東方生司妖 (茸型衛星)
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原始編
1.妖精が生まれた


この小説は素人が書いている物ですので、最初の方は文才が皆無です。
原始編はある程度流し読みしても結構です。
この小説自体流し読みしてもらって結構です。


   東方生司妖(とうほうしょうしよう)

 

 

 

 

「彼」はどこにでもいる、普通の会社員だった。

変わらない毎日の中、突然「彼」に転機が訪れる。

 

 

 

 

 

 

 

--目が覚める。意識がはっきりしない中、ゆっくりと目を開ける。

 いつもなら木目の天井が見えたのだが、今日は違った。そこにあったのは、木目ではなく、どこまでも続く「黒」だった。

 

「なんだこれは!?」

 

思わずあげてしまった声は、いつもの声よりかなり高く、幼い声だった。

 

「ん?声が違う?」

 

何度聞いても、やはり幼い声は自分から発せられていた。

理解できない。昨日まではそこそこ渋い男声だったはずだ。なのに何故?

なぜこうなったか手がかりを探すため、あたりを見回す。

 

 

---上下、左右、前後。ほぼ黒だけだ。小さい光がところどころに点在している。

動かした首と腰は、かなり動かし辛い。

 

-少し考えてみよう。まず、高い声と動かしにくい体。これは、信じたくないが1つしか考えられない。

 

「…自分が幼女になった?」

 

相変わらず高い声で、そう呟く。

証拠に、手足は小さく、しわ一つない、白く、きれいな肌。

 

他に何かないか調べると、自分が身に着けているのはなぜか、スーツではなく、草の模様が書かれた白いワンピースを着ていた。靴は履いていなく、裸足だった。

背中から生えていた羽と薄い青緑色の髪を見ると、自分が人間ですらないことが分かった。

 

「俺は何なんだ…」

 

ふと、違和感を感じた。それもそのはず、自分には少しだが胸があった。Aカップくらい。

 

「やはり幼女なのは間違いない、か。俺は妖精にでもなったのか?」

昔見た絵本に、羽があり、髪の色が様々な妖精があった。

もしそれならば、この容姿にも納得がいく。というか、それ以外思いつかなかった。

 

「妖精、か…これが楽しい夢なら十分妖精ライフを満喫しようじゃないか。」

「いや、夢ではない。」

 

いきなり、背後から男の声がした。

振り向くとそこには、神々しい男性が立っていた。(立つ床はないのだが。)

 

「貴方は誰?何の用ですか?」

「儂か?儂はゼウス。又の名を全知全能神。」

「か、神様?しかも最高神、神って本当にいたのか…」

「何を言っておる?この世界(宇宙)には神しかおらんじゃろうに」

「俺は神じゃないですよ」

「分かっておる。おぬしは妖精という種族じゃ。最も、おぬしがこの世界(宇宙)の最初の妖精じゃがな。そして、これは夢ではなく、紛れもない現実じゃ。」

 

…俺は本当に妖精だったのか。そして、夢でもないらしい。 本当なのだろうか。

 

「おぬし、儂を疑ったな?」

「な、なぜ考えていることが分かったんですか?」

「言ったじゃろう?儂は全知全能。全知なら、おぬしの考えていることも、おぬしが次にすることも、すべて分かる。」

 

これはすごい。全知全能は嘘ではないらしい。と、いうことは俺は世界で最初の妖精か…訳が分からないことばかりだ。

 

「いいや、最初の妖精ではない。最初の生物じゃ。他の皆は儂が創ったのじゃが、おぬしだけは勝手に生まれた。まぁ、こうなることは最初から知っておったがな。」

 

ホホホ、とゼウスは笑う。考えていることが常時読まれているとは、恐るべし全知全能。

しかし、最初の生物とは俺も大物になったものだ。

最初の生物、ということはこの真っ暗な空間は宇宙なのか。ゼウスがこの世界のことを宇宙と呼んでいたが、やはりここは宇宙らしい。

 

「それはそうと、おぬし、儂の部下にならんか?儂は人手不足、おぬしも一人では何もできまい。」

 

なるべく自由に妖精ライフを楽しみたかったのだが、最高神の部下というのも悪くなさそうだ。

俺は迷うことなく了承した。

 

「話が早い、では早速、おぬしに任せる星を伝えよう。アテナ。」

「お呼びでしょうか」

 

ゼウスがアテナ、と呼ぶと、ゼウスの横に女性が現れる。

 

「この者に例の星を任せたい。案内してきてくれ。」

「かしこまりました。」

 

アテナがそう言い終えると、ゼウスはいきなり消えた。

 

「さぁ、行きましょうか。」

 

 

俺の新しい人生(妖生?)が始まる。

 




どうでしたか?

誤字脱字などがありましたら教えていただけると有難いです。
転載ですので不自然な点があると思いますが、生暖かい目で笑ってください。

尚、神様転生のタグは後々関係してきますので、外しません。

それでは。


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2.妖精は力を貰う

自分が書いたものを読み返すほど恥ずかしい物はないですよね。


「さぁ、行きましょうか。」

アテナはそう言い、どこかへ飛んで行く。

 

「どうしました?早く来て下さい」

「どうしたも何も、俺飛べないんですが…」

「えっ、飛べないんですか? …そういえばまだ生まれたばかりでしたね。」

 

神なら飛ぶのも納得できるが、俺は飛べない。

…ん?待てよ、妖精としての羽があるじゃないか。

羽を動かそうと、背中に集中する。

しかし、動かし方を知らないため、羽は全く動かない。

 

「飛び方を教えておきましょうか。まず何処にも集中せず、前に進むことだけ意識してみてください。」

 

言われた通り、前に進むことだけを意識する。すると、力を入れていないのに、前世の全力疾走のスピードを超える速さで進む。

 

「うわっ止まらないぶつかる!」

 

途端に止まれ、と強く思うと、アテナの目の前で急に止まる。

 

「…少々危なっかしいですが、一応飛べるみたいですね。でも、生まれたばかりにしては上出来です。」

「あ、ありがとうございます、アテナさん。」

「さんを付けなくてもいいですよ。私のことはアテナ、と呼んでください。」

 

アテナはそう言い、また飛び始める。真っ黒な宇宙の中で、どうしたら方向が分かるのだろうか。

 

「あ、そういえばあなたの名前を聞いていませんでしたね。」

「あ、俺の名前は…」

 

あれ?名前が思い出せない。前世の顔を見ればわかるか、とも思ったが顔も思い出せない。

今思えば、前世の少し渋い声も詳しくは思い出せない。

どうやら、妖精(幼女)になる前の自分に関しては意識していなかったので、殆ど覚えていないようだ。

 

