Crossfire×Sonic ~戦争の超獣世界~ (ブルー・ハイパー)
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Episode1 プロローグ(side:ソニック)

「ムニャムニャ……」

 

広く、広大な草原、綺麗な青みがかかった青空。

そして心地いい風が吹くこの場所で青いハリネズミのような住人ソニックと2つの尻尾が生えている黄色い狐のような住人テイルスが仰向けに昼寝をしている。

その表情は心地いい風に打たれているせいか、気持ちよさそうなものだった。

 

 

ゴォォォォ

 

しばらくしてそんな音が聞こえた。

それだけでなく、青空が遮られていき、草原に巨大な影ができていく。

 

「う~……ん」

 

ソニックが目を擦りながら起き上り、遮られた青空を見る。

そこにあったのは……。

 

 

「What!? デカすぎるだろ!?」

 

 

巨大な黒い物体が浮遊していた。

よく見てみるとその物体は戦艦のような外見をしている。

そこから聞こえるゴォォォォという音が非常にうるさかった。

 

「テイルス! 起きろ!! 変なもんが浮いてるぞ」

 

ソニックは、すぐテイルスを揺すって起こそうとする。

 

「う~……ん、今いいとこなのに……」

 

テイルスは呑気に寝言を発するが、巨大な物体を見た瞬間、

 

「うわーッ!!」

 

驚きのあまり、仰向けのまま飛び上がって完全に目を覚ます。

 

「起きたら、あんなもんが浮いてたんだ」

 

ソニックは「あんなもん」を見上げ、腕組みをしながらテイルスに話しかける。

 

 

「ブルータイフーン号を使おう。マスターエメラルドの力がまだ少し残ってるはずだ」

 

ブルータイフーン号。かつてメタレックスと呼ばれる機械生命体の侵略をくい止める為に建造、改造された宇宙船。しかし、動かすにはカオスエメラルド、もしくはマスターエメラルドの力が必要となる。それらの力がまだ残留していると確信したテイルス。

 

そしてテイルスとソニックは走りだす。

住んでいる町へ戻り、地下格納庫へ向かう2人。

 

「久しぶりだな、コイツを見るのも……」

 

ソニックはテイルスが作り上げたブルータイフーン号を見て口笛を吹きながらそう呟く。

 

「ソニック、発進するよ! 早く乗り込んで!!」

 

テイルスがアナウンスで早く乗るよう促す。

やれやれと言わんばかりの顔でソニックも乗り込む。

 

 

ギュイーンッ

 

ブルータイフーン号が動き出し、激しいエンジン音がうるさくなる。

しかしテイルスはそんなことは微塵も気にせずに次々とスイッチを押していく。

 

「…システムオールグリーン! ブルータイフーン号発進!!」

 

そして格納庫のハッチが開き、ブルータイフーン号は発進する。

すぐ巨大な戦艦へ接近する。

 

「ソニック、すぐにソニックドライバーが撃てるように準備して」

「OK」

 

主砲のソニックドライバーはスピンしたソニックを弾丸にして攻撃する。

ソニックはすぐに主砲の中へ入り、いったん外へ出てスタンバイする。

 

 

「ホーホッホッホ!! また性懲りもなく出てきたか、ソニック」

 

目の前いある巨大な戦艦から姿を現したのは、ふっくらとした体格にとび出たヒゲが特徴のドクター・エッグマン。彼は世界を自分の理想郷「エッグマンランド」に変えるために、度々ソニック達と激突している。

 

「やれやれ。性懲りもないのは、どっちだか……」

 

ソニックは呆れた顔で手の平を上にしながらそう言い放つ。

 

「喧しい!! 今日こそ、この世界はワシの理想郷エッグマンランドn」

 

「ソニックドライバー、発射ッ!!」

 

しかし、エッグマンが話し終える前にテイルスはソニックドライバーで容赦なく攻撃する。

 

「ちょっと!! まだ話してる途中なんですが!?」

 

 

ドカーン

 

そんな鈍い音が大音量で発生し、戦艦はあっけなく爆破し、爆風も発生。

その爆風でエッグマンは某3人組のように空彼方へ飛ばされてしまう。

同時にソニックもUターンした後、ブルータイフーン号に着地する。

 

「悪いけど、一人でこれを動かすのも大変なんだ。」

 

テイルスはホッとした様子でそう呟く。

戦艦も撃墜したので引き上げようとしたその時だった……。

 

 

ゴゴゴゴゴゴ……。

 

「What!? 今度は何だ!!?」

 

まるで地震が起こったような鈍い音がソニックに突き刺さる。

すると、そこには……、

 

「と、扉? それにしてはかなりデカいな」

 

ソニックは左手を顔に当て、覗き込むように目の前にある巨大な扉を見つける。

その扉は全体的には黄色く、黒い枠と模様があった。そして何より巨大であり、ブルータイフーン号がすんなり入れそうなほどの大きさだった。

そしてゴゴゴゴという音は一層鈍くなり、目の前にある巨大な扉が開く。

 

「扉が……、開いた!?」

 

その直後に扉は辺りを吸い込み始めた。

ブワーっと激しい台風が来たかのような感じでうるさすぎるあまり、ブワーという激しい音以外は何も聞こえない。ましてソニックは外にいるから激しい音をまともに受けている状態だ。

 

「す、吸い込まれる……」

 

ソニックも思わず耳を塞ぐが、ブルータイフーン号ごと引き寄せられていく……。

まるで世紀末を見ているような感じだった。

 

 

「う、うわーーッ!!!!」

 

遂に扉に吸い込まれてしまい、意識を失ってしまう。

ブルータイフーン号を吸い込んだ後、扉はピタリと吸い込むのをやめる。

その後、その扉はバタンと閉じ、消滅した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「う……ん、ここは?」

 

気がつくと、そこは森の中だった。

俺達は、扉に巻き込まれた後ここに放り出されたということになるだろう。

振り返ると、だいぶ遠くの場所だが、ブルータイフーン号が横たわっているのが見えた。多分、そこにテイルスがいるんだろう。

 

「テイルス!!」

 

急いでブルータイフーン号の艦内へ入り、テイルスを探す。

しかし、彼はブリッジにはいなかった。

 

「テイルス…、どこ行ったんだ?」

 

思わず、俺はそんなことを口にする。

そしてしばらくは艦内の至るところを捜索することにした。

 

 

 

 

「ソニック……、どこ行ったのかな?」

 

僕は、現在ソニックを探している途中だ。

あの扉に吸い込まれた後、僕はブリッジで目を覚まし、ソニックを探しにいったが、近くにソニックはいなかった。

 

「あの時、外にいたからだいぶ遠くまで飛ばされちゃったのかな……」

 

そう、ソニックはあの時外にいた。あれだけ激しいともなれば遠くまで飛ばされた可能性だって十分ある。

そう考え事をしていた矢先に……、

 

 

 

「ケケケケケ……、オメェうまそうなキツネだな。」

 

緑のトカゲのようなモンスターが僕を食べようと、涎を垂らして近づいてきた。

僕は戦慄して、そのモンスターから逃げるように走り出した。

しかし…、

 

「逃げたって無駄だぜ、ここはオレらの縄張りだ。仲間は幾らでもいる。ケケケケケ……」

 

ここは奴らの縄張りだった。足がすくんで動けなくなり、気がつけば囲まれていた……。

更に戦慄し、僕は思わず、

 

 

「ソ、ソニックーーッ!!!」

 

……彼の名を呼んだ。

 

「さてと、大人しくしてもらおうか」

 

僕は縄で縛られ、グルグル巻きにされてしまった。

このままじゃ、食べられてしまうのは時間の問題だろう。

 

 

 

 

 

 

「……ん?」

 

今、どこかでテイルスが俺の名を叫んでいたのが聞こえた。

多分、知らせるためにわざとやってるか、或るは……、

 

 

「……今いくぞ、テイルス!!」

 

ピンチなのかどちらかだろう。

俺は声のしたほうへひたすら走った。走って走って走りまくった。

 

 

 

 

 

 

「なあ、コイツどうやって食うか?」

「ふつう焼くだろ?」

「丸かじりってのもアリかもよ」

 

トカゲのようなモンスターは僕をどう食べるかどうかで議論している最中だ。

この隙に逃げられれば……。

 

ひたすら体を動かしてバランスを取り、ジャンプしながら逃げるという作戦でまずは体のバランスをとる。体をモジモジさせていき……、

 

「よし、体が起き上った。」

 

小声でそう呟き、ジャンプしながら逃げ出す。

だが、

 

「うわッ!!」

 

 

……運悪くバランスを崩してしまった。

 

 

「ん? ……コイツ、逃げようとしてたのか」

「油断も隙もない奴だな」

 

転んだ拍子で声が出てしまい、逃げようとしたことがバレてしまう。

 

「あ……、あ……」

 

情けない声を出しながら、僕は更に戦慄した。

このままじゃ、確実に食べられる、そう思ったとき……、

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おっと、そこまでだ」

 

聞き覚えのある声が。その声の主は、

 

「ソ、ソニック!!」

 

そう、ソニックだった。彼が来てくれるだけで安心した気持ちになった。

もう、僕は戦慄なんてしていなかった。

 

「何だ? オメェ、コイツの仲間か?」

「何でもいい、やっちまえ」

 

すると、ソニックは体をボール状にして、彼の最も得意なスピンジャンプで攻撃する。

体をボール状にしながら目にもとまらぬ速さで次々とモンスターを薙ぎ払っていく。

僕は、相変わらずすごいと思った。

 

「悪いが、やられるのはアンタ達のほうだ」

 

気付いた時には、モンスターは全員気絶していた。

しかし……、

 

 

 

「……よくも、オレ様のかわいい子分たちを虐めてくれたなぁ」

 

ホッとしている僕たちの目の前に、今度は灰色のドラゴンが現れる。

 

「こ、こいつ等、僕を食べようとしてたんだよ!?」

 

僕は慌ててそう言ったが……、

 

「問答無用ッ! 子分を倒した青い奴はここでくだばれ!!」

 

そう言ってそのドラゴンは、ソニックに襲い掛かる。

いかにも鋭そうなその爪がソニックに振り下ろされる。

 

「ソニックッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バーンッ

 

「ウ……」

 

