問題児たちが異世界から来るそうですよ?箱庭超コラボ〜Chaos〜 (エステバリス)
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ゼロ限目 プロローグ的なもの

はい!というわけでかっこうむしです!今回はこうも多くの方々からキャラを借りての合作ということになります!

一応、プロローグであるこのゼロ限目から暫くはまだ出てこないキャラもいますが、贔屓はしないことは天と地とおばあちゃん語録の人に誓って公言します!

あ、それと今回、読者様が主人公ということを主眼に置きたいと思うので今作限定のオリ主も作りました!これで竜胆くんが知らず知らずのうちに贔屓されることも減る……はず。





某県某所某区、そんな某だらけの場所には一つ、有名なものがあった。

 

それは学校。学校と言ってもスポーツとかで有名とか、そういうことではない。別に素行が悪いからダメな意味で有名というわけでもない。

 

有名なのは、そこに通う少年少女達のことだ。

 

これは、これより先半世紀以上に渡って語り継がれる、伝説の世代のお話である……

 

◆◇◆

 

時間は朝。特に部活とかもやる時間ではないこの時間帯、何故かそんな時に手越 昴(てごし すばる)は学園こと、『私立桃水原(ももみずはら)学園』に足を運んでいた。

 

「やることないんだけどな……図書館だって閉まってるし……教室で寝る、かな」

 

「教室なら空いてないぞ。この時間帯は教師も誰もいないからバイトの元センパイが校門の鍵だけ開けてるんだ」

 

昴がそう呟いた時、丁度通りかかった中庭の方から声が聞こえた。

 

暗いところにも関わらず、芝生の上に座り込んで英語でタイトルの書かれた本を読んでいる人物がいた。

 

「あっ……夜子先輩、またこんな暗いところで本読んでる。目悪くしますよ」

 

「いいんだよ昴。ここは俺の特別スポットなんだ。ここで落ち着いて本を読むのが堪らなく安らぐ」

 

眼鏡を掛けて昴の言葉を軽く返した中性的な女性はそのまま本を読むのに夢中になる。

 

「ってか、だいたい俺の名前は十六夜だ。なんなんだ後輩のお前まで夜子夜子って」

 

ある程度読み終えたのか、はたまた既に読み終えていて流し読みの二週目をしていたのかは定かではないが、彼女、逆廻 十六夜は本を閉じて立ち上がった。

 

「えっ、」

 

「……なんだその反応。まさかお前今の今まで俺の本名夜子だとでも思ってたのか?」

 

「……その、一輝先輩が夜子夜子と言うから、先輩の名前は夜子なんだと思ってました」

 

「一輝ぃ?あの神社の息子か……おい昴。アイツの言ってることはあんまり鵜呑みにするなよ。陰陽術みたいないかにも怪しそうなのには近づかない方が吉だ」

 

十六夜はそう言うとまた本を読み直そうとした、が。

 

「……おい昴。本が読めねえ」

 

「だから目に悪いって言ってるじゃないですか……!先輩もう若干近視入ってるんでしょ!?」

 

「まあそうなんだけどなぁ」

 

「だったらきまりです!ほらさっさと明るい場所に!」

 

「はっ!?ちょ、おいコラ、勝手に人の手を掴むな───」

 

その続きを十六夜が言おうとした時、

 

「やあ二人とも。もしかしてデートかな?」

 

また新たな声が聞こえた。

 

「……げ、五月雨センパイ」

 

「あ、先輩どうも」

 

「はいどうも二人とも。それと僕はもうここは中退してるから、態々先輩なんて呼ばなくていいよ」

 

「いやでも、それでもOBなのには変わりないですし」

 

「いーの。僕としては食堂アルバイト2号さんとでも呼んでくれた方が嬉しいよ」

 

ハハハ、と軽く自虐ネタを引っ張りながら笑う五月雨。あんまり笑えるネタではないのだが、というか笑っては後輩的にいけないのだが、五月雨はほら笑え……笑えよ、とでも言わんばかりだ。

 

「ほれほれ、夜子も偶には後輩の言うこと聞いてやりなよ。昴は夜子を心配して言ってくれてるんだよ?」

 

「……はいはい。わかりましたよ」

 

夜子は五月雨がちらつかせた、なんとなくヤバい気配を察したのか、さっさと中庭から去っていった。

 

「うんうん。正直でよろしい」

 

「……五月雨先輩。貴方夜子先輩になにしたんですか?」

 

「……知りたい?」

 

「結構です」

 

聞いた瞬間に五月雨は昴にも十六夜と全く同じ顔をしたので即座に否定。なにがヤバいのかはわからないが、なにかヤバい気がした。

 

◆◇◆

 

そして時は移ろい流れ……放課後。

 

生徒会室には電気がついていた。そこには四人の男女がそれぞれ好き放題やっている。

 

「……お。新しいのできた。……ってまた艦隊のアイドルかよ。解体解体……っと」

 

「……会長。生徒会会長の身でよくもまぁ学校のパソコン使って艦◯れできるね」

 

「そーは言われてもなぁ。ほら、ウチの生徒会優秀だからさ、仕事終わってやることないんだよ、わかる副会長殿?」

 

「わかるけどさ……それ、態々学校のパソコンでやらなくていいよね?最近はスマホでもパソコンの画面仕様にできるアプリとかあるんだからそれにしようよ」

 

「断る!電力食う!」

 

「だから学校の備品でやること自体が間違いっていうのがそもそもの問題なの!いいからさっさとやめる!」

 

「嫌だねリンちゃん!」

 

「ちゃん付けしないで!」

 

学校のパソコンで暇だからと鎮守府に着任した寺西 一輝に対してスパッと迅速に的確なツッコミを浴びせるリンちゃんこと高町 竜胆。一輝も竜胆もお互いの主張を決して変えない。普通に考えてどちらが悪いかなんてすぐにわかるのだが、正直なところこうやっていると竜胆は生真面目なので寄ってくると踏んで一輝は艦こ◯をやっていた。

 

そしたら当たった。竜胆は弄り甲斐があるし、なによりその辺の女よりも可愛いし女らしいという頭のネジが飛んでるような少年なので一輝は比較的竜胆を好んで弄っている。

 

「だいたい一輝。俺達は仮にも三年だよ?その三年のお前が、しかも生徒会長が!率先して規則を破りに行くってどういうことなの!?」

 

「あー!俺の榛名が!」

 

そして竜胆がパソコンを奪ってシャットダウンを押したため、出撃中だった画面が強制的に切れた。

 

「リンちゃん貴様……!」

 

「◯これを学校の備品で生徒会の活動中にやっている会長にだけは恨まれたくない!」

 

う〜……と二人とも互いにいつ飛び掛かってもおかしくない体勢をとる。実のところこの会長と副会長の喧嘩(じゃれあい)は生徒会の名物になっている。

 

なぜなら……

 

「今日こそ覚悟しろー!」

 

「勝てると思うな!小僧ー!」

 

竜胆が飛び掛かり、一輝が竜胆の頭を掴む。そして二人の身長差が原因で竜胆の手を一輝に届くことは決してなく……

 

「くううううううううううう!」

 

「あっははははははは!」

 

ご覧の有様である。しかも竜胆はお約束のように両手をブンブン振り回している。

 

そしてその光景を見てほっこりするのが書記と会計である。

 

「いやーやっぱりリンちゃんは可愛いねはーちゃん!」

 

「……うーん。ボクとしてはこうしてリンくんが弄られてるのはちょっと……同情する」

 

二人の姿を見て素直にほっこりしている少女が破従 夏凛。書記。なによりも楽しみを追求し続け、その結果なぜか"楽しみを提供する側"になっていたという誰からも愛されるという稀有な体質の持ち主。

 

そして竜胆に同情してる方が会計の縁己 呉羽。同情という言葉からわかる通り、竜胆と同類(男に見えない容姿)である。

 

「うにゃー!一輝そこを動くなー!すぐに成敗してやるー!」

 

「はっはっは!待てと言われて待つアホはリンちゃんのおねーちゃんくらいのものだよ!」

 

「そのアホの弟っていうのが傷つくからやめてくれないかな!」

 

竜胆がついに一輝の手を両手で引き離すと机に手をつけ、机を飛び越えて一輝の元に接近し、一輝もまた机を巧みにつかいながら竜胆から逃げる。

 

「あっははは!やっぱり生徒会やっててよかった!かいちょーとリンちゃんの追いかけっこはいつ見ても楽しいよ!」

 

「ああ……折角纏めた書類が……会長がネトゲしてリンくんと喧嘩して夏凛がそれに便乗してた時に纏めた書類が……」

 

哀れ、呉羽が必死になって纏めた書類達は竜胆と一輝の追いかけっこによって宙を舞い、破れ、皺がつき……彼の苦労は文字通り水の泡となったのだった。

 

◆◇◆

 

そしてその晩のことだ。桃水原の寮、"郷土の寮"の一室には複数人の男子がいた。

 

「……さて、今日諸君らに集まってもらったのは他でもなぃ」

 

「いきなりどうしたその畏まった態度はさぁ。夜雷」

 

そこにいた男子達は揃いも揃って普段から頭のネジが九割弾け飛んでいることで有名な夜雷が敬語っぽいなにか(決して敬語ではない)を使ったことに全力で突っ込んだ。

 

「ぃやぃや。別にオレはぃつも通りだぜ?だが……そう見えるとしたら多分、こんかぃオレがお前らにぃうことの真剣さが伴ってるからかもしれねぇ」

 

普段が普段なのでその畏まった態度になにかあったのかと真剣な顔をする一同。そして彼の口からは、その真剣な話題というのが出てきた。

 

「……ウチの学園でぃちばんエロぃ女って誰だと思う?」

 

「「「はい解散」」」

 

「おぃコラ待てテメェら!オレは真剣にこの話題振ってんだ!なんだよその即解散とかぃうチームワーク!」

 

「エロい女の話題に夜子と夏凛が連れてこられて竜胆と呉羽がいない時点で真面目なわけねーだろが死ね!」

 

「なんで死ねまでぃえるんだゴルァ!上等だぃったヤツ出てこぃ!あとリンドーとクレハは男じゃねえ!男娘だ!」

 

「それに関しては激しく同意するがお前絶対真面目じゃねぇだろ!」

 

「はいはい!私はーちゃんも可愛いけどリンちゃんが一番可愛いと思います!お願いすると顔真っ赤にしてちょっと発情しながら了解してくれるし!」

 

「「「えっ」」」

 

殴り合いの喧嘩まてあとちょっとというところで夏凛が凄いカミングアウトをした。あの生真面目な竜胆が発情しながら了解?まさかそんなことが……

 

「ああ……アイツああ見えてマゾっ気あるからな。普段は生真面目だが、夏凛のよくわからん言霊に支配されたい願望が出るんだろうな……」

 

というかツッコミ所は生態的に男とは発情した女が誘惑して初めて発情する筈なのだが、男の竜胆が自発的に発情していることである。まあそんなこと誰からも……夜子と呉羽(同類)以外に男扱いされないのが竜胆なのでそこは完全に無視。

 

「そういうのだったら僕は花音チャンかな。あーやってお気楽の皮を被って自分の暗い部分や本当のところを見せないところはミステリアスでいいかもね。なにより"普通"な僕じゃそんなことできないし、憧れってのもあるかも」

 

そしてそのカオスな流れにごく普通に介入してくる彼こそが景山 健太。普通すぎて正直続きに困るのだが、この普通さこそが彼なのでしょうがない。

 

「俺は自由奔放な琉璃を推すかな。ああいう朝から晩まで元気なのは見習いたいかもな」

 

「「「ヘタレの修也が女の好みに率先して反応する……だと……!?」」」

 

「よっしゃお前ら纏めてオモテ出ろ全員貧血になるまで採血用注射器ぶっ刺してやるからな」

 

「修也。お前がそれをしたら俺は保健委員の権限を使って特別にお前に持たせている注射器と輸血用の血液パックを没収する」

 

「やめてくれ命。その権限は俺に効く。やめてくれ」

 

そして速攻で土下座。貧血気味な修也に血液パックの没収はかなり痛い。

 

そうして行くうちに俺はこーだお前マジかよだのと時間が過ぎて行き……

 

「……うしじゃあラスト!昴は誰がぃぃ?」

 

「うぇ、僕!?」

 

「当たり前だ!全ぃん誰がタィプか答えたからな!なぁキリキリ吐けよぉ!」

 

突然夜雷が昴に不良のように絡んできたので少しだけ後ずさりするが、気付けば全員に囲まれていた。

 

逃げ場など、ない。

 

「……え、えー……僕は、ですね」

 

「「「誰?」」」

 

「……皆さんいいところあっていいと思います!ハイ終了サヨナラ!」

 

「あ、逃げた!」

 

「逃がすな追え!」

 

「来ないでええええ!」

 

こうして桃水原学園の夜は更けていくのである……

 

 




はい、ありがとうございました!今回出なかったキャラクターは今度の更新とかで紹介します!

あ、耀ちゃんさんとか飛鳥さんとかは色々な意味で凄いことになるので出ません。



今回登場したキャラクターの登場作品と軽い紹介

手越 昴
登場作品 本作オリジナル
所謂プロデューサーとか提督とか。ただはっきりしているのは二年生で一人称は僕、基本誰にも敬語であるということ。
口調から厄介事に巻き込まれるとツッコミ役に回りそうだが、その実ツッコミとかボケとか関係なく逃げる。人間関係は良好で誰に対しても一定以上の評価を頂いている。
ギフトをマイルドにしたものは"追いかけっこで必ず勝てる"。お気に入りスポットは誰かがいる場所。

逆廻 十六夜(夜子)
登場作品 一番の問題児の性別がひっくり返ってるみたいです
作者様 江宮 香
ご存知問題児様の性別が婦女子パワーによって性転換した。ただ性転換しただけでなく大きく(なにがとは言わない)、同時に乙女。
しかし本質は変わらないため問題児であることには変わらず、服装もボーイッシュなものを好むため隠すつもりはないが女にはまず見られない。
ギフトをマイルドにしたものは"単純な身体能力の高さ"。お気に入りスポットは裏庭、屋上、図書室。

五十嵐 五月雨
登場作品 問題児たちが異世界から来るそうですよ? 箱庭の家族物語
作者様 タジャドル・隼
コラボマスターこと箱庭家族の家長さん。なによりも家族を愛し、かつ問題児の心得を忘れない、そしてコラボの時は基本導く側という家長の鑑。強い(確信)。
ギフトをマイルドにしたものは"基本なんでもできる"。お気に入りスポットは不明。神出鬼没の用務員とは謎が大きくなる。

寺西 一輝
登場作品 問題児たちが異世界から来るそうですよ?〜無形物を統べるもの〜
作者様 biwanoshin
外道陰陽師。外道とはゲスとかそういう外道ではない。仏教の教えに背いている、とかそういう意味合いでの外道である。問題児だが。
様々な妖怪を自身の檻の中に封じたり"擬似創世図"(アナザーコスモロジー)を有していたりと家長に負けず劣らずやりたい放題。物語そのものが大きく進んでいるのと本人の性格もあってか、家長と同じく導く側の人間。
ギフトをマイルドにしたものは"手品と霊感、および小動物程度の妖怪を使役できる"。お気に入りスポットは本屋。

高町 竜胆
登場作品 問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ?
作者 かっこうむし
ウチの子。ヒロイン。巨乳(♂)。元厨二病の死にたがり。初期は冷徹淡白無愛想と三拍子揃った典型的な避けられるタイプだが、避けられるようにそうしていた。色々あって今はツンデレ、可愛い、ちょろインと三拍子揃った可愛いヤツになった。そして恋する乙女(♂)。本編では死に設定だが実は頭のネジが外れるとドMになる。
ギフトをマイルドにしたものは"なんとなく動物と会話でき、手品のように手持ちサイズのものを取り出せる"。お気に入りスポットはお風呂と児童向け絵本がある場所、寂しくない場所。
今作ではキマイラ事件そのものがないのでツンデレ要素はほぼなく、本編の彼より少しよそよそしい。

破従 夏凛
登場作品 問題児 魔王少女も来るそうですよ?
作者様 厨二病(治りません)※()内はルビ
ツンデレでも家長でも外道でもない魔王系問題児。レズの気がある。
彼女のギフトは『彼女に服従したくなる』という願望を与えるというものであり、そもそもの性格も合わさって軟禁生活を強いられていた。そのためか誰かとの繋がりや愉しみに飢えている節があり、暴走しがちな元気っ娘。最近奇妙な三角関係が見えてきた。
ギフトをマイルドにしたものは"誰にでも好かれることと高い身体能力"。しかし誰にでも好かれるが少し強いのか竜胆くんの頭のネジを知らずのうちに外してはドM化させる。お気に入りスポットは愉しい場所と一人ではちょっと危ない場所。

縁己 呉羽
登場作品 同上
作者様 同上
"友達"の夏凛を追って箱庭にまでやって来た男の娘。夏凛に惚れていたのだがその分彼女のギフトを間近で強烈に浴びたため、その状態から脱するため"破従 夏凛の全て"を一度吐き出した影響で彼女への愛情を失ってしまった。だが彼女への好意そのものは残っているので客観的に見ると強烈なまでに狂った友情の在り方をしている。最近おかしな三角関係を築き始めている。
ギフトをマイルドにしたものは"誰とでも別け隔てなく接することができ、交渉が得意で病弱"。お気に入りスポットはみんなで笑顔でいられる場所。

夜雷
登場作品 問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ?
作者 かっこうむし
コラボ編に登場した人物で13年目の亡霊作戦というものを企てている。その中核には竜胆の存在が必要不可欠らしい。
本人の性格は一言で言うとウザい。基本ハイテンションで『い』の発音を小さくする癖がある。
ギフトをマイルドにしたものは"夜中の天気を一ヶ月に一度晴れにできる"。お気に入りスポットは奇妙な場所。

景山 健太
登場作品 異常な普通も異世界から来るそうですよ?
作者様 忙人K.H.
異常な普通の名の通り、本人は普通なのだが、その普通が度を過ぎていて運動、勉強、その他諸々のなにを取っても丁度平均になる。ただこれは自身のギフトで自身の周囲の異常を徹底的に普通にするという力が働いているせいである。
ただしリア充。初恋が実っている。作者様曰く爆発しろ。
ギフトをマイルドにしたものは"ただただ普通"。お気に入りスポットは図書室とプール。

月三波・クルーエ・修也
登場作品 問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界から来るそうですよ?
作者様 ほにゃー
かつてノーネームに所属していた吸血鬼の父と魔王の母の間に生まれた吸血鬼のハーフ。ヘタレだが兄貴。吸血鬼らしく吸血したりしたらパワーアップしたりするが、吸血するとされた相手が恍惚状態に陥る理由は謎。敢えて言うならお約束。コラボだとよく耀の血を吸うせいで因縁つけられてボコられる。当時は付き合ってなかったしヘタレ全開だったから尚更ボコられていた。
そしてレティシアの従姉弟。男に吸血する様はどう見ても江宮さん大歓喜モノである。(あと地味に作者も)
ギフトをマイルドにしたものは"貧血と低血圧"。お気に入りスポットは日陰。

一夢 命
登場作品 問題児たちと命の理解者が異世界から来るそうですよ?
作者様 Shin-EX-
世界から拒絶され、誰からも愛されなかった少年。あらゆるイノチを理解する程度のギフトを持ち、それを駆使する。
かつては愛してくれた人がいたが、既に故人であるらしい。クラマとシラマというリリカルでマジカルな眷属とフェニスというメロンパンが好きそうな眷属がいて、彼女らとイノチを一体化させれる。あとギフトの中にフラグ建設するギフトがある。そのうちコラボ編でコラボをしたら竜胆くんが攻略されそうで作者は怖い。
ギフトをマイルドにしたものは"他人の気配にゴルゴの如く察知できる"。お気に入りスポットは屋上。



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一限目 ラブホでもBARでも好きなところに行くがいい!

はい、一限目です!

え?一限目からサブタイが酷いって?気にしたら負けさ!

……こういう日常モノはなにをやるにしても勢いとノリと思いつきが大事だから……




「よっしゃテメーら聞けよオイ!来週から我々二年生は修学旅行だ!ってなわけで班決めっぞ班!」

 

「「「イェアアアアアアアアアア!!!」」」

 

昴達が二年生になってから少しの時が経ち、教師の謎のテンションの言葉に乗るように男衆が叫ぶ。

 

「今回生徒会の取り決めによって三年生も受験シーズンに入る前に少し羽を伸ばすことを目的にこの旅行に参加することになっている!そこも考慮して班は二年、三年混合の班にすることが決まった!」

 

生徒会の取り決め……?なにをバカなことを仰る。会長が行きたいから勝手に決めて学園長が面白いからいいよとか言って可決したという生徒会どころか個人間の取り決めと呼ぶほうが相応しい決まり方をしていたのに。

 

「ということでくじ引き云々に関しては学級委員長!頼む」

 

ヤケにテンションの高い教師がそう言うと、小学生に見間違えられても不思議ではない少女が出てくる。その少女は教卓の前に立つと、態とらしく黒板を叩いた。

 

「あいさー!よっしゃーてめーらくじ引きやろーぜ!班が別れるから誰が誰と班組んでも恨みっこなっしんぐだかんね!でも私はリンと一緒の班になりたいな!一年間離れ離れだったからおねーちゃんとしていっぱいリンと話したいな!っていってー!黒板いてー!」

 

彼女、高町 鈴蘭がほぼ好き放題言った挙句、自分で黒板を叩いたのにその黒板を目の敵のように手を抑えながらローリングし始める。

 

「はーい!スズちゃん三年生と一緒にいれるならはーちゃんと同じ班がいーな!」

 

「うおお……手が、手がぁ……!んにゃ、夏凛りんははーくんと同じ班になりたいのね!ういわかったくじ操作しとく!」

 

「「「オイコラアホ姉」」」

 

夏凛が鈴蘭に乗っかって自分の願望を言うとこのイカサマするからまかせとけ発言である。

 

よくこんなんで一年間も語学留学ができたものだと一同は思わざるを得ない。

 

彼女、鈴蘭は去年なにを思ったのか突然『ちょっと世界一周してくる!だーじょーぶ学校には語学留学って言ってあるから!』なんて言って本当に世界を一周して来たのである。

 

時々、否毎日のように竜胆の元に手紙が届いてきたのだが、その中にはどう見ても紛争地域にしか見えない場所の紛争に介入して不殺の完全勝利を収めていたものだったり、ワニをジャングルで齧っていたりチーターと追いかけっこしていたりホッキョクグマと戯れていたり狐を飼いならしたりツチノコ狩りをするという謎の一団と便乗してツチノコ探しを始めたり、とにかく凄まじい内容だった。

 

こんなアホみたいな性格のくせに語学と数字にだけはアホみたいに強く、この語学留学の間に殆どの国の言葉を覚えて帰ってきたのだから恐ろしい。

 

そんなこんなの実績と本人の面白さを買われて学級委員長に抜擢されたのが彼女である。

 

この黒板叩いて床でローリングしている彼女が、である。正直彼女と少し付き合えばなんで竜胆があんな生真面目になったのか容易に想像できるのがまた怖い。というかよくこんな姉と今まで双子でいられたと竜胆を賞賛せずにはいられない。

 

「ふぐううう……と、とにかくくじ!くじの箱は既に私が用意しちょる!さっさと引くけん!」

 

彼女がおもむろにスカートの裏地に手を突っ込んで引っ張るとなぜかそこから明らかにスカートの布面積で隠せないサイズの箱が出てきた。

 

箱には鈴蘭の名前とやたら達筆な文字で『リン絶対主義』と書かれていた。ブラコンここに極まれり。

 

「鈴蘭……お前それどこから出した?」

 

ふと、普段は教室にいないor居眠りが普通なのに今回はなぜか教室にいた竜堂 明が思わず突っ込む。

 

それに対して鈴蘭はお茶目にウィンク。

 

「いやだなぁアキラんったら。女の子にそんな事を聞くと、デリカシーナッシングだゾ☆」

 

「すまん。歳上で女なのは知ってるが無性にコイツを殴りたくなった。止めないでくれ」

 

明は一言謝ったが誰もその言葉に反論しようとしない。その反応を見た明は鈴蘭に向かって強烈な左のボディーブローをかます。

 

「アビゴルッ!?」

 

ポーズを取って決まった……と気が緩んでた鈴蘭の腹部に強烈な一撃が突き刺さる。再び鈴蘭はゴロゴロするが、10秒くらいしたら何事もなかったかのように起き上がった。

 

「おーいってー……おうしそれじゃくじ引きしようぜ磯野!」

 

磯野って誰だよ、なんてツッコミは置いておき、二年生はぞろぞろとくじ引きを始めたのだった。

 

◆◇◆

 

それから一週間!修学旅行当日!

 

『……以上、学園長からの挨拶とさせていただきます。次は生徒会長から』

 

副会長の竜胆が業務のように定型文を読むと、そのすぐ隣りから生徒会長の一輝が壇上に上がり、おもむろにマイクを取る。

 

『……あー、テステス、マイクテス。え?さっき学園長がやったからいいって?気にするな。気分だ』

 

のっけからこんな緩い感じになってしまった。多分一輝としてはマイクテスやりたかっただけなのだろう。

 

『うし、生徒会長の寺西 一輝だ。お前らにとっては聞き飽きることかもしれないが、一応生徒会長の業務として、修学旅行のルールを言わせてもらうぞ』

 

一輝はマイクテスが終わるとまるで本番が終わったかのように面倒くさそうな顔になる。

 

『えーと、しおりの5ページ。書いてあると思うが……お前ら、子供だけは作って帰ってくるなよ』

 

「「「このしおり作ったヤツバカじゃねーの!?」」」

 

生徒一同総ツッコミ。それを聞いた一輝は「流石だな。書いてよかった」と痛感する。

 

『まあ、子供さえ作んなきゃなにやってもいい。ナニやっても72やってもだ。ついでに宿泊場所もタイムロスなく班行動に移せる場所ならどこでもいい。ラブホでもBARでも好きなところに行くがいい!』

 

声を高らかに上げてヤバいことを恥ずかしげもなく言い切った。多分これこそが彼がこの学園で生徒会長なんてものをやれる所以だろう。恥ずかしげもなくラブホ行っていいよなんて言う会長普通は嫌だが。

 

『あと副会長のアホ姉。お前は誰と班になろうが強制的に副会長の班だ。お前副会長側に置いとかないとなにしでかすかわからんから』

 

「いよっしゃアアアアアアアアアア!!!我が世の春がキターーーーーーーーーーーーー!!!」

 

鈴蘭は一輝のその言葉を聞いて狂喜乱舞する。ブラコンも度が過ぎると嫌われます。

 

「……ごめんなさい。ごめんなさい。うちのアホお姉が騒いでごめんなさい……」

 

こうして謝ってる辺り弟も弟なのだが。

 

『あと、忘れないよう再確認するが旅行先は沖縄だ!この辺には空港がないから特急で成田まで行ってそこから飛行機!たとえキャビンアテンダントがロリっぽくてもセクハラするなよロリコンども!』

 

どんどんと一輝が特定の個人を指すような注意をしていっているが、ともかく挨拶は終了。一同はバスに乗り込むべくその場を離れて行った。

 

◆◇◆

 

※以下人数の都合とその他諸々につき基本台本形式

A班

鈴蘭「うおっしゃー!旅行だ旅行だ!旅に出るぞー!」

 

竜胆「お姉、電車の中ではお静かに」

 

鈴蘭「にゃ、そうだった。おーせんくすリン!」

 

竜胆「あとお菓子は食べ過ぎないように。お昼食べられなくなるし栄養バランス偏るし虫歯になるしそれに」

 

呉羽(……弟っていうよりお母さんだ)

 

華蓮(あんなお母さんそうそう見ないんだけどねぇ)

 

竜胆「まったく……少し目を離すといつもこうだ。だから俺は元々語学留学にも反対してたっていうのに……変なところだけ頑固だからなぁ」

 

鈴蘭「ん〜……チョコ食べたらなんかベタッとなった……」

 

竜胆「はいはい、ティッシュね。ほらこっち向いて」

 

鈴蘭「うい〜す」

 

呉羽「もうホントに二人は姉弟じゃなくて親娘みたいだね」

 

華蓮「もういっそ二人で暮らしたら?」

 

鈴蘭「もう二人暮らしです!寮は男女別れてるけどね!」

 

竜胆「頼むから部屋に入ったらいるとかいうホラーはやめてほしいよ……」

 

華蓮「というか、竜胆と呉羽って二人共生徒会なのになんで同じ班なの?普通は見張る範囲を増やすとかそういう理由とかで分けない?」

 

呉羽「ああ、それね……しおり見て。14ページ」

 

華蓮「?えーと……大浴場での入浴は九時までに終わらせること。なおその際三年高町 竜胆及び縁己 呉羽の二名は議論が多数持ち上がったため個室でのみ入浴を可能とする……」

 

呉羽「で、次は27ページの部屋割り」

 

華蓮「……なんで竜胆と呉羽だけ二人部屋?」

 

竜胆「俺達が男子部屋にいること自体に苦情が殺到したんだって。かといって、女の子の園に入るわけにもいかないでしょ?」

 

呉羽「ボクらも最初は文句は言ったけど、多数決には勝てなかったよ……」

 

華蓮「可哀想に……かといって確かに一応男の二人と一緒に寝ろなんて言われても……あれ、割と気にならないかも」

 

竜胆・呉羽「「えっ」」

 

◆◇◆

 

B班

夏凛「うええ……はーちゃんと別々の班になっちゃったよ……所詮権力には抗えないんだ……」

 

健太「しょうがないよ。二人共生徒会で竜胆クンと呉羽クンは……その、色んな意味で特別だからね。あ、それダウト」

 

凍夜「また負けた……健太お前トランプ強すぎだろ」

 

健太「こんなものポーカーフェイスでどうとでもなるさ。あとはちっちゃい挙動を見ればだいたいの思考もわかるしね」

 

十六夜「やっぱり一般人(笑)だろお前。世界の一般人のハードルどんだけ上げりゃ気が済むんだ」

 

健太「失礼な……僕以上に普通な人間がおりますか?」

 

凍夜・十六夜「「すくなくともお前よりも一般人なヤツならこの地球上に活火山ほど居るわ」」

 

健太「なん……だと……!?」

 

夏凛「はーちゃーん……うぅ〜……」

 

十六夜「ところで俺はなんで竜胆と呉羽と同じ班じゃないんだ……?あのルールで言うなら俺も適用されてもおかしくないと思うけど」

 

凍夜「多分、男に見える女と女にしか見えない男の決定的な違いだな」

 

◆◇◆

 

C班

命「ところで、流し読みで終わってたんだがこの方向ホントに成田なのか?学園はルートを説明しないからどこからどうやって成田まで行くのか皆目検討つかん」

 

一輝「はっはっは。命、そんな細かいこと気にしたら禿げるぞ?」

 

命「ハゲねえよ!」

 

昴「あ、それは僕も気になります。あとそこで夜雷が男だけの班なことに絶望してさっきから変な顔して一言も話さないことにも」

 

夜雷「………」

 

昴「ムカつくしウザいからやめさせたいんですけど」

 

一輝「殴っていいぞ」

 

昴「……命さん、頼みました」

 

命「よっしゃ、大空の果てまで吹っ飛ばしてやる。明が『あれ?こんな昼間に流星が見える』とか言いそうなくらいにぶっ飛ばす」

 

夜雷「………」

 

命「せーの、ドーン☆」

 

夜雷「ホワァッ!?」

 

◆◇◆

 

D班

明「……あれ?こんな昼間に流星が見えるぞ」

 

悟「気のせいじゃないのか?」

 

レイラ「もしくはウザい顔した夜雷が命辺りに殴り飛ばされたとかかも」

 

悟「あ、それだ!」

 

七夕「皆さん揃いも揃ってなんて酷いことを……まあ、会ってる気がするのがなんとも言えないんですけども」

 

『ぎにゃーーーー!!』

 

明「……あ、この声」

 

悟「夜雷だったな、間違いなく」

 

レイラ「可哀想に。本当にお星様になってしまったのね、彼」

 

七夕「馬鹿なこと言ってないで早くどうにかしてあげましょうよ……夜雷さんの顔面がいい加減倍のサイズになりそうですけど」

 

『ちょ……まっ、バカヤロー!なんで殴ってぃぃってぃわれただけで関節メチャクチャにしようとしてんだ!テメーぃっぺんくたばれ!』

 

レイラ「元気そうでなによりじゃない」

 

七夕「あれを元気と言うんでしょうかねぇ!?」

 

ボケとツッコミ、多くの役割を乗せた飛行機は今、沖縄に飛び立とうとしていたのだった……!

 

続く!

 

「……そう言えば夏凛がすぐそばにいないのって随分新鮮だなぁ。……少し、寂しい……のかな。ボクは」

 

一人寂しくぽつんと呟く。それはいったい、なんのため?

 

 




とりあえずまずはキャラクターみんな一通り出さないと……その後じっくり掘り下げてかないとコラボしてるのに出てない人とかまだいるからなぁ……次回は残った未出キャラ全出しかな?

前回言ってた飛鳥さんと耀ちゃんさん参加による色々ヤバイこと。

飛鳥さん 下手したら夜子ちゃんと百合ップルになる。いいはずがない。そもそもこれは江宮さんが望むのたろうか……?いや、むしろ江宮さんはもっとイケメソと夜子ちゃんを組ませた方が涎出るだろ。江宮さんが飛鳥さんが好きかどうかは置いておくとして→却下。

耀ちゃんさん どこの耀さんを基準にしたらいいのかわからない。そもそも逆ハーになる。逆ハーなら間違いなくウチの耀ちゃんさんなんですけども→却下。

はい、こんな蛇足を踏まえて今回新出のキャラ紹介です。



鈴蘭=T(タカマチ)=イグニファトゥス
登場作品 問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ?
作者 かっこうむし
ウチの子。アホ。天才。ロリ。竜胆くんの双子の姉だが箱庭に呼び出されたのは竜胆くん達が呼び出された今より三年前なので年齢は竜胆くんより幼い。というか幽霊なので年齢の概念とかない。
そのアホっぷりは初登場時がミステリアスだった分輪を掛けて酷く、どうしてそうなったというものばかり。ただ、アホであっても天才なので発言はいちいち的を射ている。
過去の死んだ時のトラウマで特殊な措置もなく炎を見ると発狂するが、そんなの関係ないねと言わんばかりのアホっぷりとブラコンぶり。
ギフトをマイルドにしたものは"自分自身が光源になれる"。お気に入りスポットはリンのすぐそば。
なお今作ではそもそも死んでいないため名前は高町 鈴蘭だが、外国の国籍をいくつか取っており、それは鈴蘭=T=イグニファトゥスとなっている。名前を変えた理由は単純明快な『ミドルネームあるってカッコよくね!?』である。しかしそのミドルネームの部分が明らかにファミリーネームなのが彼女のアホっぷりを証明している。

竜堂 明
登場作品 問題児たちが異世界から来るそうですよ?〜箱庭に吹く風〜
作者様 ソヨカゼ
風のギフトを操る風のような自由人。ロリコン。レティシアを彼女にするくらいだから間違いなくロリコン。ただ、母に現人神を持つ半神霊で未来の数ある可能性から望んだ未来を選択できるというこれまたチートみたいなギフトを持つ箱庭家族最強のロリコン。
まあメタい話が原作4巻で一旦完結しているため、こんな早期にチートもいいところなギフトを突っ込めたのだろう。
ギフトをマイルドにしたものは"明日の天気がなんとなくわかる"。お気に入りスポットはいつも寝ている屋上。
ちなみにサボリ魔。屋上に行くと大抵彼がいる。

柊 華蓮
登場作品 問題児【四神の担い手〜柊の名を冠する者〜】
作者様 よっしぃ
その身に四神の神を宿す少女。というか言動からして少女というよりは姉御……兄貴?ただしロリ巨乳メイド。ショタ巨乳で従順なウチの子とは似て非なる。言動だって兄貴と妹というもうこの二人の性別交換した方がいいんじゃないかな?というくらいに互いに性別交換したら似合いそうだ。
元作品では十六夜に恋をしてるんだかしてないんだかな描写があり、作者様が十六夜×オリ主と公言しているためまあ間違いなくそういうことなのだろうが、下手したら百合ップルになりかねない当作品……ってまた夜子絡みの百合ップルかよ!
ギフトをマイルドにしたものは"力の受け流し"。お気に入りスポットは運動場と体育館。

天城 凍夜
登場作品 問題児たちと絶対者も来るそうですよ?
作者様 紅の暁
絶対者という概念を捻じ曲げるチートギフト……チートチート何回言えばいいんだろうか。ともかくチートギフトを持つ主人公。ただ箱庭家族はチートギフトであればあるほど入手の経緯に不幸を伴うジンクスでもあるのか、彼も絶対者の目覚めの際に殺されそうになった、救おうとした30人の少年少女を周囲の人間ごと殺害してしまった。
普通に考えればこんなことあれば精神がぶっ壊れて某厨二病主人公みたいにふらふらと死に場所を求めて一人旅をしてもおかしくないのだが心に大きな傷を残しこそあるが、その面影を感じさせないのは一重に彼の強さであろう。
ギフトをマイルドにしたものは"小規模な自然現象を引き起こせる"。お気に入りスポットはプール、屋上、図書館。生息地らしい。

緋御 悟
登場作品 問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ?
作者様 天崎
サトリの妖怪の血を引いている。ロリでなければなんかよくわからん目があるわけでもない。ただ、サトリの名は伊達ではないらしくある程度種族間の会話に融通が利いたりと割と便利。まあ親はぬらりひょんなんだけど。ぬらりひょんの息子というタイトルでジャンプの仲間入りを……無理です。嘘つきましたごめんなさい。
ギフトをマイルドにしたものは"人の感情に敏感、気配を消せる"。お気に入りスポットは屋上の屋根の上。

レイラ(朱雀)
登場作品 問題児【四神の担い手〜柊の名を冠する者〜】
作者様 よっしぃ
華蓮の中に宿る四神の神、朱雀の魔王。その正体は華蓮にとっての"おねぇちゃん"であり、両親の古い友人と偽って幼い華蓮の面倒を見ていた。
彼女自身、魔王として暴れ回ることは兎も角、それに華蓮を巻き込むことに負い目があり、同時に華蓮を育てているうちに情を交わしていたようだ。彼女を倒したことによって華蓮の中にある四神の封印術式は不安定になり始め、結果彼女は事態の解決のためサウザンドアイズに所属することになった。
ギフトをマイルドにしたものは"触れた傷を治す"。ただし既に失われた血を戻すことは不可能で、軽い傷しか治せない。お気に入りスポットは暖かい場所と図書室。

五十嵐 七夕
登場作品 問題児たちが異世界から来るそうですよ? 箱庭の家族物語
作者様 タジャドル・隼
苗字からわかる通り家長さんの弟。ものっそい礼儀正しく誰にでも敬語。兄の博愛主義も伝染ったのか、例え魔王のコミュニティが相手でも殺生を良しとしない"優しすぎる人間"。
ただその優しさが隙になることもあまりないというある意味での完璧超人。常に笑顔を絶やさないし誰にでも思いやれる文武両道ってなにこの超人。作者的には隼さんの箱庭家族の中である意味一番怖い子です……
ギフトをマイルドにしたものは"動物に好かれる体質"。お気に入りスポットはみんなが笑顔の場所。



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二限目 ソレハオトメノヒミツナンダヨー

全員出すと言ったな?あれは嘘だ(ウワァァ……

はい、ごめんなさい全員出してると薄っぺらな内容に分量だけが増えると判断したので残り三人は次回に出します!

