FAIRY TAIL 天候魔法の眠り姫 (唯野歩風呂)
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一、出会い

 

 

 

 

 港町『ハルジオン』

 

 「ナツ!レーナ!ついたよハルジオン。起きて起きて!!」

 

 青色のしゃべる猫(?)が、列車の座席でぐったりしている二人に声をかける。

 そのうちの一人、ピンク色の髪をした少年の方は、青い顔でぐったりしている。

 

 「だ、大丈夫ですか?」

 「アイ!いつものことです」

 

 駅員が声をかけると、青色の猫――ハッピーが答える。

 

 「はぁ。……えっと、そちらのお客様は……」

 

 駅員は座席に沈んでいるもう一人を指した。

 

 「大丈夫です。寝てるだけなので」

 「すぴー、すぴー」

 

 確かに寝息が聞こえる。

 いや、それより降りるのなら早くしてほしい。と思う駅員なのだった。

 

 「無理……もう二度と列車には乗らねぇ……うっぷ」

 

 ピンク色の髪の少年――ナツは慌てて列車の窓から身を乗り出した。

 

 「情報が確かなら、この街にサラマンダーがいるはずだよ。いこ!」

 「オエ~……。ちょっと休ませて……」

 「すぴー」

 

 

 ポ~~~~

 

 

 「あ」

 

 ハッピーが振り返ると、列車が動き出していた。そして、窓から身を乗り出していたナツは、涙と涎をまき散らしながらハッピーに助けを求めていた。

 

 「すぴー」

 

 その中でも、幸せそうな寝ていた人物が一人――。

 

 

 

 

 ※※※※※※※※※※

 

 

 

 

 「ちぇーっ。1000ジュエルしかまけてくれなかった。あたしの色気はたった1000ジュエルか?」

 

 目当てのものは手に入ったとはいえ、どうも納得がいかない。

 

 イライラしながら歩いていると、女子の悲鳴――いや、歓声が聞こえてきた。

 どうやら、有名な魔道士サラマンダーが来ているらしい。

 火の魔法を使うというあの!この街に来てるの!?

 

 これは会わなければ!

 

 慌てて人が集まる広場へ駈け出した。

 

 

 

 ※※※※※※※※※※

 

 

 

 「ったくよー。列車には二回も乗っちまうし」

 「ナツ乗り物弱いもんね」

 「腹は減ったし」

 「おいらたち金ないもんね」

 

 ふらふらと歩くナツ達一行。

 

 「なぁ。サラマンダーってイグニールのことだよな?」

 「火の竜なんてイグニールしか思い浮かばないよね」

 「だよな」

 

 と、ナツ達一行の耳に「サラマンダー様!!」という声が聞こえてきた。

 

 「「サラマンダー!?」」

 

 ナツとハッピーは顔を輝かせ、人ごみへ向かった――のだが……。

 

 「誰だお前」

 

 完全に人違いであった。

 

 キラリと歯を光らせた男は一瞬焦ったように見えたがすぐに冷静になり、炎を出現させた。

 

 「夜は船でパーティをやるから、みんな参加してね」

 

 男は女の子たちの歓声に見送られて去って行った。

 

 「なんだ、あいつは」

 「ほんと、いけ好かないわよね」

 

 ナツが唖然と男を見送ると、金髪の女の子が話しかけてきた。

 

 「ありがとね」

 「あ?」

 「あ、そういえばナツ。レーナは?」

 「……あれ!?いない!探すぞハッピー!」

 「アイサー!!」

 「ちょ、ちょっと、無視しないでよ!」

 

 慌てて来た道を駆けだすナツとハッピー。そして金髪少女のルーシィ。

 

 

 「あ、いた!」

 

 暫く戻ると、道のど真ん中で倒れている人を見つけた。

 

 「レーナ、起きて!こんな所で寝たら風邪ひくよ!」

 「いやいや、そういう問題じゃないでしょ」

 

 ルーシィは倒れている人に近づいた。

 とても綺麗な青い髪をしている女の子だった。少し小柄だが、恐らく15・6歳くらいだろう。

 

 「どこか具合でも――」

 「いえ、寝てるだけです」

 「すぴー、すぴー」

 「えええええぇぇぇっ!!」

 

 道のど真ん中、それも女の子が幸せそうに寝ていることに驚くルーシィ。

 そのうるささにレーナが眉をひそめる。

 

 「んぁ……むにゃ」

 「お?起きたかレーナ」

 「おはようございまグー」

 「寝るな!」

 

 

 

 これが、、ナツとハッピーそれにレーナがルーシィと出会った時の出来事である。

 

 

 

 

 

 

 




不定期更新です。アニメしか観ていないのでずれている部分があると思いますがよろしくお願いします。


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二、辛いモノ

 

 

 

 「あたし、ルーシィ。よろしくね」

 「アイ!」

 

 

 バクバクバク

 

 

 すぴー、すぴー

 

 

 「あ~……ナツとハッピーと、レーナだっけ?」

 「あんた、バクバク、いい人だな、もぐもぐ」

 「わかったから、もっと落ち着いて食べれば?何か飛んできてるし(っていうかお色気代1000Jがパーだな、これ)」

 「すぴー」

 

 ルーシィはいまだに寝ている青髪の少女レーナを見た。

 道端で寝ている所を何とか起こし、レストランまで連れてきたが、席に着いた途端テーブルに突っ伏して寝始めた。

 

 「えっと、レーナ……ちゃん?何か食べなくてもいいの?」

 「ご心配なく。レーナの注文はおいらがしておいたから」

 

 魚を頬張るハッピーが答えてすぐ、ウェイターが料理を運んできた。

 

 「『激辛!炎の激辛ラーメン激辛風味ゲキカラ』、でございます」

 「激辛が三つも!っていうか最後の語尾みたいなの何!?」

 

 ルーシィがツッコムもテーブルに置かれたモノを見て言葉を失った。

 

 

 それは例えるならマグマ。スープは真っ赤に染まりドロドロと揺れている。麺を持ち上げたらさぞかしよく麺に絡みつくことだろう。

 

 

 「う、見てるだけで辛くなってきた……。ちょっと、注文間違えたんじゃ」

 「これでいいんです」

 

 

 この少女が、こんな辛い物を……?

