無知で無名な決闘者 (KE.)
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第1話 これなんて漫画展開?

どうも始めまして。
初登校……じゃなくて、初投稿のKE.(ケイ)です。

遊戯王の二次小説に挑戦してみましたが、書いている私でもよく分かりません。
この後の展開も知りません。(キリッ

下手な文章でも良いのであれば、どうぞご閲覧下さい。

脱字、誤字があればどうぞ気軽に教えてくれれば、と思っております。


では!どうぞ1話を!

 



それは、買い物の帰りで起こった。

 

 

俺の名前は七宮樹。普通の男子高校生だ。

今日は妹の頼みでコンビニに散歩がてら買い物に来ていた。

頼みのガ●リガリ君とコカ・コ●ラと、ついでに懐かしい遊戯王のパックを1つ買い、コンビニを出た。

 

そこまでは良かった。

 

だが、

 

 

ドンッ

 

「…ぇ……?」

 

赤信号をぼーっと見つめていた時、身体に強い衝撃が走った。

グルグルと回る景色。息のしづらさに咳きこむと、赤い血が飛んだ。

 

「(轢かれ……たのか…?)」

 

唯一動かせる目で横を見ると、壁に当たって大破した車がそこにあった。

 

うわ、これなんて漫画展開?と思考する。

思わず笑えば、胸のあたりが痛んだ。

絶対骨折れてるな、これ。

 

「(……いや、その前に死ぬか)」

 

テレビでしか聞いたことのない事故に遭うなんて、自分はどれだけ運が無いんだ…。

溜め息を吐こうとしたが、今度は身体が言う事を聞かなかった。

 

こりゃあ、本格的に駄目だな。

 

「(悪いな。妹よ)」

 

血に濡れた買い物袋を見ながら、俺は静かに目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピピッ、ピピッ、ピピッ……

 

 

「(………?)」

 

ふと意識が戻ると、何かの音が聞こえてきた。

病院の心電図……?

 

俺はそっと目を開けた。すると…

 

「……俺の部屋?」

 

いつもと変わらない、自分の部屋。

俺はベッドに寝ている。

 

「どうなってんだ?」

 

まさか、夢…?

 

だが、その割にはやけにリアルだったような…。

実際に痛みも感じたし。

 

うんうんと唸って、結局は夢で完結した。

別に考えるのが面倒臭かったとかではない。

 

「お兄ちゃん、いつまで寝てるの?」

 

その内、妹がノックも無しに部屋に入ってきた。

年頃の男の部屋に無断で入るとは、お兄ちゃんは関心しないぞ?

 

「あ、おはよう」

「あ、おはよう。……じゃないよ!今日試験でしょ!?」

「………は?」

 

試験、とは一体なんだ。

さっきの出来事を夢と完結した俺に、更なる疑問を増やすな。

 

そのまま妹を凝視していると、呆れたように溜め息を吐かれた。

 

「もう!お兄ちゃん高校生になるんでしょ!?そのテキトーな性格直さなきゃ駄目だよ!」

「おいこら、ちょっと待て」

 

高校生になる?いくらなんでもそれは許さないぞ。

俺は卒業間近の高校3年だぞ?

 

「何?やっと妹に注意されることじゃないって気付いた?」

「いや、それはどうでもいい」

「良くないよ!?妥協しちゃ駄目な所だよ!?兄の威厳が損失だよ!?」

「落ち着け。お前、歳いくつだ」

「14、だけど…」

 

おかしい。妹の音羽と俺の年齢差は1つ。

つまり、今の俺の歳は15ということになる。

音羽がこんな下らない冗談を言うはずが………あるにはあるが、こんな説教染みた場面では言わないはずだ。

 

「(まさか、タイムトラベル…?)」

 

過去に来たってことか?

 

そんな馬鹿な。現実離れもいいとこだ。

しかも、15と言ったら高校の受験がある。

再び高校受験を受けるくらいならいっそのこと家出してやる。

 

「お兄ちゃん、どうしたの?なんか変だよ?」

「ん?あぁ、ちょっと夢を見てな」

「ふーん。よっぽど変な夢だったんだね」

「交通事故の夢だ」

「不吉すぎる!?」

 

いつも通りオーバーリアクションな妹を見て、少しだけ気持ちが落ち着いた。

こいつは成長してもしなくても、性格変わらないな。

 

……まぁ、それは俺もか。

 

「(二回目の人生、とでも思えばいいか)」

 

そんな気軽なことを考えていた俺に、再び妹が言ってきた。

 

「で、でも!デュエルには関係ないから大丈夫だよ!」

「は?デュエル?」

「……お兄ちゃん、今日デュエルアカデミアの試験だよ?」

 

いや、うん。ちょっと待て。

 

俺の脳内キャパがそろそろ容量オーバーになりそう。

そして最後に1つだけ言わせろ。

 

 

「まさかのトリップかよ!!」

 

「…お、お母さーん!お兄ちゃんが壊れたー!!」

 

 

 

 

 




はい、いかがだったでしょうか?

この次は試験の話を書ければいいなー、と思っています。
思ってるだけですけど。

 


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第2話 見える、俺には見えるぞ!

二羽です。……あ、違います。2話です。
前書きで2話を変換したら何故か二羽になったという下らない話で文章を増やそうとしているKE.です。
書くことないなら書くなよ、とかそういう殺生なことは言わないで下さい。
私の防弾ガラスハートがブロークンします。

では、どうぞご覧あれ!


タイムトラベルかと思ったらまさかのトリップ付きという摩訶不思議体験中の俺。

あの後、何とか妹から壊れた発言を撤回して頂き、色々と聞いた。

 

うん。デュエルとか試験とか言ってる時点でも若干予想していたが、どうやらここは遊戯王GXの時代に当たるらしい。

もしかして、死ぬ前にコンビニで冗談半分に買った遊戯王のパックのせいだろうか。

答えの出ないことを考えても仕方は無いが、そう思わずにはいられない。

 

それはさておき、ここが遊戯王の世界だとしたら俺にとって死活問題だ。

この際だからハッキリ言うが、俺は遊戯王を殆ど知らない。

シンクロはぎりぎり、脳味噌をフル活動して絞りに絞った雑巾並に頑張れば大丈夫レベル。

エクシーズは論外。俺にとっては宇宙規模。

勿論シンクロもエクシーズもこの時代には全く関係ない

簡潔に言えば、それが分からないくらい危険ってこと。

 

つーか、現代の制限とか禁止カードとか分からない時点で終わってる。

こんな知識で何故デュエルアカデミアを受験しようと思ったんだ、俺。

……あぁ、この世界がデュエル中心で回ってる世界だからか。←

 

「そういえば、未来の警察はセキュリティに詰めデュエルを使ってたな…」

 

どこか遠い目になる俺。

まぁそれは一度置いて、現状はかなり厳しい。

幸い、筆記の方は俺じゃない俺がやっていたようなので問題は実技。

モンスターカードを全く知らない俺がデッキ構築なんて出来るハズもなく、再び俺じゃない俺にお世話になった。

つまりデッキをそのまま拝借した。

別に良いよね。元を正せば俺のモノだし!