突然そんな銃声が響き渡る。

よく見ると、灰色のドラゴンは背中に傷を負っている。

一体、どこから攻撃したのか、そもそも何があったのか。

僕は辺りをキョロキョロした。そして僕の視界の右上に……、

 

 

「こんな時代に、よく外をウロウロできたな」

 

その声の主は、赤い体色をしており、軍服を着用した2足方向のドラゴンって感じの容姿だ。ただ、顔と手以外は身長170㎝の人間に近い体つきをしている。そして銃を持っている。恐らくさっき銃を撃ったのは彼だろう。

 

「アンタ、何者なんだ?」

 

ソニックは少し睨むような目で彼を見つめながら言う。

 

「俺か? 俺はクロスファイアだ。」

 

クロスファイアというドラゴンは、いきなり体を変形させて灰色のドラゴンに襲い掛かる。

変形後は、体が3mくらいまで巨大になり、体色も赤と茶色と黒を基調としたものになり、翼も生えてきた。

 

「……ちょっとばかり、遊んでやるぜ」

 

クロスファイアってドラゴンはそれだけ言うと灰色のドラゴンに攻撃を始めた。




エッグマン、完全にかませでしたね。
エッグマンなんていなかったんだ(多分)


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Episode2 プロローグ(side:クロスファイア)

ある荒野で俺はある人物の帰りを待つ。

 

「相変わらず殺風景だな、ここは」

 

俺がいるこの荒野は、ある悲劇が起きてから殺風景なものと化した。

夕方になって風は強く吹き、その風に砂が大量に混ざっている。そのせいで周りはまともに見えず、天気は晴れることもなく、茶色い空が辺り一面を覆っている。

 

 

「……おーい!!」

 

そこにある声がする。

その声の主は俺の友人ヨルムンガルドだ。

 

「どうだ、ヨルムンガルド。手掛かりは見つかったのか?」

 

そう、俺達はある手掛かりを求め、旅をしている。

その手がかりとは何かというと……、

 

 

「すまねぇ、見つからなかった。……このままじゃ、戦争はさらにエスカレートしてしまうというのに」

 

この世界で起こっている戦争をくい止める為の手がかりだ。

だが、2年近く旅をしている今でも手掛かりはほとんど掴めていない。

戦争への苛立ちかヨルムンガルドは唇をかみしめ、手も強く握りしめる……。

 

「あぁ、このままじゃこの世界は戦争によって取り返しのつかないことになる。だから絶対に俺たちの手で戦争を……」

 

俺はヨルムンガルドにそう言い聞かせる。

そして背中に背負っていた大きいリュックサックテントと携帯用の折り畳み式イスを出し、それらを広げて野宿の準備をする。

 

「…腹が減っては戦はできぬ。さあ、食えよ」

 

そう言って俺が出したのはキムチ。

こいつは俺の大好物で非常食用に常に何個も持っている。

 

「……そうだな。サンキュ、クロスファイア」

 

ヨルムンガルドはそう言い、キムチを手に持ち、食べる。

 

「相変わらず辛過ぎるだろ、これ」

 

そう言って舌がヒリヒリした顔を見せ、涙目で俺に訴えてくる。

まあ、いつものことだから俺的にはどうしたという話ではあるが。

 

「仕方ねーよ、俺に合うやつそれしかねぇんだから」

 

そう言いながら俺はキムチを一口食べた。

シャキシャキした食感と唐辛子がきいた辛い味、これ以上に俺を魅了した食べ物はない。

 

「……まぁ、キムチ生活にも慣れたからいいけどよ」

 

「何だよ、それって俺が強引に食わせたって言い方じゃねぇか」

 

「まるっきり、その通りだけどな」

 

「うるせぇ」

 

こうやって、皮肉混ざりで話しながら俺達は一夜を過ごした。

深夜にもなるころにはさらに暗くなり、何も見えなくなり辺りが真っ黒に染まるが、朝が近づくにつれて空は少しずつ明るくなり、俺が目を覚ましたころには……、

 

「う~……ん、相変わらずいい朝だな」

 

戦争が起きているにも関わらず、この瞬間に映る風景だけはとても綺麗だ。

東の岩山から太陽がおはようと言わんばかりに美しく光っており、今日も1日頑張ろうって気持ちにさせてくれる。

 

「う~ん、もう朝か……。ふわぁ……」

 

そしてヨルムンガルドも目を擦り、大きくあくびをしながら体を起こす。

 

「起きたか、出発するぞ」

 

そう言って、俺はすぐにテントと折り畳み式のイスを畳み、大きなリュックサックにしまう。そうしてパンパンになったリュックサックをまた背負う。

 

「相変わらず出発するの早えよな」

 

そんな様子を見たヨルムンガルドは、ボソッと呟く。

しかし、そんなことは気にせずに俺は黙々と作業を続ける。

やがて作業も終わって俺は、

 

「行くぞ」

 

それだけ言って俺達は再び歩き出した。

 

 

「……なぁ、今日はどこ目指して歩くんだ?」

 

ヨルムンガルドは俺にそう聞いてくる。そういえば、そんなことあまり考えてなかったっけ。

 

「……」

 

俺は思わず言葉を濁らせる。

 

「おいおい、今日も目指す場所決めずに歩くのかよ。……まぁ、いいけどさ」

 

ヨルムンガルドは呆れた顔で俺にそんなことを言う。

目的地も決めずに旅するのが俺の……、俺達のやり方だ。

 

 

そしてしばらくは何も話すことなく、黙々と歩き続けた。

ヒューッと吹く風と歩くたびに聞こえる足音だけが俺の耳に入った。

 

 

そしてあっという間に昼はやってきて、爆音や銃撃音が聞こえるようになる。

そんな中、俺達は昼飯をとることにした。

 

「あ~、疲れた……」

 

ヨルムンガルドは四つんばいになり、頭を地面に向けながらそう言う。

 

「何言ってんだよ、食った後もまた歩くんだぞ?」

 

俺は、微笑しながらそう言い返す。

そしてリュックをおろし、中から折り畳み式イス2つを取り出し、イスの形に広げる。

 

「さぁ、今から食うぞ。ほれ、今回のキムチ」

 

俺はまたキムチを取り出し、ヨルムンガルドに手渡す。

よっぽど腹が減っていたのか彼は、すぐに蓋を開け、キムチを頬張る。

 

「うん、辛いな」

 

いつも通り辛いって顔をするが、不満そうな顔はしていない。

やがて、俺達は昼飯を食べ終え、再び歩く準備をしようとしたときだった……。

 

「う、うわーーー!!!」

 

ヨルムンガルドは突然悲鳴をあげた。

何かあったのかとすぐに振りかえると……、

 

「おい! ヨルムンガルド!!」

 

ヨルムンガルドは崖から足を踏み外してしまい、崖から突起している部分を掴んで辛うじて落ちてはいなかったが、その突起はかなり脆く今にも砕けそうだった……。

 

「今助けるぞ!!」

 

すぐに手を出してヨルムンガルドを掴もうとしたが、僅かに届かなかった……。

そして予想していた最悪の事態は起こってしまう。

 

 

「う、うわーーー!!!」

 

掴んでいた突起部分が体重で砕けてしまい、ヨルムンガルドは底が見えない暗闇に吸い込まれるように落ちていってしまった……。

 

 

「ヨルムンガルドーーォッ!!!!」

 

ヨルムンガルドが落ちてしまい、俺は大きく絶望し、涙を多く流す。

胸が裂けそうで、体が震える。

 

 

 

 

 

そしてその悲劇が起こってから半年後……、

 

「なぁ、ヨルムンガルド。アンタは一体今どこにいるんだろうな……」

 

俺は、レイジング・ブルと呼ばれる俺の故郷の街へ帰っていた。

しかし、帰ったところでヨルムンガルドを失ってできた傷が癒えるはずもない。

 

 

「……行くか」

 

そう言って俺は歩き出す。

手をズボンのポケットに突っ込みコツコツと音を立てながら歩き、やがて動きを止める。

そこは、カジノだった。そこはいつも騒がしく、外までその音が聞こえる。

しかし俺はそんなことは微塵も気にせずにドアを開け、中へ入る。

 

 

「ヒィ! クロスファイアが来たぞ!!」

「ヤベェよ、今日は誰が餌になるんだ!?」

 

このカジノの常連はライオンに目を付けられたウサギのようにおびえたような顔で俺を見る。

 

「……チッ」

 

そんな様子を見て、苛立ちを覚えつい、舌打ちをしてしまう。

そして俺は客の適当な奴を1人選んで指を差し、こう言い放つ。

 

「……今日は、お前だ。」

 

するとその客は……、

 

「えーマジ!? 俺に勝負挑むのwww? 今の俺チョーついてるからやめとけってwww」

 

……なんだコイツ、頭おかしいこと抜かしやがって。

そう心の中で思い、殴りたい衝動を抑えながら俺はアーケードレースゲームに向きながらそいつにこう言う。

 

「……今回は、レースゲームで勝負だ。始めるぞ」

 

俺はそう言ってゲーセンにあるようなアーケードレースゲームの椅子に腰を掛ける。

人間が住んでる世界じゃ、カジノは運要素が強いらしいがここは実力の要素が強い。

指名した客も椅子に腰を掛け、お互いレースの用意をする。

 

「5、4、3、2、1、Leady Go!!」

 

ゲーム機からそんな音声がすると同時に俺と客のカートが走り出す。(ゲーム内では)

最初はお互いほぼ互角でカートが並ぶ状況が続いていたが……、

 

 

「……フン」

 

俺はそう鼻息を出す。同時にカーを少し減速させる。

相手は調子に乗ってスピードを上げカーブに入ろうとしたとき……。

 

 

「……くたばれ!!」

 

コースの端に走っていた相手めがけて猛スピードで走り体当たりをする。

相手は見事に弾き出され、コースの外に泥水に着水してしまう。

 

「何ッ!!?」

 

泥水に使った相手のカーは簡単にはコースに復帰できず、その隙にそのカーを抜かしゴール。

 

 

「チキショー!!!」

 

相手はそう言って悔し泣きするが、俺はそんな様子など見向きもせずに賭けに勝って得た金だけを手にしてカジノを出る。

 

 

「今回はまずまずか……」

 

今回得た金額は2万5千円。

最近はカジノで只管勝負に勝っては金を得るという生活になっている。

 

「……コイツでも買って帰るか」

 

