騎士(笑)の日常 (ガスキン)
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弓弦学園編
潜入!乙女の園 その一


時系列的には、本編夏休みが終わった直後だと思ってください。


「そろそろ帰るか」

 

金曜日の放課後、図書室での調べ物を終え、俺は帰宅しようと玄関へと足を運んでいた。そこへ通りがかったのは山田先生。どうも悩んでいるような顔をしている。

 

「先生、どうかしましたか?」

 

「え? あ、神崎君。別に何でもありませんよ?」

 

「とてもそうは見えませんよ。何か困っているのでしたら、俺でよければお手伝いしますよ?」

 

そう言うと、山田先生は一瞬だけ考える素振りを見せた後、躊躇いがちに口を開いた。

 

「・・・あの、聞いてくれますか?」

 

「ええ。どうぞ」

 

何でも、昨日例のストリートファイターな先輩と電話で話していたら、先輩の勤めている学校である事件が発生したのだとか。その事件というのが・・・。

 

「下着泥棒?」

 

「はい。織斑・・・あ、先輩の名前なんですけど。先輩の勤めているのは隣町の女子校で、学校の近くに寮があるんですけど、最近そこに下着泥棒が出たんだそうです。普段はセキュリティがしっかりしているのでそんな人物が侵入したらすぐにわかるそうなんですけど、ちょうどメンテナンスの最中で、その間を狙われてしまったそうなんです」

 

おかげで寮に住んでいる子達がすっかり怖がってしまって大変らしい。セキュリティのメンテナンスが終わるのが明後日の日曜。それまでにまた同じヤツがやって来るかもしれないので、どうにかして捕まえたいとその先輩は考えているそうだ。

 

「でも、それは危険じゃないですか?」

 

「う、うーん・・・私も最初はそう思ったんですけど、先輩に関して言えばその心配は必要無いかも・・・」

 

あ、そっか。ストリートファイターなんだもんな。なんか夏休みの間に山田先生と弟君と一緒に旅行という名の修行したみたいだし。下着泥棒の一人や二人相手にならないかもな。

 

「先輩、事件のあった日からほぼ徹夜で寮を見張っているらしくて、電話口の声も疲れているようでしたから、私としては先輩が倒れたりしないか心配で・・・」

 

その言葉で、その先輩がどれほど寮の子達を大切に思ってるのか伝わって来た。強くて優しいって素晴らしい女性じゃないですか。

 

「話は聞かせてもらったぜ!」

 

ちょっとだけ感動していた俺の耳に突然そんな声が聞こえて来た。声の正体・・・アザゼル先生が兵藤君を連れて姿を現す。

 

「ひゃあっ!? って、ア、アザゼル先生?」

 

いきなりの乱入者にびっくりする山田先生。その様子に「ゆ、揺れた・・・!」と目を見開く兵藤君。何が揺れたかは言わないでおこう。

 

「水臭いぜ山田先生。そういう事なら何で俺に相談しないんだ。その下着ドロ、俺達が捕まえてやるよ」

 

「ええ!? ア、アザゼル先生がですか!?」

 

「“達”って事は・・・」

 

「おう、お前とイッセーの三人でだ」

 

ファッ!? さらっと組み込まれてる!? 

 

「ちょ、何で俺まで!」

 

「・・・いいのか? 女子寮だぞ? こんな機会でも無い限り訪れる事が出来ない女の園に行きたくないのか?」

 

嫌がる兵藤君に耳打ちするアザゼル先生。すると、直前まで嫌そうな顔をしていた兵藤君の目が瞬く間に輝き始めたではありませんか。

 

「任せてください! 同じ男として、下着ドロなんてするヤツは許せません! そんな犯罪者は俺が捕まえてやりますよ!」

 

燃えている所に水を差すようで悪いけど、キミ、少し前まで犯罪行為ギリギリな事たくさんやってたよね? ま、まあ、今の彼は昔とは違うみたいだから別にいいか。

 

にしても、アザゼル先生は兵藤君限定でやる気にさせるのが凄く上手いな。さっきの耳打ちの内容が気になってしょうがないわ。

 

「え、ええっと、そのお気持ちは凄く嬉しいんですけど、先輩がなんて言うか」

 

「なら今からその先輩とやらに確認してみてくれよ」

 

「わ、わかりました」

 

山田先生が携帯を取り出す。しばらく通話した後、携帯を切った。

 

「・・・とりあえず、連れて来て欲しいとの事です」

 

「よし、決まりだな。なら明日の朝八時に駅前に集合だ。隣町まで電車で移動してから歩いて向かう事にしよう」

 

「了解ッス! 格好は制服でいいんですか!」

 

「そうだな。お前らは制服の方がいいだろう。遅刻は厳禁だからな」

 

パパッと予定を説明し、アザゼル先生と兵藤君は去って行った。残された俺達は互いに顔を見合わせる。

 

「・・・なんだか、妙な展開になってしまいましたね」

 

「そ、そうですね。・・・でも、神崎君も一緒だからちょっと心強いかも」

 

「はい?」

 

「な、何でもありません! で、では、明日はよろしくお願いしますね!」

 

逃げるように去って行く山田先生の背中を見送り、俺も改めて玄関に向かう事にしたのだった。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

翌日、集合時間五分前に駅前に着くと、すでに俺以外の三人の姿があった。聞けば、兵藤君は三十分も前に来ていたらしい。今からそんなに気合い入れてて疲れないのだろうか。

 

「んじゃ、全員揃った事だし、そろそろ行くか!」

 

アザゼル先生を先頭に歩きだす俺達。電車に揺られ四十分、目的の駅で降りてさらに徒歩で十分をかけ、俺達はようやく件の学園に辿り着いたのだった。

 

「弓弦女学園・・・か」

 

まさか、野郎の身でありながら女子校を見上げる日が来るとは・・・。随分と立派な校舎だ。きっと中の設備も凄いんだろうな。

 

「私もここの卒業生なんですよ。ふふ、何だか懐かしいです」

 

へー、そうだったんだ。でも、なんかイメージ的に山田先生は女子校出身っていうのがピッタリな感じがする。

 

「で、肝心の女子寮はどこだ?」

 

アザゼル先生がキョロキョロと辺りを見渡す。この人、どうも学園自体に興味は無さそうだ。

 

「・・・待っていたぞ、山田君」

 

思わず背筋を正してしまいそうな威厳に満ち満ちた声が背後から届く。振り返った俺の視線の先に、スーツ姿の女性が立っていた。

 

「あ、先p・・・織斑先生!」

 

ッ・・・! こ、この人があのストリートファイターな先輩か!? めっちゃ鋭いつり目に、スーツがよく似合う長身、正に“凛”という言葉はこの人の為にあると言っても過言ではない気がする。

 

「わざわざ来てもらって済まないな。・・・そちらにいるのが例の三人か?」

 

「はい。右からアザゼル先生、兵藤君、そして神崎君です」

 

「初めまして。あなたの様な美しい女性と出会えて光栄です。よろしければ、今回の件を機に、個人的に仲良くしたいものです」

 

おおっと、いきなり口説き始めたぞアザゼル先生!? あ、でも織斑先生も満更じゃ・・・。

 

「構いませんよ。ですが、私は自分よりも強い男にしか興味がありません。実力を示していただければいくらでも仲良くさせて頂きますよ」

 

思わず見惚れてしまうくらいの綺麗な微笑みを浮かべながら、言ってる事は物騒極まりなかった。

 

「ア、 アザゼル先生?」

 

表情を固まらせたアザゼル先生を心配した兵藤君が小さく声をかけるが、先生はそれに反応せずブツブツ呟いていた。

 

「・・・やべえ、勝てる気がしねえ。なんだよこの女。本当に人間か・・・」

 

そんなアザゼル先生を尻目に、織斑先生が兵藤君に目を向ける。彼は彼でなんか委縮した様子だった。

 

「ひ、兵藤一誠であります! 今日はよろしくお願いします!」

 

「ああ、こちらこそよろしく頼む」

 

そうして、最後に俺の前に立つ織斑先生。っと、いかんいかん。挨拶しなければ。

 

「初めまして。駒王学園三年生、神崎亮真です」

 

「織斑千冬だ。キミの事は山田君から聞いている。随分と頼りにされているようだな」

 

「お、織斑先生!」

 

「俺のやった事なんてたかがしれてますよ。むしろ俺の方が山田先生のお世話になってますから」

 

駒王学園で一番尊敬している先生は? と聞かれたら俺は迷わず山田先生の名をあげるだろう。そう答えると、織斑先生は目を細めた。

 

「・・・なるほど」

 

何がなるほどなんだろう。織斑先生はそれ以上何も言わず、俺から離れた。

 

「さて、いつまでもこんな所で話していても仕方ないな。詳しい話は寮で行う。私の後について来てくれ」

 

スーツを翻し、歩き始める織斑先生。その背中に一瞬“滅”の字が浮かびあがったように見えたのはきっと気のせいだと信じたい。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

学園から寮までは五分もかからなかった。階段状に建つ寮は清潔感溢れる白一色で統一され、時折女の子の声が響いていた。

 

「今日、キミ達が来る事は一部の者しか知らない。・・・とはいえ、おそらくすでにほとんどの者に知れ渡っているだろうがな。その所為でめんどくさい事態になるかもしれんが、我慢してくれ」

 

何それ。入る前から不安でしょうがないんですけど。けど、ここまで来て今さら逃げるなんて出来ないし、覚悟決めるか。

 

「あ、織斑先生」

 

そこへ、女の子集団が姿を現した。数は六人。しかも、みんな例外無く可愛かった。

 

「どこ行ってたの、姉さ―――」

 

その内の一人、織斑先生によく似た女の子がそう言いかけた瞬間、たった今まで俺の近くに立っていた織斑先生が女の子の目の前に現れ、どこからか取り出した出席簿を女の子の脳天に振り下ろした。ええっと、出席簿って常に持ち歩く物でしたっけ?

 

「痛い・・・!」

 

「お前は・・・織斑先生と呼べと何度言ったらわかるんだ」

 

「でも姉さ―――」

 

刹那、再び出席簿が振り下ろされた。

 

「次は沈めるぞ」

 

「オリムラセンセイハドチラニイッテイタノデスカ?」

 

出席簿アタックで意識が遠のいたのか、虚ろな目でそう尋ねる女の子に、織斑先生が満足気な顔で答える。

 

「ちょっと彼らを迎えにな」

 

「彼らって・・・え、男の人!?」

 

綺麗な金髪を首の後ろで束ねている女の子が俺達を見て目を丸くする。ああ、やっぱりそんな反応されるわな。

 

「あ、山田先生もいる」

 

「久しぶりですね、織斑さん。前回の旅行は一緒に行けなくて残念でした」

 

「うん。でも、ちょうど剣道部の合宿と重なってたからしょうがない」

 

さっきの織斑先生似の子が仲良さそうに山田先生と話している。何となく察したぞ。織斑先生には弟君だけじゃなくて妹さんもいたんだな。

 

「教官! 質問があります! 何故ここに男がいるのでありますか!」

 

小柄で銀色ロングヘアの子が元気よく手をあげる。よく見ると瞳の色が左右で違う。銀髪オッドアイって実在してたんだな。

 

「ボーデヴィッヒ。何だそのにわか軍人口調は。それと、私の記憶が正しければ、お前の瞳は両方とも赤色だったはずだが?」

 

「はっ! クラリッサより、尊敬する人物に近づくにはまずその人物の真似をするべきだと教えられましたので、まずは口調から真似しようと思いまして!」

 

「・・・あの馬鹿。またコイツにくだらない知識を」

 

「それと、この瞳はカラコンであります! 日本では銀髪の者はオッドアイでなくてはならないという決まりがあるそうなので!」

 

「それもクラリッサが?」

 

「はい!」

 

褒めてくださいオーラを発しながらドヤ顔する銀髪少女に深々と溜息を吐く織斑先生。ああ、こんな呼び方は彼女に失礼かもしれないが、あえて言わせてもらう。バ可愛いと!

 

「口調は戻せ。ここは軍隊じゃない。それと、日本にそんなふざけた決まりは無い。加えて過度なファッションは校則違反だ。金輪際カラーコンタクトの使用は禁止する」

 

「なん・・・だと・・・!? で、では、私はクラリッサに騙されたのですか!?」

 

愕然とした表情で地面にへたり込む銀髪少女。ただ、その状態でしっかり指示通りにカラコンを外しているのがなんか可愛かった。

 

「ち、千冬さ・・・じゃなくて織斑先生! まだラウラの質問に答えてもらってないです!」

 

「そ、そうです! この者達は何者なのですか!?」

 

「この男子禁制の場に連れて来られたのですから、もちろんわたくし達を納得させる理由がありますわよね?」

 

ツインテール、ポニーテール、そしてレイヴェルさんみたいな金髪縦ロールの女の子達が織斑先生に詰め寄る。

 

「騒ぐな。彼らは例の事件を聞いて隣町の駒王学園から来てくれた協力者だ」

 

「駒王学園? 確か、数年前に共学化したっていう・・・」

 

「よく知っているな、篠ノ之。せっかくの機会だ、互いに自己紹介しておけ」

 

「アザゼルだ。駒王学園で教師をしている」

 

「兵藤一誠です! 駒王学園の二年生です!」

 

「神崎亮真。駒王学園の三年生だ」

 

「知ってる子もいますが、山田麻耶です。アザゼル先生と同じで駒王学園の教師です」

 

ササッと自己紹介を済ませると、あちらも一人ずつ自己紹介を始めた。

 

「篠ノ之箒。弓弦女学園の二年生だ」

 

一人目はポニーテールの子・・・篠ノ之箒さん。初対面なのに何故かその声は馴染みのあるものだった。

 

「ほほう、これは中々・・・」

 

「で、デカイ・・・!」

 

アザゼル先生と兵藤君が篠ノ之さんを・・・正確には彼女のある部分を凝視する。それに気付いた篠ノ之さんが腕でその部分を隠す。

 

「ど、どこを見ている!」

 

「言っていいのか?」

 

「止めろ!」

 

こんな時くらい自重してください。このままじゃ話が進まないので、俺が二人を止めないと。

 

「二人とも・・・それくらいにしておきましょうか」

 

肩に手を置き、静かにそう言い聞かせる。すると、二人も自分達が調子に乗り過ぎた事に気付いたのか冷や汗を流し始めた。

 

「お、おう、そうだな! 今のは俺達が悪かった!」

 

「反省しました! それはもう海よりも深く、山よりも高く! ですから先輩! どうか怒りをお静めください!」

 

別に怒ってないよ? ただちょっと呆れただけだから。周りを見ると、篠ノ之さん達も顔を青ざめさせている。ひょっとして彼女達も俺が怒ってるとか思ってるのかな。誤解だよ。俺はただ二人を止めただけなのに。

 

その中でただ一人、織斑先生だけが興味深そうな顔で俺に視線を送っていた。それはそれでよくわからないんだが、まあ今は気にしてもしょうがないか。

 

「すまない、続けてくれ」

 

「で、では、次はわたくしが。初めまして、弓弦学園二年生のセシリア・オルコットと申します。イギリスより留学して参りました。どうぞよろしくお願い致しますわ」

 

続いて、金髪縦ロールの子が優雅な一礼と共にそう名乗った。なんか、まさしく“お嬢様”って感じの子だな。

 

「「チョロコット?」」

 

アザゼル先生と兵藤君が揃ってそう口にする。当然、間違えられたオルコットさんは憤慨する。

 

「オ・ル・コ・ッ・トですわ! もう! どうしてみなさんわたくしが名乗る度に同じ間違いをするのですか! オルコットとチョロコットじゃ全然違うでしょうに!」

 

「いや・・・何となく?」

 

「何となくで人の名前を間違えないでください! ふん! 所詮、お父様以外の男なんてみんな同じですわね!」

 

ん? どうしてそこで彼女のお父さんが出て来るんだ?

 

「わたくしのお父様は、それはもう素晴らしいお方なのですわよ。婿養子でありながら、決して腐らずお母様を支え続け、いつも優しく、時に厳しくわたくしを育ててくださったお父様を、わたくしは心から尊敬しているのですわ!」

 

「ああ、まーたセシリアの父親自慢が始まったわよ。ファザコンも大概にしなさいよね」

 

「あ、あはは、こうなったセシリアは止まらないからね」

 

「ここは放っておくのが正解だな。よし、では次は私の番だな」

 

そう言って銀髪少女が一歩前に出る。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒでありんす。お会い出来て光栄の極み。ど、どうしてもというなら仲良くしてやってもいいんだからね!」

 

う、ううん・・・随分と個性的な挨拶だな。

 

「む、何かおかしかっただろうか。こういう場での挨拶を色々組み合わせてみたのだが」

 

首を傾げるボーデヴィッヒさんに、織斑先生が冷たく言い放つ。

 

「やり直せボーデヴィッヒ。余計な真似はせずさっさと済ませろ」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ。ドイツから来た。前の二人と同じく二年生だ。よろしく」

 

有無を言わせぬその声に、ボーデヴィッヒさんが少し上擦った声でそうやり直した。

 

名前が聞けたから充分なんだけど、さっきのを聞いた所為かちょっと物足りなく思ってしまった。

 

「じゃあ、次は僕だね。シャルロット・デュノアです。二年生です。フランスから来ました。えへへ、昔から男の人と接する機会があまり無かったからちょっと緊張してたりして」

 

はにかむデュノアさんを見て萌えてしまったが、むしろこれが当然の反応だと言わせてもらいたい。しかも僕っ子とかレア属性持ちじゃないか。

 

「この気持ち・・・まさしく愛だ! というわけで、付き合ってください!」

 

「え!? ええっと・・・ごめんなさい」

 

告白即フラれで崩れ落ちる兵藤君。いや、そりゃそうだろうさ・・・。

 

「何か変なヤツが来たわね・・・。アタシは凰鈴音。中国出身よ」

 

凰さん、この子は元気というか威勢のよさそうな子だな。ツインテールがよく似合っている。

 

「ほら、マドカ。アンタもさっさと済ませちゃいなさい」

 

凰さんに促され、最後の一人である織斑先生似の子が改めて俺達の前に立つ。

 

「私は織斑マドカ。好きなものは姉さん」

 

おお、堂々と言い切るとは潔い。それと、名字が同じだからやっぱり妹さんだったんだな。

 

「さて、これで一応全員済ませたな。では山田君達はこのまま私と一緒に食堂の方へ向かうぞ。更識達も既に向かっているだろうからな」

 

はて、更識とは誰の事だろう。まだ誰か紹介しないといけない人がいるのだろうか。まあいい、とにかくついて行けばわかる事だ。

 

「織斑先生、私達もついて行っていいですか?」

 

「好きにしろ。ただ、話の邪魔だけはするなよ」

 

「了解です。みんな、行くわよ」

 

「え、僕も?」

 

「当然じゃない」

 

何故か篠ノ之さん達までついて来る事になってしまった。

 

「だからお父様は・・・って、あ、あら、みなさんどちらへ行かれますの?」

 

そして、一人のその場に残されていたオルコットさんも、慌てて合流するのだった。




書かないと忘れるので本編そっちのけで書いてしまった。しかも予想外に長くなったので続きは次回に回します。

ちなみに、作者のIS知識はここの二次だけなので、原作と違う所があるかと思いますが、どうぞご容赦ください。ただ、あえて原作と変えた部分もあります。具体的には原作であったそれぞれの過去の改変です。

以下、改変部

織斑姉弟・・・千冬、一夏、そして末っ子にマドカ。両親は交通事故で死亡。兄弟中は良好。

篠ノ之姉妹・・・織斑姉弟と同じく仲が良い。今回、箒から下着ドロが出たと聞かされた束は、今度発表する災害救助用のパワードスーツに武装を載せて送ろうとしたが止められた。

セシリア・オルコット・・・周囲が引くくらいのファザコン。理想の男性は父親。

凰鈴音・・・父と母はラブラブ。娘が留学中に二人で何度も世界旅行に行っている。その度に送られて来る写真に毎回呆れている。

シャルロット・デュノア・・・両親が離婚後、母の死をきっかけに父親の元に戻る。そこで出会った継母に大層気に入られ、猫可愛がりされる。似合いそうだからと男装させられた影響で一人称が僕になった。

ラウラ・ボーデヴィッヒ・・・孤児院シュヴァルツェ・ハーゼ出身。同じく孤児だったクラリッサ・ハルフォーフと共に里親に引き取られ、色々あって弓弦女学園に入学する事となった。クラリッサは大学に進学したが、置き土産として「ブラックラビッ党」なる組織を結成。構成員達はラウラの日常を優しく見守り、それをクラリッサに逐一報告している。現在、クラリッサが把握している構成員の数は百人だが、実際はもっと多い。

世界が変われば人生も変わる。こんな彼女達がいてもいいんじゃないでしょうか。


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潜入!乙女の園 その二

食堂への道中、すれ違う女の子達からの視線が刺さる刺さる。総勢十人もの大所帯で移動、しかもそこに野郎がいれば注目を浴びるのも仕方ないわな。

 

「な、なんか、動物園の動物になった気分ッス」

 

居心地が悪いのか、兵藤君が背筋を丸めながら歩く。対象的に、アザゼル先生は嬉しそうにその前を歩いている。

 

「おいおい、イッセー。こんなにもたくさんの女の子が視線を送って来るんだぞ。男ならもっと喜べよ」

 

「な、なるほど! 確かに・・・!」

 

「フューリ・・・神崎を見てみろ。あんなにも堂々としてやがるだろ。女の視線には慣れっこなんだよ。お前もあれくらいドッシリ出来ないと舐められるぜ」

 

「う、うっす! ・・・にしても、先輩さっきから織斑先生の背中をジッと見つめてますけど、ひょっとしてあんな人がタイプなんスかね?」

 

「さてな・・・同じ人外どうし、惹かれるものがあるんじゃねえのか。これはリアス達に要報告だな」

 

うーむ、やっぱりどんなに観察しても“滅”の字なんて見えないな。やっぱり気のせいか? ま、そりゃそうだよな。ゲームキャラじゃあるまいし。

 

(・・・この視線。どうやら“測られている”ようだな。ふふ、神崎亮真・・・先程の殺気と合わせ、今までに出会って来た男とはどうも違うようだ)

 

ん? なんか織斑先生の肩が小刻みに揺れてるぞ。寒い? それとも思い出し笑いでもしてるのだろうか。

 

「マドカ、あの神崎という男・・・」

 

「強いね。けど姉さん相手に迂闊だよ。あんなバレバレなやり方じゃ。現に私達ですら気づけたんだし」

 

「ああ。しかし、千冬さんは特に気にしているようではないな」

 

「あれが絶対的強者の余裕ってやつだね。流石姉さん、そこにしびれる憧れる」

 

うーむ、なんだか変な寒気がするぞ。この寮、冷房効き過ぎじゃないのかなぁ。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

「ここが食堂だ」

 

織斑先生が扉を開けた先には思わず目を丸くするほどの広大な広間があった。そこに並べられた机や椅子は百や二百どころではない。

 

「さて、更識は・・・あそこか」

 

織斑先生の視線の先の席に四人の少女が着いていた。みんなでそこへ近づくと、その中の一人、扇子を持った水色の髪の少女が立ち上がる。

 

「待たせたな更識」

 

「いえいえ、私達もつい先ほど来たばかりですから。それで・・・そちらが例の?」

 

「ああ」

 

「ではご挨拶を。ようこそ、弓弦女学園へ。生徒会長を務めさせて頂いている三年生の更識刀奈と申します」

 

自己紹介と共に扇子を開く更識さん。すると、そこには『歓迎』の文字が書かれていた。まさか、このためだけに用意したのだろうか?

 

「三年生、生徒会会計の布仏虚です。この度は私達の事情であるにも関わらず、ご協力頂きありがとうございます」

 

続いて、眼鏡に三つ編みという、いかにもしっかりしている少女が頭を下げる。

 

「こんにちはぁ。布仏本音だよ~。生徒会書記で二年生で~・・・く~~~」

 

「本音! こんな所で寝たら風邪ひくでしょ!」

 

なんだかのほほんとしてるな・・・と思ってたらいきなり寝ちゃったよこの子! 布仏さんが微妙に間違っているツッコミで彼女を起こした。

 

「す、すみません。この子は私の妹なのですが、こういう性格でして・・・」

 

「ああ、気にしなくていいぜ。それで、最後にそっちの嬢ちゃんの名前は?」

 

アザゼル先生が見つめる先には、更識さんと同じ水色の髪に眼鏡をかけた少女が座っている。その子は先生の視線に気づくとビクッと体を震わせた。

 

「この子は更識簪。私の妹で・・・今回の事件の被害者です」

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

簡潔に自己紹介を済ませ、俺達は席に着き、改めて今回の事件の経緯を聞く事となった。

 

「事件が起こったのは、今から三日前。セキュリティシステムのメンテナンス開始の翌日です。現場はこの寮で、被害に遭ったのはこの子を含めて三十人を超えています」

 

「さ、三十人以上!?」

 

「それは・・・」

 

「ふん、随分と派手にやらかしやがったな」

 

被害報告に驚く俺達。せいぜい一枚二枚くらいだと思っていたが、まさかたった一度でそこまで大量に盗み出すとは。

 

「私の下着は無事でしたが、虚も被害に遭っています。あと、そちらの子達も何人か・・・」

 

篠ノ之さんとデュノアさんの頬が赤い。たぶん彼女達が被害者なのだろう。

 

「単独犯とは思えねえな。二人・・・いや、三人はいてもおかしくねえか」

 

「私も最初はそう思ったんですが、どうも違うようなんです」

 

「なに?」

 

「・・・簪ちゃん、話せる?」

 

「う、うん・・・」

 

「無理はしないでね」と優しく更識さんが妹さんの背中を摩る。

 

「え、えっと、あの日、私は体調を崩して早退して寮に帰ったんです」

 

そうして妹さんがフラフラ状態で寮の前に着いた時、中から男が飛び出して来たのだとか。やけに膨れた片手カバンに作業服を着ていたその男は、血走った目を妹さんに向けると、恐ろしい速度で駆け寄って来たらしい。怖っ! 聞いた俺ですら怖いんだから、当事者の彼女の恐怖は凄かっただろうな。現に、今こうして話している間も、妹さんの体が震えている。男は妹さんのあげた悲鳴に驚いて逃げていったそうだが、それが不幸中の幸いだった。

 

だが、次に妹さんの口から出た言葉に、俺達はさらに驚く事となる。

 

―――男には二枚の黒い翼が生えていた。

 

「ッ・・・!」

 

「被害を受けた子はみんなバラバラの階に住んでいます。中には一番上の階に住んでいる子も。しかも、扉の鍵はしっかり閉まっていた。ならば犯人はどうやってベランダに干してあった下着を盗んだのか? この寮は階段状の設計になっていますが、まさか、わざわざ一階からよじ登ってまで上の物を狙う必要があったのか? この子の言うとおり、翼があって空でも飛べれば話は別ですが・・・」

 

流石にそんなファンタジーありえないと苦笑いを見せる更識さん。恐怖で見えないものが見えてしまったとでも思っているのだろうが・・・俺達は笑えない。何故なら心当たりありまくりだから。

 

「さらに不可解なのが、どうして犯人がこのタイミングで現れたのかです。まるで、メンテナンス中だと知っていたかのようで私には不気味なんです」

 

再び扇子を開く更識さん。あれ、『謎』って書いてある。おかしいな、さっきは『歓迎』だったのに、いつの間に別の扇子を?

 

「・・・まあ、色々わからない事件ですが、私としては簪ちゃんを怖がらせた犯人を許す気はありません。・・・叶うならこの手で断罪してやりたいです」

 

今度は『激怒』か・・・。でも気持ちはわかるな。妹さん、凄く辛そうだもんな。・・・うん、俺もムカついてきた。こういう女性を狙う犯罪はマジで許せん。

 

「更識、お前達を守るために彼等に協力をしてもらうのに、お前達が動いてどうする」

 

「あら織斑先生。私達がただ大人しく守られるだけのお姫様だと思いますか? そうでしょ、みんな?」

 

その言葉を合図にしたかのように、篠ノ之さん達がそれぞれに何かを持ち出してきた。

 

「み、みなさん、何ですかそれは!?」

 

山田先生が仰天している。いやうん、確かに色々おかしいよね。篠ノ之さんと織斑さんの木刀と竹刀は百歩譲ってわかるけどさ、オルコットさん、そのライフルは何? デュノアさん、キミの右腕を覆うそのゴツイのは? ボーデヴィッヒさん、そのぶっといワイヤーで何を縛るつもりかな? 凰さん、その青龍刀は当然模造刀だよね?

 

「サバイバルゲーム部の方にお借りしたライフルですわ。わたくし、お父様の趣味だったクレー射撃を多少嗜んでおりますから、これさえあれば、犯人なんてチョロいですわ」

 

「僕はコスプレ同好会の子に貸してもらったんだ。ええっと、確かパイルバンカーだったっけ?」

 

「私のこれはクラリッサからもらったんだ。痴漢撃退用とかなんとか」

 

「アタシは歴史研究部の部室から引っ張り出してきたわ。他にも槍とか斧とか色々あったけど、一番しっくりきたからこれにしたわ」

 

「どうです、織斑先生? これだけの有志が集まれば流石に・・・」

 

刹那、更識さん以下六人の頭に出席簿が次々と振り下ろされていった。悶える七人に織斑先生がたった一言だけ口にした。

 

「没収だ」

 

ですよねー。

 

「だ、大丈夫ですかみなさん」

 

「あはは~。痛そうだね~」

 

いや、割と笑い事じゃないと思うよ。なんか織斑さんとかオルコットさんの頭から煙みたいなのが立ち上ってるし。

 

「我の強いお前達だ。どうせそんな事を言うだろうと思っていた。だが今回は私達に任せて大人しく言う事を聞け。そもそも、犯人が再び来るかどうかも定かではないのだぞ。我々の目的は犯人を捕まえる事が第一ではあるが、そうでなくともメンテナンス完了まで待てばいいだけの話なのだからな」

 

「ですが・・・」

 

「それとも何だ? この私が下着泥棒などという下衆に遅れを取るとでも?」

 

不敵な笑みを見せ、某冥王さんみたいに胸の前で拳を合わせる織斑先生。やだ、この人イケメン過ぎる。すごく美人だけど、生まれてくる性別間違ってたような気がする・・・。

 

「織斑先生の言う通りだ。ここは俺達に任せとけ。・・・どうも、お前らじゃ荷が重そうだからな」

 

「アザゼル先生、犯人に心当たりが?」

 

「当たらずとも遠からずとだけ言っておこうか。とにかく、もし犯人がまた来たら俺達が絶対捕まえてやるから安心しろ」

 

「先生の言う通りだ! 話聞いてて、俺マジで犯人が許せなくなった! もしも俺の前に現れたら絶対にぶちのめしてやる!」

 

おお、兵藤くんがイケメンモードを発動したぞ。こうなった彼は頼りになるからな。よし、俺も気合を入れる為に何か言わないと!

 

「俺は男だ。下着を盗まれる辛さを真の意味で理解は出来ないだろう」

 

一旦言葉を切り、俺は更識さんの妹さんの方を向いた。妹さんもやや俯きがちながら、俺の視線から逃げずにいてくれていた。

 

「だが、そんな俺でも、キミの抱く恐怖の原因を消し去る事は出来るかもしれない。キミの笑顔を・・・そして、ここにいるキミ達全員の平穏を取り戻す為、俺の全力でこの事件に挑む事をここに誓う」

 

ちょっと芝居がかかったセリフになってしまったが、自分を追い込むという意味ではこれくらいがちょうどいい。さあ、これで何も出来ませんでしたじゃ済まなくなったぞ、俺。せいぜい頑張れよ。

 

けど、やっぱり慣れない真似はするものじゃないね。顔が熱いし、今更ながら恥ずかしくなって来たわ。

 

(お、おお、先輩もかなり頭にきてるみたいだな)

 

(犯人終わったなこりゃ・・・。むしろコイツがやり過ぎないよう見張っておく必要がありそうだ)

 

ほら見ろ、兵藤君が顔を引き攣らせてるじゃないか。アザゼル先生も呆れたようなジト目だし。「こんな時くらい真面目にしろ」って言われてるみたいだ。

 

(この人・・・まるで・・・)

 

その中で、妹さんだけが笑うでもなく、呆れるでもなく、真剣な表情で俺を見ていた事にちょっとだけ救われた。他の子はみんな顔が赤くなるほど怒ってるみたいだし。あののほほんとした布仏さんの妹さんですら頬が若干紅色に染まっている。

 

まあ、一番怖いのは織斑先生なんですけどね。なんなのあの獲物を狙うような目は。そんなにさっきの俺の発言が気に食わなかったんですかね。

 

「ゴ、ゴホン! そ、そういう事でしたら、この件は先生達にお任せいたします。とはいえ、直接的な事は自重しますが、何か手助けが必要な時はいつでも声をかけてくださいね」

 

わざとらしい咳をし、更識さんがそう纏める。それはいいんだが、扇子に書かれた『無自覚?』ってどういう意味だろう?

