第四真祖が絃神島から来るそうですよ (大さん)
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第四真祖箱庭へ

初心者で分からないこともありますが、何かアドバイスがあればお願いします!


 暁古城が”冥き神王(ザザラマギウ)”を倒して数日後のことである。

 

「あちぃ~死ぬ~。」

 

『古城くーん、深森ちゃんのところいってくるから!』

 

 古城が今日の暑さで参っていると、凪沙は深森のところに出かけて行った。

 

「しっかし、暑くて何もやる気が出ねーな。ん?何だこれ、手紙?」

 

 水を飲もうと部屋から出て、リビングに行くと、机の上に手紙が置いてあった。裏をめくっても名前が書いてない。

 

(凪沙が置いっていったのか?)

 

そう思いながら手紙の中身を見てみると。

 

『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。その才能を試すことを望むならば、己の家族を、友人を、財産を、世界のすべてを捨て、我らの”箱庭”に来られたし』

 

「はぁ。もしかしてまたヴァトラーの奴からか?」

 

また何か企んでいるのかと思い、ため息をついていると、急にまばゆい光に包まれた。

 

 

 

   ☆

 

 

 

「何だったんだ今のは?ってうわーーーーーー!?落ちるーーーーー!!」

 

そう叫び下を見ると青い湖が広がっていた。

 

(これ…やばくね?)

 

周りを見ると他にも三人の少年少女が空に投げ出されていた。

 

 

バッシャーーーン!!!

 

 

四人は、湖から這い上がった。

古城は、雪菜に泳ぎを教わっていたので溺れずに済んだ。

 

「し、信じられないわ!まさか問答無用で引きずり込んだ挙句に、空に放り出すなんて!」

 

「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場で即ゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ。」

 

「服がびしょびしょになったじゃねーか。」

 

そう言って古城は、三人に目を向けると二人の少女の服が水で体に張り付いて実に艶めかしかった。

 

「あ…鼻血。」

 

「あなた、どこ見てるのよ!変態!」

 

「おっ、ここにきて即発情か?」

 

「違うわ!変態じゃねー!こういう体質なんだよ。」

 

それから少しの間、女性二人から軽蔑のまなざしを向けられていた。

 

「まず間違いないだろうけど、一応確認しとくぞ。もしかしてお前達にも変な手紙が?」

 

「そうだけど、まずその『オマエ』って呼び方を訂正して頂戴。私は久遠飛鳥よ。以後は気をつけて。」

 

「…春日部耀。以下同文。」

 

「そう。よろしく春日部さん。それで、見るからに野蛮で凶暴そうなそこの貴方は?」

 

「高圧的な紹介ありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様。」

 

(結構危なそうな奴だな~)

 

「で、そこの変態さんは?」

 

「だから体質だって!はぁ、俺は暁古城だ。よろしく。」

 

ため息交じりに言うと、久遠に睨まれた。

 

(チョー帰りたいんだけど)

 

「で、呼び出されたのはいいんだけどよ、何で誰もいねぇんだよ。この状況だと招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねぇのか?」

 

「ええ、そうね。何の説明もないままでは、動きようがないもの。」

 

「じゃああの茂みの中の奴に来いてみればいいんじゃねぇのか?」

 

古城が尋ねると、十六夜が驚いたふうに言った。

 

「おお、お前も気づいてたのか。」

 

「まあ…いろいろあってな。」

 

(色々ありすぎて神経質になっちゃったかな?)

 

「ほかの二人も気づいてたんだろ?」

 

「当然よ。」

 

「風上に立たれたら嫌でもわかる。」

 

茂みの中のウサ耳がびくっと動いた。

 

「ようし、出てこないんじゃ仕方ねぇ。」

 

そのウサ耳が出てこようとした瞬間、逆廻十六夜が明らかに普通ではない脚力で跳躍した。そしてウサ耳の女性のすぐ近くの地面が彼の飛び蹴りによって思いっきり抉れる。

 

「なにあれ。」

 

「コスプレ?」

 

「どんな脚力だよ。」

 

「「驚くとこそっち!?」」

 

「普通そう驚くだろ!!」

 

「違います、黒ウサギはコスプレなどでは―――」

 

黒ウサギと名乗った少女が抗弁しようとするも十六夜がまたも人並み外れた威力の蹴りをお見舞いし、それをバック転で回避する。どちらも超人レベルの技の応酬だ。

 

そこに春日部耀が加わり猫のような動きで周りをピョンピョン跳びまわる黒ウサギを追跡。この中で一番まともだろうと思っていたがやはりこの子も十分異常だった。

 

(うわぁ、これじゃあ絃神島にいたときと一緒じゃねーか。)

 

そんなことを考えていると、久遠飛鳥も動き出した。

 

「鳥たちよ、彼女の動きを封じなさい(・・・・・・・・・・・)!」

 

彼女の命令に従うかのように無数の鳥たちが黒ウサギを取り囲み動くのを阻止。跳んでいた黒ウサギはいつまでも滞空していることはできずに地面に尻もちをついた。

 

そして三人にあえなく囲まれてしまう。

 

 

 

   ☆

 

 

 

「―――あ、あり得ないのですよ、学級崩壊とはきっとこのような状況を言うに間違いないのデス。」

 

「いいからさっさと話せ」

 

(なんだよこの悪魔みたいなやつは!)

 

黒ウサギは三人に寄ってたかって虐められている。ウサギ耳を引っ張られて半泣き状態の黒ウサギ。それでも何とか気を取り直したのか咳払いをして高らかに宣言した。

 

「コホン。ようこそ、”箱庭の世界”へ!我々は貴方がたにギフトを与えられた者だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼントさせていただこうかと思いまして、この世界にご招待いたしました。」

 

「ギフトゲーム?」

 

「そうです!すでにお気づきかもしれませんが、あなた方は皆、普通の人間ではありません!」

 

(まあ、俺は吸血鬼なんだけどな?)