 

 

 すると、レーナは鼻をひくつかせてムクリと体を起こした。

 レーナはぼーっとした様子で目の前に置かれた料理を見ている。

 

 

 た、食べるのだろうか……。

 

 

 ルーシィと、お店にいるすべての人が彼女の動向を息をのんで見守る。

 

 レーナは箸を取ると――

 

 

 ズゾゾゾゾゾゾ―

 

 

 思いっきりすすりはじめた。

 

 『う、うわー……』

 

 見てるだけでも辛くなってくる。

 

 「レ、レーナちゃん、辛くないの?」

 「?辛いですよ」

 「え!?じゃぁ、何で食べてるの?っていうか食べれるの?」

 「この、ピリッとした感じが目の覚めるようで……グー」

 「寝んのかい!!」

 「はっ!」

 

 覚醒したレーナ(若干眠そうだが)はさらにテーブルに常備されている唐辛子をふりかけズゾゾゾゾゾと音を立ててすすった。

 

 それを見て胸やけのする人々。

 

 「レーナの食事は見ない方がいいよ。食欲なくすから」

 

 手遅れな時に忠告するネコちゃんだった。

 

 「それにしても、気前がいいですね。見ず知らずの私たちにこんな御馳走を……ズゾゾゾ」

 「え~っと(う、見ないようにしないと)あ、あのサラマンダーって男ね、“魅了”の魔法を使ってたの――」

 

 

 ルーシィの話によると、非合法の魔法であのサラマンダーを好きになりかけたが、ナツが飛び込んできたおかげで完全にかからずにすんだ、ということらしい。

 

 

 「なるほど。……しかし、現れただけでチャームが解けるなんて……」

 

 レーナの視線が横にいる、ものすごい勢いで食べ物を掻きこむ人物を見る。

 

 「……惚れたか」

 「いやいや、違うから!」

 「冗談です」

 

 

 ズゾゾゾゾゾ

 

 レーナは何事もなかったかのように麺をすするのを再開する。

 

 「くっ……。こう見えても、一応魔道士なんだー、私」

 「ふぉう」

 「へー」

 「まだギルドには入ってないんだけどね。あ、ギルドっていうのはね」

 

 

 魔道士ギルドとは、魔道士が集まる組合。そこに依頼人が依頼を出し、魔道士に解決してもらう、仲介所のような場所である。

 

 

 ルーシィは熱く、ギルドへの思いを語り、ナツとハッピーは何とも言えない顔をして見合わせた。

 

 「よくしゃべるね」

 「あ、そういえば、あんたたち誰か探してたみたいだけど」

 「アイ!イグニール」

 「もぐもぐ。サラマンダーがこの街に来るっていうから来てみたはいいけど、別人だったな」

 「見た目のことじゃなかったんだね」

 「火の竜っつーから、てっきりイグニールのことかと思ったんだけどなー」

 「見た目が火の竜って、どうなのよ人間として」

 「ん?人間じゃねーよ。イグニールは本物のドラゴンだ」

 「はぁ!?」

 

 

 ルーシィはポカンと口を開けて固まった。

 

 代わりにレーナが「ナツ……」と声をかける。

 

 

 「ドラゴンがこんなところにいるわけないよ」

 「「はあ!!」」

 「今気づいたんかい!……ってかあんた汁まで飲んじゃったの!!??」

 

 衝撃を受けるナツとハッピーにツッコムも、赤いところのなくなった器に衝撃を受けるルーシィ。

 

 「レーナ、気付いてたんなら言えよ!」

 

 「話聞いたとき寝てた」

 

 レーナはしれっと言うと、「ではお休み」と言って寝てしまった。

 

 「はぁ……。なんか精神的に疲れた。あたしもう行くね」

 

 ルーシィはテーブルにお金を置いて立ち上がる。

 

 「ごちそうさまでした!」

 「でした!」

 「すぴー」

 

 去り際、ナツとハッピーは通路に土下座してルーシィに頭を下げる。

 

 「やめてぇ!恥ずかしいから!」

 「だけど……そうだ!これやるよ。サラマンダーのサイン色紙」

 「いらんわ!!」

 「すぴー」

 

 

 こんな騒ぎにも関わらず、完全に夢の中のレーナなのだった。

 

 

 

 



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三、新たな仲間

 

 

 

 「ぷはー!食った食った!」

 「アイ!」

 「もう夜だけど……」

 

 昼にレストランへ入ったはずが、あたりはもう真っ暗。どんだけ食べるんだと言いたい。

 

 「ん?お前だってずーっと寝てたじゃねぇか」

 「アイ」

 「すぴー」

 「もう寝てるし」

 

 柵に寄りかかって眠るレーナに呆れた声を出すハッピー。

 

 「そういや、サラマンダーが船上パーティやる船って、あの船かな」

 

 ナツが海を見ると、大きな船が沖へ向かっている。

 

 「うっぷ……気持ち悪ぃ」

 「想像しただけで酔うのやめようよ」

 

 

 

 「ねぇ、あれがサラマンダー様の船よ」

 「えー、行きたかった~」

 「サラマンダー?」

 「知らないの?今この街に来てるのよ?あの有名なフェアリーテイルの魔道士なんだってー」

 

 

 

 

 「……フェアリーテイル」

 

 話に出た名前に目を鋭くするナツ。レーナも閉じていた瞼を開ける。

 

 ナツの視線の先には船があり――

 

 「うぐっ」

 「はぁ……」

 

 

 レーナは眠そうに溜息をついた。

 

 

 

 

 ※※※※※※※※※※

 

 

 

 

 ――なんなのよこいつ。

 

 

 突然現れた男たち。男たちのかたわらには、同じ船に乗っていた女性たちが眠っている。

 これからルーシィを含めた女性たちはボスコへ奴隷として連れて行かれてしまう。

 抵抗しようとしたら、大事な鍵まで奪われ、海に捨てられてしまった。

 

 

 ――こんなことをする奴が……これが、フェアリーテイルの魔道士か!

