東方冒険禄2――なかなかチート主人公―― (遠山tsun)
しおりを挟む

~異変~

どうも!!遠山tsunです!!
これは東方冒険禄の二期なので、東方冒険禄の方も覗いていってください!!
それでは、ゆっくりしていってね~♪
キャラ崩壊は、あんまないかな?


僕は桜花妖人(さくらかようと)、天橋立(あまのはしだて)高校に通う一年生だ。

能力は《変える程度の能力》というまぁおおざっぱといえばおおざっぱなものだ。

 

そんな僕は今、(恐らく)未来の日本の、薄暗い森の中を走り回っている。

謎の女の子の声によると、僕の力と霊夢の力が必要で、幻想郷と日本の時間が離れすぎている、ということだそうだ。

 

そして、そんなこんなで日本のどこかの森に霊夢と一緒に飛ばされたはずなんだけど……

霊夢が見当たらない。それどころかさっきなんてワニの化け物が襲ってきたぐらいだ。

――ますます日本だとは思えない。

 

そう思うも、僕はとにかく走り回っていた。能力により、《霊狐》の劣化版を使用したから、体力がすでに切れていたのに、さらに走り回るから、今はもう心臓がパンチングボールのように跳ねている。

 

息なんて三メートル離れても聞こえるんじゃないかと思うくらい、荒く大きい。それでも、不安にかられて、僕は走り回っていた。

 

「――とぉ?――ぅとぉ?―――ようとぉ?」

「!!霊夢!?そこにいるの!?」

「ようと!?よかった、取り敢えず今そっちに行くから!!」

 

人影が見えたと同時に、霊夢の声が聞こえてきた。

霊夢に言われた通り、その場で回りを警戒しながら待つ。

 

はて、そういえばさっきの人影、少し小さかったような……?

 

目の前の草が連なっている部分がガサガサと揺れた。

 

「!?」

 

霊夢の身長くらいなのに、霊夢の影が見えない。

 

まさか、またさっきの怪物の類いが……!?

 

そう思い、いつでも迎撃出来るように身構えると……

 

ピョコン、と赤い大きなリボンが草の奥から覗いた。次いで、霊夢が……姿を……あらわ……した。

 

「……えっと……れい、む……?」

「……私にも分からないわよ。」

 

僕の疑問を先読みするように、霊夢がムスッとした顔でそっぽを向きながら呟いた。

 

霊夢は、十歳くらいの姿になっていた。あの赤い巫女装束も、年相応のサイズになっていて、リボンだけがやけにでかかった。

 

―――――

 

「どうして私がこんなになったのか、さっきあっちで会話したようにあの女に聞いてみたのよ。だけど、全く反応なし。ったく……どうしてこんなときに……。」

「あ、ははは……。まぁ、取り敢えず再会できたんだから、まずはよしとしようよ。」

「そうね。そうしとくわ。……納得いかないけど。それにしても、ここは本当に日本なのかしら?前来たときは、鬱陶しいほどに騒がしくて、高層ビルだらけだったのだけれど……。」

「前にも来たことあるの?」

「えぇ、何回かは。でも、こんなところ一つもなかったわ。」

「僕が思うに、ここは未来だと思うんだ。」

「未来?ここが日本の未来で、これが未来の日本の姿ってこと?」

「あの女の子から聞いたことを整理すると、まず女の子が言っていた、『日本と幻想郷のわ時間が離れすぎている』ということ、次に、この鼻につくような匂いと景色、そしてあの怪物。」

「妖人も会ったの!?」

「霊夢も!?」

「えぇ、私はくもが巨大化したやつだったわ。そっちは?」

「僕は、ワニが巨大化したようなやつだったよ。」

「う~ん、確かに未来と言われればそうかもしれないわね……。駄目だわ、判断材料が少な過ぎる。とにかく町に出ましょう?話はそこからだわ。」

「そうだね。でも、どっちに行けばいいんだろう……。」

 

周りを見渡しても、もう見慣れてしまった枯木だらけで、他には何も見えない。空は、もうそろそろ日が暮れてしまいそうだ。焦りを促すような空の色に、少し怒りを覚えた。

 

「ちょっと待って。空からなら分かるはずだわ。」

「あ、うん。よろしく。」

 

そういって、霊夢が空に向かって飛んでいった。

 

……あともう少し!!あと一めくり!!

 

「パンツ見たら殺すわよ?」

「はい、どうもすみませんでした。」

 

満面の笑みの裏に立ち込めるどす黒いオーラに足がすくみ、目線も足元に向けられた。

 

……欲を出すと悪いことになる。それを学べただけでも死にかけた甲斐があったってことにしよう。

 

ほどなくして、霊夢が空から降りてきた。……降りる瞬間にふわっとスカートの部分が浮いて、しゃがみそうになったのはいうまでもない。日本に来てテンションが上がってるのかもしれない。こんなになってるのに。

 

「何やら黒い塔みたいのに囲まれていて、そのなかだけ見違えるように綺麗に町があるわ。恐らくだけど、あの怪物たちが入ってこられないような、結界みたいな役割をあの黒いのが果たしてるんでしょう。町はあっちよ、行くわよ。」

「あ、うん。……やっと休める……。」

「そうね、急ぎましょう。」

 

霊夢は僕の肩くらいのところをふわふわ漂うように飛んで、僕は例の《霊狐》劣化版になり、二人とも風の速さで町へと向かった。

 

なお、時折ふらりと怪物達が見えたが僕らの速さに追いつけずに、途中で諦めていた。

 

常にこの状態でいられる訳でもないし、何回も使える代物じゃないから、使いどころを気を付けるようにしよう。

 

走りながら、そう思った僕だった。

―――――

森が開けて、霊夢のいう黒い塔みたいのがいくつも並んでいるのが見えてきた。

 

「あれが霊夢のいってたやつだね?」

「えぇ 、そうよ。」

 

黒いのに目と鼻の先まで近づいたとき、霊夢に異変が起こった。

 

「つぅ!?」

「霊夢!?」

 

霊夢が急に地面に落下し始め、寸でのところで脇に抱える。

 

「どうしたの?霊夢。」

「分からない。突然頭が痛くなったの。多分、あの黒いのが原因ね。あれは私にも影響があるみたいね……。……一応、巫女としての力は使えるみたいだけど。」

 

霊夢が陰陽玉を両脇に出して、確認するように言った。

 

「妖人は何ともないの?」

「うん、僕は何ともないけど……。」

「ま、いいわ。町に着いたのだし。普通に戦えるみたいだし。」

「そんな血気盛んな……。」

 

黒いのを抜けて町に入り、僕は苦笑いしながら、《霊狐》を解いて、霊夢はどこかおちついた感じで陰陽玉を消して、僕の脇から抜け出た。

 

「ふぅ……。ようやく着いたわね。」

「そ、そう……だね……。」

「?どうして疲れてるの?もしかして、あんたもやっぱり……。」

「多分。回復が遅くなってるから。……部分部分で使用すれば体力は減らないだろうけど。」

「そう。」

 

僕にも影響があるということは、能力に干渉する力があるのかもしれない。……気になるなぁ。

 

僕はそう黒いのに興味を持ち出し始めたその時、女の子の悲鳴と通常ならあり得ないようなアスファルトが崩れる音、さらには僕が森の中で戦ったワニの化け物のような叫び声に思考は中断させられた。

 

「なに!?こっちでも異変が!?」

「もしかしたら僕みたいに抜けてから影響が出始めたやつがいるのかも!抜けてからだから、普通ならすでに影響がなくなってるだろうし!」

「やれやれ、面倒事の匂いがするわね……。」

「行くよ!!霊夢!!」

「はいはい!!」

 

回復したばかりの体力をいきなり消費するわけにも行かないので、僕は全力で走り、霊夢も飛べないので僕と並んで全力で走って、女の子の悲鳴と化け物の声が聞こえた町の中央に向かった。

―――――




どうでしたか?
霊夢はちっちゃくなって、能力使えなくなるし、妖人は回復が遅くなるなど、あの黒いのは一体どんな役割を果たしているのでしょうか?気になりますね!!
(原作は知ってます!!)
それでは、次回予告。
悲鳴をあげた女の子は一体誰なのか!?そして怪物、化け物が町中にいる理由は!?
それが次回明かされます!!明かさないと駄目だけどね…。
では、次回もどうぞよろしくお願いいたします♪
のし~♪


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~怪物~




WRYYYYYYYYYYYY!!どうも、桜花妖人(さくらかようと)です。

 

僕は今、未来(?)の日本に居る。僕は普通の日本から幻想郷に行き、そこからこちらに来たんだけど、どうやら謎の女の子によると幻想郷と日本の時が離れすぎているとのこと。

 

そしてそんなこんなで幻想郷の巫女、博霊霊夢と一緒に飛ばされてきたんだけど、最初は二人とも離ればなれで薄暗い森の中だった。木が全部かれていて、何事かと立ち往生していると、後ろから巨大なワニの化け物が出てきた。

 

僕はそれを《霊狐》と呼ばれる僕の能力でなんとか切り抜けたんだけど、倒せはしなかった。投げ飛ばすくらいだった。

 

そして、《霊狐》を使ってすり減った体力のなか、森を走り回っていると、人影とともに、霊夢の僕を呼ぶ声が聞こえてきた。

霊夢の所にすぐに駆け寄ろうとした僕だけど、霊夢のこちらに来るという声に足を止めた。

 

そのとき、異変に気付く。あれ?あの人影、少し小さかったような……、と。

すぐに、目の前の草の群れが揺れ、またあの化け物かと身構えた。

 

けど、中からはピョコンと霊夢のトレードマークの赤い大きなリボンが出てきて、その後すぐに霊夢が出てきた。……十歳くらいの身長で。

 

霊夢にも理由はわからないとのことで、とにかく町に出ようという霊夢の意見に同意し、霊夢が空へと浮かび上がった。

 

……もう少し!!あともう一めくり!!そう下から覗こうという悲しい男の性で霊夢の下にあるきだそうとしたが、霊夢の上からの満面の笑みの奥に漂うどす黒いオーラに僕はすぐに元の位置にもどった。

 

霊夢が降りてきて、黒い大きな塔みたいなものが幾つにも、幾重にも並んでいると言って、町の方向に走り出した僕ら。

 

黒い塔の奥に見えた町に歓喜する僕らだったが、突如霊夢が落下し始め、危ないところで僕が助けた。霊夢がいうには、あの黒い塔の影響ではないかと。

 

中に入った僕ら。そこで僕にも異変が起きる。体力の回復が遅いのだ。恐らくこれもあの黒い塔の影響なのだろう。そう確信した僕ら。

 

そのとき、女の子の悲鳴と、化け物の声がした。

町のなかにあんなやつがいたら大変だ、ということで僕らは悲鳴現場に向かった。

―――――

「!!霊夢!!あれって!?」

「ええ、間違いないわ。……あれはさっき森でみた怪物よ!!」

 

走り始めてまもなく、悲鳴現場にたどりついた僕ら。そこにあったのは、木の柵が壊されて煙をあげていて、それを見てキシャァァアと声をあげている大きな蜘蛛の化け物だった。

 

そこに、一人の高校生くらいの人と、いかにも刑事、って人が二人の三人が現れた。

 

「ガストレアモデルスパイダーを確認!!これより交戦に入る!!」

 

青年特有の低いとも高いともつかぬ声が戦闘に入ることを宣言した。

 

ガストレア……というのがあの化け物の名前のようだ。そして、蜘蛛の姿をしているから、モデルスパイダーということか。

 

と、僕が理解した時、さっきの悲鳴を上げた女の子が木の柵の奥から出てきた。

 

「蓮太郎!!」

「延珠!!」

 

青年の方は蓮太郎、霊夢と同じ身長だから恐らく十歳くらいの女の子の方は延珠というのか。

 

その延珠が、蓮太郎の方に両手を広げて走り出した。蓮太郎も延珠の方に両手を広げて走り出す。どうやら二人は離ればなれになっていたようだ。

 

兄妹……には見えないけど……。

 

二人が再会の熱い抱擁をかわす……かと思いきや延珠が蓮太郎の急所目掛けて蹴りを放った。

 

「ぐぉぉぉお!!」

 

蓮太郎がアスファルトに頭を強く打ち付けて急所を押さえ込んで倒れた。

恐らく蓮太郎は彼岸の痛みにうちひしがれていることだろう。おいたわしや。

 

「フィアンセの妾を置いていくとはどういう了見だ?蓮太郎。」

 

なんだ。二人はどういう関係なんだ。フィアンセ?……あぁ、なるほど、あの蓮太郎はロリコンなのか。それなら合点が行く。……同士よ。頑張れ。

 

「お、怒ってるのかよ……。」

「当たり前だ。」

 

蓮太郎は苦しそうに前で仁王立ちして不満顔してる延珠に当たり前のことを聞き、延珠は当たり前の答えをかえす。

それもそうだ。フィアンセを置いていくとは、ロリコ(ゲフンゲフン)紳士の行為ではない!!