 

「決まったな。なら、俺はちょっと連絡する所があるから一度外に出てくる」

 

アザゼル先生がそう言って立ち上がる。そしてそのまま食堂から出ていこうとして・・・動きを止めた。

 

「何だありゃ・・・?」

 

気づけば、食堂の入口の方に大勢の女の子達の姿があった。皆興味津々といった様子で俺達に視線を向けていた。

 

「更識。早速だが、あそこにいる連中を即刻解散させろ。これでは食堂から出られん」

 

「了解です。ほら、あなた達! 織斑先生の出席簿をお見舞いされたくなかったら道を開けてちょうだい」

 

更識さんの言葉に、女の子達が一斉に道を開けた。どうも、織斑先生の出席簿の恐怖はここにいる子達全員が知っているようだ。

 

「イッセー、神崎、俺が戻るまでにこの寮を一通り回って敷地内の把握をしておけ。まずは大まかな侵入経路の予想をたてるぞ」

 

「わかりました」

 

「ウッス!」

 

「私も行こう。詳しい者がいた方がいいだろう」

 

「あ、それでは私も」

 

「では、山田君は兵藤君の方を。神崎君の方は私が案内しよう」

 

「お願いします」

 

こうして、俺達は下着泥棒の再来に備え、それぞれ動き始めるのだった。




今回、更識姉妹と布仏姉妹が出てきましたが、この世界の更識家は暗部なんて物騒な設定の無い普通の裕福な家庭なので、名前も刀奈のままです。簪の方は原作よりもさらに引っ込み思案で、今回の事件で若干の男性恐怖症になっております。


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潜入!乙女の園 その三

食堂を出た俺は、織斑先生と共にまず寮の周りをグルっと一周してみる事にした。アザゼル先生の言っていた侵入経路になりそうな場所が無いか調べる為だ。

 

「この寮は正面以外全てを塀で取り囲んである。忍び込むつもりであれば、まずはそれを乗り越えなければならない」

 

織斑先生の言う通り、寮と同じ真っ白な塀がずっと伸びている。高さ的には・・・四メートルくらいだろうか。これじゃ普通の人間ならまず侵入出来そうにない。とはいえ、下着ドロの正体が俺達の予想通りならば、この塀も意味が無いだろう。

 

そんな風に思いながら塀の傍を歩いていると、目線の先に一ヶ所だけ他とは違う所があった。ブルーシートがかけられ、そのシートの周りは近付けない様にする為だろうか、カラーコーンとバーで囲まれていた。

 

「織斑先生、あそこはどうしたんですか?」

 

気になったので指差しながら尋ねてみたが、織斑先生は何ともいえない表情で口ごもった。

 

「あ、ああ、あれはだな・・・」

 

そんなに答えにくい質問をしてしまったのだろうか。そんな俺の疑問に答えたのは、織斑先生では無く、突然背後から聞こえて来た第三者の声だった。

 

「素直に答えてやれよ千冬。私が壊したってな」

 

やや乱暴な感じのするその声に、俺と織斑先生は同時に振り返った。そこには二人の女性の姿があった。その片方のロングヘアーの女性がニヤついている。おそらく今の声はこっちの女性のものだったのだろう。

 

「オータム先生? それにスコール先生まで。何故ここに?」

 

「なあに、ウチの娘共にちょっかい出しやがったヤツをぶちのめすって聞いたから見に来たんだよ」

 

「それで・・・その男の子が今回の助っ人という事でいいのかしら?」

 

もう一人・・・綺麗な金髪の女性が俺を興味深そうな目で見つめて来た。続いて、ロングヘアーの女性も織斑先生から俺に視線を移す。うーむ、どうも品定めされているような気がしてならないんですけど。

 

「はっ。こんな顔しか取り柄の無さそうなガキが本当に役に立つのか?」

 

初対面なのにいきなり毒を吐かれてしまった。見た目アル=ヴァン先生だったから今ので済んだのだろうが、これでもしも生前の姿のままだったらどんだけボロクソに言われてたのか・・・想像しただけで泣きそうになる。

 

「オータム先生。今のは失礼よ。ごめんなさいね。気分を悪くしたのなら代わりに謝るわ」

 

「いえ、別に気にしてませんから」

 

頭を下げようとする金髪女性を止める。そんな俺の態度が不満なのか、ロングヘアーの女性の表情がさらに不機嫌になる。

 

「ふん、言い返しもしないのか。こんな腰抜け野郎必要無いだろ。さっさと帰らせろよ千冬」

 

「・・・本当にそう思うか?」

 

「あん? どういう意味だ?」

 

織斑先生の含みのある答えに、ロングヘアーの女性が訝し気に聞き返す。

 

「オータム先生。あなたが男に抱いている感情は理解している。その上で言わせてもらおう。彼を他の男と同じ目で見ない方がいいぞ」

 

その言葉に反応したのは金髪女性の方だった。

 

「あら、随分とその子の事が気に入ったのね、織斑先生」

 

「ええ。何せ、私が忘れて久しかった“寒気”を感じさせてくれましたからね」

 

織斑先生がそう言うと同時に、二人の表情が驚きに染まった。にしても寒気を感じさせたって・・・ひょっとして、その原因って、さっき食堂で俺が口にしたあのカッコつけたセリフの所為? って事は、やっぱりあの時の目って俺にキレてたの!?

 

ど、どないしよう。織斑ストリートファイター先生に目をつけられるとかシャレにならないんですけど! 違うんですよ。俺はただ自分に気合を入れる為にああ言っただけで、別にカッコつけるつもりなんて微塵も無かったんですよ!

 

・・・いや、駄目だ。言いわけしたら余計印象が悪くなってしまう。ここはもう一度、俺の決意が本物だって事を証明しなければ! 幸い、証人はこの二人がいるから心配無いしな。

 

そう決めて、俺はロングヘアーの女性を正面から見据える。なんか一瞬たじろがれた様な気がしたが、構わず俺は口を開いた。

 

「あなたの言い分は最もです。本来部外者である俺がここにいる事であなたに不快な思いをさせてしまったのなら謝らせて頂きます」

 

そこで言葉を切り、俺は頭を下げた。次に頭を上げた時、そこには先程までとは違い、真剣にこちらの言葉に耳を傾けている二人がいた。

 

「・・・ですが、俺は更識さんに約束したんです。彼女だけじゃない、彼女のお姉さんや布仏さん姉妹。それに篠ノ之さん達にも。彼女の笑顔を、彼女達の平穏を取り戻す為に俺の全力を尽くすと。信じてくださいとは言いません。ですが、どうか俺にその約束を果たす機会を頂けないでしょうか。今ここを立ち去ってしまえば、俺は約束一つも守れない卑怯者になってしまいます」

 

しゃべりながら、俺は先程の光景・・・震えながらも当時の状況を話してくれた更識さんの姿を思い出す。彼女とは今日が初対面だ。友人でも何でも無い。だけど、何の罪も無い女の子に、それこそトラウマになりそうな恐怖を抱かせた相手を許せるか? しかも、そいつはもしかしたらまたここにやって来る可能性がある。その時、彼女の心はさらに傷付いてしまうかもしれない。いや、もしそいつの歪んだ思いが爆発してしまえば、最悪の場合、心だけでなく体も・・・。

 

それは、それだけは絶対に防がないといけない。自衛の為にとオカンに貰ったこの体だが、本当に役立たせるのはこういう時なんだと思う。それに、俺は一人では無い。兵藤君もいるし、アザゼル先生だってついている。あの二人がいてくれれば、絶対に上手くいくはずだ!

 

「彼女達を守る。・・・それが俺の“誓い”です」

 

偽りの無い正直な思いを全て伝える。応えは無い。織斑先生も、二人の女性も、何も言わず俺を見つめ続けている。かなりのプレッシャーだが、ここで目を逸らせばその瞬間俺は叩き出されるだろう。なので、腹に力を込めてそれらを受け止める。

 

「・・・あなたの負けね、オータム先生」

 

沈黙を破ったのは金髪女性だった。彼女はロングヘアーの女性の肩に手を乗せ、諭すような口調で語りかけた。

 

「あなたも感じたでしょう。今の言葉に込められた彼の思いを。あの織斑先生をして寒気を感じさせる実力に、あの子達を真剣に思ってくれる優しくて強い心。・・・これでも彼を疑うのかしら?」

 

「・・・認めねえ」

 

そう言って、ロングヘアーの女性は俺に背を向けて歩き始めた。

 

「オータム先生・・・!」

 

金髪女性が呼び止めると、ロングヘアーの女性は振り返りこそしなかったが、立ち止まった。そして、その状態のまま、口を開いた。

 

「アタシは口先だけのヤツは嫌いだ。認めて欲しいのなら結果を出せ。お前が口にした“誓い”とやらを果たしたのなら・・・その時はアタシもお前を認めてやる」

 

これ以上言う事は無いとばかりに、ロングヘアーの女性は足早に寮に入口の方へ去って行った。

 

「もう、素直じゃないんだから」

 

その後ろ姿を見送る金髪女性。と思ったら、俺の方へ向き直り、微笑んだ。

 

「気にしないでちょうだいね。今のはあなたへの応援の言葉だから。彼女、ちょっとツンデレの気があるのよね」

 

ツンデレじゃなくてツンドラじゃないですか? とても応援の言葉とは思えなかったんですけど。

 

「ところで、聞くタイミングが無かったから今さらなんだけど、あなたのお名前は?」

 

「神崎亮真です」

 

「神崎君ね。うん、覚えたわ。私はスコール。さっきいなくなっちゃったのがオータム。私達も織斑先生と同じく、弓弦女学園の教師よ」

 

先生かぁ。・・・正直、スコール先生は教師より女優とかの方が似合ってる気がする。

 

「それにしても・・・ふふ、織斑先生じゃないけど、私もあなたに事が気に入っちゃったかも。もしもあなたが今回の事件を解決してくれたら、その時は私からもご褒美をあげようかしら」

 

わざとらしく胸を寄せるスコール先生。正直、野郎には目の毒です。この場に兵藤君とアザゼル先生がいたらえらい騒ぎになっていただろうな。

 

「スコール先生。教師が学生を誘惑しないでください」

 

頭に手を当てながら織斑先生が至極真っ当な事を口にするが、対するスコール先生はどこ吹く風とばかりに聞き流していた。

 

「それじゃ、私もそろそろ行くわね。今頃拗ねちゃってるだろうし、構ってあげないと」

 

誰の事を言っているのかわからないが、とにかくそう言い残し、スコール先生も去って行った。

 

「やれやれ、結局何をしに来たんだあの二人は・・・」

 

それは俺が聞きたいですよ織斑先生。まあ、とにかく見周りを再開しようか。

 

「織斑先生、それでは行きましょう」

 

「そうだな。・・・だが、その前に。そこに隠れている者、五秒以内に出て来なければしかるべき方法をとらせてもらう。五・・・」

 

カウントを始めたとほぼ同時のタイミングで、物陰から何かが飛び出して来た。

 

「はいはいはい! 出ます! 超出ます! なのでお仕置きは勘弁してください!」

 

ペンと手帳を持った少女・・・それが飛び出して来たものの正体だった。首には大きなカメラをぶら下げている。

 

「お前は・・・三年の黛だな」

 

「はい! 三年生、写真部副部長の黛薫子でっす!」

 

「教師の話を盗み聞きとは、いい度胸じゃないか。一度部室にお邪魔して他の部員達も含めてじっくり話し合う必要がありそうだな。神崎君達が今日ここに来る事がどうして広まったのかも含めて」

 

「わ、我々は権力には屈し・・・はい、すみません。どうかお許しください。あの狭い部室で先生とお話とか一年生の子達の心が持ちません」

 

惚れ惚れするほど綺麗な土下座をする黛さんに、織斑先生が呆れた様子で大きな溜息を吐いた。どんだけ恐れられてるんだこの人・・・。

 

「それで、実際いつから聞いていた?」

 

「ええっと、オータム先生が織斑先生に声をかけた所から」

 

ほぼ最初じゃん!

 

「本当なら、そのままみなさんも巻き込んで突撃インタビューしようと思ったんですけど、なんかシリアスな空気になっちゃったから出るタイミングを逃しちゃって」

 

「それで、隠れて様子を窺っていたと?」

 

「ええ。結果的には良かったですけどね。そちらの彼、神崎さんの“誓い”が果たされるかどうか、私も見届けたいと思います」

 

やっぱりそこもバッチリ聞かれてたのか。まあ、彼女一人くらいに聞かれても別に気にする事は無いか。

 

(一字一句、しっかり記録させてもらいましたから。今回の事件の事と一緒にして、次の校内新聞に載せちゃいますね。ふふ、他校とはいえ、弓弦女学園初の男子の特集・・・きっと売れるわ!)

 

無言のままコロコロ表情を変える黛さん。一体何を企んでいるのだろう。俺の騎士(笑)としての勘がざわつくが、(笑)の付く勘なんて当てになるわけないし、まあ、心配しなくてもいいよな。

 

「それでは、私は後ろからお二人の後をついて行きますので、気にせずどうぞ」

 

いや、どうぞと言われても・・・。

 

「・・・いいだろう。寮まで追い返す時間も惜しい。邪魔さえしなければ私は何も言わない」

 

「ありがとうございまーす!」

 

結局、この時約束した通り、見周りを終えて食堂まで戻るまでの間、黛さんは一言も口を開く事無く、ただ俺達の後ろをついて来るのだった。




おっかしいなあ。番外編は本編以上にはっちゃけるつもりだったのに、なんか中途半端にシリアスになってしまった。


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潜入!乙女の園 その四

アザえもんのお茶目でオルタ世界に跳ばされたオリ主が機動兵器サイズに戻ったラフトクランズで要塞級をオルゴンクローで引き摺り回して、居合わせたヴァルキリーズの一同が「ファッ!?」ってなる。

スパロボ世界の変態機体や変態武器のデータを見て寝込む夕呼先生。

まりもちゃんに迫る兵士級にアナイレーションかますオリ主。

・・・そんな夢を見た私は戦車級にぱっくんされてしまえ。


「あ、帰って来た」

 

食堂に戻ると、出て行く前と同じ面子が誰一人欠ける事無く同じ場所に座っていた。デュノアさんがいち早く俺達に気付き声を上げると、他の子達もそれぞれに顔を向けて来た。

 

「お帰り姉さ・・・織斑先生」

 

織斑先生の一睨みですぐさま言い直した織斑さん。最早指導というよりも調教と言った方がいいかもしれない。

 

「あら? 黛さんじゃないですか。どうしてあなたがお二人と一緒に?」

 

布仏さんが付いて来た黛さんを見て可愛らしく首を傾げる。

 

「取材です。こんな面白い出来事を放っておくわけにはいきませんからね」

 

ムフフと意味深な発言をする黛さん。一瞬アル=ヴァンセンサーが反応したが・・・どういう事だ?

 

十秒ほど身構えたが特に何も起きなかった。それならそれでいいのだが、ならどうして反応したのだろうか。

 

「兵藤君とアザゼル先生は?」

 

「戻られたのはお二人が一番ですわよ」

 

オルコットさんが答えてくれた。という事は、まだ戻って来てないって事か。なら、戻って来るまでここで待たせてもらおうかな。

 

「すまない。二人が戻るまで待たせてもらえないだろうか」

 

「ええ、もちろん。というか、あなたはお客様なんだからそんなに遠慮しないでいいわよ」

 

更識さんが『遠慮無用』の扇子を手にニッコリ微笑む。感謝しつつ、俺は空いている席に着いた。よく見ると、彼女達の目の前にはトレーに載せられた料理が並んでいた。時計を確認すると丁度十二時を過ぎていた。

 

「ああ、もうこんな時間か」

 

入口の方へ目をやれば、女の子達が続々と食堂に入って来ていた。それはいいんだが、こっちを見る度にギョッとするのは止めて頂きたい。女子寮に男がいるのに驚くのはわかるが、そんな風にリアクションされるとこっちも地味に傷付くんですよ?

 

兵藤君は大丈夫だろうか。彼、普段は女の子が好きと言ってはばからないが、いざとなるとしり込みしてしまうからな。現にここの女の子達の視線に晒されて委縮してたし。そう言うお前はどうだったのかって? 俺は織斑先生の背中をジッと観察してたからそれは気になって無かったから。

 

話が逸れたな。とにかく、二人が戻って来るまでただ待つのもあれだし、俺も昼飯を買ってこようかな。そう決めて立ち上がる俺に、布仏(妹)さんが相も変わらずののほほん加減で尋ねて来た。

 

「どこ行くの~?」

 

「ちょっと昼食を買いに行って来る。よければこの辺りのコンビニの場所を教えてもらえると助かる」

 

「別にわざわざ行かなくてもここで食べればいいじゃない」

 

いや凰さん大学の食堂みたいに一般の人にも解放しているような所ならともかく、寮の食事は寮に住んでる子しか食べれないんじゃないの? そう口にすると、またしても更識さんが微笑む。

 

「特例ですが、生徒会長としてあなた達は認めます。戦の前は腹ごしらえをしておかないといざという時に力が出ないわよ」

 

戦て・・・。いや、まあ彼女達からしたら、下着を盗んだ憎き敵との戦い・・・という事になるのかな?

 

「話は纏まったか」

 

「織斑先生もどうですか?」

 

「・・・そうだな。せっかくだ、ご相伴にあずからせてもらおうか。神崎君、キミの分も取って来てやるからまっていたまえ」

 

「え、あ・・・」

 

流石にそれは申し訳ないと言う前に織斑先生は立ち上がるとさっさと行ってしまった。うーむ、厳しそうだけど、面倒見も良さそうな先生だ。だから出席簿アタックをかましても慕われているのかもしれないな。

 

「で、どうだったかしら。寮を周ってみての感想は?」

 

「そうだな・・・。正面を除いてあれほどの塀が設けられている以上、普通の人間では余程の身体能力が無ければ乗り越えられないだろう」

 

「そうね。加えて、あの塀の上には防犯用のセンサーが張り巡らせてあるわ。乗り越えられたとしてもセンサーが反応して大きな音が鳴るようになっているの」

 

まあ、今は機能していないけどね、と苦笑する更識さん。あ、そうだ。あの事を彼女に聞いてみよう。

 

「更識さん、一ヶ所気になった所があるのだが」

 

「どこかしら?」

 

「塀の一部にブルーシートが掛けられていたのだが、あれはどうしたんだ? オータムという先生にも会ったのだが、どうも織斑先生が関係しているそうなんだが・・・」

 

俺が何の気なしにそう言った直後、その場にいたみんなが何とも言えない微妙な表情を浮かべた。ぬぬ、ひょっとして聞いてはマズイ事を聞いてしまったのだろうか。

 

「神崎君、オータム先生に会ったの?」

 

「ああ。それとスコール先生にも」

 

「さっき、オータム先生がプリプリしながら食堂に現れたんだけど、あなた何かしたの? ほら、今もあそこからあなたを睨んでるわよ」

 

え、マジで? と指された方へ振り向くと、確かにそこにはオータム先生がいた。しかも更識さんの言う通り凄い目で俺を見ている。隣に座るスコール先生も優雅な笑みと一緒に手を振っている。正直、俺じゃなくて隣の方を何とか宥めて欲しい。

 

「はいはーい! それは私がお答えしましょう!」

 

いつの間にかちゃっかり隣に座っていた黛さんがテンション高く手を上げた。何故にキミがここで手を上げるの?

 

「実は私、神崎さんとオータム先生のやり取りを物陰から盗ちょ・・・聞いていたのです」

 

今盗聴って言おうとしたよね。ねえ、絶対盗聴って言おうとしたよね? おかしいな。出るタイミングが無かったから仕方無く聞こえてしまったんじゃなかったっけ?

 

そんな俺を無視するように先程の俺とオータム先生の会話を一人二役で再現する黛さん。正直、わざわざそんな事しなくても普通に話せばいいと思う。てか、俺の真似が酷過ぎる。俺、そんなカッコつけた声じゃないよ。これじゃオータム先生だけじゃなくて更識さん達にまでカッコつけ野郎と思われちゃうじゃないか!

 

「・・・ってな感じでしたね。いや~、あのオータム先生を前に一歩も引かずあそこまで言い放つとは思いませんでしたよ。特に誓い~云々の所では完全に気圧されてましたしね~」

 

(ギリリ・・・!)

 

ひいぃっ!? な、なんか背中に感じる視線が強くなったぞ!? センサーがさっきから振りきれてるし! 具体的にはオータム先生の方から!

 

「え、ええっと、ひょっとして、神崎君は演劇部か何かに入っているのかしら」

 

気にするな俺! そうとも、気にしては駄目だ! ほら、更識さんが話しかけて来てるぞ。

 

「いや、そういった類のものに所属した憶えは無いな」

 

「そ、そう? それにしてはセリフ回しがやけに芝居がかっているというか・・・」

 

んー・・・たぶん口調がアル=ヴァン先生だからだろうな。普通なセリフも先生を通したら途端にカッコよくなるし。

 

「はは、むしろ演技は下手な方だと思うが」

 

思った事がすぐに口に出たりするから、演技しようとしてもすぐにバレちゃうだろうな。

 

「それで、結局の所原因は何なんだ? 言い難いのだったら無理に聞く気は無いのだが」

 

すっかり脱線してしまった話を戻す。ふと更識(妹)さんから視線を感じたので顔を向けると慌てて逸らされた。何か言いたい事があるのなら遠慮無く言ってもらっていいのだが・・・まあ、今の彼女には難しいか。

 

「・・・あれは織斑先生が壊したの」

 

「どうやって?」

 

厚さもそれなりにあったし、壊すとなるとそれなりの物を用意しないといけないだろう。いや、そもそも何で壊す必要があったんだ。

 

「それは私よりも彼女に答えてもらった方がいいわね」

 

そう言って更識さんが示したのは織斑さんだった。彼女は一人黙々と昼食を進めていたが、その手を止めこちらに顔を向けた。

 

「あの壁は犠牲になったの。そう・・・姉さんの新技の犠牲にね」

 

新技? え、ちょっと待って。つまり・・・あの壁は織斑先生自身の力でぶっ壊したって事? 何それ怖い。

 

「夏休み中に新しい技を思いついたと聞いたから、興味があった私は姉さんとの手合わせの中で見せてくれるようにお願いした」

 

女子高生の口から手合わせなんて言葉が出て来る時点で色々おかしい気がするが、今は置いておこう。じゃないとここから先の話に耐えられない。

 

「姉さんが低い声で「死ぬなよ」と呟いた瞬間、私は本能的に横に飛んだ。その直後、私が今まで立っていた場所を何かが通り過ぎ、気付いたら後ろの塀がボロボロになっていた」

 

ああ・・・撃ったんだな。とうとう気弾的なものまで撃てるようになっちゃったのね、織斑先生。もう先生辞めて格闘家になった方がいいですよ。あなたなら最速で世界最強にんれますよ。

 

「さすが千冬さんだ。私もその場に立ち会いたかったものだ」

 

篠ノ之さんが腕を組みながらうんうん頷く。何なのこの子達。織斑先生も含めてバトルジャンキーなの?

 

「そういえば箒。ずっと聞きたかったんだけど、どうしてアンタそんなに千冬さんを尊敬してるの?」

 

「ああ。それはな、あの人が姉さんを変えてくれたからだ」

 

「お姉様と言うと・・・束さんの事ですか?」

 

「おお、あの人か! 前に一度会った事あるけど、優しい人だったな。お菓子もたくさんくれたし」

 

「そうだね。初対面の僕達にも随分フレンドリーだったよね」

 

へえ、社交性の高いお姉さんなんだな。きっととても素敵な女性なのだろう。

 

「今でこそお前達の言う様な性格だが、昔は今とは全く違っていた。私の様な身内や、千冬さんみたいな極々近しい友人以外の人間にまるで興味を持たず、常に冷淡な態度を崩さなかった」

 

篠ノ之さんの独白に、織斑さん以外の子達が目を丸くする。それほどの驚きだったのだろうか。

 

「でも、それならどうして今の束さんはあんなに・・・」

 

「姉さんが中学生の時だ。同じクラスの者を酷く傷つけてしまったんだ。それで、千冬さんが謝るよう言ったんだが、姉さんは「有象無象が泣こうが喚こうが知ったこっちゃない」と言ったらしい。それで千冬さんの怒りが限界を越えてしまった」

 

「そ、それで・・・?」

 

「千冬さんはその場で姉さんに対し、地上打ち上げからの空中六連コンボを叩き込んだらしい。気絶した姉さんが目を覚ました時、傍には姉さんが泣かせたクラスメイトが付き添っていた。・・・それからだ、姉さんが変わったのは」

 

「私としては気絶程度で済んだ事に驚きなんだけど・・・」

 

「そういうわけで、私は姉さんを変えてくれた千冬さんを尊敬している。・・・あのまま行けば、いつか姉さんは取り返しのつかない所までいってしまいそうだったから」

 

うん、いい話だ。いい話なのだが・・・正直、六連コンボの件のインパクトが強すぎて他が霞んでる。

 

「何を話している?」

 

「ッ!? い、いえ、その、ちょっと勉強の事でみんなに相談を・・・」

 

っと、ここで本人が戻って来た。慌てて話を変える篠ノ之さん達。

 

「ほう、感心だな」

 

どうやら誤魔化せたようだ。織斑先生が俺の前にトレーを置く。

 

「何が食べたいか聞くのを忘れていたので適当に選ばせてもらった。だが、味の保証はするぞ」

 

「ありがとうございます」

 

そして、俺は織斑先生と同時に箸に手を伸ばすのだった。




本編を一々挿入投稿するのが面倒だからと分けた番外編ですが、分けた事で話数が増えても問題無い事に気付いて密かに喜んでます。これでゆっくりじっくり書けるぞ。

次回は他の子達について触れようと思います。ええ、みなさんのご想像通り、ゆるーい感じになってます。


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潜入!乙女の園 その五

妄想垂れ流しシリーズその二 アカメが斬る! 編

胃が荒れ過ぎて酒が飲めなくなったアザえもんに八つ当たりな形で異世界に跳ばされたオリ主。気付けば原作開始前のアカメ世界を彷徨い、なんやかんやでセリューの父親を助ける。セリューは正しい正義の心を持ち、立派な騎士を目指す様になる。

三獣士がチョウリ親子に襲い掛かる場面に遭遇し、盗賊か何かだと勘違いして教育的指導を行うオリ主。結果、親子の未来は変わり、綺麗なニャウが誕生する。

その実力と、どんなに攻撃しても傷つかないチートボディがエスデス様の目に留まり、最高の玩具として目をつけられる。後に摩訶鉢特摩すらも無効化され、自身を完全に凌駕する存在を前にエムデス化。なお、ブドー将軍にも本気でスカウトされている模様。

バックに売られそうになったエア達を見て、売春強要許すまじ! の精神で富豪もろともバックをボコボコにして助ける。

・・・そんな妄想で悦に浸る私はブラートの兄貴と水浴びしてこい。


更識さんの厚意で昼食を頂ける事になったわけだが。少し・・・いや、かなり肩身が狭い。何せ前も後ろも右も左も全員女の子なのだ。自分という存在の異物感が半端無い。

 

しかも、さっきまで感じていたオータム先生からのおっそろしい視線が緩んだと思ったら、それに代わるように送られる視線が一気に増えた。しかし、こういう時の対処法を俺は冥界で学んだ。そう・・・気にしないと!

 

兵藤君かアザゼル先生が戻って来てくれれば少しはマシになるのだろうけど。・・・それにしても、二人とも遅いな。

 

「あ、いたいた! り~~ん!」

 

その時、食堂に入って来た女の子が一人、鳳さんの席に近づいて来た。手には何やら封筒の様な物を持っている。

 

「ってうわっ!? ホントに男の人がいる!?」

 

俺を見るなりそう言って指差してくる女の子。え、ちょっと待って。今のセリフだと、もしかして俺達の事はもうこの寮全体に広まってるって事?

 

「何か用かしら?」

 

「あ、う、うん。鈴に手紙が・・・じゃなくて、何でそんな冷静なの!? 男の人だよ!?」

 

詰め寄って来る女の子に対し、鳳さんは落ち着いた様子で箸を置いて答えた。

 

「とりあえず、指を差すのは失礼だから止めなさい。この人、私達より一つ上の先輩よ。それと、別に冷静ってわけじゃないわよ。この空間に男がいるなんて本来ありえないんだから、戸惑いだってあるわ」

 

「そ、そう言う割には落ち着いてるけど」

 

「ま、自己紹介も済ませたし、何より私達の力になりたいと本気で思ってるみたいだから、変に身構える必要も無いかなって。・・・少なくとも、アタシの幼馴染に比べたら随分まともな人よ」

 

ほっ、どうやら鳳さんは先程の俺の言葉は決しておふざけなんかじゃないと信じてくれたみたいだな。

 

「鈴の幼馴染って確か・・・」

 

「織斑一夏・・・。千ふ・・・織斑先生の弟で、マドカの兄よ」

 

「そして、私の幼馴染でもある」

 

篠ノ之さんがそっと付け加える。

 

「そういえば、前にそんな事を聞いた憶えがありますわね」

 

「どんな人なの?」

 

「顔は・・・まあ、悪く無いどころかかなりカッコイイと思うわ。料理も上手だし、運動神経もそれなり。頭だって中々良かったわ」

 

「知っているぞ! そういう男の事を“優良物件”と呼ぶのだろう? 見つけたら絶対に逃がしたら駄目だとクラリッサが言っていた」

 

自慢げに語るボーデヴィッヒさんを見て思う。そのクラリッサという女性にはこれ以上この子に変な知識を植え付けないで欲しいと。

 

「そうね。それだけなら私も好きになってたと思うわ。でもね、実際はそれだけじゃない。アイツは・・・一夏はね、オタクなの。それもとびっきりの」

 

席が近いのでどうしても会話が耳に届いて来る。オタクにも色々あるが、どうも一夏君は所謂美少女アニメオタクらしい。

 

「人の趣味を馬鹿にする気は全く無いわ。でもね、誕生日に何が欲しいか聞いたら、真剣な顔で「PCの中に入れる機械」なんて返されたらどう思う? しかも、三年間全く同じ答えだったのよ? 極めつけは、「○○は俺の嫁!」なんて迷い無く言われたら・・・恋愛感情なんて湧かないわよ」

 

ほほう、中々にレベルが高いですな。まあ、前世じゃそういった友達も何人かいたけど。やっぱり女の子からしたら抵抗みたいなのがあるんだろうか。

 

「身内の前でそれだけ言えるとは大したものだな鳳」

 

「あ、ご、ごめんなさい」

 

織斑先生にジト目で見られ委縮する鳳さん。だが、次の瞬間には織斑先生はフッと表情を緩めた。

 

「いや、正直私もアイツの趣味に思う所が無いわけでは無い。少しは現実の女にも興味を持ってくれればいいのだが」

 

「そんなの簡単だよ姉さん。一夏の部屋にあるオタグッズを全部処分しちゃえばいいよ」

 

「・・・発狂するぞ」

 

篠ノ之さんの呟きにも似た声に、デュノアさんが怖々した顔で尋ねる。

 

「は、発狂って。いくらなんでもそんな・・・」

 

「いえ、篠ノ之さんもその方と幼馴染なのですからその方の事はよくご存知のはず。ですから本当にそうなるのでしょうね」

 

「前に動画サイトでゲームのセーブデータを消されたヤツが狂ったように暴れる動画を見たけど、きっとあれくらい凄いんだろうな」

 

「そろそろ本題に戻りましょ。結局、アタシに何の用なの?」

 

「これ。さっき鈴に渡してくれって頼まれたの」

 

「封筒? ・・・ああ、またか」

 

差出人を見てゲンナリする鳳さん。その場で開封すると、中からは一枚の手紙と写真が入っていた。写っているのはどことなく鳳さんと似た一組の男女で、見ているこっちが恥ずかしくなるくらいの熱烈なキスを交わしていた。

 

「う、うわぁ・・・これはまた・・・」

 

「ず、随分と情熱的ですわね」

 

「あんの馬鹿ップル! なぁにが「もしかしたら弟か妹が出来るかもしれないから、その時は仲良くしてね」よ! しかもこの写真、自撮りじゃなくて明らかに誰かに撮ってもらってるし! どこまで恥晒す気なのよもう!」

 

恥ずかしさか怒りかは分からないが、とにかく鳳さんの顔が真っ赤になっている。

 

「旅行に行くのは勝手だけど、その度に惚気しか書かれて無い手紙や写真を送られる娘の気持ちがわかってないのよあの二人は! 親のキスしてる所の写真なんか誰が見たいってのよ!」

 

「お、落ち着くんだ鈴。それにこう言うじゃないか。“旅の恥は焼き捨て”と」

 

惜しい、ボーデヴィッヒさん。それを言うならかき捨てだ。

 

「私は今すぐこの手紙と写真を焼き捨てたいわよ!」

 

「さ、流石にそれは駄目だよ。それにほら、いつまでも親が仲良しってのはいい事だと思うよ?」

 

デュノアさんがそうフォローを入れると、鳳さんは幾分か落ち着きを取り戻したようだった。

 

「・・・アンタの所はいいわよね、シャルロット。ウチと違ってまともな物ばっかり送ってもらって。この前も色々送ってもらったみたいじゃない」

 

「あ、あはは。うん、本当にありがたいよ。特に義母さんからは向こうで僕が好きだったお菓子とか服とかたくさん送ってもらっちゃってさ。なんか申し訳無いくらいだよ」

 

「確か、血は繋がって無いのでしたわよね?」

 

「そうだよ。でも、義母さんはそんな事全く気にせずに僕を大事に育ててくれたんだ。だから僕は義母さんが大好きなんだ。・・・僕に男装ばっかりさせる癖は直して欲しいんだけどね」

 

事情は知らなくても、今の会話で何となく察せる。ええ子や・・・。ええ子やでデュノアさん。今ここにお義母さんがいたらきっと泣いて喜んでいる事だろう。

 

「では、次はわたくしの両親の話を・・・!」

 

「「「「却下」」」」

 

オルコットさんがそう切り出そうとした瞬間、デュノアさんを除いた四人が一斉にぶった切った。

 

「な、何故ですの!? ここは話の流れ的にそれぞれのご両親についての話を・・・!」

 

「だって、アンタが話す内容なんてどうせいつものお父様自慢でしょ?」

 

「セシリアの話は長いから眠くなってしまう」

 

「しかも、大体いつも同じパターンだからな」

 

「なので時間の無駄」

 

「なん・・・ですって・・・」

 

集中砲火を喰らい、オルコットさんが席に着いたまま崩れ落ちた。嫌われているとかじゃなく、純粋に話を聞きたくないって感じだな。

 

「ウチは姉さんが親代わりだったから、色々大変な思いをさせちゃって申し訳無いと思ってるし、それ以上に凄く感謝してるよ。姉さんが私の姉さんで本当に良かった」

 

「・・・ふん、姉が弟や妹の世話をするのは当然だ馬鹿者」

 

「照れてる姉さんをオカズに食べるご飯は最kふぎゃっ!?」

 

「調子乗るなよ織斑」

 

今のは迂闊だったな織斑さ・・・あれ、なんかちょっと嬉しそう? まさかこの子、ヴァーリさんや匙君と同族!? Mランドの住人なのか!?

 

「箒の家って確か神社だったわよね? それに、お父さんが道場も開いてるんでしょ?」

 

「ああ。自慢というわけではないが、それなりに有名だし、門下生も結構な数を有している」

 

「私も数年前までお世話になっていた。・・・柳韻さんには感謝している。今の私があるのはあの人のおかげだからな」

 

「・・・という事は、箒のお父さんもあっち側の人なのね。束さんが千冬さんの怒りに触れて気絶だけで済んだ理由がわかったわ」

 

「姉さんは特別だ。あの人は所謂天才だからな。頭脳も強さも、私はあの人の足下にも及ばない。最近、クロエという助手と共に介護用のパワードスーツを開発したらしい。そのスーツ、計算上では宇宙空間でも使用出来るのだとか言っていた」

 

「何で介護用の物にそんな機能があるのよ」

 

「さあな。あの人の考えはわからない」

 

「さらに言えば、束のヤツ、今回の騒ぎをどうやって聞きつけたかは知らんが、そのパワードスーツに武装を搭載させてこちらに送ろうとしていた。もちろん、私が阻止したがな」

 

何それ凄く見たい。・・・なんて言ったら織斑先生に何されるかわからないのでそっと胸の奥に仕舞う事にしよう。

 

「流石教官! そこに痺れて憧れます!」

 

「・・・ボーデヴィッヒ。今のは・・・」

 

「日本では最上級の褒め言葉だとクラリッサから聞いています。教官もご存知でしょうが、私は孤児です。クラリッサとは同じ施設で共に育ち、私にとっては姉の様な存在です。何も知らなかった私に色々な教育を施してくれた彼女には感謝してもし足りません」

 

「そうかそうか。・・・とりあえず、クラリッサには教育的指導が必要なようだな」

 

「え・・・!?」

 

逃げて! クラリッサさん超逃げて! 手をめっちゃゴキゴキさせている織斑先生を見て、俺は心の中で叫んだ。

 

「姉妹の仲の良さなら私達も負けないわよ! ね、簪ちゃん?」

 

とここで、篠ノ之さん達の話を最初から今までずっと黙って聞いていた更識さんが突然声をあげた。・・・ひょっとして、このタイミングを待っていたのだろうか。

 

「え、ど、どうしたの姉さん?」

 

「だ・か・ら! 私と簪ちゃんがどれだけ仲良しなのか、今からみんなに話してあげるのよ!」

 

「ええ!? そ、そんな、恥ずかしいよ! 虚も本音も黙ってないで止めてよ!」

 

「ごめんなさい。こうなったお嬢様は止められないので」

 

「あはは~。かんちゃん頑張って~」

 

「そ、そんなぁ・・・」

 

「まずは、簪ちゃんが六歳の時! 夜、雷が怖くなった簪ちゃんは・・・」

 

「わ~~~! わ~~~!」

 

バッと立ち上がり、更識さんの口を塞ぐ更識(妹)さん。傍から見れば姉妹がじゃれついている様にしか見えないので、ちょっと気持ちが温かくなった。妹さん、大人しい子かと思ったら、今みたいな声も出せるんだな。ひょっとしたら、こっちの方が本来の性格なのかもしれない。

 

「よお、待たせたな。随分と盛り上がってるみたいだが、何の話だ?」

 

そこへ、ふらりとアザゼル先生が戻って来た。その後すぐ兵藤君と山田先生も戻って来た所で、俺達はそれぞれの得た情報等を交換する事にしたのだった。




番外編は気ままに書けるので気が楽です。今後も本編を書きつつ、のんびりゆったり進めて行くつもりです。

あと、妄想シリーズは今後も続けていけたらいいと思ってます。


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冥界掲示板
第一話 とあるスレを覗いてみた


聞こえる・・・。こんなん書いてるヒマがあるならさっさと本編進めろという声が!
けど・・・書きたかったんです。書きたかったんですよ!

