アルドノア二次(仮) (クイハ)
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first season
1話 プロローグ


アニメ二期の開始に合わせて書き始めました
衝動で書いたのでどこまで続くのやら・・・

なんとか頑張ります(´∀`)



俺は火星人だ。

いや、正確に言うと地球人と何ら変わりないのだが火星で生まれ火星で育ったいわゆる火星人である

 

1972年、レイレガリア・ヴァース・レイヴァース博士率いる調査団が古代文明のテクノロジー通称「アルドノア」を発見し、その正統な継承者であるとされてから世界は一変した

火星側はアルドノアの独占を主張し、地球側は共有化を主張した。

 

そして1985年、レイレガリア博士は自らを皇帝と称し、火星に「ヴァース帝国」を建国した。

俺が生まれたのはそんな火星と地球がにらみ合っていた時期だ。学校では時には言外に、時には直接地球側を批判する思考を教え込まれ、皇帝や騎士といった封建的な身分制度があり、工業の発展に力を入れるあまり環境が悪化していく時代だ。

火星人、特にヴァース帝国が建国されて以降に生まれた者は地球人を劣等種としてみなし、火星人であることに誇りを持つ者が大半だ。

そういった意味では、地球の書物を読みあさり火星の幼さを感じていた俺は異端児だったのだろう

 

そんな俺は地球に憧れを持ち1999年、火星と月をつなぐ「ハイパーゲート」を移動する揚陸城に乗り込んだ

それが俺の戦いの始まりだったのかもしれない

 

ハイパーゲートの暴走によって月が砕ける大惨事「ヘブンズ・フォール」が発生し、大型機動兵器「デューカリオン」に潜伏していた俺は大怪我を負った。

 

その時現場に居合わせたのが鞠戸孝一郎(まりとこういちろう)大尉だ。鞠戸さんに助けられた俺は火星人であることを隠しながら保護してもらった。

俺の身元引受人になってくれ、記憶喪失を装った(というか実際記憶喪失していた)俺に地球のことをいろいろ教えてくれた。今では年の離れた兄のような存在だ

 

地球と火星の関係はヘブンズ・フォール後の2000年に休戦協定が結ばれ、少しずつではあるが和平交渉が進められていった

俺は鞠戸さんと同じ軍人となり、地球の対火星軍用に作られた人型機動兵器「カタフラクト」の操縦士(パイロット)になると同時に、これまた鞠戸さんと同じく高校生に操縦・戦闘技術を指導する教官にもなった

 

それから幾分かの月日が経ち迎えた2014年世界は新たな局面を迎える・・・

 

「鞠戸さん、いい加減起きないと遅刻しますよ」

 

「あ~わかってる、わかってる。そう急かすなよ(まこと)

 

こりゃダメだ。この酔っ払いを待ってたら自分まで遅刻する。

いやまあ既に遅刻なんだが・・・

 

「俺、先に行きますからね」

 

俺は鞠戸さんの朝食をテーブルの上に置いて家を出た。愛車の大型バイクにまたがりエンジンをかける。

エンジンの始動と共に心地いい振動が伝わる。ヘルメットを装着して俺が勤めている芦原高校に向けてバイクを走らせた

 

 

「お、やってるやってる」

 

今日は兵科教練のある日で学生たちは訓練用となりつつあるカタフラクト「KG-6 スレイプニール」に乗り訓練を行う。訓練といっても簡単な操縦や射撃訓練のみで

成績優秀者が軍に入ったときにその成績を見て操縦士になることがある程度のものだ。

 

「あっ!有田中尉遅ーーい!」

 

「いやーすまん界塚准尉。鞠戸さんが中々起きてくれなくてな」

 

今ちょうど生徒に指示を出していた彼女は界塚ユキ准尉だ。若さ故か、おっちょこちょいなところはあるが優しく明るくそれでいて芯の強い女性だ

ちなみにその容姿と持ち前の明るさから生徒の間では女神のように言われてたりもするとか・・・

 

「あれ?その鞠戸大尉が見当たらないですけど・・・」

 

「朝から飲みだして、やる気が出なさそうにしてたんで面倒だからおいてきた。酒は没収したから時期に来ると思うけどな」

 

「あの酔っ払いめ」

 

そう言って少しの間遠くを睨むとすぐに生徒たちの方に戻っていった

俺は「急いで荷物置いてくる」と言って教官室へと小走りで向かった

 

教官室に入るとそこには学校の保健医兼鞠戸さんの担当医の耶賀頼蒼真(やがらいそうま)先生がいた。

 

「今日は和平のために火星の王女様が来るそうですからね。15年前の戦いを生き延びた大尉としては思うところがあるんでしょうね

とはいえお酒の話はこれとはまた別ですから止めていただいて感謝します」

 

「いきなり何を言い出すかと思えば・・・盗み聞きはあまりいい趣味とは言えませんよ」

 

どうやってさっきの話を聞いてたんだ?あとついでに言っとくと俺も15年前の生き残りですけどね

と思いながら急いで着替えて教官室を出た

 

「頑張ってきてくださいね」

 

う~ん、耶賀頼先生っていい人なんだけど何かやりづらいんだよな

 

そんなことを思いながら走っているとやっと来た鞠戸さんが界塚准尉に怒られている姿がみえて思わずふっと微笑んだのであった

 




次回でアニメ1話以上進む予定です
感想等あればどんどん言ってくださいお待ちしております


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2話 開戦

◇の後ろにSide~と付くときは視点が変わる時で
何もないときは場面が変わる時なのでご了承ください

今回は戦闘はしません


「お~い真さん。こっちこっち」

 

「はいはいわかってるからそう急かすなよ界塚」

 

俺と界塚は火星の王女様、アセイラム姫のパレードが開かれる通りに来ていた

これはもちろんのことながらデートなどではなく、職務の延長線上にあるようなものだ

というのもこのパレードの交通整備や観客の誘導には芦原高校の生徒会役員と有志の数名が駆り出されており、その監督というか様子見的なものだ

 

「おーいたいた、みんなしっかり働いてるな」

 

「そうですね。今のところ特に問題もないようですし、今日はパレード観るのがメインになりそうですね。」

 

そんな話をしながら通りの真上を通る遊歩道までやってきた。

そこにはちょうどスタッフの腕章を付け観客の誘導に励む網文韻子(あみふみいんこ)がいた。

彼女は学力が高く、カタフラクトの操縦も良い成績を収めている。更にそのしっかりものの性格からか生徒会役員にもなっている

教官の言うこともよく聞きしっかりと理解するので教官陣にも人気が高い

 

そんな彼女によっていくのは2人の男子

彼らの名前は界塚伊奈帆(かいづかいなほ)とカーム・クラフトマンといい彼女の友人だ

 

界塚伊奈帆は別名界塚弟で、その名のとおり今俺の隣にいる界塚の弟だ。

こちらも網文同様に座学、実習ともに成績優秀でしっかりものだ。網文とは違って明るい方ではなく冷静沈着な方のしっかりものだが・・・

普段あまり表情が変化しないので下手な大人(特に隣にいる姉)より大人びているが、時々理屈っぽくごねるのが子供らしいなと感じるのだ

 

カーム・クラフトマンの方は先述の二人と違い座学も実習も成績不振だ。

しかしその元気そうな見た目に違わずお調子者ながらも活気あるムードメーカーだ

更にカタフラクトについての知識だけは人並み以上にあるので、その力強さとあわせて整備士が似合うのではないかと睨んでいる

 

「あ、見てくださいよ真さん。どうやら到着したみたいですよ」

 

「本当だ・・・・な」

 

「どうしたんですか?真さん」

 

貝塚に言われて振り返るとそこには確かにアセイラム姫の乗る車があった。だがその更に後方の上空に飛行物体があるのが見えたのだ

その飛行物体をよくよく見ているとどうやらミサイルのようだった

 

「界塚准尉これより観客の避難誘導を行うようにこの場にいる生徒に伝令。その後速やかに基地へ移動する」

 

界塚准尉と呼ばれプライベートの顔からから軍人の顔へと変えた彼女はそれでもまだ困惑していた

 

「はっ!しかしどうゆうことですか有田中尉?」

 

「あれを見ろミサイルだ。狙いはおそらくアセイラム姫、こんなことをしたら結果がどうであれ・・・・」

 

と話していると後ろから悲鳴が上がった。既に何発か建物にぶつかり爆発したミサイルの流れ弾がこちらに向かってきていたのだ

俺はホルスターから常時携帯している拳銃を取り出しミサイルの信管にめがけて発砲。なんとか空中で爆発させることに成功した

 

そして振り返って言った

 

「・・・開戦だ」

 

界塚准尉は信じられないという顔をしていたが、再び上がった悲鳴に思わずそ振り向いた

その視線の先では、爆風により転覆した車から這い出たアセイラム姫に一発のミサイルが落ちていくのであった・・・

 

◇Side三人称

 

「通りの観客の避難は完了しました。」

 

「・・・あぁ、了解した。基地へ向かうぞ」

 

「?中尉、どうかしましたか?」

 

「・・・いや、何でもない。さっさと行くぞ」

 

真の曖昧な返事にユキは心配げな表情を見せた。避難・救助活動は別行動だったので活動中に真に何があったかユキは知らない

真はそんなユキの様子に気づいているようだが、だからといって取り繕うほどの余裕は見られなかった

 

一体真に何があったのかそれを知るのは真本人だけである

 

二人が車に乗り込み基地へと向かっている途中で上空から何かが降ってくるのが見えた

「何か」とはズバリ火星の揚陸城である。アセイラム姫の暗殺の知らせを受けた軌道騎士が地球へと上陸(着陸?)してきたのである

 

この事態を予測していた真は近くのシェルターに一旦避難した。

二人が外の様子を伺っていると道路の真ん中で落下してくる揚陸城に吠える犬がいた

しかしその犬は上陸とほぼ同時に炭と化し粉々になるのであった

 

「ちっ・・・」

 

嫌なものを見たといった苦い顔を浮かべて真は舌打ちをした

今のは犬だったが逃げ遅れてた人がいたら?そう考えるとやりきれない気持ちになり、目の前の壁にぶつける他なかった

 

 

この日地球上の様々な地点に揚陸城が上陸し、多くの地球人を死に追いやった。

更にそこから出撃したカタフラクトはアルドノアドライブを搭載しており、その力の前に地球のカタフラクト隊為すすべなく蹂躙されるのであった

しかしこの事実は火星側の通信妨害により芦原にいた真たちに知らされることはなかった

 

そして同じような驚異が迫っていることもまたその身に起きてみるまで知ることのない事実である・・・




拳銃でミサイル撃墜って無理がありますかね?
無理があるなら実は真が魔改造を施したものだとでも思ってください

次回、ライエ、ダンゴムシは登確(登場確実)
エデルリッゾ、アセイラム姫は出ると思う・・・

起助の死亡フラグは折れるのか?・・・俺にもよくわかりません

それではまた次回で


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3話 強襲!ダンゴムシ

感想いただけたのが嬉しくて思わず書いちゃいました
ただし全然話が進まないorz

戦闘シーンもなかなか書くのが難しいですぞ

1/15 22:50に大幅加筆
カタフラクト隊VS二ロケラス戦を入れました


◇Side三人称

避難勧告が出され、人々が港に集まりそこにある揚陸艇で芦原を次々と脱出していく中

とある集団が誰も通ることのなくなった道路で固まっており、遠く離れたところにポツンと赤い髪の少女がいた

 

「これで俺たちも正式な貴族になれるのか」

 

「早く火星に帰って妻たちに報告したいぜ」

 

「アセイラム姫には申し訳ないがこれも必要なことなんだ」

 

口々に言葉を発する彼らは何を隠そうアセイラム姫暗殺の実行犯である

彼らはヴァース帝国のスパイとして地球に潜伏し、この度貴族への格上げという報酬(エサ)で王女暗殺テロを起こしたのだ

 

しばらくするとそこに1機のカタフラクトがやってきた。

全面が紫色に塗装された装甲で全体的に丸みを帯びた形状である

そしてそのカタフラクト、二ロケラスから外部スピーカーを通じて音声が発せられる

 

「大儀であった。約束通り貴様らを好待遇で火星に迎えよう」

 

それに答えてテログループのリーダーであるウォルフ・アリアーシュが一歩前に出て答える

 

「ありがとうございます。ヴァース帝国のために働けることを光栄に思います」

 

「そうか。では、最後にもう一つ任務がある。・・・・死ね」

 

突然の言葉に誰も反応することなく、一瞬の間に二ロケラスの手によって殺された

そしてその場に残ったのはニロケラスと遠く離れていた赤髪の少女だった

 

「ハハハッ!馬鹿な奴らめ!この計画を知る者を生かしておくわけなかろう!ん?生き残りがいたか。安心しろ貴様もすぐに奴らの元に送ってやろう!!」

 

そう言って近寄ってくるニロケラスに少女は動くことができなかった

そうしてニロケラスが腕を振り上げたときその紫の装甲に銃弾が当たった

 

 

遡ること1時間、基地に到着した真とユキは基地がほとんど全焼し、廃墟と化していた基地を見て騒然としていた

しかし、真はすぐに地下基地があることを思い出し、ユキを連れて地下への道へと歩いていくのだった

 

「偵察隊より入電!敵のカタフラクトらしき機影を発見!近くに巡回していたカタフラクト隊がいたそうなので確認に向かわせたとの連絡です」

 

「よし。基地から避難させた2機はどうなっている?」

 

「どちらも応急修理は完了しました。出れます!」

 

「二名のパイロットを選出。すぐに出撃させる」

 

「しかし、連絡の取れているパイロットがもういません」

 

「クソッわずが数kmすら届かんとは」

 

このように新たな情報や指示の声が飛び交うのは地下基地に急遽作られた火星対策本部である

もっとも火星側による電波妨害により、昔ながらの足で情報を運ぶスタイルになっていたり、情報の短距離バケツリレーになっているので

最新の情報かどうかも怪しく、指示にも困る状況ではあるが

 

「少佐、遅れて申し訳ありません有田中尉、界塚准尉現在より、対策本部の指示下に入ります」

 

「おお二人共助かった悪いがすぐに出撃してもらう。敵火星カタフラクトの目撃情報が出た」

 

「「ハッ」」

 

こうして二人は休むまもなく戦場に駆り出されるのであった

 

一方その頃先行していたカタフラクト隊は・・・

 

「怯むな!撃てッ!撃てぇぇぇ!!」

 

「何なんだあの機体は!?弾が当たらない!?」

 

「いや、当たってるのに全く通じてねぇ!!」

 

3機のカタフラクトが様々な箇所に同時発砲するが二ロケラスのバリアの前にそれは無意味だった

やがて弾切れとなり、弾倉を装填する間に距離を詰められる

 

「キサマらなど相手にしている暇はないのだ。これから後始末(ゴミ処理)があるのでな!ハハハハハッ!」

 

そして為すすべなく3機が破壊され、二ロケラスはその場を去った

やがてその場に近づく2機のカタフラクトがいた

 

「味方機、全機破壊を確忍。これはひどい。どうやったらこんなやられ方をするんだ・・・。敵機が近くにいるかも知れない注意を怠るな」

 

「了解・・・有田中尉。生存者がいます。」

 

二人は慌てて機体から降り、生存者のもとへ駆けつけた

その生存者は爆発で投げ飛ばされたようで全身に打撲と火傷があり、もはや命は風前の灯といった様子だった

 

「やつ・・め・・・弾が、うっ!・・・これっ・・ぽっち・も・・うぅ・・効きや・・・しねぇ」

 

死ぬ前に何かを残そうとするパイロットの様子に二人は黙って聞くしかなかった

 

「頼む・・・火星の・・・奴らに・・うっゲホッ!ゲホッ!・・好き勝手・・・やら・・せる・・な・・・・・」

 

目の前で死んだ仲間の遺志を聞き届け、これ以上敵の思い通りにはさせないと決めた二人はただ黙ったまま火星の機体を探すために動き出した

そしてその数分後橋の前で立ち止まる所属不明機を発見するのであった

 

◇Side有田真

 

「全弾命中。ただし敵機に損傷は見られない。・・・弾が消滅させられたか?」

 

「!民間人を発見。敵機に狙われているようです。救助するので援護お願いします」

 

「了解。敵機の装甲は特殊仕様だ。間違っても触れるな」

 

「了解」

 

さて、敵カタフラクトの目撃情報を受けて来てみれば、一気に大ピンチじゃないか

不自然に欠けた道路はあのダンゴムシみたいなのが手で抉ったものだ。

遠目で見たからはっきりとは分からないがそこには少し前まで数名が立っていた場所だ

それが血の一滴すら流れることなく完全に消滅している。

 

こちらが撃った弾が消滅させられたのは置いといてもその勢いでわずかに揺れることすらしなかった

よっぽど装甲が硬いか、あるいは運動エネルギーまでも消滅させられたか

 

そんなことを考えながらも敵機に対する攻撃の手は緩めない。

しかしあのダンゴムシはこちらに見向きもせず界塚准尉の機体を狙っている。いや、正確にはあの民間人を狙っているのか?

 

「この!しつこい!!」

 

界塚准尉はなんとか敵機の腕の攻撃を避けているが、民間人を保護しているために動きが鈍い

このままじゃそう長くは持たないと思った俺は界塚准尉に指示を飛ばす

 

「界塚准尉、こっちに向かって走ってこい!」

 

指示通りにこちらに向かって走ってくる機体。そしてそれを追いかけるダンゴムシ

界塚准尉の機体が俺を通り過ぎたタイミングでダンゴムシの関節にめがけて引き金を引いた

 

数十発撃ってほんの2,3発だけではあったがしっかりと関節に当たった

もっともそこが弱点であるという俺の予想は外れたわけだが・・・・

しかし、今は生きてコイツから逃げることが先決だ。こんなデタラメなのとまともにやりあっても一方的にやられるだけだ

 

そう判断した俺は界塚准尉の機体を追いかけるように走り出した

 

「虫けら共め、逃がすと思うか!!」

 

 

「界塚准尉。市街地へ逃げ込むぞ。地の利を生かして上手いこと敵機をまく」

 

「了解。それにしても敵の装甲何だったんでしょう?弾を弾くわけでもなく消滅?させるなんて」

 

「いいから走れ。それについて考えるのは無事に逃げ延びてからだ」

 

「は~い。ってナオ君だ」

 

言われて前を見るとそこには避難民を乗せているであろうトレイラーがあった。

それはちょうど新たな避難民を乗せているところで、界塚弟はその誘導を行っていた

 

こちらの足音に気づき界塚弟が振り向いた時、ビルの向こうからあのダンゴムシが無理やり突っ込んできて腕を振るった

腕に当たったのは俺の機体の足だった。正確に言うと外れたのだダンゴムシの攻撃は。

 

アイツは寸分たがわず界塚准尉の機体のコックピットを狙っていた。

何とか庇うことはできたが、俺の機体に巻き込まれて界塚准尉の機体も転倒しかけている。俺は目の前の貝塚弟を見てから界塚准尉の機体を前へ突き飛ばした

 

そして俺は替えの弾倉を放り投げ、それを撃って爆発させた

 

しかしやつはなんでビルのこちら側が見えた?しかも正確に。上空から見でもしないとそんなことできな・・・・そうか!!

