Fairy Vanguard (TubuanBoy)
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スタンド・アップ
火竜と先導者


アニメキャラを出したい!ユニット(カード)のキャラも出したい!ユニット設定を生かしたい!と言う欲望の結晶作品です。
ヴァンガの原作キャラはみんな出すつもりです。いつになるかわかりませんが。


 

フィオーレ王国、人口1700万人の永久中立国。この国では魔法文明が栄えており沢山の魔導士が暮らしている。

魔導士はギルドと言うグループに属し、色々な仕事を受け持つことを生業としている。

 

これはそんな魔導士ギルドの一つ【妖精の尻尾】(フェアリー・テイル)でのお話。

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

ハルジオンの街の駅、電車に酔い潰れているお客に駅員が尋ねる。

 

「あ……あの……お客様……

だ…………大丈夫ですか?」

 

「う〜〜〜〜」

 

呻くお客の横で連れの客が介抱していた。

 

「あい!いつもの事です。」

「ほらナツくん……駅に着いたよ。」

 

いつもの事と説明する喋る青い猫と酔った客に肩を貸す青髪の少年。

 

「無理‼︎もう二度と列車には乗らん‼︎

…………うぷっ!!」

「お願いだからここで吐かないでよ………」

「すまねぇアイチ…………」

 

酔っている少年は桜色の髪の毛に鱗のようなマフラー、名前は『ナツ』。

その少年に肩を貸している青髪の少年は『アイチ』。

二人について行く喋る青い猫は『ハッピー』である。

 

「情報が確かならこの街に火竜がいるはずだよ、行こ!」

「こんな平和そうな街に竜なんているのかな?…………」

「イグニールは優しい竜なんだぞ!!いたっていいだろ!!」

「ゴメン、ゴメン、そういう意味じゃないよ。」

 

三人が街を歩いていると若い女の子たちがピンクい声をあげて走っていくのを見かける。

 

『キャー、キャー!』

火竜(サラマンダー)様〜〜』

 

「「火竜(サラマンダー)!?」」

火竜の名前に反応するナツとハッピー。

「俺たちも行くぞ!!」

「あい!」

 

「あっ!ちょっと待って!」

 

 

人集りに突っ込んでいくナツ。

人混みを掻き分け、注目の的の側にたどり着く。

 

「イグニール!!イグニール!!

 

…………誰だお前。」

 

人混みの中に居たのは人間の男性であった。

その男はナツが自分を知らない事に軽いショックを受けながらも自分をこう名乗った。

 

「火竜と言えばわかるかね?」

 

「……………はあ〜〜〜」

ナツは目当てのものでないと認識し、大きなため息をした。

 

すると周りの女子たちがナツの失礼な態度に怒る。

 

『ちょっとアンタ失礼じゃない!?』

『サラマンダー様はすっごい魔導士なのよ!!』

 

するとアイチが頭を下げまくり、ナツを引きずって

 

「すいません!すいません!失礼いたしました!!今すぐどっか行きますから!!ナツくん行こ!人違いみたいだし…………」

「おっおう…………」

 

なんとか人ごみから離れることが成功した二人であった。

 

「なんだ……あいつ…………」

「ナツくん…………人の顔見るなり残念な顔するのは失礼だよ…………」

 

「でも、本当いけ好かない奴よね。」

二人に話しかけてくる金髪の少女。

 

少女の名前は『ルーシィ』今はどこのギルドにも属していないフリーの魔導士であった。

 

ルーシィは先ほどの男は『魅了』という禁止された魔法を使っていたことを教えてくれた。

 

三人が場を乱してくれたお陰で魔法が解けたと食事をご馳走してくれた。

 

「こう見えて私も魔導士だからね。

………………まだ、ギルドに入ってないけど。」

 

魔力が高い人間は魔法に対する耐性が高いらしい。

 

「私の入りたいギルドはすっごい魔導士が沢山集まるところで入るのも厳しいところなんだろーなぁ〜〜

でも絶対そのギルドに入りたい。だっていっぱい仕事が貰えそうなんだもん」

 

「ほぉか………」

「よく喋るね…………」

 

勢いよく喋るルーシィに戸惑うナツとハッピー。

 

「でも素敵な目標だと思うよ。」

 

隣で聞いていたアイチだけは違う感想だった。

 

「ありがと、ところでアンタ達、誰か探してるみたいだけど?…………」

 

「あい!イグニール!」

 

するとナツは残念そうにかたりだした。

「火竜がこの町に来るって聞いたから来てみたけど別人だったな」

「火竜って見た目じゃ無かったんだね」

 

ルーシィが会話の違和感に気づく。

「見た目が火竜って人としてどうなのよ………………」

「ん?人間じゃねぇよ。イグニールは本物の竜だ。」

 

「‼︎‼︎そんなの街中にいるわけないでしょ!」

 

ピクッ!

 

「オイイ!!今気づいたって顔すんなー!」

 

その事に気付かなかった二人は驚いたが、アイチは。

 

「まぁ、そうだよね…………」

 

 

 

「あなたも大変ね。こんなのと一緒にいると。」

「フフ、確かにナツくんと一緒にいると大変だけど一緒にいると楽しいよ。

ナツくんも僕の大切な仲間の一人だから。」

「仲間?…………まぁ、確かに楽しそうだね。」

 

ルーシィはお金を置いて店から出ようとした。

 

「私はそろそろ行くけどゆっくり食べなよね。」

 

何もわからぬまま食事をご馳走になったナツとハッピーは深々と土下座した

 

ぐもっ!!

 

「「ありがとうございました!!」」

「恥ずかしいからやめてーー」

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

「ふー!!食った食った!!」

「情報は人違いだったし、お腹も膨れたから帰る?」

「そうだな。」

 

2人が歩いていると港から出航する一隻の船が見えた。

先程の火竜と名乗る男が開いた船上パーティーの船だ。

先程2人が立ち去る際、そのようなことを言っていたことを思い出す。

 

「船上パーティーか…………うぷっ!!」

「想像で酔わないでよ…………」

 

その船を見ていた街の女の子の声が聞こえる。

 

『見て〜〜火竜様の船よ。』

『火竜?』

『知らないの?今この町に来ているすごい魔導士なのよ?

火竜様はあの有名な【妖精の尻尾】(フェアリー・テイル)のメンバーなのよ。』

『本当に!?あ〜〜〜ん私も行こうかしらまだ、間に合うわよね?』

『うん!!』

 

その会話の【妖精の尻尾】(フェアリー・テイル)の所で三人は反応した。

 

「あいつが…………【妖精の尻尾】(フェアリー・テイル)?」

「…気になるから様子を見に行こうか。」

「あい!」

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

ナツ達と別れたルーシィは魔導士専門誌、月刊ソーサラーを読みながら注目の的であるギルド、【妖精の尻尾】について思いを老けていると先程の火竜と名乗る男と出会う。

 

ルーシィはその男に対し魔法で持て囃されて浮かれている嫌な奴と言う認識であったが、彼があの【妖精の尻尾】のメンバーだと聞き、取り入ってしまう。

 

確かに妖精の尻尾の火竜と聞けば聞き覚えがある。ルーシィはその言葉を信じてしまう。

 

 

 

 

 

船上パーティーに出席したルーシィはその男の魔の手に捕まってしまう。

 

この男は若い女性を集め他国に連れて行き奴隷にする犯罪を続けていた。

 

ルーシィは大勢の男に取り押さえられ、今、その男に奴隷の焼印を打たれる直前であった。

 

「(何なのよコイツ……!!こんな事する奴が……)」

 

ルーシィは怒りと悔しさで顔を歪める。

 

「(これが【妖精の尻尾】(フェアリー・テイル)の魔導士のする事か!!!)」

 

「(魔法を悪用して………………人を騙して………………奴隷商ですって!!?)

最低の魔導士のじゃない!!!」

 

ルーシィは渾身の怒りに歯をくいしばる。

するとルーシィに聞き覚えのある声が聞こえる。

 

「本当、最悪だね…………」

その声と共にルーシィのむわにも止まらぬ速さで焼印を入れる棒の先端は切られ、ルーシィを取り押さえている男たちは叩き伏せられる。

それが終わった後、ルーシィはその存在を確認することができた。

ドレスを着た綺麗な女性であった。

 

「な!!」

サラマンダーと名乗る男は手に持つ焼印の棒を切られ驚く。

 

「様子を見に来て正解だった……ルーシィさん、大丈夫ですか?」

「あ…………貴方は?…………」

 

その人はカツラを取り、服装を魔法で変える。

それは知らない女性ではなく、ルーシィの知っている人であった。

 

「あ……アイチ君…………」

「でも、なんでルーシィさんも居るの?」

 

「騙されたの!!【妖精の尻尾】(フェアリー・テイル)に入れてくれるって言われてそれで!!」

 

ピクッ!

またもやアイチはその言葉に反応する。

 

「そう…………細かい話は後だよね。

ハッピー!ルーシィさんをお願い。」

「あい!」

何処からかハッピーが羽を生やして飛んでくる。尻尾でルーシィを掴み飛んで行こうとする。

 

「逃がすかぁ!!」

「おっと!!」

サラマンダーの男の炎の魔法攻撃をハッピーは軽々と交わす。

 

「待って!!アイチ君がまだ残っている!」

「二人は無理。」

「え〜〜〜!!」

「でもアイチなら大丈夫。」

「え?」

「アイチ達も魔導士だから。」

 

「お前ら!!あの女を逃がすな!!

評議員に通報されると厄介だ!!!」

 

サラマンダーの男は部下の男たちに命令する。

男たちは銃で二人を狙ってくる。

 

パンッ!!パンッ!パンッ!

 

「させない!!!」

アイチはルーシィを狙う弾丸を剣を取り出し弾く。

 

「魔法剣!!」

それは異空間にストックしていた剣を取り出す魔法。ルーシィはそれを見て驚く。

 

「ただの魔法剣じゃないよ。

王都の守護を司るこの国の砦の一つ、【ロイヤルパラディン】そこで作られた勇気を力に変える超兵装【ブラスター・ブレード】、アイチはその数少ない適合者だよ。」

「王都守護騎士団ってなんでそんな武器持ってるのよ!!」

「それには色々と事情があったりするね。」

 

 

「無力な女性を狙った卑劣な犯罪の数々、僕は君達を絶対に許さない!!

行くよ!!僕の分身!!ブラスター・ブレード!!」

アイチは白い武装にその身を包み、次々と部下の男を切り伏していく。

 

ルーシィは戦いに赴くアイチの姿を見てさらに驚く。

人混みの中を頭を下げて引き下がる腰の低いものいい。優しそうで気弱そう、どちらかと言うとナツの陰に隠れているイメージの少年が自分も怖いくらい真っ直ぐで力強い光を瞳に宿す。

 

「ルーシィ、ルーシィ」

「何?」

「羽消えた。」

「クソネコーー!!」

 

船を飛び出したハッピーとルーシィであったが、ハッピーの翼の魔法が解けてしまい海へ真っ逆さま。

 

しかし好都合にも先程捕らえられた時に奪われ、海に捨てられたルーシィの魔法の鍵、精霊の鍵を見つけることが出来た。

 

「(まずは女の子達を逃がさないと……)

開け!!宝瓶宮の扉!!!アクエリアス!!!」

 

ルーシィが鍵を翳すと水の中から水瓶を持った人魚が現れる。

その人魚の能力で発動者であるルーシィごと巻き込む大津波で船は沖に打ち上げられた。

 

この魔法のデェフォなのか精霊との関係が良好で無いのかわからないが、本人も巻き込んでしまうルーシィの一番強力な魔法。

 

この様子を見て直ぐに軍が駆けつけて女の子達は保護されるであろう。

 

船が沖に流れついていることに中の彼らは知らない。

「いったい!!……何事だ!!」

 

「どうやら年貢の納めどきみたいだね……

揺れが収まってそろそろ来る頃だよ。(ニコッ」

 

笑みを浮かべながらアイチはその男に言う。

 

「…………な…………何がだ…………」

「本物の竜の逆鱗が…………」

 

ドスン!ドスン!と音を立て、ナツが黒い剣幕でその場にやってきた。

船が動いているときはグロッキーで動けなかったのだろう。

 

男は叫んだ。

 

「お前ら一体何者なんだよ!!!」

 

二人は答える。

 

「はぁ?お前こそ誰だよ。」

「僕も知らないな〜〜」

 

「何を訳のわからないことを言っている!!お前ら!こいつらを摘み出せ!!」

男は部下を使って2人に襲い掛からせる。

ナツはそれを片手で払いのける。

 

「俺は【妖精の尻尾】(フェアリー・テイル)のナツだ!!

お前なんて見たことが無ぇ!!」

「僕もだよ……」

ナツの肩とアイチの外した手袋の下には妖精の尻尾の紋章が付いていた。

 

それを見て男たちは驚く。

「あの紋章、本物だぜボラさん!!!」

「バカ!!その名で呼ぶな!!」

 

「ボラ……紅天のボラ、数年前「巨人の鼻」ってギルドから追放された奴だね。」

「きいたことある…魔法で盗みを繰り返してて追放されたって!!」

この喋る猫は変に博学だ。

 

「おめェが悪党だろうが善人だろうが知った事じゃねぇが妖精の尻尾を語るのは許さねェ!!」

「ええいっ!!ゴチャゴチャうるせえガキ共だ!!」

 

ボラは紅い炎を発火させ、二人にくらわせた。

それをアイチは避け、ナツは諸に受けた。

 

「ナツ!!」

「大丈夫だよナツに炎は効かなよ。」

心配するルーシィをハッピーが抑止。

 

かぶっもぐっもぐっ

 

ナツはなんと火を食べたした。

「なんだコレぁお前本当に火の魔導士か?

カイの炎の方が百倍美味いぜ。」

 

アイチは次々に周りの手下どもを切り伏していく。

 

「…………誰一人だって逃がさない!!」

 

 

手下の一人が二人の姿を見て思い出す。

 

「ボラさん!!!こいつらを見たことあるぞぉ!!」

「はぁ!!?」

「桜色の髪に鱗みたいなマフラー、騎士団由来の聖属性の武装!!

………こいつらが妖精の尻尾の……!!!」

 

 

 

火を食べ終わったナツはアイチと背中合わせに魔法を放つ。

「行くぞ!!!」

「【火竜の咆哮】!!」「【バースト・バスター】!!!」

 

 

火竜(サラマンダー)先導者(ヴァンガード)…………」

ルーシィが本人たちは知らない二人の通り名を口走った。

 

「よーく覚えておけよ………」

「これが僕たち………妖精の尻尾の………」

「「魔導士だ!!!!」」

 

「竜の肺は焔を吹き、竜の鱗は焔を溶かし、竜の爪は焔を纏う。

自らの体を竜の体質へと変化させる竜撃用の太古の魔法……………

滅竜魔法!!!…………イグニールがナツに教えたんだ。」

 

ハッピーがナツの特殊で規格外の魔法に驚くルーシィに説明した。

 

「ふぅ………ナツくん終わったね…………」

 

ドカ!!ゴッ!!ガン!!ボコ!!!

 

「…………ナツくんそれ以上は……………」

 

「くぉらぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜」

 

「ナツくん…………………………………』

 

ガコッ!!ゴバ!!バキ!!ドス!!ズガガ!!ゴッ!!!

 

プツン…………………

 

何かが切れる音がした。

 

「オラオラオラオラオラオラ[ゴンッ!!]…………………」

 

アイチが暴れたはいいが止まる様子のないナツに剣の腹で頭を思い切り叩き無理やり止める。

 

「少し、頭冷やそうか………」

その時、アイチの笑顔が一番怖かった。

 

 

「………」

「あ…………あい…………」

ナツは急に大人しくなった。

 

すると騒ぎを聞きつけた軍隊が現場に突入してきた。

『この騒ぎは何事かねーーー!!!』

 

「ああ〜〜止めるのが遅かったね。」

「やべぇ!!!逃げんぞ」

 

ナツはルーシィの手をしっかり握って走り出した。

 

「なんであたしまでーーー!?」

「だって俺たちのギルドに入りたいんだろ?」

「だったら来なよ。きっと楽しいよ!!」

 

 

「うん!!!」




【キャラクター紹介】
名前:アイチ=センドウ
所属 妖精の尻尾 年齢16歳
魔法 騎士団(ザ・パラディン)カイくん命名
好きな物 カイくん
嫌いな物 不明


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孤高と火竜

ナツとハッピーとルーシィとアイチはマグノリアにある【妖精の尻尾】のギルドに到着した。

 

「「「ようこそ、【妖精の尻尾】へ!』」」」

 

 

 

 

中に入ると沢山の魔導士達で賑わっていた。「ただいまーー!!!!」

ナツが元気よく中に入っていった。

「おい、ナツ!また派手にやらかしたなぁ

ハルジオンの港の件、新聞にの………うごっ!!

「てメェ火竜の情報嘘じゃねぇか!!!」

嘘ではないのだが、ナツが偽情報を掴まされた腹いせに蹴りをお見舞いする。

 

「アイチ!!ダメじゃない!いきなり飛び出して行ったらお母さん心配するでしょう!!「ごめん、エミ。ナツくん止めようとしたらこうなっちゃった。

「言い訳しない!もう、アイチは直ぐに周りに流されるんだから!!」

アイチも急に飛びたした事を妹に怒られている。なんとも情けない様子

 

そんな二人を無視し、ルーシィは自分が妖精の尻尾に来たことに感動していた。

 

「凄い……あたし本当に【妖精の尻尾】に来たんだぁ」

 

 

 

「ナツが帰って来たってぇ!!?

