北郷一刀ちゃんの憂鬱 (龍鱗)
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蜀の抱き枕:魏の傾国御遣い

こんなSSが思いついたのは大体m○bage版恋姫の充実ぶりのせい、だってあのゲームのイベント絵巻が完全に・・・w

①と②の話には接点はありません


①みんなで笑って暮らせる世の前に私が泣きそうです

 

 

気がついたら後漢末期、賊に襲われた時に助けてくれたのは、純粋な夢を持つ少女。

 

自分の知らない三国志、女性ばかりの武将たちに真名。

 

あの桃園の誓い、劉備、関羽、張飛の中に自分が混ざることになるとは思わなかったが。

 

桃香「御主人様ー!」

 

一刀「ん、桃香じゃないどうし・・・たぁ!?」

 

ドーン!といった効果音がでそうなぐらいの勢いで飛びついてきた桃香。

 

一刀「こぉら桃香、いきなり抱きつくなって前にも言ったでしょ?」

 

桃香「えへへ、だって御主人様を見たら抱きつきたくなって・・・。」

 

ギュッと抱きついてくるのは構わないんだが、その大きなのが当たってるんだけど、胸がない私に対するあてつけかと一瞬思ったがそんな嫌味なことをするような子じゃないのは私が一番良く知ってるわけで・・・。

 

鈴々「あー!お姉ちゃんばかりずるいのだ!鈴々もー!」

 

一刀「ふぐ!?」

 

後ろに抱きついている桃香に気を取られて前が疎かになっていた私に長女と同じく勢い良くぶつかってくる鈴々。

 

一刀「り、鈴々・・・お願いだからもう少し優しく来て、出ちゃうから・・・。」(宇宙的な何かが)

 

桃香「御主人様、なんだかその言い方すごいドキドキするんだけど。」

 

一刀「なんで!?」

 

桃香に嗜虐趣味があるとか泣けてくるんだけど!?

 

鈴々「一刀のお姉ちゃん、鈴々もかまって欲しいのだ!」

 

わかったから腰に抱きつくのやめて!?それと君たちその手の位置は確信犯なの!?

 

愛紗「・・・皆揃って何をしているんですか?」

 

一刀「愛紗!?ちょっと助けて!」

 

義姉妹二人に挟撃されて全く身動き取れない中通りがかった愛紗に助けを求める。

 

愛紗「・・・楽しそうですね。」

 

しかし拒否された。

 

一刀「どこが!?」

 

桃香「ふふー愛紗ちゃんも混ざる?」

 

愛紗「な!?」

 

おおい、何を言ってますかこのほわほわ娘は!

 

桃香「愛紗ちゃんも素直じゃないよねー♪」

 

鈴々「なのだー♪」

 

愛紗「ぐ、そもそも我らは大義のために戦っているのですぞ?ここで潰す暇は・・・。」

 

一刀「と、桃香、愛紗もこう言ってるしいい加減離してくれると嬉しいな、それに当たってるんだけど。」

 

桃香「・・・当ててるんだよ?」

 

どこで覚えたそんな言い回し!?

 

愛紗「・・・。」

 

あ、あの愛紗さん?なんだか目がドンドンと怖く・・・。

 

愛紗「ご主人様、失礼します!」

 

ちょっと!なんで愛紗も抱きついてんの!?あ、やばい、いい匂いする・・・じゃなくて!?

 

桃香「いい天気だねー。」

 

鈴々「なのだー。」

 

愛紗「ご主人様、暖かいです。」

 

鈴々「一刀のお姉ちゃん、ちゅー!」

 

一刀「え、ちょっと、んぐー!?」

 

桃香「あ、鈴々ちゃんずるい!わたしもー!」

 

みんなで暮らせる世を目指して邁進中だがこんな調子で大丈夫なのだろうか・・・?

 

 

 

 

②この二人今にも空箱送ってくる(しかも本人全く気にしない)レベルの険悪さなのだが・・・。

 

 

【我が子房なり】と言う言葉がある、過去の偉人が高祖劉邦に仕えた名参謀『張良』に値する傑物を迎えた時に使われた言葉なのだ、私が何故か後漢末期に飛ばされ今現在世話になっている曹操軍にもそういう軍師がいる、言わずと知れた『荀彧』だ、しかし晩年になると互いの意見が合わず曹操は荀彧にお前はもう無用という意味を込めて空箱を送ったとされる説がある。(その後に荀彧は自殺乃至毒殺された話になるが空箱の話の真偽は定かではない、寧ろ創作の可能性が濃厚で諸説色々あるらしい。)

 

一刀「まあ、晩年を迎える前は軍師として程昱や郭嘉共にかなり重用されて信頼されてるはずなんだけど・・・?」

 

華琳「・・・。」

 

桂花「・・・。」

 

そんな私の前には、街の改革案のために三人で会議の中笑顔で睨み合う華琳と桂花が居た。

 

一刀「なんか既に亀裂が入ってる気がするんだけどなー・・・。」

 

不思議に思うかもしれないがこの二人は私がさっき話した曹操と荀彧その人だ、何故か女性になっているのかや真名の件は全く分からないが、この二人どうにも仲が悪い、いや普段の仲は良い方だ、華琳様と慕う桂花は寧ろ忠誠の塊と言ってもいいくらい。

 

華琳「一刀、さっきから一人で何をぶつぶつ言っているのかしら?」

 

一刀「ああごめん、治安改善の話だったよね、私の故郷では区画ってのがあってさ、街をある程度の広さで分けて管理することなんだけど、その分けた場所に警・・・じゃなくて、治安部隊を配備するんだよ、そして治安部隊が不正とかを起こさないようにそれを統括する人材を置くんだ。」

 

華琳「なるほどね、ただ部隊を置くのではなくて軍のように隊長を更に纏める将を置くか。」

 

桂花「なら状況把握のために報告書のようなものも必要になるわけね。」

 

一刀「そういうこと、華琳や桂花は教養が高いからすぐに飲み込んでくれて助かるよ。」

 

華琳「あら、嬉しい事を言ってくれるわね?」

 

にこやかに笑った華琳が此方に近づいてくる、そしてそのまま私の頬にその綺麗な手が触れる、ああしまった、これはいつものパターンだ。

 

桂花「む・・・。」

 

華琳「あなたの知識は非常に興味深いわ、その天の知識を私の覇道の役に立てなさい。」

 

桂花「華琳様、戯れもほどほどに。」

 

華琳「あら桂花、嫉妬かしら?」

 

桂花「ええ華琳様、あなたにしています。」

 

華琳「ふふ、正直者は嫌いではないわよ?」(ニコニコ)

 

桂花「ありがとうございます、華琳様。」(ニコニコ)

 

だ・よ・ねー・・・どうしてこうなった、いや私のせいなんだがorz

 

元々私が華琳の軍に仕える前は実は荀家の世話になっていたのだ、その時に荀彧が私の故郷(ここでいうところの天の国)の政策や農耕の話を聞いて非常に感激されて真名を預けられてしまったのだ、その時はあの荀彧に感激されるなど思いもよらなくてしどろもどろになってしまったのが懐かしい、その後桂花と一緒に袁家に行ったのだが、あまりにもアレだったので桂花が辞表を叩きつけて再び旅に出た後曹操軍に世話になることになった。(その後親交が深まり曹操からも真名を預けられた。)

 

其処までは良かった、桂花も自らの生涯を懸けて仕える主を見つけられたと大喜びしていたし、問題は華琳が非常に女好き・・・現代でいうところのレズ、まあ桂花も荀家で起きたあることが理由でとんでもない男嫌いのせいか少しばかりそっちの属性がある。

 

此処まで聞くと、この二人非常に相性が良いように思えるのだが、実を言えばほぼ私のせいでこの二人の間に厄介な溝があるのだ、天の御遣いの私に非常に興味を持った華琳が私のことを閨に誘って、それを嫉妬した桂花が・・・華琳をライバル視している。

 

此処でさっき述べた荀家でのあることが挙がるのだが・・・実は桂花と旅に出る前に桂花が一人賊に襲われた時があったのだ、幸い駆けつけた私が賊を討ち桂花の純潔は守られたのだが、私が初めて人を殺めてやや不安定になってしまい、責任を感じた桂花が私に付き添ってくれたおかげでここまで持ち直せた、そしてその過程で私と桂花の間には支えあった二人だけの絆がある。

 

で、此処でさっきの話に戻るのだが・・・そう、桂花と華琳は私を求めて絶賛火花を散らしている状態なのだ、その険悪ぶりと言ったら廊下で対立したら風(程昱)が夢の世界に逃避して、稟(郭嘉)が変な妄想をして鼻から鮮血が舞うくらい・・・。

 

そこ、いつもどおりじゃね?とか言っちゃいけません。

 

とにかく私のせいで桂花と華琳の諍いが絶えない、幸い二人共公の場ではしっかりしている、しっかりしているのだが・・・。

 

華琳「ならこういうことは一刀に決めてもらうのが一番よね?」

 

桂花「同意見ですね。」

 

げ、やべ、考え事してて話聞いてなかった!