 

「どうされましたか?」

 

「いや…この世界には人間以外もいるのか?」

 

「Yes!この世界には吸血鬼やら精霊やらいろんな種がいるんです。」

 

「まあそのことはさておき、皆様の持つその特異な力は様々な修羅神仏や、悪魔や、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその恩恵を駆使して、あるいは賭けて競い合うゲームのこと。この箱庭の世界はその為のステージとして創られたものなのですよ!」

 

(恩恵ってアヴローラからもらったこの力のことか?)

 

「恩恵―――つまり自分の力を賭けなければいけないの?」

 

「そうとは限りません。ゲームのチップは様々です。ギフト、金品、土地、利権、名誉、人間。賭けるチップの価値が高ければ高いほど、得られる商品の価値も高くなるというものです。ですが当然、商品を手に入れるためには”主催者(ホスト)”の提示した条件をクリアし、ゲームに勝利しなければなりません。」

 

「……”主催者(ホスト)”て何?」

 

今度は耀が黒ウサギへと質問した。

 

「様々ですね。暇を持て余した修羅神仏から、商店街のご主人まで。それに合わせてゲームのレベルも、命がけで凶悪、難解なものから福引き的なものまで、多種多様に揃っているのでございますよ!」

 

(何でもありだな…)

 

「話を聞いただけではわからないことも多いでしょう、なのでここで簡単なゲームをしませんか?」

 

『ゲーム?』と首をひねると黒ウサギは、どこからともなくトランプを取り出した。

 

「この世界の住人は必ずどこかのコミュニティに属さなければなりません。いえ、属さなければ生きていくことさえ困難といっても過言ではないのです!」

 

力説する黒ウサギがパチンと指を鳴らすと、宙に突然カードテーブルが現れ、ドサリと地面に着地する。

 

「皆さんを黒ウサギの属するコミュニティに入れて差し上げても構わないのですが、ギフトゲームに勝てないような人材では困るのです。ええ、まったく本当に困るのです。むしろお荷物・邪魔もの・足手まといなのです。」

 

「じゃあ、俺帰るわ。」

 

「え゛!?」

 

帰るといわれると思ってもみなかったのか、その言葉に黒ウサギは変な声が出てしまった。

 

(え、ちょ!計算外です。ここで怖気づく方がこの問題児の中にいらっしゃるとは!しかも一応強いギフト保持者の方々に手紙を出したからあの方も強い……筈です。だらしない人のようにしか見えませんが。でもここで帰してしまったら黒ウサギの計画がパーに……うーん。)

 

変な声を出してしまった以外は冷静を装っている黒ウサギも内心は冷や汗だらだらで心臓がバクバクなっている。ギフト保持者のほとんどはプライド高そうな奴ら多いから煽っておけば乗ってくるだろうと考えていたから古城の帰宅希望は予想外だった。

 

「いや、でもここは素晴らしいところですよ。もうちょっと考えてみては?」

 

「?お前なんか焦ってないか。」

 

「い、いえそんなことは……」

 

「何か理由があるなら話してくれ。だまされて入っても面白くないだろ?」

 

さっきとは変わった優しい目で聞いてくる古城。古城は、結構なお人好しである。そんな彼の目を見て、仕方なく話し始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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水神&ギフトゲーム

古城が少し崩壊しかけているので、次からは直したいと思います。


「じゃあ魔王に旗を取られたせいで”ノーネーム”になってしまったから助けを求めたんだな。」

 

「そういうことになるのです。」

 

黒ウサギから伝えられたことは、三年前に魔王に負けてコミュニティを継続させるのに必要な人も、名も、旗も、奪われて”ノーネーム”となってしまたコミュニティを助けてほしいとのこと。

 

「わかった。ずっとじゃなくてもいいなら手伝ってやるよ。」

 

「私もそのコミュニティに入らせてほらうわ。」

 

「…私も。」

 

「魔王だと!面白そうだなそれ。俺も参加するぜ。」

 

「本当ですか!?」

 

みんなの言葉に黒ウサギは感激してピョンピョン跳ねている。

 

「では、さっそくジン坊ちゃんのところに行きましょう!」

 

「ジン坊ちゃんって?」

 

「現在のコミュニティのリーダーです。ですがまだ十一歳です。」

 

こうして四人とも”ノーネーム”に入ることとなった。

 

 

 

   ☆

 

 

 

「なあ古城、世界の果てを見に行こうぜ。」

 

「十六夜アホかお前は。」

 

「いいじゃねーか。」

 

十六夜は、古城の返答を待たずに、腕を引っ張られて強引に連れて行かれた。

 

「春日部さん。あの二人どうしましょう?」

 

「黒ウサギに聞かれたわけじゃないから言わなくていいんじゃない。」

 

「それもそうね。」

 

 

 

   ☆

 

 

 

「ジン坊ちゃーん!」

 

町の門の前の少年に黒ウサギは、声をかけた。

 

「お帰り黒ウサギ。そちらの女性二人が?」

 

「Yes!こちらの四人の方が……ってあれ?」

 

そこで黒ウサギは、十六夜と、古城がいないことに気がついた。

 

「あの、残りの二人は、どちらに?」

 

「ああ、十六夜君が暁君を連れて『世界の果て』を探しに行ったわ。」

 

「何で黒ウサギに一言言ってくれなかったんですか!?」

 

「「だって聞かれなかったから」」

 