近くの24時間営業のスーパーで適当にキムチを手に持っていた金で買い、スーパーを出る。

そういえば、人間世界にもスーパーとかコンビニとかがあった気がするのを思い出す。

 

そして家へ帰り、リビングの電気をつける。

木造の家で玄関から入ってリビングがあり、キッチンとトイレと風呂、寝室がある程度の少し小さい家だ。家の雰囲気が少し古臭く、傷が多いので周りからは貧しそうと哀れまれているが、実際はカジノで毎日3万、多いときは5万近くは得ているので生活に不自由はない。

 

「……はぁ」

 

そうため息をつきながらベッドに横たわる。俺はヨルムンガルド以外に友人はいない。

厳密にはアリスという友人もいたが、現在は連絡がとれていない。

いくら金があったところで彼を失ってからは、嬉しいとは思ってもそれで心が満たされたと思ったことは無い。

そして俺は目を閉じ、眠った。

 

 

 

 

「ふわ~……」

 

翌日、俺は拳を握り、腕を真っ直ぐにあげながら目を開けて起床した。

だが、時間は午前11時45分。よくあることだ。何せ昨日、いや今日寝たのは深夜4時だからだ。

 

「……暇だ。散歩にでも出よ」

 

うん、ホントに暇だ。いつものことだが。

そう思った俺は、散歩に近くの森まで歩くことに。歩いて30分位だが暇つぶしくらいにはなるだろうと思い、外へ出る。

 

 

「……戦争か」

 

歩き出してしばらくすると、爆音や銃声等が聞こえるようになる。

昼間の時間帯になると戦争はピークを迎える。何でこの時間帯なのかは俺も分からない。

すると……、

 

 

 

「……よくも、オレ様のかわいい子分たちを虐めてくれたなぁ」

 

森に入ろうとしたとき、森奥からそんな声が聞こえる。

 

「何だ?」

 

散歩する方角からは外れるが、気になって仕方がないので声がした森奥のほうへ入っていく。

 

 

「こ、こいつ等、僕を食べようとしたんだよ!?」

「問答無用ッ! 子分を倒した青い奴はここでくたばれ!!」

 

そんな会話が走るたびにどんどんはっきりと聞こえてくる……。

 

 

「ソニックッ!!」

 

そんな声がすぐそこで聞こえた。どうやら絶体絶命のようだ。

そして俺は……、

 

 

 

バーンッ

 

 

「ウ……」

 

ズボンの中に隠していた拳銃を手に、「青い奴」を襲おうとした灰色のドラゴンを撃った。

そして「青い奴」こう言い放つ。

 

「こんな時代によくウロウロできたな」

 

するとそいつは少し俺を睨むような顔でこう言う。

 

「アンタ、何者だ?」

 

……ハハッ、ごもっともだな。

思わず微笑しそうだった俺もそいつにごもっともなセリフを言う。

 

 

「俺か? 俺はクロスファイアだ。」

 

そして全身に力を込めて、俺のもう一つの姿というべき戦闘形態に姿を変える。

「青い奴」の身長は100㎝くらいだから今の俺はそいつの3倍の身長だろう。

だがそんなことはどうでもいい。ちょうど暇だったんだ。退屈しのぎに暴れさせてもらおうか。

 

「……ちょっとばかり遊んでやるぜ」

 

そう言って俺は灰色のドラゴンに攻撃を始めた。




今日のカレー美味かった。(関係ないけど)
クロスファイア、カードのイラストは結構カッコいいです。個人的に。


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Episode3 青い風(ソニック)と業火(クロスファイア)

「オラオラ、どうした? それで終わりか!?」

 

突然、俺たちの目の前に現れたクロスファイア。

アイツは、今灰色のドラゴンと戦っている。

…だが、それはクロスファイアの一方的な暴力にも見えた。

 

「お、おのれ……、このガラムタ様をここまで追い詰めたのはお前が初めてだ。」

 

「ああ、思い出したぜ。おめぇ、ガラムタっだったけな」

 

灰色のドラゴンの名前がガラムタだということがここで判明する。

するとガラムタは……、

 

「……こうなったらオレ様の本気を見せてやる」

 

 

ガラムタは息を大きく吸い込む。すると、さっきまで俺たちの後ろで倒れていた緑のトカゲみたいなモンスターが消滅して黄色く光る粒になる。その粒はガラムタへ吸収されていく。

 

「うおーー!!」

 

ガラムタは大声を上げ、どんどん大きくなっていき、ガラムタの周りに眩しい光が発生し、俺達は目を覆う。

 

 

「グルルルル……」

 

眩しい光が収まったときには視界が灰色で覆われていた。

上を見上げてみると、巨大なガラムタの顔が俺達を見下ろしていた。

そう、ガラムタは自身の子分である緑のトカゲみたいなモンスターを吸収して巨大ななったのだ。

 

「で、デカッ!!」

「Oh! そんなのアリかよ!!?」

 

 

俺とテイルスは思わず声をあげる。あんなの見たら誰だってそう思うはずだ。

 

「……」

 

だが、肝心のクロスファイアは全く驚きを見せない。

それどころか、悪い笑顔で潰してやるぜと言わんばかりの笑みを浮かべている。

 

 

「おぉ、力が漲る……、漲るぞ!!」

 

すると、クロスファイアは……、

 

「……一瞬で終わらせてやる」

 

 

 

……それだけ言って大きな翼をはばたかせて飛ぶ。

そして肩に赤いエネルギーを充填させる。

 

「これでも喰らえ、ミリオネアバーストッ!!」

 

そしてそのエネルギーがもの凄い速さで2本の線を描くよう真っ直ぐに飛んでいく。

そのすごく赤く光線とクロスファイアの戦い方は、どこか煮え滾る業火のようにも見えた。

 

 

「グボォ!!」

 

そしてその光線はガラムタを貫通する。ガラムタは体が元の大きさに縮み、倒れる。

……ホントに一瞬で終わらせた。

 

「あー、久々に暴れられてスッキリした! ……ところでおめぇらさ、何でこんなところにいるんだよ。」

 

クロスファイアは元の姿に戻り、唐突に俺達にそんなことを聞く。

答えない理由も特にないので事情を説明する。

 

 

「……俺達、変な扉に巻き込まれて気がついたらここにいたんだ」

 

すると、クロスファイアは目の色を変える。

 

「その扉って黄色くて枠と模様が黒かったか!?」

 

彼は声のトーンをいきなりあげてきながらクロスファイアは俺に問い詰める。

 

「アンタ、……俺達が見た扉のことを知ってるのか?」

 

俺はびっくりして思わずそう答える。

すると、クロスファイアからある事実を知らされる。

 

「知ってるも何も、その扉を知らない奴なんていないだろ!? 不定期に現れてはクリーチャーを吸い込んで行方不明になる事件がよく起きてるだろ?」

 

 

「ちょっと、待て。……そもそも「クリーチャー」って何だよ!?」

 

いきなり、「クリーチャー」っていう言葉が出てきて俺は困惑した。

クロスファイアは呆れた顔で俺を見る。

 

「は!? クリーチャーって俺らのことだろ!? ……アンタまさかこの世界の住民じゃないな?」

 

クロスファイアは早口で人差し指を俺に向けて指しながら話す。

 

「まぁ、そういうことになるな」

 

クロスファイアはため息をつき、頭を抱える。

……何か俺達が非常識みたいな顔もしている。何もそんな顔しなくてもいいのにと思う。

 

「どうやら、ホントにこの世界の住民じゃないみたいだな……。「クリーチャー」ってのはな、この世界の住民のことを差すんだ。お前らの世界の住民を「人間」と指すようにな」

 

クロスファイアは今、「人間」と言った。

聞いた感じ、俺達の住んでる世界にもある程度は知っているようだ。

すると……、

 

「ん? おい、あれひょっとして人間じゃねぇのか!?」

 

俺達は後ろを振り返ると、そこには人間の少女がいた。

金髪のボブヘアーに赤いリボンを結んでいる。海のような青いワンピースを着ており、それに淡い緑色のパンプスを履いている。

 

「だけど、この女の子ボク達は知らないよ?」

 

そう、テイルスの言うように彼女とは面識が一切ない。

どうやってここに来たのかは知らないが、俺達のように扉に吸い込まれたここに来た可能性が高い。

 

「……とりあえず俺の家に運ぶぞ」

 

クロスファイアはすぐにその少女を背中に乗せて走り出す。

俺達もそれに続く。

 

 

「この世界じゃ、おおむね2つの勢力が争ってるんだ。ドラゴンとオラクルだ。あいつ等はどういう理由があるかは知らないが、5年くらい前に争いだしたんだ。」

 

クロスファイアが向かう途中。

彼はこの世界で起こっている事を話す。戦争とはまた物騒な話である。

 

「じゃ、5年も前からずっと戦争が起こって、死人も多いのか?」

 

すると、クロスファイアは意外な事実を俺達に話す。

 

「いや、戦って死んだ奴はいるが、巻き込まれて死んだ奴ってのは聞いたことがねぇな。この世界の住民は皆、爆風やミサイル1発程度じゃ死なない程の体なんだ」

 

クロスファイアは一旦言葉を区切ってまた話し出す。

 

「……だが、このままじゃ戦争によって農作物や水と言った食物とかは全部やれれて、……食うものが無くなって死ぬ。こうなってクリーチャーが絶滅するのは時間の問題だろう」

 

 

クロスファイアは瞳の潤いが完全になくなった目で俺達に話す。多分死ぬのが怖いのだろう。

俺だってそんな立場ならきっと同じ顔をしてたはずだ。

 

「そうか……、ならそんな戦争、俺が終わらせようか?」

「何? お前等には関係ない話だろ? とっとと扉でも見つけて帰るんだな」

 

俺はクロスファイアにそう言った。

だが、彼は完全に相手にせずに払いのける。

 

「ちょっと!! そんな言い方しなくていいでしょ!!?」

 

テイルスはクロスファイアの言動が気に食わなかったのかそう反論する。

すると、クロスファイアは……、

 

「あん!? 今じゃこの世界は、戦争が起こってるのを忘れたのか!! お前、さっき食われそうだっただろ? この世界じゃそれ以上に獰猛で、凶悪な奴なんか腐るほどたくさんいるんだぞ!! 脆いお前等じゃあっという間にそいつ等に飲みこまれるのがオチだ。 ……悪いことは言わねえ、とっとと帰る当てを探すんだな」

