比企谷 八幡の異世界漂流記(沈黙) (Lチキ)
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プロローグ

どうもどうも、皆様おなじみLチキです。え?知らない?


まあ、いいや。毎度御目汚しで申し訳ありません。今回は大人になった八幡が色んな世界にいく感じです。


細かい設定や内容はまだ決まっていない感じです。複数の世界に行きますが、その都度設定や年齢が変わるかもです

だらだら、グダグダ長い感じに進めますのでよければ感想なんかをお願いします


俺の名前は比企谷 八幡、御年38歳、独身だ

 

見た目は高校時代から身長は変わっておらず、少しばかり筋肉が付いた感じで、相変わらず目が腐っているそれなりに顔の整ったナイスガイだ。

 

 

実際は、筋肉がついているにもかかわらず高校よりひょろっとした感じで会うやつからは不気味な雰囲気を出しているとよく言われる。

 

まったく失礼な奴らだ

 

 

そんなどこからどう見ても普通のおじさんの俺だが、今いるところはいささか変わっている。それは俺の特別な職業に関係しているところで、俺はあまりここを好きではない

 

 

「被告、比企谷 八幡―――――――」

 

 

なんせここは裁判所なのだから、むしろ好きというやつの方が少ないだろう。

俺のように職業に詐欺師を選択した奴らには特にな…

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

それは大学を卒業し、サラリーマンとして働くある日の事だった。

 

高校時代に目標としていた専業主夫は残念なことに達成できず、親のすねを齧るのもいいと思ったが、それを言うと働かないと勘当すると言われ、渋々就職を決めた

 

 

就職先は良くも悪くも普通の中小企業でそれなりの社畜ライフを送ることになる。

 

 

朝の電車に乗り込み、ふと高校時代の事を思い出す。

高校2年の奉仕部、雪ノ下 雪乃と由比ヶ浜 結衣、彼女たちとの間違った青春ラブコメは結局のところ最後の最後まで間違い続けて、お互いが明確な答えを出せないまま、本当の本物を誰もがつかめず、有耶無耶に灰色のアルバムにしまわれてしまった青春の一ページ

 

 

俺は結局のところ偉そうに恰好をつけて散々彼女たちを傷つけてしまった。それは今でも後悔と懺悔の気持ちがこみ上げてくる

 

 

大学生になり、お互いが別々のところに行き、それ以降俺は彼女たちに会っていない。皆が皆ハッピーエンドにもバットエンドにもたどり着けずに時間切れで卒業してしまった。

やはり俺は間違っていたのか…ふとそんな事を考える

 

 

いつもはこの後、会社に行き一日働いて家に帰り、また次の日にはこうして昔の事を振り返るそんな毎日を送っているそう、いつもはだ‥‥…

 

 

「こ、この人痴漢です!」

 

 

一人の制服を着た女子高生が俺の手を挙げ、高らかに叫んだ。この時から俺の間違った物語は本当の意味で狂い出してしまう

 

 

俺はその後駅のホームに連行されそのまま警察に引き渡された。一応言っておくが俺は痴漢なんてしていない。だが、そんな俺の言葉は誰にも届かず俺は起訴されることになった

 

 

始めは必死に無実を訴えたが、そんな俺の声に耳を傾ける奴なんて妹の小町くらいだった。

それでも、小町一人が信じてくれるそれだけで俺が戦うには十分すぎたのだけれどその思いもすぐに打ち砕かれる

 

 

起訴されて何日かした後、俺の面会に弁護士がやってきた。そして、その弁護士は俺にある事件とある提案を持ちかけた

 

 

提案はこのまま裁判をしても俺に勝ち目がない事と、向こう側との示談として罪を認め謝罪する事だ

 

 

もちろん俺はそんなものは受け入れられず拒絶した。俺はやっていない、俺は無実だなのになぜ俺が謝らないといけないのかと

 

 

しかし、弁護士の言ったことは俺を絶望の縁まで追いやる。

 

 

痴漢は冤罪であろうとなかろうと、その証明は難しくこのままやってもずるずると時間だけが過ぎたうえで負けるという事だ

 

俺もテレビなんかではそういう物を見聞きした覚えがあったが、いざ自分にそれが降りかかるとたまったものではない。しかし、それでも俺には俺の事を信じてくれる妹がいる。それなのに俺が折れてしまっては妹に申し訳が立たない

 

 

そういうと弁護士はおもむろにあるニュース記事を持ち出す。それは小町が通っている大学で起こった傷害事件の記事で、被害者の女性の兄が今現在、痴漢の容疑で捕まりそれを知った同大学生により被害者女性は怪我を負ったとのこと

 

被疑者の同大学生は、被害者女性の兄の事を知り、それを馬鹿にするような物言いで被害者に精神的苦痛を与え、それに怒った被害者が抗議したところつかみ合いの喧嘩に発展、突き飛ばされた被害者はバランスを崩し近くの階段から転落、今だ意識は戻っていないとのことだ

 

 

まさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさか

 

 

「妹さんの意識は今だ戻っていません。このままでは最悪もあるという事です。さらに、この事で大学では妙な噂も立っており、このまま裁判を行うと確実に時間がかかります。そうすると妹さんに会う事もできませんし、仮に裁判を続けても勝ことは難しいでしょう。そうすれば噂は本当になってしまいます、それが例え事実ではないとしてもね」

 

 

妹さんの事を考えればここはどうか示談を――――――――――

 

 

俺の頭の中は真っ白になった。俺のために俺のせいで小町が怪我をして、あまつさえ最悪もある‥……

 

 

そこから先は早かった、相手側も示談に応じ俺はすぐさま妹の病院に駆け込んだ。幸いなことに小町の意識は戻り、後遺症の心配もないとのことだ

 

 

だが、そこから俺の生活は一変した。当たり前だが会社は首になりご近所からも俺や家族に向けられる視線はひどく冷たいものになり

 

 

それからしばらくして、小町が退院する前に家を出た

これ以上小町にも両親にも迷惑はかけられない、俺がいる事で皆に迷惑がかかるそんな思いからだ

 

 

だが、家を出た後は正直なにも考えておらず幾度目かの町にたどり着いた俺の前に一人の詐欺師があらわれる。

 

といってもそいつが詐欺師と知ったのは出会ってから結構後の事だが、そいつはどうやら俺を詐欺のカモに選んだらしく親身に話を聞き、詐欺を働くタイミングを狙っていて、ついにそのタイミングが来たと思い俺に儲け話を持ち掛けた

 

 

だが、生憎な事にいくら消沈していたからといいそんな詐欺師に嵌められるような俺ではない。ボッチの警戒心と洞察力を甘く見るなよ

 

 

結果だけを言えば俺はその詐欺師を逆に嵌めたのだ

 

そこからは、味を占めた俺は流れるように詐欺師となった。そしてそれから数年

 

38歳になった俺は今や立派な詐欺師へとなり、現在裁判にかけられている。

そこだけ見れば下手こいて捕まった哀れな詐欺師だが、生憎俺には一種の才能があったようだ

 

 

「――――――以上の事から、被告の販売した製品には注意事項として明記がされており詐欺とは認められない。よって比企谷 八幡を無罪とする」

 

 

そう、俺には詐欺師の才能があった。

いくら起訴されようが関係なしに無実を掴みとる、どんな相手だろうが騙して欺くたとえそれが、国の裁判官達としてもだ

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

夕暮れ時、無実を勝ち取り釈放された俺はオレンジ色の町を彷徨うように歩く。

その瞳には、勝利への余韻も被害者への罪悪感もなく、ただ次の詐欺はどうするかという考えでいっぱいだ

 

 

ふと思う、今の最低で最底辺の俺を見たら高校時代の彼女たちはなんというのか

雪ノ下は相変わらず容赦なく、俺を罵るのだろうかそれとも目を合わすのも嫌がるかな。でもなんだかあいつなら今の俺を更生させようと躍起になりそうだ

 

 

由比ヶ浜は…どうだろう?もしかしたら心底失望した眼差しを向けるかもしれないし、もしかしたらだが、バカだけど心優しいあいつならこんな俺のために涙を流してくれるかもな

 

 

それに平塚先生はラストブリットでもお見舞いされそうだな。んでその後に、優しい目で俺を見つめてきそうだ、本当に先生には謝っても謝りきれないな‥‥というかあの人結婚できたのか?

 

戸塚は怒るだろうな…可愛い顔して怒ると一番怖いんだよな、それに曲がったことが嫌いな頑固者だし

天使で怖い、俺の友達

 

葉山とはそういや前に弁護士として会った以来だな。あったというか戦ったというかあれなんだかな、もちろん俺が勝ったが最後に見せたあの顔は今でも覚えている

本当にあいつは昔から変わらない。リア充でみんなの人気者で変におせっかいな俺の敵

 

材木座は‥…まあ、あいつはいいや、どうせあいつはいつもの調子で馬鹿やってそうだし、いい加減中二病は卒業してるだろうがな

 

 

それから、陽乃さんは俺の事を多分笑うな、それはもう面白おかしく大爆笑するだろう

 

川崎は、クールに馬鹿じゃないとか言いそうだよな、でもあいつは気づいてるか知らんが結構顔に出るんだよな。クールぶってるがとても情に厚い奴だ

 

三浦は結局葉山とは、うまくいかなかったらしいがあいつならどんな相手でもいい母親になるだろう

 

海老名さんは、今度こそ関係やしがらみを関係せずに本当の恋愛をできていればいいんだが、一周まわって腐女子に戻ってなきゃいいが、主に俺のために

 

 

んで、小町は‥‥俺が思うのはおこがましいだろうがどうか幸せになっていてくれればいいんだが、本当にこんなごみいちゃんでごめんな小町‥‥

 

 

つーかなんで、こんな事を考えているのやら、らしくないな‥‥

 

 

 

 

少し遠くから犬の声が聞こえその方向に顔を上げた、そこにはリードから離れて走っている一匹の犬とそれを追いかけてる少女がいた。

それはまるで、あの入学式の日のような光景で思わず釘いるように見てしまった。

 

恐らく俺の間違った青春の始まりの一ページ

 

だが、そんな考えはすぐに彼方に消え失せた見ると道路には一台の大型トラックが走っておりその運転席の男性は前を見ていない…いや、眠っている

 

そのまま、トラックは先ほどの少女と犬のほうに走り、ぐしゃというおよそ人間の人体から出たとは思えないような音と共に少女のか細い悲鳴が聞こえる

 

 

 

俺の目の前には真っ赤に染まった先ほどの少女と犬がいる。しかし少女たちに怪我はない様子で、震えながら座り込み俺の方を見ている‥‥…ああ、そうか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ赤なのは俺の方か‥‥‥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本当にらしくない事をしてしまった。

 

 

 

そこで俺の意識は消え、後には真っ暗な闇だけが残る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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IS インフィニット・ストラトス

痴漢冤罪で捕まり、詐欺師になり10年以上。ここまでの年月詐欺師として生きてきた俺の人生は碌なものではなかっただろう。得る物はただの金と恨み、失う物は見ず知らずの人の人生と人としての何か。

 

まったくもって釣り合わないし、割に合わないしくだらない人生だった

 

 

だが、そんな下らないものでも少しは役に立つこともある。例えば今の状況なんかがそうだ。

 

詐欺を働くにおいて大切なのは情報でも、うまいやり口でも、騙しやすい人の選別でもない。どんな状況においても常に冷静に物事を考えられ、その都度場合に会った対応をする適応力と判断力である

 

 

最初の頃はボッチスキルをフルに発動し、ところどころでキョドっていたがもはやベテラン詐欺師となった俺は大抵の状況で取り乱すという事はなくなった

 

 

なので、つい今しがた事故に会い絶命したはずの俺の体が傷一つない状態である事にも動揺はないし、その体が異様なまでに小さくまるで中学生のような体型であった事にも全く驚かない

 

 

さらに、そんな俺が今いる場所はどこかの民家であり知らないうちに姉と弟がいる事にもさほど思うことはない

 

 

終いの果てには俺の性がなぜか比企谷から織斑に変わっている事に対してもどうという事はない

 

 

さて…ではとりあえず状況を整理しよう。まず俺の名前は比企谷 八幡、御年38を迎えるおじさんで、車に引かれて恐らく死んだはずだ

 

 

だが、死んだ俺は天国‥‥は端から無理だろうが、地獄に落ちることなく気が付けば見ず知らずの家の子供になっていた

 

 

ついでに言うとここにはISという女子にしか扱えないパワードスーツが存在しており、そのせいで世間は女尊男卑が当たり前という事だ

 

 

このISは世間で知らぬものはいないというほどの知名度だが、その存在は俺は知らないしそもそも死ぬ前の世界にそんなものは存在していない。つまり俺は異世界に来てしまったという事だ‥‥‥‥‥‥‥ふぅー

 

 

「落ち着いていられるかァァ――!!」

 

 

いやいや流石にないわ、いくらベテランの詐欺師でもこの状況で平然といられるわけがないだろ!

体が縮んだとかまではまだ分かる。コナン君でもおなじみだしな、名前が変わっているのも受け入れよう。そもそも職業上の都合でいくつもの名前を使い分けていたことに比べるとさほど気にすることはない

 

死後の世界とかあんまし信じてないし輪廻転生の概念も希薄だが起こってしまった物はしょうがないと、生まれ変わった事も問題ない。むしろどんなにクズな人生を歩んでも決して自ら命を捨てようとは思わなかったしどんな形でも生きている事に感謝しよう

 

 

でも、異世界とか意味わかんない、そんな経験した事ないし。

よしんば外国に行ったと思えば受け入れられなくもないがそもそも生前約40年あまりの人生で日本の土地を離れたことがないので無理だ。

 

 

俺はどんなことでもそれが必要なら冷酷な判断を冷静にするという事で関係各所から忌み嫌われているが、それも全ては長い年月に培った経験からなせる業だ。

逆説的に言えば、経験したことがないならどんな些細な事でもキョドるということだ。

 

 

しかも、この世界なんだか胸糞が悪い。それも世の女尊男卑の風潮のせいだ。

歩道の端の方を歩いていたところに前から来た女子グループの一人と肩がぶつかった。俺は端を歩いているし非はない。逆にむこうは道に対して横並びで歩いてきて端から見ると凄い迷惑だ。

 

しかし、肩がぶつかり俺が軽く会釈して立ち去ろうとすると

 

 

「ちょっと!ぶつかっといて謝りもしないわけ!」

 

 

「そうよ!男のくせに謝りなさいよ!」

 

 

などといちゃもんをつけられた。しかもこの世界ではこういうことが割と日常で起こるらしい。まったくもって胸糞が悪い

 

 

まったく、前の世界でも世界は俺に厳しかったがここではそれ以上に俺に厳しいとか、贅沢は言わないからせめて人並みくらいには寛容でいろよ世界

 

 

 

「八兄いきなり大声出してどうしたんだ?」

 

 

小町でさえ俺の事をそんな呼び方したことないのに俺の事を八兄呼ばわりするこの少年

見た目は葉山みたいなイケメンリア充風味で性格はよくも悪くも男の子という感じで俺との関係で言うなら弟だ

 

弟だが俺が三月生まれでこいつが四月生まれなので同い年という事になる。

名前は織斑 一夏だ

 

 

「別になんでもねーよ。それより姉貴はどうした?」

 

 

「今、大会の打ち合わせがあるとかでもう少しかかるって」

 

 

「あっそ、それじゃあ適当にぶらつくか」

 

 

さて、いくつか聞きなれない単語が出てきたところで今現在の状況を説明しよう。こういうのは簡潔に初めの内に言っておいた方がいい。それは詐欺師として、というか俺自身が無意味に面倒な事を先延ばしにするのが嫌いだからだ

 

 

先に言ったとうり、この世界の俺には天使のような妹がいない代わりにイケメンの弟とさらに上に一人姉がいる。

姉の名前は織斑 千冬、見た目は年相応以上に成熟したお姉さん系でその性格も年上といった感じだ。それも、織斑家の事情によるものからだろう

 

 

織斑家には俺達三人しかいない。それは両親がある日突然、姿を消したからだ。要は俺たち三人を捨てて2人で逃げたという事だ。それからは一番上の千冬が弟2人の面倒を見るため女手一つで育て上げた雪ノ下さん並みにハイスペックな人だ

 

 

大会というのはIS、正式にはインフィニット・ストラトスの世界大会に出場している。驚くべきことに第一回目の大会を優勝し今大会の優勝候補ということらしい

 

 

イケメンの弟に文武両道、天下無敵な姉、それに挟まれる生前の中学時代と姿形が変わらない俺‥‥‥世界は残酷だ

 

 



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IS インフィニット・ストラトス 2

IS≪インフィニット・ストラトス≫国際競技大会モンド・グロッソ

 

 

今日の織斑家は姉の千冬がこの大会に出るため、今年度の開催地であるドイツまで来ている。俺と一夏はただの応援だけどな

 

ここまで来てなんだが、やはり外国というのは慣れていないので居心地が悪い

ドイツの街並みはやはり日本と違う気もするが、別にそこまで違くもない気がするのでどうでもいい。正直もう帰りたい、帰りたいといっても今住んでるところは俺の家ではないのだけだな

 

 

 

この世界に来てから幾分かたち、これからの方針を決めた。

まず、元の世界に帰るか否か

 

これは否だ。帰り方を知らないのもあるが、何よりあちらでの俺はもう死んでいるとみていいだろう。そこに俺が帰ったところで歓迎などされないだろう。

それに戸籍や保険書、その他もろもろと厄介だしな。必要な面倒ならいやいややるが、必要ない面倒は決してやらない、それが俺のポリシーだ

 

 

次にこの世界でどうするか?

 

これは普通に生きてみようと思う。人生のやり直しとか、昔出来なかった青春を謳歌するとか…そんなことは露程も考えていないがな。

世界が変わろうと家族が変わろうと俺が俺であることに変わりはない。俺は世界に嫌われている、なら下手に希望を持つ方が馬鹿らしいという物だ

 

しかし、知識があってもこの世界の事が今だよくわからず、俺の実年齢も中学生だ。その状況で下手に動くことなぞ馬鹿らしい。最低でも一年は、様子見したいところだ

 

とりあえずの目標は?

清く正しく一日一日を大切にするとかでいいんじゃね?しいて言うなら会いたい人が一人いる。

 

 

篠ノ之 束

 

 

ISの開発者にて、この世界を面白おかしくした張本人である。現在は消息不明で、どこにいるのか分からないがこの女と織斑家には、繋がりがあるようなのでいずれ会う事もあるだろう。

 

会いたい理由は、単純に金になりそうだからだ。世界が変わろうと金が必要であることには変わりない。その点で彼女はとても興味深い

 

文字通り世界を変えてしまった彼女の技術力は金のなる木のようなものだ。とりあえず会って、親睦でも深めたうえでその技術を騙し取れば相当な値段になるだろう

彼女自身を国に売ればそれも金になるが、そうすると継続的な資金源にならないのでそれはないな。

なにはともあれこれも、今はできない事なので保留しておこう。

 

とりあえずそんなところでいいだろう。さてと、これからの方針はひとまず置いておき今ある問題を片付けるとするか。

 

 

誰かにつけられているな。

 

 

前方の曲がり角に停車してる黒塗りの車、それと後ろに2人、サラリーマン風の格好をした奴と、カフェテラスみたいなところでコーヒーを飲んでる女

それと、遠くから視線を感じる。恐らくここから数百ほど離れたビルのところにもいるな

 

全員普通を装っているが、明らかに素人ではないな。しかし、逃亡生活の中で身に着けたサーチャーヒッキーの前ではそんなちゃちな変装、無駄である

 

さて、狙いは俺か?馬鹿なこの世界で俺はただの中学生だ。人に付け狙われる覚えなんてない。精々あのぶつかってきた女子グループから迷惑料として財布をすった程度くらいだ

 

では、隣を歩いてるこのアホ面したイケメンか?それもない。知識としてあるこの弟は普通にいい奴で、プロに付け狙われるほどの馬鹿な事はしないだろう

 

こいつを好いてる女が妙な気を起こしたというなら分からなくもないがな。なんせこいつ顔もよくて性格もいい癖に、女の気持ちに全くと言っていいほど気が付かない唐変木だしな

 

 

では、こいつらの目的は何か?決まっている。このタイミングということは間違いなくモンド・グロッソ絡みだろう。

 

明日は千冬とドイツの選手との決勝戦がある。大方、俺達を誘拐し棄権しろとでも脅すつもりなのだろう。

 

 

そうなるとここで捕まっても殺されることは多分ないし、明日らへんになったら千冬が試合をほっぽてでも助けに来るだろう。両親がいない事からあの女の姉弟に対する執着心は俺が小町を思う気持ちや、雪ノ下陽乃が雪ノ下を思う気持ちに等しい。

 

むしろ、川崎レベルのブラコンといっても過言ではない

そんな女だ、世界大会と弟を天秤にかければ、弟の重さで世界大会が空の彼方に飛んでいく勢いで助けに来ることだ。

 

 

そんな安全がほぼ決まっている状況でどうするか、下手に抵抗せず捕まる?そんな訳がない。

 

なぜ俺が、見ず知らずの連中に捕まらなければいけない。俺を捕まえたいなら金を払ったうえで高級ホテルのスイートルームでも予約しろ。

 

次に一夏を囮に使い俺だけ逃げおおせるか。それもない。

 

こんな見ず知らずの弟など、どうなっても構わないがそれでは千冬がこいつを助けるために大会を棄権するだろう。

世界大会というだけあってその優勝賞金は少なくなく、両親不在、三人家族、二人学生のこの状況で家には金が必要だ。

前評判でも千冬は大会二連覇が確実とも言われている、その状況で棄権だと?寝言は寝ていえ。

 

俺の生活のためにも千冬には優勝してもらわなければならない。

 

 

なので、ここは非常に、面倒くさく、遺憾であるが俺自身が動いて事なきを得よう。

 

 

「おい、一夏。そろそろホテルに戻るぞ」

 

 

「なんだよ八兄?せっかくの外国なんだしもうちょっと見てこうぜ」

 

 

外国程度で浮かれやがって…これだから餓鬼は嫌いなんだ。

 

 

「それはまた、明日な。今日はとりあえず千冬のために早く戻って肩でも揉んでやれ」

 

 

「明日って、明日は決勝だしその後はすぐに帰らなきゃいけないじゃんか!今日くらいしか時間ないって。それとなんで千冬姉のこと呼び捨てなんだ?」

 

 

面倒くさい奴だな、兄貴のいう事は素直に聞けって、小町なら・・・・・・小町もあんま俺のいう事聞いてなかったな。妹でも弟でも兄貴のいう事を聞かないのが世の常なのか?それとも俺が兄貴だから聞かないだけか?金取るぞこの野郎。

 

まあ、いい。とにかく今はこいつをホテル(安全地帯)に早くやることが先決だ。多少の事には目をつむってやろう。

 

 

「はあー…いいか一夏?姉貴は今、一人でホテルにこもって明日に備えてるんだぞ?誰にも弱みを見せず、誰にも頼れず、外国の地でただ一人だ。そんな姉貴を見捨てて一人観光しようだなんてお前には血が通ってないのか……?」

 

 

「酷い言われようだ!?確かにそうかもだけど、兄貴が弟に言うセリフと目じゃないってそれ!ていうかいつもの倍以上濁ってるよ目!」

 

 

これぞ長い年月をかけ習得した濁り強化の術だ。目が濁ってるなとか腐ってるとか言われ続けて導き出したこの術は俺の意のままに目の濁りを増すことができる。

相手を牽制するときや、警察なんかに問い詰められた時によく使う高等技術、ちなみにこの術は増すだけで減らすことができない。

 

なので目の濁りをなくせはしない。時間が立てば勝手に戻るからいいんだけどな

 

 

「この年まで女で一つで育ててくれた姉貴のここ一番手時に、お前ってやつは・・・」

 

 

「分かったよ、戻るって!だからそのあからさまな泣きまねやめて!周りの人が見てるから!!」

 

 

心なしか涙声でそう訴える一夏をホテルに連れて行き、千冬に預け俺は先ほどの連中を見つけるためまた、外に出る。

 

 

日が暮れてもうすぐ暗くなるそんな時間、ホテルの前には黒い車の前で何かを話す数名の男女の姿

 

 

そして、その目が向けられた先には体格はまだ子供くらいだが、深く深く目の濁ったどこか大人びた雰囲気を曝しだす一人の詐欺師の姿

 

 

日の光も届かぬ夜にその二種類の姿は闇の中にと消えていく

 

 

 



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IS インフィニット・ストラトス 3

季節は巡り、学生たちが受験だのなんだのと浮足立つ季節がやってきた。

この季節になると思い出す。以前に販売したありがたいまじないが施された合格祈願のお守り一個3500円は、それなりにいい儲けになった。

 

受験生らが必死こいて勉強しているさなかに、先輩がそのお守りを持っていたら競争率が高いT大に受かっただの、受験当日に家を早めに出たところ、お守りを持っていくのを忘れて取りに帰ったら、そのまま乗るはずだった電車が事故にあっただのという音も葉もない噂を流し、不定期にいくつかの場所を巡って販売したところ飛ぶ鳥を落とす勢いで売れるは売れる。

 

原価計算で、他県の安いお守りと俺が適当に書いた何語か分からないまじないの入った和紙

それらを全部合わせても、一つ300円ほどで一つでも売れれば10倍の収益になる。

 

それを2000個ほど用意して完売したので単純計算640万の収益だ。さらに受験前日限定で、売り出した合格祈願のお守り5000円に合格成就の効果があり、それを使って神様に祈れば効果が跳ね上がるという祈祷を受けた10円玉6320円やその他まじないの方法、誰かを落とさせる呪いの方法などなども合わせると約1000万の収益を得た。

 

実際にそれを買ったやつらが合格できたかは知らんが、まあ、そもそもが自分の責任であり、神に頼む前に机に向かわなかったそいつらが悪いので俺には全く非はないのでどうでもいいことだがな。

 

ただ、その土地を離れた後にふとネットを見ると俺のお守りが大批判を受けていたので、恐らく駄目だったのだろう。まったく、ざまぁない。

 

 

だが、今回は何の因果か俺自身が高校受験をするはめになり、自然とため息が出る。

別に勉強ができないとか言うわけじゃないぞ?

 

これでも有名進学校に入学してその後も国立大学に見事一発合格を果たした俺の前じゃあ、高校受験なんぞ赤子の手をひねるように簡単だ。

 

では、なぜそんな余裕全開の俺がため息を吐くのかというと、金にならんからだ。

 

まったく何が悲しくて人生で2度も高校受験を受けねばならんのか。しかも金をもらえるならまだしもこちらから金を払ってわざわざ受験するとか…ため息の一つも吐きたくもなる。

 

しかも、進学校ならまだしも就職率重視の私立に受験するなんて、ただただ面倒だ。

織斑家の財政事情は千冬のモンド・グロッソ優勝の賞金で割とよくなったが、それでもまだまだだろう。

 

少し無理をすれば国立のところにも通えるが、一夏たっての希望により俺共々私立藍越学園に受験することが決まった

 

 

こいつもこいつで、姉一人に負担をかけている事に後ろめたさを感じていて、少しでも家計の足しになるように早く働きたいのだろう。

 

といっても俺から言わせればただ働いて稼ぐより、より高収入で働いて稼いだ方が後々いいだろうに。こちらでも相も変わらず学歴社会は健在で高卒と大卒では能力に関係なく所得に大きな差が生まれる。

 

その上、ただでさえ女尊男卑の風潮のせいで男は社会的に肩身が狭いのに合わせ、織斑 千冬の弟というだけで世間から色々言われている一夏の今後の人生はハードモードであること間違いなしだろう。というかすでにハードに突入してると言えるな。

 

ま、いい高校、大学出てそれなりの会社に勤め社畜の如く毎日真面目に働き痴漢冤罪でそのすべてを失った俺が言えた義理ではないか。

 

 

 

受験当日、俺と一夏はちょうど家を出るところなのだが…

 

 

「2人ともちゃんと荷物の確認はしたのか?忘れ物はないか?」

 

 

「ああ、大丈夫だよって、さっきから心配しすぎだよ千冬姉」

 

 

「馬鹿者、初めての受験なんだしこのぐらい用心してちょうどいいくらいだ。八幡も平気か?気分が悪くなったらとりあえず手の平に人という字をだな―――――――」

 

 

「大丈夫だ。それとそれは緊張したときのおまじないだろ?少し落ち着け」

 

 

このブラコン世界チャンピオンが俺達以上に動揺しており、なかなか出発できない。

全く姉弟が心配なのは分かるが、この慌てようは若干引くぞ。俺でも小町の受験の時でさえここまでの取り乱し方はしてなかったぞ?

 

これで、世界チャンピオンというのだから何とも言えない感情が芽生える。

 

 

「うっし、それじゃあ行ってくるぜ千冬姉!」

 

 

「うむ、くれぐれも事故には気を付けるんだぞ。それと問題が終わってもしっかりと確認することと、名前は一番初めに書くんだぞ」

 

 

元気よく行こうとする一夏に駄目押しといわんばかりに千冬は言葉をかけると、続いて俺の方を見やる

これは、俺も何か言わなきゃいけないのか?面倒くさい。

 

 

「‥‥行ってきます」

 

 

俺が気の利いた事を言えるはずもなく、そっけなく答えると千冬はふーとため息をこぼしながら俺にも言葉をかける。

 

 

「お前の事だから心配はいらんと思うが、それでも用心するんだぞ?」

 

 

「‥‥うす」

 

 

本気で心配している目で真っ直ぐ俺を見て話す千冬の姿に遠い昔、俺がまだ高校生だった頃大学受験当日の母ちゃんの事を思い出す。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「んじゃ行ってきます」

 

 

「行ってらっしゃい!頑張ってねお兄ちゃん!」

 

 

「おう」

 

 

気を引き締めいざ行こうとすると、後ろからいきなり母ちゃんが俺を引き留め。

 

 

「待って八幡!これ」

 

 

そういって手渡されたのは、ポケットに入るくらいに折りたたまれた袋と少しのお金と何かが書かれたメモ用紙だった。

 

 

「帰りにそれ買ってきて」

 

 

「‥‥‥」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

なんか違うな。今更だが、大事な日になにお使い頼んでんだよ母ちゃん‥‥

んで、俺も俺でちゃんと帰りに買って帰るし、レジのおばちゃんに変な目で見られて凄くやな気分になったんだよな…

 

ちなみにその日の晩御飯はカレーだった。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

念のため余裕をもって家を出たため遅刻の心配はまずない。朝の早い時間なので人も少なく難なく目的地である藍越学園受験会場に付く、はずだった…

 

会場前まできて、先ほどまで一緒だった一夏とはぐれてしまったことに気が付きあたりを探しているとある疑問が生まれる。

 

同じように受験を受けるであろう学生を見かけるが、見かける学生全員が女なのだ。

時間的に早い時間なので受験生の数もあまりいないが、それでもざっと見20人以上はいるだろう。それなのにそれらが全員女とは不可解である。

 

藍越学園は共学だが、男女比で言うなら男の方が多いらしい。それなのに男の受験者を一人も見ないなどという事があるだろうか?

 

そこでふと、先ほどまで見ていた方向より視線を上に向けあたりを見わたすとこの不可解な疑問の正体がすぐに分かった

 

 

「IS学園‥‥‥?」

 

 

つまりあれか、あいえつとあいえすを間違えてしまったという事か?そんな馬鹿な‥‥‥

 

携帯の時間を確かめると残り数時間とちょいで、受験が始まる。すぐさまアプリで地図を検索し藍越学園までの交通手段を確かめる

 

この時間ならまだ急げばギリギリ間に合うはずだ

大抵の高校受験なんて屁でもないくらいの偏差値を持つ俺だが、流石に性別の差を越える事は不可能であり、受験を受けられずに留年とかシャレにならん。

 

特にこんなことを千冬が知ったら間違いなく切れる。弟に激甘のブラコンだが、その性格は直情的で、ただ甘いだけではなく時に厳しい親代わりのあの姉は、こんな馬鹿のような失敗を許しはしないだろう。

 

千冬の潜在能力は生身でISに匹敵するとファンの間で実しやかにささやかれているが、そんなふざけた奴にキレられたら俺でも命の保証ができん。

最低でも地獄のような苦痛を味わわされることは請け合いだ。

 

 

俺の歩くペースはだんだんと早くなり、一夏を見つけるために全身の感覚を鋭くさせる

必殺、誰でも見つけられるヒッキーレーダー!

 

不特定多数の中からいいカモを見つけるために開発した必殺技、特定のしぐさやあたりの環境を瞬時に判断するこの技は、人間観察の発展技でありその精確さは数々の獲物を見つけ出してきた折り紙つきのものである。

 

これを使用している間、俺の思考スピードと観察眼は普段の1.8倍まで跳ね上がる

 

 

一夏を最後に見たのは、会場入り口、そこからはぐれるとすれば突き当りにある分かれ道しかない。

確かその道には電光掲示板で関係者以外立ち入り禁止という文字が表示されていたはずだが、まさかあいつその先に行ったのか?

 

普段の一夏ならそんなホラー映画で真っ先に酷い目に合う若者のような行動はしないはずだが、他に思い当たる節もないのでそこまで駆け足で移動する。

 

 

 

 

 

「確かこのあたりか」

 

 

記憶を頼りに掲示板の前まで来たがそこでまたもや、あることに気が付く

 

 

「これ…どっかからハッキングされてんな」

 

 

今は立ち入り禁止となってる掲示板に違和感を感じ、思ったことをついつい口に出してしまう。

 

別に専門じゃねーが、こういう中途半端な電化製品はハッキングを受けやすく、ハッキングされるとどうしても多少のノイズが入るそうだ。

 

つまりは、一夏がこの掲示板を見た時にはこれと違う文字が表示されていて、一夏はそれに従いこの道をいった可能性がある

もしそうなら、普段やらないような行動の説明にもなる

 

さらに最悪を予想し携帯を確認すると、やっぱり俺の携帯にもハッキングされた形跡があった。いくらなんでも目的地を間違えるなんておかしいと思ったが、こういう事か

 

藍越学園に行くまでに、携帯で道のりを調べた事があり、恐らくその時に偽物の地図を掴まされたというわけか

 

 

「ッチ」

 

 

 

舌打ちをしながら携帯からメモリを抜き出し、そのままガラゲーを真っ二つに折り、ごみ箱に捨てる。

 

一度ハッキングされたものなんていつまでも持ち歩いていると更なる被害が出るという判断からだ。それにしてもこの俺を騙すなんてこの犯人はいい度胸をしているな。

 

犯人を見つけた時には三倍返しで金を騙し取ってやろうと心に誓いそのまま、先を探す。

 

 

少し行ったところで、ドアが閉じてない所を見つけ、勢いよくそのドアを開ける

 

 

「一夏ッ!!」

 

 

「うおっ、八兄!?」

 

 

どうやら一夏は無事のようだ。素っ頓狂な声を上げ俺の方を見て驚いている。

 

 

「どうしたんだよ、そんな大声出して」

 

 

「お前の方こそ何やってんだ、ここ立ち入り禁止だぞ」

 

 

「え?でも、こっちの方が試験会場って書いてあったけど」

 

 

恐らくは、さっきの電光掲示板だろう。というか、電気もところどころついてないし薄暗いここが本気で試験会場とでも思ってるのこいつ?

 

 

「どうでもいい、とにかく急ぐぞ。じゃないと試験すら受けられず落ちるぞ?」

 

 

「受けられないってそんなオーバーな‥ちょっと道に迷っただけなんだしまだ時間だって大丈夫だろ?」

 

 

腕時計を見ながらそう答える一夏はまだ、事の重要性に気が付いていないのだろう。ヘラヘラ笑いやがって‥‥‥一発どついてやろうか、そのイケメンフェイスを?

 

 

「生憎だが、ここは藍越学園試験会場じゃなくIS学園試験会場だ。お前が女子高に行くってんなら止めないがお兄ちゃん、お勧めはしないな」

 

 

「はっ!IS学園!?ど、どういうこと?」

 

 

「どうもこうも道に迷ったんだよ」

 

 

「マジでかっ、あ!それで、こんなのがあるんだ」

 

 

と、一夏が後ろを振り向くと薄暗くて分かりにくいが、なにやら機械がごちゃごちゃとなってるパワードスーツが置いてあった

 

 

「こいつは‥‥ガンダムか!」

 

 

「いやいやISだよ、八兄。ていうかモンド・グロッソで見た事あるでしょ」

 

 

「ばっかお前、こういうのはとりあえずガンダムって叫ぶのがお約束だろ?」

 

 

「どこのお約束だよ!」

 

 

あれ、おかしいな?こういうところも世界が違う影響かな

人型の等身大機械をみたら皆ガンダムって叫ぶよね、ふつう?

 

 

そんな事をISの前で話していたらいきなり後ろの俺が入ってきた扉が、開かれ女性の声が聞こえる

 

 

「貴方達!こんな所で何やってるの!」

 

 

「え?」

 

 

「あん?」

 

 

俺と一夏は、反射的に振り向きその時前にあるISに手が触れてしまう

 

するとISは突然光だし、何が何だか分からない俺ら2人をよそに先ほど入ってきた女性は驚いたような声を上げる

 

 

 

「嘘…ISが起動してる?」

 

 

 



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IS インフィニット・ストラトス 4

この世界は俺から見たらやたら出鱈目だと思う事が多々ある。

代表的に言えばISなんかがそうだろう。一体どんな理論や理屈で設計されてるのか不明、絶対防御、量子変換、ハイパーセンサーなど便利な機能が多々あるもそれに比べ、一般の医療技術は俺のいた世界とたいして変わらない。これもおかしな話だ

 

昨今ではおもちゃの技術が戦闘機に利用されたり、軍事技術が医療の場で使われることだってある。このように、優れた発明、技術は様々な分野に利用されるのが世の常である。しかし、ことISの技術ではそういったのが極端に少ない

 

アラスカ条約とか色々あるのだろうが、それでもこの世界でISという兵器はあまりにも不明虜である。

 

あと、女尊男卑もそうだろう。そもそもこのような風潮が出回ったのはほんの数年前の事だ。俺もいつから風潮があったかは知らんが、約10年前にISが世界的に発表され、元近代兵器たちの立つ瀬がなくなりそれからしばらくしてどこぞの学者が男と女が戦争をすれば三日で決着がつくだのという論文を発表これが大体8年くらい前で

 

それからだんだんと世間が女尊男卑だのという事になったのだ。

だが、ここで考えてみろ。たかだか8年という歳月でここまで変わるものか?

 

今、18歳のやつが10歳の頃だぞ?まあ、10歳というと小学生だしそのくらいの年ごろならそういった物に流されやすいかもだが

 

それより上の20代以上の連中がここまでこの風潮に染まってるのはどういう事だよ。

それまでは皆俺の世界と同じように普通の世界だったんだろ?じゃあなぜそこまで立場が逆転するんだよ。

 

仮に立場が入れ替わってもかなりの年月が必要のはずだろ?そりゃあ、女子がやたら集まれば上長するのはいつもの事だが、男の方はなぜ何もせず黙って受け入れてるんだよ、草食系男子か!

 

 

しかも、その問題の論文も調べてみたが、あれは詐欺といっていいレベルだったぞ。

まず、世界にある400数個のコア全機使用で各国の首都が落とせるというのは、まあいいだろう。

 

しかし、その後が問題だ。確かにIS相手に近代兵器を使っても倒すことはできないかもしれない。例えば戦闘機10機に戦車が20機、ミサイル30発 対 IS1機だったらISの方が勝つ

 

だが、例え倒しても無傷とはいかない。正確に言えば機体や人体は平気でも弾薬やエネルギー、操縦士の疲労などを削る事は出来る

 

そうすると、武器やエネルギーの補充はもちろん操縦士の交代か休養は必要になる。

そのために基地やその他の施設、物資が必要なのだがこの論文にはそのことが記載されていない

 

 

戦争において、兵器は勿論だが物資、基地はそれと同等並みに必要になる。だが、逆にそこを叩かれるとどんなに優れた兵器も使用し続ける事が出来なくなる

つまり、戦闘で無敵のIS唯一の弱点となる部分だ

 

 

歴史などを見ても分かるが攻略できないほどの性能差がある兵器に対してとる戦法はパイプラインの除去、兵糧攻めや後は特攻とかも手ではあるな

まあ、要は戦っても勝てないなら無視して大本を叩くか、自滅を待つかみたいな事だ

 

 

それに、いくら相手が戦闘機を凌駕するほどの兵器でも歩兵の存在は必要だ。歩兵の場合は兵器との戦闘そのものではなく、後方支援の排除などで使えるし、決して考慮しなくていい訳ではない

 

 

論文にはそのことも記載されていない

IS側の基地、物資の有無

 

男側の歩兵又はそれに準ずるものが記載されておらず、さらにIS側はあくまでデータ上での計算で戦闘で操縦士にかかる影響もほとんど考慮されていないのだ。そうするとどう考えても三日で決着は不可能だ

 

 

仮に三日で女がISを使い男を倒すとするなら、その操縦士すべての技量、精神力が千冬並みになくてはならないだろう

 

それなのになぜ、この論文は世間一般に認知されているんだ

割烹着を着て実験をしていたとかでも叩かれるうちの世界ではまずありえないぞ

 

そんな明らかにおかしい世界を平気な顔して受け入れるこの世界の人間は寛容というかなんというか出鱈目である

 

そして、そんな出鱈目な現象が今まさに俺に降りかかっている

 

これまた正確に言うと俺ともう一人

隣にいるこの若干顔が引きつってるイケメンフェイス(弟)に降りかかっている

 

 

「八兄、これ思った以上につらいんだけど‥‥」

 

 

「気にするな、気にしたら負けだと思え」

 

 

「いやいや、どうしたって気にするでしょ。むしろ八兄はなんでそんな普通なわけ?」

 

 

「別に・・・しいて言うなら心を無にすることだ、目をつぶって考えろ、自分は一人だけだ。人なんて誰もいない。いるのは自分一人だけ、孤独と絶望の中に自分はいると‥‥さあ選べ、このままパンダの気分を味わい続けるか、一緒にダークサイドに落ちるかを」

 

 

「そんな救いのない究極の選択嫌だよ!?」

 

 

 

 

 

あの受験の日、俺と一夏は道を間違えてIS学園の受験会場に行ってしまい、さらにそこでISに触れたら起動してしまった。そうして気が付けば男でISを唯一動かせる兄弟となり、世界中から注目される時の人となったのだ

 

 

ちなみに、各メディアにはそれぞれ写真や名前を勝手に使用した事で文句をいい、起訴寸前まで行ったが示談金をふんだくり事なきを得ている

 

 

それから色々あって本来、女子校であるはずのIS学園に俺達2人は入学したのでした。俺達に拒否権がなかったので入学というか連行といったほうが正しいかもだけど

 

で、入学初日1年1組の教室にて女子の中に放り込まれた男二人は上野のパンダ並みに見られている

 

 

一夏は唯でさえ、知り合いもおらず精神的にきてるのに、それに加え周りすべてが女子で、完全に参っている

 

 

俺は、先ほども言ったが心を無にしてるのでさほど気にしてない

 

 

「じゃあ、諦めて寝たふりでもするかイケメンらしく話しかけてこいよ」

 

 

「寝たふっりて、今からしてもバレバレじゃん…それに話かけるとかこの状況でどうしろっていうわけ?」

 

 

「知るか、そもそも俺に聞くな。こうみえても非リアのボッチだから女子との話かたなんて知るわけないだろ」

 

 

「こう見えてもって、見たまんまだと思うけど?」

 

 

この弟何気に失礼である。

俺だってお前と同じくらいの身長で同じくらいに整った顔立ちしてるんだからな?ただちょっと、それを飲み込むくらい目が濁ってて後ろの効果音がドロドロドローなだけで、それ以外の基盤は高スッペクなんだからな?

