リプリケーション演繰者が異世界に来たようですよ (月球儀)
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第一話 やってきた異世界

初めましてcornerです。
不定期で駄文で処女作であるこの作品
温かい目で見てやってください。

感想などお聞かせください。
返信はできないかもしれません。ご了承ください。


「なんだこれ・・・まさかラブレターか♪?」

 

「単なるあんたの妄想ね」

 

やあ、初めまして俺の名前は 綾木(あやき) (ゆう)

 

この小さいのが (あかつき) 俺のお目付け役みたいなものだ

 

自己紹介も終わったところで・・・

 

「なんだこれは・・・」

 

「この時代には珍しいわね。開けてみれば?」

 

「そうだな・・・えっと」

 

 

 

『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。その才能(ギフト)を試すことを望むならば、

己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、我らの"箱庭"に来られたし』

 

 

                ◆

 

 

「は!?」

 

「えっ!?」

 

二人?は上空4000mほどの高さから真っ逆さまに落ちていた

いや、他にも男女三人が同じように上空に投げ出されていた。

だが、他人を気にしている余裕はない。

暁は問題ないだろう。だって羽出せるし。

問題はこの俺だ。死ぬかもしれない。

 

もちろんなにもできず

 

ドボォォォォン と4つの大きな水柱を立てた

幸いにも、幾重にもある薄い水膜によって、体がバラバラにならずにすんだ。

 

「大丈夫?」

 

珍しく暁が俺のことを心配してくれた。

 

「ああ、なんとかな。でも、体痛ぇ」

 

「そうでしょうね」

 

俺が、ぶつぶつ文句を言いながら岸に上がると

 

 

二人、金髪の学ランの少年と高飛車そうな少女はかなり不機嫌な様子だった。

 

「し、信じられないわ! まさか問答無用で引きずり込んだ挙句、空に放り出すなんて!」

 

「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ」

 

「・・・・・・・・・。石の中に呼び出されたら、身動きがとれないでしょう?」

 

「俺は、問題ない」

 

「そう、身勝手ね」

 

二人の男女はフンと、互いに鼻を鳴らして服の端を絞る。

 

「此処....どこだろう?」

 

「さあな。まあ、世界の果てっぽいものが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃねえか?」

 

茶髪の少女の呟きに学ランの少年が応える。

 

「まず間違いないだろうけど、一応確認しとくぞ。もしかしてお前たちのも変な手紙が?」

 

「そうだけど、まずは“オマエ”って呼び方を訂正して。私は久遠(くどう)飛鳥(あすか)よ。以後は気をつけて。それで、そこの猫を抱きかかえている貴女は?」

 

「・・・・・・春日部(かすかべ)耀(よう)。以下同文」

 

「よろしく春日部さん、野蛮で凶悪そうなそこの貴方は?」

 

「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶悪な逆廻(さかまき)十六夜(いざよい)です。

粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれよお嬢様」

 

「そう。取扱説明書をくれたら考えてあげるわ、 十六夜君」

 

「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」

 

「最後に、一人でこそこそと話している貴方は?」

 

「俺は、綾木 悠 呼びやすいほうで呼んでくれたのでいい

それに、一人じゃない」

 

「はーい、私の名前は 暁 この子のお目付け役みたいなものよ」

 

「あら、かわいいわね。よろしく。綾木君 暁さん」

 

心からけらけら笑う逆廻十六夜

 

傲慢そうに顔を背ける久遠飛鳥

 

我関せずに無関心を装う春日部耀

 

あたりを観察している綾木悠

 

(うわぁ、問題児ばかりみたいですねぇ...)

 

そんな彼らを見ていた黒ウサギは、そう思った。

 

召還しておいてアレだが・・・・・・彼らが協力する姿は、客観的に想像できそうにない。

 

黒ウサギは陰鬱そうにため息をついた。

 

「で、呼び出されたはいいけどなんで誰もいねぇんだよ。

この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの

説明をする人間が現れるもんじゃねぇのか?」

 

「そうそう、チュートリアルみたいにさ」

 

と十六夜とが苛立たしげに言い。暁がワクワクしている様子で言う。

 

「そうね。なんの説明もないままでは動きようがないもの」

 

「・・・・・・。この状況に対して落ち着きすぎているのもどうかと思うけど」

 

「あんたが言うのか?」

 

その様子を見ていた黒ウサギは、

もっとパニックになってくれれば飛び出しやすいのだが、場が落ち着きすぎているので出るタイミングを計れないでいた。

 

