パズドラがバーチャル化? (ぷーすけ)
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はじまり

誤字脱字があったらすみません。
初投稿なのでそこらへんはよろしくお願いします^_^


友「いいから始めてみろって」

 

俺「えー、どうしよっかなー」

 

俺と俺の友人は行きつけの店である話題について話していた。

その話題とは今人気を誇るアプリ「パズドラ」に今までにない新しいシステムが追加されたことだった。

 

友「悩むことないだろ、なんつったってバーチャルの世界が体験できるんだぞ! まだその機能はやってないけどぜってーすげえって!」

 

俺「興奮しすぎだろ笑 でも俺ゲーム自体苦手だしなあー、すぐ飽きちゃうかもしんないな」

 

友「んなことない!絶対ハマるお前は!」

 

俺「どうかな笑」

 

友「頼むよ…んっもうこんな時間か、行かなきゃな」ガタッ

 

俺「用事か?」

 

友「ああ、これだ」

 

そういって友は小指を立てる。

友はイケメンで高校の時からモテモテで今も彼女がいて仲良くやってるみたいだ。

まあ俺の方はというというまでもないのだが…

 

俺「そうか、じゃあまたな」

 

友「すまん、家に帰ったら入れとけよ!じゃあ」

 

カランカラーン

そういって俺と友人は店を出た。

 

 

〜家〜

 

俺「あー暇だーすることねー、彼女ほしー………」

 

俺「……あっそうだった、友がパズドラを入れろってうるさかったな、暇潰しにいれてみるか」

 

ポチポチポチ

 

俺「よしインストール完了、じゃあ早速噂のアプリを起動っと」

 

ポチ

 

俺「んっ? このアプリをバーチャル化しますか?だと? ははーんこれだな、友が言っていた新システムは…」

 

俺「…まあとりあえず押してみるか、ポチッとな」

 

その瞬間俺は白い光に包まれた。

 

 

 

気づくと俺は何もない草原にいた。

 

俺「ここは?」

 

当たりを見回してもなにも見えない。

どうすればいいのかと途方にくれようとした時、手にスマホが握られていることに気づく。

画面を見るとパズドラだった。

 

俺「そうか、ここがバーチャルの世界ってわけか、ってことはここではスマホだけが頼りってことだな」

 

そういって画面をみると`最初のパートナーを選んでください と書いてあった

俺は`はいを押す。その瞬間…

ボン

 

大きな音をたてて目の前に大きな金色のドラゴンが現れた。

 

俺「うおっ、びっくりしたあ! なんだあ? このドラゴンがパートナーか?」

 

しかしそのドラゴンは動く気配がない。

置物のようだった。

 

俺「いったいどうしろってんだ」

 

そう言いつつ画面を見るとこのドラゴンの説明?が書いてあった。

 

俺「なになに…ドラゴンの腕を引いてください、そうすればあなたのパートナーが決まります…だと? ふーん…ポ◯モンのように3体から選ぶとかじゃないんだな」

 

俺「じゃあ引くか! よいしょっと!」

 

ガラガラガラ…ポロッ

大きな音をたててドラゴンが揺れてお腹のあたりから銀色の卵が出てきた。

そしてそこからでてきたのは

 

俺「うおおお!? 女の子? しかもめっちゃ可愛い! ええっと名前は…」

 

ワル「ワルキューレといいます…よろしく…」

 

俺「おう、よろしくねワルキューレさん!」

 

白い装備を纏ったその女性はとてもモンスターとは思えないほど美しかった。

しかし何故か浮かない顔をしている。

 

俺「よしっ、パートナーも決まったことだしいよいよ冒険の始まりかな、さーて次にすることは…と」

 

そういってスマホを確認していると

 

ワル「あのぅ…」

 

俺「んっ? どした?」

 

ワル「リセットはなさらないのですか?」

 

俺「リセット? なんで?」

 

ワル「銀卵が出たので…」

 

俺「銀卵じゃだめなの?」

 

ワル「ダメというか弱いので…金の卵が出るまでリセットするのが普通だと思いますが…」

 

俺「普通?」

 

ワル「はい、前の皆様はそうしてきています」

 

俺「あなたはどうなっちゃうの?」

 

ワル「私のことはいいですから…」

 

俺「いや、気になるだろ 教えてよ」

 

ワル「……次の人が引きあてるのを待ってます…まあまたリセットされるでしょうけど」

 

フフッと彼女は笑った。

しかしその笑いには悲しみが含まれているようにみえた。

 

ワル「さあリセットしてください。次はいいモンスターを引いて下さいね」

 

俺「別にリセットなんてしないよ、俺はこのまま続けるよ」

 

ワル「………同情などしなくていいですから……そういう人も今まで少数いました…でも結局は……」

 

俺「……俺は違…」

 

ワル「いいから早く私を消してください!」

 

俺「…………」

 

ワル「…………」

 

俺「いい加減にしろ!!!!」

 

ワル( ビクっ

 

俺「さっきから聞いていれば、リセットリセットと…そんなにされたいか! それは自分で本当に望んでいることなのか!!」

 

ワル「そ、そんなこと…」

 

俺「いままでどんな酷い扱いをされたかは知らないが、俺は必要のない人材などこの世にないと思ってる。だから俺は君を責任もって育てる! そして強くなって見捨てた奴らを見返してやればいいじゃないか! だから…こう…もっと自分に自信をもて!」

 

ワル「…私が…必要とされている…?」

 

俺「ああ、そうだ」

 

ワル「……ううっ…ぐすん……」

 

俺「ええっ!? なんで泣くの!? なんか俺悪いこといった?」アセアセ

 

ワル「い、いえ こんなこと言われたの初めてなんで感動してしまって…大丈夫です」

 

俺「そっか じゃあこれからよろしくね ワルキューレさん」

 

ワル「はい!! よろしくお願いしますねマスター!!」ニコッ

 

俺(笑った!! めっちゃ可愛い!!)

俺「よーしそれじゃあ冒険の旅にー……はい!!」

 

ワル「………はい?」

 

俺「ああもう! しゅっぱーつ!」

 

ワル「すみません! こういうノリ私うまくわからなくて…」ショボン

 

俺「いいよ、いいよ気にしないで! 俺のアホみたいなノリなんかに合わせなくても」

 

ワル「…クスッ、いえ頑張ります!」

 

俺「あー今笑ったなー、傷ついたわー俺ガラスのハートだから…」しくしく

 

ワル「ご、ごめんなさい!」

 

俺「なんちゃってー嘘だよーん」ばあっ

 

ワル「もう! からかわないで下さい!」

 

俺「はははっ、すまんすまん」

 

俺「よしじゃあいくか!」

 

ワル「はい!」

 

ワル(こんなに感情を出したのはいつ以来だろう。やっと私を必要としている人に出会えた…マスターありがとうございます…)

 

 

こうして私たちの冒険ははじまった。

 

 

 

 

 

 




続くと思います。たぶん笑

ワルキューレって弱くないですよね?

他に出したいモンスターとかいたらお願いします。


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マイホームで

二話です。
誤字脱字があったら指摘をお願いします。

きりよく終わらせたかったんで前回より短くなってますがどうかご勘弁を


〜ダンジョン内

 

俺「ふん、このっ、これでどうだ!」

combo 1 ぽろーん しーん

俺「ありっ?」

 

ワル「………」

 

俺「むむっ、もう一度! せい!」

combo 2 ぽろぽろーん しーん

俺「はっ? なんで?」

 

ワル「…マスターってもしかしてパズル下手ですか?」

 

俺「う、うん パズルだけじゃなくそもそもゲームが苦手なんだ…ゴメン」

 

ワル「マスターは悪くないですよ、これから上手くなっていけばいいだけです」

 

俺「頑張ります! でもさっきから少しはパズルを消してるのに一向に攻撃できないね」

 

ワル「……マスター」

 

俺「んっ?」

 

ワル「私の属性知ってます?」

 

俺「属性? なにそれ」

 

ワル(これは長くなりそうだ……)

 

〜1時間後〜

 

ワル「というわけです。わかりましたか?」

 

俺「大変お勉強になりました」

 

ワル「よかったです、お役にたてて」

 

この1時間ずっと座ってワルキューレの講義?を聞かされていた。もちろんずっと起きてられるわけもなく、そのたびにワルキューレさんのビンタを食らい、もうほっぺた真っ赤っかだよこんちくしょう!

 

ワル「じゃあ目の前にいる敵をやっつけて…ってあれ」

 

俺「そりゃ、1時間も同じステージで相手にされなきゃ逃げるだろ…俺らも戻るか」

 

ワル「ごめんなさい…私のせいで」シュン

 

俺「気にしない気にしない、次頑張ろう! まあ頑張らなきゃいけないのは俺だけど」

 

ワル「マスターは優しいですね」

 

俺「そうか? んじゃ戻ろっか小屋に」

 

ワル「はい!」

 

小屋というのはパズドラの世界でのプレイヤーとそのモンスター達が一緒に居住できる、1人のプレイヤーに一世帯運営から与えられている。

無論、プレイヤーがパズドラの世界と現実の世界を行き来出来る場所もここのみである。

 

 

〜小屋

 

バタン

 

俺「あー疲れたー」

 

ワル「何かお作りしましょうか?」

 

俺「んっ、あー、じゃあなんかてきとーにお願い」

 

ワル「わかりました、待っててくださいね」

 

そういってワルキューレはキッチンへと向かう。

ここは小屋といっても現実世界の家とたいして変わらず設備も充実している。

俺もソファに寝転がりくつろぐ。

 

俺「はあ 気持ちいいー」

 

俺がソファでうつらうつらしているとワルキューレが食事を持ってやってくる。

 

ワル「マスターできましたよ、ちゃんとしたものではないですけど召し上がってください」

 

俺「んっ、おおっ卵焼きかー 大好物なんだよ、ありがとね」

 

そういって卵焼きをほうばると口いっぱいに旨味が広がった。

今までで一番美味しいと感じた卵焼きだった。

 

俺「うっま、何これ! ワルキューレって料理上手だね」

 

ワル「喜んで頂けて嬉しいです、いつか誰かにお使えする時のためにずっと練習してましたから…」

 

俺「そっか…役にたってよかったな」

 

ワル「はい!これからも作らせていただきますね」

 

俺「おう、よろしくな」

 

食べ終わった俺は窓越しに外を見つめる。

外はすっかり暗くなっていた。

 

俺「さて夜になったしそろそろ寝ますかー」

 

ワル「そうですね それじゃあ私はソファで寝ます」

 

この小屋にはベッドはあるが一台しかない。それは人間であるプレイヤーのものであり、モンスターは床などに寝るらしい。運営もそれぐらい用意しとけよ!

 

俺「寒くないの?」

 

ワル「ええ少し、でも大丈夫です」

 

俺「俺のベッドで一緒入ってもいいんだよ?」

 

ワル「なっ、何を言ってるんですか! 変態ですねマスターは」

 

ワルキューレは顔を真っ赤にする。

 

俺「いやいやいやちげーよ!! そういうじゃなくてさ…」

 

ワル「じゃあ何なのですか?」

 

俺「いや、えっとそのぅ……」

 

ワル「やっぱり」

 

俺「……うっ」

 

返す言葉がない。実際そういう気持ちもあったからだ。

だって今まで生きてきた中で女の子と寝る、ましてや一緒にいるなんてなかった俺がこういう立場に置かれたら興奮せずにはいられない。

 

ワル「でも気遣ってくれることには感謝します。今は気持ちだけ受け取っておきますね」

 

俺「今はって、今度だったらいいの!?」

 

ワル「//////あっ、いやなんでもないです、おやすみなさい!」

 

再び赤くなる顔を隠すように向こうに体の向きを変えるワルキューレ。そんな仕草が可愛すぎる。

 

俺「ああ、おやすみ」

 

よっぽど疲れていたのかすぐに睡魔が襲ってきて俺は深い眠りについた。

 




自分もパズドラをやってますがいっこうにパズルがうまくなりません涙

次回はワルキューレさん主体からスタートするつもりです。

あと質問なんですが

俺「 ワル「 ←これって必要ですかね?

よかったらアドバイスお願いします。


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ワルキューレの過去

新しい形で書いてみました。

ゴットフェスでいいのがでなくて泣いている筆者です。


チュンチュン

 

「んんー、……もう朝ですか……眠いですね…」

 

窓から差し込んでくる朝日で目覚めた私はソファにいた。

そうだった。私には新しいマスターができたのだった。

 

「マスター、起きてください……あれ?」

 

そういってベッドのほうに視線をやるとマスターはいなかった。

「マスター!」

 

どうやら小屋の中にはいないようだった。

きっと早く起きてしまって朝の散歩にでも出かけたのだろう。

 

「朝ごはんでも作って待つことにしましょう。 お腹が空いてるでしょうから」

 

私はそう言っていそいそとキッチンにむかった。

 

 

 

 

しかし西の空が真っ赤に染まり、もうすぐ日が暮れてしまいそうな時間になってもマスターは帰ってこなかった。

 

「遅いですね…」

 

私の頭の中でよからぬことがぐるぐるとまわり始める。

 

「まさか…またあのようなことが……」

 

そんな訳が無いと首を振るがそんな確信はあまりなかった。

なぜなら私は以前あのようなことを経験しているからであった。

 

それは、今のマスターと出会う前………

 

「はあ………」

 

私は次に引かれるのを卵の中で待っていた。

私達モンスターにとってガチャで引かれて、マスターとともに冒険をするというのはこの上ない喜びであり、またモンスターとしての誇りでもあった。

だがそんなモンスターは一部の強いものだけであった。

私は弱いモンスターのほうだ。

回復量には自信があったが、それでも圧倒的なバランスをもつ神タイプ、攻撃力がとてつもない攻撃タイプなどに比べると全然だった。

今までかなりの人が私を引き当てたが、すぐにリセットをしていった。いわゆる<はずれ>であった。

最初は落ち込んでいた私だったが、だんだん慣れていき自分の役割はこういうものなんだとさえ、思い始めていた。

 

ガチャン ゴロゴロゴロ ポン

 

私が入っている卵が外にでる。

はあっと、私はため息が出る。また卵から出た瞬間がっかりされた目で見られるのはもうこりごりだ。そう思いつつ卵からでる。

だが返ってきた答えは違った。

 

「うお、かわいい!! よっしゃー! あたりー!」

 

「ええっ!?」

 

自分の予想と反していたことに私はびっくりした。

 

「んっ? どうかした? 」

 

「い、いえ //よろしくお願いします!」

 

「おう!よろしくね!ワルキューレ」

 

私はすごく嬉しかった。だって自分を必要としてくれる人がようやくあらわれたのだから。

 

「それじゃあ、行きましょう!! マスター!」

 

ビクッ

「お、おお 行くけど…って、すげえ楽しそうだな」

 

「はい! 私は今とっても幸せです!」

 

こうして、私とこのマスターとの冒険が始まったのだが…

 

 

 

敵の攻撃! バンバンバーン!!

 

「きゃあ!」「うおっ!」

 

GAME OVER

 

「ごめんなさい…また失敗してしまいました…」

 

「いいっていいって、次頑張ろ」

 

「はい………」

 

プレイをし始めてから1ヶ月が経とうとしていた。

普通だったらもう結構進んでてもおかしくないのだが、私たちはまだ始めのほうのダンジョンで苦戦していた。

このマスターは今のマスターとは違って、パズルはすごくうまかった。なので毎ターン私は攻撃することができたが、何せそんなに攻撃力は高くないのでダメージはあまり与えられなかった。

だからいつも、長期戦になる。

そこは私の長所でもある回復力によってなんとかなっているのだがいずれは、回復が追いつかなくなってしまう。

そうしてやられてしまうのが定番だった。

 

仲間を増やせばいいといってもダンジョンをあまりクリアしてないのでガチャを回すために必要な魔法石がなかなか集まらない。

だから今だ私一人だった。

 

「次こそは絶対に!!」

 

「頑張るのはいいけど無理しちゃダメだからね」

 

マスターは優しかった。

ゲームオーバーになってもいつも「どんまいどんまい!」「次があるよ」と、励ましてくれて怒ったことなど一度もなかった。

そんな彼に私は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。いつか絶対にお役にたつと誓ったものだった。

 

 

そんなある日

 

いつも通りダンジョンへ行く準備をしていると

 

「ワルキューレ」

 

「はい! いつでもダンジョンへいけます!」

 

「そのことなんだけどさ」

 

「どうしましたか?」

 

「…俺、現実世界に用事があるから戻るね…、すぐにここに戻るからさ…」

 

「全然構いませんよ」

 

普段、ここにほとんどいるマスターが帰るのは珍しかった。

 

「すまん、じゃあ」

 

シュン

 

マスターが現実の世界に戻る。その時マスターの顔が少し寂しげに見えた。

 

「……………少しの間でも、トレーニングをしてお役に立てるようにしなきゃ!」

 

そういって私は誰もいなくなった部屋で素振りを始めた。

だがマスターがここに戻ってくることはなかった。

 

…………………………………

 

「そうですよね…私みたいな立ち位置のモンスターがそういうことを高望みしてはいけなかったのですね……」

 

昔のことを思い出しているうちにすっかり外は暗くなり、部屋の隅で私はうずくまる。

 

「…せめて声ぐらいかけてくれてもいいじゃないですか……、何も言わずに行ってしまうなんて……」グスッ

 

目から涙がでて止まらない。

 

「…私はこれからどうすれば………」

 

もういっそモンスターなんてやめたい。そう思った時、

 

パチッ

暗かった部屋全体が明るくなり、びっくりした私は顔をあげる。

 

「ただいま〜、ってあれ? 何で泣いてるの?」

 

そこには帰って来ないと思っていたマスターの姿があった。

 

「……マスター?」

 

「なんだ寝てたのか? 怖い夢でもみたか? まったくかわ…「マスター!!」うお、どうしたどうした!?」

 

私はマスターに近づくやいなや抱きついた。

 

「ううう、何も言わずに出て行くからもう戻ってこないのかと…」

 

「ああ、そのことはごめん……朝早く起きたら用事があることに気づいてさ、言おうと思ったけど気持ちよさそうに寝てたからさ、起こすのは悪いと思ってね……心配かけて悪かった」

 

マスターが頭を撫でてくる。それがすごく気持ち良かった。

 

「さてと、お腹がへったなー、誰かさんのおいしい手料理が食べたいなー…」チラチラ

 

「はい! 今お作りしますね!!」

 

私は弾むようなステップでキッチンに向かった。

 




ワルキューレは弱くない!(確信)

次回から新キャラ出そうと思ってます。

要望などあったらコメントお願いします。


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新たな仲間

追加 魔法石一つでガチャがまわせるようになってますがご勘弁を

新キャラ登場です!


「はあ…はあ…はあ……」

 

「っ、あと一息ですマスター!」

 

「ああっ!」

 

ダンジョンの最深部、俺たちはボスであるダークゴーレムを前に一時間もの激闘をくりひろげていた。

 

プレイ開始から二週間が経ち、ワルキューレさんのご指導のおかげで (まああまり真面目には聞いていないのだが) わずかながらだけれどパズル力をあげた俺はいくつかのダンジョンをこなしていくことができたが、この前からずっとこのダークゴーレムに道を塞がれているのだ。

 

「くそっ、もう回復がねぇ………よし勝負にでる!!」

 

「はい、お願いしますマスター!」

 

俺はパズルを回す指に力をこめる。ワルキューレも相当気合が入っているようだ。

 

「これでどうだ!」

 

1.2.3.4.5.6.7.8.9.10combo!!!!!!

 

「うおっまじか」

 

今までに見たことがないすごい数のコンボだったので思わず声がでる。

 

「いきます!!! はあああー!!!!!」

 

 

コンボのおかげで凄まじくなったワルキューレの攻撃が、ゴーレムを襲う。

 

「ぐわぁーー、こんな小娘ごときにぃぃぃー」

 

そんな攻撃にさすがのゴーレムも耐えることができずに消滅していき、ゴーレムがいた場所に宝箱が現れた。

 

「や、やりました………やりましたよ!マスター!!」

 

ワルキューレが喜びに満ちた表情で俺に歩み寄ってきた。

 

「ああ、やっとクリアできたな、お前のおかげだよ」

 

そういって俺は頭を撫でてあげるとワルキューレは小声でそんなことないですと頬を赤らめた。

 

「でもマスターもすごかったじゃないですか!最後のコンボ!」

 

「ああ、あれね……ま、まあ頑張ったから…ね…」

 

「あれには驚きでした。やっぱりマスターはすごいです!」

 

「お、おう当然だ!」

 

目を輝かせながら褒めてくる彼女に、本当は10コンボ中7コンボが落ちコンだったなんてさらさら言えない俺であった。

まあ結局勝てばいいんだし結果が良ければすべてよしっ!ってことで!