それを聞いてジンがあわてたように言う。

 

「それって、やばくないですか!?『世界の果て』には、危険な幻獣や、精霊がいるんですよ!」

 

「幻獣や精霊?」

 

「はい。ギフトを持った獣や、特定の属性を司るギフトと霊格を持ったものを示す言葉で特に『世界の果て』付近には、強力なギフトをもったものもいます。出くわせば最後、とても人間では太刀打ちできません。」

 

「あらそう。では彼らはもう……」

 

「冗談を言っている場合ではありません!」

 

(ああもう問題児様たちは、”箱庭の貴族”と謳われたこのウサギをバカにしたこと骨の髄まで後悔させてやりますよ。)

 

「ジン坊ちゃん、このお二人のご案内をまかせました。黒ウサギは問題児様達を捕まえてまえりますので。」

 

そういうと黒ウサギの黒い髪とウサ耳が、淡い緋色へと変貌した。

 

そして、全力で跳躍した黒ウサギは、あっという間に三人の視界から消えていった。

 

「黒ウサギ速…」

 

「ウサギは、箱庭の創造主の眷族ですから、力もそうですが、様々なギフトや特殊な権限も持ち合わせた貴種なんです。彼女ならよっぽどのことがなければ大丈夫でしょう。」

 

その言葉を聞き、飛鳥達は安心したように言う。

 

「じゃあ、さっそく箱庭を案内してくれないかしら?」

 

「ええ、構いませんよ。」

 

そうして、黒ウサギは問題児を捕まえに、残りの二人は、ジン坊ちゃんに町を案内してもらうこととなった。

 

 

 

   ☆

 

 

 

「なあ古城。お前のギフトって何なんだよ?」

 

「いやあ、俺もよくわかんねえ。」

 

「もう一つ。お前は人間じゃあないだろう?」

 

「イ、イヤ、ニンゲンデスヨ?」

 

「ふん、まあいい。でもいつか教えろよな。」

 

 

それから三十分後、

 

「おい、待て小僧ども。」

 

十六夜が古城を連れて”世界の果て”に行く途中、滝の中から現れた水神に呼びとめられた。

 

「何だよ。でっかい蛇だな”世界の果て”にはこんな奴までいやがんのかよ。」

 

「ヴァトラーの蛇や、レヴィアタンよりはちっせえな。」

 

「ほう、それはさぞ楽しそうじゃねぇか。」

 

『このわしを無視するなッ!』

 

十六夜が古城と話をしていると、水神が竜巻を飛ばしてきた。

 

「おっと、あぶねぇ。」

 

「何すんだよ!あぶねぇじゃねえか!」

 

十六夜がが軽く避け、古城が危うく当たりそうになっていると

 

「フッ、人間がこんなところに何しに来た?なんなら、わしのギフトゲームで貴様らの力を試してやろうか?」

 

「安い挑発ありがとよ。」

 

「人間などに礼を言われてもうれしくないわ。それよりも、やるなら試練を選べ。」

 

「何言ってやがんだくそ野郎、お前ぶっ―――」

 

「待て、古城。俺がやる。おい蛇野郎、まずは、お前を試してやるよ!」

 

戦闘態勢になった十六夜に止められ、古城は仕方なくその辺の石の上に飛び乗った。

 

 

 

   ☆

 

 

 

「ああ、もう!あの問題児様方はどこまで行っちゃったんですか!?」

 

そんなことを言っていると、大きな竜巻が出来ているのを黒ウサギは見つける。

 

 

「もう、何やってるんですかッ!」

 

「おお、黒ウサギか。ちょっと待ってくれ。今、十六夜がギフトゲームやってるから。」

 

 

『まだ…試練は終わってないぞ小僧共!!』

 

水の中から怒り狂った水神が出てきた。

 

「何であんなのとやりあってんですか!?」

 

「なんか偉そうに『試練を選べ』とか言ってきたからな。今、十六夜がそいつをボコボコにしようとしてるってわけよ。」

 

「はぁ―――!」

 

彼らは偉そうなのが気に入らないだけで、水神に喧嘩を売ったようだ。

 

 

「早く謝っちゃってくださいよ!」

 

「バカ言うな。あいつから喧嘩ふっかけてきたんだからよ。」

 

『貴様……つけ上がるなよ人間風情が!わしがこの程度で倒れるものか!!』

 

水神の怒りに応えるように周囲の水が、さっきよりも巨大な竜巻に変化した。怒りのあまり、『人間風情』に本気を出してきたようだ。

 

「これは俺が売って、奴が買った喧嘩だ。邪魔したら黒ウサギ、お前からぶっ潰すぞ。」

 

ニヤリと笑ってそういう。黒ウサギは、困ったように古城のところまで離れる。

 

『心意気は買ってやる。それに免じ、この一撃を防げばお前の勝利を認めてやる。』

 

「寝言は寝て言え。決闘は勝者が決まって終わるんじゃない。敗者を決めて終わるんだよ。」

 

『フン―――その戯言が貴様の最後だ!』

 

竜巻はどんどん大きくなり、周囲を破壊しながら十六夜に襲いかかる。だが、十六夜は動じない。

 

「―――ハッ―――しゃらくせぇ!!」

 

しかし彼にしてみればどうってことなかったらしい。襲いかかってきた竜巻にそれを上回る拳の一撃で消し去ってしまった。

 

「えッ……あれは水神ですよ、人が倒せる相手では…」

 

「偉そうな割にはたいしたことなかったぜ。」

 

あの水神はかなり強い神様で普通なら人間では倒せないレベルの相手だったのだろう。だから黒ウサギは口をあけてて驚いている。

 