「名前が無いんですか?」

「あるんですが、思い出せないんです。」

「成程…では、私が名前を付けてあげましょう。」

「いいのですか?」

「ええ。そうですね…白精 宇巧(はくしょう うこ)、というのはどうでしょうか。」

「白精宇巧ですか…いい名前ですね、ありがとうございます。」

 

名前について考えていたら、急にアテナが立ち止まった。

同じように止まり、アテナの近くによると、目の前に大きな岩の塊が浮いていた。

かなり遠くから見ていても視界に収まらないので、かなりの大きさのようだ。

 

「ここが、これから貴女に管理してもらう星です。」

「管理する、とは何をすれば…」

「簡単に言えば、貴女にはこの星の神になってもらいます。」

「神に!?でも俺、妖精ですよ?」

「大丈夫です。今から少し、私の神力を貴女に分け与えます。」

「神力、というのは…?」

「神の持つ特別な力です。それを持っている者は種族関係なく、神としての力が使えます。貴女は妖精ですので、神力が増えるにつれて貴女の元々持っている妖力も増えると思います。」

 

そういい、アテナは俺に向かって手を向ける。

アテナの手が光ったと思うと、体中を強い痛みが襲う。

 

「ッ…!」

 

暫く痛みを我慢していると、だんだん痛みが引いてくる。

 

ようやく痛みが治まると、体がものすごく軽くなったように感じた。

 

「成功したようです。では、自分の中に集中してみてください。」

 

よくわからないまま、瞼を閉じて、言われた通りに集中する。

すると、瞼の裏に文が現れ、自分の中に二つの力のようなものをはっきりと感じた。

片方の力のようなものは紫色で、炎の形をしていて、もう片方は白色で丸い形をしている。

 

「見つけました。紫色の炎と、白色の球体のようなものと、何かの文です。」

「それが妖力と神力です。量が多いほど、はっきりと感じられます。先程はかなりの量を与えましたから、はっきり見えたでしょう?」

「では、この文は何ですか?」

「…少し、読んでみてください。」

「えと…生命を司る、能力…と書いてあります。」

「成程、神力を持ったことによって能力が開花しましたか…」

「能力、とは?」

「それぞれの個体に与えられた、特別な能力のことです。能力を持っている者は稀なのですが、持っている者は特別な自分だけの力を使えます。貴女の場合、生命を司るので、生命を吹き込んだり、操ったりできます。」

「それはまたすごい…」

「しかし、最初から使えるわけではありません。妖力もですが、修行すれば妖術を使え、能力も色々と使えるようにになっていきます。」

 

妖術、というのは妖力を使った術なのだろう。

能力の方は、修行すればできることが増えていく、ということなのだろう。

 

「宇巧さん、一度、この星で修行してみては如何でしょうか?星の管理は、今の所星を安定させるだけでいいので。」

「そうさせてもらいます。」

「では、私は仕事に戻りますね。」

「もう行くんですか?」

「はい。わからないことがあれば、大声で呼んでくださればいいので。では、私はこれで。」

 

アテナはそう言い終わると、その場から消えた。

 

「さて言われた通り、修行するか~」

 

 

 

これから何億年と修行することになるのを、宇巧はまだ知らない。

 




原作キャラは暫く出てきません。誕生を早くしすぎた、と過去の作者は嘆いております。


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3.妖精神の仕事

下手な演出ですねぇ。


SIDEゼウス

 

アテナがすぐ横に現れる。

 

「ゼウス様、只今戻りました。」

「神化は成功したようじゃな。」

「はい。能力も開花したようです。星を安定させながら修行するように、と言っておきました。」

「分かった。」

「では。」

 

そういい終えると同時に、アテナは自分の持ち場へと帰る。

 

「…しかし、あのような過去を持っていたとは…さすがの儂でも驚いた。」

 

あの妖精は、何かに守られていた。この「全知全能を司る程度の能力」をも跳ね返す、強大なもので。そのせいで、あの妖精の過去の一部は覗くことが出来なかった。

それが何かを知る必要がある。能力を使っても知ることができないので、様子を見るしかない。

 

早めにあの星を成長させる必要がありそうだ。

まずはあの星の近くにあった恒星を成長させる。

「…これで大丈夫じゃろう。」

 

彼女が、あの星を成長させることを願おう。

 

SIDE OUT

 

そして、5000万年の月日が流れる。

 

SIDE宇巧

 

星が安定して、修行に明け暮れること早5000万年。

妖力はかなり増え、能力もかなり使えるようになってきた。(他の生命が無いので自分に対してだけだが。)

 

ある年、この星に異変が起こった。

星は、隕石が落ちて少しずつ巨大化していたのだが、星が直径約12万Kmになった時、近くの星があり得ない速度で成長し始めた。

 

「熱ッ!」

 

その星は恒星となり、光を発し始めた。

能力を使って自分を操り、自分を急な温度の変化に耐えられるようにした。

急な温度の変化に耐えられなくなったのか、星の中から溶岩が飛び出してきた。

 

「あーあ、せっかく安定してたのに。」

 

再び、昔の作業に戻ることにする。

 

 

7億年が経った。

 

時間が飛びすぎ、と思う人もいるだろう。

しかし、7億年も生きていると、時間の感覚が狂う。

「生命を司る能力」に関しては、7億年前よりもさらに色々なことができるようになった。

自分のことはほぼ全て分かる。

もちろん他人のこともわかるので、(プライバシーなんてあって無いようなもの)普段は使っていない。

 

そして1番変わったことというと、海ができた。すでに島も点在している。

溶岩を止めるときに大気中の水蒸気を使い、雨を降らせてみたら予想外の大雨が降り、溶岩が固まって地殻ができた。

 

大気にはまだ酸素がない。

酸素が無いことに気付いた時、妖精の体は呼吸が必要ないことが分かった。

 

体は何故か、全く成長しない。7億年経っても未だ体は幼女体型のままだ。

ゼウスやアテナも体型は変わらないようだ。

 

前のようにのんびりと過ごしていたら、海に何かが混じったような気がした。

 

近寄ってみても、全く見えない。能力で視力を上げて見てみると、そこにはすごく小さな丸が「居た」。

「丸」が「居た」のだ。毛が1本生えている。なんだこれは。

いや待てよ、心当たりがある。

 

「うおぉ微生物じゃねぇか!ついにこの星に微生物が!」

 

この星最初の、生物との遭遇である。

 

 

 

 



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4.妖精神と仲間

内容の薄い生活は短く感じるものです。

内容が濃い生活、つまりそれは仲間といる時間。

 

 

初めて微生物と出会ってから早数億年。何をしていたかって?上空を飛び回って生物の進化を眺めていました。(途中で寝てたとは言えない)

 

約27億歳になったある日。酸素が生まれた。

それもそのはず、陸地はコケやシダで覆われていた。

コケを見つけたときは本気で喜んだものだ。

 