 

「界塚弟!俺のことはいい、ユキ准尉を連れてどこかのトンネルか地下道に潜れ」

 

界塚弟が頷いたのを見て俺は機体から脱出した。幸運にもダンゴムシは民間人の少女にご執心なようで、戦闘不能となった俺のことは無視してトレーラーを追いかけるのであった

 

「ここから一番近いのは・・・あのトンネルか。となれば俺は一足先に学校に向かうとするか」

 

そう呟いて上空を見ると浮遊する物体が目に入った

 

これは俺も堂々と学校に行くことは出来ないな。

そう思って一つため息をつくのであった




というわけで今回はダンゴムシに華を持たせる回でした

次回いよいよアセイラム姫とエデルリッゾが登確です
マグバレッジさんはまだ少し先ですね

起助の死亡シーンは書きづらかったので飛ばします

それではまた(いつになるかわかりませんが)次回お会いしましょう


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4話 火星人

ほとんどライエとお話して終わりました
一応姫様とか出てきたけど触り程度
「あなたがモテない理由を教えましょうか?」
「多くの言葉を交わすのが大切だと聞きましたが?」
「まとまっていない文章は駄文というのです」

的な仕上がりになりました


◇Side有田真

 

起助が死んだ・・・

 

そう告げられたのはあの後破壊されたカタフラクトを放棄し、地下道を通って芦原高校でトレーラー組と合流した後のことだ

界塚准尉が気絶したと聞いたので保健室に立ち寄り、安否の確認をしたあと界塚弟から真っ先にその事実が知らされたのだ

 

その場には箕国起助と親しくしていたカーム・クラフトマン、網文韻子の二人もいた

クラフトマンはやり切れない表情で、網文は死と言うものに恐怖している様子だ

唯一冷静に報告してきた界塚弟もその無表情の裏には確かな悲しみや後悔の色が伺えた

 

やがて報告が終わる

 

「そうか、報告ご苦労だった。しばらく休んでくれ、明日は忙しくなると思うからな」

 

「えっ?なんで明日なんですか?ここには食料もありますし、みんな疲れているんです。何かするにしても明日じゃなくてもいいじゃないですか」

 

さて、どうしたものか。本当の理由を告げるにはこいつらはまだ幼い

かと言ってそれらしい言い訳も思いつかない。・・・・適当にはぐらかすか

 

「そうなんだがな・・・」

 

「それは、私のせいよ」

 

はぐらかそうとしたとき話に割り込んできたのはあの民間人の少女だった

 

「君は?」

 

突然の言葉に周りが驚く中、界塚弟が尋ねた

 

「私はライエ、ライエ・アリアーシュよ」

 

「僕は界塚伊奈帆。それでライエさん、君のせいっていうのはどういうことなんだ?」

 

「それは・・・」

 

「はいストップ」

 

今度は俺がアリアーシュの話に割って入る

アリアーシュは驚いていて、界塚弟の方は少し不満げだ

 

「実はちょっとした事情があってアリアーシュは火星人に狙われているんだ。

向こうも地球人(エモノ)の取り合いで忙しいからな。早々に出ていかないと絨毯爆撃や最悪、隕石爆撃をするかもしれない

だから、できれば明日のうちに荷物をまとめてトンズラするわけだ。これでいいか?網文」

 

「あ、はい」

 

 

できるだけ口調は軽くしたが、これ以上は聞くなという雰囲気を全面に押し出していたので、これ以上は誰も何も言及しなかった

 

「じゃあ、アリアーシュには話があるから少し来てもらえるか?」

 

その言葉にアリアーシュは頷いたので、彼女を連れて歩き出した

すると後ろから予想していなかった言葉が発せられる

 

「僕たちであの火星カタフラクトを撃退する」

 

その言葉の発生源、界塚弟のほうへ振り返るとクラフトマンや網文も俺の方をしっかりと見ていた

その瞳の奥に断固たる決意が見えた俺ははぁとため息を吐いて言った

 

「条件がある。1つ、復讐で戦うな。2つ、誰も死なすな。3つ、・・・そのリベンジマッチに俺も混ぜろ」

 

そう言って再びアリアーシュと歩き出すのだった

 

 

「さてアリアーシュ、君には質問がある。答えられる範囲で答えてくれ」

 

人気のないところに移動して彼女に話しかけた

彼女が頷くのを確認するともう一度周囲を警戒し、誰もいないことを確認してから質問を始める

 

「単刀直入に聞くけど君は火星人だね?」

 

「なんで!?」

 

驚いたように声を漏らしたあと慌てて彼女は口を塞いだ

しかし俺としてはその反応だけで十分だった

 

「なぜか?正直に言うと君が火星人である保証はなかった。ただの勘ってやつだ

まあもっとも、君が火星の関係者であることは確信していたけどな」

 

「・・・どうして?」

 

もはや隠すことを諦めたのだろう、素直に質問してきた

 

「大きな理由としては君があの場にいたことだ。俺は遠目ながらもあの現場を見ていた

君は疎外感こそあったものの確実にあの殺された集団の仲間だ。それは君の受けている精神的なダメージを見ればわかる」

 

「それだけじゃ理由にならない」

 

「もちろん。それ以外にも理由はある。殺される時の抵抗の少なさは恐らく裏切られたからだ

それに時間的にもアセイラム姫を暗殺した犯人グループであると思われるし

君が執拗なまでに狙われているのも火星側が仕組んだ暗殺テロの真実を知っているなら理にかなう」

 

「ちょっと待って。あなたは何故アセイラム姫暗殺が火星側の仕組んだものだと知っているの?」

 

「それは簡単だ。知っているわけじゃないが、それ以外にありえないんだよ

地球は火星と戦争したところで何一つとして利益がない。唯一利益があるならそれは火星という脅威がなくなるってことぐらいだ

それなら別に和平で構わないだろう?」

 

「それは・・・そうね」

 

彼女には言えないことがあり、それを言葉を次々に発することでごまかしているがあいにく気づかれていないようなので安心する

 

やがて彼女は一通り考えてからこれ以上聞くことはないといった様子で話しだした

 

「で?私をどうするつもり?言っておくけど私に人質の価値はないわよ」

 

「人質なんかにする気はない。君が今後どうなるかは君次第かな?」

 

「それはなんでも言うことを聞けって脅してるの?」

 

人を疑うことが先に立つ彼女に思わず苦笑した

 

「そういう取り方をするか。まあアリアーシュがそれがいいなら別に俺は構わんが

俺は君がこのまま行動するというのなら、このことは秘密にしようと思っている」

 

「なんで?」

 

彼女は疑いの目を向けたまま俺に質問を続ける?

 

「これは大人の責任だからな」

 

「大人の、責任?」

 

「そうだ。殺された集団は君には少し酷な言い方になるが仕方なかったんだよ

たとえ彼らにどんな理由があったとしても彼らが人の命を奪ったことに変わりはない

そしてそれは彼らが彼ら自身の責任の元で行った行為なんだからどこかでそのツケが回ってきても仕方のないことだ」

 

それなら私も・・・と言いかけた彼女の言葉を遮って俺は話を続けた

 

「でもな、それを君たち子供に求めるのは間違っている

君たちは良くも悪くも未発達だ。善悪の判断も大人に委ねることが多いだろうがそれは正しいことなんだ

子供の教育をし行動の責任を持つことで子供は失敗を恐れずに挑戦できる。失敗をすることで成長していくんだからな

責任云々は大人になった時に考えればいい。だから君の責任は俺が取ろう。みんなに嘘をつくことも、暗殺に関わっていたことも。そういう話だ」

 

それからしばらく彼女は考え込んでいた。

 

10分ほどがたっただろうか、彼女はようやく口を開いた

 

「とりあえずは何もかもを秘密にしておくことにする。あなたの責任でね

ただし、必要だと感じたらバラしてもらっても構わない。あたしの責任でね」

 

全く強情なやつだ。まあ少しは気が楽になってくれればいいんだがな

 

「それと私のことはライエでいい。アリアーシュっていうの嫌いなの」

 

そう言って彼女は歩き出した。だが途中でとまって何かを考え始めた

何事かと思ってみているとやがて一つの質問をした

 

「そういえば私が火星人だっていう理由。大きなって言ってたけど小さいのはなんなの?」

 

「そんなことか。俺は軍人であるとともに教官だからな

君の、ライエのような年の子が兵科教練に参加していなかったら特殊な事情があると思うだろう?」

 

「へえ、じゃあ兵科教練に参加している生徒は全員分かるんだ」

 

「もちろん」

 

「ふーん」

 

そう言ってライエは興味なさげにどこかへ歩いていくのであった

さて、もう一人の火星人のところへ行くとするか・・・あ、いや二人か

 

◇Side三人称

 

「ナオ君!ちょっと、ねえ聞いてるの!ナオ君てば!」

 

男子トイレに入って個室の一つをノックし続けているのは

気絶から目を覚ましたあと、怪我をした左手の治療中に耶賀頼先生から火星カタフラクト撃退宣言の話を聞いた界塚ユキだった

 

「ユキ姉ここ男子トイレ」

 

「知ってるわよそんなこと」

 

冷静にツッコミを入れるのはもちろん撃退作戦の首謀者である界塚伊奈帆だ

そんな二人が押し問答しているとそこにひとりの男性が現れた

 

「界塚准尉こんなところで何やってんだ。ここ男子トイレだぞ?頭でも打ったのか?」

 

「打ってません!それより有田中尉聞いてくださいよ。ナオ君達あのカタフラクトを撃退するって言ってるんですよ」

 

「ああその話か。で、界塚弟、作戦は立てれたのか?一応ブリーフィングルームは用意してるが」

 

「ありがとうございます。ちょうど今まとまったところです」

 

「んじゃいくか。」

 

「はい」

 

こうして何も知らないユキだけが取り残されて男二人はブリーフィングルームへと向かうのであった

一方残されたユキの方は・・・

 

「あ~い~つ~ら~!何考えてるの!ちょっと待ちなさい!」

 

と走って男どもを追いかけるのであった

 

やがて追いつき男ども、主に伊奈帆にガミガミと文句を飛ばしている

そんな時、伊奈帆が出会ったというロシア風の少女とその従者のように一歩下がってついていく金髪の少女がすれ違った

 

すれ違いざま男の一人有田真がロシア風少女のポケットにメモ用紙を忍ばせた

それに気づいた少女はメモに目を通し驚愕の表情で後ろを振り向いた

しかしその時には既に男たちの姿はなかった

 

「どうしたのですか姫様?・・・・これは!?」

 

「エデルリッゾ、正体はわかりませんがひとまず言うとおりにしましょう」

 

「はい姫様。しかしいったい誰がこんなことを・・・」

 

◇Side有田真

 

ふぅ何とかメモを渡すのには成功したかな?

思ったより界塚弟の作戦がまとまるのが早くて話し合うのは後日になりそうだがめもをしっかり読んでくれればおかしなことはしないだろう

 

「ってちょっと聞いてるんですか有田中尉!?」

 

「あ、いやすまん聞いてなかった」

 

「なに~!!」

 

そしてブリーフィングルームに着くまで今度は俺がガミガミ言われるのであった




作者の人間論に関してはあんまり批評とかして頂かないと助かります(主にメンタルが
作者はこんな感じの考えを主人公に持たせてやっていると理解していただけると嬉しいです

ではでは次回は新キャラ登確者はなしです
もしかしたら揚陸艇組が出るかも

戦闘はあるかどうかわかりません
メインはダンゴムシ攻略の作戦会議になることが予測されます

それでは次回お会いしましょう


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5話 作戦会議

1/15 22:50に第三話にカタフラクト隊VS二ロケラスを加筆しました

・・・という連絡を入れたかったので今回はタイトル通りにあっさり終わってます

そして今回一緒に書く予定だったものをこれまたあっさり載せようと思います
戦闘に1話丸々使いたいのでご了承ください


◇Side有田真

 

ブリーフィングルームに着くと界塚弟は携帯端末を室内にある大型画面に接続し始めた

網文とクラフトマンを待つ間、軽い質問を投げかけた

 

「で、何か分かったのか?」

 

「はい。中尉の機体に残っていた戦闘データからあのカタフラクトは物質はもちろん運動エネルギーやレーダーの電波も吸収していました。

今は韻子とカームにそれ以外について調べてもらってるところです。ダメ元ですが」

 

「ダメ元かよ」

 

クラフトマンが少し機嫌が悪そうな様子で、その後に続いて若干しょげた感じの網文が部屋に入ってきた

結果は聞かなくてもわかるが一応聞いておくか

 

「収穫は?」

 

「赤外線も音波探知も駄目。アクティブセンサーの(たぐい)は全滅です」

 

「エコーが返ってこないんです」

 

報告が終わると二人は疲れていたようで、ドシッと椅子に座った

すると界塚弟の方も準備が出来たみたいで大画面を用いて説明を始める

 

「物質も光も音も電波も、触れるもの全てを吸収する。それがあの壁の特徴なんだと思う」

 

「壁?」

 

「あいつの表面を覆っているエネルギーフィールドのことだよ。バリアって呼んでもいい」

 

「バリア・・・」

 

クラフトマンの質問に対して「壁」以上に固さを感じる「バリア」という答えが出たことに網文は思わず呆れたように言い放った。

実際、一度俺たちが圧倒されたことも踏まえて、その完全性がどんどん強固なものになっていくのだ。子供には辛いだろう

 

「んじゃあ攻略法はそのバリアの隙を突くしかないか?」

 

「隙間なんてあるんですか?」

 

「お前はアホか界塚。接地面にはバリアが貼れないだろうが、あとは・・・弟が説明してくれるそうだぞ?」

 

全部言っても良かったのだが、界塚弟が用意をしているだろうし、じーっとこっちを見ていたので譲ろう

 

そして俺が振ると界塚弟は頷いて画面に図を映し出す

 

「さっきの話に戻るけどアイツは外からの情報を全部遮断しているんだ。僕の考えではあのバリアの裏側は何も聞こえず見えない、真っ暗な世界だと思うんだ」

 

「でもアイツは迷うことなく追ってきたぜ?」

 

「攻撃も正確に狙ってきてたよ?」

 

「そう、アイツはビルの向こう側からでも正確に追ってきた。なのにトンネルに入った瞬間あっさり諦めた。なんでだと思う?」

 

界塚弟の問いにクラフトマンも網文も界塚までもが首をかしげた

おいおい界塚、お前は気づけよ・・・そんなんだからペニビアなんて言われるんだよ

 

「アイツは視界を確保するために上空に別のカメラを用意してるんだと思う。こんな感じ」

 

そう言って携帯端末をタッチすると画面が航空写真に切り替わった

 

「だからビルの向こう側にいても正確にこちらの位置を把握してたし、トンネルに入るのを嫌がった」

 

「なるほど~だから有田中尉はトンネルか地下道に行けって行ったんですね」

 

「そういうこと。ついでに言うとその外部カメラから情報を受信する必要がある。それもバリアの隙間の一つってわけだ」

 

「他にも外部スピーカーなんかもありうるけど、内側から外に働きかけるときはあのバリアがどう作用するのかわからないから期待できない」

 

そう言って界塚弟が締めくくるとみんながあ~う~と唸りながら悩み始める

界塚弟、お前作戦が出来てるんだったら言ってやれよ。中々いい性格してやがる

 

「とりあえず接地面が隙間なんだったら地雷が有効なんじゃないのか?」

 

「クラフトマンにしては優秀な回答だな。確かにそれが一番楽かもしれんがアイツはこっちを四六時中監視しているわけだから堂々と設置できない

となると地下道で仕込むことになるわけだから設置場所が限られてくるわけだ。アイツはああ見えて中々素早いから誘導するのは難しいぞ

なにより相手もバカじゃない。はっきりとした隙間があるならそこを補う何かがあるはずだってのも考えとけよ」

 

最初にクラフトマンにしてはって言った時には少し怒っていたのに、どんどん言うたびに頭がうなだれていき

最終的にはすみませんでしたと言われてしまった。・・・言いすぎたか?

 

「ま、まあ相手が馬鹿だっていう可能性もあるから地雷の方は俺がなんとかしよう。ただダメだった時の代案が欲しいな」

 

「僕に考えがあります」

 

ちらっと界塚弟の方に目を向けて話を振ってやると待ってましたと言わんばかりに話し始めた

 




というわけで次回は戦闘前夜になります
そのときにできれば真とユキの絡みも入れたいなあと思っております

次回は新キャラ無しです

それではまた次回お会いしましょう


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6話 決戦前夜

思ったより書く暇がなくて予想より遅れた投稿になりました

今回の話は前回同様に会話がメインとなるので誰が話をしているのかをさりげなく入れたかったのですがわざとらしくなってしまいましたorz




◇Side有田真

 

「じゃあ地雷の方はダメ元で仕掛けておくとして、界塚弟の作戦を主体に行くか」

 

作戦会議はブリーフィングルームから移動して倉庫に行きカタフラクトや残弾などを確認しながら行うこととなった

そして会議が終わったのは日没頃の話であった

 

「カットに3人、囮トラックに最低二人は欲しいな」

 

「カタフラクトにはお前たちが乗れ。囮トラックには俺とライエが乗る」

 

カームの質問に対する真の答えにその場にいた全員が驚いた。たった一人、伊奈帆を除いて

やがて伊奈帆以外の全員が思っていたであろう質問を韻子がする

 

「中尉は乗らないんですか?パイロットなのに。それにライエさんの同意なく勝手に決めちゃっていいんですか?」

 

「多分囮トラックの方が危険だからな。お前らの方に行くかも知れんがライエがいる限り、まずこっちを狙ってくるだろう

彼女の方は大丈夫だと思うぞ?・・・なぁ?」

 

少し大きめの声で振り向くとそこには壁にもたれかかるライエがいた。

全員が彼女の方を見ると彼女は大きく頷いた。そして話し合いの輪の中に入っていった

 

「でもそこまで狙われるライエさんって一体何者?」

 

「どこにでもいるちょっと運のない女の子だ」

 

韻子の疑問に間髪入れずに真が答える

ライエに余計なことを言わせないことと、全員に様々な憶測をたてさせないためである

 

「そんなことよりあの火星ヤローを倒す。オコジョや他の殺された人の仇を討つんだ!」

 

「言っただろうクラフトマン。仇討ちに囚われるな、生き延びることに固執しろ」

 

「そんなこと言ったって、中尉俺は・・・・」

 

「何度も言ってるはずだ。恨むなら俺を恨め。俺になら理屈のないだだ(・・)でも構わんが、敵に対して復讐心を持つな

さもないと・・・死ぬぞ」

 

真の最後のセリフ、そしてそれと同時に発した殺気にその場の温度が一気に下がった

言い合いをしていたカームは意気消沈し、韻子は少し怯えている

他の3人は表情こそあまり変わっていないが緊張が感じ取れる様子であった

 

「俺は今から地雷の設置に行ってくる。今日は冷え込むだろうから風邪をひかないように気をつけろよ」

 

そう言って真はその場を立ち去るのであった

しばらくは誰も動けないままであったが、突然ユキが走り出した。その行先は真である。

 

 

「なんであんな・・・子供たちを怯えさせるようなこと言ったんですか!?」

 

ユキが真に追いついたのは彼が爆薬や工具などを詰めたリュックを背負い、学校にある地下道へと向かう途中だった

怒鳴るユキに対して真はまず頭を下げた。しばらくして頭を上げ話し始める

 

「すまない。俺には誰かを励ましたり勇気づけたりなんてことはできないんだ。どうも口下手でな、あんな言い方しかできないんだ

お前には申し訳ないが、アイツ等のことは頼んだぞ。俺は俺で出来る限りのことはする」

 

「中尉はそんなことを考えていたんですね。やっぱり私ってダメだな~

ナオ君達を戦場に出して中尉に辛い役目を押し付けて、自分は避難誘導なんて名目で戦いから逃げ出してる」

 

ユキは笑ってみせるが明らかに作り笑いであるのがわかるものだった

その笑顔は儚く脆くすぐに崩れてしまいそうで、その奥にはユキだけが抱える戦えない恐怖があった

 

そんなユキを真は思いっきり抱きしめた

無言、ただただ無言で力いっぱい抱きしめるだけであったが、その行為の裏に励ましをユキは感じるのであった

 

やがて抱きしめた腕を解き振り返って一言

 

「行ってくる」

 

と言って真は歩き出した

 

「いってらっしゃい」

 

少しぎこちない笑顔ではあるがユキの笑顔に偽りはなかった。

 

 

一方その頃伊奈帆たちは各々でカタフラクトの最終確認を行い、各自就寝という形をとっていた

カームが毛布に包まって眠り出した頃、韻子が伊奈帆の元を訪れた

 

「伊奈帆はまだ起きてたんだ。カームは絶賛爆睡中だけど」

 

「中尉が言ったとおり冷えるから、風邪ひかなきゃいいけどね」

 

そう言うと韻子はクスッと笑った

その反応に伊奈帆がクエスチョンマークを浮かべると韻子が話し始めた

 

「風邪の心配なんて・・・明日死んじゃうかも知れないのに」

 

「明日に怯えてただ待つのは耐えられないんだよ。僕も多分カームも

だから明日もまた生きて迎えれるようにって考えるし努力する。・・・もっとも中尉は別だと思うけどね」

 

今度は韻子がクエスチョンマークを浮かべる番であった

 

「どういうこと?」

 

「中尉の言い方は『何があっても俺が守るから今日と変わらない明日が来るって信じとけ』って感じだと思う」

 

伊奈帆の口真似に思わず韻子は全然似てないと言いながら笑った

伊奈帆はその様子に笑みを浮かべる

 

「それじゃあ私も寝るね。おやすみ伊奈帆」

 

「おやすみ」

 

「風邪、引かないでね」

 

「韻子も」

 

こうして夜が更けていくのであった

 




ライエの会話文が全然ないことに今気づいた∑(°д°)
ユキとの絡みは初回なんでこんなもんでいいですかね?
もっとあっさりしたほうがいいですか?それとも甘甘?

次回はマグバレッジさんが登確です
姫様は戦わないけどちゃんと姫様回も用意してるんで安心してください
いつ出てくるかわからないけど・・・

それではまた次回お会いしましょう




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7話 決戦!二ロケラス

戦闘オンリーになっております
アニメで言うと軽快なBGMが流れ始めるところからダンゴムシが沈黙するまで

拙い文章ではありますが、作者としては結構力作なんで
楽しんで読んでいただけるとありがたいです

では、どうぞ!!


