第四次ギャグキャラ戦争 ただしセイバー除く (ケツアゴ)
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第一部 セイバー除け者編
続かない一話


この作品は五月くらいに別の作品のあとがきで書いた案を少し変えて形にしたものです。だから百%おふざけです


 聖杯戦争。それは七人の魔術師と七体の英霊(サーヴァント)が万能の釜や願望機と呼ばれる聖杯を巡っての争いである。そして日本の冬雪の地にて第四次聖杯戦争の幕が開かれようとしていた。

 

 

 

 

 見習い魔術師ウェイバー・ベルベットは憤慨していた。才能溢れる(と自分では思っている)彼は自信を持って提出した論文を大勢の前で否定された。否定した相手の名はケイネス・エルメロイ・アーチボルト。魔術師の学校である時計台の講師だ。ウェイバーの血筋は魔術師として歴史が浅く、赤子と変わらないと馬鹿にされた彼はとある噂を耳にする。ケイネスが聖杯戦争に出る、と。これは彼を見返すチャンスだと思ったウェイバーは強力な英霊を呼び寄せる為に聖遺物を探すも見つからず、仕方なく独力での召喚を試みる。

 

 そして、それは見事に成功した。召喚による魔力の急激な消費で息を切らせる彼の前には一人の男が立っていた。

 

 

 

「今回の聖杯戦争にライダーのクラスで降臨した者だ。坊主、お前が儂のマスターで良いのか?」

 

 その男、髪型は角刈りに繋がった太い眉毛。東洋人を思わせる濃い顔に胴長短足の体型。服装は日本の警察官の制服にサンダル。そして自転車に乗っている。

 

「お、お前の名は?」

 

 どう見ても英霊には見えない男に対し、ウェイバーは名を尋ねる。

 

 

 

 

「儂か? 儂の名は両津勘吉。葛飾署に勤務する警察官だ」

 

 こうして未熟な魔術師ウェイバー・ベルベットと不死身の警察官両津勘吉のライダー陣営が結成された。

 

 

 

 

 

 

 

 薄暗い地下室の床で間桐 雁夜は死に掛けていた。魔術の修行をろくに行っていない彼が聖杯戦争に参加する為には魔力が足らず、体中に虫を寄生させて急造の魔術師と仕上げた。当然、そのような真似をすれば命が大きく削られると彼は知っていた。

 

 そこまでする理由。それは自分の代わりに家を継ぐ事になったになった少女、桜にあった。彼女の家も魔術師の一族で魔術を伝承できるのは一人のみ。だが、彼女は姉共に高い素質を持って生まれてきた。それを放置しておくのは勿体無いと考えた父が間桐の家に養女に出す。だが、間桐の家に伝わる魔術は虫を体に寄生させるというもので、当主の臓見は悪辣な魔術師。かつての思い人の娘である桜を救うべく、雁夜は臓見に取引を持ちかける。聖杯を渡す代わりに桜を解放しろ、と。そして臓見はそれを承諾する。雁夜がもがき苦しむさまを見て楽しむ為に……。

 

 

 

「俺はバーサーカーのクラスで現界したモンだ。お前が俺のマスターで良いのか?」

 

「な、なんだコイツはっ!?」

 

 その異様な姿に雁夜だけでなく臓見さえも固まってしまう。オレンジの球体にトゲが生え、手足と顔がついている。まるでボールペンで書かれたような謎の生き物が召喚されていたからだ。

 

「お、おいっ! お前は何だっ!?」

 

「あぁ? おいまさか知らねぇのか? 世界をマルハーゲ帝国から救った伝説の男。鼻毛真拳継承者ボボボーボ・ボーボボを」

 

「つまり、お主の名はボボボーボ・ボーボボで良いのじゃな?」

 

 臓見は謎の生き物を観察するように近づき、謎の生き物は静かに頷く。

 

 

 

 

 

「俺は首領(ドン)パッチだぁぁぁぁぁっ!!」

 

「ぶぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

 

 そしてそのまま殴り飛ばされて星となった。

 

 こうして死に掛けの急造魔術師間桐雁夜と伝説のハジケリスト(バカ)首領パッチのバーサーカー陣営が結成された。

 

 

 

 

 ケイネス・エルメロイ・アーチボルトは名門魔術師一族の嫡男で、失敗を知らずに育った。彼は武功を手にれる為に参加を決意した聖杯戦争で初の失敗を味わう事になる。手に入れようとした聖遺物を積んだトラックが全て事故で紛失し、何も用意できないまま召喚に望む事となった。

 

 

「あ、私がランサーのクラスで現界した者です。え~と、貴方が私のマスターで良いんですか?」

 

「……貴様、真名はなんだ?」

 

 

 呼び出したサーヴェントは確かに槍と盾を持っており、紫の服と兜を身に着けている。だが、どう見ても英霊というよりも主夫と言ったほうが似合う穏やかな雰囲気を持っており、ケイネスでさえも真名に心当たりがなかた。

 

 

 

「あ、初めまして。私、悪の組織フロシャイム川崎支部で将軍をやっているヴァンプと申します」

 

 ヴァンプは糠味噌臭い手で握手を求めてきた。

 

 

 

 

「……綺礼、君だけが頼りだ。マトモなサーヴァントを引いてくれ」

 

 遠坂時臣は協力者である言峰綺礼をやつれた顔で見る。その原因である彼のサーヴェント・アーチャーは別室で寛いでおり、今この場にいるのは綺礼の父親である聖杯戦争の監督役を合わせた三人だ。なお、時臣は用意してた聖遺物をうっかり暖炉にくべてしまい、仕方なしに召喚したのがとんでもない相手だった。

 

 そして、綺礼が呪文を唱えるとサーヴァントが姿を現した。

 

「アンタは運が良い。なにせ最強の忍者を味方に出来るんだからな。俺の名は音速のソニック。アサシンのクラスで現界した」

 

なお、ソニックとは音速という意味である。

 

「……また馬鹿か」

 

「馬鹿のようですね」

 

「……ふぅ」

 

 遠くの部屋からは一人残されたアーチャーがいくら撃っても弾切れしない拳銃を乱射しながら騒いでいた。

 

 

「うぉぉぉっ! 俺の魚を取るとは、ふてぇ泥棒猫だ。逮捕だ逮捕だ逮捕だ逮捕だ逮捕だぁっ!!」

 

 

 

 

 雨生 龍之介はシリアルキラーである。「死」とは何か知る為に殺人を繰り返し、この日は実家で見つけた古文書の通りに殺した相手の血で魔法陣を描き、呪文を唱えていた。今まで何回か試したものの悪魔が出てくる様子もなく、単にマンネリとかした殺人に変化を加える程度のつもりだった。

 

 

 そしてこの日、彼は初めて儀式に成功した。なお、魔法陣の近くには特撮番組の特集記事のページが落ちていた。

 

 

 

 

 

「ヒーロー?」

 

 現れたのは銀色に輝く全身スーツに身を包んだ存在。特撮ヒーローを思わせるその姿に龍之介は固まり、唯一生きていた少年は縛られた状態で叫ぶ。このヒーローに助けを求める為に。

 

「……え~と、どういう状況……さ、殺人現場ぁっ!?」

 

 ヒーローはまるで女子中学生のような口調で飛び跳ねる。その声は濃く、アイテムが嫌いなボスや最強の人造人間を思わせる声だ。

 

(うわぁ、オカマのヒーローかよ)

 

「……え~と、旦那は悪魔で良いんだよ」

 

「違いますぅ。魔法少女トランシーナちゃん、ですっ!」

 

「嘘つけ」

 

(おいおい、魔法少女に憧れる変身ヒーローって、本格的に関わりたくない)

 

 龍之介は残った少年を殺すのも忘れてその場から離れようとする。しかし、その肩をヒーローが掴んだ。

 

「……ちょっと、この殺人現場は貴方の仕業?」

 

「そうだけどぉっ!?」

 

 次の瞬間、龍之介はヒーローに殴り飛ばされ意識を刈り取られた。

 

「このトランスウィザード超空転神トランセイザーの目が黒い限り、悪党は絶対に見逃さないわっ!」

 

 

 キャスター陣営はマスターが警察に捕まり、自分も不審者だと気付いたトランセイザーのみが地に放たれた。

 

 

こうして正史とは違うサーヴァントが召喚された。なお、セイバー陣営は正史の通りだった。多分苦労する。

 

 

 

 

この物語が今後どうなるのか。続かないから誰にも分からない……

 




セイバー アーサー王

ランサー ヴァンプ将軍 天体戦士サンレッド

アーチャー 本官さん 天才バカボン

ライダー 両津勘吉 こちら葛飾区亀有公園前派出所

バーサーカー 首領パッチ  ボボボーボ・ボーボボ

キャスター  トランセイザー  超空転神トランセイザー

アサシン  音速のソニック  ワンパンマン


なお、全員無敵の固有スキル ギャグ補正(絶対死なず、傷も一瞬で消える)と単独行動EX持ち


セイバー……


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まさかの二話

まさか続いてしまいました


冬木の地に到着したセイバー陣営は湾岸近くを歩いていた。セイバーと共に居るのはマスターである衛宮切嗣ではなく、その妻のアイリスフォール。彼女がセイバーのマスターと思わせ、他のマスターを切嗣が狙い撃ちにする、というのが彼らの作戦だ。誇り高い騎士であるセイバーは難色を示しつつも従う。そして、セイバー達は湾岸倉庫に入り込んだ。

 

「サーヴァントの気配がしたから来てみれば……。貴方、本当に英霊ですか? 見た所ランサーのようですが……」

 

 セイバーはヴァンプを見てその様な台詞を吐く。ヴァンプはどう見ても戦士には見えず、三大騎士クラスが相応しいとは思えない。ヴァンプを遠くから観察する切嗣さえもヴァンプの能力に違和感を感じていた。

 

(……運を除いて殆どのステータスがE。かろうじて敏捷がC。いくらなんでも弱すぎるな。よほど未熟なマスターか、あるいはステータスを偽造するスキルか……。そして、一番気になるのは宝具。……まさかExとは)

 

 マスターは英霊のステータスをある程度見ることができる。狙撃銃を構えながらヴァンプを観察していた切嗣はあまりの弱さに一瞬油断しそうになるも、宝具の数値を見て気を引き締める。そして、ヴァンプがセイバーの言葉を受けて動き出した。

 

「あ、こんばんは。いい月ですね。あ、私はランサーであってますよ」

 

「あ、これはどうも。私はセイバーです」

 

「こ、こんばんは」

 

 ヴァンプのあまりに呑気な対応にセイバーとアイリスフォールは挨拶を返し、我に帰った。

 

「と、とにかくっ! 英霊同士が戦場で会ったならば、やるべき事はただ一つ。さぁ、構えられよっ!」

 

 セイバーの対応に切嗣は内心で舌打ちをする。敵の宝具が未知数な今、やるべき事は宝具を使わせる前に倒すこと。なのにセイバーはヴァンプが構えるのを待つというのだ。そして、ヴァンプの方に動きがあった。

 

「ククク、良い度胸だ、セイバーよ。月明かりの下、あの世に舞い戻るが良い」

 

「いざ参るっ!」

 

「え? え? ちょ……」

 

 セイバーが斬りかかった事にヴァンプは動揺しその場に固まる。そのままセイバーの不可視の剣がヴァンプへと迫った。

 

 

 

 

 

 

「てめぇ、ヴァンプ様に何してんだコラっ!」

 

「アーマータイガー君っ!」

 

 そしてセイバーの剣は突如現れた虎の獣人によって防がれる。虎の獣人、アーマータイガーはセイバーの腕を掴んで剣を止めていた。セイバーは一瞬固まるも直ぐに気を取り直し、アーマータイガーを蹴りつけて離れようとする。だが、魔力放出を受けたセイバーの蹴りの一撃を受けてもアーマータイガーはビクともしない。

 

「ウッス! 英霊ってことはヒーローと同じ扱いで良いんすよね、ヴァンプ様?」

 

「あ、だけど女の子だから手加減しなよ」

 

そのままアーマータイガーはセイバーを宙に放り投げ、身動きがとれない所を狙い、

 

 

「タイガークラッシュッ!!」

 

 マッハのスピードで肩から突っ込む。アーマータイガーの巨体と鎧の重量が加わった強力なショルダータックルを食らったセイバーはコンテナに激突し、跳ね返った所を再びアーマータイガーが狙う。

 

「タイガーラリアットッ!」

 

 アーマータイガーの腕はセイバーの細い首に絡みつく様に振るわれ、そのまま地面に叩きつけた。

 

 

「ちょ、ちょっとアーマータイガー君っ!? いくら何でもやりすぎだよ。君は馬鹿力なんだからさ」

 

「ウス! 自分最低っす!」

 

 ヴァンプにペコペコ頭を下げるアーマータイガーは最優のサーヴァントと呼ばれるセイバーを圧倒した実力者とは思えない。だが、その姿を見た切嗣は固まっていた。彼の目にはアーマータイガーのステータスが映っていたからだ。

 

(馬鹿なっ!? 運と魔力以外は軒並みA+だとっ! ……おそらくあれがランサーの宝具。自分より強力なサーヴァントを呼び出す宝具か。一体真名は何だ……)

 

 切嗣は撤退を視野に入れながらもヴァンプのマスターを狙う。セイバーが押されたのは予想外だったが、それならばマスターを殺せば良いだけ。そして、そのマスターはすぐに発見できた。魔術で姿を隠しているが、科学技術に対する隠匿は出来ていない。直ぐに狙撃しようとした時、相棒の舞弥と切嗣の銃がほぼ同時に撃ち抜かれる。狙撃された方向を見ると仮面を付けた狙撃手が二人を狙っていた。そして、狙撃手のステータスも見る事ができる。彼もまたサーヴァントのようだ。

 

(……アーチャーッ!? くそっ! ランサーとアーチャーが組んでいたか)

 

「……アイリスフォール、撤退だ。状況が悪すぎる。最悪、令呪を使ってでも……」

 

 その時、何かが土煙を上げながら湾岸倉庫に突っ込んで来た。

 

 

 

 

 

 

 

(……ククク、最初能力を見た時は落胆したが、宝具はかなり使えるようだな。まさかセイバーが手も足も出ぬとは。その上、まだ数がいる上に魔力供給の必要もなし。これは勝ったも同然だ)

 

「……おい、狙撃されそうだぞ」

 

 アーマータイガーの戦いを見てほくそ笑んでいたケイネスはヴァンプが護衛につけたルゴル14が指し示した方向を魔術で見てみると狙撃手を二人確認した。

 

「……おのれ、聖杯戦争を汚しおってっ! ……むっ?」

 

 聖杯戦争を誇り高き魔術師の戦いと思っているケイネスは銃を使う切嗣に激怒する。その時、彼も近付いてくる土煙に気付いた。

 

 

 

 

 

 

 

「おい、馬鹿っ! 止めろ、バーサーカー!!」

 

「退け退けっ! 俺より目立ってんじゃねぇっ!!!」

 

 土煙の正体はバーサーカー(首領パッチ)。頭の上に簀巻きにした雁夜を担ぎ、何故かアメフトの防具を着込んで突っ込んでくる。

 

「タッチダウンッ!!」

 

「ぐばぁぁぁぁっ!」

 

 そのまま地面に叩きつけられた雁夜は血を吐いて倒れる。一同の注目がバーサーカー陣営に集まる中、首領パッチが叫んだ。

 

「この小説の主役は俺だぁぁぁぁっ! 全員纏めて掛かってこいやぁぁぁぁっ!!」

 

「……おいコラ、バーサーカー」

 

 雁夜はフラつきながら立ち上がると、首領パッチの頭を掴んで持ち上げる。そのまま腕を振り上げ、

 

「おらぁっ!!」

 

 そのまま放り投げた。首領パッチはアスファルトの地面をバウンドし、そのままコンテナに激突する。首領パッチが血を吐いてピクピク痙攣する中、雁夜は良い仕事をしたとばかりに額の汗を拭う。

 

「……ふぅ。馬鹿は滅びた。帰るか……」

 

 一同が我に帰ったのは雁夜が帰った数分後。セイバーが剣を杖にして立ち上がっていた事に誰も気付いていなかった……。

 

 

 

 

「……気を取り直して戦いましょう」

 

「ウス!」

 

 セイバーが剣を構え、アーマータイガーもデスランスを取り出す。その時、サイレンの音が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なぁ、ライダー。警察に通報って卑怯じゃないか?」

 

「何言ってんだ、坊主。銃刀法違反に器物破損。立派な犯罪じゃねぇか。それに『ずるい』『卑怯』は敗者のたわ言! 世の中には経過が重要だって奴も居るが、そんなのは負け犬の遠吠えだ。一番以外はビリと同じっ!」




クラス ランサー

真名 ヴァンプ

マスター ケイネス。ロードエルメロイ・アーチボルト

性別・身長・体重 男性 ? ?

属性 混沌・善

力 E 耐久 E 敏捷 C 魔力 E 運 A 宝具 EX


保有スキル

ギャグ補正 A

どんな目に遭ってもギャグで済むスキル。このランクなら本当なら即死するダメージを受けても””死ぬかと思った”で済む。

カリスマ C

悪の組織の支部長としては十分なレベル。理想の上司となれる。

直感 c

家事の時に役に立つレベル。調味料の大体の分量がわかる。

単独行動 ex

マスターの魔力供給無しでいくらでも現界でき、宝具も単独で使える。


宝具

悪の組織の怪人達(フロシャイム・クリーチャーズ)

対英雄宝具 

ランク A++

レンジ?

対象?

フロシャイム川崎支部の怪人および戦闘員を呼び出す。呼び出した怪人達は全て単独行動Bを所有


アーマータイガー

力 A+ 耐久 A+ 敏捷 A+ 魔力 E 運 c 宝具 ―

ルゴル14

力 B+ 耐久 B 敏捷 B 魔力 E 運 A 宝具 ―

本来は宿敵に救援要請(ギブミー・サンレッド)

ランク EX

対怪人宝具

レンジ?

最大捕捉?

ヴァンプがピンチになった際に自動発動。サンレッドが現れる



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意外な三話

「……酷い目にあったな。まったく、何奴も此奴も魔術師同士の誇りある戦いの邪魔をしよって」

 

 本拠地である冬木ハイアットホテルに戻って来たケイネスは紅茶を飲みながら愚痴を零す。さすがは天才と呼ばれるだけあって隠匿魔術の技術が高く、何とか警察が帰るまで隠れている事が出来た。ただ、その間夜風に晒され続け風邪気味になってしまったが。

 

「大丈夫ですか? ケイネスさん。今、甘酒作っていますので」

 

「まったく、ロードエルメロイともあろう者が無様ね」

 

 ケイネスの婚約者であるソラウは膝の上にウサコッツを乗せ、絵本を手にしながらケイネスに声を掛ける。ケイネスは悔しそうにしながらもヴァンプが差し出した甘酒を飲み始めた。

 

「……ふん。まぁ、セイバーを楽に倒せそうだと分かっただけでも収穫はあった。あの忌々しい狙撃手のような者が居る事も分かった事だしな」

 

 狙撃手が居ると知ってたなら、それなりの対策が出来る。ケイネスは不意打ちで頭を打ち抜かれる心配が減ったと安堵した。

 

 

「……その狙撃手だが、男の方の手に令呪らしきものがあったぞ。あの状況で生きているかは分からんが」

 

 切嗣は令呪を使って霊体になれないセイバーとアイリスフォールを逃がし、自分達は海に飛び込んで逃げようとした。その際、ルゴル14が切嗣達の足を撃ち抜くが生死は不明だ。

 

 そして、その話を聞いたケイネスは顎に手を添えて考え込む。

 

(あの女は偽のマスターか? それとも同盟を組んでいるのか。それならもう一体のサーヴァントは何故居なかった? 考えられるのは直接戦闘より支援に特化した能力か。アサシンやキャスター辺りであろうな。その場合、私自らアインツベルンの本拠地に乗り込むのは危険か?)

 

 ケイネスは切嗣と似た勘違いをした後、ルゴル14の方を見る。聞いた話では戦場で長い事過ごしたという。サーヴァントを所詮は使い魔と蔑むケイネスだが、役に立つと分かっているもの全てを使わないほど浅慮ではない。

 

「おい、ルゴル14とやら。戦争経験のある貴様なら、私をどう攻めるか申してみよ」

 

「……そうだな。魔術工房の事はよく分からんが、破壊すべき重要拠点と考えれば良いんだろ? なら、下の階から爆弾で吹き飛ばす。または食事に毒を仕込む」

 

「いや、流石に誇りある魔術師……いや、それなら狙撃などせぬな」

 

 ケイネスは暫し思案すると地図を取り出した。

 

「ソラウ、拠点を移動するぞ」

 

「……こうして幸せに暮らしましたとさ。あら? ケイネス、何か言ったかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのランサーが呼び出した獣人、かなりの強さでした。また戦ってみたいものです」

 

 拠点に戻たセイバーは昨日のアーマータイガーとの戦いを思い出して目を輝かせる。それを離れて聞いていた切嗣が不快そうに見ていた。

 

(……騎士王様は呑気なもんだな。そんなに殺し合いを楽しみたいのか。それより、あのランサーの宝具は厄介だ。セイバークラスのサーヴァントを呼び出すなんて。やはりマスター狙いしかないか。だが、あのアーチャーが厄介だな。舞弥の足がしばらく使えない以上、サポートはあまり期待できない。早く敵マスターを探し出さなければ)

 

「……アイリ。今日も街に出てくれ。他のサーヴァントにも君とセイバーが一緒にいる姿を見せる必要がある。倉庫に弾痕が残っているだろうから警察も警戒しているだろうし、流石に昼間から狙撃はしないだろうしね」

 

「ええ、分かったわ。それより切嗣。本当にセイバーとは話をしないつもりなの?」

 

「僕に道具と話す趣味はないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁさぁ、皆さん寄っといでっ! 聞けば馬券がピタリと当たるっ! 馬券予想屋だよっ!」

 

その頃、場外馬券投票所では勝手に商売をしている両津とウェイバーの姿があった。両津が資金調達と言って少ない持ち金をギャンブルで使い果たし、資金調達の為に金を集めているのだ。ウェイバーの未熟な暗示で何とか警備員は気付いておらず、客は少しながら集まっている。

 

「おい見ろ坊主っ! 結構儲かったぞっ! よ~し! これを次のレースに全部つぎ込んで……」

 

「いい加減にしろ、バカバカバカぁ~!」

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ」

 

 トランセイザーは何度目か分からない溜息を吐く。単独行動スキルの為に魔力枯渇で消滅はしないが、宿無し生活は女子中学生には堪える様だ。片手には拾ったお金で買った紅茶のペットボトルが握られており、それを飲む為に実体化した彼女を通行人が奇異な物を見る目で見る。

 

 

 

 

「おい、貴様英霊だな」

 

「ええ、そうよ。あ、結構格好良いかも」

 

 マスコットポジションの三十代派遣社員(時給制)に病気とまで言われた悪癖がでたトランセイザーは目の前の男に見惚れる。なお、トランセイザーの声は貝類の名前の妻を持つ婿養子の同僚の声と同じ。そう、オッサンの声だ。

 

 

「きょ、今日の所は引かせて貰うっ! 今度会ったら、この音速のソニックが仕留めてやるから覚悟しろっ!」

 

 そのままソニックは去って行き、トランセイザーだけがその場に残された。

 

「……なんで帰ったのかしら?」

 

 自分が気持ち悪いからだと分からなかったトランセイザーが首を傾げていると、再び近づいてくる影があった。

 

 

「……サーヴァント? 随分妙な格好ですね。確か、特撮ヒーローでしたか? 聖杯からの知識で少しは知っています」

 

 セイバーはあまりに異質な格好に戸惑い、トランセイザーはセイバーとアイリスフィールに見蕩れる。

 

「あ、綺麗な人達ねぇ。え~と、貴女もサーヴァントで良いのかしら?」

 

「ああ、そうだ。私はセイバーのクラスを得て現界した」

 

「私はキャスターよ」

 

「嘘を付けっ! 貴様の何処かキャスター(魔術師)だっ! クラスを偽り油断させようとは卑怯だぞっ!」

 

「す、好きでこんな格好になったんじゃないわよっ! 私だって本当はヒラヒラの衣装を身に纏って踊るように戦いたかったわよぉ! 男の子じゃなくって女の子の憧れの魔法少女になりたかったのよぉ!」

 

 もう一度言うがトランセイザーの声は十七号と十八号を吸収した人造人間と同じ声だ。泣き叫ぶとトランセイザーにセイバーが動揺した時、別の声が聞こえてきた。

 

 

「何やってるっチ。トランセイザー! アイツは敵っチよ! さっさと構える、ぐはぁっ!」

 

出てきたのは尻尾が星型の謎の生物。その愛くるしい姿にセイバーは見とれ、トランセイザーは殴り掛かった。

 

 

「おい、チーポ。元を正せばアンタがっ!」

 

「痛い痛い。トランスナックル痛い」

 

「だからヒーローっぽい名前付けるんじゃないわよぉ! あ~も~、やったるわっ!」

 

「その粋だっチよ! ほら、一般人が巻き込まれない様に空間固定ッチ!」

 

 その瞬間、周囲の時が停まった。

 

 

「なっ!? これは……」

 

「さぁ、行くわよっ! 超空転神トランセイザーが相手をしちゃうんだからっ!」

 

 トランセイザーはライトセイバーを抜くとセイバーに切り掛る。セイバーは剣を横にして振り下ろされた其れを防ぐが少し押し切られ、トランセイザーは剣の合わさった部分を支点にしてクルリと回る。セイバーが咄嗟に伏せると結んでいた金髪のリボンから先が地面に落ちた。

 

「……強い」

 

「……あれ? これ結構いけるかも」

 

 その言葉にセイバーは視線を強め、距離を取ると剣を大上段に構える。剣に暴風が集まりだし、セイバーはそのまま剣を振り下ろした。

 

 

 

風王(ストライク)鉄槌(エア)ァァァァァッ!!」

 

「きゃっ!?」

 

 放たれた暴風は地面を削りながらトランセイザーに衝突し吹き飛ばす。土煙が舞う中、アイリスフィールはセイバーに近付いていった。

 

「セイバー、、まだ生きてるわ」

 

「ですが、直撃しましたから無傷では済まないでしょう」

 

 セイバーがトランセイザーが居るであろう場所を油断なく見つめる中、土煙が晴れ、無傷(・・)のトランセイザーとチーポが姿を見せた。

 

 

(いった)~いっ! よくもやったわね!」

 

「こんなに愛らしい僕まで殺す気っチかっ!」

 

 




クラス キャスター

真名 トランセイザー(篠原心愛)

マスター 雨生 龍之介

性別・身長・体重 女性 ? ?

属性 秩序・善

力 A++ 耐久 A+ 敏捷 A+ 魔力 D 運 A++ 宝具 A++


保有スキル

ギャグ補正 A

どんな目に遭ってもギャグで済むスキル。このランクなら本当なら即死するダメージを受けても””死ぬかと思った”で済む。

主人公補正 B

一つの物語の最重要人物の証。世界を味方に付けた様な都合の良い事が優先して起こりやすい。また同ランクの直感・仕切り直し・戦闘続行・守護騎士・心眼(偽)・勇猛・嵐の航海者の効果も併せ持つ特殊スキル。



単独行動 ex

マスターの魔力供給無しでいくらでも現界でき、宝具も単独で使える。

道具作成・陣地作成 F

能力的に無理。部屋の模様替えや学生の下手な工作レベル


変身 A++

スーツを二段階に変化させて能力を強化させる。変身する事で使用可能な宝具有り


宝具

見た目は愛玩動物(チーポ)

ランク A+

対?宝具

レンジ ?

最大捕捉 ?

トランセイザーの相棒的存在の派遣社員。語尾の~チは世界観だけでも望むようにやってやれとの上司命令。空間固定や空間移動。変身などの多彩な能力を持っていおり、疑い深さ故の鋭い観察眼も併せ持つ

マルチディメンションスプレッダー

ランク  A+


対人宝具

レンジ

最大捕捉

十徳ナイフ状の柄から武器を召還


マジカルプリフィアスターライト

ランク A++

対魔幻獣宝具

レンジ ?

対象 ?

トランセイザーの必殺技。一段階目は腹部からビームを放つ。変身を重ねる事で強化。

宝具 トランチアーズ

ランク A+

対魔幻獣宝具

レンジ?

最大捕捉 ?