 

「よし、じゃあ戻って祝勝会とでもいくかー!」

 

「はい! でもその前にあれを開けましょうよ」

 

ワルキューレはそういってゴーレムのいた場所を指差す。

そうだった、宝箱を開けるのをすっかり忘れていた。

 

「そういえばこんなものがモンスターから落ちるのは初めてだな、何が入ってるんだろう」

 

「私も初めてです。なんかワクワクしますね」

 

「よし、じゃあ開けるぞ! それ!」

 

ガコッといって宝箱が開かれる。そこに入っていたのは…

 

「いらっしゃいお宝ちゃーん!!……ってあれなんだこりゃ」

 

そこに入っていたのは沢山の宝石やお金ではなく手のひらサイズの虹色の石がたった一つポツンとおいてあるだけだった。確かに綺麗だがそんなに価値があるものとは思えず、自分の想像していた宝箱の中身と違って俺は肩を落としたが、それとは逆にワルキューレは嬉しそうな表情をしている。

 

 

「すごい! おめでとうございますマスター! やりましたね!」

 

「えっ、そうなの?」

 

「そうですよ! この石の価値を知らないのですか?」

 

「うん」

 

「わかりました、じゃあ私が説明しますね」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「というわけです、わかっていただけましたか?」

 

「はーい」

 

またワルキューレさんのくそ長い講義が始まるのかと身構えていた俺だったが、案外シンプルだった。

 

ワルキューレが言うにはこの石は魔法石といって、このゲーム内で一番価値があり、自分の小屋を拡張することや新しい仲間を手に入れることができるガチャを引けるなど、他にもさまざまな用途があるらしい。

しかしこの魔法石は通常はモンスターから出るのだが、その確率が極めて低いためすごいレアで、そうそうお目にかかれないそうだ。そう考えると俺たちはなかなかラッキーだな。

 

「それでマスターはその魔法石を何に使うのですか?」

 

「そうだな…特に考えてないんだけど、ワルキューレは何かあるか?」

 

「私ですか!? … ありますけど…これはマスターが決めることであって、モンスターが口を出せるようなことでは…」

 

「いいよ別に あるなら言ってよ」

 

「そうですか、じゃあ無理だと思いますけど言いますね」

 

「おう」

 

では、といって彼女は一息おく。何をそんなに溜める必要があるのだろう。

 

「私は仲間がほしいです」

 

「OK、じゃあそれでいこうか」

 

「はや! 少しは考えたりしないのですか?」

 

俺が即答したため、ワルキューレのほうがとまどった。

 

「いや、確かに言われてみればそうかなーって思ってさ。あと仲間が増えると楽しいだろうし」

 

「ありがとうございます、マスター」

 

「おう、じゃあガチャ引くか」

 

俺は手元にあるスマホで ガチャを引く と書いてある画面をタッチすると、目の前に大きな金色のドラゴンが現れた。

さきほど手に入れた魔法石をそのドラゴンの口にいれると、ドラゴンが起動した。

 

「よし、このドラゴンの腕を引けばいいんだな」

 

「いいモンスターが出るといいですね!」

 

ガチャ ガラガラガラ ポンッ

 

 

出てきたのはワルキューレがでた卵と同じ銀色の卵だった。

そしてその卵が割れてモンスターが姿を現した。

 

「はーい初めまして、私はエキドナ! あなたが私のマスターね? どうぞよろしくね!」だきっ

 

「おわっ!?」

 

自己紹介が終わるやいなやその陽気な女性は俺に抱きついてきた。俺の胸に彼女の大きな胸が遠慮なくあたってきていい気分になる。うん、悪くないな。

 

「ちょ、ちょっと! いきなり2人とも何やってるんですか!」

 

ハグを目の当たりにしたワルキューレは慌てた声でいう。

 

「あら、ワルキューレさんじゃないの。あなたも一緒にどう?」

 

「は、はあ!? 何を言ってるんですかあなたは!」

 

「エキドナさん…ちょっと苦しいです…」

 

「あら、ごめんなさいね」

 

エキドナがだきつくのをやめる。胸を押しつけられるのは最高だが、モンスターの力で抱きつかれると苦しいものがある。

 

「全く…マスターもなににやけてるんですか」

 

「べ、別ににやけてなんかねーし!!」

 

「いいえ、抱きつかれてた時にやけてました」

 

(しまった表情にでていたのか、これから気をつけよう)

 

「と、とりあえず新しいメンバーの加入とダンジョンのクリアを記念して戻ってパーティだ!」

 

「嬉しいわ!」

 

「まったくマスターは……ブツブツ ええ、そうしましょう」

 

 

「よし帰るか!!」

 

新しいメンバー、エキドナが加わってますますこれからが楽しくなりそうだ。

 

 




他にも候補はありましたが新キャラはエキドナにしました。

イメージですがエキドナは大人なお姉さんみたいな感じがします。



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パーティだ!

最近暖かくなってきましたね。
もう春がきてると思い始めている作者です。




ガチャ

 

「あー、やっと帰れたー 意外と距離あったなー」

 

ダンジョンをクリアして仲間も加わった俺たち一行は家に帰宅したのだった。

 

「そんなに歩いてませんよ?」

 

「いやいや、お前らが寄り道とかするから、かれこれ2時間は歩きっぱなしだったぞ」

 

 

「たった2時間じゃないですか」

 

「もうマスターったら」うふふ

 

俺はもう歩き疲れたというのにワルキューレとエキドナは全然ピンピンしていた。こいつら化け物か? あっ…モンスターだからか。

 

「ひゃっほーう、やっぱベッドさいこー!!」

 

俺はベッドに飛び込む。すると2人は不機嫌そうな顔で

 

「ちょっとー、パーティーはどうなったのよ」

 

「そうですよ、やろうって言ったのはマスターですよ?」

 

「そうだったな、ごめんごめん」

 

なんかもう疲れていてパーティーとかどうでもよくなっていたけど、言い出しっぺの俺がやらないとか言ったら何されるかわかったものじゃない。だから素直にやることにした。

 

「あーでも今疲れてて動けないしなー、誰かやってくれないかなー」ちらっ

 

そういってワルキューレを横目で見る。

 

「またそれですか、まったくこれだからマスターは………分かりました、じゃあ食事を作ってくるので2人は待っていて下さい」

 

俺がこんなことを言っても何かしら言ってくるが結局はなんでもやってくれる彼女は本当に優しい。

 

「えっ、私も手伝うわよ?」

 

「いいんですよ、このパーティはエキドナさんのためのパーティでもありますから私にまかせてください!」

 

「…そう? じゃあお願いしようかしら」

 

エキドナはそれは悪いなと思うものの、ワルキューレが自信満々の顔をするので頼むことにした。

 

「フーフー、ワルキューレさん素敵ー!」

 

「か、からかわないでくださいマスター!」

 

そんなやりとりを見た俺がからかったらワルキューレはみるみる顔が真っ赤になり、それを見られたくないかのように台所に向かって行った。まったく、かわいいもんだ。

 

 

「あー、疲れたなー」

 

 

「ねえマスター」

 

ワルキューレが台所で支度をしている間、リビングでダラダラしているところをエキドナが話しかけてくる。

 

「んっ、なに?」

 

ベッドの上で寝ようとうつ伏せになっていた俺はエキドナの方を向く。

 

「あの子とはうまくやっていけてるの?」

 

エキドナが台所を方を横目で見ながら言う。

 

「まあまあじゃね、なんで?」

 

「いや、モンスターの間でもいろいろといわれてたからね………で最近見なくなったから心配してたのよ」

 

「なんだ、そんなことか。それなら心配ないさ。うまくやっていけてるよ」

 

俺もワルキューレの方をみる。

 

「なら良かったわ。これからも私も含めてあの子をよろしくね」

 

「いやいや、むしろお世話になってるのはこっちのほうだって。今やあいつは俺の頼れる相棒だよ」

 

 

「……そう…ふふ (こんなマスターに出会えて良かったわねワルキューレ)」

 

「ん、なんか俺おかしいこと言ったか?」

 

俺は首をかしげる。

 

「いえ、なんでもないわ」

 

「そうか」

 

「でもマスターって変わってるわよね」

 

「なにが?」

 

「普通銀の卵が2回も出たらやめるわよ。でもあなたはやめなかった」

「……」

 

言われてみれば確かに2回とも銀の卵というのは少し運が悪いのかもしれないが俺は辞めようなどとは1ミリも思わなかった。

 

「そりゃあせっかく引き当てたモンスターはちゃんと育てなきゃダメだろ」

 

そうそうましてやこんな可愛い2人を消すなんてもってのほかだ。

 

「立派ね。私もいろんなところでお世話になったけどこんなマスターは初めてだわ」

 

「それほどでもねーよ、おっ!?」

 

エキドナと話してるうちにワルキューレの方も食事が出来上がったらしく台所から料理を運んできた。

 

「お待たせしましたー!」

 

「うおおお!!すげえ!」

 

「すごいわ」

 

そこには豪華な料理がたくさん並んでいた。俺とエキドナは思わず驚きの声をあげる。

 

「それじゃあ食べましょうか」

 

「ああ、そうだな。じゃあ新しい仲間とダンジョン攻略を記念して、、、カンパーイ!!」

 

「「かんぱーい!」」

 

俺はご馳走にかぶりついた。うん。味付けも完璧だ。やっぱサイコー!!

 

 

そうやってみんなで楽しく食べていると隣から、

 

「はいマスター、あーん」

 

エキドナが箸でものを食べさせようとしてきた。これがいわゆるアーンってやつか。

くー、現実でもやってもらいたいものだ。

 

「お、おう」ぱくっ

 

「おいしい?」

 

「お、おいしいれす」

 

やベー、友の気持ちがわかるわー。ああ、早く彼女欲しいよぉ〜。さいこーすぎる!

そんなことを思いながらにたにたしてると、ワルキューレがジト目でみてきた。

 

「どした?」

 

「いえ、なんでもありません。」

 

そういってぷいっとそっぽをむく彼女。なんで怒ってるんだ?

 

「またまた〜素直じゃないわね。あなたもやってあげればいいじゃない」

 

それをみたエキドナが意地悪そうな顔で言う。

 

「そんなこと出来るわけがないじゃないですか! 」

 

ワルキューレがまた赤くなる。

 

「いや、俺もワルキューレにしてほしいなー…なんて」

 

「マ、マスターまでなにいってるんですか!もういいです、わたしはもう寝ますので後は2人で盛り上がってください!」ばたん

 

そういうとワルキューレは違う部屋に行ってしまった。

 

「…俺が悪かったのか?」

 

「いや、マスターは悪くないわよ。あの子が素直じゃないだけ」

 

「まあ確かに恥ずかしがり屋だからな (まあからかう分にはすごい面白いけど)」

 

「私が改善させてみせるわ」

 

「おう、頼んだ………ふあーあ」

 

あくびがでたので時計をみるともう夜中の12時をまわっていた。

 

「そろそろ俺らも寝るか」

 

そういってベッドの方に向かおうとしたら、後ろからがしっと肩を並べる掴まれた。

 

「なにいってるの、夜はここからよ。さあ飲みましょう」

 

一升瓶を片手に持っているエキドナはもう完全におっさんそのものだ。

 

「しょうがないなあ、ちょっとだけだぞ」

 

断ったら酔っ払ってる彼女に絞め殺されそうなので付き合うことにした。

まあちょっとで済むはずもなく、2人ともでろんでろんになるまで飲み続けたわけだが。

 




今後どういう展開にしようか迷ってます。

だから少し更新が遅くなるかもしれませんがご了承を。


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番外 えきどなさんのすきる

番外編です。本編とはあまり関係ないです。




俺の提案で小屋で3人でパーティーをしていたがワルキューレが怒って?先に離脱してしまったので残された俺とエキドナは酒を飲みながら盛り上がっていた。(まあエキドナに強制的に付き合わされただけだが)

 

「この酒サイコー!!」

 

「いやあわかってるねぇマスターは」

 

最初のうちは眠いし一杯ぐらいでさっさと切り上げようと思ってた俺だったが、酒がいい感じに体に回ってきてしまいすっかりいい気分になっていた。

エキドナのほうも顔を赤くしてすっかり酔っ払っている。

 

「…………」ゴクゴク

 

「…………」ゴクゴク

 

飲み始めのほうはワルキューレのことや今までのエキドナの体験談などを話していたが、もう特に話すことがなくなったので2人とも黙って飲んでいた。

 

「…あっ、そういえば」

 

突然俺の頭にある気になることが浮かんだ。

 

「ん?」

 

したを向いていたエキドナが顔をあげる。

 

「あのさあ、少し気になったんだけどさ」

 

そういって俺はスマホを取り出し、パズドラの画面を開く。

 

「なになに…んっ?これあたしじゃん」

 

画面を覗き込んだエキドナは画面に写っているのが、自分の画像とステータスだと気づく。

 

「これがどうかしたの?」

 

「ああ、ここここ」

 

俺は画面の一部を指差す。

 

「…威嚇、それは私のスキルだけどそれがどうかしたの?」

 

エキドナは不思議そうな顔をして俺に尋ねる。

 

「うん、このスキルの効果としてしばらくの間敵の動きを封じることができるってあるけど、どんなことやってるのかなぁーってさ」

 

「そんなたいしたことしてないわよ、ただちょっと怖い顔をするってだけ…」

 

エキドナは恥ずかしそうに言う。

 

「えっ、何それみたいみたい!」

 

すっかり酔っ払ってしまっている俺はこの後起こる恐怖を予想だにもしなかった。

 

「別にダンジョンでみれるからいいでしょ?」

 

「いやあその前に一回見ておきたいんだ」

 

「…でもこれ結構恥ずかしいのよ」

 

エキドナはこんな表情をするんだってほど恥ずかしがっていた。ちょっとかわいいな。

 

「ちょっとだけ、ほんのちょっとでいいからさ」

 

俺は手を合わせてお願いする。

 

「…わかったわ、本当はこれは人間にやるものではないけどそんなにマスターが言うなら少しだけ…」

 

「うんうん」

 

俺は期待した目でエキドナを見つめる。もし過去に戻れるのだったらここで止めとくべきだった。この時の自分をぶん殴りたくなるのはいうまでもない。

 

 

 

「…じゃあいくわよ…………………」

 

「おう!」

 

「…………………………」

 

「……………!!!………」

 

「…………………」

 

「………………」

 

「……………」

 

「………………………………」

 

「ってマスター大丈夫!?」

 

「………い、いえ、だ、だ、だ大丈夫です。」ガタガタ

 

「はあ、やっぱり……でもこれはマスターからの提案であって私は悪くないですからね、これでもマスターが人間だから抑えたほうなので」

 

「!!」

 

まじかよ。これで抑えたほうって普段モンスターにはどんな顔をしてるんだよ。敵ながら同情するわ。

 

「ほんと軽いノリで言ってしまってすみませんでした。」

 

「でもいい経験になったんじゃないかしら。私を怒らせると怖いって」ニコッ

 

「!!」ビクッ

 

エキドナが微笑む。だが今の俺にとってそんな笑顔も恐ろしく感じた。

 

 

これでひとつ俺の心のなかで確信が持てた。この人には絶対逆らってはいけないと。

 

 




実際威嚇ってどんなことをしてるんだろう。

エキドナはまじでやばい。
今だにお世話になってます。


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ダンジョン攻略!

「…きてくださいマスター! 朝ですよ!」

 

「んが? んあ、もう朝? もうちょっと寝かせてよ…」

 

朝の7時、窓から朝日が差し込んでくる時間に俺はワルキューレに起こされた。

 

「不規則な生活は体に悪いです。だから起きましょう!」

 

ワルキューレの高い声がキンキンと響いてくる。

二日酔いだっつーのに耳元で騒ぐのはやめて欲しいものだ。

 

「うるさいなあ、俺だけじゃなくエキドナも起こせよ」

 

「私は起きてるわよ、てゆーか早く新しいパーティーでダンジョン行くわよ。」

 

エキドナはダンジョンへ行く支度をしていた。昨日あんだけ飲んだというのにピンピンしてるとは末恐ろしいやつだ。

 

「はいはいわかりましたよ、起きればいいんでしょ。あー頭痛てー」

 

そういって俺も支度をし始める。

 

「偉いですよマスター! 以前は私が何度言っても起きなかったのに。成長しましたね!」

 

ワルキューレは俺がすぐに起きたことに喜ぶ。

いや違うんだワルキューレ。成長したんじゃなくてエキドナさんには極力逆らわないようにしてるだけだ。昨日の一件もあるしな。

 

 

「じゃあ、行きますか」

 

支度のできた俺は2人に声をかける。向こうもバッチリみたいだ。

 

「よし、最初に行くのはこのダンジョンだ!」

 

 

 

…………………………………

〜ダンジョン内

 

「マスター!、そこ揃えて!!」

 

「は、はい!」カラカラカラ…

 

1.2.3combo!

 

「……………あっ」

 

「…マスターってもしかして…下手くそ?」

 

「うるさいなー、わかってますそんなこと〜」………

 

……………………………………

 

 

 

「ふぅふぅ……」

 

俺はダンジョン外の道端に生えている木の下で休んでいた。

見ての通り疲れているわけだが、今までの疲れとはレベルが違った。

 

結果をいうと、今までと比べものにならないくらいダンジョンが進んだ。

今まではゲームオーバーばかりでクリアーしたらラッキーぐらいの頻度だったのでスタミナがすぐに尽きてしまい、「今日はもう無理だな。明日頑張ろう!」とか言って諦めて小屋に戻っていたのだが、今日はクリアばかりしていたのでランクがガンガン上がり、そのたびにスタミナが全回復するので今までの10倍は入った気がする。 (それは盛り過ぎかもしれんが)

 

なんでそんなにクリアできるようになったかというと、やはりエキドナが入ってきたことだろう。 まず1人から2人に変わったというのもあるが、彼女の場合ワルキューレと同じ回復タイプなのでワルキューレのリーダースキルの効果で攻撃が2倍になることが大きかったし、ピンチになった時もエキドナのスキルである【威嚇】で敵の攻撃を封じたりと完璧だった。

 

俺も最初はランクが上がることやダンジョンが進むことの喜びがあり楽しんでやっていたわけだが、疲れが出てくると「今日はここらでやめておこうか、明日に響くし」とか言って2人を帰らせようとしたわけだ。

 

まあでも疲れを知らない2人にはそんな言葉も意味をなさず、「私は平気です!」、「まだいけるわよ」とか言われて続行ってわけ。いや疲れるのは俺の方! お前らが疲れないことは知っとるわ!

 

それでも帰ろーよーとか言ってたら、「私達ではご不満でしょうか…」とワルキューレが上目遣いになりこちらをみてきたので「いやいやそうじゃないそうじゃないよ!」と慌てて弁明した。 その上目遣いは反則だろー!

 

あ、もちろんエキドナさんにもお世話になりましたよ。

さっきなんかマスターである俺を引きずりながらダンジョンに入りましたからね。 俺の立場マジどうなってんの!?

 

「マスター、戻るんじゃないのー?」

 

「ん、ああ」

 

ぼーっとしていた俺にエキドナが話しかけてくる。

 

「なんだったら何処かはいる?」

 

帰るそぶりをみせていない俺を見たエキドナは余ったスタミナでダンジョンに入ろうとしていた。

 

「いやいやいや、帰りましょう帰りますとも!」

 

俺は立ち上がり彼女を阻止する。流石にもうこれ以上は勘弁だ。

 

「まったくしょうがないわねー、今日はここら辺で勘弁してあげるわ」

 

「あ、ありがとうございます…」

 

いやいやもうなんか立場が逆転してるような気がするんですけど!!、と心の中でつっこみながらも俺はやっと帰れると安心したのだった。

 

 

〜帰り道

 

「私達なかなかいいコンビね」

 

「そうですね、まあでもエキドナさんがリードしてくれるおかげですよ」

 

「そんなことないわよ、あなたも結構強いわ。私びっくりしちゃったもん」

 

「いえ、私はそんな…」

 

「またそんな遠慮しちゃってー。 マスターから愛情をもって育てられてるくせにー」

 

「あ、愛情って//// なにいってるんですか!!」

 

「あ、照れた」

 

顔を赤くするワルキューレをみてエキドナはニヤニヤする。

 

「もうエキドナさんったら」クスッ

 

「まあまあ」フフフ

 

そう言って2人は笑った。

 

そんな2人の姿を後ろから見ていた俺は やっぱ仲間はいいなあ、と前に聞こえないくらいの声で西に沈む太陽を見ながら呟いた。




最近思ったんですけど主人公の名前って決めてなかったですね。

あれっ、これって意外とやばい?

まあ大丈夫でしょう汗


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友との再会[1]

また新しい要素を追加しました。
次から次へとすみません。


 

 

「ちょっくら現実の世界に戻るけどいい?」

 

新しいメンバーでダンジョンに挑んだ次の日。ベッドで寝転がっていた俺は現実世界に戻りたくなったことを2人に尋ねる。

 

「別に聞くことないでしょ。勝手に戻れば」

 

「そ、そうっすよね」

 

エキドナのそっけない態度に一瞬ビクッとする。

え、ひょっとして…

 

「怒ってらっしゃいます?」

 

少し恐れ気味になって聞いてみる。

 

「なんで敬語なのよ。別に怒ってないけど今日もダンジョン入りたかったから…」

 

「ああ、それはごめんな。戻ったら何回でも付き合ってあげるからさ」

 

「ほんと!? 約束よ!」

 

「お、おう」

 

瞬時にエキドナの目が輝く。

どんだけ行きたいんだよお前は。 まあ怒ってなかったからよかったよかった。

 

 

 

「あ、あの……戻ってきますよね…?」

 

エキドナが怒ってないとわかって安心している俺にワルキューレが不安そうな顔で尋ねてくる。

そっか、前に何も言わないで出て行っちゃって不安にさせちゃったんだっけ。

 

「おお、ちゃんと戻ってくるとも」

 

ドンと胸を叩く。

 

「はい! それなら安心しました。どうぞいってらっしゃいませ!」

 

ワルキューレは笑みを取り戻し手を振ってくる。

 

「おう、じゃあ行ってくるな」

 

そう言って俺は小屋の一角にあるワープゾーンにいき白い光に包まれながら現実に戻った。

 

 

 

 

 

……………………………

 

 

 

 

 

光が消えると俺は家に戻っていた。家は埃だらけだった。

まあこっちに戻ってくるのも2、3週間ぶりだったので仕方ないだろう。

もう最近はパズドラの世界が我が家とか思い始めてたしな。

 

 

「でもなんか家は落ち着くなー」

 

俺は自分のベッドに横になり、天井を見ながらぼーっとしてると不意に電話が鳴った。かけてきたのは友だった。

 

『お、どうした』

 

『おお、やっと繋がったか、全く随分と家を空けてたな』

 

『わりい、なんか用か?』

 

『少し話したいことがあってね。時間ある?』

 

『おおあるよ、じゃあまたあの喫茶店か?』

 

『いや俺の家にきてくれないか?』

 

『別にいいけど』

 

『じゃあ待ってるな』

 

プツンとそこで電話が切れる。なんかいつもの落ち着いた感じではなく少し慌てていた気がした。

 

「どうしたんだろ」

 

少し疑問に思いながら俺は家を出た。

 

「うお、寒!」

 

冷たい風が俺に当たる。こっちの世界では冬まっしぐららしくて長袖一枚の俺には寒すぎた。

 

「やべえ風邪ひく! 急ごう」

 

俺は走った。

幸い俺と友の家は近かったのですぐに着いた。

 

「友の家入るのめっちゃ久しぶりだな」

 

そう呟きインターホンを押す。

すると

 

「いらっしゃいませ、マスターのご友人さんですね。どうぞ上がってください」

 

ドアが開き中から出てきたのは友ではなく黒い髪で白い綺麗な衣装を着飾った女性が立っていた。 スタイルもよく俺より背が高い。

 

…………めっちゃ美しすぎるんですけど〜!!!

なにこれ、えっ?、友の彼女ってこんなに綺麗だったのかよぉー!!羨ましすぎる!!!