 

新芦原の港では次から次に避難民を乗せた船が出航する中一隻の揚陸艇が残っていた

その一隻の前に並ぶのは鞠戸孝一郎と1人の機関士、そして3名の学生であった

 

その5名は鞠戸の呼びかけに寄り集まった、芦原高校に残って戦っているメンバーの救助に向かうための部隊である

 

「これより我々5名は友軍の救助に向かう」

 

「1名追加してください。あなたに興味があります鞠戸孝一郎」

 

鞠戸の後ろに現れたのはすでに出航した揚陸艦「わだつみ」の艦長である、ダルザナ・マグバレッジである

彼女が鞠戸を見る目つきにどこかトゲトゲしさが見られた

 

「助かります。」

 

そう言って鞠戸が敬礼をしたタイミングで、学生の一人ニーナ・クラインが遠くの空に打ち上がる信号弾を見つけた

信号弾は激しく光る赤い弾が3発打ち上がってる

 

それを見た鞠戸は驚いた顔で空を見上げる

 

「何だと・・・」

 

その信号弾が示す意味は・・・

 

◇Side有田真

 

「戦闘開始だ!」

 

味方が残っているのは昨夜のうちに確認してあるから、戦闘開始の合図を送れば自ずと出港準備や受け入れ準備をしてくれるだろう

民間人がそこにたどり着くまではあのダンゴムシを引き付けないと

 

「ライエ、悪いが少し窓から乗り出して、アイツにお前がこれに乗ってることを確認させてやってもらえるか?」

 

「わかったわ」

 

ライエが姿を見せると案の定ダンゴムシはこちらに向かって動き出した

 

「敵機発見、10時の方向。・・・作戦開始」

 

界塚弟の合図でカタフラクトに乗る網文とクラフトマンが上空に煙幕弾を撃った

それは狙い通りアイツが上空に展開している外部カメラの映像を妨害することに成功した

 

「敵の動きが止まった。伊奈帆の言った通り」

 

網文が嬉しそうな声を上げる。作戦は順調に進んでいるようだ

チラリと隣を見るとライエ何を思っているのかじーっと煙幕弾の詰まったランチャーを見つめていた

 

「どうした?煙幕とは言え銃を持つのは緊張するか?」

 

「まさか、セーフティを外す、構える、撃つ。それだけのことよ」

 

と強がってはいるが、いちいち確認しているところから緊張が伺えて微笑んだ

ジロっと睨んでくるが運転に集中しているふりをして誤魔化した

 

しかしそんな余裕があったのもその時までである。不測の事態が突然やってきた

敵に味方がやってきたのだ。更にそれが戦闘機であったため、気流が乱れ、煙幕がうまく貼れなくなってしまった

 

「あのコウモリ、アイツのせいで煙幕が乱れる。墜とさねぇと!」

 

そういってクラフトマンが戦闘機に攻撃始める

しかし、アイツの腕じゃあまず当てられない。案の定反撃を食らっていた

一瞬ヒヤッとしたがスタビライザイーがやられるだけの軽傷で済んでいてホッとする

 

その後駆けつけた網文が戦闘機に弾を当て、撃墜とまでは行かないが戦線離脱まで追い込むことに成功した

 

「アイツには弾が当たるのね」

 

「あれはスカイキャリアというヴァースの戦術輸送機だ。機銃やミサイルは搭載されてるが特殊能力は有していない」

 

「・・・詳しいのね」

 

ライエが疑いの目を向けてくるので、少し荒々しく停車して流れを変える

 

トレーラーを止めたあと乗せていたカタフラクトの固定装置を外し界塚弟を送り出す

網文とクラフトマンは先行して準備をしていて界塚弟も自分の持ち場で待機する予定だ

 

「さてこれからは俺たちが働く番だ」

 

見るとそう遠くない距離にヤツがやってきているのが見えた

そのためライエのことを気にする間もなく逃走劇を開始することになったのである

 

◇Side三人称

 

真たちの乗るトレーラーは道幅の広くないところを通って敵を牽制しようとするが

二ロケラスはそのバリアを持って気にすることなく追っていく

 

「地雷第1弾は遠隔操作式だ!」

 

そう言って真はどこからかスイッチを取り出してボタンを押すが、なんの反応もなかった

なのでそれを諦めすぐに窓からスイッチを放り投げた

 

「地雷第2弾は重量に反応して爆発するタイプだ。」

 

そしてトレーラーがマーキングされたすぐそばを通り、二ロケラスがその真上を通る

しかしこれも何の反応も示さなかった

 

「ヤツの足裏からセンサー妨害の電波が出てやがる」

 

真は手元の計器を見て毒づいた

が、真はまだ地雷を用意しているのである

 

「ライエ、気をつけろよ地雷第3弾はこの車で導火線に火をつけるからちょっと荒っぽいぞ」

 

そう言って角で大きくドリフトし火花を上げながら曲がっていく

車の中は大きく揺れたものの、無事導火線に火をつけることに成功した

 

そして爆発するかに思われたが爆発の直前で二ロケラスの手が地雷ごと地面を抉りとった

 

「フハハハッ!キサマらの小賢しい考えなどお見通しよ!もうこれで打つ手あるまい」

 

そう言って調子づくトリルランであった

 

やがてトレーラーは大きは橋へと逃げ込んでいく・・・

 

◇SIde有田真

 

地雷はダメだったか。しかしそれは想定範囲内だ、時間を稼げばアイツ等がしっかりやる

だから合流予定時刻までの2分弱絶対に逃げ切ってみせる

 

「くらえ!」

 

そう言ってやつは骨組みの1本の根元を抉り、上部を飛ばしてきた

何とか躱すことができたがヤツは再び骨を飛ばしてくるのであった

 

「ええい、ちょこまかとネズミが!!」

 

やがて1本が車体の側面にぶつかりバランスを崩した

その隙にヤツは腕をふるい、トレーラーの後輪を抉りとった

これでもうトレーラーは単なる箱になってしまったのである

 

「合流時刻まであと54秒。・・・もう少し逃げ回ってやるか」

 

「逃げ回るって言ったってどうするのよ。車はもう動かないし走って逃げるの?」

 

自嘲気味にいうライエを無理やり引っ張ってある物に乗せる

それは俺が学校に置いておいた我が愛車である

 

「俺のバイクの運転は車の比じゃねえぐらいに荒いから舌噛むなよ!」

 

そう言ってトレーラーから飛び出した

 

「フンッまだ逃げる気かネズミが!もういい加減諦めろ!」

 

大振りな腕の振りはバイクで小回りの利く俺には当たらない

骨組みを再び飛ばすが、地面との隙間に車体を寝かして滑り込ませ回避する

 

やがてヤツが我慢の限界が来た頃、港の方から無数のミサイルがヤツに降り注いだ

その正体は一隻の揚陸艇でデッキには鞠戸さんがいる

 

時計を見れば合流予定時刻になっており、逆側から網文が狙撃を開始した

 

「無駄だ。我が二ロケラスは鉄壁なのだ!」

 

しかし、網文の狙いはヤツではない。ヤツの足元の橋を狙っているのだ

1発また1発と撃たれていく度に橋が揺れ崩壊が始まった

 

しかし、ここで1つ問題が起きた。ミサイルの爆風により弾が安定せず、橋が完全に落ちるまでに至らなかったのだ

 

「ちぃ、ライエここで大人しくしとけよ」

 

そう言って後ろのライエを下ろし、紫の巨体に突っ込んでいく

 

「ちょっと、アンタ何やってんの!?」

 

ライエが後ろで叫んでいるが俺には聞こえない。正確には無駄なものとして切り捨てた

目の前でヤツが腕でなぎ払いにかかってくる。俺は手前の小さな瓦礫の山をジャンプ台にしヤツの腕の上を行った

 

「こいつはいままで散々やってくれた礼だ・・・・ダンゴムシ!!」

 

ヤツの股の下をくぐる時にこう言いながらダイナマイトを置いて行く

 

そしてそれは爆発し、橋を崩壊にいたらせた

 

「おのれえええぇぇぇぇええええ!!!」

 

ヤツは海に落ちその表面のバリアはどんどん水を吸い込んでいく

しかしその中に水が吸い込まれない場所があるはずだ。それがヤツの弱点、バリアの隙間だ

 

クラフトマンがラジコンを飛ばしそのカメラがついにやつの隙間を捉える

 

「背面装甲、インテーク右下、ツメの隙間!!」

 

その声と同時に橋の下で隠れていた界塚弟が格闘ナイフを隙間に差し込む

そしてそのまま装甲を切り開き銃口を差し込んだ

 

「・・・友達の分だ」

 

そう言って発砲しやがて紫の巨体はバリアを解除され、その身を海に沈めた

 

「ふぅ・・・・勝ったな」

 

その日の空はやけに青く見えた




・・・という話でございました

このあと原作には沿うのですが、シンプルに沿うか、オリジナリティを入れていくかは悩み中です

次回はスレインが登確です
まあ今回のマグバレッジさんみたいな形になるかもですが・・・

それでは次回お会いしましょう


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8話 再会

だいぶ遅れましたね

真をどうしようかいろいろ考えていてまとまりがつくまで時間がかかっちゃいました

では、どうぞ


◇三人称

 

「ゴホッゴホッ!クソッ!地球人風情が!!」

 

水面から上がってきたのは二ロケラスのパイロットのトリルランであった

水に濡れ、やつれた顔には確かな復讐心が見えていた

 

そんなトリルランに近づく影がひとつ

影の主はそのままトリルランに近づくと地面に押し倒し、両腕を踏みつけ拳銃を突きつけた

 

「な、何だ貴様は!?何をする!?」

 

「俺か?俺は有田真、軍人だ。お前には色々と聞きたいことがあってな」

 

軍人という言葉に一気に青ざめていくトリルラン

そんな彼に真はいやらしくニヤリと笑った。トリルランにより恐怖を与えるために

 

「貴様はアセイラム姫暗殺テロの首謀者か?」

 

恐怖のあまりトリルランは必死になって答え、余計なことまで口を滑らしていく

 

「ち、違う!我はザーツバルム卿に指示されて実行犯である火星人のスパイを処分んしたまでだ。我がやったのでもなければ計画したわけでもない」

 

「ほう、ちなみにアセイラム姫が生きていたらお前はどうなるのだ?」

 

「そ、それは・・・我らは一族郎党逆賊として刑を受けるであろう」

 

それを聞いて少し考えたあと、拳銃を向けたまま首だけ捻り、後ろを向く

 

「だ、そうだが君もその仲間か?そうでなければその手を下ろして欲しいのだが」

 

彼の背後では彼に拳銃を向けていた火星の兵士がいた

しかし、彼は火星人ではない。地球人の科学者の息子として火星に渡ったれっきとした地球人である

 

そんな彼はアセイラム姫を心から慕っており、この暗殺も地球人の犯行であると思ったが故に、同族である地球人に銃を向けたのである(実際は火星人なのだが)

そんな彼に知らされた驚愕の事実は少なくとも彼が地球人を攻撃する意欲を失う程度には効果的だった

 

彼の様子を見て、犯行に関わっておらず純粋に姫の仇討ちをする気であったことを確信した真はトリルランに向き直る

 

「冥土の土産だ、いいことを教えてやろう。・・・アセイラム姫は生きている

お前たちが殺したのは影武者で本物は地球人に紛れてさっきの揚陸艦に乗ってるはずだ」

 

「ば、馬鹿な。馬鹿なぁぁぁぁぁああああ!!」

 

ドンッ!!

 

眉間を打ち抜かれたトリルランはあっけなく息を引き取った

一方暗殺の事実を知って驚いていた彼は更なる驚愕の事実と目の前で行われた殺人に頭が混乱していた

 

しかしそんな彼の混乱を無視して、真は彼に声をかける

 

「久しぶりだな。スレイン・トロイヤード」

 

「なぜ僕の名前を?あなたは一体・・・」

 

スレインの反応に苦笑しつつ、真が答える

 

「もう十年近く前だもんな、覚えていないか。俺は有田真、昔君の家でお世話になった者だ」

 

「まさかあなたは、シン兄さん?」

 

スレインは懐かしい兄のような存在の名前を呼び、現在の姿にかつての面影を感じ始めていた

 

「そうか、スレインは俺のことシンって呼んでたんだったな」

 

そう言って笑う姿が幼い頃の記憶にある兄のものと一致し、目の前の軍人がかつて共に過ごした青年であることを確信した

しかし、それと同時に優しかった彼が軍人になり、目の前で人を殺していたことにショックを受けていた

 

一方の真は懐かしい呼び方に心が穏やかになっていくが、一刻を争う事態であるため

感動の再会とはせずに次へと話を進めていく

 

「あのスカイキャリアはお前が乗ってきたのか?」

 

「ええ、そうですが」

 

「別に敬語じゃなくていいぞ。・・・それで悪いんだが俺を乗せて揚陸城まで飛んでもらえないか?」

 

「え?」

 

スレインは驚いた。目の前の彼は何を言い出すのであろうか

地球人が揚陸城に乗り込むということは自ら殺されに行くようなものである

そこまでしたところで彼に利点はないはずだが・・・

 

と、考えたところで肩を掴まれて思考が停止する

 

「悪いが時間がない。揚陸艇が新芦原上空に大きな熱源を感知していた。恐らく隕石爆撃が来る」

 

そう急かされて結局なし崩し的にスカイキャリアに乗り込む真であった

 

一方スレインは真の強引さに、そう言えば昔から強引なところがあったなと

場違いなことを考えつつもクルーテオの揚陸城へ向かうのであった




というお話でした

トリルランにはあっけなく死んでいただき、再会というテーマに重きを置いて書いたつもりなんですがいかがでしたでしょうか?

今後は2日に1回くらいで進めていきたいと思います


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9話 手紙

今回はまだ後処理感が出た作品となっています
一応今後についての布石もまきつつ書きました

では、どうぞ




◇三人称

 

ズドォォォォオオオオオンンンンッッッ!!!

 

揚陸艇が港を出航して数分後、新芦原に隕石爆撃が行われた

新芦原全域は焦土と化し、津波も発生し揚陸艇は大きく揺れた

 

「揚陸艇のレーダーが新芦原上空に複数の巨大質量をキャッチしていました」

 

「隕石爆撃・・・有田中尉の言った通りだな。火星人め!!」

 

レーダー手の詰城祐太朗(つむぎゆうたろう)の言葉にカームが反応する

 

「間一髪でしたね」

 

とマグバレッジも冷や汗をかく中、デッキに慌てた様子でユキが入ってきた

 

「鞠戸大尉!有田中尉を見かけませんでしたか!?」

 

「真なら、やり残したことがあるとかなんとか言って、後で合流するって言ってたぞ?

・・・ってまさか!アイツまだ来てないのか!?」

 

ユキの質問と焦りの意味を汲み取り、最悪の事態を想像して慌て出す鞠戸

そんな彼に対するユキの返事は残酷なものだった

 

「はい・・・どこを探しても見当たらないんです。もしかしたら今の爆撃に巻き込まれてっ!」

 

そしてこらえきれなくなった涙をこぼし始める

 

「真さーーーーーーん!!」

 

やがてユキは虚空に向かって叫ぶのだあった

 

 

一方その頃、館内の一室でライエ、伊奈帆、アセイラム、エデルリッゾの4名が秘密の会談を行っていた

 

「真からあんたたちに手紙を渡すように言われたの」

 

ライエはそう言って、伊奈帆とアセイラムに手紙を渡した

ちなみに、ライエが真と呼ぶのはトレーラー内で、あんたじゃ言いづらいだろうから真でいい、と言われたためである

閑話休題

 

2人が手紙を開けて読むとそこには別々の内容が書いてあった

 

伊奈帆の方は・・・

『界塚弟へ

おそらくこの手紙が届くときには俺はお前たちの前から姿を消しているはずだ

行き先は教えられないが危険な行為をすることは確かなので、お前にある程度の情報を託していく

 

まずはアセイラム姫についてだ

アセイラム姫は生きていて、お前たちにはセラムと名乗っているだろう

詳しいことはさて置き、彼女の暗殺は火星側の陰謀であり地球側は彼女を守らなければいけない

ただし、この状況下で無闇に口外するのは好ましくない。なのでお前にのみ知らせることとした

話していいのはライエだけとする。界塚准尉やお前の仲間にも言いたいだろうが我慢してくれ

 

次に今後の目的地だが、種子島基地に行くことを勧める

あの基地には唯一地球軍が建設したアルドノアドライブ搭載の戦艦『デューカリオン』がある

ロシアの本拠地まで行くにはそれがないと厳しいと思う

アルドノアの起動はアセイラム姫に行ってもらえば大丈夫だ

 

最後に、界塚准尉についてだが、彼女には何も言わずに出発している

事情をどの程度説明するかはお前に任せるが、うまいこと言っておいてくれると助かる

怒られるのは覚悟の上だが、彼女の精神を支えてやって欲しい

 

以上だ』

 

読み終えた伊奈帆は何も言わずに手紙をたたみ、元の封筒にしまってポケットに入れた

 

対するアセイラムの方は・・・

 

『アセイラム姫殿下へ

2度も手紙という形で申し訳ないが

先日の手紙で触れたあなたがアセイラム姫であることの理由から話そう

 

テロの時に俺も現場にいたのだが、その後の救助活動中にあなたの影武者の遺体を見た

詳しい描写は控えさせてもらうが、明らかに顔が違っていたので光学迷彩か何かであると判断した

また、従者の顔もあまり知られてはいないが知っているものもいる

できれば違和感のない程度に変装することをお勧めする

なお、その遺体についてはこちらできちんと埋葬したので悔やまれる必要はない

 

今後についてだが界塚伊奈帆という少年にあなたのことを話した

勝手な話で申し訳ないが、しばらく離れるので信用できる人間に託させていただいた

他に信用できる人間としてはこの手紙を渡したであろうライエが挙げられる

ほかの人物については立場上、あるいは性格上の問題があるので推奨しないが

あなたが信用に足る人物だと判断した場合、正体をバラしても構わない

 

最後にライエについてだが少し気にかけてもらえるとありがたい

今回の出来事や過去の事情なども踏まえて大分人間特に火星人嫌いになっている節があるが

根はいい子であるので、友人になっていただけるとありがたい

 

以上』

 

この手紙を読み終えた後、アセイラムは伊奈帆と同様に手紙をしまい

死者への冥福を祈ると同時に真に感謝したあと、光学迷彩を解除した

 

「姫様!」

 

とエデルリッゾが彼女を叱るが、それを手で制し伊奈帆のほうを向く

伊奈帆の方が軽く頷いたあと、彼女も同様に頷いた

 

そして今度はライエの方を向き笑った

 

「改めまして、私はアセイラム・ヴァース・アリューシアです。よろしくお願いします。伊奈帆さん、ライエさん」

 

 

この少し前、スレインはスカイキャリアを揚陸城に飛ばしながら昔のことを思い出していた

 

今からちょうど12年前、ヘブンズ・フォールから3年が経った頃

当時6歳だったスレインは研究者の父に連れられ日本にやってきていた

研究者である父がヘブンズ・フォールの調査を行っている頃、同じく保護者の鞠戸が種子島レポートについて取り調べを受けていた真は子供同士でくっつけられていた

そんなこともあって特に語るような出来事はなかったが、引越しの多かったスレインのふさぎ込んでいた性格も時間とともに解消され実の兄弟のように仲良くなっていった

 

その後も鞠戸の精神治療などもあってしばらくの間、真はトロイヤード博士にあずけられることとなった

その後別れるきっかけとなったのは、真が成人したこととトロイヤード博士が火星に移住を決めたことである

 

それ以降は各々の道を進んでいったのである

 

あの後、シン兄さんに何があったのだろうか?そう考えているうちに揚陸城着いたのでスレインの思考を停止させた

 

「それでは、僕は報告に行ってくるのでお気をつけて」

 

「ああ、ありがとう」

 

そう言ってスレインは降りて行き、真は機体に潜伏して機会を待つのであった




という感じでありました
ちなみに真の経歴的には
1989年 誕生

1999年 ヘブンズフォールに巻き込まれて地球へ
↓謎の期間
2002年スレインと邂逅
↓スレインとともに行動
2009年 スレインたちと別れ鞠戸のもとへ(成人+軍人になる)
↓謎の期間
2014年 アセイラム姫暗殺テロによる戦争に巻き込まれる←今ここ

次回はクルーテオや皇帝がでるかも
もしかしたらブラドや不見咲さんがさきかもしれないけど・・・・

では次回お会いしましょう


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10話 休戦

お久しぶりです
私情がありこれからも亀更新を余儀なくされると思いますが
お付き合いいただけるとありがたいです

それで今回の話ではついに誠の正体が明らかに!
それと3話で出てきた地下基地にいた方の悲惨な末路も書きました

ではどうぞ


◇三人称

 

「トリルラン卿が死んだだと!?」

 

「はい隕石爆撃に巻き込まれて・・・」

 

「おのれ!!戦局に紛れて我が占有地を狙う者はいたとは!!騎士の誇りはないのか!!」

 

新芦原にある揚陸城の中で怒号が響き渡った。その声の主はクルーテオ、この揚陸城の所有者である

その原因はトリルランの死亡である。ましてやその死因が味方の隕石爆撃だったのである

 

一方その報告を行なったスレインは悩んでいた

本当は真が殺したことを言うべきか、アセイラムの生存については?

しかし、次のクルーテオの言葉でその悩みは一瞬でなくなる

 

「ブラドを呼べ!地球の残党を狩りこの地を燃やし尽くせ!