 

「キシャァァア!!」

「「!?」」

 

夫婦漫才(?)を繰り広げていた蓮太郎達に蜘蛛のガストレアが突進し始めた。突然のことに二人は回避することができない。

 

ちいっ……!あまり人前じゃ使いたくないが、仕方ない!!

 

「《霊狐》!!部分憑依《脚》!!」

 

霊狐……紫色の狐の獣の力を使い、足だけに霊狐を憑依させる。部分憑依なので体力も使わず、獣の脚が本物の脚を包むように憑依する形になる。

 

霊狐で強化された脚力で一瞬でガストレアの前に躍り出て、顔面に脚をめり込ませ、五メートルほど蹴り飛ばした。想像以上に固かったが、なんとか蹴り飛ばすことが出来た。

 

「キ、キシャ、キシャア…。」

 

ガストレアが痛みに震えている。効果はあったようだ。

 

「「お、お前は(お、お主は…?)…?」」

 

蓮太郎達の声が重なり、僕の事を聞いてくる。でも、今はそれどころじゃない。まずはあの化け物を仕留めなければ!!

 

「話は後!!二人とも武器もって!!」

「「お、おう(あ、あぁ!!)!!」」

 

また二人の声が重なる。蓮太郎は腰から拳銃……あれはスプリングフィールドXDだろうか。前にグークルで調べたことがある。

延珠はスッ……と静かに片足を上げて、交戦体勢に入った。

 

「キシャァァア!!」

 

僕の一撃で怒ったのだろうか。さっきより大きな声をあげてこちらに突進してきた。

 

「二度も同じ手を食らうかよ!!お前、避けろ!!」

 

僕が横に飛ぶと同時に、蓮太郎が銃のトリガーを引いた。

 

すると、パアァン!!と普通の弾じゃ聞こえない音とガンファイアと共に……黒い弾丸!?がガストレア目掛けて飛んでいき、ガストレアのこれまた顔面に当たり、ギィイイイ!!とさっきよりも効いてることが分かる苦しそうな悲鳴が聞こえた。

 

パアァン!!パアァン!!と蓮太郎は――セミオートなのだろう――トリガーを連続で引いて、黒い弾丸を連射して、確実にガストレアを追い詰めていく。

 

弾をうち尽くしたのだろう、空撃ちの音がした。

 

「くそっ!!弾切れか!!」

 

そう苦々しそうに叫ぶ蓮太郎にさっきまでずっと怯んでたガストレアが襲い掛かる。

 

が、それよりも早く延珠が飛び上がり、その延珠に目標を変えたらしいガストレアが延珠に飛び掛かろうと上を向いた。

そのガストレアに上空で華麗に一回転した延珠の回し蹴りがHITする!

 

……人じゃないのにロリのパンツを見るからだ。

ガストレアがバラバラの肉片になるなか、僕は心のなかで憎々しげに呟いた。

 

「蓮太郎はすぐ油断するな!!」

「……悪かったよ。」

 

着地して間も無く延珠が勢いよく振り返りSEをつけるならズビシッという音が似合うポーズで蓮太郎を指差し、指差された蓮太郎は申し訳なさそうに呟いた。

 

「おい、あんた。」

「?」

 

申し訳なさそうに頭をポリポリと掻いていた蓮太郎に、今までどこにいたのか、警官が後ろから声をかけた。

 

「最近ここらへんで少女誘拐事件があってだな……。身長はお前くらいで、体重はお前くらいだったんだが、どう思う?」

「え、冤罪だ。無罪だ、無実を主張する!!」

「詳しい話はあちらで聞こうか!!」

 

そういって、蓮太郎と警官は延珠の周りををくるくると回り始める。

 

「延珠も何か行ってくれ!」

「一言では言い表せない仲だ。」

「居候だ!!」

「いつも夜は寝かしてくれんのだ。」

 

その延珠の言葉を聞いたとたん、警官の手元からカチリと音がした。

 

なんだ、蓮太郎は射殺されるのか?可哀想な蓮太郎……ほろり。

 

「ちっ、おしゃれなブレスレットをつけてやったのによ……。」

「じょ、冗談きついぜ警部……。」

 

二人は回転をやめた。

 

あれは冗談だったのだろうか。大真面に見えたのだが……。

 

「そ、それよりあんたとその子は一体誰だよ?あれは……なんのモデルだ?お前はイニシエーターには見えないが……。」

 

蓮太郎が話を露骨に反らし、こちらに話の矛先を向けてきた。

 

その子、とは避けてからずっと戦闘を見守っていた僕の隣にトタタ……と可愛らしく走って来ていつのまにか隣にいた霊夢のことだ。

 

モデル……というのはあのガストレアのことを指すものなのだろうが、所々分からない言葉が聞こえる。

 

「えっと……僕の名前は桜花妖人で、この子は博麗霊夢っていうんだ。えっと、なんのモデルってどういうこと?それと、イニシエーターって……?」

「!?お前、民警じゃないのか!?なのにあんな……、……。」

 

民警……それが蓮太郎の所属する仕事の名前なのかな?

 

蓮太郎は僕が民警じゃないことに驚いているのか、少し考えてこう言った。

 

「よし、取り敢えず妖人……だったか。その霊夢って子を連れてうちに……『天童民間警備会社』に来い。なんつーかお前達、変なんだよな……。」

「は、はぁ……。わ、わかったよ……。」

「お、おい蓮太郎!!それよりそろそろタイムセールの時間じゃないか!?」

なんか命令みたいな感じで言われて戸惑う僕をよそに、延珠が蓮太郎の裾を引っ張る。

 

「あ?……うぉっ、やべぇ!!急ぐぞ延珠!!」

「あ、待つのだ蓮太郎!!フィアンセの妾を置いていくな!!」

 

延珠に言われて時間を確認し、慌てて走り出す蓮太郎。それに慌てて走り出す延珠。

 

「お、おいあんた!!どこいくんだ!?」

 

戦いに参加していなかったので忘れてた。警官が蓮太郎に叫ぶ。

 

「モヤシが一袋六円なんだよ!!あ、あと妖人!!絶対『天童』に来いよ!?多田島さん!!また仕事くれよな!!」

 

モヤシが一袋六円とはなんとお得な。

 

警官の多田島さんに叫んだあと、僕に釘を差す蓮太郎。そして、二人は夕焼けの景色のなかに消えていった。

 

「あいつ……報酬忘れてないか……?それに、もやし……?まぁ、いっか!!」

 

最初は戸惑っていた多田島さんも、最後はなんだか嬉しそうに見えた。

 

蓮太郎は報酬を受け取り忘れたのか。それに、また仕事くれって……一体どういうことなんだろうか?二人は同じ部署じゃないのだろうか。

 

「とにかくその『天童民間警備会社』とやらに行こうか。霊夢、行くよ~。」

「えぇ、……やっぱり、ここは私たちの知る日本じゃないのね。」

 

とにかく話はそれからだと割りきって、僕は霊夢を呼び、歩き始める。その後すぐに考え事を始めた霊夢。今の霊夢には、何を言っても無駄なので、放っておくことにした。

 

と、その前に……。

 

歩るきをとめて僕は多田島さんに駆け寄る。

 

「あ、あの~……?」

「あん?なんだ坊主?」

「その報酬金って、僕が受け取ってそれを渡すってのはいいんでしょうか?」

「……聞いてたのかよ、チッ……。せっかく金を払わずに済むと思ったのによ……。ま、ええわ。ほれ、これが報酬金だ。横領なんてバカな真似すんじゃねぇぞ?」

「しません!!」

 

そうして、僕は報酬金を受け取り、受け取りついでに『天童』の場所を聞いて、霊夢と共に歩き出した。

 

……ここから、僕と霊夢、そして蓮太郎達との運命の歯車が回り始める……。

―――――




どうでしたか?今回は体調が悪くて前書きが書けなくて……。すみません。

今回はついに主人公と蓮太郎が遭遇しましたね!!これからどうなるのか、見ものですよ!!

さて、それでは次回予告。
天童民間警備会社にたどり着いた妖人と霊夢。そこには、怒っている黒髪の女の子と、怒られている蓮太郎がいた。
そこで、妖人達は、ついに今の日本の現況を知る――!

それでは、また次回~♪
のし。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~設定~

どうもこんにちは!!遠山tsunです!!
今回は設定説明の会となっております!!おきをつけて!!
それでは、GO FOR THE EPISODE!!


桜花 妖人(さくらか ようと)

…今作の主人公。天橋立(あまのはしだて)高校に通う高校一年生。一人称は「僕」。

《変える程度の能力》の持ち主。

様々なものを変えることが出来、時には存在を変えることが可能。ただし、人の内部、筋肉や内臓、記憶や心などを変えることは不可能。

そして、「変えて」作った力、《霊狐》は多すぎる霊力を具現化させたもの。《憑依》という形で使う。部分憑依が可能。例「部分憑依《脚》」。

使いすぎると体力が減り、時には気絶する。

 

雨立 真人(あまだて まなと)

…妖人の親友。悪友ともいう。天橋立高校に通う高校一年生。一人称は「俺」。

能力はないようだが、なにやら魔理沙と隠れて修行しているようだ。

とにかく楽しいことが好きで、祭りとあれば我先にと駆けつけるような祭男。

 

小夜鳴 夕美(さよなき ゆうみ)

…真人と同じく妖人の親友。ポニーテール。天橋立高校に通う高校一年生。一人称は「私」

これまた真人と同じく能力はないが、紫(幻想郷の最古参の妖怪)の元で修行しているようだ。

いつも明るく振る舞っているが、実は人一倍気弱な女の子。決して人には感じさせないが、妖人のことが気になっている。なので現在離ればなれになっていることを内心不満に思っている。

 

博麗 霊夢(はくれい れいむ)

…日本の山奥の辺境の地にあると言われる「幻想郷」にある幻想郷の中心、「博麗神社」の巫女さん。年齢は不詳だが、恐らく16歳前後。

能力は《空を飛ぶ程度の能力》、《霊気を操る程度の能力》。

空を飛ぶ程度の能力のおかげで、人から浮いたりしたり、文字通り空を飛んだりするが、魔理沙や他の妖怪達からは好かれている。鬱陶しがってはいるが、内心嬉しい。

性格は無頓着。物事にこだわらないが、自分に面倒なことなどは身を鼓舞して回避する、または迅速に終わらせる。

 

霧雨 魔理沙(きりさめ まりさ)

…幻想郷の住人。博麗霊夢の友人。魔法使い。年齢は霊夢と同じ16歳前後。

能力は《魔法を使う程度の能力》。

霊夢と仲がよく、暇あれば霊夢の所に遊びに行ってお茶を飲んでる。

性格は陽気で、軽いみたいに思えるが、陰の努力家だということをバレないように努めている。

魔理沙の代名詞「マスタースパーク」は高火力な上に広範囲を破壊するビーム。だが連発すると魔力が枯渇するのでばんばん放ってるようでここぞということで放っている。

 

桜花 由夢(さくらか ゆめ)

…妖人の妹。紫に無理矢理連れてこられて怒りに任せて異変を起こした人物。

能力は《消す程度の能力》。

この能力で幻想郷を崩壊させかけた。様々なものを「消す」ことが出来るが、妖人と同じく人の内部に関わることは消せない。だが、時を消すことは出来る。

ツインテール。性格は大人びているように見せかけてやんちゃな子供。

 

???(謎の女の子)

…妖人と霊夢の頭の中にだけ声をだす女の子。幻想郷と日本の時間が離れすぎている、ということで未来(?)の日本に二人を飛ばした。霊夢が縮んでいることは知らない。

どうやら日本にいるみたいだが、果たしてどこに……?

