ハイスクールD×D~剣聖天使 無限の剣を振るう者 (ユニゾン)
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プロローグ
第零話 転生


どうもー、ユニゾンです。

IS~インフィニット・ストラトスから二作目になります
ハイスクールD×Dです。

ISの方をある程度書いたらハイスクールD×Dの方を書き始めようとして
いたんですが思ったよりも進まなくて投稿が遅れました。
前から書こうと思っていたんですがね。

それでは本編どうぞ!


私、朝霧奏は目を覚ますと何故か真っ白な空間にいた。身を起こすと目の前に黒い

ローブを羽織り、杖を持った老人が立っていた。ヨボヨボで今にも死にそうではあ

るが。

 

「おう、やっと目を覚ましたか」

 

その目の前に立っていた老人が気さくに話し掛けてきた。今の状況をいまいち把握

出来ていないので、老人にこの空間の事などの事を聞こうとしたが止められる

 

「あんたの聞きたい事は分かっとるよ。この空間の事と何故自分がこんな所にいるのかと

言う事じゃな?」

 

何故分かった!?

 

「それくらい分かって当然じゃ、突然こんな所に連れて来られて混乱せん筈がないからのう」

 

「なるほど、それよりずっと聞きたかったんだけど貴方誰?」

 

「儂か?儂はお前達で言う神じゃ」

 

「………………」

 

「どうしたんじゃ黙ってしまって」

 

「なるほど、イタイ人か……いい年して中二病とか可哀想に。良い精神科の病院紹介して

あげるから」

 

「ま、待て、儂は本当に神じゃ!」

 

「まあ、冗談はさておき」

 

「って冗談なんかい!」

 

「さっさと話戻そうよ」

 

「お前が話反らしたんじゃろうが。おほん、話を戻すぞ。儂は万能の神 ゼウスでお前は死んで

この空間に送られて来たんじゃ」

 

「え!?貴方が万能の神 ゼウス!?それに私が死んだって…」

 

私が死んでいる事実に驚きが隠せなかった。私が何で死んだのか思い出そうとしている内にゼウ

スが答える。

 

「お前の死因は心臓麻痺じゃ。ベッドで寝ている内にポックリ逝った」

 

心臓麻痺でポックリ逝くってどこぞのデ◯ノートですか。

 

「ちなみにお前をここに連れて来たのは転生させたりするのも面白そうだと思ったからじゃ」

 

「理由がおかしいでしょ理由が。それより転生させるってどういう事?

 

「そのままの意味じゃ。ほれあるじゃろ二次創作の小説に。転生先は決まっておる、ハイスクール

D×Dの世界じゃ」

 

「え!?死亡フラグ満載のあそこ?すぐ死んじゃうよ?」

 

「大丈夫じゃよ、希望する能力を与えるからな。何でもいいぞ」

 

「何でもいいの?じゃあ複写眼と魔力を無尽蔵にして、あらゆる物への概念付与能力に、原作知識

残しておいて欲しい。それと性別変えないでね、TSとか勘弁だから。ここ重要」

 

自分が男になるとか絶対に考えられない。

 

「それくらいなら大丈夫じゃ。他にはないのか?」

 

「無い。これで大丈夫」

 

「そうか。ならこれから転生させるぞ」

 

ゼウスがそう言うと何故か天井から紐が降りてきた。

 

「ちょ、ちょっと待って、その手に掴んでる紐は何?」

 

「では、逝ってこい」

 

グイッ←紐を引っ張る音 パカッ←私の足元が開く音

 

「いやあああああああああ!!」

 

「こういうのもテンプレじゃろ。こんな事をしてみるのもまた一興じゃ。ハッハッハッハッ」

 

「変な事言って笑ってんじゃ無いわよおおおおおおおお!」

私は最後にイタズラが成功した子供のような笑顔を浮かべているゼウスさんの言葉を聞き、叫び

びながら穴に落ちていった。

 

 

転生させたその後

 

「はぁ疲れた、嫌に対応に疲れる奴じゃ。それよりあの子がこの運命の物語をどう紡いで

いくか楽しみじゃ」

 

意味深な言葉を残し、ゼウスはこの場を去った、



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第一話 転生後の五年の過去と現在

どうも~、朝霧奏です。神に転生させられてからかれこれ五年が経ちました。

五年前、朝霧家に二度目の生を受けました。

 

 

生まれた時、分娩室での事

 

生まれたが赤ちゃんといえども疲れるので泣かない事にした。だが、一向に泣かず、

なんか心配されたので、面倒だと思いながらもとりあえず泣いてみた。

 

「おぎゃー(棒読み)」

 

「うわ、なんてやる気のない泣き声……」

 

「生まれたばかりなのに絶望したような目をしてますよ」

 

なんか医者と看護婦に心配されてしまった。いきなり死んだとか転生させるとか言われ

たらこんなんにもなるわ。

 

生まれてから三年後

 

三歳になって母親に手鏡を貸してもらって部屋に戻り、自分の顔を見てみると私は悲鳴

とも驚きの声とも取れる声を上げた。突然悲鳴が聞こえて来たので母親が駆けつけてきたが、

さっき虫がいたとごまかしておいた。手鏡をみた時な驚いたのは自分がきめ細やかな黒髪

に青く澄んだ瞳、白く綺麗な肌をしている美少女と化しているからだった。

 

前世は容姿、性格共にラノベや漫画で言うそこら辺にいるモブと言われる存在だったので

こんな事になっているとは思わなかった。これは絶対に神がやった事だと思う。

 

それと神器が発現した。どうやら偶然宿った物らしく、木場佑人が有する神器、魔剣創造(ソード・バース)

の亜種にあたる神器で、能力は刀剣の種類問わず無銘の物から業物、魔剣や聖剣、妖刀な

どを数に制限なく無限に創り出す事が出来るという物だ。この神器の名は……強いて言う

なら刀剣を無限に創り出す事が出来る能力から無限の剣製(アンリミテッドブレードワークス)ってところだろう。発現し

た際に前世に原作のラノベで見た事があったのでさほど驚きは無かったが、家で突然発現

した為、気付かれないようにするのに必死だった。誰も来る事のない場所で試しに様々な

種類の剣や刀を創造してみるも、幼く体が出来上がっていない事もあり、体力的に数十本

くらいしか創造出来なかった。試しに自分の周りの創造した剣を持ってみるが、三歳児と

いう事で筋力が全く無く、重くて持ち上げられなかったのでそこで諦めた。

 

今更ながら思うが、偶然なのかはたまた神のせいなのか生まれた町が駒王町だった。

それに加えて隣の家が兵藤だったりした兵藤一誠とは幼稚園や公園で遊んだりする所謂幼

馴染みで、その際友達になった紫藤イリナとも遊んだりしていた。現在は両親が病気が死

因で亡くなり、私は親戚に引き取られて暮らしている

 

その後、せっかく剣創造系の神器を持っているので書斎から剣道の本を引っ張り出して来

て独学で学ぶことにした。前世では柔道や合気道などの武道を一通りやっていたが、剣道

だけは少し齧っただけで心得はあったので剣の持ち方や構え方とかは何とかなった。

 

これが五年の過去と現在の近況です。

 

 



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第二話 冥界へ

こんちは~、あれからまた五年が経ち、十歳になりました。(精神年齢的には三十歳)

 

独学ではあるものの剣の腕はかなり上達しました。五年前に数十本くらいしか創造出来

ませんでしたが、現在は数百本単位での創造が可能になりました。恐らく基本的には、

神器で創造した刀剣に属性概念を付与するのが主なものとなると思う。この組み合わせ、

ある意味バグだよね……

 

ある日の事、いつもの様に型を確認しながら真剣で素振りをしていた。この五年で刀剣に

属性概念の付与が可能になったので剣に氷の属性を付与する。前に炎の属性を剣に付与して、

一閃した結果辺りが燃えてパニックになり慌てて炎を消した、何て事があったりした。あの時は危う

く火事になるとこだった。抜刀の姿勢を取り、気合いと共に横凪ぎに一閃する。

 

―――ズパッ

 

本来は音がしないはずなのに何故か何かが切り裂かれた音がした。剣を振った場所を見

てみるとそこに次元の穴らしき物が…いや次元の穴だった。

 

「え!?何故にですか…」

 

何故か次元が斬れちゃってました(笑)呆然としている私の目の前には斬れた次元の穴

があった。確か次元切り裂けるのって聖王剣コールブラントくらいだったよね…

この穴をしばらく見ていると穴が閉じようとしていた。何処に繋がっているのかも分か

らなく、ここには家族もいたがあまり未練は無かったので躊躇いもなく目の前に出来た

空間の穴に飛び込んだ。

 

少女次元の穴移動中

 

数十分後

 

「初一人旅IN冥界~」

 

無事冥界に到着した。冥界は人間界と違い、空は紫色、気温は寒くもなく暑くもなく、

ぬるりとした感触の独特なものになっていた。そんな事を考えながら辺りを適当に歩

いていると数十匹のドラゴンがいた。それを見ているとそのドラゴン達がこちらを向

くと唸り声を上げながら追いかけてきた。

 

「いやあああああ!」

 

私は叫び声を上げ、全速力でベクトル変換能力を駆使して逃げ出した。その際私の髪は

黒髪から白髪へ、瞳は青色から赤色へと変化していた。変化するのが髪と瞳の色だけで

言動が某禁書の一方通行みたいな変な感じにならなかっただけ良かったと思う。

 

数十分間ドラゴンとの追い掛けっこを繰り広げていた所、目の前に眷属らしき人達を連

れている紅髪の男性がいた。その紅髪の男性は、数十匹のドラゴンに追い掛け回されて

いる私を見ると、掌に赤くどす黒い魔力らしき物を出し始めた。

私はそれを見て驚愕した。その身に纏う強者と言うべきオーラと、内包する魔王並みの

桁外れた魔力を感じて確信した。あれは四大魔王 紅髪の魔王(クリムゾン・サタン)サーゼクス・ルシファーだと。

 

 



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第三話 サーゼクス・ルシファ―との出会い

四大魔王の一人 サーゼクス・ルシファ―がこちらの私を追い掛け回している数十匹

のドラゴンに向けて赤くどす黒い滅びの魔力を放とうとしているのを私はそれを一瞥

し、全く埒が明かない為ドラゴン達と向き合い、氷の属性を付与した魔剣と聖剣を両

手に創造。そこらの地面一帯にも魔剣と聖剣を咲かせ、串刺しにして動きを止める。

 

両手の剣を地面に突き立て、神器を開放。そこから氷を発生させて全てのドラゴンを

氷漬けにする。その光景を目撃した男性は呆然としていた。男性の側にいた人達も同

じような感じだった。こんな事をするとは…いや、出来るとは思っていなかったのだろう。

ドラゴンの処理を終えた私に男性が話し掛けてきた。

 

「君凄いね、あれ中々高位のドラゴンなんだけど……」

 

そう言いながら氷漬けにされたドラゴンのオブジェを見詰めている。

 

「そうなんですか?てっきり下位のドラゴンだと思ってたんですけど……」

 

「いや、そんなことはないよ。紹介が遅れたね、私はサーゼクス・ルシファー」

 