てめェ………この間の決着つけんぞ!!!」

 

パンツ一丁の男がナツに喧嘩を売りに来た。

 

「グレイ…………あんたなんて格好で出歩いてるのよ」

 

ウェーブかかった長髪の女性が注意する。

「はっ!!!しまった…………」

 

「……これだから品のないここの男どもは嫌だわ。」

 

そう言いながらも酒の入った大タルを豪快にも飲み干す。

 

「おォ!?喧嘩かぁ!?俺もまぜろぉ!!」

 

赤髪三白眼の少年が喧嘩に混ざろうとする。

 

「ど新人の癖に身の程を弁えるのです!!このツッパリモドキ!!!」

 

パッツンヘヤーのメガネをかけた少年が変な敬語で赤髪の少年に逆に葉っぱをかける。

 

「なんだとこの刈り上げ眼鏡!!お前から相手してやる!!」

「上等です!!かかってくるのです!!」

 

正直、ノリについて行けないルーシィはツッコミ役である。

 

「くだらん…………昼間っからピーピーギャーギャー、ガキじゃあるまいし……」

一際体が大きい学ランの男。

 

「漢なら拳で語れ!!!」

「結局喧嘩なのね…………」

 

「「邪魔だ!!」」

 

「しかも玉砕…………」

 

 

 

 

「全く誰が強いとか勝負しなくてもわかるだろうに…………」

髪の毛がV字に別れた男が、またでかい事を言う。

「一番強いのはこの俺様に決まってるじゃねーか!仕方ねぇ一丁揉んでやるか」

 

「なんか三下ぽい人がデカイこと言ってる!!!」

 

「俺様最強ーーーー!ふごっ!!」

見事顔面にナツの拳が決まる。

「邪魔だっての」

「やっぱり、玉砕……

………………二回目はウケないね。」

 

「ん?……騒々しいな……」

「あっ!!『彼氏にしたい魔導士』上位ランカーのロキ!!(週刊ソーサラー調べ)」

ルーシィは雑誌でよく見るイケメンをみで頬を少し染める。

 

「混ざってくるね〜〜」

『かんばって〜〜〜〜』

女の子とイチャついながら喧嘩に混じる彼にルーシィは一瞬で幻滅する。

 

「(ハイ!!消えた!!!)」

 

雑誌でもよく取り上げられるフェアリーテイルの有名人と言えばもう一人。

 

「な……何よこれ……まともな人が一人もいないじゃない…………」

絶望するルーシィに救いの手。

「あら?新人さん?」

「!!!ミ…………ミラジェーン!!」

クラビアアイドルとしても活躍する妖精の尻尾の看板娘。

 

「キヤー‼︎‼︎本物!…………はっ!!

あれ、止めなくていうをやですか!!?」

「いつものことだからぁ。放っておけばいいのよ。」

この規模の喧嘩が日常茶飯事とは流石、妖精の尻尾だ。

 

「あっ!ルーシィさん、紹介します。僕の妹」

「先導エミです。よろしくお願いしますルーシィさん!!」

「アイチくんもこの惨状は無視なのね……

でもよろしくエミちゃん。」

 

「みんななんだかんだで楽しそうだからね…………ふぐっ!!」

その時喧嘩の流れ弾で何故かケーキが飛んできてアイチに直撃した。

 

「……………フ……フ……フフッ」

アイチからほとばしる異様な雰囲気、エミとミラジェーンは気を使い、ルーシィを少し下げた。

 

「あーうるさい!!落ち着いて酒も飲めないじゃないの」

 

騒がしい会場にタルでお酒を飲んでいた人が

魔法のカードをかざす。

 

 

「あんたらいい加減にしなさいよ!!」

 

パンツ一丁の男が手を重ね、手が光る出す。

 

「アッタマきた!!!!」

 

赤髪三白眼が拳に雷の魔力を貯める。

 

「ぶちかませ!!俺の拳!!」

 

パッツンメガネが忍びの印を構える。

 

「【むらくも】の本気を見るのです!!」

 

学ラン男が腕を変形させる。

 

「うおぉぉぉぉ!!」

 

V字髪の男が、考えなしに突っ込む。

 

「俺様最強〜〜〜!!」

 

アイチが剣を構える。

 

「………殲滅せよ!!我が分身!!!」

 

ロキの指輪が光り出す。

 

「困った……奴等だ…………」

 

ナツが両手に炎を灯す。

 

「かかってこーい!!!」

 

 

「魔法!!?」

「これはちょっと不味いわね〜」

喧嘩がヒートアップし、魔法戦まで到達すると流石に不味い、其処に全員を抑えれる存在が現れた。

 

「やめんか!!!バカタレ!!!」

 

ルーシィが見上げると其処には建物一杯一杯の巨人が立っていた。

「デカーーーーーーーーーーっ!!!」

 

巨人の言葉に全員が喧嘩を辞め静まり返る。

 

「あら?いらしたんですか?マスター」

「マスター!?」

 

「ム?新入りかね?」

「は……はい…………」

巨人の威圧にけおとされていたルーシィだが、巨人はみるみる小さくなり、小さめのおじいさんにその姿を変えた。

 

「よろしくネ」

 

彼こそがこの【妖精の尻尾】の総長マカロフである。

 

「ま〜〜〜たやってくれたのう、貴様ら!

見よ!評議会から送られてきたこの文章の数を!!」

 

マカロフ喧嘩をしていたメンバーに声をかけ始めた。評議会とは魔導士ギルドを束ねる機関。

 

「まずは…………グレイ!!」

「あ?」

パンツ一丁の男だ。

「密輸組織を検挙したまではいいが、その後街を素っ裸でふらつき、あげくのはてに干してある下着を盗んで逃走!!」

「いや……だって裸じゃマズイだろ」

「まず裸になるなよ。」

 

「次!モリカワとイザキ!!」

大口を叩くV字の髪の青年と喧嘩に参加していなかった天パの青年。

「過剰すぎる追っかけ!!

ストーカー被害として某アイドル事務所から損害賠償請求が来ておる。」

「俺は止めたのに〜〜〜」

「俺様のコーリンちゃんに対する愛は誰にも止められない!!!」

「いや、反省しろよ。」

 

「エルフマン!!

貴様は要人護衛の任務中に要人に暴行」

大柄の学ラン男である。

「男は学歴なんて言うからついて…………」

 

「ナオキにシンゴ!

聞き込み調査中に町の少女を恫喝!!」

赤髪三白眼の青年とパッツン眼鏡の青年。

「俺はただ聞きたいことがあっただけ!!…………」

「顔が怖いのですよ顔が」

 

「カナ・アルベローナ、経費と偽って某酒場で飲むこと大樽15個、しかも請求書が評議会」

大酒を飲んでいた女性

「ばれたか…………」

 

「ロキ…………評議員レイジ老師の孫娘に手を出す」

 

「アイチ・センドウ!!お主は…………

今回は無かったな…………」

「今回は!?」

 

「そしてナツ………………

デボン盗賊一家壊滅するも民家7件も壊滅、チューリィ村の歴史ある時計台倒壊、フリージアの教会全焼、ルピナス城一部損壊、ナズナ渓谷観測所崩壊により機能停止、ハルジオンの港半壊…………」

 

「アルザック、レビィ、クロフ、リーダス、ウォーレン、ビスカetc…………

貴様等ァ…………ワシは評議員に怒られてばかりじゃぞ……………」

 

キルドの人間が問題を起こせば勿論責任はマスターに降りかかってくる。

マカロフは身を震わせ、周りの問題児たちも黙りこくる。

 

「だが……………

評議員なんぞクソくらいじゃ」

 

マカロフは報告書を燃やす。

 

「よいか………

理を超える力はすべて理の中より生まれる。

魔法は奇跡の力なんかではない

我々の中にある"気"の流れが自然界に流れる"気"の波長が合わさり初めて具現化されるのじゃ。

それは精神力と集中力を使う……いや、己が魂全てを注ぎ込むことが魔法なのじゃ。

 

上から覗いてる目ん玉気にしていたら魔道は進めん!!

評議員のバカ共を恐れるな

 

自分の信じた道を進めェい!!!!

それが妖精の尻尾の魔道士じゃ!!!!」

 

マスターの言葉にギルド内は一段と盛り上がる。

その笑い声は町中に響く程であった。

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

「ここで良いのね?」

「はい!!」

 

ナツとアイチの推薦でルーシィの妖精の尻尾入りが決まった。

今ミラに刺青スタンプを使い妖精の尻尾の紋章を右手の甲に押してもらった所だ。

 

「ナツ!!アイチくん!!見てー!!

妖精の尻尾のマークいれてもらっちゃったぁ」

「良かったな、ルイージ」

「ルーシィよ!!」

「アハハ!」

 

かなり可愛い新人に昼間から酒を飲むオヤジ連中がベロベロになっている。

 

「お前らあんなかわいい娘どこで見つけてきたんだよ〜〜」

「いいな〜〜うちのチームに入ってくれないかな〜〜」

 

「あっチームといえば………………

ミラさん、カムイくんとミサキさんは?」

「あなたが急にいなくなるから、二人とも別の人とクエストに行ったわよ。

カムイくんはエイジくんとレイジくんと一緒に…………

ミサキも他の人と行ったわよ…………」

「あ〜〜〜二人とも居ないのか〜〜戻ってくるまでゆっくりしてよっかな〜〜〜

あれ?ナツくんどこ行くの?」

「仕事だよ、金ねーし。」

「そう、行ってらっしゃい〜」

 

「あれ?アイチくんは一緒に行かないの?」

ハルジオンの時を見る限り二人は一緒に行くとばかり思っていたルーシィは疑問に思った。

 

「今回は巻き込まれた感じについて行ったからね。いつも一緒に仕事してるわけじゃ無いんだ。

勿論、一緒に行く時もあるし、他の人と行く時もあるよ。

でも僕が本格的にチームを作ってるのは別なんだよ。」

「Q4って言って妖精の尻尾の中でも一二を争う強いチームなのよ。」

ミラがアイチの言葉に付け足す。

先程話していたカムイやミサキもメンバーである。

 

「アイチくんはそのチームのリーダー的役割なのよ〜〜」

「そんなことないよ…………カイ君の方がよっぽどリーダーらしいよ」

 

「へぇ〜〜どんな人なの?その人は?」

 

また、新しい名前が出たのでルーシィはアイチに尋ねる。

 

「カイ君は本当に凄いんだよ。

強くてカッコ良くて僕の憧れなんだ////」

 

まるで恋する乙女のように嬉々として語るアイチ。

ルーシィはアイチがここまで思いを寄せる人物に少し興味がわいていた。

するとアイチの後ろから声がする。

 

「俺がどうしたって?…………」

「!!!カ……カイ君!!何時から其処に!?」

「たった今だが?」

アイチは顔を真っ赤にしてごまかそうとしていた。

 

「そういえばどこに行ってたの?………」

「ミワと一緒にクエストに行ってた………」

「おっす!アイチ!」

「あっ!!ミワくん」

 

後ろ髪が跳ねているイケメンと黄色髪の人当たりの良さそうな青年であった。

彼らはトシキ・カイとタイシ・ミワ。

カイはかつて孤高の魔道士と呼ばれていた有名な魔導師で誰も近づかせない雰囲気を振りまいていたが、妖精の尻尾に所属し、アイチ達とチームを組み少し柔らかくなった。

ミワはそんなカイのお目付役、カイの妖精の尻尾入りにも一役買ったカイの幼馴染。

 

「おっ?ねーちゃん新入りか?」

ミワが新人のルーシィに気づく。

 

「あっ!ハイ!アイチくんとナツの推薦で入りましたルーシィですよろしくお願いします。」

 

挨拶をするルーシィの前にカイがズーンと立ちはだかる。

 

「な……何か…………」

「アイチとナツが導いたのだろう?

お前は強いのか?………………」

「は?はい?」

 

「もう!カイ君!!

カイ君を満足させれる新人なんてそうそういるわけないじゃん!!」

「そうか………すまん………」

「ほーんと、ブレない奴wwww」

 

話してるのを聞いていると二人は本当に仲が良さそうだ。

 

少し変わったところがありそうだがルーシィはこのギルドに来てやっと真面な人間にあった気がした。………気がした。

 

「カイ!!帰ったのか!!

よっしゃー!!俺と勝負しろ!!」

「ナツ〜〜仕事行くんじゃなかったの〜〜」

 

カイの帰還に気がついたナツがカイに喧嘩を売りに来た。

 

「いいだろう…………

だが、時間と場所を確保して思い切りできる状態にしてから挑んでこい。

今すぐはここではダメだ。」

「ちぇ〜〜」

 

カイは好戦的な方だが、先ほどの様な喧嘩には一切関わらない。

しかし、しっかりと手順を組めば必ず相手してくれる。

特にナツとは幾度となく決闘をしており、カイも結構ナツのことを気に入っている。

結果はカイが圧勝であり、同属性の魔導士同士ゆえ二人には軽い師弟関係が築かれている。

 

「あっ!そうだ!カイ〜カイ〜」

 

ハッピーが背中に背負うカバンからある写真を取り出す。

 

「なんだ?」

「ハルジオンでのドレスコスとさっきの喧嘩の生クリーム塗れの写真が有るんだけど〜〜(ボソッ」

「向こうで話さないか?…………」

「餡掛けカニチャーハン作ってよ。」

「良いだろう…………」

 

二人はミワと喋っているアイチ達に気づかないように話している。

その様子を見たルーシィは希望が絶えた様に眼光のない表情で悟った。

 

「(やっぱりこのギルドにはまともな人は居ないんだろうなぁ…………)」

 

いくらアイチが女顔で可愛いとはいえ、この二人のやりとりはガチでアイチが恋する乙女に見えてくるレベルである。

 

追記、二人の名誉の為に言っておくが、二人の関係は禁断のなんたら的なものではない‼︎

ただ、アイチはカイを尊敬していてカイは小動物的可愛い物が好きなだけ‼︎多分‼︎‼︎……(笑

 

「父ちゃんまだ帰ってこないの?」

「ム」

 

ナツやルーシィ達はマスターが小さい子供と話している事に気がつく。

「くどいぞ!ロメオ、貴様も魔導士の息子なら親父を信じて大人しく家で待っとおれ」

「だって……3日で戻るって言ったのに…………もう、一週間も帰ってないんだよ…………」

ロメオと言うこのギルドのメンバーの子供は不安で今にも泣きそうだ。

 

「マカオの奴は確かハコベ山の仕事じゃったな」

「そんなに遠くじゃないじゃないか!!!

探しに行ってくれよ!!!心配なんだ!!」

「冗談じゃない!!自分のケツもふけねぇ奴はこのギルドにはおらんのじゃあ!!!帰ってミルクでも飲んでおれ!!」

 

「バカー!!!」

子供はマスターに怒られ立ち去っていった。

 

話を聞いていたルーシィはミラに言う。

「厳しいのね………」

「本当はマスターも心配してるのよ。」

 

話を聞いていたナツやカイが動き出そうとする。

 

「ハッピー…………悪いがまた後でいいか?」

「あい!」

 

「ナツ………」

「止めんなよ……カイ」

「止めはしない、俺も行く…………」

 

血相変えて

出て行く二人にルーシィが驚く。

「ど………どうしちゃったの?アイツ急に………」

「ナツもカイも昔の自分にロメオを重ねちゃったんじゃねぇか。」

「え?」

ミワがルーシィに話す。

 

「ナツは育ての親のドラゴンがある日急に居なくなっちまったんだ。」

「ドラゴン!!ナツってドラゴンに育てられたの!?」

「ああ、小さい頃にドラゴンに拾われてな、それからはそのドラゴンが親代わりだったらしいぜ。」

「そっか……………それがイグニール……………」

 

「カイも………両親が小さい頃に事故で亡くなってるんだ………

アイツはその関係で親戚に引き取られてこの町を離れることになったんだ…………」

 

「戻ってきたアイツは気難しい奴になってた……………

それでもアイチやナツや此処の連中と居るうちに大分マシになったんだぜ。

……………………此処の連中は皆んななんか抱えてる…………」

 

ナツとカイはロメオに安心するように言って出かけていった。

重きを抱える二人の炎術士が仲間を救うため動き出した。




キャラ崩壊をタグに加えるべきか迷っています。
流石にアニメのテンションでは妖精の尻尾についていけない気がします。
キャラ崩壊ってあんまり好きではないのですが。

【キャラクター紹介】
名前:ナオキ・イシダ
所属 妖精の尻尾 年齢16歳
魔法 雷拳・喧嘩屋(らいけん・ブロウラー)
好きな物 男気
嫌いな奴 仲間をバカにする奴

元は町のヤンキーであったがアイチが一役買い改心、魔法を覚え妖精の尻尾入り。
ほぼ同期のシンゴとは喧嘩するがその分仲も良い。










妖精の尻尾の濃いキャラ達に消されないようにヴァンガード勢も全体的にキャラが濃くなってます。
みにヴァンとか二次創作でのキャラに近いですかね。

いつもより文字数が多いのに話が全然進んでなかった………………



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三人の炎術師

「でね〜〜ミラさんのお部屋に遊びに行くことになったの〜〜〜〜」

「下着盗んじゃダメだよ。」

「盗むかーー!!」

「う〜〜〜ん」

 

ロメオの父、マカオを助ける為ナツ達はハコベ山へと馬車を進めていた。

 

相変わらずナツは乗り物が苦手で完全にダウンしている。

 

「なんで……ルーシィが居るんだ?……」

「だってー、折角妖精の尻尾に入ったんだから何か役に立ちたいじゃない。」

「(絶対株を上げたいんだ………)」

ダウンしながらもナツはルーシィに問う。

その言葉にハッピーが密かに思う。

 

「へへっ!おもしろそーな新人が入ったな〜」

「ミワ、何でお前も付いてきてるんだ?………」

「お前ら2人のお目付役だよ………」

 

 

 

四人と一匹は雪山に到着するとそこはすごい猛吹雪。

 

「マジで………ここから歩いていくのかよ…………」

「何これ!?いくら山の方だからってこんな吹雪おかしいわ!!……さ……寒っ!!!」

 

数メートルさきでさえ見えない程の大吹雪。

 

「そんな薄着で来るからだよ…………」

「アンタも同じようなもんじゃない!!」

「情けないぞミワ。」

「お前ら能力系(アビリティ)の炎の魔道士と一緒にすんなよ〜〜」

 

ルーシィは堪らずナツの背中に背負う荷物の中の毛布で体を包み、星霊を呼び出す。

 

「う〜〜〜毛布貸して〜〜〜〜

ひひ………ひ……開け…………ととと【時計座の扉 ホロロギウム】!!!」

 

ルーシィはその中に入る。

「『私はここにいる』と申しております」

どうやら星霊が代わりに喋ってくれるようだ。

中は中々暖かそうだ。

 

「おぉ!!ねーちゃんやるじゃんか!!