 

 

 憧れて、どうしても入りたくて……けど、こんなの……

 

 

 「最低の魔道士じゃない!」

 

 

 叫んだ瞬間、天井を突き破って人が落ちてきた。

 

 「ナツ!」

 

 ナツは顔を上げると――

 

 「うっぷ」

 

 青くなって口を押えた。

 

 「えーっ!かっこ悪!」

 「ルーシィ、何してるの?」

 「ハッピー!」

 

 ナツが突き破った天井の穴からハッピーが白い羽をはやして覗いている。

 

 「騙されたのよ!フェアリーテイルに入れてくれるって。……てか羽なんて生えてたっけ?」

 「細かい話はあとだよ。行くよ!」

 

 そういうとハッピーはルーシィを掴んで空へ飛び出した。

 

 「ちょっと、ナツは!?ってかレーナは?」

 「ここに」

 「うわぁ!レーナ!?」

 

 突然眠そうなレーナが目の前に現れた。

 

 そう、目の前に。

 

 「え、レーナ……うう、う、浮いてる!?」

 「浮いてます」

 

 レーナは空中に胡坐をかいて浮いていた。

 

 「も、もしかしてレーナって」

 「うん。魔道士です」

 

 それから、といってレーナはルーシィに、先ほどサラマンダーに捨てられた鍵を見せた。

 

 「あ、それあたしの鍵!」

 「飛んできたのでキャッチしておいた」

 「ありがとう!」

 

 レーナは頷くと、どんどん岸から離れていく船に向きあった。

 

 「あれを岸まで戻さなきゃなんですが……」

 「あ!あたしに任せて!」

 

 ルーシィは海まで降りると、星霊魔法でアクエリアスを呼び出した。

 

 「アクエリアス、あなたの力で船を港まで押し戻して!」

 「ちっ」

 

 アクエリアスの態度にルーシィは憤慨するも、アクエリアスの起こした大津波に飲み込まれ悲鳴を上げた。ルーシィを持っていたせいでハッピーも巻き添えだ。

 

 「おー」

 

 レーナは上空へ避難して船とともにルーシィたちが岸まで流されるところを見ていた。

 

 

 

 船は見事港に突っ込み、横倒しになった。

 あたりには騒ぎを聞きつけた地元民が集まってきている。

 

 「ナツ―!」

 

 船に近寄るルーシィを見つけ、その横に降り立つ。

 

 「あ、レーナひどいや。一人だけ逃げるなんて」

 「ん~?ごめん?」

 「ちょっと黙ってて!」

 

 

 怒られてしまった。

 しかし無理もない。ルーシィはまだ知らないのだ。

 

 岸に戻った地点で、決着がついたことに。

 

 

 「言いそびれたけど、ナツも魔道士だから」

 「え!?」

 

 心配そうなルーシィにハッピーが言うと、ひどく驚いた。

 

 「オレはフェアリーテイルのナツだ。お前なんて見た事ねぇ」

 「えぇ!」

 

 どうやらフェアリーテイルを語る偽物はボラと言って、何年か前に追放された魔道士らしい。

 

 フェアリーテイルの名を語り悪事を働いたことに怒るナツをボラは攻撃。

 

 「ナツに炎は効かないよ」

 「ふあぁ~」

 「何でそんな余裕なのよ!」

 

 岩に寄りかかり今にも寝そうなレーナにルーシィが怒鳴る。

 

 「ん?……ほれ」

 

 目をこすり指を指すと、ちょうどナツが炎を喰い終わる所だった。

 

 

 

 そこからはあっという間だった。

 

 『火竜の咆哮』であらかた蹴散らされ、ナツが本物のフェアリーテイルのサラマンダーだと気付き、ナツの滅竜魔法で港を半壊させて終わった。そしてルーシィは……。

 

 

 「やりすぎーっ!!」

 

 炎に包まれた町を見て叫んだ。

 

 「アイ!」

 「アイじゃない!!」

 「すぴー」

 「そこ!寝るなぁ!!」

 

 

 ガチャガチャと鎧の音が近づいてくる。

 

 「軍隊!」

 「やっべ!逃げるぞ!」

 

 ナツは寝ているレーナを脇に抱え、ルーシィの手を引っ張って走り出す。

 

 「何であたしまで!?」

 「だって、俺達のギルド入りたいんだろ?」

 

 ナツはにっこりと笑う。

 

 「来いよ」

 「……うん!」

 

 ルーシィもいい笑顔で返した。

 

 

 

 こうして、フェアリーテイルに仲間が一人増えたのだった。

 

 

 

 それにしても………

 

 

 

 「プロポーズみたい」

 「うっさいわ!!」

 

 

 

 

 




レーナほとんど魔法使いませんでしたが、それには訳があるんです。本当ですよ?

やっと一話が終わりましたので今日はここまで。次回いつになるかわかりませんが、よろしくお願いします。


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四、妖精の尻尾

 

 

 

 

 

 「へぇーっ、ここがフェアリーテイル!」

 

 ルーシィは妖精のマークが掲げられた建物を見上げ、目を輝かせた。

 

 

 ナツ、ハッピー、ルーシィ、レーナの四人は、ハルジオンからフィオーレ王国マグノリアにある、フェアリーテイルの本拠地へと帰ってきていた。

 

 「ただいまーっ!!」

 

 ナツは扉を蹴破り中へ飛び込む。

 みんなの「おかえり」という言葉をよそに、あたりを見回し、ある人物を見つけると――。

 

 

 バキッ

 

 

 顔面を蹴とばした。

 

 「何でぇ!?」

 

 突然のことにルーシィが叫んでいる。

 

 それをゴングに、フェアリーテイルの面々は物を壊すのもいとわず、暴れだした。

 

 

 「……すごい。あたし本当に、フェアリーテイルに来たんだ!」

 

 

 こんな状況を前に感動しているルーシィは結構大物だと思う。

 

 が、それも一瞬のこと。

 

 

 「ナツが返ってきたってぇ?」

 

 

 パンツいっちょのグレイに驚き、

 

 

 「これだからここの男ってのは」

 

 

 酒を樽ごと飲むカナに驚愕し、

 

 

 「(おとこ)なら、拳で語れ!」

 

 

 と言って一発でやられることにビビり、

 

 

 「やれやれ騒がしいな」

 

 

 と言いながらケンカに混ざるロキに呆れた。

 

 「上位ランクから抹消――。っていうか何よこれ。レーナ、いったいどうなって……」

 「すぴー」

 「って、寝てんのかい!!」

 

 すぐ後ろにいたはずが、いつの間にかカウンターに突っ伏して眠っていた。

 

 ケンカの余波で色々モノが飛んでくるが、全く起きる気配はない。

 

 

 

 

 

 ここでレーナについて説明しよう。

 

 

 鮮やかな青い髪をしており、前髪は右側だけ長く目が隠れてしまっている。

 髪は一見短髪に見えるが、来ているポンチョを脱ぐと下の方で結っている髪が腰のあたりでしっぽのように垂れている。

 

 いつも眠そうで背中が丸まっており、長い裾で手が隠れているため、幽霊っぽくて夜見るとビビる。

 

 

 

 「ちょっと起きてよーっ!このケンカ何とかしなくていいの?」

 「むにゃ……だいじょーぶ。もうすぐマスターが……ほら」

 

 

 

 「やめんかバカたれー!!!!」

 

 

 「でかぁっ!!」

 