 

華琳「さて、一刀、貴女はどっちと閨を共にするのかしら?」

 

え、そんな話になってるの!?

 

桂花「・・・。」

 

いやいや、桂花さん?その「私に決まってるわよね?」的な不安そうな視線やめてくれませんかね?

私、事此処に至って四面楚歌・・・?

 

華琳「私は別に三人同時でも構わないけどね、あなた達が乱れるさまを寝台で愛でてみたいわ。」

 

桂花「ふふふ、華琳様、欲張りすぎると身を滅ぼしますよ?」

 

敢えて言おう、誰か助けてください!

 

風「無理ですねー。」

 

どっから湧いた!?




呉とか他のキャラは文が浮かんだら・・・。(白目)


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大切だから抗う

思った以上に反響が多くておっかなびっくりの筆者です・・・。
何か一本作るよりもこういった小話を書くほうが性に合ってると思っています

どうでもいい話ですがうちの一刀ちゃんはポニテ&知力ややブースト。
それと今回はちょい真面目な展開です。


③誰がなんと言おうと貴女が普通なんて言わせない

:白蓮所属

 

 

黄巾賊、漢王朝の腐敗によって民の不満が募り、周囲の賊も呼応して無差別に暴れまわる賊徒達、私が知る黄巾賊はそんな知識だ、当然領地を治める太守や県令達はその防衛に労力を費やすのだが、中には逃亡、どこ吹く風で税を上げる不届き者まで居るらしい、まあそれとはまた別な話で問題を起こした太守が私の眼の前に居るわけで・・・。

 

一刀「ねえ、白蓮。」

 

白蓮「な、なんだ一刀。」

 

一刀「なんだか城の兵や民の数が極端に減って見えるのは私の気のせいかな・・・?」

 

白蓮「あーそのな、学友が旗揚げしたものだから・・・な?」

 

一刀「そのせいでうちの防衛力がやや下がっているんだけど?」

 

ああ知っている、このお人好し太守様は親友であり学友の劉備に様々な『餞別』を渡してあまつさえ独立の助けまでしたのだ、そのせいでうちにとってはかなりの痛手だ、わかっていたけど趙雲まで抜けちゃったし。

 

一刀「はぁ、まさか【あれ】迄渡してないでしょね?」

 

白蓮「いや、私だってあれの凄さは身にしみてわかってるさ、まさか一刀の入れ知恵で騎馬隊の練度が見違えて変わるなんて思わなかったし。」

 

白蓮「驚いたのが馬にも武装をさせた上であの大きい槍、あれの存在がうちの威容を高めてるんだもんなぁ・・・。」

 

一刀「うちには問題が多いからね、最近発生した黄巾賊に数で負けてもいいようにこっちは量より質を揃えてるんだから。」

 

最終目的はわかりやすく言ってしまえば西洋騎馬隊だ、あれなら多少の弓で馬は怯まないだろうし、人も馬も完全武装した騎馬隊が攻めてくるのはこの時代の人達からしてみれば脅威の一言だろう、その証拠に一度此方に攻めてきた烏丸相手に試作段階のランスと武装した馬で迎撃したらその恐ろしさからか此方に有利な条件で講和を結ぶことができた。

 

後に聞いたんだがその様相は烏丸の人達からしてみれば騎馬に乗った数千の将が一つの隊で来たのかと見間違えるほどだったらしい。

 

今現在この幽州の地にそこそこな数の烏丸の民や兵たちも居る、白蓮が烏丸との平和的な関係を築くために講和を結んだ後に幾度と無く交渉を重ねて今現在烏丸の中に居る数部族の仲は極めて良好だ、幽州の地に屈強な烏丸の人達も集まっていて中にはうちの軍に居る人もいる。

 

一刀(備えておくことに越したことはない、とは言え、この世界の職人のレベルが高すぎてもう何も言えない・・・。)

 

まさかうろ覚えで作った設計図をさらに昇華させてよく映画などで見る西洋騎士の武具を作ってしまうのだからどういう技術力だと頭を抱えた、まあ現代顔負けの料理とかある時点でもう突っ込むのにも疲れたが。

 

白蓮「でも本当に一刀は私にはもったいないくらいだよ。」

 

白蓮「桃香から趙雲みたいに誘いがあったんだろ?私は別に行っても気にしな・・・あだ!?」

 

聞き捨てならないことを言ったのでその頭にチョップを食らわせる。

 

一刀「次同じ事言ったら殴るよ?」

 

白蓮「今叩いたよな!?」

 

一刀「白蓮、私は好きでここに居るの、誰に強要されたわけでもない、私の意思でここに居るんだからね?」

 

白蓮「うう・・・。」

 

一刀「白蓮は自分は凡庸だとか自信がないとか言ってるけど、そんな人にはこんな風に街を治められないよ。」

 

政庁の窓へと歩き、窓からその情景を見渡す、人達の活気で溢れ、皆が皆笑顔がある、客将としていた時に聞いた劉備の理想の縮図が此処に在る。

 

一刀「何のために私が此処に来たのかはわからない、でもこの笑顔を守るためなら私は頑張れる、白蓮みたいにね。」

 

白蓮「一刀・・・。」

 

一刀「私はそんな優しい白蓮の支えになりたい、天の御遣いとかそういう肩書関係なくね。」

 

そう言って振り返ってみれば何故かゆでダコみたいに真っ赤になった白蓮がいたわけで・・・?

 

白蓮「お、お前、よくもそんな恥ずかしげもなく・・・!」

 

一刀「何が?」

 

白蓮「いや、今更だな・・・惚れた私の負けだ。」

 

小声ではぁ、と溜息を付く白蓮、本当に何なんだ?

 

一刀(でもまあ、白蓮にはああ言ったけどそのためには問題が山積みだよなぁ・・・。)

 

自分で言ったが、優秀な将が少ないうちは本当に兵の質で勝負するしか無いのだ、なにせこの先白蓮を待ち受ける壁は非常に大きい。

 

一刀(幽州を治めている以上、歴史通りあの名族袁紹との戦いだってあるだろうし、勝ってもその先には多分その頃には強大になってる曹操軍・・・頭痛い。)

 

白蓮の領土欲が少ないのは知ってる、でも相手はそうではない、自衛のためには力がいる・・・。

 

一刀(絶対に、白蓮は守ってみせる!)

 

たとえ歴史に抗ってでも、拾ってくれた恩人であり、民を大切にする彼女を守りたい、その決意を新たにした。

 

 

④マイナスイオンとかそういう次元を超越してると思うんだ

:董卓軍所属(呂布寄り)

 

 

一刀「恋、れーん!」

 

ねね「恋殿ー!何処ですかー!」

 

天水、月が治める領地で私達は一人の女の子を探している、まあぶっちゃけ恋だ。

 

一刀「ねね、あと探してないところどこだっけ?」

 

ねね「むむー・・・あとは庭しか無いですぞ。」

 

一刀「最初から庭を探しに行けばよかったね。」

 

ねね「恋殿だったら間違いなく家族とお昼寝をしてたでしょうし・・・。」

 

二人ではぁ、と溜息をつく。

 

 

 

一刀&ねね「やっぱり(ですぞ)・・・。」

 

庭に行ってみれば案の定、数えるのも億劫になるほどの動物に混ざりセキトを抱きかかえてお昼寝中の恋がいた。

 

恋「・・・かずと、ねね。」

 

一刀「恋、また家族増えた?」

 

恋「ん・・・。」

 

ねね「恋殿ーもうすぐ視察の時間ですぞ。」

 

恋「分かった。」

 

ムクリと起きて家族をなでてから此方に歩いてくる恋、ここだけ見れば誰がこの子をあの鬼神呂布に思うだろうか、いやそれ以前に月もそうなんだが・・・あんな優しい女の子が董卓とか思わないって、もしあの反董卓連合が起きたら・・・無理、考えるだけでも悲しくなってくる。

 

 

 

 