追記 寝ぼけて書いてたら旅行場所が北海道と書いて沖縄と読む場所になってました……




「ワー!ウェミダー!」

 

「鈴蘭……思ってた通りだな」

 

様々な過程をすっ飛ばして目的地沖縄についた一同。初日はみんな乗り継ぎの連続で疲れるということで沖縄についてから1日目は完全に自由行動ということになったのだが……勿論、そんな疲れなんてあるはずもなく一同は海で騒いでいる。

 

一番乗りで海にやって来たのはやはりというか、鈴蘭。彼女の水着はなぜかスク水。しかも旧式の。

 

そして次にやって来たのは意外にも明だった。風にでもなったのかというくらいの豹変ぶりだ。

 

「んにゃ?どないしたんアキラん。そんなにおねーさんをジマジマと見て」

 

「それを言うならマジマジな」

 

「お、それそれ。んなことよりもどないしたん?」

 

「いや……ナイス」

 

明は真顔で鈴蘭に向けて親指を立てた。おまわりさん弟さんコイツです。

 

◆◇◆

 

「───この感覚ッ……!お姉がロリコンと出くわした!」

 

「え?なに言ってるのリンくん」

 

「悠長に着替えなんかしてられない!ゴメンはーくん俺行かなくちゃ!」

 

「え、ちょ、リンくん!?リンくーーーん!!!?」

 

◆◇◆

 

一方ロリコン()合法ロリ(鈴蘭)のスク水姿をずっと見続けていた。途中モリとゴーグルを持ち出して「まっさるまっさる!」とか言いながら海の中に入ろうとしたがそれは流石に阻止した。それ以上はいけないと感じたのだろう。沖縄のビーチ的にもネタ的にも。

 

「ふっ、俺は今まで生きててよかったと実感している……今が俺の人生の境地だ……!」

 

「は〜い、それじゃあ境地から一気にドン底に叩き落としてあげるよぉ〜」

 

そんな明の真後ろにトランクスタイプの桃色のパンツと学園指定のワイシャツを着ていた竜胆が右の拳を振り上げる。

 

「殺気!」

 

「くたばれゴルゴ!」

 

「くらうか!───何!?俺の回避を見越してのフェイントだと!?」

 

竜胆が明の後ろから拳を繰り出し、明がそれを避けると、それを見越していた竜胆は逆の手で避けた明の頭を鷲掴みにした。

 

「シャアアアアアアアイニングゥゥゥウウウウ!!目潰しフィンガァアアアアアアアアアア!!!」

 

「ギャァァァァアアアア!!?目が!目がぁー!?目に直接沖縄産のサラッサラな砂がぁあああ!?」

 

「ロリコン、爆殺!」

 

「ぐああああ!」

 

その一言を区切りに、竜胆は明から手を離し、左手をコキコキさせながら海ではしゃぐ鈴蘭と目に砂を大量に入れられて悶絶している明を尻目に着替え用ロッカーへと戻って行った、

 

『お客様!こちらは男性用です!』

 

『海のバカー!』

 

帰り道で竜胆は竜胆で泣きそうになっていたが。

 

◆◇◆

 

「海来たよー!……っておや、何故かそこで明が苦しみに耐え切れず大声で泣き叫びながら右往左往してるよ」

 

「ワァ゛〜ッハッハッハ!本当か!?ええ!」

 

そして次にやって来たのは堤 光と反坂 皐。光がサラッとネタを提供して皐がしれっと答えてアメリカ風のボケが成立する。

 

「そう思ってるんなら助けろっ……!」

 

「うーん、助けてやってもいいけど経緯を教えてくれないかい?」

 

「鈴蘭を見てたら竜胆が後ろから片手アームハンマーしてきたから避けたら頭掴まれて直接沖縄産の超サラッサラな砂を擦り込まれた」

 

「よーし無視無視!ロリコンは放っておいてほら皐クン二人でバレーでもやろうか!」

 

「そうだな。ロリコンは放っておくべきだ」

 

「薄情者おおおお……!」

 

明は目が見えないせいで光と皐のいる場所からほぼ真逆の方向に手を伸ばしていた。みじめすぎる。

 

◆◇◆

 

それから暫く、元から海に行くつもりだった者達はこぞって海に来た。最初は光と皐だけだったビーチバレーも人数が揃っている。

 

「吹雪!」

 

「おし!任せろ!」

 

凍夜と吹雪のチーム寒そうな名前は見事なチームワークでコートにボールを叩き込む。

 

「させるものですかって!」

 

夏凛と華蓮のチーム魔王系女子、華蓮はそれを飛び込んでレシーブ。華蓮のロリぃデカチチがむにゅう、と圧迫されて目に悪い。

 

「よいしょ!」

 

そしてまた夏凛が割とグラマーなおかげでぽよんぽよんと重力に逆らいつつも従う挙動を見せるアレ。正直凍夜と吹雪にはやり辛いったらない。

 

「ああもう、面倒なことになってるなっ!」

 

「同感だ……さっさと終わらせたい!」

 

「そう簡単には終わらせないって!」

 

「こんな楽しいこと簡単に終わらせたくないしね!」

 

「……あふ。みんな楽しそうだね」

 

四人とも全力でバレーしている中、先程のトランクスに『みんな仲良く』と書かれたいかにも彼らしい文字のシャツを着た竜胆が眠そうに審判をしている。

 

「リンちゃんもやろーよ!」

 

「ヤダよ。やるってことは俺も水着になるってことでしょ?」

 

「そだよー」

 

「このシャツだけは死んでも脱がないからヤダ」

 

「えー!私リンちゃんの水着見たいー!みーたーいー!」

 

「いやだ!いーやーだ!ってか見るんならはーくんのでも見ててよ!」

 

「なんでそこに僕に振るの?」

 

「仲間だから。もしくは夜子でもいい。それにはーくんは夏凛にならそーいうのアリでしょ?」

 

「夜子は今ここにいないよ。あとリンくんってわりと淡白だよね」

 

竜胆と同じくシャツを着た呉羽は少し引きながら少し言い合う。

 

「なんで?なんではーちゃん私ならいいってどういうこと?」

 

「うぇえ、あ、いや、その……」

 

突然夏凛が頭に露骨な程疑問符を浮かべて近づいて聞いてくるため呉羽はもにょる。顔は真っ赤、呂律は回らないと散々だ。

 

「……あぁ〜」

 

「なるほどなぁ」

 

「へぇ、そういう……ね」

 

「な、なんだよぅ!なんでみんなしてボクにそんな顔するんだよ!」

 

「???」

 

「にゃははは!なんとやらは盲目ってね!頑張りたまえ若人よ!」

 

竜胆が珍しく鈴蘭のような言葉の使い回しをして夏凛以外察したような顔を見せる。おかげで6人とも自分達がビーチバレーやってたことを完全に忘れて竜胆を除いた3人が呉羽を弄り回していた。

 

◆◇◆

 

「ハマグリ取ったどー!」

 

「鈴ねぇちゃん、それ海に返しなさい」

 

「やだー!これは私んだぞぅ立月っち!私が取ったから私がしっかり一時間吟味して一番高級なハマグリ選別したんだぞ!」

 

「なんでそう無駄スキルが多いかな……」

 

「お金の匂いがするのだよ!」

 

「……あー、因みに旅行に持ってきたお金は?」

 

「んー?ないよ。リンが『2000着も私服あるのにこれ以上増やされてたまるか!』って私のお小遣いリンが口座ごと持ってるし。だからこそここで自給自足してる!」

 

なんというか、凄まじい理由だった。鈴蘭の所持金が1日で私服に変わることは学園生徒教師皆周知の事実なのだが、改めて言われるとドン引きモノである。

 

「ところでさ、そんなに私服持ってるならなんでそのスク水なの?」

 

「にゃはは!もしかして立月っちもアキラんとおんなじ?イヤン私モテモテ?」

 

「違うよ。気になったから教えて欲しいだけなんだけど」

 

「おおう。華麗かつ淡麗にスルーされたよ。まー理由は一つ。ルリルリが『スズちゃんにはスク水が似合う』って言ったからなのだよ!」

 

「ルリルリ……瑠璃?」

 

「まーリンが変な服着られるよりはそれの方が何億倍もマシって褒めてくれたのが一番なんだけどね!やんリンったら。そんなにおねーちゃん褒め倒してもなんにも出ないゾ☆」

 

「それ褒めてないから」

 

立月の空ツッコミが沖縄の海を静かに震わせたのだった。

 

◆◇◆

 

所変わって商店街。ちんすこうやらさとうきびやら紅芋タルトやらの沖縄名物が鎮座しているこの場所には複数のグループがいた。

 

「えーと、皆さんのお土産は……と」

 

昴は律儀にも知人ほぼ全員分に金を溶かす勢いでお土産を買って行く。瞬く間に両手が塞がりインド人も驚くレベルの量のお土産を頭に乗せている。

 

「お、こんなにも土産を買うとは律儀だなぁ昴。誰用とかわかるのか?」

 

そんな昴に生徒会で唯一海に来なかった一輝が話しかける。一輝は器用に頭のお土産を揺らすことなく一輝の方へ振り返る。

 

「あ、会長。はい、一応お世話になってる皆さん……勿論、会長にもお渡ししたいなー、なんて思ってるんです」

 

「おいおい、それをここで言うか?土産を買ったって現地で聞かれるのは少し新鮮な気分だよ」

 

「あ、それもそうですね」

 

あはは、と2人が談笑していると、また別の人影がやって来た。

 

「おや、スバるんにカズさんじゃん!おいーす!」

 

「お、花音か、おいーす」

 

「花音さん、どうも。沖縄は天気が荒れやすいですし、晴れて幸いでしたね」

 

「うん、私も晴れてくれて嬉しいよ。天気予報は雨だったからね」

 

そんな二人の会話に割り込んできた日比野 花音は頭に乗るほどお土産がある昴とは対照的にほぼ手ぶらに近い状態だった。

 

「ん?花音はまだ土産買ってないのか?」

 

「んーん。結構買ってるよ。仲良い人とか家族とかにもあげないとさ」

 

「その割には花音さん、なんにも持ってないみたいですけど……」

 

「あーぁ、それ?ほら、アレアレ」

 

花音が指差す方へ二人は視線を移す。するとそこにはすごいゆらゆらとしながらこっちに向かってくる七夕がいた。

 

「お、重い……」

 

「ありがとね七夕ー!あとで宿泊施設に置くからそれまで頼むね!」

 

「ふぐぐぐ……わ、かったよ……」

 

「……そういえば花音さん」

 

「ん?なに?」

 

続いて昴が新たな質問をする。花音は同じように聞き直す。

 

「花音さんって基本皆さんに渾名で呼びますよね。なんで七夕くんだけ名前呼びなのかなー、て。それに七夕くんにこんな足労をかけてるようですし、もしかして花音さんって七夕が好きじゃなかったりするんでしょうか?」

 

「……へ?」

 

「は?」

 

昴の問いに思わず花音と一輝はワンモアプリーズと言わん顔になっている。しかしすぐに気を取り直したのか、花音は軽く咳払いをする。

 

「……ソ、ソレハオトメノヒミツナンダヨー。シカタガナインダヨー」

 

「……はは、どうやら昴は"そういう側"か。なるほどなぁ」

 

「お、重いっ……」

 

ひたすら、ただひたすらに時間は流れて行くのだ……それがどんなカタチであれ。

 

◆◇◆

 

一方学園。

 

「……ヒマだ」

 

五月雨はひたすらいつもは割と賑わっている屋上でヨーグルトと骨っこを食べていた。

 

2、3年の一部の問題児を相手にするには並大抵のカルシウムでは足りない。彼は日課のように毎日これらを食べている。

 

「みんなは今頃沖縄か……いいなぁ。僕が2年の頃は京都だったし、3年も修学旅行なんて一輝みたいに変なこと思いつかなかったから提案しなかったからね」

 

ついて行けるなら五月雨もついて行きたいが、彼はアルバイトの用務員。そんな立場の彼が旅行について行けるはずもない。そもそも無駄に広いこの学園の用務員をするのなら休日は月一で返上するくらいのペースでないとダメなのだ。

 

「やあやあ五月雨ちゃん。1人で黄昏てどうしたのかな?」

 

「……うぇ、真琴先生……」

 

五月雨が声がした方向に振り向くと同時にげんなりとした顔になる。

 

「なんだなんだ、五月雨ちゃんはセンセと話したくないのかい」

 

「可及的速やかにここから立ち去って欲しいくらいには話したくないですよ。それより先生は愛しい立月がいなくて平気なんですか?」

 

「のんのん、問題ないない!立月ちゃんには毎日日が変わる前には連絡するように言ってあるからね」

 

ニコォ、と笑いながら真琴は五月雨のいた場所まで来て隣に座る。真琴が距離を詰めてくるので五月雨は距離を離す。

 

「つれないなぁ五月雨ちゃん。そんなにセンセが嫌い?」

 

「嫌いってわけじゃないけど苦手ですよ。この際はっきり言いますとね」

 

「はは!正直でよろしい!それじゃあお仕事頑張ってね五月雨ちゃん」

 

真琴はニコニコ笑いながらその場を去っていった。

 

「……なんで来たんだろ、真琴先生」

 

五月雨は正直にポツリと、訳のわからない部分を漏らしたのであった。

 

◆◇◆

 

そうして時は流れ、夜。

 

班が同じでも男女で部屋を同じにするわけには流石の桃水原学園でも問屋が卸さず、呉羽と竜胆を除いて、4〜6人で寝ることになっている。

 

そうして女子部屋。

 

「ぷはー!やっぱり運動後の牛乳はサイコーだね!うん、チョーイイ!」

 

「いい運動にはなったけどシミができないようにしないと……特に沖縄はね」

 

「ハマグリがいい値で売れて私満足さね!明日はジャンジャン買っちゃうぞー!」

 

海から帰ってきた夏凛と華蓮、鈴蘭の三人はそれぞれ海の感想を述べる。若干一名海というより漁師の感想だが。

 

「鈴蘭……貴女海でなにをやってきたのよ」

 

「大方金稼ぎでしょ?貴女のすぐそばにいる座敷童が可哀想ね」

 

あーヤダヤダ、と紅葉は肩を震わせながらそう言う。彼女は昔から座敷童と縁深い関係にある家系に生まれており、その関係で悟や一輝とは因縁浅からぬ関係をしている。

 

「何故ばれたし」

 

「そりゃあ、発言云々よりも貴女の私生活見てれば嫌でも察するわよ」

 

ごもっともである。

 

「鈴蘭もご満悦でなにより。私も面白いこと知ったからよかったわ」

 

「えー!なになに!私にも教えんさい!」

 

「ふふっ、秘密よ秘密。知ったら一名びっくりしちゃって腰抜かしちゃうからね」

 

「ぶー!なんだよなんだよ!私におせーてくれてもいーだろー!」

 

「私もいい買い物できたよー。今日は七夕が荷物持っててくれたからね!」

 

「あー!そう言えば今日はーちゃんがすっごい可愛かったんだよ!なんでか顔真っ赤にしてさ!」

 

「……恋は盲目、ね」

 

レイラがそっと呟き、女子会は盛り上がりを始めたのだった。

 

 




というわけで二限目でした!

今回宿泊施設にいなかった光さんと夜子ちゃん、ルリルリは別所にて夜を過ごしています。詳しくは次回で。

はい、キャラ紹介!



堤 光
登場作品 異常な普通も異世界から来るそうですよ?
作者様 忙人K.H
勝手に異世界に行った健太を追って箱庭にやってきた魔法使い。正真正銘の異常だが、文武両道才色兼備と絵に描いたような完璧超人。が、完璧超人すぎたせいかダメ男しか恋愛対象として見れないようで、箱庭世界のダメ男オブダメ男のルイオスに嫁いで彼を普通にいいヤツに矯正した実績を持つほどの包容力。
因みに健太とは仲良すぎて恋愛対象として見れない(両人談)。
ギフトをマイルドにしたものは"ちょーすごい身体能力"。お気に入りスポットは放送室と屋上。

反坂 皐
登場 作品 問題児たちと大嘘つきと吸血鬼が異世界から来るそうですよ?
作者様 天崎
オリキャラ組の一反木綿。ペラペラ。まあやっぱり妖怪なのでペラペラになれるペラ。でもそんなことはどうでもいいんだ。重要なことじゃない。
何より特筆するのは……多分酒豪。ヒッポカンプの時だって馬券と酒を片手に大儲けと最早オヤジ。よくこなよ作品で高校生やってられると言ってやりたいくらい酒飲み。勿論当作品でも酒豪であることには変わらず……え?高校生なのにいいのって?そんなのどうでもいいだろ!
ギフトをマイルドにしたものは"一反木綿の力を借りてペラッペラになれる"。お気に入りスポットは屋上。

白銀 吹雪
登場作品 問題児たちが異世界から来るそうですよ?〜箱庭に訪れる冬〜
作者様 bliz
名前通り氷を使う問題児。朴念仁。お兄ちゃん。
耀さんにエスパー十六夜にそそのかされたとはいえお兄ちゃんと呼ばせた猛者。というよりもウチの耀ちゃんさんがフラグクラッシャーすぎて作者目線から見て新鮮すぎるのだろう。まあともかくお兄ちゃんである。あとはアンリミテッドブレイドなんたらができる。便利なギフトを沢山持ってる。ウチの子みたいに一歩間違えたら自爆しかねないものでもないのでちょー便利。
ギフトをマイルドにしたものは"常人より寒さや冷たさに強い"。お気に入りスポットはエアコンの効く場所。

桐島 立月
登場作品 問題児たちと一般人?が異世界から来るそうですよ?
作者様 厄日犬
やっぱり一般人なわけがない。開口一番であるがどこが一般人かと小一時間問い詰めたい。眠れるバケモンをその身に宿らせ、攻撃が効かないはずなのにラッキースケベ時に殴られれば普通に効くというギャグ補正も完備。ついでにトラウマ補正も持っていて一般人要素なんて最早欠片もない。
そしてギフトにフラグ建築士アリ。ついでにクラッシャーも併用。さあこれでフラグを立ててはバッキバキとへし折るんだ!
ギフトをマイルドにしたものは"異常に丈夫な身体、手先が器用"。お気に入りスポットは図書室のカウンター。

日比野 花音
登場作品 問題児たちが異世界から来るそうですよ? 箱庭の家族物語
女版俺ら。オタク。
原点では七夕くんの彼女だが今作はそれに近くて少し遠い、なる少し前の関係。幻想殺しか一方通行かと言われたら幻想殺し派らしいが、やってることはうちはのやはり天才である。箱庭家族の例に漏れずチート級。そのコピー能力はコピー忍者も真っ青である。
あと、彼女のすごいことはこう凄いと書いてると悪い気がするが、両親が13回も変わるという十六夜くんみたいなことになっている。そしてやはり、そういった環境下にあった反動か他者との関係には他の箱庭家族に漏れず過敏気味でもある……
ギフトをマイルドにしたものは"モノマネが得意"、お気に入りスポットは人がいる場所。

水樹 真琴
登場作品 問題児たちと一般人?も異世界から来るそうですよ?
作者様 厄日犬
オリキャラ組唯一の教師。ただこのメンバーてま教師やってるだけあってアクは強烈でかの家長さんも少し苦手。立月っちが大好きで立月っちの命の恩人。初期十六夜なら100パーセント負けるといわしめるほどのスーパーチート。チートやチーターやろこんなん!
ギフトをマイルドにしたものは"スーパーチート級に凄い"。お気に入りスポットは職員室。

紅葉
登場作品 問題児たちと大嘘つきと吸血鬼が異世界から来るそうですよ?
作者様 天崎
原点では座敷童だが、今作では座敷童と縁深いということになっている。他のキャラもそうだが流石に日常モノに幽霊がいる学園はいかがなものか。座敷童らしく幸運を引き寄せるがぶっちゃけ原点世界では幸運なんて引き寄せる必要性皆無だと思う。
ギフトをマイルドにしたものは"影が薄い、軽い幸運を引き寄せる"お気に入りスポットは妖怪三人揃って屋上。



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三限目 みらうみ水族館

はーい!テストのおかげでろくに執筆できない上にゴッドイーターできないおかげで飢え死にしそうな作者です!

一応カタチとしては全キャラ出ましたので、コラボ企画としては次回からが本番になります!




夜、ある者は眠りに更け、またある者は夜の街に駆り出しひと暴れ。そんな今も昔も馴染み深い、夜。

 

さて……今回は暴れる者達を見てみよう。

 

◆◇◆

 

(チュン)……つまり新ドラは(ハク)だ」

 

「あれ……?おかしいね、今の流れならてっきり(ペイ)がドラになると思ってた」

 

「な、なにをデタラメ言って……!」

 

「まぁでも……関係ないね。同じことだ」

 

とある雀荘、影山 健太は世界でも指折と有名な米軍の打ち手と麻雀していた。状況は……この一手で健太の勝ちが確定する。

 

「……ふっ」

 

健太はゆっくりと手元の2つの牌を人差し指と中指で倒す。その光景をまさかと信じる者は歓喜の顔を、あり得ないとホラを吹く者には絶望の顔をしていた。

 

「まっ、まさかっ……!?」

 

そして、その牌は姿を現した。

 

「は、白!?ドラの頭!」

 

「リンシャンツモ!三色ドラドラ!!満貫だ!決着がついたぞ!」

 

「なっ……バカな……!?」

 

健太とメインで打ち合っていたのであろう、壮年の老人は身を乗り出して健太の出した2つの白の牌を信じられないように撫でる。

 

「そんなバカなことがありえるかっ……!どうして白が頭なんだ!?」

 

「どうでもいいよねそういうのは……いやいやそれより、そっちから仕掛けて来た勝負なんだしさ、払うモン払ってね?」

 

「ッ……!上等だ!鉛玉で払ってやらぁ!」

 

「……えー……」

 

健太がゲスい顔して右手を前に出すと、打ち合っていた壮年の老人の雇い主と思われる中年は容赦なく銃を引き抜いた。

 

「たかだかガキに大金なんてくれてやるもんか……テメェにゃ鉛玉がお似合いだ!」

 

「あちゃー……典型的な小悪党だね。役者としても三流もいいとこだ……やられ役なら100点満点あげるけどね」

 

「ふざけやがってぇ!」

 

健太が男に向かって挑発すると激昂した男は容赦なく引き金を引いた。その銃弾が健太に当たる寸前───普通に、ガシッと銃弾が第三者の手によって掴まれた。

 

「はいはぁい、そこまで。いくら米軍ヤクザでも約束の反故は軍人としてダメだと思いますよぉ、私は」

 

余裕綽々に、その声の持ち主が喋る。わざとらしく、間延びをした喋り方は不思議と一輝に通じる悪ふざけ感がある。

 

「サンキュ葵サン。いやー、銃取り出した時はビビっちゃったなぁ」

 

「またまたぁ、ケンちゃんは白々しいですねぇ。後ろに私がいるってわかってたからあんな人をおちょくるような態度してたんでしょう?」

 

「いやいや、それよりもやめらんないね賭け事は。意気揚々と挑んで来たヤツらがこうして破産する時……うん、米軍サン、倍プッシュで」

 

健太が清々しいほどの笑みを浮かべている。明らかに破産後も臓器売ってでも払わせるような顔だ。

 

「さぁ……契約(ギアス)だよね……ほらほら、僕ら互いにお金っていうギフトを賭けたゲームしてるんだよね……?敗者は勝者に従わないと」

 

「っ……sit!Fuck you bitch!」

 

「ケンちゃ〜ん。今この人『くたばれビッチ』って言ったけどヌッコロしていいかな?」

 

「死なない程度にね〜。竜胆クンと呉羽クンにバれると絶対お説教されちゃうから」

 

「おk把握ー!」

 

「Sorry girl!Help boy!」

 

「うっは、謝ってますよこの人!謝るんだったら言わなきゃいいのに!」

 

……この二人は明らかにヤバいことしてるので視点変更。

 

◆◇◆

 

「はぁっ……はぁっ……い、一体僕に、何曲歌わせる気なのキミ達……」

 

「取り敢えず夜が明けるまでかなー?さぁ頑張れ"奇跡の歌い手"ー!」

 

「ガンバレー」

 

「いくら僕が一応有名歌手で体力にもその都合で自信あるとはいえ、40曲も連続で歌わせるって気が狂ってるよねぇ!?総時間にして3時間くらいも!」

 

一方、沖縄の大きめなカラオケ。ここはさっきの二人みたいなざわ……ざわ……とした空気はなかったが、かわりに色々とぶっとんだ空気が流れている。

 

それもそのはず、現在桃水原学園1の有名人と言っても過言ではない、伝説級の歌い手の天歌 奏をドナドナして3時間ぶっ通しで歌わせているのだから。

 

因みに奏をドナドナしたのは上月 琉璃と堤 光。まぁこの二人に人畜無害の塊である奏がロクな抵抗などできるはずもなく……現在に至る。

 

「はい次ー!」

 

「っていうか!キミ達二人とも誘ってきた(誘拐してきた)のなら歌いなさいよ!いい加減僕の喉が潰れる!」

 

「……どうする?光ちゃん」

 

「うーん、確かにこのまま奏クンを弄っててもいいけど、流石にあの"奇跡の歌い手"の喉潰したら大ブーイングは必至だろうねぇ」

 

「そ、それじゃあ……」

 

奏はようやくこの地獄から解放されると思って顔を輝かせる。

 

「だから喉潰れるギリギリまで歌ってもらおう」

 

「それだ!」

 

ホロリ、奏の瞳にはもうどうにでもなれと言わんばかりの涙が流れていた。

 

◆◇◆

 

揺れるバス。優雅に読書を決め込む数名。鮮やかにリバースする鈴蘭。

 

「おrrrrrrrrr」

 

「竜胆……あの子海を汚染しかねないくらい吐いてるけど放っといていいの?」

 

「いいの華蓮。車どころかウォータースライダーのボートに乗るだけで吐くようなお姉が1日目の乗り物分しか母さん特製吐かなくなる吐きどめを持ってかなかったのが悪い」

 

「いや……ていうかこれだけ吐いてるのに1日目全く吐かなかったってどんな効力してるのその吐きどめ!?」

 

「母さんがお姉専用に作った特別製だから、多分無駄に丈夫なお姉にしか使えないんじゃないかな。まぁどうせこうなると思って前日に母さんに送ってもらったけどさ」

 

「おrrrrrサンキュリンやっぱりリンは私の天srrrrrrrrrrrrrrrr」

 

「鈴蘭こっち見ないでリバースが私の服に当たる!」

 

「うえええええええ」

 

「……まあ呑む前に乗ったら絶対こうなるから渡すに渡せないんだけど」

 

「うわぁ、これはひどい」

 

まあそれ以外にバスで目立った出来事もなく……

 

「水族館!とーちゃく!みらうみ水族館だってー!」

 

美ら海(ちゅらうみ)ね。相変わらず日本語はバカだなお前」

 

「なんだよメスヨル!私はエリートだぞ!りゅーがくせーだったんだぞぅ!」

 

「メスヨル……それなんだ?蔑称か?」

 

「ヨルコだからメスヨル!」

 

「おう、副会長。そこのアホ二年を殴り倒したくなった」

 

「程々にね〜」

 

とまぁ、現在地は夜子が言った通り美ら海水族館。沖縄の有名なあの水族館だ。

 

因みに後ろで聞こえる鈴蘭の悲鳴は阿鼻叫喚。語感が似てるね。

 

「……片腹大激痛だぞコラボ企画者」

 

やはりツッコミおったか寺西一輝!その地の文干渉だけはこんな時でもできるんだな!

 

「……まぁいい。はい、というわけで俺たちの二日目のメインはこの美ら海水族館だ。班行動ではなく自由行動の扱いとする。海の神秘と海の幸を見ていけ」

 

「水族館の魚を食うな!」

 

「冗談だ」

 

「会長が言うと冗談に聞こえないの!あとそこで折檻されてるのに聞かれたら本気にしかねないからやめて!」

 

竜胆が思いっきり夜子に折檻されてる鈴蘭を指差す。彼自身としてはただでさえどこから問題事を持ってくるかわからないこの学園の二、三年に対して潰せる目は確実に潰しておきたいのだろう。

 

「なによりアレだ……水族館と言えばデートスポットの一つ。友達としてははーくんと七夕にはがんばってもらいたいのが本心……とすれば、今回マトモなツッコミ役は俺の他に二人いれば嬉しい程度。更には騒ぎを大きくして事態を生徒会に丸投げされればはーくんには仕事をさせるわけにはいかない現状、生徒会に丸投げされた事態は間違いなく俺一人で背負うことになる!これ以上過労死してたまるものかッ……!」

 

長い独白。この長い独り言の間に竜胆は決心を固め、割と楽しみにしていたこの水族館イベントを全て投げ出し自分の過労死の阻止と友達のために粉骨砕身することを決意した。

 

そしてそれが、彼の目に酷い化粧みたいな隈をつくる原因にもなった。

 

◆◇◆

 

「……あー、リンくん、よかったら二人で水族館周りで……も……」

 

「水族館の予定は正午から大掛かりなショーの開幕が予定されているからそこには人が大勢集まる。人が大勢ということはモラルのなってない人が集まる可能性は否定できないしそんなのに絡まれたらウチの人達はなにをしでかすかわからないからここの見張りを重点的に行う必要性は大。女の子はペンギンみたいなものの方が興味を示すだろうからそこを狙ってナンパヤロウが出てくる可能性もあるしそこは少し多めに時間を割いてマンボウみたいな衝撃に弱い生き物になんらかの衝撃を故意ではなかったとしても与えてしまった時には責任の追及を求められるからそういうところへの見張りを忘れずに行うことも重要視してその後の行動のことも考えるとこの方向から目的地に行く人が比較的多いはずだからその辺の見張りにつくのも重要だし」

 

「……おーい、リンくーん」

 

「ッ!はーくんは黙っていてくれ!今俺は如何に死なないかの計画を立てている!それを邪魔だてするならたとえはーくんといえど許さぬ!」

 

「ゆ、許さぬ!?リンくん口調変わってるけど!?」

 

「うるさい今の俺に構うな!いいからはーくんは夏凛と楽しんで来てくれ!……汚れ仕事は全部俺が請け負うから」

 

「……え、なに言ってるのリンくん!?汚れ仕事って何!?水族館ってそんな危険な場所じゃないよね!?」

 

「……ハッ!?俺は一体何を……ぁで、でも、でもでもはーくん!ホントに心配いらないから!俺はいいから、はーくんは夏凛と水族館楽しんで!」

 

竜胆はいつの間にか手に持っていた紙とペンで凄まじい勢いでゴリゴリと細かく字を書いている。目が若干紅く血走っていて凄く暴走しそうな雰囲気を醸し出している。

 

「え、ぁ、うん……わ、わかったよ」

 

そして呉羽は竜胆の謎の威圧感に圧倒されてその場を去っていった。

 

◆◇◆

 

そして本番。

 

夜子、鈴蘭二人組。

 

「おー……前々から来たいとは思っていたが、やっぱりすげぇな」

 

「えー!夜子っちここ来たかったの!?」

 

「まあな……ほれ、アシカとか、ホッキョクグマとか、ペンギンとかさ……すごい可愛いだろ?」

 

「え〜、アシカもホッキョクグマもペンギンも向こうで見飽きたよ。私北極からシベリアに行く時に3日くらい北極にいたけど、ホッキョクグマが飛行機襲ってねー、キャプテン曰く『嬢ちゃんと別れたくないんだろ』なんて言うもんだからほれ困った!」

 

「……ああ、滅多に人前に姿を現さない上に人を見たらすぐ姿を隠すホッキョクグマをお前が3日で手懐けたことに関してはスルーしておくよ。お前にゃなにを突っ込んでも無駄な気がしてきた」

 

実際その通りなのだから仕方ない。最早彼女の起こす奇行になにを突っ込んでも無意味。

 

実際竜胆はツッコミを実質放棄している。やり過ぎにはO☆SHI☆O☆KIするのだが、それ以外は好き勝手やってくれと彼でさえ丸投げである。

 

「おーっすアシカくん達!元気してたかな私は元気100割!あれ、100割って1000%だっけ?漢字ってむつかすぃねぇ!」

 

鈴蘭が手を振るとアシカ達が何故か彼女に好意的にオウオウ言い出す。いえーい!と謎のポーズを繰り出す鈴蘭とアシカ達は何故かすっごい楽しそうで……夜子はちょっと妬いてた。

 

◆◇◆

 

沖縄修学旅行2日目、午前ヒトマルマルマル。はーくん、夏凛と同行の誘いに成功。

 

高町 竜胆、ワレ任務ヲ遂行ス。

 

 




というわけで三限目でした!一応全キャラが顔出ししたので次回からは特定のキャラをメインに一つ二つの話を使っていきたいです!



登場人物

朱羽 葵
登場作品 検索失敗の異世界録
作者様 biwanoshin
やっぱりチート、強い。そして箱庭家族の女性主人公としてある意味パーソナルとなりつつあるロリショタを愛でる才能を持つ。一人愛でられる側の巨乳ロリメイドがいるのは秘密。そしてバイ。男も女もイケる両刀使い(刀は持たない)。
……下ネタはここまで。彼女は教会の孤児院育ちで、教会で育ったせいか、ギフトゲームの神話系統への理解も深く、頭の回転も相当。また、そんな環境で育ったせいか、年頃の少女らしい部分はあまり見当たらず髪型へのこだわりは必ず結う以外なく、胸だって貧n(これ以降の文は意図的に消されたような跡と血痕によって見えなくなっている)
ギフトをマイルドにしたものは"すげー身体能力と一度見たことを絶対に忘れられない記憶力"。お気に入りスポットは不明。

天歌 奏
登場作品 箱庭に流れる旋律
作者様 同上
箱庭に来る人の中では珍しい、正真正銘の非問題児で一般人。箱庭に来る以上ある程度の異常性はあるが、それでも普通に一般人である。某自称普通さんとは違って普通に一般人なのがミソ。元の世界では奇跡の歌い手と呼ばれ、異名と同名のギフト"奇跡の歌い手"により元の世界では生歌にギフトを持たない一般人への強力な中毒症状を発症させ、CD活動に徹していた模様。あとはbiwanoshinさん主人公共通のギフト"空間倉庫"を持っているくらいだろうか。ただ、"奇跡の歌い手"は彼の持つもう一つのギフト"共鳴"によって常に一律背反の関係にあり、互いを常に高め合っている。
ギフトをマイルドにしたものは"絶対音感とどんな歌でも歌える"。お気に入りスポットは音楽ホール。

上月 琉璃
登場作品 問題児たちと絶対者も来るそうですよ?
作者様 紅の暁
凍夜の親友で"ノーネーム"とはまた別のコミュニティ"イザヴェル"を結成したコミュニティのリーダー。普通にしてれば美少女&優等生なのに彼女は悪戯好きの天衣無縫者。残念な面がある女性枠は最早箱庭家族の常識。これは完璧な人間などいないことを暗喩しているのかもしれない……
彼女が箱庭に来たのは凍夜達より二年前で、箱庭には四年いることになる。本人曰く凍夜が機関に攫われた翌日、消えた彼に続くように姿を消したらしい。イベントが大好きで企画や立案、実行に定評があるのに生徒会に誘われなかったのは恐らくもなにもボケ枠だから。
ギフトをマイルドにしたものは"手品程度の小物を瞬時に出せる。軽い未来予知ができる"。お気に入りスポットは図書館と屋上。凍夜と同じくお気に入りスポットと書いて生息地と呼ぶ。



次回の主役
縁巳 呉羽(問題児 魔王少女も来るそうですよ?)