 

と、言い訳がましいことを思いながらも海馬ランドの実技試験会場に到着。

流石は海馬コーポレーション主催。広い。広すぎてちょっと迷ったので黒服の人に案内してもらった。

恥?そんなモノより緊張で頭が真っ白。

頑張れ俺、深呼吸だ。

 

「(ヒッヒッフー、ヒッヒッフー)」

 

って、これラマーズ法じゃん!俺は妊婦さんじゃない!

 

………1人ノリツッコミ、なんか悲しいな。

別に漫才やるつもりじゃなかったから良いけど。

 

近くの椅子に腰かけ、中央で行われているデュエルを観戦する。

皆、よく伏せたカードを覚えていられるよね。

現代でデュエルやってる人でも何度も確認するのに。

 

《受験番号5番 七宮樹君。続いて受験番号4番……》

 

へぇ、5番か。

 

…………ん?

 

「5番!?」

 

俺じゃない俺って、そんなに成績良かったのか!?

ハッ!いや、待てよ?俺じゃなくて同姓同名の誰かとか…。

そのまま疑心暗鬼で少しだけ待ってみると、もう一度放送で呼ばれた。

若干声がイラついていたのは気のせいだろう。

俺はそそくさと下の広場に向かった。

 

「何故呼ばれてすぐに来なかったのかね?」

「すみません。(番号の)聞き間違いかと」

「今度からは気を付けなさい」

「はい」

 

完全に俺が悪いので素直に平謝りした。

相手も広い大人の心で許してくれた……ら良いと思う。

 

「では、これより実技試験を行う」

 

試験官がデュエルディスクを構えるのを見て、俺も自分のディスクを構えた。

 

「「デュエル!」」

 

七宮樹 LP4000

試験官 LP4000

 

どうやら、先攻は俺の様だ。

カードをドローし、手札を見る。

 

《神の宣告》

《血の代償》

《聖なるバリア‐ミラーフォース‐》

《リビングデッドの呼び声》

《二重召喚》

《六武衆の侍従》

 

み、見事に事故ってる!?

心の中でまだこの世界がアニメだと甘く捉えていた。

だが、その幻想は修復不可能なまでに粉砕された。

こういう大事な場面で普通事故るか!?

 

「…モンスターを裏守備表示でセット、カードを4枚伏せてターンエンド」

「何!?」

 

カードを4枚伏せられたら驚かれた。何故だ。

 

って、しまった!ノリでカード伏せたわ良いけど分からなくなった!!

失敗したと思って合計5枚の裏表示のカード達を見る。

 

「(………あれ?)」

 

不思議なことに、カードが透けて見える。

なんだこれ、トリップ特典?

 

「私のターン、ドロー!手札から《ブラッド・ヴォルス》を召喚!」

 

《ブラッド・ヴォルス》ATK1900/DEF1200

 

いきなり攻撃力1900かよ。

召喚を無効にして破壊できるカードがあるにはあるが…。

でもなぁ、なんか勿体無い気がする。

 

「《ブラッド・ヴォルス》でモンスターに攻撃!」

 

あ、迷ってる内にモンスターが攻撃された。

攻撃されたのは《六武衆の侍従》だ。

 

《六武衆の侍従》ATK200/DEF2000

 

試験官 LP4000→3900

 

「カードを1枚伏せ、ターンエンド」

「俺のターン、ドロー」

 

自分自身のデッキじゃない上に削られたライフも100程度だからか、相手は表情を変えない。

攻撃力1900のモンスターをあっさりと出せることから、パワー中心のデッキかも知れない。

あくまでも予想だけど。

 

「《強欲な壺》を発動」

 

ドローしたカードを発動し、新たにデッキからカードを2枚手札に加える。

来たのは魔法カードの《増援》と《大将軍 紫炎》というモンスターカード。

えーと、紫炎のレベルは7だから………だ、出せねぇ。

 

「(うぅ、なんでこんな場面で重量モンスターが来て下さりやがるんですか……、…ん?)」

 

思わず絶望しかける俺だが、モンスター効果を見て希望の光が浮かび上がる。

これならいける!多分!

 

「魔法カード《増援》を発動し、デッキからレベル4以下の戦士族モンスター1体を手札に加える。《六武衆‐ヤイチ》を加え、召喚!」

 

《六武衆‐ヤイチ》ATK1300/DEF800

 

金色の線が入った黒い鎧に身に纏い、大きな弓を持った武人がフィールドに現れた。

ヤイチは持っている弓を構えると、試験管の場にある伏せカードに狙いをつけた。

一体何をしてる………あぁ、ヤイチの効果か。

 

「ヤイチの効果発動。自分フィールド上に《六武衆‐ヤイチ》以外の《六武衆》と名のついたモンスターが存在する場合、1ターンに1度、フィールド上にセットされた魔法・罠カード1枚を選択して破壊できる」

「く…っ」

 

俺の説明が終わると、それを待っていたかのようにヤイチは力強く矢を放つ。

鋭く飛んで行った矢は試験官の伏せカードに当たり、破壊………って、《聖なるバリア‐ミラーフォース‐》かよ!

人のこと言えないけど、なんてもの伏せてやがる。ヤイチには感謝だな。

 

「ミラーフォースは破壊されたが、そのモンスターでは《ブラッド・ヴォルス》を倒すことは出来ない」

「分かっています。俺は手札より《大将軍 紫炎》を特殊召喚!」

「!!」

 

赤い鎧に、刀を持った将軍がフィールド上に現れる。

ソリットビジョンのはずなのにすごい威厳オーラが……。

こっちが若干気後れしていると、ヤイチが紫炎に向かって頭を下げていた。

 

……ソリットビジョン、だよな?