でもなんか随分古典的な服装をしてるな。少し変わった人なのかな? それでも美しい!!

 

「あの…私の顔に何かついてますか?」

 

開けた時からずっと顔を見つめていた俺にその女性は反応する。やべ、見惚れすぎた。

 

「あ、すみません。なんでもないです」

 

そういって俺はすばやく中へ入って行った。

 

「おう、来たな。入れ入れ。あったかいぞー」

 

入ってすぐのリビングで友はコタツに入っていた。

 

「はあー、あったけえ」

 

俺もすかさず入る。

薄着で外に出て冷えきった体をコタツの暖かさがじわじわ伝わってくる。やっぱり冬はコタツだな。

 

「お前さー、まじでずるいぞ」

 

コタツに入った俺はいきなり友の彼女の話題を出す。

すると友はキョトンとした表情で言う。

 

「彼女? 俺はもう別れたぜ」

 

「えっ?」

 

「いやだから別れたって」

 

なんだよ、じゃああの女性は彼女じゃなかったのか。と俺は安心する。と同時にあの女性は誰なのかという疑問が湧き上がったので友に聞いてみる。

 

「じゃああの人はどちら様?」

 

俺は台所でお茶をいれている女性を指差して言った。

友は言ってなかったっけ?と言いその女性の紹介をしてくれた。

 

「え!? モンスター!?」

 

友が言ったことに俺は驚いて大きな声をあげる。 そりゃあ驚くだろ。なんでモンスターがこっちの世界にきてるんだよ。

 

「ええ、そうです。私はイシスと言います」

 

その女性は煎れてきたお茶を差し出してコタツに入ってきた。

 

「イシスは俺が初めてのガチャででてきたんだよ。今ではいいパートナーなんだ」

 

「いやそうじゃなくてさ。なんでモンスターがここにいるの?」

 

俺は疑問をぶつける。

すると友はハハっと笑って言った。

 

「お前まだランク50いってないだろ」

 

「ああ」

 

昨日新しいパーティーになって結構ランクが上がったけど、それまで全然上がってなかったので初めて1ヶ月くらいたっていたが40だった。ちなみに友はランクが70。

友いわく50以上になると自分のモンスターを現実に連れてこれるらしい。 そんなシステムも備わってるなんてすげえな運営。

 

「でもお前ランク上がるの早くね?」

 

たしか友も俺と一緒に始めたはずだが、こんなに差がつくとは思わなかった。

 

「そりゃあ金の卵2つ当てたからな」

 

友はどうだと言わんばかりのドヤ顔をする。 ムカつくがこればかりは運だから仕方ない。

 

やっぱこの人は金か……確かに金っぽいオーラが出てるしな、強そーだし。そう思いイシスをちらっと見る。

 

でも2人いるはずなのにもう1人の姿が見えない。俺がキョロキョロと部屋中を見回していると、

 

「にゃ」

 

「!?」

 

コタツの中から猫の格好をした女の子が出てきた。

 

「あれ、お客さんだにゃ。コタツが気持ちよくて寝ちゃって気がつかなかったにゃ。はじめましてだにゃ」

 

その女の子は俺にぺこりとお辞儀をする。

えっ何これ、猫の格好してる女の子とか超萌えるんですけど!!!

 

「その子がもう1人のメンバーのバステトだよ。こう見えて強くて頼りになるんだ」

 

「もうマスター恥ずかしいにゃ」

 

そういってバステトは友に抱きつく。友も抱きつくバステトを撫でていてそれはなんとも微笑ましい光景だった。

つーか俺も撫でさせてくれよぉぉぉ

 

「そういやお前のパーティーってどんな感じなの?」

 

バステトとイチャイチャしている友が聞いてくる。

 

「い、いやスマホ家に置いてきちゃってさ。悪りぃ見せらんねえわ」

 

本当はポケットに入っていたがとっさに嘘をついてしまった。あいつらには悪いけど、友が金を2個出しているなか俺は銀2個なんて言えなかった。

 

「そっか、じゃあ今度お前の家でみせてくれよ」

 

「あ、ああいいぜ」

 

……なんかくることになっちゃったんですけどっ!

あーあ それまでには強くしとかなきゃなー (はぁ

 

俺はコタツの上に置いてあるみかんをとる。

 

あー、やっぱり冬はコタツでみかんだよなー、とか思いながら食べているとまた友が口を開く。

 

「それで今日呼んだことなんだけどさ…」

 

友の声のトーンが急に変わる。電話の時と同じ口調だった。

俺も思わず顔が引き締まった。

 

 




あーいずれかパズドラもこういうシステムが出来ないかな〜

実体化とか、サイコーです!!


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友との再会[2]

最近めっきり暖かくなってきて寒がりの作者には非常に嬉しいです。


 

 

「お前はモンスターを大事に育てているか?」

 

少し間があいて友が俺に尋ねてきた。

そんなこと当然に決まっている。

当たり前だろ、と俺が言うと友は少し表情が和らいだ。

 

「だよな。 お前ならそうだと信じてたよ。安心した」

 

「どうかしたのか?」

 

「いや大事にしてるのならいいんだ」

 

「いや気になるだろ。なんだよ」

 

友の言いたいことがわからない。普段は物事をスパッと言い切るのだが今日はなんだか控えめだった。

 

「……マスター」

 

今まであまり喋っていなかったイシスが口を開く。俺も友もイシスの方を向いた。

 

「私たちはもう大丈夫ですから…どうぞ話してください」

 

「いいのか?」

 

「はい」

 

この話にはイシス達が関係しているのだろうか。でもこの雰囲気はあまりいい話ではなさそうだ。

 

「実はな。お前はどうかわからないけど、金を二つだし彼女たちを手に入れて最高のスタートをきったかにみえた俺は最初は大変だったんだ」

 

「なんでだ?」

 

まあ俺はワルキューレを出した時は大変だったけど、金でしかも神タイプの彼女たちの何が困るのだろうか。

神様はわがままだからその扱いが大変だからとかかな? と俺は頭の中で考えたが友から返ってきたことは全然違った。

 

「彼女たちは《人間》という存在に極度に怯えていたんだ」

 

「? それは臆病ってことだからじゃないのか?」

 

「俺も最初はそう思っていたんだ。 だが違った」

 

友は首を横に振った。

 

 

「モンスターの記憶はデータを消してもずっと残り続けるっていうのは知ってるだろう?」

 

「ああ」

 

ワルキューレの事例があったのでそのことはよく知っていた。

 

「それでその彼女たちの過去の記憶が最悪だったんだよ」

 

「なんで? 強いから優遇されるだろ。 何が最悪なんだ?」

 

俺はよくわからなかった。銀の卵ならまだしも金の卵でもそういう扱いされるなんてみんなは何だったらいいのだろう。

 

「いや、強さの面じゃないんだ。 むしろ強さに関しては申し分ない」

 

「じゃあ、何が原因で?」

 

「可愛さだ」

 

「はっ?」

 

まあ今ここにいるイシスとバステトを見ても分かるが、友が言うには神タイプのモンスター(まあ女の子限定だが)はみんな可愛さも神級らしい。

 

「そのあまりの可愛さゆえにいろいろとやらかしてしまう奴らが多くてな…」

 

いろいろというのは言わなくてもわかるだろう。まあ男性が女性にもつ性的な感情のことだ。

 

「それが原因で金卵であっても精神的ダメージを受けているモンスターが多いんだ。 お前も金が出たらそういうことをきにしたほうがいいぞ」

 

俺はイシスとバステトを見る。

そうか金でも苦労してきたんだな。

 

「でももう平気です。今のマスターは私たちにすごく優しく接してくれますから」

 

「にゃ♪」

 

「そんなことねーよ、俺は当たり前のことをやっているだけだ」

 

「ふふ、マスターのそういうところ好きです」

 

「ったく、最初のお前らは本当に大変だったんだからな?」

 

 

 

 

 

 

〜回想〜

 

友「おお! 奇跡的にガチャが2回ひけるぞ!! よし!! そいや!!」

 

ガチャ ガラガラガラ…………ホロッ…ホロッ

 

友「うおぉぉぉー、金2つ!!!!!まじか!! これは熱い!!!」

 

 

パカッパカッ!!

 

友「しかも両方女の子ときた!!! 超かわいいぃぃぃ!!ひゃっほーい!!!」

 

イシス「あの…うるさいんで静かにしてもらえませんか」

 

バステト「………」ブルブル

 

友「あ、すみません」

 

イシス「それでは私たちを好きに使って下さい…あなたはマスターですから…」

 

バステト「………」ブルブル

 

友「…あ、ああじゃあダンジョンいこっか」

 

イシス「…それだけでいいのですか?」

 

友「う、うん」

 

イシス「わかりました…では行きましょう」

 

友「……………」スタスタ

 

イシス「………………」スタスタ

 

バステト「………………」スタスタ

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「こんな感じが1週間ぐらい続いたから参ったよ。イシスは冷たいし、バステトはずっと震えて俺を怖がってたし」

 

「あの時はすみませんでした」

 

「悪かったにゃ…」

 

「いいんだよもうそんなことは」

 

「「マスター/////」」

 

友は2人を抱き寄せた。抱き寄せられた2人は顔を赤くする。

あーあ3人とも幸せそうで何よりだ。よかったよかった………

 

 

…………つーか途中から俺何も言ってなくね!? なんかこの状況俺いらなくね!?

なんなんだよ友の奴。 結局自分の[仲いいですよ]アピールしたかっただけじゃねーか!

 

 

「じゃあ俺そろそろ帰るわ。邪魔しちゃ悪いし」

 

俺はコタツから出て荷物を持ち、帰る支度をする。

 

「なんだよもう帰るのかよ。泊まっていけよ。」

 

「い、いや用事もあるからさ!」

 

「そっか、じゃあまたな」

 

「またいつでもお越し下さいね」

 

「またにゃ」

 

 

俺は軽く会釈をして友の家を後にした。

ふん誰が行くかよ。 行ったらまた俺が確実に浮くパターンじゃねーか。 てか泊まってけってなんだよ。 それこそやベーわ。

 

そんなことをブツブツ言いながら俺はすっかり暗くなった街中を歩く。

 

「さむっ」

 

冬恒例の冷たい風が吹いてきて俺は立ち止まる。

そしてふと友の言ってたことを思い出した。

 

 

『金卵であっても精神的ダメージを受けているモンスターが多いんだ。お前も金が出たらそういうことをきにしたほうがいいぞ』

 

 

「金であってもか………」

 

ボソッと俺は呟いた。

これは金を当てても楽ではなさそうだった。

彼女たちをこんな目に合わせた奴らに無性に腹が立った。

 

「帰るか……」

 

俺は再び家へと続く道を歩き始めた。

 

 

 




またそのうち新モンスターを出したいと思ってます。


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撫でてほしい!

なんとか10話いきました笑




 

 

ジリリリリリリ…………

 

「…………ん、」

 

リリリリ……バン!!

 

けたたましい目覚ましの音で俺は目が覚めた。 どうやら服を着替えてない様子から昨日帰ってからすぐに寝てしまったみたいだ。

そうか、疲れてたんだな俺……とか思いボリボリと頭をかく。

 

「……………はあ、二度寝するか」

 

まだ眠かった俺はまた布団に潜った。

 

 

 

 

……………………

 

 

次に目が覚めたのは昼を回った午後3時頃だった。 こんなに寝るのは久しぶりだ。 なぜかって向こうではあの2人が朝早く起こすことを義務づけていたから二度寝なんてさせてくれなかったからな。

 

「さて、行くか」

 

十分寝てスッキリした俺は着替えてパズドラ界へと続くワープゾーンに立ち白い光に包まれた。

 

 

 

……………………

 

 

「やあ君たち元気し…「おそーい!!!!」」

 

ベチン!!

 

「ぶべら!!」

ワープして2人に声をかけようとした俺はエキドナの尻尾に顔をビンタされて吹っ飛ばされる。

 

「いってえな! なにすんだよ!!」

 

なぜ吹っ飛ばされたのか全然わからなかった俺は少々キレ気味になる。

 

「ダンジョンなんていつでもいけるから少しは我慢しろ!」

 

そんなやりとりを行く前にしていたことを思い出した俺はエキドナに食ってかかる。こんな口をきいたのは初めてで何されるか分からなかったので少々後ろ気味になったのだが

 

「…私のことは別にいいのよ、ただ…」

 

エキドナは正反対に声を小さくしてワルキューレの方を見る。

それにつられるように俺も目をやる。

 

「あ、マスター…おかえりなさい!……グスッ」

 

うずくまっていた彼女は涙を拭いてスクッと立ち上がり俺のところによってきた。

 

「……この子昨日の夜から『マスターが帰って来ない…どうしよう』ってずっと泣いてたのよ。 私が励ましても聞く耳を持たないし本当に大変だったのよ」

 

「…ごめんなさいエキドナさん、迷惑かけて…」

 

「ん、いいのいいの気にしないで! 大丈夫だから」

 

「でも……」

 

「そうそう、許してくれてんだからいいじゃねーか」

 

 

「あなたがその張本人なんですからね! 少しは反省してください!」

 

ワルキューレは少し怒ったような顔をして背を向けて向こうにいこうとした。

 

「ワルキューレ」

 

俺はワルキューレを呼び止め、歩み寄って頭を撫でる。

 

「!!!!! んっ、////////」

 

ワルキューレは急に触られて一瞬ビクッとしたが顔が和らいで気持ち良さそうな顔になる。

 

「すまなかった、またこんな思いをさせてしまって」

 

俺は頭を撫でながら謝る。

 

「ん///いいんですよ。次からは気をつけて下さいね///」

 

「ああ」

 

ワルキューレの顔にはいつの間にか笑顔が戻っていたので俺はホッとした。やっぱり女の子の悲しんでいる姿は見たくないからな。

 

 

 

 

「さて、ダンジョン行きますか!」

 

「はい!」

 

「………」

 

一段落ついた俺は2人に向かって言った。

ワルキューレは機嫌を取り戻して大きな返事をしたが、エキドナは何やら下を向いてモジモジしている。

ワルキューレが大丈夫だと思ったら今度はこっちか。 いったいなんだ?

 

「どうした?エキドナ」

 

「…いや、えっと…その……」

 

「なんだ、トイレか? だったら早く行ってこい」

 

「いやそうじゃなくて……その…」

 

「なんだ、はっきり言えよ。お前らしくないぞ」

 

「…………私にもしてほしいなー……なんて」

 

「なにを?」

 

「さっきワルキューレにしていたこと…」

 

「?」

 

「…えっと…こんな風に…」

 

エキドナは頭を撫でる仕草をする。 もうこの時点で俺は何かは分かっていたが、いつもと違ってモジモジしているエキドナが可愛くて少し意地悪くとぼけてみた。

 

「それはなんだ?」

 

「………もういいわよ! さっさとダンジョン行きましょ!」

 

流石にエキドナも恥ずかしかったのかプイと視線を外して行こうとする。

 

「ごめんごめん冗談だよ。こうだろ」

 

「もう!///////」

 

慌てて俺はエキドナの頭を撫でる。 するとエキドナもまたワルキューレと同じように気持ち良さそうな顔になった。

撫でられるのはそんなにいいものなのだろうか。 男の俺にはさっぱりわからない。

 

 

 

「んじゃ行きますか」

 

2人がご機嫌になったところで俺は再びダンジョンに行くことを提案する。

 

「それで次に行くところはどこかしら」

 

「次行くところはだな…えっとー」

 

俺は手元のスマホで確認する。

 

「私たち結構進みましたもんね」

 

「まあうちらの手にかかればこんなものよ」

 

「ああ、これだ。[魔王の城]ってとこだな」

 

「…!!」

 

「!!!」

 

と俺がダンジョン名を読み上げた瞬間、緊張の空気が走った。

 

「ん、どした?」

 

何もわからない俺は首を傾げる。

 

「…………このダンジョンは今までのとは全然違う……このパズドラにおいて第一の試練なのよ……以前ここを突破できなくてやめていった人達をたくさん見てきたわ」

 

「つまり?」

 

俺は聞き返す。

 

「…つまり生半可な気持ちではとてもじゃないけど突破できないわ。 あなたにもそれなりの覚悟が必要よ」

 

「…そういうことか。ならいつも以上に気合いいれていかないとな!」

 

俺はグッと腕に力をこめた。俺のパズドラ人生もかかってるってわけか。面白い。

 

「それでこそマスターね。さすがだわ」

 

「頑張りましょう!!」

 

2人もやる気に満ちているようだった。

 

 

 

「よし! じゃあ出発だ!」

 

「「おおー」」

 

こうして俺たち一向は魔王の城にむかったのだった。

 

 

 




新キャラ男でもいいかなーとか思ってたりします笑

まあまだ決めてませんが笑


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魔王の城

みなさんゴッドフェス引きましたか!?

作者も引きましたよ!

なんと3個中3個金でした!!

結果は セイレーン、イフリート、エンジェル……………


んー………やっぱパズドラ最高です!!!!!


 

「…ついたな」

 

「ええ」

 

歩いてどれくらいたったのだろうか。俺たちの目の前にそれは現れた。 そう、冒険者の第一の関門とも呼ばれている魔王の城だ。やっぱり関門というだけあって、他のダンジョンとは雰囲気が少し違った。 俺たちもその佇まいに圧倒された。

 

 

しばらくしてハッと俺は我に帰る。こんなんでビビってたらダメだ。いつも通りいかないと。

 

「よし、じゃあ早速入るぞ!!」

 

「ええ」「はい」

 

俺は大きな声で言う。

しかし……なんだか2人の反応が薄い。いつもだったら元気良く返事をしてくれるのだが。

 

「なんだよもっとテンションあげていこーぜ! ほら!」

 

「ええ」 「はい」

 

「ほらもっといつも通りに!」

 

「ええ」「はい」

 

「………」

 

俺が何を言っても2人は「はい」の返事しかせず、しかも何処か落ち着きがなかった。

もしかしてこいつら緊張してるのか。今まではそんなことなかったのだが、そんな2人をこんなにさせるほどこのダンジョンは難しいのか。

 

だがそれが原因で2人が全力を出せなかったらまずいしな……どうしよう……

 

 

 

「もしこのダンジョンがクリア出来たらまた撫でてやろうかなーなんてね」ボソッ

 

「!!」「!!」

 

どうしようか考えていた俺が何気無く発した言葉に彼女たちは鋭く反応した。

 

「マスターそれはホントですか!?」「嘘じゃないわよね!?」

 

さっきのテンションはどこかへいってしまったかのように2人は食いついてくる。

どんだけ撫でられたいんだこいつら。

 

「エキドナさん! 気合いれて行きますよ!」

 

「ええ! 私たちのコンビは最強よ!!」

 

「おいおい」

 

そういって2人はズカズカと城の中へと入って行ってしまった。

今度は俺が彼女達のテンションにおいていかれてしまったようだ。 まあでもいつもの2人に戻ってよかったよかった。

 

「やれやれ、なんてコロコロした奴らだ」

 

フッと笑い俺も城に入った。

 

 

 

 

 

〜城内

 

 

城の中は薄暗かった。 光は壁に立ててある蝋燭の火だけでなんか本当に城という感じがした。

 

「おーい先行き過ぎるなよー」

 

俺はガンガン進んでしまっている2人に声をかける。

 

「大丈夫大丈夫ー」

 

かなり先の方からエキドナの声が聞こえる。 どんだけ先に行ったんだよあいつら。 もし敵が出てきたらどうすんだ。

 

 

 

「……」

 

 

 

そう思った俺はふとあることに気づいた。

 

「…なんで敵が出てこない?」

 

普通だったらダンジョンに入るとすぐ目の前に敵が現れて戦闘になるはずなのだが、ここは入ってしばらくするのに物音さえしない。 それが逆に不気味だった。

 

「つーか、もし1人で出くわしたらどうするんだよ。なんてな」

 

「……………………」

 

 

冗談混じりで呟いた俺だったが自分が言った言葉に少し焦り出す。

 

 

そう。今がその状況なのだから。

 

「おーい!! エキドナ!! ワルキューレ!! 戻ってこい!!」

 

嫌な予感がした俺は急いで2人を呼び戻す。だがまだ2人は呑気そうに返事をしている。

 

「ったく、仕方ねえな」

 

2人が来そうにないのでこっちから行こうとしたその時…

 

「うわ!!!」

 

突然俺の前にモンスターが現れた。 5体いる。

 

「て、敵か!!」

 

俺が思った通りの最悪の状況になってしまった。

でもまさか俺に向かっては攻撃してこないだろう。

 

 

「エキドナー!! ワルキューレ!! 敵だ!!」

 

俺は必死に2人を呼び戻す。全く何してんだあの2人は。

 

「2人が来るまでもうちょっと待っててくれる?」

 

俺がモンスターにそう言った時だった。

 

ザザザザザッ

 

「!?!?!?」

 

モンスター達が俺の方に武器を振りかざして向かってきたのだ。 驚いた俺は反射的に逃げる。

 

「!! こいつら俺を攻撃するつもりか!?」

 

もし生身の人間がモンスターの攻撃を受ければいくら弱いモンスターでもかなりのダメージを受けるだろう。 ましてや今の状況だと5体から狙われているのでなおさらだ。

 

 

「……おかしい」

 

俺は走りながら呟く。

今まで数々のダンジョンをやってきたが、モンスターが人間を狙うことなど絶対になかった。 そんなことあったら運営的にもまずいからな。

 

だが今回は違った。 まずダンジョンに入った時からおかしかったのだ。 モンスターは出てこないわ、出てきたと思ったら襲われるわ、いったいどうなってるんだ。

 

大分離れたが敵はまだ追いかけてくる。しつこい奴らだ。

すると向こうからワルキューレとエキドナが駆けつけてきた。

 

「すみません、マスター。離れすぎてしまいました」

 

「それで敵ってどこにいるわけ?」

 

「あれだ」

 

俺は向こうから来る5体の敵を指差して言った。

 

「俺を追っかけてきたんだ。危ないところだったよ」

 

「「追っかけてくる?」」

 

俺の言葉に2人は反応する。

 

「ああ、俺もびっくりしたよ」

 

 

「…マスター、そんなことは……」

 

ワルキューレが何か言おうとしたが敵はもう間近まで迫っていた。

 

「まずい! いくぞエキドナ! ワルキューレ!」

 

そういって俺はパズルを回した。 火と光の全体攻撃! これでどうだ!