トランセイザーのサポート要員であるトランチアーズを召還。三人は単独行動Bを保有


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予想外の四話

セイバーとトランセイザーの戦いは、ステータスで劣るセイバーが優勢だった。対人の訓練と実践を積み重ねてきたセイバーに対し、トランセイザーは経験で大きく劣り、戦ってきた相手も殆どが人の姿をしていない。故にどう見ても人間にしか見えないセイバーとの戦いに迷いが生じていたのだ。

 

「……どうした。私が女だからと舐めているのか」

 

 そしてその迷いを感じ取ったセイバーは怒りを露わにする。トランセイザーはそれを見てライトセイバーを構え直した。

 

「……そうね。正直迷ってたわ。でも、それじゃあ失礼だから本気で行くわっ!」

 

 トランセイザーの振るったライトセイバーを受け止めたセイバーは魔力放出で高めた力で押し返すs。それでもトランセイザーが押すが、セイバーは技巧の差で剣を弾いた。

 

「お強いですね。名前に聞き覚えがありませんが、どこの英霊ですか」

 

「あ、私は日本人よ。え~と、貴女は?」

 

「……貴方ばかりに名乗らせるのは卑怯ですね。申し遅れました。私の真名はアルトリア・ペンドラゴン。アーサー王と言えば分かるでしょうか?」

 

「あっ! 聞いた事があるっ! すごい有名人じゃないっ!」

 

 有名な王に会った事で嬉しそうにするトランセイザーに対し、セイバーがあくまでも真剣な眼差しを向けていた。

 

「さて、勝負は此処からです」

 

「そうね。じゃあ、行くわよっ! トランスマジカルブリザードっ!」

 

 トランセイザーはライトセイバーの刀身を消すと鍔の先をセイバーに向ける。すると、途轍もない冷気が発射された。だが、その冷気はセイバーの体に触れた途端に消え去る。

 

「惜しかったですね。私の対魔力はA。今の冷気は魔術の類だったようですね」

 

 セイバーは一気に詰め寄り、トランセイザーがライトセイバーの刀身を出す前に切り掛る。セイバーの手には手応えが伝わりトランセイザーは切り飛ばされた。地面に激突したトランセイザーは土煙に包まれる。

 

「……今度こそっ!」

 

 

 セイバーが手応えを感じたその時、セイバーとアイリスフィールの耳に音楽が聞こえてきた。それは言うならばヒーロー物のテーマ曲。具体的に言うならドラマCDに収録されてそうな音で、間違いなくトランセイザーのテーマ曲だった。

 

 

 

「……すっかり忘れてたわ。この戦い、ソーダライト達との戦いと同じ命懸けの戦いだって事をね。さぁ、私の本気を見せちゃうんだからっ!」

 

 其処に立っていたトランセイザーは先ほどまでの銀色のボディスーツではなく、赤を基調としたボデイスーツを身に纏い、手には柄のみの剣を持っている。その柄から巨大な刀身が出現した。

 

「来たぁぁぁぁっ! 行くっチよ、トランセイザー!」

 

「さぁっ! 此処からが本当の勝負なんだからっ!」

 

 トランセイザーの隣にいるチーポはラジカセを仕舞うと遠くに避難する。トランセイザーから放たれる力が格段に上がった事を察したセイバーは油断なく構えた。その時、彼女の耳に切嗣の声が聞こえてくる。

 

 

 

『令呪をもって我が傀儡に命じる。直様アイリスフィールと共に帰還せよ』

 

 

 次の瞬間、アイリスフィールを抱えたセイバーはチーポが固定した空間から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういう事ですか、マスター!」

 

 切嗣の下に転移したセイバーは抗議の声を上げるが切嗣は反応すらしない。まるでセイバーなどこの場にいない様な態度だ。

 

「……アイリ。作戦を変更する。キャスターでさえ予想以上に力を持っている。その上、召喚した英霊が役に立たないなら、他のマスターを殺して英霊と再契約するしかないからね」

 

「マスター!?」

 

「僕は他のマスターを探す。……幸いキャスターのマスターの居場所は分かった」

 

 切嗣が指差したテレビには連続殺人犯逮捕に関するニュースが流れていた。

 

 

 

『なお、生き残った少年も容疑者と同じくヒーローが助けてくれたと証言しており、現場周辺でヒーローの目撃証言も多発している事から警察はヒーロー姿の人物を探しているとの事です』

 

「……おそらくコイツがキャスターのマスターだろうね」

 

「切嗣、貴方本気なの!?」

 

「僕は使えない道具だけで戦おうとする程愚かじゃないさ」

 

 ぐっと拳を握り締めるセイバーを無視した切嗣はそのまま銃を持って出かけて行った。

 

 

「セイバー、気にしないで。切嗣は焦っているのよ」

 

「……分かっています」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なぁ、ライダー。こんな事していてどうすんだよぉ。これは命懸けの戦いなんだぞぉ。僕はこの戦争で死んでも良いと思って参加したのに、一回も戦ってないじゃないか」

 

 ウェイバーは両津が作った借金を返す為、バーの皿洗いのバイトをしていた。その後ろでは両津がツマミを作っている。

 

「あのなぁ、坊主。お前さんは物事を暗く考えすぎだ。大体、最近の若者は悩むと”生きる”か”死ぬ”の二択だけになる。儂はまず”生きる”モードに切り替えるっ! んで、どう生きるか考えるっ! 人生は楽観的に生きるに限るぞ、ウェイバー。ライフ・イズ・ポジティブだぁっ!」

 

 

 

 

 

 

「うぉ~いっ! ツマミが来てねぇぞぉ」

 

「おっと、いかん。直ぐ持っていく。……何だ、本官じゃねぇか」

 

「……んあ? 何だ、両津じゃねぇか。(ひっさ)しぶりだなぁ、おい」

 

 酔っ払った目玉繋がりの警察官は両津の顔を見るなり手を振ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「大体よぉ、最近の若もんは大先輩の俺達に敬意が足りないてんだよ」

 

「そうだよな、本官よぉ。中川や麗子も儂に金を貸さないし。おい、坊主。聞いてんのか?」

 

「き、聞いてるよ」

 

 バイト後、ウェイバーを連れて飲み屋に来た二人は大酒を喰らいながらウェイバーに絡む。既に瓶を何本も飲み干しており、アルコール臭が凄い。ウェイバーは辟易としながらも二人の姿を眺めていた。

 

(……この二人、楽しそうだよなぁ。なぁんにも悩みがなさそうでさ。なんか悩んでいるのが馬鹿馬鹿しく感じるよ)

 

 

 

 

 

 

「お会計一万五千三百円になりま~す」

 

「坊主、払っといてくれ」

 

「馬鹿馬鹿馬鹿ぁ~!」

 

 ウェイバーの聖杯戦争資金が大幅に減った……。

 

 

 

 

 

 

「んじゃな、両津。また飲もうや」

 

「おうっ! またな」

 

 目玉繋がりのお巡りと別れた両津は鼻歌を歌いながら夜道を歩く。匂いだけで酔っ払ったウェイバーは口を押さえながらその横を歩いていた。その時、ウェイバーに向かって手裏剣が飛んでくる。

 

 

「伏せろっ!」

 

「うわぁっ!?」

 

 両津は手裏剣を全て撃ち落とす。手裏剣が飛んできた方向を見るが誰も居らず、後ろから声が聞こえてきた。

 

 

「……遅い」

 

 声の主は関節のパニッ……音速のソニック。彼は刀を出すとウェイバー目掛けて突き出した。

 

 




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ネタが切れてきた五話

「アーチャーは役に立たない。彼を囮にし、アサシンにマスターを片付けさせよう」

 

 自由奔放で自分勝手の自堕落三昧の本官に見切りを付けた時臣は、早々にパニッ……ソニックを作戦の主軸に据える事を決定。最終的に本官を自害させる事にした。そんな事など知らない本官は毎夜夜遊びを繰り返し、ついにソニックはライダー(両津)を発見。まずは牽制にと手裏剣を投げるも、全て拳銃で撃ち落とされる。あれならアーチャーの適正も有るのではないかと思いつつも、ソニックはマスターであるウェイバーを狙う。

 

「時よ止まれっ!」

 

 そしてソニックはその声を聞き、気が付いたら縛られた状態で肥溜めの中に沈められていた。

 

 

 

 

 

「……なぁ、ライダー。何でお前は時を止めれるんだ?」

 

「知らん。なんか使えた事が有ったんだ。後は宝具で再現した」

 

 両津はアッサリと言い放つと滞在先のマッケンジー宅へと向かう。その間、ウェイバーは思い悩んでいた。

 

(あの時、世界全体の時が止まってたよな。対界宝具か……。でも、僕の魔力は使用されてない。……単独行動EXか)

 

「ん? どうしたんだ、坊主」

 

「……お前の事、詰まんない奴だなって。結局、お前はマスターが誰でも良いんだろ? 僕は自分が立派なま魔術師だって証明する為に参加したっていうに……」

 

「……なぁ、坊主。お前さん、古い考えの奴らが嫌で論文を出し、それを馬鹿にされたんだろ?」

 

「そうだよ! 何だ、お前まで僕を馬鹿にしてるのかよっ!」

 

「結局、お前さんも其奴らと同じじゃねぇか。魔術師として立派である事を証明しなきゃいけない、なんて古臭い考えに囚われてよ。そうじゃないと自分の人生を誇れないみたいによ」

 

「当たり前だろっ! 僕は散々馬鹿にされてきたんだっ! 歴史の浅い三流だってっ! なのに、召喚したのはマスターなんて必要としないサーヴァント。これじゃあ、優勝しても僕が優秀なんて証明できないじゃないかっ!」

 

「……良いか、ウェイバー。何回馬鹿にされても、何回失敗しても良いんだ。儂は借金が三千億以上あるし、何度も警官をクビになったり、何度犯罪を犯して捕まったか分からん。だがっ! 儂は自分の人生に誇りを持っている。人間、転ぶ事が恥ずかしいんじゃない。立ち上がらない事が恥ずかしいんだ」

 

「……うるさい。それで慰めてるつもりかよ」

 

プイッと横を向くウェイバーだが、両津の話を聞いている内に悩んでいるのが馬鹿馬鹿しくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やはりな」

 

 龍之介を遠くから観察している切嗣は彼の手を見て呟く。彼に目を付けたのは、裏社会に出回った情報が始まりだった。殺人現場に血で書いた魔法陣が残されていた、と。

 

 

「……さて、どうやって始末するか」

 

 

 

 

そしてその頃、セイバー達の元に一体のサーヴァントが向かっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイリスフィール、敵襲ですっ!」

 

セイバーの指した方向からは土煙が上がり、何やら悲鳴が聞こえてくる。やがて土煙の正体が見えてきた。

 

 

 

「シュッポシュッポシュッポッポォォォォ!」

 

「おい、馬鹿っ! 止まれぇぇぇぇっ!!」

 

 やって来たのはバーサーカー(首領パッチ)。頭に煙突を付け、胴体を輪っかにした紐の中に入れている。その後ろではマスターである雁夜が速すぎて浮いていた。

 

 

 

「到着っ!」

 

「ぐぼっ!」

 

 首領パッチが急に止まった為、雁夜は慣性の法則で止まれず、そのまま地面に顔面からダイブする。そのまま岩にぶつかり、ピクピクと痙攣していた。

 

 

「大丈夫か、雁夜っ!?  いったい誰にやられたっ!?」

 

「お…お前……」

 

「ちくしょぉぉぉぉ!! 雁夜の敵だぁぁぁっ!!」

 

「えぇっ!?」

 

 首領パッチはそのまま雁夜を担いでセイバーに向かって行き、セイバーに投げつけた。

 

「はい、どーん!」

 

「「ぐはっ!?」」

 

 雁夜は大量に吐血し、セイバーも数メートル吹き飛ばされる。アイリスフィールは慌ててセイバーを治療した。

 

「……貴様! 何を巫山戯ている。英雄同士の戦いをなんだと思っているんだっ!」

 

「テメェこそこの戦いが何だか分かってるのか? 俺が主役になる為の戦いだろうがぁっ! そして、これは雁夜の弔い合戦だ!」

 

「そうだ! そうだ! 俺の弔い合戦だっ!」

 

雁夜は首領パッチのそばでセイバーに拳を向ける。どう見ても死に掛けには見えなかった。

 

 

 

「やはりバーサーカーか。話が通じない……。此処は一気に決めるっ!」

 

最近、負けが込んでいるセイバーは汚名返上のチャンスと首領パッチに切りかかる。

 

 

「雁夜ガードっ!」

 

首領パッチは雁夜を盾にし、雁夜が切り裂かれた。

 

「えぇっ!?」

 

 

 

 

 

 

「……許せねぇ。雁夜を切る必要があるのかよ」

 

「いや、貴方が盾に……」

 

「行くぞ首領パッチ!」

 

「生きてるっ!? っていうか無傷っ!?」

 

確かに体を切り裂かれ、血飛沫を上げた雁夜はまったくの元気だ。流石にセイバーも展開について行けず、アイリスフィールもどうして良いか分からなさそうだ。

 

 

 

 

「おい、雁夜! 首領パッチハンマーだ!」

 

「白ネギなら有るけど?」

 

「おぉっ! 有るじぇねぇか首領パッチハンマーっ!」

 

首領パッチはネギ片手にセイバーに向かっていく。

 

 

 

 

「はぁっ!」

 

そして真っ二つにされた。切られた体は綺麗に二つに分かれ、中から”三等”と書かれた紙が出てきた。

 

 

 

「首領パッチィィィィィイッ!!」

 

「……放っといてっ! 私、三等だったのよ! その気持ちが貴方に分かるっ!?」

 

左側は目に涙を蓄えながら叫ぶ。その間、右側はセイバーに切り刻まれていた。

 

 

 

「俺、来週から後藤(五等)です」

 

雁夜が持った婚姻届には『後藤葵』と書かれていた。

 

「……二年までは八等だったんだよね~」

 

 

 

「甘えてたっ! 私甘えてたっ!」

 

左側は右側の方に飛び跳ねていく。そして、合体した。

 

 

 

 

「魔光破邪神ザルビオス!!」

 

「おりゃぁぁっ!!」

 

そして雁夜によって真っ二つにされた……。

 

 

 

 

 

 

 

「……アイリスフィール。もう、我慢ができません」

 

「……え? 何か言ったかしら?」

 

あまりの展開にセイバーは怒り、アイリスフィールは現実逃避する。セイバーの剣には暴風が集まり出していた。

 

 

「げげっ! アレは拙いぞ、バーサーカー。バカガードでも防ぎきれないっ!」

 

「……こうなったら。雁夜、これを食えっ!」

 

首領パッチが差し出したのは大量の焼き芋。それを雁夜の口に押し込んでいく。その間にもセイバーの剣には風が集まりだす。

 

 

風王(ストライク)……」

 

「雁夜、セイバーに尻を向けろっ!」

 

 雁夜は首領パッチの言う通りにセイバーに尻を向け、セイバーは剣を振り下ろす。

 

鉄槌(エア)ァァァァァァァァァッ!!」

 

それ当時に首領パッチは雁夜の腹を殴った。

 

「強制オナラ真拳”皐月”!」

 

「ぐはっ!?」

 

 暴風と強烈なオナラがぶつかり合って相殺する。セイバーは呆然として剣を落とした。

 

 

「わ、私の風王鉄槌がオナラに……」

 

 

 

「よし雁夜! 今がチャンスだっ! 首領パッチソード出せっ!」

 

「白ネギなら有るけど?」

 

「おぉっ! 有るじぇねぇか首領パチソードっ!」

 

 

首領パッチは白ネギを片手にセイバーに向かっていく、セイバーは気を取り直して剣を構え、

 

 

 

 

 

 

 

 

「勝ったっ!」

 

 

首領パッチにボッコボコにされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、深夜の倉庫街。空間に歪みが生まれ、中から一人の女性が現れた。どこか未来的な感じをする彼女はまるで機械の様だ。

 

 

「両津勘吉を抹殺する……」

 

 

 

その頃、海の中に巨大な異形が現れた。魚に似た顔をしており、頭には王冠を被っている。

 

「臭うわぁ。人間の香りがするわねぇ」

 

 

 

その頃、冬木の地に未曾有の恐怖が訪れていた。

 

「此処が冬木か。よし、ここを世界征服の足掛かりにするぞ」

 

「はい、デビルアイ様」

 

「それはそうとして、お腹減りません?」

 

「……そうだな」

 

 

 

 

その頃、長髪の男が教会の前まで来ていた。後ろには褐色の肌の少女三人が立っていた

 

「ふむ、此処が聖杯戦争の監督役が居る場所か。少し挨拶して行くか?」

 

「「「はい、ソーダライト様」」」

 

 

 

 




【CLASS】ライダー
【マスター】ウェイバー
【真名】両津勘吉
【身長・体重】161cm・71kg
【属性】中立・善
【ステータス】
筋力:c(A++) 耐久:B(A++) 敏捷:c(A++) 魔力:F 幸運:EX 宝具:EX


騎乗 B+ 自転車から戦闘機までたいていの物は動かせる


強欲 EX どれだけ欲望に忠実か。金が絡んだ際、魔力と幸運以外のステータスをA++にする。ただし、一定以上発動した場合、幸運とカリスマのランクがFまで下がる。


黄金律 B 大体の起業が大成功する

単独行動 ex マスターの魔力供給無しでいくらでも現界でき、宝具も単独で使える。


主人公補正 A++

一つの物語の最重要人物の証。世界を味方に付けた様な都合の良い事が優先して起こりやすい。また同ランクの直感・仕切り直し・戦闘続行・守護騎士・心眼(偽)・勇猛・嵐の航海者の効果も併せ持つ特殊スキル。

ギャグ補正 A

どんな目に遭ってもギャグで済むスキル。このランクなら本当なら即死するダメージを受けても””死ぬかと思った”で済む。

道具作成 A

手先がとても器用。世界的大発明を作ることもある。強欲発動時、ランクが一ランク上昇


宝具

超長期連載の歴史(コチカメ・ザ・ヒストリー)

ランク EX

対人~界宝具

レンジ ?

最大捕捉 ?

三十八年間休まず続いた歴史が宝具化した物、漫画・アニメで一度でも起きた事象(透明化や分裂や時を操る)や登場人物を再現・召還する。ただし、展開の都合で少々変化







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何とか六話

時は雁夜が首領パッチを召喚した日の夜まで遡る。臓硯は星になり、鶴野が逃げ出した事で家に残った人間は雁夜と桜だけになった。首領パッチは鶴野のベットでイビキを着て眠り、雁夜は自室で眠っていた。

 

 

 

「……此処は?」

 

雁夜が目を覚ますと、桜が隣に立っており、見渡す限りの……ウンコ畑に居た。

 

「……ウンコ?」

 

「違うよ桜ちゃんっ! きっとチョコ味のソフトクリームだよっ!」

 

まっすぐに現実を直視する桜に対し、雁夜は必死に現実から逃げようとする。その時、あたりのウンコに羽が生え、宙に浮かびだした。

 

「ウンコではありません。これは全て真理であり、バビロンの一部です」

 

「違うよ、ウンコだよっ!」

 

「桜ちゃんっ!?」

 

宙に浮くウンコ達には何時の間にか可愛らしい顔と手足が現れ、二人の周囲をクルクルと回る。

 

「バビバビロンロン! バビロンロン!」

 

「ウンコ! ウンコ! ウンコ!」

 

 

 

 

 

 

「ウンコーーーーーーーーー!!」

 

そして、地中からソフトクリームのイラストが印刷されたパーカーを着たウンコが現れ、其処で雁夜の目は覚める。鏡を見たら体が元に戻っており、リビングにいた桜も元に体の戻っていた。

 

 

「あ! オジさんお早う! 朝ご飯できてるよ」

 

「あ、ああ。お早う桜ちゃん。……これ?」

 

雁夜の目の前にはケセットコンロに乗った巨大な鍋が有り”ドッキリ大成功”と書かれた看板と首領パッチのち手足がはみ出していた。

 

 

「……こまんぞ。……突っ込まんぞっ!!」

 

「「!?」」

 

あと令呪が何故かウンコマークになっており、発動させようとしても発動しなくなった。

 

 

 

 

 

 

そして、場面は移り変わり切嗣の帰宅途中、彼の前には三人の怪人が立ち塞がっていた。

 

「貴様、マスターだな? 我が名はデビルアイ。貴様には今から我が傀儡になってもらう」

 

(……新手のサーヴァントか。それも中々強力だな。くそっ! 令呪は残り一つ。セイバーを呼ぶわけには……。タイムアルター・トリプリアクセル!!)

 

切嗣が選んだのは逃走。自らの体内の時間経過を加速させ、一気に距離を取ろうとする。だが、怪人の無数の触手に絡め取られてしまった。

 

「馬鹿な奴だ。人間が怪人に速度で勝てる訳がないだろう。さて始めよう」

 

デビルアイは片目を隠している目を掻き揚げて切嗣の目を見つめる。切嗣の意識は次第に薄れ始めた……。

 

 

 

「さて、これで良しとしよう。正義の味方(ヒーロー)を全て抹殺し、私こそが世界を征服するのだ」

 

(くそ……。こんな…所で……)

 

 

 

 

 

 

「……アイリスフィール。マスターに何かあったようです」

 

首領パッチは勝っただけで満足して帰って行き、治療を終えたセイバーは直感で切嗣の危険を察知する。舞弥の傷も戦闘が可能な程には回復しており、アイリスフィールの護衛を任せたセイバーは切嗣を探しに街に出た。

 

 

 

 

 

「ねぇ、どうしようかチーポ。私、願いもないのに聖杯なんて要らないし、あの殺人鬼に聖杯が渡るのも嫌だし……」

 

「あれ? 昔みたいに”変身魔女っ子になりた~い” とか言わないんッチ?」

 

「……それは少し思ったけど、この姿(トランセイザー)を否定するって事は、これまでの戦いの全てを否定する事なんだ、て思うようになって……」

 

「ココア……」

 

海辺ではトランセイザーが海を見ながら黄昏ている。その横にはチーポの姿が有り、寿司を貪り食っていた。

 

「おいコラっ! その特上寿司はどこで手に入れやがったっ! まさか日雇いのバイトで手に入れた金で注文したんじゃないでしょうねっ!」

 

「く、苦しいっ! ウニ出るっ! 今食べたウニ出るっ!」

 

トランセイザーはチーポを締め上げチーポは口から泡を吐く。その時、少し離れた場所から轟音が聞こえてきた。

 

 

「……サーヴァントの気配だッチ。……どうするッチか?」

 

「う~ん、敵なのよねぇ。……様子だけ見に行きましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

風王鉄槌(ストライクエア)ァァァァァァァァッ!!!!」

 

セイバーが放った暴風は目の前の敵に向けて行き、その敵は只立ち尽くして息を吸う。

 

「ふっ!」

 

「なっ!?」

 

そして、息を吐いただけでストライクエアを跳ね返す。セイバーは何とか避けるが、着地の瞬間に殴り飛ばされ地面をバウンドした。

 

 

「弱いわねぇ。やっぱり、人間なんてこの程度よね」

 

「……強い」

 

この敵と会ったのはつい先程。倉庫街を探索中、いきなり襲ってきたのだ。

 

「その王冠、貴方も王とお見受けします。私の名はブリテンの王、アルトリア・ペンドラゴン。貴方も王なら堂々と名乗りなさい」

 

「……貴方と私を同じにしないでくれる? 私の名は深海王。偉大なる海を統べる王。そしてこの世界全てを支配する存在。貴女のチッポケな国とは違うのよ」

 

「貴様っ!」

 

セイバーは怒り、切り札を切る。それはセイバーの持つ最大宝具。輝くその剣は、過去、現在、未来において戦場で散りゆく全ての強者が抱く尊き夢。いま常勝の王は高らかに奇跡の真名を唄う。

 

 

約束された(エクス)勝利の剣(カリバ)ァァァァァァァァッ!!」

 

巨大な光の剣が深海王を飲み込む。膨大な魔力を消費したセイバーの疲労は高まり、

 

 

 

 

絶望は加速する。 

 

「効いたわ。……少しね」

 

深海王の体の表面は焼け焦げ、肉が見えている。そして、少し血が出ているものの傷は徐々に塞がってきていた。

 

 

 

「私に傷を付けたご褒美よ。貴女、甚振って殺してあげるわ♥」

 

「くっ!」

 

深海王は身を屈め、一気に飛びかかる。セイバーは正面から受けようとするが、直感が受けきれないと告げていた。

 

 

 

 

 

 

 

「トランスマジカル……ヤクザキック!!」

 

「ぐぶっ!?」

 

だが、突如上から飛びかかってきたトランセイザーの蹴りによって地面に叩きつけられた。

 

 

「キャスター!?」

 

「……セイバー。私はヒーローなの。だから、世界を支配しようとする此奴を見逃せない。貴女と手を組んであげるわっ!」

 

 

 

 

 

「……また、鬱陶しいのが増えたわね」

 

深海王は平然と立ち上がる。空模様は悪くなり、もうすぐ雨が降りそうだった……。

 




クラス バーサーカー

真名 首領パッチ

マスター 間桐雁夜

性別・身長・体重 男性 ? ?

属性 混沌・善

力 ? 耐久 ? 敏捷 ? 魔力 ? 運 ? 宝具 ?


保有スキル

ギャグ補正 EX

どんな目に遭ってもギャグで済むスキル。此処まで来るとマスターやその周囲の人間も巻き込み、ギャグ補正Aを付属できる

単独行動 ex

マスターの魔力供給無しでいくらでも現界でき、宝具も単独で使える。

怒んパッチ ex

怒りが最高値に達した時、性格と姿が変わる。怒りが増すとステータスがアップ




宝具

葱(首領パッチソード)

対鍋宝具 

ランク E~ex

レンジ?

最大補足 1

焼いてよし煮てよしの野菜。スーパーの見切り品にしては美味しい


理解不能の馬鹿共(ハジケリスト)

ランク EX

対?宝具

レンジ ?

最大補足 ?


意味不明理解不能。その場のノリで暴れまわる。あと、ステータス隠匿





そして、新たな敵の共通スキル



シリアス補正 A

同ランク以下のギャグ補正を軽減し、ダメージを与えられる。


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苦労して七話

「あ~ん。ウサちゃん可愛いわねぇ」

 

「僕は可愛くなんかないやい! も~ぶっ殺すよ!」

 

ソラウはウサコッツを抱き抱えながら頬擦りし、ウサコッツはジュースを飲みながらプンプン可愛らしく怒る。ケイネスはその光景を見て微笑んでいた。

 

「……ランサー。私はお前を呼んで良かったと思うぞ。ソラウがあの様に笑うのを見るのは初めてだ。それだけでも収穫だな」

 

「ほらほら、それだけで満足しちゃダメですよ? ケイネスさんは武功を手に入れ、私達はレッドさんを抹殺する。そうでしょ?」

 

「お前の最強宝具は確か……。いや、そうだったな。よし! 使い魔を飛ばし、他のマスターを探すぞ!」

 

ケイネスは立ち上がると張り切って使い魔を飛ばそうとする。その時、雨が降ってきた。

 

「……雨天中止だな」

 

ケイネス達は慌てて拠点にしている古屋敷に入る。その姿を遠くから見ている女性が居た。

 

「まずは、アイツ等から……」

 

 

 

 

 

 

 

「リリカルマジカルぶった斬り!!」

 

「はぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

セイバーとトランセイザーは深海王に猛攻をかける。先程から降り始めた雨。それに対して強烈に嫌な予感がすると二人の直感が告げていた。深海王も人など遥かに超越した反撃を繰り出し、その一撃一撃はミサイルさえ超す威力。掠っただけでも危ないが、二人は直感によるコンビネーションで完全に押していた。

 

「くっ! 中々やるわねぇ。でも、無駄よぉ」

 

今もトランセイザーとセイバーが交差した切り傷を付けるも直ぐに塞がっていく。セイバーは宝具を連発した後で疲弊しており、このまま長期戦になれば押され始めるだろう。だが、目の前の怪物は余りにも危険で放置して撤退する訳には行かない。それが分かっているからこそ、トランセイザーも第二形態に変身していた。

 

「……セイバー、私に策があるわ。アイツに大きな傷、付けれるかしら?」

 

「無論だ。……エクス…カリバァァァァァァァァッ!!」

 

本日二度目の最強宝具。セイバーが保有していた魔力は一割を切り、もはや実体化すら危うい状態になる。そしてエクスカリバーは修復しかけの傷を抉り、内蔵まで達する。そしてトランセイザーは刀身を消した剣の柄を深海王に向ける。

 

「トランスチアーズ!」

 

 

 

 

「チアーズレッド・ローズ!」

 

「チアーズブル・ムーン」

 

「チアーズグリーン・ドルフィン」

 

 

 

 

「「「トランチアーズ参上!!!」」」

 

 

 

 

その瞬間、トランセイザーの周囲に三人の少女が出現する。一人はチアリーダーの様な格好をした少女。もう一人は大きなペンを持った少女で最後はバトンを持った少女だった。三人は視線を合わせると手から光を放ち、その光はトランセイザーに吸い込まれていく。するとトランセイザーが放つ力が増大した。

 

 

「トランスマジカルブリザード!!」

 

「か、体が……」

 

深海王の傷口はトランセイザーが放った冷気で凍りつき修復を阻害される。そしてトランセイザーの腹部に膨大な魔力が充填された。

 

 

「マジカルプリフィア…スタライトォォォォォォォォッ!!」

 

「グ、グォォォォォォォォッ!!」

 

放たれた魔力は深海王の体を貫通し大穴を開ける。そのまま深海王は倒れ伏した。

 

 

「か、勝った! ……セイバー。今日はお互い休戦にしない?」

 

「……ええ、そうしてくれると助かります」

 

二人は挨拶を交わし、トランチアーズはその光景を見て微笑む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~あ。随分とやってくれたわね。でも、雨のおかげで萎んでいた体が元に戻ったわ……」

 

そして、悪夢はまだ終わらない。既にセイバーは余力が残っておらず、トランセイザーもお技を放ったばかりで疲弊の色が見える。そして、深海王から放たれる威圧感は遥かに増していた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……重要な話? 直接会ってでないと出来ないのですか?」

 

時臣は曇天の空を見ながら通話先の璃正に尋ね、緊急だからと人目を忍んで落ち合う事になった。本来なら一人で出歩くべきではないのだが、魔術の秘匿という考えからして昼間から襲ってくるとは思っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「……やれやれ、魔術の秘匿さえできないのか」

 

そしてその道すがら、首領パッチと桜を連れた雁夜に出会った。雁夜と桜は時臣の顔見るなり黙り込み、

 

 

 

「「誰だっけ?」」

 

真顔で尋ねた。

 

「馬っ鹿! アゴヒゲーンだよ! 日夜人の為に戦ってる正義の味方だ!」

 

「ああ! そうだったな!」

 

「テレビでやってるよ」

 

「……いや、何の話をしている?」

 

「正義の味方だアゴヒゲーン♪ 今日もせっせとドブ掃除~♪」

 

「いじめっ子は怖いから~♪ アゴヒゲ撫でて退散だ~♪」

 

「メケメケメケメケ♪」

 

「「「ダダンボ!」」」

 

「……意味が分からないな。悪いがその様な遊びに付き合ってる暇は……」

 

その時、時臣は人の気配を感じて後ろを振り向く。其処にはデビルアイ達と共にいる切嗣の姿が有り、虚ろな瞳の切嗣は時臣達に向かってマシンガンを向けてきた。

 

「この様な所でっ!」

 

「おい! 相手はマシンガン持ってるぞ! コッチも何か武器を出さないと」

 

「ボンタンなら有るよ!」

 

「いや、ボンタンでは何の役にも。……桜、何か悪い物でも食べたのかね?」

 

「……いや、硬くなったボンタンは銃器に匹敵するという言い伝えが」

 

「織田信長の鉄砲隊も実はボンタン隊だったってお姉ちゃんが言ってた!」

 

「そんな言い伝えがあってたまるか! 凛、君は何を……」

 

「……やって見る価値ありだな」

 

「腐りかけの柔らかいのだけ集めて来たよ!」

 

「よりにもよって!?」

 