頼む!!俺も入れてくれーーーーー!!」

「駄目、これ一人用だから………………」

「頼むよーー俺、こいつらみたいにワイルドに出来てねーんだ。凍えちまうよ!」

 

「ミワ…………本当に何しについて来たんだよ……………」

 

ミワは何とか入れるように詰めてもらった。

ルーシィは当初の目的を思い出す。

 

「『何しに来たと言えばマカオさんはこんな所に何しに来たのよ』と申しております。」

「知らねえでついてきたのか?凶悪モンスター"バルカン"の討伐だ………」

「!!!!」

「『私帰りたい』と申しております。」

「はい、どうぞと申しております。」

 

ルーシィはその現実に冷や汗をかき不安がった。

 

「まあ、ねーちゃん怖がんなってナツもカイも居るし俺だっていざとなれば戦うし、そうそう大事には至らないって!」

「情けなく時計に入れてもらって毛布にくるまってる男にカッコつけられても説得力無いわよ?」

「………」

 

確かにそうであるがハッピーがミワにフォローを入れた。

「あい!でもその通りだと思うよ。カイもナツもミワも炎の魔道士としては妖精の尻尾の中ではトップクラスの実力があるから!!」

 

「え?ミワさんも炎の魔法を使うんですか?」

「タイシ・ミワ…………気軽にタイシでいいぜ」

「………じゃあミワで。」

「……………………言うよね〜〜………………

え、えーーと俺の魔法は【封炎魔法】つってな、炎を札に封じ込めたり、封じ込めた炎を解放してコントロールする所持系の魔法なんだぜ!こんな風にな!」

 

ミワは東洋風の札を取り出し、小さい炎を灯す。

まあ、ホロロギウムの中なのですぐに消す。

 

そんな会話を続けている二人を他所にカイとナツは仲間の捜索を開始した。

「マカオーーー!!いるかーー!!バルカンにやられちまったのかーー!!」

 

「縁起でもないことを言うな………」

「声で雪崩とか起きないでくれよ〜〜」

 

ミシミシッ!!

ドドドドドドドド!!

ミワが見事フラグを踏み抜いたのか高台から雪の塊が降り注いできた。

 

 

「え!!ちょっとヤダーーー!!!」

 

ホロロギウムに直撃しようとした瞬間、カイが割って入った。

 

「”暁”!!!」

雪の塊はカイの放った炎の魔法により蒸発した。

 

「あ………ありがとうございます…………」

「サンキュー、カイ!!」

 

カイはいつも以上に眉間に皺を寄せて答えた。

 

「足手まといになるぐらいなら最初から付いてくるな……………………」

「ご…………ごめんなさい…………」

 

カイはルーシィにキツイことを言って再び歩き出した。

気軽についてきてしまったルーシィは落ち込む。

 

「まぁ、ねーちゃん気にすんな。

ああは言ってるけどねーちゃんの事心配してんだぜカイの奴。その証拠にちゃんと助けてくれただろ?」

「そうなの?…………」

 

ルーシィは不思議な顔をしてカイの方を見る。

 

「ミワ……余計なことは言うな。

お前もそんなとこに入っていると今みたいな時に動けないぞ」

「俺がここから出たら別の意味で動けなくなると思うぜー。」

 

「アレ?ナツとハッピーは?」

「今ので生き埋めになってるぜ。」

 

ナツとハッピーは雪の中から勢いよく現れる。

 

「ウガーーーー!!!

マカオ何処だーーーー!!!!」

 

 

 

すると声に反応したのか近くの雪山から影が現れ、ナツを襲う。

「バルカンだー!!!」

影の正体は白き大猿、バルカンであった。

 

「ウホ!」

 

白猿は標的を変え、ホロロギウムに向かっていく。

 

「人間の女だ!!

ウホーーーーーーーー!!」

猿はホロロギウムを持ち上げて中にいるルーシィとミワごと連れ去ってしまった。

 

「キャーーーーーーーーー!!」

「ねーちゃんしがみつくのヤメロ!!!マジ出られないからーーーーー!!!」

 

 

連れ去られる二人にナツは

「しゃべれんのか。あの猿」

的外れなことを言っていた。

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

二人は雪山の洞窟の少し広い空間に連れてこられた。

「ここってあの猿の住処かしら……てかナツ達はどうしちゃったのよ〜〜〜」

「まあ、助けが来るまでこうしてれば良いんじゃね?」

 

ホロロギウムの中に入ってる二人は二人の到着を待つ。

 

ポン!!

 

「ちょ………ちょっとォホロロギウム!!!消えないでよ!!」

『時間です。ごきげんよう。』

「延長よ!!!延長!!!」

 

星霊が消えると同時に大猿は襲い掛かってきた。

 

ウホ〜〜〜!!!

 

「きゃー!!!!」

 

ウホ!「どわっ!」ウホ!「おっと!」ウホ!「しつこい!」

猿はミワばかり攻撃する。

 

「なんで!俺ばっかし攻撃すんだよ〜〜この猿!」

 

「ウホッ!男いらん……オデ女好き………」

 

 

「………………それは……………しょうがないな………………」

「しょうがないの!!?」

 

ミワは先程と同じ札を取り出した。

 

「悪いがこれでおとなしくしてもらうぜ!

"呪われし魔力よ、今、風を破り、炎獄となりて薙ぎ払え!"」

札から炎が不吹き出し大猿を包み込む。

 

ウホーーーーーーーー!!!!

 

「すごい………さっきの話本当だったんだ…………」

 

ミワは使い終わった札を捨て止めの札を取り出した。

 

「これで止めだ!!ブロケード・インフェ『ポフッ!…………』…………

 

あっ………………このお札湿気ってる………………」

「嘘ぉ!!」

この雪山でかき回されたのだ、大事なお札が湿気ってしまってもしょうがない。

 

ウホーーーーー!!!!!

 

戸惑っているうちに猿は火を逃れた。

 

「もう!!結局自分でなんとかしないといけないんじゃん!!

開け!!金牛宮の扉!!タウロス!!」

 

ルーシィは魔法で人型の牛を召喚する。

体格はよくいかにも強そうだ。

「MO!準備オーケー!!」

ホロロギウムで魔力を消費したため残量に多少の不安があるが、なんとかルーシィが戦いに参戦する。

 

そこにようやくナツが大声を出して到着した。

 

「うおぉぉぉぉ!!やっとおいついたぞー!!

マカオは何処だぁぁぁ!!!」

 

ウホ?

MO!?

「なんか増えてるじゃねーか!!」

今、現れたナツは牛が敵だと思い蹴り飛ばしてしまった。

 

「ちょっと!!なにすんのよーーー!!」

 

ルーシィの叫びを無視し、ナツは猿に叫びだした。

 

「おい!そこの猿!言葉わかるんだろ?マカオだよ!!

人間の男だ、どこに隠した!!」

「うわー!!『隠した』って決めつけてるし!!

 

そこにカイが遅れて登場する。

何故か少し高台の所にある洞窟から出てきた。

 

「ナツ……甘いぞ………………

この手の奴に物を聞くときは口よりも先に手を動かせ!!」

 

「(なんであんな所から出てきたのかしら?………高いところが好きなのかしら?)」

 

「よっしゃー!!黒焦げにしてやる!!」

「ナツー!!勿体無いからこれ使えよ!!」

 

ミワはお札を放り投げナツに渡す。

ナツはそれを受け取り、口の中に放り投げた。

 

「え!?札なんて食べて何するつもりなの?」

 

ミワの札には炎の魔法が封じ込まれている。

言ってみれば火属性の魔力の塊、同属性の魔力を取り入れることでスレイヤー系の魔道士は一時的に強くなれる。

 

二人の炎の魔法が炸裂する。

 

「見せてやる…………これが俺の力……………

"この世の全てを焼き尽くす黙示録の炎!"」

「ムシャ、ムシャ、ゴクン…………ご馳走さん!

食ったら力が湧いてきたーーーー!!」

 

「【エターナル・フレイム】!!!!」

「【封竜の炎獄】!!!!」

 

あたり一面氷の世界が二人の魔法によって火の海に変わる。

大猿は炎に包まれる。

 

「ちょっとやり過ぎじゃねーの?」

「手は抜いた…………」

「あれで!?」

 

炎のは静まり黒焦げになった猿が見える。

 

「やり過ぎよ!!どう見たって話が聞ける状態じゃないじゃない!!」

「……………いいや。これで良い……………」

 

みみみみみみみみみみみ!!

「え?」

「な!何だ!!?」

 

すると猿は音を立てその姿を変える。

中から出てきたのは知った顔の男であった。

「マカオ!!」

 

捜しひとのマカオであった。

その様子を見てハッピーがひらめく。

 

「バルカンに接収されてたんだね!!!」

接収(テイクオーバー)?」

「体を乗っ取る魔法だよ!!」

 

マカオは凄い怪我をしていたがナツの荒療治により一命を取りとめた。

 

その後怪我をしていたマカオを担ぎ下山、無事息子のロメオの下まで返すことが出来た。

 

ミワがカイに問いただす。

 

「気づいてたのかよ。カイ?」

「ああ……………バルカンは魔法を使うモンスターだ…………

とは言えマカオがタダでやられるとは思えんし、その辺を調べていた。………」

「へ〜〜〜〜それであんな所から出てきたのかよ。

………………ん?と言うことは…………」

「初めからお前達を助けに来る気は毛頭なかったぞ。」

「このヤロー…………」

「俺の忠告を無視したバカより、一週間行方不明の仲間を探す方が優先だと思うが?」

「……………」

 

肩に担がれるマカオが意識を取り戻す。

 

「…………うぐっ!………………

すまねぇな…………カイ、お前まで巻き込んじまって…………」

「ロメオから聞いた…………ロメオの為に危険な仕事を一人でこなそうとしたんだろ?…………

だがな…………本当にロメオの事を考えるなら無事に帰って来ることを優先すべきだったぞ…………

親が帰ってこないなんて子供にはこれ以上の苦しみはない。」

 

カイは自分に重ねていた。

ある日突然居なくなった両親、ロメオの苦しみはカイには痛い程伝わった。

 

マカオと再会したロメオは感激に涙を流し、ナツやルーシィにお礼を言っていた。

立ち去るカイの表情は何処か嬉しそうであった。

 




仲間の為に頑張るカイくん。
このカイくんは四期のカイくんに近い感じに書いてます。


【キャラクター紹介】
名前:タイシ・ミワ
所属 妖精の尻尾 年齢17歳
魔法 封炎魔法

ミワの魔法はチーム下剋上のときの平安貴族ぽい格好と封竜デッキの使い手からイメージしました。
湿気ると戦えないとかどこの炎の大佐だよwwwww


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本に取り憑かれた者

皆さんお久しぶりです。
最近執筆時間が大幅に削られた上に進み悩んでましてこちらももう一つの連載中の作品もストップしている状態からの今回の投稿です。
本編ではまだまだ序盤の短めのストーリーだったので一話にまとめてみたら中々書き終わらない………完成してみたら遅いはずいつもの二〜三倍の文字数………長めの話を除き、今後一括・一話分で投稿するかは読者の意見を聞きたいと思います。文字数に比例し時間がかかりますから文章の書き方から指摘を受け入れる方針です。

流石に次の話鉄の森編は二話以上に分けたほうがいいかな?


 

ルーシィがギルドに入って数日、ギルドから歩いて通える場所に部屋を借り一人生活をスタートさせていた。

 

「もー!!なんで勝手に入ってきてるのよー!!帰って!!」

「やだよ、遊ぶんだから。」

「超勝手!!!」

 

ナツとハッピーは引っ越してきた場所に早速遊びに来ていた。

 

そこに引越し祝いとお土産を持ってアイチの妹エミがやってきた。

 

「ルーシィさん!!さっそく遊びに来ちゃいました!

あっ!これお土産のケーキです。どうぞ!」

 

「ハア、本当良い子よね貴方達姉妹は……」

「兄妹です。」

「不法侵入の上に太々しい態度をとるどっかの誰かさんとは大違いね。」

 

「ふごっ!!ほぐがぁぐわっひぐわっが!!(ん?そんな奴がいるのか?)」

「ってもう食ってるしーーーー!!!」

 

ルーシィはエミについてきた少年の姿が気になる。

 

「そっちの男の子はエミちゃんのボーイフレンド(男友達)?」

「ボッ……ボーイフレンドォ(恋人)!!!」

ルーシィは男友達の意味合いで言った言葉を勝手に勘違いし顔を赤らめながら叫ぶ。

 

「お前らも入れよ!お茶ぐらいは出すってさ。」

「…………それ、私のセリフね…………」

 

ルーシィは二人を招き入れお茶を飲みながら五人でトークを開始した。

 

「ヘェ〜カムイ君まだ小さいのにもう魔導師として難しい任務をこなしてるんだ!」

「あんまし子供扱いすんじゃねえぜ!これでもアイチお兄さんにも勝った事があるんだぜ!!」

「今は同じチームだけどね。」

 

カムイはエミの兄アイチと同じQ4のメンバー。

あれだけ強いアイチでさえチームを必要とするクエストがあるのだ。

まだ、クエストを受けた事のないルーシィには不安にかられる。

 

「チームかぁ…………

冒険活劇に仲間って要素は欠かせないし、いざとなった時に頼れる仲間は欲しいよね〜(ボソッ」

 

ルーシィがため息をする様に言葉を零すとエミが反応した。

 

「ルーシィさんなんか物書さんみたいなこと言うんですね。」

「え……ああえーと………」

 

口ごもるルーシィに何かを思い出すようにナツが少しにやける。

 

 

「チームだよチーム!!ルーシィ!!チーム組もうぜ!!」

 

「え!?」

 

※※※※※※※※※※※※※※※※

 

「うごぉぉぉぉ〜〜〜」

「御機嫌いかがですか〜〜ご主人様〜〜〜」

 

ナツはルーシィをチームに誘った。

変な奴だけど自分を認めてくれたと思いルーシィは上機嫌でそれをOKした。

了承を確認したナツは目的の品、二人の初仕事を提示した。

 

そのクエストの内容はとある伯爵家から本を取り戻す任務。

その伯爵はど変態で金髪メイドが大好物、ルーシィにメイド服を着させ任務を遂行させる算段であった。

流石のルーシィも自分が騙せれたことに気づき呻き回った。

 

今は移動の馬車でグロッキーになっているナツに囁かな復讐をしているところだ。

 

「大丈夫ですか?」

「心配いりませんよエミさん!何時もの事ですから。」

 

その場にいたカムイとエミは二人を心配しついてきたのだ。

 

「心配してついてきてくれたからね。20万Jが手に入ったらエミちゃん、一緒に買い物でも行こっか。」

「うん!!」

 

「俺はエミさんのためならたとえ火の中水の中!どこでもオフコースしますよ!!」

「エスコートね」

「ありがと!カムイくん!」

「いや〜〜それほどでも〜〜////」

 

ルーシィはカムイのエミに対する態度と他の人との態度が違うことに気がついた。

エミやその兄のアイチにのみ敬語を使い、アイチをお兄さんと慕う。

 

「ねえ、ハッピー。カムイくんってもしかして………(ボソッ」

「あい!気づいてないのは本人だけです。」

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

 

ナツが呻いているうちになんとか目的地のシロツメの街に到着。

男たちは腹ごしらえをしていると着替えてきた二人に目を奪われた。

「結局私って何着ても似合っちゃうのよねぇ〜〜

お食事はお済みですか?ご主人様。まだでしたらごゆっくり召し上がり下さいね♡」

「どうかな?似合ってるかな?カムイくん。」

 

ポロッ

 

二人がメイド姿に着替えて出てきた。

 

「ブフォ!!………………お……オレのハートにクリティカルトリガー!!!!」

 

メイド服をきたエミに悶えるカムイとは正反対の反応をするナツとハッピー。

 

「ナツ〜〜」

「おう。」

「どーしよぉ〜!!冗談で言ったのに本気にしてるよ〜〜メイド作戦。」

「今更冗談とは言えねえしな。こ……これで行くか」

「聞こえてますが!!!?」

 

「私、潜入なんて初めてだから心配だな〜〜」

言ってることとは正反対に期待に胸を膨らかせるエミ

「思いの外ノリノリの人が約1名…………」

「………心配しないでくださいエミさん。

エミさんを変態公爵の前に出すわけにはいきません………潜入はルーシィさん1人で十分です。…………」

「そっか………残念。」

 

※※※※※※※※※※※

 

 

腹ごしらえを済ませた四人は先に依頼主の所に行った。

本一つに二十万もかける人なのだからよっぽど裕福な人だろう予想通り家は立派なお屋敷であった。

 

「私が依頼主のカービィ・メロンです。」

「(メロン………この町の名前もそうだけど………何処かで聞いた事があるのよね………)」

 

「仕事の話をしましょう。

私の依頼したことはただ一つ、エバルー公爵の持つこの世に一冊しかない本『日の出』の破棄又は焼失です。」

「盗ってくるんじゃねーのか?

事実上他人の所有物を無断で破棄するのですから盗むのと変わりありません。」

「驚いたぁ………あたしてっきり奪われた本かなんかを取り返してくれって話かと……」

 

「……泥棒はとってもいけないことですよ?できれば訳を話してくれませんか?」

純粋無垢なエミにこの任務は向かなかったかもしれない。

所有権がエバルー公爵にある物ならばそれは犯罪であることは確かだ。

 

「いーじゃねーかエミ!二十万だぞ二十万!!」

 

「…………いえ、成功報酬は200万です………」

「にっ!!!?」

「ひゃ!!!!」

「くぅ!!!?」

「まぁ!!!?」

「んーー!!!」

 

格上げされたことを知らずにきた五人は驚く。

 

「な………なんで急にそんな………200万に………」

「それだけどうしてもあの本を破棄したいのです。

私はあの本の存在が許せないのです。」

 

依頼主メロンは顔を伏せ重い空気で語った。

 

「おおおおおおッ!!!行くぞルーシィ、カムイーーーー燃えてキタァァぁ!!!!!」

 

「おう!」

「ちょっと!!!」

「あっ!!!まってーーーー」

 

「(存在が許せない本ってどーゆー事!?)」

 

 

 

五人が立ち去った後、残された依頼主の妻が依頼主に言った。

「先週、同じ依頼を別のギルドが一回失敗しています。

エルバー公爵からしてみれば未遂とはいえ自分の屋敷に入られた事になります。

警備の強化は当然です。今は屋敷に入ることさえ難しいでしょう。」

 

「……わかってる………だが、あの本だけはこの世から消し去らねばならんのだ……

例え、あの悪魔(・・)相手であっても…………」

 

※※※※※※※※※※

 

 

五人は早速本強奪任務を始めた。

 

〜〜作戦その1・メイド作戦〜〜

 

当初の作戦メイド作戦を決行。

相手は超がつくほどのブ男、身体はボールのようで手足は細い異様な体型、右手に怪しげな本を携えていた。

 

ルーシィも正直鳥肌物だが、ここは200万の為、必死で我慢したのだが………

 

「いらん!!帰れブス」

「ブ…………」

 

「そーゆー事よ帰んなさいブス」

「え………ちょ…………あちゃーーーーーーっ!!!」

 

ルーシィはエルバーのお眼鏡には敵わず門前払。

ブタゴリラのようなメイドにより投げ飛ばされてしまった。

 

 

ショックを受け済みで泣いているルーシィに追い打ちをかける。

 

「使えねぇな」

「違うのよ!!!エルバーの美的感覚が特殊なのよ!!!!あんたも見たでしょ!?メイドゴリラ!!!」

「言い訳だ」

「きーーーーーくやしーーーーー!!!!」

「ルーシィさん………同情します………」

「エミちゃん………ありがとう…………」

 

〜〜作戦その2・突撃!!〜〜

 

 

突撃とは言え相手は悪党でもないし町の権力者でもある。

下手に強行突破すれば下手すれば軍が動く、それだけは避けたい。

ルーシィの指摘により隠密行動することにした。

 

ナツの炎で窓ガラスを溶かし、中に潜入。

誰にも気づかれないように静かに行動しているつもりであったが、監視用水晶によって五人の行動は筒抜けであった。

 

 

「誰かとっ捕まえて本の場所聞いた方が早くね?」

「あい」

「見つからないように任務を遂行するのよ。忍者見たいでかっこいいでしょ?」

「に……忍者かぁ」

「なんだか益々いけないことしてるみたいで気がひけるなぁ〜〜」

 

すると下のタイルが盛り上がり、中からエバルー公爵自慢のメイド部隊が地面から現れた。

 

「侵入者発見!!!」

 

 

「うほぉぉぉぉぉ!!!!」

「見つかったぁーーーーーっ!!!」

「きゃーーーーー!!!」

 

「ハイジョシマス」

排除の言葉に反応し怒りをこみ上げるカムイが魔法を発動させる。

「エミさんに手を出す奴は俺が許さーーーーーーん!!!

