東方混迷郷 (熊殺し)
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1話

初めまして熊殺しです!今回初めて自分で小説を書く事に挑戦します!文章力皆無ですががんばります!!!では本編スタートです


この世界には、我々の知らないもう一つの世界がある。

その世界は、人間、妖怪、妖精、はたまた神といった色々な種族が入り交じって暮らしている幻の楽園。

この物語は、そんな奇妙な世界{幻想郷}で起こった不思議なお話・・・。

 

 

 

_____________

 

 

 

秋、星の煌めく幻想郷の夜空に1つの流星が流れた。

光り輝くその小さな点は、湖畔の島にひっそり佇む立派なレンガ造りのお屋敷{紅魔館}へ落ちていった。

 

 

~紅魔館 レミリアの部屋~

 

 

赤レンガで出来た大きな洋館。

此処の当主、レミリア スカーレットは、先の時代で名を馳せた高貴な吸血鬼のお嬢様だ。

透けるような薄紫のブロンドヘアに美しい緋色の瞳。

鋭く白い八重歯は人間の血液を啜る度に口から血を溢し、純白のドレスを真っ赤に染める。

付いた二つ名はスカーレットデビル、真っ赤な悪魔だ。

が、それも昔の話。

今ではすっかり大人しくなっている。

風呂上がりの彼女は真っ白なパジャマに袖を通し、部屋に置かれた赤いソファに腰掛けながら紅茶を飲んでいる真っ最中だった。

 

 

レミ「肌寒いわね・・・もう冬が近づいてるのかしら?」

 

 

少し寒気を感じ、誰も居ない部屋で小言を呟く。

温かい紅茶の入ったティーカップからは湯気が立ち込め、近づいたレミリアの顔を加湿器のように潤していた。

そんな季節の流を感じさせるような体験をした直後。

突然、部屋の窓が大きな音を立てて震え始めた。

 

 

ガチャガチャガチャガチャ・・・

 

 

レミ「ん?突然どうしたのかしら?

・・・風?」

 

 

だが、窓の震動の音が鳴る中で、また別の音が聞こえてきた。

 

 

キィィィィィィン!!!!

 

 

突如部屋の外から鳴り響く大きな音。

風を斬るような音は段々大きくなり、直後豪快な破壊音が館中に響き渡った。

 

 

レミ「何!?何が起こったの!?」

 

 

いきなり聞こえてきた大きな音にレミリアが驚き、ガタッという音を出しながらソファから跳びあがる。

何が起こったのか気になり、外の様子を見に行こうと小走りでカーディガンをクローゼットから取り出そうとすると、何者かが部屋の扉を勢いよく開けてきた。

 

 

バン!

 

 

咲「失礼致します!!」

 

 

扉を勢いよく開けて出てきたのは紅魔館のメイド長、十六夜咲夜だ。

彼女は銀色のショートカットを揺らし、息を切らしてかなり疲労している。

メイドは簡潔に事を述べた。

 

 

咲「お嬢様!大変です!

空から隕石が落ちてきて庭園が半壊しています!!」

 

レミ「え!?」

 

 

急いで窓の外を確認しようとしたが、レミリアの部屋からは中庭しか見えない。

庭園を確認するには外に出るしかなかった。

 

 

レミ「仕方ない。

咲夜!外へ出るわよ!」

 

咲「畏まりましたわ!」

 

 

レミリアは咲夜を率いて外へと出るための大ホールへ向かった。

その頃、庭園では落ちた衝撃で出来たクレーターの中心で倒れている男が一人いた。

 

 

___________________

 

 

右の前髪だけ上にあがった特徴的なヘアスタイルを持つ、ボロボロのTシャツとジーンズを穿いた青年。

 

 

???

「うっ・・・くっ・・・がはぁっ」

 

 

館の瓦礫と土に埋もれて大の字に倒れて勢いよく吐血した。

どうやら内蔵を痛めているようだ。

さらに落ちた勢いが強すぎて館まで被害が出ており、壁が完全に破壊され、周辺の窓ガラスも全て割れていた。

男は必死に動こうとするが、体が言うことを聞かず、どう足掻いても全く動く気配が無い。

大量の傷口からは血液が流れ続け、頭の中も真っ白になっていった。

 

 

???「クソッ体が動かん・・・。

折角助かったのに・・・これでは・・・いみ・・・が・・・」

 

男は閉じていく目蓋に抵抗せず、そのまま眠りにつくように意識を手放した・・・。

 

 

__________________

 

 

レミ「これは・・・」

 

 

レミリアは目の前の光景に愕然とした。

美しく手入れされた自慢の庭が跡形もなく消えているのだから。

だが、怪我人が出なかっただけ良かったと言えるだろう。

 

 

咲「土煙が酷いですわ。

お嬢様、少しお下がりになられては?」

 

レミ「そうね・・・ん?

ちょっと待って、穴の中から人の気配が微かにするわ」

 

 

微弱な霊力の流れに気がついたレミリアは穴に近づいて中を覗きこんだ。

すると、大穴の中にはで血まみれで放って置けば確実に死ぬであろう重傷を負った謎の青年が力無く倒れていた。

二人は下へ降りてそっと歩み寄り、男の顔を確認した。

 

 

咲「酷い怪我ですわね・・・。

骨も幾つか折れているようです」

 

 

落ちた時の怪我なのか、それとも元々怪我を負っていたのか、どちらかも解らないほどの重傷だ。

こんなところに放置しておく訳にもいかない。

 

 

レミ「一体何があったのかわからないけど彼はまだ生きてるわ。

息も辛うじてしてる。

知ってること聞き出さなくちゃね。

咲夜!この男を回収して治療するわ、パチェに回復術を掛けさせて」

 

咲「かしこまりました!すぐにベッドを用意致します!」

 

 

咲夜は命令通りに男を抱き抱え、空き部屋のベッドまで運んでからパチュリーを呼んだ。

現在はとある一室で男の容態を調べさせていた。

 

 

~簡易病室~

 

 

真っ白なベッドに寝かせた男に魔方陣の治療術を施して、紫のネグリジェのような格好をした魔女のパチュリーが容態を確認する。

聴診器を当てている最中、咲夜が口を開いた。

 

 

咲「パチュリー様、容態はどうなのでしょうか?」

 

パ「酷い怪我で出血多量。

もう少し遅かったら死んでたかもねこの人・・・。

でも回復術を掛けているから、一週間あれば怪我も治り軽く動けるようにはなると思うわ」

 

咲「そうですか、なら一安心ですわね」

 

 

咲夜は胸に手を当て、ほっと一息つくが、問題はこれからだ。

 

 

パ「でも一体この人どこから来たのかしら?

普通の人間じゃ即死よ?

もしかしたら人間じゃないかも・・・」

 

 

妙だった。

通常の人間ならば後遺症が残っても可笑しくないレベルの致命傷を負っているにも関わらず、軽い治癒魔法を掛けた瞬間から傷口は閉じ始めている。

1日経てば骨折も治りそうな勢いだった。

だがこの青年が目覚めない以上、詮索した所で何の解決にもならない事も明白だった。

 

 

咲「詳しい事はこの方の意識が戻ってから調べましょう」

 

パ「そうね、このまま考えても無意味だわ。

咲夜、レミィに報告お願いね」

 

咲「かしこまりましたパチュリー様」

 

 

男の正体を知るのは一先ず意識が回復してからにし、咲夜は男が無事であることをレミリアに報告しに部屋を退室した。

 

 

__________________

 

 

~レミリアの部屋~

 

 

コンコン

 

 

レミリアは男の容態が気になりつつも何時も通り玉座に座って堂々と振る舞う。

使用人の咲夜が訪ねてきても同様だ。

 

 

咲「咲夜です、報告に参りました」

 

レミ「入りなさい」

 

 

内心、全く落ち着いていなかったが、外側では平常心を装いつつ、咲夜を部屋に入れた。

 

 

咲「失礼します、パチュリー様によると一週間もあれば怪我も治り動けるようになるそうです」

 

レミ「そう・・・報告ありがと。

彼の目が覚めたら教えてくれないかしら?

聞きたいこともあるし」

 

咲「畏まりました。

では目が覚め次第報告に参ります」

 

レミ「ええ、お願いね」

 

咲「はい。

では、失礼致します」

 

 

キィ・・・バタン

 

 

咲夜が去った後レミリアは安堵の表情を浮かべるが、一人考え込んでいた。

 

 

レミ「何故かしら、見ず知らずの男を助けてしまうなんて・・・。

でもあの男を見ているとなんだか紅魔館に、いえ、幻想郷に影響を与えそうな、そんな気がする。

彼の運命はこれからどうなるのかしら・・・」

 

 

窓の外の真っ黒なキャンパスに映る星空を見上げながら呟く。

レミリアは自らの、運命を操る程度の能力で青年から何か不思議なモノを感じとっていた。

 

これが紅魔館の住人と男の最初の出逢いである。

まだこの青年が幻想郷の未来に変革をもたらす事になるとは、この時は誰も考えてすらいなかった・・・。




はい、1話終了です、とてつもなく短いです、そしてわかりました、小説書くのって大変ですね、、、ちなみに主人公の名前を出さないのはまだ決まってないからです。次回からちゃんとやります

面白ければお気に入り登録お願いします!


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キャラ設定紅魔館

紅魔郷の情報は入ってませんが、独自設定が入ったりしています。



これは紅魔館住人のキャラ設定です。

咲夜は後に霊夢達と異変解決組で出すので含みません。

リュウトも含まれないので注意。

 

 

紅美鈴(ホン メイリン)

 

種族:妖怪(何の妖怪かは不明)

 

身長:176cm

 

能力:気を使う程度の能力

 

代表的なスペルカード:虹符「彩虹の風鈴」

 

キャラ説明:何時から居るのか不明だが、紅魔館の門番を勤める中国妖怪。

特徴は龍の刺繍が施された緑のチャイナ服に無地のロングパンツ。

お下げとロン毛の赤い髪。

主に武術に長けており、近接戦ではトップクラスの実力を持つ。

その代わり、弾幕ごっこは得意でないので何時も魔理沙に門前でやられてしまう

美鈴の正体だが、何の妖怪なのか全く不明。

 

 

小悪魔

 

種族:悪魔族

 

身長:167cm

 

キャラ説明:パチュリーに召喚された契約悪魔。

図書館の全ての本の管理を任されているだけあって優秀なスタッフ。

明るい性格で良心的だが、悪魔としてのアイデンティティは完全に失っている。

背が高く、咲夜に並ぶモデル体型だが、紅魔館全体で比べると丁度中間位の背丈で少し微妙な立ち位置。

頭と背中に蝙蝠の羽がついており、美鈴のような赤い髪が特徴。

若干OLのような恰好をしているが、タイトスカートではなく黒のロングスカート。

戦闘が得意な悪魔ではないため、弾幕ごっこではパチュリーの援護役となる事が多い。

 

 

 

パチュリー・ノーレッジ

 

種族:魔女

 

身長:161cm

 

代表的なスペルカード:日符「ロイヤルフレア」

 

キャラ説明:紅魔館内部のヴワル図書館の管理人。

普段は図書館で魔導書を延々と読んでいる所謂引きこもり。

そのせいで魔理沙からは紫もやしと言われたりしている。

だがそれは彼女が喘息持ちで運動が苦手な事が関連している。

さらに喘息で魔道の詠唱が上手く行かなかったりと残念な所が多いが、それでも魔女としては一流の腕前。

自作でマジックアイテムを作り出したり、独自の魔術式を開発したりしている。

魔理沙だって馬鹿にすることはあるが、一個人の魔法使いとしてはパチュリーを尊敬しているほどだ。

特徴的な紫のロングヘアの先を青と赤のリボンで纏め、たてしま模様のゆったりした服を着用。

三日月型の飾りが付いたナイトキャップを被っている。

 

 

 

フランドール・スカーレット

 

種族:吸血鬼

 

身長:143cm

 

能力:あらゆるものを破壊する程度の能力

 

代表的なスペルカード:禁忌「レーヴァテイン」

 

キャラ説明:始祖吸血鬼の末裔の妹。

金髪のサイドテールに赤を基調とした服装。

黄色のスカーフリボンを付け、布を腰に巻くタイプの変わったスカートを履いている。

背中の羽は何故か骨格に複数のダイヤ型の宝石がぶら下がった形をしている。

姉のレミリアとは5歳差で、年齢はあの見た目でなんと495歳。

スペイン王国時代を私が子供の頃の話だと言えてしまうくらい長生きしている。

それでも吸血鬼の中ではまだまだ子供で、見た目に比例する行動を起こしたりする。

友人も自身と同じ位の見た目をした少女ばかり。

特技の中に裁縫が入っているが、これはまだ彼女の能力が上手く制御出来ていなかった頃に毎日壊した縫いぐるみを直していた事が切欠となっている。

姉よりしっかり者で咲夜と仲が良い。

 

 

レミリア・スカーレット

 

種族:吸血鬼

 

身長:145cm

 

能力:運命を操る程度の能力

 

代表的なスペルカード:神槍「スピアザグングニル」

 

キャラ説明:紅魔館の現当主、スカーレット家の跡取り娘。

跡取りと言うだけあって紅魔館を統括しているのかと思いきや、事実上統括しているのはメイド長の咲夜。

理由は咲夜が統括している方が何かと都合が良いから。

吸血鬼なので基本的に血は吸うが、血を吸うのが下手なので何時もこぼした血で服を汚している。

そこからついた渾名はスカーレットデビル。

かつてレミリアはその名でヨーロッパを恐怖に陥れた事がある。

幻想郷の中でも実力は折上付き。

水色のブロンドに赤い瞳。

ピンクを基調としたドレスを身につけ、胸にSを型どったブローチを付けている。

たまに白いドレスを着る事もある。




情報が足りないかもですが、これ以上思い付きませんでしたスンマセン


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2話

熊殺しです!2話目投稿です!温かい目で見てください。では本編スタート!


あれから3日が経ち、咲夜は現在男の寝ている部屋に掃除に来ていた。

しかし未だに男は目を覚まさない。

まだまだ酷いものの外傷の治りが早い為、後は目を覚ますのを待つだけなのだが、死んだように眠っている人間がいる部屋を毎日掃除しに来るのは少し落ち着かない。

 

 

咲(あれから3日経ったけどまだ目を覚まさないわね。

大丈夫なのかしら・・・あら?)

 

 

窓を拭き、床を箒で掃いてからモップ掛けを終わらせて道具を持って出ようとした時だった。

 

 

?「ん、うん?

・・・ここはどこだ?」

 

 

男がゆっくりと瞼を開き、上半身を起こして辺りの光景を見てきょとんとしている。

目を覚ました!

状況がよくわかっていないこの男に、今の現状を教える為、咲夜は声をかけた。

 

 

咲「気がついたようですわね?

ここは紅魔館。

私はこの館のメイド長を務めている十六夜咲夜と申します。

空から降ってきた貴方を此方で保護させて頂きましたわ」

 

 

今までの知り得る限りの話を簡潔に伝えると、男は現在の状況を理解できたようだ。

 

 

?「そうか・・・そうだったのか。

咲夜、君が俺を助けてくれたのか?」

 

咲「はい、主の命令でもありましたが」

 

 

男は納得したような顔で頷いた。

 

 

?「いや、ありがとう。

悪いんだが主の所に案内してくれないか?

礼を言いたいんだ」

 

咲「畏まりました、こちらです。

起きたばかりで怪我も完全に治ってないと思うのですが歩けますか?

何ならお運び致しますが?」

 

 

男の身体には何重にも巻かれている包帯が何十ヶ所とあり、それほど酷い怪我の人間を歩かせまいと手を貸そうと肩を貸そうとしたが・・・。

 

 

?「いや、歩ける程度には回復しているから心配しないでくれ」

 

 

本人は至って平気そうな応対をした。

ベッドから立ち上がる時に松場杖くらい要るのではないかと考えたが、スリッパを履いて立ち上がったのを見た限りでは問題なさそうだ。

何も無かったかのように立ち上がるので、人間離れした治癒力に驚かされるが、良いというのならそれで良い。

 

 

咲「畏まりました。

では私についてきて下さい」

 

 

咲夜は男をレミリアの部屋へ案内すると同時に、主に男が目覚めた事を報告すると、主の提案で紅魔館全員を呼んで自己紹介等をすることになった。

 

 

____________________

 

 

~大図書館~

 

 

金の豪華な装飾を施された椅子に腰かけたレミリアは、紅魔館に住む全員が集まった事を確認してから話を始めた。

 

 

レミ「先ず自己紹介からしましょうか。

私は紅魔館の主レミリアスカーレットよ、よろしくね」

 

パ「図書館の館長をしているパチュリーノーレッジよ、以後よろしく」

 

フ「お姉ちゃんの妹のフランドールスカーレット。

気軽にフランって呼んで」

 

美「館の門番をしてます紅美鈴です!よろしくお願いしますね!」

 

小「パチュリー様の使い魔の小悪魔です。

皆さんはコアと呼びますが、お好きなように呼んでいただいて結構ですよ?」

 

 

全員の召集が掛かり、席についた者達は全員女性だった。

羽の生えた者も居る。

優しそうな人ばかりだ。

全員の名前が挙がったところで、青年はゆっくりと口を開いた。

 

 

?「俺は・・・リュウト。

神谷リュウトだ」

 

 

紅魔の主はテーブルに肘を付き、ニヤリと口を裂くようににやける。

 

 

レミ「へぇ、リュウトくんね。

いい名前じゃない?よろしく。

んじゃ自己紹介も終わったことだしリュウトくんには質問に答えて貰うわ。

リュウトくんは幻想郷の住人なの?」

 

リ「いや、違う。

俺は別の世界から来た。

あと君づけは止めてくれ。

俺はそんな年ではない」

 

レミ「あらそう?ご免なさい。

私からすれば貴方含めて全員が年下だけど」

 

 

少し自慢げに胸を張ってそう言う。

その後はリュウトの世界の話になるはず・・・だったのだが、リュウトは自分の世界の話をする事を頑なに拒否した。

何でもこちらの都合により他言無用らしいのだ。

レミリアはリュウトの世界の話を諦め幻想郷について説明をした。

 

 

レミ「と言うわけで、あなたは今その幻想郷にいるのよ。

だからリュウトは外の世界に普通の方法では帰れないの」

 

リ「・・・なるほど、そう言うことか」

 

レミ「どうかしたのかしら?」

 

リ「いや、なんでもない。

と言うか俺は元の世界に帰る方法があるとしても帰れないんだ」

 

 

一同は首を傾げる。

 

 

レミ「何故?妖怪の賢者に外の世界と空間を繋いでもらって帰るだけじゃない?まぁあいつが現れなきゃ意味がないのだけれど」

 

リ「いや、理由は言えないがとにかく今は元の世界に帰る訳にはいかないんだ」

 

 

どうやら彼にはかなり複雑な事情があるらしく、レミリアはこの件についてこれ以上詮索しないようにし、違う話題へ話を変えた。

 

 

レミ「へぇ・・・。

そう言えばあなた空から落ちてきたのに生きてるなんて凄いわね。

人間があんなところから落ちたら間違いなく大怪我じゃ済まないと思うのだけれど?」

 

リ「俺は人間と別の種族のハーフだ、それに能力だって持ってる」

 

 

驚くべき事実にレミリアは立ち上がった。

 

 

レミ「あなた能力持ちだったの!?」

 

リ「そんなに驚くことじゃないだろ?

レミリアだって運命操る能力もってるんだし」

 

レミ「まぁ確かにそうだけど・・・」

 

 

と、此処で咲夜が先程の会話に不審な点を見つけた。

 

 

咲「ちょっと待ってください、何故お嬢様が能力持ちなのをご存知なのですか?」

 

パ「それにどんな能力かも当ててるし」

 

 

二人が会話の中で気がついた違和感。

知らず知らずの内にリュウトが不自然な会話をしている事に。

確かにおかしい。

今までそんな話題も出てきてないし、今日初めて会ったのだから知ってるはずは無いのだが、何故かリュウトは知っていた。

それも、かなりその状況に馴れているような口振りだ。

それに対し、リュウトは突然挙動不審になり、頭を掻きながら苦し紛れの言い訳をした。

 

 

リ「そ、それは・・・。

能力を持つものだけが出すナニカを読み取ったんだ」

 

 

そんなもの聞いたことがない。

この時全員が同じことを思っていただろう。

物凄く怪しい、絶対何か隠してる・・・と。

 

 

フ「何かあんまり詮索しない方が良さそうだから私は何も聞かないよ。

難しい話はお姉ちゃん達に任せる」

 

 

リュウトが嘘が下手な人間だと解ったフランは、察して椅子を降りて先に部屋へと戻っていった。

その後を急いで美鈴が追いかけ、お供に就く。

 

 

美「あ!お待ち下さいフラン様!

ご一緒します~!」

 

レミ「勝手なんだから。

美鈴、任せたわ」

 

美「はい!では失礼します」

 

 

そう言って美鈴もフランと共に図書館を出て行ってしまった。

話は進んでいきリュウトのこれからについて、レミリアは怪我が治り次第リュウトを元の世界に返すつもりだったのだがリュウトは帰れないからこのまま幻想郷にいる事になった。

リュウトも怪我が治り次第紅魔館を出ていくつもりだったのだが、リュウトは人間じゃないため人里等に行くと何をされるか分からない。

そこでレミリアはリュウトに紅魔館に住む事を提案した。

 

 

レミ「リュウト、あなたここに住まない?

只でさえこんなだだっ広い屋敷なんだから一人増えたって問題無いわ」

 

リ「いいのか?

こんな見ず知らずの男を助けただけじゃなく住まわせるなんて」

 

レミ「いいのよ。

貴方がここに落ちてきたのは何かの運命でもあるし。

それに、ただで住まわせるなんて言ってないしね」

 

 

それに、見極めるという意味も入っている。

彼女は既に、リュウトが選ぶ未来が見えていた。

演技力が高いのか、彼はその事に全く気づいていなかった。

 

 

リ「なるほどそういうことか。

それなら恩返しも含めて住まわせて貰うことにしよう。

やることは俺の壊してしまった所の修繕か?」

 

レミ「それもあるんだけど、他にも咲夜の手伝いもして貰うわ。

咲夜だけじゃこの広い屋敷を管理するのは難しいの」

 

咲「私は別に構いませんが、リュウトさんは何が出来るのかわからないので何をさせたらいいのか・・・」

 

リ「俺は家事全般はまぁまぁできる方だから心配しないでくれ。

いざとなれば戦う事もできる」

 

 

この言葉を聞いた咲夜の顔がパァっと明るくなった。

 

 

咲「それは頼もしいですわ!

確かに一人じゃ広すぎるので助かります♪

じゃあリュウトさんには私のサポートに回って貰うことにしますわ」

 

リ「あぁ、任せてくれ」

 

 

只でさえ大変な紅魔館の仕事を手伝ってくれる助っ人が現れて、咲夜は喜んだ。

リュウトは紅魔館の仕事の手伝いをすることが出来るのだろうか。




2話終わりました、大分疲れますねこれ、でもめげずにがんばります!ではまたお会いしましょう
感想・評価待ってます!


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3話

熊殺しです!何か2話が二つも投稿されてて急いで消しました。
危ない危ない。
では気を取り直して本編スタート!


あれからさらに2日経った。

リュウトの怪我は一週間で治る筈だったのだが、回復スピードが思ったより早く、今ではもうすっかり完治していた。

人間業ではないとパチュリーは容態を見て驚愕していたが、結果的に治ったのだからそれで良いと興味無さそうに言っていた。

怪我も完治し、動けるようになったリュウトは早速紅魔館での居候での仕事を始める事となった。

一日目はリュウトが破壊してしまった外壁の修繕。

それと庭園の舗装だ。

彼は咲夜に連れられて庭まで来ていた。

 

 

~紅魔館庭園~

 

 

咲「リュウトさんにはとりあえず庭園の破壊された花壇とお掃除を手伝ってもらいます。

大変だとは思いますが私もやりますのでお願いしますね」

 

 

彼女はにっこりとリュウトに微笑むと、必要な道具を全て用意して渡す。

外壁の大穴の周りには、誰が持ってきたのかレンガが大量に置かれていた。

館には相当の力の持ち主が居るようだ。

しかし、これで材料も道具も一式全て揃った。

 

 

リ「わかった。

此処を全て直せばいいんだな?」

 

 

そう言うとリュウトは早速壁の修理に取りかかり、驚異的な作業の早さでしゅうふく。

半日程でレンガの花壇は、ほぼ完璧な元の形を取り戻していった。

 

 

_______________

 

 

昼頃、全ての作業を終了させたリュウトは厨房へと向かい、次に何をやればいいかを咲夜に聞いた。

彼女もまさかこんなにも早く修復作業が終わってしまうとは思ってもいなかったのだから、伝えていないのも無理は無い。

 

 

リ「終わったぞ咲夜、次は掃除か?

何でも言ってくれ」

 

咲「あら?もう終わったのですか?

早いですね。

お疲れでしょう、昼食にしましょうか」

 

 

リュウトはそう言われると音を鳴らす腹を手でさする。

 

 

リ「確かに腹減ったなぁ・・・。

わかった、行こう」

 

咲「私は食事を運んできますので食堂にお越し下さいね」

 

 

そう言うと咲夜は能力を使い食堂へと向かった。

彼女も自身の能力を持っていたようで、時間を止めたり早くしたりする事が出来るらしい。

最初見た時は驚いたが、慣れは早い物だなと思う。

しかし、彼にはそんな便利な能力は無いので歩いて食堂へと向かった。

 

 

~食堂~

 

 

装飾された二枚扉を開けると、既に咲夜を含めた全員が席についていた。

明るい表情で全員がリュウトを迎え入れる。

 

 

咲「お待ちしておりました。

今日は腕に頼を掛けて作りましたわ。

どうぞ、お掛けになってください」

 

リ「あぁ、ありがとう。

・・・凄く豪華だな」

 

 

テーブルクロスの敷かれた豪華なテーブルには、これまた豪勢な洋食のフルコースが並べられていた。

紅魔館の食事は何時もこうなのか?

 

 

レミ「今日はリュウトの歓迎の意を込めてあるわ」

 

リ「俺の?」

 

咲「はい、十六夜咲夜のフルコースですわ♪」

 

フ「咲夜の料理は美味しいよ!

リュウトの為に張り切って作ってたんだから!」

 

美「最初に殿方が此処に住むって聞いたときは驚きましたが、リュウトさんからはは誠実な気を感じます!

私も歓迎の気持ちとしてお料理御手伝いさせていただきましたよ!」

 

パ「そういうこと言われちゃうと何もしてない私は凄く嫌な奴になっちゃうじゃない」

 

小「パチュリー様、こういうのは気持ちの問題ですよ!

リュウトさんを歓迎する気は皆さんと変わらないんですから」

 

レミ「そういうことよ。

改めてこれからよろしくね、リュウト」

 

 

玉座に座りながらレミリアは微笑み掛ける。

恐らく彼女が提案したのだろう。

新しい住人が増えた祝いの為に。

 

 

リ「ありがとう、凄く嬉しい」

 

 

温かい家族の温もりを感じた。

人の優しさとは、こうも心地のよいものだっただろうか。

久しくこの感覚を忘れていた彼は、思わず涙ぐみそうになった。

歓迎の宴も込めた昼食は一際賑やかだったという。

そして昼食は終わり午後の仕事に入る。

 

 

リ「咲夜、俺はどこの掃除をすればいいんだ?」

 

咲「そうですね、では廊下の掃除をお願いします。

かなり長いので時間が掛かると思いますが私もこちらの仕事が終わり次第手伝いますので」

 

リ「わかった、廊下だな?

任せてくれ」

 

 

バケツを持った彼は直ぐ様掃除を始めた。

優秀な助手を得た咲夜は普段やっている仕事が大幅に減った事でかなり余裕が出来ていた。

彼女は残りの仕事である部屋のベッドメイキングやお茶の用意があるので仕事を始める事にした。

 

 

 

~大図書館~

 

 

仕事を終わらせ、図書館の整理の手伝いに来た咲夜はパチュリーと椅子に座りながら小話をしていた。

話題は勿論リュウトについてだ。

 

 

パ「リュウトは仕事頑張ってやってるの?」

 

咲「はい、しかもかなり手際が良いので凄く助かってますわ」

 

パ「そうなの?意外ね、彼そういう風には見えないのに」

 

咲「人は見かけによらないとはこの事ですね、今度リュウトさんに料理でも作らせましょうか?案外上手いかもしれませんよ?」

 

パ「面白そうね、じゃあ今日の夕食はリュウトに作らせてみる?」

 

咲「今日の夕食ですか?さすがにいきなり過ぎでは・・・」

 

リ「俺は別にいいぞ?」

 

咲・パ「「ひゃあ!?」」

 

 

声のした方をふりむくと、そこには何故か掃除をしている筈のリュウトが立っていた。

全く気付かなかった二人はビックリして同時に変な声を出してしまった。

 

 

咲「リュウトさん!?掃除をしていた筈ではなかったんですか!?」

 

リ「さっき廊下の掃除が終わって咲夜がどこに居るか小悪魔に聞いたんだ、それで図書館にいるって聞いたから来たんだ」

 

咲「もう終わったのですか?物凄く早いですね」

 

リ「安心してくれ、廊下の掃除を手抜きした訳じゃない、ついでに窓拭きもしたからな」

 

咲「並の人間に出来る範疇じゃないと思うんですが・・・」

 

パ「リュウト、話戻すけどあなた料理できるの?」

 

リ「出来るが和食とかが一番作るのに慣れているんだ。

でもここは洋館だから普段和食を食べるのか聞きたい」

 

パ「えぇ、食べるわよ。

咲夜のレパートリーは広いから色々な料理を食べてるのよ」

 

リ「それならいい。

でも材料とかはあるのか?」

 

咲「材料は人里に買いに行きましょう。

丁度お味噌が切れて買いに行く所だったんです」

 

リ「んじゃ決まりだな、今日は俺が晩飯を作る、咲夜は休んでてくれ」

 

咲「でもリュウトさん人里の場所知らないでしょうから買い出しは私もついて行きます、よろしいですか?」

 

リ「あぁ構わない、むしろ助かるよ」

 

咲「では私は出掛ける準備をして参ります」

 

リ「俺もそうするか、パチュリーも行くか?」

 

パ「私は喘息だから行けないわ、二人で行ってらっしゃい」

 

リ「そう言えばそうだったな、わかったそうするよ、またな」

 

 

と言うと彼らは図書館を出ていき出掛ける準備をしに行った。

 

 

パ「・・・私、リュウトに喘息持ちって教えたかしら?」

 

 

 

 




3話終了です、なんだか終わり方が微妙、でも咲夜さん幸せルートです!次回は人里です、原作キャラも出ます!まぁ誰だかわかりますよね、ではまたお会いしましょう

感想・評価待ってます!


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4話

最近Twitterで同じように小説を投稿してる人と仲良くなりやした熊殺しです、主人公の挿し絵が出来たんですけどのせ方が分からなくて苦戦してます泣載せ方が分かり次第載せるんで待っていてください、主人公の性格は普段はしっかりしているのだがおっちょこちょいで照れ屋さんです、顔は目付きが悪いです、では本編どうぞ


咲夜とリュウトは夕食の食材を買いに人里に来ていた、里は活気に溢れていてとても騒がしい、咲夜とリュウトは魚屋や八百屋等に行き必要な食材を買っていた。

 

 

咲「リュウトさん、魚は秋刀魚が美味しい季節なので秋刀魚にしますか?」

 

リ「そうだな、じゃあ秋刀魚を七匹くれるか?」

 

店主「へい!秋刀魚だね?ちょいと待ちな。

ほら、秋刀魚七匹だろ?全部で700円でさぁ!」

 

 

ざるに乗せられたサンマのしっぽを七匹掴むと、店主はそれを紐で縛って咲夜に渡した。

受け取った咲夜はそれを袋に入れ、財布をポケットから取り出して700円を渡す。

 

 

咲夜「代金は丁度です、どうぞ」

 

店主「あいよ!また来てくれよ!」

 

 

丁度の代金を確認した彼は気前の良い顔で去る二人を見送った。

 

 

~少年少女移動中~

 

 

リ「後は野菜と味噌か?」

 

咲「そうですね、それだけ買えば全部揃います」

 

リ「じゃあさっさと買い物済ませて夕食の準備するか」

 

咲「はい。

ん?あの方は・・・」

 

 

人里の一番広い道を並んで歩いていると、人混みの中から二人の目の前に一人の女性が現れた。

特徴的な青と白の服に、フリルのついた青いロングスカート。

家のような形の帽子を被っているのは、寺子屋の教師である上白沢慧音だ。

彼女は此方の存在に気づくと声を掛けてきた。

一方は咲夜だと直ぐに認識出来たようだが、初めて会うリュウトの事を知らない彼女は顰めっ面でリュウトを見つめた。

 

 

慧「おや?紅魔館のメイドじゃないか、買い物か?

横の彼は誰だ?」

 

咲「慧音さんこんにちわ。

こちらは訳あって紅魔館で暮らしている神谷リュウトさんです」

 

リ「・・・神谷リュウトだ。

よろしく慧音」

 

慧「あぁ、よろしく。

ところで私は名前を名乗ったつもりは無いのだが?」

 

リ「いや、さっき咲夜が名前で呼んでいたからそれでわかったんだ」

 

慧「そうか。

しかし私にもしっかり自己紹介させてくれ。

私は寺子屋で教師をしている上白沢慧音だ」

 

 

すっかり顰めっ面は消え、慧音は微笑みながらリュウトに自己紹介をした。

自分の職業も添えて。

 

 

リ「寺子屋で教師をしてるんだな」

 

慧「あぁ、それで君達は人里で何を買っているんだ?」

 

咲「夕食の食材を買いに来ているんです。

後は野菜と味噌を買えば全部揃います」

 

 

それを聞くと少し慧音は考えるように腕を組み、閃いたようにある提案をしてきた。

 

 

慧「野菜かぁ・・・。

何なら私の家にある野菜を持っていくか?

結構量があるから心配しなくていいぞ?」

 

咲「本当ですか?

ではそうさせてもらいます」

 

 

これは願ってもいなかった出来事だ。

まさか野菜をタダで手に入れることが出来るとは。

だが、それは慧音に得があるのだろうか?

 

 

慧「うむ、私も少しリュウトに聞きたい事があるからな」

 

 

咲夜は納得の表情をする。

彼女は、慧音が野菜をあげるという口実にリュウトの事を聞き出そうとしている事に気が付いたのだ。

だがそれをリュウトが承諾するかどうか分からない。

彼は自分の素性を隠しているのだから。

 

 

リ「まぁ答えられる範囲ならな」

 

 

あっさりと承諾した。

咲夜とリュウトは慧音の家に行き必要な野菜をもらい受け、家に着くと慧音はリュウト達を居間に上げで質問責めをしたが、秘密にしていることばかり聞いてくるので殆ど答えられなかった。

なので慧音は少し不満そうな顔をしている。

 

 

慧「秘密にしている事が多すぎるのではないか?

これじゃ質問した意味が無いぞ」

 

リ「悪いな、でも秘密にしておかなければいけないんだ。

俺の過去に関係無ければ質問に答えよう」

 

慧「ではそうだな、そもそも君は人間なのか?

確か空から落ちてきて重傷だった所を助けられたと言っていたが・・・。

3日程で治ってしまったんだろう?

傷痕も見当たらないし、明らかに異常な治癒能力なんだが」

 

リ「いいや、俺は人間と別の種族のハーフだ」

 

慧「そうなのか?でも霊力以外に何も感じないぞ?

片方の力を隠しているのか?」

 

リ「隠してなんかいない、ただ認識出来ないだけだ」

 

慧「物凄く小さくて感じられないのか?」

 

リ「まぁそういう所だ」

 

慧「そう言えばリュウトは能力をもっているのか?

ハーフなら何かしらの能力をもっていても可笑しくないが」

 

リ「確かに持っている、見せてやろうか?」

 

 

そう言ってリュウトは立ち上がり外に出て普通にジャンプしたり走ってみたりする、そして次に身体に力を込める、その状態でリュウトが走ってみたりジャンプしてみたりした、するとさっきよりも動きが俊敏になっていた。

 

 

リ「運動神経を一時的に上げる事が出来る。

以上が俺の能力だ」

 

慧「それが能力か?かなり地味だな・・・。

そんなことやろうと思えば誰でも出来るぞ?」

 

リ「まぁあまり役に立たない能力だから気にしないでくれ」

 

慧「そうか、私の知りたかったことはもう全部聞いた。

引き留めて悪かったな」

 

リ「イヤ、気にしないでくれ」

 

咲「そうですよ、野菜をただで貰い受けた身ですので気にしないでください」

 

リ「そういうことだ。

じゃあ慧音、またこんどな」

 

慧「あぁ。

リュウト、幻想郷に来たばかりなら博麗神社に行ってみたらどうだ?」

 

リ「博麗神社、な。

わかった行ってみよう」

 

咲「買い物終わりですので寄ってみましょう。

博麗の巫女がいる筈ですので」

 

リ「よし、それなら急いで買い物を済ませて神社に行こう」

 

 

咲夜とリュウトは最後に味噌を買い博麗神社に向かった。

 

 

~博麗神社~

 

 

咲「ここが博麗神社です」

 

リ「綺麗だな、鳥居も社も建ったばかりにみえる」

 

咲「そうですか?私は荒んでいるように見えますが。

社に誰もいないのかしら?

ごめんくださーい、誰かいらっしゃいませんかー?」

 

霊「うるさいわね~。

ここにいるわよ呼ばなくたって・・・って、横の男は誰?」

 

 

玄関から呼んだ筈なのだが、何故か縁側の方から来た。

この女の子が博麗の巫女らしい。

 

 

リ「初めましてリュウトだ、君の名前は?」

 

霊「私?私は幻想郷の巫女、博麗霊夢よ(^^)」

 

リ「!?」

 

 

続く

 




なかなか意味深な終わり方ですねw今回も終わりが中途半端です、許してください泣
主人公の秘密はまだ出しません、結構先になると思います、まぁ待っていてください!ではまたお会いしましょう

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5話

熊殺しです、挿絵の件なんですが方法が解りました!
でも載せるには数日かかるらしくてまだ載せられないんですすいません、戦闘シーンもまだ出てないしやることがいっぱいあるけど気楽に頑張って行きます!
では本編スタート


リュウトは霊夢と聞いて何故か動揺している。

そんなリュウトを見て咲夜は胸がなんだか苦しかった。

もしかして霊夢はリュウトにとって特別な存在だったのでは?と。

しかしリュウトは別の世界から来たのだからそこに霊夢がいる筈がない。

だがこれだけは言える。

{リュウトは霊夢の事を知っている}

しかしこれをリュウトに聞いても教えてくれそうにないので聞くのをやめた。

そんなことを考えていると霊夢が不機嫌そうな顔でリュウトに話しかける。

 

 

霊「何よ?私の名前を聞いてその動揺。

もしかして私を怖がってるわけ?

失礼なやつね」

 

リ「え!い、いや!違う!

そういう訳ではないんだ!

博麗の巫女がこんな若いなんて思わなかったからな!」

霊「・・・アンタ何か隠してない?

博霊の勘は鋭いから白状した方がいいわよ?」

 

咲「リュウトさんは過去の事を秘密にしているんです。

私たちにも秘密にしているんですから 」

 

リ「それに関してはすまないと思っている。

しかしこれを話してしまうと俺の存在だけではなくお前たちにも危険が及ぶ可能性があるから言うわけにはいかない 」

 

咲「承知しておりますわ。

霊夢もこの事についてはもう詮索しないでもらえる?」

 

霊「・・・はぁ、わかったわよ。

でもそのうち教えてもらうわよ、いいわね?」

 

リ「まぁもしもの時は話すつもりだ。

そんな時が来ないのを祈るがな」

 

霊「どれだけヤバイ話なのよ・・・でもまぁいいわ。

では、ようこそ幻想郷ヘ!

歓迎するわ!リュウト!」

 

リ「よろしく頼む、霊夢」

 

霊「よし!じゃあリュウトの幻想入りを祝って宴会やりますか!

勿論用意とか片付けとか手伝ってもらうけどね」

 

リ「すまない霊夢、今日は夕食を作らなければならないんだ」

 

霊「あらそうなの?私も参加者集めしなきゃいけないし・・・。

明日辺りならいいかしら?

レミリアからの許可もいるでしょ?」

 

咲「そうね、じゃあお嬢様に連絡してくるわ。

行きましょうリュウトさん」

 

リ「そうだな、またな霊夢」

 

霊「えぇ、また明日」

 

 

咲夜とリュウトは夕食と明日の宴会に必要な物を準備するために紅魔館へ帰っていった。

 

 

~PM 7:00紅魔館食堂~

 

 

リ「待たせたな、人数分作るのに手間取った」

 

 

夕食は約束どおりリュウトが作った。

どうなるものかと少し心配していた咲夜とパチュリーだったが、料理を見てその心配も消えた、とても美味しそうだ。

 

 

レミ「あら?夕食はリュウトが作ったのね、美味しそうじゃない?早く食事にしましょう」

 

リ「そうだな、冷めないうちに早く食べよう」

 

皆「「「「「「「いただきます!」」」」」」」

 

 

夕食の献立は焼いた秋刀魚と味噌汁、おひたしに煮物、そしてご飯だ。

みんな一口食べてみる。

 

 

咲「美味しいです!

秋刀魚も油が乗ってて塩加減がばっちり、文句なしで美味しいですよリュウトさん!」

 

フ「リュウトは料理得意なんだね!

なんだか意外だよ」

 

パ「本当ね、あなたの見た目からは想像も出来ないくらい美味しいわ」

 

リ「それは誉めてるのか?なんだかバカにされてるような・・・」

 

美「でもビックリですね!

これ咲夜さんに匹敵する美味しさですよ?

これだけで稼げるんじゃないですか?」

 

小「わ、私のより美味しい・・・泣」

 

リ「どうした小悪魔?なぜ泣いているんだ?」

 

小「いえ・・・世界は理不尽だと思いまして・・・」

 

リ「どう言うことだ??」

 

 

全員からかなりの高評価をうけた。

リュウトの料理を食べたレミリアはこんな事を提案してきた。

 

 

レミ「確かにこれだけ美味しかったらいけるわね、リュウトお店出したら?

儲かりそうよ?」

 

リ「でも咲夜の手伝いをする約束をしてるんだ、店なんか開かない。

それに作れるのは和食だけだ」

 

咲「私の事はいいんですよ?

一人で今までやって来たんですから」

 

リ「何を言っているんだ?

俺は咲夜と一緒に居たいんだ」

 

レミ「(何だか今の軽いプロポーズのような気が・・・)」

 

咲「リュウトさん!な、何言ってるんですか!

そそそ、そんな一緒にいたいだなんて・・・」

 

リ「そもそも店を開くなんて面倒な事、俺には無理だ」

 

咲「( ̄▽ ̄;)、そういうことなんですね・・・」

 

レミ「まぁここで働く約束だったものね、この料理を独り占めも悪くないわ」

 

咲「そう言えばお嬢様、霊夢が明日宴会をやるそうなので来るようにお嬢様に伝えろと」

 

レミ「リュウトの歓迎ね?わかったわ、みんなで行きましょう」

 

咲「では私は明日持っていくワインや料理の用意をして参ります」

 

レミ「じゃあ各自用意するように」

 

「「「「「「「ごちそうさまでした」」」」」」」




自分の文章力の無さに泣けてきます(T-T)こんなんでやっていけるのか心配です、もっと勉強します
ではまたお会いしましょう

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6話※

かなり投稿が遅れましたすいません!後主人公の挿絵が載せれるようになったので載せます!

【挿絵表示】
これで良いはずなんですけど見れますかね?まぁ見れたら良いです、では本編スタート


日の光が大地を照らす日、リュウトは一足先に宴会の準備をするため博麗神社に向かっていた。

尚、咲夜は宴会の料理や酒の準備や紅魔館の掃除等でまだ行けそうにないらしい。

ということでリュウトが先に博麗神社に向かっている途中、湖の上で氷の妖精に会ったのだが・・・。

 

 

チ「あんた!あたいの縄張りに何勝手に入ってるのよ!!

許さないんだから!!」

 

 

いきなり攻撃された。

 

 

バババババッ

 

 

「うお!?なんだ!?」

 

 

突然の奇襲で驚いて後ろに下がるが、弾幕による攻撃は止む気配を見せない。

青いワンピースの妖精ッ娘は、リュウトに向けて氷の弾幕を絶え間なく撃ち続けた。

 

 

バンバンバンバン!!

 

 

四方にばら撒かれる弾幕の雨の中を器用に体を逸らしながら避け、敵意が無い事を伝える。

 

 

リ「ちょっと待て!!

俺はお前と戦う気なんて無いぞ!!」

 

チ「問答無用!くらえ!!」

 

リ「クソッ妖精の癖に攻撃が強力だな・・・。

仕方ない、少しだけ本気出すか」

 

 

そう呟くと、弾幕をかき消すほどの眩い光を放ち、あたかも何も無かったかのようにその場から消えた。

突然姿が消えたことに吃驚して辺りを急いで見渡すが、何処にも見当たらない。

 

 

チ「あれ?消えちゃった?あたいの攻撃が当たったのかな?」

 

リ「おれならここだぞ?」

 

チ「え!?後ろ!?いつの間に!」

 

 

後ろから声が聞こえて振り向くと、その時にはリュウトは既にチルノの後ろに回っていた。

再びチルノが攻撃体勢に入ろうとしたので攻撃を止めるよう言う。

しかし止める気配がないためどうしたものかと考えていると、もう一匹妖精が此方へ飛んできた。

割と大人しそうな見た目の小さな女の子といった所だろうか。

妖精の少女はこの状況を見て理解すると声を荒げた。

 

 

大「チルノちゃん!かくれんぼなのに隠れないなんて意味無い、、、って何してるのチルノちゃん!?」

 

チ「あ!大ちゃん!こいつが、私の縄張りに勝手に入って来たからやっつけようとしてるのよ」

 

 

どうやら後から来た妖精が大ちゃん、いきなり攻撃してきた妖精がチルノという名前らしい。

大ちゃんの方はリュウトの事を知っているようだ。

 

 

大「あれ?この人最近紅魔館に来た人じゃない?」

 

チ「そうなの?わたしこんなやつ見たこと無いよ?」

 

大「私も昨日見たばっかりだよ?この人ここがチルノちゃんの縄張りだって知らなかったんじゃないかな?」

 

 

初対面の相手にいきなり攻撃をしてくるチルノに対して、大ちゃんは割りと常識人のようだ。

人ではないが。

 

 

チ「う~ん知らなかったんじゃあ仕方ないか、、、あんた!名前は?」

 

リ「俺の名前はリュウトだ、君たちは?」

 

チ「チルノだよ!こっちは友達の大ちゃん!」

 

大「私は特に名前はないんですけど大妖精って呼ばれてます」

 

リ「だから大ちゃんなのか、、、。

チルノ、勝手に縄張りに入って悪かったな、お詫びと言っては何だが今日博麗神社で宴会があるから来てくれないか?」

 

チ「え?いいの?霊夢が何か言いそうだよ?」

 

リ「俺がここに来たことを祝うためらしいから俺が言えば大丈夫だろ。

妖精も来るか?」

 

大「良いんですか?私も行っても?」

 

リ「チルノを呼んで大妖精だけ呼ばないのは不平等だろ?それにチルノだって大妖精が

いた方が良いだろうし」

 

チ「そうだよ大ちゃん!いこうよ!」

 

大「じゃあ御言葉に甘えていかせてもらいます」

 

リ「あぁ、時間は夜の7時辺りだからそれくらいに来てくれ、それじゃあ俺は宴会する準備があるから行くぞ」

 

チ「じゃあねリュート!!」

 

大「また夜お会いしましょう」

 

 

リュウトはチルノ達と別れて博麗神社に向かう、境内を見ると既に準備を始めている霊夢の姿が見えた。

 

 

リ「霊夢!済まない遅くなった!」

 

霊「あらリュウト、別に遅くなんか無いわよ?寧ろ手伝ってくれるだけ助かるわ♪魔理沙は全然手伝わないからね、、、ッと噂をすればね、、、リュウト、来たわよ」

 

リ「ん?何がだ?、、、おい、何か凄いスピードでこっちに来てるぞ」

 

 

鳥居の先を見ると、箒に乗った魔女のような格好の女の子が物凄いスピードでこちらに飛んできていた。

 

 

魔「霊夢ぅーーーーーー!!!!」

 

 

キィィィィー、、、、、スタッ

 

 

見事な着地を決めて霊夢にどや顔を見せている。

この子がさっき話していた魔理沙だろうか?確かに騒がしそうな印象だ。

 

 

霊「ハァ、五月蝿いのが来たわね、、、」

 

魔「うるさいやつとは失敬な!私はいつもこんな感じだ!ん?誰だこいつ?」

 

 

中々面倒くさそうな金髪の魔法使い魔理沙は、今まで此方の存在に気付いていなかったかのような言いぐさで指を指しながら名前を聞いてきた。

 

 

リ「まるで嵐だな、、、俺はリュウトだ、最近この世界に来た」

 

魔「おぉ外来人か!私は霧雨魔理沙!普通の魔法使いなんだぜ!」

 

リ「よろしくな、ところで魔理沙は何で箒に乗ってるんだ?確かに魔女といえば箒だが」

 

魔「私は別に箒使わなくたって飛べるぜ?ただイメージが崩れるだろ?普通に飛んでたら、あと私は魔女じゃなくて魔法使いだ」

 

リ「魔女と魔法使いは何が違うんだ?」

 

魔「魔法使いはただ魔法が使えるやつのことだ。

使えるだけで不老不死になれたりはしない。

魔女は魔法で寿命を延ばしたりしているから妖怪の一種なんだ、わかったか?」

 

 

口調や性格からは想像出来ないほど芯の通った説明をされ、普通に納得してしまった。

 

 

リ「なるほど、じゃあ魔理沙は人間なんだな?」

 

魔「そゆことだぜ♪そういやリュウトの種族は何なんだ?見たところ人間っぽいが?」

 

霊「リュウトは人間と別種族のハーフよ、まぁその種族がわかんないんだけどね」

 

魔「ふぅん、、、、霊力しか感じないな、ほんとなら別の力も感じる筈なんだけどな」

 

 

リュウトの体をジロジロと見ながら潜在的な力を見極める。

だが、霊力以外には得に何も感じなかったようだ。

 

 

霊「まぁリュウトが教えてくれないんだけどね。

というか魔理沙来たんなら手伝いなさいよ」

 

魔「あー?私は用意とか苦手だから手伝わないぜ!」

 

霊「じゃあ弾幕ごっこで負けたら手伝いなさいよ」

 

魔「良いぜ?やってやるよ!何枚だ?」

 

霊「二枚で良いわよ」

 

魔「上等だぜ!」

 

 

弾幕ごっこ?聞いたこと無い言葉だ。

一体何をするのだろうか?

 

 

リ「なぁ、何する気だ?」

 

霊「弾幕ごっこよ?この世界の決闘方なのよ」

 

 

幻想郷には特殊な決闘方法があり、それが弾幕ごっこというらしい。

外の世界のじゃん拳のようなものだという。

 

 

リ「へぇ!面白そうじゃないか!どんなのなんだ?」

 

魔「見た方が早いんだぜ!やるぞ霊夢!」

 

 

シュバッ!!

 

 

二人は空高く上がり光の玉の撃ち合いを始めた。

両者互角だったが霊夢がカードの様なものを出すと大きな虹色の玉が魔理沙目掛けて飛んでいき、それに対して魔理沙は星のような形の玉を撒き散らしながら箒で突撃する。

そして爆発が起き、魔理沙がフラフラ飛びながら戻ってきた。

 

 

魔「いや~負けた負けた!やっぱ霊夢は強いぜ!」

 

霊「当たり前でしょ?伊達に博麗の巫女やってないわよ、それじゃあ手伝ってもらうわよ?」

 

魔「仕方ない、手伝うか、、、」

 

リ「なぁ、さっきの俺にも出来るのか?」

 

霊「空が飛べて弾幕を作ることが出来れば誰にでもできるわよ?」

 

リ「俺もやってみてぇなぁ…なぁ、今度教えてくれよ」

 

霊「良いわよ?魔理沙も良いわね?」

 

魔「あぁ良いぜ?今度勝負してやるから強くなれよ?」

 

リ「わかった、楽しみだなぁ」

 

霊「じゃあさっさと準備終わらせますか!」

 

リ・魔「「おう!!」」

 

 

リュウトは弾幕ごっこというものに興味を持ち、魔理沙と戦うのが待ち遠しくなりながら宴会の準備をするのだった。




また中途半端な所で、、、次回は宴会です、ではまた会いましょう

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7話

熊殺しです!この小説何かフランの出番が少ない気がする、。
気のせいではない、少ないのだ。
どうしよどうしよ!!何かフランが出てきそうな話を考えないと!乞う御期待。
では本編スタートです


博麗神社の境内にシートを敷き終わり料理や酒の準備をしていた咲夜がやって来た。

そして全ての準備が終わった頃にはもう辺りは暗くなり、参加メンバーも集まりだしていた。

 

 

霊「みんな集まって来たわね、そろそろ始めましょうか?」

 

リ「霊夢、実は俺も宴会の参加者を呼んだんだが」

 

霊「あら?もう知り合いができたの?まぁ良いわ、一体誰なの?」

 

リ「チルノと大妖精なんだが」

 

霊「あぁ、あの妖精達ね?良いわよ別に。

貴方の歓迎会なんだから何も文句は無いわ」

 

リ「ありがとう霊夢。

時間は夜の7時辺りと言ってあるからそろそろ来るはずだ」

 

霊「オッケー、じゃあ主役に音頭をとってもらいましょうかね?」

 

魔「こっちだぞリュウト!早く始めようぜ!」

 

リ「わかった!わかったから引っ張るな!」

 

 

シャツの裾を魔理沙に引っ張られて壇上に上がると、境内には幻想郷を代表する住人達が制ぞろいしていた。

 

 

リ「魔理沙、ここにいるのは全員俺に会ったことがあるのか?」

 

魔「いや?私の知り合いも呼んでるから全員って訳じゃないよ?」

 

リ「じゃあまずは自己紹介だな。

初めまして、俺の名前は神谷リュウトだ」

 

 

まずは自己紹介と挨拶から始めようとしたリュウトだったが、そこに霊夢と魔理沙が突っかかってくる。

 

 

魔「そんな固っくるしい挨拶要らねーから早く始めようぜ!」

 

霊「そうよ、楽しい宴会なんだからそんなにガチガチしてちゃダメよ」

 

リ「お前らははしゃぎたかっただけか!?

まぁ良いか、乾杯!!!!」

 

皆「乾杯!!!!」

 

 

騒がしい宴が始まりリュウトも壇上から降りる、魔理沙が知り合いも呼んできたと言っていたので取り敢えず皆の所を廻って見ることにする。

まずは慧音の所に行ってみることにした。

 

 

リ「慧音か、二日前くらいに会ったばかりだが」

 

慧「おおリュウト!来てくれたのだな!

紹介しよう、私の横に座っているのは友人の藤原妹紅だ」

 

妹「初めまして藤原妹紅だ。

話は色々と聞いているよ、よろしくリュウト」

 

リ「あ、あぁよろしくな妹紅」

 

 

手を出され、軽く握手をすると、白髪の赤モンペの女性は座れとでも言いたげにシートを叩かれ、何も言わずにその場に腰かける。

意思が伝わったと確信すると、妹紅はにっこりと微笑んだ。

 

 

慧「妹紅は焼き鳥屋を経営していてな、人里等で屋台を開いているんだ」

 

妹「まぁ味は保障するからいつでも食べに来なよ」

 

リ「ありがとう妹紅、今度行かせてもらうよ」

 

妹「あぁ、旨いの作って待ってるからな。

来たらサービスしてやる」

 

リ「楽しみにしてるよ。

じゃあ俺は他の所にも廻ってみるよ」

 

慧「そうか、じゃあなリュウト」

 

妹「またな、絶対来てくれよ?」

 

 

リュウトは妹紅達と離れて縁側へ向かう。

だがその途中、縁側に座る魔理沙と霊夢の間に挟まって話をしている金髪の青いロングスカートの少女に話かけられた。

 

 

ア「あなたがリュウトね?魔理沙から聞いてるわ。

私の名前はアリス・マーガトロイド、魔理沙とは違うけど魔女をやらせてもらっているわ。

長いからアリスで良いわよ、よろしくねリュウト」

 

 

魔理沙の友人のアリスという少女は、既にリュウトの話をいくつか聞いていたようで、自己紹介をすることも無く名前を当てられてしまった。

 

 

リ「よろしくアリス、魔理沙と知り合いなのか?」

 

ア「腐れ縁ってやつよ、住んでる所も近いし私、魔女だしね」

 

魔「酷いなアリス!私はアリスの事友達だと思ってるのによ!」

 

 

立ち上がって声を荒げる魔理沙に動じることなくアリスは平然を保ち続けている。

日常的にこのような境遇の当たっているのか、流石慣れている。

 

 

ア「じゃあ私の家から魔道書盗むの辞めてくれる?」

 

魔「私は借りてるだけだぜ?」

 

ア「あなたはその前に一生がつくでしょ?」

 

魔「あぁ、一生借りてくぜ」

 

リ「それを盗むって言うんじゃないか・・・」

 

 

呆れてものも言えない。

泥棒癖が定着してしまっているようだ。

そういえばパチュリーもそんなような事を言っていたような気がする。

 

 

霊「リュウト、チルノ達は来たの?」

 

リ「来てるんじゃないか?確認はしてないが」

 

ア「チルノ達なら咲夜に連れられてレミリアたちの所へ行ったわ、今ごろフランと遊んでるんじゃない?仲良いし」

 

リ「そうなのか?それなら良いか、オレンジジュースあったはずだし」

 

霊「レミリアたちの所へいかなくて良いの?」

 

リ「俺は紅魔館に住んでるからな、こういうときはいろんなやつに会っておきたいんだ」

 

霊「そういうことね、じゃあこいつの紹介もしないとね」

 

リ「ん?誰の事だ?」

 

 

唐突に霊夢は誰も居ない隣に話掛けた。

すると何もない空間が割れ、薄気味悪い裂け目から美しい金髪の女性が出てきた。

 

 

紫「あら霊夢?いつから気づいてたの?」

 

霊「もう馴れたわよ。

で?今日はリュウトに逢いに来たんでしょ?」

 

紫「ええそうよ、でもまずは自己紹介からさせて頂戴」

 

紫「私の名前は八雲紫、幻想卿の創設者ですわ」

 

リ「・・・神谷リュウトだ。

よろしくな、紫」

 

霊「でも挨拶に来るだけなら別に隠れなくったって良いんじゃない?

何か他に用があるんでしょ?」

 

紫「別に用なんて無いわよ?

ただ幻想入りしたことに私が気付かなかった異端の青年に会いに来たの」

 

 

チラッと目線だけをリュウトに合わせてくる。

どうやら紫はずっとリュウトが幻想郷に来た事を知らなかったらしい。

幻想郷に来るには常識と幻想の境界を飛び越えなければならない。

それを認識出来るのは幻想郷を創造した八雲紫だけである。

その紫が認識出来なかったというのはかなり異常なのだそうだ。

 

 

紫「でもまぁ過去の事は秘密にしてるみたいだし、詮索はしないわ。

折角幻想郷に来たんですもの、楽しんでもらわないと♪」

 

 

にっこりと此方に微笑みかけてくる紫の顔には何か裏があるよう感じられた。

何かを隠している・・・そんな感じだ。

 

 

リ「そうしてもらえると助かる。

紫も宴会参加するんだろ?」

 

紫「ええ、喜んで参加させて頂きますわ」

 

ア「式神二人はどうしたの?」

 

紫「藍と橙は留守番してるわよ、私がいつも結界の維持とかで働いてるから今日は宴会楽しんできてってね。

ホント良い子達だわぁ」

 

魔「働いているようには見えないけどな」

 

紫「そりゃ普段姿を見せないからでしょ?

私だっていつも忙しいのよ」

 

リ「まぁ酒飲めば疲れも吹っ飛ぶだろうよ、楽しもうぜ(男俺一人だけどな)」

 

 

そんな他愛もない話をしているとチルノ達が来て一緒に遊びたいと言い出したので仕方なくリュウトも混ざって遊ぶことになった。

ちなみにこの宴会が終わったのは朝の4時頃で、参加した半数近くが二日酔いになったらしい。




やっと紫が出せたというのとやっぱりフランが出てこないのがヤバイかなぁ、妹紅の出番もそんなに無かったし・・・でもまぁ妹紅の店に行く話を作るフラグ建てたから問題無いかな?あと大体のキャラクターはもう出すか未定です

それではまたお会いしましょう

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8話

熊殺しです!今回は今まで出番がなかったフランの回です!やっぱり人気キャラだしバンバン出さないとね!!ちなみに本作のフランは良い子です、狂気で狂ってるなんてことは全くありません、能力も制御できます、でもたまにやらかすような感じですね!まぁ今後の展開を考えるとそっちの方が楽なんですよね、無駄話が過ぎました、では本編スタート


宴会が終わり博麗神社の片付けも終わって皆と別れた紅魔館御一行は既に全員帰宅していた。

幸い二日酔いでフラフラになっているやつは一人もおらず帰ってからは皆いつものように過ごしていた、リュウトが図書館で小悪魔の手伝いをしていたら・・・。

 

 

フ「ねぇリュウト、リュウトはいつもどんな仕事してるの?」

 

 

椅子に座って魔道書を読んでいたフランが唐突な質問をしてきた。

しかし自分には明確な役割は決まっていない為、忙しそうな人の手伝い係のようなものだ。

だが何故フランはそんなことを聞くのだろうか?

 

 

リ「明確な事は決まっていないんだが取り敢えず皆の手伝い係みたいな感じだな、何でそんなこと聞くんだ?」

 

フ「だってリュウトが此処に来てから私と一回も遊んでもらって無いんだもん、昨日はチルノ達と一緒だったし・・・だから一緒に遊びたいの 」

 

 

どうやらフランは遊んでほしかったらしく、リュウトが仕事で一回も遊んでくれてないことに不満だったようだ。

そういえばフランが外の友達と仲良く遊んでいる姿は一回も見たことがない。

年齢では大人のように見えても、やはり精神面は見た目に反映するらしい。

 

 

リ「わかったフラン、この仕事が終わったら一緒に遊ぼうか?」

 

フ「やったー!じゃあ早く終わらせてね!」

 

リ「あぁ、終わるまで待っててくれ」

 

フ「うん!待ってる!」

 

 

今にもルンルンと謡だしそうなフランの姿はとても嬉しそうだ。

本の整頓の次の予定ができたため、少し早めに終わらせれるように急いでやることにした、そして一応小悪魔に伝言を預かって貰うことにした。

 

 

リ「小悪魔、悪いんだがこれが終わって咲夜辺りの誰かが来たら俺はフランと一緒にいるって伝えてくれないか?」

 

小「妹様?あぁ、遊びに誘われたんですね?

わかりました!伝えておきます」

 

リ「頼んだ。

さてと、フランの為にも早めに終わらせるか」

 

小「リュウトさん、この棚が最後ですよ」

 

リ「よし、さっさと終わらせるぞ小悪魔」

 

 

ドンと積まれた本を、とてつもなく大きい本棚に順番にいれていく。

最後の棚も終わりフランの所へ行くと、フランが満面の笑みで待ち構えていた。

 

 

フ「終わったのねリュウト!

さ、早く遊びましょう?」

 

リ「それはいいんだがどこで遊ぶんだ?」

 

パ「図書館で遊ばないでね?」

 

フ「わかってるわよパチェ、私の部屋に行くからいいよ」

 

パ「ならいいわ。

リュウト、フランの事頼んだわよ?」

 

リ「わかった、行くぞフラン」

 

フ「うん!こっちだよ!」

 

 

手を差し出すフランの手を優しくつかみ、二人は仲良く図書館を後にした。

 

 

~紅魔館地下室~

 

 

リ「こんなとこあったんだなぁ、知らなかった」

 

フ「私の遊び場だよ?勿論お姉ちゃんからも許可貰ってる」

 

 

連れてこられたのは地下にあるフランの遊び場だった、壁はピンクに塗られていて本棚やぬいぐるみなどといった女の子らしいものが数多くあった。フランとリュウトは部屋にあるソファに座り何で遊ぶかを話し合う。

 

 

リ「で?ここで何するんだ?」

 

フ「ウ~ン・・・そうだ!

リュウトに弾幕ごっこ教えてあげる!」

 

リ「弾幕ごっこ?魔理沙達がやってたあれか?」

 

フ「え?もう知ってるの?」

 

リ「やり方はわからない、見ただけだからな」

 

フ「じゃあ教えてあげるね!」

 

 

フランは弾幕ごっこをイマイチ良く知らないリュウトの為に、解説付きで丁寧に教えた。

 

 

フ「弾幕ごっこってのは幻想郷の正当な決闘方法なんだよ。

人間や妖怪が平等に戦う為の方法なんだ。

それで負けた方は相手の出した条件を飲まなきゃならないの、だから幻想郷で暮らすなら弾幕ごっこは必須なんだよ?」

 

リ「魔理沙が出してたあの光る弾が弾幕なのか?」

 

フ「そ♪それをいっぱい撃って相手の動ける範囲を狭めたりして弾を当てるんだ♪」

 

リ「ほう、これを大量に撃ち合うのか」

 

 

リュウトは手のひらに野球ボールくらいの光る弾を作り出した。

 

 

フ「あれ?リュウト弾幕作れるの?」

 

リ「俺は元々これを使って戦ってたからな、これだけでも結構強力だぞ?

まぁ撃たないけどな」

 

 

そう言って手のひらから弾を消した。

 

 

フ「んじゃ弾幕の次はスペルカードだね!」

 

リ「スペルカード?魔理沙と霊夢がそんなこと言ってたような・・・何なんだそれは?」

 

フ「スペルカードは簡単に言うと必殺技みたいなものだよ、それを発動すると普通とは違う特殊な攻撃ができるんだよ」

 

リ「そういうものだったのか、枚数制限もあるんだろ?あの二人が戦ってた時も何枚か決めてたし」

 

フ「それに発動するときはそれを宣言しなきゃいけないんだ、その時は攻撃出来ないから隙になっちゃうんだよ」

 

リ「それだけ強い攻撃が出来るってことなんだな、それはどうやって作るんだ?」

 

フ「何も書いてない紙に力を込めて念じれば出来るよ?私持ってるからあげるね!」

 

リ「ありがとうフラン、念じるんだな?」

 

フ「どんなものにするか決めてそれに見あった力を込めなきゃダメだよ」

 

リ「よし、一つ思い付いた・・・」

 

 

リュウトが力を込めて念じると紙から煙が出てきて一枚のカードになった。

 

 

ボンッ☆

 

 

リ「これがスペルカードか?

何か凄い軽い音がしたが・・・失敗ではなさそうだ」

 

フ「じゃあ試してみる?」

 

リ「でも一枚だけじゃ出来ないだろ?

もっと作らないと」

 

フ「それなら私も一緒にスペルカード考えてあげる!」

 

リ「それもいいが自分で考えないといけないような気がするんだ、それにもう一個思い付いたのがある」

 

フ「それできたら私と弾幕ごっこしよう!」

 

リ「あぁ、んじゃもう一枚紙くれ」

 

 

リュウトはもう一枚のカードを完成させる、準備が整いフランと弾幕ごっこをするためにリュウト達は狭い地下室から場所を変えて紅魔館の大ホールに来ていた。

 

 

~紅魔館大ホール~

 

 

フ「カードの枚数は二枚で三回被弾した方が負けね!」

 

リ「オーケーフラン、始めようぜ」

 

フ「じゃあこのコインが床に落ちたら開始ね、じゃあ行くよ」

 

リ・フ「「弾幕ファイト、Leady go!!! 」」

 

 

チャリン☆

 

 

リュウトvsフランの戦いの火蓋が切って落とされた。

勝つのはどっちだ!!




8話終了ですが次回は続きなんでこれが前編みたいなものですね、9話はとうとう戦闘シーンです!ちょっと不安もありますが頑張ります!
ではまたお会いしましょう

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9話

今回は戦闘シーンばっかりです!
では本編スタート!


コインが落ちると二人同時にステップで後ろに下がり距離をとる。

先手を仕掛けたのはフランだった。

 

 

フ「来ないのなら私から行くよ!」

 

 

フランは自分の周りに魔方陣を8基召喚し、リュウトに向けて弾幕を撃ちまくる。

リュウトは経験値の違いを目にしながら、それを最低限の動きでグレイズさせながらギリギリのラインで避けた。

 

 

リ「まさか魔方陣を8個同時召喚とは・・・これが実力の差か、しかし手数の多さは俺だって負けていない!」

 

 

回避速度を上げて指の先から弾幕を放つ。

小さい分速度が早く、見た目はマシンガンを五丁同時に連射しているのとほぼ同じ。

フランドールの動体視力では弾幕の雨を完全に避けきるのは難しく、サイドステップやホバーで掠りながら必死に避ける羽目となった。

 

 

フ「なんで!?弾幕初心者とは思えない!」

 

 

ドガァン!

 

 

フ「うわぁ!?」

 

 

体に突如大きな衝撃が加わる。

リュウトはフィンガー弾と同時に魔法陣から通常弾幕をばら撒いていたようで、避けるのに必死になっていたフランは全く気が付かず戦略にまんまとはまってしまう。

 

 

リ「さぁフラン!

これで一回だぞ、どうするんだ?」

 

フ「こうなったらお返ししてやるんだから!

レーヴァテイン!!」

 

リ「ん?なんだ・・・あれは・・・?」

 

 

ポケットから一枚のカードを取り出し、その名前を詠唱する。

輝きながらカードは散り散りに消滅してしまったが、代わりにフランの手元に巨大な炎の剣が現れた。

その炎の大剣をフランは思い切りリュウトに振りかざす。

紙一重でそれを避けるが、一体何度あるのだろうか。

とてつもない熱気がリュウトの肌を焼きつけようとしていた。

 

 

リ「うお!こんなの直撃したら人溜まりもないな・・・」

 

 

リュウトが避けた床部分は、レーヴァテインから出る炎の高熱でバターのようにドロドロに熔けていた。

 

 

フ「どう?これが私のスペルカード、レーヴァテイン!!」

 

リ「驚いたよ、これがスペルカードか。

じゃあ俺も格闘戦で行くぞ!」

 

 

リュウトは手を薄い霊力で覆いグローブを作り出し、眼前までフランとの距離を一気に詰めていく。

 

フ「こんなに楽しいの久し振りだよ!

なかなかデキるね!」

 

 

ガキィン!

 

 

リュウトは振りかぶってきたレーヴァテインを素早く掴み、フランの動きを止める。

しかし、あまりの熱量に霊力コーティングしたはずの両手が燃えそうなほど熱されてしまった。

 

 

リ「熱っ!?

凄い熱量だっ!霊力でカバーしていても手が焼けていく!」

 

フ「じゃあ大人しくやられてくれない?」

 

リ「生憎、黙って勝ちを譲るほど男として出来ていないからな!」

 

 

ガァン!

 

 

リュウトが思い切りレーヴァテインを押し返して再び距離を取ると、大量の弾幕を撃ちつつ突撃する。

この時、まだ彼はレーヴァテインの特性に気付いていなかった。

フランはニヤリと笑い、レーヴァテインを勢いよく横に振り払うと、レーヴァテインから無数の弾幕が放たれ、リュウトは避けきれずに一発被弾してしまう。

 

 

リ「グッ!?何が起こった!?

レーヴァテインから弾幕が出てきたように見えたが・・・」

 

フ「スペルカードは自由な発想なんだよ?

剣から弾幕を出すのは私の発想なの、物事を概念で捉えてちゃダメだよ?」

 

 

やられた、まさか剣を弾幕射撃に活用してしまうとは。

警戒しつつ、相手との一定の距離を保って攻撃するのが無難か。

リュウトは一旦、後方へ退却する。

 

 

リ「一本とられた・・・これが弾幕ごっこか。

もはやごっこじゃないな・・・」

 

フ「でも基本弾幕で相手は殺せないからね。

力入れれば殺れるけど、だからあくまでごっこ遊びなんだよ」

 

リ「なるほどな、それじゃ本気のごっこ遊びを続けようか?」

 

フ「そうだね!じゃあ私も本気で行くよ!」

 

 

フランはスペルカードで自分の分身を三体作り出し四人で同時攻撃を仕掛ける。

 

 

フ「「「「4対1だよ!勝てるかな?」」」」

 

 

四方八方から攻撃体勢に入るフラン。

だが、リュウトは冷静だった。

 

 

リ「この瞬間を待っていた。

フラン、そのスペルカードを選んだのはミスだったな、俺の勝ちだ」

 

フ「ハッタリなんて効かないよ!」

 

リ「これから教えてやるよ、スペルカード発動だ」

 

 

リュウトがスペルカードを発動すると、リュウトの手から四本の光の触手のようなものが出現し、分身を含めた全員へ襲い掛かる。

避けようとするがホーミング性が高く四人全員に刺さってしまい、腹部に痛みが走る。

だがそれだけではない。

何故かそれが刺さった瞬間からフランの分身が消えて、フラン自身も徐々に力が入らなくなっていった。

 

 

フ「うぐっ!!なに・・・これ!

力が入らなくなってきた・・・」

 

リ「これは標的のエネルギーを吸いとるスペルカードだ。

エネルギーの塊である分身は当たれば消えちまうって訳だ。

ではもう一つのスペルカードも使わせてもらおう」

 

 

リュウトがもう一枚のカードを出すとカードから8つの弾が飛び出し、フランを囲むように配置される。

そして弾からレーザーが出てきて互いを繋ぐ辺になり、最後に面となるエネルギーの膜が出てきて四角形の箱の中にフランを閉じ込めるような形を構成、さらに8つの弾がレーザーの鎖を撃ち、フランの四股を拘束した。

 

 

フ「囲まれた!?

え、なにこれっ!ほどけない!」

 

リ「拘束スペルだ、避けられるなら動きを止めようってな。

これで終わりじゃないぞ?」

 

 

リュウトが箱の中に一発、弾幕を撃ち込むと、弾幕が中で跳ね返り、不規則な動きをしながら行動不能のフランに容赦なく直撃。

中で爆発が引き起こされ、爆煙の中から服がボロボロになったフランが出てきた。

 

 

リ「俺の勝ちだなフラン」

 

 

ゆっくりと降りてきて床に膝をつくフランに、そっと手を差し伸べる。

 

 

フ「リュウトって凄い強いんだね・・・最後はやられっぱなしだったなぁ。

でも楽しかったよ!」

 

リ「そうか、俺も久しぶりに闘えて楽しかったぞ」

 

フ「今度は負けないよ!」

 

リ「あぁ、いつでもやってやるさ」

 

 

リュウトの手を掴み、立つのを手伝ってもらう。

負けても弾幕ごっこは楽しいものだと、この時のフランの心は、何処かすがすがしい気分だった。

 

 

WINNER 神谷リュウト

 

 

このあと二人は大ホールをボロボロにしたせいでレミリアにこっぴどく叱られ次からは外でやろうと決めるのだった。




なかなかに難しいんですよ戦闘シーンって、結構動きますからね、これを上手く書く人って相当文章力あると思います。
基本挿絵は僕の友達であるころさんに頼んであります。
リュウトを描いてくれた方です!
これからも頻繁に登場するのでよろしくお願いします。
次回はまだ決まってませんが決まり次第投稿します!ではまたお会いしましょう!

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10話

どうもこんにちは熊殺しです、なかなか話が思い付かなくてこんなに時間が掛かってしまいました。
まぁよくあることですよね!では本編スタート


現在リュウトはボロボロになった大ホールを修理中。

弾幕ごっこの後、レミリアにこっぴどく叱られ修復するように言われたのだ。

フランは手伝っていないが、その代わり彼女はボロボロになったリュウトの衣服を縫い直していた。

実は彼女、手先が器用で裁縫が大の得意なのだ。

本来咲夜がこういったことをいつもしているのだが、レミリアから罰として自分でやるように言われ、フランは部屋で黙々と裁縫をしていた。

ほぼ趣味の範疇なのでやれと言われても痛くも痒くもない。

その間リュウトは服が無いので、仕方なく両性着れるものを持っている美鈴から昔履いていたズボンを借り、上はシャツだけの格好で過ごしていた。

 

 

_____________

 

 

~地下室~

 

 

フ「私が裁縫得意でよかったよ、お姉ちゃんが罰として自分でやりなさいって言ったときは正直嬉しかったね♪こんなことで許されるんだからさ~」

 

 

フランが呑気に独り言を言いながらどんどん縫っていく。

かなり早いスピードで縫っていてもう自分の服は元通りになりそうだ。

しかし、リュウトの服はボロボロになったこの一枚しか存在しない。

フランの攻撃でかなりボロボロになっているので直すのに時間が掛かってしまい、新しく買った方が早いくらいだった。

なので急遽、咲夜に頼んでリュウトの服を新調する事となった。

 

 

~ヴワル図書館~

 

 

フ「咲夜~、居る~?

ちょっと用事があるんだけど~」

 

 

門を開けて咲夜を大きな声で呼んでみる。

何時もなら大体これで一瞬で現れるのだが、今日はその代わりに少しムスッとした表情のパチュリーが現れた。

 

 

パ「ちょっとフラン、図書館では静かにしなさいよ」

 

フ「パチュリー、咲夜どこにいるかしらない?」

 

パ「咲夜ならもうそろそろ買い出しから帰ってくるはずよ、何かあったの?」

 

フ「実はリュウトの服なんだけどあれって一着しかないじゃない?

でもあの服ボロボロになっちゃって、直すくらいなら買った方が早いくらいなの」

 

 

と言うと、彼女は後ろに隠していたボロボロの男性用衣服を取り出した。

・・・確かに見るに絶えないボロボロさだ。

 

 

パ「だから買ってきてもらおうと?」

 

フ「そーゆーこと」

 

 

パチュリーは先日、リュウトとフランが弾幕対戦を行った事を知っていた為、全てを察した。

 

 

パ「理由は解ったわ。

なら食堂に行ったら?買い物が終わってから直ぐに支度に取りかかるだろうから」

 

フ「わかった、ありがとうね」

 

 

図書館を後にし、咲夜が居るであろう厨房部屋に入ると、食材をキッチンの冷蔵庫に入れている咲夜の姿が見えた。

 

 

_____________

 

 

〜厨房~

 

 

フ「咲夜~ちょっと用事があるんだけど~」

 

咲「なんですか?フラン様」

 

 

フランはもじもじしながら答える。

 

 

フ「うん、それがね?リュウトの服を直そうとしたんだけど、余りにもボロボロで買った方が早いくらいなの。

だからリュウトの服買ってきてくれないかなぁ?」

 

咲「私もあれ一着しかないというのはどうにかしなければいけないと考えてはいたのですが・・・。

まずお嬢様に掛け合ってみないといけませんね」

 

フ「そういえば今リュウト何着てるの?

もう服は無いでしょう?」

 

咲「今は美鈴の古着を借りてますよ。

でもいつまでもあのままというわけにはいきませんわよね・・・」

 

フ「ちょっとお姉ちゃんの所に行ってリュウトの服買うお金貰ってくるね」

 

咲「あ!フラン様!お待ちを!

・・・行ってしまいましたね」

 

 

咲夜が呼び止めようとしたときにはフランは物凄いスピードで食堂を出ていってしまった。

 

 

____________

 

 

~レミリアの部屋~

 

 

フ「お姉ちゃ~ん!居る~?」

 

 

ガチャッ

 

 

ドアを開けると椅子に座りながら本を読んでいるレミリアの姿が見えた。

 

 

レミ「ノックぐらいしなさいな・・・。

お金でしょ?待ってなさい、出してあげるから」

 

フ「あれ?お姉ちゃん何でわかったの?」

 

レミ「忘れたの?私の能力」

 

フ「あぁそういうことね、じゃあお願い」

 

レミ「ちょっと待ってね、金庫から出すから」

 

 

レミリアは部屋の本棚の中心にある本を取り出す。

すると本棚がスライドして秘密の部屋が出てきた

一体いつこんなものをこしらえたのだろうか?

 

 

フ「え、何これ、初めて知ったんだけどこの仕組み」

 

レミ「どう?格好いいでしょ?

この中に金庫しまってあるの」

 

 

フランは思った、もはや秘密基地であると

そして同時にこうも思った、バカだなぁ・・・と。

 

フ「お姉ちゃんってたまに訳わかんない所にこだわるよね」

 

レミ「まぁ良いじゃない?防犯用に役立つんだし。

ほら、これだけあれば足りるかしら?」

 

フ「泥棒なんか入るかなぁ?

あれ?お姉ちゃん、お金多すぎない?」

 

渡された金はかなり多く服を買うだけの金額とは思えなかったがレミリアは言った。

 

レミ「フラン、咲夜にお金渡すんでしょう?だったら伝えてくれる?

余ったお金で好きな服買ってらっしゃいってね」

 

フ「えー私は~?」

 

レミ「はぁ、わかったわ。

あなたもついていっていいわよ、ただし迷惑かけないこと!良いわね?」

 

フ「やったぁ!お姉ちゃん大好き!」

 

レミ「ふふっ♪さぁ、いってらっしゃいな」

 

フ「はーい!」

 

 

フランは食堂へ向かい咲夜にお金と伝言を伝えると咲夜は泣いて喜んだという。

ちなみにその後レミリアは咲夜に抱きつかれてちょっと嬉しそうだった。




話の内容が次に繋げるためにかなり強引な感じになっちゃいましたね~、しかしこれで次の話のネタができる!ではでは次回またお会いしましょう!

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11話※

どうも熊殺しです!投稿が色々あって遅れてしまいましたすみません!
今回は挿絵がありますがはっきり言って今回も下手くそです!
なので気分が悪くなったら見るのをやめてくださいね、では本編スタート


あの日の夕食の後咲夜が考えた結果、服を買うのに着る本人が居なければ意味がないとのことでリュウトもついていく事となった。

ちなみにレミリアが服を買いにいく日はフランも連れていってほしいとのことで、フランも人里に行くことになっている。

そして当日・・・。

 

 

咲「皆さんもう行く準備はできてますか?」

 

 

咲夜は人里に行く準備が終わり二人を待っていた。

 

 

フ「いいよー♪リュウトは~?」

 

リ「俺も良いぞ、そんなに準備するものなんて無いからな」

 

 

フランはいつもの紅魔館の中で着ている服ではなくお出かけ用の冬服を着ている、一方リュウトはいつも着ている紺色のTシャツにジーンズだが、なぜ直っているのかというと、あの後フランと咲夜が二人で頑張ってなんとか元通りに近い状態まで縫い直したのだ。

ちなみに上はフラン、下は咲夜が直した。

しかしなんと言って良いのやら、見た目は張りぼて状態だ。

 

 

咲「リュウトさん寒くないですか?」

 

リ「寒くないといえば嘘になるが・・・まぁ大した事はない」

 

咲「そうですか?でもこれからもっと寒くなるのでコートも買っておきましょう」

 

リ「そうしてもらえると助かる」

 

フ「私人里に行くの初めてだなぁ~♪楽しみだよ!」

 

咲「フフッそうですね♪では行きましょうか」

 

 

三人は空を飛び人里へ向かう。

紅魔館は湖の中心にある島にあるので湖を跨ぐ。

そして森の上空を飛行していると大きな集落のようなものが見えてきた。

ちなみに紅魔館から人里ま結構な距離があるのだが飛んでいるためかなり時間が短縮されている。

そして門の手前辺りで三人は着地した。

フランは初めての人のたくさん居る街におおはしゃぎだ。

 

 

フ「凄い凄い!人がいっぱいいるよ!」

 

リ「まぁそりゃ人里だからな、じゃあ入るか」

 

咲「はい、では行きましょう」

 

 

三人はまず服屋に向かって歩いていく。

人里には三軒ほど服屋があるのだが、今回は洋服が売っている店に行った。

 

 

咲「あ!見えてきましたよ、入りましょう」

 

 

三人が中に入ると店の中にはたくさんの洋服がこれでもかというほどに並べられていた。

先ずはリュウトの服を選ぶ。

 

 

咲「先ずはリュウトさんの服を選びましょうか、どんな服が良いですか?」

 

リ「動きやすい服が良いな、それ以外は君達のセンスに任せる」

 

咲「そうですか・・・では一緒に探しましょう!」

 

フ「私も選んであげる!」

 

 

とりあえずリュウトの言っていた動きやすい服を片っ端に選んでいく。

金にはかなり余裕があるので気にする事はない。

そして全て選び終わり試着室に向かう。

 

 

咲「ではリュウトさん、試着お願いします」

 

リ「あぁ、少し待っていてくれ」

 

 

リュウトは取ってきた服をどんどん着ていく。

カッターシャツにロングコート、トレーナーにパーカー等色々あったが、どれも普通に似合うため結果全て買うことにした。

ちなみにズボンはジーンズが一番しっくり来ると本人の希望で色んなジーンズを買った。

次は咲夜の服なのだが、リュウトは女性ファッションなどわからないのでリュウトは見てるだけで服選びはフランと咲夜でおこなった。

 

 

リ「咲夜なら何でも着こなしそうだけどな」

 

フ「リュウトは何にもわかってないなぁ、適当に着てるだけじゃオシャレって言わないの!」

 

リ「わ、わかった悪かったよ」

 

 

女性というのはよくわからないとリュウトは思った。

そして口出しすると怒られそうなので今回は黙っていることにする。

その間リュウトは暇なので咲夜たちと服を選んでいる間少し別行動することにした。

 

 

リ「咲夜たちが選んでる間少し街を廻ってくるけど良いか?」

 

咲「あ、はい。

すみません、待っててもやること無いですわよね。

ではお金少し渡しておきますね」

 

リ「あぁ、ありがとう。

じゃあ廻ってきたらすぐ戻るから」

 

 

咲夜から一万円札を貰った。

リュウトも丁度欲しいものがあったため都合が良い。

街の中を歩いていると、雑貨屋に置いてある半透明の仮面のようなものを見つけたのでちょっと見てみることにした。

 

 

リ「なんだこれ?

サングラス・・・ではなさそうだが?」

 

 

顔を覆い隠すほどの大きさがあるが、遮光性が高そうな素材だ。

現代なら然程珍しくもない素材だが、幻想郷ではかなり貴重なものだろう。

それを手にとって眺めていると、店員が気づいたらしくこちらにやって来た。

 

 

店員「お客さんいいセンスしてるね~、それ最近出たばっかりの仮面型バイザーなんだよ!」

 

リ「これで何か良いことあるのか?」

 

店員「う~ん・・・プライバシー保護?」

 

リ「なんだその適当な解説は。

でも確かに顔を隠すには丁度良いかもしれないな、視界も広い」

 

 

丁度、顔を隠すものを探していたところなので、これはピッタリかもしれない。

デザインも気に入っている。

 

店員「どう?買わない?今なら安いよ?」

 

リ「・・・いくらだ?」

 

店員「20000円でどうでしょう?」

 

リ「高い、持ち合わせていないぞ」

 

店員「そりゃあないぜ、仕入値も高かったのに誰も買わないんだから宝の持ち腐れなんだよ。

折角買ってくれそうなのにこれじゃあ在庫処分するしかなくなる」

 

 

なら何でこんなものを仕入れてしまったのか。

不意に男の胸に付いたらバッジが見えた。

・・・この男、どうやらこの店の店長らしい。

今後の店の将来が不安だ。

 

 

リ「よし買った」

 

店員「毎度あり!

仕入れ値よりかなり下がっちまったなぁ」

 

リ「悪いな、金に余裕が無いんだ」

 

 

財布から一万円札を出して店長に渡す。

これで目当てのものは手に入った。

 

 

リ「また用があれば来るかもしれん、その時は贔屓にしてくれ」

 

店員「えぇ、心待ちにしております」

 

 

雑貨屋を去ったリュウトはバイザーの入った紙袋を片手に咲夜達と合流する。

彼女らは丁度試着をするところだったらしく、試着室の前にいた。

 

 

フ「あ!リュウト!いいタイミングで帰ってきたね!」

 

リ「そうみたいだな、これから試着か?」

 

フ「そうだよ!私の選んだ服も入ってるんだから!」

 

リ「それでテンション高いんだな、それじゃあ咲夜のオシャレ姿を拝見させてもらおうかな」

 

咲「わ、わかりました。

では着替えますね」

 

 

咲夜は試着室に入りカーテンを閉め着替え始める。

服を脱ぐ音が聞こえてくるため何だか恥ずかしくなってくる。

着替えはじめてしばらく経ち、服を着衣する音が聞こえなくなってからも一向にカーテンが開く気配が無いのでフランがしびれを切らし始めた。

 

 

フ「咲夜遅いなぁ、もう開けちゃえ!」

 

咲「だ、ダメですフラン様!」

 

フラン思いっきりカーテンを開けると、中からメイド服を脱いで大人な女性へと変身した出来る女、咲夜が出てきた。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

咲「はわわわ・・・見られてしまいましたね・・・」

 

フ「おお!似合ってるよ咲夜!!

どう?リュウトの感想は?」

 

リ「とても似合っている、俺は好きだぞ」

 

咲「!?!?!?」

 

 

耳まで真っ赤にした咲夜はそのまま固まってしまい、リュウトの問いかけにも全く反応しなくなってしまった。。

 

 

フ「リュウトってあんなこと言うんだね(笑)」

 

 

このあとも咲夜の試着は続いたのだが、咲夜があまりにも着こなすため結局咲夜もフランに全部買わされるのだった。

因みに、総額がかなり高くなった為、レミリアの機嫌取りに妹紅の焼き鳥を土産に買っていく事となった。




11話が終わりましたが妹紅の店の話は割愛させてもらいました、何故かと言うと思い付かなかったからです。妹紅ふぁんの方々すみません!でももしかしたら書くかもしれないのでまだおこらないでください。
これで多少分かりやすくなったと思います。
ちなみにリュウトの買った物は春雪異変で出てきます。
それまでお預けですね。
次回はリュウト達が出掛けていた時の紅魔館の話です!また投稿が遅れるかもしれませんがよろしくお願いします!


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12話

今回は前回の平行回です!レミリアの特技が出てきます!では本編スタート


これは、リュウト達三人が出掛けていた時に紅魔館で起こっていた話である。

現在レミリア達は、咲夜が居ない現状での役割分担について話し合っていた。

 

 

________________________

 

 

~レミリアの部屋~

 

 

レミ「貴方達に言い忘れてたけど、咲夜達はお昼過ぎても帰ってこないから」

 

パ「あらそうなの?じゃあ掃除とか洗濯とか誰がするのよ?

妖精メイドまとめあげたところで碌な働きしないわよ?」

 

美「私がやりましょうか?その代わり門が手薄になりますけど」

 

 

パチュリーの質問に対して美鈴が挙手する。

美鈴は咲夜が来る前にもメイドの様な立ち位置に居た事から経験は豊富で一番の適任者だ。

それには2人も賛成した。

 

 

レミ「そうね、じゃあ美鈴には掃除と洗濯をお願いしようかしら」

 

パ「じゃあ私が侵入者の撃退をするわ、万が一の時だけだけど」

 

 

門前に立つ訳ではなく、正確には早期警戒魔法陣を敷いておくだけなのだが。

 

 

レミ「それじゃあ私だけやらない訳にもいかないからお昼は私が作るわ」

 

美「え!お嬢様って料理作れるんですか?

作ってるところ見たことありませんけど」

 

 

美鈴が門番として紅魔館に来たのはかなり昔の事で、その時からパチュリーは既に居たのだが、レミリアが料理しているところなんて見たことが無かった。

そんなレミリアが料理をすると言うので心配しているとパチュリーが言った。

 

 

パ「あなた咲夜が来る前は誰がご飯作ってたか知ってる?あの料理レミィが作ってたのよ?」

 

美「確か当時は色んな料理食べてた記憶がありますけど・・・・。

え?えぇ!?あれ全部お嬢様が作ってたんですか!?」

 

 

今まで何故気づかなかったのか不思議な位だと二人は同じ感想を吐いた。

実を言うとレミリアは、欧州料理なら粗方作れるほどの腕を持っており、その理由としては妹のフランの存在が大きい。

昔は彼女の面倒をレミリアが見ており、ほぼ二人暮しだった為か、はたまた使命感か、自然に料理の腕が上がっていったのである。

 

 

レミ「まぁそんな大した物は作った覚え無いけど、腕は落ちてないと思うから安心して頂戴。

そんじゃあ役割分担も終わった事だし解散しますか」

 

パ「そうね、私は図書館に戻るわ。小悪魔を待たせたままだし」

 

レミ「たまには外に出なさいよ?

じゃっ、美鈴もよろしくね?」

 

美「はい!任せてください!」

 

 

三人は解散しそれぞれの役割を果たしにいく。

パチュリーは図書館へ、美鈴はまず館の掃除をすることにした。

レミリアは食事の用意でまだ時間にかなり余裕がある為、部屋でパチュリーから借りた料理本を読むことにした。

ブランク解消の為である。

 

 

_________________________

 

 

美「先ずは廊下の掃除ですかね~、咲夜さんがいつも綺麗にしてるからそんなに汚れてないけどいつもの事だしやるとしますか」

 

 

美鈴は手際よく黙々と廊下を掃除していく。

美鈴は実は咲夜が来る前は館の掃除や洗濯等を担当していたためこういうことは結構得意だったりする。

しかし掃除洗濯担当というだけで紅茶を淹れるのはあまりうまくなかったのでメイドというわけではなかったし、白兵戦ではかなり強かったため咲夜が来てからは門番を務めるようになったのだ。

そうこうしているうちにもう廊下掃除が終わりそうになっていた。

流石妖怪なだけあって体力も桁違いだ。

そして部屋の掃除をしようとした次の瞬間、下方で何か大きな音がした

 

 

美「この震動の伝わり方は、爆発?

図書館かな?また白黒魔法使い辺りが扉を壊して入ったんでしょうね」

 

 

少し前、図書館では・・・。

 

 

魔「パチュリー!魔道書借りにきたぜー!」

 

 

魔理沙が案の定扉を壊して侵入していた。

美鈴の予想的中である。

 

 

パ「あなた毎回扉を壊さないと中に入れないの?バカなの?」

 

魔「私の通る道に扉があるからいけないんだ!」

 

パ「直したら魔道書貸してあげるわ、ただし一週間でちゃんと返してね」

 

魔「ちぇっ、わかってるぜ。全く面倒だなぁ」

 

パ「早く直さないと酷いわよ?」

 

魔「わかったわかった、今直すよ」

 

 

魔理沙は修復魔法を使って扉の残骸を操り、時間を巻き戻しているかのように元の姿に直していった。

 

 

魔「べつにこれくらいお前なら簡単に直せるだろ?」

 

パ「何であなたが壊したものを私が直さなきゃいけないのよ」

 

魔「・・・ま、まぁあれだ。

そう!魔道書貸してくれよ!」

 

パ「話をそらしたわね。

まぁいいわ、借りていきなさい。

でも一週間以内で返してね」

 

魔「わーかってるよ、ったく信用無いなぁ。

そういやここに来る途中、咲夜を見かけなかったんだがどうしたんだ?」

 

パ「咲夜はフランとリュウトと一緒に出掛けてるわ」

 

魔「フランも一緒なのか?珍しいな」

 

 

フランが外に出るのは余程珍しいらしく、付き合いのある魔理沙でも驚いた。

紅魔館でパチュリーに次ぐ引き篭もり少女だ。

 

 

パ「そうよ、だからお昼過ぎても帰ってこないわ」

 

魔「おいおいそれじゃあ昼飯は誰が作るんだよ?

 

パ「心配要らないわ、レミィが作ってくれるから」

 

魔「はぁ!?あいつ飯作れるのかよ!初耳だぞ!?」

 

 

無論魔理沙が知っている訳がない。

紅魔館の外では誰にも言ってないのだから。

そして魔理沙はそれに興味を示して一緒に食べたいと言い出した。

 

 

魔「なぁなぁ!私も一緒に食べたいんだぜ!」

 

パ「私に言わないでよ、食べたいのならレミィに頼むのね」

 

魔「じゃあレミリアが良いって言ったら食べてもいいんだな!?」

 

パ「私は構わないわ、今ならキッチンに居るだろうから聞いてきたら?」

 

魔「そうさせてもらうぜ!」

 

 

魔理沙は箒に乗って食堂まで行き、丁度いたレミリアに頼んで昼食を一緒に食べたいと頼んだのだが、何故お前の分まで作らなければいけないのだと断られそうになったため食材提供で手を打った。

 

 

レミ「それで?何の食材提供をするのかしら?」

 

魔「魔法の森で採れたキノコでどうだ?」

 

レミ「あら、丁度良いわ。

無難にカレーにしようとしてたところよ。」

 

魔「交渉成立だな!取ってくるぜ」

 

 

魔理沙が一旦家に帰っている間にレミリアはカレーを作っていく。

ちなみに幻想卿にはガスコンロなんてものがあるはずもないのでキッチンと言えどもやはり薪を使って火を焚いている。

二人で暮らしていた時フランがレミリアのカレーを偉く気に入っていたためレミリアの得意料理になってしまったのがキッカケなのだが、フランが居ないためちょっと寂しく感じる。

 

 

レミ「うん、腕は鈍っていないみたいね」

 

 

切った具材をフライパンで炒め、焦げ目が付いたところで火を止める。

咲夜が来てから殆ど料理をしていない為、久しぶりの料理にはじめは不安を抱いていたがそんなことを気にする必要は無かったようだ。

カレールウを作り玉葱を完全に溶けるまで煮込んでいた途中で魔理沙が戻ってきたので、炒めた具材と一緒に生でキノコも切って入れていく。

炊いたご飯と出来上がったカレーとご飯を盛り付けて完成だ。

完成した頃にはお昼になっていたので丁度いいタイミングだ。

みんなが集まってきて食事にすると、懐かしい味だと感じる者や初めて食べて美味しいと言う者と様々だった。

 

 

美「あ~この味ですね~。

咲夜さんとはまた違った懐かしい味です♪

本当にお嬢様が作ってたんですね~」

 

レミ「当たり前よ、フランの面倒を小さいときから見てたんだから。

それよりこれだけで足りるかしら?」

 

パ「大丈夫よ、私はそんなに動いてないし。

私の食べきれる量を未だに覚えてるって凄いわね」

 

レミ「体が覚えてるのかしらね。

それよりどうかしら?私のカレーは?」

 

魔「正直以外だぜ、こんな特技があったなんてな。

しかも超美味しいぜ!」

 

小「ホンとですね!レミリア様の料理初めて食べましたけど凄く美味しいです!」

 

レミ「本当はフランにも食べさせたかったんだけど仕方ないわね、また今度の機会にしますか」

 

 

この日の夜、リュウト達が帰ってきた時に美鈴がレミリアのカレーの話をしてフランが駄々をこねたので、結局夜もレミリアが作る事となったのだが、その時はサラダとチーズカツ、さらに妹紅特性の焼き鳥も食卓に出された。

そして素朴でちょっぴり豪華な食事を皆で楽しむのだった




熊殺しです!何故レミリアの特技を料理にしたかと言うとお姉ちゃんキャラで都合が良いししかも年齢500歳なので大人の女性らしさを出したかったといったところです、それと後付け設定が多かったですね、次回から気を付けます。さてさて次回はオリジナル異変?です!リュウトに史上最大の大ピンチが襲いかかります!次回危雪異変、お楽しみに

感想・評価待ってます!


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主人公設定

まだ異変の挿絵が出来ていないので今回はリュウトのプロフィールです。今まで決まっていなかったので丁度いいですね


神谷リュウト

 

 

【挿絵表示】

 

 

18歳

 

種族:違う種類同士のハーフ。人間ともうひとつあるが、今のところ不明。

 

 

身長:180cm

 

体重:72kg

 

体型:細身の筋肉質

 

 

 

髪の色:黒

 

目の色:黒

 

この二つはある条件下でのみ色が白に変わる。

なぜそうなるのかは明かされていない。

 

 

服装:Tシャツにジーパン、靴はブーツで冬はコート等を着ていることがある

首にドックタグペンダントを掛けている。

ペンダントには秘密があるのだが今のところ機能は不明。

 

性別:男

 

生年月日:不明

 

能力:不明、本人は運動神経を向上させる能力だと言っている。

 

 

※スペルカード

 

{愚か者達の笑い}

 

敵を四角いレーザーの檻に閉じ込めてトラクタービームで四肢拘束。

霊力弾を檻に放つと面部分に反射して不規則な軌道で相手を追い詰めていく。

いつ当たるか分からない恐怖を駆り立てる半ば拷問の様な技。

 

 

{エネルギーパイルバンカー}

 

敵に至近距離まで近づき自分の霊力を敵胴体に打ち込む。

内臓に直接ダメージを与える為、場合によっては戦意喪失させることも出来る。

話にはまだ登場していない。

 

 

{動かない愉快な藁人形}

 

弾幕と同じ要領で作ったエネルギー吸収管を敵に突き刺し、霊力や妖力など様々なエネルギーを吸いとっていく技。

フランのフォーオブアカインドを消した際に使用。

 

 

※通常攻撃

 

 

{フィンガー弾}

 

リュウト自身が編み出した弾幕で、指の先から弾幕を打つ。

速度が速く通常のものより貫通力がある

 

 

{通常弾幕&オールレンジ弾幕}

 

魔方陣を出現させて敵に撃つ一般的な弾幕。

リュウトは現在6個の魔方陣を出現させられる。

しかもその魔方陣を移動させて敵にオールレンジ攻撃をすることが可能で、レーザーや拡散弾幕等も撃てる。

 

 

※武器

 

{ルス=グラディウス}

リュウトがフランのレーヴァテインを参考にして作った剣。

本体は柄の部分のみで、力を込めるとエネルギーの剣が出てくるという物だったが、パチュリーが後々それを作り直し、剣の部分を賢者の石にすることで力の伝達がかなり良くなりエネルギー効率も桁違いに良くなった。

原理は簡単で、賢者の石を研磨して作られた刃に魔力や霊力などのエネルギーを纏わせ、その熱で溶断する。

力の込め具合で切れ味や刀身の長さが変わるが最大出力で使うと長さ数百メートルのほぼ何でも溶断出来る剣になる。

しかし長すぎて取り回しが悪く、そんなに力をこめないのでほぼ使うことはない。

 

 

 

※キャラ説明

 

突如幻想郷に降ってきた謎の少年。

致死レベルの大怪我を負っていたが、脅威的な回復力を見せて三日で完治した。

色々な事を秘密にしていて、特に過去の経歴や自分のいた世界の話をすることを頑なに拒む。

その為リュウトの全てを知っている者は一人も居ない。

八雲紫が自分の能力に干渉せず幻想入りした人間として興味を持っており、彼女には気に入られている。

嘘をつこうとすると何かしらのボロが出て直ぐにバレてしまうことが多い。

意外とおせっかい焼きで他人を心配性なところがあり、動物に良く好かれて嫌われる事はまずないのだが、本人も何故こんなにも好かれるのか解っていない。

彼の愛用している剣、ルス=グラディウスは、改良を施したパチュリーさえも何をエネルギーにしているのか知らない。

 

リュウトは戦闘センスはかなり高く、白兵戦ならば美鈴と渡り合えるレベルなのたが、基本的に人間なのでパワーでは妖怪に見劣りする部分がある。

本人はあまり戦いを好まず、必要となった時だけ仕方なく戦うことにしている。基本殺生は好まない、しかし仲間を傷つける奴は容赦無く鉄槌を下す。

 

 




ちなみに言うとオリキャラは今考えている時点で二人出す予定です


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番外異変13話前編

今回はオリジナル異変です!ちなみに前編中編後編でわけるつもりです。本編スタート


十二月上旬、幻想郷は史上最高記録の大雪に見舞われていた。

 

 

 

~危雪異変 DANGERs Blizzard~

 

 

 

~博麗神社~

 

 

霊「凄いわねぇ、こんなに雪が吹雪くなんて生まれて初めてよ。

まぁ異常気象って所かしらね、こういう日はこたつに入って煎餅食べる!これに限るわねぇ♪」

 

 

外の景色を一頻り見終わると、彼女は居間の炬燵を根城に煎餅を頬張る。

この冬の間は神社から出ずに部屋で過ごそうと決め込む霊夢なのであった。

 

 

 

______________________________

 

 

 

~霧雨魔法店~

 

 

魔「うへぇ、凄い雪の量だなー。

よくもまぁこんな大雪の中ここまできたなぁアリス」

 

 

今日は珍しくアリスが魔理沙の家に来ていた。

何時ものように二人は会っているのだが、大体は魔理沙がアリスに会いに行っている。

なので彼女から魔理沙に会いに来るのは本当に珍しい。

 

 

ア「だって家に居たって人形と過ごすしかないんだもの、だから家の警備を頼んで遊びに来たのよ。

良いじゃない?貴女だって何時も私の所に来るんだから」

 

魔「まぁ私も暇だし来てくれて嬉しいけどさ、大変じゃなかったか?」

 

ア「別にどうってことないわ、天才魔法少女アリスマーガトロイドはこんな大雪に負けやしないわ」

 

 

何故かアリスのテンションが何時もより高い。

これ、雪のせいか?

 

 

魔「お、おおぅ、(何だ少女って?)てか地味に私の事バカにしてないか?

私がダメな魔法使いだってのか?」

 

ア「まぁ魔法の腕前は私の方が上よね~」

 

魔「私より弾幕勝負弱いやつが何いってんだぜ」

 

 

事実、魔理沙の火力はアリスのそれを上回っている。

しかし戦いは火力だけではない。

 

 

ア「力任せな魔法は私使わないの、もっと高度な魔法を使うからそんな野蛮な魔法私は使わないわぁ♪」

 

魔「このやろう・・・!じゃあ弾幕勝負で決着をつけてやる!」

 

 

カチンと来た魔理沙はポケットから取り出した八卦炉を構え、魔力を収束させていく。

これはまずい。

 

 

ア「ちょ!ちょっと!

アンタこんなところで八卦炉構えてまさか撃つ気じゃないでしょうね!?」

 

魔「吹き飛ばしてやる!!!」

 

ア「やめなさぁーい!!!!」

 

 

その日、魔理沙の家には大きな風穴が空き、冬の間はその修理に追われることとなった。

 

 

______________________________

 

 

~八雲邸~

 

 

籃「紫様が冬眠してる時に限ってこんな雪が降って全く・・・」

 

 

屋敷から外の景色を眺めながら、九尾の八雲藍は嘆いていた。

現在八雲紫は冬の冬眠に入っており、起きることはないため結界の維持等は籃がやっている。

なので仕事の邪魔になるこの大雪に大層うんざりしていた。

そんな時、彼女の後ろから悲しそうな少女の声が聞こえてきた。

 

 

橙「籃様ぁ~、猫達があまりの寒さに炬燵の中に皆入っちゃいました~」

 

 

藍の式神である猫又の橙が泣きついてきた。

彼女が修行の為に躾ていた猫達が寒さで炬燵を占領してしまったらしい。

猫はコタツで何とやらとはこの事だろう。

 

 

籃「まぁ寒いから仕方ないな、橙も寒くないか?」

 

橙「籃様の尻尾の中で暖まるからいいのです♪」

 

 

そう言うと橙は籃の尻尾の中にくるまって寝てしまった。

 

 

籃「橙もまだまだ子供なんだな・・・。

では私も雪が収まるまで少し寝るかな」

 

 

そう言うと、二人はそのまま丸くなって寝てしまった。幻想郷の住人はこの大雪で何時もと違う過ごし方をしていた。

そしてここでもそれは例外ではなかった。

 

 

___________________________

 

 

~紅魔館~

 

 

大きな暖炉が壁に埋め込まれた部屋に皆で集まっていた住人達は、暖かな部屋の中で暖をとっていた。

いつもなら図書館に篭っているパチュリーも、今日はレミリアに釣られて暖炉部屋で読書だ。

しかし、約2名のお陰でその読書も全く捗らない。

 

 

レミ・フ「ゆ~きやこんこんあられやこんこん降っては降ってはズンズン積もる~」

 

パ「貴女達どんだけはしゃいでるのよ、少しは静かにしなさい」

 

 

吸血鬼姉妹は現在、揃って窓にへばりつきながら大雪にはしゃいでいた。

その横に立っている咲夜は一篇変わってあまり嬉しくなさそうだ。

 

 

咲「お嬢様方は大雪で興奮しておられますね。

私としてはあまり喜ばしくないのですが」

 

レミ「こんなに雪が降ってるのを見るなんて初めてよ?

凄いと思わないの咲夜は?」

 

咲「確かに凄いと言われれば凄いですがここまで寒いと仕事が辛くなってきます」

 

フ「水が冷たいからね、あかぎれになっちゃうよ」

 

咲「ところでリュウトさんを見ませんでしたか?さっきから探してるんですけど・・・」

 

パ「リュウトなら外で雪かきやってるんじゃない?今ごろ屋根の上よ」

 

 

パチュリーが外を指差すと、その先には確かに人影が見えた。

窓の結露で良く見えないため窓の結露を拭いて覗くと、そこには雪だるまを転がしながら進んでいるリュウトの姿があった。

しかもその作った雪だるまを光る剣のようなもので真っ二つにして遊んでいる。

流石の咲夜もこれには呆れて何も言えなかった。

一時間後、戻ってきたリュウトは先程の一部始終を見られていた事に対して謝罪した。

 

 

リ「すまない、大雪についはじゃいてしまった」

 

咲「リュウトさん・・・」

 

レミ「リュウトって雪で喜ぶのね、何だか凄く珍しい瞬間を見た気がするわ」

 

フ「というかリュウトが持ってたあの光る剣はどこ?」

 

リ「あぁ、あれは俺が作ったものだ。

まだまだ改良の余地があるがな」

 

 

そういうとリュウトはポケットから剣の柄だけを出し、それを握ると柄から光る剣が出現した。

 

 

フ「わっ、これレーヴァテインにそっくり!」

 

リ「それがきっかけになってるからな、でもアイデアだけ参考にしただけだ、マネした訳じゃない。

他にもこんなことができるぞ」

 

 

リュウトの剣は形を替えて盾のような形になった

 

 

リ「シールドモード、これで攻撃を防げる。

弾幕勝負はガードするのはアリなのか?」

 

パ「自分に攻撃が当たらなければいいんだからアリじゃないかしら?

ただ誰もやってないだけで反則にはならないと思うわよ?」

 

リ「ならいいな、こいつをこれから弾幕勝負に使うとしよう」

 

咲「あのー、リュウトさん?実は頼みたい事があるんですが・・・」

 

 

咲夜は申し訳なさそうにリュウトに問いかける。何かと思えば。

 

 

咲「実は今日の分の食材と備蓄を買うのを手伝って欲しいのですが・・・」

 

 

買い物だった。

 

 

リ「それはいいんだが、何故今備蓄を買うんだ?」

 

咲「それが、今まで買うのを忘れていたんです・・・」

 

 

リュウトは紅魔館に住んでからしばらく経ってわかったことがある。

咲夜は以外とおっちょこちょいなのだ。

完璧超人にみえる彼女だが、実は希にとんでもない失態を犯すのだ。

ちなみに最近やったのは侵入者だと思って門番から帰ってきた美鈴にナイフを投げつけてしまったことである。美鈴はギリギリ反応出来て避けられたため無事だったがこれが人間だったらあたり血の海になっていた事だろう。

 

 

リ「まぁ仕方ないな、咲夜は紅魔館の管理を一生懸命やってるんだ、失敗したってしょうがない。

荷物運びをすればいいのか?」

 

咲「ありがとうございます!今度リュウトさんが好きな鍋焼きうどん作りますね♪」

 

リ「ホントか?楽しみだなぁ」

 

咲「手伝ってくださるせめてものお礼ですよ。

さぁ!雪がこれ以上酷くなる前に早く済ませましょう!」

 

リ「あぁ。もう準備は出来てるから行けるぞ」

 

 

キィ・・・バダム

 

 

二人はそのまま買い物に行ってしまったが端から見ると只の夫婦にしか見えなかったのは言うまでもない。

一方人里は行きなりの大雪で雪掻きに追われていた。

 

~人里~

 

 

慧「雪の降りすぎで家が倒壊しそうになる事態になるとは・・・。

しかし妹紅がいてくれて助かったな、雪を溶かして廻ってくれているおかげでかなり作業が進んでる。

火を操れるから火事になる心配も無いしな」

妹「慧音!こっちはなんとか終わりそうだ!」

 

慧「あぁ!すまないな妹紅!

疲れただろうからゆっくり休んでいてくれ!

ん?あれは・・・」

 

リ「おーい慧音!久しぶりだな!」

 

 

リュウトと咲夜が人里に到着し、慧音が居たので話しかけた。

 

 

慧「おおリュウトと咲夜か。

どうした?こんな天気の中で大変じゃなかったか?」

 

リ「食糧を買いに来たんだ、店はやってるのか?」

 

慧「あぁ、やっているぞ。

今回は備蓄を買っていった方が良い、この雪はまだ続く気がするからな」

 

 

強い寒波の影響で作物も育つことは無く、今は秋頃収穫した野菜や果物の備蓄を売っているのだが、それが無くなるのも時間の問題で、八百屋の計算では蓄えは1月を超えた辺りで無くなる予想らしい。

食料の値上がりは必至だ。

紅魔館の財力ならあまり関係は無いのだが。

 

 

咲「そのつもりですわ、この雪の中を買い物に来るのは辛いので」

 

慧「気を付けるんだぞ、今回のは只の異常気象ではない気がするんだ。

出来るだけ館からでない方がいい、その方が安全だ」

 

咲「そうさせて頂きます。

では私たちはこれで失礼しますわ」

 

リ「じゃあな、慧音も気を付けろよ」

 

慧「あぁ、じゃあな」

 

 

別れの挨拶を交わし、買い物に戻る2人を見送った後、慧音は薄暗い空を見上げて眉をひそめた。

 

 

慧「それにしてもいつまでこの雪は続くんだ?止む気配がまるでない。

まさか異変、なわけないと思いたいが・・・」

 

 

幻想郷を包み込む不穏な空気は、この世界の住人達を徐々に胃袋へ収めようとしていた。

 

 

To be continue

 

 

 




この回はドラゴンボールでいうところの映画みたいなものなので短くするつもりです。では次回お楽しみに


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番外異変13話中編※

今回は戦闘シーンが大半です。
異変の犯人はあの人です。
ネタばれになるから言いませんけどね!!


あれから三日が経った。

雪の量は日に日に増していき、今では積雪6mを超えていた。

 

 

~紅魔館バルコニー~

 

 

リ「よし、行くか」

 

 

このままでは幻想郷が雪で完全に埋もれてしまう為、リュウトはこれを異変と判断。

霊夢はこの大雪で出られないのか一向に解決する気配が無いので、仕方なくリュウトが調査に出ることにした。

咲夜も行こうとしたのだが、彼女は人間の女性でそんな雪の中で耐えられる訳もないとのことで連れてきていない。

彼はバルコニーから助走をつけて空に上がり、吹雪の中へ突っ込んだ。

 

 

リ「太陽が出なければ光の充填が出来ないからな、全く不便な能力を持ったものだ」

 

 

独り言を呟きながら視界が悪い中、自身が開発した武器であるルス・グラディウスをエネルギーの幕で盾状態へと変形させて飛行中。

現在この異変で分かっているのは、雪は誰かが意図的に降らせているという事。

これは紫が持ってきた外の世界の新聞に書いてある{東北地方}という地域の積雪量を見た時に、最大積雪量の約2mという高さを遥かに超えていて、外の世界の異常気象が幻想郷に影響を与えているとしても明らかに度が過ぎていると考えたからだ。

それを踏まえてリュウトはこの大雪の中、数少ないヒントを手掛かりに犯人探しをしていた。

 

 

リ「ちっ、なんて雪の量だ。

シールドが無かったら碌に前も見えないぞこれは。

・・・ん?なんだあれは?」

 

 

そのまま暫く飛んでいると、目の前に一か所だけ吹雪が渦巻く謎のボール状の物体を見つけた。

かなり大きく、およそ500mほどだろうか?

確かめる為に覚悟を決め、勢いよくその中に突っ込んだ。

雪が視界を塞いでいるせいで廻りが全く見えない。

球体の表面部分、卵の殻のようなところにいるのだろうか。

突風と雹の嵐に吹き飛ばされそうになりながらも進んでいくと、段々と雪が弱くなっていき、視界が拓けるようになってきた。

 

 

リ「吹雪が止んだ・・・。

球体の中に到達出来たみたいだな」

 

 

どうやらリュウトは、雪の吹雪く球体の中に入ることが出来たようで、吹雪も完全になくなっていた。

と同時に目の前・・・と言ってもかなりの距離があるのだが、二つの人影が見えた。

 

 

リ「あれか?二人も居るのか」

 

 

二人は天に手をかざし、大量の雪を放出し続けている。

とてつもない量だ。

幻想郷全てを覆い尽くすと言われても何も疑わない程に強力な力が使われているのだろう。

リュウトの見つけた人物とは・・・。

 

 

チ「あら?最初に誰が来るかと思えば博麗の巫女じゃなくてリュウトじゃない?

異変解決に来たのかしら?」

 

レティ「チルノの知り合い?見たことない顔だけど」

 

 

妖精であるチルノとレティ・ホワイトロックだった。

しかしチルノの姿は前とは全く違い、幼い少女から大人びた女性へと変わっていた。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

リ「お前らが犯人だな?レティ・ホワイトロックは初めましてだな。

それはそうとチルノ、前と姿が違うのはどういうことだ?」

 

チ「さぁ?私にもわからないわ。

で、も、今は凄く気分がいい・・・力がどんどん湧き出てくるわぁ♪

こんな気分初めてよ♪

だから私はこの力を使って幻想卿を真っ白に染めて私たちの世界を作るの」

 

 

狂気だった。

支配欲の塊と言ってもいいだろう。

チルノは外の世界の影響を受けすぎて精神を支配されてしまっていた。

 

 

リ「私たちの世界だと?どんな理由があろうと止めさせるつもりだったがまさかこんなふざけた理由だったとはな」

 

 

しかしこの言葉を否定するようにレティが入ってきた。

 

 

レティ「ふざけた理由じゃないわ、私はチルノの生きやすい世界を創るためにこの世界を永遠の冬にするのよ。

何で初対面の貴方が私の名前を知っているのか知らないけど、私達の世界に貴方は必要無いわ」

 

リ「生きやすい世界?」

 

チ「私は妖精という類いの種族で強い力を持っていた、でも妖怪に比べたらその力は大したものではなかった。

でも今は違う、今の私は妖精、妖怪という種を遥かに超越した存在になった。

この力を使って今まで妖精だからと見下してきた愚かな者達に鉄槌を下し、そいつらを一人残らず抹殺して私たちが世界の頂点に君臨するの」

 

 

チルノは種族の格差によって強いたげられてきたその怒りをこの異変にぶつけていた。しかしリュウトはそんなことは許さない。

 

リ「弾幕ごっこで勝敗を決めるのがルールみたいだが、それを聞いてそんな生温い事を言ってられなくなった。

俺の力でお前のエゴを止める!」

 

 

リュウトはチルノに急接近し、グラディウスを振りかざしたが、そこにチルノの影は無く、代わりに後ろから強い衝撃が襲いかかってきた。

 

 

リ「ぐぅあ!何!?」

 

 

リュウトがダメージを受けて後ろを振り向くと目の前にいたはずのチルノがいた。

 

チ「言ったでしょう?今の私はすべてを超越しているって」

 

 

その言葉の後横から白い弾幕が大量に襲ってきた。

それをバックステップで避け、飛んできた方向を見るとレティがいた。

 

 

レティ「私が居ること忘れてない?貴方は二対一というのと私たちに有利なフィールドで戦うっていう二つのハンデを負ってるのよ?貴方一人で勝てるわけがないわ」

 

リ「だからなんだって言うんだ?そっちが一人多いだけだしそれに寒さなんか別に気にならん、俺一人で充分だ」

 

レティ「そうやって減らず口を叩いているといいわ、どうせ貴方はここで死ぬんだから、やるわよチルノ」

 

チ「わかってるわ、ごめんねリュウト。

その代わりせめて私の手で殺してあげるね」

 

リ「ちぃっ!!」

 

 

チルノとレティは距離をとりリュウトに攻撃を仕掛ける。

リュウトには無数の白と青の弾幕が降り注いだが、リュウトはそれを最低限の動きで避けたり弾いたりして、さらに六つの魔法陣を展開して拡散弾幕をばらまく。

それを見てチルノは弾幕を変更してレーザーを撃ってきた。

レーザーがリュウトの弾幕に当たるとリュウトの弾幕が全て凍ってしまう。

 

 

リ「何でもアリかっ!!」

 

 

リュウトの攻撃が塞がれている隙にレティが拡散弾幕で牽制してきて押されぎみになったリュウトは攻撃を止めて吹雪の中に入り地上に向かっていく。

それを逃がさんとばかりにレティが小型弾幕を大量に撃ちながら追いかける。

リュウトは弾幕を避けながら土煙をあげるため地上スレスレを飛行し煙幕を作り、レティの視界を塞いだ状態でフィンガー弾を撃つ。

視界が悪いので弾幕が見えずレティは直撃してしまい、さらに煙の中からいきなり現れたリュウトに回し蹴りを喰らって地面に落ちていく。

 

 

レティ「あぐぅっっ!!!」

 

リ「止めだ!!!」

 

 

リュウトはグラディウスをレティに構え、ビームを発射し止めをさしてからチルノのいる上空へほぼ全力のスピードで向かう。

 

 

ドォン

 

 

リ「うぉぉぉぉぉ!!」

 

 

リュウトは冷気の煙の中から勢いよく出てきてそのままチルノに突撃し、顔面に思いっきり拳を振るったが、チルノはそれにギリギリ反応し、それを左手で受け止めた。

 

チ「うっ!ぐっ!流石リュウトね・・・あの時睨んだ通りの実力だわ!

今の私じゃ貴方と実力が同じ位、でも貴方はまだ力を隠している。

でもね、隠してるのは私だって同じよ!!」

 

 

チルノの左手が急に冷たくなりリュウトの拳が凍りついてしまった。

 

 

リ「ガァァ!!ッ右手が凍った!?」

 

チ「まだよ!食らいなさい!

 

 

スペル:パーフェクトフリーズ

 

 

チルノはとてつもない量の弾幕をばらまく。

リュウトは構えたが避けようとした弾幕が動きを止め、さらにチルノは弾幕を撃ちそれと同時に止めた弾幕を動かして逃げ道をふさぐ。

それをリュウトはグラディウスで弾き返し弾幕の檻から脱出し、スペルを唱えた。

 

 

スペル:動かない愉快な藁人形

 

 

無数の触手がチルノを襲うが全て凍って砕けてしまった。

弾幕での戦闘が始まりどちらも殆ど実力が変わらなかったがチルノは余裕の笑みを見せたのでリュウトはそれに苛立った。

 

 

リ「そんな余裕かましてられる状況じゃないだろ?

何を企んでやがる」

 

チ「わかってないのね、じゃあヒントあげる、何か忘れてないかしら?」

 

リ「何っ!しまった!」

 

 

いつの間にか自分の後ろにレティが待機していた。

リュウトは倒したはずのレティが復活していた事に気付くのが遅れてしまった。

不味いっやられる!

 

 

レティ「あんなのでやられるわけないでしょ?お返しよ」

 

チ「これでおしまい♪」

 

 

スペル:ダブルクリスタライズシルバー

 

 

チルノとレティは巨大な氷結弾幕の渦をリュウトに向けて撃つ。

リュウトは完全にレティの位置がわからなかった為に隙が出来て体に直撃し、どんどん身体中が凍っていった。

 

 

ガチガチガチッ

 

 

リ「うぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

 

リュウトは氷と雪の塊になりそのまま地上に墜ちていった。

 

 

 

To be continue

 

 




文字を詰めすぎているので後で直したいと思います。リュウトが負けてしまったのかは次の話でわかります。ちなみにこの異変のチルノはいつもの70倍位の力を持っているのでかなり強いです。
レティが若干酷い扱いになってしまっているのはリュウトの力をわからせるためです
ダブルクリスタライズシルバーは東方原曲のクリスタライズシルバーからとっています


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番外異変13話後編※

忌まわしい記憶と共に立ち上がれ


リュウトは氷と雪の塊になり力無く地上に墜ちていく。

レティとチルノは何をするということもなくただ彼が無残に墜ちていくのを見ていた。

 

 

レティ「大したこと無かったわね。

最初に言った筈なのに、{私たちのフィールド}って」

 

 

レティがなぜ復活したかというと、{元々やられていなかった}からだ。

レティは回し蹴りを食らった後雪の煙幕に紛れて氷で作ったドーム状のシールドでビームを防いでいたのだ。

そしてリュウトがチルノの方に向かった後ドームから出てエネルギーを蓄積、その後自分の存在に気づいていないリュウトに隙をついてチルノと合体攻撃を仕掛けたのだ。

 

 

チ「バカね、ちゃんと止めをさしたときに確認しないからよ。

レティ、あんなのじゃまだ止めを刺したとは言えないわ、粉々にするわよ」

 

レティ「あの氷の中じゃとっくに凍死してるとは思うけど一応やっておきましょうか?」

 

 

チルノとレティはリュウトに向けててをかざすと、その間に庇うように小さな人影が入ってきた。

 

 

大「チルノちゃん!

もうやめて!!」

 

 

止めをさせまいとチルノを止めに入ってきたのはなんと大妖精だった。

さっさとリュウトの息の根を止めたいレティは、邪魔が入ったことに少し苛立ち、強めの声色でチルノに聞きだした。

 

 

レティ「また貴女の知り合い?」

 

チ「・・・大ちゃん、退いて」

 

 

その言葉に大妖精は首を横に激しく振り、抵抗の姿勢を見せた。

親友の悪行を黙って見ていられなかった彼女は、必死にチルノを説得しだす。

 

 

大「どかないよ!リュウトさんを殺そうとするなんて!

止めるに決まってるじゃん!

チルノちゃんが色んな人から嫌な目で見られて辛い思いしてきたのは私も知ってる、、、、。

でも異変なんて起こしてほしくなかった!

今のチルノちゃんの力が強すぎて私一人じゃ止めることなんて出来なくて、、、!

怖くて隠れてた。

でも・・・でもリュウトさんはチルノちゃんに優しくしてくれたじゃん!!」

 

チ「黙れ・・・・」

 

大「チルノちゃん忘れちゃったの!?

いつものチルノちゃんに戻ってよ!!」

 

チ「ダマレェェェェェ!!!!!!」

 

 

必死の抵抗も虚しく、チルノは問答無用で大妖精に向けて極太ビームを撃つ。

大妖精はそれに腰が抜けて動けなくなり死を覚悟した。

親友に殺されるなら本望かな、、、だがそれが大妖精に当たることはなかった。

そのビームはバリアのようなものに防がれたのだが、それを防いだのは・・・。

 

 

リ「大妖精、よく頑張ったな」

 

大「あ・・・あぁ・・・!」

 

 

殺されて墜落した筈のリュウトだった。

しかし、今のリュウトの姿はさっきとは別物で、髪は黒から白に、目の色も白に変わり背中には輝く四枚の羽が生え、気配が全く感じられない。

さらに羽からは光の粒子が放出され続け、その姿は神のようだった。

大妖精は口を半開きにし、驚いた表情をしている。

リュウトは大妖精の肩を優しくつかみ、微笑みながら自分に任せるように言った。

 

 

リ「あとは俺に任せてくれ」

 

大「はっはい!」

 

 

そんなリュウトの姿を見てレティは動揺を隠せなかった。

後ずさりしながら顔が引きつっているのが証拠だ。

 

 

レティ「どういうこと!?あんな力を隠していたなんて!

 

チ「あれがリュウトの本当の姿・・・」

 

リ「さぁ二人共、この姿は余り長く維持出来ないから、さっさと第2ラウンド始めるか」

 

 

そういうとリュウトは両手を広げ、二人に対峙する。

まるでお前たち二人を倒すなど容易い事だと言わんばかりに。

 

 

レティ「ッふざけるなぁぁぁ!!!」

 

 

レティは怒り、叫びながらリュウトに殴りかかる。しかし空振りしてしまう。

すると真後ろから声が聞こえてきた。

 

 

リ「そんな怒るな、これでも驚いてるんだぞ?

俺をこの姿にさせたのはこの世界に来てお前らが初めてなんだからな」

 

 

レティは恐怖した、ここまで実力差がある相手は初めてだったからだ。

その後首筋と腹部に強い衝撃と激痛が走った。

 

 

レティ「アッッガッガハッ」

 

リ「軽い力で蹴ったがそれでもかなり苦しいだろう。

お前は妖怪だからな、それで今回の件はチャラにしてやる」

 

 

バガァン!!!!!!

 

 

レティは顔を歪ませながら蹴られた部位を抑え悶絶し、そのままリュウトに腹部を蹴られどこか霧の中に消えていった。

リュウトは振り返り、チルノを睨み付ける。

 

 

リ「チルノ、頭を冷せ」

 

チ「・・・私は負けるわけにはいかないのよ。

だから・・・あんたは邪魔なのよぉぉぉぉぉ!!!!!!!」

 

 

スペル:アイシクルフォール

 

 

チルノは氷結弾幕と巨大弾幕をリュウトに向けて撃ちまくった。

しかもいつもと違い、氷結弾幕にホーミング性がついていて避けても追いかけてくる。

しかしリュウトにそれが当たることはなかった。

 

 

ヒュンッ

 

 

チ「消えた!?あの時と同じ!後ろか!」

 

 

警戒して振り返るが、後ろには居ない。

 

 

チ「何処だぁ!!」

 

リ「こっちだ」

 

 

スペル:エネルギーパイルバンカー

 

 

リュウトはチルノの真下から突然現れ、チルノの鳩尾に拳を突き上げると同時にエネルギーを内蔵に向け撃ち込みまくる。

体が飛散するような感覚に襲われるたびにチルノは苦しそうな表情を浮かべる。

 

 

バガァン!バガァン!バガァン!バガァン!

 

 

チ「ガハッがはっガハッヴぉぇぇぇ・・・」

 

 

あまりの苦しさにチルノは胃の中のものを全て吐いてしまう。

しかしリュウトの手は止まらない。

パイルバンカーを打ち込んだあとチルノの腕をつかみ、ハンマー投げのようにぶん投げ、さらに飛ばした先に先回りして飛んできたチルノの腰部を思い切り蹴った

 

 

ドゴォッッ

 

 

チ「がぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!」

 

 

痛々しい音と共にチルノの腰は逆方向に曲がり、海老ぞりになってしまった。

 

 

リ「どうだ?異変を止める気になったか?」

 

チ「あ・・・がぁ・・・」

 

 

リュウトはチルノから足を放し、苦しむチルノを見下すように見る。

 

 

リ「なんだ?もう喋れなくなったのか?」

 

チ「今の私が負ける訳、無い!!」

 

 

チルノは周りの冷気を吸収してさらに魔力を増幅させた。

もはやリュウトは手遅れだと判断し、グラディウスを取りだし力を込める。

そして・・・。

 

 

リ「チルノ・・・やはりこうするしかないのか」

 

チ「私はぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

ジャキィンッ

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

その音と共にチルノの体は真っ二つとなった。

 

 

チ「あ・・・いや・・・いゃぁぁぁぁぁぁあ!!!」

 

リ「・・・」

 

 

チルノの体は氷柱のように尖り、人の形を留めなくなり、氷の結晶となって断末魔と共に散っていった。

リュウトは散っていくチルノをただ見るしかなかった。

 

 

リ「,,,お前は妖精だからもし死んだとしてもまた復活することができる。今度会う時は元に戻ってくれよ」

 

大「チルノちゃん・・・」

 

リ「済まないな大妖精。

こうするしか無かったんだ。

許してくれ・・・」

 

大「いえ、これでよかったんです。

これでチルノちゃんも元に戻ると思うので」

 

リ「あぁ、そうだな。

チルノが復活したら逢いに来るよ」

 

 

体の至るところを怪我し、そのままこの場を去ろうとするリュウトを大妖精は引き留める。

 

 

大「あ、あの、凄い怪我ですが大丈夫ですか?

私の家で治療を・・・」

 

リ「怪我の事は心配するな、見た目よりもたいしたことは無いからな」

 

大「そっそうですか!良かった」

 

 

しばらく経つと、元凶がいなくなったせいか段々と白い霧が晴れ、冬の幻想卿の姿が見えるようになってきた。

 

 

リ「さて、みんな待ってるしそろそろ帰るかな」

 

大「はい、今日はありがとうございました。

あんなに酷いことしましたがチルノちゃんの事、これからもよろしくお願いします」

 

リ「当たり前だろ?じゃあな」

 

 

リュウトは元の姿に戻り紅魔館に帰った。

紅魔館につくと門番の美鈴が出迎えたがボロボロのリュウトを見て大慌てでパチュリーの所へ連れていき色々騒がしくなって休む暇もなかったリュウトであった。

 

 

 

 

二日後

 

 

__________________________________________

 

 

~大妖精の家~

 

 

チルノは一緒に暮らしている大妖精の家のベッドの上で目を覚ます。

寝起きではっきり見えないが、ベッドの周りを見渡すと。

 

 

チ「あれ?大ちゃん?」

 

 

目の前には大妖精がいた。

大妖精は涙ぐんでいるが、チルノには何故大妖精が泣いているのかわからなかった。

 

 

チ「何で大ちゃん泣いてるの?どこか痛い?」

 

大「ううん、ちょっと目に塵が入っちゃっただけだよ!おはようチルノちゃん!」

 

チ「うん!おはよう!」

 

 

それは至極当たり前な日常の始まりだったが、大妖精にとってはとても素晴らしい一日の始まりだった。

 

 

 

 

 

忌雪異変 完

 

 

 

 

 




番外異変終了です!戦闘シーンが中々上手く書けずに伝わるかどうか・・・。
とりあえずリュウトの秘密はまだ明かしません。
そしてチルノとレティ好きの皆さん本当にごめんなさい。
次回からはまた日常生活です!感想待ってます!


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14話

今回は年明け回です。
ちなみに慧音と妹紅は出てきません、理由は妹紅の店が忙しいからです。
投稿が遅れたのはただ単に話が思い付かなかっただけですwなのでちょいと無理矢理な部分がありますがそこはもう,,,気にしないでください



今日は大晦日、一年の総締めのこの日は博麗神社で皆で宴会をすることとなった。

今宵の幻想郷は除夜の鐘が鳴り響き、年の終わりを告げていた。

 

 

~博麗神社~

 

 

リュウトが酒を飲みながら縁側に座っていると、若干千鳥足の霊夢が居間から出てきてリュウトにドサリと後ろから倒れこんできた。

 

 

霊「まぁたこうやって集まって騒ぐだけ騒いで全部私任せで帰ってくのよぉこいつらはぁ~手伝ってくれるのはリュウトと咲夜だけよぉ~ヒック」

 

リ「うわっ!霊夢酒臭いぞ!もうそんなに飲んだのか!?」

 

 

顔を自分の肩に乗せて愚痴り出した霊夢の口臭はアルコールの臭いでとてつもなく臭く、つい口に出してしまったので霊夢は膨れっ面になった。

 

 

霊「臭いって何よ臭いってぇ~!

こぉんな美少女が絡んできれくれてるのにさぁ~もったいない男ねぇ~ヒぇック。

それともあれかなぁ~?枯れちゃってるのかなぁ~?」

 

リ「そんな酒臭い女に近寄るような男じゃないんだ俺は。

全く、誰かこれをどうにかしてくれ」

 

 

リュウトは背中に乗る酔いど霊夢をどうにかするように言うと、隣に空間の裂け目が現れ、中から紫が出てきた。

 

 

紫「あらあらリュウトも大変ねぇ、霊夢は私に任せて楽しんでらっしゃいな」

 

リ「すまないな、じゃあ頼むよ」

 

 

霊夢を離して紫に渡し、リュウトは少し離れた咲夜たちのいるブルーシートの上に座った。

 

 

リ「はぁ、酔っぱらいの介護は疲れる」

 

咲「そうですわね、同意いたしますわ・・・。

でもこれでゆっくり出来ますね♪」

 

リ「ハハハ、そうだな」

 

 

リュウトと咲夜が楽しそうに談笑していると、見慣れない人物がリュウトに話かけてきた。

 

 

文「あややや!あなたが噂のリュウトさんですね!!」

 

 

文文。新聞で知られている射命丸文だ。

こちらの世界に来てから文とははじめて会う。

 

 

咲「あら?文じゃない、久しぶりねぇ」

 

文「咲夜さん!お久しぶりです!」

 

 

文と咲夜は面識があり仲も良いようだ。

挨拶が終わると文はリュウトに話しかけてきた。

 

 

文「リュウトさん、今日はあなたにお願いがあるんです!」

 

リ「取材だろ?」

 

 

ズバリ当たったので少しビックリしてしまったが文は話を続けた。

 

 

文「あややっ!話が早くて助かります♪というわけで取材をさせてもらいたいのですが」

 

咲「リュウトさんに取材しても意味無いと思うわよ文?」

 

文「そんなことはありません!リュウトさん!よろしいですか?」

 

リ「俺は構わんぞ」

 

文「よっしゃぁぁぁぁあ!!!では質問タァーイム行ってみましょう!」

 

 

かなり嬉しかったのか、ガッツポーズをして喜ぶ。

その後、文はリュウトに取材をしたのだが、殆ど答えられるものはなく、あまり意味のあるものではなった。

慧音の時とデジャブを感じる。

 

 

文「もう!真面目に答えてくださいよ!これじゃ取材になりません!」

 

リ「そんなこと言われてもなぁ・・・」

 

咲「だから言ったじゃないの」

 

文「うぅ~・・・ならこの前の異変の時になってたひかr 」

 

リ「なっ!?す、ストップ!!」

 

 

突如リュウトは文の口を押さえて慌てたような反応をしだした。

 

 

咲「ど、どうしたんですかリュウトさん?」

 

魔「なんだなんだ?何かあったのか?」

 

フ「リュウトーどうしたのー?」

 

ア「どうしたのよリュウトそんな声出して?」

 

パ「珍しいわねリュウトがテンパるなんて、何かあったのかしら?」

 

 

リュウトがいきなり叫ぶのですぐそこで飲んでいた皆がが集まってきてしまった。

 

 

リ「い!いや!ちょっと文と向こうで話してくる!」

 

文「んぐ!んぐー!!」

 

咲「え?ち、ちょっとリュウトさん!?」

 

 

リュウトはそういうと口を押さえたままの文を強引に森の中につれていった。

 

 

文「ぶはー!リュウトさんって以外と大胆なんですね~初めてあったばかりなのにいきなり人目のつかない場所に女の子を連れていくなんて」

 

 

照れながら身体を捻らせ、まるで誘っているかのようだったが、今はそんなことどうだっていい。

 

 

リ「冗談はいい!それよりあれを見ていたのか!?」

 

文「アレ?あぁ、あなたが光の羽を生やした姿に変身した時ですか?実際には見てませんけど監視の白狼天狗に聞きました」

 

リ「椛かぁ・・・」

 

文「え?何か言いました?」

 

リ「あ、いや、何でもない、そのー。

あの事は忘れてくれないか?あれをあまりばらされてしまうと困るんだ」

 

文「う~・・・何やら複雑な事情がありそうですね。

わかりました、この話は口外しないことにします」

 

リ「そ、そうか!助かる!そうしてくれ!」

 

文「まぁとりあえず話も終わりましたし神社へ戻りましょう」

 

リ「あぁ、(よかったぁ・・・)」

 

 

話が済んだ二人は神社にもどってきた 。

何を話していたのか気になった咲夜達は文に聞いたのだがあやふやにされてしまって結局聞けなかった。

しかし文が、今から面白い情報を聞ける、というので同席することにした。

 

 

魔「なぁ文、面白いことってなんだ?」

 

文「まぁまぁ今から聞きますから♪」

 

文「さてさてリュウトさん?取材がまだ終わっていなかったので再開するとしましょうか?」

 

リ「えっまだ終わってなかったのか?てっきりもう終わったものだとばかり・・・」

 

文「そんなわけ無いじゃないですか!まだ重要な情報を取材していません!」

 

リ「何だ重要な事って?言っておくがさっきみたいなのは絶対答えられないぞ」

 

文「もうそれに関しては諦めましたよ、私の聞きたいのはリュウトさんの好きな人です!!」

 

皆「な!何ぃーーー!?」

 

咲「(な!なんて事聞いてるのよ!!)」

 

魔「おお!確かに気になるぜ」

 

レミ「え?誰?」

 

紫「面白そうねぇ~♪」

 

 

皆が一斉にリュウトに注目する。

そこまで気になるものかと思ったがやはり女の子は恋の話には目がないのだろう。

リュウトは仕方がないので答えることにした。

 

 

リ「す、好きな奴??と・・・言われても、まだこっちに来て日が浅いからなぁ。

特別な好意を持っているのは今のところいないな」

 

文「えー何ですかそのつまらない解答は、じゃあ気になるひととか居ますか?」

 

リ「う~ん気になるかぁ・・・紅魔館に住んでる皆は命の恩人だからなぁ。

あ、でもここに来て初めて逢った咲夜にはある程度好感を持ってるかな?」

 

咲「え?わ、私に!?」

 

文「おお!やりましたね咲夜さん!!」

 

レミ「明日紅魔館でパーティーしましょうか?」

 

魔「お!いいな!幻想卿に新しいカップル誕生だぜ!」

 

リ「お、おいそういう意味でいった訳じゃないぞ?」

 

レミ「わかってるわ、からかってみただけよ」

 

ア「あら?除夜の鐘が終わったわ」

 

 

ゴォーン・・・ゴォーン・・・

 

どうやら除夜の鐘が鳴りやんだようだ。

もうすぐ一年が終わる合図だ。

 

 

紫「そろそろ0時よ!」

 

 

0時まであと10秒、皆でカウントダウンをする。

 

 

 

魔「年明けまであと五秒!!」

 

パ「四」

 

フ「三!」

 

咲「二!!」

 

リ「一!!!」

 

皆「新年明けましておめでとうございます!」




これ正月回にしてもよかったかな~って書いてて思いましたw でも正月回は書く気がありませぬ。
次からは普通に日常に戻ります


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15話

投稿が遅れました!今回は正月回を飛ばして日常回です!今回新しいキャラがまた出てきますが名前は出しません、誰か当ててください
それじゃあ本編いってみよう


新しい一年が始まりお祭り騒ぎも治まり、普通の生活に戻ったのでいつも通り紅魔館では咲夜や美鈴、そしてリュウトが働いている。

咲夜はリュウトにお使いを頼み、彼は人里に来ていた。

 

 

~人里~

 

 

リ「おっちゃん、ジャガイモとトマトと人参あるか?

五つずつ欲しい」

 

店主「おぉリュウトさんか?

毎度ありがとよ、ちょいと待ってくれ」

 

リ「金はいくらだ?」

 

店主「全部諸々あわせて600円だ」

 

リ「600だな?

丁度あるからこれでいいだろ」

 

 

ポケットから出したがま口財布から小銭を取りだし、店主の掌に乗せる。

丁度ある事を確認すると、店主は礼を言った。

 

 

店主「ありがとさん、今後ともご贔屓にな」

 

リ「また今度来るさ」

 

 

買い物も終わったので空を飛んでさっさと帰路につこうとしていたら森の中に一匹の茶色い狼を見つけた。

しかしその狼は身体中傷付いてかなり弱っているらしくぐったりしていて全く動かない。

リュウトは様子を見るため森へ降りた。

 

 

リ「狼?幻想郷にこんなやつがいたのか」

 

狼「クルルルル・・・」

 

リ「かなり弱っている。

放っておいたら死んでしまうな・・・。

こういうのは自然の摂理に従って放っておくべきなんだろうが・・・」

 

 

狼の倒れ込む姿を悲痛に感じてしまい、結局助けてしまう。

 

 

リ「流石に見つけちまったものをそのまんまってのは後味悪いからな。

帰ったらどう説明しようか」

 

 

リュウトは狼を背負って離陸し、紅魔館へ向かう。

狼はそんなに大きくなかったためリュウトも余裕で担ぎながら飛べた。

紅魔館に着くと美鈴が物珍しそうに狼を観察し始めた。

 

 

美「リュウトさん?

背負ってるのってもしかして狼ですか?」

 

リ「あぁ、森で倒れているのを見つけてしまってな。

そのままにしておくというのも後味が悪いから連れて帰ってしまった」

 

美「そう言うことですか」

 

リ「それで頼みたい事があるんだが、こいつを俺の部屋まで連れていってやってくれないか?

咲夜に頼まれていた物を渡さなきゃいけないんだ」

 

美「構いませんよ?

リュウトさんの部屋はですね?」

 

リ「あぁ、頼むよ」

 

 

美鈴に狼を預けてリュウトは咲夜のいるキッチンへ向かう。

咲夜に買い物袋を渡して狼を拾った事を話すと治療に向かっても良いと言われたのでリュウトは包帯と傷薬、それと食べ物を持って自分の部屋に向かった

 

 

ガチャ

 

狼「クルルルル・・・」

 

 

狼はまだ苦しんでいるようで力なく鳴いていた。

リュウトは直ぐに治療を開始した。

 

 

~青年治療中~

 

 

リ「よし、これでよくなるはずだ」

 

 

狼は身体中包帯でぐるぐる巻きでなんとも痛々しい姿になっていた。

リュウトは次に腹が減っているだろうと持ってきたミルクを狼に差し出す

 

 

狼「?」

 

リ「腹減ってないか?

まだ内臓が痛んでいるだろうからな、飲んでもいいんだぞ?」

 

狼「・・・クルル」

 

 

チロ・・・チロチロ・・・

 

 

狼は少し警戒していたが直ぐに警戒を解いてリュウトの手から差し出されたミルクをペロペロと舐めだした。

そして腹が膨れて気分が良くなったのかそのまま狼は寝てしまった。

 

 

リ「やれやれ、寝てしまったか」

 

 

リュウトは毛布を取りだし狼の身体に掛ける。

毛皮があるとはいえ、弱っているのだからこれくらいがちょうどよいだろう。

 

 

リ「これでいいだろう。

獣臭がつくかと思ったが、こいつ意外と臭くないから大丈夫か」

 

狼「クー・・・クー・・・」

 

リ「そろそろ咲夜の所に戻るか。

美鈴には礼言わんとな」

 

 

リュウトは足早に咲夜の下に戻り食事の準備を手伝う。

夕食時に皆に傷付いた狼の話をするとフランが見てみたいと言い出した。

 

 

フ「狼!?見てみたい!!」

 

リ「今は寝てるからダメだぞ? 」

 

フ「えーつまんなーい、モフモフしたかったのにー」

 

リ「尚の事ダメだ」

 

 

傷ついた体に刺激を与えでもしたらどうなるか。

絶対安静だと言うのに、無知とは恐ろしい。

 

 

美「そうですよフラン様、狼さんは怪我をしてるので痛がって嫌われちゃうかもしれませんよ?」

 

フ「嫌われるのは嫌だな~。

わかった、見るだけにする」

 

美「偉いですねフラン様♪」

 

フ「私を子供扱いしないでよ美鈴!」

 

美「いえそう言うわけではないんですけどね・・・(汗)」

 

 

子供扱いされたフランが頬を膨らませながら美鈴を叱るが、それは置いておいてレミリアはこの狼の今後の処遇についてどうするかを問いだした。

 

 

レミ「その狼はずっとリュウトの部屋に置いとくつもりなの?」

 

リ「まぁ怪我してるし置いとく場所も他に無いんだろ?」

 

レミ「あら?別に部屋なら空いてるしいいわよ?」

 

リ「そ、そうか?なら空いている部屋に移すか」

 

レミ「そうしなさい、貴方の部屋にいたら私たちが入りにくいわ」

 

リ「レミリアも狼が気になるのか?」

 

レミ「まぁね♪」

 

リ「欲望に忠実だな」

 

 

結局この後レミリアの一存で狼は他の部屋に移させる事になった。

ついでに狼を見るため皆リュウトの部屋に集まってきた。

 

 

フ「すっごーい!本物の狼だ!」

 

美「運んでる最中気づいたんですけどこの子獣臭が全然しないんですよね」

 

小「本当だ!なんだかお花の香りみたいですね!」

 

咲「お上品な狼ですね、とても野生とは思えません」

 

レミ「私のペットにピッタリね!」

 

 

全員が興味深々な様子で狼を眺めていた。

しかし、リュウトの中でこの狼をどうするかは決まっていた。

 

 

リ「言っておくが怪我が治れば野生に帰すぞ」

 

レミ「えー?飼わないの?」

 

リ「元々自然の中で育った動物だからな、俺たちの勝手な判断でどうにかするのは間違ってると思わないか?

現に俺はこいつを助けたのは間違ってると思う」

 

パ「なら何故助けたの?矛盾してるじゃない」

 

リ「目の前で死にかけてるのを見てたら放っておけなくなってな、つい助けてしまったんだ」

 

パ「お人好しって訳ね」

 

リ「まぁそんなとこだな、そろそろこいつを移動させるぞ、何処に連れていけばいい?」

 

レミ「美鈴の部屋の近くでいいんじゃないかしら?」

 

美「私の部屋のですか?構いませんよ?むしろ大歓迎です♪」

 

リ「決まりだな、じゃあ運ぶぞ」

 

 

リュウトは寝ている狼をそっと抱き上げ起きないように慎重に運んでいき、美鈴の隣の部屋のベッドに降ろす。

そんなことをしていると時間はあっという間に過ぎていきもう11時を過ぎていた。

リュウト達は皆部屋に戻っていきその日は終った・・・

そして翌日

 

 

美「狼さ~ん朝ですよ~ってあれ?何処に行った?」

 

 

美鈴が部屋に行くと既に狼の姿が無かった。

美鈴は慌てて咲夜に伝えに行った

 

 

美「咲夜さん!!狼見ませんでした?!」

 

咲「え??私は見てないわよ?」

 

美「それが部屋から出ていったみたいで・・・」

 

咲「何ですって!?わかったわ、手分けして探しましょう!あの怪我で迷子になったら大変だわ!」

 

美「私お嬢様方に伝えてきます!」

 

咲「リュウトさんにも手伝って貰うように言ってくるわ!」

 

美「お願いします!」

 

 

咲夜と美鈴は急いでこの事を紅魔館中に知らせに行った。

その頃リュウトは咲夜の下に行く途中だった。

 

 

リ「早く咲夜の手伝いに行かねぇと・・・ん?誰だ?」

 

 

リュウトが廊下を歩いていると見知らぬ女性がキョロキョロしながら歩いているのを見つけた。

しかし女性はかなり怪我をしているようで身体中に痛々しい包帯を巻いていた。

 

 

リ「アンタ大丈夫か?というか何処から入ってきたんだ??」

 

?「あ!お兄ちゃん!!」

 

ガバッ

 

リ「うお!?な、何だぁ??」

 

 

女性はリュウトの事をお兄ちゃんと呼び思い切り抱きついた

 

 

咲「リュウトさん!狼が居なくなっ・・・て・・・え?」

 

リ「あ」

 

 

そしてそこで運悪く咲夜と鉢合わせしてしまった。

 

 

 

 

 




普通に次回に持ち越します

感想、評価待ってます!!


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16話※

お気づきの方も居ると思いますが新キャラ登場です。もちろん原作にいます、では本編スタート


リュウトは今ピンチに陥っている。

見知らぬ犬っぽい女性に抱きつかれている所をあろうことか咲夜に見られてしまったのだ。

このままではとんでもない誤解を生むので何とかその誤解を解こうと口を開こうとしたのだが、その前に咲夜が先端を開いた。

その目は光が一切無い氷のように冷たいものだった。

 

 

咲「リュウトさん?これは一体どういう事でしょうか・・・?」

 

リ「ちっちが!違うんだ!

君は誤解している!」

 

 

必死に誤解を解こうと体を使って表現するが、少女の一言で灰燼に帰す事となる。

 

 

?「お兄ちゃん私お風呂入りたい!

身体洗って~♪」

 

咲「なぁっ!!」

 

 

この状況でなんて爆弾発言をするんだこいつは!!

自分に恨みでもあるのかと。

このままでは咲夜のナイフで人生を終わらされてしまう為、必死に咲夜を説得する。

 

 

リ「おい!空気を読め!また誤解するだろ!

咲夜聞いてくれ!俺はこんなやつしらなi」

 

?「えー??もう忘れちゃったの?昨日会ったばかりなのに。

それに・・・私の裸見たでしょ?

でも・・・そんなところも好きだよ♪」

 

リ「はぁ!?いやいや!

そんな記憶は一切無いし!」

 

 

微笑みながら頭から生えた獣耳をピコピコと動かしてくる。

抱き着きながら割と本気でそのようなことを言うのだからもはやリュウトはその少女から悪意しか感じ取られなかった。

お願いだから少し黙ってくれ、少女にそう目で訴えかけるが・・・。

恐る恐る咲夜の顔を伺うと、そこには絶望しかなかった。

 

 

咲「リュウトさん・・・見損ないました。

・・・ユルシマセン」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

リ「は!早まるんじゃあない!

落ち着いてくれ!!」

 

咲「覚悟はいいですね(怒)」

 

リ「あ・・・俺死んだかも知れん」

 

 

狂気の目でリュウトを睨み、ひっそりとナイフを構える咲夜。

この時リュウトは初めて幻想卿の恐怖を体験した。

 

 

~食堂~

 

 

食堂には朝食兼、狼少女の紹介の為に皆が集まっていた。

 

 

レミ「それじゃあ貴女は昨日の狼ってこと?」

 

狼「がるー♪」

 

 

レミリアの問いかけに笑顔で鳴き応える。

明るい純粋な心を顔全体で表しているような感じがした。

耳やしっぽを振りながら椅子に座ってる姿を見てパチュリーが納得した声を上げた。

 

 

パ「妖怪だったって訳ね、弱りすぎて妖力が感じられなかったのね」

 

美「確かに耳と尻尾がありますね・・・。

それにしてもリュウトさんよかったですね誤解が晴れて」

 

リ「ったく本当に死ぬかと思ったぞ、美鈴が来てなかったらホントに殺させてたかもな」

 

咲「も、申し訳ありません・・・」

 

 

咲夜の早とちりで死にかけたリュウトだったが間一髪美鈴が止めてくれたお陰で助かった、あのままいったら確実にリュウトは串刺しになっていただろう。

するとパチュリーが皆が気になっている質問をした

 

 

パ「貴女、名前はあるの?」

 

 

確かに狼だと呼びにくいので名前があるかどうかは気になる。

 

 

狼「あるよ?」

 

 

きょとんとした表情で当たり前のように答える。

ちゃんとした名前があるようなので、狼少女は自己紹介を始めた。

 

 

狼「私の名前は今泉影狼、竹林のルーガルーって呼ばれてる」

 

リ「竹林?