 

精神年齢大人の俺は今更そんな事を言ったりしないがな。

ということで精神年齢大人の俺はおとなしく寝たふりを開始する

 

あれ?これじゃあ高校の時と変わってなくね?‥‥‥まあ、いいか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

これは…これは思った以上にキツイ…

 

あたりを見渡してもいるのは全員女子であり、男は俺と兄ちゃんの2人だけだ。しかも、その八兄も今は寝たふりをしているのか、机に突っ伏している。

 

そうすると自然とクラスの視線は俺へと集中的に注がれる。友人である長髪赤毛にバンダナをした男なら涙ながらに喜ぶか、むしろこの状況なら嬉々として周りにいる女子にアプローチをかけていただろう。

 

しかし、俺こと、織斑 一夏はそんな積極性も度胸も持ち合わせていないのだ。先ほど兄に聞いた実に悲しい対処法も俺向きではない、というかあんなの八兄くらいしかしないだろう

 

友人のようにも兄のようにもできない俺のとる選択は沈黙しかないのだが、状況が全然変わっていないので相変わらずキツイ…

 

 

 

 

 

「皆さん入学おめでとう。私は副担任の山田真耶です」

 

 

緑色の髪にメガネをかけた副担任という女性は、明るい声でクラスを見渡す様に自己紹介をする。

 

 

「‥‥‥」

 

 

しかし、クラスからは声一つ上がらない。これには先生も顔をひきつらせている。

本当なら名前のヤマダマヤとおいうのにツッコミを入れたいところだが、せっかく減った視線をまた戻す事になりそうなので俺も無言を突き通す。

 

 

 

「き、今日から皆さんはIS学園の生徒です。この学園は全寮制、学校でも放課後も一緒です。仲良く助け合って楽しい3年間にしましょうね」

 

 

気を取り直して学園の大まかな説明に入り、このような締めくくりで会話を閉じまたもクラスの反応を伺うが

 

 

「‥‥‥」

 

 

相変らず無反応だ。その上さらに厄介な事に、先生の説明が終わるや否やクラス中の視線はまたも俺に突き刺さられることになる

 

教壇の前に位置する俺の席は本来このような場合では先生にちゃちゃを入れるなどして、場を和ませる位置取りだが、生憎と俺は自分の事でいっぱいなのでフォローに入ることもできない

 

 

というより、このクラスにはムードメーカーとかいないのかよ!俺なんか見るよりこの場の空気をどうにかしろよな!

 

 

内心そんな事を考えながら、じりじりと突き刺さる視線に耐え、ふと一番端の席にいる女生徒にすがるような目を向ける、が、俺の視線に気が付くと彼女はそっぽを向いてしまった。

 

 

(それが6年ぶりに再会した幼馴染に対する態度か…もしかして俺嫌われてるんじゃ…?)

 

 

彼女は名前は篠ノ乃 箒、俺の幼馴染で彼女の実家である篠ノ乃道場に千冬姉と一緒に通っていたことがあり、お互い不器用ながらにもそれなりに仲良くやっていたと思う。

 

でも、この態度を見るとそう思っていたのは俺だけだったのか?まさか箒のそっくりさんで本当は赤の他人なのではとか軽く現実逃避をするが、俺の名前が呼ばれている事に気が付きすぐさま意識を戻す

 

 

「織斑君?…織斑 一夏君!」

 

 

「は、はい!」

 

 

それは先ほどから一生懸命に話してる副担任の山田先生の声だった。

 

 

「あの~大声だしちゃってごめんなさい。でも、あ から始まって今 お なんだよね。自己紹介してくれるかな…駄目かな?」

 

 

なぜか、子供に言い聞かすような口調で先生は身を屈めながら聞いてくる。その時ちょうど俺の座っている位置と先生の胸の位置が水平上になり、その豊満な胸が目の前で揺れる

 

 

な、なんだこの破壊力は!?これが本当に人体の一部というのか!

 

 

それに一瞬、目を奪われすぐに返答することができなかったが何とか、自制を取り戻し話をしようとするが、申し訳なさそうに謝る先生に対し、むしろ俺の方こそ邪な目線で見てしまいすいませんと謝りたくなった。

 

だが、ここで下手に謝ると最悪牢屋いき、よくてもこれからの学園生活で初日に教師に対しセクハラした最低男という汚名が付くことになるだろう。

 

というかいつまでもそんな下らんこと考えている場合じゃないな

 

 

一度大きな深呼吸をし、意を決して立ち上がる

 

 

「えー‥えっと、織斑 一夏です。よろしくお願いします」

 

 

無難ながらもザ・自己紹介という感じの挨拶を終へ座ろうとするがどうやら周りはそれを許してはくれないようだ

 

突き刺さるように向けられた視線は一瞬、キランと光り輝き先ほどまでとは比べられないほどの強い視線が体を貫く

 

 

いかん、このまま黙ってしまっては、暗いやつのレッテルを張られてしまう。それはさけねば!

 

 

「す「織斑 八幡。好きな食べ物は甘いものと肉、座右の銘は押してダメなら突き落せです。よろしく」

 

 

本日2度目の意を決して話そうとした矢先に、先ほどまで寝たふりをしていた後ろから言葉を遮るようにして自己紹介をはじめた

 

 

「ん?…なにまだ立ってんだ一夏?座れば」

 

 

「ァ…はい」

 

意気消沈して静かに席に座りなおすが、なんとも微妙な空気のまま、俺と兄の自己紹介は終わり教室の空気は依然と重いままで、山田先生もオロオロとしっぱなしだ。

 

 

次に自己紹介をするであろう人も何も話さず…というか、立とうとすらしない。

クラス中の時間が止まったかと思うような錯覚を起こしそうになる。誰でもいいから何か喋れよと思うが、俺の願いとは裏腹に誰一人として喋らない、沈黙が教室を支配している。

 

そんな時、教室のドアから救世主が現れた

 

 

「すまない、山田君遅れて‥‥‥なんだ、この空気は?」

 

 

救世主は全身黒いスーツに、スカートが全身のシルエットを強調し、唯でさえいいスタイルが一層はれ、長髪でややウェーブのかかった見慣れた黒髪…というか

 

 

「なんで千冬姉がここに!?」

 

 

職業不詳で週に数度しか帰ってこない、IS世界大会2連覇を成し遂げた俺の実の姉だった

 

 

「学校では織斑先生だ一夏、それと八幡も顔を上げろ。まだHR中だぞ!」

 

 

俺の声と、八兄の姿に反応し出席簿と思わしき物体で頭を殴りながら注意する。

目にもとまわない速さで繰り出された出席簿は俺の頭を割らんばかりの力で押し付け、あまりの衝撃にその場で頭を押さえうずくまる

 

そのまま目線を上げ、この殺人出席簿のもう一人の犠牲者であろう兄の姿を確認しようとするが予想に反し兄は、平然としていた。

 

 

「ほう…今のをよけるか」

 

 

「入学初日から虐めとは感心しませんよ」

 

 

「人聞きの悪い。こんなのただのスキンシップだろ?」

 

                 ・ ・ ・ ・ 

「公私の区別はつけた方がいいですよ織 斑 先 生」

 

 

なんと兄はあの一撃をよけていたのだ。机に突っ伏してる状態からどうやってよけたのかが気になる。なんせ兄と姉で火花を散らしてる後ろにいる女生徒は軒並みありえない物を見たという風な顔をして、机の真上の天井には出席簿と思われる物体が深々と刺さってるんだもん

 

天井に刺さってるとかどういうことだよ?俺の見てない一瞬にどんな攻防があったのか凄く気になる

 

 

「まあいい、二人とも席につけ」

 

 

千冬姉は教壇のほうに移動し、クラス全体を見渡しながら言葉を続ける

 

 

「諸君!私が担任の織斑 千冬だ。君たち新人を1年で使い物にするのが仕事だ」

 

 

まさに威風同等、大胆不敵といった感じの自己紹介を終えると先ほどまでの沈黙が嘘のように教室が湧いた

 

 

「きゃああああああああああああああっ!!!!!」

 

「千冬様よ!本物の千冬様よ!!」

 

「私お姉様に憧れてこの学園に来たんです!北九州から!」

 

「私!お姉様のためなら死ねます!!」

 

 

一体なにがどうしたのか分からんが、クラス中の生徒は千冬姉に向け一様に羨望の眼差しを向け、頬を赤らめ黄色い声を放つ。その有様はまるで、どこぞのテレビで見たような光景であり等の千冬姉は呆れるように頭を掻く

 

「毎年よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ。それとも私のクラスに集中させてるのか?」

 

そうするとまたも教室が湧きあがる

 

「きゃあああああああああああ!!!!!」

 

「お姉様もっと叱って罵って!!!」

 

「時には優しくして、そして付け上がらないように躾をして!!」

 

おいこら最後、人の姉になんつうアブノーマルなプレイを頼んでやがるんだ?



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IS インフィニット・ストラトス 5

クラスに騒音が響き数十秒後、やっとのこと女生徒達が話ができるほどには静かになる。それでも、あちらこちらではまだ感嘆の声を上げる者がいる

 

好かれることはありがたいが、こうも熱烈すぎる物はいっそのこと迷惑だ。しかも毎年毎年同じように騒がれては気も滅入るというものだろう

まあいい、とにかくここは例年如く一喝すれば大抵の生徒はどうにかなるだろうし日を追うごとに生徒たちもおとなしくなる

 

ただ、これも毎年の事だがいささか厄介な者達もいる。

 

窓際の席に構えるポニーテールの少女、篠ノ乃 箒

私の親友でもある天災の妹。高校の頃お世話になった剣道教室の娘であり、ISが世に出て少ししたら家族ともども政府の保護プログラムにより引っ越し、それ以降もたびたび住まいや名前を変えており両親とも離反。中学3年に剣道の大会で優勝したようだが、同じ門下生である私の目から見ても随分剣筋が荒れていた。

今の不機嫌そうな顔と合わせても、何事も問題なく卒業まで行くことは‥‥残念ながらないだろう

 

後ろの席に座る金髪でどうセットしてるのか謎のドリルの少女 セシリア・オルコット

イギリスの代表候補制であり専用気持ち、入試試験で女子で唯一教官に勝利した名実ともに優等生。彼女の家は貴族の家系であり今現在彼女が頭首をしている。数年前に両親は事故に会いこの世を去り、一人でオルコット家を支えてきた。

貴族かどうかは知らんが高慢な態度が目立ち、まさに女尊男卑を表現したような性格

普通のクラスなら問題はないだろうが‥‥いかんせんこのクラスには2人のイレギュラーがいる。何事もないなんて口が裂けても言えないが、当面は問題ないだろう‥‥多分

 

 

織斑家長男 織斑 八幡

どこかつかめにくい性格でその根性は目と共に腐っているが、何事にも対応できる柔軟な思考を持ち体捌きも自衛ぐらいなら難なくこなせる。よく誤解されるが根は腐っていても優しく、一本筋が通っている。

織斑家では家計簿をつけており、私と一夏の月の小遣いも管理している。金関係になると姉弟であろうが他人であろうが関係なくシビアになり基本的にどケチで金に汚い

言ってることはどことなく正論のように見せかけた虚言で、分かっていてもついつい言いくるめられるので小遣いアップや前借は絶望的にできない‥‥しかも前に失敗した時なんて、家にあるはずだったビールが消いたりとみみっちいけど効果てきめんな攻撃を仕掛けてくるので注意が必要だ

親しい友達はいない模様

 

ちなみに織斑家での役割は私が収入 一夏が家事全般たまにバイト 八幡が家計簿たまに家事である

 

 

織斑 一夏

末の弟で、兄とくらべるとイケメンで性格も明るく女受けしそうな感じだが、圧倒的なまでに鈍感、朴念仁なためいまだに恋人はいない

ちかくにある食堂では私が家にいないときなどにお世話になり、そこにいる兄妹とも親しい。

家族思いで私や八幡の事が大好きであり、前に八幡がいじめにあっていた時もいじめっ子を殴り飛ばすなどしたりしたほど男同士で年も近い事から私よりも八幡に懐いてる‥‥‥‥‥もちろん一夏も八幡も私の事は大好きである、異論は認めんッ!!!

 

と、まあそれはさておき今あげた4人はこのクラスで良くも悪くも中心になるであろう。天災の妹、代表候補制、世界初の男性操縦士(2人)

一癖も二癖もある連中がこれからどう過ごすのか、一人の人間として興味はあるが担任教師としては頭の痛い話である。

 

しかし、私も人を導くものとして何より彼らの家族としてこれから成長の手助けができれば幸いだ。   

 

それじゃあ、そろそろ学生気分の小娘共を黙らせるとするか

 

 

「静かに!」

 

 

先ほどまでしつこく騒がしかった数人の生徒は完璧に黙り、クラスの視線は自然と教卓にたたずむ千冬に向けられる

 

 

「これからISの基礎を半年で覚えてもらう。その次に実習だが基本動作は半月で体にしみこませろ!いいか?いいなら返事をしろ、良くなくても返事をしろ!」

 

我ながらどこかの軍隊かとツッコミたくなるが、実際に以前行われた自衛隊の教官をしているときの癖のようなものなので否定できない。

ついこの間まで普通の生活をしてきた小娘(こども)には堪えるかもしれないが、ISは、絶対防御があるといっても全てにおいて安全というわけではなく、下手をしたら一生消えない傷ができたり、最悪死んでしまう。なので、多少きつくともお遊び感覚を捨てさせる必要がある。

もっとも、例年道理なら私のクラスの人間がこれに否定をした事はなく、今年もそれは例外ではなかった

 

 

「「「「はい!!」」」

 

 

先ほどまでの騒音とは違い、一つに整われた声は教室に響き

予想していた通りの反応に内心頷く

 

それからは、副担任の山田君に任せ私は腕を組みクラス全体を見渡す

その時、弟たちを見るが一夏はなにやら顔を青くさせだらしなく口元が開いている。まあ、この空間(女子しかいない)に放り込まれ尚且つ私が教師であった事実に戸惑っているのだろう。

 

まったく‥‥‥‥可愛い奴め

 

本当なら今すぐ傍に行き頭の一つでも撫でてやりたいが、公私の区別をつけるべきと八幡にお説教されたばかりだしここは我慢する

 

その八幡はというと、顔を上げているがその目線は明後日の方向にある。あいつでも緊張するのかと一瞬思ったが、どうやらただ単にボーとしてるだけのようだ

 

相変らず肝が据わっている‥‥‥‥そんなところも凛々しい奴だ

 

腐った目に似つかわしくないその大人びた雰囲気は実年齢よりはるか上に思え、大人ならではの渋さがにじみ出る

弟に向ける感情ではないだろうが、もし血がつながっていなかったら女として惚れている事だろう。

 

世間のやつらは良く勘違いするが私の弟たちは男としてそれぞれ最上位に位置している

家事万能で心優しい可愛い一夏

家計を切り盛りする憂た顔が凛々しい八幡

 

どちらともジャンルは違えどそれぞれが立派なに『男』である

まあ、一夏の方は『男』というよりいいとこまだ『男の子』であるがな。それでもこれからに期待できる

                    ・・

だからこそこの学園で彼らの魅力に気が付くメス共も現れるだろうが、その時は姉として家族として女として真正面から叩き潰してやろう‥‥‥おっとそれから、教師としてもだな、それは別にいいか?いや駄目か

 

 

どれほどの時間そんなことを考えていたか知らないが気が付くとHRは終わっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

HRが終わり教室の前には他のクラスから来た女子がごった返していた。

いったい何事かと思うが、彼女たちの目線は俺に降り注いでることから原因は俺だろう

 

こういったことは本来なら一夏の役なのだろうが、一夏はHRが終わるなりポニーテールの女子に連れられ教室を出て行てしまった

なにやら親しそうな雰囲気だったので知り合いかなんかだろう

 

ついでにその箒と呼ばれていたポニーテールは俺に向かって殺気を飛ばしていたので俺とも何らかの関係があるようだ。記憶にないから知らんがこの世界の俺は一体なにをしたんだよ?

殺気飛ばされるって相当だぞ‥‥まあ、以前は日常的に殺気や鈍器を向けられる生活を送っていたので気にしてはいないがな

 

一応警戒はしておこう。

 

 

「ねえねえあれが?」

 

 

「ISを動かした‥‥‥?」

 

 

「でも、二人いるんじゃ‥‥‥」

 

 

ざわざわとそんな会話が聞こえてくる。

どうやら、俺‥‥というか男性操縦者が気になるが声をかけられずに遠巻きから見ているといった感じか

 

高校時代の俺なら発狂していてもおかしくない状況だな。

人からの奇異の視線、勝手な落胆、遠くから人を見てヒソヒソと何かを言うしぐさしかも相手は全員女子

 

この状況、俺じゃなくても大抵の男はトラウマもんだと思う

 

唯でさえボッチ歴が長い俺なら速攻で耳イヤホン、寝たふり、素数を数えるの3段手法を取っていただろう。といってもそれは昔の話であり、こちとら30超えたいい大人であるのでこの程度の修羅場どうとでもなるのである

 

高校時代の俺は、いささか爪が甘かったのだ。いくら寝たふりを極めようと由比ヶ浜のような子が話しかけてくることもあるし

イヤホンもそれを取られれば嫌でも顔を上げなくてはいけなくなる。話しかけるなオーラを出しても気が付かない奴もいる。それでは本当の平穏は訪れない

 

ではどうするのか?これは俺の人生をかけ見つけた相手が話しかることを極限まで減少させる必殺技その名も『トランプ・タワー』!

 

トランプ・タワーとはトランプを立体に積み上げ山を築き、周りの振動でも崩れてしまう繊細かつ集中力を極限まで使う遊びだ

 

この遊びをしているうちは極力周りは近づいてこない。なんせ近づいた振動でタワーが崩れる恐れがあるためだ。仮に近づいてこようものなら軽く一睨みすれば散っていくし話しかけられたのを無視しても集中しているのだと思わせる事ができる

 

実際にやってくる奴がいても大抵興味本意か本格的な嫌がらせかただの空気が読めない奴くらいで

 

興味本位のやつが近づいてきたらわざとタワーを崩して無言で睨んでいると勝手にいなくなるし

嫌がらせのやつはそもそも寝たふりしててもやってくるのでどうしようもない

この事から、やっても結構楽しいトランプタワーは休み時間にボッチがとる行動としては最適といえる。ただし先生に見つかると没収される恐れがあるので要注意だ

 

最後に空気読めない奴だが、流石にタワーが完成まじかで話しかけてくるレベルはそうはいないし大丈夫だろう

で、俺のタワーは今あと2組を乗っければ完成する。なのでこのまま時間をかけ2枚をゆっくりおけば休み時間中に話しかけれらえる事はない。それに完成したときの達成感も味わえる一つで2つ美味しい完璧な作戦だ

 

 

 

そして2枚のカードを乗せようとした時、目の前に一つの影が声と共に現れる

 

 

「ちょっとよろしくて?」

 

 

それと同時にパラパラとタワーは崩れていき、俺の手に残る2枚のカードはその行き場を完全に失ったのだった

 

 

 



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IS インフィニット・ストラトス 6

俺の手元に残る2枚のカード、スペードのAとジョウカーは行き場を失い空中にただずむ。持っている俺の手は微振動を繰り返し、机の上または机から落ちた数枚のカードを虚しくも見つづけている

 

 

「‥‥‥ふう」

 

 

まあ待て落ち着け俺、まだ慌てる時間ではない。冷静に状況を把握しよう

俺の手にはカードが2枚、机の上には崩れたタワーの残骸が散乱し、先ほどまでざわざわと遠巻きから見ていた女子たちはなぜか無言

 

いや、どこからかうわぁー‥‥とかあー‥‥とか言う声が聞こえる

その視線は俺ではなく崩れたトランプに向けられ、俺の目の前は金髪縦ロールの外国人が一人

 

 

 

うん、どう考えてもアウトだわ、慌てる時間なんてとっくに過ぎてた‥‥

 

 

「そこの貴方!返事くらいしたらどうですの!!」

 

 

「あ‶あ‶ん?」

 

 

悲観してる俺に向かい金髪はさらにまくしたてるように話しかけるが、なにぶん今は虫の居所が悪いのでやや乱暴に答える。ゆわずもながらだが、機嫌が悪い理由は目の前にいるこいつである。

 

 

「まあ!なんですのそのお返事は!」

 

 

なにやらオーバーなリアクションでおどけるが、こちとら今それどころではない。俺の八幡スパイラルタワー(トランプタワー)崩壊の影響で心が凄く荒んでいる

理由は目の前にいるこいつである。

 

 

「私に話しかけられるだけでも光栄なのですからそれ相応の態度という物があるのでないかしら!」

 

 

フンと鼻を鳴らしながら偉くご立腹の様子だが、人が丹精込めて建てた塔をぶち壊した奴に対する相応の態度なんてこれでもまだ寛大な部類だろう

 

 

「そいつはすまねーな。名も名乗らない奴に話しかけられたらガン飛ばすのが俺なりの相応な態度てやつなんで」

 

 

ちなみにこれはマジである。裏世界とか舐められたら終わりだし虚勢を張り続けなくては一流の詐欺師とかやってられないし生きていけないので礼儀知らずにはそれこそ、ガンも飛ばすし声だって低くする

 

それが俺なりの処世術だ

 

というかこいつ、目の前で八幡スパイラルタワーが崩れてるのを見て謝罪の一つもないのかよ?あん?

 

 

「なっ!わたくしを知らない⁉セシリア・オルコットを!イギリスの代表候補制にして入試主席のわたくしを知らないと言うのですか!!」

 

 

バンッと机をたたいて顔を怒りで赤らめたオルコットが怒鳴ってくる。

その時カードが何枚か床に落ちるが知らぬ存ぜぬで話を続けるこいつに先ほど以上の怒りを感じる

 

他人の物を大事に扱わないとかそれでも貴族かこいつは?

 

 

正直な話、俺はこいつセシリア・オルコットの事をすでに知っている。IS学園に入学する事が決まり何をおいても率先して行った行動は情報収集である

情報は時にどんな武装より強力な武器なる。それは世界を巻き込む戦争も、企業同士のいざこざも、子供同士の喧嘩でさえ効力が発揮される。

 

俺自身、情報という力にいつも頼ってきてたので折り紙つきで言える。詐欺にしても警察の網の目を掻い潜るにしても何より情報がなくては成功しない

 

それ故、できる限りの情報網(ネットや雑誌)を駆使して集めた結果、そう難しくなくセシリア・オルコットにたどり着いた

イギリスの代表候補制で第3世代型IS『ブルーティアーズ』をもつ専用機持ち

 

名門貴族のお嬢様であるが両親はすでに他界しており、幼いながらも両親の遺産を周りの大人達から守ってきたやり手

 

今会話した感じだと、育ちのためか口調が上品ではあるが、プライドが高く自信家。いちいちオーバーリアクションを取ることから役者気質か形から入るタイプだろうと予測できる

 

そしてもっとも重要な情報はこのIS学園内でもオルコット家の誇る富は1、2を争う金持ちである。

幸か不幸か間違いなく不幸ではあるが、この俺に目をつけられたかわいそうな少女(カモ)ただし今現在は憎たらしいカモにグレードアップしている。大事な事だから3回言うがその理由は目の前にいるこいつである。

 

ここで俺には3つほどの選択肢が存在する

1つはこのまま友好的な態度で親睦を深めいずれ金を騙し取る

 

2つ目はとりあえず様子を見て、お互いが冷静な時にまた話をしてから詐欺にかける

 

そんで俺が選ぶのはその2つではなく3つ目の選択肢‥・・・

 

                                       

「ああ知らないな‥‥代表なんちゃら?だか、なんだかお前みたいな礼儀知らず全・く・知らないな」

 

 

むしゃくしゃしたのでとりあえず泣かせてから金をぶんどり詐欺におとすだ、こんちきしょう

 

 

 

 

 

 

 

 

「な!代表候補制をしらないなんて信じられませんわ!!日本の男性という物はこれほど知識に乏しい物なのかしら!常識ですわよ常識」

 

 

オルコットは両手をあげヤレヤレといった感じで答え、両腕を組み換えはあとため息交じりにこちらを睨んでくる

 

ちなみにこいつ曰く常識という代表候補制の存在はぶっちゃけ世界規模で認知度があまり高くない。特に男の方で国家代表くらいなら知っているが代表候補制までは知らないという者が結構いる

 

そもそも男にとってISなんぞただのスポーツという認識がほとんどだろう。なんせ動かすことができないのだから自然と興味も薄くなる、世界大会連覇という事もあり日本では割と世間一般から認知されてる方だが他の国とかじゃ関係ない男はせいぜいテレビ中継を見るくらいである。

 

逆に女子の場合は、操縦者になれる可能性があったり整備科として就職したりなんかという堅実な将来のために幼いころからそういった勉強に触れるのでIS関係の知識で男女の間に差が生まれるのも致し方ないのだ

 

女子では常識、男子にはなんだそれ?それが代表候補制の世間的認識といっていいだろう

 

さらにこれは必要か分からん情報だが、ISの操縦者は比較的美人が多いので純粋にスポーツとして楽しむ意外に邪険な気持ちでやたら詳しいやつがいたり、一部の男達の間では本人もびっくりなくらいの個人情報が出回っていたりするらしい

 

 

「それじゃあその常識とやらを教えてもらえるか、セシリア・オルコット」

 

 

「フン、いいですわよ下々の者の要求にこたえるのも貴族の務めですもの」

 

 

なんだろう?今にも片手を口元に持っていきオーホホホホみたいな笑い方をしそうなこの雰囲気は?一々嫌味ったらしい奴だ

 

 

「代表候補制とは――――――」

 

 

「国家代表IS操縦者の候補生の事で一言で言えばエリートと言うわけだな」

 

 

オルコットは瞳を光らせ意気揚々と話そうとするが、途中から俺が代わりに言い唖然とした表情で一瞬固まる。が、すぐに顔を赤くして詰め寄るように声を上げる

 

 

「あ、あなた!知っていましたの!!」

 

 

「なに言ってんだよ、仮にもIS学園に通うならそのくらい知ってて当然、常識だろ?じょ・う・し・き」

 

 

上から見下ろす様にあからさまな嫌味ったらしい笑顔を向け様子を伺うが、予想どうりにオルコットはかんかんに怒っている

 

 

「先ほどまでは知らないと!!!」

 

 

「は?俺は別にそんなこと言ってないだろ」

 

 

「わたくしを知らないと―――――――――」

 

 

「ああ、お前の事は知らんよ。でも代表候補制ってもの事態は知ってんだよ。俺が知らないのはあくまでお前の事を、だからな」

 

 

「なっ!あ、貴方このわたくしを愚弄するつもりですか!」

 

 

「ベッツにー俺はただ、事実をありのまま述べただけだぜ?それともまさかお前‥‥自分の事は学園中の全員が知ってるものだとでも勘違いしてたわけ?」

 

 

「なっ!!?!」

 

 

「うっわその反応まさか図星かよ‥‥恥っず」

 

 

「馬鹿にしてますの!?」

 

 

キイ――といった感じで物凄い怒り心頭の彼女を尻目に内心ではYESめっちゃしてますと頷く

というか面白いくらいに挑発に乗ってくるな、もういっそちょろいといってもいいレベルだ。俺の調べでは貴族の家を守ってきたかなりのやり手といった印象だが‥‥こんなんで良く家を守ってこれたものだ

ある意味、彼女自身に関心しそれと同時に将来が心配である。悪い男に引っかかったり、一人の男をずっと思うあまりに婚期を逃したり、詐欺師に騙される情景がありありと見える。

 

特にそのうち1つは、そう遠くないうちに現実のものになるのだから‥‥まあ、その詐欺師は俺なんだがな

 

 

「おいおいそんなわけないだろ?仮にも国を代表するエリートを馬鹿にするなんて恐れ多い。俺みたいな凡人にはミス・オルコットのような存在はまさに雲の上の存在。なにぶんコミュニケーションというのが元来苦手でな、不用意な発言で気分を替えしたんだったら謝る」

 

 

さきほどまでの態度を急変し目細めながら会釈する俺にオルコットは一瞬困惑の色を見せるが、すぐに胸を張り某時間をループする魔法少女のように長くきれいな金髪をファサ―とかきあげながら体の方向を後ろに向ける

 

 

「ふん!わたくしは優秀ですからあなたのような粗暴な相手にでも優しくしてさしあげますわよ。分からない事があればまあ、膝を付き泣いて頼べば教えて差し上げない事もなくってよ」

 

 

感情の起伏が激しいのか先ほどまでの怒り心頭から打って変わって高慢な態度を誇らしげに自慢してくる。

そんなオルコットを見る俺の目が酷く冷ややかな物になっているが本人は気が付いていないらしく、私って優秀なエリート自慢大会を一人で続けている

 

 

「なんせわたくし入試で唯一、教官を倒したエリート中のエリートですから」

 

 

「ワースゴイデスネ」

 

 

本来は機密になっている情報だが今年の入試で教官を倒したのは全部で3人、まあ倒したといっても教官らはある程度手を抜き、生徒の基本動作や操縦技能、戦略の構築などを確かめるような動きをしており決して本気ではなかったがな

 

で、3人ののうち一人は先ほど自分から申告したオルコットであるが残りの2人は俺と一夏である。

 

俺達の場合は色々とイレギュラーが重なっているので、本来受けるはずではなかったIS学園には特別枠として入学している。そのため俺達2人の入試データは、本来存在していない

オルコットはイレギュラー(俺と一夏)を除けば唯一教官を倒したエリート(笑)である

 

ちなみにだが、俺らは筆記試験を受けておらず実技試験だけを受けている。そもそもIS学園とは女子の中でも優秀な成績のもののみが入学できるエリート校であり、その倍率は年々増えていき一説ではすでに東大より上という話だ

 

そんな学校に、今まで就職率を見据えた学校に行く予定だった俺達が正規の方法で受かるわけもなく致し方のない配慮といえる。

 

つまり政府公認の裏口入学である。ただ、データ収集の意味合いが強い実技試験を形だけ受けたらなんやかんやで勝ってしまっただけなので誇れるかどうか分からない話だな

 

一夏は日本純正の訓練機、打鉄を使用し、俺は訓練機ラファール・リヴァイヴ使いオルコットは自分の専用機を使っていた。こちらも誇れるかどうか分からない話だ

 

 

「まあ、もっともわたくしの教えを受けたいのあればまずその腐った目を洗浄してからいらっしゃいな」

 

 

そのまま自分の席にまで戻るオルコットに向け俺は満面の笑みで答えた。

 

 

「それじゃあな、自意識過剰の代表候補制ハズカシ・チョロコット」

 

 

「あ!!貴方ッ―――――――」

 

 

顔を真っ赤にして振り向くオルコットが何かを言うと同時にチャイムが鳴り先生らが教室に入ってきて、オルコットは顔から蒸気が発せられるほどの怒りを持ったまま自身の席に戻る。その時ドカッ!という大きな音をたてながら乱暴に座る彼女に隣の生徒は恐々としていたのは言うまでもない

 

 

 



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IS インフィニット・ストラトス 7

「…なあ八兄、なんか後ろの人睨んできてない?」

 

 

予鈴ギリギリに帰ってきた一夏は、顔を引き攣らせながら後方を見る。そこには先ほど哀れにも俺に喧嘩を売ってきたメシマズ大国の代表候補制が怒気を通り越した、殺気をヒシヒシとぶつけてきている。

 

それは俺に対する物なのだろうが、俺の前の席という事で一夏にも向けられてるような状況だ。元からそういう直感が優れている一夏は知らずに殺気という物を感じられるので、少し教室を離れた間に自分らに殺気をぶつける女に恐々としている。

 

 

「自意識過剰だぞ一夏。ここは教壇の目の前なんだから織斑先生でも見てるんだろ?」

 

 

わざわざ自意識過剰という部分だけ、周りに聞こえるように声を張りそれ以降は小声で話す。別にオルコットの事を言ってるわけではないが、先ほどの今なのであっちからしたら俺がまた何らかの侮辱をしているように聞こえてる事だろう

 

現に先ほどまでの殺気がより鋭利になっている。

 

 

「ッヒ、は八兄なんかさっきよりも睨んできてるんだけど!?」

 

 

「気のせいだろ、大方HRの時みたいに千冬様~とかいう感じの女子校特有のあれだろ?別に俺らを見てるわけじゃないって」

 

 

「いやいやいや!そんな黄色い感じの視線じゃないって!あの人まるで仇を見るような目で見てきてるよ!俺がいない間に何やったんだよ八兄!」

 

 

「おいコラ、よしんばそいつが俺らを睨んでたとしてもなんで俺なんだよ、一夏を睨んでるかもしんねーだろ?いい加減にしろ」

 

 

「いやだって、俺さっきまでここ(教室)にいなかったし‥‥」

 

 

「それが、問題なんじゃね?ここって女子高で先生も皆、女なんだしそういうところを男が好き勝手動き回ってるのが気に食わないんだろ」

 

 

「え゛!?いや・・・でも、そんなんであんな般若みたいな顔にはならないでしょ・・・?」

 

 

朴念仁だが基本女に優しいこいつを持って般若と言わしめるとは、いったいどんな顔をしてるんだか?

え?後ろを見れば分かるって?・・・やだよめんどくさい、そこまであいつに興味ないし

 

 

「ばっかお前、見ず知らずの男が自分ちの中を好き勝手歩き回って気分がいい訳ないだろ?ここなんて全寮制なんだからなおさらだ。それにただでさえ良く思われてないのに、ふらふらしてるお前の事が目障りなんだろ」

 

 

「えーなんでさ?俺ら強制的に入れられただけだぜ?」

 

 

一夏は心底、理不尽だと言わんばかりの目で訴えてきている

まあ、俺らからしてみると政府が安全上の問題だとかデータ収集がどうだとかで本来受けるはずだった学校をキャンセルしてここに入れられたわけで、いわば被害者といっていい立場にあるわけだがそんな事を普通に入学してきた連中に分かるわけもないので

 

 

「要は裏口入学したってことだ。努力して入ってきた連中からすれば許せないんじゃね?」

 

 

就職率重視の私立高希望が世界一の超難関を誇る学園に通うだけの学力を持っているわけもなく、形だけの実戦試験のみで受かった俺らは、どこをどう見ても裏口だろう

 

実際、実技試験でそれなりにいい成績を収めても筆記で落ちる事がざらにあり

筆記内容も一般教養からISに関する専門知識まで広く深く試される。さらに日本中、世界中の女性が受ける事よりその倍率もすごい事になっているのだ

 

そんな受かるだけでも世間的にエリート連中が、裏口(強制入学)ではいった人間を快く思わないのは致し方ないともいえる

 

もっとも今回に限り、後ろの金髪縦ロールが般若化したのは俺の性なのだがな

 

 

「そ、そういうものなのか‥‥おれ謝ったほうがいいのかな?」

 

 

「そうだな・・・下手に謝ると火に油だしここは、話しかけられたらすいませんチョロコットさんて言うべきだな」

 

 

「チョロコット・・・?かわった名前なんだな」

 

 

「外人の名前なんてそんなもんさ」

 

 

さて、これで遠くない未来にあっちとこっちで問題を起こしてくれるだろう

一夏に飛び火するが・・・イケメンだし問題ない。イケメンはこの世の不条理を一身に受けても顔がいいからと優遇される。そんな存在が犠牲になろうと何も問題はないだろ?

何心配するな、流石に死にそうになったら助けてやるよ、気が向いたらな

 

 

「おしゃべりは終わったか?」

 

 

スコーンと、言う音が鳴り響くと同時に俺から見て前方から声がかけられる。

言わずもながら声の主は千冬だ、若干声が低いが間違いなく千冬の声である。そしてこれも言わずもながらだが、今は授業が開始されている授業中だ

 

そんな時に教壇の目の前で声を落とさず話していたら注意もされるというものだろう。

だが、さっきも思ったが注意で出席簿を使うのはいいのかよ?これって明らかに体罰でしょ、この世界の倫理感とか知らんが、常識的に考えて駄目だろ

 

ちなみに出席簿は俺と俺の目の前の一夏に向けて一直線に放ったが、俺は難なくよけて一夏は絶賛頭部をさすりながら身悶えてる。うんいい気味だ

恨みはないがイケメンなので実にいい気味だ

 

千冬は案の定俺には当たらなかったのが気に入らないらしく、悔しそうな顔をしている。例えるならアニメとかでムムムムみたいな効果音がついてる感じだ。

 

そして、そんな姉を本気のドヤ顔で見返す俺

端から見ると何やってんだこの兄弟達は・・・と、呆れらる事は間違いない

 

そんな若干カオスな空間を初めに壊したのは千冬だった

はあ・・・とため息一つつき、俺と一夏に静かにするよう注意をした後教壇まで戻る

 

 

「これより再来週に行われる対抗戦のクラス代表者を決める。代表者は対抗戦以外にも生徒会の会議や委員会に出席など・・・まあ、委員長と考えてくれてかまわない。自他立候補、推薦でも構わない誰かいないか?」

 

 

ふむ…これはまためんどくさい事この上ない話だ。委員長とはクラスの長として先生などからやたらつかいっパシリにされるは、クラス中のやっかみを受けるは、その癖みんなからの認識もクラスの長ではなく体のいい雑用で、碌な事がない

 

その上、対抗戦などという名の殴り合いに教じらされるとは、一種の嫌がらせかなんかだろうか?

それであれだろ、もし対抗戦で初戦敗退なんてしたらお前のせいでクラスのイメージが悪くなったとか言うやっかみを受ける

これを自らやる奴なんて、よほどのマゾかリスクとリターンの計算もできないバカ位な物だろう

 

 

「はい、織斑君を推薦します」

 

 

「私もそれがいいと思います」

 

 

女生徒が何とも忌々しい提案をするとそれに同調する者が数人出てきた。

これは、間違なく特に深い意味なしで珍しいから推薦したという流れだ。女子とはどこの世界でも自分の所有物を見せびらかして自慢したいという性態を持っているらしい

 

この場合、クラスの所有物=男性操縦者という意味だ。

 

 

「だそうだぞ一夏、頑張れよ」

 

 

何食わぬ顔で一夏の肩をポンと叩き、激励をする。これからめんどくさい事この上ない仕事を押し付けられる弟にせめてもの応援をおくろう

 

 

「なんで俺!?八兄だって織斑だろ!」

 

 

「ばっかお前、この場合どう考えてもお前の事だろ?」

 

 

「だからなんでだよ!誰も名ざししてないじゃん」

 

 

まったく聞き分けのない奴だ。ここはボッチの兄を思い率先して厄介事を引き受けるくらいの度量を持てよなまったく

 

 

「いいか?このクラスじゃお前は織斑君で俺は織斑君のお兄さんなんだよ。つまり今呼ばれたのはお前であって俺ではない」

 

 

「何初日におかしな取り決め決めてるんだよ!誰もそんなの知らないよ!」

 

 

というより普通に考えて、イケメンのこいつと目が濁ってる俺とでは絶対にこいつの事を指名したはずだ。だって、高校生女子が好きな物ベスト3って甘いものとオシャレとイケメンだろ?

 

 

「静かに!織斑は両方とも推薦とする。他にいないか?いないならこの2人の内どちらかに決めるぞ」

 

 

千冬は教室を見わたし他に候補者がいないか確認をする。

 

つーか、何俺を巻き込んでんだよ。喧嘩両成敗とでも言いたげな視線を向ける千冬に顔を顰めながら講義をしようとすると、よく聞き覚えのある声がそれを遮る

 

 

「お待ちになってください!」

 

 

 

 

 



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IS インフィニット・ストラトス 8

「納得がいきません!そのような選出は断じて認められません!」

 

 

声の主は皆さまおなじみのチョロコッ・・・いや、オルコットである。さっきの煽りが相当聞いてるのかその声は怒気と棘まみれで、あたりの生徒を軽くドン引きさせていたが、本人はそんなの関係なしに声を張り上げ講義をつづける。

俺が言うのもなんだが、そんなんで友達できるのかね、こいつ?

 

 

「男がクラス代表なんていい恥さらしもいいところですわ!それもそのような粗暴極まりない礼儀の一つも知らない人間だなんて論外もはなはだしい!」

 

 

一指し指をピンと突き立て教壇の前、つまりは俺達の方をさす

 

 

「そのような屈辱を1年間味わうなど我慢なりません!大体、文化としても後進的な国で暮らすこと自体わたくしにとっては耐え難い苦痛だというのに!」

 

 

腕を上下に振り、力拳を作りながら力説するオルコットは、すでに周りの事など頭にないようである事ない事をくちばしっている。

このまま止めもせず放置しとけば、国際問題的に学園から強制退去されるか、そうでなくても友人関係とかで学園中からリセットされそうな勢いだが言われっぱなしというのもなんだか尺である。

 

高校時代千葉愛をかがげ、詐欺師になってからは日本の各地を回り時にはどこぞの大層立派な神社に初もうでに行き、2月になれば恋する乙女たちに効きもしないお呪いを売買し、花見の席では多くの酔っ払いから財布をすり抜き、某王手企業を罠にはめ金をむしり取り、夏場は浮かれている連中をカモり、おかしな宗教団体を道すがら壊滅させ、秋には紅葉を見ながら風流を楽しみ、冬はこたつで丸くなる

 

そんなこんなで日本LOVEをもっとうにする俺の前で堂々と日本ディスるなんぞいい度胸だ

 

‥‥‥‥‥よろしいならば戦争だ

 

 

「おいおい、日本が後進的とは言ってくれるな」

 

 

オルコットの方に向き直りながらおもむろに立ち上がる

そんな俺にオルコットは軽く鼻を鳴らしなおも暴言を続ける

 

 

「あらなにか問題でも?わたくしはただ本当の事を言っただけですのよ」

 

 

「ハン、そりゃあ随分と節穴の目をしてるこったな。つーか、イギリスは人の事いえんのかよ」

 

 

「お生憎様、我がイギリスは――――――」

 

 

「食文化が後進的なメシマズ大国」

 

 

オルコットの言葉を遮るように言った俺の一言にあからさまに機嫌を悪くしたようで、眼はつりあがり顔は怒りで真っ赤、肩を小刻みに震わせながら睨み付けてくる

 

 

「おいしい料理もたくさんありますわ!あなたわたくしの祖国を愚弄するつもりですか!!」

 

 

そもそも日本をディスって来てるのそっちなのに何言ってんだこいつ?

 

 

「こちとら別にうまい料理なんざ聞いてないんだよ。まずい飯がどんだけあるか言ってみるよ。それでもし、仮にも、万がいい一、いや億が一にでもうまい料理の方が多いっていうんなら土下座でもなんでもしてやらー」

 

 

「言ってくれますわね‥‥‥‥」

 

 

そういうとオルコットは手を顎につけ考え始める。しかし、初め真っ赤だった顔色はすぐに肌色、青色と変わりははてついには

 

 

「‥‥‥…いいでしょう、ならば決闘ですわ!」

 

 

額や頬やらに汗をにじませ人差し指をピーンと立てながら、なぜか決闘宣言をし始めた。というか

 

 

「うまいほうが少なかったのかよ」

 

 

「お黙りなさい!いいから私と決闘しなさいですわ!!」

 

 

あれだな考えたもののメシマズの方が多かったんだな。それで有耶無耶・・・というか勢いだけで決闘だの言ってる感じか‥‥子供か!