視察と行ってもそんなに堅苦しいものじゃない、単に恋、ねね、私、セキトの三人+1匹が天水の街を歩くだけ・・・なのだが。

 

「呂布さーん、蒸かしたての饅頭があるんだけど食べてかないー?」

 

恋「お饅頭・・・。」

 

いや、そんな物欲しそうな声出さなくてもいつもどおり買ってあげるから・・・。

 

恋「・・・。」(もきゅもきゅ)

 

相変わらず癒やされる光景だと思う、歩きながら食べるって行為は普通行儀悪いんだが、そんなこと帳消しにして恋を中心とした癒やしオーラが溢れてる、ほら、近くの民衆がほわわ~んとしているし。

 

一刀「ほら、ねねも。」

 

ねね「いただくのですぞ。」

 

ねねもねねでなんだか妹みたいでついつい世話を焼いてしまう、なんだか董卓軍にお世話になってから癒やしとやりがいが両立している仕事といった感じで元の世界よりも充実感を感じている気がする。

 

一刀(それでも、此処は戦乱の世、なんだよね。)

 

恋は敵を倒す武人で、ねねはその場を作る軍師、二人共後にまで名を残す偉人らしくその容姿とは吊り合わないほどの圧倒的な武と知を秘めた名コンビ、そんな二人にしてあげられる私のできることはとても少なくて・・・。

 

恋「一刀、悲しそうな顔してる・・・。」

 

一刀「え、なんでもないよ、恋。」

 

ねね「一刀殿は隠し事が下手ですぞ。」

 

一刀「う・・・。」

 

恋「一刀、恋が一緒に居る、恋だけじゃなくて、ねねも、月も詠も、霞も華雄も居る。」

 

ねね「そうですぞ、これで足りないならとんだ贅沢ものです。」

 

一刀「はは、そうだね、今も十分幸せなのに、これ以上望むのは我儘だよね。」

 

一刀(だからこそ守りたいんだよ、君たちを、こんな私にだって譲れないものが有る。)

 

きっと、もうすぐ朝廷から招集の勅が来るのだろう、でもこの董卓軍でも、あの連合が起きるのか?

 

どんなことがあっても、心が暖かくなるこの居場所を守りたい、そのためには歴史、人物評関係はあてにならないけど、今の技術でも使える兵器や再現できる政策が有るはずだ。

 

一刀「二人共、手、繋がない?」

 

恋「うん・・・一刀の手、あったかい。」

 

ねね「なんだか子どもみたいですが、今はかんべんしてやるのですぞ。」

 

一刀「・・・ありがとう。」

 

一刀(絶対に、この手は離さない。)

 

二人から伝わる温もりをその手に感じながら、来るかもしれない大戦に向けて改めて気合を入れる、この手の温もりを零さないために。




呉より先にこの人達の文が思いついてしまった、ねねがデレてる気もしますが気にしない。
三姉妹書いた次の話でこんな話も違和感ありますが、いや好きなんですよ、白蓮。

焼きそばとか作っちゃうし、西洋騎士みたいな武具が作れてもいいと思うんです。
でも次の話は前回みたいなノリになるかもです。


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とりあえず胃薬の開発を急ごうか

今回は孫家編、しかし、mo○age見ると炎蓮様単騎でもすごく強そうです。


私が孫家に拾われてある程度時が経った、しかし、まさか三国時代の名だたる面々が女性だったとは・・・。

 

「いやーそれにしても。」

 

「・・・言わないで。」

 

見渡すかぎりの一面荒野、その中を走り抜ける数騎と大軍、信じられないことに、数騎が大軍を追っている、それを眺める私と蓮華。

 

「おらぁ!何を縮こまって逃げてやがる、生きたいなら戦いやがれ、俺を喰らってみろ雑魚ども!」

 

「ぴぃぃぃぃ!孫堅が来るのじゃぁぁぁぁ!七乃、何とかしてたもぉ!」

 

「と、言われましてもねえー・・・。」

 

追われているのは袁術、あの蜂蜜偽帝と名高いおっさんが可愛い女の子だったのは驚いたが。

 

「なんか、こっちが防衛戦なのにすっかりイジメだよね。」

 

「はぁ・・・母さま。」

 

江東の虎と名高い孫堅文台、真名を炎蓮というのだかこの人がまず恐ろしい。

 

少し前に劉表の要請で賊の討伐を依頼されたのだが、それは今後の孫家の躍進を止めるための劉表の罠だった。

 

ただの賊と侮り劉表軍の伏兵で炎蓮を葬る手筈だったのだがその目論見は脆くも崩れた。この炎蓮という人は娘である雪蓮(孫策)、蓮華(孫権)、小蓮(孫尚香)の三人娘を呆れさせるレベルの豪傑で、言葉が通じる分ある意味本物の虎よりも怖い。

 

曰く、「黙って俺について来い!」、「食いたくなったら食って、眠くなったら寝る、そして殺りたくなったら殺る!」

 

聞き様によっては暴君にも等しい信条の持ち主なのだがそれを凌駕する英雄としての魅力、並外れた武勇の持ち主で、彼女を慕い数多くの人材が集まったのもまた事実。

 

そんな彼女がそんな奸計で死ぬほど弱い存在ではなく・・・文字通り罠ごと踏み潰した。

 

後から聞いたが寧ろ獲物が増えて楽しめた、らしい、何なのこの人。

 

そして、黄巾の乱でも反董卓連合でもその武勇を恐ろしいほどに見せつけ周辺勢力から危険視され今に至る。

そしてどこの勢力の陰謀か分からないが袁術を焚き付け此方に攻め込ませたようだが炎蓮さんと兵こそ率いたがそれでも兵百数十人で十分という理不尽なまでの戦力差。

 

「どこの勢力の謀略かわからないけど、あんな子に攻めさせるとか酷いことするよねえ。」

 

「そういうのを諌めるのが軍師、張勲の役目のはずなんだけどね。」

 

とうとう炎蓮が追いついて袁術達を補足した、袁術を守ろうと兵たちが奮起するが、あまりにも酷い実力差に次々と兵が減っていく。

 

「あ、かなりの人達が吹き飛んだ。」

 

「もう袁術が可哀想でしかたがないわ・・・。」

 

少し離れた場所で手を出すなと言われて待機中の私達だがここまで来るともう何のために私達が出陣したのかわからなくなる。

後の孫呉になるであろう孫家に落ちた私はなんだかもう色々と現代で培った価値観が壊れてしまった。

 

 

 

 

それからまもなく、袁術軍を壊滅させた炎蓮さんが捕虜なのであろう二人を連れて悠々と帰還してきた。

 

「小娘、クソガキ、貴様らにくれてやる、どうするかは勝手に決めろ。」

 

「はっ、分かりました母上。」

 

「いいですけど・・・炎蓮さんは?」

 

「ああ?飯食って寝るだけだ。」

 

炎蓮さんは言うだけ言ってさっさと本拠地に帰還してしまった。

 

「さて・・・と?」

 

私が袁術に視線を移せばすっかりと怯えてしまった二人が顔を青ざめさせていた。

 

「ぴぃ!?」

 

「あ、あのあのあのあの、私達にできることならばなんでもするのでどうか美羽様のお命だけは・・・・!」

 

「七乃!?だ、だめじゃ、死んではならぬぞ!?」

 

「いや、其処まで鬼じゃないし、降伏してくれるなら命は助けるよ?」

 

「ええそうね、でもひとつ質問があるのだけど、あなた達は誰に焚き付けられて此処に攻めてきたの?」

 

「そ、それはですね、孫堅様を討伐しなければ大軍を持って攻めこむぞと劉表さんに脅しをかけられてしまい・・・。」

 

「わ、妾はそんな面倒なことは嫌だったのじゃ!でも・・・。」

 

「把握、あのおっさんがまたやったのね。」

 

「懲りないわね、劉表も。」

 

張勲から事情を聞き頭を抱える私達、最近妙に劉表からの攻勢が激しい、それこそ謀略侵攻流言と数え出したらキリがない。

炎蓮さんを仕留められなかったばかりか危惧した通り躍進を続ける炎蓮さんを討つために最近しつこく攻めてくるのだ。

 

「この分だと南陽には既に劉表の手が回ってるだろうし、此処に留まる必要もないね。」

 

「じゃあ早めに帰還しましょうか、袁術も構わないわね?」

 

「助けてくれるなら、妾にできることをなんでもするのじゃ・・・。」

 

すっかり萎縮してしまった袁術、なんて言うか少しばかり庇護欲がわいた。

 