こんなやつがいたのか、しらなかった」

 

レミ「どうして死にかけてたの?それに大体の妖怪は今冬眠中じゃないかしら?」

 

影「私襲われてたの、よくわかんないやつだったけど・・・。

後ろから襲われたから顔は見てない・・・恐かった・・・」

 

 

酷く怯えた表情で体を震わせる。

よほど怖い経験をしたそうで、リュウトに助けてもらわなかったら本当に死んでいたかもしれなかったらしい。

 

 

リ「それであんなところに倒れてたのか・・・。それにしても妖怪が妖怪を襲うとはな、縄張りに入ったんじゃないか?」

 

影「違うよ!前通ったときはあんなやつ居なかったもん!

それに私幻想郷には結構長く居るけどあんな妖怪見たことない・・・」

 

リ「・・・よしわかった。

その妖怪、俺が探してみよう」

 

 

影狼はしばらく呆気に取られていたが、その発言は本当に命取りだから止めた方が良いと引き留めた。

体験した身からすれば、それは死を意味するに近いものだと解っているからだ。

 

 

影「え?駄目だよ!あの妖怪かなり強いよ!?

止めた方がいいよ!お兄ちゃん死んじゃうよ!」

 

咲「安心してください♪リュウトさんは一人で異変を解決してしまうくらい強いので。

いくら相手が強くても負けませんから!」

 

 

自身気に言う咲夜の表情からは、それを本気で言っていると感じ取れた。

影狼はリュウトの実力を全く知らないが、そこまで言うのなら、彼女はもう止めなかった。

 

 

リ「それと紫にもこの事を伝えた方が良さそうだな、もしかしたらまた影狼みたいな被害者が出るかもしれん」

 

フ「もしそいつと戦う事になったら私も混ざっていい?」

 

リ「そいつは頼もしいな、フランがいれば百人力だ」

 

 

影狼を襲った妖怪の件を紫に伝えるためリュウトと咲夜は博麗神社へ向かった。

その間、影狼を介抱する者が居ないため小悪魔が図書館で介抱することとなった。

 

 

~ヴワル大図書館~

 

 

大量に並べられた椅子の一つに影狼は腰かける。

 

 

小「影狼さん、何かあったら何時でも私を呼んでくださいね♪」

 

 

だが、早速申し付けがあるようで、うるうるとした目で小悪魔を見上げてきた。

 

 

影「小悪魔ちゃん、私お風呂に入りたいよぅ」

 

小「え?お風呂ですか?」

 

影「うん・・・この前襲われてからずっと入ってないの・・・」

 

 

その言葉に小悪魔は非常に反応し、即座に行動に出た。

 

 

小「それは女の子にとって死活問題ですね!パチュリー様、影狼さんをお風呂に連れてって良いですか?」

 

パ「良いわよ、でもなるべく早く帰ってきてね」

 

小「はぁーい!では行きましょう影狼さん♪」

 

影「うん!がるるるーん♪」

 

 

嬉しそうな鳴き声を上げながら小悪魔と手をつなぎ、風呂へと軽快な足取りで向かう。

怪我をしているのがウソのようだ。

 

 

パ「ご機嫌ねぇ...大怪我してるって言うのに」

 

 

大怪我をしてるのにご機嫌な影狼を他所にパチュリーは読書を続けた。

 

 

_________________

 

 

 

小悪魔は怪我をしていて上手く体が洗えない影狼のために背中を流してあげようと一緒に風呂に入ろうとしていた。

 

 

~大浴場~

 

 

影「うわぁ~大きい!」

 

小「怪我してるんだから余りはしゃいじゃ傷口が開きますよ?」

 

 

今浴場には二人入っているが紅魔館の大浴場はスケールが段違いのため二人入った程度ではまだまだスペースに余剰がある、これを掃除しているのが咲夜なのだがリュウトはここを掃除しない、これはリュウトが断ったからなのだが理由は節度を守るためらしい。

大浴場は紅魔館の住人がほぼ女性というのもあって全て女湯なのだ。

ちなみにリュウトは普通の風呂にいつも入っている、もちろん一人用でシャワー付き、流石紅魔館。

木製の小さな椅子の座り、影狼は小悪魔に優しく頭を洗ってもらう。

 

 

小「影狼さん、頭洗いますよ~」

 

 

シャカシャカシャカシャカ・・・。

 

 

影「んー♪気持ちいい~」

 

 

ザバァァァァァ・・・。

 

 

小「はい、お顔拭きますよ~」

 

影「うぅ~ん」

 

小(かわいいなぁ…)

 

 

小悪魔は影狼の頭を洗い終えると影狼の胸辺りに目を向ける。

そして・・・。

 

 

ムニュ。

 

 

影狼の胸を揉みだした。

 

 

影「ひゃ!?

な、何やってるの!?」

 

小「・・・私とおんなじくらいなかぁ?」

 

 

小悪魔は自分の胸と揉み比べながら大きさを調べる。

 

 

ムニュ、ムニュ

 

 

影「あ・・・あぁ・・・。

そんなに揉まないでぇ・・・!」

 

小「え?あ!ごめんなさい!

あんまり柔らかそうだったのでつい・・・」

 

影「うぅ~・・・恥ずかしい」

 

 

他人にこんなことされるのが初めてだった影狼は胸を隠しながら恥ずかしがり、もう小悪魔とはお風呂に入らないようにしようと誓った。

そんなことをやっている一方でリュウトと咲夜は博麗神社で既に紫達と未確認妖怪の件を話し合っていた。

 

 

~博麗神社~

 

 

今回起きた謎の事件について話し合うため、紫を呼び出して居間でちゃぶ台を囲みながら霊夢を含んだ5人で会議を行っていた。

 

 

紫「なるほど、その妖怪の顔は見てないと言うことね?」

 

リ「あぁ、だからこれといった特徴が解らないんだ」

 

霊「特徴が解んないんじゃどうしようもないわね・・・」

 

 

顔も解らない、身体的特徴も解らない。

完全にお手上げ状態だ。

 

 

咲「しかも話によるとその妖怪はかなり強いらしいですよ?」

 

紫「でもそんな妖怪私は把握してないわ、かなり強い妖怪なら風見幽香が考えられるけど今は冬だから彼女も活動を控えてると思うわ」

 

霊「まぁ正体がわからなくてもそれっぽい妖怪がいたら退治すればいい話なんだし、警戒するように呼び掛けるだけでいいんじゃないかしら?」

 

リ「特に人里で徹底してくれ、そいつのせいで犠牲者が出るかもしれないからな」

 

紫「私は独自で怪しい奴を探してみるわ」

 

リ「そうしてくれ」

 

 

紫は事件の足跡を独自で追うと言い、先にスキマで自宅に帰っていった。

 

 

咲「では私たちはここいらで失礼するとしましょう、今度来るときは何かお土産を持ってきますわ」

 

霊「本当!?楽しみにしてるわ!じゃあね~♪」

 

リ「あぁ、また今度な」

 

 

今まで暗い話をしていたというのに、お土産という言葉に過敏に反応する霊夢を見るとどうしても笑いが起こってしまう。

リュウト達が紅魔館に帰ると影狼がよたよたしながら駆け寄ってきてリュウトに抱きつきまたまた騒ぎが起きるのであった。




原作キャラの影狼ちゃん出してみました!あと影狼を襲った妖怪はまだ出てきません!今回も友達のちゅんころさんに頼んで描いて貰いましたよ~♪思わずにやけちゃいますね地味に出てないキャラの名前出てるしw

そろそろあの二人を出そうかと思い、次回はとうとうあの異変に入ります

感想、評価待ってます!!


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春雪異変17話※

またまた投稿が遅れてしまいました、すいませぬ、今回は春雪異変の始まりの回です!原作やったことありますが物語の世界観の問題でオリジナル要素がかなり強くなると思いますが暖かい目で見てやってください


あれから4ヶ月経ったが未だに影狼を襲った妖怪は見つからなかった。

しかし幻想郷にはもうひとつの問題が起きていた。

 

 

リ「なぁ咲夜」

 

咲「何ですかリュウトさん?」

 

リ「・・・今何月だ?」

 

咲「5月ですよ?」

 

リ「・・・なんで雪が降ってんだよ」

 

 

東方妖々夢~perfect cherry blossom~

 

 

今幻想郷は春・・・のはずなのだが未だに何故か雪が降っている。

そのせいで植物は芽を出さず、動物は眠ったまま。

そして段々と食べ物が無くなっていった。

そしてそれはこの紅魔館だって例外ではない。

 

 

咲「困りましたわねぇ・・・」

 

 

咲夜は地下の食料庫で一人嘆いていた。

すると後ろから昼食の材料を取りに来たリュウトが話しかけてきた。

 

リ「咲夜、どうしたんだ?」

 

咲「あ、リュウトさん。

実はもうすぐ食料庫の備蓄が無くなりそうなんです。

人里に買い物に行っても殆ど売ってないし・・・。

やはりこの寒さが原因なのでしょうか?」

 

リ「だろうな、そもそも5月で雪が降っているなんて絶対におかしい」

 

咲「というとこれは・・・」

 

リ「あぁ、異変の可能性が高いな」

 

咲「そうですね・・・。

あら?何か上の階が騒がしいですね」

 

 

上のフロアから怒鳴り声のようなものが聞こえてくる。

その頃上では、鬼の形相を浮かべた霊夢が玄関をぶち破り突撃してきていた。

 

 

ドガァァァァァァァァァン!!!

 

 

霊「レミリアー!!出てきなさーい!!!

居るのはわかってるんだからー!!!」

 

今の霊夢が中で暴れたら紅魔館を破壊されかねないので咲夜達が大急ぎで止めに来た。

 

 

咲「ち!ちょっと何やってるんですか!」

 

霊「咲夜!あんたでも良いわ!

付いてきなさい!あとリュウトも!」

 

咲「な、何故ですか?」

 

霊「異変解決に行くのよ!!」

 

咲「・・・・え?」

 

 

~大図書館~

 

 

レミリアは図書館にある暖炉の前でパチュリーとお茶を飲みながら本を読んでいた、そんな時間を楽しんでいると暫くして咲夜が扉をノックして入っていいか聞いてきた

 

 

コンッコンッ。

 

 

咲「お嬢様?少しよろしいでしょうか?」

 

レミ「良いわよ、入りなさい」

 

咲「失礼します・・・」

 

リ「入るぞ」

 

 

ついでにリュウトも入ってきた。

咲夜は用件を伝えようとしたのだが。

 

 

レミ「用件はわかってるわ、二人とも外出許可を取りに来たのでしょう?」

 

 

レミリアは既に能力でお見通しだったようだ。

咲夜は話が早いと思い、外で扉の前で待たせている霊夢を怒らせないように手短に済ませようとした。

 

 

咲「はい、それでよろしいのでしょうか?」

 

レミ「良いわよ、ただし行くのは咲夜だけ。

リュウトはここに残りなさい」

 

パ「あら、何故かしら?」

 

 

以外な返答をレミリアが出したので気になったパチュリーが理由を聞いた。

レミリアは訳を話したのだが。

 

 

レミ「咲夜、貴女異変解決に行くつもりでしょ?

咲夜とリュウト両方行っちゃったら紅魔館の仕事する人居なくなっちゃうじゃない?

私寒いの苦手だから動きたくないし」

 

 

しょうもない理由だった。

 

 

パ「とんでもない理由ね」

 

レミ「なら貴女がやってくれるのかしら?」

 

パ「それは嫌ね」

 

レミ「なら黙ってなさい」

 

 

彼女の言うことも正論なので、パチュリーはそれ以上何も言わなかった。

 

 

パ「はいはい、でも博麗の巫女はどうして咲夜を呼んだのかしら?」

 

レミ「幻想郷に来てちょくちょく遊びに行ってたから仲良くなったのよ。

それじゃあ頼んだわよ咲夜。

このうざったい寒さを無くしてきて頂戴」

 

咲「かしこまりました」

 

リ「俺は今回何もしなくていいんだな?」

 

レミ「ええ、紅魔館の仕事をしてくれていれば良いわ」

 

リ「了解した」

 

咲「ではお嬢様失礼します」

 

 

咲夜はお辞儀をして図書館を出る、それに続いてリュウトも出た。

外で待たされていた霊夢はご立腹だ。

 

 

霊「遅い!早く行くわよ!!」

 

咲「ちょっと待って防寒具取って来るわ」

 

 

そう言うと咲夜は指を鳴らす、すると手袋とマフラーを着けた咲夜が現れた。

 

 

咲「準備出来たわ、行きましょう」

 

リ「あ、待ってくれ咲夜」

 

咲「何ですかリュウトさん?」

 

リ「手を出してくれないか?」

 

 

リュウトは咲夜を呼び止め首に掛けているペンダントを外し咲夜に渡した。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

咲「リュウトさん、これは?」

 

リ「お守りだ、これを持っていろ。

そしてピンチになったらそのお守りに祈れ。

きっとそのペンダントが護ってくれる」

 

咲「いいんですか?大事なものでしょうに・・・」

 

リ「預けておくだけさ、正直俺もそれが何なのかよくわかってないからな。

さぁ、霊夢が待ってるから」

 

咲「はい、ありがとうございますリュウトさん。

では行ってきます!」

 

リ「よし、行ってこい!」

 

 

こうして霊夢と咲夜は壊された扉から外へと向かった。

空を見ると魔理沙が外で待っていたようで霊夢達と合流した後一緒に飛んでいった。

それを見届けてからこの霊夢が破壊した扉をどうしようか考える。

が、その前に昼食を作ってないのを思いだし急いで厨房で食事の用意を開始すると。

 

 

フ「美味しそうな匂いがする~。

あ!シチューだ!」

 

リ「フランか、ちょうど良い所に来た。

皆を呼んできてくれ、食事にするぞ」

 

フ「アイアイサー!」

 

 

食べ物の匂いにつられて早めに来たフランはリュウトの指示に敬礼して答えた。

その後、昼前になって皆が食堂に集まってきたのだが。

 

 

小「あれ?美鈴さんが居ないですよ?」

 

リ「本当だ、どこに行ったんだ?」

 

 

美鈴だけ姿が見えない。

一方その頃彼女はと言うと・・・。

 

 

~紅魔館門~

 

 

美「誰か~・・・助けて~・・・」

 

 

霊夢の攻撃に巻き込まれ再起不能になっていた。

 

 

To be continue




ここまで書いたのに次の話が思い付かない,,,やべぇwまぁ頑張りますか!
リュウトが咲夜に渡したペンダントはキーアイテムなので忘れずに。
感想、評価の方も待ってます!


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春雪異変18話

ようやく異変に入れる・・・今回は挿絵無しです
ではどうぞ。


霊「全く寒いわね~!

こんな迷惑な異変起こす犯人は絶対に許さないわ!

覚悟してなさいよ~(怒)」

 

 

霊夢達は異変の犯人を捜索中。

咲夜は霊夢が何故何時もより気合いが入っているのか気になって魔理沙に、霊夢に聞こえないくらいの声で聞いてみた。

 

 

咲「ねぇ魔理沙、何だか霊夢妙に気合い入ってない?何かあったの?」

 

聞いた瞬間、魔理沙の顔が呆れ顔になり、事の経緯を説明してくれた。

 

 

魔「あー・・・それがな?」

 

 

_______________

 

 

~回想~

 

 

霊夢が何時ものように炬燵に入りながら蜜柑を食べていると玄関の戸を叩く音が聞こえた。

 

 

慧「おーい霊夢ー!居るかー?」

 

 

玄関を叩いていたのは慧音だったようで、霊夢は寒さに耐えながら炬燵から出てきて早々に体を震わせながら不機嫌そうな顔をして玄関の戸を開けた。

 

 

霊「何ようっさいわね、何の用?」

 

慧「やはりまだいたのか・・・」

 

 

冬の寒さに耐えるためにコートとマフラーを着用している慧音は、額を抑えながら深い溜め息をつき、霊夢にとある質問をした。

 

 

慧「霊夢、可笑しいとは思わないか?」

 

霊「は?何がよ」

 

慧「今何月だと思っているのだ?」

 

霊「カレンダーなんて無いから知らないわ、それがどうしたのよ?」

 

 

月日への関心の無さに呆れながらも、慧音は話を進めた。

 

 

慧「・・・教えてやろう、今は5月だ。

今は5月なのに雪が降っているのだ」

 

霊「へえ・・・」

 

 

素っ頓狂な声を出して知らん顔の霊夢に溜め息をつきたくなった。

 

慧「解らないのか?異変だぞこれは」

 

霊「異変~?私に解決しろって? 自分で行きなさいよ自分で!

私はそんなに暇じゃないのよ!」

 

 

ツンとした対応で慧音を追い返そうとする霊夢。

だが堅物寺子屋教師にそんなものが通じる訳がない。

 

 

慧「ほぅ?今まで炬燵に入りながら蜜柑を食っていた人間が忙しいと?そう言うんだな?」

 

霊「そうよ、博麗の巫女は色々大変な仕事があるの。

何か文句でもあるのかしら?」

 

 

寒さにイライラしているのか、横暴な態度をとって冷たい目で慧音を睨み付ける。

大人の対応でそれを受け流すが、このまま説得しても異変解決に行きそうにない。

そこで、慧音は少し策略を使う事にした。

 

 

慧「いいや?ただ里の皆にどう報告しようか考えなければいけないなぁと思ってな?」

 

霊「へぇ・・・どう報告してくれるのかしら?」

 

 

いざと言うときの最後の手段。

慧音は霊夢の生活に関わるものを盾にした。

 

 

慧「そうだな・・・博麗の巫女は炬燵に入って蜜柑を食べる仕事で忙しいため異変解決には行けない。

今後は{里からの仕送りはしなくていい}と報告させてもらおう」

 

霊「な!何ですって!!」

 

 

実は霊夢は博麗の巫女という幻想卿を護る重要な役割を担っているため里から奉納品として食料等を神社に納められている。

毎回妖怪退治の依頼が来るわけでもなく、お賽銭もろくに入ってない博麗神社で霊夢が暮らしていけるのは里の仕送りがあっての事。

それが無くなれば食べるものが無くなる。

つまり、かなり危機的状況に陥ることになるのだ。

流石の霊夢もこれには慌てて止めに入った。

 

 

霊「ち、ちょっと!仕送りを盾にするなんて卑怯よ!

私はあれに命が掛かってるのよ!?」

 

 

しかし、その言葉に慧音は葛を入れて激しく反論した。

 

 

慧「お前のような怠け者にやる物など一つもない!

ずっとこのままその仕事とやらをやっていろ!」

 

霊「あ!ちょっと!待ってよ!」

 

 

何も言うことはあるまいと、慧音は神社を去ろうとする。

急いで霊夢が慧音を追いかけようとすると玄関屋根の上から雪が落下。

丁度真下にいた霊夢はその雪の下敷きになった。

 

 

ドサァッ

 

 

霊「へぶっ!」

 

慧「あ・・・」

 

 

霊夢は沈黙したまま雪の中から立ち上がり社へと戻っていき、針やら札やらを大量に持ったフル装備で出てきた。

その表情は影で隠れているが、怒っていることに間違いはなかった。

 

 

霊「・・・慧音、異変を起こした奴はどこ」

 

慧「い、いや、そこまでは私も把握していない」

 

霊「そう・・・なら探してお礼しないとね・・・。

タップリトオレイヲシテアゲナキャ」

 

 

少々自業自得のような気もするが、霊夢は受けた屈辱と里からの仕送りの為に、異変の犯人にお礼という名の復讐を誓った。

 

 

~回想終了~

 

 

_________________

 

 

魔「と、いうことがあったんだぜ・・・。

半分は自業自得なような気がするが、そんな事を本人の前で言おうものなら命は無いぜ」

 

咲「霊夢・・・必死なのね・・・」

 

魔「まぁ私は話を聞いただけなんだけどな」

 

霊「ちょっとあんたたち!喋ってないで犯人探ししなさいよ!」

 

魔「おうおう大層ご立腹のようだな」

 

 

出来れば怒りを鎮めて欲しいものだが、どうやら収まりそうもないので、二人は霊夢がさらに怒りだす前に犯人探しを再開することにした。

 

 

咲「でもそんな簡単に黒幕が見つかるはずが・・・」

 

魔「あ、前から何か飛んできたんだぜ」

 

 

三人の前方に人影らしきものが出現する。

魔理沙がみつけたのは・・・。

 

 

レティ「くろまく~」

 

 

雪女のレティホワイトロックだった。

鉢合わせたレティと霊夢は同時に臨戦態勢に入るが・・・。

 

 

レティ「貴女達冬の空で雪女に逢うなんて運がわr」

 

霊「貴様が黒幕かぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

なぜか怒り狂っている霊夢にレティは困惑した。

 

 

レティ「え?な、なんでそんなに怒ってるの?

ちょっと!いきなりスペルカードなんて卑怯よ!?」

 

霊「問答無用!!天誅!!」

 

レティ「きゃあ!!」

 

 

ドカァーン!

 

 

怒りMAXの霊夢のスペルカード宣言になすすべもなくレティはやられてしまい、煙を吐きながらヨロヨロと浮いていた。

余りにも一方的なので魔理沙と咲夜は呆気をとられていた。

 

 

レティ「私まだ何もしてないじゃない!」

 

霊「サッサトハルニモドセ」

 

 

物凄い形相で迫ってくる霊夢。

これが鬼巫女と言うやつだろう。

レティは自身の身に危険を感じ正直に話した。

 

 

レティ「わ、私この件に関しては何も知らないわ!ただ冬が終わってほしくないってだけで・・・」

 

咲「じゃあ何か情報を知らないかしら?私達異変解決に来たのだけれど?」

 

レティ「異変解決・・・?

・・・まっまさか!」

 

 

レティは思い出してしまった。

五ヶ月前に異変を解決しに来たあの男の事を。

レティはあの男に蹴られた後妖怪の山まで吹き飛ばされ、四週間もの間ろくに動けないほどの重症を負わせられた。

それからのレティは、その男に対するトラウマと恐怖心を抱えてしまったのだ。

レティはリュウトに会いたくないので情報を教えた後その場から一刻も早く立ち去ることにした。

 

 

レティ「私が知ってるのは北の方から暖かい空気が流れ出てるってことだけよ。

あとは知らないわ、さようなら」

 

咲「え、えぇ。

ありがとう」

 

 

そしてレティは逃げるようにその場からそそくさと消えていった。

 

 

魔「何かあいつ慌てて帰っていったな。

何かあったのか?」

 

咲「もしかしたら異変解決者に昔何かされたのかもね」

 

魔「違いないぜ、今代の博麗の巫女がこれだからな」

 

霊「うっさいわね魔理沙!

北の方からってことはそこに犯人がいる可能性が高いわね・・・」

 

咲「あっ道案内をしてもらうの忘れてたわね」

 

魔「北に進めばいいんだろ?簡単じゃないか。

早く行こうぜ」

 

霊「そうね、待ってなさいよ!

今懲らしめに行ってやるわ!!」

 

 

三人は進路を北に向け、異変解決の第一歩を踏み出した。

 

 

Stage 1 CREAR

 

 

To be continue

 




何だか書いてたら文章がおかしくなっちゃったw次はこうならないようにしなければ!次回は新キャラまたまた登場!お楽しみに~

感想、評価待ってます!


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春雪異変19話

まーた投稿遅くなりましたね、多分また遅くなります、では本編すたーと


霊夢達はレティに言われた通り北へ進路を進めていた。

すると気温が段々暖かくなり、気がついたら不思議な空間へ三人とも入り込んでしまっていた。

 

 

霊「妙な所に出たわね、幻想郷にこんなところがあったなんて知らなかったわ。

見た目は人里に似たような感じだけど・・・」

 

 

霊夢が辺りを見渡しているとちらほら猫の姿が見えた。

暖かい気候でくつろぐ猫たちは、どうやら此処に住んでいる者達らしい。

しかし、見渡す限り生物は猫以外見られない。

 

 

霊「猫がいっぱいいるわね、一体ここ何処なのかしら?」

 

魔「もしかしてここマヨヒガなんじゃないか?」

 

咲「マヨヒガって?」

 

 

魔理沙はマヨヒガについて、知識の限り説明した。

実は魔理沙もマヨヒガについてあまりよくは知らないが、人よりは知識がある方だと自覚している。

 

 

魔「あぁ、私もよくわかんないんだけどな、ここの物を持って帰ると良いことがあるらしいんだ」

 

霊「迷い家ね、簡単に言うと訪れた者に富をもたらす幻の家よ、まさかこんなところにあるとは思ってなかったけどね」

 

咲「へぇ、知らなかったわ」

 

 

マヨヒガについては霊夢の方がよく知っていたようだ。

咲夜が知らないのは無理も無い。

マヨヒガとは日本の東北地方や関東を中心として言い伝えられている山中の家屋の事なのだ。

咲夜は幻想郷に来る前まではヨーロッパで暮らしていたので幻想郷のある日本に来たばかりの咲夜は知らなくて当然だ。

折角マヨヒガに来たので霊夢達は家屋に入り何か持って帰る事にした。

 

 

魔「ここだけ春の気温だから暑いぜ~」

 

咲「魔理沙、霊夢もう入ってったわよ?」

 

魔「早えーなあいつ!」

 

 

霊夢が既に家に入ってしまったので後を追いかけるように二人も入る。

すると中には生活感溢れる空間が広がっていた。

ちゃぶ台の上に飲みかけの湯呑が置いてある空き家など何処にあるのだろうか?

 

 

魔「凄い生活感溢れてるなぁ」

 

咲「もしかして人が住んでるんじゃないかしら?

そうじゃなかったらこんなところに飲みかけの湯呑みなんて置いてないわ」

 

霊「別にいいじゃないの、それより持ち運びが出来そうな物無いの?早く持って帰りましょうよ」

 

?「いやいや泥棒だからそれ。

あと貴女達が今やってることも泥棒だから」

 

 

部屋の中を物色していると突如後ろから謎の声が聞こえた。

三人が後ろを振り返ると、そこには猫耳としっぽを生やしたドアノブカバーのような帽子を被った女の子が立っていた。

 

 

橙「泥棒は良くないって籃様も言ってたよ?」

 

 

その正体は八雲紫の式神、八雲籃の所持している式神のだ。

呆れた表情で霊夢を泥棒呼ばわりする少女は、霊夢も紫が神社にやってくる時にちょくちょく見かけていたので存在は知っている人物だ。

 

 

霊「誰かと思ったら橙じゃないの、どうしてこんなところに?」

 

橙「どうしてって言われても・・・。

ここは私のお家だよ?」

 

霊「え?迷い家に住んでるの?」

 

橙「うん、籃様の足を引っ張らないくらい強くなるまで一緒には暮らさないって決めたんだ」

 

 

どうやら橙はここの主でさっきまで式神の特訓をしていたようだ。

猫が多かったのは橙が式神として操っていたかららしい。

橙は霊夢の前にいる見知らぬ二人を見て警戒する。

 

 

橙「霊夢さんの知り合い?普通の人間の癖に随分と物騒な力を持っているね」

 

 

咲夜の太腿に付いたナイフホルダーと、魔理沙のマジックアイテム{八卦炉}を見て物騒なものと呼んだ。

確かに普通の人間が持つ代物ではないだろう。

マジックアイテムに関しては魔法使いが持たなければ意味が無い道具だが、橙は八卦炉に秘められた莫大な魔力を透かして見えていた。

古代の大妖怪の式神である橙が警戒するほどに大きなエネルギーがそれにはこめられているのだ。

 

 

魔「お?私の事誉めてくれるのか?なんか照れるぜ」

 

咲「誉められてはないと思うわよ?」

 

 

勘違いも甚だしいほどだ。

物騒な物を持っていると言われて照れる人間などただの異常者でしかない。

流石の咲夜もそれには突っ込んだ。

ただ、そこまで自分の力に自信があるというのなら、少し試してみよう。

 

 

橙「そこの白黒のは随分自分の力に自信があるみたいだね」

 

魔「当たり前だろ?私のマスタースパークは最強だからな!」

 

 

橙はニヤリと笑う、そして・・・

 

橙「ふぅん・・・じゃあ貴女がどれだけ強いか私が確かめてやる!」

 

 

 

橙は外に出て、魔理沙に向けていきなりスペルカードを至近距離で発動した。

 

 

スペル:鳳凰卵

 

 

バァン!バァン!バァン!

 

 

魔「うぉ!?いきなり撃つなよなぁ!」

 

 

橙の周りにまるで爆発したかのように弾幕が撒き散らされた。

家屋の中に向けて放ったせいで居間は完全崩壊。

魔理沙達もスペルから脱出する手取り早い方法に壁天井を弾幕で破壊するという手段を使ったので、家屋事態もボロボロとなってしまった。

倒壊した勢いで土煙が辺り一面に撒き散らされ、埃をかぶらないように空からそれを眺めていた。

 

 

魔「うっへぇ・・・容赦ないぜ・・・」

 

霊「あ~あ、折角何か持って帰ろうと思ったのに・・・」

 

 

壊れていく迷い家に未練を残す霊夢だが、今はそれどころではない。

橙が勝負を挑んできたのだ。

魔理沙は人間の中でも霊夢の次に実力を持つ人物だから、橙はそれを利用して今の自分がどこまでできるのかを試そうとしているのだ。

咲夜は巻き込まれないようにその場から離れて迷い家の壊れかけの縁側に座り、その様子を見物しだした。

魔理沙は器用にそれを避けながら寛ぐ咲夜に一緒にやらないのかと聞いた。

 

 

魔「おいおい咲夜は弾幕ごっこやらないのか?」

 

咲「あの橙って猫さんは貴女とやりたいみたいだから私がいたらお邪魔でしょ?」

 

魔「それもそうだな」

 

橙「余所見して喋ってる余裕なんかとらせない!」

 

 

橙が二人の視界の間に割り込み、通常弾幕で攻撃を仕掛けてくる。

弾幕は魔理沙へ飛んでいくものと空間にばらまいているものの二種類で、上手い具合に範囲を狭めてくるのでほのかにうっとうしい。

魔理沙もやられてばかりではいられない為、レーザーと弾幕で反撃を開始した。

 

 

魔「余所見して喋ってる余裕があるからこんな簡単に避けられるんだぜ」

 

 

魔理沙のレーザーはホーミングしながら橙に向かって飛んでいくが、橙は逃げつつレーザーをギリギリまで惹き付けて通常弾幕ですべて撃ち落とした。

爆煙で視界が遮られるが、霊撃で吹き飛ばし、辺りを見渡し魔理沙を探すが魔理沙の姿が何処にも見当たらなかった。

 

 

橙「いない!一体何処に!?」

 

 

橙は相手の力を感じて探そうとする・・・。

その瞬間、自分の直上に魔力を感じて上を見上げる。

そこには太陽を背にする魔理沙と同時に瓶のような物が複数降ってきている事に気がついた。

 

 

魔「食らいな!私の作った魔理沙特製ナパームボムだぜ!」

 

橙「誰が当たるもんですか!」

 

 

バババババババ!

 

 

ニヤリ

 

魔理沙は不適に笑う

 

橙は弾幕を放って瓶を纏めて空中で破壊した。

しかし爆発した瓶から大量の弾幕が出てきて咄嗟の出来事に反応できず、橙はガードもままならぬまま胴体に直撃してしまった。

 

 

橙「にゃああ!?」

 

魔「どうだ!良く考えずに何でもかんでも避けようとしないからこうなるんだぜ!」

 

 

実はあのボムはただのボムではなく、煙を放つ火薬と一緒に魔理沙が圧縮した魔力を入れて作ったもので、火薬が爆発すると瓶が割れてそれと同時に魔力が一気に解放される仕組みなのだ。

なので瓶を避けずに破壊する選択を選んだ橙はまんまと罠にはまった事となる。

橙は爆発のせいで地面に叩きつけられたが、すぐに跳ね起きて体を宙に浮かせた。

 

 

橙「結構強いね!でもこっちだって負けられない!」

 

 

橙は二枚目のスペルカードを発動した

 

スペル:飛翔晴明

 

 

橙の広範囲に弾幕が花火のように複数放たれ、弾幕はそのまま四方に拡がっていった。

魔理沙は余裕そうに避けていくが、途中から交差するように弾幕の射線が変わる。

 

 

魔「げぇ!?いきなり全部曲がるのかよ!」

 

 

魔理沙は驚愕しながらも次々襲ってくる無数の弾幕の中を掻い潜っていき、橙は魔理沙を追い込む為にもう一つのスペルカードを続けて発動した。

 

 

橙「これで終わりよ魔法使い!私の本気の攻撃を食らえ!」

 

 

スペル:天仙鳴動

 

 

体を前転させながら弾幕を撒き散らし上空に大量の弾幕を展開する、そして・・・。

 

 

橙「変化!!」

 

 

そう唱えると弾幕が弾けて中からさらに弾幕が出てきた。

魔理沙に弾幕の雨が降り注ぐ。

 

 

魔「くっそ!もう避けるのもめんどくさいぜ!」

 

 

魔理沙は八卦炉を取りだし橙に向けて構えた。

 

 

魔「全部凪ぎ払ってやる!

食らいやがれ!マスタースパーク!!」

 

 

ヴォォォォォォォォォ!!!!!!

 

 

瞬間、巨大な光の柱が橙に向かって伸びていき、弾幕を巻き込みながら全てを一掃した。

 

 

橙「え!?何それ!卑怯だよ!きゃあぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

ピチューン

 

 

魔「あ・・・吹き飛ばしちゃったぜ」

 

 

無論それに為す術もなく橙も魔力の奔流に呑み込まれていった、。

そのせいで橙が何処かへ飛ばされてしまい、異変の犯人だと思っていた人物が居なくなってしまったので三人はとりあえず此処から出ることにした。

 

 

Stage 2 CREAR!

 

 

To be continue|




何か敵キャラとか考えてたら遅くなっちゃったんですよね~あとスペルカードがわかんなかったんで妖々夢プレイしてました、早く5面辺りまでいかないとな、まぁそんなこんなでおわりがグタグダになっちゃいましたすいません!次回からは一気に駒を進めたいと思います!
魔理沙の持っていたナパームボムですが、あれがマジックナパームの原型になる武器です。
あといつもの事ですが感想も待ってます!どんなことでも構いませんよ!アドバイスとかくれると嬉しいです!


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春雪異変20話

熊殺しです!マインクラフトにはまってしまい小説の方がおろそかになってしまいました泣はまりすぎも良くないものですね。
今回は春雪異変の途中です!戦闘シーンは入れてません!そういうのを期待していた人はすいません、ではどうぞ!


迷い家の出口を探そうと色々な方向へ飛んでいたらいつの間にか外に出られた。

外に出るとまだ雪が降っていて、橙が異変の犯人ではない確かな証拠だった。

 

 

魔「うぉぉやっぱ寒いな」

 

 

魔理沙は外に出た途端ブルブルと身震いをした、今まで暖かい所にいたから余計寒く感じるのであろう。

マヨヒガの出口はどうやら森に繋がっていたらしく、三人の足元には雑木林が広がっていた、しかし・・・。

 

 

霊「やっと外に出られたわね、ってあれ?ここってもしかして魔法の森じゃない?」

 

 

着いたのは魔法の森だった、余りにも見慣れた場所なので異変の犯人から遠ざかっていくような気がして三人は一気にテンションが下がってしまった。

 

 

魔「なぁんだまた振り出しかよ~」

 

霊「そういうこと言わないでよ魔理沙」

 

咲「でも確かに異変の関係性からは遠ざかっているような気がするわね・・・」

 

 

三人ははぁっと溜め息をつく。

そしてふと魔理沙が下を見下ろすと森の合間にどこかで見覚えのある人影が通っていた。

 

 

魔「ん?おい霊夢、森の中に人がいるぜ」

 

咲「こんな雪の中出掛ける人間なんて珍しいわね」

 

霊「もしかしたら異変の犯人かもしれないわ!追うわよ!」

 

咲「あ!ちょっと!もう、勝手にいっちゃうんだから」

 

 

霊夢の後に二人もついていき森の中にいる人物を追跡する。

どうやら歩いていたのは女性のようで、後ろ姿だけしか見えないが明らかに知り合いだったので魔理沙は声をかけた。

 

 

魔「おーい!アリスー!」

 

ア「え?魔理沙?」

 

 

森にいたのは七色の魔女ことアリス・マーガトロイドだった。

魔理沙は何故こんなところにいるのか聞き出した。

 

 

魔「アリスお前こんなとこで何やってんだ?」

 

ア「あぁ、これを探してたのよ」

 

 

そう言うとアリスはポケットから何か桃色に光るものを取り出した。

 

 

魔「なんだこれ?桜の花びら?」

 

咲「なんだか暖かいわぁ♪」

 

霊「一体これは何なのアリス?」

 

 

霊夢が聞くとアリスは説明を始めた。

 

 

ア「これは春度と呼ばれるものよ」

 

霊・魔「春度ぉ?」

 

 

春度とは春の訪れが具現化したもので、桜の花びらのような見た目をしているのが特徴。

これが大量に集まると季節が春に変わるのだが、春度の持っているエネルギーは単体でも凄まじく、手の指先程の大きさしかないが一つ持っているだけで家一つの暖房を全て賄える。

 

 

咲「そういえばリュウトさんも前そんなような事を言ってました、確か春度が無ければ春は訪れないとか」

 

霊「へぇ、その話いつ聞いたの?」

 

咲「確か3ヶ月前くらいでしたかね・・・」

 

 

 

 

 

これはまだ幻想郷が冬真っ只中のこと・・・。

 

 

_______________

 

 

~3ヶ月前~

 

 

リ「今日も寒いな、いつまでこの寒さが続くのやら・・・」

 

 

リュウトがいつものように買い物から帰ってくると咲夜が迎えに来てくれた。

 

 

咲「リュウトさんお疲れ様です、荷物お持ちしましょうか?」

 

リ「ありがとう咲夜、大丈夫だ・・・もしかして

この寒い中俺の事を待っていたのか?」

 

 

リュウトが心配そうな目で問い掛けてきたのでそうではないと否定する。

 

 

咲「あ、いえ、窓の外から帰ってくる姿が見えましたので・・・」

 

リ「そうか、うむ、春度でもあれば咲夜に寒い思いさせずに済むんだけどな、簡単に見つかる物でもないか」

 

 

咲夜はリュウトが自分の事を心配してくれている事が嬉しかったが、何だか聞きなれない単語が出てきた事に気がついた。

 

 

咲「リュウトさん、春度って何ですか?初めて聞く言葉ですけど」

 

リ「あぁ、春度っていうのは春が形になったものだよ、持っていると凄く暖かいんだ、それが沢山集まって春が訪れるんだよ」

 

咲「春が形になった物・・・どんな形をしているんですか?」

 

リ「本当に小さいんだけどな、桜の花びらみたいな形をしているんだ」

 

咲「へぇ~…あ、つい間抜けな声をあげてしまいました、でもその春度って取っちゃまずいんじゃないですか?春が来なくなっちゃいますよ?」

 

リ「ハッハッハ!一つや二つ採った位じゃ何も変わらないさ、ほら、寒いから中に入ろう」

 

咲「ふふふ、そうですね♪」

 

 

雑談を終えた二人は仲良く戻っていった。

 

 

_______________

 

 

霊「なるほどね、それじゃこの花びらみたいなのがなけりゃ春は来ないんだ」

 

咲「そういうことになりますわね」

 

霊「ナルホドネ・・・」

 

 

霊夢はギギギという音が出そうな振り向き方をしてアリスの方を見る、目が殆ど死んでいるため凄く怖い。

 

 

ア「ち!ちょっと待ちなさいよ!もしかして私が春を止めてると思ってる?」

 

霊「当たり前でしょ!アンタが一番確信に近いんだから!!」

 

 

霊夢はアリスに向けて怒鳴り散らすが、それに負けじとアリスも反論した。

 

 

ア「あのねぇ!春度ってのは一つだけでも凄い力を持ってるの!私は魔法の研究に春度を使う予定だけど使うのはこの持ってる一つだけでいいの!

 

 

どうやらアリスは手に持っている一つしか春度を持っていないそうで、自分が異変の犯人だということを全否定した。

 

 

魔「じゃあアリスはこの異変とは無関与なのか?」

 

ア「そういうことよ、でも一週間くらい前に春度を集めてるっぽい緑色の服を着た女の子を見かけたわね」

 

咲「あの・・・それってもしかして」

 

霊「ええ、異変の犯人で間違い無いわね!アリス!そいつ何処に行ったか知らない?」

 

ア「確か上に飛んでいったけど」

 

霊「空に何かあるのね・・・二人とも!行くわよ!」

 

魔・咲「おう(はい)!!」

 

 

アリスが思わぬ情報提供してくれたお陰で一気に異変の犯人に近づき三人は教えられた通り空へ昇っていくと、段々気温は上がり、厚い雲を突き抜けると三人の目線の先には大量の春度が空中に浮かんだ巨大な門のようなものに向かって集まっているのが写った。

その門は三人の行く手を阻んでいるようにも見えたが、それよりも驚くべきことはその春度の数だ。

想像を絶する量の春度が門の中に流れ込んでいるのだ。

 

 

霊「何よあれ!10や20なんてもんじゃない!10000以上あるんじゃないの!?それにあの巨大な門は何!?」

 

咲「まさかこんなに大量の春度があったなんて・・・」

 

魔「あの良くわからん門みたいなやつの向こうに異変の犯人がいる証拠だぜ!私がぶっ飛ばしてやる!」

 

 

そう言って魔理沙は八卦炉を構えてマスタースパークを撃つ。

すると門のあった空間がガラスのように割れ、中から先の見えない大きな穴が現れた。

どうやら結界が張られていたようで今の攻撃で壊れてしまったらしい。

門の中はどす黒い怪しい雰囲気だが、三人はそんなこと気にせず中に入っていく。

中に入ると辺りは一気に暗くなり、三人の前には先の見えないほどの長さの階段が現れた。

 

 

霊「何だか変な所に来ちゃったわね、さっきまで昼だったのにいきなり夜になっちゃうなんて」

 

 

辺りを見渡して霊夢がぼやくと・・・。

 

 

ジャキィン!

 

 

魔「霊夢!避けろ!」

 

 

ズバァッ!

 

 

その瞬間、霊夢は何かに両断された・・・

 

 

Stage 3,4 CREAR?

 

To be continue




謝りましょう、ごめんなさい、でもプリズムリバーってどうやって入れりゃいいんですか!教えてくださいよ!でも出さない訳じゃないですのでおこらないでください、次回はようやくあの方のご登場です!ではさようなら~


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春雪異変21話※

色々考えていたらいつもより文字数が長くなってしまいました、でも妖夢の回だから気合い入っちゃうよね、では本編どうぞ


瞬間、霊夢は両断される・・・事はなく、代わりにいつの間にか階段の前から少し離れた所に移動していた。

 

 

咲「ふぅ、間一髪ってとこかしら?」

 

 

どうやら斬られそうになった瞬間、咲夜が時間を止めて助けてくれたようだ。

霊夢を襲ったのは弾幕とは違い、石階段がぱっくりと真っ二つに割れていた。

かまいたちにでも斬られたかのように。

 

 

魔「・・・随分手荒な歓迎だな」

 

 

魔理沙が石階段の上に向かって喋りかける、すると緑色の上着とスカートを履いた、刀を二本携えた少女が階段を歩きながら下りてきた。

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

?「何物だ?結界を破壊して冥界に入ってくるとは・・・余程命が要らないらしいな」

 

魔「お前こそ一体何物なんだ?異変解決の邪魔しやがって」

 

妖「私の名前は魂魄妖夢、この冥界にある白玉楼の主、西行寺幽々子様に仕える者だ」

 

 

このサムライのような少女、魂魄妖夢は階段を登った先に建っている白玉楼という屋敷に仕える門番兼庭師だ。

話を聞く限り犯人は西行寺幽々子という女性らしいが、それについて追及する前に霊夢が睨みつけながらきつい声で当たった。

 

 

霊「アンタね?私をいきなり襲ったのは、弾幕じゃなかったみたいだけどその刀が関係あるのかしら?」

 

妖「あれは斬撃を飛ばしたもの、俗にいうカマイタチだ。

当たれば貴様らなんて一発であの世行きだ」

 

 

初対面でいきなり嘗めた口を利かれ、ピクリと額がうずく。

博麗の巫女は幻想郷最強の証、それを解らない輩は多くいるが、妖夢もその一人だったらしい。

 

 

霊「剣術使いって訳ね、アンタも私たちの敵なんでしょ?

だったらここで倒してやるわ!」

 

 

ビュビュン!

 

 

妖「!?」

 

 

霊夢がお祓い棒を構え戦闘体勢に入り、それを目視した妖夢も居合の構えをとる。

しかし一歩ふみだそうとした瞬間、妖夢眼前を黄色い弾幕が通過していった。

撃ったのは魔理沙だった。

 

 

魔「おいおい霊夢、こいつは元凶じゃないんだぜ?

だったらこんなとこで道草食わずにさっさと先に進めよ」

 

妖「そこの金髪・・・お前が私を止めると言うのか?」

 

 

妖夢が魔理沙を睨み付ける。

だが、八卦炉を妖夢に向ける魔理沙の隣にもう一人現れた。

 

 

「あら?魔理沙だけじゃなくてよ?」

 

 

咲夜も話に割り込み、ナイフを逆手持ちして臨戦態勢に入った。

 

 

咲「ここに来るまで何もしていないんですし、ここいらで何か役に立たないとお嬢様に叱られてしまいますわ」

 

妖「・・・ふん、人間風情が良くほざく・・・」

 

魔「余裕こいてるのも今のうちだぜ、只でさえ二対一で部が悪いのに相手が私たちなんだからな」

 

咲「そういうことです。

さぁ霊夢、貴女は先に進みなさいな。

ここは(私たち)でどうにかするから」

 

 

霊夢はその言葉に後押しされて先に行く決意を決めた。

 

 

霊「アンタたち後で助けてなんて言っても知らないわよ?」

 

妖「そうはさせるか!」

 

 

霊夢が先に行くのを妖夢が阻止しようと斬撃を放とうとするが、またもや魔理沙が弾幕で邪魔をしてきた。

 

 

魔「おっとそうはさせないぜ、お前の相手はここにいるからな!」

 

咲「刃物を使う者同士、仲良くしましょう?」

 

 

妖夢が二人を警戒しているうちに霊夢は階段に沿って上昇する。

気が付いた頃には既に霊夢の姿は見えず、完全に妖夢は足止めされてしまった。

妖夢はこの怒りの矛先を二人へ向けた。

 

 

妖「小賢しい・・・いいだろう。

二人まとめて蹴散らしてやる!」

 

 

妖夢は刀を抜き思いきり踏み込む、そしてトップスピードで二人同時に斬り込みにかかる。

咲夜と魔理沙は左右に別れて後ろへ引くと同時にビームとナイフで挟み撃ち攻撃をする。

しかし妖夢は飛行してそれを避け、妖夢の

真下で爆発が起きる、戦いは空中戦になり咲夜が逆手持ちしたナイフで妖夢を引き裂こうとするが。

 

 

咲「はぁぁぁぁぁ!!!」

 

妖「甘い!」

 

 

ガキィン!

 

 

一瞬鍔迫り合いが起こるが妖夢は剣術のスペシャリスト、当然ナイフの咲夜が勝てるわけがなく

 

 

ガチガチガチガチ・・・

 

 

妖「ッフン!」

 

 

ガギャアン!

 

 

咲夜は容易く押し飛ばされてしまった。

 

 

咲「クッ!」

 

魔「一人忘れてるんだぜ!」

 

 

しかし息ピッタリのコンビネーションで咲夜は素早くその場から退き、魔理沙がレーザーを妖夢に向けて3発放った。

 

 

デューンデューンデューン!

 

 

妖「そんなものでっ!」

 

 

妖夢も素早く後ろへ下がりレーザーを回避するが、追撃は終わらない

 

 

咲「只のメイドではなくてよ!」

 

 

シャシャシャシャッ!

 

 

咲夜は能力を使い、投げたナイフの速さを4倍にした。

妖夢にナイフが襲いかかり、すかさず刀で打ち払おうとするが、かなりの速度を持っていたナイフに反応が追い付かず1本が妖夢の腕をかすった。

 

 

キィン!スパン

 

 

妖「くっ」

 

 

カッターシャツが裂け、二の腕から血が出血して怯んだ隙をついて魔理沙が追い討ちをかける。

 

 

ビュビュビュビュビュビュビュン

 

 

魔「追い込まれてるぜ?」

 

妖「どうかな?はぁ!」

 

 

魔理沙の挑発に乗らず妖夢は刀を素早く回転させ盾代わりにし、弾幕を全て防ぐ。

そしてもう1本の刀を抜刀して鎌鼬を後ろへ向けて放つ。

妖夢の後ろにはナイフを突き刺そうと接近してきた咲夜がおり、胴体を真っ二つにしようと容赦なく襲いかかったところを逆に真っ二つにされそうになるが。

 

 

咲「フフッ」

 

 

カチッビシュン

 

 

妖「何!?」

 

 

当たると思われた鎌鼬は標的に当たらず段々消滅していった。

どんな能力かは解らなかったが瞬間移動のような事が出来る咲夜は厄介なので先に仕留めることにする。

 

 

妖「よし、メイド。

まず貴様から切り捨ててやる!」

 

 

妖夢は咲夜に向かって突進していく、二本の刀を交差させ空間を斬るように振る、するとクロス状の鎌鼬が形成されそのまま真っ直ぐ飛んでいく。

 

 

咲「また鎌鼬?芸がないですわね」

 

 

咲夜は空中で体を捻りながらジャンプするように鎌鼬を避ける、しかしある事に気付く。

 

 

咲「!?何処へ消えたの!?」

 

 

さっきまで目の前にいた妖夢がいつの間にか居なくなっていた。

そして魔理沙の声が聞こえる。

 

 

魔「咲夜!上だ!」

 

 

咲「!?」

 

 

上を見ると妖夢が兜割りの体勢で自分の体を一刀両断する直前だった。

魔理沙も急いでマジックミサイルで援護しようとするがもう間に合わない、しかし咲夜は冷静に時を止めて回避した。

 

 

カチッッ、ビュン

 

 

スカッ

 

 

妖「ちぃっ!あと少しの所で!」

 

 

間一髪避ける事に成功した咲夜は魔理沙の隣に移動していた。

いきなり現れたことに少しビックリした魔理沙だったが咲夜が無事だった事にほっと一息つく。

 

 

魔「咲夜!良かったぜ!もうダメかと思ったからな!」

 

咲「そんなわけ無いでしょ?それより・・・なかなか彼女強いわよ?

どうする?」

 

魔「スペカで一気に蹴りをつける!

っつってもどうせ避けられるだろうな・・・、」

 

そんなことを話していると妖夢がこちらにゆっくり浮遊しながらやって来る。

二人は警戒体勢をとるが、何もしてこない。

そんな状況に困惑していると妖夢が口を開いて自分の種族について説明しだした。

 

 

妖「正直貴女達の事を嘗めていました。

まさかこんなに強い人間が居るなんて・・・。

一つ私の生まれについて説明させてくれますか?」

 

魔「あ、あぁ、構わないが・・・?」

 

咲「その前に質問いいかしら?貴女さっきから人間と言っているけど貴女も人間でしょ?力も霊力しか感じないし」

 

 

その質問に先程の態度とは裏腹に妖夢は答えてくれた。

 

 

妖「そこのメイドさん、名前は?」

 

咲「申し遅れました、紅魔館でメイド長をしております、十六夜咲夜と申します」

 

魔「私は霧雨魔理沙!魔法使いだ!」

 

妖「お二人とも私が人間だと思われているようですね。

しかし私は人間ではありません、正確には(半分だけ人間)ですが・・・。

半霊、おいで」

 

 

妖夢が何かを呼ぶ、すると何処からか白玉のようなものが飛んできて妖夢の手元に留まった。

 

 

妖「私の種族は(半分人間と半分幽霊の半人半霊)

、つまりコレは私の幽霊としての部分なのです」

 

魔「お前幽霊だったのか!?全然解らなかったぜ・・・」

 

咲「それで?これを説明したのには意味があるんでしょ?」

 

妖「ええ、忠告しようと思って」

 

咲「忠告?」

 

 

咲夜は意味がわからなかった。

何か策があるのだろうが二対一に変わりはなく依然戦力差は埋まっていない。

パワーアップでもするのだろうか?そう考えていると妖夢は一枚のスペルカードを取り出した。

 

 

妖「もうさっきまでのようにはいかないぞ・・・」

 

 

スペル:幽明求聞持聡明の法

 

 

妖夢はスペルを唱えると半霊を離す。

すると半霊が膨らみだし、段々人の形になっていった。

なんと半霊がもう一人の妖夢となったのだ。

魔理沙と咲夜はその光景に呆気をとられていた。

 

 

魔「分身・・・?フランのフォーオブアカインドとは違うのか?」

 

咲「みた感じどっちも本物ね・・・」

 

 

驚きで停止してしまっている二人はアレが分身だと思っているらしい。

妖夢は説明に入る。

 

 

妖「これは分身ではありません、どちらも本物なので(分裂)と言った方が正しいです」

 

 

妖夢はもう一人の自分に刀を鞘ごと1本投げる。

そして二人で抜刀し同時に構えた。

 

 

妖「「さぁ!これで二対二!お前たちに勝ち目など無い!」」

 

 

妖夢は二人に襲いかかった。

 

 

~???~

 

 

霊夢は大きな桜の木の見える所に向かっていた、あそこから異様な気を感じるのだ。

そして桜の木の下に女性が一人・・・。

 

 

?「あぁ、楽しみねぇ…早く咲かないかしら?」

 

 

To be continue




幽々子のキャラ立ちがイマイチわからないのでなんだか微妙な句切りになっちゃいましたね。
妖夢のしゃべり方は大物感を出すために男まさりな口調にしてあります。
妖夢が使ったスペルは緋想天に出てくる半霊がトランスフォーマーするやつです、何て読むかはわかりません!調べてください。
次回は妖夢と幽々子の二人同時進行でいきたいと思います!


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春雪異変22話

熊殺しです!今回はかなりテキトーな感じで進みます!正直言って主人公ほったらかしなんで早く出したいんです・・・まぁ多目に見てやってください、それでは本編どうぞ!


二人の妖夢が咲夜と魔理沙に襲いかかる、と同時に二人は互いに離れ距離を取り、一対一の戦闘に持ち込もうとする。

妖夢自身もそのつもりだったようで、それぞれ違う相手へ向かっていく。

どうやら妖夢の相手が咲夜で、半霊妖夢の相手が魔理沙のようだ、四人は同時に戦闘体勢に移り、第二ラウンドのゴングが鳴った。

 

 

魔「先手必勝!メテオニックシャワー!」

 

 

魔理沙は虹色に光る星の弾幕を大量にばら蒔きながら飛行する。

その弾幕を避けつつ刀で防ぎ、半霊妖夢は地上から陣を展開して弾幕の対空砲火で魔理沙を撃ち落とそうとした。

 

 

ヴォン

 

 

ババババババババババ

 

 

魔「そんな簡単に当たるかよ!」

 

 

魔理沙がやってくる弾幕を避けていると、弾幕の爆撃でできた煙幕の中から居合いの構えを取りとてつもないスピードを出しながらこちらに突撃してくる半霊妖夢の姿が見えた。

不味いと悟った魔理沙は緊急回避として体を右に反らした。

 

 

ドォォォォン

 

 

妖「切り裂く!」

 

魔「こ、こいつ速い!」

 

 

バシュン!

 

 

シャキンッ

 

 

すれ違う瞬間魔理沙の髪の毛に刀の剣先が当たり、切れた髪の毛が重力に従って落ちていく。

 

 

魔「あぁ!私の髪の毛よくも切りやがったな!?」

 

 

魔理沙はエプロンのポケットから瓶を取り出し半霊妖夢に投げつけた。

 

 

魔「これでも食らいやがれ!!」

 

 

魔理沙が投げつけたのは橙との弾幕勝負で使ったナパームボムの余りだ。

初見でコレのギミックを見破るのは相当難易度が高い、しかも戦闘中でだ。

魔理沙は既に相手が被弾する様を想像していた・・・。

しかし半霊妖夢はボムから何かを感じ取ったのか、瓶を避けるように飛びそのままこちらに向かってきた。

 

 

魔「何!?中身に気づきやがったのか!?

斬らなきゃ意味無いんだよ!」

 

妖「子供騙しに引っ掛かるほど馬鹿ではない!」

 

 

半霊妖夢は陣を六つ展開して拡散弾幕を一斉発射した。

大量に弾幕を撃ちまくり物量で魔理沙を攻める。

 

 

魔「なんだよこの弾幕の量!フランといい勝負だぜ!」

 

 

迫り来る大量の弾幕に魔理沙は驚きながらもそれを避けていく。

しかし色々な方向から攻めてくるので、後ろからやって来た弾幕気づかず直撃。

それに続いて横から一発、前から一発とどんどん当たっていき、空中にいるのは不味いと考え一旦地上に降りる。

魔理沙が急いでその場から離れ、一定の距離をとうとする一方、半霊妖夢は地上に降りて刀を両手持ちし、構えをとる。

魔理沙だっていくら弾幕勝負が得意だからといって白兵戦に持ち込まれたら負けてしまう。

それを承知の上での行動なのだが、妖夢にはそんな作戦通用する筈も無かった。

 

 

半霊「・・・斬」

 

 

ブゥン!

 

ババババババババ!!

 

 

半霊妖夢が刀を振ると、斬った跡のように水色の弾幕が並んで出現し、魔理沙に向かって飛んでいく。

魔理沙もそれを避けつつレーザーを撃って半霊妖夢に当てようとするが、真っ直ぐ飛んでいくレーザーでは簡単にステップで避けられてしまう。

そこで魔理沙は新しく開発した弾幕の攻撃に変更した。

 

 

魔「当たらねぇ!

こうなったら・・・マジックミサイル!」

 

 

魔理沙は4つの魔方陣を展開し、貫通力の高い弾幕を大量に半霊妖夢に向かって放った。

広範囲に飛ばしていき半霊妖夢の逃げ道を塞ぐ。

 

 

ババババババババババァン!!!

 

 

視界を遮るように弾幕が放たれるが、半霊妖夢はステップでそれを避けながら刀で跳ね返しジャンプして上昇。

そこから一枚のスペルカードをポケットから取り出し発動した。

 

 

スペル:冥想剣

 

 

半霊妖夢の刀が緑色に発光し、とてつもないエネルギーを放つ長刀となる。

その圧巻するほど長い刀に魔理沙は圧倒されていた。

 

 

魔「あれがあいつのスペルカードか・・・」

 

 

瞬間半霊妖夢は今までとは比にならないようなスピードで急接近し、魔理沙に斬りかかった。

そのスピードに魔理沙は反応が追い付かず、あっさり直撃して地面に思いっきり叩きつけられてしまった。

 

 

ドガァン!!!

 

 

魔「ぐぅえ!」

 

 

バッカァァァァァン!!!

 

 

ひきがえるのような声を出しながら魔理沙は地面に落ち、地面にはおおきなひび割れが出来た。

 

 

魔「う・・・ぐぅ・・・あれ?

なんで斬られてないんだ・・・?」

 

 

魔理沙が苦しんでいると、空から半霊妖夢が無表情のまま降りてきた。

既にスペルカードの効力は切れ、刀は元に戻っていた。

半霊妖夢は魔理沙に近づきながらを見下すような視線を送る。

 

 

妖「この刀は白楼剣といって、幽霊を殺せる刀なの。

でもこの刀は幽霊は斬れるけど生身の生物は殺せないの」

 

魔「随分と使えない剣もってンだな、高く売れそうにないぜ」

 

妖「売る気なんて無いわ、家宝だもの。

それに貴女のような(弱い)人間を殺すくらい斬らなくても出来る」

 

 

その弱いという言葉を耳にした瞬間、魔理沙の耳がピクッと動き、無意識に憤怒を魔力のオーラに変えてゆっくりと立ち上がる。

彼女の体が纏うはっきりと見える程の魔力はまさに怒りそのものだった。

 

 

魔「おい・・・今私の事を弱いと言ったか?」

 

妖「悪い?弱いのに変わりは無いからいいじゃないの」

 

 

魔理沙は完全にキレてしまった。

 

 

魔「私が弱いだとぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

体の中の魔力を怒りで放出するその姿はもはや何時もの魔理沙ではなかった。

激しく放出される魔力はオーラのように全身を纏い、身に付けているマフラーやスカートが音をたてて靡く。

半霊妖夢はその力に圧倒され、一歩後ろに引き下がってしまった。

 

 

妖「これは・・・!

さっきまでこんなに強力な力は持っていなかったのに!」

 

魔「私を罵倒した罪は重いぜ・・・」

 

 

魔理沙はポケットから一枚スペルカードを出す。

 

 

スペル:スターダストレヴァリエ

 

 

星形の大きな弾幕が全方位に多数広がっていき、半霊妖夢はステップで後ろに下がりながら飛行してこれを避けるが、既に魔理沙は次の攻撃に移行していた。

 

 

魔「私だってスピードには自信がある!」

 

妖「何!?」

 

 

半霊妖夢の目の前に魔理沙が現れ、魔力を充填した八卦炉を向けられる。

もう魔理沙はもう1つのスペルカードを発動させていた。

 

 

魔「私の十八番のスペルだ!

食らいやがれ!!」

 

 

スペル:マスタースパーク

 

 

八卦炉から巨大な極太レーザー砲が撃たれる。

ほぼ至近距離でこれだけ巨大なものを避ける事は不可能、半霊妖夢に選択肢は無かった。

 

 

妖「斬れぬ物などあんまりない!!!」

 

魔「やれるもんならやってみろ!!」

 

 

半霊妖夢は刀でレーザーを真っ二つにしようとする。

縦に二つに分かれていくレーザーは流れ弾となって大地を削っていった。

 

 

ズガガガガガガガァァン!!!!

 

 

妖「こ・・・こんなものぉ・・・」

 

 

半霊妖夢は腕に精一杯の力を込めた。

しかし魔理沙の持つ巨大なエネルギーにどんどん押されていった。

そして・・・。

 

 

魔「吹っ飛べ!人魂野郎!」

 

 

魔理沙がマスタースパークの力を上げた瞬間、勝負が決まった。

 

 

ズドォォォォォン!

 

 

妖「きゃあああああ!!!!!」

 

 

半霊妖夢はそのまま遠くへ飛ばされていった、そして勝ったのは・・・。

 

 

魔「はぁ、はぁ、はぁ、ざまぁみやがれ・・・」

 

 

構えたまま息をきらす魔理沙だった。

しかし・・・。

 

 

魔「もう・・・魔力スッカラカンで・・・立てねぇ~。

もうここで寝ちゃおう」

 

 

バタッ

 

 

魔理沙はその場で倒れ、そしてそのまま寝てしまった。

 

 

Stage5 MARISA KIRISAME CREAR!

 

 

 

To be continue




22話終了です、次回予告?そんなものは知らん、あれはフェイクだ!騙されやがって!
魔理ちゃんはキレると本気出す子です。
ちなみに妖夢が使った陣というのは魔理沙が使う魔法陣と同じようなものです、次回は咲夜vs妖夢です!これはウソではないです!ではまた


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春雪異変23話

なんだか最近主人公が放置されているような?まぁいっか、では本編どうぞ


魔理沙が苦戦している一方、妖夢と咲夜は互いに弾幕を撃ちまくっていた。

 

 

咲「インディスクリミネイト!!」

 

 

咲夜は全方位に多数のナイフを展開して妖夢の出方を探りつつ攻撃する、しかし妖夢は投げナイフを刀で光速で叩き落とし、自身に当たらないようにガードする。

 

 

妖「はぁぁぁぁぁ!!」

 

 

ガキキキンガギキン!!

 

 

咲「なんて速さなの!?」

 

 

向かってくる全てのナイフを叩き落とした妖夢は上に飛んで刀を縦に、横に降り、大量の弾幕を咲夜に一気にぶつける。

咲夜はその弾幕の中を器用に避けながら進み、懐から両手に二本ずつナイフを掴む、そしてそれをクナイのように投げつけた。

 

 

シャシャシャシャッ

 

 

妖「その程度で!」

 

 

妖夢は空中で月面跳びをしてナイフを避け、その反動を使って咲夜に斬りかかった。

ほぼ自由落下での攻撃たったのだが、咲夜は時間停止でこれを避ける、いきなり咲夜が居なくなったのに少し驚いた妖夢だったが、これで咲夜の能力を見破った。

 

 

妖「貴女、私の推理が正しければ時間を止めていますね?」

 

咲「!!」

 

 

まさかたったの三回で自分の能力を見破るとは思っていなかった咲夜は内心凄く驚いていた、最初の霊夢を狙った一撃を避けた時に妖夢は見ていた筈だがあの時から既に自分の能力について推理していたとしたら大した洞察力だ、しかしわかったからと、どうということはない、咲夜の能力は完璧だ。

咲夜は自信ありげに答える。

 

 

咲「わかったところで貴女にはどうしようも出来ませんわ?」

 

妖「確かにそうですね、貴女は強いです・・・でも私だって負けられない理由があるんです!」

 

 

妖夢は4つの陣を出し、一斉に巨大な弾幕を放ち、一気に攻めこんだ。

 

 

ババババババッ!

 

 

咲夜は空中を蹴るようにスピードを出し、迫り来る弾幕の中を突っ切って妖夢を斬りつけようとするが、弾幕の中に入ったのは間違いだった。

 

 

妖「弾けろ!!」

 

 

次の瞬間妖夢の一言で巨大な弾幕は形状崩壊し、中から数十個の中型、小型の赤い弾幕が弾け飛んだ。

咲夜は罠にはまってしまったのだ。

しかしその程度で追い込まれる咲夜ではない。

 

 

咲「それで追い詰めたつもり?」

 

 

カチッ

 

咲夜は能力を使って時間を止める、すると全てのものがが一斉に動きを止める。

まるで世界が死んでしまったかのような灰色の世界になり、咲夜は弾幕をナイフで弾きながら通り道を造り中から脱出した。

そして時間がまた再始動する。

 

カチッ

 

 

咲「はぁ!」

 

 

時間が再始動すると同時に咲夜は持てるだけのナイフを妖夢に向けて投擲し、さらに接近戦に持ち込もうとする。

 

 

妖「接近戦に持ち込んで!!」

 

 

妖夢は刀を手で器用に回してディフェンスロッドのようにしてナイフを弾く。

そして斬りかかってきた咲夜のナイフを刀で受けとめて鍔迫り合いになる。

 

 

妖「私に勝てると思っているのか!」

 

咲「そんなことは一ミリも思っていないのだけれど!」

 

 

二人とも剣先にありったけの力をいれて表情が険しくなっていく、しかしやはり咲夜は妖夢に力負けをしてしまう。

妖夢が力んでいる隙に咲夜は妖夢の横っ腹に蹴りを入れようとするが、それも見切られて逆に蹴りを入れられてしまう。

咲夜は時間を止めて蹴りを避けようとするが、余りにも速すぎて避けきれなかった。

 

 

ドゴォッ!

 

 

咲「うぅ・・・」

 

 

ヒューーン

 

 

妖「どうしても埋まらない人間と人外の力の差ってものがあるんです、いくら貴女がそんな反則じみた能力を持っていたとしても所詮貴女は人間です。

今の蹴りだけでその有り様だったら次で貴女は終わりですね...もう少し骨のある相手だと思いましたが、どうやら見込み違いだったようですね」

 

 

咲夜は脇腹を押さえて痛みに堪えながらゆっくりと地面に降りて膝を付き、とても苦しそうな表情でよう妖夢を睨む。

時を操る能力を持ち、今まで色々な敵からレミリアを護ってきた自分は、自分すらも守れない弱い存在だと思い知らされてしまった。

咲夜は妖夢の言葉が全て正しいのが許せなかった。

 

 

咲「まだ・・・まだ私は生きている!私はこの身が朽ち果てるまでお嬢様を御守りする!最後までお嬢様に仕えていたい!だからこんなところで力尽きる訳にはいかない!!」

 

妖「ここで降参していれば死ななくて済んだものを...愚か者め!」

 

咲「愚か者でもいい!私は貴女を倒して帰るべき場所に帰る!」

 

妖「そんなに死にたければ殺してやる!私の本気の技でな!!」

 

 

スペル:未来永劫斬

 

 

妖夢は膝を曲げ、姿勢を低くし、刀を鞘に一旦仕舞い、居合いの構えをとる。

咲夜は時間を止めて攻撃を避けようとするが、脇腹の傷みが強すぎて集中出来ない。

そこで自分もスペルカードを使って攻撃をして防ぐ事にした。

 

 

スペル:殺人ドール

 

 

咲夜の周りに無数のナイフが回転しながら展開され、咲夜が合図を出すと一斉にナイフが妖夢に向かって飛んでいった。

瞬間妖夢も思いきり踏み込みトップスピードで咲夜に向かって突撃していった。

 

 

ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュン!!!

 

 

妖「やはりその程度か・・・」

 

 

キンキンキンキンキンキン!!!

 

 

咲「そんなっ!!」

 

 

咲夜の殺人ドールは妖夢に当たるが、なんと全てアタックだけで全て弾き返されてしまった。

咲夜はそのまま妖夢に刀で上空に突き上げられ、何度も何度も斬りつけられる。

 

 

咲「ぐっっ!あぁぁぁ!!!」

 

 

多方向から何度も斬りつけられた咲夜は服がボロボロになり、身体中に痛々しい痣が出来でしまった。

 

 

妖「これで解ったでしょう?貴女じゃ私には勝てないんです」

 

 

咲夜は余りの痛みに声も出ない程だった、しかしまだ咲夜は倒れなかった。

 

 

咲「・・・まだ・・・終わってない・・・」

 

妖「・・・命を無下にするなど・・・もう貴女には何も残っていないだろうに」

 

咲「まだ・・・終わってない!」

 

 

咲夜は一枚ポケットからスペルカードを取り出した。

それは間違いなく咲夜の全身全霊を掛けた技だった。

 

 

スペル:ソウルスカルプチュア

 

 

咲「あああああああああ!!!!!」

 

 

咲夜の瞳が真っ赤に染まり、両手に持ったナイフで五月雨のように妖夢を斬りつける。

しかし全て刀で弾かれてしまう。

 

 

妖「いい加減に諦めてください!貴女に勝ち目は無いんですよ!」

 

咲「くっっ!!なら!速度、三倍!!!」

 

妖「何!?」

 

 

咲夜はソウルスカルプチュアの速さを三倍にしてさらに斬りつける、すると段々と妖夢にも余裕が無くなってきた。

 

 

妖「さらに速く!?こんなものを隠していたなんて!」

 

咲「体が壊れてもいい!速度、四倍だぁ!!」

 

 

咲夜は限界の体に鞭を入れ、さらに速度を上げていく。

すると妖夢に一発だけ当てることか出来た。

そしてそれを筆頭にどんどん当たっていき、妖夢は刀で防ぐ事が出来なくなってしまった。

 

 

ズバババババババババババァン!!

 

 

妖「そ・・・そんなっ!!そんなバカな!」

 

咲「うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

咲夜のソウルスカルプチュアは妖夢の体にどんどん傷をつけていき、妖夢はなるがままに斬られていった。

 

 

妖「きゃああああ!!!!!」

 

 

妖夢はそのままナイフのカマイタチで飛ばされて地面にたたきつけられた。

再起不能となった妖夢を確認した咲夜は深く息を切らしながらフラフラと地面に足をつける。

 

 

咲「・・・次に会う時には友達になれるかしら・・・?」

 

 

咲夜はボロボロの体で霊夢のところまで歩いていった。

一方その頃霊夢はというと。

 

 

_____________________

 

 

霊「あんた!往生際が悪いわよ!さっさと私に倒されなさいよ!」

 

幽「あら?最後の敵って大体そんなものだと思うのだけれど?」

 

 

中々攻撃が当たらない幽々子に苦戦を強いられていた。

霊夢は巫女装束の袖から封魔針を何本か撃ちだした。

 

 

霊「封魔針!!」

 

幽「惜しい惜しい♪」

 

 

しかし幽々子はヒラヒラと舞うようにそれを避けていく。

すると階段の方から霊夢を呼ぶ声が聞こえてきた。

 

 

咲「霊夢!大丈夫!?」

 

 

ボロボロの姿になった咲夜だ。

限界の体に無茶させやって来て、霊夢の援護もできなくなるほど疲弊していた。

 

 

霊「咲夜!来ちゃダメ!!」

 

幽「今いいところなの、邪魔しないでくれる?」

 

 

ビュウン!

 

 

幽々子は無情にも疲弊した咲夜に大出力ビームを放つ。

それは霊夢にも止められなかった。

 

 

霊「駄目!間に合わない!咲夜避けて!!」

 

咲「あ・・・あぁ・・・」

 

 

咲夜はこの時自分が死ぬ直前だということに本能的に気がついた、ここで終わりなのか?もうみんなに会えないのか?そんなときあの言葉を思い出した。

 

 

リ「ピンチになったらそのお守りに祈れ、きっとそのペンダントが護ってくれる」

 

 

咲夜は首にかけておいたリュウトに貰ったペンダントに願った。

 

 

咲「助けて・・・助けて!リュウトさん!!」

 

 

そのときペンダントが光り輝き咲夜を照らした。

 

 

キィィィィィィン!!

 

 

光壁:ダイアモンドウォール

 

 

直後、咲夜にビームが直撃し、大爆発を起こした。

 

 

霊「咲夜ぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

ドドドドドドド・・・。

 

 

咲「う・・・あれ?

私・・・生きてる・・・?」

 

 

しかしビームは咲夜に当たる事はなかった。

そして土煙が舞う中、咲夜の目の前にはマントを羽織った仮面の男が咲夜を護るように立っていた。

 

 

?「助けに来たぞ」

 

咲「あなたは・・・だれ?」

 

 

 

Stage 5 SAKUYA IZAYOI CREAR! !

 

To be continue




咲夜が何だか痛々しいですが仕方がないですね、それだけ強敵なんです。ちなみに本編の妖夢はかなり強い設定です。話には出ていませんが、妖夢が持っていたのが楼観剣、半霊妖夢が持っていたのが白楼剣です。
次回は謎の男が介入してきます!霊夢は強いので大丈夫です。ではまた来週♪


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春雪異変24話※

学校の中間テストがあって投降出来ませんでした!でもやっと完成しました!今回も主人公ほったらかしなんで若干飽きてきてしまい、最後辺りが物凄く適当です。


?「助けに来たぞ、十六夜咲夜」

 

 

ペンダントが光り輝き、眩しさから閉じていた目を開くとそこに居たのは・・・

マントを羽織りバイザーをつけた見知らぬ男だった。

顔はバイザーがサングラスのようになっていてよく見えなかったが、その男は髪の色が真っ白で、背中には四枚の光り輝く大きなウイングがあり、光の粒子を撒き散らしていた。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

咲「私を・・・助けに?」

 

?「そうだ。

あの男から渡されたペンダントが俺を呼んだんだ。」

 

咲「リュウトさんの御守りが?ということはリュウトさんが言っていた{助け}っていうのは・・・」

 

?「あぁ、俺の事だ。」

 

 

すると霊夢が空から降りてきて咲夜の元へ駆けつけてきた。

 

 

霊「咲夜!!あんた!大丈夫なの!?」

 

咲「あ、霊夢、私なら大丈夫。

この方が助けてくださいましたわ。」

 

 

霊夢は咲夜の身体を見て絶句した。

一体どれだけ激しい戦いをすればこんな身体中が傷だらけになるのか、そして霊夢は咲夜を庇ってれた男に礼を言う。

 

 

霊「あなたが助けてくれたのね?誰だか知らないけど感謝するわ」

 

?「いや、いいさ、それよりも・・・」

 

 

男は幽々子の方を振り向く。

幽々子はこちらを睨んだまま上空に待機していた。

それはまるで相手を待っているかのようだった。

 

 

?「博麗霊夢、君は異変を解決しろ。

十六夜咲夜は俺が治療をする、だから思いっきり暴れるんだ。」

 

霊「え・・・」

 

 

霊夢は考える、正体不明の男に咲夜の事を預けて大丈夫なのだろうか?しかし、霊夢の出した答えは・・・

 

 

霊「・・・わかったわ、初対面だけど今はあなたの事を信用することにする。

その代わり!咲夜と魔理沙を頼んだわよ!」

 

?「あぁ、任せろ」

 

 

霊夢は男に二人の事を任せる。

咲夜を助けてくれたし、何故か解らないが信用できる人間のような気がしたからだ。

霊夢は浮遊して幽々子と同じ高さまで上昇する、そして右手にお払い棒、左手に札を持って構えをとる。

幽々子はずっと待たされていたので少し怒り気味だが、霊夢が構えをとると幽々子も扇子を広げて口元を隠し、独特の構えをとる。

 

 

霊「随分待たせたようで悪かったわね」

 

幽「良いわよ?その分楽しませてもらうだけだし」

 

 

静寂が流れる、そして咲夜達の退避が終わったのを確認すると、霊夢が先制攻撃を開始した。

 

 

霊「さっきみたいにはいかないわよ!ホーミングアミュレット!」

 

 

霊夢は上昇しつつ札を複数枚幽々子に投げつける。

幽々子は回避行動をとるが、追尾性能付きの札はどこまでも追いかけて来て標的を逃がさない。

 

 

幽「鬱陶しい弾幕ね、纏めて消してあげるわ」

 

 

霊夢は幽々子が追いかけられている間も弾幕を撃ちまくり牽制をする、しかし幽々子は弾幕の雨の中をすり抜けていき、アミュレットをレーザーで破壊した。

そして懐から一枚のカードを取り出す。

 

 

スペル:ギャストリドリーム

 

 

蝶の形をした弾幕が全方位に放たれる。

追尾性能は無いが全方位のため、それがシールドの役割も果たす。

しかし霊夢にそんなものは通用しない。

 

 

霊「博麗の力なめんじゃないわよ!」

 

 

霊夢は弾幕の僅かなスキマを、掠りながら、スピードをだして潜り抜けていく。

幽々子は視界が自分の弾幕で埋め尽くされているため霊夢の位置を把握できない、そして霊夢はゼロ距離移動で幽々子の真後ろに現れ、幽々子に向かって思いきり飛び蹴りをかます。

 

 

バコォン!!

 

 

幽「あぐぅあ!」

 

 

幽々子は衝撃で前に飛ばされてしまうが、なんとか上空で体勢を立て直し、振り向き様に、霊夢に向かって赤いレーザーを5本同時に掃射する。

霊夢は宙返りして地上に向けて降下し、地面スレスレを飛行してレーザーを避ける、すると真っ直ぐ飛ぶレーザーは引き裂くように地面に熱線の痕を残しながら霊夢を追いかけていく。

 

 

霊「あ~もう!しつこいわね!」

 

 

霊夢は飛んだまま後ろを向き、両手で結界を張る。

レーザーはその結界に直撃するが、霊夢まで届かずそのまま消えていった。

 

 

霊「幽霊なんだから大人しくあの世で暮らしてなさいよね」

 

幽「だってつまんなかったんですもの、たまには何かスリルが欲しいじゃない?」

 

霊「あんた、その我が儘、レミリアといい勝負よ!」

 

 

幽々子に向けて大量の札型の弾幕と陰陽玉をぶつける、しかし幽々子は華麗な動きでクルリクルリと弾幕を避けていく。

そして幽々子は背部に巨大な扇子のようなものを展開し、懐からスペルカードを取りだし詠唱する。

 

 

スペル:生者必滅の理-死蝶-

 

 

幽々子の後ろの巨大扇子から蝶弾幕と大型弾幕が大量に射出され、その全てが霊夢を襲った。

 

 

霊「今度は直接弾幕で攻撃してくるのね、でもそんなもの通用しないわよ?」

 

 

霊夢は自分の横に陰陽玉を展開、そのまま弾幕の中に突っ込んでいく。

高度なテクニックでグレイズして回避したり、弾幕で相殺させたりして、全くスピードを落とさずに幽々子にどんどん近づいていく、そして・・・

 

 

霊「これなら避けれないでしょ!」

 

 

霊夢は幽々子の上空に現れ、弾幕を地上に向けて大量に乱射する。

それはまさに弾幕の雨、もとい大規模な爆撃のようだった。

 

 

ドドドドドドドドドン!!!

 

 

幽「なんて量!?避けられない・・・!」

 

 

最初は避けていた幽々子だったが、次第に余裕が無くなり、ついには弾幕の雨に吹き飛ばされてしまった。

 

 

ズドドドォン!!

 

 

咲「凄い・・・!あれだけの戦いで一回も当たらずに攻めるなんて!」

 

?「あれが歴代最強の巫女の力か」

 

魔「イッテてて、いや~強敵だったぜ~」

 

 

霊夢が戦っている姿を二人が眺めていると、所々服がボロボロになった魔理沙が漸く合流してきた。

 

 

咲「あら魔理沙?遅かったわね、何かあったの?」

 

魔「いやぁ、さっきまで階段のところで寝てたんだけど上の方から爆発やら何やらのでっかい音が聞こえてきたんでな、気になって来てみたんだ」

 

咲「あなた呑気ねぇ、霊夢が異変の主犯と戦っているというのに」

 

魔「まぁあいつがやられるところを想像出来ないからな、それより・・・」

 

 

魔理沙は咲夜の隣に立っている男を指差す。

 

 

魔「こいつは一体誰だ?お前の知り合いか?」

 

咲「私を助けてくれた人よ、名前は事情があって言えないみたいなの、敵ではないから安心して」

 

魔「ほへ~、まぁ詳しいことは終わってからで良いとして、そろそろ決着がつきそうだぜ」

 

 

三人が空を見上げると、上空四百メートル程の高さに二つの人影が見えた、一人は紅白色の巫女装飾の霊夢、そしてもう一人は淡い水色にフリルで飾られた着物を着た幽々子だ。

しかし、幽々子の着物はあちこちに焦げて破れた部分が多くあり、霊夢に一方的にやられたのが誰の目から見ても明らかだった。

 

 

霊「もう諦めたら?どうみたって勝ち目無いんだし、私もさっさとこんな面倒事終わらせて帰りたいんだけど?」

 

 

霊夢は既にボロボロの幽々子に投降するように言う。

しかし、幽々子は諦めるような素振りを見せず、スペルカードを取り出した。

霊夢はため息を付き、幽々子に向かって手をかざす。

 

 

幽「もう後戻りは出来ないの・・・だから、もう出し惜しみなんてしない」

 

 

スペル:完全なる墨染の桜

 

 

幽々子から大量の蝶弾幕が全方位に放たれる、そして全ての弾幕が、まるで産むかのように分裂していき、霊夢の視界を鮮やかに彩った。

その死を孕んだ美しい弾幕に、四人とも魅了されていった。

 

 

霊「綺麗・・・まるで芸術ね」

 

幽「私のラストスペル、これを出させた事を後悔させてあげる!」

 

 

幽々子のスペルカードは今まで見た弾幕よりも遥かに規模が大きく、流れ弾が地上に降り注ぐと忽ち土煙をあげ、地面が凹凸状になっていった。

しかし霊夢は冷静だった。

 

 

霊「大したモンよ、でもね、私の後ろには幻想卿があるの。

だから私もあんたに敬意を払って今の本気を出させてもらうわ。

 

 

無駄の無い動きで弾幕をヒラリヒラリと避けていく霊夢、一つでも当たってしまうと忽ち生気を吸いとられてしまうがそんなものには恐れない。

強い精神が無ければこんな芸当は出来ないだろう、そして霊夢は袖からスペルカードを取り出した。

 

 

スペル:封魔陣

 

 

霊夢がスペルカードを発動すると、巨大な結界が幽々子を囲み、幽々子は動きを封じられてしまう、そして動けない幽々子に霊夢はトドメを刺す。

 

 

霊「これで決着よ、夢想封印!!!」

 

 

スペル:夢想封印

 

 

ドンドンドンドンドォン!!!

 

 

幽「そんな・・・!負けてしまうの・・・?」

 

 

5つの虹色に輝く珠がそれぞれ違う軌道を描いて着弾し、大爆発を起こした。

 

 

ドガァァァァン!!!

 

 

霊「これに懲りたら二度とこんなことしないことね」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

博麗霊夢は異変の元凶を倒し、見事幻想郷を救った・・・。

 

 

しかし、この異変はこれで終わりではなかった。

 

 

 

 

Stage6 CREAR!

 

Next to be continue




次どうしようか悩んでいますがどうにかします!
この回のせいで一気に評価下がりそう、、、


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射命丸文のキャラ設定紹介

これは本編に出てくるキャラの設定です。
話とは繋がっていないので注意してください。


※これは新聞記者、射命丸文が独自に入手した情報です、所々不明な点があります。

十六夜咲夜

 

17歳

 

種族:人間

 

身長:170cm程度

 

体重:不詳

乙女の体重を聞くなど言語道断と言われてしまった。

 

好物:バタートースト砂糖まぶし&コーヒー

*基本的に食べ物はシンプルなものが好きで意外と庶民的な舌の持ち主。

いつもレミリア達に出している食事も食べるが、朝は絶対にこれを食べる。

ちなみに甘党、でもコーヒーはブラック。

 

好きな男性のタイプ:自分の事を良く見ていて困ったときに助けてくる優しい人。

 

 

キャラ説明

紅魔館のメイド長で館に住んでいる唯一の人間。

詳しい経歴が不明で、紅魔館に来る前は何をやっていたのか知っている者はいない、本人は「雇われメイド」として紅魔館に来たといっている。

幻想郷に来る前は、既に紅魔館の一員としてヨーロッパに住んでいて、英語が話せたりする。

特技は種無し手品とナイフ投げ。

 

 

博麗霊夢

 

16歳

 

種族:人間

 

身長:160cm程度

 

体重:不詳

 

好物:肉じゃが

*日本食を主に食べているが、特に肉じゃがが

好き。

理由は母の味だからだそうだ。

 

好きな男性のタイプ:稼ぎがいい人・・・ではなく、クールで物静かで、自分との時間を大切にしてくれる人

 

 

キャラ説明

幻想郷の平和を守る博麗神社の巫女。

人間の中で最も強く、その力は大妖怪にも対抗でき、歴代博麗の巫女でもダントツでトップの実力を持つ。

しかし、非常にめんどくさがり屋で、大体修業はしない、なので、博麗の仕事が終わるといつも、縁側でお茶を啜るか、居間で寝ている事が多い。

幻想郷の中では割と常識人で、アリスなどとも仲が良い。

神社に参拝客が来ないのが最近の悩みだそうだ。

 

 

霧雨魔理沙

 

15歳

 

身長:158cm程度

 

体重:不詳

 

好物:きのこ

言わずと知れたきのこ好き。

彼女が食べる料理の殆どにはきのこが入っている。

 

好きな男性のタイプ:基本的に彼女はそういった事には関心が無いため、流れに任せる感じだという。

強いていうなら気が合う人。

 

 

キャラ設明

霊夢と古くからの友人で、霊夢を越えるために日々、魔法の研究と特訓に励む、霊夢とちがって努力家だったりする。

でも努力している所を見られるのは嫌らしい。

魔法を学ぶ切っ掛けとなったのは怨霊の魅魔の影響で、美しい魔法に魅了されたらしい。

しかし、そのせいで実家の霧雨道具店から勘当されてしまい、今は魔法の森で霧雨魔法店という店を構えている、名前だけだが。

ちなみに彼女は自分の努力をバカにされるのが一番嫌いで、弱いと言われると怒る、しかもその報復に魔法で成敗される。

 

 

これらの情報は本人への取材が主なので、嘘偽りは一切ありません、以上。

射命丸文でした。

 




設定って大事だと思うんですよね。
ちなみにちょくちょくこういったものを小説に入れていきます。

評価&感想待ってます!


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春雪異変25話

春雪異変の終わりがなんだか微妙なんですが、、、ホントにこんなので良いのかなぁ、、、どうもスッキリしない終わりなんですよね。
まぁ諸事情でリュウト君は正体を明かせないので仕方ないですね。



異変の首謀者、西行寺幽々子を倒し、異変を解決した霊夢は、冥界から負傷した二人を連れて出ようとしていた。

 

 

霊「二人とも、犯人も倒した事だし早くここから出るわよ、さぁ、肩貸すから捕まりなさい。

貴方にも礼を言わないとね、咲夜と魔理沙の事をありがとう」

 

?「礼なんかいい。

俺は戦闘にも手助けしていないんだからな」

 

 

マスク越しで顔や表情が見えないが、少し笑いぎみに言う男の声に霊夢もクスリと笑ってしまった。

緊張が解れて皆が安堵の表情を浮かべると、事件は起きた。

 

 

霊「!!!!!」

 

咲「!!!!!」

 

魔「!!!!!」

 

 

突如、背筋が凍り付くような悪寒が三人に走る。

その正体は・・・死への恐怖だった。

 

 

魔「なんだ・・・今の・・・何かとてつもなく恐ろしいプレッシャーを感じた・・・」

 

霊「この感じ・・・幽々子と同じだわ!!」

 

 

魔理沙は身体を抑えながら恐ろしい感覚に恐怖の表情を見せる。

そして霊夢はこの感覚が幽々子の死に誘う程度の能力に似ている事に気がついた。

 

 

咲「そんな!!!今確かに霊夢が倒したじゃない!?」

 

?「いや違う!!幽々子じゃない!このプレッシャーはあのでかい桜の木からだ!!」

 

 

男が示す方向を見ると、そこには禍々しい気を発しながら不気味に蠢く巨大な桜の木があった、こんな高濃度の妖気に人間が触れれば間違いなく死んでしまう。

霊夢は思い出した、幽々子に会った時の言葉を・・・。

 

 

_____________________

 

 

~40分前~

 

 

霊夢が桜並木の長い階段を進んでいくと、頂上辺りが漸くみえだした。

飛ぶスピードを上げて一気に駆け抜けると、そこには大きな和風のお屋敷があり、その向こうには立派な桜の木があった。

しかしその桜は他の桜とは違い花をつけておらず、何だか寂しい印象だった。

 

 

霊「可哀想に、あんなに立派なのに花が無いなんて、枯れてるのかしら?」

 

?「今から咲くのよ、優雅にね」

 

 

声がした方を見るとそこには桃色のウェーブのかかった髪の、美しい着物を着た美女がいた。

 

 

霊「あんたが異変の首謀者ね?」

 

幽「あら?何故そんなことがわかるの?」

 

霊「勘よ、それで?あんた一体何者?異変を起こした理由は?」

 

幽「そんなに一度に言わないでちょうだい。

私の名前は西行寺幽々子、この冥界の管理人。

それと白玉楼の主でもあるわ」

 

霊「冥界のねぇ・・・春を奪ったのには理由があるんでしょ?さっさと言いなさいよ。

余りにも下らない理由だったらぶっ飛ばしてやるんだから」

 

幽「あらあら血気盛んねぇ♪私はこの西行妖を満開にしたかったのよ。

蔵の中に古い書物を見つけてね?そこにはこう書かれていたの。

西行妖の下には何者かが封印されていて、満開になれば封印が解けてその人物が姿を現す・・・ってね」

 

_____________________

 

 

もしかしたらあの言葉と何か関係があるのではないか?色々な考察が頭の中を過るが、今はそんなことしているそんなことしている場合ではなかった。

 

 

?「避けろ!!!」

 

霊「!!」

 

 

霊夢がその言葉に反応すると、西行妖から枝の触手が勢いよく此方に迫ってきていた。

霊夢は二人を持ち上げて咄嗟に避けるが、霊夢が避ける速さよりも、触手の攻撃の方が速かった。

 

 

バシュッ!!

 

 

霊「ぐぅっ!!」

 

魔・咲「霊夢!!!」

 

 

霊夢のふくらはぎに触手が掠り、傷口から血が滲み出る。

しかも余りの速さに傷口は、摩擦熱で焦げた火傷の痕のようになっていた。

そのせいで一瞬怯む霊夢だったが、意地で立て直して直ぐにその場から離れる。

そして触手は男の方にも迫っていた。

 

 

?「くっ、ここで三人を死なせるわけには!!」

 

 

男には三本の触手が迫っていたが、懐から瞬時に光り輝くエネルギーの剣を出して、目にも止まらぬ速さで切り捨てたあと、自身の気合いの衝撃波ですべて吹き飛ばした。

それを見ていた霊夢は圧巻の声をあげた。

 

 

霊「凄い!あの速さで動く枝を一瞬で!!どうやらとんでもない強者だったみたいね・・・」

 

魔「速すぎて見えなかったぜ・・・」

 

 

魔理沙も男の実力に息を呑む。

男が戦っている所を呆気をとられながら見ていると、西行妖の触手が倒れている幽々子へと伸びている事に気がついた。

しかし、触手は妙な動きを見せていた。

なんと幽々子を掴んで持ち上げて自分の方に引き寄せているのだ。

どうやら幽々子を吸収しようとしているらしい。

男はそれに気づいて咄嗟に手を銃の形にし、強力なビームで触手を撃ち抜く。

その後男は霊夢達の方を見ながら激昂する。

 

 

男「早く冥界から逃げろ!!!人間の君達はこいつに近づけば死ぬぞ!!!」

 

霊「なっ!!そんなこと出来る訳ないでしょ!!」

 

 

折角異変を解決したというのに最後の最後で逃げるなど、霊夢には出来なかった。

これは博麗の巫女としての責任問題でもあるのだ。

しかし、この状況でそんなことを言っている暇はどこにもなく、魔理沙にも逃げるよう言われてしまった。

 

 

魔「霊夢・・・悔しいがここはあいつの言う通りにしよう・・・」

 

霊「で、でも・・・」

 

咲「魔理沙の言う通りよ・・・あの禍々しいオーラは危険過ぎるわ・・・」

 

霊「・・・わかった、ここは退くことにしましょう、でもあの木はどうするのよ?このままじゃ幻想卿にも被害が出るわよ?」

 

 

こうしている間にも西行妖の妖気はどんどん広がっていた。

早くしないと冥界全域に妖気が撒かれて手遅れになるため、男は霊夢達を急かす。

 

 

?「この化け桜は俺が何とかするから早く逃げろ!間に合わなくなるぞ!!!!」

 

霊「わかったわ、貴方に任せる、また会った時にゆっくり話しましょう」

 

?「あぁ、楽しみにしている」

 

 

霊夢は方向転換して冥界の出口へと向かう。

ふと後ろを振り返ると、西行妖と男の弾幕で上がっている土煙や、巨大な爆発が見えた。

そして霊夢は、あの人ならきっと大丈夫だと心の何処かで確信していた。

真っ直ぐの階段を道なりに戻っていくと、最初に見つけた冥界への入り口が見えてきて、一気にその中に全速力で突っ込んだ。

 

 

ビュオン!!

 

 

魔「やったぜ!幻想郷だ!!!」

 

霊「なんとか間に合ったわね・・・」

 

魔「咲夜!!戻ってこれたぜ!!・・・咲夜?」

 

咲「・・・・・」

 

魔「咲夜ぁ!!」

 

霊「魔理沙!!紅魔館に連れていくわ!!ここからは自分で飛んで!」

 

魔「わかった!!」

 

 

二人がホッと一息吐くなか、咲夜だけ反応が無く、ずっと黙ったままだった。

身体に大量の傷を負った状態で無理をしすぎたせいで、咲夜の身体はもはや限界を迎えていたのだ。

その後、咲夜は紅魔館の病室に緊急搬送され、パチュリーの緊急治療が行われた。

その時リュウトはその場には居なかった。

 

 

 

Stage??? Perfect CREAR




もう25話までいったので、そろそろリュウト君の正体について少しだけヒントを教えます。
まずこの春雪異変が起こることを彼は知っていた、でもいつ起こるかまでは知らなかった。
そして西行妖の過度な暴走はリュウトのせいでもある。
そして最後、リュウトが幻想郷に来た理由ですが、彼にはある目的があります。
これからもリュウト君の正体を明かすまでは能力を使ってでの戦闘は人前では避けていきます、あまり人に知られてはいけないので戦うなら単独で、相手にも口封じをします。


評価と感想待ってます!
ではさようなら


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春雪異変26話※

なんだか詰め込み過ぎてどれが本題なんだかわからなくなってしまいました、、、この前といい今回といい、なんだかスッキリしない内容ばっかだなぁ、、、でも次こそはしっかりやりたいとおもいます!!では本編です。


~咲夜の部屋~

 

 

リ「ほら、咲夜、口を開けろ」

 

咲「あのっ・・・そのっ・・・一人で食べられますから(恥)」

 

 

あれから一週間という日にちが経っていた。

重傷を負った咲夜は奇跡的に命に別状はなく、気を失っていただけだった。

今では怪我の治療の為にベッド生活だ。

咲夜が異変解決に行っていた時、リュウトは紅魔館に居なかったようで、咲夜が緊急搬送されたときはその場に居合わせなかった。

姿が見えなかったのはそのためだ。

そしてどこへ行っていたかなどの明確な情報は何も教えなかったので、リュウトにはその代わりに咲夜の介抱を頼んでいた、しかし・・・、

 

 

リ「そんな身体で無理をしてはダメだ、怪我の治りが遅くなるぞ?」

 

咲「うぅ・・・恥ずかしいですよ・・・」

 

 

誰かに介抱されるなんて経験が余り無い咲夜は何処か落ち着かない様子で、リュウトが雑炊を食べさせようとしても食べようとしなかった。

しかし、頬を少し赤らめている所を見ると、どうやら咲夜は介抱してもらって満更でもないようだ。

 

 

リ「何が恥ずかしいんだ?ただの食事だろ?・・・やはりこういうのは同じ女性の方が良いのか?」

 

咲「そんなこと無いです!

私はその・・・リュウトさんに介抱してもらえて嬉しいので・・・」

 

 

咲夜はリュウトが誰かを呼んでこようとするのを必死に止める。

そして深呼吸をして心の準備を整え、ゆっくりと口をあけた。

 

 

リ「??まぁいいか、ほら、口を開けろ」

 

咲「はい、あ、アーン・・・」

 

 

パクリ

 

 

リュウトの出す雑炊を口に入れると、出汁の効いた甘酸っぱい風味と溶き卵の絶妙なハーモニーが奏でられ、口一杯に旨味が

広がっていった。

咲夜は頬に手を当て幸せそうな表情を浮かべた。

 

 

咲「あぁ~・・・幸せですぅ~(*´ω`*)」

 

リ「そ、そうか?そんなに美味しいのかこれ?」

 

咲「はい!これはリュウトさんが調理されたのですか?」

 

リ「あ、あぁ、そうだが?」

 

咲「とっても美味しいです!もっと食べたいです!」

 

リ「わ、わかった、はい、アーン」

 

咲「ア~ン・・・はむっ、ン~♪」

 

 

幸せそうな顔をして食べる咲夜を見て、リュウトも頬が少し緩む。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

リ「本当に幸せそうな顔をして食べるな、作った甲斐があったよ」

 

咲「フフッ♪リュウトさんだからかも知れませんね」

 

 

咲夜は雑炊を一口、また一口と食べていった。

この時間がずっと続けば良いのにと、今の咲夜は本気で思った。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

幸せな時間は短く感じる、正にその通りだ。

ご飯の時間は既に終わってしまい、咲夜は少し残念そうな顔をしていた。

時刻は午後の2時辺りを指していた、リュウトは仕事があるため部屋を出ていってしまった。

そして部屋には咲夜一人だけになり、静かな時が流れていった。

 

 

咲「はぁ・・・、やはり一人だけ部屋にいてもやることがなくて暇ですね・・・」

 

 

そんな時、ドアの外からノック音が聞こえてきた。

 

 

コンッコンッ

 

 

ガチャっ

 

 

レミ「咲夜?調子はどうかしら?」

 

咲「お!お嬢様!?」

 

 

部屋に入ってきたのはレミリアだった。

レミリアは咲夜のベッドの近くの椅子に腰を下ろした。

 

 

咲「お嬢様?なぜ此処に?」

 

レミ「あら?私の家なのに自由にしてはいけないのかしら?」

 

咲「も、申し訳ありません・・・」

 

レミ「ハァ・・・貴女のことが気になったのよ、どうせやることがなくて暇してたんでしょ?

私もやることなくて暇だったし 、世間話でもしようかと思ってね」

 

咲「・・・お嬢様には敵いませんね、私が暇で暇で仕方ないこともお見通しなんですから」

 

レミ「当たり前じゃない、私の従者なんだから。

じゃあ暇だし、異変の時の話でも聞かせてくれないかしら?」

 

咲「喜んでお話致しますわ」

 

 

咲夜は異変解決に行ったときの出来事をレミリアに全て話した、冥界へ行ったこと、妖夢と戦ったこと。

そして・・・自分が死にかけたことを。

 

 

咲「でも私が殺されそうになったとき私を庇って助けてくれた人がいたんです。

名前どころか会ったことすら無い人でしたが・・・その・・・不思議と知っているような感じがしました」

 

レミ「そうなの、じゃあ今度その人を呼んでお礼をしなきゃね(能力で既に知ってるけど、ついでにそいつの正体も。

でも言ったらあいつ困るだろうから言わないでおこう)」

 

咲「あの・・・お嬢様?」

 

レミ「え?何かしら?」

 

 

レミリアはいきなり咲夜に名前を呼ばれとぼけた声を出してしまう。

どうやら気づかぬうちにボーッとしていたようだ。

すると咲夜が心配そうな目で此方を見ていた。

 

 

咲「いえ、虚空を見つめていたものですから・・・私の留守中に何かあったのですか?」

 

レミ「あらごめんなさい、何でも無いわ、で?その人は一体何処に?」

 

咲「あ、いえ、それが・・・冥界にある西行妖という桜の木の暴走を止めるために・・・私たちを逃がしてそれっきり・・・」

 

レミ「そう・・・会えるといいわね」

 

咲「はい、その時はちゃんとしたお礼をしたいです」

 

 

咲夜とレミリアが二人だけの時間を過ごしている同時刻、リュウトは紅魔館の全ての掃除を終わらせて、レミリアの部屋へと向かっていた。

 

 

~レミリアの部屋~

 

 

コンッコンッ

 

 

リ「レミリア~掃除終わったぞ~、ん?」

 

 

シィ~ン・・・

 

 

レミリアの返事が無い。

何処かへ出掛けたと判断したリュウトはとりあえず図書館のパチュリーの元へ行ってみた。

 

 

~大図書館~

 

 

ガチャン・・・

 

 

リ「パチュリー、レミリア此処にいるか?」

 

 

リュウトは図書館の廊下を真っ直ぐ歩きながらパチュリーの名前を呼んでみる、すると奥の方から返事が聞こえてきた。

 

 

パ「大きな声出さないでよ・・・」

 

 

パチュリーのうんざりした声だ、どうやら迷惑をかけたようなので一応謝っておく。

 

 

リ「悪い悪い、レミリア何処にいるか知らないか?」

 

パ「レミィなら此処には居ないわよ、それと、謝る気があるなら少し付き合って」

 

リ「ん?なんだ?」

 

 

少し付き合ってほしいと言われたリュウトは、パチュリーの机の前まで頭を掻きながら腰に手を当て歩いていった。

 

 

リ「一体何の用なんだ?今からレミリアに金を貰って買い出しに行かにゃならんのに」

 

パ「別に貴方自体に用があるわけじゃなくて貴方の持ってる剣に用があるの」

 

リ「剣?もしかしてこいつのことか?」

 

 

リュウトはポケットの中から柄だけの剣を出す。

リュウトの作った武器、グラディウスだ。

これをパチュリーは自分に預けてほしいとお願いしてきた。

 

 

パ「それ、私に預けてくれない?見た時から気になってたのよ、仕組みが解れば強化する事だって出来るわよ?」

 

リ「まぁそう言うことなら構わないぞ?ほれ」

 

 

リュウトはグラディウスをパチュリーに渡す。

するとパチュリーはそれをランプにかざしながらまじまじと見つめた。

 

 

パ「へぇ・・・以外と軽いのね・・・それに単純そうだわ・・・。

ありがとう、あとこれやっぱり強化しておくわね、このままだとエネルギー効率が悪いわ」

 

リ「そうか、じゃあ任せるよ」

 

パ「はいはい、あ、もしかしたらだけど、レミィは咲夜の部屋にいるかもね、行ってみたら?」

 

リ「わかった、行ってみるよ。

飯の時間にまた呼びに来るぜ」

 

パ「ありがとう」

 

 

用事も済んで、早速咲夜の部屋へ向かおうとすると、図書館の扉が開きだした。

 

 

ギイィ・・・。

 

 

レミ「あ~あ、良い暇潰しになったわ」

 

 

なんと探していたレミリアだった。

彼女も此方を見つけたようで、買い出しのお金を出した。

 

 

レミ「リュウト、そろそろ終わるだろうと思ってね、ちゃんと持ってきたわよ」

 

リ「サンキューレミリア、じゃあ行ってくるぜ」

 

 

そう言って買い出しに行こうとすると、レミリアがすれ違い様にリュウトの腕を叩いて小さな声でこう言った。

 

 

レミ「行ってらっしゃい、救世主さん♪バレないと良いわね~」

 

リ「ん?おい、どういう意味だ??」

 

レミ「さぁ?どういう意味でしょう~?」

 

リ「????」

 

 

このあとリュウトは頭の中にスッキリしないモヤモヤがあるまま一日を過ごすのだった。

 

 




ぐぬぬぬ...次どうしよう...我らがアイドル紫さんはどうすれば良いんだ、いっその事乱闘させるか...ヘッヘッヘ、ハァ...ネタバレになりそうだから辞めとこう、言っておきますが小説を書く気はあります、 ただ話の繋ぎが思い付かないだけです。

感想、評価も待ってます!!ダメ出し大歓迎!!ではさようなら


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春雪異変27話

はい、超適当回です。そのくせに結構悩んで書きました、何も思い付かなさすぎて泣けてきましたよ、過度な期待はしないでください。


あれから一週間が経ち、咲夜の怪我も順調に回復、今では普通に動く事が出来る程だ。

幻想卿にもすっかり春が戻り、一気に桜も満開になった、ということはやることは一つだ。

 

 

霊「異変解決に乾杯!!!」

 

皆「かんぱ~い!!」

 

 

春の訪れと異変解決の祝いの宴会が開かれた、場所は勿論、博麗神社だ。

ちなみに時刻は午後1時程、やはり桜は昼間の明るい時に見なければ意味がないとの事でこの時間らしい、紅魔館の住人は勿論のこと、今回は白玉楼の二人も新たに参加して会場は大盛り上がりだ。

霊夢が神社の縁側で酒を飲んでいると、慧音が

やって来て隣に座る。

 

 

慧「霊夢、異変解決ご苦労だったな」

 

霊「まぁ私にかかれば、こんな異変の一つや二つくらい、簡単に解決出来るけどね」

 

慧「寝てたやつが言う台詞ではないな」

 

霊「ギクっ・・・」

 

 

霊夢は何も言い返せないので冷や汗をかきつづけている。

暫くすると魔理沙が、何処からか縁側の霊夢の隣に座ってきた。

 

 

魔「まぁいいじゃないか、異変は無事に解決したんだしな」

 

慧「ま、まぁそれは良いんだが・・・」

 

魔「それに!折角の宴会なんだから説教は次の機会でいいだろ?」

 

霊「魔理沙・・・」

 

慧「それもそうだな、異変を解決したのに説教というのもおかしな話だ」

 

魔「よし!じゃあ今日はパーっといこうぜ!

おーい!妖夢ー!お前の持ってきた肉焼けたかー?」

 

妖「もう焼けてますよ~、妹紅さんの焼き鳥も焼けたそうですからどうぞ~」

 

 

魔理沙の目線の先には、屋台の中で妹紅と肉を焼いている妖夢の姿があった。

話によると、異変の迷惑料として持ってきた肉を皆に振る舞う為に、妹紅の屋台の厨房を借りて自ら焼いているらしい、特に異変を解決したメンバーには絶対食べてほしいそうなので、霊夢と魔理沙は小走りで妖夢の元に向かっていった。

 

 

ジュゥゥー...

 

 

屋台の厨房では妖夢と妹紅が一緒に肉を焼いており、妹紅は妖夢の事を絶賛していた。

 

 

妹「お前、肉焼くの上手いな!私の目から見てもかなり凄いと思うよ!」

 

妖「そ、そうですか?まぁ料理の腕には多少の自信はありますけど・・・」

 

 

妖夢の焼いた牛肉ステーキは脂を逃がさずしっとりとした艶が美しく、食欲をそそる香ばしい香りがする。

肉のうまみを最大限に生かしている料理人の鑑であるような絶妙な焼き加減だ。

 

 

妹「いや、私も店では牛肉とか豚肉焼いたりしてるけど、見ただけであんたが手慣れているのがわかる」

 

妖「う~ん・・・あまりそういう事を意識したことが無かったので凄いのかどうか良くわかりません」

 

妹「少なくともあんたのご主人様はあんたの事を立派だと思ってるだろうよ」

 

妖「えへへ、何だか照れちゃいますね」

 

 

妖夢が照れながらニヤニヤしていると、肉の香ばしい匂いに釣られて色々な人物が集まってきた。

そのうちの一人、西行寺幽々子はよだれを垂らしながら指をくわえて肉をジーっと見ていた。

 

 

幽「妖夢~・・・お腹空いちゃったわ~、お肉食べたい~」

 

妖「ダメですよ幽々子様!これは皆さんに迷惑料としてお出しするものなんですから!これを食べちゃったら持ってきた意味が無いじゃないですか!」

 

幽「良いじゃない!まだいっぱいあるんだから!」

 

妖「ダ!メ!で!す!いくら幽々子様の頼みでも聞けません!我慢してください!」

 

幽「わぁーん!妖夢の意地悪ー!横暴よー!最低よー!そんなのだからいつまでたってもおっぱいが大きくならないんだわー!」

 

妖「・・・幽々子様、黙りましょうか、それと、今晩は無しです(怒)」

 

幽「ヒィ!ご!ゴメンナサイ・・・」

 

妹「・・・一体どっちが主人なんだか・・・」

 

 

妹紅は思った、妖夢は本当はメチャクチャ強いんじゃないか・・・と。

妖夢は涙目になっている主人を他所に、ステーキを小分けにして皿に乗せ、どんどん配っていく。

ステーキは人気が高くてあっという間に全て無くなってしまった、妹紅の焼き鳥もファンが多いため、直ぐに無くなってしまった。

ちなみに幽々子は妹紅の焼き鳥を食べたらいつも通りの状態に戻った。

 

 

妹「屋台はもう必要ないから片付けるよ」

 

妖「あ!手伝います!」

 

妹「お!済まないねぇ」

 

 

妖夢は屋台を畳むのを手伝う、すると声を掛けてくる人物がいた。

 

 

リ「二人ともご苦労だったな、俺も片付け手伝うよ」

 

咲「私も手伝わせて頂きますわ」

 

 

紅魔館に住んでいる十六夜咲夜と、神谷リュウトだ、正直嬉しい人手なので断る理由も無い。

 

 

妹「助かるよ、じゃあ炭を片付けてくれるか?他のゴミはこっちでどうにかするからさ」

 

リ「了解だ、咲夜?持てるか?」

 

咲「怪我も治りましたのでこれくらいは余裕ですよ」

 

 

二人は仲良く段ボールの中の炭を運んでいった、その様子を見ていた妖夢は何処か憧れを感じていた。

 

 

妖「良いなぁ・・・」

 

妹「良い雰囲気に見えるだろ?あれ、付き合って無いんだぜ?」

 

妖「え?付き合ってないんですか?あんなに仲良さげに見えるのに・・・」

 

妹「お似合いだと思うんだけどねぇ、妖夢も気になるやつがいるのかい?」

 

妖「あ、そういうわけでは無いんですが、何だかああいう関係が羨ましいというか・・・やはり守りたいと思う人がいれば強くなれるのですね、私が咲夜さんに負けた理由が解る気がします」

 

 

妹紅も何となくだがその気持ちがわかった。

里の人々や慧音を守りたいと思う気持ちと同じだろう、しかしそれは妖夢だって同じだ。

 

 

妹「それはお前にだって当てはまる事じゃないのか?お前には幽々子っつうご主人が居るんだからさ」

 

妖「それはそうなんですけど・・・やはり私の幽々子様に対する思いが弱いんでしょうか?」

 

幽「そんなこと無いわよ~?」

 

 

妖夢の言葉に反応して近くにいた幽々子が反応してきた。

いきなり介入してきた幽々子に妖夢はビックリしてしまう。

 

 

妖「幽々子様!!聞いてたのですか?」

 

幽「途中からね~。

私は妖夢が側に居てくれるだけで嬉しいわよ?独りぼっちじゃないって安心できるし、ご飯も美味しいし♪」

 

妖「幽々子様・・・」

 

 

幽々子は扇子で口許を隠しながら微笑む、妖夢も嬉しかったのか口許が緩んでいた。

 

 

妹「そうそう、それに強くなりたいんだったらリュウトも協力してくれるかもよ?あいつ意外と強いからな」

 

 

妖「え?あの人そんなにお強いんですか?」

 

妹「あぁ、一人で異変解決しちまう位だからな、不老不死の私でも勝てるかどうか怪しい」

 

妖「妹紅さん不老不死なんですか!?」

 

妹「あれ?言わなかったっけ?何なら証拠見せようか」

 

 

妹紅は懐から短刀を取り出して手首に突き立てる、しかし妖夢はそれを全力で阻止した。

 

 

妖「やめてください!それは流石にダメですって!」

 

妹「そう?まぁぶっちゃけ痛いしやめとくよ」

 

妖「はぁ・・・心臓に悪い・・・」

 

 

この日、妖夢はまだ見ぬ世界の片鱗を味わった。

ちなみにこの日の幽々子の夕食は無かった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

~???~

 

 

籃「よろしかったんですか?宴会」

 

紫「ええ♪私は見ているだけにするわ」

 

 

幽々子を救ってくれてありがとう・・・リュウト。

 

 

 

 

春雪異変 完




まーた妖夢がメインで、しかも何故か妹紅との絡みです。
書いてて頭が可笑しくなったのか、他のキャラをあまり出してません、あとプリズムリバー出すの忘れた。
あ~あ、もう丸投げだーい


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キャラ設定妖々夢編

妖々夢に出てきたキャラを紹介する回です。
詳しく小説内で書かれていない情報も書かれています。
プリズムリバー三姉妹は出てきていないので書かれていません。


レティ・ホワイトロック

 

種族:妖怪(雪女)

 

能力:寒気を操る程度の能力

 

身長:160cm

 

代表的なスペルカード:寒符「リンガリングコールド」

 

キャラ説明:冬になると現れる妖怪。

同じように冷気を操るチルノとは気が合い、二人で異変を起こして幻想郷を恐怖に陥れた過去を持っているが、その際に異変を解決しに来たリュウトに妖怪の山まで蹴り飛ばされた事がトラウマとなって異変解決者に拒否反応を起こすようになってしまった。

 

 

(チェン)

 

種族:化け猫(式神)

 

能力:妖術を扱う程度の能力

 

身長:142cm

 

代表的なスペルカード:仙符「鳳凰卵」

 

キャラ説明:八雲紫の式である九尾の八雲藍が操る式神。

まだ藍が式神となって1000年経たない頃に出会った猫が藍に可愛がられて、至近距離で九尾の妖気を浴び続けた結果妖怪となったのが彼女。

実力はまだまだな所があるが、本人はいつか立派な式神になる為にマヨヒガで日々修行を続けている。

 

 

アリス・マーガトロイド

 

種族:魔女(人形使い)

 

能力:魔法を扱う程度の能力(人形を操る程度の能力)

 

身長:162cm

 

代表的なスペルカード:試験中「レベルティータニア」

 

キャラ説明:魔法の森に棲む魔理沙ともう一人の魔女。

人形を生きているかのように操る達人で、人形作りが得意。

いつか完全自立型の人形を作る事を夢見ている。

噂ではあるが、彼女は実は魔界の王の娘と名前が同じで、容姿もかなり似ているらしく、何かしらの関係があるのではないかと言われている。

しかし人当たりが良いので、人里の人間からは評判が良い。

しかも人形劇を里で開くことがあり、そのお陰で子供たちからの人気も上々だ。

 

 

魂魄妖夢

 

種族:半人半霊

 

能力:剣術を扱う程度の能力

 

身長:160cm

 

代表的なスペルカード:断命剣「瞑想斬」

 

キャラ説明:冥界のお屋敷で庭師をする少女。

腰に携えた二本の刀はそれぞれ特殊な能力があり、白楼剣は代々魂魄家に伝わる家宝で、人の迷いを断ち切ると言われている。

彼女には魂魄妖忌という剣術の師匠がいるのだが、100年ほど前に姿を消し、何処に居るのか全く分からない。

しかし妖夢は未だに妖忌からの教えを守っており、毎日稽古を続けている。

そのおかげか彼女の実力はかなり高く、今まで本気で戦った事は一度も無い。

ちなみに本気を出せば大妖怪に匹敵する戦闘力を発揮できる。

天敵は幽々子の食事時間。

 

 

西行寺幽々子

 

種族:亡霊

 

能力:死を操る程度の能力(不老不死、もしくは既に死んでいる者には効果が無い)

 

身長:164cm

 

体重:不明(恐らく存在しない)

 

代表的なスペルカード:桜符「完全なる墨染めの桜 封印」

 

キャラ説明:1000年程前に亡くなった冥界の管理をする亡霊の女性。

かの有名な詩人、西行法師の娘である。

若くして亡くなった彼女は生前から死を誘う力を持っており、それと同じ力を持つ西行妖という桜の木を封印するために体を封印する媒体として使われている。

亡霊となった幽々子は生前の記憶が無く、生前と没後の幽々子は全くの別人と言っても過言ではない。

ある日、彼女が白玉楼の蔵へ足を運んで面白そうなものが無いか探していると、一つの古い書物を発見する。

その書物には

 

「西行妖が目覚める時、封印の術が解かれ、亡骸に魂が還る」

 

と書かれていて、興味本位でそれを復活させようとした。

後の愁雪異変である。

ちなみに、もし西行妖が復活して幽々子が人間に戻ったとしても所詮は人間の体。

1000年という永い時間には耐えられず残っている筈も無く、幽々子は復活した瞬間死ぬ事となる。




異変があるたびにこうして設定を入れるつもりです。
主人公格ではないキャラなので、リュウト達ほどは詳しく書いておりません。
フラグが立つわけでもないですからね。
次回は永夜抄です。


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28話※

さあ!気分を引き締めましょう。
今回は新キャラ登場回です、ちゅんころさんに描いてもらいました!書いてる途中で文章おかしくなってたらスイマセヌ。
それではどうぞ


今日も博麗神社はのどかな時間が流れている、そんなまったりとした空気の中、ここの巫女の博麗霊夢は居間で昼寝を満喫していた。

 

 

霊「くー・・・スピー・・・スピー・・・」

 

 

なんとも可愛らしい寝顔を仰向けで晒しながら寝ている、勿論脇も。

しかし、静かな時が流れるなか、この博麗神社に奇妙な来客が現れる。

 

 

キィィィィィィィィィィン...

 

 

突如耳鳴りのような音が外から聞こえてくる、そして・・・

 

 

ドォォォォォン!!!!

 

 

その音の主は博麗神社の境内に落ちた。

衝撃によって起きた爆風と破壊的な音によって、居間はメチャクチャになり、霊夢はビックリして起きてしまう。

 

 

霊「ひゃぁあ!?は?え!?」

 

 

霊夢はさっきまで寝ていたのにすっかり目が覚めてしまい、それどころかパニックになっていた。

そして境内から大量の土煙が舞っている事に気付き、縁側から急いで外に出ようとした、しかしその行く手を阻む者が現れた。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

?「ン?ここは神社だったのか、良くわからないまま降りたから気づかなかった。

君はここの巫女か何かか?」

 

霊「・・・・・・だれ??」

 

 

いきなり目の前に現れた男に、霊夢は首を傾げるしかなかった。

 

 

 

~博麗神社、居間~

 

 

霊「じゃあ話を聞く限りあれはあんたの仕業なのね?」

 

?「そうだ、着地に失敗してしまってな」

 

 

霊夢はとりあえず男を家に上げて、博麗神社に来た用件を聞くことにしたのだが、どうやら話を聞く限り、この男はあの土煙の大元の原因を作った張本人だったようだ。

その後霊夢は外の様子を見てみたのだが、そこにはもはや原形を留めていない残骸と巨大なクレーターがあるだけだった。

霊夢はちゃぶ台越しに男と対面するように正座で座り、冷静になろうと深呼吸をする。

 

 

霊「・・・そうよ、こういうときこそ冷静になるの。

そういえば名前を聞いてなかったわね、私は博麗霊夢、あんたは?」

 

?「周りからは零夜と呼ばれている」

 

霊「そう、零夜ね、じゃあ零夜、早速本題に入るけど・・・」

 

 

スッ...

 

 

霊夢は立ち上がり、零夜に近づいていく。

その手は握り拳になっており、有り得ないほどの力が込められていた、そしてその拳を大きく振りかぶり・・・

 

 

ゴチィーーーーーン!!!!!

 

 

零夜の頭にクリティカルヒットさせた。

その衝撃で零夜の頭はそのまま畳に叩きつけられた、そしてその頭には巨大なたんこぶが出来ていた。

 

 

バァァァァァァン!!!!

 

シュ~...

 

 

零「何をするんだ、痛いじゃないか」

 

霊「あんたは何て事してくれるんじゃあああああああ!!!!!!!」

 

 

思いっきり怒鳴り声を挙げる霊夢、それもそうだ、神社の外をこんなにされれば怒りたくもなるだろう。

それにしてもこの男、冷静過ぎはしないだろうか。

 

 

零「そんなに怒ることは無いだろう?俺が直せばいい話なのだからな」

 

霊「当たり前でしょ!!!今すぐ直しなさい!!今日中に!!」

 

零「あ、あれを一人で直すのか?今日中には無理だぞ」

 

霊「うっさい!誰か来る前に直すの!!良いわね!?」

 

零「し、しかし・・・」

 

霊「い!い!わ!ね!(怒)」

 

零「・・・わ、わかった、できるだけ努力しよう・・・」

 

 

霊夢のとてつもない覇気に零夜ははいと答えるしかなかった、そして数時間が経過した。

 

 

霊「あいつ、サボらずに片付けてるかしら?」

 

 

零夜の様子が気になった霊夢は少し様子を覗いてみることにした。

 

 

霊「どれどれ・・・あら?」

 

 

縁側の柱の隅から様子を見ると、黙々と作業をしている零夜の姿があった。

今は大穴を埋めているらしく、大量の土を何処からか運んできては一生懸命中に入れていた。

見た目の第一印象から零夜には真面目なイメージがなかったので、ちゃんとやっている姿に少し意外性を感じた。

声を出すと除いているのがバレてしまうので、霊夢は静かに観察することにした。

 

 

霊「(意外とちゃんとやってるじゃない、案外いいやつなのかも知れないわね)」

 

 

霊夢は心の中だけで零夜を誉める、そして暫く見ているとすっかり穴が塞がっており、すっかり元通りになっていた。

 

 

零「はぁ・・・次は灯籠だな、石を探してこなければ・・・」

 

 

そう言って零夜が何処かへ行こうとした瞬間、

 

 

霊「待って!」

 

 

霊夢がそれを止めた。

零夜は何故止めるのかを問う。

 

 

零「博麗、どうした?今から灯籠を作り直そうとするとこなのだが」

 

霊「でもずっとやってて疲れたでしょう?休憩にしましょ」

 

 

霊夢は優しい声で休憩するよう零夜を居間に誘い、中に戻っていく。

零夜もその後を追うように縁側から入っていった。

 

 

~居間~

 

 

霊「はいどうぞ、さっきはお茶も出してなかったものね」

 

零「すまない、境内を破壊してしまったのにこんな気遣いを・・・」

 

霊「良いのよ、お茶を出すくらい、それにまだ聞きたい事もあるしね」

 

 

霊夢は零夜に冷たいお茶を出す、零夜は胡座で霊夢は正座を崩した座りかたをしている。

二人とも楽な体制になると、霊夢が零夜に質問をしだした。

 

 

霊「さっき貴方、地上に降りてきたって言ってたけど、もしかして天界から来たの?」

 

零「いや、俺はさらに上の世界から来た」

 

霊「さらに上の世界?」

 

零「あぁ、神界だ」

 

霊「し!神界!?」

 

 

霊夢は余りの衝撃的事実に持っていたお茶を溢しそうになる、驚くのも無理は無い、なんと零夜は神々の世界から来たというのだ。

神界とは、地上とは別の次元にある神々の集う楽園である。

確認した者が居ないため、あるのかどうかもわからない空想の土地だと思っていたが、まさか本当に実在したとは思っていなかったのだ。

そしてそこから来たと言うことは・・・。

 

 

霊「じゃあ・・・零夜ってもしかして?」

 

零「察しが良いな、俺は神だ。

昔はトール神と呼ばれていたな」

 

 

やはり零夜は神だった。

ちなみに神は人間や妖怪とは一段階別次元の存在なので、通常の人間や妖怪は神力を感じられない。

それを知っていた霊夢は零夜の力を感じようとしたが、いくら探っても全く感じられない。

どうやら嘘はついていないらしく、彼は本物の神のようだ。

 

 

霊「・・・力を感じられない・・・本当に神みたいね。

そのトール神?って言うのは聞いたこと無いけど信じる事にするわ」

 

零「別に信じてほしかった訳ではないのだが・・・まぁ嘘つき呼ばわりされるよりは良いか」

 

霊「まぁいいわ、で?その神様が地上に何の用なのかしら?」

 

零「実は向こうで揉め事を起こしてしまってな、あの世界に居られなくなってしまったんだ」

 

 

霊夢は聞いて呆れてしまった、まさかケンカだったとは。

しかしそうなると一つ問題が起きる。

 

 

霊「ねぇ、一つ聞いていい?」

 

零「なんだ?」

 

霊「住むとこ、どうするの?」

 

 

零夜の住む場所が幻想卿にあるのかだ。

この調子だと絶対に考えていないだろう、そしてそれは案の定だった。

 

 

零「まぁなんとかなるだろう、いざとなれば何処か隠れ家でも探すさ」

 

 

零夜は一息ついて落ち着いた表情でお茶を飲む。

その呑気さに霊夢はさらに呆れてしまった。

この男、結構・・・いや、かなり適当過ぎやしないだろうか?

仕方ないので霊夢は溜め息混じりにこう言った。

 

 

霊「はぁ・・・仕方ない、泊めてあげる、暫くの間ね」

 

零「何だって?」

 

霊「泊めてあげるって言ったの」

 

 

まさかの展開に零夜は戸惑ってしまう。

初対面の相手を簡単に泊めさせて良いのだろうか。

しかし霊夢はあまり気にしていないようだ。

 

 

零「しかし・・・本当にいいのか?」

 

霊「良いわよ、悪いやつじゃ無さそうだし、それにこの神社意外と広いから一人増えたくらいじゃどうってこと無いわ」

 

零「済まない、何から何まで世話になってしまって・・・」

 

 

申し訳無さそうに言う零夜だが、霊夢が只で居候などさせる訳が無い。

と言ってもそこまで酷いことを差せるではないが。

 

 

霊「まぁその代わりに色々手伝って貰うわよ?喩え神様でもね」

 

零「構わんさ、寧ろそれでいいのなら喜んで引き受けよう」

 

霊「そう、じゃあこれから宜しくね零夜♪」

 

零「あぁ、よろしく頼むよ」

 

 

 

博麗神社のパーティが一人増えました。




最後どうすればいいかわからなくなって適当になりやした。
序盤は良かったんですけどねぇ…まぁよしとしましょう。
ちなみに零夜は仮の名前で本名はトール神です、北欧神話の神様ですね、かなり有名です。
能力もそれに関連してます。

評価または感想待ってます!ダメ出しOK 構いません!!
ではまた来週グッドバイ


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29話※

ずっとやりたいと思っていた話がとうとう出来ました!こういうのやってみたかったんですよ!いや~嬉しいです。この話は三話ぐらい使って書きたいですね、ではどうぞ


博麗神社の騒動があったその日、紅魔館では別の事件が起きていた。

 

 

~大図書館~

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

リ「・・・は?」

 

咲「こ、これは・・・」

 

パ「どうしてこうなった・・・」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

時は30分前に遡る。

 

~30分前~

 

 

リュウトは小悪魔から、剣が完成したとパチュリーが言っていたのでと報告されて、今は大図書館に来ているのだが、パチュリーの姿が見当たらないので困っていた。

ちなみに小悪魔は、外の薬草庭園に用があると言って外出してしまったため案内を頼めなかった。

 

リ「パチュリーの奴、 何処にも居ないじゃないか。

何処へ行ったんだ?

・・・ん?なんだこれは?」

 

 

今リュウトの足元のの床下には謎の魔方陣が描かれている、そして気になったリュウトは詳しく見るためにその中に入ってしまった。

 

 

ヴォン

 

 

そして突如魔方陣が光出し、起動させてしまったのだ。

それを手洗いから丁度帰ってきたパチュリーが止めようとしたのだが・・・。

 

 

パ「あー!リュウト!早くそこからにげて!」

 

 

時既に遅し・・・。

 

 

ボォォォォォン!!!

 

 

魔方陣から爆発したように煙が出て、その中にいたリュウトは子供になってしまったのだ。

さらにそこへおやつのクッキーを持ってきた咲夜がやって来た。

 

 

咲「パチュリー様クッキーを・・・って一体どうしたんですか!?」

 

 

図書館に入ってみれば煙まるけなのだから驚くのは無理もないだろう。

しかし咲夜にとってもっと驚くべき出来事が現在進行形で起きていた。

 

 

リ「・・・は?」

 

咲「こ、これは・・・」

 

パ「どうしてこうなった・・・」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そして今に至る。

 

 

リ「どうなってるんだこれは!?」

 

咲「小さいですね・・・」

 

パ「えぇ、小さいわね」

 

 

今の状況がカオスすぎてリュウトはパニックになり、咲夜はそんなリュウトをみて唖然とし、パチュリーは何故か落ち着いている。

すると庭園から薬草を取ってきた小悪魔が図書館へ戻ってきた。

 

 

小「パチュリー様、必要な植物を採取してきました~。

あれ?その子誰です?」

 

パ「リュウトよ」

 

小「え?リュウトさん?」

 

 

小悪魔はテーブルに薬草を置いてリュウトに近づき顔をまじまじと見る、するとどうやら気づいたようで、凄く驚いている。

 

 

小「あ!ホントだ何となく面影があります!」

 

リ「そんなにジロジロと・・・。

見世物じゃないぞ俺は」

 

小「口調もリュウトさんだ!!」

 

リ「・・・めんどくさい奴だな、こいつ」

 

 

若干小悪魔に呆れ気味のリュウトだが、もとはといえばこの男

が魔方陣にうっかり入った事が悪いのだ。

文句は言えまい。

しかしこうなってしまったものは仕方が無いため、打開策が出来るまではリュウトはこのままだ。

そしてこれからの事について久しぶりに紅魔館緊急会議が行われたのだった。

 

 

~紅魔館緊急会議室~

 

レミ「えー・・・。

久し振りの緊急会議なんだけど。

これは一体どういう事なの??」

 

 

現在レミリアの目の前には、咲夜の膝に座って抱えられているリュウトがいた、そして隣には目をキラキラさせている妹がいた。

この状況に誤解を招くと考えたリュウトは、自分の意志でないと否定しようとするが、膝に乗せている咲夜が満更でも無い様子でニコニコしながら説明しだす。

 

 

リ「いや、これはちが」

 

咲「すみませんお嬢様、椅子に座っても顔の半分程がテーブルで隠れてしまいますので膝の上に乗せさせて頂いております」

 

レミ「何で貴女がそんなに嬉しそうなの??」

 

咲「いえ、余りに愛らしかったので・・・」

 

レミ「あぁ、満更でも無いのね」

 

フ「なんだか弟が出来たみたい!

私は嬉しい♪」

 

リ「嬉しくない!!!泣」

 

咲「あらあら、フラン様苛めてはいけませんよ?」

 

リ「子供扱いするなぁ!泣」

 

 

本気で嫌なのか、リュウトは涙目でジタバタしながら全否定する。

このまま行くと会議が進みそうにないのでパチュリーがまとめあげようとする。

 

 

パ「はいはいそのくらいにして、今はどうするか話し合うべきでしょ?」

 

レミ「別に今まで通りでいいんじゃない?」

 

 

しかし子供の姿でやれることは限られてくるのでやはり考えなければいけない。

 

 

パ「そういう訳にもいかないでしょ、今のリュウトは子供なんだし」

 

リ「子供の姿だからといって嘗めないで貰いたいものだな」

 

咲「小さくなったリュウトさんに説得力あるんですかね?」

 

リ「なっ!

咲夜は味方だと思っていたんだぞ!」

 

フ「今のリュウトは只のお子ちゃまだよ(笑)」

 

リ「お前も同じようなものだろ!!」

 

 

そして暫くの間お子様だとバカにされた。

 

 

~30分後~

 

 

結局話が進まぬまま、最終的にパチュリーの解除魔法が完成するまで出来る限りの咲夜の手伝いをすることとなった。

早い話いつも通りである。

 

 

リ「まぁ、いつも通りと言ったら買い出しだよな。

しかし人里か・・・。

嫌な予感しかしないぞ」

 

咲「安心してください、今回は私も同行させてもらいますので」

 

リ「何も起きなければいいが・・・」

 

 

今、二人は紅魔館の正門前にいる。

今回の買い物には咲夜が同行するが、実質リュウトは咲夜の手伝いだ。

リュウトは空の買い物袋を抱いていざ、人里へ向けて飛び立とうとするが、

 

 

ピョン・・・ピョン・・・

 

 

何故か飛ぶことが出来ない。

 

 

咲「あの、どうされたのですか?」

 

リ「とべないー!!何故だー!!」

 

 

飛べないと叫びながらピョンピョン

跳ねるリュウトに、咲夜は不意に可愛いと思ってしまった。

暫くジャンプしていると、地面から漸く足が離れて滞空しだした。

やっと成功である。

咲夜は心配混じりにリュウトに言う。

 

 

リ「ハァ・・・ハァ・・・飛べたぞ!」

 

咲「無理しなくてもいいですよ?辛いなら館にいても・・・」

 

リ「いや、子供の姿だからといって贔屓される訳にはいかない。

それとも咲夜は俺の事が邪魔か?」

 

咲「そんなわけ無いじゃないですか、リュウトさんの事を邪魔だなんて思ったりしませんよ。

さぁ、お買い物にいきましょう、御飯を作る時間が無くなっちゃいますから」

 

リ「あぁ、そうだな」

 

 

二人は人里へ向けて飛び立った。

 

 

咲「あ!はぐれるといけないので手を繋ぎましょう!」

 

リ「だから子供扱いするな!」

 

美「行ってらっしゃ~い」

 

 

つづく

 

 




本当は記憶が無くなる方向で話をすすめたかったんですけど思い付かなかったんですよね、だから急きょ記憶アリの話になってしまいました。若干スケットダンスのパクりみたいになってしまいましたがこれはわざとではないです、本当です。
ちなみにあの魔方陣はパチュリーが若返りの研究をしていた時に書いたものです。没案になったものを消し忘れたままトイレに行ったときにリュウトが起動させちゃったって訳です。


評価&感想待ってます!!ダメ出しコメント構いません!むしろありがたいです!
これからもよろしくお願いいたします。


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30話※

もう30話です。
話が全く進まないのでこれからスピードアップさせたいと思います。


咲夜は人里に着くと、今日買うものをメモした紙を取り出して早速店を廻りだした。

 

 

咲「今夜はビーフシチューにしようと思うので、まずはお肉を買いにいきましょうか」

 

リ「了解した。

・・・なぁ咲夜」

 

咲「はい?何でしょう」

 

リ「・・・いつまで手を握っているつもりなんだ・・・?」

 

 

リュウトと咲夜は紅魔館を出てからずっと手を握っている。

そもそも握ってきたのは咲夜なのだが、いつまで経っても離す気は無さそうだ。

別に手ぐらい握っていてもと思うが、リュウトは兎に角咲夜と手を握りながら歩くのが嫌だった。

嫌いだからではない、ただでさえ見た目が幼くなっているというのに更に幼く見えてしまうからだ、これでは仲良く買い物に来た姉弟である。

なので放すよう説得してみることにした。

 

 

リ「俺は大人だぞ?

それに人里くらい何回も来てるんだから迷子になんかならん」

 

咲「でも今は子供ですよ?

お姉さんの言うことはちゃんと聞かなきゃダメなんです♪」

 

リ「バカにしてるだろ!!!(怒)」

 

 

かつて無いほどニコニコしながら言ってくる咲夜に少しムカついたが、多分もう何を言っても無駄なのでリュウトは無理矢理引き離す事にした。

 

 

リ「もう頼まん!無理矢理放させてやる!」

 

咲「あっ!わ!ちょっと!リュウトさん!」

 

 

リュウトは握っている右手をブンブン振り回す。

咲夜はリュウトに振り回されてしまい、手を離してしまった。

 

 

リ「はぁ・・・やっと離れたか。

もう繋がないからな!」

 

咲「やれやれ反抗期ですか、お姉さんは悲しいです」

 

リ「バカにしやがってぇ~(怒)

もうさっさと買い物済ませて帰る!」

 

咲「もうっ、そんなに怒らなくてもいいじゃないですか」

 

 

リュウトがさっさと前を歩いていくので咲夜はそれを追いかけるように後ろを歩く。

すると早くも精肉店が見えてきたので二人は立ち止まる。

その精肉店は顔見知りの店主がいるところで、無精髭を生やした白髪の親父がいる店だった。

店の中にいる親父に咲夜は挨拶をした。

 

 

咲「叔父さん、こんにちわ」

 

親父「おお!咲夜ちゃんじゃねえか!

ん?そこのちっちゃい坊主は弟か何かか?」

 

リ「まぁわかってたさ、こんなナリだから仕方が無いな・・・」

 

 

親父は見かけない子供を連れている事に気づき、ここで咲夜がネタバラシをした。

 

 

咲「あの・・・その子リュウトさんなんです・・・」

 

親父「んぁ?リュウトぉ?

あのアンちゃんがこんなちっせぇ訳ねぇじゃねぇかよ?」

 

リ「それが本当なんだなこれが」

 

親父「大人からかっちゃいかんぞ坊主・・・ありゃ?

でも確かに顔に面影があるなぁ」

 

リ「わかったらもうこの話題に触れないでくれ、これでも落ち込んでいるんだ」

 

 

げんなりしているリュウトを見て親父は腹を抱えながら大爆笑した。

 

 

親父「ハッハッハ!こりゃ参ったな!

まさか本物とは!

いやはや恐れ入った!

ぶっ!イッヒッヒッヒ!!」

 

リ「そんなに笑う事ないだろ、結構大変なんだぞこの格好は。

着る服も無いんだからな」

 

親父「悪い悪い、でも。

ブフッハッハッハッハ!!笑えちまうんだよ!!

可笑しくって可笑しくって!」

 

リ「顔見知りに会うたびにこんな反応をされるとなると何だか嫌になってしまうな」

 

咲「中には普通に接してくれる人もいるかも知れないですよ?」

 

リ「・・・極少数じゃないのか?」

 

 

気づかないうちに親父の笑い声が小さくなってきた。

そろそろ落ち着いてきたようだ。

なので手早く牛肉を購入しようとしたのだが・・・。

 

 

親父「あー、良いもの見せてもらったぜ。

お礼に安くしとくよ!

何でも好きなもん買ってきな!

半額にしてやる!」

 

 

なんと半額にしてくれたのだ、これは嬉しい申し出だ。

しかしその代わりにリュウトは醜態を晒すこととなってしまった。

なので咲夜はおお喜びだったが、リュウトはあまり嬉しそうではなかった。

 

 

咲「まぁ!嬉しいですわ!

リュウトさん良かったですね!」

 

リ「その代わり俺の魂に傷がついたけどな」

 

親父「まぁそういうなよ。

今度は元に戻った状態で来てくれよな」

 

リ「はいはいわかってるよ、元に戻れるかはわかんねぇけどな。

牛肉を三キロくれ」

 

親父「あいよ!全部で三千くらいかな」

 

 

リュウトは牛肉を三キロ購入し、それを受け取る。

その様子を見ていた咲夜が持つのを手伝おうとしたのだが、軽くリュウトは断った。

 

 

咲「私が持ちましょうか?」

 

リ「力は前より少なくなってはいるがそれでも三キロくらい余裕さ」

 

咲「そうですか、でも辛くなったらいつでも言ってくださいね?意地を張る必要なんて無いんですから」

 

リ「わかってるよ」

 

 

仲の良い姉弟のように会話をしながら二人は店を去っていった。

親父はその様子を後ろから見ていた。

 

 

親父「結局仲良いんだなあの二人は、全くお似合いだぜ」

 

奥さん「貴方~、お客さんよ~」

 

親父「らっしゃい!何を買っていくんだ?」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

リ「次はじゃがいもとニンジンか?」

 

咲「あとブロッコリーも買っていきます」

 

リ「よし、じゃあさっさと買っちまおうぜ」

 

 

咲夜が再びメモを取り出して、八百屋に着いてから買う野菜をチェックする。

リュウトはそれを確認すると八百屋に足を向けた。

人里事態が目茶苦茶広い訳では無いため八百屋までの道のりはそんなに遠くはない。

 

 

リ「ニンジンとじゃがいもとブロッコリー・・・お!あったぞ咲夜」

 

咲「とりあえず6つずつ買っていけば足りると思います」

 

リ「6つずつだな?わかった。

親父ぃ、これとこれとこれ、6つずつくれ」

 

店主「あいよおチビさん!」

 

リ「うるさい!チビじゃない!」

 

咲「あらあら、フフっ♪」

 

妖「あれ?咲夜さんじゃないですか、お買い物ですか?」

 

 

咲夜が名前を呼ばれた方向を向くと、そこにいたのは妖夢だった。

妖夢も買い物らしく、背中には大量の野菜や魚、肉が入っていた。

もしかしなくてもあれを持ち帰るつもりなのだろうが、見た感じ80キロは有りそうである。

あれを二人で食べきるのは些か無理があるのではないかと思ったのだが、本人はこれで三日分だと言う。

すると妖夢はリュウトの存在に気がついたようで、咲夜に質問をした。

 

 

妖「あのー・・・そちらのお子さんはもしかして・・・」

 

咲「あぁ、この方は」

 

妖「咲夜さんの息子さんですか?」

 

咲「・・・、は?」

 

 

咲夜は状況が理解出来なかったが、妖夢は話を進めていく。

 

 

妖「いや~咲夜さんがまさか1児の母だったとは!尊敬してしまいますね~」

 

咲「え!あのっちょっと??」

 

妖「料理は上手で掃除も得意、おまけにとびきり美人だなんて、お子さんにとっては自慢のお母さんなんでしょうね!」

 

咲「いや、だから・・・」

 

妖「あれ?でもお父さんは誰になるんだろう?あ!リュウトさんがお父さんなのか!とっても素敵ですね!憧れます♪」

 

咲「話を聞いて下さーーい!!!」

 

リ「・・・俺、空気だな・・・」

 

 

 

~咲夜説明中~

 

 

 

妖「すいませんっ!すいませんっ!私が早とちりしてしまったばっかりに!」

 

咲「良いんですよ別に、誰だってそう思うだろうし・・・」

 

 

咲夜が事の経緯を全て妖夢に話して誤解を解くと、妖夢は物凄い勢いで謝った。

リュウトが何故あの時口を挟まなかったかと言うと、既にこうなる展開が読めていて、殆ど諦めていたからである。

しかし妖夢の他にもう一人、しかもこの状態で絶対会いたくなかった人物が此処に現れてしまった。

 

 

文「あやや、珍しいですね!お二人でお買い物ですか?」

 

咲「あら、珍しいわね人里に居るなんて」

 

リ「何?うわ!よりにもよってこいつが来るとは・・・」

 

 

三人の前に姿を現したのは、人里を一人で歩いていた文だった。

文は手にカメラを持っていて、ネタ探しの為に来ているのは明白だった。

その為リュウトはバレないように身を隠そうと、店の中へ入ろうとしたのだが・・・

 

 

咲「リュウトさん?何処へ行くんですか?」

 

 

咲夜に呼び止められてしまった、しかも名前まで呼ばれて。

ここまで咲夜が空気を読めないとは思っていなかったリュウトだったが、その前に咲夜に察してほしかったと心の底から思った。

そして仕方がないので文にも事の経緯を説明した。

 

 

~またまたメイド説明中~

 

 

文「アハハハハ!!!やってしまいましたねリュウトさん!」

 

リ「クソッ他人事だと思って笑いやがって・・・」

 

妖「でもここまで小さいと何だか母性本能が擽られますね」

 

咲「そうなんですよね、まるで子供が出来たみたいなんです」

 

文「愛されてますね~、マスコット状態じゃないですか」

 

 

パシャパシャッ!

 

 

リ「写真を撮るな写真を」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

妖夢に頭を撫でられてムスッとしている様子を文に写真に納められ、一刻も早く元の姿に戻りたいと願うリュウトなのであった。

 

 

リ「というか咲夜、買い物は良いのか?」

 

咲「あ、忘れてました」

 

リ「・・・ハァ・・・」




知名度が低いせいか中々感想等のコメントが来ないんですよね、自分としては読者の感想は貴重なのでもっとほしいところです。


てなわけで感想&評価待ってます!!


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31話

この話はこれで完結なので、文字数がいつもより多めです。でもここまで長くなるとは思っていなかった、、、ではどうぞ


買い物を終えた二人は紅魔館へ帰ろうと空を飛ぼうとしたのだが、荷物が重くてリュウトが飛べず、仕方なく二人で森を歩きながら帰ってきたのだが、紅魔館に着いた頃には日が傾き始めていた。

 

 

リ「体が小さいと本当に不便だな、大人の体に早く戻りたい」

 

咲「まぁまぁ、パチュリー様が解除魔法を作るのも時間の問題ですよ」

 

リ「それもそうだな」

 

 

喋りながら二人が歩いていると、門番をしている美鈴の姿が見えた。

紅魔館正門に到着すると、美鈴が門を開けてくれた。

 

 

美「お帰りなさい咲夜さん、リュウトさん。

今日は歩いて帰ってきたんですね?」

 

リ「俺が飛べなくてな、そのせいでで咲夜に迷惑をかけてしまった」

 

咲「気にしなくて良いんですよリュウトさん。

おかげでゆっくりお話出来たんだし」

 

美「子供の姿なんだから少しくらい甘えても罰は当たらないと思いますよ?」

 

リ「小さくなったのは体だけだろ?

中身はそのままなんだ、俺にだってプライドがある」

 

美「勿体ないなぁ…まぁそれでリュウトさんがいいなら私は何も言いません。

門を開けるので下がってください」

 

 

そう言うと美鈴は腕に力を込めて、思いっきり門を押す。

何気に重い鉄格子の扉がゆっくりと開いていった。

 

 

美「どうぞお通りください、何なら荷物持ちましょうか?」

 

咲「ありがとう、でもいいわ。

どうせあとちょっとだから」

 

美「そうですか、では引き続き門番をしますね」

 

咲「えぇ、お願いね」

 

 

二人は門を後にし、紅魔館へと入っていった。

扉を開けると大ホールが姿を現し、目の前には二階へ続く大きな階段がある。

二階の廊下の先には食堂がある為、リュウトは二階へ登り、長い廊下を歩いていく。

すると廊下の柱の陰からチラチラと宝石のついた枝のようなものがちらついていた。

 

 

リ「フラン、何してるんだそんなところで?」

 

フ「あ!帰ってきた!」

 

 

隠れていたのはフランで、フランはリュウトの声が聞こえると、トテトテと走ってきてリュウトの手を引っ張った。

 

 

フ「ねぇリュウト!今からお姉ちゃんと三人でトランプして遊ぼう!」

 

リ「おいおい、今から夕飯の準備だぞ?

咲夜の手伝いしなきゃならないのに出来るわけ」

 

咲「夕食くらい自分一人で作れるのでどうぞ遊んであげてください♪」

 

リ「即答だな・・・まぁ良い。

咲夜の許可も降りたし、付き合うとしよう」

 

フ「やったぁ!早くいこう!」

 

 

ガシッ!ズサササーッ...

 

 

リュウトの手を思いっきり引っ張りながらフランは走っていく。

体が小さくなったリュウトは成されるがままに引きずられていき、その姿は滑稽にも思えた。

 

 

リ「いだだだだだ!!!

そんなに強く引っ張らなくてもついていくからやめないか!!」

 

フ「いえーい!」

 

リ「聞けよ!」

 

 

タッタッタッタッタ....

 

 

咲「年の近い姉弟みたい・・・」

 

 

咲夜は二人を見送り、そのままキッチンへ向かった。

 

 

~レミリアの部屋~

 

 

レミ「来たわねリュウト?じゃあ早速始めましょうか?」

 

フ「やろうやろう!最初はババ抜きがいい!」

 

リ「元気良すぎだろ!!!」

 

 

フランはゴメンゴメンと笑いながら謝り、三人で丸いテーブルを囲むように座る。

レミリアがポケットからトランプを出して、フランのやりたがっているババ抜きをする為にトランプを一枚ずつ配っていく。

 

 

レミ「じゃあ最初はババ抜きね、カードは伏せておいてね」

 

リ「オーケー、触れないでおこう」

 

フ「私も~」

 

 

リュウトとフランは如何様をしないために手を上に上げ、ピラッピラッっとカードの弾く音だけが聞こえてくる。

全員に配り終わると、三人とも同じ数のカードを出していき、最終的に一番カードが少なくなったのはフランだった。

今の所ジョーカーを持っている人物はわからない。

弾幕ごっこよりもはりつめた空気の中、ババ抜きはスタートした。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

~食堂~

 

 

咲「あの、お嬢様?何かあったのですか??」

 

レミ「もうトランプは見たくない・・・」

 

フ「私も・・・二度とリュウトと賭け事なんてしないよ」

 

リ「ふん!自業自得だ」

 

 

レミリア、フラン、リュウトはあれから夕食時までトランプでずっと遊んでいたのだが、途中から遊ぶだけではつまらないと言ってギャンブルになったのだ。

その最中、二人はリュウトを陥れようとしたらしいのだが、リュウトがそれを悟って逆に追い詰めたらしい。

おかげで二人のポケットマネーは完全に無くなり、凄く後悔しているらしい。

代わりにリュウトの懐が潤ったが。

 

 

咲「確かに自業自得ですね」

 

パ「というか手を組んでも負けたのね」

 

レミ「うぐっ・・・」

 

美「まぁまぁ、そのくらいでいいじゃないですか?」

 

フ「メイリ~ン(泣)」

 

咲「そうですね、折角のビーフシチューが冷めてしまいますわ」

 

レミ「じゃあ頂くととしますか」

 

全員「「「「「「「頂きます!!」」」」」」」

 

 

時刻は夜の七時。

夕飯のビーフシチューは好評だった。

ちなみに食事中も色々な話題が飛び交ったが、大半は人里で起きたリュウトの珍事件の話で、全員が爆笑し、リュウトは明日の文々。新聞の内容がとんでもないことになっていないか心配になった。

 

 

~リュウトの部屋~

 

 

リ「ハァ・・・。

今日はとんでもない一日だったな」

 

 

食事が済んだあと、リュウトは自分の部屋に戻ってベッドに飛び込んだ。

そしてそのまま寝てしまいそうになったのだが、

 

 

リ「いかんいかん、風呂に入らなきゃな」

 

 

風呂に入ってないことを思い出す。

精神と肉体疲れを癒すためにリュウトは浴室へ向かおうとするが、部屋を出る前に外からノックの音が聞こえてきた。

 

 

咲「リュウトさーん、いますかー?」

 

フ「リュウートー!」

 

 

声の主はフランと咲夜だった。

何の用かわからなかったが、部屋を出るつもりだったので扉を開けた。

 

 

リ「なんだ?今から風呂に入るのだが?」

 

 

その言葉を聞いて二人はニヤリと笑う。

リュウトは直感的に嫌な予感がした、そしてそれは的中していた。

 

 

フ「丁度良かった ♪私たちも今からお風呂場に行くんだ、それでね?

リュウトも一緒に入らないかな?」

 

リ「・・・・・は?」

 

 

こいつ今何て言った?リュウトは頭の中が混乱していた。

そして思考停止状態のリュウトを咲夜とフランが強制的に浴場まで連れていこうとした。

我に返ったリュウトは抵抗をする。

 

 

リ「・・・ハッ!?

やめろぉ!何をするんだぁぁ!!」

 

フ「うるさいなぁ、静かにしてよね」

 

咲「そうです、大人しくお縄についてください」

 

リ「俺が何したってンだよぉ!!!」

 

 

ジタバタと抵抗するも、全くの無意味に終わり、結局リュウトはまたフランに引きずられることとなった。

 

 

~大浴場~

 

 

リ「クソッ、こんなことしてただで済むと思うなよぉ...(泣)」

 

フ「あはは!リュウトすっぽんぽんだ!」

 

 

脱衣所に到着した二人はリュウトの服を脱がそうとしたのだが、暴れるので咲夜が時間を止めて強制的に脱がせた。

気がついたら素っ裸なのでリュウトはタオルで下半身を隠して半泣き状態になり、フランはそれを見てケラケラと笑った。

そして二人も服を脱いでタオルで体を隠し、逃げようとするリュウトを捕まえ浴場へ入っていった。

 

 

咲「そんなに拒否しなくてもいいではありませんか、子供の姿なんだから不思議なことではない筈ですよ??」

 

リ「だ・か・ら!!

中身は変わってないと言っているだろ!!