酸素が生まれたことによって、生物が陸に上がってきた。

 

「…何だこれは…トカゲ?ではなさそうだ…」

 

それは立派な生物なのだが、自分の知っている生物とはまるで違った。

 

謎の生物について悩んでいると、海の上に新しい生命が生まれるのを感じた。

「海の上に」生まれたのである。普通では考えられないことのはず。

 

「…行ってみるか」

 

海の上を低空飛行で移動する。

しかし、宇宙の時ほどのスピードは出ない。

最高速の時でも光と同じ位だ。

どうやら大気が濃いところでは弱体化するようだ。

それもそのはず、妖精は自然から生まれ、自分に合っているもの(花、木、水など)の近くにいる時に力が増す。

なら自分に合っているものは何か、それは宇宙だろう。現に、宇宙に近づくほど力が増す。

 

「お、見つけた。…妖精か?」

 

海に浮いているのは、自分より一回り小さな、羽の生えた幼女だった。

既に見た目で分かるが、妖精のようだ。

 

「君はここで生まれたのか?」

「…」

 

妖精は喋ることができないのか無言のまま頷く。

そして、何かを見つけたようにふよふよと飛んで行く。

 

「仲間か…そういえば、自分以外の妖精と会うのは初めてだな。」

 

さっきの妖精を追いかける。

 

「おーい!」

 

共に楽しい時を過ごせることを願って。

 

 

 

 

 

 

 

飛んで行った妖精に声をかけ、追いつく。

何処へ行くのか訊こうとしたら、妖精が急に抱き付いてきた。

俺は驚いたが、すぐに理由が分かった。

 

「…仲間がいないのか?」

「…!」

 

 

図星だったようで、服を握る力が強くなった。

 

「俺と一緒に来るか?」

 

妖精は、少し嬉しそうに頷いた。

もちろん何処へ行くかは決まっていない。

 

 

 

 

「2人で生活するなら、家がいるな。」

 

二人とも家が無い(宇巧は普段空中で一日を過ごす)ので、家を造りに森へ入る。

 

暫く森を歩いていると湖があり、遠くに森を挟んで山が見えた。

湖のそばには、少し平原もある。

 

「お、なかなか良い土地だな。ここにするか?」

 

妖精にそう訊くと、妖精は何かを見つけたのか、森に入っていく。

ついて行ってみると、大木に子供が数人入れる程の大きな穴が空いていた。

 

「ここがいいのか?」

 

妖精は、そうだと言わんばかりに首を縦に振る。

 

「じゃ、今日からここは俺等の家だ。」

 

自分にとっては星自体が家のようなものなのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日、久しぶりにアテナがやってきた。

 

「アテナ、なんでここに?」

「星の安定が確認されたので、それを伝えに来ました。以後数十億年は、星が安定した状態が維持されます。」

「つまり、暫く仕事はないと」

「そうなりますね。部下でもつくって、休んでみては如何でしょうか。」

「部下…」

「ええ。神を創造し、仕事をしてもらうのです。」

 

俺はとうとう部下を持つ立場になったのか。

そんなことを考えながら、能力で神を創造する。

 

 

「…其方が我の主か」

「あ、主?…まぁそうなるか。」

 

あるじ、と呼ばれるとは思わなかった。

それにしても、自分の神に対するイメージのせいなのか、少し強そうな老人が生まれた。

 

「成功のようですね。では、私はこれで。」

「あ、もう行くのか?」

「はい。あと、貴女も女なのですから口調には気を付けた方がいいですよ。」

 

言い終えると、瞬く間にどこかへ行ってしまった。

…喋る時の口調は考えておいた方がいいかもしれない。

 

森の方から妖精が出てきた。突然の来客に驚いていたのだろうか。

 

「主、この妖精は?」

「あぁ、お…私の家族。」

 

だめだ、まだ私口調に慣れない。

使い続けていたらそのうち慣れる事を願おう。

 

 

とにかく、また前以上に平和な日常が返ってくるのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

いつもの朝。今ではもう慣れてしまった、木に開いた穴の中で、今日も目覚める。

 

 

「主、そろそろ力を抑えてはどうだろうか。」

 

唐突に質問してきたのは、少し前に創った、部下の神。どうやら名前があったらしく、伊邪那岐大神というらしい。

 

「何故?」

「近頃、世界に妖気とやらが充満しているようで、妖が生まれている。」

「仕事してない間に大変なことになってるんだねぇ…」

 

平和ボケしていたのだろうか、知らない間に世界に異変が起こっていたらしい。

 

「でも、力を抑えるって、どうやって?」

「主の力で封印してみては?」

「封印か…生物にかけるのは初めてだなぁ…」

 

封印には、何か力を蓄えるものが必要なのだが、邪魔にならないように、髪留めにしてみる。

封印の印を神力で書き込んで、後ろで髪を結ぶ。

 

「おお、力が弱まった感じがする」

 

髪留めに力が蓄えられたせいか、結んだ髪が一気に伸びた。どういうことだろうか。

 

「あ…急に…眠気が…」

 

力が弱まったせいなのだろうか、一気に眠気が襲ってきた。

 

「先程起きたばかりにもかかわらずもう睡眠か」

「…zzz」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時代が進み、星に人間が生まれた頃。

とある木を中心に、羽があり人の形をした妖が大量に発生した。

そして、その妖たちは、一匹の妖を中心に、一柱の神を守り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

~古代編へ続く~

 




初原作キャラと思った?残念、またオリキャラでした。

文字数が足りなかったので3話分を1話にまとめて投稿しました。
もっと1話の文字数を多くした方がいいのかな?


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古代編
5.妖精神と白兎


…あれからどのくらい眠っていたのだろう。

 

 

 

目を開けると、そこには見慣れた木目は無く、土の天井が広がっていた。

 

「…ここは…?」

 

 

辺りを見回すと、壁や天井はすべて土でできていた。洞穴の中なのだろう。出口のような穴から外が見渡せる。外は夜で、森が一面に広がっていた。

しかし不自然なのは床で、その床は色とりどりの妖精で埋め尽くされていた。

 

「なんで妖精が集まって寝てるの…」

 

呆然としていると、外から誰かが入ってきた。

逆光でよく見えないが、羽があるのでやはり妖精なのだろう。

しかし、海の上で会ったあの妖精とは雰囲気が違う。

 

「…あれ?妖気が少ない…」

 

妖精は何かを呟いたあと、ふらつきながらこちらへ近寄ってきた。

逃げようとするが、妖精が体に乗っていたようで身動きが取れない。

しかし、すぐ近くで寝ころんで、そのまま寝てしまった。

 

「何だったの…」

 

私は、妖精を押しのけて外へ出た。

 

