ToLOVEる ピーチ&オレンジ (高橋徹)
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美柑のお話。「Sister Love〜寝起きのイタズラ〜」(1)

美柑の単発エピソードです。何話かに分けて掲載します。


ある日の朝。

場所はリトの家。

 

 

「リトー、朝ご飯出来てるよー!」

リトの妹の美柑が、1階から声をかける。

「まーうー!まう~♬」

既にテーブルにはセリーヌが座っており、美味しそうに美柑が作った朝食を食べていた。

「…リト―?まったく…」

リトの反応が無いと分かると、美柑はぶつぶつと文句を言いながら階段を昇って行った。

 

「リート―!朝だよー!」

リトの部屋の前まで来て、再び呼びかける。

しかし、リトからの返事は無い。

「…ここまで呼んで返事が無いなら、部屋に入っても問題無いよね、うん…」

自分に言い聞かせるようにして、部屋のドアを開けた。

 

「…モモさんは…いないか」

度々リトの部屋に夜這い(?)に来ているモモが居ないのを確認して、安心する美柑。

この場合の美柑の安心感には、モモが居ないことと、気兼ねなくリトと同じ空間に居られることという2つの意味があるのだが。

 

少し前までの、二人でこの家に住んでいた頃であれば、こんなことは日常茶飯事だった。

二人きりで居ることは至極当たり前のことで、お互い、何ら気兼ねなく暮らしていた。

 

しかし、ララ達が住み始めてからは、少なくとも美柑の中では、確実に感情の変化が生じていた。

 

―今まではただの『大切な兄』としか見ていなかったリトへの、少なからぬ恋心―

 

ララのリトに対する真っ直ぐな愛情は勿論知っているが、今まで家族として抱いていた愛情が男性に抱く愛情に変化して来ている美柑にとって、リトへの恋愛感情と言うものは、ララとは少しばかり方向性が違うが、これもかなり強いものとなっていた。

 

そんな状況下での、わずかばかりの、二人きりの時間。

 

何も、意識しない訳には行かなかった。

 

「…むにゃ…」

「リト―、朝だぞ~?」

「…むにゃ…?むにゃむにゃ…」

「…まったく、気持ち良さそうに寝ちゃって…。」

美柑はリトの安らかな寝顔を見て、呆れつつもにこやかに微笑む。

そして、ベッドに腰を下ろして、間近でリトの顔を見つめる。

「…リ~ト~?」

耳元で呼びかけてみる。

「…むにゃ…マシュマロ…」

しかし、リトは起きない。

「なんで毎回マシュマロなのよ…」

思わず、寝ているリトにツッコミを入れる。

「ほれほれ~、朝だぞ~…♬」

「ん…むにゃ…んむ…?」

ここまで呼んでも起きないリトに、一周回って面白さを感じ始めたのか、美柑はリトの頬をつつき始めた。

しかし、つつかれても尚、リトが起きる様子は無い。

 

徐々に、美柑の中でいたずら心を通り越した何かが芽生え始める。

「リト~?…起きないと…もっとすごいことしちゃうぞ~…?」

再び、リトの頬をぷにぷにとつつく。

「むにゃ…」

やはり、起きる様子は無い。

「…。」

辺りを見回して、もう一度誰か(主にモモ)が居ないか確認する。

そして、リトの顔に思い切り近付いた。

美柑の目と鼻の先にリトの顔がある状態になっている。

互いの唇が、今にも触れ合いそうな距離だ。

「…ほ、ほんとに、すごいこと、しちゃうぞ…?」

「…むにゅむにゅ…」

美柑が喋っただけで、息がリトの唇に当たる。

その度、少しくすぐったそうに口を動かすリト。

「(わ、私何やってんだろ…!?でも…止めらんない…!)」

美柑は心臓が爆発しそうになる程に緊張していた。

「…いいのか~?…しちゃうぞ~?」

念入りに許可を取るかのように、何度も寝ているリトに念押しをする。

 

そして、今にも唇と唇が触れ合いそうになったその時。

 

ぱちっ。

 

「ん…あれ、美柑?何やってんだ?」

「!!!」

ここに来て、やっとリトが目を覚ました。

限界まで近付いた状態の美柑を見て、寝ぼけながらも不思議がるリト。

美柑は完全に不意打ちを食らった形になり、大慌てで何を言うか考える。

「な、なな、な、何でもないわよ!!ただ、起きないなーって思って近付いただけなんだから!!