換装………バトロイド『バトルライザー』に俺様搭乗(ライド)!!!」

 

カムイはロボットを召喚しそれに搭乗した。

 

「うわっ!!ろ………ロボット!!」

その魔法を始めて見たルーシィは大いに驚いた。

 

カムイはそのロボットの手をメイド軍に叩きつけ、メイド長らしきゴリラにはその拳で軽々と吹き飛ばした。

「ライザー!!!……パーーーンチ!!!」

 

 

 

「カムイの魔法はアイチと同様、異空間から魔力駆動の機械兵器を取り出す魔法なんだ。」

「それでロボットを取り出すなんて……反則臭っ!…………」

「自分が操縦して自分の魔力を使って動かせば魔法の杖や魔法剣と大差ないって本人は言ってるよ。」

 

「で?アンタは何をやってるの?」

「…………忍者なんだろ?顔ぐらい隠さないと。」

首に巻くマフラーを顔に巻き顔を隠すナツ。

「すでに絶望的なまでに騒がしいから……」

 

あれだけ大きな音を立てておきながら誰もこの場に駆けつける様子がない。

五人は本の捜索を続けることにした。

 

次々と部屋を捜索するとエバルーの書斎を見つける。

部屋の壁中に積まれた本棚とぎっしり詰まった本の山は文学少女のルーシィにとって圧巻であった。

 

「エバルーって見かけによらず蔵書家なのね。

ここにある本を全部読んでるのなら少し尊敬しちゃうかも。」

 

「おいおい、ここにある本全部調べるのかよ。俺、本を読むと眠くなるんだぜ〜〜」

「だから屋敷ごとやいちまおうぜ。そうすれば任務完了だ。」

「カムイくんもナツさんも真面目にやってよ〜〜。」

 

普段から本など読まないし、調べごとも苦手なナツやカムイは早速だれていた。

 

「ねぇ、みてみてー。お魚の本〜〜」

「zzzzzzz」

「エロい本みっけーー!」

「ナツさん!!/////」

 

「おおおっ!!!金色の本発っけーん!!!」

「ウパー!!!」

 

「アンタら真面目に探しなさいよ!!」

その時、ナツが手にした本こそ目的の本であった。

 

日の出(デイ・ブレイク)!!!」

「見つかったのかよ!!」

「こんなにあっさりみつかっちゃって言い訳!?」

 

偶然手にした本が目的の本とは運がいい。

他の本と一緒になっている事を考えるとこの本自体エルバーにとってそこまで重要なものではないようだ。

 

「さて燃やすか。」

「ちょっ!!待って!!

これ作者ケム・ザレオンじゃない!?」

「あっ!私も知ってます。魔導師でありながら小説家だった人ですよね?」

「「知らんなーー」」

「あんた達本読まないからよ。」

 

ルーシィはその本をナツから取り上げると嬉しそうに上に掲げた。

 

「あたし大ファンなのよー!!

ケム・ザレオンの作品は全部読んだはずなのにーー!未発表作品って事!!?」

「いいから早く燃やそうぜ」

「何言ってるのこれは文化遺産よ!!

燃やすなんてとんでもない!!!」

「仕事放棄だ………」

「大ファンって言ってるでしょ!!」

「今度は逆ギレか………」

読書家のルーシィにはとても価値のある本の様だ。

本の破棄に手間取っていると本の主人が現れてしまった。

 

「ボヨヨヨ!!

貴様らの狙いは日の出だったのか。泳がせておいて正解だった!!

我輩って賢いのうボヨヨヨ」

 

「ほら!モタモタしてっから!」

「ごめん…………」

 

「(地面から現れた!?………魔法かな?………)」

「(にしても何だ、あの本。嫌な気配がする。)」

 

エバルーの異様な登場に推測を立てるエミ。

登場の仕方ではなくエバルーの手に握られた本の方が気になるナツ。

 

 

「フム………魔導師たちが躍起になって何を探していると思えば、そんなくだらない本とは」

「くだらない本!?

(依頼主が200万も払ってでも破棄したい本を所有者のエバルーまでもがくだらない本だって………)

も…………もしかしてこの本貰ってもいいのかしら?」

「嫌だね。どんなくだらない本でも我輩の物は我輩の物!!」

「ケチ!」

「黙れブス」

 

「じゃあせめて読ませて!!」

「ここでか!?」

 

緊迫する筈の状況でまさかのコントのようなやりとり。

その場に座り込み本を読み始めたルーシィに激怒したエルバーは自分が雇った傭兵たちを呼び寄せた。

 

「ええい!!気に食わん!!偉い我輩の本に手を出すとは!!お前たち!!仕事だ!!」

 

本棚の間からゆっくり三人の男が出てきた。

 

「グットアフタヌーン」

「こんなガキどもがあの妖精の尻尾の魔導師かい?」

 

狼の紋章が刻まれた服を着る二人、一人は大きなフライパンを装備する。

傭兵ギルド南の狼所属【バニッシュブラザーズ】の通り名を持つ傭兵であった。

 

この二人とも只者ではない雰囲気を出しているが少し遅れて部屋日入ってきた男は更に何段階も上の力を秘めていることにカムイもナツも感じ取った。

 

ピリッ!ピリッ!っと近づいてくる其の者の殺気を感じた。

 

その男はコートを着込み、独特の髪型に鋭い目をしていた。

 

「………カムイ…………」

「分かってる。あいつだけダンチだ……」

 

その特徴的な風貌に博学なハッピーはピンとくる。

 

「……【施棍の喧嘩屋 喧嘩屋(ブロウラー)アーク】!?」

「ハッピー!知ってるのか?」

「あい、今や国にも強い影響力を持つ傭兵ギルドの⒉トップの一つ、【なるかみ】所属の傭兵……確か問題行動の多いギルドの中でもかなりの問題児で独房に放り込まれたのも一度や二度じゃないとか…………」

「……なんでそんな奴がこんな所に………」

 

 

まさかこんな比較的小さい規模の依頼にビックネームの傭兵が絡むとは思わなかったハッピーたちは息を飲む。

 

「(上司に説教くらってこんな仕事しか受けさせてもらえなかったなんて言えない…)」

 

驚くカムイ達にそんな事を心に思うアークであった。

 

緊迫する空気の中、ガン無視で黙々と本を読ん読んでいたルーシィはある事に気づく。

 

「これ……

ナツ!!少し時間を頂戴!!この本にはなんか秘密があるみたいなの!!!どっかで読ませて!!」

 

いきなり走り去るルーシィ。

その会話を聞いていたエバルーが焦る。

 

「(秘密じゃと!?我輩が読んだ時には気づかなかった………こうしてはおれん!!)

作戦変更じゃ!!あの娘は我輩自ら捕まえる!!御前達はその小僧達を消しておけ!!」

 

エルバーは出てきたように地面に潜りルーシィを追っていった。

 

「……面倒なことになってきた……」

「エミさん、すいませんけどハッピーと一緒にルーシィの所に行ってもらいませんか?ここは俺たちが食い止めるので。ここは……」

「「俺たち2人で十分だ!!」」

 

アークが強敵なのは二人とも理解している。だからこそあまり戦闘に向かないエミを逃したのだ。

 

「我々に対し2人で十分だと?

どうやら妖精の尻尾の魔導師は自分たちが最強か何かと勘違いしているようだな。

しかし、所詮は魔導師、戦いのプロである我々にはかなわない。」

 

二人の挑発に反論したフライパンを持つ方の傭兵

 

「……しかし、獅子は兎を狩るにも全力を尽くすと言う。相性の良い相手をさせてもらう!!」

 

するとバニッシュブラザースの二人が向かってきて、その大きなフライパンと投げ技でナツとカムイを引き離した。

 

「とう!!」

バニッシュブラザーズのフライパン攻撃を避ける二人だがナツがもう一人に掴まれ投げ飛ばされてしまった。

その投擲は壁を軽々と破壊しナツを隣の部屋に移動させた。

ナツはうまく体制を立て直す。

 

「チッ俺の相手はこいつらかよ。」

 

「確かについてないな。何故なら火の魔導師は(ミー)の最も得意とする相手だからな。」

「ん?なんで火って知ってんだ?」

 

ナツはまだこいつらの前では魔法を使っていない。

バニッシュブラザーズの二人は惜しまず答えた。

 

「全ては監視水晶にて見ていたのだよ。」

 

「あの娘の鍵……所持(ホルダー)系星霊魔導師、契約数7。

猫は疑うまでもなく能力系『(エーラ)』、ガキ二人の男の方は所持(ホルダー)系『換装』で魔導兵器を取り出していた。」

 

「そして貴様は潜入するとき熱で窓ガラスを溶かしていた、能力(アビリティ)系火の魔導師。

もう一人の子供は知らないが、戦場から逃がしたところを見ると戦闘向きの能力者では無いだろう。」

 

少ない情報で的確に相手の能力を見抜いていったバニッシュブラザーズ魔法についてもそれなりの知識があるのだろう。それなのに先ほどから魔導師を蔑む傾向にあるのは魔導師のその性質によるものだった。

 

貴様(ユー)は魔導師の弱点を知っているかね?」

「ん?」

「肉体だ」

「肉体!!!?」

 

「そう、魔法とは知力と精神力を鍛錬せねば身につかぬもの」

「結果…魔法を得るためには肉体の鍛錬は不足する。」

「すなわち…日々、体を鍛えている我々には力もスピードも遠く及ばない。」

 

彼らの言っておることは正しい。

確かに一般的な魔導師に関してはその法則が成り立つかもしれない、しかし今彼らが対面している魔導師はただの魔導師ではなかった。

 

「………喧嘩屋が相手している少年の魔法こそそれを体現しているだろう。

未熟な肉体を補うために機械兵器によって身を守りながら魔法を行使する、非力な魔導士が戦うための最も有効的な回答だろう。………

しかし、それこそあの喧嘩屋には通用しない。そして貴様の魔法も我々には通用しない。」

 

その話を聞いてもナツは慌てるどころかまだまだ余裕があった。

確かに喧嘩屋は強そうだがカムイがそうやすやすと負けるとも思ってないからだ。

 

「アイツはお前たちが思ってるよりも100倍強ぇぜ………

そして俺はその更に100倍強ぇぜ!!!ぶっ飛べ!!!!」

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※

 

 

バニッシュブラザーズによりナツと引き離されたカムイはアークとの激しい戦闘を繰り広げていた。

 

「いっけーーーー!!『ライザー・カスタム』!!!」

カムイは先ほどとのバトロイドの後継機に搭乗しアークに攻撃を仕掛ける。

 

アークはその攻撃を難なくかわし、時には両手に持つ武器、ヤイバ付きのトンファーを振り回し攻撃を受け逃した。

 

「そんな鈍重な攻撃では俺は捕らえられんぞ。

妖精の尻尾の魔導士とはその程度か?」

 

「だったらこいつでどうだ!!行くぜ!!『ジェットライザー』!!!!」

 

別のバトロイドに換装。その姿は変わってないようにも見えたが背中に大きなジェットを搭載してあった。

ジェットの恩恵を受け猛スピードで突撃してきたライザーの拳はアークにヒットし大きな土煙をあげた。

 

「(当たった!!)」

機動力を上げた一撃をアークにヒットさせることができたがその攻撃はアークのトンファーによって見事止められていた。

 

「…………この程度か!?ならばその木偶の坊を破壊させてもらう。」

ギロッと鋭い目を更に釣り上げ殺気を高める。

カムイは気配の変異と周りの空気の異変に気がつく。

 

ビリッ!バリバリバリ!!!!

 

「(!!!………不味い!!!)右腕武装パージ!!!」

切り離した右腕は突如破壊され爆発した。

 

「…………いい判断だ……でなければ今頃黒焦げだ…」

 

「(…………電気!?………確かにロボットには有効だな。)」

 

「俺の名はアーク………電弧放電のアークだ。」

 

「(絶縁破壊…………回路をショートさせてくるのか…………

この攻撃ならたとえショートしなくても確実に動きが鈍るし、挙動がおかしくなる。

これ又相性の悪い相手だ…………)」

 

そして、アークは両手に持つトンファーを構えた。

今までとは構えが違う。

これまでは様子見と言わんばかりに本気を出そうとする。

 

「そしてこれが俺の施棍の真の姿だ。」

トンファーから雷が溢れ出し、刃を形成する。

 

「刃状のプラズマジェット………金属だろうがカーボンだろうが平気で切断できそうだなぁ。」

「その通りだ。これでお前のバトロイドの装甲をやすやすと貫ける。」

 

 

 

「へッ!!だったら近づかなければいいんじゃねーか!

バトロイドこ攻撃法が肉弾戦だと思ったら大間違いだ!!!搭乗(ライド)!『ターボライザー』!!!」

高出力・高起動・中遠距離仕様のライザー、その機動力で距離を取りエネルギーガンやミサイルで波状攻撃を開始した。

 

次から次へと放たれる攻撃、しかしアークはその攻撃を見切りかわし果てにはミサイルを真っ二つにして目にも留まらぬスピードで懐に入った。

 

「遅い……!!!」

 

アークはターボライザーの右足、左足、右腕、左腕果ては武装を切り離し、最後には本体に直接刃を突き刺し放電した。

 

「終わりだ!!」

 

ターボライザーは見事に爆発し木っ端微塵に砕け散った。

 

「…………うまく脱出したなぁ…………魔導士!」

「ハア………ハア………ハア………」

 

なんとかコックピットから脱出したなカムイは大きなダメージを受けていた。

 

「だが、お前に勝ちの見込みが無い。

お前は魔導士にしておくには勿体無いぐらい強かったぞ?

才能ある若者を潰すのは気がひけるがこれも仕事だ。悪く思うなよ。」

 

 

「……………勝手に決めんなよ…………

ロボット無しじゃ誰が戦えないって!!!?魔導士が肉弾戦しちゃいけないって誰が決めた!!」

カムイは左腕を伸ばし換装の魔法陣を展開する。

 

「換装…………左腕特殊武装『ライオン・ヒート』!!!!」

 

カムイの右腕には獣をモチーフにした機械武装を展開した。

 

「安心しろ。俺は(こっち)の方が強ぇ!!!」

 

この言葉がハッタリではないことをアークはカムイの目を見て悟った。

 

「退屈な仕事だと思っていたが、楽し気なってきたな!!」

「行くぜ!百獣の王の拳!!」

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

 

「ぶっ飛べ!!!!火竜の翼撃!!」

 

その頃ナツはバニッシュブラザーズの二人を見事撃墜していた。

 

「な………なんだ………この魔導士は……………!!!!」

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

本を持って地下に逃げたルーシィは本を解析し、衝撃の事実を目の当たりにしていた。

 

「…………ま…………まさかこんな秘密があったなんて……………

この本は………燃やせないわ…………カービィさんに届けなきゃ…………」

 

ルーシィが立ち上がった瞬間、壁から手がで出来てルーシィを拘束した。

 

「ボヨヨヨヨヨヨ………風詠み眼鏡を持ち歩いているとは………

あなたもなかなかの読書家よのう」

 

手の主人はエバルー。

 

「さあ、言え!!何を見つけた!?その本の秘密とはなんだ!!」

「痛っ…!!」

 

「言え!言わないとこの腕へし折るぞ!!」

「べーーーーーー!!」

 

ムカッ

 

メキメキメキメキ!!

 

絶体絶命のピンチに天使の叫びが聞こえた。

 

「えーーーーいっ!!!」

「おおぉ!!ぎゃあああああああ!!!」

突如飛んできたハート形の魔法弾がエバルーの腕にヒットしエルバーはその手を離した。

 

「エミちゃん!!ハッピー!!ありがとう!」

 

エミは小さめの杖を構えていた。

先ほどの魔法は魔導士としては最もオーソドックスな魔力の塊を弾として放つものだ。

 

「…………でも、エミちゃんの魔法。

魔法弾の形と色をピンクいハート形にする必要あったの?」

「そっちの方が可愛いから。」

「……………」

 

エミの手に持つ小さめの杖はハートマークや星マークがふんだんに使われている所謂魔法少女が持ってる如何にもな杖である。

 

 

「ぐぅぅ……おのれ……………」

 

魔法弾がヒットしても決定打にはなれずエルバーは怒りを燃やす。

 

「形勢逆転ね………」

ルーシィは鍵を構えて威嚇する。

 

「ほぉう……星霊魔導士かボヨヨヨ

だが文学少女のくせに言葉の使い方を間違えているね。

小娘一人増えたところで我輩の魔法『土潜(ダイバー)』は破れん!!」

 

「オイラもいるのに完全に無視だね…………」

 

先程からエバルーが使っていた奇妙な移動方法はエミの予想通り魔法の一種であった。

 

確かにこの四方八方壁に囲まれているこの場では驚異的だ。

 

エミとルーシィは回避するのに精一杯といったところだ。

 

ルーシィは語り出した、この本に書かれていた事を。

 

この本は著者であるケム・ザレオンがエバルーに脅され三年間独房で書かされたものである。

この土地にはまだ封建主義が残っておりそこの権力者であるエルバーに逆らったら親族全員の市民権剥奪も可能らしい。

市民権を剥奪されれば親族の生活は苦しいものになってしまう。

自分の誇りとの戦いの三年間であったと。

 

普通に読めば内容はエルバー本人を主人公としたファンもガッカリの駄作であるが、解読すればこの本が書かれたひどい経緯が書かれていた。

 

しかし、この本に隠された秘密はそれだけではない。

このの著者ケム・ザレオンは魔導士。そう、この本には魔法がかけられている。

 

「だからこの本は渡さない!!てゆーかあんたに持つ資格なし!!