 

 

「確かに四の五の言うより実力で分からせた方が分かりやすくはあるな」

 

 

「フンッ、わざと負けるような事があったらわたくしのこま使い、いいえ奴隷にしますわよ!」

 

 

まあ、あれだな今まで話をしている限りこのセシリア・オルコットは随分と幼稚であると言える。自分より立場の弱い者に対する高圧的な態度、簡単な挑発にものるちょろさ、少しいい気にさせればどこまでも付け上がる傲慢さ、立場が悪くなると有無を言わさず自分の土俵で勝負を持ち掛ける自己中さ

 

さらにこの現代社会において奴隷などと言う人権侵害発言を平気で言うところ‥‥推定年齢小学2~4年くらいと見た。

こういう相手は討論でいくら負かそうと自分の負けを認めず、最終的に力ずくで負けを認めさせないと納得しないタイプなんだよな‥‥

 

そういう意味では決闘というのは実に効果的な方法であるといえる。スマートではないが力ずくでねじ伏せればいい訳の仕様もなく負けを認めるだろうし、なにより本人からの提案と言うのがいい

 

これで相手は逃げも隠れもできない上、表面上は正々堂々戦わなくては体面が守られないため卑怯なてや奇襲をしてくる可能性が限りなく少ない。実際の実力差がどうであれ、真正面から馬鹿正直にやってくる相手にこの俺が負けることなぞありはしない。

 

勝てる勝負をわざわざ断る必要もない

 

 

「よろしくて、では―――――」

 

 

「だが断る」

 

 

「な!?この期に及んで逃げるつもりですかの!」

 

 

「この比企谷・・・あ、間違えた‥‥この織斑 八幡の最も好きな事の一つは自分で優位に立っていると思っている奴に『NO』と断ってやることだ」

 

 

オルコットはすでに口をパクパクとさせて次の句を言えないくらいに放心状態となっている。

うむ、いついかなる世界でもこの言葉は効力を発揮するらしいな流石としか言いようがないな。

 

 



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IS インフィニット・ストラトス 9

次回から、フルボッコを予定してます。

ISでの戦闘は一応書きますが戦闘描写を碌に書いてないので期待はしないでほしいです

それと戦闘描写で誰かおすすめの人の作品があったら教えてほしいです。
サイト内限定でお願いします

感想待ってます!


「何馬鹿な事を言ってるんだお前は・・・一週間後にオルコットに織斑2人の模擬戦を行う。その勝敗にてクラス代表を決める。異論は認めん」

 

 

何という事だ、せっかく俺がキメ顔でジョジョってるのに千冬の一言によってすべては台無しになってしまった!‥‥まあ、いいか

ぶっちゃけ、ああいったのも特に理由はないし、しいていうならオルコットをからかってるだけだったので問題ない

 

 

「ちょ、ちょっと待って!」

 

 

「なんだ織斑 一夏」

 

 

「その模擬戦俺も出るんですか!?」

 

 

「当たり前だ、名前が挙がったのは推薦の織斑2人に自薦のオルコットの3名なんだからお前だけでない訳にはいかんだろ」

 

 

「ええー‥‥」

 

 

一夏とて日本を馬鹿にされ思うところがない訳ではないだろうが、俺とオルコットのやり取りを黙って見ていた手前、自分がまきこまれるのにどことなく不満を感じてるようだ

というか、オルコットの自薦を強調してやるなよ、これではまるでオルコットに友達がいないみたいじゃないか!

多分そうなんだろうけども

 

等のオルコットはふて腐れてる一夏を小馬鹿にしてるので気にしていない様子だけど

 

 

「フン!あらあら、どうやらそちらの男性は意気地がないようですわね。まあ、泣いて詫びるのでしたら許してあげなくもないですわよ」

 

 

「なんだと!」

 

 

「なんですの!」

 

 

オルコットの挑発を受け、二人はその場で互いに睨み合う

 

 

「いいぜ、その決闘受けてやるよ!」

 

 

「惨めに這いつくばらして差し上げるので覚悟しなさい!」

 

 

「ハンデはどのくらいつける?」

 

 

「は‥‥?」

 

 

一夏の言葉に一瞬目を丸くしたオルコットだがすぐにその顔は、自分が優位に立っているとでも言いたげな表情だ

 

 

「あら、さっそくお願いかしら?」

 

 

「いや、俺がどのくらいハンデをつけるかって事なんだが・・・」

 

 

が、今度こそ表情を崩し大口を開けながらポカーンとしていた。

どうでもいいが、英国貴族のそれも女性がそれでいいのか?

 

さらに一夏の発言により、今まで静観していたクラスが突如として騒ぎ出す。

それは大口開けてる英国貴族(笑)とは対照的な吹き出すような笑い声だった

 

 

「アハハハハ、織斑君それ本気で言っているの」

 

 

「男が女より強かったのってISができる前の話だよ」

 

 

「もし男と女が戦争したら三日持たないって言われてるよ?」

 

 

何人かの女子がまるで無知な子供に言い聞かせるような、優しいがどこか相手を見下してるような口調で語りかける

 

それは今の情勢なら仕方ない発言の数々だったのだが、それでも譲れない物があるのだ

大人であり、こういう嘲笑の嵐に立たされることが慣れてる俺ならどこ吹く風で聞き流しながら、内心ではいつか詐欺ってやるノートに名前を書き込むのだが

 

まだまだ子供で以前の学校ではこういう女尊男卑がそんなにひどくなかった事も災いしてか一夏のボルテージは下がることをしない

こういう子供っぽいところも一部の女子の間じゃ可愛いだのいう連中がいるのだが、とりあえずイケメンは死すればいいと思う

 

 

「むしろわたくしの方がハンデをつけなくていいのか迷うくらいですわ、日本の男子はジョークセンスがあるのね」

 

 

そういうオルコットは芝居がかった動作で前に出る

その発言に一夏は拳を握りしめながら不機嫌そうに目の前のオルコットを見返す

 

不意にショウトカットで赤いカチューシャをつけた女子が今からでもハンデをつけてもらったほうがいいと、どこかイラっとくる言い方で言うが

一夏はそれを取り合う事もなく一周してしまう

 

まったくもって勿体ない

経緯はどうあれ相手より優位になりそうな状況を餓鬼の意地ではねのけるのはその一言に尽きる。

 

 

「じゃあ、俺はハンデもらうわ」

 

 

そういう俺に向けて、一夏とオルコットの2人に今まで2人を見ていたクラス中の視線が突き刺さり、その中でも一夏の視線は俺を糾弾するかのような物である

 

 

「八兄!」

 

 

そんな一夏を無視してオルコットに向かい歩きよる

 

 

「フンッ‥‥よろしくてよ貴方が地べたに這いつくばりながらお願いすれば優しくて寛容なわたくしはそれを無下に致しません」

 

 

そういうオルコットの目は先ほどとは打って変わりまるで興味がない・・・いや、むしろ嫌悪する何かを俺に照らし合わせてみているように目を細める

 

 

「ようは、土下座しながらお願いしろってことか?」

 

 

「あらそこまで言ってませんわよ?ですが、貴方の誠意がそれで示せるのならそれも手ではあるかもしれませんわね」

 

 

「別にかまわないぜ‥‥ただしハンデの内容によるがな」

 

 

「言ってみなさい」

 

 

そういう俺に一夏は、奥歯を食いしばりながら先ほどよりも強く拳を握る。それは、単純にここまでされて悔しくはないのかと言う疑念と怒りの眼差しで

 

オルコットは先ほど変わらず興味を持たずただ事務的にゴミを見るように見てきて

その他の女子共は、一夏の時とは違い声には出さない物のその視線は一夏以上に俺の事を見下している

 

どれも種類は違えど発言に対して思うことは情けないだのという見・当・は・ず・れな内容だろう。それゆえに

ただ一人、不適な笑みで俺を見ている千冬以外のクラス中が俺の言葉に目を丸くする

 

 

「簡単な話だ。ただお前はISを一切使わなかったらいいそれだけだ」

 

 

「なっ‥‥!?」

 

 

「もちろん俺達は普通にISに乗ってやるからこっちの心配はするな」

 

 

「あ、あなた正気で言ってますの!?」

 

 

「もちろん、正気も正気だぞ、え・・・なにできないの?」

 

 

「当たり前です!!そんなの端から勝負にすらならないじゃ――――」

 

 

「使っちゃいけないのはISだけで他の武装は好きにしろよ。銃でも剣でもミサイルでもISのブレードでもありだ、これなら十分戦えるだろ?なんせ、男と女が戦争すれば三日も持たないんだろ?じゃあ、このくらいのハンデ問題ないよな」

 

 

 

 

 

 

そういう俺の言葉にクラスの中は静まり返るが、少し経てば周りからちらほらと声が聞こえる

 

 

「そ、そんな事いったてねぇー?」

 

 

「さ、流石にそれはないでしょ」

 

 

「そうだよ、そんなの決闘でもなんでもないじゃん…」

 

 

と、なにやら声が聞こえてくる。その内容はだんだんと俺を糾弾する内容に移り変わり次第に大きくなってきている

このままでは、一クラス30人ばかしの女子から大糾弾大会が開かれることは時間の問題だろう。

しかし、それを俺がさせるかどうかと聞かれれば‥‥答えは否だ

 

 

「なんだよ随分と情けないな、さっきまで笑ってた勢いはどうしたんだ?」

 

 

高校時代、いや実際はそれよりも少し前位から俺には別に誇ることができない特技が存在する

それが、この顔芸だ

いつのころからか死んだ魚の目、腐った目濁った目などと言われる俺のパッチリおめ目のせいで何もしてないのに態度が悪いだのと教師に言われ、ただ一瞬チラ見しただけなのに不良っぽいのにガン飛ばすなと絡まれることがしばしばあった。

 

そのため必死に笑顔の練習をしていたらいつの間にかレパーリーが増えどんな顔でも瞬時に作れるようになっていたのだ。その一つが今してる『皮肉めいた笑み』通称・ヒッキーのニヤケ顔マジキモイ!である

どういう顔かは書いて字の如くとだけ言っておこう

 

ちなみに結局のところ笑顔だけは習得することができなかった。なぜか故意に笑顔を作ると周りからキモイと言われる

 

 

「そこのお前」

 

 

「え!?・・・・・私」

 

 

先ほどまで元気に笑いながら虚言を吐いていた名前も知らない誰かを指さす

 

 

「男が女より強かったのって前の話なんだろ。じゃあ、何か問題でもあるのか?」

 

 

「え?・・・いや、その・・・そ、そうはいっても普通に考えてISなしの決闘なんてありえないじゃん。それに女が強いのはISがあるからだし・・・」

 

 

「じゃあ何か、ISがなければ女は男に勝てないってか?そんなわけねーだろ?ISなんて所詮世界に500もねーンだから、それに乗れるのも500人もいねーんだぞ、それ以外の連中は能無しかなんかか?」

 

 

「なっ!そ、そんな事‥‥!!」

 

 

「ないよな?なんせ今の世の中、女尊男卑は当り前、女は男より優れてるそれが常識だろ。IS適性も碌にないような連中まで女だからってでかい顔してんだし、そんな情けねー事いうわけないよな」

 

 

「それはぁ‥・・・」

 

 

「いやーごめんごめん、こんなこと言っちゃ失礼ってもんか、何せここにいるのは天下のIS学園に入学できたエリート様なんだからそんな事口が裂けても言わないわな。

あ!それじゃあもちろん男のIS操縦者風情なんかと万全の状態で決闘なんて大人気ない事も言わないのは当り前、ハンデなんていくらつけても男なんかより遥かに優れてる女性は余裕で完勝間違いなし、むしろISなんて必要ありません!男がクラス代表は恥さらし私の前に這いつくばれ、さぁ分かったならさっさと勝負しなさい!って事でいいんだよなオルコット?」

 

 

「ッ‥‥」

 

 

話を振られたオルコットに先ほどまでの余裕の笑みは存在せず、苦虫をつぶしたような顔で俯いている

その肩は小刻みに揺れ、下唇を噛み切らんばかりの力で噛んでいる。目までは流石に見えない

 

これは少しやりすぎてしまったか‥‥このままでは下手をすると泣かしてしまう可能性もあるだろう。目の前で少女が泣いている姿はいくつになっても苦手だ

 

 

「あれれぇー?おかしいな、さっきまで高らかに笑ってたオルコットがしゃべらないぞーいったいどうしたのかなー?」

 

 

だから、俺は更なる追い打ちをかける

 

女の涙は好きではない・・・が、俺に喧嘩を売って一泣きもせず済むとは思わない事だ

ここにいるのは青い春に思いを寄せた少年ではなく、世の中の穢れを身に浴びた大人なのだから

 

 



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IS インフィニット・ストラトス 10

追いつめられてる人間にさらなる追い打ち、もとい、止めを刺す技法『あれれー?おかしいなー』

 

何処から出したと問いたくなる猫なで声に、ワザとらしく小首をかしげるポーズ、そしてその後のドヤ顔、これら3つのあまりのウザさに正常な判断ができなくなる名探偵御用達の技である。

見た目が子供の名探偵だから、ウザ可愛いレベルで済むが

これを高校生がやったのならその効果はただのウザッ!になる

 

さらにこれは本来ならば、犯人を追いつめる時に使い高確率で勝負を決められる必殺技であり、大体の場合相手側は、言い返す事が出来なくなるか、言い返しても墓穴を掘るかしない

要は一方的に蹂躙されると同義と言えるのだ

 

現に目の前では、先ほどまで高飛車で自信満々に笑顔を作っていた金髪縦ロールの少女セシリア・オルコットに、世界に2人しかいないISを動かせる男であり俺の兄弟でもある八兄が

言葉という暴力を一方的にくらわしている

 

 

「ねぇねぇ、さっきまで見下してた男に好き勝手言われてどんな気持ち?今、どんな気持ち?ねぇねぇどんな気持ち?」

 

 

「…ッ・・・ッ」

 

 

華麗なるステップで、反復幅跳びをしながら何度も何度も、彼女の前を右に左にと動き続ける八兄はまさに勝者の余裕とでも言いたげなおかしな顔をしている

 

((●)з(●))こんな感じだ

 

そんな兄に向かい、セシリアは目じりにたまった涙がこぼれないように必死に耐えている。

瞳は、決して目の前から背けず真っ直ぐに見つめている

 

それはまるでどんなに辛くても泣かず、背けず、屈しないという彼女の最後のプライドを表しているかのような強い瞳だ

 

仮に、彼女が物語の主人公ならば、敵はそんな彼女の気高さ?を見てこれ以上の追撃はしないだろう・・・

仮に、彼女がヒロインならば、どこからともなくヒーローが駆けつけて彼女の事を救ってくれるだろう・・・

 

だが、残念な事にここは架空と空想が入り乱れる物語の世界ではない

主人公を引き立てるような殊勝な心がけの敵キャラは存在しないし、ご都合主義で駆けつけるヒーローも存在しない

 

目の前にいる彼女の敵は

 

『天災』篠ノ乃 束

『最強』織斑 千冬

 

彼女たちに並び称され、ある意味一番敵に回したくないと言わしめる

 

『悪道』織斑 八幡 なのだから‥‥

 

あの千冬姉をもってしても御しきる事ができず、かなり昔の話だが束さんを泣かした唯一の男でもある

 

一般人が敵にするにはあまりに無謀

例え専用機を持った代表候補生だとしてもそれは変わらない

この勝負ともいえない勝負は、初めから結末が決まっていたのだ‥‥

 

 

「ほらほら、言っちゃえよ。わたくしは男なんぞ相手にISを使いません!この身一つあれば男風情に負けるわけありませんって」

 

 

「‥‥‥ッ」

 

 

「おやぁ~?返事がないなー聞こえない?それとも無視してるの?まさか会話が成り立たないアホってわけじゃねーンだろ」

 

 

「そ‥‥ッ・・・むッ・・・」

 

 

「はあ?なに言ってるのかな?小さすぎて言ってることがわからねェや」

 

 

「だからッ‥‥無理‥‥ッ・・・いって・・・の」

 

 

「あんだって~~~~ッ!!?耳が遠くて聞こえねーよー!!!」

 

 

「だから!そんな事ッ言ったて無理だって言っているのッ!!ISなしで・・・ひっぐ・・・戦うなんてェ‥‥‥無理にッ‥‥決まっているじゃな‥‥いのっ!!」

 

 

「あ、ごめん聞いてなかった。もう一回いって」

 

 

「~~ッッ!!」

 

 

ついにセシリアはその場に膝をつき泣き出してしまった。

さっきまで溜めながらも決して落ちる事のなかった涙がどんどんと溢れだす。唯でさえ静まりかえっていた教室にその泣き声は余計大きく反響した。

 

泣いているセシリア以外誰も動くことができず皆時間が止まったように制止している。クラス中の女子も、山田先生もあまりの事にどうすればいいのか分からず思考停止状態になっている

 

箒でさえ、開いた口が閉まらず目を点にしているし、千冬姉は千冬姉で手で顔を覆い盛大なため息をついている。

斯く言う俺もどうすればいいのか分からず身動きができない。

 

しかし、そんな中でも平然と構えている男が一人いた

彼は、いかにもヤレヤレとでも言いたげなジェスチャーをした後言葉を続ける。

 

 

「あのなお前、泣けば済むと思ったら大間違いだからな?どこぞの政治家だって一発の失言で今まで積み上げたもの全部なくなる世の中なんだぞ。泣いても喚いても一度言った発言は―――」

 

 

「やめて八兄!セシリアのライフはとっくにゼロだッ!!」

 

 

俺は、なおも追い打ちをかける我が兄の非情なる姿に意識を覚醒させて、とりあえず八兄を止めるため動き出した

 

それに伴い、静止していたクラスメイト達は一斉に意識を戻し各々動き出した。

泣いているセシリアにハンカチを渡したり、背中を撫でてあげたり、終始大丈夫だよと声をかけていたりしている

 

その中で箒は席が遠く、基本的に人見知りである事もあり何もできずにオロオロとしており、名前は知らないがのほほんとしている雰囲気だった女子生徒は八兄の事を凄い形相で見ている

 

(~ω~) これが、(<●><●>) こんな感じになっている

 

しばらくして山田先生が泣いているセシリアをつれ教室から出ていき、千冬姉がその場を無理矢理閉めて八兄を呼び出しセシリアとは別の方向へ連れて行く

結局その時間内に4人が戻ってくることはなかった

 

 

‥‥‥正直もう少し早くに止めていればと反省はしている

 

 

 

 

 

結論を言おう

決闘は千冬姉の鶴の一声で3人ともハンデなしで行うこととなり

 

セシリアは自分の専用機『ブルーティアーズ』

八兄と俺は近いうちにデータ収集を兼ねた専用機が届くらしいので、それで戦う事となる

 

一対一での戦闘のため順番にやることとなり、まず初めに俺とセシリア、その次に八兄とセシリアで、最後に八兄と俺と言う順番でやることとなり

試合合間の休憩及び機体調整時間は15分づつ、試合時間は30分、それが過ぎたら引き分けで降参かシールドエネルギーが0になったら試合終了

3試合の中で一番多く勝った者がクラス代表となる

 

セシリアが2連続で戦うのはクジ引きの結果‥‥‥‥という訳ではなく、試合でのハンデが駄目ならそれ以外でハンデをつけろとの八兄の要望のようないちゃもん、難癖がありこうなった

 

その際、眼が赤く腫れて若干鼻声のセシリアと八兄で再度、壮絶な舌戦があったり

それを止めようと間に入った山田先生が逆に泣かされ、物理的な教育的指導(出席簿)をしようとした千冬姉に対し、人間離れした動きでそれを躱す八兄のやらなくていい攻防があったり

 

なんやかんやでクラス代表関係なしに2人の間で、セシリアが勝ったらクラスの前で八兄と俺が土下座をして、八兄が勝ったらセシリアがなんでもいう事を一つ聞くという約束事をしたり

 

常時空気だったのになぜか、巻き込まれる俺がいたりとしたが模擬戦は滞りなく進むようだ‥‥‥いや、なんでだよ?あんまし関係ないの上に、自分が負けたらではなく八兄が負けたら土下座とか理不尽すぎるだろ!

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみにその後のクラスでは、八兄を非難する声やら視線が酷かったが、八兄のにらみつける攻撃と「あ゛あ゛ん?」というドスの効いた一声をかけると蟻の子を散らす勢いで皆離れて行った。(ファイヤーが使うレベルのにらみつける攻撃である)

今では非難はないものの声を欠けるものや目を合わせようとする人はほとんどいなくなったが、本人はどこ吹く風で「ボッチなのはいつもの事」と全く気にしていない模様

 

そんな経緯で俺も非難めいた視線を受けたり道行人に怖がられたりしたが、クラスのみんなに一応詫びを入れてまわったら普通に接してくれるようになった。

それでも若干名は俺の事を嫌っているようだが特に実害があるわけでもないので大丈夫だ

 

で、衆目の面前で大泣きをしてしまったセシリアは今ではクラスの中心人物で八兄風で言えばクラスのトップカースト上位に当たるようだ

あの高飛車な性格もそれはそれでありと受け入れられ、多くの女子と笑い合っている姿を度々見かける

 

男に対してはアレだが、もともと人を惹きつける性格で人柄も割とよく、話せばすぐに打ち解けられ、見た目もよくその上イギリスの代表候補生という事もあり多くの女子から憧れられる人気者である

 

 

セシリアはクラスでの立場を獲得でき、八兄も曰くセレブなボッチ略してセレボッチな生活を優雅に送っており、俺も俺で以前のような四方八方からの視線を受ける事がなくなり充実した生活を送っている

 

 

 

 

 

あんだけの事があったが俺達の学園生活に大した影響がなくよかったと思う

 

のほほんとしてる子が時折、笑っているのに笑っていない顔をしたり

山田先生が、必要以上に八兄を怖がっていたり

箒が何もしていないのに・・・むしろ何もしていないからこそなのか?クラスでやたら孤立していたりすることを除けば特に問題なしと言えるだろう

 

 

ちなみにこれまでの出来事はIS学園生活が始まって4日目までの出来事である

 

‥‥‥‥‥‥‥前途多難にもほどがあるだろ

 

 



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IS インフィニット・ストラトス 11

放課後と言えば多くの学生は部活道に興じる時間帯だ。入学したばかりの新一年生はそれぞれの部活見学や仮入部などで、教室に残っている者はほとんどいない

 

一年一組もそれに同様で、生徒は他の場所に行っている

ただし、少しだけ他のクラスと違うと言えば終わりのHRが終わったと同時にクラスのほとんどの生徒が一斉に教室から出て行ったくらいだ。

 

その生徒たちは、教卓の方に険しい目を向けたり、あからさまに不機嫌な顔で、今にも舌打ちでもしそうな勢いだ。思うところはそれぞれだが、どうやら皆さん不機嫌なご様子だ

 

逆に、その教卓の前では我がクラスの副担任がやたらキョドリながらオロオロとしている

HR中も今にも泣き出しそうな感じで進行しているもんで、一歩間違えればR18的な物にも見え、特別な性癖持ちならストライクと大声を出しそうな危ない雰囲気だった

 

もっとも俺にそんな性癖はかろうじてないので幸いだ。見ている男が俺でヨカッタナ

 

その場にいるもう一人の男も伊達に爽やか系イケメン風朴念仁をしているわけではないので問題はない。実はそういうのが大好きな変態で、過激な少女マンガ風な展開になる可能性もなきにしもあらずだが、あまり深く考えない方が無難だろう

 

んで、もう何を言ってるのかほとんど分からない山田先生の話が終わりHR終了から2分後の現在、1年1組の教室に残っているのは俺達兄弟2人だけとなった。

 

 

「夕日がきれいだな‥‥」

 

 

窓から外の景色を眺めながら不意に口から出る言葉。

ここが海に囲まれた島とという事もあり都会ならほとんど聞く事のないカモメが鳴いている

 

といっても以前は割と見る機会が多かったので物珍しさはない

 

色々な地域を周ったが夕暮れ時の空は何処にいても同じようにきれいだ。茜色に染まる空、地平線に消えていく太陽、長く伸びた影、荒んだ心でもそれを見ると、いつの日か少女と共に見たあの夕日を思い出す‥‥

 

だからだろう、俺は夕暮れが好きなんだ―――――――――――

 

 

「いやいや、まだそんな時間でもないから!ていうか八兄、なにやってんだよ」

 

 

ッチ

 

せっかくいい感じに黄昏ていたというのに無粋なツッコミ入れてくるなよ。まったく家の弟はもう少し空気を読んだ方がいいぞ。マジで

 

 

「何って見ての通り、外を眺めながら感じた事をありのまま言ってるだけだろ。他に何をしてるように見えるんだ」

 

 

「今やってる事じゃないよ!それに、ありのままでもないじゃん。外なんてまだ日は沈んでないし!」

 

 

「想像力を働かせろよ。眼を閉じて瞑想してみろ、段々と夕日が見えるだろ」

 

 

「それもう外すら眺めてないよね!?って、そうじゃなくて、セシリアの事だよ」

 

 

「なんだ、あの貴族(笑)の金髪縦ロール(爆)がどうかしたのか?」

 

 

「(笑)ってなに、(爆)って何!爆笑の事なの、確かに俺もあの髪型は珍しいとは思ったけど八兄的にそこまでツボってたのかよ・・・爆笑してる八兄なんて見た事ないんだけど」

 

 

「舐めんなよ爆笑くらい4年に1、2回はするんだぞ」

 

 

「めちゃくちゃレアじゃん!?」

 

 

豆知識だが、この世界にはオリンピックが存在していないらしい

その代わりにモンド・グロッソみたいなIS競技が盛んなんだそうだ

 

ただ、オリンピックとは違うがスポーツ競技も各国で定期的に開催されているので、そこまですたれているわけではない。単純にレア度が2段階ほど下がってるだけだ

 

そのためか、近年ではスポーツ特待生や補助などを大幅に削減し、その代わりにIS関係の特待生が増えている

 

例えばIS技術師特別手当とか整備士育成補助金というものだ

国的にも男の進学率の低下や失業率の増加に伴い出したものなのだろうがIS学園で直にISに触れている人間とそうでない人間とでは学べるものにも差が出てしまい成果があまり出ていない

 

税金の無駄遣いという声も上がっているので近々改正と見直しが予定されている模様だ

 

 

「俺も頭にきて色々揉めたからそんなに言えないけどさ‥‥女の子を泣かせるのは良くないと思う」

 

 

あらやだイケメン

 

憂いを秘めた顔でそういう一夏はどこからどう見てもイケメンだ。

自分や日本をあそこまでコケにされたにも関わらずそういう風に擁護できるのはある意味凄い事だろう。現に俺では絶対に真似できない

 

言っている事は正しい事だし何も間違ってはいない。もっとも、今の女尊男卑の世の中ならこれを自分たちの事を軽視していると難癖つける輩もいるだろうがな

 

 

イケメンと言うと、元同級生であり弁護士として何度も法廷で敵対した皆仲良し主義のあいつを思い出すが、一夏のこれは根本的にあれとは異なっている

 

 

葉山が男も女も皆仲良し、皆は一人のために一人は皆のためにみたいな感じなら一夏は単純にフェミニストなのだろう

 

フェミニストと言えば女性を特に尊重する男性、女性を大切にする男性、女性をちやほやする男性といったものを意味する

この世界で言えばどうか知らんが、こういう考え自体はいい物だろう。どんな形であれ他者を大切にして尊重することは尊い行いだ

 

もっとも‥‥この場合は女を甘やかすという意味合いなんだろうがな

 

 

「間違ってんぞ、あれは別に泣かせたんじゃなくあっちが勝手に泣いただけだろ。むしろ目の前で急に泣き出されてこっちが迷惑してるくらいだ。ボッチは人付き合いが苦手なんだから、あんな場面どうすればいいか分からんしな」

 

 

「‥‥その割には、饒舌だったじゃん」

 

 

「テンパってたんだよ。お前と同じで俺も頭にきてやっちゃっただけだろ?それに、そもそもの原因はオルコットにあるしな」

 

 

「‥‥‥‥‥‥‥‥はあー・・・分かったよ、今回は俺も八兄を止めなかった同罪なんだしそれでいいよ」

 

 

なにやらかなりの不満顔の一夏だが、今回の事は俺だけに非があるわけでもないのでそれ以上の追及はしないようだ

 

なんだろうな・・・こいつは15の餓鬼なんだからしょおがないんだろうけど、こういった世の摂理を無視した青い事を面と向かって言われると喉の奥が痒くなってくるんだよな

 

社会に出れば否が応でも周りから評価される。それは自分の努力次第で生活態度次第でいかようにも変わることができる。しかし、なんでか世の中というものの中で正しい意味での正当な評価をもらう事は実に難しい

 

どうしたって自分以外の要素が絡まり自分じゃどうすることもできないレベルでこじれる事も珍しくはないだろう。俺はそういうのが嫌いだ、大嫌いだ

 

どこぞの誰がどうなろうが知った事ではないがせめて自分に起こるこういった理不尽は断固として阻止するのが俺の心情だ

 

一夏の言いたいことは、あっちも悪いが女の子を泣かせるのは良くないみたいな事だろうが、今回オルコットの言った暴言の数々は名誉棄損、侮辱、人権否定、人種差別に男女差別などにあたる。

これは明らかな犯罪であり、生前の俺では数千万と言った慰謝料をふんだくれるレベルの失言だ。今は未成年で、裁判一つ起こすにも大変なのでやれないが本来ならしかるべき罰を受けることが今回のオルコットに対する正当な評価というものだろ?

 

だが、生憎ここは日本でさえ不可侵のIS学園内で相手は国の代表候補生だ、IS学園はもちろん日本でさえイギリスと事を構える気はないだろうし、いくら問題にしてもよくて相手側を謹慎、最悪的には握りつぶされるのが落ちなのだからやるだけ徒労に終わる

 

なら仕方ない。どうせ握りつぶされるんならしっかりと罰を与えてやるしかないだろう

罪には罰を、これぞマイ・ジャスティス

 

むしろあの暴言で泣きの一つで許してやるんだから感謝されたいほどだ

まあ、許す気はないがな。

 

模擬戦が楽しみだ

 

 

「それじゃあ帰る?ついでに夕飯の買い物したいんだけど」

 

 

「おう‥‥マッカンも忘れるなよ」

 

 

「八兄は本当にあれ好きだよな。千冬姉のビールも買ったほうがいいかな」

 

 

鞄の中に教科書を詰め込んで帰る支度を整える。

IS学園は全寮制だが、俺達は事情が事情なので1週間は自宅から通う事になっている。その送り迎えには政府から護衛が付くって話だ

 

買い物に護衛が付きあってくれるかという、何気ない疑問を抱いたと同時に扉の隙間から声が聞こえた

 

 

「お、おお織斑君!ちょっとととと、おおお話がッ」

 

 

扉の隙間からひょこっと顔を半分出して震えながらそういうのは山田先生だ

警戒・・・というより単純に恐怖心を抱いてるのかこの上から読んでも下から読んでもヤマダマヤはあれからずっとこんな感じだ

 

しかし、何もここまで怖がる必要はあるのだろうか?

女としてはどうかしらんが、教師としては落第点もいいところだ

 

相手が不良でもなんでも生徒であるからには真正面から時には拳で語るくらいしなくてはいかんだろ

まあ、実際じゃあ平塚先生みたいなのは稀な部類なんだろうがな

 

 

「‥‥えーっと、どうかしましたか山田先生?」

 

 

「えええええと、ですね!りょりょうのことでッお話がああああります」

 

 

うん、すごく聞き取りずらい

もう何を言ってるのか辛うじて分かるかどうかというレベルだ

 

話している一夏も困った表情でこちらを見てくる

‥‥あれを、俺にどうにかしろとでも言うのかこいつは?

 

 

「おおおりむららくんたちののっりょりょうのへへへやがですねっ!あkhwづふs@fにうhふぁf」

 

 

「せ、先生落ちつて!日本語になってませんよ」

 

 

一夏は先生のもとに駆け寄り優しく話しかける

っち イケメンかよ、イケメンだったわ

 

話を要訳すると、警護の都合上、自宅から通うのは危ないので今日から寮に泊まる事になったという感じだ

 

なんで分かるかって?

日本人は、外国人からすると超能力とまで言われるほど人の空気が読める人種なのだそうだ

思ったことを素直に口に出さず、内に蓄積する傾向がある日本には生きてくために必要なスキルだから伸ばされたんだろう

 

そこに俺の持論であるコミュニケーションの7割は会話以外を組み合わせて使用すると、何を言ってるか分からなくても言いたいことが分かる

 

つまりなんとなくだな

 

 

しかし、寮暮らしとかぶっちゃけ嫌なんだよな‥‥

元々家からあんまし出たくない系の人間だし、枕が変わると寝れなくもないがなんとなく違和感を感じてやなんだよな

 

最終的には寮で暮らすのも致し方なしと分かっているが、せめてこの1週間は家でねたかったんだよ

 

‥‥‥‥よし、ばっくれるか

 

 

「深呼吸して、大丈夫ですか?」

 

 

「は、はい、ありがとうございます織斑君・・・」

 

 

「それで、どうしたんですか」

 

 

「えっとですね・・・実は織斑君達の寮の部屋が決まりましてそれをつたえに」

 

 

「え?確か1週間は自宅からって話じゃなかったでしたっけ」

 

 

「はい、そういう予定だったんですが、やはり防犯の都合で寮の方がいいという事になりまして」

 

 

「でも、俺達荷物も持ってきてないんですけど‥‥」

 

 

「それなら心配するな」

 

 

声と同時に一つのカバンを投げ渡され、それを辛うじてキャッチする

 

 

「千冬姉!」

 

 

「しばらくの着替えと携帯の充電器が入ってる。それ以外の必要な物は後日取りに行け」

 

 

千冬姉は肩にもう一つのカバンを下げ、逆の手には、枕を握っている。

スーツ姿に枕を引っさげた姿はなんともアンバランスだ

 

あの枕は八兄の愛用で、枕が変わると眠れないという変なところで繊細な

兄のために持ってきた物だろう

本当、千冬姉も千冬姉で変なところで優しいんだよな

 

ちなみに俺と千冬姉は別に枕が変わっても普通に眠れる

 

 

「‥‥ところで八幡はどうした?」

 

 

「え?八兄ならそこに‥‥」

 

 

さっきまで八兄がいた所に目を向けるが、そこに人影はなく

あたりを見渡してもいるのは俺と千冬姉に山田先生の3人だけだった

 



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IS インフィニット・ストラトス 12

 

あの後、八兄を連れ戻すために千冬姉が人間離れした全力疾走で追いかけたり、俺が一人で寮の部屋に行くと箒がいて、風呂上りのタオル1枚のところに居合わせて危うく頭をかち割られそうになったり、結局千冬姉と八兄は翌日の始業のチャイムが鳴るギリギリになって一緒に登校してきたりと色々あった

 

その時、2人は泥だらけで熊っぽい物を担いでいたがそれには触れないでおく

 

それから先も模擬戦までの1週間の間で色々とあった

 

翌日、俺の専用機がIS学園で用意されることになったと先生から報告を受けると、性懲りもなくセシリアが突っかかってきて、なんやかんやで八兄と口論になって

3分もしないうちに、昨日と同じ流れになってセシリアが涙目になったところで俺とクラスの何人かが全力で止めた

 

あと、専用機の話は八兄にもあったが当てがあると断っていた。

いつの間にそんな当てを作ったのかと凄い聞きたいところだが、半ば乱心状態のセシリアが騒いだり、それを周りがあやしたりなだめたりとそれどころじゃなかったので聞けなかった

 

その後、普通の授業になって束さんの話が出た所で、箒の事がクラスに知れ渡る事となってそれなりの騒ぎになったが

 

箒の姉とは私は関係ないという一喝でクラスの空気は凍ってしまい、それ以上この話が出る事はなかった

6年前の話だが、箒と束さんは仲がいいとは言えなかったがそこまで悪いという訳ではなかったはずだ。

それなのに、あの言いようはいささかおかしいと思い

休み時間に八兄に相談したら

 

 

「兄妹っていうのは大抵が優秀なほうとそうじゃない方とで周りから評価される。一方が優秀であればあるほどにもう一方は優秀な方の付属品と思われる物なんだよ。そうすると付属品は徐々に不満をためていきやすくなり、最終的に付属品であることが嫌になる

 

昔の知り合いに優秀な姉貴に憧れてその存在を認めてるのに反面してるっていう自身も相当優秀な妹と、妹より不出来で学校での認識が小町ちゃんのお兄さん、家でも妹がカーストトップで自分が最下位みたいな兄貴がいたよ

 

でも、妹が自分に反面しても使えるものは兄でも使うが座右の銘なちゃっかり妹でも上のやつは兄貴でも姉貴でも形がどうあれ妹を大切にしてるもんなんだよ。もっとも、その逆もそうとは限らんがな」

 

 

よそ様の家の事だ。ほっといてやれと最後に締めくくり話を終える

何か釈然としなかったが、箒もあまり触れられたくないようだしとりあえずは放っておくことにした。というか、小町ちゃんって誰?

 

 

一日たって何とか普通に喋れるようになった山田先生の授業で、女子高的なノリにいたたまれなくなったり

 

将棋の駒とチェスの駒を片方ずつに並べて日英戦争みたいな事をやってる八兄がいたりした。いやいやどういうルールだよそれ?

 

ちなみに、最終的に圧政を敷くキングをクイーンが打倒し、戦死した王将の腹心の部下である金将が王をついで、金将の親友である銀将がクイーンと駆け落ちして終わった。地位や名誉を捨てて一つに愛に生きる事を決めた銀将と、そんな友の事を知りながらも、黙って見送った金将の男気がよかった。軽く感動してしまったよ本当に

 

 

その後、俺と八兄と箒で一緒に昼食をとったり、なんやかんやで俺は箒にISを教わる事になった。

昼食中は誰も話しかけてこず、八兄も終始無言で箒も機嫌が悪く、俺も必死に話を振ったがどうしても話が続かなかった。定食の味、よくわからなかったな‥‥

 

訓練に八兄も一緒にどうかと誘ったが用事があるとそのまま帰ってったが、俺の見立てでは用事なんてないと見た

 

で、その後、ISを教えてもらうはずが1週間剣道の稽古ばかりして模擬戦当日を迎えたのであった‥‥‥順風満帆、用意周到?なにそれ美味しいの?・・・はぁー・・・

 

 

模擬戦当日 アリーナ

 

 

「なあ、箒」

 

 

「なんだ」

 

 

「ISの事を教えてくれるって事じゃなかったのか」

 

 

「‥‥‥」

 

 

「目をそらすなよ‥‥」

 

 

「‥‥仕方ないだろ、お前のISがまだ届いていないんだから」

 

 

「はぁー・・・まあ、いいよ。それで先生!俺のISはまだですか?」

 

 

『す、すいません!もう少しだけ待ってください』

 

 

管制室から山田先生の申し訳なさそうな声が届きもう一度ため息を吐く

そう、俺の専用機は試合時間になってもまだ届かないでいる。本当に俺の学園生活はなぜこうもあれなんだかな‥‥

 

仕方ないので空中に表示されてるディスプレイから、すでに表で準備ができてるセシリアに目を向ける

 

 

「あれが、あいつの専用機か」

 

 

青を主体にしたカラーリングにひときわ目立つ大きなライフル銃

八兄に聞いた名前は確か「ブルー・ティアーズ」だったけ?

 

 

『織斑君!織斑君!来ました織斑君の専用IS』

 

 

『織斑、すぐに準備しろアリーナを使用できる時間は限られているからな。ぶっつけ本番で物にしろ』

 

 

そうこうしてる内にようやく来た

白を主体とし、セシリアの専用機と比べるといささかゴツイ印象を受ける機体

 

 

『これが、織斑君の専用IS、白式です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

管制室

 

 

「背中を預けるように、そうだ。後はシステムが最適化する」

 

 

ようやく届いた白式の乗り方の基本を教え一息つく

その他、相手の説明などは山田君が引き継いでくれているので、随分前に入れて冷めてしまったコーヒーに手を伸ばす

 

本当なら三日前くらいに用意できていればよかったのだがな・・・

そうすれば最低でも最適化は済むし、なんなら戦闘訓練の初期の初期だけでも教えられたものを、あのバカがやたら凝り性でこんなギリギリになってしまった

 

あの白式は、学園が用意したと名目上なっているが本当のところは束の手がけたハンドメイドであり、正直心配でたまらない

 

あの束に限り、不備があるとか何らかのトラブルがあるなんて事思ってはいないが、あの束だからこそ、いったい何を仕出かすのか分からないのだ

 

昔から一夏の事を可愛がっていたやつなら万が一にも一夏に何かがあることはありえないだろうが、逆を言うと敵対者の身の安全が保障されてない可能性がある。

流石に、そんな無茶はしないと思うがもしかするともしかするので気が抜けない。できれば一夏に勝ってほしいところだが、オルコットの身の安全も教師としては守らねばいけないのだ

 

そんな事を考えているうちに一夏は白式を纏いアリーナ上空に飛び上がった。

やや危なっかしく体をよろけさせるが、どうやら問題なく起動できたようだ。これでもう一つ肩の荷がおりる。あとはこのまま何事もなく試合が終わり、欲を言えば一夏が勝てばいいのだが

 

すると、オルコットはISに備わっている専用チャンネル越しに一夏に話しかける

 

管制室は、データ収集、不測の事態への早期対応、細かな記録などが目的でアリーナ内の会話を逐一ひろえるようになっている。もちろんそれは、IS同士でしか会話ができない専用チャンネルでも例外ではない

 

 

『最後のチャンスをあげますわ』

 

 

『チャンスって?』

 

 

『わたくしが一方的な勝利を得るのは自明の理、今、ここで謝るのであれば許してあげなくもなくてよ』

 

 

‥‥私は、この小娘の身の安全を守らなくてはいけないんだろうか?‥‥なんだか別にいいような気がしてきた。

でも、教師としてやらねばならんか‥‥じゃないと減給とかされそうだし

世知辛い世の中だ

 

 

『謝るって‥‥ぶっちゃけ俺、そんなに悪い事してなくないか?』

 

 

『おだまりなさい!!わたくしを辱めておいてよくもぬけぬけとッ』

 

 

いやいや、それは一夏じゃなくて八幡の方だろ。それに、もとはと言えば自業自得なのに何を言ってるんだこいつは?

 

と、いうか辱めも何もお前が国際問題に匹敵するような暴言を吐いたところに八幡が日本の威信を守るために応戦しただけで、多少のやりすぎはあったがそれでも悪いのはお前だし勝手にビービー泣き出したのもお前だろうが!

 

教育的指導と銘打ってしばいてやろうか?あん?屋上への片道切符なら割安で販売中だぞ?