そのとき、ふと十六夜がため息交じりに呟いた。

 

「仕方がねえな。こうなったら、そこに隠れている奴にでも話を聞くか?」

 

物陰に隠れていた黒ウサギは心臓を捕まれたように飛び跳ねた。

 

「なんだ、あなたも気づいていたの?」

 

「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ?そっちの二人も気づいてたんだろ?」

 

「あたり見ていた時にちらっと」

 

「風上に立たれたら嫌でもわかる」

 

「・・・・・・・へえ? 面白いなお前」

 

軽薄そうに笑う十六夜の目は笑っていない。理不尽な召集をかけられた三人は殺気の籠った

冷たい視線を向けた。

 

 

「や、やだなあ皆様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んでしまいますよ?

は、はい、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じて

ここは穏便に御話を聞いていただけたら嬉しいでございますヨ?」

 

「断る」

 

「却下」

 

「お断りします」

 

「へえーー・・・」

 

「あっは、取りつくシマもないですね♪最後の人は聞いてないのですよ」

 

バンザーイ、と降参のポーズをとる黒ウサギ。

 

と、そこに耀が不思議そうに黒ウサギの隣に立ち、ウサ耳を根っこから鷲掴み

 

「えい」

 

「フギャ!」

 

力いっぱい引っ張った。

 

「ちょ、ちょっとお待ちを! 触るまでなら黙って受け入れますが、

まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵な耳を引き抜きに掛かるとは、どういう了見ですか!?」

 

「好奇心の為せる業」

 

「自由にも程があります!」

 

「へえ? このウサ耳って本物なのか?」

 

今度は十六夜が右から掴む。

 

飛鳥は左から。

 

「ちょ、ちょっと待っ、そこの人お助けを」

 

「無駄よ。あいつ自分の世界に入ってるわ」

 

黒ウサギの絶叫は、箱庭に広がっていった、




うーーーーん
この先不安
書き上げれるかな?
頑張ります!!


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第二話 ギフトゲーム

飴ちゃんなめていて いきなり大音量の通知が来て


驚きそのまま飴を飲み込んだcornerです。


初体験だったので正直怖かったです。


「あ、あり得ないのですよ。まさか話を聞いてもらうために小一時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはきっとこのような状況のことを言うに違いないのデス。

参加してない人は未だにきょろきょろしてますし」

 

そういわれて、悠は、黒ウサギに視線を向けて、

 

「向こうのほうも見に行きたいんだけど」

 

「その前に、黒ウサギを助けてください!!

そうしたら見に行けたかもしれなかったですのに!!」

 

「む、それはすまなかった」

 

「わかっていただけてうれしいですヨ」

 

「もう終わったから行っていいな」

 

「黒ウサギを助けて下さる優しいお方はいないのですか・・・」

 

「いいからさっさと進めろ」

 

 

ズーンという音が聞こえそうなぐらい落胆している黒ウサギに十六夜は話を進行させる。

 

 

「それではいいですか、皆様。定例文で言いますよ?ようこそ、”箱庭の世界”へ!我々は皆様にギフトを与えられた者達だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼントさせていただこうかと召喚いたしました!」

 

「ギフトゲーム?」

 

「そうです。既に気づいていらしゃるでしょうが皆様は、普通の人間ではありません!その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその”恩恵”を用いて競い合う為のゲーム。そしてこの箱庭の世界には強力な力を持つギフト保持者がオモシロオカシク生活できる為に造られたステージなのでございますよ!」

 

「まず初歩的な質問からしていい?貴女の言う”我々”とは貴女を含めた誰かなの?」

 

「YES!異世界に呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するにあたって、数多ある”コミュニティ”に必ず属していただきます♪」

 

「嫌だね」

 

「属していただきます!そして『ギフトゲーム』の勝者はゲームの”主催者《ホスト》”が提示した商品をゲットできるというシンプルな構造になっております」

 

「………”主催者”って誰?」

 

「様々ですね。暇を持て余した修羅神仏が人を試す為の試練を称して開催されるゲームもあれば、コミュニティの力を誇示する為に独自開催するグループもあります。」

 

「結構俗物ね。………チップには何を?」

 

「それも様々ですね。金品、土地、利権、名誉、人間……そしてギフトを賭けあう事も可能です。新たな才能を他人から奪えばより高度なギフトゲームに挑むこともできるでしょう。ただし、ギフトを賭けた戦いに負ければ当然──ご自身の才能を失われるのであしからず」