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四限目 そのデート相手はロリですか?

待たせてしまったな……!

私にも色々事情があるゆえ致し方のないこと……そう、あの黒龍討伐の旅に出ていたのだよ。

あ、イタい、これイタい。

今回のその他諸々注意!
作者が作品のChaosに磨きをかけるために各キャラに勝手ながら当作品限定で追加、あるいは強調、もしくは誇張表現された"属性"が割と顕著になってます!

そして今回から特定のキャラにスポットライトを当てる都合、登場するキャラがひじょーに少ないです!出てこなかったキャラクターの作者様、本当にごめんなさい!孤独の狐本編の竜胆くんと副会長の竜胆くんがなんでもしますから!




というわけで(詳しくは省略)夏凛とデートっぽいなにかをするのことになった呉羽。が、悲しいかな、呉羽は今まで夏凛と長い事こうした付き合いはしていたが、いざはっきりと『デート』と叩きつけられたことをしたことはない。

 

故に、呉羽は打開策として最近流行のチャットを使うことにした。

 

 

 

ヤマトウィング:

 

誰か助けてください

 

 

 

〜ドラゴンフラワーさんが入室されました〜

〜ウィンドさんが入室されました〜

〜ヘタレヴァンプさんが入室されました〜

 

 

 

ヘタレヴァンプ:

 

え?どういうこと?

 

 

 

ヤマトウィング:

 

友達に催促されて前から好きだった幼馴染とデートすることになったんです

 

 

 

ウィンド:

 

リア充かよ( ゚д゚)、ペッ

 

 

 

ヤマトウィング:

 

それでもその人と何度か二人で出かけたことはあってもはっきりデートって意識したのは今回初めてで……

 

 

 

ヘタレヴァンプ:

 

なるほど……で、緊張してどうすることもできない、と?

 

 

 

ヤマトウィング:

 

恥ずかしながら……できれば色々とアドバイスが欲しいです(;ω;)

 

 

 

ドラゴンフラワー:

 

参考になるかはともかくとして、私の姉は昔こう言ってましたよ

「女は金」って

 

 

 

ヤマトウィング:

 

どんな姉ですか!?流石にお金で釣るのは違うと思うんですけど……

 

 

 

ウィンド:

 

待て、それより大事なことを聞いていない

 

 

 

ヤマトウィング:

 

え?なんでしょうか。その人の性格とかでしょうか?

 

 

 

ウィンド:

 

そんなことはどうだっていい、大事なことじゃない

 

 

 

ヘタレヴァンプ:

 

じゃあなによ?ルックス?ってかなんで霧が出てんの……

 

 

 

ウィンド:

 

まあある意味ルックスではあるな

俺が聞きたいことはただ一つ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのデート相手はロリですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドラゴンフラワー:

 

ウィンドさんは無視しましょうか、ヤマトウィングさん、ヘタレヴァンプさん

 

 

 

ヘタレヴァンプ:

 

そうですね、その方がヤマトウィングさんのためだし

 

 

 

ヤマトウィング:

 

え?あ、はい。まあ取り敢えずその相手は言っちゃえばロリ体形です。一応私は18で彼女の一つ上なんですが……

 

 

 

〜五月はキミの雨さんが入室されました〜

 

 

 

五月はキミの雨:

 

どうも、少し困ってそうなので参加させてもらいます

 

 

 

ヤマトウィング:

 

五月はキミの雨さんいらっしゃいませ。いえいえ、むしろ案を沢山くださるということではありがたいことです

 

 

 

ウィンド:

 

無視しないでください(´;д;`)

 

 

 

ヘタレヴァンプ:

 

自業自得だと思われ

 

 

 

ドラゴンフラワー:

 

マトモな質問をモトム

 

 

 

ウィンド:

 

わかりましたよー(・ω・)

 

 

 

五月はキミの雨:

 

まず僕の解釈に間違いはないかヤマトウィングさんに聞くけど、ヤマトウィングさんはそのデート相手の子とどうデートすればいいかを聞きたいんだよね?

 

 

 

ヤマトウィング:

 

はい、恥ずかしながら

 

 

 

五月はキミの雨:

 

質問するってことはもうヤマトウィングさん自身の中で答えは出てるんじゃないかな?

一応僕もそんなことやってた頃あって色んな人に聞いたけど、結局は自己解決して万事解決万々歳だったし

 

 

 

ドラゴンフラワー:

 

お、おお……

 

 

 

ヘタレヴァンプ:

 

おいどうすんだ一番最後に来て考えた時間が3人中最短の五月はキミの雨さんが一番いい答え出したぞ

 

 

 

ウィンド:

 

ってかヘタレヴァンプさん質問答えてなくね?

 

 

 

ドラゴンフラワー:

 

確かに

ヘタレヴァンプさん、なにか案はありませんか?

 

 

 

ヘタレヴァンプ:

 

……恥ずかしながら、自分自身ヤマトウィングさんと同じような人間だから回答のしようがないです

 

ウィンド:

 

ダメダメじゃねーか!

 

 

 

ヘタレヴァンプ:

 

デートの相手がロリか否かをまず質問するウィンドさんにだけは言われたくないね!

 

 

 

ドラゴンフラワー:

 

まぁま、結局どっちもダメダメってことでどうです?

 

 

 

五月はキミの雨:

 

ドラゴンフラワーさん酷いね。かなり酷いよそれ

 

 

 

ドラゴンフラワー:

 

ああ、いえ、すみません

少し焦っていたもので……理由は言えませんが

 

 

 

ヤマトウィング:

 

そ、そうですか……ともかく、皆さんアイデアありがとうございます!これを参考に頑張ってみたいと思います!それではオツカレー

 

 

 

〜ヤマトウィングさんが退出いたしました〜

 

 

 

ドラゴンフラワー:

 

オツカレー……死ぬ気なのはーく……あの人?

 

 

 

五月はキミの雨:

 

華麗にフラグ回収してオツカレー、てならなければいいですけどね……

 

 

 

◆◇◆

 

そうしてチャットを終えた時、ヤマトウィングこと呉羽は重大なことに気づいた。

 

「……あれ?そういえばボク、マトモなアドバイス貰わずに五月はキミの雨さんに上手いこと言いくるめられたような気が……」

 

事態はなにも変わっていなかったのである。いや、悩みを誰かにぶちまけた分少しは楽になったが。

 

「は、早く夏凛が来ないうちに解決策を」

 

「はーちゃんお待たせー!」

 

「ふぁっ!?」

 

そしてこの超高速フラグ回収。これは酷い。なにが酷いって、夏凛が呉羽に考えさせるヒマすら与えずに現れたことが問題なのだ。

 

無自覚にも夏凛は呉羽の首を絞めつけ、呉羽は思いっきりorzる。

 

「もうダメだ……おしまいだぁ……そもそもボクにこんなことできるだけの能力なんてないんだ。身体だって弱いし多少頭が回るからってそれを活用できる場面もそうそうないし、活用しようとするとこんな風になるし……」

 

完全に自己嫌悪に陥っている。ヤバい。早くも彼の生徒会一の苦労人ポジションとして鍛えられた鉄の意志と鋼の強さが瞬殺された。

 

そしてそんな呉羽と夏凛を見守る影一つ……

 

 

壁|/H\

壁|竜M胆)ジー……

壁|⊂/

壁|/

 

 

リンドウザァン!ナズェミテルンディス!?

 

まあ、ネタバレとかそういう次元ではないのだが、先程のチャットでドラゴンフラワーと名乗っていたのは他でもない彼である。

 

当然、彼もヤマトウィングこと呉羽が退出してからそもそも根本的な解決になってないことを悟った彼は尾行と生徒会の仕事を同時に行うという強行策に出た。これで呉羽のデートの死亡率と共に彼の物理的死亡率も跳ね上がった。さあどうする不幸の権化。幸せになってほしい親友が自分の不幸の巻き添えになった感があるがどうする?

 

(ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!!変に意識しすぎてるせいでマトモな考えができない!?で、でもせっかく質問に答えてくれた名前も知らない4人のためにもボクはこれをやらなきゃいけない!あの4人のため、なによりボク自身のためにも今回は引き下がれないっ!)

 

「いやー、でも意外だったな。はーちゃんこういうのって大体私が誘わないとリンちゃんと一緒にかたくるしーお仕事に専念するでしょ?」

 

呉羽が話題に苦しみ心の中でローリングしていると、唐突に夏凛が話題を振ってくれた。これは呉羽にとっても嬉しい。

 

「あ……うん。本当はそうするつもりだったんだけど、リンくんがなんか『俺の背に立つな』みたいなオーラ出してて……」

 

「リンちゃんのそういうとこって滅多に見ないなー。なんだろ、本気出したって感じ?」

 

「もしかしたらそうかも」

 

その当人は後ろをガラ空きにして目の前の2人に意識を向けているのだが。

 

呉羽も夏凛も竜胆の本気を明らかに勘違いしている。きっと2人は可愛いもの好きの竜胆は全力で楽しんでるという意味合いでの本気と捉えているのだろう。

 

それは悲しいのか優しいのか、2人の予想を180度離れている竜胆は2人の話題が続いていることにホッとしている。

 

「そ、それじゃ、行こうか」

 

「オッケー!はーちゃんのエスコート、楽しみにしてるよ♪」

 

「え、エスコート……!?」

 

◆◇◆

 

一方所変わって明と修也。つい先ほど合流した2人は見るもの見たからフラフラ歩くかー、的なことになった。

 

「今の世の中便利だよなー。さっきチャットやってたんだけどさ、俺それ見てスゴイいい事言う人見つけたんだよ」

 

「あ、俺もさっきまでチャットしてたよ。人生相談のチャットやってて、途中から来た人に凄い感銘受けたな」

 

「ははは!偶然だな!俺も途中から来た人がスゲー解答してな!みんな納得、その人聖人として思わず崇めちまったよ!」

 

「いやいや、俺が見てたチャットの人の方が聖人君子だったって!」

 

「「ははははは!!全く、いい世の中になったよなぁ!」」

 

◆◇◆

 

「はっくしゅ!うう……ここ最近働き詰めだったから疲れが溜まったのかな……」

 

「五月雨ちゃ〜ん、そろそろお昼休憩ですよー」

 

「あー、わかりました真琴先生」

 

◆◇◆

 

「……ん?あれ竜胆か?」

 

「なにやってんだ?アイツ……態とらしく隠れて」

 

暫く物陰からなにかを見ている竜胆を見ていた2人は同時に目を合わせ、凄い爽やかな顔をした。

 

そう、2人は問題児特有のチャチな悪戯を思いついたのだ。

 

◆◇◆

 

「うん、いいぞ……その調子、少しずつでいいから距離を詰めればいい……ってああ、そうじゃないでしょ!はーくんは女心を理解してない……ってなんで夏凛は夏凛ではーくんをカエルの場所に連れてくの!?」

 

背中が疎かになりまくっている竜胆は静かに。かつ激情的に2人の行動を実況していた。

 

まあ幸い2人にはバレてないが、そのあからさますぎる隠れ方は結構周囲の目を引いていた。

 

「ってあーもう、散った散った。見世物じゃないんだから……」

 

竜胆は周りの人にシッ、シッ、とやると改めて2人の方に目を向ける。

 

 

壁|明w明) ジー……

壁|竜M胆) ジー……

壁|修H也)ジー……

 

 

「ってなにやってんの明と修也!?」

 

「いやなに、竜胆が面白そうなカッコしてるからマネしてみたんだよ」

 

「主にツッコミ待ちでな」

 

「……今日は忙しいからツッコミ少ないよ」

 

「へえ……忙しいっていうのはアレか?」

 

竜胆がマイペースな2人にツッコミ少ないと言いつつツッコミをすると、修也が目を使って夏凛と呉羽を指差す。

 

「へぇ〜、デートかよ」

 

「くっ、あんなロリの夏凛とデートするとは……呉羽もなかなかやるな」

 

「無条件に欲情しないだけ明より断然マシだと思うけど」

 

「ちがぁぁあう!ロリとは欲情するものじゃない!愛でて反応に悶絶するものだ!」

 

「変わんねーよロリコン!ウチのお姉に手ぇだしたらゴッド目潰しフィンガーだぞ!」

 

「はん!外見ロリのお前にやられるなら本望だね!」

 

「「………」」

 

超、ドン引き。愛でるものと言った直後のコレである。根本的に竜胆や修也とは頭の中が違ってるのかもしれない。優先順位とか本能とか。

 

「まあ兎角、竜胆は呉羽のデートのセッティングをしたはいいけど逆に心配になったってわけだ。だからこうしてアスキーアートでも作れそうな格好で2人を見ている」

 

実はもなにも、もうアスキーアートできてます。しかも2つ。

 

「暫くはこうして監視だな。異変があったりその兆候があったりしたら排除すればいい」

 

「……手伝ってくれるの?修也」

 

「おう。流石にここまで首突っ込んで手伝わないのも野暮だろ」

 

「……ありがと」

 

「どういたしまして」

 

「俺もいるぞ!」

 

こうして、デートは3人に見守られながら続くのであった。

 

◆◇◆

 

「……変だね」

 

「え?変て、なんのこと?」

 

「んにゃ、なーんか誰かに見られてる気が……はーちゃんは?」

 

「そんなこと言われても……ボク動くのからきしだから夏凛みたいに不思議な人体構造してないよ」

 

「不思議とは失礼な!それならウチの学園は不思議な人でいっぱいだよ!はーちゃんの見た目とかリンちゃんの見た目とかかいちょーの神社ネットワークとかetcetc!」

 

「うーん、それは比較対象がおかしい気が……あれ?なんでボク入ってるの?」

 

2人が他愛のない話をしていると、2人がいる場所の少し後ろ、いかにもDQNっぽい、世紀末もほどほどにしろと言いたいレベルのモヒカングラサンノースリーブの革ジャンという経絡秘孔を突かれたら奇声を上げて爆死しそうな輩がいた。

 

「おいアニキ、見ろよアイツら、アツアツだぜ」

 

「ちょーしくれちゃってさぁ……2人仲良くナニさせてやろうかぁ!」

 

「よしきた任せろ、カッコイイとこ見せてやりましょ!」

 

そんな者共は不意に、肩をトントン、と叩かれる。

 

「あ?なんだ?」

 

「……ふ、ふふふ?人の恋路の邪魔をするヤツらは馬に蹴られて死んじゃえばいいんだよ」

 

「誇張表現だが、まー諦めたと思って死んでくれい」

 

「ヤダ竜胆怖い」

 

上からロリショタ、ヘタレ、ロリコン。この台詞を皮切りに3秒間だけ騒ぎがあり、いかにもDQNなヤツらはゴミ箱に頭から突っ込んでたとかなんとか……

 

結論、恋路に絡んだ竜胆くんは暴走しすぎて怖い。

 

 




というわけで四限目でした!

今回は今回登場したキャラクターの属性と今作における小ネタ、チャットの名前の考察……加えてbiwanoshinさんからパク……biwanoshinさんの神様当てクイズを参考に僕からも『妖精当てクイズ』をしたいと思います!


キャラクター属性

縁巳 呉羽 男の娘病弱属性

破従 夏凛 愛され系重依存属性

高町 竜胆 巨乳ショタツッコミ属性

月三奈・クルーエ・修也 ヘタレ系白肌属性

竜堂 明 超ロリコン属性


小ネタ

桃水原学園の由来
世界に退屈、あるいは絶望していた問題児たちにとっての『桃源郷』の箱庭のもじり。桃源→桃、さんずい、原→桃、水、原→桃水原

生徒会の活動
本編で説明した通り学園長に楽しいこと、面白いことを提案する以外は至って普通な生徒会。因みに仕事の9割は竜胆と呉羽がやっているが、竜胆と一輝が喧嘩すると高確率で書類が水の泡になるので実質ほとんど全て呉羽がこなしている。

郷土の寮
桃水原学園の学生寮。一応県外からも無駄にデカい学園として有名なのでそれなりに人があつまるため、学生寮も勿論ある。名前の由来は桃水原でおいてけぼりにされた郷の部分と桃源郷という土地を示すものとして土を利用、郷土の寮と名付けられた。

桃水原学園の場所
とりあえず成田空港から沖縄に行ったので関東地方なのは確か。首都圏ではなく、実は駅から割と離れていて小さな山の中腹に存在している。


チャットのハンドルネーム

ヤマトウィング(呉羽)
呉は戦艦大和の呉鎮守府で有名、ウィングは羽をそのまま英語読みしたもの。

ドラゴンフラワー(竜胆)
竜胆の名前の由来の竜胆の花から、竜という字が使われているのでドラゴンフラワー。

ヘタレヴァンプ(修也)
ご存知の通り、ヘタレで吸血鬼だから。

ウィンド(明)
作品タイトルより、加えて天気に関する能力から風との関連性を強めてみた。

五月はキミの雨(五月雨)
漫画、『四月は君の嘘』を名前でもじった。


妖精当てクイズ

第1問(難易度中級)
アイルランドの伝承に登場する、死を泣いて予言する女性の妖精。彼女の予言の対象となった家は近いうちにどれだけ離れていても親族が誰か死んでしまう。また、彼女の予言はある種英雄を見極めるようなものもあり、ケルト神話のクー・フーリンの死を予言したとも言われる。

第2問(難易度上級)
イングランドの民間伝承に現れる不吉な妖精。鎖をひきずる角と鉤爪、赤い目の黒い犬の姿を好んでとり、この妖精が現れるということは不吉の先触れであり、この妖精を見ると親しい者の死が訪れ、その時は荒野で吠える。シェイクスピアのマクベスに登場するヘカテーの猟犬がモチーフという説がある。

第3問(難易度……多分低め〜中級辺り)
イングランドの民間伝承に登場。貧しい人達のために仕事をし、お礼にボウル一杯の生クリームと一個のリンゴを貰っていく。また、怠け者にポルターガイストを起こして懲らしめたり、人の子供を盗んだり取り替え子を行うとも言われている。


クイズは今回はこの三問です!わーっかるかなーわっかるっかなー?



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五限目 心配かけさせないでよっ!


よくわかる箱庭超コラボ前回までの深刻な間違い!(敬称略)

かっこうむし「瑠璃!?瑠璃がなぜここに!?できたのか!?自力で出演を!?」

他作者様達「瑠璃イイイイイイイイイイイイイイイ!!」

紅の暁「(無言の腹パン13連打)彼女は瑠璃ではない。琉璃だ」




 

(……言われてみれば誰かに見られてるって感じはするんだよね……正しく言えばボクと夏凛、両方を見てる、みたいな?)

 

水族館の中、静かに泳ぐマンボウを見ながら呉羽はそんなことを考えていた。ゆっくりと泳ぐマンボウを見ているとどうも自身の心も落ち着く。

 

「はーちゃん!次はどこ行くの?」

 

「ちょ、くっつきすぎだよ夏凛!そんなくっつかなくてもボクは勝手にどっか行ったりしないから!」

 

「おやや〜?やっぱりはーちゃんもどこまで行ってもオトコノコ♡だったりするのかな……?」

 

「もー!からかわないでよ!」

 

露骨に、態とらしく密着してくる夏凛に呉羽は辟易赤面しながら毅然としているマンボウに目を向け、ため息をつく。

 

(あぁ……こんな時にでもボケっとしていられるなんていいなぁ。ボクもなれるならマンボウになりたい……)

 

◆◇◆

 

「でねー夜ちー、その時リンに言ってやったのさ!おいおいそれじゃあウチのマミーはなにをやってるんだい!書類にバッテン付けて頼んだのにこんなヤローよこしやがってってね!」

 

「……それはなんのアメリカンジョークだ。それとも軍事目的のための致し方ない犠牲(コラテラル・ダメージ)か?」

 

少しそれから時間が経った。鈴蘭に振り回されるように夜子は水族館を見ているので正直自由にしているという感覚がない。

 

「ったく、こういうのは弟かロリコンの役目だろ……なんでわざわざ俺に来るのかねぇコイツは」

 

答えは2人共お取込み中だからです。

 

「……ん?なんだ?なんでゴミ箱にトゲのついた肩パットした連中がゴミ箱入ってんだ?」

 

「うおほー!見て見て夜ちー!マンボウ!マンボウがいるよー!」

 

「あーはいはい、別にマンボウくらい珍しくもなんともないだろ」

 

「んなこたぁない!私地球一周して来たけど海の中はそんなに潜らなかったからマンボウに会えなかったんだ!」

 

「……あー、ちなみにそんなにってことは潜ったことはあるんだな?どこで潜ったんだ?」

 

「アマゾンと北極南極!あとバミューダ海域!」

 

違う、一つ海じゃないのがある。というかなんでコイツは危険な場所にしか潜ってないのだ。諸々のツッコミはするだけ無駄だとツッコミ役でない夜子は悟って大人しく鈴蘭と共にマンボウを見る。

 

「むふふ……実はバミューダでバカでけぇサメに遭遇してね!その時バトって勝った戦利品がこの首にかけてあるサメの牙のお守りなんだよ!ハワイはサメの牙がお守りなんだって!」

 

「……いい加減コイツの頭のおかしさについていっぺん3年の主要メンバーで話し合った方がいい気がしてきたぞ……」

 

実はその時、後ろに竜胆と修也、明の3人がいたことは内緒だ。3人も気付いてなかったし。

 

「おー!向こうには見たことない魚がいる!ペンギンは南極で散々見たからいいけど、あれはなんだろな!?」

 

「あ、こら走り回るな!周りの客に迷惑だしそもそも大人気ないだろうが!」

 

◆◇◆

 

「……ヒマだ」

 

水族館の深海魚を扱う水槽近く、そこは一輝を中心とした妖怪チームが蔓延っていた。

 

「ヒマすぎるぞオイ。なんだって生徒会長なんてヒマするヒマもなさそうな職務に就いてるのにこんなヒマなんだ。ヒマ死しそうなくらいヒマだ」

 

「ヒマヒマヒマヒマうるせぇ。こっちだってなんだって俺ら妖怪のお家柄3人纏めて特に用がないのにお前に使役されにゃならん」

 

「全く同感だ。用事がある時なら皐は兎も角、なんで俺と紅葉まで呼び出されるんだ」

 

「はぁ!?んだそれ、まるで俺だけがこうなるべきって思ってるみてぇじゃねーか!」

 

「実際その通りじゃない?こんな場所でわざわざビール呑んでたんだから、生徒会長に伝わったのだから即刻懲罰ね」

 

「……まぁ、お前のその酒に関しては直らんし神社ネットワークで揉み消しにできるから俺の手伝いしてくれれば不問にしてやる。悟と紅葉は連帯責任だ。ってかそもそもお前らコイツの隣にいながら止めるどころか酌してただろ」

 

「ぐっ……そこを突かれると反論のしようがない」

 

「悪ノリなんてやめとけばよかったわ……」

 

生徒会長によるありがたいお説教をされながら妖怪3人組は反論できないため頭を垂れる。

 

そんな3人を迷惑にならないよう通路に連れ出してくどくどくど、と意外にも生徒会長としての責務を果たしている一輝の姿は不思議とサマになっていた。

 

「はーちゃんあれ!深海魚だよ!」

 

「夏凛……なんでそんなグロいのばっか見たがるの?ボクにはその思考が理解できない……」

 

「……うん?見てごらん光サンや。あんな所に仲睦まじく深海魚を見ている2人組がいるじゃないか」

 

「全く微笑ましいですなぁ健太サンや」

 

(……呉羽クン、これ色んな人に見られた結果旅行終了翌日からありとあらゆる人達に弄られ尽くされるだろうなぁ……可哀想に)

 

(はーちゃん……これはまた絶好の弄り対象がパワーアップしたと見た。また可愛くなってしまうじゃないかああもうなんて罪深い子なんだ……)

 

呉羽くんの人生が色々と終わってしまうような、そんな気もするデートは終盤戦に突入する。

 

◆◇◆

 

「ぜぇっ……はぁっ……この水族館、無駄に広い……なんで、こんな動き回らなきゃいけないの……」

 

「大丈夫はーちゃん?オロC飲む?元気ハツラツになるよ」

 

「うう……ありがと……」

 

夏凛と呉羽は現在、水族館でも結構大詰めとも言える……こう、某しゃちほこ県で昔シャチのパフォーマンスが生で見られたというアレっぽい場所にいた。ここ美ら海だよね?とかいうツッコミはヤボである。

 

なんでここにいるのかというと、歩いているうちに呉羽は自身が懸念していた自分自身の体力の無さが次第に浮き彫りになって心配した夏凛が呉羽をお姫様が抱っこして近くの休める場所まで直行して……こうなった。

 

「もうヤダ……先にバテてその上あんな恥ずかしい運ばれ方されるなんて絶対大失敗だよ……」

 

「おろ……飲み物切らしちゃった。ゴメンねはーちゃん、ちょっと飲み物買ってくるよ」

 

「あ、うん。いってらっしゃい」

 

とたたた、と駆け足がその場から離れていく夏凛を見て呉羽は心底羨ましがる。ちょっとはその身体能力分けてくれればいいのに……とか。

 

「どうぜボクはマンボウ以下なんだよぅ……泳げないボクはマンボウ以下だ……」

 

ナーバスも極まればこうなる。

 

呉羽はもうそのまま貝になりたいなー、くらいの気分でオロナミンCを飲んでいたが……10分ほど経っても夏凛が帰って来ない。

 

「……おかしい」

 

そんな呉羽を後ろから見ていた竜胆と明は夏凛の方に行った修也に連絡を取る。ちなみになぜ修也が行ったかというと単純に明に向かわせるのはアレだし、竜胆が向かったら一人だと迷子センターに連れてかれるからだ。

 

「修也、夏凛は?さすがに10分も戻って来ないからはーくんがナーバスになってる」

 

「そうか……かといって俺達の方から接触するのは無理があるしな……いや、マズイことになった」

 

「マズイこと?どんな風にさ」

 

「いや……その、な」

 

「なに?早く言ってよ」

 

「……俺と夏凛、両方とも迷子になった」

 

「はぁあ!?迷子だぁ!?夏凛はともかく修也まで迷子とか小学生なの!?地図くらい持ってるでしょ!?」

 

「スマン……それが、ない」

 

「……修也。とりあえず夏凛の近くにいて」

 

ブツン、と竜胆は一方的に通話を切った。目がドンドンすわっていって比喩ではなく瞳が赤く光ってる気もするくらいだ。

 

「……おーい、竜胆?」

 

「明ぁ!死んでも探すよ!そもそも生徒が迷子になるとかありえねぇだろ!」

 

「お、おう」

 

「はーくんには俺が連絡するから手掛かりを死んでも探す!」

 

「い、イエスマム!」

 

マムじゃない、と本来なら突っ込むべきだろうが今の竜胆はすっごい焦ってたので突っ込まなかった。

 

◆◇◆

 

「えぇ!?夏凛が迷子!?ってかなんでそんなこと知ってるの!?」

 

『それは今は聞かないで!ともかく俺は今片っ端から探してるから、多分修也も一緒にいるはずだから!』

 

「ちょ、ちょっと!?リンくん!?聞きたいこと山ほどあるんだけど、ねぇ!?……切れちゃった」

 

呉羽は携帯を持って露骨な溜息をつく。呉羽は自身の体力の都合上竜胆が言ったように無闇と動くのは自分の首を絞める。

 

なら、確実に夏凛(と修也)の居場所がわかるような手はないか。調べるとしてもどうやって?なんで特定の個人の居場所がわかるようなことを───

 

「ある」

 

あるじゃないか。超身近に。普段からわけのわからないスーパーネットワークが。

 

ある時はハッキングでアカウントを奪ったり、ある時は情報の隠蔽。その他諸々をできる最強のネットワーク、その名も

 

神社ネットワーク

 

これだ。呉羽はもうこれに頼る以外に活路を見出すことができなかった。ならばやることは一つ。呉羽は携帯の電源を入れ、神社ネットワークの主、寺西 一輝へと連絡を入れた。

 

『はいはーいもしもし生徒会長でーす』

 

「会長今どこにいる!?」

 

『地球ん中。宇宙飛行士じゃないから』

 

「真剣な用があるからOZONE歌わないで!それより神社ネットワークの協力がほしいの!」

 

『え、なんで突然。はーちゃんなら難しい問題くらい自力で解くだろ?』

 

電話に出た一輝は相変わらず息をするようにボケる。弄る、が詳しく言えば正解なのだが。

 

「夏凛(と修也)が迷子になったの!どこにいるかわかる!?」

 

『おいおい、いくらなんでも神社ネットワークなめすぎじゃないか?……その程度わからないわけがないだろ』

 

逆に普通はネットワークにそこまでわかられても困るのだが。まあ今の呉羽にそんなこと呟いてる余裕はなく、切羽詰まって夏凛(とついでに甲斐性なしのヘタレ貧血ヤロウ)の居場所を問う。

 

『あー……ここは、埠頭だな。水族館に隣接してる』

 

「なんで水族館の近くに埠頭があるのとかは突っ込まないけどありがと!」

 

『あ、ちょ、なに1人で楽しそうに人探し始めようとしてんだ、俺にも一応会長として探させ』

 

ブツン、と電源を切ると呉羽は猛ダッシュで水族館から出て行く。まぁ、猛ダッシュと言っても一つ下のフロアに行くだけで息が切れてるが。

 

ゼーハーゼーハーと呉羽は自分の息すらもどかしいという風に走り回る。普通なら走れば5分とかからない道程も呉羽では倍近くかかってしまう。

 

「はっ……はっ……もー、なんでボクの周りの人達はこうも人騒がせな人達ばっかりなんだ……」

 

文句をぶつくさと垂れているが、彼自身こうして夏凛を探しているこの時は不思議と嫌ではなかった。つかれるし、正直面倒だし……なのに今の呉羽はそれを上回るほど不思議な感覚に包み込まれていた。

 

それはまるできっと、ずっと昔から夏凛と一緒にいて、ずっと昔からこうして夏凛を探していたからなのだろう。目の前にいようとも、目の前にいる夏凛の心の奥を探して……その時からずっと、"破従 夏凛を探している自分"という瞬間に感じているものは変わらない。

 

「……やっぱり、スキ、なんだよね」

 

今の今まで心のどこかで感じてはいたが、こうしてはっきりとわかるような状況におかれると不思議とすんなり受け止められる。

 

好きだ、ボクは夏凛が好きだ。自覚してしまえばもう止まらない。高鳴る鼓動が胸の暑さなのか、疲労なのかもわからない状態で呉羽は埠頭に辿り着いた。

 

◆◇◆

 

「夏凛!」

 

「あれ?はーちゃん?」

 

「本格的に迷子になるところだった……」

 

埠頭の辺り一帯に響く呉羽の高めの声。その声に夏凛は即座に反応して振り向いた。修也は……この際無視しておいたほうがよさそうだ。その方が2人の為でも修也のためでもある。

 

「バカ!」

 

「ふぇ?」

 

呉羽は感極まって思わず夏凛を抱き締めていた。ただの迷子と言えばそこまでなのだろうが、ここに来るまでにありすぎた様々な要因が絡み合って、焦りに焦っていた呉羽にとってはとても重大なことのように感じてしまっているのだろう。

 

「い、痛いってはーちゃん……なんでそんな顔してるの?」

 

「バカ!バカバカバカ!心配かけさせないでよっ!夏凛のバカ!」

 

「ご、ごめんって……なんか飲み物買ったと思って戻ろうとしたらなんでかわからないけど道に迷っちゃって……」

 

「電話は!?」

 

「生憎充電切れ……」

 

「ハァ……ほんっと、バカ!」

 

「もう……なんでバカしか言わないの?」

 

「夏凛がバカだからだよバカッ!」

 

バカバカバカ、まるでそれしか言えないようにバカを連呼する呉羽。心配だったのだろう。

 

「……でも、心配されるのも悪くないかなぁ」

 

そう呟くと夏凛は自分の中でチクリ、と針が刺したような感覚に陥った。

 

「………?」

 

理由はわからないし、不思議と顔が熱っぽい。だが、その感覚と共に暫くこのままでいたいなぁ、と心の奥底から願っていた。

 

 

 

 

 

「……こんなことはもう手伝わないぞ」

 

「ははは、こんなことに付き合わせちまってすまねえ、凍夜」

 

そしてそんな2人を遠巻きに凍夜と修也が眺めていた。2人は見つからないように物陰に隠れているので、恐らく事故や自分達から出て来ない限り見つかることはないだろう。そうマジマジと見ているわけでもないし。

 

「自然現象を起こす……ていうレベルじゃないぞ。最早因果律が書き換わってるレベルだこれは」

 

「まぁまぁ、でもおかげで夏凛を"絶対に人気の少ない場所に迷うように誘導"できたんだ。俺達としては御の字さ」

 

「はぁ……お人好しだな、竜胆も明もお前も……あっ、こんなのに手伝う以上は俺もそのお人好しか」

 

 





ツンデレを扱ってきたせいでピュアな恋愛模様を書けずにセリフが多めになったしなんか個人的にもっといいの書きたかった。もうダメだ、竜胆くんの服剥こう……(ビリビリ)

というわけで妖精クイズ!第1回の答えと軽い言葉をば。

第1問
答え バンシー
答えてくれた人はだいたい合ってましたねー。妖精のクイズとなると北欧系が多くなるのでその辺知ってる人はとことん強いみたいです。バナァァァアジイイイイイ!!の名前の元ネタ。

第2問
答え バーゲスト(もしくはブラックドッグ)
なんで1番難しい気がした問題が全員正解したんだろう……まあともかく黒いわんわんおです。バーゲストもブラックドッグも伝わった場所が違うだけでルーツは同様なのでどちらも正解です。

第3問
答え ピクシー
特防高そう(小並感)。ともかくピクシーです。名前くらいは聞いたことある人いっぱいいると思います。特にポケモンで。解答でブラウニーと書いてくれた人もいますが、問題にはイングランドの民間伝承に登場と書かれているのでフォークロアやブリテンで伝わったブラウニーは不正解……だと思われます。かなり屁理屈っぽいのでそれは違うよ!という指摘点があれば教えてください。



第2回妖精クイズ

全体的な難易度(主に妖精に関する概要を減らして)を上げてみました。

第1問
土より黒くて性格はだいたいが邪悪。外見はドワーフに似ている。


第2問
風を従え、性格は温和で慈悲深いか邪悪か、二つの性質を持っている。

第3問
悪戯者で草と貝を身にまとっている。




次回予告コーナー
呉羽「なんか今日ボクすっごい疲れたんだけど」

竜胆「まあまあ、それでも最初の主役なんだから、特別な反面見切り発車みたいなのもあるんだよ」

皐「どうやら次回は俺と夜雷が主役だそうだな。おい夜雷、明日はなんの日だ?」

夜雷「ィハハハ!決まってるじゃねぇか皐ィ!それは……男女の宿泊施設がこてぃ!」

皐「ならやることぁ一つ……!」

夜雷「覗こうぜ!」

呉羽「キミら……よくボクら生徒会がいる状況でそんなこと言えるね」

竜胆「あ、もう予告時間終わり?さっさと次回のサブタイトル言えって?ちょ、ちょっと……」

呉羽「あーもうグダグダだよ。はいせーの!」

「「「「次回、『お前は俺達の英雄だッ!』」」」」

次回主人公
皐(問題児と大嘘つきと吸血鬼が異世界から来るそうですよ?)
夜雷(問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ?)


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六限目 お前は俺達の英雄だッ!