何時もの俺に裸を見せてるようなもんなんだぞお前ら!!」

 

フ「リュウトもしかして興奮してるの?」

 

リ「違う!!!!ったく。

面倒だからもうこのまま風呂に入ってやる」

 

 

抵抗するのも面倒臭くなり、リュウトは椅子に座ってシャンプーを使って頭を洗う。

早く出たい一心で適当に頭を洗うと、後ろからフランがちゃんと頭を洗うように注意してきた。

 

 

フ「こら!ちゃんと頭洗わないと汚いでしょ!」

 

リ「男はこれくらいが丁度いいんだ」

 

フ「だーめ!私が洗い直してあげる!」

 

 

そう言ってフランはリュウトの頭にシャンプーを付けて洗い出す。

これがなかなか気持ちよくて、リュウトは病み付きになってしまった。

 

 

リ「おぉ・・・気持ちいいな・・・」

 

フ「良いお手本がいるからね!エヘヘ♪」

 

咲「あらあら、お褒め頂き光栄です。

フラン様、頭お洗い致しますわ」

 

フ「ありがと咲夜!」

 

 

三人は上から順にお母さん、お姉ちゃん、弟といった感じで頭を洗いっこする。

そしてリュウトが頭を洗い終わると、今度はリュウトが咲夜の頭を洗う。

リュウトも最初は断ったのだが、フランに頭を洗ってもらったのでフランに何も言い返せず、渋々洗うことにした、しかしタオル越しとはいえ裸の、況してや咲夜の色気たっぷりの身体を後ろからずっと見ているなんて出来ないリュウトは目のやり場に困りながら頭を洗っていた。

そして身体を洗い入浴。

 

 

カポーン....

 

 

リ「はぁ~、いい湯だなぁ~。

湯船の気持ちよさは男湯と変わらないなぁ~」

 

 

お湯に浸かるとリュウトは湯船にもたれ掛かって思いっきり寛ぐ。

その後フランと咲夜も続いて湯船に浸かる。

お湯には入浴剤が入っていて若干濁っていたが、リュウトは二人を見ることが出来なかった。

 

 

咲「一日の疲れが吹っ飛んでしまいますね~」

 

リ「なぁ、いくら今まで男が居なかったからって節度が無さすぎないか?」

 

フ「私はこう見えても立派な大人だから別に気にしないわ♪こんなに楽しくなるんならお姉ちゃんも来れば良かったのに」

 

リ「レミリアはどうせ断ったんだろ?

レミリアは常識人だからな」

 

 

ボォォン!!!

 

 

会話の途中、突然リュウトが爆発して辺りに煙が撒き散らされる。

いきなりの出来事に二人はパニックに陥るが、煙の中に人影が見えるのに気がついた。

 

 

フ「キャー!何これ!?」

 

咲「ケホッケホッ、フラン様!大丈夫ですか!?」

 

フ「どうしよ!リュウトが爆発しちゃったよ!?」

 

咲「一体何が・・・フラン様?煙の中に人影が・・・」

 

フ「え?」

 

 

咲夜が指を指す方向には確かに大きな人影が写っており、煙に噎せているのか咳き込んでいた。

 

 

フ「もしかしてこれって、、、」

 

 

~大図書館~

 

 

その同時刻、パチュリーは幼児退行の解除魔法を作るために魔道書を読んでいたのだが、途中であることに気がついた。

 

 

パ「あ、これ・・・時間が経てば戻る魔法だったみたい」

 

 

~大浴場~

 

 

立ち込めていた煙が晴れると、中から見慣れた顔の男が姿を現した。

 

 

リ「ゲッホ!何なんだよいきなり・・・?

ん?元に戻ってるぞ!!やったぁ!!!」

 

 

なんとリュウトがもとの姿に戻っていた。

しかし、ガッツポーズをして喜んでいられるのも束の間、次に何が起こるかは誰もが予想出来た。

 

 

咲「き・・・」

 

リ「ん?・・・ゲッ!この展開はまさか・・・」

 

咲「きゃあああああ!!!!!」

 

 

ブゥン!

 

ガゴン!!

 

 

リ「あべし!!!」

 

フ「わぁ!これが修羅場なのね!( ☆∀☆)」

 

 

リュウトの裸を見てしまった咲夜は、悲鳴をあげながら風呂の桶をリュウトの顔面目掛けて思いっきり投げつけ、鼻に直撃したリュウトは鼻血を出しながら転倒した。

その悲鳴は紅魔館中に響き渡り、その日の夜、リュウトはめでたくベッド送りとなった。

一方その頃大浴場の入り口ではレミリアがその様子を覗いていた。

 

 

レミ「いやぁ、良いもの見せてもらったわ!

言わなくて正解だったわね。

あー面白かった!」

 

 

レミリアはこの事を既に予測済で、この事件はレミリアの一人勝ちで幕を閉じた。




今考えてみれば東方のキャラってかなり多いんですよね、どんどん出さないと全員出せないなぁ、、、
美鈴はこの小説の中では割りと真面目です。

感想&評価お待ちしております!


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番外異変32話前編※

投稿遅くなりました!すいません!何故遅くなったのかというと、話が思い付かなかったからです、、、
出来るだけ修正しましたが、多分クソッタレです。
暖かい目で見てやってください


~約8000年前~

 

雑木林の中、二人の金髪の女性が言い争いをしていた。

 

 

「誰が貴様なぞに封印させるか!私は自由に生きるのだ!」

 

 

「五月蝿いやつね、大人しく器に入りなさい」

 

 

片方の女性が念仏のような呪文を唱え始める。すると女性が器と呼称している小娘に、黒服の金髪は吸い込まれるように吸収されていった。

黒服の女は最後にこう言い残した。

 

「必ず私はこの檻から出るぞ!その時は貴様なぞ容易く消し去ってやる!覚えておけ!!」

 

 

___________________

 

 

 

~宵闇異変 Black Out In The World~

 

 

 

ミーンミンミンミンミン・・・

 

 

幻想卿が初夏に入ろうとしていた6月上旬、霊夢は未解決の異変の捜査の為、見回りに出掛けていた。

異変の捜査とは、半年程前、紅魔館で保護されていた今泉影浪を強襲した犯人を捕まえる事だ。

実はあの日の夜、襲われたのは影浪だけでなく、人妖問わず似たような被害を受けていたのだ。

あれ以来そのような事件は起きていないが、犯人が判らない以上、このまま野放しにする訳にもいかず、今でも人里等では警戒が続いている。

しかし、事が既に半年も前の事なので定期的にパトロールをしているだけで、特に進展は無かった。

 

 

~博麗神社~

 

 

現在留守番中の零夜は、居間で胡座をかいて座り、少し暑い気分を紛らわす為に麦茶を飲んでいた。

霊夢はかなり広い範囲を巡回している為しばらくの間は帰ってこないのだが、彼は初夏の暑さよりもそっちの事を心配していた。

 

 

零「霊夢が居ない間は一人か・・・それにしても大量殺害未遂事件とはな、霊夢は大丈夫なのだろうか?」

 

 

零夜はなんとなく霊夢の事が心配だった。

上手く言葉に出来ないが、彼にとって初めての感覚だったのは間違いなかった。

この感覚が何なのか解からず考えていると、境内の方から女性の声が聞こえてきた。

 

 

慧「おーい!霊夢~!居るか~!」

 

零「ん?霊夢の知り合いか?」

 

 

幻想卿に来てからあまり人に会っていないため人脈が無い零夜だったが、言葉からして霊夢の知り合いだと判断し、本人が不在である事を伝えようと外へ出たのだが・・・

 

 

零「誰だ?霊夢なら今は居ないが?」

 

慧「な!!お前こそ一体博麗神社でなにをしている!!」

 

 

不審者扱いされた。

 

 

 

割愛

 

 

 

慧「なるほど、貴方は霊夢の所で居候をしている方だったか」

 

 

博麗神社にやって来た慧音だが、今回は小学生ほどの女の子の付き添いとしてきていた。

慧音は見知らぬ男が博麗神社に居たので驚いていたが、零夜が事情を説明すると、すぐに誤解を解いて、今は神社の社の中にある客室で零夜と話をしている。

本当は霊夢に用があって来たのだが、本人がいない時に来てしまい困っていた。

 

 

零「あぁ、先程まで霊夢もいたのだがな、定期パトロールに行ってしまった」

 

慧「あぁ、あの事件以来の・・・では私たちは入れ違いになってしまったのか、弱ったな・・・」

 

 

困り果てている慧音を見て零夜は手助けすることにした。

 

 

零「何か霊夢に用があるなら伝えておくぞ?」

 

慧「うむ、ありがたい。

実はこの子から霊夢に話があるんだ」

 

 

慧音はそう言うと、自分の横に座っている小さな女の子を紹介した。

 

 

花「は、初めまして!花梨です!私、霊夢さんにお願い事があって来たんです!」

 

零「依頼か?」

 

 

零夜の質問に花梨は俯きながら沈んだ声で答える。

 

 

花「はい、私の友達のルーミアちゃんを捜してほしいんです・・・」

 

零「ルーミア?」

 

 

慧音はルーミアについて説明を始めた。

 

 

慧「ルーミアは私の寺子屋に来ている妖怪の女の子だ。

見た目は花梨と同じくらいでな、よく人間や妖怪の子供達と遊んでいるんだ」

 

 

慧音の話によるとルーミアは半年程前から様子がおかしかったらしく、思考停止状態になったり、フラフラとおぼつかない歩き方をしたりしていたらしい。

そして三週間程前から姿が見えなくなって今に至るそうだ。

零夜はこの半年前という言葉が気になった。

 

 

零「半年前・・・ふむ、わかった。

この事は霊夢に伝えておこう、もしかしたら危険な状況に陥っているかもしれん」

 

慧「すまないが頼んだぞ」

 

花「ありがとうございます・・・」

 

 

花梨は沈んだ声で礼を言う。

その様子を見て零夜は花梨を励ました。

 

 

零「そう落ち込むことはない、霊夢ならすぐに見つけてくれるさ」

 

花「ッはい!」

 

 

落ち込んでいる花梨の頭を零夜が撫でると、花梨は元気を取り戻して元気よく返事をした。

その後二人は人里へ帰っていき、それから一時間程経過した・・・

 

 

ガラガラガラッ

 

 

霊「ただいま~」

 

 

玄関を開けて、巡回から帰ってきた霊夢に、依頼が来ていることを零夜は柱から顔を覗かせながら知らせた。

 

 

零「霊夢、慧音という女性から依頼が来たぞ」

 

霊「慧音??」

 

 

話を詳しく聞くため彼女は居間に向かった。

 

 

 

~青年説明中~

 

 

 

霊「う~ん・・・また別の依頼が・・・、私の体は一つだけなんだからそんなに一辺になんでも出来ないわよ」

 

 

腕を組みながら霊夢はぼやいた。

 

 

零「しかし放っておく訳にもいかないだろう?」

 

霊「それもそうなんだけど・・・」

 

零「それに、この事件は未解決の異変と関係があ気がするんだ」

 

 

その言葉に霊夢の眉が動く。

 

 

霊「何故そう思うの?」

 

 

理由を追求する霊夢に零夜は事細かに説明した。

 

 

零「この二つの事件が始まったのはどちらも同じ頃なんだ。

ルーミアの場合は行方不明になったのは最近だが、様子がおかしくなったのはあの異変と同じ6ヶ月前なんだよ。

ルーミアは闇を操れると聞いた、襲われた奴らは誰も犯人を見ていないんだろう?夜だったら闇で姿を隠せば誰だかわからないんじゃないか?」

 

 

犯人としてここまで出来上がったやつなんて他にはいないだろう?零夜はそう言った。

確かにそのとおりだ、となると様子がおかしくなったのも何か理由があるに違いない・・・そう考えた霊夢は、人探しにピッタリの能力を持った人物を呼び出した。

 

 

霊「解ったわ零夜、じゃあ人探しのエキスパートを呼ぶからちょっと待ってね」

 

零「エキスパート?」

 

 

零夜はなんの事か解らなかったが、そう言うと霊夢は誰も居ないのにその人物の名前を叫んだ。

そしてその人物とは零夜も知っている人物だった。

 

 

霊「紫ー!ゆーかーりー!」

 

紫「そんなに大きな声を出さなくても此処にいるわよ」

 

 

霊夢が呼ぶと何処からか返事が聞こえてくる。

二人がキョロキョロと辺りを見渡していると、何もない空間に亀裂が入りスキマという異空間が広がり、中から和と洋が入り交じったドレスを身に纏った長い金髪の美しい女性が現れた。

女性はスキマから飛び出し、華麗に畳に着地した。

 

 

紫「ごきげんよう霊夢、貴女が私を呼ぶなんて珍しいわね。

しかもいつの間にか男作っちゃって、お盛んねぇ~」

 

 

八雲紫は口許を扇子で隠してクスクスと笑う。

霊夢はなんだかムカついてきたようで、札を何枚か取り出して紫に向けた。

 

 

霊「出てきて早々悪いんだけどムカつくからこれ投げていい?」

 

紫「ちょっと待って!冗談よ!謝るからそれしまってちょうだい!」

 

 

さっきまでの美しい立ち振舞いは一体何だったのか、紫は完全に腰を抜かして霊夢にビビってしまっている。

そんなやり取りを第三者目線で観察していた零夜は溜め息ついでに、あぁ~、と納得したような声を出した。

 

 

零「あぁ、エキスパートってのは紫の事だったんだな」

 

霊「え?紫の事知ってるの?」

 

 

まぁな、と彼は答えた。

どうやら零夜と紫は昔からの付き合いらしく、零夜によると、二人が知り合ったのは今からざっと8000年程昔の話らしい。

その時代はまだ零夜がトール神と名乗っていた頃だ。

二人は飽くまで友人関係だったらしいが、出会って200年程経って零夜が神界へ帰ってしまった為、今回は久しぶりに再会だそうだ。

そんな過去があったとは知らなかった霊夢はその話を聞いて少々驚いた。

 

 

霊「へぇ~、紫の過去にそんな話があったなんて・・・」

 

紫「まぁその話は今度ゆっくり話すとして、そろそろ本題に入りましょう」

 

 

霊夢自信も忘れかけていたようで、そういえばそうだったと苦笑いしてごまかした。

どうせ内容も知っているだろうが、一応最初から説明した。

 

 

紫「嫌よめんどくさい」

 

霊「はぁ!?」

 

 

何でよ!!あんた幻想卿の賢者でしょ!?と怒鳴る霊夢に全く動じず、私だってこう見えて忙しいのよ?と静かに反論した。

その後も霊夢はどうにかして協力させる為に紫を挑発しまくるが、協力する気は全くなし。

 

 

紫「まぁそういうわけだから、私そろそろお暇させてもらうわね」

 

霊「あ!ちょっと!待ちなさいよ!」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

そのまま霊夢の制止を聞かずにスキマを開けて去っていった。

零夜はやれやれと言いたそうな様子だ。

日が沈み始め、そよ風が吹く気持ちいい時間帯、博麗神社に少しの間、静寂が訪れる。

 

 

霊「・・・もう遅いから捜すのは明日にしよっか・・・」

 

零「霊夢・・・、俺も手伝うからそんなに落ち込むなよ・・・」

 

霊「・・・ありがとう(泣)」

 

 

ルーミア捜索は次の日に丸投げされた。

その頃、とある山中にある洞窟・・・

 

 

~とある洞窟~

 

 

ゴシャッニチャ・・・ブチュブチュブチュ・・・

 

 

ボドッ・・・

 

 

?「フフッ・・・来る来る!もうすぐだ♪」

 

 

バリバリ!ドシャドシャ・・・

 

 

口を血で染めた妖怪、そして入り口には千切られた人の腕が投げ捨てられていた・・・

 

 

 

 

 

 

To be continue




また続きが書きづらくなってしまった、、、TBSだわ~(テンションバリ下がるの略)
かなりエグい話になる予定です、あまり想像はしないでくださいね。
感想or評価お願いします!!


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番外異変32話中篇

楽園追放っていうアニメ映画を観てたら投稿が遅れました。
今回は前回の続きです。
・・・ルーミアと影浪が好きな方々、本当にすいません・・・。


零「・・・おいおい、これは何の冗談なんだ?」

 

 

翌日、零夜はいつも通り朝の7時に起床した。

しかし、今日の朝はいつもとは違った。

 

 

零「何で太陽が昇ってねぇんだよ」

 

 

その日は太陽が姿を現さなかった。

 

 

~博麗神社(寝室)~

 

 

零「おい!霊夢!大変だ!起きろ!」

 

霊「うぅ~ん・・・何よ零夜、騒々しい・・・」

 

零「何を寝ぼけてるんだ!いいから外へ来い!」

 

霊「眠い~・・・」

 

 

零夜は熟睡している霊夢を叩き起こして外へと連れていく。

外が真っ暗なので、夜中に起こされたと勘違いした霊夢は不機嫌になって怒りだす。

しかし零夜が壁に立て掛けてあった時計を引っ張り出して目の前に見せつけると、一瞬にして霊夢の表情が怒りから驚きへと変わった。

 

 

霊「え?七時・・・?でも・・・えぇ!?」

 

零「これでわかったろ、緊急事態だって事が」

 

 

霊夢はコクッコクッと頷く。

そう・・・異変が起こったのだ。

 

 

~霊夢の部屋~

 

 

いつまでも寝間着の格好でいるわけにはいかないので、霊夢は急いで部屋の箪笥から夏用の巫女装飾を取り出して着替える。

その間、零夜は暗闇の元凶を探っていたのだが、日食ではなく、どうやら人為的なものらしい。

試しに成層圏までジャンプしてみた所、高度一万メートル辺りに厚い暗黒の雲がかかっており、光を全く通さないシールドとなっている事が解った。

破壊できるかどうか試みたが、レーザー、弾幕、全て闇に吸収されてしまった。

着替え終わって居間にやってきた霊夢はそれを聞いて頭を悩ませた。

 

 

霊「厄介な異変が起こったものね・・・犯人を倒さない限りどうしようもないじゃない・・・」

 

零「参ったな・・・それらしい気配も感じないし、犯人がどこにいるのかも全く検討がつかん。

まぁ、犯人は誰か検討がつくが」

 

 

しかし霊夢はその結論を否定した。

 

 

霊「ちょっと待ってよ、ルーミアはこんなことできる程の妖力持ってないわ。

これは上級妖怪じゃないと出来ないレベルの異変よ?」

 

 

霊夢の言うとおりルーミアは下級妖怪に属する妖怪で、異変を起こせるような力は持っていない。

だとすると犯人はルーミアのような力を持った他の人物になる、さらに厄介なことに、その相手は強大な力を持っていながら居場所を特定できないのだ。

誰が犯人かもわからない、居場所も特定できない、圧倒的不利な状況に陥った霊夢のテンションは寝起きとともに下がっていった。

 

 

霊「・・・朝ごはん食べてる場合じゃないわね・・・」

 

 

朝ごはんが食べられない事につい溜め息が出てしまう。

こういうときだけ博麗の巫女は忙しいんだから困ったものだ。

 

 

零「兎に角犯人探しだ、里の様子も気になるし・・・行くぞ霊夢」

 

霊「ちょっと!異変解決は私の仕事なのよ!?」

 

 

顔を洗う暇も無く霊夢は零夜に急かされ、あとを追いかけるように境内から飛び立っていった。

 

 

 

~幻想郷の上空~

 

 

 

暗くて視界が悪い中、二人は空の上から常時気を探りつつ犯人を捜していた。

しかし、犯人の反応は無く、それどころかそこらじゅうの妖怪が大人しくなっていた。

 

 

霊「なんだか変な気分ね、夜みたいだけど明らかに違う・・・上の雲のせいかしら?」

 

零「だろうな、しかもこんなに暗いのに妖怪が落ち着いている・・・何か嫌な予感がするんだが・・・」

 

 

ブワァァァァ!!!

 

 

その時、凄まじい程の妖気が何処からか発せられ、二人はそれに圧倒されてしまう。

しかし霊夢はそれを退け、妖力の発信源を特定した。

 

 

霊「うっ!な!何よこの出鱈目な妖力!!」

 

零「バカな!?フルパワーの紫・・・いや、よりも上だぞ!?」

 

霊「何処から・・・これは!」

 

 

その場所は意外にも近く、博麗神社と人里を挟んだ森の中心部近くだった。

間違いなく異変の元凶だと確信した二人はそこへ急行した。

 

 

 

~森林~

 

 

 

キィィィィン・・・スタタッ

 

 

~!!...イヤ!?!ヤメ!~~イャ~...

 

 

威圧感のようなよう妖力が近づいてくるにつれて、森の中から微かにだが、女性の声が聞こえてくるようになった。。

何か叫び声や悲鳴を挙げているようだった。

襲われているのか?

 

 

零「おい、誰かいるぞ。

・・・間違いない、こいつから妖力が漏れ出ている」

 

 

森の中心部に着いた二人の目の前には見知らぬ女が立っていた。

妖力はこの女からでているようで、さっきよりも威圧感が強くなっていた。

それと暗くてよく見えないが、何か自分と同じくらい大きなものを左手で掴み上げている。

 

 

霊「誰・・・?」

 

 

霊夢達の着地音に気がついた女は此方を振り向いた。

霊夢はこの女と面識は無かったが、髪が金色で虹彩が赤く、どことなくルーミアを連想させる見た目だった。

 

 

?「あら?博麗の巫女が来ちゃったわ、もうちょっと遊びたかったのにぃ。

丁度いいわ!あなたたちに良いもの見せてあげる!」

 

 

女はそう言うと左手に掴んでいたものをを見せてきた。

それを見て霊夢は悲鳴をあげそうになった。

 

 

霊「影狼!!」

 

 

そこにいたのは身体中の骨が軋み、顔が青紫に腫れて無惨な打撲の痕ができた影狼だった。

影狼の腹部には大きな風穴も開いているのに、女は影狼の首もと掴んでを持ち上げてさらに苦しめ、さっきまでこいつで遊んでいたの、と楽しそうな声で笑った。

影狼の肌は重度の出血により段々と青白くなっていき、ついに身動きさえ出来なくなってしまった。

 

 

影「・・・ウグッ・・・う・・・」

 

?「んー?さっきまで元気に動いてたのに・・・。

ふん、あの時大人しく死なない方が悪いのよ」

 

 

バギャア!!

 

 

影「ぐぶぅ!!!」

 

 

女は動かなくなった影狼を手放すと、サッカーボールのように蹴りあげる。

宙を舞った影狼はそのまま落下して地面に叩きつけられ、うめき声すらも出なくなってしまった。

そのいきなりの出来事に二人は見ているしか出来ず、霊夢は激昂した。

 

 

霊「惨い・・・なんて事するのよ!死んじゃうじゃない!!

あんた一体何者よ!」

 

 

霊夢が女を睨み付けると、いっぺんに言わないでよ、と澄ました顔ではね除け、自己紹介を始めた。

 

 

?「そうねぇ、多分信じないと思うから解りやすく実物をみせてあげるわ」

 

霊「実物・・・ですって?」

 

 

女はそう言うと、どす黒い塊のようなものを右手のひらに出現させた。

さらにその闇が消えると、中からおもむろな目をした少女の生首が出てきた。

驚くことにその首だけとなった少女は二人が捜していた人物だった。

 

 

零「あれは・・・?」

 

霊「何で・・・。

何であんたが首だけのルーミアなんて持ってるのよ・・・」

 

 

霊夢は嫌な汗が止まらなかった。

あのルーミアが自分の目の前に変わり果てた姿で現れたのだ。

ルーミアが殺された・・・?

しかし、女はこのあと可笑しな事を言い出した。

 

 

?「安心して、ルーミアは生きているわ。

まぁ、貴女が知っているルーミアはこの世にはもういないけど」

 

 

意味深なヒントを教えると、これはもう用済みだと、ルーミアは少女の頭を軽くグシャリと握り潰した。

滴る血を見ながら、こいつは何を言っている?霊夢はショックのあまり思考が働かずに理解が出来なかった。

しかし、零夜はこの言葉の意味を瞬時に理解した。

 

 

零「まさか・・・お前が{ルーミア}なのか?」

 

ル「ピンポンピンポーン!大正解!!」

 

 

ルーミア(仮)は正解してくれた事が嬉しかったのか、笑顔で大きな丸のジェスチャーをした。

しかし零夜は考えた。

ならあの生首は一体何なのか・・・と。

それについてもルーミア(仮)は説明してくれた。

霊夢もそれに耳を傾けた。

 

 

ル「大昔、人間が神によって地上に降ろされたとき、私は生まれたわ。

私はとある村に神として崇められていた、それも邪の神としてね。」

 

零「邪の神・・・だと?」

 

 

ルーミアは大昔、山の神としてとある村から崇められており、村を護る代わりに生け贄として人間を喰らっていたそうだ。

しかしある時ルーミアを恐ろしい存在だと理解したその村の住人は、外の村から呪術師を雇い、ルーミアの生け贄として捧げられた少女の中に、強力な結界を使って封印した。

その時、黒かった少女の髪の毛は金色に染まり、虹彩が赤く変化して今のルーミアになったらしい。

 

 

霊「と言うことはその首は生け贄となった女の子の・・・?」

 

ル「そう言うこと、理解したかしら?」

 

霊「なるほどね、あんたがどんな存在かは解かったわ」

 

 

彼女が危険な存在だということも・・・

それを踏まえて霊夢は戦闘体制に入る。

 

 

霊「それならあんたを見逃すわけにはいかないわ、そんな危険な存在なら尚更ね!」

 

ル「そう・・・あなたも私の自由を奪おうとするのね・・・。

でもね、まだまだ遊び足りないのよ」

 

 

バシュッ!!

 

 

ルーミアは漆黒の翼を身に纏い、空高くジャンプする。

そして・・・。

 

 

ル「ゲームよ、止められるものなら止めてみなさい」

 

 

ルーミアは右手を天に掲げて力を込める。

するとどんどんエネルギーが収束し、直径50mはある巨大な塊となった。

彼女の向いている方角は人里の方角、まさか・・・

 

 

霊「やめなさいっ!!!」

 

ル「もう遅いわよ」

 

 

巨大な闇の球体はルーミアの手によって人里へ落とされた。

しかし、一発で里全てが吹き飛ぶ程の威力を持った妖力の爆弾は、いち早く動いた零夜が落下前に受け止めた。

舞台は整った。

これはルーミアが仕組んだ罠だった。

 

 

霊「零夜!!!」

 

零「しまった!逃げろ霊夢!!」

 

霊「でも!」

 

 

これが霊夢との一対一に引き込む罠だと気付いた零夜は逃げるように霊夢に促すが、そんなことが今のルーミアに通用する訳が無い。

ルーミアの策にまんまとはまってしまった零夜は冷や汗が止まらなかった。

 

 

ル「さぁ!!これで邪魔者は消えたわ!あの爆弾は半端な威力じゃない・・・いくら名の知れた神でも受け止めるのが精一杯の筈。

これで一対一で戦えるわね・・・霊夢♪」

 

霊「くっ!!」

 

 

 

死闘のゴングが無慈悲にも鳴らされてしまった。

 

 

 

 

 

To be continue

 

 

 

 




霊夢超ピンチです、勝てる見込みは殆どありまえせん。
補足説明EXチルノを秒殺できる位強いです、もしかしたらスカーレット姉妹が相手でも勝てないかも、、、でも流石に霊夢と零夜を同時に相手にすると厄介なので二人を引き離して霊夢との一対一の戦いに引き込んだんです。
霊夢一人だけならどうってことないと考えてますからね。
ちなみにルーミアは零夜の存在を一方的に知っています、それほど有名だったんですねトール神ってのは。
この小説でのルーミアは三百万年ほど前から存在している設定です。
紀元前ですね、はい。
しかも人間が生まれてからちょっと経ったくらい?ですかね。
本人は昔人間の呪術師に封印されたといっていますが、もう既にこの頃から妖怪としては最強クラスの実力を持っていました。
そんなルーミアを封印するなんて人間では到底不可能、ということは?呪術師の正体は解りましたね?


、、、また影浪が悲惨な事に、、、てかルーミアゴメン、、、

感想または評価お待ちしております!

次回お楽しみに!


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番外異変32話中篇2※

挿絵の構図やら話の内容にてこずってまた遅くなってしまいました。
今回は100%戦闘シーンです、文章力が足りませんが頑張って書いたので、よくわからなかったら感想コメお願い致します。


ドゴォォォォン!!!・・・

ドォォォォォォン・・・!!!

 

 

空から降り注ぐ流れ弾で森の木々はなぎ倒され、地面はクレーターが至る所に作られていく。

地形が変わる程激しい攻撃に、霊夢は防戦一方でかなり苦戦していた。

 

 

ババババババババ!!!!!

 

 

霊「くっ!ちょっと!手加減くらいしなさいよ!」

 

ル「貴女が弱すぎるのよ、霊夢」

 

 

ルーミアが展開した魔方陣から放たれるレーザーと弾幕の雨を必死に霊夢は避けていく。

人間の彼女がこの弾に当たれば忽ち木っ端微塵に吹っ飛んでしまうだろう、それほどの威力が一発一発に込められているのだ。

 

 

霊「当たる訳には!」

 

 

しかし、避け続けるのにも限界があった。

叙々に体力が奪われ、動きが遅くなっていく。

 

 

ドォンドドドドォン!!!

 

 

ル「アッハッハッハッハ!!まるでバッタねぇ!」

 

 

避けることしか出来ない霊夢をバッタと表現し、その滑稽とも言える姿をみて嘲笑った。

 

 

ル「でも・・・これならどうかしら?」

 

 

ルーミアは霊夢の回避行動を見て、ランダムで雨のように降り注ぐ弾幕の中に、3発だけ直撃コースの弾幕を撃った。

 

 

霊「ッ!!まずい!ガード!!」

 

 

回避不可能な弾幕を見つけた霊夢は急いで結界によるシールドを張る。

 

 

ズガガガガガガガァン!!!!

 

 

結界に3発の弾幕が当たると、それに続くように連続で弾幕が直撃していく。

そして全ての攻撃を受けきった結界はガラスのように割れ、その機能を失った。

 

 

霊「ハァ・・・ハァ・・・ギリギリセーフってとこかしら」

 

ル「残念、アウトよ」

 

霊「!?!?」

 

 

結界が壊れ、体力を消耗し始めている霊夢は、ルーミアの接近に気づくことができずに目の前まで接近を許してしまう。

しかし、この戦いを遊んでいるルーミアはそこで止めを刺さず、霊夢の腹部を思いっきり蹴った。

 

 

ドゴォッ!

 

 

霊「あぐぅ!」

 

 

 

やはり今のルーミアを相手に一人で戦うのは荷が重すぎる。

その様子を目の端で捉えた零夜は叫びをあげる。

 

 

零「霊夢ぅ!!!」

 

 

ルーミアの蹴りで腹部の痛みと衝撃によって吹き飛ばさる霊夢。

飛ばされる最中、夢想封印で攻撃を仕掛けるも、無駄だと言わんばかりに全て闇に吸収されてしまった。

力の違いは明らかだった。

このままでは霊夢は殺されてしまう。

 

 

零「ぐ!!うおぉぉぉぉ・・・!!!」

 

 

渾身の力を振り絞り、徐々に爆弾の軌道をずらしていく。

軌道が完全にずれ、空へと上がっていく妖力弾を遠めで確認した後、零夜は急いで霊夢の救出に向かった。

しかし・・・。

 

 

零「霊・・・夢?」

 

 

助けに向かう頃には既に霊夢は再起不能となっていた。

零夜の目には、瓦礫に埋もれたボロボロの霊夢の姿が映っていた。

 

 

霊「う・・・このぉ・・・」

 

ル「あらあら、もうへばっちゃったの?」

 

 

削れた地面の土で巫女装束が汚れ、痛々しく倒れこむ霊夢の姿。

動けない霊夢の胸をルーミアはじわじわと踏みつける。

 

 

ル「ふふふ・・・」

 

ギシギシギシギシギシ・・・

 

霊「がぁぁ!!!!」

 

 

苦しむそんな霊夢を見て、自分の情けなさと非力さに怒りがこみ上げてくる。

許せない・・・・・絶対に・・・・・・。

その矛先はルーミアへと向けられ、無意識のうちに能力を開放した。

 

 

零「おい・・・その汚い足をどけろ・・・」

 

 

零夜の怒りの感情は力へと変化する。

雷の神、トールの真の姿は、闇に包まれた幻想郷を明るく照らした。

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・

 

 

零「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

ウオォォォォォォォォォォン!!!!!

 

 

身体中の潜在エネルギーを外側へ放出し続ける。

数千年前と全く変わっていない神々しさは、二人をどこか未知の世界へいざなうようだった。

 

 

ル「これが・・・トール神の本来の姿・・・」

 

霊「れ・・・零夜・・・?」

 

 

大気が揺れるビリビリとした感覚、霊夢は今まで見たことなかった零夜のもう一つの顔に、動揺を隠せなかった。

一瞬、痛みを忘れてしまうほどに・・・それほど衝撃的だった。

一方ルーミアも、敵意をむき出しにする零夜の存在に少し怯えていた。

 

 

ル「は・・・はは。

まさかここまで凄いとはね・・・」

 

 

完全に予想を超えている・・・どっちが化け物かわかったものではない。

ルーミアも殺気を零夜に当てて威嚇をするが、そんなものに意味は無い。

零夜の怒りはそんなものを簡単に打ち払ってしまうほど高まっているのだから。

 

 

零「この力は世界の秩序を乱しかねない危険な力だ・・・しかし!

大切な人間をこうもされれば怒るのも当然!!

許さんぞ!!!」

 

 

これまでにない威圧感。

森が、大気が、幻想郷が揺れる。

能力で殆どの脅しが効かない霊夢だが、これには本能的にビビッてしまった。

しかし、ルーミアはこの状況で何故か笑い出した。

 

 

ル「あは・・・あははははははっはあっは!!」

 

零「何がおかしい!!!」

 

 

コケにされて零夜は怒り狂いそうになる寸前まできている。

それなのにルーミアはそれを鼻で笑った。

その訳は直ぐに明かされた。

 

 

ル「いえね?予想以上の力ではあったの。

でもね・・・適わないわけじゃないのよ?」

 

 

瞬間、ゼロからトップスピードで零夜に蹴りをかます。

ギリギリ反応出来た零夜はとっさに左腕でガードする。

が、あと少し遅れていたら顔面に直撃していただろう。

この時、あの言葉がハッタリではないことを理解した。

 

 

バギィア!!!

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

ル「あら、簡単に防がれちゃったわ」

 

零「・・・どうやら出任せではないみたいだな」

 

 

 

内心、妖怪がここまでの力を持っている事に驚いたが、今の一撃で解ったことは、{まだ本気を出してはいない}ということだ。

 

 

零「っうぉら!!!」

 

 

ブォン!!

 

 

蹴りを受け止めていた左腕に力をいれて弾き返す。

物凄い力によってふんばりも効かず、ルーミアはふっ飛ばされてしまい、距離をとられてしまった。

その隙に、トール神こと、零夜は何かを呼び出した。

 

 

零「来い!!ミョルニル!!」

 

 

ヒュンヒュンヒュンヒュン・・・・・

 

 

零夜の呼び声と共に、どこからか風を切るような音が聞こえてくる。

そしてその音の主は、ルーミアの頭上を通過し、零夜の手に収まった。

 

 

ヒュンヒュンヒュン・・・ガチィィィィィィン!!

 

 

神器ミョルニル。

ウォーハンマーのような形をしたそれはルーミアも本物を見るのは初めてだったが、底知れぬパワーが肉眼で見えるほど伝わってきた。

これには地球の雷の力が込められているのだから当たり前だ。

 

 

零「北欧神話で語りつがれた力、なめるなよ!!!」

 

 

 

ライトニングプラズマ

 

 

 

ミョルニルを再び手元に宿した零夜はその力を存分に振るい、どこからともなく雷を呼びよせ、ルーミアに向けて放った。

無数の雷がルーミアめがけて襲い掛かるそれは、まさに竜の群れのようだった。

しかし、ルーミアはそれに動揺したりはしなかった。

 

 

ゴロゴロゴロォッ!!!

 

 

ル「忘れたのかしら?私は闇を操るの」

 

 

闇は全ての光を飲み込む。

それは雷だって例外ではない・・・

 

 

零「な!何!?

神の雷をも吸収するのか!」

 

 

ギュォォォォォォォ!!!

 

 

なんとミョルニルの雷は、ルーミアが身にまとう闇の衣に全てかき消されてしまったのだ。

神の力に対抗出来る程の力を持っているとは、一体こいつのポテンシャルはどうなっているのだ?

零夜はそれと同時に悟った。

これは一筋縄ではいかない・・・と。

 

 

 

ル「相性が悪いのよ、貴方と私では・・・・ね?」

 

零「くそったれが!!」

 

 

光が吸収されてしまうなら接近戦で対抗すればいい。

零夜はミョルニルを腰にマウントし、電光石化の勢いでルーミアの鳩尾目掛けて突きを繰り出す。

あまりに早い動きにルーミアは反応できず、クリティカルヒットした。

 

 

ドゴォン!

 

 

ル「うぐぉっ!」

 

零「まだまだぁ!!」

 

 

この隙に苦しんでいるルーミアの頭を掴んで、顔面に膝蹴りを当てる。

最後に回し蹴りで追い討ちをかけて吹き飛ばし、加速したまま森の中へ消える。

そこに高出力ビームを両手で撃ちまくった。

 

 

零「消えてなくなっちまえ!!」

 

 

デューンデューンデューンデューン!

 

 

ドカァァァン・・・・ドカァァァァン・・・

 

 

その付近一帯に巨大な土煙と爆発音が響く。

霊夢もその爆音に反応して自力で瓦礫から脱出し、それを見届ける。

それもそのはず、あの二人の戦いに割って入るなど自殺行為に等しいのだから。

 

 

霊「零夜・・・」

 

 

霊夢には空高くにいる零夜がこの時だけ、今ある距離よりもはるか遠い存在に思えた。

一方零夜にそんなことを気にする余裕は無く、シックスセンスを尖らせながら爆煙の中を警戒していた。

不可思議だった。

煙の中でただ立っているだけ、それが逆に警戒を厳重にさせた。

何故上がってこないのか?何故攻撃を仕掛けてこないのか?

 

 

零「一体何をたくらんでいる・・・?」

 

 

しばらくの間、二人の動きが停止した。

最初に動いたのはルーミアだった。

しかし何か攻撃をしてくる訳でもなく、ただゆっくりと宙に浮き、零夜と同じ高さまで上がってきたのだ。

 

 

零「・・・・・」

 

ル「・・・・・」

 

 

お互いあいてを鋭い眼光で睨みつけたままだ。

だが、ここでルーミアが行動に出た。

 

 

ジャキン!

 

グゥオオ!

 

 

零「・・・?」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

何も無かったルーミアの手に、黒いロングブレードと闇の固まった球体が出現する。

どうやら本気になったようだ。

 

 

零「おもしろい。

来いよ、ババア」

 

ル「殺してやるよ、クソジジイが・・・」

 

 

 

 

極限の第二ラウンドの幕上げとなった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




検索すると神話の時代って明確に出てこないんですよね、やっぱり本当かどうか曖昧な歴史だから記述されてないのかな?なので自分の勝手な解釈でそこら辺は書いてます。

感想コメ、評価お待ちしております!
批判大歓迎!!


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番外異変32話後編※

書いてたら中途半端に終わってしまった、、、
でも早く新キャラも登場させないといけないし、、、
苦渋の決断だったんですよ、まぁそういうことにしておいてくださいな。
本編どうぞ!


ル「神だろうと私には勝てない・・・それを証明してやるわ!!!」

 

 

ルーミアの剣が妖しく赤い光を発し、悲鳴のような音を出す。

それを合図に零夜は接近戦をルーミアに仕掛けた。

 

 

零「フッッ!!!」

 

 

スピードは此方が上、先制攻撃なら勝機があると考えた零夜だったが、それは違った。

 

 

ル「甘いっ!!!」

 

 

ルーミアのい二度目の技は通用しない、まさに戦闘のプロだった。

ルーミアは零夜が迫ってくると同時に左手に纏わせていた闇で目潰しをして視界を封じたのだ。

 

 

零「バカな!あの速さを見切ったって言うのか!?」

 

 

亜光速に近い速度を出していた零夜は当然よけれるはずも無く、まんまと戦略に引っかかったわけだ。

しかも操られている闇は自力で脱出することは不可能だ。

 

 

零「くそっ!振り払えない!」

 

ル「こっちの方が一枚上手だったみたいね!」

 

 

そこからは一方的だった。

目が見えないのをいいことに、零夜を剣で滅多刺しにしたのだ。

 

 

ル「ハハハハハハハハ!!」

 

 

 

ザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッ・・・・・

 

 

剣を何度も振りかざし、零夜の体に斬られた傷跡が痛々しく刻まれていく。

そして・・・・。

 

 

ル「ふんっ!」

 

零「うぐあぁ!」

 

 

ブシュア!

 

 

 

ルーミアが突き刺した剣が零夜の肩を貫通した。

もはや零夜に勝ち目は無い。

 

 

ル「私の勝ちよ!!」

 

 

このままとどめを刺そうと剣を構えたその時だった。

 

 

ル「!!」

 

 

ビュゥン!

 

 

下から飛んできた気弾に気が付いたルーミアは紙一重で回避する。

しかし、そのせいで闇を操っていた集中がきれてしまい、零夜を闇から開放してしまう。

誤算だった、ここで行動に出るとは考えていなかった。

あれだけ痛めつけたのに何故動けるのだ!!

 

 

ル「霊力弾・・・?霊夢かっ!!」

 

 

疲弊しきっていた霊夢だったが、残っていた全ての力を振りしぼって霊力弾を撃ったのだ。

しかしこれで彼女の体力は無くなったに等しく、激しく息を切らしていた。

 

 

霊「零夜!遠慮なくぶっ飛ばしなさい!。」

 

 

空に向かって思いっきり叫んだ。

全てを零夜に託して。

 

 

ル「あいつにそんな力は残っていない筈なのに・・・なんで・・・?」

 

 

まさかの事態に対応出来なかった。

ルーミアの心に受けたショックは大きかったが、そんな感傷に浸っている場合ではない。

 

 

零「霊夢の思い・・・受け取ったぞ・・・」

 

ル「・・・!」

 

 

片腕を負傷してフラフラと浮いている零夜、かなりのハンデが付いた状態だ。

まだ勝てると思っているのか?目潰しなんてしてなくても今なら簡単に倒す事が出来る。

あともう少しでとどめをさせたところを邪魔されたのもあり、ルーミアの怒りは爆発寸前だった。

ルーミアは己の中で確信した。

自分が勝者だと・・・。

 

 

ル「片腕が使えないくせに・・・・勝てる訳ないだろぉー!!」

 

零「ルーミア・・・・お前は一つミスを犯した。

敵を過小評価して勝利を確信したことだ」

 

ル「たいした力も残ってないくせにぃ!!」

 

 

ルーミアは狂ったように両手で剣を振り下ろす。

その形相はこの世のものとは思えないほど恐ろしいものだった。

しかし

 

 

ガキィン!!

 

 

この渾身の一撃はいとも簡単に止められてしまう。

 

 

零「勝利を焦ったな?」

 

 

中指と人差し指で剣を挟まれ、いくら力を入れてもびくともしない。

それどころかどんどん引っ張られていく為、ルーミアは諦めて剣を離して距離をとろうとするが・・・

 

 

零「はぁ!!」

 

 

ドゴォッ!

 

 

ル「ギッ!?」

 

 

右脇腹を体のひねりを利用して思いきり蹴られ、肋骨の折れる音が聞こえた。

ルーミアの顔は痛みで歪み、苦しみで息が途切れる。

 

 

ル「痛い・・・・イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ!!!!」

 

 

うずくまり、腹を抑えることでしか痛みを和らげることが出来ず、次第にその痛みが怒りへと変わっていった。

 

 

ル「ウグアァァァァァ!!」

 

 

ドシュウゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!!

 

 

 

怒りの叫びをあげながら黒いレーザーをめちゃくちゃな方向に撃ちまくる。

一見それが弾幕になっているように見えるが、何も考えずに撃っているのは明白だった。

なので零夜に簡単に突破されてしまう。

 

 

零「うおぉ・・・!」

 

 

バギャア!!

 

 

ルーミアの眼前まで迫った零夜の回転蹴りが右頬に直撃し、さらに脳天に踵落としを当てて地面まで真っ逆さまに墜ちていく。

 

 

バガァァァァァン!!!

 

 

地面に大きなクレーターが出来上がる。

最後の一撃が効いたのか、ルーミアはもう虫の息だ。

零夜はゆっくりと下降し、ルーミアに近付く。

そしてゆっくりと・・・右手をルーミアの心臓に向けた。

 

 

零「おまえは余りに危険すぎる・・・悪いがここで始末させてもらうぞ」

 

 

バチ・・・・バチチッ・・・

 

 

零夜の右手に電流が蓄積されていく。

だが、それがルーミアに放たれることは無かった。

 

 

慧「そこまでにしておけ、零夜」

 

 

何時からいたのか?慧音だけではなく、花梨もこの場にやってきていた。

そしてもう一人、赤いモンペを履いた白い髪の毛の女性も来ており、背中には影狼を背負っていた。

 

 

零「なぜ止める?こいつは放っておいたら危険な存在だぞ?」

 

慧「それは・・・」

 

花「だって・・・ルーミアちゃんは大事な友達なんだもん!!」

 

 

花梨が思わず叫ぶ。

どんな姿になってもルーミアは大切な友達なのだ。

花梨は走って零夜に立ちはだかるようにルーミアの盾になる。

その眼を見て、本気だと解った零夜は三歩下がって二人を見守ることにした。

 

 

花「ルーミアちゃんでしょ・・・?」

 

ル「その声・・・花梨・・・?」

 

花「・・・!!ルーミアちゃん!!」

 

 

花梨はボロボロになったルーミアの傍らにしゃがんで泣き出す。

悲しませている、私が。

しかし、自分の死期が近付いていることは、なんとなく・・・わかっていた。

それでも力を振り絞り、口を開き、声を出す。

 

 

ル「花梨・・・聞いて・・・私はもう、花梨とは一緒に遊べないの・・・・」

 

花「なんでそんなこと言うの・・・?

また一緒に寺子屋の帰りにみんなで遊ぼうよ!!」

 

ル「・・・ゴメン」

 

花「!!!」

 

 

その言葉にショックで息が詰まる。

もう一緒にいられないのか?

もう友達では・・・いられないのか。

 

 

ル「私は力を自分の好きなように振り回した・・・そのせいでみんなには迷惑をかけた」

 

花「いいよ・・・私が一緒にみんなにご免なさいって謝ってあげる・・・」

 

 

いいんだ、そんなことしなくても。

そっとルーミアは呟いた。

 

 

ル「手を出して・・・」

 

 

ルーミアは花梨に手を伸ばした。

花梨も言われた通りに手を差し出す。

泣きじゃくる花梨の顔を見て、ルーミアの心が痛んだ。

友達をこんなに悲しませて、酷いやつだと心の底から思った。

でも最期に花梨にお願いしたい事がある。

痛む内蔵などもはやどうでもいい。

ルーミアは残った力を全てこれに注ぎ、花梨にお願いした。

 

 

ル「花梨、私の力を受け継いで・・・貴女ならこの力を、正しく使える筈・・・ゴボッ!」

 

花「ルーミアちゃん!!」

 

 

傷ついた内臓から血が溢れ、口から大量に吐血する。

それでもルーミアは親友に語り続けた。

 

 

ル「・・・私がいなくなっても、貴女の心の中で私は生き続ける。

だから・・・」

 

 

あなたがルーミアになって。

 

 

え・・・?

 

 

友人の最期の願い。

これはこれからの人生を大いに狂わせ兼ねない。

流石の慧音もこれには止めに入った。

 

 

慧「おい、やめるんだ!そんなことをしたら人間の君の体がどうなるか・・・」

 

 

しかし、花梨は・・・。

 

 

花「わかった」

 

 

それを承諾してしまった。

人間であることをやめる道を選んだのだ。

しかし慧音はどうしてもそれを許す事が出来なかった。

 

 

慧「正気か!?花梨!!」

 

花「良いんです先生、私はルーミアちゃんを受け入れるから・・・」

 

慧「だが・・・!」

 

妹「慧音、もういいだろう」

 

 

妹紅は慧音の肩をつかんで、そのくらいにしておけ、と・・・。

慧音が反対する中、妹紅は反対をしなかった。

それは、人間から人外になった妹紅が言うから説得力があるものだった。

彼女も過去に辛い経験があったのだ。

花梨の気持ちを今、一番わかっているのは彼女だろう。

慧音は苦虫をかむような思いを堪えながら、妹紅の言う通り引き下がる。

 

 

ル「ありがとう、先生・・・」

 

慧「だが、これが別れではないのだろう?」

 

ル「あぁ・・・・私は花梨と同化する事によって存在する事となるからな・・・」

 

妹「こんなこと言うのもなんだが・・・元気でな」

 

ル「また会えるさ・・・いつでもな・・・・」

 

 

花梨、目を閉じろ。

言われた通り目を閉じると、手のひらに熱いものを感じた。

同時に、体に浮遊感を感じた。

それはすぐに体に馴染んでいき、全身に広がっていった。

そして目を開けると、そこにはすでに親友、ルーミアの姿は無かった。

 

 

零「いったか・・・」

 

妹「おい!花梨!その髪は・・・」

 

花「え?」

 

 

ブツッ

 

 

花「これって・・・!」

 

 

花梨は自分の髪を一本切って驚愕した。

黒かった髪が綺麗な金色に変貌していたのだ。

それと同時にそら耳のようなものも聞こえてきた。

 

 

 

最後にその力を使うかどうかを決めるのはお前だ・・・道を誤るなよ・・・花梨・・・。

 

 

花「心配いらないよ、もういつだって一緒でしょ?

踏み間違えそうになっても止めてくれる人がいるから」

 

 

フッ、そうだな。

 

 

 

花梨は立ち上がり、涙を服で拭い、空を見上げてほほ笑んだ。

 

___________________________________________

 

 

同時刻、森の中で霊夢たちの様子をこっそり伺っている男がいた。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

?「今回はどうにかなったが・・・次このようなことがあった時は・・・」

 

 

ヴォン

 

 

男が木の陰から霊夢たちの様子を見ていると、何もない空間に切れ目が入り、紫が姿を現した。

 

 

紫「今回の件、私の管理不足だと思ってたけど、あなた何か知っているわね?」

 

?「・・・・」

 

 

紫の質問に答える事無く、男は黙る。

解っていたけどね、と紫は言うが、その顔は納得している顔ではなかった。

 

 

紫「でもそのうち話してもらうわよ、神谷リュウトくん」

 

 

そう言い残して紫はスキマの中へ消えていった。

 

 

 

宵闇異変、完




ルーミア最後小物感ヤバイww
あっルーミア死んでないですからね!!
ただ花梨ちゃんと融合しただけです!
これからも登場しますがその時は花梨ちゃんのもう一つの人格のような感じで出てきます。
今回も挿絵を友達のころさんに描いてもらいました!
そして、そろそろ原作回に入ろうと思います。
結構いっぱいいますからね。
ではまたお逢いしましょう!


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33話

今回は意外なキャラの名前が登場します!
誰か想像してから読むのも面白いかもですねw
では本編どうぞ!


次の日、あの異変は直ぐに文々。新聞に取り上げられ、記事の一面を飾った。

このニュースは里中で反響を呼んだが、それは妖怪たちでも同じことだった。

紅魔館もそのうちの一つだ。

 

 

~紅魔館~

 

 

文「美鈴さ~ん!文々。新聞の配達に参りましたぁ!」

 

 

朝、美鈴が門番の仕事をしていると、颯爽と文が空から降りてきて、脇に挟んだ新聞を一つ差し出してきた。

少し前、リュウトが新聞を読むために配達を依頼するようになったので、今では雨の日以外は毎日来てくれている。

 

 

美「文さんですか、朝から精がでますね。

どうです?良かったら上がっていきませんか?」

 

文「すみませんねぇ~、まだまだ配達の仕事が残ってるんで休む訳に行かないんですよ~」

 

 

朝から働くもの同士なので、朝食でも一緒にどうかと誘ってみた美鈴だったが、文に頭を掻きながら笑顔で断られてしまった。

まぁ、咲夜に無許可でやって良いことではないのだが。

まず朝食の準備が始まる前に言わなければ機嫌が悪くなる。

メイド長は怒ると恐いのだ。

 

 

文「咲夜さんとリュウトさんに宜しく言っておいてください!では!」

 

 

シュン!

 

 

 

美「速いなぁ、相変わらず」

 

 

そういうと彼女は風のように飛び去っていった。

黒い羽を散らしながら。

日の出から数分、夜の涼しさから日光の気持ちいい時間帯に変わろうというとき、門の中から咲夜の朝食が出来たという声が聞こえてきた為、美鈴は急いで紅魔館の中へ入っていった。

 

 

~食堂~

 

 

美「リュウトさん、文さんの新聞が届いてますよ」

 

リ「おぉ、ありがとな美鈴」

 

美鈴が食堂へ入ると、もう既にリュウトが席についていた。

厨房では咲夜が出来上がった食事を皿に盛っていた。

美鈴が座っているリュウトのもとに新聞を持っていくと、リュウトは軽く礼を言った。

しかし、リュウトの手には既に新聞がある。

しかもそれは文々。新聞ではないようで、記事の写真にもカラーが使われていた。

 

 

美「あれ?その新聞は?」

 

 

美鈴は物珍しそうにその新聞を見つめる。

その新聞の正体は厨房から料理を持ってやってきた咲夜が説明してくれた。

 

 

咲「リュウトさんは紫さんに頼んで外の新聞も貰ってるのよ、結構おもしろいわよ?お嬢様はあんまり関心ないみたいだけど」

 

美「へぇ~・・・外の世界の新聞ですか。

なんだかいろんな事が載ってますね」

 

美鈴は物珍しい外界の新聞を興味津々。

その新聞の見出しにはでかでかとこう書いてあった。

 

 

~○日新聞~

 

 

岡崎夢美大学教授、またも偉業達成。

 

 

2004年 6月20日、東京大学の若き天才美人教授、岡崎夢美教授が、日本未来科学研究所で、高軌道エレベーター建設に必要な{ハイパーカーボンファイバー}の開発に成功。

地球上で最も固いと言われるダイヤモンドと肩を並べる強度を持つといわれるこの金属は、これからの人類の発展に大きく貢献していくだろう。

昨年開発に成功した{レーザー核融合発電システム}と二年前の{高解像3Dホログラム}とを合わせて、日本人史上初の、ノーベル賞二年連続受賞の快挙を成し遂げた夢美教授は記者会見で、「今度は苺を無限に作り出す機械でも作ろうかな」と、可愛らしい少女のような一面をみせた。

彼女の頭脳は今の人類の科学レベルの数世紀先を行っているとされ、海外からは{第二のトマス・エジソン}と言われており、今後の発明に期待が寄せられている。

尚、軌道エレベーター建設場所は赤道ギニアに決定されており、数か月には早くも建設が・・・以下略

 

 

美「はぇ~、何がなんだかサッパリですね~」

 

 

咲「うぅ~ん・・・私もよくわからないですわ・・・」

 

 

リュウトの後ろで咲夜と美鈴が一生懸命目を凝らして意味を理解しようとしていたが、どうにも理解出来なかったようだ。

溜息まじりに首を振っているのが見える。

 

 

リ「この世界はそういったものとは無縁の世界だからな、わからないのも無理はないだろう。

外の世界で魔法がチンプンカンプンのようにな」

 

咲「そういうものですかね?」

 

リ「そういうもんさ」

 

 

ガチャ

 

 

レミ「ふぁ~・・・おはよう。

あんたたちはいっつも早いわねぇ・・・」

 

フ「お姉ちゃんは見習った方がいいね」

 

 

そんな会話をしていると、食堂の扉からレミリアとフランが現れた。

そろそろ朝食にはちょうど良い時間になる為、一斉に起き始めたのだろう。

その後、パチュリーと小悪魔もやってきたので、咲夜は料理をテーブルへ運んでいった。

今日の朝食は、咲夜特製のバタートースト、夏野菜のサラダ、それと目玉焼きだ。

リュウトは紅魔館に来てから、食事の際はいつも咲夜の隣に座っている。

いつもは行儀よく食事をしているのだが、今日のリュウトは食事中にも関わらず、いつまでも新聞をよんでいるので、咲夜は怒って注意したのだが・・・

 

 

咲「もうっ!リュウトさんお行儀が悪いですよ!」

 

リ「・・・・・」

 

 

リュウトは新聞を眺めたまま固まっている。

読んでいる新聞はさっきと違い、文々。新聞を読んでいるようだ。

無視された咲夜は何を固まっているのか気になって新聞を覗くと、そこにはとんでもない事が書かれていた。

 

 

~暗黒異変終結!解決者は博麗の巫女の同棲相手!?~

 

 

咲「・・・はぁぁぁ!?」

 

 

このニュースは幻想郷中で話題となり、人外の皆様方にも瞬時に広がっていった。

 

 

_____________________

 

 

~博麗神社~

 

 

魔「おい霊夢!私はそんなこと聞いてなかったぞ!」

 

ア「そうよ!なんでもっと早く紹介しないのよ!!」

 

霊「あーもう!うるさいわね!!だから、今度の宴会で紹介しようと思ってたって言ってるでしょ!?」

 

 

朝の9時ごろ、博麗神社には既に新聞を読んだ魔理沙とアリスがきており、霊夢に友人なのに隠しごとをするなんて見損なったとさわいでいた。

その場には零夜もいるのだが、零夜は肩の怪我が酷く、体を動かすわけにはいかない為、布団に横たわったまま、霊夢に看護されている。

そんな看護で忙しい時にこんなうるさい奴が来やがったのだからイライラするのもうなずける。

しかし、零夜はそんなこと微塵も感じておらず、むしろ魔理沙達の来客を歓迎した。

 

 

零「本当に仲がいいんだな。

魔理沙ちゃん、アリスちゃん、良かったら一緒にお昼食べるか?」

 

魔「いいのか!?食べる!」

 

ア「お言葉に甘えさせてもらうわ」

 

零「ハハハ、了解した。

霊夢、頼めるか?」

 

 

勝手に話を進めて一緒に昼食を食べようなどと言い出す始末。

人の苦労も知らないで・・・。

いつもの霊夢ならここで怒っているだろう。

しかし今回は零夜に助けられた借りがある為、本意ではないが、承諾した。

 

 

霊「はいはい、じゃあ四人分つくればいいのね?」

 

ア「私も手伝うわ」

 

 

そういって二人は立ち上がり、台所の方へ歩いて行った。

魔理沙もアリスに連行され、部屋には零夜一人だけとなった。

少しの間、部屋に静寂が訪れる。

しかし、その静かな時間は一瞬で打ち破られることとなる。

 

 

ザザーっ!!

 

 

妖「霊夢さん!異性と同棲なさっているとは真か!?」

 

 

何だか言葉使いがおかしなサムライガールがやってきた。

よく見たら横にフヨフヨした物体が浮いている。

しかも脇差しに刀があるではないか。

今の状態であれに切り捨てられたら想像するだけでも恐ろしい。

少し怖いが、零夜は少女に話かけてみた。

 

 

零「・・・君も霊夢の友達か何かか?」

 

 

そっと話かけると彼女は我に返ったようで、ハッΣ(゚□゚;)!、と漫画のような反応をすると、咳払いをしてから丁寧に自己紹介をしてくれた。

 

 

妖「コホン、先ほどは失礼いたしました。

私は冥界の白玉楼で庭師兼剣術指南役をしております、魂魄妖夢と申すものです」

 

零「これは丁寧にどうも、動けないのでこのまま失礼するが、博麗神社に居候をしている零夜だ。

気軽に零夜と呼んでくれて構わない」

 

 

少女、魂魄妖夢のあの反応、おそらく今朝の新聞を読んでやってきたのだろう。

同棲かぁ・・・確かにそういう風に見えなくもない。

いや、それを自分で認めてしまったら霊夢に追い出されてしまうだろう。

そんなことを考えていると、境内の方から女性の声が聞こえてきた。

 

 

幽「ようむぅ~・・・まってぇ~」

 

 

妖夢の名前を読んでいるのが聞こえる。

知り合いなのだろうか?

ゼェハァゼェハぁと息を切らしているあたり、かなり急いできたのだろう。

どうやらその女性もこちらの存在に気付いたようで、軽くお辞儀をして名前を教えてくれた。

 

 

幽「ふぅ、あなたが零夜君ね?西行寺幽々子です。

ゆゆちゃんって呼んでもいいわよ♪」

 

 

そういって幽々子は縁側から手を伸ばして握手をしてきた。

見た目は上品なのに意外とフレンドリーな人らしい。

おっとりした性格でかなりの美人。

霊夢が幻想郷にはろくな奴がいないといっていたが、幽々子はその中でもかなり常識を持った人なのだろう。

しかし、その考えは一瞬で打ち破られることとなる。

 

 

ピキィッ!!

 

 

幽「ハッ!?」

 

 

突如、幽々子は宇宙で生まれた新人類の如く何かを感じ取ったようで、サッと立ち上がる。

何事か?不思議に見上げていると、幽々子はくちを開いた。

 

 

幽「ごはんのにおいがする!!」

 

 

・・・はぁ?

 

 

 

幽「零夜くん!私もお腹すいた!

私も食べる!」

 

零「ま、まぁいいんじゃないか?」

 

幽「やったー!」

 

 

凄い勢いで迫ってくる幽々子に圧倒され、零夜は断ることが出来ずに了解してしまう。

そうなると妖夢の分も用意しなくてはならなくなるが・・・

 

 

零「そういえば妖夢はどこへ行った?」

 

 

妖夢がいつの間にか居なくなっていた。

一体どこへ行ったのか?だが妖夢はすぐに帰ってきた。

大量の荷物が入った風呂敷を担いでだが・・・

 

 

零「妖夢、一体それは何なんだ?」

 

妖「何って食材に決まってるじゃないですか」

 

零「多すぎるだろ!!」

 

 

つい突っ込んでしまった、仕方ないだろ、あんあものが出てきたら誰でも一言言いたくなる。

妖夢はそのまま台所へ行ってしまったが、後で霊夢に聞いたところ、幽々子は超がつくほどの大食いで、あれほどの食材がないと満足しないらしい。

それにしてもあの風呂敷、箪笥より大きかったぞ・・・

 

その後も博麗神社には、新聞を読んだ者達が大勢きて、怪我が治ってからやるつもりだったが、宴会を早める羽目になった。

ちなみに幽々子は今回も見事な食いっぷりを見せ、零夜が驚いて呆気を取られたのは言うまでもない。

 

 

 

___________________

 

 

?「へぇ、あいつもかなりつよそうだねぇ・・・でも」

 

 

やっぱり光の男と戦いたいねぇ~。




もう宴会はこりごりです。
何書いていいかわかんないもん、、、泣
補足説明
夢美さんはこの小説のストーリーで結構重要なキャラです。
この新聞がキッカケというかなんというか。
最後にでてきたキャラはあの子です!


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萃夢異変34話

何か凄い早く更新できちゃった。
さてさて、久しぶりに原作に戻ります。
今回はちょっと特殊な視点で異変を見ています。
どう思うかはわかりませんがねw
では本編どうぞ!


レミ「博麗神社に居候・・・ねぇ。

あの霊夢がよくも承諾したわね」

 

咲「私もビックリしてしまいましたわ・・・」

 

 

紅魔館はティータイム、レミリアとフランは館のテラスでパラソルの日陰に入りながら優雅にお茶を飲んでいる。

ちなみに紅茶はアイスティーだ。

しかし傍から見れば、小学生が大人のまねごとをしているようにしか見えないのは偶然ではない。

ちなみにリュウトは朝から倉庫の食料や備品の整理などを行っている。

 

 

フ「でもいい人だよ?霊夢が居候を許したのもわかるなぁ」

 

 

フランは先日の宴会で零夜に優しくされたのもあって結構懐いているようで、時たま博麗神社に遊びに行っているようだ。

さらにその時に友達もできたようで、今日はその友達が遊びに来る予定だ。

 

 

レミ「フラン、そういえばあなた今日お友達を呼んでるんでしょ?時間は大丈夫なの?」

 

フ「あ!そういえばもうすぐだ!行ってくるね!咲夜!日傘取って!」

 

咲「かしこまりました、どうぞ」

 

フ「ありがと!行ってくるね!」

 

 

タッタッタッタッタッタ・・・

 

 

 

フランは日傘を片手に館へ走っていった。

それにしても友達とは一体だれなのだろうか?今日その友達とやらが来たら、挨拶ついでにみてやろうとレミリアは考えた。

しかし、レミリアはまだ気づいていなかった。

今、この館に、フランの友達以外に、とんでもなく恐ろしい奴が向かってきていることに・・・

 

 

ヒュルルルルルル・・・ドォォォォォン!!!

 

 

突如、レミリアたちのいるテラスの近くの花壇に弾幕らしきものが着弾し、辺りに土煙が舞う。

と、同時にどこかで聞いたことのある怒気のこもった声が聞こえてきた。

 

 

霊「レミリアー!!(怒)」

 

 

どうやらかなりお怒りの様子。

霊夢が何故怒っているのかよくわからないが、レミリアにはこれだけは理解できた、今、自分はかなりピンチな状況に置かれている・・・と。

 

 

レミ「れ!霊夢!何をそんなに怒っているのか知らないけどとりあえず私じゃないわ!」

 

霊「やっぱりアンタかーっ!!!」

 

 

スペル:夢想封印

 

 

ドゥンドゥンドゥンドゥンドゥン!!!!

 

 

レミ「きゃあ!!」

 

 

ピチューン!!

 

 

言い訳も虚しく、レミリアは夢想封印の前に散っていった。

 

 

~少女治療中~

 

 

レミ「もう!一体なんなのよ!突然来たと思ったらいきなり攻撃仕掛けてきて!私が何したってのよ!!ギャーギャー!! 」

 

咲「まぁまぁお嬢様、どうか落ち着いてくださいな・・・」

 

 

無実の罪を課せられた上に報復まで受けたレミリアは、パラソルが吹っ飛んだせいで日光に当たってしまい、二重で致命傷を負うこととなった。

怒るのは当たり前だ。

咲夜の声もまるで聞こえていないようで、てんで話にならない。

それに対して霊夢はどこ吹く風だし、ここはレミリアに代わって咲夜が事情を聞くことにした。

 

 

咲「はぁ・・・お嬢様が落ち着くまで私が要件を聞くわ、一体何があったの?」

 

 

ビシッ!

 

 

霊夢は右手のお祓い棒をレミリアに向ける。

 

 

霊「アンタんとこのお嬢様が異変起こしてんのよ!」

 

咲「・・・はい?」

 

 

~少女説明中~

 

 

霊「というわけで、アンタの主人が一番怪しいと思ったのよ」

 

 

最初、咲夜は異変と聞いて何のことかわからなかったが、どうやら最近やった宴会が異変と関係あるらしい。

確かにこの頃宴会の回数が妙に多かった。

零夜の歓迎会が行われたのはもう二週間も前の事だ。

それからというものの、三日に一回は宴会をやるようになってしまったのだ。

しかもそれは、何者かによって意図的に集められていたらしいのだ。

にわかに信じがたい話だが、霊夢は前回行われた宴会の時、わずかに妖力を感じ取っていたそうだ。

 

 

咲「お嬢様に大勢の人を集める力なんてないわよ?そもそも動機が見つからないわ」

 

霊「でもその妖力は霧なのよ?あんた達が前起こした異変だって霧だったじゃない。

疑うのは当然でしょ」

 

 

そんなことをいわれても・・・と咲夜は小さい声で反論した。

レミリアが何か行動を起こすときは咲夜にも言う筈だ。

主人を疑う訳もない咲夜は、やはり霊夢の推理違いではないかと考える。

 

 

咲「やっぱりお嬢様が犯人だなんて考えられないわ、もちろん主人だからって庇っている訳じゃないわ」

 

霊「う~ん・・・じゃあやっぱり違うのかな?」

 

 

顎に手を当て、考え込む霊夢。

得意の勘が今回はてんで働いていないようだ。

なら魔理沙と一緒に解決すればいいのでは?そう言おうとしたら・・・

 

 

霊「魔理沙も怪しかったから一回ボコったけど結局違ったし・・・」

 

 

まさかの犯人サイドにカウントされていたようだ。

確かに魔理沙はいつも宴会の幹事をしていたから怪しいと考えるのもわかるが、何もいきなりボコボコにすることはないのでは?流石に理不尽だと思う。

今回の異変はさして危険ではなさそうなので、館の仕事が残っている咲夜は解決にいかないことにした。

霊夢には悪いが、この異変は一人でどうにかしてもらうことに。

しかし、その前に霊夢にはやっていただかないといけない事がある。

 

 

咲「霊夢、お嬢様は私がどうにかするからいいとして、あなたが破壊した花壇は誰が直すのかしら・・・?」

 

 

咲夜の表情は笑っているが、心は絶対に笑っていない。

勘違いで破壊されたのではたまったものではない。

咲夜は霊夢をひっ捕らえて花壇を修理させようとするが、

 

 

霊「え、えーっと・・・私忙しいからまたね!」

 

 

霊夢はそそくさと空へ退散してしまった。

咲夜も跡をおいかけようとする。

 

 

咲「あ!待ちなさーい!!」

 

霊「あとで零夜にでもやらせるわよー!」

 

 

零夜を何だと思っているのだろうか?咲夜は少し、零夜に同情してしまった。

そういえばリュウトは一体何処に行ったのだろうか?倉庫整理に行くと言ってから見かけていないが・・・?

 

 

___________________

 

 

同時刻、幻想卿のとある場所。

リュウトは紅魔館内の倉庫を整理をしていた時、紫にスキマの中へ連れられ、よくわからない所へ連れてこられていた。

 

 

カツ、カツ、カツ、カツ・・・

 

 

リ「紫、俺に逢わせたいやつって一体誰なんだ??」

 

紫「この先にいるわ、私は反対したんだけどね・・・」

 

リ「???」

 

 

紫の言っている事がまるでわからないリュウトは首をかしげてしまう。

周りを見渡す限り、空は薄暗く、太陽は出ていない。

灰色の地面、土の地面ではないようだが、外であることは明らかだ。

何だか方向感覚がおかしくなりそうな場所だ。

本当に幻想郷なのか?歩きながら謎が深まっていく、そんなときだった。

 

 

紫「いたわ、あそこよ」

 

リ「何・・・?」

 

 

リュウトは目線を前に再び向ける。

すると、遠くに人影らしきものがあるのが確認できた。

頭に角が生えており、それが鬼であることは容易に想像できた。

その鬼はこちらに手を振ってきた。

 

 

萃「お~い!ここだここだ~」

 

 

結構背が小さい印象を受けたが、本人を傷つける可能性がある為言わないでおくことにする。

少女は無い胸を張りながら名前を名乗ってきた。

 

 

萃「私があんたをここに呼んだ{伊吹萃香}だ!よろしく頼むよ異端な少年君」

 

リ「リュウトだ、よろしく」

 

 

まずは挨拶代わりに酒でも飲もうと盃を差し出して誘う萃香。

しかし鬼の酒と言ったら度数がとんでもなく高いのが特徴だ、そんなもの飲めるはずがない為、リュウトはいらないと断った。

 

 

萃「なんだ、つれないねぇ」

 

リ「おい、こんなことの為にわざわざ俺をここまで呼んだのか?」

 

 

無駄な話で本題を先延ばししようとする萃香にだんだんイライラしてきたリュウトは、少し度の強い声色で萃香から、ここに連れてきた理由を聞き出そうとした。

すると萃香は頭をかきながら難しい顔をする。

そしてため息交じりに話しだした。

 

 

萃「はぁ、、せっかく楽しく話でもしようと思ってたのに、意外とせっかちな奴だね、あんた」

 

 

紫は見ているだけで何も言わない。

萃香はリュウトに指をさす。

 

 

萃「私はあんたと戦いたいんだ、だから紫に頼んでここに呼んでもらったのさ。

訳あって表に出られないんでね」

 

 

萃香はリュウトがチルノと戦っているのを何処からか見ていたらしく、前々から戦ってみたかったのだという。

誤算だった、まさかあれを見られていたとは。

 

 

リ「悪いが断らせてもらう。

お前と戦う義理などないからな」

 

萃「おや?そんなこと言っていいのかねぇ?」

 

 

これ以上自分の存在を明かす訳にいかないリュウトは戦いを放棄しようとするが、萃香は意味深な発言でリュウトの足を止めた。

 

 

萃「私は能力で体の半分を幻想郷に置いてきているんだ。

これが何を意味するかわかるかい?」

 

 

この後、萃香が言った一言が、リュウトの怒りを買ってしまうことになる。

 

 

萃「アンタと親しい、十六夜咲夜・・・だっけ?あの子がどうなっても知らないよ?」

 

リ「!!!」

 

 

リュウトの心の奥深くに、ふつふつと怒りがこみあげてくる。

自分の自己満足を満たす為に関係ない人間を巻きこむのか?そんなことは絶対にさせない。

咲夜を傷つけさせやしない!

 

 

キィィィィィィィィィィィン!!

 

 

リュウトの体をまばゆい光が包み込み、黒かった髪と虹彩が白く変化する。

背中には四枚のダイヤ型の羽が生え、光が治まると、さっきまでのリュウトはどこにもいなかった。

 

 

リ「お前のチンケな挑発に乗ってやる。

だがな、咲夜に指一本触れてみろ、全力でお前を宇宙の果てまでぶっ飛ばしてやるからな!!」

 

 

全身に力を入れ、大地を震え上がらせる。

紫は驚いていた、こんな力を隠していたなんて。

間違いなく今のリュウトは、チルノと戦っていた時の数倍の力がある。

そんな桁違いのリュウトの力に萃香は屈服せず逆に燃えていた。

 

 

萃「ハッハッハー!いいねいいね!私はこれを望んでたんだよっ!!」

 

 

萃香も妖力を爆発させ、リュウトにぶつけた。

力のぶつかり合いは空気を振動させ、辺りには轟音が鳴り響いた。

 

 

紫「ここにいたら不味いわね・・・」

 

 

ヴォン

 

 

危険を感じた紫はその場から立ち去り、完全な二人のタイマンとなる。

 

 

萃「さぁ!アンタの本気を見せてみな!」

 

 

誰にも知られることのない戦いが、今始まろうとしていた・・・。




萃香の悪役感がヤバイwこれ怒られるんじゃないかなww ちなみに僕は萃香好きじゃありません。
萃無想で嫌いになっちゃいました。
、、、ごめんなさい萃香好きの皆さん。
見ている限り、零夜よりもリュウトの方が強そうに見えるかもしれませんが、実力は殆ど変わりません。
でもリュウトの力には欠点があるから少しハンデがついてます。
あ、教えませんからね?
ではまたお逢いしましょう!


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萃夢異変35話※

これで萃無想編は最後です。
果たしてリュウトは鬼の四天王の一人にどう挑むんでしょうね?


カツ・・・カツ・・・カツ・・・カツ・・・

 

 

ガチャ、、ギィィ・・・

 

 

咲「リュウトさん?・・・いない・・・」

 

 

リュウトの様子が見当たらない咲夜は、なんとなく倉庫へ向かって歩いていった。

倉庫の前まで来ても物音一つしない。

扉を開けてみると、中には誰もおらず、明かりも全て消えていた。

カギは開いているのに何故かリュウトの姿だけが消えていたのだ。

 

 

咲「リュウトさん・・・何処へ行っちゃったんだろう・・・」

 

 

咲夜はリュウトを探しながらいつもの仕事へ戻っていった。

一方その頃、リュウトは・・・。

 

 

___________________________________________

 

 

ガキィン!!

 

 

萃「へぇ!!なかなかやるじゃないのさ!」

 

リ「余裕こいてる暇がお前にあるのか!!」

 

 

リュウトはパチュリーによって改修されたグラディウスを振りかざして萃香を襲うが、萃香の体に巻きつかれている鎖をヌンチャクのようにして防がれる。

ギチギチと鎖が軋む音が聞こえてくる。

萃香も不味いと思ったのか、鎖が切れる前に自慢の腕力でリュウトを撥ね退ける。

 

 

萃「余裕?私はこの戦いを待ち望んでいたんだ、手加減なんてするもんかい」

 

 

その証拠を見せてやる。

そういうと萃香は、自分の真下の地面に向かって拳を突く。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

バンッ!!!

 

 

土煙が水面に映る波紋のように広がっていく。

一瞬の間、静かな空気が流れるが、リュウトは後方に何かを感じ取った。

 

 

リ「これはっ!!」

 

 

後ろを振り向くと、そこにはさっきまでなかった超巨大な岩の山々が連なっていた。

そしてそれはどんどん連なっていき、最終的に自分たちを囲むように巨大なリングが出来た。

 

 

リ「隆起させたとでも言うのか!?なんて正確な妖力の操作・・・」

 

 

リュウトだってやろうと思えば出来なくもない、しかしこんな綺麗に円を描くように隆起させるなど、ちょっとやそっとの修行で身につくものではない。

リュウトはこの時点で、自分と萃香の圧倒的な経験の差を悟った。

だからこそ、負けるわけにはいかない。

 

 

萃「さぁ!これからが本番さね!」

 

 

萃香が腰を下ろして低い姿勢で突きの構えをする。

間違いない、これは正拳突きの構えだ。

しかし、リュウトと萃香の距離はかなり離れている。

いくら萃香が脚力で踏ん張っても、リュウトのスピードの前では無意味も同然だ。

何故こんな離れた距離から?

だが、萃香にそんな常識的な考えは通じない。

 

 

萃「フッッ!」

 

 

バッ!!

 

 

萃香は踏み込むわけでも、距離を詰めるわけでもなく、ただ正拳突きを繰り出した。

これが何を意味するのか?

それは直ぐにわかった。

 

 

リ「!!不味いッッ!」

 

 

リュウトは咄嗟に腕をクロスして防御の構えをとる。

その直後、とてつもない爆風が襲い掛かった。

 

 

ドッギャァァァァァァァァァァン!!!

 

 

衝撃波とでも言えばいいのか。

萃香の放った拳は空気を振動させ、強力な空気砲となってリュウトを襲いかかったのだ。

リュウトは踏ん張りをきかせてなんとか耐えるが、その衝撃波すさまじく、リュウトの300mほど後ろにある岩盤にまでぽっかりと巨大な穴を開けてしまうほどだった。

 

 

萃「おや?あれを耐えたのかい?頑丈だね~」

 

リ「それで本気か?」

 

 

少し挑発をきかせる。

 

 

萃「そうおもうかい?」

 

リ「・・・さぁな!!」

 

 

ドドドドドドドドドドドド!!

 

 

両手を前に出し、リュウトはお返しと言わんばかりに指から弾幕を撃ちまくるが、萃香はバックステップや宙返りで難なく避けていく。

だが、そんなものは牽制でしかない。

本命の一発はこれからだ。

 

 

リ「そこだぁ!ライトニングスパークッ!」

 

 

萃香の回避パターンを完全に見切ったリュウトは、萃香が着地するであろう地点にグラディウスを突き付けてロックオンし、魔理沙のマスタースパークに似たレーザーを放つ。

しかしその威力はマスタースパークの何十倍というものだった。

 

 

萃「やっぱり本命はそれかい!」

 

リ「何!?」

 

 

だが、萃香は手から鎖をアンカーのように飛ばして岩盤に突き刺し、錨のように引き寄せようとする事で緊急回避を行う。

最初から作戦だと気づいていたのだ。

 

 

リ「こんな単純な作戦は通用しないか・・・なら!」

 

 

戦術的な作戦を企てても効果がないと考えたリュウトは、自身のスピードを駆使した攻撃に切り替える。

 

 

 

ビュン!   ビュンビュン!    ビュビュビュビュビュン!!

 

 

ランダムな動きで飛行しつつ魔法陣でレーザーを撃つ。

滑らかな旋回を繰り返している為スピードが遅いが、それでもかなりの速度が出ており、目で追うのは難しい。

 

 

萃「射撃戦かい?私の苦手な分類だねぇ」

 

 

萃香は思い切り鎖を引き抜き、飛来してくるレーザーを手で弾き飛ばしていく。

だが、何故か一本のレーザーが腕に巻き付いてきた。

そのレーザーはリュウトの手から伸びており、縄のようになっていた。

 

 

リ「かかった!」

 

萃「何!?うわっ!」

 

 

そのまま萃香は引っ張られ、地面へと叩きつけられた。

バゴンという音とともに地面がひび割れ、萃香は地中へ埋もれていく。

しかしそれで終わりではない。

 

 

リ「うおぉぉお!!」

 

萃「きゃあああああ!」

 

 

右、左、右、左と萃香を地面へ叩きつけまくる。

このままではいずれ動けなくなってしまうと脱出を試みるが、からだに力が入らない。

縄から妖力を吸われているのだ。

萃香は心乏しいが奥の手を使う。

 

 

萃「クッ!拡散!!」

 

 

ブワァ・・・

 

 

リ「何だと!?消えた・・・?」

 

 

遠心力で負荷がかかっていた筈の縄はいきなり軽くなり、縄の先端を見ると萃香の姿が消えていた。

周りを見渡しても姿はどこにも見当たらない。

 

 

リ「どこにいるんだ・・・、」

 

 

辺りを警戒していつでも対応できる構えをとるが、やはり何処にも見当たらない。

だが萃香の攻撃は既に始まっていた。

 

 

ドゴォ!

 

 

リ「うぐぅおッ!」

 

 

突然どこからともなく背中に強い衝撃を受ける。

だが後ろを振り返っても誰もいない。

次は鳩尾にそれを受ける。

痛みに堪えながらも目をひからせるが、やはり何も見えなかった。

・・・何やら声が聞こえる、反響しているような声だが、これは萃香の声だ。

 

 

萃「どうだい?これが私の能力、{密と萃を操る程度の能力}さ」

 

 

霧のような靄が集まり、萃香の形を形成していく。

なんて厄介な能力なのだろうか。

 

 

リ「参ったな・・・攻略法が思いつかん・・・」

 

 

こんなもの空気と戦えと言っているようなものだはないか。

最後の奥の手もあるにはあるが、それを使うわけにはいかない。

萃香どころかこの空間全てを消し飛ばしてしまうかもしれないからだ。

リュウトは絶体絶命の危機に陥った・・・そう思い込んでいた。

だが、一つ腑に落ちない事がある、何故萃香が元の姿に戻ったのか?だ。

もしかしたら・・・、萃香は密度0状態を長時間維持出来ないのではないのか?

だとしたら元に戻ってからしばらくの間は霧になれない筈。

なら、今から短時間で決着をつければ良い。

リュウトは体を纏うエネルギーを最大出力に上げ、全ての攻撃に身構える。

しかし、萃香の初撃はおとりとして受ける。

 

 

萃「流石に驚いたか?まぁいいさ」

 

 

萃香は右手に妖力を集中させ、魔法陣の壁を蹴ってリュウトに急接近する。

 

 

グシャア!!

 

 

リ「ッ!!」

 

萃「砕いた!!」

 

 

萃香の拳はガードしたリュウトの左腕の骨を容易に粉砕した。

瞬間的に強烈な痛みが腕に走り、リュウトの体は新幹線にでも轢かれたかのように吹き飛ばされる。

そしてその体は轟音をたてて岩山へと埋もれていった。

 

 

萃「仕上げだよ」

 

 

リュウトが埋もれている岩穴に向けて妖力弾を何発も着弾させる。

土煙が大量に舞い、もはや岩の山は崩れ、原形を無くしていた。

だが、そこには人の姿も見当たらない。

リュウトならボロボロの姿が残っていても可笑しくないのに。

何故か?答えは簡単、避けられたのだ。

 

 

萃「・・・何で?」

 

 

萃香の後ろには、ついさっきまで岩に埋もれていた筈のリュウトが立っていた。

全く見えなかった、全く気付かなかった・・・、。

力が感じられないから。

 

 

萃「さっきから気になっていたけど・・・何で変身してから全く存在を感じられないの?」

 

 

それは一つの答えを導き出した。

リュウトは人間と他種族のハーフと言っていた、そのもう一つの種族が解ったかもしれない。

 

 

萃「あんた・・・まさかっ!」

 

リ「それは・・・お前が知らなくていいことだ」

 

萃「!ッこのぉッッ!」

 

 

リュウトに軽くあしらわれた萃香は、怒り交じりに振り向き、右ストレートを顔面に叩き込もうとするが、

 

 

リ「無駄だ」

 

 

ビキィン!

 

 

萃「か・・・あ・・・」

 

 

萃香の拳が届くよりも早く、リュウトの人差し指が萃香の額に触る。

その瞬間、萃香の頭の中が真っ白になり、まるで魂が抜けたかのように動かなくなった。

そしてリュウトがそのまま額を押すと、仰向けに萃香は倒れた。

 

 

リ「治癒能力・・・強化」

 

 

リュウトの左腕が淡い光を放ちだし、それが消える頃には砕かれた骨の痣が綺麗に消えていた。

リュウトはいつも首から下げているペンダントを手のひらに乗せ、上を見上げる。

 

 

リ「・・・咲夜たぶん怒ってるだろうなぁ・・・どうしたものか」

 

 

これをきっかけに、宴会の回数は劇的に減り、妖力もさっぱり感じられなくなったそうだ。

この後紫に元いた倉庫へ返されたリュウトは、ボロボロの庭とレミリアを見て驚きの余り口が半開きになり、霊夢の尻拭いをしにやってきた零夜と庭を元通りにするのだった。

 

霊夢と萃香が弾幕ごっこで異変の決着をつけるのはその次の日の事だった。

 




最後あまりにも適当すぎる、、、萃香普通に倒しちゃったよ、チートじゃねえか。
最初からリュウトが本気出してたら萃香が20秒ぐらいで殺られると思う、、、何故そんなキャラを作ってしまったのか、、、紫でも倒せないんじゃないのこれ?
萃香の鎖なんですが、飛ばしているモーションは、フルメタルパニックセカンドライドの(アーバレスト)を参考にしてます。
描写が思いつかない方は一度それを観てみるとイメージがつきやすいかもしれないです。
次回は永夜抄に向けてまた日常に戻ります。


評価、お気に入り登録、感想待ってます!


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キャラ設定萃無想

萃無想編に出てきたキャラの設定集です。
そんなに出てきてないので二人だけの紹介です。


八雲紫

 

種族:スキマ妖怪

 

能力:あらゆる境界を操る程度の能力

 

身長:173cm

 

代表的なスペルカード:幻巣「飛行虫ネスト」

 

キャラ説明:幻想郷の創設者。

妖怪の世界で一番強いと謳われている。

胡散臭い性格で近寄り難いと言われているが、中々顔が広く、世界中に知り合いが居る。

中には大企業の会長なども入っているが、どう知り合ったかは不明なものが多い。

霊夢とは師弟関係のような関係で、博麗の力を直伝した。

だが、師弟関係とは名ばかりで、霊夢は紫の事を一ミリたりとも尊敬していない。

主に彼女の食えない性格がそうさせていると思われる。

だが実力は本物で、霊夢の使っている結界術などは紫の劣化版である事が多い。

見た目は金のロングヘアの毛先をリボンで複数束ねており、若干妹紅と酷似した髪型をしている。

だが時たま髪を束ねて帽子に仕舞う事もある。

服は時代に合ったものを着用しており、最近は八卦と対極図が描かれた中華服にドアノブカバーのような帽子を被っていることが多い。

彼女は非常に頭が良く、特に演算能力がずば抜けて早い。

未来の世界では霊夢の子孫であるリュウトと響華の面倒を生まれた時から見ており、そのせいか二人からはユカ姉の愛称で呼ばれている。

ちなみに霊夢の夫である博麗零夜とは古い仲で、神話時代に知り合ったと言っている。

その事から彼女の推定年齢は1万年以上昔とされ、幻想郷の中、それどころか世界でもかなり古参の妖怪となる。

8000年前にルーミアを封印した過去を持ち、その事からルーミアもかなり古参である事が分かる。

もしかしたら二人は結構歳が近いのかもしれない。

 

 

伊吹萃香

 

種族:鬼(四天王の一人)

 

能力:密と疎を操る程度の能力

 

身長:149cm

 

代表的なスペルカード:鬼符「ミッシングパワー」

 

キャラ説明:日本古参妖怪の一つ、鬼の中でもかなり強力な力を持つ俗に四天王と呼ばれている4人の内の一人。

伊吹山の総領、酒呑童子その人である。

横に伸びる二本角が特徴で、薄茶のロングヘアの先を纏めている。

白のノースリーブに紫のロングスカートが特徴で、腕や腰には鎖や足枷のような重い鉄の塊が付いている。

三本の鎖の先には各々丸、三角、四角のブロックがついており、丸が密、三角が疎、四角が不変を表している。

能力を簡単に説明すると、要は密度を操る能力。

萃香はこの能力を使った戦術と鬼の度が過ぎた力で敵を圧倒する。

疎を限界まで高めれば体を霧にする事も可能で、物理攻撃が全く効果が無くなる。

が、しかし、霧状態は非常に防御力が低く、通常弾幕が当たれば部分的ではあるものの一瞬で消滅してしまう。

しかもその状態は長く維持出来ず、制限がある。




紫は丁度良いので此処で紹介させてもらいました。
藍は、、、出てきてないからまたの機会に。


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36話

今回は前回の挽回という意味合いもあり、少し長めの日常回となっています。
ちなみにリュウトは出てきません。


最近、フランドールの生活に変化が表れ始めた。

ここ最近、外で友達が出来たらしく、毎日のように昼間、外に出て遊んでいる。

吸血鬼のくせに昼間の外に出て大丈夫なのかという疑問があるが、それはレミリアにも言えること事だから触れないでおこう。

 

___________________

 

~紅魔館玄関~

 

 

フ「お姉ちゃん、行ってきまーす」

 

レミ「はいはい、早めに帰ってくるのよ?」

 

フ「はぁ~い」

 

 

勢いよく扉を開け、日傘を差しながら飛んでいく。

最近のフランはいつもこの調子だ。

外に仲の良い友達ができるのはいいが、自分の目の届かないところで何かあったらと思うと心配になってしまう。

お姉ちゃんは心の中では不安がいっぱいだ。

そこでレミリアはあることを思いついた。

 

 

レミ「ということで、偵察にいくわよ」

 

咲「お嬢様・・・心配なさる気持ちはわかりますがそれはどうかと・・・」

 

 

正直心配のし過ぎなのではないかと咲夜は考えてしまう。

それもそうだろう、フランはかなりしっかり者で、たまに美鈴と花壇の水やりをしたり、咲夜本人も裁縫を手伝ってもらったりしているのだから。

どちらかというとレミリアが洗濯やらをやるほうが心配になってしまう。

料理は別だが。

 

 

レミ「いいから!早く目立たない服に着替えるのよ!」

 

咲「は、はぁ・・・」

 

 

あまり乗り気ではないが、主人が言うのであれば行くしかあるまい。

咲夜は私服に着替え、我儘主人のお供へ向かった。

 

 

___________________

 

 

フ「みんなー!おはよー!」

 

花「あ!フランちゃんきたよ」

 

 

人里のはずれ、フランはいつものようにみんなが集まるここに来ていた。

この場所は空地のようになっており、周りも木々に囲まれいる為日陰が多く、フランにとって都合の良い場所だ。

メンバーは、花梨、大妖精、チルノ、リグルを合わせて5人だ。

 

 

大「フランちゃんおはよう!みんな揃ってるから何かして遊ぼう」

 

フ「うん、でも何して遊ぶ?」

 

 

毎日のように遊んでいる5人は今まで思いつく限りの遊びをやってきた為、全員で悩みこんでしまう。

するとチルノが一つ遊びを提案してきた。

 

 

チ「そうだ!虫取りしようよ!」

 

大「いいね!いつもしないから新鮮だよ」

 

花「虫取りかぁ、全然やったことなかったなぁ」

 

リグル「一応わたし、虫の妖怪なんだけどなぁ・・・まぁいっか」

 

 

全員一致で今日は虫取りをすることに決定した。

 

 

_________________

 

 

霊「・・・で?なんでうちで虫取りなわけ?」

 

 

霊夢の目の前にはちびっこ5人が整列している。

疑問しかない、何で他の森ではなくて博麗神社なのか。

 

 

5人「零夜(さん)がいるから(です)!!」

 

 

あぁ、納得。

それにしてもよくもまぁここまで好かれたものだと感心してしまう。

そういう人格なのだろうか?だが、自分に迷惑が掛からないなら断る理由もない。

 

 

霊「わかったわかった、今呼んできてあげるから待ってなさい」

 

5人「はーい!」

 

 

そう言って霊夢は社の中に入っていく。

それからすぐに大きな影が現れた。

 

 

零「何だ、今度は虫取りして遊ぶのか?」

 

 

縁側から草履を履いて外に出てくる。

5人は零夜が出てくるなり近くに走り寄って行った。

 

 

チ「零夜!一緒にカブトムシ獲ろうよ!」

 

花「セミ!セミ獲りましょうよ!」

 

フ「とろーとろー!」

 

 

両手を引っ張られて前かがみになってしまっているその姿は、人気のある学校の先生を連想させる。

虫取りを一緒にやろうと、半ば強引に誘われている零夜だが、面倒見がいい為断ることをしない。

 

 

零「よしよしわかった、俺もやればいいんだろ?」

 

5人「やったあ!!」

 

 

零夜はつい苦笑してしまう。

子供の笑顔を見るとどうも断れない、こういうのをお人よしというのだろうか。

零夜は神社の蔵の中から虫取り籠の代わりになりそうなものを持っていくことにした。

 

 

零「じゃあ霊夢、行ってくる」

 

霊「えぇ、夕飯までには帰ってきてね、それと森の中の山菜とかもできれば取ってきてほしいかな」

 

零「了解した、任せてくれ」

 

 

フランたちは零夜を連れて神社の裏の森の中へと消えていった。

だがその光景を見ていた者達がいた・・・。

 

 

咲「お嬢様?こうまでして後を付けること無いと思うのですが・・・」

 

レミ「何言ってんのよ咲夜、尾行してるんだから隠れなきゃ意味ないじゃない」

 

 

神社の鳥居の陰に隠れているレミリアと咲夜、これでは程の良いストーカー行為である。

着ている服装もどことなく野戦服に似ているし、一体どこにそんなものあったのだろうか。

こんなものがあるくらいだ、きっともっと凄いものがあるに違いない。

だが、隠れている場所が鳥居なのでどうも隠れ切れていない。

なのでバレるのはとても早かった。

 

 

霊「アンタたち・・・何やってんのよ・・・」

 

 

いつの間にか近付いてきていた霊夢の呆れた声が聞こえてきた。

それもそうだろう、見た感じ不審者にしか見えない。

いきなり現われた霊夢に気付かなかった二人は驚いた声を出した。

 

 

レミ「きゃあ!・・・なんだ霊夢か・・・」

 

咲「お邪魔しております・・・」

 

 

咲夜の軽い会釈と同時に出た苦笑の声でなんとなく霊夢は理解した。

レミリアに無理やりさせられたんだな・・・と。

 

 

霊「もう一度聞くけど何やってんの?」

 

レミ「わが妹を心配しての行動よ!」

 

霊「いや、私は今あんたの今後の人生の方が心配になったわ」

 

 

威張って言うほどのことではないだろう・・・咲夜が気の毒になってくる。

まだこんなことを続けるのかとレミリアに聞くと、

 

 

レミ「あたりまえじゃない!ここでやめたら意味がないわ!」

 

 

と、凄い形相で言ってきた。

もう好きにすればいい、霊夢はこの件について何も触れなかったことにした。

 

 

___________________

~森の中~

 

大「花梨ちゃ~ん!こっちにおっきいのいたよ~」

 

花「え?どこどこ??」

 

 

一方、こちらは既に虫取りを始めており、もう既に何匹か捕まえているようだ。

全員空を飛べる為、網を使わずとも簡単に捕れてしまう。

先程も大妖精が一匹何かを見つけたようで、近くにいた花梨を呼んでいた。

どうやら見つけたのはミヤマクワガタらしく、木に幹に留まっているのを見せてきた。

 

 

花「クワガタだ!やったね大ちゃん!」

 

大「うん!」

 

 

大妖精はクワガタを籠の中に入れる。

その頃フランはチルノととんでもない大物を捕まえようとしていた。

 

 

フ「チルノ・・・こんなカブトムシいるの・・・?」

 

チ「さぁ・・・というかこれ、カブトムシ・・・なのかなぁ・・・?」

 

フ「カブトムシって四本も角あったかなぁ?」

 

 

一つの木の前に突っ立っている二人が気になった零夜は声をかける。

 

 

零「どうした?何か見つけたの・・・か・・・は?」

 

 

零夜は開いた口が塞がらなかった、二人が見つけたのは・・・。

 

 

零「ネプチューンオオカブト・・・何でこんなところにいるんだ?」

 

 

黒光りした大きなネプチューンオオカブトだ。

南米のカブトムシが何故こんな場所にいるのか気になるが、零夜がカブトムシだと教えるとチルノは早速それを捕まえた。

 

 

チ「カブトムシならこいつ捕まえよう!」

 

 

木の幹にしがみついているそいつを引きはがして籠に入れる。

だが、二人の他にもすごい虫を見つけている者が一人いた。

 

 

リグル「二人とも!こっちにも凄い大きいクワガタいたよ!」

 

フ「え?まだいるの?」

 

花「何ですか?」

 

大「何か見つかったの?」

 

チ「見せて見せてー!」

 

 

みんながリグルの手のひらに注目した。

それに一同が歓喜する。

 

 

花「うっわ!何ですかこのクワガタ!私の捕まえたクワガタより断然大きい!」

 

大「でも名前なんて言うんでしょう?」

 

フ「零夜ー!これの名前教えてー!」

 

 

フランが零夜を呼び出すと、零夜が三人の頭の上から顔を覗かせそれを確認した。

 

 

零「う~ん、ギラファノコギリクワガタだったかな?」

 

リグル「へぇ~、かっこいいね!」

 

大「普通のノコギリクワガタとは全然違いますね!」

 

 

こちらも日本原産のクワガタではないが、リグルは問題なく籠に入れた。

 

 

リグル「私こんな大きなクワガタ見るの初めてだよ~」

 

 

籠の中のクワガタをまじまじと眺めて微笑む。

触角をピクピク動かしているクワガタにつられてリグルも触角をピクピクさせている。

そんなリグルの姿を見ていたフランの虫かごの中には虫一匹もいない・・・

 

 

フ「私はまだ0匹かぁ・・・何処かにいないかなぁ・・・」

 

 

フランは一人でふらふらと森の中を散策する。

どうせ捕まえるならチルノやリグルが捕まえたような大きい獲物がいいが、この際獲れれば何でもいい。

そんなフランの思いが天に届いたのか、フランが触れた木の幹に一匹のカブトムシが留まっていた。

美しい黄金の羽を携えたそのカブトムシは今まで見たカブトムシのどれよりも大きく、まさしく昆虫の王の貫禄があった。

それはパチュリーの図書館でも見たことがある、世界最大にして最強のカブトムシ。

 

 

フ「ヘラクレスオオカブトだ!!」

 

 

感動した。

内側から吹き出しそうになる興奮をなんとか抑え、ヘラクレスの角をつまみ、そっと持ち上げる。

だが、それだけで終わりではなかった。

 

 

フ「あ、もしかしてこれメスの方かなぁ?」

 

 

自分の膝より下の幹にはヘラクレスのメスも留まっていたのだ。

 

 

フ「みんなに見せてこようっと!」

 

 

オスとメスを同時に見つけたフランは二匹とも籠に入れて皆のいる場所へ走っていった・・・。

その日、一番の大物は残念ながら花梨の捕まえたアルビノのオオクワガタだったが、フランは上機嫌で紅魔館で帰っていったという。

 

 

ちなみにその後、ヘラクレスオオカブトは紅魔館で飼育することとなった。

 

___________________

 

 

~バルコニー~

 

 

レミ「・・・結局途中からフランの様子見れてないじゃない・・・」

 

咲「しかしお嬢様、フラン様の楽しそうなお顔を見れただけでも良かったじゃありませんか」

 

レミ「ま、それもそうね」

 

咲「そうですわ」(もうやりたくないなぁ・・・)

 

 

バルコニーで紅茶を飲みながら夜の刻を主と過ごした従者は、ただただ平穏な日々を望むだけだった・・・。




最近トリビアの泉の最強のカブトムシ決定戦を見て書きたくなりました。
ムシキングも復活したし良い機会だと思いましてw
あと地味に新キャラと花梨ちゃんが出てきてますね。


それと感想、お気に入り登録ありがとうございます!


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37話前編

少し長い話になりそうなので2話に別けて書くことにしました。
今回は出番が少な目のキャラを出しました。
流石にいつも同じキャラばかりはつまらないですからね~


~白玉楼縁側~

 

 

幽「今日も涼しいわねぇ~」

 

妖「ええ、そうですね」

 

夏の暑さがあまり感じられないここ、冥界。

そこを統括する亡霊の女性。

西行寺幽々子はふと、空を見上げると、ある一つの疑問が頭に浮かんだ。

 

 

幽「ねぇ妖夢」

 

妖「はい?何ですか幽々子様?」」

 

幽「、、、世界一美味しい食べ物って何だと思う?」

 

妖「、、、、、はい?」

 

 

その日、事件が起きた。

 

___________________

 

~紅魔館客室~

 

妖「というわけで協力してくれませんかリュウトさん!!」

 

リ「いやいやいやいや!何故だ!?」

 

 

座っていたチェアからテーブルに両手を突っ張って身を出す妖夢にリュウトは思いっきり突っ込んだ。

そもそも世界一美味しいものなんて定義が存在するのかどうかも怪しいのだが。

今、彼女はその無理難題を唐突に押し付けられて相当困っているらしい。

 

妖「お願いします!!

このまま何も見つけられなければ私はどうなるか!」

 

リ「う、う~む、、、」

 

 

かなり必死にリュウトを説得しつつ涙ぐむ妖夢。

こちらも咲夜と同様、主の気まぐれに頭を悩まされる苦労人のようだ。

見ていて少し可哀そうになってしまう、、、。

椅子の背もたれに身を任せつつ、腕を組んで悩んだ結果。

 

 

リ「ま、まぁそれなりの目星がついているなら、、、」

 

妖「本当ですか!?ありがとうございます!!」

 

 

引き受けてしまった。

たまには断ることも必要なのにどうして断らないのだろうか。

だが悲しみと恐怖に満ち溢れた妖夢のあの顔を見てしまってた断るものも断れないだろう。

リュウトは次なる面倒ごとに巻き込まれないように直ぐに行動に出ることにした。

しかしその前に、、、、。

 

 

リ「おっと、その前に咲夜に許可もらわないとな」

 

 

リュウトは咲夜の名前を大きな声で呼ぶ。

すると何処からともなくいきなり彼女は現れた。

呼び出してから掛かった時間、およそ1秒。

妖夢はその尋常じゃない速さに驚いて体がビクリと反応してしまう。

 

 

カチッ

 

 

咲「どうされました?リュウトさん」

 

妖「早っ!」

 

リ「あぁ、実はな」

 

 

 

~青年説明中、、、~

 

 

咲「リュウトサントフタリキリ...リュウトサントフタリキリ...リュウトサント...」

 

リ「お、おい、咲夜?どうしたっていうんだ?」

 

 

一通り事情を説明すると咲夜の目からは光が消え、完全に鬱状態になってしまった。

何故こんな状態になってしまったのかわからないが、今は絶望したかのように床に座り込んでブツブツと何かを呟いている。

折角呼んだのにどう呼びかけても反応がなく、話にならなくなってしまったのでどうしたものかと悩んでいると、妖夢が弱々しい声で話掛けてきた。

 

 

妖「あの、、、やっぱり私一人で、、、」

 

リ「ん?何故だ?」

 

妖「い、いや、、、(鈍感か!)」

 

リ「????」

 

 

寧ろ何故気付かないのか、何だか咲夜が凄く可哀想に思えてきてしまう。

彼女は色々と苦労が絶えないようだ。

そんな咲夜に妖夢はただ、心の中で謝り続けるしかなかった。

 

 

リ「それで、手伝いに行ってもいいか咲夜?」

 

 

そのリュウトの声に反応して咲夜が壊れかけのブリキ人形のように頭を左に回転させ、目をそらしながら、、、

 

 

咲「イイデスヨー、フタリデタノシンデキテクダサイ、、、」

 

 

ほぼ棒読み、しかも死んだような目でそう言った。

もう見ていられない。

いつもの咲夜の面影が何処にも感じられないその姿はもはや別人だった。

しかしどんな形であれ、許可はとれたので早速行動に出る。

その為にこの件について一番はっきりと答えを出してくれそうな紫に相談。

そして今、妖夢とリュウトがいるのは、、、。

 

 

リ「なんで大平洋、、、」

 

妖「うっぷ、、、何だか気持ち悪いです、、、」

 

 

紫に相談したのが間違いだったのであろうか、二人は幻想卿の外の世界に飛ばされ、何処かもよくわからない港から船で大平洋まで連れてこられていた。

何故二人がこんな事になっているのかというと、それはここに連れてこられる少し前の話になる。

 

___________________________________________

 

 

リ「おーい、紫ー、聞こえてたら出てきてくれー」

 

妖「紫さまー」

 

 

こういう時は紫に相談するのが一番だろうという結論に至ったリュウトは、来るかどうかわからないが取り敢えず名前を呼んでみる。

するといつも彼女が出てくる不気味な目が大量に浮いている次元のスキマが口を開いた。

 

 

紫「あらあら、珍しいじゃない?リュウト、どうしたの?」

 

 

紫は上半身だけ外に出してリュウトに問いかける。

リュウトは早めに行動するために事を簡潔に説明した。

 

 

~青年説明中~

 

 

紫「へぇ、面白そうじゃない?そういうことなら協力するわ」

 

リ「本当か?助かるよ」

 

 

たまには幽々子の気まぐれに付き合うのも悪くないわ、と言って紫は上を見上げてしばらく考え込む。

世界一美味しいの定義が無い為、紫も悩んでいるのだろう。

だが、紫は意外と早く答えを導き出した。

 

 

紫「いろいろ思いついたけど、、、やっぱり海の幸かしらねぇ。

幻想郷に海は無いし、幽々子も食べた事なかった筈よ」

 

リ「海かぁ」

 

妖「おぉ!流石紫様!

で?その海の幸というのはどこに行けばいいのです?」

 

 

早く獲りに行こうと急かす妖夢に紫はそっと答える。

 

 

紫「幻想郷には海が無い。

でも、、、」

 

 

紫の口元がにやりとゆがむ。

嫌な予感がしてきた。

 

 

紫「連れていく事は出来るわ♪」

 

 

その瞬間、二人の足元が消え、咄嗟に事態に二人とも成すすべなく穴へ落ちる。

 

 

ヒューーーーー、、、

 

 

妖「きゃああ!スカートが!」

 

リ「何?うわぁ!?」

 

 

落下時の空気の流れでスカートがめくれ上がってしまいそうになるのを必死に止めようとしている妖夢の姿は女の子らしくとても可愛らしいが、これを見ようしたら間違いなく変態の汚名を着せられる羽目になってしまう為、リュウトは急いで目線を反らした。

その後の着地はうまくいったが、足を付けたのは地上ではなく白い板の上。

周りを見渡したら視界いっぱいに広がる海があり、今自分たちがいるのが船舶の上である事を理解させた。

 

 

妖「何か揺れてません?ここ」

 

リ「、、、どうやら船の甲板みたいだな」

 

 

そして話は現在に戻される。

此方に来てから少々妖夢の顔がグロッキーになっているのは恐らく船酔いのせいだろう。

船に乗ったことが無いのだろうか?

それとも元々ダメなのだろうか?

よくは知らないが、船の反対側に走っていった妖夢が心配だ。

その理由として先程から微かに何かを吐く声が聞こえてくる。

船がそんなにダメだったのか、えらいところに連れてこられたものだ。

そもそも何故船がこんな場所で待機しているのかも謎だが、どうせ紫が裏から手回したというオチなのだろう。

と、そんな解釈をしているとまたまた紫がスキマを開いて姿を現した。

その両手には手には釣り竿が一本ずつ握られている。

、、、まさかとは思うがこれは、、、。

 

 

紫「じゃ!あとは頑張って好きなだけ釣ってちょうだい♪」

 

リ「適当か!妖夢どうすんだよ!!」

 

紫「頑丈だから大丈夫よ」

 

リ「あっちで吐きまくってるんだぞ!?」

 

 

まぁどうにかなると言って、紫は白い玉が大量に入った瓶を小さなスキマから取り出し渡してきた。

酔い止め薬という事なのだろうか。

 

 

リ「これでどうにかしろと、、、」

 

紫「意外と効くから大丈夫よ、夕方になれば迎えに来るし」

 

リ「はぁ、、、やはり面倒ごとになるのか、、、」

 

全然納得がいかないが、夕方には帰れるらしいので良しとした。

要はいっぱい釣って帰ってこいと言うことだ。

話は済んだと紫も帰っていき、船の上には妖夢とリュウトの二人だけ。

彼は紫から受け取った竿をまじまじと眺める。

 

 

リ「釣りなどやったこと無いのだが、、、やるしかあるまい」

 

妖「オロロロロ、、、」

 

リ「の、飲むか?」

 

妖「ありがとう、、、ございます」

 

 

リュウトは酔い止め瓶を妖夢にそっと渡し、妖夢はこの日、人生初の船酔いに。

リュウトは人生初の釣りを体験することとなった。

 

 

後半へ続く

 

 

 

 

 




多分生前は海の魚も食べたことがあると思いますが、幽々子は死んでから昔の記憶を全て無くしてるので知らなくて当然だと思います。
それにしても幽々子の気紛れには困ったものですね。


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37話後編

この前の続きです!妖夢回、、、まぁ見ていけばどうなるかわかりますね。


~太平洋沖~

 

 

リ「う~む・・・どうにも釣り竿というのは慣れないな・・・」

 

 

グリップを握った釣り竿を眺めてそう呟く。

初めて握ったのだから違和感があるのは仕方ないと思うのだが、事は試してからでもいいだろう。

早速ルアーをつけて釣り糸を大海原へ勢いよく投げ込む。

 

 

シューーーーーーーーーーー・・・チャポン。

 

 

リ「確かこれでいいんだよな?

・・・上手く釣れるといいのだが」

 

 

リールから糸が吐き出され、ルアーが落ちた地点を示す浮きがどんどん波に流されているのがわかるが、それが良い事なのか悪い事なのか、それすらも素人の彼にはわからなかった。

波の揺れが大きく、立っているだけでも少しよろけてしまい、それと同時に自然というものがいかに大きな存在かを理解させられた。

 

 

リ「あの頃と全く変わっていない。

これが地球か・・・」

 

妖「何です?地球って」

 

リ「お、妖夢。

もう平気か?」

 

妖「はい!すっかりよくなりましたよ」

 

 

感情に浸っていると、調子がよくなったのか妖夢が後ろから話かけてきて、隣で釣りを始めだした。

顔色もいつも通りに戻っているのでどうやら薬が効いたらしい。

何がともあれ元気ならそれでいい。

 

 

リ「そうか。

地球というのは今、俺たちの住んでいるこの星の事だ」

 

妖「星って・・・あのお星様ですか?

あれは空にあるものじゃないんですか?」

 

リ「それもそうだが、俺たちの立っているここも惑星という星の一つなんだ。

空のもっともっと上に行けばこの青い星の姿が見えるぞ。

その時はこの星も空に浮かぶお星様に見えるかもな」

 

妖「へぇ~!物知りですねリュウトさんって」

 

 

そうでもないさ、と軽く流す。

幻想郷には科学が無い為地球を見たことがないのだろう。

二人は再び釣りを再開し、無言で浮を見張る。

そんな中、妖夢がある質問をしてきた。

 

 

妖「海の魚ってそんなに種類見たことないんですけど、紫様の言ってたマグロって魚はどんな魚なんですか?」

 

リ「マグロ?あぁ、幻想郷にはサンマやらイワシやらしか海の魚は無いからな」

 

 

マグロがどんな魚と聞かれても、専門家でもなければそこまで詳しいわけでもないので簡単に自分と同じぐらいの大きさの魚だと言うと、妖夢の釣り竿が音を立てて甲板に転がった。

 

 

リ「ん?どうかしたのか?」

 

 

不思議に思ったリュウトが呼びかけるが、妖夢は何の反応も見せない。

それどころか竿を手放してしまったのに拾う動きを見せず、うつむいたまま立ち上がり、妖夢はリュウトの竿を指さして、物凄い形相で突っ込んだ。

 

 

妖「そんな大きい魚なんて聞いてませんよ!?

こんな竿で釣れる訳ないじゃないですか!!

知ってたなら解ったでしょう!?」

 

リ「・・・ハッ!?」

 

 

カラカラァン・・・。

 

 

リュウトはショックを受けた。

まさに妖夢の言う通りだからだ。

何故今の今まで気づかなかったのか、初心者でもそれくらいわかるだろうに。

あまりのショックにリュウトも竿を放してしまう。

 

 

リ「な・・・なんということだ・・・。

これでは釣れない・・・だと?」

 

妖「当たり前じゃないですか!

これはもっと小さい魚を釣る為の竿ですよ!」

 

 

鯛や鰤なら問題なく釣れるだろうが、恐らくマグロがヒットした瞬間、この竿は真っ二つになることだろう。

だが、第一目的のマグロが捕獲できないというのはかなり不味い。

リュウトは今この場で可能なマグロの捕獲方法を思いつく限り考える。

どうにかしなければ。

どうにか・・・・そうだ!

リュウトは画期的な案を思いついた。

 

 

リ「直接捕まえてしまえばいいんじゃないか?」

 

妖「え?それってもしかして・・・って何やってるんですか!?」

 

 

いきなりシャツを目の前で脱ぎだすリュウトを注意する、が、リュウトはさほどそのことを気にしていないようで、頭に?マークが浮かんでいた。

そして・・・。

 

 

リ「いざ!未知なる世界へ!」

 

 

ザッパァァァァァァァン!!

 

 

妖「きゃあ!?リュウトさん!?」

 

 

太平な海に勢いよくダイブをした。

妖夢はとびあがる水しぶきが目にかからぬよう顔を隠し、ゆっくりと目を開けると、そこにはもうリュウトの姿は無かった。

 

 

~海中~

 

 

リ「案外下は深いんだな。

いろんな魚が泳いでいるな・・・」

 

 

海の中は地上とは違い、太陽の光がほとんど無く、足元はまさに奈落の落とし穴。

だが、そんな地獄のような世界でもちゃんと生き物がいた。

銀のカーテンのようなイワシの大群。

それを餌とするイルカ。

深海に行けばもっと多くの生物がいるだろう。

しかしこの光景を見る限り、それが信じられなかった。

だが、マグロの姿はどこにも見当たらない。

 

 

リ「よし、遠くに移動するか」

 

 

リュウトは妖夢の期待に応えるべく、水の中を物凄い速度で移動し始めた。

そのあまりの速さに、海面では大きなアーチ状の波が立っていた程だ。

その一方で、船の上では妖夢が釣りを再開していた。

 

 

妖「凄い速さだけど・・・魚逃げないかな、あれ」

 

 

リュウトの移動している時に出来た波は船の上からでもはっきり見え、その光景は異常だった。

大きな波に揺られる中、彼女はのんびりと、海釣りを楽しむことにした。

 

 

シャーーーーーーーー・・・・・チャポン

 

 

妖「はぁ~・・・。

海ってのはいいですねぇ~・・・」

 

 

潮の香はどこか気持ちのいい気分にさせてくれる。

そんな印象だった。

初めて嗅ぐのにどこか懐かしく、波の音は眠りを誘う子守歌のように聞こえる。

母なる海とはよく言ったものだと思う。

さてさて、どんな魚が釣れるのであろうか、だがそれを知る機会は直ぐにやってきた。

 

 

グググーッ

 

 

妖「お!かかった!」

 

 

手ごたえを感じた妖夢はリールを巻きながら獲物を引き寄せていく。

海面に上がってきた糸の先には白銀に輝く一匹の魚がヒットしており、未だに釣られまいと抵抗をしている。

しかし体格の小さいその魚はあっさりと妖夢の力に負けてしまい、甲板に姿を現した。

 

 

妖「う~ん・・・なんて名前なんだろうこの魚。

・・・まぁいいか」

 

 

チャポン

 

 

海の魚なんて今までほとんど見たこと無かった為、名前は解らなかったが、食べられそうなので生簀の中に入れる。

これで一匹目、まだまだ時間はあるのでリュウトが帰ってくるまで釣りを続ける。

それから2時間ほど時間が経った。

日が暮れ始め、水平線にはきれいな橙色の太陽が反射している。

 

 

妖「もう帰ってきてもいい頃合いなんだけど、どこまで行っちゃったんだろう。

迷子になってたりして・・・」

 

 

怖くなった妖夢が手遅れになる前に探しに行こうとしたときだった。

 

 

リ「お~い」

 

妖「この声・・・リュウトさん?」

 

 

どこからか聞き覚えのある声が聞こえてくる、これはリュウトの声だ。

声の聞こえる方を振り返る、すると太陽を背にしている巨大が影が目に入った。

海の上をホバリングしながら迫ってくるそれは、近付いてくるにつれてどんどん大きくなる。

リュウトが大きな魚を大量に背負ってこちらに帰ってきているのだ。

だが少々、いや、普通に大きすぎる。

あれ全部船に載せるの?と、言いたげな顔の妖夢を他所に、リュウトはお構いなしにそれを甲板にぶちまけた。

重量が重すぎるのか、船体が前方に傾いているような気がする。

 

 

妖「どこまで行ってたんです?

危うく探しに行くところでしたよ」

 

リ「あぁ、すまない。

水の中で人食い鮫に遭ってな、マグロを捕まえるついでに持ってきた」

 

妖「海ってそんなのがいるんですか!?

しかもそれをついでに捕まえたって・・・」

 

 

常識外れすぎて呆れてしまう。

だが、無事に目標のマグロが手に入り万事解決。

ところが妖夢にはどれがマグロかわからない。

 

 

リ「そうか、妖夢はマグロを見るのが初めてだったな、これがマグロだ」

 

 

リュウトは両腕を使って大きな体の一匹の魚を持ち上げて見せる。

銀色の肌を持つそれは、どことなく金属を連想させ、今までの魚は小さいというイメージを完全に覆していた。

 

 

妖「きれいな魚ですね~、これだけ大きければ幽々子様もお喜びになる筈です!

これで胸を張って帰れます!

どうかお礼をしたいんですが・・・」

 

リ「いや、礼ならいい。

だがその前に少しいいか?」

 

妖「はい?」

 

__________________________________________

 

 

日が沈みかけ、約束通り直ぐに紫が迎えのスキマを開き、二人は幻想の世界へ帰っていった。

その日の夜・・・。

 

 

~白玉楼~

 

 

妖「幽々子様、世界で一番おいしい食べ物を自分なりに探して参りました」

 

 

部屋の襖を開け、しとやかなお辞儀をしてから居間の机に料理を並べていく。

皿の上には刺身や天ぷらなどの海の魚を使った料理が多く盛られ、それらの中心には大きなマグロの頭が載せられた刺身の盛り合わせが置かれた。

初めて見る圧巻の食材に幽々子は興奮しっぱなしだ。

 

 

幽「凄いわぁ~!これは妖夢が釣ってきたのかしら?」

 

妖「は、はい」

 

幽「へぇ~、ではいただこうかしら?」

 

 

幽々子はマグロの刺身を上品に口に運ぶ、すると食べた瞬間に口の中から身が無くなってしまった。

筋が無く、噛まずに溶けてしまうほど柔らかい刺身に幽々子は幸せそうな表情を浮かべた。

 

 

幽「とっても美味しいわぁ!

この世にこんな美味しい魚がいたのね!

こんなに美味しいものを食べれて幸せだわぁ~」

 

 

ありがとう、妖夢。

という幽々子の言葉は、今までの苦労の甲斐があったと思わせてくれる言葉だった。

手伝ってくれたリュウトには感謝しかないのだが、礼を断られたのは予想外だった。

 

 

妖「まさか自分で釣ったお土産だけでいいなんて言うとは思わないもんなぁ・・・」

 

幽「あら?妖夢どうかしたの?

それより一緒に頂きましょう?

とっても美味しいわよ?」

 

妖「はい、ではご一緒させていただきます」

 

 

この後紫たちも夕食に呼ばれ、酒も用意されたという。

白玉楼は夜遅くまで明かりが消えることは無かった。

 

 

___________________

 

 

~紅魔館バルコニー~

 

 

咲「はぁ。

妖夢さんと二人っきりで海、かぁ・・・」

 

 

夜風に打たれながらバルコニーの柵に肘をつき、ため息を吐き出す咲夜。

リュウトが妖夢と二人っきりで出かけた事がよほどショックだったらしく、一緒に行きたいと言えなかった自分にげんなりしていた。

すると後ろの、開いたままの入り口の扉からノック音が聞こえてきた。

 

 

コンコン

 

 

リ「咲夜、一緒にどうだ?」

 

咲「え?リュウトさん?」

 

 

現れたリュウトの両手には、日本酒とグラス。

それと海でリュウトが釣りあげた立派な鯛の刺身が盛られた皿があり、それは晩酌を一緒にどうだという意味を示していた。

咲夜もそれを察して直ぐに席を用意した。

リュウトも用意されたテーブルに皿を置いて椅子に座り、同じように座る咲夜にグラスを渡して酒を注いだ。

 

 

咲「めずらしいですね、いつもは宴会でもない限り飲みませんのに」

 

リ「これを咲夜と一緒に食べたくてな、たまにはいいだろう?」

 

咲「えぇ、悪くないですわ」

 

リ「フッ、ならよかった」

 

 

少し安堵の表情が漏れて見えるリュウトを見て、咲夜は上品に笑みをこぼした。

 

 

咲「フフッ♪こういうことをする所、リュウトさんらしいですね♪」

 

リ「ん?どういう意味だ?」

 

咲「いいんですよ、私は嬉しいですから」

 

 

二人は夜空の下で乾杯し、二人だけの時間を風情を楽しみながら共にした。

 

 




結局は咲夜に戻るんですよ。
最後に釣ったのは咲夜の為なんですね、いい男だと思います。
ちなみに捕まえたホホジロザメは博麗神社に奉納させた後、巫女さんに美味しく頂かれました。


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38話※

新キャラ登場!!でもこのキャラを出す前に色々出さなきゃいけないキャラいると思うんだけどなぁ…まぁいっか


幻想郷には、冥界があるように、あの世というものも存在する。

俗に言う天国と地獄というやつだ。

となると勿論死者を裁く閻魔様も存在する。

 

 

~無縁塚、裁判所~

 

 

幻想郷の外れにある、外界の忘れ去られたものが行き着く無縁塚。

ここには三途の川への入り口があり、死して魂のみになった者達が集まる危険区域だ。

そのさらに奥へと進むと一つの大きな裁判所があるのだが、そこでは罪人を裁くのではなく、魂を裁いている。

その責務を果たしているのが閻魔の玉座に座る女性、四季映姫・ヤマザナドゥだ。

 

 

映姫「、、、今日は仕事が少ないですね」

 

秘書「そうですね、今日来た魂の数はおとといのおよそ半分以下です」

 

 

だが今日は三途の川を渡ってくる魂が少ないらしく、珍しく暇を持て余していた。

いつもはこんなこと滅多に無い為どうすればいいかわからない。

そこで秘書の女性がある提案を出した。

 

 

秘書「四季様、お暇ならば今日は休暇をとって、例の彼に会ってみてはどうでしょう?」

 

映姫「彼、、、、ですかぁ、、、確かに会う機会がなかったのでいいかも知れませんね。

では仕事の方を頼めますか?」

 

秘書「はい、映姫様」

 

映姫「、、、ついでにあの方にも会いに行きましょうかね」

 

 

___________________

 

 

~紅魔館大図書館~

 

 

リ「アリス、星占いをするのはいいのだが、何故俺が対象なんだ?」

 

ア「誰かを占うのが楽しいんじゃない、リュウトってそういうの信じなさそうだし」

 

リ「否定はしない、未来はつかみ取るものだ」

 

パ「良い事いうじゃない?見直したわよ」

 

リ「、、、何だか言って後悔した」

 

 

今日は珍しい面子で何故か星占いをしている。

何故このようなことになっているのかというと、アリスが偶然図書館の中で見つけた星座占いの本に興味を持ち、その場にいた全員を巻き添えにして占っているのだ。

 

 

魔「アリス~、言われた通り呼んできたぞ~」

 

フ「なーに?いきなり呼び出したりして」

 

 

魔理沙が地下からフランを呼んできてさらに人数が増える。

お姉ちゃんも呼ばないと怒るんじゃないの?とフランが言うが、レミリアの場合は能力がそういったものを全否定してしまうのではないか?

 

 

ア「見てなさい!今からリュウトを星占いで占ってあげるわ!」

 

リ「あまり気乗りしないなぁ、、、」

 

魔「諦めな、こうなったアリスは中々めんどくさいんだ」

 

 

魔理沙の言葉なんて右から左へ聞き流し、アリスは本を見ながらリュウトの運勢を占う。

真剣な顔つきで占う彼女のその行為自体は魔女のイメージにとても合っているのだが、いかんせん見た目が可愛らしすぎる。

魔女は金髪でヘアバンドをつけているのだ等と世間一般の人々に言えば忽ち笑われてしまうだろう。

魔女はそんな姿をしていない、と。

だが現実、そんな普通一般の恰好をしている魔女の方がいない、魔法使いなら一名ここにいるが。

 

 

ア「、、、なるほど、新しい出会い、、、かぁ」

 

リ「新しい出会い?」

 

魔「何とも胡散臭い占いだな」

 

 

占いの結果が出たはいいが、正直なところどうも当たる気がしない。

幻想郷に来てからリュウトにはいろいろな知人が出来たのに、今更出会いなんてあるのだろうか?

 

 

リ「ま、所詮占いさ、そうそう当たるものでもないだろう」

 

ア「そうかしら?」

 

 

コンッコンッコンッ

 

 

咲「失礼します。

リュウトさんにお客様です」

 

リ「俺に?」

 

 

会話の途中、扉がノックされる音が聞こえると同時に咲夜が姿を現し、リュウトに客を連れてきた。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

爽やかな若草色の髪の色をした中肉中背の中々美人の女性だ。

ということは、、、?

 

 

魔「おー、アリスの占いが当たったぞ」

 

パ「あれって当たるのね」

 

フ「アリス凄い!本物の魔女みたい!」

 

ア「あら、当てちゃった」

 

 

まさか本当に当たるとは思っていなかったアリスは本を眺めてきょとんとしている。

すると、早く仕事に戻りたいとしびれを切らした咲夜が話に横入りし、客人の紹介を始めようとした。

 

 

咲「お楽しみなのはよろしいですが、お客様の事をお忘れになっていませんか?」

 

 

一同は口をそろえて、あっ、と呟き、それは紛れもなく忘れていたという証拠だった。

どうやら占いに目が行き過ぎて来客が来ていることを全員忘れていたようだ。

 

 

?「全く、此処の住人は皆こうなのですか?」

 

咲「も、申し訳ございません、、、」

 

?「あなたが謝る事ではないです。

仕事の最中に案内ありがとうございました、もう結構ですので通常の業務に」

 

咲「畏まりました、私はこれで失礼いたします」

 

 

案内を終えた咲夜は時間を止め、物音一つ立てず姿を消す。

が、やって来た来客とやらは此処にいる全員面識が無い人物で、勿論リュウトも面識が無く、全くの初対面だ。

全員が警戒態勢をとる。

 

 

?「まぁ警戒するのは致し方ありません。

私はあなた方と一切の面識がないですから、私が一方的に知っているだけです」

 

 

一方的に知っているという言葉が引っかかるが、女性の正体はそれをも納得させられるようなリ人物だった。

 

 

四季「自己紹介をしておきましょう、私は四季映姫・ヤマザナドゥ。

死んだ魂を裁くものです」

 

リ「四季映姫・ヤマザナドゥだと!?」

 

 

名前を聞いた途端、リュウトが驚きの声をあげる。

この女性を知っているのだろうか?だが、リュウトの声色を聞く限り良い人物ではないようだ。

 

 

パ「リュウト、しっているの?」

 

 

パチュリーの問にリュウトは答えた。

 

 

リ「あぁ、、、、四季映姫・ヤマザナドゥ、幻想郷の閻魔大王だ」

 

 

その事実に一同は驚愕した、あの閻魔大王が自分たちの目の前に現れたのだ。

だがその閻魔大王がリュウトに何の用で会いに来たのだろうか?

 

 

映姫「実は前々からあなたの事が気になっていたんですよ、リュウトさん。

なので今日はお話しに来たんです」

 

リ「仕事をほったらかしてか?」

 

 

今日は暇だったので、と映姫は頷いた。

意外に厳格な人物のようで、実はそうでもないのかもしれない。

 

 

リ「、、、場所を移そう、二人きりの方が都合がいい」

 

映姫「どうぞお好きなように」

 

 

二人は図書館から出ようと扉へ足を向ける。

が、魔理沙はこれに待ったをかけ、リュウトの前までズカズカと歩いていき、何故隠すと抗議した。

 

 

魔「何で私達は話に加われないんだよ!ここにいる全員にその権利があるだろ!?」

 

リ「聞く覚悟があるのか?」

 

魔「何?」

 

 

今までリュウトは自身の素性を一切公表しなかった、それにはしっかりとした理由があり、魔理沙もその事は霊夢から聞いていた。

幻想卿や自分達にも危険が及ぶかもしれない、と。

 

 

魔「だ、だけどよぉ、、、」

 

 

何も言い返せない。

見かねたアリスがもう良いと止めに入ってきた。

 

 

ア「もう良いわよ魔理沙、リュウトだって秘密はそのうち教える事になると言ってるんだから、その時を待ちましょう。

これ以上迷惑をかけてはいけないわ」

 

 

その言葉に魔理沙は黙りこむ。

勿論納得のいく理由ではないが、アリスの言う通り、リュウトを困らせてはいけない。

 

 

魔「、、、わかった。

でもあんまり一人で抱え込むなよ、言いたいときに言ってくれ、友達なんだからさ」

 

リ「そうだな、約束しよう」

 

 

魔理沙の言葉に少し微笑んでしまう。

友達、、、か。

二人は空き部屋へと足を運ぶべく、図書館を後にした。

 

 

カツッ、、、カツッ、、、カツッ、、、

 

 

リ「ここなら空いている、入ってくれ」

 

映姫「では、失礼します」

 

 

空き部屋に入ると、中心に向き合うように置かれた椅子と、それに挟まれるようにテーブルが置かれており、映姫は部屋に入ると片方の椅子に腰かけた。

リュウトはティーポットに紅茶を淹れてから部屋に入り、カップに二人分の紅茶を注いで一つを映姫の前に置く。

映姫は角砂糖を二個ほど投入してから紅茶に口をつけた。

 

 

映姫「良い紅茶ですね、どこの銘柄ですか?」

 

リ「アッサムのはずだ。

詳しい事は咲夜に聞かんと解らん」

 

 

そうですか、と言いながら二度目の紅茶を楽しむ映姫を見て、リュウトも一息ついて紅茶を口に運んだ。

では、そろそろ本題に入ろうか?リュウトは単刀直入に映姫に切り出した。

 

 

リ「、、、さて、そろそろ本題に入ろうか、一体俺に何の用だ?用が無ければアンタみたいなのがここに来ることなんて滅多に無いだろうに」

 

映姫「ではその滅多な機会が来たという事でしょう、私は純粋にあなたと話がしたかったのです。

過去が見えない異端者な貴方に、、、ね」

 

 

そういうと映姫は懐のポケットから手鏡のようなものを取り出してみせた。

 

 

映姫「これは浄瑠璃の鏡と言って過去が見える鏡です。

私はこれで死者の生前に犯してきた罪や善行などを見て裁判を行っています」

 

 

浄瑠璃の鏡とは、閻魔大王が持つとされる真実を映す鏡だ。

普段は絶対に見ることが出来ない大変貴重なものだが、何故今それを取り出したのか?

 

 

映姫「貴方の過去が見えないんです、どうしても」

 

リ「、、、」

 

映姫「何か心当たりがあるみたいですね」

 

リ「、、、」

 

映姫「、、、だんまりですか」

 

 

目を閉じたまま微動だにしないリュウトに映姫はこれ以上詮索しないことにする。

これ以上聞いても無駄だと考えたのだろう。

リュウトは秘密にしていることが多く、自身の素性が解るようなことはたとえ聞かれても答えない。

映姫もそのことは既に知っており、知っているからこそそれが気になって仕方がなかった。

堅苦しい空気のまま小一時間ほど二人で話し、そろそろ帰るという映姫をリュウトは玄関まで送った。

 

 

映姫「送っていただいてありがとうございます。

複雑な構造で迷いそうだったので助かりました」

 

リ「最後くらいは気の利いた事をしなければな、俺の顔が立たんだろう」

 

映姫「そこまで気にしなくてもいいですよ、あぁ、一つ言い残していたことがありました」

 

 

___________________

 

 

リ「、、、何だと、、?」

 

映姫「一応教えておこうかと思っていたのですがすっかり忘れていましたよ。

まさかそんなに驚くとは思っていませんでしたが、今は所在が分からないので会いに行くことは出来ませんよ」

 

 

では、映姫はそう言い残してその場を去っていった。

リュウトの頭の中には、映姫の最後に話した内容だけが残っていた。

 

 

_______________________________

 

 

~紅魔館個室ベランダ~

 

 

その日の夜、リュウトは自身の部屋のベランダで星を眺めながら考え事をしていた。

まだ寝るには早い時間帯、たまたま廊下を通りかかったレミリアは、何故か半開きになっていたリュウトの部屋の扉の中から聞こえてくる独り言が耳に入ってきた。

 

 

リ「、、、響華、、、何処に居るんだ、、、」

 

レミ「響華?、、、一体誰の事?」

 

 

少々気にはなったが、あまり気にせずレミリアはその場を立ち去った。

この女性が、リュウトの過去を紐解く鍵だとも知らずに、、、、




小町はどこいった?って思った人もいるでしょう。
安心してください、出てきてませんよ!
そりゃ仕事あるしサボってるし出掛ける訳にはいきませんよ。
てか最後に新キャラフラグ立ててるし。


久しぶりにお気に入り件数を確認してみたら、46人に増えていました!たくさんの方に読んでいただいてとても嬉しいです!本当にありがとうございます!
小説内で何処か可笑しな点を見つけたり、話の感想等を書いてもらえると自分としては助かるので、そちらの方も余裕があればお願いします。


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永夜異変39話

タイトル通りです。
待ちに待ったこのときが来ましたよ!
ウサミミJK 好きの皆さん、喜んでくださいね。


ザッザッザッザッ、、、

 

 

妹「今日の収穫は微妙だなぁ、久しぶりにもっと奥まで行ってみるか」

 

 

竹林の林を一人歩く女性。

不死の娘、藤原妹紅は週に一度竹林で筍掘りを行っている。

筍は自身の経営する焼肉屋で出したり、自分で食べたりと色々あるのだが、今日はいつもより筍の収穫量が少なく、はっきり言って足りなかった。

竹林の面積はかなり広いため、普段は一部分の面責だけでもかなりの量が獲れるのだが、今回は中心部付近まで足を踏み込む事にした。

その最中、妙な建物を見つけた。

 

 

妹「ここは、、、こんなもの竹林の中にあったか?」

 

 

以前ここに来た時はこんな立派な屋敷は建っていなかった筈。

千年前、妹紅がまだ貴族の生活を、人間だった頃住んでいた屋敷よりも大きいかもしれない寝殿造りのその建物には、間違いなく人外の気配があり、それもかなり危険な気配だった。

 

 

妹「中の奴らに見つかる前に逃げよう、、、」

 

 

不死身の肉体を持つ妹紅だって殺されれば痛い。

妹紅は中の住人に見つかる前にその場を静かに去っていった。

 

___________________

 

 

~人里(夜)~

 

 

とある日の夜、いつものように慧音が人里の夜の見回りをしていた時だった。

 

 

慧「月が、、、いつもと違う?」

 

 

月に異変が起きた。

 

 

東方永夜抄~Imprishable Night~

 

 

月がおかしい、それは慧音の特性のおかげで初めて認識された。

そのせいか、慧音の体調があまり優れず、寺子屋を休業して妹紅のもとで看病を受けている。

だが病気ではないので、それに意味があるかは定かではない。

 

 

妹「慧音?最近調子が悪いみたいだけど大丈夫か?」

 

慧「あ、あぁ、何だかこの頃月を見ると気分がおかしくなるんだ、、、」

 

 

眉間に皺寄せて頭を悩ませる。

実は慧音は自身の能力の他に、満月の夜に妖怪へと変身することが出来る。

すなわち半人半妖なのだ。

昨日は満月の周期で、いつもならばワーハクタクの姿に変貌するのだが、何故か昨日はそれが無く、それどころか妖怪としての本領を全く発揮できなくなっていた。

これに気付いた者は慧音だけではない。

 

 

~魔法の森  アリス邸~

 

 

ア「変ね、、、いつまで経っても満月になる兆候が見られないわ、、、」

 

 

月光を利用して自身の人形のエネルギーを補給をできるかどうかの研究をしていた彼女は、一番魔力を放つ満月が現れないのを不審に感じていた。

 

 

ア「これじゃあいつまで経っても研究が進まないじゃない」

 

 

そもそもあの月が本物かどうかが怪しい。

異変か?というよりそうとしか考えられない。

ならばやることは一つしかないだろう。

 

 

~魔法の森 霧雨魔法店~

 

 

ガチャ

 

 

ア「魔理沙!居るでしょ!」

 

魔「アリス?今日来るなんて言ってたか?」

 

 

いきなりノックも無しに家に入ってきて何者かと思った魔理沙だったが、アリスだとわかると、なんだアリスか、と言って妙に落ち着いた。

だがノックもせずに入ってくるなんて今まで一度もなかったのに、今日はどうしたのだろうか?それになんだか怒っているようにも見えなくはない。

何かしたのだろうか、そんな恐怖感を感じたが、玄関で仁王立ちしているアリスはそんなこと考えていなかった。

 

 

ア「言ってないわ、でも用があってきたの」

 

魔「用?何の?」

 

 

はぁ?とでも言いたげな顔でアリスを見るが、さらにはぁ?と言いたくなるようなことを彼女は言い出し、魔理沙の顔は呆れへと変わった。

 

 

ア「異変解決よ!!」

 

魔「、、、はぁ??」

 

 

~少女説明中~

 

 

アリスの話によると、何日か前から月の様子がおかしく、満月が現れなくなっているというのだ。

だがそれは人間には認識できないほどの変化で、これを認識できるのは人外だけらしい。

魔理沙がこの件を知らなかったのは恐らくこのせいだろう。

ならば早く解決しなければ。

 

 

魔「よし、そうと決まれば早速解決に行くぜ!!」

 

 

ハンガーにかけてあるおなじみのとんがり帽子を慣れた手つきで取り、立てかけてある箒をつかんで準備を整え、久しい異変解決に心躍らせるのだった。

こうして二人の魔法少女によるコンビが結成された。

その日の夜、この二人の他にも異変を解決しようと動きだしていた者たちがいた。

 

 

___________________________________

 

 

 

霊「ったく、紫は何で自分で解決しようとしないのよ。

こんな時間に異変解決なんて、、、眠いったらありゃしないわ」

 

零「昼に散々寝ただろ?まだ寝たりないのか?」

 

 

日が沈み、闇夜が支配する時間帯、いつもならばとっくに寝ているとぼやきながら飛んでいる巫女服を着た女の子。

彼女は博麗神社の居候の神、零夜ことトール神と共に異変解決に向けて出発したところだ。

こんな夜中に叩き起こされたのだ、少々やりすぎても罪は無いだろう、霊夢は異変の犯人を再起不能にする気満々だ。

過去にこれでとばっちりを受けた者達は何人もいる。

霊夢が鬼と言われるのは恐らくこれが原因だろう。

 

 

霊「ふぁぁ~、、、ほんとに眠くなってきた、、、、零夜ぁ、おんぶして」

 

零「ダメだ、こんなところで寝たら異変解決に来た意味がなくなるだろ、それに風邪ひくぞ?」

 

霊「、、、、何よ、この前来てた映姫とかいう女には優しくしてたのに(ボソッ)」

 

零「何かいったか?」

 

霊「何にも言ってないわよ」

 

 

あの女には優しくしてたのに、霊夢は軽い嫉妬のような感情を閻魔大王に抱いていた。

紅魔館に寄ったついでに会いに来た四季映姫は、零夜との久方ぶりの再会に喜んでおり、零夜もまんざらではなかったようで、二人で楽しく談笑をしていたのだが、見ているだけで胸が苦しくなり、今思い出すだけでも霊夢は嫌だった。

だから甘えてやろうと思ったのに、飛んだ計算違いだ。

しかし眠いのは本当で、飛んでいる最中もあくびが止まらず、瞼が重いのか、うつらうつらしている。

 

 

霊「う、、、寝ちゃいそう、、、墜落しないようにしないと」

 

 

落ちてくる瞼を気合いでこじ開け、しばらく飛行し、どうにか人里まで来た、、、筈なのだが、人里が見当たらない。

 

 

零「何言ってるんだ?ここにあるじゃないか」

 

霊「零夜には見えてるの?じゃあ見えてないのは私だけ??」

 

 

何故か零夜には見えてるようなのだが、霊夢の目には視界いっぱいに広がる木々しかない。

聴覚も人の活気など全く拾っていない、それどころか虫たちの音楽会が聞こえてくる。

ここまで高度な幻覚を作り出せる人物は、人里にいる者の中でこんな芸当が出来る奴は一人しかいないだろう。

 

 

零「慧音か、、、」

 

慧「ご名答、よくわかったな」

 

 

いつの間にか現れた慧音は零夜に相槌をしながら答えた。

恐らくこの異変が理由なのだろう、月は妖怪にとって象徴のようなもので、それが侵されたら妖怪たちの中には理性を失う者もいる為、誤って人里に迷い込めばとてつもない被害が出るだろう。

そういった妖怪達から里を護るために行った彼女の判断は非常に正しい。

そして彼女は異変の元凶がいるであろう場所も突き止めていた。

 

 

霊「慧音、私達異変解決に行く途中なんだけど、何か情報知らない?」

 

慧「妹紅が前話していたんだが、竹林の中で見知らぬ屋敷を見つけたらしくてな、その時は不審に思ったのでその場を直ぐに立ち去ったらしいんだが、その後その竹林から屋敷が無くなったらしいんだ。

それから月がおかしくなり始めたから、もしかしたらその屋敷が原因なのかもしれない」

 

零「屋敷、、、かぁ」

 

 

これはかなり有力な情報だ、正直犯人がどこにいるか検討もついていなかったので、行ってみる価値は十分にある。

そしてもう一つ、慧音から耳よりな情報が入って来た。

 

 

慧「そういえば、お前たちが来る前に異変解決に出ている奴らを三組見たぞ。

もう竹林に向かっている筈だから合流してやってくれ、嫌な予感がするんだ、、、」

 

 

慧音の心配そうな目は、いつも子供たちを心配するものとは違い、何か感じられるものがあった。

今回の異変は本当に不味いかもしれない。

 

 

零「霊夢、急ごう。

今の話で異変の謎が解ったかもしれない、この推理が合っていたら敵はかなりやばい相手という事になる。

下手をしたら死人が出るぞ!」

 

霊「わかったわ!早く行きましょう!」

 

 

どうか無事でいてほしい。

霊夢がその一心で竹林へと飛び立ったその頃、例の屋敷では、近付いてくる異変解決者たちを迎え撃つための刺客達が動き始めようとしていた。

 

 

~謎の屋敷(診察室?)~

 

?「鈴仙、貴女は外で奴らの足を食い止めなさい。

能力の使用を許可するわ」

 

?「はい、師匠」

 

 

何も書いていないカルテや、医療器具が大量に置かれた薄暗い部屋の中で指示を出している二十代後半の見た目の美しい女性。

部屋が暗くて顔がよく分からないが、師匠と呼ばれるこの女性がかぶっている帽子についた十字のマークから察するに、医者か何かなのだろう。

指示を出された制服を着たウサギ耳の少女、鈴仙は、診察室を後にし、命令通り外へと足を進めた。

 

 

 

?「鈴仙は行ったわね、、、」

 

?「まぁ鈴仙なら大丈夫さ、元軍人なんでしょ?」

 

?「月の軍隊は依姫が率いているからね、そこで鍛えられた鈴仙はそこいらの妖怪じゃ相手にもならないわ」

 

 

鈴仙の居なくなった診察室には医者の女性を合わせて三人。

一人は桃色のワンピースを着た少女、そしてもう一人は、、、

 

 

 

 

 

 

博麗の巫女だった。




ややこしくなってきました!博麗の巫女が二人出てきましたよ。
一人はともかく最後の彼女は一体何者なのか?異変解決のメンバーとは一体誰なのか?鈴仙は一人でどう太刀打ちするのか?う詐欺はどこへ行ったのか?謎が謎を呼ぶ永夜異変は混迷に迷いこむことでしょう。


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永夜異変40話

永夜異変....長くなりそうだなぁ…頑張ろう...


~竹林~

 

 

レミ「へぇ、貴女の住んでる竹林ってここの事だったのね」

 

影「うん、そうだよ。

ここの事だったら何だって知ってるもんね」

 

 

異変解決で夜更けに外に赴いたレミリアは、竹林に入ったところで今泉影狼に再会し、事のついでで道案内を頼もうとしていた。

ちなみに言うと、お供は咲夜、それとリュウトである。

何故いきなり異変解決に出たのか、それは吸血鬼のシンボルが月だから、、、という名の気まぐれである。

自分の象徴を穢されたのだから怒るのは必然で、確かにそれもあるのだが、大体は暇つぶしの為だった。

こういった気まぐれには毎度のように咲夜が付き合わされ、そのついでと言わんばかりにリュウトまで巻き込み、おかげで二人はいい迷惑である。

 

 

リ「何でこんな夜に出かけなきゃならんのだ、霊夢たちがいるじゃないか」

 

レミ「ダメよ!月を穢すなんて私に喧嘩を売っているようなものよ!?許せないわ!!!」

 

 

かなり意気込んでいるようだが、ここにいる全員がレミリアに対して、おそらく異変を起こした側にそんな意図はないのではないかと思ってしまったことは言うまでもない。

今のレミリアに何を言っても無駄なのだろうが。

 

 

咲「あの、そろそろ出発しませんか?影狼さんが先程から待っているですが、、、、、、」

 

レミ「あら、悪かったわね」

 

影「絶対反省してない、、、」

 

 

肩を垂らしてシュンとする影浪を見て、反省していない声色で謝る。

澄ました顔をしているから余計に反省の色が見られない。

 

 

リ「まぁいいじゃないか、それよりも道案内頼むぞ」

 

影「うん、そうだね。

しっかり付いてきてね」

 

 

狼の脚力を持つ影狼は竹林の中を縦横無尽に駆け回り、三人はそれを見失わぬようその後を急いで追いかけていく。

それからしばらくして、何故か影狼が足を止めた。

 

 

レミ「どうしたの?いきなり止まりだして」

 

 

突然辺りをグルグルと回りながら見渡す影狼にレミリアは声をかけたが、影狼の顔色がおかしく、まるで道に

迷ったかのような様子だった。

結果はそのまさかだった。

 

 

影「、、、うそ、昨日はこんな場所なかったのに、、、」

 

レミ「まさか!迷ったの!?」

 

影「、、、そうみたい、、、」

 

 

影狼が迷ったという確信を持ち始めたのは、竹の生えている位置だった。

どう考えても昨日まで生えていなかった竹が生えているのだ。

これは竹が急成長したとしか考えられない。

一旦引き返して状況を立て直そうか。

皆がそう考えていた時だった。

何処からか聞いたことのある声が耳に届く。

そう遠くない場所からだ、しかも声の主は、、、

 

 

咲「!この声はアリスと魔理沙ですわ!!」

 

リ「多分俺たちと同じ状況なんだろう。

距離が遠退く前に早く追いつくぞ」

 

 

リュウトが先行して声の聞こえる方角へ飛び、続けて三人もその後をついていく。

すると早くも人影が二つ現れ、言い争いをしている魔法少女二人の姿が見えた。

 

 

ア「ちょっと魔理沙!あんたのせいで迷子じゃないの私達!どうすんのよ!異変解決どころじゃなくなっちゃったじゃない!」

 

魔「なんだと!?お前が妹紅に道案内頼もうとしたら断ったんだろうが!」

 

 

いがみ合っている二人もやはり四人と同じ境遇にあっているようで、今にも本格的に仲間割れしそうな状態だった。

二人が弾幕勝負に入る前に急いでリュウトが間に入って仲裁をする。

 

 

リ「二人ともやめろ!一旦落ち着け!」

 

魔「な!リュウト!?」

 

ア「何でここにいるの!?」

 

 

予想以上に驚いている辺り、気配で気付けないほど気が立っていたらしい。

後続の二人も到着し、一旦落ち着いたアリスと魔理沙は、今どのような状況に自分たちが陥っているのかを影狼の説明で理解し、争っている場合ではないことに気付かされた。

 

 

ア「ってことは今私達は何者かによってこの竹林の中に閉じ込められたってことかしら?」

 

影「としか考えられないよね、、、」

 

 

脱出方法を色々考えるが、一番現実的な飛んで脱出する方法も何故か結界のようなものに阻まれて失敗に終わった。

やはり方法は一つしかないようだ。

 

 

リ「元凶を探し出して倒すしかないな」

 

レミ「そうみたいね」

 

影「私のテリトリーで好き勝手する奴は許さないんだから!」

 

魔「行くしかないな」

 

咲「早く終わらせちゃいましょう、戦力は十二分にあります!」

 

 

全員の考えは一致した。

敵の本陣を見つける為、広大な敷地面積を効率よく捜索できるように手分けして探し出す。

一人が発見したらそこに全員で集まる作戦だ。

 

 

レミ「じゃあ、作戦スタートよ!もし発見しても絶対に単独で突入しない事、良いわね?」

 

咲「存じ上げております!」

 

ア「らしくなってきたじゃないの?」

 

リ「よし、行くぞ影狼」

 

影「はいな!お兄ちゃん!」

 

 

レミリア、咲夜チーム。

アリス、魔理沙チーム。

影狼、リュウトチームに分かれ、それぞれ北、西、東に進み捜索を開始した。

だが、この三チーム以外にも同じことをしている第四勢力が既に動いていた。

 

 

~竹林内部~

 

 

妖「幽々子様、どうやらこの竹林には複数のトラップが仕掛けられているようです」

 

幽「えぇ、しかも全て見たこと無い武器を使用しているようね」

 

 

此方も異変を察知して降りてきていたようで、レミリア達よりも早く竹林に入り元凶を捜索していた。

しかも先程から至る所に外敵を排除するためのトラップがよく見られるようになり、目標の存在が近付いていることを示していた。

妖夢と幽々子はそれを見極めながら進んでいくが、トラップに使われている仕掛けがどれも見たこと無いようなものばかりで、プラスチック爆弾や対人機雷など、現代兵器にもよく見られるものが主な為、引っかかったらどうなるか二人には解らない。

それが二人をさらに警戒させていたのだが、ワイヤーに触ると起動するタイプのものが多く、月の光で反射しないように仕掛けられており、正直近くまで寄らないとどこに仕掛けられているか判らなかった。

 

 

妖「いっそ弾幕を撃ってわざと起動させてみましょうか?」

 

幽「そんなことしてみなさい、これがもし敵に私たちの居場所を知らせるものだったら私達は井の中の蛙なってしまうわ」

 

妖「も、申し訳りません、、、、」

 

幽「いいわよ、冗談だってわかってるし」

 

 

だが本当はそうしてやりたいと幽々子も考えていた。

このうっとうしいワイヤーやらなんやらを全て吹き飛ばせたらどれだけいいか、とりあえずこの緊張した空気からは脱出できるだろうか?そんなことを考えてしまう程二人はこの状況にうんざりしているのだ。

この状況を早くどうにかしたい、しかしそんなことを言っていても状況は何も変わらないので、二人は辺りを警戒しつつ、少しづつ前へと進んでいく、、、、筈だった。

 

 

妖「ハッ!?幽々子様!あぶない!!」

 

幽「え?きゃあ!?」

 

 

幽々子の四方に突如として複数のアンカーワイヤーが出現し、捕らえられそうになるところをすかさず妖夢が庇う。

 

 

バシュッ!!ギリギリギリ、、、

 

 

妖「うぐっ!動けないっ!!」

 

幽「妖夢!避けて!」

 

妖「え、嘘!?」

 

 

ワイヤーが絡まって身動き出来ない妖夢に、何処から放たれたのか、ロケットランチャー弾頭が迫っていた。

 

 

幽「くっ!これしか方法が、、、」

 

 

竹の間をすり抜けて迫ってくるそれを、幽々子は弾幕をばら撒いて撃ち落とし、大きな爆発音と熱風が駆け抜ける。

その際、流れ弾等でトラップが次々と発動し、ドミノ方式で爆発が起こっていった。

 

 

幽「今の爆発で敵が出てくるわ!この固い紐を切るからじっとしてて!」

 

 

ジャキン!