 

里見 蓮太郎(さとみ れんたろう)

…幼少期にガストレアと呼ばれる突如現れ、存在意義、行動理由共に不明の怪物に両親を殺されたと言われる男の子。

そして、両親が消息不明になってから天童家にお世話になっていたが、天童家の娘、天童木更を庇ってガストレアに左目、右手右足を奪われる。だが、執刀医室戸菫の手により復活。超バラニウム合金の義手義足、義眼を手に入れた。天童式戦闘術初段。IP序列は12万と数千。

 

藍原 延珠(あいはら えんじゅ)

…ガストレアウィルスが空気感染して、毒性をもったまま産まれた《呪われし子供達》。

モデル《ラビット》。脚力が強く、足技が主体。ちょっとおませな女の子。

蓮太郎の事が好きで、自称「蓮太郎のフィアンセ」。

蓮太郎は嫌がっているようで放っている。……蓮太郎はロリコンではないかという噂が密かに流れている。

 

天童 木更(てんどう きさら)

…少女期にガストレアに両親を殺され、蓮太郎がボロボロになったショックで腎臓が麻痺してしまい、過度な運動が出来ないが、天童式抜刀術免許皆伝の実力はお墨付きの女の子。

蓮太郎が密かに思いを寄せていて、蓮太郎がたまに見てしまう巨乳の持ち主なので、延珠から目の敵にされてはいるが、延珠は嫌っているわけではない。複雑だ。

心に闇をもつ女の子。その闇はそこ知れない。

 

『システム編』

 

霊力(霊気)

…存在が曖昧な力。何物でもない力。妖人や霊夢が主に使う。色は主に紫色。扱いを間違えると意識を乗っ取られ、使った本人が暴走し、時には死にいたるが、滅多にない。

 

IP序列

…民間警備会社、通称《民警》の中で付けられる順位。単なる戦闘力ではなく、戦果により付けられる。千番台からは中々の手練れとされる。

 

ガストレア

…突如現れた存在理由、行動理由、共に不明な化け物。体液感染を主に繁殖する。体液が体内で50%を越えると凄まじい勢いでDNAを書き換えていき、姿を保っていられなくなりガストレア化する。常識が通用しない。

たまに『ガストレアウィルス』、空気感染をするが、毒性はとても弱く、母親の口にはいりそれが胎児にいく場合がある。そうして産まれた子供達が《呪われし子供達》。産まれた子供達は必ず女の子で、ガストレアと同様に目が赤いが、感情をうまくコントロール出来るようになれば普通の子供として生活できる。モデルというのは感染源ガストレアの種族の名前。

 

イニシエーター、プロモーター

…《民警》は二人一組で戦うのが基本。そのなかで《呪われし子供達》から選ばれた

開始因子(イニシエーター)、それを統率、管理するのが加速因子(プロモーター)である。

 

IISO

…今作にはまだ登場していないが、イニシエーターをプロモーターと出会うまで統率、管理する団体。蓮太郎と延珠は未来(?)の日本のなかで一年前に出会った。

 

バラニウム

…ガストレアが唯一苦手とする金属。黒い。火山活動の盛んな日本からは大量に産出される。

 

モノリス

…ガストレアが唯一苦手とする金属、バラニウムで作った塔のような巨大な壁。ガストレアに襲われるなか何とか作り上げ、そしてモノリスを幾重にも、そして可能な限り広範囲に展開し、そのなかで辛くも未来(?)の日本は保たれている。幾つかエリアがあり、妖人達が飛ばされたのは『東京エリア』。

 

ここまで!!

―――――




どうでしたか?様々な設定などが分かっていただけたなら光栄です。
次回は、天童民間警備会社から蓮太郎のアパート編にしようと思います!!

それでは、次回もGO FOR THE ENJOY EPISODE!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~契約~

どうもこんばんは、遠山tsunです!
すみません、蓮太郎のアパートまでいけませんでした……。次回は必ず、アパートまで書きます!!
それでは、ゆっくりしていってね!


どうも、桜花 妖人(さくらか ようと)です!

 

僕は今、幻想郷と呼ばれる不思議な所から、幻想郷の巫女さん、博麗 霊夢(はくれい れいむ)と一緒に未来の日本に来ているんだけど、ここがどこで、一体何時なのかも分からない。

 

そんな世界で、《ガストレア》と呼ばれる不思議な化け物に出会った。

最初に出会ったのは、薄暗い森の中で、何とか切り抜け、離ればなれになっていた霊夢とも再会し、近くに見える町の中に入った。

 

そこで、女の子の悲鳴と、ガストレアの声が聞こえて、僕と霊夢は急いで現場に駆けつけた。

 

そこには、恐らく《ガストレア》に飛ばされたはずの女の子と、その女の子に股間を蹴られて悶絶しながら倒れている男の子と、警官二人だった。

 

皆、男の子――蓮太郎と女の子――延珠の夫婦漫才(?)に注目していて、ガストレアに意識を向けておらず、その隙をついて、ガストレアが襲い掛かってきた。

僕は、僕の能力《霊狐》(詳しくは前回参照)を使い、一度ガストレアを吹っ飛ばし、その後蓮太郎達と協力して倒した。

 

何故かそのあとすぐに蓮太郎は警官――多田島警部とおいかけっこをして、しばらくして僕に話しかけてきた。

内容は蓮太郎の所属している民警――ガストレアから市民を守ることに特化した警官達――の『天童民間警備会社』に来るように、とのことだった。

 

いきなり言われて戸惑い、その真意を問おうとするが、蓮太郎達はもやしを求めてタイムセールへと急いで姿を消した。

 

報酬を受け取り損ねていたので、『天童』に行くついで、ということで多田島警部から報酬を受け取り、ずっと退屈そうな顔をしていた霊夢を連れて、『天童』に向かった。

 

が、ここは僕らの知らない日本。『天童』どころか、道も分かるはずもなく……。

―――――

「……困ったなぁ。」

「……困ったわねぇ。」

 

絶賛迷子ですね!あははは!!(涙)

 

「ったく……本当『天童』ってどこなのよ……。そもそもあるのかしら?それすら怪しくなってきたわ……。」

「でも、あそこで嘘つく必要ないし……。とりあえず、今いる場所を確認しようか。」

「そうね、報酬も渡してないし、ここで諦めたら横領だし、諦めたところで行く宛もないしね。」

「……ますます見つけないと。」

 

霊夢が呆れてポロリと漏らした一言に緊張しながらも、周りを見渡す。

 

ここは、一本道。左手の少し上は、緑色の柵で区切られていて、その向こう側には電車がひっきりなしに通っている。

そして、その柵の手前、つまり一本道の左側には、黒いごみ袋が捨てられており、カラスが「ガアガア」と鳴きながら集団でつつきあっている。……ガアガア?

 

一本道の右側には、いくつものマンションが立ち並んでいる。僕らは、そのマンションのうちの一つのマンションの前にいる。

 

一階と二階は、別々の店ながら、同じ業界。いわゆるキャバクラだ。

 

うん、そうだね。でも僕らは好き好んでこのマンションの前に立ち止まった訳じゃないんだ。別に珍しいからって立ち止まった訳じゃないんだ!!信じてくれ!!え?知ってる?ならいいや。

 

つ、次に三階……なんだけど……、

 

「……。……?」

「?どうしたのよ妖人?」

「あ、いやその、……あれって、まさか。」

「?……。どうやらそのまさかのようね……。一体なんでこんなところに?」

「さぁ……。」

 

僕らは呆然としてそのマンションの三階を揃って見上げていた。何故ならそのマンションの三階の窓には……『天童民間警備会社』と白い文字で書かれていたからだ。

 

天童民間警備会社ここにあり!!……って感じのを想像してた分、拍子抜けするな~……。

 

「ま、まぁとりあえず、入ろうか。」

「ええ、そうしましょうか。」

 

喜びと困惑の入り交じった複雑な心境で僕らは三階へと続く外階段を上りはじめた。

 

なお、四階はルンルンローンという、闇金会社だった。

―――――

外階段を上り終え、ドアノブに手を掛けようとした瞬間、物騒な会話が中から聞こえてきた。

 

「こんのおバカ!!」

「うぉっ!?」

「なんで避けるのよ腹立たしいわね!」

「無茶苦茶言うな!!」

 

蓮太郎と誰か知らない女の子の声だ。なんだ、一体中で何が起きてるんだ。

 

「大体どうして避けられたのよ!!」

「そりゃ死ぬ前に何か言い残すことある?なんて言われれば嫌でも身構えるわ!!」

 

なんだ、蓮太郎は殺されそうになってるのか。一体何が―――

 

「どうして報酬を受け取り忘れるのよ!!」

「タイムセールがあったんだよ!!」

「このおバカ!!……全く、一度落ち着きましょう?」

「お、おう。」

 

……聞き覚えがありすぎる。

 

「確か、一度里見くんは報酬を受け取り忘れたことを思い出したのよね?」

「おぅ。」

「で、多田島警部に慌てて連絡したけど、『あぁ、あれならそこら辺のガキにあげたわww』と払ってもらえず。」

「おぅ。」

「それでもモヤシは買ってきたと。」

「あんたも食べるか?木更さん。」

「このおバカ!!甲斐性なし!!……もうやだ、ビフテキ食べたい……。」

「俺だって食いてぇよ。」

 

……あの~、そこら辺のガキって、まさか僕のこと?

 

ふと、横を見ると霊夢が口を抑え顔を真っ赤にして、こちらを指さしていた。

 

こら、人を指ささない。自分でも指してるから、人のこと言えないけど。

 

「ほら、入るなら今の内よ?」

 

霊夢が少々笑みを含みながらも小声で囁いてくる。

 

「わ、分かったよ……。」

 

自分でも潮時だと思っていたから、案外すぐに決心出来た。

ドアを数回ノックする。

 

「「!?」」

 

二人の息が密められる。

 

何!?なんで黙るの!?

 

「……延珠か?」

 

蓮太郎の声がドア越しに聞こえる。僕は、ゆっくりとドアを開けた。

 

「こ、こんばんは……。」

 

時刻は今六時くらいだったから、こんばんはと言うことにした。

 

「あぁ!妖人と霊夢か!」

「知ってるの?里見くん。」

 

女の子の姿は、今時珍しの黒いセーラー服だった。長い綺麗な黒髪。ぱっちりとした大きな目。そして、胸元の赤いリボンが……その、立派な胸の上で横倒しになっている。

 

「紹介するよ木更さん。こいつらが俺と延珠と多田島さんを助けてくれた、『一般人』の妖人と霊夢だ。」

「あぁ、この子達がさっき里見くんが言っていた子達ね!」

「ど、どうも。」

 

どうやら一通りのことは話終えてるみたいだ。

 

「こんばんは、『天童民間警備会社』社長の天童 木更(てんどう きさら)です♪よろしく。」

「改めて、『天童民間警備会社』社員里見 蓮太郎(さとみ れんたろう)だ。よろしく。」

「こ、こちらこそよろしくお願いします。」

 

木更さんの笑顔は高校生には不釣り合いなほど綺麗な笑顔だった。ドキっとしたかは不明。

 

「それで?『逸般人』の妖人くんと霊夢ちゃんがどうやってガストレアを吹っ飛ばせたの?」

「字が違う!!」

「だって、ガストレアを吹っ飛ばした人間が普通の人間なはずないじゃない?」

「「「ごもっともで。」」」

 

あまりの的確な指摘に、僕と蓮太郎だけじゃなく、霊夢までもが頷いた。

 

「ま、立ち話もなんだから、そこに座ってちょうだい。」

「あ、はい。それじゃ、失礼します。」

 

そう木更さんに言われて、オフィスの真ん中にある二つのイス、その前にあるガラス張りの長方形の机、そしてその向こうに一つのイスがあるので、そこに向かった。ちなみに全部革張りだ。………一つ?