「…まあそれはともかく!ゲームに勝利したのですからそちらの水神様からギフトを頂くとしましょう!」

 

「何せ水神様本人を倒しましたからね。きっとすごいギフトを頂けますよー♪」

 

黒ウサギは水神との交渉で『水樹の苗』の苗を手に入れ、水源を確保出来たととても喜んでいる。ノーネームでは、水を確保するのも難しいのだろう。

 

 

それから三人は、急いでジン坊ちゃんのところまで走った。

(俺そんなことできないから行きと一緒で掴まれててただけど…)

 

 

 

   ☆

 

 

 

三人がジン坊ちゃんのところに帰ると、予想通り、もう二人の問題児もなにやら、やらかしていた。

 

「どういうことですか!?ジン坊ちゃん!なぜフォ、”フォレス・ガロ”とギフトゲームすることになってんですか!?」

 

「「腹がたって後先考えず喧嘩を売った。反省も後悔もしていない。」」

 

「反省もしていないって…」

 

それを聞いて古城は呆れたようにため息をつき、十六夜は嬉しそうに笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




サブタイトルのネーミングセンスなくてすいません。
次は、”フォレス・ガロ”と戦うと思います。


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白夜叉現る

すいません。ガルドのところまでいきませんでした。


「どれどれ…『主催者が勝利した場合、参加者は主催者の罪を黙認する。ならびにコミュニティの解散。参加者が勝利した場合、主催者はすべての罪を認め、人質を返した後コミュニティを解散する。』はあーー!!負けたら大変なことになるじゃないですか!!」

 

「でも勝てばガルドを追放できるかもしれないのよ。」

 

「僕もガルドを逃がしたくない。あんな罪人を放っておくわけにはいけないよ。」

 

「はあ~わかりました。腹立たしいのは黒ウサギも同じです。”フォレス・ガロ”程度なら十六夜さんがいれば楽勝でしょうし。」

 

「何言ってんだ?俺は参加しねえぞ。」

 

まさかの発言に、黒ウサギは焦る。

 

「えッ…ちょ、ちょっと何言ってるんですか!?」

 

「当り前だろう。さっきも言ったじゃねーか、これはこいつらが売って、あいつらが買った喧嘩だ。その喧嘩に俺が手を出すのは無粋ってもんだろ。」

 

「わかってるじゃない。もちろん暁君も出ないわよね?」

 

「いや、俺は出るぞ。」

 

『え』『本当ですか!』

 

一同全員驚いた。

 

「何でよ?」

 

「だって、子供が一人で、女が二人だけだろ。危ないじゃないか。」

 

「…バカにしないで。」

 

「春日部さんの言う通りよ。なめないで頂戴!」

 

「わかったよ。でも危なそうになったら手伝うからな。」

 

「……まあいいわ。ところで今日はもう帰るの?」

 

飛鳥は少し考え込んで諦めたのか、今からすることを黒ウサギに聞いた。

 

「ジン坊ちゃんには先に返ってもらいます。私たちはギフトを”サウザンドアイズ”に鑑定してもらおうかと。」

 

「”サウザンドアイズ”?それはコミュニティかなんかか?」

 

初めて聞く名前に十六夜は、黒ウサギに質問する。

 

「Yes!”サウザンドアイズ”は特殊な”瞳”のギフトを持つ者たちの群体コミュニティで、箱庭の東西南北・上層下層のすべてに精通する巨大商業コミュニティです。この近くにもその支店がありますよ。」

 

「ギフトを鑑定すると何かいいことあんのか?」

 

「自分の力の正しい形を把握しておいた方が、何かと便利でしょう?」

 

「それもそうね」

 

四人は『確かに』とうなずいて、”サウザンドアイズ”に向かいだす。

 

 

 

   ☆

 

 

 

”サウザンドアイズ”に向かう途中、飛鳥が木々を見上げて言った。

 

「桜の木…ではないわよね?真夏になっても咲いているはずがないもの。」

 

「いや、まだ初夏になったばかりだぞ。」

 

「…今は秋だったと思う。」

 

「いや、冬だろ。」

 

その理由を黒ウサギが説明する。

 

「皆さんはそれぞれ違う世界から召喚されているのです。元いた時間軸以外にも歴史や生態系もところどころ違うところがありますよ。」

 

「パラレルワールドってやつか?」

 

「まあそんなところです。」

 

そう言ったところで、店の前にいる女性店員が看板を下げているのを発見した。

 

「あっ、ちょっと待っ―――。」

 

「待ったなしですお客様。うちは時間外営業はやってません。」

 

黒ウサギが慌てて止めようとするも最後まで聞かずに断られてしまう。

 

「この店は商売する気あんのか?」

 

「まったくよ。」

 

「…同感」

 

店員は少しムッとして言う

 

「なるほど。”箱庭の貴族”であるウサギのお客様を無下にするのは失礼ですね。中で入店許可を伺いますので、コミュニティの名前をよろしいですか?」

 

「えっと…」

 

言葉を詰まらせる黒ウサギを目じりに、十六夜は何のためらいもなく名乗る。

 

「俺たちは”ノーネーム”っていうコミュニティなんだが。」

 

「では、どこの“ノーネーム”様でしょう。旗印を確認させていただいてもよろしいですか?」

 

十六夜の言葉にわざとらしく質問する店員。それを聞いた古城は怒ったふうに言う。

 

「何だよお前、態と言ってやがんだろ!よくこんな店が繁盛してるな!」

 

「……お客様。今何と?」

 

黒ウサギが焦る中、店員は怒りを押し殺して言った。

 