 

 

 

洞穴を出ると、すぐ横から声がした。

 

「おや、あんたは…妖精たちの親玉じゃないか。ようやく起きたのかい」

 

話しかけてきたのは、ピンクの服を着ていて、白い尻尾と耳が生えた少女。

 

「貴女は誰?」

「怪しいもんじゃないよ。私は因幡てゐ。見ての通り兎の妖怪さ。あんたの名前は妖精たちから聞いてるよ」

「妖怪…伊邪那岐の言っていたことは本当だったんだ…」

「誰だいそれは?それより、あんた、生きてたんだねぇ。200年も起きないから死んでるのかと思ったよ」

「私、200年も寝てたの!?」

「私が見つけたときは既に寝ていたから、もっと寝てたんじゃないかな」

 

どうやら、200年以上も寝ていたようだ。寝坊にも程がある。

 

 

 

その後、てゐからいろいろ聞き出したところ、いい情報が得られた。

・妖精たちは、ずっと私(宇巧)を守ってくれていた。

・最近、ある動物(サル)が爆発的に増えている。

・少し前、八ヶ丘が崩壊した。

 

 

 

 

「あんた、結構な量の妖力を持ってるんじゃないの?」

「持ってるには持ってるけど、それがどうかした?」

「いや、普通、力を持った妖怪なら他の生物を襲うもんでしょ」

 

封印してもまだ結構な量の妖力が残っているが、他の生物を襲ったことは1度もない。

他の妖怪はどのくらいの力を持っているのだろうか。

 

「私は襲われるまでは襲わないよ」

「へぇ、優しいんだね」

「そう?」

 

てゐと話していると、洞穴の中から声がした。

 

「宇巧様がいない!」

「本当だ!」

「大変だ!」

 

妖精たちが起きたようだ。

 

「あんた達、宇巧ならさっき目覚めたわよ。ほら、ここにいるでしょ」

「わぁ、本当だ~」

「宇巧様、お目覚めになられたんですか!?」

「ようやく起きたんだねぇ」

 

妖精たちがこっちに集まってくる。騒ぎで目が覚めた妖精たちも、ゆっくりと近付いてくる。

一番前に出てきたのは、昔海の上で見つけた妖精。

少し間をおいて話しかけてくる。

 

「おはよう、お母さん」

「お母さん?…それより、貴女喋れたの?」

「お母さんが眠ってから数十年で喋れるようになったよ。」

「寂しい思いをさせたね…」

「いいや、だんだん妖精達(みんな)が生まれてきたから、寂しくなかったの」

「生まれてきた?」

「っと、そこは私が説明するよ」

 

てゐが割り込んでくる。

 

「あんた、寝てる間ずっと妖力を纏っていたんだよ。偶にその妖力が集まって、妖精が生まれた。ここにいる妖精達も、みんな同じように生まれてきたよ。だから、あんたがお母さんなのさ。」

 

少し複雑だが、私の妖力でここにいる妖精達が生まれた、ということでいいのだろう。

 

「つまり、ここにいる妖精は皆私の家族ってこと?」

「そうだね」

「じゃぁ、妖精たちは何人いるの」

「多分100は超えてるんじゃないかな」

 

大家族の域をとっくに越している。小さな村といっても過言ではないだろう。

 

「そうだ、妖精の村とか作ってみようよ」

「へぇ、面白いことを考えるねぇ」

「お母さん、その村はどこに作るの?」

 

ちょっとした冗談のつもりだったのだが、何故か乗り気な2人。

他の妖精たちは冗談として受け取ってくれるだろうか。

 

「…じゃぁ、皆はどうなの?」

「さんせーい」

「賛成です」

「宇巧様が仰るなら」

「いいんじゃないかな」

...etc

 

皆口々に言う。結局、誰一人として反対はいなく、本当に村を作ることになった。

冗談のつもりだったが、案外面白いかもしれない。

早速、いい土地を探しにどこか遠方を目指して旅立って行く。

大量の妖精を引き連れて。

 

 

 

 

 

 

 

~飛行中の会話~

 

「てゐもついてくるの?」

「面白そうなことがあるのについていかない理由はないでしょ」

「そこまで退屈だった?洞穴の暮らしは」

「特に変わったことが無かったからね。話し相手がいるだけでも私は満足だよ」

「成程…」

 

 

 

 

「ねぇ」

 

最初に出会った妖精に訊く

 

「訊くのが遅れたけれど、まだ名前を聞いてなかった」

「言ってなかったっけ?」

「あのころは名前なんて必要なかったからね」

「そうだったっけ。私はコキアっていうの。」

「いい名前じゃん」

「伊邪那岐に付けてもらったの」

 

 

 

 

 

 

 

 

暫く飛んでいると、湖があった。かなりの大きさの湖で、水は透き通っている。

 

「せっかく家を作るんなら、もっと面白くしてみない?」

 

と、てゐ。

 

「何かいい案でも思いついたの?」

「隠したりしてみたらいいんじゃないかな」

 

いい案だとは思うが、さすがに無茶がある。

しかし、神力を使えばできるかもしれない。

入り口だけ隠して、村は空間いじって創れば場所も取らないだろう。多少無理矢理でも大丈夫だと思うが、腕が鈍ってないかが心配だ。

 

「その案採用。」

「あんた、大きい村をどうやって隠そうっての」

「空間をいじって作ろうと思う」

「空間を弄る?そんな真似、大妖怪でもできやしないよ」

「まぁ見ててみなよ」

 

神力を使って、湖の中心に土を盛り、小さい島を作る。

その島に、直径3m位の縦穴を開けてゲートの代わりにする。

ここからが大仕事。宇宙に飛んで行って、封印の髪留めを外したら、神力を開放する。

そして、宇宙に岩で星を作る。大気も忘れずに用意する。

星に竪穴を開けて、地球の縦穴と空間を繋げれば完成。

髪留めを付け直す。

 

無事成功したことを確認して、てゐ達のところに降りる。

 

「あんた、どれだけの力を持ってるんだい…1000年生きた大妖怪でもそこまでいかないよ」

「確かに1000年なんて余裕で超えてるからね」

「…しかも妖怪じゃなくて妖精なんて。普通妖精は弱いものなのに」

「そんな常識、私には通用しないね」

「ほんとに規格外だよ、あんた」

 

 

 

 




本当はこの話で8話目でした。それが約半数に…。


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6.妖精神と隠れ里

「まだ入り口が隠れてないよ」

「そのくらいの大きさなら私に任せて」

 

コキアが割り込んでくる。

 

「そういえば、隠すはあんたの特権だったね」

「どういうこと?」

「私は、隠す能力をもってるの」

「何でも隠せるってこと?」

「うん。入り口でも、小島でも。目に見えないものだって隠せるんだよ」

 

どやぁ、と言わんばかりに(無い)胸を張るコキア。

…ん?