 

 

幽「はぁぁっ!!」

 

 

妖夢の脇差しの刀を抜き、ワイヤーを一刀両断し、妖夢の体中に巻き付いていたワイヤーが切れた。

 

 

妖「助かりました幽々子様」

 

幽「お礼はいいのよ、それより、、、もう気付かれちゃったみたいよ」

 

妖「はい、先程から鋭い殺気を感じられます」

 

 

神経を研ぎ澄まし、妖夢は暗闇の中から投擲されたダガーを刀で弾き返す。

金属音が響き渡るだけの空間。

土を踏む足音と共に、淡い紫色の長髪をなびかせながら赤い目をした可憐な少女が現れた。

左手にはロングダガーが握られており、妖夢が叩き落したのは恐らくそのうちの一本だったのだろう。

投げられたダガーは確実に妖夢の頭を狙って投げられていて、それは妖夢に対する殺意を意味していた。

間違いなく今、二人に向けられている殺気は彼女から出ているものだ。

 

 

鈴仙「よくここまで来れたわね、結界が張ってあった筈なんだけど?」

 

妖「だとしたら随分貧弱な結界なのね」

 

鈴仙「罠には引っかかったのにね」

 

妖「ッ!」

 

 

罵声を罵声で返され、妖夢の顔が曇る。

助けた者に助けられた屈辱は、いくら主とはいえ心に来るものがあった。

あのような失態、本来ならば許されない。

妖夢は自分を鍛え上げた師匠に合わせる顔が無かった。

師匠ならば、あの状況を簡単に切り抜けられた筈、、、この失敗は妖夢がまだ半人前であることの証拠だった。

そのことを認めたくないあまりについカッとなった妖夢は、感情を露わにしてしまい、落ち着いた判断が出来なくなり始め、剣を抜いて鈴仙に向けた。

 

 

妖「黙りなさい!今すぐ首を掻っ切るわよ!」

 

鈴仙「あら?返す言葉が見つからなければ力で黙らせるの?やっぱり地上に住む者は野蛮な奴ばかりね」

 

妖「何ぃ!?」

 

幽「妖夢!落ち着きなさい!」

 

妖「ここまで言われて黙っている訳には参りません!」

 

 

幽々子の静止も聞かずに妖夢は真っすぐ鈴仙に刀を突き付けたまま特攻する、、、が、剣が鈴仙を貫くことは無かった。

妖夢の正直すぎる性格が仇となり、彼女は鈴仙の戦略にまんまと乗ってしまった。

 

 

鈴仙「どうしたの?私はまだ動いてすらいないのよ?」

 

妖「そ、、、そんな、、、」

 

鈴仙「一度ならず二度までも、、、学習能力が無いわね」

 

 

鈴仙に襲い掛かった筈の妖夢は、竹に括りつけられた何本ものワイヤーで出来た蜘蛛の巣に絡まり、身動きが出来なくなっていた。

しかも今回使われたワイヤーはいくらちぎろうとしても傷一つつかず、妖夢の刀でも切断出来ないものだった。

 

 

鈴仙「フェムトファイバー製の蜘蛛の糸はどう?斬るどころか身動きさえできなくなっていくでしょ」

 

 

もがけばもがくほど糸が体に絡みつき、徐々に体が動かなくなっていく、まるで本物の蜘蛛の糸のようだ。

ついに妖夢は、糸が肌を圧迫する痛みと、抵抗する体力さえも奪われ、宙に浮いたまま完全に動かなくなる。

 

 

鈴仙「これで一対一ね」

 

幽「そんな、、、」

 

 

絶望的な状況だった。

ここは鈴仙のテリトリー、しかも鈴仙自体の能力も不明のままで戦うのは危険だ。

だが、幽々子はそんな事を気にしていられる精神状況ではなかった。

目標はただ一つ、目の前の敵を倒して妖夢を助ける事だけ。

それ以外はもはやどうでもよかった。

たった一人の家族を助けるだけだ。

 

 

幽「妖夢、今助けるわ!!」

 

 

幽々子が扇子を広げて戦闘態勢に入ると、鈴仙も右手を銃の形に変え、幽々子に突き出すように構えた。

 

 

鈴仙「せいぜいあの子みたいにならないようにね?」

 

 

口が裂け、三日月のように笑う鈴仙。

何を企んでいるかわからない彼女の目は、何処か恐ろしい雰囲気を醸し出している。

完全に相手が有利な状況の中、幽々子は鈴仙との、アウェーの中での一騎打ちを強いられる事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 




絶対戦闘シーン長くなるやつやぁ!疲れるわ!!
まぁ自分で書いたんだけど。
何か妖夢が凄い弱そうに見えますけどこれは正直な性格が裏目に出て判断力が鈍っただけです。
本当はメチャクチャ強いんです。
ホントなんです(泣)
次回は幽々子対鈴仙です!トラップはまだ隠されてるっぽいですね。
お楽しみに!!


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永夜異変41話

書いててワケわかんなくなってきました。これはアカン、捨て回決定だ。
用は次回への繋ぎです。


幽「あなたの実力を、、、測らせてもらうわ!」

 

 

浮遊しながら色鮮やかな弾幕を鈴仙に向けて大量に放ち、どういった動きを見せるのかを観察してから本命を打ち込む、幽々子の作戦はこうだった。

敵の能力、戦闘力が解らない以上、下手に攻撃するのは裏をかかれる危険性があるとふんだのだ。

 

 

幽「私は妖夢のような性格ではないからあのような手には引っかからないわよ?」

 

鈴仙「、、、、」

 

 

口を開くことなく鈴仙は、迫りくる弾幕の波に対し、後退して弾の密度が薄くなったところを、体をひねらせ、絶妙な身のこなしで踊るように躱していく。

戦い馴れしている者でしかできないような芸当だ。

グレイズをして衣服が焦げる事もなく、本気ではないとはいえ、幽々子の弾幕を無傷で避けきってしまったのだ。

今のところ能力を使ったような形跡がないことから、これが鈴仙の戦闘能力の片鱗であることが解る。

 

 

鈴仙「、、、時間を掛けるわけにはいかない。

さっさとゲームオーバーしてもらうわ」

 

 

鈴仙は左手をミニスカートのポケットに突っ込み、何かのスイッチらしきものを取り出す。

付け入るスキを与えまいと幽々子はさらに追加の弾幕を鈴仙に放ち続けるが、スイッチを押すことぐらい避けながらでも出来る。

スイッチを押された。

綺麗なカチッという音と共に、風を切るような音が四方から聞こえてくる。

妖夢がトラップにかかった時に聞こえたあの音と同じだ。

あの攻撃が来る!

 

 

幽「逃げなきゃ!」

 

 

幽々子は咄嗟にその場から退避するが、迫りくるロケット弾頭は幽々子を完全にロックオンし、竹林の中を縫うように飛翔しながらどこまでも追ってくる。

速度もかなり早く、追いつかれて爆発されるのは時間の問題だった。

そうしている間にも鈴仙は次の手を打ってくる。

 

 

幽「追いかけられないくらい複雑な動きをすれば、、、!」

 

 

後方から迫ってくる弾頭を撃ち落とそうとすると、バックで飛行しなければいけない為自身の速度が落ち、撃破しても爆発にまきこまれる危険性がある。

それに、弾頭が爆発した時の威力は幽々子のバリアを容易く貫通できるほどはあった。

そこで幽々子は、速く飛ぶのではなく、翻弄するような飛行をすることで弾頭を竹にぶつけようとしたのだ。

弾幕などよりもっと速く飛行しているロケット弾頭は、当然そんな複雑な飛行をできる筈がなく、、、

 

 

キィィィィィィィン、、、ドカァン!!ドォォン!ドドドドォォォォン!!!

 

 

結果は作戦大成功。

弾頭は全て、速度を維持出来なくなって墜落するか、障害物の竹に激突して誤爆していった。

一先ず難を逃れ、地上に降りて一息つく幽々子だが、そんなことをしていられる暇はない。

直ぐに鈴仙が次の攻撃を仕掛けてきた。

 

 

鈴仙「ミサイルがダメならこれならどう?」

 

 

ガチャリという重厚感のある音、鈴仙の手には自分の体と同じぐらい大きい30口径の大型マシンガンが握られており、彼女の周辺にはプロペラのついた金属製のビットのようなものが飛んでいた。

 

 

幽「クっ、、、!スペルカード発動!」

 

鈴仙「させるわけないでしょう!」

 

 

ビットがスペル発動を妨害するために素早く行動に入る。

ビットには22口径のアサルトライフルと同等の威力の砲台が付いていて、合計12機のビットがオートマチックでの一斉攻撃を幽々子に仕掛ていく。

しかしその程度の銃火器では幽々子を倒すのに力不足。

そこで鈴仙のマシンガンである。

ビットが行うのはあくまで援護射撃、鈴仙の射撃を確実にするための手伝いなのだ。

12機のビット総攻撃と、鈴仙のマシンガン掃射のコンビネーションは幽々子を追い詰めるのに十分過ぎる威力を持っていた。

だが、一斉射撃を行うより幽々子がスペルを発動する方が若干早かった。

 

 

スペル:ギャストリドリーム

 

 

全方向に大量の蝶々のような弾幕が放たれる。

衝撃波のように広がる弾幕は、強固な壁のように密度を変える事無く鈴仙を追い詰める。

これを凌ぐ手段を鈴仙は一つしか持っていない。

 

 

鈴仙「ちっ、、、仕方ないか」

 

 

エナジーの塊である弾幕は、実体弾を装填しているマシンガンで破壊することは不可能。

しかし同じエナジーを使った弾幕ならば、相殺することは可能。

鈴仙は手をピストルにして弾幕を連射する。

だが、あまりに量の多い幽々子のギャストリドリームは、ただ連射しただけの弾幕では到底敵うものではなかった。

 

 

鈴仙「これだけじゃ、、、はぁ。

使う気は無かったけど」

 

 

ブレザーの胸ポケットから一枚のカードを取り出す。

そしてそのカードを読み上げた。

 

 

スペル:カローラヴィジョン

 

 

彼女は巨大なリング状の弾幕を前方に向けて発射する。

すると忽ちギャストストリームは消滅していき、相殺されるようにカローラヴィジョンも消滅していった。

しかしこの事態は幽々子のシナリオ通りの出来事だった。

 

 

幽「やっぱり使ってきたわね?ちゃんと見せて貰ったわ」

 

鈴仙「、、、、、」

 

 

あの危機的状況から幽々子は脱するどころか、さらに能力を探る為の罠まで張っていた。

カローラヴィジョンを使わせる為に。

だが得られた情報は余りにも少なかった。

これでは能力どころか、他にどんなスペルを持っているのか、どんな攻撃が出来るのか全く解らない。

鈴仙は幽々子の自身げな言葉がはったりであることを察していた。

 

 

ガチャっ

 

 

幽「な!!」

 

鈴仙「ふふっ♪」

 

 

鈴仙が動じることなく瞬時にマシンガンを構えてきた事に驚く幽々子。

ハッタリは通じなかった。

もしかしたら動揺を隠す為の偽装工作なのでは?そう考えたりもしたが、明らかにハッタリだと気づかれていた。

余裕の笑みを浮かべる鈴仙は、そのまま幽々子に向けてマシンガンを掃射する。

幽々子もバックステップで音速で飛んでくる鉛の弾を必死に避けながら弾幕で反撃する。

しかし、弾幕の量は比べるまでもなく鈴仙の方が圧倒的に多かった。

 

 

幽「なんて連射性なの!?私の撃つ速さじゃとても追いつけない!」

 

鈴仙「月の技術なめんじゃないわよ」

 

 

身軽な体を生かし、鈴仙は竹を上へ上へ蹴りながら登り、竹から竹へ渡り移ることで空中から幽々子を攻める。

さながら忍者が、木の枝から枝へと飛び移りながら飛ぶ姿が連想させられた。

銃の反動がかなり大きい筈なのだが、そこは妖怪の腕力なので関係ないのだろうか、空中でも正確に幽々子を狙って撃ってきている。

鈴仙の正確な射撃を紙一重で避け続けていた幽々子だったが、ビットの援護射撃が加わると状況は一気に劣勢に追い込まれた。

そして、一発の銃弾が幽々子に直撃しようとした瞬間に、、、

 

 

幽「はぁ!」

 

グゥオン!

 

 

バリアを張って、突撃してくる銃弾を何とか持ちこたえ、その間に魔法陣を展開。

放射状にレーザーを放ち、ビットと共に空中の鈴仙を撃ち落とそうとする。

その天に放たれたレーザーは、幽々子の居場所を竹林にいる全ての異変解決者に知らせる灯台となった。

 

 

_______________________________________

 

 

~20分前~

 

 

異変解決に来たレミリアらが、3チームに分かれてそれぞれ別方向に散らばりながら、例の屋敷の捜索をしだしたその後だった。

突如、何処からか謎の爆発音が複数回聞こえてきたのだ。

それに、異常に大きい霊力も感じられ、爆発と何らかの関係がある事は明白だった。

これを聞いていたリュウトは、その場で足を止め、影狼もそれと同時に立ち止まった。

 

 

リ「何だ、、、?この爆発音、、、」

 

影「それに何だか凄く大きい力を感じるよ、、、」

 

 

しかし、大きく膨れ上がっていた霊力は、その後次第に薄れ、爆発音だけが響き渡るようになった。

 

 

影「!!霊力が消えていってる!」

 

リ「不味いぞ、、、早く助けに行かなければ!!」

 

影「うんっ!」

 

 

二人は竹林を颯爽と駆け抜けていく。

そして、二人の行く先には、レーザーの柱が空に上るように伸びていた。

 

 

 




大したことやってませんなぁ今回。
表現も曖昧だし、、、、途中までは何となく出来てたような気がするのに、、、。
ちなみに今回の話に出てきた兵器は実在しません。
30口径の月の技術のマシンガンなんて人間が撃てるわけありません、反動であらぬ方向に弾が飛んでいきます。
ビットはドローンを思い浮かべて貰えば良いです。

追記
質問があったので答えます。
一人で異変解決メンバーを全員相手にするんだから銃使っても良いんです!!鈴仙が可哀想になっちゃうよ。
弾幕ごっこに実弾を使ってはいけないと言うルールはこの小説の設定に存在しません。
それを禁止したら紫、咲夜、妖夢はルール違反になってしまいますからね、紫のぶらり廃線下車の旅なんて銃使うよりえげつないし。
なのでその辺りは気にしないでください!


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永夜異変42話※

鈴仙が微妙に強いです。
若干のキャラ崩壊がありますが、二次創作なので多めに見てくださいね。
ではスタートです!


竹林の駆け抜ける二つの人影、リュウトと影狼は、大きな霊力の消えた場所へ疾走していた。

目的地に近付くにつれて、橙色の小火が見えるようになり、戦闘の光であることは容易に想像出来た。

段々と銃声や爆発音も大きくなっていき、二人が駆け付けた時、目の前には異様な光景が広がっていた。

 

 

影「な・・・何これ・・・」

 

リ「これは・・・まるで・・・」

 

 

戦争のようだった。

機関銃が地面を叩きつける音、何度も鼓膜を響かせる爆発の音、光、そして異常なまでに鼻腔を刺激する火薬の臭い。

二人の目に映ったその光景は、外の人間たちが行う殺し合いそのものだった。

戦っているのは・・・なんと幽々子ではないか。

しかも銃口を向けられ、今まさに銃弾に体を貫かれようとしている瞬間だった。

 

 

リ「危ない!間に合えぇっ!!」

 

鈴仙「!!!」

 

 

ガキキィン!!

 

 

リュウトは咄嗟にその場から飛び立ち、幽々子の壁になるようにバリアを張って銃弾を弾く。

かなり疲労していた幽々子は、目の前のリュウトの背中に寄りかかるように倒れた。

 

 

幽「あら・・・?リュウトくんじゃない・・・助けに来てくれたのかしら?」

 

リ「疲れているならしゃべらなくていい。

もうじき仲間が来る」

 

 

疲れ切った幽々子を抱きかかえ、地面にそっと降ろす。

その瞬間、続々とレミリア達が竹林の影から現れ、鈴仙と対峙する形となった。

 

 

鈴仙「まさかこんなにいたとはね・・・」

 

 

流石に1対6は分が悪いと悟った鈴仙の額には汗が一滴垂れていた。

思った以上に幽々子が強く、優勢だったものの、この状況になり彼女は一気に劣勢に追い込まれしまい、自然に焦りが外面に出てしまっている。

だが、彼女に諦めて降参する意思はない。

戦う、今の彼女の頭の中にはそれしかない。

弾を撃ち切ったマシンガンを捨て、懐から小さな瓶を取り出し、一気にそれを飲み干した。

国士無双の薬、鈴仙の師匠である医薬の天才、八意永琳が作った一時的に身体能力を底上げする、云わばドーピング薬だ。

効果は絶大で、飲んだ者は・・・

 

 

バキッ!!!

 

 

ア「あぐぅ!!」

 

魔「アリス!!!」

 

リ「速いッ!」

 

 

通常の身体能力に5倍に匹敵する力を手に入れ、体が黄緑色に発光する。

一瞬でアリスの目の前に現れ、勢いだけで殴り飛ばした鈴仙は、もう片方の手で、隣の魔理沙の米神に銃弾型の弾幕を撃ちこむ。

 

 

ドォン!!

 

 

魔「きゃあ!?」

 

リ「魔理沙ぁ!」

 

影「あ、、あぁ・・・」

 

 

余りの速さに、目の端でとらえたものの魔理沙は何の抵抗もできずに直撃を食らってしまう。

倒れる魔理沙、この一瞬で二人も致命傷だ。

影狼も完全に腰を抜かしてしまっている。

本気でかかるしかない!

 

 

レミ「行くわよ!咲夜!合わせなさい!!」

 

咲「はい!援護します!」

 

 

二人は同時にスペルカードを出し、さらに同時に発動した。

 

 

スペル:スピア・ザ・グングニル

 

スペル:殺人ドール

 

 

強力なスペルカードを鈴仙の両サイドから挟み撃ちを仕掛けるが、咲夜の無数のナイフも、レミリアの最強の槍も、ただのジャンプで簡単に避けられてしまう。

 

 

鈴仙「うっ!グオォ!!」

 

 

急激な体の変化に苦しみながら、鈴仙はさらにその体制からスペルカードを発動した。

 

 

スペル:マインドスターマイン

 

 

レミリア達のスペル発動から1秒も経っていないのではないか、その瞬き程の時間での反撃。

時を止めようにも時間が足りず、避けようにも時間が足りない。

大小の狂気の爆発が無数に広がり、二人を巻き込みながら大爆発を起こす寸前。

 

 

リ「咲夜に手を出すなぁ!!!」

 

 

ドガァッ!!

 

 

鈴仙「ぐぁっ!!」

 

咲「リュウトさん!」

 

 

起こす前に、リュウトの飛び蹴りが鈴仙の背中にクリーンヒットし、その勢いでスペルが解除され、鈴仙は受け身もすることなく墜落した。

 

 

鈴仙「ウグッッ・・・グゥ!!」

 

 

痛みに堪えながら少しずつ鈴仙が起き上がる。

だがそれを待つつもりは無い。

リュウトは踵落としでさらに追い撃ちをかけようとする。

が、それを感じ取った鈴仙は後転で回避し、そのまま体制を立て直す。

 

 

鈴仙「そこぉ!! 」

 

リ「チィッ!」

 

 

低い姿勢から瞬時に射撃し、リュウトの頭を狙うが、目で動きを捉えていたのでかすり傷を与えただけだった。

しかし鈴仙の反撃は続く。

 

 

鈴仙「ぐぁぁぁ!!!」

 

リ「ゴフッ!?」

 

 

リュウトの懐まで一瞬で近づき、鳩尾に蹴りを入れてから弾幕を乱射する。

それを彼はホバリングで後ろへ下がりながら避けていく。

襲ってくる弾幕を刀で弾き、魔法陣を展開して弾幕での攻撃もする。

二人は攻防一体の戦いを繰り広げた。

 

 

レミ「接近戦に持ち込むわ!援護お願い!」

 

リ「任せろ!」

 

 

爪を出したレミリアが、上空から高速接近で鈴仙の目の前まで近付き、吸血鬼の速さを生かした近接戦闘に持ち込む。

リュウトも援護射撃の為に、弾幕を拡散型からレーザーへ切り替える。

薬で体を強化しても吸血鬼の反応速度は速く感じ、リュウトの援護射撃と相まって、鈴仙はそれを回避するのが精一杯だった。

 

 

レミ「この!当たりなさいッ!!

 

鈴仙「フッッ!!クッ!!」

 

 

自分の体を貫こうと何度も迫りくる爪は真っ赤に染まっており、血でも塗られているのではないかと思わせる。

首を狙って爪を突き出すレミリアの腕を蹴り上げ、胴体と頭、肩へ弾幕を撃ちこむ。

激痛で動けなくなるレミリア、そのまま止めを刺そうとすると、足元に数本のナイフが刺さり、咄嗟に後ろに跳躍する。

ナイフを投げたのは勿論咲夜だ。

 

 

咲「させませんっ!!」

 

鈴仙「な!何!!」

 

 

咲夜はレミリアを庇いつつ、反射するナイフを使って多方向から襲撃する。

竹に当たってランダムな動きをしながら向かってくるナイフを撃ち落とし、ミサイル型の弾幕を咲夜に向けて放つ。

直後、竹林の中で轟音が鳴り響いた。

 

 

鈴仙「やった!・・・何!?」

 

 

舞っていた土煙が晴れると、そこには爆発の窪みしかなく、人の姿は何処にも無かった。

一瞬にして消えたのだ。

 

 

鈴仙「一体どこへ・・・!!」

 

 

いきなり体が重くなる。

自分の身に何が起こっているのか解らないまま混乱していると、目の前に消えた筈のメイドが、気配を感じさせず、どんな手品を使ったのか、一瞬にして現れた。

しかし、他の二人は見当たらない。

何をしたんだ?まさか自分の身に起こっているこの奇妙な現象も彼女のせいなのか?

 

 

咲「ご名答、ですわ」

 

鈴仙「!!!」

 

 

考えていることを的確に当てて、さらに応えてきた。

心を読めるのか?このメイドの能力がさっぱりわからない。

鈴仙の頭の中はさらに混乱していった。

 

 

咲「はぁっ!!」

 

鈴仙「!!??」

 

 

咲夜が投げたナイフは、鈴仙の胸に当たる寸前で動きを止める。

避けようと体を反らすが体が重く、動きがとても遅い。

声を出すこともままならない。

まるでスローモーションの中で動いているようだ・・・。

スローモーション?・・・まさか!!

 

 

咲「能力・・・解除」

 

 

バシュっ!!

 

 

鈴仙「ああぁっ!!」

 

 

咲夜の合図とともにナイフが再び動きだす。

目の前まで迫っていたナイフを一瞬の動きで回避することは出来ず、鈴仙の腕に刺さり、紺色のブレザーに真っ赤な血が染みつく。

 

 

鈴仙「う・・・うぐぅ!」

 

 

銀のナイフは華奢な鈴仙の二の腕を確実に貫通し、神経を突き刺す痛みに我慢できず、声を上げてしまう。

彼女は迸る痛みに耐えながらナイフを慎重に引き抜く。

そして咲夜に対して憎悪の感情が芽生え始めた。

絶対に許さない・・・。

だが彼女の体は限界を迎えていた。

 

 

咲「光が消えていく・・・!!」

 

 

段々と鈴仙の体から発せられていた光が消えていき、薬を飲む前の状態へ戻ってしまった。

国士無双の薬の効果が切れたのだ。

 

 

鈴仙「くっ!こんな時に・・・!」

 

咲「チェックメイト・・・ですわ。

大人しく投降しなさい」

 

鈴仙「!?」

 

 

ナイフを突きつけられ、投降するように言われる鈴仙。

状況は最悪、まさに絶対絶命だった。

だが、そこに一つの勝機が現れる。

 

 

リ「咲夜!一人で突っ込むんじゃない!」

 

レミ「咲夜ー!!」

 

咲「あ、リュウトさん・・・それにお嬢様も」

 

 

咲夜の気配を頼りに後を追いかけてきた二人。

メイドは二人に気をとられている。

チャンスは今しかない!!鈴仙は咲夜が目を反らした隙に、後ろへジャンプして逃げる。

そして咲夜が此方を向いた瞬間。

 

 

鈴仙「・・・」

 

 

能力を発動した。

 

 

リ「!!咲夜!逃げろぉ!!!」

 

咲「えっ・・・?」

 

 

鈴仙の考えにいち早く気付いたリュウトは、咲夜を庇い、代わりに能力の餌食となった。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

リ「あ・・・ア・・・」

 

 

鈴仙の狂気の波長を直に受けたリュウトは、意識が茫然としたまま、叙々に狂い始める。

勝利を確信した鈴仙は高らかに笑い声を上げた。

 

 

鈴仙「アッハッハッハ!!!私の勝ちよ!アンタ達に勝ち目は無くなったわ!!」

 

咲「貴女・・・リュウトさんに何をしたの!?」

 

鈴仙「私の能力を使って狂気の波長を浴びせたのよ!」

 

咲「そ・・・そんな!」

 

レミ「狂気・・・ですって?」

 

 

レミリアは有るものと連想させた。

昔、自分の妹であるフランドールスカーレットが苦しんだあの狂気の渦を。

だが、リュウトはそれとは違った。

 

 

リ「・・・・・・」

 

咲「リュウト・・・さん?」

 

 

まるで魂が抜けたかのようにただ茫然と立ち尽くす。

リュウトの目に光は無く、咲夜が呼びかけても何も応えない。

が、彼女はある異変に気付いた。

リュウトの目が赤いのだ。

 

 

鈴仙「これでそいつは私の命令を聞くだけの人形となった。

さぁ、行きなさい!あのメイドと吸血鬼を粉微塵にするの!!」

 

リ「・・・ダマレ」

 

鈴仙「!?!?!?」

 

 

体を押し潰させそうな程の威圧感。

思わずその場にいた全員が黙りこんでしまう。

 

 

レミ(な!何!?この吐きそうになる威圧感は!!)

 

 

怯えている、自分の体が。

あの温厚なリュウトがこれほどまでの力を持っていたなんて。

完全に震え上がっている鈴仙に、リュウトは言い放った。

 

 

リ「俺の前に立ちはだかる者全てが・・・敵だぁ!!!」

 

 

彼の叫びと共に白い衝撃波が果てしなく迸る。

光のドームから出てきたのは、真っ白な髪の毛と、四枚の輝く翼を携え、全く違う姿となったリュウトだった。

敵意をむき出しにし、ギロリとレミリアと咲夜を睨みつける。

狂気に飲み込まれた彼の目にはもう、仲間の姿は写っておらず、見えているのは眼前の敵だけだった。

既に目の前に現れる全てを敵と認識してしまっているようだ。

これからが悲劇の始まりだった・・・。

 




妖夢どこ行った!?あと咲夜が地味に活躍してたり、そういえばレミリアが本格的に戦ったのってこれが初めてじゃないですか?もうちょっと活躍させてもいいような気もしますが、凡人な私には無理でしたよごめんねレミィ。
咲夜の一回目の時間停止が出来なかったのは、停止させるための時間が足りなかったからです。
一瞬で能力発動なんて無理ですよね、大技決める時に力を貯めるのと同じです。
幽々子はお疲れで休んでおります、影ちゃんと一緒に。
さて、次回はリュウトが大暴れします。
止められるのは奴しかいない!乞うご期待。


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永夜異変43話※

私の~お店の~前で~吐かないでください~って歌昔ありませんでした?最近安室奈美恵にはまったと言っていましたが、一番好きな曲は太陽のSEASONって曲です。


リ「雑魚は引っ込め・・・」

 

鈴仙「え・・・?」

 

 

ドゴォォッ!!

 

 

鈴仙「ゴホォア!!??」

 

 

一番近い位置にいた鈴仙は、疲弊と体力切れでしゃがみこんでいるところを、鳩尾を思い切り蹴り上げられる。

扱いはまるでサッカーボールだった。

ボロ雑巾のような姿で宙に舞いあげられると、そのまま自由落下し、骨や筋肉がちぎれたようなグロテスクな音を立てて地面に激突した。

 

 

鈴仙「カハッ・・・・・」

 

 

彼女は全く動かなくなってしまった。

生きているのか、死んでいるのかもわからない程に。

だが、咲夜はそれよりも気になる事があった。

 

 

咲「リュウトさん・・・その姿は一体?」

 

 

豹変したリュウトの姿は、何か神々しい雰囲気を纏っていた。

今までこのような姿を見たことが・・・ある。

咲夜はいつかの異変の時に現れた謎の男を思い出していた。

 

 

咲「似ている・・・」

 

 

異変の時、殺されるところを助けてくれたあの男、あの時はマントとバイザーで殆ど誰だか解らなかったが、男の背中に出ていた四枚の光る羽と、今のリュウトについている羽が全く一緒の形をしていた。

まさか、あの時救ってくれたのがこの人だったなんて。

 

 

リ「俺の仲間を・・・返せぇ!!!」

 

レミ「なっ!?」

 

 

リュウトがまず狙いをつけたのはレミリアだった。

眩いほどの光を放ちながら、とてつもない速さで近づき、刀を抜刀して勢いよく斬りかかってくる。

レミリアの目の前まで攻めよってくるまでほぼ一瞬、吸血鬼の目を有しても殆ど認識出来ないほどの速さ。

いきなり目の前に現れたように錯覚するほどの速さの攻撃を避けれる筈などなく。

 

 

レミ「グっアァァァァァァ!!!!??」

 

 

何の躊躇いもなく、リュウトの剣はレミリアを斬りあげた。

断末魔と、返り血を大量に浴びたリュウトは、まるでバーサーカーだった。

 

 

咲「お嬢様・・・!!」

 

 

息が止まってしまう程、咲夜は恐怖していた。

自身が仕えている主人は、決して弱いわけではない、寧ろかなり強い部類に入る筈なのに、本当に一瞬だった。

あんなにあっさりやられてしまうなんて、自分なんて足元にも及ばない。

だから、戦わずに止めて見せる!!

 

 

咲「止めてくださいリュウトさん!

あの時のような優しい貴方はどこへ行ってしまったんですか!!」

 

レミ「咲夜!危険よ!下がりなさい!!」

 

咲「嫌です!!!」

 

 

負傷したレミリアの静止も聞かず、咲夜は必死に呼びかけ続けた。

 

 

咲「目を覚ましてください!私はあなたのそんな姿を見たくありません!

本当はこんなことしたくない筈です!」

 

リ「うるさい!!忌々しい神々どもめがぁ!!」

 

咲「!?」

 

 

リュウトの右手が咲夜に翳される。

気付いた時には腹に当たった光の弾が左の腎臓を貫通していた。

 

 

咲「がはっ!?」

 

 

弾速が全く見えない。

何が起こったのかさえ解らない。

ただ、腹の痛みだけが感じられた。

 

 

リ「痛いか?苦しいか?みんなはこれよりもっと痛みながら、苦しみながら死んでいったんだぞ!!!」

 

 

怒りの感情をむき出しにしながら、咲夜に殺意を向ける。

幻覚を見ているのか、咲夜の事を誰かと照らし合わせているようだ。

だが、先程からリュウトの発する言動には引っかかるものがある。

もしかしたら、リュウトは過去を見ているのかもしれない。

 

 

リ「感謝しろ、中途半端な力は使わずに全力で楽に殺してやる・・・」

 

 

そういうとリュウトは咲夜を踏み倒し、右手に光を収束させ始めた。

圧倒的な殺意を前に歯を食いしばった時だった。

 

 

ア「させないっ!上海!蓬莱!」

 

上海「シャンハーイ!」

 

蓬莱「ホウラーイ!」

 

 

吹き飛ばされた筈のアリスが、人形に糸を持たせてリュウトの手足を縛る。

精巧に作られたアリスの人形、青い色の上海人形と赤い色の蓬莱人形によって、糸に巻かれたリュウトは動きを封じられた。

しかし所詮は人形。

時間稼ぎが関の山だろう。

そこである人物の力が必要になる。

 

 

リ「フン、雑魚どもが」

 

魔「だけじゃないぜっ!!」

 

リ「何?」

 

 

頭部を負傷していた魔理沙も意識を取り戻し、リュウトに向けてマスタースパークを撃つ。

息の合ったコンビネーションで確実な一撃を狙った。

 

 

リ「だからどうしたんだ、そんなもので俺を止められるものか!」

 

咲「え・・・?」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

咲夜は目を疑った。

突如、リュウトの体にまとわりついていた糸が発火し、跡形もなく灰と化した。

直後、巨大な魔法陣がリュウトの盾になり、マスタースパークを防ぐ・・・のかと思いきや、魔法陣は魔理沙のマスタースパークを全て吸収してしまったのだ。

若干、後ろの羽が肥大化した気もする。

四人は、今までリュウトと一緒に過ごしてきた中で、余りにも彼の事について知らなさ過ぎていた事に気が付いた。

 

 

ア「そんな・・・きゃあ!?」

 

 

予想外の事態にアリスは腕が止まってしまい、リュウトの放った弾幕への対応が遅れ、右肩に直撃した。

操作が止まった人形は当然動くことは無く、上海も蓬莱もその場で停止しているだけ。

二度の直撃を受けたアリスには、もはや抵抗する体力は残っていなかった。

 

 

魔「もうアリスは限界だ・・・何とかあいつの気を逸らさないと殺されちまう!」

 

 

スペル「ブレイジングスター」

 

 

魔理沙は乗っている箒の先端に魔力を集中させ、リュウトめがけて一点突破の突撃を仕掛けた。

その姿はさながらほうき星の輝きだった。

 

 

リ「・・・」

 

 

流星の輝き、その美しさを全身で表現したかのような技。

リュウトは一言も言葉を発さなかった。

 

 

魔「お、おいおいまじかよ・・・!」

 

 

考える必要もなかった、魔理沙の渾身の一撃も彼にとっては(その程度の攻撃)でしかなかったのだ。

全ての能力が未知数なのだから何が出来ても驚くに値しない。

リュウトの目の前には透明な壁のようなものが形成され、それに阻まれ動けない魔理沙はまるで空中で止まっているよような状態だった。

アダマース・パリエース、意味はラテン語でダイヤモンドの壁。

その名の通り、無敵を誇る最強の盾だった。

魔理沙が全力を出して技を繰り出しているのに対し、リュウトはただ立っているだけ。

力の差は歴然だ。

だからこそ、彼女は心底許せない。

こんなに身近な存在だったのに。

まるで裏切られた気分だった。

 

 

リ「・・・フン」

 

 

もう飽きた。

そう言いたげな顔をする彼は、壁を解いて箒の先端を蹴り上げる。

それだけで魔理沙はバランスを失い、体だけが宙返りしてしまう。

 

 

魔「うぁっ!?」

 

 

どさっという音を立てて背中を地面に打ち、勢いで箒を放り投げてしまう。

アリスを助ける筈が、自分まで二の舞になってしまった。

やはり殺されてしまうのだろうか?だが、リュウトはその場で動けない魔理沙に止めを刺すことは無く、ゆっくりと上空へ昇っていった。

そして、彼の姿が確認出来ないほど上に昇ってしまった時・・・。

 

 

ゴォォォォォ.....

 

 

太陽が現れた。

 

 

レミ「ま・・・眩しい・・・」

 

 

太陽の光に当たると気化してしまうレミリア、だが、その兆候が見られない。

途方もないエネルギーの塊だというのに、何故?その答えは至極簡単な事だった。

 

 

リ「面倒だ、まとめてあの世に送ってやる」

 

 

終末兵器:バベルの光

 

 

左手を天に翳したリュウト、真上にはあり得ない程肥大化したエネルギーの球体が鎮座していた。

ここいら全てを吹き飛ばして、全員を始末する気だ。

 

 

リ「堕ちろ、バベル」

 

零「させんっ!!」

 

リ「何だと?」

 

 

人里のある方角。

遅れてやって来た零夜と霊夢が、遠距離からこちらに向かいながら、リュウトのバベルの光へ弾幕、レーザーでの一斉攻撃を開始する。

 

 

零「こいつで消し飛べッ!!」

 

 

バベルの光へ向けて球電を放つ。

大きさはバベルの光の4分の1程と心ともないが、弾幕を撒き散らしながら飛ぶそれは、十分過ぎる程の威力を持っていた。

だからこそ意味が無い。

 

 

バヒュゥゥゥゥゥン!

 

 

リ「フム、中々強いエネルギーだな」

 

零「な!球電が消えた!?」

 

 

リュウトの右手の魔方陣に球電が当たった瞬間、それに吸い込まれるように球電が消えていったのだ。

エネルギーを使った攻撃では今のリュウトに通用しない証拠だった。

霊夢の弾幕ならば札などの物理的な物なので吸収されることは無いかもしれないが、今のリュウトに通用するとは到底思えない。

激しい混戦を予想した霊夢は、一早く全員の避難を促す。

 

 

霊「アンタ達は早く逃げなさい!そこのウサギみたいなのも連れて!早く!!」

 

魔「あ、あぁ」

 

レミ「貴女はどうするの?」

 

霊「戦わない訳にはいかないでしょう?でも、足手まといにしかならないでしょうね・・・」

 

レミ「ならっ!!」

 

 

一緒に逃げようと説得するが、霊夢は断った。

何故なら彼女が・・・。

 

 

霊「博麗の巫女に・・・負けは許されないの・・・」

 

 

幻想郷の守護者だから。

 

 

_______________________________

 

 

零「接近戦しかない・・・か」

 

 

戦う以外にリュウトをもとに戻す方法が無い。

だが、相打ち覚悟で挑まなければ確実に殺される。

零夜は薄々気付いていた。

リュウトの実力は、自分とほぼ同等かそれ以上だという事に。

 

 

零「迷ってなどいられん!」

 

 

光の剣を生成し、剣道の構えをとる。

剣道自体を知っているわけではなかった零夜だが、無意識にこの構えをとっており、これが一番どんな状況にも対処できる、そう思ったのだろう。

 

 

リ「昔年の恨み・・・散っていった仲間の為にも、貴様を殺して世界を救う!」

 

 

リュウトも脇差から剣を抜刀する。

その剣も金色の光を纏っており、零夜の剣とどことなく雰囲気が似ていた。

そして、二人の剣が交わろうと、同時に空を踏み込んだその時だった。

 

 

?「博麗、七重結界!!!」

 

リ「誰だ!・・・グオォ!?」

 

 

突然、何処からか七つの正方形型の大きな結界が飛来し、リュウトの体を縛り付ける。

肩、胴体と腕、腰、足、全てに結界の枷が憑りつき、身動きが全く出来ない状態にされる。

いきなりの出来事に零夜は呆気に取られてしまう。

 

 

?「博麗、八方鬼縛陣!」

 

リ「ガァァァァァッ!!?」

 

 

さらに、謎の声と共にリュウトは八方の結界の閉じこめられ、力を容赦なく吸い取られていく。

リュウトの断末魔が聞こえなくなる頃には既に気絶しており、結界が消えると脱力したように墜ちていった。

すかさず霊夢が真下からリュウトをキャッチすると、ゆっくりと下降してきた零夜は、近くに寄り霊夢に問いかけた。

 

 

零「おい霊夢、今の技、霊夢がやったのか?」

 

霊「まさか、そんな訳ないでしょ?あんな強力な結界張るなんて私じゃ無理よ」

 

零「じゃあ今のは一体・・・」

 

?「ちょっと、無視しないでくれる?」

 

霊・零「!?」

 

 

二人はほぼ同時に声がした後ろを振り向く。

霊夢は驚愕した。

 

 

霊「その巫女服・・・まさか!!」

 

?「ふふっ初めまして、霊夢さん♪」

 

 

自分と同じ、博麗の巫女装飾を身に纏った白い髪の少女が、あどけなく霊夢に微笑んだ。

 

 

永夜異変 完




やっと出てきましたね!もう一人の博麗の巫女!!この時を待っていましたよ!!いやぁ長かったですね~。
そういえば妖夢の存在忘れてましたね、次回は流石に助けてあげましょうか。
捕まったままは可哀想なんで。
それと影狼ですが、戦意喪失しちゃってるし、幽々子も気絶してるし、今回は一言も喋ってません。
いやぁ、必要無いかなって思ったんですよ。
悪意ではありません。
鈴仙ファンの皆さん、すいません、苛めちゃいました☆テヘッ-☆


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キャラ設定永夜抄編

永夜抄に出てきたキャラの紹介です。
裏設定ありなので注意


上白沢慧音

 

種族:半人半妖(ワーハクタク)

 

能力:歴史を食べる程度の能力(変身前)

   歴史を創る程度の能力(変身後)

 

身長:155cm

 

代表的なスペルカード:産霊「ファーストピラミッド」

 

キャラ説明:ハクタクと呼ばれる中国の妖怪と人間のハーフ。

苗字の上白沢とは、ハーフという意味のワー{上}と、ハクタク{白沢}で、半人半ハクタクという意味を形成している。

特徴的な青のロングスカートに家のような形をした帽子を被っていて、銀メッシュのロングヘア。

後ろ姿でも一発で本人だと解るほど奇抜な恰好をしている。

人里の守護者として名の知れた存在で、老若男女構わず慧音先生と呼ばれている。

これは昔から寺子屋で教師をし続けた結果で、妖怪の血が通った彼女の寿命も相まって里の殆どの人間が昔、慧音先生の教え子だった事が関係している。

背は小さめで、魔理沙と同じ程しか無い。

その為か子供が親しみやすいらしい。

非常に秀才で、外界の高等学校までの教育なら朝飯前。

得意教科は歴史。

 

 

藤原妹紅

 

種族:元人間(蓬莱人)

 

能力:老いる事も死ぬ事も無い程度の能力

 

身長:160cm

 

代表的なスペルカード:不死「-火の鳥-鳳翼天昇」

 

キャラ説明:竹取物語に出てきた輝夜姫に求婚した貴族の一人、藤原不比等の隠し子。

元は人間の少女だったが、輝夜姫への復讐の為に蓬莱の薬を飲んで不老不死の身体を手に入れた。

それも1000年も前の話。

昔は人々からは老けないのを不審に思われては幾つもの集落を転々として生きていたが、段々と一人で野宿をしながら生活をするようになり、生存競争の中で独学で妖術を使えるようになる。

それからはたまに妖怪退治の依頼を人間から請け負ったりもしていたが、やはり定住することは無く、幻想郷にたどり着くまではずっと野宿生活を送って来た。

今は人里の外れで焼き鳥屋を営みつつ、迷いの竹林の案内役をして生活している。

容姿は髪が黒から白に変色し、瞳の色も赤へと変わった。

札があしらわれた赤いモンペをサスペンダーで繋いでいる変わった格好をしている。

東方キャラの中では珍しいズボンキャラ。

腰まで伸びる髪は札のリボンがつけられており、何かを封印しているようにも見えなくはない。

 

 

因幡てゐ

 

種族:妖怪ウサギ

 

能力:人間を幸運にする程度の能力

 

身長:147cm

 

代表的なスペルカード:エンシェントデューパー

 

キャラ説明:かの有名な因幡の白ウサギその人。

白ウサギというだけあって服装も真っ白な耳に真っ白なワンピース。

ニンジンの形をしたペンダントをつけているが、これと似たようなものを鈴仙も持っている。

鈴仙の場合はネクタイピン。

真実は誰も知らないらしいが、もし本当にてゐが因幡の白兎だった場合、そこから逆算すると彼女の年齢は180万歳にもなり、幻想郷の中でも屈指の年長者という事となる。

だが永遠亭の住人の中では三番目の高齢者。

ちなみに一番は永琳。

いたずら好きで竹林の中に大量のトラップを仕掛けていて、たまに鈴仙がそれに誤って引っかかっている。

響華とは仲が良く、屋敷の中で唯一てゐは響華にだけはいたずらをしたことが無い。

 

 

鈴仙・優曇華院・イナバ

 

種族:玉兎(月のウサギ)

 

能力:狂気を操る程度の能力

 

身長:166cm

 

代表的なスペルカード:散符「インビシブルフルムーン」

 

キャラ説明:元月のウサギで、元軍人でもある。

銃弾のような弾幕を使うのはこれが影響している。

月ではかなり優秀な兵士だったらしいが、戦時中に敵の重要人物の暗殺に失敗してその結果戦争が長引き、責任を負うために勝手に地上へ降りてきた。

髪の色は薄紫で、服装は女子高生。

靴もローファーという徹底ぶり。

耳の付け根にボタンのようなものがついているが、つけ耳ではなく本物。

軍の元エースだったこともあり、かなりの実力を持っている。

素手でも十分な力を発揮するが、武器を持たせると手が付けられなくなる。

先頭になると軍人の血が騒ぐのか、口調も厳格になる。

異変が終った後、人里には薬を売るに行っている。

八意印の薬は評判が良いが、売りに来ているのが鈴仙なので皆、鈴仙に感謝をしている傾向にある。

 

 

蓬莱山輝夜

 

種族:蓬莱人

 

身長:162cm

 

能力:永遠と須臾を操る程度の能力

 

代表的なスペルカード:神宝「ブリリアントドラゴンバレッタ」

 

キャラ説明:竹取物語に出てきた輝夜姫本人。

フリルのついた桃色の長袖に、桜、梅、楓、竹が金色でプリントされたあずき色のロングスカートを履いている姿はどことなく和服にも見え、如何にもお嬢様という雰囲気を出している。

蓬莱の薬を飲んで地上へ追放されて始まった話が元となっているのが竹取物語なのだが、話のラストだけが真実とは違い、本当は月に帰っていない。

永琳と脱出を企てて地上に残り、竹林に定住した。

その定住した場所というのが迷いの竹林で、その頃から建ったのが永遠亭。

永遠亭には彼女の能力がかけられており、木造建築なのに手入れせずとも全く痛まない。

咲夜の能力の上位版に当たる能力で、かなり強力な力を持っているらしい。

永琳が教育者として子供のころからついていたせいか、かなり博識。

だが唯一科学にめっぽう弱く、簡単な理科も出来ない。

 

 

八意永琳

 

種族:蓬莱人

 

能力:あらゆる薬を作る程度の能力

 

身長:172cm

 

代表的なスペルカード:天呪「アポロ13」

 

キャラ説明:蓬莱の薬を作った張本人にして、永夜異変の首謀者。

今まで膨大な量の薬を作って来たと言っているが、当の本人もどんな薬を作って来たか覚えていないらしい。

容姿は赤と青に分かれた服装。

上は左が青、右が赤。

下はその逆となっていて、スカートには星座があちこちに描かれている。

ちなみに被っているナース帽も吹くと同じツートンカラー。

たまに白衣を着ていることも。

実は知られていないが、永琳はヤゴコロオモイカネノミコトという神様。

月の都を建造した一人で、月詠神と肩を並べるほどの大物。

学問の神様で有名なだけあって永琳自身も博識。

医学以外にも様々事に精通しているが、何処まで手を出しているかは不明。

零夜とはかなり古い関係で、神界に居た頃に色々と世話になったらしく、零夜の孫のリュウトと響華には優しく接している。

神界に居た頃というのはまだ人間が地球に存在していないほど大昔で、実際彼女の年齢は億単位だとか、、、。

 

 

 




公式設定から引っ張ってきたものに独自設定を入れただけですが、上手く出来ていると思います。
永琳の設定だけ妙に凝っているのは気のせいです。


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44話※

リュウトが暴れたその後の話です。
ちなみに異変は終了しました。
書いてはいませんが、霊夢が永琳達のやっている事が無意味だという事を教えて一件落着したことになってます。
というか異変やってる場合じゃないですわ。


リュウトが目を覚ました時、最初に見えたのは知らない天井だった。

 

 

リ「ここ・・・どこだ?」

 

 

少々の薬品臭が花を刺激するが、不快に感じる程ではない。

身を包み込んでいる真っ白な掛布団は、紅魔館のものとは違う、そんな感じがした。

眩しい日差し・・・ではなく、部屋を照らしているのは真上の照明。

寝起きでいきなり日光を浴びると物凄く眩しく感じるが、それは人工的な電気照明でも同じのようだ。

 

 

永「あら?起きてたの?気付かなくてごめんなさいね」

 

 

声のした自分の左側を振り向くと、そこには赤と青がツートンで真っ二つに分かれている独特な服の上から白衣を着た銀髪の美女が、回転椅子に座って此方を見下ろしていた。

左手にカルテ、右手にペンを持ち、かぶっている帽子の赤十字マークから察するに、この美女は医者かそれに関連する職業についている方だと判断できる。

 

 

永「体は動くかもしれないけど無茶はダメよ?霊力を殆ど失ってたんだから」

 

リ「俺は・・・途中から何も覚えていないんだが、何か知っているか?」

 

永「うちの鈴仙の能力に引っかかって暴走してたそうよ?全く、あなたのせいで患者の手当てが凄く忙しかったのよ?」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

腕を組んでプンプンと怒っている仕草は、いわゆるギャップ萌えという現象を引き起こした。

見た目からは淑女のようなイメージが付きそうだが、意外と少女のような性格なのかもしれない。

彼は余り関心が無いようだが。

 

 

リ「皆はどうしたんだ?もう帰ったのか?」

 

永「なわけないでしょう?重傷者だっていたのよ?あなた以外にも入院患者は居るわ」

 

リ「そ、そうか。

すまない・・・」

 

永「私じゃなくて彼女たちに言ってやりなさい、不可抗力とはいえ流石に謝らないのは不味いわよ。

それと、そこの戸の隙間から覗いてる子にはお礼言わなくちゃね」

 

リ「ん?」

 

 

部屋の戸がわずかに開いていることに気付く。

戸の隙間からは人の顔がわずかに確認でき、セミロングの白髪が少しだが見えた。

輪郭や顔からして少女だ。

永琳に覗いていることがバレると、少女は戸をゆっくりと開け、もじもじしながらリュウトの前に姿を現した。

その瞬間、彼の顔は驚きと歓喜に満ち溢れた。

 

 

リ「響華・・・?お前響華か!?」

 

響「エへへ・・・リュウ兄久しぶりだね」

 

リ「心配してたんだぞ!映姫からもう一人ここに来た奴がいるって聞いたからお前なんじゃないかと!」

 

響「ごめん、でも会いに行く訳にはいかなかったから・・・」

 

リ「生きていたならそれでいい・・・よく無事でいたなぁ・・・」

 

 

ベッドからゆっくりと立ち上がり、彼女をそっと抱きしめる。

抱きしめられた彼女の目には涙が溜まり、感情が高ぶりやがて号泣へと変わった。

 

 

永「あらあら、そういう関係だったのね。

何だかここにいるのが場違いみたいだわ」

 

 

私の診察室なんだけどなぁ、と、心の中で疑問形を浮かべながら、永琳は部屋を後にした。

 

 

_____________________

 

 

レミ「リュウト、目を覚ましたのね。

どうなっちゃうかと思ったわよ?」

 

リ「あぁ、本当にすまなかった。

皆にも迷惑をかけてしまった、今度お詫びをしよう」

 

 

魔「本当か!?やったぜ☆」

 

霊「美味しいご飯がいいわねぇ」

 

咲「気になさらなくてもよろしいのに・・・」

 

 

リュウトが目を覚ましたことを聞きつけた異変解決者たちは、入院している者もいる為、ここ永遠亭に集まった。

永遠亭の応接間には、かなりの人数がせめぎあって座布団に座っている状態だ。

 

 

妖「私はよく知りませんが・・・何かあったんですか?」

 

幽「私もよく分からないのよねぇ・・・途中で疲れて寝ちゃったし」

 

ア「あなた達はあのウサギとしか戦ってないから知らなくて当り前よ。

これはその後に起こった事なんだから」

 

 

何故集まっているのかよく分かっていない二人にアリスが簡単に説明する。

だが、アリスも途中で気絶していたグループの人間なので、詳細はあまり理解していなかった。

そのせいもあり。

 

 

響「・・・」

 

 

机越しに対面している巫女装飾の女の子が誰なのかも全く知らなかった。

白髪のセミロング、髪はサイドテールでまとめ、一見活発そうな見た目だが、ずっとうつむいている為印象としては大人しいイメージだ。

応接間の中には異変解決者以外にも、永遠亭の住人も加わっており、女性ばかりのせいか、こちらもリュウトと零夜を物珍しそうに見ていた。

 

 

霊「ちょっと、話しをするんだから自己紹介ぐらいしてもいいんじゃない?」

 

 

応接間に普通に集まっているが、永遠亭の住人の中で霊夢達が知っているのは怪我の治療をしてくれた永琳だけ。

それ以外は顔だけ知っているか、あったことすらない者ばかりだ。

今後の為にも自己紹介は重要である。

 

 

永「なら私がまとめて自己紹介をしようかしら?」

 

 

そういうと永琳は座布団の上からスッと立ち上がり、皆の顔を見下ろした。

 

 

永「私は八意永琳、永遠亭で医者をしているわ。

正確には薬師なんだけどね。

あなた達が昨日戦ってたのが鈴仙・優曇華院・イナバ。

玉兎という種類の月出身の妖怪よ、元は軍人でね?並の戦闘力じゃないわ。

このちっちゃいのは因幡てゐ、因幡の白兎よ」

 

魔「因幡の白兎だって!?あの神様と結婚して姫になった!?」

 

永「えぇ、昔の話だから今は微塵もその雰囲気を出してないけどね」

 

てゐ「師匠・・・説明が酷い・・・」

 

永「あら?ごめんなさい」

 

 

桃色のワンピースを着ているウサギの耳を生やした黒髪の少女、因幡てゐは、その昔神様に幸運をもたらして姫の地位まで上り詰めた幸運の白いウサギその人だ。

だが、自分の説明が不憫なせいで耳を垂らしてしょぼんとうつむいており、隣に座っている鈴仙に頭を撫でられ慰められている姿からはただの少女にしか見えない。

要は姫の雰囲気が微塵も感じられない。

どちらかというと、その隣に座っている女性の方が雰囲気は出ている。

黒い長髪に十二単のような着物を着た10代後半らしい少女。

いかにもなオーラを出しているが、何か貫禄のようなものを感じられた。

本当に10代後半か怪しく思えてくる。

紹介も残すはその女性一人となった。

だがその説明は、今まで聞いてきた誰の説明よりも驚くべきものだった。

 

 

永「そして最後にここ、永遠亭の姫様、蓬莱山輝夜姫。

元は月の姫だったんだけど、禁忌を犯して追放されたの」

 

霊「禁忌?」

 

ア「追放って言うんだからよっぽどの事なのかしら?」

 

妖「その禁忌って何なんです?」

 

永「蓬莱の薬、不死の薬を飲んだの」

 

レミ「不死の薬!?じゃああなたもしかして不死身なの!?」

 

輝「えぇ、歳もとらないわ」

 

魔「す・・・すげぇ・・・」

 

 

そこで皆は気になった。

なら一体輝夜は今、何歳なのか。

女性の年齢など軽々しく聞いていいものではないのだが、こればかりは凄く気になる。

 

 

輝「ま、あなた達が考えていることは解るから教えてあげる。

大体3000歳くらいよ」

 

魔「さ・・・3000歳!?」

 

咲「信じられませんわ・・・」

 

ア「それでこの美貌なの・・・」

 

幽「さぞや色々な男性を魅了したでしょうねぇ」

 

輝「そうね・・・色々な人を釘づけにしたわ・・・その分だけ人を傷つけてきた・・・」

 

永「・・・・・」

 

 

輝夜の悲しそうな目は、長い時を生きてきた者にしかわからない何かがあったような気がした。

 

 

零「・・・なぁ永琳。

もしかしてアンタも蓬莱人なんじゃないか?」

 

永「え・・・?何故?」

 

零「アンタも輝夜と同じ目をしていた」

 

永「・・・はぁ、やっぱり神様にはそういうことわかっちゃうのかしらね」

 

レミ「うそ・・・あなたもなの?」

 

永「えぇ、私も蓬莱人よ、しかも薬を作った張本人」

 

 

驚くことの連続で全員黙り込んでしまう。

それもそうだろう、不死身の人間が二人も出てきたのだから無理もない。

不死身だから人間ではないのか?

 

 

妖「ということは永琳さんも月の人なんですか?」

 

永「えぇ、その頃は姫の家庭教師のようなことをしていたわ」

 

魔「へぇ・・・でもなんでアンタまでここに降りて来たんだ?月の姫の側近の地位ってかなりすごいんじゃいか?」

 

輝「それはね、私が月の生活に飽きてしまったからよ。

永琳は私が月から逃げる手助けをしてくれたの」

 

霊「贅沢な奴ね、姫なんて何不自由なく暮らせるんだからいいじゃない」

 

輝「まぁそうなんだけどね、私は自由が欲しかったの。

四六時中誰かに見張られ、プライベートなんて知ったことじゃない。

仲の良い友人も出来ない、毎日毎日・・・何のために生きてるのか解らなくなったわ」

だから夢を見たのよ、月から見える青い自由の楽園に」

 

霊「・・・」

 

 

霊夢にはあまり理解できない事だったが、彼女にとっては耐え難い出来事だったのが言葉から伝わって来た。

もう何も言うことは無い。

これ以上、霊夢は彼女に何も問い詰めなかった。

 

 

永「さぁ、そろそろいいかしら?あなた達も私達の事を聞きに此処へ集まった訳じゃないでしょう?」

 

霊「あ、そうだったわね、今日は別件だったのを忘れそうになったわ」

 

 

ポンと手を叩いて思い出したというようなしぐさをすると、魔理沙から視線を当てられ、呆れたような顔をされた。

 

 

魔「お前なぁ、一番忘れちゃいけないこと普通に忘れるなよなぁ」

 

霊「仕方ないじゃない、その前の話が衝撃的過ぎたのよ」

 

 

一同が納得できる答えだ。

その気持ちは解らなくもない。

だが今回集まったのは・・・。

 

 

ア「今日こそリュウトに隠していることを話してもらうんでしょ?」

 

リ「・・・」

 

咲「リュウトさん・・・」

 

 

そう、リュウトの秘密をすべて明かしてもらう。

彼が暴走した時に言っていた不可解な言動の数々、そして霊夢と同じ博麗の力を使う少女の登場。

もう隠すことは出来ない、あの言葉を聞いた霊夢達にはそれを知る権利があるのだから。

それにリュウト本人も言っていた。

時期に話さなければいけなくなる、と。

今がその時なのだ。

咲夜は心配そうに見守る。

本当は話したくないのが解っているから・・・。

 

 

リ「もう・・・隠しきる事は不可能だな・・・。

わかった、俺の正体を、俺がこの世界に来た訳をすべて話す」

 

皆「!!!!」

 

 

等々このときが来た。

全員が息を飲んで静まる。

そして・・・。

 

 

リュウトは過去を語りだした。




新キャラ登場!
応接間は勿論和室です。
障子の外から鹿威しが見えるような詫びさびのある部屋という設定です。
次回からはリュウトの過去編になるので一旦メンバーは出てこなくなります。


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キャラ説明※

今回は登場キャラの紹介をしたいと思います。
まぁいい機会だったので纏めてやっちゃおうって感じです。


博麗零夜

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

年齢:不詳(おそらく100億以上の時を生きているとされる)

 

 

種族:神

 

 

身長:180cm

 

 

体重:72kg

 

 

能力:電光を扱う程度の能力

 

 

好物:無し(今のところ)

何も食べずとも信仰心を定期的に吸収すれば生きられる為。

 

 

好きな女性のタイプ:特になし(生殖の必要が無い為、愛し合うという事を知らない)

 

 

武器:ミョルニル(トール神が持つウォーハンマー。

雷を集めることが出来る)

 

 

スペルカード

 

神化:能力を使って本来の姿になる。

 

ライトニングプラズマ:電撃を連続で敵に当て、上空まで吹き飛ばす。

 

放電:光の速度で敵前まで瞬間移動し、両手に蓄電した電力を相手に触れることで感電させる。

 

サンダーボール:超巨大な光球を出現させ、電気の弾幕を撒き散らしながら敵に投げつける。

この光球一つで火力発電所が2時間で発生させる電気が補える。

 

超電磁マグネット:地球を電磁石のようにして、金属などを浮かせたり引き付けたりする。

あまり使えないが、ものは使いよう。

 

ライトニングブレイド:神力で形成した剣に電気を帯びさせた剣。

エネルギーで出来ている為、実体が無い。

ガ〇ダムのビームサー〇ル。

 

ライキリ:日本刀の美しさに魅力されて彼が憧れで形成したエネルギーの剣。

強い稲妻を帯びており、120万ボルト以上の電気が常時纏われている。

何時出てくるかは不明。

 

雷光鎧:全身に雷を纏うことで鎧のような役割を持たせる。

攻撃に転用することも可能。

 

フラッシュ:強い光で目眩まし。

まともに食らえば眼が潰れる程の威力。   

 

 

キャラ説明

神の楽園、神界から地上に降りてきた神。

北欧神話に登場するトール神は零夜の事で、人間が崇めた時の名前がトール神、神界での呼ばれ方が零夜。

神界でいざこざがあり、久しぶりに地上に来たら霊夢を怒らせてしまった可哀想な神でもある。

今は博麗神社で居候をさせてもらっていて、神というのもあってか神社の信仰に貢献している。

しかし本人にその自覚はない。

神の中でも上位に立つ実力の持ち主で、幻想卿の中でも一二を争う強さ。

しかも中々イケてるメンズなので、人里の女性から結構の支持を得ている。

対ルーミア戦では苦戦していたが、能力の相性が悪かった為あのような結果になった。

 

 

花梨(ルーミア)

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

年齢:11歳(ルーミアは不詳)

 

 

種族:人間(能力を使用すると妖怪化し、人格も変わる)

 

 

身長:143cm

 

 

体重:32kg

 

 

能力:闇を扱う程度の能力

 

 

好物:肉全般(以前は梨などの果物が好きだった。

恐らくルーミアの影響)

 

キャラ説明

前ルーミアが器となっていた少女から封印を破って抜け出し、その後融合した人間。

ルーミアとは友達で、妖怪とも普通に仲良くする少し珍しい女の子だが、容姿端麗なせいか寺子屋の男子児童からの人気が高い。

ルーミアと融合したことで髪の毛が黒から金色になったが、それはそれで需要があったようで、気味悪がられたりは全くしなかった。

両親もルーミアと融合したことは知っており、家族が増えたと大喜びしたらしい。

花梨は能力こそ持っているが、戦いを好まない性格からスペルカードを一枚も持っていない。

融合してからもルーミアは花梨の中で生きており、二重人格のような形でたまに出てくる。

 

 

博麗響華

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

種族:人間と神のハーフ

 

 

年齢15歳

 

 

身長:165cm

 

 

体重:ヒミツ

 

 

能力:想いを力に変える程度の能力

 

 

好物:ラーメン全般(リュウトが作ったもの)

 

 

スペルカード

(持っていないので技の種類)

 

博麗七重結界:代々博麗の巫女が受け継いできた技の一つ。

響華の力によって格段にパワーが上がっている。

 

八方鬼縛陣:結界の中に敵を閉じ込める技。

此方も響華の力によって格段にパワーが上がっている。

 

封魔陣:魔を滅する聖なる力。

結界の檻に閉じ込め邪悪な者を滅する。

 

夢想封印:追尾性の高い虹色の弾幕を大量に敵にぶつける連撃技。

かなり威力が高いが、力の込め具合によっては霊夢の何倍の威力のものを撃ちだせる。

 

夢想天極:能力をフル稼働させて、限度があるが大体の事を可能にする。

だがそれには強い彼女の想う力が必要で、感情に左右されやすい技。

 

 

キャラ説明

リュウトの妹で、30代目博麗の巫女。

零夜と霊ろら夢の孫にあたる存在で、能力や容姿はどちらかというと霊夢の特徴が強く出ている。

未来の世界でリュウトと二人で博麗神社に住んでいる。

両親は隠居しており、母親は前博麗の巫女で、技の伝承わなろ等をしていた。

因みに、彼女は兄のように光を纏うことが出来ないが、博麗の血をかなり濃く受け継いでいる為か陰陽術に関しては兄のそれを大幅に上回っている。

響華は14歳頃から博麗の巫女になっているが、先天的な才能からもっと早く巫女になる予定だった。

紫とはとても仲が良く、姉のように慕っており、親しみをこめてユカ姉と呼んでいる。

他にもレミリア、フラン、幽々子等も姉のような感覚で接している。

 

 




見えにくいですが、零夜の首にはペンダントが掛かっています。
四角い金属製のシンプルなものです。
響華については本編の説明が不十分だったので載せました。


感想、評価待ってます!


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過去編45話

いつもと比べて文字数が少ないです。
それとほのぼのです。
辛い過去に隠れた幸せな時って感じですかね?


岡崎夢美教授による第一次科学革命により、人間の技術は新たな進化の道へ踏み出した。

だがそれももう、150年も昔の話。

人々は宇宙まで生活範囲を広げ、地球からは一本の世界樹のような軌道エレベーターが聳え立ち、生活もさらに豊かなものになるにつれて人間同士の争いも次第になくなっていった。

全てを平等に分け合い、この世に生きる全ての者に幸福を与える。

人類は神を信じず、自らが神となった。

この世の人間全てが幸福に生きられる時代となったのだ。

時は、西暦2156年。

この時は丁度、桜が綺麗な季節だった。

 

 

~幻想郷.A.D.2156~

 

朝。

博麗神社からは、リズミカルな包丁の音と、味噌のいい香り漂う。

此処には博麗の巫女と、その兄が同居しており、いつも兄が朝食を早い時間から作りだす。

その間、巫女の妹は自身の部屋の布団で熟睡している。

巫女の名は、博麗響華。

兄の名は、博麗リュウト。

 

 

___________________

 

 

リ「よし、出来た!

我ながらいい出来だ」

 

 

台所で漸く完成した料理の出来を自画自賛する。

朝の弱い響華の為に毎日朝食を作って来たおかげで料理の腕前は人並み以上になった。

輝くような白の白米、わかめの味噌汁、アユの塩焼き、どれをとっても素晴らしい出来だ。

冷めないうちにリュウトは料理を盆にのせ、居間のちゃぶ台へと並べに行った。

 

 

~響華の部屋~

 

 

女の子らしい桃色のカーテン、部屋の至るところに縫いぐるみが置かれている。

妹、博麗響華は部屋は綺麗にする方だが、性格は若干ずぼらだ。

 

 

リ「おい響華起きろ、朝だぞ。

早く顔洗って飯食えよ

今日はレミリアさんが来るんだろ?」

 

響「ま・・・眩しい・・・。

この世の終わりかぁ・・・」

 

リ「何バカみたいなこと言ってんだ、さっさと起きて飯食えよ」

 

響「はぁ~い」

 

 

部屋のカーテンを開け、日の光を部屋全体に入れ、毛布に包まる少女を彼は無理やり起こす。

渋々布団から出てきた彼女のパジャマはボタンを掛け違えていて、寝相が悪いのかズボンが半分ずれ落ちて白い下着が見えてしまっている。

白色の髪も寝癖が付いて所々飛び跳ねてしまってかなりだらしなかった。

そんな状態で朝はいつも社を徘徊するのだから兄として将来が心配になってしまう。

 

 

リ「はぁ、せめて大人になる頃にはどうにかならないものか・・・」

 

 

顔を洗いに洗面台へノロノロと向かうだらしない格好の妹の後ろ姿を残念そうな目で見送り、リュウトは一足先に居間へと入っていった。

 

 

_____________________________________

 

 

響「あー!もう食べてる!」

 

リ「お前がおそいからだろ?」

 

響「もう!少しぐらい待っててくれたっていいのに!

レミ姉にチクってやる!」

 

リ「勝手にしろ、100パーセントお前が悪いんだから」

 

 

プクーッと膨れながらもさっさと席に座り、戴きますとともに彼女は朝食を口に運ぶ。

何だかんだ言って、この兄妹は仲が良いのだ。

 

 

居間にはブラウン管のカラーテレビが置かれていて、外の世界のニュースが見られるようになっている。

もう随分と昔の話だが、河童の技術者たちが大量に幻想入りしてきた古いテレビを修理して幻想郷全体に普及させたそうだ。

リュウトがちゃぶ台に置かれたリモコンでテレビの電源をつけると、ちょうど朝のニュースがやっていた。

外の世界では通勤、通学の時間帯だ。

黒かった画面には光が灯り、次第に女性アナウンサーの音声と映像が流れだす。

 

 

キャスター「グリニッジ標準午後2時、太陽系外に向け、巨大探査船アルカディアが月面ドッグから発進しました。

全長4000mのこの艦船は、世界一大きい船としてギネスブックにも認定され、総勢1万人ほどの乗員と共に星の海へと旅立ちます。

この船は50年前に発見された最も地球から近い、スーパーアースと呼ばれる人類生存可能な惑星の調査に向かう為に建造され、この船の調査が良好に行われれば、近い将来、地球を離れ移住することも可能になるわけです」

 

響「へぇ~、こんな大きいのが動くのか~」

 

リ「グリニッジ午後2時ってことはこっちは10時か、俺たちは寝てるな。

ま、どちらにせよ俺たちには無縁の話さ」

 

響「またそうやっていうんだから、夢ってものが無いの?」

 

リ「外の人間が何をしようが俺たちには関係ないからな」

 

響「ひえぇ~」

 

 

夢の無い兄の発言を批判するかのようなリアクションだ。

さっさと食べて着替えろよ、そういうとリュウトは茶碗の白米を一気にかき込んだ。

 

__________________

 

朝食を終えた二人。

響華は巫女服に着替え、境内の掃除を始める。

その間、皿洗いが終わったリュウトは、剣術の師匠の下へ出掛ける準備をしていた。

お気に入りのジーンズを履き、紺色のTシャツの上に一枚真っ白なシャツを羽織る。

最後に祖母からのお守りのペンダントを首にかけ玄関を出た。

祖父が他界してから、人里で両親と暮らしている元博麗の巫女だった祖母。

昔、曾祖父から御守りとして貰ったらしいが、そんな大事な物を俺に託して良いのか?と、たまに

考えてしまう。

玄関を開けると、箒を持った響華が出迎えた。

 

 

響「いってらしゃい、妖夢さんに迷惑かけちゃだめだよ?」

 

リ「どの口が言うんだ!ったく。

お前こそ、レミリアさんに迷惑かけんなよ」

 

 

リュウトは霊力を操り、手を振る響華を背に、白玉楼へ向け大空へと舞い上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ヤバイくらい未来ですねぇ、ちなみにこの未来は、原作通りに話が進んだら訪れる未来です。
霊夢がこのまま異変を解決し続ければこの未来に行き着きます。
リュウトが過去に来てしまったからチルノが暴走したり、ルーミアが暴走したりしたのです。
ルーミアが暴走したときにリュウトが言っていた言葉、(次このような事が起こった時は)
リュウトは自分のせいで過去が変わってしまっている事に気づいていたんですね。
次回はリュウトの師匠が出てきます。
お楽しみに。


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過去編46話※

今回で50話まで来ました!!記念すべきこの回は大した事やってません!!こんなので大丈夫なのだろうか。


~白玉楼~

 

 

リ「すいませ~ん、妖夢師匠いらっしゃいますか?」

 

 

大きな木造の和風式門の前、日常となった剣術の稽古の為、師匠である魂魄妖夢の名を呼ぶ。

すると、門の向こうから返事が微かに聞こえてきた。

 

 

幽「リュウトく~ん!勝手に入っていいのよ~??」

 

 

白玉楼の主の声だ。

毎度毎度、勝手に門を開けて入っていいと言われているのだが、他人の家の敷地に勝手に入るのは申し訳ないので断っている。

しかし、無駄に広いこの庭を越えた向こうにある屋敷まで誰かを呼ぶのは面倒といえば面倒だ。

 

 

リ「・・・入るか」

 

 

少し重い木でできた扉を開け、リュウトは屋敷へと足を踏み入れた。

門を抜けて少し進むと、素晴らしい出来栄えの日本庭園が出迎えてくれる。

ざっと2000平方メートルといったところだろうか、この広さを師匠一人で管理しているというのだから驚きだ。

過労死とかしないのか?と、心配した時もあったが、本人は、半分死んでいるようなものなので今更といった感じらしい。

庭園の中の砂利道を道なりに進んでいると、縁側のある方から力んだ声が聞こえてきた。

聞き慣れた声だ・・・リュウトは声のする縁側へと転身し、声の主を見つけた。

 

 

リ「あぁ、やっぱり師匠でしたか」

 

妖「おや?もう来たのですかリュウト?」

 

 

声の主はやはり師匠だった。

今までずっと真剣の素振りをしていたらしく、上半身だけ着物を脱ぎ、サラシと緑のハカマだけの恰好なのに大量の汗を欠いていた。

かなり長い時間素振りをしていたようだ。

 

 

リ「はい、師匠は素振りをしていたみたいですね」

 

妖「基礎は道を極める上で最も重要なものの一つ、怠ってはいけないのです」

 

リ「昔は耳にタコができる程言われてましたね、今思えば懐かしいです」

 

 

縁側に置いてあるタオルで汗を拭きながら会話をする師匠は何処か色っぽい。

白髪のロングへアに立派な胸、男が興奮するのは間違いないだろう、胸に関して本人は邪魔なだけだと言っているが。

 

 

妖「フゥ、少し休憩したら手合わせしましょうか?久しぶりに修行の成果を見てやりましょう」

 

リ「基よりそのつもりで来てますから」

 

妖「ふふ、では期待しておきますか?」

 

幽「あら、じゃあ私は見物しながらお菓子でも食べようかしら?」

 

妖「あ、幽々子様」

 

 

二人の会話を聞いて幽々子が和室から見物をしに寄って来た。

その手には、柏餅やら最中やらが乗った皿があり、見物しながら食べる気満々だった。

 

 

妖「よいですが、あまり食べないでくださいよ。

先程朝御飯を食べたばかりなんですから」

 

幽「え~・・・もう一時間も前よ?」

 

妖「一時間しか経ってません。

間食すると御昼が食べられなくなりますよ?」

 

幽「それはイヤ!!」

 

妖「なら程々にしてください」

 

 

御昼が食べられなくなる、その言葉に敏感に反応した幽々子は妖夢の言う通り少し控える事にした。

そして、休憩が終わり、汗をぬぐい終わった妖夢はタオルを縁側に置き、はだけた着物を元通りにしてから刀を抜いてリュウトと対峙した。

 

 

リ「・・・」

 

 

準備が整ったという師匠の合図を悟り、リュウトは刀の柄のようなものをポケットから取り出す。

リュウトが柄に力を込めると、霊力が剣のような形を形成し始めた。

二人同時に我流の構えを取り、対決が行われた。

 

 

リ「では・・・推して参る!!」

 

妖「いざ尋常に勝負っ!!」

 

___________________________________

 

 

手合わせの結果は引き分け、剣は互いの体に当たることなく、ほぼ互角の戦いだった。

長い時間剣を合わせて疲れ切った二人は縁側で休憩しながら共に汗を拭きつつ他愛もない話をする。

 

 

妖「強くなりましたねリュウト、私が教える事はもうないでしょうに」

 

 

縁側に腰を掛け、愛弟子の成長を間近で感じた妖夢の顔には自然に笑顔がほころぶ。

いつも褒めると謙遜する彼だが、実力が上がっている事は事実で、妖夢は師匠として高くそれを評価している。

 

 

リ「そんな事は無いですよ、師匠が本気を出したらとてつもない強さですからね、俺なんてまだまだ半人前です」

 

妖「・・・なんだかその台詞、昔の私を見ているようです」

 

リ「え?」

 

 

師匠の昔を知らないリュウトは、突然放った師匠の何気ない一言に反応する。

師匠は今のリュウトの言葉が、昔の自分が言っていた言葉と同じだったらしく、思い出した昔の話を聞かせてくれた。

 

 

妖「もうずいぶん昔の話ですね・・・昔は私も半人前で弱かったんです。

でも、師匠が行方をくらましてから私も懸命に修行して強くなりました、その時は自分は強いと自負していました。

でも・・・」

 

リ「でも?」

 

妖「私より強い人なんていっぱいいたんですよ、昔、異変を起こした時にそれを思い知らされました」

 

リ「異変・・・あぁ、幻想郷縁起に載っていましたよ」

 

 

幻想郷縁起、稗田家が執筆している1300年ほど前から続いている歴史書だ。

幻想郷の妖怪の図鑑や危険区域案内などが書かれているものだが、その中に歴史上に起こった異変が載せられており、幽々子の起こした春雪異変も詳しく掲載されている。

異変を解決したのは博麗の巫女と書かれていたが、そのことなのだろうか?

 

 

リ「博麗の巫女に負けた・・・という事ですか?」

 

妖「いいえ、幻想郷縁起にはそう書いてありますが、あの時代には博麗の巫女に匹敵する強さを持った人間がいたんです」

 

リ「ひいばあちゃんと肩を並べる強さ・・・一体誰なんです?」

 

 

そう問うと、妖夢は黄昏るように空を見上げた。

 

 

妖「霧雨魔理沙と十六夜咲夜という人間です、私が本気で挑んでも勝てなかった・・・」

 

リ「霧雨魔理沙・・・十六夜咲夜・・・?」

 

 

今まで聞いたことの無い名前だ。

師匠が本気を出しても勝てなかった相手とは興味深かった為、真剣に耳を傾けた。

 

 

妖「魔理沙は霊夢と仲が良い・・・というか、腐れ縁のような関係でしたね」

 

リ「友達だったんですか・・・ひいばあちゃんと」

 

妖「よくものを盗む魔法使いでしたよ、決まって言い訳の台詞が(盗むんじゃない、一生借りるだけだ)ってね」

 

リ「は、はぁ・・・」

 

 

魔理沙と呼ばれる女性は話を聞く限りまともな人とは思えなかった。

きっとろくな人間ではなかったのだと思う。

だが、十六夜咲夜という女性は聞いている限りはそうは思えなかった。

 

 

妖「咲夜は紅魔館でメイドをしていた人間ですが・・・そうですね、大体の事を完璧にこなしてしまう人でした。

本当に人間なのか疑ってしまうくらい、でも、二人とも寿命で亡くなってしまった・・・。

仲が良かった分、悲しかったですね」

 

リ「師匠・・・」

 

 

その目には僅かに涙が溜まっており、昔の出来事を思い出してしまったのだと察した。

人外である者の影ながらの苦悩というやつなのだろう。

いつかそんな日が自分にも来るとなると少しゾッとしてしまう。

 

 

妖「あなたもいつかこの気持ちが解る日が来るでしょう、神の血を引いて産まれているのですから・・・」

 

リ「覚悟しています、でも、今は今この時を大切に過ごしたいと思います」

 

妖「良い心掛けです♪そうだ!今日は此処でお昼を食べてはどうです?私が作るのでゆっくりしていていいですよ?」

 

リ「はい、ではお言葉に甘えさせてもらいます。

妹はレミリアさんと一緒に食べるでしょうし」

 

 

では決定ですね!と、気合をいれて妖夢師匠は立ち上がり、台所へと向かった。

 

 

幽「あんなに嬉しそうな妖夢の顔、リュウト君が来てから変わったわね・・・。

じゃ、私もリュウト君と一緒にご飯が出来るの待とうかしら♪」

 

 

縁側でぼうっとしているリュウトの隣へ座り、雑談をしながら妖夢の料理を二人で待つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




リュウトの師匠は妖夢です。
剣術の師匠が妖夢で、他にも射撃の師匠、体術の師匠がいます、今後リュウトの過去エピソードに出てくる予定です。
挿絵はこちらになります。

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過去編47話※

過去編はリュウトたちの平凡な日々を描いてからの絶望への道を辿っていきます。
なので結構長めのエピソードになります。
今回は響華サイドの話です。


~博麗神社~

 

 

レミ「貴女ねぇ、もうちょっとおしとやかにしないと男が寄ってこないわよ?」

 

響「いいもん、リュウ兄が養ってくれるから」

 

レミ「兄でも男でしょうが」

 

 

昼間から吸血鬼が遊びに来ている神社。

居間の座布団に正座を崩して座り、緑茶を湯呑で啜る吸血鬼は世界中どこを探してもいないだろう。

最も、吸血鬼は探して見つかるものではないのだが。

響華の事を実の妹のように可愛がってきたレミリアは、ずぼらな響華の将来が心配で仕方がない。

 

 

響「リュウ兄は別だよ、私の事女として認識してないんだもん」

 

レミ「・・・貴女それ自分で言ってて悲しくならない?」

 

響「???」

 

レミ「あ・・・そう、いいのね」

 

 

自分が言えたことではないのでレミリアはこの件についてもう触れないことにした。

というより諦めた。

一旦落ち着こうとレミリアは湯呑に口をつける。

ちらりと目の前を見ると、響華が幸せそうにお茶請けの羊羮をほおばっていた。

その姿がふと、昔の友人の姿と重なったような気がした。

 

 

響「ん?どうかしたのレミ姉?」

 

レミ「え?あぁ。

昔の友人と貴女が何となく同じように感じたのよ」

 

響「へぇ、その友達って誰なの?」

 

レミ「貴女のひいおばあさんよ」

 

響「ひいおばあさん?」

 

 

首をかしげて誰?といった顔をする響華に少しだけ昔話を聞かせてあげた。

 

 

レミ「貴女のひいおばあさんの博麗霊夢はね、貴女の何倍もめんどくさがりな性格だったわ。

戦いに関しては先天的な天才だったから修行する必要もなかった。

そのせいかしらね、いつも神社で寝てるかお茶飲んでるところしか見たこと無かったわ」

 

響「わ・・・わたしそんなにひどくないよ?」

 

レミ「ふふっ、でもまぁ近い感じかしらね?」

 

響「もうっ!からかわないでよレミ姉!」

 

レミ「あははっ!ごめんごめん」

 

 

それから聞かされたレミリアの昔話は面白おかしなものばかりで、自分のおばあさんの話までしか知らなかった響華は笑いながらそれを聞いていた。

時には腹を抱えて笑い転げることも。

しかし、そんな楽しい時間ほど直ぐに過ぎてしまうものだ。

気付けば時計は3時を指していた。

 

 

響「え?もう3時?早いなぁ」

 

レミ「3時かぁ・・・。

おやつの時間ね!人里のお団子屋さんに食べに行きましょうよ!」

 

 

私が出すから心配いらないと言ってレミリアは立ち上がり、響華の腕を引っ張り立たせた。

悪いからと遠慮するも、そんなこと気にしなくていいと言い、玄関の靴を履いて二人は外に出た。

勿論レミリアは日傘も忘れずに。

 

 

 

~人里茶屋~

 

店員「お待たせしました、みたらし団子二人前です」

 

レミ「ありがとう、お金は丁度だから」

 

店員「はい、丁度頂戴いたします」

 

 

甘味処に到着してから店員にみたらし団子を二つ注文し、道側に置かれた木製の長椅子に腰かけて出てきた団子を店員から受け取る。

代金はあらかじめ椅子の端に丁度置いておいた為、店員はそれを回収して店の奥へと戻っていった。

皿に乗った団子は垂れにたっぷりと浸かって午後の日の光に照らされている。

硝子細工のように美しい団子だ。

 

 

レミ「久しぶりに来るとやっぱり良いものね、いつもはメイドに買ってこさせてるけど」

 

響「もちもち~」

 

 

三つ櫛に刺さった団子を幸せそうにほおばり、二人ともリスのように頬が丸く膨らむ。

直ぐに団子は口の中から消えたが、それで二人は満足だった。

 

 

 

道には様々な人が行き交い、老若男女、時々妖怪といった感じだ。

妖怪に知り合いの多い二人は、人里に住む妖怪の殆どと知り合いであり、人里ではほぼ100%の確率で誰かとすれ違う。

だからいつ話しかけられても可笑しくないのだ。

 

 

レミ「だからってなんでアンタなのよ」

 

神子「おや?何かよからぬ事でもありましたか?」

 

レミ「全体的に仙人って変人が多いからあんまり関わりたくないのよ」

 

神子「何だか否定できない自分が嫌になります・・・」

 

 

偶然通りかかった聖徳太子こと豊聡耳神子が、霊廟に帰る途中のところをついでがてらに寄って来た。

冠位十二階のトップを表す紫を多くあしらえた服装を着ているが、今ではそんなものに全く意味は無く、彼女曰く昔の服装を現代風にしただけなんだとか。

人間から仙人になった彼女の廻りには同じような仙人が多く集っており、一部を除いてめんどくさい奴が多い。

レミリアはその事を言っているのだが、まさかその変人達の中に自分が入っているとは思ってもいないだろう。

 

 

響「今日も聖さんのところに行ってたの?」

 

神子「えぇ、同業者みたいなものだから色々と話すことがあったりするんです」

 

響「素直に友達だからって言えばいいのに」

 

神子「ま、まぁそれもありますけどね!

あとお姉さん、私にもお茶をください。

それとお汁粉一つね」

 

店員「はーい、畏まりました!」

 

レミ「アンタここにいる気満々じゃないの」

 

神子「あら?いけませんか?」

 

レミ「はぁ、好きにしなさいな」

 

 

店員にお汁粉を頼んでとどまる気満々の神子にため息が出てしまう。

折角響華と二人きりでお茶をしていたのに台無しだ。

それほど響華は周りから好かれているということなのだが、人里に来てからも道行く人に挨拶をされまくったし。

やはり博麗の巫女だから知名度が半端なく高いのだろう。

 

 

響「そういえば今日は屠自古さんと布都さんと一緒じゃないんですね、珍しい」

 

レミ「確かにそうね、いつも一緒に歩いてるのに」

 

神子「今日は霊廟で留守番ですよ、どうも聖さんと私が仲良くしているのが嫌みたいで・・・」

 

響「へぇ~、何だろうね?別に友達同士仲が良いんだから何も言うこと無いと思うんだけどなぁ」

 

神子「そ、それは・・・」

 

 

レミリアの口がにやりと歪む。

少しいたずらをしてやろうという口だ。

神子が何故答えるのを躊躇うのか知らなそうな響華に、その理由を教えてやった。

 

 

レミ「あら?知らないの?

屠自古って神子の奥さんなのよ?」

 

響「え!?そうなの!?」

 

神子「あー!!何で言うんですか!

勘違いされるから出来るだけ言わないようにしてるのに!!」

 

レミ「アハハハハ!!!」

 

 

神子の慌てように笑いが止まらない。

涙目で訴える神子の必死な顔にレミリアは大爆笑し、腹を抱えて笑い続けた。

元々神子は男だったのだが、聖人になった時に何故か女になってしまったらしく、屠自古を妻に持つ同性愛者のような事になってしまったらしい。

折角今まで秘密にしていた事だったがもう遅い。

既に響華含め茶屋に居る客も普通に話を聞いており、皆揃って、へぇ~というような反応を見せていた。

昔、宴会で酔った勢いでレミリアに話してしまったのが運の尽き、話す相手を間違えるとこういう事態になりかねない。

この話が世間に広まれば、自分が同性愛者だと勘違いされかねない、そう考えるとどんどん気分が落ち込んでいき、半ば放心状態になる。

その時、この状況で一番聞きたくない声が聞こえてきてしまった。

 

 

屠「ほう?太子、私が貴女の妻だったら何が不味いんですか?」

 

響「あ、屠自古さん」

 

神子「イィ!?屠自古!?

いつの間に!?」

 

屠「貴女がなかなか帰ってこないから連れ戻しに来たんです、、、」

 

 

体を持たないせいで屠自古の足音は聞こえない、そのせいで神子は直ぐ近くまで彼女が迫っていたことに全く気付かなかった。

尸解仙となるときに体を失い、それ以来亡霊として生きているせいだ。

死んでいるのに生きているとはどういう事なのだろう。

 

 

屠「それで?どこをほっつき歩いているのかと思ったら・・・。

響華さんとレミリアさんと一緒にお茶をしていたとは・・・」

 

 

どうやら屠自古は今の会話を全て聞いていたようで、うつむいたまま握り拳がプルプルと震えている。

これは不味い、非常に不味い。

命蓮寺に出かけると朝言った時、凄く不機嫌になっていたのにこれ以上怒らせたら・・・。

いや、もうお怒りになられているようだ。

話によると屠自古は雷を操る能力を持っており、怒ると能力で雷を落とすらしい。

 

 

レミ「ヤバい、、、響華、離れるわよ」

 

響「う、うん、、、」

 

 

雷の被害は被りたくないので二人は神子を置き去りにしてそそくさと店の中から小走りで退散する。

気付けば屠自古と神子の周りには誰もいなくなっていた。

皆の安全が確保できたことを確認すると、屠自古は雷を思い切り神子の脳天に突き落とした。

 

 

屠「天誅!!!」

 

神子「いぃぃぃぃぃやあぁぁぁぁぁ!!!??」

 

 

間近で人間が落雷に遭う瞬間を目撃した全員がおぉ、と若干後ずさりながら驚きの反応をする。

落雷後の丸焦げの神子を見てからは引いている者も多かったが。

屠自古は丸焼きになった神子の首元を掴み、どうもお騒がせしましたと一礼してからそれを引きずりながら去っていった。

地面には真っ黒なすすを引きずった跡のようなものだけが残っていた。

 

 

レミ「、、、帰りましょうか」

 

響「そうだね」

 

 

予期せぬ事態が起こったが、これはこれで面白かったので良しとしよう。

もういい時間帯なので、二人はこのまま解散して帰路に就くことにした。

その日の夜、響華が稽古から帰って来たリュウトに今日あったことを話し、リュウトも妖夢の手料理を食べたことを話すと、

 

 

響「ずるい!何でリュウ兄ばっかりそんなにいい思いばっかりするのさ!」

 

 

と、怒声のような文句が返って来たそうだ。

 

 

 

~紅魔館 レミリアの部屋~

 

 

食事を終えたレミリアは自室に戻り、机に飾られた一つの写真立てに手を添え、話しかける。

 

 

レミ「なんだか今日は波乱に満ちた一日だったわ、久しぶりにこんな日を過ごした気がするわね。

一体何年ぶりなのかしら・・・貴女達が生きていた頃は毎日そんな感じだったような気がするけど・・・ねぇ、咲夜」

 

 

写真に写る少女は、笑顔でレミリアに応えているかのようだった。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

写真の隅にはこう書かれていた。

 

 

 

sakuya izayoi・・・と。

 

 

 

 

 




何故か登場神子さま&屠自古さん。
神子さんは聖徳太子なので元男という独自設定です。
屠自古は聖徳太子の妻が元ネタらしいんでそれをやりたいが為にこんな無茶設定にしてしまいました。
尸解仙は仙人の一種で、一度死んでからもう一度復活してなれるらしいんですが、魂を別の入れ物に移す必要があるらしく、長い時を過ぎても朽ちない物を用意しなければいけないそうです。
神子が尸解仙になるために選んだ入れ物が金のかんざしで、女性が使う物を入れ物に選んだ結果、それが体に反映してしまったという設定なので矛盾は生まれてないかと思います。
金なら錆びないし。
まぁかんざしの話は後々することにします。


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過去編48話

もう一人の師匠が出てきます。
この人に関しては格好が全く変わってません。
妖夢はちがうけどね。ありませんか


魔法の森の上空、リュウトは竹林への近道を通っていた。

博麗神社から竹林に向かうには魔法の森を横切った方が近い。

一般人にとっては森の植物から出る瘴気は有毒なので基本は森には入らないのだが、空を飛べる者は別だ。

 

 

リ「お?アリスさん?」

 

 

森の中にぽつんとある木の生えていない開けた場所に彼女は一人座っていた。

綺麗な金髪は空から見ても目立ち、座っているだけでも絵になる。

 

 

リ「おーい、アリ・・・ん?」

 

 

何か違和感に気付く。

アリスは誰かに話かけているようで、微かだが語りかけている声が聞こえてきた。

名前を呼ぼうとしたが、ここは一旦様子を見て誰と話しているのか探ってみる事にした。

 

 

ザッ・・・ザッ・・・

 

 

ゆっくりと地面に足をつけ、気配を消して木の影に隠れ耳を澄ます。

気付かれないように後ろに回って聞いているので詳しく聞き取れないが、笑い声のようなものが聞こえたりした。

 

 

リ「周りに誰も居ない。

携帯で話をしているようにも見えないし・・・。

一体誰と話してるんだ?」

 

 

今の彼女の姿勢はいわゆる乙女座りというやつだ。

手は地面についてるし、周りに誰も居ないのにも関わらず彼女は話を続けている。

近くにあるのはせいぜい腰かけられるくらいの大きな石くらい・・・。

・・・大きな石?

 

 

リ「あの石に話しかけてるのか??」

 

 

アリスが影になって全体は見えないが、人工的に造形されているようにも見える。

もしかして墓か何かなのだろうか?

下に花が添えられているのを見ると墓らしいが、となると一体誰の墓なのだろうか。

観察を続けていると、アリスが静かに立ち上がり此方に向かってきた。

急いでリュウトは能力を使って自分の周りの光を屈折させる。

めちゃくちゃな方向に光が屈折することによって自身を透明化させた。

 

 

ア「・・・・」

 

 

ザッザッザッ

 

 

リ「・・・・・・」

 

 

無言でこちらに向かってくるアリス。

此方もそれに合わせて心拍数が徐々に上がってくる。

しかし、どうやら此方の存在に気付いたというわけではなさそうだ。

その証拠に、アリスは透明のリュウトをスルーし、森の野道を歩いて行ってしまった。

そういえばこちらの方向にはアリスの家がある事を思い出し、安堵の表情をする。

能力を解除して姿を現したリュウトは、アリスが去ったのを確認すると、その墓らしきものを近くで確認しに行った。

木々の影で日光が少し抑えられて、それらしい雰囲気が出ている。

なんとも神秘的な感覚だ。

石はその中心にひっそりと立てられていた。

やはり墓標だったようだ。

 

 

リ「なかなか綺麗にされているな・・・毎日手入れされているようだな」

 

 

その墓は新品のようにピカピカで、西洋風な墓標だった。

念入りに磨かれたそれは大事にされている何よりの証拠だ。

しかし、今までこんなところに墓があるなんて全く知らなかったが、これはいつからここにあるのだろうか。

リュウトは墓に彫られた名前を覗き込む。

そこにはこう書かれていた。

 

 

MARISA KIRISAME

 

BORN1990~DEAD2071

 

 

______________________

 

 

~竹林~

 

真昼の竹林。

いつもは風に揺らされる竹の葉の音しか聞こえない筈だが、今日は至るところで銃声のような音が聞こえる。

鈴仙・優曇華院・イナバは、竹林の中を疾走しながら各所に設置された射撃標的を的確に撃ち抜く。

彼女はこうして週に何度かこうして射撃訓練をしているのだが、見事なものだ。

ほぼすべての的が的確に中心を撃ち抜かれており、彼女の射撃の正確さが窺える。

その神業にも等しい射撃をじっと見ていたリュウトは拍手をした。

 

 

リ「流石ですね、師匠。

命中率100%、全て中心に当たっています」

 

鈴仙「リュウト君もここまでできるようになれば言う事無しなんだけどね~」

 

リ「あんなに上手くはなれませんよ・・・」

 

 

射撃があまり得意ではないリュウトは、鈴仙に痛いところを突かれて少し引っ込んでしまう。

それでもかなりの腕前なのだが。

鈴仙が100ならばリュウトは80程の確率だろう。

彼女が言うには射撃が得意になれば、戦いで無駄玉を無くして力の消費を最小限に抑えることによって、持久戦になっても相手よりも体力が持ちやすいのだとか。

元軍人なだけあって理に適った説明だ。

昔は弾幕を張って敵の行動範囲を狭めて戦う方法がポピュラーだったらしいが。

 

 

鈴仙「んじゃ、的の回収はウサギたちに任せて永遠亭に帰りましょう。

任せたわよ」

 

ウサギ「了解しました!」

 

 

何処からともなく現れたウサギに後片づけを頼み、二人は永遠亭へと足を向けた。

 

 

~永遠亭~

 

鈴仙「粗茶ですがどうぞ♪」

 

リ「あぁ、ありがとうございます」

 

鈴仙「フフッ♪どういたしまして」

 

客室に招かれ、革製のソファに腰かけたリュウトに緑茶を出す。

その事に礼を言うと、彼女はにっこりと微笑んだ。

客室は洋室になっていて、一人用の革製ソファが四つに、ニスの塗られた大きな長方形のテーブルが置かれている。

昔は外見と同じく和室しかなかったそうなのだが、改修工事をした際に何部屋か洋風のフローリングの部屋に変えたらしい。

テーブルに湯呑とお盆を置くと、鈴仙もソファに座る。

そこでリュウトは今朝あった出来事を思い出し、彼女に話してみた。

すると彼女は懐かしさに浸るように目を閉じ、口を開いた。

 

 

鈴仙「あぁ、懐かしいわね。

アリスはね、魔理沙と親友のような関係だったのよ、住んでる所が近くてご近所付き合いって感じかしらね?魔理沙の墓は丁度魔理沙の家があった所にたてられてるの。

だから昔、あそこには家が建ってたのよ」

 

リ「そうか、だからあそこだけ妙に何も無かったんですね」

 

鈴仙「えぇ、アリスが毎日綺麗にしているからね。

ホント、よくやるわよ、、、」

 

リ「アリスさん、、、、、」

 

 

師匠がその話をする時、とても悲しそうな顔をしていた。

話によると、魔理沙が死んだ時に一番悲しんだのは彼女だったのだとか。

もしかしたらあの時アリスが話かけていたのは、アリスが心の中で生み出した魔理沙の幻影なのではないか。

その時、妖夢師匠の言っていた言葉が頭をよぎる。

 

あなたもいつかこの気持ちが解る日が来るでしょう、神の血を引いて産まれているのですから・・・。

 

リュウトはその言葉を、近い未来に理解できるようになる。

 

それは、今から2週間後の話だった・・・。




アリスは魔理沙の墓に毎日話しかけています。
少し病んでる感を出したつもりだったんですけどあまり出ませんでしたね、しかも中途半端だし。
鈴仙は射撃の師匠です、リュウトは一人の師匠ではなく、専門分野をそれぞれ持った師匠がいるんですね。
全ては妹の手助けをするためなんですが。
未来の話だから新しいキャラとかは通常の時系列で出したいんですけど、次回登場する二人に関しては出てくれないと話が進まないので仕方なく出てもらいます。
誰でしょうね?


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過去編49話※

投稿遅れました!!
今回は少しズレますw 東方っぽくありません。
でも安心してください、東方ですから。


~神界・牢獄~

 

 

霊「・・・みんな・・・」

 

 

ボロボロの麻服を着せられ、暗い牢獄で立たされたまま四股を鎖に繋がれたその女性は、涙で冷たい石の床を濡らした・・・、、。

 

 

_______________

 

 

1weeks later(1週間後)

 

 

射命丸文などが住んでいる天狗の里が存在する妖怪の山。

その頂上付近には一つの大きな神社が建っている。

神社は、百年以上昔に外の世界の日本という国の諏訪という地域から近くの湖ごと幻想入りしてきたと言われている古い神社だ。

名前は守矢神社、二人の変わった神が祀られていることで有名だ。

軍神、八坂神奈子と、土着神、洩矢諏訪子という女性の姿の神で、神奈子は紫の八の字に見える髪型が特徴で、諏訪子はギョロリとした大きな丸い目のついた帽子をかぶっているのが特徴だ。

昔は突然、山に神社が現れたと異変にもなったが、その後は徐々に世間に浸透していき、今では人間、妖怪関係なく信仰されている。

そんな二人のどこが変わっているのか。

例えば、朝から居間でテレビを観ながらご飯を食べたりだとかそういうことである・・・。

 

 

八「へぇ、外の世界はこんなに進化してるのかい、すごいねぇ」

 

洩「そりゃあそうでしょ?昔とは違うんだよ、それのせいで私達信仰を失って、存在が消えかけてここにいるんじゃないか」

 

八「あの時は本当に焦ったよ、体が消えかけてたんだから。

はぁ・・・昔は地下の旧地獄の核融合カラスを使ってこの山を工業化しようなんて考えてたけど、今はそんな気起きないね」

 

洩「人が空よりもっと上に住んでるんだからね、しかもお月さんよりもっと遠くまで行けるようになってるんだし」

 

 

テレビで流れている朝の情報番組をみながら二人はぼやく。

今は外の世界で流行っているオシャレ特集らしく、可愛らしいモデルの女の子が説明交じりに洋服やコーディネートを紹介している。

取り外し可能なフリルやポケットのついた服などの紹介だが、モデルの女の子が着るとより一層可愛く見える。

幻想郷の女の子達もオシャレには気を使っているので、こういった特集は結構反響があるのだとか。

だが、その特集は一つのニュース速報により打ち切られた。

いきなり画面に血相を変えたアナウンサーが現れて驚いた二人だったが、その速報で流れた事件は二人を釘づけにした。

 

 

アナウンサー「速報です、たった今、国際連邦政府から、2週間前に月面から飛び立った探査船アルカディア号が、太陽系外縁部にて突如、謎の攻撃により撃沈されたとの情報が流れてきました。

その一部始終がレーザー通信によって映像で送られているので、ノーカットで放送いたします」

 

 

アナウンサーの合図とともに、テレビには探査船の船内映像と、船の外を映した映像が流れだした。

重苦しい雰囲気の中、船内管制室からは乗組員の断末魔のような声が聞こえてくる。

アラート音と赤ランプが絶え間なく鳴り響き、切羽詰まった状況であることを知らせている。

 

 

乗組員「エマージェンシーコール!こちら探査船アルカディア号!何者かの攻撃を受けている!窓の外からレーザーらしき光が見える!至急、迎撃を!う・・・うわぁぁぁぁぁぁ!!??」

 

 

撃沈する直前の映像だったのだろうか、何処かと通信していた人間が、爆発の炎に巻き込まれて火だるまになる。

その瞬間、船体を映している船外活動中のカメラが衝撃的な映像を映していた。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

八「お・・・いおい、これは何の冗談だい、、?」

 

洩「これ・・・ウソなんかじゃないよね・・・」

 

 

 

画面には、真っ暗な星の海を背景に、無数の太いレーザーに撃ち抜かれ、動力系に被弾して巨大な船体の半分を覆い尽くすほどの爆発で吹っ飛ぶアルカディア号が映され、その後砂嵐へと変わってしまった。

宇宙空間で空気がないせいで音は全く無いが、爆発の威力がどれほどのものかは観れば解る。

大きすぎる船体には隕石の衝突等を回避するために、ミサイルやレーザーを使った迎撃システムがあるはずなのにも関わらず、いとも簡単に宇宙の藻屑となってしまった。

そのSFじみた映像に、二人は息を飲み込んだ。

だが、その映像を観て解ったことがある。

船を襲った攻撃からは、二人にしか感じられない神力が感じられたのだ。

 

 

洩「あの攻撃・・・間違いない、{神}の仕業だよ」

 

八「やはりか。

神を信じず、宗教を信仰を全くしなくなった地球はいつかこうなるのではないかと思っていたが・・・、。

遂に本格的に動きだしたな。

皆に知らさなければ!」

 

洩「天狗の里に行って大天狗に伝えてくるよ!!」

 

 

諏訪子は急いで居間から飛び出して天狗の里へと向かう。

諏訪子の話を聞き入れ、里の中心に構える大きな和風建築の建物の中にいる天狗の長、射命丸文は、緊急の招集を幻想郷実力者代表にかけ、幻想郷歴史上、最大人数の十傑会議が開かれた。

 

 

___________________

 

 

~幻想十傑会議、会場 天界~

 

 

天界、それは人を超越した者達が住まうまさに天の楽園。

妖怪の山のさらに上に存在する空中島は、十傑会議の会場となった。

会場に置かれている殆どのものが白色で統一されており、石英で出来た真っ白な石段の上には、真っ白なテーブルと十個の椅子が置かれ、そこには十人の幻想郷代表実力者が座っていた。

呼ばれたのは幻想郷創設者である紫を含め、レミリア、幽々子、永琳、神子、神奈子、萃香、響華、射命丸と、紫と金のグラデーションがかかったロングヘアの僧侶。

僧侶の名は聖白蓮。

神子の友人で、妖怪と人間が共存する道を模索している女性である。

この十人が集まり話し合う議題は、勿論外の世界で起きた事件についてだ。

 

 

紫「さて・・・集まってもらったわけは解るわよね?」

 

レミ「当たり前だ。

あの事件の事だろ?

話によるとあれは神の仕業だそうじゃないか、同じ神なら何をしようとしているのか解るんじゃないのか?」

 

八「・・・、」

 

紫「教えて頂戴、知っているのでしょう?

ヤツらが何をしでかそうとしているのか・・・、、」

 

 

全員が神奈子に注目する。

外の世界での人間同士の争いならば何も触れないが、今回は違う。

幻想となった神の仕業ともなれば介入しないわけにはいかない。

一体神が何のために探査船を襲ったのか、何を起こそうとしているのか。

それを神奈子は事細かに説明しだした。

 

 

八「・・・まず人間の起源から話そう。

まだ宇宙に星が無かった時代、強大な力を持つ神達が集まって銀河を作った。

神達は信仰されることでその姿を保ち、宇宙を管理できるほどの力を手に入れることが出来る。

だがそのためには知能が高い生命が大量に必要だった。

だから神達は自分たちに似た人間という存在を創造し、生命生存可能な惑星に解き放ったのだ。

だが一つの星には白人だけ、黒人だけ、アラビア系だけ、東洋人だけなど、決まった種類の人間しか存在せず、それぞれその種を創造した神しか信仰しないのが当たり前だった。

だがそれでは効率が悪いだろう?

だから神達は考えたのだ。

{一つの星に多種類の人間を解き放った方が効率が良いのではないのだろうか?}ってね」

 

 

一同は息を飲んだ。

まさか、その星っていうのは・・・。

 

 

萃「おいおい、その星ってまさか・・・」

 

八「そう、この地球は神達が、効率よく多くの信仰を手に入れる為に実験的に作り上げた、いわばモルモットなのさ」

 

紫「・・・そんな話があったなんて・・・!」

 

 

紫でさえも知りえなかった事実。

それもそうだろう、なにせこの話は神だけの知るトップシークレットなのだから。

しかし、神に作られたのは人間だけで妖怪は作られていない。

 

 

レミ「ねぇ、人間が神から作られたなら私たちは一体何なの?

人間の恐怖心から出来た精神的なものの実体化だと聞いているけど・・・」

 

八「それは違いない、なにせこれは神達も予想済の展開だったのだから」

 

レミ「えっ・・・?」

 

 

神奈子の話では、他の星でも妖怪のような存在が発生していて、それが神を幻想の存在だと思わせないための抑止力となっているようだ。

一つ地球と違うところがあるとすれば、妖怪が未だに信じられているというところだ。

 

 

八「でも、実験は大失敗。

人間は他種族同士と殺しあうし、科学が進歩すると途端に神の存在を信じなくなり、今では誰も信仰なんてしていない。

してるのはせいぜい幻想郷の人間くらいさ。

結果、用済みと判断されたんだろうね、他の星に影響を与える前に地球人を一斉排除ってところじゃないかな?」

 

聖「そんな・・・!

共存は出来ないのですか!」

 

八「あっちからしてみれば共存を打ち切ったのはこちら側なんだよ。

こうなったらどうしようもない・・・、圧倒的な力を前に全滅を待つことしかできないよ・・・、」

 

永琳「圧倒的ね・・・月詠様レベルがゴロゴロいるんだから」

 

文「相手は宇宙を管理する存在。

戦うなんて無謀でしょうね・・・」

 

幽「神じゃちょっと私の能力は効きそうに無いわね・・・次元が違いすぎるわ・・・」

 

 

皆が絶望した。

滅びるのを待つしかない。

しかし、諦めていない者が一人だけ居た。

 

 

響「・・・、諦めるの?」

 

レミ「響華・・・、」

 

響「だって、まだ何もしてないんだよ?

それに、神様だってそんな事するかどうかまだわかんないじゃん!

みんなおかしいよ!!」

 

 

その言葉に全員が心打たれた。

そうだ、まだ何もしていないのに諦めてどうするんだ!

 

 

萃「そうだ!響華のいう通り!

まだ諦めるには早いぞ!」

 

幽「そうよね!やって見なくちゃわかんないわ!」

 

文「私達だけじゃないですもんね、まだまだ仲間はいるんです!

皆でかかればもしかしたら勝てるかもしれないし!」

 

 

皆の顔が希望に満ち溢れる。

響華の言葉が皆の心を動かしたのだ。

 

そして会議が終わり、この事件の二日後、{神}と名乗る集団によって、数億の人間が住むスペースコロニー、月面都市も圧倒的な攻撃に遭い壊滅。

地球では主要都市が存在する国家に巨大な光の柱が現れ、ニューヨーク、パリ、上海、香港、ベルリン、モスクワ、ニューデリー、東京から人の姿が忽然と消え失せる。

人類は、たったの一週間程度で世界人口の90%を失う多大な被害を被り、滅亡の一歩手前まで来てしまったのだ。

幻想郷の住人はこの脅威に対し、立ち向かう決断を下した。

しかしこの決断が、あらぬ悲劇を招くこととなってしまう・・・、。




なんかもう訳わかりませんが、要は地球に神様が攻めてきたんです。
神奈子や諏訪子が幻想卿に引っ越ししてきた理由と似てます。
話がいきなり進みすぎて説明不足な部分が多いですが、それを全部小説に入れちゃうと説明っぽくなっちゃうんですよね~。
なのでそのうち設定集みたいなのを投稿したいと思います。
最初に出てきた女性は勿論あの人ですよ?
次回もお楽しみに!


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過去編50話

前回は遅かったので今回は早めに投稿します!
今回は話が飛びすぎてよく解んないと思いますが、すいません。
こちらの都合でこれくらいが限界でした。
手抜きじゃないです!!
ではどうぞ


ドカァァァァァン!!!

 

 

響「きゃあ!?」

 

リ「響華ぁ!!」

 

レミ「リュウト!危ない!!」

 

 

____________________

 

 

あれから一体どれほどの時間が経っただろうか。

たった一人の敵に、幻想郷の強者たちは次々と敗れていき、その度に命を散らしていく。

誰が生き残っているのかもわからない。

自分の体ももはや限界。

もはや勝ち目など一ミリたりとも無い。

希望は完全に断たれた・・・。

 

 

リ「ウッ・・・くそっ・・・。

まるで歯が立たない・・・」

 

 

荒れ果てたかつて大きな街があった地域。

既に見る影もないそこには、砂にまみれた大地に倒壊したビルが墓標のように何本も建っている。

それは、死んでしまった仲間たちの手向けのようにも感じられる。

絶対的な力を持つ神の前に散っていった仲間たち、それは幻想郷で今まで共に過ごしてきた家族のような存在だった者達ばかりだった。

 

 

リ「こんな・・・こんなぁ・・・」

 

 

地に膝をつき、手をつき、視界には砂しか映らない。

心の底から絶望した。

彼の目の前には、力尽きたレミリアがただならぬ傷をその身に刻んでうつ伏せに倒れている。

身を挺してリュウトを庇い、余りにも呆気なく命を散らしてしまった。

蝙蝠のような羽は、穴が至る部分に開き、風に揺られて小さくパサパサと音を立てる。

この運命も、レミリアには全て見えていたのだろうか?

だとしたら、運命というのはとても残酷だ。

 

 

リ「響華だけでも・・・どうにかして守らなければ・・・!」

 

?「守られたお前が・・・言える言葉ではないな、少年」

 

リ「!?」

 

 

空に悠然と浮かぶ男。

神の気を纏った金色のオーラは見るものを圧倒する。

この男が皆を殺した張本人・・・だが敵を討つ力など既に残っていない。

もしフルパワーの力が残っていても、この男の絶対的な力の前には抗えない。

その結果がこれなのだから。

しかし、だからこそ最期は自分の大切なものを守ってみせる!

 

 

リ「だとしても・・・響華は俺が命に替えて守り切ってみせる!

はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

?「ほぉう?流石トールの子孫というだけあってしぶといじゃないか」

 

 

能力が使えない程に力を失ったが、残った霊力と神力を無理やり混ぜて力を溜める。

傷ついてもなお反抗する意思を持つリュウトに、神は少し眉を動かすが、表情は全く崩れない。

 

 

リ「うぉあらぁぁぁぁぁ!」

 

 

バギィっ!!!

 

 

?「・・・・・」

 

 

最大速度で迫って来たリュウトの拳が男の右頬に直撃する。

確かな手ごたえがそこにはあった。

なのに・・・。

 

 

リ「く・・・くっそぉっぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

リュウトの渾身の一撃は男には全く通じなかった。

それでも諦めず、拳の連撃、さらに回し蹴りを繰り出し、エネルギーを込めた拳を顔面に当てようとしたときだった。

 

 

ガシィッ!!

 

 

リ「な!何!?」

 

 

振り上げた高速の拳は男の顔に当たる前にいとも容易く掴まれてしまう。

しかも、リュウトがいくら力を入れても全く動かないほどの力がその男の腕には込められていた。

 

 

?「全く、俺もこんなことしてる暇ないんだがな。

他の星へ赴いて信仰者達を導いたりと忙しいんだ。

だから・・・そろそろ終わりにしていいか。

神の子よ?」

 

リ「俺が倒れたら地球はお終いなんだ!絶対にお前を倒す!」

 

?「はぁ・・・、トールと全く変わらんな。

此方の意見を聞く耳を持とうとしない。

そうだ、貴様があの世に行く前に一つ良いことを教えてやろう」

 

リ「何・・・?」

 

 

一体何の事だ・・・?

何も思い当たることが無い。

だが、その男の言葉はリュウトの怒りを最大源に引き立たせた。

 

 

?「お前の曽祖父と曾祖母、確か女の方は博麗といったか?

トールと交配してから神になったとか?」

 

リ「俺の・・・ひいばあちゃん?

何故今になってひいばあちゃんの話を出してくる!!」

 

?「お前の曽祖父と曾祖母はな・・・現在神界の牢獄に幽閉されているんだ。

無論、俺の指示でな」

 

リ「んなっ!?」

 

?「無様だったぞお前のひいじいさんは!

あの女を人質にすると何も抵抗できずバカな女と仲良く幽閉されるんだからなぁ!!」

 

リ「グッ・・・貴っ様ぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

神界に飛び立った二人がそんな事になっていたなんて。

本気の怒りを露わにし、男に向けて弾幕を放とうとした瞬間。

 

 

?「フンっ!」

 

リ「うわ!?」

 

 

掴まれていた手を思い切り振り回され、パワー負けしているリュウトはハンマー投げのように飛ばされてしまう。

空中へ飛ばされたリュウトは体勢を整え、その場から動かない男へ向けて極太のレーザービームを放った。

 

 

リ「くそったれ!!

食らいやがれ!ライトニングスパァァァァァァク!!!」

 

 

ヴォォォォォォォォォオ!!!

 

 

勢いよく、真っすぐと飛んでいく虹色のレーザービームは、男の体を容易く飲み込み、大地に粉塵を撒き散らした。

レーザーが通った跡にはくっきりと、大地を削ぎ取った跡が残っていた。

の筈なのだが・・・。

 

 

リ「な・・・あ・・・」

 

?「・・・・・」

 

 

何事も無かったかのように男は一歩もその場から動かず、服も破れていない。

ダメージは皆無だった。

 

 

?「そろそろ終わりにするか?」

 

 

そういうと男は首の骨を鳴らした後、リュウトの眼前まで急接近し、鳩尾にめがけて正拳突きを繰り出した。

 

 

バゴォン!!

 

 

リ「グッッボォア!?」

 

 

腹を抑えてもがき苦しむが、余りの威力に今にも気を失いそうだ。

肺の空気が全て抜かれて思い切りせき込み、そのたびに吐血をする。

ポタポタと血がしたたり落ちるが、地上から遥か上空からでは血が落ちる音も聞こえない。

 

 

?「今度こそ終わりだな」

 

 

男の利き手に出鱈目な威力を持ったエネルギーが集中していく。

勝てない・・・。

そう悟った時、リュウトの心は完全にへし折られてしまった。

抵抗するだけ無駄だと、覚悟を決めた時。

 

 

紫「飛行虫ネスト!!!」

 

 

ドドドドドォン!!!

 

 

真横から弾幕による砲撃が多数飛んでくる。

弾幕が飛来してきた方角を見ると、ボロボロとなった紫がそこにはいた。

紫は生きていたのだ。

複数着弾した弾からは爆発の煙が巻き上げられ、それにより男の注意がそれてリュウトはその場から退避した。

だが、そんな砲撃をしたところで奴へのダメージは皆無だ。

無論、煙の中からは無傷の男が姿現し、かなりイラついたのか、紫を鋭い眼光で睨みつけている。

 

 

?「羽虫め・・・まだ生きていたのか。

たかが妖怪の分際で小生意気な」

 

紫「お生憎様ね、私もそう思うわ」

 

?「口が達者な羽虫だな。

大人しくつぶされていればいいものを・・・」

 

 

邪魔をされて怒りだした男はさらに上へと上昇し、右手を天に向けた。

 

 

?「この星ごと消してやる・・・。

本来は地球は残しておく手筈だったが、もうこんな星に用はない。」

 

 

先程溜めていたエネルギーの何十倍というような威力の弾を上空に形成しだす。

 

 

紫「これは・・・もうどうにも出来ないわね・・・。

こうなったら、せめて最後の希望だけでも未来に託すとしましょうか」

 

 

ほぼ独り言のような言葉だった。

しかし、紫はこの時点で覚悟を決めていた。

自分が死ぬ事になろうとも、未来の希望の芽をつぶさせはしない・・・と。

 

 

紫「リュウト、ごめんね」

 

 

ヴォン・・・

 

 

バキッ!

 

 

リ「グォオ!?」

 

 

そういうと紫はスキマの瞬間移動でリュウトの目の前に現れ、回し蹴りで思いっ切り蹴り飛ばす。

今まで受けた傷もあってか、リュウトは簡単に吹き飛ばされてしまう。

いきなり何をするのだ!

だが、紫は寝返った訳ではない。

全ては{未来に託す為}だ。

 

 

紫「時空間穴・・・開放!」

 

 

リュウトが飛ばされる先に大きなスキマが開きだす。

いつものような不気味な多数の目が浮いたものではなく、先の見えない水色の空間だ。

力を全て使い果たしてしまったリュウトはもはや浮くことすら難しく、ただ下へと落ちていく。

 

 

リ「ゆ!ユカ姉!」

 

紫「リュウト!貴方達は世界を救う最後の希望よ!

過去の者達と一緒にこの最悪の未来を変えるの!」

 

リ「ならユカ姉も一緒に行こう!」

 

紫「私は幻想郷の創造者・・・私の子供の最期を見届けなきゃいけないわ。

それに・・・私まで行っちゃったらみんなが寂しがるでしょ?」

 

リ「そんな・・・!

ユカ姉ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

この言葉が、リュウトの聞いた紫の最期の言葉だった。

スキマに落ちた彼が最期に見たのは、紫が大きな光に呑まれて消えていく姿だけだった。

それは手をいくら前に延ばしてもどうにもできない。

いくら叫んでも届かない。

何も出来ない・・・。

 

 

リ「・・・・・」

 

 

青年はただ、流れに身を任せて、何処に出るのかも分からない空間を漂い続ける。

 

そしてその空間を出たとき、彼は世界を救うために再び地上に舞い降りた・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 




最初の方が意味不明ですが、ある程度の差戦闘が終わった後から話が始まっているせいです。
このエピソードの後、第一話に戻って物語が始まるというわけです。
ちなみに紫は時空の境界をこじ開けてリュウトを逃がしましたが、飛ばす時代は適当で、正確な時代に人間を飛ばすことは出来ません。
響華も同様な逃がし方をしましたが、二人が飛ばされた時代が重なったのは偶然です。
次回は過去編を終了して本編に戻ろうと思います。
お楽しみに!


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51話

なんだか変な話になっちゃいまして、、、本当に申し訳ない。


リ「今まで隠していて本当にすまなかった。

これが俺達の世界で起こった話の全てだ」

 

 

応接間には嫌な空気が漂っていた。

それもそうだろう。

自分たちの未来がこんな結末を迎えると言い出すのだから。

だが、だとしたらリュウトはずっと昔から霊夢達の存在を知っていた事になる。

恐らく知っていると全員に悟られないように隠していたのだろう。

だから今、心の中に刺さっていた杭が抜けて気が楽になったのだろうか。

段々と、リュウトの目がしらには涙が溜まっていった。

 

 

リ「だから・・・もう一度みんなに逢えた時は本当にうれしかった。

もう・・・逢えないって・・・思ってたから・・・」

 

 

涙を流しながら話す彼を見かねて、霊夢は彼の隣に座りそっと抱きしめる。

そして、頭を撫でながら彼の興奮を和らげた。

 

 

霊「さぞ辛かったでしょうに・・・ありがとう。

私達に隠さなきゃいけなかったからずっと我慢してたのね。

今は・・・思いっきり泣いていいわ」

 

 

微笑む霊夢の顔からは、聖母のような優しい雰囲気が感じられ、霊夢の言葉がリュウトの心のダムを一気に決壊させた。

 

 

リ「う・・・ウグッ!うわァァァァァァァ!!!」

 

霊「よしよし、よっぽど堪えてたみたいね」

 

 

霊夢に抱き着きながら泣きじゃくるリュウトの背中をさすり、優しくささやきかける。

まるで子供を慰める母親のように。

 

 

響「リュウ兄・・・昔から私の見本にならなきゃっていつも大人ぶってたっけ。

思えば私がいつもリュウ兄を追い込んでたのかな」

 

 

妹である響華は昔から兄に甘えていたが、そういう行いが純真だった兄の心を無理矢理大人へと変えてしまった。

そう考えているのだろう。

だが、それは違うとレミリアは教えた。

 

 

レミ「そんなことはないわ。

年上ってのはね、妹や弟の為なら何でもしてあげられるものなの。

そうやって気を使われる方がよっぽど堪えるわ。

私もフランがそうなったら嫌だもの♪」

 

響「レミ姉・・・」

 

レミ「だからお兄ちゃんには今まで通りあまえてやりなさいな」

 

響「うん!

でも、今くらいはリュウ兄の好きにさせてあげることにする。

おばあちゃんに優しくされてずるい感じもするけど」

 

 

響華は生まれて初めてみる兄の甘える姿に少し安心し、クスリと笑う。

傍から見れば年下の少女に甘えているようだが、相手は自分たちの祖先で、自分たちよりも100歳以上年上なのだから、変な気分にもなるだろう。

しかし、同時に微笑ましくもある。

 

 

咲「リュウトさん・・・私にも甘えてほしいなぁ・・・」

 

ア「言えば甘えてくれるんじゃない?

メイド長さん?」

 

咲「そ、そんなこと言えるわけ!

でも・・・いいなぁ・・・」

 

 

二人とも血がつながったいわば家族なので、抱き合っていても何ら問題はないのだが、自分が好きな人間が親しい友と抱き合っているのを見るのには抵抗がある。

だからといってその事を本人に言うのも嫌だしと、咲夜の心のなかにはもやもやとしたものが渦巻いていた。

メイド長はしょぼんとした表情で指をくわえながらそれを見ていた。

 

_________________

 

霊「どう?落ち着いた?」

 

リ「はい。

見苦しい所をお見せしました」

 

霊「そんなに畏まらなくたって良いのに」

 

 

泣き止んで落ち着いたのか、目をゴシゴシと腕で拭い、一息ついて何時もの冷静なリュウトに戻った。

しかし、何故口調が敬語なのだろうか。

何時もの彼はそんなもの使わないのに。

 

 

リ「俺は昔から皆さんの事を知っています。

生まれた時からずっと遊んでもらったり色々な事を教えてもらったりしたので。

本当は敬語を使わなきゃいけないのに・・・数々の無礼を許してください」

 

 

畏まった表情で彼が正座のまま皆に対面して深く御辞儀をすると、全員が大きな笑い声を出した。

 

 

魔「何いってんだ。

私たちは仲間なんだぜ?そんなこと気にするかよ」

 

妖「そうですよ、今更そんなこと気にする人なんて居ません。

これからも何時も通りに振る舞って貰えれば良いんですよ」

 

幽「妖夢の言うとおり。

私たちには気軽に接してくれれば良いのよ。

貴方の言う、昔の頃、みたいにね?」

 

リ「!!有難う・・・みんな・・・!」

 

 

その言葉にまた目頭が熱くなってしまう。

 

 

霊「あ!ちょっとアンタたち!折角泣き止んだのに何泣かせてんのよ!

 

魔「え!?私達のせいかこれ!?」

 

霊「当たり前よ!私の孫をよくも泣かしてくれたわね!

許さないわよアンタらぁ!」

 

魔「ぎゃあ!弾幕は禁止だぜ!!」

 

零「それにしてもお婆ちゃん・・・プフッ!」

 

霊「零夜・・・人の事笑ってるけど私がおばあちゃんならアンタはおじいちゃんだからね。

私と零夜の孫なんだから」

 

零「うぐっ!?おじいちゃんか・・・流石に傷つくな・・・」

 

霊「あんたにも解るわよ、孫の可愛さが」

 

ア「あなたたちよくそんな会話出来るわね。

結婚相手が目の前に居るんだから普通は気まずくならない?」

 

零・霊「・・・あっ///」

 

 

さっきまでの重苦しい空気とは裏腹に、ドタバタと騒いだりと、永遠亭は皆の笑い声で溢れ返る。

これから起こる最悪の危機を忘れた訳ではないが、この時くらいは忘れさせても良いだろう。

 

 

___________________

 

 

~博麗神社縁側~

 

 

紫「未来の私が残した最後の希望・・・か」

 

 

縁側から月を見上げながら徳利を天に翳す。

それは、今は亡き未来の自分への手向けであり、証明でもあった・・・。




紫が何でリュウトが博麗大結界を越えたのが感知出来なかったのかというと、自分が開けていたからです。
未来の紫は半端なく強いんでしょうね、とうとうタイムマシンになっちゃうんですから。
次回は重苦しい話から日常回にしたいと思います。
まだまだ書きたい話がありますからね。
では次回もお楽しみに!


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設定集

解りやすく話の解説を纏めたものです。
飛ばしても構いません。


本編での内容では不十分な設定が多々あるので、その説明や解説をしようと思う。

 

 

東方プロジェクトのゲームの時系列を辿っていくと、最終的には地球が滅亡する。

リュウトの生まれたあの世界は、異変を全て霊夢が解決した後の世界という設定。

しかしリュウトがタイムスリップしたせいで、昔の幻想郷の歴史が大幅に改変され、結果として起きない筈の異変が起きたり、外界の科学の進化スピードを早めたりしてしまった。

ただ一つ、どの次元でも共通しているのが、零夜が幻想郷にやってくるということ。

どの世界でも霊夢の結婚相手は零夜だけ。

 

リュウトは霊夢、零夜の曾孫の位置にいる人物で、神の血を受け継いでいる。

性格や口調は零夜似、目や髪の色は霊夢に似ている。

霊夢の察知能力と零夜の能力を受け継いだサラブレットなのだ。

 

そんな零夜の力を先祖返りのような状態で受け継いだのがリュウトで、非常に濃く神の遺伝子を受け継いでおり、かなりの潜在パワーを持っている。

 

姿も零夜に似ている部分があり、能力を開放して神格化するとさらにそっくりになる。

 

能力も零夜寄りの強力な能力だがデメリットが多く、零夜のように神力を光に無尽蔵に変換するのではなく、外部から取り入れて体内に貯めるタイプで、能力を発動してから光を放出し続ける為、溜めた光のエネルギーが切れたら能力が使えなくなってしまう。

 

要は充電式の能力。

 

しかも溜めるための時間はかなり長く、戦闘で一度使い果たしてしまったらもう一度能力を使うことは難しい。

 

対チルノ&レティ戦で、{この姿はあまり長く持たない}と言っていたのはそのため。

 

しかし、そのお蔭でメリットも多く、能力で吸収出来る範囲はかなり広く、概念的な光であっても吸収することが出来る。

 

例えば希望の光や、生命の光など様々。

 

しかも光のエネルギーだけを消費するので、霊力も神力も消費しない。

 

だから光が切れても戦う手段はある。

 

ちなみに力の源である光を操る能力を持っているせいか、動物に好かれやすい。

 

光を操ることが出来るリュウトだが、どの程度の事が可能かというと、光に近い速度を出し、1秒未満でで月に到達できる程度。

だがそんなことをしたら地上がとんでもない事になるから絶対にやらない。

しかもそれをやるには相当量の光を放出することになり、使った後は能力使用不可能。

 

リュウトが首からかけているペンダントは、零夜が所持しているペンダントと同じもの。

光の吸収を助けたりする効果があるが、まだまだ謎が多いアイテム。

 

 

 

神は人間を創造した者達で、宇宙が生まれた時から存在し、宇宙を管理している。

ちなみに生命体という概念は無い。

 

神という存在は、人から信仰心を得ることでその存在を維持できる。

だからその信仰が無くなれば、その星にいる人間は必要なくなる。

 

宇宙には地球のような星がいくつも存在し、その星にも人間が住んでいるのだが、色々な人種が混ざって存在するような星は地球だけ。

黒人だけが住む星、白人だけが住む星、黄色人種だけが住む星など様々だが、全ての星の人間たちは必ず{神}の存在を信じ、それを崇めながら生活をしている。

神もたまに星に赴いて姿を現したりする。

地球にもそういった時期が存在し、それが神話という形で世界各地に残されている。

 

人種によって崇める神が決まっているのだが、それは地球でも同じで、そのせいで宗教紛争が起こったりしているが、何故そんな事になるのかというと、その人種を創造した神を崇めているから。

簡単に言うと、崇めている神が自分たちの産みの親なわけ。

 

地球は実験的に作られた星で、神たちが協力して色々な人種を混合して住まわせたらどうなるかを調べる為に作られた。

その結果、実験は大失敗になり、それどころか科学が進歩するにつれて人間が神の存在を信じなくなり、完全に要らない星となってしまった。

探査船を破壊したのは下級の神だったが、地球で人類を滅亡させたのは、神話の中でもトップクラスの実力を持った神達。

その圧倒的な力の前に、幻想郷の実力者はほぼ全員殺されてしまう。

 

人類を滅亡させようとした神達だが、全員がそれに賛成した訳ではなく、少数だが反対派もいた。

その中に零夜や神奈子、諏訪子がいる。

 

霊夢は零夜と結婚して子供を産むが、その時に神の子種をその身に受けたせいで、神力が体に浸透し、最終的に神になる。

前代未聞の出来事で、他にそんな事例もないので、実質霊夢が初めて人間から純粋な神になった存在。

姿も若いまま。

現人神とは全く違うので注意。

 

本来の世界では、咲夜や魔理沙は独り身のまま生涯を全うした為、子孫がいない。

そのため紅魔館のメイドの中に咲夜の血を受け継いだ子供はいない。

2165年現在のメイド長は初老の女性、ちなみに人間。

あくまで設定だけのキャラで、本編には一切登場しない。

 

何故リュウトがずっと咲夜達に正体を隠していたのかというと、まだ生まれていない人間の存在を知られたら存在が消える可能性があるから。

響華が永遠亭に落ちてからリュウトに逢いに行かなかったのは、永琳達にとって不都合だったから。

ちなみにリュウト達のいた世界は既に手遅れで、地球は滅亡して霊夢達も助からないバッドエンドな終わり方をしている。

リュウトはそんな未来をどうにかするためにやって来たいわば救世主。

 




明日には続きを投稿できるかな?といった所です。
出来次第投稿させてもらいます。


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外界編52話※

お待たせしました日常回です!
今回は気合い入れて書きました。
ではどうぞ


リュウトは自室の木製椅子に腰掛けながら、一人考えごとをしていた。

異変が終わった後の事だ。

未来の話を過去でしてしまったら、何かしら未来に影響が出る筈。

まだ生まれていない人間の話などしようものならその存在が消えてしまっても可笑しくない。

その可能性を示唆したうえで皆に何も話さなかったというのに。

 

 

リ「何で俺の存在は消えないんだ?

本当なら消えてしまっても可笑しくないというのに・・・」

 

 

謎だった。

かつて、この問題は様々な科学者が説を提唱してきたが、天才科学者である岡崎夢美も答えに到達することは無かった。

パラレルワールドという

言葉を知っているだろうか?通称、平行世界などと呼ばれる説なのだが、全ての出来事には木の枝のように分岐点があり、選ぶ道が違うと後の未来も大きく変わってしまうというものだ。

この説を今のリュウトの状況にあてはめると、既にリュウトが生まれる世界への道が何等かの影響で選ばれていた事になる。

例えば、もう霊夢は妊娠しているとか・・・。

 

 

リ「いやいやいやいや!!そんな訳ないよな!

あの二人はまだ結婚もしてないんだし・・・」

 

 

でももしかしたら・・・可能性としてはある。

これは確認の余地がありそうだ。

 

 

リ「これは・・・行くしかないな」

 

 

というわけで彼は、部屋の窓から博麗神社に向けて飛び立った。

 

 

_______________

 

 

~博麗神社~

 

 

霊「あら?リュウトじゃない?いらっしゃい。

上がってきなさいな」

 

リ「ありがとう」

 

 

神社につくと、いつも通り霊夢が境内の落ち葉を掃いていた。

霊夢はリュウトをみると表情を明るくし、快く社に上げてくれた。

リュウトが住んでいたのは未来の神社だったが、今の神社と構造が全く変わっていない為、住み慣れた家のように居間へと入っていく。

・・・零夜の姿がどこにも見当たらない。

 

 

霊「あぁ零夜ね、いま呼ぶわ。

零夜~!リュウトが来たわよ~!」

 

 

大声で縁側から外に向けて叫ぶ。

するとしばらくしてから小さな返事が返って来た。

 

 

零「今行くから少し待ってくれ」

 

 

ガタゴトと何やら蔵の方から騒がしい音がする。

霊夢に言われて片づけをさせられていたのだろう。

1分ほどしたら埃まるけの服を着た零夜が咳込みながら縁側に身を乗り出してきた。

 

 

零「おぉリュウトか。

よく来たな」

 

リ「おじいちゃん、埃まるけだぞ?どうしたんだよ?」

 

零「いや、蔵の中が思ったより汚くてな。

横着をしてマスクをしなかったのがいけなかったようだ。

それと、おじいちゃんはやめろ」

 

 

零夜がそんな会話をしていると、霊夢が服についた汚れと行儀の悪さに怒り出した。

 

 

霊「ちょっと!せっかく朝掃除したんだからそんな汚い格好で縁側にのりださないでよ!

外で払ってらっしゃい!

あと、行儀悪いからせめて座るか上がってきなさい!!」

 

零「す!・・・すまん・・・そうする」

 

 

恐らく日常的にこうして叱られているのだろう。

凄く悲しそうな目をしている。

零夜は言われるがままに履物を脱ぎ、居間へとあがる。

しかし二人とも仲が良いようで、怒られても隣同士に座っている。

 

 

霊「それで?今日は何しに来たの?」

 

リ「あぁ、ええっと・・・聞きにくい質問なんだが・・・」

 

霊「別にいいわよ。

なんでも聞いて?」

 

 

笑顔でそういわれると余計に聞きにくい。

だが、これは至って真剣な話だ。

リュウトは一旦深呼吸をしてからあの質問をした。

 

 

リ「えっと・・・その・・・おばあちゃんたちはもうデキてるのか??」

 

霊・零「・・・はぁ!??」

 

リ「い、いや!これには真剣な訳があるんだ!!」

 

 

 

青年説明中・・・

 

 

 

零「成程、そういうことだったのか」

 

霊「わたしはちょっと分からないわ・・・」

 

 

質問の意図を説明したところ、一応納得してもらえたようで、真剣に考えてくれている。

霊夢はこういった話は苦手なのか、よく分からないという顔をしている。

だが、零夜はちゃんと理解したようで、原因を先程から考えてくれている。

顎に手をつき考え込み、零夜はある一つの結論を編み出した。

 

 

零「これは仮説に過ぎないが・・・第三者の介入があるのかもしれないな」

 

 

第三者からの介入。

パラレルワールドの分岐点を、何者かが何等かの手を使って一定の未来に行き着くように仕組んだのではないか。

そう考えたのだ。

紫でも不可能そうな事象だが、そんな事可能なのだろうか?

 

 

リ「レミ姉の能力ならできなくもなさそうだが・・・俺の正体を知っていないと無理だしなぁ」

 

霊「ま、一番怪しいのはレミリアだけどね。

運命が見えてるんなら未来予知もできるってことでしょ?

あいつならリュウトが正体を明かす前でも既に知ってておかしくないわ」

 

リ「確かにそうなんだが、確かレミ姉って昔は能力が不安定に発動したって言っていたような・・・。

だとしたら可能性が薄れるな」

 

 

答えが一向に出てこない。

しかし、霊夢はそれでも良いのではないかと言い出した。

 

 

霊「別に答えなんて出なくても良いんじゃないかしら?

だって、現にリュウトはここにいるんだから、答えなんか出したところで何も変わらないと思うわよ?

それに私の勘が言ってるわ、少なくとも悪い奴が仕組んだことではないってね」

 

リ「!!!」

 

 

リュウトは目が覚めた。

こんなことをいちいち気にしてもしょうがないことに気が付いたのだ。

誰かが意図的に仕組んだことだとしても、生きているのだからそれでいいではないか。

それに、今までの話も仮説に過ぎないのだから。

 

 

リ「それもそうだな。

なんか吹っ切れた感じがするよ。

あ、それともう一ついいかな?」

 

霊「え?まだ何かあるの??」

 

リ「これは別に大した話じゃないんだが・・・異変で皆に迷惑をかけたから自分なりに何か償いをしようと思って・・・。」

 

 

永夜異変時、リュウトは狂気に駆られてなりふり構わず敵味方関係なしに大暴れしてしまった。

その時のお詫びに何かをしようというのだ。

 

 

リ「そこで色々考えたんだが・・・外の世界に旅行へ連れて行こうと・・・」

 

霊「外の世界に旅行!?」

 

 

思いもしなかった言葉に思わず大きな声を出してしまう。

それもそうだろう。

いくらお詫びとはいえ唐突に外の世界に連れていくなどと言われればこうもなる。

 

 

リ「うん・・・そこで相談なんだが・・・何処へ行こうか決めていないんだ。

出来れば何がしたいかとか、何処へ行きたいとかを具体的に教えてくれないか?」

 

零「だとさ。

どうするんだ?折角の孫からのプレゼントだぞ?」

 

霊「い、いきなりそんな事言われたって・・・」

 

 

今そんな事を聞かれてもパッと出てこない。

だが、折角の機会なのだから何か案を出さないと・・・そうだ!

霊夢は一つだけ思い当たるものを見つけた。

 

 

霊「海・・・海に行きたい!

幻想郷には湖しかないし・・・一回だけでも見てみたいわ!!」

 

リ「成程、海か・・・。

良いかもしれないな。

そうなると綺麗なところにしないと・・・」

 

 

リュウトは腕を組みながら行先を考える。

 

 

リ「う~む・・・よし、決まった。

何処へ行くかは秘密だが、4日後に出発する予定だ」

 

霊「ホント!?ありがとう♪」

 

零「旅行か・・・なら、それなりの準備をしておかないとな」

 

霊「フフッ、楽しみだわ♪」

 

 

歳相応に女の子らしく喜ぶ霊夢。

未来の世界で報われなかったのもあり、彼女のその無邪気な姿が見れただけで、リュウトは嬉しく感じられた。

願わくば、いつまでもこの二人が幸せでありますように・・・。

 

 

 

【挿絵表示】

 




霊夢と零夜は未来の世界では幽閉されてどうなったか解らないので、この時代では幸せになってほしいものです。
ちなみに零夜は尻に敷かれるタイプです。
強いのにね。


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外界編53話

この小説をかきはじめた頃からずっとやりたいと思っていた話です。
やっと書けるぞ!!
ではどうぞ。


~紅魔館~

 

 

リ「咲夜、ちょっといいか?」

 

咲「はい?」

 

 

永夜異変から数日が経過し、幻想郷の住人たちは元の生活を取り戻していた。

咲夜がいつも通り屋敷の無駄に広い部屋の数々を清掃をしていると、後ろから自分を呼ぶ声が聞こえ、振り返るとそこにはリュウトが立っていた。

何か用事があるのだろうか?

いつもなら昼食の食材を買ってくるからメモをくれだとか、そういう事が多い。

今回もそれを聞きに来たのかと考えたが、リュウトが聞きたかったのはそんなことではなかった。

 

 

リ「咲夜・・・外の世界に旅行に行かないか??」

 

咲「・・・えぇ!?」

 

 

いきなり旅行にさそわちゃった。

 

 

________________

 

 

~PM7:30~

 

 

夜の7時半、紅魔館ではいつもこの時間になると夕食の為、食堂に全員集まる。

今日の夕食はハンバーグと豪勢なのだが。

ただ・・・何故か一人だけすごく機嫌が悪い人間がいる。

 

 

リ「なぁ・・・なんでそんなに怒っているんだ?」

 

咲「怒ってません!!」

 

リ「・・・どうしたってんだよ・・・」

 

 

 

何故咲夜の機嫌が悪くなったのか、それは数時間前に遡る。

 

リュウトが異変で迷惑をかけたことを気にかけ、咲夜を旅行に連れて行こうと誘い、咲夜はそれに同意したのだが、リュウトの説明不足だったのだろう。

他の者も誘っていると言わなかったため、咲夜が二人きりで行くと勘違いしてしまい、現在絶賛お怒りタイムというわけである。

 

 

レミ「あ~あ、リュウトは一体どっちに似たのかしらね。

咲夜をあんなに怒らせるなんて」

 

パ「まぁ、十中八九零夜さんでしょうね」

 

フ「咲夜怒るとすっごく恐いのに・・・リュウトやっちゃったね」

 

 

三人が呆れた表情でそのやり取りを眺めている。

紅魔館の中で一番怒らせてはいけないのは咲夜かもしれない。

そんな咲夜に困り果てたリュウトを見かねて美鈴が咲夜を宥めるため、咲夜を引っ張り部屋の隅に連れていく。

 

 

咲「何よ美鈴・・・私は今すっごく機嫌が悪いんだけど」

 

美「咲夜さん、旅行はみんなで行くかもしれませんけど、旅行先で二人きりになるチャンスがあるかもしれませよ?

皆さん咲夜さんの気持ちに気付いてますし、そんなに怒らなくてもやり様はいくらでもありますよ」

 

咲「!!」

 

 

耳元でそう教えると、咲夜の顔は一気に明るくなった。

 

 

咲「!そうよね!ありがとう!」

 

 

さっきまでの怒りはどこへやら。

咲夜は上機嫌でリュウトの隣の席に座り、ニコニコと彼に微笑んだ。

 

 

咲「リュウトさん!旅行、楽しみにしてますね♪」

 

リ「ん?あ、あぁ。

期待していてくれ」

 

咲「はい♪」

 

 

何とか美鈴のおかげで助かったリュウトだが、いきなり咲夜の機嫌がよくなったことには少し不気味さを感じた。

 

 

_________________

 

 

リ「・・・ユカ姉、見てるんだろ?出てきてくれないか?」

 

 

夕食が終わってすべての仕事が終わった夜、リュウトは部屋に戻ると誰かからの目線を感じた。

名前を指定して呼ぶと、空間を引き裂いて視線の主が現れた。

 

 

紫「流石ね、そういうところは霊夢譲りなのかしら?」

 

リ「さぁ・・・おれはおばあちゃんの事をそんなによく知らないから」

 

紫「それもそうか・・・」

 

リ「それより例の件、どうだった?」

 

紫「えぇ、一応聞いてきたわよ」

 

 

紫が聞いてきたというのは、外の世界に旅行へ行くメンバーだ。

仕事で忙しいリュウトに代わって白玉楼や永遠亭を廻り、わざわざ聞いてきてくれるのだから彼女も中々のお人よしだ。

ちなみにこの旅行は外界での身分証明書や、外界へ送るスキマなどに紫の力を使っており、彼女への負担が大きい。

その為の金は一応払っているからいいのだが、これも割に合わないほど安い。

リュウトは今まで紅魔館で働いてきた分の金を貯金してはいるが、決して大きい額ではない。

そこを気を使って紫は安くしてあげているのだろう。

 

 

紫「幽々子と永琳、輝夜、てゐは行かないそうよ。

幽々子は妖夢師匠と楽しんで来い、永琳達も同じようなことを言っていたわ。

まぁ、お土産だけくれればそれでいいみたい」

 

リ「そうか・・・ごめん。

ユカ姉ばかりに負担を押し付けて・・・」

 

 

リュウトは申し訳なさそうに謝るが、紫はクスクスと笑いながら扇子で口元を隠してそれを否定した。

 

 

紫「そんなこと気にしなくてもいいわ。

これでも結構楽しんでるし、頼ってくれるのが嬉しいのよ」

 

 

扇子で表情を隠しているが、紫の声は少し、喜んでいるように聞こえた。

 

 

それから二日経ち、二泊三日の外界旅行の日は訪れた。




咲夜って解りやすい性格してますね、可愛いです。
リュウトは咲夜の気持ちに気付いてないダメ男ですね、旅行に行ったら頑張ってほしいものです。
そういえばこの小説ってR15指定入ってたような、、、ニヤリ(確信犯)
次回もお楽しみに!


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外界編54話

出発の日です。
あと今回は千字くらいと短いです。
何人かのキャラの台詞も無かったり。
適当ですね、ではどうぞ


~紅魔館門前~

 

 

リ「皆、忘れ物は無いか?」

 

 

今日、とうとう外の世界へ旅行へ行く日となり、出発の待ち合わせ場所としていた紅魔館の門に、メンバーが続々と集まって来た。

 

人数は10人。

霊夢、零夜、レミリア、フラン、咲夜、アリス、魔理沙、妖夢、鈴仙、そしてリュウトだ。

全員、外の世界で浮かないようにそれぞれ現代風なファッションをしている。

だが、元の衣装に近い色の洋服を皆着用している。

例えば霊夢は赤いワンピース、魔理沙は黒を基調とした割とボーイッシュな服装だ。

その場には紅魔館の留守番メンバーである美鈴達や、結界に出口を作る為に紫、そのサポートの藍もスタンバイしており、いつでも行ける状態だ。

リュウトは最終チェックとして全員に忘れ物は無いかをあらかじめ聞いておく。

 

 

霊「えぇ、ちゃんと着替えもお金も持ったわ」

 

魔「あぁ。

このぱすぽーと?とかいうのもちゃんと持って来たぜ!」

 

 

他も全員頷く。

問題はなさそうだ。

ちなみに今回旅行に行くのは海外の為、全員に紫からパスポートが渡されている。

 

 

リ「よし。

なら行こうか、ユカ姉」

 

紫「はいは~い♪

では、十名様ご案内~」

 

 

扇子を縦に軽く振り下ろし、次元の境界を開ける。

と、その前にリュウトから一つ、全員に忠告しておくことがあったので、一旦足を止める。

これはかなり重要な事で、旅行の最中は絶対に守らなければいけない事だ。

 

 

リ「みんな、わかっているだろうが、旅先で絶対に能力を使用したり、人を殺したりするなよ?

何があってもだ。

もし、何らかの事件に巻き込まれそうになったらすかさず逃げろ。

出来るだけ団体行動をして、俺やじいちゃんから離れないようにするんだ。

女だけで歩いていると襲われる可能性があるからな」

 

レミ「襲ってくるったって人間でしょ?

どうにでもなるわ」

 

フ「お姉ちゃん、今リュウトが言ってた事ちゃんと理解してる?」

 

 

さっき言ったことを理解していないような言動だ。

一番警戒しなくてはならないのはレミリアかもしれない・・・。

と、あまりグダグダしている時間はないので、紫を待たせない為にもリュウトは先を急いだ。

 

 

リ「ま、まぁいい。

時間が無いから早く行こうか」

 

 

リュウトを先頭に、続々とスキマの中へ入っていく。

そして、全員が入り終わったところでそれはゆっくりと閉じた。

 

 

紫「あ、そうそう。

藍、妖夢が旅行でいない間は幽々子が家にくるからよろしくね?」

 

藍「えっ聞いてませんよそんな話」

 

紫「だって今言ったんだもの、知らなくて当然だわ」

 

 

口元を扇子で隠しながら藍のジト目を当てられる。

だが、そんなのはお構いなしに紫は話を進める。

 

 

紫「貴女、私の式でしょ?

なら私の命令くらい聞きなさいよ」

 

藍「うぐっ!それを言われてしまったら何も言い返せない・・・」

 

紫「わかったら返事」

 

藍「はい・・・」

 

 

九尾である彼女の自慢の9本のしっぽは情けなくしなる。

紫の命令で白玉楼で食事を作らなければいけなくなった藍は、心の中では今すぐにでも逃げ出したくなる気分だった。

 

 

美「苦労人ですね・・・、。

パチュリー様、お嬢様方も出発されたのでそろそろ私達も戻りましょうか?」

 

パ「そうね。

こあ、行くわよ」

 

小「畏まりましたパチュリー様」

 

 

珍しく外に出ていたパチュリーも、用が終わればそそくさと帰っていく。

まだ日が昇ってから間もない時間だったので、朝食の準備の為、美鈴も館に戻った。

紫達も仕事が終わればすぐに帰り、門の前には誰も居なくなった。

 

 

 

そして幻想の外へ出た者達は、次元の扉を潜り抜けた時・・・この世の摩天楼を見た。




妖夢と鈴仙は次回辺りに台詞が出てきます。
海外旅行ですが、行き先は海が綺麗な場所です。
次回もお楽しみに!


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外界編55話

旅行のメンバーに響華は含まれていませんが、これは響華の気遣いです。
未来でリュウトに頼りっぱなしだったので少しは自立しようという考えです。
ちなみにリュウト達が旅行で居ない間は響華が博麗神社で結界の管理などをしています。
それを踏まえてではどうぞ


妖「ここが・・・外の世界・・・」

 

レミ「凄い大きな建物ね・・・もしかしたら紅魔館より大きいかも」

 

零「だが少し空気が汚れているな」

 

 

スキマをくぐり、出た先にあったものは、羽田国際空港と書かれた看板が立てかけられた大きな四角い建造物だった。

スキマから出てきた瞬間は誰にも見られていないようだが、建物の中に明かりがついているので人はいるようだ。

それと・・・先程からかなり大きな音が断続的に聞こえてくるのだが、一体何なのだろうか?

フランがキョロキョロと音の根源を探っていると、音の原因はリュウトが直ぐに教えてくれた。

 

 

リ「飛行機のエンジンの音だ。今の時間から飛んでいるんだろう。

俺達も今からそれに乗るんだぞ?」

 

フ「ひこーき??」

 

魔「なんだそれ?」

 

 

二人して不思議そうな顔をするので、リュウトは簡潔に航空機について説明をしてやった。

 

 

リ「空を飛んで移動するための乗り物さ、エンジンってのはそれを飛ばすための力を作ってくれる機械だよ」

 

ア「へぇ、わかりやすいわね。要は私達が空を飛ぶのに魔力を使ったりするのと同じってわけね」

 

リ「そういう事だ。

さ、無駄話は終わりにして、速く中に入って受付を済まそう」

 

 

リュウトが空港の中へと進んでいくと、後を付けるように皆も歩いていく。

外装やドアに至るまで清掃が行き届いている清潔な建物のようだ。

リュウト達をセンサーで捉えた入り口自動ドアが開き、それをくぐると、そこには数えきれない程の人の波があった。

 

 

鈴仙「なっ!凄い人・・・月の都より凄いかも・・・」

 

咲「こんな時間からこれ程の人々が活動しているなんて・・・」

 

 

行き交う人々の中にはスーツを着用し、小さな平たい箱を耳に当てて話している者や、大勢で集まって行動してい者もいる。

それを不思議そうに横目で見ながら、看板を頼りにカウンターのある奥へと歩いていく。

旅行用の大きなカバンやキャリーバッグをゴロゴロと引きずりながら、ベルトコンベアに驚いたり、エスカレーターに驚きながら受付カウンターまで到着し、リュウトが受付の女性に話しかける。

 

 

リ「すみません、10名で二泊三日のグアム行を予約した博麗リュウトです。

チェックインに来ました」

 

受付嬢「博麗様ですね?お待ちしておりました。

金額のお支払いは既にお済みのようなので直ぐにお渡ししましね」

 

 

受付嬢はパソコンで何かを打ち込んだと思いきや、カウンターの下から10枚のチケットを取り出した。

 

 

受付嬢「10枚チケット、グアム行です。

ご確認ください。

では搭乗カウンターにてお待ちください」

 

リ「あぁ、ありがとう」

 

 

チケットを渡した受付嬢は座ったまま綺麗にお辞儀をし、リュウト達を見送る。カウンターに用が無くなった彼らもその場を去り、少し広い場所へと身を映した。

チケットを手にしたリュウトは全員に一枚ずつチケットを渡し、受付の流れを簡単に説明する。後でどうすればいいか分からなくなってパニックになるのを防ぐためだ。

まず最初に出すべきパスポートをポケットから取り出して見せた。

 

 

リ「いいか?カウンターについたらまずチケットとパスポートを見せろ。

パスポートは俺達の顔写真の載った証明書だから絶対に無くすなよ?」

 

ア「この前文が撮った写真かしらこれ?なかなかうまく撮れてるじゃないの」

 

 

カバンの横についたポケットからパスポートを取り出して中を確認するアリス。

だが、パスポートをそんなところに入れてはダメだ。

 

 

リ「アリス、パスポートは自分の身に着けておけ。万が一盗られでもしたら大変だからな」

 

ア「あら、ごめんなさい。

不注意だったわ」

 

 

そういうとアリスは、現代アレンジされて短くなった青いチェック柄のスカートのポケットにパスポートを入れなおした。

パスポートの正しい管理は旅の基本である。

 

 

リ「パスポートの提示が終わったら荷物を預けろよ、そうすれば飛行機の中に運び入れてくれるから」

 

 

じゃ、並ぶぞと言い、Bと書かれた搭乗カウンターの長蛇の列に全員で並ぶ。

自分達が並んでいる前にも人が大勢並んでいて、それにも圧倒されてしまうが、それよりも驚くべきことが、此処に並んでいる全員が自分達と同じ場所に行こうとしているという事だ。

 

 

咲「この人たちみんな私達と同じひこーき?に乗るのですか?」

 

リ「あぁ、俺達の後にも乗ってくるだろうな」

 

 

暫く並んで待っていると、案の定、後ろにも長い列がいつの間にか出来ていた。

そうこうしているうちに列はどんどん短くなり、いつの間にか順番が回ってきてカウンターの女性から指示が出される。

 

 

女「お客様、チケットとパスポートの確認を致します」

 

 

言われた通り、一番先頭に並んでいたリュウトが手本としてやって見せる。

ジーンズのポケットから指示された二つを出し、カウンターに乗せた。

 

 

リ「どうぞ」

 

女「はい、拝見させていただきました。

では荷物をお預かりいたします」

 

 

言われた通り、カウンターの横に立っている女性に荷物を渡す。

女性は、お預かりします、と笑顔で微笑みかけると、そっと荷物を持ち、ベルトコンベアへと乗せる。

業務員が優秀なのもあり、この工程は直ぐに全員済ませることが出来た。

これでかなり時間にゆとりが出来、この後の身体検査も何も起こらずスムーズに進むことが出来た。

その際、レミリアとフランが見た目のせいか子供扱いされたりもしたが、とりあえずは事なきを得た。

現在、時刻は飛行機発進の30分前を指しており、今、搭乗ロビーに向かっても時間が余ってしまうため、朝食代わりにターミナル内のショップで何か買う事にした。

幻想郷の通貨は日本銀行券なので問題は無い。

外の世界に来てから初めての買い物だからどこか違うところがあるかもしれないが、さほど気にすることでもないだろう。

 

 

零「ま、通貨が同じで言語も同じなんだから大丈夫だろ」

 

 

しかし、いざショップに足を踏み込むと、一同は絶句した。

 

 

霊「それもそうなんだけど・・・なんていうか・・・」

 

魔「凄いな・・・」

 

 

何に驚いているか、それは商品の豊富さだ。

幻想郷にはここまで色んなものがそろっている店はどこにもない。

飲み物、お菓子、弁当、サンドイッチ、しかも見たことも無い容器に入っている物が大半だ。

霊夢はドリンクと書かれた札の掛かった冷蔵庫を開け、中からペットボトルを取り出してまじまじと眺める。

見たことも触れたことも無いそれに、霊夢は魅了された。

 

 

霊「ガラスみたいだけど凄く軽い・・・それに何だか柔らかい・・・?」

 

零「不思議だな・・・試しに買ってみるか?」

 

霊「うん!でもどれにしようかしら?」

 

 

冷蔵庫の中には霊夢が何気なしに取り出したもの以外にも多くの種類が置かれている。

そのうちどれか一つなんて選べそうにない。

しかし、霊夢はある一つの飲み物に目が留まった。

 

 

霊「この黒いの何かしら?」

 

 

霊夢が目をつけたのは、赤いラベルでボトルを巻いた、コッカ・コーラと書かれたドリンクだ。

白の筆記体で書かれたパッケージはなんて書いてあるかわからなかったが、勘が言っている。

これは間違いなく当たりだ・・・と。

 

 

霊「私これを買うわ!」

 

零「ん?・・・中身が黒いな。

醤油みたいな色だが・・・炭酸飲料?」

 

霊「私の勘が言ってるわ!これは絶対美味しいってね!」

 

零「まぁ、霊夢がそれでいいなら俺は何も言わんさ」

 

 

自信満々に言う霊夢を見て、それ以上何も言わない事にした。

コッカ・コーラボトルの裏ラベルには炭酸飲料と書かれており、それが何を現すのか、二人には見当もつかなかった。

零夜はここは大人しく、味を知っていて、尚且つ馴染みのありそうな缶コーヒーを買う事にした。

下手に手出しすると痛い目を見そうだからだ。

二人とも買うものが決まったところでレジへと向かう。

他の者も大体買うものが決まったようで、後に続いてレジへと並ぶ。

外界の初めての買い物で、店員の若い男性から渡されたレシートなるものに戸惑ったりもしたが、何とか全員買うことが出来た。

そして、出発ロビーのベンチに座り、各自で買ったものを袋から取り出して見せあった。




空港の事について色々と調べましたが、行った事がないので殆んど想像です。
セントレアならあるんですがね。
てなわけで間違った部分が結構あるかもしれません。
二次創作なのでそこは多目に見てくださいな。
次回もお楽しみに!