二月十一日、桜日紅葉雪様から頂いた案を元に追記。それに伴い、時系列も変わりました。




【鋼の】フューリーについて語るスレpart10【救世主】

 

1 名無しの悪魔

 

このスレは伝説の騎士ことフューリーについて語るスレです。

・荒らしは徹底スルーです。

・過度な下ネタはNG。また掘られ隊の隊員が出現したら速やかに掘られ隊スレに報告をお願いします。

・次スレは>>980レスを越えた後に宣言した上で立ててください。

前スレ

【伝説の】フューリーについて語るスレpart9【騎士】

 

2 名無しの悪魔

 

これまでに判明しているフューリーの情報+偉業

・二天龍から三大陣営を救った。

・グレモリーとフェニックスの婚約パーティーに乱入。

・再び三大陣営による戦争を引き起こそうとした堕天使コカビエルを倒す。

・和平会談の会場を襲撃したテロリストを撃退。その後、今代の赤龍帝と白龍皇二人と戦い勝利。

・グレモリー領に潜伏していた天魔の業龍ティアマットを一人で駆逐。

・テロリストだったディオドラ・アスタロトとのレーティングゲームにてテロリスト相手に無双。生きたまま全員を捕縛。

・鋼の救世主の発表により異世界よりやって来た事が判明←新規情報。

 

3 名無しの悪魔

 

フューリーパワァァァァァァァァァ!!!

 

4 名無しの悪魔

 

フューリーパワァァァァァァァァァ!!!

 

5 名無しの悪魔

 

>>3 >>4

 おい、何があった!?

 

6 名無しの悪魔

 

>>5

こう叫ぶとフューリーに出会えるらしい。なお、前スレの900から後は全てフューリーパワーで埋め尽くされている模様。

 

7 名無しの悪魔

マジか。ちょっと確認して来る。

 

8 正妻

フューリーパワーフューリーパワーフューリーパワーフューリーパワーフューリーパワーフューリーパワーフューリーパワーフューリーパワーフューリーパワーフューリーパワーフューリーパワーフューリーパワーフューリーパワーフューリーパワーフューリーパワーフューリーパワーフューリーパワーフューリーパワーフューリーパワー。

 

9 名無しの悪魔

 

>>8

ちょ、必死すぐるww

 

10 名無しの悪魔

 

どんだけ会いたいんだよww

 

11 名無しの悪魔

 

ヒント・・・名前

 

12 名無しの悪魔

 

名前・・・正妻・・・あっ(察し)

 

13 名無しの悪魔

 

なんだ、いつもの正妻さんか。

 

14 名無しの悪魔

 

今日も平常運転の様で大変よろしい。

 

15 名無しの悪魔

 

このスレももう10回目か。早いもんだな。

 

16 名無しの悪魔

 

>>15

お前、それ鋼の救世主スレの連中の前で言えるか?

 

17 名無しの悪魔

 

あのスレは異常。何だよpart563って・・・。

 

18 名無しの悪魔

 

俺、鋼の救世主を全巻収める為にでっかい本棚買ったんだ。そしたらさ、大き過ぎて部屋の中で組み立てられなかった・・・。母ちゃんにもめっちゃ怒られた。

 

19 名無しの悪魔

 

Oh・・・

 

20 名無しの悪魔

 

無茶しやがって・・・

 

21 名無しの悪魔

 

何で先に部屋の寸法を計らなかったんだ馬鹿野郎!

 

22 名無しの悪魔

 

けど、実際全巻揃えるのって大変だぞ。お前等、何巻まで持ってる?

 

23 名無しの悪魔

 

5巻まで

 

24 名無しの悪魔

 

3巻

 

25 名無しの悪魔

 

10から先は数えて無い。

 

26 名無しの悪魔

 

結局一巻ずつしか読めないんだから一気に買っても意味が無いだろ。というわけで俺は現在一巻熟読中。あとクスハは俺の中で巨乳。戦闘中にオッパイバルンバルン揺らしてそう。

 

27 名無しの悪魔

 

俺も一巻だけ。というか一巻しか買えなかった。

>>26

なんだ同士か。

 

28 名無しの悪魔

 

やっぱりどこも売り切れなんだな。仕方無いから予約注文したら三ヶ月待ちだとさ。

>>26 >>27

感じる、かつてないほどの一体感を・・・!

 

29 名無しの悪魔

 

>>26 >>27 >>28

これくらいなら問題無いが、あまりエサ(下ネタ)を撒き過ぎると“アイツ等”が湧いて来るぞ。

そして俺は半年待ちだ畜生。

 

30 名無しの悪魔

 

流れをぶった切って済まない。その鋼の救世主スレから流れて来たんだが、今代の二天龍とかティアマットとか、公式で発表されて無い情報が何で出てんだ?

 

31 名無しの悪魔

 

>>30

新顔か。歓迎しよう。

実は情報提供者がいるのだ。

 

32 名無しの悪魔

 

情報提供者?

 

33 気まぐれな黒猫

 

呼んだかにゃ?

 

34 名無しの悪魔

 

ファッ!?

 

35 名無しの悪魔

 

なんと!?

 

36 名無しの悪魔

 

噂をすれば!?

 

37 名無しの悪魔

 

黒猫さんキタァァァァァァァァァァ!!!

 

38 名無しの悪魔

 

キタァァァァァァァァァァァ!!!

 

39 名無しの悪魔

 

落ちつけ。とりあえず何もわかってない俺に説明頼む。

 

40 名無しの悪魔

 

>>39

フューリーの関係者。フューリーをご主人様と呼ぶほどの仲で、かなりプライベートな事まで知っている模様。

 

41 名無しの悪魔

 

関係者でプライベートまで熟知。そしてご主人様呼び。・・・ひょっとして眷属の・・・。

 

42 名無しの悪魔

 

>>41

そこまでだ小僧。

 

43 名無しの悪魔

 

>>41

例えわかったとしても決して名前は出さない。それがここのルールだ。もしそれを破り、巡り巡ってフューリー様に何かしらの迷惑をかけてしまった場合、お前の家に蒼いローブを纏った死神がやって来るだろう。

 

44 名無しの悪魔

 

何それ超怖い。

 

45 名無しの悪魔

 

蒼ローブって・・・ひょっとしてフューリー教か?

 

46 名無しの悪魔

 

何で別スレのタイトルがここで?

 

47 名無しの悪魔

 

フューリー教は実在する。俺の友達がそれらしき集団を見たらしい。

 

48 名無しの悪魔

 

マジで?

 

49 名無しの悪魔

 

>>47

kwsk。

 

50 名無しの悪魔

 

その友達が興味本位でスレを覗いたらルシファードで集会を開くって書かれてたらしい。で、当日に電話がかかって来て、集会場所に行ったら蒼いローブを纏った女達が三十人くらいいるって言われた。しかも悪魔だけじゃなくて天使や堕天使もいたみたいだぞ。

 

51 名無しの悪魔

 

怪し過ぎだろ・・・。

 

52 名無しの悪魔

 

早く続きを!

 

53 名無しの悪魔

 

友達がもう少し近くで見てみるって言った直後、「うわっ!? 何をする、止めっ・・・!」っていう声が聞こえて来て、電話が切れた。

 

54 名無しの悪魔

 

えっ

 

55 名無しの悪魔

 

ちょっ

 

56 名無しの悪魔

 

友達は無事だったのか!?

 

57 名無しの悪魔

 

結論から言えば無事だった。けど、その日自分が何をしていたのかすっぱり忘れてた。俺がフューリー教の話をしても首を傾げるだけだった。

 

58 名無しの悪魔

 

記憶消されとる!

 

59 名無しの悪魔

 

もし、今このスレをその蒼ローブの誰かが見てたら・・・。

 

60 名無しの悪魔

 

>>41

お前の事は忘れない。

 

61 名無しの悪魔

 

失言でした! すみません許してください! 何でもしますから!

 

62 名無しの悪魔

 

ん?

 

63 名無しの悪魔

 

 

64 名無しの悪魔

 

何でもするって

 

65 名無しの悪魔

 

言ったよね?

 

66 名無しの悪魔

 

この流れは・・・!

 

67 掘られ隊№37

 

騎士様に掘られたい!

 

68 名無しの悪魔

 

掘られ隊だ! 掘られ隊が出たぞ!

 

69 名無しの悪魔

 

掘られ隊員は掘られ隊スレに帰れ。

 

70 名無しの悪魔

 

誰か通報しろ!

 

71 名無しの悪魔

 

したぞ。その内向こうの住人が確認に来るはずだ。

 

72 名無しの悪魔

 

最早何でもしますからの掘られ隊出現の流れはお約束になってるな。

 

73 名無しの悪魔

 

にしたって反応早過ぎだろ。監視でもしてんのか?

 

74 名無しの悪魔

 

ただ掘られたいって叫ぶ為だけにスレというスレをか? だとしたら相当にヒマなんだろうな。

 

75 名無しの悪魔

 

掘られ隊の連中はニート。

 

76 名無しの悪魔

 

止めろ! 俺はノンケだ!

 

77 名無しの悪魔

 

>>76

自らニートだと告白してるんですがww

 

78 ファング

すみません。たった今確認しました。№37には注意しておきます。

 

79 悪のカリスマ(笑)

 

ご迷惑をおかけしましたぁ。

 

80 名無しの悪魔

 

>>78 >>79

ご苦労さん。

 

81 名無しの悪魔

 

>>78 >>79

頼んだぞ。

 

82 名無しの悪魔

 

お前等いつまで掘られ隊で盛り上がってんだよ! 黒猫さんを待たせるんじゃねえ!

 

83 名無しの悪魔

 

はっ! そうだった! すみません黒猫さん! まだいますか!?

 

84 気まぐれな黒猫

 

いるよ。

 

85 名無しの悪魔

 

よかった。てっきりホモネタにうんざりして去ってしまったかと。

 

86 気まぐれな黒猫

 

まあ、この掲示板を知った当初は困惑したけど、今はもう慣れたにゃ。

 

87 名無しの悪魔

 

さて、もうみんなすっかり忘れているであろう>>30からの質問なんだが。

 

88 名無しの悪魔

 

過去スレ見ろ。確か5か6スレ目に黒猫さんが纏めて書いてくれてるはずだ。

 

89 名無しの悪魔

 

というわけで質問終了。そしてここまでフューリー本人についてほとんど語られていないという驚愕の事実。

 

90 名無しの悪魔

 

誰かなんか話題を振ってくれ。

 

91 名無しの悪魔

 

じゃあ、ディオドラ・アスタロトとのレーティングゲームについて話そうぜ。

 

92 名無しの悪魔

 

>>91

待ってました!

 

93 名無しの悪魔

 

>>91

お約束だな。

 

94 名無しの悪魔

 

やっぱりその話題が一番盛り上がるよな。ちなみに俺調べによると、第二位はレーティングゲーム前に放送されたインタビューで第三位は初めてフューリーがTVに映った時だな。

 

95 名無しの悪魔

 

一番盛り上がるのは鋼の救世主だろうが!

 

96 名無しの悪魔

 

>>95

専用スレへどうぞ。

 

97 名無しの悪魔

 

あのゲームって、結局ディオドラ・アスタロトがアーシアちゃんを自分の物にする為に仕組んだって解釈でいいんだよな?

 

98 名無しの悪魔

 

>>97

大体合ってる。

テロなんざ言語道断だが、犯罪を犯してでもアーシアちゃんほどの美少女を手に入れたい気持ちはわかるんだなこれが。

 

99 名無しの悪魔

 

むしろアーシアちゃんの可愛さが犯罪級だろ。

 

100 名無しの悪魔

 

平日の昼間からゴロゴロしている俺だが、いつかアーシアちゃんが呼び出してくれる日を信じて待ち続ける。

 

101 名無しの悪魔

 

アーシアちゃんみたいな妹が欲しかった。

 

102 名無しの悪魔

 

妹なアーシアちゃんの頭をナデナデしたい。

 

103 名無しの悪魔

 

ナデナデされて油断しているアーシアちゃんのほっぺをフニーってしたい。

 

104 名無しの悪魔

 

フニフニし過ぎてちょっと赤くなったほっぺを擦りながら「酷いですお兄様ぁ」って言われたい。

 

105 名無しの悪魔

 

そしてその赤くなったほっぺをprprするというわけですねわかります。

 

106 名無しの悪魔

 

むしろ俺がprprしたい。

 

107 名無しの悪魔

 

俺がアーシアちゃんをprprしてアーシアちゃんが俺をprprする・・・完璧じゃないか。

 

108 名無しの悪魔

 

>>105 >>106 >>107

フューリー様コイツ等です。

 

109 名無しの悪魔

 

>>105 >>106 >>107

どうやら次に本当の絶望(モードF)を味わうのはコイツ等のようです。

 

110 気まぐれな黒猫

 

ちょっとご主人様呼んで来るね。

 

111 名無しの悪魔

 

止めて!

 

112 名無しの悪魔

 

止めて!

 

113 名無しの悪魔

 

止めて!

 

114 名無しの悪魔

 

>>111 >>112 >>113

息ぴったりだなお前等ww

 

115 名無しの悪魔

 

投稿時間までキッチリ一緒だしww

 

116 名無しの悪魔

 

奇跡の無駄遣いww

 

117 名無しの悪魔

 

まさか・・・俺達が奇跡の世代だったとは。

 

118 名無しの悪魔

 

確かに、思考が全く一緒の変態が三人揃うってのは奇跡だよな。

 

119 名無しの悪魔

 

私の変態力は530です。

 

120 名無しの悪魔

 

>>119

桁が3つくらい違うんじゃねえの?

 

121 名無しの悪魔

 

0.53? ただの真人間じゃないか。

 

122 名無しの悪魔

 

>>121

減らしてんじゃねえよww

 

123 名無しの悪魔

 

堕ちた聖女スレをフューリーに見せたら・・・。

 

124 名無しの悪魔

 

>>123

それだけはアカン!

 

125 名無しの悪魔

 

>>123

貴様! 冥界を滅ぼす気か!

 

126 名無しの悪魔

 

あっちは掘られ隊とは別のベクトルで変態の巣窟だからなぁ。本人が見たら間違い無く泣くだろう。

 

127 名無しの悪魔

 

ヴァカめ! アーシアちゃんをそこらのビッチと一緒にするな! きっとそっちの知識は皆無だから何が書かれてるかすら理解出来ないだろう! あの子はキスしたら子どもが出来るって信じてるはずだ!

 

128 気まぐれな黒猫

 

でもあの子、友達から借りた結構きわどい描写が描かれた漫画とかそれなりに読んでるわよ。

 

129 名無しの悪魔

 

/(^o^)\

 

130 名無しの悪魔

 

\(^o^)/

 

131 名無しの悪魔

 

₍₍ (ง ˘ω˘ )ว ⁾⁾

 

132 名無しの悪魔

 

>>129 >>130

ショック受けてるくせに顔文字を入れる余裕はあるのな。

 

>>131

何が言いたいんだよww

 

133 名無しの悪魔

 

全員頭を冷やせ。ここはアーシアちゃんのスレじゃなくてフューリーのスレだぞ。

 

134 名無しの悪魔

 

>>97

まさか、あれだけの数集めたテロリストを、たった数人でフルボッコにされるとは思って無かっただろうな。アレ、全員上級や中級悪魔だったんだろ?

 

135 名無しの悪魔

 

なんかエクソシストみたいなヤツも映ってなかったか? で、ソイツと何か話をした直後、咆哮→光の柱→パワーアップの流れだったはず。

 

136 名無しの悪魔

 

あのパワーアップって何だったんだ? 土壇場の覚醒とか漫画の主人公かよ! と思ったけど。余計な装甲をパージしてより機動性を増やしたのかな? 黒猫さん何か知ってます?

 

137 名無しの悪魔

 

素顔も丸出しだったよな。おかげで一緒に見てた妹が隣でキャーキャー叫んですっげえ煩かった。

 

138 名無しの悪魔

 

武装も変わってたよな。何種類くらいあったんだろう。

 

139 ロボット大好き

 

1 爪

2 双剣

3 双刃剣(2の柄頭同士を結合させる)

4 合体剣(2を1つに合体させる)

5 大剣(左スラスターに内蔵)

6 槍(右スラスターに内蔵。他の武器と違い刀身は結晶で出来ている)

7 膝のブレード。

モードF発動時には出力全開の為に各パーツがスライドし、溢れ出たエネルギーがスラスター部から噴出。翼の様な形になります。

 

140 名無しの悪魔

 

>>139

纏めthx。てかちょっと詳し過ぎ?

 

141 名無しの悪魔

 

ものの見事に剣ばっかりだな。これじゃ遠距離攻撃出来なくね?

 

142 名無しの悪魔

 

必要無いだろ。相手が撃って来る前に近づいてぶった斬れるくらい速いんだし。アホみたいな数の魔力弾すら剣の一振りで切り払ってたのを見たぞ。

 

143 名無しの悪魔

 

近づいたらやられる。かといって撃ってもダメ。もたもたしてる内に気付いたら目の前に迫る剣。・・・どないせえちゅうんや。

 

144 名無しの悪魔

 

>>143

心配しなくても、真面目に生きてればフューリーと戦う事になんかならないから安心しろ。

 

145 名無しの悪魔

 

>>144の言う通りだ。むしろ心配しないといけないのは>>143よりも>>111 >>112 >>113だろ。

 

146 名無しの悪魔

 

見てるか>>2>>3>>8。手っ取り早くフューリーに会いたければ犯罪者になればいいみたいだぞ。

 

147 名無しの悪魔

 

ただし命の保証は無い。

 

148 正妻

 

私は会おうと思えばフューリー様にはいつでも会えます。ただ、色々事情がありまして。

 

149 名無しの悪魔

 

正妻なのに離れて暮らしてんのかよww

 

150 名無しの悪魔

 

とんだ正妻もいたものですなww

 

151 正妻

んだとゴルァ!

 

152 名無しの悪魔

 

正妻さん口調口調ww

 

153 名無しの悪魔

 

いつものインテリ口調もぶっ飛ぶほどお冠の様です。

 

154 名無しの悪魔

 

しかしまあ、こうして語れば語るほど、とんでもない存在なんだって思い知らされるよなぁ。

 

155 名無しの悪魔

 

信じられるか? こんなスペックで人間なんだぜ?

 

156 名無しの悪魔

 

もうさ、種族フューリーでいいんじゃね?

 

157 名無しの悪魔

 

うーん・・・。

 

158 ワイルド総督

 

>>157

止めとけ。ヤツに関して言えば考えるだけ無駄だ。ああいう存在なんだと自分に納得させなければ俺みたいになるぞ。

 

159 名無しの悪魔

 

>>158

意味深発言ですな。出来ればkwsk。

 

160 気まぐれな黒猫

 

>>158

何しに来たにゃ。

 

161 ワイルド総督

 

シスコン野郎に教えられたんだよ。そういうお前こそこんな所で何してやがる。

 

 

162 名無しの悪魔

 

おや? 黒猫さんお知り合いですか?

 

163 気まぐれな黒猫

 

ちょっとね。あ、それと>>161を呼ぶ時はワイルド総督じゃなくてストマック総督って呼ぶにゃ。なんなら総督も必要無いわよ。

 

164 ワイルド総督

 

それじゃただの胃じゃねえか!

 

165 名無しの悪魔

 

つまり、ストマックさんだな。

 

166 名無しの悪魔

 

ストマックさんチーッス!

 

167 名無しの悪魔

 

ストマックさんもフューリーについて色々知ってるんですか?

 

168 ストマック総督

 

>>163

おい! テメエの所為で最悪な呼び名になっちまったじゃねえか!

 

 

169 気まぐれな黒猫

 

>>168

と言いつつ名前変えてるじゃない。

 

 

170 ストマック総督

 

どうなってんだこれ! 変えた覚えねえぞ!

 

171 気まぐれな黒猫

 

無意識下での行動。つまりアンタは自分をストマック総督だと自覚してるのにゃ!

 

172 ストマック総督

 

なん・・・だと・・・。

 

173 名無しの悪魔

 

おい、なんか始まったぞww

 

174 名無しの悪魔

 

ストマックさん。自分を認める勇気も大事ですよ。

 

175 名無しの悪魔

 

ストマックさんが新たな一歩を踏み出すまで、俺達はいつまでも待ってるぜ。

 

176 名無しの悪魔

 

突然だがお前等に聞きたい。もしもフューリーの鎧姿のプラモが出たら買うか? ぶっちゃけノーマルモード(勝手に命名)のデザインめっちゃ好きなんだけど。

 

177 名無しの悪魔

 

>>176

わかる。カッコいいよな。

 

178 名無しの悪魔

 

いっそ鋼の救世主シリーズみたいな感じで売り出して欲しいわ。本の描写や説明だけじゃイメージしきれない。何で挿絵入れなかったし!

 

179 名無しの悪魔

 

>>178

そんなお前にお勧めのサイトがある。『S・Aの工房』っていう名前のサイトだ。このサイト、管理人が自作したロボットのプラモの写真が載ってるんだが、その中に鋼の救世主に登場したヤツが何体か載ってた。もちろん、フューリーのあの鎧姿のヤツもな。

 

180 名無しの悪魔

 

それって結局管理人のイメージに左右されるんじゃないのか?

 

181 名無しの悪魔

 

いや、本当かどうかわからないけど、フューリー本人に確認を取りながら作成したって書いてあったぞ。俺も覗いてみたけど、実物を見た事無いのにすげえ納得出来る様な感じの作品だったぞ。

 

182 名無しの悪魔

 

ほほう、それは見る価値がありそうだな。

 

183 ロボット大好き

では、サイトのURLを載せておきます。

 

184 名無しの悪魔

 

>>183

GJ

 

185 名無しの悪魔

 

ちょっと行って来るわ。

 

186 名無しの悪魔

 

俺も。

 

187 名無しの悪魔

 

後は任せた。

 

188 名無しの悪魔

 

実際、しばらくしたらホントに発売されそうだけどな。絶対金になるコンテンツだし。

 

189 名無しの悪魔

 

鋼の救世主でグレモリーはウッハウハだろうな。

 

190 名無しの悪魔

 

自分の過去の戦いで金儲けされるってどんな気持ちなんだろうな。

 

191 名無しの悪魔

 

別にそこまで気にしてないんじゃね。あれほどの内容の物を本人の許可も得ずに世に出すわけないし。

 

192 名無しの悪魔

 

やっぱりそうなのかな。出版会見の時に記者から質問されて二分くらい黙ってたから納得してなかったのかと思ってた。

 

193 名無しの悪魔

 

思い出した。妙な緊張感に溢れてたよなあの時間。

 

194 名無しの悪魔

 

ここで初心に戻ってフューリーのスペックについて挙げていく。とりあえず戦闘力については満場一致で“化物”という事にして、他なんかあるか?

 

195 名無しの悪魔

 

イケメン。

 

196 生徒会長

 

戦術面も目を見張るものがあります。

 

197 魔王少女

 

とっても優しい人だよ!

 

198 名無しの悪魔

 

周りに美女が多すぎる。

 

199 名無しの悪魔

 

>>198

ホントそれ。

 

200 名無しの悪魔

 

眷属全員滅茶苦茶レベル高いよな。加えて魔王の妹にアーシアちゃん。つーか挙げて言ったらキリないだろ。

 

201 名無しの悪魔

 

ハーレムじゃねえか!

 

202 名無しの悪魔

 

選び放題だな。いや、英雄色を好むっていうし、ひょっとしたら全員・・・。

 

203 名無しの悪魔

 

そうだとしてもまずは正妻だろう。誰を選ぶと思う? 何なら自分だったら誰を選ぶかでもよし。

 

204 正妻

 

もちろん私に決まってます!

 

205 名無しの悪魔

 

えー、>>204が何か言ってるが、気にせず挙げて行こう。

 

206 名無しの悪魔

 

アーシアちゃん。

 

207 名無しの悪魔

 

黒歌。

 

208 名無しの悪魔

 

レイナーレ。

 

209 名無しの悪魔

 

リアス・グレモリー。

 

210 名無しの悪魔

 

グレモリー眷属の青髪メッシュの子。

 

211 名無しの悪魔

 

>>210

ゼノヴィアな。

ギャスパー・ヴラディ。

 

212 名無しの悪魔

 

>>211

だが男である。

 

213 オカルト部部長

 

彼には同い年の紅髪の子がお似合いだと思うわ。

 

214 ポニーテール巫女

 

いえ、黒髪でちょっぴりSな女の子なんかがいいと思いますわ。

 

215 くのう

 

あにさまとけっこんするのはわたしじゃ

 

216 百均は至高にして究極

 

結婚しなくても一緒にいられる方法はあります。

 

217 魔王少女

 

ヒーローと結ばれるのはやっぱりヒロインだよね!

 

218 名無しの悪魔

 

おい、なんかいっぱい湧いて来たぞ。

 

219 ストマック総督

 

お前等・・・。

 

 

 

 

          以下、しばらくの間嫁論争が続く

 

 

 

329 名無しの悪魔

 

ようやく落ちついたみたいだな。

 

330 名無しの悪魔

 

いい勝負だった。掛け値なしに。

 

331 今北名無しの悪魔

 

なあ、ちょっと聞いて欲しい事があるんだがいいだろうか。もしかしたらフューリーのファンに叩かれまくるかもしれんが、それを覚悟してでも話がしたいんだ。

 

332 名無しの悪魔

 

>>331

穏やかじゃないな。

 

333 名無しの悪魔

 

>>331

俺は聞くぜ。

 

334 名無しの悪魔

 

>>331

覚悟してるならいいが、言い過ぎると正妻(笑)さん他が黙ってないから気をつけろよ?

 

335 正妻

 

あ?

 

336 偉大なるF様を崇める者

 

さて・・・特定の準備を進めければ。

 

337 名無しの悪魔

 

>>336

ひいぃ!?

 

338 名無しの悪魔

 

>>336

え・・・フューリー教・・・え?

 

339 名無しの悪魔

 

>>336

やべえ・・・やべえよ・・・

 

340 名無しの悪魔

 

おい、この場合>>331と>>334のどっちに黙とうすりゃいいんだ?

 

341 名無しの悪魔

 

どっちもでいいんじゃね?

 

342 名無しの悪魔

 

だな。よし、>>331と>>334に・・・黙とう!

 

343 名無しの悪魔

 

(-_-)

 

344 ロボット大好き

 

(-人-)

 

345 名無しの悪魔

 

(-人-)

 

346 気まぐれな黒猫

 

(-人-)

 

347 名無しの悪魔

 

(-人-)

 

348 折堆我

 

( ˘ω˘ )

 

349 末酒

 

お前等の事は忘れな( ˘ω˘ )スヤァ…

 

350 骸唖

 

>>348>>349

>>331と>>334に=͟͟͞͞( ˘ω˘)˘ω˘)˘ω˘)ジェットストリームスヤァ…をかけるぞ!

 

351 名無しの悪魔

 

>>350

お前、二巻まで既読済だな?

 

352 名無しの悪魔

 

>>348>>349>>350

寝んなww

 

 ( ・д・)彡☆))Д´)

     ⊂彡☆))Д´)

     ☆))Д´)

 

353 偉大なるF様を崇める者

 

話が進みませんのでお静かに

 

354 折堆我

 

ごめんなさい!

 

355末酒

 

ごめんなさい!

 

356骸唖

 

ごめんなさい!

 

357 名無しの悪魔

 

本日二度目の奇跡頂きましたww

 

358 今北名無しの悪魔

 

話す前からもう心が折れそうなんですがそれは・・・。ええっと、嫁論争の前にフューリーのスペックについて話しただろ?

 

359 名無しの悪魔

 

ああ、確かそんな流れだったよな。それがどうかしたのか?

 

360 名無しの悪魔

 

あれ、反応消えた?

 

361今北名無しの悪魔

 

長文失礼。鋼の勇者スレの方で話す内容とは違うと思ったからこっちの住人に聞いてみる。俺、まだ三巻までしか持ってないんだけど、いくら読んでも宇宙とか異世界とかそんな話はあっても、その時のフューリーが何歳とか書かれてない訳じゃん?んで、今のフューリーは二十にもなってない人間。・・・なあ、あの本の戦いって一体何年かかってるんだ? いつからフューリーは戦場に立ってるんだ? あれだけの戦争がたった一年や二年で終結するわけないし、あの強さを振るえるようになるまで数年なんてこと無いだろうし・・・六~七歳・・・へたすりゃそれよりも前の歳には戦場に立ってたんじゃないかと思うんだが・・・

 

362 ストマック総督

 

言われてみれば確かに。・・・しかし、あの規模の戦いをそんなガキの頃から?

 

363 名無しの悪魔

 

ものわかりが悪い俺の為に三行で頼む。

 

364 今北名無しの悪魔

 

あの戦いは何年かかったのか

フューリーは何歳から戦場に立ったのか

もしかしたら十にもなってなかったんじゃね? 以上

 

365 名無しの悪魔

 

おk、把握した

っておい、こうして言われるとあり得なくないか!?

 

366 名無しの悪魔

 

人間で十歳って・・・俺達からしたら子どもどころか精子レベルじゃねえか・・・。

 

367 名無しの悪魔

 

>>366

俺やお前がティッシュに向かって無駄に生命を消費している間に、フューリーは既に戦場にいたって言うのか?

 

368 気まぐれな黒猫

 

>>367

おい

 

369 ストマック総督

 

>>367

おい

 

370 オカルト部部長

 

>>367

ふーん・・・

 

371 ポニーテール巫女

 

>>367

アラアラ・・・ウフフ

 

372 魔王少女

 

>>367

ちょーっとおふざけが過ぎたかなぁ・・・

 

373 ファング

 

>>367

久しぶりだよ・・・ここまで神経を逆なでされたのは

 

374 悪のカリスマ(笑)

 

>>367

(#^ω^)ビキビキですぅ・・・

 

375 ロボット大好き

 

>>367

あなたは言ってはならない事を言った

 

376 生徒会長

 

>>367

この罪は許されるものではありません

 

377 くのう

 

>>367

あにさまへのぶじょくはわたしがゆるさんぞ!

 

378 天井を断つ剣

 

>>367

そこに直れ。私のデュランダルで始末してやる

 

379 ミカエル様のエース

 

>>367

今なら特大の光をぶつけられそうだわ

 

380 百均は至高にして究極

 

>>367

北欧式フルバースト魔法もお付けしますよ

 

381 三日月

 

>>367

我が好敵手足り得る男への侮辱・・・許せるものではないな

 

382 せきりゅーてー

 

>>367

テメエは俺を怒らせた

 

383 苦労人な白猫

 

>>367

最低ですね

 

384 燃えるフェニックス

 

>>367

燃やしてやる。一片の慈悲も無く、骨すら残さず燃やしつくしてやるぞ貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 

385 救われた堕天使

 

>>367

殺すわよ?

 

386 名無しの悪魔

 

oh・・・

 

387 名無しの悪魔

 

やべえ・・・こいつはやべえよぉ・・・

 

388 名無しの悪魔

 

いつの間にか嫁議論連中が戻って来てる・・・

 

389 名無しの悪魔

 

掘られ隊が空気を読むレベル。・・・そして一番ヤバそうなあの二人が何も言ってないのは何でだ?

 

390 名無しの悪魔

 

まさか・・・

 

391 名無しの悪魔

 

>>367

逃げて! 今すぐ超逃げて!

 

392 名無しの悪魔

 

だ、大丈夫大丈夫。ってあれ、こんな時間に客か? ちょっと応対してくるから消えるなノシ

 

393 名無しの悪魔

 

>>392

いくなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 

394 名無しの悪魔

 

>>392

お前の犠牲を胸に、俺達は前に進む。さあ>>364、>>392の為にも続きを

 

395 今北名無しの悪魔

 

冷静に促す>>394が怖い。とにかく、そんな小さい頃から戦争に参加していたら精神に異常をきたしたっておかしくないのに、なんで今のフューリーはあんな人格者でいられるのか。あの揺るがない精神も異常スペックに加えても違和感無いと思うんだ。

 

396 名無しの悪魔

 

人間であろうと悪魔であろうと、子どもっていうのはかけがえの無い宝だろうに。何で周りのヤツ等は代わってやろうとしなかったんだよ。

 

397 名無しの悪魔

 

禿同。他にも指揮官いたみたいだし。わざわざ総司令官なんざ必要無いだろ。しかも、幼い子どもを・・・。

 

398 名無しの悪魔

 

そいつ等があまりにも無能だったからとか?

 

399 名無しの悪魔

 

それか、フューリーの指揮能力が滅茶苦茶凄かったとか? じゃないと子どもに総司令官なんか任せないだろうし。

 

400 名無しの悪魔

 

フューリーの世界って色んな侵略者に襲われてたんだろ? なら、女子ども関係なしに戦場に立たないといけなったんじゃねえの。

 

401 名無しの悪魔

 

>>400

最初からあんな風に戦えてたと思うのか?

 

402 名無しの悪魔

 

あ、確かに。フューリーだって最初は普通の子どもだったかもしれないしな。

 

403 名無しの悪魔

 

普通じゃなかったとしたら・・・?

 

404 名無しの悪魔

 

>>403

どういう意味だ?

 

405 名無しの悪魔

 

>>339が指揮能力云々について言ってたが・・・最初からそのつもりで教育されていたとしたら? いや、教育ならまだいい。下手したら、その為に“作成”されたのかもしれんぞ

 

406 名無しの悪魔

 

それって・・・!?

 

407 ストマック総督

 

所謂デザイナーベビーってヤツか・・・。

 

408 名無しの悪魔

 

そして、仲間達もほとんど未成年だった事に気づく俺。

 

409 名無しの悪魔

 

そうなると、鋼の救世主の意味も変わって来るぞ。

 

410 名無しの悪魔

 

ああ。そうなると、彼等は大人達の我が身可愛さによって結成されたって事だよな・・・。

 

411 名無しの悪魔

 

けど、大人達も結構いたろ?

 

412 名無しの悪魔

 

多分、あの大人達は子どもを戦場に立たせる事に異議を唱えたんじゃないか? そしたらお偉方が「そんなに心配なら傍で見守ってやったらどうだ」とか言って送り込んだのかもしれないとしたら・・・。

 

413 名無しの悪魔

 

あの世界の上層部死ね!

 

414 名無しの悪魔

 

死ね! 氏ねじゃなくて死ね!