 

「じゃぁ、私が隠さなくてもよかったじゃん」

「私は隠すことができても村を創るのは無理なの」

「私も専門外なんだけどね…」

 

~~~~~~~~~~~~

 

「早速隠しちゃうよ~…それっ」

「この術式…妖術も混ざってるの?認証用の術だけど」

「そこに登録した人は、隠してるものが見えるようになるよ」

 

直後、淡い赤色の術式が粉になって散って行く。

残されたのは、穴の開いていない小さな島1つ。

 

「ここに、手を置いて」

 

言われた通り、術式の中心に手を置く。

すると、術式が光り始め、強い光を放った後、先程と同じように散って行く。

島には、元通りぽっかりと穴が開いていた。

 

「ほら、他の皆も」

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

妖精たち全員が術に触れ、縦穴に入り終わった。

 

「それにしても、この星はあんたが創ったのかい?」

 

と、信じられなさそうに訊いてくるてゐ。

普通は自分の隣に創造神が居るなんて信じられないだろう。

 

「神力を固めたただの岩だけどね」

「神様は泥団子を作る感覚で星を創るのかい?」

「大体の神は神力が尽きるでしょ」

「あんたは有り余ってるんだろうね…」

 

 

 

 

 

「お母さん、村ができてないよ」

 

コキアの言う通り、星には家どころか草木一本ない。

 

「うーん…まず森を創ろうかな」

 

土の力で星に土を敷き、草木を生やして森を創る。

妖精たちは、木に穴をあけてそれぞれの住処を作った。

 

「私も家を作っていいかな?」

「いいよ。てゐもここに住むの?」

「前の家はあの洞穴だったからね。それにここなら敵もいないし、住むには丁度いい」

 

てゐは森の方へ走っていくと、妖力で木を切り倒し、小さな小屋を造った。

小屋は完璧に造られており、無駄が一切なかった。

 

「で、あんたの家は?」

「え、私の家?」

「そうに決まってるじゃない。まさか家無しなんて考えて無いでしょうね」

 

風雨が届かない空中で寝るつもりだったのだが、てゐに先読みされた。

家を造る気は無かったのだが、折角だしこの機会に造ってみよう。

神様の家、ということで神殿を造ろうと思う。

神が神殿を造るのもどうかと思うが、ちょっとくらい見栄を張ってもいいだろう。

 

金の力で石の山を創り、妖力を圧縮した刃で削って行く。

 

「あんた、相変わらず規模が大きいね、私達とは桁違いだよ。」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

神殿内部

 

「これくらいでいいかな。」

「普通なら何年もかかる物をわずか数分で…」

 

神殿内部には、両側に何本もの石の柱、奥には3段の階段と踊り場。

全体的に薄暗く、踊り場だけが消えない炎で明るく照らされている。

 

「この星に西洋建築も変かな…?」

「いやいや、変だから面白くていいんじゃないの。」

「そうかな?」

 

ただの神殿ではなく、何か機能を持たせないと入る気がしないくらい、中は殺風景だ。

神殿といえば…何だろう。神が降臨する場所?祈りをささげる場所?  …どちらも、必要ないし、村でできる。  ん?降臨する?

 

「テレポーターとかどうかな」

「な、なによ急に」

「あ、いや、神殿に何か機能を持たせようと思ったんだけど、テレポーターとかいいんじゃないかな?」

「なによその、てれぽーたー、って奴は。」

「ああ、知ってるわけないか。テレポーターっていうのはね」

 

~少女説明中~

 

「えっと、つまり、そのテレポーターっていうのを使えば、違う場所や時間に行けるってこと?」

「その通り。」

「すごいじゃないか、それを使えばこの神殿からどこへでも行けるってわけかい?」

「うん。ただ、妖精達が変なことしないように、限られた人しか使えないようにするよ」

「誰が使えるの?」

「今のところは、私と、てゐと、コキアだけにしようと思ってる。」

「私も入れてくれるのかい、ありがとう。」

「どういたしまして。さて、早速装置を作るよ」

 

 

~~~~~~~~~~~~~

 

 

「やっとできた…」

「どれだけ大掛かりなんだい、手伝おうにも何も分からなかったよ」

 

呆れたようにてゐが言う。

何処にいても自由に戻れるようにしたので、迷う心配はなくなる。

 

 

村も家(木の穴)が次々と出来ていき、移動経路も確保できた。

 

 

何にしろ、暫くは退屈な日常を神殿で解消できるだろう。

また、面白いことが起こるまで。

 




小説1話投稿から100分以内に、いきなり50UAに到達しました。夜分遅くにどうも。


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7.妖精神と薬師

サブタイトルネタバレ。


「妖怪が人間にやられている?」

「うん」

 

久しぶりにてゐが来た。何をしていたのか知らないが、妙な噂を持ち込んできた。

近頃人間が妖怪を圧倒しているらしく、殺される妖怪が後を絶たないという。

ただの人間なら妖怪に触れるのがやっとだ。そんな人間がどのような方法で妖怪を倒すのか、気になったので調べに行くことにした。

 

「てゐも一緒に行く?」

「いいや、久しぶりに帰って来たんだ。もう少しゆっくりしていくよ。」

「じゃ、私は行ってくるね」

 

ゲートを通り、てゐが言っていた場所にワープする。

 

 

SIDE OUT

~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

今、私は追われている。いつもなら苦労せずに倒せるような雑魚(ようかい)に。

 

「ギ―――――――!」

 

妖怪は、ノイズが混じったような声を発しながら突進してくる。

「もう!なんでこんな時に限って矢が無くなるの!」

やり場のない怒りを声に出しながら、全力で街へ走る。

 

遠くに街が見えた。あそこまで辿り着けば、兵士に助けて貰ったり、矢も補給できる。

しかし、少しの油断がミスに繋がる。私は、石に躓いてしまった。

背後に、妖怪が迫る。 覚悟を決めたその時。ふと、声が聞こえた。

 

「ヒーローは遅れてやってくる、か。あれ?この場合はヒロインなのかな?」

 

少女の声とともに、妖怪が潰れた。

潰れた妖怪の上には、羽の生えた少女が立っていた。おそらく妖精の類だろう。

純白のワンピースには、返り血が付いていなかった。

日陰の中で黄緑色の瞳が光る。

この妖精は私を助けたつもりなのだろうか。

しかし、妖精が人間を助けたという例は殆ど無い。

 

「…助けたように見せかけて、貴女も私を襲うつもりね。」

「え、ちょっと!それは酷いでしょ!」

 

妖精は純粋だ。あの反応からして、本当は襲うつもりはなかったのだろう。

しかし、用心に越したことはない。私は、街に向かって逃げ出した。

 

 

 

 

 

走り続けて疲れ切った頃。

やっと、街の入り口についた。

門番がきっちり街の入り口を護っている。

 

「…八意様で間違いないでしょうか」

「ええ。通して頂戴」

 

ビルの並ぶ街中でも、ひときわ目立つ、大きな八意家の家。

自室に入ると、早速今日採ってきた薬草を机に広げる。

 

「八意様、たまには研究以外のことをしてみては如何でしょうか。疲れが出ていますよ」

 

使用人が昼食を運んでくる。

研究以外の事…たまには気分転換も大事だろうか。

先程の、自分を助けてくれた妖精のことを調べてもいいだろう。

 

―何故か、あの妖精は妖力探知機に映らなかった。

 

 

 




皆さん、年末年始は誰と過ごしましたか?
彼女?彼氏?両親?親友?