イイハナシダナー、とラブコメしてからのコレである。




呉羽と夏凛の一件の翌日、まぁ色々あって時間は弾け飛び最終日前日となるこの日。

 

今日は最終日前日ということで飛行機云々の都合全生徒が強制的に同じ宿に泊まることになっている。

 

まあ、本来は修学旅行とはこうあるべきものなのだが。

 

「と、いうわけでトランプでもやるぞ!」

 

「なにがどういうわけだ」

 

男子部屋A。メンバーは凍夜、吹雪、立月、昴、健太。

 

「まぁでも、まだ寝る時間には普通に考えて早いわけでして……僕もトランプ云々の前になにかをやるっていうのには賛成です」

 

「……俺は断りたい。この場にこと心理戦なら鬼神のような強さのヤツが1人いるから」

 

吹雪は静かにそう言うとチラッと視線を健太に向ける。その健太はニコニコとギャンブラー顔負けのシャッフルをしているわけだが。

 

「なんだい吹雪クン?そんなに僕をチラチラと見て。チラチラ見てただろ(因縁)」

 

「唐突にそういう反応に困るネタはやめろ!お前そういうキャラじゃねぇだろ!」

 

「僕に取り憑いたなにかがそう言えと呟いた気がするんだよ……」

 

健太は一瞬焦ったのか、シャッフルしていたカードを取り零す。ヤベッ、と言いながら健太はそれを拾い再びシャッフル。

 

因みに吹雪はテレビでアイドル"春日部 耀"のライブを見ている。彼の調べによるとこの学校結構この手の……というかその春日部 耀ともう一人のアイドル久遠 飛鳥のファンが大勢いるらしい。

 

健太もそれに若干目を移しながらシャッフルを終える。

 

「さあ、誰でもいい。僕とデュエルしろ」

 

健太はトランプからカードを見ずに5枚ドローしてそう告げる。明らかにテンションがおかしいしトランプは決してそういうゲームではない。

 

まあ深夜のテンションというか、旅行特有のテンションもあってか乗り気じゃなかったメンバーも不思議と健太の誘いに乗っかって脳の中はすっかりトランプ一色になっていた。

 

(っ……健太を打倒できる人材なんてこの中にいない。ならば誰か当て石をぶつけて4人全員で勝ちに行くスタイルをとるべきか)

 

(冗談……じゃないみたいだな凍夜。当て馬は誰が行くんだ?)

 

(でも当て馬になるということは大富豪でいう大貧民を自らなりに行く行為。そんなことを進んでやる人なんて……)

 

(僕、やります。囮になります)

 

(((昴ぅ!?)))

 

(僕だって意地があります。ああやって余裕の態度とってる健太くんは意地でも地べたに這いつくばらせてやりたいんです!)

 

(昴……お前)

 

(……なら俺達はもう何も言うまい。作戦の概要を伝えよう)

 

この間2秒の出来事。全て健太を除いた4人によるアイコンタクトだ。

 

そして腹の決まった4人は揃って不敵な笑みを浮かべながら健太に対して向き直る。

 

「ふっ……いいぜ健太。デュエルだ、決着をつけよう」

 

「その顔はみんなやるって顔だね……さぁくるがいい、凡百にして勇敢なる挑戦者達よ!この僕に勝てるものならかかってこい!潰してやる!」

 

「「「「うおおおおおお!!行くぞおおおおおお!!!」」」」

 

4人の勇気が健太を倒すと信じて……!

 

まぁ結果論で言えば健太が全勝したんだけど。

 

◆◇◆

 

同刻、男湯露天風呂。

 

「仕込みは完璧だぜ……皐ぃ」

 

「助かったぜ夜雷。これで最大の不確定要素は消えた」

 

露天風呂の中で皐と夜雷は意味深な会話を繰り広げており、その場にいた修也、明、七夕は首を傾げる。

 

「なぁ……お前らなにやってんだ?正直嫌な予感がするんだが」

 

「ふっ……わかっていないな明。俺達が今どんな境遇に置かれているのかってのぉな」

 

「どんなって……露天風呂だろ?」

 

「ただの露天風呂じゃねぇぜ。キャヒヒ……今日は特別俺達と女衆が共に寝床を1つとする日……即ち」

 

「覗くってわけだ」

 

「いやナチュラルになに言ってるんですか!?」

 

「ただ覗くわけじゃない。俺はこの日のために目から血が出る想いで女性陣が風呂に入る時刻を調べに調べた……そして露天風呂で沖縄という特性上天気に関しては部の悪い運ゲーだったが……」

 

「オレが自分の力で晴れにしたのさ、ィハハハ!」

 

「なんっ……だと……!?」

 

「お前らよくそんなことできたな……」

 

修也と明は色んな意味で賞賛の言葉を、七夕は呆れて声が出なくなっている。

 

「だがしかし、そんな大っぴらに覗けば普通に考えてバレるだろ!?」

 

「それに関しても問題ない。俺の家は一反木綿と共に江戸から歩み(詳しくはどのくらい前からか覚えていない)過ごしてきた……その一反木綿の力、今借りる!」

 

「まさかっ……ペラッペラになって覗く気か!?」

 

「やべぇよやべぇよ……お前ら天才だよ!」

 

「ヒハ……おぃおぃ二人共、オレを褒めるなぁよしてくれ。全てはこんなことをしようと思ぃ立った皐から始まって、俺はそれに乗っかっただけさ……」

 

「まさか、今日の夜の天気は100%雨と予報されていた。お前がいたからこそだ夜雷」

 

皐と夜雷が謎の友情を育みながら、夜雷は脚立をどこからともなく取り出して男子風呂と女子風呂を隔てる竹に掛ける。

 

「夜雷、お前なにを!?」

 

「ィハハ……ぃざって時は俺自身を囮にするためさ。これでお前らも皐もなにをやってもなにをされることもなぃ……」

 

「お前ってヤツは……!」

 

「夜雷……皐……お前ら、いや、お前らは最早2人じゃない!1人の人間として機能している!だから敢えてこう言う。お前は俺達の英雄だッ!」

 

「貴方達バカなんですか!?そんな悲壮感篭ったやり取りしてても実際貴方達がやろうとしてることは最低最悪、コラボ史上類を見ない暴走ですよ!?」

 

だがまぁ、当然ここは七夕が止める。数少ない純常識人枠として。これだけは譲れないのだ。

 

が、まるでなにかに取り憑かれたかのように明は七夕の腕を掴む。

 

「そう言うな七夕……これは男として正しい衝動だ。最早どんな力でも抑えることなど不可能……!」

 

「いや抑えてくださいよ!修也さんもなんとか言ってやってください!」

 

「……七夕。俺は今日この瞬間ヘタレを卒業するぞ」

 

「修也さぁん!?」

 

もうダメだ。おしまいだ。前門の変態、後門の変態。勝てる気がしない。

 

「それに……だ。今この時間帯は花音だっている。これを止めるよりも乗っかった方が、お前自身にもメリットがあるんじゃねぇか……?」

 

「なっ……えっ……な、なんでそんなことを……」

 

「言っただろ、目から血の涙を流す想いで調べたとな。さぁどうする五十嵐 七夕……お前はどの選択をする?」

 

皐の甘言に翻弄され、本当にこれでいいのかと七夕は自問自答をする。自分だって男だ、いくら日常を真面目に振る舞おうととんでもない朴念仁でない限りは……否、朴念仁であろうとも男なら女性の柔肌を肉眼の記録に納めたいという衝動はある。

 

「……ぼ、僕は……!くっ、僕は……!」

 

七夕の表情が変わる。迷っている顔をしている……だが、不思議とその顔は答えが出ているのにそれを言うか否かを迷っている顔なのだとわかってしまう顔をしていた。

 

「どうした七夕!言え!それでも男か!?男なら……あの伝説の五月雨先輩の弟ならハッキリと言ってみろ───!!!」

 

「───!!……僕は、僕は、僕だって覗きたいですよ!僕だって男なんだからそういう衝動の1つや2つありますよおおおおおおお!!!!」

 

瞬間、七夕の目の前の景色がまるでガラスのように割れた。

 

「……え?」

 

「おめでとう」

 

「おめでとう」

 

「おめでとう」

 

「おめでとう」

 

「キー!」

 

「ちくわ大明神」

 

何故か4人総出の拍手喝采。途中でわけのわからないメッセージがあったが、もうそれは無視の方向で。

 

だが、七夕は悟った。これが僕の望んでいたものなんだと!僕はこの流れに逆らわなくてもいいのだと!

 

欲望にありがとう。

 

ストッパーにさようなら。

 

そして、全ての変態達(チルドレン)

 

おめでとう。

 

「ふっ、これで七夕も陥落した……行くぞお前らああああああああああああああああ!!!あの竹の向こうが俺達を呼んでいるううううううううううううう!!!!」

 

「「「「雄々オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」」」」

 

そして夜雷が脚立に足を踏み出し、そーっと女子風呂に顔を出した。

 

その瞬間、夜雷の顔は細く、流線的なカタチをした手に思いっきり掴まれた。

 

「なっ───」

 

女子風呂(コッチ)覗こうなんざ、一万年と二千年、或いは一億と二千年早いのよおおおおおおおおおおお!!」

 

「バ、バカな!?なぜオレ達の行動がバレ……ごふっ!?」

 

「「「や、夜雷ああああああああああああああああ!!?」」」

 

夜雷にアイアンクローをかました張本人、華蓮は夜雷をぶん投げると共に彼が用意した脚立を没収する」

 

「バカねアンタ達……七夕を説得、いやむしろ洗脳と言った方が近いのか、そんなことをあんな大声でやってたら嫌でも耳につくわよ」

 

「なん……だと……!?しまっ、ごふぅ……」

 

「や、夜雷が今の短い台詞の中で2回もごふった!?」

 

「まさかこれは、命に関わる方の『ごふっ』なのか!?」

 

そして夜雷が死んだ(気絶した)のを皮切りに続々と湯船に浸かっていた女子達が竹の上に頭だけ出してくる。一応言っておくと男衆も今は腰にタオル巻いてるからセーフ。

 

「バカだ変態だとは思ってたがまさかここまでやるとはな……俺も正直恐れ入ったぞ」

 

夜子が、

 

「バカ、もう本物のバカってレベルよ。ってかアンタ達に覗かれても私の座敷童の力でどうせ誰もいないのがオチよ」

 

紅葉が、

 

「私も女の子好きですからな〜んとなく、気持ちはわかりますけどぉ、正直ここまでやってくるとは私思いもしませんでしたねー」

 

葵が、

 

ぞろぞろとこちらを侮蔑の目で覗いてくる女性陣。4人は思わず尻餅をつき、後ずさる。しかし、その行為もすぐそこにある湯舟の近くに手をつけた時に不可能になってしまった。

 

「なんてことだ……まさか、こんなバカげたことで俺達の計画が頓挫するなんてっ……!」

 

「お、俺は……ただヘタレを、ヘタレを卒業したかっただけなのにぃ……!」

 

「ロリがいない……ふざけんなよてめぇら。なんで華蓮と紅葉しかロリ枠がいねぇんだよ。おかしいだろ!?なんで、この学校ロリ多いのになんで2人しかいねぇんだよ!?」

 

「………」

 

「……七夕」

 

放心の余り口が開いたままになっていた七夕だが、そんな彼に冷たい声が聞こえてきた。

 

花音だ。

 

「ひっ……!」

 

「……最ッ低」

 

普段から明るい彼女だったからこそ、普段から素行が真面目だった彼だからこそ。その言葉は誰よりも効いてしまった。

 

七夕は後ろが湯船であることを忘れて更に後ずさり、そのまま湯船にドボン。気を失ってはいないだろうが、暫く上がってくる気配はなかった。

 

その夜、洗脳に近い処置をされていた七夕以外の4人は簀巻きにされ、夜風に吹かれながら宿のベランダで1日を過ごしたのだった。

 

◆◇◆

 

場所は変わって、3つ目の浴場。場所としては男湯と女湯のすぐ側にある……混浴。

 

そこには3人の人影があった。

 

「なんか凄いことになってるなぁ……」

 

「アイツら基本バカだからな。いくら七夕でも歳上という補正もかかってる以上逃げられなかったんだろうな」

 

「そ、そうなんだ……」

 

ここの混浴は現在『とある事情』で男湯にも女湯にも入れられないと判断した生徒……呉羽、竜胆、命の3人が特例として浸かっている。

 

「まぁアイツらの気持ちもわからんことはない。お前らだからこそ腹割って言えるが、こんなナリしてても俺達男だからな」

 

「うん……わからないことは、ない」

 

「かと言っても……ねぇ」

 

「流石にあんなことをするのはないな……」

 

話は聞かせてもらった!お前ら纏めて尋問タイムだ!げぇ!?会長!?ふざけんなよなんでこんな時に限って仕事してんだよ!今回のことは包み隠さず五月雨パイセンに言っておくから覚悟しとけ!な、なんだとぉ!?に、兄さん……ごぼぼぼぼぼぼ……七夕が死にかけてるぞ!ある意味ごふった夜雷よりも重症だ!

 

「……騒がしいなぁ」

 

「いやまったく」

 

「その通り」

 

因みに命と呉羽は腰にだけタオルを巻いて胸部には謎の光が当たる処置をされていたが、竜胆はもう普通に、ナチュラルに女性の巻き方をしていた。BDでは光とタオルが(ry

 

◆◇◆

 

翌日

 

4人は全員纏めて風邪ひいた。それも当然、風呂上りに簀巻きにされて沖縄の夜で一晩明けさせられたのだから。

 

まぁそんなことはどうでもいい。竜胆は本州に帰るまでの最後の自由時間、集合30分前までの間に適当に街を歩き回っていた。

 

特に意味はない。なんか知らないけどぶらぶら歩いていた。

 

そうこうと時間だけが潰れていって、そろそろ空港に行こうかなーと思っていた、その矢先。

 

「うわっ!?」

 

「きゃ!?」

 

突然前から走ってきた少女にぶつかってしまった。

 

「ご、ごめんなさい。大丈夫ですか?」

 

「あ……うん、大丈夫」

 

竜胆の手を掴んだ少女は言葉少なげに立ち上がり、キョロキョロと周りを見渡した後に竜胆に向かってこう言った。

 

「あの……私、空港行きたいんだけど、ここからじゃどう行けばいいのかわからない……」

 

「あ、そうなんですか……よかったら、一緒に行きます?丁度俺も空港に向かうところでしたし」

 

俺、という言葉を使ってもいつものように『俺?女の子なのに?』と驚かれなかったのは一重に制服と奇異の目で向けてくる胸を隠すためにサラシを巻いていたおかげだろう。竜胆は今日ばかりは制服に感謝していた。

 

「キミは学校の旅行でここに来たの?」

 

「はい。一応生徒会だから早めに空港に行こうと思っていて……そういうそちらは?」

 

竜胆はよそよそしい敬語を使いながら少女と対応していく。らしくないとは言わないが、あんまり似合わない敬語を浸かっているため少し少女の耳についた。

 

「……あのさ、そのよそよそしい態度やめてくれない?」

 

「へ?で、でも」

 

「初対面だからってそういうのはナシ。こっちまで遠慮しちゃうから」

 

「……じゃあ、わかったよ」

 

「うん、それでよし。で、私がここに来たのは……友達と旅行に来てたの」

 

「え……?今って普通に月曜日だよね?なんで旅行?」

 

「今日はウチの学校創立記念日で休みなの。だから友達と二泊三日で来たんだ」

 

へー、と竜胆と少女は会話を深めていく。そうしているうちにすぐに空港についた。

 

「じゃあ俺はこの辺りで。友達との集合場所はわかってるんだよね?」

 

「うん。ありがとね」

 

「当然のことしただけだよ。それじゃあバイバイ。多分もう逢えないけど」

 

竜胆はさっさと空港の中へと走っていく。その途中、竜胆はまったく気づかなかったが一つのノートを落としていった。

 

少女はそれに気づき、ノートを拾って竜胆の元に行こうとしたが、時は既に遅く竜胆の姿はもう見失っていた。

 

「……これ、落し物として渡しておけば気づくよね。名前書いてあるし……えっと、たか、まち……りゅうたん?」

 

まぁいいや、と思い少女はそれを空港の受付に渡してさっさと友達との集合場所に向かっていくのだった。

 

 






一応言っておきますと、竜胆くんと少女の出会いは恋愛フラグじゃありません。あしからず。

ところで、biwanoshinさんからこんな意見もらいました。

「もういっそのこと原作と原作ごちゃ混ぜにしたカップリング見てぇなぁおい」(要約)

さすがにここまでのことは僕一人の権限じゃ決められないので、感想メッセージどちらでもいいです、『別に他作品の人とくっついても一向に構わん!』という人はその旨のメッセージを送ってください。筆が走ります。作者の腐男子マゾヒストパワーが腐女子に負けない妄想力で組み上げます。

そして今回の妖精クイズは色々思うところがあったので問題の方はナシにします。では答え!

第1問
答え デック・アールヴ
ダークエルフとも呼ばれます。元々は信仰の対象でしたがなんやかんやあって災厄の対象にされたのだとか。FF4のダークエルフは攻略法ナシでは負けイベ。

第2問
答え ルサリィ
特に言うことなし!ルーマニアの妖精です!

第3問
答え シェリーコート
分かった人がいたら逆に尊敬するレベルです。悪戯者の妖精ボーグルの一種ですが、噛み砕いて言えばそのボーグルの中で貝と草を纏うとかいうエロゲでありそうな外見をしているのはシェリーコートだけ!

以下、次回予告のコーナー

夜雷「ひっでぇ目にあったぜ……」

皐「くぅっ……なんてことだ、あんなことで俺達の桃源郷がぁあ……!」

修也「畜生、畜生おお……!」

明「アツクナラナイデマケタワ」

七夕「……僕、なにやってたんだろ……」

健太「えーっと、次回の主役は……未定?それでいいの?予定立てとけよ」

竜胆「ウチの作者結構行き当たりばったりだからねぇ……」

健太「え?じゃあ次回予告のサブタイ発表は?」

竜胆「その話のセリフから取ってるから、ここじゃ発表できないね」

健太「えー……じゃあ各人言いたいこと言って終わりにしよう!」

「こうなったのもデケェ声で説得した皐が「ぃや皐は悪くねぇ、軽率なオレが「それでもこんなふざけたこと企てたヤツに責任が「乗っかったテメーらも同罪だ!「うるさい黙れ!「皆さん仲良く「「「「1人だけ許されたお前にとやかく言われたくない!!」」」」「そんな、元はと言えば皆さんが僕を洗脳したせいで

竜胆「あーもうメチャクチャだよ……ってこのセリフなんかデジャヴを感じる……」

健太「構わん強引に締めるぞ!」

竜胆、健太「「次回もよろしくね!」」



次回の主役……未定



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七限目 花の揺らめくような、そんなキミの音 他の全てを投げ捨てるような、そんな貴方の愛

みんな、ブラックコーヒーは持ったな!いくぞォ!




 

五十嵐 七夕は死にたい気分だった。

 

修学旅行の最終日前日。皐、夜雷、修也、明に操られたように彼らに便乗して女子風呂を覗こうとしてしまった。

 

ここまでなら、まだいい。品行方正質実剛健な彼からすればこんなことはただ恥ずかしいだけのこと。

 

だが、しかし!まるで全然!そんな恥ずかしさすらほど遠くなる大事件がその事件と共に起きてしまっていた。

 

『最ッ低』

 

「………」←魂の抜ける音

 

花音に言われたあの一言。あれだけで彼は物理的に死にかけるほどの重症を背負ってしまった。修学旅行から帰ってくるなり部屋に1人閉じ籠り振り替え休日をフルに使って部屋から頑なに出ようとしたい辺りどれだけ重症なのか伺える。

 

もう何度自分にもう大丈夫と覚悟を決めてあの時後頭部に意図的に投げられた危険球(ビーンボール)みたいな台詞を脳内再生してはまたスタートに戻るを繰り返しているのだろう。

 

そして少し前によくCMでもやってた落書きしても消せる壁を採用している郷土の寮の七夕の部屋には至る所に同じ文がびっしりと書き詰められていた。

 

『もし生まれ変われるのなら人間なんて厭だ。またあの時のような恥辱と共に全てを喪ったような気分に浸るくらいなら牛か馬になりたい。

 

……あゝ、でもそれじゃあまた酷い目に遭わされる。

 

どうしても生まれ変わらなければならないのなら……

 

いっそ、深い海の底の貝にでも……

 

貝だったら、深い海の底の岩にへばりついているだけだからなんの心配もいりません。

 

兵隊(へんたい)に洗脳されることもありません。

 

どうしても生まれ変わらなければならないのな……

 

私は貝になりたい……』※以下、同文の永続的繰り返し

 

如何に彼が精神を病んでいるのかがわかるレベルである。しかもチョイスがかなりアレだ。なぜに清水 豊松なのだろうか。

 

『ねぇ!七夕ー!起きてるんでしょー!いい加減出てきなよ!』

 

ああ……いつもは心配してすぐ駆けつけ、心強いアドバイスを贈ってくれる兄の存在でさえ鬱陶しい。ジョナサン流の強がりで完全論破された後に心配されるような気分。多分今の七夕はその心配に対し誰が相手であろうと「ほ゛っ゛どい゛でぐでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛っ゛!!」の一言で追い払ってしまう自信すらある。

 

「ねぇ七夕!開けてってば!」

 

「ほ゛っ゛どい゛でぐでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛っ゛!!」

 

「……これは、重症だ」

 

そう言うと五月雨の気配と足音が遠ざかっていった。ホントに追い返せた。これに関しては七夕も少しビックリ。

 

しかし少しするとまた五月雨の足音が聞こえてきた。

 

ドア越しに深呼吸するような声が聞こえたかと思うと、次の瞬間五月雨の叫び声が響く。

 

「みんな 丸太は持ったな!!行くぞォ!!」

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

「уараааааааааааааааааааааааааааааааааааааааааааааааааааааааааааааааа!!!!」

 

「ハルトオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

「琉璃イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!」

 

「正直スマンかった!」

 

「土下座2%!」

 

「ふざけるなテメェら!」

 

「かっとビングだ!俺達ィーッ!」

 

バゴォン!という素晴らしいくらい豪快な音と共に七夕の部屋のドアは壊された。

 

「なっ……!?」

 

「お ま た せ」

 

彼の部屋に殴り込んで来たのはさっきのセリフを上から五月雨、立月、修也、鈴蘭、凍夜、明、夜雷、健太、皐。

 

なぜか9人全員やたらかっこいいポーズで丸太を両手でそれぞれの利き腕の肩の上あたりに持っていたり両手で支えながら小脇に抱えたりしている。

 

「っ………!?」

 

七夕は開いた口が塞がらない。普段から奇行ばかりしてるメンバーが何人かいるが、それよりも用務員の兄がドアをブチ破るという行動をしたことに驚きを隠せなかった。

 

「ふぅ、作戦大成功」

 

「な、何やってんですか!?皐さん達はともかく兄さんまで!」

 

「決まってる。人間として持ってて当然の感情一つ暴露しただけで部屋に閉じ籠る情けない弟を連れ出しに来たんだよ!」

 

「まー、俺達は先輩にこっぴどく怒られた上に一応責任は感じてるから付いて来たんだが」

 

「友達として僕はこういうことには手を貸すよ」

 

「そうそう。僕らもう家族みたいなものだろ?」

 

「私はみんなが楽しそーなことしてたから便乗しますた!」

 

1人だけ理由がおかしかったがそれはいつも通りなのでスルー。

 

「……でも僕はもう生きていける気がしないくらいに精神的ダメージを負ってしまったんだよ。あんな一言を言われた奇跡だけでもう息が止まりそうだよ」

 

七夕はらしくもなくヘタレている。やっぱりというかなんというか、この学園の常識人はみんな変なところで頑固だ。

 

そうとう参っている。だからこそ一同はなんとかしてやりたいと思い、彼の頑固さに頭を悩ませられる。

 

「……参ったなぁ。こんな状況じゃむしろ花音の方があんな事言ったことに引け目を感じてるなんて言っても信じてくれなさそうだ……」

 

「強引に連れ出しても下手すりゃ悪化するだけだからな……」

 

はぁ、と溜息をついて視点は少し移る。

 

◆◇◆

 

「なるほどね。つまり花音はあの日訳のわからない洗脳をされたとはいえ七夕に覗かれそうになったのにビックリしてあんな言葉を言って、それで落ち込んでると」

 

「うん……七夕絶対精神ダメージ来てるよ……レンレン、どうすればいいと思う?」

 

「どうって……ぶっちゃけた話例えどんな理由があろうとも覗いた方が悪いのよ。未遂でもね」

 

一方花音。一連の事件が起こってから暫く花音もどうしようどうしようと悩んでいたのだが、思い切って被害者の1人でありみんなの姐御華蓮に相談することにした。

 

が、流石は姐御と呼ばれるだけはあるか。帰ってくる答えは極めて客観的かつサバサバとしたモノだ。当事者なのに客観的に答えられるなんてそれはそれでスゴい。

 

「でもでも!あんな事言っちゃったし七夕に嫌われちゃいそうだし」

 

「自業自得で嫌うようじゃそこまでの男よ。そんなん私だったら自分からお断りよ。今までの関係全部なかったことにしたくなるわ」

 

確かにその通りなのだがそうではない。なにが違うのかは花音自身よく言葉にはできないが、そんな感じなので聞く相手を間違えたかなと少しだけ後悔した。

 

「……花音、アンタ七夕とどうしたいの?」

 

「へ?どうって、それは仲直りしたいに決まってるよ!」

 

「それよ。もっと突き詰めるとアンタはその仲直りしたいの部分に自分が悪いと思ってるかどうかよ」

 

華蓮のその指摘に対して花音は少しだけ考え、ぽつ、と述べる。

 

「……ちょっと、言いすぎたと思ってる」

 

「だったら、ちょっとでも自分が悪いと思ったのなら行動しなさい。客観的に誰が悪いかなんて関係ない。自分が悪いと思えば自分から謝りに行けばいいじゃない。……もし、それでアンタが悪いって言ってるような事を言うならば」

 

「……言うならば?」

 

「ひっぱたきなさい。その後から謝っても 彼がッ 泣いても 殴るのをやめないッ!すればいいわ」

 

華蓮は右手に(グー)を左手に(手刀)を作りながら笑ってそう言う。清々しいまでの笑顔に思わず花音は戦慄を覚える。

 

「……流石にそこまでは、ちょっと」

 

◆◇◆

 

場所は更に移り、学園のある山から下りて少しの商店街。一応全国的に有名な桃水原の最寄りにあるということで商店街はそれなりに活気がある。まぁそれでも物件的に関東地首都圏寄りにしては少ないが。

 

そこで竜胆は両手にありったけの機材と木材、あとレポート用紙になにかの発注をするための"契約書類"と、小さく可憐(男)な身体に不釣り合いなほどの量を抱えていた。

 

理由は一つ。修学旅行から帰って2週間後という息をする間も無く行われる学園祭の資材を買いに来たのだ。所謂遠征とも。

 

「はぁっ……はぁっ……なんで生徒の俺が、こんな山を下りて資材を買ってまた山登らなきゃならないんだ……!こういうのは、学園側がやることだろっ……!」

 

そこにもちゃんとした……かは知らないが、理由がある。桃水原は緩い規則と自由で有名だが、その自由は生徒がやることの責任は生徒が請け負うという意味でもある。故にこういう買い出しも生徒がやることなのだ。流石に予算分は支払ってくれるが。

 

「アイツら……俺が買い出しに行くって言った瞬間にポンポン注文しやがって……絶対報復を受けさせてやる……!五臓六腑引き裂いてやる」

 

怒りが昂ぶっているのか竜胆は口調が彼らしからぬモノとなっており、溢れる不運オーラが凄まじい。

 

「やっぱりアレか……酸素魚雷食らわせるべきか。あ、いややっぱり下履きに味噌汁……ダメだ!そんな陰湿なことしたくないしなによりそんなことに味噌汁を使いたくない!」

 

訳のわからない葛藤をしながら結局は資材を根気よく運ぶ姿はまさに彼らしい。どこかの彼に似た誰かならツンデレの一言で済む。

 

「ってかそもそも1人に買い出し行かせるってどういうことなの……」

 

ぶつくさと女のように呟きながら運ぶ。ちょっとずつ運んでいるとある時、ふとあることを疑問に思った竜胆は後ろを振り向く。

 

「……あれ?ここどこ?」

 

本当にちょくちょくと面倒な方面に運を使っていると自分でも思いたくなる。道に迷うってどういうことなんだろうか。

 

が、彼は気づいていない。彼の不運は基本、不運の先に運命的ななにかがあることに。

 

「……───」

 

「──、─……」

 

「……ん?」

 

声は男のものだ。少しなんか……下卑ている声。

 

だが気になったのはそれではない。もう一つの方だ。耳に少し、声が聞こえてきた。少し耳に覚えのある、不思議と安心できる甘い声。そう、この声は数日前に聞いたことがあるような……

 

「……また面倒事かぁ。もう、なんで俺ばっかこんな貧乏クジ……」

 

竜胆は頭を掻きながら声のする方向に歩いていく。すると竜胆の予想通り、1人の少女を複数人で取り囲んでいる状況に立ち会った。

 

「最悪……急用で友達にドタキャンされたと思ったらこんなのに囲まれて……」

 

「仕事と恋愛の両立はキツいよなぁ。俺なら空いてるぜ?」

 

「いいえ結構」

 

「お宅にいい夢見せてやろってんだぜ?」

 

「……大声出すよ?」

 

「ケッ、アバズレが」

 

なんだかB級だけど中毒性の高いアメリカ映画を見せられているような気分だった。具体的には筋肉が弾けて汗が飛び散るような。

 

でもこんな光景見た以上、元々介入するつもりで足を運んだのだからなにかをしないわけにもいかない。竜胆はその複数人に見えるように姿を晒す。

 

「ちょっと待った」

 

「ん?新しいのが来やがった」

 

「なんでこんなことにまたノコノコ1人で」

 

「俺達になにか見せてぇんだろ?」

 

「ストリップかな?ぬへへ」

 

アメリカ風の独特なジョークを聞きながら竜胆は女扱いされたことにキレた。目が据わり、片方が誇張表現のように赤くギラギラ光り出す。

 

「俺は、男だぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!!!!」

 

近くの鉄パイプを踏んで跳ねさせ、掴むとそれを集団に向けてぶん投げる。丁度壁際にいたヤツにぶっ刺さり「ゔぇえええええうううううううううううう…………………」という蒸気抜きされたような感じになる。

 

「地獄に堕ちろベネ……知らないヤツ!」

 

「な、なんだありゃ!?」

 

「なんだお!?」

 

その一発を皮切りに周囲に畏怖とざわめきが伝導する。今目の前にいるのは優しく可愛い竜胆ではなく、腕が片方千切れて腹部に風穴空いても敵を惨殺せんとするヤンデる竜胆だ。

 

「鉄パイプも機材も木材もいらねぇ……テメェらなんか怖かねぇ!ヤロウぶっ殺してやらぁぁぁああああ!!!」

 

竜胆はその一言と共に正に縦横無尽、理由もわからず襲われているナンパ側が可哀想に思えるくらいに殴り倒し、ブレーンバスターし、ゴッド目潰しフィンガーし、蹴り倒し、超野菜人真っ青な怒りのパワーアップを果たしている。

 

「こふぅうううううう……無事だった?」

 

一通り蹂躙し、一息ついた竜胆は何事もなかったように少女に向き直る。少女は当然唖然としていたが、すぐに持ち直す。

 

「あ、ありがと……不思議だね。この前沖縄で会ったのに、こんなところで会うなんて」

 

「そうだね、よく色んな人に巡り合わせがいいって言われるんだよね。巡り合わせ云々の前になんで変な出会い方しかしないのかな……」

 

資材を両手に持ち直した竜胆はそれじゃ、と立ち去ろうとした。が、そうは問屋が卸さない。

 

「待って。2度も助けられてなんにもできないのは嫌」

 

「え……いやいや、俺はただ好きでやってることだから」

 

「それでも、私の気が済まない。だから……少し付き合って」

 

「……へ?」

 

◆◇◆

 

所は変わって桃水原の屋上。様々な人が集まるこのスポットには不思議と人が全然いなかった。

 

その全然いない場所に、花音は1人でいた。

 

「……そーいえば、七夕と初めて会った場所もココだっけ」

 

花音は三年生だから七夕より一つ上。今更だが花音はそれを思い出す。彼女自身キメるときはキメるが、普段どこか抜けた性格をしているため不思議と七夕が同学年かそれより上に思えてしまうのだ。

 

「んー……そうそう。センパイの弟って知る前からどうも気にかけていた。まるでそうなることが元から決まっていたかのように。同学年の人に何人か聞いたんだけど、やっぱりイメージ通りの真面目な子だったんだよね」

 

不思議なものだ……としみじみ思いながらフェンスに背中をつける。そう、

全てはケジメをつけるべく。

 

で、その扉を一歩跨いだ先。

 

「行け行け行け行け七夕!お前がそんな奥手でどうする!どこまで花音が男勝りだとしても所詮は女!キメる時はビシッとキメるのが男の務めだろ!」

 

「無理無理無理無理!きっと色々言われて僕らの関係おしまいだよ!」

 

「うるせぇリア充!非リアはリア充をヤサいクセに大事なところでヘタレるから嫌ってんだよ!上◯さんや◯イルズのロ◯ドさんみたいに非リアにも好かれるリア充になるんだよ!」

 

「スッゴイカワイソ」

 

「そのロイドさんじゃねぇ!」

 

恐れのあまりうざい外国人みたいな喋り方をしてしまう。その後もあーだこーだと屁理屈じみた言い訳をするが、流石に痺れを切らした五月雨が七夕の頭を掴む。

 

「あーもー、そうやって逃げ続けてたら七夕も花音も損しかしない!いいからさっさと行ってくる!」

 

五月雨が扉を開くと、その手前に立たせられた七夕を背中から蹴り飛ばす。弟の軟弱な姿はどうしても見ていられなかったのだろう。

 

「うわわわっ!?」

 

七夕の悲鳴が聞こえると同時にドアはバタンと閉じられ、完全に鍵を閉められる。七夕に逃げ場などない。

 

「………」

 

「………」

 

「「あのっ」」

 

「………」

 

「………」

 

「……七夕から、いいよ」

 

「いや、花音からで」

 

完全に声が被る。まるで恋愛小説のようだ。おかしい、この小説はカオスな小説じゃなかったのか……?