姫がその命を持って我らの15年もの切願を叶えられたのだ

誇り高き軌道騎士として姫の無念を晴らさん!!」

 

クルーテオもまたトリルランと同じ姫の死を利用するものであったのだと思ったスレインは

結局、真のこともアセイラムのことも誰にも言わなかったのであった

 

◇Side有田真

 

さて、スレインの協力もあって上手く揚陸城に潜入できたが、どうやって謁見の間まで行くか

さすがにこの格好だとすぐに侵入者だとバレてお陀仏だ。となれば・・・・

 

「これって地球人のスカイキャリアだろ?なら別に俺たちが、むぐっ!?」

 

「悪いな。ここでしばらく眠っててくれ」

 

整備をしに来た1人を捕まえて気絶させ、衣服を剥ぎとった

これで顔をしっかり見られない限りはバレないはずだ

どうも火星はアルドノアに依存している節があり、こういったセキュリティなんかは甘いのだ

 

「隕石爆撃から逃れた地球人たちがここに近づいたせいで機関銃にやられてよ。俺の班が掃除したんだぜ」

 

「そりゃ運がなかったな、お前も地球人も。隕石爆撃でやられてたら苦しまずに済んだのによ」

 

謁見の間を探している途中、すれ違った男たちの会話が聞こえた

どうやら残念なことに地下基地にいた彼らは全滅したようだ

 

だが、今は悲しんでいる暇はない。彼らのためにも俺は俺のするべきことをしなければ

しかしそう思っていても壁を殴らずにはいられなかった

 

 

「ここか」

 

数分ほど城内を捜索したところこの部屋が謁見の間のようだ

中に入ってみるとそこには1つの台座があるだけだ

その台座に手をかざす。すると目の前の景色が突然火星のものに変わる

 

「懐かしいな15年ぶりか。だが感傷に浸っている場合じゃないな」

 

そう言って足早に城内を進んでいき皇帝レイレガリアのいるところへ向かった

 

 

数分ほどで寝室にたどり着いた

現在皇帝は年と共に病弱になり、寝たきりの生活をしているとスレインに聞いていた通り彼は眠っていた

 

「皇帝陛下」

 

「・・・誰だ?」

 

呼びかけに少しして返事があったが正直この質問にはどう答えるか悩んだ

一瞬嘘を吐こうかと考えた。しかし、やはり真実を伝えるべきであろうと決心して彼のほうを向いた

 

「ヴェリテ・・・ヴェリテ・アリュタニアです」

 

俺の火星での名前を告げると彼は目をむいてこちらを見る

 

「お主、本当にヴェリテなのか?」

 

「ええ正真正銘本物のヴェリテにございます。・・・お久しぶりです父上(・・)

 

◇三人称

 

時を遡って、揚陸艇の中の混乱がひと段落着いたところ

 

「とりあえずはアンタが火星の姫様だってことは黙っておく、でも危ないと思ったら迷わず言うわ」

 

「ええ、それで構いません」

 

「火星人はみんな敵よ」

 

そう言ってライエは部屋を出ていった

 

残された伊奈帆とアセイラム(光学迷彩ver)とエデルリッゾはそれぞれの行動に出る

 

アセイラムとエデルリッゾは人が集まっている食堂へ向かった

いるであろうライエに会いにいくためである

 

一方の伊奈帆はデッキへと向かった

そこにはユキが泣き崩れていたので、なんとか真が生きていることを告げるとその顔はだんだん怒りに染まっていく

 

「ま~こ~と~!!帰ってきたらぶん殴るってやる!!」

 

といって壁を殴って。 普通なら手が痛くなるのだが麻酔をして

更にアーマチュアという某野球漫画の主人公、星飛雄○がつけていそうなギプスを付けている彼女は

逆に壁を凹ますのであった

 

ちなみに周りの人はその威力に、真へ冥福を捧げていたのであった

 

 

人員不足という不安はあったものの無事合流地点まで到着した揚陸艇は先行していた部隊と合流する

今はマグバレッジが先行隊を指揮していた中林少佐の報告を受けているところである

 

「強襲艦わだつみは安全な航路を迂回中。我々は不見咲副長の命によりアパルーサ小隊と先行しております」

 

「報告ご苦労。・・・それにしても放棄されたんですね。まだ被害は少ないというのに」

 

マグバレッジがそう言いながら辺りを見回す

確かに特にこれといった損害も見当たらず戦闘継続が可能な状況である

 

「賢明な判断だ。粘ったところで被害が増えるだけだ。とっとと逃げるに限る」

 

「・・さすがはあの15年前の戦いを生き延びた人の見解ですね」

 

皮肉っぽくいうマグバレッジの視線はどうしてか鞠戸にだけはひどく冷たかった

 

その時銃声が鳴り響いた。それもカタフラクトの放つ銃弾の音である

緊急事態であると判断した彼らは各々の艦に戻り戦闘態勢を整える

 

その後現れた火星人パイロットのブラドの駆るアルギュレによってアパルーサ隊は全滅、中林も船ごと沈められたのであった

 

揚陸艇の方はその余波でAPUが停止し一時航行不能になった

しかしその場は伊奈帆の機転により伊奈帆、カーム、韻子の3名により敵機を小破させる

その後やってきた不見咲副長率いるわだつみによって敵カタフラクトの撃退に成功するのであった

 

 

「・・・というわけです」

 

「・・・なるほどそなたの話が本当ならアセイラムは生きておるのか」

 

皇帝は真のこれまでのいきさつとそこからくる推測を静かに聞き終えてから言った

 

「して、そなたが本当に我が息子ヴェリテである証拠、また我が孫娘アセイラムが生きている証拠はあるのか?」

 

「いえ、ありません。ですから信じていく必要はございません」

 

そう言うと真は強い意志のこもった目でレイレガリアを見直す

 

「しかし、私の話にあなたが信じてもいいと思える節があったならば、せめて休戦し、きちんとした調査を行っていただきたい」

 

「・・・ふむ、そなたの言いたいことはわかった。今日のことは秘密にするゆえ今は戻られよ」

 

「はっ失礼いたします」

 

そう言って真は謁見の間を去るのであった

 

後に海賊放送ではあるがヴァース皇帝が休戦の申し入れを行うのであった

 

 




というわけでしたがいかがでしたか?

ちなみにヴェリテというのはドイツ語で真実という意味だそうです
間違ってたらすみません
アリュタニアという苗字はアセイラムのアリューシアと有田の複合語です
劇中で語るかわかりませんが、真の母は日系でヴァース皇帝の側室的なイメージです

次回は(いつになるかわかりませんが)一気に種子島まで持っていく気です
ブラドorアルギュレファンの方には申し訳ありませんがほとんど出番なしです



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11話 リベンジと開戦

気づいたら評価がついてました。それも7と9!!
超嬉しいですヽ(*´∀`)ノ

今回はブラドの話を終えるだけにしときました
ではどうぞ


◇Side三人称

 

謁見の間を離れた真は脱出の機会を狙っていた

徒歩で脱出しようものなら、すぐにサーチ&デストロイは免れないので目下の目標はスカイキャリアの奪取である

高望みするならカタフラクトを奪いたいのだが、コックピットには入れず

仮に奪えたとしても真がヴァースの血筋のものだとバラすことになるのである

 

城内で怪しまれないように整備作業をしているとブラド専用カタフラクト『アルギュレ』が戻ってきた

しかしその左頭部が破壊されていた

 

火星カタフラクトはアルドノア・ドライブを使って様々な特殊能力・武装を保有している

二ロケラスは『次元バリア』であり、アルギュレは『ビームサーベル』である

そのため損壊そのものはありうるのだが、機動力やビームサーベルの威力を考えると頭部の損壊は異常である

 

その様子を見た真はアルギュレの整備に取り掛かりながらつぶやいた

 

「界塚弟か?なんとか撃退できたようで良かった」

 

 

一方、伊奈帆たちはわだつみに乗り込んで種子島基地を目指していた

 

「伊奈帆聞いた!?ヴァースが休戦を申し込んだんだって!」

 

食堂からやってきた韻子が艦内を歩いていた伊奈帆に告げた

更にその後ろからカームがやってきた

 

「勝手に戦争始めて直ぐに休戦って・・・一体どうなってるんだ?」

 

「火星も一枚岩じゃないってことだろうね」

 

そう伊奈帆が答えて3人が食堂に向かおうとしたそのときだった

突然艦が大きく揺れた

 

その直後に警鐘が鳴り響く

 

「デッキの上に敵カタフラクトが乗り込んできた。総員出撃だ!」

 

慌てた様子のカタフラクト隊の話を聞いた伊奈帆は彼らに続いてドッグへと向かった

カームとインコもそれについて行きながら会話をする

 

「休戦じゃなかったのかよ!?」

 

「あの映像・・・完全に休戦状態に入る前にリベンジしに来たんじゃない?」

 

艦内のディスプレイに映し出されていたのは先日撃退したアルギュレであった

伊奈帆はそれをチラっと見ただけで直ぐに歩を進める

 

「カーム僕も出るからパジャマの用意して、アップリケのやつ」

 

そう言いながら伊奈帆はスレイプニルへと向かっていくのであった

 

 

アルギュレが大立ち回りする中現れたのはタクティカルスーツを身につけたスレイプニル(オレンジ色)であった

 

「現れたな。我が宿敵」

 

スレイプニルが放つ銃弾をすり抜けアルギュレが突っ込んでいく

そして4発ほど交わした頃にはかなり接近しており斬りかかった

 

ドォォオオンッッ!!

 

派手な爆発音がしたあとそこにはアルギュレの腕を掴み押さえつけているスレイプニルの姿があった

アルギュレはもう一方でも斬りかかるが結果は同じであった

 

それを艦内で見ていたライエは隣にいたアセイラムに説明する

 

「りアクティブアーマー、爆薬でできた装甲板よ

爆発で砲弾を跳ね返すものなんだけど、その爆発を利用して(ビームサーベル)のプラズマを吹き飛ばしているのよ」

 

その直後、伊奈帆の指示により艦体が大きく傾き始めた

 

更にスレイプニルはスラスターを前方に向け全力で後退していく

もちろん腕を掴んでいるアルギュレもろともである

 

「おのれ!!」

 

伊奈帆の狙いに気づいたブラドはビームサーベルの出力を上げようとする

そうすればスレイプニルの脚を焼ききれるからだ

 

しかし、実際にはそこまで出力が上がらなかった

 

「何故だ!?何が起こった!?」

 

困惑するブラドの目の前にある文章が表示される

 

『俺からのプレゼントだ。ありがたく頂け by真』

 

ブラドはその意味も分からぬまま海へと突っ込んでいった

その直後に起きるのはビームサーベルの膨大な熱量によって起きる水素爆発である

 

伊奈帆はベイルアウトしていてコックピットとともに海上に着陸(水?)していた

 

こうして無事に2機目の火星カタフラクトの撃破に成功したのであった

 

 

一方、真が去ったあとのヴァース皇帝の寝室に新たな客人がやってきていた

その人物はザーツバルム、アセイラム姫暗殺の首謀者である

 

「なんと嘆かわしい事でありましょうか。姫様のことで傷心である陛下に今は亡き息子の名前を語り

あまつさえ姫が生きているなどという戯言を吹き込むとは」

 

そう、実はザーツバルムは全てではないが真と皇帝のやり取りを知っているのである

そして自分の野望のため真のことを『皇帝の息子を装った地球のスパイ』に仕立て上げているのだ

 

「アセイラム姫の死は我が配下がその目で確かめたのです

それにヴェリテ様は我らとともに地球に降り、ヘブンズ・フォールに巻き込まれてお亡くなりになりました

それは我が誇りにかけて偽りはないと誓いますぞ」

 

そして皇帝に顔を隠した状態でザーツバルムはニヤリと笑った

 

「どうか卑しき種族に正義の鉄槌を」

 

こうして休戦の申し入れから時をおかずして開戦となったのである

 

 




という話でしたがいかがでしょうか?

ところでそろそろタイトルを決めたいのですが中々決まりません
何かいいアイデアはないでしょうか?あれば教えてください(>人<;)

次回は少し長めになる予定なので更新遅いと思います

それではまた次回お会いしましょう


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12話 種子島

遅くなりました
最近、私的な用事が立て込んでましてどんどん更新が遅くなっていきます
(最初に亀更新のタグつけといて良かった~)

最近アニメも溜まっているという状況です(トホホ・・・)
まあ、アルドノア・ゼロとSHIROBAKOだけはすぐ観ますが

そんな話は置いといて今回やっと真と合流します

それでは12話どんどんドーナツ、どーんといこう
(やべっテンションがおかしい(汗))


◇Side三人称

 

開戦を告げる放送の後、連合軍も開戦の準備を始めた

とは言っても電波妨害も受け、度重なる火星の攻撃により軍は大きな損害を受けていた

そのため公立高校に通っていた者は徴兵の対象になるのであった

 

こういったときのことも想定していた真はあらかじめアセイラムについては特殊な事情があると言っておいたので

彼女とエデルリッゾは徴兵の対象にはならなかった

 

一方ライエはどうしたらいいか悩んでいた

多くの人が口々に

 

「火星人を倒す」

「火星人から地球を守るんだ」

「火星人は敵だ」

 

と言っていたのを聞き、火星人である彼女は複雑な思いであった

彼女自身、父を殺されたことで火星人、ひいては自分自身のことまで恨み憎しみ忌み嫌っている

だからこそ、火星を敵視する声に居場所のなさと自己嫌悪に苛まれることになっているのだった

 

「あなた・・・ライエさんよね?」

 

突如ライエに声をかけてきたのは名前も知らぬ女性船員だった

 

「はい、そうですけど・・・」

 

「よかった。あなたは軍属じゃないけど訓練は受けてもらうからこの服持ってて」

 

いきなり手渡されたのはカタフラクト隊が着ているものと同じ服だった

 

「えっ?私まだ何も・・・・それに訓練なんて受けません」

 

「残念ながらあなたの保護者が決めたことだから本人に直接言ってもらえるかしら?私これでも忙しいの」

 

そう言って女性船員は立ち去っていく

しかし、何一つ納得の行かないライエは最後に1つ質問する

 

「保護者って誰ですか?」

 

「有田中尉よ」

 

「・・・いないじゃん」

 

この艦にいない男のことを思い出しながら不満そうな顔をするライエ

全て真の手のひらの上のようでむかつくが、今の自分に最善であろう策をとってくれたことに少しだけ感謝するのであった

 

ちなみに伊奈帆と韻子はカタフラクトのパイロットとなり、カームは整備班に配属となった

不平を言うカームだったが、高校での成績を見たら当然の結果である

 

 

日が高くなり周りは全面海となっていた頃、アセイラムはデッキに出てきて風にあたっていた

同じく外へと出てきた伊奈帆はアセイラムの側に立った

 

そんな伊奈帆をチラっと見てから再びアセイラムは前を向いた

 

「本当に綺麗・・・」

 

「青い空は珍しいですか?」

 

「ええ、光を屈折し、海と空が青く見えるほどたくさんの水と空気、そんなもの火星にはありませんもの」

 

「それは違います。空が青いのはレイリー散乱、雲が白いのはミー散乱です」

 

地球人・・・スレインに教えてもらった知識が実は間違っていたことを告げられて

恥ずかしさを隠すために頬を膨らませたアセイラムであった

 

 

 

この会話が後に大きな意味を持つことになるとは誰も予想していなかった・・・

 

 

 

 

わだつみに搭乗している一行は種子島基地の目の前まで来ていた

夕日が差し込む中、甲板には1つの酒瓶とそれを見ながら座る鞠戸がいた

 

「まだ日は高いですよ、鞠戸大尉」

 

そう言いながら近づいてきたのは耶賀頼であった

 

「これは俺のじゃねえ」

 

そして鞠戸は立ち上がり、酒瓶を持って大きく振りかぶる

 

「飲めなくなったやつの分だ」

 

言うやいなや酒瓶を海・・・種子島基地の方へ投げた

そして、胸ポケットから別の酒瓶を取り出す

 

「俺の分はこれだ」

 

「・・・ヒュームレイさんですか・・・」

 

耶賀頼が呟いたヒュームレイとは鞠戸の親友であり戦友だった男のことだ

ヘブンズ・フォールが起きたあの日、鞠戸は自らが引いた引き金によってその親友の命を奪ったのである

それ以来、鞠戸はパニック障害になり、戦えない身となってしまったのだ

 

「では、私もご一緒させていただきましょう」

 

治療のため、あまり鞠戸の飲酒を良しとしない耶賀頼だが今日については止めるどころか参加するようである

そんな二人に近づく影が一つ

 

「私も一杯頂けますか?」

 

そう言ったのはわだつみの館長であるマグバレッジであった

彼女は鞠戸から酒瓶をもらい、一口飲んでから鞠戸に向き直った

 

「私の兄も種子島での戦闘に参加していたんです。しかし戦死・・・・

いえあなたに殺されたんですよ鞠戸孝一郎!

私の旧姓はヒュームレイ、あなたの親友は私の兄です!!」

 

その言葉に鞠戸と耶賀頼は言葉を失った

しかし、なにか答えねばと鞠戸が口を開こうとしたそのとき・・・

 

ドォォオオン!!!

 

大きな音と揺れが艦を襲った。それは敵の攻撃によるものであった

三人は急いで持ち場に戻り、戦闘体制を整え始めたのでこの話は一旦終わりとなったのであった

 

 

甲板を貫いた敵の攻撃は当初不発弾のように思われたが、それは間違いだった

不発弾と思われたそれは再び動き出し島の方へと向かっていく

そして島の頂上にいた六臂のカタフラクトに近づき、腕としてドッキングするのであった

 

「断りもなくワラワの領地に入るとは・・・お灸を据えてあげましょう」

 

そして再び六臂から腕が射出される

 

「カタフラクト隊迎撃開始!!」

 

次々と現れたカタフラクトは迫り来る腕に銃撃を行う

しかし、何発当てたところで傷一つつくことはなかった・・・

それもその筈、飛ばされた腕は拳を握った状態で巨大分子となっているのである

 

「AP弾は無効、HE弾に切り替えて!!」

 

いち早くユキが指示を飛ばすが、狭い場所で縦横無尽に迫り来る腕に方フラクト隊は為すすべなかった

あるものは左右の攻撃に反応するも、上空からの攻撃に反応できず潰され

あるものは左右からの挟撃によってぺしゃんこになった

 

次々とやられていくカタフラクトたち

やがて残るはユキ、韻子そして伊奈帆の3名になったのであった

 

「きゃっ!!」

 

韻子は突っ込んできた腕を避けきれずにスタビライザで受け止める

しかし受け止め切れる訳もなく押されていくのだが、この時幸運にも機体が傾き、受け流すことに成功した

 

「なるほど・・・ありがとう韻子、ついでにスポッターよろしく」

 

そう言うと稲穂は迫り来る腕に向かって発砲した

 

ドンッ!

 

炸裂した銃弾の爆発によって傷はつかないものの軌道を艦からそらすことに成功した

そして3人はかたまり、ユキ、韻子が腕の位置を告げ、伊奈帆が逸らしていく

 

しかし、それも長くは続かなかった

 

上空から迫り来る腕に発砲するが重力の関係上射程が狭まる

 

「向こうは重力で加速している。これ以上接近されると・・・・」

 

バンッ、バンッ、バンッ・・・カチッ

 

引き金を引くたびに響いていた発射音が、空を切る音に変わる。その音が示すのは・・・

 

「・・・弾切れ」

 

 

更に悪いいことに弾切れを起こしたのであった

 

迫り来る腕、弾切れになった銃、動かない船

絶体絶命の状況に誰もが思わず目をつむってしまったその時

 

ドォォオオンンッッ!!!

 

腕がいきなり爆発し、進路を変えて海へと突っ込んだ

正確には爆発したのではなく打たれたのだ。上空に現れたスカイキャリアによって

 

「すまん、遅くなった」

 

スカイキャリアから発信された音声は・・・

 

「真さん・・・」

 

紛れもなく真のものだった

 

「わだつみの避難員は種子島基地に逃げ込め。道は俺が開ける」

 

そう言うやいなやスカイキャリアが崖に向かって発砲する

弾が当たった崖の部分は表面が崩れ落ち、洞穴が現れたのであった

 

「総員あの中へ逃げ込むぞ!」

 

鞠戸の指示によって、なんとか動かせるようになったわだつみが洞穴へと移動していった

その様子を見てから真は伊奈帆、ユキ,韻子に回線を開く

 

「今からあの六臂ヤローを倒す。界塚と網文は援護、弟は俺に乗ってあの腕を潰すぞ」

 

韻子、伊奈帆が返事をする中、黙っていない者がいた

 

「ちょっと待ちなさいよ!!その前にまず言うことがあるでしょうが、バカ真!!」

 

「す、すまん。だが今は緊急事態なんだ後でなんでも言うこと聞くから指示に従ってくれ」

 

これを聞いたユキは悪そうな笑みを浮かべる

 

「今『なんでも』って言いましたからね。帰ったら覚えときなさいよ」

 

言質を取られた真はしまったという顔をするが

すぐに諦めため息をつく

 

「一応俺はお前の上司なんだが・・・・」

 

「自分勝手な人は敬いません!」

 

「・・・まあいい反撃開始だ!!」




という話でした
ところでオリ機体、オリ敵って作ったほうがいいですかね?

というわけで軽くアンケートしてみたいと思います

1、オリ機体、オリ敵両方出演
2、オリ機体のみ
3、オリ敵のみ
4、どちらともいらない

感想やメッセージから番号と余裕がある人はその理由やアイディアいただけると嬉しいです

ちなみに誰からも来なかったらその時の気分で適宜追加していきます


ではでは次回は種子島戦決着と揚陸城での真の脱走の話かなあと考えています
もしかしたらOHANASHIかもしれませんが・・・
(アーマチュアいたそう((((;゚Д゚)))))



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13話 決戦!ヘラス

前回のアンケートに大量の感想でのご意見が寄せられてとても驚きました
みなさん貴重なご意見ありがとうございます

さてさて今回ですが完全に真視点での話となります
それに伴って少し角方を変えた(つもりな)のですが変だったら言っていただけるとうれしいです

それでは(作者にしては)長めの話です!どうぞ!!



◇Side有田真

 

「界塚弟乗れ」

 

そう言うとスカイキャリアの機体搭乗スペースにオレンジ色の機体が乗った

スレイプニルとは言え重いな・・・おかげでスピードが落ちてあの腕に簡単に追いつかれちまう

 

「・・・だが、それでいい」

 

相手に銃火器はない、突っ込んで来るだけなら・・・よっと

 

ぶつかる手前で降下、減速して再浮上すれば簡単に後ろが取れる

 

「ファイヤ!!」

 

手元のスイッチを押せば目の前の敵に向かって機銃が火を噴く

そしてそれとほぼ同時にスレイプニルの銃も発砲し、エンジンに当たって爆発した

 

情報通りエンジンは巨大分子化できないみたいだな

 

ヤツの弱点は盗み聞きしただけでも2つある

1つは巨大分子化できないエンジン。そしてもう1つの弱点は・・・

 

 

 

「中尉、3時の方向からもう一本。このままじゃ羽を握りつぶされますよ」

 

言われてそちらを見ると腕が手を開きながら襲いかかってきている

・・・が敵には悪いがこれは想定の範囲内、むしろ好都合だ

 

「界塚弟ヤツの手のひらを撃て」

 

「しかし、ヤツにはAP弾は効きませんよ。HE弾で逸らすのが精一杯です」

 

界塚弟がそう考えるのも無理はない、むしろ当然のことだろう

さっきまでの戦闘でAP弾は全くの無意味だったし、HE弾だとこの距離じゃ爆発に巻き込まれて自爆になりかねん

しかし、今は撃つのが正解だ

 

「HE弾でかまわん撃て!」

 

「しかしそれだと・・・・」

 

「いいと言っている!ヤツの硬さの秘密は巨大分子化だ」

 

「!」

 

界塚弟の言葉を遮って最低限のことを伝えると、それだけで全てを理解したようでHE弾を撃った

 

バンッ!・・・ドォオンッ!!

 

ってアイツ合図もなしに撃ちやがった

いくら切羽詰まってるからってこっちは爆風を流すのに神経削ってんだぞ!