「だってそうだろう。どんな客でもちゃんとした対応をするのが接客ってもんだろ!ちょっとは考えろ!!俺だってそれくらいのことはできるぜ!」

 

「……黙って聞いていれば貴様!」

 

古城が怒って吐き捨てると今度は店員が怒りだした。そこに―――

 

「いぃぃぃやほおぉぉぉぃ!久しぶりだ黒ウサギィィィ!」

 

「うわぁぁぁ!」

 

ハイテンションで走ってきた和服の少女が黒ウサギに突っ込んでいき、ウサギともども川に落ちて言った。

 

「し、白夜叉様!?どうして貴女がこんな下層に!?」

 

あの和服少女は白夜叉というらしい。

 

「そろそろ黒ウサギが来る予感がしておったからに決まっておるだろう!やっぱり黒ウサギはさわり心地が違うのう!」

 

「白夜叉様、ちょ、ちょっと離れてください!」

 

黒ウサギに押し飛ばされた白夜叉が古城の方に跳んでくる。

 

「うわっ、あぶね。」

 

「フギャッ!」

 

古城がとっさに避けてしまったので、白夜叉は顔面から地面へダイブした。

 

「美少女が飛んできたのにそれを避けるとは何事じゃ!…ん?おぬし、鼻から血が出ておるぞ。」

 

「えッ…やば。」

 

それを見ていた女性陣は再び軽蔑のまなざしを向けてくる。それを十六夜が笑ってみている。

 

「少女の濡れた体を見て鼻血を出すなんてやっぱり変態ね。」

 

「…ロリコン」

 

「変態です。」

 

「何でいっつもこうなるんだぁぁぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いつもどうり古城は鼻血出しましたね。
まあ、お約束ですから…


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ギフトカード

今回は古城達のギフトがわかります。


古城が軽蔑の眼差しを向けられてから数分後、店の中に入らせてもらえることになった。

 

「生憎と店は閉めてしまったのでな。私の部屋で勘弁してくれ。」

 

個室というにはやや広い和室に連れて行かれた五人は軽く挨拶をしてから箱庭について聞いていた。

 

「この箱庭は階層を示す外壁で囲まれておるのじゃ。数字が小さいほど都市の中心に近く、同時に強力な力を持った者たちがすんでおる。」

 

「箱庭の都市は上層から下層まで七つの支配層に分かれており、それに伴ってそれぞれを区切る門には数字が与えられています。」

 

「まあそういうことじゃ。」

 

「じゃあ白夜叉の階層はどこなんだよ?」

 

「白夜叉様は三三四五外門に本拠地があります。そして四桁の外門ともなれば、名のある修羅神仏が割拠するほどすごいところなんです。」

 

それから構造の話になり『バームクーヘン的なもの』ということになった。

 

 

今現在、問題児三人は白夜叉が非常に強い存在であることを知り、喧嘩を売っている最中である。

 

三人は白夜叉相手に闘争心むき出しの目で睨む。

 

「何じゃその目は。依頼しておきながら、私にギフトゲームで挑むと?」

 

「え?ちょ、ちょっとお三人様何考えてるんですか!?」

 

「よいよい黒ウサギ。それよりおんしらが望むものは“挑戦”かそれとも“決闘”か?」

 

そう言った途端、和室にいたはずが広大な雪原になっていた。

 

「おいおい、マジかよ。」

 

古城は急に場所が変わり、那月の夢の中のようなものかと思った。

 

『もう一度問おう。私は”白き夜の魔王”―――太陽と白夜の星霊、白夜叉。おんしらが望むものは“挑戦”かそれとも対等な“決闘”か?」

 

格が違う。十六夜は、そう思った。感じたことのないくらいの威圧を感じ取った。そしてこの広大な雪原が自分のもつ一つのゲーム盤と言われて三人とも諦めて試されることにした。

 

「いい判断じゃ。では古城とやらはどうする?」

 

「いや、やめとくよ。それに俺はもとから戦う気なんてない。」

 

黒ウサギがホッとしていると、遠くに見える山脈から甲高い叫び声が聞こえた。その声にいち早く気付いたのは動物の声を聞くことのできる耀だった。

 

「何、今の鳴き声。初めて聞いた。」

 

「ふむ…あやつか。おんしらを試すにはうってつけかも知れんの。」

 

現れた動物は、獅子の体に鷲の頭と羽根がついた伝説上の動物だった。

 

「グリフォン?…うそ、初めて見た。」

 

「如何にも、あやつこそ鳥の王にして獣の王”力””知恵””勇気”のすべてを兼ねそろえたギフトゲームを代表する獣じゃ。」

 

(そういえば見たことある眷獣の中に、グリフォンはいなかったな)

 

白夜叉は手に持っているカードから輝く羊皮紙を取り出し白い指で記述していく。

 

五人はそれを覗き込んだ。そこに記されているクリア条件は、『グリフォンの背に跨り、湖の周りを一周回ること。クリア方法、グリフォンに”力””知恵””勇気”のいずれかで認められること。』

 

耀が前に出る。

 

「私がやる。」

 

そんな耀に、心配そうに鳴く猫。そんな猫に微笑む。

 

「大丈夫、心配しないで。」

 

「春日部さん。あんまり無茶しちゃだめよ。」

 

「任せて。絶対成功して見せる。」

 

耀にも何か秘策があるのだろう。

 

こうして春日部耀のギフトゲームは始まった。

 

 

 

   ☆

 

 

 

耀は最後に振り落とされて落ちるかと思われ一同冷や汗をかいたが、落下直後にギフトの力によって助かり、グリフォンに”勇気”を認められギフトゲームに勝利した。

 

「おめでとう春日部さん。」

 

「ありがと。」

 