 

415 名無しの悪魔

 

子どもの小さな背中に世界を背負わせて自分達は傍観とかクズ以下じゃねえか!

 

416 正妻

 

それでもフューリー様は幼き頃から戦い続けていたのですね。名前も、顔も知らない。一生縁のないであろう人々の為に。・・・妬ましいわ。

 

417 名無しの悪魔

 

>>416

お帰りなさい。何をしてたかはあえて聞きません

 

418 名無しの悪魔

 

>>416

もうあなたがレヴィアタン(嫉妬)名乗ったらどうですか? ・・・けど、本当によく戦い続けられたよな。テロリスト達との戦いの時、元の世界では相当な絶望を味わって来たって言ってたよな?

 

419 名無しの悪魔

 

なんて言ってたっけ?

 

420 名無しの悪魔

 

いま録画してヤツをチェックした。纏めると

 

成す術も無く味方が死んでいくのを黙って見ている事しか出来なかった

敵に対し、決死の思い(多分命を捨てるくらい)で放った攻撃が無駄に終わった

多くの仲間達と協力してようやく倒せる様な化物が目の前で増えた

 

こんな感じ。

 

421 名無しの悪魔

 

>>420

おかげで思い出した。確か、皇帝機とかいう相手に啖呵切った時だよな

 

422 名無しの悪魔

 

>>420

ダメだ。俺じゃ想像すら出来ねえ。・・・ところで、>>395が言いたかったのはそれだけ?

 

423 今北名無しの悪魔

 

まだある。『鋼の救世主』を読んだらわかるけど、敵味方が入り乱れる戦場で味方や敵の言葉一つ一つを憶えている記憶力。その所為で、救えなかった者、喪ってしまった者の最期も憶えているはずなのに、それでも壊れずに立ち上がり続けた意志。それと、これは異常性とは違うけど、フューリーはどのタイミングでこっちに来たのかって事。・・・なんか、一個一個書く度にSAN値がゴリゴリ削れていくのを感じる

 

424 名無しの悪魔

 

つまり・・・どういう事?

 

425 名無しの悪魔

 

レーティングゲームに置き換えてみるとわかりやすいぞ。これを見ているヤツの中でゲームしてるヤツに聞くが、通信機等で味方の声が聞こえたとしても、『王』以外の味方の声を全部聞きとれるか?

 

426 名無しの悪魔

 

無理

 

427 名無しの悪魔

 

無理

 

428 名無しの悪魔

 

同じく無理

 

429 名無しの悪魔

 

俺も無理だ。というか、『戦車』の俺はショートレンジで相手とやり合っている時は『王』の声ですら微妙な時がある

 

430 名無しの悪魔

 

>>429

お仲間がいた。俺もそんな感じだ

 

431 名無しの悪魔

 

なるほど。確かにそれは異常だな。けど、最後のタイミングってなんだ?

 

432 名無しの悪魔

 

俺達、あの世界の戦争が終わった事を前提に話してるけど、もしまだ戦時中だったとしたら? ひょっとしたらフューリーが言った絶望との戦いの最中にこっちに来てたとしたら?

 

433 名無しの悪魔

 

ファッ!?

 

434 ストマック総督

 

その可能性も無い事は無いだろうが、それならアイツはこっちの世界の事なんか放ってすぐに戻・・・いや、待てよ。そういや、自分の意思でこの世界に来たわけじゃない様な事を言っていた様な・・・

 

435 今北名無しの悪魔

 

だとしたら、ようやく手にした平穏を味わう事も無く、いきなり二天龍との戦いに巻き込まれたとも考えられる

 

436 気まぐれな黒猫

 

そっか・・・。だから、ご主人様はあんな夢を。・・・平凡なんてものじゃない。ご主人様にとっては、本当に心からの夢だったんだ・・・。

 

437 名無しの悪魔

 

しんみりムードの中でもう一個放りこませてくれ。フューリーって元々総司令官だったんだろ? それなのに、なんであんな滅茶苦茶強くなったんだ?

 

438 名無しの悪魔

 

・・・おい、今俺の頭の中で全部がガッチリハマったんだが。

 

439 名無しの悪魔

 

>>438

言ってみろ

 

440 名無しの悪魔

 

総司令官として、多くの仲間が散って行くのを見ている事しか出来なかった。だから、これ以上仲間を死なせない為に、力をつけようとした。>>361で言われてたけど、あの強さは数年で身につけられるようなものじゃない。なら、フューリーは司令官としての務めを果たしながら、陰で血のにじむ様な努力を重ねてたんじゃないのか

 

441 名無しの悪魔

 

>>440

ちょ、ちょっと待てよ。でも『鋼の救世主』にはそんな事一言も書いて無かったじゃん。

 

442 ストマック総督

 

あのお人好し馬鹿がそういう事をひけらかすものかよ。上に立つ者では出来なかった事を成し遂げる為に、アイツはあの力を・・・

 

443 名無しの悪魔

 

・・・もうさ、英雄とか救世主とか、そういうレベルじゃないよな。誰か、こういう場合に相応しい呼び名を教えてくれよ

 

444 名無しの悪魔

 

悪い、俺には思いつかない・・・

 

445 名無しの悪魔

 

>>443

俺も知りたい。あとさ、救ってもらった悪魔である俺なんかがこういう事言える資格無いってわかってるけど、この世界でこれ以上フューリーに戦わせるのって良くないと思う。いいじゃん。もう十分過ぎるほど頑張ったんだからさ、これからは平穏に楽しく生きたって。送るべき青春が戦いだけだったなんてあまりにもむごすぎるだろ・・・

 

446 名無しの悪魔

 

>>445

あれ、おかしいな。画面が滲んでよく見えない・・・

 

447 名無しの悪魔

 

決めた。俺は一生フューリーを応援する!

 

448 名無しの悪魔

 

俺も!

 

449 気まぐれな黒猫

 

ゴメン。ちょっと落ちるね。なんだかわからないけど、ご主人様を抱きしめたくてたまらないの

 

450 名無しの悪魔

 

行ってらっしゃい黒猫さん

 

451 名無しの悪魔

 

俺が許す!

 

452 名無しの悪魔

 

私の分まで癒してあげて!

 

 

          以下、黒猫が戻るまで誰も書きこみをせず




流石に1000まで書くのは無理でした。スレってこんな感じでよかったですか?
けど、書いててめっちゃ楽しかったです。また時間がある時に書こうと思います。
その前に本編をちゃんと進めないといけませんが。


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IF
もしも騎士(笑)がスパロボ世界に転生したら


D×D小説執筆中の2代目パソコンが逝ってしまったのでむしゃくしゃして書いた。短編なんで設定やらなんやらもう滅茶苦茶なんで注意。




『なあ、アンタ。別の世界に興味あらへん?』

 

 明くる日の朝、唐突にオカンからそんな連絡が入った。どういう意味ですか?

 

『いや、アンタはウチの勘違いでその世界に行くことになったやろ。楽しそうに暮らしてくれとるからええんやけど、その勘違いがなかったら今頃どんな風に過ごしとるんやろうかなって……』

 

 まだ気にしてたんですか? すでに謝罪してもらってますし、俺は気にしてません。むしろ感謝してるくらいですから。

 

『ありがとな。けどウチ、こういうの一度気にしだしたら収まらんのよ。せやから、どうやろ。今回は転生なんて大げさなもんやなくて、アンタの“もしも”を体験してみいひん?もちろん、こっちの世界に影響は無いから安心してくれてええで』

 

 なんかいつも以上にぐいぐい来るなぁ。けど、そうだな……ここまで言ってもらえてるんだし、ちょっとだけ体験してみるのもいいかもな。

 

『よっしゃ! そういう事ならさっそく始めよか! さっきも言うたけど、体験が終わったらちゃんとこっちの世界の今の時間に戻したるから安心しいや』

 

 わかりました。ところで、体験時間はどれくらいですかね?

 

『そうやな……向こうで天寿を全うする程度や』

 

 ああ、なるほ……え?

 

『ほな、行ってら~~』

 

 ちょ、ま、それ長すぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!

 

………

 

……

 

 

「……真。亮真」

 

「っ……!?」

 

 気づいたら目の前にナイスミドルなおじさまの顔があった。え、何これどういう状況!?

 

「はは、緊張しているのか。大丈夫だ。今回の謁見はシャナ=ミア様からのご希望だ。お前ならばきっと仲良くできるはずだ」

 

 ふむふむ、どうやら俺はこのおじさまと一緒に今からシャナ=ミア様という人に会いに行くみたいだな。……はて、シャナ=ミア? シャナ=ミアってもしかしなくてもあの……。

 

「エ=セルダ・シューン。息子、リョウ=マ・シューンを伴い参上した。皇女様に取次ぎを」

 

「はっ!」

 

 気づいたら巨大な扉の前にたどり着いていた。剣を持った男性が中に入り、しばらくして戻ってきた。

 

「どうぞ。シャナ=ミア様。アル=ヴァン様がお待ちです」

 

「うむ」

 

 ……もう疑いようないなこれ。シャナ=ミア。エ=セルダ。そして先生(アル=ヴァン)

この名前から導かれる答えは一つしかない。

 

 開かれた扉の向こう。美しい花に囲まれた庭園のような場所にその二人はいた。

 

―――椅子に座り、こちらを見てふわりと微笑む少女。

 

―――少女の背後に立ち、鋭い視線を向けてくる騎士然とした男性。

 

 間違いなく初対面。けれど見覚えのあるその顔を見て俺は心の中でつぶやいた。

 

(あ、J世界だわこれ……)

 

 しかも、状況から察するに俺、統夜ポジじゃん。なのに名前亮真なんですけど。あれか、本名プレイか。誰だこんな設定にしたの。

 

『ふふーん』

 

 いや、うん、まああの人だな。それ以外考えられんわ。

 

「待っていましたよエ=セルダ」

 

「申し訳ありません。シャナ=ミア様。どうも息子が緊張しているようでして」

 

「まあ! うふふ、そんなに緊張されなくてもいいのに」

 

「この場所に来てからそわそわと落ち着かないご様子だったのはどなたでしたかな」

 

 笑顔の少女に背後の男性も笑いながらそうツッコむ。すると見る見るうちに少女の顔が赤らんだ。

 

「も、もうお従兄様!」

 

「シャナ=ミア様。私の事はアル=ヴァンと」

 

「いいのです。ここには私たちしかいないのですから」

 

「しかし……」

 

「ははは! シャナ=ミア様がこうおっしゃっているのだ。いいではないかアル=ヴァン

 

「……仕方ありませんね」

 

「と、ところで、そちらの方が……」

 

「ええ。リョウ=マ。皇女様に挨拶しなさい」

 

ええ……。皇女様に挨拶なんてハードル高すぎでしょう。仕方ない。向こうで培った騎士ムーブで乗り切ってやる。

 

(そう! 俺は騎士! 目の前の皇女様に使える最高の騎士!)

 

俺は少女の前で片足立ちとなり、そっと彼女の手を取った。

 

「え……」

 

「うん……」

 

「ほう……」

 

 固まる皇女様。目を丸くするおじさま。興味深そうな男性。三者三様の反応を見せる中、俺は口を開いた。

 

「……私のような者にこうして尊き方のお顔を拝見する機会を頂き、この亮真、望外の喜びに打ち震えております。これ以上を望める身ではありませんが、もしもお慈悲を頂けるのならば、皇女様のお名前を口にするお許しを頂ければと存じます」

 

 よし、満点とは言えないだろうが、それっぽく出来たぞ。あの人曰く「フューリーさん、最後に手の甲にキスすれば完璧だよ!」らしいが、僕にそんな度胸はありません。

 

「……」

 

「シャナ=ミア様?」

 

「え? あ、は、はい! ゆ、許します!」

 

 なんかポヤポヤしてた少女が男性に促されて慌てて頷いてきた。うーん、あれでもまだ及第点じゃなかったんだろうか……。

 

 まあ、失敗してしまったのなら仕方ない。それより許可もらったんだし呼ばないと失礼だな。

 

「ありがとうございます、シャナ=ミア様。私の事は亮真とお呼び下さい」

 

「は、はい、リョウ=マ……」

 

 こうして、俺は少女……シャナ=ミアちゃんの名前を呼べるようになりましたとさ。……ところで、彼女の声は初めて聞いたわけだが、なんだろう……女の子なのに「オッス!」って言わせたい気がする。

 

「さすが、エ=セルダ殿のご子息ですね。この幼さで既に騎士としての立ち振る舞いを覚えているとは」

 

「いや、私も教えた覚えはないのだが。亮真、お前どこでそんな挨拶を覚えたのだ?」

 

 え? あー、やべえ。とりあえずごまかさないと。

 

「ネットで昔の騎士の立ち振る舞いを調べたんだよ。それからひたすら反復練習しただけさ」

 

「そうか。そういえば確か最近PCを買ったばかりだったな。早速活用していたわけか」

 

「付け焼刃だけどね。一杯一杯だったよ」

 

「そんな事はない。見事な挨拶だったよ」

 

「ありがとうございます。先生にそう言ってもらえると嬉しいです」

 

「先生?」

 

「あ、す、すみません。俺のお世話になってる人に似ていたもので」

 

「そういう事か。何、気にしていないさ。私の事はアル=ヴァンでいいが……なぜだろうな、キミにそう呼ばれる事を喜んでいる自分がいる」

 

 流石、先生の優しさは天井知らずやでぇ。

 

「リ、リョウ=マ。お従兄様とばかりではなく、私ともお話しましょう」

 

「ああ、失礼しましたシャナ=ミア様」

 

「さ、様はつけなくていいですから。ほら、あちらに私のお気に入りのお花があるんです。見に行きましょう」

 

 俺の手を引き走り出すシャナ=ミアちゃん。ああ、そんなに慌てたらこけちゃうぞ。

 

「早速仲良くなったようで何よりだ」

 

「ええ。ですが、リョウ=マ君は将来苦労しそうですね」

 

「どういう意味だアル=ヴァン?」

 

「主に女性関係で。……結婚される前のあなたの様に」

 

 その場から去った俺達の背後でそんな会話がされている事に俺は気づかなかった。

 

………

 

……

 

 

さて、そんな出会いから数年が経った。ここまでくるとオカンが言っていた天寿を全うするまでが現実味を帯びてきたが、ここまで来るともう受け入れるしかない。

 

結局、シャナ=ミアちゃんと先生に会えたのはあれが最初で最後だった。そして、それからは俺の予想通りの日々が待ち受けていた。

 

まず、エ=セルダ……父さん(色々抵抗があったがようやく呼べるようになった)が俺の前から姿を消した。覚悟していたがやっぱりショックはでかい。俺は二人目の父親を失った……はずなのだが、不思議な事に生活費がずっと振り込まれ続けている。確か、統夜は遺産で生活していたはずなのにこの違いは何だろう。生きていてくれているのならばこんなに嬉しい事はないが……。

 

次に、この世界の情勢だが、Dr.ヘルだったりオルファンだったりとこちらに乖離はなさそうだった。物騒なのは物騒だが、そんな連中から人々を守る正義の味方達のおかげで割と平和に暮らせている。

 

そして、俺は成長し、高校生となった。……のだが、ここでも予想外の出来事が俺を待っていた。

 

「亮真先輩! 卒業おめでとうございます!」

 

「これ、私達からです」

 

「花のチョイスはオレ様とさやかでやったんだぜ!」

 

「ありがとう、()()()()()()()()

 

 花束を受け取った俺を満面の笑みで見つめてくる三人。左から兜 甲児君。弓 さやかさん。そしてボス君。改めて説明する必要も無いが、Dr.ヘルの機械獣から日本を守ってくれる鉄の城「マジンガーZ」のパイロットとその仲間達だ。そんでもって、本来ならば俺は彼らと同級生になるはずだったのだが……どういうわけか先輩となってしまっていた。シャナ=ミアちゃんが年下っぽかった時点で気づくべきだったが、どうも本来の年齢から二歳上になっているようだった。まさか、こっちでも“先輩”になるとは思わなかったよ……。

 

「やけにセンスのいい花束だな。ホントにボスが選んだのか?」

 

「ふっふっふ。花屋でバイトした経験が活きたぜ。他でもねえ先輩のためだ。オレ様のセンス全開で選んだんだ、間違いはねえ!」

 

「ああ、本当にきれいだよボス君」

 

「へへ、アンタに喜んで貰えたんなら何よりだぜ」

 

「先輩、卒業してもいつでも会いに来てくださいよ!」

 

「研究所に来てくれたらいつでも歓迎しますから!」

 

「ありがとう。必ずお邪魔させてもらうよ」

 

 三人と別れ、級友たちとも挨拶を交わした後、俺は帰路についた。道すがら、兜君たちの事を思い出す。一年しか交流できなかったけど、みんないい子たちだった。

 

 (彼等が進級する四月以降、始まるのはそこからか……)

 

 多分、トリガーとなる“夢”をそろそろ見る事になるだろう。“彼女”が俺に向けて送るメッセージ。全てが動き出すその時が……。

 

………

 

……

 

 

―――許して…どうか許してください…。

 

(来た……)

 

 卒業式から二週間後、俺の目の前に祈りを捧げる“彼女”がいた。

 

―――もう私には止めることができない。私には止められないのです。滅びるべきは私達、立ち去るべきは私達。この世界はあなたがた子ども達のものなのに。待ち続けた永き刻のその暗闇の冷たさがすべてを狂わせてしまった。どうか…力なき私を許してください。

 

 ここで見ているだけ……というわけにはいかんな。というわけで突貫します!

 

「シャナ=ミアちゃん」

 

「ッ……!」

 

 恐る恐るといった様子で顔を上げるシャナ=ミアちゃん。そして俺を確認するとその目を大きく見開いた。

 

「リョウ=マ……リョウ=マなのですか?」

 

「何年振りだろう。大きくなったね」

 

「リョウ=マ!」

 

 弾かれる様に駆け出したシャナ=ミアちゃんがそのまま俺の胸に飛び込んできた。

 

「リョウ=マ! ああ、リョウ=マ! 会いたかった! ずっとあなたに会いたかった!」

 

「シャナ=ミアちゃん。ここは? 俺は夢を見ているのか?」

 

「ええ、ここはあなたの夢の中です。サイトロンの力でこうして直接あなたの元へ私の意思を届けに来ているのです。あなたに……あなた達の住む星の皆さんに危機を伝えるために」

 

 あー、やっぱり絶望総代さん動き出しちゃったか。死んでいった人達に報いたいっていう気持ちは素晴らしいけど目的と手段がごっちゃになってんだよなあの人……。

 

「名ばかりの皇女となってしまった私にはもう彼等を止められません。同胞達の想いを果たしたい。ですが、その為にこの星に住む人々を害していい理由にはならないというのに……」

 

 涙を滲ませるシャナ=ミアちゃん。俺はそんな彼女の涙を拭……わずに、そのやわらかいほっぺをムニっと掴んだ。

 

「ふえっ? リ、リョウ=マ?」

 

「シャナ=ミアちゃん。何を悩んでいるか知らないが、あの時、交わした約束を忘れたのか?」

 

「約……束……?」

 

 庭園で二人きりになった時、シャナ=ミアちゃんは俺にこう言った。「将来、私の騎士になってくれませんか。私の傍で私を助けてくれませんか」と。

 

「……あの時、あなたは騎士になれるかどうかわからないからと言いましたね」

 

「けれど、こうも言ったはずだ。騎士としては無理かもしれないけど、友人としてならばいつでも力になるって」

 

「友……として?」

 

「ああ。きっと父さんもその為に俺達を合わせたんだと思うんだ」

 

 父さんが言っていたきっと仲良くなれるというのはきっとそういう期待を込めて言った言葉だと俺は思う。

 

「詳しい事情はわからないけど。キミが困っているのならば……俺は全力でキミの力になるよ」

 

「リョウ=マ……」

 

 シャナ=ミアちゃんはぼうっと俺の顔を見つめた後、決意したかの様に頷いた。

 

「……ありがとうございます。私も決心がつきました。リョウ=マ。あなたの力を私に貸してください」

 

「ああ」

 

 周囲の景色がゆがみ始める。そろそろこの夢から覚める時間のようだ。

 

「リョウ=マ! 私は……私はいつでもあなたを想っています!」

 

………

 

……

 

 

 その日、俺は久しぶりに高校への道を歩いていた。周囲には制服を着た子達の姿も見える。

 

「ほら急ぎなさい! もうチャイムが鳴るわよ!」

 

 校門前に立つ先生が生徒達を促す。懐かしい顔に俺もついそちらへ足を向ける。

 

「おはようございます神楽坂先生」

 

「え? あ、あら、ひょっとして紫雲君!?」

 

「はい、お久しぶりです」

 

「ええ、ホントに! 今日はどうしたの? 学校に用事?」

 

「いえ、先生の顔が見えたんで挨拶をと思いまして」

 

「ふふ、礼儀正しさは変わっていないわね。……あの子達にキミの爪の垢を煎じて飲ませてあげ……」

 

 先生が玄関の方へ視線を向けようとしたその瞬間、突如として警報が鳴り響いた。

 

「な、何!? 空襲警報!?」

 

「伏せてください先生!」

 

 先生を抱きかかえて地面に伏せる。数舜後、凄まじい轟音と振動が俺達を襲った。完全に収まった頃を見計らい上体を起こす。先生は……よかった、気絶しているけど怪我は無さそうだ。

 

「まずは先生を避難させないと」

 

 確か学校のすぐ近くにシェルターがあったはずだ。俺は先生を抱きかかえ、全力で足を動かした。

 

「ロケットパーンチ!」

 

 勇ましい声の方へ眼を向けると、そこには鉄のスーパーロボットの姿があった。その雄姿を背後にひたすらシェルターへの道を進む。

 

「し、紫雲先輩!?」

 

シェルター内に飛び込むと、制服をまとった少女が俺見て叫んだ。俺も彼女の事は知っているのでその名前を呼ぶ。

 

「千鳥さん。すまない、この人を頼む」

 

「え? あ、神楽坂先生!?」

 

「気絶しているだけだから横にしておいてあげてくれ」

 

「って、先輩はどこに行くんですか!?」

 

「ちょっと確かめないといけないものがあるんだ」

 

 千鳥さんに先生を任せ。俺は学校に戻った。先ほどの落下物……“彼女達”の乗ったロボットがそこにはいるはず。

 

 さて、果たしてどの機体なんだろう。グランティード? クストウェル? ベルゼルート? それともまさかのヴォルレント?

 

「……ファッ?」

 

 んん? 見間違いか? ええっと、目をこすってもう一度……。

 

「……えぇ……」

 

 なぁんで()()()()()()()が片膝立ちしてるんですかねぇ……。いや、別におかしくはないけど、キミ、出てくるのもっと後じゃん……。

 

 予想だにしない機体の姿に目を見開く俺をさらなる衝撃が襲う。コクピット部分が開いた事でパイロットの姿が見える事が出来たのだが、そこにいたのは……。

 

「ぐ、うう……」

 

「父さん……?」

 

 苦悶の表情を見せ、脇腹を真っ赤に染めたその人物は……俺の父、エ=セルダだった。

 

 衝撃はさらに続く。父さんの横から顔を覗かせたのは……。

 

「エ=セルダ! 大丈夫ですかエ=セルダ!?」

 

「シャナ=ミアちゃん……!?」

 

 皇女様!? 皇女様ナンデ!? 本来いないはずの二人の姿に動けない俺を尻目に父さんの背後から少女達が顔を覗かせる。

 

「こんなところに落ちちゃって大丈夫なの!?」

 

「メルア、オルゴン・エクストラクターは?」

 

「大丈夫、安定しています」

 

「ならば、急いでこの場を離れなくては……ぐっ」

 

「エ=セルダ! ですがその傷では……!」

 

「この程度で参るほど軟な鍛え方はしておりません。今はとにかく一刻も早く奴らから離れ、亮真の元へ向かわなければ」

 

「いや、俺ならここにいるんだが」

 

「「「「「え?」」」」」

 

 五人の表情が一斉にこちらに向けられる。一瞬呆けた様子の父さんがいの一番に正気に戻って俺の名を呼んだ。

 

「り、亮真!? なぜここに!?」

 

 それはこっちのセリフじゃい! いや、生きてくれてたのは超うれしいけどさ!

 

「ッ! ダメ! あの人達が来ます!」

 

金髪の女の子が叫ぶ。父さんは何かを決めたように頷いた。

 

「亮真。色々聞きたい事があるだろう。後で必ず話す。だから今は黙ってこの機体に乗るのだ」

 

「わかった」

 

 秒で頷くと、父さんはなぜか目を丸くした。

 

「どうしたんだ父さん?」

 

「いや、即答してくれるとは思えなかったからな」

 

「状況が状況だしな。それに、シャナ=ミアちゃんがいるという事は()()()()()なんだろう? なら、俺は俺に出来る事をやるさ」

 

「リョウ=マ……」

 

「あの……」

 

「三人とも、これが私の息子だ。サポートを頼む」

 

「彼が……」

 

「ですが、この人数で戦闘は……」

 

「そうだな。では私とシャナ=ミア様とカティア、そしてメルアはここで待機。テニア、任せてもいいかな?」

 

「わ、わかった!」

 

「急ごう。もう時間がない」

 

降りてくる四人と入れ変わるようにコックピットへ向かう。……その前に。

 

「ちょっと待ってくれ父さん」

 

 脇腹に向かって「信頼」をかける。

 

「これは……!? 亮真、今のは……!?」

 

「軽いまじないだ。さあ、早く離れてくれ」

 

「リョウ=マ。必ず、必ず無事に帰って来てくださいね!」

 

 四人が離れるのを見届けてハッチを閉める。眼前のモニターの向こうでマジンガーZが機械獣相手に大暴れしているのが確認できる。

 

「流石、兜君だな」

 

「ね、ねえ、亮真……でいいんだよね?」

 

 複座の方から恐る恐るといった感じの声が届く。務めて明るい声で俺も返事をした。

 

「ああ、よろしく。ええっと……」

 

「フェステニア・ミューズ」

 

「ありがとうミューズさん」

 

「テ、テニアでいいよ。それで、その。怖くないの? いきなりこんなロボットに乗せられて」

 

 まあ、オカンのおかげでちょっとやそっとじゃ動じませんからね。いやうん、あっちの世界でもだけどホントにありがたいわ。オカンがいなけりゃ多分初期の統夜以上にテンパってたと思うし。

 

 ところで、この子こんなにおどおどした性格だったっけ。むしろ「怖いの? 怖くないなら乗れるでしょ」くらい言いそうだけど。

 

 ひょっとして、いきなり俺みたいなヤツに操縦させるのが不安なんじゃないだろうか。そりゃあ父さんに比べたら頼りなさそうに見えるかもしれんけど、俺も生半可な気持ちでここにいるわけじゃないよ?

 

「……安心してくれテニアちゃん」

 

「え?」

 

「何も知らないまま死ぬつもりはない。それに、震えている女の子一人守れないような情けない男に成り果てるつもりもないさ」

 

 ちょっと大げさだったかな。けど、効果はあったようだ。テニアちゃんの震えが少し収まったように見えた。

 

「ふ、ふんだ。カッコつけちゃってさ……あれ」

 

「どうした?」

 

「サイトロン・コントロールのリンゲージが……70……83……すごい、おじさんを超えてる……!」

 

(何かわからんがとにかくよし!)

 

 グリップを握る。……大丈夫。俺とラフトクランズは一心同体。そう、俺の手足も同然!

 

「ッ……来るよ、亮真! 十一時方向に三機!」

 

ラフトクランズを立ち上がらせると同時にテニアちゃんが警告を発する。十一時……あっちか。

 

突如として空間がゆがみ、そこから三体のロボットが現れた。左右に黒いリュンピーを従え中央に滞空するのは……ラフトクランズだった。

 

「―――見つけたぞ、エ=セルダ」

 

 ッ!? な、なんだこの島田兵にシリアスと外道をたっぷりミックスしたような声は!?

 

「流石は禁士長。しぶとさも一級品というわけか。だが、もはや逃げ場はない。グ=ランドン総代に代わり、謀士長カロ=ラン・ヴイが貴様を始末する」

 

(誰だお前は!?)

 

 待て待て待て待て。マジで待って。カロ=ラン!? 誰よカロ=ランって!? あと謀士長って何よ!?

 

「気を付けて亮真! アイツ、不意打ちでおじさんを……!」

 

 聞いた事もない名前に慌てる気持ちが一瞬で凪ぐ。……ほお。そうかそうか、父さんのあの傷はあなたの仕業というわけですな。

 

「ん? エ=セルダではないのか? 何者だ、貴様」

 

「……紫雲 亮真。エ=セルダの息子だ」

 

「息子だと? ふ、死んだか、エ=セルダ」

 

 生きてますけどね。まあ、それをテメエに教える義理はねえけど。

 

「ならば亮真とやら。皇女はどこにいる?」

 

「それを知ってどうするつもりだ?」

 

「私は謀反人から皇女を取り戻すために追ってきたのだ。……最も、帰還中に不慮の事故に遭われてしまうかもしれんがな」

 

 シャナ=ミアちゃんがいなくなって大騒ぎになるのはわかるけど、それならこいつじゃなくて先生あたりが追ってきそうだけど……なるほど、どうして代わりにこんな胡散臭い輩が追ってきたのかわかった。この野郎、最初から父さんとシャナ=ミアちゃん殺すつもりで来たな。

 

「ついでにその機体も返してもらおう。量産型や騎士のものとは違い、その禁士長専用のラフトクランズは特別性なのでな」

 

「断る」

 

「……何?」

 

「断ると言ったんだ卑怯者。この機体もシャナ=ミアちゃんも貴様には渡さん。俺は父さんの息子として、そして彼女の友人として貴様を止める」

 

 もう話すことは何もない。ただ全力でこいつらをぶちのめす!

 

「所詮、愚か者の息子か。……やれ」

 

 二体のリュンピーが指示と同時に高速でこちらに向かって迫ってくる。それを正面に見据えながら俺は大きく深呼吸をした。

 

「来るよ、亮真!」

 

「テニアちゃん。少しばかり乱暴に動かすけど許してほしい」

 

「え?」

 

 さあ、行くぞ相棒!

 

SIDE OUT

 

 

テニアSIDE

 

「テニアちゃん。少しばかり乱暴に動かすけど許してほしい」

 

「え?」

 

 そう謝罪してくる亮真に聞き返そうとした次の瞬間、私はその言葉の意味を身を以て知る事になった。

 

「ッ~~~~~!?」

 

 あろうことか、亮真はいきなりブースターをフルスロットルにして敵機……リュンピーに向けて突撃を始めた。瞬く間に縮まる両者の距離が0になろうとしたその瞬間……。

 

「遅いっ!」

 

 ラフトクランズの武器の一つ「オルゴンソード」を抜くと同時に一機のリュンピーに向かって振りぬく亮真。そのまま勢いを殺さずに大きく旋回をする。

 

「は、外れた!?」

 

 斬ったはずのリュンピーは未だに健在だった。そして、そのリュンピーが照準をこちらに向けようとしたその瞬間、敵機の四肢が一斉に切断され地面へ落ちていった。

 

(嘘!? 一回しか斬ってないはずなのに!?)

 

 それが高速すぎて視認できなかったのだと私は後で知る事となるのだった。

 

「お、おのれ!」

 

「突っ込むぞ」

 

 ライフルを連射するもう一機に対し、亮真は「オルゴンクロ―」をシールドモードにして攻撃を防ぎながら再び距離を詰め、今度はシールドからクローモードに移行して相手の頭部を掴むとあっという間に破壊してしまった。

 

「失せろ」

 

 カメラが壊されたからか動きが止まったリュンピーに見事な踵落としが決まる。先に倒されたもう一機と共に地面に転がるリュンピーを視界に収めようとしたその時、目の前のモニターがゆがんだと思ったら、目の前にはカロ=ランの機体の背中があった。

 

「何っ……!?」

 

「……なるほど、そうやって父さんの背中を撃ったわけか」

 

慌てて距離を取るカロ=ランに対し、亮真は嘲る様に指摘する。

 

「え……え……?」

 

「テニアちゃん、ヤツは今俺達の背後から砲撃して来たんだ。それをオルゴン・クラウドを利用して回避ついでに背後に回ったんだよ」

 

「そ、そうなんだ……」

 

 対して優しい声色で私に説明してくれる亮真。

 

「馬鹿な……。オルゴン・クラウドを使いこなすなど、搭乗したばかりの貴様に出来るはずが……!」

 

「馬鹿はアンタでしょ。実際亮真はそれを使ってアンタを出し抜いたんだから」

 

「なっ……!?」

 

 何だろう。亮真が馬鹿にされるのが妙にイラつくからつい割り込んでしまった。

 

「ありがとう、テニアちゃん。少しすっきりしたよ」

 

「べ、別に。私がそう思っただけだもん。それより、来るよ!」

 

 カロ=ランの機体が動き始める。こっちと違って向こうのラフトクランズは両腕にオルゴンクロ―が装着されている。あれがメインウエポンなんだろう。

 

「貴様は危険だ。我等の脅威となる前にここで確実に殺す!」

 

「それはこちらのセリフだ。シャナ=ミアちゃんのためにもお前はここで倒す」

 

「ほざけ、謀士でありながらラフトクランズを与えられた私に、バスカー・モードすら発動出来ない貴様が敵うと思うたか!」

 

 バスカー……モード?

 

テニアSIDE OUT

 

 

IN SIDE

 

「ほざけ、謀士でありながらラフトクランズを与えられた私に、バスカー・モードすら発動出来ない貴様が敵うと思うたか!」

 

 ああ、はいはい。そうやって聞きなれない言葉を吐けばこっちが動揺するとか思うなよ。ラフトクランズでモードっつったら……Fモードの事だろ。うわ、ひょっとして自分だけの特別な名前でも付けてんのかこいつ。

 

 上等だ。お前がそういうノリを押し付けてくるんならこっちだって乗せられてやるよ。行くぞ! 気合い入れろよ俺!