 

「ゲームそのものはどうやったら始められるの?」

 

「コミュニティ同士のゲームを除けば、それぞれの期間内に登録していただけたらOK!商店街でも商店が小規模のゲームを開催しているのでよかったら参加していってくださいな」

 

「……つまり『ギフトゲーム』はこの世界の法そのもの、と考えてもいいのかしら?」

 

お?と驚く黒ウサギ。

 

「ふふん?中々鋭いですね。しかしそれは八割正解の二割間違いです。『ギフトゲーム』の本質は一方の勝者だけが全てを手にするシステムです。」

 

「そう。中々野蛮ね」

 

「ごもっとも。しかし主催者は全て自己責任でゲームを開催しております。つまり奪われるのが嫌な腰抜けは初めてからゲームに参加しなけばいいだけの話でございます」

 

さて、と黒ウサギは話の流れを区切る様に言って、

 

「話した所で分からないことも多いでしょうから、ここで黒ウサギと一つゲームをしませんか?」

 

「「ゲーム?」」

 

そう言って、黒ウサギは虚空からテーブルを出した。

今まで沈黙を保っていた十六夜と、何かと話を聞いていた悠はピクリと片眉を上げた。

 

「ルールは至ってシンプル。ジョーカーを含めた53枚のトランプの中から絵札を1枚選んでとっていただきます。カードに触れるのは一人一回までとさせていただきます♪商品は、そうですねぇ……黒ウサギに何でも一つ命令できるということにしましょうか♪」

 

「ほう?……何でも、ねぇ………」

 

「勿論性的なことはダメですヨ!!??」

 

「冗談だ。」

 

そう言って、十六夜は黒ウサギの豊かな胸部をまじまじと見、黒ウサギは自慢のウサ耳まで赤くし、他の女性陣は、ゴミを見る目で十六夜を見た。(暁を含む)

 

「チップには・・・貴女のいうギフトを賭けるのかしら」

 

僅かに竦んだ様に飛鳥は尋ねた。黒ウサギはそれを感づき、

 

「最初のギフトゲームということでチップはなしとさせていただきます。強いて言うなら皆さんのプライドを掛けるといった所ですか」

 

挑発が下手くそなやつだ、と悠は思った。

 

「それではゲームを開始したいと・・」

 

「ちょっとまった。始める前にカードにおかしな点がないかチェックさせてくれ」

 

「 ? かまいませんよ」

 

その間、悠は大人しくしていた。

そうして、カードを黒ウサギに返した。

十六夜は一番手を名乗り上げ、テーブルのカードをざっと見て

 

「さっきは粋な挑発をありがとよ」

 

「き、気に入ってくれて何よりデス・・・」

 

「これはその礼だ!!」

 

十六夜は突然テーブルを平手で叩きつけた。黒ウサギは突然のことに驚き、耀と飛鳥は表になった絵札のカードを取っていった。

 

「な、何をやっているんですか!?」

 

「一人一回、絵札のカードを選んでとる。ルールに抵触してない筈だろ?」

 

「うう、箱庭の中枢から正当であるとの判断が下されました。し、しかし、十六夜さんと七花さんがまだですよ!!」

 

どうやら十六夜は黒ウサギを憤慨させてしまった様だが、十六夜は

 

「俺を誰だと思っているんだ?ほらよ」

 

手のひらを返すと、そこにはちゃんとクラブのキングがあった。それを見て黒ウサギは目を丸くした。

 

「一体どうやって!?」

 

「憶えた」

 

「は?」

 

「だから53枚のカードの並びを憶えたんだよ。」

 

なんでもなさそうに言う十六夜に、黒ウサギは再び目を丸くした。

 

「さあ、あんたの番だぜ?」

 

「おっ、やっとか。じゃあ」

 

悠はテーブルの上のカードを見回し。

 

「表になってる絵札がない!!!」

 

五人がずっこけた。

 

「な、なにやってんのよ。だったら他の人みたいにイカサマすればよかったのに!」

 

「一枚ぐらい表になっててもおかしくないだろ!!」

 

叫ぶ暁、頭を抱える悠、けらけら笑う十六夜、

 

「はあ、じゃあこれな」

 

悠の取ったカードはスペードのジャック

飛鳥、耀、黒ウサギは唖然として

暁はほっとした様子で

十六夜は、悠を見ていた。

 

(こいつ、一瞬、俺が見たカードを選びやがった。たまたまか?それとも・・・)

 

「でもまあ、これで全員クリアだな」

 

「おっとそうだった。じゃあ、俺の命令を聞いてもらおうか。

俺が聞きたいのはただ一つ

・・・・・この世界は、面白いか?」

 

そう聞かれて黒ウサギは満面の笑みを浮かべ、答えた。

 

「Yes。『ギフトゲーム』は人を超えた者たちだけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白い、と黒ウサギは保証いたします♪」

 

 

 

 

 




最後のほうめちゃくちゃだな・・・

意見、感想など

よろしくお願いします!