 

「あ、……。」

「……。」

 

そう、イスが3つ、つまり蓮太郎、木更さん、僕、霊夢の内の四人の誰か一人が座れないことになる。

 

「う~ん……、霊夢座っていいよ、僕たつから。」

 

少し逡巡した僕だが、すぐに霊夢を、女の子を立たせるわけには行かないという答えにいきつく。

 

「すまん。ここ滅多に客が来ないもんだから、イスが3つしかないんだ。」

「いいよいいよ。僕は立つの慣れてるから。」

 

蓮太郎達がもう一度謝って、それをいなしたあと、蓮太郎達は座って、霊夢が座って会談の場が整う、はずだったんだけど……。

 

「待って、妖人。」

「?」

「その必要はないわ。とりあえず妖人座って?」

「え、でも……。」

「いいから。」

「わ、分かった。」

 

霊夢が有無を言わさず僕を座らせる、霊夢はどうするのか、問おうとしたら……、

 

「で、私がこうすればいい。」

「!?」

 

霊夢が座った僕の膝の上にチョコン、っと座った。

 

「ちょ、ちょっと霊夢!?」

「何よ、別にいいでしょ?それとも、私が重い?」

「いや、別にいいけど、それに、逆に軽いし……。」

「ならいいでしょ?」

「……うん。」

「全く、いいなら最初っからそういいなさいよ……。……心配になるじゃない。」

「え?」

「なんでもないわよ!」

 

霊夢が最後に何かを小さく呟いた。だけど、僕はそれを聞き取ることが出来なかった。なんだろう、何か霊夢らしからぬ声が聞こえた気が……。

 

「ふふっ♪」

「ははっ♪」

「「?」」

 

僕と霊夢は、蓮太郎達が笑っているのに気が付いた。そして、僕らの怪訝そうな表情を見た蓮太郎達が、言った。

 

「いや、すまん。延珠を思い出して。」

「ええ、延珠ちゃんみたいね。」

「延珠?」

 

延珠ってあの、蓮太郎の股間に足をめり込ませていた……。

 

「そう、あの延珠ちゃんよ。」

「心を読めるの!?」

「顔に書いてあったわよ。」

「嘘だ!!」

「と思っていたのかしら?」

「ダニぃ!?」

 

木更さんに心を読まれて、動揺する僕。顔に書いてあったって、そんな明確に書いてあるもんなのだろうか。ここで一句。気を付けよう、女の勘と、読心術。

 

「?どういうことだ木更さん?」

「いいえ、なんでもないわ。」

「?」

 

蓮太郎はわからなかったようだ。その方がいいだろう、また彼岸の痛みに襲われたくはないだろうから。

 

「とりあえず、二人には、うちに入ってもらいたいんだけど、どうかしら?」

「え!?僕達が!?」

「だって、うちは人員が少ないし、あなたたちに興味があるもの。」

「俺も、お前らの力が知りたいしな。」

「えぇ~……。」

 

いずれは帰るはずの僕らにこの世界で居場所が出来ると、少し名残惜しくなりそうというか、不味そうな気が……。

 

「いいんじゃない?」

「え?」

 

膝の上にいる霊夢がこちらに首だけで振り向きながら、僕にしか聞こえないような小さな声で僕にいった。

 

「どうせこのままでいても、餓死かあの化け物、ガストレアだっけ?にか殺されるのだから、ここで一旦身を置ける安定した場所が必要だわ。それに、異変解決のきっかけになるかも知れないわ。」

「確かに……。」

「なら、もう迷う必要はないわね?」

「……うん、分かったよ、霊夢もそれでいいね?」

「よくなかったら、こんなこと言わないわよ。」

「それもそうだね。」

 

霊夢とのこしょこしょ話をお互い苦笑で締め、蓮太郎達の顔を見る。

 

「僕達でよければ、よろしくお願いします。」

「「本当(本当か!?)!?」」

「は、はい。」

「やったな木更さん!!」

「えぇ!!やったわね里見くん!!期待の新人を一気に二人もゲットよ!!」

 

蓮太郎と木更さんが手を打ち合わせて喜ぶ。

 

ここまで喜ばれると、こっちも嬉しくなるな~。

 

僕は二人を見て、そう思った。

と、二人の喜ぶ顔を見てあることを思い出す。

 

「あ、そういえば。」

「「?」」

「……これを。」

「「あぁあ!?」」

 

僕は懐を少しまさぐり、多田島警部から受け取った茶色い封筒を差し出す。

それは、二人が散々抗議していた、例の受け取り忘れの報酬だった。

―――GO FOR THE NEXT!!




どうでしたか?
今回は少しラブコメの伏線をいれてみました。(場所はどこかわかるかな?)
分かったらコメントでどうぞ!
誹謗、抽象は作者がなくので控えてほしいです……。
感想などなら、いくらでも受け付けます!必ず返信します!
それでは、次回をお楽しみに~♪


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~居候~

ども、こんばんは、遠山tsunです!
今回は冒頭はブラック・ブレットについての説明になっているので、気を付けて~♪
それでは、ゆっくりしていってね~♪


ガストレア――それは突如現れた正体、存在理由、行動原理、殆どが不明の化け物。

突如現れたガストレアは、凄まじい勢いで世界の人々を殺す、もしくは食していった。

食され、体液を送り込まれた人間は、血中体液濃度が50%を越えると、DNAが書き換えられ、たくさんの人がガストレア化していった。

 

そして、それは日本とて例外ではなかった――。

各所でガストレアが侵攻し、壊滅的な被害を受けた。日夜襲われ続け、なすすべもないまま滅ぼされるかと思われた時、一筋の光が指した。

ガストレアの唯一の弱点が分かったのだ。

 

唯一の弱点、それはバラニウムと呼ばれる漆黒の金属だ。

そのことが判明してすぐに、世界はそれの採掘に追われた。

火山活動が活発な日本は、いち早く多くのバラニウムが採掘出来た。

 

そして、そのバラニウムで作られた党のように聳える巨大な壁、モノリス。

人類はそれを各地で製造、設置した。

可能な限り大きく、そして幾重にも。

そうして区切られた場所のことを、エリアと呼ぶ。

 

僕、桜花 妖人(さくらか ようと)と博麗 霊夢(はくれい れいむ)が謎の女の子に飛ばされたのは、日本の東京エリアと呼ばれる区画だ。

 

そして、今は2031年――。

 

人類はガストレアに対向する力をつけた。バラニウムを加工して、刀、弾……様々な武器に作り変え、それを扱う組織、民間警備会社、通称民警。彼等はそれぞれの後援者(パトロン)の支援を受け、ガストレアと日夜戦闘をしている。最も、依頼や情報がないと仕事にならないのだが。

 

そんな民警にも、頼れる相棒達がいる。

 

人とガストレアウィルスがたまたま空気感染し――微力ながらも毒性をもっている――そのウイルスが母親に入り、それが胎児に感染することがある。

そうして産まれてきた子供たちが呪われし子供たち(この呼び方に少し嫌念がさした。)だ。

 

生まれてくる子供は全員女の子、そして全員目が赤い。産まれてきた子供たちは気味悪がられ、虐待され、時には川に沈められたりしたという。

そんな子供たちは外周区、モノリスの手前に逃げ込み、そこで暮らしている。

 

そんな呪われし子供たちからIISOと呼ばれる機関に選ばれたのが、イニシエーターである。

 

民警は雇われてすぐイニシエーターと組まされ、ツーマンセルで戦うことが決められている。

 

イニシエーターには感染源、つまりウィルスを放ったガストレアの種族の力がある。

それをモデル~という。

ちなみに里見 蓮太郎(さとみ れんたろう)のイニシエーター藍原 延珠(あいはら えんじゅ)の能力はモデルラビットだ。

 

そうして人類はガストレアは戦闘を繰り返しているが、そんな中でもイニシエーターと民警、プロモーターのツーマンセル、そのコンビ達の順位もつけられている。

 

それがIP序列と呼ばれるものだ。ちなみに蓮太郎達のIP序列は12万とちょいだそうだ。……相当低いらしい。

 

などといった説明を、さきほど戦闘をした天童民間警備会社の蓮太郎と社長の天童 木更(てんどう きさら)さんに受けて……。

―――――

「なるほど、さっきからみえるあの黒いのはガストレアの侵攻を防ぐためだったんだね……。」

「私はガストレアじゃないし、呪われし子供たちでもないのだけれど……。」

 

僕らはそれぞれの感想を漏らした。とりあえず、この時代のことを理解できてよかった。

 

「だから、民警でもないお前らがガストレアに対向出来たことに驚いてるんだよ。ま、さっき登録したから、その内警察手帳みたいなのが送られてくるはずだ。」

「本来ならIISOにも行かなければならないのだけれど、妖人くんには霊夢ちゃんがいるから、特例ってことで登録したわ。」

「ありがとう!これから一生懸命頑張ります!」

「「期待してるぜ(してるわ)。」」

 

蓮太郎達が僕らのことを歓迎してくれる。

 

歓迎されている以上は、頑張らないと!

 

僕は心の中で決意した。霊夢はずっと表情を変えず、真剣に聞き入ってたから、恐らく霊夢も。

 

「さて、もうこんな時間だ。そろそろ帰らないと……。」

「それもそうね。私も病院に行かなくっちゃ。」

 

蓮太郎達が時計を見たので、僕と霊夢も時計を見る。今は短い時計の針が7を指している。つまり今は夜の七時か……。確かに窓の外も暗い。

 

「んじゃ、また明日の八時、ここに集合ってことで、解散!!」

 

木更さんが声を上げて明日の集合時刻、集合場所を宣言する。そうして、二人は腰を上げた。帰るのだろう。……!まだ問題が残っているではないか!?

 

「あ、あの!!」

「「?」」

「僕ら……家がないんですけど……。」

「……あらま。」

「「……へ?」」

 

そう、僕と霊夢には家がないのだ。何しろ、突然飛ばされたのだ。家なんてあるわけない。

霊夢もそれに気付いたようで、蓮太郎たちは口を大きく開けていた。

 

……どうしよう。野宿なんて僕は嫌だ。

 

家がないことに僕と霊夢が頭を悩ませていると……。

 

「……はぁ。なんでお前らはそう、何もかもがおかしいんだよ……。……ま、今日のところはしゃあねぇ。四人じゃちょっと狭いが、家にこいよ。妖人、霊夢。」

「「いいの!?」」

「里見くん、案外優しいのね~。」

「案外は余計だ木更さん。……とにかく、家探しはまた明日だ。ほら、行くぞ。」

 

木更さんに誉められて頬を赤らめた蓮太郎がぶっきらぼうに僕らを催促する。野宿することに決めあぐねていた僕らにその誘いはまさに地獄に仏。

 

満面の笑みで、僕と霊夢は蓮太郎の後に続いた。

―――――

蓮太郎の家は、数十分歩いた先にある、アパートだった。

 

「ここが……?」

「蓮太郎の家……?」

「なんだよ、文句あっかよ。」

「いや、少し驚いて……。」

「……。ほら、行くぞ。」

「「はーい。」」

 

僕らは、蓮太郎の部屋の前に行き、蓮太郎が鍵を開け、中に入ったのでそれに続いた。

 

「帰ったぞ、延珠~。」

「延珠?」

「さっき言ったろ?四人じゃちょっと狭いがと。」

「なるへっそ。」

「おぉ!?帰ったか蓮太郎~!」

 

元気のいい声が奥から聞こえてきた。延珠と一緒に暮らしているのか、……ロリコン?

 

奥から延珠がトタタ……と元気な顔で走ってきた。

 

「?あぁ!お主らはさっきの!」

「こんばんは、延珠。」

「どうしたのだ蓮太郎、こいつらも居候にしたのか?」

「今日だけな。家がない、ってことだから。」

「ふ~ん。ま、とりあえずゆっくりしていくのだ!ただし、妾たちの営みを邪魔するなよ?」

「んなことするか!」

 

とまぁ、こんな感じで僕と霊夢、そして蓮太郎と延珠の四人が揃い、蓮太郎が買っていたモヤシで晩御飯を食べることとなった。

―――GO FOR THE NEXT!!




どうでしたか?
蓮太郎の家に一日居候をすることになった妖人達。……一悶着の予感がしますね~!
では、次回予告。
次回は、ついにあの人が登場!果たして蓮太郎との関係は!?そして妖人達との出会いは!?
それでは、次回をお楽しみに~♪


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~騒動~

こんばんは!遠山tsunです!
今回はついにあの人が!?
それでは、ゆっくりしていってね!