 

「中尉の言ったとおりですね。指を動かすときは分子化できない

だからHE弾であれば十分に破壊することができるわけですか・・・」

 

「あのなぁお前の言う通りそれがヤツの弱点の2つ目だが、撃つときは撃つって言えよ」

 

「すみません、一刻を争っていたので。それに中尉の腕なら大丈夫だと思っていました」

 

ほう・・・なら俺の(荒っぽい)操縦技術を見せてやろうじゃないか

 

俺は一気に加速して目の前から突っ込んでくる2本の腕の間を擦りぬける

ちょっと掠ったか・・・まあいい

2本の腕を引き連れて地上にいた界塚と網文の真上を通り過ぎる

 

「界塚、網文、今だ撃て!」

 

俺の声を合図に2人の乗るカタフラクト・・・アレイオンが発砲した

下手な奴・・・クラフトマンあたりならこっちに飛んでくるかもしれんが、あの2人に関してはそんな心配は無い

 

そして見事2本とも撃墜に至るのであった

 

「どうだ?お前のお墨付きの操縦技術は」

 

「確かにすごいですが、別にこんな無茶は要求してません」

 

「でもこれであと2本・・・だろ?」

 

そう、あと2本

 

本体は腕を操作中は動かないのか動けないのか知らんが今のところ動きはない

2本だと挟撃は可能だが一番厄介な3方向からの攻撃はもうないと思っていいだろう

前後左右に加えて上下からも攻撃されたんじゃきついからな

 

しっかりと警戒しながら残りの2本を落とせばあとは数で押し切れる

 

予想通りヤツは最後の2本で前後から挟撃をしてきた

 

「界塚弟、後ろの腕にアンカーを引っ掛けろ」

 

そう言うとすぐさまアンカーを飛ばし腕に引っかかりワイヤーでつながった状態になる

よし、ここから一気に上昇して大きく宙返り(ループ)する!!

 

ワイヤーで引っ張られた腕は宙返りの勢いで前から突っ込んできた腕とぶつかり爆発した

これで腕の残りは0、ヤツ本体の武装はわからんが十分注意すれば勝てる

 

 

 

・・・と思っていたのだがそれは一変する

 

 

 

ヤツは動き出そうとしない

どうした?出し渋っている?動揺している?何かを待っている?

何にしてもこちらからアクションをかけないといけないか

 

そう思ってヤツに向かっていく・・・次の瞬間驚くべきことが起きた

 

 

 

そう、ヤツが・・・・・変形したのだ

 

 

 

「何!?」

 

「中尉、アレは何なんですか?」

 

まるで巨大な一本の腕のようになったヤツは今までの腕よりも更に1段階速度を上げて上昇した

そして重力を利用してさらに加速しながら迫ってくる

 

まずいこのままじゃぶつかる

 

「界塚弟、しっかり捕まっとけよ!!」

 

そう言ってヤツとぶつかるかというところでローリングする

 

ドォォォォオオオオンンンンッッッ!!

 

激しく水しぶきを立ててヤツが海へと突っ込んだ

なんとか避けることには成功したがスレイプニルに引っ張られて一瞬ぐらつく

しかしそれもすぐに立て直す

 

その後もヤツの容赦ない攻撃が続く

ちっこれがヤツの奥の手ってわけか

速さも威力もさっきまでのの比じゃない。なんとか避けてるが落ちるのも時間の問題だぞ

 

「界塚弟、おろすぞ。ちょっと雑なやり方にはなるが、まあ大丈夫だろ?」

 

「了解です」

 

そう言って地面のすれすれを飛ぶとあとは勝手にむこうが降りた

 

よし、これで幾分かマシになる。搭乗スペースもしまって、空気抵抗も減った今なら少しはやりあえる

 

 

行くぞ六臂ヤロー・・・いやロケットパンチ!

性能だけが戦いじゃねえことを教えてやる!!

 

 

こうして俺とヤツとの一騎打ちが始まった

 

 

 

「ダメ元だが・・・くらえっ!!」

 

突っ込んでくるヤツと正対して発砲し、機体をひねって避ける

ちっやっぱりノーダメージか。腕がそうだったから本体ももちろん巨大分子化してんだろうな

 

「狙うはやっぱり、エンジンか」

 

しかしどうやって後ろを取るか・・・

腕の時のように失速による降下で通り過ぎさせようとしたら進路変更してついてきたしなぁ

地上部隊に撃たせるか

 

「下の3人、今からそっちに行くからエンジンを撃ってくれ」

 

「「「了解」」」

 

後ろから突っ込んできたヤツを旋回して避けると一気に加速して地上部隊の方へ向かっていく

肝心のヤツは予想を裏切ることなく追いかけてきた。その差は徐々に詰まっていく

 

「そうだ、ついてこい!!」

 

しかし、こっちは最小限かつ最速の動きしてんのにそれに余裕で追いつくって何なんだよ

 

そして地上部隊の上を通過する頃にはほとんど2機の間隔は無かった

さっきまでならこのタイミングで旋回するなりしてやり過ごしていたが

そうすればヤツも旋回するからエンジンが狙えない

 

「当ててくれよ!」

 

だから俺は味方を信じてただ最速で飛行するだけだ

 

そして地上部隊が発砲した

当たった!・・・と思った瞬間ヤツは旋回してよけやがった

ちぃ、エンジンには全力で警戒ってわけか

 

更にまずいことにヤツは攻撃目標を俺から地上の3人に変更した

 

スレイプニルじゃあの速さについていけない

 

「ユキ姉、韻子避けて!!」

 

いち早く危険を察知した界塚弟が2人に指示を出す

2人もその声に反応してヤツの進路から離れるように散解する

 

しかしそれじゃあダメだヤツはあの速さから信じられない機敏な動きでついてくる

そしてその標的になったのは界塚の乗るアレイオンだった

 

よけられないことを悟った界塚は最後の抵抗とばかりに残弾を全て撃ちきる

撃ちきったあとは諦めたかのように動かなくなった

 

「・・・やらせるかぁぁぁぁああああ!!!!」

 

無理な旋回で体にGがかかる

全身が悲鳴を上げだし、機体も異常を知らせるアラームが鳴り響いている

 

「ぐっ!根性見せやがれっ!!」

 

意地で何とかヤツの後ろにつけた俺は標準を気にせず発砲した

 

幸運にもヤツは銃声だけで回避運動を行い進路を大きく変えた

銃弾はヤツのいたところには飛んでいかなかったので界塚に当たることもなかった

 

そしてヤツが再び俺を攻撃目標にした

命懸けの鬼ごっこの再開だ

 

そう思って加速しようとした瞬間、機体に異常が発生した

 

「速度が上がらない!?」

 

どうやらさっきの無理がたたったようで速度がスレイプニルを乗せていた時ぐらいしか出ない

さらにそのことに気を取られ気づいたときにはヤツが接近していた

 

まずい、やられる!!

そう思ったその瞬間

 

ドドドォォオオンンッッ!!

 

ヤツに数発のミサイルが当たった

そのミサイルは種子島基地のものらしく島からさらにミサイルが射出される

 

ヤツがそのミサイルを避けていると

地面が割れ中から戦艦が出てきた。ただ、それはただの戦艦ではない

 

それは、空を飛んでいた

 

「航空艦?・・・いや、戦艦だ」

 

界塚弟が驚きの声を上げている

 

「あれは地球陣営が唯一所有するアルドノア・ドライブを動力源とした戦艦

 

 

『デューカリオン』だ」

 

 

 

 




という感じでした
タイトルが思いつかずまさかの7話のパクリ(・・;)

次回はデューカリオン起動までの話とヘラスの破壊がメインとなります

しかし真は着々とユキに対するポイントを稼いでいきますね(笑)

それと前書きで書き忘れていましたがアンケートに対するご意見は
敵機などにも反映してできる限り登場させる予定です
しかし、当然登場できないものもあるわけでそれに関してはご了承ください
アンケートは引き続き受け付けますがそれ以外にもバシバシいい案いただけると嬉しいです

それではまた次回お会いしましょう
そしてこれからもよろしくおねがいします


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14話 勝利の代償?

どうもおはこんばんにちは、クイハです

人の作品読んでたらちょっと甘い話が書きたくなったので
ストーリーはあまり進めず糖度多めの作品にしたつもりです

初めてユキサイドを書いたり、甘めの作品書いたりということで若干キャラがぶれてる気もしますがそこのところは生暖かい目で見てください

あとご都合展開もあるのですがそちらもご了承頂きたいです

それではどうぞ!


◇三人称

 

種子島基地から文字通り飛び出したデューカリオンに驚いたのは何も伊奈帆や真たちだけではない

火星騎士フェーミリアン・・・ヘラスのパイロットも、あるいは真たち以上に驚いていた

 

「そんな馬鹿な、起動因子を持たぬ地球人がなぜ!?」

 

そんな彼女の問いへの答えはなくただ帰ってきたのは砲弾の雨だった

 

「おのれぇ、わらわを、火星を侮辱した罪、その身をもって教えてくれるわ!!」

 

砲弾の雨をかいくぐり、デューカリオンに突進を開始するヘラス、しかしその後ろには一つの機影があった

もちろん、その機影とは真の駆るスカイキャリアだ

 

「油断したな、チェックメイトだ」

 

回線を通じて聞こえた声にフェーミリオンは笑う

 

「残念だったな、わらわが考えなしに突っ込むとでも思ったか?

スカイキャリアの残弾がないことは知っておるぞ?その機体で何ができるというのだ?

貴様はよくやったがあと一手足らぬわ。そこで仲間の死を見て絶望するがいい!」

 

 

 

そんな彼女の通信に真も笑った

 

「言っただろう?チェックメイトだ!

チェックメイトっていうのは王手じゃない詰み(・・)だ」

そう言うとコックピットを開け、そこから体を乗り出す

その手には狙撃銃があった

 

それなりの高度、速度の中での狙撃は難しい

真自身も風圧、気圧などにジワジワと体力を削られていく、そんな状況だった

 

しかし、真はその一撃を外さない

 

機体の操縦能力以上に身体の能力の高いということもあるだろう

だがそれ以上に彼の外せないという責任が、当てるという意志が、当たれという願いがその一撃を外させない

 

ドンッ・・・・バァァアアンッッ!!

 

エンジンに着弾し、バランスが崩れたヘラスは一旦変形を解き人型になって着地する

 

一方の真は着弾したのを確認すると同時に意識を手放し海へと落ちていった

無人となったスカイキャリアはまっすぐ島に突っ込み爆発するのであった

 

ふたりの勝負なら勝者はフェーミリオンだろう・・・ふたり(・・・)の勝負なら

 

着地したヘラスが態勢を整えている時に近づく物体があった

それは、デューカリオンである

 

「皆さん衝撃に備えてください!」

 

操舵士のニーナの声に艦内の乗組員は何かに捕まり衝撃に備える

そしてヘラスの十八番を奪う体当たりをかました

 

運のいいことにヘラスは戦闘不能まで追い込まれたが、かろうじてまだ動き、撤退行動を始めようとする

しかし、その行為はすぐに無駄になる

 

ドォオンッ!・・・・バァァアアンッッ!!

 

デューカリオンのハッチで大型ライフルを構えていたアレイオンの手によってヘラスは完全に撃破されるのであった

そのパイロットであるライエは憎々しく呟く

 

「お父様を殺した火星人はみんな敵よ・・・」

 

◇Side界塚ユキ

 

「真さんっ!!」

 

真さんが落ちていったのはここからそんなに遠くないところ

泳いで行けば間に合うかもしれない、いや間に合わせるのよ、私!!

 

「あー、もう邪魔」

 

パイロットスーツについている余計なものを捨て去り勢いよく海に飛び込んだ

 

大丈夫、このあたりはヘブンズ・フォールの調査とかで水深が深くなってるから頭は打ってない

とは言っても意識を失ってたから早く見つけないと

 

「確かこの辺よね・・・・・ん、何かしら?ネックレス?」

 

ネックレスが浮いているのも謎だけどなんでこんなところに・・・まさか!?

そのまさかの可能性にかけて私は潜水する

 

(いたっ!)

 

運良く真さんはそこまで沈んでいなかった

その彼の腕を掴み引き上げる

 

重たい・・・服が水を吸ってるからかなりの重さがあったのね

アーマチュアを付けておいて良かった

 

水面に出ると直ぐに真さんの意識確認をしてみる

 

「真さん!真さん!しっかりしてください!真さん!!」

 

意識がない水もだいぶ飲んでるんだわ

陸まで運んでいったんじゃ間に合わない

 

そして心を決め真さんの鼻をつまみ、息を大きく吸う

そして唇に唇を合わせて息を吹き込む

 

(私のファーストキスなんだから死んだら殺すわよ)

 

「・・・ゴホッ!ゴホッゴホッ!・・・界塚か?」

 

「真さん!」

 

願いが通じたのか真さんは意識を取り戻した

私は嬉しくて思わず抱きついた

 

「界塚・・・すまんが痛い・・・とりあえず、陸に上がりたいのだが・・・」

 

「あっすみません、それじゃあさくっと泳ぎますか」

 

◇Side 有田真

 

「打ち身、骨の罅に骨折、内蔵の損傷まで・・・随分と無茶しましたね中尉」

 

「・・・」

 

俺はあの後デューカリオンの医務室に運び込まれて耶賀来先生の治療を受けている

全身は包帯でぐるぐる巻きにされてまるでミイラだ

 

「真さん大丈夫ですか!・・・ってミイラ?」

 

「・・・うるさい」

 

勢いよく入ってきたのは界塚だった

しかし、入ってきてそうそう上官をミイラ呼ばわりとは・・・しかも真さんはプライベートでの呼び方だろうに

一度指導し直すか

 

「しかし、よくもまあそんなボロボロになるまで無茶しましたね」

 

「全くです。愛の力というものは測りしれませんね」

 

「愛の力?」

 

耶賀来先生の謎めいた発言に界塚は首をかしげる

かくいう俺も全然心当たりがないんだが、はてさてなんのことだ?

 

「内蔵の損傷や骨折は海に落ちた時のものだけじゃないんですよ

戦闘を見せてもらいましたが、怪我のいくつかは界塚准尉が狙われた時に無理やり機体をひねったからですよね?

なかなかの負荷でしたでしょうに、まあ愛しの界塚准尉のためならそれぐらいどうってことありませんもんね、中尉?」

 

こいつっ!なんてこと言いやがる

いち早く言葉の意味を理解した俺は界塚の方を見ると最初は意味が分からずきょとんとしていたが

次第にその顔が真っ赤に染まっていった

 

そして振り返るとその様子を見た耶賀来先生がニヤニヤしている

 

「耶賀来先生、何を!」

 

「満更でもないみたいですよ?准尉も・・・中尉もね

そんなに真っ赤な顔して言われても何も怖くありませんね(笑)」

 

どうやら俺の顔も真っ赤だったらしい

言われて意識した瞬間顔が熱なっていくのがわかる

 

くそぅ、やっぱりあの人は苦手だ

 

精神的にもズタボロにされた中、更に耶賀来先生が爆弾を投下する・・・しかもかなり大きいやつだ

 

「界塚准尉も熱烈なキスをしてましたしねぇ。両思いでカップル成立ですね」

 

だぁぁああっ!!それを言うか!?わかってたけど意識しないようにしてたのに

 

「あれは!人工呼きゅ・・・」

 

「あっ、僕はこれから避難民たちの様子を見に行かないといけないので二人で留守番しといてくださいね」

 

界塚の発言を華麗にスルーした耶賀来先生はそのまま医務室を出て行った

腹が立つくらいの意地の悪い笑みを浮かべて

 

この状況で二人きりでどうすればいいんだよ!耶賀来先生にはいつか絶対やり返す

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

「あ、あの」

 

「ん、ん?何だ?」

 

「じ・・・人工呼吸ですから」

 

「あ、ああ」

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

「そ、それでは失礼します!」

 

「ああ、ありがとう界塚」

 

もう一度言おう、俺はやっぱり耶賀来先生が苦手だ!!!




という感じになりました

耶賀来先生がなかなかにいい性格になってしまった
ユキサイドはあんな感じでしょうかね?

意外と書くのは楽しかったんですが結果は・・・
まあ、作者にこんな話は「似合わないというか書けない!」と思われましたら言ってください
二度と書かないようにするんで・・・

次回こそはデューカリオン起動までの流れをバーっと行こうと思います

それではまた次回お会いしましょう


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15話 決別

長い間、更新止めてすみません
PCの故障と作者の身の上の都合で全然書く暇がなかったのでお許し下さい

今後もあまり早くには更新できないと思いますが
完結はさせるので温かい目で見ていただけるとありがたいです


◇三人称Side

 

順調な航海を続けるデューカリオンのデッキに艦内探索をしてきたカームがやってきた

 

「ここがデッキか・・・他のとこもそうだけどアルドノアを使った空飛ぶ戦艦って割には普通のやつと大差ないな」

 

それもその筈、機体状態デューカリオンが重力操作を行っていたため空飛ぶ戦艦などというものを建造したが、今日まで試運転すらできなかったのだ

今後地球軍の重要な兵器となるならそれに合わせて大規模な改修が行われていくのであろう

 

そんなことはさておき、そのように呟いたカームはそのまま操舵士のニーナのところに向かった

 

「操船は普通の船と同じなのか?お前でも大丈夫なの?」

 

「同じ感覚で操船できるようにFCSが調整されてあるの」

 

少し小馬鹿にした感じでニヤつくカームにニーナは少し膨れながら答えた

 

「そんなことより持ち場を離れてもいいの、カーム?」

 

痛いところを突かれたカームは苦い顔をしながらも日々のサボりによって培われた言い訳をする

 

「いいだろ、ちょっと休憩してるだけだし、偉い人いないし

 

・・・・ってか伊奈帆は?」

 

それに応えたのはニーナではなく通信士の祭陽だった

 

「その偉い人のとこ、火星人と一緒に」

 

「火星人!?」

 

火星人という言葉にう過剰反応するカームであった

 

◇有田真Side

 

ヘラスとの戦闘の後処理も大体終わり落ち着いた頃、今回で発覚したアセイラム姫の生存に関係するメンバーが集められた

組み分けとしては以下のとおりである

 

地球軍(何も知らなかった組):マグバレッジ艦長、不見咲副長、鞠戸さん、界塚

隠蔽組:俺、界塚弟、ライエ

当事者:アセイラム姫、エデルリッゾ

 

そして今は大体の流れを俺の方から伝えたところである

 

「火星の騎士が殿下の暗殺を・・・・にわかに信じがたい話です」

 

「いやいや落ち着いて考えればそう言う結論にも十分成り得ると思いますが」

 

そう言ってやったら艦長に睨まれた、いや睨まれたというよりか真剣に考えてる時は目つきが鋭くなるのか?

そしてその目は明らかに「続きを」と言っている

 

「この戦争には火星側にしかメリットが存在しないのです

今回の和平では火星側がアルドノアに関する技術開示が約束されていましたし

トロイヤード博士の研究もあってアルドノアの起動の一般化も進められていました」

 

そう言うとアセイラム姫とエデルリッゾは大きく頷いた

 

「そして鞠戸さんの種子島レポートこそ握りつぶされたものの地球軍も十分に戦力差は理解しているでしょう

少なくとも公立校で軍事訓練が義務化されてからまだ数年しか経っていない、そんな準備不足で仕掛ける必要はないでしょう?

独断テロの可能性もあるがそれは俺と界塚が見た状況からの判断で除外とします」

 

ひとしきり言い切ると艦長は手で口元を押さえ、少し考え込んだ

全員が艦長の次の言葉を待った

 

「・・・・分かりました。まだまだ気になる点はありますが、ひとまずは有田中尉の話で進めていきましょう」

 

「それはありがたい。で、今後はアセイラム姫を保護する方向でいいでしょうか?

この艦で地球連合本部まで行くのなら彼女の保護は絶対条件です

それに彼女はこの戦争を止める切り札になり得ますので」

 

「それも問題ありません。ですが・・・」

 

そう言って艦長は俺、界塚弟、ライエを順に睨む。今度は本当に睨みつけている

まあ、今のでごまかされて「はい、解散」とはいかないだろうな

むしろこっちのほうが本題だろう

 

「アセイラム姫の存在の隠蔽、少なくともそちらの二人は許せても、あなたは許されませんよ有田中尉」

 

やっぱり言うと思った

まあ界塚弟は軍の都合で軍に入れられた訳だし、ライエは軍属ですらない

二人共、功績もちゃんとあるし、俺に比べれば大した問題ではないのだろう

 

俺の方はかなり面倒だ

ドラマなんかじゃよくこんな隠蔽しても「終わりよければすべてよし」の考えで許されるが現実は違う

 

今は軍がまともに機能してないしこの艦も慌ただしかったから何もないが

普通なら地球軍の敵、火星の味方だと思われて問答無用で檻の中にぶち込まれる

 

といっても現状もそこまでいいものではない

信用はダダ下がりで軟禁は確実だ。だから・・・

 

「はぁ・・・・・」

 

「ため息を吐きたいのはこちらなのですが」

 

「すまない、ちょっとした自己嫌悪だ」

 

そう言って俺は軍服を脱ぎ捨てた

 

「俺は只今を持って軍を抜ける。どうするかはそちらの勝手だが、俺にもやるべきことがあるのから邪魔するなら容赦はしない」

 

そう言って俺はブリーフィングルームを出た。 

 

 

こんな時のために自室に用意していた荷物を持ちデッキへ向かって歩いていると後ろから足音が近づいてきた

走ってきたであろう息が少し切れているその足音の主は界塚だった

 

「有田中尉、どこに行くんですか?一緒に戻りましょう、謝ればまだ大丈夫です」

 

「界塚、お前にこうやって止められるのはあの時以来だな」

 

あの時・・・俺が地雷を仕掛けに行ったときも、ひどいことを言ってそのまま出て行った

あの時も今回も俺は自分のしたことに後悔はない、自分で決めた道なのだから

 

「そうですね、でもあの時のように簡単に行かせるわけにはいきません」

 

「言っただろう?邪魔するなら容赦はしない、それが例えお前であってもだ」

 

そう言って再び歩き出す

そんな俺の前に界塚が立ちふさがった

こいつ聞いてなかったのか?・・・いや聞いた上で立ちふさがるのか、まったく

 

「どけ」

 

「嫌です」

 

「どけっ!」

 

「嫌ですっ!!」

 

はぁ、強情なやつめ

・・・怪我はさせたくなかったんだがな

 

「それなら予告通り、押しとおr「なんで」・・・」

 

「なんでなんですか、なんで真さんは自分から距離をとって、自分勝手に行動して私たちに何も、何も教えてくれない」

 

界塚は話すに連れてその目に涙が溜まっていく

それでも泣くまいと、俺を止めようとする彼女は一体何を思っているのだろうか?

 

「真さんは、私たちが嫌いなんですか?

嫌いなら褒めないでください!命を懸けないでください!優しくしないでください!