「ルシファーって事は……」

 

「君が思っている通りルシファーは魔王。ここでは紅髪の魔王(クリムゾン・サタン)と呼ばれている」

 

まさに私が思っている通りだった。

 

「ドラゴンを見たという事は私がどういう存在か分かっているね?」

 

「人外……人ならざる存在……」

 

「ああ、私は悪魔だ」

 

証拠だと言わんばかりに蝙蝠のような翼を広げる。

 

「で、君は?」

 

「私は朝霧奏、種族は見ての通り人間であの時見た通り神器持ち。あと少し特殊な

能力も持ってます」

 

「そうか……何故ここ冥界に?」

 

何故ここに来たのか理由を聞かれる。別に隠したい事があるわけでもないので素直

に理由を言う。

 

「家の近くで神器を出して素振りしてたら何故か次元が斬れてそこに入ってみたらここに……」

 

「行く宛は……勿論無いか……」

 

「はい……」

 

とは言うものの興味本意であの穴通ってここに来ちゃったわけで…

「なら私の家に来ないか、一人くらいなら置いておくのも大丈夫だから」

 

「い、良いんですか?」

 

「ああ、大丈夫だ、問題ない」

 

「なら家にメイドとして置いて下さい。世話になるのだったら当然です」

 

「何故それが分かるんだい?」

 

サーゼクスさんは少し驚いたように聞いてきた。

 

「貴方は自分の事を魔王だと言いましたよね?それと身なりからも推測して上流階級

の貴族だと判断しました」

 

「凄いね、当家はメイドを募集はしてないが一人くらいならメイドとして雇うのも大丈夫

だけど本当にそれで良いのかい?」

 

「はいよろしくお願いします」

 

私はサーゼクスさんの家に世話になり、メイドをする事となった。

 

 




感想、評価等よろしくお願いします。


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第四話 グレモリー家に

 

こんにちはー、何故か偶然冥界に来てしまったら成り行きでこんな事になりました。

 

私がメイドとして働く事が決まると、サーゼクスさんは眷属の人達……いや悪魔達をこちら

に召集した。

 

「この子が家でメイドをする事になった朝霧奏君だ」

 

「よろしくお願いします」

 

召集された眷属の人達に私は挨拶をする。中には体が凄く大きくてゴツい人や逆にヒョロ

ヒョロの人がいた。ゴツい人は北欧神話の炎の巨人のコピー体で、ヒョロヒョロの人はデ

ンマークの伝説に残る英雄ベオウルフの子孫らしい。他にも神獣と呼ばれる存在のバハム

ートに麒麟に、それと私でも知っている、かの有名な新撰組の沖田総司が眷属の中にいた。

何でも沖田さんは死の回避のために様々な魔の儀式を繰り返したために一人百鬼夜行状態

らしく、そこをサーゼクスさんに助けてもらったらしい。その人達は私を温かく迎えてく

れた。

 

「私の家は悪魔一情愛を大切にする家系だからね」

 

笑顔でそう言ってくれる。

 

「今から家に向かうけどその移動手段に転移魔方陣があるけど私とその眷属しか転移出来

ないようになっているんだ。悪いけど自分で行くようになるけど行けるかい?私も一緒に

付いていくから。行けないのなら私が連れて行くけど……」

 

そこまで考えていなかったが、能力があるので断る。

 

「あっ大丈夫です。能力使うので。能力投影(アビリティトレース)開始(オン) 情報操作(データオペレーション) 『“翼” 情報連結 』」

 

私はそう呟くと背中に光の粒子が集まりだし、翼を形成する。

 

「これで大丈夫です、行きましょう」

 

「あ、ああ……」

 

サーゼクスさんは驚きながらも悪魔の翼を出し、私は翼をはためかせる。眷属の人達は一

足先に転移魔方陣で行き、私達は家へと向かった。

 

 

グレモリー家

 

私達はサーゼクスさんの家に到着すると客間に通された。そこには銀髪のメイド、間違い

なくグレイフィア・ルキフグスだ。

 

「グレイフィア、急遽今日からメイドを一人雇う事になった」

 

「メイドを?これまた急な話ですね」

 

グレイフィアさんはサーゼクスさんに何も聞かされていなかったのか、驚いているようだった。

全然驚いているようには見えないが。まあ、そうだろう。サーゼクスさんに今日会ってここ

に来たんだから。すると―――

 

「彼女のメイドとしてどれほど出来るかの能力が分かっていません。暫く私に任せて頂けま

せんでしょうか」

 

とサーゼクスさんに言っていた。

 

「彼女の事は任せたよ」

 

「畏まりました」

 

するとグレイフィアさんは私を連れてキッチンに向かっていた。

 

「これから料理をしてもらいます。それと掃除や洗濯など家事全般をやって頂きます。これは

メイドとしての能力を確かめる試験だと思って下さい」

 

「分かりました」

 

そう言うと調理を開始する。調理法が分からない冥界特産品らしき物(私から見るとゲテモノ

のように見える。こんな物は人間界にあって欲しくない)はちょくちょく教えて貰いながらも

やった。その後も家事全般全てをやり終えて、魔王としての仕事をしているサーゼクスさんの

いる所へ向かう。

 

「グレイフィア、彼女はどうだった?」

 

「はい、メイドとしては申し分ない能力です」

 

「私、こう見えても家事全般得意なんですよ」

 

「そうか、ここの使用人達は全員家族の一員としてここの家にいる。今日から君も家族の一員だ。

奏、ようこそグレモリー家に」

 

「はい!」

 

今日から私はメイド……いや、グレモリー家の一員となった。

 

 



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第五話 能力説明

やっほー、奏です。メイドとして働き始めてから早一ヶ月が経ちました。

 

この一ヶ月はサーゼクスさんの両親(グレモリー卿とその妻)とご対面したり、

サーゼクスさんとグレイフィアさんの子供のミリキャス君(本人の前では様付け)

と会って遊んだりした。と会って一緒に遊んだりした。グレイフィアさんがサーゼクス

さんの妻だった事を忘れてたが。メイドの仕事の方もすっかり慣れてメイドや執事の方達

とも仲良くさせてもらっている。良い人達で良かった~ サーゼクスさんの両親からは孫

のように、サーゼクスさんからは妹のように可愛がってもらっている。

 

何ともサーゼクスさんには実妹がいるとの事。恐らくリアス・グレモリーの事だろう。

最近は仕事の傍ら二人にソロモン七十二柱についてや、堕天使と天使の事、悪魔の駒の転生

システムの事、レーティングゲーム、四大魔王のその他の人達についてや旧魔王派の事、

そしてはぐれ悪魔の事などの悪魔の情勢についてや三大勢力の関係についてなどを教えても

らった。ここまでは転生悪魔が最初に覚える所らしい。流石に覚える事が多すぎて頭が痛く

なった。仕事中突然サーゼクスさんに呼ばれた。何故呼ばれたのか考えながら部屋へ向かった。

 

「何のご用ですか?」

 

「それについてなんだが、最近はぐれになる悪魔が増えてきているんだ。人間界に行って人

間を襲う者もいると聞いている。それと神器保持者が無理矢理眷属にされる事が横行してい

るんだその案件については神器保持者を保護、またはその他は討伐せよという要請が来ている」

 

「それで私は…」

 

「君は神器保持者。その他にも能力があると言っていたがそれを見せて欲しいんだ。あのド

ラゴンを倒した時の実力から気になってね。主人を殺す、若しくは主人を裏切るはぐれ悪魔

が増えてきてA級やS級程の実力を持ったはぐれ悪魔を討伐出来る者が少なく、討伐出来る実

力を持った人材を探しているそうだ」

 

「はい、分かりました」

 

まずは神器についての説明からする。

 

「ご存知の通り私の所有する神器は剣創造系の無限の剣製(アンリミテッドブレードワークス)という魔剣創造の亜種神器です。

を能力は創造出来る剣の種別や数に制限なく任意で創造する事が出来ます」

 

そう言うと床から様々な種別、形状の刀剣が大量に咲き乱れる。

 

「創造出来る剣は様々な神話や伝承、逸話に存在する武器や私の持つ概念付与能力による

概念を付与したオリジナルの剣になります」

 

二人にコールブランドとグラムを創造して見せる。その二振りの剣からから放たれるオーラ

から察したようで二人は案の定驚きの表情を見せている。

 

「そしてもう一つ、能力模倣の魔眼です」

 

二人に見せた元々の色である蒼色の瞳は一際蒼く染まっている。

 

「能力はこの魔眼で見た他人の技や能力や元々記憶している能力を解析して自分で使えるよ

うにするものです」

 

二人は理解したようで先を促す。

 

「この魔眼によりよく使用するのは投影、別名グラデーション・エアという魔術です。創造

理念と魔力によってオリジナルの鏡像を物質化する魔術なんですが、私のは少々特殊なもの

です。何故か分かりますか?」

 

「…………。それは何故だい?」

 

「例えると、普通は具現化させた魔力弾や魔力で生成した物は時間が経てば自然消滅しますよね?」

 

「そうだね」

 

「普通はそうなんですが、私の場合は術者である私の意志で破棄するか、致命的な損傷を受

けない限り投影した武器は半永久的に存在し続けます」

 

その魔術の異質さに驚きを露わにする。

 

「投影できる武器には宝具という物があります。宝具は過去の英雄や神の偉業を元に形を成

した「物質化した奇跡」です。そこそこ有名なのは……刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルグ)とかですかね」

 

そう言うと投影を始める。

 

投影、開始(トレース・オン)

 

投影したのは禍々しい魔力を放つ紅の魔槍。

 

「これは光の御子クー・フーリンの持つ因果逆転の魔槍 刺し穿つ死棘の槍です」

 

実際に投影をした所と、投影された槍を見た二人はというと呆然としていた。

 

「ついでに言っときますがあの時展開した翼も魔眼の能力の一部です」

 

「成る程……あれもか……」

 

サーゼクスさんは納得したようにしきりに頷いている。グレイフィアさんはよく分かってな

いみたいだが。

 

「これなら簡単にやられず大丈夫だろう。はぐれ悪魔の討伐を任せてもいいかい?」

 

「はい!よろしくお願いします」

 

私はメイドの仕事と兼任ではぐれ悪魔の討伐をする事になった。

 

 