 

「黙れ!」

 

SIDE OUT

 

 

シャナ=ミアSIDE

 

リョウ=マとカロ=ランの戦いは佳境を迎えていた。対峙する二機を遠目に、私はただリョウ=マとテニアの無事を祈り続けていた。

 

「すごいですね亮真さん。あっという間に2体も倒しちゃいましたよ!」

 

「ええ、さすがはエ=セルダさんの息子ね」

 

興奮するメルアにカティアも頷く。確かに、先ほど見せたリョウ=マの戦いぶりは圧倒的だった。あれほどの動きはアル=ヴァン並みと言っても過言ではない。

 

「……サイトロンの導きなのか? いや、それにしても動きが良すぎる。亮真、お前に一体何が……」

 

そんな中、エ=セルダは考え込むような様子でリョウ=マの乗るラフトクランズに目を向けていた。あの機体……ラフトクランズ・シンは歴代の禁士長にのみ乗る事を許された護皇の剣。その真価は皇家の者が同乗する事で初めて発揮される。

 

(あなたが私を支えてくれるのならば、私もあなたを支えたい)

 

 けれど、今の私はこうして祈る事しかできない。だから、ただ願います。リョウ=マ。テニア。あなた達が私達の元へ帰って来てくれる事を。

 

「ほざけ、謀士でありながらラフトクランズを与えられた私に、バスカー・モードすら発動出来ない貴様が敵うと思うたか!」

 

「ッ……カロ=ランめ、本気か!」

 

 カロ=ランの声色に何感じ取ったのかエ=セルダの顔に緊張が走る。それを見た私達の間に不安が沸き上がるが、次の瞬間それは吹き飛んだ。

 

「黙れ!」

 

 リョウ=マの声に初めて怒りの感情が込められる。いえ、ため込んでいたものが爆発したといった方がいいのかもしれない。

 

「我が名は亮真! 紫雲 亮真! 我は……シャナ=ミアの剣なり!」

 

「ッ……!?」

 

 ど、どうしましょう。こんな状況なのに、嬉しいと思ってしまっている自分がいる。頬が熱い。心臓が激しく鼓動しているのがわかる。

 

「亮真さんのラフトクランズが……!」

 

 眼前に剣を構えるリョウ=マのラフトクランズ。その機体から緑色の眩い光が溢れ出した。

 

「あれは、オルゴンの光!」

 

「亮真、まさかバスカー・モードを……!?」

 

 エ=セルダの声に応える様に、リョウ=マのラフトクランズはその姿を変えていく。そして、構えていた剣の刀身が大きく割れたと思った次の瞬間、そこから新たにオルゴナイトで出来た巨大な刀身が天へと伸びていった。

 

「馬……鹿……な。バスカー・モードまでも……。何なのだ、貴様は一体何なのだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 もはや余裕すらなくなったカロ=ランに対し、リョウ=マは大剣の切っ先を向けながら静かに答えた。

 

「俺は……お前を止める者だ」

 

 ああ、リョウ=マ。あなたはかつて自分は騎士になれるかわからないと言いましたね。ですが、今のあなたの姿を見れば誰もあなたを騎士として認める事でしょう……。

 

シャナ=ミアSIDE OUT

 

 

テニアSIDE

 

(凄い、凄いよ亮真!)

 

 モニターに表示される全てのパラメータが限界値を超えている。亮真は今、この機体の限界を超えさせたんだ。

 

「馬……鹿……な。バスカー・モードまでも……。何なのだ、貴様は一体何なのだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「俺は……お前を止める者だ」

 

 そうだね亮真。お姫様やおじさんを守るためにも、こいつをやっつけよう!

 

「テニアちゃん、これで決めるぞ!」

 

「OK! やっちゃって!」

 

 再び襲い来る加速の衝撃。それすらも今の私には心地よかった。

 

「おのれ! 寄るな! 私の傍に近寄るなぁ!!!」

 

私達を近づかせまいと両腕のクローを振り回し、背部のオルゴン・キャノンを乱射するカロ=ラン。最早私達を追いかけていた時のようなプレッシャーは感じなくなっていた。

 

「跳ぶよ、亮真!」

 

 オルゴン・クラウドのコントロールをこちらに回し、タイミングを見計らって発動する。私達がいるのは……カロ=ランの上。さえぎるものは何もない!

 

「亮真、今だよ!」

 

 オルゴンソードを振り上げながらカロ=ランへ肉薄する私達。そして、とどめの一撃が放たれる!

 

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「ちぇあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 私達の雄たけびと共に振り下ろされた斬撃はカロ=ランの機体を一直線に切り裂いた。同時に世界から音が消える。けれど、それも一瞬の事。後に残されたのは刀身が砕け散った事で通常サイズに戻ったオルゴンソードを持った私達のラフトクランズと……。

 

「ば、馬鹿な……。私が、私がこんなところでぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 紫電を発しながら力無く崩れ落ちるカロ=ランのラフトクランズだった。

 

(カティア、メルア、亮真が……この人がいてくれたら、きっと私達……)

 

私達を助け出してくれたおじさん。そしてその息子である亮真。この出会いはきっと“運命”だったんだろうって、この時の私はそう思ったんだ……。

 

テニアSIDE

 

 

かくして、可能性の世界で生きる事となった騎士(笑)。果たして、これから先に待ち受ける運命に立ち向かう事は出来るのだろうか。そして、本当に天寿を全うするまで戻れないのか。それは“彼女”だけが知っている。

 

「んふふ。今度はあの子の好きだったものに合わせた世界に送ってあげたから喜んでくれとるやろうなぁ。どうしてもアカンくならんと手を出したらいけんって言われとるし、しばらくはデバガメせずに他の子の様子でも見とこうっと」

 

……知っている?




続かない(断言)

3000文字くらいでさらっと書こうと思ったのに、気づけば半日使ってこれですわ……。ただ、熱量さえあればまだこれだけ書けるとわかったので良かったです。

ここからは設定を考え付くだけ。

この短編はD×D小説の執筆中、相棒の2代目PCが起動時のディスクチェックから動かなくなった……つまり逝ってしまったショックと怒りで書きなぐったものです。

PCが逝く→ショックで放心→唐突にスパロボJを買いなおして遊び始める→シャナ=ミアの扱い酷くね?→CV早見さんとかヒロインにするしかねえだろ!→なら書きゃいいじゃん!

なお、オリ主はJ世界だと思っていますが、登場人物からわかる通りOG成分が混じってます。と言ってもすでに一人退場しましたが。

年上設定は、まあ本編でも年上だったしいいかなって。ヒロイン達の“ちゃん”付けはそのせいです。

そして、機体はラフトクランズにしました。設定的にグランティードだとも思いましたが、やっぱりこのオリ主にはこの機体しかないので。なお、後継機はラフトクランズ・セイヴァー(セイバー)になる予定。

エ=セルダとかカロ=ランの口調に違和感がありましたらすみません。もうあまりOGの記憶がないもので。


不殺……フューリーの脱出装置は宇宙一イイイイイイイ!!!!

時系列的には最新章とその前の章の間くらいの平和な時間中の話です。


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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか
オラリオに騎士(笑)がいるのは間違っているだろうか


コソコソと投稿。


 ―――見覚えのない部屋。

 

 ―――壁に沿って長々と設置された本棚。

 

 ―――そこから落ちたであろう床に散らばる本。

 

 ―――そして、一冊の本を胸に抱いたまま、尻もちをつきながらその真っ赤な目で俺を見上げている一人の少年。

 

 第三者がいればどういうシチュエーションだと言われそうだが、それは俺が知りたいくらいだ。何故なら、たった数分前まで、俺は自分の部屋でまったりしていただけだったのだから……

 

………

 

……

 

 

『あんなぁ、ちょっと相談があるんやけど』

 

唐突にオカンから連絡が入ったと思ったらそんな事を言われた。

 

『実は、『鋼の救世主』の事なんやけどなぁ。この世界でごっつい数の子達に読まれとるやろ? その結果、信仰の対象にしてしまう子もたくさんおるせいか、『鋼の救世主』というものが概念化してしもうたんよ。でなぁ、あまりにも読んだ子達の想いが強すぎたせいかその概念がその世界を飛び出してしもうて……簡単に言うと別の世界にも『鋼の救世主』が広まってしもうたっちゅうわけや』

 

……はい?

 

『で、ここからが本題なんやけど、別世界の子の中にアンタに憧れるあまり本来歩むべき運命から大きく逸れてしまう恐れのある子が出て来そうなんよ。せやから、アンタにはそんな子達が危険な道に進んでしまわんようにフォローしてあげてもらいたいんや』

 

 何でそんなとんでも展開になってるんですか!?

 

『? 人の想いが世界を飛び越えるなんてよくある事やで? アンタもよう知っとるやろ?』

 

 い、いやまあ、スパロボならよくある事ですが……。

 

『ま、そういうわけやからよろしく頼むわぁ。ちょうどそっちの世界のゴタゴタも落ち着いたみたいやし』

 

 それはそうですが……って、もう決定事項なんですか!?

 

『ほな、いってら~』

 

 ちょっ! またこのパターンかよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!

 

………

 

……

 

 

 と、あまりにもザックリとした説明と共に俺は別世界とやらに送り込まれましたとさ。……いや、とさじゃねえわ。もう大体予想つくわ。ここはこの男の子の部屋で、俺は彼の読書中にいきなり姿を現した不審者なんだろどうせ!

 

 いや待て落ち着け。ここで慌てた感じで言い訳始めたら余計怪しくなる。ここはむしろキミこそ誰だ? 的な感じで話しかけ―――。

 

「……す、凄い」

 

「?」

 

「凄い! あのお姉さんの言う通りだ! 本当に現れた!」

 

 そう言うやいなや、男の子は興奮を隠しきれない様子で立ち上がると勢いよく俺に近づいて来た。

 

「あ、あの! あなたは『騎士様』ですか!? 『鋼の救世主』を率いて戦ったという伝説の!?」

 

 ファッ!? 何でそれを!? ……え? ひょっとしてこの子がオカンの言っていた……。

 

「キミは……俺を知っているのか?」

 

 俺の問いに、男の子は目の輝きを増々強めて何度も頷いた。

 

「は、はい! 騎士様の事はこの本で知りました!  ぼ、僕、騎士様に憧れてて! それで、いつか僕も騎士様みたいな英雄になりたいってずっと思ってて! そしたら夢でお姉さんが!」

 

「夢?」

 

「そうなんです! 夢に今まで見た事もないような凄く綺麗なお姉さんが出て来て! その人が、近いうちに僕がずっと憧れていた人に会えるからって! だから僕、その夢を見た日から時間が出来たらずっとこの部屋で待ってたんです! 何故かわからないけど、会えるならここかなって思って!」

 

 ……オカンだな。間違いない。綺麗なお姉さんって部分が引っかかるが、事前に説明出来るのってあの人しかいないだろうし。

 

「そうか。ならば、俺を呼んだのはキミという事か」

 

「え、僕が……呼んだ……?」

 

「ああ。キミの言うそのお姉さんに言われたんだ。これからキミが歩むべき運命。それを支えるように」

 

「僕の運命……。そ、それってつまり、僕も騎士様の様な英雄に……!?」

 

「それはわからない。けれど、それがキミの目指すものだというのなら、俺はそのために力を貸すよ」

 

 それが俺の役目みたいだし。何より、こんな純粋そうな男の子に不幸な目に遭って欲しくないしな。オカン、俺がこの子に会ったらこう思うだろうって予想してたんだろうな。

 

「ッ~~~~~~~! 僕やります! 冒険者になってたくさん鍛えて、いつか騎士様みたいな英雄になります!」

 

 両こぶしを天に突き上げ、声を張り上げる男の子。……って、今この子冒険者って言った?

 

「キミ、そういえば名前……」

 

「はっ、そうだ! おじいちゃんにも知らせないと! おじいちゃーん! 騎士様だよ! 本当に来てくれたよー!」

 

 全速力で部屋を飛び出していく男の子。部屋の中、ただ一人残された俺。

 

「……とりあえず本でも拾っておくか」

 

 多分おじいさんを連れて戻って来るだろうし、その間にこっちも色々質問でも考えておこうか。

 

 少しして、男の子と彼に続いて老年の男性が部屋へ入って来た。そこで、未だ興奮冷めやらぬ様子の男の子を男性が落ち着かせた所で改めて自己紹介を行った。

 

 男の子の名前はベル・クラネル君。この家でおじいさんと二人で暮らしているらしい。おじいさんの名前も聞こうとしたら「秘密じゃ」とウインク混じりで言われてしまった。まあ、怪しさ満点だから仕方ないかと思ったらそうでもないみたいだった。

 

「わし、そういうのわかるんじゃよ。お主から邪なものは感じん。秘密と言ったのはほれ、その方がミステリアスでカッコいいじゃろ?」

 

 ……らしい。中々ユニークな方のようだ。俺も名前、そしてここに現れた理由を二人に伝えた。

 

「……なるほどのぉ。ベルがお主を呼んだと」

 

「はい。俄かには信じられないと思いますが」

 

「この人は本物の騎士様だよおじいちゃん! だってお姉さんが言ってた通りの人だもん!」

 

「ふむ。どうせならわしの夢にもその美人なお姉ちゃんに出て来て欲しかったもんじゃのう。……とと、話が逸れたわい。お主はベルの夢を支えると。ならばベルよ、お前の夢とはなんじゃ?」

 

「はいおじいちゃん! それはもちろん騎士様の様な英雄になる事です!」

 

「やれやれ、そう言うと思ったわい。わしとしては男に生まれたならばぜひともハーレムを目指して欲しいと思っておったのじゃが」

 

「? それは英雄になるために必要な事なの?」

 

 キョトンとするベル君におじいさんは首を横に振った。

 

「……これじゃよ。のう騎士殿、ベルの年齢で異性にチヤホヤされたいと思うのはむしろ当然の事だと思うのじゃが」

 

 また何とも答えにくい事を……。

 

「それは……まあ、個人差があるのでは?」

 

「とはいえこやつのは極端すぎると思うのじゃがなぁ。ほれ、英雄色を好むとも言うじゃろ? むしろ英雄こそモテモテなんじゃぞ」

 

「英雄がモテモテ……。つまり、英雄になるにはモテなければならないって事だね。そういう事なら僕、頑張ってモテモテになるよ!」

 

(こ、こやつ、手段と目的が逆になっておる……)

 

「クラネル君、一つ聞いていいかな?」

 

「ベルでいいですよ。何ですか騎士様?」

 

「俺の事も神崎か亮真で構わないよ。それでベル君、キミはどうしてそこまで英雄になりたいんだ?」

 

 まだ出会って少ししか経っていないが、彼が英雄というものに強烈に憧れているのは言葉の節々からよくわかった。そこまで彼を突き動かすものは何なのか、俺は少しばかり気になった。

 

「きっかけは、おじいちゃんが集めたこの『鋼の救世主』です。誰が書いたかもわからない。けれど、昔から読まれていたこの本を初めて読んだとき。僕は感動したんです。年齢も性別も立場も考え方も何もかもバラバラの戦士達が、人々を守るために命を懸けて、どんな相手でも決して諦めずに戦うその姿に。……だから憧れたんです。僕もいつか、誰かの為に、誰かの希望になりたいって」

 

「……そうか」

 

 これがオカンの言う本来の運命から逸れているってやつなのか? なら、ベル君の本来の運命っていったい……。

 

(いや、今は気にしても仕方ないか。まずはこの子が無茶しない様に見守る事が先決か)

 

「そのためにもおじいちゃん。やっぱり僕は冒険者になるよ!」

 

「そうじゃな。お前の夢の為にはそうするべきなんじゃろうて」

 

 そうだ、すっかり忘れてた。

 

「すみません、その冒険者というのは?」

 

「ん? おお、そうか。お主には馴染みの無いものじゃったな。では、少しばかり長くなるが説明させてもらおうか。ベルや、椅子を持ってきておくれ」

 

「はい!」

 

 ベル君が用意してくれた椅子に腰かけ、俺はおじいさんの話に耳を傾けた。途中で質問を交えつつ、全ての説明が終わった頃にはすっかり日が暮れてしまっていて、俺はそのままこの家でやっかいになる事となった。

 

………

 

……

 

 

 ベル君の口ぶりからして、てっきりすぐに冒険者となるため迷宮都市と呼ばれるオラリオへ向かうとばかり思っていたが、おじいさんから許可が出るまでは出発してはいけないと言われてしまった。まあ、彼からしたら孫と離れたくないんだろうなぁと思っていたら、なんとおじいさんの方からベル君と離れてしまった。

 

「騎士殿、ベルの事、よろしく頼むぞ」

 

 話があるとベル君を先に寝かせ、家の外に俺を呼びだしたおじいさんは神妙な声でそう言った。そして次の日、おじいさんはいなくなっていた。

 

 書き置きにはベル君に対する謝罪。そしてオラリオへ向かう許可が記されていた。

 

「……行きましょう、リョーマさん」

 

 そして今日、ベル君と俺はついにオラリオへと向かうため家を出る。この日の為に準備した荷物を背負い、ベル君も『鋼の救世主』のお気に入りの巻を数冊袋へ忍ばせていた。

 

「流石に全部持っていくわけにはいきませんからね」

 

 期待と不安の混じった表情を見せるベル君。さながらお守り替わりなのだろう。

 

 世界で唯一「迷宮」と呼ばれるものが存在するというオラリオ。果たして、ベル君を待ち構える運命とはいったい何なのだろうか。

 

 




最近プラモデルに熱をあげていたのですがいいかげんこっちも書かないとと思いつつ、まずはリハビリとばかりに書いてみました。

いつもの低クオリティですが、暇つぶしになれば幸いです。


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オラリオに騎士(笑)がいるのは間違っているだろうか その二

この小説の方針ですが、ダンまちの設定は本編はもちろんハーメルン内の作品でも丁寧に説明されている方がたくさんいますので、一から説明を入れるのは逆にくどいかなと思うので、改変したい部分以外の展開や説明はなるべく省こうと思いますので、詳しい事が知りたい方は本編を読もうね!


「つ、着いた……着きましたよリョーマさん!」

 

 眼前に高々とそびえる市壁を見上げるベル君。俺も彼に倣いそのデカすぎる壁に目を遣る。いや、道中立ち寄った村や町の人達が揃ってデカいデカいと言っていたからどんな感じかと思っていたが、これは予想以上だわ。

 

「いよいよこの街から僕の冒険者人生がスタートするんですね。しかもあの騎士s……リョーマさんと一緒に」

 

 言い淀むベル君に思わず苦笑いする。ここに来る前に、彼には俺が『鋼の救世主』の騎士(笑)である事は秘密にしてもらうよう頼んである。当事者であるベル君とおじいさん以外の人からしたら物語の登場人物を名乗る痛い人間にしか見えないだろうし、そのせいでベル君に何かしら迷惑がかかるのは俺の望む所ではないからだ。

 

「余計な気を遣わせてしまってすまないな、ベル君」

 

「い、いえいえ! 考えてみればリョーマさんの正体が知られたら大パニックになりそうですし! 僕の方こそ浮かれすぎちゃって」

 

「はは、そんな事にはならないと思うけどな」

 

「(謙虚だなぁ。やっぱり英雄には謙虚さが大事なのかも)」

 

 納得した様子で頷くベル君。そうそう。パニックどころかドン引きされて終わりだろう

。ここまで『鋼の救世主』……ひいては俺に興味を持ってくれる人なんて俺を呼んだこの子くらいだろうし。

 

「それで、まずはファミリアを探すんだったか?」

 

 おじいさんから聞いた話を思い出す。オラリオへ着いたらまず何をするのか。冒険者になるためにはどうしたらいいのか。とにもかくにもまず最初に決めなければならないのがファミリアだという。

 

 話を聞いて驚いたのが、なんとこの世界には普通に神様が存在するそうだ。そんな神様の恩恵を受けた人々が集まっているのがファミリアと呼ばれている集団組織なのだとか。……その考え方だと、俺はオカンのファミリアに属していると言えるのだろうか。

 

「ファミリアは一つじゃないんだろう。ベル君はどこのファミリアに入りたいとか希望はあるのか?」

 

「いえ、そもそもどんなファミリアがあるのかも知らないんです。だから色々見て回ろうかなって」

 

 うーん、色々と言ってもこの街滅茶苦茶でかいから一つ一つ探して歩いていたら日が暮れてしまいそうだな。となると、やっぱり人に聞くのが一番か。

 

 商店の並ぶ区画に進んだところで、俺は近くの店で呼び込みをしていた女性に声をかけた。

 

「すみません、少しいいですか?」

 

「いらっしゃ……あら、いい男じゃないか! なんだい、ウチの店で買い物してってくれるのかい?」

 

 見れば商品棚には果物や野菜が並んでいた。そうだな。何も買わずに質問するだけなのも失礼だな。若干喉も渇いてるしとりあえずこの桃っぽい果物を二つ。

 

「これを二つください」

 

「はいよ、まいどあり!」

 

「それと、一つお聞きしたい事があるのですが」

 

 ベル君が渡してくれたお金(ヴァリス)を支払いつつ、本題に入る。ファミリアについて知りたいと聞いてみると、女性は合点がいった様に頷いた。

 

「はいはい。アンタ冒険者になりたいんだね。そうさね……このままこの道を進んだ先に案内所があるから行ってみな。確か、有名どころのファミリアを紹介している冊子か何かを配ってたはずだよ」

 

「そうですか。ありがとうございます」

 

「どういたしまして。そうそう、冒険者として有名になったらぜひともウチを御贔屓にね!」

 

 豪快に笑いながら見送ってくれる女性に頭を下げ、俺はベル君の下へ戻った。果物を手渡し今聞いたばかりの情報を伝え、早速案内所へと向かってみた。

 

 確かに女性の言った通り、そこでファミリアについて尋ねてみると小さな冊子を手渡され、開いてみるとそこには様々なファミリアについての紹介が書かれていた。

 

「ふむふむ……」

 

 たまたま近くにあった噴水周りのベンチに腰掛け、ベル君は熱心に冊子とにらめっこしている。その隣で俺はボケーッと空を眺めていた。

 

「……よし、決めた! リョーマさん、僕このファミリアにします!」

 

 しばらくして、ベル君は決心したように顔を上げた。さてさて、ベル君はどのファミリアに決めたのかなっと……。

 

「ロキ・ファミリアか」

 

 脳裏に一瞬浮かんだ裸マントにふんどし姿の集団のイメージを慌てて消し去る。いかんいかん。だから名前から知ってるゲームのイメージを勝手に当てはめるなっての俺。

 

「このオラリオで最強の一角だそうです。ここなら僕も強くなれそうだなって」

 

 なるほど。あえて厳しそうな環境で鍛えるって事か。中々に体育会系だなベル君。

 

「ん? 入団試験?」

 

 赤い文字で目立つように入団希望者には試験を実施すると書いてある。その下には団長だというフィン・ディムナさんという人の言葉が乗っている。

 

―――ありがたい事に、ロキ・ファミリアへ入団を希望するものは年々増加している。けれど、その全てを抱えきる事は出来ない。故に入団を希望する者には我等のファミリアに相応しいかどうか試験を受けてもらう。新たに冒険者を志した者も、他のファミリアから改宗を希望している者も例外無く全員だ。それでもロキ・ファミリアを望むというのならば、どうか門を叩いて欲しい。試験はいつでも誰でも必ず受け付ける。

 

 つまり、試験に合格しないと入団出来ないけど、受けるだけなら自由だよって事か。うーん、やっぱりきつそうだな。けどベル君はやる気みたいだし……。

 

「場所も載ってますし、早速行きましょうリョーマさん」

 

 ……そうだな。せっかくのやる気に水を差すの悪いし、ベル君の熱意なら合格出来るかもしれないしな。

 

 そう思って、ベル君に引っ張られる様にロキ・ファミリアへ向かったのだが……

 

「あぁ? 入団希望だぁ?」

 

 ロキファミリアの本拠地前に立つ二人組の門番へベル君が入団希望の意思を伝えると、二人はベル君の頭からつま先までをジロジロとねめつけたと思ったら、次の瞬間には互いに顔を見合わせ大声で笑い始めた。

 

「だーっはっはっはぁ! お前みたいなチビがロキ・ファミリアに入団だぁ? 冒険者ごっこがやりたいなら他所のファミリアに行きな」

 

「し、身長は関係ないでしょ! 僕は本気です! だから試験を受けさせてください!」

 

「受ける必要なんざねえよ。どうせお前みたいな貧弱野郎が受かるわけねぇ。わかったんならさっさと失せな」

 

「そんな……」

 

 項垂れるベル君。そんな彼から俺の方へ目を向けてくる男達。

 

「で、お前も入団希望なのか?」

 

「いや、俺はこの子の付き添いだ」

 

「ならさっさとそのガキを連れて失せな。どうせ田舎からのこのこやって来たんだろうが、身の程知らずにもほどがあらぁ」

 

「そうそう。田舎への仕送りでもしたいってんなら他にいくらでも仕事があるだろ」

 

「そっちのお前なんか男娼とかやってみたらどうだ? どうせその顔で何人も女を泣かせてきたんだろ? あっという間に稼げるだろうさ」

 

「違えねえ!」

 

 ギャハギャハと笑う二人を前に俺はひたすら驚いていた。ここまで面と向かって馬鹿にされたのは久しぶりだし。何よりあれだけご立派な事を謳っていたのに、こんなレベルの団員が所属しているファミリアが最強と呼ばれている事に。

 

(いや、待てよ。これもおじいさんの言っていた事か)

 

―――冒険者っていうのはとにかく荒っぽい連中が多くてのお。もちろん己を律して立派に活動しておる者も多いがな。故に初対面で馬鹿にしてきたりキツイ冗談を言われたりする事もあるじゃろうて。じゃが、それに一々反応しておったらキリがないからの。そういうものだと思って流してしまう方が楽じゃと思っておきなさい。

 

 今のがおじいさんの言っていたキツイ冗談だというのなら、言われた通り流すか。ここでムキになって騒ぎを起こしたらベル君の立場も悪くなるだろうし。

 

「……なるほど」

 

「「ッ……!?」」

 

「リョーマ……さん?」

 

 あれ? 冗談として受け取りましたよって意味で返したつもりなのに、二人とも大きく目を見開いたまま固まってしまったぞ。おまけにベル君までびっくりしてるみたいだし。

 

「中々、面白い事を言う。冒険者と言うのはお笑いのセンスも鍛えているのか」

 

「い、いや……」

 

「今のは、その……」

 

「何だ? まだ面白い事を言ってくれるのか?」

 

「「ひぃっ!!」」

 

 ええ……人の顔見て悲鳴あげるとか流石に失礼すぎませんかねぇ。

 

「も、もういいです! 行きましょうリョーマさん!」

 

 とそこへベル君から突然手を引っ張られて俺はそのままロキ・ファミリアを後にした。

 

「……ざまみろ」

 

 途中、ベル君が何か呟いたような気がしたが、上手く聞き取れなかった。

 

 ―――そして、俺達がいなくなった後で、門番二人がその場で腰を抜かし、館の中から俺が無意識に発していたモノに感づいた数人が飛び出して来た事にも気づく事はなかった。

 

………

 

……

 

 

 一言も発さず歩みを進めるベル君。入り組んだ道をでたらめに突き進み、やがて開けた場所に出た所で彼は立ち止まった。

 

「……ベル君」

 

「……ふ、ふふふ」

 

「?」

 

「ふふ、ふふふふ。あはははは! 凄い! 凄すぎですよリョーマさん! あれが“プレッシャー”ってやつなんですね! 僕、震えが止まりませんでした!」

 

 先ほどまでの表情から一変し、涙を浮かべながら大笑いするベル君に戸惑う。え、何事?

 

「ベル君、ロキ・ファミリアには」

 

「入りません。僕だけならまだしも、リョーマさんにまであんな事言う人達と一緒のファミリアなんてお断りです!」

 

 え、何この子。自分もあんな事言われたのに、俺の為に怒ってくれてるの? いい子過ぎない?

 

「……俺が守護らねばならない」

 

「何か言いましたか?」

 

「いや、何でもないよ。なら、もう一度ファミリア探しを……」

 

「―――キミ達、ファミリアを探しているのかい?」

 

「「?」」

 

 突如として発せられた第三者の声。ベル君と共にそちらへ振り向くと、曲がり角の向こうから声の主がゆっくりと姿を現した。

 

「それなら、ボクのファミリアに入りなよ。歓迎するよ。このボク、三大女神が一柱、ヘスティアが有するヘスティア・ファミリアがね!」




戦争遊戯で騎士(笑)ごっこするオリ主まで書けたらいいなと思ってます。まあ、そこまでたどり着くまでどうなる事やらって感じですが。



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オラリオに騎士(笑)がいるのは間違っているだろうか その三

今の予定だとオリ主はダンジョンに潜らないのでタイトルを変えてみました。


 ファミリア探しを再開しようとした俺達の前に現れたのは、小柄ながら一部やけに自己主張の強い黒髪の少女だった。

 

「ヘスティア? ボクの? ……ッ、ま、まさか、あなたは神様なのですか!?」

 

「おいおい、ちゃんと聞いていなかったのかな? 仕方ないなぁ。ではもう一度名乗ってあげよう。ボクはヘスティア。さっきもいったけど三大女神なんて呼ばれてる凄いヤツなんだぜ? どうだい、キミさえよければボクのファミリアに来ないかい?」

 

 ……これがこの世界の神。見た感じは普通の女の子って感じだが。……いや、イカンイカン。見かけに惑わされたらダメだってオカンから学んだだろ。

 

「い、いいんですか!? 僕、こんな見た目だからってたった今他のファミリアから断られたばかりなんですけど」

 

「はあ? なんだいその失礼なファミリアは。まあでも、断られて正解だったよ。おかげでボクとこうして出会えたんだからね。キミ、名前は?」

 

「ベルです。ベル・クラネル」

 

「ではベル君。ボクのファミリアに入ってくれるかい?」

 

「はい、お願いしま……」

 

 頭を下げようとしたベル君がふと気づいたように俺の方に目を向けて来た。

 

「あ、あの、リョーマさん。勝手に決めちゃいそうになっちゃいましたけど、僕、この神様のファミリアに入らせてもらおうと思って……」

 

 ああ、なるほど。俺の同意無しに決めようとしたと思ってるのか。律儀だなぁ。冒険者になるのはキミなんだから決める権利はキミにあるのに。

 

「もちろん構わないよ。どこに行こうと、俺は力の限りキミを支えるから」

 

「ッ……! はい! ありがとうございます!」

 

「お、キミも入団希望かい? もちろん大歓迎さ。名前を教えてくれるかい?」

 

「神崎 亮真です。よろしくお願いしますヘスティア神」

 

「ふむ、キミは極東出身かな? うん、よろしく。……それはそれとして。んー、固いなぁ。もっとフランクにいこうよ。ヘスティアでいいし敬語もいらないよ」

 

えぇ……。まあでも本人が言ってるからいいのか?

 

「……わかった。ヘスティア」

 

「うんうん。それでいいよ」

 

「ぼ、僕は流石に恐れ多いので神様って呼ばせてもらいます」

 

「えー、そりゃないぜベル君。リョーマ君はこうして変えてくれたのに」

 

「か、勘弁してください~!」

 

 からかう様にベル君に抱き着くヘスティアと、そんな彼女にたじたじになるベル君。そんな二人を見て、先ほど彼女が言っていた通り、こうして出会えて正解だったんだと何となく感じたのだった。

 

 数分後、ベル君いじりに満足したヘスティアが離れた所でこれからどうするかを話し合う事になった。

 

「すみません、神様。色々お話させてもらいたいんですけど、まずは荷物を置かせてもらいたいので神様の本拠(ホーム)に行かせてもらってもいいですか?」

 

「うっ……」

 

 ベル君の提案にギクリとするヘスティア。なんだ、何か都合が悪いのか? でも、確か団員はそのファミリアの本拠で生活するものだと聞いていたが。

 

「あ、もしかして新人の僕達じゃまだ早いとか? そういう事なら今日は宿屋に……あー、でもおじいちゃんが置いてたお金ももうそんなに残ってないしなぁ……」

 

「となると、野宿かな」

 

「ですね」

 

「ま、待って待って待って!」

 

 頷きあう俺達にヘスティアが慌てたように割って入って来た。

 

「ボクの眷属になってくれた子達にそんな事させられるわけないだろう! い、いいとも。ボクの本拠に案内してあげるよ!」

 

「いいんですか?」

 

「もちろんだとも! ……ただ、その。見たら驚いちゃうかもしれないけど」

 

「わあ、そんなに凄い所に住まれてるんですか?」

 

「あ、あはは。うん、ある意味ね」

 

「?」

 

「じゃ、じゃあ案内するからボクについてきて」

 

 なんだろう。身長も相まって今の彼女が隠し事が親にバレそうになって焦ってる子どもに見えて来たんだが。

 

 そんなアホな感想を頭に浮かべながらベル君と共にヘスティアについて行く。入り組んだ路地をスイスイ進んで行く彼女を見失わない様に歩く事数分、すっかり街の中心部から離れてしまった俺達の前にボロボロになった協会が姿を現した。

 

「神様、あの、ひょっとしてこの今にも倒壊しそうな教会が……?」

 

「……はい。ボクの本拠です」

 

「他の団員は?」

 

「いません。キミ達がボクにとって初めての眷属です」

 

 ベル君が問いかけるたびにどんどん小さくなるヘスティア。

 

「なるほど……確かにこれは凄い」

 

 思わず呟くと、ヘスティアはそれはもう見事な土下座を披露した。

 

「ご、ごめんよ~! 騙すつもりはなかったんだ! まさか、ボクの誘いに応えてくれるなんて思ってもみなかったから……!」

 

「? どういう事ですか?」

 

「その……ボク、下界に降りてからしばらくは友達の所でやっかいになってたんだけど、その子を怒らせちゃって追い出されたんだ。それから慌てて眷属を探し始めたんだけど、それも全然。だからあの時、偶然キミ達の会話が聞こえて来て思わず声をかけちゃったんだ。正直、断られるんだろうなって思ってたのに、ベル君もリョーマ君も誘いに応じてくれたから……」

 

「―――なーんだ、そういう事だったんですね」

 

「ベル君?」

 

 跪いたまま懺悔するかの様に声を絞り出すヘスティアが、あっけらかんとした声でそう返すベル君に顔を上げる。

 

「とりあえず、荷物を置いたら少し掃除でもしましょうか。神様、掃除用具ってどこにありますか? 流石に教会ならどこかにしまってあると思うんですけど」

 

「それなら地下に……じゃなくて! べ、ベル君? 怒ってないの?」

 

「? 何で僕が怒らないといけないんですか?」

 

「だ、だってボク、こんなボロボロな所を本拠にしてる神だよ? キミからしたら騙されたって思うんじゃ……」

 

「あはは。そもそも、神様は驚くかもって言ってたのに、僕が勝手に勘違いしただけなんですから騙されたも何もないですって」

 

「でも……」

 

「……嬉しかったです」

 

「え?」

 

「僕、他のファミリアに断られたって言いましたよね? 冒険者は無理だって。だから、声をかけてもらって、ファミリアに誘ってもらえて嬉しかったんです。僕でも冒険者になれるって、英雄になれるって言ってもらえたみたいで」

 

 どこまでも優しい微笑みを浮かべながら、ベル君がヘスティアに手を伸ばす。

 

「だから僕は神様の眷属として、このヘスティア・ファミリアで頑張っていきたいと思います。改めて、これからよろしくお願いします神様」

 

(はは、ベル君ならならそう言うと思った)

 

 一緒に過ごしてみて何となくわかってきたが、この子ナチュラルにカッコいい言動見せるんだよな。立ち寄った村や町でも親からはぐれた子どもに真っ先に声をかけて探し回ったり、重そうな荷物を抱えた老人に駆け寄って家まで荷物を運んだり。

 

(……嘘じゃない。この子は本気でそう思ってくれている)

 

 潤んだ目でベル君を見つめるヘスティア。そして、彼女が差し出された手にゆっくりと自分の手を乗せようとしたその瞬間、ベル君が今までで一番と言ってもいい明るさで―――

 

「それに……英雄を目指すならこれくらいの逆境も跳ね返さないとダメですよね!」

 

「……へ?」

 

 その勢いと声量にヘスティアの動きがピタリと止まる。それに気づいていないベル君はさらに続ける。

 

「よーし燃えて来た! この教会を元に戻せるくらいたくさん活躍してみせるぞー! 神様、リョーマさん。見ててくださいね!」

 

「え、ベル君? え? ここはボクを立たせて夕陽をバックに感動的な雰囲気になる所じゃ? というか、キミさっきまでとキャラ違わない?」

 

 ああ、そうか。まずはそこから説明しないといけないのか。

 

 夕日に向かって叫ぶベル君。いつまで経っても立たせてもらえないヘスティア。そして、そんな二人を横から見つめる俺。

 

 これが俺達三人の最初の記憶。ヘスティア・ファミリア始まりの記憶だった。




おかしいな。省けるところは省くつもりだったのに。

ベルの性格に違和感があるかもしれませんが、そこは鋼の救世主の読みすぎでおかしくなったと思ってください。


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オラリオに騎士(笑)がいるのは間違っているだろうか その四

今回はキャラ崩壊著しい人物が出て来ますので、原作の性格を大事にされる方はこれ以上読み進めない事をお勧めいたします。


「行ってきます! 神様、リョーマさん!