 

 

好きにならせないでくださいっ!!」

 

そう言い切ると界塚はついに決壊し大粒の涙を流し出す

かくいう俺はあまりの衝撃に一瞬固まってしまった。やがて心のモヤが晴れたような気持ちになる

そうか俺は・・・

 

「俺は・・・俺もお前のことが好きだ、界塚」

 

その言葉に界塚は顔を上げる

 

「でも俺はこの歩みを止める気はない

俺にはやらなければならないことがあるからな」

 

心に刺さるような痛みを感じるが、これは俺が背負うべき十字架だ

・・・ただ界塚には真実を告げておこう

 

「俺は火星人、それも王族の血を引き継ぎアルドノアの起動権を持つ存在だ

アセイラム姫の父親の弟、つまりは彼女の叔父というわけだ

だから俺はすべてを終わらせに行く」

 

そういうと界塚は呆然となり、ただ涙を流し続けた

その横を抜けデッキへの最後の扉を開く

 

入ってくる外気に界塚は振り返った

 

俺は彼女に笑っていう

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあな」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして俺はデッキから飛び降りた

 

◇Side三人称

 

デューカリオンから飛び降りた真はパラシュートを使って着陸した

彼がパラシュートを片付け終えた頃、スカイキャリアが彼の目の前に降りてきた

 

着陸したスカイキャリアから降りてきたのはスレインだった

 

「久しぶりだなスレイン」

 

そう声をかける真に返事もせずどんどん近づくスレイン

そしてすぐ目の前まで歩くとスレインはいきなり膝を曲げ、腰を折った

その姿はまるで忠誠を誓う騎士の姿である

 

「お迎えに上がりました。ヴェリテ・ヴァース・アリュタニア様」

 




というわけで次回へと続きます

次回もいつになるかはわかりませんが頑張ってできるだけ早く上げたいと思います


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16話 火星と地球と・・・

大変長らくお待たせしました。え?待ってない?そんなこと言わないでください

今まで忙しかったのと別の作品が書きたくなったのとで書くのが遅れました

とりあえずザーツバルム城での戦いを終わらせて完結とし
その後どうするかはゆっくり考えていこうかなと思っています

では今回は結構が~と進むのでそこんとこよろしくです




クルーテオ城では城の主が珍しく穏やかな顔つきで話を楽しんでいた

 

「全く、もっと早くにお知らせいただけたらトリルラン卿やブラドを仕向けたりしなかったものを」

 

「いや~すまん、まさかお前が伯爵になっているとは思わなくてな。それに正体をバラす気はなかったんだよ」

 

仲よさげに話す二人に混乱しているスレインはおずおずと声をかける

 

「お二人はどういったご関係なのですか?」

 

口を挟んだスレインに怪訝な顔をするクルーテオを真が手で制す

 

「クルーテオは俺の子供の頃のお目付け役兼遊び相手で、火星にいた時はほとんど一緒だった兄貴みたいな奴なんだ」

 

「先日の種子島での戦闘で貴方様の姿を見つけた時は目を疑いましたが

スカイキャリアの動きの癖や少し無茶をするところは相変わらずでしたな。ほんとうに困った弟分です」

 

昔のことを懐かしみ少し困ったように苦笑するクルーテオの表情には真の生存に対する喜びが隠しきれていなかった

 

本当であれば再会を祝して食事でもしながら思い出話に花を咲かせるところだが

あいにく今は落ち着いて話せる状況ではなかった

 

話が一段落したところでクルーテオと真は一気に真剣な顔になる

 

「ザーツバルムのことだ、真実を知っている俺やお前を殺しに来る可能性は十分にあるな」

 

「あやつのディオスクリアは次元バリアを搭載していますから、奇襲にはうってつけという訳ですな」

 

実は真はザーツバルムと話をしたことがない

トロイヤード博士のところにいた頃も正体をバラさないために合わないようにしていたからだ

 

だが、火星の話を聞くためにザーツバルムとトロイヤード博士の会話はこっそり聞いていたため人となりは知っている

 

「デューカリオンの部隊がロシアの地球連合本部からアセイラム姫生存と休戦の放送を行う

奴が今、月での指揮権を持っているなら妨害をするだろうからお前は宇宙に上がって何とか父上に放送を届けてくれ」

 

「ヴェリテ様はいかがなるおつもりで?」

 

「俺はアセイラム姫の護衛にあたる。彼女の存在は今後の戦局において重要だからな」

 

「それならば私もお伴します」

 

「・・・ダメだ。これは俺の戦いだから、お前は余計な首を突っ込むな」

 

「しかしヴェリテ様「ただし、」・・・」

 

食い下がろうとするクルーテオに真が上から声をかぶせる

 

「ザーツバルムが地球に攻め入った時だけは許そう、これが最大の譲歩だ

この中でまともに奴と戦えるのはお前のタルシスだけなんだから、簡単に城から離れるな」

 

それでもなお食い下がろうとするクルーテオだったが、真の目、そのあまりにも真っ直ぐな目に諦めのため息をつくのであった

 

「分かりました。ヴェリテ様付いてきてください」

 

城の奥に向かって歩き出すクルーテオの後をついていく真だった

 

 

「これは・・・」

 

「火星にいた頃のヴェリテ様の要望を元に作らせたヴェリテ様専用機です

型式番号はGUF-00、通称『ユナイト』」

 

そこにはきれいな青がいた

 

 

「火星の揚陸城が降下してきます。場所は・・・・・ここ地球連合本部付近です!?」

 

「一気に攻めてきたかっ!!総員第一戦闘配備!!」

 

地球連合本部の中枢、指揮官室で指示がとび基地内に緊急アラームが鳴り響いた

 

この事態で基地内の人々に動揺が走る

それもそのはず、つい今しがたアセイラムが火星に向けて生存報告及び休戦の呼びかけを行ったのだ

誰もが戦争の終結を信じずにはいられない、そんな中での緊急アラーム音はその一縷の希望を打ち砕いたのだから

 

民間人からは阿鼻叫喚が絶え間なく流れでるが軍人はそうも言ってられない

民間人をシェルターへ誘導すると共に火星との決戦に向けて準備をする

 

それはデューカリオンに乗っていた彼らも例外ではない

心と体、共に疲労困憊ではあるが鞭を打ってそれぞれの持ち場へと向かう

 

一方その頃アセイラムはといえば・・・・

 

「火星は、私のことなどどうでも良かったのですね。戦争する理由がただ欲しかったのですね。」

 

「姫様がどうでもいいだなんて、そんなことはありません」

 

「ではなぜ戦争をやめないのですかっ!!」

 

慰めるエデルリッゾに珍しく声を荒らげていた。

その顔には様々な感情が入り交じっていたが、その全てが絶望を表していた

気丈に振舞っていれたのも今回の演説に賭けていた部分が大きいのだから、ある意味誰よりもショックが大きいのも彼女なのだろう

 

そんな彼女に通信が入る

 

「セラムさん無事ですか?」

 

「伊奈帆さん・・・」

 

「無事なんですね?シェルターに向かえますか?無理なら場所を教えてくれれば僕が迎えに行きます」

 

「・・・・」

 

少しの沈黙・・・その間に何があったのかはアセイラムにしかわからないことであるが彼女の目には確かに闘志が宿っていた

 

「伊奈帆さん、火星の兵器の多くはアルドノアによって動いています。揚陸城もまたアルドノアを元とする兵器の一つです

アルドノアを止めるには3つの方法があります。1つは起動者が止める、2つ目は起動者の心臓が止まる

そして3つ目は起動権を持つものが強制停止する、です。私が揚陸城のアルドノアを止めます。そうすればこの戦闘は終わるでしょう」

 

「・・・わかりました、艦長に掛けあってみます」

 

この数十分後、デューカリオンで成層圏から揚陸城に乗り込むという無謀とも言える作戦が決行されるのであった

 

 

時を同じくして成層圏の更に上では情報戦が行われていた

 

月から離れた位置にあるクルーテオの揚陸城は先程のアセイラムの演説映像を様々な方法を用いて火星に届けようとするが

月面にいるザーツバルムの息のかかった者達が妨害を行ってるため、未だ目的は達せられていない

 

クルーテオ城で指揮を執っているのはクルーテオではなくその息子クランカインである

ではクルーテオはというと、すでに自分の専用機『タルシス』に乗り込み成層圏にて宇宙、地上のどちら側にも参戦できる位置にいた

 

デューカリオンが上昇してきたのはそんな時である

 

クルーテオはかすかに笑うとデューカリオンへと向かった

 

 

クルーテオの接近などつゆ知らずデューカリオンは伊奈帆の考えた揚陸城突入作戦を決行に移した

 

「デコイ発射!」

 

デューカリオンから射出されたデコイ弾はザーツバルム城に方向を向けしばらく進んだ後、弾けた

そして大量にばらまかれたのは、カタフラクトを模したデコイである

 

当然のごとく揚陸城は迎撃行動を行い、デコイが一つまた一つとゴミに成り果てる

 

デコイである程度撹乱できたタイミングでユキ率いるマスタング小隊が降下を始める

この突撃部隊はデコイの撹乱があるとはいえ最も危険な役割である

実際にはないが、揚陸城に一斉掃射の兵器があれば抵抗すらできずに死ぬ

 

それがなくともまだ一つとして損害のない対空砲火を避けて揚陸城に取り付けくのは困難を極めるのだ

 

「当たりませんように、当たりませんように」

 

こうして韻子が怯えるのを咎めるものは誰もいなかった

 

「嬢ちゃん、弾っていうのは臆病もんが好きなんだ

堂々としてりゃあ弾のほうが勝手に避けt・・・・・」

 

「マスタング4ー4!!」

 

「ひぃっ!」

 

このようにベテランパイロットであっても簡単に落ちてしまうような状況だった

次に誰が落ちてもおかしくない

 

そして猛威はユキへと向けられた

 

「ユキ姉っ!!」

 

「ユキ准尉っ!!」

 

「っ!!」

 

避けられない・・・・瞬時にユキはそう判断した

 

(こんなにあっけなく死ぬのか、嫌だな・・・・・・・・真さん)

 

この場にいない愛する人へと心で呼びかける

しかし、都合良くどこからか真が湧いてきて助けてくれるわけでもなく、ユキは生を諦め目を瞑った

 

数秒、長いとは言えないが弾丸が命中するには十分すぎる時間

しかしいくら待っても来ない衝撃に恐る恐る目を開けるとそこには白い機体がいた

どうやら白い機体が彼女を守ったらしい

 

ユキはまさかと思い回線を開いた

 

「・・・真さん?」

 

「真?・・・ああヴェリテ様の地球での名前か、残念ながら私はヴェリテ様ではない

私の名前はクルーテオ。ヴェリテ様の命により助太刀に参った」

 

突然のクルーテオの参上、その事態にいち早く反応したのはやはりというべきか伊奈帆だった

 

「クルーテオさんありがとうございます。このまま揚陸城に取り付くので援護をお願いします」

 

「うむ、援護とは言わず私が先導し道を開こう。ところで少年、界塚ユキはいるか?」

 

「は、はい」

 

クルーテオの後ろのユキが突然呼ばれて慌てて返事をする

 

「そうか、貴公のことは絶対に守れとの命でな、守りはするがそう離れられても困るので距離を開けて私の後ろにつけ」

 

「っ!はい!!」

 

真が大切に想ってくれていることに喜びながらも、足手まといにならないように気をつけようと思うユキであった

 

・・・がその顔は確実ににやけていたのは言うまでもない

 

そんなことは知らずクルーテオは最前線の伊奈帆に並ぶ

 

「では一気に行くぞ、ついてこれるか少年?」

 

「問題ありません」

 

「上等だ!我がタルシスの力とくと見せてやろう!」

 

こうして二機は揚陸城に吸い込まれていった

 




という話でした

できれば次回を最終回としたいと思います
番外編等の希望があれば書きたいと思いますが、まあ文才のない作者にそんなもの求めませんよね?

次回は出来る限り早急に描き上げるので待っててくれると嬉しいです


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17話 タルシスとシュルトとディオスクリアと

えー最終回とか言っておきながら全然最終回じゃないです

次こそは・・・・・・
と思ってるんですが正直なところ言いますと
原作同様にザーツバルム城での戦いだとバッドエンディングしか見えないんですよね

どうしよう(-_-;)

続きもいいけどISとか空戦魔導士とかダンマチとかSAOとかガンダムとか書きたい
でも時間がない

っとまあ作者の愚痴は置いといて17話行ってみよう!!


「少年、常に私の真後ろに付いて来い。ちょっとでも遅れると死ぬぞ」

 

「了解・・・それと僕の名前は界塚伊奈帆です」

 

「上等だ、界塚少年!」

 

そう言うと白とオレンジの機体は弾幕の中心に向かってどんどん進んでいく

 

「早っ!?」

 

「って、ちょっと待ちなさい。無茶よ!」

 

無茶・・・と言うのは確かだが、それはあくまでただの機体ならば、という条件がつく

クルーテオの専用機タルシスに関して言えばこれは無茶とはいえないのだ

 

というのもタルシスはアルドノアによる膨大なエネルギーを用いて少しだけだが未来予知を実現している

その能力を有しているため、当たる弾だけを確実に避け、防ぎ、最短かつ最速で揚陸城へと向かうことができるのだ

 

むしろ凄いのはこのタルシスの動きについていく伊奈帆の方だろう

伊奈帆は周りへの警戒を遮断し、タルシスの一挙手一投足にのみ集中しているからこそできるのだろうが・・・

 

なぜ伊奈帆はそこまでクルーテオを信用できるのか?

正確に言うならば、クルーテオではなくクルーテオを信用してこちらに寄越した真への信頼であるのだが、このことは当の本人にもわからない事実である

 

順調に駒を進める伊奈帆たち突撃部隊

しかし、それを簡単に許すザーツバルムではなかった

 

「ふんっ!クルーテオめ、地球人に与するとは下劣な!

砲撃をタルシスに集中、あの裏切り者を撃ち落とせっ!!」

 

いかにタルシスが未来予知で圧倒的な回避能力を誇ると言っても必ずしも無敵というわけではない

機体の反応速度を超えた弾丸、あるいは地雷・機雷などの(トラップ)、そして回避することができない圧倒的な物量

結果として撃墜することはないものの回避に精一杯でそれ以上の接近は困難を極めることとなるのであった

 

 

「クルーテオさんどうにかなりませんか?」

 

「ふむ・・・できなくはないがリスクに対してリターンが見合わぬ

それより、ここで奴らの注意を惹きつけて、他のものが取り付き制圧するのを待つほうが堅実的だと思うが?」

 

「なら僕がっ!」

 

「やめておけ、私の援護なしにこの弾幕を避けきれるとは到底思えん」

 

焦る伊奈帆に対して完全な正論をとくクルーテオ

伊奈帆が焦るのはきっと早々に取り付いて、後続に楽をさせたかったからなのであろう

だからこそクルーテオは何をするでもなくただただ正論で伊奈帆を黙らせたのだ

 

ドォンッ!

 

「しまった!」

 

その時気が緩んだのだろう、オレンジ色の機体が被弾した

ダメージと言う目で見ればかすり傷程度だったのだが、機体のバランスが崩れたのがまずかった

タルシスに遅れてしまったスレイプニルは弾丸の嵐に飲まれる

 

「大丈夫か、界塚少年!!」

 

スレイプニルの前にタルシスが割って入り盾でガードする

 

ドドドッッッンン!!

 

第一波の弾幕が当たり煙が晴れた時そこに盾の姿はなかった

しかしそんなことは関係なく容赦なく第二波が襲いかかる

 

「くっ!」

 

「クルーテオさんっ!!」

 

絶体絶命、まさにその言葉がふさわしい状況

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしその後に来る言葉は間一髪(・・・)だった

 

 

 

 

 

 

ドォォォォォォォオオオオオオンンンッッッッッッッ!!!!!

 

地上から伸びた巨大なビームが光の棒となって弾幕を薙ぎ払う

 

「何やってんだよ、なっさけねーなクルーテオ」

 

「あの程度、お助けいただなくても結構でした・・・・と言いたいところですが今回ばかりは助かりました。ありがとうございます」

 

通信に伝わってくる声、その声は紛れも無く真の声だった

伊奈帆はビームの発射元に目をやるとそこには見慣れない青色の機体がいた

 

全身がほとんど青色に染まっており特徴といえば両腕で抱える大型ランチャー、腕に取り付けられた大盾、前頭部から後頭部に向かって伸びる角

そして目の働きをしているのであろう赤く光るライトは怪しげに光っていた

 

ドォオンッ! ドォオンッ! ドォオンッ!

 

そんな風に伊奈帆が観察している間にも青色の機体はその両腕のランチャーで次々と対空砲を破壊していく

更に数発撃ったところで、弾切れになったのかランチャーを投げ捨てる

 

しかしそれでも揚陸城サイドは危険と判断したのだろう

青色の機体に向かってミサイル群を発射した

 

「真さんっ!!」

 

思わず叫ぶ伊奈帆、しかし彼にはどうすることもできない

唯一どうにかできそうなクルーテオはというと・・・一足先に揚陸城に取り付き対空砲の掃討を行っていた

 

そんな場合じゃないでしょう!!と言おうとした瞬間クルーテオの方から先に言葉がかかる

 

「心配するな、ヴェリテ様にあの程度の攻撃は無意味だ」

 

何を馬鹿な、と思ったが実際はクルーテオの言った通り何も問題はなかった

なぜならミサイル群は真に当たる前にすべて爆発したのだ

 

一瞬だったため何が起こったかわからなかった

そのため第二波のミサイル群に目を凝らしているとその時爆破の正体が見えた

 

「あれはワイヤー・・・」

 

「そう、自由自在、縦横無尽に操り、高圧電流を流す事のできる特殊ワイヤー、それがヴェリテ様専用機『シュルト』の特殊兵装だ」

 

ミサイル群が止んだタイミングで大きく跳躍しシュルトもまた地上からという無謀なルートを通って揚陸城に取り付くのであった

 

 

「こいつの名前は『シュルト』だな・・・」

 

自分の専用機である青い機体を見た時、真はそうつぶやいた

 

「シュルト・・・ですか?」

 

「ああ、ドイツ語で罪や責任みたいな意味の言葉だ」

 

『罪』と『責任』、そう聞いたクルーテオはまだ気にしているのかと思い少し暗い顔つきになる

それに気づいた真は笑って返した

 

「火星じゃ強さを象徴する名前をつけることが多いけどさ、地球じゃこうして悪印象な言葉をつけることがよくあるんだよ

それに海にも青空にも負けないこの鮮やかな青色ならそんなもの振り払って自由になれそうな気がするだろ?」

 

「なるほど、そう考えると確かに悪くありませんな」

 

悪くないと言いながらその顔は満足気だったのは言うまでもない

 

 

「真さn・・・・」

 

「今は戦闘中ださっさと掃討しろ。それに俺の名前はヴェリテだ」

 

伊奈帆が声をかけたが真は有無をいわさず戦闘行為に戻る

一瞬困惑したが、真の意思を汲み取った伊奈帆は軽く笑って言う

 

「マスタング2-2(ツー・ツー)、了解」

 

あくまで一定以上の距離感を保つそれが真なりの優しさなのだ・・・と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・って了解な訳あるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!!!!!!」

 

対空砲火が止んだところで降下してきた『アレイオン』に乗るマスタングリーダー・・・・つまりはユキが思いっきり真を殴った

 

「あのねぇ、一体私がどれだけ心配したと思ってるのよ!!デューカリオンから飛び降りたかと思ったら、意味のわからん人を寄越すし

で、自分は火星の機体でやってきて、しまいには『俺の名前はヴェリテだ』って何よ!?ふざけんじゃないわよ!!」

 

「そ、それはだな・・・・」

 

「これ以上言い訳するならもう一発殴るわよ?」

 

「すみませんでした!!」

 

謝りつつ、なんで俺は謝ってるのだろうと思う真であった

 

ちなみにクルーテオは「ほほぅ・・・」と関心したような声を出し

伊奈帆の方はせっかく自分が空気を読んだのにそれを平然とぶち壊す姉に呆れてため息をつくのであった

 

「本当なら小一時間ぐらい説教したいところだけど、戦闘中だから勘弁してあげるわ

それじゃあサクッと勝ちますよ。ま・こ・とさん」

 

「・・・もう勝手にしろ!」

 

そんなやりとりをしている間にも後続機の着陸、揚陸城上部の制圧は着々と進んでいた

この作戦の肝であるアセイラムはこのタイミングあたりで降下する・・・予定だった

 

「・・・プリンセス(ワン)、はまだなの?」

 

「もう降下しててもいい頃だと思うけど」

 

異変が起こったのはちょうどそんな時だった

 

「伊奈帆!ユキさん!2時の方向!」

 

韻子がそう叫ぶと全員がそちらを見る、するとそこには・・・・

 

「デューカリオン・・・」

 

「っ!しまった、ザーツバルムのやつかっ!」

 

そうデューカリオンが降下してきたのだ

しかしあちこちから煙をあげながら航行する様子は明らかに狙って降下していないことがわかる

その原因がザーツバルムによる行為であることにいち早く気づいたのは、やはりというべきか真である

 

そして空飛ぶ戦艦(デューカリオン)は揚陸城に突き刺さるのであった

 

 

「緊急装置が起動していて完全に封鎖されてる。こりゃ壊すしかないな」

 

そう言うと真はいとも簡単に出撃用出入口のシャッターをこじ開けた

内部の方は衝撃でだいぶやられていたようだが、鞠戸からの連絡があり死者はいないようだった

 

アセイラムを載せたアレイオン・・・プリンセス1には負傷していたパイロットの代わりにユキが乗ることとなった

 

一行が揚陸城内部へ侵入しようとしたその時、ザーツバルムはやってくる

 

「多重ロックオンだと!?いつの間に」

 

そう言いながらも襲い掛かるミサイルを簡単に爆破すると

真はすぐにミサイルの飛んできた方向へと目を向けた

 

「ずいぶんなご挨拶だなザーツバルム」

 

「おお、これはヴェリテ様!アセイラム姫殿下にクルーテオ卿もいらっしゃるとは」

 

白々しい挨拶とともに現れたのは黒い機体だった

その黒い機体を操るのはもちろんザーツバルムである

 

「突然で申し訳ないが・・・・お命頂戴する!」

 

「やれるもんならやってみな!!」

 

先程と同じくミサイルの嵐が真たちをおそうが

これも先ほどと同様にシュルトのワイヤーに絡め取られ、爆発する

 

そのタイミングでクルーテオがマシンガンを発砲、伊奈帆がミサイルのお返しをするが

これを読んでいたザーツバルムは危なげなく躱す

 

「ふたりとも俺のことはいい、さっさと行け」

 

「しかしっ!」

 

「しかしもクソもねぇ。俺達の勝利条件はアセイラム姫によるアルドノアドライブの停止だ

ここでヤツを倒すために時間をかけてる間にも多くの犠牲が出る

それを止めるために来たってことを忘れるな

 

それに今の(・・)タルシスじゃ足手まといだ。とっとと行っちまえ」

 

真の言う通り、タルシスは少なくない損害を受けていた

というのも先程のミサイルの強襲の時に盾が吹き飛ばされただけでなく、足を主とした諸々に被害が出ていたのだ

 

痛いところをつかれたクルーテオは、結局真の言うことに従った

それにつられて他の面々も作戦行動を再開する

 

その中でも後ろ髪惹かれるユキに真は笑った

 

「安心しろ、俺はこんなことじゃ死なねぇよユキ」

 

「っ///・・・・・・思いっきり死亡フラグ立ててるじゃないですか」

 

そう言ってユキも進んでいく

 

「さて・・・待ってくれるとは意外と紳士なんだな、ザーツバルム」

 

「ご冗談を。それより良かったのですか?貴方様でもアルドノアは止められるのですから非力な姫殿下に任せずともあなたが行けばよかったでしょうに」

 

「それこそ冗談だろ?俺が止めに行ったらあいつら無視して真っ先に俺を殺すくせに」

 

「・・・なんのことでしょう?」

 

しらを切るザーツバルムだが完全に図星だった

アルドノアドライブのある揚陸城の中枢には基本的にカタフラクトで行くことはできない

無理やり壁を壊して突入することもできなくはないが最終的にアルドノアを止めるためには機体から降りアルドノアに触れなければならない

その作業におよそ30秒、真を殺すには十分な時間だった

 

「さてこうやって口で言い合っても決着はつかないだろうし?お前の行為を許すつもりもないんでな

さっさと決着つけようぜ?」

 

「いいでしょう、見せてあげましょうアルドノアの輝きを!」

 

そう言って飛ぶと下からさらなる機体が飛び出してきた

一体何をするのかと思ったら、それらは形を変えていった

 

次々と変形していくカタフラクト

そしてそれらはザーツバルムの機体に集まり合体した

 

ドンッ!!