ほら、ご飯出来たからさっさと起きて!!」

「んあ、そうなのか?わかった…ごめん、ありがとな。」

美柑の苦しい言い訳に少し違和感を覚えたが、眠気に負けて、細かいことを考えるのはやめたようだ。

「ほ、ほらほら!」

「わーかったよ~…ふあぁ…」

動揺を隠すように、リトをベッドから起こして部屋から出そうとする。

 

 

「はは~ん…♬」

そんな美柑の様子を、モモが物陰からにやにやとしながら覗いていた。

 

 

 

続く。

 

 

 

 




いかがでしたでしょうか!

ToLOVEるの話はまだほとんど書いたことが無いため、試行錯誤して行こうと思います。

ご感想、お待ちしています(^^)!


それでは、お読み頂きありがとうございました(^^)!!


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美柑のお話。「Sister Love〜寝起きのイタズラ〜」(2)

このエピソードの後編です。


朝食後。

 

 

美柑は皿を洗いながら、先程のことを思い返していた。

「(あ、危なかった…。…リトが目を覚ますのがあと少しだけ遅れてたら、私、本当に…しちゃってたのかな…?)」

「…はぁ」

自分がやりかけていたことを思い返し、ため息を漏らす。

それが、寸前で出来なかったことを惜しむものなのか、止まって良かったという安堵によるものなのか、美柑自身にも分からずにいた。

 

「…ふぅ、これで最後…と」

かちゃりと、洗い上げた最後の皿を食器置場に置いた。

 

そのとき。

「み・か・ん・さぁん♡」

「!!?」

びくっ!として後ろを振り向く。

美柑のすぐ後ろに、モモが立っていた。

しばしば見かける、明らかに何かを企んでいる顔をして。

「…な、なに、モモさん…?(危なかった…まだ洗い物してたら落とすとこだった…)」

「大丈夫ですよー、ちゃーんと、話しかけるタイミングを計っていましたから♬」

「(なんで心を読んでるのよー!?)」

美柑は賢い。気遣いもよく出来る。

その人が何を欲しているかを察する能力は、幼い頃からリトや父に対しての家事で磨かれてきた。

それ故か、モモの、普段から何を考えているか分からない性格は、美柑にとって未知のもので、常に警戒していた。

そんな状況で心を読まれるような真似をされれば、心中穏やかで無いのは至極当然のことであった。

「うふふ…今日はですね、姉様もナナも私も、用事で一日家を空けているんです。

…ですから、どーぞ、リトさんと二人っきりでごゆっくり♬」

にやっ、と笑うモモ。

とても、14歳の少女が見せるような表情ではない。

「あ、そうなんだ…って、な、なな、なんのことよー!?」

モモに好き放題に心を揺さぶられる美柑。

「うふふ…♬」

不敵に笑いながら、美柑にずいっ、と近付く。

「…二人っきりで買い物に行くもよし、家でお話するもよし、甘えるのもよし、それ以上のことをするのも…ですよ♡」

「ちょ、そ、それ以上って、どう言うこと!?」

「あらー♬そんなの決まってるじゃないですかー美柑さんったら♬

…さっき、美柑さんがしようとしてたことですよ…♡」

「…!!!」

モモに見られていたことを知り、顔を真っ赤にする美柑。

あまりに恥ずかしかったためか、すぐに言葉を発することさえ出来ずにいた。

「…も、もーーー!!まだしなきゃいけないことがあるんだからリビングに行ってーーー!!!」

「きゃー♡すみませ~ん、そうしますねー♡」

美柑の剣幕にもまるで動じず、飄々と台所を去るモモ。

「…はぁ…はぁ…はぁ…。な、なんなのよ、全く…。

…二人、きり…か…」

モモとの会話の余韻が去ると、今日これから置かれる状況について考え始めた。

「…それ以上…」

モモが言った言葉が、脳裏を過ぎる。

何か起きる予感がしてならない、休日の朝だった。

 