 

「ああ、行ってらっしゃい」

 

「夕飯までには帰って来るんだよ~」

 

 オラリオに来てはや二週間。今日も朝からダンジョンへ向かうベル君をヘスティアと共に見送る。何故同行しないのかというと、俺は冒険者になっていないからだ。

 

 俺はベル君を支えると約束したが、なにも一緒に戦う事だけが支える事ではない。彼が冒険者として思う存分活動できるようサポートするのが俺に求められるものだと思ったのだ。

 

 ベル君には最初残念がられたが、「でも、甘えてばかりじゃいられませんもんね! 自分を追い込むためにも一人で頑張ります!」と納得してくれた。

 

 そういうわけで、ヘスティアより冒険者となるために必要な『恩恵』を授かったベル君は晴れて冒険者となった。アビリティという冒険者の能力を数字化されるというシステムを最初聞いた時はゲームみたいだなと思ったものだ。その数字は部外秘だというので俺も部屋の外で待っていたのだが、中からヘスティアの「ほあぁっ!?」なんて声が聞こえて来た時は何事かと思った。何でもないと言っていたが、絶対何かあっただろう。

 

 この『恩恵』がなければ冒険者として認められず、ダンジョンに潜る事は許されないそうだ。なので当然俺も潜る事は出来ない。まあ行く事もないだろうが、いざという時はオルゴン・クラウドでこっそり……。

 

「リョーマ君、ボーっとしてるけど準備しなくていいのかい?」

 

 ヘスティアに声をかけられて我に返る。ああそうだそうだ。今日は朝から出かけないといけないんだった。

 

 冒険者にならなかったのなら、お前は一体この街で何をやっているのかと聞かれたら……。

 

「キミは大丈夫なのか、ヘスティア?」

 

「ああ、今日のバイト先に行くにはまだ時間があるからね」

 

 バイト。そう、アルバイトである。神様の口から出たとは思えない単語だが、なんだかんだベル君の言葉に感動した彼女はこのままでは駄目だと言ってバイトを始めると宣言した。確かに何をするにも金は必要かと思い、俺もそれに倣い二人でバイトを探し回り二日目にはいくつかの募集先に採用してもらった。

 

 そういうわけで、今日も朝からバイトというわけだ。ちなみに、今日のバイト先は「じゃが丸くん」という食べ物を売っている店だ。このじゃが丸くん、割と人気なメニューらしく、味のバリエーションもあってか子どもから大人、男性女性問わずたくさんのお客さんが来店する。

 

「おはようございます」

 

「……おう」

 

「おはようございます、カンザキさん」

 

 店に着くと、店長と先輩がすでにジャガイモの皮むきを始めていた。俺も手を洗い早速そこに混ざる。

 

 店長は四十代の男性で、物静かな人だがまさに職人と言える腕をされていて、今も大小様々なジャガイモが彼の手であっという間にツルツルにされていく。

 

 それには及ばないまでも、先輩もまた器用にジャガイモの皮を剥いていく。五年ほど前からここで働いているという彼女は丁寧に仕事を教えてくれる優しい人で、しかも誰が見ても美人だと答えるくらい綺麗な人で男性客からも人気が高い。

 

 彼女も落ち着いた性格の人なのだが、一つ特徴的な日課みたいなものがあった。

 

 休憩時間中にたまたま彼女が鞄から小さな人形を取り出してそれに数分間祈りを捧げている所を目撃したことがあるのだが、俺が不思議に思っていると先輩が教えてくれた。

 

 先輩は五年前まで冒険者として活動していたのだが、ある時自分を含めたファミリアの人間が別のファミリアの罠によって死にかけるほどの出来事があったそうだ。彼女も腹を深々と貫かれこのまま死ぬのだと思った時、突然どこからか現れた冒険者が自分達を襲ったモンスターを一太刀で倒し、死にかけていた先輩達を見た事も聞いた事もないような魔法で一瞬で回復させただけに留まらず、傍で見ていた犯人をボコボコにした上でファミリアに突撃、残りの団員はもちろん、なんと神様までも斬ったのだとか。

 

 基本神様は死ぬ事はないそうで、団員達も手加減されたのか命に別状はなかったらしいが、斬られた者達はみんな傷が癒えた後も痛みを訴え続けついには発狂してしまったのだとか。神様も「アレは神を殺す! 存在してはならない!」と言い残して天界という元々神様達がいたという場所へ自ら還っていった。

 

 この出来事はとんでもない大事件として世間を騒がせ、先輩達を助けたという冒険者を一斉捜索したが結局現在も見つかっていないらしい。先輩達も何度も事情聴取されたらしいが、その冒険者は全身を蒼い鎧で覆っていて素顔もわからず、一言もしゃべらなかったので男性か女性かもわからなかったとか。

 

 その謎の冒険者は今も神斬(シンザン)と呼ばれ、当時の関係者達の脳裏に深々と刻まれていると先輩は言う。その後、先輩の所属していたファミリアは神様が責任を感じて解散を宣言、今ではこの街の外で暮らしているそうだ。残された団員達は先輩の様に冒険者を引退、または別のファミリアで活動していて今も交流していると先輩は笑顔で語る。

 

 あの時、感謝の言葉すらかけれなかった事が心残りで、記憶を頼りに生産ファミリアに作ってもらったという青銅の人形にこうして毎日感謝の祈りを捧げているのだと先輩は最後にそう締めた。

 

 中々にハードな人生を送られているんだなと思いながら、先輩に断ってその人形を見せてもらったのだが、右手に剣、左手に盾(どっちもなんか変形しそう)を持っていて、胸部に窪みみたいな部分があったり背中に不思議なものを背負っていた。これがロボットだったらビームの発射口とかブースターに見えるんだけど、人が纏ってる鎧なんだから違うだろうし。

 

 「いつか会えるといいですね」と言うと先輩も微笑みながら「そうですね。その時は今度こそあの時のお礼を」と答えてくれた。うーん、こんな素敵な女性に5年間も忘れられずに想われてるなんて羨ましいなぁ。……爆ぜろ。

 

「……そろそろ始めるぞ」

 

「「はい」」

 

 揚げたてのじゃが丸君を袋に入れ店頭に並べる。さて、今日も一日頑張りますか!

 

………

 

……

 

 

 改めて言うが、この店は割と人気で昼時なんかは大忙しになる。その為、それを理解している常連さん達はそれ以外の時間を狙ってスルッと買いに来たりする。

 

「……こんにちは」

 

 噂をすれば早速だ。この綺麗な金髪をなびかせながらやって来たのはこの店の常連さんの一人だ。ちなみに名前は知らない。こっちから尋ねるとナンパと思われて気分を害されて来なくなったら店長に申し訳ないし。剣を下げてるので心の中では冒険者ちゃんと呼んでいる。

 

「いらっしゃい。今日もいつものでいいかな?」

 

「うん」

 

 彼女はお気に入りの味があっていつもそれを頼む。なのでこちらもそんな風に対応する。代金を預かり、熱々のじゃが丸くんを手渡す。

 

「どうぞ、熱いから気を付けて」

 

「ありがとう」

 

 じゃが丸くん片手にそのまま去って行くかと思ったが、冒険者ちゃんはその場を動かない。

 

「ん? もしかしてもう一つ欲しいのかな?」

 

「お兄さん、この後時間ありますか?」

 

 聞く者が聞けば勘違いしそうなセリフを発する冒険者ちゃんだが、生憎彼女が言いたいのはそういう意味じゃない。

 

「もしかして、また話を聞きたいのか?」

 

 俺がそう言うと、冒険者ちゃんは懐から一冊の本を取り出した。

 

「今日はコレ」

 

 その本のタイトルは『鋼の救世主』。……そう、この子もまたベル君と同様この本のファンなのだとか。ただ、ベル君と違う所は、彼女は書かれた部分を自分なりに解釈して物語を広げるのが好きらしい。それで、自分が気になった部分を俺に色々質問してくるようになったのだ。

 

 そもそものきっかけは、店の向こう側で英雄ごっこ遊びをしている子ども達を眺めていて無意識に「英雄……か」と呟いたところをこの子に聞かれた事だった。

 

「あ、いらっしゃいませ」

 

「……」

 

「? どうかしたのかな?」

 

「……お兄さんにとって、英雄って何ですか?」

 

 一瞬、はて? となったが、それが数秒前の自分のつぶやきに対する問いだと気づく。そういえば、おじいさんに聞いたが、この世界では「英雄」って特別な意味を持ってるんだよな。……そういえば、以前にも似たような質問をされた事があったっけ。

 

 そんな事を思い出しつつ、俺は答える事にした。

 

「そうだな。英雄と聞くと歴史に残るような偉業を成し遂げた人間を思い浮かべるけど、俺は人の数だけ英雄がいると思うんだ」

 

「人の数だけ?」

 

「例えば、あそこで遊んでいる子ども達。あの子達が毎日楽しく遊び回れるのも、親御さんが一生懸命汗水流して働いているからだ。大切な家族の為に懸命になって仕事に励む……俺からすればそれだけで十分偉業さ」

 

「あの子達にとっては親が英雄って事?」

 

「ああ。超人的な能力が無くても、歴史に名を残さなくても、世界を救わなくても、人は誰かの英雄になれる。その誰かが多いか少ないかの違いだけだと俺は思う。キミにだって、そういう人達がいるんじゃないかな?」

 

「……私の英雄。そんなの……」

 

「何か言ったか?」

 

「何でもない。なら、お兄さんにもいるの? そういう人」

 

 それはもちろん両親……と答えたいが、初対面の子には中々ショッキングな話になるし、ここまもうちょっと明るい方向にもって行きたいし……。

 

「そうだな、『鋼の救世主』なんか……」

 

「え……?」

 

 っておい! 何でそうなる! ああやばい、俺、ベル君の英雄=鋼の救世主理論に浸食されてる!? いやまあ確かにまごう事なき英雄だが、さっき俺が偉そうに語った内容とそぐわないじゃねえか!

 

「い、いや、今のは―――」

 

「お兄さんも『鋼の救世主』を読んでるんですか……!?」

 

 先ほどまでの無表情から一変、目をキラキラさせながら顔を近づけてきた冒険者ちゃん。その瞬間俺は悟った。この子……ベル君と同じだと。

 

 それから『鋼の救世主』についてもっと話がしたいとせがまれたが、流石に仕事中だと断ろうとしたところで店長が「……休憩行ってこい」と何故か冒険者ちゃんの味方をした結果、近くの広場の芝生に腰を下ろして話をする事になった。

 

 最初に言ったが、冒険者ちゃんは何度も同じ場面を読み返しては登場人物がこの時どう思っていたとか、この裏では実はこうなっていたとか自分なりの考察を披露してくれた。その中には的を射ているものもいくつかあって、聞いている内に面白くなってきた俺はつい口を挟んでしまったのだ。

 

「はは、そうそう。キミの言う通りあの時は出撃前に……」

 

 それがいけなかった。どこにも載っていない情報をスラスラ語りだす俺に冒険者ちゃんは増々興味を持ってしまったらしく。休憩時間ギリギリまで質問攻めにされたのは忘れていない。

 

 それから来る度にソワソワと話を聞きたそうにされるので、休憩時間でよければと答えている内に気づけばこうして休憩時間間際に来店する様になってしまった。

 

「……行ってこい。女の誘いは断るもんじゃねえ」

 

「はい……」

 

「ふふ、行ってらっしゃい」

 

 店長と先輩に見送られ。いつもの場所に向かう。はてさて、今日はどんな事を聞かれるのやら……。

 

………

 

……

 

 

 休憩時間が終わり、冒険者ちゃんと別れた俺は仕事を再開する。別れ際、近い内に遠征するからしばらく来れなくから戻ったらまた話を聞かせて欲しいと言われた。とりあえず冒険者ちゃんの無事を願いつつ彼女を見送った。

 

しばらくすると、最近になって新たに常連さんとなった人物が現れた。

 

「いらっしゃいませ」

 

 この世界には人間と呼ばれる種族が複数存在している。今来店されたのは猪人と呼ばれる種族の男性だ。かなり大柄な人で、そのせいか店長も先輩もちょっと緊張しているように見える。そんな中、毎回彼が小さなじゃが丸くんを美味しそうに食べている姿を見て和む俺。うんうん、こんなに美味そうに食べる人が悪い人なわけないじゃないですか。

 

「今日もお遣いですか? いつもありがとうございます」

 

「うむ」

 

 この人は仕えている人の代わりにじゃが丸くんを買いに来ている。聞くところによると、その主さんがたまたま見かけた俺の仕事ぶりを気に入ってくれたそうで、それから売上に貢献してくれるようになったのだ。言われてみれば、バイトを始めてからどこからか視線を感じた事が何度かあった気がする。流石に空の方から感じたのは気のせいだろうが、それ以外の視線の中にもしかしたら主さんがいたのかもしれないな。

 

 まだ始めたばかりなのにというありがたさと申し訳なさに恐縮しつつ、それなら一度お礼くらい言っておかないとと思って来店をお願いしたが、恥ずかしいからと断られてしまった。ずいぶんとシャイな人なんだろう。

 

「あの方は忙しいからな(礼を言いたいと伝えたら突然鼻歌とスキップを始め、来店を勧められたと伝えたら「え、いや、待って頂戴それは無理。至近距離だなんて尊すぎて直視できない」と目を覆う……やはりあの方の考えは俺の及ぶところではない)」

 

 そう言われてしまっては仕方ない。けど、時間が出来たらいつかは会えたらいいな。

 

「お待たせしました。熱いので気を付けてください」

 

「ああ。また来る」

 

 両手いっぱいに袋を下げて去って行く男性に頭を下げる。今日も美味しく食べてくれればいいんだが。

 

 その後、時間いっぱいまで働いた俺は店を後にした。いやぁ、今日も盛況だったな。あれから他の常連さんも何人か来てくれたし。……あ、でも……。

 

「そういえば、今日は()()()()()()()来なかったな」

 

 マックールさんは小人族という名前の通り四十代でありながら少年の様な姿をしている男性冒険者で、あのロキ・ファミリアに所属している。

 

「やあ、キミが噂のお兄さんだね。僕にも話を聞かせてくれないかな」

 

 初対面でいきなりそんな事を言われて混乱したが、詳しく聞くとあの冒険者ちゃんの関係者との事。男性なら大丈夫だろうと名前を聞いてみると。

 

「へえ、僕の事を知らないのか。……なら、僕の事はマックールとでも呼んで欲しい」

 

 口ぶりからして有名な人なんだろう。偽名っぽいが、知らねえなら自分で調べろバーカって事なのかもしれない。

 

 と思っていたのだが、実際話してみるとマックールさんは凄い人だった。物腰柔らかだし、何より話していてこの人頭いいんだなってすぐに理解できた。なので、そんな彼がロキ・ファミリアに所属していると聞いた時は思わず顔をしかめてしまった。

 

「どうかしたのかい?」

 

 そう気遣ってくれるマックールさんに俺はつい尋ねてしまった。あなたみたいに優しくて落ち着いた人がロキ・ファミリアにいて苦労してませんかと。

 

 どういう意味かと聞いて来るマックールさん。俺は初日にあった出来事を話した。話している内に彼の顔はどんどん不機嫌なものに変わっていった。

 

「試験は厳しいけれど受けるのは自由……ロキ・ファミリアの団長の言葉ですが、俺と一緒にこの街に来た男の子は受けさせてもらえる事無く追い出されました。結局、アレは対外的にイメージを良くしようとしただけの上辺だけの言葉で実際はそうじゃないのか。それとも、団長の考えが団員達に周知出来ていないのか。そんな統制出来ていない組織じゃマックールさんみたいに真面目な人は苦労しているんじゃないかと勝手に思っただけなんですが」

 

「……いや、ありがとう。大事な事を教えてもらったよ。この件は責任を持って僕が()()()()()()()()()()

 

 言い聞かせて? ああ、もしかして団長さんに直接言ってくれるのかな?

 

「しかし、それでマックールさんの立場が悪くなったら」

 

「心配は無用さ。その男の子への対応も問題だが……初対面で男娼呼ばわりなんて冒険者以前に人間として論外だ。とにかく、後は僕に任せておいてくれ」

 

 やけに迫力のある雰囲気のままマックールさんは去って行った。その数日後に来店した時には「当事者にはしっかり話をつけた」と言っていたが、あの二人は上手い事反省してくれたのだろう。マックールさん……やっぱり凄い人なのかも。

 

 と、マックールさんの事を考えている内にホームへ戻って来ていた。地下に向かうと二人の姿はない。ベル君はダンジョン、ヘスティアはまだバイト中かな。ならとりあえず、片付けでもするか。初日からチマチマやってるがまだ十分じゃないしな。

 

 そうして、二人が帰ってくるまで俺は部屋のホームの掃除に勤しんだのであった。

 

………

 

……

 

 

 そうしてさらに半月後、バイトから帰宅したらヘスティアが先に戻っていた。

 

「やあ、お帰りリョーマ君。今日もお疲れ様だ」

 

「ヘスティアもお疲れ様。ベル君はまだか?」

 

「もうそろそろ戻って来ると思うけど」

 

 などと会話している間に上の方からどたどたと足音が聞こえて来た。

 

「はぁ……はぁ……た、ただいま帰りました」

 

「ど、どうしたんだいベル君!? そんな息を切らして!」

 

「はぁ……はぁ……。き、聞いてください二人とも! 今日、凄い人に会ったんです!」

 

 ベル君の出会ったという凄い人。果たしてどんな人物なのか。まあ、それを聞く前にまずは……。

 

「水でも飲むか?」

 

 この汗だくのベル君を落ち着かせないとな。

 




はてさて、今回登場した人物達。いったい何者なんでしょうかね。

怪物祭りまではなるべく早めに更新したいと思ってます。


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オラリオに騎士(笑)がいるのは間違っているだろうか その五

ちょっと予想外の展開かもしれません。


 ベル君の話をまとめるとこうだ。彼は今までダンジョンの上層で活動していたが(活動初日からお世話になっているアドバイザーさんに言われていた)、今日はいつもより調子がいいと感じて先の階層に進んでしまったらしい。

 

 そうしてしばらく周りのモンスターを倒して回っていたら、突如として雄叫びと共に新たなモンスターが現れ、しかもそのモンスターというのがさらに先の階層じゃないと出現しないというミノタウロスというヤバいヤツだったそうで、慌てて逃げ出したが案の定追い掛け回されてしまい、あわや追い付かれそうになったその時、モンスターの背後から風の様に駆けて来た冒険者がミノタウロスを一撃で倒してしまったのだとか。

 

 その時、ベル君は冒険者に倒されたミノタウロスの血をモロに浴びて血まみれになってしまったそうだ。そんな彼に冒険者の方から大丈夫かと声をかけてきたので、ベル君もまたお礼と共に自己紹介をした。そうすると冒険者の方も名乗ってくれたそうで。その名前がアイズ・ヴァレンシュタイン。

 

「そして、そのヴァレンシュタインさんというのがロキ・ファミリアに所属しているという凄腕の女性冒険者だったという事でいいのか?」

 

「はい! アドバイザーのエイナさんにお願いして教えてもらいました。なんとレベルが5で二つ名までもってるそうなんです」

 

 へ~、やっぱり実力はあるんだなあのファミリア。

 

「ベ、ベベベベベル君!? まさかキミ、そのヴァレン某とかいう女に心奪われちゃったとかじゃないよね!?」

 

「え? いやいや、そんなんじゃないですよ神様。確かに綺麗な人だなーとは思いましたけど、僕がこの街に来たのは憧れの人達の様な人間を目指すためなんですから。……あ、でもあの強さには確かに心奪われたかも……」

 

「そ、そんな……。ベル君が他所の女に誑かされてる……!」

 

「も~、だからそういう意味じゃないですってば~」

 

 崩れ落ちるヘスティアに苦笑するベル君。中々な災難に見舞われたようだが、こうして無事に帰って来てくれて何よりだ。労わるためにも今日の夕飯は張り切って作らないとな。

 

………

 

……

 

 

 翌日、俺とベル君は街に出かけていた。今日は互いにバイトと冒険者活動は休みだ。

 

「リョーマさんと一緒に出掛けるのも久しぶりですね」

 

「そうだな。この間の休みはヘスティアと一緒に出掛けたんだろ?」

 

 そのヘスティアは今日は朝からバイトだ。自分も一緒に出掛けたいと最後までごねていたが、最後は諦めてトボトボとバイト先へ向かって行った。

 

「あはは、あの日は色々連れまわされちゃって休みなのに疲れちゃいましたけど」

 

「そうなのか。なら今日はどこかゆっくり出来る場所へでも―――」

 

「も、もし、そこの冒険者様……」

 

 少し上擦った声が背後から届く。何事かと振り返れば、そこにはウェイトレスの様な格好をした少女が立っていた。

 

「僕の事ですか?」

 

「これを落としましたよ」

 

 そう言って女の子はベル君に石の様なものを差し出した。

 

「あ、魔石の欠片! うわあ、全然気づかなかった。すみません、ありがとうございました」

 

「いえ、お気になさらないでください」

 

 柔らかく微笑む女の子。

 

「わざわざ追いかけて来てくれたのか。ありがとう。俺からも礼を言わせてもらうよ」

 

「い、いいいいいいいえいえいえいえいえ! 本当に、いや本当に気にしないでください! たまたま! そう、たまたまなんです!」

 

 女の子の優しさに暖かな気持ちになりながら合わせてお礼の言葉をかけた瞬間、女の子の微笑みが一瞬で崩れシュバッ! と効果音が付きそうな速さで俺達から離れた。

 

「そ、それよりですね。ついでと言っては何ですが宣伝させてください。実は私、そこの酒場で働いているのですが、よければぜひ一度食事にいらしていただければ私としては嬉しいです」

 

「あ、そうなんですか。そういう事なら拾って貰ったお礼じゃないですけど、お邪魔させてもらいますね」

 

「はい、お待ちしてますね」

 

 中々いい雰囲気で会話するベル君と女の子。……もしかして彼女、ベル君の事が気になっちゃってるとか? 宣伝するなら俺にもしてもいいと思うけど、頑なにこっち向こうとしないし。……俺、邪魔者じゃん

 

「リョーマさん、早速今日の夜にでも神様も誘って食べに行きませんか? お金の事なら僕にドドーンと任せてください」

 

「はは、流石に自分の分は自分で出すよ。そういう事ならヘスティアにバイト終わりに合流するよう伝えておかないとな」

 

「あ、そうですね。なら今から神様のバイト先に行ってみましょうか。すみません、僕達そろそろ失礼しますね。えっと……」

 

「私はシル。シル・フローヴァです」

 

「僕はベル・クラネルです。じゃあシルさん。また夜に会いましょうね」

 

ペコリと一礼するフローヴァさんと別れ、俺達はヘスティアのバイト先へ向かい歩みを始めた。……え? 俺は名乗らなくていいのかって? 別にいいんじゃね(泣)。

 

「……………耐えた。よく耐えたわ私」

 

………

 

……

 

 

 そして、辺りがうっすらと暗くなってきた時間、俺達はフローヴァさんの働いている酒場の前に到着した。

 

「ここがシルさんの働いている『豊饒の女主人』ですね」

 

「すっかり賑わっているようだな」

 

 外からでも中で騒いでいるであろう客達の明るい声が聞こえてくる。

 

「それにしても、神様残念ですね。まさか今日に限って夜までシフトだなんて」

 

「間に合えば必ず行くって言っていたし、それまでのんびり待っていればいいさ」

 

「そうですね。じゃあ行きましょうか」

 

 並んで店内に入ると、複数のウェイトレスが忙しなく動き回っていた。

 

「あ、ベルさん! 来てくれたんですね」

 

 その中の一人、昼に出会ったフローヴァさんが俺達に気づいた。

 

「こんばんはシルさん。忙しそうですね」

 

「ふふ、ここはいつもでこうですよ。早速お席に案内しますね」

 

 カウンター席に案内された俺達は揃って腰を下ろした。そこへカウンターの向こうから一人の女性が身を乗り出して来た。

 

「アンタ等がシルのお客さんかい。はは、アンタ冒険者のくせにずいぶん可愛らしい顔をしてるねぇ。で、そっちのアンタは……」

 

 ベル君の顔を見て笑う女性だったが、一方で俺の方には値踏みするような目線を向けて来た。

 

「何か?」

 

「アンタは……いや、何でもない。中々イイ男だと思っただけさ」

 

 褒められた……のか? なんか歯切れ悪いけど。

 

「っと、ここにはおしゃべりじゃなく食べに来たんだよね。さあ、そこにメニューがあるからさっさと決めとくれ」

 

 女性の言われるままメニューを手に取る。さてと、せっかくの外食だし、少しばかり贅沢してもバチは当たらないよな。

 

………

 

……

 

 

 注文した料理を平らげ、ヘスティアの到着を待っていると、入り口の方がにわかに騒がしくなってきた。思わず目を遣ると、十数人規模の団体が突如として入店してきた。

 

「おい、アレ……」

 

「ああ、帰って来たのか。ロキ・ファミリア」

 

 周囲の客の声が耳に届く。あれがロキ・ファミリアの団員達か。

 

 ひそひそと話す客達の視線などものともせずに彼等は俺達の席の対角線上のテーブルに腰掛けた。

 

「さあて、おっぱじめるかぁ!」

 

 音頭を取った女性に合わせる様に、注文した飲み物の入った器をぶつけあいながら騒ぎ始めるロキ・ファミリア一同。そういえば、ファミリアの宴会にもよく利用されるってさっき聞いたっけ。

 

「アレがロキ・ファミリアの人達かぁ。なんか遠目に見ても強そうな人達ですね」

 

 ベル君も興味があるのかチラチラと目線を向ける。俺は……別にいいかな。

 

 そのまま騒ぎ立てるロキ・ファミリアを尻目にチマチマと飲み物を飲んでいると、一人の男性が殊更大きな声でしゃべり始めた

 

「そうだアイズ。せっかくだしあの話を聞かせてやれよ!」

 

「あの話……?」

 

 ……ん? 今男性に聞き返した声、どこかで聞いたような。

 

「お前が五階層で始末したミノタウロスと、その時いたトマト野郎の話だよ!」

 

 声が大きすぎて嫌でも耳に入って来る。下層からの帰還中に出くわしたミノタウロスの集団から逃がした数匹を追いかけた先で、そのミノタウロスに追いかけられていた新米冒険者を助けたら返り血でその冒険者がトマトの様に真っ赤になったそうだ。

 

「兎みたいに逃げ回った挙句、全身に血を浴びてポカンとしてたんだぜ? いや、あの時の野郎の間抜け顔は傑作だったぜ!」

 

 テーブルをバンバンと叩く男性につられる様に周りの人間も笑い声をあげる。……いや、まさかと思うけど、今の話に出ていたトマトみたいになった冒険者って。

 

「あはは、僕の事みたいですね」

 

 うわぁ……最悪だ。マジでベル君の事か。

 

「逃げ回るだけでロクに反撃もしねえ。最初から戦うつもりもない雑魚ほど目障りなもんはねえ。ったく、なんであんなヒョロガキごときが冒険者やってんだか」

 

 勝てないなら撤退するのは当たり前では? いや、そんなツッコミはどうでもいい。本人に聞かせるような内容じゃないぞ。

 

「うーん、やっぱりいいお店だと水も美味しいんだなぁ」

 

 思わずベル君の方を向くと、彼はケロッとした顔でお代わりした水を美味しそうに飲んでいた。

 

「ベル君?」

 

「なんですかリョーマさん?」

 

 え、ちょ、まさかのノーダメージ!?

 

「ああ、僕は気にしてませんよ。あの人の言ってる事は正しいですからね。あの人達から見て僕が弱いのは当然ですから」

 

 そう言って、ベル君は残りの水を一気に飲み干すと、器をカウンターに叩き付ける様に置いた。

 

「『鋼の救世主』の中でだって、強敵を前に逃げたりしてました。けど、それは次に戦う時に必ず勝つためだからです。だから僕も諦めませんよ! 一生懸命ダンジョンで鍛えて、いつかミノタウロスだって倒してみせます!」

 

 ま、眩しい! 眩しすぎるぞこの子! もう主人公じゃないか! ベル君……いや、ベルさんと呼ばせてください!

 

 瞳に中に炎を灯すベル君に心の中で拍手喝采する。いやあ、『鋼の救世主』が世界を飛び越えたと聞いた時はどうなる事かと思ったが、こういう影響ならいい方なんじゃないか?

 

「……あの」

 

「美味しいものも食べたし、明日からはもっと気合い入れて頑張るぞぉ!」

 

「その意気だベル君。俺も今まで以上にサポートするからな」

 

 なんか俺にまで熱が入って来たわ。明日からバイト頑張れそうだ。

 

「あの」

 

「はい、心強いです!」

 

「あの……!」

 

「「ん?」」

 

 そんな熱い会話を繰り広げている俺達の間に突如として涼やかな声が割り込んできた。ベル君と同時に振り返ると、そこにはなんと冒険者ちゃんが立っていた。

 

「やっぱり、お兄さんとベルだ」

 

「キミは……」

 

「ア、 アイズさん……!?」

 

 アイズ? え? じゃあ冒険者ちゃんがベル君の恩人のアイズ・ヴァレンシュタインさんだったって事!?

 

「一緒に晩御飯? 二人はどういう関係なの?」

 

「ぼ、僕とリョーマさんは一緒のファミリアなんです。アイズさんこそどうしたんですか? あっちでファミリアのみなさんとお話してたんじゃ……」

 

「ベ―トさん達の所為でつまらなくなったから抜けて来た。この間フィンがロキ・ファミリアの品位や名誉を損なう様な言動をしたら例外なく罰するって宣言したのにもう忘れてる」

 

 チラリと目を遣ると、先ほど騒いでいた男性が猿轡をされた上でロープでグルグル巻きにされているのが確認できた。

 

「だ、大丈夫なんですかあの人。なんか動いてすらいないんですけど」

 

「なんか番がどうこう言われたから平気で他人を馬鹿にするベ―トさんより直前まで危険な目に遭っていたのにちゃんとお礼を言える人の方がずっといいって答えたらああなった」

 

 俺とベル君の会話の間にそんな事になっていたとは。まあ、静かになったからいいか。

 

「それよりベル。今、『鋼の救世主』って聞こえたんだけど」

 

「き、聞かれてたんですね……って、え!? もしかしてアイズさんも読んでるんですか!?」

 

「愛読書」

 

 Vサインと共に懐から一冊の本を取り出すヴァレンシュタインさん。それに応じるようにベル君も鞄から本を取り出す。

 

「三巻……いいチョイスだねベル」

 

「アイズさんこそ。八巻の第四章は僕も大好きです」

 

 本を片手にガッシリと握手を交わす二人。ここで同好の士に出会えるとは思ってもみなかったんだろう。嬉しさが顔に出ている。

 

「アイズたん、そんなところで何やっとるんやぁ?」

 

 そこへ新たに二人の人物が近づいて来た。一人は先ほど宴会の音頭を取った女性。そしてもう一人はマックールさんだった。

 

「やあ、久しぶりだね」

 

 相変わらずの紳士スマイルを見せるマックールさん。対照的に怪訝な目を向けてくる女性。

 

「フィン、何やコイツ?」

 

「遠征前に話しただろう? 彼はその一人さ。……もしかして、アイズと握手してる彼が」

 

「ええ。ついでに先ほどそちらの席で会話のネタにされていたのもベル君です」

 

 そう言うと途端に顔色の変わる二人。

 

「……一度とならず二度までも。穴があったら入りたいとはこの事だな」

 

「せやな。……ちょい、そこのチビ助」

 

「はい?」

 

「ウチはロキ。ロキ・ファミリアの主神や」

 

「僕はフィン・ディムナ。ロキ・ファミリアで団長をさせてもらっている」

 

 あ、やっぱり偽名だったんだなマックールさん。

 

「話はこのフィンから聞いとる。ウチの子がエライ迷惑かけたみたいやな」

 

「ベル・クラネルです。あの時の事はもう気にしてませんから」

 

「アンタが良くてもこっちが良くないんや。詫びっちゅうわけやないけど、もしアンタが今からでもウチに入りたいっていうんなら試験受けさせたるけど」

 

 マックール……じゃなかった、ディムナさん、本当に話をつけてくれていたみたいだな。

 

「すみません。せっかく提案していただいてありがたいんですけど。僕、もう別のファミリアに入ってるんです。僕は僕のファミリアで、僕を拾ってくれた神様のために頑張りたいんです」

 

「そうか。キミがそう決めたのならこれ以上は言わないよ。先ほどのベ―トの暴言も含め、重ね重ね申し訳ない」

 

「あはは、だからもういいですって。それに、さっきの話を聞いたら余計みなさんのファミリアになんて入れそうにないですから」

 

「どういう意味や?」

 

 首を傾げるロキ神に、ベル君は合点がいったような顔で続ける。

 

「僕、まだ冒険者になって一月過ぎなんですけど、あそこにいるみなさんはその頃にはもうミノタウロスを倒してるんでしょ? ()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 つまりベル君は、さっき笑っていた連中は冒険者になって一月でミノタウロスを倒してしまったほどの実力者だから、自分達と比べて逃げだしたベル君を笑っていたのだろうと考えたらしい。

 

 いつの間にかロキ・ファミリアの団員どころか店内中の視線が俺達に向けられていたが、ベル君はそれを気にした様子もなくなおもしゃべり続ける。

 

「僕、ミノタウロスと対峙した時、情けないですけど凄く怖かったんです。だからろくに特徴とか観察する事が出来なくて、もしよかったら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()に攻略のヒントとか教えてもらえたら嬉しいです。いつかは戦わないといけない相手でしょうから」

 

「い、いや」

 

「俺は別に……」

 

「な、なあ?」

 

 気まずそうに目を背ける団員達。……あ、そういえばこの前たまたま聞いたけど、確かそういう情報ってファミリア内でしか共有しないんじゃなかったっけ。

 

「ベル君、それは他所のファミリアには教えない決まりじゃなかったか?」

 

「え? あ、そっか! そういった情報とかってファミリア内で共有するもので他のファミリアの人間には教えちゃ駄目だったんですよね。すみません。さっきも言いましたが僕、冒険者になったばかりでそういう事にも疎くて……」

 

「……くく」

 

「ロキ?」

 

 いきなり顔を伏せ、肩を震わせ始めたロキ神にディムナさんが声をかけた次の瞬間、彼女は腹を抱えて大笑いを始めた。

 

「く、くくくく……だーっはっはっは! チビ助、お前おもろいやないか! 見ろやフィン、この純粋な目! コイツ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……ああ、そういう事か。ふふ、確かに面白いね。なんだか大物になりそうな予感がするよ」

 

「ええでええで()()! 暇な時にロキ・ファミリアに遊びに来いや。それまでにアンタの言う実力者のみなさんにミノタウロスの攻略法まとめさせといたる」

 

「「「はあっ!?」」」

 

「本当ですか!? ありがとうございます!」

 

「ぶふっ! (まだ信じとるコイツ!)」

 

 深々と頭を下げるベル君。それを見てさらに笑い声をあげるロキ神。どうやら彼女に気に入られたみたいだ。

 

「じゃじゃーん! ボク、ただいま参上! さーて、ベル君とリョーマ君はどこに……って、何この状況?」




当初の予定では前話のマック―ル(フィン)との会話をカットして、この酒場内で切れたオリ主が糾弾する感じでしたが、そうなるとどうしてもオリ主が目立ってしまうし、そもそもそんなキャラでもないので、変えてみました。


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オラリオに騎士(笑)がいるのは間違っているだろうか その六

 この日、ヘスティア・ファミリアに初めてのお客さんがやって来た。

 

「やあ、お邪魔するね」

 

「失礼する」

 

 小柄な男性と長髪の女性。知らない人から見れば姉弟の様に見える二人だが、その内の一人は正体はロキ・ファミリアの団長である。

 

 席に着いてもらっている間にお茶を用意する。チラッと目を遣るとディムナさんはニコニコと、女性の方は微動だにしないでこちらを見ていた。ええ……あんな風に見られる様な事したっけ俺?