 

「いくわよー!」「くらいなさい!!」

 

2人の連携攻撃が5体の敵を一掃する。うん、なかなかいい感じだ。

 

「よくやった2人とも」

 

「ありがとうございます」 「まあこれくらいは当然ね」

 

「よし、じゃあ次に進むとす…「マスター」」

 

俺が歩き出そうとした時、ワルキューレが俺を呼び止める。

 

 

「先ほどの敵に追いかけられたというのは本当ですか?」

 

「ああ、出くわした時に武器を構えて向かってきたから逃げたんだ」

 

するとワルキューレはエキドナと目を合わせて首を傾げた。

 

「どうかしたのか? まあ確かにこんな経験をしたのは初めてだからな」

 

「基本的には敵のモンスターはプレイヤーには攻撃しないはずなんですが…」

 

「まあ、たまたま気性の荒い敵だったんだろ」

 

ハハっと俺は笑った。

でもさすがに毎度毎度は疲れるから勘弁してほしいものだな。

 

 

 

「いや」

 

 

 

エキドナが口を挟む。

 

「基本的ではなく絶対によ。敵は絶対プレイヤーを攻撃したりしないわ」

 

エキドナの言葉に俺は顔の色が変わる。

 

「じゃああいつらは一体…」

 

「わからないわ………まあでも今はクリアすることだけを考えましょ」

 

確かにエキドナの言う通りだ。 そんなことを深く考えるよりクリアすることの方がよっぽど大事だからな。

 

「よしっじゃあ次いくぞ!」

 

「「おおー!!」」

 

そういって俺たちは上へと続く階段を上って行った。

 

 

 




試しにワルキューレとエキドナで魔王の城をやってみましたが…………無理!笑





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城の実態

なんかパズドラじゃなくなってきてる?

いや気にしない気にしない!!


 

 

入っても敵が全然出てこないことに若干の疑問を抱いたが、モンスターに襲われてなんとかエキドナたちと合流して突破した俺たちの後に待ち構えていたのはたくさんの敵だった。

 

俺たちは若干それを見て焦った。

俺たちが一度に戦えるのは5体が限界なので、一度に襲いかかられたらひとたまりもないからだ。

まあいつものダンジョンだったらそんな心配しなくてもいいのだが、先ほど襲われてから少し不安があった。

 

 

だけどそこのところは モンスター達はきっちり五体ずつ出てきてくれて残りは後ろで待機という状態だったので大丈夫だった。 その後ろで待ってるモンスターが少しかわいく見えた。

だが五体ずつを相手にするのもなかなかキツイものであり俺たちは苦戦を強いられた。

 

 

 

 

 

 

「うおっ、危ねえ!」

 

敵が俺めがけて攻撃してくる。 俺はなんとかそれをかわす。

 

「マスター大丈夫ですか!?」

 

戦っているワルキューレがこちらを振り返る。

 

「ああ、大丈夫だ」

 

そういって俺が起き上がろうとした時

 

「マスター!上!」

 

エキドナが俺の頭上を指差し叫ぶ。

そこには空中から攻撃してこようとする敵の姿があった。

 

「くっ、」

 

これは避けられないだろう。 だったら…

俺は素早くパズルを揃えた。火の1コンボ。

これでいってくれ!

 

「エキドナ、頼んだ!」

 

「任せなさい!」

 

エキドナは口から炎の玉を飛ばす。

 

「!!」

 

それが見事命中して敵は炎に包まれていった。

 

 

 

「ふう」

 

目の前の5体を倒して俺はため息をつく。

何故敵は俺を狙ってくるのかわからない。 今はエキドナとワルキューレがいるのにそれでも俺を優先してくる。 いったいなんなんだ。

 

「次の奴はどいつだ?」

 

俺は辺りを見渡す。 周りには誰もいなかった。

 

「何とかひと段落ついたみたいね」

 

倒れている敵を見ながらエキドナは言う。

 

「ふう、なんとか倒しきったか」

 

「危なかったですねマスター」

 

「ああ、なんとかな…」

 

もしあそこで素早く対処してなければ俺は攻撃を食らっていたかもしれない。 今思うとゾッとする。

 

「ありがとうエキドナ。助かったよ」

 

「あなたの判断がよかっただけよ。私はそれに従っただけ………それでそのことなんだけど……」

 

エキドナが指を合わせてもじもじしている。

 

「ん?」

 

「頑張ったから頭を撫でてくれないかなー……なんて……」

 

エキドナが顔を赤らめながら言う。

 

「ああー! エキドナさんだけずるいです! マスター私にもして下さい!」

 

そのやりとりを見ていたワルキューレも俺の近くに寄ってくる。

 

「それは終わってからの約束だろ。今はダメだ」

 

 

「…ケチ」「残念です…」

 

2人は不満そうにほっぺたを膨らます。その姿が可愛かった。まあでも今はこの緊張を解く訳にはいかないから我慢してくれ。

 

 

 

 

「じゃあ気を引き締……」

 

ギィー

 

俺が2人に話しかけようとした時、奥の扉の開く音が聞こえた。

俺たちはその音に反応して身構える。

 

「いやあお見事お見事」

 

静かな城内に低い男の声が響き渡る。その声は扉が開かれた場所から聞こえたものだったが薄暗くてよく見えない。

 

「誰だ」

 

俺は扉の方に向かって言う。

 

「おっと失礼。暗くて姿が見えませんかな? ならばもう少し近くに行きましょう」

 

そう言ってその言葉の主は俺たちの方に歩いてきた。

俺たちはさらに身構える。

 

その男は俺たちの5m先で止まった。すると見えなかった姿が蝋燭の光によって照らし出された。

 

青白い長い髪で黒いマントを羽織り赤いサーベルを手にしていた。

 

「お察しの通り私がこの城の主であるヴァンパイアロードというものです」

 

やはりそうか。なんかそんな気がした。さっきの敵たちとはまるで違うオーラを放っている。

 

「いやあ参りましたねぇ、私の精鋭部隊が全滅させられるとは。 ここまで来た者は久しぶりですね」

 

ヴァンパイアはハハハと笑う。

 

「ここまで来れたことは褒めてあげましょう。ですが貴方たちもここまでです」

 

そういってヴァンパイアは腰にさしてあるサーベルを抜いた。

それを見てワルキューレとエキドナも戦闘体制に入る。

 

「1つ聞いていいか?」

 

俺はヴァンパイアに問いかける。

 

「なんでしょうか」

 

ヴァンパイアは首を傾げる。

 

「ここに来るまでに俺たちはたくさんの敵と戦ってきたわけだがどのモンスターも俺を中心的に狙ってくる。 普通ではありえないのだが、ここの秩序はいったいどうなってるんだ? 危なくてしょうがないぞ」

 

その言葉を聞いてヴァンパイアはまたハハハと笑った。

 

「何がおかしい! そんなことしていたら運営に目をつけられるぞ!」

 

俺はその態度に少し苛立ちをおぼえた。

 

「ハハハ、運営? そんなもの目じゃないですよ」

 

「何?」

 

「ここは運営が手をつけられなくなった、いわば無法地帯。まあ要するにこのダンジョンのボスである私が取り仕切っているわけですよ」

 

「……」

 

俺は言葉が出ない。ヴァンパイアは話を続ける。

 

「そこで私は自分なりのルールを定めたわけです。 まあ例えば “モンスターより人間を優先的に狙え” とかね」

 

「そんなことしたらマスターが危ないじゃないですか! 何かあったらどうするんです!」

 

ワルキューレは怒ったような口調になる。

 

「何言ってるんですか。それでいいんですよ」

 

ヴァンパイアは当然の顔をして言う。

 

「そ、それならマスターが死んでも構わないと…?」

 

 

「ええ、なんども挑まれるのは少々面倒くさいのでね。 そうした方が手っ取り早いかと」

 

フフッとヴァンパイアは笑ったが目は笑ってなかった。

俺はそれに得体のしれない恐怖を感じた。

 

「…それじゃあ、ここでパズドラを辞めていった人たちっていうのは……」

 

今まで黙っていたエキドナも口を開く。

 

「まあ仮で辞めた形になっているのでしょう。 だって本当は私達が殺したのですから」

 

「…非道ね」ギリッ

 

「ゆ…許せない……」

 

2人は怒りで震えていた。

 

「マスター、パズルを回して下さい。 こんな奴さっさと倒しましょう」

 

「ああ」

 

ワルキューレがこちらを向く。 こんなに怒っている彼女は初めて見る。

 

だが俺も同じ気持ちだ。 こんな奴放っておくわけにはいかない。

 

 

 

俺はパズルに手をかけた。

 

 

 




なんかシリアスな展開になってきちゃいましたね

ほんわかいきたいんだけどなー笑


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魔王との決着

 

「行くぞヴァンパイア!! お前の非道な行為を見逃す訳にはいかない!」

 

そう叫んで俺はパズルを回す。 火を含めた5コンボ。

まずはこれでもくらえ!

 

「はあーー!」

 

エキドナが無数の炎の玉を飛ばす。 だがそれをヴァンパイアは訳もないかのように華麗にかわす。

 

「!?」

「何!?」

 

俺は驚いて思わず声が出る。 エキドナも驚いた顔をしている。

あいつ、攻撃をかわすことまでできるのか。

 

「何するんですか。いきなり危ないじゃないですかー」

 

ヴァンパイアはのんびりとした口調で話す。どうやら全然余裕のようだ。

 

「私はただ…「ならこれならどうだ!!」」

 

ヴァンパイアが続けて何か言おうとしたのを遮って俺は再びパズルを揃える。 光と火を消したコンボ。

2人同時なら当たるだろう。

 

「いきます!!」「いくわよ!!」

 

ワルキューレが剣を構えて突撃していき、その後にエキドナも続く。

 

「くらいなさい!」

 

ワルキューレとエキドナの攻撃が連続してヒットする。 流石によけれなかったみたいだ。

 

「どうだ、くらったか?」

 

俺は攻撃を受けて飛ばされたヴァンパイアの方を見る。

 

 

 

 

…しかし

 

「痛いじゃないですかまったく」

 

ヴァンパイアは余裕だった。

攻撃を受けたのにもかかわらず目立ったダメージは見られず、飛ばされた時に服についた埃を落としていた。

 

「まじか」

 

今のコンボでこの程度のダメージか。やはりボスとなると強さが段違いだ。 これは苦戦を強いられそうだな。

俺は再び気を引き締める。

 

「よし!次だ!」

 

俺がそう言ってパズルを回そうとするとヴァンパイアが言った。

 

「しつこいですね、そろそろ私も攻撃していいですか?」

 

「「!!」」

 

その言葉を聞いたエキドナとワルキューレは慌てて防御の姿勢を取る。 俺も彼女達がヴァンパイアの攻撃を耐えれるかどうか不安になりながら見守ろうとした。

 

「…………」

 

ヴァンパイアはしまったサーベルをもう一度取り出す。

そしてサーベルを構えて走り出した。

 

「き、きなさい!」「耐えてみせます!」

 

 

 

しかしヴァンパイアはそんな2人を目にもかけず俺の方向に向かってきた。

 

「な、!?」

 

そんなこと思ってもなかった俺は慌てる。

 

「お、おい! 彼女達はあっちだぞ!」

 

するとヴァンパイアは言う。

 

「なに言ってるんですか。さっき言ったでしょう? 最初から狙いは貴方だけだって」

 

その言葉と表情から俺は確信した。 こいつ、マジで殺しにきてると。

 

俺はパズルを回そうとしたがさっき攻撃した時に俺と彼女たちとの距離が離れてしまったので間に合いそうにない。

その間にもヴァンパイアは俺との距離をどんどん詰めてくる。

為す術もないと感じた俺は腕を降ろして呆然とする。

 

「マスター!!」 「避けて下さい!!」

 

ヴァンパイアの後方から2人の声が聞こえる。

 

すまんエキドナ、ワルキューレ。 お前達を撫でてあげることは出来そうにないや。

 

ヴァンパイアはもう目の前まで来ていた。

 

「おしまいです」

 

ヴァンパイアはニヤリと笑い武器を振り上げた。

 

「いやあああぁぁぁ!!!!」

 

ワルキューレの悲鳴が聞こえる。

俺は覚悟を決め目を閉じた。

 

 

 

 

……………………………………

 

 

 

 

 

 

 

んっ? 意識がまだあるぞ。 無事だったのか? 辺りも静かになったし何があったんだ?

俺が恐る恐る目を開くとそこには武器を振り上げたまま硬直しているヴァンパイアの姿があった。

 

「き、貴様何をした!!」

 

ヴァンパイアは動けないようだった。 俺も何が起きたのか分からずキョトンとする。

 

「ふう、どうやら間に合ったようね」

 

ヴァンパイアの後方にいたエキドナとワルキューレが近づいてくる。

 

「エキドナ、何をしたんだ?」

 

おれがそう尋ねるとエキドナは呆れたような顔をする。

 

「やっぱり忘れてたのね。私のスキルを使ったのよ! 以前あなたにも見せてあげたじゃない」

 

「あっ…」

 

すっかり忘れていた。 ついパズルを揃えることだけに意識が行き過ぎていたようだ。

始めからスキルを使っていればこんな危険に遭うことなどなかったはずだ。

 

「本来はマスターが指示するものだけど、今回は止むを得ない状況だったから私から使わせてもらったわ。 次からはこんなことがないようにしてほしいものね」

 

「もう! マスターったら心配させないでください!」

 

「ごめん、悪かった」

 

俺はひとまず2人に謝り、ヴァンパイアの方に向き直す。

 

 

「さてヴァンパイア。 こんなわけで形勢が逆転してしまったな」

 

するとヴァンパイアはフッと笑って言う。

 

「何を言っている。 たとえ俺がこうして動けない状態でも貴様らの攻撃など効かぬわ。 さっきのを見てわかったろう」

 

「さあそれはどうかな」

 

「なに?」

 

「まあみていろ。 …ワルキューレ…いけるな?」

 

俺はワルキューレの方を向いた。 ワルキューレは黙って頷く。

 

「…俺もこれを使うのは初めてだ。 【攻撃態勢・光】 発動!!」

 

その瞬間パズルの画面が黄色に染まり、ワルキューレの持っている剣が光を帯びる。

 

「!!」

 

ヴァンパイアはその光に目を背ける。

 

「くらえヴァンパイア!!」

 

俺はそう叫んでパズルを揃える。今までの比ではないくらいに光のコンボが決まった。

 

 

「やあああーーー!!!!」

 

ワルキューレは身動きが取れず無防備なヴァンパイアの体に怒涛の攻撃を浴びせる。

 

 

「ぐわぁぁぁぁーー 、こんな奴らにぃぃぃ……」

 

さすがのヴァンパイアもそれには耐えきれず最後は断末魔を残し消滅していった。 再び城は静寂に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

「や、やったか」

 

俺は安心したのかへなへなとその場に座り込む。

 

 

「やりました!!」 「やったわね!!」

 

駆けつけてきた2人が俺に抱きついてくる。

 

「ああ、よくやってくれた!」

 

俺も2人を抱きしめる。

 

 

「それじゃあ」「マスター」

 

そういって2人は頭を前に出す。

 

「ああ、わかってるよ。 約束だもんな」

 

 

 

この後2人の気が済むまでめっちゃ撫でてあげた。

 

 

 




戦闘シーン書くの難しい汗
なのでそこら辺はご勘弁を笑


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進化? なんだそれ

ffコラボ金ですぎーって皆が言ってる中まだ僕は金を見てません。

もう死ぬほどガチャ運ないです(泣)


 

「ああー暇だなー」ぐでー

 

今俺は小屋 (パズドラ内での我が家)のソファでゴロゴロしている。 まあこないだの魔王の城の件もあったので休養と称してダラダラしている感じだ。

 

「できましたよ!」

 

エプロン姿のワルキューレがキッチンから食事を持ってやってくる。

 

「おお、出来たか!」

 

「ええ、また腕を振るっちゃいました!」

 

「よっしゃあ!!!」

 

俺は運ばれてきた食事にすぐさま喰らい付く。

 

「どうですか? お味の方は」

 

「ああ、最高!!」

 

俺は頭の上で大きな丸を作る。申し分ない。 本当にワルキューレは料理が上手だ。

 

「喜んでもらえて嬉しいです」

 

そう言ってニコッと笑うと彼女はまたキッチンへと戻っていった。

 

 

「やっぱいいなあ」

 

 

俺は食べながらそうボソッと呟く。

 

 

ワルキューレは何でも出来る。 料理はもちろんのこと掃除や洗濯などもテキパキとやるし、小屋の管理は全て彼女がやってるようなものだ。 ワルキューレがいないと成り立たなくなってしまう。本当になくてはならない存在だ。

 

 

 

 

 

それに比べて……

 

俺はエキドナの方をチラッと見る。

 

「くー!! 今日のもサイコー!!」

 

「…あの、また飲んでるんですかエキドナさん…」

 

俺は酒を飲んでいるエキドナに話しかける。

 

「何? ダメなの?」

 

「いえ、いいんですけど。そんなに毎日飲んでると体に悪いかなーって」

 

普段からエキドナには言葉遣いに注意しているが、酒が入ってる状態だと尚更気をつけるようにしている。

いくら酒に強いとはいえ何されるかわからないからだ。

 

「大丈夫よ、私丈夫だから」

 

そういう彼女の顔は真っ赤だった。 もう酔っ払ってんじゃねーか。

 

「飲み過ぎには注意してくださいね」

 

はあ、とため息をついて俺はソファに戻った。

 

 

エキドナは本当に酒が好きで小屋では常に隣りに酒があるくらいだ。

前なんてダンジョンにも酒を持っていこうとしていて流石にそれはやめさせた。(まあ少しもめたが)

 

そんなわけでエキドナは家事ができない。 最初はやらせていたが、なかなか酷かったので結局今まで通りワルキューレだけになった。

 

 

でもそういった面では役に立たないエキドナだが戦闘のこととなると別だ。 前回の魔王の城もそうだが何度もピンチを救われた。

ワルキューレとの息もバッチリで今やうちの戦力には欠かせない存在だ。

 

 

「…………」

 

 

 

そう考えると俺はこの2人にお世話になりまくっている気がする。

まあモンスターとマスターの関係と言ったら当たり前なのかもしれないが、それにしても少しくらいお礼をしたい気持ちにもなってくる。

 

「うーん…」

 

とりあえず俺は腕を組み目を閉じて考えてみる。

 

 

 

しかし、あれはどうか、これはどうか、などと何か2人にしてやれることを考えたが、所詮人間である俺が仮にもモンスターである彼女達にできることなどない気がした。

 

うーん、と俺は頭を抱える。

 

「……………」

 

無いなら仕方ないか。やっぱり別にそんなことしなくていいかな。

そう思い始め俺はソファの隅に置いてあったスマホのパズドラをいじくる。

 

 

 

 

「(あー2人とも結構強くなったなー)」

 

 

そうやってぼーっと考えながらチェックしていた俺はあることに気づく。

 

「ん? なんだこれ」

 

それはメニュー画面の真ん中にあった【進化】というアイコンだった。

 

進化?

そう思いながらそのアイコンをタッチする。

 

するとエキドナとワルキューレのアイコンが光っていて(可能)と書かれている画面にかわった。

 

可能? 何がだ? 進化のことか? なんで光ってんだ?

 

「………?」

 

なんかよくわからなかったがとりあえず押してみることにした。

俺は酒を飲んでいるエキドナの方に視線を向けてエキドナの光っているアイコンにおそるおそる指を近づける。

 

 

ピッ

 

「うおぉぉぉぉー!??」

 

押した瞬間エキドナは眩しい光に包まれた。

 

「なになになに!?!?」

 

エキドナはいきなり自分自身が光りだしたことに驚く。

 

「な、なにが起こってるんだ!?」

 

「なにって、なにしたのマスター!!」

 

「いや、ちょっとな…よくわからん」

 

「もう何やってるのよ!! どうなるの私!」

 

「こっちが聞きたいわ!」

 

「もう!!」

 

そんなことを言い合っているうちにだんだんと光がエキドナを包み込んでやがて完全に見えなくなった。

 

「エキドナ!!」

 

「…………」

 

呼んでみたが返事はなかった。

 

ああ、何も考えずに押した結果がこれだ。 さっきの自分を悔やんだがもう遅い。

 

「すまん、エキドナ……」

 

そうボソッと呟いて俺はうなだれた。

 

 

 

 

 

するとポンポンと肩を叩かれる。

 

「ん?」

 

俺が顔を上げるとそこにはニコニコしたエキドナがいた。

 

「え、何で?」

 

「ごめんね〜、マスターの慌ててる顔を見るのが面白くてからかっちゃった」

 

??どういうことだ? 今俺の前にはいつも通りのエキドナがいる。

じゃあさっきの光は何だったんだ?