 

そんな美柑の様子をリビングから覗いていたモモは、引き続きにやにやしている。

「…ま、私は用事なんて無いんだけど…♬じっくり観察させてもらいましょう♡身を隠す術や道具ならいくらでもあるし♬」

お膳立てが上手く行ったと、にやにやしていた。

 

 

数十分後。

「じゃあ行ってきまーす!」

「はーい、行ってらっしゃーい」

ララとナナとモモが玄関を出た。

ちなみに3人とも別の用事と言うことで、すぐに分かれた。

そしてその後、モモは誰にもばれないように引き返し、こっそりと家の中に入る。

 

モモがそんなことをしているとは露知らず、美柑はリビングでテレビを見ながら考え事をしていた。

「(最近、モモさんがやたらとリトにべたべたしてるから焦ってるのかな…って、何を焦ることがあるの私!?)」

「…はぁ」

再び、ため息をつく。

おおよそ、小学生がつくとは思えない、何とも言えない哀愁の漂うため息だった。

「どうした美柑?疲れてるのか?」

そんな美柑の様子を見て、心配したリトが話しかけてくる。

「!あ、ううん、大丈夫だよ、心配しないで」

「…そっか」

そう言うと、リトは台所へと向かった。

「(…はぁ、それに、最近、お父さんの仕事場でご飯作ったり、学校の出し物の準備があったりもして、本当に、色々なことで疲れてるな…。こんなこと誰かに言ってもしょうがないし…うーん…)」

疲れの原因は、モモのことだけではなかった。

テレビで好きな料理番組をやっているのだが、今日はそれも頭に入って来ない。

うーん、と唸りながら、あぐらをかいて左右に揺れていた。

 

すると。

「美柑!はい」

「!…あ…ありがと…」

リトが、温かい紅茶を持ってきた。

「…さっきは大丈夫って言ってたけど、そうは見えないぞ?俺に話しても良い答えが返せるか分からないけど…話して楽になることもあると思うんだ。

…だから、いつでも俺を頼ってくれよ。…こんな俺でも、一応、おまえの兄ちゃんなんだからな」

少し照れながらも、リトは真摯な言葉を美柑に伝える。

「…リト…」

リトを見つめる美柑の頬は、少しばかり赤らんでいた。

先程までの悩みの種が、いともたやすく、心の中から洗い流されて行くのを感じた。

「…ありがとね、リト。なんか今の言葉だけで、すごく楽になった♬」

そう言う美柑の顔は、年相応のかわいらしい笑顔になっていた。

「そっか。よかった。…今日はゆっくりするか」

「うん♬」

そうして、二人はソファに並んだ。

 

 

15分もした頃。

美柑は先程のリトの言葉を思い返しては、少しむず痒い気持ちになり、繰り返しリトの顔をちらちらと見ていた。

リトは美柑の視線に気付くと、その度に目を合わせにこっと微笑む。

そして、美柑が恥ずかしくなり視線を伏せる。

そんな流れを、何度も繰り返していた。

「(リト…やっぱりこう言うとき、頼りになるな…。そうだよね、最近は接する時間が少し減っちゃったけど、それでも、ずっと私のことを守って来てくれたんだもんね…)」

今までのことを思い返し、思わず笑みがこぼれる。

そして、再びリトの顔を見つめる。

「(うう…リト…リト…リト…!最近はずっとモモさんとのことを嫉妬してばっかり…。…もっと甘えたいよ、もっと昔みたいにべたべたしたいよ…!!)」

徐々に、徐々に、心の奥底に秘めていた思いが溢れ出して来る。

 

…ちょっとくらいなら…いいよね?

 

自分に言い聞かせるように、心の中で呟く。

 

そして。

 

「…。」

「ん?どうしたんだ美柑?」

リトの左腕を、そっと抱きしめる。

傍から見れば、カップルが家でテレビを見ているようにしか見えない状況だ。

しかし、リトからすれば、美柑はあくまでもかわいい妹。

きょとんとした目で、美柑を見つめる。

「…だ、だめ?今日は…なんかこうしたくて…」

上目遣いでリトを見つめる。

 

「はわわーーー!!!美柑さん、なんて積極的なー!まだ私からは何も手を出していないのに!