開け!!巨蟹宮の扉!!キャンサー!!!」

 

ルーシィは切り札の一つカニの手足を持つ美容師キャンサーを召喚した。

 

「(秘密じゃと!!?まさか我輩の事業の数々の裏側でも書きおったか!?

マズイぞ!あれが評議院の検証魔導士に渡ったら我輩は終わりではないか!!)

そうはさせん!!開け!!処女宮の扉!!バルゴ!!!」

 

エルバーは懐から鍵を取り出し、ルーシィと同じ魔法に周りが驚愕した。

 

「お呼びでしょうか?御主人様」

「バルゴ!その本を奪え!!」

 

先ほどカムイが吹き飛ばしたゴリラメイドが現れる。

まさか彼女も星霊であるとは思わず驚きも二倍であったがさらに驚きの事件が起きた。

 

ナツが偶然バルゴを掴んでおり、星霊が普段住まう星霊界を中継して瞬間移動を果たしたのだ。

 

「ルーシィ!俺はどうしたらいい!?」

「そいつどかして!!」

「おう!!」

 

相手が戸惑っているうちにナツは手に炎を纏いバルゴを撃破。

ルーシィは腰に装備した鞭を取り出しエルバーを拘束した。

 

「もう、地面には逃げられないわよ!」

 

その隙にキャンサーの攻撃がエバルーにヒットする。

 

「あんたなんか脇役で十分なのよ!!」

 

エバルーは倒れ、戦いは終結したかに思えた。

 

「やりましたね!ナツさん!!」

「…………」

「どうしたんですか?」

「………なんかやな予感がする。」

 

ナツが変な雰囲気を感じた。

すると倒れたエルバーの横にエバルーが戦闘時にも肌身離さず持っていた本が転がり本が開く。

 

「……………我輩が……脇役だと…………

我輩の物語はここで終わりだと?…………そんなの認めん…………認めんぞ!

そんなストーリー…………バットエンドにしてやる!!!」

 

本から立ち上る黒い煙に包まれ再び立ち上がる。

そしてその煙は悪魔へと姿を変えた。

 

「書物の悪魔!!…………もしかして………こいつの悪行の数々………まさか!!」

 

禁書と呼ばれる魔道書の中には悪魔が封印されているものが多い。

魔導士であり、蔵書家であるエルバーが偶然手にしてもらったものであろう。

 

実体のないこのタイプの悪魔は持ち主の欲望に反応し持ち主の体を乗っ取ったのだ。

『ストーリー・テラー』それがこの悪魔の名前であった。

この男、エルバーの本に対する執着と自分の地位に対する欲望を糧に力を貯め。

この男に理性を超越した悪行を仕向けた張本人である。

 

悪魔はその大きな体から繰り出される攻撃をルーシィに放つ。

 

「エビ!!!」

「キャンサー!!」

 

キャンサーがルーシィをかばいこの攻撃を受け戦闘不能になってした。

というか蟹なのに語尾がエビなことにルーシィ以外の全員が心の中で突っ込んだ。

 

「ルーシィさん!下がってください!!えいっ!!!」

 

エミは魔法弾を放つが攻撃力が足らず、悪魔は平気そうだ。

 

「やっぱりこのままの姿で攻撃しても倒れてくれないかぁ〜〜」

「でもそこに水があるから全力が出せるよ!」

 

ハッピーが横の大きな下水を指差し

エミの魔法の真骨頂はルーシィのアクエリアスのように水場で発揮されるものなのだろうか。

 

「エミちゃんの魔法も水場の条件があるの!?」

「はい………そうなんですが………下水ではあんまり使いたくないですね………」

「………それならしょうがないね………私もそうだし。」

 

確かに下水なんかでアクエリアスを呼び出したら後でどんな仕打ちを受けるのだろうか。

 

「火竜の…………鉄拳!!!!!」

ナツの炎を纏った攻撃を悪魔にかまそうとした。

 

バシッ!!!

 

悪魔はその攻撃を見事受け止めた。

 

「!!!!ナツが力負けた!!!」

 

火力自慢のナツの攻撃を受け止めた。

この悪魔の原動力はエルバーの欲望、とんでもない力だ。

 

「火竜の鉤爪!!!」

ナツはすぐ様足での攻撃に切り替え悪魔に一撃を入れた。

 

スカッ!!

 

攻撃が入ったと思われた瞬間その攻撃はすり抜けた。

元々実体のない悪魔なのだから実体化の有無は自由自在だ。

 

「すり抜けた!?実体の有無は自由自在なの!?

だったらエバルー本人に攻撃よ!!行けーー!!ナツ!!」

「ルーシィ………何にもやってないね。」

「アンタも人のこと言えないし、私があんな化け物敵うわけないじゃん。」

 

「どわっ!!」

エバルー本人に攻撃しようとしたナツに降りかかる悪魔の攻撃、ナツは躱せたがこれでは攻撃できない。

 

「これじゃあ攻撃できない……………」

 

するとエミがある作戦を立てた。

 

「…………ルーシィさん。」

「どうしたのエミちゃん?」

「あの悪魔の本を狙いましょうルーシィさん。悪魔の発生源ですから狙うのが難しいですけど私が魔法で悪魔を引きつけます。ルーシィさんはその間に本を奪ってください。

後はナツさんの魔法で本を焼き払えば…………」

 

「ダメよ危険すぎる!もし失敗したら………」

「大丈夫です!私信じてますからナツさん達妖精の尻尾の仲間を……そしてルーシィさんの事もね!」

「…………わかった………ナツ!聞いてた!?」

「おう!!」

「ハッピーはエミちゃんをサポートして!!」

「あい!!!」

 

四人は覚悟を決め作戦に移った。

 

「当たってーーー!!!!」

 

エミはエバルーに向かって魔法弾を放った。

宿主を守るのはデフォの様で悪魔は実体化してエバルーを守るしかない。

 

「いけ!」

ルーシィは鞭を使い針の穴を通すかのような攻撃でエバルーの手元にある本を弾いた。

 

「ナツ!!」

「任せろ!!火竜の咆哮ぉぉぉぉ!!!!」

 

ナツは弾かれた本に目掛け、火炎放射を禁書にぶつけた。

 

「「ぎゃあああぁぁぁぁあああああぁぁぁぁ!!!」」

エバルーと悪魔はシンクロするように苦しみ出しエルバーはその場に倒れ、悪魔は消滅した。

効力を失った禁書はチリになって消えた。

 

それを確認した四人は歓喜をあげた。

 

「やったなエミ!!」

「はい!!」

 

パンッ!

 

エミとナツは仲良くハイタッチする。

 

「ルーシィさんも。」

エミは笑顔でルーシィの前に手を掲げた。

 

「ありがと。エミちゃん!」

 

パンッ!!

 

その時、ルーシィはチームで動くことがどういう事なのかわかった気がした。

エミとカムイが今回ついてきたのはそれを教えてくれるためだったのかもしれない。

 

 

※※※※※※※※※※※※

 

 

一方その頃、強敵アークと戦っていたカムイは…………

 

 

「ふぅ〜〜〜〜〜どうやらあっちは終わったようだなぁ。」

「任務失敗、お前たちの勝ちだ。これ以上戦う理由は無いな。」

「意外だなそんなの御構い無しで戦い続けるのかと思ったぜ。」

「俺がいくら戦闘狂でも時と場合を考えるぜ。」

 

この短くも濃密な戦いの中で軽い友情が芽生えていた。

 

「全く………お前たちのお陰で骨折り損のくたびれ儲けだぜ…………

まあいいけど……

それにしてもお前、なかなかやるじゃねえか。どうだ?俺と一緒に来ないか?

お前を魔導士にしとくには勿体無い。仕える価値のある男を紹介してやる!」

 

カムイは傭兵ギルドからの勧誘を受けたがその気は全くなかった。

 

「いい話かもしれないが俺は今が楽しくてしょうがないんだ。悪いが断らせてもらうぜ。」

「だろうな。また機会があった殺り合おうぜ。」

「おう!またな!!」

 

アークは去っていった。

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

その後目的の本を依頼主カービィ・メロン、本の著者ケム・ザレオンの息子に渡すと本にかけられた魔法が発動。

本の文字が書き換わり真のストーリーが現れた。

 

父が残した最後にして最悪の本を躍起になって破棄しようとした息子カービィは父の真意を知ると涙を流し喜んだ。

 

そうしてこのクエストは終わりを迎えた。

 

 

 

 

 




ナツに対するバニッシュブラザーズ、カムイに対するメタとしてアークを採用したのですが、序盤登場のキャラとしては強くしすぎましたかね?
今話のように今後は色々なメンバー、ヴァンガキャラ、ヴァンガユニット、フェアテキャラを絡ませたいと思います。
ヴァンガキャラ、ヴァンガユニットはフェアテ世界のいたる組織、団体に差し込んで行く予定です。

【キャラクター紹介】
名前:カムイ・カツラギ
所属 妖精の尻尾 年齢12歳
魔法 換装(バトロイド・グラップル)

使用クランノヴァグラップルの能力を再現、漫画でのライザーでの戦いが一番近いです。
ロボに乗って戦いますけど直接的な戦闘も得意。
エミちゃんが好きなのは原作通り。


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鉄の森
姉御と番長


 

 

「う〜〜〜ん………

"魔法の腕輪探し"に"呪われた杖の魔法解除"

"占星術で恋占い希望"!?"火山の悪魔退治"!!?

へぇーーーー依頼って色々あるんですね。」

 

「気に入った仕事があったら私に言ってね。

今、マスターいないから。」

 

様々な依頼書が貼り出されている依頼版の前で悩んでいるルーシィに看板娘のミラが言っておく。

マスターは地方のギルドマスターが集い定期報告をする定例会に出席する為出張していた。

 

「つーか早く仕事選べよ。」

「前はオイラたち勝手に決めちゃったからね。今度はルーシィの番。」

 

「冗談!!チームなんて解消に決まってるでしょ。」

「何で?」

「あい」

 

ルーシィは先日の本の破壊依頼の任務の時の事をいう。

 

「だいたい金髪の女だったら誰でも良かったんでしょ!!」

「何言ってんだ………その通りだ。」

「ホラーーーーー!!!」

「でもルーシィを選んだんだ。いい奴だから」

「……………///」

 

なんの含みもなく言われた言葉にルーシィは言い返せなくなる。

 

「なーに、無理にチームなんて決める事ァねえ

聞いたぜ大活躍だってな、きっとイヤってほど誘いが来るぜ。」

「ルーシィさん!僕らのチーム、Q4に入らない!?」

「ほら、フェアリーテイル最強チームからの直々の勧誘だぜ。」

 

チームの話になり、ナツとチームなんて止めておけと言うグレイ。

そしてQ4のリーダーのアイチが勧誘を始めた。

 

「雪山でも本の件での活躍、カイくんやカムイくんから聞きました。ルーシィさんなら皆んなも喜びます。」

「…………アレ?本の件ならともかく雪山の件ではほとんど何にもできなかったわよ?………」

 

「『ワザと敵に捕まって上手く敵の情報を掴んでくれた……』ってカイくんが褒めるなんて中々ないんだよ。」

「話を大きくしたのはあの人ですか!?」

 

何処からか傭兵二人もメイドゴリラも倒したのはルーシィであると噂が広がり、今や期待の新人である。

 

 

 

「あっ、でも五人だとQ5になっちゃうな………五つ葉のクローバーとかレア度がまた一段と上がるね。」

「そう言えばQ4の最後の一人ってどんな人?」

 

 

ピクッ!!!

向こうで日常茶飯事的な喧嘩しているナツとグレイもその名前を聞いて手を止めた。

 

 

「……………ああ、ルーシィさんまだミサキさんと会ったことなかったっけ。」

 

Q4最後のメンバーについて話そうとしているとナオキが走ってやってきた。

 

「ナツ!!!グレイ!!!マズイぞ!!!姉御と番長が帰ってきたぞ!!!」

「「あ!!!!!?」」

 

ズシン………ズシン…………

 

次第に音が大きくなりその場の誰もが息を飲む。

「…………俺、帰るわ…………」

危険を察知したロキはそそくさと帰っていった。

 

音の正体は巨大な角、それを赤髪で鎧を着た綺麗な女性が運んできたのだ。

共に入ってきたのも女性、銀髪で大胆なスリットのあるスカートを履いている。

 

「………ただいま。」

「今、戻った。マスターおられるか?」

 

「お帰り!!マスターは定例会よ。」

二人を迎えるミラ。

 

巨大な角は討伐依頼が出された魔物のツノを地元の者が綺麗に装飾した物らしいのだが、綺麗だからと持って来たのだと。

こんなバカデカイ物迷惑以外の何物でも無いが、二人の威圧感に誰も反論しない。

 

二人は自分達の事を棚に上げて日常的に空気を吸うレベルで素行不良をするギルドのメンバーを注意していった。

 

「また、問題ばかり起こしてるようだな。マスターが許しても私達が許さんぞ。」

 

「カナ………なんという格好で飲んでいる。」

「う………」

 

「イザキ、表でモリカワがノビてる。さっき、エルザに勝負を仕掛けて返り討ちにあってた。」

「……どこに行ったかと思ったら……世話がやける……………」

 

「ビジター踊りなら外でやれ、ワカバ吸殻が落ちてるぞ。」

 

「カイ、またそんな所で寝て、邪魔!!」

「zzzzzzz…………」

 

 

「全く………世話がやけるな。今日のところは何も言わないで置いてやろう。」

「(随分色々言ってたな…………)」

 

あの血の気の盛んなメンバーたちがただ注意を受けている現状に驚きながら二人を見た。

 

「……風紀委員か何かで?」

「エルザとミサキです。」

 

「風紀委員?あの二人はそんなんじゃねーよ。」

「え〜〜っと…………ナオキさんでしたっけ?

「ナオキでいいぜ!

あの二人は別名『妖精組の牡丹と薔薇』俺たち地元の不良間柄では裏で有名だからな。」

 

「ナオキ〜〜!!!!

変なこと吹き込んでじゃないわよ!!!」

「そっちの子は見ない顔だな。新人か?よろしく。」

 

「あっ!………はい……ナツとアイチくんの推薦で先日メンバー入りしたルーシィです………よ、よろしくお願い……します。」

 

先程のナオキの言葉に硬直するルーシィ。

 

「そう、身構えなくても大丈夫だ。ナオキが勝手に言ってるだけだ。

そんな事実どこにも無い。」

「でも姉御、火のないところに煙は立たないって………」

 

どごぉ!

ミサキはナオキに見事な上段蹴りをお見舞いする。

 

「ナオキ、いい加減にしないと蹴るわよ?」

「………もう、蹴ってます…………」

 

 

そこにアイチが他のメンバーと違い何の気負いも無く近づいてきた。

 

「エルザさんミサキさんお帰りなさい。」

「アイチか。留守中、良い子にしてたか?」

「エルザさん、ボクそんな子供じゃないですよ〜〜」

「フッ!可愛い奴め。」

 

ゴンッ!!

「痛っ!!」

所々仕草が乙女チックで可愛いアイチをエルザが抱き寄せるが鎧を着ている為逆に痛い。

「エルザ、アイチ痛がってる。」

「ああ、すまん。」

ミサキはエルザからアイチを取り上げ逆に抱え込む。

 

「所でナツとグレイはいるか?」

「あい」

 

「や……やあエルザ……オ……オレたち今日も仲よし……よく……や…………やってるぜぃ」

「あい」

「ナツがハッピーみたいになった!!!!!」

 

アイチとは正反対に二人はガチガチになって肩を組む。

二人とも昔、エルザにボコボコにされたことがあり、それ以来二人に取って恐怖の対象である。

 

「実は二人に頼みたいことがある。

仕事先で少々厄介な話を耳にしてしまった。

本来ならマスターの判断を仰ぐトコなんだが早期解決が望ましい私達は判断した。

二人の力を貸して欲しい。ついてくれるな。」

「え!?」

「はい!?」

 

エルザの言葉に二人だけではなく、ギルドのメンバー全員がどよめく。

あんな巨大な角を持つ怪物を倒せる二人が力をかりる自体なんて異常だ。

 

「腕に自信のある奴なのは勿論、それなりに頭数が必要なのよ。アイチも手伝ってくれる?」

「はい!ミサキさん!」

「カイも手伝っ…………」

「何者も俺の眠りを妨げる事は出来な………むにゃむにゃ………」

 

「寝言でも偉そうね。」

「やっぱりカイくんは凄い!!」

「………………(絶対に違うと思うんだけどな。)」

 

 

※※※※※※※※※※

 

マグノリアの駅

 

エルサとミサキに呼ばれたメンバーが集まっていた。

人が賑わう駅の中、不穏な空気を漂わせる者達がいた。

 

「なんでエルザみてーなバケモノが俺たちの力を借りてえんだよ。」

「知らねえよ。

つーか”助け”ならオレ一人で十分なんだよ」

「じゃあ、オマエ一人で行けよッ!!!オレは行きたくねぇ!!!」

「じゃあ来んなよ!!!後でエルザに殺されちまえ!!!」

 

「迷惑だからやめなさいっ!!!」

 

顔を合わせれば息をするように喧嘩を始めるナツとグレイ。

巻き込まれた大荷物の商人らしき人は可哀想だ。

 

ルーシィはそんな二人の仲裁を取るためにミラに頼まれついてきたのだ。

 

「あ!!エルザさん!!!」

 

ビクっ!!