 

「からかった? どういうことだ?」

 

「もう…見て分からないの?」

 

エキドナが少し不機嫌そうな顔になったので、まずい!と思い、よく彼女を見てみる。

 

 

 

………言われてみれば確かに少し外見が変わっていて一回り大きくなった気がする。(色んなところが)

しかも両手にソードなんか持ってるし、これは本格的に逆らえないぞ。

 

「ああ、変わってるね」

 

「なんか反応薄いわね。もう少し喜びなさいよ」

 

「いやだってよく分からないんだよ」

 

「何が?」

 

「あの光ってる最中に何があったんだ?」

 

それを聞いてエキドナは呆れた顔になる。

 

「はあ、それを見てみたら?」

 

そういって俺が持っているスマホを指差す。

俺は画面を見てみる。

 

「…進化成功……」

 

それを見て俺はようやく何が起こったのか理解した。

俺が訳のわからないまま押したのはモンスターを進化させるものだったのだ。

 

「つまりエキドナは進化したってことだな?」

 

「そうよ、何も言われずにいきなりだったからビックリしたわよ」

 

「あはは、それは悪かった。 でもこれで強くなったわけだな」

 

「まあね、これからの活躍期待してなさいよ!」

 

「ああ、頼んだぞ…」

 

 

…………

 

こうしてひと段落済んだのでだらだらするのを再開し始めたが、間も無くリビングにもう1人の声が響く。

 

「あーーー!!! エキドナさんそれ!!!」

 

その声の主は勿論ワルキューレ。 まあそういう反応になるだろうな。

 

「ふふふ、マスターに進化させてもらったのよ。 いいでしょう」

 

エキドナは酒が入っていて気分がいいのか自分の格好をワルキューレに見せびらかす。

 

「ううう…ますた〜私も進化したいです〜」

 

ワルキューレが俺にすがってくる。

…うん、そりゃあそうなるわな。

俺もそうしてあげたいのは山々なんだけどな……

 

 

 

 

 

「ええ!? 素材が足りない!?」

 

「ああ、さっきのエキドナので使っちゃって一部足りないんだ」

 

「だ、だったら今すぐ取りに行きましょうよ!!」

 

「いやーでも今ダンジョンに行くことへの恐怖心があるからなー……来週ぐらいにでも…」

 

「今じゃダメですか?」

 

「うんちょっとメンタル的にも…」

 

「ダメですか?」ウルウル

 

うおーそんな顔するんじゃねーよ!! そんな泣きそうな表情されたら…

 

「わ、わかったよ。じゃあ今から行くか」

 

「ありがとうございます!!」

 

はあ、結局そうなるんだな。 まあいつまでも引きこもってる訳にもいかないしいい機会なのかな。

そう考えながら俺は支度をする。

 

 

 

「エキドナも準備できたか?」

 

「ええ! バッチリよ!」

 

「じゃあ行きますか」

 

「「おおー!!」」

 

こうして俺たちは小屋を後にした。

 

〜〜〜

 

この後しっかり素材もゲットしてワルキューレも進化させましたとさ。

 

 




エキドナ「ああー」

俺「どうした?」

エキドナ「いやなんか進化してから急に肩が凝りやすくなった気がしてね」プルン

俺「気のせいだろ。張り切りすぎだきっと」

エキドナ「きっとそうね」プルン

ハハハ…ふふふ………


ヴァルキリー「……(エキドナさんの方が大きい)」


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ヴァルキリーの不安

少し間が空いてしまいました。

今後も更新速度が遅くなりますがご了承を(ーー;)


 

 

「これで終わりだ!!」カラカラカラ……ポンポンポン……

 

パズルの回す音の後に続いてコンボする音がダンジョン内に響き渡る。

 

「よし! 8コンボ!!」

 

「すごいです! マスター!」

 

俺はガッツポーズをする。

これは運じゃない。 最近パズルが心なしかうまくなっている気がする。

 

「よし! とどめだ!!」

 

「「やあぁぁぁー!!!」」

 

進化してパワーアップしたエキドナとヴァルキリーの攻撃が次々と敵にヒットしていく。 今回の敵も決して弱い訳ではないが2人の怒涛の攻撃に耐えられるはずもなく消えていった。

 

「よし、クリアーだ! 2人ともよくやってくれたな」

 

勝利のファンファーレがダンジョン内に鳴り響く。

俺は2人の元に歩み寄って頭を撫でてあげる。

 

「「//////」」

 

戦闘中はキリッと引き締まった顔をしていた彼女達も撫でられると一気に表情が崩れた。

 

 

 

「さて、帰ると………おっ?」

 

ひと通り撫でてあげた後ダンジョンを出ようとした時、俺はボスのいたところに宝箱が置かれていることに気づいた。

 

 

 

…これってもしかすると

 

そう思いながら箱を開ける。

 

「おお〜やっぱりこれか!」

 

そこには以前と同じように一つの魔法石が入っていた。

俺はそれを手に取り眺める。

 

「おめでとうございます! やりましたね!」

 

ヴァルキリーはそれを見て手を叩いて喜んだ。

 

「ああお前たちのおかげだよ。本当によくやってくれた」

 

「そんな///私達はやるべきことをやったまでです」

 

「そ、そうよ。 当たり前よこんなもん」

 

2人はそう言うも顔は嬉しそうな表情を浮かべていた。

 

「よし! これで新しい仲間が増えるぞ!!」

 

「やったー!!」 「え…」

 

 

すると俺がそういった瞬間、エキドナはさらに喜んだのに対してヴァルキリーの笑顔が一瞬固まった。

 

「ん、どうかしたか?」

 

「あ…い、いえ。何でもないです」

 

「あれ? ってゆーかガチャが引ける石ってこれであってるよね?」

 

「あ、あってますよ。 大丈夫です!」

 

 

慌てて彼女は笑顔を取り戻す。 だがそれは何か寂しげだった。

 

 

 

 

〜帰り道

 

 

 

早くガチャが引きたい俺はダンジョンの攻略で疲れているはずなのに自然と速歩きになったので、その後ろからエキドナとヴァルキリーが追う形になった。

 

 

「まったく、マスターったらあんなにはしゃいじゃって…まあ確かに私も楽しみだけどさ」

 

「…………」

 

「いやー次の仲間は誰かな〜。 男かな?女かな? はたまたドラゴンかな? いやドラゴンはちょっと勘弁かなー。 ヴァルキリーは誰だと思う?」

 

「……………」

 

「ヴァルキリー?」

 

反応がないのでエキドナはヴァルキリーの顔を覗き込む。

 

「な、なんでしょう?エキドナさん」

 

「どうしたの? そんなに落ち込んじゃって」

 

「いえ…何でも……」

 

ヴァルキリーはそう答えたが本当は何かあるようだった。

 

「…困ってることがあったら私に言いなさいよ。 私達コンビでしょ?」

 

「…………」

 

エキドナがそう言ってヴァルキリーは黙り込む。 そしてしばらくして口を開いた。

 

 

「エキドナさんは不安じゃないんですか?」

 

「何が?」

 

「マスターがガチャを引くことが…」

 

「仲間が増えていいことじゃないの。 それの何が不安なの?」

 

ヴァルキリーが深刻そうなのに対してエキドナは至って呑気だ。

 

「新しい人が来たら私達…」

 

 

 

 

「…見捨てられてしまうかもしれない…」

 

ぼそっとヴァルキリーは言った。

 

それを聞いたエキドナは驚いた顔になるが、すぐに噴き出す。

 

「ぷっ、 あははははは!」

 

「な、何がおかしいのですか!?」

 

ヴァルキリーは真剣に打ち明けたことを笑われたことに少しムカッとする。

 

「あはは…そりゃおかしいわよ。 だってマスターがそんな事するわけないじゃない」

 

「…そうでしょうか…」

 

「そうよ。 今までいろんなマスターに仕えてきたけどあんなに優しいマスターに出会ったのは初めてよ」

 

 

 

…確かに、とヴァルキリーは思った。 私と出会った時もそうだった。 あんなに暖かく喜んで迎えてくれた。 そして今も……

 

 

それに…とエキドナは続ける。

 

「今の貴方は十分強いわ。 だからもっと自分に自信を持ちなさいな」

 

 

そうか。 リーダーがこんなに不安になってどうするんだ。

ましてや、新しい仲間のことより自分のことを優先するなんてリーダー失格だ。

 

 

そうですよね、と言ってヴァルキリーは顔を上げる。

 

「エキドナさん!!」

 

「うわっ、何よびっくりしたなあ」

 

「私達も新しい仲間を迎える準備をしましょう!」

 

「おっ、やっと元に戻ったわね。 それでこそ我らのリーダーよ」

 

「そうとなったら早く戻ってご馳走を作らないと!」

 

ヴァルキリーはそう言ったかと思うと走り出した。

 

「やれやれ。 なんてテンションの変わりようなの」

 

エキドナも苦笑いをしてそれを追いかける。

 

 

沈みかけの太陽が走っていく2人の後ろをいつまでも照らしていた。

 

 

 




新しいモンスターを決めるのに悩んでいます。

まあ回復タイプにはしようかなと思っています^ ^


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新しい仲間

ついに新キャラ登場です!!


 

「よし!! それじゃあ引くぞー!!」

 

また例によって出した金色のガチャドラの前で俺は指を鳴らす。

 

「マスター! こっちも準備出来ましたよ!!」

 

「おう! 2人もこっちに来い!」

 

歓迎会の準備をし終えたヴァルキリーとエキドナもガチャドラのところに向かった。

 

 

「よ、よーし。 回すぞー……」

 

「ええ」「はい」

 

3人の間に緊張が走る。

 

 

「………せい!」ガチャ

 

ガラガラガラ…と大きな音を立ててガチャドラは振動する。

 

「どうだ!?」「「………」」

 

俺達は固唾を飲んでその行方を見守る。

 

そしていよいよ振動が止まりお腹の辺りがパカッと空き、卵が出てきた。

 

 

 

 

「うお!!」 「わあ!」「やったわ!!」

 

この俺たちの反応で分かるように出てきたのは金の卵だった。

 

「やりましたね! マスター!」

 

「あ、ああ。初めての金。 さて誰かな!?!?」

 

卵が光り、その中にいたモンスターが姿を現した。

 

 

「ようこそ! いらっしゃい!!」

 

初めて金の卵が出て嬉しい俺はハイテンションでその出てきたモンスターを出迎える。

 

出てきたのはこれまた女性だった。しかもヴァルキリーとエキドナに負けないぐらい綺麗な人だった。

 

そのことが俺のテンションをさらに上げる。

 

 

「君が新しいモンスターだね!? これからよろしく!!」

 

そう言って俺は彼女の肩に手をかけようと手を近づけた。

 

 

 

…しかし

 

バシッ 「いた!!」

 

彼女はその手をはたく。

 

「ご、ごめん。 つい…」

 

はたかれて俺は少し冷静になる。

いくらなんでもテンションが上がっていたからといって初対面の女性に触るなんて無礼すぎる。

 

「当たり前でしょ。 失礼極まりないわ」

 

「す、すみません」

 

その女性が口を開く。

細く鋭い声に俺は自然と敬語になってしまう。

 

なんなのよ全く…とその女性はぶつぶつ言う。

 

 

 

「…えっとー、あのー」

 

「何かしら」

 

「お名前の方を教えて頂けないかなー…なんて」

 

「…そういえば言ってなかったわね」

 

 

「私の名前は 代行者 メタトロン。まあ呼ぶ時はメタトロンでいいわ」

 

「おう、 よろしくなメタトロン」

 

「宜しくお願いします」 「よろしくね」

 

俺に続いてヴァルキリーとエキドナも挨拶をする。

 

メタトロンはその2人の方に顔を向ける。

 

「貴方達は誰かしら」

 

 

 

「……私はこのマスターのパーティのリーダーを務めているヴァルキリーと言います」

 

「…私はエキドナよ」

 

出会って最初のメタトロンの言い方に2人とも若干イラッとしながらもヴァルキリーとエキドナも自己紹介をする。

 

するとそれを聞いたメタトロンは ふふふっ、と笑う。

 

「な、何かおかしいですか?」

 

ヴァルキリーは少し怒ったような声になる。

 

「あら、ごめんなさい。マスターに笑ったのであって貴方達ではありませんよ」

 

「俺に? 何で!?」

 

「何でも何も珍しいわね」

 

「何が?」

 

 

 

 

「こんなに弱いパーティで続けている貴方が」

 

 

 

 

 

「!!!」

 

「なっ…」

 

「なんですって!!」 ガタッ

 

「だ、ダメです! エキドナさん!!」

 

「何するのよ! 放して!」

 

 

メタトロンのその言葉にエキドナは我慢が出来ず武器を構えて襲いかかろうとするのをヴァルキリーが止める。

 

「あら、少し言い過ぎたかしら」

 

それでもメタトロンは微笑んでいた。

 

「このぉぉぉー!!」

 

「だめ………です………エキドナさん!」

 

エキドナが振り払おうとするのをヴァルキリーは必死で止める。

 

「貴方は悔しくないの? ヴァルキリー!」

 

「……悔しいですよ……でもそれは駄目です! 仲間同士で傷つけあってはいけません!」

 

「……そうだけどっ!」

 

そう言われてエキドナは止むを得ず力を抜く。

 

「ふふふ」

 

そんなやり取りをメタトロンはただ微笑んで見ていた。

 

 

 

 

 

「何言ってんだ」

 

「俺のパーティは最高だぞ。 まして弱いはずがないだろ」

 

 

「…そうかしら?」

 

突然の俺のそういう発言にメタトロンは笑うのを止め真剣な顔になる。

 

 

「ああ、そうだ。 確かに俺のパーティには神タイプはいない」

 

「だけどな。神タイプが全てではない。 どんなモンスターも向き合ってしっかり育てれば必ず強くなるんだよ」

 

「だから逆に何回もやり直している奴はその時点でマスター失格だと俺は思ってる」

 

「…じゃあ神タイプの私は不要ってわけ?」

 

「そうは言ってない。 どのモンスターも平等だってことだ」

 

「……変わってるわね。あなた……」

 

「よく言われるよ」

 

 

 

「……今までいろんなところを回ってきたけど貴方みたいな人は初めてよ…」

 

「…そう…変わってる……」

 

確かに周りの人たちと比べると少し、いやかなり変である。

 

でもそれは今まで強さのみを求めてきたマスターに仕えてきたメタトロンにとって新鮮で素敵なものの様に感じた。

 

 

 

 

 

「…どうやら間違っていたのは私の方だったようね」

 

メタトロンはそうボソッと呟くとエキドナとヴァルキリーの方を向いた。

 

「な、何よ! やる気になったわけ?」

 

「エキドナさん!」

 

エキドナが再び武器を構えるのをヴァルキリーは止めようとするがその前にメタトロンが頭を下げる。

 

 

「ごめんなさい」

 

「ど、どうして急に…?」

 

「ふん。 今更謝ったって遅…」

 

「エキドナさんは少し黙ってて下さい!!」

 

「うっ…」

 

ヴァルキリーに怒られてエキドナは小さくなる。

 

 

「さっきは私の偏見であのようなことを言ったけれど、間違っていたのは私の方だったわ」

 

「だからさっきの発言を許してほしいのだけれど……駄目かしら」

 

 

「まあどうしてもって言うなら許して……ヒッ」

 

エキドナはヴァルキリーに冷徹な目で睨まれて再び小さくなる。

 

 

「……確かにさっき貴方にそう言われて悔しかったです。 悲しかったです」

 

「だけど私達だって強い訳ではない。 まだまだ未熟者です。 そう言われて目が覚めた自分もいました。ありがとうございます」

 

 

「このことはなかったことにします」

 

「ですからこれから一緒にマスターの下で頑張って行きましょう!」

 

 

 

 

 

「………………はい! よく言えました!! はいヴァルキリーさんに拍手!」

 

パチパチパチパチ……

 

「いやお前もするんだよ!」パコッ

 

「痛!? なんで私も!?!?」

 

「いいから!」

 

俺に叩かれたエキドナも仕方なく拍手をする。

 

「ちょっとマスター///// やめて下さい////」

 

ヴァルキリーは恥ずかしそうに顔を赤らめる。

 

 

 

 

 

 

このパーティは今までの中で一番弱くて馬鹿だ。

でも今までの中で一番笑顔が多く明るい。

 

もしかしたら今まで戦いのことだけしか頭になかった私には不適な場所なのかもしれない。

 

でも一方それが楽しみな自分もいた。

 

「……悪くないわね」

 

三人が騒いでる光景を見ながらメタトロンはそう呟いた。

 

 

 




まあここらで強いモンスター出しておくか、ってことで神タイプにしました。

いろいろ選択肢はありましたが考えていた性格にピッタリだったのがメタトロンでした。

というかそんなことよりどんなモンスターでも強くなるって本当ですか!?主人公さん!!

そうと分かった作者はホノリン5体+297の夢のホノリンパでチャレダンLevel 10に突撃してきます。


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譲れぬ場所

 

 

「よしそれじゃあ準備はいいか?」

 

俺がエキドナとヴァルキリーに確認をとると2人は頷いた。

 

「それでは…新しい仲間を祝って……」

 

「「「かんぱーい!!」」」

 

3人が元気良く宴の挨拶をする中メタトロンは状況がつかめずキョトンと佇んでいた。

 

 

 

「…これは一体何かしら」

 

「何言ってるんだよ。 メタトロンの歓迎会に決まってるだろ」

 

「さあ座って下さい!」

 

「そうよ。あなたのために準備したんだから」

 

 

「歓迎会…」

 

 

 

メタトロンは過去を思い出してみる。

 

今までいろんなパーティを回ってきたが歓迎会などあっただろうか。

 

いや勿論ない。 むしろ喜ばれるどころか無反応の時が多かった。

 

でも私はそんな事を気にしなかった。

何故なら私達はマスターという人間に仕えるモンスター。 そのような扱いを受けることは仕方ない、いや当然のことだと思っていたからだ。

 

だから逆に今の日常によくある状況がメタトロンにとっては凄く違和感があるように思えた。

 

「やっぱり変わってるわね」

 

メタトロンはそう呟いて席についた。

 

「よっしゃー! さあ食べろ食べろ! そして飲め飲め!」

 

「え、ええ…」

 

「マスター酔っ払ってませんか?」

 

「うるへー、気にするな!」

 

そういってヴァルキリーが気にかけるのを無視して俺はメタトロンに酒を勧める。 メタトロンは少し戸惑いながらも酌を受け取った。

 

「ささ、ぐいっと!」

 

「はあ…」ゴクッ

 

メタトロンは俺に勧められるがまま酒を飲む。

 

「どう?」

 

「ええ、美味しいわ」

 

「おお、そっかそっか! それは良かった! んじゃこっちのご馳走も」

 

「はい」パク

 

「………美味しい…」

 

「たりめーよ、何たってうちには何でもできる頼れる主婦がいるからな!」

 

「あら、そんな褒めないでよ。 照れるじゃない」

 

「いやお前じゃねーから。 つーかお前は酒を控えろ」

 

「私だってやってるわよ! 皿を並べたり片付けたり…」

 

「いやそれぐらい俺でもできるから!」

 

「はっ、舐めてもらっちゃ困るわ」

 

「何を!…」

 

 

「もう! 2人ともいい加減にして下さい!」

 

俺らのくだらない言い合いが活発になるまえにヴァルキリーはそれを一喝する。 でもその顔は何故か嬉しそうだった。

 

 

そしてまた飲んだり食べたりの喋ったりの歓迎会らしい雰囲気に戻った。

 

 

でも思うように盛り上がらない。

俺もヴァルキリーもエキドナもメタトロンに話題を振るもほとんど「ええ」や「はい」の曖昧な返事ばかりで会話が続かなかった。

 

まあ確かに今まで最低限の会話しかしてこなかったメタトロンにいきなり喋れといっても無理な話だ。

 

 

「…ええっと〜」

 

俺は次の話に入るふりをしてヴァルキリーとエキドナと小声で話し合う。

 

「(次お前喋れエキドナ!)」

 

「(ええっ! もう私の面白い話のネタは尽きちゃったわよ。 しかもあまり笑ってくれないし…)」

 

「(いや全然面白くねーからあれ! だったら他の話題でいいから!)」

 

「(そんないきなり思いつかないわよ!)」

 

「(はあ⁉︎ せっかくの歓迎会が台無しだろ!)」

 

「(で、では私が喋ります!)」

 

「(おお! ありがとおかん!)」

 

「(おかんじゃありません!)」

 

3人はメタトロンの方に向き直る。

 

 

 

そしてヴァルキリーが喋り始めようとした時

 

 

「ひとつ聞いてもいいかしら」

 

とメタトロンの方から話しかけてきた。

 

今までずっとこっちから話していて向こうからくるとは思ってなかった俺たちは少し驚きながらもメタトロンが話す内容に耳を傾ける。

 

 

「まだこのチームのパーティ編成と戦略を聞いていないのだけれど教えてもらえないかしら」

 

「そういえばまだ言ってなかったな」

 

俺はメタトロンに説明した。 説明といってもリーダーはヴァルキリーであることとチームの方針は無茶はしないであまりにも危険だったら撤退するってことぐらいだが。

 

それを聞いたメタトロンは少し目を閉じ、そしてまた俺たちの方を向き直るとこう言った。

 

 

「それについて私に提案があるわ」

 

「おお! それはどんな?」

 

 

 

 

「リーダーを私にしたほうがいいわ」

 

 

 

 

「え?」 「‼︎」 「は?」

 

メタトロンの思わぬ発言に俺たちは驚く。

 

 

「そ、それは…どうしてですか?」

 

 

「貴方より私の方が強いからよ」

 

ヴァルキリーはおそるおそる尋ねたのに対しメタトロンはすっぱり答える。

 

「あなたまだそんなこと言って…」

 

エキドナが突っかかろうとするのをヴァルキリーは止める。

 

 

「確かに神である貴方とそうでない私との実力の差は歴然です。 ですから普通だったらそうするのが妥当、というより当たり前です。 でも私は………」

 

 

 

 

 

 

 

でも私はこの場所を譲る訳にはいかない。

 

譲ることでマスターから離れていってしまう気がするから。

 

 

 

 

 

 

「メタトロンさん」

 

「何かしら」

 

「私と勝負して下さい。 リーダーの座を掛けて」

 

「……いいわよ」

 

 

 

「………はっ!? いやいや待て待て!!」

 

「マスター」

 

いきなりこんな状況になって慌てる俺をエキドナが抑える。

 

「これは女同士の真剣勝負。 マスターが首を突っ込んではだめよ」

 

「いや、でも‼︎」

 

 

そういって少し不安になった俺は小屋から出て行った2人を追いかけた。

 

 




メタトロンのキャラ設定が難しい‼︎

ぶれていったらごめんなさい!


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メタトロンの思惑

水着ガチャ全然水着出ないじゃん‼︎

なんなのもうこれ‼︎ 訴えるぞ‼︎(泣)


 

 

「おーい、2人ともどこ行くんだー」

 

スタスタと歩いていくメタトロンとヴァルキリーを追いかけながら俺は尋ねる。

 

しかし2人とも黙ったままだった。

 

 

「なあ本当に大丈夫なのか?」

 

「平気、平気♪」

 

ますます不安になる俺とは反対にエキドナはこの状況を楽しんでいた。

 

 

「ヴァルキリーに勝ってもらってあの女をぎゃふんと言わせてあげるわ」

 

しまいにはこんなことまで言っている。

 

 

「いやいや仲間同士で傷つけあうのは良くないって言ったのヴァルキリーだろ!? それなのに言い出しっぺがこんなことやっちゃ駄目でしょーが!」

 

俺がそう言うとエキドナはあきれた顔になる。

 

 

「何言ってるのよ。 別に本当にお互いが戦う訳じゃないわよ。 あんたがパズルするに決まってるでしょう」

 

「あっ、そうなの?」

 

「当たり前じゃない。 本当に戦ってどうするのよ」

 

 

「そうだよな………」

 

「そうよ」

 

「ふーん………」

 

「………………」

 

 

「……んっ⁉︎ってことは俺に全てがかかってるってわけ⁉︎」

 

「そうよ。頑張ってね」

 

 

いやいや頑張ってねって! 俺そんなパズル上手くないんですけど!