 

鼓膜が破れるかと思うほどの大声で長々とテイルスにそう言い返す。

今の話が本当だとこの世界って相当ヤバい所だなと思った。

 

そして俺達はクロスファイアの家へ着く。

 

「いいか? 絶対にここから出るんじゃねぇぞ? あと、カーテンも開けるなよ?」

 

家へ入った途端、クロスファイアは至る所の窓と青いカーテンを閉め出してそう言う。

 

「お、おう……」

 

俺は思わず、硬直したようにそう言い返す。

その直後、クロスファイアはバタンと大きい音を立てて家を出て行った。

 

 

 

「全く、戦争もピークになってきてんじゃねぇか……」

 

俺は、もうすぐこのレイジング・ブルも戦争がピークになるだろうとアイツらを家に入れたが、まるっきし監禁みたいだなと思った。

だが、アイツらをこの世界の戦争に巻き込んだら確実に死ぬ。そう考えたらこうするのが妥当だろう。

 

 

「ククク……、今日こそレイジクリスタルを渡してもらいます」

 

聞き覚えのある声が後ろから聞こえる。

後ろへ振り替えると……、

 

「大人しくレイジクリスタルを渡せば、今後は一切手を出さないと約束しましょう。ドラゴン軍が攻めてきたときも護衛します」

 

ゾロスターだった。赤と白い髪に白を基調としたローブを着た好青年な容姿だ。

コイツはオラクル軍のクリーチャーで「策士」「卑怯者」として名が知れている。最近は、アウトレイジが長年大事にしている「レイジクリスタル」と呼ばれる鉱石をよこせとしつこく要求してくる。

 

「……何度来たって一緒だ、断る」

 

レイジクリスタルが無くなればレイジング・ブルは瞬く間に動力源を失い、電気も水も流れなくなる。冗談じゃない、それだけ重要なものを安々と渡すはずがない。

 

 

「……そうですか、では死んでもらいます!!」

 

そう言うとゾロスターは不意打ちで雷魔法を放ってくる。

まともに受けてしまい、痺れて動けなくなる。

 

「どうしました? 情けない動きですね。……炎魔法!!」

 

体が痺れているせいでまともに動くこともできなければ、戦闘形態にもなれない。

それをいいことに魔法攻撃を連発するゾロスター。……さすが「卑怯者」と言われるだけのことはある。

 

「グッ……」

 

魔法攻撃をまともに連続で受けたせいで俺はその場に倒れてしまう。

意識が薄れていき、目に映る景色やゾロスターもぼやけて見える。

 

「……ククク、もうおしまいですか? 戦闘能力が高いと知れた貴方がその様では話になりませんね」

 

ゾロスターの奴はゴミを、家畜を見る目で好き放題俺を煽りつける。

だが、既に俺は動けない状態にまでダメージを受けている。奴の言葉を飲み込む他ならない。

 

「……そろそろレイジクリスタルを渡す気になりましたか? 渡す気がないなら……、ここで死になさい!!」

 

 

ゾロスターが止めの一撃を放とうとする。

体が動かない。意識が薄れる。景色がぼやけて見える。こんな状態ではとても……

 

 

 

 

 

……そう思った時だった。

 

「ん?」

 

ゾロスターが何か異変を感じた。

その直後に青いリングが猛スピードで回転しながらゾロスターめがけて飛んでくる。

その様子はどこか青い風のようにも見えた。

 

「なんだ!? あれは。ええぃ、魔法で消し去ってやる! 雷魔法!!」

 

ゾロスターは魔法でそのリングを攻撃する。

しかし、それをいとも容易く避けるそのリングはゾロスターにぶつかる。

 

「ゴブゥ!!」

 

ゾロスターの腹にまともに直撃し、奴はお腹を抱えるように体勢を崩す。

そしてリングの回転が止むと……、

 

「お前……、何でここに!?」

 

 

そう、さっきまで俺の家にいた青いハリネズミだった。

 

「……って、俺の家にいろって言っただろ!?」

 

「Sorry. ずっと家にいると妙に窮屈だったからな。それにそんなにボロボロじゃ、今の言葉も俺達が軟だからクリーチャーに飲まれるって話も説得力ないぜ」

 

コイツ、中々生意気なこといってくれんじゃねぇかと俺は心の中で思った。

ちょうど、コイツがどれだけ軟じゃないかも知りたい。

そう思えてきたら、痺れが無くなって、意識も戻ってきて、目もまともに見えるようになった。

 

「……言ってくれるな。アンタ、名前は?」

 

「俺か? 俺はソニック。ソニック・ザ・ヘッジホッグさ」

 

「ソニック・ザ・ヘッジホッグか……。面白れぇ、どれだけ軟じゃないか見せてもらおうじゃねぇか。ソニックさんよ!!」

 

戦闘形態になり、俺とソニックは共にゾロスターへ反撃を始めた。




ソニックが風と例えられているとウィキペディアに書かれているのを見ました。ならクロスファイアは業火なんじゃないかなと思った俺です。


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Episode4 謎の少女saya

「とっとと、片をつけてやるぜ、ソニック!」

 

ゾロスターと戦い始め、最初は奴の策略にまんまと嵌められてしまい、大ピンチに陥ったが、ソニックがやってきて、ようやく戦えるようになった俺は現在、ソニックと共にゾロスターと戦っている最中だ。

 

「All Right! 早く終わらせたいからな」

 

「何をゴチャゴチャ言ってんですか、……雷魔法!!」

 

ゾロスターはすかさず雷魔法を放つ。

あれに当たればダメージを受けるだけでなく体が痺れて動けなくなる。

だが……、

 

 

「……同じ手は二度と食わないぜ!! ゾロスター!!」

 

一度見て避ける術をとっくに見抜いていた俺には意味がない。

 

「これでも喰らえ!!」

 

「消え失せろ、ミリオネアバースト!!」

 

 

そしてゾロスターにめがけて俺は必殺技のミリオネアバーストを、ソニックはさっきと同じように体をボール状にして体当たりする。

 

「……ゴブゥッ!! お、おのれ……、覚えていなさい」

 

ゾロスターに2つの攻撃が直撃した。うん、かなり痛そう。

大ダメージを負い、戦えなくなったゾロスターは霧魔法で目をくらます。

 

「おい、待てッ!!」

 

思わず声を出す俺だが、一瞬でゾロスターの姿が見えなくなった。

 

「逃げられたか……」

 

「だが、とりあえずこの場は何とかなったな。クロスファイア」

 

体力を使い果たし、俺は元の姿に戻り、仰向けになって倒れる。

 

「そうだな、……しかしお前案外やるじゃねぇか。脆いとか言って悪かったな」

 

「No Problem. もういいだろ? そんなこと」

 

ソニックは俺と同じ様に仰向けになりながら、呑気げな顔でそう言う。

 

「ハハッ。なぁ、俺達ってどっちかがピンチになると現れる。……似た者同士なのかもな」

 

「さぁ、どうかな。だが、今回は久々に力んでもう動けねぇや」

 

お互い笑いあい、仰向けになりながら、俺達はそんな会話を交わす。

そして、体力を完全に使い果たし、……目を閉じた。

 

 

 

 

 

「……ニック、ソ……ニック、ソニック!!」

 

テイルスがソニックの名を呼んでいる。しかし、意識がまだ目覚めてないせいかその声はぼやけて聞こえてしまう。

 

「……ここは……? 俺はいったい……」

 

俺は体を起こして、朝しばらく寝ぼけてからシャキっと目が覚めるように意識が目覚める。

ここは俺の家だ。

 

「そうか、俺ソニックと仰向けになってそのまま気絶していたのか」

 

 

「……目が覚めましたか?」

 

すると、後ろから聞き覚えのない少女らしき声が聞こえる。

だが、疲れがまだ取れてなく、後ろを向くのも面倒なので前を向いたまま話す俺。

 

「まぁな、だが傷がまだ完治してないがな」

 

「じゃあ、私の魔法で回復させますね」

 

「お、そんじゃ頼むわ」

 

魔法をかけてくれるといい、どんなものか気になった俺は後ろを向く。

そこには……、

 

 

 

「よーし、じゃ早速魔法を…………ってえー!!! お前あの時の!!」

 

「もう! そんなに驚かなくていいじゃないですか!?」

 

俺がソニックと出会った森に倒れていた少女だった。

金髪のボブヘアーに頭の横に赤いリボンを結んでいる。更に海のような青いワンピースに淡い緑のパンプスを履いている。

 

「お前、なんか変な扉に巻き込まれてここに来たんだろ?」

 

俺はソニックと同じようにそんなことを聞く。

だが、

 

 

「うーん……、ごめんなさい。私今までの記憶がないんです……」

 

「記憶がない」そんな答えが返ってきた。一瞬、頭がポカーンとなる。

 

「じゃ、どこに住んでたのかのも、家族の顔も、好きな食い物も、名前も忘れたってのか!?」

 

「あ、名前と好きな食べ物なら覚えてますよ。言うのが遅くなったんですけど、私『saya』って言います。それで、好きな食べ物は紅茶とかタピオカとかミルクティーとかです」

 

「タピオカ!? 何だそれ」

 

人間世界についてはある程度知っているつもりでいたが、タピオカなんてものは聞いたことがない。

 

「あ……、目が覚めましたか?」

 

そこに黄色いキツネが割って入る。

そういえばまだ名前を聞いてなかったなと思いだし、俺は名前を聞く。

 

「なぁ、そういえばアンタ、名前は?」

 

「ボクはテイルスです。ソニックとは昔からの付き合いです」

 

彼がテイルスと言う名前だと知った俺。

ただ、2人とも敬語を使うせいで妙に慣れない空気を感じる。

 

「……なぁ、2人ともそう畏まるなよ。窮屈じゃねぇか……」

 

すると、ドアがバタンと音を立てる。

一体誰が入ってきたのかと気になった俺は玄関に向かう。

 

「何だ? 風でも吹いたのか?」

 

すると……、

 

 

 

「……兄貴ーッ!!!」

 

「な、何だ!? おわーッ!!」

 

突然、誰かが猛スピードで走ってきてぶつかってしまう。

頭を打ってしまった俺はあと少しでまた気絶すろところだったと思った。

 

「イテテテ……、何なんだよもう」

 

「兄貴!! 大変ッスよ!! 巨大な戦艦を見つけたッス!!」

 