「ふぅ~……。美味しかった~♪なんで蓮太郎はモヤシからあんな美味しいものを作れるのだ?」

「料理したからな。」

「夢のない……。」

「うっせぇ。」

「愛想のない……。」

「放っとけ!!」

 

藍原 延珠(あいはら えんじゅ)、里見 蓮太郎(さとみ れんたろう)、僕、桜花 妖人(さくらか ようと)、そして博麗 霊夢(はくれい れいむ)の順に会話をする。

 

僕と霊夢は、幻想郷にいたある日、突如謎の女の子の声により、幻想郷と日本の時間が離れすぎているということで、日本に飛ばされた。

 

そして、僕が最初に目にしたのは、日本のものとは思えない枯木の森だった。そのことに驚いていた僕に、追撃をかけるかのように現れた僕の三倍以上の大きさのワニの化け物だった。

何とかそれを切り抜け、離ればなれになっていた霊夢と再会するも、霊夢は十歳位の背丈になっていて、髪留めの赤いリボンがより一層目立っていた。

 

ほどなくして町のなかに入り、一息ついていた所で、女の子の悲鳴と人ならざる者の声がしたので、また走り出した僕と霊夢。

 

そこには、蜘蛛の化け物と、蓮太郎、そして警官がいた。すぐに脇から延珠が現れ、蓮太郎の急所にどぎつい一蹴りをもらって、夫婦漫才をしているところに化け物が襲い掛かり、危ういところで僕が化け物を吹き飛ばす。

 

その後、蓮太郎と延珠のコンビプレイにより、その場は一件落着。蓮太郎が僕と霊夢に天童民間警備会社に来るように言われるが、すぐに蓮太郎と延珠はタイムセールへと消えてしまう。

 

唖然とする僕(霊夢は無表情みたいだった)は、その光景を僕と同じく唖然として見ていた多田島警部が漏らした声に気付き、バックレるのもどうかと思ったので多田島警部から報酬を受け取り、霊夢と共に天童民間警備会社に向かった。

 

道に迷うというとんでもないアクシデントにあいながらも、何とか天童民間警備会社に僕と霊夢はたどり着き、そこで蓮太郎と天童の社長、天童木更さんにあった。

その後、僕と霊夢は民警、天童の社員になり、この世界のことを知らないことを怪訝しながらも、蓮太郎と木更さんにこの世界の説明を受けた。(*長いので前回を見てね)

 

説明を終えた頃には、夜の7時くらいになっており、今日の所は解散と相成ったのだが、僕と霊夢は幻想郷から来た異世界人。家などないことはあったり前田のクラッカー!!

さすがにそれは、と蓮太郎が僕と霊夢を蓮太郎のアパートに一日だけ居候させてくれることになり、現在に至る。

 

今は蓮太郎と延珠、そして僕と霊夢の四人が一部屋に集まっているので、少し手狭だが、逆に心地よく感じるのは何故だろうか。

 

「よし延珠、いつもの日課をやるぞ。」

「むぅ~。」

 

蓮太郎が言うと、延珠は唇を尖らせて露骨に嫌がる顔をしたが、恐る恐るといった感じで腕を差し出した。

 

何が始まるのだろうか?

 

蓮太郎は、どこからともなくシルバーケースを取りだし、それを開いた。中には、いくつもの緑色の液体が入った注射器みたいなのが入っており、それを一つ取り出した。

 

「んっ……!」

 

蓮太郎がそれを延珠の腕に押し付け、延珠にそれを打ち込む。……キュポッ、という音と共に、空になった注射器が離れた。

 

「はぁ~♪終わった終わった~♪」

「ねぇ、蓮太郎。もしかしてそれが?」

「ん?あぁ、そうだ。ガストレア因子の進行を急激に遅らせる薬だ。」

 

先程説明されたときに話された、イニシエーター達の中のガストレア因子を抑えるための薬を打つことが日課だったようだ。

 

「ん、そろそろ寝る時間だな。妖人、霊夢、延珠。寝るぞ~。」

「あ、うん。」

「分かったわ。」

 

そうして、僕と霊夢が立ち上がった蓮太郎と一緒に別室にて寝ようとしたとき……。

 

「いつもの日課も終わったし、もうやることは一つしかないだろ蓮太郎!」

 

延珠が顔を赤らめてどんとこい、と言わんばかりに両手を広げて蓮太郎を呼ぶ。

 

……この展開はまずい、何とはいえんがとにかくまずい。

 

蓮太郎もそう思ったらしく、僕と目線があい、同時にうなずき、襖を一人一枚ずつあけ(霊夢は小さいので僕が開ければ入る)、

 

「「うん、おやすみ。」」

 

と声を揃えて、襖の奥へと消え、布団にそそくさと入った。四つある布団の配置は、僕が左奥、霊夢がそこから一つとなりの右側、その隣に延珠と蓮太郎の布団が並ぶ。

 

奥から延珠の唸り声が聞こえ、次の瞬間、

 

「おのれ!!淑女の誘いを断るとは何事か!?」

「ぐがあぁ!!」

 

神速の勢いで襖が開け放たれ、蓮太郎の頭に延珠の足がミシミシと音をたててめり込みはじめた。

 

「あらま……痛そ。」

「うん……。」

 

これまでずっと成り行きに身を任せていた霊夢がさすがに声を漏らした。

 

「な、眺めてないで助けてくれ!!」

「「だが断る。」」

「何故だ!?」

「えぇい待たんか蓮太郎!!ついでに妖人もだ!!妾は蓮太郎と!妖人は霊夢と添い遂げるのがあの流れであろう!!」

「理不尽だぁ!?」

 

こうして、霊夢は真ん中で座っていて、その周りをドタバタと僕と蓮太郎が延珠に追いかけられて逃げ回る。

 

少ししたら下から竹槍が物凄い勢いで貫いてきた。危うくそれを避けるが、僕らを追いかけるように下から竹槍が迫ってくる。

いよいよ地獄絵図とかしてきた。

 

「なんで僕がこんな目に……。」

「俺だって知りたいわ!!」

 

僕と蓮太郎は、延珠が疲れて眠るまでずっと走り続けて、寝始めた三時間にもみたないんじゃないかと思える早さで朝を迎えた。……寝不足である。

 

――――――GO FOR THE NEXT!!

 




どうでしたか?
あの人とは、そう!下の階の人です!!竹槍捌きが凄いですよね……。
あ、ねぇねぇKだと思った?ねぇねぇKだと思った?残念、下の人だ!!
とまぁ、おふざけはここら辺で、次回予告。
次回は……ストーリー的に分かるよね?分からない人は察してね!!
それでは、次回をお楽しみに~♪


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~驚愕~

遅れてすみません……遠山tsunです!
今回はついに!?それでは、ゆっくりしていってね♪


「聖天子様……。」

「聖天子様?」

「お前……さすがに聖天子様を知らないのはどうかと思うぞ……?」

「あ、あはは……。」

 

僕、桜花 妖人(さくらか ようと)は、博麗 霊夢(はくれい れいむ)と一緒に僕が今日から勤務となった『天童民間警備会社』の先輩であり、一日居候をさせてくれた里見 蓮太郎(さとみ れんたろう)の作ってくれた朝ご飯を、こちらはずっと居候であり、蓮太郎の『イニシエーター』藍原 延珠(あいはら えんじゅ)を加えた四人で食べて、蓮太郎は勾田高校に、延珠は勾田小学校へ行くため支度をしていた。僕と霊夢は蓮太郎が今日中に手続きをしてくれるとのことで、学校は明日からだ。

 

そんな時、テレビから「ご覧ください!!」と女性レポーターの甲高い声に引き寄せられるように皆の視線がテレビに向き、テレビには白い服に包まれた、とても綺麗な女の人が観衆に向けて笑顔で手を振っていた。

 

なるほど、様、というのは美しさというだけではなく、ほんとにそう呼ぶ立場にあるからだろう。

 

「蓮太郎、あれ。」

「ちっ、ジジィか。」

「ジジィ、ってことは、少しはあなたと縁があるのかしら?蓮太郎。」

「あぁまぁ、ちょっとしたな。」

 

延珠が聖天子様の後ろに立つ白髪白髭のおじさんが立っているのを指差し、蓮太郎が苦虫を噛んだような顔をしたことを、霊夢が少し面白そうに聞く。本当に面白がっているかはわからないけど。

 

「む?そろそろ時間ではないか?蓮太郎よ。」

「あ!やべ!?おいお前ら!!全員外に出ろ!!」

 

こうして僕らは慌ただしく蓮太郎のアパートを飛び出した。蓮太郎達が学校に行ってる間、僕と霊夢は契約金と渡されていた報酬の三分の二(いらないといっても聞かなかったからだから!!奪い取ってないからね!?)を持って、この世界での新居を探すことにした。

 

蓮太郎がアパートの部屋を買ったときに行った不動産のメモをみながら、霊夢と話す。

 

「とりあえずは、落ち着いてきたかな?」

「そうね、でもまずは家が先ね。また居候なんてのはさすがに図々しいからね。」

「霊夢でもそういう考えするんだ!?」

「あぁん?」

「誠に申し訳ございませんでした。」

 

歩く度にピョコピョコ揺れる赤いリボンに少し注目していたら、その後ろからどす黒いオーラと霊夢の般若のような顔、そして女の子とは思えない野太い恐怖極まりない三種の神器に神速の早さで謝罪をする。

 

最近霊夢のどす黒いオーラが出現する機会が増えてる気がするのは、気のせいだろうか?

 

「あ、そういえばさ、あの女の子、結局誰だったんだろう?」

「さぁね、多分この世界にいるはずだろうけど、今のところは放っておいても問題なさそうね。」

「んじゃ、幻想郷とこっちの時間がずれている原因を調べないと……といいたいけど。」

「けど?」

 

赤信号で立ち往生する僕と霊夢。霊夢が顔を上げてこちらを見上げて次の言葉を催促する。

 

「何となくだけど、予想はついているんだ。ただ、まだ予想だけだから、確定したら教えるよ。」

「ふぅ~ん。ま、期待してるわ。」

「ねぇ、霊夢?」

「うん?」

「あんまり興味なさそうだけど、霊夢は帰りたくないの?」

「別にそういう訳ではないけど、ただ面倒なのよ。……もし興味なさそうに本当に見えるなら、こういうことは案外珍しいことでもないから、慣れているからそう見えるだけだと思うわ。」

「へぇ~……。」

 

何気にずっと胸のうちにあったつっかえがとれた気がした。赤信号が青に変わり、立ち往生を食らっていた人達が皆一斉に歩き出す。僕らも歩き出して、少ししたら不動産に着いて、恐る恐る入る。

 

「いらっしゃいませ♪お部屋をお探しですか?」

「あ、は、はい!」

「それではこちらへどうぞ~。」

「はい……。」

「クスクス。」

「笑うなよな……!」

 

いつになっても慣れない接客に緊張する僕+それをクスクス笑う霊夢。

 

むぅ~……。

 

男性店員に案内されて、カウンターにつく僕と霊夢。店員が、大きなファインダーみたいな資料を開けながら僕に聞く。

 

「どのようなお部屋をお探しですか?」

「えっと、出来るだけ安くて、風呂つき、台所つきで、出来れば洗濯機は外のアパートはありますか?」

 

僕は蓮太郎の家を思い出しながら言った。

 

「そ~れ~だ~と~、こんなのはどうですか?」

「……。」

「妖人……あんた……わざと?」

「何もいえねぇ。」

「北○さんパクるんじゃないわよ!!」

「いやそういうつもりでいった訳ではないんだけどね!?……あ、その部屋でいいです。」

「かしこまりました♪料金は―――。」

 

僕が言った通りの部屋を店員さんから紹介された。

 

それもそのはず、店員から紹介された部屋は、蓮太郎のアパートで、しかもその隣の部屋だったからだ。

 

まぁ、サプライズみたいで丁度いいかな、みたいな感じで僕は了承して、金額を渡し、鍵を手渡された。

 

その後、僕と霊夢は来た道を戻り、蓮太郎の部屋を通りすぎ、隣室の部屋の鍵を開けて、小休憩をいれた所で、木更さんから防衛省の玄関で待ち合わせ、という電話が入った。

 

……場所の地図は電話の後、木更さんから送られて来たが、何故に防衛省?