「今日も仲良くいってみよー!」

「あいさー」

 

エルザの名前を聞くだけで態度が一変する。

いったい二人は今までどんな仕打ちを受けたのだろう。

 

「すまない……待たせたか?」

そこに現れたエルザの荷物を見てルーシィは驚く。

山のように積み上げられたカバンを引きずるエルザ。

 

「荷物多っ!!!

…………何が入ってるんですか?……………」

 

何と無く気になったのでルーシィはこの大荷物の中身を聞いた。

 

「ん?………女の旅は色々物入りなのはわかるだろ?私の場合は殆どが服だな。」

「服?…………」

「アイチに似合いそうな服も色々と持ってきた…………」

 

なしてアイチが関係しているのかわからなかったが、その答えはすぐに分かった。

 

「アイチくん?…………そう言えばまだ来ていませんね」

「いや、もう来ているが。」

 

あたりを見渡してもアイチの姿は見えない。

するとエルザの大荷物の陰からアイチが姿をあらわす。

 

「エルザさ〜〜ん…………もう、いいでしょ。着替えてきても…………」

 

出てきたアイチはなんとメイド服を着ていた。

可愛さを基調とし、フリフリをふんだんに使ったものであった。

 

「あ…………アイチくん……その格好………」

 

ハルジオンでも潜入の為、変装していたがここまでくると何か危険な香りがする。

 

「うむ、やはり私の身立ては間違っていないようだな!似合っているぞ。」

「う…………嬉しくないです……………」

 

アイチは同世代の中でも背は低く、顔も童顔で言動も乙女チック、ゆえにエルザにチョクチョク着せ替え人形にされていた。

 

ルーシィはまだ知らないがエルザにはコスプレの趣味が少しばかりあって、際どい服装やあざとい服装を趣味で着る傾向がある。

 

しかし、自分には似合わないと思っている服は買うだけで放置してあったのだ。

 

そこで目をつけられたのがアイチである。

アイチなら下手な女の子よりも可愛く、恥じらう姿もいい。

女装故の背徳感もまたそそられるらしい。

今ではアイチはエルザのお気に入りである。

 

ハルジオンでも抵抗少なく変装ができたのはエルザの日頃の行いの賜物である。

 

いや〜慣れって怖いですよねwww

 

 

 

「アイチ〜アイチ〜こっち見て〜〜。」

カシャ!!カシャ!!カシャ!!

「やめて!ハッピー!!撮らないで!!」

 

ハッピーがメイド服のアイチをどこからか持ってきたカメラで激写した。

本当にこのネコは自重という言葉を知らないのか…………

因みにこの写真は後日、匿名【黙示録の炎】が高値で購入していったとかなんとか………

 

 

「お待たせ……」

 

集合時間少し前に最後の一人ミサキが到着した。

 

「アイチ、ちゃんと約束は守ったみたいだね。」

「ミサキさん。もう、許してくださいよ〜〜」

「ダ〜メ!私達を置いてナツとハルジオンに行った罰として今回の仕事はその格好でやる事。」

「そんな〜〜」

 

どうやら今回は一緒に行く筈のクエストをほったらかしてナツとハルジオンに向かったアイチへの罰としてミサキとエルザが結託したようだ。

 

「心配しなくても良いよアイチ、とっても似合ってるから。」

「も〜〜、ミサキさんまで〜〜〜」

 

彼女達もまた、フェアリーテイルの魔導士。

ルーシィの言う真面な人間とは到底言えないのであった。

 

「(あ〜〜〜もう、受け入れるしかないのね〜〜ここには真面な人なんかいないって事を……………)」

 

ルーシィが何かを悟っているとアイチが助けを求めてきた。

 

「もう〜僕、これでも男なんですよ。似合うわけないじゃないですか。

ね?ルーシィさんもそう思うでしょう?」

「え?……私?…………」

 

ここでルーシィが否定すればアイチは助かるかもしれなかったが、ルーシィはアイチの謎の魅了に支配されてしまう。

 

可愛い服、童顔、女顔に加え。

羞恥心からくる恥じらいからくる不安そうな表情、瞳は涙でウルウル状態。

女の子顔負けの可愛さにルーシィさえもが苦し悶える始末であった。

 

「うっ!!……………わ、私も…………似合ってると…………思うかな…………(可愛い過ぎる!!)」

 

その様子を見たエルザとミサキはすかさずルーシィをそっちの道に引きずり込もうとする。

 

「確か、ルーシィって言ったね。流石、期待の新人、話がわかるじゃない」

「さあ……………こっち(・・・)に来るんだ………」

 

 

「それは謹んで遠慮します…………」

 

なんとか理性を保ち断ったルーシィだが、本能には逆らえない。

近い将来、ルーシィ・ミサキ・エルザで【アイチ完全包囲網】が完成する事になるのを誰も知らなかった。

 

※※※※※※※※※※

 

 

メンバーは全員、機関車にの乗り込み、目的地へと向かった。

 

乗り物という事は勿論…………

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

毎度の事ながらナツはグロッキーである。

見るに見かねたエルザは力技を行使した。

 

「仕方ない……」

 

ドスっ!!

 

エルザはナツの腹に拳を叩き込み気絶させた。

 

「これで少しは楽になるだろう」

「「「「………………」」」」

 

ルーシィは空気を変えようと、それぞれが使う魔法について聞いた。

 

「そういえばエルザさんはどんな魔法を使うんですか?」

「エルザでいい。」

「エルザさんの魔法は僕と同じなんだけどとってもカッコいいんだよ〜〜」

 

アイチが嬉々としてエルザの代わりに答えた。

 

エルザの魔法は異空間から武器や武装を取り出す魔法、【換装】という魔法である。

 

「…………カッコいいか……嬉しい事を言ってくれるが私はグレイの魔法の方がいいと思うな。」

 

するとグレイは自分の魔法を披露する。

両手を合わせ、魔力を貯める。

すると中から妖精の尻尾の紋章を形取った氷の結晶が現れた。

 

グレイの魔法は【氷の造形魔法】、氷属性の魔力に形を与える魔法である。

氷は火の魔導士であるナツとは大局に位置する存在。

二人が仲が悪いのはそのせいなのかもしれない。

 

自分の魔法を引き合いに出されたグレイが本題に入るようエルザに言った。

 

「つーか、そろそろ本題に入ろうぜ、エルザ。

いったい何事なんだ?」

「そうだな話しておこう。」

 

エルザは先の仕事であった事を語り出した。

一緒に行っていたミサキは説明をエルザに任せ、自分は本を読んで暇をつぶしている。

 

※※※※※※※※※※

 

先の仕事の帰り、ミサキが欲しい本があるから買い物にいきたいと言い出した。

エルザはそこまで本が好きと言うわけでもないため一度別れ、魔導士がよく集まる酒場で待ち合わせをすることにした。

そこで気になる連中をみかけたのであった。

 

『コラァ!!!酒遅えぞ!!!」』

『ビアード、そうカッカすんなよ。』

『うん』

 

四人組の柄の悪そうな男達がいた。

 

『これがイラつかずにいられるかってんだ!!!』

『せえっかくララバイ(・・・・)の隠し場所を見つけたのにあの封印だ!!!

何なんだよあれはよォ!!全く解けやしねぇ!!!』

『バカ!声がでけぇよ。』

『うん、うるせ』

騒ぎ立てる男とそれに対し怒る男が二人。

 

すると最後の一人の男が口を開いた。

『あの封印は人数がいれば解けるなんてものじゃないよ。

後は僕がやるからみんなはギルドに戻ってるといいよ。

エリゴールさんに伝えといて、必ず三日以内にララバイ(・・・・)を持って帰るって』

『マジか!?解き方を思いついたのか?』

『おお!!さすがカゲちゃん!!!』

 

そうしてその男は席を立った。

これがエルザが仕事先で遭遇した事だ。

 

※※※※※※※※※※

 

「ララバイ?」

「子守唄……眠り魔法か何かかしら……」

 

封印されている事から強力な魔法であると思われるが、しかしそれだけでは仕事かもしれないため気にする事もない。

しかし、エリゴールと言う名をミサキに聞き覚えがあり、後でミサキに確認すると驚くべきことがわかった。

 

魔導士ギルド 【鉄の森(アイゼンヴァルト)】のエース。【死神 エリゴール】

 

暗殺系の依頼ばかり遂行し続けついた字名、本来暗殺依頼は評議会の意向で禁止されているが鉄の森は金の為に動いた。

結果、6年前にギルド連盟を追放され、今は【闇ギルド】と言う無法者の集まりとなっている。

 

「不覚だった………

あの時エリゴールの名を思い出していれば……

全員、血祭りにしてやったものを…………」

 

エルザは悔やみながらも殺意を撒き散らした。

 

 

「……それにしても、よくエリゴールの名前だけでそこまで思い出しましたね。」

「ん………まぁ、記憶力には自信があるからね。……………」

 

 

ミサキは魔法とは別に忘れる事のない完全なる記憶。直観像記憶《アイデテック・イメージ》、某シューティングゲーム風に言うならば【一度見た物を忘れない程度の能力】をもっている。

一家に一人欲しい便利さだが、その能力に目覚めるきっかけが忘れてしまいたいと思わせるほどに辛い過去が原因である為本人は余りその事を自慢しない。

 

とにかく、そんな危険人物がララバイなる強力な魔法を手に入れ、何か考えているとなれば手を打たなければならない。

 

故にエルザは言った。

 

「鉄の森に乗り込むぞ」

 

 




久しぶりの更新です。すいません。

エルザは原作より早く柔らかくしました。
大荷物の中身が服なのは僕の勝手なイメージです。
もっと二次創作よりのキャラにしたいな〜〜原作キャラとの絡みを増やしたいな〜〜…………結果こうなりました。


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呪歌

だいぶ遅れてしまいました〜〜。


鉄の森 その2

 

エルザ率いる妖精御一行は封印された謎の魔法ララバイを手にしようとした闇ギルドアイゼンヴァルトに乗り込もうと士気を高めているとルーシィが異変に気付いた。

 

「やだ……嘘でしょ!!?

ナツがいないんだけどっ!!!」

「「「「あ!!!」」」」

 

乗り物酔いで真面に動けないナツは一人、列車に忘れ去られていた。

 

※※※※※※※※※※

 

一人、苦しんでいるナツに話しかける男性、それこそ、エルザが見た酒場でララバイの封印を解くと言っていた男、カゲヤマであった。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

「お兄さんここ空いてる?」

「ふーーふーー」

「あらら……辛そうだね、大丈夫?」

カゲヤマはナツの肩の妖精のマークに目が止まる。

「妖精の尻尾か……羨ましいね。」

 

早速というか、やはりと言うか。

ナツは常にトラブルの中心にいる男である。

 

 

※※※※※※※※※※※

 

 

「何と言う事だっ!!

話に夢中になるあまりナツを列車に置いてきた!!アイツは乗り物に弱いと言うのにっ!! 私の過失だっ!!とりあえずアイチ!私を殴ってくれないかっ!!!」

 

 

「まぁまぁまぁ」

「エルザ、落ち着いて。とにかくおいかけよ。」

 

 

取り乱すエルザを落ち着かせるアイチとミサキ。

 

しかし、ハッピーが無理やり電車を止めようとしたりグレイが服を脱ぎ出したりてんやわんや。

 

なんとか車を借りてナツを追いかけることができた。

 

エルザが運転席に座り魔導四輪車を走らせた。

この車は運転手の魔力を使うクリーンな車だ。

 

「はぁ〜〜なんでこうなるんだろ。」

 

電車を無理矢理止め、ナツを追いかける御一行、その事態に頭を抱えるミサキ。

 

「苦労しますね、ミサキさん。」

頭を抱えるミサキにルーシィが隣から声をかけた。

 

 

「こいつらは昔からそうなのよ。

グレイは服を脱ぐし、ナツは暴れるし、エルザはこんなんだし。

モリカワやカムイはバカだしカイはあんなん出し…………etc」

「アイチくんだけが良心な訳ですね。」

「それがそうでも無いのよ。アイチはあれで結構頑固で一度決めたことにはとことん突っ走るから心配で目が離せないのよ。」

 

今日も昨日も、エルザのインパクトの強さに押されていたルーシィはミサキと初めてまともな会話をした。

 

ミサキはどうやらギルドの中でも古参メンバーで皆の姉的な存在らしい。

 

「アンタ、ナツとアイチの推薦でこのギルドに入ったんだろ?」

「はい。」

「あいつらと付き合う一番の方法は自分自身もあいつらと一緒にいることを楽しむことだから。」

 

ミサキはギルドの中でもキャラの濃い連中達と付き合う方法を心得ていた。

 

「楽しむですか………………」

「そう……」

「この露出狂(グレイ)と怪獣(ナツ)がいるこの環境をですか?」

「…………うん……………

大丈夫。救いはあるから…………」

 

ルーシィのツッコミに苦笑いするミサキ、そんなミサキを見て笑顔が漏れるルーシィであった。

 

「フフフ、参考にさせてもらいます。」

 

確かにこのギルドのみんなは喧嘩はするがみんな楽しそうだ。

ルーシィが他の大きなギルドではなく、妖精の尻尾を選んだのはとても楽しそうなギルドであった事も一つだ。

確かに変わった人の多いギルドだがそれもひっくるめて楽しんでしまえばいいのだ。

 

「こんな時に談笑してんじゃねーよ。

ほら、列車に追いつくぞ。」

 

二人の会話は車の上に乗ってるグレイの言葉によって遮られた。

 

ガシャン!!

 

前方を走る列車の窓が割れ、中からナツが飛んできた。

 

「なんで列車から飛んでくるんだよォ!!!」

 

飛んできたナツは屋根にいたグレイに激突、エルザは慌てて車を止め駆け寄る。

 

「みんな、ひでぇぞ!!俺を置いてくなんて!!」

 

 

ナツの無事を確認したエルザは喜び、鎧を着込む胸へと抱き寄せた。

「すまない、しかし無事で何よりだ。よかった。」

ガシャ!

「硬っ!!」

 

 

「無事なモンかっ!列車で変な奴に絡まれたんだ!!」

「?」

 

「なんつったかな?アイ……ゼン……バルト?」

「バカモノぉっ!!」

 

バチィ!!

 

「鉄の森は私達の追っている者だ!」

「まぁまぁ、ナツくんは気絶して何にも聞いてないんだから。」

「うむ、そうだったな。」

 

ナツに列車で絡んできた男こそ、封印されし魔法ララバイを手にし、ギルドのメンバーと合流するため、列車を利用していたカゲヤマと言う男であった。

 

「さっきの列車に乗っていたのだな。

今すぐ追うぞ!どんな特徴をしていた?」

ナツは自分に絡んできた者の様子を話し出した。

「あんま特徴なかったなぁ……

なをかドクロっぽい笛持ってた、三つ目があるドクロだ」

「何だそりゃ、趣味悪ぃ奴だな。」

 

笛の特徴を知った時、読書家の二人が反応した。

 

「三つ目のドクロの笛…………

ううん……まさかね……あんなの作り話よ。」

「そういう話し私も聞いた事がある。

でももしそれが本当なら大変な事ね………」

 

深刻そうな顔をする二人にグレイが問う。

 

「なんだよ。自分たちだけで納得すんなよ。」

 

ミサキは自分の記憶にあるその魔法の情報を皆に語り出した。

 

「その笛が呪歌(ララバイ)、”死”の魔法なんだよ。

アンタたちも知ってるでしょ?禁止されてる魔法に呪殺ってのがあるの。

対象者に呪い”死”を与える黒魔法、元々その笛は”呪殺”の為の道具の一つだったんだけどね。伝説の黒魔道士ゼレフがさらなるまてきに進化させたって言い伝えられてるの。

その音を聞いた者全てを呪殺する……

 

”集団呪殺魔法”【呪歌(ララバイ)】……」

 

何に使うのか知らないが少なくともとんでもないことになる事は確かであろう。

 

「そんな危ねぇ魔法が……」

「私も物語でしか聞いたことない魔法だけど間違いないと思う。」

 

「…………そんな危険な魔法がエリゴールの手に!?…………」

 

「急ぐぞ!!」

 

6人と一匹は急いで次の駅、クヌギ駅に向かった。

 

6人が向かうクヌギ駅ではその頃鉄の森によるトレインジャックが行われていた。

 

そして到着したカゲヤマの手からエリゴールに禁断の魔法が手放されそうになっていた。

 

「この列車で戻ると聞いて待ちわびたぞ、カゲヤマ。」

「なんとか封印は解きましたよ。」

「これが禁断の魔法……呪歌か……」

 

その時、偶然にも鉄の森を訪れようとしていた者がジャックされた列車に現れた。

その者が声を発するまでそこにいる全員がその者の存在に気づかなかった。

 

「全く…………厄介な物を掘り起こしたもんだ………………」

『!!!!』

 

その男は東洋の剣士の服を着ており腰には日本刀を差していた。

 

「おい!テメェ!!乗客は降りろって言っただろぉ!!」

「仕方ねぇ、こいつバラしちまおうぜ!」

 

男の存在に気付き、男に襲いかかる鉄の森のモブ魔導士二人。

 

「黙れ……」

 

キーーーーーン!!!

男は素早く刀を抜き差しし、それによって発せられた超高周波の音を近距離で二人に聞かせた。

 

バタッ!!

 

二人は倒れ、あたりに緊張が走る。

 

「誰だテメェ。」

 

エリゴールはその瞬間悟る。

こいつは只者ではないと、故に下手に仕掛けず素直に男に言葉を放ったのだ。

 

男は自らの素性を明かした。

 

「闇ギルド【闇の異端者(ダークイレギュラーズ)】所属。シュティル・ヴァンピーア…………」

 

闇の異端者(ダークイレギュラーズ)

人ならざる力を持った為故郷を追われた者、力を求めて禁呪法や改造手術で異形となった者達など、世界の常識や秩序、同調圧力などから弾き出された者達の集まりである。

 

彼等の仕事は表に出せない仕事が多い。

故に闇ギルドに区分されているがその性質は他の闇ギルドとは大きく違う。

 

他の闇ギルドの大半は闇ギルドの三代勢力、通称バラム同盟に所属しているが、ダークイレギュラーズだけは違う。

バラムに参加しなくともバラムや国に潰されない事からバラムに匹敵するほどの戦力を持ち合わせている。

彼等の仕事は決して表には出ない、闇から闇へ誘われる為、表の者は勿論、裏の者でさえその存在を認識できない事がある。

大国と言う大きな器にはそういった流れが存在するものだ。

そういった仕事しかこなせない異端者達が仕事を求める場所でもある。

普通の仕事もこなせるのに金や力の誇示の為に違法な仕事をこなす他の闇ギルドの連中とは大きく違う。

 

見るのは初めてだがエリゴールもその存在を知っていた。

 

だからこそ今、この時にコイツが現れた事に疑問を感じていた。

 

「俺たちに何の用だ…………」

 

エリゴールの問いにヴァンピーアは答えた。

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

ギャギャギャ!!