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第三話  世界の果てで

ふっくらした白ごはんって素晴らしいですね。

おかずが要らない♪
(↑ただ作るのが面倒なcornerです。)


箱庭の世界についての説明を聞き終えた悠達は、黒ウサギの案内を元に外門と呼ばれる場所を目指していた。

しばらく歩み続けると、前方に目的地が見えてくる。

黒ウサギは大きく手を振り、

 

「ジン坊ちゃーン! 新しい方たちを連れてきましたよー!」

 

 ジンと呼ばれた少年は、ダボダボのローブに跳ねた髪の毛が特徴的な人物。

 黒ウサギ達に気づいた彼は、居住まいを正して彼女達を迎える。

 

「お帰り、黒ウサギ。そちらの女性二人が?」

 

「はい! こちらの御四人様が――」

 

クルリ、と物凄い勢いで振り向き、ガチン、と固まる黒ウサギ。

 

「あ、あれ? 記憶違いでしょうか。もう御二人いませんでしたっけ? ちょっと目つきが悪くて、かなり口が悪くて、全身から“俺問題児!”ってオーラを放っている殿方と子供みたいにきょろきょろ観察してた御方が」

 

と、黒ウサギは残っている飛鳥と耀に問いかけた

 

「ああ、十六夜君なら『ちょっと世界の果てに行ってくるぜ!』と言って駆け出して行ったわ」

 

そういって彼方を指をさす飛鳥

 

「な、なぜ黒ウサギに教えてくれなかったのですか!?」

 

「『黒ウサギには内緒な』と言われたから」

 

「うそです。単に面倒だったからでしょう!?」

 

「「うん」」

 

「それで悠さんはどうしたのですか?」

 

「十六夜君に拉致られてったわ」

 

ガクリ、とウサ耳をへにょらせて前のめりになる黒ウサギ。

新たな人材に胸を膨らませていた数時間前の自分が妬ましい。

そんな黒ウサギとは対照的に、ジンは顔を蒼白にして叫ぶ。

 

「たたた、大変です! “世界の果て”にはギフトゲームのため野放しにされている幻獣が!」

 

「幻獣?」

 

「は、はい。ギフトを持った獣を指す言葉で、特に“世界の果て”の付近には強力なギフトを持った者も多くいます。出くわせば最後、人間ではとても太刀打ち出来ません!」

 

「あら、それは残念。ということは、彼らはもうゲームオーバーってこと?」

 

「ゲーム参加前にゲームオーバー? 斬新?」

 

「冗談を言っている場合じゃありません!」

 

 ジンは必死に事の重大さを訴えるが、当の二人は叱られても肩を竦すくめるだけである。

 そんなやり取りを横目で見つつ、黒ウサギは大きくため息を吐いて立ち上がった。

 

「はあ……ジン坊ちゃん。大変申し訳ありませんが、御二人様のご案内をお願いしてもよろしいでしょうか?」

 

「え? あ、うん。黒ウサギはどうする?」

 

「問題児様方を捕まえに参ります。ことのついでに──“箱庭の貴族”と謳うたわれるこの黒ウサギを馬鹿にしたことを、骨の髄まで後悔させてやりますッ!!!」

 

怒りのオーラを全身から噴出させ、長い青髪を淡い緋色へと染め

 

「一刻ほどで戻ります!皆さんはゆっくりと箱庭ライフをご堪能くださいませ!」

 

と、いうと彼女は空中高く飛び上がり、駆け出して行った。

巻き上がる風から髪を押さえていた飛鳥は、あきれたように

 

 

「・・・・・箱庭の兎は随分ずいぶんと速く跳べるのね。素直に感心するわ」

 

「兎達は箱庭の創設者の眷属。力もそうですが、様々なギフトの他に特殊な権限も持ち合わせた貴種です。彼女なら余程の幻獣と出くわさない限り大丈夫だと思うのですが・・・・」