「これなら勝てる! うぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 

「「「ボンタンボンタンボンタンボンタンボンタンボンタンボンタンボンタンボンタンボンタンボンンタンボンタンボンタン!!!」」」

 

 

 

「「「がぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! ば、馬鹿なぁぁぁぁぁぁっ!!」」」

 

「効いてるっ!?」

 

「こ、こうなったらっ! ドッズ!」

 

「スパイクキャノン!!」

 

ドッズが地面に拳を打ち込むとアスファルトが激しく崩壊し、三人の動きを阻害する。そしてその隙を狙って切嗣の銃口が桜に向けられ銃声が鳴り響く。

 

 

 

 

「お父…さん…?」

 

「「アゴヒゲーン!?」」

 

「私も…甘いな…。根源に至る事のみ…考えて…いたのに…体が…勝手に動いてしまった…」

 

桜を庇った時臣の腹からは血が流れ出し、桜が必死に押さえるも出血は止まらない。

 

 

 

「ククク、まずは一人逝ったか。さて、残りを……ん?」

 

「……せねぇ」

 

首領パッチの体から弾けるような音が聞こえ、徐々にトゲの形が変わっていく。

 

 

 

 

 

 

 

「俺って奴は、自分が自分で許せねぇよ」

 

其処には金色に輝く首領パッチ。いや、怒んパッチが立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~おまけ~

 

 

ランサーは困惑していた。いけ好かないマスターの命令で他の英霊と戦う事になったのだが、どう見ても人ではなかった。

 

 

「……カエル?」

 

「カエルではない! ケロン軍所属ギロロ伍長だっ!」

 

「何真名バラしてるのよ、アーチャー!」

 

 

 

そして目撃者を殺しに行き、新たに召喚された英霊と対峙する。

 

「……テメェ、クラスはなんだ?」

 

「セイバーに決まってるだろ。この魔剣大根ブレードが見えねぇのか?」

 

「セイバー!? 馬鹿言ってんじゃねぇよ!  ゲイ・ボルク!!」

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!! ……あ、俺ところ天だから効かねぇや」

 

 

 

 

間桐桜は終わらない悪夢の中、英霊を召喚する、出てきたのは自転車に乗った一人の男だった。

 

「……貴方は?」

 

「私はクラス・ライダーで召喚された正義の自転車乗り”無免ライダー”だ!」

 

 

 

 

 

マスターをくら替えした魔女は門番となる英霊を召喚する。

 

「……忍者?」

 

「ああ、俺はアサシンのクラスで現界した元御庭番集筆頭・服部全蔵だ。……ここのトイレ、ウォシュレット付いてる?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、衛宮士郎の前には最強の英霊が立ち塞がる

 

 

「私のバーサーカーは最強なんだから!」

 

「んちゃ!」

 

 

 

 

 

第五次ギャグキャラ戦争 ただしランサーとキャスター(不幸ポジ)除く 

 

 

 

 

混沌の舞台が今、始まらない 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、英雄王は思う。

 

「……関わりたくないな」

 




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もう直ぐ終わりの第八話

推奨BGM

キャスター・セイバー 鋼のレジスタンス

ランサー(終盤)   続・溝ノ口太陽族

ライダー       気持ちだよ


立ち上がった深海王の姿はより化物じみた物になっていた。まだ人に見えた顔は完全に凶暴そうな魚の顔になり、全身の筋肉が盛り上がる。そして足に力を込めた瞬間、セイバーはコンテナを数個ぶち抜きながら吹き飛ばされた。

 

「脆いわねぇ。ま、所詮は人間の英霊ね」

 

先程までセイバーがいた場所に深海王は拳を振りかぶった姿で立っていた。

 

「……今、見えなかった」

 

「トランセイザー! こうなったら最後の変身だッチ!」

 

「させると思う?」

 

再び深海王の姿が掻き消え、トランセイザーは衝撃と共に宙を舞う。その真上に跳躍した深海王は再び拳を振り下ろす。地面に叩きつけられたトランセイザーに何発も拳が叩き込まれ倉庫街の地面は衝撃で崩れ出した。

 

「知ってるかしら? ラッシュってのは一発一発に殺意を込めて打つのよ。っ!」

 

深海王は大ぶりの一撃を入れようとしてその場を飛び退く。トランセイザーの手に収まった十得ナイフの様な物から巨大なドリルが飛び出し深海王の肩の肉を抉っていた。

 

「……マルチディメンションスプレッダー。やっぱり便利ね」

 

「……この姿の私に傷を付けるなんて褒めてあげるわ。でも、これで終わりよ」

 

深海王はトランセイザー踏みつけて押さえつけ両腕を振り被る。その時、トランチアーズが深海王を囲むように立っており、それぞれの武器から放たれた光のラインが三角系を描く。

 

 

 

「「「チアーズトライアングルシンフォニー!!」」」

 

三角系の中心居た深海王をエネルギーの球体が包み、トランセイザーは咄嗟に抜け出す。

 

「今だッチ!」

 

「ええ、分かっているわっ!」

 

トランセイザーの体に強力なエネルギーが集まりだし、徐々に体を包んでいく。

 

 

 

 

 

 

「何する気か知らないけど、させると思ったの?」

 

だが、その光が頂点に達しようとした瞬間、深海王が飛び掛かる。チアーズは追撃を掛けるが深海王はそれを無視してトランセイザーに襲いかかる。

 

「トランセイザー!」

 

(拙い! この変身中は身動きが……)

 

「死になさい」

 

チーポが咄嗟に前に飛び出すも盾になどならず直ぐに吹き飛ばされる。そして深海王の鋭利な牙が身動きの取れないトランセイザーに襲いかかった。

 

 

 

 

 

風王鉄槌(ストライクエア)ァァァァァァァッ!」

 

「まだ生きていたの!?」

 

だが、先程吹き飛ばされたセイバーが放ったストライクエアによって一瞬深海王の動きが阻害され、トランセイザーの変身が完了する。その姿は今までの特撮ヒーローではなく、変身魔女っ子を思わせる姿だった。

 

 

「わ、私は偉大なる海の王。貴女なんかに負けないわ……」

 

深海王はトランセイザーから放たれる力に恐怖を覚え、それでもプライドが邪魔をし逃亡という選択肢を取らせない。そのまま恐怖に駆られて殴りかかる深海王に対し、トランセイザーは片手を向けた。その手のひらに強力な魔力が集まりだす。

 

「マジカルプリフィアスターライトォォォォォォォォッ!」

 

そしてその魔力は強烈な光となって深海王を包み込んだ。

 

「ギ、ギャァァァァァァァァァァッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「セイバーッ!? 貴女、もう魔力が尽きてるじゃないっ!」

 

深海王を打倒したトランセイザーは元の姿である女子中学生の姿でセイバーに駆け寄る。限界を超えて魔力を消費したセイバーは既に限界を超え、もう直ぐ消えようとしていた。

 

「あの様な化物を見過ごし、それで目的を叶えても私は民や騎士達に顔向けできません」

 

「セイバー……」

 

セイバーは消えかけであるにも関わらず、満足したように笑っていた。

 

「それにしても、貴女は女だったのですね。なぜ、あの様な姿を?」

 

「それはだねぇ、いい年して変身魔女っ子に憧れ、アニメ見てたせいで遅刻しそうになってお母さんに怒られて。……ぶっちゃけ、良い年して変身魔女っ子になりたいって思っている奴が他に居なかったっ!」

 

「アンタは黙ってなさい、チーポ!!」

 

「げふぅっ!」

 

チーポは海まで投げ飛ばされ、セイバーはトランセイザーの姿を見て苦笑していた。

 

「……大変でしたね」

 

「……まぁね。でも、今じゃヒーローの姿に誇りを持ってるわ。最初は嫌だったけどね。……ねぇ、セイバー。私の魔力、全部貴女にあげちゃう」

 

「なっ!? キャスター!?」

 

セイバーの体にトランセイザーの全魔力が注ぎ込まれ、セイバーの体は魔力で満たされる。反対にトランセイザーの姿は魔力枯渇で消え始めた。

 

「……良いの。私は望みなんかないまま参加しちゃったし、マスターは偶然召喚した殺人鬼よ? ……頑張って、セイバー。応援してるわ……」

 

そしてトランセイザーは笑顔のまま消えていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「首領パッチ?」

 

桜は目の前の首領パッチの姿に困惑する。体は金色に輝き、手には布が出現していた。

 

「今は”()んパッチ”だ」

 

「ふん。見た目が変わったようだが、それがどうした? やれ!」

 

「スパイクキャノンッ!」

 

「ヘルホーマーッ!!」

 

「……」

 

デビルアイの声と共にドッズ、ホーマス、切嗣が一斉に怒んパッチに襲いかかる。強力なパンチと強酸、そして無数の銃弾が迫る中、怒んパッチは両手にコーラを持って振り始める。

 

 

 

 

 

そして高速で振られたコーラは高水圧の刃となって怪人二体と銃弾を切り裂いた。

 

「何っ!? クソ! おい、マスターを殺せっ!」

 

「させねぇよ」

 

切嗣の銃を蹴り飛ばした怒んパッチはデビルアイに接近し、両手を交差させた状態でデビルアイに触れる。

 

 

「ハジケ奥義……怒雷蜂(どらいばち)っ!!!」

 

怒んパッチの手から強烈な雷撃が放たれた。

 

「ぐ、ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

デビルアイは強烈な電撃で体を焼かれ、やがて消えていく。それと同時に切嗣が糸が切れた人形の様にその場に倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……お父さん」

 

桜は動かなくなった時臣の姿を見て涙を流す。雁夜は其の姿を複雑そうに見ていた。

 

「……なぁ、バーサーカー。俺、時臣が殺したいくらい憎かったんだ。だから、願いもないのに戦争に参加した。……だが、たった今願いが出来たよ。聖杯の力で時臣を蘇らせ、桜ちゃんが家族四人で暮らせるようにする。力を貸してくれるか?」

 

 

 

 

 

「……良いぜ、雁夜。だが、飴ちゃん三個だからな」

 

首領パッチは何処かの世に中を舐めた少年の様な格好をしながら指を三本立てた手を突き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヘルネイル!」

 

「マシンガンシャワー!」

 

「アシッドレイン!」

 

それは突然の襲撃だった。ケイネス達が鳥団子鍋を食べ様としたその時、巨大な全裸の中年男性の拳が屋敷に突き刺さったのだ。咄嗟にゲイラスがヴァンプ、ケイネス、ソラウの三人を抱えて飛び上がり、他の怪人達が猛攻撃を掛ける。だが、あまりの巨体に効果が薄く、足や手の一振りで怪人達は吹き飛ばされてしまった。

 

 

「皆逃げてっ!」

 

「……出来ませんよ、ヴァンプ様。俺達が食い止めないと、此奴はきっとヴァンプ様達を追いかける。ゲイラス! 早く逃げろっ!」

 

メダリオはフラつきながら立ち上がり、再び両肩の砲身から砲撃を放つ。だが、少ししか効いた様子がなかった。

 

 

 

「無駄だ。私の名前はターミネーチャン。人間を滅ぼす為に未来からやって来たロボット。貴様らが勝てる存在ではない」

 

「そんなん知るかっ! こっちはなぁ、本気で世界制服を企んでるんだっ!」

 

メダリオが叫んだその時、ターミネーチャンの顔の直ぐ傍にPちゃん・改が現れビームを放った。

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

顔面にビームを喰らったタームネーチャンは顔を押さえてたたらを踏み、ゲイラスはその隙に逃げ出そうとする。だが、突如伸びてきたターミネーチャンの手が掴み掛る。ゲイラスは上下左右に避けるが腕が掠り、ヴァンプが真っ逆さまに落ちていった。

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

「ランサー!」

 

「ヴァンプ様っ!」

 

ゲイラスは咄嗟に触手を伸ばすが間に合わない。だが、運良く木の枝に引っかかって落下のスピードが落ち、ヴァンプは少し怪我しただけで済む。だが、その体を踏みつぶそうとターミネーチャンの足が振り下ろされた。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ!? ……助けて、助けてレッドさぁぁぁぁぁぁん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ったく、悪の組織がヒーローに助けを求めんなってんだよ」

 

そして、ターミネーチャンの足は赤いマスクのヒーローによって受け止められていた。

 

「レ、レッドさん!」

 

「よぅ、ヴァンプ。面白い事になってんじゃねぇか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、どうだウェイバー。綺麗だろ」

 

「……ああ、そうだな」

 

両津とウェイバーは冬木の地を離れ、遠くの海を見に来ていた。二人の後ろには此処まで乗って来た両津の自転車が立てられている。ウェイバーは両津に連れてこられた海をジッと見ていた。

 

「こ~んな海見てると、僕の悩みなんかちっぽけに感じてきたよ」

 

「当たり前だ。人間の悩みなんか海と比べればちっぽけなモンだぞ。お前さん、新しい理論を出して馬鹿にされたんだろ? 何時の世も開拓者は馬鹿にされるもんだ。人間、最後は皆死ぬんだから人生は楽しんだモンの勝ちだぞ」

 

「ああ、僕もそう思い出したよ。本や授業で人生を分かった気になってたけど、知識はそれで学べても、社会ってのは人から教えられないと分からない物なんだな」

 

海を見ながら呟くウェーバーに対し、両津はその頭にそっと手を乗せた。

 

「お前は若いんだからもっと世の中を見とけ。儂なんか、なんでもっと記憶に残して置かなかったんだって悔やむ事ばかりだったぞ。だからもっと遊べ。餓鬼が一丁前に時間なんか気にしてんじゃねぇ。だが、聖杯戦争の事も忘れるなよ? 男が一度始めた勝負事から逃げるのは許されんからな」

 

両津は豪快に笑うと缶コーヒーを一気に飲み干した。

 

 

 

 

 

 

 

 




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あと二話で完結予定です 次は本官さんの活躍予定 ソニックの扱いはワンパンマンと同様に雑ですがね(笑)


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次で終わりの第九話

 ターミネーチャンの目的は人類抹殺の障害となる抗体を持つ両津勘吉の抹殺。熱が弱点である事を見抜かれ、大文字焼きに巻き込まれて失敗した任務だが、その為に作られたターミネーチャンは何故か復活した後も両津勘吉の抹殺を目的とし、最終的に人類抹殺を企んでいた。同じように集まったソーダライトやデビルアイも聖杯を欲しており、その為に手を組んだ三名は英霊と協力を拒んだ深海王の抹殺を企み、ターミネーチャンはランサー陣営(ヴァンプ達)に襲撃をかける

 

 

「てめぇ、どう見ても悪だよな? なら、ボッコボコにしても構わねぇって訳だ」

 

そして、ターミネーチャンの前に太陽の戦士(天敵)が立ち塞がった。

 

「おらぁっ!」

 

サンレッドは受け止めたターミネーチャンの足を強引に押し上げたたらを踏ませる。サンレッドは懐から煙草を取り出すと一服しだした。

 

「駄目だな、こりゃ。デカイばっかりで雑魚だ。さっさと終わらせるか。……変身!」

 

タバコの煙を吐き出したサンレッドの体が光り輝き、次の瞬間には炎の羽を思わせる装飾とマントを身に付けたサンレッドの姿があった。

 

「サンレッド・プロ……」

 

「プ、プロミネンスフォーム! ほら、皆! アレが私が見た奴!」

 

「おいコラ、ヴァンプ! 写メ撮るんじゃねぇよ!」

 

何時の間にかお年寄り向けのラクラクフォンから画像の撮れる携帯に変えていたヴァンプはたどたどしい手付きながらサンレッドの姿を映す。他の怪人も携帯を手にしていた

 

「え? 何でですか? 今度見せてくれるって言ってたじゃないですか」

 

「……さっさと終わらせて帰る」

 

サンレッドは頭痛がするのか頭を押さえるとターミネーチャンに向かって飛んで行く。

 

「メテオクラッシュ!!」

 

その速度は機械が人間に反乱を起こす程に発展した技術で作られたターミネーチャンでさえ捉えきれず、サンレッドの体は炎に包まれ、そのまま飛び蹴りでターミネーチャンの体を貫通した。

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

超々高角度から弱点である超高熱の飛び蹴りを喰らったターミネーチャンの体は炎に包まれ、やがて消えていった……。

 

 

 

「レッドさん。有難うございました!」

 

「したーーーーーーー!」

 

「だから悪の組織が正義の味方に礼を言うなって言ってるんだろ。ったくよ。……で、お前らは聖杯に何を願うんだ?」

 

「レッド抹殺っ! です」

 

「……アホくさ。帰るわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……ふむ。デビルアイ達が負けたか。まぁ、どうでも良い。欲しい物は全て手に入ったからな」

 

冬木教会の床には璃正の死体が転がっており、白髪の男がそれを見下ろしている。そして、其の横には三人の少女と腕に無数の令呪を刻んだ綺礼の姿があった。

 

「さて、心の底に溜まった淀みを開放した気分はどうだ、綺礼?」

 

「……悪くはない、な」

 

 詰まらなさそうに呟く綺礼だが、その顔には歪んだ笑みを浮かべていた。

 

「ソーダライト様。必要な数の英霊が聖杯にくべられた様です。その中にはトランセイザーの存在が……」

 

「そうか。私の手で奴を殺せなかったのは残念だが、まぁ仕方ない。では、例の女を浚ってこい、ソニック。この世界とあの三つの世界を手に入れるぞ!」

 

「……ふん」

 

ソニックはソーダライトの話に興味がないと言わんばかりに鼻を鳴らし、そのまま教会から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

「……ソーダライト様」

 

「ああ、分かってるさ。時が来たら……消せ」

 

 

 

 

 

 

 アイリスフィール・フォン・アインツベルンは切嗣の妻であり、聖杯を守るための殻として造り出されたホムンクルスだ。英霊が消えるたびに聖杯にその魂が回収され聖杯は完成へと近づく。そして、それと同時に彼女の人格及び人間としての機能は塗り潰されていくのだ。

 

「くっ……」

 

「マダム!」

 

そして、深海王、キャスター(トランセイザー)、ターミネーチャン、デビルアイ、計四体の魂がほぼ同時に聖杯に入り込んできた。蹲るアイリスフィールに舞弥が駆け寄り、起き上がらせようと手を貸すが、握り返すアイリスフィールの力は弱々しかった。

 

「大丈…夫。英霊が…ほぼ同時に四体も…消えたみ…たい…。もう…すぐ私は…、アイリ…スフィールは完全に消えるわ。切嗣の…事、お願い…ね…」

 

 

「ああ、もう会う事もないだろうしな」

 

「誰だ! マダム、下がって…消えたっ!?」

 

「鈍間め。この女は貰っていくぞっ!」

 

二人の目の前に突如現れたソニックは即座にアイリスフィールを担ぎ上げ、舞弥の放った弾丸を軽々と避けて去っていった。

 

「マダムゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぃ~! 酔っ払っちまったよぉ~!」

 

今日も飲み屋をハシゴした本官は何時の間にか教会の近くまで来ていた。

 

「ひっくっ! 今日もご苦労様でしたっと。おっといけね、教会には近付いいたら……ん? 何だ、あの姉ちゃん達?」

 

本官がふと教会の敷地を覗き込むと協力者であるソニックと見知らぬ少女が何やら会話をしていた。なお、少女はトランチアーズの一人である乃絵にそっくりだ。ソニックは見知らぬ美女(アイリスフィール)を担ぎ上げており、何やらただならぬ雰囲気だった。

 

 

 

「それで、この女をどうするんだ?」

 

「ソーダライト様が言うには殺すらしいわ。……この町の人間も一緒にね」

 

「……どういう事だ? この女を殺すというのも初耳だが、街の者まで殺すのは?」

 

「聖杯は汚れている。その女を殺して聖杯が降臨すれば溜まりに溜まった穢れは泥となって溢れ出し、この街を焼き尽くすわ。まぁ、この世界はソーダライト様の物になるし構わないでしょ? 私達は異空間からそれを見物って訳。さ、その女を渡してちょうだい。儀式を行う場所まで連れて行くわ」

 

鍵の様な大鎌を持った乃絵はアイリスフィールを受け取ろうと手を出すが、ソニックはその場から飛び退いた。

 

「……気に入らんな。貴様、俺を殺す気だろう。出かける前よりも殺気が濃厚だぞ」

 

「あら、分かってたの。そうよ、聖杯を完成させるにはアンタを殺すのが手っ取り早いの。令呪で私達を傷付けられない貴方じゃ勝ち目はないわ。……じゃあ、今すぐ……!」

 

長髪の少女は大鎌を振り上げソニックに切りかかろうとする。だが、その顔の真横を銃弾が飛んでいった。

 

「その姉ちゃんを連れて逃げろアサシン! 守りながらじゃ何があるか分からねぇっ!」

 

「アーチャー! ……ふん、ここは従ってやる。あのハゲ頭を倒すまで俺は死ぬわけには行かんのでな!」

 

ソニックはアイリスフィールを担ぎ上げて高速で去って行き、本官は銃口を乃絵に向ける。対する乃絵は銃口を向けられているにも関わらず動じた様子がなかった。

 

「貴方が私に勝てると思ってるの? ステータスがほぼ最低ランクの貴方がこの私に勝てる訳ないじゃない」

 

「うるせぇ! 国家権力を舐めるなっ! 逮捕だ逮捕だ逮捕だ逮捕だ逮捕だぁぁぁぁぁっ!!」

 

まるで弾切れという言葉を知らないかの様に本官の拳銃からは銃弾が打ち出され、乃絵は真っ直ぐに本官へと向かって行く。銃弾はその体に傷一つ付けられなかった。

 

「うっざ!」

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!」

 

大鎌でバッサリと切られた本官は数メートル吹き飛ばされ、頭にバッテンマークの絆創膏を貼った状態で起き上がった。

 

「ほ、本気でタマ取りに来やがったなぁぁぁぁ!」

 

「……当たり前でしょ。てか、なんで平気な訳? でも、アンタが私を倒せないのは分かったでしょ。これ以上痛い思いしたくなかったら何処かに消えなさいよ」

 

「……だから国家権力を舐めるなって言ってんだろ。俺は警察官なんだよ。たとえ相手がどんな奴でも、人を殺そうとしてる奴を見逃せるかよっ!」

 

本官は立ち上がると警棒を手に乃絵に向かっていく。そして何度切りつけられても立ち上がり、その度に立ち向かって行った。

 

「っくそ! こうなったら此奴を撒いてアサシンを……」

 

「行かせねぇよっ!」

 

本官は乃絵の足にしがみつき、何度踏みつけられても離さない。乃絵は大鎌を振り下ろし、漸く本官を引き剥がした。直ぐにソニックを追おうした乃絵だが、またしても背後から銃弾が撃ち込まれ、右足を貫通した。

 

「なっ!?」

 

「だから、行かせねぇって言ってんだろ! 国家権力舐めんなよっ!」

 

本官は先程までの二頭身ではなく、劇画調の六等身となっていた。乃絵は咄嗟に大鎌を振るい、その体を切りつける。今度は切った感触と共に血が噴き出した。それも、思っていたよりも大量にだ。

 

「終わりね。サヨナラ!」

 

乃絵は大鎌の切っ先を本官に突き立て深くまで突き刺す。それと同時に銃声が鳴り響き乃絵の眉間に穴が空いた。

 

 

「……だから言っただろ、国家権力舐めんなよってな」

 

乃絵と本官は同時に倒れ、やがて消えていった……。

 

 

 

 

 

 

 

アイリスフィールを連れたソニックは建設中の市民会館に隠れていた。令呪で呼び出された時、アイリスフィールを連れて行く危険が有る為、抵抗する時間を稼げるようにアイリスフィールからは距離を開けている。

 

「……此処まで来れば」

 

 

 

「やぁ、アサシン。態々届けに来てくれて感謝するよ」

 

「ッ! 貴様が何故此処に……」

 

ソニックの前には不敵に笑うソーダライトと綺礼の姿があった。

 

「ああ、それなら簡単だ。私は君に催眠を掛けていたんだ。その女を連れて逃げたら、無意識に此処に来るように暗示を掛けていたんだ」

 

「くそっ! こうなったら……」

 

ソニックは懐に忍ばした忍具を手に取る。だが、綺礼が腕をかざす方が早かった。

 

 

 

 

 

 

「命呪をもって命じる。アサシンよ自害せよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

~おまけ~

 

「くそ! 桜なんかに頼らなくても僕の手で……」

 

その少年は強い嫉妬の念を持つ義妹を見返す為、才能が皆無にも関わらず英霊を呼び出そうとしていた。

 

 

 

 

 

そして、その召喚は奇跡的に成功する。現れたのは騎兵(ライダー)のクラスを持ち、犬に跨った腰みのの少年だった。

 

「んばば!」

 

 

 

 

 

「僕には分からないぞ、シンジ。なんで妹と仲良くしないんだ? 変だな、仲良くできないなんて。ケンカするよりよっぽど簡単なことじゃないか!」

 

 

 

 

 

 

その少女は日常と化した悪夢の中、赤い弓兵を召喚した。

 

 

「桜……?」

 

 

 

 

「……昔とある少女と、その少女だけの正義の味方になると約束してね。だが、今は君の為の正義の味方となろう」

 

 

 

 

 

正義の味方を目指す少年は、偶然英霊を呼び出してしまう。

 

「サーヴァント・ランサー……いや、ヒーロー(正義の味方)なら、堂々と名を名乗ろう。鳥取戦士サキューン参上!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「正義の味方ってのは結構楽じゃないんだよ、士郎。でも、君は君なりの正義の味方を目指せ!」

 

 

 

誇り高くうっかり屋の少女はうっかりして召喚事故を起こしてしまう。

 

 

 

「ケ~ロケロリ。聖杯の力があればペコポン(地球)なんて簡単に侵略できるであります。あれぇ? 吾輩のクラスのバーサーカーって何?」

 

 

 

「凛殿と過ごせて、我輩楽しかったであります!  ……って! 今ので通信切れてるっ!? な~んちゃって、って言うつもりだったのに!」

 

 

 

 

ホムンクルスの少女はセイバー(最優の英霊)として謎の生き物を召喚した。

 

「……何これ」

 

「私のマスターになるにあたり、守ってほしい千の項目があるのだが」

 

 

 

 

 

 

 

 

「一から十二までで好きな数字を選び給え」

 

「七?」

 

「ヴァカめ! 貴様に選択権など無いわっ! 私の伝説は12世紀から始まった……」

 

 

 

 

 

 

 

 

とある魔術師はキャスターとしてスーツ姿の男を召喚した

 

 

「……匂う。濃厚な『謎』の匂いがするぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから貴様はクズだというのだ。このゴミ虫め。虫は虫螻らしくを這いつくばって頭を下げて生きるがいい。……さて、この謎はもう吾輩の舌の上だ」

 

 

 

 

 

 

そしてとある神父は英霊を知らぬまま知り合いから令呪を奪う。そして女性の拠点で英霊と出会った。

 

 

「貴様、何ものだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つけものです」

 

 

 

 

 

第五次ギャグキャラ戦争 ただしアーチャー、テメェは駄目だ 近日公開・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

しません

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




クラス アーチャー

真名 綱刈本官

マスター 言峰 綺礼

性別・身長・体重 男 ? ?

属性 秩序・中立

力 E 耐久 E  敏捷 A+ 魔力 E  運 C 宝具 A++


保有スキル

ギャグ補正 EX

どんな目に遭ってもギャグで済むスキル。此処まで来るとマスターやその周囲の人間も巻き込み、ギャグ補正Aを付属できる

単独行動 ex

マスターの魔力供給無しでいくらでも現界でき、宝具も単独で使える。



宝具

無限の銃弾<インフィニット・ブレット>

ランク  E

対人宝具

レンジ ?

最大補足 ?

無限に撃てる銃弾。ただし、実はモデルガン



劇画化<ベニトカゲ>

ランク A++

対人宝具

レンジ ?