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外界編56話※

60話です!!
やっとこさここまで来ましたね!
投稿遅れましたが次からは更新スピード戻ります。
ではどうぞ。


リ「ははっ咲夜と俺は全く同じものを選んだみたいだな」

 

咲「あら?奇遇ですわね、でもやはり慣れ親しんだものが一番だと思いましたので」

 

 

リュウトと咲夜が選んだのはドリップのホットコーヒー。

最初は機械の使い方が解らずに葛藤していたが、店員の簡単な説明を受けてようやく淹れることが出来たコーヒーは香が漂う非常に良いものだった。

間違いなく美味しいコーヒーだ。

 

 

レミ「フラン、それ何?お菓子っぽいけど」

 

フ「うん、何かポテトチップス?ってやつらしいよ?

お姉ちゃんのそれは?」

 

レミ「これ?唐揚げおにぎりだけど?」

 

フ「お姉ちゃんってそういうの好きだよね・・・」

 

レミ「そんなにおかしいかしら?」

 

 

フランの抱えている袋には、ポテトチップスうす塩バター味と書かれている。

袋を揺さぶると、ガサガサという音が聞こえてくるあたり、この中にそれが入っているのだろう。

一方、レミリアは唐揚げおにぎりのビニールの取り方がいまいちわからない様子。

本当は正しい開け方があるのだが、理解したのはしばらく後だ。

 

 

鈴仙「妖夢!これ凄くおいしいわ!」

 

妖「私もこの抹茶アイスというのは初めて食べますけど、何だか懐かしい感覚に襲われますね」

 

 

鈴仙が食べているのは、いわゆるシロクマアイスと呼ばれているものだ。

練乳と凍ったフルーツがかかったシャーベットをかなり気に入ったらしい。

抹茶アイスを買った妖夢は、大体予想通りな選択だろう。

流石、サムライガールなだけはある。

 

 

魔「アリス、お前が買ったそれって一体何なんだ?」

 

ア「水らしいんだけど・・・何だか水っぽくないのよね。

どんな味なのかしら?」

 

魔「水なんだから水の味がするに決まってんだろ?

ま、私はこれを食すとするぜ!」

 

 

といって魔理沙が袋から出したのは、チョコレートスナックなるものだった。

糖分は乙女の燃料というが、魔理沙はどうなのだろうか。

男勝りな口調と行動が目立つ彼女は乙女かそうでないかと言われれば、悪いが後者だろう。

黙っていれば十分可愛らしいのだが。

 

 

ア「ン・・・あら?不思議な感じね。

この水、甘くておいしいわ」

 

 

ボトルのキャップをひねり、一口飲んでみると、口いっぱいに柑橘系の香が広がり、水を飲んでいる感覚は全くなく、どちらかというとジュースを飲んでいる感覚に近かった。

なんとも言い難いが取り敢えず凄い事はアリスにも解った。

 

 

霊「ふんふんふ~ん♪どんな味がするのかな~?」

 

零「ご機嫌だな、感想を後で教えてくれよ?」

 

霊「わかってるわ♪」

 

 

プシュッっと炭酸独特の音がボトルの中から発せられる。

開けてみると、液体からシュワシュワと空気の玉が無数に上がって来た。

 

 

霊「・・・んぐっ」

 

 

勢いよく霊夢はそれを口に流し込む。

その瞬間、舌に電流が迸る。

まさに衝撃だった。

 

 

霊「うわっ!!何よこれ!飲んだ瞬間口の中がバチバチってなったわ!」

 

零「お、おい。

それ大丈夫なのか??」

 

 

突然の出来事に霊夢は吃驚してボトルを投げ出しそうになる。

辛うじてボトルは依然、手の中だが、しかし、きょとんとした表情でボトルを見つめてから、不思議な感覚に霊夢は襲われた。

 

 

霊「これ、なんだかクセになる感覚ね・・・」

 

 

霊夢達の周りには、霊夢と同じパッケージのボトルを持った人々が多く見られる。

これは外界でも人気の高い飲み物なのだろう。

何度も飲みたくなるその味には、一種の中毒性があるかもしれない。

外界人は凄い飲み物を開発したものだ。

それからも霊夢は、炭酸飲料なる物に心奪われ、何度もそれを口にするのだった。

 

 

________________

 

 

 

咲「リュウトさん、コーヒーはブラックですか?」

 

リ「あぁ、目が覚めるからな。

それにしてもこれ中々美味いな」

 

咲「確かに・・・機械で淹れたとは到底思えませんわ」

 

 

紙コップに入った淹れたてのコーヒーは、二人の脳を覚醒させる手助けをしてくれる。

機械で自動的に淹れられたコーヒーだが、豆をその場で挽いているおかげか物凄く美味しい。

長椅子に座りながら飛行機搭乗時間が来るまで談笑しながら待っていると、ロビーの外、飛行場の方から鼓膜に響く大きな音が聞こえてきた。

 

 

キィィィィィィン!!!

 

 

咲「あっ!リュウトさん!

外見てください!あれが飛行機ですか?」

 

 

咲夜が窓の外に視界を移すと、そこには離陸を始めている旅客機があった。

かなり遠くから見てもかなり大きい事が解る。

生まれて初めて見るその光景に、皆が立ち上がりそれを眺めた。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

レミ「わぁ・・・あれが飛行機・・・。

確かに大きいわね・・・」

 

フ「あれに私達も乗るんだぁ。

凄いなぁ~、あんなのが飛ぶんだね」

 

 

スカーレット姉妹は、巨大な飛行機を、窓に張り付きながら眺める。

外界に住んでいたことがある二人だが、住んでいたと言っても幻想郷にやってくる前はかなり不気味な薄暗い湖畔だったので、科学とは殆ど無縁な生活を送っていたのだから飛行機は勿論初めて目にする現代科学の結晶だ。

どういう原理で飛んでいるのか二人には想像出来ないが、パチュリーならわかるのだろうか?

それからというものの、二人はショップで買ってきたものを肴に、大空へと飛翔するその姿を一言も言葉を発さず眺めていた。

 

 

鈴仙「・・・そろそろ乗る準備した方が良いんじゃない?

10分前よ」

 

リ「ん?あ、本当だ。

皆、搭乗口に行くから手荷物忘れないようにな」

 

魔「ばっちりだぜ!」

 

妖「右に同じです」

 

 

バッチグーと言いながら、親指を立てる魔理沙。

他も問題なさそうだ。

10人は、遂に念願の飛行機初搭乗を果たすのだった。




レミリアとフランは何処か子供なんですよね。
珍しいものに目がないんです。
次回は漸く飛行機に乗ります!
お楽しみに!


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外界編57話

色々あって早い更新となりました。
ちょっとエロを想像してくれると助かります。
露骨に書けないんでね!!
ではどうぞ。


~飛行機内~

 

 

リ「ふう、やっと外せるな」

 

 

飛行機離陸終了後、機内アナウンスでシートベルト解脱許可が出される。

シートベルトの締め付け間がどうにも苦手なのか、ほんの数分しかつけていない筈なのに妙な解放感がそこにはあった。

指定された通路側の席で背中を背もたれにくっつけてくつろいでいると、後ろの席から怪しい呻き声が聞こえてきた。

 

 

妖「う・・・うぉえ・・・私これダメかもしれないです・・・」

 

鈴仙「ちょっと!大丈夫!?」

 

 

以前もこのようなことがあった気がする。

妖夢は船だけでなく飛行機でも酔ってしまうようだ。

この調子だと車も碌に乗れないのではないか?

後ろから嘔吐音が聞こえてくるという中々グロテスクな空間に閉じ込められてしまったリュウトは、気分直しに席に付属していたヘッドホンで何か音楽を聴くことにした。

リュウトの右隣の席には咲夜がスヤスヤと眠っており、寝顔をこちらに向けている。

エコノミーでも良い乗り心地で、毛布もついているせいか寝る体制が作りやすい。

長い空の旅を退屈することなく過ごせるようにサービスしているのだろう。

 

 

咲「すー・・・すー・・・」

 

リ「咲夜ってこんな顔して寝るのか・・・」

 

 

咲夜の頭が肩に寄りかかり、微かにシャンプーの香が鼻をくすぐる。

居心地がよくなってきたので、眠れそうな音楽を探して一緒に寝てしまおうとした時だった。

丁度キャビンアテンダントがドリンクのサービスにやって来た。

 

 

キャ「ドリンクは何になさいますか?

コーヒーもありますよ?」

 

リ「あ、少し待ってくれ。

咲夜、飲み物はどうする?」

 

咲「すー・・・すー・・・」

 

リ「ダメだ、完全に寝てる。

仕方ない、アップルジュースと烏龍茶一つずつ頼む」

 

キャ「畏まりました」

 

 

どうぞ、っと二つのカップを差し出す手からそれをそっと受け取り礼を言う。

その後すぐに女性は去っていき、リュウトは咲夜の席に簡易テーブルにアップルジュースを置き、烏龍茶を一口飲むと、目の前に搭載されたディスプレイを座席横に収納されたリモコンで操作し、音楽ジャンルからオーケストラを選択したのち、意識を暗転させた。

 

 

___________________

 

 

フ「お姉ちゃん!凄い高いところ飛んでるよこれ!」

 

レミ「自分で飛んでばかりだったからこういうのは新鮮ね。

それにとてもきれいな景色・・・最高じゃない」

 

 

飛行機はグアムに向けて現在、太平洋の上を飛行中。

運よく窓際席となった二人はその圧巻の景色に見惚れていた。

離陸した時から二人のテンションは上がる一方だ。

通路を挟んだ隣席の霊夢がうらやましそうにそれを見るのも無理はないだろう。

なにせレミリア達の席は窓側なのだから、今回ばかりはくじ運が無かったと諦めるしかない。

 

 

零「まぁまぁ霊夢、帰りだってこれに乗るんだからチャンスはあるぞ?」

 

霊「別にそんなの気にしてないわよ・・・」

 

 

サービスで頼んだ緑茶をごくごくと飲み干して心を読まれないように落ち着かせる。

ところで、外の世界に来てから知ったことがいくつかあるのだが、青い男と赤い女が並んだマークが書かれた看板は手洗い場という意味らしい。

幻想郷ではそんなもの存在せず、普通に便所と書かれた立て札があるだけだ。

そのせいで何処にトイレがあるのか解らなかったのだが。

しかし、知ってしまえばこちらのもの。

 

 

魔「アリス、ちょっとトイレに行ってくるんだぜ」

 

ア「あらそう、行ってらっしゃい」

 

 

席を立ち、標識のある場所まで歩いていくと、鉄の扉がそこにはあった。

TOILETと英語で書かれていて魔理沙には解読不能だったが、ここがトイレだという事は容易に察することが出来た。

何の躊躇いもなくそのドアを開け、鍵らしき棒をスライドさせる。

洋式便座は紅魔館にある為使い方は知っている。

白い蓋を開けて、白いホットパンツと下着を脱いでその上に座る。

 

 

魔「温かいなこの便座、気持ちいぜ♪」

 

 

 

_____________

 

 

 

幸いトイレットペーパーを使うのはこちらでも同じだったので問題は無く、流し方もリュウトから教わっていたし、問題なく用を足せた。

トイレを出て席へ戻ろうと通路を歩いていると、若い男の乗客二人の会話が少しだけ聞こえてきて、不意に気になった魔理沙はその会話に少しだけ耳を傾けた。

 

 

男「なあ知ってるか?この飛行機に岡崎夢美が乗ってるっていう話。

どうやら本当らしいぜ」

 

男2「どうせファーストクラスだろ?

会う事なんて無いって。

まぁ、逢ってみたいけどな、かなり美人なんだろ?」

 

男「あぁ、良いよなぁ~!

あんな美人だったらもう婚約者とかいるんだろうなぁ~!」

 

魔(岡崎夢美?そんなに有名人なのか?)

 

 

全く知らない人物の会話だったので、魔理沙はさっさとその場を去ることにした。

 

 

_______________

 

 

飛行機での空の旅ももうすぐ終わり。

窓からは綺麗な透き通る海と、真っ白な海岸沿いがくっきりと確認できる。

目的地のグアム島に着いた飛行機は滑走路に向けて着陸態勢に入る為、乗客は再びシートベルトを着用し、着陸と共に体が落ちる感覚を味わう。

 

 

10人は、常夏の南の島の大地を踏んだ。




以上、魔理沙のトイレシーンでした。
、、、想像しちゃいました?安心してください、正しい行いです。
少し鈴仙と妖夢の絡みも入れてみました。
敵同士だった二人がねぇー…でも妖夢のキャラ崩壊が酷いな。
一回だけ乗った事のある飛行機内の出来事を思い出してそれっぽく書きましたが、違和感ありませんよね?大丈夫ですよね??
次回は少し、幻想卿サイドに入りたいと思います。
リュウト達が旅行に行っている間に幻想卿では何が起こってるんでしょうかね??
では次回もお楽しみに!


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外界編58話

※今回は旅行に行っているリュウト達の話ではありません。



所変わって幻想郷。

リュウト達が旅行で居ない間、響華が博麗神社の運営を任されることとなった為、永遠亭では朝からてゐが響華の見送りに玄関に立っていた。

 

 

てゐ「もう行くのかい?何だか寂しくなるねぇ」

 

響「しょうがないよ、私一応未来の世界の博麗の巫女だから抜擢されちゃったんだから。

何なら遊びに来る?」

 

てゐ「いや、鈴仙達が帰ってきたらまた帰ってくるんだろ?

それまで待ってるよ。

それより、異変も終わったんだし、久しぶりの幻想郷を見てきたらどうだい?」

 

 

その言葉には間違いがある。

響華が知っているのは未来の幻想郷で、この世界は生まれて初めて見る光景と何ら変わらないのだ。

しかし、行ってみる価値はある。

 

 

響「お勤めがある程度済んだら考えてみようかな。

ユカ姉が来るのは明日だし、今日は神社で一人きりだし」

 

てゐ「そうかい。

ま、好きにするといいよ」

 

響「うん。

じゃあ行ってくるね」

 

てゐ「行ってらっしゃい~」

 

 

引き戸を開け、専用の巫女服や下着の入った大き目の肩掛けバッグを担ぎ、手を振るてゐにバイバイと手を振りながら飛び去った。

それから遅れて輝夜も玄関にやって来たが、もうその時には響華は居なかった。

 

 

輝「あれ?もう行っちゃったの?」

 

てゐ「姫様・・・もうちょっと早ければ見送り出来たのに」

 

輝「あちゃあ・・・でも三日経てば帰ってくるからいいか」

 

てゐ「ま、その間は此処が少し寂しくなるけどね。

ウサギたちの相手してればいいか」

 

 

過ぎ去る響華の背中を玄関から見送った二人は、永琳が待っているであろう居間へと続く板張りの廊下を歩いて行った。

 

 

__________________

 

 

 

響「お邪魔しま~す・・・て言ったってここは私の家なんだけど」

 

 

神社には勿論誰も居ない。

不用心に鍵が閉まっていない玄関をガラガラと音を立てながら開け、慣れたように中へ上がっていく。

自分の部屋となる部屋には霊夢の私物が置かれており、前まで居た頃と時代が違うという事を、改めて実感させられた。

 

 

響「おばあちゃんの部屋にこれ置いとけばいっか」

 

 

重い荷物を床に降ろすと、凝っていた肩や腰の骨をパキパキと体を伸ばして鳴らす。

神社へは遊びに来た訳ではない、博麗の務めの代行に来たのだ。

いつも霊夢がやっていることを一日のうちにやらなければいけない。

取り敢えずは自分が巫女の時やっていたように掃除から始める事にした。

幸い掃除道具は今も置いてある場所が変わっていなかった為、慣れた動きで直ぐに終わらせることが出来た。

 

 

響「前みたいに過ごしてればいいんだから、特に大変って事も無いなぁ」

 

 

博麗大結界に綻びが無いかを調べようと境内の中心に立ち、目を閉じる。

潜在エネルギーを一気に開放して、幻想郷全体まで響くエコーの波を発し、レーダー探知機のように綻びを探知するのだ。

霊夢もこれを毎日やっているのだが、殆ど知られていない。

だが、この行為が息をするように簡単に出来ないと、博麗の巫女にはなれない。

それほど博麗の巫女は強大な力を持っているのだ。

ちなみに結界の綻びが見つかった場合はその修復をするのだが、霊夢の場合はその綻びに向けて修復結界を投げつけるだけ。

後は自動的に綻びまで飛んでいき、勝手に直してくれる。

その場まで行かずに済ませてしまうのだ。

怠け者の極みのような技だが、歴代の巫女でもこの技を使えるのは霊夢だけで、これだけでも彼女が天才的な霊力操作の才能の持ち主と言えるだろう。

 

 

響「・・・そろそろ帰ってくるかな」

 

 

幻想郷の端まで飛んでいった波を、体全体で感じる。

自分の放った霊力に異常が見られなければそれは結界の綻びが無いという事だ。

 

 

響「うん、無いね。

他も異常無し!」

 

 

結界の修復箇所も無い事が判明し、特にこれと言ってやることも無くなってしまう。

基本的な事以外を勝手にやってしまうと霊夢に迷惑が掛かってしまうかもしれないので、下手に何か勝手なことををするわけにはいかない。

だが、彼女には一つだけ、どうしてもやってみたい事があった。

 

 

~霊夢の部屋~

 

 

響「えへへ!見つけちゃったもんね~」

 

 

どうしてもやりたかった事、それは、霊夢の巫女装束を着る事だ。

身長もさほど変わらず、体系も似たり寄ったりだったので、もしかしたらと考えていたのだ。

霊夢の部屋の箪笥を漁り、巫女装束を拝借する。

探している途中で、真っ白の下着なども見つけてしまったが、ちゃんと元あった場所へ戻してある。

というか、下着が白しかないせいで、純情少女にしか見えなくなりそうだ。

・・・どうやっておじいちゃんを誘ったのだろうか?

もしかしたらおじいちゃんは清純が好きなのか?

いや、これ以上考えるのはやめよう。

これ以上考えたらおじいちゃんに失礼だし。

気を取り直して響華は拝借した巫女服の手触りを確かめた。

 

 

響「生地はそんなに変わらないのかな?

でもデザインはこっちのほうが可愛いかも」

 

 

自分の着ていた巫女服を脱ぎ棄て、霊夢の巫女服を着ていく。

構造は殆ど響華のものと変わらず、何不自由なく着ることが出来た。

そして、部屋に置かれた鏡に映る自分の姿を見て少し気分が下がってしまった。

 

 

響「・・・私の髪の毛は白いからおばあちゃんみたいはなれないな・・・」

 

 

響華の髪色は零夜の遺伝子を多く受け継いだせいか、芯から真っ白なのだ。

鏡に映る自分の姿を見て、美しい黒髪の霊夢が着るからこの巫女服は映えるのだと思い知らされてしまったのだ。

自分のうなじに手を伸ばし、白髪を触りながら少し黙り込む。

 

 

響「・・・・・」

 

 

似合っていないのならもう脱いでしまおうか?

しかし、折角二度とないであろう機会に拝借したのだ。

少しくらいこの格好で外出しても問題は無いだろう。

そうと決まれば・・・。

 

 

響「よし・・・紅魔館に遊びにいこっと!!」

 

 

自慢の立ち直りで再び気分を取り直し、軽快な足取りで玄関を飛び出し、紅魔館までマニューバを利かせながら飛んでいった。

ちなみに、丁度その時射命丸文が入れ違いとなり、彼女が神社に着いた頃には響華の姿は全く見えない程小さくなっていた。

 

 

文「・・・折角来たのに誰もいない(泣)」

 

 

カメラを見下ろしながら、彼女はとぼとぼと天狗の里へと力の入っていないだらしなく撓った翼をはためかせながら帰っていく。

涙を流しながらノロノロと飛ぶその後ろ姿からは、悲壮感しか感じられなかった・・・。




響華は自分の考えたキャラの中でもかなり好きなキャラです。
寝ぼけてパンチラに気づかない女の子ってメチャクチャ可愛くないですか!!
これからも微エロ担当位置で書かせていただきます。
リュウト達が旅行に行っている間、響華の話をもう1話くらい入れてやろうと思います。
次回はまたリュウトサイドに変わります。
では次回もお楽しみに!


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外界編59話

グアムに行った事は無いですが、取り合えず調べて書いてみました。
もし違ったらゴメンナサイ。


静かな波の音と潮の香が鼻を刺激し、日差しは皮膚をジリジリと焼いてくる。

真っ白な砂浜には、観光客が立てたパラソルがそこいらじゅうに刺さっており、日光浴を楽しむ者や、海でサーフィンを楽しむ者などであふれかえっていた。

目の前に広がるオーシャンビューは、まさに地球の神秘だ。

 

 

魔「おぉ!これが海か!!」

 

鈴仙「地球の海はこんな感じなんだ・・・。

綺麗ねぇ・・・」

 

 

光の反射でスカイブルーに見える母なる海は、照りつく太陽でエメラルドに輝き、見るものを魅了した。

日本では秋真っ盛りだというのに、ここでは気候が全く違うおかげで海水浴がこの時期でも普通に楽しめるのだ。

なんて素晴らしいところなのだろうか。

 

 

リ「んじゃ、俺達は場所を取りに行くから、みんなはその間に着替えてくるといい」

 

咲「そうですね、ではそうさせていただきます」

 

 

早速女性陣は水着に着替えるために外に置いてある個室型の仮設更衣室に向かう。

その間、男性陣は場所取りをするために砂浜に残る事となった。

しかし、場所取りと言ってもかなりのスペースが空いており、適当な場所にビニルシートを敷くだけだったが。

しかも今回は中々良い立地があり、近くに売店もあって不自由が無い場所を獲得することが出来た。

男二人はシートの上に座り、女子陣が返ってくるのを待っていた。

 

 

リ「案外砂浜が大きかったお陰で楽に場所取りが出来たな」

 

零「こちらとしては大いに助かっているからいいさ。

それよりどっちが迎えに行くんだ?

霊夢達が着替え終わってもこの場所が解らないだろう?」

 

リ「あ、それもそうだな。

どうする?おじいちゃん行くか?」

 

零「別に構わんが・・・。

あ、おじいちゃんはやめろよ」

 

リ「実際そうだから仕方がない」

 

零「・・・、、行ってくるよ」

 

 

ため息をついて泣き寝入りし、零夜は後ろを向いてそのまま歩いて行った。

だが、その顔はまんざら嫌そうではなかった。

 

 

_________________

 

 

~更衣室前~

 

 

霊「あら、待っててくれてたの?ありがとう♪」

 

零「待っていないとリュウトが待ってる場所が解らないだろ」

 

 

霊夢が更衣室の扉を開けると、砂浜にポツンと立っている零夜を見つけた。

待っていてくれたのだと悟った霊夢は、自分の水着姿を零夜に惜しみなく披露した。

 

 

霊「零夜、どう?私の水着姿!

似合ってる?」

 

 

くるりと一回転して上目づかいで零夜の目をとらえると、頬を掻きながら。

 

 

零「あ、あぁ。

似合っているぞ・・・、」

 

 

と、照れくさそうに言った。

だが、まさかこの会話を聞かれているとは思っていなかった。

 

 

ア「あらあら!霊夢はおませさんなのね。

純・情・乙・女♪」

 

霊「/////!!!」

 

 

突然、零夜の後ろに隠れていたアリスが現れてそうからかうと霊夢は顔を真っ赤に染め上げて顔を手で隠してしまう。

少し扉の前で待っていると、咲夜達も着替えを終えて出てきた。

色はそれぞれのパーソナルカラーを基調としているが、個性に合ったものを選んでいてとても似合っている。

レミリアとフランはワンピースタイプに日傘をさし、妖夢と霊夢、アリスはビキニ。

咲夜と鈴仙はビキニにパレオを着用。

魔理沙はビキニの上に薄茶のパーカーを着ている。

美人ぞろいな為か周りの観光客の視線を集めてしまっているが、高嶺の花が勢ぞろいなのだ、無理はないだろう。

 

 

___________________

 

 

 

フ「わあ!ホントに日焼けしないよ!」

 

レミ「凄いわね、吸血鬼の弱点を一つ克服しちゃったじゃないの」

 

鈴仙「当ったり前よ。

なんたって師匠の作った成功作の一つ、八意印のUVカットクリームなんだから」

 

 

鈴仙に貰った日焼け止めを塗ったレミリアとフランは、太陽の下に出ても平気な体へと変化していた。

本来、吸血鬼という種族は太陽の光に極端に弱く、皮膚が焼けてしまうほど日焼けをするのだが、クリームを塗ってからは全くその兆しが見られない。

正直、二人は驚いていた。

自分達の全身を確認しても、塗っていない時とその差は歴然なのだから。

そんな驚く二人を見て胸を張っている鈴仙だが、彼女が作ったわけではない。

というか、そんなに反っていると視線を集めてしまう・・・。

 

 

鈴仙「あ・・・はうぅ・・・」

 

 

主に男性陣の視線を釘づけにし、それに気づいた鈴仙は、薄紫の水着に覆われた胸を隠してその場に座り込んでしまう。

外界に出る前にウサギの耳は隠してしまったが、もし今それがあれば、今頃シュンと垂れ下がっているだろう。

 

 

レミ「ま、感謝はするわよ。

確かに助かったし、これで心置きなく海で遊べるしね。

フラン!行くわよ!」

 

フ「うん!やったぁ!!」

 

 

海に向かって走り、波打ち際で水をかけあう二人はとても楽しそうだ。

二人の姉妹らしい一面を微笑ましく思いながら、それを眺めている二人もまた、このひと時を自分達なりに楽しんでいた。

 

 

咲「お嬢様方・・・なんて仲のよろしい事でしょう」

 

リ「紅魔館にいる時もそれなりに仲良さげだが、こうして二人で一緒に楽しんでるのは俺も久しぶりに見たような気がするな」

 

 

二人は海の家からレンタルパラソルを借り、シートに出来た日陰で寄り添い座って語り合う。

未来の世界でも二人は仲が良かったが、150年という年月は妖怪から見ても長く、吸血鬼姉妹の身体と精神を成長させていった。

故に、二人一緒に居る時はあってもそれは一緒に居るだけなのだ。

それ以上何かをするわけでもない、あれば少し二人で話をするくらいだった。

リュウトは小さい頃、紅魔館に遊びに行くたびにそんな二人の様子を見てきたのだ。

唯一、二人が一緒に遊んでいたのは、幼い響華と遊んでやっている時だけだった。

 

 

咲「そうですか・・・未来ではお二方はそのような事に・・・。

でも、仲がよろしかったならそれで良いですわ」

 

 

従者として、二人の将来を心配していた咲夜は、それを聞いて安堵する。

咲夜は人間だ。

寿命には限界があり、リュウトの居た世界では当の昔に帰らぬ人となっている。

彼女もそれは、リュウトに聞かされた彼の過去の話で聞いていたため既に知っている。

だからこそ、咲夜は知っておきたかったのだ。

主人達は、自分が居なくなっても今まで通りやっていけるのかどうか・・・を。

 

 

リ「咲夜・・・」

 

咲「フフッ♪そんな顔しなくても、私はまだくたばる気はありませんことよ?」

 

リ「あぁ、わかっているとも」

 

 

冗談交じりにそう言って笑う彼女にリュウトも笑顔で応える。

少し雰囲気も明るい方向へ取り戻し始めたところで彼女は、ちょっとした皮肉を交えた言葉をリュウトに掛けた。

 

 

咲「それはそうとリュウトさん?この私の姿を見て一言も無しとは酷くありませんこと?」

 

 

咲夜はそういうと、下から顔を覗き込むようにしながら微笑みかけてきた。

その笑顔は、何を期待しているかは流石のリュウトでも簡単に理解出来た。

 

 

リ「う、うん。

とても似合っていると・・・思うぞ?」

 

咲「う~ん・・・何だか曖昧な言い方ですね・・・。

もしかして照れてるんですか??」

 

リ「う・・・うぅむ・・・」

 

 

どうにもやりにくい。

いつの間にか会話を咲夜のペースに持っていかれ、リュウトは自分のペースを乱しつつあった。

頬をかいて顔を染め、目をそらしてしまう。

意識してみているつもりは無かったが、言われてしまうとどうしても見てしまう。

リュウトも男なのだから、そういう目で女性を見てしまう事だってある。

水着の女性が隣に座っていれば尚更だ。

 

 

咲「もうっ。

罰として私の我儘に付き合ってもらっちゃいますよ?」

 

リ「その程度で許されるのなら何でもいいぞ」

 

 

腕を組んでリュウトの曖昧な表現に不満を持ち、頬を膨らませる咲夜は、何気なしに行ってみた一言を聞いてくれると言ってくれたリュウトに、少し驚きながらも、何をお願いしようか少し悩んで考えてみた。

 

 

咲「え?良いんですか?

なら・・・そうですね・・・」

 

リ「何でもいいぞ?限度はあるけどな。

咲夜なら大丈夫だろうが」

 

 

本気で聞いてくれるらしいので、余計に悩んでいると、波打ち際の方から呼ぶ声が聞こえてきた。

 

 

霊「アンタ達折角ここまで来たんだから、そんな所に座ってないでこっちに来て一緒に遊びましょうよ!」

 

妖「楽しいですよ~!」

 

 

霊夢と妖夢が手を振りながらこっちに来いと言っている。

鈴仙もいつの間にか立ち直って一緒に混ざって遊んでいて、レミリア達も輪の中に入っていたようだ。

 

 

咲「・・・とりあえず、今は皆さんと一緒に遊びましょうか」

 

リ「ははっそうだな!」

 

 

リュウトはリードして咲夜の手を取り立ち上がるのを助けると、彼女の手を引っ張り海へと走っていった。




やはり行ったことの無いしかも実在する場所を舞台に書くのは大変ですね、、、、いつもより疲れました
ちなみにレミリアとフランの羽は収納出来る設定です。
原作では鈴仙は着脱式の耳という設定でしたが、本作は二次創作なので本物の耳という設定にしてます。
なのに何故耳が無いのかというと、永琳が耳を髪の中に隠せるように細工してます。
こういうとき便利だよね永琳って。


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外界編60話※

久しぶりの更新です!!お待たせしました!
今回はちょっといい感じの雰囲気が出てる回です。
ではどうぞ。


夜、海で遊び疲れた一行に癒しを与えてくれたのは、ホテルで出された豪華な食事の数々だった。

10階層まである高層ホテルで、レストランはその5階層に入っている。

現地でもかなり豪華なホテルだ。

南国の島なだけあって海鮮料理が多く、見たことも無い魚を焼いた、日本で言う所の塩焼きに近いものや、顔よりも大きいエビを丸ごと蒸したボイル。

さらにデザートには南国原産のカットフルーツも出され、まさに南の島にの料理大集合といった状態だった。

初めて目にする料理の数々に魔理沙は興味津々にそれを見つめていた。

 

 

魔「でっかいエビだなぁ・・・まるで化け物みたいだぜ」

 

ア「何言ってんのよ、幻想郷に居る妖怪の方がよっぽど化け物みたいなのがいるじゃないの」

 

魔「それもそうだぜ」

 

 

ふと、魔理沙が窓から外を見ると、激しい雨が絶え間なく降り注いでいた。

この季節のグアムはスコールが多く、さっきまで晴れていたのにいきなり雨が降り出すなんてことが結構あるのだ。

昼間は快晴だったというのに、夕方になると途端に雨雲が空を覆い、それからずっと雨が降っている。

 

 

魔「海にいる間に降らなくてよかったな、私達は運が良いぜ」

 

 

重ねておかれたプレートを手に取り、気に入った料理を盛り付けていく。

隣で同じようにトングでパスタをとっていたアリスは、魔理沙の盛り合わせた皿を見て呆れた顔をして注意した。

 

 

ア「アンタ野菜が全然入ってないじゃない。

栄養が偏りすぎよ、もっとサラダを取りなさい」

 

魔「えぇ~?

別に今日ぐらいいいじゃんかよ?」

 

ア「ダメ!少しはフランを見習いなさい」

 

 

アリスの視線の先のフランは、サラダコーナーで栄養を考えながらバランスよく料理を選んでいた。

日頃から咲夜の料理を食べているからだろう。

 

 

魔「私は妹よりも姉の方を見習うぜ」

 

ア「姉?レミリアだってフランと同じように・・・、。

あっちゃあ・・・」

 

 

アリスは見てしまった。

ワインを取ろうとしたレミリアが女性のウエイトレスに、これはジュースではないよ?と注意されている所を。

何やら文句を言っているようだが、見た目がまだ幼いせいで何を言っても聞いてくれていない。

挙句の果てには代わりにジュースを渡されている。

吸血鬼の威厳などあったものではない。

妹の方がよほどしっかりしているのではないだろうか?

 

 

ア「あれは咲夜に任せておきましょう、私達は何も見てないわ」

 

魔「うん・・・何か私も悲しくなってきたぜ・・・」

 

 

魔理沙は黙ってトングを手に取り、サラダを皿に盛りつける。

アリスもその場から早々に立ち去り、食事を済ませてしまう事にした。

そして、食事が済んでから各自、割り振られた部屋へ向かった。

 

 

__________________

 

 

~宿泊部屋~

 

 

カチャ。

 

 

咲「はあ・・・気持ちのいいお風呂でしたわ」

 

 

濡れた髪をタオルで拭きながら部屋のバスルームから出てくる。

バスタオルを体に巻いてスリッパを履いているだけの姿だ。

湯船から出てまだ時間が経っていない為か、体からは湯気が絶え間なく出され、火照った咲夜の体をゆっくりと冷ましていった。

二人一部屋で割り振られた個室だが、今は部屋に一人だけ、バスタオル一枚でも何の問題もない。

なかなか広い部屋で、ベッドが二つと冷蔵庫、そして木製の椅子が三つ置いてある。

誰も居ないのを良いことに、椅子に腰かけながらゆっくり髪を乾かそうと考えていた時だった。

 

 

リ「よう、風呂はもう出たのか・・・っておいおい。

せめて寝間着を着てから出て来いよ・・・」

 

咲「え?・・・え!?

リュウトさんいつの間に・・・」

 

 

座ろうとしていた椅子には既にリュウトが座っており、それに気づかなかった咲夜は驚き、急いで体をタオルで隠す。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

しかし、実際リュウトは椅子の座って後ろを向いているので全く見られていない。

不意に振り向いたら咲夜がとんでもない姿だったというだけだ。

簡単に説明すると、咲夜が悪い。

 

 

リ「さっき帰って来たばかりだよ・・・。

それより早く服を着てくれ・・・」

 

咲「あ・・・すみません・・・///」

 

 

顔を真っ赤にしながら旅行鞄からパジャマを取り出す。

自分の真後ろで女の子が着替えているのを想像すると少し興奮してしまうが、自制心を保つためにそとの空気を吸うためにベランダに出た。

ガラス張りのスライドドアを開けると、スコールが止んでいて、町の明かりが陸を輝かしていた。

 

 

リ「綺麗なもんだな、人工の光だというのにここまで心を落ち着かせてくれるとは。

いや、人が作り出したからこその温かみなのか」

 

 

柵にもたれながら街と月光とのコントラストを堪能していると、後ろから自分を呼ぶ声が聞こえた。

 

 

咲「リュウトさん、コーヒーいかがですか?」

 

 

スコールが止んだばかりでジメジメとして暑いと感じていたところに、丁度咲夜がアイスコーヒーを持ってきてくれた。

 

 

リ「あぁ、もらうよ。

すまないな気を使わせて」

 

咲「い、いえ、私こそ先程は・・・」

 

 

先程の事を思い出して二人とも黙り込んでしまう。

気まずい空気はしばらく続き、コーヒーを飲んでも脈拍は落ち着かない。

咲夜は目を逸らしてくる。

何か話題が必要だ。

 

 

リ「き・・・今日は星が綺麗だな!」

 

咲「え?あ、あぁ、そうですね!」

 

 

気まずい空気を脱しようと話しかけたリュウトの思惑を察した咲夜も上手い具合に乗っかってきてくれる。

とても有難い事なのだが、それなら話をつなげるようにしてほしい。

それから黙り込まれるとさらに気まずくなってしまう。

直ぐ隣に居るのにも関わらず、既に二人の間には1キロ位距離があるのではないかと錯覚してしまうほどだった。

 

 

リ「さ・・・咲夜!」

 

咲「は!はい!?」

 

 

突然名前を呼ばれて直立しながら声が裏返ってしまい、赤面しながらパジャマの裾をもじもじと弄る。

緊張のあまり声も出ない。

リュウトはそれを察して優しく話しかけた。

 

 

リ「少し空の散歩に行かないか?」

 

咲「え・・・?きゃあ!?」

 

 

動揺する咲夜を抱き上げて空へ飛翔する。

その唐突な行動に驚いて顔が熱くなり、声を上げてしまう。

だがそんなことはお構いなしにリュウトはベランダから飛び立った。

もう既に地上は遥か下だ。

 

 

咲「あ・・・あああああのぉ!?」

 

リ「・・・」

 

 

外の世界でこのようなことをすれば、誰かに見られた時に面倒な事になるが、今のリュウトはそんな事全く考えていない。

いや、そんな事はどうでもいいと考えていた。

咲夜はいきなり抱き上げられて頭の中が真っ白になり、何かを考えていられる状況ではなかった。

それなのに、リュウトの温かさは肌でしっかりと感じ取っていた。

 

 

リ「飛ばすぞ、掴まってろよ」

 

咲「キャっ!」

 

 

いわゆるお姫様抱っこという姿勢の状態のまま、リュウトは星の海の中を泳ぐように飛び、一気に加速して上空へと昇っていく。

雲を突き抜け、空に星空以外何も映らない高さまで飛ぶと、リュウトはその場に留まり話をしだした。

 

 

リ「咲夜、俺達が初めて出会った時を覚えてるか?」

 

咲「え?はい、覚えてますけど・・・?」

 

 

何やら真剣な表情をするリュウトを見て、話に耳を傾けた。

 

 

リ「俺がこの時代に飛ばされてから初めて逢った人間は咲夜、君だったな。

あの時は心の底から安心させられたよ、地獄から手を差し伸べられたようだった。

あの時の俺には、君が天使に見えたんだ」

 

咲「そ、そんな大袈裟な・・・」

 

リ「大袈裟ではないさ。

実際、俺はこの時代で咲夜達と過ごして本当に救われたのだから・・・」

 

咲「・・・、」

 

 

物思いにふけるリュウトの顔には何処か悲しい雰囲気も醸し出されていた。

同じ幻想郷、仲の良かった者達と再会出来てもあちら側は自分の存在を知らない。

妖怪は何年経っても姿が変わらない種が多く、150年程度では姿は変わらない。

まさに自分という存在だけが世界から除外されたような気分だったのだろう。

もし、自分が同じような境遇に遭ったら?

咲夜は考えただけでも恐ろしくなった。

知り合いに会ったとしても、その知り合いは自分の知る者ではないのだから。

 

 

咲「あ・・・あの!私はリュウトさんの事絶対に見捨てませんから!」

 

リ「えっ?」

 

咲「リュウトさんは私の事をいつも助けてくれました!

異変の時だって、私、あの時本当に命を落とすところだったんです!

あの時は・・・」

 

 

春雪異変の時、咲夜が幽々子に殺されそうになった時に真っ先に助けに来てくれたのは他でもないリュウトだった。

諸事情で正体は隠していたが、声と雰囲気でなんとなく誰か解っていたのだ。

でも、確信が無かったから言えなかった。

だから今、伝えよう。

 

 

咲「ありがとう・・・」

 

リ「!咲夜・・・」

 

 

咲夜の目頭は涙で溢れる。

しかしそれは嬉しさの涙だ。

真っ直ぐとリュウトの目を捉える咲夜の眼差し。

それは、リュウトにある決心をさせた。

今まで言えなかった心の中で引っかかる想い。

今なら伝えられる。

 

 

リ「咲夜・・・俺は君の事が好きだ」

 

咲「ふぇ!?」

 

リ「君が欲しい。

君といつまでも一緒に居たい・・・」

 

 

漸く伝える事が出来た。

 

 

________________

 

 

遠い昔、リュウトがまだ小さかった頃、レミリアが一度だけ咲夜の事を教えてくれた事があった。

桜が舞う季節、紅魔館の裏庭に置かれた墓標にレミリアが花を添えているのをリュウトが偶然見てしまった時だった。

 

 

~リュウト幼少期~

 

 

リ「レミィお姉ちゃん、何してるのー?」

 

レミ「あらリュウト、いらっしゃい。

今はね、私の友を弔っていたのよ」

 

リ「お友達ぃ?」

 

 

墓標に置かれたダフネの花を見て、なんとなくその友というのが女性ではないかと想像した。

石板に彫られた文字は英語で、まだ小さいリュウトには理解出来なかったが、レミリアに読んでもらってその人が自分と同じ日系の名前なのだと理解出来た。

十六夜 咲夜、既に死後100年ほど経ってしまっているらしいが、レミリアの脳裏にはその人との思い出が今でも焼き付いているらしい。

 

 

レミ「それは楽しい日々だったわ、ちょっとおっちょこちょいな所もあったけどね。

今ではこうして花を添えて、帰ってくるはずも無いのに墓に話しかける事しか出来ない。

貴方にも合わせてあげたかったわね・・・せめて、貴方からもお花を添えてあげて頂戴」

 

 

渡されたのはレミリアが添えたのと同じダフネ、もといジンチョウゲだった。

その時は訳も分からず会ったことも無いその人の為に花を添えた。

 

 

リ「これで天国のその人もよろこんでくれるかなー?」

 

レミ「えぇ、もしかしたら私達のすぐ近くで笑ってくれてるかもね♪」

 

 

リュウトが微笑むと、レミリアもそれに応えて微笑みかえした。

 

 

________________

 

 

あの時墓の中に眠っていた人が、まさか目の前に生きた姿で現れるなんて夢にも思っていなかった。

しかも、その人に恋心を抱くなど誰が考え付くだろうか。

紅魔館に居候し数々の出来事があるたびにリュウトは咲夜に惹かれていったのだ。

ただ、その気持ちを伝えていいかどうか今まで迷っていた。

生まれた時代も生きる時代も全く違うのだから、もしかしたら未来の世界に帰る時がひょっとしたらあるかもしれない。

そんな時、彼女はどんな顔をするだろうか、そう考えると言い出す気持ちが無くなってしまった。

だが、そんな心配はどうやら要らなかったらしい。

 

 

咲「嬉しいです・・・私も貴方の事が好きでしたから」

 

 

突然の告白に少し動揺するも、咲夜も同じように彼に惹かれていた。

だが、彼女には少し不満があり、頬を膨らませながら不満をぶつけた。

 

 

咲「でも、もう少し早く私の気持ちに気付いてくれても良かったんじゃないですか?」

 

そう、咲夜は待っていたのだ。

彼が想いをぶつけてくれるのを。

何故自分からアタックしなかったのかというと、図書館に置いてあったとある一冊の本が原因なのだ。

タイトルは、ドキドキ☆彼と結ばれる100の方法、だ。

その本にはこう書かれていた。

告白は相手からされるのを待て!

リュウトへの恋心を自制できなくなり始めた咲夜が読み始めた本だったが、本のチョイスが何というか・・・独特だ。

 

 

リ「・・・色々悩んでいた自分が凄くバカみたいだな」

 

咲「フフッ♪でも本当にうれしいんですよ?

リュウトさんがやっと告白してくれたんですから。

私の中ではもう答えは決まってます」

 

 

咲夜はギュッとリュウトを両手で抱きしめ返し。心の中で決めていた答えを言葉にした。

 

 

咲「私、十六夜 咲夜は、博麗リュウト様を愛しております。

私の想い、どうぞ受け取ってくださいまし・・・」

 

 

無数の恒星の瞬きが見守る中、二人は抱きしめあいながら口づけを交わした。

何処までも広がる宇宙のように、二人の愛は大きなものだった・・・。

 

 

翌日から二人の距離が一気に縮まり、全員が不審に思ったのは言うまでもない・・・。




この二人まだ正式に付き合ってなかったこと忘れてました。
既に付き合ってるっぽい感じ出てましたけどね。


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外界編61話

個人的にあまり気に入っていない回です。
もっと咲夜とリュウトの絡みを書きたいんですがね、そうもいかないんですよ。
ではどうぞ。


グアムにはたくさんの観光名所が存在するが、リュウト達は島のショッピングストリートにやってきていた。

リュウトと紅魔館三人組はそのままショッピングモールの中へ入っていったが、その他は別行動をとっている。

島のメインストリートはホテル街となっていて、買い物も十分楽しめるが、やはり所詮はホテル街。

島一番のショッピングモールが連なる唯一の通りには勝てないのだ。

 

 

~ショッピングモール内~

 

 

レミ「リュウト!これもお願いね!」

 

咲「リュウトさん此方もお願いします!」

 

フ「これもね~!」

 

リ「おいおい!!まだ買うのか!?」

 

 

清算を済ませた商品が梱包された箱を山にして持ち抱える。

どんどん積みあがっていく箱に、レジの女性店員も目を見開いてそれを眺めていた。

レミリア達が上に放り投げた箱を上手い具合に積みあげていくと、店に買い物に来ていた他の観光客からは拍手喝采を浴びせられる。

既にてっぺんが見えないほど高くなったそれは、後もう少しで天井につくのではないかと思うほど高い。

 

 

ドサドサドサドサ!

 

 

客「オー、ブラボー!」

 

客2「ファンタスティック!」

 

 

パチパチパチパチ!

 

 

リ「はぁぁ・・・見世物じゃないぞ全く・・・」

 

 

余りにも高すぎてバランスをとるのも一苦労なのに、と心の中で愚痴りながらも、それを表に出さないのは彼の良いところだろう。

旅行に参加した女子が8割を占めているだけあって、買い物の時間はとてつもなく長い。

優雅に異国でのショッピングを満喫しているが、こういう場合は絶対男は荷物役を任される。

服にアクセサリー、お菓子に特産品と様々なものを買ったが、何しろ多すぎて困っていた。

店から出る時には箱の山はさらに高くなっていた。

 

 

リ「いい加減勘弁してくれ・・・」

 

 

人一人分はあるであろう高さまで積みあがった箱は、現地の人間も吃驚してしまう程だった。

高すぎて視界が塞がってしまっている為、咲夜が誘導しなければ歩くことすらままならない。

リュウトには悪いが、そのままホテルまで抱えたまま歩いてもらうことにした。

 

 

________________

 

 

その頃、霊夢を筆頭に海岸沿いの町の中を散策していた魔理沙達はある事に気付いた。

日本語表記の看板が至る所にあるのだ。

グアムはアメリカ領の島だが、時差が日本と1時間しか違わなかったり、日本人が多かったりするせいか、英語表記と日本語表記が一緒に書いてあることが多い。

殆ど日本と言ってもいいくらいだ。

 

 

妖「私達でも解る言葉で書かれているものが多いので助かりますね。

それにとてものどかな雰囲気で落ち着きます」

 

魔「そうか?私は結構騒がしいと思うぜ?

だってあんなのが四六時中街の中を走ってんだろ?」

 

 

魔理沙が騒がしいという理由、それは自動車だ。

アスファルトで舗装された道を歩いていると、時たま横を自動車が横切っていくのだが、そのエンジン音は聞きなれていない魔理沙にとっては騒音同然だった。

無論、霊夢達もそれは感じていたのだが、霊夢達が気になったのはそこではなかった。

 

 

霊「私はどっちかっていうとあの箱が後ろから出す煙みたいなのの方が嫌ね。

頭が痛くなっちゃうわ」

 

鈴仙「あんな原始的な乗り物を未だに使ってるなんて・・・あり得ないわ」

 

 

鈴仙に至っては車の存在自体を全否定する始末だ。

よほど車の排気ガスが嫌だったらしい。

 

 

ア「確かにこの綺麗な空気が台無しな感じがするわね。

科学も万能ではないって事よ」

 

 

今は比較的車通りの少ない道を歩いているが、先程までは通りの横を歩いていたので

本当に酷かった。

時刻ももうすぐ昼時になる1時間前といったところだし、ここいらで気分転換に何か食べることにした。

丁度歩き続きで腹が減る頃だ。

 

 

零「どこで食べようか・・・あれは何だ?」

 

 

零夜が道で見つけた店、そこにはこう書かれていた。

 

 

零「BBQハンバーガー?」

 

 

俗にいうファストフード店というやつだ。

木で出来たボロい空き家を改造したような佇まいのその店は雰囲気がそれっぽい。

しかし此処はアメリカ領、本場のハンバーガーは一味違う。

看板には、ボリューム満点の本場のアメリカンバーガーとでかでかと書かれていた。

だが、零夜にはハンバーガーという食べ物が一体どういったものなのか解らなかった。

 

 

零「何なんだこれは?」

 

ア「ハンバーガーの店みたいね、試しに入ってみましょうよ」

 

 

そういうとアリスは潮風が透き通る壁が吹き抜けの店内へ入っていく。

ギシギシと床が鳴るも、壊れそうな感じはしない。

店のカウンター裏のキッチンからは、鉄板で肉を焼く美味しそうな音が聞こえてくる。

食欲をそそる良い音だ。

全員の食欲を抑えるのがはもはや限界だった。

 

 

魔「もうここで食べようぜ!

私はもう限界だ!!」

 

妖「私もここが良いです、美味しそうな香がさっきから・・・」

 

 

まだ店に入ったばかりだというのに、挽肉の油が焼ける香が既に伝わってくる。

魔理沙と妖夢はそれの虜となってしまっている。

ホテルでビュッフェを食べてから大分時間が経過しているのだから仕方がない。

それに、腹が空いているのは魔理沙達だけではないのだから。

 

 

零「ここから歩いてまた何処に店があるか解らんし、此処にするか」

 

魔・妖「やったぁ!」

 

 

二人は手を取り合って大喜びする。

カウンターからはその様子をにやにやと眺める店主らしき人物が身を乗り出していた。

白人系の小太りの男性は日本語が解っているのかメニューを無言で取り出した。

 

 

男「Hey!何にするんだいお嬢ちゃん?」

 

魔「おぉ!おっさん私達の言葉解るのか!」

 

男「Ofcouse!」

 

 

初対面の人間にフレンドリーに接する魔理沙は店主と普通に会話しだす。

いきなりさっき会ったばかりの人間をおっさん呼ばわりする精神の図太さはかなりのものだろう。

 

 

魔「どれが美味しんだ?」

 

男「何言ってやがる、この店のハンバーガーは全部美味いぞ!」

 

魔「んじゃおすすめは何だ?」

 

男「おすすめか?

そうだな・・・お!良いのがあるぜ!

腹が減ったらこれを食えってくらいにな!」

 

 

何やらカウンターの下から紙を取り出し、魔理沙に見せびらかした。

紙にはイラスト付きで、エンパイアステートバーガーと書かれた10段異常積みあがったハンバーガーが書かれていた。

 

 

魔「おぉ!私これにするぜ!」

 

男「気に入ってくれたか!ハッハッハ!!」

 

零「俺もそれにさせてもらおう、非常に興味深い」

 

男「お?young boyもか?

やっぱ男はこれを食わなきゃな!嬢ちゃんに負けてられねぇもんな!」

 

 

高笑いしながら笑顔を見せる店主は厨房の奥さんに注文を作らせる。

アリスはチーズバーガーとフライドポテトのセット、霊夢はシーフードバーガーというのを頼んだ。

巨大バーガーを頼んだのは魔理沙と零夜の二人だけだ。

食べてからも歩くことを想定して鈴仙はベジタブルバーガーに落ち着き、妖夢は別メニューのフィッシュ&チップスをオーダーした。

だが食事をしていたら喉が渇くのは想定できるだろう。

そこで、ハンバーガーとは別でドリンクバーもオーダーした。

 

 

~10分後~

 

 

男「さぁ、おあがりよ!

おれのマイワイフ特製のハンバーガーだ!」

 

 

テーブルの上にはツインハンバーガータワーが聳え立ち、反対側に座っている人間の顔が見えない。

ナイフとフォークで食べるらしく、皿にセットで置かれていた。

エンパイアステートバーガーでなくとも通常サイズのハンバーガーがそもそもデカい。

チーズバーガーの大きさが某世界的有名ファストフード店のものと比べると4倍は優にある。

まさにアメリカンサイズだ。

 

 

ア「は・・・ハンバーガーってこんなに大きいものだったかしら?」

 

霊「さぁ?でも美味しそうじゃない?

冷めないうちに食べましょうよ!」

 

魔「霊夢の言う通りだぜ!ムグムグ・・・」

 

 

大きなハンバーガをほおばりながら美味しそうに食べる魔理沙を皆で笑いながら、全員で本場アメリカのハンバーガーの味を舌で感じると同時に、アメリカ人の胃袋の大きさを身をもって知るのだった。

ちなみに、魔理沙はハンバーガを食べ終わった後、店を出てから血相を変えて歩き続ける事となってしまった。




男って大体荷物持ちやらされますよね。
まぁ流石にリュウトの持ってた量は行き過ぎですけど。
でも女の子の荷物全部軽々持っちゃう男の人ってカッコいいですよね。
次回もお楽しみに!


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外界編62話

この小説のお気に入り件数が70を突破しました!
これほど多くの人が読んでくれていると思うととても嬉しいです!
ありがとうございます!

今回はとうとうあのキャラが人物として登場します!!
この物語にかなり関係が深いあの人です!
誰かは、、、わかりますよね?
ではどうぞ!!


~グアムレストラン~

 

 

リ「ングッ!モグモグ・・・ムシャ!」

 

レミ「そんなにお腹減ってたの?

いくらなんでも食べるスピード早すぎない??」

 

 

ホテルに荷物を置きに帰る前に街のレストランで昼食を摂る事にしたのだが、リュウトの食べる量が何時も以上に多い。

テーブルに置かれている料理の6割がリュウトの注文したものだ。

身長175cmの体格で勢いよく食べて続ける姿に咲夜も呆気に取られている。

 

 

フ「どうしたの?

いつもそんな量食べないのに突然こんなに・・・」

 

リ「あれだけ大量にモグモグ・・・物運んでたからモグモグ・・・」

 

 

口に物を入れたまま忙しなくしゃべるので、見かねた咲夜がそれを注意した。

 

 

咲「リュウトさん、食べながら話すのやめてください」

 

リ「モグモグモグモグゴクンッ!!了解した」

 

レミ・フ「「速い!?」」

 

 

一瞬で口の中の食べ物を飲み込んで普通に話だす。

余りの速さについ二人は声に出してしまった。

 

 

リ「そういえばホテルにこれを置いてきてからはどうするんだ?

今度は違う所に行ってみるか?」

 

咲「そうですね・・・どうされますかお嬢様?」

 

レミ「と言われてもね・・・私もここの地理が詳しい訳じゃないし。

しいて言えば・・・そうね、あの車というのに乗って少し遠くに行ってみたいわね」

 

 

街の中を走る自動車を見つめながらそう呟く。

その願い、叶えてやろうではないか。

 

 

リ「よし、ならホテルに戻ったら乗ってみるか」

 

レミ「え?乗れるの?」

 

リ「まあな」

 

 

そうと決まれば話は早い。

リュウトはさっさと食事を済ませてホテルに戻る時間をできるだけ早くすることにした。

 

 

 

__________________

 

 

レミ「わぁ!綺麗ねぇ!」

 

リ「どうだ?来て良かったろう?」

 

 

ソレダット砦。

かつて冒険家マゼランが上陸したと言われる岬を一望できるそこは、まさしく絵画のようだと観光客に語り継がれている。

ホテルからタクシーに乗って1時間ほどかかる場所にあるが、輝く海原から吹く南風が心地よく、自動車の閉鎖的な狭さからの解放感は最高だ。

運よく天気に恵まれ、日傘を差しながら果てしない水平線を眺めながら風に白いスカートがなびかせるレミリアの姿もまた、一枚の絵画のようであった。

 

 

フ「本当に綺麗だね~、此処で弾幕ごっこ出来たら最高なんだけどなぁ」

 

咲「フラン様、それではこの景色が台無しとなってしまいますよ?」

 

フ「あ、それもそうだね」

 

 

普段幻想郷で弾幕ごっこをしていても周りが荒地になり兼ねないのに、こんな綺麗な場所でやったら忽ち美しさが無くなってしまうだろう。

それよりも、フランはリュウトに先程から気になっていたことを尋ねた。

 

 

フ「ねぇリュウト、あのボロボロの建物は何?」

 

 

フランが指刺した先には石台の朽ち果てた建物があった。

その横にはレプリカの大砲も設置されている。

ガイドブックをペラペラと見ながらリュウトはそれについての記述を述べた。

 

 

リ「・・・スペイン統治時代に作られた建物だそうだ。

スペインというのはヨーロッパ南西部にある国家だな。

一時はその国が世界を支配していた時期があったんだ。

この建物はその時の名残だな。

ソレダット砦という名前もそこから来ているらしい。」

 

フ「へぇ!ちなみにその時代ってどれくらい昔の話?」

 

リ「確か・・・大体500年ほど昔だったか?」

 

フ「なんだ、お姉ちゃんが生まれたくらいじゃない。

大したことないね」

 

リ「それは妖怪の目から見れば人間の歴史なんてそんなものさ」

 

 

しかいそうなると紅魔館は一体いつから建っているのか謎となる。

レミリアは吸血鬼の貴族出身のお嬢様だから生まれた時には既に紅魔館が存在していたかもしれない。

だとすると紅魔館は500年以上昔から存在していることとなる。

それなのに未だにあの形を維持し続けているとは、恐るべし紅魔館。

 

 

レミ「あれは私の誕生祝いで建てられたものよ。

形を保ってるのはパチェのお陰、パチェが来る前はあそこまで綺麗じゃなかったわ。

フランが暴れればあちこちがドミノ倒しみたいに壊れてたし」

 

リ「いつの間に・・・というか心の中で考えてる事が何で解るんだ?」

 

 

いつの間にか隣に現れて話しかけるのは心臓に弱いからやめてほしい。

あと、心の声は気付かぬうちに声に出てしまっていたらしい。

 

 

その後も当時を再現した建物の見学や、放し飼いとなっている水牛に餌をやったりとゆったりとした時間の流れを過ごす。

ヨーロッパの建築を再現してせいか紅魔館のデザインと似ている部分が多く、レミリア達も慣れ親しんだ感覚で観光を楽しんでいた。

 

_______________________

 

 

咲「良い所でしたわね、空気も綺麗でとても有意義な時間でしたわ」

 

フ「あんなところにもう一回行きたいね~、まだまだ知らない所がたくさんあるんだなぁ」

 

 

日も沈みかけ、砦跡からホテル周辺の街へ戻って来たリュウト達は街灯で明るく照らされたアスファルトの上を歩いていた。

まだ日は出ているが、暗くなると街の雰囲気がガラッと変わる。

若者たちがクラブで騒いだり、バーで酒を楽しんだりと一気に夜の顔を出すのだ。

 

 

レミ「全く煩いわね、さっさとホテルに戻りましょうよ」

 

リ「人間はこの膨らんだ巨大な社会を皆で支えているんだ。

だからこうしてするべき事を終えれば皆で騒いで心をスッキリさせるのさ」

 

咲「それだけ大変という事ですわ」

 

フ「その中で幸せを見つけるから人間なんだよ」

 

レミ「人間も楽じゃないわね」

 

 

宿泊先のホテルはもう目と鼻の先だ、10分も歩けば到着するだろう。

帰り道である2車線の道路の脇を歩いていると、真っ暗な脇道から何やら言い争う声が聞こえてきた。

男と女の声だがどちらも若い声だ。

気になった4人がその脇道を覗き込むと、3人程の堅の大きい男達が華奢な女性を囲み、腕を掴んで攫おうとしていた。

女性の年齢は10代後半から20前半で、男達はそれよりも上だろう。

三人組は現地の英語を話しているが、女は日本語を話している。

どうやらこの女性は、道を歩いていたら人攫いに遭ってしまってたようだ。

 

 

女「放して!警察呼ぶわよ!」

 

男「来るわけねえだろこんな場所に、それにどうやって呼ぶんだ?

お前のケータイはぶっ壊しちまったぜ?」

 

女「クっ!」

 

 

サングラスをかけた黄色いシャツを着た男は女に壊れた携帯電話を見せる。

暗くて良く見えないが、赤い髪の女はケータイを壊され助けも呼べない危険な状況らしい。

抵抗するも力が段違いで相手は微動だにしない。

向こう側の通りには大きなワゴンタイプの車が見える。

あれに乗せて遠くまで攫う気だ。

 

 

レミ「あいつら・・・少し痛い目に合わせてやろうかしら?」

 

咲「あれ?リュウトさんは?」

 

レミ「え?」

 

 

さっきまで後ろにいたリュウトが何時の間にか姿を消してしまった。

二人が後ろを振り返って何処かと探していると、フランがリュウトを見つけてあそこだと指を指した。

 

 

フ「二人とも!あれ!」

 

 

建物の塀の影からフランが指を指した先にリュウトの姿はあった。

目を離した隙に三人組の中に単独突入しているではないか。

 

 

リ「おい」

 

男2「あぁ?何だおまえ?」

 

男「はっ!ジャップかよ!

有色人種が俺達に何の用だ??」

 

 

如何にも見下しているような言動で嗤う三人。

女を連れて行こうとする男の腕を利き手で掴んで睨みつけると、相手も同じようにリュウトを睨みつけた。

だが、その表情は一瞬にして崩壊することとなった。

 

 

グググッ!

 

 

男2「うっ!ッグああああああ!?」

 

男「どうした!?」

 

リ「・・・、その女性を離せ」

 

 

ググググッ!!

 

 

右手に力を入れ、握力で男の腕をギシギシと圧迫していく。

人間を遥かに超えた超人的な筋力の前に男は苦悶の表情を露わにし、痛みに耐えれずひざまずくと女を掴んでいた左手を離した。

それを確認すると、リュウトも力を抜いて男を解放した。

 

 

バッ

 

 

男2「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、」

 

女(助かった!でも誰だろう?)

 

男3「こ、こいつ何しやがったぁ!?」

 

男「ケンポーの使い手か!?」

 

 

腕力だけで大男をねじ伏せたリュウトを只者ではないと確信した男達。

それもその筈、リュウトは神の血を引いているのだから波の人間が太刀打ち出来る筈がない。

武器を持ってきても無意味だろう。

ただそれを目の前の彼らに言って通じるわけがない。

男たちはリュウトを拳法の達人か何かと勘違いしているらしく、まだ勝機があると考えているようだ。

 

 

男「全員でかかれば絶対勝てる!

やっちまえぇ!!!」

 

リ「下がっていろ!」

 

女「はっはい!」

 

 

女性を自分の後ろへ下がらせ、先頭の男の額にデコピンをする。

あまり大きな力を使うと相手の体が吹き飛んでしまう恐れがあるからこれくらいがちょうどいいだろう。

走り向かってきていた男はただのデコピンで勢いを失い尻もちを打ってのたうち回る。

リュウトの図り知れないパワーがこれで理解出来ただろう。

 

 

男「痛っっってぇぇぇぇぇぇ!!??」

 

男3「な!なんだこいつ!?」

 

男2「ただのデコピンで人間吹き飛ばしやがった!?」

 

 

予想以上の力の差に驚愕し、足が震えている。

漸く逃げる気になったか・・・。

だがこれでもうこんな悪さもしない事だろう。

 

 

男「クッソ!逃げるぞ!

敵う相手じゃない!」

 

男2「畜生!やっぱり日本人は空手の達人ばっかだったのか!?」

 

男3「ファッキン!覚えてやがれ!」

 

 

足早にその場から立ち去り、用意していたワゴンに急いで乗り込んで逃げていく。

追いかける理由も無いのでそれを放っておくと、助けてくれてありがとうと後ろの女性が礼を言った。

 

 

女「貴方とっても強いのね!

好きになっちゃったわ!私の泊まってるホテルまで来て!

お礼をするわ!」

 

リ「悪いがその言葉だけ受け取っておく。

俺には最愛の人がいるんでな・・・って。

アンタ・・・何処かで見たことが・・・あ!」

 

 

偶然通りかかった車のライトで一瞬だけ照らされた女性の顔に見覚えがある。

記憶を遡り、似た顔の人間を探すと、答えは直ぐに出てきた。

 

 

リ「アンタまさか、岡崎夢美か!」

 

夢「あら?知らなかったの?

てっきり知ってるから助けられたのかと思ってた」

 

 

なんてことだ、まさかよりによってこのような場所で出会ってしまうとは。

科学が進歩しすぎたせいで起きた最悪の未来。

その科学をそこまで進化させてしまった張本人とも言うべき存在。

いずれこの人物は未来を絶望へと変えるだろう。

みてくれは科学者には全く見えない、ただのオシャレが好きな若い女の子といったところだろう。

 

 

リ「・・・一旦ここから離れるぞ」

 

夢「え、えぇ」

 

 

こんな暗い脇道で話すことも無いだろうと、一先ず岡崎夢美の手を引っ張り大通りに出る。

騒ぎが治まると隠れている意味も無くなった三人がひょっこり壁の影から出てくる。

脇道から出てきて明かりで照らされたレミリア達と対面すると、夢美は何かを悟ったような顔をし、不気味に笑いながら彼女たちに言った。

 

 

夢「貴方達・・・。

あぁ、なるほどね、それならあれほどの力を持っていても可笑しくないわ。

フフッ遠路はるばるこんなところまで良く来れたわね。

どう?外の世界の居心地は。

幻想の住人さんたち?」

 

リ・咲・レミ・フ「!!!」

 

 

何故幻想郷の存在を夢美が知っているのか。

そして、この女は一体何を考えているのだろうか。

この時、四人は知る由も無かった・・・。




何故教授が幻想郷の存在を知っているのか、それは次回明かす事にします。
それと夢美教授は何かそれ以外にも知っています。
それが何なのかも次回明かされます。
色々と伏線貼りましたからねー、活用しなきゃダメですよね!!


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外界編63話

これで外界編は終わりです。
この小説は何故こうもシリアスに走るんでしょうね?
冒頭では既にグアムから帰ってきています。


リ「また歴史が変わった、、、か」

 

 

旅行から帰ってきて丸一日が経とうとしていたこの日、リュウトは紅魔館の自室で椅子に腰かけながら一人、ため息をつきながら岡崎夢美との会話を思い出していた。

正直侮っていたのだと思う。

深層心理が全く見えない、紫とはまた違う胡散臭さを持った印象だった。

対談をして全てを明かされても尚、何かを隠しているのではないかと疑ってしまう程だ。

 

 

リ「もう会いたくはない、、、かな」

 

 

リュウトの正直な気持ちはそれだった。

彼女との会話の内容は霊夢らには殆ど伝えていない。

話したところで霊夢達の反応は大体予想が付くからだ。

あれは今から数十時間前の話だ。

 

___________________

 

 

~宿泊部屋~

 

 

夢「いや~悪いね~、上がらせてもらちゃってさ」

 

リ「御託はいい。

それよりも、、、何故お前が幻想郷の存在を知っているんだ」

 

 

眼光を尖らせ、椅子にふんぞり返る夢美を威圧するが、おおこわい、と彼女は笑い流す。

部屋には夢美とリュウトの二人だけ、その方が話しやすいと彼女が言うので仕方なくそうしている。

ヘラヘラとした掴みどころの無い態度のまま、岡崎夢美は自分の知っている全てを明かした。

 

 

夢「研究の一環でね、異世界の存在の証明をしようとしていたんだ。

丁度長野県辺りだったかな?

妙な波を発している地域というか、、、土地を発見しちゃったんだよね」

 

 

波を発している、、、間違いなく博麗大結界の事だろう。

科学の力で干渉出来るようなものではない筈なのだが、、、、。

第二のトマス・エジソンと言われる理由がそこにはあった。

これだけの事を可能にする頭脳を持っているのならば、この年代から科学の進歩が飛躍的に向上したのもうなずける。

だが、リュウトの居た世界の歴史では岡崎夢美が幻想郷にやって来たという記述は無い。

恐らくこれも自分がこの時代にやってきてしまったせいなのだろうと、そう彼も考えていた。

しかし、夢美が幻想郷の存在を知っていたのは一方的なもので、決して幻想郷というものが存在している事を知っているという事ではなかった。

彼女は、科学の力で幻想郷を発見してしまったのだ。

これが何を意味するのか。

そう、幻想郷の存在が外の世界に晒されてしまうのだ。

そうなれば妖怪などの人間に害を及ぼす種族は真っ先に狙われるだろう。

 

 

リ「おい、まさか幻想郷の存在を外の世界に公表する気じゃないだろうな」

 

夢「公表したところで誰も信じてくれないでしょ?

あれは私の個人的な興味からやったことだし。

いやぁ~でもホントに実在するとは!

正直驚いたよ!」

 

 

興味本位で結界に干渉されるなど溜まったものじゃない。

行き過ぎた科学は魔法をも超越するとはよく言ったものだ。

思い返せば、何故夢美は自分達を幻想郷の住人だと解ったのだろうか。

 

 

夢「あんな事出来る人間なんてこの世に存在しないわよ。

デコピン一発で大の男を吹き飛ばすなんてさ。

あの男の倒れ方を見ればわかるわ。

驚いて尻もちをついたんじゃなくて、額に大きな衝撃を受けた事によって物理的に飛ばされていた。

たかがデコピンよ?

貴方の細腕でそんな事が出来るとは到底思えない。

ま、半分冗談で言ってみたんだけどね~」

 

 

またまた笑ってそう言うが、あの一瞬でここまで推理していたとなるとかなりの洞察力を持っていないと不可能だ。

やはり侮れない。

 

 

夢「とにかく!貴方達に執拗に関わる気は無いから安心してよ。

あ!でも私が異空間に行ける装置を作った時はソッチに遊びに行くからその時は宜しくね♪

そろそろ帰らなきゃいけないから私はこれにて失礼するよ~」

 

リ「待て、まだ話は終わっていないぞ」

 

夢「あんまりしつこい男は女に嫌われるよ?

女の私が言うんだから間違いないわ。

、、、貴方とはもう一度何処かで会う気がするしね」

 

 

そう言って彼女は部屋から出て行ってしまった。

またどこかで会う気がする。

未来を見透かすように彼女が最後に放ったその言葉は、何故か実現してしまうような気がして背筋がゾッとした。

 

 

___________________

 

 

リ「奴が興味本位で始めたと言っていた研究、何処か引っかかるな、、、。

本当に{個人レベルの研究}なのか?」

 

 

リュウトはどうしてもその言葉が引っかかるようだ。

夢美は幻想郷が存在するという確定的な証拠を見つけてしまった。

なら、結界を越える技術を作り出してしまうのではないか。

そうなれば、彼女は個人レベルの開発ではなく、大量の人員を総動員させて早期開発をしかねない。

科学の進化の為なら出し惜しみをしない生粋のサイエンティストなのだから。

 

 

リ「、、、胸騒ぎがする。

何もなければいいんだがな」

 

 

考えていても仕方が無い。

彼は背もたれからゆっくりと起き上がると、部屋の照明を消して部屋から出て行った。

 

 

__________________

 

 

~岡崎邸宅~

 

 

同時刻、夢美の自宅。

彼女は研究室に置かれた一つのモニターを眺めながら頬を歪め笑った。

 

 

夢「フフッそれっぽい事言ってごまかしちゃったけど、実はもう結界を越える装置は完成してるんだよね~。

本当は私が出向いて行きたかったんだけど、面白いもの見つけちゃったからそれを送り込んでみようかな?

あっちの世界の住人たちはどうやって戦うんだろうなぁ。

データは無人機を送り込んでを取らせればいっか」

 

 

モニターには無限に広がる宇宙空間と、歪な形の巨大な小惑星が映っていた。

 

 

 

 

 

 

 




またまた伏線が貼られましたね。
まだ話に出す気はありませんが、異変にするつもりです。
次回はまた時間軸が旅行中に戻りますが、幻想郷サイドの話です。


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クリスマス特別編 小さな吸血姫への贈り物

クリスマスなので特別企画で話を書きました!
計画自体は半年以上前から考案されていたものなので漸く投降出来る時期になった話です!


12月24日、一年に一度のこの日になるととあるお屋敷のお嬢様はある悩みに頭を抱えていた。

 

 

~紅魔館、レミリアの部屋~

 

 

レミ「とうとう今年もこの日が来てしまった・・・どうしよう~(泣)」

 

 

レミリアは自分の部屋で椅子に体操座りしながら頭を抱えて泣き言を吐く。

何故そんなことになっているのかというと、事の始まりは三年前の12月24日に遡る。

 

 

_________________

 

 

~3年前、12月24日~

 

 

クリスマスイブの夜。

レミリアは暖炉の近くで椅子に腰掛け、パジャマ姿でカーディガンを羽織りながら本を読んでいた。

他に誰も居ない部屋の中には薪がパチパチと燃える音だけが耳に入ってくる。

パチュリーの図書館から借りてきた本は外の世界の有名なSF映画らしいが、レミリアはそんなこと知らずただ気になったから借りてきただけだった。

しかしこれが意外と面白く、既に三冊あるうちの二冊目まで読んでいた。

彼女が次のページをめくろうとした時、部屋の扉が勢いよく開かれる。

と同時にパジャマ姿の小さな女の子が大きな赤い靴下を抱えて走り寄って来た。

 

 

フ「お姉ちゃん!あのねあのね!

私サンタさんにお手紙出したよ!

これで明日はサンタさん来てくれるかなぁ!」

 

レミ「大丈夫よフラン♪

フランは良い子だからきっとサンタさんもプレゼントくれるわ。

だから心配しなくても大丈夫よ」

 

フ「ほんと!?早く明日の夜にならないかなぁ!」

 

レミ「フフフ♪」

 

 

跳ね跳びながら明日が待ち遠しいと言うフランの顔は笑顔で満ち溢れていた。

毎年クリスマスになると夢を壊さないようにレミリアがサンタクロースの代わりにフランの枕元にある靴下にプレゼントを入れてきた。

フランが未だにサンタクロースを信じているのはこの為だ。

だが容姿の問題で昔は背が高く変装してもあまり違和感が無い美鈴がこれをやるようにしていた。

今まで一度も失敗をした事が無いので変装する意味も無いのだが、もしもの言い訳の為に一応衣装を一式そろえている。

メイドとして咲夜がやって来てからはこの役割は咲夜に受け継がれていた。

しかし、今年到頭悲劇が起きてしまった。

 

 

~フランの部屋~

 

 

フ「くー・・・くー・・・」

 

 

照明を消した真っ暗な部屋の奥。

寝息の聞こえるベッドの横に大きな靴下をぶら下がっている。

起こさないように忍び足でベッドに近付き寝ている間にこっそりその中にプレゼントを入れるのだが、今年のプレゼントは箱が大きく靴下に入らなかったため諦めて枕元にプレゼントを置くことにした。

咲夜はそっとベッドに近づいてプレゼントを枕元にそっと置く。

その時シーツが箱を置いた時にガサッという音を立ててしまい、眠りが浅かったのかフランが目覚めて咲夜と目が数秒合ってしまった。

 

 

フ「・・・あれ?咲夜?」

 

 

ヴォン

 

 

不味いと感じた咲夜は時間を止めて急いで逃げた、まさか起きるとは思っていなかった為、髭をつけていなかったのだ。

顔を出していたせいで一瞬でバレてしまい、サンタクロースの正体は咲夜だったとバレてしまった。

重い足取りでレミリアの部屋へ戻ってきた咲夜の表情は暗い。

 

 

ガチャッ

 

 

咲「お、お嬢様・・・」

 

レミ「あ!咲夜!

おかえりなさい。

・・・どうしたの?」

 

咲「そ、それが・・・」

 

 

咲夜が経緯を話すと、喜びの表情から一気に重苦しいものへと一変した。

 

 

レミ「そ、そんな・・・」

 

咲「申し訳ありません!私が不出来なばかりにこのような事に!」

 

 

咲夜は泣きながら謝った、自分はとんでもない事をしてしまったと。

しかしレミリアは寛容な心でそれを許した。

 

 

レミ「まぁ・・・これで良かったのかも知れないわね。

フランももう子どもじゃないんだし・・・。

ここいらで現実を知るってのも大事なのかもね・・・」

 

咲「お嬢様・・・」

 

 

無理矢理作った笑みは悲しみで溢れていた。

もうあのフランの顔が見れないのか・・・と。

しかしそれ以外にまた別の問題も浮上してきた。

それは明日フランにどう説明するかだ。

流石にいきなりサンタさんは居ませんでしたと現実を突きつけるのは余りにも無慈悲。

だからと言って嘘をつくわけにもいかない。

次の日の朝、フランは気まずそうな顔をしながらレミリアの前に現れた。

 

 

フ「お姉ちゃん・・・ごめんね」

 

レミ「え?何が?」

 

フ「昨日ね・・・見ちゃったの・・・。

咲夜がサンタさんの格好してプレゼントを置いてくのを」

 

レミ「そ・・・それは・・・」

 

 

気付いていた。

やはり昨日の時点で全て解ってしまったのだろう。

言い訳をしようとする口をふさぐようにフランは話を続けた。

 

 

フ「いいの。

私がサンタさんはいるって思い込んでたからお姉ちゃんが私のために今まで頑張ってきてくれたんだね・・・」

 

レミ「ち、違うのフラン!それは!」

 

フ「私これからプレゼントは要らないよ・・・。

もうお姉ちゃんに迷惑かけないから」

 

レミ「フ・・・フラン!」

 

 

ギィ・・・バタン。

 

 

聖なる夜が訪れる日、フランは二度とサンタクロースを信じなくなった。

 

 

________________

 

 

レミ「一体どうすればいいの・・・」

 

 

レミリアはあの日からずっと悩んでいた、あの悲しそうなフランの表情をまた明るく出来ないかどうか・・・。

だが、それに救いの手を差し伸べるように彼女の目の前に救世主が現れた。

 

 

リ「レミリア、館の掃除全て終わらせたぞ」

 

 

紅魔館で唯一の男、リュウトだ。

リュウトなら男だし身長も高くサンタクロースに変装させるにはもってこい。

もしかしたらどうにかなるかもしれない。

 

 

レミ「リュウト!あなたにしか頼めない事があるの!協力して!」

 

リ「ん?なんだかよくわからんからとりあえず説明してくれ」

 

 

少女説明中

 

 

リ「なるほどサンタクロースかぁ・・・」

 

レミ「そうなの、何とかお願い出来ないかしら」

 

 

取り敢えず椅子に座って話を聞き、内容は理解した。

必死に頼み込むレミリアに承諾してしまいそうになったが、問題はそこではない。

 

 

リ「それは良いんだがまたバレないか?同じ事の繰り返しだと思うんだが」

 

レミ「それは心配しなくていいわ、用はわからなくすりゃいいんだもの、変装を完璧にすればそうそうバレるものじゃないわ」

 

 

要は完璧な変装をしていけば解る事は無いだろうと言う事らしい。

男の体格なら違和感は無いだろうし、部屋が暗ければ顔は見えない。

 

 

リ「ならいいんだけどよ、プレゼントはどうすんだ?」

 

レミ「・・・まだ用意してない」

 

リ「・・・衣装は」

 

レミ「ま、まだ・・・」

 

リ「ハァ・・・仕方ない。

今から用意するか」

 

 

期限は今日の夜。

急いで準備に取りかかった。

衣装は採寸を合わせて特注で咲夜が作ったのだが・・・。

 

 

レミ「ほぼ完璧ね・・・誰だかわからないわ」

 

咲「似合ってはいますが・・・ここまで解らないと少し怖いですわ」

 

リ「自分で作っておいてその反応は何だ!?」

 

 

試着をさせたところ、本人だと解らない程の出来のものが完成した。

作った本人も少し引いてしまう高クオリティだ。

後はプレゼントなのだが・・・。

 

 

レミ「プレゼントは私が用意するわ。

二人はフランに気付かれないように準備を続けて頂戴」

 

リ・咲「?」

 

 

二人は目を合わせて首をかしげるが、レミリアを信じてそれ以上は何も口を出さなかった。

そしてその日の夜、本番がやって来た。

 

 

_________________

 

 

キィィ・・・。

 

 

リ「・・・よし。

寝てるな」

 

 

真っ暗な部屋に入ると囁くような寝息が聞こえてくる。

完全に寝ていることを確認すると、サンタ衣装に身を包んだリュウトは抜き足でカーペットの上を歩きながらベッドへ近付く。

抱えて運ばなければいけないほど大きな水色の袋に入ったプレゼント、中に何が入っているのか運んでいる本人でさえ全く想像がつかない。

解っているのはただ一つ。

間違いなく枕元に置けない程大きく、そして重い物だという事。

 

 

リ「ベッドの下にプレゼントを置いて、後は起こさないように出て行くだけか・・・」

 

 

割と重い袋をそっと下ろし、ふと、フランの寝顔を覗く。

ぐっすりと寝ているのか、口が半開きになって八重歯が少し上唇から見えている。

こうしてみると歳相応の可愛らしい普通の女の子だ。

400年生きているとは思えない。

こうしている間にも起きてしまったら元も子も無いのでさっさと退場する事にする。

 

 

フ「う・・・うぅ~ん・・・」

 

リ「!?」

 

 

突然呻り寝返り打つフラン。

・・・どうやら寝返りを打っただけだったらしい。

無意識とはいえ心臓に悪いからそういうドッキリはよしてほしいものだ。

胸を撫で下ろし、今度こそ出て行こうとしたその時だった。

 

 

フ「・・・だぁれ?」

 

リ「!!!???」

 

 

毛布がムクリと起き上がり、寝ぼけたフランが目をこすりながら此方に問いかけてきた。

最も恐れていた事が今、現実に起きてしまった。

ここで一歩間違えば今度こそ本当にフランはサンタクロースの存在を信じなくなるだろう。

一秒が1分に感じられる程時間がスローモーションで進んでいるように感じる。

必死に考えた結果、リュウトが思いついた最善策は・・・。

 

 

リ「メリークリスマス、フランドール」

 

 

自分の持つ最大の演技力を使ってサンタクロースを演じる事だった。

声もそれらしくしたつもりだったが、実在しないものをどうやって演じればいいのか解らず、ほぼ地声となってしまっていた。

これは気付かれたのではないか?

息を飲むリュウトだったが、彼女は予想外にもそれを信じた。

 

 

フ「ほ・・・ホントにサンタさん?」

 

 

リュウトの渾身の演技とこうクオリティな変装によって完全にサンタだと信じ切ったフランは驚きに目が冴えてもう一度サンタクロースに問ただした。

もうこれはやりきるしかない。

サンタクロースを演じ切るしかない!

 

 

リ「フォッフォッフォ。

皆には内緒だよ?さぁ、良い子は眠る時間だ」

 

フ「うんっ!」

 

 

こうしてリュウトクロースはフランを寝かしつける事に成功し、一時の夢の時間を与えたのであった。

そして次の日の朝、フランがカーテンから差し込む日の光で目覚めると、ベッドの下に大きな水色の包を見つけた。

 

 

フ「これ・・・昨日の夜のサンタはホントだったんだ!」

 

 

カーテンを開け、包を開けると中には大きな真っ白のミシンが入っていた。

 

 

フ「凄い!おっきなミシンだ!!」

 

 

それはレミリアが裁縫をしているフランの姿を見て、三年前にクリスマスプレゼントとして購入していたものだった。

サンタクロースを信じなくなってから渡す事は無いだろうと思っていた代物だったが、漸く日の光を浴びる時が来たのだ。

チルノ達と遊ぶようになってからちょくちょく人里へ足を運ぶようになったフランは裁縫屋に置かれたミシンに憧れを抱いていた。

それも相まってか本格的なミシンが手に入ったフランは大喜びだ。

 

 

咲「フラン様、起きていらしたのですか?」

 

フ「あ、咲夜」

 

 

いつもは自分が起きる前に起こしに来るはずの咲夜が遅れて起こしに来た。

自分が起きるのが早かったのかと考えたが時計の無いフランの部屋では時間を確認出来ない。

ちなみにフランが起きた時間はいつも通りの時間、咲夜はわざと時間を遅らせてきたのだ。

プレゼントを開けるのを待つために。

 

 

咲「お着替えをお手伝いさせて頂きますゆえお部屋にお邪魔しても宜しいでしょうか?」

 

フ「ち!ちょっと待って!

・・・、、良いよ!」

 

咲「失礼いたします」

 

 

いつも通りフランは鏡の前の椅子に座り、咲夜にブラッシングをしてもらってから着付けを行う。

少し顔がにやけてしまって咲夜に何かあったのかと聞かれたが、フランはそれを誤魔化して答える。

サンタクロースとの約束を守っているのだ。

真実を全て知っている咲夜はフランの様子を見て作戦が成功したのだと確信した。

 

 

_________________

 

 

~食堂~

 

 

レミ「フラン、何か良いことでもあったの?

そんなに笑顔作っちゃって」

 

フ「えへへ~、何でも無いよ~♪」

 

 

食事中もニヤニヤが止まらないフランは心の底から喜んでいるのだろう。

リュウトの姿を見た事が嬉しい誤算となったらしい。

あそこまで頑張った甲斐があったというものだ。

 

 

咲「リュウトさん、上手く行ったみたいで良かったですわね」

 

リ「あぁ、人生初めての物まねをさせられたがな」

 

パ「リュウトが物まねねぇ。

少しどんなものか気になるわね」

 

リ「よしてくれ・・・もうたくさんだ」

 

 

耳打ちで話す三人は、二人の姉妹が楽しそうに笑いながら話しているのを眺めていた。

親友のパチュリーからしてもそれは喜ぶべきものらしい。

 

 

レミ「よし、今日はクリスマスだし!

パァーっと豪勢にいきましょっ!」

 

 

その日の夜、紅魔館では今までに無いほどの盛大なクリスマスパーティが開かれた。

ツリーやろうそくで飾り付けられた部屋の窓の外から誰も気づかなかったが、トナカイに引っ張られたソリが飛んでいたのは此処だけの秘密の話・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




またレミリア?と言いたい人もいるとは思いますが、大分前から考えていたものなので仕方ないのです。
最後に出てきたトナカイとソリ?そんなもの決まってるじゃないですか。
まだ純粋な心を持ったフランとお姉ちゃんしてるレミリアを書きたかったんです!
結局リュウトが全てかっさらってったし美鈴とか出てないし紅魔館の話としてはあまり良い出来ではないですけどね。
美鈴の話は近いうちに書こうと考えています。
では、メリークリスマス!!
次回もお楽しみに!


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64話

なかなか話が思い付かず悩みに悩んだ結果このようなものになりました。
ただちゃぶ台越しに二人でしゃべるだけの話です。
あまり面白くないかも知れませんがご了承ください。


~博麗神社~

 

 

響「いらっしゃいユカ姉!

さっき掃除したばかりだから綺麗だよ!」

 

紫「あら優秀ね。

霊夢にも見習わせたいわ」

 

 

今代の巫女の私生活にため息が出つつも彼女はほくそ笑みながら玄関で靴を脱ぎ、居間へと上がっていく。

巫女の代理としてやって来た翌日、約束通り紫がスキマ経由でやって来た。

今まで永遠亭の中から一歩も外に出ていなかったせいで殆ど知り合いが居ない響華の為に話相手にやってきてくれているのだ。

敷かれた座布団に座ると紫は面白いように上品に口元を隠しながら笑った。

 

 

紫「私は貴女と知り合いじゃなくても貴女にとっては私は姉のような存在・・・。

ウフフ♪何だか不思議な気分ね。

貴女は私の事を色々知っているのに私は貴女の事を何も知らないんだもの」

 

響「そう?でも私にとっては未来でも過去でもユカ姉はユカ姉だよ」

 

 

先に座っていた響華は湯呑に口をつけながらまったりと居間でくつろぎながら話す辺り、元居た神社のように直ぐに馴染めたようだ。

ところで、未来の世界ではとっくに廃れてしまったらしいが、弾幕ごっこというものをご存じだろうか?

幻想郷で妖怪などが人間を蹂躙出来ないようにするために対等な立場で決闘を出来るようにするために布教中の戦いごっこ遊びである。

今日はそのルールを響華に理解してもらう為にやって来たというのもある。

 

 

紫「未来の世界では一応弾幕ごっこが普及したみたいね。

でも廃れちゃったみたいね・・・、。

殺しあわなくていいように作ったルールなのに・・・」

 

 

現在は実力者を筆頭に普及しているらしいが、実際はほんの僅か。

下級妖怪は未だに人間を襲うし、異変だって殺し合いになる事が多々ある。

実情はかなり厳しいものだ。

霊夢だって異変を解決する時、殺す気でかかられたら再起不能になる程懲らしめる。

戦った殆どの相手は生きて霊夢の知り合いとなったりしているが、下級妖怪となると懲らしめるだけでは抵抗を続けてくる。

 

 

響「私も名前は聞いたことあったけど、弾幕ごっこ自体をやった事はないね。

大体は殺し合いだったよ。

懲らしめるだけじゃ何も聞かなかったからね」

 

紫「そう・・・」

 

 

とても残念そうな顔でその話を黙って聞いていた紫は胸が痛くなった。

弾幕ごっこを普及させたところで結局殺し合いは終わらない事が分かってしまったからだ。

彼女は目を閉じて緑茶を喉に通すと、一つため息を吐く。

その時、響華がとある質問を紫にぶつけてきた。

 

 

響「そういえば前から少し気になってたんだけど、妖怪って死んだら人間みたいにあの世に逝くの?」

 

 

人間が死んで肉体から魂が抜けると、三途の川というところを渡って閻魔大王に生前の行いを見られ、天国に行くか地獄に行くか決定される。

人の恐怖心が元の妖怪はあの世に逝くのだろうか?

疑問はそういうものだった。

これは例外があるが、紫は詳しく説明をしてくれた。

 

 

紫「基本的にあの世に逝くわ。

大体の妖怪は生前の行いが良くないから地獄に堕とされるわね。

地獄に堕ちれば地獄の鬼に人間の罪人と同じように死よりも苦しい罰を与えられるわ。

でも・・・、」

 

 

一つだけ例外がある。

紫はそういった。

その真剣な眼差しに響華も真剣な目つきとなる。

これから話す話は、60年周期で関係してくる話らしい。

 

 

紫「死んだ妖怪でも・・・博麗の者が殺した妖怪はね、強大な力を持った輩が多いのよ。

だから地獄に堕とされてからは特別待遇を受けて、弱い妖怪も強い妖怪もまとめて超強力な結界の中に閉じ込めるの。

地獄のブラックボックスだから私でも場所は知らないんだけどね、四季映姫・ヤマザナドゥが全てを統括して結界の周囲も強者の精鋭死神たちが警護しているらしいわ。

だけど結界は60年周期で揺らぐらしくてね、力が不安定になるのよ。

結界の中がどうなっているのか誰も知らないらしいけど、噂では魂から元の肉体を取り戻して暴れまくってる妖怪が居るって話よ」

 

響「今まで博麗の巫女が殺してきた妖怪達がそんな事になってたなんて・・・」

 

紫「もうすぐその60年周期が来るらしいんだけどね。

あのうるさい小娘が私の所に珍しくやって来た時に言ってたわ」

 

 

煩い小娘とは四季映姫の事だ。

流石の紫でも閻魔は苦手らしい。

ちなみにやって来たのはリュウトに逢いに来た時のあの日だ。

 

 

響(誰の事だろう?

そんなに嫌いなのかなその人の事。

・・・あんまり触れないでおこう)

 

 

四季映姫に会った事の無い響華は紫が誰の事を言っているのか解らなかったが、その話をすると機嫌が悪くなりそうなので触れない事にした。

 

 

__________________

 

 

響「今日は楽しかったよ!

また遊びに来てね!待ってるから!」

 

紫「その時は貴女は永遠亭に居るだろうからそこの人の許可が出たらお邪魔させてもらおうかしらね♪

また今度会える日を楽しみにしているわ」

 

 

夕方となり、時間を忘れて話続けた紫は玄関からスキマで帰っていった。

その際、彼女に手を振って別れを告げられて嬉しかったのか、響華も手を振って別れを告げた。

その日の夜は一人だけの神社でも寂しくはなかった・・・。




まて、また伏線が張られたぞ。
隕石は?隕石どうなったの??
そう、このグダグダ感が熊殺しクオリティなのです。
、、、この調子でやっていると面白くないと言われそうなので次回からはちゃんとキャラを動かします、、、。
ゴメンチャイ


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番外異変65話前編

話がいきなり飛んだ感じがしますが、旅行が終わった直後の話という設定です。
あと今回つまんないです。
思い付く限り面白く書いたつもりですが全然ダメでしたわ。



それは唐突な非日常だった。

 

 

~八雲邸~

 

 

八雲紫が住んでいる和風建築の一角。

直感的に何かを感じ取った紫は自分の部屋にこもり、円形の術式を床に広げて意識を一つのスキマに集中させていた。

術式陣に書かれた文字や模様からは何やら天体的な物が連想させられる。

光を発し続ける術式が停止し、紫はその{何か}を発見した。

それが判明すると、紫は藍を呼び出しとある場所へと向かわせた。

 

 

紫「まさか・・・。

でもなんでこんなにピンポイントで・・・?」

 

 

部屋の襖を開け外に出ると、彼女は空を見上げて考え込む。

もしかしたらこれは幻想郷最大の危機かもしれない。

 

 

幻想郷某日。

幻想郷に向けて謎の巨大隕石が接近していた・・・。

 

 

____________________

 

 

AM7:30

 

 

~人里~

 

 

とある日の朝、幻想文屋こと射命丸文の文々。新聞に信じられない記事が載せられていた。

早朝早くから人里中に号外としてばら撒かれたそれを拾った者達は驚愕した。

 

 

慧「幻想郷に・・・隕石が落ちる・・・?」

 

 

寺子屋兼自宅の居間で新聞を読んでいた上白沢慧音は唖然とした。

持っていた湯呑を落としてしまうほどに。

この新聞に載せられていた記事の内容は瞬く間に人里中に知れ渡り、住人は避難の準備をし、動物たちは本能的に洞窟などへ逃げ出していた。

その号外に書かれていた隕石衝突までの残り時間はあと5時間。

余りにも時間が無かった。

 

 

~博麗神社~

 

 

霊「もうっ!なんだって隕石なのよ!

旅行から帰って来たばっかりだってのに!」

 

零「でもどうにかしないと本当に幻想郷が壊れてしまうぞ」

 

 

朝食を食べた後、二人は新聞を読んでから忙しなく家の中の家具などを倉へ片付けていた。

隕石が落ちたら爆風で家屋がグチャグチャになるだろうという零夜からのアドバイスで全て倉へ仕舞っておこういう事らしいが、それだけでは倉も吹き飛ばされてしまうので神社を結界で覆うのが本命だ。

隕石落下までの余裕が無い為急ピッチで作業を進めるが、忙しいのは無論此処だけではない。

 

 

~紅魔館大図書館~

 

 

パ「小悪魔!こっちの棚も縛るわよ!」

 

小「いくらなんでも多すぎますよぉ~汗」

 

美「だから私が手伝いに来てるんでしょう?」

 

小「そうですけどぉ・・・」

 

 

泣き言を言いながら小悪魔は飛びながら図書館に置かれた膨大な数の本棚を倒れないように固定作業を迅速に行う。

急遽助っ人として門番から美鈴が来ているが、それでも直ぐには終わりそうにない。

咲夜は館の全部屋の家具の固定をリュウトと二人で忙がしいので助けには来れないのだ。

だからこそ普段動けないパチュリーも体に鞭を打って頑張っているのだが、それでも小悪魔は不満があるようだ。

 

 

小「5時間でこの量を全てなんて無理ですよ!」

 

美「正確にはあと3時間くらいしかないんだけどね。

口よりも手を動かさないと棚がドミノ倒しになっちゃうよ」

 

小「うぅぅ・・・。

早くしないと全部水の泡・・・」

 

パ「二人ともしゃべってばかりいないで早く手伝って!」

 

 

咲夜の能力で拡張された空間に置かれた棚の数は軽く1000を超えているのではないかと錯覚してしまうほど多いが、それでも既に半数近く固定されている。

西洋建築の紅魔館は耐震ではないので地震にも弱く、本来は本棚どうこうの話ではないのだが、建物自体は魔法防壁で如何にかするらしい。

そう考えてみるとパチュリーは紅魔館の中でも重要な人材と言えるだろう。

実際、喘息が無ければパチュリーは大魔法使いに匹敵するほど強力な魔女なのだ。

喘息さえなければの話だが。

 

 

小「ところでお嬢様方は一体何処へ向かわれたのですか?

お二方とも紫さんに連れていかれたきりですけど?」

 

パ「あの二人は隕石をぶっ壊すのを手伝いに行ったのよ。

リュウトも行くらしいけど咲夜は私達と留守番よ」

 

 

魔法でいくつもの鉄の鎖を操り棚に括りつけながら事細かに説明してやり、作業が残り3分の1まで終わったころになり漸く咲夜が図書館の扉を開けてやって来た。

 

 

咲「遅くなって申し訳ありませんパチュリー様!

リュウトさんを見送ってきましたので」

 

パ「ありがとう、鎖で棚を固定するの手伝ってくれる?」

 

 

畏まりました、と一礼して彼女は床に落ちている鎖を拾って飛びながら棚の上を鎖で括りつけ始めた。

咲夜の手際の良さもあってかそれからの作業は予想よりも早く終わり、隕石衝突の30分前には全ての固定作業が終了していた。

後は館全体に防護壁を張るだけ。

レミリア達が隕石を破壊してくれればそんなものは必要ないのだが、念には念を入れ、もしも破壊出来なかった時の為に彼女たちの帰る場所を守るためだ。

隕石落下まで残り30分。

 

 

_____________________

 

 

~草原~

 

 

藍「着いたぞリュウト殿」

 

リ「済まない、遅くなってしまった」

 

魔「お!主役の登場だぜ!」

 

リ「ん?主役?」

 

 

草原に到着したリュウトは何故か魔理沙から主役だと言われた。

隕石破砕作戦の要となっている存在がリュウトだからだ。

使ったことは一度も無いが、リュウトの持つ専用武器、ルス・グラディウスは彼の力加減によって切れ味や刀身が変わるのだが、最大出力まで上げると刀身が170mに達し、隕石を一刀両断出来る長さになるのだ。

今回の作戦ではそれを有効活用して隕石を細切れにして粉々しようというのだ。

 

 

リ「成程、俺の剣を使うのか」

 

紫「ごめんなさいね、いつも貴方頼りで」

 

リ「いいさ。

皆の役に立てるのなら」

 

 

紫の命で藍は幻想郷の選りすぐりの実力者が一同に集め、今リュウトもスキマを経由してその場に合流した。

見た限りリュウトが一番最後にやって来たらしく、その場には幻想郷でも有数の実力者たちが顔を合わせていた。

喧嘩しなければいいのだが、今はそんな事をしている場合ではないし心配はないだろう。

レミリア、フランの他に永遠亭から永琳と響華。

紫と式の藍。

博麗神社を結界で守っている霊夢の代行として零夜、そして高火力な技を持つ霧雨魔理沙。

鬼の萃香にフラワーマスターの風見幽香まで来ている。

幻想郷の強者がそろっているこの場に見惚れていると、若草色のセミロングをなびかせながらチェック柄の衣装で身を纏った風見幽香が自前の日傘をさしながらリュウトの眼前まで歩いてきた。

 

 

幽「初めまして・・・と言っても貴方は私の事を既に知ってるわよね」

 

リ「そうだな、しかも知り合いだった」

 

 

まさか自分から声を掛けにやってくるとは。

彼女の性格を知っているリュウトは少し驚いたが、未来の世界でそうだったようにほくそ笑みながら慣れ親しんだ仲のように応えた。

 

 

リ「俺が小さい時から花畑に行けばよく遊んでくれるお姉さんみたいな感じだったな」

 

幽「そんなに仲が良かったの?未来の私と貴方は。

自分で言うのもなんだけど中々信じがたいわね・・・」

 

 

良い人だと褒められるのに慣れていないのか、幽香は頬を桃色に色づかせ、それを日傘で上手く隠そうとする。

照れているのが可愛らしいが、これでも昔は幾多の人妖を恐怖の底に陥れた凶悪な妖怪だったのだ。

その力は鬼の四天王である伊吹萃香にも負けずとも劣らない程だ。

 

 

萃「あれ?幽香もしかして照れてるのかぁ??」

 

幽「ち!違うわよ!」

 

 

突然下から顔を覗き込んできた萃香の何気ない言葉に幽香は顔を真っ赤にして怒った。

動揺する様子が可笑しいのか萃香は高笑いをあげ、傘を振り回す幽香に追いかけられる。

今から特大の隕石が落ちてくるというのに呑気なものだ。

と、そうこうしているうちに時間は過ぎ去り、到頭その時はやって来た。

 

 

紫「!来たわよ」

 

 

全員が一斉に空を見上げる。

雲一つない晴天、真上にポツンと黒い点のようなものが見えた。

目を凝らすとそれが巨大な岩の塊であることが確認できた。

間違いない、隕石だ。

暫くするとその隕石は蒼く発光しだし、大気の摩擦熱の摩擦熱で表面を焼かれだした。

あの光が消えればすぐにでも此処に落ちてくるだろう。

全員が気を引き締め、射撃体勢に入る。

リュウトは腰にさしたグラディウスは抜刀すると同時に輝きを放ち、光の化身と化す。

 

 

リ「フウ・・・行くぞぉ!!!」

 

 

腹の底から雄たけびを放ち、青年は故郷を救うため光柱を両手で携えて天へと飛び立った。

 

 

To be continue




久しぶりに出ましたがリュウトの武器グラディウスは昔設定でちゃんと書いた記憶があるのでもう一度見てください。
あとこの話けっこうズルズル引きずるつもりです。
隕石壊しただけじゃあ終わらないんでね。
そしてちゃっかり初登場幽香さんです。
この小説話がややこしくて説明するのが疲れます、、、
次回はあんまり期待しない方が良いかも、、、


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番外異変65話後編

隕石はあくまで布石なので本題はまだこれからです。
ちなみに言っておくと今回の異変に岡崎夢美は全く関係ありません、彼女は傍観者というだけです。
幻想郷に行くために作った装置を応用して隕石が幻想郷に落ちるようにしたのは夢美ですが、隕石自体は彼女が偶然見つけたものでそれには手さえ触れていません。
まぁ手っ取り早く読んでもらいましょう!


~幻想郷上空~

 

 

リ「おおおお!!」

 

 

ガギギギギギギィィィィ!!!

 

 

遥か上空、速度を上げながら勢いよく隕石へ突撃を開始する。

腕に力を入れ大きく振りかぶった光の剣は縦に隕石を一刀両断していく。

切り込みは上手く行った。

しかし、此処に来てある重大なミスに気が付いてしまった。

 

 

リ「この隕石、思った以上に大きいぞ!

これでは両断まで届かん!」

 

 

隕石の大きさは想像していた倍はある大きさの300mはあった。

刃は確かに隕石の中に食い込んでいるが、両断するにはもっと長さが必要だ。

 

 

リ「クソッ!これでは意味が無いぞ!」

 

 

剣はこれが最大出力、これ以上は長くならない。

誰かに残りの半分を斬ってもらうか。

いや、地上に落下する速度が速すぎて残骸を破砕する時間が無くなってしまう。

どうすればいいんだ・・・。

 

 

リ「長さが・・・、足りない!!」

 

 

剣で切り込みを入れたお陰で隕石の速度が若干相殺されて遅くはなっているがそれでもどうしようもない。

これでは作戦が水の泡となってしまう。

考える時間も無いその時だった。

 

 

ヴォンヴォンヴォンヴォン!!!

 

 

リ「何だ!?」

 

 

後方から何かが飛来してきて隕石の上方へ激突した。

上空から飛んできたものだ。

鈍い金属音と岩が破壊される音が鼓膜に響き、同時に隕石上部に大きな一列のヒビが入る。

その時少しだけブーメランのように帰っていくそれがみえた。

どうやら投げられたのはウォーハンマーだったらしい。

ハンマーなんて渋い武器を使うのは一人しかいない。

 

 

リ「・・・じいちゃんか?

良いタイミングだ!」

 

 

間違いなく零夜の持つミョルニルだろう。

自分の祖父は中々粋な計らいをしてくれるものだ。

隕石の上部が破壊されたことが分かるとそれに便乗して一気に刀に力を入れ、切り口はバターのように滑らかに切り裂かれた。

300mの大きな岩の塊は瞬く間に真っ二つに割れて地上へと落下していった。

 

 

リ「後は頼んだぞ!」

 

 

綺麗に二等分された隕石が落ちるのを上から見下ろす。

これで後は下に居る者達がどうにかしてくれる筈だ。

 

 

______________

 

 

零「よし、援護は完了した」

 

 

帰って来たミョルニルを掴み、落ちてくる隕石に目を当てる。

リュウトも射線上からの退避は完了。

零夜もその場から急いで退く。

これで隕石を粉砕する条件は整った。

 

 

紫「今よ!撃ちまくりなさい!!!」

 

幽香「待ちくたびれたわよ」

 

 

幽香の日傘が空へと向けられ、先端から大出力のレーザー砲が発射される。

真っ直ぐと空を突き抜けるレーザーは隕石の中心を貫通し、内部から破壊していった。

何処となくマスタースパークに似た技だが、幽香が真似ているのではなく、魔理沙が真似て使っている技なのだ。

つまりこれが元祖マスタースパークというわけだ。

かなりの威力で風穴を開けたが、隕石の大きさから考えると小さな損傷だ。

しかもまだ片方が健在している。

 

 

魔「そこで私の出番が来るんだなわかるぜ」

 

 

待っていたと言わんばかりに右手に持った八卦炉を隕石に向け、十八番のマスタースパークをさらに強化した大技を放った。

 

 

魔「これが魔理沙様のファイナルスパークだぜ!!」

 

 

八卦炉から放出された膨大な魔力の渦は、幽香の放ったマスタースパークの倍の太さがあり、容易く隕石の分厚い層を貫いた。

中に傷を負った隕石は大気の抵抗に抗えずに形状崩壊を起こしていく。

バラバラと岩石を撒き散らしながら崩れていくところを見ると、作戦は上手くいったようだ。

だが、隕石の破片には未だ大きなものが多く、地上に落ちても被害が出ない程の大きさにする必要がある。

そこで第三陣の出番がやってくる。

 

 

レミ「ま、楽な仕事よね」

 

輝「さっさと撃ち落として帰りましょ」

 

 

地上から放たれる二人のレーザーは個々に破片を破壊していく。

スペルカードなど使うまでも無い。

 

 

フ「ギュッとしてドカーン!」

 

萃「鬼の四天王嘗めちゃいけないよ!」

 

 

能力で纏めて破壊するフランに続いて萃香も負けじと火炎弾を投げ、爆発の衝撃で破片を巻き添えにしていく。

全員が一斉に空に向けてレーザーや弾幕を破片に向けて狙い撃ちしていき、さながら弾幕ごっこのような光景だ。

数分後には隕石は散り散りとなり、気が付けば落ちてくる破片は非常に小さなものとなっていた。

もし大きかったとしても速度が落ちた破片が着弾したところで地上には被害はでないだろう。

幻想郷は救われた・・・。

 

 

________________

 

 

紫「これで片付いたわね、皆お疲れさま。

礼を言うわ」

 

 

会釈程度だが、紫は事が済むと感謝の意を全員に伝えた。

此処にいる全員の奮闘があったからこそ幻想郷には何の被害も出なかったのだ。

 

 

幽香「フンっ、妖怪の賢者がそんなに簡単に頭下げるものじゃないわよ」

 

 

紫に対してツンとした態度でそっぽを向きながら一人だけそそくさと帰って行ってしまう。

少し機嫌が悪そうにも捉えられるが、これが彼女なりの感謝の受け取り方なのだろう。

それに対して萃香がまたまた余計な事を口走ってしまった。

 

 

萃「昔から素直じゃないんだよなぁ。

もう少し正直になっても良いと思うんだけど・・・痛い!?」

 

幽香「うるさいわよ、黙ってなさい。

ったく、私はもう帰るわよ」

 

 

油断していたところを後ろから頭めがけて弾幕を撃たれて黙らされ、最後に後頭部を抑え悶える萃香を睨みつけると彼女は今度こそ飛んでいってしまった。

去り際頬が少し赤かったのを全員が見ていたのでそれが照れ隠しだという事もバレバレだったが。

 

 

零「それにしても突然隕石が落ちてくるなんて驚いたな。

紫は事前に察知していたのか?」

 

紫「えぇ、でも今日の朝よ。

外の世界では何の発表もされてないみたいだし、不思議よねぇ」

 

 

それに関しては紫も朝から不思議に感じているらしいが、原因は全く分からないと腕を組みながら応えた。

今回の一件に関しては本当に謎だらけだそうだ。

外の世界で察知されていないというのも気がかりだが、それよりも何故世界から隔離されている筈の幻想郷に落ちてきたのか。

そして、それよりもさらに驚くべきことをリュウトが口にした。

 

 

響「リュウ兄、未来の世界に幻想郷に隕石が落ちてきたなんて歴史あったっけ?」

 

リ「いや、幻想郷縁起にもそのような事は書かれていないし、ユカ姉からもそんな話は聞いていないぞ」

 

永「貴方達の世界ではこの出来事は無いってこと?」

 

リ「そうなるな・・・」

 

 

なんとこの出来事は未来の世界では起きていないというのだ。

これはリュウト達が未来からやってきてしまったことで起きた危雪異変や暗黒異変などと同じケースだ。

また歴史が改変されたのだろう。

だが、今回は被害が全く出なかっただけ良いと考えるべきか。

今までが酷すぎたのだ。

 

 

リ「ま、これ以上何も起きないと願うだけさ」

 

 

次の日、誰だか分からないが異変終わりに宴会をやろうと言い出し、何も知らされずに神社で宴会を起こされた霊夢が怒り狂い、隕石を止めるよりも危機的状況に陥るのだった。




もう話が空想科学小説みたいになってきちゃってますね。
でも魔法とか全然わかんないし東方=魔法関連だから他の作品となるべくかぶらないようにしたいんですよ。
、、、東方=魔法はおかしいか。
この小説には科学っぽいのが大量に出てくるのでファンタジー好きよりもSF好きの人の方が楽しめるかもですね。


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66話

消してからのスタート回です。
普通に日常回を書きたかったので今回はこうなりました。


ガチャン

 

 

リ「や・・・やってしまった・・・」

 

 

神谷リュウト。

厨房でティーカップを割る。

 

 

______________

 

 

~厨房~

 

 

咲「リュウトさん?

今何かが割れる音がしたんですが・・・あら。

やってしまいましたね」

 

リ「さ、咲夜・・・すまない。

うっかり落として割ってしまった」

 

 

昼食が済んで布巾でテーブルを拭いていると、厨房から陶器が割れた音がした。

入り口から覗くと、リュウトが申し訳なさそうにしゃがんで割れたカップの破片を回収していた。

しかもそれはレミリアがいつも愛用していたティーカップだった。

 

 

リ「どうしよう・・・。

悪気はないとはいえ此処まで木っ端微塵に割れてしまうとは・・・」

 

 

落ちた衝撃で至るところに破片が飛び散ってしまったカップはもはや原形をとどめておらず、どうしようもない状態だ。

 

 

咲「割ってしまったものは仕方がないですわ。

これを機に新しいものを新調致しましょう♪」

 

リ「新調と言ったって・・・幻想郷は和風な店が多いぞ?

西洋ティーカップなんて売っている所あるのか?」

 

咲「ありますよ?

店主が変わった方ですが」

 

リ「・・・え?」

 

 

______________

 

 

人里から魔法の森に入る入り口にはポツンと古い一軒家が建っている。

玄関の前には縞々のピエロと白タキシードの爺さんが肩を組んでベンチに座っているという異常な光景。

というか、この二つの人形は一緒にしてはいけない気がする。

物が溢れかえっているような店構えだが、看板にはこう書かれていた。

 

 

=雑貨屋香林堂=

 

 

雑貨屋だという事位、入り口を見ればわかる。

だが、これはやりすぎだと思う。

リュウトは此処に連れてこられた時、少し後ずさりをしてしまった。

もれなく咲夜に後ろから押されてしまったが。

 

 

咲「下がらないでください。

さ、入りますよ?」

 

リ「本当に入るのか?

あまり気のりしないのだが・・・、」

 

咲「私が知る限りティーカップなんてここでしか買えませんわ。

大方揃っている店なので」

 

 

この店構えでよくやっていられると思いながらも、咲夜が催促するので大人しく扉を開けて中へと入っていく。

外見とは裏腹に店の中はスペースがあり、棚に置かれた品々を見る限り確かに店として成り立っていた。

ただ、置かれている物がリュウトの居た時代では博物館に飾ってあるレベルの古いものばかりだった。

しかも壊れている。

商品として使えない物ばかりだ。

 

 

リ「これは・・・本当にガラクタばかりだな」

 

?「ガラクタで悪かったね」

 

リ「ム?」

 

 

商品の置かれた棚をまじまじと眺めていると、店の奥から眼鏡をかけた銀髪の長身の男が出てきた。

和風なコスチュームに身を包んでいるが、独自のアレンジを加えている。

リュウトはこの男に見覚えがあった。

 

 

リ「霖之助か?」

 

霖「おや?僕のことも知っているのかい?」

 

リ「あぁ。

しかも久しぶりに会った」

 

霖「ハッハッ!

それじゃあ君にとっては久しぶりの再会というわけか。

何だか不思議な感覚だね、僕は君に会ったことがないのに君は僕に会ったことがあって、しかも知り合いなんだから」

 

リ「違いないな。

俺も久しぶりに会ったが、全く変わっていないぞ?」

 

霖「それは未来でも若いってことかい?

それは嬉しいね」

 

 

初対面の相手に軽く会話するところは流石、店を出しているだけの事はある。

幻想郷では数少ない男の友人と、もう少し話していたかったが、今は時間が無い。

間に咲夜が割って入り、霖之助に用件を伝えた。

 

 

咲「お話中失礼します。

霖之助さん、ティーカップの在庫はございますか?」

 

リ「おっと、そうだった」

 

霖「ティーカップかい?

あるにはあるが、どれも高級品ばかりでね。

だれも買おうとしないんだよ」

 

 

というと、店の奥の暖簾をくぐって木箱を取り出してきた。

墨で西洋器と書かれた箱を開けると、和紙で梱包された二つのカップが出てきた。

淵に彩られた綺麗な金色の模様は何処となく貴族を想わせる。

霖之助によると、これは二つセットで売っている物なのだそうだ。

ただでさえ高いものを二つ買うのだから相当な額になる筈。

誰も買わない訳だ。

 

 

霖「どうだい?

高いだけあって綺麗だろう?」

 

リ「良くは分からないが・・・確かに良い物のようだな」

 

霖「気に入ってくれたかな?」

 

 

良い物を買うに越したことは無いが、値段が気になる。

リュウトは霖之助が取り出した箱の裏に貼られた値札をチラッと覗いた。

 

 

リ「ろ・・・6万円!?」

 

霖「だから高いと言ったじゃないか」

 

 

恐る恐る尻ポケットに入っている財布の中を確認する。

万札が二枚と千円札が5枚。

足りない・・・。

 

 

リ「想定外だ・・・、」

 

霖「僕も商売だからね。

値下げは出来ないよ」

 

咲「あの~・・・お金なら私が用意してますよ?」

 

 

二人の会話に置いて気彫りになっていた咲夜が小声で財布を取り出す。

水色の長財布片手に軽く6万円を出した。

この状況で救いの手を差し伸べてきた彼女を見てリュウトはこう思った。

 

 

リ「神か!!!」

 

咲「えぇ!?」

 

霖「まいどあり~」

 

 

__________________

 

 

その日の夜。

一人でリュウトはレミリアの部屋の扉の前に立っていた。

割れたカップの入った袋を持って。

 

 

リ「・・・よし」

 

 

扉を三回ノックし、その場で待つ。

中からレミリアの声が聞こえ、入っていいと言われてドアノブを握る。

 

 

ガチャッ

 

 

リ「れ、レミ姉・・・」

 

 

部屋に入ると、チェアにもたれ掛かり眼鏡をかけたレミリアの姿があった。

手に持った開いた本。

どうやら読書中だったようだ。

 

 

レミ「あら、珍しいわねこんな時間に来るなんて。

・・・その袋は?」

 

 

ビクっと身体が反応してしまう。

 

だが、謝らなければいけない。

 

 

リ「す、すまない!

レミ姉が大切にしていたティーカップを不注意で割ってしまった!」

 

レミ「あら、そうなの?

その袋が割れたカップってわけね」

 

リ「うっ・・・

その通りだ・・・」

 

 

いつもよりも声のトーンが低いレミリアに低姿勢になってしまう。

怒鳴られるか?

だが、帰って来た言葉は意外なものだった。

 

 

レミ「別にいいわよ?

そろそろ替え時だと思ってたし。

カップなんて館に腐るほどあるでしょ?」

 

リ「え?いいのか?」

 

レミ「カップが割れた位でどうもしないわ。

私はそんな小さな器じゃないわよ」

 

リ「そ・・・そうか・・・」

 

 

無駄な心配だったなと少し後悔したが、一つ引っかかる言葉があった。

 

 

リ「ちょっと待て。

館に腐るほどある・・・だと?」

 

レミ「えぇ。

食器棚には置いてないけど保管庫に箱詰めで置いてあるわよ?

昔に大量買いした奴が残ってる」

 

リ「・・・・・」

 

 

聞いてないぞ咲夜・・・。

建て替えた6万円は一体何だったのだろうか。

いくら割ったからと言っても出費が大きすぎる。

反省しろという事だろうか。

 

 

リ「咲夜ぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

今世紀最大に一杯食わされたリュウトなのであった。

ちなみに買ったティーカップはその後、レミリアのお茶に使われるようになった。

もう一つはリュウトが咲夜へのプレゼントという形となった。

お陰で彼のポケットマネーは瀕死状態らしい。




出していないキャラの一人ですね。
少しだけですが、数少ない男キャラなのて貴重な人材です。
そろそろ花映塚に入りたいのですが、、、もう少し日常を描いたあとにします。


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67話

今回は博麗神社での出来事を書きました。
霊夢のデレを書くのは難しいですね・・・。


~博麗神社~

 

 

霊「零夜・・・。

貴方、髪が伸びたんじゃない?」

 

零「ん?そうか?」

 

 

居間で茶を飲む零夜の後ろを歩いていた時に気が付いた。

最近になって零夜の髪の毛のボリュームが多くなっている事に。

後ろからそっと頂点の髪を手に取り長さを見ると、出会った時よりもかなり伸びていた。

零夜も自分の手と目で確かめるが、前髪が目にかかって鬱陶しいと感じていたのもあって全体的に長かった。

 

 

零「確かの最近頭が重いと感じていたところだが・・・」

 

霊「長すぎよ。

男ならもっと短くしないと。

というか神様も髪の毛伸びるのね」

 

零「それはな。

幾ら神でも外見は人間なんだから」

 

霊「そんなもんなの?

う~ん・・・それにしても気になるわねぇ」

 

 

毛を触りながらまじまじと零夜の頭を見つめていると、段々と切りたい欲望が生まれてきた。

まるで零夜が切ってほしいと言うのを心待ちにしているかのように。

 

 

零「そうだなぁ。

折角だし切るか?」

 

霊「ホントに!?

やったぁ!!私が切ってあげるね!!」

 

零「え?あ、あぁ」

 

 

まさか霊夢が切るとは思っていなかったが、彼女の歓喜の顔とその場の勢いで渋々了承してしまった。

跳ねて喜ぶ霊夢の顔を見れただけでも良しとした方が良いか。

こうして、霊夢のイメチェン美容室が開店するのだった。

 

 

_______________

 

 

魔「霊夢・・・お前って髪を自分で切った事あったか??」

 

霊「無いわよ?

でも一度やってみたかったのよ」

 

零「おいおい・・・本当に大丈夫なのか?」

 

魔「零夜・・・いざとなったら私が止めに入ってやるから・・・」

 

 

境内に出てシートを敷き、ハサミを引っ張り出してきた霊夢は椅子に零夜を座らせて完全にその気になっていた。

暇潰しに神社へやって来た魔理沙もこの状況には目を丸くし、髪を切ったことがあるのか聞けば案の定。

ド素人が見よう見まねでやろうとしている所だった。

・・・ならば霊夢の髪は何時も誰が切っているのだろうか?

 

 

魔「なぁ、霊夢って一体誰に髪切って貰ってるんだ?」

 

霊「そんなに切るモンじゃないからたまにだけど、アリスが切ってくれるわよ?」

 

魔「ちょっと私用事思い出したから失礼するぜ」

 

 

そういうと持っていた箒に跨り、魔力で空へと帰っていった。

 

霊「え!ちょっと!

今から良いところなのに帰っちゃうわけ!?」

 

 

霊夢の言葉は魔理沙に届くことなく、白黒の魔法使いは空へと消えていった。

 

 

霊「一体何しにきたのかしら?

まぁいいわ。

やってれば如何にかなっていくものよ!」

 

零(魔理沙・・・早くアリスを連れてきてくれぇ!)

 

 

危険なにおいがしだした霊夢美容師の腕前に不安を感じ、おそらくアリスを呼びに行ったのであろう魔理沙の帰りを待つことにした。

ハサミをチョキチョキさせながらいつの間にか鏡まで持ってきている霊夢は、アリスが到着する前に自分の髪を瞬く間に再起不能にしそうだが。

 

 

霊「さッ!行くわよ!

じっとしててね~」

 

零「動くな・・・動くな・・・。

動いたら死ぬぞ・・・、」

 

 

主にハサミが動脈辺りを切り裂きそうで。

束の間、耳元で髪の毛がハサミで一刀両断される音が響いた。

自分の後頭部で何が起こっているのかさっぱり分からないが、音で判る。

切りすぎじゃないか?と。

 

 

零「れ・・・霊夢?

何やら不審な音が聞こえるのだが??」

 

霊「え?私は何も聞こえないわよ?

というか、集中できないから静かにしててよね」

 

零「い・・・嫌な予感がするぞ・・・」

 

 

言ったそばから予感は的中。

零夜は音を聞いただけで見えていないが、彼の後頭部は凄まじく短くなっていた。

しかもパッツンと真っ直ぐ切りそろえられていると思いきや、毛先もまばらでお世辞にも上手いと言えない。

正直に言って下手くそな切り方だった。

 

 

霊「あれ?どうも上手く行かないなぁ。

もう少しこっちを切って形を整えて~」

 

零「待つんだ」

 

霊「やだ」

 

零「・・・、、」

 

 

後ろで何が起こっているのか気になって仕方が無い。

だが止める気がない霊夢の手は面白おかしく滑るように散髪をしていく。

そして、かれこれ10分が経過した頃・・・。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

 

零「霊夢!?

お願いだから手を止めてくれ!!」

 

霊「なんでよ?

短くなってきてるじゃないの?」

 

零「短くはなっているがこれ以上切ったら丸坊主になってしまう!」

 

 

抵抗出来ない零夜の必死の叫びも虚しく、座ったまま動けないのをいいことに凄まじい勢いで彼の髪を短くしていった。

まさか此処まで酷くなるは思ってもいなかった零夜は後悔するしかなかった。

何をやらせても大方は勘で如何にかできる霊夢の事だから、散髪だって何とかなると思い込んでいたのが運の尽きだ。

鏡に映る自分の姿が段々と酷くなっていくのを半ば公開処刑の如く見せられた彼のHPは消滅寸前だ。

 

 

零「お願いだからもうやめてくれ・・・」

 

霊「え~?そんなに嫌なの?」

 

零「はっきりというが・・・君には散髪の才能が無い・・・」

 

 

もうおしまいだ・・・。

そう決めつけようとした時。

救世主は現れた。

 

 

ア「零夜さーん!

大丈夫ー?」

 

魔「うっわ・・・。

原形残ってないじゃなねーか

育毛剤貰ってきて良かったぜ・・・」

 

 

箒の後ろにアリスを乗せた魔理沙が漸く到着した。

急ブレーキで止まった箒は風を起こし、魔理沙の足がブレーキ替わりとして境内の地面を削った。

箒からアリスを下ろした後、余りにも無残な姿となった零夜の頭を見た彼女は早速引いていた。

遅れた理由だが、アリスが人里まで出かけてしまっていたらしく、今まで情報を集めながら探していたらしい。

そして、もしも霊夢が失敗していた時の為に永遠亭から毛髪剤を貰ってきていたという。

気遣いが効いた魔理沙の行動には思わず零夜も涙が出てしまいそうになった。

 

 

魔「霊夢、選手交代だ。

後はアリスに任せるんだ」

 

霊「折角いい感じに進んでたのにぃ~」

 

魔「これの何処が良い感じだ!!

兎に角アリスに任せるんだ!!」

 

 

霊夢が持つハサミを強引に奪い、これ以上被害が悪化しないようにしたうえで薬を零夜の頭に振りかける。

暫く待っていると、彼の毛根からは真っ白な新しい髪の毛が生え始め、爆発的な勢いで伸びていった。

思っていた以上の効きっぷりに少し驚いた四人だが、流石は八意印の製薬といったところだろう。

少々伸びすぎだが。

 

 

零「・・・まさか地面まで伸びるとは・・・」

 

魔「切ればいいさ。

大丈夫だよ、アリスの腕は此処の脇出し巫女より上手いから」

 

霊「ちょっと、誰が脇出し巫女よ」

 

魔「私の右隣にふんぞり返ってる巫女の事だぜ」

 

 

親友の一言に睨み返すが、否定できない恰好ではある。

年がら年中脇を露出させている恰好なのだから無理も無いだろう。

持参の散髪道具をチェックしながらだが、アリスも霊夢に言いたい事があった。

 

 

ア「魔理沙は放っておいて、霊夢は反省しなさい。

幾ら零夜さんが優しいからって好き勝手し過ぎよ。

初めての事に挑戦するのは良い事だけど、少しは相手の事を考えないと」

 

霊「うっ・・・」

 

 

アリスに図星を突かれてしょぼくれてしまう。

だが彼には解っていた。

彼女が親切心で良かれと思ってやっていた事を。

 

 

零「アリス、俺は良いんだ。

霊夢だって俺の髪を親切心で切ってくれたんだから。

遊び半分でやるような奴じゃないって知っているからな」

 

霊「べ、別にそんな事思ってないわよ!!」

 

零「ほらな?」

 

 

照れ隠しに顔を見せないようにそっぽを向く霊夢。

素直じゃない反応を見せる彼女に、アリスも思わず笑ってしまった。

 

 

ア「プフッ、貴方達本当に仲が良いわね」

 

 

口元を軽く隠しながら笑うとアリスは{始めるわよ}と言い、持っていたハサミと櫛で零夜の髪を切り始めた。

前髪が目に入らないように目を閉じるよう言われ、全てをアリスに委ねた。

手慣れた手つきで滑らかに切っていく手は、特に長い部分からバランスを取りながら切っていく。

息遣いは静かで、冷静に、的確に短くしていく彼女のテクニックは店を経営出来るのではないかと思ってしまう程凄い。

地面に付くまで伸びていた髪は、あっという間に短くなっていた。

 

 

ア「これで・・・はい、おしまいよ」

 

零「おぉ!これは凄い!

見違えたな!!」

 

 

目を開けると、鏡には先程までとはまるで別人のような自分の姿が映っていた。

くせ毛は上手く自然に切られて形が整っており、毛先は全く枝毛になっていない。

男らしい、俗にいうイケてる髪型へと変貌していたのだ。

これには横で見ていた二人も驚きを隠せなかった。

 

 

魔「すげー似合ってるぜ!

これは人里歩いたら凄い事になりそうだな!」

 

霊「切る人間が違うと此処まで見違えるのね・・・」

 

 

思わず関心して零夜の周囲を廻りながら見つめる霊夢。

短くはなっているが、元の髪型の面影は少しだけ残っているせいか、霊夢にとってとても見ていて落ち着く髪型だった。

 

 

零「済まなかったなアリス。

タダ働きは悪いから夕飯を一緒にどうだ?」

 

霊「良いわね~、そうと決まれば豪勢に行くわよ!」

 

魔「それじゃ、私も一緒させてもらうぜ。

アリスを連れてきてやったのは私なんだからな」

 

ア「アンタはしょっちゅう用も無いのに神社に行き過ぎなのよ」

 

魔「良いじゃないか減るもんでもないし」

 

 

友達の家に行くのは当たり前だと言う魔理沙の意見も最もだが、そこは察して遠慮しろと言いたくなった。

霊夢と零夜の邪魔をするのは野暮だし、アリスはそれを見越して余り用の無い時にお邪魔するのは止している。

魔理沙のような余りにもフレンドリーすぎる性格も考え物だ。

 

 

霊「ま、今日位はいいわ。

宴会とは違ったにぎやかな夕食にしましょ。

零夜、準備手伝って~」

 

零「了解だ」

 

 

いつもは魔理沙を面倒事の種のように扱っている霊夢も、シートや鏡の後片づけをした後に夕食の準備に取り掛かり、零夜も台所に入ってそれを手伝う。

神社での夕食は二人だけが多かったが、今日だけは久方ぶりの賑わいを魅せるのだった。




一応、神様も髪は伸びるって事にしてあります。
スキンヘッドの零夜かぁ、少し見てみたいかもしれないw
独自設定ですが、霊夢の髪を切っているのはアリスということにしておきました。
女子力高そうだし、似合ってると思うんですよね~。
カリスマ美容師アリス・・・なかなか良いんじゃないでしょうか?
ちなみに零夜の髪は初登場時より少し短くなってるくらいです。
言っときますが、リュウトは咲夜に切ってもらってますからね?
メイド長嘗めないでください?


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68話前編

今回は三編使ってドドンと書きます!
内容は、、、まぁ見ればわかるでしょう。


パチュリー・ノーレッジは、広い図書館の書斎で一人悩んでいた。

面白半分で研究していた秘薬があるのだが、最初は作って終わりにする筈が、段々と試してみたくなってきてしまったのだ。

図書館の研究室に瓶に入れて保管しておくつもりだったが、長い時間をかけて完成させたものを使わずしてどうするのか。

だが、劇薬であるこの薬は使えばどうなるかまだ良く分からない。

過去にも試した人間は居ないのだ。

それもその筈。

パチュリー・ノーレッジが開発者なのだから。

 

 

パ「使ってみたい・・・。

これは魔女としての知的好奇心よ、何を躊躇う事があると言うの?

でも、これを使ったらどうなるかは未だに不明・・・。

試すか・・・試さないか・・・」

 

 

悩みに悩んだ末に導き出した答えは・・・。

 

 

ギィィィィ・・・。

 

 

リ「本を借りに来たぞ、パチュリー」

 

咲「パチュリー様、今日のディナーのメニューなのですが・・・」

 

パ「ええい!ままよ!

使ってしまえぇぇぇぇ!!!!」

 

 

パリーン

 

ドォォォォォン!!

 

 

二人が扉を開けた瞬間。

パチュリーの声と共に、図書館から謎の煙が紅魔館を包んだ。

 

 

~~~~~~~~~~~~~

 

 

レミ「・・・で?

結局これはどういった意図で作った薬なのかしら?」

 

パ「えっと・・・これには訳が・・・」

 

 

紅魔館の住人全員に囲まれ、滝のように汗を欠きながらタイルの上に正座させられている魔女。

実はあの後、図書館から舞い上がった煙は紅魔館全体に流れ出てしまい、あろうことか館に居た全員の性別が逆となってしまったのだ。

という事は煙を浴びた咲夜とリュウトの身体は・・・。

 

 

咲「一刻も早く元に戻してください!

出ないと僕はリュウトさんの服を借りて生活しなければいけなくなるんですよ!?

メイドだったのにこれでは執事になってしまいます!」

 

リ「おい、前にもこんなことあったよなぁ?

前回は私の身体が小さくなって大騒ぎだったのに、今回はそんなレベルじゃないぞ!?」

 

 

性別が逆となり、咲夜は銀髪くせ毛の青年。

リュウトは真っ黒なショートボブの少女となってしまっていた。

しかも何時の間にか口調まで性転換してしまっている。

 

 

リ「まさか女になってスカートを穿くことになるとは・・・。

しかも何だか下着が落ち着かない・・・締め付けられてるみたいで・・・。

それにスカートなんて布を腰に巻いてるだけじゃないか、下から覗けば見えてしまうぞ・・・」

 

咲「ぼ、僕はトランクス結構履き心地良いですよ?

プリンセスラインが締め付けられないし、解放感がありますね。

ズボンを初めて穿いたし、良い経験ですかね?」

 

 

女体化してランジェリーを着けざる負えなくなったリュウトは、ついでに咲夜の私服である桃色のブラウスに、薄い水色のチェック柄のミニスカートを身につけてすっかりお洒落な女の子へと変貌。

一方で咲夜は何時もリュウトが着ている薄手のTシャツの上から黒の上着を羽織り、ジーンズを穿いていた。

先程からモジモジと恥ずかしがっているリュウトに対して、咲夜は迷惑がっていながら少し楽しんでいるようだ。

 

レミ「ちっとも良い経験なんかじゃない!

早く元に戻してもらわないと!」

 

 

部屋で紅茶を飲んでいたレミリアも煙にまみれて男となり、その他のフラン、美鈴、小悪魔も男の身体となっていたのだ。

全員性別が変わったせいで元々着ていた服が着られなくなり大混乱。

辛うじて背丈が入れ替わった咲夜とリュウトはお互いの服を交換することで如何にかなったが、レミリアとフランはトレード出来る者が居ないせいでどうしようも無くなっていた。

 

 

美「確かに男性の身体なら頑丈ですし門番には向いているとは思いますが・・・。

私も元に戻してほしいですね~、どうにも落ち着きませんし、お嬢様達以外はリュウトさんの服を借りている現状ですから・・・」

 

 

頭を掻きながらそういう美鈴。

今、彼女の着ている服もリュウトから拝借したもので、現在レミリアとフラン意外の全員がリュウトの服を借りなければいけない現状だった。

しかも咲夜以外はサイズが合っておらず、きつかったりゆったりしすぎたりとまばらで、数にも限りがある。

いつまでも彼・・・。

いや、今は彼女だったか。

に、頼っている訳にはいかない。

皆でどうするかを話し合っていると、フランが小動物のような口を開いて訴えた。

 

 

フ「そうだよ。

私、この格好じゃ皆に逢えないよぉ・・・。

明日だって集まる約束してるし」

 

リ「約束してるのか・・・。

確かに服も無いのに外に出る訳にはいかないよな・・・」

 

フ「違うの。

集まる場所・・・此処なの」

 

小「え!?なら一刻も早く元に戻さないと!!」

 

 

小悪魔だけ一人でパニックに陥り、そこいら呪を走り回って慌てている。

頭を抱えながら走り回る前に色々やることがあるだろうに。

彼女は何か事件が起きると真っ先に大慌てして墓穴を掘るタイプだ。

 

 

明日までに全員の身体を戻さなければいけないというタイムリミットが加算されてしまった今。

勿論、パチュリーの事だからもとに戻す薬位持っていると全員が考えるだろう。

だが、現実はそう上手く行くものではなかった。

 

 

パ「ごめんなさい。

実は元に戻す薬・・・作ってないんだよね」

 

レミ「ならサッサと作らんかぁ!!」

 

 

牙を魅せながら投げやり気味に突っ込むレミリア。

怒るのも無理はない。

 

時間が無いのだから今すぐにでも取り掛からなければいけない。

パチュリーならば明日までに薬を完成させる位容易だろう。

だが、またしてもこの魔女はやらかしてくれた。

 

 

パ「えっとー・・・クスリが残ってればそれの真逆の者を作ればいいだけなんだけど。

もうクスリ残ってないんだよ・・・」

 

レミ「お前は何でこういう大事な時にそういうヘマを起こすんだぁー!!」

 

 

もはや何かに変身するのではないかと言いたくなる勢いで突っ込みを入れるレミリアは爆発寸前だ。

取り敢えずこの状況を打開するには紅魔館に居る以外の者達に助けを求めるしかない。

 

 

リ「ハァ・・・。

仕方が無い。

助けを呼ぼう」

 

 

野暮坂ではあるが、リュウトは今すぐ呼ぶことが出来、尚且つ信頼できる女性の名を叫んだ。

 

 

リ「ユカ姉ー!」

 

 

すると、7人の前に言わずと知れたスキマが開き、彼女はやって来た。

それも満面の笑みで。

まるで今回の騒動を見ていたかのような顔だ。

 

 

紫「リュウト~!

可愛くなっちゃったわね~!

やっぱり霊夢の曾孫だからかしら、何処となく輪郭とか目とかが霊夢にそっくりになってるわよ?」

 

 

そういうと小さなスキマを開いて手鏡を取り出し、リュウトへと向けた。

彼女も自分で確かめるが、言われてみれば髪を伸ばせば似ているかもしれないと思った。

 

 

紫「この前零夜が使ってた育毛剤使って髪伸ばしてみる??」

 

リ「そんなことしなくていい。

というか育毛剤って?」

 

咲「リュウトさん!今はそんな世間話してる場合じゃないです!」

 

リ「あ、そうだった。

実は頼みたいことがあって・・・」

 

 

咲夜に言われて引き戻されたリュウトは紫にある頼みごとをした。

元々、協力するつもりだった彼女はその願いを何のためらいも無く承った。

こうして、全員の身体をも元に戻すため計画が始動した。

 

 

_______________

 

 

~人里~

 

 

男「なぁ、あの子可愛くね?

あんなことされてみてーなぁ~」

 

女「一緒の人かっこいい~!

あの人何処に住んでるのかな!」

 

 

少女から少年へと変わってしまったレミリアとフランの為に、リュウトと咲夜の二人だけで人里へ服を買いに来た

のだが、大通りを何時ものように歩いていると違和感を感じた。

先程から様々な人間から視線を感じるのだ。

ただ道を歩いているだけなのに何故注目されているのか全く分からない。

店先の並ぶ繁華街。

多くの人間が二人へ目を向けているのだ。

 

 

リ「なぁ咲夜・・・私達なんか注目集めてるぞ?」

 

咲「えぇ、僕も先程から視線を感じている所です」

 

 

手は繋いでいないが、咲夜は男の身体になってからリュウトの前方に出てエスコートしている。

世の女性にとってはこれがたまらなく良いシチュエーションらしく、咲夜の容姿が整っているのも相まって熱い視線を集めていた。

リュウトも恥ずかしいのか咲夜の背中に顔を蹲め、真っ赤になった頬を隠す。

それが世の男性にはたまらないシチュエーションでこれが男性からの視線を集めていた。

だが二人はその事を全く分かっていない。

 

 

咲「あ、リュウトさん。

着きましたよ」

 

リ「やった!

早く中に入ろう!視線が耐えられない!」

 

咲「リュウトさん、私の背中に抱き着いていても良いですから!

そんなに押さなくても入りますよ~・・・」

 

 

女の身体でスカートまで履かされた事に半ば公開処刑を受けたような感覚に見舞われていたリュウトは、目的地に着くと咲夜の背中を押しながら小走りで服屋へと入っていった。

中へ入ると運よく客足は少ない日だったらしく、店の中には店員とまばらな客だけだった。

 

 

リ「どうせ二度と着ることも無いんだし、適当でいいよな?」

 

咲「す、少しはお洒落な物を選びますが・・・値段に関しては安いもので構わないとのことですよ?」

 

店員「あら?お子さんに衣装でいらっしゃいますか?」

 

リ・咲「!?」

 

 

服選びに集中していて背後から近づいていた店員の女性に全く気付かなかった二人。

驚いてつい背筋をのばしてしまった。

 

 

店員「お二人のお子さんとあればさぞかし可愛らしいんでしょうね~!」

 

リ「え!?ア!そうですわね!おほほ・・・」

 

 

それらしく口を隠しながら気品に微笑もうとするリュウトは内心では心臓が破裂しそうなほど緊張していた。

もうこの際、正体がバレなければどうだっていいと考えているようで、店員の言葉にそのまま流された受け答えをしてしまい、何故か咲夜との間に既に子供がいる設定になってしまっていた。

今の彼女では子供は産めないだろうに。

どちらかというとリュウトが産んでいる設定なのだろう。

客観的に見ても明らかに子供を産むには若すぎると思うのだが、幻想郷では18歳で子供を産むのはごく普通の出来事でもある。

 

 

咲(リュウトさん!流石に不味いのでは?)

 

リ(し、しょうがないじゃないか!

私だって恥ずかしいし・・・、)

 

 

店員に聞こえないように耳打ちして批判するが、今にも泣きそうなリュウトの目を見ていると咲夜も何も言えなくなってしまった。

ここは男になった僕が引っ張らなければ!と、謎の気合いを入れた咲夜が此処で行動に出た。

 

 

咲「あの、男物の服を探してるんですけど、案内してくれませんか?」

 

店員「男性用ですね?

此方です♪」

 

 

上手い具合にリュウトから店員を引き離す咲夜。

これで少しは緊張もほぐれる事だろう。

一先ず深呼吸をして心を落ち着かせたリュウトは、店員に付いていく咲夜の後を追いかけた。

その後、時間はかかったものの、全員分の服を買う事が出来た。

かなりの量になってしまったが、中には下着も入っているのだから仕方が無い。

荷物持ちは男の咲夜が担当し、紙袋を両手に持ちながら歩いてきた道を戻っていく。

またもやリュウトは咲夜の後ろに隠れている。

女体化してからリュウトの行動が小動物らしい・・・女の子らしくなっているような気がするが、これも薬のせいなのだろう。

 

 

咲「リュウトさん。

可愛い行動が目立ちますけど大丈夫ですか?」

 

リ「自分の意志ではないが、何故かそういう行動をしてしまうんだ。

クスリの効果がかなり効いてしまっているようだ」

 

咲「早く戻ればいいのですが・・・」

 

リ「直ぐに治るように手配したんだろう?

あちらの事はあちら側に任せよう」

 

 

紅魔館で紫に頼んだ事。

それは、図書館に魔理沙を連れてくることだった。

魔道に精通した魔理沙ならばパチュリーの助手が務まると考えたのだ。

アリスは魔女だが操作系の魔法を主としている為、分野が違うと断られてしまったが、魔理沙だけは如何にかなると協力してくれた。

今頃は図書館で薬の調合を手伝っている最中だろう。

そうこう話しているうちに、既に目の前には門番の立つ大きな人里からの出口が聳え立っていた。

入る時も言われたが、門番は帰りも、やはり美しい女性だ、とリュウトを称賛した。

 

リ「はぁ。

漸く門まで帰ってこられたわ。

早く此処から立ち去ろう」

 

 

人里の門へ到着するまで一体何人の人間に振り向かれたか分からないが、歩いている最中14回ほど飛んで帰りたいと考えてしまった。

飛んだ瞬間、リュウトはスカートの中の神秘を晒すこととなってしまうが。

・・・恐らく彼女はそんな事を考える余裕も無かっただろうが。

 

 

咲「ですね。

あ、でもその前に神社へ寄りましょう。

実は霊夢と少し会う予定が・・・」

 

リ「い、今の状態で?

ちゃんと認識してくれるだろうか?」

 

咲「恐らく霊力でお判りになると思いますよ?

姿には驚くと思いますが」

 

リ「ま、いざとなれば何か証拠を見せればいいか。

そうと決まれば行くか!

博麗神社へ!」

 

 

気合いの入った少女のソプラノ声と青年の低音で、オーと拳を掲げ、二人は博麗神社へ向けて飛び立った。

その時、油断していたリュウトがうっかりスカートの中の天国を門番に見せてしまい、一人の門番が興奮してしまったのは秘密にしておくとしよう。




やっぱり女性用の服は種類が多くて大変!
ファッションに一ミリも興味が無いせいでリュウトの衣装を決めるのが大変でしたよ。
というか、性転換してるせいで書いててワケわからなくなりそうでした。
リュウトが女で咲夜が男?ん?どーなってんだ?って感じでしたね。
ちなみにリュウト、この先名前も変えてリュカちゃんにしましょう!
リュカちゃんは咲夜の使ってるランジェリーをつけてます。
というか、咲夜と下着をその場で交換してます。
さぞかし興奮するでしょうねw
ちなみに咲夜はトランクスの解放感に感動してます。
女の人はパンティーラインが締め付けられますからね~。
次回は挿し絵でリュカちゃんの姿を公開したいと思います!


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68話中編※

久方ぶりに出したかったキャラが出せます!
今回は挿絵アリです!
リュウトの口調は女になってから少し変わってます。
他の全員も同様です。
それと、、、今回は少し描写の中に成人向けな部分があります。
詳しい事は内容で。


~博麗神社~

 

 

霊「あ・・・アンタ達。

今度は凄い格好で来たわね・・・」

 

咲「僕たちも困ってるんですよ。

人里では色々な所からの視線が凄かったんですから」

 

 

神社に到着するや否や、境内を掃除中だった霊夢に遭遇。

最初は持っていた箒を落として口を金魚のようにパクパクさせていた霊夢も慣れてきたらしく、今は普通に話している。

何時までも立ち話をしている訳にもいかないと、霊夢は二人を居間へと上げた。

 

 

リ「お邪魔しま・・・ん?

おばあちゃん、誰か客がいるのか?」

 

霊「さっきね。

多分あの子もアンタのその姿見たら驚くわよ?」

 

 

玄関に入って靴を脱ごうとすると、霊夢の物でも零夜の物でもない靴が置かれている事に気付いたリュウトが問うと、二人が来る前に一人、来客して既に居間でくつろいでいると言う。

黒のローファーのような靴だ。

霊夢が言うには二人が知っている人物らしいが。

先に上がったリュウトが居間に入ると、ちゃぶ台に下半身を隠された呑気にお茶を啜る妹が見えた。

どうやらあのローファーは響華の物だったようだ。

 

 

響「ズズズ・・・はぁ。

あれ?どちらさん?」

 

 

どうやら目の前の人物が自分の兄だという事に気が付いていないようで、頭の上にクエスチョンマークが浮かび上がったような顔をしている。

ギシギシと廊下を歩いてきた霊夢はリュウトの横を通り、座布団に座りながらヒントを出した。

 

 

霊「響華、貴女分からない?」

 

響「え?こんな人、会った事無いけど?」

 

霊「霊力で探って見なさい。

吃驚するわよ?」

 

 

意味が解らなかったが、目の前の女性の目を見て霊力を探る。

瞳の奥に映る人の気は、人によって若干の違いがある。

指紋や血管の位置、虹彩が人それぞれなように、生命力も皆同じと言うわけではないのだ。

要は、霊力を極めた者ならば目を閉じていても目の前の人間が誰だか分かるのだ。

そして、響華が導き出した答えは・・・。

 

 

響「この霊力流れって・・・リュウ兄!?

でも女の子・・・えぇ!?」

 

リ「やっぱりこういう反応なのか・・・」

 

 

まじまじと見つめた後、驚きの余りサッと後ろへ下がって身をそらす。

如何にも模範のような反応だ。

知らない人間ならばこの反応で間違いないだろう。

親族なら尚の事だ。

 

 

響「お兄ちゃんがお姉ちゃんになっちゃった!!」

 

霊「ね?驚いたでしょ?」

 

響「驚いた!」

 

 

霊夢が微笑みかけると響華は立ち上がり、今度は目を輝かせながらリュウトに思い切り抱き着いた。

そしてこう言った。

 

 

響「お姉ちゃん!」

 

リ「うるさい!!」

 

響「うるさいとは何だ!

こんなものぶら下げてるくせに!」

 

 

モニュ

 

 

リ「ひゃん!?」

 

響「おぉ、質量が凄いですな。

リュウト改めリュカちゃんに名前変えたら?」

 

リ「ひ・・・あぁぁ、フウッ!?」

 

 

唐突にリュウト改めリュカの胸を鷲掴みにし、そのまま上下に風船のように豊かな女性の象徴をマッサージする。

それが性感帯を刺激したのか、リュカは今まで出したことも無いような声を出しながら喘いだ。

引き離そうと手を前に出して響華の肩を押すが、気持ちよさに急激に力が抜けていき、抵抗そのものが出来なくなっていった。

 

 

リ「お、、こら!

だ・・・ダメだって・・・!

ンン!!」

 

響「ほれほれ~、咲夜さんが見ているぞぉ?」

 

リ「きゃああ!?」

 

 

今にも腰が抜けそうなリュカの隙をついて今度は後ろに回り、背後から脇に手を通して見せつけるように揉みしだいた。

兄妹・・・今は姉妹の戯れは続き、リュカは膨らんだ胸を揉みしだかれ、セクハラ並の扱いを受ける事となった。

彼女曰く、揉みやすいサイズの胸らしい。

そして、漸く飽きたのか、彼女は胸から両手を離してホールドアップを解いた。

 

 

リ「くそっ。

こいつ何処でこんな高等テクニックを覚えたんだ・・・」

 

響「修行の果てに得た技だよ」

 

 

息を荒げながら倒れ込み、顔を赤らめながら胸を守る。

少し感じてしまったのが彼女を最悪な気分にさせた。

まさか妹に犯されそうになるなんて考えてもいなかった。

しかも咲夜の前でなんという失態だ。

彼も顔を赤らめて手で見ないように隠していた。

この時ばかりはリュカは妹の存在が恐ろしくなった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~

 

 

二人が神社に来てから暫くして出掛けていた零夜が帰宅した。

事の経緯を説明すると、彼は落ち着いた様子で話を受け止めた。

 

 

零「成程、それでその恰好なのか」

 

霊「何かあの時は凄いものを見せられた気がするわ」

 

咲「もうあのような事は止めてほしいです」

 

響「いやぁ、触りたくなるでしょ?」

 

 

あれを触るとは言わない。

咲夜はジト目でそう訴えたくなった。

現在、男の身体となっている以上、ああいったものを見せれられてしまうと不味いからだ。

 

 

零「ん?何かあったのか?」

 

霊「アンタは知らなくて良し!」

 

零「そ、そうか」

 

 

何も知らない零夜は少し興味があって聞いてみただけなのにあっさり霊夢に拒否されて落ち込む。

 

 

 

零「それにしてもなぁ。

性転換なんて、そんなことできるのか」

 

 

 

事の経緯を説明し、彼には理解はしてもらえたが、どうにも現実と考えられないらしい。

ちゃぶ台越しにリュカを見る零夜の目は何処か不可思議なものを見るような目だ。

 

 

リ「今、目の前に現実として存在しているだろう?

それと、さっきから目線がやらしい」

 

霊「・・・ちょっと零夜?」

 

 

怒り心頭を露にした霊夢が、カツアゲをするヤンキーのようにクイックイッと零夜を居間から暗い部屋へ連れだそうとするが、何としても避けたい零夜は。

 

 

零「いや!だがな!

顔が何処と無く霊夢に似ているから親近感が湧くんだ!!」

 

 

手をブンブン振りながら必死に零夜は否定しようとした。

 

 

咲「それ、紫さんにも言われてませんでした?」

 

リ「実感はあるが、言われて嬉しくは無いな」

 

霊「何でよ!!」

 

リ「私は男だぞ?」

 

響「今は女でしょ?

お・ね・え・さ・ん?

 

リ「ぐぬぬぬ・・・」

 

 

悔しそうな顔で妹を睨むが、否定出来ない時点で既に負けている。

まるで威嚇する犬のようだ。

 

 

響「まぁ私はお姉ちゃんのままでもいいけどね」

 

リ「良くない!

何としても元に戻ってもらわなければ困る!」

 

 

とんでもない響華の一言にちゃぶ台に身を乗り出して異議を唱えるが、さらに霊夢、零夜までもが響華の意見に賛同し始めた。

 

 

零「俺はそのままでもいい・・・と思うぞ」

 

霊「うん、違和感ないしね。

腹痛めて産んだ子じゃないけど血が繋がってるから私の子供って感覚はあるし」

 

リ「な!何てこというのよ!」

 

 

三人が親指を立てて許可を出し、それを恥じらいをみせながら頬を赤らめて否認する。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

身体を隠すように腕全体で胸を覆い隠し、身を反らす姿勢は男とは思えない。

性転換してから徐々に女としての部分が強調されていったが、ついに仕草、行動までも女性化が進んでいるようだ。

その仕草に咲夜が横から突っ込みを入れた。

 

 

咲「なんだか女の身体になられてからリュウトさんが次第に女性らしくなっていっている気がします」

 

霊「そうねぇ、言葉遣いも女っぽいわよ?」

 

響「もしかして・・・その性別が逆になる薬って精神的な部分も逆になっちゃうんじゃないの?」

 

零「おいおい、だとしたら大問題じゃないか。

時間が経過するほど効果が濃く表れていくって事か?」

 

リ「えぇ!?」

 

 

咲夜は普段、日常的に敬語を使って話す事が多いせいか男訛りが良く分からないが、語尾に女性らしい言葉を入れなくなったりしている所を聞くと、やはり男性化が進んでいるのだろう。

リュウト同様、精神的な部分も性転換し始めているようだ。

もしかしたら、時間がある程度経過してしまうと二人は元の身体に戻れなくなってしまうかもしれない。

 

 

霊「大変じゃないの!

早く紅魔館に急ぎましょ!」

 

 

5人は急いで立ち上がり、紅魔館へ向けて飛び立った。

森を抜けると一際目立つ赤レンガの大きくて立派な洋館が聳え立つ。

だが、紅魔館の門前はいつものように美鈴が立っていない。

服が無くて出ようにも出れないのだろう。

 

 

咲「そうでした・・・。

服が無いから外に出れないんでした・・・」

 

リ「いいから早く図書館に!」

 

 

地上へ降りて、門を開けた後に図書館へと駆けていく。

階段を上がり、広く長いレッドカーペットが敷かれた廊下の先。

木製の両開きのドアを押すと、書斎でフラスコ調合を進めるパチュリーに、本で何か調べながら小悪魔に指示を出す魔理沙が居た。

 

 

魔「やっと戻ったか。

レミリア達が待ってる・・・あれ?

何で霊夢達が居るんだ??」

 

リ「話は後に!

それより、薬の効果について詳しい事何か解った?」

 

魔「何か口調が女っぽいぜ?

そうだなぁ・・・今のところは煙を浴びるど性別が逆になるということだけか?

あ、それと確かに元に戻るには使用した薬の逆の効果を持つものを浴びれば良いらしい」

 

 

恐らく、その効果の意味は性別に関わるものが全てが逆になるという意味だ。

仮説に過ぎないが、現状そうとしか思えない。

 

 

パ「それより早く着替えを頂戴。

この服は男用じゃないから」

 

咲「お待ち下さい。

今お着替えをお手伝いします」

 

 

未だに何時もの服を着ているパチュリーが手招きしながらそう言う。

咲夜が指を鳴らすと、いつの間にかパチュリーの服が着替えさせられていた。

動きやすい紫を基調としたジャージのような服に着替えさせられた。

パチュリーも気に入ったらしく、なかなか好評だ。

 

 

パ「うん、良い着こごちだね。

これなら調合が楽になる」

 

 

一言、咲夜に礼を言うと、直ぐに研究にとりかかった。

話によると幸い、調合手順らしきものは資料として書きとどめていたためスムーズに進んでいるとの事。

だが、材料に関しては特殊な物が必要な項目があり、現在の在庫では少ないらしく、採取する必要があるそうだ。

 

 

魔「だが材料が少し無いんだよなぁ。

同じものは少量あるが足りない。

自生場所がここいらだと妖怪の山しか無いってのも厄介だなぁ」

 

霊「天狗が厄介ね、あの連中は融通が利かないから」

 

響「へぇ。

私達の時代だと割とオープンな感じなのに」

 

 

未来の妖怪の山は天魔が文になったり、神社が建ったりして人間の出入りが多くなっているらしい。

だが、今の所は哨戒天狗が目を利かせており、普通に入るのは不可能だ。

 

 

響「誰か妖怪の山に行ける人・・・かぁ」

 

霊「この中には居そうに無いわね」

 

?「おやおや?

久しぶりに顔を出してみれば私の出番のようですね!」

 

 

突然聞こえてきた声に全員が一斉に反応し、辺りを見渡す。

聞き覚えのある艶やかで活き活きとした声色は、書斎に集まる全員の直上。

シャンデリアの上に彼女は立っていた。

 

 

文「フッフッフ、射命丸文!

只今を以って現役復活であります!!」

 

 

にししと笑いながら、満面の笑みで床に降り立ち、彼女は全員に向けて敬礼をした。




リュウトの女体化した姿は霊夢に何処となく似ているという設定です。
元に戻る為に必要な植物の名前ですが、一回きりの登場なのでつけてません。
美鈴が出てきませんでしたが、一応図書館に居ます。
文が今まで顔を出していなかったのは先の異変などで山の情勢が混乱していたせいで、里を出られなかったからです。
次回で説明が入りますが、理解の為この場で書きました。


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68話後編

グダグダな最後です。


~レミリア自室~

 

 

レミ「ふうん。

って事は元に戻るのも時間の問題って事だな」

 

咲「はい。

現在は文が山の中でその植物を採取中です。

その交換条件として今回の事故を新聞に載せられてしまいます。

勿論、ねつ造をしないという条件付きで、ですが」

 

レミ「別にいいよ。

元に戻ればこっちのモンなんだから」

 

 

男子用のカッターシャツと赤いネクタイ。

レザーパンツに身を包んだレミリアは、玉座に座りながら咲夜に紅茶を注いでもらい、湯気と共に香を楽しみながらそう答えた。

一方で、現地に向かったリュカは霊夢達と別れ、文同伴の元、哨戒天狗の許可をもらって山に入っていた。

 

___________________

 

 

~妖怪の山~

 

 

リ「文姉さん、此処誰の家?」

 

文「私の昔からの友人ですよ。

山の麓から天狗の里付近の標高までなら彼女に聞いた方が早いですからね。

探すのを手伝ってもらえるかもしれませんし」

 

 

そういってリュカを連れてきたのは、森の中にぽつんと建つ一軒家。

というより大きめの小屋だった。

一階建ての木製の家屋だが、煙突や立て札が立てかけられており、そこには{にとり工房}と書かれていた。

リュカはこの名前に見覚えがあった。

玄関を文が叩こうとすると、突然小屋の中から金属を研磨する騒音が聞こえてきた。

 

 

文「あ~、始まりましたね。

気にしないでください、いつもの事なので」

 

 

気にせず扉が壊れそうなほど大きくノックをする文。

すると、中から聞こえていた騒音が止み、乱暴に引き戸が開けられた。

 

 

に「誰だよ!扉が壊れちゃうだろ!?」

 

文「どうもにとり、久方ぶりですね」

 

に「あれ?文じゃん?

確かに久しぶりだね」

 

 

水色の作業服と同じ色をした髪を、チェリーリボンでツインテールにした少女。

河城にとりは扉を叩いたのが文だと解ると、素っ頓狂な顔をした。

 

 

 

文「実は今日は頼みがあって来たんですよ」

 

に「頼み~?

それって後ろの女の子と何か関係があるの?」

 

 

文の後ろに隠れる形となっているリュカの存在に気付いたにとりは、覗き込むように文の背後へと首を向けた。

 

 

に「可愛い女の子だね~!

人間みたいだけど・・・名前はなんていうの?」

 

リ「えと、その・・・。

神谷・・・リュウトです」

 

に「可愛い顔して名前は男っぽいね」

 

リ「まぁ、男だから・・・」

 

に「え?」

 

 

首をかしげて不思議そうに今の言葉を聞いた彼女は、あぁ、と言い、手をポンと叩いた。

分かったような顔をしているが、理解してくれたのだろうか?

 

 

に「緊張してるから冗談で紛らわそうとしたのか!

アッハハ!大丈夫だよ!

私は妖怪でも人間は襲わないし、というより友だとだと思ってるからさ!

お願いって私と友達になる事だったのか~!」

 

 

全く違い解釈をして勝手に話を進めている。

リュカの言葉を完全に冗談だと思い込んでいるようだ。

 

 

文「いえ、本当に男ですよ?

詳しく言えば、元々は男、ですがね」

 

に「え?・・・えぇ!?」

 

 

信じられないと言いたげな顔で、にとりはリュカの周りをくるくると周りながら観察し出す。

見てくれは完全に女なので、二人して自分をだまそうとしているのではないかと疑ってしまった。

 

 

に「・・・私をからかってるんじゃあ?」

 

リ「いや、本当なんだ・・・。

これが冗談ならどれだけ良いことか・・・」

 

 

今にも泣きそうな顔を手で伏せると、彼女も冗談ではないと確信したようで、哀れみの表情でリュカの背中を擦った。

だが、にとりには一体何があってこのような状況になっているのか全く解らず、リュカに事情を聞いてみた。

 

 

に「それで?一体何があったの?」

 

リ「うぅ・・・実は・・・」

 

 

リュカは、今日の朝型に起きた事件について簡潔に説明した。

 

 

~少女説明中~

 

 

に「成程ね、それで私の所なのか」

 

文「そうなんですよ、手伝ってくれます?」

 

に「う~ん・・・いいよ。

但し!一つだけ条件がある」

 

 

少し腰を落とし、合掌して頼み込む文。

それに腕を組んでにとりは呻りながら悩んだが、数秒後には了承した。

但し、手伝う上で必要な条件を提示した。

 

 

_______________

 

 

~図書館~

 

 

魔「おぉ!これはまさしく私が求めていたものだ!」

 

文「採れるだけ採ってきましたからね。

どれくらい必要かもわかりませんでしたし」

 

 

よっこらせ、と文が背負っていた竹籠をテーブルに乗せる。

文とリュカが持ってきた竹籠の中には魔理沙が注文していた植物が籠の半分ほどまで入っていた。

手に取って使えるか確認するが、どれも鮮度が良く使うのに問題は無かった。

 

 

魔「よし!さっさと調合始めようぜ!」

 

パ「小悪魔、美鈴とソレをすり潰して」

 

小「了解しました!」

 

 

早速魔理沙達はパチュリーと共に薬の調合を再開した。

文はその様子を写真に収めようとしたが、如何せん何をしているのか全く分からなかった為、意味不明な写真を撮ってもフィルムが勿体無いと撮影を中断した。

クスリが完成したのはそれから約2時間後の事だった。

そして、次の朝には全員が元の身体に戻っていた訳だが、まだリュウトはやるべき事が残っていた。

 

 

_______________

 

 

~人里~

 

 

リ「おっちゃん、店に売っているキュウリを全部譲ってくれ」

 

店主「何だい急に?

まぁいいけどよぉ」

 

 

一人、里の八百屋へ来ていたリュウトは何時もの恰好でキュウリを大量に購入していた。

もうすぐ秋も終わりという季節に残っていたキュウリ、合計して37本を袋に詰め、店主の親父に金を払う。

かなりの金額だが、訳も無く財布から札束として出してみせた。

 

 

リ「少し用があってな。

早急にキュウリを50本用意しなければいけないんだ」

 

店主「そうなのか、この季節に大変だなぁ。

お!そういえば昨日すっげぇめんこい女の子が店の前を通ってな!

連れの男と一緒に注目の的だったんだぜ?」

 

リ「そ、そうなのか」

 

 

それ、絶対自分の事だ・・・と、自覚症状が心にグサリと刺さるような感覚がした。

近いうちに新聞に載せられる事になったらこの店主は一体どんな顔をするだろうか。

というか、里の皆からまた注目されることとなるだろう。

性転換している時に慧音達に遭遇しなかったのは不幸中の幸いだろう。

ところで、何故リュウトが季節外れのキュウリを今更大量買いしているのかというと・・・。

 

 

_____________

 

 

り「ほら、約束通りキュウリを買えるだけ買って来たぞ」

 

に「やった!これで当分はキュウリ不足に悩まされずに済む♪」

 

 

里の帰りに山の工房へやって来たリュウトは、にとりに全てのキュウリを袋ごと手渡した。

 

 

リ「しかし、本当にキュウリが好きなんだな」

 

に「そりゃあそうだよ!

キュウリは河童の為にあるようなものだからね!」

 

 

そんなことは無いのではないか?

そう突っ込みたかったが、袋に頬ずりする程ならそう言えるのかも知れない。

これほどまでに喜んでくれると、彼としては買ってきた甲斐があったと言うものだ。

 

 

に「ところで・・・これだけのキュウリ買うお金、かなりしたんじゃない?」

 

リ「その事なら気にしないでくれ。

心優しい人が全額負担してくれたからな」

 

 

_____________

 

 

その後、帰って来たリュウトが図書館へ行くと、広い部屋で体操座りをしながら隅に蹲るパチュリーが見えたという。

そして彼女の書斎のテーブルの上には、何も入っていないがま口財布だけが置かれていた。




キュウリの金はレミリアが全てパチュリーに支払わせたとさ。
めでたしめでたし。


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花映塚69話

完全にオリジナルストーリーです。
ゲームのストーリーではありません。



リュウトが幻想郷に来てから早くも一年が経過した。

この一年間で色々な異変が起きたが、その分だけ周囲には仲間が増えていった。

そして、彼がこの時代に来てから二度目の春が迎えられようとしていた。

 

 

_____________

 

 

紅魔館の中庭には菜園や花畑といった、植物を育てている場所がある。

といっても、リュウトが落ちてきた時に大半が破壊されてしまってからはパチュリーが研究で使う薬草等を育てている花壇もあるくらいだ。

だが病弱な彼女は外に出て世話をするだけでも一苦労。

そこで代わりに小悪魔が全ての管理を任されていた。

晴天の日、今日も頼まれた調合用植物の回収の為に花壇へ来ていたのだが、今日は植物たちが何時もと違っていた。

 

 

小「花が・・・全部の草が花をつけてる」

 

 

昨日まで咲いてなかった花が一斉に咲き乱れていた。

 

 

 

東方花映塚~Phantasmagoria of Flower View~

 

 

 

花が一斉に咲き乱れる現象は、門番の紅美鈴も認識していた。

この現象に彼女は腕を組みながら首をかしげて考え込んでいた。

 

 

美「おっかしいですねぇ。

昨日まではこんな状態じゃ無かったのに。

しかも・・・まさか幻想郷全体がこうなっているとは・・・」

 

 

開いた門の向こうには、自然の緑の中に映える色とりどりの花達が見えた。

幻想郷全体で全ての花が咲き誇っているのだ。

 

 

_____________

 

 

~博麗神社~

 

 

魔「おい霊夢!

こんな異変時に何やってんだよ!」

 

 

微風で神社の桜の木が花びらを散らす。

境内に降り立つなり慌てた様子で神社の住人の元へ駆けていく魔理沙。

霊夢は零夜と共に桜の下にシートを敷いて花見をしている真っ最中であった。

突然の魔理沙の訪問に驚いた霊夢が酒の入ったお猪口を溢しそうになり、不機嫌そうな声で魔理沙に用を聞いた。

 

 

霊「危なっ!うるさいわよ魔理沙!

なんかあった訳?」

 

魔「何って・・・今幻想郷で何が起こってるのか知らないのか!?」

 

 

魔理沙の右手には、朝刊の新聞が握られていた。

バッと渡された新聞を霊夢が広げて読むと、一番前の記事にはでかでかとこう書かれていた。

 

 

{幻想郷花祭り}

 

 

零「花祭りか・・・。

確かに花見に持って来いの天気だが」

 

霊「春でお花見シーズンってだけでしょ?

これの何処が異変なのよ」

 

魔「確かに花だけどよ!

季節関係なく全部の花が咲いてるんだぜ!?」

 

零「別に害無いだろう?

放っておいても問題ないんじゃないか?」

 

魔「え?う~ん・・・確かに言えてるなぁ」

 

 

今回は零夜の意見に一理ある。

花が咲いているだけで実害が無ければ気にするものも殆ど居ない。

と、魔理沙がどうするか悩んでいると、零夜が再び口を開いた。

 

 

零「それより魔理沙も一緒にどうだ?

二人だけの花見は味気ないからな、やはり花見は大人数でやるものだ」

 

魔「花見かぁ・・・。

そうだな、私も仲間に入れさせてもらうぜ」

 

 

少し霊夢が不満そうな顔をしていたが、魔理沙は言われるがままに二人と一緒に花見に興じる事にした。

が・・・。

 

 

魔「あ、でも大人数が良いんだろ?

なら私が暇そうなやつ手あたり次第呼んできてやるぜ!」

 

零「な、なに?

いや、そんなに多く呼ばれても困るんだが」

 

 

零夜の静止を聞くことなく箒に跨りアクセル全開で飛び立ち、一瞬で彼女の姿は見えなくなってしまった。

かなりの人数が来ることを悟った二人は、花見を一時中断して宴会の準備を始める事にした。

 

 

~~~~~~~~~~~

 

 

零夜は桜の木の下にシートを敷き、酒を倉から何本か出して来る。

ツマミを作り終えた霊夢も大皿を持ってやって来た。

 

 

霊「あいつ、まだ帰ってこないの?」

 

零「おそらく本当に手当たり次第声を掛けているんだろう」

 

 

勝手なやつだ。

霊夢はため息がでたが、魔理沙は何時もあんな感じだ。

今更どうもすることは無かった。

 

 

妖「霊夢さん、零夜さん。

こんにちは」

 

霊「妖夢?こんにちは。

珍しいわね、こっちに来てるなんて」

 

妖「はい。

花見をやると聞かされて」

 

 

石階段を登って来たのは冥界の魂魄妖夢だった。

若草色の大きな風呂敷を担いで石段を登ってくるとは流石は剣術指南役として体を鍛えているだけの事はある。

その隣には冥界の主、西行寺幽々子が立っていた。

 

 

零「もしかして魔理沙に呼ばれたのか?」

 

幽「えぇ、冥界も桜は満開でとても美しいのだけれど。

やっぱり空が暗いと寒く感じるのよね~」

 

零「確かにあそこは一年中曇天だからな」

 

 

冥界の空は暗いのが当たり前。

晴れた日なんて一度たりとも無い世界だ。

だが、同時に天気が崩れたことも無い。

要は一年中天気が一緒なのだ。

雨も降らなければ日が照ることも無い。

そんな世界で花見をしても気分が落ち込むだけだ。

幽々子はそれに不満を感じており、魔理沙の誘いに乗ったのだと言う。

 

 

幽「そういう事♪

お仲間に入れてくれるかしら?」

 

零「構わんよ。

その為の用意もしていたところだ。

だが、そうなるともっと用意した方が良いか?」

 

妖「任せてください。

お手伝いさせていただきます」

 

零「助かる。

妖夢は霊夢とつまみを準備してくれ。

魔理沙の事だ、手あたり次第に声をかけるだろうからな」

 

妖「大丈夫ですよ。

食材や酒は十分な量を白玉楼から持参していますから」

 

 

そう言って妖夢は風呂敷をシートの上に見ろげ、中身を取り出して見せた。

正直多すぎるのではないかと言えるほどの酒、酒、酒に、つまみの数々。

博麗神社で用意する必要も無かったのではないかと言えるほどの量がそこにはあった。

これには零夜も何も言えなかった。

食材の下ごしらえも全て妖夢が一人で、霊夢の手を煩わせるまでも無い、と全て終わらせてしまい、後は魔理沙が帰ってくるのを待つだけとなった。

そして、魔理沙が帰ってくるまでの間、博麗神社へ続々と人が集まって来た。

紅魔館に永遠亭。

人里や竹林に住む者も集まり、最終的に大宴会となった。

と、そこに漸く魔理沙が到着し、霊夢の隣に座った。

 

 

魔「おぉ、凄い数だなこれは」

 

霊「魔理沙、アンタ一体何人に声かけてんのよ」

 

魔「言っただろ?‘‘手あたり次第‘‘ってな」

 

霊「バカ!掛け過ぎよ!」

 

 

神社に入りきらない程の人数が一斉に入って来たせいで用意していたシートは満席となり、零夜の予想通りの展開となった。

その零夜は宴会が始まると、色々な所から引っ張りだことなって何処にいるか分からなくなってしまっていた。

折角、零夜と二人で静かに花見を楽しんでいたのにとため息交じりに霊夢はぼやいた。

 

 

霊「もうっ零夜と二人きりの花見だったのに飛んだ展開になっちゃったじゃない」

 

魔「なんだぁ?