それに…何と言う小悪魔ぶりなの!?小学生にしてあの上目遣いとは…恐るべし…」

物陰からモモが覗き、一人興奮している。

何かしら、手は出すつもりのようだ。

 

モモが居ることなど知らない二人は、やり取りを続ける。

「…ど、どう?」

「いいよ♬」

リトはそう言うと、笑顔で優しく、美柑の頭を撫でた。

「(はうっ!!)」

「はうっ!!」

きゅーーーーん。

リトのその行動に、美柑とモモは同時にハートを撃ち抜かれる。

「?今、なんか聞き覚えのある声がしたような…?」

「き、気のせいじゃない?(良かったー私の反応はばれてないみたい…)」

「あ、あぶないところだったわ…」

ハートを撃ち抜かれた際、美柑はなるべく反応を隠したのだが、モモは堂々と声を出してしまっていた。

…本当に、隠れる気があるのだろうか。

 

 

そんなやりとりをしてからは、美柑はリトにしばしば甘えて、いつもならしないような、べたべたとしたスキンシップを度々図るようになっていた。

リトはそれに笑顔で応じ、その度に美柑は、溢れ出る幸せに思わずにやけそうになるのをこらえて、不自然な笑顔になっていた。

 

 

しかし、そんな二人の様子をみて、モモはやきもきしていた。

「むむむ…良い感じで甘えているわね、美柑さん。…でも、このままでは、兄妹として仲が良くなるだけ!!

ここは、弱めの媚薬効果がある花粉を出す、この植物に働いてもらって…うふふふふ…」

手を、出し始めた。

 

 

「…なんか、暑くなったような…?」

リトがふと周りを見渡す。

正確には、花粉の効果により、リトの身体自身が火照って来ていた。

「そう?(あれ…なんだろ…さっきから頭の中がぽーっとする…)」

「お、おい、美柑?」

美柑はリトよりも花粉の効果が強く出たのか、腕に抱き付いていただけだったのが、今度はリトの胸板に絡み付くように抱き付く。

「ど、どうしたんだ、こんなにくっついて…?」

花粉の効果だとは知らないリトは、流石にこれには動揺する。

 

「…私ねー?」

美柑が話し始めた。

その様子は、まるでバーで酔っ払ったOLかのようであった。

「最近疲れてるんだー。お父さんの仕事場の家事をすることも多いし、学校でも色々やることがあって大変だし…」

「そうだったのか…」

美柑の顔が目の前にある状況ではあるのだが、それでもリトは優しく美柑の頭を撫でる。

美柑の顔が、更にぽっと赤くなった。

「…あと、ラブレターもやたらもらうし…」

「え!?そ、そうなのか…美柑、モテモテなんだな。」

自分が知らなかった妹の側面に、驚きを隠せないリト。

「そうなんだよ~?結構モテるんだ~私♬…ねえ、リトから見てどうなの?私って。」

不意に、リトを真剣な目で見つめる美柑。

リトは少しばかりたじろいだが、真剣に答え始める。

「ずっと見てきたから、可愛いかどうかなんて考えたことなかったけど…」

そう言って、美柑の顔をじっと見つめる。

「…あ、あんまり見ないでよ…恥ずかしい…」

いざ見つめられると、恥ずかしくなってしまう。

そんな美柑の反応も気にせず、リトは更に数秒、美柑の顔を見つめる。

「…うん、かわいいと思うよ。」

「…!」

素直な意見だった。

その言葉を聞いて、嬉しさと恥ずかしさで美柑の顔が一気に赤くなる。

「あ、ありがと…。」

「それに、料理も本当に上手いしな♬」

「…!!」

他意も無く、畳み掛けるリト。

美柑の顔は更に赤くなる。

まるで、バーで酔っ払うOLを口説き落とそうとしているかのような、こなれた話し方だった。

もちろん、リトにそんなつもりは無いのだが。

 

「り、りり、リトさーーーん!!!なんて素敵なの!?ああ、私も言われたい…!!」

モモは一人、悶えに悶えていた。

 

ここまで褒められたところで、美柑は一番言いたいことを話し始めた。

「で、でも、その中でも一番気になってるのは…リトとモモさんのことなんだ…」

「…え?」

「ほら、モモさんったら、いっつもリトにべたべたしてるでしょ?