最大補足 1

アニメであった劇画化を再現。運を除く全ての能力が半分になるが、相手のスキル・宝具・ステータスに関わらず上記宝具が殺傷能力を持つ。この宝具の発動中は本人のギャグ補正が消える。


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大団円の第十話

 「しかし驚いたな。まぁ、放っておいても直ぐに死ぬだろうが……」

 

 ソーダライトは巨大なカプセルの前で呟く。カプセルは三つ並んでおり、中央に綺礼、左右に褐色の肌の少女達が入っていた。彼の背後の床には血溜りが出来ており、外へと続く道に転々と血の跡が残されていた。令呪によって自害を命じられたソニックは自分の腹を苦無で貫くも、そのまま逃走したのだ。もはや放っておいても良いと思った判断したソーダライト達は無視する事とし、計画を最終段階へと進める事にした。

 

「さあ、生まれるがいい。聖でも魔でもなく人でもない新しき存在よ。……私は高みの見物とさせて貰う。聖杯のことは頼んだぞ」

 

「貴様に言われるまでもない。我々に任せておけ」

 

「約束は覚えておるな? 貴様の居た世界は貴様が支配し、この世界は儂らが貰うぞ」

 

ソーダライトの背後には怪物が二体現れていた。片方は多数の腕に燃え盛る剣を持ち、片方は天狗を思わせる姿だった。

 

 

 

 

 

「此処は?」

 

切嗣が目を覚ますと椅子に座らされた状態で縛られていた。部屋を見渡すとアインツベルン城の食堂。隣には舞弥とセイバーの姿が有り、ケイネスや雁夜の姿まであった。状況が飲み込めず混乱していると、もう一組が食堂に入って来た。

 

「終わったかね、ウェイバー・ベルベット君?」

 

「は、はい! 住民の避難は終わりました、先生!」

 

「こらこら、ケイネスさん。そんな高圧的に接しないの。ウェイバー君達もご苦労様。ライダーさんも大変だったでしょ?」

 

「まぁな。流石に魔力を使いすぎたぜ」

 

両津はだらしない格好で椅子に座ると茶菓子を手掴みでガツガツ食べだす。ヴァンプは何処かのチンピラヒーローにするかのように甲斐甲斐しく世話を焼きだした。

 

「あの、そろそろマスターに状況説明を……」

 

見かねたセイバーがケイネス達に言うと雁夜は一枚の手紙を取り出す。それを広げると立体映像が映し出された。

 

 

 

『やぁ、生き残ったマスターの諸君。私はサーヴァント・侵略者(インベーダー)。真名をソーダライトというものだ。単刀直入に言おう。聖杯は既に汚れ、悪意ある解釈で願いを叶える。……実に素晴らしいではないか! この聖杯を使い私はこの世界を一度破壊してから支配しようと思う。だが、ただ支配するだけでは詰まらない。だから、ゲームの提案をしようと思う』

 

 此処まで話した所でケイネスは手紙を閉じ立体映像を消した。その顔は不快そうに歪んでいる。

 

「此処から先は無駄な話が多いから私から話させてもらうぞ。今から三時間後に奴は聖杯を起動させる。それまでに聖杯を破壊し、彼処に居る奴を倒せば我々の勝ち。出来なければ奴の勝ちという訳だ」

 

ケイネスが窓の外を指さすと、空に大きな門が浮かんでいる。そして街と空を得体の知れない化け物達が犇めき合っていた。

 

「……奴らは魔幻獣というらしい。一体一体が下級サーヴァントに相当する力を持っており、全滅させるのはまず無理だろうな。魔術師協会と聖堂教会にも同じものが送られ、調査の結果聖杯の汚れはキサマらアインツベルンが前回の聖杯戦争で召喚したイレギュラーなサーヴァントが原因だと分かった。……アンリ・マユだそうだ」

 

「……ゾロアスター教の悪神か」

 

「ああ、そして忌々しい事に街から出る事は出来ても、入る事はできない様な結界が張られている。既にウェイバー君のサーヴァントの宝具によって街の住民は避難させた」

 

「街の住民を避難? 瞬間移動系かなにかか?」

 

「いや、警察官やら軍人を召喚していた。まあ、一般人を避難させる役には立ったが……アレは反則だと思うぞ」

 

”まぁ、私のサーヴァントも人の事が言えないがね”と、付け足したケイネスは再び切嗣の方を見る。今度彼が向けた表情は侮蔑や怒りではなく真剣なものだった。

 

「さて、結論を言おう。今回の聖杯戦争は中止になった。我々がやるべき事は一つ。奴を倒し、聖杯を破壊する事。既に他の陣営はセルフギアス・スクロールにサインしている。さて、どうするかね?」

 

切嗣は一瞬躊躇し、静かに溜息を吐いた。

 

「……了解した。サインしよう」

 

 

 

 

「くそ! この俺がまんまと利用されるとは……」

 

ソニックは高い木の上に隠れ、薬局から盗んだ包帯で傷口をきつく縛る。だが包帯は赤く染まり血の匂いを嗅ぎつけた魔幻獣達が木の近くに集まりだしていた。今は気配を消しているが意識が薄れ、このまま怪我が原因で消滅するか魔幻獣に殺されて消滅するかの二択だろう。

 

「こうなったら一匹でも道連れに……」

 

ソニックが忍具片手に木から飛び降りた瞬間、魔幻獣達が血飛沫を上げながら絶命する。まだ生き残っている魔幻獣達の中心に拳を振り上げた男が立っていた。

 

「貴様はっ!」

 

「……え~と? 関節のパニック、だったっけ?」

 

「お・ん・そ・く・の・ソ・ニ・ッ・ク・だ!」

 

武士の侍、馬から落馬。女性の婦人が笑顔で笑う。ソニックとは音速を意味する言葉である。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、問題は彼処までどう行くかだな。まさか召喚系の宝具が無効化されるとは……」

 

ケイネスは忌々しげに市民会館と空に浮かぶ門を睨む。当初はヴァンプや両津の宝具で怪人や戦闘機を呼び出して向かう予定だったのだが、作戦決行時間になった途端に市民会館と門の周辺に召喚を無効化する結界が張られたのだ。それにより一同の作戦は大きく崩れる。その時だった。

 

 

 

「飛んでいけるよ! だって僕達には翼があるのだからっ!」

 

「おぉ、パチリータ様。私には翼がありません」

 

「大丈夫! 自分を信じるんだカリヤーンっ!」

 

綺麗な瞳をした首領パッチと雁夜は手を翼の様にはためかせ、そのまま門の方まで飛んで行く。無数のめ魔幻獣が襲いかかるも華麗に避け、そのまま門へと入って行った。

 

 

「……さて、問題は聖杯をどうやって破壊するかだな」

 

「流したっ!」

 

「セイバーの宝具なら破壊可能だろう。念の為に令呪で底上げすれば可能なはずだ。……問題はどうやって行くかだが」

 

市民会館の周囲は魔幻獣が取り囲まれており、作戦の為にはセイバーを万全の状態で聖杯まで向かわせるのがベストだ。

 

 

「……ライダー。まだお前には色々教えて貰いたかったけど、これでお別れだな。……令呪を持って命じる。セイバーを迅速に聖杯まで連れて行け。更に令呪を重ねて命じる。セイバーを無事聖杯まで送り届けろ。更に令呪を重ねて命ずる。死ぬな、ライダー」

 

ウェイバーの手の甲から全ての令呪が消え失せ両津に膨大な魔力が注がれる。それと同時にウェイバーは両津に背中を向けた。

 

「……もう僕はマスターでも何でもないんだ。さっさと行っちまえ、両津!」

 

「そうだな。おい、ウェイバー。お前と過ごせて中々楽しかったぞ。……お前の人生だ、後悔せずに生きろ! 人生に何があろうが、逃げ出しちまった時点で其奴の負けだからな! じゃあ、行くぜセイバー!」

 

 

「セイバー。これまでの事を謝罪しよう。……すまなかった」

 

「切嗣……」

 

「令呪を持って我が戦友に命じる。セイバーよ、必ず聖杯を破壊せよ!」

 

 

 

 

深々と頭を下げる切嗣に笑みを向けたセイバーは両津の自転車の後ろに座り、両津は猛スピードでペダルを漕ぐ。それに反応した魔幻獣達が襲いかかるが怪人達によって行く手を阻まれた。

 

「令呪を三つ重ねて命じる。ランサーよ。二人の行く手を邪魔させるな! ……貴様には感謝しているぞ、ヴァンプ。私は貴様を喚びだした事を誇りに思う」

 

その時のケイネスからは神経質さや驕りが感じられず、清々しい表情をしていた。

 

 

 

 

 

「やれやれ、まさか私の所に来るのが貴様らとはな」

 

門の先には異空間が広がっており、その中心にソーダライトの姿があった。対する雁夜はコック帽を被り、首領パッチはタコスに挟まれていた。

 

「貴方の為に頑張って作りました。食べて♥」

 

「いらん」

 

「!?」

 

「この馬鹿ぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

ソーダライトは雁夜のビンタで顔面を地面に叩きつけられ、それを見下ろす雁夜と首領パッチは涙を流してる。

 

「貴方は何時もそう! 私が頑張って料理を作っても食べやしない!」

 

「食べれば良いじゃない! 一口だけでも食べれば良いじゃないっ! ……ほら、捲ってみて。貴方の為に特別な具を入れてるのよ」

 

「……」

 

ソーダライトが無言でタコスを捲ると中にはタップリの靴クリームが入っていた。直ぐ様首領パッチは蹴り飛ばされ川に落とされる。

 

「食えるかっ!!」

 

「溺れる溺れるっ!」

 

「これに捕まれっ!」

 

首領パッチの頭に波消しブロックが落とされ、そのまま首領パッチは沈んでいった。

 

「首領パッチィィィィィィィ!」

 

「……もう良いか? ん?」

 

雁夜を殺そうとしたソーダライトの肩を掴む。見るとターバンを巻いてカレーを手にした男達が横に立っていた。

 

「タコス食わない奴はメキシコに連れて行く。これ、メキシコ人の掟」

 

「いや、お前らインド人じゃ……」

 

「ラッコアタック! 」

 

「ぐはっ!」

 

首領パッチはソーダライトの後頭部をヤシの実で殴打し、ぐったりした彼を掴んだインド人達は宙に浮かんで何処かへ飛んでいった。

 

「勝利!」

 

 

 

「いい加減にしろぉぉぉぉぉぉぉっ!! 光も! 闇も! 全て消えされ! 我が野望の為に!! 魔幻……炎帝流!」

 

ソーダライトの放った炎はインド人達を吹き飛ばし首領パッチ達に迫った。

 

「どどど、どうするんだ雁夜っ!? あんなの防げねぇぞっ!? くそっ! こんな時に首領パッチステッキさえあればっ!」

 

「シャッター下ろす奴なら有るぞ?」

 

「有るじゃねぇか、首領パッチステッキ! ナントカナントカパトローナム!!」

 

「? ……やっぱ、ギャァァァァァァっ!! ま、負けてなるものかぁぁぁぁっ!」

 

「……仕方ない」

 

首領パッチはソーダライトに抱きつくと潤んだ瞳で雁夜を見る。

 

「さよならカリさん。どうか死なないで……」

 

そして自爆した。

 

「首領パッチィィィィィィィィッ!!」

 

「……ふぅ。ビックリさせやがって」

 

煙が晴れると鎧を着た首領パッチが立っており、ソーダライトはボロボロになりながら立ち上がった。

 

 

「くそ! 、まだ立つのかっ! こうなったら……。雁夜! 聖鼻毛融合(ボーボボ・フュージョン)だっ!」

 

聖鼻毛融合(ボーボボ・フュージョン)っ!?」

 

「えい」

 

首領パッチはダイナマイトで雁夜の頭をアフロにし、鼻の穴に縄跳びを突き刺した。

 

 

「おっしゃぁぁぁぁぁっ! 行くぜ、雁夜! トランスホーム・飴!」

 

「もう、どうにでもなれぇぇぇぇぇ!!」

 

「「なんちゃって鼻毛真拳究極奥義! 聖鼻毛融合(ボーボボ・フュージョン)もどきぃぃぃぃぃ!!」」

 

雁夜の体が光り輝き、次の瞬間には別の男が立っていた。日に焼けた肌にボクサーパンツ。頭にはパンダナを巻いている。

 

「融合完了。俺の名はカンパッチ。この姿で居られるのは一分なんでな。即効で勝負を付けさせて貰う」

 

「舐めるなぁぁぁぁっ! 我が名はソーダライト! 全ての世界を手にする男だぁぁぁぁ」

 

「ハッ!」

 

カンパッチの拳はソーダライトを易々と天に打ち上げ、落ちてきた所に追撃を掛ける。

 

「この時の戦闘力は通常時の七千倍。一気に決めるぜ! しみったれブルース!」

 

怒涛のラッシュがソーダライトを襲い、体力を一気に奪う。そしてフラフラになったソーダライトに対し、カンパッチは腕を大きく振りかぶった。

 

「教えてやるぜ、ソーダライト。この世界はテメェのもんじゃねぇし、ましてや人間だけのモンでもねぇ。この世界はなぁ、全生命体の……

 

 

 

 

 

 

 

上を行く俺のモンだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

「がっはっ!」

 

 

 

 

 

「……終わったな」

 

「ああ、終わったぜ」

 

融合時間が過ぎ、カンパッチはお茶漬け星人と田楽マンに戻った。

 

 

 

「「あれ、俺達はっ!!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃっ!!!」

 

両津はセイバーを後ろに乗せたまま爆走する。襲い掛かる魔幻獣は轢き飛ばされるか怪人によって吹き飛ばされていった。

 

「見えたっ!」

 

 

両津は市民会館を視界に捉えるなり一気に加速する。門をぶち破り中に入ると泥や魔幻獣が襲いかかって来たが自転車でジャンプし、調度品や魔幻獣を踏み台に奥へと進んでいった。

 

 

「あったぞっ!」

 

奥へと向かう二人の目の前についに聖杯が現れる。

 

 

「……行かせん」

 

だが次の瞬間、天井から綺礼が現れた。全身の筋肉が膨張し、全身に刻まれた刺青の様な模様が怪しくひお借り輝く。

 

「あの姿、人間を辞めていますね。……こうなったら」

 

セイバーは自転車から降りると剣を抜く。だが、両津がそれを手で制した。

 

「辞めておけ。お前には大事な使命があんだろうが。……奴は儂が足止めする」

 

「任せましたよ、ライダー!」

 

セイバーは綺礼の横を駆け抜けようとし、其れを止める為に手が伸ばされる。だがその手は飛ばされたサンダルによって邪魔された。

 

「お前の相手は儂だって言ってんだろっ!」

 

「……」

 

無言で飛びかかった綺礼の腕が床に叩きつけられると床が大きく崩れる。そのまま顔を上げた綺礼の目は両津を捉えていた。

 

「ひぇぇぇぇぇぇ! 死んじまうぅぅぅぅ!」

 

直ぐ様引き返した両津を綺礼が追って行き、その場にはセイバーのみが残された。

 

 

「……今の内に」

 

 

 

「行かせると思うか? 奴が死んだみたいだな、天空王」

 

「甘かったな。どうせ約束を守る気などなかった奴だ。別にかまわんだろう、地底王」

 

そして地面からは灼熱の剣を持った巨人が床を砕いて現れ、上から天井を破って天狗のような巨人が現れる。その二体は深海王と同程度のオーラが放たれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「宝具も使えねぇのに、こんなのの相手なんかしてられるかぁぁぁぁぁっ!!」

 

両津は必死に逃げて市民会館から脱出する。綺礼はその後を追い、一撃で倒せるであろう拳を放って来ていた。そして綺礼の手が両津に届こうとした時、両津が転けて綺礼の腕は空振りする。その勢いで前につんのめった綺礼は両津を跨いだ形になり無防備な背後を晒した。

 

 

 

 

此処で一つ。どんな達人でも絶対に鍛えられない場所である『秘点』が有り、そこを付けば格下でも勝つ事が出来る。

 

「今だっ! カンチョー!!!!!」

 

そして両津は其の秘点を突いた。

 

 

「ガッハッハッハッハッハ! 儂は無敵なのだぁっ!」

 

得意気になってブイサインする両津の後ろでは立ち上がった綺礼に無数の魔幻獣が群がり吸収されていく。影に気付いた両津が振り向くとその全長は五メートルにもなっており、両津に拳を振り下ろした。

 

 

 

「……大丈夫か?」

 

だが、後ろから綺礼を一撃で倒した男によって拳は両津に当たる事がなかった。

 

「なぁ、お巡りさん。ああいう化物の親玉って何処に居るかしらねぇか?」

 

「あ、ああ、この奥にある聖杯ってのが原因らしい。……お前は誰だ?」

 

「俺か? 俺は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ!」

 

セイバーは地底王と天空王の攻撃をかわしながら聖杯を破壊するチャンスを伺う。令呪によって強化されるのは一発限り。その一撃で決められなかれば終わりだが、目の前の二体はエクスカリバーに耐え切った深海王を自分たちと同格と先ほど言ってのけた。そしてそれは本当だとセイバーの直感が告げている。

 

(くそっ! このままでは……しまっ!)

 

セイバーが飛び乗ったガレキが崩れ、セイバーは体勢を崩す。そしてその細首を切り飛ばそうと地底王のけんが振り下ろされた。セイバーはそれを防げないと判断すると無理にでも聖杯を破壊しようと構える。

 

「一か八か……エクス……」

 

「えい」

 

「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

だが、それは急に現れたハゲ頭にマント姿の男が地帝王を一撃で倒した事で止まった。天空王は一瞬固まった後に男に襲いかかるが又しても瞬殺された。

 

「……え~と、貴方は誰でしょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

「趣味でヒーローをやっているものだ」

 

 

 

 

 

 

「エクスカリバァァァァァァァァッ!」

 

「お! 派手だな」

 

セイバーの放った一撃は見事に聖杯を破壊し、第五次聖杯戦争は幕を閉じる。聖杯が破壊された事によってすべての英霊が現界出来なくなり消えていった。

 

 

 

 

ケイネスはウェイバーと共に時計台へと戻り、やがてウェイバーはケイネスの正式な弟子となり、やがて『他人の才能を見抜き開花させる才能』と『理論の解釈と再構築の才能』を開花させ、やがてアーチボルト家の末席に連なる少女と結婚する事となる。

なお、両津の影響か自由奔放さが目立ち、ケイネスが何処かの派出所の部長の様になる事となった。

 

 

ケイネスはソラウと正式に結婚。やがて多くの子に恵まれ、その中でも特に優秀だった第一子『ヴァンプ』がロードエルメロイの称号を継ぐ事となった。なお、ヴァンプは少し人が良すぎる所が有り、次男の『ルゴル』や長女の『ウサコッツ』が支える事となる。そして三男の『サンレッド』はチンピラ気質だが下の者からは慕われていた。

 

 

 

 

 

切嗣はアインツベルンから娘のイリヤを奪い返し、聖杯となった心臓を元に戻す旅を続ける事となった。その傍らに居た舞弥は生き別れの子と再会し、やがて切嗣の子を産んで衛宮舞弥となった。

 

 

雁夜は妖怪屋敷のような家を売り払い、ケイネスの元に身を寄せる事となる。それは正式に養女にした桜が実験台にならないよう、ケイネスの弟子にするであった。雁夜も一流のハジケリストになっており、放置は出来ないと呼び寄せたケイネスの胃はウェイバーの影響もあって痛み出した。

 

 

なお、とある猟奇殺人鬼が死刑になったらしいが、日本に居ない面々には知る由もなかった。

 

 

そして遠坂の家は凛が継ぐ事となり、聖杯を解体するかどうかの問題に巻き込まれるもケイネスや切嗣がそれを助ける事で何とか乗り切った。

 

 

 

 

なぜあの様なメンバーが召喚され、イレギュラーが現れたかは誰にも分からない。だが、今日も地球は平和に回っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コラ―――!! ウェイバー!!!!!」

 

とある魔術師の胃はボロボロだったが……。

 

 

 

 

 

 

 

    第四次ギャグキャラ戦争 ただしセイバー除く 完結!           

 

 

 




クラス アサシン

真名 ソニック

マスター 言峰 綺礼

性別・身長・体重 男性 ? ?

属性 混沌・善

力 B 耐久 C 敏捷 EX 魔力 E 運 D 宝具 C


保有スキル

ギャグ補正 C

どんな目に遭ってもギャグで済むスキル。大怪我を負ってもギャグなので何とか生き残れる

気配遮断 C

忍者としての技術で持っているが本人があまり隠れれようとしない

単独行動 ex

マスターの魔力供給無しでいくらでも現界でき、宝具も単独で使える。




宝具

忍具(ニンジャツール)

ランク C

対軍宝具

レンジ ?

最大捕捉 ?

爆発する手裏剣などの武器。それなりの威力を持ち、大勢相手でも有効




英雄は遅れてやってくる(ワンパンマン)

ランク EX

対界宝具

レンジ ?

最大捕捉 ?

この宝具はステータスに表示されず、本人も所有していると知る事が出来ない。明確な悪にソニックがやられ、大勢の人の命が危機に晒された時に自動発動。ハゲ頭のヒーローが単独行動EXで出現する。





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第二部 第五次ギャグキャラ戦争 ただしアーチャー、テメェは駄目だっ!! 編
第二部 プロローグ


さて、これは一部の続きではありませんが、繋がる予定です


「満たせ満たせ……」

 

とある屋敷で一人の少女が魔法陣の傍で呪文を唱える。彼女の名前は遠坂凛。彼女は暗記した呪文を唱え、英霊を呼び出そうとしていた。彼女が呼び出したいと思っているのは最優の英霊であるセイバー。

 

「汝はその瞳を混沌に曇らせ……」

 

だが、”うっかり”バーサーカー用の呪文を呼び出し、さらに偶々吹いた風で屋敷が軽く揺れ、幼い頃に”うっかり”逃がして干からびていた蛙が棚から落ちてきた。

 

 

 

 

「ケ~ロケロリ。聖杯があれば地球(ペコポン)侵略なんて簡単であります」

 

「……蛙? しかもかなり弱い。なんでこんな役立たずが出てくるのよ~!?」

 

「なんですとぉっ!? 我が輩、怒ったでありますっ!」

 

呼び出されたのは蛙のような謎生物。ステータスを見たら殆どの能力が最低ランクのE。それでも英霊ならただの人間が勝てる相手ではないのだが、凛は飛び掛ってきた所をあっさりと叩き落とした。

 

「ゲ、ゲロ~」

 

「……終わった。私の十年は何だったのよ~? ……ところでアンタの真名とクラスは?」

 

「はっ! この度バーサーカーのクラスで召喚に応じましたケロロであります!」

 

ケロロは短い手で敬礼の構えを取った。

 

 

 

 

 

 

 

その少年、慎二には魔術の才能が全くなかった。だから後継にする為に家の養女となった義妹の桜に嫉妬し、見返してやろうと自分も無理を承知で英霊を召喚する事にした。

 

 

 

 

「シンジ~、メシ~!」

 

「サーヴァントの分際でマスターである僕を呼び捨てに……」

 

「チャッピー! えさ」

 

「ゴメンなさいゴメンなさい~!」

 

そしてかなりの力を持つライダーを召喚できたのだが全く制御が出来ず、今も宝具である犬に頭を噛まれて血を流している所だ。その傍では体に髑髏マークが有り、”しねじ”という文字の”ね”にバツを付けて横に”め”と、書いた人面キノコが当主である臓見に寄生していた。

 

「おい桜っ! 早く飯作れっ!」

 

「は、はい! 今作ります!」

 

「全く、トロイんだよお前はっ! ……なんだよ」

 

苛立ち紛れに桜に八つ当たりしているとライダーがジッと慎二の顔を見ていた。

 

「なぁ、シンジ。なんで家族なのに仲良くしないんだ?」

 

「お前には関係ないだろっ! なんでそんな事を聞いてくるんだっ!」

 

「だって変じゃないか。仲良くするなんて争うより簡単だって、子供のボクでも分かるぞ。魔術ってそんなに大切なのか? それがあれば友達や家族が居なくても平気になるのか?」

 

「……ちっ! おい、桜! 遅いって言ってんだろ! 手伝ってやるから早くしろよ!」

 

慎二は悪態をつきながらも桜の手伝いをし出す。その光景を一人の男が見ていた。

 

「奴も変わったな。……お前の影響か、ライダー?」

 

「ボクは何もしてないぞ、アーチャー。シンジが変われたなら、それはシンジが強くなったって事だ」

 

「……そうか。さて、私も手伝うとするかな」

 

「じゃあ、僕を煮込むだにゃあ」

 

「貴様は毒キノコだろうがっ!」

 

「失礼な。僕はシメジだにゃあ。ほら、ちゃんと体にしめじって」

 

「悪辣な書き間違えをしておいてよく言うなっ!」

 

この聖杯戦争は自分が知る物と余りにも違いすぎる。腰ミノ姿の少年を見ながらアーチャーは溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

「ヴァカめ!」

 

「……ウザイ」

 

イリヤスフィール、通称イリヤは目の前の英霊に胃を痛めていた。アーサー王の鎧の欠片を媒体に呼び出したのが目の前の謎生物。白いステッキを持ち、アインツベルン当主をペチペチ叩いている。歌う歌も言動も余りにもウザすぎ、あまつさえ契約をするにおいて千の項目を守って欲しいっと言ってきた。

 

「ねぇ、セイバー」

 

「ヴァカめ! 私の名はエクスカリバーだと言っただろうっ!」

 

「アンタがクラス名で呼べって言ったんじゃない……」

 

「第754項目『私に話しかける時は発音良くエクスカリバーと呼ぶ事』を忘れたか!」

 

「前聞いた時と番号が違うわよ?」

 

「ヴァカめ! 日々更新しているに決まっているだろう!」

 

令呪三つ使って自害させようか、イリヤは本気でそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がっはっはっはっはっ! 俺様に任せとけっ!」

 

(此奴、本当に頼りになるのか? 耐久と運の良さ特化のアサシンなど想定外だ)

 

とある魔術師は聖杯を手にれる為に儀式を行い、一人の男を召喚した。頭はアフロで服は胴着。妙に自信タップリの英霊のクラスはアサシンだ。なお、腰にはチャンピオンベルトを巻いている。

 

「俺様の正体は天下一武道会のチャンピオンにして地球を救ったスーパーヒーロー”ミスターサタン”だっ!」

 

(まぁ、宝具もEXだし何とかなるか? しかし、気配隠す気ないな、此奴……)

 

気配遮断してからの暗殺がアサシンの得意技にも関わらず、ミスターサタンは隠れる気など毛頭もなかった。

 

「よし! まずは飲みに行くぞ、マスター! 前祝いだ!」

 

(悟空さんとかみたいな化物じみた強さの奴は居ないだろうし、俺にも勝ち目があるなっ!)

 

自信満々のサタンは豪快に笑いながら夜の街に繰り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんでさ」

 

衛宮士郎は魔術師としての修行を殆ど受けておらず、最低クラスの魔術師だといえよう。今日は倉の整理途中に手を切り、倉の床に書かれていた魔法陣に飛び散った時、目の前にヒーローが現れた。

 

「私はランサー……いや、正義の味方(ヒーロー)なら正々堂々と名乗ろう。鳥取戦士サキューンだっ!」

 

こうして正義の味方を目指す魔術師見習い衛宮士郎と鳥取を悪の組織シャンシャンから守る砂の戦士サキューンのランサー陣営が結成された。

 

 

 

 

 

 

そして、冬木の教会にて一人の英霊が消えようとしていた。彼の名はギルガメッシュ。間違いなく最強の英霊……だった存在だ。今はこの世から消え去ろうとしており、金髪の髪は無残にむしり取られ、頭の上にラーメンが接着されている。その光景を一人の神父は愉悦混じりの笑みで眺めていた。

 

「……驚いたな。まさか此処までとは」

 

「……フン」

 

ギルガメッシュを倒した男は賞賛の言葉など興味がなさそうに鼻を鳴らすとギルガメッシュの首を掴んで持ち上げる。するとギルガメッシュの体は手品で使うような箱に収まり、中からまたくの別人が出てきた。

 

「さて、何奴が来るかと思いきや貴様か、BB(ビービー)

 

「……」

 

「さぁ! まずは聖杯を手に入れ、この世界とあの世界の全てを手に入れる! このキャスター……いや、ツルツルリーナ三世の名の下にな!」

 

かつてない悪意が混じった聖杯戦争の開幕まであと少し……。

 




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仕切り直しの第一話

 冬木市の外れにある小さなクラブで一人の魔術師が盛大に溜息を吐いていた。彼の名はマーク。奇しくも本名が同じだという彼が呼び出した英霊こそが溜息の原因だ。

 

「がっはっはっはっはっ! 酒だ! 酒持って来いっ!」

 

「……いい加減にしろ、アサシン。悪目立ちしすぎだ」

 

「なぁに、他の英霊なんて私に掛かればチョチョイのチョイだっ! う~しっ! もう一件行くぞっ!」

 

「まだ飲む気かっ!?」

 

 折角用意した聖遺物は運んでいる途中で車ごと崖下に落ちて行き、仕方なく何もなしで召喚したら出てきたのは目の前の問題だらけのアサシン。アサシンだというのに気配遮断はお粗末。そして何故かカリスマのランクが異様に高く自信家。そして名乗っているミスターサタンなどという名前は聞いた事が無い。

 

(まあ、願いが”孫を後継者にしたかった”だから私の願いの邪魔にはならんが……)

 

 とりあえず宝具が評価規格外のEXという事に期待する事にしたマークはサタンと共に飲み明かした後で裏路地を通る。そして宿泊先である町外れの安マンションが見えてきた所で足が止まった。

 

「……アサシン」

 

「ああ、分かっている。私に任せておけ」

 

 サタンはマントを上に放り投げ拳を構える。二人の目の前にはコンビニ袋を持った少女と赤い外套を身に付けた英霊が立っていた。

 

「下がっていろ、マスター」

 

「は、はい! 頑張って下さい!」

 

 英霊、アーチャーはマスターである桜を下がらせると双剣を手元に出現させる。油断なくサタンを見つめるアーチャーだったが心の中では動揺していた。

 

(……やれやれ、どういう事だ? ランサーとの対決も起きていないし、私を呼び出したのは凛ではなく桜。そして目の前にいる英霊には見覚えがない。私の知っている聖杯戦争とは大分違うようだな……)

 

「さあ! 何処からでも掛かってこいっ! このサタン様が相手になってやるっ!」

 

「おい、馬鹿っ! 真名をバラすなっ!」

 

 サタンはアーチャーに先手を譲るつもりなのかかかって来ようとしない。その構えは確かに格闘家としては一流の様だが英霊には遠く及ばない。アーチャーは自信の裏に宝具があると察し桜に視線を送る。マスターの権限でサタンのステータスを見た桜は目を疑った。

 

「その人、力と敏捷がD+で魔力はEですが……嘘っ!? 宝具と耐久がEXで運が……(測定不能)!?」

 

「がっはっはっはっはっはっ! 私の強さに恐れをなしたのなら今すぐ降参するのだなっ! そうすれば命だけは助けてやらん事もないぞ?」

 

「……いや、私には聖杯に託す願いなどないがマスターの為にも必要なのでな。貴様の鉄壁の防御、崩させて貰うっ! マスター、令呪だっ! 敵を全力で撃ち抜けと命じてくれっ!」

 

「はい! 令呪を持って命じる。敵を全力で撃ち抜いてください!」

 

 マスターに与えられるたった三回の命令権。それを消費する事で自らの英霊の動きを抑制し、時に奇跡的な力を発揮する。そして今は桜の命令によってアーチャーの宝具の威力が大幅に上昇していた。

 

I am the bone of my sword(我が骨子は捻じれ狂う)偽・螺旋剣(カラドボルク)

 

 ドリルの様な刀身を持つ剣が弓によって打ち出されサタンへと迫る。呆然としていたサタンの顔面に其れが見事命中し、衝撃によって土煙が立ち込めアーチャーの視界を遮った。

 

「……流石に今のを受けて無事では済むまい」

 

 令呪を受けて底上げされた威力を持って放った宝具は無防備な所、しかも急所である顔に命中した。これで倒せてはいなくても重症は負わせた。アーチャーはそう確信していた。

 

 

「ひぇ~! 痛いよ~! 死んじゃうよ~!」

 

「なっ!?」

 

 土煙が晴れ、鼻血を垂らしながら転げまわっているだけ(・・)のサタンの姿を見るまでは……。

 

「引くぞマスターっ!」

 

 アーチャーは桜を抱えると即座に退却する。鼻を押さえて立ち上がったサタンはその姿を見て勝ち誇った笑みを浮かべた。

 

「が~っはっはっはっはっはっ! 私の実力に恐れをなして逃げていったぞっ!」

 

「……まあ、実力…なのか?」

 