 

 ジンの心配を余所に、飛鳥は「そう・・・」と空返事をする。

 

「なら黒ウサギも堪能くださいと言っていたし、お言葉に甘えて先に箱庭に入るとしましょう。エスコートは貴方がしてくださるのかしら?」

 

「え、あ、はい。コミュニティのリーダーをしているジン=ラッセルです。齢十一になったばかりの若輩ですがよろしくお願いします。御二人の御名前は?」

 

「久遠飛鳥よ。そこで猫を抱えているのが」

 

「春日部耀」

 

 ジンが礼儀正しく自己紹介すると、飛鳥と耀も彼に倣ならって一礼する。

 

「さ、それじゃあ箱庭に入りましょう。まずは、そうね。軽い食事でもしながら話を聞かせてくれると嬉しいわ」

 

 飛鳥はジンの手を取ると、胸を躍らせるような笑顔で箱庭の門をくぐるのだった。

 

 

 

 

                      ◆

 

 

「どうして俺はこうなってんだ?」

 

「そりゃ・・・どうしてかしら?」

 

俺たち(悠と暁)は、今、絶賛高速移動中である。

なぜかって? 十六夜に引っ張られているからだ。つかあり得ねぇだろこの速さ・・・

 

 

「なに、おまえが面白そうだったから連れてきた」

 

「それが理由か!?」

 

「俺にはそれ以外の理由はない!!」

 

 

もう、あきらめた。なるがままになろう。

そうしてそのままなるがままになっていると、森を抜け、目の前に飛び込んできた光景を前に

 

 

「・・・・すげぇ」

 

「綺麗・・・」

 

「ヤハハ、来てよかっただろ?」

 

「ああ、止まったらまず、文句を言ってやろうと思ってたんだが

そんな気すら吹っ飛んでいった」

 

 

二人は滝壺付近までやってきた瞬間、水面がうねり、間欠泉のように

巨大な水柱が立ち上った。

姿を現したのは、純白に輝く鱗を纏っている巨躯の大蛇だった。

蛇神はギロリと二人の姿を見ると

 

 

『人間よ、試練を選ぶがいい』

 

「「試練?」」

 

『そうだ。“力”“知恵”“勇気”そのいずれかを我に示すことが出来たのならば、貴様らに恩恵を与えてやろう』

 

「オーケーオーケー、じゃあ、その前にお前が俺たちを試せる持ち主か確かめさせてくれ」

 

「俺たちじゃなくて 俺だろ?おれを巻き込むな」

 

「まあ、いいじゃないか」

 

『いいだろう、後悔するなよ。小僧どもォ!』

 

「俺まで標的になってるーー」

 

「情けない声出してんじゃないわよ。」

 

 

そんな二人を前に蛇神の周囲に竜巻く水柱が立ち上る。

そして、開戦とばかりに咆哮を上げた。

 

 

『いくぞ小僧どもォ!神格たる我の力、その身に受けるがいい!』

 

 

竜巻く水柱が迫りくる。

それを十六夜が拳一振りで爆散させると、すぐさま十六夜が大地を砕く勢いで跳躍し、

蛇神の目の前に行った。

 

 

『なっ!?』

 

「おいおいこんなもんかよ。期待外れもいいとこだぜ!」

 

 

吐き捨てながら、蛇神の眉間に山河を打ち砕く拳をくりだした。

あまりの威力に蛇神は吹っ飛んでいき、水中に沈んでいく。

 

 

「容赦ねえな。お前が怖くなったわ」

 

「心配すんな、一応手加減はしといたし、すぐ出てくるだろう」

 

「十六夜さん!、悠さん!」

 

 

聞き覚えのある声が飛び込んできた。

振り返るとそこには淡い緋色に染めた黒ウサギが立っていた。

 

 

「あれ?黒ウサギ?」

 

「どうしたんだその髪」

 

 

駆け付けた黒ウサギは二人の無事にほっと安堵するが、それ以上に沸き立つ憤慨に怒髪天を衝くようにして問い詰める。

 

 

「どうしたもこうしたもありませんよ! 御二人共、一体どこまで来てるんですか!」

 

「“世界の果て”まで来てるんですよ、っと。まあそんなに怒るなよ」

 

「これが怒らずにいられますか!」

 

 

猫のようにウサ耳を逆立てる黒ウサギをなだめる悠

そこに十六夜は素直な感想を言った。

 

 

「しかしいい脚だな。遊んでいたとはいえ、こんな短時間で俺に追いつけるとは思わなかった」

 

「むっ、当然です。黒ウサギは“箱庭の貴族”と謳うたわれる優秀な貴種です。その黒ウサギが──」

 

 あれ? と黒ウサギは小首を傾げる。

 

(この黒ウサギが半刻以上もの時間、追いつけなかった……?)