 

「……じゃあ、やっぱり僕から言うよ」

 

「……うん」

 

スゥー、と露骨なほど息を吸う。これから言う事を考え、最悪の回答を想像し、それをなんとか跳ね除ける。一連の動作を終えた七夕は改めて花音と向き直る。

 

「………………………ごめんなさい!!」

 

「………」

 

「変な事されたとはいえ、覗きを止められず、あまつさえ便乗してごめんなさい!許して欲しいなんて言わない!だけどみんなのことは許してやって欲しいんだ!やり方はどうあれ、真意がどうあれ、4人とも僕のためを思って誘って……一歩を踏み出すように促してくれたんだ!そんな彼らの優しさに感謝しているんだ!だから僕のことはなんて蔑んでくれても構わない!でも、謝罪だけはさせてほしい!ごめんなさい!」

 

誠心誠意、多分これまでで一番謝罪の気持ちを込めたその言葉。それはいかにも彼らしい、明らかに悪い4人を庇う言葉だった。

 

勿論、七夕自身こんな謝罪で自分達のやろうとしていたことが許されるなんて思っていない。だが謝る。それが五十嵐 七夕という人間だ。

 

「この通りだよ!だからっ……!」

 

「……七夕」

 

花音は七夕の頭の側面を両手で押さえ、自分の目と目を合わせる。

 

「……正直、最初あんなことになった時はビックリしたんだよ。そんなことしそうにない七夕が……その、変な事されたとはいえヤル気満々になってたんだから」

 

うっ……と七夕は視線を逸らす。だが、そんな彼にとっての予想外な言葉を花音は投げ掛けてきた。

 

「でも、全部終わった後に私も悩んだの。私こんな性格してるけど結局はオンナノコだから、オトコノコの気持ちなんてわかんないんだよ。だからしょうがなかったんじゃないかな、とも思った」

 

「え……?」

 

「だから私もごめんなさい。気が動転していたとはいえ人の気持ちを考えてなかった」

 

花音は腰を曲げたままの七夕に対して腰を曲げる。が、逆に謝られたことでフリーズしている七夕とは違い花音はすぐに体勢を元に戻すと、七夕に手を出してくる。

 

「えーと……こういう時なんて言えばいいのかな。その、人間ってさ。価値観が違うからこそ誰かと話ししてケンカして、それで仲直りして……同じ価値観を見つければ喜びを分かち合えるんだよね、きっと」

 

七夕が見上げた花音の表情は七夕も、花音本人すらも見たことがないくらいに照れていた。七夕は思わずその姿に見惚れてしまい、その目をじっと見ている。

 

「うーんと……だから、あぁぁぁぁ違う違う!私が言いたいのはこういうんじゃなくて、その!」

 

花音は差し伸べた手も使って自分の頬を思いっきり叩く。

 

「七夕!」

 

「は、はい!」

 

「つまり、私が言いたいのは!これからはこうやって違う価値観や同じ価値観を見つけていける仲になろう!要約すると私のカレシになれ!以上!」

 

「…………………はい?」

 

「に、2回も言わせないで!だから、その……(私と付き合ってって言ってるの)……」

 

唖然、一言で言うならこの言葉しか見当たらない。事実七夕は花音が何を言ってるのか全ッ然理解できてなかった。なにせ誠心誠意、全ての感情を込めたスーパー謝罪タイムがなぜか告白タイムに変わっていたから当然だ。

 

「……えーと、その……」

 

「な、なに……早く言ってよっ……私が恥ずかしくなってくるじゃん!」

 

「え!いや……えっと……正直、謝ったら付き合ってくださいなんて返答が来るとは思ってなかったから……だから!ちょっとだけ、返事の仕方を考えさせて!」

 

七夕は何故か自分から気まずい空気を作りに行く。なんでこんな空気のまま考え事をしなければならないのか。

 

が、七夕は何故か考えると言ってからなにも考えてなかった。まるで考える前から答えでも出てたかのようにだ。

 

「……花音」

 

「……うん」

 

「僕、昔から兄さんが凄かったからよく比較対象にされてたんだよね」

 

「……え?」

 

「それでも僕は兄さんは凄いと思うし、憧れるし、困ってる人全てに手を差し伸べる。そんな兄さんが好きだよ。……でも、僕はそんな完璧超人の兄さんじゃなくて、その弟の七夕でしかない」

 

「……知ってる」

 

「だから僕は兄さんみたいに花音を護ってやれる保証なんてない。もしかしたら逆に護ってもらっちゃうかもしれない……それでもいいなら、僕は花音の気持ちに応えたい、と思う」

 

最後は少しだけ自信なさ気に言ったが、これが七夕の答えだ。受け身な感じのする返答だが、その言葉には自分は五月雨じゃないからなんでもできるわけじゃない。迷惑をかけるだろうからやめるなら今のうちだ。という旨の警告でもある。

 

その想い全てを汲みとった花音は七夕の胸に彼女自身の頭を預ける。それはもう、一つの答えをこれでもかというほどに示していた。

 

「ばーか。七夕だからいいんだよ。五月雨先輩じゃダメ……私は七夕のそういう生真面目で周りに流されがちで、先輩と自分を比べて自分を低く見ちゃって、それが陰になってるとこ……全部全部ひっくるめて付き合ってほしいって言ったんだよ?それに七夕は先輩じゃないから、先輩は七夕の代わりになんかなれないんだよ……さっき七夕が自分は兄さんじゃないって言ったようにね」

 

「………」

 

「だからもう1回だけ……言わせて。私は五十嵐 五月雨じゃない、五十嵐 七夕のことが好き。七夕のことを知ってることから知らないことまでいっぱい知りたい……あと遺伝子も欲しい」

 

「!?ちょちょちょちょ!?」

 

「今のはじょーだん。そういう風に驚いてる七夕がいつか本気になった時の顔も知りたいから……ね?」

 

「……うん。僕も僕の知らない花音が沢山知りたい。だから僕も」

 

その日の夕暮れはよく光っていた。赤く、橙に、燦々と。

 

いつの間にか閉められていた鍵は開けられており、そのドアの向こうには誰もいなかった。もう見守る必要はない。彼らはもう既に、互いを見守ってくれる人となったのだから。

 

「いつか、花音の音を聴いてみたい。花の揺らめくような、そんなキミの音を」

 

「いつか、七夕の愛を見せて欲しい。他の全てを投げ捨てるような、そんな貴方の愛を」

 

今の2人の価値観は間違いなく、違うモノを共有していた。

 

 





今回もかなり深夜のテンションを解放して書きました。僕の中にいるもう一つの魂が「小説で……みんなに笑顔を……」なんて言ってくるんですよ。ヤバい方向に笑顔にさせてしまいそうなんですがそれは。

それとカップリング云々のことなんですが、作者様全員から意見をいただいていないので現状まだ決められません。できるだけ早めに答えてほしいです……いや、なんかアンケートみたいなのに答えてくれると嬉しいものもあるので。

次回予告コーナー

五月雨「ふっ……どうやらもう僕らの出番はないようだ」

皐「そっすね、先輩」

立月「いやーよかったよかった。僕らも手伝っただけの価値はあったよ」

華蓮「今回の主人公は間違いなくあの2人ね。私達はあくまで背中を押しただけ」

明「そうだな。……ん?アレって、奏じゃないか?」

奏「あ、みんな。今日僕スタジオ帰りなんだ」

修也「なるほど。その途中で偶然この次回予告ロケを見たと」

奏「そうだね。……あ、もしよかったら次回予告僕に言わせてくれないかな?」

五月雨「奏が?珍しいね」

奏「いえいえ、歌手特有の出しゃばりってヤツかもですよ。それじゃ……」

奏「次回、『アイドルってなんでこんな酷いくらい格差あるんだろうな』。Don't miss it!」

修也「……普通だな。で、今の英語の意味はなんなんだ?」

奏「え?あれ?あれの意味は『見逃すと損するよ』かな。わかりやすく言うと」



次回の主役……天歌 奏(箱庭に流れる旋律)



出張コラム
ラストエンブリオ編キャラクター設定

前書き
本当に孤独の狐のラストエンブリオ編の新キャラ設定なのできょーみない人は飛ばしてくれてかまいません。なにも言わなきゃ飛ばしたことなんて本人以外気づかないしね……

名前:ブルーム=ネームレス

種族:人間(女)

年齢:不明(多分10代半ばくらい)

身体設定:身長165cm、体重47kg、上から74、58、85の貧乳が眩しいプリケツ。

プチ概要:ある日突然ラピュタばりに落ちてきた少女。一人称は僕。自分の本当の名前と彼女が憧れている"彼"とその関係者の名前に関する全ての記憶を失っている。
過去に彼女の命を救ったという"彼"には憧れを通り越して一方的な恋慕のような感情を抱いており"彼"の話題になると盲目的に彼について語り出す。
彼女はとてつもない幸運体質であり、やる事なす事全てに幸運という結果が集約する。何故か本人はこの幸運体質を毛嫌いしているのだがその理由は不明。性のネームレスは文字通り名前に関する記憶を失っていることに起因し、性がないと不便な部分があるという配慮の元つけられた。



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八限目 アイドルってなんでこんな酷いくらい格差あるんだろうな



さーて、今回は原作からあの人が出てきますよ〜!




 

 

天歌 奏は自惚れでも自称でもないが、奇跡の歌い手と呼ばれている。音楽番組で歌を歌う以外なにもできないということを幾度となく彼は言及しているが、実際その通りで彼の専門である音楽一つ取っても楽器の演奏はボエ〜、という擬音が出てくるレベルのものだった。歌ってないのにそんな音出せるとか最早ガキ大将よりも凄いレベルである。

 

だが、そんな凡才以下のその他諸々に反してことツッコミと歌には眼を見張るものがある。歌はその異名から言わずもかな、そのツッコミスキルは歌手でありながらバラエティー番組でレギュラー張れるレベルである。

 

この前は芸能人格付けチェックなアレに出場して見事に現状全敗。実に悲惨だ。

 

そんな彼にも悩みはある。歌とツッコミ以外はだいたい平凡以下の彼が抱えるような悩みと言えばやはり秀でたことの悩み……歌手としての悩みだ。

 

「……はぁ、」

 

思わずロケ帰りで疲れている身体に疲れを溜めてしまうように溜息を漏らす。天才故の悩み、とはよく言うが彼の場合もまさにそれであった。

 

「……"売れる曲"を作れ、かぁ」

 

歌い手である彼の仕事は曲に歌という命を吹き込むことだ。声優と近しいものだと、そうしたタレント業で知り合った友人の1人にそういう話を聞いている。勿論奏自身それは少なからずとも意識はしている。

 

だからこそ、そうして"売れる曲"と言われるとどうしても抵抗感がある。歌い手としてはそういう売れる売れないではなく、自分が歌いたい歌詞を心のままに書きたい。

 

が、そこでその言葉が引っかかってくる。そんなことを言われれば否が応でも『これを売り出したとして、常識的な反応』というものに囚われて歌の自由という長所が殺されてしまう。

 

こればっかりはその道に詳しくない友達や仲間であると同時に一応ライバルでもある歌手としての知人には相談し辛い。そういった理由で作詞は必ず自分で仕上げる奏にはかなり重たい問題だ。

 

「ぐぬぬ……僕はこんなんに負けたりなんかしないぞっ。絶対売れて僕の歌いたかった歌を完☆成させてやる……」

 

奏は端から見ればキモいくらいにぶつぶつ呟いている。しかも夜の銀座と来れば人が沢山いるのは確定的に明らか。変装して変な騒ぎを起こさないよう配慮している分周りからドン引きされている有様だ。

 

まぁともかく、今は寮に帰ろう。そう思った奏は少し早足で駅へと向かって行った。

 

◆◇◆

 

「最近、この辺の治安が悪い」

 

「……え?」

 

竜胆と夏凛がおらず、一輝と呉羽だけになった教室。今回に限っては一対一で弄っても周りの反応がないからなのか、呉羽を弄ることなくマトモに仕事を消化し、ひと段落ついて呉羽が本を読み始め、一輝が艦これし出した時、一輝は唐突に思い出したようにそう呟いた。

 

「かいちょーさん、ボクそんな話聞いてないけど……そんな話題あったらまずボクかリンくんに連絡行くよね」

 

「あ、いや。別に生徒会で話題になるほどの話じゃないからな。チンピラのナンパ騒ぎ程度だから」

 

「じゃあなんでそんなこと……」

 

「……そう言えば修学旅行の時に神社ネットワーク使った借りを返して貰ってないな」

 

「……聞かなきゃよかった」

 

どうやって知ったのか教えてもらおうとしたら唐突に神社ネットワークの話をし出した。ならば答えはひとつだろう。というかよく考えたら生徒会に伝わってないのに一輝にだけ伝わってる情報があるとすればそれ即ち神社ネットワークしかない。

 

「うっし、バケツカンスト。あとはえんえんとオリョクルかなぁ……すまんなでち公、働いてもらうぞ」

 

「で、そんな真面目な話題出してる最中出した張本人がなにやってるの」

 

「艦これだよ見てわかんないの?」

 

「わかるけどそういう意味じゃ……」

 

なんでそんな真剣な話題出しながら春イベの準備してんの、ということである。緊張感が台無しだ。

 

兎角、かいちょーさんはとても忙しいのである。

 

「まぁ問題ないだろ。丁度ウチの生徒会には絶賛買い出し中の超不運な副会長がいるんだから、今頃ナンパでもされてキレて事件解決だ」

 

先生、ここに超能力者がいます。

 

「それはまた別の俺だ」

 

「かいちょーさんどうしたの?」

 

「いや……できない人間には教えることすらできない、敢えて言うなら……天の声との会話?」

 

「えっ」

 

え?

 

「ふっ、ジャオウシンガンを持たぬ者にはわからぬこと……みたいな類じゃあないぞ。なんかわかる、何故かこの世界を作ったヤツの声が聞こえるんだ」

 

「……かいちょーさん、お医者さん呼ぶ?」

 

「え?」

 

ザマァwwww

 

「……くっ、声が聞こえるだけで手出しできないのが憎たらしい……!」

 

ハハハ、いつも弄ってくる仕返しだ!

 

「くそっ、何年かけても神社ネットワークでコイツを叩きのめす方法見つけてやる……!」

 

まぁそれは置いといてだ。

 

「まぁ、なにがあってもウチの優秀な会員2名がなんとかしてくれるだろ?」

 

「……自分でできるのにいっつも他人任せなんだから……」

 

◆◇◆

 

歌というものは自分一人で作るものではない。奏は少なくともそう考えている。

 

小さな頃から触れ合ってきたものだが、その小さな頃から彼は歌に対して常に対等な立場でいた。

 

歌が好きでいれば歌も応えてくれる。昔はそう思っていた。

 

だが今はどうだ。中途半端に大人になってきているせいで達観することも我儘になることもできず、歌には想いが篭らない。自分が思い浮かべた詩を書いても彼自身が『これに籠めたものなんてないと」思ってしまうのだ。

 

言ってしまえば精神的なところから来るスランプ。こういうのは陥りやすい人がちょろければちょろいほど簡単に克服できるイメージが強いが、別にそうでもない。

 

ていうかあんなんギャグ描写であると奏は考えている。事実、菩薩メンタルとか言われてる御仁だって相棒が死んだら家に塞ぎ込む。鮫の人だってちょろいけどすぐにカウンセリングされるわけではない。

 

だから今は落ち着こう。落ち着くために早く帰って寝てしまおう───

 

「って思ってたんだけどなぁ……」

 

奏TL

 

こんな状態。記念すべき4人目のアスキーアートの完成だ。

 

いや、もはやこれはアスキーアートと呼んでいいのだろうか?なんて思いながらも奏は目の前に立ち塞がる人物にもう許してやってよ……みたいな目を送る。

 

なぜか……人がぶっ倒れてた。見たことがない女の人がぶっ倒れてたのだ。

 

「えー……こ、これはどうすれば……なんでわざわざ山の中腹より少し低い辺りでぶっ倒れてるの……なに、これは僕に安息を与えないという証なの?」

 

もう全部信じることができないっ……!と奏は嘆きながら取り敢えず女の子を背中に乗せて歩き出す。お姫様抱っこなんてして誰か(主に会長)に見られたら後世に渡って弄られ続けるのは想像に難くない。そもそも顔も知らない男にいきなりお姫様抱っこされて喜ぶ女なんてどこにいる。いたらぶん殴ってやる。なんてニンジャリアリティショック並みに頭の中を混乱させ続けながら奏は自分の部屋に向かっていったのだ。

 

◆◇◆

 

「んっ……ぅ、」

 

「……あ、起きたね」

 

それからしばらく、少女は奏のベッドで目を覚ました。先に断っておくと奏はやましいことをしてないし、やましい考えを以って少女を自分のベッドの中に入れたつもりもない。ただ思ったのは日系の顔立ちなのに外人さんみたいな髪だなー、なんてことくらいだ。

 

「……あの、ここは?」

 

「桃水原学園高等部学生寮郷土の寮。その僕の部屋だよ」

 

「……はぁ。あの……その郷土の寮?になぜ私が……?」

 

「うーん、こっちとしてはなんであんな山の中で倒れてたのかが知りたいんだけどな……なにか覚えてないかな?」

 

「……姉に、会いに行く途中だったんです。私としてはあんなの姉とかやめてほしいってレベルですけどね。絶対アレは私が姉です」

 

「……えっと、双子のお姉さんなのかな?」

 

それから奏は少女の話を少し聞いて、軽〜く状況整理。

 

少女の家は桃水原学園のある山含めて山を4つほど越えた先にあること。

姉が東京にお住まいということ。

そしてその姉は双子の姉で、名前は久遠 飛鳥ということ。

 

「……あれ?久遠 飛鳥?」

 

「ああ、言ってませんでしたね。私、今東京で話題沸騰のアイドルとかなんだで調子に乗ってるっぽい久遠 飛鳥(くどうあすか)の戸籍上双子の妹の久遠 彩鳥(くどうあやと)です。お好きに呼んでください」

 

「は、はぁ……それじゃあ彩鳥さん、と」

 

奏は言われてから彩鳥の顔をちら、と見る。グラデーション、と言うのだろうか。日本人らしからぬ銀髪は少し角度を変えて覗くと先辺りの色が金よりに変わって見える。どういう仕組みなのだろうか。

 

しかし、双子の妹と言われればなんとなく納得できる。さっきまでは髪色のせいで『なんかどこかで見た事あるな〜』程度だった顔立ちがはっきりと奏もテレビで見た事のある久遠 飛鳥そっくりだ。

 

「えと、天歌 奏です。訳あってアイドル歌手やらせてもらってます……一応アイドルじゃなくて歌手が正式な職種ですが」

 

なぜか礼儀正しくお辞儀。しかし彩鳥がすぐに『そんなにかしこまらなくてもいいですよ』と言うのでその体勢を改める。

 

「しかし……天歌さん、ですか」

 

「奏で大丈夫ですよ。こっちも名前の方で呼ばせてもらってるので」

 

「そうですか。では奏さんと。なるほど、寝ぼけた頭のせいでどこかで聞いたことのある程度にしか感じていませんでしたが、貴方がその"奇跡の歌い手"でしたか」

 

彩鳥がおお、と拍手をすると奏は少し嬉しそうに、だが不思議と居心地が悪そうな表情をしていた。

 

「……すみません。あまりこの呼び名は好かれないようですね」

 

「あ、いえ。確かにあんまり好きじゃない呼び名ですけど……それでもそういう呼ばれ方をされるということはそれなりの評価をいただいているということですから」

 

これはあれだ。転校初日によくあるかまととぶる人。アレに酷似している。奏自身そう思っていた。敬語がものっそい敬語していて違和感しか感じない。

 

「ま、まぁとにかく、今日は彩鳥さんはここで泊まっていってください。どうせ寝るとこないんでしょうし、僕はどこか適当に友人の部屋で寝させてもらいますから」

 

「いえ!それは流石に世話になりすぎです!せめて誰かにご迷惑になるくらいならここで寝られても構いませんから」

 

「え、で、でも流石に女性と同じ部屋で一晩明かすのは……」

 

思わず顔を赤らめて否定する奏。なんか敬語がたどたどしくなってきている。

 

「そんな心配はいりません。私はそういうの気にしませんし、そもそも私には奏さんは女性を襲って喰ってしまうような人種には見えないですし」

 

まぁなんやかんやとあって、結局奏が折れるカタチで床に予備の毛布を敷いて寝ることになったのだった。

 

◆◇◆

 

時間はちょっと遡って夕方。

 

言い寄ってくる男共は完全に瞬獄殺だった。

 

それが今の竜胆と少女の状況。言い寄ってくる度に少女にはごめんねと言いながら竜胆は『俺の女になにすんの?』と発言→レズ扱い→キレる→フルボッコ→ぷんすか怒りながら少女の頼みで今日一日一緒にここらを見て回る約束を実行している。

 

「ゴメンね……急にあんな変なこと言ってさ」

 

「ううん。一応その辺はわかってるつもりだから」

 

ありがと、と竜胆は一言言うとふと目の前にある落書きされた看板に目が行った。

 

「うわ……乱雑……く、どう……あすか?様万歳……なんだこれ」

 

「あ……それ多分、書いたのは飛鳥のファンだよ」

 

「飛鳥?誰それ」

 

「え?知らないの?超有名なのに」

 

「うーん……?ゴメン、知り合いに歌手兼アイドルがいるけど、芸能とかあんまり興味ないんだ。あるとしたら……上京する前に大阪で上方歌舞伎やってたから、詳しかったとしたらやっぱり歌舞伎らへんかな?」

 

「歌舞伎、やってたの?」

 

「うん。小さい頃母さんに連れて行ってもらってね。その時色々あって歌舞伎に関わる機会もらって……家族に相談したらみんな『やってみたら?』って言うからつい、ね。それが楽しくて今も偶に踊ってるし、たまーにだけど白粉も塗るしね」

 

丁度塗り終わって久しぶりに踊ろうって服も着替えていざって時に会長に見つかってめっちゃ弄られたんだっけ……と思い出したくないことまで思い出す。以来学校で着替えるのだけはやめようと思ってたり。

 

「あっ、でも最近ウチの学校でアイドルが2人話題になってたな。なんだったっけ……1人は、えーと……髪が長くて、もう1人が、茶色のセミロングって聞いた覚えが……で、二人組のグループって」

 

「……そうなんだ」

 

少女はそれに対して淡白に返す。その返答にん?と思って少女を見ると、あれ?となる。

 

「そういえば、キミも髪が茶色のセミロングだね。偶然だね」

 

「……そうだね、偶然だね」

 

少女がそう返すと竜胆は普通にそうだよね〜なんて言う。

 

少女がホッとため息をつくと、思い出したように竜胆に向き直る。

 

「ね、こんな場所で会ったのも何かの縁だからさ。アドレス交換でもする?」

 

「え……アドレス?まぁ確かに2度も会ってこんな風に話し合った人と簡単に親交をあっさり切るのは俺も嫌だけど……」

 

「じゃ、キマリ」

 

少女は竜胆の携帯機器を取って何故か一発でパスワードを解除、LI◯Eアカウントとメールアドレス、電話番号を竜胆の携帯に登録させて同様の手順をまた行い少女のアドレスに登録を……とやると、途端に竜胆の向いてる方とは逆に踵を返した。

 

「3回もありがとね竜胆。またどこかで会おう」

 

「え!?ちょっと、まっ───」

 

行ってしまった。ご丁寧に駅のすぐ近くでだ。はぁー、と息を吐きながら竜胆は新しく追加された連絡先を目に通す。

 

「───、」

 

そこに書かれていた番号と名前を、竜胆はしっかりと覚えたのだった。

 

◆◇◆

 

時間は夜に戻って奏の部屋。本来奏が作詞作曲したいからという理由で1人部屋にさせてもらっていたことから、さすがにこの部屋で2人が寝るというのはなかなか背中にクる。まぁそれでもまだ寝る前だが。

 

「先に上がらせてもらいました。奏、どうぞ」

 

「あ、ありがと」

 

そんな状況に駆り出されれば奏とて男。ていうか男以前にここの生徒に1日だけとはいえ女性を部屋に泊めていたことがバレれば瞬く間に噂が拡散メガ粒子砲してしまうだろう。笑の神様が舞い降りるとか冗談じゃない。

 

そう思って立ち上がって風呂場に目を向けると、そこに彩鳥。唐突に泊まることが決定したので服とかも勿論奏のだ。そいて高校3年生の奏の服を着た高校1年生の飛鳥……の双子の妹の彩鳥の風呂上がりはやっぱり蠱惑的だった。奏は内診やめろおおおおおおお!!うわぁぁああああ!無理ら……こんなモンスター、倒せるわけがない……とヘタれた王様みたいな気分だ。

 

ってかエロい。サイズが合ってない服のダボダボ感がどうしようもなくヤヴァい。奏はそう思ってる。

 

「あの……奏、お風呂、空きましたよ?」

 

「あ、ああ!うん、お風呂、だね!わかった!うん!」

 

奏はそのまま火照った身体を全力で冷やすべく最低温度まで下げた水で頭を洗い流した、

 

「……ふぅ」

 

「ず、随分と早かったですね、私が出てからまだ5分と経ってませんが」

 

「気にしないで。カラスのなんとかだから」

 

それだけ言うと奏は彩鳥と会う時に持っていた鞄からなにも書かれていない楽譜とノートの切れ端を取り出し、ペンを握る。

 

「……自作するんですか、歌は」

 

「はい。自分で書いた詩じゃないと歌えないくせにスランプなんですよ。図々しいことに」

 

はぁ〜、と自嘲気味に溜息。スランプなのは確かだし、この際誰でもいいから悩みを聞いて欲しかったのだろう。奏は少し感傷的になりながらそう語る。

 

「……そうですか。では奏。一ついいでしょうか」

 

「あ、はい。どうぞ」

 

「では。奏にとって歌とはなんですか?」

 

彩鳥の質問は今の奏にとって答えにくい問答だった。

 

前述した通り、彼は今の自分にとって歌とはなにかというのを全力で考えてたところだ。そんな質問をされればなんと答えればいいのか悩んでしまう。

 

金づる?それだけは断じてない。

 

楽しいもの?それが怪しくなったから悩んでいるのだ。

 

自分の唯一の特技で、縋るモノ?そんな風には考えたくもない。

 

思えば、歌詞を考えてる時は真剣に考えて、心を込めていたが、果たして歌う際はどうだったろうか。

 

そんなネガティヴな方向ばかりに考えがこんがらがっていく。なんとも答えられない。

 

「……質問を変えましょう。歌と友人のどちらが大事ですか?」

 

「それって……どういうこと?」

 

「例えば、です。親しい方が今にも死んでしまいそうな状況にあるとします。その方を救えるのは貴方だけ……ただし、その方を救うには代償として貴方の"歌"を犠牲にしなければならない……二度と歌えなくなるとします。その時貴方はどちらを選びますか?」

 

「そんなの、友達にっ……」

 

「真剣に答えてください。今貴方が友達と言えば貴方は"天歌 奏"である絶対条件と言っても過言ではない歌を棄てることになるんです」

 

彩鳥の牽制に奏は思わずたじろぐ。

 

確かに、そう言われると悩んでしまう。自分が幼い頃から一緒だった歌を手放す。こんなこと普通に考えればできっこない。それが人気歌手である奏なら尚更に。

 

「っ………」

 

「……それでいいんです」

 

「え?」

 

答えられないといった表情をしている奏に、ふと彩鳥は諭すようにそう言った。

 

「人生とは選択です。その都度最も自分が選んで、損をしない選択肢を選び続ける。まるでその択から木の枝のように可能性が広がる……ならば、存分に悩めばいいんです。その上で答えが出せないのなら、私や貴方の友人が背中を押します。まぁ、先程の質問は極端な例として挙げただけなんですが、あまりにも真剣に悩んでいたので……区切らせてもらいました」

 

まぁ、と彩鳥は続ける。

 

「そんなに悩むということは貴方は歌も友人も同じくらい大事に思っているんじゃないかと……私は思いました」

 

「同じ……」

 

瞬間、悩みが纏めて氷山に船が激突したように砕け散った。なんでこんな単純なことに気づかなかったのだろうか、どうしてこんなバカみたいなことに苦悩していたのだろうか。思えば思うほど自分がバカらしくなる。

 

「……彩鳥さん」

 

「はい」

 

「ありがとう。なんか吹っ切れたよ」

 

「いえ、お役に立てたのならなによりです。……それでは私は姉に連絡もつきましたし、奏のお邪魔にならないうちに寝させてもらいます」

 

その言葉と共に彩鳥の声が聞こえた場所辺りからもぞもぞ、と音が聞こえ、やがてその音は小さな寝息に変わっていった。

 

「……ありがとう、彩鳥さん」

 

奏は小さく呟いて、真っ先に思いついた歌の名を書き記すのだった。

 

◆◇◆

 

それから1週間後。

 

学生寮の食堂にて。

 

「そーいや奏」

 

「ん?なに、吹雪くん」

 

「先週お前新曲出したって聞いたから買ったけど、今週のオリコンチャートどうよ」

 

「うーん……どうだろ。僕としては傑作のつもりなんだけど。ようやく向こうにもOKもらった曲だしね、色々あった分思い入れ深いからさ」

 

「へー、そうか。俺、アイドルってなんでこんな酷いくらい格差あるんだろうなって思ってたことあったけど……お前は結構売れてるから今のところそういう心配はいらないな」

 

奏と吹雪は向かい合った席に座る。その奏の姿をすぐに悟が見つけ、テレビのリモコンをかっさらう。

 

「おーい!奏が新曲出したからオリコンチャートのウィークリー気にならない!?チャンネル変えていいかなー?」

 

「「「いいともー!」」」

 

「いいですとも!」

 

パワーがメテオに集まるわけはないが、なんだか2943と2971を連想させる声があった。まぁいいや、と悟はチャンネルを変える。

 

『───以上2位まででした!それでは今週のオリコンチャート第1位は……』

 

丁度いいタイミングだった。もし仮に1位じゃなくてもトップの10か5まではもう一回記載されるだろう。不思議と、周りに緊張した空気が流れていた。

 

『───♪』

 

そして、その1位の曲が流れ始めた。

 

「この曲って───」

 

そして、誰かが呟いた。

 

すぐにわかったのだ。その曲がなんなのかは。

 

『天歌 奏の"彩鳥(イロドリ)"でした!』

 

一瞬、食堂に静寂が訪れた。だがすぐに男達は食堂のマナーを忘れたようにワーワーと騒ぎ出し、食堂なのに奏に群がって胴上げまで仕出す始末。

 

「えええええ!?ちょちょちょ、嬉しいのはわかるし僕も嬉しいのはわかるけどなんでこんなところでこんなことしてるの!?」

 

「やったな奏ええええええ!!今夜は無礼講じゃァァアアアアアアアアアア!!!」

 

でもそんなこと御構い無し。むしろ食堂の人まで便乗するというこのどうしようもないノリ。

 

胴上げされて重力を一身に受ける奏はなんか色んな意味で泣きそうになり、心の中で彩鳥に感謝していた。

 

(ありがとう、彩鳥さん……何回目かわかんないけど、曲ができたのは彩鳥さんのおかげだよ……!)

 

オチとしては騒ぎを嗅ぎつけた五月雨が強引に騒動を止め、奏が後頭部から地面とキスしたということだ。

 

で、その中のもう一つのオチ……

 

『2位のtruthの2人……久遠 飛鳥と春日部 耀の2人も惜しかったんですけどねぇ。今回の彩鳥はまさに傑作でしたから』

 

カタン、と誰も気づかないほど小さな音を立ててスマートフォンが落ちる。

 

その携帯機を持っていた人物───竜胆が握っていた携帯は確認し終えてはっきりと理解したように……彼のメールアドレスには"春日部 耀"と書かれていた。

 

 






ナ、ナンダッテー(棒)だった方、気にすることはない。名前以外仕草も何も隠す気なかったし。

ところで、例のカップリングの件ですが、一人か二人返信が来ませんが、ほぼ全員がOKと返してくださった以上はアリの方向で進めていきたいと思います!ってか、今回まさにそんなんでしたし。



しかし、原作キャラから十六夜を抜いて初めて明確に原作キャラとわかっていながら喋ったのはまさかの彩鳥さん。フェイスさんじゃないよ、彩鳥さんだよ。



次回予告コーナー

奏「彩鳥さん、見ててくれたかな……?」

吹雪「にしてもイロドリ、ねぇ。読み方を変えれば人名に読めなくもないが、まさか……」

奏「え、え!?なんの、ことかな?」

吹雪「お前これからの歌詞は読み方を変えて人名に読めるようなタイトルで売る気だな!」

奏「……ああ、うん。安心と一緒に変な気分になってきたよ……」

悟「さて、そんな中の次回の主人公は、と───」

竜胆「やっぱり俺なんだって……作者曰く毎話出てるから早々にメイン張るのは避けたかったらしいけど、孤独の狐みたいにもどかしい関係が長く続くのが嫌だったらしいよ。だからこの話と最終的な展開も原作とは全然違うってさ」

奏「へー。それじゃあ竜胆くん、次回予告いってみよう!」

竜胆「う、うん。えーと、次回、『母親との生殖と書いてクソ野郎と読む』……え゛」

悟「なんというか……かなりアレなタイトルだな。流石の俺もちょっと引いたぞ」



次回の主役

高町 竜胆(問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ?)



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九限目 母親との生殖と書いてクソ野郎と読む


死んだ魚のような目で深夜テンションで執筆を続けると作者はこうなる→竜胆くんをいじめたくなる。

そんな九限目。




 

これは二人の少年少女のメールによるやりとりである。

 

宛先: 春日部 耀

件名:ちょっとおおお!?

本文

聞いてないんだけど!?ねぇ俺聞いてないんだけど!?

 

 

宛先:高町 竜胆

件名:無題

本文

どうしたの?

 

 

宛先:春日部 耀

件名:どうしたもこうしたもないよ!

本文

どうしてあの時自分がその飛鳥と一緒にやってるアイドルですって言わなかったのってことだよ!今朝偶然オリコンチャート見てお姉に味噌汁吹くところだったよ!?

 

 

宛先:高町 竜胆

件名:無題

本文

だって聞かれなかったもん。それに知らない方が変に気負わないと思ったから。

 

 

宛先:春日部 耀

件名:反論できない……

本文

いやまぁ確かにそうだけどさ……

 

 

宛先:高町 竜胆

件名:無題

本文

そうだ。こうして連絡しちゃったんだし今度の土曜日遊ぼうよ。

 

 

宛先:春日部 耀

件名:唐突じゃない!?

本文

なんで今までの文脈で突然そうなるの!?……まぁ構わないけど。

 

 

宛先:高町 竜胆

件名:無題

本文

じゃあ決まりだね。集合場所とかは追って決めよう。

 

 

 

◆◇◆

 

「最近リンちゃんの様子がおかしい」

 

竜胆のいない生徒会室。竜胆が「ちょっと今日は早めに帰らせてもらいます」なんて彼らしくもなく仕事をほっぽり出して部屋に戻って行って少し経ってから一輝が両肘を机につき、組んだ手を顎元に持って行きながらなぜかグラサン掛けてそう言った。

 

因みにそんなわけで現在竜胆に代わり彼と呉羽と同じ人間の命が仕事をしている。恨むなら2人と同じ人種であった己を恨めとは会長の弁。そもそも文化祭目前なのであんまりサボれない状況なのでサボられたのが痛手だったのだろう。

 

「どーしたのかいちょーさん……そんならしくもない本当に組織のトップみたいなポーズして」

 

「だいたい竜胆が変って……アイツ元から変なヤツだろ。やたら不運だし女子力高いし男の癖に巨乳だし」

 

「いやいや、俺が言ってるのはそういう外見的な話じゃない。最近どこかぼーっとしててな……仕事にも身が入ってない。あの生真面目で有名な、歴代生徒会の真剣な判断の下当選した枠の中で特にクソ真面目なリンちゃんがだぞ?これがおかしくないと言えるのか?」

 

「……言われてみれば」

 

「でもさ、私リンちゃんにはたまーにでもいいからこのところみたいに遊んでてもらってもいいと思うんだよね。ほら、ウチの生徒会って基本はーくんとリンちゃんが仕事してるじゃん?」

 

「そのうち八割はかいちょーさんとリンくんの喧嘩でめっちゃくちゃになるからボクが全部やり直してるんだけどね……」

 

もしかして一番休みが必要なのは呉羽なんじゃないのだろうか。

 

「それよりだ。流石にあのリンちゃんがこのまま、てのはこれから色々と面倒だ。主に承認のハンコ押すだけだった俺の仕事量が増える。だから……」

 

「「「だから?」」」

 

「この4人とプラスα何人か連れて今度の土曜日リンちゃん尾行しようぜ!」

 

こうして事件が始まったのだった。

 

◆◇◆

 

「え?竜胆クンの尾行?面白そうだね」

 

「じゃあ僕も。絶対面白そうだし」

 

健太と光が、

 

「竜胆の尾行?なんで俺が「いざちーいこーぜ!おねーちゃんとしては気になる話題ですなぁ!」いやだからなんで俺が……」

 

夜子と鈴蘭が、

 

「それは俺も気になるな」

 

「私もついてくよ。なんか面白そうだし……」

 

凍夜と琉璃が、

 

「そう言えば俺達アイツの尾行手伝ったよな」

 

「じゃあアイツも尾行しよーぜ」

 

明と修也が、

 

「俺達はパス。部屋で酒でも呑んでるよ」

 

「竜胆が女と遊んでるに3,000円」

 

「とことん親父臭いわねアンタら……まぁ私も呑むけど」

 

悟と皐、紅葉は断って……

 

「私パス。男尾行しても変なの見せられるのがオチよ」

 

「じゃあ私も」

 

「流石姐御……」

 

華蓮とレイラもパス。

 

「リンっちの尾行?どーする七夕?」

 

「正直僕はどれでも……花音が行くっていうんなら僕も行くけど」

 

「私も七夕次第かな」

 

「リア充爆発しろ」

 

花音と七夕は爆発して……

 

「僕は仕事あるから離れられないけど、あんまり騒ぎは起こさないでね」

 

「先生とのお約束だからね?」

 

五月雨先輩と真琴先生はお仕事。

 

「私はぁ、リンちゃんのかわいぃ〜ところを見れればなんでもいいですよぉ?」

 

「じゃあ俺もついてくかな。やることないし」

 

「あ、僕も」

 

葵と吹雪(お兄ちゃん)、立月が同行して……

 

「僕……ですか?……遠慮しときます。絶対嫌な予感するんで」

 

「ィハハハ!ってわけだ。悪りぃがオレと昴はナシってことでよろしくなぁ」

 

昴が逃げて夜雷がそれに便乗……

 

「僕ですか……僕はちょっとその日は人と会う約束を。あ、別に女性とかじゃないですよ!ただの恩人です!」

 

奏がはぐらかして。

 

その結果。

 

一輝、呉羽、夏凛、命、健太、光、明、修也、夜子、鈴蘭、葵、吹雪、立月、琉璃、凍夜という果たして尾行と呼べるのか謎な人数が参加するこもになったのだ。

 

◆◇◆

 

「おい、改めて見たが……なんだこの人数。絶対尾行の人数じゃねぇだろ」

 

当日人数を知らされずに集まったメンバーから開口一番夜子がそう言った。実際そうだからしょうがないのだが。

 

「いやー、アイツも誘おうコイツも誘おうってやってたらいつの間にか……これでも半分くらい断られたんだぜ?」

 

対する一輝は悪い悪い、と悪びれてない。

 

「これで半分って多すぎだろ……」

 

「じゃあ俺達含めてだいたい30人くらい誘ったってことか?」

 

「そーそー」

 

「バカじゃねぇの!?」

 

あまりにもあっけからんと言ってしまう一輝にさすがのメンバーも声を荒げる。だがこれくらいやらないと桃水原の生徒会長なんて肩書きだけの存在になってしまうほどこの高校とここの生徒会がぶっ飛んでるのもまた事実であって。

 

「それよりも……見ろ。リンちゃんがそわそわしだした。これはまさか……人、それも異性を待っているというのか?」

 

「な、なんですとぉーう!?お、おねーちゃん許しませんよ!そんなどこの馬の刺身とも知れない女に!リンには私というおねーちゃんがいるのに!」

 

「馬の骨な」

 

鈴蘭の大真面目なボケを夜子がナチュラルに返していると、すぐに竜胆は顔を尾行組からは見えない壁の向こうに目を移し、そこに少し歩いていく。

 

「しまった───!」

 

「見失う前になんとしても追わねば……あの様子だとそう遠くへは行っていないは───!?」

 

憎々しげに呟く修也。だが次に修也が見たのは衝撃的な映像だった。

 