 

 

「銘打ってて言っちゃ駄目だろ教師。それに片道じゃあ戻れないし、5体満足で帰れるかどうか不明だが」

 

 

何問題はないだろ、それに今ならサービスで私自らISの操縦試験もやってやろう。そのかわり落第点を取ったら即留年だがな

 

 

「テストがサービスとか・・・それに始まったばかりで留年が決まるとかどんだけ鬼畜使用なんだよ。減給どころかクビ切られるぞ」

 

 

ブリュンヒルデをなめるなよ、いざとなれば不当解雇だのなんだのとマスコミ使って騒ぎ立てれば民衆は――――‥‥

 

 

「‥‥八幡、なぜここにいる」

 

 

「ピットにいても篠ノ乃と一緒で気まずいし、観客席にいてももっと気まずいんでそれなら一番見やすい所で見ようと思って」

 

 

そういう八幡は私の隣でなにやら甘い臭いを漂わせる入れたばかりのコーヒーを片手にディスプレイを眺めている

 

無論、ここは管制室であり関係者以外立ち入り禁止で、扉も電子ロックを始め2,3個ほどのセキュリティーで守られている。一般生徒は教師が同伴しないと入る事すらできない場所だ

 

 

「そういうことではない。どうやってここに侵入してきた」

 

 

「扉から」

 

 

「‥‥殴られたいのか?」

 

 

「体罰反対。別におちょくってるわけじゃなくて普通に扉から入ってきたって意味です。というか窓もないここ(管制室)に入るなら扉から入るかどこかを壊さなきゃいけないでしょ」

 

 

「‥‥では、どうやって扉から入った?最低でもカードとパスがなきゃ入れないはずだが」

 

 

電子ロックを解除する専用カードに、本人認証のパスワードこれらは通常教師陣と一部の生徒(生徒会)しか持っていない

しかも、電子ロックはいくつかある重要施設ごとにカードが変わっているためどこからかカードを入手しても管制室専用をピンポイントで手に入れるのは至難の業だろう。

もっとも防衛主任をしている私の持つマスターカードだったら話は別だが

 

 

「企業秘密です」

 

 

「‥‥‥」

 

 

「無言で手をならすのやめてくださいよ。とりあえず今は一夏の試合を見ましょうよ」

 

 

「‥‥お前の模擬戦が終わったらじっくり聞かせてもらうぞ」

 

 

と、一応いった物の八幡が本気を出せばそうそう捕まえる事が出来ないので本当に話せない内容なら聞き出すのは難しいだろう

というか、正直な話、この規格外な弟ならルパン○世レベルの事でも平気でやりそうなので電子ロックの解除くらい普通にできそうだし

 

とりあえず、この事は置いておこう。考えていても分からんし

 

目の前で戦っているもう一人の弟に目をやると、ちょうどファーストシフトが終わったところだった

 

一夏の機体は先ほどまでより全体の線が細くなり、色の鮮明度も段違いだ。

何より持っていたブレードの名に驚かされた

 

 

「雪片弐型、あれって先生の使ってたやつですか」

 

 

「…同型ではあるが、私の使用していたものとは別物だな。ただ、雪片の最大の特徴はその特殊能力にある」

 

 

「確か、自分のエネルギーを消費して相手のバリアを貫通するみたいなのでしたっけ」

 

 

「ああ、大まかに言えばそれであってる」

 

 

あいつにしては時間がかかった割に平凡な機体だと思ったが、こういう事か

 

 

「それじゃ、一撃逆転で一夏の勝ちって感じですか」

 

 

「いいや、おそらく一夏の負けだろう」

 

 

雪片の力はまさにISキラーといっても過言ではない強力な物だ。しかし、その分アレの取り扱いは非常に難しくまさに諸刃の剣と言っていい代物だ

 

一撃を当てればどんな不利からでも逆転できるが、良くも悪くもアレは近接武器であり相手に近づき当てなければ意味がない

今の一夏の技量では中距距離戦を主体とするオルコットに当てる事は難しいだろう

 

 

そして、案の定一夏の刃がオルコットに当たる前に試合終了のブザーが鳴る

 

 

《試合終了、勝者セシリア・オルコット》

 

 

 

 



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IS インフィニット・ストラトス 13

次回ついに八幡の専用機が明らかに

ただしオリ機体とかはないのであしからず


一夏の試合は結果から見れば、完敗と言っていいだろう。オルコットのシールドエネルギーは5割以上残っているし最後なんて自滅で終わったしな

 

まあ、でも試合の中でも相手を追いつめる時やいい感じのところも結構あったし、専用機持ち相手に素人が頑張った方だろう

 

というか、むしろ素人相手にあれでいいのかよ代表候補生・・・

ぶっちゃけ最後の一撃が決まってたらやばかっただろ。慢心やらがあったのは分かるが、流石に色々と駄目だろ

 

遠、中距離タイプで間合いも確保できるうえビットを入れれば最大5つのビーム兵器を携えて完全な近距離タイプに接戦されること自体なかなかないと思うのだけれど

 

しかも相手が千冬レベルの達人とかならまだしも、篠ノ乃相手に剣道で完敗してた一夏の近接戦闘でアレとか、割と本気でそれでいいのかと聞きたい

いや、これから戦う身としてはそのほうが都合がいいと言えばいいんだけどもあまりにもずさん過ぎるだろ

 

でも、そうはいっても俺はISの事をそこまで詳しい訳じゃないし、知識のほとんども前の世界から引き継いでるだけでそれが=この世界と同じでもない

現にISとかいう摩訶不思議乗り物が存在してるしな

 

だから一概に俺の知識だけでオルコットの事を酷評できるわけではないんだよな

 

 

「で、今の試合は世界王者『ブリュンヒルデ』としてどうでしたか?」

 

 

分からないなら分かる相手に聞けばいい

幸にここにはそれを解説してくれそうな人が二人いるしな。といっても一人の上から読んでも下から読んでもの人は俺の存在を認識すると同時に怯えまくり、生まれたての小鹿みたいになっているので実質一人だけだけどな

 

話を向けられた千冬はブリュンヒルデという単語に若干眉がピクリと反応する

 

理由は知らんが千冬はこの名前が気に入っていないそうだ。まあ、中二っぽいネーミングだし分からなくもない

それにうろ覚えだが確かブリュンヒルデってジークフリートの恋人でなんやかんやで寝取られたジークフリートを謀殺してその後葬式で後追い自殺したとかなんとかのアレだったな、自分が言われると確かに不快と思うかもしれんな

 

 

「‥‥一夏の方は見たまま素人と言っていい。ところどころ評価できる箇所もあったが動きに無駄があり被弾数も多い。それに、最後の方でいつもの癖が出ていた」

 

 

一夏の癖と言うのは、おそらくあの調子に乗ると手をグーパーするあれだろう。俺はそこまで気が回らなかったが千冬は気が付いていたようだ。流石である

 

 

「代表候補生相手に健闘していたが、それも相手の慢心があってからこそだ。運よくファーストシフトが完了したがあれがなければそこで試合は終わっていた。総合評価はC-と言ったところだ」

 

 

「フォーマットも終わってないぶっつけ本番になったのはそっち側(学園側)のミスなんじゃ?」

 

 

別に俺の事じゃないんでどうでもいいが単純に気になったので聞いてみる

稼働時間2桁程度の素人が国内有数の実力者である代表候補生と戦うのに万全とかけ離れた状況でやり合わなくてはいけにとか無理ゲーだと思う。むしろ悪意すら感じられる

 

 

「‥‥次にオルコットの方だが」

 

 

話そらしやがった

 

 

「色々と言いたいことはあるが全体的に酷かった。この一言に尽きる」

 

 

やっぱりそういう感じなんだな、あれ

 

 

「第3世代型の特徴でもある近代兵装を惜しみなく使用しているのはテストパイロット的にはいいだろう。ビームライフルによる射撃にビット4機の変則攻撃、同時変容できない事を除いてもスッペク的には初期の白式を遥かにしのいでいる。

 

だが、いくら機体の性能がよくとも使用者があれでは宝の持ち腐れもいいところだ。

ビットは本人の集中力次第で機動力が大幅に変化する。常に冷静を心がけビットの機動力を最大限まで発揮させていれば一夏は近寄る事すらできていないはずだ。なのに4機すべてを破壊され、隠し玉であるミサイルでも決定打を与えられなかった」

 

 

「最後のは一夏が運良くファーストシフトしたからでしょうがないんじゃ?」

 

 

「シフトが完了するまでどれだけ時間があったと思ってるんだ?オルコットが慢心なく戦っていればそんな時間を与えることなく倒せたはずだ」

 

 

なるほど、つまり今回オルコットが最も失敗したのは時間をかけすぎたという所か

慢心だの侮りなどもあったろうが、それ以上に相手を嬲り倒そうという腹積もりだったのだろう、そのためやたらと勝負を長引かせていた。それは試合中の会話やら発現やらでも伺える

 

結果、一夏に同時変容できない欠点を見破られ隙を突かれビット大破

擁護のしようがないな。するつもりもないけど

 

 

「ところで、次はお前の試合だがいつまでここにいるつもりなんだ?」

 

 

一通り試合の評価を話し終えると千冬は一息置いてそんな事を聞いてきた

 

 

「俺の機体は整備もメンテもばっちりなんですぐにでもやれるし、下に行っても一夏と篠ノ乃が話すのを少し離れた所から見てることしかやることないんでもう少しいさせてもらいます」

 

 

「2人と会話する選択肢はないのか‥‥」

 

 

呆れ顔で言う千冬の顔を視界の端でとらえたが気にしない

そんな顔なんて生前これでもかと言うほど担任のおせっかい独身教師やら部活の毒舌氷の女王やあれは天使かな?違った妹だ、違わないや天使だった。から散々やられ続けてきたのだ

 

今更、兄妹設定のクール系スーツ姿の教師風美人姉からそんな顔されても痛む心などありはしない。むしろ痛みを通り越して快楽を感じるくらいだ

 

 

「そういえば、ドタバタしていて聞いていなかったが、お前のその機体はどうやって手に入れた?」

 

 

「企業秘密です」

 

 

「茶化すな、真剣に答えろ。どこの国でも男性操縦士の情報はほしいだろうが国の最新鋭であり技術の結晶である第・3・世・代・型を易々とくれるとこなんてありはしない。どんな裏ワザ、いや・・・どんな取引をして手に入れた?」

 

 

俺は一夏と違い自分で専用機を入手している。

教師である2人はすでにそのISを見ており、整備にも立ち会っている。しかし、その入手経路は秘密にしてある

 

特にそれは家の家族にも関わる秘密であり、もしも千冬の耳に入ると冗談抜きに国際問題に発展する可能性が高い

 

 

「国家機密です」

 

 

「私は真剣に答えろと言ったはずだが、聞いていなかったのか?」

 

 

声に明らかな怒りの感情を滲ませ目も鋭い、人を射殺さんばかりの目とはこういうのを言うのだろうか?

 

普通に怖いが、こちらもそれではいそうですかと素直にいう訳にはいかない。ISの事もそうだがあ・の・国にはまだまだ利用価値が残っているので、今ここで潰されるわけにも有耶無耶にされるわけにもいかない

 

なので、どんなに凄まれようともこれ以上答える事はできない

都合のいい金づるは大切に使いつぶさなくてはいけない。それが俺のポリシーだ

 

 

「真剣ですよ。お察しの通り色々と取引してますんで話すことはできません。それにそっちだって国家機密の意味は十分承知してるでしょ」

 

 

「‥‥話す気はないか。まあいい、今は試合も控えている事だしこれ以上は聞かん」

 

 

「そりゃどうも」

 

 

「今・は・だぞ、試合が終わったらちゃんと話してもらう。これは命令だ」

 

 

「それは教師命令ですか、それとも家族命令?」

 

 

「両方と言いたいところだが、その答え次第で話すのか?」

 

 

「いいえ」

 

 

そう答えると扉に向けて歩き出す

 

アリーナの方を見ると機体の整備を終えたオルコットがすでにISを展開して飛びだっている。

時間的にはあと少し余裕があるが、まあいいだろう

相手の情報は頭に入っている。実際の実力も今ので大体分かった

後は、あの短絡思考をうまく利用すれば勝てない事もないだろう

 

仮に今の戦闘で慢心がなくなっていても問題はない。俺はいつもと同じようにいつも道理に俺としてこの戦いに臨むだけだ



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IS インフィニット・ストラトス 14

次回バトル編!!

ただし、過度な期待はスンナよこのヤロウ!!


一夏とセシリアの試合が終わり10分足らずして次に戦う2人はすでにアリーナ上空にその姿を現した

まずセシリアのほうは、前の試合と同じイギリスの第3世代型 遠距離射撃タイプのIS『ブルー・ティアーズ』その名前にふさわしく澄んだ青色のカラーリングで、操縦士のセシリアの白人特有の白い肌に長い金髪が合わさりモデルと言われてもなんら違和感のない美しい出で立ちだ

 

一夏に破壊されたビット4機はあらかじめ本国から取り寄せていた予備と交換を終え、機体事態のダメージもIS学園最先端のリカバリーを受け、なんら問題はない

 

流石に全てが元通りという訳ではないが先ほどの試合と同等の起動ができるので、ダメージの蓄積による敗北と言う可能性は限りなく0と言えるだろう

 

さらに、それに加えセシリア本人の顔つきも明らかに違う。一夏との試合で見せた相手を侮る見下した目も、自分が負ける事は万が一にもないという余裕の表情もそこに存在していない

 

彼女の今までの性格を考えれば試合に勝ち今以上に男より遥かに自分は優れていると増長しそうなものだが、どういった心境の変化か現在彼女にはそんな考えはありはしない

 

その目は真っ直ぐに己の敵を見定め、その表情は学生と言うにはあまりにも鮮麗された戦士の物、その姿に一切の油断はなくこれから始まる試合のため精神を集中させている

 

そんな彼女を見て多くの生徒は違和感を感じ戸惑っている。主に1組の面々だが

 

初め一組の女生徒たちはセシリアに対していい感情を持っていなかった。あんな日本を侮辱する演説をしたのだし当たり前であるが、その考えもものの数分で消えてなくなった

 

それは、言わずもながらだが口喧嘩に負けた彼女が泣き出してしまったことが原因であり、またセシリア以上の物言いをして尚且つ女性を泣かし平然としている女性の敵ともいえる存在が現れたからだ

 

人というのは可笑しなもので、どんなに第一印象が最悪な相手でもそこに、自分たちの共通する敵が現れるといきなり一致団結するもので、さらに言うならセシリアは専用機を持ったイギリスの代表候補生、性格がどうあれ自分たちの目指す道の先達者といってもいい存在だ

 

そんな彼女を一組の女生徒たちはこぞって応援していた。話してみると彼女のいささか難儀な性格も分かってきて、基本的にいい奴という事もあり今では一組女生徒のマスコット的な存在だ

 

同じマスコット的な、名前も雰囲気ものほほんとしている女生徒と一緒にいる事が多く、見ている分には実に和む光景で始めの印象などなんのそのすっかりクラスの人気者だ

 

そんな彼女達の目から見ても今のセシリア・オルコットは普段の彼女からかけ離れた姿をしている。もちろんい意味でだ

 

彼女にいったい何があったのかと言うと、それは試合が終わってすぐまで時間を戻す必要がある

 

 

 

 

~~~~~~回想~~~~~~~~

 

試合が終わり、わたくしは破損したブルー・ティアーズの整備と修理を整備科の皆さんに任せ心を落ち着かせる意味と試合で汗をかいてしまったのでシャワーを浴びるために更衣室に来ている

 

靴を脱ぎ、ISスーツを脱ぎシャワー室に向かう

ISスーツは体にぴったりと張り付くようになっているのでただでさえ脱ぎにくい物なのに汗で湿ってしまったスーツは普段よりも断然脱ぎにくい

 

ふと、脱ぎ終わったスーツを見ると相乗以上に自分が汗をかいていたことに驚きました

普段これ以上に訓練をしているが、ここまでなったことは早々ない事で、自分がどれだけ今の試合で冷静さを失っていたか改めて思い知らされる

 

正直な話をするとこの試合は自分の圧勝で終わるという確固たる自信があった。まだ実験機の段階ですが、イギリスの誇る第3世代型ISに国内でもっともBT兵器の適性が高く、代表候補制に至るまでに並々ならぬ努力をしてきた自分が

 

ただただISを動かせる事が出来たというだけの物珍しさしか取り柄のない男に負けるなんてありえない、そう思っていたのだ

 

しかし、いざ蓋を開けてみれば勝ったといっても理由は知らないが相手側の自滅で拾った勝利に数多くの武装を用いたわたくしをブレード一つで肉迫していた彼、織斑 一夏の奮闘

 

それに加え、自分は始めの威勢など終盤につれなくなり、隠し玉のティアーズ(実弾ミサイル)を持ちいても勝負を決める事が出来なかった‥‥

 

そして、最後のあのブレード‥‥

あれが何なのかは知りませんが、わたくしの直感が言っています。あれが当たっていれば勝者と敗者は真逆になっていたとことだろうと

 

これが散々相手を否定し、侮っていた自分の戦いかと思うと落ち込まずにはいられない

今も本国でオルコット家を支えてくれてる幼馴染に死んでしまった両親になんといい訳をすればいいのか、わたくしにはその言葉が見つかりません

 

そして何より、そんな自負の念に駆られているさなかにも頭の中で思い浮かべているのはあの男の‥‥彼の姿だというからもはやどうすることもできない

 

今まで見てきた男という存在とはまるで違う、死せる前まで母の寄生虫と周囲に穢されいつも周りの顔色をうかがっていた情けないあの人とも

 

両親が死んですぐに言い寄るようにやってきた、オルコットの保有する財を狙ったあのやから達とも

 

彼の、そんなわたくしの中の男という存在とはかけ離れた凛々しい姿。どんなになっても諦めず立ち向かう不屈の闘志

 

 

「‥‥‥織斑 一夏」

 

 

流れ出るシャワーの音にかき消され周囲には聞こえないくらいの声でそう呼べば途端に頬が熱くなる。一糸纏わぬ胸に手を当てれば自分の中に響いてくる。

 

何とも騒がしく普段では感じられないほどに高鳴る鼓動

 

しかし、決して嫌な物ではない。むしろ心地いい、生まれてきて今まで感じた事のない高揚感

 

 

ああ‥‥なんとも素晴らしい‥‥ああ‥‥何とも幸せだ‥‥

 

 

濡れた体を乾いたタオルで拭き、雫のすべてをはらいのけ

予備用の真新しいISスーツに足を通し、腹に胸に肩にと上へ上へと着ていく

 

化粧台の鏡に映る自分の顔、頬は赤く口元にも締まりがない。これが誰の顔かと一瞬分からないくらいには締まりがない

 

これではいけないと両の頬を軽くたたき意識を覚醒させる

 

まだわたくしの戦いは終わっていない。これ以上無様な姿を曝すわけにはいかない祖国の為に家を守る彼女たちの為に死んでしまった家族の為に‥‥そして、彼のためにも、これからの試合は自分の全霊をかけて挑む

 

もう、男だからと侮りはしない。慢心も捨てる。

 

相手はあまり似てるとは思えないが彼の兄なのだ

浮ついた心根ではまさしく負けてしまうだろう

 

目をつむり、深呼吸を一回

 

整備の方々から受け取った自分の愛機を一撫でし、次の瞬間には全身を青い機体が包み込む

 

動作に異状なし、エネルギーの充電もよし、破壊された武装も新しくどこにも問題はない

静かにアリーナの空に飛び立ち、彼敵が現れるのを静かに待つ

 

これからがこのわたくしイギリスが誇る代表候補生セシリア・オルコットの本当の戦いだ

 

無様は曝さない、誰に恥じることなく挑み勝利をつかみ取る

 

頭は常に冷静に、でも闘志は決して絶やさない

 

 

空高く静かにたたずむ青い機体、それに乗る日の光を浴びきれいに輝く金髪の少女、その顔には一切余分な物はなくこれからの戦いに挑む面持ちはまさに遠き昔、彼国を守るため戦った騎士のようであった

 

 

 

~~~~回想終了~~~~~

 

 

そんな感じで今に至る

 

 

一方、それに対するもう一人の男性操縦士も彼女と同様にアリーナの空に飛びだった

 

その姿はまさに黒

セシリアや一夏の機体より随分と武骨で重々しく、一際目立つ砲身が何より特徴的だ

 

黒を主体に赤いラインがところどころに入り、アジア系の人種に見られる黒髪に黄色人種特有の肌、その奥から覗く暗く濁った二つの瞳

 

真夜中や廃墟で見れば間違いなくホラーな絵面である。その異様ともいえる不気味な姿に周囲はこぞって息をのんだ

 

さらに管制室では、モニターによりアップでその姿を見た山田先生が泡を吐いて気絶したりと、先ほどまでの試合で熱していた会場は見る見るうちに冷めあがる

 

その中でも今だ平然を貫く人物はたったの3人だけだった

 

一人は言わずもながら世界最強のIS乗りであり2人の弟の姉、織斑 千冬

八幡の姿を見ても驚きもせず平然とコーヒーに口をつける。一瞬、床に倒れてる後輩を見て軽くため息を吐くがすぐに視線はアリーナに向けられる

 

というか、保健室にでも運んでやれよ

 

二人目は、世界最強を姉に持つ一番下の末っ子であり彼の弟、織斑 一夏

八幡の専用機を初めて見たので興味津々といった感じで空中ディスプレーを見ている。男の子なら機能性とか関係なくゴテゴテのメカメカしてるロボ系に心が引かれるのは必然と言える

文句があるわけではないが、いや、ブレード一本とかいささか不満ではあるが・・・自分の乗る白式は機動力を重視したタイプで線もシャープな作りになっているので、八幡の機体のようなタイプにも憧れがある

 

隣りで見ている幼馴染の少女が、初め女の子らしい悲鳴を上げた所

 

「箒でもそんな可愛い声上げるんだな」

 

と、色んな意味で失言をしてしまい物理的に痛い目を見たこと以外は問題なく観戦を続けている

 

三人目は、意外な事にもっとも至近距離からその姿を目視してる対戦相手 セシリア・オルコット

普段の彼女ならドン引きしたり悲鳴を上げたりするのだろうが、今現在彼女の集中力は非常に高くこの程度の些事で取り乱したりはしない

目をそらすことなく目前の敵を見つめる姿は、多くの者が見とれる凛としたものだ

 

 

 

八幡の用意した専用機『シュヴァルツェア・レーゲン』

 

黒を主体としたカラーリングに右肩に装備された大口径レールカノン。6本のワイヤーブレードと両手に付くプラズマ手刀を装備したドイツの第3世代型、近距離から遠距離射撃までこなす万能型である

 

 

両者が同じ制空権にたどり着いたとき、初めに話しかけたのはやはりセシリア・オルコットだった。

 

 

「意外ですわね。てっきり日本製のISを使用すると思ってましたが、まさかドイツの第3世代とは」

 

 

「なにぶん世界に2人の実験動物なんでな。一声かければ大抵の国がうちのを使えって言ってくる。別にどこの何を使っても問題はないだろ?」

 

 

「ええ、無論ですわ。貴方がどこの国のどのようなものを使っていても、わたくしのやることは変わりませんから」

 

 

そう宣言するセシリアは、一見今まで道理の傲慢で男を馬鹿にし、どこからくるのか分からない自信を誇張する精神年齢小学生のようだがその顔を見ればそれが誤りだとすぐに分かる

 

先ほどの試合の影響だろうか、男(俺)に対する見下したような視線を感じない。あくまで相手と自分を同等に、驕りを消し去り相手を観察するそんな視線を感じる

 

 

 

これはまた、めんどくさい

 

そんなセシリア・オルコット(改)をまじかで見る八幡の感想だ。正直な話、オルコットのこのような変化を想像していなかった。

俺の立てた目論見じゃ、散々自分を馬鹿にした一夏(実際は八幡)に対し相当な報復があるというのは想像していた。

 

例えば、素人同然の相手をすぐに倒さずじわじわと嬲り倒すとか、自分の持てる戦術、武装、経験の差などを惜しみなく発揮し有無を言わなさに勝利を収めるとか

 

そんな感じで次の対戦なんて関係なく全力を出すという事は分かってた、というかそういう風に誘導した。

で、俺はそんなオルコットを観察して不測の事態が起きないように万全を期すつもりだったのだ。

前情報にない武装、画像やデータだけでは分からない相手の動きのリズムや癖、その他もろもろを見極める。

 

一夏は、犠牲になるが最終的に俺がオルコットを倒すためにはなくてはならない、かと言われると実はそうでもない、いわば無くても困らないけどあったほうが便利みたいな感じで、必要と言えば必要な犠牲になったのだ‥‥‥今ではなったはずだったと過去形になるがな

 

途中までは俺の思惑道理の展開になった。ビットを使用中は自身は、他の攻撃動作をとれない事、ビーム兵器以外の実弾ミサイル等、あいつの武装もこれ以上の隠し玉はないだろう。一夏は自身の役割を全うして後は、華々しくオルコットに敗れ、その勝利でオルコットはさらに慢心し、隙を見せるだろう。

 

しかし、残念ながらそうそううまくは行かなかったようだ。一夏は予想以上に善戦し、最後に至ってはほとんど勝利していたと言えるほどの活躍を見せた。

 

その結果、オルコットは慢心するどころかある種の危機感を覚えさらに、彼女の中にある男と言う存在の根本を変えてしまった。

 

慢心どころか今の彼女は一夏の時とは違い、初めから勝負を仕掛けてくる。自身が絶対に勝つと驕らず勝つために全力を尽くす。そういう感じのやからは極めてめんどくさい

 

 

「それじゃあ、いっちょ胸を借りるつもりで行かせてもらいますか。できれば手加減を期待してるんだが・・・」

 

 

「残念ながらそれには答えかねます。わたくしも手心を加えて貴方に勝てるほどの実力を持っているわけではありませんので、全力で行かせてもらいます!!」

 

 

機械的なアナウンスによりカウントダウンが始まる。両者の距離はおよそ10m弱、一方は手に握るもっとも使い慣れたライフル銃をもう一方は、右手のプラズマ手刀と大口径レールカノンを構え、試合開始のゴングを静かに待ち続ける

 

 



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IS インフィニット・ストラトス 15

今現在、作者さんが鬱期にはいられました

なので、非常に残念ながら当初の予定を変えてハッピーエンドにならないルートにしま~す

何か流れ的にいい感じになってんじゃね?と思ってくださった方、申し訳ありません。

この八幡はやっぱりゲスでした


試合開始まであと数十秒というところか‥‥

 

現在の状況は、俺の予想とはいささか異なる。まずオルコットの雰囲気が違う。生前でもああいう目をした奴は一様に厄介極まりない

 

10度目くらいの裁判ですっかり俺の担当弁護士になってる葉山もあんな目をしてたっけか

あ、担当弁護士って言っても俺を訴える方の担当だから、俺を弁護とかは絶対してくれないから間違えないように

 

あの時の葉山は本当に厄介で一度は負けも覚悟した。まあ、最終的には俺が勝ったけど

それでも後にも先にも俺があそこまで追いつめられたのはあの時だけだった。

 

それに、この間合いも予想外だ。遠距離射撃を主体とするオルコットの事だから最低でも20mくらいは最初から離れて、そのままライフルとビットで射撃体勢に入る物だと思っていた。

 

それがなぜかこの距離、大体10m程度

 

離れてないならいいじゃん、と思うかもだがそれは一夏みたいに近距型のみの話だ。

俺の主体攻撃も実を言うと遠距離で、むしろ近距離戦は苦手だ。今構えてる手刀もただの張ったりで、こんな超至近距離武器なんざ怖くて使いたくない。

 

俺は詐欺師であり犯罪者であり、その筋ではかなり有名だが基本的にはビビりの臆病者である。

臆病だからこそいくつもの策をめぐらしのらりくらりと今までやってこれたし、ビビりだからこそ警戒心を強め、どんな時でも冷静に慎重に対処してきた。だから、あの人外と言って過言ではない千冬の攻撃(出席簿)もよけられる

 

ただし、ビビりで臆病だから回避や保身は得意でも相手への攻撃とかは苦手だ

こんな明らかに僕兵器ですよと言う感じのパワードスーツでの戦闘とかめちゃくちゃ怖い

 

なので剣や手刀での斬りあいとか勘弁願いたいし、手刀とライフルでのドンパチなんかなおさら嫌だ

 

当初の予定では、相手の方から十分に距離をとってくれると予想してたのでこっちは、開始早々に一発レールカノンをブチ込んでそのまま移動しながら距離をとり蜂の巣にでもしようとしていた。八幡だけに

 

自分の得意分野である射撃で完敗することにより相手の心をへし折って日本をディスった事を後悔させてやるつもりだったのに‥‥

 

こうも近いとその予定も難しい、レールカノンはその威力とスピードから完全な遠距離戦で不意を突けば割と回避不能の強力な兵装だが、逆にこのくらい近いと発射までの予備動作やための時間などで相手に悟られ回避される可能性が高い

 

意外な事だが、こういった兵装は遠距離より近距離の方が回避されやすいのである

しかも、何あの凛と真っ直ぐにこっちを見てる目は?

 

透き通るような青い目に決意の炎を燃やしてて物凄くきれいだ。目の濁った俺へのあてつけかよ?

 

これ絶対よけられるよ。別に軍人でもないし銃とかあんま使ったことないからあれだが、俺の直感がいってる。このまま撃ってもよけられて逆にこちらが一発もらう

 

むしろ一発で済めば御の字というレベルだよ

 

‥‥しかたない、こうなればプランβを使うしかないか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「‥‥随分と雰囲気が変わったな。何かいい事でもあったのか?」

 

 

試合開始までもう時間がないというとき、俺はオルコットに話しかける

今までのように語調を強める事もなく、なるべくセリフに棘が刺さらないように

ただ、怪しまれないように最低限の警戒心をセリフに乗せる。

 

 

「いい事‥‥確かにそうかもしれませんわね。このような気持ちになるのは随分と久しぶりですから、いえもしかしたら生まれて初めて感じる気持ちかもしれませんわ」

 

 

要領がつかめんが、さっきの試合で心境の変化でもあったんだろう。

頬を染め微笑むその顔からすると一夏に惚れでもしたのか?

というか、あの顔は絶対にそうだろ。絵にかいたような恋する乙女って感じだし

 

 

「何のことか知らんがそれは良かったな。でも、そんな緩みきった顔して勝てるのか?確か俺を奴隷にするとか言ってたけど」

 

 

「そのような事も言いましたわね‥‥申し訳ありませんでした。アレはわたくしの失言でしたわ」

 

 

と、オルコットは謝罪の意思として腰を曲げ頭を下げる

 

おいおい、本当にこれがあのセシリア・オルコットかよ‥‥

自分の責を認めその上での謝罪。まさしくザ・大人の対応だな

 

以前のこいつならありえない対応だぞ‥‥‥いや、むしろ本来の貴族としてイギリスの代表候補生としてのオルコットの姿はこっちの方かもしれんな

 

祖国を離れ単身日本に留学してきて肩肘はってたのが、一夏に恋することもとに戻ったていう感じか

 

 

「あのような失言謝ってすむとも思いませんが・・・せめてもこの試合は、わたくしの全力を持って貴方に答えます」

 

 

「いや、こっちもあの時は言いすぎたうえに泣かせちまってるしな‥‥お互いあのことはこれで手打ちにしてくれると助かる」

 

 

そういい、俺は右の手をオルコットに向け差し出す

あっちもこちらの意図にきずいたのか、ゆっくりと近づきながら差し出された手を握り返す

 

金髪碧眼のイギリス人の女の子と握手すなんて本来の俺なら、内心で盛大にキョドリながら表面上は冷静に対応するのだが・・・なにぶんお互いがISに乗っており、握手したてもやたら機械じみたごつごつとした手なので正直なんとも思わん

 

むしろガチャガチャと鉄と鉄がぶつかる音が聞こえて酷く不愉快だ

嫌な顔はしない物のどうしても無表情になってしまう俺を責められる奴はいないだろう

 

例えるなら友好の印とか言ってガン○ムとザ○が握手をしてるけど、中に乗っているパイロットは握手してないみたいな何とも微妙な感じだ

こいつら一見仲良くしてる風だが、本心ではそうでもないだろみたいな

 

やはり握手と言う行為は人と人がお互いに手のぬくもりを感じられるからいいのであってロボット同士の握手と言うのは何か違うだろ、みたいな

 

 

「色々ありましたが、この試合はお互いに正々堂々と己の実力を出し切り戦いましょう。もう手加減やハンデなどという失礼な事はいいません。全力で行かせていただきますわ!」

 

 

そんな俺とは裏腹にこいつはこいつで物凄くいい笑顔で、言い切る

形から入るタイプみたいだし、こういう絵になる行動は好みらしい、合理主義者の俺にはよく分からんが

 

 

「ああ、そうだな。これであの時の事は手打ちだ」

 

 

試合開始のカウントが場内に響く

 

『5』

 

 

「だからお互い全力で頑張ろうじゃないか」

 

 

『4』

 

 

先ほどまで握っていたお互いの手を放しオルコットは徐々に後方に後退するが、3メートル離れたところで呼び止め

 

 

『3』

 

 

「そういえば一つ言い忘れてたぜ、オルコット」

 

 

『2』

 

 

「?・・・いったいなんですの」

 

 

『1』

 

 

「いやな大したことじゃないんだが、ただな俺は全力でやるつもりだが」

 

 

『試合開始ッ!!』

 

 

 

 

「正々堂々は保証できないぞ?」

 

 

「それは、どういう‥‥‥なッ!こ、これは!?」

 

 

不適な笑みを浮かべそう告げる俺にオルコットは一瞬感慨そうな顔を浮かべるも、すぐにそれは驚愕へと塗り替えられその場に押し止まる

 

いや、それは立ち止まるとかという意味ではなく文字道理に止まっている

人の取る態勢としては違和感があり、まるでテレビ画面を一時停止したような不自然な格好で彼女は身動き一つ取られず指の一本も動かすこともできず、張り付けられたように止まっている

 

唯一動ける顔は先ほどまでの恋に恋する乙女の顔とは異なり、驚愕とそして怒りの表情へと姿を変えている。

目を吊り上げ、こちらをにらみつける彼女はこれまたあの時と違い、迫力が半端ない

 

セシリア・オルコットが持つ第3世代型兵器『ブルーティアーズ』と同様にこの機体にも第3世代型兵器は搭載されている。

シュヴァルツェア・レーゲンが持つ第3世型兵器、その名も『停止結界《慣性停止能力(アクティブ・イナーシャル・キャンセラー)》』

 

 

 

 

 

第3世代型兵器とはその名の通り第3世代のISから搭載された兵器でISコアの能力をワンオフアビリティー以外で、誰でも自在に使用できるようにするという構想の元開発された。

 

言わば量産型ワンオフアビリティーとでも言う感じのしろ物で、搭乗者の意志による操作装置(イメージ・インターフェイス)を内蔵している。

 

ブルーティアーズは操縦者の意志により複数のビット兵器を同時に使用するが、この停止結界は意識的に停止させたい物体に意識を集中することでその物体を完全に停止させるという、何ともチート風な兵器である

 

常に複数のビットを動かしてるブルーティアーズと比べ集中するのは、停止させたい物体に限定している停止結界は操作がやりやすく、使用の際に他の武装が使えないという事態にもならず比較的に使用しやすい

 

だからと言って基本的には、一方向にしか使えないので複数人と戦うときにはあまり有効ではない。それに、本来ならティアーズのように複数の方向からの攻撃ができる武器相手では分が悪く

 

使い勝手はいいが、使う場面を間違えると痛い目を見る

 

まあ、本体事ビットも停止してる現在ではそれを心配する必要もないけどな

 

 

 

さてと‥‥

 

多くの人は思っただろう。一夏との試合を終え、纏う雰囲気が異なる今のセシリア・オルコットは、代表候補生として相応しいと

 

自分の非を素直に認め、謝罪をする潔さも、それからの啖呵も国を代表する、まだ幼いながらも貴族としての振る舞として素直に尊敬できると

 

これから始まる試合は、さっきまでの試合より過熱を極めお互いが死力を使い果たすさぞ素晴らしいものになると

 

ただ、生憎と現実と言うやつは中々に非情な物で、いくら心を入れ替えようとも、いくら自分の非を認めようともそれで全てがハッピーエンドになるとは限らない

 

そんなのご都合主義など俺は認めない

 

間違い続ける俺の人生はそれでも変わらない

 

 



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IS インフィニット・ストラトス 16

ヤッホー皆様おなじみのLチキです

なんかもう一つの投稿の方で、迷走入りしてしまって考えがまとまりません

皆から生暖かい激励の言葉待ってます~

こっちに対しての感想も随時募集していますよ~






「これは一体どういうつもりですの・・・」

 

 

今現在、わたくしは身動き一つとれないように拘束されている。拘束といっても端から見ればただ空に浮かんでいるだけにしか見えないでしょうが・・・

 

開始直前に言葉をかけられ、そのまま捕まってしまった・・・自分でいうのもなんですが、随分とマヌケですわね

 

 

「どういうつもりも何も、開始直前に気をそらして開始直後に攻撃。そんなどこにでもあるような先制攻撃だろ。それとも自分が動けない理由でも知りたいのか?」

 

 

「…結構です。イギリス代表候補生として同じヨーロッパ圏の機体の事はある程度知っています」

 

 

あの黒い機体はドイツが開発中の物で確か名前をシュヴァルツェア・レーゲンと言いましたか・・・万能性に優れた機体で、AICという認識した物体の動きを止める第3世代兵装を搭載しているという話でした

 

今のこの状況は、そのAICのせいなのでしょう

 

というよりわたくしが聞きたいのはそういう事ではありません!

 

 

セシリアは眼を吊り上げ、動かない体で必死に目の前にいる男を睨みつけ問いただす

 

 

「わたくしが聞きたいのは、なぜこのような不意打ちのような真似をしたかという事です!!」

 

 

一応言っておくが、不意打ちとは、倫理的な問題を除けば特に問題があるわけではない。

 

今回の場合だって停止結界を使用したのは試合開始直後だし、停止結界自体も別に禁止されているわけではない

 

織田信長の桶狭間の戦いしかり

 

明智光秀の本能寺の変しかり

 

関ヶ原の戦いの小早川秀秋しかり

 

歴史を見ても奇襲、不意打ちは常套手段の一つであり、れっきとした戦術と言える

 

なので、八幡の使った不意打ちは戦いという枠組みでは別段問題なく、国際ルール上でも問題ないので反則にはならない

 

しかし、それはあくまで戦いという枠組みの中での話である

 

 

「お互いが全力で戦おうと誓った矢先にこのような真似をして・・・貴方には恥と言う物がありませんのっ!」

 

 

アラスカ条約が作られてからISを軍事目的で運用することは禁止されており、それからの流れでISは国際的な競技として現代社会に根付いている

 

競技・・・つまりはスポーツである。

 

姿かたちは異なれど彼女たちは自国の威信を肩にのせ、将来は国の代表として世界大会に挑むという高い志を持ったアスリートなのだ

 

スポーツとは正々堂々を心情とし、アスリートとは周りに恥じぬ振る舞いで競技に対し紳士としてふるまうもので

 

八幡の行った今回のような真似はそういった物に触れ、IS競技に携わる者にとっては恥ずべき行いといえる

 

スポーツと言う枠組みのISでは、正々堂々が当たり前、清く正しく華やかに行われるのである。

 

八幡の行いを他の競技で言うと

 

野球で例えるなら、自分の苦手な打者に対しわざとデッドボールを連発し

 

サッカーで言うなら、危険なスライディングで多くの選手に怪我をさせ

 

ボクシングだったら、世界王者決定戦で反則技の応酬をする

 

そんな、やる人間、見る人間、運営する人間誰に対しても不愉快極まりない暴挙なのである

 

仮に今回と同じことをモンドグロッソでやろうものなら、各国政府及びに各国操縦士さらには各国のISファンから苦情が殺到し

 

メディアから叩かれ、ネットの住民からはおもしろおかしくネタにされることだろう

 

つまり世界規模のボッチになりかねないのである

 

なので真っ当な国家代表選手は勿論、代表の座を求めて数多くのライバルと凌ぎを削り専用機を文字道理、自分の力で手に入れた代表候補生、そんな華々しい彼女たちに憧れを抱くIS学園の生徒達ではこのような戦い方はまずしない

 

というよりスポンサーや政府の受けが悪すぎるので、したくてもできないという方が正しいけれど・・・

 

もっとも誇りをもってISに乗っている彼女たちには、端からそんな考えがあるかどうかは疑問であるが

 

 

 

セシリア・オルコットの怒気を含む問いかけは、一人のIS操縦者とし至極真っ当な物であり

 

握手までしてお互い頑張ろうと鼓舞し合っていた者として、聞く権利がある質問だ

 

 

「恥・・・?なんでそんなもん感じなきゃいけねーんだよ」

 

 

「な・・・ッ!」

 

 

見るからに激情しているオルコットに対し、八幡はいたって冷静に表情一つ変えずにいいきった。

 

流石のオルコットもこれには絶句

 

激怒する自分に対し、謝罪するでもなく、開き直るのでもなく、無視するのでもなく、逆に怒るのでもなく

 

そもそもなぜ自分が怒こられているのかすら理解をしていない。そんな返答だ

 

 

 

ただ一応言っておくが、八幡と言う男は高校時代からやたらと鋭い感性を持っており、そん所そこらのラノベ主人公とちがい自分に対する好意も悪意も理解しており

 

場の空気を読むことに関しても極めて優秀だ

 

なのでオルコットがなぜ怒っているのかも正しく理解している

 

つまりはこの反応もただの演技なのだ

 

 

なぜ、そんな事をするのか?・・・ただの嫌がらせじゃない事を祈ろう

 

 

「別にルール違反をしたわけでもない。それに、こっちはあらかじめ正々堂々は保証しないといっただろ」

 

 

確かにそれは言っていた・・・開始とほぼ同時で停止結界を発動する1秒前ほどにだが

 

 

「こっちの攻撃がうまく決まったからって癇癪を起すな。そんな事で一々文句言ってる暇があったら少しは自分を磨きやがれ」

 

 

「言わしておけばッ!わたくしはそのような事で起こっているのでは、ありません!!」

 

 

「じゃあなんだ、カルシウム不足か?小魚か牛乳でも飲んで寝てろよボケ」

 

 

「毎日規則正しい生活を送っています!そもそも余計なお世話ですわッ」

 

 

と、言い合っているが微動だにせず止まっている状況なので周りからすればいささかシュールである

 

 

すっかり頭に血が上っているセシリアだが、このやり取りで逆にいつもの調子を取り戻した。

以前として頬を赤らめ八幡を射殺さんとばかりに睨みつけているが、思考はむしろクリアになり、この後の事を冷静に分析していた。

 

 

(この拘束は、彼本体のシールドエネルギーを消費しながら発動していたはず。なら、そう長い時間は使う事はできないはずです・・・が)

 

 

どう考えても自身のシールドエネルギーが尽きる前に攻撃するのは目に見えている。

 

現に会話をしているこの時にも、右肩にあるレールカノンからわずかな機械音が聞こえてくる。

 

 

(最大火力での一撃・・・あの見た目がただの飾りでないのでしたら、大ダメージは免れませんわね)

 

 

動けないから回避もできず、防御態勢をとる事すら許されない。そんな無防備な状態なうえ、この至近距離からの砲撃と言うのは、絶対防御という安全があっても恐怖心を覚えても不思議はない

 

どんなに訓練しようとも、人が本来持ち合わせる恐怖心を完全に消し去る事なんてできはしない

 

それはあの織斑 千冬も例外ではない。

 

どんなに取り繕うとも彼女は20代の女性だ。戦闘において恐怖を感じない事などないし、モンドグロッソ2連覇した世界最強の肩書を持っていようともそれは変わらない

 

普通の人でも

 

ただの動物でも

 

聖人君子でも

 

歴戦の軍人でも

 

百戦錬磨の戦士でも

 

魔王を倒す勇者でも

 

歴史に名を残す英雄でも

 

傲慢な王様でも

 

狡猾な悪魔でも

 

各地に祀られる神様でも

 

 

知性ありし者ならば、人も動物も魑魅魍魎も関係なく誰しもが何かしらの事を、あるいは物を恐れて生きている

 

ただそんな中でも勇者や英雄という一握りの者達は、多くの者が足踏みをして恐怖という激流に屈する中

 

一歩一歩と前に進むことができる

 

別に、怖くない訳じゃない

 

怖いながらも勇敢に勇猛に挑戦することができるのだ

 

 

そして、それはここにいる誇り高い戦士も例外ではない

 

絶体絶命のピンチの中でも、細められた蒼い瞳には敗北の色はなく

 

纏う雰囲気は依然として健在で、感じられる覇気はなおも上昇している

 

セシリア・オルコットはまだ、諦めていない!