 

 兎は箱庭の世界、創設者の眷属である。

 彼らの駆ける姿は疾風より速く、その力は生半可な修羅神仏では手が出せない程だ。

 そんな彼女に気づかれることなく姿を消したことや、追いつけなかったことも、思い返してみれば人間とは思えない身体能力だった。

 

「ま、まあ、ともかく!十六夜さんも悠さんも、御無事で良かったデス。

御二人が水神のギフトゲームに挑んだかと思いヒヤヒヤしてましたよ」

 

「水神? ―――ああ、アレ(・・)のことか?」

 

へ?と黒ウサギは硬直する。

指さしたものは、川面に浮かぶ白くてながいものだ

黒ウサギが理解する前に巨体をうねなし立ち上がった。

 

 

『まだ・・・・まだ終わってないぞ、小僧ォ!!』

 

 

十六夜によってぶちのめさせられた蛇神が復活した。

 

 

「蛇神・・・・!ってどうやったらこんなに怒らせられるんですか!?」

 

「ちなみに俺はなにもやってないぞ!叱るなら十六夜だけにしてくれ」

 

 

十六夜はケラケラ笑って事を黒ウサギに話す。

 

 

「いや、偉そうに『試練を選べ』とか上から目線な素敵なことを言ってくれたから

俺を試せるかどうか試させてもらったのさ。残念な奴だったが」

 

 

そんな十六夜の言葉を尻目に、蛇神は怒りに震えた声で

 

 

『貴様ら……思い上がるなよ人間! 我がこの程度の事で倒れるか!』

 

 

するとまたも周囲に先ほどよりも大きな水柱が立ち上った。

 

 

「御二人とも、下がってください!」

 

 

黒ウサギは咄嗟とっさに二人を庇おうとするが、十六夜の鋭い視線がそれを阻はばむ。

 

「何を言ってやがる。下がるのはテメェだろうが黒ウサギ。これは俺と悠が売って、ヤツが買った喧嘩だ。手を出せばお前から潰すぞ」

 

「だから俺を巻き込むなぁ!」

 

 

十六夜の言葉に、蛇神は息を荒くして答えた。

 

 

『いい心意気だ。それに免じ、この一撃をしのげば貴様らの勝利を認めてやる』

 

「寝言は寝て言え。決闘は敗者を決めて終わるんだよ」

 

『フン!その戯言が貴様らの最後だ!』

 

 

巻き上がる水柱は更に水を吸い上げ、蛇のようにうねり、襲いかかる。

 

 

「はっ! しゃらくせぇぇぇ!!」

 

 

迫りくる水柱を殴りつけた。

瞬間、嵐のような水柱は、薙ぎ払われた。

 

 

「嘘!?」

 

『馬鹿な!?』

 

驚愕する声。それは人智をはるかに超越した力である。

そして、すぐさま蛇神の懐に入り、

 

「ま、中々だったぜオマエ」

 

蹴りつけた。それは悠のほうに飛んでくる。

 

「悠さん!」

 

黒ウサギが叫び、向かうが間に合わない。

すると、悠は落ち着いた声で

 

「暁」

 

「あいあいさー」

 

二人が意志疎通しあい、刹那、悠の背中から、いや正確には

悠の後ろに伸びている影から巨大な機械が出現した。

その機械は後ろに大きく腕を振りかぶり、蛇神を殴り飛ばした。

それは十六夜にも劣らない。

 

 

「おいこら十六夜、さっきのは絶対にわざとだろ」

 

「ヤハハ、そんなもの隠してるほうが悪いんだよ。

それにさっきぶっ飛んでった勢いでまた濡れちまった。

クリーニング代くらいは出るんだろうな黒ウサギ」

 

「へっ 罰があたったんだ。ざまあみろ」

 

冗談めかして言う十六夜に、無邪気な笑みでからかう悠

しかし黒ウサギの心はそれどころではなかった

 

 

(人間が、神格を倒した!? それもただの腕力で!? それにあの機械も

そんなでたらめなギフトが――――)

 

 

ハッと黒ウサギは思い出す。

彼らを召喚するギフトを与えた‟主催者”の言葉を。

 

 

『彼らは間違いなく――――人類最高クラスのギフト保持者よ、黒ウサギ』

 

 

 




4000文字オーバー

これからこんなことがあるのでしょうか

相変わらず下手くそだ
うまくいかねえ
これからも頑張ります。


アドバイス、感想お願いします。


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第四話 ノーネーム

昨日温かかったのに今日は寒い!