私は勿論彼女と過ごしましたよ。
ただ、なぜか彼女は画面から出てきてくれないんですよね… 


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8.妖精神と生存競争

この時代の人間の住処は、とても安全で頑丈だった。

街には結界が貼ってあって、並みの妖怪では入れない。

一度こじ開けてみたら、すぐに発見されたので逃げた。

 

街の周りを飛んでいると、この前助けた人間が、数名の人を引き連れてやってきた。

私は木の陰に隠れ、聴力を強化して会話を盗み聞く。

 

「…奴は探知レーダーに映らないわ…」

「…ではどうすれば…」

「…双眼鏡で探さないといけないわね…」

「…しかし、見つけても倒せるとは限らない…」

 

誰かを探しているようだ。

暇だから手伝ってあげよう。

 

「何してるの?」

「あ!奴がいたわよ!」

「皆!奴だ!殺せ!」

 

こちらを見るなり光線銃を撃ってきた。

反応が遅かったせいか、光線が左腕に掠る。

掠っただけのはずが、左腕は無くなっていた。

 

「これ、普通の妖怪じゃ死んじゃうよ?」

「なっ…痛みを感じていない!?」

「諦めないで撃ち続けて!弱点はあるはずよ!」

 

この前会った銀髪の女が、仲間らしき人間に命令する。

私は右手で手刀を作り、妖力で強化してから、亜光速で人間たちの銃を破壊する。

封印を強めているので今はこれが最高速だ。

 

「銃が!もう武器が無いぞ!」

「なぜ銃しか持ってこなかった!」

「まだよ、私の弓があるわ!これで仕留められなかったら終わりよ!」

 

銀髪の女は、こちらに向かって矢を放つ。弓とは思えない速度で迫ってくる。

しかし、光線銃に比べれば圧倒的に遅く、移動しなくても平気で掴める。

 

「…あなたの勝ちよ。好きにして、覚悟はできているわ。」

「じゃぁ…人間の街に入らせて。無理矢理入ったら追い返されたからね」

「それは、街の皆も襲うってこと?それは月夜見様が許さないわよ」

 

物凄い勘違いをされている気がする。

私が人を襲うような妖怪に見えるのか。

 

「違う違う、人間と暮らしたいんだよ。」

「それはできないわね。妖怪が人間の街に住むなんて、嘘に決まってるわ。」

 

私が反撃してこないのを良いことに、人間たちは街へ帰っていった。

 

「妖怪だからって、街に入るくらいいいじゃない…」

 

少し離れたところにある湖の畔で、文字通り羽を休める。

 

なぜあの人達は私を襲ってきたのだろうか。

人を探しているように見えたのも、私を見つけて殺すためだったのだろう。

封印を緩めないと、あの光線で殺される恐れはある。

しかし封印を緩めれば、人間どころか妖怪にも敵視される。

幸い人間たちは亜光速についていけないようだから、油断しない限り殺されはしないだろう。

 

ザッ、ザッ、ザッ。

 

何かがこちらに近づいてくるようだ。

今度は攻撃されないよう、人間に擬態する。

 

藪の中から何かが現れる。

 

「おお、人間か?俺の縄張りで寝ころぶたぁ、いい度胸じゃねえか!」

 

藪から現れたのは、額に1本の角を生やした大男。道着のようなものを着ているが、上半身は裸。

能力で調べると、種族は鬼だった。

 

「おい人間、聞いてるのか?まぁいい、逃げ出す前に食っちまうぞ」

 

鬼はそう言い、飛び蹴りで攻撃してきた。人間なら即死するような威力だが、私は右手で跳び蹴りを止める。

 

「なんだてめぇ、人間のくせに強いじゃねえか」

「勝手に人間って決めつけないでよ」

 

私はいつもの妖精の姿に戻り、妖力を丸めた球で鬼を撃つ。反応が遅れた鬼の腹に、妖力弾が直撃する。

 

「妖精!?いや、妖精がこんな力を持っているはずは…」

「油断してるとやられるよ」

 

鬼の腹を、妖力を纏った手で思いっきり殴る。

鬼は遠くへ吹っ飛んで行き、やがて見えなくなった。

 

「…あ、やっちゃった。大丈夫かな、あの鬼」

 

少し疲れた体を休めるため、何事も無かったかのように寝ころぶ。

―左腕に違和感を感じた。

 

「あ、左腕負傷してたんだった」

 



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9.隠妖精と人魚姫

「…き……コ…ア……」

 

私は薄らと目を開ける。

太陽の光がまぶしい。

 

「やっと起きた。コキア、今日は地球に行くんじゃなかったの?」

「あ、よーちゃん。起こしてくれたの?ありがとう。」

 

私は今日、地球に行く。

 

「それじゃあね、よーちゃん。」

 

私はある場所へ赴く。

だいぶ前にお母さんが建てた神殿だ。その神殿には時空を超える機能がある。

神殿の中央にある謎の機械に手を触れて。

――私は、地球にワープする。

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

―冷たい。

 

頭が冷たい。

 

頭を触ってみると、額に氷が乗っていた。

目を開ける。  広がる空。空。空。

どうやら私は寝ていたようだ。

 

「あ、目を覚ましましたか」

 

声がした方を向くと、緑の着物を着た人が寝転んでいた。

その人の下半身は、魚の尻尾だった。

 

「に、人魚?」

「ええ。あなたは…妖精のようですね。なぜここで倒れていたの?」

「私、ここで倒れてたの?」

 

見渡してみると、ここは草原のようだ。一本の川が流れている。

人魚の下半身は川の水に浸かっていた。

 

「えっと…久しぶりに地球に来てから、ここまで記憶が無いの。」

「まぁ、久ぶりに…?貴女は何処で暮らしていたというのですか?」

「妖精の村。この空の向こうにあるの!」

「ふふふ、おとぎ話みたいですね。」

 