「うるせぇな。お前に兄貴と言われる筋合いはねぇ」

 

コイツはキューブリック。

俺達アウトレイジと呼ばれる種族の中でもかなり腕の利くメカニックとして名が知れている。

ただ、コイツは俺のことを兄貴と呼んでくるので鬱陶しい。

 

 

「……ねぇ、その戦艦、ひょっとして森の方になかった!?」

 

すると、テイルスが慌てた様子でキューブリックにそう聞く。

 

「そうッスよ? もしかしてその戦艦のこと知ってるんスか?」

 

「うん、宇宙船ブルータイフーン号はボクが造ったものなんだ」

 

ここで驚愕の事実が明らかになる。

テイルス、容姿からして年齢は幼いはず。なのに戦艦を造り上げたことが俺には信じられなかった。

 

「……でも、動力源はカオスエメラルドっていう宝石を考えていたんだ。それがないんじゃ動かすこともできないよ」

 

 

 

「……だったら、レイジクリスタルを使ってみたらどうッスか?」

 

キューブリックはレイジクリスタルを使うことを提案する。

確かに神秘のエネルギーを秘めているあれなら宇宙船の動力源の代わりくらいにはなる。

 

「レイジクリスタルって?」

 

当然、レイジクリスタルを知らないテイルスとsayaはそう声を揃えて言う。

 

 

「レイジクリスタル、それはアウトレイジが長年守り続けてきた伝説の宝石」

 

「それを使えばあらゆる機械の動力源になり、鍛冶屋では剣などを大幅に強化できるんスよ」

 

しかし、キューブリックは声のトーンを下げ、顔の表情もどこか悲しげなものになる。

 

 

「……だけど、レイジクリスタルはあまりに需要が高くそれを巡った戦争も少なくなかったのも事実なんス。この世界じゃ、今大きい戦争が起こってるのはもう知ってるっスよね?」

 

「うん」

 

「はい」

 

sayaとテイルスはそう頷く。

テイルスにはもう話したし、sayaも恐らくテイルスから聞いたのだろう。

 

「オラクルもドラゴンも武器強化や戦艦の動力源のためにレイジクリスタルを狙ってやってくるんス。今はまだいいんスけど、いずれ大軍団にもなって攻められたらこの街は終わりッス!!」

 

キューブリックの言うとおり、レイジクリスタルが鉱山ごと奪われたらこの街は動力源を失い、荒廃してしまう。

 

 

 

「……だったら、終わらせましょう!!」

 

すると、sayaがそう言う。

その目はかなり真剣で、瞳は嘘偽りないといわんばかりに透き通っていた。

そういえば、ソニックもそんな事言ってたっけ……。

 

「だが、ソニックはどうする? まだ起きてないんだろ? 行くのは明日にでもするか?」

 

そう、ソニックはまだ目を覚ましていない。

置いていくわけにもいかないと判断した俺はそう言う。……もっとも、そう判断したのは俺だけじゃないというのは分かりきっていたが。

 

そして俺達はキューブリックも含めてリビングに戻る。

するとsayaは唐突にこんなことを言う。

 

 

「じゃ、私の魔法で傷を治すね」

 

sayaは、そう言った。

……ん? 待て、今『魔法』が使えることをしれっと言いやがったぞ。

 

「アンタ、魔法使えんかよ!?」

 

「うん!!」

 

自慢げに誇らしげな顔でsayaはそう言う。

おいおい、コイツ只者じゃないだろと心の中で思った俺。

 

「ま、まぁ、傷が治せるならそれに越したことはねぇ。頼むわ」

 

とにかく、今は細かいことは考えないようにしよう。

全身がとにかく痛くて傷が出来て沁みて、たまったものじゃない。

 

「じゃ、いくよ。 ……プレア・ティフ!!」

 

手のひらを俺に向けてそれを重ねながら、魔法名らしき言葉を叫ぶsaya。

すると、白い光がsayaの手から現れて、俺を包みこむ。

 

「ん? 何だ、この光」

 

俺は光に包み込まれているのを実感する。

意識を集中しているのかsayaは目を閉じている。

光に包まれてから2秒くらいして体に異変を感じる。

 

「……お!? 痛みがどんどん引いてくぞ?」

 

信じられないことにさっきまで痛くてたまらなかった全身に感じる痛みが、どんどん引いていくのを感じる。またしばらくすると……、

 

 

「痛みがなくなった……。すげぇ!! これならまた大暴れできるぞ!!」

 

痛みが無くなり、興奮する俺。

正直、あまり興奮はしないが、一度興奮したらしばらくは収まらないタイプだって前にヨルムンガルドに言われたことがあったことを思い出す。

『ヨルムンガルド』……?

 

 

「……」

 

「ど、どうしたの? クロスファイア」

 

『ヨルムンガルド』って友人の名前を思い出してしまい、高ぶっていた気持ちは空気が抜けた風船のようにどんよりと落ちてしまう。全身の痛みが治ったというのにそれ以上に沁みる心の傷が新たにできてしまった。

 

「……いや、なんでもねぇよ……」

 

俺が発した声は明らかに情けない感じになっている。

そして俺はベッドへ向かう……。

 

 

ヨルムンガルドが崖に落ちそうになり、必死に手を伸ばすが、そのまま彼が崖に飲み込まれるように落ちてしまった。トラウマともいうべき光景が俺の頭でフラッシュバックされていく……。

 

 

「ヒック、……エック!!!」

 

泣き声がソニックのいる寝室中へ響くが、ソニックはどうせまだ目を覚まさない。

泣いていることはバレないだろう。

 

「ヨルムンガルド……。なぁ、ホントにアイツは死んじまったのかよ……」

 

抱いている悲しみが抑えきれないあまり、そんな言葉が思わず漏れてしまう。

俺はヨルムンガルドが死んだことがいまだに受け入れられていない。

すると……、

 

 

 

「……なぁ、クロスファイア。どうやらアンタ何やら訳ありっぽいな」

 

さっきまで俺に背を向けて寝ていたソニックが目を覚ましてしまう。

……最悪だな、情けない所を見せてしまう羽目になるとはな。



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Episode5 業火な奴は訳ありで

「ソニック、お前さっきまで寝てただろ!?」

 

前回、俺は泣いているところをソニックに見られてしまい、最悪な気分でいる。

泣いているせいで今は多分、俺の目は充血しているはず。

 

「Sorry. 悪いな、悪ふざけで寝たふりをしてたが、アンタが泣いてるのを見て起き上がれずにはいられなかったんだ」

 

ソニックの奴、今まで嘘寝してたのかと普通なら呆れる俺だが、何せ状況が状況だ。呆れることを俺は忘れてしまっている。

 

 

「なぁ、クロスファイア。アンタ一体過去に何があったんだ?」

 

するとソニックの雰囲気が気楽でおどけた様子から一変、シリアスな様子になり、目つきも鋭くなる。

 

「……何でアンタに喋らなきゃいけねぇんだ?」

 

しかし、プライドが弱さを見せるのを嫌うせいで俺はそう言ってしまう。

 

 

 

「……だったら、言わなくてもいいんだぜ?」

 

すると、ソニックがそう発する。

意外だった。何で言わないのか問うのが俺の中では普通だったからだ。

 

……だが、それが心底嬉しかった。そして思わず俺は、

 

 

 

「……なぁ、ソニック、気が変わった。アンタには話しておいてやるよ、俺の過去を」

 

ソニックの方へは向かず、彼から見て後ろ向きで話すように俺は過去を明かそうとする。

 

「……」

 

彼もまた、言葉を発さないまま俺に背を向ける。

 

 

 

「俺には昔、ヨルムンガルドっていう友人がいたんだ。俺は昔戦争を終わらせようと2人で旅に出ていたんだ。」

 

「かなりやばい奴だって昔はクリーチャーどもに恐れられてたんだが、アイツは唯一俺を親友と呼んでくれたんだ。」

 

「だけど、旅の途中でアイツは崖に落ちて消息が……分からない。あの高さじゃ死んだ可能性が……高いだろうとニュースで……やってたよ」

 

話している途中で涙があふれていく……。

そのせいで言葉がすらすらと繋がらない。

 

「その時は……、心底……絶……望して……さ」

 

「俺は……、アイ……ツが……、死んだ……なんて……受け入れ……らない……んだ」

 

俺は何とか言葉を紡いで言いたいことを言い終える。

……完全に泣いていた。大粒の涙が目から溢れ出て、視界は水のように歪んでいた。

 

 

「そうか……」

 

ソニックはそんな姿を見てただそう言うだけだった。

そして俺は意識が遠のいていく……。

 

 

 

 

 

 

 

チュン、チュン

 

ふと、俺の頭でそんな鳥の鳴き声が聞こえる。

そして俺は目を擦りながら体を起こす。

 

「ん? もう朝か……、俺、あれからずっと寝てたのか」

 

辺りを見回すと、ソニックがいなかった。

俺は朝飯を食おうとリビングへ向かう。

 

 

「Good Morning! もう朝ごはんならできてるぜ!」

 

ソニックがそう言う。

テーブルにはバターを塗った食パンと目玉焼き、牛乳と人数分美味そうに並んでいた。

 

「これ、一体誰が作ったんだ!?」

 

料理が美味そうに出来上がっているのを見て思わず俺は、そう聞く。

すると……、

 

 

「私が作ったんだよ!! ……まぁ、皆が手伝ってくれたお蔭なんだけど」

 

sayaが自慢げにそう言う。

 

「俺も目玉焼き作ったんスよ!!」

 

「ボクが焼く目安を教えたんだけどね」

 

「何を言うんスか? 焼いたのは俺ッスよ!?」

 

「まぁ、まぁ」

 

テイルスとキューブリックも漫才のようにそう会話を交わす。

この2人、いつの間に仲良くなったんだ? ……と思った俺。

 

 

「……よし、食うか」

 

そうして俺とソニック、テイルス、キューブリック、sayaはテーブルへ向かい、椅子に座る。

 

 

「いただきまーす!!」

 

俺達5人はそう声を揃えて、朝ごはんを食べ始める。

 

 

「久々ッスよ! ほかのメンツと朝ごはんを食べるのは」

 

「やっぱり、皆で食べる朝ごはんは美味しいです!!」

 

満面の笑みでsayaとキューブリックは目玉焼きを頬張りながら言う。

 