 そうしてほうが精神衛生上良いと感じたマークは一人納得する事にした。確かにサタンは攻撃を受けて転げまわっていただけだろう。だが、相手がアーチャーらしき事を知る事ができ、宝具を見た上に令呪を一個消費させる事が出来た事からして上々と言えるだろう。

 

 

 

「……ふん」

 

 その夜、間桐臓硯は空を見上げ黄昏ていた。彼に変化を齎した、いや、かつての彼に戻らせつつあるライダーもその横で月を眺めていた。

 

 

「お前、なんでこんな酷い事するんだ?」

 

 元々は素質がないと期待していなかった慎二が呼び出した無名の英霊。だが、知名度と魔力部おsクで弱体化しているであろうにも関わらず能力は高く、自分をマスターに鞍替えさせようかと思いながら桜の調節を行っている時の事だった。蟲藏に入ってきたライダーは調整用の虫を宝具で吹き飛ばすと臓硯を睨んで問うてきたのだ。

 

「カカカ、決まっておろう。聖杯を手にする為じゃ。貴様も叶えたい願いが有るから喚ばれたのじゃろう?」

 

「確かにボクにも願いがあるからシンジに喚ばれたんだぞ。でも、こんな酷い事を見過ごしてまでボクは願いを叶えたいとは思えない。ボクの願いは早く目覚めて友達と遊ぶ事なんだ。だけどこんな酷い事を見逃してたらボクは友達と楽しく遊べないぞ」

 

「くだらんな。余りにもくだらん願いだ。儂はな聖杯によって不老不死を手に入れたいんじゃよ」

 

「……それで、その後はどうするんだ?」

 

 ライダーの願いを嗤っていた臓硯はライダーの問いの意味が分からず固まった。

 

「だって、何かやりたい事があるから不老不死になりたいんだろ? ボクにはパプワ島に友達がいて。皆とやりたい事をやってた。でも、お前は一人で永遠に生きてまで何がしたかったんだ?」

 

「……儂がしたかった事、か。……興が冷めた。桜、今日の調整は終わりじゃ。ライダーを連れてさっさと出て行け」

 

 ライダーの言葉を受けて彼には失った理想が徐々に蘇ってきていた。彼の理想は『悪の根絶』。その理想を叶える手段として不老不死を追い求め、何時の間にか手段と目的が逆転していたのだ。もしライダーの言葉がただの言葉だったら鼻で笑われるだけだっただろう。だが、ライダーの持つ宝具の能力の一つである『精神浄化』の影響が徐々に効果を現していた。

 

 そして数日後、”貴様の様な者に本体を寄生させていたら危なっかしい”、と言って桜の心臓に寄生させていた本体を取り出した臓硯は目を閉じる。後ろからは足が生えた巨大なオカマの鯛と巨大なカタツムリに迫られるアーチャーの悲鳴が聞こえて来た。

 




何故か地の文がお案してもセリフのあとにくっつく

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変わり始めた第二話

「それで、アンタは一体誰なんだ? 英霊(サーヴァント)とかいうのは何となく理解できたんだけど、サキューンなんて聞いた事ないぜ?」

 

 衛宮士郎は蔵の掃除中に突如現れた特撮ヒーローのような姿をした男にお茶を出しながら尋ねる。士郎自身も魔術師(ただし半人前以下)なので非常識な存在全てを否定するわけではないが、サキューンと名乗る男から聞いた話は半信半疑だった。

 

「ああ、それは仕方ない。俺は正式にはこの世界の存在ではなく、”子供達が憧れる様なヒーローの代表”なんだ。だから、僕自身の記憶にある世界は此処じゃなく、怪人やヒーローの居る別の世界なんだ。まあ、悪人ではないから安心してくれ」

 

「本物の正義の味方(ヒーロー)、か……」

 

 サキューンが冗談めかしに言う中、士郎は養父とした約束を思い出していた。彼の養父は士郎に自分のかつての夢を話した。

 

「僕はね、正義の味方になりたかったんだ」

 

 士郎はその夢を継ぎ、自分が代わりに正義の味方になろうと決めた。だから本物の正義の味方(ヒーロー)を前に思うところがあったようだ。

 

「なあ、正義の味方をするっていうのはどういう事なんだ?」

 

「……そうだね。まあ、大変さ。テレビのヒーローの様にはいかないね。俺が敵対していた悪の組織、シャンシャンって言うんだけど首領が脳梗塞で倒れて入院してね、何もする事がなくて暇だったから怪人派遣会社のヒーロー派遣部門でバイトしたり……」

 

「バイトっ!? いや、ヒーローだろっ!?」

 

「いやいや、ヒーローも生きてるからね。衣食住にお金が掛かるんだ。怪人だってバイトしながら世界征服を目指してる奴だっているしね。まあ、ヒーローも怪人も庶民には変わらない。テレビの中(理想)と現実は違うんだよ」

 

「……正義の味方にも色々有るんだな」

 

「そうそう。僕の知る中では……あんまり先輩の事悪く言いたくないんだけどさ、北海道担当の兄弟戦士アバシリン先輩達なんて酔っ払った勢いで凶悪な悪の組織『デスヒグマ団』を皆殺しにしたり、ヒーロー辞めてホストやってる先輩や……悪の組織に入った奴も居るからね」

 

「そ、それはヒーローなのかっ!? いや、ヒーローならもっとさ」

 

 士郎はあまりの内容に動揺し、サキューンが最後の方で複雑そうな声色になった事に気付かなかった。

 

「所詮は正義の味方も人間だからね。色々居るさ。……士郎、他の英霊()だ。俺から離れるなっ!」

 

 サキューンは入り口の方から他の英霊の気配を感じ取り立ち上がる。聖杯戦争の事を少し聞いた士郎も緊張しながらサキューンの後に続く。門の方に人影が二つ有り、その片方は犬に乗った子供だった。

 

「おいおい、なんで衛宮がマスターになってんだよ? 襲われてなくて安心したけどさ。いや、他の英霊に魔力吸われてたら厄介って意味でだけどね」

 

「ハッハッハ! ボクがこの家から英霊の気配がするって言ったら慌ててたくせに。シンジは照れ屋だな!」

 

「う、五月蝿いぞっ! バラスなよ、ライダー!」

 

 月明かりで二人の姿が鮮明になる。其処には小柄な少年と士郎の友人であるワカメ(慎二)が居た。

 

 

 

 

 

「はぁっ!? 魔法陣に血が掛かったら召喚しちゃったっ!? お前、世の中の魔術師に喧嘩売ってるわけっ!?」

 

 慎二達に敵意がないと判断したサキューンは士郎の意見もあって慎二達を家に上げ、今までの経緯を話した。慎二からすれば家の者の目を盗んで一生懸命準備した自分が馬鹿みたいに思える内容に憤りを覚えて仕方がない。少し前までの彼なら問答無用でライダーを差し向けただろう。だが、彼はライダーと過ごした数日の間に変化していた。

 

「……兎に角、教会まで行くぞ。其処に戦争の監督役が居るから降りるなり参加するなり勝手にしろ。ああ、そうそう。僕と聖杯を巡って争うなら骨の一本位は覚悟しておけよ、衛宮」

 

 裏を返せば最悪でも骨一本で済ませる気である、という事だ。士郎は友人の最近の変わり様に戸惑いながらも案内されるまま教会に向かう。其処で前回の聖杯戦争で起きた事を知った。

 

 

「……あの大火災は聖杯戦争で起きたのか」

 

 そして士郎は聖杯戦争に参加する覚悟を決める。自分のみが生き残った大火災が聖杯戦争によって引き起こされたと知り、見過ごす訳には行かなくなったのだ。

 

「力を貸してくれ、サキューン」

 

「……ああ、俺もヒーローとして見過ごす訳にはいかない!」

 

 決意を決める二人を見ている聖杯戦争の監督役、綺礼は北叟笑んでいた。

 

 

 

「……ふ~ん、参加する事にしたんだ。言っとくけどさぁ、僕も間桐の家の者として聖杯を諦める訳にはいかないからな。ま、今日は遅いから戦わないでおいてやるよ。……そうそう、忠告しておいてやるよ。遠坂も聖杯制作に関わる御三家の一人だ。多分あいつも英霊を召喚してるよ」

 

「なあなあ、シンジー」

 

「あん? なんだよ?」

 

「さっきから思ってたんだけど、なんでアーチャーが二人居るんだ?」

 

「はぁっ!? 何言ってるんだよ」

 

 

 

 

「へぇ、面白そうな話ね。私にも聞かせてくれるかしら?」

 

「さて、一から十二の中から好きな数字を選びたまえ」

 

 士郎達は声のした方を振り向く。其処には白髪の小柄な少女とステッキ片手にダンスを踊る謎生物が居た。

 

 

「……え~と、じゃあ……」

 

「ヴァカめっ! お前に選択権はない!」

 

「いや、お前が選べって……」

 

「ヴァカめっ! ……私の伝説は十二世紀から始まった。あれは茹だるような夏の日の事。いや、心さみしい秋の事だな。そうだ! 暖かな春の日だっ! 肌寒い冬の寒さに耐えていた私はカフェで温かいコーヒーを注文したんだ。すると友人のジョニーがやって来て”大変だ、エクスカリバー! マリリンが攫われた!”と言うのでな、慌ててココアを飲み干して誘拐犯を探したものだよ……

 

 

 

 

 

 

……とまあ、これが守って欲しい千の条項の一つ、”キムチは大根以外認めない”の理由だ」

 

訂正、非常にウザイ謎生物が居た。

 

 

 

 

 

「あ~、もう! ホンット使えない英霊ねっ!」

 

 その頃、凛は己の英霊の宝具について聞いておくのを”うっかり”忘れていた事を思い出して聞いたのだが、非常に使えなかった。

 

「本人には使用不可な上に故障してて正常に動かない、ですってっ!?」

 

「ゲロ~。で、でも、それは仕方ないのであります! だって、ずっと冬樹殿や夏美殿に没収されてたんだもん」

 

「侵略者が兵器を没取されるなぁぁぁぁっ!!」

 

 凛はアンテナの付いたボールのような物体片手に持ちながらバーサーカーを蹴り飛ばした……。

 

 




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エクスカリバーのセリフ確認しようと参考にエクスカリバーが出まくっているHSDDとソウルイーターのクロス作品読もうとしたら消えていた 好きな作品だけに残念


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何とか書けた第三話

手塚先生の『ボクの孫悟空』の悟空でエクストラ考えた。最後まで楽勝だけどラスボスで詰むww


 英霊とマスターは互いの記憶を夢に見る。桜はライダーの散歩に付き合って出掛けた慎二の帰りを待つ内にいつの間にか転た寝をしていた。

 

(……これは、アーチャーさんの記憶? あれ? あれは……)

 

 桜はアーチャーの記憶の中で裸でベットに寝転がり目の前の男性を誘う自分と見知らぬ女性の姿。そして自分達を抱く……衛宮士郎の姿だった。

 

「先輩っ!?」

 

 慌てて起き上がるとベットではなくソファーの上。先程の夢を思い出し顔が真っ赤に染まる。

 

「……どうしよう。明日から先輩の顔を直視できないよぉ……」

 

 

 

 

「虫酸ダッシュっ!」

 

「激しく同感っ!」

 

 謎生物に対して慎二は心底嫌そうな顔で呟く。マスターらしき少女も心底嫌そうな顔をしていた。

 

「ヴァカめっ! ヴァカめっ!」

 

「あ~、もう! 早くコイツら倒すわよ、セイバー(・・・・)!!」

 

「はあっ!? 其奴が最優の英霊(セイバー)!?」

 

 驚く慎二の目の前で謎生物(セイバー)は光り輝き、少女の手に神々しい剣が握られていた。

 

「さあ! 行くわよ、エクスカリバー!!」

 

「アレは拙いっ! 流石に子供に手を出せないから剣を取り上げて……」

 

 サキューンは少女から剣を取り上げようとダッシュし、

 

「イリヤダイナミック!!」

 

 なんか爆発して吹き飛ばされた。死んではいない様だが気を失っており、少女は慎二達に勝ち誇ったような笑みを向ける。

 

「あ、名乗るのが遅れてたわね。私の名はイリヤ。イリヤスフィール・フォン・アインツベルンよ」

 

「アインツベルンっ!? 御三家の一角じゃないかっ!?」

 

「ええ、そうよ。私はアインツベルン家の者。貴方は間桐の関係者ね。でも、貴方には用はないの。私が用があるのは其処のお兄ちゃんだけよ」

 

 イリアは士郎を指さすとニコリと微笑む。その時、非常にウザイ声が聞こえてきた。

 

「ヴァカめっ! 私の紹介がまだではないかっ!」

 

「……このウザイのはセイバーの英霊(サーヴァント)で真名は聖剣エクスカリバー。強さは見ての通りお兄ちゃんの英霊も中々だけど、エクスカリバーには大きく見劣りするわ。……じゃあ、そろそろ死んでくれる?」

 

 イリアはエクスカリバーを士郎に向け殺気を送る。小柄な少女とは思えない程濃厚な殺気に士郎がたじろいだ時、ライダーが一歩前に出た。

 

「なあ、シンジー。シロウはお前の友達なんだよな?」

 

「あ、ああ。衛宮は俺の友達だ」

 

「なら、ボクはシロウを守る事にするぞ」

 

 ライダーの目の色が変わり光りだす。慎二は少しだけ魔力が消費されるのを感じた。英霊の切り札である宝具の発動だ。

 

「小娘、引くぞっ!」

 

「えっ!? きゃあぁぁぁぁっ!?」

 

 エクスカリバーは元の謎生物の姿に戻るとイリアを抱えて去っていく。それを見たライダーは宝具の発動を止めた。

 

「大丈夫か、シンジー?」

 

「あ、ああ。宝具の魔力消費が少なかったからな。最近漸く魔力回路が開いたばかりの僕でも何とかなったよ」

 

「ほら、立てるか慎二?」

 

 それでも堪えたのか慎二はその場に尻を付く。少し汗ばみ息も乱れている。士郎が差し出した手を取って立ち上がると何とか歩く事ができた。

 

「……とりあえずさ、ウチに来いよ。お前が参加するならするで話さなきゃいけない事もあるし、何でかは知らないけどアインツベルンに狙われてるだろ? このまま帰して明日になったら殺されてたら目覚めが悪いしさ」

 

「そうだな。じゃあ、世話になるよ。サキューン、起きれるか」

 

「……何とか。くそっ! あのクソガキ、今度会ったらしばいたる」

 

 ヒーローにあるまじき言葉を発しながらサキューンは起き上がると目立たない様に霊体化する。ライダーも慎二の負担を考えてか霊体化し、そのまま四人は間桐宅に向かっていった。

 

「兄さん、お帰りなさい。ライダーもお帰りなさい。あ、あれ? せ、先輩っ!?」

 

 慎二を出迎えに出てきた桜は士郎の顔を見るなり真っ赤になって去っていく。訳も分からず混乱する士郎に三人と一匹がジト目を送った。

 

「お前、桜になにかしたのか?」

 

「サイテーだな、シロウ」

 

「あうあう!」

 

「……なんでさ」

 

 

 

 

「爺さんは居ないのか?」

 

「は、はい。お爺様は用があって朝まで出掛けるそうです」

 

 桜は漸く落ち着いたのか何とか士郎の顔を見れるまでになった。それでも恥ずかしいのか直視出来ずにチラ見している。又しても士郎に責めるような疑惑の視線が注がれ、士郎は誤魔化す様にお茶に口を付ける。

 

「……あれ? 桜の前でライダーが姿を現してるって事は……」

 

「ああ、桜もマスターだよ。……本当は隠しておくべきなんだろうけど、友達に隠し事はしたくないし桜はトロいから直ぐにバレそうだしな。それで、アーチャーの奴はどうしたんだ?」

 

「せ……アーチャーさんなら先程偵察に行くって言って出掛けました。どうも先輩を避けてるみたいで……」

 

「……ふ~ん。まさかね……。まあ、良いや。おい、衛宮。最近昏睡する奴が増えてるって噂知ってるか?」

 

 慎二は少し何か考えた後で話題を変える。この所冬木市では昏睡する人が増えており、ガス漏れが頻発しているからだ等との憶測が飛び交っている。

 

「ああ、事故が頻発してるって聞いたけど……」

 

「あれ、何処かの馬鹿が一般人から魔力を吸い取ってるせいだぜ。なあ、衛宮。一旦手を組まないか?」

 

 

 

 

「……やれやれ、奴は敵だろうに。幾ら何でも甘くなり過ぎではないかね? ……所でマスターが私の顔を直視してくれなくなったのだが何かあったのか?」

 

 取り敢えずその夜は泊まる事となった士郎は客室で眠りサキューンも布団を敷いて同じ部屋で眠る。慎二が深夜番組を見ていると偵察から帰ってきたアーチャーは桜から説明を受けたのか慎二に対して嫌味混じりの忠告をしてきた。

 

「……僕さ、衛宮の事、友達だとは思ってたけど嫌いだったんだよね」

 

「ほう?」

 

「アイツは何頼んでも引き受けるし文句も言わない。だから心の中では僕の事を馬鹿にしてるんじゃないかって思ってたんだ。桜もそうさ。僕は最初あいつの事を可哀想だって思ってたんだけど、桜が本当の継承者で僕に憐れみの視線を送っていたって知って……まあ、色々やったよ」

 

 慎二はテレビを消すと天井を見上げた。

 

「……でも、そんなのどうでも良かったんだ。魔術の継承何てどうでも良かった。友達が居て妹が居て好きな事やって、僕は確かに此処で生きていた。たったそれだけの事だったんだよな。……なあ、アーチャー」

 

「なんだね?」

 

 

 

 

「お前、衛宮だろ?」




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動乱始まる第四話 おまけ追加

 アーチャー……衛宮士郎の生涯は波乱に満ちたものだった。第四次聖杯戦争によって引き起こされた大災害を生き残った彼は養父である衛宮切嗣の養子となり、彼の夢であった”正義の味方”を目指した。そして第五次聖杯戦争でセイバーとして一人の少女を召喚し絆を深める。そして聖杯の破壊と共にセイバーと永遠の別れを告げた。

 

 そして本来ならば救えなかった人を救う為に世界と契約し英雄としての力を手に入れた彼は救った人々に裏切られ生涯を閉じる。その結末には後悔がなかった。だが、力の代価として押し付けられたのは霊長の守護者としての役割。世界を滅ぼそうとする人間を虐殺し世界を救う内に彼の精神は摩耗していった……。

 

「行い自体には何の後悔もなかったさ。だが、そもそもの動機は借り物だった。私は養父の夢を継いだに過ぎなかったのだ。だから考えたのさ。過去の自分を殺して過去を変えよう、とな」

 

 アーチャーは気付かぬ内に自分の内心を吐露していた。自分でも何故慎二に話してしまったのか分からない。ただ、もしかしたら慎二の召喚したライダーの影響ではないかとは思っていたが。

 

(……変わったのは慎二だけではなかった、という事か)

 

 彼の持つ記憶とこの世界には大きな食い違いがある。いや、有りすぎると言って良いだろう。(アーチャー)を召喚したのは桜でなく凛だし、慎二は腐ったまま桜が召喚した別のライダーを従えていた。そして慎二と士郎から聞いたエクスカリバー(セイバー)は余りにも記憶にある少女と違いすぎる。

 

「……少し話し過ぎたな。しかし馬鹿の見本のような話だろう?」

 

「……別に。僕は自分でも人の生き方を馬鹿に出来るほど立派な生き方をしてきたとは思ってないよ。でもさ、二つだけ言わせて貰うよ。たとえ理想や夢が借り物だったとしても、それを最終的に選んだのは自分なんだから自分の物じゃないか。それと、此処の衛宮は僕の親友なんだ。その親友を殺そうってんなら未来の衛宮(お前)でも容赦しないから覚悟しとけよ衛宮」

 

 慎二の言葉を聞いたアーチャーは暫く固まり、いきなり腹を押さえて笑い出す。笑い過ぎたのか少し咽せ、呼吸を整えて何時もの皮肉めいた笑みを浮かべた。

 

「くくっ、これは怖い。せいぜい肝に銘じておこう。……所でなんで私が衛宮士郎()だと分かったんだ?」

 

「いや、桜が思いっきりお前を先輩って呼ぼうとしてたし、衛宮を見る目と同じ目でお前を見てたからな。……それとライダーが衛宮を見て”なんでアーチャーが二人居るんだ?”って、言ってたんだよ」

 

「……ライダーか。あれは不思議な奴だな。確か願いは”一刻も早く目覚めて友達と遊ぶ”、だったか? 無邪気な事だ。まあ、奴の願いの邪魔はしない様にするさ。この聖杯戦争には口煩い親友も居る事だしな」

 

 アーチャーは再び笑みを浮かべると霊体化して消えていく。慎二も話に夢中で見ていた番組の内容が頭に入っていなかったのでテレビを消すと寝室に戻っていった。

 

 

 

 

 

「なあ、士郎。俺の友達の話を聞いてくれないか?」

 

「親友? ああ、別に良いけど?」

 

 アーチャーと慎二の会話から少し遡った頃、同室で寝ようとしていた士郎にサキューンは一人のヒーローの話しをし始めた。彼はヒーロー一族の出身で所謂”お坊ちゃん”だったのでヒーロー養成施設の同期だったサキューンは彼の世話をよく焼き、何時の間にか友人になっていた。二人して立派なヒーローを目指し、同じ先輩に良く世話になったっと話す時のサキューンは本当に楽しそうだった。もっとも、先輩ヒーローが何処ぞのチンピラにしか思えない事について士郎は多少のショックを感じたのだが……。

 

「でも、俺は彼奴の悩みに気付いていなかった。彼奴は、ナイトマンは子供の頃から怪人になりたかったんだ」

 

「怪人!? 怪人ってあのヒーローと戦う奴だろ!?」

 

「ああ、その怪人だ。でも、ヒーローとして生きていくしかないって思ってたからそんな事家族には相談できなくてずっと苦しんでいたんだ。結局、さっき話した先輩に相談して最終的には先輩と敵対している悪の組織に入ったんだ。……そしたら彼奴、生き生きしていたよ」

 

「え~と、家族は何か言わなかったのか? ずっとヒーローになる為に育ててきたんだろ?」

 

「……気付いてやれなくて済まなかった、そう言ったそうだ。なあ、士郎。正義の味方ってのは責任感が要るものだ。でも、責任感からなるものじゃない。それに、誰かを助けるだけなら正義の味方である必要もないんだ。本当に自分の心の底からの意思じゃなかったら、失敗した時辛いぞ?」

 

「……」

 

 サキューンの言葉に士郎は無言で返し、そのまま布団を頭まで被る。サキューンも布団の中に入った。

 

「……そういえば俺の願いを言ってなかったな。ある日、世界中に支部を置く悪の組織”フロシャイム”の東京支部の”ヘンゲル将軍”の罠に掛かって、日本に居るヒーローとフロシャイムの全面対決になったんだ。俺も当然参戦して……ナイトマン、いや、フロシャイム怪人ナイトールと相討ちになった。ヒーローとしてその事は後悔してない。でも、サキューン個人としては後悔しているんだ。アイツと戦わない道もあったんじゃないかって。……士郎。君も本当に今の道で後悔しないか考えて行動した方が良い」

 

「……」

 

 サキューンはそれだけ言うと布団を被る。士郎は暫くの間黙って考え事をしていた。

 

 

 

 

 

「しかし、他の英霊と会わんなぁ。俺様に恐怖をなして隠れてるのか?」

 

「いや、お前は一回戦っただけだろう。まあ、頑丈さには驚いただろうな」

 

 拠点に戻ったマークとアサシンは他の英霊を探すも先日のアーチャーの一件以来遭遇しない。作戦を練ろうにもアーチャー以外の能力が分からないので作戦が立てられない。安マンションは壁も薄く声が筒抜けなのでそろそろ寝て、明日別の場所で作戦を話し合おうとなった時、衝撃と共にマンションが崩れた。

 

「「ぬわぁぁぁぁあああああっ!?」」

 

 二人が居たのは一階。上から降り注いだ瓦礫は運良くサタンを避けるように崩れ、近くに居たマークも運良く助かる。そして息つく暇もなくサタン目掛けて巨大なダーツが襲いかかった。

 

「ぎょへぇぇぇっ!?」

 

 サタンは悲鳴を上げながら隣の建物の壁に激突してゆっくりズリ落ちる。そのまま頭から落ちたので頭に大きなタンコブができた。大したダメージはない様だが起き上がったサタンは涙目で頭を押さえている。その無防備な姿目掛けて襲撃者は何かを投げる様に手を振り抜く。

 

 

 

真紅の手品(レッドマジック)真拳奥義”ノントリック(タネの無い)超魔術”!!」

 

「サターン!!」

 

 サタン目掛けて無数のナイフや鳩が襲い掛かり、マークは衝撃で吹き飛ばされる。サタンが居た場所に土煙が濛々と舞う中、襲撃者(ツルツルリーナ三世)は鼻を鳴らしマークに向き直る。

 

「……くだらんな。所詮はこの程度か……さて、あとはマスターを……!?」

 

 ツル・ツルリーナ三世は土煙の中から放たれた力の大きさに固まる。この日、彼は生まれて初めて恐怖というmのがどういう物かを知った。やがて土煙の中にサタン以外の人影が現れる

 

 

 

 

 

 

「……お前、サタン虐めたな」

 

 

 

 

 

 

 

【CLASS】アサシン

 

【マスター】マーク

 

【真名】ミスターサタン(マーク)

 

【属性】秩序・善

 

【ステータス】

筋力:D+ 耐久:EX 敏捷:D+ 魔力:E 幸運:(測定不能) 宝具:EX

 

 

クラス別スキル

 

気配遮断:E 目立ちたがり屋な上に訓練も受けてないので一般人が息を殺して物陰に隠れる時程度

 

固有スキル

 

カリスマ:EX 何度も世界を救った(事になっている)事により、サタンは某金ピカすら超える高いカリスマ性を持つ。そのカリスマは声だけで地球全土の人間を動かせれる程。

 

ギャグ補正:EX 存在自体がギャグであり、ブゥ(純粋悪)のパンチや超一星龍の飛び蹴りをモロに食らっても痛がる程度で済む。

 

英雄補正:EX 様々な幸運が重なってサタンの行動は世界を救済する事に繋がり、大衆は彼こそが英雄だと信じる。

 

 

 

宝具 永遠の親友(ブウ)

 

ランク EX

 

対宇宙宝具

 

レンジ 全宇宙内

 

最大補足 測定不能

 

 

 サタンがピンチに陥った時に自動発動。永遠の親友であるブウを召喚する。なおブウはBランク相当の単独行動を保有。ただし、脅威が去ると宝具は解除される。この宝具の発動にマスターの魔力は消費しない。

 

本人曰く、『サタン友達。ずっとずっと友達。俺、サタンの事忘れない』、とのこと。その友情はウーブと同化しても消えなかった。

 

 

 

~オマケ~

 

 月で行われる聖杯戦争。記憶を失ったマスター岸波白野は一体のサーヴァントを召喚する

 

「僕の真名? お前を信用したら教えてやるよ」

 

頭に金色の輪っかをはめて伸縮自在の棒を持ち、雲に乗る猿のライダーはそう言った。

 

 

「仕方ネェナ。マトリスク判明装置作ッテヤルヨ。カレーパン使ウカラ買ッテコイ」

 

遠坂凛は白衣を着た熊のキャスターを召喚する。

 

 

「!!」

 

「また怒っていますね」

 

そしてラニⅧはノースリーブの赤白の縦縞模様の服をきて耳に安全ピンを刺した兎のバーサーカーを召喚した

 

ファイトエクストラGACW(ギャグアニマルキャラウォー)

 

「ぼくの孫悟空」

 

「秘密結社鷹の爪」

 

「ウサビッチ」

 

 

近日公開……しません。

 




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最近フェアリーテイルの二次を始め、キャラ募集も活動報告でやっています


いや、本当に公開しませんからね? フェアリーテイルの感想が増えれば気を良くしたりするかもしれませんが、今のところ公開予定はないですからね?


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もうすぐ終わりの第五話

「ユスティーツァ、儂は随分と止まっていたようじゃ。最近になって漸く目的を追い出すとは年は取りたくないものじゃな」

 

 臓硯は柳洞寺の地下大空洞にある、すり鉢状の岩肌に刻まれた魔法陣”大聖杯”の前に来ていた。大聖杯は彼の仲間であった女性が核になっており、既に彼女の意識などない事など臓硯にも分かっている。だが、誰かに話さずにはいられなかったのだ。

 

「……儂ももう直ぐこの世から去る。まあ、散々やらかしたからには地獄行きじゃろうな……」

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 死の恐怖、それは自らの生命を守る上で欠かす事の出来ないものである。世界のほぼ全てを統一し圧倒位的な力を持つツル・ツルリーナ三世はこの時、その恐怖を味わっていた。

 

「この、化物がぁぁぁっ!!」

 

 彼が此処まで取り乱すのは因縁ある毛の王国の者達との戦いでもあり得なかった事だ。彼は迫って来る敵に攻撃を仕掛けるも全く効いていない。いや、確かにツル・ツルリーナ三世の攻撃はブウの体に傷をつけている。ブウは攻撃を受けるたびに肉片を飛び散らせ、すぐに元の通りに戻っていた。

 

「いぇ~い|」

 

 ブウの拳はツル・ツルリーナ三世の顔面にヒットし、そのまま地面に叩きつける。肺の中の空気をしべて吐き出したツル・ツルリーナ三世の上に馬乗りになったブウは無邪気な笑みを浮かべながら拳を何度も叩きつけた。

 

「へいへいへ~い♪」

 

 やがて顔面ボロボロになって気を失った彼の上から退いたブウはサタンへと駆け寄っていく。

 

「大丈夫か、サタン」

 

「え、ええ、有難うございましたブウさん」

 

 ブウが手を翳すと淡い光が発生しサタンやマーク、巻き込まれて瓦礫の下敷きになっていた住民達の傷が癒えていく。そして瓦礫を除けて住民達を助けた所でブウの体が透け始めた。

 

「サタン、危なくなったら俺を呼べ。俺、何度でも助けに来る」

 

「よろしくお願いします、ブウさん!」

 

 ブウの姿は消えて行き、何時の間にかツル・ツルリーナ三世の姿も消えていた。サタンとブウが交わした約束、『もう何も壊さないし、誰も殺さない』、という約束により彼は一命を取り留めていた。

 

 

 

 

 

「B・B…き、貴様……」

 

 拠点である教会に帰るなり手下であるB・Bに胸を貫かれるまでは……。

 

 

 

 

 

「自らのマスターを放って何処に行く気ですか、エクスカリバー。お嬢様が今どの様な状況か貴方も分かっているでしょう?」

 

 イリヤの従者であるセラは城から出ていこうとするエクスカリバーに非難のこもった視線を向ける。イリヤの正体は生きた聖杯。英霊(サーヴァント)が脱落する度に聖杯に魂が注がれ、イリヤの人間としての部分はなくなっていく。そして、ツル・ツルリーナ三世は破格の強さを持ち、英霊四体分の価値を持っていた。もし、彼がギルガメッシュを使ってB・Bを呼び出さなければ既に聖杯は完成していただろう。イリヤは大量の魂を注がれた事で苦しみ出し、彼女を救うには六騎分の魂を注いで降臨した聖杯を破壊するしかない。

 

「ヴァカめっ! 決まっているだろう。私の願いの為だ。私の願いは最高の職人(パートナー)を見つける事。ならば、そのパートーナーを救う為、今から他の英霊(サーヴァント)を探しに行くのだ!」

 

「……お気を付けて」

 

 アインツベルンの目的は聖杯の完成。アインツベルンの作り出したホムンクルスである彼女も聖杯の完成の為に行動する様になっている。だが、セラは聖杯を破壊すると言う意味の言葉を発したエクスカリバーを止めずに見送った。

 

 

 

 

 こうして聖杯戦争は加速し、やがて夜明けが訪れる。そして、この日の内に決着する。

 

 

 

 

「おい遠坂。ちょっと話が聞きたいんだけど」

 

「あら、何かしら? 衛宮君、間桐君、桜……」

 

 その日の昼休み、凛は話し掛けて来た士郎と慎二と桜の手の甲に目を向ける。包帯で隠していたが其処に令呪がある事は明確だった。

 

 

(ゲ、ゲロ~。まさか三人相手にするでありますか!?)