 

 ピタッ

 

 

 巨人の出現に、争いはぴたりとやむ。

 

 が、ナツだけは仁王立ちして止まった奴らを笑う。

 

 

 「だーはっはっは。みんなしてビビりやがって!この勝負オレの」

 

 

 プチっ

 

 

 「ひっ」

 

 

 踏まれた。

 

 自業自得だ。

 

 

 その大きさにビビるルーシィだが……。

 

 

 シュルシュルシュル

 

 

 「ちっさっ!」

 

 もとに戻ったフェアリーテイルマスター、マカロフに思わず叫ぶ。

 

 

 その後マカロフはくるくると回転しながら二階へと飛び上がるが、距離が足りず手すりに頭を打ち付ける。

 

 

 うん。痛そうだ。

 

 っていうかかっこ悪い。

 

 

 しかしマカロフが手すりに立って人々を見下ろすと、みんな自然と注目した。

 

 「まーたやってくれたのぉ、きさまら」

 

 マカロフは呆れたように紙の束を振った。

 

 「見よ、評議会から送られてきた文章の量を!ぜーんぶ苦情ばかり」

 

 確かに多い。あれが全部苦情だとは……。

 

 「聞いたぞ、ナツ、レーナ!ハルジオン港を半壊させたそうじゃないか!」

 「い、いやぁ、まぁ、あれは……」

 「ぐー」

 「寝るなバカもん!!」

 

 

 カコーン

 

 

 放り投げられたマカロフの靴がレーナにあたり、レーナは椅子から落ちた。

 

 「んぁ?……おはようございます」

 

 まったく堪えた様子のないレーナにマカロフはプルプルと怒りで震える。

 

 「まったく。わしは上に起こられてばかりじゃ」

 

 身に覚えのある者はばつが悪そうに顔を逸らす。

 

 

 

 

 

 

 「……だが、評議員などクソ喰らえじゃ!」

 

 

 紙の束が燃え出し、マカロフは空中へと放る。

 

 

 「よいか!理を越える力はすべて理より生まれる。魔法は奇跡の力なのではない、我々の内にある気の流れと、そして自然界に流れる気の波長が合わさり、初めて具現化されるのじゃ。

 それは、精神力と集中力を使う。いや、己が魂をすべて注ぎ込むことが魔法なのじゃ」

 

 

 魔法は自分と共にあるもの。自然と同じく共に生き、そして強く願うことで、魔法はより強くも弱くもなる。

 すべては自分の心次第――。

 

 

 「上から覗いてる目ん玉、気にしてたら魔道は進めん。評議員のバカどもを恐れるな。自分の信じた道を進め!

 それがフェアリーテイルの魔道士じゃ!!」

 

 

 人々は指を天井へ突きだし雄叫びを上げる。

 

 ルーシィはそんな様子に感激しているようだった。

 

 

 レーナはその様子を見たあと、瞼を閉じて思った。

 

 

 

 燃やした書類、提出するんじゃないのかなぁ……と。

 

 

 

 

 

 




レーナの容姿が出てきました。
顔は前髪で隠しています。


それからレーナは割とどうでもいいことが気になる性格です。


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五、竜の子

 

 

 

 

 

 「ナツ、レーナ、見て見て!フェアリーテイルのマーク入れてもらっちゃった!」

 「あっそう。よかったな、ルイージ」

 「ぐー、っププ」

 「ルーシィよ!っていうかレーナ、あんた今寝ながら笑ったでしょ!」

 「何言ってんのルーシィ。寝ながら笑えるわけないじゃん。バカなの?」

 「ぐ……っふ」

 「笑った!今絶対笑った!!」

 

 

 

 

 

 「ねぇ、父ちゃんまだ帰ってこないの?」

 

 ルーシィが騒いでる中、ナツはマスターに話しかけるロメオを見る。

 

 「くどいぞロメオ。魔道士の息子なら親父を信じて大人しく家で待っておれ」

 「だって、三日で帰ってくるって言ったのに、もう一週間だよ!」

 「確か、ハコベ山じゃったか」

 「そんなに遠くないじゃないか、探しに行ってくれよ!」

 

 しかしマスターはそれを厳しく断る。

 ロメオはマスターを殴り、出て行ってしまった。

 

 「厳しいのね」

 「あぁはいっても、マスターも心配しているのよ」

 

 

 その時、バキッという音がし、リクエストボードがナツの拳によって陥没していた。

 

 「レーナ、ハッピー」

 「アイ」

 「ふあぁ」

 

 ナツは荷物を持ち、フェアリーテイルを後にする。

 ハッピーもその後に続き、レーナは眠そうにあくびをしながら猫背気味で出て行った。

 

 「どうしちゃったの?あいつ」

 「ナツも、ロメオ君と同じだから」

 「え?」

 「ナツのお父さんも、出て行ったきり帰ってこなかったの」

 

 ナツはドラゴンのイグニールに育てられた。しかし777年7月7日、突然、その姿を消して、戻っては来なかった。

 

 「ナツは、いつかイグニールと会えるのを楽しみにしてるの」

 

 そういうところが可愛いわよね、とミラジェーンは笑う。

 

 「ん?だったらレーナは?どうしてナツと一緒に?」

 

 少ししか一緒にいなかったが、レーナはちょっとやそっとじゃ動かない。基本寝ている。

 

 「もしかして、レーナもナツみたいに親を……」

 

 ルーシィはしんみりと俯く。

 

 寝てばかりいるダメな子だと思ったけど、実は苦しい過去が――

 

 

 「ううん。レーナは仕事もせずに寝てばかりいるから、マスターの堪忍袋の緒が切れて、行動力のあるナツと一緒にいさせているのよ」

 「やっぱり寝てんのか!!」

 

 しんみりして損した!と憤慨する傍らで、ミラジェーンとエルフマンは顔を見合わせ、視線を下げた。

 

 「本当は外に出しちゃいけないんだけど……(ボソ)」

 「え?何か言いました?」

 「ううん。何でもない」

 

 

 ミラジェーンはいつもの笑顔を浮かべ、皿拭きに戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 




三人称、難しいです。
ハコベ山で、ちょっとオリジナル展開入れます。結果は変わりませんが。

次回。レーナの能力が明らかに!……なるかもしれない!(そこまでいかないかもしれない!)