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第六話 はぐれ悪魔討伐とハプニング

今までインフィニット・ストラトスの方を書いていた
のでしばらく更新してませんでしたが、今回から更新
を再開します。


あの数日後、サーゼクスさんと大公に報告した後にはぐれ悪魔討伐に向かった。向かった所は

特にはぐれ悪魔が出没しているとされる場所で、偶に現れる。一匹一匹は少し強いくらいだが、

偶に現れるとはいえ出て来るばっかりされると困る。はぐれ悪魔相手にいちいち伝説の聖剣、

魔剣などを創って討伐するのは面倒なので、概念を付与したオリジナルの剣を創る事にした。

神器で模造した物といえども本物と性能が大して変わらないので一振り一振りの能力が強すぎる。

それともう一つ理由があって、その場で聖剣、魔剣を創造してみせると二人の表情が普通なら

気付かない程度だが変わっていたからだ。本来は神器は神によって作られ、神がいる限りは相

対する性質とは絶対交わらないようになっている。私の持つ神器は亜種の物を発現させる人が

殆どいないからか、ほぼ新種のような扱いで、対する属性である聖と魔の力が組み込まれてい

る所謂神滅器と同じく神器プログラムの“バグ”である。見る人が見れば分かるシステム上のエ

ラーやバグの類いなので神の不在を証明する証拠となる。悪魔の事実上トップである魔王のサ

ーゼクスさんとその女王のグレイフィアさんは神の不在を知っていた為にあのような表情をし

たのだろう。その為オリジナルの剣を創造しようと考えた。無銘の剣に悪魔に有効な光などの

適当な概念を付与して使えば大丈夫だろう。呪文の詠唱は必要なく、禁手したときのみ呪文の

詠唱が必要になる。早速実行に移し、試行錯誤で能力を使って無茶苦茶した結果、奇跡に近い

確率で天使、それも四大熾天使の力を内包した一振りの剣が出来てしまった。何故だ……

創造した剣は伝説上の聖剣や魔剣のように派手な装飾が施されていた。この剣の性質は、剣の

能力を解放する事で力を発揮し、解放しない限りは相手を傷つける事は無い。

イギリスの聖剣、カーテナと同じ性質を持つ慈悲の剣。四大熾天使(セラフ)のミカエル、ガブリエル、

ラファエル、ウリエルの力を使う事を可能とし、尚且つ天使の翼を展開する事も出来る。

この剣の銘はマルアハ、ヘブライ語で天使を表す名だ。その周辺を歩いていると胴体や腕が様

々な種族の魔物になっているはぐれ悪魔が目の前に現れて襲い掛かって来た。

この手のはぐれ悪魔は契約の有無に関係なく人間を襲う事が多いので人間界に降り立つ前に討

伐する必要がある。私は他の能力を使わずに対処しようと天使(マルアハ)を構える。

 

天使(マルアハ)解放(リリース)

 

発動キーを唱えることで剣の力を解放する。同時に六対十二枚の天使の翼が背中に展開される。

 

「天使 Ver.ラファエル ―――風よ、纏え」

 

剣に発生させた風を纏わせて振るうと暴風と共に鎌鼬が発生してはぐれ悪魔を切り刻む。

 

「グギャアアアアアア!!」

 

断末魔の叫び声を上げながら襲いかかってくるが風で吹き飛ばし、数メートルと距離を取る。

 

「天使 Ver.ガブリエル 凍鎧(シリョン)

 

冷気を鎧のように纏い、収束させてそのままはぐれ悪魔に斬りかかる。斬られた箇所から徐々

に凍っていき全身が氷付けになった。それを剣で切り崩し、はぐれ悪魔の身体がバラバラにな

った所で討伐は終了した。この後本家に帰り、サーゼクスさんにはぐれ悪魔に遭遇して討伐し

た事と私が創造した特殊な性能を有した剣の事を話して、後は今日の事を考えながらメイドの

仕事をした。後に剣の事で問題になりかけたのは言うまでもない。

 

⬧     ⬧     ⬧     ⬧     ⬧

 

明くる日、私は転移魔術の練習をしていた。魔術としては魔力を水や炎に変化させるものと同

じく基本のもので、私の場合は能力で解析して使用すればいいのだが、基本のものなので能力

に頼らないようにしたいので現在練習している。私は魔力を少し使って魔方陣を展開、指定し

た座標の位置に転移する。転移してみると景色が違う。何処かの部屋の中だった。指定した座

標は適当に冥界の中心都市ルシファードにしたはずだがどうやら座標を間違えたらしい。

部屋を見渡してみる。近くにあった書類を手に取って見てみると―――

 

「えっと…『僕の考えた最強の神器(セイクリッド・ギア)資料集(イラスト付き)』?|閃光と暗黒の龍絶剣《ブレイザー・シャイニング・オア・ダークネス・ブレード》?

ア、アザゼルって事は……」

 

ガチャッ

 

「シェムハザの奴、いつも……」

 

何かぶつぶつ呟きながら部屋に入って来た人物は顔を上げると固まった。その人物の視線は私

の持っている資料に向けられている。

 

「えっと…この『僕の考えた最強の神器資料集』と|閃光と暗黒の龍絶剣《ブレイザー・シャイニング・オア・ダークネス・ブレード》って何?」

 

「だああああ!俺の黒歴史を見るなあああ!!」

 

男性は素早く私の近くに寄り、書類を引ったくる。よほど見られたく無かったらしい。

 

「……オホン、俺は堕天使の総督、アザゼルだ。それでお前は何故ここにいるんだ?」

 

「ルシファードに転移しようと思ったら座標を間違えてここに……」

 

「何処をどう間違えたら悪魔領と堕天使領を、しかも神の子を見張る者(グリゴリ)の建物内に座標を

間違えるんだ……ここ結構セキュリティ厳重にしてあるんだぞ……」

 

呆れられてしまった。自分でもこの状況をよく飲み込めて無いんですけど……

アザゼルはずっと訝しげな目を向けていたが私が神器を持っている事を話すと―――

 

「お前が神器を持っているとはな、調べさせてくれ!」

 

数分後、先程とは打って変わってテンションが高い。さっきまで訝しげな目を向けていたのに。

私が神器を所持していたのと、神器に興味を持っていた事もあり、神器談義に花を咲かせていた。

 

「長年神器の研究を続けてきたが、こんな変わった亜種の神器なんか初めて見るぞ。無銘や業物

の剣や刀、聖剣や魔剣、妖刀を無限に近い数創り出す事が出来て、禁手にも至っていると。それ

禁手(バランス・ブレイク)は創造出来る剣の能力値を上げる固有結界か……ある意味鬼畜だぞこれ」

 

私の神器の能力の詳細を聞いてやはり驚いていた。何でも、現在確認されている創造系の神器

の中でも類を見ない物らしい。自分でも納得だ。いや、納得しない方が可笑しいか。

私が転移魔方陣を展開して帰ろうとするとアザゼルが一言声を掛けてきた。

 

「神器関連についての事なら俺としても大歓迎、その他の事でも連絡用の魔方陣でいつでも

連絡してくれ」

 

「分かった。色んな神器について詳細を知れたし、有意義な時間だったよ。お言葉に甘えて

神器関連だけじゃなくて他の事でも連絡させてもらうね」

 

そうアザゼルに言い残して神の子を見張る者の総督室を後にし、堕天使領の神の子を見張る者

から魔方陣で転移した。

 

⬧     ⬧     ⬧     ⬧     ⬧

 

「うわっ、眩しい!」

 

その瞬間照らされた光によりが目が眩む。そこは雲の上で、見上げてみると白く輝く広大な天

井があった。

 

「ここ何処?」

 

堕天使領から冥界のグレモリーの本家に座標を設定したはずだが何を間違えたのかどうやらま

た訳の分からない場所に転移してしまったらしい。何回間違えてるんだ私は……

すると奥からウェーブのかかったブロンドで、見た目おっとり風のスタイルのいい六対十二枚

の翼を生やした若い女性と同じく金色に輝く翼を生やした青年が出てきた。

 

「えっ!?何故天界に人間が?天使以外人間でなくとも立ち入る事は出来ないはずですが……

貴女は何故ここに?」

 

「私はサーゼクス・ルシファーの関係者で、転移したら座標を間違えて悪魔領から

堕天使領の神の子を見張る者と巡りめぐってここに……」

 

「……何故人間が転移だけで座標を間違えて堕天使領の神の子を見張る者はおろか天界に

来る事が出来るんですか……理解不能です」

 

理解不能ですいませんね、自分でも訳分かんないんだからしょうがないでしょうに。

 

「サーゼクスの関係者ですか。それならば相当な実力者のようですね」

 

大体の実力くらいは測れるらしい。

 

「それはそうと、翼の数とオーラから見て熾天使のガブリエルとミカエルですか?」

 

「ええ、私は四大熾天使の一人、ガブリエルです。御使い(ブレイブ・セイント)ではハートの札を司っています」

 

「推察の通り私は四大熾天使の一人 大天使長ミカエルです。御使いではスペードの札を司

っています」

 

「私はサーゼクス・ルシファーの部下兼グレモリー家のメイドの朝霧奏です」

 

互いに自己紹介をする。正体については私の読みが当たっていたようだ。

 

「少し聞いて欲しい事があるんだけど……」

 

「当たり障りのない事なら問題ないわよ」

 

「ええ、それくらいなら大丈夫です」

 

「ええ、それが……本当に偶然出来た物なんだけど天使、それも四大熾天使の力を持った代物で……」

 

え?私達の力を持った代物?見せてみて」

 

「分かった。―――天使」

 

私の手の中に全体に派手な装飾を施された剣が現れる。

 

「天使、Ver.ウリエル 聖焔(セイントフレア)

 

剣の刀身に大火力の聖なる力を持った焔を纏う。同時に純白の六対十二枚の翼を展開する。

 

「この聖なる焔はまさしくウリエルの持つ力と同質の物。貴女は天使なのですか?」

 

「いや、違う。この翼はこの剣の能力の副産物で展開出来るようになったもの」

 

「そうですか、ではこれを何故私達に?」

 

これをわざわざ見せた理由を聞いてくる。

 

「この力を何も無しに行使するのはちょっとマズいかなと……ちょっと使っちゃったけど」

 

最後の方は小声で呟いたので二人には恐らく聞こえていない。

 

「構いませんよ。力の使い道を誤らなければですが。用事があるのでそろそろお暇します。

 

何かあれば私の元に連絡してください。協力します。では」

 

「私もやらなければならない事があるので」

 

そう言ってミカエルとガブリエルは奥に消えていった。要するにここには私一人だけ。

 

「どうしよう……ちょっと行ってみよっか」

 

二人が消えていった所まで行くとそこには門があり、その足下には金色の魔方陣があった。

 

能力の副産物である翼を展開したまま門を潜ると魔方陣が輝く。一瞬の浮遊感があるとそこに

降り立っていた。気配を殺して覗いてみるとそこにはさっきの二人がいた。察するにここは恐

らく神の奇跡を司るシステムがある場所。私がいれば何かあるはずだが、持っている力とあら

かじめ展開していた翼のお陰か何も起こらない。再び覗くと何やら話をしていた。

 

「先の戦争で魔王だけでなく神までも亡くなられて……ああ、主よ……」

 

「……………」

 

(魔王だけでなく神も死んだ?これはマズい場面に遭遇して聞いてはいけない事を聞いて

しまった気が……)

 

気配を殺したままその場を離れ、先程の場所に戻って転移魔方陣を展開、すぐさまグレモリー

家の本家に転移した。今度は転移に成功して一安心だ。戻ってサーゼクスさんに神の不在を知

った事以外の今日の事を話すと大変驚かれた。三人に話した様に話すと、どうしてそんな事に

なるんだと言われた。自分でも知りたいわ。あり得ない事だらけで疲れたので部屋に向かって

すぐに休んだ。

 

 