 

「お待たせしました」

 

 お茶と一緒に数日前にバイト先の人に教えてもらって買いに行ったお菓子を机に並べる。

 

「どうぞ、お好きなのを」

 

「い、いや、我々は客として来たわけでは……」

 

「ありがとう。僕これ好きなんだよね」

 

 戸惑う女性と対照的に嬉々としてお菓子に手を伸ばすディムナさんを女性が睨む。

 

「フィン……」

 

「リヴェリア、こうして用意してくれたものを断るのはそれこそ失礼だと思うよ?」

 

「……はあ」

 

 溜息を吐く女性。しかし、そんな彼女が複数あるお菓子の中から迷うそぶりを見せず苺味のお菓子に手を伸ばしたのを俺は見逃さなかった。

 

「な、なんだ? 好きなものを取っていいと言ったのはキミだろう?」

 

 いや、俺何も言ってないんですけど……。まあいいや、追求しようものなら絶対ややこしい事になるだろうし。

 

 とりあえずお茶とお菓子を平らげてもらったところでぼちぼち本題に入る事にした。

 

「さて、今日お邪魔させてもらったのは他でもない。ロキ・ファミリアの団長として、改めて謝罪をさせてもらおうと思ったからだ。本来であれば、主神であるロキにも同席してもらうのが一番だったのだけど……」

 

「……ヤツをここに連れて来ると、謝罪どころではなくなる可能性があったからな。不服かもしれないが、代わりに副団長である私、リヴェリア・リヨス・アールヴが同席させていただく」

 

 アールヴさんの言うロキ神をここに連れてこなかった理由。それは、ロキ神がウチの主神であるヘスティアとすこぶる仲が悪いからだ。

 

 あの『豊饒の女主人』でロキ・ファミリアの面々と顔を合わせた日、遅れて来たヘスティアは俺達の傍にいたロキ神の姿を見つけるといきなり「こら絶壁! ボクの大事な家族に何しようとしてる!」と詰め寄ったのだ。対するロキ神も「はあ!? いきなり現れたと思ったらケンカ売っとんのかドチビ!」と言い返し、次の瞬間には取っ組み合いのケンカを始めてしまったのだ。

 

 ちなみに、二人がケンカしている最中、ベル君は周りにいた冒険者の人達に囲まれていた。

 

「おう小僧! 中々言うじゃねえか!」

 

「見ろよ。あいつ等すっかり意気消沈してるぜ」

 

「こっち来なよ! 面白いもん見せてくれた礼に一杯おごってあげるわ!」

 

「え? え?」

 

 違う席に引っ張られていくベル君を見送りつつ、俺は一人飲み物片手に過ごそうとしたのだが、ヴァレンシュタインさんとディムナさんに捕まってしまった。

 

「お兄さん、遠征中に聞きたい事まとめたから今からお話しよう?」

 

「おっと、少し待ってもらえるかなアイズ。やあ、お兄さん。彼だけではなくキミにも正式な謝罪をしなければならないのだけど……どうもそんな空気じゃなさそうだ。近い内にキミ達のホームにお邪魔させてもらうよ」

 

 その二日後、バイト先にやって来たディムナさんから訪問日を伝えられ、そして今日、宣言通りやって来たというわけだ。

 

「さて……。では、改めて。この度は僕達のファミリアの人間がキミに対して不快な発言をしてしまった事、まことに申し訳なかった。ロキ・ファミリア団長、フィン・ディムナとして深く謝罪する」

 

「同じく、ロキ・ファミリアの副団長、リヴェリア・リヨス・アールヴとして、団員の非礼を謝罪する。今後、二度とこのような事が起らぬよう、全団員へ徹底させる事をここに誓う」

 

 先ほどまでのにこやかな表情から一変、誠意ある顔と声色で深々と頭を下げるディムナさんと、再発防止を約束するアールヴさん。

 

「はい。お二人の謝罪、確かに受け取りました。ですのでこの件はもうお終いです」

 

 もう気にしてないという意味を込めてあえて明るい口調で言ってみる。そうすると顔を上げた二人も表情を和らげた。

 

「ありがとう。キミの寛大な心に感謝を。今リヴェリアが告げたように、団員達の意識の改善はすでに始めている」

 

「キミとあの少年……ベル・クラネルを侮辱した二人はペナルティとして雑用係への降格を命じている。まったく、報告すら怠るなど門番という役目を何だと思っていたのだ」

 

 え、あの二人そんな事になってたの? それはまあ、頑張れとしか言えないが、いきなりそんな事命じられたら不満なんじゃないのか?

 

「ああ、逆恨みとかは心配しなくていいよ。万が一反省もせずキミ達に危害を加えようとするのなら、容赦無く“追放”すると明言しておいたからね」

 

「それと、先日の『豊饒の女主人』での騒ぎを鑑みて、しばらく店を利用しての宴会を自粛する事にした。酒で気が大きくなるのは仕方ないが、それが他の冒険者を貶していい理由になどなるわけがないからな。しかも、それが人目の多い酒場でなど論外もいいところだ」

 

「ああいう所での話っていうのはあっという間に広がるからね。実際あの日以降ベル君を笑っていた者達は他所のファミリアの冒険者達に実力者(笑)なんて散々煽られて肩身を狭そうにしてるよ」

 

 ? 何でそれが煽りになってるんだ? ベル君の言う通り、それだけの実力あったから笑ってたんじゃないのか? いくらなんでも自分が出来なかったくせに他人が出来なかったらそれを笑うなんて恥知らずな真似、出来るはずがないし。もしそんな輩がいたら見てみたいもんだわ。

 

「おいフィン。身内の恥をわざわざ晒すんじゃない」

 

「そうじゃないよリヴェリア。初めて潜るダンジョン。初めて戦ったモンスター。初めて感じた死の恐怖。僕は今でもハッキリ覚えている。キミだってそうだろう?」

 

「……」

 

「始まりは皆一緒。僕達だって彼と同じ頃があったんだ。けれどそれを忘れた彼等はベル君を笑った。……ねえ、リヴェリア。今、このオラリオに本当にベル君を笑える冒険者が果たして何人いると思う?」

 

「……さあな。そもそも、実力があろうがなかろうが、ダンジョンの過酷さを知る者が同業者を笑っていいとは思わない」

 

「はは。まあそれが当たり前なんだけどねぇ。……っと、ごめんごめん。すっかり置いてきぼりにしちゃったね。とにかく、団員達の意識改革はしっかりやらせてもらうから」

 

 いきなり話を振られたのでとりあえず頷いておく。なんか意味深な空気だったけど、俺、聞いててよかったんだろうか。

 

「さてと、こうして無事に謝罪も受け入れてもらえたし、ここからはもっと楽しい話を……」

 

「待てフィン。お前、まだ彼に謝らなければならないことがあるだろう」

 

「何かあったっけ?」

 

 ?マークを浮かべるディムナさんにアールヴさんが鋭い目でツッコむ。

 

「偽名を使って彼に近づいた事に決まっているだろう! どういう意図か知らないが、失礼にもほどがある!」

 

「あー……。ゴメン、僕の姿や顔を見ても全然反応なかったから、ちょっと面白くなっちゃってつい……」

 

「つい……じゃない! それと謝るのは私じゃなく彼にだ!」

 

「わかったわかった。別に騙すとかそういうつもりじゃなかったんだけど、本名を名乗らず混乱させてゴメンね。ええっと……」

 

「どうした?」

 

「……そういえば、キミの名前聞いてなかった」

 

 たはは~と頭を掻くディムナさんにアールヴさんの額に青筋が浮かんだ。

 

「フィンッ!!!」

 

 それから、平謝りするアールヴさんを宥めた所で、改めて俺は名前を告げた。

 

「じゃあ、これからはリョーマ君と呼ばせてもらうね」

 

「私も構わないだろうか?」

 

「ええ、どうぞ呼びやすい様に」

 

「ところで、今日は他の二人はどうしたんだい?」

 

「ベル君はダンジョンで、ヘスティアは友人の所に訪ねるといって留守にしてます」

 

………

 

……

 

 

 あの日、酒場での騒ぎを耳にしたヘスティアは怒り心頭といった様子で、ホームに戻るなり「おのれ~。絶対ぎゃふんと言わせてやる~! ロキ・ファミリアめ、ボクを怒らせたらどうなるか思い知るがいい!」などと発言し、殴り込みでもかけるのかとベル君が慌てて止めようとした。

 

「お、落ち着いてください神様。いいんです。ちゃんと謝ってもらえましたし」

 

「それじゃボクの気が済まないのさ!」

 

「だ、だからといって乗り込むのはちょっと……」

 

「乗り込む? いや、そんな事はしないよ」

 

「へ? そうなんですか? なら何を……」

 

「武器だ! ベル君、ボクがキミにすんごい武器をプレゼントしてあげる! ミノタウロスなんか一撃で倒せちゃうような強力なヤツをね! 任せてくれ、ボクの友人に頼めばそれくらいちょちょいのちょいさ!」

 

 ムフーと鼻息荒く胸を張るヘスティアに、ベル君は一瞬嬉しそうな顔をしたが、静かに首を横に振った。

 

「……いえ、神様。すごくありがたい提案なんですけど、それは必要ありません」

 

「ど、どうしてだい? ボクの事、信用できない?」

 

 断られた事に酷くショックを受けたヘスティアが見る見る内に萎んでいく。そんな彼女にベル君は微笑む。

 

「そんなわけないじゃないですか。神様が僕の為に一生懸命になってくださっているのは普段からよくわかっています」

 

「じゃあ、どうして……」

 

「生意気かもしれないですけど、僕は、僕の力でミノタウロスを倒したいんです。どんな相手でも、諦めずに頑張ればいつか勝てる。……僕があの人達(鋼の救世主)から学んだ事です。だから、僕は他の人より遅くても一歩一歩確実に進んで行こうって決めたんです。そしていつか、神様やリョーマさんが自慢出来る様な立派な冒険者になる。……それが僕の目標の一つなんです」

 

「ベ、ベルぐ~~~~~ん!!!」

 

 感極まったヘスティアがベル君に抱き着く。正直、俺も同じ様にしたかったが、俺みたいな野郎にひっつかれても絶対嫌だろうから自重する。

 

「……わかったよベル君。けれど、武器自体は必要だろ? キミが今使っているヤツ、大分ガタが来ているんじゃないかい?」

 

「そうですね。鍛冶師の方にお願いして何度か手入れしてもらってるんですけど」

 

 ベル君が冒険者になったその日に買った短剣は近くで見ると確かにボロボロである。これじゃ確かに心もとないだろう。

 

「うん。じゃあやっぱりボクから武器をプレゼントさせてもらうよ。これからキミの目標の為に一緒に歩んでいく“相棒”をね。それくらいはいいだろう?」

 

「ッ、はい! ありがとうございます!」

 

………

 

……

 

 

 そういうわけで、ヘスティアはベル君の新しい武器を作ってもらいに友人の元へ向かったというわけだ。

 

「ところでリョーマ君、キミは冒険者としてダンジョンに潜ったりしてはいないのかい?」

 

 回想していたらディムナさんからそんな風に聞かれた。

 

「そうですね。俺はヘスティアから『恩恵』を授かってません」

 

「何か理由が? あ、いや別にどうというわけではないのだが、この街に来る若者は冒険者を目指す者がほとんどだからな」

 

「冒険者になりたいと言ったのはベル君なんです。俺は、彼が冒険者として活動に専念できるよう支えるために一緒に来ただけなんです」

 

「ベル君とはどういう関係なんだい?」

 

「彼の家に居候させてもらっていたんです。それでベル君が家を出るタイミングでこの街に」

 

 別世界から呼ばれましたなんて言えるわけないしな。

 

「居候という事は、元々は別の場所に住んでいたのかな? 名前から察するに極東の方からこちらへ移動して来たとか?」

 

「止めろフィン。まるで尋問ではないか」

 

「でもリヴェリアだって気になるでしょ? アイズの『母親』として噂のお兄さんがどんな相手なのかをさ」

 

「んなっ!? わ、私は別に……」

 

「母親?」

 

「幼い頃からアイズの面倒を見てくれていたのが彼女なのさ。そんなアイズが、最近やけに楽しそうだから理由を聞いてみたら、キミの話が出てね」

 

「……昔から物静かで感情も表に出さない娘だった。けれど、ある本を読み聞かせている時だけは目を輝かせ、続きをせっつかれたものだ」

 

「もしかして、その本というのは」

 

「そう。『鋼の救世主』さ。作者も不明。いつ書かれたかもわからない。けれど、人々の為に命をかけて巨大な悪に立ち向かう。そんな英雄達に憧れたんだろう。……だからこそ、全てを救う存在は物語の中にしか存在しない。……自分を救ってくれる存在は現実には決して現れる事は無いと思っているのさ」

 

 最後にぼそりと呟くディムナさん。隣にいるアールヴさんには聞こえたのか、少し悲しそうな表情をしている。何言ったんだこの人?

 

「リョーマ君、これからもアイズに色々話をしてあげて欲しい。これはロキ・ファミリア団長としてのお願いじゃない。フィン・ディムナとして……彼女の家族としてのお願いだ」

 

 先ほど謝罪してもらった時と同等かそれ以上の引き締められた顔を見せるディムナさん。

 

「ええ。俺でよければいくらでも。それに、ベル君も愛読してますし、彼もいい話し相手になってくれると思いますよ」

 

 あのがっちり握手を俺は忘れてないからな。

 

「はは、そうだね。なら、ベル君にもよろしく言っておいてくれるかな?」

 

 それから、しばらく雑談した後、二人は帰って行った。なんか謝罪より他の話の方が長かった気がするが……楽しかったからいいか。

 

SIDE OUT

 

 ヘスティア・ファミリアを後にしたフィンとリヴェリア。交わされる会話の話題は先ほどまで顔を合わせていた青年であった。

 

「それで、どうだったリヴェリア。アイズの“お兄さん”は?」

 

「あの年にしてはずいぶんと落ち着いていたな。それにこちらへの気遣いも感じられた。……ウチの連中に見習わせたいくらいだ」

 

「大事な娘を誑かす不届きな輩じゃなくて安心したかい?」

 

「ふん、もうその手には乗らんぞフィン」

 

「あはは、残念。でもそうか、()()()()()()()()。ねえ、リヴェリア。僕がリョーマ君にした質問を覚えているかい?」

 

「彼が冒険者かどうかと聞いたアレか?」

 

「うん。そして彼はこう答えた。自分はヘスティアから『恩恵』を授かっていないと」

 

 自分の記憶と相違ない事を確認しリヴェリアは頷いた。

 

「それがどうした」

 

「これってさ、微妙に質問の答えになってないんだよね。僕は冒険者かどうかと聞いたけど、彼は『恩恵』と返答した。それに、ダンジョンに潜っていないとも言わなかった」

 

「……まさか、彼が『恩恵』も無しにダンジョンへ挑んでいるとでも思っているのか? その危険性を理解していないお前ではないだろう」

 

神の『恩恵』により己の能力を引き上げていく事で人は強力なモンスターと戦う事が可能となる。それを無視するという事=死である事は()()()()()()()()()()()の常識だった。

 

「でもね、リヴェリア。僕の親指が疼くんだ。リョーマ君が“戦う者”であると。それもとびっきりのヤツだってさ」

 

 それがこれまで何度もロキ・ファミリアの窮地を救ってきたものだと理解しているリヴェリアは目の色を変える。

 

「まさか……本当に? しかし、それが真実ならば冒険者の間で噂になってもおかしくないはずだ」

 

「そこなんだ。けど、僕が調べた限りダンジョン内で彼に見かけたものはいない」

 

 まあ、上層と中層ではの話だけど……とフィンは告げる。

 

「では下層よりさらに先だと? 一人で? 『恩恵』も無しに? そんな事はありえない」

 

 リヴェリアの中で、先ほどまでの誠実そうな青年の姿が今では得体の知れない何かに変貌していた。

 

「彼は悪い子ではない。それは断言できる。でも……秘密を抱えているのは間違いないだろうね」

 

「ロキに伝えるか?」

 

「止めておこう。ここまでの話は全て確証のないものでしかない。ロキなら面白がるだけかもしれないが、許してもらったばかりでまた怒らせるような事につながる真似は避けたい。アイズの為にもね」

 

「……わかった。お前がそう言うのならこの話は胸に秘めておこう」

 

 ロキ・ファミリアのホームまで後数分。二人は無言で歩みを進めるのであった。




悲報、オリ主何もしてないのに警戒される。

次回から怪物祭りですが、ちょっとだけオリ主が活躍する予定です。あくまでちょっとだけですが。


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オラリオに騎士(笑)がいるのは間違っているだろうか その七

とりあえずあと二、三話で一旦終わらせます。もう少しだけお付き合いください。


「ただいまー! そしてお待たせベルくーん!」

 

 ニッコニコで帰宅したヘスティアに部屋の奥からベル君が顔を覗かせる。

 

「お帰りなさい、神様。お待たせって……あ、もしかして」

 

「ふふーん。そう、これが約束の物さ!」

 

 ドヤ顔と共に机の上に何かを置くヘスティア。それは革の鞘に納められた一本のナイフだった。彼女が抜いてみると、その刀身がキラリと光る。それを眺めるベル君は見惚れたように溜息をもらした。

 

「今、ボクの貯えで買える最高の素材で作ってもらったナイフだ。もちろん、ズルはしてないよ。ベル君、このナイフがキミの進む道を切り開いていくための助けになればボクは嬉しい」

 

 鞘にナイフを戻したヘスティアは微笑みながらベル君にそれを手渡した。……こういう表情を見ると、正しく彼女が女神さまだって思えるんだよな。

 

「……ありがとうございます、神様。大切に使わせてもらいます」

 

「うんうん。そうしてくれたまえ。さて、帰って来たばかりでなんだけど、お腹がペコペコなんだ。今日の晩御飯は何かな?」

 

「そう言うと思ってもう準備してあるよ」

 

「さっすがリョーマ君。じゃあお皿でも並べようかな」

 

「あ、僕も手伝います!」

 

 そうして、今日も三人で揃って仲良く晩御飯を食べるのであった。

 

………

 

……

 

 

 その数日後、朝から街は活気に満ちていた。今日は怪物祭りというガネーシャ・ファミリアが主催する祭典が行われる。モンスターを公衆の面前で調教するその催しは、ダンジョンとは縁の無い一般の人達からすれば大興奮のものだそうだ。一見物騒だが、もちろん安全面に関しては万全を期し、過去に行われた祭りでも問題が起った事は皆無なのだとか。

 

 モンスターを一度も見た事が無い俺も、この機会にぜひともお目にかかりたかったのだが、生憎今日はバイトが入っている。まあ、今日みたいな日は稼ぎ時だししょうがないっちゃしょうがないのだが。

 

 今日ばかりはベル君もダンジョンは休み。ヘスティアは数日前から今日は休むとバイト先に伝えていたそうで二人は揃って祭りに出掛けて行った。

 

「ヘスティア、これを」

 

 出かける直前、俺はヘスティアにこっそりお金の入った袋を渡した。

 

「リ、リョーマ君、これは?」

 

「ベル君のナイフでお金を使ったんだろう? ウインドウショッピングだけじゃ詰まらないだろうし、少なくてすまないが楽しんできてくれ」

 

「え、い、いいのかい!? それは嬉し……ファッ!?」

 

 袋を開けたヘスティアが仰天する。

 

「いやいやいや! 少ないどころか出店制覇出来そうな額じゃないか! こんなにもらえないよ!」

 

「これはベル君の為に動いてくれたキミへのお礼でもある。気にせず思い切り使いきってくれ」

 

「リョーマ君、キミってヤツはぁ……!」

 

「はは、せっかくの祭りなのに泣いてどうする。ほら、ベル君が待ってるぞ」

 

「そうだね。ならベル君と一緒にたっぷり楽しんでくるよ。本当に、ありがとうリョーマ君」

 

 大事そうに袋を抱いて出て行くヘスティアを見送り。俺も外出の準備を始める。さて、俺は俺で頑張りますかな。

 

………

 

……

 

 

「……今日はもう店じまいだ」

 

 せっせとじゃが丸くんを売り続けて二時間、唐突に店長がそう告げて来た。

 

「店長? ですが、むしろこれからが稼ぎ時なのでは」

 

「生言うな亮の字。おめえらみたいな若ぇのはせいぜい祭りでバカ騒ぎしてりゃいいんだよ」

 

 ……どういう事?

 

「ふふ、カンザキさん。つまりですね、バイトはもういいからお祭りを楽しんできなさいって店長は言いたいんです。それに、店長だって今日はお孫さんと一緒にお祭りを回るって約束してたみたいですし」

 

「……ふん」

 

 先輩の言葉にそっぽを向く店長。……その耳がちょっと赤くなっていたのは見なかった事にしておこう。

 

 そんなわけで、唐突にバイトが終了してしまった。ちなみに先輩はこれから依然話してくれた昔の仲間のみなさんに会いに行くらしい。そして店長は店じまいすると駆け足で去って行った。……お孫さん大好きなんだろうなぁ。

 

「さて、どうしようか」

 

 ベル君達と合流……この人の多さじゃ難しいかもな。とはいえ、さっさと帰宅するのも味気ないし。とりあえずブラブラしてみるか。

 

 そう決めて喧騒の中をのんびり歩んでいく。世界が変わっても、こういう賑やかさは変わらないものなんだな。

 

 そんな風に目的も無くふらついていたのだが、しばらくして前方の方がにわかに騒がしくなってきた。何かイベントでもやっているのかと思いきやどうやら違うみたいだ。

 

「おい、本当なのか?」

 

「ああ、向こうから逃げて来たヤツに聞いた」

 

「こっちは大丈夫なのか?」

 

「すみません、何かあったんですか?」

 

 事情を知っていそうな人がいたので近づいて話を聞いてみる。

 

「あ、ああ。実はな、ガネーシャ・ファミリアが捕まえていたモンスターが逃げ出したらしいんだ。冒険者が鎮圧の為に動いてるみたいだからその内捕まると思うけど……」

 

「何か別の問題が?」

 

「なんでも、白髪の坊主とその連れの女の子がその内の一匹に追われてるらしい」

 

 ……その男の子達に心当たりがありすぎるんですが。そうと聞いたらこんな所でジッとしている場合じゃない!

 

「すみません、ありがとうございました」

 

「お、おい! だからモンスターはそっちに……!」

 

 男性達の声を背に俺は走る。そうして人目のつかない物陰を見つけた所でそこへ隠れた。

 

「こうなった以上、躊躇う必要はない」

 

 この世界で出来た大事な物を守るため、俺は使う事は無いと思っていた“力”を解放した。

 

SIDE OUT

 

人々の笑顔があふれる祭り会場。それは突如として発生したモンスターの脱走により恐怖と混乱の場と成り果てた。

 

 巨体を銀色の毛で覆うそのモンスターの名前はシルバーバック。彼は立ち並ぶ露店をなぎ倒しながら一組の男女の元へ駆ける。

 

「神様、下がってください!」

 

 自らの主神を背後にナイフを抜く少年……ベル・クラネルは相対するモンスターの姿と日ごろ世話になっている専属アドバイザーの言葉を重ねていた。

 

―――これはシルバーバックというモンスター。ベル君が相手をするのはまだまだだいぶ先になるでしょうけど、情報として頭に入れておくのは大切な事よ。

 

 太く、強靭な手足による攻撃は生半可な防具では意味をなさず、レベル2の冒険者とて油断すればあっという間に危機に陥る。そんな凶悪なモンスターを冒険者となってまだ一月半の駆け出しが相手をするのは無謀でしかない。

 

―――いい? なんども言うけど、冒険者は冒険してはいけないの。そうして無理をして倒れていった人達を、私達は数えきれないくらい見て来たんだから。

 

(ごめんなさい、エイナさん)

 

 心の中でアドバイザーのエイナへ謝罪したベルは、深呼吸するとナイフを構えなおす。額に汗を滲ませながらも、彼の顔に恐怖や絶望は感じられない。何故なら、自分の背後には守らなければならない大切な人がいるからだ。

 

(逃げちゃだめだ。そう……逃げちゃだめなんだ)

 

 自らが憧れる英雄達の中にも本当は戦いを望まない人がいた。それでも、“彼”は自分を鼓舞し、敵に立ち向かっていた。

 

(逃げる事は決して恥ずかしい事じゃない。―――けど今は! 大事な人を守るためには逃げちゃだめなんだ! そうですよね、リョーマさん!)

 

 覚悟を決め、戦う意思を見せるベル。その瞬間、()()()()()()()()()()()

 

「~~~~~~~~!」

 

 雄叫びと共に跳躍したモンスターがベルに向かって力任せに右手を振り下ろす。その速度は駆け出し冒険者に反応できるものではなかった。

 

「ッ!」

 

 しかし、ベルはそれをローリングする事で避ける。そう、ギリギリではあったが確かに回避してみせたのだ。ベルの動きを隠れて見ていた街の住人は驚きに目を見開く。そして、それは彼が守ると決めた彼女も同じだった。

 

(今のを避けた!? まさか、あのスキルがベル君を……!?)

 

 恩恵を授けたその日、羊皮紙に記されたベルのスキルにヘスティアは思わず奇声をあげてしまった。

 

『騎士の応援』……倍の経験を得る。

『救世主を目指す者』……戦闘時、意志によりランダムで精神コマンドが発動する。レベルアップごとに発動種類が増加。

 

 まるで意味がわからなかった。『騎士の応援』だけでもとんでもないのに、『救世主を目指す者』に記された精神コマンドなど神である自分でも聞いた事が無い。

 

 結局、誰にも相談できずに今日を向かえてしまったが、ヘスティアはここに来てようやくそのスキルがベルを助けるものだと理解した。

 

「お返しだ!」

 

 燃え上がる意志と共に反撃として繰り出したナイフによる一閃は回避行動に移ったシルバーバックの左足を掠るだけに終わった。しかし次の瞬間、そこから大量の血が周囲にまき散らされた。

 

「~~~~~~!?!?!?」

 

 痛みと混乱でのたうち回るシルバーバック。与えるダメージを二倍にする『熱血』と必ず致命傷を与える『闘志』が組み合わされたその一撃は、たとえ薄皮一枚斬りつけるだけしか出来なかっただけでもそれほどの威力を示してみせた。

 

「ッ! 今だ!」

 

 こちらから視界を外したシルバーバックに向かってベルは駆ける。そして、ヘスティアから授けられた新たな相棒を両手に持ち、相手の胸元へ突き立てた。

 

「たぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 持てる全ての力を込め、ナイフを沈めていく。やがて、何か固いものを砕いた感触を得ると同時に、シルバーバックは断末魔と共にその巨体を地面に沈ませたのだった。

 

「……た、倒せたのか?」

 

 ふらふらになりながらもナイフを離さないベル。しかし、倒れたシルバーバックが静かに霧散していく様を目にし、緊張から解放された彼はその場にへたり込んだ。

 

「ベル君!」

 

 駆け寄るヘスティアにベルは喜びと興奮の混ざった笑顔で応えた。

 

「や、やりましたよ神s……」

 

「「「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」」

 

 ベルの声は大勢の声によってかき消された。それは、ベルとシルバーバックの戦いを始まりから決着まで見届けた住民達からの称賛の声であった。

 

「凄かったぞ坊主!」

 

「カッコよかったわよ~!」

 

「俺達を守ってくれてありがとなぁ!」

 

(……そっか。神様だけじゃない。僕、この人達も守る事が出来たんだ)

 

 誰かを守るために戦う。今まで物語の中でしか見られなかったそれを自分が成し遂げた。歓声を浴びる中、ベルは静かにそれを実感するのだった。




はてさて、結局間に会わなかったオリ主はどこで何やってるんですかねぇ。

ちなみに、ベルは戦闘開始時に命中率、回避率を増加する『集中』も発動させています。シルバーバックの攻撃を回避できたのはそのおかげです。意識がクリア云々は発動をそれっぽく表現しただけです。



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オラリオに騎士(笑)がいるのは間違っているだろうか その八

今回はオリ主サイドです。ちょっとだけ頑張ります。


「うおっ!?」

 

「きゃっ!?」

 

「な、何だ!?」

 

 轟音と風圧にビックリしている人達を()()()俺はベル君とヘスティアを探し回っていた。逃げ惑う人々を避けながら進むよりこの方が早い。迷惑をかけて申し訳ないが、緊急事態なので勘弁してもらおう。

 

 この街は複雑に入り組んでいるから探すだけで一苦労だ。ベル君なら無茶はしないと思うが、それでも早く見つけないと。

 

 「ニャニャ! ウチの店を襲おうだなんてふてえ奴らだニャ!」

 

『豊饒の女主人』の近くに差し掛かったところでそんな声が耳に届く。目を遣ると、まさに店の目の前で数人の女性が狼の様な動物に囲まれていた。あれが本物のモンスターか。

 

(危ない!)

 

 俺はロクに状況も確認せずすぐさまその場に突っ込んだ。頭上から一頭のモンスターに向かって剣を振りぬき、そのまま着地と同時に盾で数匹まとめて殴り飛ばす。その勢いのままその場で一回転し後方に並んでいた三頭を剣で切り捨てる。

 

(ふう、腕は鈍ってないようだ)

 

「だ、誰……?」

 

 突然の乱入者に固まる女性達。あ、お邪魔しました。見た所みなさん怪我とかないようだし、俺はこれで失礼しますね。

 

「お、お待ちください! あなたは……あなた様はまさか……!」

 

 すぐさま焔を吹かし空中に飛び込む。なんか声をかけられたような気がするが急いでいるのでごめんなさい。

 

「と、飛んだぁ!?」

 

 俺は再びベル君達を探しに向かうのだった。

 

「あ、ああ……!」

 

「ど、どうしたのニャ、リュー!? 今のすっ飛んでいった()()を知ってるのニャ!?」

 

「あの剣……あの盾……そして、あの背中に背負う蒼き焔。……忘れるはずがない。アストレア様、私はまたしても()()()に救われました……」

 

………

 

……

 

 

 このまま闇雲にさがしていいものかと悩む俺だったが、突如として閃いた。追われているという事はつまり騒ぎの中心にいるという事だ。ならばそういう場所を目指せばいいのだと。

 

 そう結論づけてそれっぽい所に突き進む。するとバキバキと物が破壊されたのであろう音や人々の怒号が聞こえて来た。もしや、しょっぱなで当たりを引いたか?

 

「レフィーヤ、避けてぇ!」

 

 違ったぁぁぁぁぁ! けどあの女の子が危ないぃぃぃぃぃぃぃ!

 

 気色の悪いウネウネした物に襲われそうになっている女の子の前に盾を構えて滑り込む。間髪入れずにウネウネがぶつかって来たが、大した衝撃ではなかったので盾で受け止めたまま剣でウネウネを斬り飛ばす。何とも言えない色の液体をまき散らしながらウネウネが地面でビタンビタンしているのを尻目に俺は女の子に目を遣る。

 

「……間に合った」

 

 なんとか助けられた事に俺は無意識に声を漏らしたのだった。

 

SIDE OUT

 

怪物祭り当日、アイズ・ヴァレンシュタインは同じファミリアの仲間と共に街へ繰り出していた。

 

 そこへ突如としてもたらされたモンスター脱走の報。偶然出くわしたギルド職員から詳細を聞かされたアイズ達はその場で討伐依頼を受諾。すぐさま動き始めた。

 

 武器を携帯していたのはアイズのみであったが、彼女に同道していたアマゾネスの姉妹ティオネ・ヒリュテとティオナ・ヒリュテは素手でも十分に戦える実力を持ち。魔法を得意とするレフィーヤ・ウィリディスというエルフの少女の援護によりあっという間に鎮圧を完了した。

 

 住民や出店者の避難も完了し、後はギルドに任せればいいと気を抜きかけたその時、突然地面を突き破り触手の様なものがアイズ達の前に現れたのだった。

 

 しかし、冒険者としてこれくらいの奇襲は何度も味わってきた彼女達はすぐさま反応し、ヒリュテ姉妹が揃って拳を叩き付けたが……。

 

「うげ、何この感触!?」

 

「ブヨブヨでまともに殴れないよ!」

 

 そこらの雑魚モンスターなら一撃で絶命させるほどの拳を受けても触手の動きは止まる事は無い。その間にも触手は数を増やし、モンスターの本体であろう花の部分が完全に地上に姿を現した。その数、三体。

 

「だったら……!」

 

 まさに疾風とも言える速度でアイズがモンスターに斬りかかる。衝撃には強い半面、斬撃には耐性がないのか、触手は簡単に斬り落とされた。

 

「さっすがアイズ! 頼りになるぅ!」

 

「でも、触手だけいくら斬ってもキリがないよ。早く本体を倒さないと」

 

「ま、任せてください!」

 

 アイズ達ばかりに戦わせるわけにはいかない。焦る気持ちでレフィーヤは詠唱を開始した。そう、遮蔽物も何もないモンスターの真正面で。

 

「レフィーヤ、避けて!」

 

「え……?」

 

ティオナの叫びにレフィーヤが反応した時点で、すでに触手は彼女の眼前に迫っていた。そこでレフィーヤは己の失態を悟った。

 

 魔法職が前衛で戦う事は無い。故にモンスターの攻撃にさらされる回数も前衛に比べれば少なくて済む。それはつまり、前衛に比べ“耐久”がほとんど無いという事だ。

 

 そんな自分が、あんな巨大な触手に穿たれたらどうなるか。その答えは考えるまでもなかった。

 

「っ……!」

 

迫りくる“死”を前に、レフィーヤの頭が真っ白になる。視界の端でアイズが必死の形相で自分に手を伸ばしているのが見えた。

 

(アイズさん、私……)

 

 間に合う距離ではない。それが理解できてしまったレフィーヤは静かに目を閉じた。いずれ自分を襲うであろう痛みを想像しながら。

 

(……………………あれ?)