零夜とラブラブしたかったのか?」

 

霊「なっ!何よその言い方!」

 

魔「だってそういう風に聞こえるぜ?」

 

霊「うるさいうるさい!

私はそんな事思ってない!」

 

 

顔を真っ赤にした霊夢が牙を出して反論するが、全く説得力が無い。

図星を突かれて照れいるのだろう。

やけ酒として霊夢はお猪口では足りないと一升瓶を一気飲みし始めた。

 

 

魔「おいおい、そんなムキになること無いだろ・・・」

 

霊「うるひゃい!

もう零夜にゃんてひらない!」

 

魔「飲みながらしゃべれるのか・・・器用なやつだなぁ」

 

 

半ばあきれ気味でそれを見ていると、隣にさらに珍しい客人がやって来た。

 

 

幽香「随分と楽しそうね。

噂の旦那様に逢いに来たのだけれど?」

 

 

日傘を射した幽香は見下ろしながら魔理沙に聞いた。

 

 

魔「零夜なら色んな所に引っ張り出されて此処にはもう居ないぜ。

というか隕石ぶっ壊した時に見たろ?」

 

幽香「私はお話がしたいの。

見たい訳じゃないわ。

そうね、居ないならもう一人の方にしようかしら?」

 

魔「もう一人?」

 

幽香「未来から来た彼の子供なんでしょ?

リュウト君って言ってたわね」

 

魔「あぁ、リュウトか。

何か用でもあるのか?

・・・まさかお前、リュウトとタイマン張る気じゃないだろうな?」

 

 

嫌な予感がした魔理沙は怪しいものを見る目で幽香に問いただした。

やりかねないと思ったからだ。

だが幽香は呆れた顔で反論した。

 

 

幽香「私をどんな奴だと思ってるのよアンタは。

別に世間話をしたいだけよ。

興味深いでしょ?

神の国から来た男と未来から来た男。

どっちも面白そうな話の1つや2つ持ってそうじゃない?」

 

魔「あー、止めといた方がいいぜ?

リュウトの過去は悲しいからな。

それに、おまえも未来は知らない方がいいぜ」

 

幽香「彼は・・・いえ、何でもないわ。

それじゃあ私は帰ることにするわ」

 

 

何か言おうとしたのだろうが、途中で切り上げて幽香は回れ右をして石階段へと歩きだした。

 

 

魔「あ、おい!

どうして帰るんだよ?」

 

幽香「桜の花もいいけど、やっぱり私は向日葵の方が正に合ってるから」

 

 

その台詞には、何処か悲しいものも含まれていたが、魔理沙はそれ以上何も言うこと無く彼女を見送った。

 

 

______________

 

 

〜地獄~

 

 

死神「な、なんて事だ。

結界がもう持たない・・・」

 

死神2「なんて馬鹿デカい妖気なんだ・・・。

こ、こんなの初めてだぁ・・・」

 

 

地獄の最新部。

二人の見張りの死神が鎌を構えながら震えていた。

彼の目の前に置かれた巨大な鉄扉。

正方形で天から鎖で吊るされた檻は大きな音を立てて揺さぶられいる。

彼が上司に聞かされて知っているのは、この檻の中には代々の博麗の巫女が倒してきた凶悪な大妖怪がひしめき合って封印されているという事。

そして、その封印は60年周期で緩み始めると言う事だ。

今日、その日が結界が緩み始める日でもあった。

 

 

ガギャアン!!バギャアン!!

 

 

死神2「は、早く応援を呼んでこい!

大至急、精鋭部隊を召集するんだ!」

 

 

一人の死神が同僚に指示を出した瞬間、悲劇は起こった。

 

 

死神「あ・・・あぁ・・・」

 

 

鉄の扉に施された結界は無理矢理抉じ開けられ、隙間から真っ黒な腕が少しだけ出てきた。

直後、結界は壊れ、鉄は紙のようにくしゃりと変形し、化け物は出てきた。

 

 

???「・・・」

 

 

殆ど人間と大差ない大きさだが、放出される妖気は台風のように激しく、そして大きい。

二人は絶望し、膝をついた。

 

 

死神「終わったな・・・。

映姫様、お怒りになられるだろうなぁ」

 

死神2「そうなればいいな・・・」

 

 

死ななければ、映姫の説教と罰を受けるだけで済む。

しかし、そんなことがある筈も無かった。

本当の地獄はここからだったのだから。

 

 

???「始めるぞ・・・戦争だ」

 

 

黒い妖怪は檻の中の百鬼夜行を率いて飛んだ。

目指す場所は・・・幻想郷。

 

 

To Be Continue




オリジナルの設定で作った敵です。
見た目は真っ黒な肌の禿げたムキムキです。
日焼けじゃなくてガチの黒です。
かなりヤバイ展開ですが、じごくで戦うことになります。
奴等は復讐するために封印を破るまでの間、ずっと力を溜めていた化け物達です。
黒いのが一番強いですが、どれだけ強いかはまだ分からないですね~


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花映塚70話

この異変ですが、64話に伏線があります。
響華が呼ばれていないのは、同じ博麗の巫女で狙われる可能性があるからです。
それを踏まえてどうぞ。


~紅魔館庭園~

 

 

博麗神社の宴会騒ぎの翌日からは紅魔館も平常運転へと戻り、皆いつも通りの生活を送っていた。

紅魔館の庭に咲く花は一向に収まる兆しが無いが、無害と解ると何の警戒もしなくなった。

珍しく庭の植物達の水やりを任されたリュウトも、花の美しさと香を楽しみながら仕事をしていた。

如雨露を花壇に傾けると、降り注いだ雫が葉から滴り落ち、土を潤す。

太陽の光に水分が反射して虹がかかると、花たちが生命の源に喜んでいるように見えた。

 

 

リ「あまり関心を持っていなかったが、花を観察するのも一興だな」

 

 

まだ彼が小さな時、とある花妖怪が言っていた。

花にも意思があり、心がある。

長年にわたって忘れていた言葉だったが、その妖怪の顔だけは花を見るたびに脳裏に浮かんだ。

翡翠の髪を靡かせる日傘をした女性の微笑みかける顔が。

 

 

リ「優しかったな・・・。

この世界に、俺の子供の頃遊んでくれた皆は居ないけど」

 

 

過去は還らない。

今が大切なんだと人は言うが、誰だって忘れたくない記憶くらいはある。

彼は昔の思い出に更けて少し悲しくなった。

その時、後ろから自分を呼ぶ女性の声が聞こえてきた。

 

 

咲「リュウトさん。

貴方にお客様ですよ」

 

リ「ん?俺に?」

 

 

咲夜の声に反応して直ぐに水やりを中断し、後ろを振り向くとそこには咲夜の他に三人の人物が立っていた。

 

 

映姫「お久しぶりですねリュウト」

 

リ「映姫?それに・・・何故おじいちゃんが?」

 

 

客というのは何時か逢った四季映姫・ヤマザナドゥだった。

しかし、映姫は前のように一人出来たのではなく、部下の死神も引き連れていた。

さらに零夜まで連れており、只事で無い予感がした。

 

 

零「リュウト。

地獄へ行くぞ」

 

リ「・・・ナニィ!?」

 

 

意味が分からなかった。

今まで生きてきた中で地獄へ落とされるほどの事をした記憶なんて無いからだ。

何かしたか?

というより、まだ死んでもいないのに迎えが来るとはどういう事だろうか。

この前、不意に咲夜が階段を登っている所を下から覗いてしまった事が原因かも・・・。

 

 

咲「リュウトさん?

顔に書いてありますよ?

読み上げて差し上げましょうか?」

 

リ「な、何だって!?」

 

映姫「安心してください。

貴方が考えているような事ではありませんよ」

 

リ「そ、そうか。

良かった、命拾いした・・・」

 

 

一息ついて胸を撫でおろしたが、後で痛い目に遭うのは確定してしまった。

目の笑っていない笑顔を見せる咲夜。

妖艶な太腿から覗かせるナイフホルスターからは銀のナイフが刃をチラつかせていた。

お前の血を吸わせろと。

リュウトはそれを見て背筋がゾッとした。

と、そんな事は二の次だ。

今は映姫たちが来た訳を聞くのが先だ。

 

 

リ「ゴホン!

で?何故俺が地獄まで行かなければいけないんだ?」

 

映姫「今日は折り入って頼みがあって来ました。

貴方の力が必要なのです」

 

リ「おじいちゃんもか?」

 

映姫「はい。

お二人の力を貸してほしいのです。

実は今、地獄で異変が起きていまして・・・」

 

 

今回、リュウトと零夜が呼ばれたのは地獄で起きている異変・・・もとい事件を解決するためだ。

本来、異変ならば博麗の巫女が行かなければならない筈。

巫女は異変が起きれば立ち入り禁止の区域も免除されて入る事が出来る。

なのに何故二人が呼ばれたのか。

それは、地獄で暴れている妖怪が原因だった。

映姫はそれについての説明を始めた。

 

 

映姫「地獄で封印し続けていた妖怪は、博麗の巫女の抹殺を計画しているのです。

代々の博麗の巫女が退治、封印してきた妖怪が、地獄で永い年月を封印されている中で力を溜め込んでいたのです。

どの妖怪も強大な力を持っており、霊夢一人で太刀打ち出来るような規模ではありません。

しかも奴等の目的は霊夢の抹殺です。

本人が出向けばどうなるか解ったものではありません」

 

リ「成程。

だが何故俺達なんだ?」

 

映姫「幻想郷の中で、博麗の巫女以外で唯一異変を一人で解決した実績を持っているからです。

零夜さんも、貴方もかなりの強者でしょう?

私の力が役に立たない以上、貴方達に掛けるしかないのです」

 

 

歯を食いしばり、拳を握りながら彼女はそう言い放った。

こんな姿を見せられたら、協力しない訳にはいかないだろう。

 

 

リ「咲夜、すまないが後の事は任せたぞ」

 

咲「そういうと思ってました」

 

 

彼は持っていた如雨露を咲夜に渡し、一歩前に出た。

すると、映姫の隣に立っていた死神が手を差し伸べてきた。

 

 

小町「さ、手を掴みなお二人さん。

此処からは私が案内役だ」

 

 

赤い髪をツインテールで纏めた女性、小野塚小町は笑顔でリュウトと零夜の手を握る。

彼女の能力、{距離を操る程度の能力}で地獄まで連れて行くのだと言う。

そうすれば、本来三途の川を渡らなければいけない道程を飛ばしていけるのだとか。

急いでいる時に便利な能力だと感心してしまった。

 

 

小町「さぁ!行くよ!

映姫様、後は任せてください!」

 

映姫「はい、そちらの事は任せました」

 

 

余程その死神を信頼しているのだろう。

映姫は去る小町の笑顔に微笑みで返し、見送った。

その後、三人は瞬間移動でもしたかのように消えていった。

 

 

______________

 

 

~地獄~

 

 

あれから時間が経過し、最下層部に居た百鬼夜行は既に中心部まで押し寄せていた。

地獄というのは世に書籍として情報が載せられているが、実際は血の池地獄や油の大釜など存在しない。

罪人は、それが最も嫌うものを具現化されて苦しめられるのだ。

だから、地獄は殆ど何もない荒れ果てた灰色の大地が広がっているだけの場所なのだ。

しかし今は違う。

妖怪の群れが通った跡には残骸のように打ち捨てられた死神達が山になっていた。

だが、それを黙って見ているだけの死神達ではない。

百鬼夜行が移動中のなか。

地獄の入り口を塞ぎ、精鋭部隊を中心に残る戦力を集中させて絶対防衛線を構築中であった。

そして、彼らの決戦の時がやって来た。

 

 

死神「防御陣を先頭に!

妖怪共が確認出来次第、攻撃を開始する!

総員、霊力陣用意!」

 

 

一人の死神の号令で、列となった死神達が一斉に弾幕の射撃体勢に入る。

混線になった時の為の大鎌を肩に担ぎ、右手で霊力陣を展開。

地平線に翳した。

すると、妖怪達の群れが線に重なるように見えた。

 

 

死神「討てぇー!」

 

 

一斉に空に無数の鮮やかな弾幕が放たれ、地平線の彼方へと消えていく。

直撃したかに見えたが、爆発が起きようとも妖怪達は怯まず直進してきた。

さながら特攻隊のような勢いで防衛線に突撃していくので、死神の中には恐怖を覚えるものも現れ始めた。

当たり前だろう。

かつて、歴代の博麗の巫女と苦しい戦いを繰り広げた強者の群れなのだから。

そして、時間が経つにつれて死神側は劣勢を強いられ、8割が削られた時だった。

 

 

小町「着いたよ・・・ってあちゃあ。

少し遅かったみたいだねぇ」

 

 

混線していた妖怪達は突然現れた三人に一斉に目を向ける。

その様子に小町は冷や汗をかいた。

しかし、彼女は現状を逆転出来るほどの力を持った救世主を連れてきた。

 

 

零「ほう、これは凄いな。

本物の百鬼夜行じゃないか」

 

リ「地獄を管理している全ての死神が集結していたようだが・・・。

これでは本当の地獄絵図だな」

 

 

二人は妖怪の群れと対面すると、同時に力を開放した。

 

 

リ・零「貴様ら全員、俺が相手だ」

 

 

 

To be continue・・・




混線している戦闘シーンはハードル高すぎです、、、。
本作では地獄の管理は死神が全て行っている設定です。
確か原作と同じですよね?
ちなみに小町以外の死神に名前は付けません。
でも服に関しては同じものを着ています。


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花映塚71話

殆どオリジナルなので書くのに苦労してます。
戦闘シーンは力を注ぐようにしていますが、全く上手くいきません。
特にカンフーの戦闘シーンなんかは本当に苦労しますよ。
どうにかしたい所ですがね。


~地獄~

 

 

リ「一体何体いるのか分かったものではないな」

 

零「数えてみるか?」

 

リ「必要ない。

ざっと500から700ってところだろう」

 

零「近いな、正確には・・・」

 

リ「いや言わなくていい。

億劫になりそうだ」

 

 

二人の目の前に広がる敵、敵、敵の軍勢。

その数は正確に数えきれるものではなかった。

恐らく500は下らない数の妖怪がひしめき合っているだろうと言う程の数。

地上、空を覆うように広がる群れは、一斉に二人に襲い掛かった。

 

 

零「来るぞ!構えろ!」

 

リ「地上は俺が!

おじいちゃんは空を頼む!」

 

零「任された!!」

 

 

リュウトと零夜はすぐさま戦闘態勢に入り、空と地上で分担して掃討しに掛かった。

 

 

リ「行くぞぉ!!」

 

 

霊力を最大まで引き出し、脚力で地上の妖怪の群れへ突撃していく。

多様な妖怪達は自らの利点を活用した攻撃方法で彼を止めようとしたが、大半が軽く一蹴りされて吹き飛ばされてしまった。

道を阻む者は容赦なく叩きのめす。

それが彼のやり方だ。

目の前に現れる妖怪を蹴りと拳でなぎ倒していき、軍勢の中心部まで突っ込んだ。

 

 

リ「だぁぁぁぁぁ!

邪魔だぁぁぁ!!」

 

 

リュウトは前方の妖怪を踏み台にして飛び上がり、八つのビット陣を展開して群れに攻撃を開始した。

ビット陣から放たれたレーザーは易々と妖怪共の身体を貫き、彼自身も大量の弾幕を上から雨のように降らせて一網打尽に制圧していった。

 

 

妖怪「囲んでぶち殺せ!」

 

 

弾幕の範囲外から来た四体の人型妖怪が滅多討ちを目論んでリュウトを囲み、格闘戦を仕掛ける。

しかし、格闘戦ならリュウトが負ける事はまず無い。

近距離での戦闘は彼の得意分野だった。

勿論、襲い掛かった妖怪達は一秒と持たずに回転蹴りで返り討ちに遭い、四方に飛ばされていった。

 

 

リ「多数の攻め方として包囲するという選択肢は正しい。

しかし、相手が悪かったな。

ライトニングスパーク!」

 

 

圧倒的な数で攻めてくる妖怪側に対し、直線の極太レーザーを発射して一網打尽にする。

余剰エネルギーがレーザーの周囲に雷を形成し、当たらなかった者も雷撃に直撃して消滅していった。

魔理沙のマスタースパークに似たレーザーが消えると、それが過ぎ去った場所には妖怪どころか地面が抉れてレーザーの形に削られていた。

今の攻撃で地上に居た敵の4分の1を消滅させたが、自律して敵を攻撃していたビット陣はいつの間にかすべて破壊されていた。

 

 

リ「やはりそう簡単にはいかないか。

此方も大技で霊力が危うい。

そろそろ変身しておくか」

 

妖怪「ごちゃごちゃうるせえぞ!」

 

 

立ち止まるリュウトに斧を振りかざす一匹の妖怪。

しかし、それは斧を振る前に心臓を剣で貫かれていた。

光剣によって。

 

 

リ「最近溜めてばかりだったからな。

エネルギー満タンだから少々やりすぎるかもな」

 

 

そう言うと彼はパチュリーによって改良された光剣、グラディウスⅡを敵に向けた。

 

 

リ「・・・最大出力」

 

 

リュウトの言葉と共に光剣は光を増し、みるみるうちに刀身が伸びていく。

最終的に剣は長さ170mの長大な物となった。

 

 

リ「まさか隕石を切る以外に使う時が来るとは。

パチュリーも便利な武器を作ってくれたものだ」

 

 

リュウトは最大出力のグラディウスを片手で軽々と、いつも通りのスピードで振るう。

振り下ろし、振り払い、振り回すだけで敵の軍勢を一気に葬る必殺の武器となったグラディウスに妖怪側も脅威を覚えたが、余りの速さに避けられるものはごく僅かな数だった。

しかし、剣を振っていると上から零夜からの苦情が来た。

 

 

零「おい馬鹿野郎!

そんな長いものを振り回すんじゃない!

上まで届いて俺に当たるじゃないか!」

 

リ「簡単に避けられるだろう?

ついでに空の奴も掃除してやる」

 

零「余計なお世話だ!

兎に角それを短くしろ!」

 

リ「了解だ。

全く、我儘な曽祖父だな」

 

 

危ないから早く仕舞えという苦情に仕方なく従い、力を弱めて短くする。

しかし、グラディウスのお陰でかなりの量を撃滅出来た。

そして、このまま一気に押し切ろうと再度、敵の中に突入しようと急加速を掛けた時だった。

 

 

リ「!」

 

 

突如として巨大な黒く輝くレーザーが彼に向けて放たれる。

光速でその場から退避して難を逃れると、流れ弾となったレーザーは地平線の彼方で大爆発を起こしてキノコ雲を作り出した。

誰が撃ってきたかは直ぐに判明した。

 

 

リ「・・・なるほど。

一連の騒動の主犯格か」

 

 

レーザーが飛んできた方向に目を向けると、遠方に真っ黒な体の大男がこちらに向かって徐に歩いてきているのが見えた。

黒いオーラを纏った大男からは大きな妖気の奔流が感じられ、近くの妖怪達もそれの道を譲るかのように後ずさる。

まるで、その男がボスであるかのように。

 

 

リ「こいつ・・・。

今までの奴とは全く格が違う敵のようだ」

 

 

しかし、敵わない相手でも無い。

リュウトは一気に距離を攻めて拳を突き出す。

 

 

リ「ハッ!」

 

 

ダァン!

 

 

強い衝撃に大男は後方へ飛ばされた。

が、リュウトは違和感を感じていた。

 

 

リ「・・・光が消えた?」

 

 

男の鳩尾に向けて拳を突いたが、当たる寸前で急に自らが解放していた光が抜けたのだ。

能力が使えなくなっていた。

この現象はリュウトだけではなく、零夜にも同様に起こっていた。

 

 

零「どういう事だ?

雷が俺の言う事を聞かない」

 

 

先程まで放っていた雷が急に出なくなってしまい、戸惑いを隠せない。

手のひらを見つめながら今、何が起こっているのかを理解しようとすると、リュウトが戦っている黒ずくめの男が目に入った。

 

 

男「・・・」

 

 

リュウトの飛ばされた筈の男は体勢を立て直し、平気な顔で直立の姿勢をとる。

なんと、奴はリュウトの攻撃を防御無しで受け止めてしまった。

 

 

リ「おい、貴様。

何をしたんだ?」

 

男「貴様ではない。

我が名は空亡。

影なる太陽を象徴する妖怪」

 

 

空亡とは、百鬼夜行に登場する太陽を司る妖怪の事。

しかし、百鬼夜行の太陽は妖怪として書かれたものではないという説もある。

形も、黒いオーラを纏った太陽のような形として主に伝えられているが、実在するかも不明な為に適当に想像されたものが伝わっている。

非常に存在が曖昧な妖怪なのだ。

 

 

リ「俺の力が使えなくなったのは、お前の仕業なのか?」

 

空亡「そうだ」

 

 

無表情のまま、淡々と空亡は答えた。

つまり、これが奴の能力という事なのだろう。

 

 

空亡「能力が使えなければお前ごときに手こずらん」

 

リ「言うじゃないか。

なら、俺のもう1つの変身を見せてやる」

 

 

 

光が使えなくなってもリュウトには闘う手段が残っている。

彼は手に拳を握ると、身体中に気合いを入れた。

 

 

リ「はぁぁっ!!」

 

 

今までの彼は霊力と溜め込んだ光の両方を駆使して戦ってきた。

しかし、彼にはもう1つ所持している力があった。

それは・・・。

 

 

零「あれは・・・神力か!」

 

 

能力が使えずに妖怪達とドッグファイトを繰り広げる零夜は自分と同じ力を感じとっていた。

神である零夜の血を受け継ぐリュウトもまた、神の力を使えるのだ。

背中には八卦が描かれた黄金のリングが出現し、神々しい光を放つ。

その姿は神に相応しい。

 

 

リ「能力の方が数倍強いが、これでもパワーアップには十分だ。

これでも俺に勝てると?」

 

空亡「あぁ。

しかし、上に居る奴も相手するとなると厳しい。

そこで・・・だ。

お前達にも協力してもらう」

 

リ「何だと?」

 

 

空亡の言葉の意味が、彼には理解出来なかった。

いや、理解するのが遅れた。

 

 

零「そう言うことか。

力が存分に使えない俺なら、此処に居る妖怪達でも十分に足止め出来ると考えたんだな」

 

空亡「違うな。

忘れたのか?

此処に居る妖怪達は、かつて大妖怪として恐れられた者達だ。

・・・殺れ」

 

 

零夜を隔離するように囲む妖怪達は、空亡の合図で一斉に襲いかかる。

雷撃が使えずに力が低下した零夜に、この数を相手するのは酷だった。

空亡はこれが狙いだった。

 

 

リ「俺と爺さんを分断する事によって、単体となった俺達を個々殲滅しようという魂胆だった訳だ」

 

空亡「肯定。

さらに言えば、お前からは博麗の気が感じられる。

間違いなくお前はあの女の子孫。

今此処でお前の首を斬り落として手土産として幻想郷に持っていってやる!」

 

 

その瞬間、竜巻のような妖気が天を貫いた。

空亡の野望を討ち滅ぼす為に、二人の闘いが始まった。

 

 

To be continue・・・




設定集の中にリュウトの能力について書かれています。
話に出したのは初めてですがね。
空亡は、日本で一番強い妖怪を探していた時に出会った妖怪です。
まぁ最強の妖怪は紫様だがなぁ!!!
ゆかりさまー!愛してるぅー!


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花映塚72話

少し戦闘シーンの参考を読み、もう少し簡単な文にすることにしました。
読みやすくはなりましたが、馴れていないのでイマイチだと思います。
シーンに出てくるラッシュというのはドラゴンボールをイメージしてもらえれば結構です。



爆音が鳴り響く地獄の空には、閃光と爆発が絶え間無く出ては消えていく。

力を制限されている零夜は、先程とは打ってかわって苦戦を強いられていた。

敵に囲まれて1対多数という劣勢の中、それでも闘いにおいては優勢を保っていた。

 

 

零「能力が使えないとここまで苦戦するものか!」

 

 

向かってくる敵に対して、力が制限された零夜は苦戦を強いられていた。

幾ら大妖怪とはいえ、一体ずつであれば彼の敵ではない。

しかし、妖怪達に圧倒的な物量の前では話は別だ。

前、右、左の三方向から接近して来た敵と3体1の格闘戦。

遠距離からは狙撃役からレーザーが随時放たれ、飛来してくるたびに三体が一旦引く。

そして、狙撃が終ると再び格闘戦に持ち込まれる。

しかし、それでも零夜は戦闘において他の妖怪よりも優勢の位置を取っていた。

 

 

零「はぁぁぁぁっ!」

 

三体「「「グオォ!?」」」

 

 

三体の攻撃を受け流す防御体制から、隙を突いて霊撃で吹き飛ばし、拡散弾幕を全方位発射して一気に殲滅する。

遠方の敵には拡散レーザーを放ち、巻き返しを開始した。

 

 

_______________________________

 

 

空での戦闘が激化する中、地上でも空亡とリュウトが激戦を繰り広げていた。

同時にぶつかり合った瞬間、目にも留まらぬ速さで拳と蹴りのラッシュが繰り返され、二人のエネルギーが徐々に上がっていく。

同時につかみ合いになり引き離しあうと、空亡がレーザーを撃ちまくり、それをリュウトがグラディウスⅡを抜刀して斬り払う。

 

 

リ「なんて奴だ。

なら、これならどうだ!」

 

 

スペル:愚か者達の笑い声

 

 

4つの神力陣が空亡を囲むように展開し、レーザーの辺と面が出現して中に閉じ込める。

空亡を捕縛した。

 

 

リ「これで動けまい!」

 

空亡「どうかな」

 

 

捕縛した空亡に向けて弾幕を放とうと両手をかざした瞬間、奴は妖気を極限まで放出し、その内部圧力でスペルを打ち破った。

これにはリュウトも驚きを隠せなかった。

 

 

リ「んな!気合いで破壊したと言うのか!?」

 

空亡「脆い技だったな。

簡単に破れたぞ」

 

リ「くそ・・・。

やはりスペルカードでは歯が立たんか」

 

 

スペルカードは本来、弾幕勝負をするときに使うもの。

本気の殺し合いで使えるかは正直、微妙な線だった。

しかし、零夜の援護が来ない以上、一人で倒すしか無い。

再び接近戦に持ち込むため距離を詰める。

アタックとラッシュの攻防が続き、二人の拳がぶつかり合う度に衝撃と轟音が鳴り響いた。

高速で動き続けるが故に、次第に疲労が蓄積されていく。

先に疲労が出始めたのは空亡だった。

動き疲れてきた空亡はリュウトから受け続けたダメージもあり、よろめいた所を鳩尾めがけて蹴られ、飛ばされた先に回り込まれてさらに追撃された。

 

 

空亡「ぐぼぉあ!?」

 

リ「決まったな」

 

 

かなりの手ごたえを感じたリュウトは勝ちを確信した。

彼の身体もボロボロだが、まだ体力には余裕がある。

腹部の痛みの悶えながら膝をつく空亡を、リュウトは見下しながら降伏するよう宣言した。

 

 

リ「既にお前に勝機は無い。

もうあきらめて降参しろ、俺も命まで奪おうとまではしない」

 

空亡「フ・・・クハハハ」

 

 

静かにリュウトの言葉に対して嗤いを返す。

不愉快極まりない。

リュウトは拳を握り激昂した。

 

 

リ「何が可笑しい!

まさか、未だに勝てるなんて思ってるんじゃないだろうな!」

 

空亡「勝てるさ・・・。

今からそれを証明してやる」

 

 

その瞬間、空亡の漆黒で彩られた腕が変形し、十数メートルはある巨大な口となる。

襲われると感じたリュウトはサッと身構えるが、その標的はリュウトではなかった。

 

 

リ「な、何!?」

 

 

空亡が喰らったのは、味方である筈の妖怪達だった。

巨大な口が開くと妖怪達を纏めて呑みこみ、体へ吸収していく。

死体もお構いなしに喰らい続け、自分以外の全ての妖怪を胃袋に収めた。

いや、体の一部にしたという表現の方が正しい。

大妖怪の妖気を大量に吸収した空亡の傷は完全に癒え、筋肉が増大して体も2倍近く大きくなった。

妖力は今までが比にならない程肥大化し、正真正銘の化け物へと進化した。

 

 

リ「バカな!!

妖怪を吸収しただと!?」

 

 

圧倒的な力の前に、リュウトは後ずさってしまう。

光の翼を纏えば少しは善戦出来るが、今の彼に勝機は無かった。

身体がそう感じ取っていた。

しかし、彼に諦めるという選択肢は存在しなかった。

吸収したばかりで動きが止まっている空亡に対し、霊力を纏った拳によるラッシュを放った。

 

 

リ「ダダダダダダぁ!!」

 

 

さらに、上空から零夜のドロップキックが炸裂し、リュウトの支援をする。

が、それが空亡に届く事は無かった。

 

 

ガシィッ!

 

 

リ「何!ガァァ!?」

 

零「ぐあ!」

 

 

リュウトは足首を掴まれ、強靭な腕でこん棒のように振り回される。

地面に叩きつけられ、零夜に向けて投げつけられ、その勢いで二人は地平の彼方へ飛ばされてしまう。

さらに、空亡は巨大なレーザーで追い撃ちを掛けた。

最初、リュウトに向けて放たれた一撃とは比にならない強さの妖気が込められた一撃。

正にトドメの一撃だった。

 

 

ドォォォォォォォン・・・・・

 

 

空亡「・・・・・」

 

 

噴煙が舞い上がり、大きなキノコ雲が上がる。

最強の妖怪の前に、幻想の戦士は敗れ去った。

 

 

To be continue




これからは沈黙時は、、、ではなく、・・・にします。

二人は負けてしまいましたが、これで終わる二人ではありません。
あるアイテムが切欠でリベンジする事となります。
二人が持っている共通のアイテムです。
本来は零夜が持っている1つ以外は存在しない筈でしたが、未来の世界からリュウトが持ってきてしまった物です。
話にも出てきています。


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花映塚73話

短い話です。
仕事が始まったので更新スピードも落ちると思います。


~洞窟~

 

 

零「大丈夫か・・・リュウト」

 

リ「すまない、もう大丈夫だ」

 

 

大爆発の後。

奇跡的にレーザーの直撃を免れて生還した二人は、爆発で舞い上がった粉塵に紛れ込み、今は退却して少し大きめの洞窟の中へと逃げ込んでいた。

零夜の肩を借りながら転がる岩の上に腰かけ、リュウトは一命を取りとめた事に安堵の息を吐く。

真っ暗な洞穴の天井から滴り落ちた雫が、二人の肌にポタリと垂れる。

砂埃を被った肌に水が付着すると、汚れを流しながら重力に従って落ちていった。

その度に傷口に沁み、体が反応する。

身体には深い傷が幾つも付けられ、その表情は暗かった。

 

 

リ「痛っ・・・奴め。

二人でかかっても倒せないとは」

 

零「能力を封じられているんだ。

能力が無ければ俺達なんてこんなものさ」

 

 

二人の神化が、本来の力を引き出すものだとしたら、能力変身はドーピング。

リュウトは今まで自分がどれほど能力に頼って戦ってきたかを実感させられた。

悔しいが、本質的な強さは空亡の方が圧倒的に上だ。

恐らく、二人が限界まで圧縮した技を同時に放ったとしても倒せないだろう。

ただでさえ疲弊しているのに、なおの事不可能だ。

 

 

リ「奴のパワーアップは異常だ。

俺達の力が全く通用しないなんて・・・」

 

 

リ「どうするんだ。

このままでは絶対に倒す事なんて出来ないぞ」

 

零「・・・・・」

 

 

切羽詰まった表情で訴えるリュウト。

零夜はその場で腕を組みながら黙り込む。

そして、一つだけ策がある事を伝えた。

 

 

零「一つだけ、やってみる価値がある方法がある。

しかし、それをしてどうなるかは俺も分からない」

 

リ「策があるなら何でもいい!

おばあちゃんが殺されるよりはマシだ!」

 

 

リュウトの意志がこもった言葉を聞いた零夜は黙って頷くと、彼は胸に提げたペンダントを服の中から取り出した。

リュウトが持っているペンダントと瓜二つの代物だ。

輝く白金の宝石が埋め込まれた銀のプレートは、淡く光を放つ。

その瞬間、リュウトは胸に熱い何かを感じた。

提げているペンダントを出してみると、彼のも同様に光を放っていた。

 

 

リ「光っている・・・これは?」

 

零「同調しているのさ」

 

リ「同調・・・?」

 

零「本来、神が持つ物はこの世に一つずつしか存在しない。

このペンダントも、本来は世界に一つしか無い物なんだ。

それを、未来の世界からお前がもう一つ持ってきてしまった。

神器が2つ存在する事は宇宙が始まって以来、一度として無い事例だ」

 

 

神器、それは神だけが持つことが許される奇跡を起こす道具。

零夜は他に、ミョルニルというハンマー型の神器を持っている。

二つとも、世界に一つしか存在しない貴重なものだ。

しかし、今まで同じ神器がこの世に二つ存在した例が無く、同じ場所に。

ペンダントが如何なる効果を引き出すか、彼にも予測不能だった。

 

 

リ「そんな危険な事、本当に大丈夫なのか?」

 

零「やるしかないだろう。

このままでは勝ち目が無いんだ、少しでも勝てる見込みのある方法があるなら賭けるだけだ」

 

リ「・・・よし、やろう。

俺達が、やるしかないんだ」

 

零「よく言った。

それでこそ俺の子孫だ」

 

 

零夜とリュウトは互いにペンダントを右手に握り、重ね合わせる。

何故か分からないが、方法が頭の中に自然と浮かび上がって来た。

重ね合わせた瞬間、一気にペンダントの光は強くなり、目を開けるのも耐えられない程の光で二人を覆った。

 

 

リ「何だこれは!!」

 

零「この感じ・・・。

まるで、俺とリュウトが交わっていくような不思議な感覚だ。

ウワッ!」

 

 

キィィィィィン!!

 

 

今まで感じた事の無い不可思議な感覚に覆われた二人の影は、やがて一つの人影へと変化する。

それは、ルーミアが花梨の身体を借りるそれではなく、完全なる融合だった。

 

 

?「なんてことだ。

本当に融合するとは」

 

 

次第にペンダントの光は消えていき、青年の手のひらには銀色の小さなプレートが置かれていた。

その融合の瞬間を、裁判所から浄瑠璃の鏡で見ていた映姫も驚いていた。

 

 

敢えて名前を付けるとしたら、彼の名は。

 

 

龍「頭に流れ込んでくる・・・。

今この時から俺の名は、博麗龍夜」

 

 

過去と未来が融合した新しい神。

博麗の力を受け継ぐ最強の神、龍夜が誕生した。

 

 

龍「・・・・そこか」

 

 

静かに目を閉じ、空亡の妖気の軌跡を探っていく。

大きく膨れ上がった妖気を探るのは簡単だった。

見つけ次第、龍夜は洞窟の天井を突き破って空へと舞い上がる。

 

幻想郷史上最強の戦士が、決戦の地へと飛び立った。

愛する者を守る為に・・・。

 

 

To be continue

 

 




リュウトと零夜の合体した姿は、次回に詳細を書きます。
能力は空亡に封じられているので使えません。
まぁ簡単に言うと、合体解除が出来るベジットみたいなものです。


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花映塚74話

花映塚完結です!
戦闘シーンが薄味ですが、そこはシンプルにしたと解釈してください。
二人が融合した新キャラならぬ神キャラはどれほど強いんでしょうかね?


空亡「グオオオオ・・・・」

 

 

空亡はリュウトと零夜を始末すると、邪魔する者が居ないのを良い事に徐々に地獄の入り口へと進んでいた。

死神の戦力は壊滅的にそぎ落とされ、空亡に反抗することも出来ない。

虫一匹居ない不毛の大地を、真っ黒な悪魔の羽を広げ、見た目の巨体からは想像できない速さの低空飛行で移動する。

しかし、空亡は唐突にその足を止め、地に足をつけた。

地面をえぐりながら脚力でブレーキをかけ、前のめりの姿勢でその場に留まる。目の前には、八卦のリングを背中に背負った謎の青年が立っていた。

 

 

龍「よお、やっと来たか。

図体がでかい分、スピードは此方の方が上だったようだな」

 

 

左右で色の違う髪は、白と黒のコントラストで彩られた髪は何処かで見たような雰囲気を醸し出す。

きりっとした目つきに服の裾から見える筋肉質な腕。

上は白、下は黒を基調とした服で身を包み、恰好は先程倒した筈の一人にそっくりだった。

 

 

空亡「・・・・?」

 

龍「お前、急激に強くなりすぎて脳筋になったのか?

俺だよ、さっき会ったばかりだろう?」

 

 

そういうと龍夜は神力を全面開放し、一帯の空気を震えさせた。地面には亀裂が入り、彼の周囲には無数の魔法陣が展開される。

空亡はこれを見て確信した。

 

 

空亡「!」

 

龍「やっとわかったようだな。お前を地獄に叩き落とす為に復活してやったぞ。

どうやら合体したらしくてな、とりあえず二人分合わせてリュウヤとでも名乗ろう。

・・・歯ぁ食いしばれ」

 

 

ダァン!!

 

 

空亡「グオォォ!?」

 

 

気合い砲を飛ばし、相手の目を潰した瞬間、懐に思い切り飛んで正拳突きを繰り出す。

足で踏ん張るも、勢いが強くて堪え切れない。

さらにラッシュが続き、空亡の胴体には拳の跡が大量に付けられた。

龍夜の腕から高速で放たれる拳に対して応戦しようとするも、図体が大きい空亡の大振りなパンチでは遅すぎて、パワーはあっても掠りもしない。

 

 

龍「ほらほら、どうしたぁ?」

 

 

しかも、大きな体は弱点を狙われやすく、拳を振るうと同時に関節を逆方向に曲がるよう攻撃され、カウンターを返される。

痛みに苦しみながら腕を薙ぎ払うが、もうそこには彼の姿が無い。

消えた龍夜を探して廻りを見渡すと、周囲には無数の魔法陣で構成された結界が完成されていた。

 

 

龍「本気で来いよ、お前死ぬぞ?」

 

 

ドーム状に広がる魔法陣から銀色の弾幕が放たれると、轟音と舞い上がった煙で何方も視界がゼロとなる。

確実に空亡にはダメージがあった。

しかし、倒すまでには至っていなかった。

 

 

龍「怒ったか?」

 

空亡「ガァァァ!!」

 

 

妖気を常時感じ取りながら戦っている龍夜には、空亡の動きが手に取るように判る。

無論、次に奴がどういう行動に出るかも予測できる。

煙の中から不意打ちを仕掛けようと飛びかかってくる空亡の蹴りも寸前で受け止めた。

両者の力はほぼ互角と思われた・・・が、龍夜の足には力が殆ど入っていない。

脚力を使わずに、腕力だけで空亡の蹴りを抑えたのだ。単純な力は既に空亡は龍夜に負けていた。

軽く受け止めた蹴りを跳ね返すと、空亡は翼を広げて空へ逃げた。

そして、その姿が米粒大よりも小さく見える高さまで上がっていった。

 

 

龍「諦めろ、お前に勝ち目は無くなった。

今度こそチェックメイトだ」

 

空亡「グ・・・ガァァァ!!!」

 

龍「やれやれ、退治されたのは自業自得なのだろうに。

巫女を恨むなんてお門違いだ」

 

 

怒りを露わにした空亡が、体内の妖気を両手の平に凝縮させ、地上へ向ける。

標的は真下、龍夜だ。

直径400mの巨大なエネルギーの塊は地上に向けて情け容赦なく斉射された。

迫りくる死の奔流は、大地と共に龍夜を消し去ろうと口を開ける。

黙って彼はそれが眼前に来るのを待った。

 

 

龍「それがお前の答えだと言うのなら、俺も容赦はしない」

 

 

神撃:ツインライトニングスパーク

 

 

彼は両手を天にかざし、体に流れる神の気を空に流した。

合体前の二人が放つ十倍の力を持つそれは、まさに神が放つ天の御柱の如く姿だった。妖怪が太刀打ちできるような力ではない。

空亡の妖力はいとも簡単に消し飛ばされ、かき消されていった。

 

 

空亡「ガァオオオオオオン!!??」

 

龍「もう一度、地獄へ墜ちやがれ!」

 

 

神力の巨大レーザーに呑み込まれた空亡の身体は徐々に細胞単位の崩壊を始め、末端部から消滅していった。

羽は捥げて灰になり、腕、足と剥がれ落ちるように消えていく。

こうして、地獄で封印されていた妖怪達の野望は儚く散っていく事となった。

 

 

________________

 

 

~二日後、博麗神社~

 

 

地獄の異変が終った次の日。あの世は平常運転を取り戻し始め、現世に残されて花に憑依していた幽霊達も次第に姿を消していった。

見事空亡を倒した二人には、映姫から成功報酬として金一封が贈呈された。

本当は地獄の通行証や、死後に天国へ行ける切符などを渡そうとしていたらしいが、部下や秘書が全力で阻止したらしい。

融合した二人もその後直ぐに元通りとなり、それぞれ帰路に就いた。

ペンダントも二つに分かれ、リュウトと零夜で一つずつ持っている。

零夜は霊夢の隣で盃に入った酒を飲みながら境内の桜を眺めていた。

 

 

霊「映姫から聞いたわよ?

今回復活した妖怪は私を殺そうとしていたらしいじゃない。

私の為に戦ってくれたんでしょ?」

 

零「幻想郷を守るためでもあったがな。第一優先は霊夢だ」

 

霊「優しいのね、ありがとう♪」

 

 

不意に笑顔を向けられた零夜は霊夢から目を逸らし、舞い散る桜に目線を合わせた。

風に乗った桜吹雪が境内を染め、その光景に心を奪われた。

 

 

零「綺麗だな、地獄の殺風景の後に見ているから余計に美しく見える」

 

霊「アンタもそういう事言うのね、あまり四季の風情に関心無さそうなのに」

 

零「聞き捨てならんな、俺だって風情を感じる心くらい持ち合わせている」

 

霊「あらそう?

ま、こんなに綺麗なんだもの。この美しさが分からない奴は可哀そうなやつよ」

 

 

お猪口を傾け喉に流すと、彼女の桃色の唇が潤う。

その瞬間、零夜の脳内に一つの単語がよぎった。

今、この瞬間に言わなければいけない事だと直感で感じた。

それが頭の中に出てきた時には既に口に出していた。

 

 

零「霊夢・・・結婚しよう」

 

霊「ブッ!!ごほっごほっ!!」

 

 

彼の衝撃的な一言に霊夢はむせる。

あまりに唐突だったので、霊夢はそのまま零夜に抗議した。

 

 

霊「あんたねぇ!もっと時と場所を選びなさいよ!」

 

零「今、言わなければいけない気がしたんだ。俺はお前と一緒に居たい」

 

霊「~~~~!!」

 

 

酒が入ってほんのり赤かった彼女の頬は一気に真っ赤に染まる。

目は見開き、髪の毛が羞恥心で逆立ちなっていた。

しかし、同時に嬉しさが溢れだしてきてしまい、それが涙となって零れだした。

 

 

零「お!おい霊夢どうした!?

なぜ泣くんだ!?俺と一緒に居るのが嫌だとか!?」

 

霊「そんなじゃないわよ・・・バカ。

これはね、嬉し涙って言うのよ・・・」

 

 

涙を袖で拭いながら、霊夢はひくついて答える。

ずっと今まで待っていた、念願の言葉が彼から聞けたのだ。

感極まった霊夢はもっていたお猪口を投げ出して、思い切り零夜に抱き着くと、彼の耳元で囁くように返事を応えた。

無論、返事は決まっている。

 

 

霊「イエスよ。これからよろしくね・・・大好き」

 

零「ありがとう霊夢。俺も君が大好きだ」

 

 

絡み合う二人は黙って意思疎通し、そっと口づけを交わす。

この日、博麗神社に本当の春が訪れた・・・。

 

 

 

花映塚 完




まさかまさかの零夜さん告白です。
リュウトがお付き合いに対して彼は交際無しの結婚ですからね。
映姫から貰った金一封の使い道、決定ですね。
因みに零夜は恋愛に疎いので、結婚というのが何なのかを知っていても何が必要なのか知りません。


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75話

さぁ、漸くここまで来ましたよ!
霊夢と零夜の結婚式です!!どうぞ!


その日の博麗神社はいつもとは違った。

真っ白な暖簾があちこちに掛けられ、神前式の用意が成されていた。

今日は博麗霊夢と零夜の結婚式の日だった。

この日の為だけに萃香が急遽、神社の外に衣装合わせの小屋を作り、霊夢はそこで衣装の着付けをしてもらっていた。

着付け役は藍が担当し、神前式の化粧はアリスが担当した。

一方、一足先に着付けを終わらせていた零夜は羽織袴姿でリュウトと共に社の外で待機していた。

 

 

零「動きにくい服だな・・・。

いつもの恰好ではダメなのか?」

 

リ「いつもの恰好だったら式の意味が無いだろう。

古来から大事な式には正装で行くのさ。

おばあちゃんだって、藍姉さんとアリスに花嫁衣裳を着付けて貰っているんだぞ?」

 

零「そうか・・・。

ま、人生で一度の結婚式なら仕方が無いな。

・・・それにしても緊張するな」

 

 

少し不安げに言う零夜。

その時、後ろから四人の女性の声が聞こえてきた。

 

 

藍「さ、転ばないように注意しろよ。

段差があるからな」

 

霊「も・・・もう少しゆっくり・・・」

 

ア「何言ってんのよ。

零夜さんが待ってるでしょ?」

 

響「おばあちゃんの花嫁姿なんだから、おじいちゃんも喜んでくれるって!」

 

 

サッと後ろを振り向くと、其処には藍とアリスに手を引っ張られながら先頭を歩く響華の後を付いていく、白無垢姿の霊夢が歩み寄ってきていた。

照れ隠しにうつむき加減で歩み寄る霊夢の顔が良く見えなかったが、近付いてくるにつれてはっきりと見えるようになった。

 

 

霊「どう・・・かしら?

変じゃない・・・」

 

零「変なものか。

良く似合っている、霊夢」

 

 

頬を少し染める霊夢に、零夜は微笑みかけながらその姿を称えた。

二人の準備が整ったため、神前式が始まった。

 

 

____________________

 

 

~博麗神社境内~

 

 

式が始まる前。

境内には溢れんばかりの人だかりが、布の敷かれた参道の脇に出来ていた。

どうやら零夜のプロポーズを紫が盗み聞きしていたらしく、噂は一気に幻想郷に響き渡り、古今東西から二人を祝う為に多くの者達が集まったのだ。

勿論、それなりに予想はされていたので人数分の席が用意されたが、ずらりと並べられた椅子は圧巻の光景だ。

席指定は特に無かったが、朝早く出てきた紅魔館組は最前列の席を獲得していた。

咲夜に日傘を差してもらっているレミリアは、いつもとは違う真っ赤なドレスを着こなし、ウェーブをかけたポニーテール姿で出席していた。

結婚式なら一般的かもしれないが、神道式なので少し他よりも浮いている感じがする。

兎に角目立つのだ。

 

 

咲「お嬢様、やはり着物になされた方が良かったのでは?

周りとかなり浮いていますよ?」

 

レミ「良いのよこれで。

私は周りに合わせるよりも、私らしく在る事を優先するの」

 

 

しかし、フランは自前のクリーム色の着物を着こなしており、パチュリーもネグリジェのような服ではなく、薄紫の和風ドレスを着ている。

美鈴はいつも通りの中華服だが、西洋ドレスを着ているのはレミリアくらいのものだった。

 

 

フ「ま、此処に来る前まで欧州に住んでたんだし。

ドレスで来ても何ら不思議じゃないんだろうけどね。

逆に何で私達が着物持ってるのかが不思議だよ」

 

小「フラン様が気まぐれで裁縫した着物が無ければ私達も冠婚用の正装を着ていたと思いますよ?」

 

フ「暇つぶしに作ったものだから数が無かったんだけどね。

現に美鈴の分まで作ってないし」

 

美「私は大陸妖怪なのでこれが正装みたいなものですよ。

着物は動きづらくて苦手ですしね」

 

 

少し申し訳なさそうに話すフランを傷つけまいと、美鈴は気にしなくても良いと優しく囁いた。

暫くして、神前式の時間が迫って来たのもあって深々とした雰囲気になり、音楽と共に参進の儀が始められた。

参道には、社へ導く巫女役の響華の後を並んで歩く二人が見えた。

 

 

リリカ「琴を弾く練習しておいて良かったよ~。

まさか使う時が来るとは思ってなかったけどね」

 

ルナサ「私だって琵琶を弾く事になるなんて思ってもいなかったわ」

 

メルラン「何時ものトランペットじゃないから、あんまり気乗りしてなかったけど、尺八も良いものね~」

 

 

神前式の音楽は、幻想郷唯一の楽団であるプリズムリバー三姉妹が請け負った。

何時もの洋楽器ではなく、リリカ、メルラン、ルナサの三人は神前式に合った和楽器を使って演奏を行っていた。

赤い服を着た三女リリカはキーボード。

白い服の次女であるメルランはトランペット。

黒い服の長女ルナサはバイオリンで演奏をするのだが、今回はそれに似た和楽器を選んで使っている。

慣れない楽曲での演奏の筈だが、三姉妹は息の合った調で音色を奏でていた。

新郎新婦の入場が終ると、社に入る前に巫女である響華が二人にお祓いをする。

沈黙して御幣を振るう姿は流石、博麗の巫女を務めていただけの事はある。

手慣れた様子で力強く振っていた。

 

 

響「身を清めた新郎新婦は神前にお上がり下さい」

 

零「あぁ。

手を握れ、霊夢の格好では歩きにくいだろう?」

 

霊「素直に握ってほしいって言えばいいのに」

 

零「皆の前で少し恥ずかしいんだよ」

 

霊「はいはい、わかったわよ。

どうぞ」

 

 

新郎新婦の身体を清め終わり、いよいよ挙式が始まった。

社へ上がろうとする二人が手を繋ぐと{おぉ}と、どよめき声が客席から聞こえてきた。

友人として見ていた魔理沙も少し驚いた表情でアリスと見ていた。

顔には出していないが、零夜の小恥ずかしがっているのを見たアリスはクスリと笑ってしまった。

 

 

魔「おぉ、あいつら手握ったぞ」

 

ア「フフッ、零夜さんったら照れてるわね」

 

魔「顔には出していないが、霊夢に何か言われたみたいだな」

 

ア「でも女性側としてはああいう気遣いの出来る男性には好感を持てるわね」

 

魔「しかも子供好きと来たもんだ。

これは次期博麗の巫女が誕生するのも遠くなさそうだぜ」

 

 

その後の式は順序良く進み、零夜と霊夢が互いに指輪を交換すると、式に集まった全員が歓喜し、拍手喝さいの中、二人は幸せという翼を授かった。

 

その日の夜の博麗神社からは、蝋燭の灯が消えることが無かったと言う。

 

 




色々調べたのですが、和風結婚式は神前式と言うらしいです。
やっぱり神社に住んでるんだから式も日本風にしようと思って神前式にしました。
あまり考えずに書きたいように書いたので少し物足りない感ありますが、式の手順長いし全部入れるのは無理です!


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76話

結婚式の後ですが、日常回に戻ります。


春に行われた博麗神社の神前式の様子は、文々。新聞で大きく取り上げられた。

一面の記事には神前式で二人が指輪を交換する瞬間が大きく載せられ、人里でお祝いムードとなる程、影響が強かった。

しかし、あれから二か月が経ち、流石に幻想郷も徐々に落ち着いた今までの空気に戻っていった。

 

__________

 

 

~紅魔館~

 

 

リュウトが自室のベッドに寝転がりながら本を読んでいると、扉からノックが聞こえてきた。

こうして、わざわざ彼の部屋に来るのは咲夜くらいしかいない。

開いている事を彼女に伝えると、音を立てながら扉が開き、咲夜が現れた。

 

 

咲「リュウトさん、お客様です・・・昼間からベッドでゴロゴロするなんて関心出来ませんわよ」

 

リ「ん?あぁ、やはり咲夜だったか」

 

咲「解っていたならだらしない格好で出ないでください」

 

 

呆れる咲夜の言葉を適当な返事で流し、再び注意される前にベッドから跳ね起きる。

テーブルの上に読みかけの本を置くと、咲夜は客人をリュウトの前に出した。

 

 

咲「全くもう・・・どうぞ、阿求さん」

 

阿「初めましてリュウトさん、稗田阿求と申します。

今日は貴方を私の屋敷に招待するべくやって来ました」

 

リ「俺を?あぁ、解ったぞ。

幻想郷縁起に俺の事を記すんだな?」

 

阿「流石ですね、話が早くて助かります」

 

 

単に身を包んだ少女、稗田阿求は一礼する。

靡く黒髪は日本人形を連想させ、見た目10代前半の少女でありながら、淑女としての嗜みを身に着けているようであった。

丁度、暇を持て余していたリュウトは直ぐに出かける準備を始めた。

 

 

リ「良いだろう。

断る理由も無いし、今更隠すことも無い。

用意するから待ってくれ」

 

咲「わ、私もご同行よろしいですか?」

 

リ「なんだ?咲夜も呼ばれたのか?」

 

咲「いえ・・・その」

 

リ「?」

 

 

咲夜は目線を下に向けながらボソボソと口ごもる。

何が言いたいのかを察した阿求はサッと彼女の片手を取り、ニコリと微笑みながら顔を近づけて耳元で囁いた。

 

 

阿「構いませんよ。

リュウトさんが気になるんでしょう?」

 

咲「!!」

 

リ「?」

 

 

阿求が囁いた後、咲夜の顔が一気に赤く茹で上がる。

何も聞こえていないリュウトには何が何だかさっぱり分からなかった。

 

 

__________

 

 

~稗田邸~

 

 

リ「おぉ、凄いな・・・」

 

咲「綺麗なお屋敷ですね、とても手入れが行き届いていますわ」

 

阿「咲夜さんに褒めていただけるとは光栄です。

私は何もしていないのですがね・・・」

 

 

大きな和室に案内された二人は、塵一つ無い屋敷に感心した。

確かに紅魔館が清潔を保っているのは人知を超えた二人がいてこそ。

それと同じ事を普通の人間が出来ている事に驚いたのだ。

 

 

リ「しかし、此処まで広いと流石に大変だと思うんだが」

 

 

彼はそう言うと、ニスの塗られた綺麗な木のテーブルに置かれた緑茶を一口啜る。

襖の向こうには広大な日本庭園が広がっており、大きな池に錦鯉が何匹も泳いでいるのが見えた。

白玉楼と良い勝負だ。

 

 

阿「ずっと昔に私の父が建てた屋敷なので今更縮小する気はありませんよ。

それに、転生を繰り返して私が守って来た屋敷でもあるんです」

 

リ「そうか、阿求は閻魔との契約で転生が許された存在だったな」

 

 

彼は未来の世界で、阿求が転生した少女から聞いたことがあった。

阿求は代々血筋で幻想郷の歴史を書き留めている一家の娘で、縁起を書き記す者は転生によって生まれるらしく、

彼女も生前の記憶を持ち合わせており、今から4代前の記憶を継いでいるとか。

しかし、転生するにはそれなりの枷があり、30年という短い寿命と、死後に閻魔の下で100年働かなければならない契約があるのだそうだ。

勿論、その時の記憶も持ち合わせており、彼女は映姫の事を知っている。

余りに幸せとは遠い生き方をしている彼女に咲夜は悲しみを感じた。

 

 

咲「転生する魂ですか・・・。

少し悲しいですね・・・」

 

阿「え?何故です?」

 

リ「結婚しても30年しか生きられないのだろう?

それに、死んでからも過酷な労働が待っているなんて可哀そうじゃないか」

 

阿「そんな事ありませんよ。

私が結婚する人も、また転生者なのですから」

 

リ「何?転生出来るのは阿求だけではないのか?」

 

阿「はい、なので許嫁が私には居ます」

 

咲「許嫁・・・ですか」

 

 

実際、未来の世界でもリュウトは阿求について知っていた。

転生することについても多少なりとも聞いた事があったが、結婚相手まで転生者だとは初耳だった。

そして、一番驚いたのが、その許嫁が屋敷に住んでいる事だった。

 

 

阿「今から呼んであげますね。

愁さ~ん、お客様に貴方の事紹介したいから来てくださ~い」

 

咲「ど、同棲しているのですか!?」

 

 

驚く咲夜を他所に阿求が彼の名を呼ぶと、部屋の障子が開き、一人の少年が現れた。

年齢は阿求と同じ位で、顔だちには少し幼さが残っている若い少年だ。

しかし、良い家柄なだけあって服装は平民が着るようなものではなく、灰色の袴を穿いていた。

 

 

愁「そんなに大きな声で呼ばなくとも自分は此処にいます。

はしたないのでお客さんの前で止めてください」

 

阿「そんなこと言って、前に生きていた時代では肝心な時に居なかったではありませんか」

 

愁「貴方はよくそんな昔の事を覚えていますね」

 

 

阿求の言葉をサラリと躱し、愁という少年はリュウトとテーブル越しに対面する。

しれっと阿求の隣に座った彼は、一礼して丁寧な言葉遣いで自己紹介を始めた。

 

 

愁「初めましてリュウト殿。

阿求の許嫁兼前代の夫、愁と申します」

 

リ「初めまして、博麗リュウトだ。

以前は神谷と名乗っていたが、偽名を使う意味も無くなったから本名で名乗らせてもらう」

 

愁「やはり本当に博麗の血を継いでいるのですね」

 

リ「あぁ、何なら永遠亭で血液検査をしても良いくらいだ」

 

愁「疑ってなどいませんよ。

纏っている空気が霊夢さんに似ていますからね、正義に満ち溢れています」

 

咲「♪」

 

 

自慢の彼を誉められて少し嬉しくなった咲夜からは自然と笑みが零れる。

微笑ましく思う愁は、自分たちと咲夜達を照らし合わせて語った。

 

 

愁「本当に仲がよろしいのですね

まるで最初に出会った私達を見ているようです」

 

阿「あの頃は私達も初々しかったですね~」

 

愁「私が君を想う気持ちは変わっていませんよ?」

 

阿「あら、嬉しい事を言ってくれるのですね」

 

 

頬に手を当てながら照れる阿求だが、彼女達の最初というのは今から1000年以上昔の話である。

それでも二人が未だに愛し続けていられるのは、もしかしたら転生というもののお陰なのかもしれない。

 

 

リ「見せつけてくれるのは一向に構わんが、当初の目的は忘れるなよ?」

 

阿「勿論。

ついでに咲夜さんとの関係も詳しく教えて貰っちゃいましょうか?」

 

咲「そ、そんな・・・」

 

愁「阿求、咲夜殿が困っておりますよ。

そのくらいにしておいてあげなさい」

 

阿「ククっ、冗談ですよ咲夜さん。

真に受けないでくださいな」

 

 

その後、幻想郷縁起にまた一つ名前が記された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これを機にリュウトの情報が幻想郷縁起に載せられる事になります。
めんどくさいのでその部分は省略します。
愁は阿求の許嫁として再登場させました。


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77話前編

書いてみたかった回に手を出しました。
突っ込みたい所が多くあると思います。


咲「ふんふふんふ~ん♪」

 

 

ご機嫌な様子で部屋の天井にハタキを掛ける咲夜。

鼻唄交じりにリズムに乗せて掃除をテキパキと進めていく。

特に何か良いことがあった訳でもなかったが、出来るだけ楽しく掃除をテキパキトしたいという彼女の心情が表れていた。

一部屋の掃除が終わり、次の部屋へ向かおうとドアを引くと、彼女の目の前に大きな影が現れた。

リュウトは咲夜の手を取ると、決意をした目で彼女を捉えた。

 

 

咲「え?あ、あの、リュウトさん?」

 

リ「さ、咲夜。

明日、外の世界へ遊びに行かないか?」

 

咲「・・・ふぇ?」

 

 

突然の事に咲夜は固まってしまった。

 

 

________

 

 

翌日、咲夜は初めてのデートに着ていく服の候補をクローゼットから引っ張り出し、ベッドの上に並べていた。

初夏が近いので薄手の洋服を選んだのだが、スカートにするかショートパンツにするか、上着の色は白か、水色か、悩み処は多々あった。

 

 

咲「う~ん、悩みますわ。

リュウトさんはどんなファッションが好みなのでしょうか?」

 

 

鏡で衣装合わせをしながらぼやく。

かれこれ数時間はこうしている。

すると、部屋の扉がゆっくりと開き、フランドールが顔を出してきた。

 

フ「咲夜~、一体何時まで悩んでるつもり?

そろそろリュウトが 行こうって言ってるよ?」

 

咲「も、申し訳ありません。

ですが、どれを着ていこうか決められないのです・・・」

 

フ「そんなに悩まなくてもリュウトは咲夜が選んだファッションなら何でも褒めてくれそうだけど?」

 

咲「それは・・・」

 

フ「もうっ自分で決められないなら私が選んであげる!」

 

咲「え?」

 

 

__________

 

 

美「それにしても咲夜さんと逢い引きですか。

咲夜さん、どんな格好で来るか楽しみですね~」

 

リ「今頃、着る服に悩んでいたりしてな」

 

 

紅魔館の門前で美鈴と他愛ない話にふける。

幻想郷の結界を越えるために紫に前日から頼んでいたリュウトは、準備を早めに済ませて咲夜が来るのを待っていた。

数分待っていると、目の前の空間が開いて紫が現れた。

 

 

紫「おまたせリュウト。

お相手さんはもうすぐ到着よ」

 

リ「そうか。

ん?来たようだ」

 

 

後ろの門が開けた咲夜が小恥ずかしそう歩いてくる。

フランドールのコーディネートは完璧で、咲夜の身体のバランスを程よく強調した清潔感のある白ベースのファッションだった。

健康的な美脚が覗けるミニスカートに、一瞬リュウトはドキッとした。

 

 

咲「えと・・・どうですか?」

 

リ「あ、あぁ。

凄く似合っているぞ」

 

咲「!そうですか!!」

 

 

リュウトが照れ隠しに背を向けながら誉めると、満面の笑みで咲夜は喜んだ。

それを見ていたフランも、我ながら良い仕事をしたと感心していた。

 

 

フ「流石私が選んだだけあるね!」

 

美「あのファッション、フラン様が選んだのですか?」

 

フ「あんまり長く選んでるから私が代わりにやってあげたの。

リュウトもまんざらじゃなさそうだし、一件落着って所ね」

 

美「ま、後はお二人で楽しんできてくれれば何よりですね」

 

 

仲良さげに会話をするリュウトと咲夜を二人で後ろから見守っていると、紫が指でそっと空間を下へなぞり、虚無のスキマを開けた。

 

 

紫「さ、彼女も来た事だし、約束通りどうぞ」

 

 

外の世界との道を開ける。

無数の目が見つめてくる先には明るい世界が広がっている。

博麗大結界の境界線がこの虚無空間なのだ。

 

 

リ「よし、では行くぞ」

 

咲「はい!行きましょう♪」

 

 

二人は手を繋いで同時に歩き出す。

暫くすると光の中に二人は消えていき、それと同タイミングでスキマが閉じた。

 

 

__________

 

 

咲「うわぁ!凄いですね!」

 

リ「あぁ。150年前だと言うのに既に此処まで発展していたのか、人類は」

 

 

二人の目の前に現れた景色。

それは、空港に入った時以上の人が行き交う、高層ビルが立ち並ぶ街並みだった。

見上げれば首が痛くなる高層ビル群が果てしなく続いている。

二人は、東の京の都の地を踏んでいた。

 

 

リ「フム、どうやら此処は東京だな。

街並みは全く違うが、発展の様子を見るに間違いないだろう」

 

 

実際、案内表示の看板にも東京都の区名が書かれていた。

ちなみに今、二人が立っている場所は中央区。

新橋であった。

此処まで大きな街を見たのが初めての咲夜は興奮を抑えきれなかった。

 

 

咲「凄い、旅行で行った島の街とは比べ物になりませんね!

あの自動車?というのもいっぱい走ってますわ!

あら?あの細長い四角い自動車は何でしょう?」

 

 

バスを見て子供のようにはしゃぐ咲夜の目は未知への興味を捉えていた。

しかし、外の世界の移動手段としてリュウトが選んでいたのはバスではなかった。

 

 

リ「咲夜、興奮しているところすまないが、今日はバスには乗らないんだ」

 

咲「え?そ、そうなのですか・・・」

 

リ「その代わり、アレに乗るぞ」

 

 

そう言ってリュウトは上を指す。

指の先には高架線があり、その上を走るモノレールが見えた。

自動車でもない、飛行機でもない奇妙な乗り物を初めて見た彼女は興味津々でリュウトに質問した。

 

 

咲「なんですかアレ!?

アレが電車というやつですか?」

 

リ「いや、あれはユリカモメというモノレールだ。

あれで東京湾の方へ行こう」

 

咲「乗れるのですか!?」

 

リ「あ、あぁ乗るぞ。

君は何にでも興味を持つな」

 

咲「初めて見るものばかりなので・・・」

 

リ「いいさ。

此方としても、此処に連れてきて良かったと思えるからな」

 

 

丁度近くにモノレールの駅があり、そこで切符を購入する。

彼女は切符の券売機にも興味を持つが、キリがないのでリュウトは咲夜の手を取ってホームまで連れ出す。

暫くすると、無人で運転しているユリカモメがホームにやって来て、安全対策の為に設置されたホームのガラス扉が開き、ユリカモメの自動ドアが開いた。

 

 

咲「わぁ、全て自動なのですね。

凄く賢い機械なのですね」

 

リ「コンピューターの自動操縦だからな。

時間通りに駅に着く。

先頭車両に乗って見るか?」

 

咲「はい!是非!」

 

 

車両に乗り込み、先頭車へ向かう。

一番前の窓からは、ユリカモメの走っているレールが見えた。

そして車窓からは東京のビルの街並みが流れるように見えた。

速度を上げて走っているモノレールの中は静かで、揺れさえも感じない程だ。

 

 

咲「静かですね。

こんなに速いのに揺れもそこまで感じませんわ」

 

リ「確かに殆ど感じないな。

これは凄い・・・。

お、そろそろ目的地に着くぞ」

 

 

駅に止まるためにブレーキをゆっくりとかけるモノレールは、一分ほどすると完全に停止し、停車駅のアナウンスが流れた。

 

 

アナウンス「お台場海浜公園です。

お忘れものの無いようご注意下さい」

 

リ「アナウンスだ。

こうして忘れ物をしないように呼び掛けているんだ」

 

咲「この女性はこれに乗っているのですか?」

 

リ「録音しているんだよ。

詳しくは降りてからだな」

 

 

扉が開き、二人はホームに降り立つ。

目の前には、窓越しに覗ける大きな銀色の建物が見えていた。




ユリカモメ本当に静かですよね。
ちなみにユリカモメとは東京の中央区辺りを走っているモノレールのことです。


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77話中編

初めて見るものに興味津々な咲夜さん。
可愛いなぁ~。
無邪気な一面を持つ咲夜さんも中々良いですな。
今回は思いっきり東方関係ない物が出てきます。
突っ込まないで下さい。


~お台場~

 

 

咲「綺麗な都市ですね~。

程よく緑があってとてもリラックス出来ますわ」

 

 

 

東京湾を埋め立てて造られた人工の大地で、モノレールの駅から一歩出ると、ほのかに潮の香が漂ってくる。

しかし、整地されて建物が立ち並び、高速道路や長大な架け橋でつながる此処は海の近くという感覚があまりしない。

都市の中心から離れているにも関わらず、未だにビルの摩天楼が続いていた。

 

 

咲「何処まで行っても都会が広がっていますわね」

 

リ「日本の首都だからな。

さて、まずは腹ごしらえだな」

 

咲「そうですわね。

そろそろお昼ですわ」

 

 

咲夜の腕時計は11時を指しており、丁度昼前の時間帯だった。

彼の目線の先。

ショッピングモールらしき建物の周辺には活気があふれており、それだけの人気を誇る有名スポットであることは明白だった。

そして、建物の前には巨大なロボットの像が立っている。

始めて目にする謎の立像を前に、咲夜は立ち止まってしまう。

 

 

咲「リュウトさん!

あれは何ですか!?」

 

 

白を基調とし、トリコロールカラーのボディを持つ二本の角のロボット。

いや、設定的にはモビルスーツと呼ばれているのだが。

子連れの家族が咲夜の横を通った時に、父親に手を引かれて歩く少年が高らかに叫び、大喜びした。

 

 

少年「パパぁ!ガンダムだよ!」

 

父「凄いなぁ!かっこいいなぁ!」

 

 

親子そろって口にする{ガンダム}という名前。

これは、昔流行った人気アニメ、機動戦士ガンダムの主役メカであるガンダムの実物大立像だ。

全高18mという圧倒的な存在感は、咲夜の心を撃ち抜いた。

 

 

咲「わはぁ~!

これはガンダムというのですか!

良く分かりませんが、凄く格好いい響きの名前ですわ!」

 

リ「まぁ確かに格好いいな。

何なら一緒に写真を撮ってやるぞ?」

 

咲「是非お願いします!」

 

 

目を輝かせながらガンダムの足元まで走り、リュウトの構えるデジカメに目線を合わせる。

しかし、咲夜はそれだけでは不満だった。

 

 

咲「リュウトさん、一緒に映ってもらわないと意味がありませんわ」

 

リ「いや、しかし。

俺がカメラを持っていなければ一体誰がシャッターを押すんだ?」

 

咲「むぅ。

ですがやはり二人一緒でないと撮る意味がありませんわ」

 

 

頬を膨らませる咲夜。

仕方がないので先程の親子に声を掛け、撮影を頼むことにした。

 

 

リ「すみません、写真を撮って貰っても良いですか?」

 

父「はい、構いませんよ」

 

 

リュウトの頼みを快く引き受けてくれた男にデジカメを託し、咲夜の横へ駆けていく。

横に並ぶと、咲夜はリュウトの片腕に腕を絡ませ、手を繋いだ。

彼は僅かに羞恥心を感じるが、悪くはない気分だった。

 

 

父「じゃあ、撮りますよ!

3、2、1!」

 

 

カシャッ

 

 

男はカメラのピントを合わせ、合図と同時にシャッターを押す。

画面には、銀髪の少女と黒髪の青年が朗らかな笑顔が写されていた。

 

 

_________

 

 

咲「色んなお店がありますわね・・・外の世界の飲食店は種類が豊富なのですね」

 

 

自動ドアをくぐり、フードコートに入ると、様々な料理店が所狭しと並んでいた。

店窓からは食事を楽しむ人々が垣間見え、ちらほら行列も見える。

和食、レストラン、中華専門店にカレー専門店まである此処は、世界の料理を網羅する事だって可能に思えてしまう程充実した店構えなのだ。

 

 

リ「ここまで多いと何処にしようか迷うな。

咲夜はどんなものが食べたいんだ?」

 

咲「そうですわね・・・幻想郷では食べられないような珍しい物を食べてみたいです」

 

リ「わかった。

なら・・・・お?

良いところを見つけた」

 

 

右手側に並ぶ店の中からリュウトが見つけたのは、外の世界では名の知れた有名なラーメン店だった。

人里でも見かけない謎の料理は咲夜の興味を引き寄せた。

 

 

咲「ラーメン?

私は食べたことありませんね」

 

リ「ならこの機会に食べてみよう。

人里でもラーメンを出している店は無いからな」

 

 

暖簾のかけられた店の入り口をくぐると、食欲をそそる良い香が漂ってきた。

従業員が指定したカウンター席へ座り、メニュー表を見る。

カウンターからは水の入ったコップを出した店員が注文を取り始めた。

 

 

店員「ご注文は何になされますか?」

 

リ「咲夜、どれがいいんだ?」

 

咲「私はこの味噌ラーメンというのを頂きますわ」

 

リ「飲み物は何にする?

俺はウーロン茶だが」

 

咲「なら私も同じものにしますわ」

 

リ「決まりだな。

味噌ラーメン一つと、チャーシュー麺一つ。

それとチャーハン一つとウーロン茶二つだ」

 

店員「畏まりました」

 

 

_________

 

 

店員「お待たせしましたー!

味噌ラーメンとチャーシュー麺です!

チャーハンもう少しお待ちください!」

 

 

注文してからしばらく待っていると、店員の若い男性がカウンター越しに中華風な黒い器を出して来る。

リュウトは二つを受け取ると、香ばしい香りが鼻腔をくすぐってきた。

 

 

咲「わぁ・・・!」

 

リ「これは美味そうだな、俺も食べるのは久しぶりだ」

 

咲・リ「いただきます!」

 

 

割りばしを二つに割り、リュウトは麺を啜る。

咲夜は熱いのか、吐息で冷ましながら上品に麺を口に入れた。

 

 

咲「美味しいです!

味の表現が上手く出来ませんが、複雑な味の中に素材の味が生きていますわ!」

 

リ「食レポみたいだな。

俺もこんなに美味いラーメンを食べたのは初めてだが」

 

咲「皆さんが並んで食べる気持ちが解った気がしますわ。

・・・紅魔館でも作ってみようかしら?」

 

リ「今度作ってやろうか?

一応心得は持っているぞ、響華に良くせがまれたからな」

 

咲「あら、ではご教授願います♪」

 

リ「任せておけ、約束だ」

 

 

互いに笑いながら、和気あいあいとラーメンを啜る。

二人きりの外界デートは、まだ始まったばかりだ。

 




この小説の時代は進んでいるので時間のズレが生じています。
でなければガンダム立像なんて存在しません。
何故ガンダムを出したかというと、気まぐれです。
因みに、幻想郷にラーメン屋はありません。
完全なる後付け設定ですね、しかもどうでもいい。


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77話後編

最近スランプ気味でして、日常系のネタが切れかけています。
どうしょう、、、


店員「毎度ありやしたー!」

 

 

昼時も過ぎ、腹ごしらえを終えた二人は、ショッピングモールの中を散策することにした。

主に洋服を取り扱う店が多く、若い女の子の出入りが大多数を占めていた。

それに目をつけた咲夜がリュウトの手を引っ張りながら中へ入ると、その店は人里の洋服店とは比較にならないほどの品揃えを有していた。

洋服に目が無い彼女にとっては楽しいひと時であり、リュウトも出来るだけ付き合う姿勢を示して後を付いていく。

 

 

咲「あ、これ可愛いわね・・・。

リュウトさん、少し試着してみても宜しいですか?」

 

リ「あぁ、好きにすると良い。

俺も待っていてやるから」

 

 

気になる洋服を見つけて試着室に入り、暫く中で着替えをする。

外で待っているリュウトは、カーテン越しに聞こえる肌と布が擦れる音に何かイケない事を想像してしまい、顔を赤くして首を振って冷静を保とうとしている。

すると、着替えを終えた咲夜がカーテンを開けた。

ノースリーブの水色のワンピースだ。

 

 

咲「どうですか?

少し露出が多い気がしますが・・・」

 

リ「いや、似合っているぞ」

 

咲「本当に?

では・・・」

 

 

再びカーテンを閉じて、次の服へ着替える。

今度は黒いフリルのついたミニスカートにジャケットだ。

 

 

咲「どうですか?」

 

リ「あぁ、似合っているぞ」

 

 

また違う服へ着替える。

 

 

咲「リュウトさん!

これはどうですか?」

 

リ「似合っているぞ」

 

 

次の服に着替える。

 

 

咲「これはどうでしょうか??」

 

リ「うむ、似合っているぞ」

 

咲「・・・・何だかどうでも良いという感じですわね」

 

リ「えぇ?そんな事は無いんだが・・・」

 

 

ずっと同じような反応を繰り返すリュウトに面白みを感じない咲夜は頬を餅のように膨らませる。

悪気があるわけではなく、単に咲夜が全て着こなすので言っていただけなのだが、彼女はそれにご不満なようだ。

 

 

リ「いや、余りに君が全部着こなすから他に何も言えないんだ」

 

咲「え?う~ん。

それは嬉しいですが・・・何か面白みがありませんわ」

 

リ「そんなこと言われてもなぁ・・・」

 

咲「そうだ!

リュウトさんも試着すればよいのでは?」

 

リ「え?俺は別に・・・」

 

咲「良いから!

服は私が選んで差し上げますから♪」

 

リ「ち、ちょっと!

押すな!」

 

咲「まぁまぁ、これだけ豊富なのですから、リュウトさんにピッタリなお洋服もありますわよ♪。

あ、先程試着した物は全て買いますわ」

 

リ「・・・好きにすればいいさ」

 

 

試着し終えた服を全て籠に入れ、レジで精算を済ませると、紙袋全てをリュウトに任せる。

大した量ではなかったが、いつかの買い物癖は健在だったと、懐かしく感じた。

グアムでのショッピングは最悪だったせいか、今回の量は可愛く思える。

が、しかし・・・。

 

 

咲「折角なのでリュウトさんの試着した服も買いましょう!」

 

リ「え‘‘・・・」

 

 

結局、後から増えてしまう事となった。

 

_____________

 

 

~墨田区郊外~

 

 

咲「わぁ・・・すごく高いですね」

 

リ「こう間近で見上げると首が痛くなるな」

 

 

墨田区の閑静な下町の中に聳え立つ一本の巨大な電波塔。

700mを越える巨大な塔は、真っすぐに天を差していた。

リュウトが行こうと言い出した場所だったが、それには理由があった。

 

 

リ「よし、昇ろうか」

 

咲「上がれるのですか?」

 

リ「有料だがな。

おっと、まだ時間があるな」

 

 

腕時計が差す時刻は午後三時近く。

何故この時間ではダメなのか、咲夜は聞くが、彼は何も教えてはくれなかった。

ただ、楽しみにしておいてくれ、と一言言うだけだった。

 

 

リ「近くに水族館がある。

そこで時間を潰そう」

 

咲「すいぞくかんとは何ですか?」

 

リ「海の生き物がたくさんいる所さ。

きっと驚くぞ」

 

 

相変わらず紙袋を提げたままだが、彼は咲夜の手を牽いて歩く。

手を握られた咲夜の表情は嬉しそうに見えた。

 

 

_________

 

 

~巨大水槽前~

 

 

咲「これは・・・お魚が泳いでいますわ!」

 

リ「海の魚さ。

海の中ではこうやって魚達が泳いでいるんだ」

 

 

水槽の中ではイワシが群れを成して泳ぎ、光のカーテンを作り出している。

幻想的な光景が目の前に広がっていた。

 

 

咲「神秘的ですね、イワシがああやって泳いでいるなんて知らなかったです」

 

リ「弱いから群れを作って集団で泳ぐ事で大きな魚に見せているんだ。

魚なりに考えた結果なんだよ」

 

咲「生き抜くための知恵なのですね・・・。

昔の私みたい・・・」

 

リ「何か言ったか?」

 

咲「あ!いえ、何も。

それより、次行きましょう!」

 

リ「え?あぁ」

 

 

手をブンブンと振り、何かを誤魔化すように彼の手を引っ張って先へと進む。

ちらりと見えた咲夜の顔が少し強張っていたようにも見えたが、あまり気には留めなかった。

 

 

_________

 

 

珍しい海の生物たちを堪能し、それなりに楽しめた頃に時間を見ると、既に日が沈む時間帯となっていた。

丁度良い暇つぶしになったと思う。

そして、退館しようと出口に向かおうとした時。

目の前を横切った女子高生がストラップを落としたまま歩いて行ってしまった。

しかし、早期に気付いたリュウトが拾い、その子を呼び止めた。

 

 

リ「君、落としたぞ」

 

?「え?ア!ありがとうございます!!」

 

 

小走りで駆け寄って来た緑髪の少女は、白蛇のストラップを受け取ると大事そうに両手に握り、彼に礼を言った。

 

 

?「これ大切なものなんです!

危うく無くすところでした!」

 

リ「今度から気をつけろよ」

 

 

と、普通に会話をしていると、リュウトはある事に気が付いた。

この少女、何処かで見覚えがある。

 

 

リ(この子・・・どこかで会ったような・・・。

なるほど、そういう事か。

これも運命ってところだな)

 

 

確かに見覚えがあり、何処で見たかも思い出した。

一人で納得していると、遠くからその少女を呼ぶ声が聞こえた。

恐らく一緒に来ていた友達だろう。

彼女はその子の名前を呼んだ。

 

 

少女「早苗ー!

早く行こうよ~!

今日は早苗が引っ越しするっていうから東京まで来たんだよ?」

 

早「ごめんごめん!

ではさようなら!」

 

 

一礼して早苗という少女は友達の所まで走っていく。

近いうち、彼女と再会することになるだろう。

 

 

咲「お知り合いですか?」

 

リ「さぁな。

さ、俺達も行こう」

 

 

リュウトは少女の去る姿を見送り、水族館を出る。

既に日の光は照っておらず、夜の街灯が街を明るく照らしていた。

その中でも一際光を放っていたのが、あの電波塔だった。

鮮やかな紫の光が塔を螺旋状に流れる。

さらに、空色の光で照らされた展望台が一層に美を産んでいた。

 

 

_____________

 

 

ホールからエレベーターで一気に展望台へ昇る。

一面ガラス張りの展望台は、夜の東京を映し出していた。

 

 

リ「これを君に見せたかったんだ。

昼の東京も良いが、夜はとても幻想的なんだ」

 

 

強化ガラスの床の上に立ち、咲夜は下を見下ろす。

さっきまで自分達が居た街がまるでミニチュアの世界のように感じられ、そのミクロな世界が地平線の彼方まで広がっている。

宵闇に映える真っ赤なビルの灯火の点滅が優しく夜を彩り、まるで生きているかのようだ。

 

 

咲「とっても明るいですわね。

それでいて美しい景色・・・。

この街には一体何人の人々が住んでいるのでしょう?」

 

リ「考えたくも無いな。

途方も無く多くの人々がひしめき合って存在しているのだから」

 

 

夜景に見惚れる咲夜の横顔を見るリュウトは、小恥ずかしそうに咳払いをする。

 

 

リ「ま、またこうして咲夜と出掛けたい・・・」

 

 

顔を見せたくないのか、向こう向きに顔を逸らし、照れながらで声が小さい。

咲夜はリュウトの腕にそっと抱き着く。

 

 

咲「奇遇ですわね、私もそう思っていた所ですわ♪」

 

 

___________________

 

 

翌日、夜のうちに帰って来た二人の距離はより一層近くなっていた。

この日を境に、二人は休日を何処か一緒に出掛ける事が多くなったという。




上手く書けてないので終わりかたが微妙な気がしますが、他に何も思い付かないのと忙しくて書く暇無いのでこうなってしまいました。
早苗はフラグです。


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風神録78話

今日は仕事帰りのバスで執筆してたら隣に座った女の子がこの小説読んでたんです!!
嬉しいですねぇ!自分が書いた小説が読まれるってのは!
てなわけで季節は秋です。


~外界、とある神社~

 

 

落ち葉が風に揺られる季節の注連縄が掛かった鳥居を持つ深夜の神社。

丑三つ時と呼ばれる時間なのにも関わらず、未だに社には灯りが付いていた。

その中で、一人の少女が誰かと話すような独り言を淡々と続けていた。

 

 

早「もうこれで、みんなとはお別れですね・・・」

 

?「怖いか?」

 

早「寂しくはあります。

でも、それでいてワクワクしている自分も居るんです」

 

?「ほう?何故?

あちらの世界は此処とは全く違う世界なんだよ?」

 

早「だからですよ。

きっと新しい出会いが待っている筈です」

 

?「フフッ良い考え方だねぇ。

・・・それじゃ、準備は良いね?」

 

早「勿論。

何時でも行けます」

 

?「なら行こうか。

‘‘幻想郷‘‘へ」

 

 

その翌日。

とある街から一つの神社が忽然と姿を消した。

 

 

_________

 

 

~博麗神社~

 

 

零「ズズッ・・・・。

ほほう、妖怪の山に謎の神社現る・・・か」

 

 

朝、味噌汁を啜りながら新聞を広げていた零夜は、見出し記事に注目していた。

妖怪の山の頂上に、神社と大きな湖が突然現れたと書かれている。

天狗の里と距離が近く、今は警戒が厳となっているそうだ。

大変な事である。

書かれている記事によると、神社には強力な神が二人存在し、いつ戦争になるか分からない状態らしい。

 

 

霊「いい加減にしてほしいものね。

神なんて出てこられたら面倒この上ないじゃないの」

 

 

霊夢が朝からやや不機嫌なのは、十中八九この異変のせいだろう。

ほぼ100%外から来たのであろうこの神社は、名前を守矢神社と言うそうだ。

神社という辺りは、垣つね同業者といった所だろうか。

 

 

霊「ん?

・・・誰か来るわ」

 

 

箸を止め、ピクリと霊夢が何かに反応する。

彼も同様に感じ取っていた。

知らない霊力の波長だ。

しかも大きい。

真っ直ぐ此処に向かってきていた。

急いで霊夢は居間から飛び出し、縁側から外に出た。

臨戦態勢で迎え撃とうと言うのだ。

 

 

霊「さぁ、何処からでもかかって来なさい!

勘が言ってるわ、今から来るのは敵よ!!」

 

?「随分物騒ですね。

今日はお話をしに来ただけなのに」

 

霊「!!」

 

 

上から聞こえた女の声に反応して霊夢は見上げる。

空には、青い巫女装束を纏ったロングヘアの緑髪が似合う少女が浮いていた。

博麗の巫女以外に巫女が居るのはあそこしかない。

 

 

早「おはようございます。

はじめまして、守矢神社から来た東風谷早苗というものです」

 

霊「守矢・・・?

山の頂上に突然現れた訳の分からない神社の巫女?」

 

早「聞き捨てなりませんね、私達の神社を訳わからない呼ばわりだなんて。

貴方こそ、神社のくせに碌に信仰を集めようともしないで。

神を祀らない神社なんて存在意義がありません」

 

霊「神様ならいるわよ。

最も、この神社の神様じゃないし、しかも私の旦那だけどね」

 

早「・・・はい?」

 

 

縁側に立つ零夜に視線を合わせる早苗。

人間には存在を感じ取れない神は、霊力を探ったところで無意味。

要は、霊力を探っても反応が無ければ神なのだ。

しかし、早苗は神の気を感じ取り、零夜が本物の神である事を確信した。

 

 

早「・・・本当に神のようですね。

貴方、何者なんです?」

 

零「俺の名は零夜。

かつての地球ではトール神と呼ばれていた」

 

早「トール!?

北欧神話最強の神の一人じゃないですか!!」

 

 

ひっくり返る勢いで驚く早苗の反応も無理はない。

事実、神話時代に刻まれたトール神は最強の戦神として、オーディン、フレイと共に祀られている。

伝わっている性格や姿は全く違うが。

 

 

早「私では敵う相手ではありませんね・・・。

しかし、今回は話をしに来ただけで戦う気はありません。

私は貴方方と交渉に来たのです」

 

霊「交渉?」

 

早「はい、此処に守矢神社の分社を建てさせてもらいます」

 

霊「はぁ!?

勝手に人様の敷地に変な物建てようとしないでよ!」

 

早「そのための交渉です。

貴方達のメリットは参拝客が増える事。

私達のメリットは信仰が増える事。

分社に入った賽銭は全て貴女達に差し上げます、これでどうです?」

 

 

悪い話ではない。

基本的に妖怪退治で生計を立てていて、賽銭は殆ど入っていない。

相応の金額が手に入るならば許可しても良いが。

 

 

霊「悪いわね。

私は今の生活に満足してるの。

お金が無くたって零夜も一緒に働いてくれるし、それにね、私達の憩いの場に余計な物を入れたくないのよ」

 

零「霊夢・・・」

 

 

正直、零夜は霊夢が承諾するのではないかと考えていた。

特に不自由なく暮らしてはいるものの、あまり贅沢が出来ている訳でもなく、零夜も人里に行って仕事を見つけようとするが、神様を働かせれば罰が当たると言われて働かせてくれない。

結局は霊夢の手伝いと少しの信仰で金を足しているくらいだ。

二人の稼いだ金額を足しても多くは無い。

零夜は霊夢の幸せの為には金が必要だと考えていた。

しかし、霊夢はそれを望まずに、零夜と一緒に居る事が幸せだと言ったのだ。

 

 

早「泣かせますね。

しかし、これで交渉決裂です。

私達は博麗神社を敵対対象として見ます」

 

 

そういうと早苗はスカートのポケットから小さな杭を取り出して地面に突き刺した。

 

 

早「この神社の土着神の呪いを掛けました。

三日後にこの土地は呪いで消え去ります。

神社もろともね」

 

霊「何ですって!?」

 

 

次の瞬間、早苗の身体が透け始める。

何かしらの能力を使ったのか、彼女の体から徐々に実体が無くなっていった。

 

 

早「もし止めたいのなら、守矢神社に来てください。

決着はそこで決めます」

 

霊「あ!ちょっと!

待ちなさい!!」

 

 

霊夢が手を伸ばして腕を掴もうとした時には既に早苗の姿は消えていた。

零夜は今の術に見覚えがあった。

 

 

零「今の術から神の気が感じられた。

恐らく神力を使った空間転移術だろう」

 

霊「何よ、ってことはあの女も神だってこと?」

 

零「それは無い。

あの子から感じられた気ではなかった。

神社で祀られている神の手によるものだろう。

それより・・・これは早く抜いておいた方が良い」

 

 

地面に突き刺さった禍々しい杭。

零夜はそれに手を伸ばし、引っこ抜こうとする。

しかし、霊夢がそれに待ったを掛けた。

 

 

霊「ちょ、ちょっと!

そんな雑に抜いて大丈夫な物なの!?

もし抜いて此処が無くなったら洒落にならないわよ!?」

 

零「安心しろ。

この手の呪いは大体作るために掛けた力よりも強い力を籠めれば壊れるんだ」

 

 

そういうと零夜は杭を握った右手に神力を集中させ、杭を地面から引き抜いた。

・・・・どうやら成功したらしく、抜いても何も起こらなかった。

 

 

霊「ふぅ。

恐い事してくれるわね、心臓に悪いわよ」

 

零「確信も無いのに無責任な事はしないさ。

どうする?

守矢神社、行ってみるか?」

 

霊「当ったり前よ。

売られた喧嘩は買うわ。

でも、零夜は此処で留守番ね」

 

零「何故だ?」

 

霊「私の仕事だからよ。

手伝ってもらう訳にはいかないわ」

 

零「・・・解った。

俺は手出ししない」

 

霊「よろしい♪

頼むわよ!」

 

零「そちらもな」

 

 

パンッ!!

 

 

ニッと笑い合い、ハイタッチをして霊夢は空へと舞い上がる。

 

 

零「霊夢!受け取れ!!」

 

 

忘れ物だと零夜から投げられたお祓い棒と陰陽玉をキャッチし、空の彼方へ消えていった。

 

 

to be continue...

 

 




早苗さんは元高校生という設定です。
今回の異変は咲夜達が絡みません。
原作通りの流れを創作で少しねじります。
異変解決に向かうのは霊夢と魔理沙だけとなりますが、ゲストを一人迎えようかと検討中です。


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風神録79話

グダグダ回です。
新キャラ登場ですが、可哀想な登場です。
異変と殆ど関係ない話ですが、気にしないで下さい。


神社を飛び立ってから妖怪の山へ直進している霊夢は既に麓付近の上空を飛行していた。

すると、後方から聞きなれた腐れ縁の声が聞こえた。

後ろを振り返ると、黒い割烹着にカーディガンを羽織った魔理沙が箒に跨って浮いていた。

 

 

魔「霊夢じゃないか。

お前も新聞見て来たのかよ?」

 

霊「何よ、アンタも来たわけ?

好きねぇ、私は新聞読んだ後にさらに神社の巫女にケンカ売られてるのよ」

 

魔「なんだぁ?

じゃあ異変の犯人にもう会ってるのか」

 

霊「そういう事。

あいつは私がシめるから、アンタは手出ししないでよね」

 

 

早苗との決着を邪魔されないように、今のうちに魔理沙には釘を差しておく。

魔理沙が毎回異変解決についてくることは百の招致なので、来るなとは言わない。

味方は多いにこしたことは無い。

 

 

魔「わかったわかった。

その巫女はお前が倒すんだな?

なら私は神社で祀ってるらしい神を倒してやるぜ!」

 

霊「隙にしなさい。

私は奴に一泡吹かせられればそれでいいから」

 

魔「へへへっ!

今回の異変は私が解決することで決定だな!

そうと決まれば出発だぜ!」

 

霊「はいはい・・・ん?

下で焚火やってるわ」

 

 

山の山中から煙が上がっているのが見える。

誰かが火を使っているのだろう。

朝型に火を使うという事は、使用用途は限られてくる。

 

 

魔「私、朝から何も食べてないから腹減ってるんだよなぁ。

なぁ、少しだけ寄っていこうぜ?」

 

霊「私は食べた。

お腹もすいてないわ」

 

魔「そう言わずにさ、行こうぜ!」

 

霊「仕方ないわねぇ~。

言っとくけど、面倒事は御免だからね?」

 

 

焚火の煙を追う魔理沙の後を霊夢は付いていく。

彼女の行動力には驚かされるばかりだ。

悪い意味でも、いい意味でも。

 

 

_________

 

 

静「穣子、そろそろ焼けたんじゃない?」

 

穣「どれどれ・・・うん!

良い感じに焼けてるよ!」

 

に「早く食べようよー!

もう待ちきれないんだよ!!」

 

文「おぉ!!

流石は豊穣の神の芋!

焼けると一段と美味しそうですね~」

 

 

愛用のカメラでパシャりと焼き芋をフィルムに納める文。

穣子は焚き火の中からトングで焼き芋の焼き加減を確かめていた。

程よく焦げ目のついた焼き芋を焚き火から取り出すが、そのまま持つと火傷するので軍手をつけて持つ。

2つに割ると、湯気が立ち込める黄金色の実が姿を現した。

その瞬間、一同は歓喜の声を上げるが、如何にも秋っぽい色のワンピースに身を包んだ穣子の姉、静葉は何処か浮かない顔だった。

 

 

穣「どしたのお姉ちゃん?」

 

静「焼き芋は美味しそうだけど、それが焼けるのは私のお陰でもあることを忘れないで欲しいわね」

 

 

姉の静葉は紅葉の神で、秋になると山の木々を一斉に赤や橙に染めることが出来る。

しかし、豊穣の神である妹の方が有難いと里の人間達に言われてしまい、それに不満を持っているのだ。

そのくせ自分は穣子の焼き芋をほおばっているのだから皮肉なものだ。

 

 

に「まぁまぁ。

美味しい焼き芋が食べられればそれでいいじゃん?」

 

静「何だか納得いかないわ!

芋や栗がいっぱい獲れるようにしてくれるだけじゃ完璧な秋の神じゃないのよ!

二人そろって秋の神なのにぃ~!」

 

 

地団太踏んで悔しがるが、本人以外はこれに関してそれほど気にしていなかったりする。

分かってくれるのは妹だけだ。

 

 

穣「お姉ちゃん!

私、お姉ちゃんの気持ちが解るよ!!」

 

静「穣子!」

 

穣「お姉ちゃん!」

 

 

姉妹は共に抱きしめあう。

魔理沙達が上から見ているとも知らずに。

 

 

魔「仲が良いのは良いんだが、内容が共感できないな。

何だか反応に困るぜ」

 

霊「奇遇ね、私も同意見よ。

めんどくさそうなにおいがするわ」

 

文「あれ?

霊夢さん達何時から居たんですか?」

 

霊「さっきよ。

魔理沙がお腹が空いたって言うから寄ったのよ」

 

 

その言葉に静葉の目がギラリと光る。

今の話題の中で恐らく言ってはならないワードだったのに。

静葉の中で何かが吹っ切れて暴走しだしてしまった。

 

 

静「やっぱり芋か!?

紅葉なんかよりも食べ物のほうがいいのか!?」

 

文「あやややや、霊夢さん地雷踏んじゃったみたいですね」

 

霊「なんで私なのよ!

何方かというと魔理沙でしょ!」

 

魔「私は秋について深く考えた事自体ないぜ」

 

静「な・・・何てこと」

 

 

この魔理沙の言葉が胸に突き刺さり、静葉は沈黙して膝をつく。

立ち直るには少し時間がかかりそうだ。

さらに魔理沙は今度は穣子のハートを傷つけた。

 

 

魔「ま、秋になっても関係なく過ごすけどな。

魔法の森のキノコは山の松茸よりも美味しいし。

秋だけ美味しい松茸なんかより一年中美味しいキノコの方が良いぜ」

 

穣「ガーン!!」

 

 

キノコの王様である松茸の一番おいしい時期を否定されてしまった穣子はその場でショックの余り泣き崩れる。

秋姉妹二人に言えるのだが、この二人はメンタルが弱すぎるのではないだろうか。

 

 

に「あーあ、完全に消沈しちゃってるね。

焼き芋食べちゃう?」

 

文「賛成です!!

もう私もお腹すいちゃって。

あ、霊夢さん、私も異変解決に付いていって良いですか?

スクープの予感がします!!!」

 

霊「・・・とりあえず、1つ貰ってからね」

 

魔「ん?良くわからんが焼き芋私も欲しいぜ」

 

 

にとりのリュックから伸びたマジックハンドが焼き芋を焚き火から取り出す。

器用なもので、新聞紙にくるめて渡してきた。

その頃には霊夢の怒りはいつの間にか無くなっていた。

 

 

to be continue...




戦わずして秋姉妹撃破です。
ちなみにニトリとはここでお別れです。
次回は誰を出しましょうかね~。


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風神録80話

今回もバトルはありません。
異変だというのに・・・。


霊夢、魔理沙は共に焼き芋を頬張りながら山の頂上へと向かっていた。

普段は山に入れば哨戒天狗に見つかり次第妨害を受けるのだが、今日はその兆しが全く見られない。

何故なら・・・。

 

 

文「どうです?

私が居て助かったでしょう??

貴女達では入った瞬間から哨戒天狗に攻撃されちゃいますからね~」

 

 

今日は文が一緒に飛んでいるからだ。

彼女は山の天狗でも上級階級に位置する立場におり、殆ど顔パスでどうにかなってしまう。

実は凄く偉い天狗なのだ。

 

 

霊「あんたってそんなに凄い奴だったのね。

てっきり新聞作ってるだけだと思ってたわ」

 

魔「リュウトが言ってたろ?

未来の世界では文が天魔やってるって」

 

文「確かに次期候補ではありますが・・・」

 

魔「ホントかよぉ?

すげえなぁ」

 

 

彼女からはそのオーラが全く見えないが、人は見かけに寄らないとはこういうことを言うのだろう。

二人がそんな話をしている最中、霊夢が突然辺りをキョロキョロと眺め始めた。

まるで何かを探すかのように。

 

 

魔「どうした霊夢?

さっきから落ち着かないな」

 

霊「ねぇ、何だか凄い嫌な気配を感じるんだけど?」

 

魔「またまたぁ。

私はそんなの感じないぜ?」

 

文「私も感じませんけど??」

 

 

霊夢がふと感じた妙な気配。

それは唐突だったが、はっきりと明白に感じられた。

邪悪ではないが、良い気配でもない。

怨念?いや違う。

何か、負の感情の集合体のように感じた。

 

 

?「もしかしたら私のせいかもしれないわね」

 

霊「!」

 

 

三人の目の前に現れた赤いゴスロリ風なドレスを纏った翡翠のロングヘアの女性は言った。

彼女の周囲には、目に見えるほど黒いオーラが渦を巻いており、それが霊夢の警戒心を煽った。

 

 

霊「真っ黒な気・・・じゃない!?

この不気味な気配は一体何なの・・・・?」

 

 

お祓い棒と札を手に構える霊夢。

そして後ろでは魔理沙も八卦炉を何時でも撃てる状態にしていた。

しかし、そんな中で文だけが平然とした態度で滞空していた。

 

 

文「誰かと思えば雛さんじゃないですか。

はっは~ん?

霊夢さんが感じていたのは雛さんが集めた厄だったんですね」

 

雛「人間が山に入って来たから注意しようと思ったんだけど、文が居るなら良いかしら。

それにしても厄を感じ取るなんて、中々やるわね。

普通は感じない筈なんだけど?」

 

 

厄とは、人間がため込む不幸を引き付ける見えないオーラの事である。

この女性、鍵山雛は人間から厄を集め、年に一度それを厄払いして葬る。

彼女は流し雛という厄を吸い取る人形の付喪神なのだ。

敵でないと解ると霊夢と魔理沙は武器を仕舞った。

 

 

霊「博麗の巫女なんだから解るに決まってるでしょ。

それに、アンタが思ってる以上にえげつないわよ、それ」

 

雛「仕方ないじゃない?

これが私の仕事でもあるんだから」

 

霊「あっそ。

それより、私達急いでるんだけど?」

 

 

無駄に時間を取られたくない霊夢が少し不機嫌そうな声で雛を睨みつける。

しかし、雛はそれに全く臆する事は無かった。

寧ろそれに喜んでいるようにも思える表情をしながら、まるで媚薬にまみれたように身体をねじらせていた。

 

 

雛「あぁ、厄いわぁ♪

貴女、とっても厄いわよぉ♪」

 

魔「うぇ、何か気持ち悪い奴だなぁ」

 

文「あれが彼女の性格なんですよ。

悪い人ではないので安心してください、寧ろいい人ですから」

 

 

文の言葉を疑り深く聞く魔理沙だが、完全に引いてしまっている。

仕方ない。

初対面の人間が異常な行動をしていたら誰だって引くだろう。

 

 

雛「あ、急いでるんだっけ?

ならこれだけ持って行きなさいな」

 

 

雛がポケットから取り出したのは、流し雛の人形だった。

しかも、大量の厄が入っている。

何かの当てつけと考えた霊夢はこれに怒った。

 

 

霊「なんてものを渡そうとしてるのよ!

こんな物騒な物持てる訳ないでしょ!!」

 

雛「違うわよ、これは私から貴方達へのプレゼントよ」

 

霊「それが要らないのよ!

厄まみれじゃないの!」

 

 

お祓い棒を突き付けて激怒する霊夢。

しかし、この流し雛はそんなつもりで渡すものではなかった。

 

 

雛「これは武器よ。

ピンチになった時にこれを敵に投げつければ厄を撒き散らす爆弾になるわ。

至近距離で当たったらとんでもない不幸が降りかかる、まさに一撃必殺よ」

 

霊「ほ、本当に??

触って大丈夫なんでしょうねぇ?」

 

雛「持ってるだけでは何も起きないわ。

ただ、大きな刺激を与えると誤って爆発するかもしれないから気を付けてね。

あ、そこの金髪ちゃんの分もあるわよ?」

 

魔「げっ!?」

 

 

そう言って雛は、はい、と人形を差し出して来る。

本当に大丈夫なのか心配だが、霊夢は思い切ってそれを掴む。

・・・何も起こらなかった。

安堵して胸を撫で下ろす彼女を見た魔理沙もその後に受け取った。

 

 

雛「時間をとらせて悪かったわ。

じゃ、頑張ってね」

 

文「あれ?私の分は無いんですか?」

 

雛「ごめんなさい、二人だけだと思ってたから用意してないのよ」

 

文「あやや、そうでしたか。

一向に構いませんがね、寧ろラッキーだったと言うか(ボソッ)」

 

雛「あら、何か言ったかしら?」

 

文「いえいえ滅相も無い!」

 

霊「何で戦う前からこんなに疲れなきゃいけないのよ全く・・・」

 

魔「もう面倒事は御免だ。

早く行こうぜ」

 

霊「そうね、ちゃっちゃと終わらせて帰るわよ!」

 

 

三人はスピードを上げて山の頂上へ一直線に飛行する。

これから三人には、辛い戦いが待っている筈だ。

しかし、少女達は例え相手が神だろうと立ち向かう。

恐れていないのだ。

何故なら幾多の異変を解決して来た彼女達にとって、これは幻想郷で起きる日常の内にしか入らないから。

 

 

to be continue...

 

 

 




雛からアイテム貰いました!
何かRPGみたいな展開ですね。
てことは最後に戦うのはさしずめ魔王ですかね。
・・・あれ?あながち間違ってないような??


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風神録81話

霊夢サイドの話です。
勿論早苗と戦いまっせ、漸くレッツバトル開始です。


~妖怪の山、頂上付近~

 

 

山から聞こえる轟音の数々。

森林の上を順調に飛行していた三人は、突如として謎の攻撃を受けていた。

地上、空の両方から挟み撃ちするように魔法陣からレーザーが飛来する。

その総量はかなり多く、魔法陣の一つ一つが独立して攻撃を仕掛けてきていた。

 

 

霊「あらかじめ仕掛けてあったようね。

面倒な事をするものだわ」

 

魔「でもかなり力が込められてるぜ?

厄介この上ないな」

 

文「しかも個別に動いて攻撃してくるなんて、操ってるとしか考えられませんよ。

何処かで私達を見ている筈です」

 

 

星型の弾幕や蛇の形をした弾幕が四方から襲い掛かり、三人を分断しようとする。

明らかなトラップだった。

仕掛けたのが誰かは考えなくとも想像が出来た。

 

 

霊「仕方ない。

あいつらの手に乗ってやりますか」

 

魔「ってことは三人分かれて戦うって事か?」

 

文「そういう事ですね。

向こうも確か三人の筈ですよ?」

 

霊「丁度いいじゃない?

じゃ、一人タイマンで倒し次第合流って事で!」

 

文・魔「おう!」「りょーかい!」

 

 

固まって回避行動を行っていた三人は、それぞれ距離をとって別ルートで神社へ向かう。

霊夢は正面低空、魔理沙は上空、文は裏から神社を攻める。

三人が離れ合うと、それを読んでかトラップの攻撃が止んだ。

 

 

_____________

 

 

~霊夢side~

 

 

霊「やはり・・・私達を分断させることが目的だったのね。

さしずめバラバラに相手すれば勝てると考えてるのかしら?」

 

 

木々の間を縫うように飛行しながら神社へ向かうと、しばらくして大きな社が見えてきた。

鳥居をくぐって社へと突っ込むと、奥の部屋には霊夢が待ち望んだ相手が佇んでいた。

目を閉じて瞑想をしていた少女は、霊夢の存在を感じるとゆっくりと立ち上がった。

 

 

早「随分と早かったですね」

 

霊「アンタをぶっ飛ばす為にわざわざこんな所まで来てやったのよ。

感謝してほしいわね」

 

 

お祓い棒と陰陽玉を展開して臨戦態勢を取る。

同時に早苗も右手に携えた御幣を霊夢に向けた。

 

 

早「血気盛んな事で。

でも、此処で戦うと社が滅茶苦茶になってしまうので外に出ましょうか」

 

霊「何を・・・うわッ!?」

 

 

部屋の中の筈が突如、早苗の方向から突風が巻き起こる。

台風を優に超える威力に、霊夢の身体はいとも簡単に飛ばされてしまった。

正に神風が吹いたようだった。

勢いよく境内まで飛ばされた彼女は、地に着く前に滞空して踏ん張り、思い切りニードルを何本か投げつける。

しかしニードルは、早苗の張った結界によって完全に防がれていた。

 

 

霊「・・・どうやら素人じゃなさそうね」

 

 

霊夢の結界よりも弱めではあったものの、弾幕を数発防ぐには十分な強度。

既に外に出ていた早苗は、結界を解くと同時に弾幕で攻撃を開始した。

 

 

早「戦いとは常識にとらわれてはいけないのです!」

 

 

彼女は両手をパンと合わせ、地面につける。

すると、地面から青い弾幕が波打つように湧き出てきて霊夢を呑みこもうと迫って来た。

それを宙返りで軽く避けると、お返しと言わんばかりに虹色の弾幕を雨のように撒き散らした。

 

 

霊「弾幕ってのは逃げ道を限りなく少なくする手段なの。

アンタの今の技は見た目が良くても実戦向きじゃないわね」

 

早「ウグッ・・・!

一発一発に強い霊力が・・・。

これが実力の差ですか」

 

 

急いで結界の傘を張るが、霊夢の弾幕は一つでも大きな威力を持つ。

早苗の結界では数発当たれば砕け散ってしまう。

案の定、結界が砕け散った後の早苗は攻撃をする暇も無く、ホバーで回避に徹するも数発被弾していた。

 

 

霊「なんだ、大して強くないじゃない。

実戦不足ってとこかしらね」

 

早「確かにそうかもしれません・・・。

ならば本気を出すまでです!!」

 

 

両手で御幣を突き出し、奇妙な詠唱を始める。

・・・彼女の周囲に風が舞い始め、足元に綺羅やかな八卦陣が現れる。

しかし、霊夢はこれといって早苗から特別な力を感じなかった。

霊力が上がる訳でもないのに、何故こんなにも大掛かりなハッタリを使ったのか。

 

 

早「貴女には到底解り得ない力です。

今、私から何も感じていないでしょう?」

 

霊「!!へぇ。

そういうことね」

 

 

一瞬で理解出来た。

早苗は神力を纏っている。

霊夢が何も感じないのは、霊夢が人間だからだ。

しかし、彼女は霊力と神力の両方を持っていた。

彼女以外にそれを持つ人間を霊夢は知っていた。

 

 

霊「アンタもリュウト達と一緒ってわけね。

でも、アンタじゃ私は倒せない」

 

早「言いますね、私の力を感じられないクセに」

 

霊「関係ないわ。

神の力が使えたところで、使う者に問題があれば只の宝の持ち腐れよ」

 

早「さっきから随分余裕な発言ですね・・・。

良いでしょう、ならその言葉、そっくりそのまま返してやります!」

 

 

現人神としての力を侮辱され、堪忍袋の緒が切れた早苗は、鮮やかな赤と青の弾幕を渦を巻くようにして霊夢に放つ。

渦は真っすぐ霊夢を巻き込もうと口を開けるが、あえて彼女はその中へ突入し、弾幕の渦を難なく避けていく。

渦の中を突破して奇襲を掛けようと考えたが、それは判断ミスだった。

霊夢は早苗の神力を感じられないが、早苗は霊夢の位置を霊力を辿って掴んでいる。

奇襲が成功する筈が無い。

案の定、渦を抜けた先には早苗はおらず、既に次の手が打たれていた。

 

 

早「見えてるんですよ!」

 

 

スペル:五穀豊穣ライスシャワー

 

 

直上から雨のように米粒のような形をした青い弾幕が降り注ぐ。

その範囲はかなり広く、その場から退避するのは不可能。

かといって避けきれるような量でも無い。

さらに早苗はもう一枚のカードを取り出して追い撃ちを仕掛けた。

 

 

スペル:九字刺し

 

 

霊夢の周囲を正方形に囲うようにレーザーの檻が出現し、ライスシャワーを避ける範囲を狭める。

只でさえ回避が困難だったのが、行動範囲を制限されてさらに困難となってしまった。

しかし、彼女はさらなる追撃の為に空へジャンプする。

 

 

早「ターゲット補足、ファイア!」

 

 

少女が使うには似つかわしくない少し厨二病めいた言葉を発しながら、霊夢に向けてレーザーを掃射する。

一直線に標的へ伸びるレーザーの速度は速く、発射から数秒で着弾した。

 

 

ドォォォォン!!!

 

 

大きな着弾音が境内に響く。

しかし手応えが無い。

爆発で舞い上がった砂埃が晴れた時、其処に霊夢の姿は無かった。

脱出していた事は既に早苗も解っていた。

ただ、次に霊夢が何処から現れるかは解らなかった。

 

 

グゥオン

 

 

零距離移動で檻から出た霊夢は早苗の直上に現れ、重力に体重を乗せた踵落としを繰り出そうとする。

瞬間移動と違い、別の空間同士を繋いで移動する技なので移動の痕跡が見えない。

ほぼ不意打ちに近い技。

・・・の、筈なのだが、早苗はそれにギリギリで反応してみせ、両腕を交差させて防いだ。

しかし、彼女にはある誤算があった。

踵落としの威力が思っていた以上に大きい事だ。

 

 

早「ウグッ!

あなた、瞬間移動まで出来るなんて本当に人間ですか?」

 

霊「少なくとも神力使ってるやつよりは人間ね。

それより、少し辛そうよ?

さしずめ防いだのは良いけど威力が大きかったって感じなんでしょうね。

少し力入れてみたし当たり前か」

 

早「へ、へぇ。

これで少し?

随分と大きく出ますね」

 

 

額から冷汗がにじむ。

これで少し?

神力を纏った体に重いダメージを与えることが出来るほどの威力だと言うのに。

もしそれが本当だとしたら、自分に勝機なんて1%も無いのではないだろうか、と。

そう考えてしまった。

 

 

霊「今のでアンタの強さが大体わかったわ。

本気を出せば数秒で倒せるけど、疲れるから手加減してあげる」

 

早「なんですって!?」

 

 

その言葉に怒りがこみあげてくる。

本気を出せば数秒でノックアウトなんて出任せに決まっている。

それなら本気を出させて、それが嘘だと認めさせてやろう。

 

 

早「だったら本気を出して私を滅多討ちにすればいいじゃないですか。

どうせ口からの出任せなんでしょう?

私を数秒で倒すなんて絶対に無理です!」

 

霊「あっそ。

ならお望み通り、本気でボコボコにしてあげる」

 

 

バゴォン!!!

 

 

その瞬間、早苗は強烈な痛みと共に意識を失った。

 

 




霊夢はこれでも本気出してません。
最初は攻撃方法から強さの大体を割り出そうとしていたところです。
なので基本的に受けに徹していたわけです。
神力を感じられればそんな事しなくても良かったんですがね~。


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風神録82話

投稿が遅れてしまいました。
なかなか話が思い浮かばなかったもので。
早くスランプを脱出せねば、、、


~湖~

 

 

文「裏には湖まであるなんて、豪華な幻想入りですねぇ。

紅魔館でも此処まで凄く無かったですよ」

 

 

湖上の上を水しぶきを上げながら高速で飛行する。

湖には八本の御柱が均等な間隔をあけて立っており、神聖な雰囲気を醸し出していた。

何となしに興味が湧いた文は少しスピードを落としてそれを観察してみる事にした。

 

 

文「あやややや、これは立派な御柱。

新品の削りだしたばかりのように綺麗ですねぇ~」

 

?「それは嬉しいねぇ。

所有者として鼻が高いよ」

 

文「これはこれは・・・。

異変の真犯人のご登場ではないですか」

 

 

八本のうちの一本の御柱の上に胡坐をかいて座っている赤い服を着た紫色の髪の女性。

背中の大きな注連縄に、穢れの無い胸に飾られた鏡。

守矢神社の神の一人、八坂神奈子だ。

神というだけあって相応の威圧感がある。

現に、座っているだけの彼女から文はとてつもないプレッシャーを感じ取っていた。

 

 

文「ひゃあ・・・。

神というのは本来こういうものなのですね」

 

神「どうだい?

神の力を目の当たりにした感想は?」

 

文「あやや、そうですね~。

戦ってみないと解らないですね~」

 

 

そんな事は無い。

正直な感想を言うと、自分では勝てない。

それだけだった。

エネルギー的な力は何も感じなくとも、自分の生存本能が危険信号を随時発信しているのだ。

いくら文が妖怪の中で強い存在だったとしても、これは次元が違う。

文を含めた天狗の里の精鋭部隊を総動員させてやっと互角といったところだろう。

一対一?バカ言っちゃいけない。

勝負になるかすら怪しいと言うのに。

 

 

神「そうかい・・・・。

なら、見せてやるとするかね?」

 

文「!!!」

 

 

神奈子がパチンと指を鳴らすと、彼女の周囲に複数の弾幕が何処からともなく現れる。

さらにそれは分裂を繰り返し、浮いている弾幕の数が二倍、さらに二倍と勢いよく数を増していき、あっという間に文の目の前は弾幕の銀河で埋め尽くさてしまった。

この光景には流石に冷や汗が出た。

愛用の葉団扇を腰から抜いて攻撃の構えを取る。

何時にもなく真剣な表情をした彼女は、戦う覚悟が出来ている者の目をしていた。

 

 

神「・・・・行け」

 

 

クイッと指を文に指すと、浮いていたエネルギー弾が一斉に文をハチの巣にしようと動き出す。

その数、およそ3000以上。

密度の高い弾幕の壁は避けるのが困難なほど間隔が狭く、数の関係もあり遠近が取りにくくなっていた。

 

 

文「高密度の弾幕で押しつぶすつもりですか?

残念ながら、そうはいきませんよ!」

 

 

文が選んだこの状況を回避する方法。

それは、相殺させる事だった。

彼女は風を操る事で多種多様な戦術を駆使することが出来る。

風を操る程度の能力。

その風を自在に操る姿から付けられた二つ名は・・・風神。

 

 

文「はぁ!!」

 

 

葉団扇を思い切り横へ振ると、空気の渦が鮮明に見えるほど強力な旋風が出現し、弾幕を切り裂き破壊しながら空の彼方へと消えていった。

文は旋風の作り出した大穴から脱出に成功する。

 

 

文「抜けたぁ!!」

 

神「ほほう?

なかなかセンスがあるな。

しかし、その後の事も読んでおくべきだったな」

 

 

避けることに目がいってしまっていた文は、一瞬だけ注意を怠ってしまった。

目の前の危機を潜り抜けた事によって一時の安心感を感じる。

それは更なる危機を招いてしまった。

 

 

神「捉えてるんだよこっちは、アンタの動きをね」

 

 

中心に穴の空いた御柱を肩に合体させ、砲撃を文に向ける。

合計四門の御柱は完全に敵を捉えていた。

 

 

ドドドドォン!!!

 

 

爆発音と共に、御柱キャノンから四つの閃光が迸る。

音速を越えて飛来するそれは、確実に文の息の根を止めようとしていた。

 

文「あ、あぶなっ!!」

 

神「まだまだこんなもんじゃないよ!!」

 

 

それを辛うじて回避するも弾速が速く、ギリギリで避けるのが精一杯な状態だった。

四本のキャノンを連携して撃ち続け、休む間もなく文に砲弾の雨を浴びせる。

一発でも当たれば即終了。

彼女の身体は爆散してしまうだろう。

 

 

文「こんなの当たったら死んじゃいますよ私!?」

 

神「だったら頑張って避けな」

 

 

自由度の広い空を出来る限り利用して、必死に文は蛇行しながら回避を続ける。

が、避けているだけではいずれ体力が尽きる。

反撃する他に無い。

そこで彼女は、三次元の戦法で反抗に出た。

 

 

文「急上昇!」

 

神「何?

ぐっ!太陽を背にしたのか!?」

 

 

一気に上昇を掛けた文は、神奈子から見て自分の後ろに太陽が隠れるようにして目くらましを喰らわせた。

効果は覿面、文を目で追っていた神奈子は自然に太陽を直視してしまう。

 

 

神「この!」

 

 

目が見えない彼女は弾幕とキャノンを視界と関係なく撃ちまくる。

太陽を背にして真っ直ぐ向かってきているなら、間違いなく射線上に居る筈。

 

 

文「そんな分かりやすい動きする訳ないでしょ!」

 

 

射線上には誰も居ない。

弾幕が放たれている方向とは全く別の場所に文はいた。

彼女が狙ったのは神奈子の脇腹だった。

その場で弾幕を撃ち続けている動かない敵にショットを当てるなど容易な事だ。

 

 

文「風神と呼ばれた実力、嘗めないでほしいですね!」

 

 

ギュオォォォォォ!!

 

 

神「下から!?

読みが外れた!!」

 

 

竜巻が神奈子を飲み込み、食べ物を消化するかのように彼女の身体を切り裂く。

ガードするも皮膚を切り裂き続ける風の刃は治まらない。

そんな中、神奈子は文に御柱の砲身を向けた。

 

 

神「諸刃の剣さ、喰らいな!」

 

 

ドォン!

 

 

文「そんな!

あの中で動けるなんて!」

 

 

動きを封じつ続けるために動けない文は、緊急回避を行うが、砲弾が早すぎて直撃を免れそうにない。

しかし、弾は竜巻で軌道が逸らされたる同時に風に斬られて文に当たる寸前で大爆発を起こした。

 

 

ドカァァァァン!!

 

 

文「きゃぁぁ!?」

 

 

爆発の炎に巻き込まれた文は力を抜かれたように墜ちていき、そのまま湖の底へと沈んでいく。

それから彼女が上がってくることは無かった。

 

 




文の勇姿を書きたかったのですが、結局噛ませ犬みたいになっちゃいましたw
神奈子には敵いませんが、レミリアとかだったら良い勝負しますよきっと。


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風神録83話

風神録早く書き終えたいので早めに投稿します!


~守矢神社上空~

 

 

魔「こいつ、ちんちくりんのクセしてやるじゃないか!」

 

諏訪「それはこっちの台詞よ。

異変解決者って言うからどんなのが来るかと思えば、只の人間なんて。

正直ガッカリしたけど、結構デキるじゃない?」

 

 

両者共に睨みを利かせながら相手に眼光を飛ばす。

文が神奈子と交戦を開始した頃、魔理沙は既に戦闘の真っ最中だった。

空では大きな爆発と無数の閃光が現れては消え、一対一の高速ドッグファイトが繰り広げられていた。

しかし、息が上がっている魔理沙に対して諏訪子は全くそのような兆候が見られない。

既に実力差が目に見えるようになっていた。

 

 

諏訪「人間と神じゃあ越えられない壁があるんだよ。

もう諦めたら?

お前じゃ私に勝てないよ」

 

魔「うるせぇ!

出来る出来ないじゃなくてやるんだよ!

黙ってろ!!」

 

 

スペル:マスタースパーク

 

 

八卦炉を諏訪子に向け、光の渦を盛大に撃ち出す。

これは、魔理沙が彼女に宛てた挑戦状でもあった。

 

 

魔「私の強さを認めさせてやるよ!

小手調べに喰らってみな!!」

 

 

グゥオォォォォォォ!!

 

 

わざと挑発的な言動で敵を煽ることで攻撃を確実に当てようという作戦でもあるが、彼女のこれは自分の力を認めさせるためのものだ。

並の威力ではないマスタースパーク、これをまともに受けて平気だった者は数少ない。

敢えて言うなら、よほどの化け物でない限りはダメージを与えられる。

 

 

魔「さぁ、どうする!?」

 

諏訪「・・・・・」

 

 

不動の姿勢で深呼吸し、黙って目を閉じる。

迫りくる光に慌てる事無く、ゆっくりと腰に拳を持ってくる。

そして、目を見開くと同時に腹に力を入れて肺の空気を出し、一気に右平手を前に突き出した。

 

 

諏訪「覇ッ!」

 

 

バジュゥゥゥゥ!!

 

 

魔「な、何ぃ!?」

 

 

魔理沙は開いた口が塞がらなかった。

なんと諏訪子は片手でマスタースパークのスピードを殺してしまったのだ。

自分の十八番の技をいとも簡単に防がれた魔理沙は唖然としたまま固まってしまった。

 

 

魔「そんな!私の十八番の技なのに!」

 

 

自慢の力圧しを封じられてしまい、マスタースパークも徐々に消えていく。

あの妖夢でさえ完全に防ぐ事が出来なかったマスタースパークを、何も使わず素手で止め切った彼女の実力。

魔理沙はこの時、絶対に考えてはいけない言葉を頭に浮かべてしまった。

 

勝てない。

 

心のどこかで諦めている自分が居たのだ。

しかし、それを認めてしまっては本当に負けてしまう。

 

 

魔「クソったれめ!

そんならもっと凄いのをお見舞いしてやるだけだぜ!」

 

諏訪「無駄だと解ってて何故立ち向かうのかなぁ?

どうせお前一人じゃ私に勝てっこないよ」

 

魔「いちいち勘に触るんだよ!

人間なめんなよ!!」

 

 

マスタースパークが防がれた要因に、諏訪子に時間を与え過ぎた事が考えられる。

防御の構えを取るスキを与えずに、懐へ全力の魔砲を放てば勝機はある。

 

 

魔「アクセル全開だぁ!」

 

 

箒の魔法出力を上げ、常にブーストを掛けながら飛行する。

その分の魔力消費が激しいが、構いはしない。

スペルカードは魔力と関係なく使えるからだ。

諏訪子も魔理沙の高速戦闘に付いていく為、空を跳躍して一気に加速した。

常に体には大きなGが掛かり、方向転換する度にGが強くなる。

 

 

魔「ぐぎぎぎぎ!!」

 

諏訪「後ろをチョロチョロとっ・・・!」

 

 

それでも魔理沙は諏訪子の後ろを取り、戦闘機のバルカンのように弾幕を撃ち続けながら加圧するGに耐える。

狙われる諏訪子も負けじと後方へレーザーを照射する。

グネグネと奇妙な軌道を描きながら飛行する二人。

最初に被弾したのは魔理沙だった。

 

 

ドドン!

 

 

魔「うわっ!」

 

 

レーザーが当たったのは魔理沙自身ではなく、魔理沙の箒だった。

箒の後ろから煙と火が広がり始め、徐々にスピードが落ちていく。

箒で飛んでいる魔理沙にとってはボディよりも当たってほしくなかった場所だ。

弱点そのものと言っても良い。

急いで帽子で消火しようとするが、なかなか火は消えず燃える一方だった。

 

 

魔「つ、墜落する~!」

 

 

飛行能力を失いかけてきた箒を乗り捨て、神社の境内へと飛び降りる。

墜ちていく箒は燃えながら森へと突っ込んでいった。

これで魔理沙は飛んで戦う事が出来なくなってしまい、圧倒的に不利となってしまった。

 

 

魔「作戦失敗か・・・」

 

諏訪「成功する確率なんて元々ゼロだったじゃん」

 

 

降りて来た諏訪子は笑いながらボロボロの魔理沙を見下す。

この状況でスペルカードを使っても避けられるか防がれるかのどちらか一択。

魔理沙に残された手は、ダメもとでスペルを使う事だけだった。

 

 

魔「仕方ねぇ。

こうなったら・・・」

 

 

スカートのポケットからカードを取り出そうと手を伸ばした時。

空から聞き覚えのある少女の声が聞こえた。

 

 

霊「何やってんのよ。

そんな状況で使ったところで効くわけないじゃないの」

 

魔「霊夢!!」

 

 

早苗との闘いを終えた霊夢が加勢に来てくれたのだ。

追い詰められていた魔理沙の表情も明るくなる。

二対一、これで勝率は一気に上がった。

 

 

魔「さぁ、反撃だぜ!」

 

諏訪「いい気になって・・・。

目に物見せてやるよ!」

 

 

諏訪子の神力が空気を振動させる。

その後ろには、はっきりと巨大な白い大蛇の化身の幻影が浮かび上がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




忙しくて碌に書く時間ありませんが頑張ります!


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風神録84話

あんまし話が進んで無いような?


諏訪「神を侮るとバチが当たるって事を教えてあげるよ」

 

 

神の気を開放した彼女の背後に大きな白蛇の幻影が現れる。

神の使いである白蛇は、敵である霊夢達に牙を向けた。

二本の鋭い牙をちらつかせる顎門は見たものを恐怖させる。

しかし、歴戦の実力者である二人にはそんな威嚇は通用しなかった。

 

 

魔「うっへぇ、あいつこんな事まで出来たのかよ?」

 

霊「知らないわよんな事。

でも、さっきの緑髪よりは骨がありそうね」

 

 

魔理沙は八卦炉、霊夢はお祓い棒を構えて戦闘態勢に入る。

が、その時。

 

 

霊「!魔理沙、避けなさい!!」

 

魔「うお!!何だぁ!?」

 

 

空から四つの閃光が飛来し、諏訪子と二人の間に着弾した。

衝撃で巻き上げられた砂塵が煙幕のように広がる。

瞬時に後ろへステップして回避した二人はイマイチ状況が掴めない。

 

 

魔「ケホッ、ケホッ。

なんなんだよいきなり」

 

霊「二人目が現れたようね・・・。

文がやられたって事か」

 

 

煙の向こうから不可思議なシルエットが映し出される。

そこから現れたのは紫色の髪を伸ばした女性。

背中に背負った注連縄と四本の御柱が異様さを引き出していた。

 

 

神「なかなか強力だったけど、天狗一匹の力じゃあ私を倒すのは無理だったみたいだね」

 

魔「こんの野郎・・・」

 

 

魔理沙は苦虫を噛みながら神奈子を睨み付ける。

悔しいが、空の飛べない今の魔理沙に神奈子の相手は無理だ。

今この場で神二人とまともに戦えるのは霊夢一人だけだ。

 

 

魔「な、なんだよ霊夢?」

 

霊「魔理沙、ほんと使えないわね~」

 

魔「な!仕方ないだろ!?

箒が燃えて使えなくなっちまったんだから!」

 

霊「何で箒が無いと飛べないのよ。

別に無くたって飛べるんでしょ?」

 

魔「調子が出ないんだよあれが無いと!」

 

 

霊夢の一言が着火剤となり、二人はその場で口喧嘩を始めた。

次第に二人の口論はエスカレートし、神奈子達を蚊帳の外にしてヒートアップする。

敵を目の前に完全にそれを無視して二人で盛り上がるので、神奈子は呆れてしまった。

 

 

神「なんて緊張感の無い連中なんだ・・・。

こいつら、本気で戦う気あるのか?」

 

諏訪「緩すぎてコッチのペースが乱れるよ全く。

さ、そろそろ話しを戻そうか?」

 

 

スペル:洩矢の鉄の輪

 

 

神力で作り上げた大きな輪を霊夢と魔理沙に向けて投げつける。

言い合いをしていた二人だが、息の合ったタイミングで同時に回避する。

そして魔理沙は神社の蔵へ走り、霊夢はそれを援護するように神二人に両手いっぱいのアミュレットを投げつけた。

 

 

諏訪「倉へ走るなんて、一体何を考えてるの?」

 

神「私の神社で勝手な事はさせないよ!」

 

諏訪「元は私の神社だよ!」

 

 

此方も口喧嘩を始めるが、息の合ったコンビネーションで霊夢を挟み撃ちにして落とそうとする。

空中戦が得意な霊夢は、360度という行動範囲を上手く利用して迫りくる弾幕を次々と避けていった。

 

 

霊「こんな弾幕で落とせると、本気で思ってるのだとしたらお笑い者ね」

 

神「本気で戦ってない奴に言われたくないね。

安心しな、あの白黒と一緒に逝かせてやるから」

 

 

神奈子の御柱キャノンが火を噴く。

射程は十分、しっかりと霊夢を捉えていた。

だが。

 

 

魔「そうはさせないぜ!」

 

 

グオォォォォ!!

 

 

下から突如現れたマスタースパークによって四つの砲弾全てが消滅する。

倉へ走った魔理沙が探していた物。

それは・・・。

 

 

霊「早かったわね。

てか本当に竹箒なら何でもいいのね」

 

魔「こればかりは気分の問題だからな。

やっぱりこれが無いと調子が出ないんだよ。

それでも乗りなれた箒じゃないから調子の良さは70%ってところだけどな」

 

霊「乗りなれた箒って言い方も可笑しなものね。

箒は乗るものじゃなくて掃くものよ」

 

 

フワリと霊夢の隣へやって来た魔理沙は箒に乗って空を飛んでいる。

倉へ走ったのは箒を探す為だったのだ。

 

 

諏訪「箒に乗って調子が戻ったって事?

単純な奴ね」

 

魔「だからまだ本調子じゃないって」

 

 

ジト目で突っ込むように魔理沙は諏訪子を睨む。

しかし、これで魔理沙も戦闘に参加できる状態となった。

二対二という公平な条件でタッグマッチは始まる。

 

 

霊「さぁ、第二ラウンドの開始よ!!」




次回で風神録は完結させる予定


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風神録85話

はぁ、長かったなぁ。
働きすぎて頭おかしくなりそうです。
俺も幻想郷で遊んで暮らしたい・・・。
あ、でもこんな物騒な毎日は御免ですね。


魔「先ずは先手必勝だ!!」

 

 

スペル:ノンディレクショナルレーザー

 

 

魔理沙のレーザーによる先制攻撃が炸裂する。

その瞬間、四人は一斉に散開して戦闘が始まった。

 

 

諏訪「ハハハハハ!!!」

 

 

上空へと上がった諏訪子が巨大な鉄の輪を二人に目掛けて放り投げ、輪は標的を真っ二つに切り裂こうと襲い掛かった。

蜂の羽音のような音を出しながら進撃する鉄輪。

回避しながら弾幕で撃ち落とそうとするも、逆に弾幕が斬られてしまい、その斬撃性が露となった。

 

 

魔「ちょっ!

危なすぎるだろこれ!!」

霊「弾幕が斬られるなんて!」

 

神「まだまだこんなもんじゃないよ!」

 

 

防戦一方の二人をさらに神奈子のキャノンが追い詰める。

今度は拡散弾に変えて砲撃し、魔理沙と霊夢の行動範囲を極端に制限する。

しかし、その分一発の威力は控えめとなっており、破壊は容易であった。

現に、拡散弾は鉄の輪に斬られてしまっている。

 

 

諏訪「ちょっと邪魔だよ神奈子!

私の鉄輪が上手く飛べないじゃん!」

 

神「なんだって!?

わ、私だって戦いたいんだよ!」

 

諏訪「ただの我儘だった!?

兎に角私の邪魔しないでよ!!」

 

 

神奈子に気を取られて鉄輪の動きが若干鈍くなり、霊夢達への追尾が疎かになる。

その瞬間を二人は見逃さなかった。

 

 

霊「弾幕が斬られるなら、上下から攻撃すれば!」

 

魔「落とせるぜ!」

 

 

回転する鉄輪は刃の向いている方向からの攻撃に強い。

なら、刃のついてない方向からの攻撃ならどうか?

どんな武器にも死角があり、弱点がある。

霊夢と魔理沙は鉄輪の円部分に向けて弾幕を放ち、墜落させることに成功した。

 

 

魔「反撃だ!

喰らいやがれってんだ!」

 

霊「霊符、夢想封印!!」

 

 

スペル:ファイナルスパーク

 

スペル:夢想封印

 

 

神「し、しまった!」

 

 

油断した神奈子と諏訪子に向けて二人同時にスペルカードを発動する。

夢想封印は直に当てるのではなく、追尾性を活用して二人を囲う。

そこを纏めて魔理沙がファイナルスパークで薙ぎ払った。

スペル一つを囮に使い、本命に特大の技を放つ。

この瞬間までに霊夢と魔理沙は一切の作戦を立てていない。

完全に互いの意志を読み合って行動したのだ。

こんな芸当はなかなか出来るものではない。

本当に仲の良い者同士でも此処までは出来ないだろう。

 

 

グオオォォォォォ!!!