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六 ハコベ山

 

 

 現在位置  ハコベ山

 

 

 

 ナツ、ハッピー、ルーシィ、レーナの四人は、三日で帰ると言ったマカオが一週間たっても帰ってこないというロメオの話を聞き、マカオを探すため、このハコベ山に来ていた。

 

 

 「寒い~っ!いくら山の方とはいえ、今は夏でしょ?こんな吹雪おかしいわ~っ!」

 「そんな薄着してっからだろ?」

 「あんたも似たようなものじゃない。……てか、レーナもしかして寝てる!?」

 「ぐー」

 

 レーナは現在、歩きながら眠っていた。

 レーナの特技の一つであり、大抵の場所は寝て歩けるが、時々転ぶ。

 そして一旦転ぶと起きるまでそのままである。

 

 「レーナ!こんな冬山で寝ちゃ駄目よ!起きて~っ!!」

 「ぐーかー」

 

 ルーシィがレーナの肩を掴んで揺さぶるも、レーナは一向に起きない。

 

 「静かに寝かせてやれよルーシィ」

 「てか、よくこんな冬山で寝られるわね」

 「あい。それがレーナです」

 

 

 

  ※※※※※※※※※※

 

 

 

 「『マカオさんはこんな場所に何の仕事に来たのよ』と申しております」

 

 ルーシィは現在、あまりの寒さに耐えきれず、己の星霊であるホロロギウムの中に入りこんでいた。

 しかも、マカオの仕事が凶悪モンスターヴァルカンの討伐と聴き、「『あたし帰りたい』と申しております」……と言うしまつ。

 そんなルーシィに、ナツとハッピーは若干呆れている。

 

 「マカオ―っ!いるかーっ!」

 「マカオ――っ!!」

 

 ナツとハッピーが山に向かって叫ぶ。しかし、その叫びはすぐに吹雪へと吸い込まれて消えた。

 

 その時、雄叫びを響かせて何かがナツ達の頭上に落ちてきた。

 ナツは避け、落ちてきたものを睨む。

 

 「ヴァルカンだ!?」

 

 ナツは戦闘態勢をとるも、ヴァルカンの様子がおかしい。

 

 「フゴフゴ」

 「?」

 「!ウフォ!!」

 「おいこら!」

 

 ヴァルカンが何かの臭いを嗅いでいたかと思うと、突然ナツとは別の方向へ飛んでいく。

 

 

 

 ルーシィはホロロギウムの中で寒さに震え目を閉じていた。ちなみに、転んだレーナも中に入って寝ている。

 そしてルーシィはホロロギウムが揺れた衝撃で目を開けた。

 

 「~~~~~~~~~!!!!」

 「人間の女だ。しかも二人」

 

 ナツはヴァルカンがしゃべるのを聞き、嬉しそうに炎をまとった拳を打ち合わせた。

 

 「しゃべれんのか」

 

 まぁ、その間にホロロギウム――つまりその中に入った二人はヴァルカンに連れ去られているのだが。

 

 

 「『てか助けなさいよ~』『ぐー』と申しております」

 

 

 ルーシィの叫びはホロロギウムの壁に遮られ、ちゃんと届くことはなかった。

 

 

 

 

 

 





長いので二つに分けました。
九時ごろにもう一話載せます。

次回は、レーナの魔法が明らかに!(タイトルでばれてますが)




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七、天候魔法

本日二話目です。

ここでオリジナル要素が加わります。


 

 

 

 ハコベ山 山頂付近 外

 

 

 

 「『何でこんなことになってるわけ~?何この猿。テンション高いし!』と申されても……」

 「女~」

 

 

 ゾゾゾゾッ

 

 

 寒さとは違う鳥肌がたつルーシィ。

 ヴァルカンはじーっとホロロギウムの中のルーシィを見つめる。

 と、その時。

 

 

 ピピピピッピピピピッ

 

 

 そんな音とともにホロロギウムは消え、ルーシィとレーナは放り出された。

 

 「時間です。ごきげんよ~」

 「ちょっとーーーーっ!!」

 

 叫ぶルーシィに応える声はなく、ヴァルカンが鼻息荒く近づいてくる。

 

 「あわわわっ!ちょ、ちょっとレーナ!起きて~っ!何とかしてーーーーっ!!」

 

 こんな状態でも寝続けるレーナの肩を掴み、必死に揺さぶる。

 首がガクガクと揺れるも、レーナは起きない。

 

 

 

 ギャアアアアアアアアアアッ

 

 

 迫っていたヴァルカンが止まり、振り返る。

 するとそこには……。

 

 

 ガアアアアアアアアッ

 

 

 ブリザードバーン、通称シロワイバーン現れた。

 

 「いやーっ!でっかいの来たーーーー!!」

 「ウッホ!しまった、ここあいつの縄張りだった!」

 「ガアアアアッ!!」

 「逃げろっ!」

 「あ、ちょっとなに一人で逃げてんのよ!」

 

 ヴァルカンがルーシィとレーナを置いて逃げてしまった。

 

 「お願いー起きてレーナ!お願いだから~っ!!」

 

 

 

 「んぁ?」

 「レーナ!やっと起きた!!」

 

 ようやく目を開けたレーナに泣いて喜ぶルーシィ。

 しかし、目の前にはご機嫌斜めのシロワイバーン。

 これを二人で何とかしなければならない。

 

 そんな危機的状況にも関わらず、レーナは呑気にあくびをする。

 

 「ふぁぁぁっ。……寒い」

 「そんなこと言ってる場合じゃないのよ!緊急事態なの!」

 「ん?……あら~」

 

 レーナは巨大なシロワイバーンを目にしても、眠そうに反応しただけだった。

 

 「ちょっと、レーナ!何でそんなに落ちついてんのよ!」

 「…………」

 「レーナ?」

 

 ルーシィは気付いた。

 そうだ。レーナも女の子。こんな状況で落ちついていられるわけがない。

 これは演技だ。

 あたしが慌ててるからきっと落ちつかせようとしているに違いない。

 フェアリーテイルの先輩だからって、甘えちゃダメた!

 あたしも魔道士なんだから!

 

 

 「……冬って眠くなるよね」

 「さっさとなんとかしろ!!」

 

 ルーシィは切れた。

 

 切れたルーシィにより前にだされ、レーナは仕方ないとでもいうように肩を落とす。

 そして、あたりを見回した。

 

 「ここ、民家とかないよね」

 「山だからね!」

 

 質問すると、きつい言葉が返ってきた。

 

 「……何で怒ってるの?」

 「誰のせいよ!」

 

 レーナは首をひねったが、この辺に民家がないのなら問題ない。

 

 「んじゃ、久しぶりにやりますか」

 

 レーナは右手を天に向けた。

 

 ルーシィはそんなレーナを見て、そういえばレーナの魔法をちゃんと見るのは初めてと気付く。

 いつも寝てばかりのレーナはいったいどんな魔法を使うのだろうか。

 やっぱり、催眠の魔法とか?