つーか聞いてねーぞ! そんなこと!

 

そんなことをぶつぶつ呟きながらしばらく後をついていくと2人があるところで立ち止まった。

 

 

「ここでどうでしょうか」

 

「いいわよ」

 

 

どうやらダンジョンが決まったようだ。

 

えっ、ここ新しい所じゃんとか思っているとヴァルキリーとメタトロンが俺らのとこに来る。

 

 

「それではお願いします。 まずは私からで」

 

そうヴァルキリーが言う。

真剣な顔をしていたがそんな彼女の武器を持つ手は震えていた。

 

 

うん。緊張してるんだろうけど、一番震えたいのはこっちだから。

 

 

 

ええい‼︎ もうどうにでもなれ‼︎

 

 

 

そんな訳でメタトロンvsヴァルキリー(被害者俺)が始まった。

 

 

ルールはヴァルキリーとメタトロンそれぞれをリーダーにしたパーティでダンジョンに挑戦してどれぐらい行ける、もしくはクリアー出来るかというものだった。

 

当然勝てばしばらく勝者がリーダーをやれる訳だ。

 

 

 

まずは俺らはヴァルキリーをリーダーにしたパーティでダンジョンに入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いが終わった。

 

 

結果から申し上げるにヴァルキリーの圧勝だった。

 

 

 

「やるじゃないマスター。 ひょっとしてヴァルキリーにひいきでもした?」

 

エキドナが小声で話しかけてくる。

 

「…いや、そういう訳では……」

 

俺はそう言いかけてメタトロンの方を見る。

 

 

「……………」

 

 

メタトロンは黙ったまま俯いていた。

 

うん……やっぱりわざとやったって思っているのかな……。

 

「いいわよ。 分かってるって」

 

エキドナがニヤニヤして俺の肩を叩いてくる。

 

 

 

いや、そうじゃないんだ。

あれはわざとなんかじゃなく俺の実力。

ましてやヴァルキリーをひいきにするなんてことは絶対にしていない。

 

 

俺はそうメタトロンに言いたかったがあんな事をして、信じてもらえそうになかったので言わなかった。

 

 

 

結果の詳細はこういうものだった。

 

 

まずヴァルキリーをリーダーにしたパーティでダンジョンに挑戦した。

 

 

まあ俺がヴァルキリーをリーダーとして使い慣れていることもあって、危なげなく進んでいった。

 

でもやはり初めてのダンジョンというのもあり、ボス直前というところで思わぬ攻撃に合いリタイアとなってしまった。

 

 

 

この時点でメタトロンがボスまで行けばたとえそこで失敗してもヴァルキリーとの戦いには勝利することになる。

 

 

そしてリーダーが入れ替わりメタトロンの番。

 

当たり前のことだが俺はあらかじめメタトロンのリーダースキルを確認しておいた。

 

 

しかしそれが問題だった。

 

 

 

 

〜1フロア〜

 

 

バン‼︎

 

 

「きゃあ」「…‼︎」「くっ‼︎」

 

 

彼女達が攻撃を受ける。

 

倒されるまではいかなかったがHPの半分ぐらいは減ってしまったようだった。

 

これは俺のパズルミスから生じたものだ。

まあでもこういうことはよくあるのでそんなに焦っていなかった。

 

 

盤面に回復は無かったが、光はあったので問題ない………と思っていた。

 

俺は光を揃える。

 

「(よし、とりあえず突破‼︎)」

 

と、心の中でガッツポーズをして彼女達の攻撃が敵に当たっていくのを見ていた。

 

 

 

 

 

 

しかし敵は倒れなかった。彼女達の攻撃はそんなにダメージを与えられなかったようだった。

 

「あれ?」とか思っていたら今度は敵が攻撃をしてきた。

 

回復をしていなかった俺らはその攻撃に耐えきれず、こうしてまさかの1フロアであえなくリタイアになってしまったのだ。

 

 

〜〜〜〜

 

 

こうなってしまったのは俺が彼女のリーダースキルをしっかり見ていなかったことが原因だった。

 

メタトロンのスキルはヴァルキリーと同じく味方の攻撃力を上げるものだったが、メタトロンの方が強い。

 

俺はその事ばかりに気がいってしまい、肝心のその後の情報を見落としていた。

 

メタトロンのスキルはヴァルキリーと違い、一定のHPがないと発動しないというもので今回のケースは一定のHPに届いていなかったことから生じたものだったのだ。

 

 

メタトロンが俯いたままなので、勝者のヴァルキリーもどう反応したらいいか分からないらしく黙ったままだ。

 

おかげで今の雰囲気は最悪。

 

うん…ここは責任者である俺が何とかしなければ……

 

 

 

ここはあえて明るくいくべきか?

 

 

 

 

 

「よーし‼︎ 皆! おつかれちゃん‼︎ あれ⁉︎ なんでショボンとしちゃってるの?? 元気ないゾ⁉︎ もっとはりきっていこー☆☆」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 

 

 

………うん、ダメだなこの案は。

言った瞬間2秒でぶん殴られる気がする。

 

 

じゃあどうするか、と俺が考えていると

 

「マスター」

 

細く鋭い声が俺を呼ぶ。 えっとこの声は………

 

「な、なんでしょうかメタトロンさん」

 

俺は恐る恐るメタトロンの方を見る。

 

「なんで敬語なんですか。 それよりいつまでここにいるつもりですか? 用は済んだことですし戻らないのですか?」

 

「あ…ああ。戻るとも」

 

うわー、絶対怒ってるだろこれ。

 

 

こうして俺らは小屋に戻り始めた。

 

 

そして歩いている最中、俺はメタトロンに話しかける。

 

 

「…メタトロン」

 

「なんですか?」

 

「……あの、その…ゴメン……俺…」

 

「分かってます」

 

「へ?」

 

 

「貴方がヴァルキリーをひいきにしていなかったことは分かってます。 それに私の時は私のリーダースキルをよく見ていなかったからでしょう」

 

ああ、何もかもお見通しだ。 鋭すぎるだろこの人。

 

 

「でも俺の不手際で……」

 

「いいんです。 もう十分分かりましたから」

 

ああー、やっぱり怒ってるな。

 

 

「貴方達の絆がどれくらいのものかが」

 

「えっ?」

 

「ヴァルキリーがリーダーの時に見させてもらいました。 貴方がどれくらいモンスターを信頼しているのかを」

 

「…で、どうだったんですか?」

 

 

「貴方はパズルが下手です」

 

 

…結局そういうことかい‼︎

俺はハハハと苦笑いを浮かべる。

 

 

「でも」とメタトロンが付け加える。

 

「貴方がモンスターを思う気持ちは凄く感じました」

 

 

 

 

「合格です」

 

「え、何が?」

 

「貴方を正式なマスターとして認めます」

 

「え、どういうこと?」

 

状況がうまく掴めないけどそれってもしかして……

 

「別に私はリーダーになる欲はありませんよ」

 

「貴方を試しただけです」

 

クスッとメタトロンは笑う。

 

そういうことかよーーーー‼︎

さっきまで俺が心配してた分を返せよ‼︎

 

「でも、一回ぐらいは私のリーダースキルを発動させてもらいたかったものね」

 

「それは本当にすみませんでした」

 

「いいのよ、もう」

 

深々と頭を下げる俺を見てメタトロンはまた笑う。

 

 

「それじゃあ私はあの2人にも事情を話してくるわ」

 

「おう」

 

そういってメタトロンは前の方を歩いているエキドナとヴァルキリーの方に向かって走っていった。

 

 

 

「試されたのは俺って訳か」

 

 

ふっと俺は笑って前で盛り上がっている3人を見ながら呟いた。

 

 

 

 



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番外 夏といったら‼︎ ①

少し遅いですけど夏をテーマに書きました!


 

「あー、暇だー」

 

「暇だったらダンジョン行きましょうよ」

 

「そうね」

 

ソファでダラダラしている俺にヴァルキリーとメタトロンが返答する。

 

エキドナはというと俺と同じくゴロゴロしていた。

 

「そうよー皆でダラダラしよーよー」

 

「おお‼︎ エキドナ気が合うじゃないか」

 

「当たり前じゃない、 マスターとは一心同体よ」

 

わはははは…と俺たちは肩を組んで笑いあう。

 

 

「もう…エキドナさんまで何言ってるんですか」

 

「…このダメコンビ…」

 

ヴァルキリーはため息をつき、メタトロンは冷たい目で俺たちを見る。

 

あの…メタトロンさん…その目でそういうこと言われると中々傷つくんでやめていただきたいです。

 

 

「俺も行きたいけどさー、暑いからなー」

 

俺は窓越しに外の景色を見る。

多分30度は越えているだろう。 この世界に四季があるのか分からないがまさに夏!といった天気だった。

 

元々俺は暑さにそんな強くないのでこういった天気は苦手なのだが、だからといって部屋にずっといるのもなあ…

 

じゃあどうしようかと考えている俺にナイスな案が浮かんだ。

 

 

「そうだ! 海に行かない⁉︎」

 

「海……ですか?」

 

「行ってどうするのよ」

 

あれ?なんか微妙な反応だな。

 

「いや、だからさ。 海に行って遊ぶんだよ」

 

「遊ぶ……?」

 

「だったらダンジョンに行った方がいいわね」

 

「え?」

 

2人の反応が思った以上に低く少し俺は戸惑う。

 

 

「い、いや…え、エキドナはどうだ? 楽しいよな海⁉︎」

 

「えー、私行ったことないから分からないわ」

 

「え⁉︎」

 

そんなエキドナの発言に俺はさらに驚く。

 

「ん? てことは2人も?」

 

俺はメタトロンとヴァルキリーにも聞いてみる。

 

「私もありません…」

 

「ないわ」

 

 

そうだったのか。 だったらこの反応も頷けるな。

 

「よし、じゃあ俺が海の魅力を教えてあげよう!」

 

「いいですけどダンジョンの方は大丈夫なんですか?」

 

「ああ、その点では大丈夫だ」

 

そういって俺はスマホの画面を3人に見せる。

 

 

 

「「「パズドラアイランド⁉︎」」」

 

 

3人が声を揃える。 そこまでハモることないだろ。

 

「なんです? それは」

 

そうヴァルキリーが聞いてきたので説明してあげた。

 

 

パズドラアイランドというのは夏の期間だけ運営が配信する特別なダンジョンである。

 

その舞台も南国の楽園ということもあり、バカンスの気分を味わえるので今人気のダンジョンらしい。

 

 

「要するにダンジョンに行ったついでにそこで遊ぶってことですか?」

 

「そういうことだ」

 

「…考えたわね」

 

「よし! じゃあ決まりだな‼︎ 早速準備をしよう!!」

 

「準備ならもう皆出来てますよ?」

 

「いやいやそうじゃなくて……あ、あったあった!」

 

俺はゴソゴソとタンスの中を探って水着を四着出した。

 

 

「なんです? それは?」

 

「え、これは向こうで着替えるやつだけど」

 

 

「こ、これを着るんですか⁉︎」

 

「そうだけど」

 

そう俺が平然と答えるとヴァルキリーは顔を赤らめた。 何かおかしいこと言ったか俺?

 

 

「変態ね」

 

メタトロンが蔑んだ目で俺を見る。

 

「いやいやそういう訳じゃなくてさ!」

 

「ではどういうことかしら」

 

「う……」

 

ずいっとメタトロンは俺に迫ってきた。何これ超怖いんですけど。

 

「え、えっとなー……」

 

その気迫に押されて俺はうまく返答出来ない。 まずい、こんな事してたら余計に怪しまれてしまう。

 

「なあ、エキドナ。お前はどう思う?……」

 

俺は助けを求めようとエキドナの方に目をむけるとそこには水着姿をしたエキドナがいた。

 

 

「……は?」

 

「どう?似合ってる?」

 

 

「どうって、まさかここで着替えたのか⁉︎」

 

「そうだけど?」

 

エキドナは何がおかしいの?と言ったような表情をする。

いやもう少し周りを気にしたらどうなんですか?

 

 

「そうだけどって…少しは遠慮しろよ」

 

「大丈夫よ、マスターだし」

 

 

エキドナはフフっと笑う。

それは女性経験が全くゼロの俺を馬鹿にしているのか? それとも信頼してくれているのか?

 

 

「で? どう?」

 

そういってエキドナは腰に手をやりポーズを取る。

 

「お、おお…」

 

 

エキドナは元々露出が比較的多い格好をしていたので気付いていたが、水着の姿になるとより一層スタイルが良いのが分かる。

 

「な、中々いいと思うぞ」

 

「ありがと!マスター!」

 

間近で水着姿を見る経験がなかった俺は顔が赤くなるのが自分でもわかる。

 

 

「ねえみんなも一緒に着ようよ〜」

 

エキドナがメタトロンとヴァルキリーに催促する。

 

「エキドナさんが言うなら……でもちょっと恥ずかしいというか……」

 

「大丈夫大丈夫! もしマスターが変な目で見てたら引っ叩くから♪」

 

「そうね、そのときは私も協力するわ」

 

 

メタトロンが不敵な笑みを浮かべてこっちを見る。

なんかあの人だけ俺の暗殺計画を立ててる気がするんですけど…

 

 

「うん…じゃ早速行こうか…」

 

 

そんな訳で俺たちのちょっとした夏休み? が始まった。

 

 

 

 

 

 

 




つーかこの際全キャラ究極進化で水着姿にしてくれればいいのに…(もちろん女の子限定でっ‼︎)


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番外 夏といったら‼︎ ②

ちょっと人数が増えるのでss風にしました。

慣れてなくて書きづらかったですけどご了承下さい(ーー;)


見渡す限りの海、海、海。

真っ青な海原は地平線の向こうにまで続いていて辺りではカモメが鳴いている。

空も快晴で雲一つ無く日差しも地面を焼き尽くすくらい強く照らしていて、まさに南国の雰囲気を醸し出していた。

 

俺「いやあ着いたねぇ」

 

早速水着姿に着替えた俺たち一行は砂浜でストレッチをしていた。

 

俺「準備体操はしっかりやっておけよ? じゃないと海で溺れるからな?」

 

メタ「マスター」

 

俺「ん?」

 

メタ「ダンジョンに行くんじゃないのかしら」

 

俺「……‼︎ 」

 

やべ、海のことがいっぱいですっかり忘れていた。 てかそれもあって3人とも行くことを了承したんだっけ? まあエキドナは結構乗り気だったけど。

 

俺「そ、そうだよ⁉︎ それも兼ねての準備運動だからね!」

 

ヴァル「でも、戦うのにこの格好はちょっと…////」

 

俺「大丈夫大丈夫! こういう洒落たダンジョンは敵もそんな強くない!……と思うから」

 

 

あれ? これはもしかしてフラグか?

 

 

ヴァル「というか、やっぱり恥ずかし…」

 

俺「心配しないで‼︎ 俺も極力下を向いてるから‼︎」

 

ここまで来て返すものか! と俺は必死に言葉を繕う。 っていってもワープでひとっ飛びでいつでも行き来できるわけだけど。

 

そんなこんなでなんとかヴァルキリーを説得できた。

後はエキドナか? とエキドナの方を見ると

 

 

エキドナ「ひゃっほーー‼︎‼︎」

 

俺「………」

 

エキドナ「ひゃーーーーー‼︎‼︎」

 

俺「………」

 

 

砂浜で泳いでいた。

 

…うん。なんかもう充分すぎるほど満喫してそうだから大丈夫だな。

 

つーか砂浜で泳ぐって何? あいつバカなの?

 

 

俺「おーいエキドナー! ダンジョン行くぞー!」

 

エキドナ「えー、私海で遊びたーい!」

 

俺「いいから! それは後な!」

 

実際俺もそうしたい気満々なんだけどあいつらが何言うか分からないから我慢してくれ。

 

メタ「ところでそのダンジョンはどこでやっているのかしら?」

 

俺「確かに……どこだ?」

 

 

俺達はキョロキョロと辺りを見回すがそれらしきものは見えない。

 

そこで俺達は少し歩いて探すことにした。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

しばらく砂浜に沿って歩いていると女性3人がビーチボールで遊んでいるのが見えた。

 

俺「あの人達に聞いてみるか、あのー、すみません」

 

???「あら、どなたかしら」

 

俺が声を掛けると3人のうちの1人が振り返る。

 

俺「………‼︎‼︎‼︎」

 

うわっ、めっちゃ綺麗な人じゃん‼︎

その瞬間俺の目線はその人に釘付けになった。

 

 

俺「…………………」

 

???「………⁇」

 

俺「…………………」

 

ヴァル「ち、ちょっとマスター! 何してるんですか⁉︎」

 

俺「……はっ‼︎ ごめん! 」

 

 

お互いに何も喋らないで見つめあっているだけの妙な状況に気づいたヴァルキリーが声をかけ、俺を我に帰らせる。

 

危ない危ない。 危うく第一印象を悪くするところだった。

 

俺「実は……」

 

そう言いかけて視線をその女性に戻すと訝しげな目で見られている。

 

うん。 全然大丈夫じゃなかった。

もう絶対印象悪く写ってるじゃんこれ‼︎

 

俺「…えっと俺達ここで開催されているダンジョンに挑戦しに来たんですけど、どこにあるか知っていますか?」

 

もうこの際だし吹っ切れた俺は本題に入る。

 

するとその女性は目を丸くして答える。

 

???「あら、それだったらここよ」

 

俺「ここって…具体的に言ってもらえると…」

 

???「だからここよ」

 

そう彼女は自分を指差して答える。

 

俺「え、貴方?」

 

彼女は頷くと後ろで遊んでいる2人も呼んだ。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

なんか人数が増えてごちゃごちゃになったので整理すると、どうやらここのダンジョンはこの3人と戦うらしい。

 

でもなんかこの3人が強すぎるらしく全然挑戦する人がいなくて俺達が久し振りのお客だそうだ。

 

 

とりあえずお互いを知るため自己紹介をしてもらうことにした。

 

 

イース「じゃあ私からね。 ヘライースよ。周りからは氷の女王とか言われているけどよくわからないわ」

 

俺が最初に話しかけた人だ。 なんか真夏なのに白い息が出てるのはやっぱり氷の女王だからかな?

 

 

アルビダ「アルビダと申しますわ。 正直貴方達とは馴れ合う気は無いわ。だ、だからあまり話しかけないで欲しいものね‼︎」

 

なるほど、これがツンデレか。生で見るのは初めてだけど中々いいな。

 

 

水メタ「メタトロンちゃんのお姉さんの水メタでーす!! やっぱ夏サイコー!!」

 

えっ、そうなの⁉︎っとメタトロンの方を見ると苦笑いをしていた。

姉妹でこんなに違うものなのか。

つーかお前の姉ちゃんバカ丸出しだぞ。

 

 

向こうか終わったのでこっちも適当にやって自己紹介は終わり雑談をしていた。

 

 

 

イース「それじゃそろそろ始めましょうか」

 

水メタ「そうね」

 

ひと段落ついたところでイースが話を持ち出す。

あー結局やるのねと思いながらも気を引き締める。 まあ一応勝負だから真剣にやらないとな。

 

ヴァルキリー達も勝負の体制に入る。

 

 

俺「それじゃおてやわらかに…」

 

 

そういって俺はスマホを取り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




20話です‼︎

これからもできる限り頑張っていきたいと思います‼︎


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番外 夏といったら!! ③

ものすんごい遅れてすみません!!

てか久々にパズドラ開いたら色々とやばいことになっててもうなんかヤバかった!


水メタ「とは言っても久々のお客さんだからなー。 嬉しくてお姉さん手加減なんてできないかもー!」

 

そういって水メタは水のオーラを纏った。

 

イース「そうね。 その時はごめんなさいね」

 

イースもフフッと笑い、今まで背中にたたんでいた翼を開き冷気を放つ。

 

 

……おいおいこれやばいんじゃね? こいつらの全力を受けたら軽い怪我じゃ済まなそうだぞ?

 

アルビダ「わ、私も本気出すから怪我にはせいぜい気をつけることね‼︎」

 

 

 

……うん。この娘は大丈夫だな。 こう言っているけどなんやかんやで手を抜いてくれるパターンだこれ。

 

 

ヴァルキリー達の方を見ると3人とも真剣な眼差しで俺を見て黙って頷いた。

 

ヴァルキリーはいつものことだが普段ふざけ倒しているエキドナまでもがそんな表情になるなんて珍しい。

それだけ今回の戦いはヤバイってことか。

 

 

…俺も気を引き締めないとな。

 

 

俺「……準備OKだ…」

 

イース「じゃあ始めるわよ。 水メタさんお願いね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

水メタ「はい!! 遂に始まりました 夏休み特別企画!! んー………名付けて【ドキッ! 女性だらけの夏休み!】!!」

 

イース「遂に始まったわね」

 

アルビダ「正直待ちくたびれてたところでしたわ」

 

水メタ「私もウズウズしちゃう! さあでは早速1種目に……」

 

 

俺「ちょっとまったぁー!!」

 

なんか話が違う方向に向かっているのに気付いた俺は一旦ストップをかける。

 

イース「何かしら。 競技の説明なら後で…」

 

俺「いやそうじゃねーだろ!! なんか趣旨が違っているように見えるのは俺だけ?」

 

メタ「私もよ、姉さん。 今から何をするのかしら」

 

水メタ「何って、色々やるけど」

 

メタ「色々?」

 

水メタ「ビーチバレーでしょ? スイカ割りでしょ、遠泳でしょ?、あとはねー」

 

はっ?