 

 自分の喚びだした英霊が怯えている事も明確だった。

 

 

 

 

「街中から魔力を吸い上げているのが私じゃないか、ですって? 私じゃないし、誰がやってるかなんて知らないわ」

 

 屋上に場所を移した凛は腕を組み、三人を警戒しながら質問に答える。だが、慎二は疑わしそうな目を向けたままだった。

 

「なら、お前のバーサーカーかキャスターがどんなのか見せてくれよ」

 

「げっ! なんで私が呼び出したのがバーサーカーって知ってるのよっ!? ……あ」

 

 遠坂家特有スキル”うっかり”を発動した凛は思わず口を滑らせ、桜は可哀想なモノを見る目を向ける。その背後から皮肉そうな笑い声が聞こえてきた。

 

「クク、やはり何処の世界でも同じ様だな」

 

「せんぱ…アーチャーさんっ!?」

 

「おい、エミ……アーチャー! なに姿見せてんだよっ!?」

 

 アーチャーは腕を組んだまま笑みを浮かべている。彼と仲良くする桜の姿を見た凛は心の中に黒いものがふつふつと湧き上がるのを感じていた。

 

「なに、向こうに情報開示を求めるのだから此方も少しくらい話しても良いだろう?」

 

「……もう。それで遠坂先輩。私達、手を組む事にしたんです。街中から魔力を吸い取ってる人がいて犠牲者が出ていますからどうにかしようと……」

 

「……お人よしね。そういうのは衛宮君だけかと思ってたわ。何度も言うけど私じゃない」

 

「私も彼女ではないと思うぞ。少なくても自分から英霊のクラスを話すような奴が街中から魔力を吸い取るようねな大掛かりな真似はできんさ」

 

「うっさいわね! それに私のバーサーカーは役に立たない程弱いんだから魔力消費も少ないんだからそんな真似する必要ないの!」

 

「……姉さん」

 

「……此処までとはな」

 

 再び”うっかり”が発動し、此処まで来たらブラフではないかと慎二が疑い出した時、凛の背後に変な生物が出現した。

 

「いやぁ、役に立たないとは酷いでありますよ凛殿~。我輩、家事とか頑張ってるでありますのにぃ」

 

「勝手に出てくんなって言ってんでしょうが、このボケガエル!!」

 

「ゲロ~!」

 

 凛はバーサーカーを蹴り飛ばして屋上から落とす。バーサーカーは悲鳴を上げながら地面に落下し、バーサーカーの形をした穴が校庭に空いた。

 

「……え~と、今のがバーサーカー? 狂化してないよな?」

 

「い、一応狂化スキルはあるのよ。……梅雨の時期限定だけど」

 

 

 

 

「ヴァカめ! 隠すべき事をペラペラ話しよって、ヴァカめ!」

 

 そして、非常にウザい英霊が現れた……。

 

 

 

 

【CLASS】バーサーカー

 

【マスター】遠坂 凛

 

【真名】ケロロ

 

【属性】秩序・中立

 

【ステータス】

筋力:D 耐久:D 敏捷:D 魔力:D 幸運:D 宝具:EX

 

 

クラス別スキル

 

狂化(梅雨):A+ 梅雨時期にのみ発動。性格が暴走気味になるがになるが運と魔力以外のステータスが三ランクアップ

 

固有スキル

 

カリスマ:-A 圧倒的な求心力のなさ。ランクEの時でさえ尊敬してくれる人にさえ蔑まれる

 

ギャグ補正:EX 存在自体がギャグであり、ダメージは受けても直ぐに回復する。

 

水棲:C 蛙型宇宙人なので水の中だと敏捷が二ランクアップ

 

道具作成:C ある程度の道具を作り出せる

 

騎乗(兵器):C 軍人としての兵器の操縦技術はある

 

 

 

宝具 

 

侵略用最終兵器(ケロボール)

 

ランク EX

 

対星宝具

 

レンジ 測定不能

 

最大補足 測定不能

 

 使い方によっては星一つ木っ端微塵にできるが、長期間滞在先の住民に取り上げられていたという事からマスター以外の地球人にのみ使用可能。

 

求心力増加装置《ケロンスター》

 

対人宝具

 

レンジ:?

 

最大補足:1

 

 隊長の証。これを貼った者のカリスマを五ランクアップする

 

 

 




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第四次ギャグキャラ戦争 あっ、ランサーさんとキャスターさんの事忘れてました 編
プロローグ


第四次ギャグキャラ戦争 新バージョン開始です 一人だけ予告と変更


 聖杯戦争。七組の英霊とマスターが聖杯を巡って殺し合う儀式。だが、とある並行世界では異常な性能の英霊と乱入者との戦いとなった。そして、この世界でも一部を除いて異常な英霊が召喚される。

 

 

 

 

 

衛宮切嗣は聖杯戦争で優勝し恒久的な世界平和の実現を成し遂げようとしていた。だが、その望みは初っ端から危機に立たされる。アインツベルンに届いたのは目的の品である英霊召喚の為の聖遺物の発見報告ではなく、既に何者かによって持ち去られていた、との報告であった。

 

「切嗣…大丈夫なの?」

 

「いや、かえって良かったかもしれない。誇り高き騎士様は僕の戦いには反発するだろうし、そうなれば破綻は目に見えていた。なら、聖遺物なしで僕の戦いに賛同してくれそうな英霊が来る可能性にかけた方が良いだろう? ……できればアサシンが良いんだが」

 

 切嗣は心配する(アイリスフィール)に笑みを向けると魔法陣の準備に取り掛かる。

 

「でも、こんな魔法陣で本当に英霊が召喚できるのかしら?」

 

「英霊を喚ぶのは聖杯自身なんだ。僕の役目は英霊を繋ぎ留め、実体化の為の魔力を供給すれば良いだけだよ」

 

 そして切嗣は呪文を唱え、英霊が降臨した。

 

 

「此奴は……」

 

「アンタが俺様のマスターか? ……ん?」

 

 現れたのは少年と言っていい年頃の男。平凡な顔つきの東洋人だ。そして呼出された英霊はアイリスフィールに気付き表情を一変させる。そして次の瞬間……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさかゴミ箱に蛇の抜け殻を落とした事に気付かずに捨ててしまうとは……」

 

 遠坂時臣は先祖代々続く固有スキル”うっかり”によって最古の蛇の抜け殻を失ってしまった。呼び出されるはずだったのは世界最古のジャイア……英雄王ギルガメッシュ。ありとあらゆる宝具の原典を持つ彼ならばあらゆる英霊の弱点を突ける為、呼び出せれば優勝はほぼ決まったものだったのだが、時すでに遅し。何時も保っている優雅さも何処かに失くした彼は聖遺物無しで召喚を行った。

 

「……綺礼、この戦争負けたかもしれん。バーサーカーだというだけで厄介だというのに……」

 

 呼び出されたのは耳たぶが長く髪の毛が一本もない男性。そしてそのステータスはほぼ全てが異様に低かった。なお、弟子である綺礼もこの後召喚を行い、見事アーチャーを引き当てた。

 

 

 

「……交換する気あるかね?」

 

「申し訳有りませんがソレと交換は嫌です」

 

「……そうか」

 

 普段は感情の高ぶりなど見せない綺礼も目の前のバーサーカーは嫌だったので全力で拒否をする。時臣も気持ちは理解できるので此処は我慢する事にし、とりあえず作戦の練り直しに入った。

 

 

 

 

 

 

 

「……ふん。既にバーサーカーが召喚されておるとは。じゃが、よりにもよって最弱の英霊(キャスター)とはな」

 

「ぐっ……」

 

 間桐雁夜は全身に寄生させた悍ましい蟲によって引き起こされた苦痛に苛まれながら地べたに這いつくばる。その姿を見下ろす臓硯は実に楽しそうだ。そして呼び出された英霊は雁夜の方を見て魚を思わせる不気味な目をぎょロリと動かした。

 

 

「初めまして。私はキャスターのクラスで限界致しましたジル・ド・レェと申します。貴方が私のマスターで宜しいのですかな?」

 

 蟲に寄生され命と精神を極限まですり減らしたことで雁夜の精神は何処か既に破綻して降り、似たような精神の者が選ばれたのかもしれない。血を吐いて倒れている彼に手を指し伸ばしたキャスターは精神汚染を感じさせる不気味な笑みを浮かべていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……これは魔術師の戦いなのだろうか? しかし、規格外過ぎるだろう……」

 

 今回の聖杯戦争において最強の魔術師と言っても過言ではないケイネス・アーチボルト・エルメロイは呼び出した英霊の宝具によって作られた物体を見て呟く。

 

「細かい事は気にしない方が良いのよね~。更に禿げちゃうわよ?」

 

「誰がツルッパゲだっ!」

 

 誰もそこまでは言っていない。とにかく、ケイネスの呼び出した英霊の宝具はやや欠点があるものの、”規格外”、この一言に尽きた。

 

「こうなったら聖遺物を盗んだ愚か者に感謝しても良さそうだな」

 

 勝利を確信したケイネスは口元に手を当てて含み笑いをする。その横では婚約者のソラウが退屈そうに英霊の作業を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え~と、アンタ、悪魔さん?」

 

 連続殺人鬼である雨生龍之介は家の蔵から発見した古文書を参考にして殺人現場で召喚の儀式を行った。だが虫食いだらけの為に所々穴があって呪文が全て分からない。それでも遊び半分の演出だったので特に構わず、今日も一人生き残った男児の前で両親の血液を使って儀式を行い、眠っていた魔術師の血に反応して英霊が呼び出された。正史ならばもう少し後なのだが、この時偶々上手くいったのだ

 

 

「ちょっと何よコレっ!? まさかアンタが犯人なのっ!?」

 

 英霊は惨状を目にして顔を青ざめると龍之介を睨む。睨まれた龍之介はポカンとしていた。

 

「そうだけど……もしかして悪魔じゃないの?」

 

「当ったり前でしょ! 私の何処を見たら悪魔に見えるのよっ! え~い! 殺人犯覚悟~!! プロトン斬りっ!」

 

「ぐぺっ!?」

 

 頭にモロに竹刀(・・)を食らった龍之介は気を失い、呼び出された英霊は彼を見下ろし気絶しているのを確かめると縛られている男の子に駆け寄った。

 

「大丈夫? すぐ解いてあげるからね」

 

「オバちゃんは誰?」

 

「……お姉ちゃんよ。私はまだお姉ちゃんよぉー!!」

 

 その後、男の子を助けた英霊は警察に連絡した後、聖杯から与えられた知識を参考に冬木教会に向かっていった。

 

 

 

「すっいませーん。保護して貰いたいんですけどー!」

 

 

 

 

 

 

「……やった!」

 

 ウェイバー・ベルベットは自分を馬鹿にしたケイネスから盗み出した聖遺物を使って英霊を召喚する事に成功した。盗み出した鶏の血を使って描いた魔法陣の中心に立っているのは彼が呼び出した英霊。絹のような金髪と綺麗な碧眼の少女にウェイバーは思わず見蕩れる。それほどまでに少女は可憐だった。

 

「―――問おう。貴方が私のマスターか」

 

 呼び出された少女は()を構えながらウェイバーに問うた。

 

 

 

 

 

 今回執り行われるのは正史とは違い、並行世界の異常な英霊戦争とも違う戦い。そして、この世界に乱入者は存在しないのでマスターと英霊同士だけでの勝負となる。

 

 

 

 

 




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遠坂の策略と湾岸の戦闘開始

 冬木市内を一組の男女が歩いている。女性の方は白髪の美女でどう見ても日本人ではなく、男性の方は凡庸な顔付きをした高校生程度の年齢の日本人。一見すると接点などなさそうな二人は観光でもするように街中を歩いていた。アイリスフィールと切嗣が召喚した英霊”アサシン”である。切嗣が隠密行動を取るため、アイリスフィールがアサシンのマスターだと思わせる作戦として二人は一緒に歩いていた。

 

「アイリさん、疲れてないっすか? ほら、あそこでいっぱ……一休み」

 

 アサシンが指し示したのはカップルが利用する為の宿泊施設。この時の彼はまるで尻尾を振っている犬のようで下心が丸出しだった。

 

「あらあら、駄目よアサシン。切嗣に怒られちゃうわ」

 

「……うっ!」

 

 アサシンが召喚されてアイリスフィールを見た瞬間、”生まれた時から愛してましたっ!”、と言いながらルパンダイブを行い、なぜか効かないはずの神秘が宿っていない弾丸を食らってのたうち回る。再び銃口を向けられ、”堪忍や~! 仕方なかったんや~!”、と情けない姿で命乞いしたので何とか助かったのだ。

 

「しかし中々見つからないっすね、他の英霊」

 

「しょうがないわよ。ほら、次は何処に行こうかしら。あっ、私,海が見に行きたいわ」

 

(……海。美人の人妻が人気のない所に俺を誘っているっ!?)

 

「あっ、変な事しようとしたら切嗣に言いつけるから」

 

 

 結局、すべて読まれているアサシンであった。

 

 

「それにしても昨日の一件はなんだったんっスかね? ……もしかしたらこうやって悩ませる精神攻撃とか?」

 

「……そうね。正攻法で攻めて来る生粋の魔術師と思っていたけど搦手も使ってくるなんて切嗣も警戒していたわ。……遠坂時臣、恐ろしい男」

 

 

 

 

 冬木市の郊外に居を構えるマッケンジー夫妻は日本が気に入って家族で越してきたのだが、二品での生活が気に入らなかった息子夫婦は祖国に戻り年老いた夫妻だけが日本に戻った。だが、最近若い男女がこの家で暮らしている。ウェイバー・ベルベットは

 

「お祖母さん、おかわりをお願いします」

 

「あらあら、アルちゃんは食欲旺盛ね。ウェイバーちゃんはお代わり要る?」

 

 金髪碧眼の少女”ランサー”は四杯目のお代わりを所望し、マッケンジー婦人はニコニコ笑いながら大盛りを差し出すと黒髪の少年に話しかけた。

 

「僕は良いよ、お祖母ちゃん」

 

 少年の名前はウェイバー・ベルベット。資金が乏しい彼は夫婦に暗示をかけ自分が戻ってきた孫だと思わせたのだ。だが、なぜランサーが此処に居るのか。それは彼女が何故か霊体化が出来ない事にあった。だから少ない魔力を使ってウェイバーの姉だと暗示をかけ、名前も彼女が提案した名前にしている。なお、なぜ恋人にしなかったかというと住まわせて貰いやすくする為と、気恥ずかしかったから、らしい。

 

 

 

 

 

「……なあ、ランサー。昨日の戦闘についてどう思う?」

 

 食事後、ランサーの部屋に来たウェイバーは昨日使い魔を通して見た一件について相談する。昨日起こった戦闘について彼は訝しげに思っていたのだ。

 

「マスターの話を聞く限りフェイクなのは明らかですが……問題は明白(あからさま)過ぎる事ですね。アレに引っ掛かる者が居るとは思えませんが……」

 

 ランサーもウェイバーから聞かされた話を元に考察するも時臣の意図が掴めない。そして涼夜が悩む中、刻一刻と時間ばかりが過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええい! 遠坂めは何を考えておるのだっ! 全く意図が掴めんっ!」

 

「昨日遠坂邸であった戦闘の事? ……確かに不思議ね」

 

 そして此処は冬木ハイアットホテルのスィートルーム。其処を借りているケイネスは婚約者のソラウと共に必死に考えるも相手の考えが読めず苦悩する。

 

「……とりあえず遠坂は後回しだ。まずは誘い出された陣営から倒して行くぞ。……ライダーはどうした?」

 

「彼なら港の方に行ったわ。ケイネス、貴方が”戦うなら人目の少ない湾岸倉庫あたりが良い”、って言ってたんじゃない。だから其処に合う様に宝具を使うそうよ」

 

 

 

 

 

 

 各陣営が頭を悩ませる出来事、それは昨日の深夜に起きた。御三家の一角である遠坂邸には偵察の為の使い魔が各陣営から放たれており、使い魔達の目の前で其れは起きた。

 

 

 

「ハデに吹き飛べっ!!」

 

 突如轟音と共に庭の一角が吹き飛び結界の一部が破壊される。破壊した犯人は英霊。付け鼻の様な鼻をした海賊を思わせる服装の男で、彼の真横には大砲が設置されている。恐らくアーチャーと思われる英霊は次々と大砲の導火線に火を付け砲弾を放っていく。だがその時、家の主である時臣と共に一体の英霊が姿を現した。

 

「タ~イム! それ以上はこのセイバーが見逃さないわっ!」

 

「さて、これ以上暴れて貰っては困るのだがね」

 

 アーチャーは二人の姿を見るなりた砲門を向ける。だが火を付けるよりも早くセイバーを名乗った女が動きアーチャーの首を跳ね飛ばす。そしてそのままアーチャーは時臣の放った火の魔術の直撃を受け激しい煙に包まれる。そして煙が晴れるとアーチャーの姿は何処にもなかった。

 

 

 

 

 

 そして、それを見た各マスターは同じ事を呟いた。

 

「「「「どうして首を跳ねたのに血が出なかったんだ?」」」」

 

 

 こうして時臣の”うっかり”で破綻した計画は別の形で吉と出る事となった。なお、作戦の後で時臣は協力者である綺礼と璃正からは”え? アレって疑心暗鬼に陥らせる作戦じゃなかったんですか?”、などと真顔で言われたという。

 

 

 

 

 

 

 

 そして、時臣のポカを見ても疑問に思えないほど追い詰められているマスターが一人居た。キャスターのマスターである雁夜である。彼の目の前にはキャスターが攫って来た子供の死体の山が有り、その前で二人は口論をしている。

 

「どういうつもりだキャスターっ! なんでこんな真似をしたっ!!」

 

「おやおや、私は貴方と桜ちゃんの為にしただけですが?」

 

 血を吐きながら怒鳴る雁夜に対しキャスターは心底疑問そうに首を傾げる。まるで本当に善意だけで行っただけだとでも言いたそうだ

 

「貴方が時臣とやらを殺し、桜ちゃんを元の家に戻したとしましょう。……さて、桜ちゃんの母親は貴方をどう思いますかな? 全ての元凶である夫を倒し大切な娘を取り戻してくれた貴方に感謝し……もしかしたら好意を寄せてくれるかもしれませんよ? ……その時の為にも魔力は節約しないと貴方の体が持ちません」

 

「っ! だ、だが……」

 

 此処で言い淀む時点で彼の精神は崩れかけていたのかもしれない。それは苦痛によるものかキャスターの影響によるものか。どちらにしてももはやマトモな精神状態ではないだろう。そしてキャスターは雁夜の背中を押す

 

「……それに、この子供達は桜ちゃんが苦しんでいる間ものうのうと幸せな生活を享受していたのですよ。実に不公平ではありませんか。……桜ちゃんを救い、貴方も幸せになる為の尊い犠牲だとお想いなさい」

 

「……桜ちゃんの為」

 

「ええ、だから気に病む必要はございません。貴方は悪くなどないのですから」

 

 ……いや、突き落とした。二度と這い上がれぬ奈落の底へと……。雁夜はキャスターの言葉に僅かに頷くと小さな声で呟いた。

 

「そうだ。これは桜ちゃんを救う為の犠牲なんだ。だから……俺は悪くない」

 

 

 

 

 

 

 

 そしてその日の夕方、人気のない海辺にアイリスフィールとアサシン、そしてライダーの姿があった。ライダーは異様に長い鼻と出っ歯を持つ小柄な男で緑色の服と角の様な出っ張りのある緑色の服を着ている。

 

「……まさかこんな所で英霊に会うなんて」

 

「危ねぇから下がっていてくれ」

 

 アサシンはアイリスフィールを下がらせると輝く籠手を出現させる。籠手からは光で形成された刃が出現していた。それに対しライダーは懐から小さな機械を取り出す。其処にはドクロマークのスイッチが有り、

 

「全国の女子高生の皆さ~ん! 揺れる瞳のアイドル、ボヤッキーよ~! それでは参りましょう! 今週の見せ場、ポチっとなァ~! 」

 

 それを押した瞬間、海の中から巨大なメカが出現した。

 

 




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決着と神の怒り

「……これは厄介だな。ライダーの宝具はアサシンと同じ規格外の様だ。そしておそらく異世界の存在だな」

 

 狙撃銃を構えながら戦闘を見ていた切嗣は軽く舌打ちをする。ライダーが名乗った”ボヤッキー”という名前など聞いた事がなく、明らかに宝具は機械の類だ。彼は夢で見たアサシンの記憶を思い出していた。

 

 GS(ゴーストスイーパー)

 

 オカルトGメン

 

 普通に現れる悪霊や神魔

 

 どれをとってもこの世界では有り得ない。そしてアサシンの話から照らし合わせた彼は有り得ないと思いつつも異世界の存在だと判断した。

 

 その記憶の中でも特に二つの事が彼の頭にこびり付いていた。『宇宙処理装置(コスモプロセッサ)』と『宇宙意思の反作用』。そして、これ次第では彼の目的は破綻する。

 

 

 

 

 

 

『何をやっているライダー。早く乗り込まんか』

 

「あらほらさっさ!」

 

 メカの中から神経質そうな声が響き内部から階段が伸びてくる。メカに慌てて乗り込もうとするライダーを見たアサシンはふと思った。

 

(あれ? アイツが乗り込まないとあのメカ動かないんじゃ?)

 

 そうと気付いてからの彼は俊敏だ。流石にメカには敵わないと判断したのだろう。アサシンの素早さで間合いを詰め背中から切り掛る。アサシンの腕から伸びた刃はスッパリと……、

 

 

 

「いや~ん。エッチ~!」

 

 ライダーのベルトとズボンを切り裂いた。ライダーが思わず振り返った時、アサシンは刃を上空から振り落とした為に膝を付いており、勿論頭の位置は低い。そしてライダーが振り返った為、男の象徴が目前にあった。

 

「ぎょえへぇっ!?」

 

 アサシンは泡を吹きながら転がり落ちライダーはその隙にメカに乗り込む。そして階段が仕舞われた時には操縦席に彼の姿があった。

 

 

 

 

「さあ! やーっておしまいー!」

 

 操縦席にはケイネスとソラウの姿が有り、中央の席に座っている。そして彼女がアサシンとアイリスフィールが映る画面を指さすとメカが海から上がってその姿を完全に顕にした。

 

「今回のメカは日本に始めて来たお二人の為に日本の伝統的主食”米”をモデルにした”シロメッシー”よー!」

 

 その姿を一言で言い表すなら”首長竜”。おそらくネッシーとシロメシを合わせた名前なのだろう。その胴体は首長竜の胴体ではなくお茶碗に入った山盛りのご飯とその上に乗った梅干だ。そして陸に上がったシロメッシーはその見た目からは想像できない速度で前進した。

 

 

 

「ひぃー!! あんなん、どないせぇーちゅーねん!?」

 

 アサシンはアイリスフィールを担ぐと涙と鼻水を出しながら必死に逃げる。そして倉庫に入り込むと巨大な胴体が邪魔するのかシロメッシーの動きが止まった。それを見たアサシンは安堵したのかその場にヘナヘナと崩れ落ちると額の汗を拭った。

 

「た、助かった~」

 

「そ、そうね……」

 

 アイリスフィールも安心したのか胸を撫で下ろす。離れた場所に要る切嗣はケイネスが機内に居ると判断してこれからどうするかを思案しだした。

 

(あの中に居られちゃ狙撃はできないな。随分と厄介な英霊を引き当てたものだ。……ん?)

 

 切嗣はシロメッシーの動きが止まった事を不審に思ってスコープを覗き込んだ。

 

 

 

 

 

「あらら~、困っっちゃったわね~。シロメッシーは陸でも速いけど、コンテナを破壊して進むようなパワーはないのよ~」

 

「だが、敵は目前に居るのだぞ。何とかならんのか?」

 

「大丈夫。梅干メカ出動! ほら、ポチッとな」

 

 ライダーは操縦席に設置されたスイッチを押す。すると梅干が開き、中から足が生えた梅干型のメカが大量に出てきた。

 

『ウメ、ボシ! ウメ、ボシ!』

 

 ボーリングの玉サイズのメカ達はまるで兵隊のように列をなして歩き、アサシン達の前で並列すると体を膨らませる。そして弾丸のような勢いで梅干の種を発射した。

 

「ひぃっ!!」

 

 アサシンは咄嗟にビー玉のような物を投げ、放たれた梅干の種は二人に降りかかり土煙を上げる。

 

 

「やったかっ!?」

 

「……マスターそれフラグなのよね~」

 

 土煙が晴れた時、其処には先ほど投げた珠を中心に展開されたバリアによって梅干の種を防いだアサシン達の無事な姿があった。『護』という文字が出現していた珠が消え去ると共にバリアも消え去り、ケイネスは横から責めるような視線が向けられているのに気付く。

 

「ケイネス……貴方、何をやっているの?」

 

「わ、私のせいではないだろうっ!? ライダー、早く次の攻撃だっ!」

 

 再び梅干メカ達は体を膨らませて種を放とうとする。

 

「ま、また来た~! は、早く次の障壁を……」

 

 アサシンは完全に怯えてしまい先程のバリアも上手く張れない状態だ。絶体絶命かと思われたその時、アイリスフィールの持っていた通信機に連絡が入る。

 

「え、え~と、これどうやって出れば良いのかしら? アサシン、出て!」

 

 だが、アイリスフィールは機械が駄目な典型的な魔術師。使い方が分かるアサシンが出た時、切嗣の助手である舞弥の声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

『此処を切り抜けたら今日着ていた下着を差し上げます』

 

 その瞬間、梅干の種が放たれ、アサシンの魔力が激増した。先程の珠に出現した文字は『爆』。投げられた其れは梅干の種に迫り、梅干メカごと爆発で吹き飛ばした。

 

「よっしゃ~!! 舞弥さんの下着ゲットっ!!」

 

 なんとも最低な発言にアサシン以外が沈黙する中、再びシロメッシーの背中の梅干が開こうとする。だが梅干メカが出てくるよりも前にアサシンは胴体を駆け上がり内部に先程の珠を放り込んだ。その珠に出現した文字は……『壊』。

 

 

 

 

 

 

「あれ? 何かおかしいわね~」

 

「どうした? ライダー」

 

「いや、梅干メカが内部で暴れて……」

 

 シロメッシーの機内で梅干の種が無数の放たれ内部を破壊する。三人が事態に気付いて脱出しようとした瞬間、シロメッシーが大爆発を起こした。

 

 

 

 

 

 

「……最低な勝利だな」

 

 切嗣は呆れ顔で狙撃銃から手を放す。流石にあの爆発では英霊のライダーは兎も角、人間であるケイネスは生きていないだろうと経験から判断した。確かに普通(・・)ならそうだろう。

 

 

 

 

 

「「「えいほ! えいほ! えいほ!」」」

 

 だが、残念ながらライダーの影響でケイネスとソラウは普通ではなかった。空を飛べる三人乗りの自転車に乗った一行は闇夜に紛れて逃走を図る。

 

「くそっ! なぜ私がこんな目に……」

 

「ケイネス、真面目に漕いで」

 

 ブツブツボヤくケイネスは爆発の影響でアフロになっており、一番前で漕いでいるソラウは服が際どい事になっている。その時、妙な声が聞こえてきた。

 

 

『お前ら負けたな~。このアカポンタン!』

 

「ド、ドクロベェ様っ!? いや、その、今回の敗北には理由が有りまして……」

 

「ラ、ライダー、何か嫌な予感がするのだが……」

 

 

 

 

 

 

 

『問答無用。ママより怖いお仕置きだべ~!』

 

 その声が響いた時自転車のチェーンが外れ三人は海に落下した。




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堕ちていく男と神の死

湾岸倉庫でのメカ対人間という、とても魔術師同士の闘いとは思えない闘いの最中、其れを遠くから観戦している者達が居た。

 

「え~と、アイツらって英霊・・・・・・なんだよな?」

 

「ええ、其れで間違いないようです。しかし少々厄介な宝具のようですね」

 

 遠くから双眼鏡を使ってライダーの操るメカを眺めていたウェイバーは、本で読んだ内容からの推察とはあまりに掛け離れた戦闘内容に疑問を抱き、隣にいるランサーは冷静に英霊二体戦力を分析する。その手には中華マンが詰まった袋が抱えられていた。

 

 

 

 何故この様な場所に中華マンを持って来ているのか。それは一時間程前に遡る。夕食後、二人を孫だと暗示で思い込んでいるグレン・マッケンジーは偵察の為に出掛けようとしている二人に気付いた。

 

「おや、何処かに出かけるのかな?」

 

「う、うん。少し姉さんと街を見に行こうって話になって」

 

「うむ。姉弟仲が良いことだ。ああ、二人はバイクの免許を持っていたかな? マーサに年だからと乗るのを辞めさせられていたが、整備だけはちゃんとしているのが裏に置いて有るんだが」

 

「ええ、私が持っていますのでお借りします」

 

 ランサーはグレンからキーを受け取るとバイクを取りに行く。昔の英雄であるランサーがバイクの免許など持っているはずがないが、彼女は英霊が持つスキルの一つである『騎乗』をBランクで持っており、バイク程度なら乗る事が出来た。なお、本当はランサーには与えられないスキルなのだが彼女自身が元々持っており、もし与えられる”セイバー”ならばAランクになっていただろう。

 

 

 

「では、しっかり掴まっていて下さいマスター」

 

「あ、ああ……」

 

 ウェイバーはバイクの免許など持っているはずがないので後ろに乗る事になり、当然の様に運転するランサーにしがみつく形になる。ウェイバーが真っ赤になりながらランサーの腰に手を回して体を密着させていると、絹の様な金髪が彼の鼻を擽った。

 

(……いい匂いだな……って、何を考えているんだ僕はっ!?)