 

 

人間離れした威力の超巨大レーザーを直撃した神達は、光の中で影だけとなる。

隕石をも貫いた破壊力だ、簡単に耐えられるものではない。

先程のように防御を取れば話は別だったかもしれないが、今回は完全な不意打ちだ。

無事では済まない。

 

 

魔「やったぜ!

これならあいつ等も只じゃ済まねぇだろ!」

 

霊「力を感じられないからどうなってるか分からないわね。

倒せたのかしら・・・?」

 

 

徐々にしぼんでいく光の渦。

それが完全に消えた時、中から二つの人の影が見えた。

 

 

魔「う、嘘だろ?」

 

霊「あれを防いだの!?」

 

 

ボロボロの衣服に折れた御柱。

腕を交差させて無理やり防いだ神奈子は、衣服が焦げて露出した肌も火傷している。

神力で防ぐ暇も無く、直で受けるしかなかった筈だから当たり前だ。

しかし諏訪子もだが、多少の火傷を負っていながらも外傷はそれ以外にダメージは無かった。

 

 

諏訪「いや~、今のは効いたね。

あと少しで飛ばされるところだったよ」

 

 

被っている帽子を手に取り埃を払うと、もう一度被り直す。

本人は効いたと言っているが、とてもそうは見えない。

この瞬間、魔理沙は悟った。

今の自分にこの二人を倒せる術は無い、と。

 

 

霊「いや、一つだけあるわ魔理沙」

 

魔「何言ってんだよ、私の最強コンボが効かなかったんだぜ?

私の力じゃあいつらは倒せない」

 

霊「そんなの私だって同じよ。

神が相手じゃ夢想天生が通じるか分からないもの。

でも、私達には{武器}があるじゃない?」

 

魔「武器?・・・・!

そうか!!」

 

 

霊夢の言葉が通じた魔理沙は武器が何たるかを直ぐに理解した。

二人のポケットに入っている人形。

鍵山雛から譲り受けた一発逆転の必殺武器だ。

これを投げつければ、人形に宿った厄が敵を包み込んで厄まみれにさせる。

しかし、問題はこれをどうやって当てるかだ。

 

 

霊「簡単に当たってくれるような相手じゃ・・・無いわよね」

 

魔「なら私に任せろ!」

 

 

何か作戦があるのか、魔理沙は自分に任せろと胸を張って自信ありげに言う。

もう正攻法では勝ち目が無い。

ましてや霊夢は兎も角、魔理沙には魔力もあまり残されていないと言うのに。

 

 

魔「へっへっへ、私は気が付いたのさ」

 

 

不敵に笑いながら彼女は神奈子と諏訪子の二人を見据える。

そして、指をびしっとさしてある事を指摘した。

 

 

魔「お前ら、本当は仲が悪いんじゃないのか?」

 

神「!」

 

諏訪「!」

 

霊「・・・は?」

 

 

意味が解らない霊夢に対し、諏訪子と神奈子は如何にも図星を突かれたような顔をする。

 

 

魔「最近、何か喧嘩でもしたんじゃないかぁ?」

 

 

彼女の作戦、それは仲間割れさせることだ。

戦いの最中、この二人の連携が上手くいっていない事を彼女は見逃していなかったのだ。

そして、作戦は彼女の思惑通りに進んでいく。

先ず口を開いたのは諏訪子だった。

 

 

諏訪「神奈子は何時も自己中なんだよ、さっきだって私の攻撃の邪魔してばっかだったし」

 

神「はぁ!?

そんなことを口に出す方がよっぽど自己中だ!

そもそもお前が前に出過ぎなんだよ、碌な作戦も立てずに一人で突っ込んでさ。

そのせいで大昔に私に負けてるじゃないか」

 

諏訪「昔の話を出してくるなよ!

そんな昔の事を今更引き出してくるなんて年寄りくらいなものだよ!」

 

神「何だとぉ!?」

 

諏訪「やるっての!?」

 

 

魔理沙の口車にまんまと乗せられた二人は火がついたように口喧嘩を始める。

時期に二人は喧嘩に夢中で戦いの事を忘れてしまった。

 

 

霊「そうか、魔理沙はこれを狙っていたのね」

 

魔「あぁ、上手く行ったみたいだな」

 

霊「んじゃま、かましてやりますか魔理沙さん?」

 

魔「にしし!

目にもの見せてやりましょう霊夢さん?」

 

霊・魔「せぇの!!」

 

 

顔を合わせてにやけると、二人は同時にポケットから人形を取りだし、それを投げつける。

普段なら簡単に避けられてしまうが、周りが見えていない諏訪子達には当然のように当てられた。

その瞬間、辺りに黒い煙が一気に充満して諏訪子と神奈子を包み込んだ。

 

 

神「うわっ!?

なんだこの煙!?」

 

諏訪「これは・・・厄!?」

 

 

自分達に纏わりつく煙が厄だと気が付いた諏訪子は危険を感じて振りほどこうとするが、付いてしまった厄を払うことは出来ない。

唯一、鍵山雛を除いてだが。

 

 

神「くそっ!!

振り切れない!!」

 

諏訪「もういい!

このままやっちゃおう!」

 

 

黒い靄を纏いながらも、諏訪子はスペルを詠唱しようとする。

一撃必殺と聞いていた二人は、話が違うじゃないかとこの場に居ない鍵山雛に罵声を浴びせた。

 

 

霊「何よ話が違うじゃない!!

一撃必殺じゃなかったの!?」

 

魔「おい、やばいぞ霊夢。

あれが効かなかったらもう手が無い!」

 

 

打つ手が無くなった二人は咄嗟に武器を構えるが、抵抗出来る筈が無い。

完全に神の怒りを買ってしまったのだから。

 

 

諏訪「よくも嘗めた事してくれたね人間。

神の怒りを買った罪、存分に味わうがいい!!」

 

神「骨の一遍も残さず消してやる!」

 

 

スペル:諏訪大戦

 

 

このとき、魔理沙は戦慄した。

久しぶりに感じた死が迫る感覚、忘れていた感覚を思い出したのだ。

今までは如何にかなったものの、今回ばかりはどうしようも無い。

足がすくんで動けなくなってしまった魔理沙を見た霊夢は、彼女を抱えてその場から緊急脱出しようとする。

 

 

魔「あ、あぁぁ・・・」

 

霊「何やってるのよ逃げるわよ!!」

 

 

しかし、神の気迫を気付かぬうちに受けているのか、思うようにスピードが出せず、回避が間に合わない。

 

 

霊「も、もうダメ!」

 

 

後ろを振り向けばやられる。

背中から光が迫ってくる感覚を感じ取っていた。

もう手遅れだ。

最後に霊夢は声に出せない思いを心の中で叫んだ。

 

 

霊(助けて、零夜!!)

 

 

・・・・その瞬間、光が治まる。

妙に思った彼女はそっと後ろを振り返る。

すると、遠めだがはっきりと見えた。

二人の手にスペルカードが無い。

 

 

諏訪「あれ??

カードは?何処いったの?」

 

 

ポケットを一生懸命漁る諏訪子。

しかし、何処にもカードは無い。

運悪く戦闘中に落としてしまったようだ。

 

 

神「ドジだなぁ、良いよ。

私が二人まとめて倒すから」

 

 

と、一枚のカードを取り出した時。

何故か空から金たらいが落ちてきて、神奈子の頭に直撃した。

 

 

バァァァァァァァン!!!

 

 

神「ぐぅえ!」

 

諏訪「神奈子!?」

 

 

ゴォン!

 

 

諏訪「ギャウン!」

 

 

墜ちる神奈子の隣にいたせいで、諏訪子の後頭部に御柱のフルスイングが激突する。

気を失った二人はそのまま下へ落ちていった。

二人が何故こんなに不運になったのか、それは間違いなく大量の厄に塗れたからだろう。

効くのが遅れたが、効果は抜群だったようだ。

 

 

霊「えっと・・・助かった?」

 

 

何とも言えない終わり方に、彼女はそのまま茫然とする事しか出来なかった。

というか、自分達で倒したわけでもないのにこんな終わり方で大丈夫なのかと心配になってしまった。

一方、湖に落ちた射命丸はというと・・・。

 

 

~湖~

 

 

文「ぶえっくしょん!」

 

 

濡れた服を脱いで焚火に当たりながらくしゃみをしていた。

 

 

 

 

 

 




ちなみにリュウトや咲夜は霊夢達が戦っている事に気づいています。
咲夜はレミリアの命令が無ければ異変解決に行きませんし、リュウトは積極的に解決する側に回れないので出てこないだけです。


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風神録86話

やっと終わりです風神録編


幼いころの出来事。

それは時に夢となって不意に記憶の奥底から出てくる。

田舎の田園風景に、真夏の青空と入道雲。

誰も居ない道を歩く鮮やかな緑色に彩られた髪を伸ばした赤いランドセルを背負う小学生の女の子。

いや、これは自分だ。

小学生の女の子、東風谷早苗はアスファルト舗装されていない道を歩いていた。

学校は山奥にあり、児童数も少なく全校生徒は20人以下。

歳に関係なく、学校の皆は友達だ。

髪の毛の色以外は至って普通の女の子。

しかし、それは表向きの話。

彼女は当時から特別な力を持っていた。

 

 

早「あっ・・・」

 

 

道の真ん中に横たわる一匹の犬。

草の影に隠れていて遠くから気付かなかったが、前足を怪我して動けなくなってしまったようだった。

血のにじんだ毛がその痛々しさをリアルに訴えかけている。

 

 

早「凄く痛そう・・・。

歩けないんだね・・・」

 

 

犬の傍まで寄り、しゃがんで腕を診てやる。

流血を止めたところで意味がなさそうだ。

しかし、普通の小学生に特別な措置が施せられる訳が無い。

専門知識なんて持ち合わせていないのだから、何もできずに終わるのが関の山だろう。

しかし早苗は違った。

 

 

早「大丈夫。

今‘‘治してあげる‘‘ね」

 

 

そう言って早苗は犬の前足に手を翳す。

すると、怪我の部分が淡い光を放ち出し、一瞬で傷口が塞がれてしまった。

怪我が完治したのだ。

 

 

早「これで歩けるね、お犬さん♪」

 

 

怪我が治った犬は嬉しそうに走り回り、早苗に礼を言うように吠えると繁みの中へ消えていった。

それを見送った直後、後ろから同い年の幼い少女の声が聞こえてきた。

 

 

少女「おはよう早苗ちゃん!

何してたの~?」

 

早「あ、ううん!

何でも無い!」

 

 

そこで視界は真っ黒となる。

 

 

_____________

 

 

早「う・・・う~ん?」

 

 

目が覚めると、自分が布団で横たわっている事に漸く気が付く。

さらに、今までの出来事が自分の夢である事にも気が付く。

上半身を起こし、最後の記憶を探ろうとした時。

布団の敷かれた和室の外から何やら楽しそうな騒ぎ声が聞こえてきた。

 

 

早「え?

何が起こってるの??」

 

 

まだ体が寝起きでふらつくが、外の様子が気になって襖を開ける。

暗い部屋から明るい場所に出て目がくらみ、眩しさに瞼を細めた。

 

 

早「うっ眩しい。

・・・なんですかこれ?」

 

 

見慣れた部屋。

間違いなく守矢神社の中だが、部屋の中には見知らぬ者達が居座り、酒を飲みながら騒いでいた。

幻想郷の例によって、異変終わりの宴会だが、先程目覚めたばかりの早苗にそんな事が分かる筈が無い。

一体なのが起こっているのか全く理解できない彼女は唖然としながらその場で突っ立った。

 

 

早「これは一体・・・?」

 

神「お?

漸く起きたか。

ったく、お前が強くやりすぎなんだよ」

 

早「神奈子・・・さま?」

 

 

畳の上で胡坐をかきながら酒瓶を一気飲みする神奈子。

それに対面するように座っていたのは博麗霊夢だった。

杯に口をつけながら彼女は神奈子に反論する。

 

 

霊「何よ、私のせいなの?

コイツが本気でかかってこいって言ったから少し本気出しただけじゃない」

 

零「いや、だからって三日も寝込むほどの攻撃を浴びせるか?」

 

霊「仕方ないじゃない、まさか三日も気を失うなんて思ってもいなかったんだし」

 

諏訪「早苗、大丈夫?

まだ寝てなくて平気??」

 

早「え?は、はい」

 

 

見覚えのある男性。

霊夢の夫という例の神だ。

諏訪子に気を遣われるが、今はもう平気だ。

そして彼女は全てを思い出した。

 

 

早「そうか、私負けたのか」

 

神「負けたよ。

あの後霊夢が気絶した早苗を運んできてくれてね。

ボロボロだったよ」

 

 

グサリと胸にその言葉が刺さる。

自分は、幻想郷を甘く見ていたのだと。

拳を握り、自らの無力さに腹立たしく感じたが、不意に彼女の頭にある疑問が浮かんだ。

 

 

早「そういえば、神奈子様達はその後どうなったのですか?」

 

神「う~ん、それがよくわからないんだよね~。

気がついたら倒れてたというか・・・」

 

 

話によると、二対二での戦いになり、最初は圧倒していたらしいのだ。

しかし、黒色の靄に包まれてから記憶が途中で途切れているのだそう。

その後起きると頭頂部に強い痛みを感じ、近くに金たらいが落ちていたという。

恐らくそれが直撃して気を失ったのだろうが・・・それは負けなのか??

グレーゾーン過ぎて早苗には判断しかねる内容だった。

 

 

諏訪「まぁそんなどうでもいい話は置いておいて、今は楽しもうよ!

折角久しぶりに零夜に逢えたんだし」

 

早「え?

諏訪子様、この方と知り合いなのですか?」

 

諏訪「当たり前じゃん、神界で超が付くほどの有名人なんだから」

 

 

大体予想は出来ていたが、流石はトール神。

神の世界でもその名は馳せており、知らない者はまず居ないという。

そもそも北欧神話の人物を何故日本の神である諏訪子が知っているのかというと。

 

神「神界に棲む神は姿形違えども神という一くくりの存在なのさ。

地球の神話なんてものはその地に降り立った神の話だからね、私が北欧に降りていれば北欧神話に私が出ていたかもしれないって事さ」

 

早「う~ん?

よく分からないです」

 

 

説明が解りにくいのか、早苗には理解出来なかった。

つまり、どういう事なのかというと。

 

 

零「要は、神話なんてものは神の世界で通用しないって事だ。

神話というのは地球だけの話だからな、他の星に行けば違う神話が存在する。

ただ、伝わっている神は大体同じだがな」

 

 

零夜の言う通り、早苗の言う北欧神話というものは神に言っても通用しない。

本来、神話というものは神が人間の星に赴いた時の出来事を題材とされており、少々盛っている部分も多くある事ない事書かれていたりするのだ。

早苗の言う神話は地球だけの出来事なのだ。

しかし、早苗は話の途中である事に突っ込みを入れた。

 

 

早「え、今さらっと宇宙人の存在を確証する言葉が出ませんでした?」

 

零「宇宙人?

あぁ、君たちから見れば宇宙人かもしれないな、彼らも」

 

 

一気に早苗の目が輝きだす。

人類が長い間探し求めてきた宇宙人の存在が、雲をつかむような話から確信に変わったのだ。

これは世紀の大発見である。

 

 

早「凄い、本当に宇宙人は存在したんですね!!

それでそれで!?

宇宙人ってどんな格好なんですか!?

やっぱりグレイみたいな見た目なんでしょうか!?」

 

 

食いつき具合が半端でない。

ちゃぶ台に身を乗り出して零夜に質問責めする早苗の目はキラキラと輝いており、彼女がこの手の話に関して好物である事は一瞬で判った。

しかし、行き過ぎた期待は想像を下回った時が一番つらい。

 

 

零「姿は普通の人間だ。

文化も何となく地球と似ているぞ」

 

早「え、何ですかその夢の無い話・・・」

 

 

零夜の一言で一気に興が醒めたように彼女のテンションは下り坂一直線となる。

それもそうだろう。

宇宙人は地球と変わらない姿で地球人のように生活していると言われたら幻滅してしまう。

もし違うリアクションだったとしても、同じだということに驚愕するだろう。

どちらにしろ夢の無い内容だ。

 

 

霊「何が宇宙人よ。

月にも人間は住んでるんだからそれと変わらないわよ」

 

 

日本酒の入った器を口へ寄せながら霊夢は呆れ気味に物申す。

幻想郷の生活に慣れ過ぎたから言える台詞だが、現代社会しか知らない早苗には夢のような話だった。

 

 

早「月の人間?

輝夜姫みたいな?」

 

零「というか本人が居るな。

ほら、あれだ」

 

 

広い部屋の隅を指さすその先に、黒い艶のある髪を伸ばした絶世の美女が座っていた。

単を着こみ、従者らしき銀髪の美女を従えたその女性は、輝夜姫と言われても納得できてしまいそうな程美しかった。

 

 

霊「他にも吸血鬼に亡霊の姫、九尾に鬼、妖怪の賢者なんて呼ばれてるやつも居るわ」

 

 

玉座に座りながらメイドにワインを注がれるレミリアに、料理を口いっぱいに頬張る幽々子。

それ以外にも萃香やアリスなど、人外達が羽目を外して楽しんでいる。

一見、普通の人間に見える者もいるが、蝙蝠の翼が生えていたり角が生えていたりと、人外的な特徴を持った者も少なくない。

そんな者達が一色たに暮らしている世界、それが幻想郷なのだ。

 

 

早「何だか凄い世界ですね。

こうして違う種族同士が争うことなく暮らしているなんて。

外の世界では人間同士で殺し合いをすると言うのに」

 

紫「幻想郷は全てを受け入れる。

でもそれは残酷な事なのですわ」

 

早「うわっ!?」

 

 

スキマから突然出てきた紫に驚ろいてしまう。

わざとやっているのだろうが、毎度見ている者はどうとも思わない普通の光景として受け入れている。

 

 

紫「こうして会うのは初めてね、私は八雲紫。

妖怪の賢者とも呼ばれている幻想郷の創造者ですわ。

この残酷な夢の世界を作った張本人、宜しく」

 

早「あ、どうもこちらこそ」

 

 

差し伸べられた手を握って握手をすると、紫の体温が伝わって来た。

何だか不思議な感覚だ。

感じないわけではないが、冷たくも無く熱くも無い。

人の温もりを感じなかった。

 

 

紫「これが妖怪よ。

人とは根本的に違う者。

未知に恐怖する人間からしてみれば、恐ろしいものでしょうね。

でも、未知があるだけ冒険があるわ」

 

早「冒険・・・ですか?」

 

紫「そう、貴方にはその資格があるわ。

だって、幻想郷の住人なんだもの。

この世界を大いに楽しんで頂戴」

 

早「幻想郷の住人・・・。

えへへ、何だかワクワクしてきました。

これから宜しくお願いします!」

 

 

別れの数だけ出会いもある。

紫の話を聞いた早苗は、外の世界の名残惜しさと共に、これから体験する摩訶不思議な生活に心を踊らせた。

これが、守矢神社幻想入りの物語である。

 

 

 

風神録 完



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緋想天87話

仕事が忙しすぎて休みがないです


とある日の昼下がり。

縁側に腰かけた霊夢は、日常に異変が起きていることに気が付いた。

 

 

霊「・・・・・」

 

零「ん?霊夢どうした?」

 

 

ここ最近、零夜に後光が差し続けていることに。

 

 

東方緋想天~Scalet Weather Rhapsody

 

 

____________

 

 

~博麗神社~

 

 

朝方、いつも通り霊夢は日が昇ると同時に起床した。

 

 

霊「ん~・・・。

何だかいつもよりも眩しいような・・・」

 

 

襖から差し込む光は霊夢の顔を照らすが、それが何時もの日の光でないことに気が付く。

まるで太陽の下で光を浴びているような眩しさだ。

隣で寝ている零夜は未だに気付かぬまま布団を被っていて起きる気配が無い。

 

 

霊「ちょっと零夜、何か変よ?」

 

零「ん・・・んう?もう朝か・・・?」

 

 

霊夢は素早く零夜を叩き起こし、今起こっている状況を理解しようと外へ出た。

すると、太陽光とは別に直上から神社に向けて一本の光の柱が降りている事に気が付いた。

 

 

霊「なにこれ?光の・・・柱??」

 

零「何だ何だ?こんな朝から騒がしい」

 

 

零夜も彼女の後を追って境内に出る。

その瞬間、光の柱は零夜を真っ白に照らし始めた。

 

 

霊「・・・あれ?」

 

零「ん?どうした?・・・ってなんだこれは!?」

 

 

零夜は自分に向けられている異常な光源に驚き、一気に目が覚める。

彼の頭上には何故か後光が差していた。

 

 

霊「何か神々しいわよ?」

 

零「自分で言うのも何だが、神だからな。

だがこんな事は初めてだぞ」

 

 

空を見上げると、雲の狭間から漏れ出る光が自信を淡く照らしているのが確認できた。

不審がる零夜と霊夢だったが、暫くしてそれ以外に何か変化が起きる事は無かった。

 

 

霊「・・・特に何もなさそうね。

これなら暫く様子見でも大丈夫じゃない?」

 

零「おいおい、そんな悠長な事言っていて大丈夫なのか?」

 

霊「だって何も起こらないんだもの、少し眩しい以外に何か困る訳でもないし」

 

 

幸い建物の中に居れば照らされる事は無いし、日常で困ることも殆ど無いので暫く様子を見ようという霊夢の楽観的な対応に少し不満が残る零夜だったが、我慢というものは大切である。

それ以上は彼も何も言わなかった。

 

 

霊「ま、早く朝ごはんにしましょうよ。

朝はお腹が空くんだから」

 

零「やれやれ、わかった。

君がそういうなら何も言わんさ」

 

 

先程と打って変わって興味なさげに社へ戻ろうとする霊夢。

が、一歩踏みだしたところで謎の揺れが二人を襲った。

 

 

零「うおっと!?

地揺れか、霊夢大丈夫か!?」

 

霊「飛べば平気でしょ。

危ないし早く逃げるわよ」

 

零「あぁ、うん」

 

揺れた直後に地面から浮いて難を逃れた霊夢を心配して損した零夜も後を追って空へ逃げる。

森の木々が揺れ、岩がうねり、そして・・・。

 

 

ドガァァァァァァァァァァン!!!

 

 

神社が倒壊した。

 

 

霊「あああああああああ!!!???

神社がぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

築何年だか知らないが、先程まで建っていた二人の我が家たる神社は、それはそれは無残なまでに崩壊していった。

耐震補強がどうとか古い建物だからとか、そういう問題ではない。

壊れたという事実が霊夢にとって一番ダメージが大きい部分だったのだろう。

地震が治まると、霊夢は力なく地に堕ち、膝をついて嘆いた。

 

 

霊「は・・・はは。

神社壊れちゃったぁ~・・・・はは・は」

 

零「お、おい霊夢?

大丈夫か??

・・・・ダメだ、完全に向こうの世界へ逝ってしまっている」

 

 

あまりのショックに精神崩壊を起こしてしまった霊夢。

目が完全に死んでいて魂が何処にあるのかもわからなくなってしまっているので零夜の声掛けにも全く反応が無い。

博麗家族は一瞬で今後の生活が危ういほどのドン底まで突き落とされしまった。

しかし、この出来事は幻想郷で今起きている異変のほんの一部の話でしかなかった。

 

 

to be continue...

 

 

 




ノロノロ書きたい自分と早く更新したい自分が葛藤してます


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緋想天88話

今回は話の中にキャラの裏話が出てきます。
みんな大好きあのキャラです。


~白玉楼~

 

 

妖「ん・・・うん~!今朝も良い朝ね」

 

 

何時も起きている時間で自然に目が覚めた妖夢は、布団を退かして体を伸ばす。

寝間着の白衣が若干はだけてしまい、胸元から健康的な谷間がちらりと見える。

眠っていた体の筋肉を起こすと、毎日欠かさずやっている剣の素振りの為に縁側へ出ようと布団から出る。

その瞬間、違和感を感じた。

 

 

妖「うぅ・・・何だか部屋が寒いような気が?」

 

 

布団から出た瞬間、部屋の空気が妙に冷たい事に気がつく。

冥界の空気は常に冷気を纏っているが、これは明らかにおかしい。

まるで冬の寒さだ。

不審に思った妖夢は恐る恐る縁側に繋がる襖に手をかけ、そっと開けてみた。

するとそこには。

 

 

妖「寒っ!!!

え!?何で雪が降ってるの!?」

 

 

なんと真っ白な粉雪を被った自慢の庭園の姿があった。

雪が降っている。

古風な庭園の緑を程よく残しながらも白一色に染まった景色に妖夢は心奪われた。

 

 

妖「わぁ、綺麗・・・ってそうじゃなくって!

冥界で雪なんて絶対おかしい!」

 

 

この異常事態に呑気な事を考えている場合ではない。

一刻も早く状況を主人に伝えなければ。

まだ顔も洗っていないが、彼女は走って主人の部屋へと向かった。

 

 

霊「幽々子様ー!!大変な事態ですー!!」

 

 

主人の名を上げながら急いで部屋へと向かう。

しかし、部屋には幽々子の姿は無い。

この緊急時に一体何処へ行ってしまったのか、他の部屋を捜索しようと空室を飛び出したそのとき。

慌てふためく妖夢の声が届いたのか、幽々子が隣の部屋から襖を開けて出てきた。

 

 

幽「どうしたの妖夢?

そんなに慌てて、オバケでも見たの??」

 

妖「幽々子様、そんな呑気な事を言っている場合ではありません!

直ぐに閻魔様へご連絡しなければいけない事態・・・が・・・」

 

 

妖夢は徐々に口ごもる。

何故か。

それは、先程から幽々子が手に雪の積もったガラスの器を持っているからである。

天辺が赤い雪の山、これは間違いない。

 

 

妖「幽々子様、そのかき氷はどうなされたのですか・・・?」

 

幽「いちご味よ。

・・・・・妖夢も食べたいの??」

 

 

と、持っているかき氷を妖夢に差し出そうとするが、彼女の口からは若干よだれが出ている。

名残惜しいのだろう。

・・・そんなに手放したくないのなら何故差し出そうとするのか。

 

 

妖「食べませんよ、涎垂らしながら何言ってるんですか!!!

ってことはまさか、この積雪は幽々子様が原因なのですか!?」

 

幽「失礼ねぇ、私は純粋に降って来た雪でかき氷を楽しんでるだけよ?」

 

妖「その氷は外からそのままとってきたんですか!?

駄目ですよ汚いじゃないですか!」

 

幽「もう死んでるから気にしな~い♪」

 

妖「そういう問題じゃありませんっ!!!」

 

 

朝から何故こうも叫ばなければいけないのか。

それもこれも、全て御主人のせいだ。

必死の妖夢の突っ込みは、自由奔放な幽々子には届くことは無い。

 

 

妖「はぁ・・・はぁ・・・もういいです。

朝ごはんの支度をするので、居間で待っていてください。

・・・大人しくしていてくださいね?」

 

幽「えぇ~??私何も悪い事してないのに~」

 

妖「う、うぅ~ん?

確かに言われてみれば幽々子様は何も悪くないような?

ん~もうっ!一体誰よ雪なんか降らせたのはー!!」

 

 

特に誰に言ったのかは隅に置き、白髪少女のその叫びはその後、冥界中に響き渡ったと言う。

 

__________

 

 

~紅魔館~

 

 

咲「はぁ・・・また濃霧ですか、今日もリュウトさんに頼むしかなさそうですわね」

 

 

洗濯籠を抱えながら、廊下から窓越しに外を眺めてため息をつく。

湿気と厚い雲で天日干しが出来ない日が続いているせいで、咲夜は顔から笑顔が消えていた。

雨の日などで洗濯物が外に干せない日はリュウトに頼んで乾かしてもらっているのだが、一週間以上もこの調子が続いていて、正直これ以上の迷惑を掛けたくはない。

 

 

咲「嫌ねぇ・・・。

でも私の能力でどうにも出来ないし」

 

リ「何が嫌なんだ??」

 

咲「あひゃあ!?」

 

 

考え事で頭がいっぱいの中、いきなり後ろから声を掛けられて洗濯籠をひっくり返しそうになってしまう。

気が付けばリュウトが心配そうな顔で咲夜の様子を窺っていた。

 

 

リ「どうしたんだ?

元気が無いようだが」

 

咲「え?そ、その・・・」

 

リ「???」

 

 

言えない。

彼の顔を直視しているとどうしても罪悪感が込み上げてくる。

しかし、自分の意に反して彼は抱えている洗濯籠を持って行ってしまう。

 

 

リ「何だ、洗濯物を持ってくる最中だったのか。

丁度いいから持っていくぞ。

あ、ちゃんと目隠しはしているから心配するな」

 

咲「い、いえ、そういう事では」

 

リ「洗濯物なら任せてくれていい。

能力の平和的利用という奴だと思ってくれ」

 

咲「あ、あの・・・」

 

 

リュウトは咲夜の言葉を聞かずにそそくさと去って行ってしまった。

聞かなかったのではなく、単に聞こえていなかっただけなのだろうが。

本当は嫌だろうに。

そう思いつつも、去っていく彼の背中を眺めるだけで断れない自分に嫌気がさす咲夜だった。

 

 

~レミリア自室~

 

 

ここ一週間辺り、紅魔館周辺は毎日のように濃霧と曇天に見舞われていた。

晴れたラウンジにパラソルを立ててお茶を楽しむのが至福の時であるレミリアだが、生憎の天気の悪さ故に部屋の中で、しっとりとした空気が漂う室内で妹と静かな茶会をしていた。

肌に纒わり付くように気持ち悪い湿気の多い部屋。

せめて景色だけでも拝めたいものだが。

妹との楽しい茶会の筈が、出るのはため息ばかりだ。

 

 

レミ「はぁ・・・最近、霧が濃いせいで外でお茶が出来ないじゃない。

私は太陽の下で日傘を差しながら出掛けるのが好きなのに」

 

フ「ちゃっかり吸血鬼のアイデンティティをひっくり返してるところは置いといて、確かに曇りだけなら有難いんだけどなぁ」

 

レミ「それにしても・・・何でこんなにも霧の日が続くのかしら?

一週間も同じ天気なんておかしいわ」

 

 

窓の外から見える景色は霧に隠され、一寸たりとも先が見えない。

お陰で洗濯物は外に干せず、何時までも部屋干しの日が続いており、そのせいか若干洗濯物が匂うのだ。

日光が苦手な吸血鬼にとっては最高の天気なのだろうが、一週間以上も続けば嫌になってくる。

去年はこんな濃霧が続く事は無かった筈。

この霧は何かがおかしい。

レミリアの中では第三者の存在が渦巻いていた。

そう、何者かが異変を起こしている可能性を考えていた。

 

 

レミ「でも一体誰がこんなことを?

霧と言えば私が起こした異変と同じやり方だけど・・・」

 

 

レミリアが一人考え込んでいると、フランが不意に何かを思い出した。

リュウトの事についてだ。

 

 

フ「そういえば、最近リュウトを食事中以外で見てないような気がするんだけど?」

 

レミ「え?知らないの?」

 

フ「何が?」

 

 

異変とは関係なさそうだが、館の中だけで唯一リュウトだけが姿をあまり見掛けなくなっていた事に気が付いたフランはレミリアに問うと、彼女はぽかんとした顔でフランに問い返した。

レミリアは件について知っているのだが、フランは何の事だかさっぱり分からなかった。

今回の切りについて何か調べているのだろうか?

しかし、返って来た言葉は意外すぎて言葉を失う内容だった。

 

 

レミ「リュウトなら今頃部屋に籠って洗濯物乾かしてるわよ」

 

フ「・・・はい?」

 

レミ「あの子、光を体に中に溜めてるでしょう?

その光を太陽替わりにして洗濯物を乾かしてるのよ。

咲夜の指示で目隠ししながらね」

 

 

能力の平和的利用と言ってしまえばそれまでだが、そんな道具のような扱いをされて彼が良く思う訳が無い。

フランは即刻辞めるように抗議する。

 

 

フ「お姉ちゃん、流石にやりすぎだよ。

咲夜に止めさせるように言ってやってよ」

 

レミ「う~ん・・・そうは言ってもねぇ。

実際助かってるのは事実だし、リュウト自身が率先してやってるみたいだから・・・」

 

フ「え?リュウトが?」

 

レミ「コソッと本人から聞いたんだけどね?

雨で洗濯物が乾かせない日って咲夜の機嫌が良くないらしいのよ。

元気が無いと言うか、笑顔が無いというか。

だから少しでもそれを和らげてあげたいんだって」

 

フ「ふうん。

昔の私達みたいにならなければいいけどね」

 

レミ「ん?どういうこと?」

 

フ「ううん、何でも無いよ」

 

 

フランは笑顔でそう言うと、少し冷めてしまった紅茶に静かに口をつけた。

その優しさが逆に咲夜を傷つけなければいいのだが。

姉との遠い昔の出来事と今の二人を重ねて心配になった。

想いがすれ違ってしまう心の痛さを知っている彼女は、二人に同じ道を歩んでほしくないと願った。

 

 

_____________

 

 

幻想郷、妖怪の山の空の上には大きな島が幾つも浮かんでいる。

広大な土地が空には浮かんでいるが、その姿を地上から捉える事は出来ない。

神聖な天の世界。

そこに暮らす全ての人々は、揺らぐことの無い安寧の中で幸せに毎日を過ごしていた・・・筈だった。

 

 

~天界~

 

 

?「あ~あ、ほんっとに何も無くてつまんないわねぇ~。

事件の一つや二つ起こってもいいのに、何にも起こらないし、変わらない毎日ってなんでこうも退屈なのかしら」

 

 

雲一つない快晴の中、芝生に転がっている一人の少女は退屈に嘆いていた。

 

 

?「屋敷から抜け出して下界を見るのも飽きちゃったしなぁ」

 

 

空のように青く美しいロングヘアに、虹色の装飾で彩られたスカート。

天人の貴族、比那名居天子は、貴族の中でも天界を統率する総領の一人娘。

多少甘やかされて育ったせいで我儘な性格となってしまった彼女は、屋敷を抜け出して退屈を吹き飛ばす良い案を考えていた。

昔は下界で繰り広げられる戦争や、町の発展を見ているのが主な日課だったが、幻想郷の空に来てからは時々起こる異変を見るのが楽しみとなっていた。

勿論、霊夢達の存在は一方的に知っているだけだが、何時かは仲良くしたいと彼女たちが此処に来る日を楽しみに待っている。

しかし、天界の存在を知らない彼女たちが此処へ来るのは些か無理があるのでは?

と、最近になって気が付き、退屈な毎日を再び歩むこととなってしまった。

 

 

天「何か面白い事・・・面白い事?

!そうだ、良い事思いついちゃった!!」

 

 

何かが頭の中に閃き、急に立ち上がったかと思うと彼女はにやりと嗤う。

幻想郷の天気が混沌となったのは、それから三日後の事だった。

 

 

to be continue...

 




最後の方が適当な気がしますが、そんなものは気にしない!!!
好きなように書くのがスタイルです。


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緋想天89話

久しく投稿でござる。
今回は久しぶりなキャラが登場です。
いずれはこの人の話も書きたいなぁ。


~永遠亭~

 

 

何時もと同じ、晴れた日の夜に見える満点の星空。

文明の光が一切ない世界で見る夜空はとても美しい。

そう思うのは本当の夜空を知らない現代人くらいなのかもしれない。

しかし、古来より月という天体は人々から崇高なものとして崇められてきた。

一際大きく輝き、日々姿を変える不思議な球体を、人は神に等しいものと考えていたのだ。

地上人に限った話・・・だが。

 

 

輝「今夜も月が美しい。

私の最も嫌うものなのに、どうしてこんなにも美しいのかしら」

 

 

月の姫だった彼女は、縁側に座りながら月見酒に洒落込んでいた。

酒の水面に映る中秋の名月を眺めながらの晩酌は何時も心を癒してくれる。

月の都の姫だった輝夜は、地上の世界に憧れて不死の薬を飲む重罪を犯し、罪人として天から追放された。

地上の生活は辛いこともあるが、後悔はしていない。

今の生活で十分充実しているから。

そんな、遥か昔の感傷に浸っていると、後ろから輝夜を呼ぶ声が聞こえて来た。

 

 

響「輝夜さん、こんな夜中に何してるの?」

 

輝「あら、珍しいお客さんね」

 

 

後ろから声を掛けてきたのは、居候として永遠亭にやって来た霊夢の曾孫、博麗響華だった。

響華は輝夜の横に{よいしょっ}と言いながら座り、 胡坐をかきながら輝夜に質問する。

 

 

響「それで?

こんな夜中にお酒飲みながら何してたの?」

 

輝「別に、何もしてないわよ?

強いて言うなら・・・昔を思い出してたわ」

 

響「昔?

それって、月に居た時の?」

 

輝「さぁ、どれくらい昔かしら?

月の姫だった時の記憶なんてもう殆ど残ってないわ」

 

 

響華の質問を曖昧な表現であしらい、手にした杯に口づけする。

都で絶世の美女と謳われただけあり、一つ一つの動作に何処か色っぽい雰囲気を纏っている気がする。

女の響華でさえ惚れてしまいそうな程だ。

しかし、彼女は当時の事を他人に一切話そうとしない。

あの時を思い出してしまうから。

 

 

輝「そんな事より、最近鈴仙から面白い話を聞いてね?

何だか此処一週間程、幻想郷の天気が極端におかしいらしいのよ。

とある場所では濃霧が立ち込め、ある場所では霧雨が降り続け、かと思えばある場所では晴天が続いている。

こんなに違う天気が同じ地域に同時に起こるなんて、変だと思わない?」

 

響「あ、その話知ってる!

里で結構な話題になってたよ。

確かに変だよね・・・。

そういえば、最近ここら辺も風が強いような気がするけど、関係あるのかなぁ?」

 

 

里に出かける事の多い響華は、既にこの話を里で小耳に挟んでいた。

彼女は謎に疑問を浮かべながら口元に手を当てる。

それに応えるかのように輝夜はクスリと笑った。

 

 

輝「クスっ、気になるんだったら調べてみれば?

貴女、博麗の巫女なんでしょう?」

 

響「え、でもそれは未来の世界での話だし・・・。

あまり下手に世界に干渉するような行為はしない方が良いってお兄ちゃんも言ってたし」

 

輝「良いじゃない、別に原因を調べるだけなんだもの。

やりたい事を我慢しない方が良いわよ?

これは人生の先輩から言える台詞だから」

 

 

響華はこの言葉を聞いて悩んだ。

未来を変えることが出来る過去への干渉。

普通ならば絶対にやってはいけない行為だ。

しかし、そんなものは自分たちがこの時代に飛んできた時から既に変わってしまっている。

今更気にしても仕方が無いのも事実だった。

暫く考えぬき、漸く決心がついた。

 

 

響「・・・そうだよね。

時代が違っても博麗の使命を任されたことに変わりはないんだもん」

 

輝「フフッ♪

その意気よ、響華なら絶対大丈夫だわ」

 

 

輝夜の確信の籠った言葉に鼓舞された響華は、縁側から外へ跳ね起きる。

そして、鈴虫たちのオーケストラの中、気合の一言を叫んだ。

 

 

響「よぉし、そうと決まれば張り切って異変解決するぞぉ!

えい、えい、オー!!」

 

 

古臭い掛け声とともに彼女は拳を天に掲げる。

こうして、もう一人の博麗の使命を背負った少女による異変解決が始まった。

 

 

永「貴女達!

一体今何時だと思ってるの!?

夜更かしも大概にして、早く寝なさい!」

 

輝・響「ご、ごめんなさいっ!」

 

 

・・・・異変解決は明日の朝になりそうだ。

 

 

to be continue...

 

 

 




今回の異変は響華ちゃんが解決に向かいます。
どうなるかは読んでのお楽しみ。


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緋想天90話

前回からかなり期間空いてしまいました。
何度も書き直してたら結構時間かかっちゃいましたよ、参ったね


夜のうちに永琳の叱りを受けた響華は、早朝に起床して一人で異変解決へ出る準備を整えていた。

普段ならば布団の中から出るのでも一苦労な彼女だが、珍しくこの日だけは既に布団を畳んで押し入れに入れ終えていた。

化粧台の前に座り、鏡を見ながら髪に櫛を通す。

白く輝く長髪を赤いリボンの蝶結びでサイドテールにし、ヘアピンで前髪を止めると、曇りなき黒い瞳がはっきりと姿を現した。

 

 

響「うん、これで良しっと」

 

 

髪型のセットに満足した後は、箪笥を開けて寝間着から巫女装束へと着替える。

白い寝間着の帯を外し、柔らかい胸の乳房があられもなく晒す。

今回は戦闘中にはだけないように、サラシは何時もよりきつく巻いた。

そして、巫女服に身を包んだ彼女は棚の中から大幣を取り出し、全ての準備が完了した。

 

 

響「これを出すのもあの時以来かぁ」

 

 

最後に使ったのは永夜異変の時。

幻惑に踊らされるリュウトを止めるのに使ったのが最後。

それ以来、引き出しに入れたままとなっていた。

久しぶりに使うとなってテンションも上がり。

 

 

響「よっ、はぁぁっ!」

 

 

試し振りをしたくなってくる。

しかし、振っている場所がいけなかった。

 

 

バチィーン!!

 

 

鈴仙「痛ったぁぁぁぁ!!」

 

響「あれ?優曇華?」

 

 

何時の間にか部屋に入っていた鈴仙の顔面に直撃し、響華のフルスイングアタックを顔面に受けた鈴仙は、あまりの痛さに床をのたうち回っていた。

・・・流石に謝った方が良いだろう。

 

 

響「ちょ、大丈夫!?

ごめん私全然気付かなくて!」

 

鈴仙「う、うん。

まだ痛いけど・・・大丈夫だよ」

 

 

顔を上げた鈴仙の目は涙ぐんでおり、未だに鼻を押さえていた。

血とか出てないよね?

念のために鼻血拭いのティッシュペーパーを渡そうと箱を探そうとすると。

 

 

鈴仙「あ、鼻血は出てないからティッシュは要らないよ」

 

響「え?あぁ、うん。

まだ何も言ってないんだけど・・・まぁいいか」

 

 

行動を読まれた。

そんなことはどうだって良い事。

それよりも、鈴仙が何の用で此処に来たのかが気になる。

 

 

響「それで?こんな朝早くにどうしたの?」

 

鈴仙「実は今日起きたら天井にこんな張り紙が貼られてて・・・」

 

 

鈴仙はスカートのポケットから徐に取り出した一枚の紙を響華に渡す。

折り畳まれたそれを開くと、そこには一言だけ。

 

(異変解決に行け)

 

とだけ書かれていた。

なんという簡単で解りやすいメモだろうか。

要は異変解決に行く自分の手伝いに行けという事だ。

 

 

響「そういう事なら早速行こうか?」

 

 

_____________

 

 

~博麗神社~

 

 

響「え・・・」

 

鈴仙「何、この廃墟は・・・?」

 

 

永遠亭を出て二人は真っ先に博麗神社へと飛んだ。

しかし、到着した二人の眼前に映り込んだ光景は、先程まで想像もしていなかったものだった。

境内は無数にひび割れや灯篭が倒れ、社は跡形もなく崩れ去っていた。

自分達が来るまでに何があったのか不明だが、この程度であの二人は傷一つ負いそうにないので心配などしない。

しかし、この状況は異常だ。

 

 

響「二人は何処へ行ったんだろう?」

 

鈴仙「近くに気配を感じないとなると、何処かへ避難してるのかもしれないね。

こんな状態じゃあ住めないし」

 

 

境内だった場所へ降り、辺りを散策してみて解った。

倒壊の原因は恐らく地震であるという事だ。

建物の壊れ方から、何者かの攻撃を受けて破壊された可能性はゼロに近く、押しつぶされたように倒壊しているのだ。

 

 

響「でも地震なんて竹林では起きてないけどなぁ」

 

零「おや?

響華と、君は鈴仙か?

君が来るとは珍しいな」

 

響「あ、おじいちゃん!」

 

 

後ろから曽祖父の声が聞こえて振り返ると、なんと零夜と霊夢二人とも居るではないか。

しかし、二人とも様子がおかしい。

霊夢は魂が抜けたように無気力に零夜に肩を預け、零夜は何故か後光に包まれている。

 

 

響「というか二人ともどうしたの?

何でおじいちゃんに光が差してるの?」

 

零「それが良く分からないんだ。

一週間ほど前からずっとこの調子でな、一向に治まる気配がない」

 

鈴仙「一週間前・・・。

丁度天気の変調が各地で起き始めた頃ね」

 

 

同時期に色々な事変が重なって起こる事は可能性としてはゼロではない。

しかし、建物を壊す程の直下型地震が近隣の土地で感じられないというのは明らかにおかしい。

零夜は話を続けた。

 

 

零「地震で崩れた時、偶然外に居たから無事だったんだが。

大事な神社が壊れて心に傷を負ってしまったようなんだ」

 

霊「私の神社・・・私の神社が・・・」

 

鈴仙「うっわぁ、相当ショックだったみたいね」

 

零「あぁ、本当に何時治るのか見当もつかない」

 

 

目が死んだ霊夢に肩を貸す零夜は、付きっ切りで看病をしているそうなのだが、鬱状態の彼女をどうすれば元通りに出来るのか頭を悩ませていた。

 

 

零「心の病だから簡単には治らないだろうな。

そんなに神社に愛着があるとは思ってもいなかったから、建て直したとしても正気に戻るかどうか・・・」

 

霊「ハハ・・・ハハハ・・・」

 

響「そんなぁ・・・。

ん?でも待てよ?

私の居た時代の神社は今の神社と作りや形は同じ筈・・・。

違うところと言えば、未来の神社の方が少し綺麗な位だけど・・・」

 

 

響華は思い出した。

未来の世界の神社と今の世界の神社の形や見た目が同じなのに、何故壊れているのだろうか。

その答えは簡単だ。

 

 

響「!そうか、そういう事だったんだ!

これで辻褄が合うよ!

そして、今回の異変の犯人。

こんなことが出来るのは、あの人しかいない!」

 

鈴仙「解ったの?」

 

響「うん、今回の異変を起こす事が唯一可能な人がね」

 

 

天気を変えることが出来、地震を起こす能力を持った人物。

犯人を知っているのは響華だけだ。

その人物とは。

 

 

響「比那名居天子、天界に棲む天人だよ」

 

 

to be continue...

 

 

 

 

 

 




響華&鈴仙コンビ結成!
因みに、魔理沙は雨で家から出れなくなっているので今回は参戦しません。
何時もは絶対出てくるんだけどねぇ~


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緋想天91話

前回消してしまった長編異変を再び始める事を決意し、緋想天編を速やかに終わらせたいと思うばかりに話が適当になっている気もしなくないです。


妖怪の山の遥か上空に浮かぶ厚い雲の上。

そこには、橋で繋がれた大きな島が10個ほど浮かんでいる。

空の楽園、天界である。

 

 

~天界~

 

 

天界は、大きな島を取り囲むように小さな島が浮かんで出来ている浮遊島群だ。

殆どが芝生か一面桃の木の森だが、中心の島には大きな中華風の屋敷が建っており、其処には天人達の総領が住んでいる。

その総領の一人娘こそが、比那名居天子である。

 