 

「紫炎は自分フィールド上に《六武衆》と名のついたモンスターが2体以上存在する場合、手札から特殊召喚することが出来ます。紫炎で《ブラッド・ヴォルス》に攻撃!」

「ッ!」

 

試験官 LP3900→3300

 

《ブラッド・ヴォルス》は紫炎の攻撃によって真っ二つにされた。

断末魔の叫びにはどこか鬼気迫るものがあった。……恐ッ。

 

「ヤイチは効果を使用したターン、攻撃することは出来ません。ターンエンドです」

「私のターン、魔法カード《死者蘇生》を発動!墓地の《ブラッド・ヴォルス》を生き返らせる!」

 

試験官の場に、再び《ブラッド・ヴォルス》が召喚された。

紫炎がいるおかげか、さっきまでの危機感は無い。

 

「さらに魔法カードを「紫炎の効果発動。このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手は1ターンに1度しか魔法・罠カードを発動できない」……何!?」

 

発動しようとしていた魔法カードを手札に戻した試験官は、別のカードに手を掛けた。

 

「ならば私は《ブラッド・ヴォルス》を生贄に捧げ、《ジャッジ・マン》を召喚する!」

 

棍棒を持った大男が現れ、こちらを睨みつける。

まるで俺達を見定めているかのようだ。

 

「《ジャッジ・マン》で《六武衆‐ヤイチ》に攻撃!」

「罠カード《聖なるバリア‐ミラーフォース‐》!」

「やはり伏せてあったか…」

 

自分も伏せていたので予想はしていたのか、苦々しい口調で言い放つ試験官。

魔法も罠も使えない状態ではなす術もなく《ジャッジ・マン》は破壊された。

 

「カードを1枚伏せ、ターンエンドだ」

「俺のターン、ヤイチと紫炎でダイレクトアタック!」

「罠カード《攻撃の無力化》!これにより、私の戦闘ダメージは0になる!」

「カウンター罠《神の宣告》を発動します。ライフを半分支払い、《攻撃の無力化》を無効にして破壊する!」

 

七宮 樹 LP4000→2000

 

《攻撃の無力化》によって足を止めていた紫炎が居合抜きとばかりに試験官に斬りかかり、ヤイチがその後ろで矢を放つ。

見事な連携プレーだ。

 

「ぐああぁぁ!!」

 

試験官 LP3300→0

 

相手のライフが0になったことでソリットビジョンが消える。

 

「(ふぅ、なんとか勝てたな…)」

 

喜びよりも疲れが先に立つ。

早く家に帰って休みたい。

 

「おめでとう。キミの勝ちだ」

「ありがとうございます」

 

ペコリと頭を下げ、素早く広場から去る。

会場を出る途中、黒い制服を着た少年とすれ違った。

なんかどっかで見たことのあるような……。

 

「ま、気の所為か」

 

取り敢えず、今日わかったことは俺じゃない俺が妙に頭の良かったこと。

そして、自分の伏せたカードが透視できたことだ。

相手のはどんなに目を凝らしても見えなかった。

 

試験デュエルにも勝ったし、幸先が良い………と思いたい。

 

 

 




終わったー!書き終えたぜ!ヒャッホー!

なーんて、生憎そんなテンションではございません。
べ、別に嬉しくて保存し忘れて二度目の投稿という面倒臭いことなんてしてないんだからね!
勘違いしないで…ッ!

………すいません、嘘です。誰か慰めて下さい。
小説は深夜に書くものじゃありませんね…。(遠い目)


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第3話 到着!デュエルアカデミア!

今回は何も書くことがありません。
とか言いながら平然とした顔で書いているKE.です。

知ってるか?海の妖精クリオネって………共食い、するんだぜ…。
人生で31位ぐらいの衝撃だったぜ…。
美味しいのだろうか?(ジュルリ


手札事故を起こしながらも何とか不屈の闘志で自分を支え、絶望と言う谷底から僅かな希望の光を命の炎を燃やしながら掴み取り、実技試験を見事勝ち抜いた俺。

半分ほど嘘が含まれているような気がしないでもないが、あながち間違ってはいない。

そんな誰に話しているのか分からない説明をしながら、俺は窓から外を見た。

 

「…海だ」

 

誰にも聞こえないほどの小さな声でそう呟き、海に浮かぶ孤島を見る。

いや、正確にはその孤島に建てられたデュエルアカデミアを、だが。

 

俺は現在、ヘリに乗っている。

狭き門と言われているデュエルアカデミアの受験に合格したからだ。

寮はまだ発表されておらず、制服もアカデミアで渡されるらしい。

高等部からの入学はラー・イエローかオシリス・レッドのどちらか。

オベリスク・ブルーは中等部からの生え抜きのエリートで構成されている……だったか?

よく覚えていないが、そんな感じだろう。

 

一応筆記の方は俺じゃない俺が5番という好成績を残しているので、流石にレッドに配属ということは無い……と思う。

デュエルでの点数が低くなければ、の話だが。

 

というか、ラーとかオシリスとかオベリスクとか、安易に名前を出して良いのだろうか?

詳しくは知らんが、確か前作の遊戯王では三幻神とか言われてたよな?

こっちでは案外知られているのか?安っぽい神だな。

 

《当機はデュエルアカデミアに到着致します。お忘れ物の無い様、ご注意下さい》

 

デュエルアカデミアの陸地部分に入ると、機内からアナウンスが流れた。

それまで騒いでいた学生達もその放送を聞き、持ってきた荷物やデッキの確認をしていた。

俺もそれに習い、荷物やデッキを確認する。

特にデッキの確認は俺にとって重大だ。

1枚でも紛失していたら本気でヤバい。

何しろデッキの構築すら出来ないし。

 

ちゃんと40枚全てがあることを確認し、デッキホルダーに仕舞う。

そしてタイミング良く、俺たちが乗って来たヘリもアカデミアへと着陸した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わって、俺たち新入生は新たな制服に身を包んで現代の体育館的な場所に集められた。

予想していた通り、俺は無事にラー・イエローへ入学。

 

いやぁ、良かった良かった。

オシリス・レッドの飯は酷いって噂があったからな。

健全な男子高校生にとってそれ以上の拷問は無い。

 

《ようこそ、デュエルエリートの諸君》

 

寮についてホッと安堵の息を吐いていると、目の前にある画面に校長らしき人物が映った。

 

《諸君は狭き門を実力で開いてやって来てくれました。未来のデュエルキングを目指して、楽しく勉強して下さい》

 

校長先生は人の良い笑みを浮かべてそう言うと、画面から消えた。

基本的に校長先生=話が長いという方程式が頭の中にある俺にとって、この短い挨拶は最高だ。

後は自由解散だと言わんばかりにオベリスク・ブルーの生徒が退場していくので、他の生徒達もぞろぞろと体育館(仮)を出て行く。

俺も人に流されて出て行くが、その最中に寝ている生徒を発見した。

おいおい、あの短い挨拶でよく寝れたな。逆に関心するわ。

 

「えーっと、ラー・イエローの寮は…」

 

解散後は入学時に配られた無駄に超高性能なPDAで寮を確認。

メールや電話、授業の連絡、島の地図など、まだまだ多彩な機能が盛り沢山。

カードの種類やそれに対するサポートカードなどの説明も細かく書かれているWiki的なサイトもあるので、大助かりだ。

今日は歓迎会があるから仕方無いとして、明日以降から少しずつ勉強していこう。

絶対授業の必須科目だろうし、俺じゃない俺の顔に泥を塗りたくないからな。

 

「ラー・イエローの寮なら向こうだ」

「そうか、ありがとう。………………ん?」

 