…なんか、リトが遠くに行っちゃうような、そんな気がして…不安なんだ」

美柑の目には、寂しさが溢れ出ていた。

 

 

ちなみにこのとき。

「…ああ、美柑さん、どんどんヒートアップしてる…!!これは、もう、目の前で見るしかないわ!!よ~し…」

ごそごそと、何かを取り出す。

「じゃーん!お姉様の発明品、スケスケスケルトンくん!これで透明になって、二人の様子を目の前で見ちゃおう♬」

とんでもないことを考えている。

「で、でも、これ、服を着てるとばれるから、全裸にならないとだめなのよね…うう…。で、でも仕方ないわ!これも、二人の記念すべき瞬間を目撃するため!!

えーいっ!!」

テキパキと裸になり、スイッチを押すと、あっと言う間にモモの姿が見えなくなった。

「…うう、やっぱり恥ずかしいな…」

益々誰からも見えなくなった状態で、モモは一人恥ずかしさでもじもじしていた。

 

 

美柑の寂しげな表情を見て、リトは、心の底から優しく答えた。

「…ははっ、心配するなよ。俺はみかんを置いてどこかに行ったりなんて絶対しないから。」

ぽんぽんと、美柑の頭を優しく撫でる。

「ほ、本当に…?」

美柑の顔が、一転してぱぁっと明るくなる。

「ああ♬」

「絶対?」

「絶対!」

「…結婚しても…?」

美柑は花粉の効果と嬉しさが相俟って、どんどん踏み込んで行く。

「うえっ!?…そ、その頃にはおまえも結婚してるんじゃないかな…はは…」

流石に返答に困り、それっぽいことを言ってごまかそうとする。

 

「…私は…リトが結婚しても、ずっとそばに居たいな…」

 

きゅっ、と、リト抱き付く力を強める。

そして、切なげな表情を浮かべてリトを見つめた。

その言葉と仕草にリトはどきんとする。

「え…(な、なに美柑にときめいてんだよ俺!!妹だぞ!?)」

激しく動揺していた。

「な、なんでそこまで…?」

 

「…だって…」

 

「(…言っちゃえ、やっちゃえ私。今なら出来る気がする。)」

 

美柑の心臓が、早鐘を打ち始める。

 

 

そして、次の瞬間。

 

「私…リトのことが好きだから…!」

 

「え…んむっ!?」

 

美柑は想いを告げると、リトが言葉を返す前に、リトの唇を奪った。

 

「んむっ!?んっ、んんっ!?」

美柑にとっても、リトにとっても、初めてのキスだった。

「んっ…んんっ…んむぅっ…♡」

次がいつになるか分からない、チャンスが来るかもわからない状況下でのキス。

美柑は、舌を入れて、唾液の交換をねちっこく行う。

「(…リト…リト…リト…好き…好き…大好きだよ…もっと一緒に居たいよ…!!)」

言葉にはしていない。

しかし、リトは美柑の目を見るだけで、美柑の気持ちが一言一句違えずに伝わっていた。

「(み、美柑…こんなに…俺の…こ…と…)」

ここに来て、リトにも花粉の効果が強く出始めてきた。

「…!」

「んむっ!?んあっ…り、リト!?」

責められていたリトが、美柑を引き離すと、今度はソファの上で押し倒して、自らが上になった。

そして、今度はリトから唇を奪う。

美柑が責めていたときよりも、更に激しく舌を入れ、美柑の口内を犯す。

「んんっ…んっ…ふむぅっ…!!♡」

頭の中がとろけにとろけた美柑は、何の躊躇いも無く甘い声を漏らす。

 

お互いが貪るように口付けを交わし始めてから20分程経った頃。

 

…はっ…はっ…はっ…

 

二人は激しく息を切らしながら、ようやく唇を離した。

 

「美柑…美柑…!!」

「リト…リト…お…おにい…ちゃん…」

 

互いの名を呼び合い、リトは手を美柑の胸に伸ばす。

「…!」

美柑は期待と不安で、思わず目を閉じた。

 

ちなみにこのとき。

「な、な、な、美柑さん…かかっ、完全に、火が点いちゃってるじゃないですかぁー!!!」

モモは大興奮していた。

「も、もっと近くで…!」

足をもぞもぞともどかしそうに動かしながら、二人に近付く。

「はぁはぁ…これは…すごい…!り、リトさんからキスを!?…こ、今度は、胸に手をーーー!?どどど、どうしましょう、興奮が止まらないわーーー!!!