 

僕と霊夢は小首を傾げ合い、地図を頼りに防衛省へと向かった。

 

――――――防衛省玄関――――――

 

僕と霊夢は、勾田高校の制服を着ている蓮太郎とセーラー服を着ている木更さんと防衛省の前で落ち合った。

 

「来たか、妖人、霊夢。」

「うん、何とかね。」

「皆集まったわね、さ、中に入るわよ。」

「え、あ、ちょっと待ってくれ木更さん!」

「?」

 

いきなり中に入る、と言われ戸惑う僕ら。それを代弁するかのように蓮太郎が木更さんを呼ぶ。

 

「今回はどういうことなんだ?」

 

どういうこと、というのは今回ここに呼ばれた理由のことだろう。

 

「知らないわ。ここに来い、としか言われてないわ。」

 

そういって中に入っていく木更さんの後を急ぎ足で追いかけながら、僕と蓮太郎は首を傾げた。

 

「嫌な予感がするわね……。当たらないといいのだけれど。」

 

そう呟いた霊夢の一言がいやに心に残った。

 

――――――

 

中に入ると、どうやら僕らが最後だったらしく、他の皆は縦長の机に均等に置かれた名札の席に座っていた。ただ、座っているのは社長だけらしく、後ろに立っている人と小さな女の子は恐らく護衛用に連れてきた民警の人だろう。

 

「末席だな。」

「仕方ないわ。実績ではうちが一番低いのだから。」

「……。」

 

言葉の通り、『天童民間警備会社』と書かれた札が置かれた席は一番端だ。そのことをぼやきながら、木更さんからの視線に目をそらした蓮太郎。

 

……察し。

 

「おうおう、誰だお前ら?」

 

そんな時、いきなり口元を布で隠した大男が、蓮太郎に向けて話しかけて来た。蓮太郎が僕らを手で制しながら、応答する。

 

「人に名を訪ねるときは、まず自分からだろ。」

 

蓮太郎が臆することなく大男を睨む。

 

「人に名を訪ねるときは、まず自分から?ハハハ!!面白い餓鬼だなっ!!」

「「「「ッ!?」」」」

 

蓮太郎がいきなり頭突きをかまされ、倒れこむと見せかけて低く構えて腰に手を伸ばす蓮太郎。

警戒心がはねあがり、僕は《霊狐》の準備を、霊夢はお払い棒とお札を構える。

 

「やめないか!!将監!!」

「!?でもよ!!」

「やめろといったんだ!!」

「……ちっ。」

 

優男の怒号により、舌打ちをしながらも立ち去る将監。あの優男は将監の社長なのかな?

 

「すまないね、うちのものがとんだ無礼を。」

 

少し離れた席だったので、歩きながら優男の人が、――名札が見えた――三ヶ島さんが詫びてくる。

 

「……部下の指導ぐらいしっかりしとけよ。」

「はは、面目ない。」

 

皮肉を蓮太郎が吐き捨てるように言ったが、三ヶ島さんは易々と受け流す。

三ヶ島さんが自分の席に戻ったのを確認し、蓮太郎が木更さんと話す。

 

「さっきのあいつ、一体なにもんだ?」

「『IP序列』千五百八十四位、伊熊将監よ。」

「千番台か……。」

「強いの?」

「あぁ、結構な。そして百番台からは悪魔に魂を売ったものと言われている。」

「なるほど……ちなみに、蓮太郎は?」

「……十二万とちょい。」

「……。」

「やめろ!!そんな生暖かい目で見るな!!」

 

蓮太郎のことを出来るだけ暖かい目で見る。……頑張れ、蓮太郎!!

 

「あれ?そういや僕と霊夢の―――。」

 

蓮太郎に僕と霊夢の『IP序列』を聞こうとしたとき、縦長の机の先にあるドアから、男の人が現れた。

 

「……む?一つ欠席か……まぁいい。」

 

こんな重要そうな会議に欠席か……どんな大変な用事なのだろうか?

 

男の人が咳払いして。

 

「諸君!!集まってくれて早速だが、この依頼は聞いてから断ることは出来ない!!断る者は速やかに退散してくれ!!」

 

そう叫ぶが、誰一人として微動だにしない。それを確認した男の人が、ドアの上にある大きな液晶パネルに会釈をした。すると、真っ黒な画面に写った人は……。

 

―――GO FOR THE NEXT!!

 

 

 




どうでしたか?
いやぁ、まさか家が隣になるとは、運命かな?
それでは、次回も波乱の会議編です!!
次回をお楽しみに~♪のしのし。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~進展~

「せ、聖天子様!?」

 

誰かがそう叫び、皆一斉に立ち上がる。もちろん、僕と霊夢も例外ではない。

モニターに写し出された白いワンピースみたいな服装の聖天子に、白い天狗とかが来ていそうな服を着た、蓮太郎曰くジジィの天童菊之丞。

 

「皆さん、ごきげんよう。……楽にしてください。」

 

そういわれて、座る人は誰一人いなかった。そのとき、菊之丞の目がある一点で止まる。

 

「木更ぁ、よくも私の前に顔を出せたな……!!」

「こんにちはお祖父様。お久しぶりです。」

 

張り積めた空気に、僕は、誰もが生きた心地はしなかっただろう。そんななか、ゆっくりと聖天子様は口を開いた。

 

「……依頼は二つあります。ひとつ目は、昨日東京エリアで感染者を出した、感染源ガストレアの排除。」

 

ガストレア――どこから来たのか、どのように生まれたのか不明の寄生生物。様々な種類があり、それは動物だけでなく希にだが植物のガストレアもいる。本来、例えばミノムシとかが人間並みに大きくなっても、自重で潰れてしまうが、ガストレアウィルス、ガストレアの体液などにあるウィルスはそれらの常識を全て覆す。

 

昨日感染者を出した、とはガストレアに体液を送り込まれてガストレア化してしまった人間が出たことを指す。ガストレアウィルスは、人の体内に体液感染すれば、尋常じゃない勢いでDNAを書き換えていき、形象崩壊というプロセスを経てガストレア化する。

 

「二つ目は、その感染源ガストレアの体内に取り込まれたケースの回収です。」

 

取り込まれた?飲み込んだの間違いでは?

 

そう懸念そうな顔をした僕に蓮太郎が僕にしか聞こえない小声で囁く。

 

「取り込まれたってのは、感染者がガストレア化する時に持っていた持ち物がガストレア化すると同時に体内に入ったてことだよ。」

「なるほどね……。」

 

要するに、感染源ガストレアもまた感染者だった、ということか。……全滅させるのは、人類が宇宙の果てに行くことぐらい難しいだろう。果てがそもそもあるかどうかはわからないが。

 

「何か質問がある人は?」

「はい。」

「なんでしょう。」

 

木更さんが手をあげた。

 

「ケースの中身を教えてもらってもよろしいでしょうか。」

「……それは……。」

 

言いづらそうに小さく視線を逸らした聖天子様。さらに糾弾しようとしたのか、再度口を開いた木更さんだが、結局言えなかった。

……突然の来訪者故に。

 

「そのレース、私も参加させてもらう。」

「「「「「!!!!???」」」」」

 

中央に集まる視線の焦点には、道化のようなタキシードのような服を着て、仮面をつけた男の人が立っていた。

 

いつの間に!?しかもどこから入ってきた!?

 

「ナナホシの遺産は私が頂く!……おいで、小比奈。」

「はい、パパ。」

 

蓮太郎の後ろ側から小さな青い髪で、藍色の服を着た小さな女の子がよいしょと机の上にいる男の人の側に近寄る。

 

ナナホシの遺産、と告げられた時、一瞬聖天子様の目が瞑られた気がした。でも、今は正直それよりもこの二人のことだ。

 

「この子は私の娘で、私のイニシエーター、蛭子小比奈だ。モデルマンティスの因子で、近接は最強だ。」

 

名前を呼ばれたとき、小さくスカートの裾を上げて礼をした。

 

イニシエーター、ごく希に妊婦の口にガストレアウィルスが入り、その毒性を持ったまま生まれた子供たち、『呪われし子供たち』の中から選ばれる子供たちのことだ。……気に入らない、呪われし子供たちなんて言い方は。

 

「う、うわぁあ!!」

 

誰もが驚愕に黙り込んでいたが、突然の叫びとひとつの発砲音に皆が自前の銃を男の人達に連射する。だけど、僕と霊夢は青白い燐光が度々あがるのを見逃さず、何も行動しなかった。次の行動を早めるために。

 

「うそ、だろ……?」

 

誰かがそう苦々しく呟いた。男の人と小比奈の周りには、だえんのシールドみたいなのが全面に張られていたのだ。

 

「……私はこれをイマジナリー・ギミックと読んでいる。これを発動するために、体のほとんどを改造しているがね。」

 

これは、という声なき疑問に答えるように説明をする男の人。そして、一瞬小さく縮むのが見えて、僕はその後の未来が見えた気がして、霊夢を抱えて伏せた。その次の瞬間、シールドに阻まれて浮遊していた弾丸が乱反射する。たくさんの悲鳴とガラスが割れる音、机や色んな所に弾丸が埋まる音が聞こえて、しばらくして静寂が訪れた。

 

「……good-bye、民警諸君。世界は、終わりだ。」

 

その声を、皮切りにして。

 

「……聖天子様、説明していただけますね?」

 

立ち上がった木更さんが改めてモニター越しに聖天子様に中身を問う。聖天子様は、諦めて説明を始めた。

 

「いいでしょう。あのケースの中身は、ナナホシの遺産。大絶滅を引き起こした十一体のステージVのガストレアを呼び寄せる触媒となり得るものです。」

 

ガストレアには段階がある。蜘蛛なら、そのままの状態がステージI、そしてそこから様々なものを取り入れることにより、II、IIIとステージが上がり、上がるごとに姿が怪物と呼ぶに相応しい状態になっていく。本来はIVが最終段階なのだが、その枠組みにとらわれない十一体のガストレア、それがステージVのガストレア。

 

――そして、その説明を終えた時に、蓮太郎が足元にある箱に気づいた。

 

「なんだこれ?」

 

その箱を机の上においたとき、正面入り口からタキシードの男の人、会社員だろうか。が、入ってきた。

 

「た、大変だ!!社長が自宅で殺された!!そして頭部がまだ見つかってない!!」

 

その事を聞いた皆の視線が、蓮太郎の前にある箱の前に集まる。……そして、蓮太郎が箱をそっと開けて、少しして閉めた。

 

きっと、あのなかには――。

 

蓮太郎は憤怒の表情になるも、すぐに深呼吸して落ち着き、そのひの会議は聖天子様の声によりお開きとなった。

 

――――




どうでしたか?
今回は様々な人物が登場しましたね~
果たして、主人公との関わりは!?
それでは、次回をお楽しみに~♪


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~急速~

どうも、お久しぶりです、遠山tsunでごさいます。
今回はとても展開が早く、あまり面白くないかもしれません、ご了承ください。
では、ゆっくりしていってね!


翌朝。蓮太郎は延珠に連れてかれアパートの裏手の空き地へと向かった。

で、僕は……、霊夢と推理していた。

 

「……結局、女の子には会えてないし、この世界というか、現代を僕が来た時代に戻す手掛かりもないし……。」

「確証はないけど、一応は考えがあったんじゃないの?」

「まぁね。……飛ばされたあと、後ろを向いたら一瞬だけ空間が避けていた気がしたんだ。一瞬すぎて何も言わなかったんだけど。」

「空間が避けていた……ものすごく既視感があるわね。何だったかしら……。」

「「う~ん……。」」

 

はて……どこかで覚えてる気がするんだけど思い出せない……。あぁ、寝惚けてるのか何なのか、もどかしいったらありゃしないなぁ……。

 

と、ここであることに気付く。

 

「あれ?僕らって手掛かりまともに探したことあったっけ?」

「そういや、ないわね。……今日は探しに行きましょうか。」

「うん、そうしよう。」

 

そうして、僕らは街中へと歩き出した。

 

―――――

 

「へぇ~……人里も結構進歩するのね。」

「まぁ、十数年経ってるみたいだしね。」

 

結局、僕らは商店街へと来ていた。そして、ぶらりと歩きながら周りを見る。

 

「あら……。」

 

宝石店のショーウィンドウの中にある宝石が目に止まったのか、霊夢が近寄る。

 

「へぇ?案外女の子らしいところあるじゃんか。」

「う、うるさいわね。私だって女よ?まぁ、幻想郷じゃ性別は殆ど関係ないけど。」

「女の子しかいないよね。」

「ほほぅ?言っとくけど他の女の子に手を出したら許さないわよ?」

「へいへい……。」

 

僕は、あまり真剣に霊夢の一言を聞いてなかったので、半ば聞き流してしまった。……後から思えば、このときしっかり聞いておけば、あぁはならなかったのかもしれない。

そして、霊夢が赤面しているのを気付けなかった僕は、きちんと霊夢を見ておけばよかったかもしれない。歩き疲れていたのかもしれない……。

 

「――そいつを捕まえろぉ!!」

「なんだ!?」

「行くわよ!!」

「え、あ、うん!」

 

向こうから聞こえた男の人の声に、霊夢が反射的に走り出し、ほんの少し遅れて僕も走り出した。

 

――――

 

「延珠、一人で家に帰れっか?」

「え?」

 

声の先には、何故か蓮太郎と延珠がいた。そして、突如蓮太郎は走り出し、背格好からして中学生の原付を奪うように乗り、エンジンをかけた。

 

「蓮太郎!!」

「妖人!!霊夢!!悪い!急いでるんだ!!」

「僕らも行くよ!!」

「わかった!先いってる!!」

 