「ダメだよ、2人とも。食べながら喋るのはマナー違反だよ!?」

 

テイルスは食パンを右手で持ちながら、そんな2人を注意する。

朝ごはんってこんなに賑やかだったけと思った。

何せ俺は朝飯も昼飯も晩飯も1人で食ってきたからだ。そう思うのが俺の中では普通だった。

ちなみに飯のときになると、俺はあることをする。

 

「……あった、あった。これがないと俺の朝飯は始まらん」

 

 

取り出したのは、コショウだ。

そして蓋を開け、コショウを目玉焼きに万遍なく、大量に振りかける。

 

「え!? ちょっとコショウ多すぎでしょ!? かけすぎだよ!!」

 

sayaはそんな光景にびっくりしながらそう言う。

そんなことないと思うんだけどなと俺は心の中でそう言い返す。

 

「Oh. そんなにかけてたら間違いなく高血圧になるぜ?」

 

「うるせぇな、俺の勝手だろ!?」

 

ソニックまでそんなことを言いやがる。

そりゃ、人間が俺みたいな食事をしてたら間違いなく何らかの病気にはなるだろうけど、俺はクリーチャーだ。人間とは体の構造が違う。この体じゃ塩分を大量に摂ったから特別、異変が起こるわけじゃない。

 

「……コイツ、いろんな意味で訳ありだな」

 

とどめと言わんばかりにソニックは皆に聞こえない程度にボソッと呟く。

訳ありってどういう意味だよ!? ……とは言わなかった。

 

 

 

 

「……ごちそうさま!!」

 

それから15分後くらいに全員朝ごはんを食べ終えて、声を揃えてそう言う。

 

「じゃ、後片付けするね!!」

 

「ボクも手伝うよ!!」

 

「俺もッス!!」

 

sayaとテイルス、キューブリックは後片付けするためにキッチンへ向かう。

今にしろ朝ごはんを作るときにしろ、俺に許可を貰おうとはしないのか……。どうでもいいけど。

 

「さてと、急がないとね。今日はレイジクリスタルを探しに行かないと……」

 

「そうッスね。鉱山に行って埋まってるレイジクリスタルを掘るのは大変ッスよ?」

 

「掘るなら、やっぱり力がいるのかな?」

 

キッチンの中からそんな会話が聞こえる。

俺は新聞を読みながら会話を聞く。

 

「ははっ、クロスファイアって新聞読むんだな。まるで親父みたいd」

 

「うるせぇ」

 

新聞を読みながら俺はソニックの頭に軽くげんこつする。

ソニックはアウチと言うが、そんなの知ったことじゃない。

 

 

「……saya達の用事が済んだら、鉱山に行かねぇとな。ほら、準備すんぞ、ソニック」

 

「OK. ……頭痛いなぁ」

 

 

 

「……おまたせッス!! ついでにゴミ出して、行く準備してたから遅くなったッス」

 

それから10分後、キューブリック達が戻ってくる。

 

「ゴミ!? そういや、今日ゴミの日だったっけ……。サンキュ」

 

ゴミの日は人間世界にも存在するらしいが、こっちの世界だってゴミの日くらいはある。

余談だが、この地域のゴミの日は水・金曜日だ。

 

「よしッ、じゃ行くか」

 

「オー!!」

 

俺以外の4人はオーって言いながら拳を上にあげ、興奮している。

全く、遠足かよと思った俺。そして皆、家から出て施錠をする。

皆、大きいリュックサックを背負っており、中にハンマーや大きいピックハンマー等といった岩の採集に必要な道具が詰め込まれている。ちなみにこのセットはレイジクリスタル採りにキューブリックが持ってきたやつだ。

 

「よし、歩くぞ」

 

俺はそう言い、皆歩き出す。

だが、ここから鉱山まではそこまで距離はないが、坂道が結構きついらしい。

 

「どこかににタピオカ売ってないかな?」

 

「タピオカってどんなものなんスか?」

 

 

「早くレイジクリスタルを手に入れて、ブルータイフーン号を動かせるようにしないと」

 

「そのブルータイフーン号って俺も乗れるのか? サイズ的に大丈夫かよ?」

 

最初は遠足みたいにはしゃいでいたが……、

 

 

「……」

 

「……」

 

しばらくしてみんな無言になる。

遠足とかで疲れてこうなったって奴も少なからずいるだろうと俺は思う。

 

すると……、

 

 

 

 

「Hey! お先」

 

歩き続けてついを煮やしたソニックが猛スピードで走りだし、俺達を置いてけぼりにする。

ホントに目にとまらぬ速さだ。

 

「オイ! 待ちやがれ!!」

 

思わず俺は、戦闘形態になり、背中の翼を大きく羽ばたかせてソニックを追おうとする。

ところが……、

 

 

「ん? 待てよ? 最初からこの姿で皆乗せて山までひとっ飛びした方が、手っ取り早い気がしたんだが」

 

ごもっともで合理的なことを俺は口にする。

 

「兄貴!! 最初からそうしてほしいッスよ!! 俺、坂道登ってもうクタクタッス……」

 

「私もだよ……。最初からそうすれば疲れずに済んだのに」

 

 

「疲れたなら、sayaの魔法で回復した方が手っ取り早いだろ?」

 

しかし、sayaから意外な答えが返ってくる。

 

「ごめん……、回復魔法は疲れてたり、しんどい状態だったりだと魔法がうまく使えないんだ」

 

「なぬッ!!? ……まぁいい、急いでソニックを追うぞ。俺の体に乗れ!」

 

俺は少し屈んでsaya達が乗れるようにする。

saya達3人は俺の体に乗りかかる。

 

 

「……ちょっと飛ばすぞ、しっかり捕まってろよ!?」

 

そう言って俺は全速力でソニックを追いかける。

今俺が飛んでるスピードは時速250㎞ってところか……。

 

「は、速いッスよー!!」

 

「ふ、振り落とされそう!!」

 

「怖いよぉー!!」

 

3人は慣れないスピードのせいか、悲鳴に近い声で叫ぶ。

しかし、俺はそんなのお構いなしにソニックを追うことに集中する。

 

「アイツ……、一体どんだけ速いんだよ……」

 

しかし、3人を降り落とさないようにする為にこれ以上はスピードを上げることができない。

ソニックは俺の倍以上の速さで走っている。とても追いつく気がしない。

 

そして、あっという間に……、

 

 

「着いたぞ、ここがレイジクリスタルが採れる『レイジング・キャニオン』だ」

 

鉱山レイジング・キャニオンの入り口前へ到着。

やはり鉱山だけあって作業車やトロッコとかが多い。

ソニック? ……そんなの知るか。どうせ山を一回りでもしてるんだろ。

 

「し、死ぬかと思った……ッス」

 

「ボ、ボクも……」

 

「私も……。これじゃ、とても回復魔法なんて使えないよぉ」

 

ただ、俺の背中に乗ってた3人は今にも死にそうな顔になってしまっている……。

 

 

「おいおい、大丈夫かよ?」

 

見ていられなかった俺は3人にそう話しかける。

 

 

ゴゴゴゴ……、

 

その直後にそんな音が奥から聞こえて激しい地震が起こる。

 

「きゃ!! な、何……?」

 

突然の地震に戸惑うsaya。

しかし、そんなことにかまっている暇などないと次の瞬間思ってしまう。

 

 

 

 

「グルルルル……」

 

何と、地面から岩でできたドラゴン『ンゴロ・ンゴロ』が現れる。

岩で生成され、体の隙間からはマグマが溢れている。そのせいでここ一帯は暑くなってしまう。

……コ、コイツは、かなりやばい奴だ。名前はふざけてるが、ドラゴン軍に所属するクリーチャーで手の大きい爪は強烈な一撃をたたきこみ食らったが最後、どう治療しても完治できなくなるほどの重傷を負わせるとして恐れられているって話を聞いたことがある。

 

「ンゴロ・ンゴロの奴……、まさかこんなところに生息してたとは」

 

「ンゴロ・ンゴロ? What? 何だ? それ。……それにしても暑いな」

 

ソニックはこの山を一走りしたのかここに戻ってとぼけた様子でなことを口にする。

ピリピリしている俺と比べ、ソニックは呑気だ。……どこまで自由なんだよ、コイツ。……と内心思った俺。

 

「アイツはかなりヤベェぞ、噂じゃ、アイツに遭遇したが最後、完治できないほどの大怪我を負うらしい。……逃げるぞ!!」

 

そう言って俺は皆に逃げるように促す。

だが、それを聞いて逃がすほど奴は甘くなかった……。

 

 

「オマエ、オトナシクれいじくりすたるヲワタサナイ。ワタサナイナラ、排除スルヨウニイワレタ。ダカラオマエ、排除スル」

 

片言な日本語を言い、奴は凄まじい咆哮をあげる。

その咆哮は、猛々しく獰猛で、周りの声が一切聞こえなくなるほどだった。

 

「な、何だ!?」

 

 

その咆哮と同時に岩が地面から大量に召喚され、俺達はその岩に囲まれてしまい、逃げ場を失ってしまう。

 

「そんな……。囲まれたッスよ!!」

 

「チッ、こうなったら戦うしかねぇか……」

 

できれば相手にはしたくなかったが、囲まれてしまった以上、もう逃げる猶予はない。

だが、今まともに動けるのは俺とソニックだけだ。3人が回復するまで持ちこたえるしかない。

 

「あうとれいじト青イ奴、ココデヤラレル。オトナシクシロ」

 

ただでさえ、疲れてるのに戦うのは正直しんどい。

そして思わず……、

 

 

「あん!? 俺は忙しいんだ。とっとと決着つけて、こことはおさらばバイバイしてぇんだよ」

 

「悪いが、俺も大人しくしろって言われて大人しくする程、従順じゃないんでね」

 

ぶっきらぼうに俺はそう言い放つ。ソニックも俺に同意するようにそう言う。

そして再び戦闘形態になり、ンゴロ・ンゴロと戦う俺とソニックだった。

 

「……さぁ、大暴れしてやるぜ!!」



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Episode6 勝利のカギは光(saya)にあり

「さぁ、大暴れするぜ!!」

 

前回、俺達はレイジクリスタルを採りに、レイジングキャニオンに向かったが、その入り口でドラゴン軍所属のクリーチャー『ンゴロ・ンゴロ』が行く手を塞ぎ、現在は応戦中。

 

 

