名探偵コナン (桂ヒナギク)
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1.痴情のもつれ

 高校生探偵の工藤 新一(くどう しんいち)は幼馴染みの毛利 蘭(もうり らん)と遊園地に行った帰りに黒ずくめの男の怪しい取引現場を目撃した。

 取引を見るのに夢中になっていた新一は背後から近付いてくるもう一人の仲間に気付かなかった。

 殴られて気絶した新一は毒薬を飲まされ、目が覚めたら体が縮んでいた。

 工藤 新一が生きているとやつらにバレたら周りの者にも危険が迫る。

 知り合いの阿笠(あがさ)博士の助言で正体を隠すことにした彼は蘭に名前を聞かれ、咄嗟(とっさ)江戸川(えどがわ) コナンと名乗る。

 奴らの情報を手に入れるため、コナンは父親が探偵をやっている蘭の家に転がり込んだ。

 *

「何──っ!?」

 デスクで新聞を読んでいた毛利(もうり) 小五郎(こごろう)が驚いて声を荒げた。

「おじさん、どうしたの?」

「一昨日の依頼人が遺体で発見されたんだ」

「依頼人って、榊 佳恵(さかき よしえ)さん?」

「ああ」

「じゃあ直に目暮警部が来るんじゃない?」

 コナンの言った通り、目暮(めぐれ) 十三(じゅうぞう)警部がやってきた。

「目暮警部殿!」

「毛利くん、榊 佳恵さんを知ってるな?」

「はい」

「彼女がお前の名刺を持っていた。ひょっとして、何かの事件の依頼を受けたのではないかと思ってな」

「と言われましても、依頼人については守秘義務がありますので……」

「殺人事件の捜査をしてるんだ」

「ストーカーの相談をされていたんです」

「ストーカー?」

「知らない男に付きまとわれていると言ってまして」

「で、その男の身元は判明してるのかね?」

「どうやら私と同業のようです」

「と言うことは、その探偵はどんなことを調べていたのかね?」

「守秘義務があるって言うんで、教えてもらえませんでした」

「そうか……。で、どこの事務所だ?」

 小五郎は探偵から受け取った名刺を目暮警部に見せた。

「行ってくるか」

 目暮警部は事務所を出て行った。

(よし、俺も)

 コナンが後を追うように事務所を出る。

 目暮警部がしまおうとする名刺を一瞬で読み取るコナン。

 山崎探偵事務所、それが名刺に書かれていた。

 コナンはスマホで事務所の番号を調べてそこへかけた。

 相手が出る。

「はい、山崎探偵事務所」

 コナンは小五郎の声で言った。

「毛利です。先日はどうも」

「何度聞かれても守秘義務は守秘義務。お答えはしませんよ」

「実はマルタイが殺害されましてね。貴方、何かご存知ではないですか?」

「私は浮気の調査をしていただけです! 殺しはしていませんよ!」

「そうですか。となると、マルタイには旦那さんか彼氏がいるんですね?」

「ええ」

「恐らく、旦那さんか彼氏が依頼人だと思いますが、その方の名前と連絡先を教えて下さい」

 コナンはメモ帳に依頼人の名前と連絡先を記入した。

 (くろがね) (あきら)

 コナンは鉄への連絡を試みる。

「もしもし?」

 鉄が応答した。

 コナンは榊 佳恵の声で言う。

「昭? 佳恵だけど」

「なっ!? お前どうやってかけてんだ?」

「お兄さんが犯人なの?」

 コナンは自分の声で訊ねる。

「今の佳恵さんの声、僕なんだ」

「お、俺が佳恵を殺すかよ!」

「じゃあ何で驚いたの?」

「そ、そんなのお前には関係ねえだろ!」

 電話が切れた。

 コナンは目暮警部に電話した。

「はい、目暮だ」

 新一の声で言う。

「目暮警部、工藤です! コナンから榊さんの事件を聞きました。犯人は鉄 昭という男です」

「工藤くん、それは本当かね!?」

「僕の推理通りなら、恐らく」

「分かった。裏を取る」

 コナンは電話を切った。

 その後、警察の捜査で佳恵を殺したのが鉄であることが判明し、事件は幕を降ろした。

 



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