…あら?急にスケルトンくんが光り出して…」

 

 

「…」

 

「…」

 

「…」

 

スケルトンくんの効果が切れ、リトと美柑が今まさに、一線を越えた行為に及ぼうとする寸前で、二人の目の前にモモが現れた。

 

…全裸で。

 

 

「…え、モモ…?」

 

「…あらら…まあ…」

 

「…。」

 

数秒、3人は完全に固まっていた。

 

そして、次の瞬間。

 

「…こーーーーーらーーーーー!!!!!」

美柑、大噴火。

「ご、ごごご、ごめんなさぁーーーーーーーい!!!」

 

結局この後、モモは二人に事情を説明した後、美柑から2時間に渡り説教を受けた。

 

 

「まったく…。」

「ごめんなさい♬…でも、楽しめたんじゃないですか?♡」

モモがにやにやとしながら聞いてくる。

質問、と言うよりは、付加疑問文であった。

「!!ば、バカ言わないでよ…!!あんなことしちゃって…わ、私、これからリトとどう接したらいいのか…!」

美柑は顔を真っ赤にして悩んでいた。

「あらー♬もう、キスをしちゃったんですよー?しかも、ディ・-・プ・キ・ス♡」

「…!!!」

「はぁ~…今思い返しても、何と言う情熱的でねちっこい、いやらしいキスだったんでしょう…♬」

「ちょ、ちょっと、思い出してうっとりするのやめてよ!死ぬほど恥ずかしいんだから!!」

「あらら、いいじゃありませんか♬これからも、どんどん遠慮なくキスしちゃえばいいんですよ♬」

「え…」

モモの言葉を聞いて、美柑の顔が思わずにやける。

「…まんざらじゃないみたいですね?♬」

「(…次するとしたら、どんな感じでしようかな…あ、ち、ちがうちがう!!)…う、う、うるさーーーーい!!!」

モモを大声で叱り飛ばしながらも、次はどうキスをしようか考えて、頭の中で振り払う美柑。

 

「うふふ〜♬では、今度こそ二人でリトさんのお布団に…♡」

「(…良いかも…あ、だめだだめだ!!)だーーーめっ!!」

いつもなら一蹴するモモの提案も、今までとは違い、一瞬乗り気になる美柑であった。

 

 

「…うう…美柑とあんなことをして、しかもそれを全裸のモモが見てるなんて…どんな状況だよ…やばすぎるだろ…」

部屋で一人、悶々と考え事をしているリト。

至極、真っ当な意見である。

「…でも、美柑の唇、柔らかかったな…。…それに、良い匂いだった…。」

にへらっ、と表情がだらしなく崩れる。

「…って、ちがうちがうちがーーーーーーう!!!ああ、どうしたら…」

 

二人揃って仲良く悩む、リトと美柑であった。

 

 

 

お終い。




後編と言いつつ、全編の4倍の長さになりました(笑)

取り敢えず、ソフト(?)なところでまとめてみました。いかがでしたでしょうか!

踏み入った描写はエロの方でするつもりですので、興味がある方は是非ご覧頂ければと思います。

単発エピソードの予定なので、お話は繋がりません。
しかし、連載として書き始めた場合、単発としている今回のエピソードを絡める場合があるかと思います。
その際は、加筆修正をして、章を単発エピソードと連載に分けた上で、前書きや後書きできちんと説明したいと思います。
…こう書くとややこしいですね(笑)連載自体、もう少し皆さんの反応を窺いつつ、構想を練ってからになりますので、しばらく先の話になるかと思います。温かく見守って頂けたら嬉しいです。

ご感想、お待ちしております(^^)!


それでは、今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!


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