本編に出てきたマルアハは四大熾天使と同質の能力を持った
剣になります。凍鎧はデート・ア・ライブの氷結傀儡から。

近々原作の方に入れるようにします

感想、誤字脱字などがあれば報告お願いします。


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第七話 人間界へ

あれから七年、私は現在学校には通っていないが学生で言う高校二年生に相当する年齢になった。

はぐれ悪魔の討伐をするにつれて私の戦闘スタイルと剣、その時一緒に展開される六対十二枚の

翼から気付いたら剣聖天使という異名が付いていた。何故かは知らないが。あの後四大魔王の一

人であるサーゼクスさんを除く三人と会った。アジュカ・ベルゼブブさんは悪魔の駒(イーヴィルピース)を作ったり、

レーティングゲームの基礎理論を構築したりした人で、アザゼルと同じく技術者気質の人だ。

ファルビウム・アスモデウスさんは冥界の軍事の統括を担当しているが「働いたら負け」が口癖

の人で怠け癖があり、言っちゃ何だけどぶっちゃけニートと言っても過言じゃない思うのは気の

せいだと思いたい。中でも特に仲良くなったのはセラフォルー・レヴィアタン 本名セラフォルー

・シトリー愛称セラだ。冥界の外交担当で娯楽作品などのプロデュースなんかもしているらしい。

因みに魔女っ子趣味で本家本元の魔法使いや魔女達から反感を買ってクレームをつけられている

んだとか。セラにはシトリー家に招かれて妹のソーナ・シトリーを紹介して貰ったりした。

他にも強制的に魔法少女の服装を着せられて色々な所を連れ回されたりした。その際の周りにい

た悪魔達の視線が居たたまれなかった。先の戦争で前魔王は亡くなったので現代の魔王は最早役

職名と化している。はぐれ悪魔の討伐任務の途中に冥界の森で大王家であるバアル家の生まれで

あるサイラオーグ・バアルと出会い、彼自身大王家の証の滅びの魔力は元よりまともな魔力を生

まれ持たなかったそうなので、体術を教えたりした。また、フェニックス家にお邪魔した時に偶

然いたそこの次男のライザー・フェニックスと対立して一悶着あったり、暇な時に神の子を見張

る者を訪ねた時に偶々いた今代の白龍皇にして旧魔王の子孫であるヴァーリ・ルシファーに神器

(セイクリッド・ギア)を持っている事を知られて戦いを挑まれたりと空白の時間はこんな感じだ。

(ヴァ―リとの勝負の時は勿論全投影連続掃射(ソードバレルフルオープン)の一斉射撃で一方的にフルボッコにして勝った)

 

 ⬧     ⬧     ⬧     ⬧     ⬧

 

私ははぐれ悪魔の討伐ではなくいつものようにメイドの仕事をしているとサーゼクスさんに呼び

出された。

 

「はい、何でしょうか?」

 

「突然だけど人間界にはぐれ悪魔の討伐に行って貰ってもいいかい?」

 

「それはまた急な話ですね……」

 

給仕をしてくれと言われるかと思ったが違った。

 

「私の妹のリアスに人間界の駒王町という町の管理を任せているんだけど完全ではなくてね。

たまにそこに現れるリアス達には対処しきれないA級からSS級のはぐれ悪魔の討伐をしても

らいたいんだ。任せてもいいかい?」

 

「分かりました、任せてください」

 

やらない理由もなく、何より魔王からの指令なので断る事もなく了承する。

 

「それと学校に通う気はあるかい?」

 

「え、今更何を?」

 

私は元々転生者で教養はあるので学校に通う意味はあまり無い。それに行方不明になったのにい

きなり現れられても困ると思う。親戚の人達は私の事あまり良く思ってないと思うし。

サーゼクスさんは私があまりいい顔をしていないのに気付く。

 

「まあまあ、はぐれ悪魔討伐のついでだと思って」

 

「……そこまで言うなら行きます。まあ、あの町は私の生まれ故郷ですし」

 

「それならなお都合がいい。学園の転入手続きをしておくよ。曲がりなりにも駒王学園の

理事長を務めているからね」

 

あの町に悪魔が絡んでいて、しかも魔王が学園の理事長をしているとは思いもしなかった。

 

「駒王学園には私の妹とセラフォルーの妹が通っている。リアスがやっているオカルト研究部

には君の事がバレてからででもいいから協力してやって欲しいんだ。セラフォルーからも『ソ

ーナちゃんの事よろしくね~』と言われているしね」

 

「分かりました」

 

これで原作介入フラグが立った。

 

「とにかく、転入手続きには数日掛かるから用意だけしておいてくれ。制服はあっちに着いた

時に私が用意する家に送るから」

 

「はい」

 

取り合えずは話し合いは終了した。

 

 




次回から原作に入ります。

文章の都合上、ルビ振りが出来ていない箇所がありますが
ご了承ください。

感想、誤字脱字があれば報告お願いします。


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第八話 再会

現在冥界から人間界の駒王町に転移魔術で連続転移中の私、奏です。         

普通冥界から出るときは一家に一台ある専用列車を使うが、私は眷属悪魔ではなくただの

メイドなので乗ることは出来ない。そこでサーゼクスさんに特別な許可を貰って冥界から

直接転移している。この時点で捕まるそうなので私のバックに魔王がいて良かったとつく

づく思う。サーゼクスさんが用意したという家の付近の人がいない所に転移し、そこから

家まで歩く。着いた家は一人だけで住むには大きい二階建ての一軒家。

 

その左右の場所は明らかに住んでいた形跡のある空き家があった。もしかするとあの人は

これよりデカくしようとした気もする。恐らくその家に住んでいた人は好条件を提示され

て引っ越して行ったのだろう。悪魔の交渉術は恐ろしい…… 家はこれでも妥協した方だろう。

それほどまでにグレモリー家には資金が有り余っている。渡されていた鍵でドアの鍵を開

けて家に入る。すると既に家電製品や家具などが用意されていた。準備早いな……

 

⬧     ⬧     ⬧     ⬧     ⬧

 

今日は連続転移で疲れたのでインスタントの物を買うために近所のスーパーに行ってその

帰り道、その近くの廃屋で下半身が人間で上半身が魔物の姿をしたはぐれ悪魔に遭遇した。

討伐の指令を受けてこの町に来たとはいえ初日で遭遇って早すぎじゃない?

とにかく人払いの結界と討伐しているのがバレないように魔力の遮断結界を張る。

 

「コンナトコロニニンゲンガマヨイコンデクルトハナ。ブッコロシテクッテヤル!」

 

不気味な笑い声を上げながらそう言って私を潰そうと拳を降り下ろして来る。

 

能力投影、開始(トレースオン) 一方通行(アクセラレータ)

 

その拳が降り下ろされる前に素早く能力を発動。髪が白くなり、瞳が赤く変化する。

能力により設定した常時反射により拳は身体に一切傷を付ける事なく逆に私を殴った腕の

骨がボキンッと音を立てて折れる。

 

「ガアアアアア!」

 

痛みによりのたうち回り、自棄になって襲いかかってくる。一旦能力を解き、神器である

刀を二振り創造する。銘は九字兼定と瓶割、片方は裏銘に「臨・兵・闘・者・皆・陣・列

・在・前」の九字が切られた邪を祓う刀、もう片方は瓶に潜んだ賊を瓶ごと切り伏せたと

される硬い物を簡単に斬る事が出来る刀だ。襲いかかって来るはぐれ悪魔を一瞥して地を

蹴って跳躍。そのまま二刀を振り下し、肩のあたりから両腕を斬り落とす。そこから横に

振り切り頭部を切断し、首の部分から股の部分にかけて斬ると、はぐれ悪魔は中心から真

っ二つになって息絶えた。遺体が残ると面倒なので光剣を創造して突き刺すと塵になって

消滅した。張った全ての結界を解除して何事も無かったかのように自宅に帰宅した。

 

⬧     ⬧     ⬧     ⬧     ⬧

 

翌朝、今日は駒王学園に転入する日だ。送られて来た制服に身に纏って駒王学園に向かい

あらかじめ確認しておいた職員室のある場所に行く。

 

「私が君の転入するクラスの担任だ。よろしく」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

私の転入するクラスの担任となる先生は気さくで優しそうだった。

 

「これから教室に行くから私に付いて来て、教室の外で待っていてくれ。後で呼ぶからな」

 

「分かりました」

 

了承して先生の後を付いていく。指示通り教室の外で待って少し経って呼ばれると私は教

室の扉に手を掛けた―――

 

⬧     ⬧     ⬧     ⬧     ⬧

 

一誠Side

 

おっす、俺は兵藤一誠だ。両親、学校の奴らは俺の事をイッセーとあだ名で呼んでいる。

青春を謳歌している駒王学園に通う高校二年生だ。見知らぬ生徒に結構下の名前を知られ

ていたりするが、それは逆に主にエロ方面で有名だ。友人の松田 別称エロ坊主、セクハ

ラパパラッチともう一人の友人 別称エロメガネ、スリーサイズスカウターと呼ばれてい

る悪友といつものように卑猥な題名の本やDVDの話をしていると先生が教室に入ってきた。

 

「はいはい、静かにしろ~と言うかそこの三人、いい加減そう言うのやめろよ。

お前らの担任って事で色々苦情言われて信用もあんまり無いんだぞ……」

 

それは大変そうで。でも俺はやめる事は出来ないッ!

 

「話はそこまでにして転入生を紹介する。入って来てくれ」

 

「はい」

 

教室の戸を開けて編入生が入って来る。俺はその編入生の姿に驚いた。

腰くらいにまで伸ばした絹のような流れる黒髪、引き込まれるような深く綺麗な蒼色をし

ている澄んだ瞳、そして平均よりは背は低めだがそれを引き立たせる容姿。

数年前まで俺の隣に何時もいた存在。

 

「このクラスに編入する事になりました、朝霧奏です。よろしくお願いします」

 

クラスメイトの前で軽くお辞儀をする。

 

「わぁ……」

 

「可愛い~」

 

「綺麗……」

 

それは数年前に行方不明になり、姿を消したはずの幼馴染みだった。

 

 



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第九話 始まり

午前中の授業が終わり昼休みの時間。私は弁当を食べながら一誠に問い詰められていた。

 

「あの時お前が突然行方不明になって警察沙汰にもなって俺や知り合いの近所の人達が大騒ぎ

してたんだぞ。今まで何してたんだ?」

 

「あの時は起きて気付いたら明らかに自分の家と違う場所に倒れてたんだ」

 

「えっ?何でそんな所に?」

 

「多分誰かに連れ去られたんだと思う。こんな事やるだけやっといて放置とか何

考えてるんだか」

 

本当は自分の意思で冥界に行っただけだけどね。ほぼ不法侵入になるけど。

 

「で、周りを見て西洋建築の建物と至るところに書かれた日本語とは違う文字から北欧の方の

国だと気付いて歩き回ってたら日本語を理解出来て話せる紅髪の男性に会ったんだ」

 

「それでその人に保護されたとか?」

 

「そんな感じ。少し話してみて信用できそうだからさっきの事を話してみると私の事を預かって

くれるって言ってくれたんだ。それで私がその人の身なりから上流階級の人だと推測してただ世

話になるだけなのは嫌だからメイドとして雇ってもらってるっていのが行方不明中にあった事。

それでこの時期になって妹が通っている学校に通わないかって言われて今のこの状況に至るって

感じかな」

 