 

エルザの運転する四輪車が物凄い勢いで走行する。

 

「エルザ!飛ばし過ぎだぞ!SEプラグが膨張してんじゃねぇーか!」

 

前述の通りこの車は魔力で動く。

かなりの馬力とスピードを出す為には大量の魔力が必要になる。

SEプラグは使用者と車を繋ぐ魔力を通す回路である。

 

「あの笛が吹かれれば大勢の人が死ぬ…………急がざるを得ないだろう。」

「わかってっけど奴等の目的もはっきりしねぇし……一戦交える可能性もある。

そんなにスピードを出したらいざって時に魔力が枯渇しちまうぞ。」

 

グレイの言う通り危険な魔法を手に入れた彼等だが、それを誰に行使するのか全くと言ってわからない。

それに電車をジャックした理由もわからない。

線路の上しか走れないし奪ってもそれ程メリットはない。

 

無理に車を走らせるエルザを心配するアイチ。

 

「そうですよ……エルザさん、無理しないでください。」

 

 

 

「ありがとう。しかし、大丈夫さ……いよいよともなれば棒切れでも持って戦うさ。お前らもいるしな、頼りにしてるぞ!!アイチ!」

 

「はい。」

 

アイチは頼りにされている事に喜んでいるのか、元気よく答えた。

 

「(誰かナツの心配してあげなよ……いつもの事とはいえかなり苦しそうよ?……私だってこの荒っぽい運転に…………うっ!)」

 

 

 

更に次の駅、オシバナ駅に到着すると此処でも騒ぎになっていた。

 

野次馬からの情報で鉄の森の連中は此処でジャックした列車を止めたようだ。

 

駅は封鎖され、周りには野次馬が大勢群がっていた。

 

軍の小隊が突入したようだが既に全滅していた。

相手は一つのギルド、すなわち全員が魔導士、敵うわけもない。

 

「急げ!!!ホームはこっちだ!!!」

 

急ぐ御一行を鉄の森の魔導士が出迎えた。

 

「やはりきたな、妖精の尻尾!」

 

やはり、カゲヤマにより、ナツたちの存在は知られついたらしい。

連中の中でひときわ目立つ姿で大鎌を持つ男に向かってエルザが尋ねた。

 

「貴様がエリゴールだな…………貴様らの目的はなんだ?返答次第ではタダでは済まさんぞ!」

「遊びてぇんだよ。仕事もねぇしひまなもんでヨォ…………」

『きゃははははは!!』

 

エリゴールの口調に鉄の森の連中が笑う。

 

「何がおかしいんだ!全部自業自得じゃないか!」

 

可愛い姿をして怒りを燃やすアイチ。

 

「まだわかんねぇのか?駅には何がある?」

エリゴールは風魔法で飛び立ち、駅にあるスピーカーに手を当てた。

 

「呪歌を放送する気か!?」

「そうだよ!この駅の周辺には何百……何千もの野次馬が集まってる。

いや……音量をあげれば町中に響くかな……死のメロディーが」

 

「大量無差別殺人だと!?ふざけるな!!」

 

「これは粛清なのだ!権利を奪われた者の存在を知らずに権利を掲げ生活を保全している愚か者どもへのな…この不公平な世界を知らずに生きるのは罪だ。

よって死神が罰を与えに来た。

死という名の罰をな!」

 

エリゴールの考えに同調できないルーシィは激怒した。

 

「そんな事したって権利は戻ってこないのよっ!!」

「此処まできたら欲しいのは権利じゃなくて権力だ。権力があればすべての過去を流し未来を支配する事だって出来る。」

「バッカじゃないの!!」

 

呪歌を持ってきた男、カゲヤマは突っかかってきたルーシィに影の魔法で攻撃した。

 

「残念だな妖精(ハエ)ども、闇の時代を見る事なく死んじまうとは!!!」

「やっぱりオマエかぁぁぁ!」

 

その瞬間、四輪車の酔いでグロッキーなナツが列車で因縁をつけられたカゲヤマ声に反応し復活した。

襲いかかる影の魔法をナツはぶった切り、声を上げた。

 

「今度は地上戦だな!!!」

 

ナツの復活により現状、現実可能な妖精の尻尾の最強チームが戦闘態勢を整えた。

 

 

「(かかったな……妖精の尻尾、多少の修正はあったがこれで予定通り、笛の音色を聞かせなきゃいけない奴がいる……

必ず殺さねばならねぇ奴がいるんだ!!)」

 

 

※※※※※※※※※※※※

 

「こっちは妖精の尻尾最強チームよ!覚悟しなさい!」

 

にらみ合う妖精の尻尾最強チームと鉄の森の魔導士たち。

 

 

するとエリゴールが喋る。

 

「あとは任せたぞ、俺は笛を吹きに行く。身の程知らずの妖精(ハエ)どもに……鉄の森の闇の力を思い知らせてやれぃ。」

 

エリゴールはそう言い残し、風魔法で空を飛んで行ってしまった。

 

「逃げるのか!?エリゴール!!……くそっ!ナツ!グレイ!二人で奴を追うんだ!」

「「む?」」

「お前たち二人が力を合わせればエリゴールにだって負けるはずがない!」

「「むむ!?………」」

 

エルザはよりにもよって犬猿の仲の二人に共闘の命をかす。

 

「此処は私とミサキでなんとかする!」

 

「………あれ?僕達二人、頭数にも数えられてないね……」

「うん……」

 

「聞いているのか!!!」

「「も………もちろん!!!!」」

「ならば、行け!!!」

「「あいさー」」

 

ナツとグレイ、二人がエリゴールを追いかけると鉄の森の幹部、カゲヤマとレイユールが二人を追いかけていった。

 

「オレが仕留めてくる!!」

「こっちも!!!あの桜頭だけはゆるさねぇ!!!」

 

好戦的な二人を見て残る幹部、ビアードとカラッカが言葉を漏らす。

 

「あんなのほっておいて姉ちゃんと遊んだ方が楽しいだろうに」

「作戦のためだよ、お前よりずぅーっとエライ。」

 

メンバーの目線が残された者に向けられた。

 

「それにしても四人ともいい女だなぁ〜〜」

「とっ捕まえて売っちまおう。」

「待て待て、妖精の脱衣ショーを見てからだ。」

 

四人?………忘れてる人もいるかもしれないが現在アイチは罰ゲームでメイド服の状態できている。

アイチの顔立ちで女装していたら大抵の人は勘違いをするであろう。

 

そしてそれに目をつけた鉄の森の変態が、ただでさえ妖精の尻尾をハエと呼ばれし怒りを露わにしている二人の闘志に火をつけた。

 

「特に青髪のメイドちゃんなんか良いねぇ。

あの初心そうな表情が歪む様がみたいねぇ〜〜。」

 

ゾクっ!!!

 

「下劣な……」

「このクズ共っ!!」

 

流石にこの扱いに慣れたアイチでさえ、この言葉には鳥肌を立て震えた。

すると二人が彼らとの間にたち、視界に入らないようにした。

 

 

「アイチ、こいつらは私達が片付ける……落ち着け………」

「…………………はい………」

 

エルザが落ち着かせたが、アイチは人を呪殺出来そうな殺気を抱え剣を握ろうとしていた。

 

「貴様ら……これ以上妖精の尻尾を侮辱してみろ。明日は保証しないぞ……」

「あんた達はアイチの教育に悪い………とっとと失せろ。」

 

 

エルザは剣を異空間から取り出し、ミサキは杖を取り出した。

 

「オーソドックスな魔法剣士と魔法使いのコンビか!?めずらしくもねぇ!」

「こっちにも魔法剣士はたくさんいるぜぇ」

「その鎧、ひん剥いてやる。」

 

その瞬間、エルザが目にも止まらね速さで魔法剣士たちを切り刻んで行く。

 

「ち!遠距離魔法でもくらえ!」

敵の一人が遠距離魔法を放とうとすると突如剣が槍に変わり男をなぎ払った。

 

「槍!?」

 

次から次へと変わっていく武器に一同は唖然とする。

 

「今度は双剣!?斧!?」

「こ……この女なんて速さで換装するんだ!?」

 

聞きなれない言葉を耳にしたルーシィはハッピーに尋ねた。

「換装?」

「そう、魔法剣は別空間にストックしてある武器を呼び出すって原理なんだけど、その武器を持ち帰る事を換装って言うんだ。」

 

後方でエルザの援護射撃をしていたミサキに白羽の矢が飛んできた。

 

「へっ!前に出過ぎだぜ鎧のねーちゃん!!

後衛がガラ空きだぜ!」

 

後方支援に長けた魔導士は接近戦に弱い。

エルザが調子に乗って前に出過ぎたところを狙ったのだろうが、エルザは初めから”前衛(・・)を務めるつもりは無かった。

 

ミサキに魔法剣を振りかざす。

 

「神託………」

 

スカッ!!

 

敵の攻撃をミサキは難なく回避、続く他の攻撃もすべての避けた。

 

「なんだ!こいつ!攻撃が全くあたらねぇ!!!」

 

「ハッピー、あれは何!?」

「あれは占術の一種、神様の御告げによる未来予測(・・)。神様の声を聞く巫女の力……」

 

神の声は本来未来予知。しかし、神の言葉には抽象的な声を含まれ語彙解釈が含まれる。

ミサキはそれを他の占術や物理演算により限りなく可能性の高い未来を導き出している。

 

「”預言者の蹴りは必ず命中する……”」

ミサキは回避の合間に見事な蹴りを繰り広げ、敵を蹴り飛ばした。

 

「……まだこんなにも居るのか……」

「面倒だね……」

「一掃する!!」

「わかった。」

 

 

「二人とも凄い!」

「でも、二人が凄いのはそれだけじゃない

エルザは武器だけじゃなくて自分を強化する魔法の鎧も換装できるんだ。

騎士(ザ・ナイト)】、それがエルザの魔法。」

 

エルザの鎧は剥がれ、別の鎧へと変わる。

ミサキは杖をしまい、鏡を取り出した。

 

「ミサキの能力は神様の声を聞きだけじゃない……神様の力の片鱗を借りる事ができる。

失われた魔法(ロスト・マジック)、【神霊魔法】」

 

 

「舞え!剣たちよ。」

「日輪の光よ、我に害なす者に裁きを!」

循環の剣(サークルソード)!!!」

八咫の鏡(やたのかがみ)!!!」

 

 

妖精の尻尾、最強の女と最恐の女が鉄の森の魔導士を殲滅した。

 




ダクイレは同盟非参加の闇ギルド、オラクルシンクタンク
ジェネシスは存在するけどノーブルのユニットを崇めるヒューマンやエルフ(魔女やシスターがメイン)の会社って感じです。
後、ミサキさんの神霊魔法は滅神魔法とは違います。寧ろ天敵です。


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シュティル

唐突に一ヶ月の休載すいませんでした。
感想欄の応援がモチベーションを上げてくれて何とか次話更新しました。
ありがとうございます。


鉄の森 その3

 

エルザとミサキ、二人が鉄の森の魔導士たちを一掃し幹部級であろう二人が残された。

 

「ヤベェぞビアード!どうするよ!!」

 

カラッカが横を見ると先程まで横にいたビアードが忽然と姿を消していた。

二人の強さに恐れおののき逃げたのだろうか。

 

残されたカラッカに逃げる以外の選択肢は無かった。

 

「ひーーーーーー!!!」

 

「エリゴールの所に向かうかもしれん、アイチ追うんだ。」

「はい!」

「私もついていく。」

 

二人がビアードを追いかけようとした所、これは自分も行かないといけないかなと思い、ルーシィもついていこうとすると。

 

「あっ!ならあたしも……」

「私たちで十分、ルーシィはエルザと町の人を避難させて!」

 

エルザは四輪車の飛ばし過ぎと今の戦闘で魔力が枯渇気味である。

表には出さないが、そんなエルザをきづかってルーシィを残したのであろう。

 

その事を悟られたエルザはミサキに「余計な心配を……」と言いたそうな顔をして見送った。

 

※※※※※※※※※※※

 

 

ミサキとアイチに追いかけられているカラッカは必死である男を探していた。

それはリーダーのエリゴールではない。

もし、彼に泣き言をいようものならば作戦は失敗し、自分は任務一つこなせない役立たずとして逆に殺されてしまうからだ。

その事を知っているカラッカはその男を探し出す事に成功した。

 

「助けてくれ!ヴァンピーアさん。

アンタだったらなんとかなるだろう!」

 

しかし、ヴァンピーアはカラッカの助けを拒んだ。

 

「断る………うちのギルドは他のギルドには不干渉と決めている………

身内ならともかく貴様らはまだ身内とも言えないからな…………」

 

ヴァンピーアが今回【鉄の森】を訪れていたのは一言で言うなら勧誘だ。

最近仕事がなく困っていた鉄の森を自らの傘下に加えようと考えたのだ。

幾つかの派閥に分かれ、内戦絶えない【闇の異端者】が戦力の増強を図るのは当然だ。

ヴァンピーアが使者としてきたのだから夜の王の派閥であろう。

 

「…………とは言え、返事を聞く前にお前らが捕まったら元も子もないな…………」

「じゃあ…………」

「多少は協力してやるよ」

 

二人の話がつくころ、カラッカを追いかけた来たアイチとミサキが追いついた。

 

 

「見つけた!!さあ!観念してエリゴールの居場所を教えてもらうよ!」

「断ったら……わかってるね!!……」

 

「ひぃ〜〜〜」

 

カラッカは慌ててヴァンピーアの後ろに隠れる。

 

カラッカに脅しをかける二人だが、ヴァンピーアの圧倒的存在感に気づく。

 

「(…………只者じゃなさそう…………)」

「……アンタ何者!?……鉄の森?……」

 

ヴァンピーアは話す余裕があると思い、名乗る。

 

「……名乗っても問題無いだろう…………

私は闇ギルド【闇の異端者】のものでシュティルの呼ばれている……

偶然、彼らに用があり訪れた際この事件に巻き込まれたものだ。」

 

二人ともその闇ギルドの名は聞いた事がある。

大分特殊な闇ギルドだと、そして目の前にいるのはその中でもかなりの使い手とみた。

 

しかし、下手に出ては不味いと思ったミサキはヴァンピーアに訴えた。

 

「巻き込まれただけならすっこんでろ!!私たち後ろのそいつ用があるんだよ!」

「…………ミサキさん…………それだと僕達が悪者みたいだよ……」

 

ヴァンピーアは少し考えて、ミサキに言い返した。

 

「…………お前たちの用とはララバイを持ったエリゴールの所在ってところだろう?

しかし、この男わざわざ私の元に助けを求めたのだ。いくら聞いても知ら無いと思うが?」

「知らねえだ!エリゴールさんが今何処に居るなんて」

「だ、そうだが?」

 

少なくともシュティルは話し合いによる解決を望んでいたがアイチたちにその余裕は無かった。

何せ大量殺戮兵器を持つ危険人物が計画を遂行しようと動き回っているのだから。

 

「闇ギルドの連中の言うことなんて一々信じられないね!

そいつを庇うっていうなら実力行使だ!

行くよアイチ!」

「分かった。」

 

二人はそれぞれの武器を構えて戦闘態勢を整えた。

 

「輝け!ブラスター・ブレード!!!」

「未来を照らせ!日輪の女神 アマテラス!」

 

アイチはメイド服から白騎士の鎧に換装し、ミサキは日輪の女神の巫女服にその姿を変えた。

 

戦闘が避けられないと見るやヴァンピーアはため息をついた。

 

「はぁ〜。全く…………血の気の多い奴だ。

あまり表のギルドには関わるなと言われているが…………降りかかる火の粉は払わないとな…………」

 

 

向かってくる二人に対し、ヴァンピーアは腰に刺す二つの刀を抜く。

 

二人はそれに十分警戒しながらも攻撃を開始しようとするが、その刀からは二人が予期しない攻撃が飛んできた。

 

「響け………………」

キーーーーーーーーーーーーーン!!!

 

二つの刀はぶつかり高周波の音が響く。

あまりにも強い音を間近で聞いた二人は一度動きを止めてしまった。

 

「くっ!!!耳がぁ…………」

「頭にまで響く………………」

 

純粋な物理現象とは思えない。

魔法なのかなんなのかはわからないが何かしらの力が付与されているのかもしれない。

 

しかし、この音で二人の動きを鈍らせる事ができるたのは一瞬。しかし、ヴァンピーアにはそれで十分であった。

 

ヴァンピーアは人間の目には映らないほどの高速でアイチの懐に入り込み、刀の背でアイチの鎧のない部分、腹をぶん殴り一撃で気を失わさせた。

 

「うっ!!……」

「アイチ!…………」

 

ミサキか気づく頃にはアイチの元にはヴァンピーアはいない。

 

その頃にはヴァンピーアはミサキの背後に回り込み柄で首元を叩いた。

アイチに続きミサキまでもがあっけなく倒されてしまった。

 

響音状態の中平気で動ける耐性、人の目には映らないほどの速さが出せる身体能力、これが吸血鬼、生身の人間とは性能が違うのだ。

 

「流石ですね!ヴァンピーアさん!