まともな晴れがねえぞと思うcornerです。

そりゃもう毎日


「あ、あのう十六夜さんに悠さん。かなり強烈なダブル攻撃でしたが、蛇神様は生きてますか?」

 

 

ハッと意識を取り戻した黒ウサギは二人に問いかけた。

 

 

「俺は命まではとらねえよ。戦うのは楽しいけど、殺すのは面白くない」

 

「それを面白がってちゃマジでやばい奴になるぞ」

 

「そういう、お前はどうなんだよ」

 

「心配すんな、ちゃんと生きてるよ。まあ、しばらく動けないと思うが」

 

「ならギフトだけでも戴いておきましょう。何はともあれ、お二人は勝者なのですから」

 

 

うきうきした足取りで蛇神に歩み寄る。

しかし、十六夜は不機嫌な顔で黒ウサギを見る。

そして、苗みたいなものをもってピョンピョン飛び回っている黒ウサギに問うた。

 

 

「なあ黒ウサギ。俺らになんか隠し事してるだろ」

 

 

ガチンと黒ウサギが一瞬固まる。そしてすぐに冷静さを保った。

 

 

「な、何のことです? たしかに箱庭のことなら至らぬ点はたくさんありますが・・・」

 

「そういうことじゃなくてだな、黒ウサギ」

 

 

今まで黙っていた悠が言う。

 

 

「十六夜が言いたいのは一つ、俺は二つだが一つ目は一緒だろう。

なぜ俺たちをここに呼び出す必要があったかだ」

 

 

黒ウサギは苦々しい顔を必死に隠し、平然を装いごまかそうとする。

 

 

「そ、それは・・・皆様にオモシロオカシク過ごしてもらおうと」

 

「それは違うな」

 

 

黒ウサギの言い訳を十六夜に制される。

十六夜の表情は険しさを増していた。

 

 

「まあ、たしかに最初は本当のことなんだろうと思っていた。なんせ俺は大絶賛‟暇”を大安売りしていたしな。だが、今のお前は必要以上に必死に見える」

 

黒ウサギの瞳は揺らぐ、そして十六夜は追い打ちをかけるように言葉を続けた。

 

 

「これは俺の勘だが・・・・黒ウサギのコミュニティは弱小のチームか、もしくは訳あって衰退しているチームか何かじゃねえのか? だから俺達は組織を強化するために呼び出された。そう考えれば今の行動や、俺がコミュニティに入ることを拒否した時に本気で怒ったことも合点がいく──どうだ? 100点満点だろ?」

 

 

黒ウサギは内心とても焦っていた

この時点でそれを知られてしまうのは手痛い

苦労の末呼び出した超戦力、手放すことは絶対に避けたい。

 

「・・・・・」

 

黒ウサギは黙り込む。

 

「この沈黙は肯定を示すぞ?」

 

「ちなみに俺たちは黒ウサギのコミュニティに入ってるわけじゃないから

他のコミュニティに入る権利はあるってことだな?」

 

「・・・・」

 

「だんまりか」

 

「まあいいさ。それなら俺は他のコニュミティにいくまでだ」

 

「え? だ、駄目です。待ってください!」

 

 

足を進めている十六夜を、黒ウサギは慌てて呼び止める

足を止め、十六夜は振り返ると共に促した。

 

「なら、包み隠さず全て話せ。それを聞くまでは、俺がお前達のコミュニティに入ることは絶対にないぜ?」

 

 

悩みに悩んだ末

 

 

「・・・・話したら、協力していただけますか?」

 

「ああ、面白ければな」

 

 

ケラケラと笑ってはいるがその眼は笑っていない。

黒ウサギは、覚悟を決めた

 

 

「分かりました。それなら我々のコミュニティの惨状を語らせていただきます」

 

 

黒ウサギはコホンと咳払いをすると、自分たちの境遇を語り始めた。

 

 