「いやはやたいしたものだ。おんしの勝利だ。おめでとう。…ところで、おんしの持つギフトは先天的なものなのか?」

 

「違う。お父さんにもらった木彫りのおかげで話せるようになった。」

 

「木彫りとな?」

 

頷きながら丸い木彫りをを取り出した。それを手に取った白夜叉は急に顔をしかめた

みんなもそれを覗き込んだ。古城には何が書いているのかよくわからなかった。

 

「……もしかしてお父様の知り合いに生物学者がおられるのでは?―――」

 

 

白夜叉と十六夜は何か分かっているのか驚いたりしていたが、なにが何だか分からなかった。

 

 

「それでどんなギフトかわかったのか?」

 

「いや、今わかっているのは異種族と会話できるのと、友になった動物から特有のギフトをもらえるということだけだ。これ以上詳しく知りたいのなら店の鑑定士に頼むしかない。」

 

「そうなんですか?でも今日は鑑定してもらいに来たのですが?」

 

白夜叉は、黒ウサギの要求に気まずそうにする。

 

「よりによってギフト鑑定か。専門外どころか無関係もいいところなのじゃが…」

 

「どうしました?白夜叉様。」

 

「いや何でもない。コホン、まあ全部調べてやろう。」

 

古城の方を見て急にやる気になった白夜叉が『パン』と手を鳴らす。すると、四人の前に光り輝くカードが現れた。そのカードを見ると自分の名前と、身体に宿るギフトの名前が書いてあった。

 

十六夜がコバルトブルー、飛鳥がワインレッド、耀がパールエメラルド、古城がミッドナイトブルーのカードだった。

 

 

『久遠飛鳥』   ”威光”

 

『春日部耀』   ”生命の目録(ゲノム・ツリー)” ”ノーフォーマー”

 

『逆廻十六夜』  ”正体不明(コード・アンノウン)

 

『暁古城』    ”純血” ”災厄7/12” ”(神格)” 

 

「このギフトカードは、”ラプラスの紙片”、すなわち全知の一端だ。そこに刻まれるギフトネームはおんしらの魂と繋がった”恩恵”の名称。それを見れば大体のギフトの能力はわかるはずじゃ。」

 

 

 

    ☆

 

 

 

それから古城は白夜叉に残るように言われて部屋に残った。

 

「おんし、皆や私に隠していることがあるじゃろ?」

 

「ばれてたか…まあ俺は吸血鬼だ。このことはみんなには黙っていてほしい。」

 

「ま、いいじゃろう。その代り、おんしのギフトカードを見せてくれ。」

 

古城は、みんなにばれるよりは…と思い、手渡す。

 

「はぁぁぁ!神格じゃと!まだ完璧ではないが確かにある。どこで手に入れた!!」

 

「いやぁ、どこでって言われても…第四真祖になった時か?」

 

「第四真祖?」

 

「ああ、世界に災厄をもたらす”世界最強の吸血鬼”だそうだ。」

 

白夜叉は、神格があることにも驚いたが、世界最強と聞き頭を押さえる。

 

「いいかよく聞け。おんしはいつでも魔王になれることを忘れるでないぞ。」

 

「わかった。それに俺はもっと静かに暮したいんだ。でもこんな厄介な力を持ってしまった。だからいっそのこと、壊すことしかできないこの力を人助けのために使おう。そう思ってるんだよ。」

 

そう言って古城は出て言った。

 

(まあ、あの男なら大丈夫じゃろう。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




古城が眷獣を呼び出すのがとても楽しみになってしまいました!


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魔王の爪痕

感想や指摘ありがとうございます。間違えないように頑張ります。


古城は、店の前で待っていた四人と拠点に戻る途中である。

 

「古城さん、白夜叉様と何を話してたんですか?」

 

「えっと…そ、そうだ速く拠点に戻らないとな。」

 

古城は、ばれては困るので話題を変えてみる。しかし、問題児たちは聞く気満々である。

 

「何で話を逸らすの?」

 

「暁君あなた何か隠しているでしょう。『教えなさい!』」

 

「ッ!…何すんだよ!強引に聞き出そうとするなよ。こっちにだって事情があんだよ。」

 

「「えッ」」

 

全員が古城に”威光”が聞かなかったことに驚く。

 

「……何であなたには私のギフトが通じないの!?」

 

「そんなもん俺が知るか。まあ、どうせすぐにわかると思うぜ。」

 

そのあと古城は質問攻めにあい、『腹が立った』という理由で四人にボコボコにされてしまったのだった…

 

 

 

   ☆

 

 

 

「何よこれ…」

 

「…ひどい有様。」

 

四人が見たものとは、それは一言で言い表すなら廃墟。建物らしきものは見る影もない。十六夜はその辺の残骸を拾おうとするも軽く力を入れただけで、崩れてしまう。

 

「…魔王とのゲームはそれほど未知の戦いだったのでございます。彼らがこの地を取り上げなかったのは、おそらく一種の見せしめだったのでしょう。彼らは力を持つ人間が現れると遊び心でゲームを挑み、二度と逆らえないよう屈服させます。僅かに残った仲間たちも心を折られ…コミュニティからも、箱庭からも去って行きました。」

 

皆がこの光景を見て複雑そうな表情をしている中、十六夜はこの状況を楽しみ古城は、一人ひっそりと怒りをみなぎらせていた。

(……ぜってぇ潰してやる!)