 

軽い地響きを起こしながら着地したそれは明らかに普通のカタフラクトよりも大きいものであった

 

「ディオスクリア、見参!!」

 

漆黒の武者のような顔をしたその機体の目が怪しく光った

 

 

 

 

 

 

 

 




というお話でした

ちなみにシュルトはグフです、はい
作中のランチャーはSEEDでルナマリアさんがやってたのを想像してくれればOKです

今更ですがクルーテオの変わり様はアセイラムや真が生きてたからということにしておいて下さい
原作でも真実を知った時はスレインに優しくなっていましたしね

ではでは次回こそ最終話になることを祈って(^_^)ノシ


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18話 First Last

大変駆け足ですが最終回となります(一応


「ディオスクリア、見参」

 

目の前に巨大な黒武者(ディオスクリア)が着地した時には、俺はすでにシュルトの指先を向けフルオートでぶっ放していた

 

ドドドドドドドドッッッ!!

 

威力はさほど高くないが、これでもヤツの装甲の硬さくらいは見切れると思っていた・・・が

その考えは甘かった

 

「次元バリア、アクティベート」

 

ザーツバルムの声が告げるように、これはニロケラスの時と同じあらゆるものを吸収するバリアだ

 

ちっ、次元バリアは隙間を見つけるか、あるいはこかして一時的にバリアを張れなくするかしないと倒せない

とはいってもヤツもそれは重々承知だろうから警戒してくるだろう

 

・・・・ここは当初の目的通り時間稼ぎに徹するとしますか

 

そして俺は少し余裕を持ってヤツと距離をとった

 

 

しかし、ヤツはそれを許さない

 

「ヴェリテ様、先ほどの威勢はどうなされた?来なければこちらから行かせていただく

 

飛べ、我が眷属よ」

 

声と同時に黒武者は左腕をこちらに向けた

そして次の瞬間その腕は飛んできた

 

なるほど、今度はヘラスと同じってわけか

 

腕の本数が一本とヘラスに比べると少ないが、その分でかい

一対一なら十分な攻撃だなっ・・・と

 

ヘラスの時のように本体を狙いに行くことはできないのでとりあえずは避け続ける

 

・・・・後ろかっ!!

 

「エネルギージョイント接続、ブレードフィールド展開、プラズマジェネレーター起動・・・」

 

なっ!?これはアルギュレの・・・

 

「抜刀」

 

背後から襲いかかるビームサーベルを寸でのところで回避する

 

そのまま距離を取るとヤツも左腕を戻し、ビームサーベルも閉まっていた

 

「ふぅ・・・今のはアルギュレのビームサーベルだな?ニロケラスの次元バリアと言い、ヘラスのロケットパンチと言い

ってお前のほうがオリジナルなのか。まあどっちにしろすぐにバラしてよかったのか?」

 

フッと不敵に笑うとザーツバルムは声高々に言った

 

「時間稼ぎをされてはかないませんのでな、それに我が最強の愛馬の前に小細工など無用なのですよ」

 

俺はその言葉に獰猛に笑い返す

 

「最強の愛馬?玩具の間違えだろ?」

 

「むっ」

 

「ガキでも思いつくような武器をくっつけただけの玩具が最強だなんて笑い殺す気か?」

 

とても安い挑発、だがヤツはそれに乗ってきた

 

「玩具かどうか、見せて差し上げます!!」

 

そして再びヤツは左腕を飛ばした

 

「へっ、ワンパターンだな。パイロットまでガキ臭くなってるぞ?」

 

そう言って俺は指先を黒武者に向け、今度はセミオートで発砲する

こっちの方が、数はなくても精度がいいからな!

 

各指から発射された銃弾は2発が飛んでくる腕に当たり甲高い音を立てた

更に2発は黒武者の装甲に当たり(・・・)、甲高い音を立てる

そして最後の一発は飛ばした腕の付け根に当たって爆発した

 

ボォォオオンッ!

 

やっぱりロケットパンチと次元バリアは同時使用ができないんだな

まあ、出力的な面でも、特性的な面でも相性最悪なんだから当たり前っちゃ当たり前なんだがな

 

焦ったヤツは腕をすぐさま戻し、次元バリアを展開する・・・が

 

「悪手だな」

 

ドンッ!

 

俺は再び銃弾を放つ。その銃弾は黒武者の腰に当たり、爆発した

そう、腰についていた装置がヤツの隙間の一つだ

 

「な、なぜ!?」

 

「次元バリアってのはな、張る瞬間を見逃さなけりゃどこが隙間なんて一瞬で分かるんだよ

ましてやそんなあからさまな位置にありゃな」

 

次元バリアが機能しなくなった今、俺はフルオートに切り替えてぶっ放していた

 

「地球人だって何もしてないわけじゃない。むしろアルドノアなんてものが無い分必死で知恵を振り絞って戦ってるんだ

ただ力任せに戦う火星人とは違ってな」

 

そう言いながらどんどん接近していくとヤツは左腕を盾代わりにし、回避行動をやめた

 

「ならばこれはどうやって攻略するのだ!!」

 

ヤツは右腕に展開したビームサーベルを大きく振りかぶった

なら俺は・・・・突っ込む!!

 

斬っ!

 

俺がヤツの横をすり抜けると同時に黒武者の右腕が切り落ちた

そしてシュルトの手にはワイヤーで編まれた剣があった

 

「悪いな、俺も火星人なんで力任せのほうが得意なんだわ」

 

右腕を落とされた黒武者は沈黙した

 

 

 

 

 

かに見えた

 

 

 

 

「我は負けられんのだ!!!」

 

再び動き出した黒武者は左腕にビームサーベルを展開し、地面に突き刺した

その衝撃で揚陸城の装甲が沈み、揚陸城内部へと引きずり込まれる

 

そしてそこはユキ達が目指す中枢区画のすぐそばだった

 

まさか狙っていた!?

いや今はそんなことどうでもいい、これ以上ヤツが何かをする前に・・・殺す

 

直ぐ様振るった剣は黒武者の残っていた腕を切り落とした

 

「ザーツバルム、15年前から続くお前の復讐は俺が終わりにしてやる」

 

そしてとどめを刺しそうとした次の瞬間

揚陸城のアルドノアの停止とともに、俺はタルシスによってヤツと一緒に中枢区画になだれ込んだ

 

◇Side三人称

 

時を遡ること数十分

 

スレインはザーツバルムの私兵に手厚くもてなされていた

そしてその時にザーツバルムの真実を聞いた

 

ザーツバルムはトロイヤード博士への恩返しとして、スレインを火星の軍に入れ、着実に力を付けさせた

クルーテオ城に配属になったのは予想外だったが、最低限の人権が守られるように手を回していたのもザーツバルムだった

そして今日の決戦において死を予感していたザーツバルムはこの城の所有権をスレインに移譲するつもりだったのだ

 

その事実を聞いたスレインは今現在戦っているであろう恩人と義兄を何とかしなければという焦りを感じていた

思えばこの焦りが問題だったのかもしれないが

 

「城内に機体は残っていないのですかっ!」

 

「今は全機出払っておりまして、あるのはクルーテオ卿が捨てたとみられるタルシスしか・・・」

 

「それで十分です」

 

そしてタルシスに乗り込んだスレインは真達の元へ向かった

止めなければ、止めなければという思いだけが先行していく

 

そしてついにスレインは見つけた

今にもとどめを刺す真とボロボロのザーツバルムを

 

その瞬間、思考が止まった

止まったと言っても一瞬のことではあったのだがその一瞬がまずかった

 

ボンッ!

 

限界を迎えていたタルシスの足が爆発

それにより身を投げ出す形で転んだ機体は目の前の黒も青も巻き込んで壁へと突っ込んだ

 

 

「痛っー」

 

真が気がついた時、辺りは散々な状況になっていた

壊れた壁の破片が飛び散り、中にいたアセイラムは出血しているのが見えユキ、伊奈帆は外傷こそないものの気を失っていた

 

「・・・・ん、セラムさん」

 

真が様子を見に行こうとコックピットから体を乗り出した時、伊奈帆が目を覚ます

伊奈帆は骨でも折ったのだろう立ち上がることなく右足を引っ張りながらアセイラムに這い寄った

 

「待てっ」

 

それを止めたのはスレイン

スレインは拳銃を伊奈帆に向けていた

 

「待てスレイン、界塚弟」

 

真が止めようとするがその声は届かない

そして・・・・

 

バァンッ!

 

伊奈帆が拳銃を取り出すと同時にスレインが発砲した

 

「・・・ん、ナオくん?ナオくん!!」

 

最悪のタイミングでユキが目を覚ます

ユキの声に反応したスレインは迷わずユキに銃口を向け引き金に指をかける

 

「やめろぉぉぉおおおおおお!!!!」

 

真の声にスレインが硬直する

そして真がスレインに銃を降ろさせようとした次の瞬間

 

バァンッ!

 

真が肩を撃ちぬかれた

弾の出どころを見るとそこには血を流し、死にそうなザーツバルムがいた

 

真が撃たれたことで錯乱したスレインはザーツバルムに向かって弾を放つ

だが、どれも急所に当たることはなく、半分以上が外れた頃にカチッカチッと弾切れの音がなった

 

真はなんとか立ち上がると、コックピットに戻る

 

「動いてくれよ!」

 

シュルトに乗っかる黒と白の機体を押しのけその手で伊奈帆とユキを優しく包み

そして、青色の機体はその場を立ち去っていった

 

 

シュルトは無事にデューカリオンに着くと二人を手からそっと下ろす

そして真自身もコックピットから降りてきた

 

「真さん大丈夫ですか!?」

 

ユキは伊奈帆を優しく寝かせると真の方に慌ててやってくる

 

「ああ大丈夫だ、。それよりユキ、お前にやってほしいことがある

今から起動因子をやるからデューカリオンを動かして避難しろ

特にお前の弟は一刻を争うから急げよ」

 

「真さん何を・・・むぐっ」

 

キス・・・それは起動因子を渡すと同時に真のユキへの愛情でもあった

 

「じゃあな、愛してるぜ」

 

そう言って真は再び揚陸城の中枢区画に戻っていく

ユキはただそれを呆然と見ていることしかできなかった

 

その後、真が帰ってくることはなかった

 

 

 

 




という話でした

この作品については処女作ということもあるので、手直しやリメイクはせずに取っておくつもりです

今後の活動についてなのですが
現在、SAO、ダンまち、ISの新作とこの作品の続編の4択で迷っております
SAO、ISは小説も愛読し、アニメもしっかり見させて頂いているので書きやすく
ダンまち、アルドノア2期は書きたいなあと思う構想が色々ありまして
本当に悩ましいです

希望がなければ書きやすい方に走るかなぁ
でもやっぱり書きたいなぁ

という状態なので希望があればドシドシお願いします

それではいつの日にかまた会いましょうノシ


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お知らせ+書きかけ供養


二期の投稿もすると言ってから放置して結構な時間が経ちましたが
思った通りの展開が描けず、さらに自分の中ではより面白い展開が思いついてこの作品を放置していました
現在投稿しているガンダムとは別に、アルドノアゼロで書きたいと思っていたのですが、この作品が心残りでどうにも筆が進まずグダグダしていましたが、このたび書き直そうと決意しました

というわけで新たにアルドノアゼロの二次を書くつもりではあるんですが実は投稿していないだけで書いてあるこの作品の続きが数話分だけあるんですよね
一応一期が終わっておりいい区切りなので投稿しないでもいいかなぁとか思ってたんですが、続き読みたいという感想を頂いていたのも思い出しまして、供養も含めて投稿し、この作品は未完として終わりにしたいと思います

今後はガンダムの方を書きながらプロットを練り必ず二期も含めてハッピーエンドで締めれるように頑張る所存ですので応援よろしくお願いします


ザーツバルムの揚陸城での戦いから19ヶ月が過ぎた

あの戦いのあと真の捜索が行われたが結局のところ誰の姿もなく、シュルトだけが残されていた

 

戦況としては

火星側はアセイラム姫の生存が確認されたことや現皇帝レイレガリア・ヴァース・レイバースが病に倒れたため慌ただしくなっていた

と言ってもザーツバルムを中心として月面基地では着々と進行の準備が進んでいる

アセイラム姫による火星騎士への鼓舞や量産機の配備を行い、士気、兵力を共に高めていた

地上に降りた火星騎士の諸侯も目立った侵攻こそ無いものの確実に領地を広げていった

 

地球側も目立った反抗作戦は行っていないが、サテライトベルト(割れた月の欠片でできた土星の輪のような衛星群)に基地を設置し、宇宙仕様の装備も開発されていた

前回の反省を生かし時間があったことも相まって敵機の情報収集にも余念が無い

 

なおデューカリオン部隊だが、アルドノア起動権を持つものは二人、界塚姉弟である

この二人のどちらかがいなければ、実質デューカリオンは鉄塊と化すのだが

ユキは乗艦を拒否、伊奈帆は長い昏睡期間とそのリハビリのため戦線離脱のため一応補修して放置されていた

 

乗組員はあちこちに飛ばされたが元々学生であったこともあり、大きな戦闘も無かったことから

現在に至るまで欠員は出ていない

 

そして戦争は完全に膠着状態に陥っていた

 

 

 

 

 

が、それも今日までの話である

 

 

 

 

 

「私、ヴァース帝国第一皇女、アセイラム・ヴァース・アリューシアはその義に服し

偉大なる務めに殉じる軌道騎士の諸侯らを称え、賞賛します」

 

その一言で締めくくられた演説は事実上の宣戦布告である

 

これを聞いていた韻子、ニーナ、ライエは違和感を感じずにはいられなかった

 

地球と火星の和平を誰よりも望んでいた彼女が火蓋を切るなんて言うのはありえない

しかし、映像に映る彼女の姿は三人がよく知るアセイラムのものだった

 

一体何があったのだろうか?どれだけ考えてもそんな考えだけが残るのであった

               ・

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               ・

 

 

 

しかし、そんなことを考えていても始まらない

わからないものはわからない、そう割り切れなければ軍人などやっていけない

 

何よりこの状況にデューカリオンの凍結が解除され

明日には乗艦、明後日には打ち上げとデューカリオン組も慌ただしいのだ

その中には彼も・・・

 

 

ー翌日ー

 

「またしばらく一緒だね」

 

久々にデューカリオンを見たニーナが呟く

 

「生きて・・・帰れるといいね・・・」

 

先の戦闘で何もできなかった韻子は自分に言い聞かせるように言う

 

「死ぬわけないでしょ

火星人に勝つ、勝って地球に平和を取り戻す、絶対に

死んでる暇なんてないわ」

 

そして、どこまでも強気なライエは相変わらずだった

 

ピーッ!ピーッ!ピーッ!

 

『敵襲!』

 

デューカリオン組にとっては19ヶ月ぶりにやってきた火星のカタフラクト

それは、長い間戦場を離れたという意味ではなく、19ヶ月準備をしてきたという意味である

 

そしてそれはパイロットである韻子達だけではない

 

「全艦戦闘態勢、ドックを離れます

発進にはどれくらいかかりますか?」

 

「最速で30分です」

 

「待てません、10分でお願いします」

 

「無理です」

 

「不見咲くん、君がモテない理由を教えましょうか?」

 

「結構です。自覚していますので」

 

指揮を執る彼女らもまた、19ヶ月ぶりのやり取りであった

生憎こちらは相変わらずではないが

 

以前と違う点はまだある

 

それは情報

 

以前はなんの情報もなくやって来る敵に対して様子を見ながら戦ってきたが

現在は火星のカタフラクトの機体、そのパイロットや特殊兵装など予備知識を持って戦うことができる

 

今回の敵はヤーコイム男爵のカタフラクト『エリシウム』

氷結のエリシウムの名で呼ばれ、特殊兵装はエントロピーリデューサー、その効果は・・・

 

 

 

 

半径1kmのフィールドに入った物質の分子運動を奪う

それにより生まれる効果は絶大であり、空気が変化するどころか凍りつくほどの超低温を生み出す

 

 

 

 

「ってこれ反則じゃん!?なんとか足止めしないと・・・」

 

情報を見て驚愕の顔を浮かべる韻子

 

「足止め?何言ってんの?倒すに決まってるでしょ?」

 

軽い口調で言うライエであったがその強気は必ずしもうまく働くものではない

 

ババババババババババッッッッッッッッ!!!!!!

 

韻子とライエのアレイオンが勢い良くマシンガンを放つがそれは当たることはなかった

すべての弾がエリシウムの手前であらぬ方向に飛んで行くのだ

 

「バリア!?そんなはずはっ!?」

 

明らかな動揺を浮かべるライエ

だが彼女の言葉は決して間違いではなく、確かにバリアは張られていない

 

しかし、エリシウムが凍らない理由でもある機体の半径30mの常温の部分が原因である

金属が冷却されれば電気抵抗は下がるが、温度の上昇によって電気抵抗が増し散乱する

 

この超電導と呼ばれる現象を用いてエリシウムは温度差による一種のバリアに近いものを生み出していた

 

「くっ、このままじゃジリ貧ね。なんとか足止めする方法を考えないと」

 

「倒すって言ってたのはどうなったの?」

 

「下方修正!」

 

「変わり身早っ!?」

 

まだまだ喋れる余裕はあるがそれも時間の問題

デューカリオンを凍らされれば敗北であるにも関わらず未だあ足止めの方法すら見つけられていない

 

ライエは考える、こんな時あの人ならどうするだろうか?きっと突拍子もない事を思いつくんだろうな・・・

だけど私にはそんな考えはない堅実で無難でつまらない手でもいい。私は私のやり方で戦う

 

バンッ!

 

いよいよ切羽詰まってきた頃、一発の銃弾がライエたちとは離れた位置から放たれた

 

バンッ!バンッ!

 

続いて2発3発と銃撃は続く

その後彼女らの耳に狙撃手の声が届いた

 

「ヤツの冷却能力・・・弾頭の電子時限信管が凍るまで50mといったところか

ヤツのフィールドは1km。つまり・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20発あれば行ける」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って行けるかぁぁぁぁぁあああああ!!!何考えてんのナオ君は!!」

 

オレンジ色の機体ースレイプニルが突っ込もうとした時通信に怒鳴り声が入った

言わずもがな彼、界塚伊奈帆の姉である界塚ユキの声だ

 

「でも理論はあってる」

 

「理論しか合ってない」

 

「めんどくさいなぁユキねぇ。じゃあ上官命令で大人しくしててよ」

 

「むぐっ。・・・・誰よ、ナオくんを無駄に昇格させた奴は」

 

こちらも実は19ヶ月ぶりの再会であったが長年連れ添ってきた二人がたったそれだけで変わるはずもなく

つまりは結局のところ、弟は弟で、姉は姉だった

 

ちなみにではあるが伊奈帆の言う通り、階級はユキよりも伊奈帆のほうが上である

閑話休題

 

「グレネードランチャー空中炸裂モード、安全距離カット、飛距離50m、3、2、1、ファイヤ」

 

改めて突撃を開始する伊奈帆の作戦とは非常にシンプルなものである

信管が凍りつくギリギリ手前で起爆し、その熱によって機体の凍結を遅らせる。ただそれだけである

 

ただしこれは水に足が沈む前に次の一歩を踏み出せば水の上を歩けるという考えのように

非常に困難で危険なものである

 

少しでもタイミングが狂えばアウト

しかし、伊奈帆にはそうならない確信があった

 

それは彼の左目

ザーツバルム城での戦いでスレインに撃たれた伊奈帆は左目を欠損した

今そこにはアナリティカルエンジンを搭載した義眼が移植されており、高度な分析や計算はそれによるものである

 

その能力を十分に把握し、十全に使える伊奈帆が出した結論がこの方法であり、心配など無用なのである

 

バァアンッ! バァアンッ! バァアンッ! バァアンッ!