 

ヴァル「…えっとー、それはつまり戦いはしないということでしょうか?」

 

水メタ「YES! レッツエンジョイサマー!!」

 

 

「…………………え?」

 

 

それを聞いた俺達一行は一気に力が抜ける。

 

 

エキドナ「なあんだ、戦わないのか」

 

メタ「緊張していた自分が馬鹿みたいだわ」

 

ヴァル「ほっ、よかった……あっ、い、いえ戦えなくてとても残念です!」

 

いいんだぞヴァルキリー言い直さなくても。 実際俺も戦わなくて安心しているからな。

 

 

 

てな訳で【ドキッ! 女性だらけの夏休み!】?の企画が始まったのであった。

 

 

 

………うん正直嫌な予感しかしないな。

 

 

 

 

俺「、で何をするんだ?」

 

水メタ「うーんとねー……じゃあ最初はこれ!」

 

そう言って水メタが取り出したのはビーチバレーボールだった。

 

 

ふむ。 バレーボールか…。

こう見えても一応運動神経は悪くないほうで、どの球技もそこそこできると自分で思っている。

まあ相手は全員女の子だし少しは手加減するか、

 

と思った刹那

 

何か冷たいものが俺の頬を物凄い速さで通り抜ける。

 

俺「うお!?!?」

 

水メタ「はい一点!」

 

エキドナ「ちょっとマスター、ぼーっとしてないで返してよ!」

 

俺「お、おうごめん」

 

あれ?おかしいな、なんかさっきボールがかすめた方の頬が軽く霜焼けになってるんだけど。

 

メタ「ちょっと姉さん。 ボールを凍らせるのはありなのかしら」

 

水メタ「あ、あれーおっかしいなー気づかなかったわ。ねぇイース」

 

イース「そうね、たまたまよ」

 

 

いやいやじゃあ貴方の口から出てるそのいかにも凍らせることのできそうな白い息は一体なんなんですかイースさん。

 

エキドナ「そうね、偶然なら仕方ないか。じゃあ次はこっちからね」

 

そう言ってエキドナはボールを真上に上げる。

 

おおー、ジャンピングサーブか。なかなか粋なことするねぇ、とか思ってたらいきなりエキドナが火を吐いた。 そして空中のボールが火に包まれる。

 

俺「!? いやお前なにして…」

エキドナ「食らえ! ファイヤーアターク!!」

 

ボールが俺の頭の上をかすめて相手のコートにいく。

 

俺「うお、 危な! 殺す気か!」

 

水メタ「甘いわね、私たちを何タイプだと思っているのかしら、アルビダ!」

 

アルビダ「まかせて! イース!」

 

イース「まかせなさい」

 

そう言うや否や水メタは来るボールをすぐさま消火してレシーブをする。そのボールをアルビダがトス。最後にイースが凄まじいスパイクを決めた。

 

水メタ「やったー二点目!」

 

 

エキドナ「く、この技が通用しないなんて」

 

ヴァル「強いですね…」

 

メタ「ふ、やるじゃない」

 

いや貴方達ルール知ってます? 何このある意味高度な戦い。

 

 

 

その後も俺のパーティは果敢に挑む(反則)も相手の圧倒的な連携プレーの前に倒れたのだった。

 

ちなみに俺は途中から外から見ていました。 ……うんあれは人間が関わってはいけない気がする。

 

 

 

水メタ「じゃあ一回戦は私達の勝ちね」

 

俺「え? これ何回戦まであるの?」

 

水メタ「3回よ。 だから先に2回勝てば勝ちね」

 

俺「負けた方はなんかあるのか?」

 

水メタ「ないよー、元々私達が暇潰しでやってるようなものだしね」

 

それを聞いて少しホッとする俺。

でもただ負けるなんて俺のプライドが許さない。 できる限りとことんやってやろうじゃないか。

 

 

 




後編とか言ってるのにまた分かれるとか…いい加減すぎる……すみません(ー ー;)


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番外 夏といったら‼︎ ④

 

 

俺「よーし! で、次の競技はなんだ!?」

 

水メタ「でわでわ! 次の競技はこれ! ズバリ【誰が一番か! 100km遠泳ー】!!」

 

アルビダ「手加減しないわ」

 

イース「腕がなるわね」

 

ヴァル「が、頑張ります!」

 

メタ「次は負けない」

 

エキドナ「さっきの借りは返すわ」

 

 

水メタ「おおー、皆さん気合いが入ってますねー。私も頑張らなくちゃ! それでは位置について…よーい…」

 

俺「ち、ちょっとまった!」

 

水メタ「どうしたの?」

 

俺「いや…えっとさ…」

 

水メタ「ああールールを説明してなかったね。いたってシンプル! この方角にある島にタッチして帰って来ればいいだけです!」

 

そう言う水メタが指差す先には海しか見えなかった。 ……うんやっぱり100kmって聞き間違いじゃなかったのね。

 

俺「ちょっと俺お腹痛いんで辞退してもいいですか?」

 

ヴァル「マスター大丈夫ですか!?」

 

エキドナ「全く頼りにならないなあ」

 

水メタ「あら、そちらの大将が抜けるのは痛いですねー。 この勝負もうちらの勝ちかな?」

 

いやいや部下の方がよっぽど頼りになるから! つーか俺が言いたいわ! ‘ 貴方達の体力大丈夫? ’ってね!

 

ヴァル「マスターがいなくても頑張ります!」

 

メタ「絶対勝つわよ」

 

 

 

水メタ「…それでは位置について……よーいドン!」

 

水メタの号令とともに全員ここからは見えない地平線の彼方にある島へと泳ぎ始めた。

 

 

……………

 

 

………ってかはえーー。開始10秒も経たないうちにその六人衆は点になっていた。やっぱり人が相手にするレベルじゃねーわ。

 

 

 

 

イース「ふふ…貴方達中々やるじゃない」

 

メタ「負けるわけにはいかないわ」

 

イース「威勢がいいわね。 頑張っているようだけど、もう既に貴方達のメンバーが1人いなくなってるわよ」

 

メタ「!? エキドナは?」

 

ヴァル「ああ、さきほど『…私やっぱ……水無理か……も…』とか言ってました」

 

メタ「馬鹿なの?あの子は! というかそれ大丈夫なの⁉︎」

 

ヴァル「だんだんと体が海に沈んでいって、終いには見えなくなったような…」

 

メタ「いやダメじゃないそれ! なんですぐに知らせないわけ⁉︎」

 

ヴァル「あの人ならガッツでなんとかなりそうだから?」

 

メタ「何その確証のない自信は! ちょっと助けてくるわ、後は頼んだわよ!」

 

ヴァル「わ、わかりました!」

 

そう言うとメタトロンは引き返していき、俺率いるチーム?はヴァルキリーただ1人になった。

 

イース「ふふふ……ついにチームバラバラになってしまったわね」

 

ヴァル「まだこれからです!」

 

イース「あら、往生際がわるいのね。 ならそろそろ蹴りをつけましょう」

 

ヴァル「け、蹴り?」

 

イース「アルビダ! いくわよ!」

 

アルビダ「ええ、分かったわ」

 

 

イースに指示を受けたアルビダが手をかざすと真っ青な海の中からどこからとなく青い龍が現れた。

 

それにはヴァルキリーも面食らう。

 

ヴァル「え、 一体何を…?」

 

 

水メタ「さあブルードラゴンちゃん! 私達を乗せてひとっ飛び〜!」

 

ヴァル「え?」

 

水メタがそう言うや否や水メタ、アルビダ、イースの3人を乗せたブルードラゴンは大空に向けて飛び立ってしまった。

 

 

しばらくしてあまりの状況の変化に呆気に取られていたヴァルキリーが慌てて追いかけるも、そのドラゴンの姿はもう見えなかった。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

場所代わり南国特有の白い砂浜。

 

俺と自分が水がダメなことを知らず参加して溺れたエキドナ (ばか) とそれを救助して戻ってきたメタトロンで待っていると、

 

 

メタ「…来たわ」

 

その言葉に俺とエキドナは目を凝らす。

 

俺「おおー、あれか」

 

その大海原にある点はだんだんと大きくなっていき、こちらに向かっているんだなと分かる。

 

 

相変わらず速いなーと思ってる間も点はどんどんでかくなっていき、俺らより大きくなりまるで怪物のような………

 

……………

 

…………ん? 怪物?

 

 

俺「メタトロン……あれ何?…」

 

メタ「さあ〜、見た感じただのドラゴンかなんかじゃないですか?」

 

俺「ふーん、そっか……」

 

 

………………

 

 

 

…………

 

 

……ん? 普通にヤバくね?

 

 

俺がこの状況を理解しつつも何も打つ手が浮かばず、ぼーっと突っ立っている間にそのドラゴンらしき怪物はもう既にそこまで迫っていた。

 

 

え? なにこれ。 やだこれ。

 

 

俺「うおぉぉぉー!! あっぶねー!!」

 

そのまま砂浜に突っ込んできたドラゴンをスレスレで俺は回避する。

 

後一歩遅かったらヤバイところだったぞ。

 

 

水メタ「ヤッター! ゴール!」

 

イース「圧勝ね」

 

アルビダ「まあこんなものよ」

 

 

俺たちが迫り来るドラゴンからの危機を間一髪で回避したそんな中、なんとも呑気な声が聞こえた。

 

俺「は?」

 

その声をする方に目を向けるとドラゴンの背中に笑顔の三人がこちらに手を振っていた。

 

俺「いや! 貴方達なにやってんの!?」

 

イース「何って、ゴールしたのだけれど」

 

アルビダ「見てわからないの?」

 

 

俺「あっ、そうですよね〜。 ゴールしたんですよねー。 いやー速いですねー、僕たちの完敗ですよーハハハハ...............」

 

 

 

…………………

 

……………

 

 

 

俺「じゃねーだろ!!! なにやってんの貴方達! それは明らかに反そ………」

水メタ「反則ではないよー。 だってなに使ってでも泳いでいれば問題無いからねー」

 

 

メタ「……やるわね、そんな手があったなんて………完敗だわ」

 

ヴァル「ごめんなさい………マスター……全力をだしましたが負けてしまいました……」

 

 

いやいやまず常識的に考えてそれはないだろ…って、さっきのバレーを見ててあいつらに常識はなさそうだよな。 あいつらああ見えて意外と大人気ないな。

 

つーかヴァルキリーいつの間に帰ってきてたの? あいつらと違って真面目に泳いでそんなに差がないってめっちゃ速いやん。

 

俺「いやヴァルキリーは良くやってくれた。ありがとな。 負けちゃったものはしょうがないさ」

 

ヴァル「いえ…感謝の言葉なんてもったいないです///////」

 

そう言って俺はの頭を優しく撫でてあげるとヴァルキリーは頬を赤らめた。

 

 

 

 

…………………………

 

 

 

 

水メタ「てな訳で先に2勝した私達のチームが勝ちました〜」

 

パチパチパチ………

 

 

 

水メタ「と、まあそんなこんなで終わりなわけですが、他にもやりたかったことがあるのでそれは勝負なしで楽しみたいと思いまーす」

 

イース「いいわね」

 

アルビダ「楽しみですわ」

 

メタ「借りは返すわよ」

 

ヴァル「頑張ります!」

 

エキドナ「ヤッター!」

 

俺「(おい、まじかよ。てっきり終わりだと思ってたらまだやるんかい! こりゃあ気が抜けそうにないな…)」

 

 

まだ俺たちの楽しい夏休み(泣)は続くようです………。

 

 




次で夏休み編は終わり!のつもりです…
ひっぱってしまいごめんなさい!


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番外 夏といったら‼︎ ⑤

久々です。 いろいろあって遅くなりました。 (まあ実際今後の展開のことなんですが…)

かなり期間が空いて文章が稚拙になってる点はご了承をー。


 

 

「いやー、やっぱり夏、海、と言ったらこれをやらずには終われないよ!」

 

そういって水メタが取り出したのは木の棒と丸くて大きなスイカだった。 結局俺らが勝負に負けたわけだが最後までイベントは続けるらしい。

日も傾き始めて地平線に太陽が沈もうとしている。

俺もやる気以前にもう疲れてクタクタだった。といっても大した活躍もしていない訳だが…

 

「これを両チームで同時にやってもらい先に割ることのできた方が勝ちとなりま〜す!」

 

「え、でも木の棒は1つしかないじゃない」

 

「ごめんね〜2本必要だってことをすっかり忘れてたものだから、そこはそちらで代わりとなるものを用意してもらえるかしら」

 

「わかったわ」

 

それぐらい用意しとけよ!とか思いつつ、俺たちは代わりとなるものを探してみる。

 

 

「うーん…意外と見つからないもんだなー」

 

「そうですね…」

 

俺とヴァルキリーの2人で砂浜周辺を探してみたがそこには綺麗な白い砂ばかりで棒どころか石さえもなかった。まあ余計なものがないって点では綺麗で完璧ではあるが。

 

「ないわね〜、…仕方ないわ! じゃあこれを使うしかないわね!」

 

そう言ってエキドナが手に持って上にかざしたものは見覚えのある武器だった。

 

「…それは」

「私の武器ですね」

「……あーなるほど」

 

すかさずヴァルキリーが反応する。まあ自分の武器だから当然か。

んーまあスイカ割に使うには少し物騒ではあるけど良く切れそうだし、いい代わりにはなるんだろうけど…

 

「いやでもさすがに愛用しているものでやるのはどうかな、って思……」

「さすがエキドナさん! 是非そうしましょう!」

 

 

あ、別にいいのね。じゃあいっか。

 

 

「普段愛用しているこのソードを使えば負けるはずがありません!!」

 

「今度こそボコボコにするわよ!!」

 

「腕がなるわねー!!」

 

 

 

「……おー」

 

なんかすごい温度差を感じる。まあ今に限ったことじゃないのはわかってるけどな。つーかこいつらどんだけ気合い入ってるんだよ。

 

 

「じゃあそうと決まったら早速始めよー!」

 

 

……………………

 

 

てな訳でスイカ割り対決が始まった。 まあルールは至ってシンプルで一人が目隠しをしてそれ以外の人がスイカまで誘導して先に割った方が勝ちといったものだ。 俺チームはヴァルキリーが、水メタチームは水メタが割る役に決まった。

 

 

「それじゃあいくわよ? スイカ割り対決〜〜…………始め!」

 

水メタの掛け声とともに約20メートル先のスイカを目指して2人が誘導の声を聞きながら徐々に近づいていく。

 

「右!右! あ、ちょっと曲がってるよ! もう少し左に寄ってー!」

 

「いい感じいい感じー、そのままゆっくり慎重にいこう!」

 

スイカ割り独特の掛け声が両チームから掛けられる。俺は少し離れたところから見ていたが昔子供の頃にやっていた懐かしさを感じていた……ん、まあヴァルキリーが手にしているのは最も普通ではありえないようなでかいソードだけどな。そこが唯一の違和感ではあるんだが。

 

ま、俺は休憩も兼ねてヤシの木の木陰で少し昼寝でもするかな。つーかなんか分からんけど疲れてるし。

 

……………

 

 

 

 

しかしそんな安らいだ時間もかん高い声によって即座に壊されることになる。

 

「マスター! 起きて!!」

 

「…ん?」

 

なんだよ。人がこれから快適な眠りにつこうとしてる時に。

 

「マスター!早く!」

 

「うるさいな。少しやすませてくれよ、俺少し疲れたから」

 

「もう! ぐずぐずしないで! 死んでもしらないよ!」

 

「は?」

 

死ぬってなんだよ。大袈裟すぎるわ。でもこれ以上うるさくされるのも嫌だしな、ということで目を開けて周りの状況を確認したところとんでもないものが目に飛び込んできた。

 

「ちょっとヴァル! そっちじゃないわ! さっきから左って言ってるじゃない!」

 

「ふえぇ……それってメタトロンさんから見た側ですか?それとも私から見た側でしょうか? というよりメタトロンさんどこにいるんですか? もうわかりません〜!」

 

「ち、ちょっと! そう言って剣を振るのやめなさいよ! 危なくて近づけないわ!」

 

それは方向音痴、というよりかただ単にメタトロンの言った情報を整理できずにパニックになっているヴァルキリーが手当たり次第に持っているソードを振り回している光景だった。しかも徐々にスイカとは真反対の俺のところに向かっていてもう1〜2mの距離しかなかった。

 

 

「あらあら、大丈夫かしら」

 

メタトロン達も心配そうに見ている。ってか向こうのチーム、スイカをもう割り終わって食べてるよ! もうこっちの負けじゃん!

 

「一回落ち着いてヴァルキリー! 長年戦い続けていた貴方ならスイカの気配を見つけられるはずよ!もうこれしかないわ!」

 

「!!」

 

するとヴァルキリーはピタッと動きを止めた。

 

 

「…………………」

 

「…………………………」

 

「…………………………………」

 

「…………………………………………」

 

 

…おお………凄まじい集中をしているのがこっちにも伝わってくるほどヴァルキリーの周りの空気はピリピリしている。

するとしばらくしてヴァルキリーが剣を構えた。

 

「……見つけたわ」

 

おお、スイカの気配を読み取ったようだな。

 

 

「ここです!!」

 

 

………ヒュン

 

 

俺の頬を一迅の風が通り過ぎる。

 

「うお! あぶねぇ! なんの気配を読み取ったんだお前! 俺を狙うな!」

 

「むむ! またここから殺気が!」

 

「スイカに殺気なんて……ヒュン………ないだろ……ヒュン……うが!!」

 

 

間一髪で何故か俺に剣を振るってくるヴァルキリーからの攻撃?を避ける俺。

 

「いいわよー!ヴァルキリー! そこよそこ!」

 

メタトロン後でぶっ飛ばす。

 

「むー! しぶといスイカめ!!ちょこまかと!」

 

 

 

スパっ! ズシン!!

 

 

 

「やりました!!」

 

手応えを感じたヴァルキリーはとっさに目隠しを取り確認をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?」

 

そこには根元から切られて横たわっているヤシの木と隣で呆然と立ち尽くすマスターの姿があった。

 

 

「いや!あれ?じゃねーよ! あぶねーな!お前!俺をスイカに見立てて攻撃するな! 死ぬとこだったわ!」

 

「ええ!?それは申し訳ございません! でもメタトロンさんたちがこっちでいいって」

 

 

俺がメタトロンの方を見るとニヤニヤと笑みを浮かべていた。 誘導もしてたのかお前ら。

 

「じゃあ私が切ったものって」

「それだよ」

 

そういって俺はヤシの木を指さす。最後の攻撃を避けた時に後ろにあったヤシの木が切れたわけだ。しかし決して柔くないヤシの木をもぶった斬るその剣の威力半端ねえ。

 

「その調子でスイカもスパッと切ってくれれば良かったのに」ハハ

 

「……はい」

 

「どした。元気ないな」

 

「…故意でなくともマスターを傷つけようとするとんだ無礼を働きました……そんな私になんなりと罰をお与えください…」

 

「なんだよそんなことか。それはあいつらが悪いから気にしなくていいの! あいつらにはしっかりお灸を据えないとな」

 

「でも……」

 

「でももへちまもない! そんなことより俺らもスイカを食べようぜ! まずくならないうちにな!」

 

 

「………はい!!!!」

 

「おーい! こっちこっち!ふたりともー!」

 

俺とヴァルキリーはもうスイカに手をつけているメタトロンたちのところに駆けていく。

夏の太陽がが段々と傾き始めて、空が赤くなり始めていた。

 

 

 

 




これからもペースは不定期になると思いますが許してください…


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番外 夏といったら‼(終)

お久しぶりです! 

パズドラのインフレ化が止まらない~泣


 

 

太陽も海の彼方に見える水平線に姿を隠し始めて、あたりもだんだんと暗くなり昼間の暑さからは少し涼しさを感じられるようになった頃。

 

「マスター、どこですかー?」

 

そろそろ帰ろうかということでヴァルキリーがマスターを探しに砂浜沿いを歩いていた。それは他の二人がだるい、疲れた、など口々に言うので仕方なく引き受けたのだ。断れない性格の持ち主の彼女だからこそである。

 

「あ、マスター…」

 

しばらく歩いていたヴァルキリーの足が止まる。その視線の先には木の陰で疲れて寝てしまったであろうマスターの姿があった。

 

「まったく…」

 

ヴァルキリーは微笑みながらマスターの元へ歩み寄る。

 

「こんな姿で寝ると風邪を引いてしまいますよ」

 

体を揺すってみるも起きる気配がない。どうやら相当疲れていたようだ。ヴァルキリーもそう解釈したらしく揺するのをやめてマスターの顔をまじまじと見つめる。

 

「マスター……」

 

すやすやと寝息を立てて眠る彼を見続けているヴァルキリーの頬が赤く染まっていく。

 

「マスター…?ほんとに寝ているんですよね…?」

 

なぜこんなにも彼女が照れているのか。それもそのはず、普段から彼女はマスターと会話をする時にしょっちゅう目線を横などに逸らすのである。それはヴァルキリーのシャイな性格からきているものであるが、そんな彼女にとって今のように割と長い時間顔を合わせることなどこの上ない状況なのだ。

 

「寝て…る…?大丈夫だよね…?」

 

この状況でマスターが目を覚まそうものなら顔から火が出るどころじゃ済まされないので念には念を入れて確認をする。

 

 

 

 

 

 

 

でもなぜヴァルキリーがそんなに警戒するのか。

 

「マスター……」

 

 

「……今からいうことは私の本心です。本来このような形で伝えるのは間違っていますが今の私にはこれが精いっぱいなんです……」

 

 

 

 

 

 

 

「マスター……私は………」

 

 

 

 

 

 

そう、この状況だからこそ伝えられること。

 

 

 

 

 

 

「私は………マスターのことを………」

 

 

 

 

 

 

 

「マスターのことを………とてもお慕いしていますっっ………」

 

顔を真っ赤に染めながら、喉から込み上げて来る声を押し殺すようになんとか発する。

 

 

 

 

 

 

「私は……」

 

 

 

 

 

そう、あともう一息。

 

 

 

 

 

 

 

 

「わた……しはっ………」

 

こんな方法でしか思いを伝えられない自分の情けなさを噛み締めながらも、次の言葉をヴァルキリーは必死に形にしようとする。

 

 

 

 

 

 

 

「マスターのことが………」

 

徐々に顔を近づけていく。ここで言っても返事がないのは十分承知している。それでも別にいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「す……きっ!?!?」

 

その瞬間、近くの茂みが音を立てる。それに驚いたヴァルキリーは慌てて近づけていた顔を離した。

 

 

 

 

「ば、ばか!! 何やってんだよ! いいとこだったのに!」

 

「あんたが身を乗り出すからだろ! バレちゃったじゃないか!」

 

そこには盗み聞きをしていたであろうメタトロンとエキドナの姿があった。

 

「な、なな何やってるんですかぁ!!お二人とも!!」

 

「あ、ごめんね、お慕いしているマスターと一緒にいるのを邪魔しちゃって」

 

「やるじゃないあんたも〜このこの〜」

 

「あ、いえ!そういう訳じゃなくて! いえ!お慕いはしているのですよ!えっと…その……」

 

「うんうん、そういうことだったのね」

 

「違いますってばぁー!!」

 

ヴァルキリーが必死に弁解しようとするも今までの行動を全て見ていた二人はニヤニヤしながら聞いている。全部お見通しのようだった。

 

そんな中ヴァルキリーにさらなる追い討ちがかかる。

 

「う、う〜ん。ん?なんだ?騒がしいな」

 

「ま、マスター!?」

 

この騒がしい中起きてしまったマスターにさらに驚いてしまい声が思わず裏返ってしまうヴァルキリー。当然マスターも不思議そうに彼女を見る。

 

「ん?どうかしたのか?ヴァルキリー」

 

「い、いえ!なんでもありませんよ!ひ、日も暮れたことですし早く帰りましょう!」

 

「ん、ああそうだな。帰るとするか。どうしたんだ?そんなに慌てて」

 

「大丈夫ですから! さ、行きましょう!」

 

「あ、ああ。よし、じゃあエキドナとメタトロンも帰るぞー」

 

「ほーい」「わかったわ」

 

こうしてヴァルキリーにとってのイベントも無事?終わり、夏の短いひと時が幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~その帰り道

 

「ヴァルキリー」

 

「はい、なんでしょう」

 

やはり疲れて寝てしまったマスターをおぶって歩いているヴァルキリーにエキドナが話しかけた。

 

「さっきは、その、邪魔しちゃってごめんね…?」

 

「ああ、あれですか」

 

エキドナが申し訳なさそうな顔をしているのを見てヴァルキリーは笑いながら答える。

 

 

「私、思ったんです。やっぱりこういうことはしっかり向き合って伝えるものだと」

 

「だから改めて私の気持ちに整理がついたらそのときこそ……」

 

そう言いかけたところでヴァルキリーは肩に頭をもたれかけて寝ているマスターを横目で見た。

 

 

「そう……応援してるわ」

 

「ありがとうございますっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やっぱりあなたもだったのね………」

 

エキドナが最後に呟いた一言はヴァルキリーには聞こえなかった。

 

 

 




遂にヴァルキリーの本心が!?