「蓮華、一応みんなに袁術を助命と保護できないか打診してみるよ、配下の張勲は知恵が回るみたいだし損はないと思う。」

 

「別にいいわよ、私からも頼んでみるわ、でも袁術、それに張勲、母さまや一刀を裏切るような真似は許さんぞ?」

 

途中から凄みのある声になり、蓮華から炎蓮の姿を想起したのか二人共首が取れんばかりに縦に振っていた。

 

(蓮華も十分いいものを持っているのも確かだよね、炎蓮さんや雪蓮が期待してるのもわかる気がする。)

 

自分はまだまだ未熟と卑下する蓮華だがその身からは十分に王としての威厳があった。

 

(ま、二人共素直じゃないから口では絶対に言わないし、認めないんだろうけどさ♪)

 

「何を笑っているのよ一刀?」

 

「なんでもないよ、蓮華が王になったのを考えてみたら様になっているなって思ってさ。」

 

「縁起でもないことを言わないでよ、それはつまり母さまや姉様から譲位されるってことじゃない。」

 

「・・・それもそっか、ゴメン不謹慎なこと言った。」

 

それでも、歴史を知る私はこの先に一株の不安が拭えなかった。

 

 

 

 

本拠地に帰還した私達は冥琳と包(魯粛)に事情を説明していた。

 

「なるほど、事情は分かった、しかし本当に劉表はしつこいな。」

 

「とうとう袁術まで炊きつけてきましたし、此方からも攻め手に講じたほうがいいですね。」

 

「呉の統治も滞り無く進んでるし、そろそろ攻めてもいいかもね。」

 

「とりあえず美羽は私預りで再教育しながら、七乃は文官として採用でいいかな?」

 

「む?一刀、お前袁術から真名を預けられたのか?」

 

「そうなんだよね、帰還中になんか懐かれちゃって、その流れで七乃からも・・・。」

 

「いやー相変わらずの人誑しですよね、一刀さんは。」

 

「包、それどういう意味かな?」

 

「ひゃわわ、なんでもないですよ?ただ今にも始まったことじゃないとも思いまして。」

 

「ほほう?」

 

「あうう、冥琳様・・・。」

 

「一刀その辺にしておけ、包のそれも今に始まったことじゃないだろう。」

 

「はぁ、そうね。」

 

包、この子は少し無自覚で毒舌な一面があり、文官としては優秀なんだがどうにかならないものか・・・。

 

「あ、一刀お帰りー!」

 

「うわっと、シャオ、ただいま。」

 

「小蓮様、仕事は終わったのですか。」

 

「うん、祭との鍛錬も終わったよ、ほんとだからね?」

 

「そうですか、私はてっきり「口も過ぎるといらない波風を立てるぞ?」」

 

「ひゃわわ・・・。」

 

ここの軍師たちは頼りになるけど、どこかしら難点があるから冥琳や雷火(張昭)の気苦労が増えるんだろうなぁ・・・。

 

「一刀ーせっかく帰ってきたんだしシャオとゆっくりお風呂に入ろうよ。」

 

「んーいいのかな冥琳?」

 

「気にするな、風呂は広いし今更だろう。」

 

「わーい!一刀背中流してあげるね♪」

 

「わ、ちょっと、引っ張らないでよ!?」

 

 

 

「天の御遣いというのは随分と人に好かれるな。」

 

「一刀さんは男だったらとんだ女誑しになりそうです。」

 

「ふ、今も変わらんだろうが。」

 

「ただいま~袁術ちゃんの残党の取り込みが終わったわよー。」

 

「お疲れ様だな雪蓮。」

 

「お疲れ様です雪蓮様、でも少し遅かったですね、今一刀様と小蓮様がお風呂に行っちゃいましたよ。」

 

「はぁ!?なにそれずるい、私も行くわ!」

 

「あ、おい雪蓮!・・・包。」

 

「ひゃわわ!わ、私のせいですか!?」

 

 

 

 

「かっずとー私も混ぜてー♪」

 

「わぁ、雪蓮ってひゃぁ!どこ触ってるのよ!?」

 

「雪蓮姉さまずるい、シャオもー!」

 

「ちょ、二人共やめてって・・・あっ・・・!」

 

その後、暫く私は二人になすがままにされてのだった・・・。




次は桂花で長いのを一本作る予定です。


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ツン10割の消失

一刀と桂花の馴れ初めです、一部流血表現があります

書いていて思ったのは・・・桂花らしさがなくなってしまったか?

後かなりオリジナル展開です。


「あーもう、腹立つ腹立つ、腹立つ!」

 

足音を立てながら帰路につく少女、猫を模しているのであろう頭巾を被り不機嫌そうに歩いている。

 

「だから男は嫌なのよ!姉様の使いで来た私を舐め回すように見て!腹が立つったらないわ!」

 

聞くに親族の使者で外出をしていたようだが人目も憚らず農夫などが作業をしている田道をヅカヅカと歩いている。

 

「でも私だってこのままじゃ終わらないんだから、何時か志高い方にお仕えしてこの知謀を振るってみせるわよー!」

 

握り拳を握って天に掲げる彼女の名は荀彧、王佐の才、我が子房、曹操に仕えた有名な智将が何故女性なのかは割愛する。

 

「はぁ・・・とはいえ、見聞が狭いのも確かよね。」

 

決意を新たにした瞬間ため息を付きながら項垂れた。

 

「漢王朝も権力の腐敗でごたごた、父様や母様も都で変えられない辛い思いをしてるっていうのに、私は何をしてるのよ・・・・。」

 

荀彧の両親は都、洛陽で父は武官、母は文官、姉は荀家の柱として腕をふるっているが最近腐敗著しい朝廷に頭を悩ませている。

 

「天の御遣いなんて言う根も葉もない占いすら縋りたいと思ってしまうこの世の中、私なら、どうする?」

 

思考に浸る荀彧、その身に宿した知謀でどうこの世を変えていくかを考えてみる。

 

「・・・?」

 

思考に没頭していると、異質な存在を見かけた。

 

「うーん、なんかおかしいな、こんな広い畑にはトラクターの一つくらいはあるはずなんだけど・・・ど田舎?」

 

顎に手を当てながら、畑を眺めている一人の少女、しかしその格好があまりにも異質だった。

 

陽光に反射する貴族すら手が出なさそうな上質な生地の白い服、奇妙な形をした包、布に包まれた細長い物。

 

「いやいや、そもそもうちの近くにこんな広い畑の土地があったっけ、近くに家の一つや二つでも有るはずなんだけど。」

 

「困ったなー折角おじいちゃんから免許皆伝もらって家宝の刀を授かったのに。」

 

うんうん唸りながら、まれに理解不能な言葉を使う少女に不気味なものを感じながらも同等の好奇心を感じた荀彧は・・・。

 

「ねえあんた、何を独り言を言ってるのよ?」

 

先ほどの自分を棚上げの言葉だが白服の少女は荀彧に振り向くと少し驚いた顔を浮かべていた。

 

「え!?えーと・・・あはは、実は道に迷ってしまったみたいで、ここって、どこでしょう?」

 

「はぁ?此処は許昌だけど、それがどうしたのよ?」

 

「・・・はい?」

 

奇しくも、これが天の御遣い、北郷一刀と後の曹魏の名参謀、荀彧文若の初対面だった・・・。

 

 

 

 

数日後

 

 

※一刀視点※

 

 

 

「はぁ、まさか、気がついたら後漢末期だなんて、どんな漫画の話よ・・・。」

 

 

 

あの時混乱した頭でひたすら事情の把握と説明を始めた。

 

『はぁ!?未来から来た!?それも千何百年も先の?』

 

『は、はい、信じてもらえるとは思いませんし自分でも信じられません、ここは漢王朝で、今の皇帝は劉宏様なんですよね?』

 

『そうよ、普通だったら頭おかしいとか思うけど・・・それを証明できるものとか有るの?』

 

『えーと、これとかこれとか・・・?』

 

『なにこれ、こんな綺麗な紙に丁寧に字や絵が書かれてる、贅沢すぎるわよ。』

 

『此方では漢文の教科書と言って、勉学をするものに配給されてるんです。』

 

『は!?こんなものが沢山配られてるの!?』

 

『若干の金銭は必要ですけど、昔と比べて紙の生産方法も安定してきましたからね。』

 

『考えられないわ・・・・。』

 

『後、この鉛筆はとある木を削って作られていてですね。』

 

他にも数点見せると荀彧はやや納得した様子でため息を付いた。

 

『はぁ、これだけ見せられれば、嫌でも信じるしか無いじゃない・・・。』

 

『あ、そう言えば自己紹介がまだでしたね、私は、北郷一刀といいます、姓が北郷で名が一刀、字がないといった感じです。』

 

『私は荀彧、字が文若よ。』

 

(んん!!??)