人魚は空を見上げ、薄らと笑みを浮かべる。

子供の妄想だと思い、信じていないのだろうか。

人魚が、何かを思い出したように私に話しかけた。

 

「そうだ。この川の続く湖に、妖精が出てくる島があるのですが、行ってみません?」

 

人魚は、私の返事も聞かずに川の下流へと泳いで行く。着物はなぜか濡れないようだ。

湖の島…私達の村に繋がる島だろうか。穴は隠してあるから村には入れないだろう。

私も、人魚を追って川の下流へ飛んで行く。

 

 

~~~~~~~

 

人魚を追って着いたのは、やはり私たちの村の入り口だった。

湖には濃い霧がかかっており、妖精が数十匹見える。

妖精の一人がこちらを見つけ、ふよふよと近づいてくる。

湖の見回りを担当している妖精だ。

 

「あ、誰かと思えばわかさぎ姫様とコキア様じゃないですか」

「様?まさか、貴女って妖精の中でも高い地位なの?」

「そうみたい。あなた、わかさぎ姫っていうんだね。よろしく。」

 

なぜか、わかさぎ姫は動揺している。自分より立場が上の人と思っているのだろうか。

 

「わかさぎ姫も、様づけなんだね。この子と知り合い?」

「コキア様、わかさぎ姫様は湖を守ってくれているのです。」

「最近、ここに住み始めました。貴女がここの管理人なのですか?」

「いや、違うよ。お母さんじゃないかな」

 

お母さんには、地球に行く、と言われて以来会っていない。

といっても1か月程の間だが。

 

 




てんぷらですか?ええ、そこそこ好きですよ。


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10.妖精神と銀の式神

新キャラ登場!


揺れている。

…担がれている?誘拐?

状況を把握するにも、寝起きは目が開けにくい。

薄らと目を開けるが、目に映るは地面のみ。

能力で周辺の生物を探知する。

 

…自分を担いでいる中級妖怪1匹、周囲に弱めの中級妖怪3匹。

左右には木の生命が大量に感知出来た。

獣道でも歩いているのだろうか。

 

怪しまれないように脱出するためには…

 

左右にある木を部分的に急成長させ、獣道を遮断する。

 

「うおっ、何だ!?」

「誰だ!人間どもか!?」

 

耳元で叫ばれると、五月蝿いことこの上ない。

妖怪達は人間の仕業だと思っているようだ。

人間はこんなことが出来なかった筈だが、この際好都合だろう。

 

樹木をどんどん伸ばし、箱部屋を作る。

妖怪達は木を破壊しようとしている様だが、破壊された瞬間再生する樹木はそう簡単に破れない。

 

私は下を向きながらも、箱部屋の中に妖怪を召喚(創造)する。妖力は多めに。

大妖怪級の妖狐が表れる。

妖力は大妖怪級なのだが産まれたてなので一尾。(普通、妖狐の大妖怪は9尾)

 

「なんだこいつ!?」

「反逆者だ!やっちまえ!」

 

妖狐が妖怪達を追い払うよう念じる。

妖狐を中心に何かの術が発動したようだ。

 

「急げ!」

「お前らも早く!」

 

私が樹木を元に戻すと、4匹の妖怪は、急にどこかへ走って行った。

私と妖狐を置いて。

 

「幻術?」

「そうだ。主(あるじ)、無事か?」

 

創造した妖狐は白い毛並みをしており、青色の着物を着ていた。男物の着物だ。

顔といい声といい、恐らくオスの狐…もとい、妖狐だろう。

主、とは。伊邪那岐の時とデジャブを感じる。

 

「そうだ、伊邪那岐は最初から名前が付いてたから、貴方も何か名前が付いてるでしょ?」

「いや、俺に名前は無い。主が決めてくれ。」

 

ここは伊邪那岐と違うのか。何もかも伊邪那岐と比較していてはいけない。

私が他人の名前を決めた事は無いので、酷い名前になるかもしれない。

 

「そうだ、白銀(しろがね)って名前はどうかな。駄目?」

「主が決めた名前だ。拒否するはずが無いだろう。元々この体も主がくれた物だからな。」

 

遠回しに却下されている気がするが、いいのだろうか。

白いから白銀、なんて誰でも思いつくような名前。本人が良いならいいか。

 

「じゃぁ、これから仲間としてよろしくね。」

「主に従うのは当たり前のことだ。よろしく頼む。」

 

仕方なくやってる感じも無いことは無いのだろうか。私が創ったとはいえ、一つの生命。

休暇も多めに与えてやろう。

 

 

「…あれ?私なんで担がれてたんだっけ?」

 




書き溜めはこれでおしまいです。

新キャラ登場、原作キャラだと思った?残念、またオリキャラでした。
10話時点で原作2人とは…


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11.妖精神と月へ行く者

「ねぇ白銀、なんで私担がれてたんだろう?」

 

また封印を強めたためか、10cm程伸びた青緑色のポニーテールを揺らす。特に意味は無い。

話しかけているのは、先程創造した妖狐、白銀(しろがね)。白髪に青い瞳。

 

「前方に妖怪がいるぞ。かなりの量だ。」

 

能力で探知してみると、確かに妖怪がいた。かなり遠くに。

白銀、かなり目が良いようだ。

 

「どうする?行ってみる?」

「…待っていても何も得られないぞ。」

 

白銀が歩き出す。

ちなみに私は今、白銀に肩車してもらっている。視点がいつもより高い。時々、白銀の尻尾が首元に触れる。

 

 

 

 

 

しばらく歩いていると、獣道を抜けて開けた土地に出た。

大勢の妖怪たちが集まっている。

西を見ると、人間たちの街が見えた。

 

殆どの妖怪がこの広間に集まっているようで、周りの森には妖怪の気配がしなかった。

妖怪達の上を白銀と飛んでいると、見知らぬ妖怪が近づいてきた。

 

「おう、お前さんも参加するのか?ずいぶん遅かったじゃねえか、あと四半刻(現在では30分)しかないぞ」

「あと四半刻でなにするの?」

「知らなかったのか?あと四半刻で人間達が月に行くというから、儂等妖怪が奇襲を仕掛けるのさ。」

 

全く知らなかった。この広場に集まっている妖怪の量…数十万、いや、百万はいた。

人間たちも妖怪に対する対策はそれなりにあるようだが、数に押し負けるだろう。

恐らく人間たちはこの奇襲のことを察知できていない。

だとしたら、襲われたときに人間たちが取る行動…軍人たちがロケットを護り、その間に住民が逃げる。

これしか考えられない。

 

「白銀、付いてきて」

「分かった」

 

~~~~~~

 

私と白銀は今、人間の街の真上にいる。

本当は白銀をあの場所に残して行っても良かった。

しかし、白銀を連れてきた理由。

 