 

 そう、考えをめぐらすルーシィだったが、この場にハッピーがいてルーシィの考えを聞けば、「ルーシィってバカなの?」と言ったに違いない。

 

 

 

 

 「天候魔法【稲妻(ブリッツ)】」

 

 

 そう言った瞬間、吹雪が止み、暗くなった。

 何事かと空を見上げると、雪を降らす灰色の雲とは違う、真っ黒な雲が上空を覆っていた。

 

 ルーシィはただならぬ空気を感じていた。

 シロワイバーンも感じたのだろう、飛びながら空を見上げている。

 

 

 「落ちろ」

 

 

 バリバリバリバリバリバリ!!!!

 

 

 「きゃあああああっ!?」

 

 ものすごい爆音とともに視界が真っ白に染まり、ルーシィは思わず耳を押さえ目を閉じる。

 そして目を開けてみると、目の前の光景に唖然とした。

 

 あの巨大なシロワイバーンが黒焦げになって地面に落ちていた。

 

 「い、一瞬で……。な、何が起こったの?」

 「これが私の魔法」

 「魔法……」

 

 レーナは両手を空に向かって広げた。

 

 「天候魔法。天候を操る魔法だよ」

 

 

 

 

 



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八、天候魔法の欠点

前回までは

ハコベ山に行ったまま帰ってこないマカオを探しに、ナツ、ハッピー、レーナ、ルーシィでハコベ山へとやって来た。
そこにヴァルカンが現れ、レーナとルーシィがさらわれてしまう。
山頂付近に差し掛かったところで、シロワイバーンと遭遇。
ヴァルカンはおびえて逃げてしまった。
絶体絶命のピンチ!
そのとき、レーナの魔法が炸裂。
一瞬でシロワイバーンが黒焦げに。
レーナの魔法。
それは、天候を操る魔法。
天候魔法だ。

後半、レーナ視点のつもり。


 

 

 

 「す、すごい……」

 

 ルーシィは黒焦げのシロワイバーンを見て腰を抜かす。

 そしてなにより、あの寝てばかりのレーナがこんなすごい魔法の持ち主だなんて――。

 

 

 バリバリバリ!!

 

 

 「きゃーっ!」

 

 再び雷が落ちた。

 

 「ちょ、レーナ!もういい『バリバリドカーン』ギャーッ!」

 

 近くに!近くに落ちた!

 

 「おーい!レーナ!ルーシィ!」

 「二人とも無事―?」

 

 ナツとハッピーの声がし、見るとハッピーがレーナの所へ飛んできて、ナツはその後から走ってきた。

 

 「雷が聞こえたからもしかして、レーナだと思って『バリバリドゴーン』ギャアアアアッ!」

 「「ナツーーーーーっ!!!!」」

 

 雷がナツに直撃し、ナツは焦げた。

 倒れたナツの口からは煙が上っている。

 

 「ちょ、レーナ!攻撃止めてよ!」

 「ムリー」

 「はぁ!?」

 

 そういう間にも、雷はいたるところに落ちている。

 この場にいるのはとても危険だった。

 

 「何で無理なのよ!」

 「あい!それは、レーナの天候魔法が、広域攻撃を専門とした魔法だからです!」

 

 「広域って……」

 

 「広い範囲」

 

 「……つまり?」

 

 「無差別イェーイ」

 

 「イェーイじゃない!!」

 

 

 ルーシィは、ブイブイとピースするレーナに殺意が湧いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ※※※※※※※※※※

 

 

 

 

 

 

 

 ガ、ガアアアアアアッ!

 

 「ま、まだ動いてる!」

 

 見ると、黒焦げになっシロワイバーンが雄叫びを上げて立ち上がる所だった。

 どうやら、硬い鱗が雷から身を守ったらしい。

 それでも、満身創痍だが。

 

 「ふむ。もう一発……」

 「きゃっ!」

 「ルーシィ!」

 「ん?」

 

 ルーシィの短い叫び声が聞こえた気がし後ろを振り向く。

 

 「ウッホ!今の内!」

 「きゃああっ!レーナ、助けて!」

 「おー……」

 

 ルーシィがヴァルカンにさらわれていた。

 

 「あんた逃げたんじゃなかったの!」

 「ウッホ!女はオレのもの!」

 「レーナーっ!助けてぇぇ!!」

 

 うむ。このままでは仲間がさらわれてしまう。

 

 「【稲妻(ブリッツ)】」

 「え、ちょ、『バリバリバリ!!』ぎゃーっ!死ぬーっ!」

 

 しかし、雷はヴァルカンとルーシィにあたらず、別の所に次々と落ちていく。

 

 「む……雷は高いところへ落ちる」

 

 ここは山。別に高いところがありすぎて狙いが定まらない。

 

 

 そうこうしている内に、ルーシィは見えなくなってしまった。

 山を全部壊せばみつかるだろうが、そのときにはルーシィは巻き添えで生きていないだろう。

 

 

 こうなったら、ナツの人間離れした鼻に頼るしかない。

 

 「ハッピー、ナツを起こして」

 「あい!……レーナは?」

 「私は――――グー」

 

 「寝たーーーーっ!!」

 

 

 

 




若干ナツとハッピーが登場しましたが、すぐに巻き添え。

雷のときは、あまり外出しない方がいいですよ?


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九、ルーシィ頑張る

ほぼ二か月もの間空けてすみませんでした。

時間があいていろいろ忘れたと思うので、ちょっと復習を。

〇オリジナル主人公
名前:レーナ
性別:女
年齢:16歳
特徴:鮮やかな青い髪、長い前髪が目を隠していて、時々神の間から覗く瞳が怖い。いつも眠たそうで半目に猫背。
趣味:寝ること
特技:どんな過酷な状況でも寝ることができる
好きな料理:辛いものならなんでも
性格:基本的眠そうなのでやる気なし。
魔法:天候魔法(広域専門➝つまり無差別)


前回までのあらすじ

ハコベ山にて、ヴァルカン退治から戻ってこないマカオを探しに来たナツ、レーナ、ハッピー、ルーシィ。
吹雪く雪山にて探していたら、ヴァルカンが現れ、レーナとルーシィがさらわれる。
しかし二人がたどりついたのはシロワイバーンの縄張りで、そこでレーナが天候魔法を使いシロワイバーンを倒すも、無差別攻撃によって、助けに来たはずのナツが黒焦げになる。
そして、再びルーシィはヴァルカンにとらえられ、山の頂上へ連れていかれたのだった。