 

正直いって驚いて声を出さなかった自分を褒めたい気分だった、荀彧といえば三国志を知るものにはものすごい有名人物だから。

 

(荀彧って、曹操に仕えた張良に比肩すると言われた傑物じゃん!なんで女の子なの!?)

 

『そういえばあんた、未来から来たって言ったけど、行く宛なんて無いでしょ?』

 

『仰るとおりなんです・・・これからどうすれば・・・。』

 

『なら私の家に来なさいよ、あんたのその未来の知識ってのに興味がわいたわ、悪い奴じゃなさそうだしね。』

 

あれから、その珍しさに興味を惹かれた彼女に屋敷に招かれることになったのだが・・・本当に驚いた。

 

 

時は戻って

 

 

「まさか荀攸も女性で、族子じゃなくて姉なんてね、まあ荀攸のほうが年上だったらしいし、間違ってはないだろうけど。」

 

それに、聞いた話だと、今は完全に漢王朝の時代で私の知る黄巾党の動きがまだ活発化していない時期だというのは推察できた。

 

「一刀、いるかしら?」

 

「あ、荀彧、今日も話を聞くの?」

 

「そうよ、あんたの話は私にとって未知の宝庫なのよ、聞いておいて損はないわ。」

 

私が荀家の世話になってから数ヶ月、荀彧にとっての話し相手になることが多かった。

そのため、話し方も砕けた感じになり、荀彧とはそこそこ交流を交わしている。

 

「それにしても、あんたが来てから私兵の練度が上がったり、作物が育ちが目に見えて違ったり万々歳ね。」

 

「私は知識を提供しただけだよ、それをここまで再現してみせたのは荀彧と荀攸さんの手腕でしょ?」

 

「それでもよ、いくら有能な知者でも知らないことは実現できないのよ。」

 

あれから、一刀は此処でも再現可能な物を出来る限り荀姉妹に伝えることにした、タダ飯食らいは御免こうむるし何より恩返しがしたかったから。

 

「それにしても・・・。」

 

荀彧が視線を移すとノートや鉛筆に消しゴムとボールペン、其処に書かれていたのは一刀が書いた文字、その側には一本の刀が立掛けてあった。。

 

「墨を態々交換しないであんな細い文字が書けるなんてね、羨ましい文化よ。」

 

「そうかな、でも私の字は荀彧より下手だよ、あんな綺麗な字書き慣れてなきゃできないよ。」

 

「当たり前よ、私は何時かこの才を捧げる方に仕官して民のために才を振るってこの天下に名を挙げてやるんだから。」

 

「あはは、荀彧ならできると思うよ、そのために書庫とかで勉強してるんでしょ?」

 

「む、まぁね。」

 

「今の世の中、何が起きるかわからない、それこそ人がいつ死ぬかわからないくらいにね。」

 

「・・・少し気になったんだけど、あの日本刀だっけ?あれであんたは戦えないの?」

 

「どうだろ、一応剣術には自信はあるけど、この手を血に染めたことは一度もないから。」

 

「ああ、そういえばあんたの生まれ故郷は争いがないんだったわね。」

 

「昔はあったんだけどね、先人に倣って武力は自衛のものしか持ってないんだ、今じゃ人を殺そうとしただけで重い罪になっちゃうからね。」

 

「ふーん。」

 

「そして貿易を盛んにさせて文化、産業や教育をどんどんと進化させたのが今の私の時代になるかな。」

 

「なるほどね・・・。」

 

「そして私はその昔の戦争があった時よりもっと過去の武家の末裔でね、祖父から子どもからずっと剣の指南を受けてたの。」

 

一刀が立ち上がり布を解くと鞘に収まった一本の刀をゆっくりと引き抜く。

 

「ふっ。」

 

そのまま青眼に構えておじいちゃんに習った型を思い出すように振っていった。

 

(・・・きれい。)

 

たとえ世界が違っても、私にとって大切な思い出の詰まった剣と、この武術は身体に染み付いている。

 

「っと・・・こんなものかな。」

 

「武なのにまるで舞のようだったわね、思わず綺麗だって思っちゃったわ。」

 

「うぇ!?・・・その、ありがと。」

 

荀彧からの思わぬ賛辞に顔を赤くして私は俯いた。

 

「こう知識やいいもの色々見せてもらってばかりだと私も何かお返ししないとね。」

 

「そ、その大丈夫だよ、そんなに気にしなくても。」

 

「私が気にするのよ、そうね・・・じゃあ一刀、これからは私のことを桂花と呼びなさい、私の真名よ。」

 

「ちょ!?真名ってそれこそ神聖なもので、大切な人にしか預けちゃいけないんじゃ!?」

 

「そうよ、私は一刀に色々なものを教えてもらったわ、きっとこの先その知識にはこれから助けてもらうことが多いと思うわ。私の道に大きな助けになってくれた一刀に私の真名を預かってほしいのよ。」

 

「う、うー其処まで言われたら断れないじゃん、私には真名がないから申し訳ないよ・・・。」

 

「いいのよ、私が受け取って欲しいんだから。」

 

「わかった、桂花、ありがたく受け取らせてもらうよ。」

 

その後、少しばかり親密になった、桂花と私に驚いた荀攸さんがいたらしい。

 

そして私と桂花は一緒に書庫で勉強をしたり、荀攸さんと一緒に私兵の訓練に混ざって腕を磨いたりしながら荀家で時を過ごした。

 

「姉様、お呼びですか?」

 

「待っていました桂花、最近一刀殿と親密に過ごしているようで微笑ましいですよ。」

 

荀攸、桂花の姉で真名を椿花(ちゅんふぁ)、桂花を一回り成長させたような見た目で性格は穏やかであり荀家を纏めるに相応しい器を持っている、それでいてその微笑みからは想像できないような知恵を持つことでも有名である。

 

「実は最近近くの農民や私兵から怪しい賊が見受けられているとのことです、数人ほどは捕縛できたのですが念のため外出するときには護衛を増やしておきなさい。」

 

「はい。」

 

「桂花、あなたは特に付近豪族との関わりが深く、最近では一刀殿の協力があり荀家はとても潤っています、どうか身辺にお気をつけを。」

 

「ありがとうございます姉上。」

 

でも、私は忘れてた、そして覚悟が足りなかった、今は黄巾賊が活発になる前とはいえ、治安の悪さは大陸全体に広がっていたことを。

 

 

 

sideout

 

 

二月程過ぎた時、桂花が使いでの帰りの道に入った時、それは唐突にやって来た。

 

「はあぁ、あいつ本当に気色が悪いわ。」

 

「荀彧様、お気持ちお察ししますが、どうか。」

 

「わかってるわよ盧祥、あんな奴でも豪族を纏めるやつだし、事を荒立ててもいい事なんてないのはわかってるわよ!」

 

桂花は荀攸の使いで様々な近隣豪族との話し合いに赴くことがある、しかし、その中には彼女のが嫌いな類の男もいる、この外史ではこれで桂花の男嫌いが加速したのも過言ではない。

 

「あーもう、帰ったら一刀に愚痴に付き合ってもらおうかしら。」

 

「その北郷様ですが荀彧様が帰ってくると聞いてお迎えに向かってるそうですよ。」

 

「は!?なにそれ聞いてないんだけど!」

 

「いえ、驚かせたいのでできるだけ内緒にとお願いされたもので。」

 

「はぁ、一刀のやつ・・・。」

 

ため息をつく桂花だったがその顔は少し緩んでいた、突発的だったとはいえ気を許せる友からの気遣いは嬉しいものだ。

 

しかし、そんな荀彧たちの道中に男たちが立ち塞がった、身なりは貧相だがそれぞれ手入れが届いていない武器を携帯している。

 

「よう、お前らなかなかいい身なりしてんなぁ、俺達に分けちゃくれねえか?」

 

 

 

 

一刀視点

 

 

「もうそろそろ桂花たちとの合流地点かな?」

 

数人の護衛とともに一刀は馬に乗って桂花との合流地点に向かっていた。

 

「はい、順調に進んでいれば、もうそろそろ合流のはずなのですが・・・。」

 

一向に桂花たちの姿が確認できない一刀たちは嫌な不安に襲われ馬を加速して進めると、凄惨な光景が広がっていた。

 

「なっ、これは!?」

 

テレビのドラマで見るのは違う、決して少なくない本物の死体、その中で、見覚えのある人が呻いた。

 

「盧祥さん!」

 

「ほ、北郷・・・様?」

 

「無理に体を動かさないで!死なない傷じゃなくても傷が開きかねないよ!」

 

「他の皆は他に息がある人がいたら手当にあたって!襲撃をした者達は無力化して!」

 

「は、ははっ!」

 

「私のことは、それよりも、荀彧、様が・・・そこの森の中に!」

 

「っ!!」

 

ある種不安があった、当たってほしくなかった、それでも今、一刻一秒を争う現実になっている。

 

「!一刀様!?」

 

其処から先は、正直言うと【あの時】になるまで覚えていない、無我夢中に森の中を走り、掻き分けた痕跡を辿って追跡していた。

 

賊が迂闊だったのか、獣道のように真っ直ぐな道に数人程の足跡が続いていて、追跡は容易だった。

 

もしこれが賊の足跡じゃなく、別の足跡で、桂花が別の道に連れ去られていたら?