 

「どうかしましたか?」

 

「な、何でもないっ!」

 

 直ぐに我に帰ったウェイバーは怪訝そうな顔をするランサーを誤魔化す。ランサーも納得はしていないようだが特に追求する事でもないと判断したのかそれ以上何も言わなかった。そして其の儘走っていた時、二人はT字路で信号に引っ掛かった。

 

「ちぇ、ついてないな」

 

「仕方有りませんよ、マスター。……おや?」

 

 ランサーがバックミラーで後ろを見ると小学生程度の少女が何かに追われる様に走っていた。少女はそのまま走り去って行き、ランサーは少々気になったものの信号が変わったので進む予定だった右に進む。そして少女が居た場所からランサー達の姿が見えなくなった頃、無数の蟲を引き連れた雁夜が少女の後を追うように走ってきた。

 

 

 

 

 

「こらこら、駄目じゃないか。君は桜ちゃんを救う為に必要な命なんだから。君は今まで幸せに暮らしてきたんだろう? だったら、もう死んでも良いじゃないか」

 

 それは塾帰りの事。偶々何時も一緒に帰る友人が風邪で休んでいたので一人で帰っていた少女は気紛れで何時も通らない道を選び、その途中で雁夜に出会った。フードを被ったその顔の半分は壊死しており背後に無数の蟲が蠢く姿は少女に恐怖を与えるのには十分だろう。そして少女に気付いた雁夜は不気味な笑みを浮かべながら少女に襲いかかって来た。

 

「い、嫌。誰か助けて……」

 

 袋小路に追い詰められた少女は助けを求めて声を上げ防犯ブザーを鳴らすが誰に耳にも届いていないようかのように助けはやって来ない。ゆっくりと迫って来る雁夜から逃げようと少女が後ずさった時、誰かにぶつかった。

 

「おやおや、気を付けなければなりませんよ? これはお仕置きをしなければなりませんなぁ」

 

 少女が最後に見たのは魚のような不気味な目をした男が自分に向かって手を伸ばす姿だった……。

 

 

 

 

「あれ? どうしたんだよ、ランサー」

 

「燃料が切れそうです」

 

 途中で進路変更をしたランサーはそのままガソリンスタンドへと向かう。この頃はまだセルフではなくフルサービスの為に機械などが苦手なウェイバーでも問題はなかった。店員がガソリンを入れている中、暇を持て余した二人はすぐ隣のコンビニに目をやった。

 

「中華マン100円均一ですか……」

 

「あんだけ食べたのにまだ食べたいのかよ?」

 

 ランサーは魔力供給の為と言って大量の食事を摂取する。ウェイバーも自分の魔力が少ないのは分かっているので文句は言えず、グレンやマーサも孫娘(だと思っている)ランサーの食欲旺盛っぷりに喜んでいた。

 

「いえ、此方の世界の知識は聖杯から得ていますが味は分かりませんから気になりまして。……この国の食事は美味ですから。ガウェインなど山盛りのマッシュポテトを喜々として差し出して来てました……」

 

「ああ、英国の飯は少しな。……余り金無いから五個までだぞ」

 

「本当ですか!」

 

 ランサーは召喚時からずっと見せていたクールな雰囲気から一変して嬉しそうな顔になる。もっとも、食事時にはいつも見せていたのだが。

 

 

 

 

 

「このカレーマンとやらは中々の味ですね。祖国にはない味でした」

 

 そして英霊同士の戦いを感知した二人は遠くからアサシンとライダーの戦いを観戦していた。その英雄同士の戦いとは思えない内容にウェイバーが戸惑う中、突如ランサーが何かに反応した。

 

「マスター!」

 

「うわっ!?」

 

 ランサーはウェイバーを抱き締めると物陰に隠れる。鎧越しにセイバーの体温が伝わり耳元に息がかかった。突然の事にウェイバーが赤面する中、宙を舞った中華マンの袋を銃弾が貫いた。銃弾は地面に減り込み煙を上げる。

 

「……どうやら銃で狙われているようです。下手をすれば三つ巴の闘いをしながら狙撃を気にしなければなりません此処は・・・・・・」

 

 一旦退きましょう。ランサーがそう言おうとした時、宙を舞った中華マンの袋は運悪く口を下にして地面に落ちる。こぼれ落ちた中華マン達は汚れた地面の上でベチャベチャと潰れた。其れを見たランサーの体は微かに震え出す。

 

 

「くっ! 店先で食べるのはマナー違反だからと直ぐに食べないのが災いしたか!! 食べ物の恨みは恐ろしいと言う事を思い知らせて……」

 

「わー止めろ馬鹿っ! 帰りにまた五個…いや、十個買ってやるからっ!」

 

 ランサーの手はアホ毛に伸び、ウェイバーは直感で其れが大変拙いと感じ財布の中身を気にせず止めに掛かる。それが幸いしたのかランサーの手が止まった。

 

「……分かりました。此処は戦略的撤退と行きましょう。全力で飛ばしますので、その帰りに魔力供給をしても問題ではありませんね!」

 

 あくまで食べ物に釣られたわけではないと言い訳をしつつ食べ物の恨みを押さえ込んだランサーは地面に落ちた中華マンに一瞬だけ未練がましい視線を送るとウェイバーを抱えてバイクの隠し場所まで向かっていく。途中、何度かウェイバー狙いの狙撃があったが全て直感で避けたランサーはバイクの場所まで無事到着した。

 

 

 

 

『切嗣、どうしますか?』

 

『追跡を……いや、少々拙い事態になった。何だ、あの梅干のゆるキャラもどきは……。舞弥、アサシンにこう伝えてくれ……。この場を切り抜けたら今日付けた下着を与える、と』

 

『……了解しました』

 

 

 

 

 

 そして数時間後、戦いを終えたケイネスは魔術で姿を誤魔化しつつホテルに帰還した。ソラウは疲れたらしくソファーに座り込み、ケイネスはワインを飲もうと栓を開ける。すると中からドクロマークの物体が飛び出してきた。そしてバネでボトルの中とつながっている為にピョンピョン揺れ動くその物体から、自転車に乗っている時に聞いた例の声が響いてきた。

 

 

『吾輩は泥棒の神様”ドクロベェ”。さあ、控えるだべ~!』

 

「「「ははぁ~!」」」

 

 何故かプライドの高い二人でさえその声には逆らえず跪いていた。

 

「で、ドクロベェ様。何の用なのかしら~?」

 

『オメェらに他の陣営の事を少し教えてやるべぇ~。セイバーのマスターだが、どうやら監督役がマスターになってるべぇ~! それと遠坂と監督役の息子もグルだから、まぁ気を付けるべぇ~! んじゃま、また負けたらママより怖いお仕置きが待っているから覚悟しておくべぇ~!』

 

 その言葉と共にドクロマークの物体はワイングラスごと爆発し、三人はワインまみれになった。

 

 

 

 

 

 

~おまけ~

 

「あ、すみません。中華マンは全部売り切れました。明日またお越し下さい」

 

「神は…死んだ……」

 

 この後、菓子パンの買いあさりでウェイバーの財布も半死半生になった。

 

 




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新しい弟子と狂った男

 間桐家の蟲蔵で桜に対して行われる調整。嫌悪感を感じさせる蟲達が桜の体に群がり幼き矮躯と精神を犯し尽くす。そして、その傍で雁夜による悍ましき所業が繰り広げられていた。

 

「ほら、あの子が見えるかい? 君達と違ってあの子は不幸なんだ。桜ちゃん、今から君の為にこの子達が死んでくれるからね」

 

 雁夜は桜に優しげに話しかけると攫って来た子供達に無数の蟲を嗾ける。翅刃虫と呼ばれる牛骨すら噛み砕く蟲によって子供達は生きたまま食い尽くされ、暫くの間蔵内部に断末魔の叫びが響いた。

 

「桜ちゃん、オジさんはこれからも頑張るよ」

 

 彼は気付いていない。今の自分こそが忌み嫌っていた魔術師の中でも腐敗した部類に入るという事に。自分を見る桜の目が冷めた物になっている事に。そして、その全てが臓硯とキャスターの目論見通りという事に。

 

「しかし、子供を集めづらくなって来たな。桜ちゃんを助ける為にももっと人数が居るっていうのに……」

 

 雁夜とキャスターによる児童連続失踪事件の影響で冬木市では外で遊ぶ子供の姿が減って来ている。キャスターなら家の中から攫う事も可能なのだが雁夜はそのような事など知らされておらず、一人でせっせと子供達を攫い集めていた。

 

 

 

「しかし、臓硯殿の思惑通りに行きましたなぁ。これでますます憎き神への冒涜が進みます。……例の約束お忘れなく」

 

「ああ、分かっているぞ。雁夜めを狂わし桜に更なる絶望を与える代わりに奴が死ねば儂が代わりにマスターなってやろう」

 

「あの様な半端者がマスターでは勝ち抜けませんからな。それに、少女を助けようとする者を狂わせ魔道に落とすのも神への冒涜になりましょう」

 

 雁夜の姿を水晶玉で観察していた二人は堕ちていく姿を見て嘲笑う。そして雁夜は効率よく子供を集める為に冬木市から外出しようとしていた。

 

 

「待っていてくれ葵さん。時臣を殺し、桜ちゃんを取り戻して君達を幸せにするよ」

 

 そして、この決断が彼の運命を大きく左右する事になる。それは決して良い方向ではなく……。

 

 

 

 

 

「バーサーカーが消えた?」

 

「どうも勝手に出掛けたようなのです。……頭が痛い事だ」

 

 時臣が召喚したバーサーカーは狂化のランクが低いからか理性が確かだった。だが、馬鹿だった。人の話を聞かず、もし聞いていても半分も理解できていない。今回も屋敷で待機という命令を忘れて遊びに出かけたようだ。通信先の教会では璃正が話を聞いて呆然とし、時臣は優雅さが崩れていた。

 

「……とりあえずセイバーを其方に向かわせましょう」

 

「ああ、頼むよ。流石に英霊なしで襲われれば危ういからね……」

 

 二人は同時に溜息を吐く。もしこの時、偵察に出かけていて不在の綺礼がいれば心の奥から湧き出た悦楽に戸惑っていただろう。

 

 

 

 そしてその頃、バーサーカーは昼間から街を出歩いていた。しかも、実体化してだ。筋骨隆々でハゲの異国人は大いに目立つがバーサーカーに気にした様子はない。

 

「全く、ずっと家の中だもんな。精米洗浄はこれからだっていうのに……」

 

 

 説明しよう! 精米洗浄とは聖杯戦争の覚え間違いなのである!!

 

 

「……それにしても何か食いてぇなぁ。おっ! 肉だっ!」

 

 公園内を歩くバーサーカーは茂みに生えた雑草を見るなり喜んで飛び付く。そしてそのまま地面から引っこ抜いて貪りだした。

 

 

 説明しよう! 馬鹿には何でも食べ物に見えるのだ!!

 

 

「うめー! うめー!」

 

 

 説明しよう! 馬鹿には味が分からないのだ!!

 

 

「なあ、オッサン。さっきから何してんだよ」

 

 そんな時である。赤い髪をした少年を始めとした数人の少年が話し掛けて来た。

 

「何って、飯食ってんだよ……ゲップ!」

 

 バーサーカーは数本の雑草(精々数十グラム)を食べて満腹になる。なお、バーサーカーは二メートル近い巨漢である。

 

「……そんなんが飯なの? ったく、ほら、これ分けてやるよ」

 

 それを見て呆れ顔の少年達は余ったお菓子を差し出した。

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、教会に直接乗り込まないんですか?」

 

 ライダーは新しく造り出したメカを操縦しながらケイネスの方を向く。ドクロベエによって監督役の不正を知ったケイネスだが、彼が乗り込む事にしたのは教会ではなく遠坂邸だった。

 

「貴様の宝具で不正を知ったが、他の陣営を説得して乗り込める訳はなかろう? そして我々だけで乗り込んで証拠がなければ監督役の権限で六陣営から討伐対象として追われるかもしれん。ならば先に御三家の一角を落とすのだ」

 

「そうですか~? まあ、なら良いんですがね。では、宣戦攻撃と行きましょう。ポチッとな」

 

 ライダーはレーダーでメカが遠坂邸の真下(・・)に居る事を確認すると操縦席のスイッチを押した。

 

 

 

 

 

 

「喝ぁ~っ! そのような事でどうするっ!!」

 

「……は、はぁ」

 

「返事が小さいっ! ちゃんと声を出さんかっ!!」

 

 セイバーを館に招いた時臣だったが、自分自身は館から出ようとしない事に憤ったセイバーによって正座をさせられていた。道着を着て竹刀を背負ったセイバーは腕組みをしながら時臣に喝を入れる。

 

「私の願いを言ってみろっ! 新ヒロインルートだと言っただろうっ!」

 

「いや、聞いていないのだが……。しかも意味が分からないし……」

 

「何となく察しろっ! それでも弟子二号かっ!」

 

「弟子になった覚えはないのだが……むっ?」

 

 もう優雅とか忘れ去った時臣の足が痺れてきた時、庭の地面が盛り上がり巨大で熱々の焼き芋が地中から現れた。芋の胴体には鋭い爪が生えた手と髭が生えている。

 

 

「遠坂時臣さ~ん、こんにちわ~! 今回のメカは焼き芋をモデルにした”石焼キイモグラ(芋+モグラ)”よ~! それでは早速、ポチッとな!」

 

「焼き芋っ!」

 

 セイバーが涎を手で拭った時、メカの胴体から火に包まれた石礫が放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、逃げちゃ駄目だろ?」

 

 雁夜は逃げようとした子供を押さえつけるとナイフを振り下ろす。吹き出した血が彼の体にかかるがヘラヘラと笑う雁夜は子供を殺す事に快楽さえ覚え始めていた。

 

(俺や桜ちゃんがこんなに苦しんでいるんだ。だから、普通の幸せを享受している奴らも不幸になるべきなんだ)

 

 雁夜は自分の行いを正当化しながら悲劇の主人公を気取る。その時、背後から足音が聞こえてきた。

 

「雁夜君……? 一体こんな所で何を……ひっ!?」

 

「葵さん? 一体何に怯えているんだい?」

 

 時臣の妻であり雁夜の初恋の人である葵は怯える雁夜の姿を見て嬉しそうに笑う。血塗れでヘラヘラ笑いながら後退る彼女を見て雁夜は首を傾げた。まるで何で怯えられているのかが分からないとでも言いたそうだ。

 

「……来ないで」

 

「……困った人だなぁ。これは君達の為にやっているんだ。この子達を殺し、時臣を殺して皆で幸せになる為にさ」

 

「ひっ!」

 

 葵は悲鳴を上げて逃げて行き、雁夜はそれを見て体をワナワナと震わせる。すねての行為を葵と桜の為だと行って自分を励ましていた彼にってその姿は許せるものではないのだ。

 

「……そうか。時臣が何か魔術を掛けているんだな。なら、正気に戻してあげないと」

 

 雁夜は蟲を嗾けて葵の動きを止めると肩を掴む。

 

「さあ、今すぐ助けて……」

 

「離してっ!」

 

 葵は振り向きざまに雁夜の顔を引っかき彼の頬に血が滲む。この時、雁夜の中で何かが壊れた。

 

 

 

 

 

 

 

「……そうか。きっと偽物なんだ。じゃないと葵さんが俺を怖がるはずがないっ! 蟲達、この偽物を食い殺せっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

                     ~おまけ~

 

クラス ライダー

 

真名 ボヤッキー

 

マスター ケイネス・ロードエルメロイ・アーチボルト

 

性別・身長・体重 男性 ? ?

 

属性 混沌・悪

 

力 D 耐久 D 敏捷 C 魔力 E 運 A 宝具 EX

 

 

クラス別スキル

 

騎乗 C (A+)

 

対魔力 D

 

個別スキル

 

仕切り直し B

 

黄金律 C

 

戦闘続行 A

 

 

宝具

 

逃走用自転車

 

ランク:B+  

 

種別:対人宝具

 

レンジ:−

 

最大補足:-

 

 空も飛べる三人乗りの自転車。下記の宝具で作成したメカに乗っている時に負けた場合自動発動。発動中は気配遮断スキルがA++相当で搭乗者全員に付随される。

 

 

泥棒の神のお告げ(ドクロベェアドバイス)

 

ランク:A+

種別:対人宝具

 

レンジ:−

 

最大補足:-

 

 自動発動宝具。泥棒の神様であるドクロベェが色々と情報をくれる。ただし、敗走中にはお仕置きが自動発動する。

 

 

メカ制作

 

ランク:EX

 

種別:対人宝具

 

レンジ:−

 

最大補足:-

 

 数々のメカを制作してきた実績が宝具となったもの。数万円~からの制作費から対軍~対城に匹敵するメカを作成。メカは宝具扱いとなり、ランクはA~A++。なおメカを動かすには女一人男二人の搭乗が必須であり、このメカに乗っている時は騎乗がA+となる。

 

 

 

 

 

 




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思わぬミスと思わぬ罠

 マッケンジー宅の夕食はこの日も賑やかだった。息子夫婦が国に帰ってから塞ぎ込んでいたマーサは帰ってきた孫(だと思い込んでいる)ウェイバーとアル(ランサー)と一緒に食事を取るのが楽しいのか張り切って料理を作っていた。

 

「そうそう、アルちゃん。今度、一緒に料理を作りましょうよ」

 

「は、はい。……参りましたね」

 

 ランサーはマーサ達に聞こえない様に呟く。その生涯から家事などした事がない彼女は世話になっている事と騙している負い目もあって断る訳にも行かず困てしまっていた。そんな中、ウェイバーは一人何処か浮かない顔をしている。

 

(何やってんだろ、僕……)

 

 彼が聖杯戦争に参加した切っ掛けは魔術師の学び舎である時計台で教師であるケイネスに論文を馬鹿にされた事だ。魔術師の世界では代を重ねた家ほど基本的に優秀とされ、まだ三代しか続いていない家の出身の彼は扱いが悪かった。しかし、自分は天才だと自負してやまない彼は其れが気に入らず、馬鹿にされた腹立ち紛れに偶然手に入れたケイネス宛ての聖遺物を盗んで参加したのだ。

 

 全ては自分の沽券を示す為に……。

 

 

(あれから探しても誰にも会わないし、だからと言って御三家に殴り込みをかける訳でもない。それにランサーの願いに比べたら……)

 

 ランサーから聞いた聖杯に託す願いと夢で見た彼女の過去。それに比べると自分の願いが小さく思えて来たのだ……。

 

 

「……」

 

 そんな彼の姿をランサーはローストビーフに齧り付きながら黙って見ていた。

 

 

 

「あたたたたたた! 奥義! プロトン斬りぃぃいいいいっ!」

 

 迫り来る焼け石を全て竹刀で叩き落としたセイバーには息一つ乱した様子はない。実は彼女の剣の腕前は直視のナンチャラカンチャラを持つ少女と互角であり、英霊となった事によって更に磨きが掛かっているのだ。その後ろに控えていた時臣は口をポカンと開けていたが直ぐに我に返って優雅さを取り繕う。

 

「さて、ロードエルメロイ殿と戦えるとは光栄な事だな。どうですかな。ここは魔術師の誇りを賭けて……」

 

 攻めてきた相手が今回の戦争で最強の魔術師とされるケイネスだと知った時臣は決闘を申し込む。だが、帰って来たのは機内からの予想外の返事だった。

 

『黙れ! 監督役と組んで不正をしている卑怯者との戦いにかける誇りなどないわ!』

 

「ありゃ~、バレてた。どうする? 時臣さん」

 

「……まさかバレているとはな」

 

『行くぞライダー! これは決闘ではなく懲罰だっ!』

 

『さあ! やーっておしまい!』

 

 ソラウの指揮の下、石焼イモグラが動き出す。鋭い爪を光らせながらセイバーに襲いかかった。セイバーは慌てた様子で突進を避けると竹刀を振るう。たかが虎のストラップが付いただけの竹刀など金属製の機体に何のダメージも与えれる訳はない。

 

 

 

 其のはずだった……。

 

 

「あれれ~? マスター、何故か効いてますよ~」

 

 だが、僅かだが機体にダメージが響き操縦席が軽く揺れる。機外カメラを見ると僅かだが損傷が見られた。

 

「何やってるのよ、ライダー。とっととやっておしまいっ!」

 

「はいはい、それでは”焼き芋喰ったらガスが出るでがす攻撃”、ポチッとなっ!」

 

 石焼イモグラはセイバーに背を向けると肛門部のシャッターが開く。其処から黄色いガスが吹き出してセイバーと時臣を包み込み、悪臭が二人を襲った。

 

「く、臭ーい」

 

「……ぐっ!」

 

 セイバーは鼻を押さえ、時臣は転げまわっている。それを見たライダー達は勝利を確信……してしまった。

 

 

 

「やるじゃないのライダー。りゅうせきねぇ、ながれいしねぇ、流石(さすが)ねぇ」

 

「えへへ~、僕ちゃん凄い?」

 

「ぐぬぬっ! おのれ、ライダ~」

 

 ライダーに抱きついて頭を撫でるソラウの姿を見て嫉妬の表情を浮かべるケイネス、その時、操縦席から椰子の木と豚の模型が出現した。

 

「豚も煽てりゃ木に登る~」

 

「「「あぽ~!」」」

 

 三人は見事な足ずっこけを見せる。その時、ソラウの尻の下に髑髏マークのスイッチがあった。

 

 

 

 ……お約束の自爆スイッチである。

 

 

 

 

「全国の女子高生の皆様、また来週~!」

 

 石焼イモグラは髑髏の爆煙をあげて爆発した。

 

 

「……何しに来たのかしら?」

 

「……分からないな。だが、この勝負、我々の勝利だ」

 

「あれ? 時臣さん、鼻にティッシュ入れたままよ」

 

 

 

 ……お約束のうっかりである。

 

 

 

 

 

 

「「「えっほ! えっほ!」」」

 

 そしてお約束の逃亡中、お約束の声が聞こえてきた。

 

『オメェら、あれだけ言ったのに負けたな~! さあ! お仕置きの時間だべぇ~!』

 

 突然の閃光にケイネス達の目は眩み、次の瞬間には大勢のカメラマンの前で

 

 

 

 

 

 セーラー服になっていた。

 

「な、なんだこの格好はっ!?」

 

「私、もう××歳よ……」

 

「僕ちゃん、似合ってるわね~」

 

 カメラマン達はセーラー服姿の三人を激写し、ケイネス達は横から伸びてきたマジックハンドでセクシーポーズをとらされる。ソラウは兎も角、ケイネスとライダーは地獄絵図だ。

 

『なお、この写真は写真集として冬木市住人と時計台の生徒に無料配布だべぇ~』

 

 

 

 

 

 

「もう、こんな生活嫌だぁぁぁぁっ!!」

 

 

 

 

 

 

 ケイネスが泣きながら叫んだ頃、アインツベルンの拠点である城の周囲の森に綺礼の姿があった。

 

「ハデに吹き飛べっ!」

 

 森に設置された罠はアーチャーの大砲で木ごと吹き飛び、それによって出来た一本道を綺礼は進む。

 

「よっしっ! 城が見えてきたぞっ!」

 

「勝手に先に行くな、アーチャー」

 

 アーチャーはマスターである綺礼を無視して先に進む。そして落とし穴に落ちた。

 

「ほげー!?」

 

 巧妙に隠されていた落とし穴にハマったアーチャーは真っ逆さまに落ちて行く。穴の深さは数メートルは有り、アーチャーは必死にジャンプするが出られない。その姿を見て何故か笑みを浮かべていた綺礼は木の蔦をロープの代わりにしようと周囲を見回した。

 

「彼処か……」

 

 ようやく蔦を発見した綺礼が取りに向かった時、アーチャーが落ちた穴の直ぐ傍から笑い声と土を被せる音が聞こえてきた。

 

「はっはっはっはっはっ! 平安京エイリアンの術ーっ!!」

 

 背景と同じ絵柄の布を広げて姿を隠していたアサシンはアーチャーがハマった落とし穴に土を被せていく。やがて何とか脱出しようとしたアーチャーの顔と右手だけ出た状態で穴は完全に塞がった。

 

「テメー! この卑怯者!」

 

「勝てば官軍、卑怯でケッコー、メリケン粉ー! この戦い、横島忠夫様の勝利じゃー!」

 

 

 

 

「……あのライダーといい、アサシンといい、真名を平気で口にするとはバカしかいないのか」

 

「舐めんなよクソ野郎がっ! この道化のバギー様の恐ろしさ、ハデに見晒せっ!」

 

 

「……馬鹿一人追加、か」

 

 それでも時臣のバーサーカーよりはマシだと自分に言い聞かせる綺礼であった……。

 

 

 




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戻れぬ男と絶望した少女

今回最後のほうが胸糞展開です ご注意を


「ご協力お願いしまーす!」

 

 セーラー服姿のケイネス一行が逃走用自転車でホテルへと向かう途中、人探しのチラシを配っている者達が居た。気配遮断スキルが発動している為にケイネスには気付かなかったが、通行人が受け取ったチラシには行方不明になった子供搜索に対する情報提供募集について書かれていた。

 

「あらら~、大変ですねマスター。どうします?」

 

「……」

 

 行方不明になった子供は数十名。それが何の痕跡も目撃情報も残さずに消え去るのは余りにも異常。これが魔術師の仕業だと察したケイネスは眉間に皺を寄せて黙り込んだ。

 

 魔術師とは己の研究の為なら人としての倫理など捨て去るもの。だがケイネスはこれほど多くの無関係な子供が巻き込まれる事に対して無関心でいられない程には人間らしさを残していた。不機嫌な表情のまま捨てられたチラシを拾ったケイネスはホテルへと戻ると休息を取る為にベットへと入る。しかし、その手にはチラシが握られたままだった。

 

 

 

『ひかえるだべぇ~!』

 

 その時である。部屋に設置されたテレビに髑髏マークが現れる。三人は慌てて跪いた。

 

「……クソッ! 情報を得る為には跪くしかないとは……」

 

「しょうがないでしょ~。ドクちゃん、直ぐにへそ曲げちゃうんだから」

 

「アンタ達っ! 無駄口叩いてないで黙って聞いてなさいっ!」

 

 すっかりドロ○ジョと化したソラウに言われるがまま二人が黙るとドクロベェが話しだした。

 

『オメェらが気にしている失踪事件だが、キャスターと間桐が犯人だべぇ~。キャスターの宝具は海魔を無限に召喚する本。そしてマスターと共に狂っているから気を付けるべぇ~』

 

 三人は爆発に備えて身構える。だが、今回に限っては爆発が起きなかった。

 

『吾輩も孫が居る身として今回の事件は非常に腹立たしい。容赦せずにぶっ飛ばすべぇ~!!』

 

 

 

 

 

「それじゃあ、今回のメカは”ガキダイショー”よぉ~」

 

 ライダーが屋上に呼び出したのは少年の頭部に鯛を付けた姿をしている。胴体は肥満型で胸元に太い線が入ったオレンジの服を着ていた。

 

「……なんか弱そうだが大丈夫か?」

 

 不安を口にしたケイネスに対しガキダイショーが屈んで睨みつける。

 

『アァン? ケイネスのクセに生意気だぞ!』

 

 

 

 

「……これは少々拙いな」

 

 木の陰から様子を伺っていた綺礼は地面に埋まったアーチャー(バギー)を見ながら呟く。その時、長年の戦闘経験から危険を察した彼が体をずらした時、先程まで彼の足があった場所を縦断が通り過ぎた。銃弾が来た方向を見ると其処には切嗣の部下である舞弥が銃を構えている。その後ろにはアイリスフィールの姿があった。

 

「舞弥さん。切嗣は彼の事を危険視していたわ。まさか切嗣が居ない時に襲撃を受けるなんて。……気を付けて」

 

「了解ですマダム。……もう少しお下がりを」

 

「……仕方がないな。早く済ませるとしよう」

 

 綺礼が二人との戦闘を決めた時、アサシン(横島)達の方でも動きがあった。

 

 

 

 

 

 

「行くぜ、赤っ鼻野郎っ!」

 

「誰の鼻が赤っ鼻だっ! このクソ野郎っ!!」

 

 アサシンはアーチャーが身動きできないからと調子に乗って笑いながら切り掛る。アーチャーは頭から真っ二つにされ、アサシンはガッツポーズを決めて高笑いした。

 

「よっしゃぁあああああっ! まずは一勝っ! この調子なら……はうっ!?」

 

 アサシンは己の願いに一歩近づいたと喜び飛び跳ねる。そして着地と同時に股間に衝撃を受け、鼻水と涙を垂れ流しにしながら転げ回った。痛む股間を押さえながら地面を見ると其処には宙に浮くアーチャーの腕、そして先ほど真っ二つになったはずのアーチャーの頭が宙に浮かんでいた。

 