 

 しかし、いくら待っても痛みどころか衝撃すらやってこない。まさかそれすらも感じる事なく自分は死んでしまったのか。

 

 そうして恐る恐る目を開けた彼女の目に映ったのは、醜悪なモンスターの姿でも、慕っている女性の顔でもなく……鮮やかな“蒼”だった。

 

(な、何が起こって……)

 

 刹那、触手が宙を舞う。そのまま地面に落下したそれは数回ほどのたうち回ったあと動かなくなった。

 

「……間に合った」

 

「え?」

 

 レフィーヤの目の前に立っていたのは全身を蒼い鎧で覆う人物だった。そうして彼女は自分が見ていたのはこの人物の背中で、触手から自分を守ってくれたのだと理解した。

 

 顔は隠されているが声からして男性だろう。しかし、レフィーヤにはそれ以上に気になる事があった。間に合ったと口にした彼の声に心からの安堵と喜びが込められていたからだ。

 

(どうして、見ず知らずの私を助けたくらいでそんな……)

 

「レフィーヤ、無事!?」

 

駆け寄るアイズ達にレフィーヤは抱いていた疑問をしまい込み頷く。

 

「はい、この人に助けてもらいましたから」

 

「よかったぁ。アンタ、どこのファミリアの冒険者か知らないけどやるじゃん! ありがとね!」

 

「突然現れたからビックリしたよ。というか剣デカ!」

 

 突然の乱入者ではあるが、仲間を救ってくれた恩人に変わりはない。礼もそこそこにティオネがモンスターを指差す。

 

「アイツ、打撃が効きにくいんだよね。アンタの剣ならさっきみたいに触手もぶった切れるみたいだし、アイズと一緒に任せてもいい?」

 

 ティオネの説明に冒険者は応えない。しかし、その代わりとばかりに突然彼女に向かって手をかざした。

 

「なんの真似……って、え、何コレ……」

 

「お姉ちゃん?」

 

 不審な行動をする冒険者に怪訝な目を向けるティオネだったが、その顔が驚きに染まる。何が起きたのか尋ねようとした妹を残し、なんと彼女はモンスターに向かって走り始めた。

 

「な、何するつもりなのお姉ちゃん!?」

 

「おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 これが答えだとばかりにモンスターを殴りつけるティオネ。その結果、殴られた箇所の肉が派手に千切れ飛んだ。

 

「は、はは……ホントにいけちゃった」

 

 殴った当人が信じられないとばかりに己の拳を見つめていた。

 

「ええ!?」

 

「す、凄いですティオネさん! まだ力を温存してたんですね!」

 

「……違う」

 

「え?」

 

 称賛の声をあげるレフィーヤにアイズが否定の声をあげる。

 

「ティオネは最初から全力だった。今のはこの人がティオネに何か魔法をかけたんだと思う」

 

「アイズの言う通りよ。なんか急に力が湧いて来たからものは試しと思って殴ってみたら通じちゃった。間違いなく、コイツが私に何かしたおかげよ」

 

 納得する両者に対し、レフィーヤが反論の声をあげる。

 

「ま、待ってください。この人、詠唱どころかいま一言もしゃべってなかったですよ!? それなのに魔法を発動させたなんてありえません!」

 

 通常、魔法を発動するにはそれに対応する詠唱を行わなければならない。しかし、レフィーヤの言う通りこの冒険者は全くそれを行ったそぶりは見せていない。それは彼女にとって到底信じられるものではなかった。

 

「そういうスキルを持ってるんじゃないの? それに、そんな事は今は問題じゃない。いま大事なのは、コイツがいれば私達の攻撃が通じるって事! さあ反撃開始よティオナ、アイズ!」

 

「了解! じゃあ、えっと。援護よろしく、蒼鎧君!」

 

「お願いします」

 

 モンスターへ立ち向かう三人へティオナが蒼鎧君と呼んだ冒険者は先ほどと同じように手をかざす。変化はすぐに現れた

 

「おお、来た来た来たぁ!」

 

「凄い、ホントに力が溢れてくる」

 

「……いける」

 

「みなさん!」

 

「レフィーヤも援護して! 大丈夫! 詠唱中はそこの蒼鎧が守ってくれるはずよ!」

 

 すると、任せろと言わんばかりにレフィーヤの前に立つ冒険者。再び目にするその背中に頼もしさを覚えた彼女は慌てて頭を振る。

 

(こ、こんな得体の知れない相手に私は何を……ま、まあ、助けてもらった事は事実だけれど)

 

「そっち! 触手が行ったよ!」

 

 複数の触手がうなりをあげてレフィーヤ達へ迫る。しかし、冒険者の右腕がフッとブレたかと思った瞬間、迫りくる触手達はその全てが両断され地に伏せる。

 

 自分では視認すら許されない超高速による迎撃をしてみせた冒険者にレフィーヤは何度目かわからない驚愕に顔を染める。同時に、彼がいれば自分の元に触手が飛んでくる事は無いと確信した。ならば、自分がやるべきことは……。

 

「解き放つは一条の光、聖木の弓幹。汝、弓の名手なり」

 

「やっちゃって、レフィーヤ!」

 

 レフィーヤの詠唱を聞き届けたアイズ達が左右に飛ぶ。そして、冒険者もまた己の役目は終えたとばかりに彼女の横へ下がる。そうする事で再びレフィーヤとモンスターとの間に遮るものがなくなった。しかし先ほどとは違い、彼女は既に詠唱を完了している。

 

「アルクス・レイ!」

 

 放たれたのは対象を追尾する光の矢。しかし、主神であるロキから「馬鹿魔力」と評され、副団長である「九魔姫」リヴェリア・リヨス・アールヴにいずれ後を継ぐものとして期待されているほどの可能性を秘めた彼女の発動させたそれは、杖を持たない今の状態ですらもはや矢と呼べるレベルのものではなかった。

 

 眩い光線がモンスター二体の腹部を呆気なく貫く。これが最期とばかりに触手を無造作に動かした後、モンスター達は動かなくなった。

 

「よくやったわレフィーヤ!」

 

「い、いえ、皆さんと……この人のおかげです」

 

 隣の冒険者に目を向ける。彼は相変わらず何もしゃべらず、その顔色をうかがう事も出来ないが、レフィーヤにはどうしてか、冒険者が称賛の意を示しているとわかった。

 

「っ……」

 

 それがどうしてか気恥ずかしくなり、レフィーヤはプイッと顔を背ける。けれど、そこに不快なものはなかった。

 

「ちょっとちょっと! まだもう一体いるの忘れてない!」

 

 ティオナの言う通り、射線からずれていた最後の一体は未だに健在である。するとそこでティオネの方が意外な提案をしてみせた。

 

「蒼鎧、後ろで守ってばかりで欲求不満なんじゃないの? アレ、アンタに譲ってもいいわよ?」

 

「お姉ちゃん……」

 

「何よその顔? いいじゃない。みんなこの謎の冒険者君の実力、気になるでしょ?」

 

「……ん」

 

「アイズさんまで……」

 

 ニヤニヤする姉と剣を収めるアイズに、妹とレフィーヤはそれぞれ溜息を吐く。

 

「それじゃ、好きにやっちゃっていいわよ。ああ、もしヤバくなったら助けてあげるから心配しないでね」

 

 四方から見つめられた冒険者は、観念したのか一歩踏み出すと左手に構えていた盾を掲げる。近くにいたレフィーヤは駆け足でその場を離れた。

 

 変化はすぐに始まった。アイズ達が見守る中、駆動音と共に盾がその形を大きく変えていく。やがて、身を守るための盾だったものは、冒険者の左腕を覆う巨大な剛爪となった。

 

「うわ、エグ……」

 

 指先で軽く触れるだけで斬り落とされそうなその凶悪な様相に思わずティオナは顔をしかめる。

 

―――ィィィン。

 

「?」

 

―――ィィィィィィン。

 

「ねえ、何か聞こえない?」

 

―――キィィィィィィン。

 

「あの人の後ろの方から聞こえ……」

 

―――キィィィィィィィィィィィィィン!

 

「ひゃあっ!?」

 

 四人の耳にどこからか聞きなれない音が聞こえて来た。まさか新手かと周囲を警戒しようとした瞬間、轟音と暴風がアイズ達を襲った。

 

「ちょっ、一体なに……が……」

 

「ティオネ?」

 

「ね、ねえみんな……アイツ()()()()()()

 

 ティオネが指さす先……そこには鮮やかな蒼い炎を背負い空中に浮いている冒険者の姿があった。

 

「な、何!? どういうカラクリ!?」

 

 見た事も無い芸当を見せる冒険者にティオナが思わず声をあげる。そんな中、アイズは驚愕

に目を見開き呟いた。

 

「……ブースターだ」

 

「ぶうすたあ?」

 

「し、知ってるんですか、アイズさん!?」

 

 レフィーヤの問いにアイズは答えない。何故なら彼女も信じられない思いでこの光景を眺めていたからだ。アイズの知る()()の中にしか存在しないはずの物が、現実に存在していたのだ。

 

 アイズの思考はあの冒険者の事でいっぱいになった。自分達の危機に駆け付け、見た事も無い力を使いこなし、極めつけは物語の英雄達と同じものを持っている。

 

(鋼の……救世主。私の……私の英雄……!)

 

―――いつか、アイズにもこの物語の様な英雄が来てくれるといいわね。

 

幼い頃、母親に読み聞かせてもらった『鋼の救世主』。読み終えた母親の言葉に、笑顔で頷く自分。それは今も決して忘れる事の無い記憶だった。

 

「ね、ねえ、もうちょっと離れた方がよくない?」

 

「そ、そうね。とりあえずあっちの方へ避難……」

 

 間違いなくこれからとんでもない事が起こる。そう予感したティオネ達だったが、移動は間に合わなかった。冒険者はモンスターに向かって突撃を開始した。

 

「~~~~~~~!」

 

 モンスターは本能で理解した。アレを近づけてはならない。近づけたら最後、自分は狩られると。

 

 残った全ての触手を駆使し、冒険者を近づかせまいとするモンスター。しかし、彼はまるで滑っているかの様に縦横無尽に空中を舞い、捕らえるどころか触れさせる事すらさせなかった。

 

 左腕の爪が甲高い音を立てながら展開する。それは眠っていた狩人が獲物を前にして目覚めの声をあげたかのようにレフィーヤには聞こえた。

 

 最早出鱈目に触手を動かすしか出来なくなったモンスターの頭上に影が差す。それにモンスターが気づいた時には何もかもが遅かった。

 

 剛爪一閃。それが全てを終わらせた。

 

 その凄まじき威力は、モンスターの体を引き裂いただけではなく、その背後の地面にまでその爪痕を残していた。その有様に戦慄するアマゾネス姉妹とレフィーヤ。それでも、アイズは熱の籠った目線をひたすら冒険者へ送っていた。

 

 その冒険者は、もはや役目は済んだとばかりに空中から周囲を見渡し、東の方へ顔を向けると再び背中に炎を灯した。

 

「ま、待っ……!」

 

 距離があったためか、アイズの静止の声は届かなかった。彼女は胸に手を当てながら、冒険者が消えて行った方角をいつまでも見つめていた。

 

「私は……私は、アイズ・ヴァレンシュタイン。あなたは……誰ですか?」

 

IN SIDE

 

 いやあ、花の化け物は強敵でしたねぇ。……なんて言ってる場合じゃないか。けど、あの状況で女の子を守らない選択肢はなかったし、もし女の子を無視してベル君を見つけたとしても絶対彼に軽蔑されていただろうしな。

 

 ただ、まさかあそこにヴァレンシュタインさんがいるとは思わなかった。多分一緒に戦っていた女の子達もロキ・ファミリアの団員達だったんだろう。正体がバレたら絶対にややこしい事になると思って()()()()()()()()()()()()()()()()大丈夫だろう。

 

 けど、モンスターってあんなデカいヤツもいるのか。精神コマンドで援護だけしてればいいと思ってたらいきなり倒せとか言われた時は焦ったわ。あんなのに毎日挑んでる冒険者って凄いんだなぁ。

 

 そんな感想を抱きつつ、俺はベル君探しを再開した。……のだが、結局俺が間に合う事は無く、追っていたモンスターはベル君自身が倒してしまったらしい。

 

 役に立てなかった申し訳なさと不甲斐なさに落ち込みつつ、俺は一足先にホームへと戻るのであった。

 

SIDE OUT

 

「ッ~~~~~~~~~!」

 

 この街で最高級の素材で作られた机を、痛む事などまるで気にしないかのようにバンバンと叩きながら悶絶する主神の姿を見て猪人の彼はくつくつと笑った。

 

(ふっ、()()め。また何かやらかしたな)

 

 彼が思い浮かべるのは、最近になって主が目をつけた二人の内、蒼い髪を持つ青年の顔だった。彼に関わる様になった事で、主は今まで見た事も無いような様々な表情を見せてくれるようになった。

 

 今もまた、つい数分前まで優雅にお茶を楽しんでいたはずの彼女が、自分の前で百面相をする様子に不遜であるとは承知しつつ、楽しくて仕方がなかった。

 

 猪人の彼にとって、青年はある意味恩人と呼べる存在であった。故に、彼もまた青年に対し、好ましい感情を抱くようになっていた。あの店に顔を見に行くのが楽しみに思えるくらいには。

 

「何か面白いものでも見れましたか()()()()()?」

 

「オ、オッタ! んぐ! 聞いてちょうだ! ああ! 彼! まさか彼! おえっ! シンザ! ファァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

「落ち着いてくださいフレイヤ様。お話なら後でじっくり聞かせていただきますので……まずは鼻血を吹きましょうか」

 

 用意していたタオルを手に、オラリオ最強と称されしレベル7の冒険者にしてフレイヤ・ファミリアの団長、『猛者』オッタルは敬愛する主神へと近寄るのであった。

 




オリ主の力って何? と気になられた方はぜひともD×D小説の方も読んで頂けると嬉しいです。

次回上手くまとめられれば最終回の予定です。

あと、オッタルがオリ主に感じているのは親しみであって断じてアッー! の方ではありませんのであしからず。


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オラリオに騎士(笑)がいるのは間違っているだろうか その九

お読みいただきありがとうございます。


 『神会』と呼ばれる集会がある。その名の通りオラリオに降り立った神々が集まり、様々な議題に取り組む……というのが表向きではあるが、実際は世間話に花を咲かせる事が多く、中には菓子や飲み物を持ち込んで宴会のごとく騒ぐ神もいる。

 

 とはいえ、まったく真面目な議題があがらないというわけではない。今から開かれる『神会』はかつてないほどの緊迫した空気の中、始められようとしていた。

 

 今回の会議の重要性は、集められた神々の表情、前回からまだ()()()()()()()()()にも関わらず開催を早められたことからもうかがえる。

 

「さて、本日はみな忙しい中集まってもらい感謝す……」

 

「前置きはいい。さっさと本題に入れ」

 

 進行役の口上を他の神が遮る。

 

「……そうだな。みな、すでに聞き及んでいるだろうが。“シンザン”が再び姿を現した」

 

 その名前に、その場にいた全ての神は五年前の記憶を思い出す。かつてオラリオに破壊と混沌をもたらしていた闇派閥の一つ、ルドラ・ファミリアを単身で壊滅させ。そして邪神を名乗る主神ルドラを()()()冒険者。オラリオの暗黒期を真に終わらせるきっかけを作ったその冒険者は名前どころかその素顔すらも不明だった故に神斬(シンザン)と名付けられた。

 

 そのシンザンが、五年の沈黙を破り再びオラリオに姿を現した。ふだんおちゃらけてばかりの神々が真剣な顔で会議に臨んでいるのはそのためだった。その真面目な空気は、普段の様子を知っているファミリアの人間が見たら「……誰?」と首を傾げるほどのものであった。

 

「確かなのか?」

 

「何故今になって姿を現したのだ?」

 

「そもそも、この五年間どこにいたのだ?」

 

 次々に疑問を口にする神達を、進行役は手を叩いて落ち着かせる。

 

「落ち着け。一つ一つ解決していこう。その為に証人も呼んである」

 

 入口の扉が開き、一人のエルフの女性が姿を現した。女性はそのまま急遽作られた証言台の前に立つ。

 

「リュー・リオンと申します」

 

「ん? 確かお前さん、アストレア・ファミリアの」

 

 気づいた神の指摘に女性は頷く。

 

「はい。私はかつてアストレア・ファミリアに所属しておりました」

 

「おお、やはり。アストレアのヤツはどうだ? いい加減オラリオに戻って来ればいいとみな言ってるぞ」

 

「ありがとうございます。ですが、あの方は未だにご自分を許されていないのです」

 

「アレはルドラの馬鹿の所為であってヤツの責任じゃないんだがなぁ。……と、話が逸れたな。本題に入ってくれ」

 

「畏まりました。……神々の皆様もご存じの通り、五年前、私達アストレア・ファミリアはルドラ・ファミリアのジュラ・ハルマ―の罠により壊滅の危機に陥りました。しかし、突如として現れた冒険者……シンザン様により助けていただきました。そして、先日行われた『怪物祭』で脱走したモンスターに襲われた時……私は再びシンザン様に助けられたのです」

 

 あの日、『豊饒の女主人』の店前でモンスターと対峙していたリュー達の前に、シンザンは彼女の記憶と全く変わらない蒼を纏い現れた。そして、モンスターを一蹴後リューの静止の声も聞かずにどこかへ飛び去っていった。

 

「おそらく、他に襲われている人を探しに行かれたのでしょう。かつての私達の様に」

 

「他人の空似という事は「ありえません。私達は五年前よりずっとあの方に感謝を捧げていました。あの姿を、あの背中を、私達が間違えるはずがありません」お、おう」

 

 心なしか目のハイライトが薄くなったリューの反論に押される様に頷く神。

 

「リューよ。その……シンザンは“剣”を持っていたか?」

 

「はい。間違いなく、邪神ルドラを斬ったあの剣をお持ちでした」

 

「そ、そうか」

 

 ルドラの末路を知る神々はその返答に冷汗を流した。不死の神にとって永遠の痛みに苦しみ続けるなど想像すらしたくないものであった。

 

「ほ、他に何かわかった事は無いのか?」

 

「……いえ、残念ながら、今回もお声すら聞く事が出来ず」

 

「ふむ、そうすると今回もシンザンの正体につながるものは無しか」

 

「―――いや、そうとも限らへんで」

 

 落胆する神へ別の神……会議の始まりからずっと無言で腕を組んでいたロキが初めて口を開いた。

 

「どういう意味だ、ロキ?」

 

「ええこと教えたる。……シンザンは男や」

 

 断言するロキに、今度こそ場は喧騒に包まれた。静まらせようとする進行役の声も空しく、近くにいた神がロキにつかみかかる勢いで迫った。

 

「ど、どういう事だロキ!? 何故知っている!?」

 

「『怪物祭』の脱走騒ぎ。ウチの子等もギルドの職員に頼まれて鎮圧に動いたんや。その途中、地下から現れた花のモンスターに襲われたそうなんやけど……来たんやって、その場にヤツが」

 

「シンザン様が!?」

 

「蒼い鎧に蒼い炎。アンタが助けられたっちゅうヤツと一緒やろ? で、ウチの子の一人が襲われそうになった所にいきなり姿を現してその子を守ってくれたんやけど、その時ヤツがしゃべったんやと……「間に合った」ってな。その声はどう聞いても男の物やってその子は言うてた」

 

「間に合った……か。普通に考えれば、目の前で危機に陥っていた相手を助けられたからの言葉なんだろうが……」

 

「私は五年前のシンザンの暴れぶりを目撃したが……あれだけの暴れっぷりを見せておきながら怒りの叫びどころかルドラすら無言で斬り捨てていたぞ。そんなヤツがそれくらいで口を開くか?」

 

「……そういえば、レフィーヤ曰く、初対面の人間を守ったにしてはやけに嬉しそうやって言っとったな」

 

「……シンザン君にとっては“それくらい”ってものじゃなかったんじゃないかな」

 

 発言主……ヘスティアへ神々が目を向ける。

 

「なんや、おったんかいなドチビ」

 

「さっきからずっといたよ! こんな時くらい真面目にやれないのかキミは!」

 

「いいからヘスティア、先ほどの言葉の意味を教えてくれ」

 

「さっきから話を聞いてて思ったんだけど、多分、シンザン君って凄く優しい子だと思うんだ。危ない目に遭っている人達の元へ一直線に駆け付ける。そんな性格の子なんだと思う。……だから五年前、アストレア・ファミリアの子達が傷つけられるのを防げなかった事をずっと悔やんでいたんじゃないのかな。けど、今回はロキの所の子が傷つけられる前に助けられた。だから嬉しくて思わず声が出ちゃったんじゃないかってボクは思ったよ。この五年、姿を見せなかったのも、自分の力が足りない所為だからってずっと己を鍛え続けていたんじゃないのかな。そして、満足いく力を手に入れたからこそ再びオラリオに戻って来たって考えられないかい?」

 

「……ドチビのくせに、それなりに納得出来てまうのがムカつくわぁ」

 

「ふっふっふ。キミと違ってボクは頭がいいからね」

 

「は、よう言うわ。頭に回すべき栄養を全部その無駄な脂肪にため込んどるくせに」

 

「にゃっ!? ふ、ふん。その脂肪すらまともにつけれないヤツに言われてもねえ」

 

 ヒートアップしていくヘスティア達を尻目に、神々達は会議を続ける。

 

「で、では、シンザンは五年前よりさらに強くなっているというのか……!?」

 

「ヤツはどこのファミリアなのだ! ……まさかとは思うがラキア王国の手の者ではないだろうな!?」

 

「それはないだろう。あれほどの存在を有しているのならばアレスであればすぐにこちらにぶつけてきているはずだ」

 

「うむ。あの頭筋肉野郎が五年間も隠しておくはずがない。むしろ嬉々として宣伝するはずだ」

 

「―――その通り。“彼”は間違いなくこの街の人間よ」

 

 その言葉と共に再び扉が開く。現れたのは神々の中でも随一の美貌を持つ美の女神、フレイヤであった。

 

「フレイヤ。今来たのか?」

 

「ごめんなさい。準備に手間取っちゃって。許してくれるかしら?」

 

 懇願するかのように上目遣いをするフレイヤに男神達の鼻の下が伸びる。それを軽蔑した目で見つめる女神達であった。

 

「も、もちろんだとも。さあ、キミも席に着くといい」

 

「ええ。それじゃあ……」

 

「ちょい待ち」

 

 ゆったりとした動きで席に着こうとしたフレイヤをロキが静止する。が、フレイヤは気にせず着席した。

 

「もうロキ、お話するのは構わないけど座ってからにしてちょうだい」

 

「ぬかせ。それよりフレイヤ。なんで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ロキの指摘に何人かが目を丸くする。確かに、フレイヤは入室時に“彼”と口にした。しかし、シンザンが男だというのはロキから説明されるまで誰も知らなかった情報だ。

 

「しかもこの街の住人だとも言うたな。……もしかして自分、シンザンの正体に心当たりがあるんとちゃうか?」

 

「そ、そうなのかフレイヤ?」

 

詰問するロキにフレイヤは、まるで何かを落ち着かせるかの様にしばし目を瞑った後、頷いた。

 

「……そうね。あなたの言う通り、私はシンザンが誰なのかを知ってしまった。けれど、それをあなた達に教えるつもりはないわ」

 

 静かに、だがはっきりとした拒絶の意を込めたフレイヤの言葉を、ロキは鼻で笑う。

 

「なんやまたいつもの病気かいな?」

 

「違うわ」

 

「はっ、ならどういう理由や?」

 

「……じゃない」

 

「なんて?」

 

「だから、“彼”に迷惑がかかるじゃないって言ったのよ。もし力づくで聞き出そうとするなら、私はすぐにでも天に帰ります」

 

 「迷惑がかかる」「天に帰る」「迷惑がかかる」「天に帰る」

 

「……はぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」

 

 フレイヤの言葉を何度も反芻したロキはその意味を理解すると愕然と声をあげた。

 

 あのフレイヤが! 気に入ったものは何でも自分の物にしないと気が済まないフレイヤが! その気になれば魅了の力でなんでも思い通りに出来るフレイヤが!

 

「他人に気を遣ったやとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?!?!?」

 

 ロキの驚愕はすぐさま他の神々にも伝染した。男神はもちろん、女神達は「明日は槍が降る」「明日はウチの子達はダンジョンに行かせない」などと口走っている。

 

 それほどフレイヤがシンザンを気にかける態度は神々を驚かせるものであった。そして、彼女に天に帰るとまで言わせたシンザンという存在に改めて戦慄するのだった。

 

「し、しかしフレイヤ。ヤツは神すらも斬ってしまう危険な男で……」

 

「あら、五年前の事はルドラの自業自得でしょ。神の力すら通じなかった時点で自分の負けを認めておけばよかったのに」

 

 攻め込んできたシンザンに対し、ルドラは自らを邪神と名乗り、眷属達に排除を命じた。しかし、眷属達の攻撃は盾すら構えていないシンザンに一切通用せず。業を煮やしたルドラが自ら消そうと神の力を解き放ったが、それすらもシンザンは意に介さないまま、恐慌状態に陥ったルドラに一歩一歩ゆっくりと近づき……斬った。

 

 神の力を跳ね返し、神すらも斬る。そんな存在が危険でないのならばなんだというのだ。

 

 けれど、フレイヤにはそんな心配は無用と言える根拠があった。

 

「”彼“の魂の輝き……それが全てを物語っているわ。あれほどまでに眩く、美しく、そして力強い……あの輝きは、正しい心を持ち、とてつもない偉業を成し遂げたものしか得る事は決して出来ないものよ。あの輝きを見るだけで私は……私は……でゅふふ」

 

「フレイヤ?」

 

「はっ、こ、こほん。とにかく、彼は正しく英雄の道を進む者です。決してこのオラリオに混乱をもたらす者ではない。このフレイヤの名にかけて断言します」

 

(この英雄狂いにそこまで言わせるんか。……にしても、一瞬ものごっつ気色の悪い顔したように見えたが……ウチの見間違いか?)

 

「わかった、フレイヤ。その者の魂の本質を見抜くことが出来るキミが自らの名をかけて言うのならば、私は信じよう」

 

「俺も」

 

「私もだ」

 

「では、シンザンに対しては、無暗に正体を探るのではなく、動向に注目していくという事でいいだろうか?」

 

「「「異議なし」」」

 

「なお、今回の『神会』は急遽執り行われる事となったもの故、通常の『神会』は予定の日時で執り行うので各自忘れない様に」

 

こうして、緊急で開かれた『神会』は唯一の議題への全会一致で幕を閉じた。緊迫した空気から解放された神々はすぐに席を立つ者、しばし雑談に興じるもの様々であった。

 

「……結局、成り行き任せって事やろ」

 

 堅苦しさから解放されたロキは背伸びをするとさっさとホームへ帰ろうと出口へ向かう。そこへ一人の女性が割り込む。

 

「お待ちください、ロキ様」

 

「あん? なんか用かリュー? ウチ、はよう帰ってアイズたんに癒されたいんやけど」

 

「さきほどおっしゃられていたシンザン様のお声を聞いたという方にぜひともお話を聞かせて頂きたいのです」

 

「まあ、それくらいなら構へんけど」

 

「ありがとうございます。ではロキ・ファミリアのホームまでご一緒させていただきます」

 

「え、今から……?」

 

「何かご都合が悪いのですか?」

 

「せやから、ウチアイズたんと……いや、何でもあらへん」

 

 何故か急に物分かりの良くなったロキと共にリューは会場を後にしたのだった。

 

「さーて、ツリ目もいなくなった事だし、ボクもベル君とリョーマ君の元へ帰ろっと」

 

 今日の夕食は何かなーっとウキウキな気分で立ち上がったヘスティアに彼女の友人であるヘファイストスが声をかける。

 

「帰るの、ヘスティア?」

 

「ヘファイストス! うん、ボクの家族が待ってるからね! ……あ、そうだ。一度お礼に行こうと思ってたんだよ。キミの所で作ってもらったナイフ。ベル君凄く喜んでたよ。シルバーバックもそれで倒したんだから」

 

「お礼なら私じゃなくヴェルフに言いなさい。あのナイフを仕上げたのは彼なんだから」

 

「もちろんそのつもりさ。だけど、キミを怒らせてしまったボクのお願いを聞いてくれて、ヴェルフ君に作成を命じてくれたのはキミだ。だからキミにもちゃんとお礼を言いたいんだよ」

 

 ありったけの感謝の気持ちが込められたその目に、ヘファイストスも微笑む。一人ぼっちだった友人にようやく出来た家族。自分の所で怠惰な生活を送っていた彼女はもうどこにもいない。家族の為に確かに変わったヘスティアの姿が嬉しかった。

 

「自分の弱さ、未熟さを受け入れ、それでも諦めずにあがく。……ヴェルフはベル・クラネルと自分を重ねたのかもしれない。だから引き受けたんでしょうね」

 

「ヘファイストス?」

 

「……何でもないわ。それなら、一度ベル・クラネルを連れて遊びに来なさい。その子、防具の方はまだ揃えてないんでしょう?」

 

「うん、そうさせてもらうよ。……ところで、その時は友達のよしみでちょっと安くしてもらったりとかは……」

 

「お代はきっちり頂きます」

 

「だよねぇ! ええい! こっちはナイフの素材にありったけ突っ込んだからほとんど残ってないってのに!」

 

 もっといいバイトを探さなければと頭を抱えるヘスティア。それを見て、こういう所は変わっていないのかと苦笑するヘファイストス。そして……その二人の会話を耳に入れながら面白そうに笑顔を見せるフレイヤ。

 

(ベル・クラネル。私が見つけたもう一つの無垢なる魂。これからもたくさんの試練があの子に降りかかるでしょう。その全てを乗り越えた先に……私の求めるものがある)

 

 フレイヤは常に翻弄する側であった。しかし……その自分がこれでもかと翻弄される立場になると、この時の彼女は夢にも思っていなかったのだった。

 

 

 

IN SIDE

 

「リョーマさん、“シンザン”って知ってますか?」

 

 ダンジョン帰りで疲れているにもかかわらず、夕飯の準備を手伝ってくれていたベル君がそんな話を振って来た。

 

「ああ、バイト先の先輩から聞いたよ。五年前にオラリオに姿を見せた冒険者の事だろう?」

 

「はい。なんとですね、そのシンザンが『怪物祭』の日に姿を見せたそうなんですって。ギルドどころか街でもみんなその話題で持ち切りなんですよ」

 

 それも知ってる。だって先輩が滅茶苦茶興奮した口調で説明してくれたし。マシンガンみたいな早さで語り続ける先輩に店長は軽く引いてたもんな。

 

「なんでもロキ・ファミリアのみなさんと一緒に脱走したモンスターを倒したのだとか。物凄く強いけどどのファミリアにも所属していない謎の人物らしいですよ」

 

 あの時、ヴァレンシュタインさん達以外の団員達も別の場所で戦ってたのか。それにしてもミステリアスな冒険者だな。ベル君を探し回ってる間にはそれっぽい人見かけなかったし、どこらへんで戦ってたんだろう?

 

「その内、ベル君もダンジョンで出会う事があるかもしれないな」

 

「そうですね。その時は迷惑にならない程度に観察させてもらって、盗めそうな技は盗めたらいいなって思います」

 

 うーん、向上心の塊。まあでも、シンザンさんのおかげであの時の俺の事は話題になってないっぽいし。正体バレの事は気にしなくてよさそうだな。

 

 そんな風に安堵しつつ、俺は噴きかけの鍋を火から離すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 近い将来、多くの人々の前で自ら正体を明かす事になると、この時の俺は知る由もなかった。




 というわけで、最終話なのに伏線たっぷりでお送りしました。本当はダンまち編のゴールは『戦争遊戯』だったのですが、そこまで執筆意欲がもつかどうかわかりませんし、このダンまち編自体あまり評価が芳しくないようなので、一旦の終了とさせていただきます。そんな中感想を書いて下さった皆様には感謝しかありません。

最後に少しばかり説明をさせていただきます。すでにみなさんご承知の通り、シンザンの正体はオリ主です。ではこれからオリ主は過去に舞い戻るのかと言われれば実はそうではありません。

答えはD×D編にあります。本編においてオリ主は原作キャラの一人に罠にはめられ、世界から放り出されます。その間の事をオリ主は夢の中の出来事だと思い込んですっかり忘れ去ってしまっています。ですが、実際はもちろん夢などではなく、飛ばされた様々な世界で勘違いっぷりを発揮しまくって鬱フラグクラッシャーとして大暴れします。

その飛ばされた世界の一つが五年前のダンまち世界だったというわけです。飛ばされて早々、女性達が怪物に襲われていたのですぐに助けに入り、重傷の彼女達を精神コマンドで癒し、コソコソしていた怪しい男を捕まえれば、その自白内容にブチ切れ、男の首根っこを掴んだまま本拠地に殴り込みをかけたというのが真相です。なお、一言もしゃべらなかったのはダンまち世界の前が某聖杯戦争の世界で狂戦士やらされていた名残です。ダンまちの次の世界では治ってます。

以上で説明を終わりますが、他の部分を投げっぱなしというのも後味が悪いので、『戦争遊戯』まで書いていたらどういう感じで正体をバラすか簡単に書いてみます。

ベル「リョーマさん、助っ人を連れて来るって言ってたけど」

オリ主「お待たせ、騎士(笑)しかいなけどいいかな?」←ダイナミックヒーロー着地で登場。

観戦者「アイエエエ!? シンザン!? シンザンナンデ!?」

アポロン・ファミリア「あっ、おい待てぃ。『戦争遊戯』に他所のファミリアの人間は参加出来ないゾ」←すでに泣きそう。

オリ主「ドーモ、ヘスティア・ファミリアノカンザキ リョウマデス」←兜部分パカー。

観戦者「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!」

オリ主関係者「「「ファ――――――――――ッ!?!?!?」」」

ロキ「おいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!! どういう事やドチビィィィィィィィィ!!!」←CV坂口 大助

ヘスティア「うーん……」←白目剝いて気絶。

フレイヤ「んほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」←鼻血ブシャー。

 ざっとこんな感じです。え? ふざけすぎ? ならオリ主の名乗りの部分だけ真面目に書きますね。



―――アポロン・ファミリアの異議は最もであった。『戦争遊戯』はファミリア同士の決闘。神と神の代理戦争である。そこへ他のファミリアの介入は一切許されていない。故にこそ、ヘスティア・ファミリア側として参戦したヴェルフ・クロッゾ。ヤマト・命は『改宗』を行いヘスティアの眷属となったのだ。

 ベル達はもちろん、『戦争遊戯』という一大イベントを見逃してなるものかと観戦に来ていた神々や冒険者達が固唾を飲んでシンザンを見つめる。それだけの視線を集めながら、彼はまるで動じた様子も無く顔をアポロン・ファミリアの面々へ向けた。

「……ほお、()()のホームを破壊するという無法を犯した貴様等が、ルールを守れとほざくか」

(え、今の声って……)

 静かに、だが確かな怒りの込められたその冷たく鋭い声はアポロン・ファミリアの数人を腰抜けにしただけでなく、観戦者達の額にも冷汗を流させるほどの威圧感があった。

 そんな中、ベルだけはその声に聞き覚えがある事に気づく。オラリオに来て以来、ずっとそばで自分を見守っていてくれた尊敬するその人の名は……。

「問題無い。何故なら俺は……」

 シンザンの頭部を覆い隠していた兜が光と共に消滅する。そして、光の消失と共に明かされたシンザンの素顔に“彼”を知る人々は驚愕する。

「ヘスティア・ファミリアの一員、神崎 亮真だからだ」

 対峙する者達へ堂々と名乗りをあげるその姿は、見る者全てに『騎士』を思わせるのであった。



 以上です。それでは、最後までお読みいただき、まことにありがとうございました。


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