 

そんな不安も頭によぎるも一心に走る、そのとき、声が聞こえた。

 

「嫌・・・!・・・なさい!・・・・だもの!」

 

「げへへ、どんなに・・・って・・・来ねえよ!」

 

そして見えた、見てしまった、衣服をほとんど剥ぎ取られ、涙を浮かべた桂花と、下卑た笑みを浮かべた三人の男たち。

 

一瞬で頭が真っ白になって、どんどん赤く染まった。

 

 

その刹那、脳裏に祖父の言葉が蘇る。

 

 

『一刀よ、お主に教えているのは人を傷つける術じゃ、もしお主の目の前で危機に瀕した親しい人がいるとする、そしてお前はその手に剣を持っている、剣を使わねばその人は助けられん状況となって、一刀よ、お前にその手を血に染める覚悟はあるか?』

 

 

恐怖もなく、迷いもなく、其処にあるのは、ただ助けたいという思いと、親しい人を傷つけた者への怒り。

 

 

今まさに桂花を手篭めにしようとしている男の首元に狙いを定めて、私は刀を構えて跳ねるように飛び出した。

 

 

 

 

桂花視点

 

 

護衛の人たちが次々と倒されて、私は森の中に連れ込まれた。

 

どんなに暴れても私の力じゃどうしようもなくて、暴れるたびに頬を張られた。

 

「この!放しなさいよ!この変態!」

 

「へ、さっきからうるせえ小娘だな!」

 

「だがなかなかの上玉だぜ、売ればいい金になるだろ。」

 

青ざめた、姉様から聞いていた話が自分に降りかかることになるなんて思わなかったのは軍師を志す者にとって失格かもしれない、それでも今の現実を信じたくなかった。

 

「だがよ、少しぐらい楽しんでも、なぁ?」

 

「うるせえ小娘をいい声で鳴かせるのも面白そうだぁ!」

 

「っ!?いやああああ!」

 

服を破られて、押さえつけられた、もがいても意味はなくて、それが悔しくて、なけなしの馬騰しか出なかった。

 

「嫌!放しなさいよ!けだもの!」

 

「げへへ、どんなに叫んだって助けは来ねえよ!」

 

(いや!嫌!助けて、助けて一刀!)

 

目尻から涙が出てこれから来る死よりも恐ろしい恐怖を前に目を瞑ってしまった。

 

「ぐぇぁ?あごおぉぉぉ!?」

 

でも、そんな思いと裏腹に、何故か聞こえたのは覆いかぶさろうとしていた男の苦悶に満ちた声。

 

目を開ければ、男の首から、刃が露出して、血を吹き出していた。

 

「・・・一刀?」

 

見間違うはずがない、その白い服、構えた刀、助けてと願った一刀その人が、賊に強襲をかけていた。

 

一刀が無言で刀を引き抜き男を私の居る方と違う方向に蹴倒した、倒れた男は首を抑えながらそのまま絶命した。

 

「な、なんだてめっ!?」

 

「はっ!」

 

背後に居た武器を振りかぶろうとした男に振り向きざまに刀を払うとその一閃で賊の手が、腕から離れた。

 

「え?俺の、手が・・・?」

 

徐々に離れた場所から血が流れ始めて恐慌し始める男、最後の一人に一刀は刀を向けると、すでに腰を抜かして戦意を喪失していた。

 

「失せろ・・・!」

 

「ひぃ、ひいいいいいいいいいいい!!」

 

「ま、待ってくれぇぇぇぇ!」

 

男達は呆気無く逃走した、私は、この時ようやく一刀が私を助けてくれたんだと理解できた。

 

「はぁ・・・はぁ・・・桂花、だいじょっ!?」

 

振り向いた一刀の顔を見た時、私は跳ねるように一刀に抱きついた。

 

怖くて、死ぬよりも怖い目にあいそうで、絶望していた中来てくれた光だった。

 

「怖かった・・・怖かったぁ・・・!」

 

「桂花、大丈夫、大丈夫だから・・・。」

 

安堵と未だ残る恐怖で嗚咽を漏らす私を、一刀は何も言わずに抱き返して頭をなでてくれた。

 

 

 

 

 

一刀が流石に半裸は不味いと荷物から野宿用の布を引っ張りだして私に被せてくれた。

 

それから私達を探してくれた兵の人たちが合流し私が持ってきた元々あった服に着替えをした私と一刀に頭深く謝罪をした。

 

「本来であれば我らがお守りしなければならないところを・・・本当に申し訳ありません!!」

 

「・・・気にしなくていいわ、一刀が助けてくれたし。」

 

「せめてお屋敷まで我ら命に変えてもお守りいたします。」

 

私を守ろうとしてくれた散った兵たちを弔い、馬に乗りなおして屋敷へと向かう、まだ怖さが残り一刀と二人乗りをして抱きついてしまった。

 

この時、なんで私は気が付けなかったんだろうか、一刀の手が僅かばかり震えていたことに・・・。

 

 

 

 

sideout

 

 

その後、無事とはいかなかったが、それからは襲撃もなく、一刀達は屋敷に到着することができた。

 

荀攸から深々と謝礼を述べられ真名まで預けられてしまうことや、桂花に服の裾を掴まれて一緒に寝て欲しいと頼まれたりと様々なことがあった。

 

そして夜も深くなり、一刀は桂花と寝具をともにしたのだが、一刀は一人震えていた。

 

(私、人を・・・殺しちゃったんだ・・・。)

 

眠りにつこうとした虚ろな頭のなかで今更その恐怖と重圧がやってきた、相手は悪党だ、しかしそれとこれは話は別である。

 

肉を裂いたあの感触、スーパーなどで買ってきた分厚い肉を切るよりも酷く悍ましい感触だった。

 

首を貫き吹き出した血、腕を切り落とした感触が今にも蘇りそうで両の手を肩に抱き一刀は震えていた

 

その時、桂花が一刀の異変に気がついた。

 

「一刀・・・?」

 

「!?けい・・・ふぁ。」

 

その時桂花は思い出した、一刀は戦いとは無縁の時代の人間だということを、殺したら重い罪になると言う時代。

普通に考えればわかる、初陣の兵ですら刺し殺した感触が忘れられずに兵をやめたものが居るほどだ。

ならば、平和な時代、人を殺すということがどれほど重い意味を持つのか。

 

「・・・私から何を言っても無駄になると思うわ、でもこれだけは伝えたいの、あそこで一刀が助けてくれなかったら、私は死んでいたわ、一刀が敵を倒したから私は助かった。」

 

「桂花、私は・・・。」

 

「一刀があそこで人を殺したのを重いと思うのなら、私が一緒に背負うわ、一刀の分も。」

 

寝台の中で一刀を抱きしめると、一刀は痛いほどに桂花を抱きしめ返して涙を流した。

 

「う、ぐぅ、あぁ、あああ!」

 

「不謹慎だけど、昼とは逆になっちゃったわね・・・。」

 

この時二人は、共に眠りに落ちて、朝になり互いが真っ赤になった。

 

 

 

 

一刀視点

 

 

その後を振り返ればあっという間だったと思う。

 

あの後桂花は袁家での士官が決まり、旅立つ準備を始めることになり、私もそれに追従することにした。

 

「本当にいいの一刀?あなたが来てくれるのは嬉しいし、正直来て欲しいと思うわ。」

 