「な、何か大変そうだったんだな、色々と。それよりその人の妹って誰なんだ?」

 

「この学園に二大お姉さまって呼ばれてるらしい人がいるでしょ?」

 

「いるな」

 

「その内の一人のリアス・グレモリー先輩。拾ってくれた人がグレモリー先輩の実の

お兄さんだったんだ」

 

「マジかよ……凄い偶然だな……」

 

少しは真実を交えてはいるもののかなり捏造した話だったので信じてくれるか分からなかった

が大丈夫そうだ。何よりリアス・グレモリーと私との意外な接点に驚きを隠せていない様子。

まああのヒト達、人間じゃなくて悪魔なんていうただの人間からするとオカルティックな存在

なんだけどね。

 

 ⬧     ⬧     ⬧     ⬧     ⬧

 

私がこの学園に編入してから数日、女子の平均よりも少し低い身長のせいもあってかいつの間

にかマスコット扱いされていた。その身長の割には胸は結構あるのだが。去年入学してから学

園のマスコットらしい塔城子猫もこんな感じらしい。

編入から大体二日くらい経った日の放課後、子猫ちゃんと初めて会って話をしてみると、子猫

ちゃんの無類のお菓子好きが判明。話が合って数日すると私がお菓子を手作りで作って持って

きて一緒に食べたり、お互いにお菓子の店を教え合って巡ったりする仲になった。

そんなこんなで幼馴染みの一誠を中心とした友達の松田と元浜。ただし変態。つるんでいる唯

一の女子の桐生藍華、これまた変態で男子のアレを数値化できるとの噂がある。

男子のアレって何の事だろ?

 

話を戻してその翌日、何故か一誠が凄く浮かれていた。側にいた藍華に事情を聞いてみる。

 

「何でか一誠がおかしくなってるけど何があったの?」

 

「なんかね、突然告白されて可愛い彼女が出来たらしいのよ。登校してからはずっとあんな

感じなのよね……」

 

「……何で女子に飢えてるからって突然の告白受け入れるてるのよ。相手の子の事何にも

知らないだろうに。あの子も一誠が近隣でアレな事で有名なのも知ってるはずなのに……」

 

「奏、何気に言ってる事中々ヒドいわね……」

 

幼馴染みだからこそなのです。

 

 ⬧     ⬧     ⬧     ⬧     ⬧

 

今日は何事もなく普通に全ての授業が終わり、子猫ちゃんは部活があるらしいので部活に入っ

ていない私は速攻家に帰り、このまま家にいてもやる事が何もないのでそこら辺をフラフラし

ていると自宅と一誠の家に近い昔一誠やイリナと一緒に遊んでいた公園に懐かしい思いで行っ

てみると一誠と噂に聞いた一誠に告白したらしい子が一緒にいた。

あのオーラの感じからすると堕天使か。堕天使がこんな事をするためにこんな所に来るはずが

ない。堕天使はろくでもないというか何処かおかしいやつばかりだ。神の子を見張る者(グリゴリ)の堕天

使総督のアザゼルやその幹部連中も含めて。取り合えず私は近くの物陰に隠れ、完全に気配を

殺して事の成り行きを見守ってみる。

 

『今日は楽しかったね』

 

そう言われて一誠は顔をにやけさせている。

 

『ねぇ、イッセー君』

 

『なんだい、夕麻ちゃん』

 

『私達の記念すべき初デートって事で、一つ、私のお願い聞いてくれる?』

 

『な、何かな、お、お願いって』

 

一誠の声が明らかに上ずっている。

 

『死んでくれないかな』

 

『……え?それって……あれ、ゴメン、もう一度言ってくれない?なんか、俺の耳変だわ』

 

彼女のこの言葉に少し身構える。

 

『死んでくれないかな』

 

その瞬間彼女は堕天使の黒い翼を展開し、同時に手に光の槍を出現させる。

 

『楽しかったわ。あなたと過ごした僅かな日々。初々しい子供のままごとに付き合えた感じだった』

 

光の槍を一誠に向けて投擲しようとした瞬間私は身体強化の魔術を全身に掛けて物陰から飛び

出した瞬間に強度と切れ味だけを強化した魔剣を創り、光の槍を叩き斬る。

 

「何!?」

 

「悪魔の管理する町にうろつくカラスなんかに一誠を殺させはしない」

 

「言ってくれるじゃないこの小娘がッ!」

 

激昂すると光の槍を連続で投擲し、更に槍を手に持ち斬り掛かってくる。投擲された槍を斬り

捨て、堕天使と斬り結ぶ。その間に上空を飛んでいた仲間の堕天使が光の槍を投擲し、戦闘を

している私達から離れていた一誠の腹部を貫通、大量の血を流して倒れた。それを確認した堕

天使は戦闘を止めて槍を消し―――

 

「油断してこのザマね、アハハハハ!!」

 

嘲笑を残してここから飛び去って行った。一誠に攻撃を加えた堕天使だけでも殺しておきたい

と思い、神器(セイクリッド・ギア)ではなく魔術を行使する。

 

能力投影、開始(トレース・オン) 投影魔術」

 

自身の能力で魔術を起動。

自らを表す言葉を口にし、内面から設計図を起こす。黒塗りの洋弓を投影し、それと一緒に投

影して矢として番えるのは黒い光沢があり稲妻のような形状をした、例え弾かれようとも射手

が健全かつ狙い続ける限り標的を襲い続ける赤光を纏った魔弾と化す、北欧の英雄ベオウルフ

が振るったとされる魔剣。洋弓に番えた魔剣に魔力を数秒込め、真名解放をする。

 

「―――赤原猟犬(フルンディング)!」

 

放たれ赤き魔弾と化した剣は通常の矢ではあり得ない曲線を描きながら一誠を槍で刺した堕天

使を貫く。更に―――

 

壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)!」

 

一言言葉を紡ぎ、込められた魔力を暴発させると、堕天使が飛んでいった方向から激しい爆発

音がし、堕天使は跡形もなく消し飛んだ。いささかオーバーキルな気もするが、悪魔の管理す

る町に侵入してくる方が悪いのでこっちは知ったこっちゃない。戦闘や爆発音の方は認識阻害

と遮音の魔術をかけて、人が寄り付かないように人払いの結界を張っていたので問題はない。

堕天使の一体を消し終わり、一誠が倒れている所に向かうと蘇生を―――

 

能力投影(トレース)―――」

 

しようとしたが何者かが背後に魔方陣で転移してきた。

 

「あなたね、私を呼んだのは」

 

背後に展開した魔方陣で転移してきたのはとても鮮やかな紅色の髪をした女性。

 

「グレモリー家次期当主 リアス・グレモリー……」

 

グレモリー家次期当主にして魔王サーゼクス・ルシファーの妹にあたる人物がそこにいた。

 

「貴女……いや……この子ね……私を呼んだのは」

 

倒れている一誠を見ながら言う。

 

「この子は……もう死にそうね」

 

改めて観察しているグレモリー先輩に告げる。

 

「まだ残っているのであれば一誠を悪魔の駒(イーヴィルピース)で転生させて下さい。眷属としても相応のモノ

を宿していると思いますが」

 

「貴女は裏の事を知っているのね……分かったわ、この子を悪魔に転生させましょう。

でも悪魔の駒を使用すれば最後、彼は目覚めた時には人間ではなくなる。それでも

いいのね?」

 

「ええ、例え憎まれる事になったとしても変わりません。彼には生きていて欲しいんです。

私のエゴに過ぎませんが。それと、眷属にして他の者に狙われないようにする意味合いも

ありますから」

 

「……分かったわ」

 

グレモリー先輩はポケットから紅い駒、悪魔の駒を取り出し一誠の胸に置くと一誠の体の中に

入り込んでいった。

 

「これで悪魔に転生させたわ」

 

グレモリー先輩は一誠を抱えると―――

 

「私はこの子をこの子の自宅に連れ帰るわ。貴女は裏について色々と知っているみたいだし、

今度使いを出すからその時に話し合いましょう」

 

そこで私とグレモリー先輩は別れた。

 

 



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第十話 異変

ここ最近俺は最低な夢を見てしまい、最悪な目覚めだった。それは俺が夕麻ちゃんに殺される夢。

それに何故か奏も一緒にいて夕麻ちゃんと戦っていた。やっぱり夢に過ぎないだろうがあれは

何だったんだろうか。俺はベッドから起き出し、朝食を食べて制服に着替えて家を出ると太陽

の陽光が照らし、肌に突き刺さるようでキツく、夜になると逆に活発になる。何がどうなって

いるのかが何一つ分からず仕舞いだった。教室に到着すると自分の席に腰掛けた。

 

「よー、心の友よ。貸してやったDVDはどうだった?エロかっただろ?」

 

俺に話しかけてきたのは友人その一の松田。一見見た目は爽やかなスポーツ少年に見えるが、

実情は日常的にセクハラ言葉が出る変態である。

 

「ふっ……今朝は風が強かったな。お陰で朝から女子高生のパンチラが拝めたぜ」

 

キザ男のように格好付けているのは友人その二の元浜だ。メガネを通して女子の体型を数値化

できる特殊能力(スカウター)を持つが、メガネを取ると弱体化する。こちらも松田や俺と同類だ。因みに逆

バージョンの特殊能力を持つ奴もこのクラスにいる。

 

「朝から何やってるのよ……」

 

こちらに呆れた目を向けているのは、数年前に行方不明になって最近戻ってきた幼馴染みの朝

霧奏だ。その時の事を簡単に掻い摘んで話してくれたが、今度詳しく聞いてみるとするか。

 

「いいもん手に入ったぞ」

 

そう言って俺の机に積み上げられるのは、明らかに卑猥な題名と表紙の本やDVDだ。

 

「ひっ」

 

近くの女子が軽く悲鳴を上げた。「朝から最低~」「エロガキ死ね」などの女子の侮蔑する声。

 

「騒ぐな!これは俺らの楽しみなんだ、女子供は見るな見るな!脳内で犯すぞ!」

 

発言が最低だぞ松田君よ。

 

「言ってる事最低過ぎるわよ、自重しなさい」

 

そう言って呆れながら松田に軽くチョップを入れる奏。そうは言っても俺らにとっては日常茶

飯事な事だからな。

 

「おいおいおい、これだけのお宝を目にして何だよ、その顔は」

 

「最近ノリが悪いぞ。おかしいぞ、おかしい。今までのお前らしくないぜ」

 

「俺だって『すげぇ!何だよ、これ!俺を猿にする気か!』って言いたいところなんだがな。

いかんせん、ここんとこ精力減退しててな」

 

「病気か?いや、まさかな。エロの権化であるお前が風邪になるわけがない」

 

元浜が失礼な物言いをしてくる。本当に失礼な奴だな、おい。

 

「あー、アレか?俺には彼女がいましたーっていう例の幻想の影響か?夕麻ちゃんだっけ?」

 

「……夕麻ちゃんの事マジで覚えてないのか?覚えてるのは俺だけか?」

 

俺の言葉に可哀想なものを見るような目を向けてくるだけだ。

 

「だからさ、俺らそんな子マジで知らないって。マジ病院とか行った方がいいんじゃないか?