つい自然に返事をしてしまったが、今のは誰だ。

声がした方向に振り向くと、そこには俺と同じラー・イエローの制服を着た……えーと…

 

「誰だ?」

「三沢大地だ。5番君」

「5番?………あぁ、俺か」

 

未だに5番という成績に聞きなれない俺は、うっかり忘れていた。

どうせその内名前で呼ばれると思うし、問題は無いだろう。

第一、 その称号(?)は俺じゃない俺が取ったものだ。

俺自身の実力では無い。

 

「俺は七宮樹。番号で呼ばれるのはお断りだ」

「それは済まなかったな」

 

俺が本気で怒っていないことを踏まえた上で、彼は軽く謝って来た。

精神年齢では俺の方が上なのに、勝てる気がしない。

……妹に説教を食らってる時点で勝てるはずもないが。

 

「同じラー・イエロー同士、仲良くしよう」

「あぁ、こっちこそよろしく」

 

島についてから初めての友達GETだ。

これで高校生活の問題の1つだった“ぼっち”は解決されたな。

アカデミアは中等部からの入学もあるから、友達のグループも決まっているようなものだ。

デュエルすれば友達の輪も広がる!という価値観がこっちの世界ではあるようだが、今のところ積極的にデュエルする予定も無いし。

 

「キミには1番君と同じく期待しているんだ」

「?」

 

ぼっち問題の解消について思考していたら、なにやら不穏な発言が三沢から聞こえてきた。

え、今コイツ俺に期待してるって言った?

 

「……期待されるのは好きじゃない」

「そうなのか?1番君はむしろ喜んでいたが」

「1番って、まさか遊城……………か?」

 

名前が思い出せなかったため、不自然に長い間が空いてしまった。

だが、三沢はそんな俺の様子に突っ込む訳でもなく、会話を続けた。

 

「そうだ。七宮も1番君とクロノス先生とのデュエルを見ていたのか?」

「いや、残念ながら見ていない。実技試験が終わった後はすぐに帰ったからな」

「それは惜しいことをしたな…。折角伝説のレアカードを見られるチャンスだったのに」

 

それって、クロノス先生の《古代の機械巨人》のことだろうか?

遊戯王について殆ど知らないのと、現代の微妙な知識のせいで残念に思うことはない。

が、ここは話の流れに合わせておこう。

 

「これからアカデミアに通うんだ。機会があれば見られるさ」

「それもそうだな」

 

丁度話の区切りもついた所で、ラー・イエローの寮に到着した。

オベリスク・ブルー程ではないが、中々に豪華な内装だ。

部屋も1人1部屋の個室のようだ。

今はまだ部屋の大きさに慣れそうにないが、その内大丈夫になるだろう。

 

「それじゃ、僕はここで」

「あぁ」

 

お互い、自分に割り当てられている個室に行くため寮の前で別れた。

どうせ歓迎会の時にも会えるしな。

 

 

 

 




まだまだ主人公(遊城十代)は出しません!
ぶっちゃけ、タイミングを間違えました。
きっとなんとかなるだろう精神で頑張ります。


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第4話 ある日♪森の中♪怪しい人に、出会った♪

皆様に微妙な豆知識をお届けする超☆天才的すーぱーみらくるごーるでん(中略)えきせんとりっく未来予知者ことKE.です。嘘です。
「紅葉」はその昔「黄葉」と書かれていたらしい…。
(この話とは全く関係はございません)


予想以上に豪華だった歓迎会を楽しんだ次の日、本格的にアカデミアでの授業が始まった。

ちなみに、歓迎会の食事にカレーが大量に出たのは言うまでもない。

 

「デュエルモンスターズのカードは、大きく別けてモンスター、魔法カード、罠カードの三つに分けられます。

 モンスターは通常モンスター、効果モンスター、融合モンスター、儀式モンスター。

 魔法は通常魔法、速攻魔法、永続魔法、装備魔法、儀式魔法、フィールド魔法に分けられ、罠は通常、永続、カウンターに分けられます」

「Very good!非常に宜シーノ。オベリスク・ブルーのシニョール明日香には優しすぎる問題でしターネ」

「基本ですから」

 

さらりとそう言って席に着く天上院明日香。

ま、まずい。答えられない……。

 

「(基本って……デュエルの基本って何だ!?)」

 

問題はまずそこからである。

天上院が一番最初に言ったセリフなら大丈夫だ。

だが、その次の通常モンスター云々から分からない。

なんでそんなにスラスラ言えるんだ。基本だからか。

 

クロノス先生に当てられないようにノートを取るフリをして視線を逸らす。

そのおかげか、次の問題はオシリス・レッドの生徒に当てられた。

フィールド魔法についての質問らしい。

 

「それで~は、シニョール丸藤。フィールド魔法についての説明をするノーネ」

「え、えっと……その…えっと……」

 

当てられた丸藤は口籠ってばかりで何も言おうとはしない。

正確には言おうとはしているのだが、言葉が出てこないらしい。

………上がり症なのか?

 

その内、オベリスク・ブルーの男子生徒が

 

「今時小学生でも答えられるぞ。流石オシリスレッドだな」

 

と、馬鹿にしたような口調で嘲笑った。

それに釣られ、周りのブルー男子も笑いだす。

思わず不快な顔をしてしまったが、他人事ではないのですぐに直した。

頑張って勉強しよう。うん。

 

その後はクロノス先生もオベリスク・ブルーの男子生徒と共にオシリス・レッドを馬鹿にするも、遊城の「知識と実戦は関係無い」的な発言に悔しそうにハンカチを齧った。

……それをナマでやる人、初めて見たわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クロノス先生の授業の後は、大徳寺先生の錬金術、鮎川先生の保健・体育の授業だ。

そのどちらもデュエルとはあまり関係ないため、特に問題は起きなかった。

個人的には錬金術の授業が面白かったな。

普通の高校じゃやらない科目だし。

鋼の錬●術師とか思い出すわ。

 

放課後はそのまま自分の寮へと戻った。

部活に入るつもりもないし、勉強がてらデッキの確認でもしておこう。

 

「えーと、俺のデッキは………六武衆ってのが多いな」

 

1枚1枚カードの効果を見ていくと、六武衆を中心に展開していくデッキらしい。

何故か知らないが、サポートには紫炎って名前のカードが多い。

六武衆と何の関係があるのだろうか?

 

「《紫炎の霞城》は……フィールド魔法か」

 

そういえば、クロノス先生の授業でもフィールド魔法のことについて聞かれていたな…。

俺はPDAを取り出し、フィールド魔法の効果を調べた。

 

「フィールド魔法は、魔法・罠ゾーンじゃなく、フィールドカードゾーンと呼ばれる特別な場所に置くカードで、効果がお互いのプレイヤーにも及ぶカード。

 攻守が変動したり、カウンターを乗せたりするカードもある。

 さらに、フィールド魔法は表側表示で1つしか存在出来ない。自分のフィールド魔法が存在している時に相手がフィールド魔法を発動させた場合、自分のフィールド魔法は破壊される…」

 

うん。ハッキリ言ってもいいか?