「今更だよ、椿花さんにも頼まれたしね、頼まれなくても一緒に行くけどさ。」

 

「・・・ありがとう。」

 

だがいざ仕えたはいいものの、袁紹のあまりのアレっぷりに桂花が激怒し辞表を叩きつけ出奔。

 

「悪い人じゃないんだけど、ねぇ?」

 

「それひっくるめても論外よ論外!自分は良い暮らししていて民のことを最低限で蔑ろにしてるもの!兵の装備は良くてもあれじゃ持ち腐れよ!」

 

帰り道の道中、治安も良く、曹操が治める発展目覚ましい陳留の領地に寄り道して(と言うか運悪く許昌行きの商隊がなかった)桂花は自棄酒を起こしていた。

 

「全く、名家の袁家と期待してたけどとんだ期待はずれだったわ。」

 

「そういえば、明日この曹操様の領地で文官の採用試験があるらしいよ、申し込みは今日まで有効みたいだし、試しに出てみる?」

 

「曹操様かぁ・・・この街を見ると相当な御方よね、このまま家に出戻りなんて御免だし、受けてみようかしら?」

 

「あ、その顔、なにか献策が浮かんだでしょ。」

 

「まあね、一刀の教えてくれた政策をこの街に当てはめればもっと発展するわ、ちょっと試験中に一つやるわ。」

 

「良いけどさ、私も見ていて一つ思いついたことがあるし。」

 

まだまだ現役なボールペンを持って二人で微笑みながら明日の試験に備えることにした。

 

私と桂花は知らない、この選択が後に私達の命運が大きく変わり、私は気苦労が多くなり、桂花は嫉妬相手ができることを。

 

 

 

 

「秋蘭、見てみなさい、この解答用紙、とても興味深いことが書かれているわよ?」

 

「華琳様、如何しました・・・これは・・・。」

 

「興味深いわ、この細い字、試験内容に加えてこの街の改善案を明確に書いている二人、とてもそそるものがあるわね。」

 

笑みを浮かべて愛おしく解答用紙を持って秋蘭に顔を向けた。

 

「秋蘭、急ぎこの二人を城に招致しなさい、私自らこの二人を見極めるわ。」

 

「はっ、すぐに取り掛かります。」

 

「楽しみだわ、北郷一刀、荀彧文若、私の目に留まるようであれば、ふふふ・・・♪」

 

秋蘭が去った後、華琳と呼ばれた少女、曹操孟徳はその笑みを艷麗なものにして深く笑う、その光景を月だけが見ていた。

 

 

 

「!?」

 

「?どうしたのよ一刀。」

 

「なんか、すごい寒気が・・・。」

 

「風邪かしらね?気をつけなさいよ。」

 

「うん・・・。」




この時点で外史において一刀の影響で起こった歴史改変

桂花の一刀へのツン要素消滅(恩人補正、女なこともあるが)

麗羽の元から早期出奔し華琳の元へ行くのが早まる。

更に一刀の知恵ブーストで黄巾の乱発生前に兵糧管理を飛び越して華琳に二人が取り立てられる

その後は魏の傾国御使いに続くが華琳の一刀へのアプローチで桂花が一刀への隠れていた恋想いと華琳への嫉妬が芽生える

結果(桂花→一刀←華琳)の修羅場発生。

・・・なんじゃこのカオス


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自分から獲物になるスタイル(自覚無し)

これなら作れるはず、外史だし!(おい)


無事魏を建国した曹操軍だったがその日常は多忙を極めた。

北郷一刀と桂花も魏の重要な役割に収まっているため例外ではなかったが

王である華琳は人一倍疲労も重なるだろう何かできないかと一刀は考えるが一つの案が浮かんだが…。

 

(うーん及川に勧められたバイトの経験を活かせば…でも凄く恥ずかしいんだけど…。)

 

元の世界で友達・・・悪友?に勧められたバイト、の割にはかなり本格的だったのだが活かせるかと思い廊下を歩いていた、ある人物を探して。

 

「栄華、ちょっといいかな?」

 

「あら一刀さん、私に何か御用ですか?」

 

彼女は曹洪、真名を栄華というのだが、魏の財政管理を担っており、華琳に勝るとも劣らない性癖と桂花と同じくらいに男嫌い、

いや、桂花よりも酷いかもしれないが…自分が男だったらどんな扱いされてたことやらと背筋を凍らせた一刀だった。

 

「ちょっとね、華琳の仕事の手伝いをしたいんだけどそれについて服作りたくてさ、栄華にちょっと力を借りたいんだ。」

 

「なるほど、あまりお金は出せませんが、どのような服ですか?」

 

「ちょっと絵が上手い人に見本書いてもらったんだけど、こういうのなんだ。」

 

栄華が一刀から差し出された紙を見ると、ふむ、と紙を片手で持ち顎に手を当てて考える。

 

「なるほど中々素敵な服ですね。」

 

「私の世界で従者の人が着る服で、清楚感とかあるでしょ?」

 

「そうですね、私の侍女にも着せてみたいですし、これなら実際仕立ててみたものを検証してみます。」

 

「ありがとう、採寸渡しておくからよろしくね、これから凪達と一緒に警邏に行くから私も見回りながら考えをまとめてみるよ。」

 

「ええ、お気をつけて。」

 

警邏に向かう一刀を見送った曹洪は一刀が去ったのを見届けると口元に笑みを浮かべる。

 

「ふふふ、やはり未来の服というだけあって素晴らしい、早速うちの侍女にも着せて…。」

 

見る人が見れば引く笑みを浮かべてた。

 

 

 

 

許昌では一刀、凪、沙和、真桜と魏の三羽烏とそれを纏める一刀が犯罪防止と治安改善のために奔走している。

それでも警邏中に何らかの事件が起きることもあるのだが…。

 

 

「隊長、ひったくり犯の確保終わりました。」

 

「ありがとう凪、被害を受けた人も軽い擦り傷ですんだみたい。」

 

・・・

 

その後凪と一緒に見回っていたのだが…。

 

「あー阿蘇阿蘇に新しい服が載ってるの、欲しいのー…。」

 

「ウチも新しい工具欲しいねんけど予算がなぁ…。」

 

「…。」(ピキピキ)

 

「「あ…。」」

 

 

 

ドガラガッシャーン…!

 

ナニヲサボッテイルカー!

ギエェェェ

ナ、ナギチャンゴメンナノ―!

 

「やれやれ…。」

 

「ふふふ、御使い様は苦労が耐えないようで。」

 

「え、貴女は・・・?」

 

一刀が声をする方を向くとなんとも変わった服を着た女性が居た、

獣の毛皮を服にしたのだろうか、虎柄の衣装を着たなんとも妬ま羨ましい魅力的な体つき、

おまけに獣耳付きとどこぞのいかがわしい店にいそうな人である

 

「私は祝融と言いまして、蜀よりさらに南の南蛮というところから参りました、」

 

(え、な、南蛮!?こんなアマゾネスな格好した女の人が?と言うか祝融!?孟獲の奥さんじゃん!?)

 

「生来行商人の真似事をしながら許可を頂いて露店を開かせてもらってます。」

 

一刀の衝撃冷めやらぬ中彼女が微笑んで露店の商品を示すと幾らかの商品が一刀の目に留まる。

 

「あ、これ…。」

 

「おや、御使い様はそれが気になるので?」

 

「うん、これ全部まとめていくらかな?」

 

「此方はですね…。」

 

 

 

 

「隊長、どうしましたか?」

 

「ん、ちょっとね、さてサボり魔のお二人さんを連れて仕事に戻ろうか?」

 

「あうう…。」

 

「ごめんなさいなの…。」

 

 

・・・

 

 

「今日の警邏はここまで、ちゃんと引継書を書いて纏めること、皆お疲れ様ー。」

 

「「「「「「はっ!」」」」」」

 

多少のトラブルはあったが無事に警邏は終了した…。

 

 

 

 

数日後…。

 

 

 

 

「お疲れ様です一刀さん。」

 

「あ、栄華、もしかして…。」

 

「はい此方が、依頼された服です、因みになんという名前の服なんです?」

 

「メイド服、っていうんだ、何をするにしても形から入った方がいいし。」

 

「しかし何故一刀さんがその、メイド服を着る必要が?」

 

「ちょっとね、疲れてる華琳に何かしてあげたくてね。」

 

「疲れてる、そうですね、お姉さまずっと政務続きでしたし、息抜きも必要ですね。」

 