ここからどうなっていくのか筆者にもわからない~??


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お宅拝見!

お久しぶりです。パズドラもインフレしすぎですねぇ…(遠い目) ネタパに専念しようと思います!


 

 

「あー、暇だなー」

 

その声の主はソファで体を転げて動く気はさらさらゼロと見受けられるマスターのものだった。

 

「では、ダンジョンに…「あーそれは忙しいな」

「それは当然ですよ!?」

 

ヴァルキリーがお決まりの提案をするもそれをきっぱりと断るのもいつものお決まりである。

 

「まあまあいいじゃないヴァル、たまにはこういうのもあっても」

 

「最近そのこういうことしかしてないから言ってるんです!!」

 

同じくカーペットで寝転がりながらヴァルキリーをなだめようとするエキドナは完全にマスターに毒されてしまったようだ。パズドラの世界がバーチャル化してしばらくが経つがこれだけ何もしていないパーティも稀であろう。

 

「メタトロンさんも何か言ってくださいよぉ」

 

「だらけ癖がなかなか抜け切らないようね」

 

「そうなんですよ」

 

「じゃあ何回程死んでもらえば更正されるかしら」

 

そのメタトロンの不敵な笑みを見るや否やマスターは体を起こして正座になる。

 

「いやなに怖いこと言っちゃってんの!?しかも一回じゃないんだ!いや一回もだめだけども!」

 

まあこの人に聞いてまともな意見が返ってきた前例はないのであるが。

 

「あら、では何かしら行動を先に移す方が先決ではないかしら」

 

「とは言ってもなぁー」

 

スマホのダンジョン一覧に目を通すも高難易度のばかりで頭を抱えるマスター。挑戦するのもいいのだが前例があるので彼女たちにあまり負担をかけたくないのもマスターの心の内にあった。

 

「あ、そうだ!」

 

「ん?どした」

 

マスターが悩んでる中、不意にエキドナが手を叩く。

 

「マスターってランク今いくつくらい?」

 

「ランクは100を超えたくらいだけど」

 

こんなグダグダでも意外とランクがいってるものである。

 

「おおー! なら条件はバッチリだ!」

 

「条件?」

 

「実はね…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇー、ここがマスターの家ですかー」

 

「あっちの小屋より狭いね」

 

「それより部屋が汚いわ。掃除をしてないからよ」

 

 

 

 

「………どうしてこうなった」

 

あろうことか自分の部屋に3人がいる光景を見てマスターはボソッと呟いた。普通ならモンスターとは言えど超絶美女が一気に3人も自分の家に押しかけたという夢のような展開に心踊るはずであるが今のマスターの場合そうではなかった。

 

 

数分前〜〜

 

「実はランクがある一定以上になると、今まではマスターだけが現実とここを行き来出来るのをモンスターも可能になるのよ」

 

「ああーそんなのあったな」

 

前に友達の家に行った時にイシスとバステトがいたのをマスターは思い出した。

 

「ランクを聞いたところ行けるっぽいから行ってみたい!」

 

「ああ、それだったらい……」

 

そう了承しかけたところでマスターはふと思い出す。今の部屋の状態。そう、とても見せられる状態ではなかった。まあ一人暮らしの男の部屋なんてどこもそんなものだろう。

 

「い、いや!明日にしてくんない!?」

 

慌てて訂正。今日はひとまず断わってひっそり片付けをしようとマスターは考えた。そうすれば明日でも明後日でもいつでもウェルカムなのだが………

 

「マスター、ここ乗ればいいのー?」

 

「楽しみですね!わくわくします!」

 

「私も行くのか」

 

もうすでに3人は自分の家とを繋ぐワープ地点に待機していた。

 

「いや待て!今日はダメだ!」

 

「れっつご〜」

 

マスターの食い止めも虚しくエキドナの呑気な声と共に4人は現実の世界へ向かっていったのだった。

 

 

「まあとりあえずここを綺麗にしましょう!」

 

「いやそれぐらい自分でできるから!」

 

「今までそれが出来ていなかったからこんなに汚いのでしょう」

 

「んぐっ…まあそうなんだけど」

 

ヴァルキリーの正論にぐうの音もでないマスター。今の部屋の状態は足の踏み場はあるもののゴミは捨てられてなかったり、食べ物のカスは散乱していたり、食器は洗ってなかったりとお世辞にも綺麗とは言えなかった。

 

「不潔…」

 

「いやまじごめんね!? だから今日来るなっていったじゃん!」

 

いつものメタトロンのさりげない一言もこういう時には心にくるものである。まあもとはマスターが悪いのだが。

 

「くそぅ…」

 

なんか俺の権限なくなってね、と思い始めるマスター。安心してほしい。もとから無いようなものである。

 

「じゃあ早速お掃除から始めましょう!」

 

「おー!」

 

……………………………

 

 

結局、掃除することになったのだが流石に4人もいれば分担できることもあってペースも早い。短時間でかなり綺麗になってきたのだが…

 

「マスターコソコソ何してんの?」

 

「あ、えと…いや何でもないから続けてていいぞ!」

 

「何かを急いで隠したように見えましたが…」

 

「い、いやこれは、その…」

 

まあ男で一人暮らしなら必ず、というより必須のアイテムであろう『えっちぃ本』の処理に戸惑っていたところ案の定見つかってしまったようだ。

 

「何?見せなさい、やましいことでもあるの?」

 

「うん…まあ確かにやましいな」

 

俺のこの戸惑いから少しは察してほしいものであるが残念なことに彼女たちは鈍感なようだ。背中が汗でぐっしょり濡れている。

 

「これはちょっとね…あ、」

 

と、何か言いくるめようとした最中、いつの間に後ろに回られていたのかエキドナにその例のブツを奪われる。

 

「なになに〜……」

 

そう言ってそれを見るエキドナの顔がだんだんと赤くなっていくのがわかった。

 

「え、えっと……はい……返すわね…」

 

うん、分かればいいんだ……つか何も反応されないのも困るんだが…特にエキドナには!

 

「ま、まあマスターも男性ですからね!そういうのも持ってますよね!」

 

「なんかごめんね、マスター…」

 

「いやいや…」

 

エキドナとヴァルキリーに励まされる俺。なんか複雑な感じではあるが。

 

 

「本当に気持ち悪いわね」

 

 

………いやこっちよりは全然マシか…

 

 

………………………………

 

 

「ふぅー、こんなもんかしら」

 

「そうですね!だいぶ綺麗になりました!」

 

(ふぃー……終わったー…)

 

そんなこんなでなんとか無事?に部屋の掃除を済ますことができた俺たち。みんなが汗を掻く中、俺だけ別の汗を掻いていた。実はばれた他にもまだまだ押入れの方に見せられないものが入っていたが、そこは物色されずに済んだようだ。

 

「よくこんな汚いところに住めたものね、マスターは」

 

「いやー…男ってみんなこんなもんだぞ?だらしないんだぞ?」

 

嘘ですっ!! 友の家にはこの間行ったけど女子の部屋か!ってくらい整頓されてました…

 

「いや…そんな当たり前のように言われても…誇れることじゃないわよ」

 

「そうですよ、これからは意識してくださいね」

 

う、エキドナは別に気にしないけど、ヴァルキリーに言われると何かくるものが……まあでもついでに部屋を綺麗にできたからいっか。自分からは絶対しないし。

 

「いや、お前たちのおかげで綺麗になったよ。お礼と言ってはなんだけどご飯作るから食べてってくれ」

 

「マスターの手作りですか!? ぜひ食べたいです!」

 

「あんた料理できるの?」

 

「まあ少しな、ちょっと待っててくれ」

 

仮にも一人暮らしをしている男子なので、ちょっとした料理ぐらいはできる。まあ友人がめちゃ出来るため、それに焦りを感じたというのが理由なんだが。

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

「なんだかいい匂いがしてきましたねー」

 

「ほれ、出来たぞ」

 

「わー! オムライスですね!」

 

「おおー! すげー! いただます!」

 

「いただくわ」

 

「……………」ゴク

 

……普段は俺だけが食べる、当然女の子に振る舞ったことなどないので味付けは完全に俺好みである。だから彼女達の口に合うかは分からない。まあでも、不味くはないはず…不味くは…

 

「…ど、どうだ?」

 

なんかみんな黙ってるんだが。

 

「とても美味しいです!!」

 

「………」

 

ああ…彼女、ヴァルキリーを見て分かった。単純な感想ではあるがこの笑顔。そして食べるのを止めない手。偽りではないことは確かに見てとれる。それだけで俺は心が満たされた。

 

「てか、エキドナそんなガッついて食べなくても。行儀悪いぞ?」

 

「だって、うまいから仕方ないだろ? マスターサイコー!」

 

「そ、そうか」

 

「味付けもバッチリですよ!」

 

「お、おう。ありがとな」

 

そんなこと言われると思わず笑みがこぼれてくる。人に何であれ褒められるってこんなにも嬉しいことなんだな。

 

「何ニヤついてるのよ、気持ち悪いわね」

 

そんな浮かれていた俺に横から一突き。やばい一番機嫌を損ねてはいけない人の口には合わなかったのか?

 

「あ、すまん。美味しくなかったか」

 

「い、いやそうではなくて……」

 

「ん?」

 

「…あ、あなた料理出来たのね。普段の様子からは考えもつかなかったわ。その……美味しかったわよ」

 

…え、何これ。今目の前でメタトロンさんが少し頬を染めて恥じらいながらも俺を褒めてくれたぞ? 普段の様子からは考えもつかないような行動してるぞ? メタトロンの「デレ」の部分を垣間見たってことでいいんだな?

 

「そっか! メタトロンありがとな!」

 

「い、いえ…素直に褒めただけよ」

 

「いやーあんまり褒められることないからさ」

 

「そ、そう」

 

「ははっ、メタトロンかわいいなあ〜」

 

 

 

「はい?」

 

 

 

あ、やべ。言葉に出てた。

 

「いやいや!冗談! そのキッチンの包丁は置いて!」

 

「気をつけてくださいね?」

 

油断ならないなやっぱり…

 

…心で思ってることをうかつに言わないように気をつけましょう。

 

 

 

 

 

 




「マスター、…メタトロンさんのこと可愛いって…」ボソ

「ん?何か言ったか?ヴァルキリー」

「い、いえ!大丈夫です!なんでもないですよっ」


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些細なことから

 

 

「暇っすねぇー」

 

「そうねえ]

 

そうマスターがいつもの決まり文句を吐く。まあやること、行くべきダンジョンはしっかりとあるので本来なら暇ではないはずであるが、エキドナはもちろんのことメタトロンも徐々にだらけたムードに毒されてしまっているようである。

 

「何かすることないかなあ」

 

「うーん…難しいわね」

 

それどころかダンジョンに行くことも提案しないので、いよいよパーティとは何だったのか、まで問いただしたいところである。

 

まあまだヴァルキリーがいれば話は別かもしれないが、あいにく今は自主トレに行っているため小屋にはいない。

 

「そうだ」

 

エキドナが小さく呟き、メタトロンの近くに歩み寄る。

 

「ねえメタトロン、ちょっと耳かして」

 

「何かしら」

 

 

「………………!…………!!」

「………………!!」

「…………!………………!!!」

 

 

自分には聞こえないまでも2人が何かを話し合っている状況に、マスターはいじっていたスマホから視線を2人へと移す。まあ女子同士の会話なので口出しはしないわけだが。

 

「ねえマスター」

 

「ん?」

 

どうやらひそひそ話は終わったらしい。何を話していたかは別に気にならないので特に聞くことはしなかった。

 

「ちょっとやりたいことがあるんだけど」

 

「おお!なになに」

 

おそらくこのことについて相談していたのだろう。それでようやくまとまった的な。ダンジョン以外でやることを探していたマスターにとっては嬉しい限りであった。

 

「実はマスターにやってもらいたいことがあってね」

 

「おう、なんだ」

 

「じゃあまず手順を説明するね、まずマスターにはソファに寝てもらいます」

 

「寝ていいの? 昼寝的な?」

 

「あー正確には寝たふりをしてもらいます」

 

「ほう」

 

「そしてそこにヴァルキリーがきます」

 

「はい」

 

「そこでマスターに『ヴァルキリー…』と本人の名前を呟いてもらいます」

 

「寝言か」

 

「終わり」

 

「はい?」

 

エキドナがやりたいことの手順?を聞いていたが、やることが少ない上に結局何をしたいのかが全くマスターには伝わらなかった。

 

「何それ、名前を言えばいいってこと?」

 

「そうよ」

 

「じゃあヴァルキリーが帰ってきた時に直接言えば良くない?」

 

そう行った瞬間エキドナが「ぶふっ」と吹き出した。

 

「帰ってきた時って、あんたバカねえ。それじゃあ普通じゃない、意味ないわよ」

 

よく飲み込めてない上に知らないけどバカと言われ、理不尽な扱いを受けるマスター。エキドナが声を出して笑っている後ろでメタトロンもクスクスと笑っていた。

 

「面白いことを言うじゃない」

 

「いやだから狙いはなんなんだよ。寝てるふりをしてまで言う理由は」

 

そんな2人の様子に若干マスターはイラっとする。

 

「うーん…強いて言うなら…」

 

エキドナは顎に手を当て、少し間をおいてから言う。

 

「彼女の気持ちが少しは分かるかもしれない、かな」

 

「ヴァルキリーの気持ち?」

 

「うん、だって………」

 

そこまで言いかけて止める。先ほどの発言からも明らかであるように、おそらくマスターはヴァルキリーの気持ちに気づいていない。

 

彼は鈍感である。ヴァルキリーがいったいどんな反応を示すか分からないが、自分自身で気づいて欲しい。

 

だからこそ今言う必要はないとエキドナは思った。

 

「だって?」

 

「いや、やっぱりなんでもない!まあきっと面白い反応するから!ドッキリよ!ドッキリ!」

 

「なんだそりゃ、でも面白そうだからやってみるか!」

 

「決まりね」

 

 

そんなわけで唐突なドッキリ企画が始まった。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「ただいま帰りました〜」

 

自主トレを終えたヴァルキリーは小屋に帰宅し、扉を開く。特に返事がなかった。

 

「みんなどこか行ってしまったのかしら」

 

そう言ってリビングに向かうとソファに横になって寝ているマスターの姿があった。

 

「あ、マスター…ってお昼寝してるんですね…起こしてしまうのも悪いですしそっとしておきましょうか…」

 

ヴァルキリーはマスターの向かいのソファに

腰をかけて、紅茶を飲む用意をする。

 

ダンジョンに入り浸っている訳でもないので疲れはないはずだから、この昼寝ただの自堕落生活の一面ではあるが、彼女も慣れっこであった。

 

 

「…………………………」

 

それでも最近はエキドナやメタトロンが一緒に居るので2人きりというのは久しぶりである。なんだか出会った当初に戻ったかのような懐かしさを感じながらヴァルキリーは紅茶を啜る。

 

「……………………」

 

にしても静かである。太陽の光が部屋の一部に差し込む昼下がり、彼女はマスターをじっと見つめていた。

 

何かしたいけど邪魔は出来ない。もし眠りが浅かったらどうしよう。そんなことを彼女は考えていた。

 

「…………………」

 

「…………ま、マスター、寒くないですか? 毛布をお持ちしましょうか?……」

 

気に障らない程度の内容を小声で言ってみる。一瞬体がわずかに動いたが、すっかり寝ているようだった。

 

「……一応かけておきますね」

 

そう言ってヴァルキリーはマスターの元に歩み寄り毛布をかける。そうすることで近くに寄れる、彼女なりの理由づけだったのだろう。

 

「……………マスター……」

 

 

彼女からしてみたら、今は突如現れた願ってもないチャンス。この間の海で出来なかったことを今なら大丈夫。2人もまだ帰ってくる気配はないので今しかない。

そう思った彼女は徐々に唇を近づけていく。

 

「(ちょっとだけ、軽くなら大丈夫なはず!)」

 

「……………」

 

そんなあと少しまできたその時。

 

「う、うーん……」

「!!?」

 

ヴァルキリーは思わず仰け反る。

 

「………ヴ…ヴァルキリー……」

 

「!!ひゃい!ご、ごめんなさい!」

 

マスターは起きていたのだ!だから私が顔を近づけたことに気づいていた。そう思ったヴァルキリーは即座に謝る。

 

「も、申し訳ありません! これは…その…つい…出来心であって………本当にごめ……」

 

そこまで言いかけて、ちらっとマスターの方に顔を上げたヴァルキリーは不思議の念に駆られた。

 

マスターはすやすやと寝息をたてて寝ているではないか。では今の自分の名前を呼んだのは何だったのか。

 

 

「ま、ますたー?」

 

おそるおそる呼びかけてみる。返事はない。寝ている。

 

じゃあ今のって……

 

 

 

「………………」

 

 

しばらくまた静寂が続く。

 

 

 

すると寝ているマスターがおもむろに口を開き

 

「…ヴァルキリーよくやった……」

 

「!!!!」

 

途端に彼女の疑問は確信へと変わった。マスターは今、私といる夢を見てるんだ!と。

 

「あ、ありがとうございます/////」

 

ついお礼の言葉が出てしまう。ヴァルキリーの顔は溢れんばかりの笑みで満たされていた。

 

となるともう一つの疑問が。

 

 

「…そこにはマスターと私の2人だけですか?」

 

ヴァルキリーは寝ているマスターに質問する。

 

「………ああ…」

 

「!!!//////」

 

ということはマスターと今も夢でも2人きり。それを想像して、ヴァルキリーは天にも登ってしまうようだった。

 

今考えると、寝ている人が返事をするおかしな状況を作ってしまったマスターの失態であるが、今の彼女の気にしていない様子を見るに結果オーライだったのかもしれない。

 

彼女はうっとりとした表情を浮かべて彼を見続けていた。

 

「!!」

 

ヴァルキリーは大事なことを思い出した。今だったら!今の状況だったらあれを聞けるかもしれない! 聞くしかない!と。

 

一息深呼吸をして間を置く。

 

「………マスターは私、ヴァルキリーのことをどう思っていますか?」

 

言った! 言い切った! そのマスターの返事を聞くだけ!彼女は次の彼の発言に全力で耳を傾ける。

 

 

 

 

「……俺は……」

 

 

 

 

 

「俺はヴァルキ「ただいま!!」

 

 

 

 

それは突如遮られた。扉を開けたのは外出していたエキドナとメタトロンだった。

 

 

少しの沈黙。

 

 

「……………エキドナさん…メタトロンさん……お帰りなさい…」

 

「ふう…い、いやー…最近ヴァルキリーが自主トレ頑張ってるからさ! うちらも頑張ろ!って思ってね! ね、メタトロン!」

 

「あ、ああ…」

 

「………それは…お疲れ様です」

 

「あれ?マスターまだ寝てるの?ほら起きて起きて!」

 

今回の企画のエキドナは寝ているフリをしていたマスターの体を叩いて起こす。

 

「……ん? お、おう」

 

 

「………………………」

 

 

その場に流れる微妙な雰囲気。そして沈黙。

 

 

「さーてそろそろ晩ご飯の準備でも…「エキドナさん」

 

 

「今、ちょうど帰ってきたのですか?」

 

「……ええ、そうよ」

 

「私の目を見て言って下さい。今、帰ってきましたか?」

 

 

「………………」

 

エキドナは黙って俯く。

 

 

 

 

「…………聞いていたのですか………前みたいに………」

 

 

 

「……………………」

 

 

 

 

「………見ていたのですね……前みたいに……」

 

 

 

 

「……………そしていいタイミングで出てきて邪魔しようとした」

 

 

 

「ち、違うわ。そうじゃ…「そうじゃないですかああー!!!」

 

 

エキドナの声を遮り、ヴァルキリーの悲痛混じりの声が響き渡る。

 

 

 

 

 

 

「……どうしてっ………」

 

 

 

 

「…………………………」

 

 

 

 

 

「……どうして邪魔をするのですか………」

 

 

 

 

 

 

「応援してくれるんじゃなかったのですか………」

 

 

 

 

 

 

 

「………どうして…………」

 

 

 

 

 

 

「…………見損ないました……」

 

 

 

 

彼女は泣いていた。それはマスターにもしっかり見てとれた。

 

直後、ヴァルキリーが出ていく音だけが小屋に響いた。

 

 

 

 



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