「……まずは俺から行くぜ! ホーミングアタックッ!!」

 

先制攻撃はソニック。

持ち前のスピードで誰よりも早く動き出し、ンゴロ・ンゴロの後ろへ周る。

 

「……」

 

しかし、ンゴロ・ンゴロは事もあろうことか、ソニックが動き出した途端に、動かなくなる。

しかも余裕の笑みを得て。この後に、俺達はその意味が分かることになる。

 

 

 

「……ホーミングアタッ……熱ゥッ!!」

 

そう、奴の体は岩ともう一つその隙間から溢れるマグマでできている。

そのお陰で岩も超高熱に温められている。それをまともに接触したソニックは頭を火傷してしまう。

 

「おい、大丈夫かよ!? マグマがあった時点で火傷するのは目に見えてただろ? 無茶しやがって……」

 

 

ある程度は推測できていたが、今ので奴に殴る、蹴るといった体技は使えないことがはっきり分かった。なら……、

 

 

「こいつならどうだ!? ミリオネアバーストッ!!」

 

遠距離攻撃のミリオネアバーストならどうだと俺は試しに撃つ。

肩から放出される真紅のビームが2本のラインを描くように飛び、奴に直撃する。

 

 

「くたばれ! ンゴロ・ンゴロ!!」

 

そして奴に直撃した瞬間、大爆発する。

その爆発は凄まじく、爆音も馬鹿でかく響く。

 

「やったか?」

 

……俺はそう確信した。

だが……、

 

 

 

 

「グルルルル……」

 

今ので倒れるほど奴は甘くなかった。

それどころか、さっきよりも体が紅くなっている。嫌な予感しかしない。

 

「……オマエノびーむ、吸収シタ。オレ、パワーアップ」

 

「何だと!? さっきの一撃を吸収したってのか!?」

 

 

……にわかに信じられない話だった。

耐性があるかとは思っていたが、まさか吸収するとは全然予想していなかったからだ。

 

「Oh…. コイツはかなりヤバいんじゃないの? アツツツ……、」

 

ソニックも思わずうろたえるが、そんな暇はない。

 

 

「グゴゴゴゴ!!!」

 

ンゴロ・ンゴロはそんな咆哮をあげ、体からビームを乱射する。

前後左右、斜め上、下、右、左、角度を問わずに至る方向へ線を描くようにビームは飛んでいく。

 

「チョッ! そんなのアリかよ!?」

 

このビームの速さ、色からして恐らく俺のミリオネアバーストを何倍返しにもして撃っているのだろう。

 

「兄貴!! このままじゃ、ヤラレチャッタになるッスよ!?」

 

「そんなこと言ってる場合かよ!? とにかく避けまくれ!!」

 

ミリオネアバーストが連射される中、俺達は光線を避けて、避けて、避けまくった。

避けて特別どうにかなるものじゃないことは分かっているが、今はそれしか手段がなかった。

 

 

「クソッ!! 体技が使えない、俺の技も効かない、どうしろってんだ!?」

 

……もう反撃する手段がないと確信した俺はそう弱音を吐いてしまう。

このまま避け続けたところでいつかは当たってしまう。

仮に避けきれたところで消耗したところを潰されるのがオチだ。

今度ばかりは流石に終わるかと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ううん、あきらめるのは早いよ!!」

 

……しかし、sayaが自信満々気にそう言う。

その顔はどこか希望に満ち溢れ、俺達に希望があると確信させられる。

 

 

 

どうやら、まだ俺達に希望は残っているようだ。

すると、自然に俺も彼女と同じように希望で満ち溢れた顔になる。

 

 

「……だったら、見せてもらおうじゃねぇか。saya! どれだけ粘れるか見せてもらうぞ!!」

 

「ううん、『粘る』んじゃなくて『勝つ』んだよ!!」

 

彼女はまた自信溢れる顔でそう言った。

今のsayaは絶望の闇を照らす希望の『光』なんじゃないかと俺には見えた。

 

「言ってくれるな、なら勝つぞ!! 行くぜ、ソニック!!」

 

「OK! 今度は俺達が大暴れする番だ!」

 

「フッ、俺の口癖がうつったか?」

 

「さぁ、何のことかな?」

 

こうしてソニックと俺、sayaは、反撃を開始する。

まずは俺とソニックが左右に分かれてンゴロ・ンゴロをかく乱する。

 

 

「鬼さん、こっちだ、こッこまでおーいでッ! ベー」

 

俺はアホみたいに挑発して奴をおびき出す。

 

 

「グルルル! フザケヤガッテ!!」

 

案の定、奴は怒りだして俺を追いかける。しかしアホみたいなことをするのは俺だけじゃないんだなぁ。

 

「……俺もいるぜ、ベロベロベー」

 

ソニックも変顔してンゴロ・ンゴロを挑発する。

やべぇよ、変すぎるあまり吹きそうじゃねぇか。

 

「オノレーッ!! オレヲ舐メテルノカ!!? 全部ブッコワス!!」

 

そりゃ、怒るわなと吹きだそうとするのを我慢しながら思う。

そして俺とソニックめがけて追いかける。

 

 

「クソ!! ドッチヲ負カケレバイインダ!?」

 

だが、奴は罠にはまる。

俺は右端、ソニックは左端にいる。これではどちらかしか追えないということだ。

 

 

 

 

「……今だ! saya!!」

 

タイミングを見計らい、俺はそう叫ぶ。

sayaはンゴロ・ンゴロめがけて走り出す。

 

「sayaちゃん、何をする気ッスか!?」

 

そして奴にギリギリまで近づくと……、

 

 

「……ルース・シャワー!!」

 

sayaは、至近距離でそう叫ぶ。

その直後にンゴロ・ンゴロの真上から光魔法が雨のように降り注ぎ、連続ダメージを奴に与える。

 

 

「グゴゴゴゴ!!! ……オ、オノレ」

 

光魔法を連続で受けてもなお、立ち上がる。

だが……、

 

 

 

ズシャーーンッ!!!

 

そんな轟音と共にンゴロ・ンゴロは倒れ、意識を失う。

気絶したのかしばらくは起き上がらないだろう。

だが、それと同時に……、

 

 

 

 

 

「な、なんだか……、しんどい……」

 

何と、sayaまでもが倒れてしまう。

これを見過ごせなかったのか、ソニックは……、

 

「saya!!」

 

真っ先に彼女の元へ向かって走り出す。

テイルスやキューブリックも彼女のもとへ向かう。

しかし、俺はその様子をただ見ているだけだった……。

 

もし、sayaが倒れた理由があるとすればそれは……、

 

「兄貴!! sayaちゃんを連れて看病して欲しいッス!!」

 

 

だが、俺の思ったことはキューブリックの唐突な言葉でかき消されてしまう。

流石にsayaが倒れてるのを見過ごせなかった俺は彼女を家へ連れて帰る。

 

「……分かった。コイツは俺の家で面倒を見る」

 

そう言って、俺は3人を残して翼をはばたかせてレイジング・キャニオンを後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺達は急いでレイジクリスタルを採って兄貴の家に戻るッス」

 

「うん、分かった」

 

「……あぁ」

 

俺は、sayaが倒れるのを見てからはしばらく放心状態だ。

彼女はクロスファイアが家へ連れて帰ったから安心だとは思う。

 

 

「はぁ……、どうやってレイジ……何とかを採るんだ?」

 

「簡単ッスよ。岩をピックハンマーやハンマーで壊せばいいッス。レイジクリスタルはハンマーやピックで壊れるほど軟じゃないッスから掘り方が荒くてもきちんと採れるッス」

 

ただ、ハンマーで岩を壊せばいい。思ったよりずっと簡単そうだ。

 

「OK. じゃ、さっさと採ろうぜ」

 

「うん」

 

俺とテイルス、キューブリックはそれぞれ分かれ、レイジ何とかを掘り出しに別行動することに。

 

 

「こうすればいいんだな!? おりゃ!!」

 

俺は、適当な岩を見つけ、リュックに入っていた道具で岩を掘る。

叩くたびにカン、カンと道具の金属音が響いてくる。すると……、

 

「……お!? これか?」

 

叩いていくうちにキラキラと光る宝石らしき物体が少し見えてくる。

俺は、それを覆う岩を削る。

 

「すげぇ、簡単に採れるんだな」

 

岩は気持ちいいくらいに順調に剥がれていく。

そして……、

 

 

「コイツがレイジ何とかか……。綺麗だな」

 

遂に岩がすべて剥がれ、宝石が姿を露わにする。

ダイヤモンドと錯覚するほど綺麗で赤と青色に輝いている12面体の宝石だ。

ちなみにカオスエメラルドと同じくらいの大きさだ。

 

「……じゃ、次行くか」

 

そうして俺は次のレイジ何とかを探しに走り出した。



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Episode7 その夜、皆は……

「全く、20個もあれば充分だろ……」

 

前回、俺達はレイジ何とかを探しに鉱山へやって来た。

俺とテイルス、キューブリック合計で採れたレイジ何とかの個数は20個。

正直、もう帰ってもいいだろうと思っているが、キューブリックがあと5個くらい見つけてほしいッスと言うのだから現在も探している最中だ。

 

「オッ、岩だ。……掘ってみるか」

 

早速岩を見つけ、俺は道具を出す。

レイジ何とかは採るのが簡単だから作業が割と病みつきになる。

 

 

 

 

 

 

「全く、戦争もピークになってきやがったか」

 

俺は、sayaを抱きかかえながら俺の家へ向かって飛んでいるところ。

戦争もピークになってきて爆音や銃声など物騒な音が至る方向から聞こえるようになる。

 

「……急ぐか」

 

これだけ音が大きければ流石に目が覚めてしまうだろうと判断した俺はスピードを上げて急ぐ。

 

すると……、

 

 

「sayaには気をつけろ」

 

そんな声が突然聞こえる。

思わず俺は、辺りを見回す。だが、その声の主らしき者の姿は全く見えない。

 

「おい、『sayaには気をつけろ』ってどういうことだよ!?」

 

 

「……彼女の力は使い方ひとつで世界を救うことも滅ぼすこともできる。決して……を甦らせてはいけない」

 

すると、また声が聞こえる。世界を救うことも滅ぼすこともできるなんて、またスケールのデカい話だと思った。だが、肝心の最後の単語が爆音で聞こえなかった。

 

「ちょっと待て! それってどういう意味だよ!?」

 

 

……慌てて言い返した時には声は聞こえなくなっていた。

 

「今のは一体……、だけど嘘じゃねぇ気はする」

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと……、25個集まったし、これだけあれば十分ッスね」

 

「ふぃー、やっと帰れる」

 

一方俺達は何とか25個集め、帰ろうとするところだ。

俺が2個、テイルスが1個、キューブリックが2個集めたので思ったよりは早く集まった。

 

「それじゃ帰ろう! ソニック、キューブリック」

 

「OK」

 

「そうッスね」

 

そして俺達はこの鉱山を後にし、歩き出す。

 

 

 

 

「Oh……。散々体力使ってもう走れないぜ」

 

「まぁ、帰りは下り坂だから朝ほどきつくはないね」

 

「そうッスね」

 

キューブリックとテイルスは苦笑いしながら俺を見る。

ただ、キューブリックはその直後に難しそうな顔をする。

 

 

そして俺達はひたすらクロスファイアの家めがけて歩く。

その途中は長いので……省略!!