蓮太郎はよほど急いでいたのか、そのまま猛スピードで何かを追いかけるように道路を走り出した。

 

「延珠、いったい何が?」

「わ、妾の同胞が警察に連れ去られて……蓮太郎がそれを追いかけていったのだ…。」

「なる。んじゃ、霊夢。悪いんだけど、延珠と一緒に帰ってくれないかな。」

 

この先は、きっと霊夢達は胸を痛めてしまうだろう。本能がそれを伝えていた。

 

「しょうがないわね……。貸し、一つだからね?」

「了解。」

 

僕は、路地裏へと入り、《霊狐》を足に『部分憑依』、つまり部分的に纏って飛び、屋上伝いに蓮太郎が向かった方向へと飛び始めた。

 

外周区付近につき、目の前にある大きなモノリスに少し驚きながら、歪曲しかけの電波塔の脇にパトカーが止めてあるのを発見した。音をたてずに着陸すると、中へと入り、柱の陰から様子を伺う。すると、そこには……。赤目の少女が警官に頭部を撃たれていた。それも、三発。

明らかに致死量と思われるほどの血だまりができ、僕は唖然として動けなかった。

警官は、そそくさとその場から逃走した。僕は、駆け寄った。

 

「妖人……。」

「蓮太郎……。」

 

震える足で蓮太郎が女の子の近くに近寄り、冷たくなっていく少女を抱き抱えた。その際、蓮太郎が僕を見た。

 

「これが……これが!人のやることかよ!!何が正義の味方だ!!市民を守るだ!!こんな虐待を座視していたのかよ、俺達は!!」

「……人は、誰かに何かを押し付ける。それは、僕らだって変わらない。人間なんだから。そして、蓮太郎のように優しい人達がいる分、あぁゆう奴等がいる。世界は醜い部分を隠しているんだ。そして、世界で隠されているから、あぁゆう奴等が平然としている。僕は、そんな世界は大嫌いだ……!絶対、許さない……!!」

 

僕らは憤慨した。その憤慨を打ち砕くように、蓮太郎が抱き抱える少女が激しくむせた。

それに、顔を見合わせた僕らは頷き、急いで病院へと向かった。

 

――――

 

病院へと着くなり、少女は手術室へと消えていった。そして、蓮太郎は手術費用を肩代わりするといい、病院を後にした。

 

「……疲れた……。」

「それに、寒いね……。」

「あぁ……。」

 

僕と蓮太郎はとぼとぼと帰り道を歩いていた。今は夜中の2時。いくら春頃だとはいえ、夜中はやはり寒い。しばらくして僕らのアパートが見えた。明かりは一つも見えない。きっと寝ているのだろう。まぁ、こんな時間まで起きてたら体に悪いから、絶対すぐ寝かしたろうけど。

 

「お疲れのようだね、民警くん達。」

 

底冷えのするような声に、蓮太郎は腰のXD拳銃を抜きながら、僕は、腕に《霊狐》を纏いながら振り向き、声の方へと向けた。すると、蓮太郎と僕の鼻先に拳銃が突きつけられていた。……ゆっくりと、それぞれ得物を下ろした。

 

「随分悪趣味なぶつじゃねぇかわ蛭子影胤(ひるこ かげたね)。」

「ヒヒ、こんばんは里見くん。桜花(さくらか)くん。」

 

燕の尻尾のように長い背中のせびれのような部分がある燕尾服に仮面という、オペラ座にいてもいいくらいの怪人は、奇妙な拳銃を二丁腰につけていた。

 

「こちらの黒いのはマシンピストル『スパンキング・ソドミー』、同じく銀色のは『サイケデリック・ゴスペル』と言ってね。私の愛銃達だ。」

「何しに来たのさ。」

「実は、里見くんに話があってね。……桜花くんには、別の方からのお誘いだ。」

「?」

 

影胤はパチンと指を鳴らした。すると、僕の目の前に境界が開いた。境界にある目が僕を睨んでるかのようだ。

 

……この、境界は……!?

 

僕は、境界から伸びた手に引きずりこまれた。

 

――Go for the next!!




どうでしたか?
前書きにもかいた通り、展開が早すぎました。反省すべき点です。
次回は、いよいよクライマックス!様々な謎が残る現在を、どう裁けるか!
では、じゃあの!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~決闘~

「ごぶぁっ!!」

 

境界を通って荒々しく出された先は、大木の木々に囲まれた円形の広場みたいなとこだった。そして、僕を引っ張った人は……。

 

「や、やっぱり、貴方ですか……、紫さん……。」

「えぇ、そうよ。」

 

『境界を操る程度の能力』の持ち主、八雲 紫さんだった。

 

「どうして、貴方が影胤と……?」

「貴方を見つけてもらうために協力してもらったのよ。」

「なるほど……。で、わざわざ連れ出してどうゆうご用件で?」

「本当はまだ時間があったはずなんだけど……、彼女がもう来てしまうから。貴方の力を借りたかったのよ。」

「彼女……?」

「貴方達をここに飛ばした子よ。彼女の力……計り知れないわね。」

「貴方達……?って、霊夢!?」

 

いつの間にか、隣には霊夢がいた。僕が境界に引きずり込まれたとは別に、自分から境界に飛び込んできたようだ。

 

「あれ……?それなら別に無理矢理連れてこられなくてもよかったよn「黙りなさい。」解せぬ。」

「で、紫?その彼女は一体どんなやつなの?」

「貴女の……はぐれ者ってところ。」

「はぁ?」

 

紫さんの返答に霊夢が顔をしかめる。

 

「まず、それには妖人の能力について少し説明しないとね。妖人のは、本来触れなければ『変える』ことは出来ないのだけれども……時々例外があるようね。能力の縛りも『変えて』いるのかしらね。そして、その妖人の能力の例外で霊夢の霊力が本人に気付かれないレベルで、しかし着々と違うものに変えられていった。誰も知らない場所でね。それが、妖人の妹さんの起こした異変で完全なものとなり、完成したの。」

「待って、どうして私は例外になったの?」

「それは貴女の能力ゆえよ。」

「あぁ……。」

 

霊夢は納得したようだ。僕は……とりあえず纏めてみよう。

 

一、僕の能力と霊夢の能力が合わさって、誰も知らない場所で霊夢の霊力が何か知らぬものへと変わっていった。

二、そして、僕の妹の起こした異変によって完成してしまった。恐らく、完成までの時間を『消して』しまったから急速に完成したのだろう。

三、つまり、霊夢の霊力が変わっていった末に出来たのは……。

 

「霊夢の曲がり者ってことか…。」

「なるほど、そういうことね。」

 

持ち前の天性の鋭さで、僕の考えがわかったようだ。流石霊夢。そこに痺れる憧れるぅ!!

 

「でも、それならどうして僕らを?」

「あれじゃないかしら?パパとママを呼ぶみたいな……。」

「ぱ、パパ!?」

「貴女の能力と霊夢の能力から生まれたのだから、そういうことでしょ。」

「ま、まぁ確かに……。」

 

うぅ、何か小っ恥ずかしい……。

 

「少し質問していいかしら?」

「何?霊夢。」

 

少し考え込んでいた霊夢が口を開いた。

 

「私の曲がり者が私達をここに連れてきたってことはわかった。声もあの頭のなかに響いた声だということもね。なら、どうやってここに連れてきたの?そして、どうして時間が狂ってるの?」

「いい質問ね、霊夢。それは彼女の能力、『狂わせる程度の能力』よ。時間を狂わせてこの時代にしたのも、貴女達の居場所を狂わせたのも。」

「狂わせる……妖人の変えるの遺伝みたいなものかしらね。」

「あ、あはは……。」

 

狂わせる……そんな相手にどう戦えと?あ、もしかして僕の変えるで対抗しようってこと?それなら合点がいく。

 

「噂をすれば、来たようね。」

「あら、もう?」

「さて、曲がりなりにも霊夢だから、気を引き締めてね。」

「え?紫さんは参加しないの?」

「私も忙しいのよ。」

「嘘だ!!」

「じゃあねぇ。」

「あ、ちょっと!?」

 

手を振りながら、境界の奥に消えていった。

 

「ね、ねぇ、妖人……?」

「うん?」

 

霊夢がもじもじしながら僕に声をかける。

 

「さっきのパパとママって……、何かいい響きだと思わない?」

「ふぇ!?」

「……や、やっぱり何でもない……。」

「う、うん……。」

 

どうしたんだろう、霊夢……。というか、何で僕こんなにドキドキしてるんだ……。さっきの霊夢、まるで僕のことを……。

 

と、思ったところで、禍々しい気配を感じて、霊夢がお払い棒を、僕は、どうやらモノリスから離れたところらしいので、我が妹の異変を解決しようと命を変えてなったあのときの姿、体全体が紫色の光を放ち、時折火柱のように燃え上がる霊力。腹に大きな陰陽玉、襟元に幾つもの小さな陰陽玉が浮かび上がる。

 

「久しぶりに見るわね……その姿。」

「気配が禍々しいからね。本気で行くよ……!」

「えぇ…!」

 

そして、意気込んだ所に、目の前に荒々しく、不可思議な境界が現れ、そこから現れた……。

 

「霊夢……!?」

「えぇ、そうよ。一応は、ね。禍霊夢(まがれいむ)とでも呼んでくれればいいわ。」

 

霊夢の曲がり者、禍霊夢だった。赤色のリボンや服が黒色になり、瞳が赤い。そして、服の裾などに赤いラインが入り、正に禍々しい。

 

「どうしてこの世界に呼んだの?」

 

臆することなく霊夢が禍霊夢に問う。

 

「この世界なら、貴方達もすぐ死ぬと思ったのだけれど……。貴女もそんな小さくしたしね。」

「何……だと……?」

 

驚いたのは僕だった。馬鹿な!?霊夢が小さくなったのは世界観故ではなかったというのかっとメタ発言は自重自重。

 

「さっさとあんたを倒して、元の世界に戻してもらうわ!!」

「ふふっ、かかってらっしゃい!!もちろん、2vs1(二対一)でね!!」

「行くよ!!」

 

こうして、僕らは禍霊夢と戦闘を始めた。全ての元凶を倒して、元の世界に戻すために。

僕は、戦闘を始める直前に、こう思った。

 

――僕、この戦いが終わったら、霊夢に――するんだ……!――

 

――Go for the next!!




どうでしたか?
と、久しぶりですね。遠山tsunです。
今回は、まぁ解決編みたくしてみました。そして、主人公に死亡フラグを!!
やったねたえちゃん!!妖人が(おいバカやめろ)。
果たして、禍霊夢との戦闘の行方は!?そして、妖人は霊夢に何を!?
次回をお楽しみに~。じゃあの!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~告白~

いきなりですが、最終回です!
お気をつけて!


「危なっ!?」

 

意気込んで望んだ禍霊夢との戦いは、2vs1でも押され気味だった。禍霊夢中心に展開される

色彩豊かな弾幕は、時々弾道を狂わせてやって来る。右斜め上からだったり、足元からだったり、背後からだったり……かなり危ない。

 

「どうして僕達を攻撃するのさ!」

「あんた達を消して、幻想郷を手に入れるためよ。」

 

わお、まさかの幻想征服と来ましたか……。

 

「はぁ……、あんたみたいのは幻想郷にいくらでもいるのよ。」

 

自身を囲むように結界を張る僕ら。そして、その結界の中で呆れて溜め息を吐いた霊夢。

 

「えぇ、そうね。でも……、だからこそやる意味があると思うわ。」

「まぁ、ありきたりだからこそやる意味があるって考えには共感できるけど、個人的にも博麗の巫女としての立場もあるわ。だから……今ここで止める!!」

 

そして、結界を壊して飛び出す霊夢。慌てて僕も飛び出す。が、霊夢と禍霊夢が格闘戦を始めたので、手出しが出来ない。

 

「やるわね。流石と言っておくわ。けど、これならどう!?」

 

霊夢の拳の勢いを貰って大きく後ろに吹き飛んだ禍霊夢は、お祓い棒を顔の前に縦に構えて、目を見開いた。次の瞬間、禍霊夢は四人に分裂。

 

「フォー○アカインド!?」

「ちょっと違うわね。あれは自分が一人という概念を狂わせて四人にしたのね。」

 

そのことに驚く僕に、理論をきちんと説明してくれる霊夢。優しい(確信)。

 

「「「「いくわよ!!」」」」

「面倒ね……。」

「霊夢!!……うおっ!?」

「あなたの相手は私!」

 

三人が霊夢へと集中し、残りの一人が僕へと来る。ガッ、と腕を交差させ、つばぜり合いをする僕と禍霊夢。

 

「退いてくれ!!僕は……僕は、霊夢のところへ行かなきゃいけないんだ!」

「なら、力づくで倒していきなさい!」

 

逆袈裟に振り下ろされたお祓い棒を腕を交差させて受け止め……切れず、地面へと紫の光の尾を出しながら激突した。

 

……威力を狂わせていたのか、くそっ!