「人間に完璧に偽装する術、出来る?」

「ああ。すぐできるぞ。」

 

それは、私が出来ない程高度な術を発動してもらうため。

当然だが、妖精より妖狐の方が術に長けている。

私も人間に化けることはできるが、完璧ではない。少なくとも今の人間たちには見つかってしまうだろう。

 

「できたぞ。どうだ?」

 

私の姿は人間に化けたときと変わらないようだ。

白銀の姿は、茶が混じった黒髪で、瞳は茶色だった。

 

「流石。完璧だね。じゃぁ、人間の街にテレポートするよ」

 

私と白銀は、人間の街にワープする。

少し前に出会った人間の元へ。

 

 

 

偽装が完璧だったからか、無事ワープできたようだ。

少し先にロケットが見える。

ロケットの傍で、見覚えのある銀髪の女性が佇んでいる。

子供を連れているようだ。黒髪のロングヘアー。

 

「おーい、久しぶり~」

 

ロケットの傍に行って話しかける。

女性はこちらを見るなり

 

「誰…?久しぶり…?見覚えないわね。」

「森で2回あったでしょ?」

 

女性は少し考えた後、驚きの表情を浮かべた。

 

「その顔、あの時の妖精…!?」

「正解~。」

「ねぇえーりん、この人だれ?」

 

子供が口をはさむ。えーりん、というのはこの女性の名前だろうか。

 

「今度は負けられないわよ!姫様だけは守って見せる!」

「ちょっと、何?私は戦いに来たわけじゃないよ。ただ、伝えに来ただけ」

「妖怪の言うことは信用できない。けれど、貴女の話なら聞いてあげても良いわ。この前の戦いだって、元々は私が悪かったもの。」

 

なぜ上から目線なのか。

そんなことはどうでもいいが、話を聞いてくれるだけ信用されているのだろう。

そこだけは嬉しいところだ。また戦う前提で話されたけど。

 

「まぁ、伝えることは1つだけ。あと四半刻もしない内に、妖怪の大群が攻めてくる。それも、ざっと百万匹はいるよ。」

「なっ…この街の全戦力でも防げないじゃない!そんなことがあるはず無いわ。」

「え~り~ん、ようかいってなぁに?」

「まぁ、私が言いに来たのはそれだけ。じゃぁね。」

 

空気を読んで少し遠くにいた白銀を呼び、街の上空へと飛んで行く。

 

妖怪たちが集まっている広場が見える高さに陣取り、変化を解く。

 

「主、人間を救うつもりか?」

「ごく一部だけね。こんなに発達した科学は、滅んでしまう方が良い。人間のためにも、妖怪のためにも。」

 

 

 

    歴史の大きな分岐点まで、あと15分。

 

 




人妖大戦での被害…またオリキャラが増える予感!



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12.妖精神と人妖の戦

人妖大戦、もうちっとだけ続くんじゃ。


遠くに見えるは妖怪勢力。

眼下に広がる人間勢力。

 

やがて、少しずつ、妖怪が動き出す。

人間たちは慌てて広場へ避難する。

広場にあるロケットに、我先にと乗り込んだ。

 

地面が揺れる。

そう、妖怪が襲撃してきたのだ。

 

「白銀は此処で待っててね」

「仰せの通りに」

 

先程の人間の元へと駆けつける。

よほど警戒していたようで、私の方を遠くから見つめている。

私がある程度近づくと、向こう側から話しかけてきた。

 

「貴女の言う通りになったわね。一応感謝しておくわ」

「結局信じたんだね、私は敵側(ようかい)なのに。」

「忠告を無視してのんびりできるほど人間は陽気じゃないわ。じゃぁ、私はもうロケットに乗るから。」

 

別れの挨拶を口にした女性は、ロケットに足を運ぶ。

 

「それじゃぁね、えーりん。もう二度と会うことは無いだろうけど」

「永琳、よ。さよなら、人間側の妖怪(反逆者)さん。」

 

永琳がロケットに乗り込むと同時に、妖怪が街へ入ってきた。

ここからでも聞こえる断末魔は兵士の物だろうか。

遠くの方で血飛沫と断末魔が飛び交う。

 

「さて、私も参加してみようかな。」

 

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

私は今、最前線にいる。まだ攻撃はしていない。

妖怪と人間の戦いは、恐らく妖怪の勝ちだろう。

人間が妖怪を倒しても、圧倒的な数で押し返される。

このままでは人間は押し負けてしまうだろう。

 

私は空気と同化する。妖精は自然の産物、自然そのものだ。空気になることなど容易い。

妖怪も人間も私には気づいていないようだ。

空気と化した体を素早く動かし、私自身が竜巻になる。

竜巻は妖怪だけを根こそぎ巻き込み、何処か遠くへと吹っ飛ばす。

残った妖怪はごく少数で、どうすることも出来ないまま木の陰などに避難する。

応援が来るのを待っているのだろう。

 

人間たちは放心状態で、何が起こったかも分かっていないのだろう。

只々こちらを見て呆然としている。

私はそんな人間たちを下目に、永琳の乗っているロケットへと足を運ぶ。

竜巻はやがてそよ風へと姿を変え、私は妖精の体に戻る。

 

 

 

 

永琳の乗っているロケットの窓を覗く。

永琳は先程の竜巻を見ていたようで、信じられない、といった顔をしている。

膝には、少し前に会った黒髪の子供が座っていた。永琳に何かを聞いている。

 

永琳も此方に何かを問いかけているようだが、ロケットの窓は音を通さない。

 

 

やがて、ロケットが発射された。

月を目指して上へ上へと。

私はロケットを追わずに、そのまま見送った。また会うことは無いだろう。

 

 

~~~~

 

白銀を待たせていた位置に戻る。

 

「主、もう戻ってきたのか。」

「そんなに早かったかな?それより、今からすべきことは分かる?」

 

といっても、白銀には分からないだろう。

 

眼下に広がる無数の空き家、物音一つしない無人の街、人間達の高い技術力。

これだけで分かる人も十分にいるだろう。

 

「人間達が生み出した沢山の物を貰っていくよ。」

「つまり、俺はめぼしいものを取っていけば良いのだな?」

「そういうこと。」

 

私は白銀に、小さな手提げを渡した。

手提げは私が創った異世界と繋がっており、いくらでも物が入る。

 

「じゃぁ、私はこっちから取るね。」

「では、俺は反対側へいこう」

 

白銀は、私と正反対の方向に歩き出した。

私も、白銀と正反対の方向へ歩き出す。

 

 

 

 

~少女採取中~




空き巣、ダメ、絶対。

主の好きなキャラは、華仙やにとり、こころですかね。
わかさぎ姫や芳香も好きです。


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