 

長ぇよ!説明だけでどんだけ書いてるんだ!?

ちょっとデュエルモンスターズの基本とか常識とか舐めまくってたわ。

勉強する気力が砂のように飛ばされて行く…。

 

「………散歩にでも行ってくるか」

 

外は暗いが、ちょっと散歩するくらいなら大丈夫だろう。

生徒手帳に記載されていた規則時間内に帰ってくれば良いだけの話だ。

 

そうと決まれば行動は早い。

床に並べていたカードを傷がつかないように拾い上げ、デッキホルダーに仕舞う。

迷ったら嫌なので、PDAも一緒に持って行こう。

 

「遠くには行けないし、寮が見える範囲で散歩するか」

 

それなら多少道に迷っても寮を目印にして戻って来られるハズだ。

時間が迫っても、走れば間に合うだろう。…多分。

 

気分転換の散歩なのでそんなに難しいことは考えず、俺は気楽に寮を出た。

 

 

 

その数分後、俺は自分自身を責めた。

 

 

 

何故、散歩なんかに来てしまったのかと。

大人しく自室で勉強に励んでいれば良かったのだ。

そうすれば、俺は…俺は……ッ!

 

「な、なななな何故ここにシニョール七宮がいるノーネ!?」

 

全身黒タイツみたいなスウェットスーツを来た怪しげな姿のクロノス先生に遭わずに済んだのに…!!

正直気持ち悪くて直視出来ない。視界の暴力だ!!

確かに鬱な気持ちは吹き飛んだが、こんなマイナスな気分転換なんて嫌だ。

 

「シニョール七宮、ここで私と「俺、何も見てませんから」…そ、そうなノーネ!シニョール七宮は何も見てないーの!」

「えぇ、何も見ていませんとも。……ふふふっ」

「こ、恐いノーネ…」

「さようなら、怪しい人Kさん」

「私は怪しくなんてないノーネ!!」

 

俺は律義にも怪しい人Kさんに別れを告げ、踵を返した。

後ろで何か弁解的なことを言ってたような気がしたが、きっと気のせいだろう。

気のせいに違いない。気のせいしか認めない。

 

ふらふらと夢遊病患者のように森を彷徨っていた俺は、いつの間にか自室のベッドの上にいた。

俺は夢を見ていたんだ。そう思う事にしよう。

 

 

 

 




ち!な!み!に!
この話は丸藤翔が偽のラブレターを掴まされ(笑)、覗き事件へと発展した所です。

フハハハハ!この私がそう簡単に主人公と絡ませると思ったか!甘いわ!!
諸君らは精々いつ出て来るのかと頭を悩ませているがいい!!
アーハッハッハッハ!!


………ふぅ、疲れた。


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第5話 人助けは大事

えー、皆様に大変重要な報告がございます。
なんと!やっと遊城十代を登場させることに成功しました!
あぁ…っ!懐かしき夏の日々。蘇る死屍累々の紙の屑。
そして揺れる、甘酸っぱい若者たちの青春…。

なんて思い出は1つも無く、いつも通りコンビニのスナック菓子と桃のジュースを片手にパソコンに打ち込んでいるKE.です。


クロノス先生………じゃなくて、怪しい人Kさん事件から数日。

あれは夢だと思うことで心の平穏を取り戻した俺だったが、現在、自室の床に打ちひしがれていた。

なんと今日は月一のテストだったのだ。

入学してから何日も経ってないのにテストかよ…。と思ったが、それは置いて行く。

 

理由はただ1つ。

 

「寝坊したー!!」

 

誰もいないラー・イエローの寮に俺の声が反響する。

そう、理由は寝坊だ。

 

ここ最近、徹夜で勉強していたツケがここで回った。

なんてタイミングが悪いんだ…。

あまりの情けなさに泣きそうだ。泣かないけど。

 

取り敢えず、急げば間に合うかもしれない。

俺は必要な物をテキトーにバッグに詰め、寮を出た。

 

「ん?」

 

アカデミアに向かう途中、前方に車が見えた。

エンストしたのかは分からないが、その車を2人で押している。

1人はその車の持ち主であろうおばさん。もう1人は、オシリス・レッドの生徒だ。

………もしかして、遊城か?

 

「うわ…っ!」

「!」

 

車が後退してバランスを崩した遊城。

俺をその様子を見て、思わず駆け出した。

 

「っ、」

 

後ろに下がる車を半ば体当たりするような形で止め、遊城が車の下敷きにならないように踏ん張る。

これでも身長は高い方だし(171cm)、力も結構ある。

 

俺を見上げている遊城に目で「早く立て」と訴いかけると、ハッとしたように立ち上がった。

 

「サンキューな!えーっと…」

「七宮樹だ」

「俺は遊城十代!よろしくな!」

「挨拶は後だ。それより、早く押せ」

「おう!」

 

遊城と並び、車を後ろから押す。

ここ、坂道だから結構厳しいな…。

 

「1、 2の3で行くぞ」

「よっしゃ!1!」

「2の…」

「「3!」」

 

ズズッと地面を擦る音が聞こえた。

1度前に動けばコチラのモノで、そのまま勢いだけで坂を登り切った。

思った以上に疲れたな…。

 

「ってヤバい!樹、行くぞ!」

「ん、あぁ」

 

時間を確認した遊城の後を追う。

間に合うか微妙だったが、何とか教室には着いた。

中を覗くと、まだ筆記試験の真っ最中だった。

遊城は早々に丸藤の所に向かったが、俺は大徳寺先生に行き、遅刻を謝ってからテストを貰った。

残り時間は後10分程度。

実技のテストでさえ厳しい俺には、この点数を落とす訳にはいかない。

ざっと問題を見通し、解答は埋めれるだけ埋めた。

 

「(こんなモンか?)」

 

寝坊したのは失敗だが、徹夜のお陰で空欄は殆ど無い。

マジ勉強しといて良かった…。

 

「これで筆記テストは終了~。なお、実技テストは午後2時から体育館で行いまーす」

 

俺が静かに安堵の息を吐くのと、筆記テストの終了が告げられたのはほぼ同時だった。

そしてその瞬間、9割方の生徒が一斉に教室から走り去って行った。

一体どうしたんだ?