「そのために色々準備したんだ、華琳喜んでくれると良いけど…。」

 

「ふふ、頑張ってくださいな。」

 

 

 

 

翌日…。

 

華琳が朝起きて身支度を整えると食堂の方から何やらお腹をくすぐるようないい香りが漂ってきた。

 

「あら、食道で琉流が料理してるのかしら?」

 

興味を惹かれ厨房を覗き見ると・・・。

 

「あ、華琳おはよう。」

 

華琳が見たのはメイド服を着た一刀、華琳に向き直ると一礼した。

 

「一刀、どうしたのその格好?」

 

「ちょっとね、本当は華琳の部屋に持って行こうと思ったんだけど、ほら朝ごはんできたよ。」

 

一刀が盆を持ってくると、華琳にとって見たことのない料理が並んでいた

 

「主食が白米で鶏肉を使った唐揚げ…まあ油で揚げる手法の一つでこの野菜と一緒に食べるといいよ、

この汁物は味噌汁、私の世界じゃ朝のこれが美味しいんだよ、味噌は熟成させるのに時間がかかるんだけど

結構前に琉流と一緒に仕込んでおいたんだ、それと一緒にこの豆腐となめこ、なめこは山菜?の一つで

この組み合わせが味噌汁にいいんだよね、事前に季衣にも食べてもらって安全性は確保してあるから問題ないよ。」

 

「ふぅん、じゃあいただこうかしら。」

 

最初こそ初めての料理に戸惑いはあったが一口運んでみれば新鮮な味わいに舌鼓を打ちつつ、

味噌汁を啜ってみれば深い味わいと体がほんのり温まり、朝食には本当にうってつけな料理だというのがわかる。

 

「美味しいわねこれ、一刀の故郷ではこれが主流なの?」

 

「まあね、でもうまく行ってよかったよ、ここで再現するには難しい料理だったからね。」

 

盆を抱えて笑う一刀、侍女服が似合っているため中々様になっている。

 

「ふふ、琉流と一緒になにか作ってると思ったけどこんなに美味しい物を作ってたなんてね。」

 

「保存も効くし、作り方もわかったから普及してもいいかもね、はい、食後のお茶。」

 

「あらありがとう…これも美味しいわね、高いんじゃないのこのお茶?」

 

「南蛮から来たって行商人から買ったんだ、苦味があるけどすっきりするでしょ。」

 

「そうね、風味があって美味しいわ。」

 

「さっきの料理の中にも幾らかその人から買ったものがあってね、正直あるとは思わなかったけど…。」

 

一刀は苦笑い、なぜならば、味噌はともかく、この時代【コーヒー豆】なんてものが売ってるとは思わなかった。

味噌の容器は真桜に作ってもらい、コーヒー豆の挽きは季衣に手伝ってもらったが埋め合わせはまた後ほど。

 

一刀がしていたバイトはある喫茶店で、割りと良い収入だっただけに求められるスキルも中々、

何故悪友があんなバイトを知っていたのかと思ったが彼女曰く合コンの賜物らしい、胡散臭い。

 

 

 

 

その後も一刀は華琳の補佐として一日を奔走する。

 

 

「華琳、書類は案件ごとにまとめてあるよ、治安関係はこっち、治水や農耕はこっちで、

華琳が見る必要がない案件は私が片付けておいたよ。」

 

「え、ええ、ありがとう…。」

 

 

 

「ねえ一刀、さっきのお茶まだあるかしら。」

 

「うんあるよ、あれは珈琲って言って、茶請けにこんなのも作ったから食べてみて。」

 

「…これも美味しいわね、なんて名前の食べ物なの?」

 

「クッキーだよ、これもこんなところで作れるとは思わなかったけど。」

 

 

 

「ん…ふぅ…。」

 

「中々凝ってるね、書類仕事が多いせいかな、あまりムリしないでよ?」

 

「そうね…でも一刀これ…効くわね。」

 

「私の道場は健康第一がモットーで、こういうツボも学んでるんだ、日々是精進には健康な体が第一だからね。」

 

 

 

・・・

 

 

 

一刀の奉仕は予想以上に効果があったようで、いつもよりも職務に集中して過ごせた華琳。

 

「不思議ね、今日一日はいつもより仕事が捗ったわ。」

 

「それは良かった、私も頑張った甲斐があったよ。」

 

「ふふ、貴女が私専用の侍女だったら嬉しいのだけどね…?」

 

(いやだからそんな色っぽい笑みで近付かないで、女同士なのに変に意識し…いや華琳がそっち系なのは知ってるけど、そんなことしたら桂花が…いやなんで其処で桂花が出てくる私、ちょ、私まで変な気分に…!)

 

「あら、その顔、もしかして満更でもないのかしら?」

 

顔が赤くなっているうちにいつの間にか華琳の顔がすぐ目の前に来ていて後ずさろうとしたらすぐそこは壁。

 

「ふふふ、そんな顔をしないで、疼いちゃうじゃない♪」

 

「え、えっと、冗談とかだったり…しないよね?」

 

「私が冗談でこういうことをすると思う?」

 

顎に手がかかって嗜虐的でそれなのに綺麗な笑みを浮かべる華琳、もはや逃げるのは無理かと思った時…。

 

「華琳様、夜分遅く申し訳ありません、北の烏丸対策について少々気になることが…。」

 

果たしてそれは偶然か必然かお約束か、華琳の部屋に駆け込んできたのは、紛れも無く桂花、そして桂花の目に止まったのは、壁際に追い詰められた自らの親友と追い詰めているのが自らの主華琳。

 

桂花はこめかみに指を当てて、とても大げさにため息を吐いた後、その口から飛び出した言葉は…。

 

「華琳様、一刀に従者の衣装を着せて、変態ですか?」

 

「ちょ!?」

 

普段の彼女の印象をぶっ壊す勢いで、はんっ、とした冷笑を隠すことなく不敬全開な罵倒を吐き出したのだった。

その刹那、部屋の空気が一気に下がって罅割れたような音が聞こえた。

 

「く、ふ…ふふふふふ、言ってくれるわね、桂花。」

 

「一刀関係においては貴女との主従関係は抜きでいいとご了承をもらっているはずですが?」

 

既に二人には一刀の事は眼中に無く…否、一刀関係だからこそ二人は火花散らせる。

 

「本当に貴女とは決着をつけないといけないわね。」

 

「そうですね、それに関しては否定しません。」

 

互いにすることは決まったようで、卓に将棋盤を置くと互いに睨み合うと駒を置く。

 

「え、えっと、二人共、将棋打つならなにか飲み物持ってくる?」

 

「私は珈琲!」

 

「一刀、私は緑茶お願い!」

 

「う、うん、すぐもってくるねー…。」

 

そそくさと退散する一刀、未だに赤い顔で考えることは先程のこと。

 

(あうう、まだドキドキするよぉ、女の子同士なのになんか悪い感じがしない…じゃなくてあぁーもう!華琳があんな顔で迫るからなんか変な気分になっちゃたじゃん!)

 

走りながら考えることを頭を振って振り払いつつ茶を用意するために急ぐ、今浮かんだ考えを消し去るためではないと信じたい一刀だった…。

 

尚、華琳と桂花の勝負は決着がつかなかったそうな。

 

 








おまけ:一刀の今日の出来事のために準備した時の少女たちのやり取り集



「姉様が作ろうとしてるお味噌って時間がかかるんですね。」

「その代わりいろいろな料理に使えるから、楽しみにしてていいよ。」

「えへへ、楽しみです!」

「おーい隊長、注文された木のやつ出来たでー。」

「ありがとう真桜、其処においておいて。」

「はいなー。」

「それでこの麹と潰した豆を混ぜて、この木桶に詰めるんだ、空気が入らないように団子にして押し込めて…。」

時がたって…。

「はい、琉流、これが味噌汁、飲んでみて。」

「…わぁ、なんだか体が暖まって、懐かしい感じがします。」

「私の世界じゃこれが欠かせないんだよね♪」



「姉ちゃんこれ美味しいねー♪」

「まだまだあるから味わって食べなよ?」

「北郷、季衣と何を食べてるのだ」

「春蘭、丁度良かったこれ食べてみて、私の世界の料理のひとつなんだ。」

「む、中々美味いな、なんの肉だ?」

「鶏肉だよ、卵の生産が安定してきたしね。」



「お姉さん、天の御使いから侍女に転職ですかー?」

「わぁ!?風、これはそのね…?」

「ふふふー♪」

「…ちょ、風!話を聞けー!」


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