「しょええええええええっ!? ば、化けもんやぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「おいおい、俺達はそもそも幽霊だろうが、馬鹿野郎。残念だったな。俺には刃物は効かねぇよ。なにせ俺は切っても切れないバラバラ人間だからなっ! んで、さっきの仕返しだっ! ”特性バギー玉”!!」

 

 腰を抜かして這いずりながら逃げ出すアサシンに対しアーチャーは大砲を出現させる。導火線に火が着くと大砲の弾が発射される。アサシンは咄嗟に『守』という文字が書かれた珠を出現させて結界を発動し、そのまま大砲の弾は結界をぶち破ってアインツベルン城の一部を破壊した。

 

「ギャハハハハハ! んなもんでバギー玉が防げるか馬鹿めっ! 次はコッチからハデに行くぜ糞餓鬼っ!」

 

 アーチャーが拳を握り締めて開くと指の間にナイフが出現する。アサシンは迫ってくるナイフを避けようと逃げ回るがバギーのてはその後を置い続け追い詰めていく。だが、ある程度の距離まで追い詰めた時、急に手の動きが止まった。

 

「な、なんやっ!? 勘弁してくれんのかっ!?」

 

「んな訳あるか馬鹿野郎っ! 此処からじゃ届かねぇんだよっ! ……あ」

 

 己の攻撃の射程範囲をうっかり話してしまったアーチャーを見るアサシンは笑みを浮かべると『爆』と書かれた珠を投げつけた。

 

「おっしゃぁぁぁっ! この距離から攻めればワイの勝ちじぁあああっ!」

 

 先程から関西弁が出ているアサシンは手を振りかぶると珠をアーチャーに投げつける。だが、飛距離が足りなかった。珠は丁度二人の中間で止まり、

 

「……へ? どひゃぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 二人纏めて吹き飛ばした。アサシンは顔面から機に叩きつけられ鼻血を流しながら無様に倒れ、地面に埋まって身動きの取れなかったアーチャーは爆発によって脱出する事が出来た。その体は少々の火傷を負っているようだが大した怪我もなく、怒りに満ちた表情でアサシンを睨んでいる。

 

「……糞餓鬼がぁ。もう絶対許さねぇ! 派手に死にやがれっ!!」

 

 アーチャーの前に大砲が合計五個も出現し全ての砲門がアサシンへと向く。だがアーチャーが導火線に火を付けるよりも早くアサシンの姿が掻き消えた。

 

「ちぃ。令呪での逃走かよ」

 

「……その様だな」

 

 アイリスフィール達も一緒に逃げたらしく血溜りはあるが死体は見えない。アーチャーは仕方なくアインツベルン城を破壊するだけして帰還する事になった。

 

 

 

 

 

 

 

「……おかしい」

 

 その頃、ケイネスと同様にウェイバーも児童の連続失踪が何処かのマスターの仕業である事に気付いていた。チラシに載っていた行方不明になった時刻に居たであろう場所に印しを付けていくと遠坂邸が中心に有り、一見すると遠坂陣営が犯人のように思える。だが、ウェイバーはその事に疑問を持った。

 

「なあ、ランサー。いくら何でも疑ってくれって言っているみたいじゃないか? あんな派手なパフォーマンスで注目を集めて、今度は家を中心に人攫いなんてさ」

 

「確かに不可解です。……罠でしょうか?」

 

「だとすると……」

 

 ウェイバーは地図を眺めながら頭を働かせる。今持っている情報をフルに働かせ犯人の思考を読み取ろうとした彼は一つの事に気が付いた。

 

「ランサー、多分犯人は間桐だ。失踪なんだけど、遠坂邸の周辺を中心に街中で起きているのに、間桐の屋敷周辺では全く起きていない。……くそっ! 子供ばっかり狙いやがってっ! ランサー! 今すぐ勝負を仕掛けるぞっ!」

 

「ですがマスター。相手の陣地に乗り込むのは危険では? ……私一人で行きます。ですのでマスターは此処で……」

 

 義憤に燃えるウェイバーだったが、ランサーは昨日の事もあり家で待機する様に進言する。それがウェイバーの怒りに触れると想定していたが、向けられた表情は怒りではなかった。

 

「……分かっているよ僕が足手纏いだって事は。でも僕はこの戦いで命を捨てる覚悟で参加したんだ。其れに、こんな事している奴に一言言ってやりたいんだ。……なあ、ランサー。お前に絶対叶えたい願いがあるのは分かっている。でも、僕も黙って見ているわけには行かないんだ。だから、連れて行ってくれ」

 

「どうやら私は貴方を見くびっていたらしいですね。申し訳ありませんマスター。……その素晴らしい勇気と考察力、貴方はもっと自分を認めるべきです」

 

「う、うるさい。さっさと行くぞっ!」

 

 ウェイバーは褒められた事に顔を真っ赤にしながら部屋から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちぃ! 仕事帰りに敵と会うとはなぁっ!」

 

「マスター、下がっていてください」

 

 そして間桐家に向かう途中、二人の前にアーチャーが出現した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「桜ちゃん、お土産だよ」

 

「……有難う」

 

 どこかで酒でも飲んできたのか酒臭い雁夜は布に包まれた塊を桜に差し出す。桜が開けると其処には葵の頭部が入っていた。

 

「お母…さん…?」

 

「いいや、違うよ? これは時臣が用意した葵さんの偽物さ。でも、そっくりだからお土産に持って帰ったんだ。嬉しいだろう? 待っていてくれ。早く時臣を殺して聖杯を手にしたら、葵さんと凛ちゃんと桜ちゃんと俺の家族四人で幸せになるんだ」

 

「お父さん…を殺すの…?」

 

「ああ、そうだ。オジさんは君の為に沢山殺して来た。時臣も君の為に殺すんだ。嬉しいだろ? ……返事はどうしたっ!」

 

 雁夜は桜の頬を平手打ちにして床に倒す。そしてそのまま桜の肩を乱暴に掴むとガクガクと揺すりだした。

 

「俺は! お前の為に命を削って、その上人を殺しているんだっ! 少しは感謝したらどうなんだっ!!」

 

「御免…なさい…」

 

「チッ!」

 

 雁夜は桜を突き飛ばすと乱暴な足取りで部屋から出ていく。その様子を眺めていた臓硯は桜に近づくと笑みを浮かべて囁く。

 

 

 

「奴もお前を助けようとしなければ彼処まで落なかったものだがなぁ。それにお前の母親や他の子供も死ななくて良かったものを……」

 

「私の…せい…」

 

 桜の心はより一層闇に沈み、彼女助けようとしていた雁夜の命は今夜尽きる。

 

 




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思いつき初回のみ

今日は展開が思いつかなくて連載が書けないので思いつきを載せます


ギリシア神話最強の英雄ヘラクレス。数多くの英霊の中でも最上位クラスに位置するであろうそのヘラクレスを第五次聖杯戦争で引き当てた魔術師がいた。

 

「やったわっ! ヘラクレスを、それもアーチャーで呼び出せるなんて!」

 

 ヘラクレスを呼び出したのはキャスターの英霊であるメディア。彼女の前に鎮座する鉛色の巨人は正しくヘラクレスであった。アーチャー故に単独行動スキルを持ち、彼さえ殺せるヒュドラの毒を持ったホーミングする弓矢を宝具として使える。他には十二回殺さなかったらいけなかったり、一回殺されたら耐性が付いたり、Bランク以上の攻撃じゃないと効かなかったり。

 

「なんなりとお命じくださいませ、姫」

 

 そしてアルゴー船で顔を合わしている縁でメディアの過去は知っており、同情した上で協力すると申し出てくれている。この時、メディアは勝利を確信していた。

 

 

 

 だが、この聖杯戦争は色々と妙な事になっていたので簡単にはいかないのだが……。

 

 

 

 

 

 

「……け、結果的に良かった……のかしら?」

 

 遠坂凛は父から受け継いだ宝石を触媒に召喚を行った。彼女が望んでいたのは三騎士クラスのどれか、欲を言うとセイバーが欲しかったのだが、来たのはよりにもよってバーサーカー。今までのマスター全てが自滅して降り、狂戦士という名に相応しく理性がない。だが、彼女が呼び出したバーサーカーには理性があった。

 

 

「およよよよ! お化け屋敷みたいでおもしろーい!!」

 

「クピピ~!」

 

 だが、理性はあったが常識や自重はなかった。常時発動型の宝具である妖精っぽい生物は机や椅子などの調度品、そして凛が魔術を使うのに必要な宝石をバクバクと食べ、バーサーカーが走り回るたびに壁や戸が壊れていく。はっきり言って現実逃避だ。しかし、それを補って余り有るステータスを持っていた。

 

 運と魔力を除く全ての能力が『EX(評価規格外)』すら凌駕する『(測定不能)』、まさに空前絶後、最強無敵の英霊だ。そして、単独行動持ちな為に凛への負担は少ない。

 

 もう、”ヘラクレス? AUO? あ~、はいはい。強い強い”、と言えるレベルである。

 

「この戦争、私の勝利よ!!」

 

 

 バーサーカーの真名は”則巻アラレ”、投げた岩で月を軽々と破壊し、拳で地球をカチ割るどころか拳圧で太陽すら破壊する無敵のロボット。もう、アラヤさんさえ土下座するレベルだ。

 

 

 

 なお、アラレが一定時間おきに発動する必要のある宝具『ロボビタンA』は大量の宝石を使わないと魔力が足らないので、優勝しても優勝できなくてもこの世界に””英霊トーサカ”は誕生する。

 

 

 

 

 

「まあ、自分の運のなさを恨めや」

 

 この日、衛宮士郎はバイト帰りにであった青タイツの男に殺されそうになっていた。家の土蔵まで追い詰められ殺されそうになった時、床に描かれていた魔法陣が光りだす。其処には何時の間にか一人の男が立っていた。

 

「馬鹿なっ! この土壇場で英霊だと!? ……英霊、だよな?」

 

 現れたのはマントを着て赤い手袋をはめた青年。どこから見ても服装以外は平凡で強そうに見えない。

 

「まあ、良い! 敵ならぶっ殺すだけだ! 覚悟しろや、ハゲ(・・)!!」

 

「ッ! 逃げろ!!」

 

 そう、そして彼は禿げていた。青タイツの槍は士郎の叫び虚しく青年に向かっていく。

 

「せい」

 

「あぶだらばぁっ!?」

 

 そして気合の入っていない声と共に繰り出された一撃で槍はへし折れ青タイツは何処かに吹き飛んでいった。

 

「ったく、誰がハゲだ」

 

「あ、あんたは一体……」

 

「俺か?

 

 

 

 

 

 

 

 俺の名はサイタマ。ヒーロー(正義の味方)をやっている者だ。ちなみにクラスはボクサー(拳士)。イレギュラーらしいぜ」

 

 この時、並行世界のとある英霊が髪の毛に悪寒を感じた。

 

 

 

 

 

 

 

「……う~ん、強いのかしら?」

 

 イリアスフィール・フォン・アインツベルンは自分が呼び出した英霊(セイバー)を見ながら首を捻る。なんかボロボロの状態で降ってきた青タイツに襲いかかられたのだが、運以外は遥かにステータスが低いのに勝ったのは彼女の英霊。見た目は異常にでかい福耳に額の湯呑、足の裏の”さいこー”、という文字。

 

 

 

「なんか知らんけど勝手に転んで頭打って死んだぞ。あっ、ラッキー!」

 

 そして、体の中央に『大吉』と書かれていた。

 

 

 彼の名前はラッキーマン。運も実力の内と言って良いのならあらゆる宇宙で最強のヒーローである。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あははははは! なんだよ、桜。お前、ある意味すごいな!」

 

 間桐慎二は義妹である桜の呼び出した英霊を見ながら笑う。声だけなら馬鹿にしているようだが、彼の顔を見ると違う事が分かるだろう。それはアニメを見て喜ぶ子供の顔だった。そう、彼の目の前にいるのは彼が幼い頃からファンであり、今も時々こっそりと観ているアニメのキャラクター。下手な英霊よりも遥かに高い知名度を持つ人気者。

 

「ボクのクラス? ライダーみたいだよ」

 

「んな事良いからさ、早く真名教えろよ!」

 

 もちろん、慎二は彼の真名が何か知っている。二頭身の青い体に大きな口と目、そして腹のポケット。そして彼が待ち望んでいた言葉がライダーの口から放たれた。

 

 

 

 

 

「ボク、ドラえもんです」

 

 

 

 

 

 

 

「綺礼、今回は静観するぞ。我はドラえもんを見ていたい。……まあ、最後には手に入れるがな」

 

 とある英霊も大好きだったようだ……。




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思いつき初回のみ 第2弾  ガチ

「貴様が我を召喚した魔術師か。……詰まらん目をしておるな」

 

 衛宮切嗣が第四次聖杯戦争のために召喚した英霊は傲岸不遜な態度で彼を眺めると鼻を鳴らす。その振る舞いは正しく暴君であり、誰よりも王と呼ぶのに相応しかった。本来ならば届くはずだった聖剣の鞘が飛行機事故で海の藻屑と消えた時は焦った切嗣だが、触媒なしに召喚して現れたのは破格のステータスを持つ英霊。其の代わり、気高い騎士道を掲げる英霊よりも遥かに扱いづらそうだったが……。

 

「我の名前? 貴様、我尊顔を拝見するという名誉を受けながら我が真名に心当たりがないと申すか」

 

 名を問われた黄金の英霊(・・・・・)が不機嫌そうに眉を顰めながら舌打ちをする。この時切嗣はこの英霊とは絶対に上手くいかないと確信するに至った。

 

「まあ良い。特別に教えてやるから感謝せよ、雑種」

 

 初対面の、それもマスターである切嗣に対して見下すような、いや、自分以外の全ての存在を見下しながら彼は口を開いた。

 

「我は英雄王ギルガメッシュ。此度はセイバーのクラスで現界した」

 

(さて、どうするか……)

 

 切嗣は強い不安を感じながらどう勝ち抜くかを思案しだした……。

 

 

 

 

 

「貴様、一体何ものだ?」

 

 ケイネスは触媒なしで召喚した英霊の顔を見上げながら問い質す。現れたのはケイネスの数倍の身長を持つ老人。薙刀と呼ばれる武器を手に持ち、頭には布を巻いている。そしてそのステータスは破格であった。

 

「俺か? 俺は”白ひげ”だ。……しっかし、妙な戦いに巻き込まれちまったもんだ。まぁ、良い。グラララララララ! 精々楽しませて貰うぞ、小僧」

 

 この時、ケイネスは予想もしていなかった。自分が目の前にいる英霊に強い影響を受け、彼を父親のように慕う事になるなどと……。

 

 

 

 

「……さて、予定は狂ったが良しとしよう」

 

 遠坂時臣は今回ばかりはうっかりを発動させなかったが目的の英霊は既に召喚されており、代わりに出てきたのは髪の毛が異様に多い少年。ダボっとしたシャツを着るその姿は一見普通に見えるが、時臣の後ろに立っていた言峰綺礼は彼の目に気付いていた。

 

(あの目は人の目ではないな。あれは殺戮を楽しむ眼だ。……しかし、何故か惹かれるものがある)

 

「へぇ、まさか僕を召喚するとはね。良いよ、一緒に頑張ろう。君の敵は僕が全て消しさってあげるからさ」

 

「それは有難い。……所で君の真名は何かね?」

 

 時臣は目の前の少年の瞳になど気づかず、ただステータスの異様に高い英霊を呼び出せた事に喜んでいるだけだ。そして少年は静かに口を開いた。

 

「僕のクラスはアーチャー。そして真名はクリア、クリア・ノート。全ての魔物を滅ぼすために生まれた存在さ」

 

 

 

 

 そして次は綺礼の召喚の番。できればアサシンを使って諜報活動をさせたい所だが、召喚されたのは一人の男。どう見てもアサシンではない。

 

 

「……まさか人間に召喚されるとはな。この怒り、早く忘れねば」

 

 呼び出された英霊はその場にいた人間三人に侮蔑の視線を向けると共に召喚された椅子に座り込む。綺礼は長年の経験から目の前の存在がマトモな物ではない事を見抜いていた。

 

「どうやら人間が嫌いなようだな。しかし、人間と組まねばお前の願いも叶わぬぞ」

 

「……ふん。まあ、良しとしよう。でも覚えておけ。キャスターとして召喚されたマルド・ギールは人間が大嫌いだ」

 

 

 

 

 

 

「スゲェ! 旦那達、最高にCOOOOOLだよ!」

 

 大勢の子供達の前でひとりの少年が大喜びしている。彼の頭の中では子供達を材料にした芸術作品の設計図が次々に生み出されており、彼のすぐそばには髑髏の仮面を被った集団が立っていた。

 

 

 連続殺人鬼である雨生龍之介は家の蔵から発見した古文書を参考にして殺人現場で召喚の儀式を行った。だが虫食いだらけの為に所々穴があって呪文が全て分からない。それでも遊び半分の演出だったので特に構わず、今日も一人生き残った男児の前で両親の血液を使って儀式を行い、眠っていた魔術師の血に反応して英霊が呼び出された。呼び出されたのはアサシン、そして正史で綺礼が召喚するはずだった”百の貌のハサン”である。

 

 

 気配を消し無数に分身する暗殺者と連続快楽殺人鬼、最悪の組み合わせとして誕生したアサシン陣営はこの日より多くの子供を攫い、冬木市民を恐怖のどん底に陥れる事となった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてさて、次はどのような奴を造るか。おい、マスター。次の部品を持って来い!」

 

(糞っ! なんでこんな事に……)

 

 ウェイバー・ベルベットが今回の聖杯戦争に参加したのは自分を馬鹿にした奴らを見返す為だった。そして触媒なしで召喚して出てきたのはか弱い老人。どうやらライダーらしいが殆どのステータスが最低。だが、その頭脳は最高と言って良いレベルだった。ガラクタ置き場に捨てられた電化製品から下僕となるロボットを作り出したライダーはロボットを使って郊外のスクラップ工場を襲撃、その日の内に強固な要塞と化してしまった。

 

「何をやっている!」

 

「わ、分かったよ!」

 

 そしてウィエバーはこのようにライダーにこき使われている。命呪を使おうにも新しく造り出されたロボット達が怖くて出来ず、ただオドオドしながら従うだけだ。

 

 

「ふははははは! ロックマンさえいなければこの世界は儂のものだっ!」

 

 ライダーの真名はDr.ワイリー。何度負けても懲りずに世界征服を目指す悪の科学者である。

 

 

 

 

 こうしてイレギュラーを抱えたまま第四次聖杯戦争の幕は上がる。今回召喚されたのは人類最古の英雄王、世界を滅ぼす力を持つ大海賊、魔物を滅ぼす為に生まれた魔物、人を雑草同然と見下す悪魔、無数に増える暗殺者、そそして世界征服を目指す悪の科学者。

 

 

 ここで冬木市民代表の一言。

 

「お前ら、他所でやれ」

 

 

 

 

 

セイバー陣営 衛宮切嗣&ギルガメッシュ

 

アーチャー陣営 遠坂時臣&クリア・ノート(金色のガッシュ)

 

ランサー陣営  ケイネス・アーチボルト・エルメロイ&エドワード・ニューゲート<白ひげ>(ワンピース)

 

キャスター陣営 言峰綺礼&マルド・ギール(フェアリーテイル)

 

アサシン陣営  雨生龍之介&ハサン

 

ライダー陣営 ウェイバー・ベルベット&Dr.ワイリー(ロックマン)

 

 

 

 

 なお、間桐家の屋敷から”カカロットー!!”、という叫び声がしたかと思うと屋敷が吹き飛び、其処には何も残っていなかったらしい……。

 

 

 

 




さて、多分被害がとんでもないことになる

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思いつき初回のみ その3

 遠坂時臣は困り果てていた。うっかり寝タバコをしてしまい貴重な英霊召喚のための触媒を焼失。仕方無くに何も無しで召喚して呼び出せたのは、何の変哲もない……いや、殆どの能力が一般より劣っている”少年”だった。

 

「せ、戦争っ!? そんなの無理だよぉ」

 

 なぜか聖杯戦争の知識もなしに呼び出された彼は、詳しく話を聞くなり震えて泣き出し、良く分からない変な名前を呼びながらヘナヘナと崩れ落ちた。彼がどの位使えないかというと、英霊の能力は最低がEなのだが、彼はほとんどがEどころか前代未聞のF。試しに走って貰ってみても小学生低学年の娘より遅い。学力も小学生二年生程度。

 

「……落ち着け。常に優雅たれ、だ」

 

 今は英霊なのに真昼間から部屋のベットでグゥグゥ寝ている己が呼び出した『アーチャー』の効果的な運用を必死に模索する時臣。だが、余りにも使えないので次に託そうかとさえ考え出していた。

 

 

 

 

 

 だが、彼は勘違いをしている。彼が呼び出した英霊の宝具はEX(評価規格外)を超越した(測定不能)。ありえない事態と聞いた事のない真名。それらから何かの間違いだと思い切っているのだ。

 

 

 彼は知らない。己が呼び出した存在が、地球を、他の星を、他の世界を、仲間と共に何度も救った大英雄である事を。彼の射撃の腕は他のアーチャーでさえ凌駕する可能性がある事を。彼の持った宝具は既に魔法の領域に達している事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (測定不能)ランク宝具『スペアポケット』を持った少年(英霊)野比のび太(アーチャー)』の価値を彼はまだ知らないでいた……。

 

 

 

 

 衛宮切嗣にとって虫唾が走る思いをするのは、これは初めてではない。少年時代から何度も世界の紛争地帯を回り、様々な所で人間の汚い部分を見てきた彼からすれば虫酸が走る光景など見慣れている程だ。故に『恒久的な世界平和』などを聖杯に願おうと思ったのだ。

 

 だがこの日、それを上回る虫唾が走る思いを味わっていた。

 

「私がジョニーと出会ったのは肌寒い冬の朝。いや、木枯らし吹き始める秋の昼だったか? いや、希望に満ち溢れた顔が溢れる春の夕方だ! 夏真っ盛りだけあってその日は非常に暑かった。思わず喫茶店に飛び込んだ私の前に彼女は現れた。”止めて下さい!”、そう叫ぶ彼女に絡む破落戸達。私が得意の空手で全て撃退した時の彼女の瞳と言ったら。それから彼女と共に同棲を始めた私が住むアパートの管理人がジェシファーと言って中々の好人物な老婆でね―――これが私と契約するにあたって守って欲しい千の項目・第三百三十六番『オムレツは半熟で味付けは胡椒オンリー』の理由だ。分かったかね、セニョリータ?」

 

「「虫唾ダッシュ」」

 

(ああ、アイリスフィールとイリヤ(妻と娘)が壊れてる。させようかな? 自害をさ。アレを殺すのが世界平和の第一歩な気がしてきた)

 

「私の伝説は十二世紀から始まった」

 

「一度聞いた」

 

「所でマスター。君の願いは何だったかな?」

 

「ああ、勿論恒久的な世界平……」

 

「私の朝はモーニングティーから始まる。この帽子が何か知っているか? コック帽は長いほど偉いんだ」

 

「その様な事など、どうでも良い。それより僕の願いを聞いたんじゃなかったのかい?」

 

「ヴァカめっ! 貴様の事などどうでもいい。まったくこれだから田舎者は困るのだ」

 

(……鞘が見つからないからってあんな本を触媒にするんじゃなかった)

 

 切嗣が触媒に選んだのはアーサー王の時代に書かれたという貴重な本。それほどの古代に書かれたにも関わらず全く傷んでいなかった本にはアーサー王の持つ『エクスカリバー』について書かれていたのだが、呼んでみれば来たのは真っ白くズボンを履いていないウザイ生物。だがふと本を見てみれば著者の部分に今漸く気づけた。

 

 

 

『著者・エクスカリバー』

 

「お前かよっ!」

 

 切嗣は思わず床に本を叩きつける。当の本人であるエクスカリバー(セイバー)は、サインはやらんぞ、と言いながら踊っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アーチボルト様。ご注文のルームサービスをお持ち致しました」

 

「ルームサービス?」

 

「ええ、先程確かに『ステーキ三人前至急頼む。笑止笑止』と電話先から……」

 

「……ああ、よく分かった。確かに私の部屋から注文された品だな」

 

 ケイネスは頭痛を堪えながらステーキを受け取る。そしてホテルの従業員が去った途端、横から伸びてきた三組の手がステーキの皿を掴んだ。

 

「これは美味い!」

 

「美味し美味し」

 

「また頼もう」

 

「いい加減にしろ、この鼠共っ!」

 

 ついに感情が爆発したケイネスは大声で怒鳴る。触媒が飛行機事故で紛失したので仕方無しに触媒なしで呼び出したのは何故か三人……正確には三匹。一応クラスは三騎士の一角である『ランサー』らしいがそのステータスはとても低い。

 

 

「我々は只のネズミではない! 笑止笑止」

 

「正確にはタテジワネズミだ!」

 

「もっと正確に言うならばフィールドに出るテテジワネズミより少し強い”槍で突くタテジワネズミ”だ!」

 

「何処か違うというだっ! ……もう、帰りたい。武功とかどうでも良い。ソラウも此奴ら嫌ってついて来なかったし……」

 

 鎧を着て槍を持った三匹のネズミの獣人に心労を溜めながら深い溜息を吐いたケイネス。彼の額がまた広がった。

 

 

 

 

 

 

 言峰綺礼が困惑していた。アサシンといえばハサンが来るはずなのだが、彼が呼び出したのはどう見ても日本人だったからだ。

 

「アサシン、何をやっている?」

 

「あぁら、見て分からないかしら? 化粧よ、お化粧。うーん、この白粉のノリが悪いわぁ」

 

「いい加減にしろ。お前は男だろう、アサシン!」

 

「失礼ね、今は女よ。それと今の私の名前は山田伝子。伝子さんって呼んでぇ」

 

「誰が呼ぶかっ!」

 

 非常に悍ましい見た目の女装に自信満々の『忍者・山田伝蔵(アサシン)』の相手によって時臣の苦悩する姿に愉悦を感じる暇すらない綺礼。取り敢えず胃薬が欲しくなった。

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ。君って悪魔の存在を信じる? なんか蔵から悪魔を呼び出すぽい儀式が乗った本を見付けて試してるんだけどさー。これが中々出てこないのよ。もし出てきたら生贄になってくれよ」

 

 少年は恐怖していた。目の前の青年こそが悪魔に見えていた。突如現れて両親を殺害した彼は、儀式が終われば縛って転がしている自分を殺すだろう。だから少年は青年が呪文を唱える間、必死に神や仏に願う。助けて、と。

 

「おっ! 成功したよっ! ……えっと、猿? 何処かで知っているような見た目だけど……」

 

 呪文が終わった瞬間、少年の両親の血で書かれた魔法陣が光り輝き小柄な肉体の持ち主が姿を現す。その大きさは少年よりも小さいかも知れない。赤い服に頭に嵌めた金の輪っか。手には長い棒を持っている……猿だった。猿は少年と両親を見ると驚き、次に青年に目を向けた。

 

「これはお前がやったのか?」

 

「そうだけど? ほら! 悪魔への生贄的なあれだよ、悪魔さん! 遠慮なく食べちゃって……悪魔さん?」

 

「このやろっ! 僕は悪魔じゃないやい!」

 

 次の瞬間、猿に殴り飛ばされて気絶する青年。彼は意識を失う前に一つの事を思い出した。

 

(ああ、そうだ。あの猿って確か……)

 

 

 

 

 

「うーん。君とパスが繋がってる様だけど……戦争とか無理だよな? 僕も、助けてって願いに反応しただけだし。でも、自害もな。……取り敢えずお釈迦様に頼もう」

 

 少年は自分の拘束を解いた猿を不思議そうに見詰める。この猿は一体何ものなのだろう。なので率直に尋ねると大いに驚かれた。

 

「僕の事知らないのっ!? 結構有名なのにっ!? ……よし! だったら名乗ってやるよ。

 

 

 

 

 

 石から生また石猿で、三蔵法師の一番弟子。数多の術を使いこなし、数多の妖怪変化を打倒して、師を天竺まで守り抜ぬく。そう、僕こそが……斉天大聖・孫悟空だ!」

 

『悟空。悟空や。余り驕ってはいけませんよ』

 

「あっ! お釈迦様っ!」

 

「お釈迦様……?」

 

 突如神々しい光が差し込み現れたのはパンチパーマーの様な髪型の雲に乗った人物。その姿は流石に少年も知っていた。

 

『悟空。この聖杯戦争ですが、何か嫌な予感がするから調査してくれ。今の私に出来るのはその少年を保護する事と貴方に魔力を供給する事だけ。その姿に戻ったからには一からやり直すつもりで励みなさい』

 

「ははぁ!」

 

 こうして少年は仏によって保護され、孫悟空(キャスター)一人(一匹)で調査に乗り出した。

 

 

 

 

 

 ウェイバー・ベルベットは動揺していた。目の前の人物? が自分の英霊なのかと。

 

 

 

「ウ○コが来たっ!?」

 

 そう。何故か召喚されたのはパーカーを着たウ○コだった。

 

「私はウ○コではない。私の名前はソフトン」

 

「チョ、チョコ味のソフトクリームだったのか。よかったぁ」

 

(さて、バビロンカー等は使えるが宝具(奥義)の内、幾つかが制限されてしまったが大丈夫だろうか)

 

 色々ショックな事があって開き直ってしまったウェイバー。安心する彼の横では『ソフトン(ライダー)』は慎重に今後の計画を練っていた。

 

 

 

 

 

 間桐雁夜は呆然としていた。己の身を削ってまで呼び出したバーサーカーが消えてしまったからだ。それも憎い爺を消し去り、助けたかった少女を助けてだ。よく分からない力を使って……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、くーちゃん。何処に行ってたの?」

 

『瞬間移動が暴走して異世界に行っていただけだ。……あの蟲はキモかったな』

 

 今日も超能力者は押し寄せるΨ難に辟易していた……。

 

 

 

 

 

 

 

セイバー   エクスカリバー(ソウルイーター)

 

ランサー   槍で突くタテジワネズミ(魔法陣グルグル)

 

アーチャー  野比のび太(ドラえもん)

 

キャスター  孫悟空(ぼくの孫悟空)

 

アサシン   山田伝蔵(落第忍者乱太郎)

 

ライダー   ソフトン(ボボボーボ・ボーボボ)

 

バーサーカー 斉木楠雄(斉木楠雄のΨ難)

 

 

 

絶対に続かない……。




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