なあ、元浜」

 

「ああ、何度も言うが俺達は夕麻ちゃんという女の子を紹介なんかされていない」

 

俺が夕麻ちゃんの話を振ってもこいつらは決まってそうだった。天野夕麻という女の子そのも

のが存在しなかった―――と。俺はこの事態に頭を抱えた。

 

⬧     ⬧     ⬧     ⬧     ⬧

 

私は教室の席に座って体がダルそうにしているのを見ていた。おそらく悪魔になった影響だろう。

一誠が席に着くと二人が話しかけ、机の上に明らかに卑猥な題名や表紙の本やDVDを積み上げ始

めた。女子に軽蔑の目で見られているというこの状態で何故こんなに堂々としていられるのか不

思議でならない。おまけに松田が脳内で犯すぞと言い出して少し焦ってチョップを入れてしまっ

たが。一誠があの堕天使の事を二人に聞いていたが、覚えておらず、私だけが覚えているという

のもおかしいので、話を合わせて覚えていないと答えておいた。本当は覚えているけども。

恐らくは何らかの術で自分を見た人々から自分の存在を記憶から消去し、更に一誠の携帯の記録

を抹消したのも一誠を殺すという目的を達成したからだろう。結構用意周到なカラスである。

一誠、松田、元浜のエロDVD鑑賞会をするという会話を聞いた日の深夜、流石に明日に差し支え

るのでもう寝ようと思ったその時、前に戦った堕天使とは違う堕天使のオーラを感じた。すぐさ

まそこに駆けつけようとした瞬間悪魔の魔力を感知した。恐らくリアス・グレモリーだろう。

少し嫌な予感がしたので―――

 

強化、開始(トレース・オン)

 

即座に部分的に嗅覚を強化すると漂ってくるのは血の匂い。大方一誠をはぐれと勘違いした堕天

使が討伐しようとしたんだろう。事が収まったのはいいが、一誠は大怪我をしているので魔力を

分け与えて治癒させなければならない。ただ、悪魔の魔力を分け与える方法は少々危ない(性的

な意味で)ので少し心配になる。明日になって一誠がどうなるか不安になる私だった。

 

⬧     ⬧     ⬧     ⬧     ⬧

 

その翌日、一誠は一緒に登校してきた。一誠の様子から見て怪我は消えているみたいなので、昨

日の予想は当たっているみたいだ。男女問わず悲鳴が上がり、ショックで気絶する人もいた。

ダメだこりゃ。更には松田は一誠の後頭部を殴りながら涙を流していた。元浜の鋭い視線も向け

られていた。そんな二人に一誠はこう言い放った。

 

「お前ら、生乳を見た事はあるか?」

 

二人はその一言で戦慄していた。ホントにバカばっかだな。するとその時

 

「や、 どうも」

 

この学園に来たばかりでよく知らないが学園のイケメン王子と言われているらしい木場祐斗君が

ウチのクラスに来た。オーラからして悪魔なので前に言っていた使いだろう。

 

「で、何のご用てすかね」

 

半目で木場君を見ながら言う。そんなにイケメンが憎いかね。

 

「リアス・グレモリー先輩の使いで来たんだ」

 

「……OKOK、で、俺はどうしたらいい?」

 

「僕について来て欲しい。それと、朝霧さんもね」

 

木場君から私の方にも声が掛かる。

 

「ま、先輩とそう言う約束したしね」

 

移動を始めると、朝一誠がリアス先輩と一緒に登校してきた時のように女子達の悲鳴が上がる。

……悲鳴の意味が多少違うのは察して欲しい。

 

「そ、そんな木場君と兵藤が一緒に歩くなんて!」

 

「汚れてしまうわ、木場君!」

 

「木場君×兵藤なんてカップリング許せない!」

 

「ううん、もしかしたら兵藤×木場君かも!」

 

「もしかしたら編入生も加わってまさかの三角関係とかだったりして!?」

 

うわー、私の方にも被害来たわー(棒)

 

「あー、分かった」

 

「私は元々大丈夫。それよりここから早く抜け出したい」

 

「そうだね、行こうか」

 

そう言って木場君は再び歩き出す。

 

「お、おい、イッセー!」

 

一誠を松田が呼び止める。

 

「心配するな、友よ。決闘とかじゃないから」

 

「これ!『僕と痴漢と時々うどん』をどうするんだ!」

 

松田はエロDVDを天にかざしていた。それを見た一誠は天を仰いでいた。アイツらの頭が本気で

心配になってきた。ホントに大丈夫なの?これ……

 

 



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第十一話 オカルト研究部

そして私達が案内されたのは校舎の裏手にある旧校舎。

 

「ここに部長、リアス・グレモリー先輩がいるんだよ」

 

連れてこられた部室には『オカルト研究部』の文字が。

 

「部長、二人を連れてきました」

 

「ええ、入ってちょうだい」

 

木場君が中に確認を取ると中から先輩の声が聞こえてくる。室内に入ると部屋の大半を占める仕事の依頼の時に使用するであろう転移の魔方陣が刻まれていた。すぐそばのソファーに座っているのは子猫ちゃん。黙々と羊羮を食べている。

 

「こちら、兵藤一誠君」

 

木場君が一誠を紹介する。一誠に向けて黙ってペコリと頭を下げる。

 

「あ、どうも」

 

一誠も頭を下げる。これを確認するとまた黙々と羊羮を食べるのを再開する。

 

「子猫ちゃん、久しぶり」

 

「!?先輩、どうしてここに……」

 

「私もこっち側の人間でその関係でここに来たんだ、黙っててごめんね?」

 

「そうですか……」

 

私がこっち側の人間だという事が驚きなのだろう。

 

「まあ、そこは気にしないでね。少し羊羮ちょうだい」

 

「どうぞ」

 

そう言いながら差し出してくれた羊羮を口にする。

 

「あ、丁度クッキー焼いてきたからあげる」

 

「ありがとうございます」

 

子猫ちゃんはクッキーを私から受け取ると羊羮をしまってクッキーを食べ始める。

 

「仲良いのか?」

 

この黒魔術などの魔法陣が刻まれたオカルト感満載の部屋の中をずっと見渡していた一誠が聞いてくる。

 

「一緒にお菓子巡りとかをする仲」

 

「ふ~ん」

 

すると部屋の奥から二人の女性が現れた。リアス・グレモリー先輩と姫島朱乃先輩だ。

 

「先程までシャワーを浴びていて挨拶が遅れたわ、ごめんなさいね。歓迎するわ、兵藤一誠君、

朝霧奏さん、いえイッセー、奏」

 

「あらあら、初めまして、私、姫島朱乃と申します。どうぞお見知りおきを」

 

ニコニコ顔で丁寧な挨拶をされる。

 

「こ、これはどうも。兵藤一誠です。こ、こちらこそ初めまして!」

 

「初めまして、朝霧奏です。こちらこそよろしくお願いします」

 

互いに挨拶を交わす。「これで全員揃ったわね。兵藤一誠君、朝霧奏さん。いえ、イッセー、奏」

 

「は、はい」

 

「はい」

 

「私達オカルト研究部はあなた達を歓迎するわ。―――悪魔としてね」

 

⬧     ⬧     ⬧     ⬧     ⬧

 

姫島先輩がお茶を出してくれて、感想を言うとうれしそうに笑う姫島先輩。テーブルを囲んで座るオカルト研究部の面々と一誠と私。

 

「朱乃、貴女もこちらに座って頂戴」

 

「はい、部長」

 

姫島先輩もリアス先輩の隣に腰を下ろす。全員の視線が私達に集まる。

 

「単刀直入に言うわ。私達は悪魔なの」

 

その言葉に一誠が少し反応を見せる。

 

「信じられないって顔ね。まあ、仕方ないわ。でもイッセー、貴方も昨夜、黒い翼の男を見た

でしょう。あれは堕天使。元々は神に仕えていた天使だったんだけど邪な感情を持っていため、

地獄に堕ちてしまった存在。私達悪魔の天敵でもあるわ」

 

それからは悪魔と堕天使の太古の昔からの関係や、そこに天使を含めた三竦みが大昔から争いを繰り広げている事を話した。

 

「……それ本当の話ですか?ちょっと普通の高校生には難易度高い話な気がしますけど」

 

「本当よ。オカルト研究部は仮の姿で、私の趣味なの。本当は悪魔の集まり」

 

訝しげな様子の一誠。そんな簡単に信じられないか。

 

「貴方はここで話されたくはないと思うけど、信じられないなら話すわ。―――天野夕麻。

この名に覚えがあるかしら」

 

先輩からこの名前が出るとは思わなかったのか一誠は驚きを露にする。

 

「せ、先輩が何でその事を!?」

 

「彼女は確かに存在していたわ」

 

先輩は懐からある写真を取り出す。堕天使、天野夕麻の写真だ。

 

「これは堕天使と言って昨日貴方を襲った存在と同質の者よ」

 

「一誠、リアス先輩が言ってる堕天使とか三竦みとかの話はは全て本当の事。今まで黙ってたけど

実は私天野さんの事覚えてたんだ」

 

「そうなのか?何で言ってくれなかったんだ?」

 

「周りの人達が覚えてないのに一人だけ覚えてるっていうのはおかしいから黙ってたんだ」

 

「そうか、それもそうだな」

 

私の話さなかった理由について納得してくれたようだ。

 

「念入りに貴方の周囲の証拠を消したみたいだけど、奏には記憶削除の細工が効かなかったみたいね」

 

「何故効かなかったのか分からないんですよね」

 

自分でも分からないんだから仕方がない。

 

「この堕天使はある目的があって貴方と接触して、その後に自分の記憶と記録を消去したの」

 

「そのある目的って?」

 

「危険因子である神器持ちの人間を殺すため、でしょう?」

 

話に割り込む形で言う。堕天使の大半はこの手段を取っているらしい。

 

「あら、知っていたのね。その通りよ。貴方の身に神器という物騒な物が付いていないか調査し、

それが確定したから殺したのよ」

 

「その神器って……」

 

すると神器は世界で活躍する人達にも宿っていると姫島先輩、木場君が端的に説明してくれる。

そこにリアス先輩が更に続く。

 

「その他にも私達悪魔や堕天使の存在を脅かすほどの力を持った神器があるの。イッセー、手を

上にかざして頂戴」

 

一誠は戸惑うが、いいから早くなさい、とそんな間もなく先輩に急かされる。

 

「目を閉じて、貴方の中で一番強いと感じる何かを心の中で想像してみて頂戴」

 

先輩に強いと感じる存在を想像しろと言われ、一誠は昔から好きだったドラグ・ソボールの空孫悟のドラゴン波のポージングを取る。思わず笑ってしまった私は悪くないと思う。

 

「さあ、目を開けて。この魔力漂う空間なら、容易に発現するはずだわ」

 

一誠の左腕が光り出すと、凝った装飾が施された赤色の籠手が装着されていた。

 

「な、何じゃこりゃあああああ!」

 

驚きの余り大声を上げる一誠。

 

「それが神器。貴方の物よ。一度ちゃんとした発現が出来れば、後は貴方の意思で何処にいても

発動可能になるわ」

 