 

 

それから五人は廃墟を抜け、徐々に外見が整った家々が立ち並ぶ場所に出できていた。

 

この居住区で暮らしている子供たちに少し、自己紹介と挨拶をした。こんなところで生活している子供たちを見て、結瞳のことを思い出す。

 

(こいつらも、何もしてないのにこんな目にあってんだな……)

 

「それではみなさん!さっそく水樹を植えましょう!」

 

そう言うと黒ウサギが台座に根を張らせる。するとそこから大量の水が噴き出した。そして流れ出した水が激流になり、貯水池や、水路を満たしていく。

 

「こんなに水が…」

 

「すごいわ!」

 

「へえ、大したもんだな。」

 

これで子供たちが水を汲みに行かなくて済み、他のことにも余力を向けることが出来るとジンも子供たちも大喜びだった。

 

「これで少しは生活が楽になるな。」

 

「はい!十六夜さんのおかげです!」

 

 

 

   ☆

 

 

 

あれから数時間たって夜である。古城は吸血鬼だからということもあるが、明日のギフトゲームのこともあり、なかなか寝付けないでいた。

 

「明日か……うわっ!!」

 

急に外から爆音がして急いで起き上がる。そして音のあった場所に行くと、十六夜とジンの前に頭を下げている黒服の男たちがいた。

 

「恥を忍んで頼む!ガルドのコミュニティ、”フォレス・ガロ”を完膚なきまでに叩き潰してくれ!」

 

「はっ、嫌だね。」

 

十六夜が言うにはこの侵入者は”フォレス・ガロ”に人質を取られ無理やり言うことを聞かされていたそうだ。

 

「その人質、もうこの世にいねぇから。はいこの話題終了。」

 

「何!?……」

 

「十六夜さん!?」

 

「十六夜てめえ、そんな言い方はねえだろ!」

 

「気を使えってか、冗談きついぞてめえら。」

 

十六夜は冷たく返答する。

 

「人質を攫ってきたのはどこの誰だ?ほかでもないコイツらだろうが。」

 

その言葉に古城は言葉を詰まらせる。人質を攫ってきたのは紛れもない、この男たちだ。だが、許せないのはそんな行いをした”フォレス・ガロ”だ。

 

「で、では人質はもう……」

 

「…はい。ガルドは人質を攫ったその日に殺していたそうです……」

 

「そ、そんな…」

 

彼らの心中は言うまでもない。そんな彼らを見て十六夜は、ニヤリと笑った。

 

「お前らの気持ちはよ~く分かった。」

 

十六夜はさっきの冷徹な態度を一変させて、まるでおもしろい悪戯を思いついたように笑い、侵入者の肩をたたく。

 

「ガルドが、そして奴の後ろにいる魔王が憎いか?安心しろ。お前らのそして人質の敵は、コイツがとってくれる!」

 

そう言うとジンの肩を抱き寄せ、

 

「このジン=ラッセルが、すべての魔王を倒すコミュニティを作ってくれる!」

 

「えっ!?」

 

十六夜の発言に全員いっせいに驚く。十六夜の手によって『名と旗をとった魔王討伐』という目標が『全魔王討伐』にすり替えられようとしていた。

 

「そ、それはいったい?」

 

「言葉どうりの意味だ。俺たちは魔王の脅威にさらされたコミュニティを守る。守られたコミュニティは口をそろえてこう言ってくれ『押し売り・勧誘・魔王関係お断り。まずはジン=ラッセルのもとへ問い合わせください』ってな。」

 

「じょ―――」

 

ジンは冗談でしょう!?と、言おうとしたところで十六夜に口を塞がれる。

 

古城は快楽主義者と言っていたが彼とてさすがに非人道的な行為を許すはずがないと思い、口を噤む。

 

「ガルドを倒した後のことも心配するな!なぜなら、俺たちのジン=ラッセルが魔王を倒すため立ち上がったのだから!!」

 

十六夜の言葉に希望を見出し、顔を輝かせる侵入者たち。ジンはすでに青ざめている。

 

「さあコミュニティに帰って仲間に言いふらせ!俺たちのジン=ラッセルが魔王を倒してくれると!」

 

「わ、わかりました!明日は頑張って下さいね!」

 

そう言うと侵入者達は急ぎ足に去って行った。

 

 

 

   ☆

 

 

 

今、三人がいるのは大広間。そこでジンが大声で叫ぶ。

 

「ど、どういうつもりですか!」

 

「どういうつもり?行ったとおりだ。魔王にお困りの方、ジン=ラッセルまでご連絡ください―――キャッチフレーズはこんなところか。」

 

「ちょっと落ち着けってジン。」

 

「これが落ち着いていられますか!魔王の力はもう理解できているはずです!僕らの敵だけでも脅威なのに、魔王を倒すコミュニティなんて流布されたら他の魔王にまで……」

 

「おいおい、あんな面白そうな力を持った連中が押し寄せてくる?ワクワクするじゃねぇか。」

 

「俺もよかったと思うぞ。押し寄せてくるのは嫌だけど。」

 

「ちょっと、古城さんまで…」

 

古城が十六夜の見方をしたのを見てジンは呆れている。

 

「だって、ここみたいに困っている奴らを助けることが出来るんだ。しかも、コミュニティを象徴するものもないんだ。これを期にどんどん人が集まれば魔王だって倒せるはずだ。」

 

「わかってるじゃねーか古城。」

 

「コイツはとんでもないハンデだ。こんな状況を抱えたまま、お前は先代を越えなきゃなならねぇんだぜ。」

 

「先代を…超える!?」

 

その言葉を聞いたジンは戦慄していた。それが彼が魔王からすべてを取り戻すために絶対に必要なことで、彼らが目を逸らし続けていた事実だ。

 

だから十六夜はジンの名前とともに『打倒魔王』を宣伝したのだ。

 