コイツらどう懲らしめちゃいましょうか!?」

「調子にのるな……おい、運ぶぞ………」

「あっ!ハイ?」

 

二人は気絶したアイチとミサキを抱え、ホームに戻ろうとしていた。

 

※※※※※※※※※※※※※※※

 

先の戦闘と魔導四輪で疲れているエルザはルーシィと共に駅に群がる野次馬に危険を知らせると建物全体に覆いかぶさる異変に気付いた。

 

「こ…………こんな事が…………」

 

それは風。

先ほどまで少しきになる程度のはずだった風が急に勢いを増し駅を囲む台風となった。

 

「きゃ!!何この風!!」

「大丈夫か!?ルーシィ!ハッピー!」

「うん!あたしもハッピーも大丈夫。」

「あい!」

 

発動したタイミングが悪かったのかルーシィとハッピーは風の中。

 

「ん?なぜ妖精(ハエ)が外に一匹……

そうか、野次馬どもを逃したのはてめえか。女王様よォ」

「エリゴール!!」

「てめえとは一度戦ってみたかったんだがな……残念だが今は相手にしている暇はねぇ。」

 

エリゴールは風の魔法をエルザにぶつけ台風の中に押し込んだ。

 

「中でじっとしてな」

「くっ!」

 

「この魔風壁は外からの一方通行だ。

中から出ようとすれば風が体を切り刻む。」

「貴様がこれを?……一体なんの真似だ!!」

「鳥籠ならぬ妖精籠ってか。……にしてはデケェがな…ははっ

てめえ等のせいで大分時間を無駄にしちまった。

俺はこれで失礼させて貰うよ。」

 

笑うだけ笑い、エリゴールは風魔法で飛んで行ってしまった。

 

エリゴールの不可解な行動に腑に落ちないえるざは苛立ちを覚える。

 

「何処に行くつもりだ!?エリゴール!話は終わってないぞ!…………」

 

エルザの訴えは虚しくもすでに誰もいない風の壁の向こうに響く。

 

「一体……どうなっているんだ……

この駅が標的じゃないというのか!?」

 

エリゴールの真の目的、それをいち早く知ったのはレイユールと交戦していたグレイであった。

 

※※※※※※※※※※※※※※※

 

エリゴールの目的が駅の野次馬に呪歌を聞かせることならエリゴールは放送室位向かうはず、その事に気がついたグレイは駆けつけたがいたのはレイユールただ一人であった。

 

レイユールとしては真実を聞いて動揺を狙い、攻めに転じようとしたのだろうが、それがグレイの怒りに火をつける。

 

「てめえらの目的は最初からそっちか!?」

「ははっ!!!

エリゴールさんならやってくれる。そして邪魔するテメェ等は出られない。

そうだ……もう誰も止められないって事だ!

今まで虐げられてきた報復をするのだっ!!!

全て消えてなくなるぞぉ!!!」

 

ガシィ!!!

 

グレイはレイユールにアイアンクローをかまし、ゼロ距離で氷の魔法を放つ。

 

「がぁ…………」

 

「…………止めてやるよ………………

俺たちの”親”を狙った事を後悔しやがれ……」

 

「がっ…………は………………」

 

「闇ギルドよりもおっかねぇギルドがあるって事を思い知らせてやる!!!」

 

※※※※※※※※※※※※※※※

魔風壁により閉じ込められているエルザたちは脅しをかけ色々聞き出していた。

 

 

「無理だって……魔風壁の解除なんて俺たちに出来るわけがねぇだろ…………」

 

 

やはりこんな末端の人間では知る負けがないか、せめて忽然と消えた奴か逃げた男、それとナツとグレイを追いかけて行ったやつあたりでないといけないなと考えているとグレイが駆けつけてきた。

 

「エルザ!!!

やつ等の本当の標的はこの先の町だ!!!

じーさんどもが定例会の会場だ!!!」

「大体の話は彼らから聞いた。しかし、今魔風壁が…………」

「ああ、今見てきた。」

 

 

じーさんどもとは地方のギルドマスター、その中にはもちろん妖精の尻尾のギルドマスター・マカロフもいる。

地方のギルドマスターが虐殺されたとなればその社会に与えられる影響は計り知れない。

 

今、この時もギルドマスターたちに魔の手が忍び寄ろうとしていた。

そんな中、ルーシィの何気ない一言が希望へと変わる。

 

「ララバイなんて危険な魔法、永遠に封印されてりゃいいのに…………エリゴールの手になんて渡っちゃうから……(ボソッ」

 

「…………封印?…………!!!

そうか!ナイスだ!ルーシィ!!!」

「え!何!?」

 

「鉄の森にはカゲと呼ばれいいるやつがいた筈、奴はたった一人でララバイの封印を解除した筈。」

「そうか解除魔導士(ディスペラー)か!それなら魔風壁も!!!」

「探すぞ!カゲを捉えるんだ。」

 

 

※※※※※※※※※※※※※※

 

 

その頃、ナツはカゲヤマに見事勝利していた。

 

「ば…………バケモノめぇ…………!!」

「かっかっかっ!!オレの勝ちだな!!!さあ、エリゴールの居場所を言えよ!!」

 

「くくく…………バカめ…………

エリゴールさんはこの駅にはいない………」

「は?」

 

そこにナツの戦闘の爆音を聞きつけ駆けつけたエルザ達がやってきた。

 

エルザはカゲヤマの胸ぐらを掴み、剣を突き立てドスの効いた声で脅した。

 

「四の五の言わず魔風壁を解いてもらおう。

一回NOと言うたびに切創が一つ増えるぞ」

 

ナツとの戦闘ですでにボロボロのカゲヤマは堪らず承諾しようとする。

 

「わかった………………」

その瞬間、どこからかカゲヤマに向かって魔法弾が飛んできた。

 

「なっ!」

 

完全に隙を突かれたエルザはカゲヤマを庇うことが出来ず、カゲヤマは魔法弾の直撃を受けてしまった。

 

「カゲ!!!」

「くそっ!唯一の突破口が!!」

 

 

魔法弾の射線上の先にはエルザとミサキの強さを見るや否や姿をくらました男、ビアードであった。

 

「くっくっくっ!…………

これで魔風壁を解除できる奴はいなくなった!てめえ等がいくら強かろうと関係ねぇ!!俺たちの計画を止めれる奴は居なくなったんだよ!!ざまぁみろクソ妖精(ハエ)!!!」

 

 

「仲間じゃねぇのかよ…………

同じギルドの仲間じゃねぇのかよ!!!」

「仲間を殺そうとするなんてサイテー!!絶対に許さない!!!

開け!金牛宮の扉!タウロス!!」

 

「MO怒り爆発!!」

「このヤロォォォ!!!」

 

「あぎゃあ!!」

 

ビアードはナツの怒りの鉄拳とタウロスの斧によって撃破されたが現状は最悪だ。

 

「カゲ!!しっかりしないか!!」

「エルザ…………だめだ、意識がねぇ」

「死なすわけにはいかん!やってもらう!」

「やってもらうって言ったってこんな状態じゃ魔法はつかえねぇぞ!!」

 

希望が絶望に変わった時、彼らの元に夜を司る悪魔が忍び寄る。

 

「ほう…………どうやらお困りの様だな。」

 

気絶したアイチとミサキを抱えたカラッカを引き連れ、【闇の異端者】シュティル・ヴァンピーアが現れた。

 

 

「助けてやろうか?…………勿論タダでとは言わないがな…………」

 




急ピッチで書いた感が出てたらすいません。
なんか早くあげないといけない気がしたので……………


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最強メンバー

二年間放置していましてすいませんでしたm(_ _)m
先日の久々に感想をもらって時期的にちょうど手が空いたのでなんとか投稿できました。


 

シュティルと呼ばれる侍と鉄の森の残党に担がれた傷だらけのアイチとミサキ。

その姿を見て落ち着いていられるエルザではなかった。

 

「貴様ぁぁ!!よくも!!」

 

「おっ、勘違いするな。

これは問答無用で向かってきたこいつらが悪い。

全く、血の気の多い連中だよ。」

 

心当たりしかないエルザはその意見に賛同せざるえなかった。

 

「…………う…………確かに。」

 

「私はお前達と話し合いに来たんだ。」

「話し合い?」

 

「取引といったほうがいいな。

私は闇ギルド【闇の異端者】(ダークイレギュラーズ)が一人。

そちらがこちらの条件を飲むのなら、お前らが苦戦しているこの魔風壁を解除してやるといっているんだ。」

 

「出来るのか!?この魔風壁を!?」

 

エルザでも抜け出し不可能な魔風壁をこの男は出来るという。

エルザは焦ってた、しかし力でこの男をねじ伏せる事は現状不可能だと理解していた。

 

「くっ…………しかし………」

「闇ギルドの人間の言葉を鵜呑みにするわけにはいかないか………

確かにな、私はどちらでも構わないがな。」

 

「ヴァンピーアさん!!そりゃねぇっすよ!!」

横でアイチを抱えるカラッカが心配そうにいう。

 

「お前達の仲間も無事で帰って来るのだ。

悪くない交渉だと思うぞ?」

 

「内容はなんだ。

こちらの要求は仲間の解放と魔風壁の解除だ!!」

「こちらの要求はただ一つ、ここに倒れている元鉄の森の構成委員を警察に引き渡すのをやめて欲しい。」

 

「犯罪者を野に放てと?」

「こいつらは好きでこんなことをしていたわけじゃない。

そう言った仕事しか出来ないからそうしたんだ。

 

こいつらの身柄は我々闇の異端者が責任を持って預かる。

奴らも適材適所の仕事を与えてやればもう表の連中に迷惑をかける事はなくなるだろう。」

 

エルザはシュティルの言葉に納得した様でウンと首を縦に振った。

 

闇ギルドに属するものとは言えバラム同盟に所属していない彼ら【闇の異端者】の性質はエルザもよく知っている。

アイチやミサキは知らないがS級ともなれば彼らが絡む仕事も出来て来る。

エルザはその辺しっかりと理解していた。

 

「魔風壁の解除を頼んだ。

グレイ、ナツ、二人を頼んだ。」

「「おう!!」」

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

魔風壁を前に二本の刀を構えるシュティル。

 

「言い忘れたが私は解除魔導士ではない……

しかし、我が名刀は全ての魔を切り裂く。」

 

彼は元々東洋の対魔士、標的の吸血鬼を求めこの地に来たが逆にその魔の虜になってしまった。

 

しかし、皮肉といえよう。

吸血鬼という自らが魔とする存在になってその力が強くなったのだから。

 

「魔を持って魔を制する………我が刃は全ての魔を切り裂く!!」

 

目にも留まらぬ速さで抜刀された刀。

その刃は風を切り裂いた。

 

 

「す………すごい………」

 

あれだけ猛威を振るっていた魔風壁をいともたやすく切り裂いたことにルーシィは驚く。

 

 

「こんなもんだ…………

約束通り残りのメンバーは私が引き取る。

エリゴールは我々でも手に負えない輩、止めれたらそちらの好きにしてもらっても構わない。」

 

「ああ、そうさせて頂く。私達の親に手を出したことを後悔させてやる。

だが、カゲは私達で引き取る。彼は早く医者に見せたほうがいい。」

 

鉄の森のメンバーで一番時間を要する重症なのは彼だけだ。

町中に誰もいないのだから隣町まで行って早く医者に見せたほうがいい。

 

「ああ…………早く行け。間に合わなくなるぞ?」

 

 

「それなら大丈夫よ。」

 

エルザとシュティルの会話に目覚めたミサキが口を挟んだ。

 

「………神の御告げとやらか?」

「違うわよ。ナツとハッピーが行った。……大丈夫、ナツは勝つから。」

 

グレイとルーシィは言われた初めて気がついた。

言われて気がつく二人がいないことに。

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

「あの町だ。見えてきた」

 

エリゴールは風の魔法を使い目的の場所へと飛んでいると背後から超スピードの物体が飛んで来た。

 

 

「コレが………

 

ハッピーの…………

 

MAXスピードだぁ!!!!」

 

ハッピーに捕まり超スピードでエリゴールに追いついたナツはエリゴールを止めるために立ちはだかった。

 

 

「キ……キサマ………

なぜこんな所に…………」

 

「お前を倒すためだ!!!!」

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

「あの火の玉小僧死んだな…」

 

ミサキの治癒の魔法の効果を受け、まともに動けないが喋れるほどには回復した様だ。

現在は魔導四輪をパクリ、ナツ達とエリゴールを追いかけている最中だ。

 

「なんでそいうこと言うかなァ

ミサキさんだって勝つって行ってるじゃない!」

 

「ふふ、いかれた女の妄想なんてなんの根拠にもなれやしないさ。」

 

「おい……………」

「え?」

 

振り返ると剣を構え首元に伸ばすアイチの姿があった。

 

「ミサキさんを侮辱するのは僕が許さない!

言葉には気をつけろ、次がお前の最後の言葉になるぞ。」

 

アイチは仲間がバカにされる事を酷く嫌う。

 

「おい、アイチ。せっかく助けた奴を殺そうとするんじゃない。

あとおまえ、なんでナツが勝てないと思うんだ?根拠は?」

 

カゲは得意げな顔で言った。

 

「火の魔法じゃエリゴールさんの暴風衣は破れない。絶対に」

 

それを聞いたアイチは「なんだ、そんな事か」と言う様な顔をして剣を納めた。

 

「うちの守護竜を舐めないほうがいいよ。」

 

「守護竜?」

 

この世界には各地に守護竜の伝説がある。

聖域の聖母竜、楽園の聖樹竜など。

 

「彼の魔法は失われたドラゴンの魔法。風なんかじゃ消えないよ。」

 

聖域に守護竜がいる様に妖精の尻尾(僕らのギルド)にはナツがいる。

アイチはそう言いたいのだ。

 

 

「…………あのギルドを壊す破壊神が守護竜!?………

アイチ………冗談はよしてくれよ。」

 

アイチの言葉に頭を抱え反論したのはエルザ。

そして残るメンバーもそれに賛同した。

 

この後、ナツの元にたどり着いたカゲは驚く事になる。

アイチとミサキの言った通りになったと。

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

「ひぃぃぃ〜〜ひぃぃぃ〜〜

ヴァンピーアさん!手伝ってくださいよ〜〜」

 

ヴァンピーアに救われたカラッカは仲間を全員荷車に乗せて必死に運び街を出ようとしていた。

 

「おまえの仲間だろ…しっかりやれ。」

 

「…カゲ………………妖精の連中に連れてかれちまったけど良かったんかな。

ありゃあ、あのまま刑務所行きですよ?」

 

「あいつはいいさ……………」

 

ヴァンピーアは気づいていた。

彼は環境が悪くてそうなってしまっただけで、本当は闇ギルドに入るべき人間ではないと。

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

駆けつけた妖精の尻尾の一行は戦いに勝利したナツを確認。

コレで首謀者をやっつけ一件落着かと思いきやまともに動けないとたかをくくっていた影山が行動を起こした。

 

 

一瞬の隙をつきララバイを妖精の尻尾から奪還したカゲヤマは満身創痍になりながらも目的の街にたどり着き計画に王手をかけていた。

 

しかし、拭こうとした時、妖精の尻尾のマスター・マカロフによってその悪行を悟られていた。

 

 

「参りました。」

 

計画を断念し、両膝をついて頭を下げるカゲヤマ、マカロフもヴァンピーアもそれができる人間だと信じていたのだろう。

 

 

コレで事件は今度こそ解決だと思われたが、そうでは納得いかない者が一人(?)だけいた。

 

 

『カカカ………どいつもこいつも根性のねェ魔導士共だ!

もう我慢できん!ワシ自ら食ってやろう………

 

貴様らの魂をな………』

 

 

ゼレフの書の悪魔、それがララバイの正体であった。

ゼレフ、それは大昔に存在した歴史上最も凶悪だった黒魔導士。

何百年も前の負の遺産が今ここで目覚めたのだ。

 

 

『さあて……どいつの魂から頂こうかな?

決めたぞ!全員まとめてだ!!』

 

小さい山ほど大きい悪魔はその大きな口を開けて邪殺の音を響かせた。

 

その場にいた他のギルドマスターは逃げようとしたが、彼らだけは違った。

 

 

「来て!神鷹一拍子!!」

 

ミサキは月影の勾玉を装備し、大きい鷹に乗って悪魔に向かって行った。

 

神霊魔法、それも神をその身に宿す「神おろし」とその神の使いを呼び出す召喚魔法を同時に行う高等テクとサラッと行う。

 

次に行動に起こしたのはエルザ。

彼女も得意の鎧の換装を瞬時に行い悪魔の足に太刀を入れた。

 

 

「こいつも鎧の換装!?なんて早さだ。」

 

四つ首の猟犬のマスターさえもが声えおあげるエルザの実力。

 

「おりゃおりゃああああ!!」

 

悪魔によじ登り蹴り一つで悪魔をよろけさせる。

身体能力に乏しい(ハズの)魔導士ではあり得ないことだ。

 

『小癪な!!!』

 

ララバイの悪魔は口から魔法弾を放つがナツはヒラリと躱す。

 

しかし、その流れ弾が他のギルドマスターに向かう。

 

「アイスメイク!『盾』!!」

 

瞬時に氷の盾を作ったのはグレイ。

造形魔法、それは魔法に形を与える魔法。

そして、形を奪う魔法。

 

「アイスメイク!『槍騎兵』!!」

 

グレイの手から放たれた槍は悪魔の腹に大穴を与えた。

 

「いまだ!!」

 

大ダメージを与え、隙を作ったグレイの合図で他のメンバーがとどめに入った。

 

エルザがまた瞬時に鎧を換装させる。

 

黒い羽を持った鎧に。

『黒羽の鎧』一撃の破壊力を増大させる魔法の鎧だ。

 

「右手の炎と左手の炎………合わせて………

『火竜の煌炎』!!!」

 

ナツは高濃度の炎を拳に集中させ悪魔に振り下ろす。

 

 

「迷えし闇を慰め、天へと導け!!

『月影の勾玉!!』」

 

神器を配置し終えたミサキはその力を解放させ悪魔に浄化の光を放つ。

 

エルザの剣、ナツは拳を、ミサキは光で攻撃した。

最後に待ち構えるは準備を整えた騎士王の姿だった。

 

「……力を借りるよ。アルフレッド………」

 

王都を守る第一騎士団、その団長は代々騎士王の家系が務める。

今のアイチの姿は今代の騎士団長と同じ姿(レプリカ)

 

「あれは騎士王の武装!?

王族にしか使いこなせない武装を何故彼が!?」

 

彼が使える武装はブラスター・ブレードだけではない。

騎士団のあらゆる猛者たちの武装が彼の元に集まっている。

 

「エクス………カリバァぁぁぁぁぁ!!!!」

 

アイチの閃光の刃が、そして他の四人の魔法が悪魔を粉々に消滅させた。

 

それを目の当たりしたルーシィと他のギルドマスターは驚愕した。

 

「ゼレフの悪魔がこうもあっさり………」

 

「凄い……これが……………」

 

 

妖精の尻尾最強クラスの魔導士の実力。

 

ルーシィはそう、呟くが妖精の尻尾にはまだまだ実力者が沢山いる事を知らない。

 

 




また、取り敢えず書くのを再開したいと思います。
もう一つの作品もあるので亀更新かな〜
僕のモチベーションは皆さんの応援です!よろしくお願いします!


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