 

 

 

「やっと、着いたッスねぇ~」

 

「もうクタクタだよ~」

 

やっとクロスファイアの家へ到着。もう夕暮れで太陽も沈みかかって、空はオレンジ一色になっている。

ちなみにドアが半開きなのですでに鍵は開いてる。

 

 

 

「ただいま、今帰ったッスよ?」

 

「ここキューブリックの家じゃないでしょ!?」

 

「ハハッ」

 

漫才のように2人は会話を交わす。……正直うるさい。

これだけうるさかったら、出てくるはずだが、

 

「クロスファイア?」

 

 

 

だが、彼は出てこない。

まだ帰ってないのかと思いつつ、俺は家の中の至る所を探す。

 

「おい、クロスファイア!!?」

 

 

だが、どこを探してもいない。

一回帰ってまたどこかに行ったのかと思い、最後に寝室のドアを開ける。

すると……、

 

 

 

「グォ~……」

 

気持ちよさそうに彼とsayaが眠っていた。彼はsayaを横に覆う形で寝ているが。

クロスファイアが看病して彼自身も眠くなって寝てしまったのだろう。

 

「何だ、寝てるのかよ……。ヒヤヒヤしたぜ」

 

よほど気持ちいいのか鼻提灯まで出しているクロスファイア。

そっとしておこうと思い寝室を後にし、バタンとドアも閉める。

 

 

 

「クロスファイアなら気持ちよさそうに昼寝してたぜ」

 

「何だ、寝てたんスか……」

 

「よかった、てっきりどこか行ってたと思ったよ」

 

キューブリックとテイルスは安心したのかホッとする。

だが、キューブリックはその直後にレイジ何とかを1個持って急いで家を出ようとする。

 

「ちょっと、キューブリック!? どこいくの?」

 

「ゴメン!! ちょっと用事出来たッス!!」

 

キューブリックはそれだけを言い残してこの家を後にした……。

 

 

 

 

「よかった……、ここにもコンビニあったんだ」

 

「コンビニとかスーパーがあるのはこの世界も一緒なのか……。何か違う世界なのに雰囲気は俺達の世界とほとんど変わらないな」

 

その夜、俺達はコンビニに売っていた弁当やパン等で凌ぐことに。

俺はホットドック、テイルスはオムライスの弁当とミントキャンディを買ってきた。

すると……、

 

 

 

「あれ? 2人とも帰ってたの?」

 

後ろから聞き覚えのある少女らしき声が。

コンビニで買ってきたものを持ちながら振り返ると、sayaがいた。

 

「saya! もう身体は大丈夫なのか?」

 

「うん、昼ぐっすり寝たからもう大丈夫だよ」

 

どうやらもう大丈夫そうだ。

身体がピンピンしているのが何よりの証拠だ。

 

「sayaもコンビニで何か買ってきたら? 通貨は僕たちの世界のと一緒だし」

 

テイルスはオムライスを頬張りながら彼女にそう言う。

食べるの早いな、オイと俺は心の中で思った。

 

「うん、じゃ何か買ってくるね」

 

「いってらっしゃ~い」

 

財布を持ってsayaは外へ出る。

そんな様子を見てテイルスはやはりオムライスを頬張りながらそう言う。

 

 

 

 

 

 

「だだいま~!!」

 

……しばらくしてsayaが帰ってくる。

 

「おかえり、……で何買ってきたんだ?」

 

「タピオカとミルクティー買ってきたんだよ!」

 

「飲み物ばっかりだな……」

 

sayaが買ってきたのはタピオカとミルクティー。満面の笑みを浮かべながら彼女はそう言った。

飲み物ばっかりだなと言い、苦笑いしている俺がいた。

 

 

 

「……それとね、キムチ。クロスファイアの分も買ってきたんだ」

 

すると、彼女の持っている別のレジ袋にキムチが3パック入っていたのが見える。

だが何故キムチなのか疑問に思ったので……、

 

「What? 何でキムチなんだ?」

 

そう言い返す。

 

 

「……朝、ゴミを出してたらね、キムチの残りみたいなのがいっぱいあったから、それでキムチが好きなんじゃないかなって思ったんだ」

 

そういえば朝キューブリック達とゴミを出してたなと、ふと思い出す。

 

「あ、キムチ冷蔵庫に入れてくるね」

 

そう言いながら、sayaはキッチンへ向かう。

一方、俺はホットドッグを食べながら再び寝室へ向かう。

 

 

「ムニャムニャ……、ぐぉ、キムチがいっぱい……」

 

扉を開けると、クロスファイアが大きいいびきをかきながら寝言を言っている。

もう、太陽も完全に沈み夜となっているのによく寝れるよなと呆れる俺。

 

「……キムチならsayaが買ってきたのが冷蔵庫にあるぞ。起きたら冷蔵庫を見るんだな」

 

 

そう言って俺はまたドアをバタンと閉め、寝室を後にする。

 

 

「やっぱタピオカ美味しいよぉ」

 

「ミントキャンディだって美味しいよ!」

 

その後、俺達3人はリビングで夕食をとる。

クロスファイアには悪いが、退屈だったのでテレビもつけている。

 

「……そういえば、キューブリックはどうしたの?」

 

「あぁ、そういえば用事が出来たって家を飛び出していったぜ?」

 

そういえば、キューブリック。

彼は一体何の用事があったんだ? レイジ何とかも持って行ったし……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん……、ここは?」

 

俺は目を擦りながら体を起こす。

寝ぼけているせいで自分がどこにいるかを忘れてしまっている。

 

 

「……そうか、俺、sayaと一緒にいて、今まで寝てたのか」

 

ようやく我に返り、状況を思い出すが……、

 

「最悪だ、もうこんな時間かよ……」

 

既に時計の針が真夜中の12時10分を指していた。

寝たのは昼ごろなのに実に9時間近く寝たことになるのか……。

 

 

「何だこれ!? 随分と散らかってるな。泥棒にでも入られたのか?」

 

起きたばかりでしばらくは眠れそうにないのでリビングへ降りた。

しかし、ゴミがそこそこ散らかっている。

 

「……そういうことか」

 

よく見ると、ソニック、テイルス、sayaが寝ているのが見える。

特にソニックは鼻提灯を出しながら寝ている。

 

……そういえば腹減ったな。

 

「腹減った。冷蔵庫でもあさってくるか」

 

俺はトテトテと歩き、冷蔵庫のあるキッチンへ向かう。

すると……、

 

 

「キムチ!? 俺キムチとか買ったっけ?」

 

冷蔵庫の中にはキムチが入っているパックが3つあった。

正直、買った覚えはないが……、

 

「まぁいいか。食お」

 

とにかく今は無性にキムチが食べたかったので冷蔵庫から取り出し、食べることに。

 

「いただきまーす」

 

そして俺はキムチを食う。

その時だった……。

 

 

 

「……あ、目が覚めた?」

 

「!!」

 

突然声がしたので慌てて後ろへ振り返る。

そこには……、

 

「ごめんね? びっくりさせちゃって」

 

「お前……、さっきまでそこで寝てたんじゃなかったのか?」

 

リビングで寝ていたはずのsayaがいた。

暗くてよく見えないが、彼女はキョトンとした顔で俺を見ている。

 

「寝ようと思ったんだけど……、」

 

「寝れないってか?」

 

「うん……」

 

どうやらsayaも俺と同じように眠れないようだ。

しかし、今はまだ真夜中。夜が明けるにはまだまだ時間がある。そこで俺は……、

 

 

「……なぁ、空を一っ飛びするか?」

 

彼女を背中に乗せて空を一っ飛びしようかと考えた。

 

「えっ?」

 

俺の言葉で一瞬フリーズするsaya。

しかし、そんなことに構うことなく俺は更に言葉を発する。

 

「ほら、さっさと行くぞ。なんならソニック達も連れて行ってやってもいいんだぜ?」

 

「で……、でも、朝乗せられたときはすごい速さで……、気絶しそうになったんだよ!?」

 

何だ、朝のことかよ……。とめんどくさい顔をしながら頭を抱える。

 

「全く……、スピードは落とすっつーの」

 

 

 

「……ホント!? じゃ行こッ!! フフン、折角だからソニック達起こしてくるね」

 

俺の一言で、さっきまで控えめだった様子から一変、ものすごい明るくなる。

凄いな、人間って言葉一つでこんなにも雰囲気変わるんだなと心の中で俺は思った。

 

 

「ソニック!! テイルス!! クロスファイアが空一っ飛びするんだって!!」

 

「……う~ん、あと5分寝かせてよ」

 

 

うん、ものすごい興奮なされた様子でsayaさんは2人を起こそうと大きい声を出される。

すごいテンション高くて若干引き気味な俺がいた。

 

 

 

「凄い!! 夜の空も結構きれいだね」

 

「That's Right. ホントに綺麗だな」

 

「まぁ、夜は大概こんな感じだ」

 

3人を乗せることもあり、俺は戦闘形態になり3人を乗せて空を飛ぶ。

暗い空は少し青みがかかっており、星が点々と至る所に光っている。

風も心地よく吹き、俺自身もこの時だけは戦争が起こっている現状を忘れてしまう。

 

 

 

 

「……もうすぐこれが完成するッス」

 

一方、キューブリックは自分の家へ帰り、火花を起こしながらあるものを作っているが、果たして……。



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