「……なん、だと……!?」

 

「どうしたんだ修也!?俺達が混乱している間に何を見た!?」

 

「竜胆……アイツ」

 

「竜胆がどうしたんだ!?」

 

「あぁあああ……帽子とメガネ、あと普段どの番組出ててもショートパンツでスカート履いてる姿に違和感があったから一瞬気づかなかったが間違いない。アイツ───春日部 耀とデートしてやがるッッッ!!!」

 

「「「なっ……」」」

 

「「「んだとォーッ!!?」」」

 

一部の男性陣、その名も春日部ファン'sに衝撃走る。まさかあの、アイドルどころか女に無頓着なハズの竜胆が、そのアイドルとデート。

 

これは、決定的なスキャンダルだ。

 

「ふざけやがってええええええ!!!」

 

「いくらヒロインぶっても所詮アイツも肉欲に塗れた男なのかァァアアアア!!!」

 

「Mother Facker!!」

 

「↑のセリフは母親との生殖と書いてクソ野郎と読むからな!!」

 

「塗り潰す

徹底的に

塗り潰す

健太、心の一句」

 

「普段はあんな紳士ぶってて本性はそういうヤツだったのか!失望したぞ!!」

 

あーだこーだぶっ殺してやるだのと超物騒な会話が聞こえてくる。その騒ぎをそこは流石生徒会長。「バカモン!」という国民的長寿アニメばりに叱って止める。

 

「このバカチンがぁ!いいか!人という字はなぁ、人と人が支え合ってできるんだよ!だが今のお前らはどうだ!?憎しみのままにリンちゃんをコロスことだけ考えて……そんなお前らは腐ったミカンだ!腐ったミカンは周りも腐らせる!このままだったらメンバー全員でリンチなんて目も当てられないことになるぞ!」

 

「だが会長!俺達はこれを黙って見過ごすわけにはいかねぇ!それとも黙って見過ごせと言うのか!?」

 

「そうは言ってない……」

 

「だったら!」

 

「だからさ、こんな面白そうなこと陰湿に楽しく妨害してやろうZE☆」

 

「「「なんだ、会長ってやっぱ天才じゃん!」」」

 

夜子と呉羽、命の3人は竜胆の行く末を案じ、思わず合掌してしまった。

 

◆◇◆

 

「あ、竜胆が愛用してたコップが割れた」

 

「なんだか不吉ね……彼基本不運だから、より一層不安になるわ」

 

「真琴せんせー、五月雨せんぱーい、割れ物の処理の方お願いしていいですか?」

 

「はいはーい、待っててね」

 

「五月雨ちゃん、任せたよー」

 

「あら、竜胆の愛用していた包丁に皹が入ってるわ」

 

「あ、竜胆に作ってもらった靴紐が切れた」

 

「「「……………………」」」

 

「「「………なにがあったか知らないけど、死なないよね?」」」

 

哀れ、1分満たずで本人のあずかり知らぬところでさえフラグをバンバン立てまくる竜胆であった。

 

◆◇◆

 

「ビクゥ!?」

 

「どうしたの竜胆?」

 

3分の1が飲まれている選ばれたお茶を口から離して耀は竜胆に聞いてくる。だが竜胆もその怖気の正体をおぼろげにしかつかめていないらしく、あやふやな言葉でなんとか説明しようとする。

 

「い、いや……なんだか今俺の与り知らないところで何本もヤバいフラグが建てられたような気がして……」

 

「……寒気でもするの?熱?」

 

わけのわからないことをのたまる竜胆に耀は互いの額を当てあって竜胆の体温を確認しようとする。勿論素だ。

 

「ちょ、ちょっと春日部さん……これはスゴい恥ずかしいし周りから見ると絶対色々と勘違いされるって……!」

 

「勘違いされてもいいように変装してるんだから問題ないよ」

 

実際問題大有りなのだが、壁側から建物が崩れるくらいドンドンという音が聞こえる。中にはバゴォンとかシャレにならない音も鳴ってるし。

 

「おのれ腐れノンケの優男めええ!!」

 

「今すぐにでもその顔をぶん殴ってやりたい……!」

 

「友達が好きなアイドルと仲良くしてるだけでこの惨状……ヤバいだろこれ」

 

「で、でも彼らの怒りもある意味もっともなわけで……」

 

えーと、と命、立月、夜子の3人がなんとかフォローしようと頑張る。さすがに友人が友人に殺されるのだけはみたくないのだろう。

 

「まだだ。爪を研ぐんだ。獅子とはウサギを狩るにも全力……下調べもしているものだ。つまり、お前達のフラストレーションが極限まで溜まった瞬間こそがアイツをリア充から非リアの道へ叩き落すことこそが最もスッキリする瞬間なんだぜ?」

 

そして煽る生徒会長。陰湿で楽しい妨害とはもしやこのファン共含むでやっているのだろうか。

 

「くっそおおおおお!!」

 

「絶対殺してやるからな……!絶対だ!」

 

バゴン、バゴン、と壁にめり込むパンチ。最早壁メリの領域だ。

 

幸い、ある程度距離があったので別に超すごい聴力を持っているわけでもない2人にはその音は一切聞こえなかったが、その間にも竜胆は常に怖気が立っている。

 

「なんなのこの感覚……周りからすごい、殺されるような目で見られてる気がするんだけど……」

 

「大丈夫?よかったらメンタル行く?」

 

「俺は精神病患者じゃないですよ!?」

 

謎の恐怖感に駆られて少し喉が渇いてくる。竜胆が近くに自動販売機かコンビニがないかと見ていたが、それも見当たらない。

 

「うう……水もない」

 

「……はい、お茶でいいなら」

 

「ぶっふぉ!?いいい、いいあいあううういいやいやいや!!流石に飲みかけの飲み物貰うほどじゃないし!っていうかそんなことしたら、その、か、かかか……!」

 

「気にしないからいいよ?」

 

「俺が気にするの!」

 

高いツッコミスキルの汎用性は異常な程に凄い。一方で恋人めいた2人のやりとりが大黒柱を壊しても気が済まないレベルにまで達したヤツらには猛毒以外の何物でもない。

 

「ここいらが我慢の限界か……よしお前ら、待たせたな。そろそろちょっかいかけるぞ」

 

「「「シャーコラスッゾオラー!!!」」」

 

一輝がこれ以上静観するのはコイツらには不可能と判断し、動き出す。すると次の瞬間健太が携帯を取り出し、番号非通知で竜胆に電話する。

 

「あ……ごめん。俺だ」

 

「いいよ、待ってるから」

 

「ごめんね……もしもし?」

 

『私メリーさん。早速だけどあなたの後ろにいるの』

 

「───!?」

 

全身に鳥肌が立った。え、嘘。なんでそんなんが態々俺に電話してくんの!?みたいな心境で。

 

電話はすぐさま消えたが、ピュアな竜胆は電話が本当にメリーさんから来ていると信じ込んでいた。事実健太は少女の声で電話してたし。

 

「どうしたの?」

 

「……い、いや。なんでもないよ。ただのいたずら電話だったみたい」

 

全身の鳥肌と冷や汗をなんとか役者根性で隠して会話に戻る。すると今度はメールが届く。やはり誰からのメールかはわからない。

 

『ねぇ、なんで?なんで無視するの?ねえ、なんでなの?ねえねえねえねえねえねえねえなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで

 

削除ボタンを押すまで1秒とかからなかった。どういう仕組みか、竜胆の身体の後ろからだけ汗が滝のように出ている。

 

「大丈夫?なんか顔色が悪いけど?」

 

「う!?ううん!?大丈夫!大丈夫、問題ない!」

 

「問題しかないよね、それは」

 

なんとか虚勢を張っているものの、見ての通り怖いのが大の苦手な竜胆はバクバクと心臓が飛び出るくらいの音を立てながら耐える。いくら周りからの評価がクソ真面目で異性に無頓着といえどこの仕打ちはいぢめに近い。

 

(だ、誰だこんなことしてるのは!?って今度はLIN◯に知らないアカウントでホラーな内容がぁ!?もうやだよ助けてよおねーちゃん!!)

 

心の中で思わず姉を甘えた呼び方で呼んでしまう。それほど今の彼がテンパって幼児退行しかけているということだ。

 

「……落ち着いて竜胆」

 

「ううう……う?」

 

耀がゆさゆさと竜胆の巨乳ごと肩を揺らして正気を確かめる。

 

「……うええ……携帯怖いぃ……」

 

「………!これは、じゅるっ」

 

いつもハイテンションでウザいくらいに励ましてくる姉とは違って静かに諭すように落ち着いてと言った耀に親のような感情でも湧いたのか、無意識に泣き顔を晒してしまう。そして耀は危ない音を出している。

 

「……大丈夫。怖くない怖くない」

 

「「「な、なにぃーーッ!!?」」」

 

「あらあら、とってもかわいいですねぇー」

 

まさかあの竜胆がここまで取り乱すとは予想外だったのだろう、そして耀がこんな行動に出ることも予想だったのだろう。一同は声を揃えて叫んだ。勿論一輝も例外ではない。まぁ、弄りのネタが増えたのは確かだが。

 

「………!?あ、ああああああいいいや、これは、その!俺怖いのが苦手で!だからついそういうの、いたずらで誰かに送られたからでっ!他意はなくて!」

 

ハッとなった竜胆。つい手をブンブンさせて目の前のことを否定する。どう言い繕っても色々とヤバい方向に事が進んでしまっているのだが。

 

「……可愛かったから許す」

 

「……嫌な許され方なんだけど」

 

◆◇◆

 

「くっ……まさかリンちゃんにあんな必殺技があったなんて。不覚にもこの生徒会長寺西 一輝も一瞬萌えたぞ」

 

恐ろしい……これがギャップ萌えか。と続ける。完全に男として見てないのはご愛嬌。

 

「いや……俺だけじゃねぇ。ロリコンは勿論のこと、あの健太や夏凛、あまつさえ命まで本気で一瞬ヤラレタ……!恐るべし、リンちゃん」

 

こんなん本人は嬉しくもなんともない、むしろ泣き顔で「そんなの嫌だ!」と言うレベルである。

 

「なんてヤツだ……!恐怖メールの類は苦手なもの故に逆効果だったか!」

 

「ちぃ!じゃあ次はどうやってリンちゃんを貶めてやれば面白い感じにリンちゃんの困った顔が「俺がなんだって?会長」……うん?」

 

くっ、と歯噛みしながら次の作戦を考えようとした矢先、聞き覚えのある……ってか嫌な声が聞こえてくる。

 

「……………やぁ、リンちゃん」

 

「やぁ、会長に夏凛、はーくんと命と健太と光と凍夜と琉璃とお姉に夜子と明と修也に加えて立月に吹雪と葵……今の話からするとさっきの電話とか諸々全部テメェらの仕業だよな。どういうことかしっかり教えやがれ」

 

キレてる。口調がわかりやすいくらいに変わってる。あと目も座ってる。

 

一同沈黙。恐らく見つかった上にマジギレしてる竜胆を初めて見るので驚いているのだろう。……だが、その緊迫は修也によって壊された。

 

「……うるせえよ!お前がよりにもよって春日部 耀と一緒にデートしてんのがそもそもの発端なんだよ!聞けばそのことで暫く生徒会の業務に暫く身が入ってなかったそうじゃねぇか!」

 

「……は?」

 

その一言を切っ掛けに恨み言、逆恨みと言ってもいいレベルの非難が竜胆に集中する。これだけでいかにtruthが人気なのか伺える。

 

「そーだそーだ!だいたいアイドルに彼氏とか秋葉は禁止なんだぞー!丸刈りも辞さない!」

 

「……はぁ?彼氏?俺と春日部さんが?」

 

「そやろがぁ!」

 

何故か関西弁で答える健太。彼らしくもない感情論だ。

 

竜胆は面倒くさい誤解してるなぁ、と頭を掻く。後ろで疑問符を浮かべている耀に頭を下げて余計な時間を取らせたことに謝ると、いつもの口調に戻って語り出す。

 

「……違うよ。俺は修学旅行の時に会った彼女を空港まで連れて行って、こっちに帰ってから痴漢魔に襲われてるところを助けた折に知り合っただけ。名前だって先週のオリコンチャートの時に初めて知った。それに互いにそういう折り合いもつけてるから俺と春日部さんはそういう関係じゃない。今日だってそのことでメールしたらそのまま会話が弾んだだけだ」

 

「……え?」

 

「……それに俺、地元に彼女いるし」

 

「「「はぁぁああ!?」」」

 

なるほど、浮いた噂が全くないのはそういうことか。女に無頓着なのではなくて、もう彼女がいるからその手の噂が立つ余地がないのだろう。が、正直納得いかない。

 

「マジで?」

 

「マジで」

 

「……そっちの方もマジで?」

 

「嘘だと思うなら春日部さんに聞いてよ」

 

「……マジすか?」

 

「マジだよ」

 

即答。その答えが返ってきた途端、彼らはほっと胸を撫で下ろす。

 

「……まぁ、みんながそんなに春日部さんが好きっていうんなら誤解させるようなことしちゃってごめん。でもそれに関しては学校祭の時にウチに来てくれないかって言って経費がこっち持ちならってことでOK貰ったから。それでチャラにしてよ」

 

「え、それこそマジで?」

 

「それこそマジだよ。唐突に決めたことだったから会長には連絡してないけど、学園長には伝わってるはずだよ?」

 

「「「ごめんなさい」」」

 

清々しいほどの心変わりに竜胆は感服してしまったのだった。

 

「楽しい友達でいっぱいなんだね、竜胆の学校は」

 

楽しいで済むのかどうか、そんなレベルなのだがこれは。

 

 





竜胆くんメインという名の竜胆くんイジメ+学校祭フラグ乱立の前準備。竜胆くんの扱い悪くない?って?元々彼はこんなんだ。

さーて、次回の箱庭コラボは〜?(フグ母さん風)



竜胆「ほんっと怖かったんだからね!」

一輝「あーはいはい、リンちゃんはかわいいなぁ」

竜胆「むきー!」

命「で、どうでもいいけど次回の主役は?」

竜胆「健太」

健太「そっかー。僕かー……は?」

竜胆「健太」

健太「いやいやいや、普通にしれっと言わないで!」

竜胆「健太は普通がいいんだろ?」

健太「だからってこんな普通は嫌だよ!」

一輝「大丈夫大丈夫、健太が主役張るに相応しい回だから」

健太「え、なにそれ興味ある」

命「……えーと、問題児の里帰りだそうだ。一応寮生は全員里帰りするらしいが、健太がメインだとのこと」

健太「……あ(察し)」

竜胆「それじゃあ健太、次回のサブタイを」

健太「え〜……じ、次回『僕はアンタ達の人形じゃない!』……ちょっとやる気でるサブタイでよかった」


次回の主役 景山 健太(『異常な普通』も異世界から来るそうですよ?)



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十限目 僕はアンタ達の人形じゃない!


大変だ、原作改変著しいと(ネタ的に)意外にも好意的に受け入れられている明さんを超えた逸材が現れた。正直投稿するのを躊躇ったレベルです。結局投稿しましたけどね!

ただ、言えることは……みんな!原作者の人に許可得たからってなんでもやっていいわけじゃないゾ!(原作者様に許可もらいながら)




 

 

僕の両親は身勝手だ。

 

両親は僕が努力しても努力しなくても残す結果の変わらない、所謂なにをしても凡人でしかない人間だということを理解していた。

 

だが、両親は僕に結果を求める。

 

結果を成すことができなければ僕を殴り飛ばす。

 

曰く、『よくもそんな結果を恥ずかしげもなく見せられた』と。

 

僕が自分の"異常性"に気づいたのは、中学一年生の秋頃。そのころからなにをしても平均丁度、あるいはほぼ平均の結果しか残すことがなかった自分に違和感を感じた。

 

確か、光と会ったのも丁度それくらい。

 

まぁそれは置いておいて、僕はどれだけ勉学に力を入れても、どれだけ運動に身を置いても、何一つとして『結果に結びつかなかった』。

 

両親も僕が努力してその結果だったことを知っている。だというのに……いや、だからこそ両親は僕により結果を求めた。

 

自分達が成功した人間だから、どう足掻いても成功することのない僕の気持ちも知らないで。

 

結果を残さなければ暴力を振るって、結果を出すことがどれだけの努力を積み重ねてもないことを知っていながら僕に結果を追求する。両親は、人間の姿をしたナニカと言っても刺し違えがない。

 

どうせ憂さ晴らしだ。両親の暴力にはきっと『なにもできないお前には自分達の苦労なんてわかるはずもない』という意図があるのだろう。そんなのそっくりそのまま返してやる。

 

まぁ、結局なにが言いたいのかというと。

 

僕、景山 健太は両親の憂さ晴らしと学校側の規則で実家に帰る羽目になったということだ。

 

◆◇◆

 

「……帰って来たぞ。カナリアファミリーホーム」

 

「ここに帰ってくるのも丁度1年くらい前だね」

 

カナリアファミリーホーム。身寄りを失った夜子こと十六夜と夏凛を受け入れた、なんの変哲も無いただの孤児院。

 

「ったくなんでわざわざあの関東の山奥から九州の片田舎まで毎年来なきゃいけないんだか……まぁこんなのも今年で最後なわけなんだが」

 

「うんうん。さっさと金糸雀センセに会ってやることやって帰ろう」

 

「だな。んじゃあインターホン鳴らして……」

 

「いーざよいくーん!!夏凛ちゃんも!待ってたわよー!」

 

「げっ!金糸雀……なんで俺達が帰ってくるの知ってんだよ!?」

 

「そりゃあもう当然、学校から連絡がらあったからね。こうしてわざわざお出迎えの準備をしていたのよ」

 

インターホンを押そうとしたら後ろから金髪の女性に二人まとめて抱き締められる。彼女が金糸雀。名前からわかる通りカナリアファミリーホームを作った張本人だ。

 

「それと金糸雀、俺は女だ。その十六夜くんっていうのはやめろって何度も言ってるだろ」

 

「えー、自分を女って言う割にその一人称だったら認められないカナ?あでももしよかったら、学校のお友達のみんなみたいに夜子ちゃんって呼んであげても」

 

「それだけは勘弁してくれ」

 

この通り、と頭を下げる十六夜。金糸雀はそれを見るとしょうがないなぁ、と二人を離す。

 

「ほら、鈴華と焔、あと鈴も待ってるから、早めに来てね?」

 

「はーい、金糸雀センセ」

 

「あいよ……ったく、わざわざこんな気遣いいらねぇってのに……」

 

それが、カナリアファミリーホームの帰省。

 

◆◇◆

 

一方、京都行きの特急電車。

 

何故新幹線ではなく特急電車かと言うと、健太が帰りたくないから。どうせ帰ってもお決まりの説教と暴力。周りに言っても両親の権力で塗り潰されるのだからタチが悪い。

 

「おい健太……本当によかったのかい?家に帰るだなんて」

 

「学校の規則だからしょうがないの……それに光もついてく必要なんてないだろ?」

 

「そりゃあ、最愛の友健太がローテンションで帰ってこられたら目覚めが悪いからね、親友として凹んだ心をなんとかして学校に戻る前に立て直してやるためさ」

 

「それはどうも」

 

特急電車は新幹線より時間がかかる分健太の心に帰りたくないという思いが重くのしかかる。特急は間違いだった、とどうせ新幹線でも間違いだったかもなんて思う癖に思って、健太は露骨なため息をつく。

 

「京都か……帰りたくねぇ」

 

「さっきからおんなじことばかりだ……まぁ、気持ちはわかるけど」

 

はぁ……と健太のため息が特急電車の中に響いたのだった。

 

◆◇◆

 

「たりぃ」

 

ある場所、ある神社。そこに帰って来た一輝がまず言ってしまったのがこの発言だ。

 

生徒会の業務をハンコ以外殆どやってないのだからある意味このつぶやきは当然なのかもしれないのだが。

 

「宮司さん、御朱印帳お願いします」

 

「はいはい、300円になります」

 

神社にお参りに来た人から御朱印帳を求められた途端にこの作り笑顔。さすが会長きたない。

 

一輝は墨汁に筆を浸し、達筆に『鬼道神社』と書き、会長業務ですっかり慣れたハンコを丁寧に押す。そして締めに御朱印帳に紙を一枚挟んで、

 

「どうぞ」

 

「ありがとうございます!」

 

にこやかに、知ってる人から見たら気持ち悪いことこの上ないくらい清らかな笑みを浮かべて渡す。正直に言うと怖いレベルである。

 

「また来てくださいね」

 

一輝がそう言って受け取った人が去っていったのを尻目に……

 

「……マジでたるい」

 

この態度の変わりようである。本当に宮司なのか疑わしい。

 

「はぁ……まぁ明日には帰るから、今日1日だけしっかり働くか……」

 

めんどくせぇ、と呟きながら一輝は次の客にも作り笑顔と気持ち悪い清らかな笑みで対応するのだった。

 

◆◇◆

 

「……ついちゃったね、京都」

 

「……ついちゃったよ、京都」

 

京都府某所、電車から降りて暫くバスで移動していると、ふと光が呟いた言葉にほぼ同じ言葉で健太も返す。

 

「やだなぁ……帰りたくねぇな……」

 

「帰らないとって言ったのは健太だろ?ほら行くよ」

 

そろそろだな、と思った光はバスの降車ボタンを押してバスから健太を引っ張って降りる。

 

「ほら健太、あとは健太が自分で行かないとダメなんだからさっさと行ってきな」

 

「……はい」

 

健太は光を尻目にトボトボと歩き出す。冗談じゃなく捨てられたチワワみたいな目をしている。

 

光が曲がり角で見えなくなった辺りの、その辺の家より大きめの一軒家。もう一生近寄りたくなかった、悪夢の家。

 

「……………」

 

「そこで何をしている」

 

「ガッ!?」

 

健太が家を前にして突っ立っていると、突然背中を蹴られて吹っ飛ばされる。ああ、僕はこの家に帰ってきてしまったんだな、と否が応でも思わされる瞬間だった。

 

「……父さん」

 

「用があるのならさっさと入れ」

 

凡そ親とは言えないような淡白な声音。その声に健太は震えながら、これ以上蹴り飛ばされるのを恐れて家の中へと入っていった。

 

◆◇◆

 

「それで、何の用だ」

 

何の用だ……とは何の事だ。アンタ達が僕をここに呼んだんだろう。

 

「………」

 

「なんとか言ったらどうなの。まさかその無様な顔を晒す為だけに帰って来たなんて言うつもりはないでしょうね?」

 

「………」

 

人が呼んでおいて無様とはなんだ。

 

「なんとか言ったらどうだ」

 

「………」

 

アンタ達はその言葉しか脳みそに詰まってないのか。

 

「………」

 

「ぐっ!?ぎ!」

 

何も言わなかったら側頭部を蹴り飛ばされた。ハイキックというヤツだ。

 

「がっ……ふっ、ふっ……ぐぅっ……!」

 

「煩いぞ」

 

「ぐっ!!おごっ……!」

 

それに耐え切れず小さな悲鳴を挙げると、今度は首根っこを掴まれる。いや、正しくは気道のところを押しつぶされている。

 

これも、コイツらのやり口だ。勝手に暴力を振るっておいて少しでも悲鳴を挙げると『近所迷惑だ』と喉元を抑えられる。

 

しかも、コイツらは警察を呼ばれるという理由ではなく近所迷惑という理由でこんなことをして来る。罪悪感というものが一切、微塵もないのだ。

 

「ぐっ……かっ……!」

 

暫くするとその手も離される。今まで抑えられてきた気道が酸素を求めて荒く呼吸をする。いつもこうだ。僕はただ、帰って来いと言われたから帰って来ただけなのに。

 

「はぁ!はぁ!ひゅ、かひゅ……!」

 

肺が勢いよく酸素を求めたせいで胃液が少し床に垂れる。それを見た母は僕に平手をかます。

 

「下品なことをしないで頂戴。拭いておきなさい」

 

「はっ……はい、母さん」

 

もう嫌だ。こんなの、もう嫌だ……もう、僕は我慢の限界に差し掛かっている。これまでの6年間、よく耐え抜いたと自分を褒めてやりたい。

 

「それで……父さん、母さん……僕をここに呼んだ理由はなん、ですか」

 

「ああ、それなんだがな。あの学校に退校届を出した」

 

「なっ……!?」

 

退校届!?それってつまり、僕はあの学校から出て行かなきゃならないっていうのか!?

 

「ど、どういうことだよ!あの学校への学費はアンタ達が払うつもりはないとか言うから僕が働いて出してるんだぞ!?学校に通うかどうかの自由くらいはあるだろ!?」

 

「親にその態度はなっていないな」

 

「ふぐっ!?」

 

腹を殴られた。納得できない。そもそも桃水原に通う理由はできるだけこのクソヤロウ共から離れたかったからなのに。これじゃ本末転倒もいいとこじゃないか。

 

「あんな二流の学校に在学したところで将来社会に貢献できるわけがないだろう。いるだけ金の無駄だ」

 

「ふざけんな!高校は卒業しろと言ったのはアンタだろうが!だっていうのに今更、こんな時期にいるだけ無駄だと!?それも金かよ!」

 

ふざけんな、ふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんな!!彼処がいるだけ無駄な二流の学園だと!?そんなことだけは絶対に認めない!

 

「アンタ達は僕をなんだと思ってるんだ!?自分達の鬱憤を晴らすためだけのサンドバッグなのかよ!それとも将来自分達が楽するための金づるなのか!?」

 

「そんな口の利き方を教えたつもりはないわ」

 

「うるさい!僕にはアンタ達がバケモノに映って見える!そのバケモノが僕に教育云々を語るなよ!だいたい、アンタ達は僕にこういうことをし始めた時から一度だって僕の名前を呼んだことがなかった!そんなアンタ達が僕の親みたいな面をするなよ!」

 

父が顔面を殴ってきた。少しクラクラした。あと、鼻血がでている。

 

「文句ならあんな二流校に通っている自分に言うんだな。聞けばあの学園は学業に関係のない戯れを幾度としているそうじゃないか」

 

倒れこんだ僕の腹を蹴り飛ばし、父は嘲笑ってくる。そして父は、言ってはならないことを言ってしまった。

 

「そんな学校に通っている生徒は皆、社会に貢献なんてできない屑の集まりだろうよ」

 

………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………初めて、人を本気で殺したいと思った。

 

それほどまでに、コイツらは言ってはならないことを言ってしまった。

 

僕一人を貶すだけならどれだけよかったことか。とにかく僕は、完全にキレた。

 

父の拳が顔面に迫る。僕はそれを受け止めた。受け止めて、それを掴んだ。

 

「……いい加減にしろよ、お前ら」

 

「なんだ、その口の利き方は!」

 

左の拳を振るってきた父を拳が飛んでくる前に殴り飛ばす。ウチの学校にはやたらと腕っ節がいいヤツがいるので、ケンカとかの時にどうすれば効率的に相手を吹っ飛ばせるかとかはよく知っている。

 

「なっ……!」

 

「お前らはッ!一番言っちゃいけないことを言った!お前らが受け入れなくて、この世に絶望していた僕を受け入れてくれた僕の友達を貶した!!もう我慢なんかするもんか!僕は!お前らを僕の気がすむまで!僕が殴られた分まで殴り返してやる!!一方的に殴られる痛さと怖さ、お前達に教えられた感情を、お前達に教えてやるッ!!」

 

もう歯止めは効かない。ここには止める相手も、止められる相手もいない。止められる相手がいたところで構うものか。もう我慢なんてできない。何百回何千回だろうがぶん殴ってやる。

 

「きっ、貴様!自分がなにをやっているのかわかっているのか!?」

 

僕が父を殴り倒して腰を抜かした母に向けて父をぶん投げる。2人は激突して、身体の痛みに耐え切れずにいたところを2人まとめてぶん殴る。

 

「どれだけぶん殴っても!ぶん殴っても!ぶん殴っても!アンタ達が僕にしたことは、僕の友達に言ったことはなくならないんだよ!」

 

……どれくらい時間が経っただろうか。僕が気づくと、自分の手は両親を殴りに殴って皮が切れて血だらけになっていた。

 

「……気は済んだのかい?健太」

 

「……光」

 

僕の後ろにはいつの間にか光がいた。なんで入ってるんだ、とかいう野暮なツッコミはしない。どうせピッキングなりなんなりで途中からか一部始終かは知らないが見ていたんだろう。

 

「……待て。こんなこと、して許されるとでも思っているのか……?」

 

「……此の期に及んでまだ言うのかよ。自分達が正しいとか、そういう面して」

 

不思議と言葉がすらすらと出てくる。本当に、スカッとした気分だ。

 

「僕はもう金輪際アンタ達と関わる気なんてない。アンタ達と関わることがなくなるんだったら家族関係だって切ってやる。もう僕はアンタ達の人形じゃない!」

 

それだけ言うと僕はもうここにいたくなくなった。あの両親……いや、アイツらの顔をもう2度と見たくなかった。さっさとあの顔を記憶から抹消したかった。

 

「で、退学届出されちゃったんだろ?これからどうするんだよ」

 

「問題ナッシング。会長に電話したから……それと遺産の相続権の解消もするから、帰るのは明日になるかな」」

 

「便利だねぇ、神社ネットワーク……それで、相続権解消してカタチだけ血縁関係を切って、それからどうするんだよ」

 

光が悪戯っぽく聞いてくる。どうせ光のことだ。僕が次に言う言葉だってわかってるだろう。

 

「ん?そりゃあ、わかってるでしょ?」

 

とにかく、その日の健太はとても清々しい顔をしていた。と光は語る。

 

◆◇◆

 

「はい、というわけで景山 健太改め、『堤 健太』です。よろしくねー!」

 

「「「は?」」」

 

休み明け、その宣言は唐突に起こった。

 

「え、ちょ、それどういうこと?」

 

「まさか健太と光ってもう既にそういう……?」

 

「リア充ばっかだよこの学園!」

 

荒れに荒れる。まぁ詳しい説明とか一切せずにいっちゃったのだからしょうがないという感はある。

 

「えーとね、一から説明すると……いい加減両親に愛想が尽きたから相続権解消して光の親父さんと普通養子縁組ってカタチで契約したんだよ。これで法律上僕と光は義理の兄妹ってわけ」

 

唐突すぎる。本当に唐突すぎる。ここまで改変しちゃってよかったのか、作者自身ビビってます。

 

「まぁ、色々あったんだけど、これからは心機一転、新しくなったnew健太をヨロシクね!」

 

……それはともかく、その時の健太の顔はまさしくネオ・ニュー・健太……彼はある意味生まれ変わったのだった。

 

 





もう、やっちまったとしか言えないね。でもいいよね!違う作品で名前変わってるけど2人は兄妹なんだから!いいよね!(こじつけ)

冗談です。本気でヤバいことした気にはなってます。なのでこれからもちゃんとヤバい改変をする時はメッセージ送らせていただくので、覚悟してやがれよ!



次回予告のコーナー

健太「それじゃあ今回の主役、景山改め堤 健太でぇす!」

光「正直に言うと僕が妹なことに納得できない堤 光です!」

明「ロリコンデブ♪あーらしのなかー……誰がデブだ!リメイクによって苗字が変わった竜堂 明でぇす!」

夜子「親バカとブラコンに振り回される逆廻 十六夜……おい、なんで台本の表記が夜子なんだ!?」

健太「それはもう、お約束ってヤツじゃね?」

光「そーそ。リンちゃんがリンちゃんであるように!」

夜子「納得できる自分がいることにショックなんだが……」

明「いいじゃねぇか。他人の曲解で原作者にもロリコン呼ばわりされてる俺よりマシだ。それよりさっさと次回予告行こうぜ」

光「で、肝心の次回の主役は?ここにいる以上この2人のどっちかなんでしょ?」

健太「えーと、いないってさ。なんでも次々回の繋ぎになるらしいから、次の次回予告で主役発表だって」

夜子「へぇ……んじゃあ次回予告は、明でいいや、読め」

明「うっし任せろ。次回、『奏が女を連れてるぞ!殺せ!!』……………oh」

次回の主役 なし



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十一限目 奏が女を連れてるぞ!殺せ!!


今、箱庭に吹く風(ロリコン)の勇気と奇跡の歌い手(ヘタレ)の理性が試される刻……!




 

その日、竜堂 明は夢を見た。とても心地のいい夢だ。

 

どんな夢なのかは、夢特有の曖昧さで心地良さの原因すら忘れてしまいそうになってしまう。

 

顔もわからない、全体図は?と問われてもなんとなくでしか返せないくらいに曖昧だ。

 

……だが、その人物がどのような人物なのかは不思議とすぐわかる。その人物を見るだけで心が舞い上がってしまう。

 

そう───何故ならそれは、その人物は顔がわからずとも小さな身体とあどけなさの残る喋り方から幼女であることは間違いないのだから───!!

 

◆◇◆

 

「……ハッ。俺はいったいなんの夢を見ていたんだ……すげぇ、幸せな夢だった気が……クソッ、なんでこういうのに限って思い出せねぇんだ!」

 

日曜の朝、本気で悔しがる明。側から見ればとても残念と思われるが、明自身理解していないがっかりしている理由がわかれば残念の意味が180℃変わるのは目に見えている。

 

「……夢、夢……もっかい寝るか」

 

もっかい寝る、と言って明は布団に包まる。だが彼は忘れていたのだ。今日は日曜は日曜でも、学園祭の日であることを。

 

そしてこの布団に包まる行為こそが、明の未来を変えたのだった。

 

◆◇◆

 

「truthのライブチケットチケットはいらんかねー、SS席は6,000円、なんとP◯2のソフト希望小売価格と同じという超優しいお値段。安いよ安いよ〜」

 

超やる気無さそうな声でチケット販売に勤しむのは一輝。生徒会はライブが始まるまではチケット販売を仕事にしている。

 

「S席一つください」

 

「3627円でーす」

 

「税込み!?」

 

「冗談でーす」

 

そんなこんなやってても一輝の売り上げは100,000円を越している。truth恐るべし。

 

「……ああ、めんどくせぇ。これの仕事なんて3人に投げときゃ美少女3人組ってことでもっと売り上げ伸びるだろうに……あーヤダヤダ。なんで会長の俺まで付き合わされるのかねぇ」

 

いやその理屈はおかしい。むしろ会長だからこそやるべきだろうに。

 

「俺を働かせたければそれ相応のなにかを用意するといい!」

 

くっ、ああ言えばこう言う……!