腕に装着された籠手をまじまじと観察している一誠を見て、今度はリアス先輩の視線がこちらに向く。

 

「次に奏、貴女ね。何故あそこにいたのかしら?」

 

「あの周辺をフラフラしていたら公園にあの堕天使と一誠がいたんです。暫く隠れて観察していたら光の槍を生成して殺そうとしていたので堕天使と戦闘しました。結局一誠はやられましたが」

 

堕天使と遭遇した時の事を包み隠さず話す。

 

「堕天使を知っているということは裏に関わっているのね」

 

「はい。最近そこそこ知られるようになってきましたが、これを見せれば分かると思います」

 

神器を発動させ、いつも使う剣を創造し、解放する。解放すると背中に金色の天使の翼と頭上に俗に言う天使の輪が展開された。

 

「っ!?」

 

一同はその姿に驚きを隠せなかった。その理由は言うまでもなく光を扱う悪魔の天敵である天使の姿をしていたからだが。

 

「悪魔の最大の弱点の光を操る剣を始めとした様々な刀剣を扱い、A級からSS級のはぐれ悪魔を

いとも簡単に討伐する剣聖天使の二つ名を持つ人間。貴女だったのね」

 

「はい、改めましてはぐれ悪魔の討伐兼グレモリー家のメイド、剣聖天使こと朝霧奏です。

よろしくお願い致します、リアス先輩、いえ、リアスお嬢様」

 

最後の言葉にまたも驚く一同。

 

「ちょ、え、今何と?」

 

何故かは分からないが突然取り乱す先輩。まさにカリスマブレイク。

 

「はぐれ悪魔討伐兼グレモリー家のメイドだと言いました」

 

「そのうちの実家のメイドが何故ここにいるのか説明してちょうだい」

 

気を取り直して説明を要求する先輩。さっきのは何だったんだ……

 

「魔王 サーゼクス・ルシファー様からの指令で、駒王町にいるリアス・グレモリー眷属に討伐

しきれないA級以上からSS級のはぐれ悪魔の討伐を任されました。因みに私がここ出身というの

もあって、妹が通っているからとついでに駒王学園に通わせてくれましたが」

 

「お兄様が!?」

 

私の発言にリアス先輩からの驚きの声が上がる。他の人達も同様だ。一誠の場合は何の事か分からず右往左往しているが。

 

「はい、サーゼクス様に確認を取りますか?」

 

「ええ、お願いするわ」

 

先輩から連絡するか確認を取ると、連絡用の魔方陣を展開し、サーゼクスさんに繋ぐ。

 

『やあ、どうしたんだい?』

 

「リアスお嬢様が私の駒王町派遣について事実確認をしたいそうです」

 

『そうか、リアスに代わってくれないかい?』

 

「はい」

 

先輩に代わり、魔方陣を介して話すこと数分、話が終わると魔方陣を破棄する。

 

「この件についてはお兄様から説明して貰ったわ。次は……神器及び能力ね。協力して貰うなら

戦力は把握しておきたいわ」

 

「はい、私の所有する神器は無限の剣製(アンリミテッドブレードワークス)という魔剣創造(ソード・バース)の亜種神器です。創造出来る剣の種別や数に制限なく数多に創造することが出来ます」

 

取り敢えず所有する神器について能力などを説明する。

 

「偶然ね、祐斗が魔剣創造の使い手なのよ」

 

「そうなんですか」

 

この後、能力模倣の魔眼やあらゆる物への概念付与能力について説明した。魔眼の説明の時に、曖昧にでも解析出来れば架空の技や能力でも再現することが出来ると知った一誠は目を輝かせていた。

 

「奏の説明が全て終わった所で話を戻すけど、召還された私は貴方を見て、神器所有者で堕天使に

害されたのだと察したわ。問題はここから。堕天使の光の槍に身を貫かれれば、悪魔じゃなくても

人間なら即死。イッセーもそんな感じで死にかけていたわ。そこで私はその場にいた奏の頼みで貴

方の命を救った」

 

一誠は先輩の言葉に思考を駆け巡らせている。

 

「悪魔としてね―――。イッセー、貴方は私、リアス・グレモリーの眷属として生まれ変わったわ。私の下僕の悪魔としてね」

 

その瞬間私と一誠以外の背中から蝙蝠のような翼が展開される。一誠の背中にも同じ翼が展開される。その光景に一誠は呆然としている。改めて自己紹介をする三人に加え、リアス先輩の自己紹介に移る。

 

「そして主であり、悪魔であるグレモリー家のリアス・グレモリーよ。家の爵位は公爵。よろしくね、イッセー、奏」

 

私はグレモリー眷属の協力者となった。

 

 



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第十二話 説明

現在は深夜。私は能力で展開した翼を広げて、地上で自転車を全力で漕いでいる一誠と並んで

飛んで簡易型魔方陣の描かれたチラシを投函していた。一誠の手に持った携帯機器を一緒に確

認しながらそのチラシを投函していく。これを何度も繰り返す。

 

「うおおおおおお!」

 

「一誠、うるさいってば」

 

絶叫しながら再び全力でペダルを漕ぎ始める一誠の頭をペシンと叩いた。何故序盤からこうなって

いるのかというと、とある日まで遡る。

 

 ⬧     ⬧     ⬧     ⬧     ⬧

 

「私の元に来れば貴方の新たな生き方も華やかになるかもしれないのよ?」

 

頭を抱える一誠に向けてリアス先輩はウインクをしながら言った。

 

「それは貴女にも言える事よ、奏」

 

こちらにも視線を向けてくる。

 

「これでも私、グレモリー家の本邸で働いてるんですけど……」

 

こうは言ったものの、スルーされてしまった。

 

「でもね、悪魔には階級があるの。爵位っていうのがね。私も持っているわ。これは生まれや

育ちも関係するけど、成り上がりの悪魔だっている。最初は皆、素人だったわ」

 

「本当ですか?いまいち信用出来ないんですが」

 

信用出来ないと文句を言う一誠に耳打ちをする。

 

「やり方次第では、モテモテな人生も送れるかもしれないわよ?」

 

「どうやってですか!?」

 

この言葉に見事に食い付いた。ここからは転生悪魔についての説明になった。その関連の話で、

意外な悪魔の身近さに一誠はとても驚いていた。

 

「じゃ、じゃあ!やり方次第では俺も爵位を!?」

 

「ええ、不可能じゃ無いわ。勿論、それ相応の努力と年月が掛かるでしょうけど」

 

「うおおおおおおおおおおッッ!!」

 

私は一誠の近くにいたため、思わず耳を塞ぐ。こんな狭い空間で大声で叫ぶんじゃないよ。

 

「マジか!俺が!俺がハーレムを作れる!?エ、エッチな事もしていいんですよね!?」

 

「そうね。貴方の下僕にならいいんじゃないかしら」

 

リアス先輩がそう答えると再び騒ぎ始める一誠。

 

「フフ。面白いわ、この子」

 

「あらあら。部長が先程までおっしゃっておられた通りですわね。『おバカな弟が出来たかも』

だなんて」

 

姫島先輩もにこやかに笑っている。

 

「というわけで、イッセー。私の下僕ということで良いわね?大丈夫、実力があるならいずれ

頭角を現すわ。そして、爵位ももらえるかもしれない」

 

「はい、リアス先輩!」

 

「違うわ。私の事は『部長』と呼ぶこと」

 

「部長ですか?『お姉様』じゃダメですか?」

 

冗談半分なのか調子の良いことを言っている一誠。

 

「うーん。それも素敵だけれど、私はこの学校を中心に活動しているから、やはり部長の方が

しっくりくるわ。一応、オカルト研究部だから。その呼び名で皆も呼んでくれてるしね。

同じように一誠と奏もそう呼んで頂戴ね」

 

少し一誠に便乗して先輩を弄ってみる。

 

「それではよろしくお願いします、リアスお嬢様」

 

「奏、ここではそれは止めて頂戴」

 

「それではリーアたんと……」

 

「それはもっと止めて頂戴!はぁ……お兄様ね……メイドの前でこんな事を口走らないで欲しい

わ…… 普通に部長でお願い」

 

「分かりました」

 

なんとなく疲れた様子のリアス部長。結構面白かった。

 

「分かりました!では、部長!俺に『悪魔』を教えてください!」

 

一誠の言葉に部長は笑みを浮かべている。

 

「フフフ、いい返事ね。いい子よ、イッセー。良いわ、私が貴方を男にしてあげるわ」

 

部長は一誠の顎を撫で始める。せっかく一段落ついたと思ったのに茶番が始まってしまった。

 

「ハーレム王に俺はなるっ!」

 

そして一誠はどこぞの某海賊を真似た台詞を言い、ずっとこの調子だった。

と、まあこんな感じで、ずっと悪魔領にいてグレモリー家で仕事をするかはぐれ悪魔の討伐を

するばかりで悪魔のする事を全く知らなかったので部長にその事を話して一誠のチラシ配りに

同行させて貰った。

 

「うおおおおおおッッ!早く女の子に囲まれたいぃぃぃぃッ!」

 

「だからうるさいって言ってるでしょーが!」

 

また夜が更ける。

 

 ⬧     ⬧     ⬧     ⬧     ⬧

 

とある日の放課後。藍華達と別れて私達は旧校舎に向かっていた。

 

私は悪魔ではないが、悪魔の仕事の同行させてもらえるように言っていたので、一誠と共に

二階のオカルト研究部の部室に向かう。

 

「入りまーす」

 

「失礼します」

 

部室に入ると既に私達以外のメンバーが揃っていた。

 

「来たわね」

 

部長は一誠を確認すると、朱乃さんに目配せして指示を送る。

 

「はい、部長。イッセー君、魔方陣の中央に来てください」

 

指示を受けた朱乃さんは一誠に手招きする。

 

「イッセー、貴方のチラシ配りも終わり。よく頑張ったわね。改めて、貴方にも悪魔としての

仕事を本格的に始動してもらうわ」

 

「おおっ!やっと俺も契約取りですか!」

 

「ええ、そうよ。勿論、初めてだから、レベルの低い契約内容からだけど。さっきイッセーに

あったレベルの契約依頼が入ったからそれにイッセーは行ってもらうわ」

 

「分かりました!」

 

先程契約の依頼が入ったらしいのでそれに行く事になった一誠。それに私も同行させてもらう。

 

「それと奏、貴女は私の眷属ではないから転移の時は……」

 

「ああ、それなら転移した時の魔力の残滓を辿って自分で転移するので大丈夫です」

 

「そう?なら大丈夫ね。朱乃、お願い」

 

「分かりましたわ」

 

すると朱乃さんが魔方陣の中央で詠唱を始めた。それに合わせて魔方陣が淡く青白く光を発して

いる。

 

「あ、あの……」

 

「黙っていて、イッセー。朱乃は、今貴方の刻印を魔方陣に読み込ませているところなの。

手のひらをこちらに出して頂戴」

 

一誠は部長に言われるがまま手のひらを出すと、指先で手のひらをなぞる。すると手のひらに

魔方陣が書き込まれていた。よく見てみれば転移魔方陣の媒介となるものだった。

 