 

よれよれと立ち上がりながり、降りてきた禍霊夢を一睨みして、霊夢の方をチラリと見ると、一人に急接近して、禍霊夢の腹に手を当てて、一人を撃沈させて残りは二人という状態だった。が、やはりというか少しだけ焦りと疲れの色が見える。それを見て僕は本能的に悟った。

 

このままじゃ霊夢が、確実に殺られる、と。

 

チート級の禍霊夢を三人相手にして無事でいられるはずもないし、狂わせる程度の能力で普段と全く違う戦闘で疲れはいつもの倍だというのに、少しだけというのは我慢してるからなのだろう。

 

だから、今すぐにでも駆け付けたいが、こちらも禍霊夢との戦闘中。一瞬も気が抜けない。

 

「はぁあああ!!」

 

拳を握りしめ、心の中で南無三!と言ってから禍霊夢へと拳を向ける。禍霊夢は、全力投球の僕の拳を掌で受け止めようとするも、衝撃を殺しきれず地面に跳ねながら吹き飛んだ。

 

「きゃああ!!」

 

……何で皆僕を悪人のような目で見るの?あれだよ?皆、仲間に化けた悪役を殴った主人公と同じ立場の僕をそんな目で見るなんて、主人公をそんな目で見てるようなものだかんね?

 

「やったか!?」

 

なかなか立ち上がらない土煙に紛れ込んだ禍霊夢を前に、僕はフラグみたいな言葉を言って待つ。すると……。

 

「がっ!?」

「痛かったわ、今のは。」

 

僕の肩を回して後ろを向かせて、首を絞めて足を浮かせた。

 

「な、なんで……。」

「位置を狂わせたのよ。」

 

何でもありか!

 

またも心の中で叫ぶ僕だが、どんなにジタバタしても首を絞める手に力を入れても禍霊夢の拘束はとけない。

 

「残念ね……。もう少し、遊んでいたかったのだけれど……。」

 

シュ、と空いてる片手を細くして、構えた。まさか……!冷や汗を垂らした僕の腹に、禍霊夢の手が……。

 

「……え?」

 

……突如現れた霊夢の腹に、鮮血を撒き散らしながら深々と突き刺さった。その事実を認識するのに、霊夢の返り血をビシャッと自分の頬と右半身に浴びてからようやく気付けた。

 

「嘘、でしょ……?れい、む……?」

 

どうして、ここに……?それに、他の禍霊夢は……?

 

そんな僕の複数の問いを示すように、にこりと優しく笑った霊夢は、ゴホッ、と血反吐を吐いて……。

 

「よかっ、た……。」

 

ドサッ、と倒れたんだ。

 

「嘘だよ、霊夢……!ねぇ、目を覚ましてよ、霊夢……霊夢ぅうう!!」

「あら……あんだけいたのに、もう倒したのね。まぁ、だから自分の体でしか防げなかったのでしょうけど。」

 

冷静に状況を言う禍霊夢。僕は、そんな禍霊夢に――心の底から、激怒した。

 

「お前……お前ぇぇえ!!」

 

どこかセーフティをかけていた僕は、怒りで我を忘れて禍霊夢へと向かった。光速に動いた僕を、目の前に現れてようやく視認できた禍霊夢は何か行動を起こそうとするも、腹に深々とめり込み、そして上に突き上げられた僕の拳のせいで、ただ上空へと高く吹き飛ぶしかなかった。

 

「がはっ……!」

 

それでも少量しか血をはかない禍霊夢。……まだだ、まだ、足りない!

 

「お前が流させた!霊夢の血は、そんなものじゃないッッツ!!」

 

《霊狐(れいこ)》を完全に纏った僕は、《霊狐》の拳で禍霊夢を地面へと打ち付けた。激しい土煙をあげながら、地面にめり込んだ禍霊夢を、《霊狐》を解除して着地しながら睨んだ。

 

「参っ、たわね……。侮り過ぎたわ……。」

「……まだ、生きてたのか。」

 

血溜まりを作って地面に倒れている霊夢をみやり、止めを差すべく禍霊夢へと歩み寄る。

隣に立ち、拳を振り上げて、構えた。

 

「……死ね。」

 

振り下ろした拳が、禍霊夢の腹に刺さることはなかった。境界から現れた手が、しっかりと僕の腕を掴んでいたからだ。

 

「……離してくださいよ、紫さん。」

 

境界を操る程度の能力の持ち主へと、憤怒と怨嗟が入り交じった声をかける。

 

そして、……紫さんは全身を出して言った。

 

「あら、なら霊夢を生き返らせなくてもいいの?」

「……は?」

「だから、その娘の能力があれば、生き返らせれるってこと。」

「本当に!?」

「えぇ。……ね?禍霊夢?」

「……出来ないことはないわ。」

 

先程の僕よりも弱々しく立ち上がった禍霊夢は、少し溜めていった。

 

「だけど、それは本来の自然の摂理の流れに逆らう行為。代償は必要だわ。」

「その代償は?」

 

紫さんが唖然とする僕の代わりに聞いてくれる。そして、禍霊夢の答えは……。

 

「……生きた一人の人間の命。」

「!!」

 

僕は、その言葉を聞いた途端、禍霊夢に詰め寄っていた。

 

「僕を……僕の命を使ってくれ!!」

「あら。」

「え?で、でも……。」

「本人が死んでは出来ないし、紫さんは妖怪だ。なら、必然的に僕でしょ?」

「そ、それはそうだけど……。」

 

紫さんは意外というよりやっぱりという感じだった。禍霊夢は、僕の剣幕にしどろもどろといった感じだった。

 

「お願いだ……、僕の命を、使ってくれ……!!」

 

僕の渾身の願いに、禍霊夢は一瞬目を閉じて、開いたときには覚悟を決めた目をしていた。

 

「分かったわ……。」

 

そう言って、禍霊夢は僕の心臓の真上に手をトンとのせる。

 

「紫さん。一つだけ、お願いします。」

「何かしら?」

「生き返った霊夢に……伝えてください。」

 

生きてる内に、言えなかった言葉を、紫さんに伝言を僕は頼んだ。

 

「会ったときからずっと……大好きだったって。」

「……必ず。」

 

思い出されるのは、霊夢の多様な表情。色んな表情の中、一際思い出せるのは、笑顔だった。僕の伝言を、必ず伝えると約束してくれた紫さんに小さく微笑んで、目を閉じた。

 

その瞬間、ストン、と体の重りが抜けた感覚がした瞬間、僕は――――

 

 

――――死んだんだ――――。

 

 

 

 

「……うぅ、う……。」

 

いきなりの夜の冷気に、目を覚ました。

 

「あれ、ここは……?」

 

私はそんな疑問を口にしたが、そうではなかった。本当は、腹を貫かれて死んだはずの自分が、どうしてもう一度ここにいるのか、と言いたかったのだ。

 

「おはよう、お目覚めかしら、霊夢。それとも、おかえりなさいと言うべきかしらね。」

「え、あれ?紫!あんたどこに行ってたのよ!!」

 

後ろからかけられた聞き慣れた声に後ろを振り向くと、私の友人、八雲 紫がいた。だから、立ち上がってズカズカと歩み寄った。

 

「あなた達の弾幕ごっこを見てたのよ。といっても、だいぶルールに触れた弾幕ごっこだったけれど。」

「そう、それよ!私死んだはずなのにどうして……って、あんた!生きてたのね!」

「酷い言い草ね。ま、殺した相手に無茶いうなってところだろうけど。」

 

その後ろには、どこか悲しげな表情をした禍霊夢がいた。

 

「ほんとよ!というか、私死んでなかったの?」

「……いいえ。確かに、あなたは死んだわ。けれど、生き返ったのよ。……その子の命を犠牲にね。」

「え?」

 

その子のから、禍霊夢は足元に視線を向けていたので、それを真似て下を見ると……倒れて、ピクリとも動かない、妖人がいた。

 

「妖人?何寝てんのよ。ていうか、敵を前に寝るってどういうことよ?ねぇ!」

 

何度揺すっても、何度近くで叫ぼうと、妖人が目を覚ます気配はない。それどころか、生気が感じられない。……そう、それは、まるで……。

 

「嘘、でしょ……?」

 

それは、まるで、死体のようだった。

 

「だから、言ったでしょう?あなたの代わりに、この子が死んだって。あなたの死んだという事実を狂わせて、この子が……妖人が死んだことにしたって。」

「そんな……何で、何で!」

 

怒りのあまり、胸ぐらを掴もうとしたが、次の言葉に私は動けなくなった。

 

「あなたは……彼の想いを、彼の決意を無駄にするの?」

「え……?」

「………妖人から、あなたへ伝言があるわ、霊夢。」

 

私が動かなくなったのを見計らって、紫が告げた。

 

「会ったときから、ずっと……あなたのことが大好きだったって。」

「……!」

 

紫から告げられた、妖人の遺言を聞いた私の胸に、まるで塞き止められていた水が一気に流れ出したかのように妖人への想いが溢れた。

私を見ていた妖人。私を誉めてくれた妖人。私と戦ってくれた妖人。私と笑ってくれた……私の大好きな、妖人。

 

「……!……!!」

 

膝を折って、正座のような姿勢で座った私は、服が土で汚れてるのも構わず、声にならない嗚咽と、大粒の涙を流し続けた。ほんの数分間なのに、私は数日間泣き続けたように感じた。

 

「……そろそろ、戻りましょう。」

「……えぇ、そうね。」

 

一通り落ち着いた私を見て、紫が言った。

 

「その前に、ここを元に戻してくれるかしら?」

「……餞別みたいであまり気乗りしないけど。」

 

禍霊夢は、手で空をそっと仰いだ。すると……。見る間に景色が変わっていく。普通は見ることのないこの空間に、唖然とするばかりだ。

 

「……終わったわ。」

 

そう言って禍霊夢が手を下ろした時には、もう殆ど私が知ってる現代の日本の景色だった。

 

「……ありがとう。あなたは、これからどうするの?」

 

涙を拭きながら立ち上がって私は聞いた。因みに、今が夜であることには変わらない。

 

「そうね……。」

 

どうするか決めていなかったようで、腕を組んで悩み始める禍霊夢。

 

「なら、うちにいらっしゃい。下手にうろうろされるよりかはいくらか楽だもの。」

 

紫が、あっさりと言う。かくいう私も、拒否をする気にはなれなかった。今の彼女からは、殺気というか、闘気が感じられなかったから。

 

「そうさせてもらうわ。」

「さぁ、帰りましょう。……それをどうするかは、霊夢に任せるわ。」

 

死体の妖人をそれ呼ばわりする紫に、腹を立てかけたが、怒る気分に私はなれなかった。

 

「……うちに持ち帰るわ。」

「そう、じゃあ帰りましょう。霊夢にとっては久しぶりの、幻想郷へ。」

 

私は、妖人を背負って、紫と禍霊夢の後に続いて境界の中へと入っていった。

 

――――――――

 

桜花妖人が死んだ。意中の人を助けるために、自らの命を投げ出して。彼は、多いに喜んだ。自分の最愛の人を助けられたのだから。

 

これにて……この物語は終わる。しかし、始まりに終わりがあると共に、終わりにも始まりがある。

 

これより始まる物語は、彼の体験した、死中の物語――――。

 

『東方冒険禄3(仮)』

 

なかなか彼の物語は、終わらないようですよ――――。

 

SEE YOU MAYBE NEXT STORY!!




どうでしたか?最終回は!
どうも、最終回を投稿し終えて清々しい気分の自分です。完結に数ヵ月もかかってしまい、すみませんでした。
はい、今回は色々波瀾万丈でしたね!というか、本来はこうなるとは思ってなかったんですよ。だから、完成したときには見事なまでにポルナレフやりましたね~。
とまぁ、話が少し逸れたところで別の話へ。
最後の方で予告した通り、東方冒険禄はまだ続きます!多分ね!
最終回の伸びがよければ作りましょう!多分ね!
それでは、もしかしたら次の物語で。
じゃあの!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。