 

 

(この一撃はどうあがいても受けるほかありません。なら―――耐えて見せましょうッ)

 

 

現存する兵器の中でもISは最強と言って間違いない。

 

そんな最強兵器であるISを一撃で行動不能にするレベルの兵器はそうはない

 

一夏の、零落白夜とかの例外を除けばミサイルだろうがビームだろうが核兵器だろうが万全上体のISを一撃で屠る事などできはしない

 

大なり小なりダメージはあるけれど、逆を言えばどんな状況どんな武器を使用しても一撃は必ず耐えられるの

 

 

それにACIはとても強力だが、別に無敵と言うわけではない

 

 

(第3世代型兵器全般に言える弱点・・・攻撃時、または攻撃された時に意識がわずかでもそれてしまう事。それと資料で見たACIは、動きを封じるにあたりかなり精密な認識をする必要があったはずです)

 

一度発動すれば、相手は動けなくなるがそれは自分側も同じ

 

装備で攻撃するには問題ないが、発動中はその場で足を止める必要があり

 

自分が移動する場合は、一度解除する必要がある。

 

なら、威力の高い攻撃を受ければその反動で、動きを封じられた自分は後方へと飛ばされる。その時は、ACIは強制的に解除されてしまうのだ

 

 

(機体のダメージは、恐らく酷いものでしょう。万全に動くことはできず下手をするとスラスターが使えなくなる場合もあります)

 

 

そうすると空に逃げる事ができず、嫌が負うにも地上戦になる。飛ぶ相手に対し圧倒的に不利であり、下手をするとまた捕まる可能性が高い

 

そうすれば今度こそ本当に終わりだろう

 

 

(それでも・・・一機だけでもブルーティアーズを飛ばせればどうとでもなります!)

 

 

攻撃されると発動できないACIに対し、ブルーティアーズのような複数の場所から変則攻撃ができる武装は有効であり

 

不利な地上戦でも、自身の戦闘スタイルは元々遠、中距離からの射撃

 

一夏のように接近戦しかできないというならいざ知らず、例え飛べなくてもやりようは幾らでもある

 

故にセシリア・オルコットはあきらめない

 

自分にはまだ、抗うだけの力が残されている

 

どんな逆境でも座して敗北を待つなどありえはしない

 

今必要なのは、覚悟を決めこれから来るであろう攻撃に耐え、いち早く行動をすること

 

全意識集中させ、ブルーティアーズの脱出、自身の離脱を最優先にする

 

大ダメージを受けるこちらに対し、相手は万全の状態

 

これから逆転などくら代表候補生と言えど、無茶であり無謀と言えるだろう

 

だが―――――――――

 

 

「来るなら来なさいまし」

 

 

彼女は決して諦めない

 

 

「このイギリスが誇る代表候補生セシリア・オルコットこれしきの事で敗北するなどありえませんわッ!」

 

 

その瞳は透き通る雫のよう、だがその内側に燃え盛る炎が今なお気高く輝いている

 

 

だが――――――

 

 

対する男の瞳は、もはや雫程度ではどうすることもできないほどに濁っているのであった。

 

 

 



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IS インフィニット・ストラトス 17

次回でセシリア編終わりです~




「あ、そう」

 

 

キリットした顔でいいのけるセシリアに対し八幡の返しは、何とも気が抜けるようなものだった。

 

 

「かっこつけてるとこ恐縮だが、一応聞くが降参する気はあるか?」

 

 

「あら、意外ですわね・・・そんな事を聞いてくるなんて思ってもみませんでしたわ」

 

 

皮肉めいた笑みを見せるセシリアだが、内心では本当に驚いている

 

普通こういう場合の降伏勧告にはいくつかの意味がある

 

力の差、自身の優位性の差を誇示するため

 

それ以上の戦闘行為は、意味がないという宣言

 

後は、単に相手の身の上を心配するなどといった物とかだ

 

 

一夏に対しセシリアが試合前に言った泣いて頼めば何とかという問答もこれにあたる

代表候補生である自分の力の誇示、どうせ負けるのだからやるだけ無駄と言う傲慢にも思える宣言

 

これによりセシリアは、相手である一夏と試合を見ているクラスの面々に自信がいかに優れているのかを見せつける腹積もりがあった

 

 

しかし、この八幡はそういった自分を誇示するという事をするように見えない

 

彼は始めクラス代表をめんどくさがっていたし、授業態度から見ても真面目な生徒とは思えない。だから単純にこの試合もめんどくさくなったから言っている可能性もあるが・・・可能性は低いだろう

 

あとわたくしの身を案じているというのもないだろう。

卑怯を卑怯とも思わない人間がそんな事を考えているとは思えない

 

以上の事から八幡がこんなことを言ってくるのは意外といって正しいだろう。

 

なんなら、先ほど啖呵を切っている間にでも攻撃されるとか思っていたくらいですし

 

 

「でもお生憎様、先も言った通りこのセシリア・オルコットがこれしきの事で負けると思わないでください!」

 

 

「OK、了解だ。それじゃあこっちも遠慮なくいかしてもらうぜ」

 

 

そういうと、八幡のレールカノンはセシリアの正面にその80口径もある砲身を掲げる

 

顔の目の前にあるあまりにも大きい砲身に、ごくりと唾を飲み込む

 

 

(いくら覚悟を決めたとはいえ、流石に怖いですわね・・・)

 

 

絶対防御がある以上、肉体に対しダメージは極力抑えられるだろうが怖い物は怖いのである

 

だが、その恐怖の中でもセシリアは、片時も目を離さずに目前の敵を見据え続ける

 

チャンスは一瞬、放たれたと同時にブルーティアーズを散開させ自身も離脱する

その一瞬の勝機を逃さないように恐怖に震えながらも目の前を向く

 

 

だが、現実は・・・というよりこの男は何処までも残酷なのである

 

 

「そういえばちょっと聞きたいんだが、お前って―――」

 

八幡が話すと同時に顔の前に向けられたレールカノンの銃口は、下に移動する。

その場所は腰の少し下、ブルーティアーズ唯一実弾装備がされているミサイルポット

 

 

「誘爆って知ってる?」

 

 

「貴方まさか――――ッ!」

 

 

次の瞬間、レールカノンからはけたたましい轟音が鳴り響き、光の弾丸がブルーティアーズを刺し貫く

 

さらにその後、撃たれたポットより2度3度と続けざまに爆発が起こる

 

 

「キャアアアアアアァ―――――――ッ!!!」

 

 

セシリアは悲鳴を上げ爆発による反動でのけ反るように大きく飛ばされる。

 

さらに、その数秒後には爆破されたポットの方に装着されていた2期のブルーティアーズからも煙が上がりまたも爆発した

 

先ほどよりは小規模だが、なにぶん機体自体に装着されていたため0距離での爆発だ。

 

その反動も当然、彼女に降りかかり初めの爆発で右方向に飛ばされ、続けざまに後方からの爆発

 

空に浮いていたのが災いし、セシリアは回転するように飛ばされ機体制御ができずにいた

 

このままではアリーナの壁に衝突し、あわや大惨事となってしまうだろう

 

しかし、数十メートルほど吹き飛ばされたところで突如としてセシリアは停止した

 

 

 

そう・・・機体を制御したのでもなく、何かしらに掴まり自力で止めたのでもなく、あまりに不自然すぎる恰好で空中に停止したのだ

 

一見すると幸いのようだが

 

むしろ、このまま壁にでもぶつかり意識を飛ばしていたほうが幸せだったと言えるかもしれない

 

なんせ、動きの止まったセシリアの後ろには、右腕を付き出した八幡がひっそりと立っているのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を開けて、まず見えるのは地面

 

どうやら自分は地面に向かって逆さの状態になっている様ですわね・・・

 

そして、先ほどと同じで手足は一向に動かない。もちろんそれは爆発のショックで機体トラブルがあったとかいう訳ではない

 

いや・・・正確には機体の方も相当なダメージは受けているが

 

まず、被弾した右側のブルーティアーズ(ミサイル装備)は完全に破壊され、右足の装甲も所々えぐれている

 

それに加え4機ある自立型ブルーティアーズの内2機が破壊、残り2機の内1機は、破壊されずに済んだが余波によりダメージを受けている。これでは飛ぶことはできてもまともな戦闘はできないでしょう

 

爆発から一番遠い1機は何とか無事ですが、シールドエネルギーが大分削られました

 

 

動けずに見る事はできませんが太陽の陽射で地面にできた影に映るのは自分の物ともう一つ

 

ブルーティアーズや白式と比べ重装甲である、あのISの姿が映し出されている

 

予想外の爆発により当初の作戦は、完全に狂い

 

自身の離脱どころか6機中4機のブルーティアーズが破壊、もしくは中破され、残る2機は今だ機体についたままであり、極めつけにまたもや自分は拘束されてしまったようだ

 

セシリアの顔は、先ほどの毅然とした物から一切の余裕がなくなった

 

 

「くっ‥‥初めからこれがね―――――」

 

 

「次は左な」

 

 

「―――――らい、ってキャアアアアアアアア!?!?」

 

 

セシリアが何かを言い終える前に、再度レールカノンは唸りを上げる

 

狙われたのはもう一つのミサイルポッド

 

先ほどと同様に光りの弾丸が被弾すると、2度3度と爆発をおこしセシリアの体を乱暴に弾き飛ばす

 

これによりブルーティアーズは6機すべてを破壊され、しかも爆発の衝撃により手に握っていたライフルもどこかに吹っ飛んでしまった

 

これにより、セシリアに残された装備は、普段あまり使わない近接ショートブレード一本だけとなってしまった

 

幸にも、いや不幸にも攻撃はすべて装備品であるビットとミサイルポットに命中したので本体に対するダメージは派手な爆発の割には低い

 

低いと言っても両足の装甲は壊れ、ところどころから本人の生足が見えていまっている

 

ドレス状の装甲もなくなり見るに痛々しい

 

だが、絶対防御のおかげか本人の体には目立った外傷はないようだ

 

 

今のセシリアにできる事は、非常に少ない。

 

武装のほとんどを消失してしまったので戦闘は勿論、爆風に飛ばされまともな機体制御ができず重力と慣性に従いなすがままに落下する事しかできない

 

このままではいずれ地面に衝突してしまうだろう

 

幾度とない爆発により脳は揺さぶられ意識も薄れかけている

 

それでも残りのシールドエネルギーすべてが消費されることはないので敗北にはならないが

 

この壊れかけの機体では訓練機の機動力にすら負けてしまうのは明白なので、ほとんど無傷の第3世代型と戦えばその結果は目に見えていることだろう

 

これは、流石の代表候補生と言えど覆すことはできない。むしろ代表候補生どころか国家代表ですらこの状況での逆転など無理な話だ

 

もしもこの状況を覆すことができる者がいるとしたらそれは、文字道理生身でISと対峙できるような人外のほかいない事だろう

 

 

 

 

 

だが、そんな明らかに勝負の見えている勝負でも八幡は最後の最後まで手は抜かない

一切の油断なく、安全に確実に相手の息の根を止める

 

その様は、

 

非情であり

 

無慈悲であり

 

残酷であり

 

外道であれど

 

彼の蛮行は誰にもとめる事はできない

 

 

 

 

 

セシリアの体は、本日3度目となる動きを止められた

 

 

朦朧とする意識の中で彼女が最後に見たものは、全身黒一色の中に鈍く光る2つの瞳

 

しかし、その瞳は光りながらもどこまでもどこまでも黒く淀み濁っている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

轟音が鳴り響いた後、セシリア・オルコットの意識はなくなり

 

そのすぐ後には、勝敗を決する放送がアリーナに響く

 

 

 

 

『勝者、織斑 八幡』

 

 

 

勝負が終わったにも関わらず、アリーナはひどく静かであり

 

歓声どころか話し声一つ上がらない

 

 

試合を終えた八幡は、静かに戻っていき

 

セシリアは、担架で運ばれて行った

 

こうして、1年1組のクラス代表を決める模擬戦は静かに、静かに終わりを迎えたのだった



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IS インフィニット・ストラトス 18

セシリア編終了です

次回はリンリン編ですが、その前に番外編をやります

見なくても本編には関わらない話なので気が向いたら見ていただけると嬉しいです




俺は試合を終わらせた後、早々に自分が出てきたピットへそそくさと戻っていった

 

その理由は、今なお続くアリーナの静寂だ

 

拍手喝采が巻き起こった一夏の試合とは大きく違い、葬式にでも出てるかのように皆静まりかえっている

 

うん、なんだか懐かしい感じがする

 

中学時代とか、俺が何かを話す度こんな風に皆静まりかえってたっけか

 

 

この試合は公式的に見てもルール違反を犯したわけでもなく、むしろ代表候補生相手に碌にISを動かした事のない人間がノーダメージ、ノー被弾での完全勝利を収めたのだ

 

普通に考えれば大いに褒められる場面だろうが、そうはならない

 

まあ、当たり前と言えば当たり前だけどな。

残念かどうかと聞かれると、たいして残念とも思えないのでどうでもいいけどな

 

 

別に奇襲とか不意打ちも作戦の内でありそれに引っかかったオルコットが悪いのだが、思春期の女子集団ともなればはいそうですかとこの試合結果を受け入れる事ができないのだ

 

女は男よりも強い、自分たちは狭き門であるIS学園に入学したエリートである。

 

そんな自尊心を多大に持つ彼女たちにしてみれば、この試合結果は不愉快の一言に尽きる

 

男である俺がオルコットに勝ったことで、彼女たちの持つ自尊心は穢された

 

しかも、お世辞にも正々堂々とは言えない卑怯な手を使っての勝利だ。

本当なら罵詈雑言のブーイングの嵐が巻き起こっても不思議ではない。ただ、先ほども言った通りこの試合において不正は、一切行っておらず責めようがない

 

女子高生とかだと、少しくらい理不尽でも自分達が良いように解釈した事実を盾に一方的な、マジウザい、キモイ、ありえないなどの事を言ってきてもおかしくはないが

 

生憎なことに、この学園に通う生徒は2人の例外を除いてみんな優秀なのである。

(例外:男でISを動かしてしまい、裏口入学でやってきた俺と一夏)

 

心が受け入れなくとも頭の中では、この結果を理解しているのだ

 

 

それでも、納得しきれないのならオルコットが勝手にやって勝手に負けた事だと割り切るなんて考えもあるかも知れないが、やはりそれも駄目だろう

 

 

 

女という生物は、男には理解できないいくつかの生態を持つ

 

そのうちの一つがカースト制度である

 

一人の女王を筆頭にピラミッド型の巣を作る。その巣の名前を仮にグループとしよう

 

グループは一番上の女王が選んだ数人が加入でき、それから弾き飛ばされた者はまた違う女王を筆頭に新しいグループを作る

 

そうしてできたグループは他のグループと基本的には別物だが、クラスカースト上位者がいるグループは必然的に他のとこより上と認識されるの

 

つまり、同じグループでも違うグループでも関係なくカーストが上の者は他より優位な立場にあり、カーストが下の者達は基本的に上の人間に逆らわない

 

 

ただ、カースト上位者になるには色々と条件があり、誰でもなれるという訳ではない

 

例えば、容姿が優れているだとか、イケメンの知り合いがいたりとか周りからの信頼があるとかだ

 

では、このIS学園のカースト上位者とはなにか?

 

答えはISだ

 

 

人間関係、学校の一般成績、運動クラブ活動の有無、それら全てを置いてもISの操縦技術は何より優先させられる

 

 

国の代表候補生だとか専用機持ちだとかはそれだけで、この学園のカースト上位者となれるのだ

 

その証拠にあんな失言のオンパレードだったオルコットは今まで虐めや無視の対象になっていない。

 

気に入らない相手でも自分よりカーストが上のもには逆らえないのである

 

 

そんな自分達より優れているオルコットをいくら斬り捨てたとしても、それで現状が変わるわけではない

 

自分より上の者が今まで下に見ていた男に敗北した。

 

そこでいくら騒ごうが、結果は変えられない。自尊心が保たれるわけではない。プライドは傷ついたままだ

 

 

故に沈黙、分かっているけど認められない。

 

俺は何も悪くはなく、オルコットを責める事も出来ない。

 

やり場のない感情が彼女たちの動きを止める、口を閉ざさせる

 

これがもし賞賛に与えられる試合なら彼女たちも何らかのアクションができたのかもしれないがそれもできない

 

 

まあ、これが数日もたてば陰で陰口を叩かれたりするのだろうけどな

 

そんなの別に気にしないからどうってことはない

 

 

 

 

 

ピットに戻ってきた俺を出迎えたのは、4人の男女

 

なにやら呆れた顔と悲しい物をみるような顔の中間ぐらいの顔をしている千冬

 

引き攣った笑顔・・・というより完全に苦笑いの山田先生

 

特にこれと言った顔ではないが、とりあえずイケメンフェイスの一夏

 

んで、最後にポニーテールで明らか様に軽蔑の眼差しを向ける少女

 

確か名前は、ほ・・・ほ・・・・・・・・・モップだったか?

 

なんか掃除用具系の名前だった気がするがよく覚えていない。多分モップかなんかだろ、うん

 

 

4人の内で一番初めに話しかけてきたのは一夏だった

 

 

「お疲れ、八兄・・・って言っても対して疲れてる訳でもないか」

 

 

と、微笑んでくるイケメン・・・なにその顔、殴りたい

 

 

「何言ってんだ疲れてるし。一仕事終えた兄をいたわりやがれ」

 

 

「ほとんど動いてなかったじゃん。それに、攻撃も受けてないしシールドエネルギーだって減ってないだろ」

 

 

停止結界のせいで多少は減っている。まあ、微々たるものであることは確かだが

 

 

 

そんな風に一夏(イケメン)と俺(イケメン(笑))が話ていると、次に千冬が声をかける

 

・・・おい、(笑)てなんだよ。別に笑われるようなツラしてねーだろ、してないよね?

 

 

「よくやった‥‥‥…なんていうと思うか?」

 

 

腕を組みながら仁王立ちしている千冬の後ろに何やら鬼が見える気がする。

 

‥‥幻覚かな?

 

 

「お前のしたことはルール上問題はない。が、人としての行いとしては大いに問題がある。今回は致し方ないとして認めるが、今後このような真似をしたらそれ相応の罰があると思え」

 

 

「えー」

 

 

「あ゛?」

 

 

「何でもないです」

 

 

一瞬抗議しようと思ったがやめた

これ以上なんか言うと本気で怒りそうだ

 

千冬がいくら怒ったところで逃げ切れる自信はあるが、面倒だしな

触らぬ神にたたりなしという事で、ここは素直に従っておこう

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

試合後次の日の夜

 

学生寮の一室では1年1組の面々がお菓子やジュースを持ち寄ってパーティーを開いている。

 

パーティー内容は、クラス代表決定祝いとのことだ。そんな事で一々パーティーなど馬鹿らしいと思うが、このクラスの事だし本音はただ騒ぎたいだけなのだろう

 

現にこのパーティーの主役である一夏の周りを囲んで騒ぎまくってるし

 

この分だともうしばらくはこのどんちゃん騒ぎが続きそうなので、時間潰しにあれからどうなって一夏がクラス代表になったかを説明しよう

 

 

 

 

 

俺とオルコットが戦い終わり、これで3人全員が一度は戦ったことになる。これまでの戦績はこうだ

 

 

まずオルコット

 

・一夏 勝  八幡 負  一勝一敗

 

 

 

次に一夏

 

・オルコット 負    一敗

 

 

最後に俺が

 

・オルコット 勝    一勝

 

 

となる。これで俺と一夏が戦い俺が負ければ引き分けサドンデスにでもなるのだが、俺の機転によりそんなめんどくさい事にはならずに済んだ

 

俺が何をしたかと言うと、至って簡単

 

一夏との試合をバックれたのである

 

 

全員が一勝一敗状況になったが、ここでクラスの中から疑問が出始めた

オルコットとの試合もそれなりに問題だが、試合をバックれるなど素行に問題がありすぎる俺がクラス代表になって大丈夫か、という物だ

 

この疑問は実際正しく、端からクラス代表なんていうめんどくさい事を引き受けるつもりはない

 

そもそも、推薦されたのは一夏だけであり俺にクラス代表になってほしいと思っている人間なんて誰もいないのだ

 

それから、時間がないという事もあり千冬も渋々ながら俺の推薦を取り消した。そもそも俺推薦なんて入っていないんだけどな

 

 

 

 

残る2人一夏とオルコットから選ぶことになるの

 

普通で考えれば一夏に勝利したオルコットがクラス代表となる。何よりオルコットは俺ら2人と違いやる気があるわけだし、端からお前がやれよと言いたいが

 

 

そのオルコットだが、クラス代表を辞退した

 

なんでも

 

 

「…わたくしは、技術はもちろん精神的にもまだまだ未熟という事を思い知らされました・・・少しの間、自分を見つめなおそうと思います‥‥」

 

 

とのことだ

 

 

人生には一度や二度、自分と向きあうべきときがある。いや、なければいけない。

人は成功と勝利だけでは前に進めない。本当の意味で前に進むには失敗と挫折を味わい今までの自分を見直さなければいけない。

 

そうして立ち止まり後ろを振り向くことで学べることもある。例えそれが無駄に終わろうとも、自分で考えたその時間は決して無駄にはならないはずだ

 

 

これを期に、高慢な態度を改めて物静かなお嬢様にジョブチェンジしてもらいたい

 

 

 

 

 

その結果、参加者2人が失格と辞退となり必然的に残った一夏がクラス代表となった。

 

これには、クラス中が歓喜しそのままパーティー開こうぜ!みたいなノリになって現在に至る

 

 

 

今、一夏は新聞部の腕章をつけた恐らく先輩にインタビューを受けている最中だ

 

そんな、我が弟を見ながら俺は買っておいたMAXコーヒーを口に運び、屋上の手すりにもたれかかる

 

すると、いつの間にか背後に現れた影から声がかけられる

 

 

「こんなところにいたのか」

 

 

「…織斑先生こそ、こんなところに何の用ですか」

 

 

「なに、生徒に見つからんようにこれを飲もうと思ってな。場所を探してた」

 

 

隣りに移動した千冬の手にはビニール袋に入ったビールが二,三本入っていた

 

すると、そこから一本取り出し封を開ける

 

 

「教師が学校でんなもん飲んでいいのかよ・・・」

 

 

「今は、もう仕事は終わってる。プライベートにまで口出しされるいわれはないだろう」

 

 

最もらしいが、恐らく間違っていると思う

別に指摘はしないが多分間違っているだろそれ

 

 

「お前こそ、こんなところで何をしている。あっちに行って騒いで来ればいいだろう」

 

 

千冬は、飲み終わった缶を片手で潰しながらクラスがパーティーをしている部屋を指さす

 

飲み終わるのはっやッ、それとつぶすな色々と怖いから!?

 

 

「生憎と騒がしいのは苦手なんで、それに俺が行っても微妙な空気になるだけでしょ」

 

 

「それが分かってるなら、あんなことしなきゃいいだろ‥‥‥お前は相変わらずだな」

 

 

ふと隣に目を向ければ、千冬は何処か悲しげな瞳で夜空を眺めている

 

こういう瞳を俺は何度も見てきた。千冬が考えてることは分からないが、思っている事はなんとなく分かってしまう

 

彼女も、違う世界の彼女たち同様にこんな俺の事を少しは思っていてくれてるらしい

 

ただ、彼女の言う相変わらずとは、何を指すのか・・・入れ替わる前のこの世界の俺の事か

 

それともここ数年一緒に暮らしてきた今の俺の事か・・・その答えはおそらく一生分からないのだろう

 

でも、別にそれでいい

 

 

誰がどう思おうとも今ここにいるのは俺なのだから

 

 

こうして、俺の日々は過ぎていく

例え世界が変わろうとも、俺が俺である事には変わりはない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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番外編1 やはり私の軍人ラブコメはまちがっている。

そういうわけで番外編です。

これでは、八幡にフラグを折られ本編に登場しないラウラさんの事を描いています。

見なくても本編には関わりなく

この1話だけなので次回からは本編に戻りますよ~

それと、稚拙ですがガールズラブの要因が少しはいっていますので苦手な方は見ないでください


それでは始まり始まり~





軍隊とは虚栄であり、悪である。

 

軍人とは、自己の犠牲をいとわず国家繁栄及び国家安泰の為に日々過酷な訓練を遂行する兵士である。

 

彼らは国家の2文字の前ならどんな一般的な倫理観も社会概念も捻じ曲げて見せる

 

彼らにかかれば、人道も道徳も人権も失敗さえも国家のための小さな犠牲でしかないのだ。

 

仮に失敗することで、国家の為になるのなら人体実験に失敗した人間も立派な軍人でなければおかしいではないか

 

しかし、彼らは私を認めはしないだろう

 

全ては彼ら、上層部の都合でしかない

 

結論を言おう

 

軍人であることを誇る愚か者共

 

戦死しろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オープニングテーマ『Chang○ my mind』

 

歌:ラウラ・ボーデヴィッヒ

 

 

 

 

 

制作:やはりこのLチキは間違ってる委員会

     

   提供:ハーメルン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦死するのは、君の方だよボーデヴィッヒ軍曹・・・」

 

 

季節が移り変わり、日本という国では桜が舞い散る今日この頃

私、ラウラ・ボーデヴィッヒは外の風景など見えない薄暗い取調室にて上官である彼と話をしている。

 

彼は私の上官であり、親がいない私の身の回りの世話を時折してくれる優しき男性だ。

年はまだ40代手前だというのに、頭のてっぺんはとても寂しそうで身長はそこそこでがたいもそれなりだが別段筋肉がついているわけではない

 

どちらかと言うと、やや脂肪が付きすぎている節がある

 

その見た目と温厚な性格からドイツ軍の森のくまさんと、言う異名で呼ばれている。

ただし本人的にはその異名は、不服らしいので直接言いはしない

 

服装は、ドイツ軍正式の軍服でありやはりウエスト周りがでっぱている

 

そんな彼と私がなぜ取調室と言う場所で向い合っているのかと言うと、その原因は彼の手元にある報告書にある

 

 

「ボーデヴィッヒ軍曹、私が君にかした課題はなんだったかな?」

 

 

「はっ、我々若い世代の軍人が軍のあり方とは何かを問われる意識調査です」

 

 

ため息が出そうな表情の彼の問いに対し、私は敬礼しながら答えるがなぜか答えを聞くや否や彼は本当のため息を吐いた。それも割と深いため息だ

 

 

「それが分かっていてなぜ君は、こんな報告書を出したのかね。なぜこうなったのだ?」

 

 

彼は、自身の寂しい頭を2撫でほどした後に、私に向かい真っ直ぐに目線を向ける

その瞳はとても真剣な物で、見つめられる私は若干の居心地の悪さを感じながらも口を開ける

 

 

「それは、私の率直な意見であり嘘偽りのない答えだからです」

 

 

「‥‥‥」

 

 

今度は、額に手を当て項垂れるように眉間に皺を寄せる

少しの間、唸るように聞き取れないほど小さな言葉を発しまたも私の目を見つめながら彼の話は続く

 

 

「君ね・・・分かっているのかね?こんなもの上層部に出したら下手をすると反逆の意志ありと疑われるのだよ」

 

 

「そういわれましても報告書に嘘をつくわけにはいけませんし、何より‥‥‥例えそうなったとしても私には迷惑をかける親もいなければ、心配をする友もいないので割と大丈夫です」

 

 

 

 

 

そう、私ことラウラ・ボーデヴィッヒには親がいない。

死別したとか捨てられたとかいう理由ではない。初めからいないのだ

 

私は、ドイツ軍の遺伝子強化試験体(アドヴァンスド)として生み出された試験管ベイビーなので遺伝子提供者と、機械をいじり私を作った研究員はいれど親はいないのだ

 

鉄の子宮で生まれ、家族を持たない人造人間、軍のための戦う兵器それが私だ

 

 

生まれた私は、もの心つく前から軍人としての英才教育を受け育った。

おおよそ一般的な子供とは、文字道理育った環境が異なり幼いながらも大の大人を相手にしても勝ち越せるほど強くなった。

 

さらに、生まれてから数年したころISと言う女性にしか動かせないパワードスーツが、世の中に出回り

 

それに伴い私の地位もみるみる内に上がっていき、気づいたときには自分より2回りも年が離れてる男の大人よりも階級が上がっていた。

 

勿論初めは、それをこころ良く思わない人間は数多くいたが年が起つにつれ女性の軍人の地位が急上昇していき、今では女性のみのIS部隊なども出来上がりそのころには、中傷の声もただのあさましい嫉妬やただのやっかみになっていた。

 

当時の私はそんな声など聴く耳を持っておらず、そんなやからには高圧的な態度で接していたのだと思う。すると次第に部隊内でも部隊外でも次第に孤立していった。

 

ただ、実力のみは軍内部でも指折りのため表立った言葉や行為をされたことはない

 

いわゆる、仕事のできるコミュ障と言うやつで

当時は、強い力さえあれば何でもできると調子に乗っていたのだ。今となってはただの黒歴史である

 

ISが世に出て少ししたころ、設立されたばかりのIS配備特殊部隊はある実験に参加させられた。

 

当時の私は絵にかいたような軍属であり上の命令は絶対と言う信念を持っていたので、もちろん2つ返事でその実験を受け入れた

 

今になって思うが、アレは自薦した者のみに行われるとか言っていたがほとんど強制だったと思う。どっちにしても私にはそれを受けるしか選択肢がなかったのでどうでもいいけどな

 

 

ただ、その実験が全ての始まりで終わりだった

 

 

肉眼へのIS補佐ナノマシン移植手術実験、通称『ヴォーダン・オージェ』

 

 

事前の説明では、副作用もほとんどなく失敗する確率も極めて低い安全な実験とのことだったが結果を言うと私はその実験に失敗し、全てを失うことになる

 

ISとの適合性向上のために行われたヴォーダン・オージェの不適合により左目が金色に変色し、能力を制御しきれず以降の訓練では全て基準以下の成績となってしまう。

 

今まで実力だけで周りを見下してきた人間がある日それを失った。

 

その結果は火を見るより明らかだろう。

 

周りからは出来損ない扱いされ、以前は嫉妬と羨望を向けられた眼差しは今は侮辱と嘲笑の笑みへと変わりはてた

 

今まで人間関係の構築を怠ってきたつけなのだろう。

私には友と呼べる者は一人もおらず、結果として部隊の中で一人ボッチになった

 

せめてもの救いは、実験の前まであった中佐まであった階級だけだった

 

軍とは階級社会で、年齢も実力も関係なく階級さえあればそれ相応の地位が確立される

そのおかげで私も直接的な、悪意をぶつけられた事はない

 

以前、名も知らぬ男の軍人たちが話していたが

 

高圧的で地位のある女がいきなり地位をけり落とされ、今まで馬鹿にしてきたやつらに凌辱の限りを尽くされるという内容の話を男と言うのは好むらしい

 

その時は、何を下世話な話をしているのだと無視をしていたが今となっては背筋が凍りそうになる

 

ただ、中佐である私にそんな行為を働けば即時に軍法会議にかけられるだろう。そのことから未だに私の純潔は守られている

 

 

しかし、今まで築き上げてきた階級も徐々に降格され今では軍曹にまで下がってしまっている。

 

そうなってくるとあの会話の中にあった女性の姿が自分になるのではと言う思いがふつふつとわいてくる

 

 

 

・・・・・・なんかもう、世界とか滅べばいいと思う

 

 

 

「…君の事だから真面目に答えているのだろうね。たちの悪い事に‥‥‥小娘があまりなまをいう物ではないぞ」

 

 

と、目の前の彼はの顔は言葉とは裏腹に酷く寂しそうな悲しそうな顔をしている。

 

どこぞの神話に出てくる何とかの箱と言う話にも出てくるようでこの世界はどうにも少しばかりの希望という物がある様子だ

 

目の前にいる彼なんかが良い証拠だ

 

 

力を失った私にとり世界とは軍隊とは軍人とは恐怖の対象でしかない。

この小柄な体では同い年の男を相手にしても容易にねじ伏せられるだろう

 

片方の視界を失い、万全を出せない今では部隊に所属している誰にだって負けてしまうだろう

 

それでも、私にはここ(軍)にしか居場所がないので逃げる事すらできないのだ

 

そんな絶望の中にあっても唯一救いがあるのなら、それは彼のような存在を言うのだろう

 

私は彼に恩を感じている。自暴自棄と言えるあの状態からここまで回復できたのも彼のおかげなのだ

 

なら私が彼にできる恩返しとは何か

 

 

‥‥‥思考した結果、もっともよい案は、彼の頭の最前線がこれ以上後退しないように心労を減らす事がベストだ

 

 

「…申し訳ありません、なら書き直します」

 

 

「いいや、書き直しは結構だ。その代り少しついて来たまえ」

 

 

「?」

 

 

 

 

何処に行くのかも教えられず、とりあえず彼の後に従いついていくとしばらくしてその歩みは止まった

 

目の前には黒く重々しい扉があり、そのネームプレートには執務室と書かれている

 

なぜこんなところにと疑問に思う私にかまわず、彼は2度3度と扉を優しくたたく。

すると中から、どこか優しげであり威厳のある女性の声が聞こえた

 

 

「失礼するよ。少佐」

 

 

「このような場所までご足労していただき恐縮です」

 

 

「なーに、そんな固くならずに楽にしてくれたまえ」

 

 

「ッハ」

 

 

中に入るとそこには、髪を肩口までに切り添えられ帽子を斜めにかぶる妙齢の女性が見事な敬礼をしていた。

 

彼女と彼は2,3会話をしたのちに私に視線を向ける

 

 

「彼女が?」

 

 

「ああ。ボーデヴィッヒ軍曹あいさつを」

 

 

と、彼に言われ、片手を額にもう一方を後ろに組み敬礼をする。

 

その後、階級、名前、所属と言った定例文を述べ相手に目を向ける

これが軍人でいうところの代表的な挨拶だろう

 

と言っても、彼女たちの様子を見る限り私の事は知っている様子だ。

 

 

 

そして私もこの女の事は知っている。

 

女性のみで構成されたドイツ軍IS配備特殊部隊「シュヴァルツェ・ハーゼ」通称「黒ウサギ隊」

ドイツ国内の総IS数10機の内3機を保持しているドイツ軍最強部隊である

 

その中でも抜きんでた実力で専用機を国から与えられた部隊長クラリッサ・ハルフォーフ

 

名実ともにドイツ軍最強を誇り、軍人なら誰でも知っている有名人だ

 

話によれば部隊のメンバーからはお姉様と呼ばれるほど人気があるらしい

 

ちなみにだが、手術前私もこの黒ウサギ部隊に所属していた。

当時は、設立されたばかりでそのような名で呼ばれていなかったがな

 

今となっては全く接点のない部隊であるが、もしもあの手術がなければ私もこの部隊にいたことは間違いないだろう

 

 

 

 

「それじゃあ、クラリッサ少佐ボーデヴィッヒを頼んだよ」

 

 

「了解しました」

 

 

・・・‥‥‥ん?

 

頼んだ・・・とはどういう事だ?

 

生憎私には、特に任務が回ってくる訳ではないし彼女(隊長)のような多忙な部隊とは無縁の日陰者だぞ

 

 

「頼んだ・・・どういう事ですか?」

 

 

考えても分からんし彼に聞いてみる。

 

自慢じゃないが、私には人との繋がりを形成する力はない。なので、基本的に見知った相手としか会話が成立しないのである

 

 

「君には今からシュヴァルツェ・ハーゼに編隊してもらう」

 

 

「お断りします」

 

 

「却下する。これは上官命令だ」

 

 

いやいや、意味が分からない。

なぜ今更になって私が・・・?という疑問を持ち即行で断ったら、これまた即行で棄却された

 

しかも、上官命令というお墨付きで

 

 

「君にはあのふざけた報告書を書いた罰として拒否権はない。謹んで任に付きたまえ」

 

 

何と言う一方的な

 

なぜ、あんな紙切れ一枚でここまでの仕打ちを受けねばならんのか

 

そもそも、ここで私に何をしろと言うのだ?

 

 

戦闘訓練の成績は最下位、事務も得意でも苦手という訳ではない平凡そのもの

 

雑用要員というなら分からなくもないが掃除、洗濯、お茶くみすですらまともにできる自信がない

 

戦う事しかできない兵器である私には生活能力とかは皆無なのだ キリッ

 

逆に言えば戦う事を奪われた私には存在価値すらないという事だが・・・そこは、まあ、アレだな、うん‥‥

 

 

 

ゴホンッ

 

何はともあれ、そんな私にこの部隊で、できる事があるとは思えない

 

なので、もう一度断ろうとするが

 

 

「それじゃあ、後は当人同士でやってくれたまえ。私は執務があるので失礼する」

 

 

などと言いそそくさと出ていいってしまった。

 

あのハゲが・・・!

 

 

彼が部屋から出ていくと、否応なしに残るのは私と彼女だけとなる。

 

つまり、見ず知らずの人間と2人っきりだ

 

 

「‥‥‥」

 

 

うん、思っていた通り会話がなくなり、部屋には沈黙が広がる。

 

本来なら訳知り顔な彼女に、私から話を振らなければいけない所だろうけど

 

その選択肢はない。コミュ力0を舐めないでほしい

 

私レベルになると例え相手が上官でも、いつまでも無言を貫き通すことくらい平気で出来るのだ

 

なので私は、あいさつ代わりに少佐に向け威嚇をすることにした。

 

ギロリと相手の目を睨みつけ無言の威嚇をする

 

 

「ボーデヴィッヒ軍曹、まずは座りたまえ」

 

 

が、軽く流された。

 

そういえば昔、彼にも同じように威嚇をしたら

 

「眠たいのかね?」

 

などと言われたっけな‥‥‥私の威嚇はどうやら効果を持たないようだ

 

 

「…了解しました」

 

 

シュンとしながら指定された席に座る

 

ちょうど机を挟んで少佐と向かい合う位置だ

 

 

「さっきまでの様子だと軍曹がなぜ、この隊に来ることになったのかは理解していないのかな?」

 

 

「ええ・・・いきなり連れてこられましたので」

 

 

聞き終えると少佐は、拳を顎に当て考える仕草をする。

 

 

切れ長な瞳に私よりは明らかに女性らしい胸部、見た目も雰囲気も大人の女性と納得ができる物だ

 

私は、今まで大体同い年の者達としか訓練を共にしたことがない

 

正確に言えば、同い年の女子とだ

 

異性ならむしろ、年上の者としか接したことがないが、こうまじかで相手を観察すると大人の魅力と言う物が同性ながら感じられる

 

 

 

 

「ではまず、この部隊の事について話そうか」

 

 

「いえ・・・黒ウサギ隊の事は知っています」

 

 

むしろドイツ軍一有名な部隊を知らない者の方が少ない

 

女性のみで構成された特別IS部隊

 

 

女性のみと言う発言だと、少し前に読んだジャパニーズコミックの設定を思い出す

 

確か女子校という教育機関で、女性として心身ともに鍛える伝統的な学校

 

あの本では伝統を重んじながら淑女としての教育を受け、なぜか同性同士での色恋沙汰を描いていた

 

 

曰く、女の園には百合の花が咲くとのことだ

 

・・・意味が分からない

 

確か、慕っている者同士を血のつながりもないのに姉妹と呼び年下の者は上の者をお姉様と呼ぶんだったか?

 

恋愛の一つもしたことない私では、異性は勿論、同性同士での非生産的な恋愛など理解のできるものではない

 

 

そういえば少佐も部隊の者からお姉様などと呼ばれているんだったか‥‥‥

 

 

‥‥‥‥‥‥

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

・・・ん?

 

 

いや待て落ち着け私

 

あれは、あくまでフィクションのはずだ

 

現実に起きるわけがない

 

 

 

 

 

「そうか・・・と、その前にお互い堅苦しい話方をやめにしないか。これから同じ部隊としてやっていくんだから今からそんな調子では持たないだろう」

 

 

「はあ・・・少佐がそう言われるのなら」

 

 

「ああ、しかし話に聞いていたより素直そうで安心したよ」

 

 

少佐の言う話とは、まだ私が部隊最強であったころの話だろう。あの時の私は自分でいうのもなんだが周りに対し相当な態度をしていたし

 

悪い意味での噂話などいくらでもある

 

 

少佐は、まるで少女のようであり年相応でもある笑みを私に向けて話を続ける

 

 

「何より私が想像していたよりもかわいらしい」

 

 

ニコリと笑顔を向ける少佐の言葉に私は身の危険を感じた

 

 

私にはよくわからないが、周りからの話を聞くと私の容姿は一般より優れているらしい

 

戦うしか能がなく、戦う事も出来ない私の唯一の取り柄と言える

 

 

‥‥‥‥‥‥

 

 

あれ、これ本格的にやばくないか?