「これは床に刻まれている転移用魔方陣の媒介となるものよ、依頼者のもとに移動するためのね。

契約が終わると自動的にこの部屋に戻してくれるわ」

 

この話に感心していると、部長は朱乃さんに声を掛ける。

 

「朱乃、準備はいい?」

 

「はい、部長」

 

部長は一誠に魔方陣の上に立つように促し、立ったのを確認すると到着後のマニュアルは大丈夫

か確認させる。

 

「じゃあ、行って来なさい!」

 

魔方陣が光出し、その光が一誠を包み込む―――が、転移出来ていない。部長や朱乃さんは困惑

した表情をしている。この瞬間何が起きたか理解した私は何とか笑いを堪えている状態だ。

 

「イッセー」

 

「はい」

 

「残念だけど貴方は魔方陣を介して依頼者のもとにジャンプ出来ないみたいなの。つまり、

イッセー、貴方の魔力が子供以下。いえ、低レベル過ぎて魔方陣が反応しないのよ。

イッセーの魔力が低すぎるの」

 

「な、なんじゃそりゃぁぁぁぁぁ!?」

 

大声を上げる一誠。

 

「ブフッ、もう我慢できない!魔力が子供以下で転移できないとか面白過ぎるんだけど」

 

今まで我慢していたが吹き出してしまう。一誠には悪いが傍観しているこっちとしては結構

面白い。

 

「そんな事言われたって俺もこの事実がショックなんだ!」

 

そう言って落ち込む様子を見せる一誠。

 

「……無様」

 

子猫ちゃんが無表情でぼそりと呟き一誠に追い討ちをかける。

 

「初っぱなからこんなので大丈夫か?俺の悪魔としての人生」

 

少しいじけていた。

 

「あらあら困りましたわねぇ。どうします、部長?」

 

「依頼者を待たせる訳にはいかないし、前代未聞だけれど、足で直接現場に行って頂戴」

 

「足!?」

 

直接足で行けと言う部長に驚愕する一誠。これを実際に聞くと少し驚きがあった。

 

「足って事はチャリですか!?チャリでお宅訪問!?そんな悪魔存在するんですか!?」

 

私と子猫ちゃんがビシッと一誠を指差した。

 

部長に叱咤され、情けない声を上げながら部室を出て行った。同行する手筈になっていた私は

一誠を追い掛けた。

 

 



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第十三話 契約取り

部室から出て行った一誠を見つけ、依頼者のもとに向かう。一誠は自転車、私は剣の副次能力

である翼を展開して専用の機器を使いながら移動、依頼者の森沢さんに会うと一誠は変態扱い

されてさめざめと泣いていたところ、何とか家に通してもらえた。森沢さんは普段は子猫ちゃん

にいつも依頼していたらしく、それを私が引き受ける事にした。(というか依頼が依頼なだけ

に私しか引き受けられない内容だった)とりあえず私が短門キユの制服を着る事で依頼は終了

した。後に試しにこんな契約内容だったらどうなるかと言う話を森沢さんと一誠がしていて、

金持ちやハーレムの願いが叶った後が割と酷かった。金が降ってきたところで死ぬとか、女性

が視界に写った瞬間死ぬとかまずまとな末路ではない。人の価値は平等ではないとしてもこれ

は流石に酷いと思う。それが原因でアフターケアに回る事となった。取り敢えず契約するかど

うかは保留になった。

 

⬧     ⬧     ⬧     ⬧     ⬧

 

部室に戻って部長と話すと、このような内容のアンケートは初めてらしく、悪魔としては失格

だが意外性ナンバー1の悪魔だと言われていた。一誠は次こそは契約を取ると意気込んでいた

のだが……

次の日の深夜、昨日と同じ移動方法で依頼者のもとへと向かう。着いて私達を迎えてくれたのは、

ミルたんと名乗る筋骨隆々でゴスロリ衣装を着込み、語尾に「にょ」を付け、おまけに頭部に

ネコミミを着けているという違和感満載な出で立ちをした漢の娘だった。(※誤字に非ず)

ミルたんの依頼は魔法少女にして欲しいとのこと。ミルたんの体つきから見て魔法なんか無くても

物理的に無双出来そうな気がするのはさておき、魔法少女にして欲しいと音響兵器のように迫力

満点に叫ぶミルたんに何かおぞましく感じて冷や汗を流す私達は、私が愉快型魔術礼装のカレイド

ステッキを投影してそれを渡して急いで戻った。転移の際にミシミシと軋む音がするステッキから

中身はハリボテのはずなのに、人工天然精霊であるルビーの悲鳴が聞こえた気がした。

 

⬧     ⬧     ⬧     ⬧     ⬧

 

「二度と教会に近づいちゃダメよ」

 

契約取りに行った次の日の夜。一誠が悪魔にとって敵地である教会に行ったとかで部長に怒られ、

強く念押しされていた。何でも、この町にある教会のシスターに会い、入り口までだが教会まで

送ってあげたらしい。

 

「教会は悪魔にとって敵地。踏み込めばそれだけで神側と悪魔側の間で問題になっていつ光の槍

が飛んでくるか分からなかったのよ?」

 

一誠は部長から話を聞いて若干顔色を悪くしていた。消滅の危機に瀕していたのだから仕方がない

とは思うが。私は人間のままで良かった。身体は悪魔とかの人外に比べたら貧弱だけど。

と言うかよく考えたら能力投影で境界を操る程度の能力を投影してリスクを覚悟すれば種族変えら

れるのを忘れていた。

 

「ゴメンなさい。熱くなりすぎたわね。とにかく今後は気を付けて頂戴」

 

「はい」

 

一誠と部長の話が終わった所で朱乃さんが部屋の奥から現れた。

 

「あらあら。お説教はすみましたか?」

 

「朱乃、どうしたの?」

 

朱乃さんは部長の問いに顔を曇らせ

 

「討伐の依頼が大公から届きました」

 

朱乃さんから大公からはぐれ悪魔の討伐の依頼が届いたと伝えられた。

 

⬧     ⬧     ⬧     ⬧     ⬧

 

その周囲は背の高い草木が生い茂り、遠目に廃屋となっている建物が見える。

 

「……血の臭い」

 

子猫ちゃんがぼそりと呟き制服の袖で鼻を覆った。

 

「ちょっと待って下さい。解析、開始(トレース・オン)

 

一応廃屋の中の状況把握の為に、進んで行く部長達を止めて地面に手を付き解析を始める。

解析を終わると立ち上がり解析結果を伝える。

 

「あの廃屋にいるのは二体。一体は討伐予定のバイザー、もう一体はバイザーと似た身体構造

から同じはぐれ悪魔だと推測します」

 

「そう。大公に依頼はされていないけれど、被害が出る前に討伐してしまいましょう」

 

「もう一体のはぐれ悪魔は私が相手してもいいですか?」

 

「構わないわ。実力を測るのにも丁度いいし、貴女に任せるわ」

 

そう言って廃屋へと歩きながら一誠に悪魔の駒の特性について説明するそうだが、製作者に会って

駒について聞かせてもらって大体の事は知っているので、説明は聞き流す。

その間にはぐれ悪魔のいる場所についた。

 

「不味そうな臭いがするぞ?でも美味そうな臭いもするぞ?甘いのかな?苦いのかな?」

 

私からすれば何ともないが、一般人や悪魔に転生したばかりの一誠からすれば不気味だと思える声

を発する目の前のはぐれ悪魔。

 

「はぐれ悪魔バイザー。貴女を消滅しにきたわ」

 

すると周囲にケタケタと異様な声が響く。

 

「主のもとを逃げ、己の欲求を満たすためだけに暴れまわるのは万死に値するわ。グレモリー

公爵の名において、貴女を消し飛ばしてあげる!」

 

「こざかしいぃぃぃぃ!この小娘がぁぁぁぁ!その紅の髪のようにお前の鮮血で染め上げて

やるわぁぁぁぁ!」

 

吼えるだけのバイザーを鼻で笑い

 

「雑魚ほど洒落のきいたセリフを吐くものね。祐斗!」

 

「はい!」

 

木場君が部長の命を受けて飛び出す。木場君は総司さんの弟子らしいけどスピードとか技術は

総司さんに及ばないかな。手に持った剣を鞘から抜き、再び加速するとバイザーの両腕を切り

落とした。その場に待機していた子猫ちゃんは腕を切り落とされた事で絶叫するバイザーに踏

み潰されるが、徐々に持ち上げてどかし、バイザーの腹に鋭く拳を打ち込み吹っ飛ばした。

更に朱乃さんが手を掲げ、天から雷を数分間落とし続けててバイザーを全身丸焦げにした。

バイザーにもう戦闘意思がないのに何度も雷を落とし続ける朱乃さんに恐怖を感じたが。

そして部長はグレモリーとバアル特有の消滅の魔力を手のひらから撃ち出しバイザーを消し

飛ばした。その時、奥からバイザーとほぼ同じ身体構造をした異形が姿を現した。

 

「グギャァァァァ!!」

 

理性を失なっているかのように叫び声を上げている。これだったらだったらアレが有効か。

 

「奏、やりなさい」

 

「了解!」

 

足に強化の魔術を掛けて地を蹴り、飛び出す。腕力にものを言わせて拳を振るい、爪などで

攻撃してくるが持ち前の瞬発力で回避する。

 

解析、開始!(トレース・オン)

 

回避の合間に魔術を行使。投影したのは『鏡の国のアリス』で記述された「ジャバウォックの詩」

で登場する怪物ジャバウォックを仕留めたヴォーパルの剣。理性のない怪物に対して有効な概念

武装で目の前のはぐれ悪魔に持って来いな剣だ。再び瞬時に加速して肩口から両腕を切断、腹に剣

を突き刺すと苦悶の声を上げた。

 

投影、開始!(トレース・オン)

 

ヴォーパルの剣を魔力に還し再び投影。投影したのは光の御子クー・フーリンが持つ再生阻害の呪いが掛かった魔槍 刺し穿つ死棘の槍(ゲイボルグ)。そして攻撃を回避しながら真名開放をする。

 

刺し穿つ(ゲイ)―――」

 

槍を構え、魔力を注ぎ込み始める。後ろにいる部長達はその槍に込められたとんでもない量の魔力

に顔をこわばらせている。

 

「―――死棘の槍(ボルグ)!」

 

心臓に槍が命中したという結果を作り上げてから放つという因果の逆転により、避けようとするが

槍が突如軌道を変えて心臓を貫くと、はぐれ悪魔は消滅した。

 

「討伐完了しました」

 

討伐が終わると皆のいる場所まで戻る。

 

「終わりね。皆、ご苦労様」

 

部長の一言で何時もの雰囲気へと戻る。

 

「部長、あの聞きそびれてしまったんですけど」

 

一誠は討伐が始まる前に何か聞こうとしていたようで、部長に再度質問している。

 

「何かしら」

 

「俺の駒……っていうか、下僕としての役割は何ですか?」

 

部長に不安げに自分の駒について聞いている。残る駒は僧侶と兵士だが……

 

「『兵士』よ。イッセーは『兵士』なの」

 

その言葉に一誠は項垂れた。

 

 



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