 「いやーっ離してよ変態!」

 「ウッホ!」

 「キャァ!」

 

 力の限り暴れると、氷の地面に放り出された。

 周りを見渡すと氷の洞窟のようで、あの場所から上ってきたことから、山頂付近のヴァルカンの住処なのだろう。

 

 「おんな、おんな、ウッホッホ~」

 「イタタタッ。このエロ猿、見てなさいよぉ」

 

 恐らく、助けは期待できない。

頼りのナツは、レーナの無差別魔法の餌食になって期待できないし、レーナの天候魔法は強力だけど、ここで発動されたら、命に係わる。

 むしろ来てほしくない。

 

 「あたしだってやるんだから!『開け 金牛宮の扉 タウロス』!!」

 

 雄叫びを上げて現れたのはビキニパンツを穿いた二足歩行の牛。

 その背には大きな斧が背負われている。

 

 タウロスは呼び出したルーシィを見ると――

 

 「……ルーシィさん、相変わらずナイスバディ。モ~素敵です!」

 

 と目をハートにして言い放った。

 

 「そうだ、こいつもエロかった……。えぇい、もう!タウロス、あいつをやっちゃって!!」

 「モ~ッ!お任せあれ!!」

 

 そういうとタウロスは背中の斧を手に持ち、振り下ろす。

 すると地面が割れ、ヴァルカンへと延びる。

 

 しかし、ヴァルカンはそれをやすやすと避けると、素早い動きでタウロスへと迫る。

 

 「速い!」

 「っ!?」

 

 タウロスはヴァルカンの攻撃を迎え撃とうとし、

 

 「オラァ!!」

 「ナツ!?」

 

 復活したナツに蹴り飛ばされた。

 

 タウロスは吹っ飛び、地面に伸びた。

 もう駄目っぽい。

 

 「弱ぁっ!」

 「おい、なんか怪物増えてんじゃねぇか?」

 「味方よ、味方!星霊よ!」

 「猿が?」

 「牛の方!!っていうかあんた、よく生きてたわね」

 「まぁ、レーナの無差別攻撃には昔から慣れっこだからな……ははっ」

 

 何故だろう。この時のナツが影を背負った大人に見えた。

 

 「くっ……察するわ。――ところで、どうしてここが?」

 「俺の鼻はよく利くんだ。レーナの雷で雪が止んでたし、匂いを追ってこれた」

 「まるで犬だね」

 「そうね…………って、レーナ!?」

 

 気づいたら洞窟の入り口にハッピーに抱えられたレーナが眠そうな顔をしてそこにいた。

 

 「やっほー、ルーシィ。……よく寝てる?」

 「えぇ。生きて――って!何で『よく寝てる?』なの!?普通そこは『生きてる?』とか『無事?』とかでしょ!!」

 「えーっ、だって生きてるのも無事なのも見れば分かるし……そしたら、あと一つしか――」

 「もっとあるわよ!」

 「……ぐー」

 「ね・る・なぁぁあああああ!!」

 

 ルーシィはレーナの襟首をつかみ、ガクガクと揺さぶる。

 

 「ルーシィ、さっきから怒ってばっかり。やっぱり睡眠不足からくるイライラなんじゃない?」

 「だから違うぅっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 ※※※※※※※※※※

 

 

 

 

 

 

 ルーシィが騒いでいる間、実はヴァルカンとナツのバトルが進んでいたりしていた。

 

 「俺はマカオを連れて帰るんだぁああああああ!!」

 

 ナツの炎をまとった拳がヴァルカンを吹っ飛ばすも、ヴァルカンはすぐに体制をお建て直し、衝撃で折れて落ちてきたつららを吹き飛ばす。

 

 ルーシィは飛んできたつららを何とか避けた。

 ナツは直撃だったが、「火にはそんなもん効かぁぁん!」とノーダメージ。

 

 「あ、レーナは!?」

 「ここだよー」

 

 見上げると、ハッピーが寝ているレーナを抱えて飛んでいた。

 

 「超お荷物!何で起きないの!?」

 「すぴー」

 

 レーナはとても幸せそうに寝ていた。

 そう、憎たらしいほどに。

 

 土埃が晴れ、だんだん視界がよくなってきた。

 目をこらし、ヴァルカンを見ると――。

 

 「ウッホ」

 

 手には巨大な斧が握られていた。

 

 

 




ほんと、お待たせしてすみませんでした。

毎回あらすじをまえがきに載せますので、話の流れがわからなくなったら見てください。


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十、下山・・・

一年ほど、お待たせしてすみません!
何とか今日中にパソコンに触れた!


あらすじ等を書こうと思ったのですが、前の話読み返したら、ほとんどあらすじの状況が変わらないので、「何だっけ?」と思った人は、九話のまえがきをどうぞ。

※主人公の容姿を少し変更しました。

片目を前髪で隠している→両目とも前髪で覆っている。


 

 

 「タウロスの斧!?(あぁぁ、あたしレーナのことお荷物とののしっておきながら人のこと言えない!)」

 

 ルーシィは気絶しているタウロスを起こそうとするも、起きる気配なし。

 

 「タウロス戻りなさい!そうすればあの斧も消えるのよ!」

 

 その間も、ナツは武器を得たヴァルカンの攻撃を避ける――が、

 

 

 つるん

 

 

 「がっ!?」

 

 ナツは氷に足を滑らせてしまう。

 

 「ウッホ!チャンス!」

 

 ヴァルカンは転んだナツ向けて斧を振り下ろす。

 

 「ぐぅっ」

 

 ナツはすんでの所で斧を白羽どりで防ぐ。

 

 「あわわっ、ナツが苦戦してるよぉ!」

 

 ナツが心配でオロオロし始めたハッピーに合わせ、抱えられていたレーナが左右に揺れる。

 

 「よし!おいらがナツを助けに行くぞ!『ガン!』あ……」

 「んあ?」

 

 レーナは突然訪れた痛みに目を覚ました。

 

 「あ、レーナ……その……」

 

 ハッピーが近寄ってきたが、レーナの目は苦戦を強いられているナツに向かった。

 

 「おー、ナツ苦戦してるね。……手伝おうか?」

 「「「絶対やめろ(て)!!!」」」

 「えー」

 

 間髪絵を入れず三方向からNOのお返事がきた。

 

 「(当たり前じゃない。こんなところで広域魔法なんて使われたらあたし達生き埋めよ!本人に悪気がないところがさらに質悪い!)」

 