 

他にとりえのない者が唯一なにか取り柄があるのならそれに順ずるのは至極効率的な考えだ

 

 

同性同士による性的嗜虐とは本来の目的である繁殖行為ができないため生産性のない行為と言える

 

だが、逆に考えると繁殖することで不利益が発生するのなら話は別になる

 

 

子供ができると最低でも数年は、今まで通りの生活は送れない

妊娠に、育児と言った物にそれに伴う体力の低下などなどだ

 

例えば軍人なんかもそういった物を気にするだろう。体を動かし戦う我々にとり数年のブランクは致命的ともいえる

 

それが軍の最強部隊の隊長ともなれば尚更だ

 

 

しかし、性を発散させなければいけないというのも人の生理現象として問題である

 

異性同士でそういった行為を行い、間違いでもあれば事だ

 

なら、絶対に間違いなど起こらない同性同士ならば安全で確実だろう

 

 

 

ここで少し整理してみよう

 

片や最強部隊の隊長であり専用気持ち、軍としては失う訳にはいかない戦力

 

片や元部隊最強の現役立たずな私、軍としても失って問題はなく、むしろ私の犠牲で戦力維持ができるのなら喜んでするだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

‥‥‥詰んだ。うまく言葉にできないけど何か私の人生が詰んだ気がする

 

 

いや・・・この際考え方を変えてみよう

 

役立たずの烙印を押された私にまだやれることがあるんだ

 

それは喜ばしい事じゃないか・・・ッ例えそれがどんなことでも

 

 

あの不埒な会話をしていた連中よりも恐らく良識的な少佐が相手ならそれに越した事はないじゃないか‥‥あれ、おかしいな?目から汗が止まらない

 

致し方ない事だこれは・・・

 

 

これが私に残された唯一の道なのだ・・・受け入れるしか選択肢はないんだ・・・

 

 

 

 

「それじゃあ、さっそく軍曹の仕事について話そうか」

 

 

「…少佐ッ」

 

 

覚悟を決めよう

せめても、無様に足掻くのではなく潔く受け入れよう。それが私に残された最後のプライドだ

 

 

私は立ち上がり、深呼吸を1,2度したあと自らの軍服のボタンに手を伸ばす

 

ボタンを上から下に一つ一つ外していく。

 

手が震えてしまいうまく外せず時間が掛かってしまったが、一つまた一つと確実に

 

 

黒を基調とした軍服のボタンをはずし終えると前がはだけ白いYシャツが見えてくる

 

そのまま、上着を完全に脱ぎおえパサリと地面に転がった

 

ネクタイを外し、三つまでYシャツのボタンをはずし慎ましやかな胸元をはだけさせる

 

 

 

瞳からは雫がこぼれそうなのを必死に耐えるが、耐え切れず一粒の雫が落ちる

 

・・・ああ、なんと惨めな事か

 

覚悟を決めると思えばこの有様だ。これでは軍人でも兵器でもなくまるでただの女でないか

 

だが、決して泣き言は言うまい

 

 

いくら体は堕ちようとも心だけは軍人としていよう。

 

両腕で体を抱き締めるように抱え震えを抑える。意を決し少佐に目を向ける

 

少佐は、私よりも身長がありそのせいか目を見ようとすると見上げる形になってしまう

 

 

「少佐‥‥‥ッ不束者ですが・・・よろしくお願いしますッ」

 

 

残るYシャツのボタンに手をかけようとしたところで

 

 

「待った!!ボーデヴィッヒ軍曹!!君は何か誤解しているッ」

 

 

そう大声を上げ、私の両手を制止するため自身の手をかぶせる

 

 

「ッ離してください少佐!・・・これは私の覚悟の表れなんです!!」

 

 

「いやいや!だから君は何かを誤解している!?とにかく落ち着きたまえッッッ!!」

 

 

少佐の手を振りほどこうと力を入れるが体格的に上な少佐を振る払う事も出来ず、少佐も私の手を必死に制止しようと力を入れ

 

私達はもみあいとなった。すると、突然バランスを崩し床に横転してしまう

 

 

少佐は私に覆いかぶさるように倒れ反射的に地面に両手をつく

 

その時、執務室の扉があく

 

 

「そうだ、少佐一つ言い忘れてたこ‥‥とが‥‥」

 

 

「「‥‥‥」」

 

 

そこには私をここまで連れてきた彼が唖然とした顔で硬直していた

 

彼は倒れた私(服が乱れ半泣き状態)とそれに覆いかぶさる少佐(どう見ても押し倒してるようにしか見えない)を交互に見やり次第にわなわなと肩を揺らす

 

 

「少佐あああああああああああああああ!これはどういう事だ!!貴様一体何をしているかッ!」

 

 

「ご、誤解ですうううううううううう!?」

 

 

 

 

この日ドイツ軍の昼下がり2人の男女の絶叫が響き渡った

 

 

そしてこれが、私ラウラ・ボーデヴィッヒとクラリッサ・ハルフォーフとの出会いであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

①こうして私達は始まりから間違える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エンディングテーマ『An die ○reude』

 

歌:ラウラ・ボーデヴィッヒ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                  制作

           やはりこのLチキは間違ってる委員会

 

 

                ハーメルン

 

 

 

 

 

 

 



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IS 転校生は幼馴染 1

まずは当たり障りのない感じで始まり始まり

それでは皆さんまた次回お会いしましょう


クラス代表が決まった翌日、今日は朝からISの操縦授業なので1組の面々はグラウンドに集合している。

 

この広大な広場をグラウンドと呼ぶには少し抵抗があるが・・・

 

月並みで言うなら東京ドームと同じくらいの広さぐらいあるんじゃないだろうか

 

東京ドームなんて数えるほどしか行ったことがないから正確な広さは知らんけど

 

 

そのたっだぴろい所に一クラス30人ほどが整列している様は、なかなかにシュールだろう。

 

しかもそいつらの服装はスクール水着のような形状にふとももくらいまであるニーソ、のように見えるISスーツなのだからさらにアレだな、なんというか・・・相当マニアックな光景だと思う

 

 

「では、これよりISの基本的な飛行操縦を実戦してもらう」

 

 

先頭に立つ千冬は、真っ白いジャージを身にまとい30人全員に聞こえる声量で授業内容の説明をする。

 

ちなみに隣にいる山田先生は、青と緑の中間のような色のジャージを着ている。

 

 

山田先生はあれだな、着やせするタイプだな

 

本来であるなら1組・・・いや、この学園で最大の大きさを誇るはずの胸部がそのなりをひそめてやがる

 

別にそれがどうしたという話だが、なんとなく気になっただけで特に他意はない

 

 

正直あの胸は、思春期男子の前に晒す物としては不謹慎と言ってもいいだろう

 

もし、この学園に来たのが一夏(朴念仁)と俺(理性の怪物)でなくて普通の思春期男子なら色々と厄介な事になるんじゃないだろうか?

 

主に、男の大半が一度は通る若い激情のリビドー的な下半身事情により座ったままか中腰の状態のまま授業を受けなくてはいけない

 

ただでさえ男という注目を集める存在がそのような痴態を晒せば即刻学園中に話が広まり不登校コース待ったなし!

 

 

草食系だとか言われる昨今でも、男という性の探究者達の本質は変わっておらず、その中でも思春期というモビルスーツを身にまとう彼らの頭の中は基本的にエロがエキサイティングしている

 

だが、別にそれは悪い事ではない。なぜならそれは生理現象の一つであり、

 

女子と会話するだけで心臓はドキドキと高鳴り、ふとした拍子に重なる手の感覚に赤面する。そんな甘い青春の一コマと本質的には同じものだ

 

だから世の中の女子たちにお願いだ。もし、近くに前かがみ気味の男がいてもそっと目線をそらし何食わぬ顔で見なかった事にしてほしい

 

間違っても仲のいい女子とかで「うわぁ、マジキモイ」とか言わないでくれ

 

どMな奴を除くと本当に心がえぐられるから。男の子は皆ガラスハートなんだよ!

 

 

「織斑 八幡、聞いているのか!」

 

 

おっと、ついついボッチが誇るべき深き思考を繰り広げ現実の声をシャットアウトしてしまっていた。

 

見るとクラスの視線は俺に向けられ、先ほどまで先頭に立っていた千冬が俺の目の前にいた。

 

どうやら俺が聞いていない間に授業が進んでいたらしく、恐らく俺は質問でもされたのだろう。

 

なのにその答えが返ってこなかったから千冬は、「私の授業でうわの空とはいい度胸だな、あん?」とでも言いたそうな表情で俺を見ている

 

ここで、聞いていませんでしたと正直に言えばどこからともなく凶器(出席簿)が飛んでくることだろう

 

 

来たとしても避けられるので被害はないが、避ける際にめちゃくちゃ疲れるので進んでやりたいとは思わない

 

 

「聞いてますよ。あれでしょ、新ドラになってから旧ドラの設定を色々無視してるのはいただけませんよね。やっぱりあのだみ声が一番ですわ」

 

 

「誰が猫型ロボットの話をしている!」

 

 

ちなみに俺はドラ○モンズが一番好きだ。・・・もう彼らをスクリーンで見る事ができないと思うと切なくなるぜ

 

 

「ええい!今は授業中だ、ちゃんと話を聞け!!」

 

 

「すいません」

 

 

「まったく・・・専用機持ちは前で手本だ。早く行け」

 

 

眉間に皺を寄せながら、顎を突出す千冬につられその方向を見ると一夏とオルコットがすでに前に移動している

 

正直めんどくさいが、これ以上千冬を怒らせるのも忍びないので黙って従う事にした

 

 

「3人とも試に飛んでみろ」

 

 

「わかりましたわ・・・」

 

 

千冬の言葉に反応しオルコットは素早くISを展開させまばゆい光に包まれた。光がやむとブルーティアーズを身にまとう彼女がいた

 

専用機持ちは、普段からISを身に着け寝食を共にする。そうすることで同調率だがシンクロ率が高まるらしい

 

ただ、自身の肉体より重量のあるISを身に着ける事などできるはずもないしずっとISを装着したまま生活できるわけもない

 

なので、原理がよくわからない技術によりISをアクセサリーなどの待機状態に変えて身に着けている

 

 

オルコットはピアスの形状にしているようで、ISの展開速度も申し分ない

 

テンションが非常に低い事と、軽く目が虚ろな事を除けば模範的な展開を披露した

 

一方

 

 

「ええっと・・・あれ・・・?」

 

 

我が弟一夏はというと、待機状態の白式を見て右往左往していた

 

 

「早くしろ、熟練したIS操縦者は展開までに1秒もかからないぞ」

 

 

「…集中、集中‥‥こい、白式!」

 

 

右腕を掲げ、高らかに名を呼び、白い光に包まれ白式を展開する

 

 

「よし、できた!」

 

 

安心したように白式を身にまとう自身の姿を見つめる一夏

 

あれだな、初めて自転車を補助なしで乗れた時の反応に似ているな

不安ながらも、ペダルをこぐ足に力を入れ進んでいくと転ばずに走れた。小学生くらいのやつならこの興奮を分かってもらえるだろう

 

大人になるにつれそういう感激は薄れていくものなので大切にしなければいけない

 

自動車の免許をとっても喜びよりもこれで教習所に通わなくて済むという安堵が勝るソースは俺

 

 

そんな感じで、飛行に慣れてない一夏が地面にクレーターを作ったり、オルコットは終始消沈していたりしながら授業は過ぎっていった

 

俺は、当たり障りなく飛んで止まってその後もダラダラと授業を受けた。サボろうとしたら鬼の形相をした担任にキレられて結局、リアル鬼ごっこをするはめとなるが、いつもの事である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夕方

 

IS学園の門の前に一人の少女が立っていた

 

小柄な体格に特徴的なツインテールをした少女は夕日に照らされる学園のエンブレムを見ながら不敵にほくそ笑む

 

 

「ここがIS学園‥‥待ってなさいよ一夏、それに覚悟しなさい‥‥八幡!!」

 

 

新学期が始まり数日、IS学園に一人の転校生がやってきた。

 

 



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IS 転校生は幼馴染 2

やっほろー!

皆元気にしてるかな?

私は割と元気ではないですよー


それはさておき、鈴ちゃんがついに登場です。作者さんはISヒロインで鈴ちゃんの事をあまり好きじゃないですが、そんなこと関係なしに登場キャラにはみんな愛情を持って接していきます!

では、本編スタートです




今日もきょうとで平穏な一日を過ごすことを夢見る俺は、朝から酷く機嫌が悪い

その原因は、俺が来るなり静まりかえる教室でもイケメンフェイスを携え美少女をはべらかせている一夏でもない

 

‥‥‥いや、やっぱむかつくわあいつ

 

 

今日は朝から碌な事が起きない

 

目覚まし時計は電池が切れている、着替えようとしたらボタンが取れてる、朝食に食べたパンはカビており、自宅通学中自転車とぶつかり、自宅通学と遅刻の件で千冬には追いかけられた(逃げたが捕まり30分のお説教)

 

こういう時リア充は、ついてないとか運が悪いとか笑いながら話しているが、大体の場合は自業自得である場合が多い

 

自分の失敗談をさも運命のイタズラだとか風潮し周る連中は、一様に自分を振り返ることができないでいる

だからこそ同じ失敗を繰り返し「うっわー今日マジついてないわー」とか延々に繰りかすのである。

 

だが今回俺はあえて言っておこう

 

今日はついていない、こういう日には決まって碌な事が起きない

本当ならそういう日には、学校をさぼって家でゴロゴロしていたい

 

 

「はあ・・・」

 

 

「ため息なんかついてどうかしたのか八兄?」

 

 

「…なんでもねーよ、お前は黙って女子とイチャコラして背中でも刺されてろ」

 

 

「一段と口が悪い、ていうか酷い!?」

 

 

なぜリア充は朝からこんなにうるさいのか・・・そんなに学校が好きなわけ?寝不足とか低血圧とか無縁になるレベルで好きなのかよ。いっそ学校と結婚しちまえよ、ついでに1年くらいハネムーンとかで休校にしてくれよ。ご祝儀あげるから

 

 

「そういやもうすぐクラス対抗戦とか言うのが始まるらしいけど八兄知ってるか?」

 

 

そしてなぜリア充は非リアの話しかけるなオーラを無視して話しかけてくるのか、こいつら周りの空気とか読むことに長けてる生物だろ。なら、この話しかけるなオーラを察しろよ。凝くらいできるだろ?

 

 

「知らん。そもそも俺に関係ない事だろ。お前は黙って他のクラス代表にボコられて来いよ。死んでも骨ぐらいは、気が向いたら拾ってやるから」

 

 

「普通に知ってるじゃん!それにそこは普通に拾ってくれよ‥‥いや、死なないけどさ!ていうかやぱり酷くないか!?」

 

 

クラス対抗戦

 

それは、新1年生による初めての大会である。名前の通りクラス別にトーナメント方式で試合をしていき優勝を決める

 

学外からもIS関係の来賓を呼び寄せる割と大きな大会であり、ここで活躍すればスポンサーが付いたり将来的に国家代表候補として注目されたりする

 

つまりは今年の新一年生の披露を兼ねた新人戦だ

 

ただし参加メンバーは各クラスのクラス代表に限られている。クラス代表はいうなれば委員長のような物だし、これもそういう特典の一つといっていいだろう

 

1組のクラス代表は一夏であり俺には関係ないイベントだ

 

 

俺は一夏の会話を切り上げ自身の机に突っ伏した。

流石のこいつも、それ以上会話をしようとは思わなかったらしく自身の席に向き直した

 

 

「そういえば2組のクラス代表が変更になったんだって」

 

 

「ああ、確かなんとかっていう転校生に変わったんだっけ?」

 

 

一夏の席のあたりでたむっろっていたクラスメイト達が何やら話している

 

・・・別に聞き耳を立ててるわけではない。向こうが勝手に俺に聞こえる声で話しているだけで、偶々それが俺の耳に入ってしまっただけの不可抗力だ

 

 

「転校生?今の時期に珍しい」

 

 

新学期が始まって一か月たっていないこの時期の転校は確かに珍しい。普通なら新学期に合わせるのが普通だろう

 

中途半端な時期に転校してきてもクラスのコミュニティーに入れずボッチになるしな。ソースは俺

 

 

「うん、なんか中国から来た子なんだって」

 

 

・・・中国という単語に、なにやら俺の悪い予感センサーが反応した

八幡の必殺技の一つ、悪い予感センサー

 

八幡の碌な事が起きない人生の中で身に着けた超直感にもにたセンサー。このセンサーが発動すると数時間から数分後によからぬ事が起きる

 

詐欺師時代、警察のカチコミだとか893の襲撃だとかの前にも何度か発動している。ただし、全部の危機的状況に対し発動するわけではないし自分からは発動できない。発動しても結局回避できないなど割と弱点は多い

 

なので、一仕事終えた後に見ず知らずの中学生に鉄パイプで襲われたりしても回避はできなかったりする

 

やくに立つようであまり役に立っていないそんな微妙な技、それが悪い予感センサー

 

 

「どんな奴だろ、強いのかな?」

 

 

「さあ、でも今のところ専用機を持ってるのは一組と四組だけだし余裕だよ」

 

 

 

 

 

「その情報古いよ」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

俺がクラスの子達数人と話していると、どこか聞き覚えのある懐かしい声が聞こえてきた。

その声の先、扉の方向に俺を含めその場にいた人全員が振り向き見つめるとそこには、2年前と何ら変わらないツインテールの少女が

 

 

「2組も専用機持ちがクラス――――――」

 

 

バタンッ!

 

 

いたような気がしたがよく見る事が出来なかった

 

いつの間にか後ろの席より扉の前に移動していた八兄が扉を勢いよく閉めてしまったからだ。

八兄の席から扉の所まで行くには俺の席の隣を行くのが最短距離のはずだが、隣を通られた気配が全くせずいつものことながら俺は唖然とした表情で八兄を見る

 

周りをチラッと見ると彼女たちもいつの間にか移動していた八兄に驚いている様子で、中には口を大きく開けて固まっている子もちらほらといる

 

年頃の少女がする顔ではないのだろうが、それも仕方がない

なんせ八兄はあの千冬姉の音速を誇る雷神の一撃(出席簿)を軽々と避け、躱し、いなす存在なのだから

 

俺の知っている中でもアレを躱せるのは束さんくらいのものだ

 

そんな八兄の規格外すぎる動きに俺達が理解できないのはむしろ当たり前と言えるだろう

 

それはそうと、今閉められた扉の先には誰かがいた気がしたのだが・・・それも、俺と面識があり尚且つ仲が良かった人物が

 

 

「えっと・・・いきなりどうしたんだ八兄」

 

 

若干戸惑い気味に聞く俺に八兄は振り向きもせず、ただ扉を睨みながら淡々という

 

 

「ちょっと風が冷たくてな」

 

 

陽気はいいがまだまだ肌を撫でる風はひんやりと冷たい。それにこの学園は離島であり周りは海で囲まれている

 

人によっては涼しく感じる風も八兄にとっては肌寒いと感じたのだろうか?

 

いや、でもあのタイミングで扉を閉めるというのはやはり何らかの意思を感じる

 

 

「さっき扉の前に誰かいなかった?」

 

 

「さあ、俺は気が付かなかったな」

 

 

すると、今度は扉が勢いよく開きまたも先ほどの懐かしい声が聞こえる

 

 

「ちょっと!何いきなりしめて――――――――」

 

 

バタンッ!

 

 

が、またも八兄により扉は閉められた。

 

 

「…えっと、八兄?」

 

 

「‥‥‥」

 

 

俺の呼びかけに何の反応もなくただ扉の方を見つめている八兄

 

・・・うん、これ絶対に悪意をもってやってるな

 

あまりにあからさまな八兄の様子に内心結論を出すとまたも扉が開かれ

 

 

「だからなんで閉めるの――――」

 

 

バタンッ

 

 

ガラッ

「だから!!閉めるなって――――」

 

 

バタンッ

 

ガラッ

「いい加減に――――」

 

 

バタンッ

 

ガラッ

「閉め―る!―」

 

バタン

 

ガラ

「い―かげん―に――」

 

バタン

 

ガラ

「ふざ――けな―ッ」

 

バタン

 

ガラ

「話を――き―!」

 

 

バタン

 

ガラ

「話を聞けッ!!」

 

バタンッ!!!

 

 

「「はあはあはあ」」

 

 

扉の開け閉めで何度かの攻防を繰り広げていた2人はしまった扉の内と外で互いに息を切らしている

 

外にいる人物の事は、まだよく見てないので断定はできないが恐らく俺の考えている人物

 

始めも一瞬だったしその後は、八兄の背に隠れその姿をまだ見てはいないけどあの声とこんな風なやり取りは以前にも何度か見聞きしているので間違いないだろう

 

2年ぶりだというのに何をしているのか・・・

 

 

 

まあ、でも彼女もあの様子では変わりが無いようで何よりだ

 

何かと突っかかる彼女にそれを軽くあしらい倍返しする八兄

 

時に言葉で時に体で何かと反発し合う2人の構図にそれを唖然と見続ける俺

何もかも昔のままでありなんだか安心する

 

本当に懐かしいぜ

 

 

目を閉じれば彼女が転校するまでに行われた壮絶なじゃれ合い(・・・・・)を鮮明に思い出す

 

何かで口論する2人(一方的に突っかかってるだけ)しばらくすると彼女がいつも通り泣かされ俺のところまで走ってきたり

 

体育とかで勝負しても(一方的に突っかかってるだけ)どうしても八兄に勝てず、段々とヒートアップしてラフプレイにはしるも逆にコテンパンにされ泣きながら俺のところに走ってきたり

 

給食の早食いで(一方的に突っかかってるだけ)よく噛まずに飲み込みのどに詰まらせ青い顔で俺に手を伸ばし水を求めたり

 

あとこんな事もあったな、彼女がいきなり飛び蹴りをくらわせ、八兄はそれを平然とキャッチしジャイアントスイングで吹っ飛ばし額を赤くして俺のところまで走ってきたり

 

泣いた彼女を慰めるのはいつも俺の役割だった。本当に懐かしいなー

 

ていうか日本に戻ってきてたのか、なら電話でもしてくれればよかったのに水臭い

いや、でもあの勝気でお転婆な性格から見ると電話なんかより直接会って話したいという思いが強かったのかもしれないなー

 

何せ彼女は昔から――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――八兄の事が好きだったんだから!

 



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IS 転校生は幼馴染 3

少しの間、一夏視点で話が進んでいきますね~

それでは、報われない鈴ちゃんと可愛そうな一夏の物語をお楽しみに~


八兄と鈴がじゃれ合う事数十秒、扉はしまったまま開けられる気配がない。

諦めたのかと思ったが、一呼吸おいて扉の外から鈴の声が聞こえてる

 

 

『・・・ああもう!頭きた――――!!いい加減にあけないと扉ぶち破るわよッ!』

 

 

どうやら諦める気は全くないようだ

 

鈴は昔から、八兄が絡むと我を忘れる癖があったな。そのおかげで学校の窓ガラスやら俺の筆箱やら割れたり投げられたりしてたっけな

 

その後大抵、俺や弾に取り押さえられて3人で先生に怒られたっけ。懐かし思い出だ

 

もっとも俺と弾は全くのとばっちりでなぜか叱られ、当事者の八兄はいつの間にか姿が消えてたりして。懐かしいがどちらかと言うといい思い出ではないけどな

 

それでもその後、俺達に加え数馬なんかも巻き込んで鈴の愚痴につき合わされたりしたっけか。カラオケとかバッティングセンターとかで憂さ晴らしに付き合った思い出は割かし楽しかった

 

 

鈴は何回叱られても次の日にはまた同じことをするもんで先生も最終的には泣きながら暴れないでくれと頼みこむ始末だったけど

 

あれかな、今で思うとこれが俗に言う恋は盲目というやつなのだろうか?

 

八兄の事がきになりすぎて周りが見えなくなってしまった的な感じか。そう考えればなかなか微笑ましい光景だ

 

 

『いい!5秒数える間に開けないとほんとにぶち破るからね!!』

 

 

鈴は5から順番に4,3と数えていく

 

微笑ましくあれど、流石にこれは止めなくてはいけない。あいつのことだから本当に扉を壊してでも入ってくるだろう。中学の時ならいつも道理の光景でまたかと、楽観的に見ていられるが

 

中学の時とは状況が違う!

 

何せこの学校の先生、それもうちのクラスの先生となれば最悪の場合‥‥‥鈴が死んでしまう!?

 

席を立ち急いで扉の前までかけてく

鈴と八兄の初見では、意味不明に思えるやり取りに唖然としていたクラスメイトも俺の様子に気が付いたのか驚いた表情をしている

 

 

『2、1!・・・・・・いいわよ、そっちがその気なら本気でぶっ壊すからね!!!』

 

 

「ま、待て鈴!」

 

 

制止の声をかけるも一足遅く、扉の外から景気のいい掛け声がする

 

 

『そりゃあああああ―――――った、痛い~ッ』

 

 

が、その掛け声も途中で途切れる。するとゴツンという鈍い音と小さな悲鳴が聞こえた

いったい外で何があったのか?

 

 

『何すんのッ・・・うわぁ!?ち、千冬さん!』

 

 

『もうショートホームルームの時間だというのに・・・何をしている?』

 

 

『え、えっと・・・それは・・・』

 

 

『なんだその振り上げられた腕は?』

 

 

『こ、これは違くてそ、その、これは体操を――!』

 

 

『お前は体操でISを部分展開するのか?』

 

 

『あぅ・・・』

 

 

『学園の規則事項はもちろん知っているな』

 

 

『え?えっと・・・』

 

 

『知・っ・て・い・る・な!』

 

 

『はいー!もちろんです』

 

 

『では、ISを許可された場所以外で展開する事も私的利用することも禁止されてる事もしっているはずだな?』

 

 

『うぅぅ~・・・はぃ・・・』

 

 

 

話声が聞こえなくなり一瞬の静寂

 

 

教室の中にいる俺達でも、外から聞こえた千冬姉の声には怒りの色があることがたやすく分かる。教室の中も外もあまりの緊張感から誰一人喋らず黙ってしまう

 

話声どころか、教室の中では動くことも出来ずに棒立ち状態

 

だが、そんな中でも八兄は平然と扉の前から自分の席までゆっくり歩いて戻っていく

我が兄ながらどんだけ肝が据わっているんだ・・・

 

俺なんてうっかり息を吸う事も忘れてしまっていたというのに

 

 

『ぎにゃあああああああぁぁ‥‥‥‥ぁ・・・ッ‥‥』

 

 

静寂の中、聞こえてきたのは鈴の断末魔

 

しかもその断末魔も徐々に小さくなり最後には何も聞こえなくなる

 

声が完全に聞こえなくなると扉は開かれ千冬姉が教室に入る

 

 

「全員席につけ。ホームルームを始める」

 

 

千冬姉の一言に、先ほどまで身動き一つできなかったクラスメイト達は一斉に自分の席に戻り黙って座った

 

普段は、いくら注意してもなかなか静かにならない1組にしては本当に珍しくその日のホームルームは静かだった。

 

皆あきらかに恐怖している

 

それは先ほど聞こえた断末魔に対してかそれとも普段通りに振る舞っている千冬姉の頬と、清潔感溢れ首元から覗く純白のシャツについてる真っ赤な水しぶきに対してか・・・

 

 

ただ一つ俺にできる事は、2年ぶりに再会?した幼馴染に対して黙祷を捧げる事だけだった

 

 

「安らかに眠れ鈴・・・」

 

 

「授業中は私語を慎め」

 

 

「フガッ!」

 

 

後頭部に強い衝撃を受け俺の意識はそこで途切れた・・・

 

 

ていうか、これもとばっちりじゃね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

いつのまにか時間がたち、俺が目覚めたのはちょうど昼食どきだった。

 

不思議な事に寝る前までの記憶がない。なんかとても懐かしい感じがしたような気がしたけど覚えていない

 

それに、なぜか今日は授業中に寝ていたのに千冬姉からの制裁がなかった。いや、後頭部がなんかヒリヒリするしもしかしたらげんこつとかされたのかもしれないな・・・

 

でも、ちっとも起きない俺に愛想をつかし放置していたという事なのかな?

 

だとしたら千冬姉には悪い事をしたな・・・今度謝りついでにマッサージでもしてあげよう

 

 

 

 

 

IS学園の生徒は皆女の子という事もあり自炊する生徒も多いがやはり学食で食べる人がほとんどと言える

 

 

様々な国から留学生を呼んでいるここの学食は、留学生たちの口にも合うようにと各国のより取り見取りな料理の品々が用意されている。中には名前も知らないようなマニアックな料理も取りそろえられており留学生に留まらず日本人の学生達にも好評だ

 

俺もそれなりに料理はするが、ここの料理の味はまさにプロのものであり食べてるだけで勉強になる。

 

表に出てるまさに学食のおばさんみたいな人たちは勿論のこと、裏側で料理を作ってるシェフたちの腕は凄まじく噂ではミシュランとかで星をもらった一流の料理人を雇っているだとか

 

流石は天下に名だたるIS学園だけの事はあるぜ!

 

 

意気揚々と食堂の扉をくぐり、今日はA定食でも食べようかな~などと思っていると後ろから懐かしい声が聞こえた

 

 

「いーちーかー!!」

 

 

「え?・・・鈴!?」

 

 

その声の正体は、2年前に転校してしまった俺の幼馴染凰 鈴音(ファン・リンイン)通称 鈴だった。

 

鈴はこちらに向かい全力で走ってくるとそのまま勢いに乗り飛び上がり入射角45度の見事なとび蹴りを放った

 

 

「うを!?あぶねー!」

 

 

「よけるなバカ一夏!!」

 

 

久しぶりに再会した幼馴染が出会いがしらに全力の飛び蹴りをしてきたら流石に避けるだろ普通

 

 

「避けるわ!なんでいきなり飛び蹴り・・・ていうかお前その包帯どうしたんだ?」

 

 

なぜかいきなり好戦的な幼馴染の体を見ると体中にガーゼや包帯をつけている。

道理で2年前と比べると動きにキレがないと思ったら怪我をしているのか・・・いやいや、怪我をしているのならとび蹴りなんてするなよ!

 

 

「そんな事より!なんで私を置いていこうとしてるのよッ」

 

 

「え・・・?いや、だって一緒に食べる約束とかしてないし。ていうか連絡くれればよかったのに」

 

 

むしろ、今初めてお前がここにいる事を知ったのだけれども・・・あれ?でもなんだろう頭の隅になんかもやもやする物がある

 

 

「そんなことしたら劇的な再開が台無しになっちゃうでしょが!」

 

 

確かに出会いがしらの飛び蹴りは劇的だった。でもなぜだろう全然うれしくないぞ、その再開

 

 

「それに約束してなくても幼馴染なら誘うなり待ってたりするもんでしょうが、この薄情者!」

 

 

いや、だからお前がここにいる事今の今まで知らなかったんだけど・・・

 

 

 



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IS 転校生は幼馴染 4

次回からまた八幡視点で行く予定です。ではどうぞ~

感想待ってます




それから俺と鈴は、それぞれのランチを注文して窓側の席に着いた。この席は、ファミレスなんかの奥の席みたいに円状のソファーに丸テーブルで、広さもそれなりにありやろうとすれば7,8人くらいが座っても大丈夫だろう

 

現に隣の席には6人くらいが座ってるし

 

ていうかあれって箒たちだよな。なんか凄いこっちを見てるんだが

なんなら話しかけてくれればいいのに。そうすれば鈴の事も紹介できるのだが・・・

 

まあ、紹介は後でもできるし今は鈴との久しぶりの再会を堪能しようとしよう。

 

 

俺は予定通り、A定食サバの塩焼き定食を頼んで鈴はラーメンを頼んでいる。

 

この彼女、鈴は名前で分かるように中国出身であり親が日本で中華料理屋を開くという事で日本にやってきた

 

本人も中華料理が好きなそうで、特に和製中華料理が好きとのことである。

 

 

「へっ!お前代表候補生なのか!?」

 

 

「そうよ!朝だって・・・そういえば言ってなかったわね。まあいいわ、私は代表候補生で2組のクラス代表よ」

 

 

朝というのが何の事か分からないが、鈴はとんでもないカミングアウトをした。つまりクラス対抗戦で俺は鈴と戦うかもしれないという訳か

 

 

「すげーな。いつの間になったんだよ?」

 

 

「あんた達の方こそニュースで見た時ビックリしたじゃない」

 

 

少し見ない間に国の代表候補生になっていた幼馴染に驚愕するも、逆にあちらは俺達の方にびっくりしていたらしい

 

それもそうだろう。何せ当事者である俺でさえビックリを通り越して唖然としてたくらいだしな。

 

 

「俺だってまさかこんなところに通うはめになるとは思わなかったもんな・・・」

 

 

さらにそこで2人の幼馴染と再開するなんて、これが偶然だったら相当な確立じゃないだろうか?

 

 

「確か高校受験で間違ってISを動かしちゃったんだけ?なんでそんな事になったのよ」

 

 

「ん?その初めは道に迷ってな・・・その後ISが保管されてた部屋を見つけて興味本位で触ろうとしたんだ」

 

 

「あんた興味本位でって・・・」

 

 

若干呆れ顔の鈴だがそんな事は気にしない。男の子はみんな知的好奇心にさからえない生き物なのだ

 

 

「そしたら係りの人に見つかってな、バランス崩して咄嗟に目の前にあったISを触って起動させたんだよ――――――八兄と一緒に」

 

 

今一瞬、鈴の眉がピクリと反応したように見えた。さらに先ほどまで上機嫌だったのに途端に顔を顰めさせ俯きながらフルフルと震えている・・・・・・ああ!

そういえば鈴て昔から八兄の事が好きだったんだけ?

 

それで、八兄の名前が出た途端反応したのか

 

うんうん、好きな人と久しぶりに会えるんだ。喜びで震えもするだろう

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

この時、鈴が俯いているため一夏には見えなかったが彼女の顔は血管が浮き出て目やら口やらが引きつられまるで般若のようであったと、遠くからたまたま2人に目をやった金髪縦ロールのクラスメイトは語っている

 

 

??「一夏さんが何を話していたかは聞こえませんでしたが、一緒にいた彼女の顔はまさに鬼のようでしたわ・・・いったい人は何をすればあんな顔ができるようになるのか・・・」

 

 

匿名希望のため名前は伏せるが証言者の彼女の顔は戦慄していたという

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

ひとしきり食事を済ませ鈴との会話を楽しんでいると、先ほどまで隣の席にいた箒がいつの間にかこちらの席までやってきて

 

なぜか険しい表情で鈴について聞いてくる

 

ていうか箒が人見知りであり無愛想な事は知っているが、初めて会う人の前でそんな好戦的な態度をとるのは一友人としてどうかと思う。思ってはいるが別にいいはしないけどな

 

だって、なんか言ったら言ったでなんか怒られそうだし

 

ざっくりと説明がてらお互いの自己紹介を添える

 

 

「鈴は箒と入れ違いに転校してきた幼馴染なんだよ。で、こっちが篠ノ乃 箒、前に話しただろ」

 

 

鈴には以前箒の事を話しているため説明はこんな感じでも平気だろう。

説明を終えると鈴は箒の方を見て、微笑みながら挨拶をする。ただ、気のせいかその微笑みがなんだか挑発しているような感じに思えたが‥‥‥まあ、気のせいだろう

 

 

「ふーん、そうなんだ。初めましてこれからよろしくね篠ノ乃さん」

 

 

一方の箒はなにやら手をわなわなさして苦悶の表情を浮かべる。だから箒さんや、初対面の人にその態度はいただけないって

 

フレンドリーな鈴に対してなぜか、警戒心をMAXにさした箒が再度質問を重ねる

 

曰く、二人はどういう関係でまさか付き合っているのかとかいう感じだ

 

その質問に鈴は頬を染なにやら慌てだして言葉を濁している

 

 

 

 

ふむ、別に俺達2人は付き合っているわけでもないしそもそも鈴には好きな人がいるわけだしここは違うと答えるのが無難だろう

 

でも、否定するにしてもどうするか。中途半端に否定して逆になんか怪しいのではないのかみたいな噂が出回ってしまえば彼女の純粋な恋心に傷を作る可能性があるし

 

なによりその噂が八兄の耳にでも入って、いずれ鈴が八兄に告白するかもしれに時に何らかの足かせになるかもしれない

 

八兄は、きつい言葉をよく言うがその本質は兄弟思いであり、素直ではなく相当歪んでいるだけで基本的には優しい人だ(多分)

 

そんな兄が、弟と付き合っている噂がある女の子から告白されてもまず受け入れはしないだろう。そうなれば鈴は勿論誰もが不幸になることは間違いなしだ

 

だからと言って、ここで鈴は八兄の事が好きなどど素直に答えてしまったら、それはそれで問題だ。

 

鈴の愛情表現は、まるで好きな子にちょっかいを出す小学生男子レベルだが、それは彼女がまだ恋を始めたばかりである証拠で見てるぶんには微笑ましい

 

未だ初恋もまだな俺が言えたことではないが、初めての恋心は失敗するにしても成功するにしても自分の手で決着をつけたいというのが人情という物だろう

 

八兄も八兄で鈍感だから鈴の愛情には気が付けていない様子だ。ならここで俺がそんな事をカミングアウトする事はいい結果に結びつきはしない

 

ならば、ここは―――――――――

 

 

「違うぞ俺と鈴はただの幼馴染だ。それに鈴には‥‥‥…好きな人がいるからな!」

 

 

否定をしつつ幼馴染という言葉を強調し、さらに誰かとは言わずに好きな人がいるという事実のみを話すことで、俺と変な噂が立つこともない

 

完璧だ。完璧すぎる

 

ふと鈴の方を見ると、なにやら俺の方を見て唖然とした表情をしている

 

なるほど・・・

 

 

 

 

つまり、この表情は変な噂が立たない事に対しての安堵と好きな人がいるという事実を俺が知っているという事に対した驚きの表情という訳か!

 

ちょうどその時予鈴が鳴り俺は自分の食器を返却するため立ち上がる。数歩歩いたところでいまだに座りこっけている鈴にウインクと親指を突き立てグットのポーズをしてその場を後にする

 

ッフ、いい事をすると気持ちが良いぜ!

 

 



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IS 転校生は幼馴染 5

このあと少しだけセシリア視点になります。


では本編どうぞ~






放課後になり、生徒たちが部活や自主練に励んでいるころ

 

俺は第3アリーナへと来ていた

 

本来IS学園の生徒のほとんどは何らかの部活に参加しているそうだが俺は進んで部活に入ろうとは思わない

 

ただでさえ中学まで帰宅部皆勤賞の俺が、俺を除き男子が一人もいない集団に近づくことなんて詐欺かスイーツ食べ放題意外にありはしないだろう。

 

そんな訳で、放課後になればダッシュで自宅に帰る事を日課にしている。その際に千冬が毎度追いかけてくるので軽く鬼ごっこのような事をしなくてはならないのだが・・・そんな事をして仕事は大丈夫なのだろうか。この前なんて夜遅いから家で飯食って翌朝2人で登校していたんだが

 

まあ、一応仕事関係じゃあそれなりにしっかりしているので大丈夫か

 

そんな俺がこんな時間まで学園にいる事は至って珍しい。

 

では、なぜそんな課金でたまにしか当たらないスーパーレアな事象が起きているかと言えばそれは自主練のためである。

 

‥‥‥

 

‥‥‥

 

はい嘘です。

 

そんな殊勝な心がけが俺にあるわけがないし、そもそもクラス対抗戦にでない俺には必要ないただつかれるだけの行為するわけがない。

 

そんなのは第1アリーナでモップさんにしごき倒されてる一夏だけがやればいい

 

必要ない事は極力やらない、必要があろうとたまにしか本気を出さない。それが俺だ、異論は認めん。そもそも普段は話しかけもしないのにここぞとばかりに話しかけてくんな

 

自主練でもなければ一体なんだという話なのだが、簡単に言えば呼び出しをくらったのである。

 

呼び出しと言ってもハートのシールが貼ってある手紙が下駄箱に入っており、放課後待ち合わせ場所にいったら「うっわ~まじで来たよww」「キッモ~い、ほらタカコ早く告白しなよ!罰ゲームなんだしさww」みたいな苦くるしい話ではなく

 

校舎裏に呼び出されツッパリ系の強面が腕組みしながら待っている系のアレである

 

・・・どちらにしても碌なもんじゃない。しかも前者なんてタカコさんが最終的に泣き出してなぜか俺が謝る流れになったし、なにその理不尽

 

 

普段ならこんな呼び出し一周するところだが、差出人がある種の顔見知りであることからこれをばっくれても次の日にはクラスで会うことになる。そうなればなんやかんやとうるさい上に、逃げても回避しても結局は顔を見合わせれば同じことの繰り返しだ

 

時間をかければ諦めるだろうが、あいつの性格上なんかしつこそうだし、それならいっそこの一回で手早くかたずけたほうがいい。面倒事は元から断ち切る。急がば周れの精神が一番めんどくさくない

 

 

「で、何の用だオルコット」

 

 

「‥‥‥」

 

 

俺を呼び出した本人イギリス代表候補生であり専用機持ち、んで俺にボコられた少女セシリア・オルコットはただただ静かにそこにいた

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

少し昔の話をしましょう。

 

あれはわたくしがまだ10歳ほどの頃、今から数えると6,7年前という事になりますわね

あの頃のわたくしは、まだ両親の事をよく知ってはいませんでした。

 

もちろん自分の親です。仲も悪いわけではなかったので2人の事なら多くを知っています。

母は、厳しく凛とした強い女性でまさに強い女の見本のような人でした。会社の経営であまり家にいる事はありませんでしたが、たまの休みにはわたくしと共に遊んでくれたりもしました

 

父は、母とは真逆でとても優しい人でした。母と共にお仕事でとびまわる事も多かったけれどわたくしの誕生日や記念日にはいつも時間を作りお祝いをしてくれました。何より父が怒っている姿を見たことがないほど温厚な人でした

 

そんな両親の事をわたくしは心の底から大好きだったと言えるでしょう。ですが、人には色々な顔がある物です。

 

家で見せる優しい顔、そして家の外で見せる顔

 

当時のわたくしはまだまだ子供でそのことを良く理解していなかったのです。

 

 

わたくしが初めて母に連れられパーティーに参加したときの事です。初めてのパーティーという事もあり緊張しながらも、教えられたとおり母と父の顔に泥を塗らないように一生懸命貴族の令嬢として振る舞っていました

 

緊張のあまりか少々気分が悪くなり、しばらくの間外の空気を吸う事にしました。

 

そんな時に聞こえてきたのです。パーティーに出席していたであろう名前も知らない方々が母の事を話していました

 

その内容は、母を褒め称える物で木陰からその話を聞いていたわたくしはとてもうれしく思いました。

 

ですが、話は次第に父の事に移り変わっていきます

 

内容こそ今では覚えていませんがそれは、まだ10歳の子供には聞いてるだけで辛い、そう思えるものだったのです。

 

始めは、その話を聞いたとき頭に血が上り否定の声を上げようともしました。ですが、当時はまだ子供で相手は大人

 

何よりわたくしがもめ事を起こせばその責任は、ともに会場に来ていた母が怒られてしまうと思い何とか自分を抑えつけました

 

家に帰り精神的にも肉体的にも疲れていたわたくしはすぐに横になり寝てしまいました

 

それから、あの時聞いた話を思い出しては苦い気分になりましたが時間がたつにつれその事に疑問を覚え始め自身で調べる事にしたのです。

 

始めはきっとあんな話は出鱈目だろう。優しい自慢の父が彼らの言うような人ではない。子供ながらに、いえ子供だからこそ父の事を信じていたのです。

 

子供が調べものをするのは本来容易な事ではないです。まだ文字だって完璧にマスターしていないしインターネットの使い方だって良くわかりません。人に聞くにしても子供でありオルコット家の娘であるわたくしには本当の事を話す人などいるわけもない

 

だからと言って見ず知らずの人に私の父はどういう人ですか?などと軽々しく聞けるわけもないですし

 

子供が分からない事があれば親か先生に聞けばいいなんてよく言いますが、その分からない内容が自身の親の素行なんて聞けるわけがありません

 

しかし、幸いなことに今回の場合は自力で何とかなりました。なんせ聞くのではなく見ればいいのですもの

 

 

調べた結果は‥‥‥残念なことに会場で話していた彼らの話とほぼ変わらない評価でした

 

婿養子であり、立場の弱い父は母に対して弱弱しく卑屈な男性だったのです・・・

 

正直、子供のころのわたくしはその事実を知り酷くショックを受けました。だってそうでしょう?ずっと立派だと思って信じていた人が、周りからは陰口を叩かれ卑屈だなんだのと言われ、本人もそれを否定しない。否定できない人だった。

 

失望の一つや二つしても責められはしないでしょう

 

わたくしはただただ悲しくて情けなくて、そんな父に対して怒りを覚えました。

 

それから世間に出る事も多くなり、当時の女尊男卑になりたての世の中で男と言う生き物がどういう人たちなのか知る機会も多くなりました。

 

我が家にも男性の使用人はいますが、わたくしと接する機会があるのはほとんどが女性でしたので、父以外の男と会い、話す機会はあまりなかったのです。

 

そんなわたくしが知った世の中の真実。綺麗と優雅しかしらない箱入り娘から見た、男と言う生き物は何とも恵与しがたい存在でした

 

そのころからです。情けない男とは絶対に結婚しないというのがわたくしのポリシーとなったのわ

 

同時に父と・・・いえ両親と距離を置くようになったのは‥‥‥

 

始めはただ、受け入れられず拗ねたように距離を置きました。でも・・・それは時間がたつにつれ段々と確執となり気が付いたときには昔のように家族で笑いあう事ができなくなっていました。

 

わたくしも自分でいうのもなんですが、プライドは高い方だと思っています。なので自ら距離を置いた相手に歩み寄るなんてことできはしなかったんです。

今で思うと本当に子供のような行動だと思います。事実子供でしたが

 

わたくし自身も成長し勉強する事も習い事も増えその分両親と接する時間はなくなっていきました。

一人前の淑女に、貴族としてあるべくようにそんな思いを掲げピアノやバイオリン、ダンスにテニス等習い事に明け暮れました。

 

でも・・・本当は離れていく両親の気を惹きたくての行動だったんだと思います。

昔のようにあの頃のようにわたくしと母と父と3人で笑い合いたいだけだったのでしょう

 

意地っ張りなわたくしの精一杯の思い・・・それはあの人たちに届いていあたのか・・・今ではそれすら分かりません

 

 

ある時両親は仕事で遠出をすることになり列車に乗り出かけました。予定では数日後には帰ってくるはずでしたが

 

結局両親が帰ってくる事はありませんでした

 

 

列車事故―――――――

 

いつものように勉強に習い事にと明け暮れる日々をおくるわたくしにその知らせが届いたのは事故から丸1日たった頃の事です

 

突然。あまりにも突然の出来事

 

 

 

 

それからの事はあまり良く覚えていません。薄らと覚えているのは事故知らせを聞き向かった病院で見たものは、昔のように笑うどころか動くことも話すことも出来なくなった母と父の姿

 

始めは泣き崩れ、幼馴染であるメイドの彼女に支えられなければ立つこともままならない状態でした。

 

それから瞬く間に両親の葬式が執り行われ時間が過ぎていきました。

 

でも、後悔に悩まされ悲しみに暮れる時間はわたくしにはありません。

両親の死に嘆く声の中でわたくしに話しかけてきたのは|あの連中≪‥‥≫

 

名門貴族であり実業家でもあったオルコット家には莫大な遺産が残りそれを卑しくも狙いやってきたあったこともない|金の亡者≪親族連中≫

 

両親が残した遺産を金の亡者共から守るためにわたくしは悲しむ間を惜しみあらゆる策を講じました。その過程で受けたISの適性検査でA判定を受け、遺産を守ることを条件に国の代表候補生へとなったのです

 

 

 

そんなわたくしの価値観はあの頃同様、特に男性に対する見方はあのころ以上に辛辣な物へとなったでしょう。それに周りに侮られないため精一杯の虚勢も張りました。昔から演じる事は得意でしたし

 

 

そんなわたくしの前に彼が現れた。

 

織斑 一夏

 

始めは他の有象無象と同様に思っていた彼

 

クラス代表戦う事になり、自身の力を誇示するための当て馬にするつもりだった彼

 

わたくしの踏み台、世界でただ2人ISを動かせる。それしか取り柄がないと思っていた彼

 

 

 

結果としてわたくしは彼に勝利しました。でもその試合で、わたくしの中にある男という者に対する価値観は変わりました

もちろん世の多くの男性は情けない弱い男、その考えに変更はありませんが仲には例外もいると思えたのです

 

わたくしが見る初めての強い男

 

絵物語を観るような心のトキメキを与えてくれた男

 

真っ直ぐに、ただ真っ直ぐなとても魅力的な男

 

・・・おそらく初恋の相手である男

 

それが、一夏さんと戦ってわたくしが感じ、得たものです

 

 

 

 

しかし、そのあとすぐにまたしてもわたくしの考えは覆されることになったのです。




アンケートって感想でとっちゃいけないみたいなので活動報告で改めてとりますね~

感想でお答えいただいた物は加算されてますのでご心配なく

では、引き続きアンケートのご協力お願いします

それとまた何かありましたらどんどん教えてください。優しくね

初活動報告!!