そしてこの御旗は同じく『打倒魔王』を心に秘めた者たちを呼び寄せるであろう。魔王の被害は、このコミュニティだけではないのだから。

 

「今このコミュニティに必要なのは人材だ。俺並みとは贅沢言わないが、俺の足元並みの奴らはほしい。それくらいの奴らなら、どっかに消えちまった昔のお仲間よりは役に立つだろうぜ。」

 

十六夜の策は筋が通っている。しかし危険なことには変わりない。

 

「その件を受ける代わりに一つ条件があります。今度開かれる”サウザントアイズ”のゲームに昔の仲間が出品されます。」

 

「へぇ、そいつを取り返せってことか?」

 

「そのとおりです。しかもただの仲間ではなく、元魔王なんです。」

 

ジンの言葉に十六夜の瞳が輝く。

 

つまりこの”ノーネーム”は以前に魔王を倒し隷属させていたということになる。今、その元魔王を隷属させているコミュニティを倒せば仲間は戻ってくる上、コミュニティの名をあげる絶好のチャンスなのだ。

 

「それと黒ウサギに心配をかけたくないので内緒にしておいてください。」

 

「わかったよ。」

 

古城はもう眠くなり、話の途中で自分の部屋で寝てしまった。それからどういう話をしていたかは、また次の機会に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




出来るだけ一週間以内に新しいのを書こうと思っております。
次回はギフトゲームですが、古城はあんまり活躍はしないと思います。


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6話

「何よこれ……」

 

「本当にここにガルドがいるのか?」

 

「たぶん…いると思います。」

 

古城達は”フォレス・ガロ”とギフトゲームをするため、手紙に書かれていた指定場所に来た。しかし、そこにはあるはずの家はなく、代わりに樹木が生い茂る森林が広がっていた。

 

「…ジャングル?」

 

「ハハッ、虎が住んでんだから仕方ないだろ。」

 

「十六夜さんは本当に緊張感がないですよ。」

 

ふと、一つの木を見ると、一枚の紙が貼ってあった。

 

『ギフトゲーム名:ハンティング

 

プレイヤー名:久遠飛鳥

       春日部耀

       ジン=ラッセル

       暁古城

 

クリア条件:ホストの本拠内に潜むガルド=ガスパーの討伐

クリア方法:ホスト側は指定武具でのみ討伐可能。指定武具以外では”契約”によりガルド=ガスパーを傷つけることは不可能。

敗北条件:降参、もしくはプレイヤー側が上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

指定武具:本拠内にて設置

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下”ノーネーム”と”フォレス・ガロ”はギフトゲームに参加します。』

 

「…指定武具で討伐!?これはまずいです!」

 

”契約書類”を読み終わると同時に黒ウサギが慌てる。それを見た耀は黒ウサギに聞く。

 

「このゲームそんなに危険?」

 

「いえ、ゲーム自体は簡単です。しかし、指定武具となると飛鳥さんのギフトで彼を操ることも、耀さんのギフトで彼を傷つけることもできません。」

 

「すいません。初めに”契約書類”を作った時にルールを指定していれば……」

 

「ジン君、貴方のせいじゃないわ。あの外道を叩き潰すのに、これくらいのハンデがあった方がちょうどいいわ。」

 

「大丈夫。私たちがついてるから。」

 

そう言いながら四人は森林の中に入って行った。黒ウサギと十六夜は、入口で待つことになった。

 

 

 

   ☆

 

 

 

一方その頃、”ノーネーム”の拠点に来客が着ていた。

 

「すいませーん。誰かいますか?」

 

「何でしょうか?」

 

リリが扉をあけると黒いフードをかぶった男の人が立っていた。

 

「こんにちは。僕は暁古城に用があるのですが。」

 

「古城さんならまだ出かけております。なので私が伝えましょうか?」

 

「こんなに小さいのに偉いねー。…じゃあこれを渡しておいてくれるかな。」

 

フードの男は、リリに何かの果実と手紙を渡し告げる。

 

「その果実は、暁古城以外に食べさせてはいけないよ。お姉ちゃんだから出来るね。」

 

「はい!わ―――」

 

リリが『分かりました』と言おうとすると、すでにフードの男はいなくなっていた。

 

 

 

   ☆

 

 

 

古城達は、家というより館を思わせる建物の中でガルドと対峙していた。

 

「グォォォォォ!!!」

 

「これちょっとやばそうね」

 

「飛鳥はジン君たちを連れて逃げて!」

 

耀が慌てて叫ぶ。それと同時にガルドが襲いかかってきた。

 

「ありがとう。春日部さんもすぐに戻ってくるのよ!」

 

「わかった。」

 

ガルドを止めてくれている耀に礼を言い、飛鳥はジンに命令(・・)する。

 

「ジン君!逃げるわよ。」

 

「でも、中にまだ―――」

 

「いいから逃げなさい(・・・・・)!」

 

途端にジンの目から光が消えていく。ジンは飛鳥を担ぎ上げ、どこにそんな力がと思うほどのスピードで走る。そして、もと来た道の半分ほどのところでようやく飛鳥が止まらせる。

 

「もういいから、止まりなさい(・・・・・・)!」

 

すると、ジンが突然力が抜けたように後ろに倒れこんだ。当然飛鳥も地面に落とされる。

 

「う、うわ!」

 

「きゃ!」

 

 

「だ、大丈夫ですか。それより、今のが飛鳥さんのギフトですか?自分でも信じられないほど、力が溢れだしてきました。」

 

「私は、『私を連れて逃げろ』という意味で言ったのではないのだけど……」

 

ジンは飛鳥を助け起こしながら聞く。

 

「どうしてあんなに焦っていたんですか?それに耀さんは?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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