 逢って数日だが、レーナのことを理解してきたルーシィなのであった。

 

 「んー、でも仲間は見捨てられない……やっぱり手伝う」

 「「「やめてーーーー!!!」」」

 「天候魔法『竜――――」

 「ふん!『ガッ』」

 「ぐふっ」

 

 レーナは技を出す前にうつぶせに倒れた。

 見ると、その頭には、たんこぶが二つできていた。

 

 「な、なんて非道なネコちゃんなの。さっき自分が誤って落としてぶつけた場所を殴りつけるなんて……」

 「平和のためには仕方のないことです」

 「怖っ!……でも、今のは正しい行いだったわ」

 

 ルーシィはあえて倒れているレーナから目を背け、ナツの戦いを見守った。

 

 

 

 ※※※※※※※※※

 

 

 

 「んんんんんっががっ――食ったら力が湧いてきた!」

 「刃を溶かした!身体の熱で!?(しかも食べてる!)」

 「あい!」

 「ぐー」

 「ってあれ?気絶じゃなくて寝てる?ガチで寝てる!?もしかして!」

 「それがレーナです」

 

 「行くぞ!『火竜の鉄拳』!!」

 

 ナツ渾身の一撃がきまり、ヴァルカンは吹っ飛んでまわりを震わすほど強く氷の壁にたたきつけられる。

 ヴァルカンはそのまま動かなくなった。

 どうやら気絶したようだ。

 

 「やったー!」

 「あーあ、このサルにマカオさんの居場所聞くんじゃなかったの?」

 「あ、忘れてた」

 

 っとそのとき、気絶したヴァルカンの体が光だし、魔法が収束し始める。

 

 「え、な、何?」

 「何だ!?」

 

 軽い爆発のような衝撃の後、光の中から現れたのは――

 

 「マカオ!?」

 「えぇ!この人が!?さっきまでエロ猿でしたが!?」

 「ヴァルカンにテイクオーバーされてたんだ」

 

 テイクオーバーとは、体を乗っ取る魔法であり、ヴァルカンは人間の体を乗っ取ることで生きつないでいたようだ。

 そしてマカオは激しい戦いをした後らしく、体はボロボロだった。

 

 「おいマカオ目ぇ開けろ!くそっ、誰がこんなことを!」

 「ほとんどあんたの攻撃でしょうが」

 「ロメオが待ってんだぞ!」

 「え、無視?レーナやネコちゃんならともかく、あんたまで!?」

 「っ……く……。悪ぃ、ナツ。十九匹までは倒せたんだが、二十匹目にテイクオーバーされちまった。これじゃぁ、ロメオに合す顔がねぇ」

 「何言ってんだ。そんだけ倒せば十分だ!」

 

 ナツとマカオが笑顔で手を取り合う。

 ルーシィはそれを見てかなわないなぁと感じていた(無視されて普通に話を進められたことは別にして)。

 自分は手も足も出せなかったヴァルカンをこの人は一人で十九匹も倒したのだ。

 ナツもヴァルカン相手に怯まず戦っていたし、寝てばかりいるレーナも、天候魔法という強力な魔法で、ヴァルカンよりはるかに強い白ワイバーンを一撃で倒したのだ。

 ルーシィが入ったフェアリーテイルとは、本当に実力のあるギルドなのだ。

 

 「ルーシィ、何にやにやしてるの?顔変だよ」

 「……髭引っこ抜くわよネコちゃん」

 「ルーシィ、顔変態だよ」

 「はったおすわよレーナ!!」

 

 いつの間にか起きてそばにいたレーナ。頭のたんこぶがまだ痛々しい。

 

 「はっ、もしや二人を見て『少年×おっさん』を妄想し――」

 「よーしはったおす!何が何でも土下座させてやる!」

 

 たんこぶをもう一つ増やしてやろうかと思ったが、ハッピーにまぁまぁと諌められ、落ち着けと自分に言い聞かせ、深呼吸をくりかえす。

 

 「ちょっとしたジョークです」

 「思いっきり悪口だったわよ!!」

 

 怒鳴り返したルーシィにレーナはヤレヤレと肩をすくめた。

 そのしぐさにイラッとしたルーシィは今度こそ殴ろうと足を踏み出す。

 

 

 ゴゴゴゴゴ――――

 

 

 「え、何?地震?」

 「もしかしてルーシィの怒りか?コエー、ルーシィ」

 「ち、違うわよ!あたしじゃなくて、これ、もしかして山全体が揺れてるんじゃ――」

 「あー、おそらくー」

 「何だ!?レーナ!」

 

 レーナは人差し指を一本立てた。

 

 「さっきの天候魔法が思いのほか山を直撃したのと、止めに山全体にナツの攻撃の衝撃が響いたせいで、山にかつてないダメージが与えられたのではないかと……」

 「……」

 「……」

 「……」

 「……それってどういうことだ?」

 

 真っ青になる三人に対して、一人理解ができていないナツに、レーナははっきりと告げる。

 

 「つまり、山が崩れるということです」

 

 今度はナツも理解したらしく、顔を青くする。

 

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

 

 「みんな生き埋めだぁい」

 「だぁい、じゃなーい!!」

 

 全員、素早く走り出した。

 途端、洞窟の奥が崩れだした。

 

 「きゃああああ生き埋めになるのはいやあああああ!!」

 「うおおおおおっ!マカオ大丈夫かああああ!」

 「あぁ、すまねぇナツ!とにかく走れ!嫁さんと子供が俺を待ってる!」

 

 怪我しているマカオは、ナツに背負われている。

 

 「レーナ起きてぇぇぇ!」

 「ってレーナ!?」

 「ぐー」

 

 ハッピーに抱えられたレーナは幸せそうに寝ていた。

 

 「ほとんどはあんたが原因でしょうが!寝るんじゃなーい!!」

 

 ルーシィの叫びを最後に、五人は雪崩に飲み込まれた――――。

 

 

 




ハコベ山編、完結です!

アニメだと、やっと二話目が終わったところですね。

読み返していて思ったのですが、オリ主寝てばかりで、ぶっちゃけ空気!いや、ぶっちゃけなくても空気!
原作にそって書いているからって、これじゃああまりにも変化ないなぁ、と感じましたので、次の話からは、もうちょっとオリ主を活躍させたいなぁと思っています。(たぶん)

なぜなら、もうすぐ彼女が出てくるから!


三月中には、もう一話書けたらいいなぁと思ってます。
待ってくれたみなさん、本当にありがとうございます。


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