 

「おーい!樹!」

「?」

 

名前が呼ばれたので振り向くと、ブンブンと手を振る遊城がいる。

そんなことしなくても、誰もいないから十分見えてるが…。

 

「新しいパックが入荷したから、一緒に見に行こうぜ!」

「いや、俺は別に…」

「行くぜ、翔!」

「あ、待ってよアニキー!」

 

俺の返事も聞かず、バタバタと教室から出て行く遊城と丸藤。

これは…あれか、拒否権なしってヤツか。

思わず遊城たちの近くにいた三沢を見れば、首を横に振られた。

 

「(諦めろ、ってことですね。分かります)」

 

溜め息を1つ吐き、俺も遊城の後を追うように教室を出た。

先に入って行った遊城たちは、何故か購買の前で立ち止まっていた。

 

「どうしたんだ?」

「それが、生徒の1人が大量にパックを買っていったらしくて…」

「成る程。売り切れてる訳か」

 

それにしても、1人で大量に買う奴なんて本当にいるんだな。

心当たりは………いかん。何故かクロノス先生の顔が出てきた。

折角忘れてたのに…。

 

「えっと…樹くんはどうするんスか?」

「何が?」

「パックだよ。一応、1つだけなら余ってるらしいけど…」

「元々買うつもりはない。遊城に言われて来ただけだ」

 

その張本人を見ると「ハハハッ」と笑って流された。

憎めない奴だな。

 

遊城も最後のパックは翔に譲るということで話が纏まった時、カウンターの奥から車のおばちゃんが出てきた。

 

「今朝のおばちゃん!」

「おばちゃんじゃないわよ。トメって呼んで」

「トメさんって購買部のおばちゃんだったのか」

「知り合いなの?アニキ」

「あぁ、ちょっと訳ありでな」

 

笑顔を浮かべただけで、遅刻の言い訳をしない遊城に好感度が上がった。

……まぁ、テストも途中から寝てたから本当に遅刻を気にしていないだけかもしれないが。

 

「それより、こっちに来なさいよ」

「「え?」」

「良い物あるのよ?お客さん」

 

トメさんにそう言われ、カウンターの中に入る俺たち。

商品置き場のような所に連れて行かれると、デュエルモンスターズのパックを渡された。

 

「…何で俺も?」

 

遊城ならまだ分かるが…。

 

渡されたパックを片手に、困惑した顔を浮かべる。

すると、トメさんが

 

「何言ってんだい!アンタも助けてくれただろう?」

「……ありがとうございます」

 

アレは成り行きと言うか、偶然の産物と言うか…。

だが、こんな雰囲気の中でそんなことは言えないので口を閉ざす。

人間には言わなくて良いことがあるんだよ。多分。

 

ちなみに、俺とトメさんがこんな会話をしている最中、遊城は隣で「お、《進化する翼》か!」と1人喜んでいる。

俺も大概アレだと思うが、お前は空気を読め。

 

 

 

 




やっと(主人公を)出せたー!
意外と長かったぜ、畜生!

何かご不明な点が御座いましたら、気軽に感想プリーズです。
記憶の彼方に留めておくかもしれません。
え?上から目線で偉そう?

マジでwちょっwごめっww

はい、冗談です。
真面目にごめんなさい(土下座)


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第6話 月一、実技テスト!

最近、なんだかキャラが定まらないことに悩みを持ってるKE.です。

今回は私の愚かしいほどに下手な文才能力を掻き集め、デュエルの描写を書かせて頂きました。
ルール上で「これはありえない!」と思うことが御座いましたら、どうぞご連絡下さい。

さぁ!今日も張り切って行っちゃうぞ?皆、準備は良いかなー!


現在時刻は午後2時。

1年の生徒は実技テストで体育館へと集まっていた。

まだテストを受けない生徒はステージの上に登り、他人のデュエルを見たりデッキの調整を行ったりしている。

俺はデッキを弄れないので観戦組だ。

 

「樹はトメさんから貰ったパック開けないのか?」

「テストが終わったら開ける」

「余裕だね、樹くん」

 

恨めしそうに俺を見上げてくる翔に、思わず身が引けた。

俺の場合、余裕とかそういう理由じゃないのだが…。

むしろ口から心臓が飛び出しそうなぐらい緊張している。

ドクドクと音を立てる心臓を抑えるのに必死だ。

 

「なぁ樹」

「ん?」

「名前、呼ばれたぜ?」

「そうか…。いってくる」

「頑張れよ!」

「あぁ」

 

遊城に自分の名前が呼ばれたと言われ、下のフィールドに足を運ぶ。

相手はすでにフィールドで俺を待っていた。

 

「七宮樹だ。よろしく」

「…大原進」

 

身体は大きいのに、どこか気弱そうなラー・イエローの生徒。

……いや、俺も人のことは言えないけどさ。二重の意味で。

 

ゆっくりとデュエルディスクを構えると、相手も同じくディスクを構えた。

 

「「デュエル」」

 

七宮樹 LP4000

大原進 LP4000

 

どうやら、先攻は俺らしい。

静かに息を吐き、デッキに指をかけた。

 

「俺の先攻、ドロー」

 

えーと、手札は……

 

《六武衆の結束》

《サイクロン》

《諸刃の活人剣術》

《聖なるバリア‐ミラーフォース‐》

《リビングデッドの呼び声》

《六武衆‐カモン》

 

ま た か よ ! 

 

入学の時の実技試験と同じような手札に、脳内でツッコミを入れる。

このデッキ、手札事故率高くねぇか!?

しかも今引いたカードが《六武衆‐カモン》だから、実質的に最初からモンスターがいなかったってことだよな!?

 

俺のデュエリストとしての腕が未熟だとか、そういうのは関係ない……よな?

 

「(まぁ、悩んでも勝てる訳じゃないし…)手札から魔法カード《六武衆の結束》を発動。そして《六武衆‐カモン》を召喚」

 

《六武衆‐カモン》ATK1500/DEF1000

 

全身にダイナマイトのような物をつけ、煙管をふかせた武人が俺のフィールドに現れる。

 

「《六武衆の結束》の効果発動。このカードは《六武衆》と名のついたモンスターが召喚・特殊召喚されるたびに、このカードに武士道カウンターを1個乗せる。カモンを召喚したので、武士道カウンターが1つ乗る。カードを2枚セットし、ターンエンドだ」

「俺のターン。《巨大ネズミ》を守備表示で召喚する。カードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

《巨大ネズミ》ATK1400/DEF1450

 

えーと、《巨大ネズミ》は確かリクルーターモンスターだったな…。

それに対する対抗策は俺の手札には無い。

あっても思いつかないので却下。

いくら考えても俺の頭じゃ無理だ。

 

「俺のターン、カモンで《巨大ネズミ》を攻撃」

「罠発動!《炸裂装甲》!攻撃モンスター1体を破壊する!」

「……《紫炎の足軽》を守備表示で召喚。ターンエンドだ」

 

カモンが破壊されたのは地味に痛い。

今のは罠カードに無警戒だった俺が悪いな…。

つか、手札の《サイクロン》で破壊すれば良かった。

くっそぉ、プレイミングミスした。

 