でアンケートとってますんでよければ見てね


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IS 転校生は幼馴染 6

初めて彼を見た時の感想は、弟である一夏さんとそう身長も変わらないというのにひょろひょろとした出で立ちに何より目が酷く濁っている。正直な話一瞬不気味だと思ってしまいました。

 

それに彼を見ているとどことなく父を思い出してしまいまった。別に背格好が似てるわけでもないし顔だってまるで違う。

 

家族と言う事を除いてみても父の顔は一般的に美形の部類に入るし、あのような男とは似ても似つかない。

 

まあ、彼とてあの目がなければそれなりに整った顔立ちだと思いますがそれでもわたくしの父の方が男前です。ではなぜ、似ているなんて思ったのでしょうか

 

 

話してみると彼の印象は悪い方にどんどん変わっていきました。もとはわたくしが突っかかり彼や日本の国に対して暴言を吐いたことは深く反省してますが、それでもあのような辛辣な言葉を平然とかけてくるなんて・・・男云々以前に人間としてどうかと思います。

 

あの時のわたくしでは弁論の余地もなく彼と同類と言われても致し方ありませんが、それでも彼よりはましだったと思います

 

これでも気丈であり誇りとプライドを常に持つことを心がけているので並大抵な事では涙を流さないわたくしをあそこまで泣かしたのは後にも先にも彼一人だけでしょう

 

本当に最低な人、授業態度も悪いし、そもそもトランプやなんやで訳の分からない遊びをしているし、お姉様である織斑先生でさえ手をやく問題児

 

 

 

見た目も―――――――

 

 

素行も――――――――

 

 

言動も――――――――

 

 

性格も――――――――

 

 

そのすべてが、今まで見てきた情けない男達と同じ・・・いえ、むしろその誰よりも酷いとさえ

思える。

 

あの金の亡者共みたいに卑しく

 

そこいら編にいる有象無象と同じく取るに足りない

 

 

・・・・・・

 

 

そして、父のように弱弱しい・・・

 

そんな男達と同じようであり、誰とも似つかない最低な男

 

それがわたくしが彼に下した正当な評価です

 

 

 

一夏さんと戦い、世の男性の中にも例外がいる事を学びました。なので、今一度わたくしが接してきた男性に対して評価を下す事にしました。

 

と言っても金の亡者はどうしたって卑しい亡者でしかないし、父はやはり父ですし、有象無象はそもそも名前すら覚えていません。

 

実質評価を改める必要があるのは、身近におり尚且つ相手の事を良く知らない男性に絞られます

 

彼を最低な男と評価しましたが、もう一度考えましょう。

 

そもそも彼がわたしくしにしたことは国を穢された事に対する純粋な抗議です。若干やりすぎだとは思いますが・・・まあ、悪いのはわたくしです。やりすぎだとしてもわたくしに咎める資格はありません。

 

言い方やり方に問題は多々あれど普通に考えれば愛国精神であるはずです。何より彼はついこの間までISにもそれに伴う権力や権威というものとは無縁であったでしょう

 

いえ、織斑先生の事を考えればISとはなにかしらの接点があるかもしれませんが、それでも競技者の家族と言う域をでません。正確には分かりませんが、クラスの方の話では彼と一夏さんはISとなんの関係もない高校を受験する予定だったとからしいですし技術者などの男性がISに携われる職業に就くきもなかったようです。

 

代表候補生であるわたくしに対しての不遜な態度もそういう物に縁がなかったからだと考えられます。

 

むしろ、織斑先生は元国家代表であり世界大会の覇者、世界最強を誇るブリュンヒルデ。それに比べわたくしはまだ…まだッたかだか代表候補生どまりの存在です。

身近にいる先生と比べるとわたくしの権威なんてたかが知れてますし軽視するのもある意味頷けます

 

そう考えれば、あの教室での彼の言動は、この女尊男卑の世の中、それもクラスメイトのほとんどが女性で占められている状況下であることを考えれば

国のため、弟のため、ご自身のために勇敢にも立ちむかった行動だといえるのではないでしょうか?

 

でしたら彼の評価を改めるには十分すぎるでしょう。

 

評価のほとんどは第一印象ですし、何より見た目での判断が大きい。話してみたら思い描いていた印象とは別かもしれない

 

それに彼は、ブリュンヒルデである織斑先生と一夏さんのご兄弟です。織斑先生もなんやかんやで言葉の端々に彼に対し心を開いている事が伺えますし

 

一夏さんも大変懐いているご様子です。わたくしがお慕いする殿方のご兄弟がそんな最低な人間なわけありません!

 

 

‥‥‥

 

‥‥‥

 

 

と、あの時のわたくしは思ってしまったのです。試合前に教室での謝罪をし、お互い全力を出そうと鼓舞し合い彼もそれを受け入れてくれた。

 

ほらやっぱり、彼はわたくしの思っていたような人物ではなかったのです。

授業態度はともあれ、あの辛辣な言葉もわたくしが招いた種です。それで少し言い過ぎてしまっただけだったのです。

 

そんな風にあの時は本気で思ってしまったのです。初恋を自覚し舞い上がっていた感も否めませんがね‥‥‥

 

 

結果、わたくしは彼に一矢報いることも出来ずに敗北しました。

 

その時になりようやく分かったんです。似ても似つかない彼と父が似ていると思ったわけが

濁った瞳に写るそれは父が母に向けていたあの瞳と同じ

 

 

彼の挑発的で攻撃的な言葉

 

 

神経を逆なでするような行動

 

 

人を観察するように見つめる濁った瞳

 

 

どんな攻撃でも回避してみせる超人的な勘の良さ

 

 

どこか達観したように誰にも開かぬ心

 

 

それら全ては彼の圧倒的に捻くれたあまりにも卑屈すぎる精神からくる、そんなものであると

 

 

 

 

 

 

 

模擬戦の途中で意識を失い次に目覚めるとアリーナに設置してある医務室のベットの上でした。

保険の先生であろう白衣を着た女性が、体調について問いかけてきてわたくしもそれに答える。問題なしと判断されたが一応まだゆっくるした方がいいと言われ、お言葉に甘え少しの間横になる事にさせていただきました

 

見上げれば見た事のない天井

 

入学早々に医務室のお世話になる事なんてそうはないので当たり前ですが。目をつむり思い出すのは意識を失う前までの試合

 

自分が負けたという事はすぐに分かりました。なんせ片時も離れずに共に戦ったパートナーがない。その違和感にすぐに気が付く

 

ブルーティアーズはもうほとんど大破していたし、整備科の方に回され修理されているのでしょう。

 

自分が負けたショックもあります。でもそれ以上に彼のあの目が脳裏から離れない

 

本来なら卑怯な手で打ち破られ、完膚なきまでに叩き潰されたことに嘆き怒りでもするのでしょうが、不思議とそんな気分にはなれない

 

 

彼に改めて評価をつけるなら、卑怯な男、最低な男、どうしようもなく酷い悪魔などと色々あるがどれも当てはまるようで当てはまらない

 

 

それから数日の間、初恋の熱にうなされる間もなくずっと彼の事を考えていた。もちろんこんなドロドロしたものが恋であるはずはない

 

しかし、考えども考えども答えは出てこない。彼のような人間とは今まであったこともないし参考になるものがなければ答えを導きだせない

 

最低で卑怯で父のように卑屈な男

 

でも、彼は明らかに父とは違う。なんせ父は卑屈で弱い男だった。でも彼は卑屈ながらも強い男だ

 

卑屈とは本来、自分を必要以上に卑下し心の弱い者が物事から逃げるためによういる言葉だ

つまり卑屈という精神は弱者である者のはずだ

 

だが、彼はどうだ?

 

言葉にするなら卑怯より最低より卑屈というのが一番当てはまる。でも決して彼は弱くない

 

本当の弱者相手ならいかなる姑息な手段を用いてもこの私が負けるはずはない。これは慢心でも傲慢でもなくただの事実である。そうでなければ貴族なんてやってられないですもの

 

 

わからない

 

いくら考えようともわからない

 

なぜ自分は負けた?どうして彼は勝った?―――――――――わからない

 

 

父は卑屈な弱い人間だった、では彼はなんだ?

 

同じ卑屈でも彼は決して弱くない。でも卑屈とは弱い者を表す言葉だ

 

いったいあの男はなんだ?

 

織斑 八幡・・・

 

彼の正体がわからない

 

 

 

人は自身が受け入れられない知らない事柄に恐怖し否定しようとし排除しようとする

 

今の私も恐らくそんな感情で突き動かされていることだろう。わからない知らないそんな異物を受け入れられないから私は彼を呼びだした

 

私の目的はただ一つ、今日ここで織斑 八幡貴方の正体を見定める事

 

自分の中の異物を排除する。それが私が・・・わたくしがセシリア・オルコットであるために必要だから・・・!

 

 



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IS 転校生は幼馴染 7

シリアスな展開とギャグは相容れない

そう思う時期が私にもありました。でもあえて言いましょう

シリアスだからこそギャグを引き立てることも出来るのだと!

後悔はしていない!さあ、とくとご覧あれ!!

これが俺のリビドーだ!!!!





日もすっかり沈んでしまった第1アリーナ

 

そこに俺、織斑 一夏は、息もたえたえに大の字になって倒れていた。火照った体に地面のひんやりとした感触が何とも気持ちがいい。だが、体中から出る汗に熱を持っていかれて段々と寒く感じる

 

でも、それ以上に体の疲労感がやばい

 

 

「し・・・死ぬ・・・」

 

 

「何馬鹿を言っている。鍛えてないからそういう事になるんだ」

 

 

「こんな時間になるまでぶっ通しでやってればこうもなるだろ・・・」

 

 

「そもそも固いお前が悪い。日々の鍛練しっかりすればそうはならないはずだ」

 

 

「んな事言ったて仕方ないだろ。こっちだて色々溜まってるんだし。それより箒の方は全然疲れて無いな・・・」

 

 

「当たり前だ。私は鍛えているからな。この程度ではビクともせん!」

 

 

「あんなに激しかったのに・・・まじかよ・・・」

 

 

呼吸を整え上半身だけ上げて箒を見る。多少汗はかいてるようだが息切れ一つしていない。

それどころか腕を組みピッシと仁王立ちまでする元気があると来たものだ

 

自業自得ではあれど、なんというか男としての自信がなくなる・・・

 

 

「それよりそろそろ部屋に戻るぞ」

 

 

「ああ・・・始めに戻っといてくれ。俺は体を休ませながらゆっくりいくよ」

 

 

「しかたない。シャワーは始めに使わせてもらうぞ」

 

 

「ああ・・・了解」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリーナから橙色に塗装された更衣室にいき、ため息を吐きながら項垂れる。

 

この更衣室は本来女性用であり、こういう赤系統の色の壁や床はなんとも落ち着かない。一応言っとくが、女子更衣室にやましい事をしに来たわけではない

 

本来女性としか使用しない学園施設に男用の場所があるわけがないので、時間を区切り女生徒と同じ場所で使わせてもらっているだけだ

 

学園並びに千冬姉の許可は取ってあるので問題はない。

 

まあ、何と言うか元々豪華なうえ女性専用の場所特有の甘いにおいに正常な思春期男子として思うところもあるのだが・・・それはいいとしよう

 

むしろそこを追及すると俺の身が色々とやばいので深く考えない

 

 

それよりも問題はもっと別の話だ

 

俺は今日、箒に誘われクラス代表戦に向けISの特訓をしていた。箒は学園にある純日本製の量産機『打鉄』を使用して、俺は勿論白式でだ

 

お互い近距離戦タイプという事もあり、セシリアとの戦闘とはまた違った勝負となった。

中距離戦タイプのセシリアと近距離のみの俺では相性が悪く、初めはかなり一方的にやられていた

 

途中からは善戦できたと思うけど結局負けたし・・・

 

一方の箒との戦闘ではお互い刀と刀の斬りあいだ。正直オルコットよりもやりやすいのだが・・・

 

箒は中学で剣道女子の部全中王者で、俺はと言うと中学は帰宅部皆勤賞

むかしは俺の方が強かったと思うが今では圧倒されてしまう

 

ISは剣道と違い広いエリアをとびまわり相手をかく乱しながら戦うものだ。なので剣の腕が全てと言う事ではない

 

機動力なら白式は打鉄を圧倒してるといっていいだろう。そもそも第2世代の量産機と第3世代の専用機では埋められない差がある。

 

もしもこの2つが戦えば勝敗は明らか、仮に千冬姉レベルの操縦技量があれば話は別だろうけど、同じ素人同意が戦えば単純に機動力で圧倒する白式が勝つだろう。素人の俺でも分かる簡単な話だ

 

だが、問題がある。

 

なにぶん俺達2人は近接タイプ・・・というより刀で斬りあうしかできない2人なのだ

 

俺はそもそも雪片しか装備がない、箒は刀があくまでメイン装備でほかに銃とかもあるはずだが刀以外の装備を使おうとしない

 

そんな2人が戦えばどうなるか?空なんて飛ばずに地面で延々と斬りあうのである。そうすると機動力と言う武器がなくなった俺は剣の技量で勝る箒に一方的にボこられるのである。

 

 

不利なら俺の方が空を飛んでかく乱しながら戦えよと思うかもだが、俺だってそういう策をいくつかしたさ

 

でも、俺がいくらとびまわろうとも空を飛ぼうと挑発しようと箒はアリーナの中央から動かずにずっとかまえてるんだもん

 

箒の周りを高速で旋回しながら隙あらば斬りつけようとするも、箒は最小限の動きで常に俺の目前に刀を構える

 

いくらとびまわろうとも最終的に真正面からの斬りあいになるんじゃあ同じことだ

むしろ、動き回っている俺の方は疲労困憊、スタミナもすぐきれる

 

結果、先ほどのような光景になってしまうわけだ

 

 

「ハア・・・」

 

 

自分のふがいなさにため息が出る。負けたとはいえ代表候補生相手に善戦できたんだから、自分が強いんじゃないのかと、うぬぼれていたのかもな・・・

 

こんなんじゃ千冬姉を守るだの八兄に一人前と認めてもらうだのと言うのは夢のまた夢だ。セシリアに向かって啖呵を切ったのにこの体たらくはあまりに情けない

 

 

「‥‥‥っし!明日も頑張るかッ」

 

 

まあ、俺がふがいないのも情けないのも今に始まった事じゃない

そもそも周りがあまりに化け物ぞろいで、こんな事でいつまでも落ち込んでいたらやっていけないのである。

 

反省はする、でもいじけはしない。俺にできる事はひたすら前に進むことだけなんだし

 

自分の両頬に気合の入った平手をかまし、着替えに入る

 

まず、ぴったりと肌に張り付いた半袖のうえ、腹の部分が丸出しの上半身を脱いでいく。

 

どういう素材かは知らないがなんとなく水でぬれた水着のような感じで結構脱ぎにくい。もう少しどうにかならない物なのかね?

 

でも男の俺には分からないが女の方から見れば、このぴったりしたスーツはどんなに激しく動いても初めの位置から動かずに色々な物がはみ出る心配がなく結構好評らしい

 

・・・ほとんど女子だからと言ってそういう話はできれば俺がいない所でしてほしい

 

本当に話の内容がやばい時もあるし、何より次に会った時に凄い気まずいんだけど・・・

 

次に中途半端な長さのズボンの方に手をかける。実はこのぴったりズボンの中にはサポーター(野球のキャッチャーなんかが股間部分にいれるシールド)が内蔵されており大事な部分を守れるようになっている

 

ISの攻撃を受ければそんなもの意味ないだろうって?

 

生憎だが、別にこれは純粋な衝撃とかから守っているという訳ではない。詳しくは言えないが男の、いや、人間の尊厳を守っていてくれるなくてはならない大切な物なのだ

 

人は生命の危機に瀕したとき本能的に子孫を残すためある種の興奮状態に陥る。それは戦闘という明らか様な行為をしているISではより強くそれが形として現れるのである

 

それに、周りが全て女子でしかもみんな可愛くあんなほとんどスク水に靴下みたいな服装でいられれば色々とアレである

 

 

現に今だって疲れているからか俺のもう一人の相棒がそれなりの状態になっている。本当にこの機能がなければ俺は今日までに10回は死んでいたね(社会的にも現実的にも)

 

そんな下らない事を考えながらズボンを脱ぎ、変えの下着に手をかけようとする

 

すると、ロッカーの陰から人影が現れる。

 

平均身長よりだいぶ小さく、特徴的なツインテールに肩部分が切り取られてる改造されたIS学園の制服

 

それは、昼ぶりに会う幼馴染の少女であった

 

 

「お疲れ、いち‥‥…か……」

 

 

「‥‥‥」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の腕には真っ白なタオルと恐らくスポーツドリンクである若干白く濁った液体が入ったペットボトルを抱えている

 

ロッカーの角から俺の正面に現れた彼女と俺は、お互いの姿を視認した途端動きを止める

 

方や着替え中で全裸(一部R18指定)の男と、方や男がいる更衣室に無断で入ってきた幼馴染の女の子

 

両者は動きを止めるも段々と顔色が変わっていく。

 

一方の少女は頬がどんどん赤くなり今や顔中が熟れたトマトのように真っ赤になり

 

もう一人は対照的に顔はだんだんと青くなりいっそ白くなりつつある

 

 

そんな対照的な顔色の2人が無言で見つめ合い数秒

 

といっても本人達としてはこの数秒が遥かに長く数十秒数分数時間に感じたという

 

さらに見つめ合うと言えど両者は互いに目を合わせているわけではなく

 

男は少女を全体的にとらえ

 

少女は男のある一部分を凝視している

 

そしてついに気まずい沈黙は破られる

 

 

「‥‥‥お、おちつけ!り―――――――」

 

 

「‥‥‥き、キャアアアアアアアアアアアアアアアアァアアアアアアアアああアアアアアアアアアアアアアア―――――ッッ!!」

 

 

少年のすがるような声が放たれると同時に、少女はこれでもかというほどの声量で悲鳴を上げ、てに持つタオルとペットボトルを少年めがけて投げつけた

 

タオルは円を描き地面に落ちるも狙いをつけずに放たれたペットボトルはそのまま飛んであろうことか少年の男の弱点部分にクリンヒット

 

 

「~~~~~~ッ!?!?!?」

 

 

哀れ、少年は言葉にならない悲鳴を上げそのまま地面に悶え倒れた

 

400mlほどの液体が入ったペットボトルが全力投球された末路がこれである

 

少女はそのまま倒れた少年に目もくれず真っ赤な顔で走り去る。その瞳には一粒の涙が流れる

 

少年は地面に倒れたまま時折ビクリ、ビクリと体がはねるも悶絶したまま動かない。その頬には一線の水跡が残る

 

 

 

この誰も救われない事件には誰一人の加害者はいない。いるのはただ、二人の哀れな被害者だけである

 



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IS 転校生は幼馴染 8

どうもです。迷走疾走のLチキがやってきましたよ~

所で今(AM5:50)感想を観たら#運対#って言う風に所どころなっているのですがこれはなんでしょうか?

もしかして私がなんかやってしまい、運営様がなにかしらの何かをしているという事なのか・・・

ただのバグならいいのだけど・・・心配で夜も眠れないぜ


「‥‥‥」

 

 

「‥‥‥」

 

 

「‥‥‥‥‥‥」

 

 

「‥‥‥‥‥‥」

 

 

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

俺がオルコットに呼び出されどれくらいかの時間が過ぎた

 

だというのに一向に話が始まらない、というかこっちはなんだと聞いたのに向こうが話始めないのだ。

 

これはあれか?新手の無視的なやつなのか、それともただ単に話す事がないのか・・・どっちにしろなんかリアクションとれよ。じゃないとどう対応すればいいのか分からんだろうが!

 

 

俺とてボッチ歴=彼女いない歴のマスターボッチの端くれだ。こういう沈黙にも慣れているし、対処方法も心得ている。

 

思い返せば、初めは小学校低学年から俺と2人きりになる奴はよく沈黙していたな。それから中学、高校、大学と多くの人が否応なく絡む場所で発生するこの沈黙を俺は難なく突破してきたプロ中のプロだ

 

だが、流石に呼び出しておいてのこの沈黙は中々ないけどな。仮にどこかの木陰に笑いをこらえてる女子が遠巻きに見ていたらこれの対処もしやすかったんだがな。

 

生憎俺のセンサーにはオルコット以外の人間は感知されていない‥‥‥ん?生憎どころか最悪なんじゃないのかその状況?

 

・・・いかん、我ながら色々な部分が壊れ始めてるな。むしろすでに大破してるまであるかもしれん

 

落ち着け、プロならばまずは落ち着くんだ

 

こういうときの対処は簡単だ、いつもしてきただろうが。そりゃあ、詐欺師になってから仕事以外で人と話す機会なんてそんなになくなって多少のブランクはあれど俺ならできるはずだ。思い出せ・・・思い出せ・・・

 

 

 

まず、状況を整理しよう。俺は呼び出しをくらった(果たし状的な意味合いで)そしたらそこには差出人である一人の女がいた。

 

セシリア・オルコットつい昨日フルボッコにしたイギリスの代表候補生だ

 

ではなぜ彼女が俺を呼び出したのか

 

 

 

そんなの昨日の試合のことくらいしかないだろう。そこで考えられるのパターンは、

 

1、お礼回り

 

まあ、卑怯な手で負けたやつが逆恨みでっていうのもベタだしな。

 

2、闇討ち

 

オルコットはあくまで搖動で本命のやつが完全に暗くなったらいきなりドンッ!みたいな感じか、いやでも周りに人の気配ないしな

 

3、いちゃもん

 

あの試合の後オルコットはすぐに気を失った。だからあの時言えなかった文句を言いに来た。じゃあ、早く言えよって感じだが

 

4、告白

 

ないな。戦って友情、愛情が芽生えるのは少年誌の登場人物だけだ。戦いで芽生えるのは恨み嫉み憎しみ虚しさのみそれが人間手いう物だろう?

 

アレだなジャ○プ的にナ○トが正しいが、人間的なのはサ○ケみたいな感じだ

 

 

234が違うってことはあれか1のお礼参りか

もう少し暗くなってからいきなりあのビットが後ろに現れてドスッか、そして今の沈黙はそのためのなんらかの布石か

 

ちょうどいい感じに思いつめたような顔してるしなんか濃厚だな。多分違うんだろうけど

 

さて、そうすると本格的になんでこいつ呼び出しなんてしたわけ?

その上呼び出した本人はだんまりだし、何この状況意味わかんないんだけど

 

 

 

沈黙する相手に対するこちらが取れる最善て、それは無駄に話しかけるでもない話題を探す事でもない。こっちも沈黙するこれが正解だ

 

そのまま会話がなくとも時間切れでいつかは解放されるし、何か話したいことがあるなら向こうから話しかけてくるだろう

 

何よりボッチにとり沈黙とは普通の事であり慣れっこだ。なら、我慢比べでボッチが負けるはずがない。そしてその結果―――

 

 

「‥‥‥」

 

 

「‥‥‥」

 

 

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥…」

 

 

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

状況は何も変わらないと・・・うん、振出だな

 

時は金なり

 

これ以上無意味に時間を浪費するのは無駄の一言に尽きる

 

いいだろう。負けを認めよう我慢比べで俺は負けたよ。はいそれじゃあさようならと、また明日会えなかったらいいな

 

 

「・・・話がないなら俺は帰る」

 

 

一言いい、俺は数十分前に入ってきた出口に向かい進んでいく

 

 

「待って!‥‥‥ください・・・」

 

 

「‥‥‥」

 

 

そこでようやくオルコットが本日初めて口を開く。

初めは感情まかせに強い語調だがだんだんと弱弱しくなる声に俺は足を止め振り返っる。そこには先ほどよりも眉間のしわが濃く、俯いているオルコットの姿があった。

 

 

「なんだよ」

 

 

「‥‥貴方は・・・貴方はいったい、何者なんですの・・・?」

 

 

「・・・織斑 八幡、織斑先生の弟で一夏の兄貴だ」

 

 

「そういうことじゃありません!」

 

 

うん。知ってる

 

 

「貴方は・・・卑怯です。影が薄くて目が濁っていて授業も碌に参加しない卑屈な取るに足りない最低な男です!」

 

 

「・・・喧嘩うってるのか?」

 

 

「違います!!」

 

 

そんな力強く否定されても・・・どう聞いたって悪口しか言ってないだろ。むしろこれで喧嘩うってないとかどういうことだよ

 

 

「そんな貴方が・・・そんな男にッなぜわたくしは敗北したのですか!」

 

 

「‥‥‥」

 

 

「わたくしはこれまでどんな苦行にも耐え、数多くの敵と対峙してきました!代表候補生の座をかけ競い合った彼女達にも!お金の事しか頭にない愚劣な亡者達にも!

 

戦って戦ってどんなときにもかってきたのにッ・・・どうしてわたくしは貴方に勝てないんですのッ・・・」

 

 

オルコットは最後の方には声も枯れついにはその場に泣き崩れた

 

 

セシリア・オルコット、イギリスの名門貴族の令嬢しかし、両親は数年前に事故により他界

その後、自身の家を守るため代表候補生の座まで上り詰めた天才

 

と、世間の評価ではなっているが実際の所、彼女は天才でもなんでもない人より少し秀でた凡人だ。その彼女がこうまでなるに費やした労力、努力はまさに天才に並ぶ物だったのだろう。

 

守らなくてはいけない物があり、そのための手段を求め、それを得た。それからはただただ必死に、ただただ死に物狂いで自身を高め負けることなく勝ち上がってきた

 

努力を積み上げた秀才それこそがセシリア・オルコットの本質だ

 

そんな彼女だからこそ俺への敗北は自身の努力の否定につながる。こいつの認識では俺はISが動させるそれ以外に何も持たない存在なのだろう

 

そんな野郎が努力で積み上げてきた物を一瞬で瓦解させたのだ。それを素直に理解しろというのもガキには難しいことだ

 

秀才は天才を認めたがらない。それは自身が長い人生をかけ積み上げた功績を才能という一つのプラスだけで凌駕する理解不能の存在だからだ。自身にできない事、もしくは自身が長い間をかけようやくできるようになったことを天才は平然と超える

 

それはまさに一瞬の出来事であり、天才本人にはその認識が薄い。だからこそそんな奴らに嫉妬し羨み仇となり一般人は天才を理解できない

 

まだ見ぬ天才を越えた『天災』さまもこれと同じような物だろ

 

面白い事に本来希少である天才は、なぜか数個のパターンに分けられる。逆にただの一般人をわけるにはそれ以上の数を要する。

 

本人も理解しているの。自分が天才ではない事を、そして自分は天才ではないが努力を重ねた秀才であることを。

 

だから疑問に思う、秀才たる自身に勝つは天才か自身をこえる秀才だけだと

 

そんなのはただの思い上がりである事に気が付きもせず、格下の相手に負けた程度で狼狽える

 

 

まあ、要するにだオルコットは認められないでいる。自身の敗北、俺の勝利それを認められずぐちぐち悩んでる。ただそれだけの話なのだ

 

 

「お前が勝てない理由を知りたいか?」

 

 

「ッ・・・」

 

 

だからこんな言葉に意思が揺らぐ

 

だから敵であり取るに足らない存在に救いの手を差し出す

 

だから自分を見失う

 

だから答えを他者に求める

 

 

その考えこそがすでに敗北していることに目を向けず強者を演じ続ける

 

 

「答えは簡単だ・・・そんなのお前が弱いからだろ?」

 

 

「な!?」

 

 

そしてそれは―――――――ただの欺瞞だ――――――――――

 

 

「何を驚いてんだ。勝負事は勝者が強く敗者が弱い、そこには才能も努力も関係ない。結果こそが全てだ。そんなの幼稚園児でもしっている、当たり前の事だろ」

 

 

彼女は弱弱しくすがる瞳から一転、驚愕と憤怒のこもった強い瞳になり代わる。

そして、震える口で必死に言葉を紡ぎだす

 

 

「わ、わたくしが弱いとでッ―――――――」

 

 

「弱いよ」

 

 

が、そんな強さ今の時点では役には立たない。それしきの強さで俺の弱さに対抗するなぞおこがましい。今まで勝利しか得なかった、勝にのみ価値を見いだせなかったそんな甘ったれた幸運な人生しか体験してこないで

 

負けも不条理も不幸も罵倒も挫折も皮肉も別れも裏切りも失敗も恐怖も憐みも妥協もしる人間と対等であろうとするな

 

そもそも勝負にすらなってねーンだよ

 

常に底辺を彷徨い、周りから隔絶されたボッチ舐めんなよ

 

 

「生まれも育ちも関係ない、代表候補生だろうが一般人だろうがそれこそブリュンヒルデだろうが負けた奴は常に勝者よりも弱者だ。世の中を見渡してみろ世界は敗者を受け入れるほど優しくはない」

 

 

「‥‥‥」

 

 

「どんな努力も才能も負ければただのゴミクズだ。・・・オルコットお前は俺に負けた時からずっと俺より弱い。お前は見下した男より、取るに足らない男より、忌み嫌う金の亡者とかいうやつよりも最低な男より弱いんだよ

 

いくら理想(・・)の自分を演じようが、今の自分を受け入れられないクソ餓鬼がいきがってんじゃねーよ」

 

 

俺は彼女の顔を見ることなくそのままアリーナを後にする。

 

 

 

少年が去った後には、一人静かに涙を流す少女の姿があった。それは貴族というにはあまりにみすぼらしく情けない顔で、高慢さも自信すらも消失し声もなく涙する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただの少女がそこにいた

 

 




上記の部分でなんとなく結論がでました

結果私の責任でしたすいません。せっかく感想を書いてくださった皆様に申し訳ないと心から謝罪いたします。

もしよろしけえればこれからも見ていただければ幸いです


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IS 転校生は幼馴染 9

そういえばふと、ランキングを見たらなんと乗っていた!?

もう自分の作品が乗ることはないと思っていたが‥まさかのまさかだった

これからも皆さん応援のほどお願いします。

感想も待ってマース。






学生寮の一室、その部屋の住居人ティナ・ハミルトンは購買部で買ってきたキノコの形をしているチョコ菓子を食べながらルームメイトである一人の少女に目を向け、首を傾げていた。

 

 

この少女はつい先日1年2組に転校してきた子だ。それで一人部屋だった私のところにルームメイトとしてやってきた。

 

IS学園は入学するだけで大変難しく、その中でも自分のような日本以外から来た留学生の数は少ない

 

それにはもちろん理由はある。例えば、言葉の弊害

 

ISの開発者が日本人であることからIS関係の多くの論文などは日本語で記されている。世界共通語は英語であり日本語に精通した外国人というのは結構少ない。その上、日本語は世界難題語学の一つとも言われている

同じ言葉で読み方や意味が違っていたり、ひらがな、カタカナ、漢字にローマ字、英語となんかやたら種類がある。英語なんか和製英語というよくわからない使いまわしの言葉もあるわで頭がこんがらがる

 

その上、IS学園は何処の国にも属さない治外法権となっているが領土は日本であり買い物一つ行くのにも日本語は必須なのだ

 

読み書きだけでも大変なのに、それにプラスして日常会話とか手が回るわけがない

幼いころから日本の言葉に触れていればいいのだろうけど、そんな者は稀だ

 

国ごとに違えどもIS適性試験は、十代を越えてからおこなわれる。

 

なので仮にISの適性が高くともそこから学園の入学に向け勉強するのには4~5年くらいしか時間がない

ただでさえ難しいISの勉強、それに加え頭を酷使する日本語の勉強、その他普通の一般教養etc――

 

 

普通に考えて並大抵の人間なら無理な話だろう。脳の容量を超えている

 

逆に日本人は有利である。外国人がひらがなの読み書きを覚えている間、ISの勉強に集中できるのだから。必然的にIS学園に外国人が少なくなり、逆に日本人の割合が大半を占めるのだ

 

 

 

 

そんな中での転校生となれば興味もわく

 

短い歴史の中でもIS学園はあまり心が広い学校とは言えずむしろ軍隊に近い

 

遅刻やサボりはもちろんNG、勉強についてこれないものはせっかく入学しても1年としない間にやめていくものも多いらしし

 

中途半端な時期の転校生とは珍しく、恐らくは自分と同じようにどこかの国の代表候補生で、何らかの事情で入学に間に合わなかったところを国が無理矢理入れ込んだのだろう

 

まあ、いきさつはどうあれ数少ない外国人仲間が増える事は望ましい。一人部屋も快適だったが、この豪華すぎる部屋に一人というのも結構寂しいし

 

正直いって割と楽しみである

 

 

 

ルームメイトになった少女鈴は、若干小柄だがその性格は非常にいい。活発で明るくルームメイトになったその日の内に友達になったレベルだし

 

そんなルームメイトであり友達の彼女は数分前に部屋に戻ってくるなり制服のまま布団を頭からかぶってダンゴムシのように丸まっている

 

 

一体なにがあった‥‥…?

 

 

放課後になり初めに戻ってきた鈴が、朝登校する時と違い体中に包帯やら絆創膏がある事には驚いたが、本人はまったく気にした様子がなく明るかったので、まあ大丈夫か?と思いスルーした。

 

そしたら財布と洗濯したてのほぼ新品タオルを持ち、瞳に炎を揺らしながら部屋を出ていった。その時なんとなくどこに行くのか聞いたら

 

 

「ちょっとあの唐変木のウスラトンカチな勘違い男の誤解を解いてくるのよ。フフフ・・・」

 

 

「そ、そう・・・頑張ってね」

 

 

「ええ、少し遅れるかもしれないから先に寝てていいわよ・・・フフフ待ってなさいよ一夏!」

 

 

などと据わった瞳で言っていた。深く聞いてはいけないと私の本能が呟いたので黙って見送ることにしたが、数分すると行く時とは打って変わり耳まで・・・というより顔全体が真っ赤になり頭から煙が立ち込めてる鈴が帰ってきた

 

 

一体何があったの!?

 

 

尋常ではない様子の鈴に何事か問い詰めると、ボンッという音と共に顔から大量の煙を発生させすぐさまベットに潜っていった

 

それからずっと、布団にこもり

 

 

「~~~~~~~~~~~~~~ッ!!!!」

 

 

などと、奇声をあげながらもぞもぞとしている

 

私は手に持った空の箱をゴミ箱に捨てながら、次にコアラの形をしているチョコ菓子の箱を開け口に放り込む

 

本当に何があったのか?

 

疑問に思いながらも今食べたやつが先ほどのものよりおいしいと吟味しながら、悶える友人を見つつもぐもぐと食べ続ける

 

 

今度は、カントリー的なマムのうようなお菓子を食べようと心に誓い夜は更けていく

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

第3アリーナからの帰り、オルコットに付き合っていたら、家に帰るには遅すぎる時間になっていたので仕方なく今日は、学生寮に泊まる事にした

 

この学園に来てから一度も自室となっている部屋に行ってないのでそこがどこだか分からないが、確か一夏が1025室とか言ってたし俺も同室だろうと思い学生寮の廊下を進む

 

部屋番号が1000台に入ったところの廊下を進み、流し見ながら25の番号を探していると、目の前に生まれたての小鹿がいた

 

 

「・・・何やってんだお前?」

 

 

「お‥おぅ‥は、八兄・・・」

 

 

生まれたての小鹿もとい一夏は壁に両手を付き内またでフルフルと震えながらおぼつかない足取りでゆっくりと一歩一歩と進んでいる

 

声をかけると振り向き、振り向いた顔は真っ青で若干涙目だ。声もかすれ気味のうえ覇気がない

イケメンといえどこのような状態だと全くイケてないな。むしろイケメンだからこそ情けない感が半端ねー

 

 

「ハハハちょ、ちょっとな・・・八兄こそどうしたんだ?いつもは真っ直ぐ‥家に帰ってるのに‥」

 

 

「別に、たまには寮で寝てみようと思ってな。お前の部屋って1025であってるか?」

 

 

「お、おう‥ここをもう少しいったとこの部屋だぜ‥」

 

 

話ながらも体を震わす一夏を無視して、その隣を通り過ぎ先を進む

 

そこでふと、後ろを振り返り一夏を見て考える。こいつに何があったかは知らないが今日は、というかいつもだけど一人で寝たい気分だ

 

そうするとこのイケメン(笑)状態の一夏は非常に邪魔だ。だからと言って部屋意外に寝る場所もない‥‥よし、ここは仕方がない

 

 

「一夏、ちょっとこい」

 

 

「?」

 

 

手招きしながら一夏を呼ぶと頭にハテナを浮かべながらよちよちと歩いてくる。

 

 

「どうした‥んだ?」

 

 

「まあ、あれだ。とりあえず恨むならオルコットを恨め」

 

 

「え?セシリアがど――――ッッッ!?!?」

 

 

射程範囲に入るや否や俺は、一夏の急所(股間)めがけて思いっきり足を振り上げる

 

効果音にするならキーンとかチーンという愉快な音をたてたであろう蹴りが炸裂すると、一夏は前かがみのまま倒れ伏す

 

横から覗く顔は先ほど以上に顔色が悪く、白目を剥いており口からはブクブクと白い泡が出ている

 

完全に意識がない事を確認し、ポケットの中より部屋のキーを抜出しその場を後にする

 

え?もちろん一夏は放置だよ?

 

まあ、気温も生暖かい感じだし風邪はひかないだろ‥‥多分

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、邪魔者もいなくなったしこれで一人で寝る事ができる。と思った矢先の事だ

 

 

「なぜ貴様がここにいる!?」

 

 

それは俺のセリフだ

 

 

 

1025室の扉を開け中に入るとそこにはなんとクラスメイトであるモップさんがピンク色の浴衣を着用していたのだ

 

髪型も普段のポニーテールではなく髪を下ろしているし、ふとその紙や頬の若干の赤るみを見るとつい数分前まで風呂に入っていたと予想できる

 

ここで問題だ。この部屋は学生寮唯一の男(俺は家通いなので除外)一夏の部屋であり、外は最新式の電子ロックで侵入するには扉の破壊か、キーを使わなければまず不可能。俺はロックのかかってる部屋に一夏のキーで侵入した。

 

では、このモップはなぜここにいる?

 

答えは簡単、それはこの部屋のもう一人の主がこいつだからだ

 

 

「・・・もう一発蹴っとけばよかった」

 

 

女子と同棲していることが発覚したイケメン(怨)野郎の股にもう一発くらいレールカノンをくらわし再起不能にしてやろうかと本気で考えていると、目の前のモップは肩を振るわし次の瞬間には立てかけてある竹刀を手に取りこちらに向け構える

 

 

「無視をするな!答えろ、なぜ貴様がここにいる!!」

 

 

激怒しながら今にも殴りかかってきそうな勢いで竹刀を構えるモップ

 

おいこら、なんだこいつ。いきなり人に凶器向けてきたぞ。

これが最近のキレやすい若者なのか、だとしても沸点が低すぎないか。普通一応クラスメイトのやつにこんな態度取るか?

 

こいつ絶対友達いないだろ

 

 

「なぜも何もお前の方こそなんでいんだよ。ここは一夏の部屋だろ」

 

 

「ここは一夏と私の部屋だ!分かったらさっさと出ていけ!」

 

 

あ、だめだこいつニホンゴガツウヨウシナイヨ、ワーオ!

 

 

いけないいけないあまりの事につい外人風になっちまったぜ。あん?外人を馬鹿にするなって?

 

知るか、こちとら根っからの日本人だ。日本に来るなら日本語くらい勉強してこい

道端でいきなり声をかけられたと思ったら自分より背の高い外人が英語でなんか言ってんのて凄い怖いんだぞ

 

地図持ってるし多分道を聞いてるんだろうけど「の、ノーイングリッシュ、ジャパニーズOK」とかっていっちゃうだろうが

 

なんかOKだけ妙に発音いいし、言った後に妙に恥ずかしくなるしで散々だこんちきしょう

 

 

「何思春期の男女が同じ部屋で寝泊まりしてんだよ」

 

 

「し、仕方ないだろ!部屋の空きがな仕方なく同じ部屋で過ごしてるだけだ。仕方なくだぞ!」

 

 

「仕方なくじゃあやるなよ。男女7歳にして席を同じうせずっていうことわざ知んねーのか?」

 

 

「そ、それくらい知っている!!」

 

 

なんか今、微妙に反応が遅れたな

 

ちなみにこのことわざ最近では席を同じが同衾とかで言われがちだが正しくはこうらしい

まあ、両方とも同じ布団で寝るという意味では同じだけどな

 

 

「知ってんならやるなよ。これだからビッチは・・・」

 

 

「誰が、び、び、ビッチだ!!」

 

 

モップは、顔を赤面させ俺の発言に食い入るような否定をする。

 

ここで汚い大人からの若者に向けたアドバイス

女子高生とかに「お前ビッチぽいな」とかいうと大体6割がキモイ物を見るめで見てきて、2割が「は?」とか威圧してくる。残りの2割がこいつみたいな反応をするが

 

断言しよう。上2つはともあれ最後のやつは高い確率でムッツリ耳年増処女である。

 

なので、もし周りにこういう反応をする女子がいたら興味津々の初物だ。積極的にアプローチして告白すれば、最終的にクラス内にその話が出回り女子からは「まじないわー」「自分の顔とかみえないわけ、あいつ?」「○○さんがかわいそうだよ~・・・」なんていう罵倒や生理的に受け付けないような物を見る視線を3年間くらい続けられる

 

これで君もボッチの仲間入りさ!歓迎はしないけど強く生きろよ。ガンバー(棒)

 

 

この情報のソースは・・・ソースは企業秘密だ。個人情報保護法とかプライバシーの侵害とかいろいろあるしな。でもかなり信用度の高い情報だとは思ていてくれ

 

 

「くっ・・・貴様は昔からそうだ!ふざけた言葉で私をおちょくって!」

 

 

昔・・・

 

恐らくそれは俺がここに来る前にいた織斑 八幡の話なんだろうけど。今の俺にはお前なんかと話した記憶はない

 

 

「ふざけたも何も本当の事だろ。男が帰ってくる部屋で浴衣を着てスタンばってる女・・・どうみてもただのビッチじゃん。たく、うちの弟をたぶらかすなよな」

 

 

「ええい!私はビッチなどではないッ」

 

 

すると箒は持っていた竹刀を振り上げる

 

 

「はあぁッ!!」

 

 

剣道でいう面打ちが俺の脳天に直撃する寸前、竹刀は動きを止める

 

 

「な!?こ、これは・・・!!」

 

 

はい、皆様おなじみ停止結界です。

 

俺は右腕部分にのみ部分展開させたレーゲンを使い攻撃を止める

 

 

さてさてこのヤロウ

 

脅しならまだしも本気で打ってきやがった。今の勢いじゃあ寸止めもできないだろうし、もしもこれが生身の人間だったら本気で危ない所だ

 

直情的にも限度がある。仏の顔は2度まで殴って許してくれるが、俺は1回どころか未遂でさえも許しはしない。受けた悪意にはそれ以上の恨みを募らす。これぞボッチの極みの一つ。だから同窓会とかであのころはまじ悪かったて~みたいな事を酒を飲みながら言ってきても絶対に許さない

 

それ以前に今まで一度も同窓会とかに呼ばれたことなかったは・・・

 

 

マジ許すまじモップ!!