 

~~~~~~~~~~~~~

 

 

彼女は心底退屈そうに芝生に寝転がっていた。

大の字になって空を見上げれば、真っ青な自由が広がっており、夜になれば満点の星空が堪能できる。

雲は島の下に海のように満たされており、天界では雨が降ることが無い。

一年中お天道様が拝める。

・・・・なんて退屈なのだろう。

何度見た景色だろうか。

特に何もすることが無い世界で暮らしても、退屈なだけだ。

 

 

天「あ~あ、異変起こしてから一週間も経ってるってのに誰も来ないじゃん。

もしかして異変だって気がついてないのかなぁ?

・・・暇だなぁ」

 

 

今日もいつもと同じ晴天が空いっぱいに広がっている。

もうこのまま昼寝でもしようか、そう考えたその時。

二つの大きな気力を持った者が地上からこちらへ飛んできていることに気がついた。

ザッと上半身を起こし、詳しく力を探ってみると、一人は人間であることが解った。

 

 

天「フフ、アハハハ!

やっと来たのね!待ちくたびれちゃったじゃない!」

 

 

軽やかにバク転で立ち上がり、腰に挿した緋色に輝く剣に肘を掛けて待つ。

すると、雲の海から勢いよく二つの物体が飛び出してきた。

 

 

響「お?着いたっぽいよ?」

 

鈴仙「うっわぁ、すごい光景!

まるでラピュタじゃない!」

 

響「うん、ガリバー旅行記の方だと思いたいけどあんまり言わない方が良いよその単語」

 

鈴仙「え?何で?」

 

響「大人の事情ってやつだよ。

あまり深く考える必要もないから気にしなくていいよ」

 

鈴仙「???」

 

 

何だか意味深なやり取りをしながら天界の地へ降り立った二人は、天子の存在に気が付くと急かさず身構えた。

期待できそうな二人を見た天子は一気にテンションが上がる。

 

 

天「あはっ!貴方達中々強そうじゃない!

楽しませてくれそうだわ!」

 

鈴仙「うっさいわね!

アンタが比那名居天子ね?

さっさと幻想郷の天気を元通りにしなさい!」

 

天「良いわよ、ただし・・・。

私に勝てたらね!」

 

鈴仙「!!」

 

 

凄まじい速さで鈴仙の懐まで詰め寄った天子は、腰から剣を抜刀して鈴仙の身体を斬り上げる。

間一髪でこれに反応できた鈴仙は後ろへ倒れるように躱し、ワイシャツを掠っただけで済んだ。

しかし、彼女の目ですらも追いつくのに一苦労だった天子の一撃。

それは、彼女の実力の表れでもあった。

 

 

天「この一撃を避けるなんて、やっぱり貴女強いわね?」

 

鈴仙「グッ!は、速い!!」

 

 

さらに天子は追い討ちをかけ、鈴仙の胴体に剣を振りかざした。

しかし・・・。

 

 

ガキィン!!

 

 

その一撃は間に入った響華の大幣で防がれた。

 

 

響「流石、この時からこんなにも強かったのね」

 

天「何だか私の事を知っているような口振りね。

博麗の巫女とは顔を合わせた記憶が無いのだけれど?」

 

 

ドガッ!

 

 

響「うぐっ!」

 

 

刀を受け止められた天子は、響華を蹴り飛ばして距離を取る。

彼女は脚力も凄まじく、防御していた響華が体勢を崩してしまう程だった。

 

 

天「やっぱり見込んだ通りだわ。

貴方達、名前は何て言うの?」

 

響「博麗響華、未来から来た博麗の巫女」

 

鈴仙「鈴仙・U・イナバ、元軍人の玉兎」

 

天「未来人に元軍人?

アハハっ!何だか全然接点が無いコンビね。

気に入ったわ、徹底的にやり合いましょう!」

 

 

高らかに笑いを上げた天子は左手で指を鳴らした。

 

 

パチンッ!

 

 

その刹那、彼女の周りにドリルのような形をした岩が無数に現れ、その全ての矛先が響華達に向けられた。

 

 

天「行きなさい、要石」

 

 

彼女の一言で全ての要石が一斉に二人へ襲い掛かる。

掘削機のように回転する岩は、見た目の重厚さとは裏腹にとてつもない速さで向かってきた。

 

 

鈴仙「こんなもので!」

 

響「優曇華!避けて!」

 

 

響華が真っ先に回避する中、近づく要石を鈴仙は両手を銃の形にして狙撃で迎撃する。

そして、その全弾が目標へ確実に着弾した。

 

 

ドドドドドドドドド!!

 

 

鈴仙「フフ、この程度の岩くらいで私が怯むとでも・・・って、何ですって!?」

 

 

驚きを隠せなかった。

確実に当たった筈の要石は、破壊どころかスピードも全く変わらず自らに向かってきていたのだ。

鈴仙の攻撃が全く効かなかったのだ。

慌てて鈴仙あその場から退避する。

すると先程まで経っていた大地は要石により掘削され、根こそぎ土の塊となって地上へと墜ちていった。

その凄まじい破壊力に、彼女は戦慄した。

 

 

鈴仙「あんなものをまともに喰らってたら・・・」

 

響「気を付けて、天子ちゃんは私が戦った事のある人の中でも上位に入る実力の持ち主だよ!」

 

天「未来での話ね?

あとでゆっくり聞かせてもらおうかしら。

でも・・・このお遊戯が済んでからね!」

 

響「望む所よ!

優曇華、同時攻撃行くよ!」

 

鈴仙「タイミングは響華に任せるわ!」

 

 

そういうと二人は一気に加速して天子との距離を詰める。

先に仕掛けたのは鈴仙だった。

 

 

鈴仙「零距離ならこれでも!」

 

 

最大加速に到達したところで慣性飛行に切り替え、さらにブレーキをかけながら両手を合わせた銃で強力なエネルギーを指先に集中させる。

しかし、隙が大きすぎる。

 

 

天「見え見えよ、何を企んでるのか知らないけど」

 

 

まさに格好の餌食である鈴仙を最初に始末しようと、天子は剣を抜いて地面を思い切り蹴る。

その時、鈴仙はニヤリと笑った。

 

 

鈴仙「かかったわね!」

 

 

ギャイン!!

 

 

天「うわっ!」

 

 

鈴仙の目が赤く光り、天子はそれを直に浴びてしまう。

しかし、怯むほどではなく、剣先は真っすぐ鈴仙を仕留めた。

 

 

スパン・・・

 

 

天「んなっ!?

軽すぎる!!

残像を斬ったとでも言うの!?」

 

 

間違いなく天子の剣は鈴仙の身体を真っ二つにしたはずだった。

にも関わらず、剣の手ごたえは空を斬ったかのように軽かった。

その一撃の軽さに気を取られていると、すぐ目の前に響華が迫っていた。

 

 

響「はぁぁぁぁ!」

 

天「!?」

 

 

驚いた天子はすかさず剣を振ろうとするが、響華の速度に追いつけず、慣性速度と同調した蹴りが腹部に直撃した。

 

 

ドゴォ!

 

 

天「ぐあぁぁぁ!」

 

 

その衝撃は大きく、防ぐことが出来なかった天子は地面へ真っ逆さまに落ちていき、巨大なクレーターを作り上げた。

そこへさらに鈴仙が、幻覚を使って時間を稼いでいる間に貯めていたエネルギーを解き放ち、追い撃ちを掛ける。

 

 

鈴仙「今よ響華!

ルナティックマグナム!」

 

響「ホーミングアミュレットぉ!」

 

 

鈴仙の特大レーザーに、響華の誘導札。

二つの爆撃をクレーターの中心に向けて撃ちまくる。

着弾の度に大きな土煙が舞い、大地を焦がしていった。

 

 

響「これだけ撃てばかなりのダメージを与えている筈」

 

鈴仙「感じる霊力も弱まってるし、もうボロボロだったりしてね」

 

 

攻撃を打ち止めた二人は霊力を探って、天子が既にダウンしているだろうと考えた。

これ以上追撃をしても彼女を虐めるだけだと。

しかし、その甘い考えは直ぐに消えた。

煙がある程度晴れると、平然とその場に立つ彼女の姿が見えたのだ。

 

 

響「そんな、あれだけの攻撃を受けたのに!」

 

鈴仙「噂に聞く鬼みたいな強さじゃないの・・・」

 

天「う~ん、これでも割と堪えた方なんだけどなぁ。

おかげで服がボロボロだよ」

 

 

首をボキボキと左右に鳴らし終わると、天子は左手の人差し指をクイッと上に上げる。

すると、再び大量の要石が今度は地中から姿を現した。

注連縄の掛かった浮遊する岩は、天子を取り囲むように周囲へ群がる。

 

 

天「さぁ、今度はどんな技を見せてくれるのかしら?」

 

 

to be continue...

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いやぁ、苦戦しますね~。
まぁ響華が本気出したら簡単に勝負が着くのですが、あの子は本当に必要な時にしか能力を使いません。
霊夢より強いですが、夢想天生を越える技を能力を抜いたら持っていないのです。
因みに、響華はリュウトと兄妹ですが、光を纏えないし神化出来ません。
その代わりに博麗の血をかなり濃く引き継いでいるという設定です。


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緋想天92話

実際、天子ちゃんはどれくらい強いんでしょうかねぇ?
というか緋想の剣って天気操れる以外に何か出来るんかね。
わかんねぇけど本編スタートだぁ(トトロのおばあちゃん口調)


天「覚悟は良いかしら?

・・・撃て」

 

 

天子が左手で二人を握るような合図を出すと、全ての要石が一斉に弾幕を発射しだした。

放たれる赤いビームは二人を的確に狙っており、攻撃の隙を与えないようにローテーションを組んで撃ちまくる。

防戦一方な状況を打破するべく鈴仙は狂気の眼をプロジェクターにして、虚無の分身を何体も宙に映し出す。

これがどうやら効果あったらしく、要石の攻撃は自動的に分身も対象に入れた。

この要石は人の形を認識して攻撃しているようだ。

これにより終わらない波状攻撃が分散し、攻撃のチャンスが出てきた。

 

 

鈴仙「響華!今よっ!!」

 

響「優曇華ナイス!

これなら行ける!!」

 

 

スペル:夢想天誅

 

 

ドンドンドンドンドンドン!!

 

 

スペルカードを発動した響華から六つの虹色の玉が放たれ、ランダムな飛行をしながら要石へ突撃してナパームのように大きな爆発を繰り出す。

これにより、相当数の要石が爆散していった。

しかし、破壊しきれなかった要石は再びドリルとなって響華へ特攻を掛けてきた。

 

 

響「え!まだ来るのぉ!?」

 

 

ホーミング機能の付いた要石ドリルから逃げつつも撃ち落とそうと札を何枚も投げつける。

しかし、通常の攻撃で破壊することは叶わなかった。

そこで彼女は考えた。

 

 

響「逃げても追いかけてくる・・・それなら!」

 

 

彼女はわざと逃げることを止める。

そして、迫りくる要石ドリルを当たる寸前で擦れ擦れの状態で全て避けきると、背後からありったけの弾幕を撃ちまくった。

回転する正面への攻撃が効かなかったのに対して背後からの攻撃は有効だったらしく、簡単に破壊することが出来た。

これで要石の攻撃は全て攻略した。

 

 

響「次は本体!」

 

天「剣を持ってる相手に接近戦で挑むなんて、貴女は近距離の方が得意なのかしら?」

 

 

ガキィン!

 

 

二人の武器が互いにぶつかり合う。

速度の乗った重い攻撃にも怯むことなく受け止めた天子は、そのまま斬り合いへ持ち込む。

響華もそれを望んでいた。

しかし、天子のリング内である近距離戦は、自らに相応のリスクを与える。

 

 

響「ふっ、はぁぁ!」

 

 

大幣の突きと回し蹴り、ラッシュの連打で天子との距離を詰めようとするが、彼女と響華の実力は近く、両者一歩も譲らない攻防戦となる。

剣がぶつかり合う度に派手な火花が散り、蹴りがぶつかり合う度に衝撃波が空気を揺らす。

 

 

鈴仙「少しでも意識を散らせられれば!」

 

 

スペル:クラウンヴィジョン

 

 

天「無駄だぁ!」

 

 

鈴仙の合図で響華は天子から離れ、能力を使った長距離からのリングレーザーの射撃を敢行する。

リング状のビームは真っすぐに天子に向かっていったが、彼女は剣に炎を纏わせてリングを一刀両断してしまった。

 

 

鈴仙「私のスペルが!」

 

天「緋想の剣の前でそんなものは無力よ!」

 

 

スペル:非想非非想の剣

 

 

天子も自信のスペルカードを発動し、剣に禍々しい赤く濁る気を纏わせ、鈴仙に向けて斬撃を飛ばす。

とてつもない攻撃範囲を誇るそれは、易々と彼女の身体を一閃した。

 

 

鈴仙「きゃあああ!?」

 

響「優曇華ー!」

 

 

鈴仙は真っ赤な光に呑み込まれた。

咄嗟に手を前に出して防ごうとするも、もう遅い。

斬られた鈴仙は力なく墜ちて・・・いかなかった。

 

 

鈴仙「あ、あれ?

斬られて・・・無い?」

 

響「どういう事?」

 

天「あと五秒。

三、二、一・・・あなたはもう、此処から退場よ」

 

 

パチンッ

 

 

天子は徐に数を数え、指を弾く。

すると、その瞬間から鈴仙の体に異常が現れ始めた。

 

 

鈴仙「何も起きな・・・って何これ!?

力がっ!!入らなくなって・・・!」

 

響「妖力が・・・小さくなってる?」

 

 

鈴仙の妖力は段々と力を失っていき、浮力を得られなくなった彼女は徐々に下へと降りていった。

既に、有り余っていた妖力は20分の1以下まで激減していた。

 

 

鈴仙「そんな、一発だけで私の妖力を殆ど消してしまうなんて!」

 

天「この緋想の剣は緋名那居に伝わる伝説の宝刀。

この剣なら造作も無い事だわ。」

 

鈴仙「くっ・・・!」

 

 

飛行する為の妖力を失った彼女は、他にも弾幕や能力、スペルカードなどの妖力を必要とするあらゆるものが使えなくなってしまった。

気力が使えなくなるという事は、この世界の戦闘での丸腰状態という事。

事実上の敗北だ。

しかし、彼女にはとっておきの秘密兵器があった。

 

 

天「これであなたは戦闘続行不可能。

もうおしまいよ」

 

鈴仙「・・・確かに飛べなくなったのは痛手だわ。

でも、だからと言って負けた事にはならないという事を教えてあげる」

 

 

そう言って彼女はブレザーの内ポケットから一つのリモコンを取り出し、ボタンを押す。

リモコンには{緊急支援要請}と書かれていた。

ボタンを押してから数十秒後、何処からか飛んできたミサイルが空中分解し、中から二メートル以上ある金属製のコンテナが落ちてきた。

ズシンと重たい音を立てて落ちてきたそれの外側に取り付けられた赤いスイッチを押すと、それが変形して武器庫となった。

 

 

鈴仙「うん・・・装備は全部揃ってるわね。

たまには、てゐも良い仕事するじゃない?」

 

 

中に入っていたのは二丁セミオート拳銃とポンプ式ショットガン。

カートリッジ式の軽量バズーカ二丁にコイルマシンガン。

予備弾倉一式と、それを全て装備するためのホルスター類だ。

バズーカは背中へ、ショットガンは腰、拳銃は太腿へ、そしてマシンガンを携える。

最後にサングラス型ゴーグルを掛ければフル装備完了だ。

全ての武装を装備した彼女は、遠い過去の記憶を思いだし、感傷に浸る。

 

鈴仙「う~ん、何だか昔に戻った気分ね。

懐かしいわ」

 

天「はん!

そんな武器に頼ったところで私に敵う筈ないわ!」

 

鈴仙「誰が{私が貴女を倒す}って言った?」

 

 

次の瞬間、天子の真横へ瞬間移動してきた響華が強力な霊気を纏わせた大幣で振りかぶって来る。

目の端でそれを捉えた彼女は咄嗟に緋想の剣で防いだが、同時に背中に蹴りが直撃して地上へ吹き飛ばされてしまった。

 

 

バガァッ!

 

 

天「ぐあぁあ!?」

 

 

思わぬ不意打ちに対応出来ずにダメージを負った天子は、辛うじて受け身に成功するも、膝をついてしまった。

そして、ここから二人の快進撃が始まる・・・。

 

 

to be continue...




非想非非想の剣は元々スペルカードを破壊する技なのですが、何か地味そうなのでエネルギーを消滅させる設定にしました。
お陰で鈴仙がターミネーターになりました。
ではさようなら。


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緋想天93話※

挿し絵を前半に出しすぎて載せれなくなってしまったせいでかなり苦しんでおります。
ターミネーター鈴仙は果たしてどんな活躍をするのでしょうか?



~永遠亭~

 

 

てゐ「鈴仙・・・大丈夫かなぁ?」

 

 

要請信号を受けて補給物資を射出した後、心配になって庭に出てきたてゐが空を見上げている頃、天界では響華と鈴仙が天子と激戦を繰り広げていた。

 

 

_____________

 

 

~天界~

 

 

鈴仙「地獄へ送ってやるぜ」

 

 

サングラス越しに天子を睨み、持っているマシンガンを撃ちまくる。

正確な射撃をすると弾道が読まれると考えたのだ。

実際、滅茶苦茶な撃ち方ではあるものの、気弾とは桁違いに速い銃弾は天子を翻弄していた。

 

 

バシュッ!

 

 

天「ぐっ!」

 

 

一発の銃弾が、避けきれなかった天子の左肩を掠る。

激痛に顔を歪めるが、痛がっている余裕など無い。

次から次へと飛来してくる鉛の弾は一時の休息さえ取らせてくれない。

左肩を庇いながら剣を回転させ、ディフェンスロッドのようにして盾代わりにする。

しかし、敵は鈴仙だけではない。

 

 

響「博麗アミュレット!」

 

天「くっ!」

 

 

背後に回った響華が符撃を撃ち込んでくる。

博麗の結界でコーティングされた陰陽札は如何なる悪をも滅する強力な武器だ。

直撃すれば大ダメージは免れない。

彼女はこの危機的状況に、切り札を出してきた。

 

 

スペル:無念無想の境地

 

 

剣を仕舞い、銃弾が飛び交う中スペルを唱え終わると、彼女の身体を赤い霧が取り囲み、体へと吸収されていく。

しかし、アミュレットを防ぐことは出来ずに彼女は爆発の奔流に呑み込まれた。

彼女が何を企んでいるのか分からないが、鈴仙は追撃に弾が切れたマシンガンを捨ててハンドグレネードのピンを抜いた。

 

 

 

鈴仙「私からのプレゼントだ。

あの世の手向けだぜ、受け取りな」

 

響「何かキャラ変わってない?」

 

鈴仙「I`ll be back」

 

響「〇ーミネーターはダメだって!」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

ヒュン・・・

 

 

ドガァァァァァァァァァン!!

 

 

 

榴弾は天子の目の前で光となり、爆炎となって彼女の身体を包み込んだ。

爆煙で姿が全く見えないが、普通なら致命傷レベルの攻撃を直撃したのだから、只では済むまい。

あの爆発を見た後二人はそう確信した。

しかし、その確信は大きく裏切られる形となった。

 

 

響「噓でしょ・・・?」

 

鈴仙「・・・あの赤い霧は何だ?」

 

 

煙の中から出てきたのは、まるで先程の攻撃が効いていないかのようにピンピンした天子だった。

防御した気配も無いし、避けれる速度の代物でもなかった筈。

しかし、先程とは違い、彼女の身体からは何やら怪しげな赤い霧が噴出していた。

これが防いだとでもいうのか?

試しに鈴仙は太腿のホルスターから二丁拳銃を取り出し、全弾撃ち尽くすまでトリガーを引いた。

 

 

天「無駄よ、それくらいの攻撃では私の障壁を突破できないし、体に傷一つつけることも出来ないわ」

 

 

剣を腰に収め、目の前に赤い霧を巻き上げる。

渦を巻きながら霧はたちまち天子を取り囲み、銃弾を容易く受け止めてみせた。

その強度に鈴仙は焦りを覚えた。

 

 

鈴仙「うわぁどうしよ、全然効いてないじゃん」

 

 

やはり原因はあの霧だったようだ。

しかし、それだけではない筈。

恐らく体自体も防御力が格段に上がっているのだろう。

そうでなければ流石に榴弾を直撃して無傷はあり得ない。

自分の無力さに歯がゆくなるものの、実際この戦闘で自分が役に立つことは無いだろう。

本当に全て響華に委ねるしかなくなってしまった。

 

 

天「これを展開するには相当量のパワーを支払わなければいけなかったけれど、貴方達を倒すためには致し方ないわね」

 

 

緋想の剣が炎を纏い、太陽のように明るく光を放つ。

これが、この剣の本来の力なのだろう。

 

 

天「この剣は天候を操ることが出来る特別な剣。

晴天の力を纏った剣は如何なる闇も払い退ける。

さぁ、最強の盾と矛を身に着けた私に、貴方達は勝つことが出来るのかしら?」

 

響「確かに、今のままだったら勝てる見込みは無いよ。

でもね・・・奥の手を隠してるのは自分だけじゃないんだよ!」

 

 

大幣を両手で目の前に突き出し、腕の遠心力で袖がバッと音を立てる。

目を閉じて、体の最深部に眠っているナニカをイメージしながら彼女は詠唱を始めた。

それは、かつて歴代最強と謳われた博麗の巫女が愛した一人の男から受け継がれてきた力。

彼女も兄と同様、{なれる}のだ。

 

 

響「・・・神化解放(シンカカイホウ)

 

 

淡い光に包まれ、段々とシルエットが無くなっていく。

完全な光の球体となって天を照らすと、球体は弾け飛び、流星群の如く地上に降り注ぐ。

しかし、隕石が降ってきた時のような破壊は何処にも無く、優しく、それでいて生命を育む母のような温かい光が辺りを優しく包み込んだ。

 

 

天「これは・・・?」

 

鈴仙「霊力が感じられない?

そうか、響華もあの人の血を受け継いでいる。

成れても不思議ではないわね」

 

響「正確にはこれは変身ではない。

この姿もまた、私の本来の姿なのだから」

 

 

光の卵から出てきたのは、輝く八卦が映し出された円光を背負った神々しい姿へと変身した響華だった。

その体からは金色のオーラが絶え間なく放出され、霊力は全く感じられなくなった。

これが、神の遺伝子を前面に出した響華のもう一つの姿だ。

 

 

響「さぁ、これからが本番だよ」

 

天「そうね・・・お互い本気でぶつかり合いましょう」

 

 

燃えるような赤と、光り輝く白。

ぶつかり合う二人のオーラは天を貫く柱となって聳え立つ。

今、少女たちの究極バトルが始まる。

 

 

to be continue...

 

 

 




天子が使ったスペルカードは緋想天で登場した無念夢想の境地です。
防御が滅茶苦茶固くなるトランセルですね。
響華は霊夢の血を色濃く継いでいるので、博麗の力をリュウトよりも上手く扱えます。
その代わり、零夜の雷や光といったものは殆ど使えません。
設定に書いたか覚えてないwww


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緋想天94話

激しい高速戦闘は表現が難しくて嫌になってくるね


天界の大地が望める空で、二人の少女が激しいドッグファイトを繰り広げていた。

炎の剣は振る度に火炎を撒き散らし、辺りを灼熱へと変える。

それでも響華は怯まず剣を受け止め突貫していく。

最も今の彼女は中途半端な火炎くらいで怯まない程の強さを持っているのだが。

 

 

響「熱っついなぁ!!

突っ込む方の気にもなってよ!」

 

天「どうせ全く堪える程じょないんでしょ?

まぁ、そんなに熱いのが嫌だったらやめてあげるけどさっ!」

 

 

鍔競り合いの中、響華の愚痴を聞いた天子が緋想の剣に新たな力を込める。

すると炎が消え、今度は冷気を纏った氷の剣へと姿を変えた。

その変貌ぶりに驚いた響華は一瞬だけ力を抜いてしまう。

その隙を天子が逃す訳なかった。

 

 

天「接近戦はほぼ互角。

あとは武器の強さと、一瞬の油断が勝敗を決する切欠となる」

 

響「何をっ!」

 

 

剣で響華を弾き飛ばし、懐に蹴りを入れて吹き飛ばす。

と同時に天子はさらに剣を水平に振り、無数の氷柱を撃ち出した。

地表に叩き落された響華は瞬時に起き上がり、その場から急いで退避する。

地面擦れ擦れを飛行しながら飛来する氷柱を、右、左に身体を逸らして回避していく。

その最中でも、響華は反撃を忘れてはいなかった。

 

 

響「ちぃ!もう残りの札が少ない!」

 

 

袖から封印札を投げつけながら、残りの札の枚数を手の感覚で確認する。

弾幕よりも強力なアミュレットは数に限りがあり、戦闘が長引けばそれだけ消耗する。

というよりも、札だけでなく針の数も少ない。

無くなるのも時間の問題だ。

 

 

響「当たれば少しでも動きを止められるのに!」

 

天「厄介な武器だけど、数には限りがあるみたいで助かるわ」

 

 

天子が人差し指をクイッと上げる。

すると地面が大きく隆起し、飛行している響華の進行方向に壁を作り上げた。

 

 

響「やっばぁ!?」

 

 

速度が出ていた響華は止まることが出来ずに頭から固い壁へと突っ込む。

さらに隆起した大地は彼女を包み込み、ドーム状に固まった。

 

 

天「拘束完了っと。

さぁ、このまま握りつぶしてあげるわ」

 

鈴仙「響華ぁ!

くっ・・・このぉぉ!」

 

天「無駄よ、ショット」

 

 

ビジュン!

 

 

響華が圧殺されてしまう前に阻止しようと天子にバズーカの砲身を向けるが、トリガーを引く前に拡散弾幕による先制攻撃を受けてしまう。

クラスター爆弾のように広がる爆撃は鈴仙を巻き込み、広範囲に煙を撒き散らした。

 

 

ズバババババババババン!!!

 

 

天「妖力が無くなった妖怪なんて、所詮こんなものよ。

無力なのに歯向かってきた自身の愚かさを悔やむが良いわ」

 

鈴仙「・・・・・」

 

 

確実に無事では済まされない一撃を受けた鈴仙は満身創痍となり伏した。

直後、ドームに異変が起きた。

ひび割れた表面から光線が漏れ出し、光の大爆発を巻き起こしたのだ。

ゆっくりと上昇する響華の身体には傷一つついてはいなかった。

しかし、彼女は目の前の景色に絶句した。

 

 

響「!!!!

優曇華ぇ!!」

 

 

返事をしない倒れた相棒の姿。

彼女の周辺は爆撃の後のように焼野原が広がっていた。

到底許すことは出来ない。

この時、響華の中には怒りの感情がふつふつと湧き上がっていた。

無言で亜空穴で天子の目の前までテレポートし、高速の左ストレートを突き出す。

その拳には、静かな怒りが込められていた。

天子は体を強化しての余裕を見せていたが、拳が眼前まで近付くと咄嗟に左腕で拳を防いだ。

身の危険を感じたのだ。

 

 

響「お前ぇ・・・」

 

天「何、この力は・・・!

さっきまでこんな力はなかったのに!?」

 

 

怒りの鉄拳は治まる事を知らず、再度左ストレートを左腕部に向けて繰り出す。

 

 

バゴォッ!!

 

 

天「いっ!?」

 

 

激しい痛みを右腕部に感じた天子の顔が歪む。

しかし、彼女の中では痛みよりも驚きの方が感情としては大きかった。

無念無想の境地を使用した自分の身体に傷をつけたのは彼女が初めてだったからだ。

気合いを入れて響華の拳を掃い、高速の剣技を魅せる。

しかし、彼女の振るう剣が響華に届くことはもう無い。

剣の軌道を完全に読まてしまい、最小の動きで全てを避けてみせた。

 

 

響「こうしてみると、案外大したことないね」

 

天「何ぃ!?」

 

響「だってそうでしょ?

現にあなたは今、敗けている」

 

天「このぉっ!」

 

 

緋想の剣を両手で持ち、響華の頭上へ本気で振りかぶる。

が、その渾身の一撃は片手であっさりと挟まれてしまった。

 

 

響「捕まえた・・・。

絶対逃がさない・・・絶対に!」

 

 

彼女は分かっていたのだ。

緋想の剣は比那名居の家宝。

手放すことは許されない事に。

これを掴まれた時点で比那名居天子に逃げるという選択肢は許されないのだ。

 

 

響「やりすぎなんだよ。

死んじゃったらどうするのさ」

 

天「し、死ぬ?」

 

 

蛇に睨まれた蛙のように怯える天子に響華が問う。

唐突な質問に戸惑った彼女だが、別に関係ない者が死のうと知ったことではない。

 

 

天「ハン!自分と関係ない者が死のうと知ったこと無いわ!

私は聖女ではないもの!」

 

 

その言葉を聞いた響華の手のひらは、そっと天子の胸の前へ翳された。

そして、手のひらを中心に金色に輝く巨大な結界陣が現れた。

中心の陰陽陣は輝きが金から白へと変わっていき、エネルギーが急速の収束していった。

 

 

響「じゃあ、死ぬ恐怖を教えてあげる」

 

天「アンタ、何をっ!」

 

響「大丈夫、殺しはしないから。

ただ・・・優曇華が味わった恐怖をあなたにも味わってもらうだけだから」

 

 

その刹那、陣が先程とは比べ物にならない程の輝きを放ち、天子の身体を光の渦へ巻きこんでいく。

容易く天子の身体を覆う光源の正体は超巨大なレーザーだった。

巨大なレーザーを至近距離でその身に受け、光で体の影が歪んでいく。

 

 

天「ガァァァァァァァァァ!!!???」

 

 

断末魔と共に彼女の影は消えていき、彼方へ吹き飛ばされる。

それでも尚、光線は重力に縛られず真っ直ぐ飛んで行った。

この一筋の光は地上からもはっきりと判るほど太く、美しいものだった。

しかし、効果は今一つ。

手ごたえのある一撃だったが、響華は渋い顔でその跡を凝視していた。

 

 

響「少しパワーを抑えすぎた・・・やはり防御面では鬼以上か。

天人って何でこうも厄介なんだろ、仙桃食ってるだけでこれじゃあこっちもやってられないよ」

 

 

天の大地を抉った一撃を受けても尚、比那名居天子の体力は戦闘を行うに十分な体力を残していた。

全力の一撃ではなかったが、かなり強力だった筈。

しかし、天人の硬度はそれ以上だったようで、正面から直撃した天子は深手を負いながらも未だ浮遊したままだ。

 

 

天「く、クソっ!

私がこんな・・・こんな屈辱を・・・!」

 

響「まだ諦めないの?」

 

天「私に敗北の二文字は似合わない・・・。

だって私は、天界の王の娘なのだから!」

 

響「自分が蒔いた種でしょうに。

どんだけわがままなの」

 

天「うるさい!

私はあいつらを見返してやるんだ!

地上上がりの天人を馬鹿にする奴等に・・・!」

 

響「地上上がりの天人・・・」

 

天「もうどうなったって構いやしない!

ここいらもろともお前らを消してやる!」

 

響「!!!」

 

 

天子が能力を行使し、地面を隆起させる。

しかし、先ほどまでの隆起とは桁が違い、今度は島全体を隆起させた。

大地は一直線に宙へ伸び、成層圏を突破した。

 

 

天「此処は地上から最も遠い大地。

ここをお前の墓場にしてやる!」

 

 

天に昇る彼女は剣を握り直し、その刃を響華へと向けた。

 

 

to be continue...




何か良くわからん話になってきた。
なにがしたいんだ俺は…


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緋想天95話

明けましておめでとうございます。
16年中に上げたかったけど無理でしたとさ。


天「フルパワーで全部纏めて吹き飛ばしてやる!」

 

響「!?」

 

 

天子の声に反応した緋想の剣が手から離れて浮遊し、彼女の目の前で静止するとエネルギーが剣に集中し始める。

禍々しい赤の衝撃が広がり、空気が悲鳴を上げる。

そして、最後のスペルを詠唱した。

 

 

スペル:全人類の有頂天

 

 

ドシュウゥゥゥゥ!!

 

 

全てを焼き尽くすように赤い熱線が拡散砲となって大地を炎に包み込む。

放たれる放射熱線は無作為な軌道を描き、地面に痛々しい黒い傷跡を残していった。

ただ、左程苦労なく避けられる速さだ。

 

 

響「確かに強力ね。でもね、どんな強力な砲撃でも、当たらなければ!」

 

 

しかし、響華はある誤算をしていた。

天子は自分を狙って攻撃している・・・という考えは間違いだった。

 

 

天「避けられる事を想定せずに撃っているとでも?」

 

 

適当な軌道を描くビーム。

しかし、ターゲットは彼女ではない・・・鈴仙だ。

未だ倒れたまま動けない彼女がこの熱線に直撃すれば確実に死ぬ。そうなれば響華がとる行動は決まってくる。

 

 

響「!!!怪我人を狙うなんて卑怯な真似を!」

 

 

事に気が付いた響華は真っすぐ鈴仙の元へ向かう。

既に熱線が鈴仙に直撃するのは時間の問題だった。

 

 

響「間に合えぇぇぇぇぇ!」

 

 

札を投げて鈴仙に結界を張り時間を稼ぐ。

あれだけ強力な攻撃だ。保って数秒というところだろうが、彼女ならばそれだけあれば十分だ。

 

 

バキィィィィィィィン!

 

 

響「よし、持ち堪えてくれた!」

 

 

すかさず結界と鈴仙の間に滑り込み、バリアを張って衝撃に備える。

直後、結界はガラスのように脆く割れ、熱線がバリアに直撃した。

その時、天子の口が右に吊り上がる。この瞬間を待っていた。

 

 

天「そう来てくれると信じていたよ。

・・・最大出力!」

 

響「やっぱり罠だったか!博麗七重結界!

 

 

天子の攻撃に悪態をつくも、響華も防御結界を七層に重ねたバリアーで正面から対抗する。

が、拡散して放たれていた熱線が一点集中砲となり、バリアに負荷をさらにかける。

それだけでなく、天子は今自分が出せる最大の力を引き出して響華を消そうとした。

今の響華でさえもそれを防ぎきるのは容易なことではなかった。

 

 

響「強すぎるっ!一体いつまで続くのよこれ!」

 

天「ならさっさとくたばりなさいよ!」

 

 

二人の本気のぶつかり合いは激しさを増し、飛び散る熱線の欠片は周囲に甚大な二次災害をもたらした。

しかし、現時点では天子の方がやや優勢であった。

響華は天子のビームを押し返せていない。

完全に防戦一方な状況の中、鈴仙が漸く目を覚ました。

先の攻撃から気を失っていた彼女は、今起きている現状をはっきりと把握出来ないでいた。

 

 

鈴仙「な・・・何よこれ」

 

響「ぐぅぅっ!この異常なパワー、剣の力まで入れてるっていうの!?」

 

天「そうよ、緋想の剣は大量の妖力を纏っているの。これはある意味で妖刀の一種なのよ。

剣に力を籠めるのではなく剣の力を引き出すことによって能力を発動できる。

そしてそれができるのは我が比那名居家だけ。だからこその家宝として受け継がれてきた。

比那名居はこの剣に選ばれた一族なのよ」

 

 

天子はさらにパワーを注ぎ込む。

剣はそれに反応し、ビームは先ほどより一層重くなった。

響華の足元は地面がひび割れ、踵が埋まっている。

バリアと後ろの円光が生み出す推力を上げても五分五分といった処だ。

 

 

鈴仙「響華・・・。私は一体何を・・・?」

 

響「優曇華!気が付いたの!?」

 

 

ボロボロの体で上半身だけ辛うじて起き上がる事が出来た鈴仙がぼやけた視界の中で響華の名を呼び掛けた。

酷い出血で顔色も悪い。

今すぐ治療が必要だという事は分かっている・・・が、しかし。

目の前の敵は未だ立っている。

 

 

響「優曇華、力を貸して!」

 

 

今、自分は手が離せない。

相棒である鈴仙に頼るしかない。

やつの集中を逸らす何か切っ掛けがあれば・・・。

それを察した鈴仙がニヤリと笑い。

 

 

鈴仙「オーケー・・・任せなさい!」

 

 

落ちて左のレンズが割れた壊れかけのサングラスを再び掛け、バズーカを肩に担ぐ。

照準器を引き出し、サングラスの有視界ターゲットロックを起動させる。

装弾数は4発。月の兵器ではローテクと言われるほど古臭い代物だが、その威力は折り紙付きだ。

 

 

鈴仙「対要塞攻撃用誘導弾だから、並の威力じゃないわよ~。確実に当てるからあと10秒耐えて!」

 

響「了解!」

 

鈴仙「目標補足、ターゲットロックを完了。

弾頭軌道計算・・・セーフティーロックを解除。

 

 

サングラスにはビーム越しにターゲットロックされた天子と、弾道のルート、砲身を向けるべき方向まで表示されていた。

空気の流れやビームの温度から安全で確実に当たるコースを自動計算していく。

ここまでで約8秒。発射体制は整った。

 

 

鈴仙「一気に行くわよ!」

 

 

バシュウンッ!

 

 

バズーカを右に逸らしてトリガーを引くと、砲口から一発の誘導弾が発射されて自動で弾が軌道修正を行い、徐々に左へ流れる。

そして、標的の目の前で大きな爆発を起こして消えた。

流石は要塞攻撃用の武器だけあって威力は並大抵なものではなかった。

 

 

ドゴォォォォォォン!

 

 

鼓膜が破れそうなほど大きな爆発音と黒い炎をま撒き散らし、ビームはあらぬ方向へと反れていく。

これを好機に鈴仙は連続でトリガーを引き、追い打ちをかけた。

 

 

ドゴォン!バゴォォン!

 

 

天「あ、ぐぅあ!?」

 

 

放っていたビームは天に向けられ、徐々に光が掠れて消えていった。

それと同時に響華は結界を消すと、足のバネを最大まで縮ませ天子の高さまで跳躍し、気を纏わせた鉄拳で制裁を下した。

 

 

響「これが私の、最後の一撃ィ!!」

 

 

利き手を握った拳が天子の鳩尾を貫く勢いで繰り出される。

空気の摩擦で炎が出るほど早い一撃は、無念夢想の境地のスペルによって超強化された身体でさえも全く歯が立たない威力であった。

 

 

天「が、っはぁぁぁぁぁ!!??」

 

響「まだまだ、これで吹っ飛べぇぇぇ!」

 

 

拳に集中させていた気を衝撃波として開放する。

衝撃は内臓に直接ダメージを与え、天子は喉元からは胃液が逆流してきていた。

最早何も考えられないほどの痛みに、彼女は頭の中が真っ白になった。

何もかもが吹き飛んだ、そういう気分だ。

でも、最後にこれだけは言っておきたい。

スペルがと解け、脱力感に身をゆだねる。

響華の体に倒れ掛かり、彼女の肩に手を掛け、そっと声に出した。

 

 

天「あなたの・・・勝ちよ・・・」

 

響「えっ・・・?」

 

 

倒れ掛かってきた天子を支え、ゆっくりと降りていく。

その際、何か聞こえたような気がしたが、それ以上の言葉が聞こえることは無かった。

目を閉じて、真っ白に燃え尽きた天子からは吐息一つ聞こえない。

天子の命を具現化するように、成層圏を貫く大地は脆く、そして儚く崩れ去っていった。

 

 

to be continue...




天子やっと倒せた!!
長かったぁ…書く暇が無いし何も思い浮かばないしで散々な回でした。
てか眠い


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緋想天96話

緋想天もこれで終わり!!
漸くここまで来たという感じです。


?「起きてください、総領娘様。

一体いつまで寝ていらっしゃるおつもりなのですか?」

 

天「う・・・う~ん」

 

 

深く、暗い眠りの湖から誰かの声が聞こえる。

私を呼ぶ声。

何だかすごく落ち着く声だ。

母親の居ない私を優しく包み込むような母性に溢れた声。

暗闇の中に一筋の光が差し込んだ。

 

 

天「んぁ・・・此処は?」

 

?「ようやくお目覚めですか?

全く貴方という方は、何故あのような事を?」

 

 

自分の部屋のベッドで目が覚めたと思ったら、その横には羽衣を纏った薄紫のショートウェーブが美しい女性が座っていた。

・・・デカいな、何がとは言わないけど羨ましい。

アレのデカい美女、永江衣玖は困った顔で質問してきた。

 

 

天「え?なんの事?」

 

衣玖「お忘れですか?

昨日、天界の一部を崩壊させてしまったというのに」

 

天「・・・あー、そうか。

私負けたんだ」

 

 

昨日の事である。

響華、鈴仙と戦った天子は天界の大地の一部を地上へと落としてしまったのだ。

しかも周辺の地面はボロボロ、見るも無残な姿となっており、総領はそれはそれはお怒りのようだ。

衣玖が別仕事でその場に居合わせていなかったから良かったものの、本来ならば衣玖が監督不行き届きで厳罰を食らっているところだ。

しっかりと反省してもらわなければ困る。

 

 

天「・・・どれくらい怒ってた?」

 

衣玖「それはそれは、鬼の形相で総領娘様に厳し~い罰を与えると」

 

天「き、厳しい罰とは具体的にどのような?」

 

衣玖「さぁ?私にも想像出来ません。

それなりの覚悟を決めてから行かれた方が良いとしか・・・」

 

 

衣玖のそれなりとは、恐らくかなりという事だろう。

それほどの覚悟を決めなければいけないほどの厳罰とは一体何なのだろうか。

衣玖は何も教えてくれない。

それだけの事をしたのだから仕方ないのだが。

 

 

衣玖「そういえば総領娘様。

博麗の巫女様から最後に伝言を預かっておりますが」

 

天「それを早く言いなさいよ!!」

 

衣玖「お約束というやつです」

 

天「・・・意味わからん」

 

 

衣玖が何の空気を読んで黙っていたのか分からないが、兎に角内容が気になる。

 

 

天「いいわ、さっさと聞かせて」

 

 

どうせ碌でもない伝言なのだろうが。

鼻から期待などしていない。

私は・・・嫌われ者だ。

しかし、衣玖の預かった伝言を聞いた瞬間、心の底から熱いものがこみ上げてきた。

 

 

衣玖「今度は地上に遊びに来い・・・とのことです」

 

天「えっ・・・私に?」

 

衣玖「はい、確か・・・博麗響華様がそう伝えろと」

 

 

驚いた。

こんなことがかつてあっただろうか。

比那名居家は地上人からの出で、その家柄から他の天人達から蔑まれてきた。

今は天子の父が総領となった為、多少は周りからの評価も良くなったものの、未だに父が総領となったことを認めない者がおり、幾多の嫌がらせを受けてきた。

父のせいではない、比那名居家そのものが嫌悪される家系なのだ。

響華は地上人だからそんな事は関係ないのだろうが、それでも。

 

 

天「私なんかに・・・そんな事を」

 

衣玖「昨日の敵は今日の友、という言葉が地上にはあるそうです。

まさしくそれなのではないでしょうか?」

 

天「こんな奴らがいるんだったら私、異変なんて起こさなくたって友達出来たじゃない。

ホント・・・くっだらないわね、私って」

 

 

ポタ・・・ポタ・・・・

 

 

天「ほら・・・涙が止まらないじゃないの!

ウグッ・・・ウゥぅ・・・」

 

 

大粒の涙が掛布団の上にポロポロと落ち、顔をくしゃくしゃにしながらむせび泣く。

衣玖はそれをそっと抱きしめて、優しく撫でてあげた。

天子が生まれてから使用人として片時も離れずにそばに居た衣玖は、彼女にとって母のような存在であり、その胸の中が一番落ち着く。

衣玖は天子が疲れて泣き止むまで、頭を撫で続けた。

母のぬくもりを与えながら。

 

 

 

 

しかし、その後しっかりと罰は執行され、天子は二度目の涙を流す羽目となった。

 

 

 

東方緋想天 完

 




戦闘も楽しいけど日常のドタバタも好きな俺は欲張りな男。
次回また会いましょう。


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97話

最近ネタギレがヤバイんです。


~ミスティアの屋台~

 

 

霊「いや~、あんた等と飲むのも何時ぶりかしらね~」

 

文「でも珍しいんじゃないですか?

この面子で集まった事ってありましたっけ?」

 

咲「私と霊夢は一応つながり的に一緒になる事が多いけどね」

 

 

人里離れた森の中、その屋台は存在した。

ミスティアのうなぎ屋、それがこの屋台の名だ。

人の目に映らない場所でひっそりと営業しているのにも関わらず、知名度はかなり高い。

しかし、この店の店主もまた、妖怪なのである。

今日は店を貸し切って女子四人水入らずで飲み会を開いていた。

 

 

ミ「仲いいよねーあなた達。

魔理沙はしょっちゅう来るけど、大体アリスと一緒なのよね」

 

魔「同じ魔法の森に棲んでるもの同士だからな、自然と仲良くなるんだよ。

最近色々あって集まれなかったからってのも理由の一つだけどな」

 

霊「あー、あの件ね」

 

文「びっくりしましたよ、新聞持っていったら神社が壊れてるんですから」

 

 

前回の異変で倒壊した神社はその後、謝罪に来た天人達が総出で建て直し、家具一式も全て取り揃えてくれた。

おかげで神社は新品同然なのだが、霊夢は前の神社への思い入れが強かったため、簡単に許す気は無いらしい。

しかし、零夜が来てから彼女もかなり角が取れ、結局は神社の耐震強度を上げさせただけで目を瞑る事となった。

結婚してからかなり落ち着いた女性へと成長しつつある霊夢を咲夜は尊敬する一方、焼酎の入った徳利を片手に魔理沙はそれに突っかかった。

 

 

咲「それでも霊夢、抑えて許してあげたんだからすごいと思うわ」

 

魔「今までの霊夢だったら絶対奴隷とかにしてるだろうけどな」

 

霊「失礼ね、流石にそんな事しないわよ。

まぁ、少しの間こき使うかもしれないけど」

 

文「霊夢さんの今までの行いを見てるととてもその程度で済まなさそうなんですよね~」

 

霊「私って普段どんなイメージ持たれてるのよ」

 

魔「鬼巫女」

 

咲「めんどくさがり」

 

文「妖怪バスター」

 

霊「碌なイメージ持ってないじゃない!

あと魔理沙、あんたは後で面貸しなさい」

 

魔「お~、怖い怖い」

 

 

酒を飲みながら他愛もない話で盛り上がり、四人は徐々に酔っていった。

そして、五時間が経過した頃だ。

あの出来事の切っ掛けとなった話が浮上したのは・・・。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

霊「だぁーかぁーらぁーっ、幻想郷で一番強いのは零夜だって言ってるでしょ~!?

リュウトだって零夜の子孫なのよぉ?」

 

咲「違いますぅーっ!

リュウトさんの方が強くてかっこいいですぅーっ!」

 

霊「何よぉ~!」

 

咲「何ですかぁ~!」

 

 

酔いが回った霊夢と咲夜は、零夜かリュウト、どちらが強いかで討論を繰り広げていた。

どういった経緯で話が進んでいったのか分からないが、冷静さを失った二人の張り合いが次第にエスカレートしてしまったようだ。

両者睨み合いながら、その間には激しい火花が散っていた。

しかし、酔いが回っているのは二人だけではない。

最初に話に突っかかったのは文だった。

 

 

文「お二人とも勝手に話を進めてもらっては困りますねぇ~。

いくらリュウトさんや零夜さんでも速さで私に勝つことは出来ないんですからぁ」

 

霊「なぁんですってぇ!?」

 

咲「聞き捨てなりませんわ!!」

 

魔「おいおい幻想郷最速はこの私だろぉ!?

勝手に一番を名乗るんじゃねー!」

 

霊「あんたこと勝手な事言わないで!」

 

ミ「あ~あ、酒が回ったから喧嘩始めちゃった」

 

 

いがみ合う四人。

それを見かねた店主のミスティアは、とある提案をした。

 

 

ミ「じゃあさ、誰が一番速いのか競争すればいいじゃない?

どうせやるんだったらもっと大勢集めてさ」

 

 

ミスティアの提案に四人は一時的に思考が固まり・・・。

 

 

四人「「「「それだぁー!」」」」

 

 

全員が同意し、これにより第一回幻想郷最速王者決定戦が行われる事となる。

 

 

 

 

 

 




うちの男達は速さが売りのパワーアップをするんで一回こういう事をやりたかったんですよね!
幻想郷最速は一体誰なんでしょうねぇ?


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98話※

久方ぶりに挿し絵ありの話です!
そしてこの話はとある伏線を張るためのものでもあります。
まぁそれは先の話ということで


~人里~

 

 

人里の中央を一直線に伸びる大きな商店街が広がる大通り。

様々な店が連なり、連日人々で賑わう、人里でも最も人が集まる場所。

今日も多くの人が行き交っているが、いつもと雰囲気がまた違う。

連なる店以外にも屋台が立ち並び、特設の巨大な展望デッキが設けられている。

正面には巨大なスクリーンまで用意されていた。

完全にお祭りムードだが、このシーズン、昨年まではこんな行事は行われていなかった。

今年、急遽決まった大きなイベントなのだ。

事の発端は、一週間前の文々丸新聞に掲載された一つの記事だ。

 

 

{幻想郷最速を決定する為、一週間後にレースを行う。

挑戦者求む。}

 

 

その記事は、たちまち幻想郷の実力者達の耳に入る。

レースには、幻想郷でもスピードに自信のある者たちが集ってエントリーすることとなった。

現在、エントリーしたメンバーが開始までの間、休憩所で待機している最中だ。

因みに言い出しっぺでもある霊夢と咲夜は出ていない。

文や魔理沙にはスピードでは完全に劣っているから勝負にならないのだ。

しかし、このまま二人の勝負を外から指をくわえて見ているというのは癪に障るので、彼女らは同時に刺客を送り込んでいた。

 

 

_______________

 

 

零「で?お前もあの娘に言われて出場する羽目になったのか」

 

リ「咲夜から話があると言われた時から何となく予感はしていた。

が、まさかおじいちゃんもいるとは思わなかったけどな」

 

 

あ、という声を出して鉢合わせた二人は、何故こんな所に居るのかと同時に尋ねた。

しかし、そんなことは聞くまでもなく、二人とも無理矢理参加させられたのだ。

しかもその時言われた言葉は・・・。

 

 

霊{文と魔理沙と咲夜には絶対負けないで!!}

 

咲{文と魔理沙と霊夢には絶対負けないでください!}

 

 

これは間違いなくこの前の飲み会で何かあったな。

そう二人は確信した。

でなければ仲の良い者同士でこんなにいがみ合わないだろう。

そして現在に至るところである。

 

 

リ「今更なんだが、何でレミリアは出ないんだ?

フランは出るんだろう?

吸血鬼なんだし速さ勝負なら天狗にだって負けそうにないんだが?」

 

 

大きなテントの下に置かれたベンチに座りながら靴を履きなおすリュウトはレミリアに問う。

一方のレミリアは美鈴に持って来させたのであろう、玉座に座りながら答えた。

 

 

レミ「私はこういう見世物みたいにされるものに出たいなんて思わないわ。

高貴な吸血鬼が見世物だなんて屈辱以外の何ものでもないわ」

 

零「その割にはフランドールは出るみたいだぞ?」

 

 

ほら、と零夜が指を差す先には楽しそうにストレッチをしているフランの姿があった。

屈伸と震脚を繰り返しながら足の筋肉をほぐしているようだが、結局飛ぶのだから必要かどうかわからない。

と、こちらの視線に気が付いたフランドールは小走りで姉の元へとやってきた。

 

 

フ「お姉ちゃん!

こんな公の場で本気出せるなんて最高じゃん!

しかも優勝したら景品が出るらしいよ!」

 

レミ「え?景品??

そんなのが出るの?」

 

フ「みたいだよ?

新聞には載ってなかったけど」

 

レミ「で?景品って何が出るの?」

 

フ「それがわかんないんだよね~。

何も書かれてなくって、ただ優勝したら何かがもらえるってだけみたい」

 

 

景品自体にはさほど興味を示さないフラン。

レースに出ることが目的なので、それ以外は楽しめればそれでいいのだ。

二人が景品の話をする中、それよりもリュウトは違うことが気になっていた。

 

 

リ「なぁ、朝見てから一回も咲夜と会ってないんだが。

何時もならレミリアのそばについてるだろう?

美鈴もいないじゃないか、どうしたんだ?」

 

零「お前たちいつも一緒なのに珍しいな、何かあの子を怒らせるような事したんじゃないのか?」

 

リ「断じてないっ!!」

 

 

今日の朝、パチュリーと小悪魔を図書館に置いて会場へ向かったはずなのだが、その際から咲夜の姿が見えなかった。

あの時はレミリアから先に行ったと言われたが、一向に姿を現さない。

それが気になって仕方がないのだ。

正直に言うと、寂しい。

 

 

レミ「あっららぁ~?

もしかしてリュウト、会えなくて寂しいのかしら~?」

 

リ「ウグッ!ち、違う!

ただ姿が見えないから気になっただけだ!」

 

レミ「まったまたぁ、そんなこと言って見栄張ってさ。

大丈夫だって、そろそろ来るはずだから」

 

 

そろそろ来る?

何故に別行動をとったのか分からないが、そのまま少しじっとしていると、後ろから美鈴と咲夜の会話が聞こえてきた。

振り返ると、咲夜は美鈴の後ろ影に入るように隠れていた。

 

 

リ「咲夜、今まで何処に居たんだ?

それに・・・何で隠れてる?」

 

美「実はリュウトさんにサプライズなんです。

ほら咲夜さん、隠れていたら折角の準備が台無しですよ?」

 

咲「わ、わかってるけどこの格好・・・恥ずかしいんだから仕方ないじゃない////」

 

 

恥ずかしがりながら中々前に出てこない咲夜。

その姿が少し見えてしまった零夜は、空気を読んでこの場から離れる事にした。

 

 

零「ほほう、これは邪魔しては悪いな。

咲夜さん、がんばれよ」

 

咲「うぅ・・・」

 

 

零夜に見られてしまい、益々赤面してしまう。

何時までもうじうじしているので、焦れったくなった美鈴はそこで強行手段に出た。

 

 

美「はぁ、仕方無いですね。

なら私が前に出してあげますよ!」

 

咲「きゃ!」

 

リ「こ・・・これは!!」

 

 

目の前に現れた咲夜は、なんとレースクイーンのセクシー姿だった。

豊満なバストと透き通るような美しい太腿を誇張する薄緑を基調としたセパレート。

これは少々刺激が強すぎる。

 

 

リ「咲夜、その恰好は一体・・・?」

 

咲「あの、えっと・・・。

リュウトさんを応援したくて、何が一番いいかと自分なりに考えてみたのですが・・・」

 

レミ「似合ってるじゃない?

張り切ってたものね~、これでリュウトさんを応援するんだ!って」

 

咲「////////」

 

 

顔を真っ赤にした咲夜は言葉も出なくなってしまう。

なんというか、エロかわいい。

俺に内緒でそんな事を言っていたなんて、今すごく幸せだ。

そして、羞恥心を圧し殺した結果出てきた言葉は・・・。

 

 

咲「お、応援してるので、頑張ってくださいね!」

 

 

その刹那、リュウトの中で何かが割れた。

 

 

リ「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

気合の咆哮は天を貫き、溢れ出る霊力は底なしのように止まらない。

こんなリュウトを咲夜は今まで見たことが無かった。

霊気が強力過ぎてまるで炎を纏っているかのようなその姿を咲夜は唖然としながら見ていた。

 

 

咲「・・・・・」

 

美「ま、まぁ何はともあれ喜んでくれたみたいでよかったじゃないですか!」

 

咲「思っていたような反応ではなかったけどね・・・」

 

魔「うっへぇ~、気合入ってんなぁリュウトのやつ。

てかお前のその恰好何なんだ?」

 

咲「リュウトさんを応援する為の衣装よ。

外の世界ではレースの時は女の人がこういう格好をするらしいわよ。

魔理沙もう出場手続き終わったのね」

 

 

箒を担ぎながらにししと笑う魔理沙。

今回のレースに出場する優勝候補の一人だ

あの飲み会の後、念入りに準備をしていたらしく、霖之助に頼んで軽量の服を新調してもらってからレースに出場した。

基本ベースの魔女衣装は変わらないが、フリル部分やロングスカートなどの余分な部分を取り除き、全体的にすっきりしたスタイルとなっている。

 

 

フ「魔理沙何その服!

すっごいかわいい!」

 

魔「だろ~?

コーリンに頼んだら即行で作ってくれたんだ!」

 

 

フランのかわいいの一言が嬉しかったのか、くるりと一回転して新調した衣装を見せてくれた。

しかし、服を作ってもらうならアリスでもよかったのでは?

そう咲夜が質問すると、魔理沙は直ぐに答えてくれた。

どうやらその疑問は魔理沙の過去に答えがあったようだ。

 

 

咲「何でアリスでなくて霖之助さんに頼んだの?」

 

魔「今持ってる私の服は全部コーリンが作ったものなんだ。

採寸しなくてもサイズぴったりに作ってくれるし、マジックアイテム的な機能も付いてて結構重宝してるんだ。

いつも着てる法衣だって魔法でダメージを和らげてくれてるんだ。」

 

咲「へぇ~、霖之助さんってかなり起用なのね」

 

魔「でも店は全然繁盛してないんだぜ。

宝の持ち腐れってやつだな」

 

レミ「・・・何だかあの店主の趣味が若干混ざってるような気がしてならないのは私だけかしら?」

 

 

服を作ってもらっておきながら散々な言いぐさな魔理沙。

しかし、それに対して反論できないほど彼女の言う通りなので咲夜は何も言えなかった。

 

___________________________________________

 

 

開始時間が迫り、出場者は全員スタート位置につく。

そこで、司会者からエントリーナンバーの読み上げが始まった。

因みに、司会は犬走椛が勤めている。

何故かというと、本来務めるはずの人物が今回は不在な為だ。

尤も、不在と言ってもこの場に居ないわけではないのだが。

 

 

椛「大会出場メンバーを紹介します」

 

 

一列に並んだ出場者たち。

その並び順に、椛は補足と付け合わせて紹介する。

 

 

 

椛「エントリーナンバー1、優勝候補筆頭、博麗神社神主の博麗零夜。

 

エントリーナンバー2、同じくこちらも優勝候補と名高い博麗リュウト。

 

エントリーナンバー3、始祖吸血鬼である能力未知数の新星、フランドール・スカーレット。

 

エントリーナンバー4、言わずと知れた白黒スピードスター、霧雨魔理沙。

 

エントリーナンバー5、自称幻想郷最速の新聞記者、射命丸文。

 

エントリーナンバー6、白玉楼庭師兼従者の辻斬り侍、魂魄妖夢。

以上の六名がエントリーメンバーです」

 

妖「ちょっと最後の説明おかしくないですか!?」

 

リ「妖夢もいたんだな、知らなかった」

 

妖「最近家計が苦しいものですから。

レースに勝って賞品を売ってお金にしようと・・・」

 

 

そう言ってため息を履く妖夢。

十中八九原因は幽々子だろう。

彼女に休暇の二文字はないのだろうか、そう考えてしまう。

というか、彼女は優勝賞品が何か知っているのか?」

 

 

妖「え?優勝賞品って超歴史的価値の高い聖書なんですよね?

話では数億円の価値があるとかって聞きましたよ?」

 

リ「そんなお宝が賞品なのか!?

しかしなんでまたそんなものが?」

 

妖「さぁ?私も詳しくは知りませんが・・・。

どうやら鈴奈庵という貸本屋の店主が持っていたそうなんですが、その人も最近蔵の中でそれを発見したらしく、一体何時からあるのか良くわからないから文さんにあげちゃったらしいんです。

それで文さんが色々調べた結果、それが外の世界で魔法がまだ使われていた時代に存在した聖書だと」

 

リ「へぇ~、そんな大昔のものが未だに存在していたんだな」

 

文「あやや~、椛のやつ、完全にスルーされてますね~」

 

 

完全に椛の話を無視して私語をする二人を他所に、彼女は咳払いをして説明を続けた。

 

 

椛「ゴッホン!!えー、今大会のルール説明を行います。

一つ目、弾幕の使用は禁止です。

二つ目、レースは基本的に飛行です。

コースが空中なので飛んでください。

三つ目、スペルカードは二枚まで使用可能とします。

邪魔な相手を妨害するもよし、スピードを上げるのに使うも良し。

使い方は自由で構いません。

それと・・・これは零夜選手とリュウト選手に限定された規定ですが。

お二方は能力の使用を禁止します」

 

リ「なぜ俺たちだけ能力を使用禁止なんだ?」

 

零「そりゃあ能力使ったら誰も勝てなくなるだろ?

その気になれば光の速さで飛べるんだ、瞬間移動でも使わない限り追い越せないからな」

 

文「というかそんなドーピングみたいなの使うなんて反則ですよ。

いっつも思いますけど、博麗の力を持ってるやつはみんな無茶苦茶ですよね」

 

零「俺は神なんだが?」

 

文「貴方は論外です!!

しかし、能力が使えないあなた方なら私に勝算が回ってきたというもの。

優勝はこの私が頂いたぁ!!」

 

椛「もうっ!!!

私の話を最後まで聞きなさぁ~い!!!

司会権限で失格にしますよ!?」

 

 

またもや話を中断させられた椛の堪忍袋が切れ、三人はこれ以降完全に大人しくなった。

普段怒らない者が唐突にキレると恐ろしいものだ。

スタート時間が圧しているのもあってカリカリしている椛は、時間が無い為レース開始を急いだ。

 

 

椛「最初から大人しくしていればいいんです!

さっさと始めますよ!

カウントダウン、3・2・1・スタート!!」

 

 

椛の合図とともにスタートラインに取り付けられた信号が青く光る。

と同時に、六人全員の影はいつの間にか空の彼方へと消えていった・・・。

 

 

 

 

 




是非この回を閲覧するときはユーチューブでTsquareのtruthを検索してくださいね!


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99話

久方ぶりの登場で何かやらかすトラブルメーカーの登場です。


レース開始直後、スタート会場には凄まじい暴風が巻き起こった。

六人全員が一斉に最高速度で飛翔したせいで空気の流れがめちゃくちゃになったのだ。

幻想郷でも最速と謳われるもの達が集まって競い合っているのだから当然だろうが。

しかし、その様子を密かに影から見ている者も存在する・・・。

 

 

_____________________

 

 

~レース会場上空300m地点~

 

 

誰の目にもつかない遠く離れた空の上にそれは浮いていた。

六つの回転翼の付いた無人飛行機マルチコプター、所謂ドローンと呼ばれるものだ。

望遠カメラで捉えるのは、レース会場と六人の選手たち。

何故、幻想郷の空に外の世界でも殆ど普及していない最新機械が存在しているのか。

以前は鈴仙が武器として似たような物を異変時に実戦投入してきたが、形状が全く違う。

プロペラ軸が一本に二枚の回転翼が付いたものではなく、四枚の回転翼が末端に付いたそれは、素材も金属ではなくプラスチックで軽量化が図られている。

当たり前だろう、これは月の技術で作られたものではないのだから。

博麗大結界を科学の力で歪め、それを超えることを可能にしてしまった天才科学少女。

ドローンが撮影しているカメラ越しに映像を閲覧している彼女は、興味を持ってそれに熱中していた。

 

 

夢「幻想郷のスピード争いかぁ、リュウト君の本気が見られる良い機会ね。

よく見ると服装は違うけど、見覚えのある子もいるわね」

 

 

外の世界から幻想郷の様子を随時確認している科学の申し子岡崎夢美は、あの日以来リュウトの存在に心を奪われていた。

元々は興味本位で個人的に調べていた異世界の存在を明らかにする研究だったが。

が、しかし、彼女は出会ってしまったのだ。

初めて見た異世界の住人の圧倒的な力。

それは、人間の範疇を優に超えた超人の力だった。

彼女はその異質な力に魅了され、それを研究したいと願った。

リュウトは彼女にとって良い研究材料に過ぎない。

 

 

夢「彼の身体スペックの詳細を知る良い機会だわ。

ついでに他のも取っておこっと」

 

 

キーボードが映るノートパッドを滑らかにタップしていき、ドローンのコンピュータにデータ回収をさせる。

ドローンに積まれたAIに指示を出し終えた夢美は、別に置いてあるノートパソコンに手を伸ばした。

 

 

夢「だ・け・ど、今回のお目当てはそれじゃ無いのよねぇ~」

 

 

彼女は先程ドローンに撮らせた会場の画像からとある一枚を取り出した。

画面に出されたそれは、今大会の優勝商品となった聖書だ。

 

 

夢「古代文字で書かれた聖書・・・だと思うけど、でもあんな文字は見たことがない。

異世界の本のはずなのに、何故かその文字を誰も解読出来なかったのも気になるわ。

十分に調べる価値がある」

 

 

ノートパソコンに表示されたプログラムを調整し、エンターキーを押した瞬間、彼女の後ろから何かが起動する音が聞こえた。

それは、女性の形をしたヒューマノイドだった。

 

 

夢「私の可愛い子供、あなたのステルス能力を以てすればアレを持って帰ってくるくらい容易でしょ」

 

?「任務了解、マスターの意のままに」

 

 

機械仕掛けの少女の瞳に光が灯り、硬直していた身体は人間のようにしなやかに動き出す。

少女が手を翳すと、空間に異世界へ続くゲートが開く。

向かうは幻想郷。

少女の存在を知るものは、向こうには誰も居ない。

 

_____________________

 

 

~幻想郷~

 

 

もう既にスタート地点からはかなり離れ、現在六名は魔法の森の中を翔んでいた。

ルートが森の中なので、木々の間を潜りながら翔ばなければならない。

ここでは、森の中に家がある都合上、慣れている魔理沙が優位となっていた。

 

 

文「流石、毎日飛んでいるだけあってコース慣れしてますね魔理沙さん!」

 

リ「この木々が入り組んでいる空をスピードを落とさずに飛ぶことが出来るとは、侮れんな」

 

 

魔法が使えて大量の魔力を身に宿している魔理沙は、肉体的には常人と変わりなく脆い。

それは彼女が一般的な人間と殆ど大差ないという事だ。

なのにも関わらずこの速度の中を慣れと動体視力で突っ走っている。

おおよそ120キロは出ているはずなのだが。

 

 

魔「森の飛行は日ごろから慣れてるんでね、此処は引き離させてもらうぜ!!」

 

 

箒の速度はそのまま、跨った魔理沙を一位へと導いていく。

森を抜けるころには二位の文との差もかなり離れていた。

一気に突き抜けた先には広い向日葵畑がまるで黄色い絨毯のように広がっていた。

 

 

文「お?太陽の畑じゃないですか」

 

フ「わぁ、綺麗なひまわり畑…」

 

 

太陽の畑を初めて見るフランはその広大な黄色の絨毯に圧巻される。

どうやらレースコースには幻想郷の名所が所々に散りばめられているらしい。

先程までは霧の湖や妖怪の山も見えていた。

畑の中心には一軒の赤い屋根の西洋家屋が建っており、その庭では風見優香が日傘を差しながら此方を見ていた。

 

 

優「へぇ、魔理沙もやるようになったじゃない」

 

 

優香は昔の霊夢と魔理沙を知る数少ない人物。

その成長を間近で見ていたせいで人間という生き物に興味を持ち始めた。

風見優香の興味を惹くほど、二人の成長スピードが異常だったのだ。

特に霧雨魔理沙は優香の最強伝説を築き上げた技でもある{マスタースパーク}を完璧なまでに習得している。

風見幽香本人が彼女の才能を見込んで継承したのだ。

言わば、優香は魔理沙の師匠のような存在なのだ。

が、魔理沙にはもう一人の師匠が居る。

その人物は優香の旧友なのだが・・・。

今は明かす時ではない。

 

 

優「あの小娘がこうも成長したか・・・。

流石は魅魔の弟子なだけはあるわね。

でも、今回のレースは強者ぞろい、純粋な人間である魔理沙には不利な戦いになりそうね」

 

 

優香の言う通り、既に魔理沙は後続の者達との距離を詰められつつあった。

身体的にオーバースペックなリュウトや文などと比べると、膨大な魔力だけが持ち味な彼女はポテンシャルが劣っている部分が露呈してしまうのだ。

 

 

魔「もうこんなに追いつかれたのか!?

予定よりもずいぶん早いじゃないか!

もう少し行けると思ったんだがなぁ・・・」

 

 

森を抜けてからも巡行速度を維持していた魔理沙だったが、自分が予想していたよりも早く文達が追い付いてきてしまった。

速度を上げることは出来るが、今それをしてしまうと今後の戦いでいずれにしても不利になる。

不測の事態に備えて今は魔力の無駄な消費を抑える方が先決だ。

恐らく一番に追い越すのは文かリュウト、零夜のいずれかだろう、そう考えていた。

しかし、このレースにはブラックホースが紛れ込んでいた。

 

 

文「な、何ですって!?」

 

魔「ん?何だ?」

 

 

後ろから文の驚きの声が上がる。

それに反応した魔理沙が後ろを振りかえると、何かが不意に目の前を横切った。

一瞬のうちに横切った影は、鮮やかな七色の羽を背負った少女だった。

 

 

魔「フランか!?

あいつめ、此処に来て本気を出してきやがったな!!」

 

フ「忘れてた?私、これでも始祖吸血鬼の末裔なんだよ?」

 

 

余裕の表情でフランは徐々に一位だった魔理沙との距離を離していく。

しかし、ゴールの目前に迫ろうとしたした時、レースは一時中断された。




最後に言っておこう。
レースをすると言ったな、あれは嘘だ。


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100話

もはやレースから脱線します。
そろそろ話を本題に戻さなければ!!


それは、唐突な出来事だった。

 

 

紫「レースは一時中断!

一時中断にするわ!!」

 

 

突如リュウト達の前に現れた八雲紫により、レースは無理矢理中案させられる。

この事態に燃え滾った魂の炎を不完全燃焼させられた者達が猛抗議した。

 

 

文「なぜ止めるのです!?

あともう少しで私が勝利を掴もうというところで!」

 

フ「そうだよ!

もうちょっとでゴールする処だったのにぃ!」

 

魔「いいところで邪魔しやがって、どういうつもりだよ!」

 

 

紫を囲んで批判する魔理沙、文、フランドール。

しかし、声を荒げる紫の気迫で全員が黙り込んだ。

 

 

紫「うるさいからいったん黙りなさいっ!緊急事態が起こったのよ!」

 

 

どうも紫の動揺が気になった零夜は、何があったのかを訊ねる。

その場にいたリュウトも何か拙い空気を察していた。

 

 

零「一体何があったんだ?

紫ともあろうものがらしくないぞ」

 

紫「そりゃ慌てるわよ!

説明は後、良いから早く来なさい!」

 

リ「まさかとは思うが、会場で何かあったのか?」

 

紫「正しくその通りよ、話が早くて助かるわ。

一気に会場まで送るから早く中へ入りなさい」

 

 

言われるがままに全員がスキマの中へ入る。

空間を出た先は最初のスタート地点だった。

霊夢達は既にその場に集められていたが、彼女達も何が何だかさっぱりといった状態だ。

会場を見渡しても、スタート時と比べて特に変わった様子はない。

 

 

リ「・・・何も変わった様子は無さそうなんだが?」

 

咲「何故ここに集められたのか未だに説明されていないのですが・・・?」

 

レミ「レースを途中で切り上げなきゃいけないほどの問題って。

また隕石が落ちてくるとかそんな感じなわけ?」

 

紫「会場が襲われたわけじゃないわ。

優勝商品の聖書が何者かに奪われたのよ」

 

魔「なんだよ、あれってそんなに価値の或る物なのか?」

 

 

優勝商品が盗まれたことは確かに大事だが、紫がそんなに慌てる意味が解らなかった。

レースに参加していない彼女には全く関係の無い話のはずだが?

 

 

紫「価値の問題じゃないわ、あの聖書の正体が問題なのよ」

 

妖「あの本の正体が何か拙い物なんですか?」

 

 

売れば高値が付くものとしか認識していなかった妖夢は、呑気な声で紫に問う。

彼女は聖書とは無縁の生活を送ってきたのだから、その使用用途も良く知らないのだろうが。

しかし、そもそもあれは聖書ではないと紫は言う。

その言葉がさらに全員の考えにさらなる疑問を生ませた。

 

 

妖「聖書じゃないって、ならあれは一体何だったのですか?」

 

文「妖魔本の類でもないし、人間が書いたものではないんですか?」

 

霊「別に何かヤバいにおいがするわけでもなかったけど?

私はあれを見ても何も感じなかったわ」

 

紫「何も感じないのはある意味正解なのかもね。

あれは妖魔本でもなければ魔導書でもないわ。

あれの正体を一番よく知っているのはリュウトかもしれないわね」

 

リ「・・・おい、まさか本の中に魔法陣のようなものが書いてなかっただろうな」

 

 

紫はそっと頷く。

刹那、リュウトの顔は一気に深刻な趣を醸し始めた。

 

 

リ「なるほど、レースを中断してまで招集を掛けるわけだ。

もし、あの本の内容を解読出来る奴の手に渡っていたら・・・」

 

魔「もったいぶらずに教えろよ、何か分かったんだろう?」

 

咲「リュウトさん、あれは一体何だったのですか?」

 

リ「あぁ、これで分かったぞ、あの本の正体が」

 

 

重たい口を開け、リュウトは話し出す。

あの本は彼にとって、悪魔よりも恐ろしい存在だった。

 

 

リ「あの本は召喚陣が書かれた書物だ。

それも、俺たちの世界を滅ぼした忌々しい神々を呼び出す為のな」

 

美「神様を呼び出す召喚陣が書かれているってことは、それに載っている陣を書けば神様を呼び出すことが出来るって事ですよね・・・」

 

霊「でもそれって読めない文字で書かれてるんでしょ?

なら仮に手に入れても大丈夫なんじゃない?

召喚陣だけ書いても発動するわけないんだし」

 

零「それは解読できない奴が奪っていた場合だ。

もし、あの書物の使い方を知っていて、尚且つそれを実行できる人間の手に渡っていたら・・・」

 

 

零夜の読みが当たった場合、今の地球の実情を知った途端に世界を滅ぼそうとするだろう。

科学を進歩させ、同類同士で殺し合いを続ける人類を、とても生かしておくとは思えない。

現に150年後の未来では、それが原因で地球をリセットさせられている。

 

 

フ「神の召喚の為に奪われたって決まったわけじゃないんじゃない?

ただ単に転売目的だったとか、コレクションの為とか、例を出せば色々あるんだから」

 

レミ「あれを奪ったやつは左程門じゃないわ。

要は、あの本が存在する事自体が拙い事なのよ」

 

霊「それで、今から私達に犯人捜しを手伝えと?」

 

 

当然だろう、と、霊夢は考えていたが、紫はそれを望んでいないようだ。

いや、手伝うのは不可能と言えるだろう。

 

 

紫「犯人捜しは必要無いわ、幻想郷に居ないんだもの。

本を奪ったのは外の世界の住人よ」

 

魔「なら話は早いぜ、そいつをとっちめればいい」

 

紫「それは無理よ。

こちらに来た形跡は辿ることが出来るけど、何処から来たのか、何処へ向かったのかは結界を超えられると探知できないの。私の能力はそんなに便利なものじゃないのよ」

 

文「でもそれって言い換えれば、意図的に結界に穴を開けられる人物の犯行って事になりませんか?」

 

リ「意図的に結界に穴を開けられる・・・?」

 

 

この言葉が彼の中でどうにも引っかかった。

外界の人物で、博麗大結界への干渉が出来る人物。

 

 

咲「リュウトさん、それってもしかしてあの方では?」

 

リ「あぁ居たぞ、一人だけ心当たりがな」

 

零「っ!岡崎夢美か」

 

リ「その通りだ、あいつは博麗大結界に干渉するための機械を研究中だと言っていたからな。

それが完成したのかもしれない」

 

 

そのゲートを完成させたという事は、これから頻度に結界へ干渉してくる可能性が高いという事。

早期にその装置の所在を特定して破壊しなければならないだろう。

 

 

リ「岡崎夢美が何処に居るかは分からないのか?」

 

紫「彼女、最近はメディアに姿を現していないのよ。

潜伏して独自の研究を続けていると思われるわ」

 

霊「八方塞がりね、これじゃあ次に行動を始めたときに捕まえるしかないじゃない」

 

紫「今のところは警戒態勢という事にしておきます。

でも、私は独自で外の世界の調査をするわ。

もしかしたら岡崎夢美以外に犯人がいるかもしれないし。

あなた達にはその間、何かあった時に幻想郷の事を頼みたいの」

 

 

それは、万が一の事態が起きた場合に自分が居ない事を想定しておけという事だ。

そしてその翌日から、紫はぱったりと皆に顔を見せ無くなった。

 




近々挿絵を描いてもらう予定なのですが、どんな挿絵を書いてもらうか未定なので作業が進みませぬ…。
アリスが活躍する話と咲夜が活躍する話を描きたくて仕方が無い。


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地霊殿101話

最近、咲夜とも絡みが少ないような気がしたから今回はイチャイチャさせまっす!


~紅魔館~

 

 

リ「なぁ咲夜」

 

咲「はい?なんでしょうか?」

 

 

咲夜が館の窓掃除をしていると、ふとリュウトに声を掛けられた。

 

 

リ「・・・いや、なんでもないんだ、呼び止めてすまない」

 

咲「はぁ・・・?」

 

 

そう言うと彼は歩き出し、長い廊下の先にある扉を開けて彼女の前から消えた。

最近の彼はいつもこんな感じだ。

あれからおよそ一週間が経ち、紫も一切顔を出さなくなってしまった。

それからというもの、彼は魂が抜け落ちたように身が入らず、何処か物悲しい雰囲気を身に纏うようになった。

 

 

咲「リュウトさん・・・」

 

 

どうにかしてあげたいとは思うものの、一体何をすればいいのか分からない。

咲夜はこれを、館の中で一番仲の良い人物に相談してみることにした。

 

 

_____________________

 

 

~紅魔館正門~

 

 

美「リュウトさんを元気づけたい・・・ですか?」

 

咲「そうなの、ここ一週間くらい元気がなくて、でも何をしてあげればいいのか分からないのよ」

 

 

立場的にも一番話しやすく、手軽に相談できる紅美鈴に事を打ち明ける。

彼女は咲夜の相談に真剣に悩み、そもそも何が原因でリュウトがそうなっているのかを考える必要があると言った。

 

 

美「おそらくリュウトさんの元気が無いのは、彼の過去が関連していると思います。

例の本の正体は、リュウトさんの未来を滅茶苦茶にした神を召喚する為の物でしたよね?

リュウトさんはまた、その未来が繰り返されるんじゃないかと考えているんだと思いますよ」

 

咲「そういえば昔、リュウトさんが自分の過去を打ち明けた時に言っていたような気がするわ。

この時代に本来存在しない人間がいるって事は、世界を歪ませているのと同じだって。

リュウトさんが大きな行動を起こすと、本来は絶対に起きない事が突然起こったりするって」

 

 

俗に言うタイムパラドックスというやつだ。

未来は複数の道に枝分かれしていて、人間はそれを選択することで日常を生きている。

しかし、その選択した枝を無理矢理歪ませるようなことをすると、存在しない第二のルートである歴史的矛盾が発生してしまうのだ。

 

 

美「詳しい話はよく分かりませんが、そういう事なら慰めてあげるのが一番良いかも知れないですね」

 

咲「慰める・・・か。

よしよししてあげるって事??」

 

美「う、う~ん?近いですけど何だか遠いような気がします・・・・」

 

 

あまりに極端な咲夜の想像に美鈴は反応に困ってしまう。

しかし、考え方としては間違っていないような気がする。

 

 

咲「そうね・・・そうよね。

こういう時は私がリードしてあげなきゃ!

歳は同じだけど生まれた年は私の方がずっとお姉さんなんだから!」

 

美「あははは・・・まぁアドバイス出来ていたんならそれでいいです」

 

 

謎の気合が入った咲夜を横目に、美鈴は苦笑いする。

かくして、十六夜咲夜によるリュウト慰め作戦は開始された。

 

 

_____________________

 

 

リ「・・・・・」

 

 

思えば、全ての切欠は自分だった。

八雲紫に過去へ飛ばされてから、出来るだけ目立つ行動をしないよう、世界に干渉しないよう心掛けてきた。

しかし、結果はそれとは程遠く、今まさに最悪の事態を招こうとしている。

部屋の窓から空を見上げると、すっかり夜は更けて天辺に満月が浮かんでいた。

世界が滅んでも空だけは汚れることなく真っ青なのだろう。

そんな当たり前がもうすぐ壊される。

 

 

リ「俺は・・・俺にはどうすることも出来ない・・・」

 

 

いくら抗おうと勝てない絶対的な強さ、いや、世界の理さえも捻じ曲げかねない存在。

150年後の出来事が今、起ころうとしているのだ。

自分の無力さを痛感させられたリュウトは、あれ以来幾多の強敵と戦ってきた。

それでも奴には勝てる気がしない。

奴が来なくとも、神は強豪揃いのバケモノのような強さを持った者達ばかりだ。

一人ではとても太刀打ち出来ない。

しかし、幻想郷の皆を巻き込むような事は絶対にしたくない。

もし、咲夜やレミリア、フランやパチュリー、美鈴が戦ったら・・・。

 

 

リ「皆絶対に殺されてしまう、あの時のように・・・」

 

 

目の前で無残に死んでいった仲間達。

レミリアは、ボロボロになりながらも最後にはリュウトを庇って死んだ。

今思い出しても吐き気がこみ上げてくる程だ。

もうあんな思いをしたくはない。

 

 

リ「俺はどうすれば、どうすればいいんだ・・・」

 

 

コンッコンッ

 

 

不意にドアがノックされ、扉越しに咲夜の声が聞こえていた。

 

 

咲「リュウトさん、お時間宜しいですか?」

 

 

優しく包み込むような声で問いかける彼女に、リュウトも答えた。

 

 

リ「いいぞ、入ってくれ」

 

咲「・・・夜分遅くに失礼致します」

 

 

彼女は静かにドアを開けると、部屋のベッドに腰かけて自分の膝をポンポンと叩いた。

 

 

リ「なんだ?どうしたんだ?

 

咲「リュウトさん、膝枕をしてあげますわ!」

 

リ「・・・・は?」

 

 

あまりに突然の事なので彼も何を言っていいのやら、頭の中が真っ白になった。

それもそうだろう、何時もはそのような事を言い出すような人間ではないのに、今日は一体どうしたというのだろうか。

 

 

リ「咲夜?いきなりどうしたんだ?」

 

咲「どうもこうもありませんわ!

リュウトさんを元気つけるのが私の役目なんですもの!」

 

リ「い、いや俺は別に・・・」

 

咲「良いから此方へいらっしゃってください!」

 

 

この迄は引きずってでも無理矢理させられそうなので、大人しくお縄に付くことにする。

 

 

リ「で・・・では失礼する」

 

咲「えぇ、どうぞ」

 

 

丈の短めなスカートから覗かせるきめ細やかで白い素肌。

それが目の前にいざ近づくと、心臓の鼓動が早まり、思わず生唾を飲んでしまう。

簡潔に言うと・・・・エロいのだ。

ゆっくりと太腿に頭を下すと、何とも言えない気分に陥った。

 

 

リ「おお・・・不思議な気分だ」

 

 

先程まで考えていた事がいつの間にか頭の中から消え、母の温もりのような感覚が体を優しく包み込んでくれている。

とても気分が良く、強張っていた身体は直ぐに楽になった。

 

 

咲「最近、リュウトさんの様子が変でしたので、何かあったのかと思いまして・・・。

あの、もし宜しければ気分を害さない程度に理由をお聞かせ願いたいのですが?」

 

リ「俺の様子が変だった?」

 

咲「はい、私の名前を呼んでは躊躇って話すのを止めたり、あまり元気も無さそうでしたし」

 

 

彼女はリュウトの様子の変化を間近で見てきた。

だからこそ心配しているのだ。

 

 

リ「・・・君は本当に優しいな、そういうところがつい甘えたくなってしまう」

 

咲「どんどん甘えてくださいまし、私はお姉さんですから」

 

リ「それ、俺がパチュリーの実験で小さくなった時の事か?

あれは事故だからノーカウントだ」

 

咲「あの時は可愛らしかったですわね」

 

リ「やめてくれ、ちょっとしたトラウマなんだ」

 

 

そんな冗談も交え、二人は共に笑いあう。

和やかな空間がそこにはあった。

彼に心に潜む悲しい過去もその時だけは忘れられそうだった。

しかし、彼は敢えてすべてを話すことを決意する。

 

 

リ「・・・俺は未来の世界で、幻想郷の皆が無残な姿で死んでいくのを見てきた。

神の力は圧倒的で、とても敵うような相手じゃなかった。

俺が100人居ても絶対に勝てない、そんな相手でも皆は必死に戦ったんだよ」

 

咲「その中に、私の知っている方もいたのですか?」

 

リ「パチュリーも、美鈴も、フランも、レミリアも・・・皆死んだんだ。

でも君は違う、あの場にはいなかった。

だから君が死ぬところなんて見たくない・・・守ってやれない。

俺は非力だから・・・」

 

 

彼の心底に眠る言葉を聞いた咲夜は、リュウトをそっと抱きしめた。

 

 

咲「私は何処にもいきません、貴方を置いて去りは致しません。

私は、貴方を愛すると決めたのですから。

それに、私の目に映るリュウトさんは何時だって誰にも負けないくらいカッコいいですから!」

 

リ「!」

 

 

頬を染めながら、咲夜は精一杯の表現で彼へ想いを告げる。

リュウトの目からは自然に涙が流れ出ていた。

 

 

咲「辛かったでしょうに、その苦しみを分かち合えたらどれだけ良いことでしょう。

ずっと私達の知らないところで苦しんでいたんですね」

 

 

今だけは、せめて今この瞬間だけでも彼を世界の呪縛から開放してあげよう。

それが出来るのは私だけなのだから。

 

 

to be continue・・・




因みに作者は膝枕しながら耳掃除してもらうのが夢です。
さて次回はどんな話にしようかな〜?


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地霊殿102話

そろそろ挿絵を描こうかなぁ〜とか考えてみたり


~紅魔館~

 

 

レースが中止となった後も、何時もと変わらず時は進み続ける。

午後の晴れ空が照る中、レミリアは午後のティータイムをバルコニーで嗜んでいた。

しかし、今日はレミリアの他に客としてリュウトが同席している。

どうやら話があるそうで、彼がティータイムに顔を出すのも珍しいので、ぜひ一緒にとレミリアが誘って今の状況に至る。

 

 

レミ「それで話っていうのは何なのかしら?

あ、もしかして咲夜の事?」

 

リ「いや、そういった件では無くだな、自分を鍛えなおす旅に出るから暫く館から離れる事にした。

だから館の事は一切出来なくなる」

 

レミ「・・・はいぃ!?」

 

 

突然の長期休暇申告に此方も戸惑ってしまう。

いや咲夜は一人でも仕事出来るが、彼女は彼の恋人だ。

咲夜はそれに同意するのだろうか?

気分を落ち着かせ、冷静になって聞いてみた。

 

 

レミ「その話は咲夜にはしたのかしら?

流石に無断で行っちゃうと後が怖いと思うわよ?」

 

リ「今回の事は咲夜には黙っておくことにした。

あの子は妙に心配しすぎるところがあるからな、無駄に気を遣わせたくない」

 

レミ「そう・・・だ、そうだけど、貴方はどう思う?」

 

リ「何?」

 

 

バルコニーの日陰から様子を伺っていた咲夜は、呼ばれると素直に姿を現す。

メイドとしての立ち振る舞いを意識してはいるものの、何処か落ち着きがないように見える。

 

 

レミ「咲夜、貴方はどうしたい?」

 

咲「わ、私には館での仕事がありますので・・・」

 

レミ「それは貴方の意志ではないでしょう?

貴方自身はどうしたいの?」

 

咲「それは、その・・・」

 

 

レミリアは微笑みながら咲夜に問いかける。

まるで咲夜の出す答えを知っているかのように。

 

 

咲「私は、リュウトさんに付いていきたいです」

 

リ「何を言うんだ咲夜!

俺の行こうとしている場所は人間の君には環境が厳しすぎる!

それに凶悪な妖怪だって多いんだ、危険すぎる!」

 

レミ「あら、それなら守ってあげればいいじゃない?

貴方は元々が強いんだから、咲夜を守りながらならハンデが付いて鍛え甲斐があるでしょ。

それに、咲夜自身も良いトレーニングになるんじゃないかしら。

最近異変解決にも行ってないし、身体が鈍ってるんじゃないの?」

 

咲「・・・私はリュウトさんに付いていきたいです」

 

レミ「うん、許可するわ♪」

 

 

満面の笑みの二つ返事で外泊許可を出すレミリア。

これにはリュウトもお手上げするしかなかった。

 

 

リ「はぁ、わかった。

咲夜が行きたいというのならもう止めない」

 

 

しかし、リュウトは咲夜に対して一つだけ忠告も含めた条件を出した。

 

 

リ「但し、道中で危険な事があっても助けられるとは限らない。

危険と感じる前に逃げるようにしてくれ」

 

咲「畏まりました」

 

レミ「館の事はどうにかするから心配は要らないわよ。

ま、精進しなさいな」

 

リ「レミリア・・・感謝する。

出発は明日だ、俺は準備の為に一足先に失礼する」

 

 

ひとしきり話が終わると、リュウトはそのままバルコニーを去り、自身の部屋へと戻っていった。

二人きりになった空間で、レミリアはリュウトの前では言えないアドバイスをした。

 

 

レミ「咲夜、下着は新しいものを用意しておくのよ」

 

咲「お嬢様の助言は破廉恥です!」

 

 

to be continue・・・




咲夜さんカワユスを皆に理解してほしいだけなんだ俺は!!
ちょっとエッチな咲夜さんも…イイね!


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地霊殿103話

いよいよ旧地獄編です!!
久しぶりに咲夜さんには大暴れしてもらいましょう!!


~旧地獄入り口~

 

 

咲「ふぁぁ・・・とても深いですわね」

 

リ「俺もここに来るのは二度目だ。

入ったこともあるが、君の想像しているよりも倍は深いと思うぞ」

 

 

地底世界への入り口である巨大な縦穴の前に降りた二人は、その日を全く受け入れない闇の深さに圧倒されていた。

直径20m程の大きさの縦穴の深さはおよそ5㎞あり、最深部まで行くと地下都市が広がっている。

今から此処を降りるわけなのだが、リュウトは咲夜に一言聞いておきたい事があった。

 

 

リ「咲夜」

 

咲「はい、何でしょうか?」

 

リ「念のために聞いておくが、本当にそのバッグを持ったまま降りるのか?」

 

 

そう、咲夜は今、利き手にキャリーバッグを持っているのだ。

しかも並大抵の大きさではなく、軽く五日程の着替えが入りそうな大きさなのだ。

因みに色は青である。

 

 

咲「え?でもお着替えが必要ではありませんか」

 

リ「あ・・・そうだな、君は女性だもんな・・・」

 

 

そもそも着替えるという発想が無かったリュウトは、咲夜の発言に度肝を抜かれた。

 

 

 

リ「よし、一気に下まで降りるぞ」

 

咲「うくっ!、すごい風ね・・・」

 

 

下から吹き上げてくる温風が咲夜を揺らす。

穴を昇ってくるまでに冷やされた熱風だ。

旧地獄跡は既に地獄としての機能を失っているものの、尚も灼熱地獄の炎は消えていないのだ。

 

 

リ「空気が温かいのは灼熱地獄跡があるからだ。

地霊殿の前に行くまでは大した暑さじゃないから安心しろ」

 

咲「左様ですか、でも今日はスポーツブラにしておいて正解でしたわね、普通のランジェリーでは汗でべたつきそうですわ」

 

 

胸の下辺りを持ち上げながら自身の今日着けているブラジャーを突然暴露する。

それを想像してしまったリュウトは顔を真っ赤にして向こうを向いてしまった

 

 

リ「そ、そんな君の下着事情を此処で暴露しなくてもいい!」

 

咲「もう、お付き合いしているのですから良いではありませんか」

 

 

先に降下していくリュウトの後を咲夜も追って漆黒の穴の中へと突入する。

視界を確保するためにリュウトが体から放っている光のおかげで、咲夜も洞窟の形状を把握出来た。

広くなったり狭くなったりを繰り返しながら重力に身を任せる事およそ1分。

目の前にはとても地下とは思えない広さの空間、そしてそれを埋め尽くすほど多くの家屋が立ち並ぶ街があった。

空は土塊に覆われて真っ暗なのにも関わらず、街の光は人里以上の輝きを放っており、それが美しく夜空のように見えた。

 

 

咲「幻想的ですわぁ~!なんて素敵なんでしょう」

 

リ「とんでもない妖気を放つやつも居るんだぞ?

少しは緊張感というものをだな」

 

咲「分かっていますわ、でも綺麗なんですもの」

 

リ「これが女の子の君と、男である俺の考えの差というやつか。

このまま下に降りるぞ、そこからは人間が一切立ち入ることを許されない世界だ」

 

 

旧地獄街の入り口には大きな橋があり、そこを渡った先は完全なる魑魅魍魎の世界となっている。

尤も、入る前からこの世界の洗礼を受ける事となるのだが。

 

 

リ「!?咲夜、避けろぉ!!」

 

咲「え?きゃあ!?」

 

 

リュウトは何かの気配を察知し、咲夜の背中を押して退避させる。

すると、一体どこから投げられたのか、二つの鎌がブーメランのように回転しながら二人の至近距離を横切った。

もしあの場に居たとしたら咲夜は鎌の存在に気付かずに真っ二つになっていただろう。

しかし咲夜の頭の中はそれどころではなかった。

 

 

咲「ああああのリュウトさん!?!?!?」

 

リ「ん?あぁすまない、今降ろす」

 

 

俗にいうお姫様抱っこを突然された彼女は頭が真っ白になり、今にも爆発していまいそうなほど頬を真っ赤に染めていた。

降ろされた後も心臓の鼓動が治まらず、いつものクールビューティーさは微塵もなかった。

だが照れている余裕などない、この攻撃は明らかに地底妖怪の仕業である。

リュウトはこの手口に若干見覚えがあった。

 

 

リ「あの鎌・・・キスメの仕業だな。

丁度良い、姿が見えない相手との戦闘シミュレーションにはもってこいの相手だ」

 

咲「なら先にお相手してよろしいですか?

久方ぶりの弾幕なので心躍っていますの」

 

 

リュウトの前に出て、右太腿のホルスターから流れるように三本のナイフを抜くと、左手に添えた懐中時計を開いた。

 

 

咲「そうですわね・・・3分、いえ、一分ほどお待ちいただけますか?」

 

リ「一分でキスメを倒すのか?それは流石の君でも無理じゃ・・・」

 

咲「ご安心ください、時間内には絶対に終わらせますわ」

 

 

三本のナイフを片手に、暗闇の中を彷徨う妖気を探す。

実を言えば咲夜は、一撃目の攻撃を自力で避けれたはずなのだ。

リュウトが咄嗟に庇ったが、彼女は能力を使用するギリギリまで回避しないので、彼が庇わなくとも時間を止めて避けられた。

 

 

咲「気配が駄々洩れでしてよ?今度襲う時はそのバレバレな居場所も隠すために妖気を消すことをお勧めいたしますわ」

 

 

一瞬で狙いを定め、ナイフを三本同時に投げ放つ。

その瞬間、スコンっ!という刃物が何かに刺さる音と共に小さく少女の悲鳴のようなのが聞こえた。

 

 

キ「きゃん!」

 

 

カランコロン・・・・

 

 

穴の底から何かが落ちる音がした、恐らくキスメだろう。

此処までで15秒切らない程度だ。

まさに秒殺とはこのことだろう。

 

 

咲「さ、行きましょうリュウトさん♪」

 

リ「恐れ入ったよ、能力も使わずに倒してしまうとはな」

 

 

地上に降りると、そこにはナイフの刺さった桶の中で気絶している緑髪ツインテールの小さな女の子が居た。

白装束が幽霊に見えなくもないが、リュウトが言うにキスメで間違いないらしい。

とりあえず、彼女が気絶しているうちに咲夜はナイフを回収した。

 

 

咲「桶に当てただけですのに・・・あまり張り合いありませんわね」

 

リ「狂暴な妖怪ではあるが、意外と臆病なのかもしれないな。

もう橋の前だ、先へ進むぞ」

 

咲「いよいよですわね、妖気の渦が気持ち悪いほど漂っていますわ」

 

リ「此処から先は完全なる妖怪の社会だ、俺も何が起こるかわからんから気をつけろ」

 

咲「心得ております、行きましょう」

 

 

目の前に現れた大きな架け橋の向こうには繁華街が大きな道を挟んで広がっている。

そこから放たれる強烈な妖気は、二人が足を踏み入れるのを拒んでいるかのようだった。

そして、その様子を密かに見ている者も、この地底には居た・・・。

 

 

to be continue...




キスメって意外と凶暴なキャラなんですよね、二次では無口ちゃんキャラだけど人の首をカッ捌いてケタケタ笑うような感じが本来らしいですよ?
ネット情報なんで本当か知りませんがね。
怖いわぁ…。


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地霊殿104話※

えー、大変お待たせしました(待ってないかもしれないけど)挿絵を描いてくれている友人のころ氏が多忙だった為遅くなってしまいました。
挿絵めちゃ上手いですよ、期待していいですからね。
では本編いってみよう。


~地霊殿~

 

 

地底の繁華街を抜けると、その全てを納めている地霊殿という巨大な屋敷が存在する。

館の主は悟り妖怪の姉妹の姉、古明地さとり(こめいじさとり)

心を読む事が出来た彼女達は人間、妖怪共に嫌われ、この地底に逃げこんだ種族。

その気味の悪い能力のおかげで皆から恐れられ、この地底全土を収められている。

恐怖でこそこの世界を統べることが出来るのだ。

しかし、それ故にここの主は孤独な存在となってしまった。

その気晴らしの為なのか、この屋敷には多数のペットが飼われている。

その中には、人間へと姿を変えられる者も少なからず存在する。

この部屋にいる地獄の燐火こと、火焔猫燐(かえんびょうりん)が良い例だ。

普段は黒い猫又なのだが、変身すればお下げの赤い髪の少女となる。

彼女は飼い主であるさとりに部屋へ呼び出されていた。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

燐「さとり様、何か御用ですか~?」

 

さ「えぇ、少しね。

近々此処に二人の客人がやってくるようです、男と女ですがどちらとも人間です。

地霊殿へやってきたら少し遊んであげなさい、あちらもそれを望んでいるようですから・・・」

 

燐「人間が此処へ?」

 

 

何故?とでも言いたげに首をかしげる燐だが、彼女は人間と聞く別の興味が湧く。

 

 

燐「でもさとり様、その人間死んじゃったら・・・私のにしていいんですよね?」

 

 

不適な笑みを浮かべながら主に問いかける。

しかし主はイエスともノーとも言わなかった。

 

 

さ「それは出来ないと思うわよ?何せお二方とも相当の手練れでしょうから」

 

燐「にゃあ?私じゃ勝てない相手って事ですかい?」

 

さ「そうね・・・少なくとも私では勝てない相手よ」

 

燐「そんな奴らが此処に何しに来るんですかね?」

 

さ「恐らく、お空に用があるんじゃないかしら?」

 

 

さとりは部屋の窓から空の無い外の景色を眺める。

彼女は第三の目(サードアイ)を駆使し、二人の様子を監視し続けた。

 

 

_____________________

 

 

 

~旧地獄繁華街入口~

 

 

繁華街への入り口に渡る他の橋には、橋姫と呼ばれる妖怪が存在する。

橋姫とは女神の事なのだが、二人の目の前にいる橋姫はそれとは違う。

 

 

パル「人間、此処はお前たちのようなものが来て良い場所ではない。

早急に立ち去れ、でなければ後悔することとなる」

 

 

金色の髪にエルフ耳、エメラルド色の瞳が美しい少女だ。

一説によれば、彼女の着ている服はペルシャ人の女性が着る礼装がモチーフとなっているらしい。

 

 

咲「貴女は何者なのです?

自らを名乗りもせずに自身の都合だけを述べるとは礼儀知らずにも程があると思いますが?」

 

 

橋姫の態度が癇に障った咲夜が彼女に突っかかる。

職業柄こういう行為が気に入らないのだ。

 

 

パル「ほう?人間ごときが威勢が良い。

私は水橋パルスィ、元は水の女神と呼ばれる存在だったもの。

嫉妬心を操る事が出来るせいで忌み嫌われた可哀想な妖怪・・・。

私はね、お前たちのような人間が大好きなのよ、何故だか分かる?」

 

 

緑眼の少女は咲夜を指さし、彼女の瞳を見つめて妖力を集中させた。

 

 

パル「人間の心に眠る汚い嫉妬心をほじくり返して互いに潰し合うのを眺めるのが大好きだからよ」

 

 

咲夜の目に直接能力を掛けたパルスィはニヤリと嗤う。

暗示に掛かった咲夜は瞳が緑色に変貌した。

 

 

リ「おい咲夜、大丈夫か!」

 

咲「・・・・」

 

 

パルスィの能力を真に受けてしまった彼女の目は虚ろで、肩を揺さぶると首が下を向いて、まるで立ったまま死んでいるかのようだった。

しかし、緑眼の暗示は彼に唐突に牙を剝けた。

 

 

咲「リュウトさんは何故私以外の女性とあんなに仲良く話すのですか・・・」

 

リ「え?」

 

咲「私の事を・・・何でもっと好きって言ってくれないんですか!!」

 

リ「な、何だ!?」

 

 

突然両手でナイフを抜き、襲い掛かってきた咲夜の腕を掴み、リュウトは精一杯の力で取り押さえようとする。

が、暗示に掛かった彼女の腕力は既に人間のそれを遥かに超えていた。

 

 

リ「なんて馬鹿力だ、咲夜のか細い腕で出せるような腕力じゃない!」

 

咲「私の事など既に眼中に無いとでも言いたいのですか!!」

 

リ「違うっ!そんなことは・・・!」

 

咲「じゃあ何でもっと私を見てくれないんですか!

私はもっと貴方に見てほしいのに、貴方は理解してくれない!」

 

 

バギィっ!

 

 

リ「ぐおっ!?」

 

 

鳩尾に膝蹴りが直撃し、簸るんで手を離した隙を突いて右側頭部への回し蹴りがさく裂する。

まともに防御などしていなかったリュウトは真横に吹き飛ばされてしまった。

 

 

リ「クソ・・・咲夜に拳をふるう訳にはいかない、しかし半端な力でどうにか出来るような・・・」

 

咲「リュウトさんは・・・リュウトさんは!」

 

 

ナイフを手に殺意を剥きだしにする彼女の力は霊夢や妖夢のそれを凌駕しており、素手だけでもリュウトを手こずらせる超人となっていた。

彼女は再び二本のナイフを振りかざし、リュウトの息の根を止めようとする。

手荒い真似を咲夜にするわけにもいかず、再び腕を掴んで動きを止めた。

しかし距離の詰まった瞬間、またもや彼女の膝蹴りがリュウトの腹部に襲いかかってきた。

 

 

咲「離して!・・・離してよぉ!!」

 

 

バギャ!

 

 

リ「ぐううっ!」

 

 

ここで手を離せば埒があかなくなる。

彼は必死に咲夜の蹴りを耐えた。

何度も、何度も、何度も蹴られが、それでも離すことは無かった。

いや、離せる筈もない。

今の咲夜は操られているとはいえ、彼女の口から出る言葉の全ては本心から来ているものだろうから。

言うなればこれは自分が招いた結果でもあるのだ。

 

 

リ「これが咲夜の心の声だというのなら、俺はそれを受け止めなければならない義務がある・・・。

俺は、咲夜の気持ちと真っすぐ向き合わなければいけない義務がある!

しかし・・・・今はその時ではない!」

 

咲「!?」

 

 

リュウトは咲夜の手を叩いてナイフを手放させた後に左腕で彼女を胸に寄せ、その背後にいるパルスィに奪ったナイフを投擲する。

飛んできたナイフに驚いたパルスィは咄嗟にしゃがんで避けたが、その際に目を閉じてしまい、咲夜に掛けた能力は解除されてしまった。

 

 

パル「し、しまった!」

 

リ「お前の能力の弱点は知っている、因みに技のパターンもな。

橋姫程度ではこの俺を倒すことなど出来ん、何なら試してやるぞ?」

 

パル「たかが人間が・・・図に乗るんじゃないわよ!」

 

 

スペル:大きな葛籠と小さな葛籠

 

 

パルスィが二人に分身し、それぞれ大小の弾幕を四方八方にまき散らす。

しかし、彼には行動パターンのすべてが見えている。

 

 

リ「このスペルは一定時間経つと一瞬だけ消える。

次に現れた瞬間に近づいて一気に勝負をつける」

 

 

彼の言う通り数秒後にパルスィは消え、弾幕が止んだ。

能力を解除された咲夜は気を失い、そのまま胸の中で眠ってしまった。

気配を探り、次に出現するポイントを探ると、ある場所に二つの妖力を感じた。

 

 

リ「無駄だ、お前のパターンは分かっているんだ」

 

 

リュウトが霊力の散弾をそこへ投げるとパルスィが現れたタイミングで着弾し、大小の爆発を起こしながらパルスィに多大なダメージを負わせた。

 

 

パル「くっ・・・この私が人間に・・・」

 

 

煙の中から弱々しく地面に不時着し、膝をつく。

もう彼女の戦闘力と言える力は無いに等しい。

リュウトもこれ以上彼女に対して敵意を見せることも無い。

 

 

リ「これで俺たちの力は証明されただろ、先へ行かせてもらうぞ」

 

パル「好きにしなさい、でもこの先には私なんかじゃ相手にもならない妖怪がうじゃうじゃ居るわよ。

そんな地獄に身を投じるというの?」

 

 

彼女の忠告を耳にしたリュウトは不意に笑ってしまう。

地底に住んでいる彼女でさえも、これ以上の領域は足を踏み入れるような場所ではないというのに、何故自分は今、そこへ向かっているのだろうか。

可笑しな話である。

 

 

リ「確かにそうだな、ここの恐ろしさは俺も身をもって体験している筈なのにな。

だが今の俺には此処に来る理由がある、それだけで十分だ」

 

 

そう言って去ろうとすると、パルスィがまたもや引き留めてきた。

 

 

パル「ちょっと待ちなさい」

 

リ「何だ、まだ何かあるのか?」

 

 

彼女はポケット中から手のひらサイズの札を二枚取り、リュウト差し出した。

妖怪の文字でなんと書かれているか分からないが、恐らく入場許可証のようなものだろう。

 

 

パル「これは旧地獄街道の通行証よ、これを出しておけば下手な妖怪から襲われることも無いわ」

 

リ「そんなものは要らん、余計な世話だ」

 

パル「アンタの為じゃないわよ、これは寝ているその子の為に渡すの。

寝てるなんて奴等にとっては恰好の餌だから。

その子には悪い事をしたわ、そのお詫びにそれを渡すの。

先ずは宿屋を探すことを薦めるわ、休養は必要よ。

持っていれば私の知人の知り合いという扱いになるから、それなら安心でしょう」

 

リ「咲夜の安全を確保するためにも必要か・・・。

よし、受け取っておこう」

 

パル「言えた立場でもないけど、健闘を祈るわ」

 

リ「・・・そうか」

 

 

パルスィから札を受け取り、橋の向こう側へ歩きだす。

漸く旧街道に入った彼はパルスィに言われたとおり、宿屋を探すことにした。

この旅はなかなか長くなりそうな、そんな予感がした。

 

 

to be continue...




さとり様初登場です。
お燐も初登場ですが、何故お燐を挿絵に出したかというと廃獄ララバイが好きだからです。
次回もお楽しみに。


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地霊殿105話

早めに投稿しておきます。
出し惜しみする理由もありませんからね。
では本編いってみよう。


咲「・・・・う、うん?」

 

リ「ようやく起きたか、かなり強い催眠に掛かっていたのだから仕方がない。

身体の方は大丈夫か?」

 

 

咲夜が目を覚ました時、既にそこは地底の入り口ではなかった。

畳の部屋に敷かれた布団の上で寝ていた彼女は、隣にリュウトが居る事を確認すると妙に安堵した。

自分が倒れた後、リュウトが此処まで運んできてくれたらしい。

此処は一体何処なのだろうか?

 

 

リ「あぁ、君が倒れた後で宿屋を探してな。

さっき戦ったパルスィの友人が経営している宿屋に入らせてもらった」

 

咲「よく泊めてもらえましたね・・・」

 

リ「パルスィからもらった通行許可証を見せたらあっさり入れてもらえたんだ」

 

咲「通行許可証?ですか?」

 

リ「あぁ、これなんだが」

 

 

彼はポケットからそれを取り出し、咲夜に見せた。

妖怪の文字を見るのが初めてな彼女は興味津々にそれを眺めた。

 

 

咲「へぇ、これがあれば私達で出歩いて平気なのですか」

 

リ「パルスィが言うにはそうらしい。

そいつは地底の中でもトップクラスの強さを持っているそうだからな」

 

咲「この地底で・・・ということはリュウトさんの探しているお方なのでは?」

 

リ「いや違うな、俺たちの目的は地霊殿の最深部だ。

まぁ、それに匹敵するほど強力だがな」

 

咲「・・・まさかとは思いますが、先ほどから此方を襖の奥から覗いている方ですか?」

 

 

彼女の指を差す先には、襖から覗く額に立派な一本角を生やした女性が此方をじっと見ていた。

あの角を見る限り、その人が鬼であることを想像させる。

咲夜に気づかれた彼女は、思いっきり襖を開けて唐突に自己紹介を始めだした。

 

 

勇「お嬢ちゃんが気が付いたみたいだね。

私は星熊勇義、この旅館を経営している鬼の星熊とは私の事さ!」

 

咲「は、はぁ」

 

 

金髪の長い髪にグラマラスな体付き、それを見た咲夜は自分の貧相な体に悲しくなった。

 

 

咲(私だってあれくらい成長すれば・・・)

 

 

と、心の中で考えてみたものの、やはり勝ち目は無さそうだ。

星熊勇義は鬼の中でも特に強者とされる怪力乱神を操る鬼だ。

中堅妖怪ならハダシで逃げ出すほどの超大物が目の前に居るのだ。

 

 

勇「おい嬢ちゃん、具合の方は良いのかい?」

 

咲「え?はい、何ともありませんわ」

 

 

素っ頓狂な声を出してしまった咲夜に勇義は大笑いした。

 

 

勇「あっはっはっはっは!そうかそうか、それならいいんだ。

いやな、私の友が散々な事をしたというもんだから心配していたんだよ。

根は悪い奴じゃないんだけどな、ひねくれものなんだよあいつ。

許してやってくれよな」

 

 

咲「私はあまり覚えていないので何とも・・・」

 

リ「別に何もなかったから心配するな、ただ気絶しただけさ」

 

咲「それはそれは、ご迷惑をお掛けしました」

 

リ「いいさ、咲夜が無事ならそれでいい」

 

 

何故この人はこんな恥ずかしい言葉を平気で口に出来るのか、しかし嬉しい事は確かなので何とも言えない。

咲夜の顔が赤くなっている事は勇義に直ぐにバレた。

 

 

勇「おいおい、お連れさん顔真っ赤じゃないかい。

照れちゃってかわいいねぇ」

 

咲「そっそんな事は決して!」

 

勇「いいさねいいさね!

今日は泊っていって良いからさ、ゆっくりしていきなよ」

 

 

そう言うと勇義は背中越しに手を振って去ってしまった。

という事は今日はこの部屋でリュウトと二人きりという事だ。

 

 

咲(ど、どどどどうしましょう!?

お嬢様方がいらっしゃらない状況で二人きりだなんて!!)

 

 

そこで咲夜は最後にレミリアから伝えられたアドバイスを思い出した。

 

 

 

 

  咲夜、下着は新しいものを用意しておくのよ。

 

 

 

 

碌でもないアドバイスだと思ってたが、もしかすると使う時が来るかもしれない。

そういう状況だろう。

ちゃっかり持ってきておいて正解だったようだ。

 

 

咲(ほ、本当にやるのかしら・・・やっていいのかしら・・・)

 

 

不意に視界に入った自分のキャリーバッグを見つめ、生唾を飲む。

あの中には自分が持っている中でも最上級のランジェリーが入っているのだが、今それを着けるべきなのだろうか。

自分が今何をしようとしているのか冷静に考えてみると、徐々に顔が赤くなる。

 

 

リ「咲夜、顔が赤くなっているが、やはり体調が優れないのではないのか?

熱でもあるのか?」

 

咲「えぇ!?そ、そんな・・・」

 

 

直ぐに顔に出てしまうのは厄介極まりない。

頬を両手で隠しながら小走りで部屋の隅に座ると、一旦深呼吸して心を落ち着かせようとする。

しかし、反復してあの言葉が頭の中をぐるぐるとまわっており、彼女から理性を奪っていった。

 

 

咲(いけない、油断するとつい考えてしまうわ・・・)

 

 

エッチな女だという自覚は全く無いし、そういった経験も全く無いのだが、意識してしまうと恥ずかしくなってくる。

一体どうすればいいのだろうか、誰かこの状況の一番の対処方法を知っている方が居れば是非ご教授願いたいところだ。

そんな頭が大混乱な咲夜の事など気にも留めず、彼はとある提案をした。

 

 

リ「咲夜、折角だし此処で一日くつろいでからにするか」

 

咲「え?」

 

リ「あんなことがあった後で君も疲れているだろう。

丁度ここは温泉街として有名でな、身体を癒すには持ってこいの場所だ。

勇義もああ言っていたんだし、遠慮することもない」

 

咲「私の為にそんな時間を割いては・・・」

 

リ「嫌なのか?」

 

咲「い、いえ!そんな事は決して!」

 

 

嫌なわけがない、温泉も好きだ。

それが好き愛する人と一緒なら尚の事だろう。

でも何故突然そんなことを提案したのだろうか?

 

 

リ「どうしたんだ、君らしくないぞ。

いつもなら飛び跳ねて喜ぶのに、一体どうしたんだ?」

 

咲「飛び跳ねて喜んだことなんて一度もありませんわよ!!

私そんなはしたない女ではありません!」

 

 

頬を赤らめて反論する咲夜に、思わずリュウトも笑ってしまった。

 

 

リ「そうしている方が君らしいぞ、可愛いしな」

 

咲「かッ!可愛い!?」

 

リ「ハハハ!本当に顔に出る性格だな。

さぁ、温泉街を楽しもうじゃないか」

 

咲「あぁ!待ってくださいリュウトさ~ん!」

 

 

部屋を出て温泉街へと繰り出すリュウトの背中を咲夜も走って追う。

先程までのようにあまり深く考えるのを止め、今日一日はこのままでいいかな?と、素直に楽しもうとする咲夜なのであった。

 

 

to be continue...




星熊勇儀さんの登場回でした。
個人のイメージで勇儀は陽気な雰囲気してそうなんでこんなキャラになりました。
原作のキャラ感大事にしたいですが、地霊殿3面まで行ったことないんでダメですね。
ではサイナラ


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地霊殿106話

咲夜さんエロス回でもあります。
あ、ネタバレ乙…。


勇「よう、お二人さん、よく眠れたかい?」

 

 

あれから旅館に戻り夜が明け、勇義が和室の襖を豪快に開けてモーニングコールをしに来た。

地底には太陽が差さない為、こうして朝になった事を突て耐えに来るのだ。

日の光で起き出すリュウトにとっては不思議な感覚だった。

夜中に起こされているような感覚だが、別段眠いわけではない、寧ろ目覚めは良い方だった。

問題は咲夜の方だ。

 

 

咲「う~ん、もう少し・・・」

 

 

地底の気温は夏場と同じくらいには暑いのだが、そんな状況で毛布に包まって気持ちよさそうに寝言を呟いている。

特に朝に弱かったことは無い筈なのだが、起きる気配が全く無い。

このままでは埒が明かないので、無理矢理揺さぶって起こそうとした。

 

 

リ「咲夜、朝だぞ、早く起きろ」

 

咲「そんなに触っちゃいやぁ・・・」

 

リ「どんな夢を見ているんだ?」

 

 

どうやら現実と夢をごちゃごちゃに混同しているようで、リュウトの声にもびくともしない。

そこで最終手段として残していた、布団を引っぺがすを決行した。

 

 

 

リ「ほら、起っきっろっ!!」

 

 

無理矢理咲夜が包まっていた毛布を奪い取ると、勢い余って咲夜もあおむけになる。

その瞬間、リュウトは桃源郷を見た。

 

 

リ「さ・・・咲夜・・・」

 

勇「おやおや、昨夜はお愉しみだったのかい?」

 

 

咲夜は寝間着を着ておらず、いつから着けていたのかパールカラーのレース入りのランジェリーを身に着けていた。

メイド服で着やせしていた胸が強調され、まるでこっちにおいでとリュウトを誘惑しているようだった。

そう、これは不可抗力というやつだ。

こんなものを見せられて男として反応しない方がおかしい。

 

 

リ「いかんいかん!何を考えているんだ俺は!

咲夜、早く起きてくれないか・・・」

 

 

どうにも触ってはいけないような気がしてならず、仕方なく大声で起こすことにした。

 

 

リ「咲夜ー!朝だぞー!」

 

咲「ん・・・リュウトさん?」

 

 

眠い目を擦りながら彼女はゆっくりと体を起こす。

・・・どうやらまだ自分が下着姿だという事に気が付いていないようだ。

このままだと寝間着を脱がしたのが自分だと言われかねないので、リュウトはその場を去ろうとしたのだが。

 

 

咲「リュウトさん・・・私に何をしました?」

 

 

一歩遅かったようだ。

勿論この後、彼がナイフまみれにされたのは言うまでもない。

 

 

_____________________

 

 

 

リ「なぁ咲夜、悪かったからそろそろ機嫌を直してくれないか?」

 

咲「助平なリュウトさんなんて知りません!」

 

リ「あれは不可抗力だと何度も説明しただろ?

君があんな下着付けているなんて知らなかったし、そもそもスポーツブラだと自分で言っていたじゃないか。

スポーツブラは何処へやったんだ?」

 

咲「///~何でそう貴方はデリカシーが無いのですかっ!!」

 

 

二人並んで廊下を歩きながら、赤提灯のように真っ赤っかな顔で咲夜はリュウトを叱りつける。

当の本人に反省の色が無いのが問題だろう。

ともあれ、宿で泊る事が出来た二人は代金を支払い、後は地霊殿へ向かうのみだ。

カウンターに着いたリュウトは早速チェックアウトを申し込んだ。

 

 

リ「チェックアウトだ、代金はいくらだ?」

 

 

カウンターで椅子に座っていた骸骨姿の妖怪にそう言うと、きょとん?とした顔で外を指差した。

 

 

「兄ちゃん、何言ってんだ?

姐さんから何も聞いてねぇのか??」

 

リ「ん?何がだ?」

 

「あんたらこれから姐さんと力勝負するんだろ?

ほれ、外盛り上がってるから行ってきなよ」

 

リ「全く聞いていない、初耳だ。

どういうわけなんだ?」

 

「宿の代金はタダ、その代わりに姐さんが気に入ったアンタら二人のどっちかが姐さんと勝負するのさ」

 

 

この説明を聞いた二人は互いに顔を合わせて頷いた。

 

 

咲「リュウトさん、これは・・・」

 

リ「あぁ、願ってもないチャンスだな」

 

 

再び伝説の鬼の四天王と戦える。

以前戦った萃香よりもパワーが上で、付いたあだ名が怪力乱神。

旅館の引き戸を開けると、目先に勇義の姿があった。

周りには鬼の星熊の力を一目見ようと野次馬で溢れかえっていた。

 

 

勇「よぉ、黙ってて悪かったねぇ。

楽しみってのは秘密にしておいた方が面白いかと思ってさ」

 

リ「事前に伝えておくのが普通だとは思うが・・・今回はいい。

こうしてアンタと戦う事が出来るは幸運に近いからな。

本来ならば寄り道せずに地霊殿に一直線に向かうはずだったが、自分の今の実力を知る良いチャンスだ」

 

勇「肝が座ってるじゃないか、私にそんなことを言ったのはアンタぐらいさ。

いいだろう、私が実力を見てやるよ」

 

 

道の真ん中で両者が互いに睨み合い、力を徐々に開放していく。

まるで二人の闘志が具現化したような霊力と妖力のぶつかり合いは、それだけで見るものを圧倒した。

中にはその凄まじいプレッシャーを前に気分を悪くしたり、気絶する者まで現れた。

 

 

リ「流石だな、まだ本気なんて出していないだろうに」

 

勇「お互い様じゃないか?まだ隠してるだろ」

 

リ「さぁ?何のことだかさっぱりだ」

 

勇「そうかい・・・だったら力づくでその体から聞き出してやろうかね!」

 

 

一瞬の間に足の筋肉に力を集中させ、勇義が先手を得た。

彼女の右ストレートを左頬にモロに受けたリュウトは、その慣性に従って吹き飛ばされ、観客も巻き込みながら次々と家屋を破壊していった。

 

 

バゴォン!!!

 

 

リ「うぐぉ!?」

 

雑兵「「「「うぎゃあぁぁぁぁぁ!?」」」」

 

咲「リュウトさん!」

 

勇「いいや、まだだね」

 

 

遥か彼方へ飛ばされたと思われたリュウトだったが、姿形が分からないほど遠方から一瞬で勇義の首元まで急接近した。

彼も速度のパワーも合わせた右ストレートで勇義の顔を吹き飛ばそうと迫るが、あと一歩のところで拳を受け止められてしまった。

 

 

バシィっ!!!

 

 

勇「あえて正面から立ち向かう、それもまたいいねぇ!

でも、鬼の力を見くびってもらっちゃ困る!」

 

リ「何か勘違いしていないか?」

 

勇「何?」

 

リ「捕まるのなんて十分わかっていたさ、重要なのは何故わざと捕まると分かったうえで突っ込んできたかだ」

 

 

力む右腕い莫大な霊力を集中させ、限界まで圧縮する。

先端を尖らせるイメージで霊力の流れをコントロールし、点の威力を最大まで上げる。

撃つのではなく、打ち込むのだ。

 

 

リ「パイルバンカーだ、吹っ飛べ」

 

 

バガアァァァァァァァァァン!!!!

 

 

勇「おぉぉ!?」

 

 

拳を握っていた勇義の左手は巨大な霊力の衝突によって弾き飛ばされ、勇義自身もそれによって吹き飛ばされてしまった。

舗装された道をガタガタに破壊しながらも太腿に力を入れて踏ん張り、威力を殺そうとする。

しかしパイルバンカーの威力が想像以上に高く、地面に足が埋もれても尚、止まることはなかった。

 

 

勇「これはっ・・・予想外だっ!」

 

 

大通りを破砕しまくった挙句、先程のリュウトと同様に丁字路を超えて民家に多大な被害を与える。

衝撃で態勢を立て直せずに、踏ん張りが効かないまま地底の端の崖に激突。

瓦礫と土煙で勇義の姿は完全に見えなくなった。

それを間近で見た野次馬達は歓喜した。

 

 

雑兵1「すげぇぜ兄ちゃん!あの怪力乱神の星熊を吹っ飛ばしやがった!」

 

雑兵2「もしかしたら勝っちまうんじゃねぇの?」

 

雑兵3「頑張れー勇義姐さん!」

 

 

地底妖怪達が勇義にエールを送っている最中、当の本人は岩の中に埋もれながら驚いていた。

 

 

勇「あの坊主、なかなかやるじゃないか、まさかこんなに強いとは思ってなかったねぇ。

あの博麗(ハクレイ)と同じ匂いがするよ全く、これはとんでもないのを相手にしちまったか?」

 

 

この一撃だけで、この男が自分が過去戦ってきた人間の中でも一、二位を争う強さだと確信した。

萃香を倒したというのも納得がいく強さだ。

 

 

リ「!」

 

 

爆発のような音を出しながら瓦礫を盛大に跳ね上げ、大量の土煙を上げて脱出した勇義の周囲には、禍々しいほどの量の妖気が漂っていた。

 

 

勇「これは、初っ端から本気出しといたほうが良さそうだねぇ」

 

 

遥か目の先に捉えた男を睨み殺すような目で凝視すると、それに答えるかのようにその男はデルタ型に金色の魔法陣を展開した。

 

 

リ「その本気、どこまでのものか見せてもらおう」

 

 

to be continue...




てなわけで次回は勇儀vsリュウトです!
鬼のパワーを技で押し退けるリュウト、しかし勇儀の本気はこんなものでは無い。
果たして変身無しの条件でリュウトに勝ち目はあるのか?
乞うご期待。


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地霊殿107話

さて本格的に勇儀姉さんとバトる訳ですが、イマイチな出来です。
ご了承ください。


スペル:デルタスパーク

 

 

逆三角フォーメーションを組んだそれぞれの魔法陣からマスタースパークが発射される。

三つのマスタースパークは互いに収束し合い、渦を巻きながらその威力を向上させていった。

しかし、単純なパワーが圧倒的な勇義に対しては左程有効ではない。

 

 

勇「あらよっと」

 

 

勇義は足元にあった巨大な岩盤をひっくり返して壁のようにし、それを支えて防御する。

デルタスパークの威力ならば岩を砕くなど容易いが、彼女はただ防ぐ為だけに岩盤を利用したわけではなかった。

 

 

リ「・・・姿が消えた?」

 

 

岩盤を貫通した先に勇義の姿は無い。

妖気も抑えているらしく、気配を感じられない。

 

 

リ「何処へ消えたんだ・・・」

 

 

上へ飛んだか?と思ったのだが、上空にその影は確認できない。

次の瞬間、突然大きな地揺れがリュウト達を襲った。

 

 

リ「あまり刺激を与えると噴火しかねないが、試してみるか」

 

 

そう言うとリュウトは地面に思い切り突き、地中深くまで亀裂を入れた。

するとその中から勢いよく勇義が飛び出し、リュウトの腹部へ頭突きした。

 

 

リ「ぐほぉあ!!」

 

勇「さぁ、もう一発だ!」

 

 

すぐさまリュウトの背後に回った勇義は回転踵落としで彼を地面に叩きつける。

さらに彼女の連弾は続き、腰、肩、脇腹と、突きと蹴りを繰り出した。

叩きつけた衝撃で出来たクレーターはその度に直径を広げていき、見る者全てにその威力の強さを痛感させた。

 

 

咲「もう・・・見てられません!」

 

 

見かねた光景に咲夜は耐えきれず、飛び出そうとするが、彼の声がそれを止めた。

 

 

リ「心配いらない・・・まだいける」

 

 

連弾を打ち込んでくる勇義の右腕を掴み、そのまま関節を外す寝技に持ち込み、右腕関節を無理矢理外した後、上空に飛んで大玉の霊力弾を両手に抱えて突っ込んだ。

 

 

リ「はあぁ!」

 

 

重力と加速のエネルギーを加えてさらに重い一撃にする。

いや、そうでもしなければまともなダメージなど受けないだろう。

案の定、勇義は自慢のタフネスを惜しみなく披露してきた。

 

 

勇「ちょいと軽いね!」

 

 

リ「くそっ、ダメか!」

 

 

胴体に霊弾を撃ち込まれながら、塞がっていない両足でリュウトをひっくり返し、見事に脱出に成功した。

すぐさま体勢を立て直すも、今は勇義に背中を見せている状態。

達人同士の一騎打ちは隙を突かれた方が敗北するが、今はまさにその状況だ。

 

 

勇「後ろを見せたねっ!」

 

リ「そうはいくかよ!」

 

 

襲い掛かる拳に咄嗟にスクロール回避し、アクロバットで着地、そのまま組手の構えを取る。

妖気が溢れ出ている勇義の気配を悟るのは簡単だ、しかし鬼の中でもバケモノじみた妖力を持っている彼女は恐らくスタミナ切れを狙っていては埒が明かない。

というよりも、スタミナ切れを起こすかどうかも怪しい。

 

 

リ「手っ取り早いのは此方のフルパワーを懐に打ち込むくらいか・・・

尤もそんな隙を作るような余裕は無いんだが」

 

勇「お手上げかい?諦めて本気出しなよ、強がってちゃ私には勝てないよ」

 

 

正論過ぎてぐうの音も出ないが、それは今後の事を考えてもあまり宜しくない。

強力な力に頼ってばかりではいざという時に戦えない。

というわけで能力を使う案はノーだ。

 

 

リ「だが、戦術の幅を拡大するのは致し方ない」

 

 

スペル:動かない愉快な藁人形

 

 

両腕からエネルギーの鞭のような物を出し、変則的な動きで勇義を翻弄しつつ特攻する。

中途半端な打撃が通用しない彼女はこの行動に心底呆れた。

 

 

勇「パンチもキックも効かないからって鞭で攻撃するのかい?

そんな柔なモンで私を倒せると思ってるのかい!」

 

 

眼前に迫る鞭を掴んで全力で引っ張ってやろうとしたその時、握っている鞭が突然腕に絡みついてきた。

 

 

リ「自分から掴んでくれるなんて有難いな、お陰でわざわざ策を練る必要がなくなった」

 

勇「何だいこれは・・・?」

 

 

腕に絡み付いて鞭に疑問を持った途端、急速に妙な脱力感に見舞われた。

戦闘に差し支える程ではないが、いずれ立つことも難しくなるだろう。

 

 

勇「何だこれ!力が抜ける!!」

 

リ「お前の力は俺の中で光エネルギーに変換されてチャージされていく。

そうすればほぼ無制限に蓄積可能だからな、今後の戦いの為に目いっぱいチャージさせてもらう!」

 

 

物凄い勢いで妖力を吸われていく感覚が体全体に行き渡る。

まるで体自体が引っ張られているような感覚だ。

早急にこの鞭をどうにかしなければならない。

 

 

勇「こなくそぉぉぉぉぉ!!!」

 

リ「さ、流石にまだこれだけの力は残っていたか・・・」

 

 

彼女は片方の鞭を離し、両手でそれぞれの鞭を力ずくで引きちぎった。

もう少し怯むと思っていたリュウトは予定が狂ったことで少し焦りの汗を見せた。

吸い取ったエネルギーはこの戦闘では使えない。

リュウト自身のパワーを底上げする事は出来ないのだ。

しかし、相手が多少なりとも疲労しているのも事実であり、攻撃エネルギーの根幹である妖力を吸い取られては戦闘を行うこと自体が不可能となる。

 

 

リ「しかし流れは此方にある!!」

 

 

勇義と違い、まだまだ余力が残っているリュウトは、バテている勇義に最大出力で突っ込みラッシュの打ち合いに持ち込んだ。

彼の気迫と勢いに押されてしまった勇義は下がりながらそれをうまく受け流していくしかなかった。

戦いの年季が違うと言っても、戦術的にはリュウトの方が有利だ。

彼は勇義の手の内を全て知っているが、彼女はリュウトがどのような技を使い、どのような戦法をよく使うのか知らないのだ。

 

 

勇「私の動きを見切っているのかい!?」

 

リ「俺はアンタの癖や行動パターンを既に知っている、力のハンデはあっても戦術さえわかればそんな事はどうだってできるさ」

 

 

一撃一撃が重い勇義の攻撃は鬼の筋力とはいえスピードにある程度の限界がある。

それを大量の妖力を使って運動神経系の伝達速度を速め、無理矢理速度を上げていた。

しかしその恩恵をまともに受けられなくなった今、リュウトの攻撃に身体が上手く反応出来ていない。

徐々に彼女の体にはかすり傷が増えていった。

 

 

リ「どうした、付いていけていないぞ?」

 

勇「うるさいねぇ!どっちみちそんな柔なモンじゃ碌なダメージ受けやしないんだよ!」

 

 

しかし、どうしたものか。

このままでは打開策を見いだせないまま体力が尽きてしまう。

とはいうものの、彼女は戦術を企てて戦うような性格なので小難しい事は考えない。

ならば、自分が一番得意とする方法で一気に蹴散らすのが一番良い。

 

 

勇「はぁぁっ!」

 

 

全身から覇気と弾幕を乱射してリュウトを跳ね除けると、拳に一点集中。

 

 

勇「これ以上は町がぶっ壊れちまう、これで終いにしてやるよ」

 

 

一歩踏めば山を砕く、二歩踏めば地が割れる、三歩踏むは無敵の一撃。

初見で無事で済む者など今まで一人たりとも居なかった。

 

 

四天王奥義:三歩必殺

 

 

to be continue...




3歩必殺は初見で不可避なスペルで有名ですが、今回は弾幕ではないのでオリジナル表現にしてます。
本家が気になる方は調べて観てください。
では評価、感想お待ちしております。


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地霊殿108話

勇儀との戦い決着です!
本編どうぞ。


リ「おい!あれを地底でやろうというのか!?

街が壊れるどころか地下空間が崩落しかねないぞ!」

 

 

急激に妖気の濃度が増していく勇義に、リュウトは危機感を感じた。

彼はこの技を知っている、そう、未来の世界で既にこの技を見ているのだ。

故にこの技の威力も、危険性も両方知っているのだ。

その経験が警告している、此処でそれを使わせてはいけないと。

 

 

リ「勇義、考え直せ!

此処で三歩必殺を使えば威力が強すぎて地下空間が崩落するかもしれないんだぞ!」

 

勇「だったら必死で押さえつけてみなぁ!!!」

 

 

一歩進むごとに妖気が倍以上に膨れ上がっていく。

これをまともに受ければリュウトの体は一瞬で粉みじんになってしまうだろう。

普通の人間が旅客機に轢かれるときのような規格外さだ。

今のリュウトにはこれを受け止められる力が無い。

 

 

勇「死んじまっても恨むんじゃないよ!」

 

リ「流石にこれを防ぐ事は出来ない・・・俺の負けという事ではダメか?」

 

勇「だったら本気でどうにかしてみなぁ!」

 

 

究極なまでに高まった妖気がビッグバンを起こす直前、リュウトの視界にあるもの全てが静止した。

いや、正確には人間が認識できないほどの速度で動いている。

まるで世界が止まったかのように。

 

 

勇「らあぁ!!!」

 

リ「一か八か、保ってくれよ!」

 

 

光壁:ダイヤモンドウォール

 

 

勇義が拳を振り下ろした瞬間、突如現れた透明に輝く巨大な壁に阻まれた。

一瞬の衝撃で中心から全体に大きな蜘蛛の巣状のヒビが入ったが、見事に三歩必殺を受け止めた。

その壁の後ろには、先程の黒髪の青年とは似ても似つかない、輝く4枚のダイヤ形の翼を持った白髪の青年が壁を押さえ付けていた。

 

 

勇「な、何だいありゃあ!?」

 

リ「この地底世界を破壊させるわけにはいかない。

最強の矛と最強の盾、どちらが強いか勝負しようじゃないか」

 

 

激しいオーラの嵐が辺りの空気をミキサーのように掻き混ぜ、家屋の瓦を引っぺがし、立っていることすら出来ないほどの暴風を巻き起こした。

 

 

勇「貫けぇぇぇぇぇ!!!」

 

リ「ダメだ、威力が強すぎる!!

だが・・・やるしかない!」

 

 

地底街など一瞬で消えてしまうほどの威力を放つはずだった三歩必殺は、その壁を破壊寸前までボロボロにしたが、完全破壊には至らずに消失。

静寂が訪れると輝く壁も徐々に消え失せていった。

 

 

リ「フゥ、ギリギリ持ちこたえてくれたな」

 

勇「そ・・・そんな馬鹿な・・・?」

 

 

自身の持つ究極であり最強の一撃がこうもあっさりと受け止められてしまい、全力を出し切ってしまった勇義は両ひざをついてしまう。

そして思い知った。

今、目の前に居る輝きを放つ白髪の青年は自分を倒せる実力を備えた者なのだと。

 

 

リ「しかし・・・俺の負けだ」

 

勇「な、何だと!?」

 

 

その一言は彼女の怒りを買った。

無敵と呼称していた技をこうもあっさりと無力化した癖に、今更何故負けを宣言するのかが理解できなかった。

彼はその気になれば一瞬で自分を半殺しに出来る力を持っているというのに。

 

 

勇「お前、それほどの力を持っていて何で隠していた!?

その気になれば一瞬で勝敗をつける事だって出来ただろ!!」

 

リ「俺は最初に言ったはずだ、自分の実力を見る為の戦いだとな。

この力を出してしまったということは俺の実力はまだまだだったという事だ、だから俺の負けだ」

 

 

という事は、この男は本気を出さずに鬼の四天王、星熊勇義を倒すつもりでいたわけだ。

なんて嘗めた奴なのだろう、彼女はマジで殺してやろうと考えかけた。

しかし、実力差が愕然としているのでその考えは一瞬で消えた。

 

 

勇「はぁ・・・アンタには恐れ入ったよ。

それにしても凄いな、私の三歩必殺で砕けなかったものは無かったのに」

 

リ「いいや、流石に危なかった。

俺のダイアモンドウォールは最高硬度を誇る切り札だった。

しかしあの壁を貫通寸前まで削るほどの威力はなかなか無い。

更なる修行が必要だと実感した」

 

 

今以上に強くなるつもりらしいが、勇義からしてみれば、それほどまでに力を欲する理由がわからなかった。

今でも十二分に強い筈なのだが・・・。

 

 

リ「俺は今以上の力を手に入れなければならない、とある者との闘いに備えてな。

しかしそれには仲間も必要なんだ、共に戦ってくれる仲間が。

だからこうして咲夜と二人で地底に来た」

 

勇「その戦わなければならない奴ってのは私も関係するのかい?」

 

リ「あぁ、幻想郷に棲む全員の問題だ」

 

 

眉唾物の話だが、リュウトの目は嘘をついていなかった。

嘘が嫌いな鬼族だが、この話は信憑性が無くとも信じるに値する話だと勇義は確信した。

 

 

勇「それについては詳しく話してくれないのかい?」

 

リ「近いうちにわかるさ、恐らくな。

・・・できればそんな事が起こらない方が良いのだが」

 

 

遠くを見つめる彼の目には哀しみが溢れていた。

連れ添っている女性の前では全く見せることが無かった目だ。

この時、勇義は彼の言う来るべき危機について詮索しようとするのを止めた。

 

 

勇「・・・わかったよ、さぁ行きな。

地霊殿に用があるんだろ?さとりの奴も薄々アンタらが来るのを勘づいているだろうし」

 

リ「破壊した街はどうするつもりだ?」

 

勇「こんなもんは鬼の手に掛かれば元通りなんて朝飯前さね、気にしなくてもいい。

地霊殿の場所はもう知ってるみたいだしね、何故か」

 

リ「あぁ知っているとも、俺の能力と相性の良い人物が居るんでな」

 

 

そう言うとリュウトは勇義の前から去っていった。

彼の姿が見えなくなった頃、勇義は瓦礫の上に寝そべって真っ暗な空を見上げる。

今まで生きてきても知らなかったこの世界の可能性を実感し、疲れ切った体で眠気に身を委ねるのだった。

 

 

しかし彼らの戦いが起こった同時刻に、この地底世界と幻想郷を揺るがすとある事件が起きようとしていた。

 

 

To be continue...

 




リュウトの使ったスペルカードは春雪異変で咲夜を守るために使ったものと同じで、幽々子の攻撃を受けた時は無傷でした。
勇儀のフルパワーで破壊寸前なので、勇儀は幽々子よりも力はかなり上ということになります。
全国の幽々子推しの皆さんゴメンナサイ
では評価、感想お待ちしております。


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地霊殿109話

今回はあの二人が地底で大暴れしていた頃、地上で起きていた話です。
おかしな点を見つけたら教えてくださいね、では本編いってみよう。


リュウト達が地底で勇義と戦っていた頃、地上はほんわかな平和な日常に包まれていた。

霊夢も朝にいつも行っている境内の掃き掃除を終わらせると、社の掃除をしている零夜の為に茶を淹れ始めた。

盆に急須と湯飲みを乗せて居間まで持っていき、掃除を終わらせた零夜を呼んだ。

 

 

霊「零夜、少し休憩しましょう。

丁度お茶沸いたからその後買い物に行きましょ」

 

零「ありがとう、頂くとしよう」

 

 

結婚してから毎日のように二人付き添って暮らしているので、この一連の流れにも慣れてきた。

こうした何気ない日常でも、二人は平和な幸せというものをしっかりと噛みしめていた。

異変が起きれば、その度に死と隣合わせなのだから。

 

 

零「霊夢、今日は用事は無いのか?」

 

霊「魔理沙もアリスのところに行くって言ってたし、特に何も無いわよ」

 

零「そうか、じゃあ今日は一日中二人きりだな」

 

霊「なぁに?私と一緒は嫌なのかしら」

 

零「なわけないだろう、もしそうなら君と結婚などするものか」

 

 

霊夢の冗談を軽くいなすと、零夜もほくそ笑む。

それもそうねと笑顔を浮かべながら彼女が言うと、湯飲みを彼の分と一緒に台所へ持って行った。

その間に零夜が出かける支度をしてやろうとすると、今頃アリスの家に言っている筈の魔理沙が縁側から大慌てで身を乗り出してきた。

 

 

魔「おい!霊夢はいるか!?」

 

零「ん?魔理沙じゃないか、アリスの家に居るんじゃなかったのか?」

 

魔「そんなのはどうでもいいんだぜ!

それよりも山の麓の方を見てみろよ!でっかい水柱が上がってるんだ!」

 

零「水柱??」

 

 

彼女の言う通り外へ出てみると、確かに大きな水柱が山の麓から吹き出ていた。

しかし、柱からは湯気のようなものが出ており、危険を感じるような様子は全く見えなかった。

 

 

霊「何々?何で魔理沙が此処に居るのよ?」

 

魔「それよりもあそこ見てみろよ、ありゃあ間欠泉だぜ!?」

 

 

霊夢も外を見ると、神社からでも見えるほど大きな水柱が確認できたが、それよりも深刻な問題を起こすものが大量に見えてしまった。

間欠泉付近から大量の魂が出てくるのが見えたのだ。

それも悪の気に満ちた悪霊の類のものばかりだった。

 

 

霊「何よあの大量の悪霊は!?

一つ一つは大した力を持ってないにしても数が多すぎるわ!」

 

魔「悪霊?そんなものがお前には見えるのか?」

 

霊「かなり遠いから正確には分からないけど、結構な量があの辺りで渦を巻いているわね。

巫女だから邪悪な霊魂の類も見えてしまうのよ」

 

 

巫女としての力を持つ霊夢にしか見えない程の弱い力しか持っていないようだが、数があまりにも多い。

猛スピードで幻想郷全体に広がっていた。

 

 

紫「恐らくあれは地底の旧地獄から漏れ出てきた悪霊たちね。

このままだと間欠泉と一緒に出てきた悪霊達が人間や妖怪の精神を汚染して幻想郷がパニックに陥ってしまうわ」

 

 

何処からともなく現れた紫に突っ込む間もなく、霊夢は身支度を始めた。

異変解決の準備だ。

 

 

零「地底は任せる、俺は出てきた悪霊の処理をしておこう。

俺ならあれ全てを一掃できるからな」

 

霊「出来るだけ早く済ませるわ、それまで持ちこたえてね」

 

魔「霊夢の事は任せろ、私が付いてるぜ!」

 

 

今回は地底、地上の二手に分かれて解決を行う事となった。

事が事なだけに早急な解決が必要だろうが、零夜が持ち堪えてくれるなら百人力だ。

と、直ぐにでも地底に向かおうと霊夢が神社を飛び立とうとすると、その前に渡すものがあると紫が引き留めた。

 

 

紫「霊夢、ちょっと待ちなさい。

今回は私も少し手伝うわ」

 

零「珍しいな、お前が異変の手助けをするなんて」

 

紫「今回は特別よ。

かなり危険な場所だから本当はついていきたいんだけど、地底は地上の妖怪は入れないルールなのよ。

管理者である私がそう決めたほど危険な妖怪が多く住み着いているのよ。

だから念の為、この陰陽玉を渡しておくわ」

 

 

片手に収まるサイズの陰陽玉を霊夢に渡す。

携帯電話のような役割を持ったアイテムなのだが、いざとなればそれが霊夢の身を守ってくれるらしい。

しかしそうなると魔理沙にも必要になってくるのではないだろうか?

 

 

魔「私はもうアリスから人形を預かってるぜ!

遠隔操作でアリスがアシストしてくれるってよ」

 

霊「そんなことも出来るのあの人形遣い?

糸で繋がってなくても操る事が出来るなんて凄いわね」

 

上海「さっきから私の事見くびりすぎよ、伊達に七色の魔法使いなんて言われてないわ」

 

霊「喋るの!?」

 

上海「私が上海を通して間接的に話しているのよ、人形自体がしゃべってるわけじゃないわ」

 

 

魔理沙のポケットから出てきた上海人形が突然しゃべりだしたことに驚いたが、声の主は遠隔操作しているアリスのものだった。

彼女も異変解決の手助けをしてくれるらしい。

これで準備は整った。

 

 

霊「なら出発するわよ、今回はもたもたしてられないわ。

スピード勝負で速攻解決するわよ!」

 

魔「おぉ!」

 

 

こうして二人は異変解決の為、地底へ向けて飛び立っていった。

そして、そこで彼女たちは思わぬ人物たちと出会う事となるのだった。

 

 

to be continue...




原作地霊殿のシステムを話の中に取り入れてみました。
面白くなるかどうかはわかりません。
感想、評価待ってます!


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地霊殿110話

今回は少し為になったりならなかったりする話です。


咲「ここが・・・地霊殿ですか?」

 

 

鉄格子の門の前に立つ咲夜の目の前にはうっすらと闇に映える白い洋館が建っていた。

高い塀に囲まれた敷地には広大なガーデンが広がっており、何処となく紅魔館に似た雰囲気を感じた。

 

 

リ「久しぶりに来たが、150年後とさほど変わらないな」

 

 

大きな鉄格子の門を開けようとすると、何故か勝手に門が開きだした。

まるで中に入れと誘導されるかのように入り口の扉までも開き、二人は歩を進めるしかなかった。

中に入ると、床や天井に大きなステンドグラスがはめ込まれており、見る者を魅了するかのようだった。

 

 

咲「なんて大きなステンドグラス!

とても綺麗に管理されていますわね・・・」

 

リ「中に誰も居ないのか?さっきから誰にも会わないが」

 

?「ミャ~」

 

咲「ん?猫ちゃんですか?」

 

 

鳴き声が聞こえた方を見ると、そこには一匹の黒猫がけずくろいをしていた。

しかしこの猫、尻尾が二本生えている。

 

 

リ「火焔猫燐だな?屋敷の主人はどうしたんだ?」

 

燐「あれ?何で私の名前知ってんのさ?

・・・・・何処かで会ったっけ?」

 

 

黒猫が喋り出したと思いきや、黒い靄に包まれて一瞬で人間の姿に変身していた。

猫又の時点で普通でないことは容易に想像できたが、まさか人間に変身できるとは思っていなかった咲夜は少し驚いていた。

 

 

咲「一瞬で猫ちゃんが人に・・・」

 

燐「どう?驚いた?

それにしても猫ちゃんだなんて可愛い呼び方だねぇ、ニャンニャン♪」

 

 

耳をピクピク動かしながら猫らしいポーズであどけなさをアピールすると、口を挟むようにリュウトが割って入ってきた。

 

 

リ「そんな事よりも何故こんなにも静かなんだ?

他のペット達も居たはずだろう?」

 

燐「いいよ、そのことは私のご主人のところに着いてから話すから」

 

 

ついて来いと言わんばかりにまた猫又に戻り、ロビーの真ん中の階段を上っていく。

長い廊下の先にある一つの部屋に着くと、ドア越しに(どうぞ)と声が聞こえた。

ノブに手を当てて押すと、その先にはデスクに肘を突く一人の少女が居た。

 

 

さ「ようこそ地霊殿へ、十六夜咲夜さん、博麗リュウトさん。

貴方方をお待ちしていました」

 

咲「は、初めまして・・・ですわ」

 

 

咲夜は突然名前を呼ばれて驚きつつも挨拶を返す。

少女はそんな咲夜をじっと見つめ、クスリと笑って口を開いた。

 

 

さ「フフ、私が貴女の名前を当てたことを不思議に思っていますね?

でも先ずは自己紹介からしておきましょう。

私の名前は古明地さとり、心を読み取る覚妖怪です」

 

咲「心を読む??」

 

さ「そう、貴方が心の中で思っていることを私は文章のように読み取ることが出来るんです。

そのせいで周りから気味悪がられて此処に住み着いたのですがね」

 

 

昔、人間からも妖怪からも嫌われた彼女は、ならず者たちの溜まる地底世界へと逃げ延びてきた。

今では地底世界を統括するほどの権力を得たが、それも心を覗かれる恐怖からくるものである。

 

 

さ「誰も心の中を覗かれて気分の良い者など居ないのです、皆気味悪がって近づこうとしませんでした。

私の妹も同様ですが、あの子はそんな自分の能力に絶望して心の目を閉ざしてしまいました」

 

咲「悲しいお話ですわ・・・」

 

さ「私はどうなってもいい、でも妹だけは救いたかった・・・」

 

 

哀しみに溢れた目には少しだけ涙が流れていた。

が、一つ疑問が生まれた。

 

 

リ「で?その妹は今何処に居るんだ?

心を閉ざしただけで生きているんだろう?」

 

 

彼女の妹は心を閉ざしただけで今でも生きている、そう捉えられるニュアンスだった。

しかしどこにも妹らしき人物が見当たらないのだ。

そのことに関してさとりはこう語った。

 

 

さ「それは私にもわかりません。

時たま帰ってきますが、いつも何処かへ宛てもなく出かけているので。

それに。あの子は心を閉ざしたことで新しい能力が開花したんです」

 

咲「能力が開花?心を読む以外に能力を手に入れたという事ですか?」

 

さ「いいえ、心を読む能力を捨てたことで別の能力が芽生えたのです。

それが(無意識を操る)能力です」

 

 

咲夜はそれを聞いたとき、あまりそのイメージが出来なかった。

無意識というのは操る事が出来ないから無意識なのでは?

それに関してはさとりが簡潔に説明をしてくれた。

 

 

さ「あまりピンと来ていないようですね、説明するのは難しいのですが、あの子は他人の無意識の中に溶け込む事が出来るんです。

それと、私が唯一心が読めない相手でもあります。

行動の全てが無意識なので、ざっくり言うと何も考えていないんです」

 

咲「何だか凄いのか凄くないのかよくわからないですわね」

 

リ「いや、何も考えていないということは全ての行動が予測不可能だという事、これほど手ごわい敵はそういないだろう。

しかし分からない、何故俺たちを率先して屋敷へ入れた?」

 

 

まだ霊烏路空の事は黙っておいた方がいいだろうと思い、そのことを伏せて質問をする。

歴史通りならば八坂神奈子が霊烏路空に八咫烏の力を与えたが扱いきれずに暴走するのだが、今までの経験上何かしらのズレが生じている可能性が高い。

此処は慎重に、未来の事を明るみにしないように会話をしなければならない。

・・・・筈だったのだが、こんなことを考えていれば真っ先にさとりにバレてしまうのは必然だ。

 

 

さ「貴方の考えている通り、私のペットである霊烏路空(れいうじうつほ)の件です。

未来の世界とは違い、あの子は元々ヤタガラスの力を身に宿していますがね」

 

 

あっさりバレてしまった。

 

 

咲「リュウトさん、隠し事は通用しない事忘れていませんでした?」

 

リ「あぁ・・・うっかりしていた」

 

さ「申し訳ありません、嫌でも見えてしまうので自分でもどうしようも無いんです」

 

リ「いや、さとりのせいじゃない。

それで?今空はどういう状態なんだ?」

 

 

それを聞いた瞬間、さとりの顔が急に険しくなる。

どうやら事態はかなり深刻らしく、地底の入り口から暑かったのが関係しているらしい。

既に自分たちの力ではどうしようも出来ない状態で、そこに現れた唯一の助け舟がリュウト達だったというわけだ。

 

 

さ「現在お空(おくう)は体内のエネルギーを上手くコントロールできずに抑えきれなかった力を外へ放出し続けています。

核融合を操る程度の能力らしいのですが、私にはよくわからなくて・・・一体どうすればいいのか」

 

 

核融合とは、現在世界各国で臨床実験が行われている次世代エネルギー機関である核融合炉の中核で起きる現象である。

どういったものか説明するのは簡単で、小さな太陽を人工的に作り出し、その膨大なエネルギーによって発電を行うのだ。

しかしそれを作り出すには一億度以上の熱を持つプラズマ粒子に一秒は耐えられる内壁を必要とし、他にもハイレベルな条件をクリアしなければ発生しない。

しかし成功すれば核分裂と違い、高濃度放射線廃棄物を出さずに膨大なエネルギーが手に入る夢のテクノロジーなのだ。

 

 

リ「厄介だな・・・うかつに近づこうものなら一瞬で消し炭だ」

 

 

太陽の表面は摂氏一万度以上、今お空の周辺でも同じことが起こっているとすれば並の生物では立ち入ることは許されない。

だが、止めなければ幻想郷が火の海になる可能性だってある。

 

 

リ「よし行こう、元から俺たちは空に用があったんだ、断る理由もない」

 

咲「私も同じく同意見ですわ」

 

さ「ありがとう・・・お燐、案内してあげて」

 

 

二人は燐に連れられて、お空の居る地下最深部へと歩を進めた。

そしてたどり着いた場所は・・・本物の灼熱地獄だった。

 

 

to be continue...




核融合に関しては詳しく書くと長くなりそうだったので簡単に纏めました。

誤字報告他、感想や評価まってます。


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地霊殿111話

さあ、始まるざますよ!


現在、お燐に連れられて地下施設へ向かっているリュウト達は、道のりの間で他愛ない話で暇を潰していた。

さとりの部屋からはかなり距離があり、どうしても暇だったのだ

 

 

リ「結局、妹の事は関係なかったんだな」

 

燐「こいし様は気まぐれで動いてるだけだからね、放っておいても勝手に帰ってくるのさ。

第三の目(サードアイ)を閉じたからって別にどうってこと無いしね、強いて言うなら自由奔放すぎるのが困りどころかなぁ」

 

 

コンビナートのキャットウォークのような道を歩きながらそんな話をしていると、最下層の出口から明るい日の光が漏れ出していた。

そして何より、地底に来た中で今が一番暑い。

放射線被曝の危険性が少なく咲夜に身体的影響は無いと思っていたが、これは熱中症の危険が出てきた。

リュウトは歩みを止め、咲夜に一旦引き返すように促した。

 

 

リ「君は戻った方がいい、あまりに暑いから体の水分が一気に吹き飛ぶぞ」

 

咲「ここまで来て私だけ引き返すなんて出来ません、最後までお供致します」

 

リ「しかしなぁ、タクラマカン砂漠なんて比じゃない暑さだぞ?

人間が生存できる環境じゃないんだ、俺はともかく君は此処に居るだけで体力が持っていかれる。

下手をすれば死に至るかもしれないぞ」

 

咲「リュウトさん、私を此処に連れてきたのは私を信頼しているからですよね?

なら私はどんな状況でも貴方と一緒に戦いますわ」

 

リ「・・・わかった、好きにしてくれ。

但し、無理だと感じたら絶対に早めに言ってくれ、手遅れになるかもしれないからな」

 

 

咲夜の意志に根負けし、結局二人で行くことになった。

そんな恋人同士の絆が垣間見えた会話の後にお燐が一言。

 

 

燐「安心しなよ!死体になったら責任持ってあたいが運ぶからさ!」

 

リ「ぶ、物騒な事言うんじゃない!」

 

 

唐突に恐ろしいことを口にし出したお燐を叱る。

さらっとこういう事を平気で言うところが妖怪らしいというかなんというか。

兎も角先に進んでみると、そこには頑強な鋼鉄の内壁で覆われたさらに下へと続く巨大な空洞があり、最下層には地球のマントルがむき出しとなっていて凄まじい熱気があふれ出していた。

 

 

リ「地霊殿の地下にこんな場所があったとは・・・」

 

咲「下にある真っ赤なのはマグマですかね?」

 

燐「そうだよ、あれが灼熱地獄の中心だね。

昔は悪い魂をあの中に突き落としてたみたいだよ?」

 

咲「魂は消えずに灼熱の火に焼かれて苦しむ・・・・恐ろしいですわね」

 

 

真っ赤に燃えるマグマを見下ろした咲夜は恐怖を感じた。

この空間をこんなにも明るく照らすほど赤い・・・そこで彼女はふと上を見上げた。

・・・太陽がある。

 

 

燐「あれが今のお空の現状だよ、まだ完全に太陽になりきってるわけじゃ無いみたいだけどこのままだと危ないみたい」

 

リ「いいや、今のままでも十分危ういぞ、既に核融合炉としての機能を完成させている。

あの状態になってからどれくらいだ?」

 

燐「一週間くらい前・・・だったかな」

 

リ「一週間もあの状態を維持しているのか?もう臨界状態を維持出来るほどのエネルギーがあるという事は・・・」

 

 

今、太陽の中核に居る空は核融合をし続け、常に臨界を保っている。

その生成されたエネルギーは太陽の形を維持するために使っているのだろうが、それ以上の逃げ場を無くしたエネルギーは卵を電子レンジで温めた時のように暴発して殻を破るだろう。

もしそうなれば、核爆発で周囲数十キロメートルを消失させてしまう可能性さえある。

 

 

リ「クソッ、なんとしても貯めたエネルギーを使い果たさせなければ危険だ・・・!」

 

咲「り、リュウトさん!?」

 

 

スペル:ライトニングスパーク(小)

 

 

リュウトはミニ太陽に向けて出力を抑えたレーザーを放つ。

通常の攻撃では太陽の外壁で消滅してしまうからだ。

かといって強すぎると逆に暴発を促すこととなりかねない。

 

 

燐「ちょっと!大丈夫なんだろうね!?」

 

リ「安心しろ、核融合を邪魔するだけだ」

 

 

彼の言う通り、太陽は一瞬怯み、弾けるように消えていった。

その際に飛び散った炎がそこら中に燃え移っていたが、元々燃えているようなものだから気にしない。

火の殻を破り、中から生まれたのは、白いマントを真っ黒な翼に羽織った鴉の少女だった。

 

 

リ「姿を現したな・・・八咫烏」

 

 

瞳にはハイライトが無く、胸に付けた目のようなブローチが赤黒く光っている。

空自体に生気は無いが、胸のブローチが彼女を操っているようだった。

彼女を操っている者の正体こそ、太陽の化身である八咫烏だ。

 

 

空「誰?私の邪魔をするのは」

 

 

その声は何処か冷たく、機械的な口調だった。

簡潔に言うと、心が無い。

 

 

リ「お前が八咫烏だな?どうやって空の体を奪った?」

 

空「図が高い、私は太陽神アマテラスの使徒だ。

気安く名を呼ぶな人げ・・・・お前、人間ではないな?」

 

リ「ご名答、俺は純粋な人間ではなく神と人間の混血だ、それを見破るとは流石は太陽神なだけはある。

 

空「私は神獣であって神ではない。

それすら見破れないとは、やはり所詮人間だな」

 

リ「・・・妙に癇に障る言い方だな」

 

 

彼は八咫烏の上からの口調に少々苛ついたが、そんなことを気にしていては話が進まない。

一旦我慢してリュウトは質問を再度聞いた。

 

 

リ「もう一度聞く、どうやって空の体を奪った?」

 

 

その問いに八咫烏は簡単に答えた。

 

 

空「これはあいつの体ではなく、私とあいつの体だ。

あいつは表で私は裏、そして今あいつは私の力が強くなって完全に精神を抑え込まれている。

遂に念願の地上侵略が出来るのだ・・・誰にも邪魔されてなるものか、太陽の偉大なる力で地上を再び紅蓮の炎で焼き尽くすのだ」

 

リ「随分と物騒な事を計画しているんだな」

 

空「分かったら邪魔しないでくれる?じゃないと・・・消すよ?」

 

 

その瞬間、一気に空間の熱気が上昇し、体感温度は優に50度を超えた。

咲夜はその時、急激な環境の変化で気を失ってしまった。

 

 

バタッ

 

 

リ「咲夜!!」

 

燐「ちょっと、お嬢さん!?

お空止めなよ!さとり様も怒るよ!?」

 

空「空の飼い主か、私は飼われた記憶は無い。

どうしようと知ったことか」

 

 

彼女にとっては関係のない赤の他人がどうなろうが知った事ではないだろう。

しかしこの行動はリュウトの堪忍袋の尾を切った。

 

 

リ「平和的解決を望まない、か・・・いいだろう。

お前がそれを望むなら俺もそうしてやる、咲夜の体調が悪化する前に蹴りをつけよう」

 

 

戦闘態勢に入った空と対峙するようにリュウトは剣を抜く。

地底の太陽と地上の光、両者の対決は今始まった。

 

 

to be continue...




リュウトの抜いた剣というのは忘れがちのグラディウスですね、パチュリーが改修したものを更に改修し、結局また柄だけになりました。
刀身はリュウトの霊力で形成されますが、初号のように太くなく、かなり細くなりました。
例えるならレイピアほどの細さに留めることでエネルギー消費を少なくしています。
戦闘ではこれを活躍させていきたいと思っていますのでよろしくお願いします。

感想、評価を待っております。


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地霊殿112話

魔「ここが地底の入り口かぁ・・・思ったより深いんだな」

 

 

霊夢と魔理沙の真下にあるのは巨大な穴。

リュウト達が入った地底世界への入り口である。

しかし悠長に話などしている暇はない。

 

 

霊「さっさと入るわよ、時間が無いんだから」

 

魔「はいはい、わかってるって。

零夜なら全然余裕だと思うんだけどなぁ」

 

 

ぶつくさ言いながらも霊夢に催促されて素直に従う魔理沙。

二人は重力に身を任せ、穴の中へと吸い込まれるように落ちていった。

 

 

_________________________________

 

 

その頃、最下層ではリュウトが空の怒涛の攻撃に押されかけていた。

 

 

リ「こいつ、エネルギーは底なしか!?」

 

空「どうやら機動力が自慢みたいだけど、此処じゃあそれも出来ないわね」

 

 

レーザーと弾幕を撃ちまくってリュウトを追う空。

その勢いは留まることを知らず、核融合で生まれる無限に近いパワーで圧倒していた。

しかし太陽の光ならリュウトだって吸収することが出来る、が、変身しているだけでエネルギーを消耗するのでキリが無い。

 

 

空「啖呵切っておいてこの様だなんて笑いものね、このまま火力で圧倒してあげるわ」

 

 

空の漆黒色の翅が炎を纏って無数にリュウトに襲い掛かる。

光剣でそれをはじき返し、此方も背部ウイングから光の矢じりを飛ばす。

この狭い空間の中で二人は見事なドッグファイトを繰り広げていた。

 

 

リ「もう少し広いところなら本気を出せるというのに・・・」

 

空「そういうのを負け惜しみっていうのよ、素直に負けを認めなさい」

 

リ「この程度で負けを認めては遊び相手に不足だろう?

もう少し遊んでやるから掛かってこい」

 

空「・・・減らず口も度を過ぎると命が危ういわよ?」

 

 

空は右腕に装備した核融合制御棒の排熱ハッチを開き、内部に重水素を充満させていく。

膨大な熱量によって蒸発した水蒸気と熱気が各部から噴き出し、同時に光が漏れ出した。

拡散レーザーの嵐がリュウトを襲った。

 

 

リ「そんな攻撃に!」

 

空「だったら避けてみな」

 

 

拡散のランダム攻撃だったとしてもリュウトの機動力で容易に回避できる。

しかし、威力が強すぎるレーザーは掠っただけでも十分致命傷になってしまう。

それに気づくのが遅れたリュウトは癖で最低限の回避しかしなかった為に、右へ反れたと同時に左腕が熱せられた。

 

 

リ「うあっ熱!!」

 

 

左腕に意識が集中してしまったリュウトに更に熱線が追い打ちをかける。

砲身から出るレーザーを軸に六本の回転するレーザーが地下施設の壁を容易く溶解させていった。

大きな爆発と蒸気が彼の周りに立ち込める中、レーザーの発射パターンが一気に変わる。

 

 

空「火炎弾、速射形態へ変更」

 

 

砲身が変形し、ハッチが閉じて前方向に六つの穴が開放されると、制御棒が回転して火炎弾が高速で数千発と発射される。

まさにとどめの一撃だ。

 

 

ブオオオオオオオオオオン!

 

 

無限に生み出されるエネルギーを潤沢に使用して敵を圧倒する空。

空から出る太陽の光の全てを吸収できるわけではないリュウトにとっては苦しい戦いだった。

戦闘機のバルカン砲並の速度で発射される弾丸をウイングで防御しつつ、光を補充していくものの、これでは身動きが出来ない。

 

 

リ「くそっ!防御が追いつかん!」

 

 

これではウイングが貫かれると考えたリュウトは急降下し、マグマすれすれを飛行して同時に魔法陣をばら撒く。

個々の陣からは弾幕が発射され、空の砲撃を妨害した。

弾は中々のスピードだが、撹乱の為のものなので威力は大したものではない。

攻撃が止んだすきにリュウトは燐の元へ行き、咲夜を連れて逃げるように促した。

 

 

リ「今のうちに咲夜を連れて脱出しろ!

俺が時間を稼ぐうちにな!」

 

 

彼は鬱陶しそうに弾幕を振り払う空に蹴りを入れてそのまま燐達の居る抜け道の向かい側にあった穴へ押し込む。

此処からは格闘戦となり、剣を両手持ちにして横振りするが、制御棒で防がれてしまった。

 

 

空「少し効いたよ、でも浅かったね」

 

リ「手加減してやったんだ、感謝しろよ?」

 

空「優しいのね、お礼に貴方が得意そうな格闘戦で相手してあげるわ」

 

 

制御棒で光剣を押し返し、距離を取った後、砲身の先端からエネルギーの刃が出現した。

棒自体の長さも相まってかなりの大剣へと変貌を遂げた。

 

 

空「これでどう?」

 

リ「大きさと威力だけが全てではないぞ?」

 

 

しかし、彼の言葉はそのひと振りで一瞬で消え去った。

力任せに横名振に振られた剣は気づいた頃には目の前まで迫っており、僅かにガードが遅れたリュウトは力を入れる前に吹き飛ばされた。

 

 

ガキィィィン!!

 

 

リ「うおっ!?」

 

 

勢いを殺せなかったリュウトはそのまま外壁へ激突し、土煙を上げる。

背中の痛みを気にしている暇もなく、顔を上げれば目の前には空の剣先があった。

 

 

空「油断しすぎよ、そんなので良く今まで生きてこられたものね。

これなら上の奴らも点で大したことなさそう、直ぐに地上支配出来そうね」

 

リ「チッ・・・」

 

 

向けられたら制御棒を片手で抑え込み、空の顔面を掴んだまま手のひらでエネルギーを爆発させる。

顔が炎に包まれた空はよろめき、尻もちをついた。

 

 

空「顔が・・熱い・・・」

 

リ「嘗めんなよ・・・何も知らないくせに」

 

空「やっとそれらしくなってきたじゃないか」

 

 

顔が燃えたまま空は制御棒で再びリュウトへ振リ掛かるが、彼も光剣で斬りかかりそのまま鍔競り合いとなる。

 

 

リ「パワーは互角、スピードは俺の方が上の筈なのに何故・・・何故こうも反応が遅いんだ」

 

 

リュウトは不思議な状態に陥っていた。

能力を行使した彼のスピードは通常よりも遥かに速くなる。

にも関わらず、何故空の攻撃に対応しきれないようになっていた。

その時、彼はあることに気が付いた。

 

 

リ「汗が・・・出ていない?」

 

空「あらあら、大変ねぇ」

 

 

長時間戦っているうちに地下空間の気温は急速に上がっていき、既に空間温度は120度を突破しようとしていた。

彼は知らぬうちに熱中症の症状が出ていたのだ。

 

 

リ「これ以上長引くと俺の体も危険だな。

思った以上に苦戦した結果がこれか・・・・」

 

空「早く決着着けないと危ないんじゃないの?」

 

リ「分かっているさ、だから・・・殺す気で掛かる」

 

 

リュウトは今まで溜めていた光を全て放出する勢いで能力を開放する。

体中が眩い光で覆われ、衝撃波が空間中に響き渡った。

輝く光の粒子が舞い散る中、彼は新たなる姿を手に入れた。

 

 

to be continue...

 



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地霊殿113話

今回はリュウトの変身第二形態が登場します。
一瞬だけ第三形態(仮)にもなりますが、まだ完全ではないし決定案でもないです。
今後出てくるかもわからないものなので悪しからず。
では本編スタート。


眩い光の中から出てきた彼の姿は今までのそれと違った。

背中には左右に三枚の合計六枚のウイングが生え、両腕にも背部ウイングと同様の菱形の結晶体が付き、両足にも同じものが。

更に彼の周囲を囲むように四枚の結晶体が回っていた。

 

 

リ「これは・・・今までこんな状態になったのは初めてだ」

 

 

自らの新たな姿に少し戸惑ったが、全身から解き放たれるパワーはそんな考えを吹き飛ばした。

というよりも、戸惑っている暇などない。

 

 

リ「これならッ!」

 

 

ドガァっ!

 

 

空の胴体にタックルして坑道からそのままメインシャフトまで押し出すと、一気に加速して最下層の溶岩まで突き落とす。

彼も共に溶岩に落ちるが、結晶がバリアとなり灼熱を防いだ。

 

 

リ「此処からいなくなれぇぇぇぇ!!!」

 

 

上昇して下方へ無数の弾幕を発射して溶岩の活動を活発にさせる。

しかし、その中から噴火のごとく勢いで空が脱出してきた。

リュウトへ制御棒を向け、巨大レーザーを放つと、それは天井を突き抜けて地霊殿を半壊させた。

それを瞬間移動で回避されるが、街から見えるそれは正しく天に昇る一柱だった。

更にレーザーを拡散させてシャフトを次々に破壊していき、戦いは激しさを増していった。

 

 

空「私は地上を支配して王として君臨する、我が太陽神の為に!」

 

リ「その神はもう地上には居ない!無意味なんだ!」

 

 

リュウトの回し蹴りを片手で受け止め、空も高速ラッシュの接近戦で挑む。

しかし、先程のようにはいかず、スピードで圧倒的に負けている空は一方的にリュウトにやられるだけだった。

右ストレートで吹き飛ばされた彼女は壁伝いに上昇していき、地獄街まで出た。

その姿を自室の窓から見ていたさとりは至って冷静だった。

 

 

空「屋敷ごと消し去ってやる!」

 

 

スペル:メガフレア

 

 

左手の人差し指を天に掲げて巨大な太陽を創造すると、下に目掛けて放り投げる。

超圧縮されたエネルギーの塊は地霊殿もろともリュウトを蒸発させそうになるが、彼がそんなことを容認するはずがなかった。

彼の周囲を回る四つの光の結晶が大きく広がり魔法陣を形成し、光エネルギーの吸収を開始した。

 

 

ギュオォォォォォォ!!!

 

 

リ「効くかよっ!」

 

空「止まったね!」

 

 

太陽を吸収しているうちに背後へ回った空は不意打ちでリュウトに圧縮エネルギー弾を撃ち込む。

素早くウイングで背中を覆うが、衝撃まで殺すことは出来ず、大きく前方に吹き飛ばされてしまった。

街中まで飛ばされたが、上体を起こして受け身を取り着地する。

その頃にはメガフレアの吸収が終わっていた。

 

 

リ「チャージ完了、本体へ吸収」

 

 

結晶を手元に戻し、エネルギーのチャージを終えると再び周囲を回転し出す。

その間に空が追撃に迫ってくるが、万能ユニットを手に入れたリュウトは存分にその真価を発揮させた。

 

 

空「死ねぇ!」

 

リ「おおおおっ!」

 

 

突っ込んできた空の制御棒を左手で弾きその場から飛び退き、右腕に付いた結晶体をグローブのような形状に変えてストレートを食らわす。

更に瞬間移動して回り込み、飛来する空を空へ蹴り上げると、空中にされるがままの彼女を四肢と周囲を回る結晶を操って360度からレーザーが降りかかるオールレンジ攻撃で留めを差した。

 

 

空「ああああああっ!」

 

 

彼女は体中にレーザーが貫通して悶え苦しむが、その程度であれば瞬時に回復する。

尤も、体力が残っているうちは、の話だが。

 

 

空「出来損ないの神などにィ!!!」

 

リ「いつまでそんな自分勝手なエゴに身を任せるつもりだ!」

 

 

空が翼を大きく広げて翅を飛ばすと、リュウトもウイングを広げて光の矢を発射して相殺させる。

 

 

空「何故だ!何故お前はそこまで必死に地上の奴等を守ろうとする!?

奴等は地上に蔓延る蚤だという事を何故理解しようとしない!

太陽の恵みに感謝しなくなった屑共には一度恐怖を与え、再び太陽神の下に膝まづかせる必要がある!」

 

リ「恐怖という名の支配には何の意味もない!その果てには革命という名で飾られた殺戮が待っている!

人間が今まで刻んできた歴史にはそれが多々ある、お前がしようとしているのはその繰り返しを生むだけの行為だ!

全ての者が太陽の恵みを忘れ去った訳ではない!少なくとも感謝の心を持っている者だっているはずだ!

お前はそんな者達さえ核の恐怖に脅えさせるつもりか!

そんな事をすれば、人間も妖怪も太陽に憎しみしか抱かなくなるぞ!」

 

空「神への信仰心を忘れたゴミになど用は無い!」

 

 

怒りの叫びと共に制御棒に再びエネルギーを収束させ、リュウトに向けて高速レーザーを発射する。

吸収装置の展開が間に合わなかったリュウトは後方へ退避、それを追いかけるかのように空はレーザーを放ったまま制御棒をリュウトに向けて街を破壊していった。

地底は炎に包まれ、そこに住む妖怪たちも纏めて焼き尽くした。

 

 

リ「止めろぉ!そんな一方的なやり方で世界が変わるわけないだろ!」

 

 

見かねたリュウトが再び吸収シールドを張り、レーザーを防ぐ。

ここまで派手な戦いになってしまっては咲夜の無事も確認できない。

身体も限界に達している今、リュウトは最後の掛けに出た。

 

 

リ「時間が無いんだ・・・これで終わりにしてやる!」

 

 

今まで吸収した光を全て体に纏い、身体自体も極限まで光に近い状態にしていく。

淡く発光していた体が眩い光を放つ人型の物体へと変化し、彼は光そのものとなった。

光の消費量が吸収量に比べて圧倒的に多いが為に、姿をほんの数秒しか維持出来ない・・・が、間違いなく今の彼は生物という括りの中では宇宙最速だろう。

 

 

リ「・・・」

 

 

光となった彼は口を利くことも出来ない、しかし取る行動は一つだった。

本来、物体が光の速度で動けば大気の摩擦熱で超爆発が起きるのだが、半エネルギーの集合体となった今の彼なら被害は軽い。

 

 

バゴォォォォォォォォン!!!!

 

 

空「ぐぉええぇぇぇ!!??」

 

 

右手に拳を握ったリュウトは一直線に空へと突撃し、その腹に向けて正拳突きを繰り出した。

腹を抑えて苦しむ彼女に更に追い打ちをかけるように、残像が見えるほどの速度で四方からラッシュをぶつける。

何の抵抗も出来ないまま為す術も無くやられる空。

尚も追撃を止めないリュウトは空にアッパーを食らわせて宙に舞わせ、先回りして踵落とし。

最後に地面激突前に更に先回りして片足でその体を受け止めた処でパワー切れを起こした。

その際、空気との摩擦熱で高温に熱された彼の皮膚からは排熱の為に大量の蒸気が吹き出て更に水分を持っていかれてしまい、結果的にこれ以上の戦闘は続行不可能となってしまった。

 

 

リ「これでダメなら俺はもうおしまいだな・・・」

 

 

力なく倒れる空を前に、リュウトも重力に身をゆだねる。

その時、彼が最も考えたくなかったことが起こった。

 

 

空「う・・・・ぐぉぉ・・・」

 

リ「な・・・何だと!」

 

 

なんとあれだけ甚振ったはずの空が立ち上がったのだ。

もう残されたパワーなどないリュウトは抵抗の術が無い。

 

 

空「よくも、よくもこの私を此処まで傷つけてくれたな!」

 

リ「嘘だろ・・・もうこっちは限界越して何もかもスッカラカンだってのに・・・」

 

 

怒りに顔を歪める空はリュウトに制御棒を突きつけ、能力を再び始動させた。

 

 

空「この場で細胞の一片も残さず消滅させてやる!」

 

 

制御棒は臨界に達し、いつでも発射可能な状態にあった。

防御も回避も出来ない今のリュウトなら簡単に消えてしまうだろう、そしてその瞬間はやってきた。

 

 

リ「すまない咲夜・・・俺は紅魔館に帰れそうにない・・・」

 

空「その魂も肉体と共に滅べぇぇッ!」

 

 

圧縮された核融合弾が何もかもを燃やし尽くそうとしたその時、空の背中に強力な霊力弾が飛来する。

四発の七色に輝く陰陽玉は吸い込まれるように空へと向かい、淡い光と共に大爆発を起こした。

 

 

空「な、何ぃ!?」

 

 

リュウトよりか余裕があるとはいえ既に満身創痍に近い空は爆風に撥ねられて受け身を取ろうとするが、足に踏ん張りが効かずに膝をついた。

 

 

霊「危機一髪ってところかしら?」

 

魔「正にグッドタイミングだな!」

 

空「お前ぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

声が聞こえた上を見上げた彼女の目には、紅白色の巫女と、白黒の魔法使いが映りこんでいた。

 

 

to be continue...




次回からは霊夢&魔理沙ペアVS空となります。
魔理沙の新必殺技も登場するのでお楽しみに!


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地霊殿114話

リュウトが倒れた今、彼女を倒すのは幻想郷の異変解決者コンビしかいません!
彼女達の奮闘をご覧ください。


リュウトへのとどめの一撃を霊夢に邪魔された空は、目いっぱいの脚力を使って飛び上がり、翼を羽ばたかせて殺気を飛ばしながら一直線に彼女たちに突撃した。

 

 

空「邪魔をするなぁっっ!!」

 

魔「おぉおぉ、随分お怒りだぜ?」

 

霊「関係無いわ、やるわよ魔理沙」

 

魔「あぁ、お前はリュウトを回収してやれ、此処は任せろ!」

 

 

二手に分かれて空の突撃を躱すと、霊夢は急降下してリュウトを抱きかかえ、地霊殿へと向かった。

 

 

霊「あの建物の中ならどうにか安全そうね、生きててよ、リュウト」

 

 

抱えたリュウトは意識が無く、全く動かない。

息は辛うじてしているようだが、このまま放っておくのが危険な事に変わりはなかった。

霊夢が地霊殿の正面扉を蹴り開けると、そこにはさとりの姿があった。

 

 

さ「その方はこちらで応急処置を施しておきます、貴方はもう一人の方を助けてあげてください」

 

霊「あんた誰よ?館の主か何か?」

 

さ「そうです、さぁ早く」

 

霊「不本意だけど・・・仕方ないわね、魔理沙に任せっぱなしに出来ないし、頼んだわ」

 

 

そう言うと霊夢はさとりにリュウトを渡し、一気に魔理沙の下へ飛んだ。

 

 

_____________________

 

 

霊夢と二手に分かれた魔理沙は空の突撃を躱すと、後ろへ回り込んで攻撃を仕掛けた。

 

 

魔「まずは様子見でもするか、マジックミサイル発射!」

 

 

魔法陣から直線に飛ぶ魔力弾を連射して、相手がどの程度の強さなのかを計ろうとする。

体力全快の空であればこの程度の攻撃は何ともないだろうが、今の彼女の余力ではそうはいかない。

翼に直撃された空はバランスが崩れて墜落しかけてしまう。

 

 

空「ええい、ダメージが大きすぎた!」

 

魔「リュウトに随分とボコボコにされたみたいだな、余力が残って無いぜ?」

 

空「勘違いするなよ魔法使い、お前一人で私を倒せると思ったら大間違いだぞ」

 

 

左腕を広げて六つのエネルギー弾を生成して魔理沙に投擲する。

咄嗟にその場から回避運動を取るが、空によって操作されたそれは魔理沙を追いかけるように飛行した。

 

 

魔「クソっ、なんだこれ!振り切れない!!」

 

 

アクロバットで弾幕から逃げ切ろうとするも、追尾性能が高くどうしても振り切ることが出来なかった。

どうしたものかと考えていると、ふと思い出した。

 

 

魔「そうだ!身代わり人形!」

 

 

ポケットから取り出したにはアリスから渡された身代わり用の人形。

それを後ろへ勢いよく投げると、今までおい駆けて来ていた弾幕が人形目掛けて飛んでいき、大きな花火となった。

 

 

魔「っしゃあ!決まったぜ!」

 

上海「上手いわよ、魔理沙」

 

魔「うおっ!?いきなり出てくるなよびっくりするじゃんか」

 

 

ガッツポーズを決めていた魔理沙の肩からピョコっと上海人形が顔を出した。

突然喋り出すアリスに驚いて心臓が止まりそうになる。

 

 

ア「まだ油断しちゃだめよ、敵の追撃が来るわ」

 

魔「だったら私の新必殺技で倒すまでだぜ!」

 

 

高速で接近しながら弾幕を放つ空。

経験豊富な魔理沙に単純な弾幕が通用するはずもなく、容易く回避され、魔理沙も応戦した。

 

 

魔「ノンディレクションレーザー!」

 

 

弾幕の雨をすり抜けながら、巨大な魔術の手裏剣を二つ投擲する。

 

 

空「そんな大振りな攻撃に当たるわけないでしょう!」

 

 

二つのノンディレクションレーザーの間をすり抜けるように避けて突き進もうとした空がその間に入った瞬間、魔理沙が開発した新技がさく裂した。

 

 

魔「今だ!マジックマグネトロン!」

 

空「何!?」

 

 

その瞬間、彼女は二つの手裏剣の中心で急に身動きが取れなくなった。

まるで何かに引っかかったような、固定されているような感覚に陥った。

それは名前の通り、魔法で構成された磁場の檻に捕まってしまったのだ。

 

 

魔「どうだ私の新技その一、マジックマグネトロンの威力は!

もう逃げられないぜぇ?更に十八番の!」

 

 

スペル:マスタースパーク

 

 

動けないように固定してから一撃必殺の巨大レーザーを撃ち込む。

直線にしか飛ばないせいで今まで避けられやすいという欠点を持っていたマスタースパークを100%当てることが出来る戦術を完成させたのだ。

今はマジックマグネトロンの維持に魔力を削いでいる為、マスタースパークまでしか撃てないが、慣れればいずれはファイナルスパークもそのまま撃てるようになるだろう。

弱った空ならばマスタースパークでも致命傷だ。

 

 

空「さ、せるものかぁ!!!」

 

 

その場から抜け出せないと悟った空は無理矢理右制御棒をマスタースパークに向け、レーザー砲で相殺する。

威力は劣っていたが、どうにか直撃を免れた。

 

 

魔「こいつまじかよ、マスタースパークを打ち消して防ぎやがった・・・」

 

ア「拙いわ、檻が消えるわよ」

 

 

魔力を消費して枷が外れてしまい、再び空は自由の身となる。

しかし、ここから彼女が形勢逆転というわけにはいかなかった。

 

 

霊「何を手間取ってるのよ、こんな弱ってる相手に」

 

 

リュウトをさとりに預けてから少し観戦していた霊夢が呆れて魔理沙の前に現れた。

此処からは、異変解決タッグでの対決だ。

 

 

霊「蹴散らすわよ、いいわね?」

 

魔「愚門だな、準備は当に出来てるっての!」

 

 

霊夢が先行して空に接近戦を挑み、魔理沙は援護射撃に回る。

この戦法は個人で戦闘分担をすることで集中して攻撃をすることが出来るが、二人の息が合わなければどちらかが一方の攻撃を邪魔することとなる。

しかし、この二人の連携は完璧だ。

 

 

霊「はぁぁっ!」

 

空「ネズミがチョロチョロとっ!」

 

 

接近戦になると悟った空は制御棒をサーベルに変え、急接近する霊夢を両断しようと横に振る。

が、霊夢は空の目の前で宙返りして彼女の頭上を駆ける。

霊夢の背後からはサーフボードのように箒に乗った八卦炉を構えた魔理沙が現れた。

 

 

空「な、何!?」

 

魔「ワイドスパーク、弾けなぁっ!」

 

 

ズギャアン!!

 

 

空「グウウッ!?」

 

 

ワイドレンジ、拡散するマスタースパークを眼前で放ち、体中にダメージが行き渡った空は一瞬動けなくなった。

それを見逃さなかった霊夢は更にアミュレットによる爆撃を行い、彼女を地面に叩きつけた。

地に激突する手前でどうにか体勢を立て直し着地したが、後には追撃が待っていた。

 

 

霊「これで終わりじゃないわよ?」

 

 

自由落下で踵落としを決めた霊夢。

咄嗟に制御棒でガードするが、身体が思うようにバランスを保とうとしない。

ガクッと右足の関節が崩れ、態勢がが総崩れすると、霊夢はすかさず顔面へ蹴りを入れた。

 

 

空「ぐあぁ・・・」

 

霊「決まった!」

 

 

ガードもしていなかった空は膝蹴りを鼻先にもらい、意識が朦朧とし出す。

しかし、それを意地で建て直して霊夢に立ち向かった

 

 

空「小娘どもがぁぁあ!!!」

 

霊「なんて奴なの!?まだ戦う気力が残ってるなんて!?」

 

 

彼女は制御棒を再び霊夢に力任せに振り下ろす。

ビーム刃に当たらないように本体をお祓い棒で受け止め、跳ね返すと、今度は回し蹴りが左から飛んできた。

手で受け、馬飛びのように避けると、霊夢は封魔針を投げつける。

翼に被さったマントを盾代わりに防ぎ、お返しと言わんばかりに制御棒から砲弾を撃ちまくる。

上昇しながら結界を張ってそれを防御した霊夢は魔理沙へ援護射撃を要請した。

 

 

霊「魔理沙!今よ!」

 

魔「グッドポジションってやつじゃないか?」

 

 

霊夢が上昇して逃げた後、空もそれを追おうとするが、彼女の上空には5個の赤い小ビンが降ってきていた。

 

 

魔「クラスターボムの実験体にしてやるぜ!」

 

 

空の頭上で急に爆発したビンは、無数の魔力弾を豪雨のように地面に撃ちつける。

さながら戦争に使われたクラスター爆弾のようだった。

 

 

ア「魔理沙、少しやりすぎたんじゃない?」

 

魔「そんなことないだろ?目の前でマスパよりよっぽど優しいぜ」

 

 

爆煙で姿が見えなくなってしまったが、ダメージは相当の筈だ。

流石にもう方が着いたと考えた魔理沙が降下して様子を見ようとした時、煙の中から何かが勢いよく上昇してきた。

 

 

魔「な、なんだぁ!?」

 

 

飛び出してきたのは察しの通り、汗を流して息を切らしたボロボロの空だった。

どうやら致命傷になり得なかったようで、満身創痍ではあるものの、その目はまだ諦めていなかった。

 

 

空「はぁ・・・はぁ・・・クッソォォォォ!」

 

 

ヤケ糞になった空は天を指差し、指先にエネルギーを集中させる。

小さな光が急激に肥大化し、最終的にリュウトに放った太陽の数十倍ある超巨大人工太陽となった。

 

 

スペル:テラフレア

 

 

空「計画は達成されなかったが、こいつで何もかも消す!

これで地下の溶岩を刺激して大噴火だ!アッハハハハハ!!!」

 

霊「なんですって!?」

 

魔「こいつ正気か!?」

 

ア「二人とも早く阻止して!もしあいつの言う通りの事態になったら幻想郷なんて一溜りも無いわ!!」

 

 

アリスの指示で二人は最大火力を放とうとするが、空がそれを脅すように止めに入った。

 

 

空「これを破壊しようとしてるならやめた方がいいわ!

この太陽のエネルギーならどんな攻撃だって吸収してしまう!

かと言って私に攻撃すればこいつは制御を失ってその場で何もかも巻き込んで大爆発!みんな仲良くあの世行きよ!

アンタ達は何も出来ずにただ黙って死ぬのを待つか、早く逃げる事ね!

尤も、何処に逃げても無駄だけどね!アッハハハ!」

 

 

霊「鬼封陣で結界に閉じ込める・・・いえダメね、強力過ぎて封印出来ないわ、完全にお手上げね」

 

魔「ふざけんな!こんなあっさり幻想郷の運命投げ出して良い訳ないだろ!

リュウトなら絶対諦めない筈だぜ、だから私達も最後まで諦める訳にはいかねぇ!」

 

霊「でも方法が何も・・・」

 

 

霊夢が諦めようとした瞬間、巫女服のポケットから声がした。

 

 

紫{しょうがない、私の出番ね}

 

 

 

to be continue...




とうとうあの方が人肌脱ぐ時がやって来ました。
次回は一気に形勢逆転、新しい必殺技もでてきます、おたのしみに。

感想、評価待ってます!!


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地霊殿115話

紫さんヘルプミー!!!


紫{しょうがない、私の出番ね}

 

霊「え?」

 

 

聞こえてきたのは紫の声。

その瞬間、突如上空に巨大な異空間への門が開いた。

両端がリボンで結ばれており、中には無数の目玉が浮いている気持ちの悪い代物だったが、二人はそれに見覚えがあった。

 

 

魔「紫のスキマか!?あんなデカいのは初めて見たぜ・・・」

 

空「そ、そんな馬鹿な!?」

 

 

スキマは徐々に下へ降りていき、テラフレアを虚空の中に飲み込んでいく。

覆いかぶさったスキマが口を閉じ、まるで捕食し終わって満足したかのように消えると、そこには何も残されてはいなかった。

 

 

 

魔「おぉ!流石紫だぜ!」

 

紫{あなた達もまだまだね、今回は助けてあげたからあとは自分たちでどうにかしなさいな}

 

霊「・・・フン」

 

 

素直じゃない霊夢はさておき、ほぼ戦闘能力が無くなった空をどうするかはこの二人に委ねられた。

 

 

霊「アンタ、まだ戦うつもり?

言っとくけど、これ以上やるつもりだったら私達も手加減なしで徹底的にやるわよ?」

 

空「まさか・・・私がこんな屈辱を味わうことになるなんて・・・。いいわ、ここまで来たんだから・・・徹底的にやろうじゃないの・・・・」

 

 

ふらふらと飛びながら再び二人に制御棒を向け、核融合の力で最後の一発を撃とうとする。

能力は使えても体が持たない、制御棒も故障寸前の状態ではせいぜい一発撃つのが限界なのだ。

 

 

空「特大花火は消えたけど、この一発でケリをつけるわ」

 

 

半壊の制御棒を左手で抑え、照準を合わせる。収束していくエネルギーの圧で徐々に崩壊していくが、そんなことは構わない。

・・・・発射体制が整った。

 

 

空「食らえ核融合レーザー!」

 

霊「私の後ろに隠れなさい魔理沙!博麗二重結界ッ!」

 

 

放たれたレーザーは霊夢に襲い掛かり、結界の傘に直撃する。

傘に遮られたレーザーは拡散して地に降りかかるが、着実に結界を破壊しつつあった。

しかし、破壊される事は想定のうち。本命の一撃を撃ち込むために魔理沙が反撃の狼煙を上げようとしていた。

 

 

魔「霊夢、時間稼ぎは十分だぜ!

穿て!魔砲ファイナルスパーク!!」

 

 

八卦炉に溜まった魔力を全て開放し、究極の一撃を放つ。

結界は破られたが、魔法のレーザーは科学のレーザーを押し返していった。

 

 

空「そんな!これを押し返すなんて!」

 

魔「私のとっておきの大技なんだ、当たり前じゃねぇか!

んじゃあとは頼むぜ?霊夢!」

 

霊「任せなさい、きついの一発お見舞いするわよ!」

 

 

スペル:夢想天生

 

 

二つの砲が消滅し、強い光を放つ。

目くらましとなって空の視界を遮り、目を開けた時には既に霊夢が眼前に迫っていた。

白く輝くその身体はさながら神話に出てくるような存在に見えた。

 

 

霊「これはアンタが望んだことよ、後悔しない事ね」

 

空「私が・・・負ける?太陽神の使徒である私が・・・?」

 

霊「まずは一つ目!」

 

 

右ストレートで空の頬を殴ると、霊夢の周りを陰陽玉が回り出す。

 

 

霊「二つ、三つ、四つっ!」

 

 

最初は一つだけだった陰陽玉が、霊夢が左ストレート、右左回し蹴りと攻撃する度に一つずつ増えていく。

続けて腹に掌底、祓い棒で左回転横払い。

七連撃と同時に陰陽玉も七つとなった。

 

 

霊「これを撃たれるのはアンタが初めてだけど、死なない事を祈るわ」

 

 

玉の輝きが一層増し、一寸先も見れないほどの光と共に空は弾幕の大爆発に巻き込まれた。

その光は、今まで地底を照らしてきた何よりも明るく美しく輝いていた。

 

 

_____________________

 

 

リ「う・・・此処は、地底・・・・じゃないのか?」

 

 

目を覚ました時、彼はもう地底には居なかった。

気が付いたら布団を被って和室で寝ていたのだから。

しかし、知らない場所ではなかった。

 

 

リ「・・・神社か?」

 

 

そう、彼が居るのは博麗神社だ。

どうやら戦いは終わったようで、八咫烏の気配も感じない。

なら誰が此処へ運んできたのだろうか?咲夜だろうか?

 

 

リ「いや、咲夜じゃないな、おばあちゃんか?」

 

 

気分は良かったので布団から起き上がり、木洩れ日が透ける襖を開ける。

強い日差しに目が眩み、反射的に手で日指を作るが、その姿を間近で見ていた者が居た。

 

 

魔「お?リュウトもう大丈夫なのか?

お前、熱中症なんだからもう少し寝た方が良いんじゃないか?」

 

リ「魔理沙が何で此処に居るんだ?」

 

 

縁側で裸足を伸ばす魔理沙が振り向きながら心配そうに言ってきたので、神社に居る理由を何となく聞いてみる。

彼が倒れる寸前に幽かに見たのは曾祖母の霊夢だけだった筈。

 

 

魔「私も一緒に行ったんだよ、お前気が付いてなかったのかぁ?」

 

リ「俺が見たのはばあちゃんだけだ、その後は全く覚えていない」

 

魔「ちぇー!折角私の新技披露したってのによぉ!」

 

 

新技というワードが少し気になったが、今はそれどころではない。

 

 

リ「そうだ・・・咲夜はどうしたんだ?」

 

 

一緒に地底へ行った筈の咲夜はどうしたのか。

紅魔館へ戻ったのだろうか?だとすれば何故自分だけ此処に居るのだろうか?

 

 

魔「あぁ、あいつなら温泉に居るぜ」

 

リ「温泉?そんなもの幻想郷にあったか?」

 

魔「地底の異変があった時に間欠泉が噴き出してな?私らはそれを見て地底に向かったんだぜ」

 

 

まさか地上でそんな事が起こっていたとは知らなかったリュウトは、少しその温泉に興味が湧いた。

 

 

魔「行ってみるか?今なら私の箒でニケツしてやるぜ?」

 

リ「そうだな・・・丁度風呂に入りたい気分だし、頼んでもいいか?」

 

魔「よし来た!なら出発だ!」

 

 

縁側から降りて自前の箒に跨る魔理沙の後ろに彼も跨り、振り落とされないように肩にしっかりと掴まる。

それを確認した魔理沙は出発の合図と共に徐々に上昇し、間欠泉の或る山の麓へと急加速した。

 

 

リ「お、おい速すぎないか?そんなに急いで無いんだが」

 

魔「何言ってんだ!咲夜も居るんだぜ?温泉と言ったら覗きが醍醐味だろうが!

早くしねえと湯から上がっちまうぜ!もっと飛ばすからしっかり掴まってろよな!」

 

リ「まだ速くなるのか!?うぉあ!!」

 

 

突然スピードを上げられたせいで手を離しそうになってしまい、思わず魔理沙の胴体にしがみ付いてしまう。

別にそんな気はなかったのだが、急な事だったので不可抗力というやつだ。

そんな魔理沙の服からは女の子らしいいい香りがした。咲夜とはまた違った香りだ。

 

 

魔「うわっ!変なとこ触るなよ!くすぐったい!」

 

リ「そんなこと言うんだったら急にスピード上げるな!今の俺は力を使い切って碌に飛ぶことも出来ないんだぞ!?」

 

魔「お前いつもこれより速いスピードで飛んでるくせに何言ってるんだ!」

 

リ「それとこれとは別だぁー!」

 

 

車なら友達の運転は怖いとよく言うが、まさか箒でも同じとは思わなかったリュウトは、二度と魔理沙の箒に乗らないと心に誓った。

 

 

_____________________

 

 

リ「なぁ・・・本当に覗く気か?」

 

魔「お前此処で覗かなかったら男が廃るってもんだぞ?

ほら、あと少しだから頑張れって!」

 

 

温泉に着く手前の森に降りた二人は、木々の中をくぐって女湯に向かう最中だった。

何故か魔理沙が乗り気なのが意味不明だが、彼も外見は嫌がっていそうでも内心満更でもなかったりする。

まぁ不安要素だらけな事に変わりないのだが。

 

 

リ「因みに咲夜の他に誰が居るんだ?」

 

魔「霊夢と零夜だけだな、あとは知らねーや」

 

リ「・・・もし仮に見つかった場合はどうするんだ?」

 

魔「全力で逃げる!!!」

 

リ「・・・・・」

 

 

下手をすれば殺されるんじゃないかと最悪の事態を考えて恐怖がこみ上げてきたリュウトは、捕まった場合の弁明の言葉を今のうちに幾つか用意しておくことにした。

・・・問答無用で処刑されそうな気もするが。

暫く歩いていると、突如目の前に竹で出来た高い塀が立ちふさがってきた。恐らくこの壁の向こうが女湯なのだろう。

 

 

リ「結構高いな、どうする気だ?」

 

魔「そりゃあ、肩車に決まってるだろ」

 

リ「俺が下か?」

 

魔「当たり前だろ」

 

 

どうも納得がいかなかったが、渋々腰を下ろし、魔理沙を股から担いでやる。

思いの外体重の軽かったので、ヒョイと持ち上げてやると、彼女は塀の向こうの世界を小声で実況し始めた。

 

 

魔「う~ん、湯煙で視界が悪くて良く見えないぜ」

 

リ「何処まで見えてるんだ?」

 

魔「手前までしか見えないぜ、人影らしきものは見えるんだが・・・・」

 

 

なんてじれったい説明だ。彼は魔理沙の曖昧な返答に歯ぎしりする。

いざ目の前に女湯が来るとやはり非合法に覗くという背徳感に興奮してくるものだ。

ベッドの上で見る裸体とそれでは見たときの興奮度合いが違う・・・と何を言わせているのか。

しかし、健全な男である前に紳士でありたい。彼はいったん魔理沙を下ろして自分の行為に対してもう一度胸に問いかけた。

 

 

魔「どうしたんだ?まだ目当てのものは拝めてないぜ?」

 

リ「魔理沙、もうここらで止めにしておかないか?見れないならそれで構わないさ」

 

魔「おいおい、今更弱気になってどうすんだよ?もうすぐで桃源郷が見られるんだぜ?」

 

リ「しかし・・・無断で裸を見られる相手側の身にもなってみろ、いい気分ではないだろう?」

 

魔「いいか、世の中には{バレなきゃ犯罪じゃあない}って言葉があるんだぜ。

私達が見ていることを悟られなきゃ誰も傷付かないだろ?そういう事だ」

 

?「へぇ、じゃあバレたときのリスクだって当然考えてるわけだ」

 

魔「バレたときは全力で逃げまくるに決まってんだろ?って、は?」

 

 

背後から何者かに肩をがっしり掴まれる。

しかし、魔理沙には背後で自分の肩を掴んで鬼の形相でこちらを睨みつけているであろう正体は解っていた。

 

 

霊「じゃあ、逃げられなかった時はどうするつもり?」

 

魔「こ・・・これはこれは霊夢さん。私は知ってるんだぜ、霊夢は慈悲深き心の持ち主だから、覗きだったとしてもどうにか許してくれるって・・・」

 

霊「そうね、私は優しいから」

 

 

彼女の登場に一気に肝を冷やした魔理沙だったが、その言葉に安堵の息を漏らす

が、世の中はそんなに甘くは無い。

 

 

霊「甚振りはしないわ・・・でもお仕置きは必要だと思うの」

 

魔「・・・へ?」

 

霊「スゥー・・・・封印っ!!!」

 

 

油断していた魔理沙はそのまま封印陣の中へ入れられてしまい、身動きが取れなくなってしまう。

霊夢がパンと手を合わせると、陣に閉じ込められた彼女はまるで上から巨大掃除機で吸われるかのように身体が上に引っ張られ、光の彼方へと消えていく。

封印陣が消えると、空から栓の付いた小さな御猪口が落ちてきた。

 

 

霊「ふぅ、アンタはこの中でしっかり反省しなさい」

 

 

間近でその光景を見ていたリュウトの顔は青ざめ、ガタガタと体が震えていた。

あの魔理沙をいとも簡単に封印してしまった。呆気なく。

 

 

霊「さぁて、アンタはどんなお仕置きが良いかしら?」

 

リ「は・・・はは・・」

 

 

この後、リュウトは今世紀最大の土下座と謝罪でどうにか許してもらえたのだが、封印された魔理沙はその後アリスに譲渡され、三日ほどして漸く出してもらえたらしい。

出た直後、魔理沙は語った。巫女を怒らせてはならないと。

 

 

to be continue...




どの辺で区切ろうか迷ってたら少し長くなってしまいました。
次回で地霊殿編は終了です。感想、評価待ってます!!


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地霊殿116話

霊夢達が去った後の出来事です。かなり短いですが切りのいい所で区切った結果です。


~地霊殿(半壊)~

 

 

空「あ・・・お燐」

 

燐「お空!本当にお空なの!?」

 

空「そうだけど・・・どうしたの?あと凄く体が痛いよ」

 

 

先の戦闘で半分以上が倒壊してしまった地霊殿。

燐は瓦礫に寝そべる空が目を覚ました瞬間に力強く抱きしめた。

 

 

空「うにゅ!?お燐!痛い痛い痛い!」

 

燐「あ、ごめん」

 

 

身体中傷だらけのケガ人が苦痛を訴えると、燐は半ば冷静になって止める。先程からの口調と言い、どうやら空の中に居る八咫烏が行っていた精神支配は治まったようだ。

胸のブローチが割れたりしていないところを見ると、八咫烏は未だに健在なのだろう。

 

 

燐「お空、能力は使える?」

 

空「うーん、今は使え無さそう。何だか力が全然入らないもん」

 

燐「そっか・・・」

 

 

内心、燐は安堵していた。あの恐ろしい力は空には有り余り過ぎている。

あんなものを本気で震えば簡単に世界を破滅させてしまうからだ。彼女は今回の騒動でそれを確信した。

出来れば八咫烏の力も捨てて欲しいのだが、それを当の本人は望まなかった。

 

 

燐「ねぇお空、もうそのブローチは外そうよ。あたいもう友達が傷つくところなんて見たくない」

 

空「お燐・・・」

 

燐「アンタは知らないだろうけど、この騒動で地獄街は大打撃を受けて死んだ奴だっているかもしれない。全部八咫烏がやったことだけど、責められるのはお空だろうよ。

そうなればどんな酷い仕打ちを受けるかわかったもんじゃない、あの力は一人が持つには大きすぎるんだよ」

 

空「私はそれでも手放すつもりはないよ」

 

燐「何でさ!」

 

空「だって、私が八咫烏様を手放したら誰かが悪い事に使うかもしれないじゃん」

 

 

至極単純で何も考えていないような答えに燐は激高する。しかし、彼女には彼女なりの考えがあり、この異変の真実を知った。

 

 

空「こんな大きな力は私みたいなおバカが持ってないと危ないんだよ。私にはこの力を悪い事に使おうと考える頭も無いからね!」

 

燐「でも・・・」

 

空「それにね、八咫烏様は私に言ったんだ」

 

 

彼女は、自分が精神支配を受ける直前に八咫烏から言われた言葉を、彼女なりに解釈した内容で燐に明かした。

 

 

空「お日様の神様がもうすぐ此処に来るから、その為の準備をしなきゃいけないって」

 

燐「それって天照大御神の事かい?」

 

空「うーん・・・難しい事よくわかんないけど多分そうだと思う!」

 

燐「どういう事なんだろ?」

 

さ「その件、詳しく教えてもらえる?お空?」

 

 

静かに歩み寄ってきた飼い主が、空に再び聞き直す。

というのも、さとりは彼女が口にした内容が引っかかる話を知っているからだ。

八咫烏の言葉が本当なのだとしたら、彼は本物だという事になる。

 

 

燐「さとり様、この意味が解るんですか?」

 

さ「思い当たる節が一つだけあるの。となると、近い将来にこれよりももっと大きな惨劇が起こる可能性があるわね」

 

空「うにゅ?」

 

 

二人には飼い主が何を言っているのかまるで分らなかったが、さとりは既に危機感を覚えていた。

博麗リュウトの記憶に刻まれた、百数十年後の悲劇の再来に。

 

 

 

地霊殿・完




これで地霊殿編は終了となります。かなり長いことやっていましたが内容がイマイチだったような。
次回からは日常編にもどります。
感想、評価待ってます!!


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117話

日常回です。今回はリュウトサイドの話です。
彼が最近悩んでいることについて書きました。では本編スタート


例の異変が一段落して、少しだけ日にちが経った。今頃は地獄街の修理で勇儀達が大忙しだろう。

リュウトは既に咲夜と共に紅魔館へ戻り、再び平和な日常を歩もうとしていた。

今日は珍しいこともあるようで、パチュリーから茶会の誘いを受けていた。図書館の扉を開くと、中心の大きなスペースに置かれた丸テーブルにてパチュリーと小悪魔が待ち侘びていた。

 

 

小「準備は出来ていますよ!今日はダージリンでレモンティーを作りました!

砂糖とミルクは要りますか?」

 

リ「砂糖だけ貰おう」

 

 

気を利かせた小悪魔の質問に答え、彼も席に着く。

純白のテーブルクロスの上には、恐らく咲夜お手製であろうマカロンが茶菓子として置かれていた。

 

 

パ「こうして静かな席で話をするのも久しぶりな気がするわ」

 

リ「そうだな。何時もは咲夜と行動しているし、最近は異変で留守にしていたから」

 

 

パチュリーが言うのも無理ないだろう。彼女と関わるときと言えば、せいぜい武器の改良か若しくは如何わしい実験に巻き込まれたときくらいだ。

あまり良い印象は無い。

小悪魔が横からティーカップをそっとテーブルに置き、振り向くと彼女はニコリと微笑んだ。

 

 

リ「ありがとう、君も座ったらどうだ?」

 

小「宜しいのですか?」

 

パ「貴女だけ立たせたままは私も落ちつかないもの、座りなさい」

 

小「ではお言葉に甘えて」

 

 

生憎テーブルには二つしか椅子が無かった為、彼女は近場から魔法でチェアを自分のところまで持って来る。

何とも便利に魔法を使いこなすものだ。

 

 

小「これくらいは普通ですよ、魔理沙さんだってこの程度の事なら造作もないでしょう」

 

リ「魔理沙がこんな繊細な事出来そうには見えないな」

 

パ「女湯を覗こうとするくらいだものね、女なのに何で覗こうと思ったのかしら?」

 

リ「それは知らん」

 

パ「一緒に居たくせに、ついでに咲夜の入浴シーンを覗いてやろうって釣られたんでしょ?」

 

リ「何故もう話が広まってるんだ・・・」

 

 

確かに最初は考えていた。しかしいざ目の前に来てから思い留まったし、結果として覗いていない。

この二人に言ったところで全く聞き入れないのだろうが。

 

 

パ「貴方って結構むっつりスケベね」

 

小「リュウトさん・・・咲夜さんに欲求不満なんですか・・・」

 

リ「ち、違う!俺と咲夜はそんな関係ではない!」

 

 

彼は二人に責められて顔を真っ赤にしながら声を荒げる。

ただ、この時パチュリーは思った。

 

 

パ「ねえ、別に付き合ってるんだからそういう事はしていいんじゃない?」

 

 

リュウトや咲夜の年齢の恋人同士ならばそういった営みをするのが普通なのだと思うが、どうにも今までそういった事は一度もなかったようで、せいぜいキス止まり。健全と言われればそうかもしれないが、発展が無いのは少々拙い気もする。

 

 

リ「別に彼女も望んでいなさそうだし、良いんじゃないか?」

 

小「甘いですよリュウトさん。咲夜さんだって女の子なんです、そんな露骨なアピールなんて恥ずかしくて出来ないに決まっています!私が思うに咲夜さんはその傾向が人一倍強そうですね」

 

リ「そ、そうなのか?」

 

小「メイド長という役柄からしてみても、やはりやりにくいと思いますよ?」

 

 

同じ女性だからだろうか、説得力のある説明にリュウトも頷くしかなかった。確かに言われてみれば、彼には何かと思い当たる処があったのだ。

 

 

リ「そういえば地底で泊った時に咲夜の下着が妙に気合の入ったヤツだったな・・・」

 

小「そういうのがサインなんですよ!ホントに鈍感なんですね!

それともただチキンなだけですか!?」

 

リ「そ、そこまで言わなくても良いじゃないか・・・」

 

 

小悪魔にコテンパンに言われてしまい、肩を窄める。

女の気持ちを分かっていないという事は分かるが、それでも少し落ち込んでしまう。

パチュリーも同意見なのだろうか?

 

 

パ「私は魔女だからそんなものに興味は無いわ。あるとすればそうね・・・貴方と咲夜の子供がきになるかしら」

 

リ「話が飛躍しすぎだ!それならひいじいちゃんとひいばあちゃんだろ!」

 

パ「それもそうね、あの二人の子供も気になるわ」

 

 

魔女だから恋愛に関しては無頓着というのも偏見な気がするが、現に目の前に無頓着な魔女が存在するから何とも言えない。

流石にアリスは違うと思うが。

というか、子供が気になるというのは可愛いかどうかという意味なのだろうか。否、確実に能力やらの遺伝的な部分だろう。

彼女には悪いが、もし子供が出来てもあまり関わらさせないようにしよう。

 

 

パ「今、もし子供が出来ても私にはかかわらせたくないと思ったでしょう」

 

リ「心を読むな!」

 

 

読心術でもあるのかこの女は!?図星を突かれたリュウトは思わず口に出して突っ込んでしまう。

 

 

パ「安心しなさい、流石の私も子供を研究対象にしようなんて考えないわ」

 

 

本当だろうなぁと、若干疑いの目を向けてしまうが、別に悪気があるわけではない。もうそういう風にしか見れないだけだ。

小悪魔もよくこんなヤツと四六時中一緒に居れるものだ、こうもポンポンとブラックジョークを連発されると身が持たない。しかもそれ全てが本当にしでかしそうなものばかりなので嘘と本当の見分けが付かなくなってくる。

 

 

リ「小悪魔は毎日こんなやり取りをしてるのか?精神疲労が半端じゃないんだが」

 

小「私は悪魔なのでこの程度では何とも思いませんよ」

 

リ「さ・・・流石悪魔」

 

 

感服せざるを得ない、小悪魔といえど侮ってはいけないという事だろうか。彼女を怒らせ無いように常日頃から気をつけなければいけなさそうだ。

今更だが、彼女は一体何の種族の悪魔なのだろうか?こういうのは本人に直接聞いた方が早い。

 

 

リ「なぁ、今更聞くのも何なんだが小悪魔は種族は何なんだ?」

 

小「あ・・・それは・・・」

 

 

その言葉を聞いた瞬間からたじろぐ小悪魔。紅茶を一口つけたパチュリーがニヤリと笑い、口出ししてきた。

 

 

パ「教えてあげるわ、この子はサキュバスよ」

 

小「わぁぁぁぁ!!!何で言うんですか!?」

 

パ「今は此処の制服を着てるけどね、最初召喚したときはそれはそれは際どいエロッエロな恰好だったわよ」

 

リ「ま、マジか・・・」

 

小「ちょっとォォォォォォ!?

リュウトさんダメです!想像しないでください!忘れてくださいぃぃぃ!!!」

 

 

今世紀最大に取り乱している小悪魔を見ながらパチュリーは満足そうにクッキーをほおばる。

まさか、小悪魔がパチュリーのブラックジョーク程度では動じないなどと言ったから仕返しにバラしたのだろうか。だとしたら相当陰険である。

咲夜も日頃、こんな目に遭わされていないだろうか心配になってきた。

 

 

パ「そうだわ、リュウト貴方、咲夜とベッドインするために小悪魔から色々教えてもらえば?どうせ童貞でしょ?」

 

リ「涼しげな顔でなんてことを言うんだお前は!」

 

パ「事実でしょ。そうでなければこんなに奥手じゃないわよ。

まぁ小悪魔に任せてみなさい、きっと上手くいくわ」

 

小「え?あ、はい。私もこれでもプロなのでそちらの方面は任せてください。

でもこの件は他の方には内密にしててくださいね、特に魔理沙さんや文さんあたりには絶対に言わないでください!」

 

リ「あ、あぁ。肝に銘じよう」

 

 

素性を余程知られたくないらしく、リュウトに対して強く念を押す小悪魔。

物凄い剣幕で迫るので、流石のリュウトもこれに関しては最重要機密としておくことにした。

こうして彼は、元サキュバスからの助言や禁断のアイテムなどで咲夜を堕とす大作戦を決行することとなった。

 

 

to be continue...




前々から言われていた事ですね。咲夜からのさりげないアピールにも気づかないのが彼らしい言うかなんというか。
次回は咲夜側の話を書きたいと思います。
感想、評価待ってます!


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118話

前回の続きです。時間が重なった咲夜サイドの話となります。
それでは本編スタート。


リュウトが図書館で珍しい面子茶会をしている最中、紅魔館ではもう一つのお茶会が行われていた。

それは、何時ものようにレミリアがバルコニーでティータイムを愉しんでいる時だった。

 

 

レミ「咲夜、今日の茶葉は何かしら?」

 

咲「小悪魔さんがダージリンを淹れていたので私も真似させていただきました。

お二方とも、砂糖とミルクは要りますでしょうか?」

 

フ「砂糖欲しい!二つ入れて!」

 

 

最近のフランあまり友達と遊ぶことが無く、姉のレミリアに付き合う事が多くなってきていた。

特に友人関係に問題があるわけではなく、彼女はここのところ勉学に力を入れており、主に科学に興味を示しているのだ。

その為か、常日頃から白衣を着て過ごすようになってきている。今日もお気に入りの白衣に身を包んでのご登場だ。

 

 

咲「フラン様、白衣がお似合いになられてきましたね」

 

フ「えぇ?そうかなぁ?」

 

レミ「いつもの服に白衣だから違和感が抜けないわね」

 

 

レミリアの意見は尤もで、今まで着ていたフリル付きの赤いミニスカートの上から白衣なんて来ているものだからどうも子供のごっこ遊び間が抜けないのだ。

落ち着いた服で合わせればいい話なのだが、そこは年頃の女の子。やはり周りの友達の目もあり、まだまだ可愛い服を着たいようだ。

椅子に座って足をプラプラさせている姿が実に少女らしい。

 

 

フ「私の話なんてどうだっていいよ。それよりも咲夜の話聞きたい!」

 

咲「え・・・どういったお話をしたら宜しいのでしょうか?」

 

 

唐突に話を振られた咲夜は戸惑いながらもフランに尋ねると、彼女はとんでもない事を口にし始めた。

 

 

フ「リュウトとどこまでいったかって話。エッチはしたの?」

 

咲「は、はいぃぃぃぃぃ!!??」

 

 

茹蛸のように顔を真っ赤に燃やしながら咲夜は取り乱し、持っていた御盆を落としてしまう。

大きな金属音がバルコニーに響くが、そんな音は今の咲夜には聞こえない。もう彼女の精神はそれどころではないのだ。

一体何処からこんな話が出てきたのだろうか。

 

 

咲「何故そんなことを聞かれるのですか・・・?」

 

フ「お姉ちゃんから聞いた。咲夜が勝負に出たって」

 

咲「お嬢様!!!」

 

 

またアンタか。咲夜はいい加減にしてほしいと怒鳴りつけるも、レミリアはそれを面白がって更に茶化す。

 

 

レミ「いえね?貴女達が帰ってきたら赤飯炊かなくちゃって準備してたんだけど、何で赤飯なのか聞かれたからつい言っちゃった」

 

咲「私とリュウトさんが及んでなかったらどうする気だったんです?」

 

レミ「まぁ別にいいじゃない。何?やったの?」

 

咲「やってません!」

 

レミ「なんだ、それは残念」

 

フ「咲夜のハジメテは未だ健在かぁ」

 

咲「そんなふしだらな発言はするものではありません!はしたないですよ!」

 

 

フランが何処でこんな隠語を知っているのかはさておいて、リュウトとの体の関係をこうも求められると恥ずかしくもなる。

 

 

レミ「咲夜、顔が真っ赤だけど大丈夫?」

 

咲「それもこれも全てお嬢様のせいではありませんか・・・・」

 

フ「まぁまぁそんなに気を落とさないでよ、私が作ったとっておきのものあげるからさ」

 

咲「とっておき?」

 

 

フランはにやりと笑うと、スカートの右ポケットからピンク色のキラキラと光る液体の入った小瓶を取り出して見せた。何やら怪しいにおいがするが、一体中身は何なのだろうか。

咲夜が顔を近づけて観察すると、それが妖艶な魅力を持っている事が感じられた。

 

 

咲「フラン様、これは一体?」

 

フ「図書館で偶然見つけた本に記されていた究極の媚薬だよ」

 

咲「媚薬?」

 

フ「エッチくなるクスリなんだって」

 

咲「なんてものを作ってるんですか!?」

 

フ「塗っても良し飲んでも良し。何なら嗅がせるだけでも良し、しかも効果絶大!遠慮せずに受け取ってよ」

 

 

咲夜の突っ込みも空しくフランは半ば強引にそれを咲夜に手渡す。これでリュウトを落とすしかないと。

しかし、突然そんなもの渡されても困る。

 

 

咲「こんな危険なもの私は要りません!第一リュウトさんを薬で魅了するなんて出来ません!!」

 

レミ「そうよフラン・・・この薬は罪よ。もしこれを使えばエロ同人みたいな展開になるのは目に見えてるわ」

 

 

深刻そうな顔をしながらゲンドウポーズで語りかけてくるが、その中に聞きなれないワードが入ってきた。

その{えろどーじん}というのが何なのか咲夜には想像がつかなかったが、碌な言葉でないことは今までの会話で理解出来た。

 

 

咲「そのよく分からない展開とやらは兎も角、確かに効力が強いと何かと危険です。早急に処分する事をお勧めしますわ」

 

フ「原液で使えば確かに強いけど、じゃあ薄めればいいじゃん」

 

レミ「薄めて使えるなら話は別ね。咲夜、今晩使いなさい」

 

咲「こ、今晩ですか!?」

 

 

彼女はその時、この薬を使ってリュウトとあんな事やこんな事をする妄想をしてしまった。それは急速に彼女の頭の中で膨らんでいき、一瞬でオーバーヒートさせた。

 

 

ボンッ!!!

 

 

少し治まってきていた真っ赤な頬が再び赤くなり、咲夜の頭からは湯気が立ち込めた。

一体どこまで妄想してしまったのだろうか、彼女の思考は停止し、微動だにしなくなってしまった。

 

 

レミ「ちょっ、咲夜!?大丈夫!?!?」

 

フ「どうしよ、からかいすぎて咲夜が止まっちゃった!咲夜しっかり!!」

 

咲「ハッ!?」

 

 

二人の声が思考の止まった咲夜に届き、再び意識を取り戻す。その際頭がリセットされたのか、頬の色は普通に戻っていた。

 

 

咲「わ、私一体何を・・・」

 

レミ「もう、妄想を飛躍させ過ぎよ。にしても、リュウトは今パチュリー達とお茶会の真っ最中。

向こうは私達がこんな話してるなんて思ってもいないでしょうね」

 

 

咲夜が戻ってきて安堵したレミリアは、喋りすぎて喉が乾いたのかティーカップを手に取り、ミルクを入れてかき混ぜた後ゆっくりと口に含んだ。

 

 

レミ「でも咲夜、これは冗談ではなくて本当にそういう事にも目を向けていかないと。

近いうちに関係が冷めちゃうわよ?」

 

咲「うっ、それは・・・」

 

フ「その媚薬は咲夜が持っててよ、どうしても踏み込む勇気が出なかったらそれを使って気持ちを和らげてみれば?」

 

咲「・・・そうですわね、有難くいただきますわ」

 

 

レミリアから痛いところを突かれてしまった咲夜は、一度考えて決心が付き、小瓶をエプロンのポケットへ仕込ませる。

少々不安はあるが、今夜はリュウトが部屋に戻る前に先に下準備をしておくことにした。

 

 

to be continue...




はあ、いよいよ次回が決戦の日です。
果たして咲夜は勇気を振り絞ることが出来るのか。リュウトは道程卒業となるのか。こうご期待。
感想、評価待ってます!


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119話

さぁ、長らくお待たせしました。とうとう2人が決心をつけます。
R18指定にした方がいいか迷いますが、まぁ細かい事は気にせず書きました。ではどうぞ。


散々な茶会を終えたその日の夜、咲夜は早めに湯に浸かった後、一人自室でクローゼットの中を見ながら唸り悩んでいた。

 

 

咲「うぅ~ん、勝負下着なんて言われても、そんなもの持っていないし・・・どうすれば・・・・」

 

 

今日の昼にレミリアとフランに言われた通り、下準備を進めようとするも、そんな事態に備えた下着など急に用意できるわけもなく、どれもパッとするようなものではなかった。

勝負下着と言われれば派手な色なのだろうが、彼女の持っているものではせいぜいライトブルーか薄いピンクだろうか。レースで飾られているわけでもなく、透き通っているわけでもない。故に彼女は頭を捻りながらかれこれ30分はその場に佇んでいた。

それゆえ彼女の足元には様々な色の下着が転がっていた。

 

 

咲「白は何だか子供っぽいし、水色はいつも履いているし、ピンク・・・はキャラに合ってない気がする・・・。となると黒かしら」

 

 

一度、上下揃って黒の下着を試着してみようと姿見の前でパジャマを脱ぐ。

シャツを上げた瞬間、ガチャリとドアが開く音がした。

素早くシャツを戻し振り向くと、その正体はレミリアだった。

 

 

咲「お嬢様!ノックぐらいしてから入ってください・・・」

 

レミ「貴女の様子を見に来たのよ。どう?順調に準備は進んでる?」

 

咲「いえ、まだこれといったものが見つからず・・・。とりあえず持っている中で一番それらしく見える黒にしようかと」

 

レミ「へぇ、どんなヤツか見せてみなさい」

 

 

咲夜がそっと黒の下着の上下を差し出すと、レミリアは手に取り広げてみる。しかし、見る目は少し渋そうであった。

 

 

レミ「あまり飾り気が無いのが気になるわね、黒だと確かに大人っぽいけどせめてレースかリボンみたいな装飾があるものの方がいいわね。そーいうの持ってないの?」

 

咲「こういう事の為に用意してあるものが無いので、見た目はシンプルなものしか・・・」

 

 

だからこんなに時間がかかっているのかとレミリアは理解出来た。そこで彼女は咲夜に助言をしてやる事にした。

 

 

レミ「いい咲夜?男はギャップに萌えるのよ」

 

咲「ギャップ」

 

レミ「そう、今回はギャップ萌えを狙うわ」

 

咲「ギャップ萌え」

 

 

聞いたことも無い言葉にポカンとするだけだが、要は見た目と内側の差異が生み出す可愛さという事らしい。

咲夜にはよくわからなかったが、男を堕とすならそれが最適とのこと。

 

 

レミ「というわけで、飾り気がないなら可愛い色の下着で勝負よ!」

 

 

結果、レミリアが落ちている様々な色から選んだものはピンクだった。

これなら大人っぽい咲夜の印象からの女の子を生み出せるギャップとなるらしい。

それを手渡すと、レミリアはこれ以上邪魔しては悪いと足早に部屋を去っていった。

急に物静かになった自室で、咲夜は胸の鼓動を抑えながら早速着替えを始めた。

 

 

_____________________

 

 

リュウトは、湯舟に浸かりながら考えていた。咲夜をどう誘うべきかどうか。

小悪魔からの助言とアイテムは貰ったものの、今まで経験が無い為どうもよくわからない。

 

 

リ「それらしく見せずに、最初は他の話題から入ることでそういう雰囲気に自然に持っていく・・・と言われてもなぁ」

 

 

小悪魔からの助言は、今のリュウトには難易度が高すぎた。素人がそんなテクニックをこなせる訳もなく、ただ緊張だけが彼の胸を圧し潰そうとしていた。

 

 

リ「小悪魔はああ言っていたが・・・本当に咲夜は嫌がらないだろうか・・・」

 

 

そもそも咲夜が誘っているかどうかも真意は定かではないのに、本当は小悪魔やパチュリーの言葉に踊らされているだけなのではないだろうか。結論の点け方が有耶無耶な分、不安も大きくなる。

もしこれで咲夜にその気が無く、身体目当てだったと愛想を突かれたら、そう考えただけでも恐ろしくなる。

 

 

リ「あぁくそっ!考えるだけ無駄か!」

 

 

頭を掻きむしって乱暴に湯舟から上がると、半ば自暴自棄になりながら風呂を出る。こうなりゃ男らしく当たって砕けてやる!

そういえば、小悪魔からもらった禁忌アイテムシリーズの使えるものと使えないものを分けておかなければ。

バスローブに着替え、ベッドの横に置かれた丸テーブルに鎮座するサキュバス御用達の品々の中には、使用方法すらよくわからないものも含まれていたりしていた。

 

 

リ「この輪っかの入った袋は・・・アレだよな。これは精力剤?なのか?怪しいクスリは止めておこう、俺にはまだ早い気がする・・・」

 

 

その他にもローションや大人のおもちゃなど、小悪魔は好きに使ってくれと色々渡してきていた。アホか。

この場に居ない彼女に一人で突っ込んでいると、入口をノックする音が聞こえた。

 

 

咲「あの・・・リュウトさん?宜しいでしょうか?」

 

リ「え?あ!咲夜か!?」

 

 

ノックの主はあろう事か咲夜だった。しかし今扉を開けるのは拙い。

 

 

リ「少し待ってくれ!ほんの少しだ!」

 

 

なんの用で来たのかは兎も角、今このブツを見られるのはいけない。

リュウトは急いでテーブルの上の物をベッドの下に突っ込み、目につかないように隠す。

 

 

リ「よし、一先ず此処に入れておけば安全か」

 

咲「あの・・・大丈夫ですか?」

 

リ「い!?あ、あぁ。今開ける!」

 

 

慌ててドアを開けるリュウト。その額には汗が滲み出ていた。

部屋の前で待っていた寝巻き姿の咲夜の手にはワインとグラスが二つあり、晩酌の誘いだと勘づいた。

しかし、いつもと様子が違うリュウトの反応に、咲夜は疑問を抱いた。

 

 

咲「まぁ、汗をかいていますわ。何やら慌てた御様子でしたし、どうかなさいましたか?」

 

リ「いや、これは・・・」

 

 

これは夜のアイテムを急いで隠した時の冷や汗だなんて口が裂けても言えないリュウトは頭をフル回転させて他の言い訳を口にする。

 

 

リ「さっき風呂に入ったばかりでな、暑かったから汗をかいたのかもしれん」

 

咲「そうでしたか。なら良かったですわ」

 

丁度バスローブを着ていた事が幸いし、違和感の無い言い分だ。出任せの様なものだったが、どうにか誤魔化せたようだ。

彼女を部屋に招き入れると、リュウトはドアを閉めてそっと咲夜に気づかれないよう鍵を掛ける。

 

※此処からはお互いに目的が同じ筈なのにも関わらず、何も知らずに牽制し合う二人の様子をご覧ください。

 

 

リ(咲夜、何故今日という日に君は自分から晩酌に誘ってくるんだ!)

 

 

まだ心の準備が出来ていない頃からゲームオーバーしたリュウトは、どうすればコンティニューに持ち込めるか考える。自分がハメられているとも知らずに。

咲夜は時間を止め、テーブルに置かれたグラスにワインを一瞬で注ぐ。何故時を止めて淹れたのか彼にはよくわからなかったが、そんな疑問を抱くよりも前にグラスを差し出された。

 

 

咲「さぁ、乾杯しましょう」

 

リ「ん?あ、あぁ・・・」

 

 

出されたグラスを受け取ると、彼女は笑顔で手に取ったグラスで乾杯し、口をつける。

何やら上機嫌な咲夜を見ていたら考え事が吹き飛んだリュウトは、ワインを一気に喉に流した。その瞬間、咲夜の口元がにやりと微笑んだ。

それはとても妖艶で、今にも手を伸ばしてしまいそうな程に甘美なものだった。

・・・というか、急に身体が熱くなってきた。

 

 

リ(おかしなことを考えすぎて頭がどうにかなったか。冷静になるんだ、これじゃあ発情期じゃないか)

 

 

心の中で自身の欲と格闘しながら冷静沈着を保とうとするが、これは明らかにおかしかった。

咲夜が3割り増しで色っぽく見えてしまう。

何かの見間違いかと思い目を擦ってもう一度見るが、やはり物凄くそそられてしまう。

 

 

咲(よし、作戦は成功したみたいですわ)

 

 

彼女はフランから貰った媚薬を一滴ワインに混入させたのだ。

絶対にバレないように能力まで使って入れたのだから落ち度は無い。しかし、彼がそれを一気に飲み干してしまうのは想定外であった。

案の定、強力すぎるそのクスリはリュウトの体の隅々までオスへと変貌させつつあった。

 

 

咲(まさか一気飲みしてしまうとは・・・徐々に慣らしていくつもりでしたのに・・・」

 

 

実はこの媚薬、咲夜は自分のグラスにも一滴混入させていた。

やはり彼女も一歩踏み出すためには媚薬の力に頼るしかなかったようなのだが、少しずつ飲んで体を慣らしていくつもりだったのに、これでは計画丸潰れだ。

だがこんなことで作戦を中断するつもりは彼女には無い。

 

 

咲「リュウトさんったら、顔が真っ赤ですわ。そんなに急がなくても夜は長いですわよ?」

 

リ「さ・・・咲夜・・・」

 

 

咲夜の身体も徐々に火照ってきており、気分が高揚していた。

そして、その時は唐突にやってきた。

 

 

リ「咲夜・・・すまん、もう限界だ!!!」

 

 

咲「え?きゃっ!?」

 

 

彼は持っていたグラスを投げ捨て、咲夜をベッドへと押し倒す。

驚いた彼女も不意にグラスを落とし、されるがままに押し倒された後、彼に強引に、しかし熱く唇を奪われる。

不思議と嫌な気分ではなかった。それどころか心地よささえ感じるほどだった。

二人の長い夜は、まだ始まったばかりである。

 

 

to be continue...




次でこの回は終了となります。どうなるかはお楽しみに。
感想、評価待ってます!


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120話

大変遅くなりました。120話どうぞ。


二人の初夜から約三か月が経過した。あの一件以来、二人の距離は更に親近していた。

今まで以上に一緒に居る時間が増え、何処へ行くにも共に着いていく。そんな関係になりつつあった。

 

 

_____________________

 

 

~紅魔館キッチン~

 

 

咲「リュウトさん、皆さん分のサラダ作り終えました。コーンスープも完成ですわ」

 

リ「ありがとう、もうじきパンも焼けるぞ。コーヒーは今淹れる。

出来次第持っていくから先に並べておいてくれ」

 

咲「畏まりました」

 

 

今日も全員分の朝食を二人で準備し終え、カフェテリアのテーブルの定位置に料理を並べた直後に館の住人達が部屋に集まってきた。

 

 

レミ「おはよう、今日は洋食なのね」

 

咲「えぇ、たまには良いかと思いまして」

 

レミ「良いんじゃない?リュウトの作る和食も好きだけど、咲夜の料理は絶品だわ」

 

咲「お誉め頂き光栄ですわ」

 

 

レミリアを筆頭に全員が席に着き、今日もいつもと同じように朝食を摂る。他愛もない話を交えながらも日常の始まりを終え、食事が終われば二人で食器を片付ける。

時間は過ぎ、館の掃除を一通り終えると、少し休憩を挟んだ。

今朝淹れた紅茶を咲夜が二人分用意し、共用スペースに置かれた丸テーブルを囲む。

 

 

リ「すまないな、何から何まで。あとは俺に任せていいんだぞ?」

 

咲「いえ、好きでしている事なので気になさらないでください」

 

 

咲夜がカップに紅茶を注ぐと、上品な香りが湯気と共に立ち上る。彼女は一通りその香りを愉しむと、少し口に含んで茶葉の味を下で感じる。

 

 

咲「今日も良い味ですわ」

 

リ「どれどれ」

 

 

咲夜に続くようにリュウトも紅茶を飲む。和を好む彼も、最近紅茶の味がわかってきたのでそれが良いものだという事は理解出来た。

 

 

リ「うん、美味いな。流石咲夜だ」

 

咲「喜んで頂けて良かったです」

 

 

彼女はにっこりと微笑むと、再びカップに口をつけて喉を潤した。

 

 

_____________________

 

 

リ「じゃあ、行ってくる」

 

咲「はい、行ってらっしゃませ」

 

 

 

休憩も終わり、人里へ買い出しに向かうリュウトを門の前で見送ると、門番の美鈴が心配そうな顔で話掛けてきた。

 

 

美「咲夜さん、気の乱れが少々見えますが、大丈夫ですか?」

 

咲「え?どういう事?」

 

美「咲夜さんの中の気がいつもと違って乱れているんです。体調が優れなかったリしませんか?」

 

咲「いえ、特にそういったものは感じないわ」

 

美「おかしいですね・・・私の勘違いかな?」

 

咲「きっとそうよ。今だって元気なんだし、問題無いわ」

 

 

美鈴に心配要らないと微笑みかけると、咲夜は館の中へ戻っていった。しかし、どうにも美鈴は引っかかりのようなものを感じていた。

 

 

美「心配いらない・・・か。体調不良でもなさそうだし、もしかしたら体の変化が原因かも・・・」

 

 

美鈴の心配を他所に、咲夜は仕事へ戻ろうとしたその時、急激な吐き気が彼女を襲った。

 

 

咲「うっ!!!」

 

 

急いで手洗い場へ駆け込み、洗面器に吐瀉物をぶちまける。幸い朝食を摂ってから時間が経っていた為、酷いものでもなかったが、未だに気分は悪くすっきりしない。

 

 

咲「な・・・なんで急にこんな・・・うぇ、」

 

 

先程、美鈴が言っていた気の乱れが関係しているのだろうか。こうなった原因を少し考えてみると、関連しているか分からないが、一つだけ変わったことが起きていた。

 

 

咲「そういえば、最近生理が来てないような・・・」

 

 

女性特有といえばそうだが、個人によって少々の差があるらしいこの現象は、サイクルが決まっているはずだ。

それなのに最近になってから一向にその兆候が見られない。

 

 

咲「もしかしてこれって・・・」

 

 

 

翌日、咲夜はこっそり永遠亭へと足を運び、永琳を訪ねた。彼女に事情を説明すると、直ぐに診察が始まり、精密検査が行われた。

検査終了後、診察室で待つよう言われ、数分後に戻ってきた永琳から診断結果が出された。

 

 

永「貴女、妊娠してるわよ。だれとの間の子かは想像がつくけど」

 

咲「やっぱり・・・」

 

永「おめでとう、ここまでは順調に育ってきてるわよ。これからは過度な運動は控えることね。体を労わりなさい」

 

咲「私が・・・お母さん?」

 

 

永琳の言葉を真に受け止めた咲夜は、同時に不安を感じた。

咲夜は、母親の顔を知らない。父親の顔も、幼少の頃の記憶自体が全く思い出せないのだ。それ故、彼女の中では母親がどういうものなのか、全く想像できないのだ。

 

 

咲「私も、ちゃんとお母さんになれるでしょうか?」

 

永「それは貴女の頑張り次第ってところかしらねぇ。理想の母親像なんてのは人によって違うんだし、その前に先ずは安心してお腹の子を産む準備をしなきゃね」

 

咲「う、産む準備ですか」

 

 

産む準備という言葉に咲夜は過敏に反応する。一度図書館で見たことがあるが、出産というのは激しい苦痛に見舞われながら行うものらしく、その痛みは想像を絶する程だとか。

 

 

咲「やはりその・・・痛いんでしょうか」

 

永「痛くないお産なんてないわよ。でも、その瞬間だけは忘れられない思い出になるでしょうし、その分だけ子供を大切に思う気持ちも大きくなるわ。

とりあえず、今は激しい運動を控える事!何時もの仕事も減らしなさい。リュウト君に任せるの。栄養もちゃんと摂ってね。もうあなただけの身体じゃないから」

 

咲「はい・・・」

 

 

少々不安が残るが、帰ったらリュウトにこのことを打ち明けようと咲夜は覚悟して帰路に就いた。

 




咲夜が妊娠です。後にこれに関連する話も書いていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。


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121話

久しぶりの投稿です。読んでくれたらうれしいです。


~大図書館~

 

 

リ「なぁ咲夜、いくらなんでも気が早くないか?」

 

咲「ダメですよリュウトさん。早い段階で準備を進めないと何かあっては困るでしょう?」

 

リ「しかしなぁ・・・まだお腹も大きくなってないのにそんな本読んでもどうにもならないだろう」

 

 

図書館で咲夜が賢明に読んでいる本。た〇ごクラブ。この本には子供が生まれてから母親が何をすべきなのかが書かれている。

ちなみにこのシリーズのひ〇こクラブ、〇っこクラブも此処に常備してある。何故こんな本が置かれているのかは不明だが、今回に限っては一応役には立ちそうだ。

が、まだそれを読むのは早い気がする。

 

 

リ「大体、そんなに急いだってしょうがないだろう。永琳からも言われたんだろう?先ず産んでからだって」

 

咲「それはそうですが、心配なんですもの。

まだ母親になる覚悟だって出来てませんわ。母親がどういったものか分からないんですもの」

 

 

一生懸命に勉強を続ける咲夜。彼女は母親像がどういったものか想像が出来ないと言った。

話を聞くと、彼女は幼い頃の記憶がすっぽりと穴が開いたように無く、今でも全く思い出せないらしい。

今でも覚えているのは、ベッドに横になりながら見たレミリアとパチュリーの顔だという。

何故記憶が無いのかは咲夜にもわからないらしく、未だ謎が多い。

 

 

リ「なら、何にも縛られずに自由に考えればいいんじゃないか?ただの産みの親が母親なのか、愛情を注げば母親なのか。それを完璧に説明するのは難しいんだ」

 

咲「自由、ですか?」

 

リ「あぁ。それに、父親は俺だ。君一人に背負わせやしないさ」

 

咲「あら、カッコいい事言うのですわね」

 

リ「そういうことを言うから全部台無しになるんだぞ?」

 

 

二人は噴き出してその場で笑ってしまう。その笑い声が聞こえたのか、図書館の奥に居たパチュリーも顔を出してきた。

 

 

パ「仲の宜しいことで。でも図書館ではもう少し静かにしてほしいものね」

 

咲「も、申し訳ありません・・・」

 

パ「分かればいいのよ。それより、何を話していたのかしら?」

 

リ「いや、実はな?」

 

 

リュウトは咲夜の悩みをパチュリーに説明すると、彼女も咲夜と同様に、母親を知らなかった。いや、当の昔に忘れてしまったというのが正しいだろうか。

 

 

パ「私も母親がどんなものかなんて知らないわよ、哲学を語る気も無いわ。

でも、敢えて母親を想像するならあ貴女の場合、レミィかもね」

 

咲「え?お嬢様ですか?」

 

パ「幼い貴方が行き倒れていたのを助けたのもレミィだしね。今でも忘れもしないわ、あの時のレミィはかなり殺伐とした性格だったから、人間を殺さずに屋敷に持って帰ってくるなんて考えられなかったわ」

 

リ「そんなに凄かったのか?」

 

パ「今じゃ想像も出来ないくらいにはね。なんせスカーレットデビルなんて呼び名が付くくらいだったから」

 

咲「流石はお嬢様ですわ」

 

リ「咲夜、そこは褒めていい部分なのか?」

 

 

ぶっちゃけ咲夜にはレミリアが尊敬する存在であることに変わりないらしく、善だろうが悪だろうが関係ないようだ。

 

 

パ「因みにフランと合わせて紅魔の吸血姉妹って呼ばれてたわ」

 

リ「恐ろしいな・・・一体何をやらかしたんだ?」

 

パ「それは想像に任せるわ。でも、そんなレミリアが咲夜を拾ってきたときは本当に驚いた」

 

 

レミリアがまだヨーロッパに居た頃、彼女の名を知らない欧州の魔物は居なかったという。

当時は出会った者全てを殺してしまうような凶暴さだったらしいのだが、咲夜だけは自ら抱えて屋敷に連れ込んだ。

 

 

リ「どんな経緯で咲夜と出会ったのかパチュリーは知らないのか?」

 

パ「詳しい事は知らないけど、あの時レミィが言ってたのは、(咲夜が特別な子)だって」

 

咲「私が特別?」

 

 

確かに、彼女は人間という枠組みを超えた強さを持っている。並の妖怪では相手にすらならない程だ。

並外れた運動神経や霊力を扱えるというのもあるが、やはり一番はインチキじみた時間操作能力だ。

人間にしては異常な強さを誇る彼女の出生は気になるところがあるが、今となっては謎のままなのだろう。

 

 

咲「私の出生の秘密、ですか」

 

 

自分の存在について深く考えてこなかった咲夜は、徐々に不安を感じ始めていた。レミリアが自分を拾った本当の理由がよくわからないのが引っかかるのだ。しかし、今更本人に聞くのも気が引けるというもの。

 

 

リ「咲夜、心配しなくても、レミリアは君をただの道具として拾ったわけじゃあない。普段の接し方を見ればわかるさ。主人を信じろ」

 

 

リュウトは優しく咲夜に語り掛け、安心を与える。

不安になるのも無理はない。記憶が無いというのはそれだけで未知の恐怖を与えるものだ。その心の支えになるのが、今の彼の役目である。

 

 

咲「・・・そうですわね、私が間違っていましたわ。命の恩のあるレミリアお嬢様に対して失礼な事を。

私はこれからも、お嬢様についていく所存ですのに」

 

リ「心配する事なんてない。何かあれば二人で乗り越えれえばいいさ。心強い仲間だって居る、何とかなるさ」

 

パ「心強い仲間って私とかの事かしら?」

 

リ「他に居るか?」

 

パ「はぁ。ま、頼りになるように善処するわ」

 

 

そう言う彼女は部屋の奥へと戻っていき、再びデスクで読書を始めた。興味なさげな反応だが、彼女のキャラ的に、心のうちでは満更ではないのだろう。

 

 

_____________________

 

 

日は沈み、暗くなった図書館でパチュリーは一人、ろうそくの火を灯した自室で考えていた。咲夜が自分の正体を知った時、どう思うのか。

 

 

パ「世の中には知らない方が幸せな事もあるって言うけど、今回ばかりはそうかもね」

 

 

彼女は手にしていた草臥れた革のノートをそっと閉じ、物音一つしなくなった図書館を出ていく。

そのノートの表紙にはこう書かれていた。

 

 

{人工進化研究資料No.0398}




次回は一旦、外の世界に話を移します。


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122話

今回は外の世界サイドの話です。久しぶりにあの人が登場するのと、新キャラも登場です。






この世には、万人が知っていい事と、そうでない事がある。世界には世に出ていい事と、そうでない事がある。

世界はそうした闇を必ず抱えているが、それは我々が生きていく上では必要な事だったりする。

 

 

~京都大学学会ホール~

 

 

今日、京都大学内で行われるプレゼン発表会に、岡崎夢美は赴いていた。自身の研究内容の一通りを学会で発表したら自宅へ帰る弾丸出張だ。

既に夢美の発表は終盤に入っており、今回も各国の研究者から一際注目を浴びていた。

暗いホールでプロジェクターを使い、資料を解説していく。

 

 

夢「この素材でハニカム構造を3重にすれば、厚さ40cmのタングステン装甲の90倍の強度を持ち、長年研究が続いていた宇宙エレベーター建造計画が飛躍的に進むのです。そして、私は5年以内にこの計画を実行するつもりでいます。

これでプレゼンを終了します。ご清聴ありがとうございました」

 

 

深く礼をして壇上から退場していく夢美教授に、会場内は拍手に包まれた。

ホールを出て資料を束ねて帰り支度をしながら歩いていると、壁際に白衣を着た長身の女性がもたれかかっていた。

近づいてくる夢美の存在に気づくと、美しいエメラルドのブロンドヘアが揺れる。

 

 

?「やぁ夢美。プレゼンはどうだった?まぁ聞くまでも無く拍手喝采だったんだろうけど」

 

 

その声に夢美は過敏に反応する。遠い昔に聞いた記憶のある声だったからだ。

 

 

夢「瞳美(ひとみ)姉さん・・・何故裏社会の人間である貴女が此処に?」

 

 

岡崎瞳美、岡崎夢美の唯一の姉であり、妹と並ぶほどの科学者。しかし、その研究内容から表舞台に立つことを許されていない存在。世界の闇に溶け込むマッドサイエンティストである。

夢美の質問に彼女はクスリと笑う。

 

 

瞳美「妹の晴れ舞台に顔を出すのがおかしい?」

 

夢「余計なお世話です。私は貴女の顔なんて二度と見たくない」

 

瞳美「悲しいねぇ、たった一人の姉にそんなひどい事言うかね?」

 

夢「あんな反吐の出る研究をしているなんて知ったらこうもなります。人間として軽蔑します」

 

瞳美「はぁ・・・ま、いいや。今回はちゃんと用があってきたんだ」

 

夢「用?」

 

 

瞳美は不敵な笑みを浮かべながら壁から離れ、夢美の耳元に顔を近づけて囁いた。

 

 

瞳美「10年以上前、ヨーロッパにあった私の研究所から実験動物が一匹逃げ出したでしょ?あれをそろそろ改修しようと思ったんだけど、どうやら私の監視が届かない場所に逃げこんでしまったらしくてね。

夢美ぃ、知ってるんだよ?お前がその世界へ行く研究を密かにしていることを」

 

夢「!!!!」

 

 

衝撃的な言葉に彼女は驚いて後ろへ下がる。

あの研究は誰にもバレないように個人で秘密裏に行っていた筈。まさか監視でもされていたのだろうか。

というか、この言動で行くと幻想郷に彼女の実験場出身の人間が居ることになる。

 

 

瞳美「言いたいこと、わかるよね?」

 

夢「私が協力するとでも?」

 

 

そう言って夢美が瞳美を睨みつけると、彼女は夢美の肩をポンと叩いた。

その数秒後、夢美の顔は沈着としたそれから一遍した。

 

 

瞳美「そういうだろうと思って既に手は打ってある。

北白河ちゆりだっけ?君の助手をやっている彼女、此処には居ないだろう?」

 

夢「!まさか、ちゆりに何をしたの!?」

 

瞳美「まぁまぁ落ち着きなよ。まだ何もしていないさ、但し夢美が断ったらどうなるか分からないって事♪」

 

 

北白河ちゆり。夢美と同じく若干16歳にして大学院准教授の地位に上り詰めた若き天才であり、夢美の優秀な助手だ。

夢美は彼女の事を助手以前に妹のように想っていた。だからこそ危険な事には絶対に関わらせたくない。

 

 

夢「・・・行ってどうするつもりです?どうせ見つかりっこない。しかもあの世界に棲む連中は一国家の軍隊と渡り合えるような力を持ってる者も居る、行くだけ無駄です」

 

瞳美「へぇ~、そんなに強いんだ?じゃあ、私の作品とどっちが強いのか勝負させようかな?」

 

 

瞳美は右手を上げ、指を鳴らす。

最初、何のつもりなのか全く分からなかったが、その時後ろから気配がした。

振り返ると、そこには先程まで居なかった銀髪の謎の女性が立っていた。

 

 

夢「い、いつの間に!?」

 

瞳美「さっきまでは居なかったわ。今出てきてもらったの、{時間を止めて}ね」

 

夢「時間を止めた・・・?」

 

 

何を言っているのかさっぱりわからなかった。時間を止めるなどという非科学的な事を科学者が言うのだから無理もない。

しかし、彼女は思い返した。幻想郷の住人達のような特殊な力を使ったのではないかと。だとすればこちら側に勝ち目など無い。

 

 

夢「チっ、勝手な・・・。でも、そこから先は自己責任です、何があっても絶対に助けない」

 

瞳美「それでいいよ。最初からそのつもりだし、それに目的は実験体の回収だしね。

そういうわけだから、明日は夢美の隠し研究所にお邪魔するよ」

 

 

用が済めば此方の話も聞かずに去っていく姉に舌打ちながら、夢美もその場から足早に去る。後日、幻想郷の博麗大結界に極小規模の干渉が観測された。

 

 




咲夜さんの過去が徐々に暴かれてきました。瞳美の連れていた二人の女が一体何者なのか、咲夜とは一体何なのか。科学と幻想が交差する。


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123話

かなり遅れて投稿します。自分でも前回どんな内容だったか覚えてないです笑


~幻想郷~

 

 

外界での出来事と同時刻、世界を隔離する結界に異常が検知された。規模は極めて小さなもので、短時間ではあったものの、これは幻想郷に何者かが無理矢理侵入してきた証拠である。

幻想郷の創造主である八雲紫はそれを既に察知していた。

 

 

紫「また干渉者・・・この世界は全てを受け入れてくれる。でもそれは、とても残酷なことでもあるのよ?」

 

 

無数の目が浮かぶ不気味な空間の中で、紫は干渉者の監視を続ける。しかし、直接手出しはしない。それが全てを受け入れるという事だから・・・。

 

 

_____________________

 

 

結界への干渉があったその日、アリス邸にて女子会なるものが開かれていた。男子禁制の空間には五人の少女が集まり、日頃のストレスや最近あった話などの会話を弾ませながら、優雅に御茶を愉しんでいた。

 

 

~アリス邸バルコニー~

 

 

霊「何だか久々にこうやって集まった気がするわね。咲夜が居ないのが少し残念だけど」

 

妖「仕方ないですよ、プライベートなリュウトさんとの時間も最近あまりなかったみたいですし」

 

 

集まったメンバーはアリスと霊夢を筆頭に、魔理沙、妖夢、鈴仙の五人。何時もは咲夜も中に居るはずなのだが、今日はリュウトと出かける日と丁度被ってしまい、そちらを優先している。

残念ではあるが、今回は咲夜抜きだ。

しかし、そんな咲夜の事を鈴仙・優曇華院・イナバは羨ましく思っていた。

 

 

鈴仙「デートかぁ、月でもこっちでもそういう人には出会わなかったなぁ」

 

魔「何だウドンゲ、彼氏が欲しいのか?」

 

鈴仙「そりゃあ私だって女だし、考える事だってあるわよ。魔理沙はそう言う事無いの?」

 

魔「私にはアリスが居るからな」

 

ア「バカな事言わなくていいの。ほら、お茶のお替り注いだげる」

 

魔「流石アリス!こういうところで気が利く女に男は惚れるんだぜ?」

 

 

お前も女だろ。この瞬間全員が思っていたが、敢えて言わなかった。

 

 

 

時間は過ぎ、日も落ちかけ夕日になる頃に皆、家路に着く。しかし、アリスの家には魔理沙だけ未だに残っていた。

チェアの背もたれに前のめりで乗りかかり、キッチンで後片付けをしているアリスを彼女が退屈そうに眺めていると、その視線が気になるアリスが問いかけた。

 

 

ア「アンタは帰らないの?」

 

魔「なんだ、私が居たらいけないのか?」

 

ア「そういうわけじゃないけど・・・」

 

魔「ついでに夕飯を食っていくつもりだから安心しろよ」

 

ア「そんな事だろうと思ったわよ。

はぁ、しょうがない。アンタ食生活偏ってそうだから少しは栄養の或るもの食べさせないとね」

 

 

ため息交じりながらも、アリスは氷魔法を使った冷蔵庫の中身を確認する。

いつもの日常だった。故に何の警戒心もその瞬間は持ち合わせていなかった。

監視されているなんて微塵も考えていなかった。

 

 

瞳美「家の中には少女が二人だけ・・・か」

 

 

アリス宅の窓を、少し離れた大木の上から双眼鏡で観察していた瞳美は、随伴している女のうちの一人にゴーサインを出す。

女はゆっくり右手の平をアリスの家方面に向けると、大きな魔力弾のようなものを撃ちだした。

高速で接近する光弾に対して油断していたアリスは反応出来ず、気が付いた頃には遅かった。

 

 

ドガァァァァァァァァン!!!

 

 

爆音と共にアリスの居たキッチンへと直撃し、大爆発を起こす。炎が燃え広がる中、更に追い打ちをかけるように女は光弾を何発も発射する。

 

 

?「状況終了。戦闘データ収集終りょ・・・!?」

 

 

攻撃箇所付近に二つの生命反応を感知。二人は間一髪のところで脱出し、上空で滞空していた。

いち早く攻撃に気づいた魔理沙が咄嗟にアリスの手を引いてその場から退避したのだ。

 

 

ア「あ、ありがとう」

 

魔「礼なんて後だろ。いきなり人様の家に風穴開けるなんて無神経にも程があるぜ」

 

ア「アンタが言うな」

 

魔「あいたっ!」

 

 

魔理沙の箒に座りながらチョップでツッコミを入れる。家が壊された割にアリスが冷静なのは常日頃から壊される機会が多いからかもしれない。

 

 

魔「って!そんなことやってる場合じゃないだろ!?どうやらアイツがやったみたいだぜ?」

 

瞳美「緊急回避の反応も早いね。いいわ、少しだけ遊んであげなさい。但し、最後は生け捕りだよ」

 

?「承知いたしました」

 

 

静かに主人に対して返事をすると、ゆっくりと浮遊して二人と同じ高さまで上がり、顔が良く見えるようになった。

その時、魔理沙は女の面影に見覚えがあるような気がした。それも、かなり親しい人間だった。

 

 

魔「おいアリス、あいつ何処となく咲夜に似てないか?」

 

ア「似てるわね・・・髪色は黒だけど目元や輪郭はそのままに見えるわ」

 

 

黒の長髪だが、背が高く、瞳の色は赤。鋭い目つきはかつて紅魔の異変が起きた頃の咲夜を彷彿とさせた。

紫のライダースーツに浮かび上がっている体のラインも咲夜にそっくりだった。

 

 

?「恐らくそれは被検体398号の事だろう。私達はヤツを捕獲、または処分するためにやってきた」

 

魔「こ、声までそっくりだ・・・」

 

 

 

声も咲夜に似ていることに初めは驚いたが、口ぶりを聞く限り、やはり彼女は咲夜と何らかの関係があるようだ。

 

 

瞳美「400号、おしゃべりが過ぎるわよ。応援が来る前に片づけて捉えなさい」

 

?「承知しましたマスター」

 

 

自分達の強さを戦わずして過小評価するようなその言動に、白黒の魔法使いが激昂した。

 

 

魔「ああ、そうかよっ!!!やれるもんならやってみろ!」

 

 

魔力を八卦炉に収束させ、七色に輝く魔砲を放つ。

 

 

スペル:マスタースパーク

 

 

ア「魔理沙!敵の能力が未知数なのに魔力を無駄遣いして!」

 

魔「へへ、これであいつの強さが大体わかるってもんだぜ」

 

 

十八番の技を出し惜しみせず一気に畳みかける魔理沙。初速が異常に速いこの技を初見で避けるのは簡単ではないことを踏んでのことだ。

しかし、彼女の予想は大きく外れることとなった。

 

 

魔「何でだ?全く手ごたえが感じられない・・・」

 

400号「私にお前たちの攻撃は通用しない。いくらやっても無駄な事」

 

 

400号と呼ばれる女性は、なんとマスタースパークを無傷で凌いでみせたのだ。これには魔理沙も驚いた。

 

 

魔「そんな・・・馬鹿な!?」

 

ア「マスタースパークを受けて無傷だなんて・・・」

 

400号「種も仕掛けも無い手品、貴方たちに攻略できるかしら?」

 

 

 

 




次回の投稿も未定ですが、暇があれば書きます


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124話

400号「先ずは小手調べ」

 

 

彼女は多数の魔法陣を展開し、赤い弾幕を周囲いっぱいにばら撒いた。流れ弾は森へ降り注ぎ、炎に代わって侵略を開始する。

最初は避けていた魔理沙とアリスだが、二次災害の大きさを考えて防御に回るしかなかった。

上海人形に持たせた盾と魔理沙の魔法壁で防ぐも、物量の多さに押されて全てをカバーするのは不可能だった。

 

 

ア「魔理沙!フォーメーションで行くわ!」

 

魔「クソっ何なんだよこいつは!?」

 

 

スペル:ワイドスパーク

 

 

拡散させたマスタースパークを400号に放ち、同時に弾幕を一気に消していく。しかし、ワイドスパークはあくまで近距離にて有効なスペルであり、それには距離が遠すぎた。

 

 

400号「ほぉ、流れ弾を消す為に大技を出してきたか・・・ん?」

 

 

ワイドスパークの影に紛れ、ランスを持った上海人形が彼女を八方から串刺しにするべく迫ってきていた。

 

 

400号「成程、良い作戦だ。視界を一時的に塞いでいるうちに奇襲をかけてくるとは、連携が取れている」

 

 

矛先が目前に向かってくる中、彼女は冷静に状況を分析していた。

避ける様子も無く、何の抵抗もしない400号に、アリスは困惑した。ブレインな彼女だが、本能的に何か異変を察知していたのだ。

攻撃を止めるや否や、選択肢は二つ。しかし、そんを選んでいる余地はなかった。

 

 

ボォンっ!!!

 

 

ア「何ですって!?」

 

 

400号目掛けて飛んで行ったはずの上海人形が、突如八体同時に爆発四散する。あまりに一瞬の出来事だったので、アリスは目の前で起こった事を上手く処理出来ていなかった。

 

 

ア「私の人形が・・・あんな一瞬で?」

 

魔「アリス!ぼさっとするなっ!」

 

 

状況を理解出来ぬまま、即座に次の攻撃が襲ってくる。

何処からともなく現れ、四方からアリスに急接近するロングブレード。それを盾を持った上海人形が魔法壁と実態盾で自動で防御する。

が、勢いが強すぎて力を完全に殺すことが出来なかった。

 

 

ア「あううっ・・・」

 

 

一瞬怯み、態勢が崩れたところへ絶えず追撃。止まる事のない弾幕の花火に、ショックを受けたままのアリスは自身の身を守るので精いっぱいだった。

そこへ魔理沙がノンディレクショナルレーザーで脱出口を作った。

 

 

魔「アリスぅ!!!大丈夫か!?」

 

ア「え、えぇ・・・少しびっくりしただけ」

 

魔「気を抜くな!あいつ、デカい口叩くだけあって手強いぞ!」

 

 

魔理沙のスペル効果が消え、二人に蒼い弾幕の竜巻の渦が接近する。急いで回避行動に移るが、渦なので中心には大きな風穴が開いており、そのまま中を通過するような形で避けられた。

 

 

魔「な、何だ?」

 

ア「・・・!拙い、囲まれた!!」

 

400号「もう逃げられない」

 

 

彼女が右腕を突き出して拳を握ると、渦が二人を絞り潰すように圧縮されていく。

 

 

スペル:ブレイジングスター

 

 

スペル:ドールズウォー

 

 

突如、渦の中心が激しい光を発し、中から猛スピードで弾幕の中を突っ切ってくる魔理沙が現れた。箒の後ろに座るアリスはスペルカードで12体の上海人形を同時操作し、降りかかる弾幕全てを武器で弾いた。

 

 

400号「へぇ、なかなか粘る。でも・・・時間切れ」

 

魔「え?」

 

 

その瞬間、全ての物の動きが止まった。

アリスも魔理沙も、その事実に全く気がついていない。いや、認識出来ていないというのが正解だろう。

俗に言う時間停止。それに限りなく近い現象をこの女、400号が起こした。

 

 

400号「最初に言った筈。三分だけ相手をしてやる、と」

 

 

ゆっくりと2人に近づき、首元に注射針を打ち込む。

 

 

400号「タイムアップ」

 

 

やがて時間は動き出し、それと同時に二人は意識を失う。

いとも容易く彼女は魔理沙とアリス、両者を戦闘不能にし、眠る二人を脇に抱え・・・捕獲完了。

 

 

400号「いくら強かろうと私の力には逆らえない。

マスターを除いて・・・」

 

 

その日から、アリスと魔理沙は幻想郷から姿を消した。

 

 

 




久しぶりに投稿です。次回の更新は未定です。


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