「手札から魔法カード《大寒波》を発動。次の俺のドローフェイズまで、お互いに魔法・罠カードの効果の使用および発動・セットは出来ない。

 俺は《巨大ネズミ》を攻撃表示に変更し、《紫炎の足軽》に攻撃!」

 

ネズミと猿の戦いはネズミが勝利をおさめた。

だが、破壊された猿はやり残したことがあるのか、幽霊になって俺のフィールドをフラフラと徘徊し出した。

…なんだろう、ちょっと可愛い。

 

「《紫炎の足軽》の効果発動。戦闘によって破壊され墓地に送られた時、デッキから《六武衆》と名のつくレベル3以下のモンスター1体を特殊召喚することが出来る。

 デッキから再び《六武衆‐カモン》を召喚!」

 

俺の不注意のせいで罠カードの餌食となったカモンが俺のフィールドに現れる。

《大寒波》の影響で《六武衆の結束》が発動出来ないのは痛いが、仕方がない。

大原がターンエンドを告げるのを聞くと、俺はデッキからカードをドローする。

 

「カモンで《巨大ネズミ》を攻撃」

「くっ」

 

大原進 LP4000→3900

 

カモンは持っていた煙管でダイナマイト(?)に火を付け、《巨大ネズミ》へと投げる。

大原のフィールド上に爆発で起きた黒い煙が舞い、カードが破壊された音を聞いた。

 

「《巨大ネズミ》の効果発動!自分のデッキから攻撃力1500以下の地属性モンスター1体を自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚することが出来る!《巨大ネズミ》を召喚する!」

 

なにやら俺と同じデジャブ感があるが、そういうモンスターなのだから仕方ない。

魔法も罠もセット出来ないので、そのままターンエンドを告げた。

 

「………《巨大ネズミ》を守備表示に変更し、ターンエンドだ」

 

特に手がなかったのか、大原は守備変更をしただけ。

一応リクルーターモンスターだからそれだけでも問題はない……のか?

 

「俺のターン、ドロー」

 

引いたのは《六武衆‐ニサシ》だ。

その効果を見て「へぇ」と心の中で感心した。

便利な効果だな。

 

「俺は《六武衆‐ニサシ》を召喚」

 

《六武衆‐ニサシ》ATK1400/DEF700

 

「そして《六武衆の結束》の効果を発動。乗っている武士道カウンターの数だけ、デッキからカードをドロー出来る。2つ乗っているので、2枚ドロー」

 

来たのは《六武衆‐ヤイチ》と《大将軍 紫炎》。

おぉ、丁度良く来てくれたな。

 

「自分の場に《六武衆》と名のつくモンスターが2体いる時、手札からこのカードを特殊召喚出来る。《大将軍 紫炎》を特殊召喚!」

 

《大将軍 紫炎》ATK2500/DEF2400

 

圧倒的なまでの威圧感。

そしてやはりというか、カモンとニサシが頭を下げた。

だからお前等、ソリットビジョンだよな?

 

「カモンで《巨大ネズミ》に攻撃」

「《巨大ネズミ》の効果で、デッキから再び《巨大ネズミ》を召喚!」

「紫炎で攻撃」

 

大原進 LP3900→2800

 

さて、これで《巨大ネズミ》は全て倒したな。

次は何が出てくるのやら。

 

「デッキから《岩石の巨兵》を召喚!」

「ニサシで攻撃する」

 

大原進 LP2800→2700

 

巨兵という割にはあっさりと攻撃力1400のニサシにやられたモンスター。

ガラガラと崩れさる姿に、なんだか可哀想な感情が湧きあがってくる。

まぁ、攻撃は止めないが。

 

「そしてニサシの効果を発動。自分フィールド上にニサシ以外の《六武衆》と名のつくモンスターが存在している時、1度のバトルフェイ中に2回攻撃することが出来る」

「何だって!?」

「ニサシでダイレクトアタック」

 

大原進 LP2700→1300

 

よし、後もうちょっとだな………、…ん?あれ?

 

最初に伏せていた自分の罠カードに目を向ける。

どうしよう、コレ使えば勝てるんだけど。

 

「(次の俺のターンになれば…っ)」

「……悪いが、このターンで終わりだ」

「!?」

 

なんだか格好がつかないような気もするが、デュエルなんて勝ってなんぼだろ!

 

「罠カード《リビングデッドの呼び声》」

「それは…!」

「蘇れ、《六武衆‐カモン》!カモンでダイレクトアタック!」

「うわぁあぁぁあ!!」

 

大原進 LP1300→0

 

ピー、と機械的な音が鳴り、デュエルが終了する。

その音を聞き、一番安心したのは俺自身だ。

ホッと肩の荷が降りたように安堵の息を吐き、若干項垂れている大原の横を通り過ぎる。

 

「ありがとう」

「!!」

 

ポツリと去り際に囁かれた言葉に驚き、振り向く大原。

だが、俺は素知らぬ顔でさっさと上のステージへと移動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「樹!」

 

笑顔を浮かべてこっちに寄ってくる犬……もとい、遊城。

無駄に元気な奴だな。その元気を俺にも寄こせ。

 

「樹って強いんだな!俺ともデュエルしようぜ!」

「だが断る」

「えぇ!?何でだよ!」

 

この野郎、俺が疲れ切ってんのが見えねぇのか!?(見えません)

勝ったら良いものの、こっちは最初のプレイングミスで落ち込み気味なんだよ!!

少しは感傷にひたらせろ!

 

とは思うものの、無邪気な遊城に対してそんな暴言を吐く訳にはいかない。

そもそも、精神年齢が大人の俺が感情に流されるなんて愚の骨頂だ。

ここは穏便に回避しよう。

 

「お前、まだテスト受けてないだろう」

「じゃあそれが終わってから!」

「疲れてるからパス」

「全然疲れてるようには見えない!」

「疲れの限界を超え、悟りを開くとそう見えるんだ」

「………そうなのか?」

「「(いや、嘘だな/嘘ッスね)」」

 

三沢と丸藤はジトーという目で俺が見るが、遊城は上手く丸めこめた。

遊城のテストが始まったら一足先に寮に帰ろう。

そうすれば遭遇しないで済むし。

 

そこ、セコイとか言うな。

実際に疲れてるのは本当なんだぞ。

 

「シニョール十代!」

「お!俺の番だ!」

「アニキ、頑張って!」

「おう!」

 

クロノス先生に名前を呼ばれた遊城は、溢れんばかりの笑顔で下のデュエルフィールドへと走っていった。

本当に元気だなぁ、アイツ。

ちなみに、俺は宣言通りに寮へと帰った。

 

後日、遊城にそのことを怒られ、半ば無理矢理デュエルの約束を取り付けられたのは余談である。

本末転倒ってこのことを言うんだな。はははっ。…………わ、笑えねぇ。

 

 

 

 




はい、どうだったでしょうか?
今回は実際にあったことをそのままデュエルの描写に使わせて頂きました。
これでルールに問題があっても俺の責任じゃないぜ、ヒャッハー!