 

「……まあ、今回のライブは学園祭最大の収入源だとはわかってる。押し付けるヤツがいない限り働くしかないという事か」

 

めんどくせー、と今日何度目かの愚痴。かくして一輝は超嫌々ながらも自分の仕事に戻っていったのだった。

 

◆◇◆

 

そして時は少し遡る。校門の前ではいつもの制服とは違い、コンサート用に自分で見繕った衣服を身に纏った奏は少々そわそわしていた。勿論校門なんて場所にいる以上変な騒ぎを避けるために奏は変装用メガネを着用している。それでも衣服が一般客とも生徒とも特殊なものを着ているため多少注目はされているのだが。

 

「……あ、来た」

 

ぽつり、と奏が呟く。彼の視線の先にはあまり似ているとは言えない二人の少女がいた。

 

「待たせてすみません、奏」

 

「ううん、そんなに待ってないですし。来てくれて嬉しいよ、彩鳥さん」

 

二人の少女の片方、金髪を持つ彩鳥が奏に親しげな敬語を使って接してくる。

 

一応それなりに交流してはいるのだが、いかんせん二人共素で敬語を使うので少しよそよそしさを感じる。

 

「それで、そちらの方が……」

 

「久遠 飛鳥よ。貴方が奇跡の歌い手ね……妹から話は聞いてるし、妹がお世話になったわね」

 

「いえ、倒れている人を助けるのは人として当たり前ですから」

 

気にしないでください、と続ける。

 

そんな奏の様子を伺っていた飛鳥はふぅん、と呟いて彩鳥に向き直る。

 

「なかなかいい男性じゃない」

 

「……なぜ態々私の方に向き直ってそう言うのかしら」

 

彩鳥は奏に対して使うような敬語を飛鳥の前では使わなかった。いや、いくら財閥令嬢とはいえ今時の姉妹に話し方にまで差が出てくるのはおかしいとは思うが。

 

「あ……ところで、久遠……さん?」

 

「飛鳥で結構よ。彩鳥も名前で呼んでいるのにそれは差があるように感じるわ」

 

「そう、ですか。では飛鳥さん。質問ですけど……えと、もう一人、春日部さんはどちらに?」

 

「……あの子なら時間までには来ると思うわ。彼女、時間にルーズな上素の性格はとぼけているし、動物に好かれるから少し放っておくと猫や犬に全身包まれて元が誰なのか疑うわよ」

 

それでも時間は守るから問題ないと思うけど……と付け足す。奏はえー、となりながら気を取り直す。

 

「……そ、それじゃあ飛鳥さんは生徒会室で待っていてください。色々と騒がれると迷惑でしょうし……できれば、学園祭を楽しむのはライブが終わってからがこちらとしても嬉しいですし」

 

「そうね。流石にお邪魔させていただいている身としては騒ぎを起こすのはメディア的にも嬉しくないしね」

 

飛鳥は何故かニヤニヤとしながら承諾する。そんなことにゃ気づかなかった奏はこちらです、と飛鳥を誘導する。

 

「……なんでしょう、言いようのないムカムカがあります。あのお膳立ては万全、みたいな顔には特に」

 

彩鳥は口を三角にしながらぽつんと呟く。兎角、彩鳥は二人について行ったのだった。

 

◆◇◆

 

「姐御!姐御姐御姐御!!」

 

「なによロリコン、そんなに切羽詰まって。っていうかアンタ今日学園祭の早朝準備サボったでしょ。鈴蘭や昴達に話は聞いたわ」

 

奏の時とほぼ同時刻、ロリコン()はドタバタと近くにいた姐御こと華蓮に向かってくる。

 

正直彼女としては見た目がロリだと言われるためか、明と一対一で話すのは苦手だ。いつ変な事を言われるかわからないし、そうなった時に鈴蘭のようなボケスキルも竜胆のようなツッコミスキルも全て姐御スキルに還元されている華蓮には対応が難しい。

 

が、そこは流石の姐御。一応話は聞いてやる、というていだ。

 

「そんなことはどうでもいいんだよ姐御!俺は今日革命が起きた!」

 

「……革命?年中無休で幼女に欲情してるヤツの革命って嫌な予感しかしないんだけど」

 

「ちがわい!俺の描く幼女の理想像は曲線のないすらっとしたボディに絶えない笑顔、それになにより父性を刺激する言動を愛でることにあってきょぬーの姐御やリンちゃんに目を移しこそすれ、そこに究極という完成形は存在していないんだ!だから姐御とリンちゃんはストライクゾーンギリギリかするボール球だ!」

 

「……竜胆に連絡するわ。貴女のおねーちゃんがロリコンの理想の幼女像に見事に合致していて今にもヤバイことしそうって」

 

「やめて!」

 

華蓮がロリの素晴らしさと理想のロリを熱弁する明にドン引きしてスマートフォンを取り出す。決して彼女は間違った行為などしていない。

 

「それはともかくだ!今日俺の理想の幼女が夢の中に多分出てきたんだよ!すげくね!?」

 

「……なにそれ。もしかしてそれを言うためだけに態々私を呼び止めたの?」

 

「まぁそうなるかな!姐御だったら話聞いてくれるしな!」

 

「……竜胆、今ここに貴女のおねーちゃんが理想の幼女像と豪語するロリコンがいるのだけど」

 

「待ってえええ!やめてえええええ!!ドドドドって聞こえるよ!?全速力で廊下を駆け抜けて来る音が聞こえる!生徒会役員が廊下を全力疾走してるんだけど!?いやああああ後ろに阿修羅が見える!やめてたすけて俺はまだ死にたくな───

 

◆◇◆

 

アバー……という音が小さく木霊する。それを聞いた飛鳥がふと奏に質問をする。

 

「今……とても哀しい悲鳴が聞こえたのだけど、あれはなんなの?」

 

「あ、あぁ……多分、大方姉もしくは幼馴染を引き合いに出した人が生徒会役員のどっちかにしょっぴかれたんじゃないでしょうか……割とよくあることなので」

 

「こんなのが割とよくあるって相当アレな学校ね……」

 

「僕みたいなの含め、生徒の自主性を重んじるを大真面目に行き過ぎたような学校ですから……」

 

あはは……と自嘲気味に笑う。あくまで自分のようなの、というのは自分のようにプロとしてなにかをしていてもあくまで自主性を尊重するが故に許されている、ということなのだろう。

 

「奏、その物言いは自分を否定しているかのようで少し不愉快です」

 

「あ……ごめん、彩鳥さん。飛鳥さんも、気を悪くしたのなら謝るよ」

 

「いえ、私は特に気にしていないわ」

 

3人の会話が割と長めに続き、その会話も一段落ついた頃、丁度生徒会室に到着する。

 

「今役員はみんなライブチケットの販売の方に力を入れてますから、暫くはここで寛いでいてください。それと、照明のスイッチの横に内線が繋がってますから、なにかあったら連絡してくださいね」

 

「わかったわ……それじゃあ奏くん、妹をよろしくね」

 

「よろしくって……飛鳥さん、さっきも言った通り別に僕と彩鳥さんはそういう関係じゃありませんし」

 

「それは新曲に人の妹の名前付けるような人の言う台詞じゃないわね」

 

「う……ぐ、言い返せない……」

 

飛鳥に論破されて言葉が詰まってしまう。そんな中、本人の目の前でそういう話をされていたことに彩鳥が戸惑ったのか、少し頬を赤く染めながら奏の背中を突然押す。

 

「か、奏!飛鳥の……姉の妄言に付き合う必要なんてありません!さっさと行きますよ!」

 

「え、あ、ぁあ……うん。それじゃあ飛鳥さん、また後で」

 

「ええ、また後でね、奏くん」

 

なんで僕はこういう変なクジばっかり……と項垂れながら生徒会室から出る───

 

「……ん?」

 

「…………………………あっ」

 

「え?」

 

そこには先程まで影も形もなかった悟がいた。暫く固まる3人だったが、唐突に悟が笑顔で彩鳥に挨拶をするので、反射的に彩鳥も挨拶を返す。そして悟は生徒会室のある校舎と教室のある校舎を繋ぐ渡り廊下に顔を出して───

 

「生徒会室から出てきた奏が女を連れてるぞ!殺せ!!」

 

「めっさぁぁあああああつ!!」

 

「ぼくさぁぁああつ!」

 

「轢殺ッ!!」

 

「彩鳥さんごめんなさいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」

 

上から悟、夜雷、皐、明、奏。見事に奏に対する殺意で埋め尽くされんとする台詞の中、当の奏は彩鳥をお姫様抱っこしてその場からの全力脱出を図る。

 

「え?きゃあ!?ちょ、奏いきなりなにを───!?」

 

「しゃべってると舌噛んじゃう!!あと今は全速力でこの魔人皇帝達から逃げるのが最優先だよおおおおおお!!」

 

「リア充に()うてはリア充を斬り」

 

「リア充を殺せばまたリア充を殺す」

 

「爆殺したいから爆殺し」

 

「撃滅したいから撃滅する」

 

「「俺達に大義名分などないのさッ!!」」

 

「わけがわからないよ!?」

 

俺達が地獄だ、と語るようなヤツらから全神経を集中させて逃げる。なんとかして、なんとかして自分はともかく彩鳥を逃がせる場所に行かなくては、という焦燥感が襲ってくる。

 

「死んでたまるか死んでたまるか死んでたまるか死んでたまるか死んでたまるか死んでたまるか死んでたまるか死んでたまるか死んでたまるか死んでたまるか死んでたまるか死んでたまるか!!」

 

ちょっとだけ心の中が泣いている。あまり運動が得意ではない上に彩鳥を抱いている奏を嘲るように4人は奏の速度に合わせたスピードで追いかける。こいつら絶対疲れて動けなくなったところをリンチする気だ。

 

というか、明は何故竜胆に謎の暴力を振るわれてなおこんなことをするのか、というのが甚だ疑問である。

 

「僕は死なないぞ!死んでたまるもんかあああああ!!」

 

◆◇◆

 

そして突如始まる校内鬼ごっこ。奏が全力で逃げれば4人も全力で追う。そのうちの1人が彼、竜堂明。

 

「どこにいやがる……!?ぶっ殺してやる!あのいかにもクソヘタレな見た目の奏に彼女なんか作らせてたまるかってんだ……!」

 

なんと醜い私怨であろうか、しかし明はそれに全神経をそそいでフーフーと低く唸っているのだからタチが悪い。

 

そしてその奏はと言うと……

 

「ぜ、は……!ぐ、はぁ……!!」

 

「むごご……くる、ひぃ……」

 

「あ、ご、ごめん!」

 

その明のすぐ近くのちょっと広めの掃除道具入れに隠れていた。バレたら殺されるという恐怖と単純な疲労から発せられる荒れた息と共に奏は若干血走って、かつ瞳孔が開き切っているこの状況で発見されればどんな誤解を与えられるかわかったもんじゃない。

 

「っていうか……こんな学園祭に僕が女性といたってだけでここまで騒ぐことないでしょ……!」

 

ふぅ……と落ち着いた奏はとりあえず彩鳥に謝ろうと視線を移して───

 

「ぱぁ───!?ふぅ、ぉあ───ーー!??」

 

「………」

 

言葉にならない叫びとはこれを言うのだろうか。奏の奇声を挙げる奏と、あまりの距離間の近さと彼らしからぬ強引さでここまで連れられた彩鳥は共に超よくわからない状況。

 

「ごごごご、ごめんなさいごめんなさい!あの人達、その、変な人で!」

 

「い、いえ!その、先程の話で変な方だらけなのはなんとなく認識していたので!お気になさらず!?」

 

そしてその傍で2人……というか奏を殺すべく探す明、先程までの奏と同じく血走った瞳をしているのはお約束だ。

 

「どこだ……どこだどこだどこだ……!!」

 

そしていつもの彼なら見落とすことがなかったであろう周囲への配慮。それを怠った故に、

 

ドンッ

 

「ってぇな───!?」

 

「も、申し訳ない……少し人を探していて周りが見えなくなっていた」

 

目の前にいた少女に、明はそれ以上の言葉を紡ぐことができなかった。

 

金髪のその姿は圧倒的天使。黒基調の、学園祭という場に似合うゴスロリ服がただでさえあどけない、幼い外見に拍車をかけており……

 

「……天使がいた」

 

「……聞こえているのか?おーい」

 

つまり、絶世の美女(ロリ)なのだ。

 

「ふ、ファッ!?」

 

「ああ……すまない。驚かせてしまったのか?流石にこんな姿の者が1人で高校生の学園をうろつくなんて変に思われるのは仕方ないな」

 

いや違うっす!というのは明の心の叫び。おかしい、何故自分は先程高らかに告げた、愛でる対象であるはずのロリにここまで狼狽しているんだ!?どういうことなんだこれは!?まるで意味がわからんぞ!

 

「あ、や、すんません。よければ俺も探すの手伝いますけど、その……探してる人」

 

「本当か!?」

 

(やばいいいいい!!俺のなんか、リビドーみたいなのかかっとビングするうう!ビンビングだぁぁぁぁぁぁ!?)

 

下ネタを挟まないと死んでしまうくらいに酷い焦りようである。実際見目麗しい幼女から突然手を掴まれて嬉しそうな声音で上目遣いなんてされればロリコンにはたまったもんじゃない。

 

「ほ、本当!本当だから!」

 

「そうか!探して欲しい人は私の弟なんだ」

 

「お、弟、すか」

 

こんなロリロリしい姉を持つということは弟はよもや赤子ではなかろうか、と明が思案を張り巡らせる。が、その弟こそ明の予想だにしていなかった人物である。

 

「ああ、名前は月三波・クルーエ・修也。ここの生徒だ」

 

 

 

「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………HA?」

 

 

 

誰が予想しただろう、つまるところ、この幼女は、合法ロリなのだった。

 

そしてこれが明にとっての、後の戦いの日々の始まりでもある。そう、今まで散々リア充死すべしと言っていた彼に同じことが起こり、それでも自分の信念を曲げることなく、PTAとか自分の親とか警察とか周囲からの視線とか、そういうのと戦う日々の始まりなのであった───

 

 





今回のお話で明らかになった変更点

・修也くんとあの人は姉弟。(ただし修也くんのお父さんは本編の時点で色々とやらかしてるので実の姉弟であるかは謎)
・とりあえず彩鳥さんと飛鳥さんはタメ口するような程度には仲がいい。
・明くんの残念ぶりはもはや天元突破している。
・姐御マジ姐御。
・ドーモ、アキラ=サン。ロリコンスレイヤーです。



というわけでかっこうむしこと甲殻類です。逆?気にしない気にしない。

ってわけで次回予告コーナー。



明「天使がいた……」

竜胆「………」

修也「ダメだこりゃ。竜胆の侮蔑の目に反応返さない辺り本気で重症だぞ……」

七夕「っていうかなんで今僕は奏さんのとばっちりで追いかけられてるんでしょうか!?」

竜胆「……修也、次回予告しよっか」

修也「そうだな。今の明にやらせたらダメだ。んじゃあ……ゴホン、次回、『レティたんマジ天使』……これって感嘆符ついてないだけで酷さに関しては今までのサブタイと一切変わりないよな」

明「レティたんマジ天使……」



次回の主役……竜堂 明(問題児たちが異世界から来るそうですよ?〜箱庭に吹く風〜)



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十二限目 レティたんマジ天使


次回、明くん活躍のため今回は文字数約半分という驚きの体たらく!

ところでみなさん、この世界のどこかには自分の作品の主人公とヒロインが史上最大に不運な目に遭うのが待ち遠しくてコラボそっちのけで執筆してたクズ野郎がいるみたいですよ!いやー、ほんとダメダメですよねそういうの!しかも自分の主人公が可哀想な目に遭うのが楽しみってどんな変態ですかって話ですよ!

……あの、それ、僕です。はい。すみません。




 

「…………………行った?」

 

「……みたい、ですね」

 

明が謎のロリ少女のお手伝いに2人を探すのをやめてから少し、私立の学園祭の途中とは思えないほど静かになった廊下の掃除道具入れから一組の少年少女の声が聞こえる。

 

そーっと、周りが本当に安心であることを奏は確認すると、彩鳥の手を引っ張る。

 

「いや……人生で一番長く感じた1分だったよ」

 

「私もです。まさか突然殿方にこんなところに連れられるなんて……」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

さすがになんの断りもなしに女性を男と一緒に狭い掃除道具入れに突っ込むのはどうかと奏も悩んだが、それはまぁ命の危険だったので致し方なし。

 

奏は割とポジティブな男なのだ。

 

「とにかく、ここにいたら危険だ……彩鳥さん、早く僕の楽屋……いやダメだ。楽屋に入れば入ってこれないのはわかっているはず。なら不用意に近づくわけにもいかないか……」

 

くそっ、と思わず吐き捨てる。だが彩鳥はあらかじめ持ってきてあった腕時計を見て時間を確認している。

 

「奏。じゃあもう開き直って時間まで遊びましょう」

 

「……へ?」

 

「考えてみてください。今日屋台などが出ている場所は基本人が大勢いる場所……そこに仮に貴方を襲ってくる方がいたとします」

 

「う、うん」

 

「そんな状況で奇跡の歌い手に襲いかかれば事情を知らない人にはどちらが悪く映るのでしょうか」

 

「……鬼だ。この人鬼だ」

 

温厚で生真面目で優しそうな外見やにっこりとした表情とは裏腹にとんでもなく恐ろしいことをのたまった彩鳥に戦慄する。多分この人が一番怒らせたらいけない人だ……とか思いつつも。

 

「楽屋に来るのも遅れたら彼らの所為にすればいいんです。こんな目に遭ってるのも事情を説明する暇もなく襲ってきた彼らなのですから」

 

「……怖い、彩鳥さんが怖い……」

 

奏はきっと尻に敷かれる未来しかないのだと、誰もが予想のつく光景だった。

 

◆◇◆

 

わけがわからない。自分はなにか怪しい霊にでも取り憑かれたのか?

 

これが現在修也の姉を名乗るスーパープラチナブロンドのスーパーロリっ娘の後について修也を探す明の心情である。

 

「……えーと、ねぇ?いや、あの?」

 

「どうした?」

 

「いや……本当に修也の姉ちゃんなんでしょうか……と。失礼かもだけど、とても高校生の弟がいるようには見えなくて」

 

「ああ、そういうことか。それならよく聞かれるんだが……ほら」

 

マジでお姉さんなの?と問う明に少女はよく聞かれるからこんなこともあろうかと、と持っていた手提げ鞄から一枚のカードを明に見せた。

 

『大型二輪免許

月三波・ドラクレア・レティシア(21)』

 

あ、ロリじゃないけどロリだこれ。明は免許証を見た瞬間にそう思った。

 

「ミドルネームからファーストネームへの語呂が悪いのが私的に少し気になってるんだが……いやそれにしても、大型二輪はいいな。躍動感に溢れるエンジンの音に洗礼されたフォルム。なにより速度!私をバイクフェチに走らせた憎いヤツだよ……!」

 

うっとりと自分の免許を見ながらレティシアと書かれていた少女は自慢気にバイクの話をする。あれ?これヤバくね?修也の姉ちゃんヤバいよね?ってかその脚で大型二輪運転できるの?なんて不安と認められないとか、色々な感情が織り混ざってその結果───

 

「───趣味に打ち込める上にそれに全てを捧げてるような感じのレティたんマジ天使……」

 

結論、コイツ(ロリコン)コイツ(ロリコン)だった。バイクフェチの合法ロリとロリコンで割と優しいヤツ。2人のカオスが生み出すフィールはこれからどんな被害を(主に修也のメンタルに)引き起こすのか。その姿を後ろから見ていた葵は愉えt……愉悦に浸っていた。

 

◆◇◆

 

その頃の武道場。

 

そこで注目を浴びていた2人、健太と竜胆はなんかよくわかんないことになっていた。

 

形容するなら『健太が竜胆で竜胆が健太になってる』というのが一番しっくり来る。互いが互いに見えてきて見てる人もやってる本人達すらもうどっちがどっちなのかわからないのが現状と言ってもいい。

 

「『……ところで、副会長さんや』」

 

「『どうしたの、模倣演者様』」

 

互いに声だけ真似して話している。一応これは互いにだけ聞こえる程度の声量だと言うのにここも徹底する辺り流石は本職である。

 

「『さっき奏クンが女性を連れて夜雷や悟クン達から逃げ回っていたよ』」

 

「……………アイツら……」

 

一瞬だけ演技をやめて超怖いオーラを出しながら呟く竜胆。これには思わず健太もたじろいでしまう。

 

「……説教マニアを呼ぶしかない。命を派遣させて一人ずつシラミ潰しに消す」

 

消すとかなんだとか物騒なこと言いつつも2人は完璧に演技をしているのだから困る。

 

説教マニアさんに連絡するため、あとそろそろ春日部さんが来るはずだから最初に提案した以上は迎えに行かないとな……と考えつつ、早めに切り上げようと思いながら健太と共に踊る。

 

……なんか、知ってる人から見るとこの組み合わせは若干シュールであった。

 

◆◇◆

 

『修也、お前の姉ちゃんって言ってる合法ロリ美少女がお前を探してる。今どこ?』

 

明がこのメッセージを送って数分。未だに返事は返ってこない。

 

「……来ないな。学校関連でなにかあったか、単純に見てないか、あるいは携帯機器使いすぎて充電が切れたのか」

 

うーん、と呟きながら携帯の電源を切る。明の心情としては知り合い……それもそれなりの仲の悪友の姉と二人きりとか正直いたたまれないのだが、不幸にも何故か周囲には友人と呼べるほどの仲の人が全ッ然いない。

 

「しょーがないか。会長でも探して放送室の使用を許可してもらうかな……」

 

「いや、別にそこまでしてもらうことはないぞ?今は学園祭なんだから、生徒は生徒らしく楽しんだ方がいい」

 

「逆だよ逆、修也の姉ちゃん。生徒だからこそ学校で困ってる人は助けないと……それと修也の姉ちゃんみたいな(ロリぃ)人、俺は結構気にしちゃうタイプなんでね」

 

レティシアが外見と年齢を素早く書いた時だけのロリだということは重々承知だ。だがさすがこの男明。紳士レベルがカンストしている。

 

「っていうかアイツにパツキンのチャンネーがいるとか知らなかった」

 

「そうなのか?キミは……明、と言ったな。私の方は話なら帰郷する度によく聞いてるよ」

 

ゴンッ、と思わずそこにある壁に頭を突っ込んだ。あ、これヤバイ。もう既にこの人に俺がロリコンだって理解されてる。レティシアに見せないように壁の中にめり込んだ頭はダラダラと冷や汗が浮かんでいる。

 

「誠実な人と聞いていたが、見ず知らずの私を助けてくれるとはやはり良い人だな。小さな子も好きだと聞いている」

 

(……あれ、修也さん?クルーエさん?この人何か決定的なところで勘違いしてませんか?)

 

レティシアの口から予想外の言葉が出てきたので明は思わず目を丸くするが、すぐさま頭の中が文字で埋め尽くされんばかりに叫ぶ。

 

(いやいやいやいやいや!確かに俺時々人助けとかしますよ!一応原作もリメイク版も冒頭から猫助ける程度には正義感があるつもりですよ!?でもこれ、ロリコンが子供好きにすり替わってんじゃねぇか!いや別に原作からしてロリコン扱いされてもおかしくないっていうか、それでもロリコンではないという矜持はあったけども!ってなんの話をしてるんだ俺は!?)

 

おお、ゴウランガ。見よ、この突然の事態に混乱しまくっている明を。別にウシミツアワーでもないから周りは煩いが、彼の心はそれ以上に煩かった。

 

「今度どこかに連れて行ってやろう。勿論私のホン◯DN-◯1で」

 

「……ウィッス」

 

見た目幼女の運転するバイクとか怖いなぁ、とか思ってしまうのは仕方ないことなのだろうに。なんて明が思っていたそんな時、

 

「はぁ……まさか携帯の充電忘れるとはなぁ。携帯用の充電器も寮に置いて来ちまったし……ん?」

 

いた。ここに。誰が初めに呼んだかヘタレオブヘタレ、月三波・クルーエ・修也。その彼は明の連絡に音沙汰がない理由をまるでタイミングを見計らったかのように呟きながら登場した。

 

「おお、明。また幼女誑かし…………て」

 

「……ほう、姉に向かって幼女とは随分な物言いじゃないか弟よ」

 

「……姉、さん……?」

 

「ああ、お前の姉さんのレティシアだよ修也」

 

「………」

 

「………」

 

(き、気まずい……)

 

「戦術的撤退!!」

 

「逃すか!」

 

「は、速えええ!やめてくれ姉さん!腕は心臓の逆方向には決して曲がらない仕組みになってて……

ウボァー」

 

(し、修也がこうていの断末魔みたいな叫び声を上げて死んだぁぁああ!?)

 

「だいたいお前はだなっ、こういう場で女性の一人もエスコートできないからヘタレだなんだと呼ばれて……姉である私やオトウトの気持ちにもなってみないか!」

 

「そんな、こと言われても!別れが常に会っても出会いが常にあるわけじゃないようにっ、俺にはまだそういうのがいだだだだだだだ!!背骨が背骨が鯖折りにされるウウゥウウ!!」

 

「……修也、哀れんでやろう。それでもレティたんマジ天使」

 

そしてコイツもブレなかった。

 

◆◇◆

 

その日、一つの事件が発生した。桃水原学園のある山の反対側の方にある銀行で強盗が起こった。幸い盗まれた金額は100万円前後と比較的少なかったが……少なかった故に犯人の逃走を許してしまい、犯人は今も逃走中。

 

……なぜ、このタイミングでこんなことを伝えるのかというと……ぶっちゃけた話、その犯人が桃水原学園に逃走してきたからだ。

 

To be continue……→

 

「って!なんで俺と奏が奇妙な冒険してるみたいな締め方してんだ!」

 

 





ヒャッハー!次回は女性陣(と明くん)大暴れの回だァーッ!



次回予告のコーナーはなし!それではみなさんオタッシャデー!


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十三限目 手を出すんじゃねぇ


孤独の狐集中期間に入ります→他二作の更新停滞を犠牲に通常の3倍に。なんだ、僕はザクに乗ってたのか。

という訳でほぼ1ヶ月ぶりの超コラボ。女性陣大暴れとか書いたけど書き直してたらそうでもなくなってました!許してくださいなんでもしますから!




 

「桃水原学園にようこそ、春日部さん」

 

「うん。こっちこそ招いてくれてありがとう」

 

桃水原の裏門、客人はおろか人一人寄り付かない場所で耀と竜胆は互いに握手をしていた。バレると色々厄介だし。またこの前みたいに悪戯でホラーをされるのは御免だ。

 

「それじゃ、待合室として使う場所に案内するから……久遠さんを招いた人によると、今は一人らしいから」

 

「わかった」

 

竜胆の言葉を素直に聞き入れたかと思うと、耀はちゃっちゃかと校舎に入っていく。

 

「あ、ちょっと春日部さん!道わかるの!?」

 

「……わかんない」

 

ズッコケそうになった。わかっていたけど。

 

「……もう。案内するって言ったでしょ」

 

「ごめんね」

 

まるで手間のかかって人の話を聞かない妹を見てるみたいだ。竜胆はそう思いながら人に見つかって大事にならないルートを慎重に選ぶ。

 

気分は伝説のスパイアクションのボスのようだ。

 

◆◇◆

 

一方、奏。

 

劇を一幕終えたという健太から少し変装道具を拝借した奏は彩鳥と共に小さな綿菓子を頬張っている。

 

「それにしても、奏は普段の声は随分と小さいんですね」

 

「え?あ、友達といると大きくなるけど……多分喉のケアとかも考えなきゃだから、かな。小さいときからの習慣だから」

 

聞こえにくかったのならごめんなさい、と一言謝罪。

 

しかしそこを否定するのがやはり彩鳥。謝る必要などありませんと注意に似た叱責をする。

 

「それと、食が進んでいませんよ。いらないのならいただいてしまいますが」

 

「え゛っ!?そ、それは……ダメだよ!」

 

彩鳥がしいたけみたいな眼をして聞いてくるがそれを否定した奏は10秒要らずで綿菓子を食べ尽くす。

 

少し頬を主に染めながら奏は立ち上がって近くのかき氷を一つ頼んだ。

 

「はい……美味しく食べなさいよ奏」

 

「え?」

 

突然変装してる自分の名前を看破したのが驚いたのか、奏は思わずかき氷を手渡した人物を見る。

 

「華蓮さん?」

 

「その変装私達からすればバレッバレよ。センスもないし。仮にも貴方みたいな有名人がデートをするならもう少し身なりに気を使った方がいいわ」

 

奏にかき氷を渡したのは我らが姐御、華蓮。なるほど確かに、彼女の言うとおり今の奏は演劇部から借りたものを適当に組み合わせただけなのでひどく不似合いだ。

 

だがしかし、

 

「……なんで、デート?」

 

「貴方がバカ達と同類だとは微塵も思ってなかったわ」

 

「それ酷くない!?」

 

少しほろっと涙を流して反論する奏。しかしこの短い問答だけで彼が残念な人であることは姐御には手に取るようにわかる。

 

「……まぁいいわ。それで喉を冷やしてさっさと楽屋に入りなさいな」

 

「……はい」

 

華蓮の激励?を受けた奏はプラスティックのスプーンを二つ受け取り、彩鳥の元へ戻ってくる。奏の悲しみを助長させるかのようにかき氷はやたらとでかく、そして冷たい。

 

「あ、奏。おかえりなさい」

 

「ただいま……はい」

 

「……?スプーンを二つ貰ってきたのですか?」

 

「うん。ほら、このかき氷大きいからさ。それにこの量をひとりで食べたらお腹壊しそうだから、よかったら彩鳥さんも食べてよ」

 

「そうですか、では遠慮なく頂きましょう」

 

彩鳥は本当に遠慮なくかき氷を食べ始めた。そんな彼女の姿を見た奏は少しだけほっこりし、急かされたのですぐに食べ始めるのだった。

 

「うーん、美味しい」

 

「ですね。作った方は偉大です」

 

ブルーハワイのシロップが程よい味を出している。少しずつかき氷を二人で食べているその様はまるで恋人の如く。

 

「しかしどうしようか……あれじゃ楽屋に近づけさえしないよ」

 

「困ったものですね。どこかその辺りに便利なものが転がっていないか……」

 

「あら、お困りのようねお二人様?」

 

「「え?」」

 

◆◇◆

 

「しっかしまぁ、よくもこんな似てない姉弟がいたもんだな」

 

「うん、よく言われるよ。親が違うんじゃないかって言われるくらいにはな」

 

「姉さん、あの親父がなにやらかしてるかわかんないんだからそういうのやめようぜ」

 

やあ、明です。ようやくレティた……レティシアさんが弟に会えたと思ったらあら大変。その弟があろうことか修也でした。

 

ぐぬぬ……なんてうらや、羨ましいヤツなんだ!こんな美ロリが姉だなんて!

 

とまぁ、それはおいといて。本当にこの二人似てないな。髪の色もそうだし、目の色も違う。

 

親父さんがなんのと言っているが……まさか二人は異母姉弟!?

 

……と質問してみたけどどうも違うようだ。正真正銘同じ母親の腹から出てきた立派な姉弟。ただその親父さんはやたらフラグを乱立させるからちょっと怪しいらしい。

 

「……で、姉さんはなんでわざわざこんな山ん中まで来たんだ?弟の顔を見るため……なわけないだろ。どっかのアホ姉じゃないんだし」

 

いるね!弟の顔を見るためなら宇宙の果てから果てまでひとっ飛びしそうなおねーちゃんが!

 

「勿論そんなわけない」

 

レティシアさんマジひでぇ!それが仮にも弟の前で言うことかよ!

 

「いやなに、この学園にお前の大好きなアイドルが来るらしいじゃあないか。姉として弟の趣味嗜好に少しでも理解を深めようという私なりの気遣いだったのだが」

 

「……カエレー、シッシッ」

 

露骨に嫌そうな顔をする修也。多分自分の大好きなアイドルを追っかけてる姿を肉親の肉眼で見られたくないのだろう。わかるぞその気持ち。だがもっとその辺オープンにしてもいい!俺的には!

 

「帰るわけないだろう、ここに来るのにいくら掛けたと思っているんだ。ここまで来てなにもせずに帰れと言うのかお前は」

 

「そういうわけじゃないけどさ……ああ、明」

 

お、なんか呼ばれた。

 

「なんだ、修也」

 

「お前に任せると非っ常ォーに不安だが姉さんを頼む。取り敢えずライブを見るにしても俺のいるところまで近づかせないでくれ」

 

「……何席?」

 

「SS」

 

「おk把握」

 

あまりにも清々しく即答したものだからビビっちまった。この学校のtruthのファン怖え。

 

「……と、悪いけど少しトイレ行ってくるよ。二人は先に行っててくれ」

 

「おう、あんまり長居はするなよ?」

 

◆◇◆

 

「……ホントに協力してくれるんだよね?」

 

「勿論よ。男共の下らない嫉妬でがくえんさい壊されたらたまったもんじゃないわ」

 

奏と彩鳥のふたりの前に現れた人物は紅葉であった。曰く「面白そうだから手伝う」とのこと。

 

「ところで、協力と言ってもどうするんですか?」

 

「簡単よ。アイツら纏めて座敷童子の力で不幸にしてやるのよ」

 

「うわぁ……」

 

ある程度ここの人のぶっ飛び具合に慣れてるはずの奏も思わずドン引きである。なにがある程度慣れたなんて思ってたのは大きな間違いだったようだ。

 

「でも背に腹は変えられないよね……頼むよ」

 

「頼まれたわ……ほいっと」

 

適当な掛け声だったが、効果は抜群だ。

 

「うおっ、なんだこれ!?蜂の大群がピンポイントに俺だけ狙ってくる!?」

 

「あぁー急にどこからかペンキが飛んで!」

 

……凄惨な状況になった。

 

あるものは蜂から全力で逃げ惑い、あるものはペンキを全身に被る。

 

「さぁ~て、お前らがバカなことやったのは知ってる。SEKKYOの時間だ」

 

「み、みこっ、ヤメローシニタクナーイ!」

 

「AIBOOOOOO!!うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「……これはひどい」

 

思わず奏もこの一言が出るだけだった。隣の彩鳥も見てはいけないものを見てしまったかのように目をそらす。

 

「さ、終わったわ。さっさと行きなさい」

 

「……あ、ありがとう」

 

こうして奏は楽屋に向かったのだった。

 

◆◇◆

 

視点は巡りに巡って、ライブ会場として選ばれた第一アリーナ。

 

なんで学園にアリーナがあるとか言われると、この学園が広いからとしか言えない。広い学園作ったら生徒が増えて、だったら施設も増やそうという酷い悪循環の末に生まれたのだ。

 

因みにこのアリーナ、収容人数がなんと20000人という無駄に贅沢仕様。日本武道館もビックリである。

 

だがそんなの関係ねぇと言わんばかりにアリーナには人で一杯だ。立ち見しないといけないくらいには人がいる。

 

「……うわぁ、緊張する」

 

楽屋についてからすぐさまアリーナ直行を命じられた奏は舞台裏で超ビビってた。

 

「なにを今更……貴方は世界的にも名を馳せてる"奇跡の歌い手"天歌 奏でしょう。ビビってどうするんですか」

 

「僕はこういうのに慣れないから活動はCDメインなんだよ……何年か前歌中毒っていう病気があったでしょ?」

 

「名前くらいは。麻薬の一種と聞いてますが」

 

「その麻薬が僕の歌なんだよ……僕の歌を聞いた人の中には『"奇跡の歌い手"の生声が聞きたい』って酷い中毒症状を起こしたんだよ」

 

「……は?」

 

「以来僕の音楽活動はCDメインを余儀なくされて、今に至るってわけ」

 

いや、まさか中毒症状なんて誰も思わないよ……みたいなことをブツブツ呟く奏。嘘みたいな話だが彼の嫌なことを思い出したような顔は間違いなく真実を物語っている。

 

「でもリハーサルの段階でこんなに人が来るなんて……飛鳥さんは凄いね」

 

「そんなことないです。私生活はわりとズボラだし、料理できない芸人にカウントされるような人間の上姉の尊厳なんて毛ほどもありません。その上アイドルになる前なんてしょっちゅう家を抜け出して『ハロウィンパーティを楽しんでくるわ』なんて言い出す始末。なんですかアレは」

 

奏が素直に賞賛したらこの言い様だ。彩鳥は飛鳥に恨みでもあるのだろうか。

 

「……そうなんだ」

 

「そうなんです」

 

きっぱり断言されるってどうなんだろうか。奏はちょっとだけ飛鳥に同情したかと思うと、思い切り自分の頬を叩く。

 

「……っし。いくらか楽になったよ。ありがとう彩鳥さん」

 

「この程度であればいつでも」

 

礼を言う奏に大したことはしていない、と返す彩鳥。そんなこんなしていると今度は自分の番になったようで、奏はがんばりますかー、みたいな感じでステージに上がる―――

 

「オイコラてめぇら動くな―――!!」

 

「―――はい?」

 

突如、なにかが破裂したような音が聞こえたかと思うと特定の箇所から白い煙が立ち込めた。

 

銃声だ

 

誰がそう呟いたのかは定かではない。だが確かなのは、明確な糸を以てこの銃声が鳴らされたということだけ―――

 

それを理解した瞬間、アリーナにいた生徒は皆々震え、叫んだ。いかにこの学園の生徒の頭がぶっ飛んでても所詮はただの高校生で一般市民。パニック状態でも本能的な恐怖に打ち勝つなど困難な話だ。

 

「うるせぇぞ!静かにしねぇか!!」

 

もう一度銃声。その圧力で生徒達は押し黙り、なにもできないことへの緊迫感と恐怖が込み上げる。

 

「学園長はいるか!?」

 

男の怒声に対して数秒後、すぐに放送というカタチで返答が帰って来た。

 

『私が学園長の白夜だ。お前達のことならもう既に連絡も知っておったし通報もしてある。して、私に何用だ?』

 

学園長を名乗るのはおよそ大人の女性とは思えないような高く幼さの残る声だった。

 

しかし、その喋り方や声に威厳を感じるのは何故だろうか。男は少しだけ気圧されながらも強気に振る舞う。

 

「逃走用の車を出せ!あとは警察にこの件に関わらせるな!」

 

『……断る、と言えば?』

 

「人質の中から2、3人選んで撃ち殺す」

 

ざわ……ざわ……とアリーナの人達に明確な動揺が生まれる。それを聞いた白夜はマイク越しでもわかる露骨な溜め息をついてすぐ横にいるのであろう誰かに話し掛ける。

 

『おい、車を手配してくれ』

 

『……わかりました』

 

渋々、といった反応だった。それを聞いたもう一人の男はアリーナの観客に急かすように叫ぶ。

 

「二人だ!二人来い!向こうが妙な真似をしたらすぐに撃ち殺せるようにな!」

 

「んなっ……!?」

 

まだステージに立っていなかった奏は舞台裏で驚愕した。これじゃあ少しも怪しい動きができない。

 

そんな奏を見た彩鳥は妙案を思い付いたかのように後ろの非常用出口に視線を移し、奏をそちらに突き飛ばす。

 

「……は?」

 

「奏、誰か助けを呼んできてください。私が彼らをステージにまで誘きだしますから、その隙に―――」

 

「だ、ダメ」

 

だ、とまでは続かなかった。彩鳥の真剣な眼差しは奏に反論することを許さず、奏の身体がまるで蛇に睨まれた蛙のように固まってしまう。

 

「お願いです。成し遂げてください」

 

「……あ、」

 

奏がなにかを言う前に彩鳥はステージに向かっていった。その後ろ姿は「皆を助けられるのは貴方しかいない」と催促しているかのようで、奏は嫌が応でも彩鳥の言われたことを果たすしか道を絶たれたのだった。

 

「人質になら私がなりましょう。皆を解放しろ……などと愚直なことは言いません」

 

ステージに上がった彩鳥は自身の存在感を示すように備え付けのマイクを使った。

 

「あ、彩鳥!?貴女一体なにを―――」

 

「飛鳥には関係ありません。さぁ、一人立候補しましたよ」

 

威勢よく出てきた彩鳥に二人組は顔を醜悪に歪める。

 

「そうか……ならもう一人だ!それ以上は逃げるときの荷物になる!」

 

完全に、とは言わないが油断が少し見てとれる。アリーナにいる人間や正面玄関から入ってきた人間の反抗には動じないかもしれないのにしれないが、奏が上手くやってくれているのなら。

 

(さあ、これでここにいる人達の勇気をある程度煽った。あと一人、私と同じ立場になると言える人がいれば……)

 

「ならばもう一人は私が立候補しよう」

 

ステージから離れた客席から声が挙がった。金髪のブロンドにゴシックな服装に身を包んでいる彼女は、月三波・ドラクレア・レティシア。

 

「な、姉さん!?」

 

「なに、私はここの生徒ではないし一応大人だ。大人は子供を守るものだろう」

 

レティシアの立候補に反発しようとした修也だが、それを見越していたのかレティシアは軽く宥める。そして視線を二人の男に送り、若干高圧的に話す。

 

「そら、私と彼女で二人だ。ここだと万が一誤射や弾の貫通で関係のない人も怪我しかねない。さっさとステージに上がるんだな」

 

「んのガキ……黙ってりゃペラペラとよくしゃべりやがる……!」

 

二人はレティシアに促されるまま彼女を連れてステージに上がる。

 

ステージに上がると、彩鳥がレティシアに対して頭を垂らして謝る。

 

「申し訳ありません。煽るような真似をして」

 

「いや、キミの勇気に触発されただけさ。キミは悪くない」

 

「そう言って頂けると助かります」

 

二人は無抵抗の証として両手足を結ばれて二人の近くに転がされる。少しだけ痛かったが、自分からこの立場を買って出た以上はそんな泣き言を言っていられない。

 

(奏……頼みましたよ……)

 

勝ちを確信したような顔を見せる二人を睨みながら、彩鳥は奏にこの顛末を託したのだった。

 

◆◇◆

 

「あースッキリした」

 

アリーナでも起こっていることを一切知らずにアリーナへ向かう明。まぁ、アリーナが防音性を備えているし白夜も無用な混乱を避けるためにピンポイントで放送を繋いでいたのだから、今の今までトイレにいた明は知らなくても無理はない。

 

「早くアリーナに行かねぇとな……レティた、レティシアさんを待たせるのは忍びない」

 

少し駆け足気味でアリーナを目指す。幸運だったのは、二人の進行ルートが完璧に被っていたことだろう。

 

「あ、明くん!」

 

「あれ、奏……センパイ。今の時間はリハじゃないんすか?」

 

「それどころじゃないんだよ!今アリーナが強盗に襲われてて……アリーナにいる人が人質に取られてるんだ!」

 

「な……にぃ……!?」

 

では、レティシアもその人質の中にいることは想像に難くない。驚愕に揺れた明は思わず奏の肩を掴む。

 

「だったらなんでアンタだけノコノコ逃げてるんすか!?あそこにゃ友達とその姉さんがいるんすよ!?」

 

「それは僕だって同じだよ!助けを呼んでどうにかしてほしいって頼まれたんだ!」

 

焦りのあまり平静でいられなかった明を諭す奏。落ち着きを取り戻した明は「すんません……」と謝る。

 

「兎に角、すぐに行こう。あんまり人集めに時間はとれないから、帰路に誰とも会わなかったら僕ら二人だけになるけど」

 

「かまわねーっす」

 

奏と明は急いでアリーナの裏口に戻る。途中はやはりというかなんというか、誰とも会うことはなかった。

 

「アレか……って、レティシアさん!?なんであの人が……」

 

「ダメだ明くん!冷静になって!」

 

「これが落ち着いてられるか!あの人は……あの人は……!?」

 

(……あれ、俺はあの人のことどう思ってるんだ?)