 

次第にエリシウムに接近していく伊奈帆。そして・・・

 

「チェックメイト」

 

マシンガンを突きつけた

 

対するヤーコイム男爵は驚いた後フッと笑った

 

ババババババババッッッッッ!!!   

 

・・・・・ドォォォォォオオオオオオオオオンンンンンッッッッッ!!!!!!!

 

エリシウムが沈黙すると同時に吸収されていたエネルギーが暴走し、大爆発を起こした

 

これで一件落着

・・・・かと思いきやまだ終わってはいなかった

 

「新たに機影発見!戦闘態勢は継続されたし!繰り返す!新たに・・・」

 

「やっぱり来てたか・・・。でもこのタイミングって・・・」

 

新たな機影。それにいち早く対応できたのはユキだ

というのも実は本来ここにユキはいないはずだったのだが、たまたま近くを通った火星カタフラクトが

デューカリオンの方へ向かっていたため追跡していたのだ

 

途中で見失ったため散開して捜索していた途中、奇しくもデューカリオン組と再会を果たしたのだ

 

敵カタフラクトは紺と青の機体で特徴と呼べるものは無いが、限りなく人型に近い、火星にしては珍しいタイプのものである

 

「一応聞いとくけど、投降しなさい。しっかりとした待遇を約束するわよ?」

 

「アレイオン3機、中破スレイプニルが1機・・・勝算あり、よって投降はしない」

 

「「「「!?」」」」

 

相手の返事、その言葉ではなく声に誰もが驚いた

 

「私はザーツバルム卿に仕える騎士。主の命により貴様らを殺す

ヴァース帝国騎士ヴェリテ(・・・・)、駆るはブルーデスティニー。推して参る」

 

そうこの声は紛れも無く真のものだった

全員が混乱するが、ヴェリテは容赦なく襲い掛かる

 

ババババッッッッ!!!

 

伊奈帆がマシンガンを放ち、それにつられて他の面々もマシンガンを放つ

 

が、それはブルーデスティニーが振るう二刀のビームサーベルによって切り捨てられていった

そして、素早くユキのアレイオンの前に立つ

 

「まずは1機・・・」

 

「っ!!ユキねぇ」

 

いち早く反応した伊奈帆がユキのアレイオンを引っ張る

それにより撃墜は免れたが、装甲が切り裂かれコックピットの中が丸見えになった

 

そこには悲しそうな目で青い機体を見つめるユキの姿があった

 

ドクンッ!

 

「ぐっ!!」

 

途端に様子がおかしくなるヴェリテ

それに気づいたユキは声を張り上げる

 

「真さんっ!真さんなんでしょ!お願い、戻ってきてっ!!」

 

「がっ!ぐぁぁぁぁああああっっ!!頭がっ!痛いっ!がぁぁあああああ!!」

 

「真さん!真さん!」

 

「俺はぁヴェリテだぁぁぁああああ!!!」

 

ヴェリテは限界だった

それを振り払うかのごとくビームサーベルを大きく振るう

 

ドンッ!

 

しかしそれは伊奈帆のスレイプニルによる蹴りで妨害された

 

「はぁ・・はぁ・・はぁ・・」

 

息も絶え絶えなヴェリテは伊奈帆をキッと睨み、そのままユキを睨んだ後撤退するのであった

 

「真さん・・・・」

 

残されたユキたちはデューカリオンから連絡が入るまでそれぞれの思いにふけっていたデューカリオンが宇宙に発進した頃、港から少し離れた火星の基地にて通信が行われていた

 

地球から通信を行っているのはヴェリテ

そしてその相手は・・・

 

「・・・以上で報告を終わります。先日の失態誠に申し訳ございません、ザーツバルム様」

 

そう、かつて互いに殺しあったザーツバルムである

19ヶ月前のあの日、ザーツバルムもスレインによってその命を助けられ、現在表向きではアセイラム姫を救助した功労者となっている

 

そしてザーツバルムは秘密裏にヴェリテを配下とし、手厚くもてなしていた

 

「よい、貴公が無事であって何よりだ。ヤーコイム男爵のことは残念だったが戦争とはこのようなものだ」

 

「はっ、お心遣い痛み入ります」

 

感謝の意を示すヴェリテだったがその目はどこかうつろで、ザーツバルムは軽くため息を吐いた

 

「・・・うむ、それにしてもオレンジ色の機体が出てきたと言っておったが・・・」

 

「はい、形式番号KG-6スレイプニル、学生用の訓練機です。搭乗者は間違いなく界塚伊奈帆ぐっ!」

 

『界塚伊奈帆』たった一人の名前を言おうとしただけでヴェリテは頭を抱えた

 

「大丈夫かヴェリテ!?」

 

「ご心配いりません、少し頭痛がしたものですから」

 

『界塚伊奈帆』、いやもしかしたら『界塚』という部分に反応したのかもしれない

彼が真だった頃の恋人の名前が『界塚ユキ』という名だったからな

しばらく接触はさせないようにするか

 

ヴェリテの様子を見ながら一人そう思うザーツバルムであった

 

「しかし、私はそちらへ向かわなくてもよろしいのですか?」

 

「問題ない。それに貴公のブルーデスティニーは地上用であろう?無理はするものではない」

 

「しかし、私ならステイギスでも・・・」

 

「ならん!・・・とにかく貴公は休め。そなたもまだ目を覚ましてから日が浅い、戦果を上げるのは万全になってからでも遅くはあるまい」

 

「承知いたしました」

 

そう言うとともに通信は途絶えた

 

 

「ふぅ、とりあえずこれでヴェリテ様の方はなんとかなるだろう

元々は運良くヴェリテ様が記憶喪失になられていたものを少しばかり手を加えただけのもの

それ故、本人に負荷が及ぶことはなくとも何かのはずみで記憶が戻ることも十分あり得るというもの

なればこそ、忌々しい地球人は即刻排除せねばな・・・」

 

そう呟きながらザーツバルムは19ヶ月前のあの日のことを思い出していた

             ・

             ・

             ・

             ・

 

スレインは応急手当用のキットを使いアセイラムの止血を済ませるとザーツバルムの元へ歩いて行った

 

ゴゴゴゴゴッッッッ!!

 

その時、揚陸城が大きく揺れる

それと同時に天井から多くの瓦礫が降り注いだ

 

「姫様っ!!」

 

スレインは慌ててアセイラムを抱きかかえ、彼女を庇いながらタルシスへ乗り込んだ

いくつか瓦礫のぶつかった部分もあるが痛がってもいられない

スレインはアセイラムを抱きかかえたままタルシスを起動させ立ち上がった

 

「ザーツバルム卿はどこに?」

 

死んでしまったのか?というスレインの考えは一瞬で否定される

そう、目の前でディオスクリアが立ち上がったのだ

そしてディオスクリアのパイロットから通信が入る

 

「スレイン、姫様はご無事か?」

 

「は、はい・・・?」

 

聞こえてくるザーツバルムの声に一応返事はしたもののアセイラムの無事を問うその内容にスレインは混乱した

 

「うむ、ならば早々に離脱するぞ。我に乗れ」

 

しかし、状況がスレインが落ち着くのを待ってくれるわけもなく

スレインは混乱したままディオスクリアに乗って宇宙へと運ばれるのであった

 

一方ディオスクリアのコックピット内ではザーツバルムが操縦する傍らに真が眠っていた

 

ユキと別れた後真は揚陸城に戻り、機体を置いて内部に入っていた

そして中枢部に辿り着いたその時、揚陸城は大きく揺れる

降り注ぐ瓦礫の中、真は目の前でザーツバルムが大きめの瓦礫に潰されそうになっているのを見た

 

「危ないッ!」

 

真がザーツバルムを突き飛ばすと同時に瓦礫は無慈悲にも真に降り注いだ

 

「なぜ助けた?」

 

目の前で頭から血を垂れ流す真にザーツバルムは問いかける

 

「俺はお前と命をかけて戦った

お前は俺を殺すつもりだっただろうし、俺もそのつもりだった

ただな、お前にとって俺を殺すことが目的でないように、俺もお前を殺すことが目的じゃない

俺はできるならお前に贖罪して欲しいんだよ。だから簡単に死なせねぇ

お前には昔みたいに頭を・・下げ・・させ・・て・・・やるから・・・・・・な」

 

そう言うと真は意識を失った

 

「・・・かしこまりましたヴェリテ坊ちゃま(・・・・)

 

涙ながらにザーツバルムは忠誠の姿勢をとった

 

そうして現在に至る訳であるのだが

その後真は目を覚ましたものの記憶喪失になっており、記憶の空白による錯乱状態になっていた

そのため、精神に作用するシステム『EXAM』を持つ

最新機『ブルーデスティニー』に搭乗させることで精神の安定をはかった

 

しかしEXAMにより好戦的となった真はすぐに戦場に舞い戻ろうとしたのだ

そのためザーツバルムの配下とすることで制御に成功したのだが・・・

 

「まさかヤーコイム男爵の戦闘にあてられて輸送機から出撃するとは・・・」

 

まだまだ不安の残る存在であった

 

「ザーツバルム伯爵、スレイン殿が戻られました」

 

「了解した、出迎えに参る」

 

スレインにもこの事実は隠蔽しているため

こころの休む暇もないザーツバルムであった

 

 

ヘブンズホールによって欠けた月は現在火星の基地として君臨している

本国から遠く離れた地球を攻めるための最重要拠点として

ザーツバルムを中心に君臨していたのだった

 

そんな月面基地の主にカタフラクトの収容を行っている区画にザーツバルムはやってきていた

 

彼が到着するとまもなく白い機体がそこに着艦した

色は白くなっていてもその姿は青く輝いていたシュルトのものだ

 

そのコックピットから降りてきたのは騎士の服装を身にまとったスレインだ

彼はこの19ヶ月でザーツバルムの配下として騎士の称号を得ていたのである

 

「偏傾重力中とは思えぬ巧みな着艦、また腕を上げたなスレイン」

 

「お褒めいただき光栄です、ザーツバルム伯爵」

 

礼をするスレイン

その姿は身なりだけでなく心も騎士としての成長が見られるきれいな礼だった

 

「騎士の称号を与えて正解だったな。戦果は?」

 

「アレイオンを4機ほど」

 

スレインが答えると先ほどまでザーツバルムの後ろで黙っていた男が反応した

 

「お手柄にございます、スレイン様」

 

「やめて下さい、ハークライトさん。僕に『様』は必要ありませんよ」

 

「わたくしはスレイン様のしもべにございます

むしろわたくしに『さん』を付けないでくださいませ」

 

彼、ハークライトの反応にやり辛そうに目を背けるスレインは

人の上に立つものとしてはまだまだなのかもしれない

 

 

スレインを出迎えたザーツバルムはそのままスレインを引き連れてアセイラムのいる部屋へと向かった

 

部屋には高級ではあるが派手でない家具が必要最小限置かれているだけでスペースが余り

特徴といえば紫系の色で統一されていることぐらいだ

 

そのため窓際で外を眺めているアセイラムとその車椅子を押す侍女のエデルリッゾの姿には寂しさが感じられた

 

ドアが開く音にアセイラムが振り返るとスレインの姿を見つけ喜色の笑みを浮かべる

 

「お勤めご苦労様です、スレイン」

 

「そう言っていただけると光栄です

姫様こそ、先ほどの演説には火星騎士一同、心より感銘を受け一層精進するものでした」

 

「ふふっ、お上手ですね

・・・っと、まだこの姿のままでしたね」

 

そう言ってアセイラムが胸に輝くペンダントに触れると全身が輝きやがて異なる姿に変わった

 

「レムリナ姫にはご苦労おかけいたします」

 

そう言ってザーツバルムが深々と頭を下げる

 

そう、演説をしていたのは本物のアセイラムではなかったのだ

本物のアセイラムは前回の揚陸城戦からいまだに目が覚めないでいる

その代役として選ばれたのがこのレムリナである

 

なぜ彼女が代役に選ばれたのか?

それは彼女もれっきとした王族の血を引くアルドノア起動権の持ち主だからだ

加えて言うならば彼女はアセイラムの妹でも有りうってつけだったと言うわけだ

 

「良いのです。私もこうなることはわかっていましたから

スレイン、ザーツバルム、これから忙しくなる中で貴方達には手を借りることが増えると思いますが

よろしくお願いしますね」

 

「「はっ」」

 

 

「我が愛馬の仕上がりは?」

 

「起動テストは終了しました。後は各ユニット間のシンクロ調整が終われば戦闘可能です」

 

「よし、調整は島でやる。運び込んでおけ」

 

「はっ」

 

レムリナとの対談もそこそこにザーツバルムは出動準備をしていた

 

と言うのも地球軍のトライデントベースと火星軍のマリネロス基地がおよそ72時間後に接近するのだ

両基地の強いては両陣営の総力戦にも近い戦闘にザーツバルムも参加する

 

その前にマリネロス基地に移動しなければいけないので何かと忙しかったりする

 

スレインもタルシスに乗り込み移動の準備をしようとした、が

 

「起動しない?どうして?」

 

今まで問題なく動いていたタルシスが急に反応しなくなった

コックピットから乗り出したスレインが見かけたのはレムリナの姿だった

 

原因に気付いたスレインはレムリナへと向かって行った

 

「どうかされました、スレイン?」

 

明らかにとぼけている

 

「なぜタルシスを止められたのですか?

アルドノアを強制停止できるのは姫殿下だけです」

 

「かもしれませんね」

 

レムリナの回答は要領を得ないものだ

 

「アルドノアを起動してください」

 

「お姉さまに頼めば?

あなたが必要なのは起動因子なのでしょう?」

 

スレインは気付いたレムリナがなぜこんなことをしたのか

 

きっと今までアセイラムを慕ってきた彼らがアセイラムが死んで(正確にはそう勘違いして)

皇帝も病床に伏した今になってレムリナを慕いだしたのはアルドノアの起動因子をもつ道具としか思ってない

 

そう思っている、あるいは態度の節々にそういった思惑を感じ取っているのだろう

 

するとスレインは急に上着を脱ぎだした

 

「何を・・・」

 

そうしてランニングシャツ一枚になったスレインの体にはいたるところに傷跡があった

 

「地球生まれの私はザーツバルム伯爵に騎士にしていただくまで下僕として遣えていました

姫様の苦しみが分かるとは言いませんが、その片鱗は理解しているつもりです」

 

そして服を着直し手から忠誠の姿勢をとる

 

「お慕いしております、レムリナ姫」

 

「・・・顔を上げなさい」

 

言われて顔を上げたスレインは急に唇を奪われた

 

「ありがとう・・・ご武運を、サー・スレイン・トロイヤード」

 

 

一方でデューカリオン部隊、さらには合流したトライデントベースも当然大規模戦闘に向けて準備を始めていた

 

といってもデューカリオン部隊は異端部隊として作戦会議でもまともに意見も取り合ってもらえないような状況なので

少しばかり偉くなったとはいえ伊奈帆も正直言って暇だった

 

では何をするかといわれれば前回のアセイラムの演説の分析を行っていた

 

「伊奈帆は何やってんの?ってこれこの間の・・・」

 

と暇だった韻子が伊奈帆がいじっていたパソコンに目を向ける

 

「僕の左目に埋め込まれたアナリティカルエンジンはまだ試験品だけど

十分な演算能力を持っているんだけど

それを使えばちょっとした人の動作から三次元的な演算をしたり

人の声の振動からその人の緊張状況やそこから来る心境の把握も可能になってくるんだけど」

 

「つまり・・・・どういうこと?」

 

「つまりは嘘発見器としても使えるんだけど

この部分の声に人が嘘をついているときの緊張状況が見られるんだ」

 

そう言って伊奈帆が再生したのは

『私アセイラム・ヴァース・アリューシアは・・・』

という部分だった

 

「これが嘘ってことはこの人は本物のアセイラム姫じゃないってこと!?」

 

「絶対にとは言い切れないけど、9割方そういうことになるね」

 

「じゃあ真さんももしかしたら偽者の可能性があるかも」

 

「いやそれはないよ。その必要が無いし、なにより・・・」

 

なにより真は元々火星の王族だ。もしかしたら今まではアセイラム姫がこちらにいたから共闘していただけで

地球軍に組するつもりではなかったのかもしれない

 

そう言いかけて伊奈帆は首を振った

今までの真を見ていてそんな訳が無いのは明らかだ

 

だとしたら洗脳された?人質をとられた?はたまた二重スパイをしているのか?

そんなとりとめも無い考えが浮かんでくるばかりである

 

そんな様子の伊奈帆に韻子は小首をかしげる

 

「どうしたの伊奈帆?」

 

「なんでもないよ。三日後に向けて色々しないといけないなぁと思って」

 

「伊奈帆は真面目だなぁ。カームほどとは言わないけど適度に休まないとダメだよ」

 

「カームは適度にじゃ無くて過度にじゃないかな?」

 

そう言って二人は笑いあった

 

そのまま韻子は部屋を出て行き、また伊奈帆ひとりの空間になる

 

伊奈帆が見るパソコンの画面はアセイラムの演説の動画ではなく

ある機体のデータが表示されていた

 

「『ブルーデスティニー』、特殊武装はEXAMと呼ばれるシステムによる機体の運動性の向上

このEXAMに問題があって開発は中止されていた・・・はずだった

しかし、実際は真・・・ヴェリテの専用機とされている」

 

一体何があったのか分からないが次にあったときは殺しにかからなければいけない

ましてやユキ姉と戦わせるわけには行かない

 

と、決意する伊奈帆であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     ・

 

     ・

 

     ・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヴェリテ様、本当に行かれるので?」

 

「ああ伯爵には止められたがいやな予感がしてならない

お前が打ち上げに協力したことは黙っておくから安心してくれ」

 

その夜地球から一筋の光が宇宙に走っていったという

 

月から出動したザーツバルム一行は地球周回軌道に入った

その際に大気圏を通りブレーキ代わりにして、減速後、マリネロス基地に向う

そしてその航路はトライデントベースと接近してしまうものでもあった

 

「行きがけの駄賃だ。ステイギス隊出撃」

 

ザーツバルムの指示に従い4枚羽の付いた戦闘機、ステイギスが発進した

ステイギス隊は1機のステイギスリーダーの羽に合計4機のステイギスがドッキングしており

戦闘時に分かれるという形態をとっている

 

このステイギス隊が3隊、トライデントベースに向かっていった

いわゆる前哨戦というやつである

 

対するトライデントベースの部隊は岩石に取り付き迎撃体制をとる

宇宙仕様の機体には肩部に8基のワイヤーユニット、脚部にキッカーユニット、武装として無反動銃が装備されている

ワイヤーは岩石に射出して軌道を変更でき、キッカーユニットは燃料カプセル入りで、それを消費して宇宙を移動する

無反動銃は長砲身で、機体が流されずに射撃できるという代物だ

 

しかし

 

「このっ!このっ!」

 

そのような武装をもってしても韻子が放つ銃弾は掠りもしない

韻子だけに限った話ではなくお互いに一撃として命中していなかった

 

それはなぜか

 

「風が複雑だわ。お互いにこの距離じゃあたらない」

 

高密度衛星群による重力偏向、ようは岩石が引力を持つためまっすぐに飛ばないのだ

それが地上で吹く風のようなものなので『風』とよんでいる

 

お互いに牽制しながら相手のテリトリーに踏み込まないように当たらない銃撃戦が続く

 

 

ドンッ!・・・・・・・・バァンッ!!

 

 

しかし、1機のステイギスに着弾した

 

「当てた!?」

 

「この距離で!?」

 

韻子とライエが驚く

 

その銃弾を放ったのはオレンジ色の伊奈帆の機体だった

 

「重力偏向による調整完了。マスタング0-0攻撃を開始する」

 

伊奈帆の左目に仕込まれたアナリティカルエンジンは重力偏向による弾道のずれも計算しきっていたのだ

さらにその能力は敵機の弾道予測まで行い、伊奈帆の操縦技術と合わさって圧倒的な回避力を誇る

 

このチートじみた能力を用いてこの戦場でただ一人、的確にステイギスを撃墜していく

 

「くっ!」

 

「ステイギス隊が!」

 

これにはさすがのザーツバルム、ハークライトも驚きを隠せない

そしてオレンジ色の銃弾はやがて彼らの乗る船にまで牙をむく

 

しかし、その銃弾が届くことは無かった

 

「大丈夫ですか伯爵」

 

「スレインか」

 

スレインの駆るタルシスがその銃弾を防いだのだ

 

「僕が囮になって弾を逸らします。ハークライトさんは回避運動を」

 

「承知しました」

 

そして敵に向かっていくスレイン

同様に距離をつめていく伊奈帆

 

「この風の中で正確に当ててきている!?」

「避けた!?何だあの動きは!?」

 

両者の攻撃が当たらないまま徐々に接近していく

 

「攻撃が当たらない、一体・・・」

「弾丸の軌道を見切っている、一体・・・」

 

「「どんな敵だ?」」

 

そして遂に両者はカメラで捉えることのできる距離まで近づく

 

「「見つけた」」

 

「オレンジ色の機体・・・まさか」

「探したぞコウモリ、いやウミネコにクラスチェンジか」

 

やがて両者は目視できるほどまで近づきそして・・・

 

 

 

 

 

すれ違った

 

 

 

 

 

「オレンジ色の訓練機、エデルリッゾさんが言っていたパイロットの名は・・・」

「タルシス、元はクルーテオ伯爵の機体、現在の搭乗者の名前は・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「界塚伊奈帆、生きていたのか」

「見つけた、スレイン・トロイヤード」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




以上になります

応援ありがとうございました。次回作品にご期待ください


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