と、七宮君が言い訳を述べておきます。(俺!? BY七宮)
それでは皆様、次回でお会いしましょう!


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第7話 肝試しに誘われる、の巻(前編)

ハローハロー!
なんだか気持ちが鬱になってきたKE.様だぜ!
嫌いなモノは平日なんだぜ!休みが欲しいぜ!
あと3DSも欲しいぜ!

……自分で書いたわ良いけど、段々と口調が面倒臭くなってきたKE.です。
今回も小説をご覧になっている皆様、どうもありがとうございます。


「おーい!樹!」

「……遊城か」

 

月一テスト以来、何故か仲良くなりつつある遊城が俺の所にやってきた。

おい、これから授業だぞ。

 

「なぁなぁ!樹も肝試しやらないか?」

「肝試し?」

「おう!夜に廃寮に行くんだぜ!」

 

自信満々に寮の規則を破ることを公言する遊城。

お前、それ他の生徒に聞かれたらどうするんだ…。

思わず呆れた顔をすると「どうした?」と聞かれた。

 

「寮の規則」

「…大丈夫だって!」

 

待て、その一瞬の間はなんだ。

そしてお前の自信はどこから来るんだ。

一度で良いからコイツの頭を覗いてみたい。

 

………デェエルのことしか考えてないか。

 

「翔も隼人もいるし、一緒に行こうぜ!」

「却下」

「何でだよ!」

 

むしろこっちが「何でだよ!」だ。

言い方はちょっと悪いが、丸藤や隼人って奴とも俺は仲良くない。

いきなり名前呼びでフレンドリー精神全開なお前と違って、月一テストからはあんまり話さないし…。

多分、俺がイエローの生徒なのも関係しているんだろうが。

 

「第一、見つかったらどうする?停学や謹慎通り越して退学だぞ?」

「でも面白そうじゃん!」

 

あくまでも楽観的な思考の遊城に、頭が痛くなってくる。

にしても、廃寮か…。

 

あれ?そういえば、原作でもそんなような事があったような…。

 

「なー、行こうぜー」

「はいはい、分かった分かった」

「じゃあ廃寮の所に集合な!」

「は?」

「待ってるぜ!」

 

バッと身を翻し、さっさと自分の席へと戻って行く遊城。

その後は早々に夢の中へと落ちたようだ。

 

くそぉ、発言ミスった。

といっても、遊城のことだ。

いくら断り続けてもしつこく言いに来るだろう。

俺は半ば諦めたように溜め息を吐き、先生に見つからないことを祈った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその夜。

意外にも律義な性格だった俺は、集合場所の廃寮前にいた。

あぁ、帰りたい。

 

そんな俺の想いも空しく、背後からチカチカと3人分の懐中電灯の光が迫ってくる。

どうやら遊城たちも到着したようだ。

 

「よ!早いな」

「樹くん?なんでいるんスか?」

「誰なんだな?」

「あー、俺は七宮樹。遊城に(無理矢理)誘われて…な」

 

責めるように遊城を見るが、本人はどこ吹く風のように廃寮を見上げている。

俺の視線に気付いたのは丸藤とデス・コアラ………ゴホンッ!丸藤たちだ。

流石に名前を知らないままなのもアレなのでデス・コアラ似の男子に目線を向ければ「前田隼人」と自己紹介された。

うんうん。どこぞのデュエル馬鹿よりは常識的な奴だな。

 

「この花は…」

「アニキ、やっぱり止めましょうよ…!」

 

廃寮前に何故か置かれていた赤い花を見て疑問に思う遊城。

どうやら丸藤の方は俺と同じく乗り気じゃないようだ。

単に恐がってるだけかもしないが。

 

「何言ってんだよ。ここまで来て止められるかよ」

 

やはり遊城の性格上、来た以上は最後まで…という事らしい。

さっさと行って帰ってくるのが得策だな。

そう結論付けた俺は前にいる3人に「早く行こう」と声をかけようとしたが……

 

パキッ

 

「「で、でたぁあぁぁあぁ!!」」

「!」

 

小枝を踏んだような音が聞こえ、遊城が驚いたようにそっちにライトを向ける。

そこには、同じくこちらに懐中電灯を向ける天上院の姿が。

 

「明日香!」

「あ、明日香さん…」

「……丸藤、前田、遊城が潰れるぞ」

 

天上院の姿にホッとしている丸藤だが、その前に驚いた拍子に飛び付いた遊城から降りろ。

見ているこっちが重そうだ。

 

つーか、よく遊城も二人分の体重を支えて立っていられるな。

 

「何で明日香がここに…」

「それはこっちのセリフよ。貴方達こそ何してるの?」

 

どこか責め立てるような口調。

いつもの冷静な天上院とは少し様子が違うな…。

 

「ちょいと俺たちは夜の探検にね」

「俺は半ば強引に誘われただけだから頭数に入れるな」

 

本来ならこの時間は自分のデッキを確認したりPDAでデュエルの勉強をしているハズなのに…。

こっちはお前らと違ってデュエルの才能が皆無なんだぞ?ルールも怪しいんだぞ?

在学中は筆記で点数を稼ぐつもりなのに、本当になんてことをしてくれるんだ。

 

なんだか段々と遊城に不満が募って来た。

…今度から交友を改めようかな。

 

俺が遊城への不満が心の中で愚痴っていると、すでに天上院との会話は終わっていたようだ。

最後に「勝手にすればいいわ」と言い放ち、去って行く天上院。

 

人の感情は紙一重。

怒る、ってのは誰かを心配しているのと同じだ。例外はあるけれど。

心配されていることにも気付かない幸せ者共は天上院の様子に少しばかり戸惑っている。

そりゃあ仲が良いと思っていた人物から「勝手にしろ」発言をされればそうなるわな。

 

天上院は完全に去る前に一度だけ立ち止まり、口を開いた。

 

「ここで消えた生徒の中には、私の兄もいるの」

 

嘘を言っている雰囲気ではない。

そもそも、天上院には本当に兄がいたはずだ。

確か、三幻魔だかセブンスターズの所で出てきたような…。

 

「(あれ?どっちとも同じか?)」

 

アニメ見たのは結構前だから、記憶も曖昧になっている。

 

その間、丸藤達は廃寮の噂話や今の天上院の言葉が本当なのかを話していた。

まぁ、それは遊城の「入ってみれば分かる」の言葉で解消された訳だが。

虎穴に入らずんば虎子を得ず。理には適っている。

 

そうして、俺たちは廃寮へと入っていった。

 

 

 

 

 




多分デュエルの描写を書くことになると思うので、話を分けさせて頂きました。

最近の悩み:肩凝りがヤバイ。


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