 

好きか嫌いかと聞かれたら好きだと速答する。一緒に歩いたのはたかだか10数分だったが、それだけでも彼女の人となりは充分見えた。

 

見た目だって自分の大好きな小さな身体だ。修也に対して見せた姉らしさというのもまた好意的だ。

 

だが、その好きは愛でる好きなのか、あるいはもっと違う、漠然とした好きなのか―――

 

「……いや、()()なんだろうな。そんなの自分でも簡単にわかる」

 

「……好きなのかい、あの子」

 

「……ああ、俺はあの人が、レティシアが好きだ。多分一目惚れ」

 

「……そっか。僕もね、あの人……彩鳥さんのことが好きだ」

 

「……センパイ、追っかけてすんませんでした」

 

「いいんだよ……って、ああ!?」

 

思わず奏は目を疑った。なかなか車を用意しない白夜に痺れを切らしたのか、銃口を彩鳥とレティシアに向ける。

 

プッツン。擬音が確実に聞こえる、擬音じゃない音になった。

 

「……センパイ、止めんなよ」

 

「止めないよ……止めないともああ止めないさ」

 

「「あいつらぶっ潰す!!」」

 

恋とはなんたる恐ろしさか。奏と明はまったく同じコメントを残して二人で非常用出口の扉を蹴り破った。

 

バゴォンッ!という清々しいくらいの音が鳴りながら扉が開いたので、思わず二人の目が音の発生源である扉に向かう。

 

明が疾風と形容されるような全力ダッシュで二人の持つ銃を鉄の歯車のボスもビックリの格闘術ではたき落とす。

 

続いてそれを拾って1つを奏になげわたす。二人とも拳銃を逆手に持ち、引き金に指を触れていないことから発砲するつもりは皆無だとわかる。

 

「「その人に―――」」

 

大きく振りかぶって銃身の部分で思いっきりぶん殴る。拳銃の持つ重みが二人の顔面に突き刺さり、その身体がふっとばされる。

 

「「手を出すんじゃねぇぇええッッ!!」」

 

完全に二人は伸びた。まぁ顔面に思いっきり振りかぶった拳銃が突き刺さったらそうなるのも無理はないだろう。

 

二人は拳もう必用ないといった風に銃を男達の胸に投げ、無言で縛られている彩鳥とレティシアを解放する。

 

「……あー、緊張した」

 

「嘘つけ、最初に飛び出したのセンパイだろ」

 

一安心した二人は緊張がパッと剥がれたように呟く。暫くしてから奏は逆に強盗二人を縛り、事が終わったことを証明する。

 

「みなさん、強盗は制圧しました!もう安心してください!」

 

そう言った瞬間、観客席から拍手喝采が巻き起こる。純粋に喜ぶ者、歌以外からっきしな"奇跡の歌い手"が歌以外でなにかを成したこと、二人が助けたことを信じられない者……様々だ。

 

「……彩鳥さんがあんなこと言わなきゃもっと時間がかかってたかもしれない……ありがとう」

 

自身が見せられる精一杯の笑顔で彩鳥に感謝する。CD製作の過程でPVなども作る都合上わりとこういうのは慣れている。

 

が、次のことにはさしもの奏も予想外のものだった。

 

「……か、奏ええ!!」

 

「は、はぁあ!?」

 

彩鳥に抱きつかれた。年相応な声で、唐突に。

 

「ホントは怖かったんです!だから早く来て欲しかった!だから、だから本当に……うえええええ!!」

 

「ちょ、彩鳥さん!?なんでこんな状況で、あ、ちょ、写真撮らないで!スキャンダルじゃないからね!?そこの男も仇を見るような目をしないで!」

 

「奏ぇ……奏奏奏かなでかなでかなでぇ……!」

 

「待って、僕の人生が色々と終わる……僕は、僕はねぇ―――」

 

哀れ、奏はヤク中みたいな断末魔を挙げて逝かれてしまわれた。

 

「……あー、レティシアさん」

 

舞台裏、奏という尊い犠牲を払って明とレティシアは非常用出口に向かっていた。

 

「助かったよ明。実にカッコ良かった」

 

「え、そ、そうかな……」

 

「そうだとも。少なくとも一番近くで見ていた私は保証するぞ」

 

「……ならいいんだけど」

 

表でてんやんやと騒いでいる奏をBGMに、明は喋った。

 

「―――、―――」

 

「―――」

 

二人の会話は表の喧騒に混じって聞こえなかったが、学園祭は確かに、成功したのだった。

 

◆◇◆

 

翌日、

 

桃水原が取り寄せている新聞紙には恥ずかしいくらいにデカデカと彩鳥に抱きつかれる奏の写真が載っていた。

 

"奇跡の歌い手、2つの奇跡。学園祭に乱入した強盗を鎮圧し、truthの久遠 飛鳥の双子の妹との交際発覚!"

 

……御愁傷様である。

 

因みに、奏と彩鳥を追い回していた方達は明も一緒に命にお説教されました。

 

◆◇◆

 

「……へぇ、ここが桃水原学園か。なかなか、面白そうじゃん」

 

 





リア充を端から見ることの面白さよ。

ああ、本編の暁さんとのコラボや感情のない少女も書かないと……

以下、次回予告コーナー

七夕「おめでとうございます」

呉羽「えっと……おめでとう、でいいんだよね」

明「ありがとう!」

奏「僕はこれからどうやって生きていけばいいんだ……新聞にデカデカと乗るわ東京に呼び出されて生会見するハメになるわで……」

命「いっそ諦めたらどうだ?」

奏「そう簡単に諦められたら苦労しないよ……」

七夕「では、そろそろ行数もいつも通りの数になってきたので次回予告!」

命「次回の主役はない。ただし、色々とあるそうだ。本作品の作者は活動報告の非力さと自らの知名度の無さに自己嫌悪したらしい」

明「……うわぁ」

呉羽「それじゃ次回、『もう全部アイツ一人でいいんじゃないかな』……え?」

七夕「まさかの僕達解雇宣言ですか……?」


次回の主役、なし



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十四限目 もう全部アイツ一人でいいんじゃないかな



今回から新キャラが増えます!6人なのですが、まずは四人!

そのうち3人は新規参戦者として"狐の嫁入り"さんのキャラクターです。

あともう一つ。僕の機体に黒の旧字体が出てこなかったです。ごめんなさい許してくださいなんでも(殴




 

 

いつものように晴れた空。学園祭では一悶着(主にスキャンダル)ありましたが、ともかく元通りの日常。

 

仮に、今のこの環境がいつもと違うのだとすれば……

 

「よう奏、氏ね」

 

「出会い頭に酷くないかな皐くん!?一体僕がなにをしたのさ!?」

 

「リア充は氏にたまえ。それがリア充に許された唯一最善の行動だ」

 

……僕がなし崩し的に、想い人と付き合うこととなって周りからよく「おめでとう、氏ね」と言われるようになったことかな!

 

ていうかアレに逃げ場なんてなかったよ。明くんはちゃっかり逃げてたし。僕にどうすればいいんだ!なにをしろって言うんだ神様ァ!

 

「はぁ……ん、メール届いてる。こんな時間から……マネージャーからなにか業務連絡かな?」

 

スライド式よりもガラパゴス式が好きな僕はガラパゴスが生きてる限りガラパゴスを使い続けるという決心を持っているのは内緒だ。えーとメールメール……

 

「……彩鳥、さん」

 

朝早いなー彩鳥さん。朝早くからメールだなんて一体なにがあったんだろう。

 

僕は『朝早くからからごめんなさい』という件名で送られてきたメールを読むべく、決定ボタンをポチっと押す。

 

『朝早くからごめんなさい奏。どうしても奏と話がしたかったんですが……ダメでしたか?』

 

ぐぁぁああああaaaaaaaaaaaaaaaaa!!なんなんだこの破壊力満天すらも越えている内容のメールはぁぁぁぁぁぁぁ!!?

 

は、早く返事をしなきゃ。せっせと……うん!

 

『まったく問題ありません!どうしたの?なにかあったの?』

 

……送ってしまった。どういう意図で送ってきたのかもわかっているのにしらばっくれてる僕は最低だ。もう罵られても構わないし皐くんに氏ねとか言われても仕方ないかもしれない!

 

『なんでもないです。飛鳥が送りなさいと煩くて……』

 

ごめんなさい、予想の斜め上でした。飛鳥さん存外シスコンなのね。予想外だったよ。

 

『そっか。あのさ、唐突なんだけど……会長に聞いた話によると、今日から楽しいことが増えるみたいなんだ』

 

……よし、そろそろ教室に行こうかな。

 

◆◇◆

 

ところ変わって2年生。

 

「みんな集まってるかなー、朝のホームルーム始めるよー」

 

2年生の、というか学園の問題児先生の真琴センセが今日もテンション高めに現れる。ホームルームの開始を宣言するが、それを遮る影が一つ。

 

「マコちゃんセンセー!しつもーん!」

 

「はいはい、なにかなスズちゃんいいんちょさん?」

 

「今日からこのクラスに学友が増えるらしいというのは真かね!」

 

「……いいんちょさん?一ついいかな?」

 

「んにゃ?」

 

なにか変なことでも言ったかな、みたいな顔をしている鈴蘭。それを見たセンセは流石に頭を抱えた。

 

「私昨日いいんちょさんに伝えたんだけどなぁ……おとーとくんからも伝わってるはずなんだけどなぁ……なんでらしいなのか流石のセンセにもわかんないよ」

 

「気にするな!私は気にしない!」

 

「気になる人ー手を挙げてー」

 

満場一致の挙手。無駄だとわかっていてもこの姉の生態系が謎すぎてつい手を挙げてしまう。留学にかこつけた世界一周なんてしてただけで人外チックなのに発言、行動どれをとってもエキセントリックでなんの脈絡も突拍子もない。例えるなら黄金の鉄の塊とか言っちゃうくらいだ。

 

「んまーそれは置いとこう。確かに転入生は来るよ。ウチのクラスに一人、三年生に三人ね」

 

おおー、と学生らしい合いの手。その光景に満足したセンセはよいぞよいぞ、と頷く。

 

「センセー!転入生は女ですか!?それともロリですか!?ロリならいいな俺!」

 

「はーいロリコンは無視無視ー。それでは転入生ちゃん、いらっしゃーい!」

 

センセのロリコンガン無視からの流れるようなコンボで転入生は招かれる。

 

で、明の顔はなんか露骨にゲンナリしだした。女性ではあるのだが、なんというか、こう。明のゾーンじゃなかった。露骨すぎて逆にビックリである。

 

駄菓子菓子、あいや、だがしかし、明は少女の姿を二度見して、なにか違和感を感じた。

 

―――あれ、コイツどっかで見たことあるよーな……

 

「はじめまして、京都から来ました。安倍 要です。三年生に一緒に転入してきた兄が二人います。これからよろしくお願いします」

 

定例文をしっかりと再生したような挨拶だ。特にツッコミ所はなく、パチパチと拍手が湧く。

 

「えーと、じゃあカナちゃんの席は……」

 

「カナちゃん!?」

 

「気にしないでね、渾名の方が覚えがいいし」

 

「は、はぁ……」

 

「ん……!?ぁ、あああああぁぁぁあああ!!」

 

突如、明が要を指差して立ち上がる。

 

「どうしたのロリコン、はい座って座って」

 

「今はそんなことどうでもいいってばよセンセ!この子、どっかで見たことあると思ったら2年前に芸能界引退した奇跡の歌い手二世、神音 奏じゃねーか!」

 

明のカミングアウトから数秒後、マジで?みたいなざわめきと共にそういえばそういう子いたな、みたいな空気になる。

 

「あ、きーたことある。奇跡の歌い手と同名で、仲のいい歌手がいたって」

 

「俺も聞いたことある」

 

「そういえば聞いたことがある……しかし明、何故お前はそこにたどり着いたのだ?」

 

「俺のロリ観察能力舐めんな!2年前は立派なロリだったんだぞ!」

 

なんともアレな理由でクラスが若干冷めてきた。もういつものことなので特にツッコミはないが、お前いつから拗らせてたんだよと言わざるを得ないレベルだ。

 

「へー、で、真偽の方は?」

 

「……ノーコメント、って言いたいけどこの学園奏さんのツテで入ってきたからなー……聞かれればそこまでだし、YESと言うしか。こっちが本名、あっちは芸名ね」

 

おおー、と拍手喝采。

 

「なんでやめちゃったのー?」

 

「それは……受験のことと、家に帰ってこいって言われて……」

 

「家?」

 

「うん、私、名字の通り安倍 晴明の子孫で、陰陽師のお家柄だからあんまり俗世に紛れ込むのはやめなさいって」

 

「「「……陰陽師」」」

 

そう言えば、陰陽師って言ったら関係近そうな人一人いるなぁ、なんて全員で思う。もしかしたら、関係でもあるのか―――

 

◆◇◆

 

「とゆーわけでご紹介に預かりました、安倍 風明でっす。そこの奏とはプラトニックな関係で、そこの一輝とは陰陽的な関係ね、横の龍明と一つ下の要とはきょうだい関係。義理だけどね」

 

「ちょっと!?なにをあることないこと言ってくれてるのさ!?」

 

ガタンッと華麗なツッコミ一つ、奏から炸裂。

 

「あらあらぁ~、あることないことってぇ、なんですか?リア充さん」

 

実に皮肉の籠った言葉だ。うぐぅ、と奏が呻く。

 

「もしかしてぇ、プラトニックな関係っていう方ですかぁ?」

 

「断じて違う!」

 

スキャンダル以降、奏を取り巻く不憫な出来事はこんなのばっかりだ。なにかあるごとに恋人を引き合いに出して弄られる。なんでこんなことばかりするのかサッパリだ。

 

いや、コイツらがこんな絶好の餌に引っ掛からないわけがないのだが。

 

「ははは、まぁそれは冗談として、奏とは妹が昔世話になっててね、んで一輝とはお家柄からかなり昔の代からの付き合いなのよ」

 

ていうわけでよろしく、と頭を下げる。そしてもう一人、龍明と言われた少年だ。

 

「さっき紹介に預かった安倍 龍明です。よろしくお願いします」

 

簡単に終わる自己紹介。最後はどこか佇まいが他と違う、妙な存在感を放つ少年に向けられた。

 

「ん……俺ね。俺は紫黒 竜希。みこちゃんとは知り合い系ね、よろしく」

 

「……みこちゃん?」

 

「命だからみこちゃん」

 

なるほど、とかるーく流す。

 

「まーそんなこんなでよろしくねー」

 

はーい、という軽すぎるオチでホームルームを終えた。

 

◆◇◆

 

「……はぁ、人数増えたな……」

 

「そうだねぇ……また書類整理とか面倒になるなぁ……」

 

生徒会室でぐったりとしている苦労人ズ。今日も今日とて二人にすっぽかされた仕事を分配してやり遂げた。

 

別にこなすことくらいはなんともない。だがそれを連日と続けていれば流石にぐったりしたくなる。体力のない呉羽は特に。

 

「そーいえばはーくん……今度スポーツテストあるね……」

 

「……言わないで」

 

呉羽がより一層げんなりとした声音で返す。余程嫌なのだろう。

 

「生徒会ー、ちょっといいか」

 

「んー?この声は……夜子か。どーぞー」

 

「失礼すんぞー」

 

ガチャリ、とドアが開けられる。竜胆の予想通り夜子だ。

 

「やぁ夜子。なんの用?」

 

「いや、特に用があるわけじゃないんだが……お前ら最近特に疲れ気味だろ。少し手伝ってやろうかと思ってな」

 

「……それは有り難いけど、いいのか?」

 

「構わねぇよ。それで倒れられたらたまったもんじゃないしな」

 

「じゃあ言葉に甘えるけど……」

 

「おう……ん、これ、さっきの竜希の経歴か」

 

竜胆が見る?と渡してくる。おう、と受け取って夜子は竜希の経歴を見る。

 

「……紫黒 竜希。ラサール高校より転入。剣道全国優勝経験持ち、全県模試総合一位etcetc……」

 

なんかもうそれ以上は見る気が起きなかった。パタン、と履歴を裏返して夜子は一言。

 

「……もう全部アイツ一人でいいんじゃないかな」

 

「生徒会長変わってくれないかなぁ……」

 

「だよねぇ……」

 

二人の切実な呟きは空虚に消えていったのだった。

 

 






新キャラ紹介回なのでいつもより少なめ。それでは久しぶりの新キャラプロフィールにつき次回予告はなしで。



安倍 要
登場作品 異形の陰陽師が異世界から来るそうですよ?
作者様 狐の嫁入り
旧名神音 奏。名前で察したとかいった人は屋上ね。性格は問題児女子にあるまじき乙女。華蓮さんと双璧を成す問題児女子にあるまじき人物。
安倍晴明の子孫で第29代目当主様。つよい。十六夜くん大好き。
ギフトをマイルドにしたものは"軽い陰陽術"と"狐と喋れる"。狐……チラッ。お気に入りスポットは"高くて景色のいい場所"。屋上は今日も人気です。

安倍 風明
登場作品 同上
作者様 同上
晴明さんの分家【風】の28代目当主様。お兄ちゃん。とうとうマジもんのお兄ちゃんが出てきた吹雪お兄ちゃんの今後はいかに。元の作品では二歳年上だけど要ちゃんを一年生にぶっこんだらボッチ不可避なので一歳年上に設定変更してやめときました。
なんだか名前からして某ロリコンさんと被ってるが、そんなことない。ロリコンさんのロリコンっぷりはロリコンさんだけのオンリーワンなんだからね!耀ちゃんにゾッコン。
嫁入りさんの作品ではあべのふうめいだけど今作は現代風学園コメディなのであべかぜあきって読んだ方がそれっぽいとか勝手に思ってるんですがそこんとこどうでしょう?
ギフトをマイルドにしたものは"陰陽術"と"カラスに好かれ、会話ができる"。お気に入りスポットは"崖"。高さは明くんを超えた。

安倍 龍明
登場作品 同上
作者様 同上
お兄ちゃんその2。吹雪くん、ここが踏ん張りどころだ。安倍分家【龍】の28代目当主様でイタチを操る。飛鳥さんとLOVE♥LOVE♥。リア充率が高くて驚愕。個人的には他の二人より影が薄うわなにをするやめ(爆散
……失礼。問題児の僕キャラは不思議と弄られポジ感があるんですがそこのところどうでしょう。因みにお兄ちゃん二人とも様々な異形が混ざりあった高位生命体である。
ギフトをマイルドにしたものは"陰陽術"と"イタチに好かれ、言葉を理解できる"。お気に入りスポットは風が当たる場所。この人達天然で明くんの存在意義をロリコン以外狩り尽くしそうだな……

紫黒 竜希(本来は黒は旧字体)
登場作品 命の理解者も異世界から来るそうですよ?
作者様 Shin-Ex-
誰が呼んだかチートオブチート。問題児世界でこの人に勝るヤツなんて現状いない。刀の一振りで箱庭ぶっ壊せるとかなにこの変態。
命さんの一番の理解者でフェイスさんが好きすぎる人。フェイスさんが好きで自分も心に仮面を被っている。いやフェイスさんが切っ掛けなわけじゃないんだけども。
とにかく一途でなんでもできる最強キャラ。箱庭家族にとってこの人を越えるキャラを作ることはある意味で暗黙の了解になりつつある。ただし当の僕自身が越えうるキャラクター作ったんだけど。でもとりあえず彼は最強、全部彼一人でいいレベルで最強。
ギフトをマイルドにしたものは"とにかく最強"。お気に入りスポットは図書館。



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十五限目 何故か跳躍力だけが頭一つ飛び抜けたニートがいる



茶番に尺とったので人物紹介一人残してゴー!

スポーツあるあるをスポーツねーよと共に織り混ぜたそんなお話です。




 

 

スポーツ。それは己の身体能力を試す、本番。そしてその身体能力を測るスポーツテスト。

 

それはある者にとっては授業免除という楽園の一日であり、ある者にとっては自分のポンコツっぷりが露呈する楽園追放な一日である。

 

まずは、与えられた者と与えられざる者達に視点を当ててみよう。

 

◆◇◆

 

side †与えられし者、B†(バカor文武両道)

 

「うぉー、あっちーな」

 

「今年は特に暑いって聞くからなー。何故か周りの温度が下がる吹雪の周りが逆に人で暑くなってしまうくらいだ」

 

ぐっ、ぐっ、……と軽いストレッチをしながら皐と命が互いに喋り合う。互いになにかと『和』の雰囲気を持つもの同士、意外とウマは合うようだ。

 

「そっかー。俺は美少女達に集まられたいからある意味吹雪が羨ましーぜ、ちくせう」

 

「よーし御説教タイムだ懲りないヤツめ☆」

 

……こういうのは別なのだが。

 

そしてその端ではまた別のグループが……

 

「うわー、暑い。暑すぎて鼻血出ちまいそうだ」

 

「輸血パックは持っとけよ修也。鼻血で貧血になって死ぬとか笑えねぇぞ」

 

「確かにそれは笑えん……まぁそれを差し引いても血は常備してるから、吹雪の近くにいりゃあ危険度は減る」

 

一方こちらは修也と吹雪。因みに修也はさっき言った吹雪に集まってくるヤツらの常連だ。

 

「ホント嫌になるよなぁこの体質。親父の方から受け継いだらしいんだけど、親父も爺さんから受け継いでまたその爺さんも……とかいうタチの悪い遺伝だぜ」

 

「うわ、笑えねぇ。それあと何億年とすると地球人類全員貧血になりそうな勢いだな」

 

はははは。と他愛のない世間話に華を咲かせる与えられし者達。勿論こんな会話ができるのは余裕があるからだ。そしてここで視点を移してみよう。

 

side †与えられざる者、B†(ポンコツor文オンリー)

 

「………」

 

「………」

 

「スポーツテストなんて滅べばいいんだ」

 

「できないことを強要してなんになるっていうんだ僕は見世物なんかじゃない歌を届けるエンターテイナーだ決して見世物じゃないCD歌手はPV撮影するくらいしか運動する機会がないからむしろそんなことするのは逆に無駄になるんだだから早くこれをこの世から無くしてしまうんだ」

 

呉羽と奏……半リア充とリア充が受けた嫉妬の理由が今、なんとなくわかった瞬間であった。

 

◆◇◆

 

sjde |†与えられし者、G†

 

「スポーツテスト……か。ここに来る前は結構ある方って自信あったんだけどなぁ……頭おかしい人らばっかだから普通なんじゃないかって思えるようになったな」

 

「嘘です!ここに嘘つきがいます!せんせー!ここに嘘つきいざちーがいます!」

 

「……ツッコまねーぞ、俺は」

 

問題児以上の問題児(頭おかしい人筆頭)とお守り約その2。その1が忙しかったり性別の違いで相手にできない場合に押しつ……与えられた名誉ある称号である。

 

「なんだっけいざちー、中学の時は色んなこと部活から引っ張りだこだったんだっけ?」

 

「んー、まぁ。でもこんな性格だし夏凜のアホが問題起こしがちだったからな……どれもすぐに辞めちまったよ」

 

「そっかー。確か二人とも同じ孤児院出身なんだっけ」

 

「あぁ。呉羽はガキの頃夏凜が持ってきて暫く三人でいて……中学に上がる頃アイツが九州辺りに引っ越してったんだよ……てか、お前も世界一周なんてメチャクチャなことするからにはそれなりにあるだろ」

 

「まぁね!持久力はそれなりに。言葉通じない国に行きまくった精神力も折り紙つきだよ?」

 

どーよ、最強っしょ?と最早見慣れたナイムネ張り。男女別々の場所からスタートなのでロリコンが見ていなかったのが幸いか。

 

「あーすごいすごい、すごいわー」

 

そしてもうこれの相手は疲れたし適当に誉めちぎっとけば大人しくなるか、図に乗ってなにかやらかすと知っている夜子はそれを期待してパチパチと感情の籠ってない拍手を喝采。

 

「ほほほほ!よいではないかよいではないか!こうべをあげい!」

 

「ははー」

 

実にてっきとうな返答。しかし鈴蘭はすごく満足している。いいのかそれで。

 

そして一方。

 

side |†与えられざる者、G†

 

「おうふ……ない、これはない」

 

日比野 花音は絶句していた。別に運動ができないというわけではない。だが好きか嫌いかと問われればぶっちゃけ嫌いだ。

 

なぜ運動能力をテストしなければならないのか。それをして学校側に特があるのか、その他もろもろ……

 

要するに動きたくない。働きたくないのだ。

 

「世の中には何故か跳躍力だけが頭一つ飛び抜けたニートがいるらしいけど、あり得ないねそれは。ラノベ読みてぇ」

 

突き詰めればこれなのだ。学校にいたくねぇ的なニート思考。もう彼氏がいなければ学校なんて来ねぇよとでも言わんばかり。

 

「……うん!サボろうかな!」

 

5分後、真琴センセに誘拐されたのは秘密だ。

 

◆◇◆

 

第一競技、握力検査

 

「いきなり地味だなオイ。小説的にいいの?」

 

「いきなりメタ発言はNGだよ」

 

なんかもう好き勝手言ってるけどスポーツテストなんだから仕方ない。

 

「だってさ……競技立案、会長だろ?」

 

「まぁ……なにもないわけがないけ―――」

 

ドォン、

 

何故か計測器が爆発した。

 

「「いやなんでだよ!?」」

 

立月と凍夜、思わずの同時ツッコミ。その瞬間突如聞こえるクックックッ、という笑い声。

 

「早速犠牲者が出てしまったなァ……」

 

「こ、この声は……!?」

 

「会長か!?」

 

「否!俺は謎の男、ジンジャーマスク1号!スポーツテストとタカをくくって人の話を聞かなかった貴様らに改めて内容を説明してやる!」

 

確かに話しは聞かなかった。握力測定なんて握って終了なのだから、ある意味当たり前ではある。

 

だが、しかし、なんで爆発?みたいな疑問が消えない。

 

「いいか!この競技は生徒会長の用意した神社製握力測定機を使う!これは神社ネットワークによって調査した貴様らの現時点での最高記録を叩き出すための装置が用意されている!つまり……」

 

「今の爆発はその期待に応えられなかった者の末路……と!?」

 

「その通り……貴様ら、ド○フみたいなアフロになりたくなれば全力で引き金を引け!例え相手が幼女だろうが容赦はしない!」

 

「貴様!幼女を愚弄するか1号!」

 

「俺に逆らうヤツはまとめて爆発四散だ4号」

 

「アバーッ!サヨナラ!」

 

あわれ4号=サンは爆発四散!ショッギョムッジョ!

 

この会長のことだからなにかしでかすと思っていたが、まさかここまでやってくるとは。予想外なんてレベルじゃない。

 

「ぐっ……かいちょ、ジンジャーマスク1号!4号の味方をするつもりは断じて、一切ないがその行いが横暴だということには賛成させてもらうぞ!いくらなんでも爆発四散はやりすぎじゃあないのか!?」

 

「黙れ!こうなったのも全て貴様ら生徒がちゃんとスポーツテストを受けないから、学園長から直々に『好き勝手やってよいぞ』との太鼓判を推されているんだ!お前ら、わりと会長って大変なんだぞ!」

 

最早正体を隠すことすらしないジンジャーマスク1号。それでもなおこんなことをされて黙ってはいられない凍夜はまだなおと訴えかける。

 

「だったら!副会長と会計はどうした!?」

 

「副会長……ふはは、それはもしや、2号のことか?生憎だったな、副会長とやらは既に我が軍門に下っている!会計とやらも昨日の夜から拘束済み……色々と言われても困る故、な」

 

魔王だ。コイツ本物の魔王だ。なんか口調も魔王っぽいし、魔王に違いない。

 

「そして……天城 凍夜!貴様はこの学園の生徒の長たる我に逆らった!その罰は与えねばならん……が、我も魔王ではあるが鬼ではない。貴様にはこの握力測定のノルマ、通常の三倍に設定してくれる!」

 

「なんっ……だと……!?」

 

絶句。通常の三倍といえば普通にやってはどうあってもたどり着けない境地の代名詞のようなもの。デブリを蹴って推進力を三倍にするように、握力を三倍にするなど人力では不可能だ。

 

だが、しかし、果たしてこの横暴を許していいのか?

 

凍夜は激怒した。必ず、かの邪知暴謔の会長を除かねばならないと決意した。

 

凍夜には生徒会はわからぬ。凍夜は一般生徒である。楽しく毎日を過ごしていた。けれども邪悪(いたずらごころ)に対しては人一倍敏感であった。

 

「……やってやる!覚悟しろよジンジャーマスク1号!」

 

「さぁこい!我は逃げも隠れもせぬ!」

 

「うおおおおおおおおおおお―――――」

 

◆◇◆

 

チュドーン、見事な爆音が一つ鳴った頃、運動場ではなんかもっと爆発していた。

 

「はいはいほらほらー、走んないと死ぬぞー」

 

この目が明らかに死んでる大人と子供の中間くらいの容姿をした、至って普通っぽい人は神代 白蛇。桃水原学園の生徒指導部兼メンタルカウンセラーだ。

 

ぶっちゃけた話、彼はほとんどなにもかも、話術を除いてだいたい全部が平均以下しかこなせない。彼より頭の悪い生徒なんて正直いない。

 

そんな彼がこの学園で職員としてやっていける理由は、前述した話術にある。

 

無自覚に、かつ的確にグッサグサと言われたくないことを言って、また無自覚に落ち込んだ生徒を再起させる言葉を言い放つ。学園長が、桃水原の姉妹校に所属してきた高校生の彼の資質を見抜いて是非卒業後職員に、とスカウトしたのだ。

 

自分のダメダメっぷりを自覚している白蛇はこの申し出をちょっと悩みつつも二つ返事で了承した。兄が猛反発したが、がんばってどうにかした。

 

が、当の本人はどこをどう見初められてスカウトされたのか全然わかってないので仕事はダラッダラだ。だというのにかなりの人数の生徒に信頼されているのは一重に彼の話術があってのことだろう。

 

そんな彼がなぜ、黒いジンジャーマスクの服を着ているのか。それは一時間前に遡る。

 

※以下、回想

 

「……お、いたいた。よーしよし……にゃーこ、お前は素直でいいなぁ。ほれ、餌だぞー」

 

ニャー。

 

「この学園に住んで7年か……にゃーこもすっかり爺さんだなぁ」

 

ニャー。

 

「ははは、こいつぅ♪」

 

「ニャー」

 

「え、なんだっ……―――……て?」

 

「…………ハロー、神代先生」

 

「―――……寺西か、どうした。あと神代は厨二臭ェから白蛇先生と呼べと……」

 

「頼み、あるんすけど……頼まれてくれますよね。ジンジャーマスク5号さん♪」

 

※回想終了

 

というわけなのだ。要するに、弱みを握られてしまった。いかに話術に優れた白蛇であれ、あちらが逆転の可能性をぶっ潰すカードを持っていては元も子もない。

 

「風の方の、風圧上げてくれい」

 

「はいよー」

 

マスクの額の方に3、と書かれたジンジャーマスクが白蛇、もとい5号の指示で風圧を上げる。それだけで地雷源を突っ走ってる生徒の7割は爆発四散した。

 

「地雷源50メートル走……寺西、あいや、1号もエグいのを思い付くもんだなぁ」

 

「それがアイツのアイデンティティみたいなもんっすからねぇ……あ、せんせ、5号。右サイドからどさくさに逃げようとしてるのがいる」

 

「はいよ、起爆っと」

 

最早これはスポーツではない、蹂躙だ。走らされ、握っている者達は口々にそう言っては、憐れにも爆散していった。

 

◆◇◆

 

学園の、ある一室。

 

「……はい、そういう手筈でお願いします。……そうです。珠にはアレに泡を吹いて貰わなければ……最早あれは圧政だ」

 

『だろうな。外の光景を見るだけでわかる。では、決行は?』

 

「こちらの準備が整い次第……ええ。そうですね。オペレーション・メテオ発動の時は……もうすぐそこです」

 

『悟られないように、な。少なくともこちらが気付かれなければ勝機が消えるわけではない、気楽にするといい』

 

「ええ……お気遣い、ありがとうございます」

 

to be continued…

 

 






新規人物

ジンジャーマスク
登場作品 オリジナル?
原作者 強いて言うなら五人。
謎の五人集。ジンジャーマスク、いったい何者なんだ……
実は2号からは1号が様々な手段を駆使して手にした精鋭達で、その都合上信頼関係はほぼ皆無だが、その分個人の能力がそれぞれ飛び抜けているぞ。

神代 白蛇(しんだい びゃくだ)
登場作品 劣等生と問題児(特典シリーズは平行世界の同一人物)
作者様 オシロイバナ(旧 江宮 香)
ザ☆平凡以下。一般的になんでも普通よりタチが悪いほぼなにもできない人。ただしその話術は目を張るものがあり、それだけで箱庭を生き抜くある意味タフガイ。
が、故にほぼそれ頼みなため、強行手段とかされるとその時点でもう無理ゲー。本人も超めんどくさい性格をしている、と主人公じゃなかったらもうコイツどうすんの?ばりに嫌われそうなタイプ。
よく平行世界に同姓同名がいるが、神代 白蛇として共通しているのは「妙なところの人から人望があること」「ザ☆劣等生」「口達者」。



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