 

 

「ええい!離せッ正々堂々勝負しろ!!」

 

 

いきなり生身の人間に奇襲を仕掛けてきたやつが何をほざいていやがる。つーか、こいつ反省とか微塵もしてねーし。下手すると人殺しになる5秒前だったんだぞ、お前

 

まあいい、今日の俺は寛大だ。というより早く寝たい

 

ので、動けないこいつを2組あるうちの一つの布団で簀巻き状態にする

 

 

「何をする!というかどこを触っているッこの変態!!」

 

 

無視無視

 

かなりボリュームのある2つの膨らみがヒット・アンド・アウェイしているが無視だ無視

 

 

荷造り用のひもでまきまきと

 

そういえば昔、い~と~まきまき、い~と~まきまき、ひーてひーてバンバンバンとかってあったな。最近じゃあすっかり聞かなくなったけど

 

 

「はーなーせー!!まくな!ぐぁッ‥強く巻きすぎ‥だ!ゆ、ゆるめろッッ」

 

 

離すのかゆるめるのかどっちだよ。どっちもしないけどな

 

さらに強く絞めて、と

 

 

俺は簀巻きになったモップを展開したワイヤーブレードにて部屋の外に押しやった。何気にこの装備これが初使用だな

 

 

「うああああああああああ!?」

 

 

廊下まで転がったモップを見下ろす。

 

モップは目をまわし視点があってない目でこちらを睨みつける。だがそんなのどこ吹く風というふうに一言

 

 

「じゃあな、馬にでも蹴られて死んでろボケ」

 

 

「なんだと!!」

 

 

おっと、そういえば最後の仕上げを忘れていた。

 

流石にこのままでは何かといかんので俺は一度部屋る

 

 

もう一度廊下に出ると、持っていたガムテープでモップの口を塞ぎ再度部屋に戻る

 

 

「!?~~~~~~ッッ!!!」

 

 

流石に、このままではうるさくて近所迷惑もとい俺の睡眠妨害につながるんでな

 

部屋に入ると中からロックをかける。

 

そのまま俺は体をベットに預けすやすやと寝息を立てる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

一方そのころ

 

 

「‥‥‥来ない」

 

 

いつも八幡が家に帰るのを阻止している(成功したことは今だない)織斑 千冬は、今日も校門前で弟が来るのを待っていた。

 

 

 

 

一人悶え

 

一人気絶し

 

一人簀巻きで

 

一人安眠

 

一人待ちぼうけ

 

 

それぞれの夜はさらに更けていくのであった

 

 

 



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IS 転校生は幼馴染 10

もうなんか誰だこれ?状態ですが気にせず見てください

とうとう無人機との戦闘です。戦闘シーンとか苦手なので何か違和感がありましたらご意見お願いします

そして、次回はなんとお待ちかねのあの人も登場しますよ~

では本編どうぞ




今日はクラス代表戦当日

 

そのため、1年の生徒は皆アリーナにて試合を見るため待機している。

 

そうつまり今日は、合法的にずる休みができる日という事だ。本来ならこの試合を通し、代表者は自身と周りの力比べ、観衆は先達者の動きを見てこれからに生かすという目的がある

 

なので、1年は皆強制参加を義務づけられている。

 

 

それでも休めむ時には意地でも休むのが俺である。

 

という訳で今俺はIS学園内にある雑木林で日向ぼっこをしている。

今頃一夏は1組の代表として奮闘でもしているころだろう。そんな弟の姿を脳裏に想像させ透き通るような青空に目を向ける

 

すると、空にはなにやら影が生じ段々と近づいてきているように思う。

 

始めは鳥かなんかかと思ったがシルエット的に違う。しかもその影は2つ

 

一つは、全身真っ黒な人のような形をしており真っ直ぐに落ちていく。あの方角はアリーナの方か

 

そしてもう一つはこちらの方向に向かいどんどんやってくるような・・・

 

真上までやってきてようやく影の姿がはっきりとわかる。あれは――――――

 

 

「・・・人参?」

 

 

地面を揺らす振動に巻き起こる土煙。

 

煙の先には地面に突き刺さる巨大人参のような物があった

 

今日の天気は晴れ時々人参だったけ・・・?

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

八幡が巨大人参と遭遇する少し前、クラス代表戦が行われているアリーナでは1組と2組の代表戦が始まろうとしている

 

両者共に専用機を保持している事と、一人は中国の代表候補生、一人は世界に2人しかいないISを動かせる男性操縦者であることも話題を呼び

 

このアリーナの観客席は異様な盛り上がりを見せている。

全員女子という事もあり、噂は噂を呼び2人の様々な情報が飛び交う

 

どちらが勝つか、こちらの方が有利だとか、日本の手がけた機体と中国の機体どちらが優れているだとかなどなど・・・

 

憶測、予想をたて今か今かと試合が始まるのを待っている

 

しかし、

 

 

観客の盛り上がりとは打って変わり本人達のテンションは非常に低い

 

すでにアリーナ中央にて待機している鈴の目元は酷いクマができており顔色も悪い。

それもそのはず、なんせあの『一夏ポロリ事件』があった日より今日まで睡眠はおろか碌に食事もとれていない状況が続いている

 

現在のコンディションは同室のティナ・ハミルトンに試合に出るより病院に行けとまで言われるレベルで最悪と言っていいだろう

 

ただ、鈴はどうしてもこの試合に出なくてはいけない理由があり不調だと言っても頑張って試合に臨むほかない

 

 

(ああ・・・気分悪い。でも頑張んなきゃ、結局一夏が誤解してるまま今日まで来ちゃったし・・・それに、あの事も謝んなきゃだし―――――~~~ッ!)

 

 

鈴がこの試合に臨む理由、それは一夏のしている鈴には好きな人がいるという誤解をいい加減に解くためである。

 

なんやかんやこの1週間顔を合わせる事が出来なく、一夏の事を避けていたため今だ誤解は健在

 

仮に鈴が1組なら嫌が負うにも顔を合わせるので、話す機会もあっただろうが残念なことに彼女は2組で、避けようと思えば一日中顔を合わせないことぐらいできるのだ

 

ちなみに、鈴はいまだにあの時の事を思い出すと顔が赤面し恥じらいを見せている様子で、人によっては初々しくも感じる乙女な姿である

 

しかし、そんな事を知らない彼女のルームメイトは突然顔を赤らめ首を左右に振る彼女の姿を見て心配を募らせているのであった

 

 

 

そしてもう一方、こちらはいっそ鈴より状態が悪い。

 

あの『2年ぶりにあった幼馴染の女子にあられもない姿を目撃され、男の尊厳に関わる重大なダメージを心身共に受けた事件』と『なぜか実の兄に股間を蹴られ朝まで放置された事件』の後に残った後遺症が思いの他酷いのである

 

まずは軽い記憶障害、あの衝撃的な事件の翌日に発見された一夏は、放課後から目を覚ますまでの記憶の一部を損失していた

 

主に、箒との模擬戦より後の記憶とかがすっぽりなくなっている

 

故に何があり自分が寮の廊下で寝ていたのかが分からず、さらに同室の箒も翌朝布団でぐるぐる巻きにされた状態で発見されたため寮の中はちょっとした事件騒ぎになっていた

 

皆困惑していたが、目元にクマを作った不機嫌度MAXの織斑先生の一喝により騒ぎは沈静化したのである

 

そんな中目覚めた一夏の状態は悲惨と言ってもいい物だった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『相手の機体は甲龍、織斑君と同じ近接戦闘型のISです』

 

 

白式のスピーカ越しから聞こえる山田先生の声に合わせ目の前に目の前のディスプレイに目をとおす。

 

相手の機体性能などを頭に入れていると、隣の方から声がかけられる。

 

 

「いいか一夏!固くなるな、練習と同じようになれば勝てる相手だ」

 

 

クラスメイトであり幼馴染の篠ノ乃 箒からの激励だ。内容はともあれ人からの声援というのは、力になるし心強い

 

そんな、彼女に俺は優しく微笑みかけ一言

 

 

「・・・箒さん、物事の本質とは勝ち負けではありません。大切なのは自分を制する事です。己を高め常に精進する。そうして初めて人は一歩先に進めるのです」

 

 

「‥‥‥」

 

 

 

 

 

 

これが、あの日を境に織斑 一夏に起きた後遺症である。

目覚めた彼はなんというかつきものが落ちたような、悟りを開いたような感じになっている。

 

それ以後、なんだかお坊さんや賢者みたいな事を言うようになり、そのあまりの変わりっぷりに1組は大いに混乱していた

 

その変わりようは、朝5時に目覚め部屋と寮の廊下を掃除しその後朝食までの間に精神統一として座禅を組み

 

食事のときは、恵みを与えてくれた自然、作物を育てた人々、食事を作ってくれた人に感謝しながら手を合わせ、食事が終わり食器を返すときには作ってくれた人に感謝の意を伝え一礼

 

夜には、学校の勉強、自主トレ、そして精神統一をした後夜9時には必ず布団の中にいる。そんな生活をこの1週間しているのである

 

 

 

 

 

 

「・・・その、まだ治らないのか?」

 

 

「箒さん、治るも何もこれが本来の私なのです・・・・・・以前と比べると確かに変わっているでしょうがこれも私なのです。不思議と今は一切の邪念を捨て去ったような清々しさすら感じています」

 

 

フフフと笑みを浮かべる一夏に対して、箒は額に手をやり頭を抱えている

 

 

「その、なんだ・・・頑張れよ一夏・・・」

 

 

「ええ、私にできる最善を務めます。それでは行ってきます箒さん」

 

 

「‥‥‥」

 

 

箒は飛び立つ一夏の見送った後、盛大にため息を吐き、もう一度頭を抱えるのであった。

 

 

 

 

 

 

その後の2人の試合は、セシリア戦と打って変わりガンガン攻めようぜのスタイルを捨てた一夏が冷静に刃を振るい

 

鈴は、一夏の顔をまだ直視できず言葉すら交わせておらず、体調不良も重なり彼女本来の戦闘スタイルが取れずにいた。さらに覇気も感じられない

 

そんななんやで2人の試合は特に見せ場もなく粛々と進行していった

 

 

 

 

試合も終盤に入りお互いのエネルギーも半分を切っている。戦況は衝撃砲を展開する鈴がやや優勢という感じだ。

 

ただし、一撃必殺がある白式相手に調子の乗らない鈴は攻めあぐねっている。

 

衝撃砲で牽制しながら距離を維持する鈴に、イグニッションブーストをだす機会をうかがい慎重になっている一夏。今や試合は消耗戦の体をなしていた

 

すると突如として紫色の閃光がアリーナのシールドを突破し地面に大穴を開け黒煙を巻き上げる

 

 

「!いったい何!?」

 

 

「くっ・・・これはっ」

 

 

戦闘をしていた鈴と一夏は爆炎の衝撃で、吹き飛ばされた体を機体制御で制し爆発の起こった場所に目を向ける

 

突然の事でほかの観客達は何が何やらという感で唖然と爆心地を凝視し、管制室にいた織斑先生、山田先生、箒の3人も一瞬反応が遅れてしまう

 

だが、まじかでその衝撃を受けた一夏はいち早くこの事態に考えをめぐらし答えを導き出す

 

 

「これはっ・・・敵襲!!」

 

 

燃え盛る炎、砕け散る大地、巻き起こる黒煙、その中央に立つ黒き異形なるISを一夏はその目に捉える

 

 

「鈴さん!試合は一時中断です」

 

 

「ええ分かってるわ・・・ていうか鈴さん!?」

 

 

今日初めて言葉を交わした一夏の喋り方や呼び名に驚き声を上げ

 

 

「来ますよ!」

 

 

「え?‥うお!?」

 

 

そんな2人向け放たれた紫色のビームが押し寄せる

 

紙一重で躱すもその圧倒的な威力に戦慄を覚え、細かい事はとりあえず後にすると意識を切り替えた

 

 

「何なのよあいつ!?」

 

 

「所属不明のIS、桁違いの火力を持っており私達に敵対している。というくらいしか今のところ分かりません」

 

 

「とりあえず敵って事ね‥‥‥‥‥やっぱりあんた喋り方おかしいわよ!?」

 

 

鈴は、どうしようもない違和感を感じ切り替えた意識を若干戻す。

この異常事態に妙に冷静だったりと今の一夏には、違和感しか感じられないので仕方がないである

 

 

「そんな事より」

 

 

「そんな事ってあんたね・・・」

 

 

「どうやらあのISの狙いは私にあるようです。先ほどあのISにロックされました」

 

 

「!!」

 

 

自分にとっては結構重要な事なのだが、一夏の一言を聞き今度こそ意識を完全に切り替える

 

 

「とりあえず話しかけてみる?・・・所属不明って時点で無駄だと思うけど」

 

 

「と申されましても、計2度のビーム攻撃それもアリーナのシールドを容易に破壊する威力です。初めから敵対の意志しか感じませんが・・・」

 

 

「でしょうね。でも時間稼ぎくらいにはなるんじゃないの。そうすれば学園側も応援をよこすだろうし」

 

 

「ですね。・・・そこのISの方!私達に敵意はありません。何が目的かは分かりませんが話し合いで解決しませんか!」

 

 

「なんでそんな丁寧に聞いてんのよ!」

 

 

だが、相手側からの返答は勿論なく代わりに特大のビーム砲が襲ってきた

 

一夏と鈴はそれぞれ上空に加速しながらそれを回避する

 

 

「やっぱり駄目みたいね・・・」

 

 

すると管制室の山田先生より通信が入る

 

 

『織斑君、鳳さん!今すぐ非難してください。すぐに先生方が制圧に向かいます!』

 

 

「・・・申し訳ありませんがその要請を承諾することはできません」

 

 

『な!?』

 

 

「あのISの狙いは私です。ここで私が逃げれば被害が拡大します。せめて非難が終わるまで何とかくい止めます」

 

 

『そ、それはそうですけど・・・でも!』

 

 

一夏は、山田先生の通信を切り隣にいる鈴に目を向ける

 

 

「そういう事なので鈴さんは始めに退避を―――」

 

 

「誰に言ってんのよ。私も残るわよ。何よりあんたには色々と言わなきゃいけないことがあるんだし」

 

 

「・・・ありがとうございます。!っ来ますよ!」

 

 

そんな2人の会話を邪魔するようにまたも紫色の閃光が駆け抜ける

 

 

「行くわよ一夏!」

 

 

「ええ!参ります!」

 

 

ここに異形のISと鈴、一夏(賢者モード)の戦いの火ぶたが切って落とされる

 

 



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IS 転校生は幼馴染 11

予想以上に長くなり、途中で切ったためあの人が登場できなかった!?

次こそは登場させるので少しお待ちください





「あーッ、もう!なんなのよこいつ、馬鹿強いじゃない!」

 

 

「武装だけではなく操縦士もかなりの腕のようですね。隙どころか気を抜けばこちらが落とされてしまいそうな勢いです」

 

 

異形のISとの戦闘は、熾烈をきわめている

 

特大のレーザー攻撃を躱したら、次に待っているのは無数に展開されるレーザーの雨

始めのものより格段に威力は下がるが、数が多く避けるのがやっとの状態、さらには真正面から拳を出してきて近接戦闘を仕掛けてくる

 

2人はそれぞれ距離を保ち空を縦横無尽に駆け巡ってそれを躱していくが、決定打に欠ける

 

鈴の持つ第3世代武装である衝撃砲も牽制以上の効力を持てずにあぐねっている

 

 

「何より、あの腕が厄介ですね・・・ただ殴りかかってくるのか、ビームが出るのか予測が付きませんし」

 

 

「腕がこっちを向いたら射程からそれる必要があるし、そのせいで攻めきれないのよね・・・」

 

 

「あの機体には所々ビームの発射講があります。ですが、アリーナを破ったのは十中八九あの腕のレーザーでしょうね」

 

 

「・・・あんた妙に冷静よね。こんな状況で」

 

 

「焦っても仕方がありません。短気は損気、常に平常心を心がければ世に起きる全ては小事となるでしょう」

 

 

なぜか説法まがいの教えを説いてくる一夏に対し妙に頭痛がするが、どうにか戦意を保ち敵ISを見る鈴

 

正常道理には、到底思えない一夏の平常心と反比例するように一夏の違和感が強まり苛立ちが増す鈴

 

さらに、強敵から送られる物言わぬプレッシャーが重なり元々本調子ではない鈴の精神は著しく消耗していった。

 

今の所彼女の受けているダメージの半分以上は一夏のせいによるものだ

 

 

「一夏、あたしが援護するから突っ込みなさいよ。武器それしかないんでしょ」

 

 

鈴のいうそれは概ね正しいだろう。衝撃砲がある自分とブレード一本の一夏がタッグを組めば一夏が前衛、鈴が後衛となる。もしくは2人して突っ込むかのどちらかしか戦闘を選べない

 

相手は強力なうえ小回りも効く。なら、まだエネルギーが残されてる今の内に少しでもダメージを与えられれば勝率は遥かに上がるだろう

 

何より一夏の零落白夜が決まればそれだけで勝つことができるのだし

 

 

「いえ、それは止しましょう」

 

 

が、一夏はさも当然とその提案を袖にする

 

 

「なんでよ!まさかあんた怖いとでもいうんじゃないでしょうね!!」

 

 

今まで、一夏の違和感もありなるべく一夏の態度に触れないようにしてきたが、流石にこれには鈴も激怒する

 

この状況下で鈴の選択は勝つために必要な最善策とも言っていい。

 

ただでさえこちらは、不調と異状の即席コンビなわけだし先ほどまでの戦闘でシールドエネルギーも半分以下だ

 

こんな場合で戦闘を長引かせればジリ貧になることは目に見えている。なので多少の危険を犯しても速攻するほかないのだ

 

確かに、自分が立てた作戦の癖に危ない事は相手に任すという事には後ろめたさも感じるが、そこは甲龍と白式の都合状しょうがない

 

甲龍は他のISと比べれば近接、中距離での総合力は高い部類だが確実に攻撃を重ねる事を目的とした燃費と安定性を重視したISで、一撃必殺には向かないのだ

 

逆に白式は真逆に燃費が悪い短期決戦型ISで、武装上の問題もあり長期戦闘はできない機体である。

 

それを考慮した上での作戦提案だったのだが、一夏はそれを却下した

 

 

「もちろん恐怖も感じていますが、一番の理由は相手の武装です。今まで見てきた武装はレーザーだけしかありません。しかし、通常ISの武装は数種類あるものです。なら、敵はまだこちらの知らない武器を隠してる可能性があります」

 

 

「そ、それはそうかもだけど・・・あんたみたいにあれしかないかもしれないじゃない」

 

 

「その可能性もあるでしょうが、私が戦った両名はどちらも隠し玉を持っていました。私はそれにことごとく被弾してます」

 

 

セシリアのブルーティアーズのミサイル、鈴の甲龍の衝撃砲と2人の代表候補生との戦闘で一夏はしっかりと学習してるのだ

 

本来ISは2~3、多ければ数十種類の武装を持っているものであり、警戒するべきは見えているだけの武装ではない

 

むしろ、隠してる武装はより厄介である可能性が高い

 

 

「ただでさえ、アリーナのシールドを破壊するレベルのあのISが持つ隠し玉・・・最悪絶対防御とか貫通しそうですしね」

 

 

その一言に鈴は、唯でさえ青い顔をより青くさした。

 

一夏の言うのはあくまで可能性の話だが、よくよく考えれば信憑性がかなり高い。目的不明、所属不明、搭乗者不明、あの機体も見たことがない

 

そんな奴が学園襲撃なんて事態を起こしたのだ。

 

隠し玉の一つや二つ持っていてむしろ当たり前とさえ思えてしまう

 

 

そして、幸か不幸か織斑 一夏という男はそういう物にめっぽう弱く、今までの2つは全て被弾している

 

ミサイルの時は運よくファーストシフトして助かり、衝撃砲の場合はそもそも威力が弱めだったので致命傷になっていなかっただけでまともにくらえば即退場となっていてもおかしくない

 

 

「2度あることは3度ある。世の物事は繰り返し起こり失敗を重ねないためには用心が必要です。何より、仮に私が被弾して戦えなくなれば鈴さん1人でアレの相手をしなければなりません」

 

 

一夏は、敵ISに向ける視線を鈴にうつしいつくしむような微笑みを向ける

 

 

「大切な幼馴染にそんな危険な真似をさせる訳にはいけませんしね」

 

 

「・・・一夏」

 

 

その一夏の笑顔を見た時、鈴は思う。

 

態度や喋り方は違えどやはりこの男は、織斑 一夏なのだと

 

転校したてで学校になじめずイジメられていた私を助けてくれた男の子

鈍感で朴念仁で、とてもとても優しい頼りになる男の子

怖い姉と嫌な兄がいて、そんな兄弟の事が大好きな男の子

家計を助けるために毎日頑張っていたけなげな男の子

 

そして・・・初めて好きになった大好きな男の子

 

彼は何処まで行ってもどう変わろうと織斑 一夏なのだ

 

そんな当たり前の事を改めて認識した純粋無垢な少女は、こんな極限状態の中で優しい笑みがもれる

 

いままでの不調が嘘のように体は軽く

 

彼に感じていた違和感も今はどうでもいい

 

あのISから感じる恐怖なんてなんのその

 

 

「・・・まったく、あたしも現金な奴よね!」

 

 

今はただ、隣に好きな男の子がいる。その事実があれば彼女はいくらだって戦える

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「もしもし織斑君!織斑君!鈴さんも聞いてますか!」

 

 

そのころ管制室では、二人の教師が突然の襲撃者に対し事態の収集に動いている。

山田先生は、一夏と鈴に向け撤退の趣旨を告げるが一般生徒の非難が完了してない事からそれを却下され、そのまま通信が切られてしまい、必死の呼びかけも虚しく応答がない

 

 

「山田先生、2人の状況は?」

 

 

「・・・2人とも戦闘を続行中ですが、さっきまでの試合の影響でエネルギーが100を切ってます。それに鈴さんは試合前から体調がすぐれていなかったようですし、織斑君は‥‥」

 

 

一夏(賢者モード)の事はすでに学年のほとんどが知っており、もちろん教師である2人の耳にもその事は入っている。

 

むしろ、2人して面談をしたり脳をスキャンして異状がないか調べて、終いには精神科医にまで見せているほど一夏の事は熟知していた。

 

医者の話では、日常生活に問題なく突発性の精神異状の一種なので時間がたてば治るとのことだが、それでも今の一夏はとても正常な状態とは言えない

 

何ならこのクラス代表戦だって辞退することを本気で考えていたほどだ

本人の

 

 

「私一人の事で、大会に穴をあける事はできません。それは運営する学校、楽しみにしていた他のクラス、何より1組の皆や先生達の顔に泥を塗ってしまいます。・・・ここは私を信じて任せてもらえませんか?」

 

 

と、言う弁で承諾したのだ

 

不安はあったが、他の者にかかる迷惑と自分を信じろという頼み方では教師としては承諾しない訳にはいかなかった

 

体に異常があるならどんなに言われようと無理矢理止めるが、生徒と共にあろうと誓う心優しき教師である彼女たちには生徒の事を信じ、導くという使命がある

 

ここでそれを無下にすることは生徒の心を踏みにじる行為だ。そんな事彼女たちにはできなかった。

 

 

「・・・ここは本人達に任せてみるしかないでしょう」

 

 

「織斑先生!そんなのっ」

 

 

「もとよりここから何を言っても聞く耳を持たんよあいつらは。なら私達は2人を信じ、不詳の事態が起こった時の為に次の策を練る。それが私達にできる最善ではないかね、山田先生」

 

 

「それは・・・そうかもですが・・・あの、織斑先生」

 

 

そういい千冬はすぐそばにある、コーヒーに手をかける。その時、コーヒーの真横にある塩と砂糖と書かれた箱からスプーン一杯分の塩を入れ

 

 

「それ塩ですよ」

 

 

「‥‥‥」

 

 

そう指摘され頬を赤らめる千冬

 

彼女はもとより病気レベルのブラコン、そんなブラコンが大切な弟をそれも普通ではない状態の弟を戦地に送り出し平常でいられる訳がないのだ

 

内心では、焦りや最悪の事態を想像した緊張感などでハルマゲドンが起きている

 

立場上や人の目を気にして表に出してないだけで本当は今すぐにブレード一本担いであのISを一刀両断にしたとさえ考えているほどだ

 

 

千冬は今だ赤らめた頬をしてるも一つ咳払いをして話を切り替える

 

 

「山田先生、織斑 八幡・・・と、ほかの専用機持ちに連絡は取れますか」

 

 

一人だけ、具体的な名前が出たが山田先生は気にせず学園内の専用機持ちにコールをかける

 

 

「!・・・近くにいる専用機持ちの生徒にコールがつながりました」

 

 

千冬は内心でその報告を聞き安堵する。

あのISの所属は不明だが、目的は十中八九男性操縦者だろう。なら一夏以外にも八幡の方にも敵の間の手がさし迫っている可能性が高い

 

一夏は、本調子ではないと言え代表候補生1人と共闘しているため戦力としては幾らか信用できる

 

しかし八幡がもし一人の場合、というより絶対に一人でいるであろうけど、そんな状況であのレベルの相手をするとなれば相当危険だ

 

だから、気休めとはいえ無事が確認されたら随分安心できるのだが・・・

 

 

「でも、織斑さんにだけコールが繋がりません!!」

 

 

その時、千冬の持つカップには大きなひびが割れた

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに山田先生は一夏を織斑君、八幡を織斑さん、千冬を織斑先生と呼んでいる

 

 

 



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IS 転校生は幼馴染 12

最近、目頭が痒く花粉症になったかなと割と心配なLチキです

アンケートの締め切りはもうあと何話かで終わります。皆様ご協力ありがとうございました

集計結果はまた、活動報告でお知らせしますのでよろしくお願いします

ちなみに今のところの最高得票数は3票です!

締切まじかですがまだ続いてるので引き続きお願いしますね


では、本編どうぞ!




「‥‥‥」

 

 

「‥‥‥」

 

 

ボッチとは思考する存在だ。

本来、人と人との対人関係に費やす空気を呼んだり、機嫌を伺ったりする労力を全て自分一人の内心に向け、後悔や葛藤、黒歴史、うぬぼれ、失敗、妄想とを頭の中で混ぜ合わせ繰り返す。すると、そんな人生の汚点ともいえる恥部が歪んだ思想と完璧なまでの哲学に生まれ変わる。

 

それがボッチの誇る無駄な思考力であり、ボッチが一人でニヤニヤと笑っている原因である。

 

そんな事を考えて、世界のすべてを知ったぞ!みたいな中二思考に陥るからボッチはいつまでたってもボッチなのだが、それが分かっていてもやめる事ができない。

 

つまりは、

 

ボッチ=思考、思考=考える人、考える人=ボッチ

 

という、図形が完成する

 

かのロダンが太鼓判を押すレベルでボッチとは思考力に長けた存在なのだ。

 

 

30歳半ばまでボッチだった俺の思考力は相当な物で、マネジメントのドラッガーと並ぶといって過言ではない。いや、過言だな

 

俺には、野球部を甲子園に連れて行くだけの実力も意欲もないし

 

 

だが、そんな俺にもいくら考えても分からない事はある

 

ほとんどこける事が分かりきったような物なのに、なぜ漫画の実写化するだとか(映画は結構好きだけど)

 

リトさんは、歩いてこけるだけでなぜに女子の股にダイブするだとか

 

何処までも青い空から突然巨大人参のようなものが落ちてくるだとか‥‥‥

 

 

この世の中、分からないことだらけで嫌になってくるぜ。ほんと、嫌すぎて部屋から一歩も出ずに永遠と自己完結だけの人生を歩み本当のヒッキーになってやろうかとさえ思えてしまう

 

あ、今ヒッキーじゃねーや。織斑だからオッキーか・・・オッキーだと嫌だな。なんか中学生男子の朝の事情みたいな呼び方だし、却下だな。

 

 

「‥‥‥」

 

 

「‥‥‥」

 

 

さて、そろそろ現実逃避は諦めてこのどうしたらいいか分からないリアルと向き合うか

 

空から人参が振ってくるリアルってなんだよ?

異常気象にもほどがあるだろこれ

 

まあ、でもそれも人間が高度成長するために自然を顧みないでいた影響なのだろうからとやかく言えることでもないんだがな

 

なので、そんな異常気象の事は気象庁と地方実地団体に任せて、俺はエアコンの効いた涼しい部屋で一人読書して、熱めの風呂に一人でつかり、風呂上りに一人でアイスでも食べて素敵なGUTARA生活をエンジョイするとしよう

 

 

俺は、巨大人参に背を向けそそくさと早足でその場を後にする。

 

すると、巨大人参から明るい感じの女の声があたりに響く

 

 

『まってまって、無視しないでよ八君!』

 

 

ハチクン・・・?

 

そんな愛称で呼ぶ奴なんて、まさかこいつ俺の友達か?

 

ボッチだから違うんだろうけど、あまりに気安く話しかけるものだからついつい誤解しそうになったぜ。なんという巧妙に仕掛けられた罠だ・・・

 

俺じゃなかったら引っかかってるところだ

 

 

「生憎人参に知り合いがいないので人違いだ。野兎にでもおいしくいただかれて成仏して永遠に俺の前に現れないでくれ」

 

 

『優しさに見せかけた厄介払いしないでよ~相変わらず八君は容赦なさすぎだね!』

 

 

厄介払いという自覚がありながらこうもめんどくさいテンションで話しかけてくる奴に言われる筋合いはないと思う

 

というか、いきなり空から降ってきた人参に優しく語りかける奴の方が稀だろ。稀というか変だろ。

 

極少数や稀の中でも一人になれる俺ですらそんな行動ができる自信がない。そんな自信別にいらないけどな

 

 

が、この人参が俺の関係者という事は分かった。ただ、俺にはこんな人参の知り合いはいない。つまり、俺になる前の俺の知り合いという事か

 

しかも相当身近か、深く俺の事をしる人物。少なくとも愛称で呼ぶ程度には親交があったらしい

 

俺が集めた、というか観察した周りの状況を考慮するとこの世界にいた俺の性格は対人においては俺とたいして変わらないはずだ

 

そんな俺にこういうフレンドリーな知り合い、しかも女、がいるとはな

 

ただ・・・知り合いはもう少し選んだ方がいいと思うな。おじさん

 

 

こういった変人?変野菜?と関わると碌な事にならないぞ。ソースは俺、俺と関わって碌な目にあったやつってほとんどいないし

 

 

 

そうこう考えていると巨大人参は突然白い煙を発し真っ二つに分かれ、中から一人の女性が現れた

 

薄い青を基調としたフリフリのドレス。前にはメイドさんが着るようなドレスエプロンがあり、その肌は白人と見間違うほどに白い

 

特徴的な紫色の髪色に頭についたロボットのようなメカメカしいウサ耳

 

顔は間違いなく美人に分類されるが、どこか見覚えがあるような・・・

 

満面とまでは行かないにしても上機嫌なのか顔は笑っている。どこかその顔を見ると生前最後のほうは、何かと共闘する事があった某魔王に似ているオリファルコンでできている仮面を思い出す。

 

そして、この少女のような恰好をした女の醸し出す雰囲気が、俺の危機察知センサーと観察眼が告げている。

 

この女はただ者ではない

 

体つきはお世辞にもいいとは言えない。女性としての魅力なら腰つきくびれ巨乳と相当なものだが明らかに体重が平均値を下回っている

 

フリフリのドレスで分かりずらいかもしれないが俺の目をごまかすには至らない。にも関わらず、この女の体捌きは間違いなく達人の域に達しているかのようだ

 

俺自身、武術の達人とあった事があるわけじゃないから正確に分かるわけじゃないが少なくとも平塚先生や雪ノ下よりは上と分かる。

 

下手をすると千冬並みに強い可能性すらありえる

 

さらに、どこか陽乃さんを連想させるような腹に2重3重に何かを抱えており、それを笑顔で多い隠し決して外に出さない狡猾な笑み

 

肌を刺すようなこの場の空気に自然と緊張感が増す

 

 

「やっほろ~八君!皆のアイドル束さんだよ~ブイブイ!!」

 

 

「‥‥‥」

 

 

どこぞで聞いたような挨拶に、どう見てもイタイとしか思えないアイドル宣言をしながらダブルピースをしてくるこの目の前の女性に対し、俺は唖然とするしかなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

束、この名前は全世界の中で今現在、一番の有名人と言って過言ではない名だ

 

ISの生みの親にして天才科学者、ついた異名は『天災』

 

この、恰好も言動も明らかにねじが吹っ飛んでるような奴が噂に聞く天災とは、素直に度肝を抜かれた

 

それに、あの篠ノ乃 箒の実の姉というのだからその衝撃はさらに増す。常に不機嫌でやたらキレやすく、一夏の話曰く堅実というか固い性格の妹とは似ても似つかないという印象を受ける

 

 

まあ、兄弟だからといって性格が似てるなんてことそうはないんだし、そこは当り前か。比企谷家しかり、雪ノ下家しかり、川崎家しかりそれは仕方がない事なんだろう

 

むしろ、破天荒な姉と真面目な妹という構図は雪ノ下家の姉妹事情と重なる部分も多いか・・・

 

言葉のナイフで刺してくる雪ノ下と竹刀で殴りかかってくるモップ

 

・・・・・・

 

‥‥‥

 

駄目だ、どう考えても雪ノ下の方が良識的すぎる

 

むしろ篠ノ乃家姉妹が異常すぎるだろ。世界を文字道理変えた天災と犯罪者予備軍

 

 

この360°どこから見ても以上と分かる女に比べると

あの、あのッ雪ノ下 陽乃が良心的と思えてしまう。これは凄い事だ。まさに天変地異5秒前くらいにめちゃくちゃ凄い

 

しかもそれが良い意味の凄いでなく凄く悪いという意味の方なのだからなおさら凄い

 

おいおい、なんか変な汗をかいて来たぞ。どうなってんだよこれ

 

 

なんか今すぐ逃げ出したい衝動に駆られているのに足が全く動かない

 

ここまで、底が見えずどこまでも純粋に黒い人間がこの世にいるとかマジかと世界に聞きたくなる

 

それほどまでに、この女は常識外の存在だ

 

 

「あれれ~八君固まっちゃってどうかした?まさか、束さんに合えたのがうれしくてたまらずに意識がフェードアウトしちゃった?

 

ついに、あの難攻不落の八君がデレを見してくれたのー!やったー!

ほらほら、それじゃあ一緒に束さんオリジナルの挨拶をしようよ!やっほろ~」

 

 

「生憎、その挨拶ほかにしてる奴がいるんで」

 

 

「なんと!?まさか天才束さんと同じ発想を持った人間がいるなんて!驚き、モモの木、束さんだね~!」

 

 

どこまでも明るく、妙にハイテンションでマシンガンのように喋りつづける篠ノ乃 束だが、そんな彼女に一切の油断をできず未だなお緊張の糸を緩めない俺

 

端から見れば、不思議の国風のコスプレをしている美人と目の腐った高校生が笑顔とにらみ合いをしているなんともふざけた光景が広がっている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「八幡と連絡が取れないとはどういう事だ」

 

 

「どうやら、一部の場所にジャミングが発生しているようです!織斑さんはその地点にいる可能性が高いですが・・・詳しい状況は分かりません」

 

 

「くっ・・・!」

 

 

目の前で戦っている一夏の安否も心配だが、八幡の方も心配だ

 

あのISは火力こそ凄まじいがその戦闘力はさほど高くはない。何より零落白夜がある限りビーム兵器では、そうそう致命傷を受ける事もないだろう

 

代表候補生がそばにいるのだし数の理はこちらにある。今のところは2人とも防御と回避に集中しているから、エネルギーが切れるまでの猶予がある

 

しかし、八幡の方はというと安全どころか所在の確認すらできない始末・・・

 

あの八幡なら、人攫い10人くらいなら何とかすることだってできるだろうし、専用機がある分、普通の人相手なら敗北はない

 

だが、それで楽観はできない

 

 

今のあいつの学校での状況を考えれば、味方が近くにいる可能性は少なく、仮に誰かいたとしても八幡を助ける奴なんてそれこそ私達兄弟くらいしかいないだろう

 

 

そのくせ、あいつは目の前で理不尽な(・・・・)扱いを受けている人がいればそれが例え敵だとしても見捨てはしない

 

捻くれたあいつの事だから「別に助けるつもりなんてあるわけがない」とか「助けてやったんだから報酬をよこせ」なんて言いながらぶっちょう顔をするだろう

 

まあ、そんなアイツの心情を理解できる奴なんてそうはいないだろうし、本人にも悪いところが多々あるので自業自得ともいえなくはないがな

 

 

 

例え何があっても自分一人の力でどうにかしようとするだろう。実際にその力と悪知恵を兼ね備えてるから質が悪いし問題なくやり過ごせるだろう

 

 

でも、だからこそ心配なのだ

 

自分にない力を人とのつながりで補強する一夏と違い、八幡はただひたすらに一人で強がっている

 

いくら見栄えが取れようと強がりである事には変わりない

 

自分の正しさは、自分一人で証明できるが、他人の悪は自分一人では証明できない

 

 

「千冬さん!応援はまだなんですかッ早くしないと一夏が・・・」

 

 

先ほどまで共に一夏の試合を観戦していた篠ノ乃が声を張り上げる

 

 

「そうしたいところだが、これを見ろ」

 

 

差し伸べた先にあるのはアリーナの内部状況を管制しているシステムのディスプレイ

 

 

「遮断シールドがレベル4に設定・・・!?」

 

 

本来、テロリストなどの外部の敵から生徒を守るために展開される遮断シールドは、文字道理外部との接触を全て遮断する強固な壁だ

 

その中でもレベル4は上から数えて2番目に厳重なシステムで、コンセプトは武装したテロリスト50人を相手にしても数十時間耐えきることができるという物で生身の、それもか弱い女の力だけでこじ開ける事はまず不可能

 

 

「しかも、扉も全てロックされている」

 

 

「いったいなぜ・・・」

 

 

「敵ISの仕業だろうな・・・これでは非難どころか救援を送ることも出来ない」

 

 

自分で言ったことだが思わず舌打ちをしてしまう。

警備責任者として他の者にいらぬ気苦労を書けないため威風堂々としていなければいけない立場なのだが・・・まあ、このくらいは許されるだろう

 

 

ディスプレイに写る一夏は鈴と共にレーザーを回避し続けている

もう一つの端末は、いまだに連絡のつかない八幡に対しコールを続けている

 

 

 

どうか・・・どうか2人とも無事でいてくれ・・・

 

 



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謝罪

若葉の緑が目にしみる季節、皆様のますますのご健勝を心よりお祈り申し上げます。

 

皆様の心温かいご声援の元、これまで執筆をつづける事が出来、感謝してもしきれない思いです。

 

本日は、大変申し訳ないと承知の上ですが私の現在執筆している、比企谷八幡の異世界漂流記の今後について皆様に報告と謝罪をいたしたいと思います。

 

様々なご意見をいただき、私も深く考えたのですがこれ以上の執筆が困難になり削除することを決定いたしました。

 

私の過失により、このような結末になったこと誠に申し訳なく、深くお詫び申し上げます。

 

たくさんの励まし、応援のお声をいただいたのにこうなってしまったこといくら謝ってもあやまりきれない思いです。

 

身勝手であることは重々承知いたしておりますが、これからも応援していたければ幸いです。

 

どうかLチキは嫌いになっても作品は嫌いにならないでください!

伏してお願い申し上げます。

 

このような形ではありますがご報告とお詫びを申し上げます。

 

誠に申し訳ありませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、いう訳で!

 

『比企谷 八幡の異世界漂流記』は投稿を停止し、新しく

 

『比企谷 八幡の異世界漂流記。』がスタートします。

 

初心に帰りまた一からの投稿で、出直す決意をし、一か月ほどプロットを練り直し誤字脱字がないように気負つけながら

 

皆様により読みやすい作品ずくりをこころざしました。

 

元々が駄文製造機なのであまり期待に添える作品はできないと自負しながらも試行錯誤を繰り返しどうにか、見れる物になったと思います。

 

どうかまた不肖な私めにどうかお付き合いしていただければと勝手ながらも、思っております。

 

 

投稿スピードが遅くなり、また以前の投稿とさほど変化が無かったり全く設定を変えたりと、不平不満があるかもしれませんが、初めに謝っておきます。

 

 

まじすんませんしたッ!!!!

 

 

そんな感じにまたも駄文製造機、Lチキさんが呼ばれもしないのに帰ってきましたよ、皆さん!

 

あ、呼ばれもしないとか社交辞令言ってますが、ちゃんと皆さんの応援メッセージは確認しています!

 

本当にこんな私を多くの皆さんが応援してくれて感無量です!

 

メッセージを見るたびに頬を緩ませ、また精神的にダメージの来る事を言われるんじゃないかという恐怖にも耐えられ、また投稿することを決意しました!

 

本当にみなさんありがとう!

 

先の展開がきになる方には申し訳ありませんが、また1からお付き合いのほどお願いします。

 

内容は保証しませんが、少なくとも誤字脱字は少なくなってると思います!

 

 

それでは、また近日中に『比企谷 八幡の異世界漂流記。』の投稿を開始しますので、どうか見に来ていただけると嬉しいです。

 

ご感想の方もビシバシお願いします。もう、一度折れ掛けたので耐性がつき、そうそう折れる心配はないので辛口コメントも批判も何でもござれデス☆!

 

 

 

 

 

 

 

 

‥‥‥ごめんなさい、調子に乗りました。

 

出来れば、ハムスターやひよこなんかを愛でるレベルの応援をお願いします。

 

ガラスハートが割れ物注意なので、本当にお願いね

 

押すなよ、絶対押すなよ!みたいなフリじゃないんで、本当にマジで振りじゃないんで!

 

 

 

 

 

そんな訳で、またよろしくお願いします!

 

 

                                                           Lチキ



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