「まず、私達の組織には名乗るべき“名”がありません。よって呼ばれる時は名前の無いその他大勢、“ノーネーム”と言う蔑称で称されます」

 

「へえ・・・・その他大勢扱い、ね。それで?」

 

「次に私達にはコミュニティの誇りである旗印もありません。この旗印というのはコミュニティのテリトリーを示す大事な役割も担っています」

 

「なるほどな。まさに無い無い尽づくしって訳か」

 

「YES。そして“名”と“旗印”に続いて止とどめに、中核を成す仲間達は一人も残っていません。もっとぶっちゃけてしまえば、ゲームに参加出来るだけのギフトを持っているのは百二十二人中、黒ウサギとジン坊ちゃんだけで、後は十歳以下の子供ばかりなのですヨ!」

 

「もう崖っぷちだな!」

 

「ホントですねー♪」

 

 

十六夜の無慈悲な言葉にウフフと笑う黒ウサギは、ガクリと膝をついてうなだれる。

自分のコニュミティが末期だということが改めて思い知らされた。

そこに悠が疑問を持つ。

 

 

「なあ、どうしてそんなに子供だらけなんだ? しかも100人以上も銭稼ぎに保育園でもしてるのか?」

 

 

黒ウサギは沈鬱そうにうなずく

 

 

「彼らの親は、“名”や“旗印”と同じく奪われたのです。箱庭を襲う最大の天災──“魔王”によって」

 

「ま、・・・・マオウ!?」

 

 

十六夜はまるで新しいおもちゃを見つけたような子供のように瞳を輝かしている

我慢がならない様子で興奮気味に問いかけた。

 

 

「魔王! なんだそれ、魔王、超カッコいいじゃねえか! 箱庭にはそんな素敵ネーミングで呼ばれる奴がいるのか?」

 

「え、ええ。十六夜さんが思い描いている魔王とは違うかと・・・」

 

「そうなのか?けどそれは倒したり、無効化したりしたらものすごく感謝されたりするような存在なんだろ?」

 

 

こいつ全力でぶちのめしたいと思ってるパターンだな。と心の中で思う。

十六夜の疑問に黒ウサギは答える。

 

 

「はい。また、倒せば条件次第で隷属させることも可能です。」

 

「ふーん」

 

「魔王は“主催者権限”という箱庭における特権階級を持つ修羅神仏で、彼らにギフトゲームを挑まれたが最後、誰も断ることが出来ません。私達は“主催者権限”を持つ魔王のゲームに強制参加させられ、コミュニティは・・・・コミュニティとして活動していく為に必要な全てを奪われてしまいました」

 

比喩ではない。言葉の通り彼女らのコニュミティはすべて奪われたのだ。

だが、十六夜は少しも同情する素振りもなく、疑問を投げる。

 

 

「ふーん、名も旗印もないのは不便だな。新しく作ったら駄目なのか?」

 

「そ、それは・・・可能です。ですが、それはコミュニティの完全な解散を意味します。私たちは守りたいのです。いつか帰ってくる仲間の場所を!」

 

 

茨の道だな。と悠は思っていた。

たとえ心に誓っていても現実はそう甘くない。

だから、俺たちを召喚するという最終手段に出たのだろう。

 

 

「お願いします。私たちはもう御二人のような強大な力を持つプレイヤーに頼るほかありません。どうかその力を、我々のコミュニティに貸していただけないでしょうか!?」

 

深々と頭を下げて懇願する黒ウサギ

 

「・・・魔王から誇りと仲間をねえ」

 

(もしここで断られたら・・・私達のコミュニティはもう・・・・!)

 

「いいな、それ」

 

「・・・・・は?」

 

「HA?じゃねえよ黒ウサギ。協力するって言ったんだからもっと喜べ」

 

「え?・・・・あれ?今ってそういう流れでございました?」

 

「そんな流れだったぜ。というわけで俺はお前たちのコミュニティに入ってやる!せいぜい感謝しやがれ」

 

十六夜は黒ウサギのコニュニティに入ることを決めた。

 

「あ、あの悠さんは・・・?」

 

恐る恐る聞いた。悠も入るとは限らないから。

 

「ん~そうだな・・・入るよ」

 

「ほんとですか!?ありがとうございます!」

 

黒ウサギは喜びを露わにした。

悠は一度真剣な表情に戻り、言った

 

 

「おれの二つ目の質問だ」

 

「な、なんでございましょう」

 

 

じっくりと黒ウサギをにらみ、そして顔をくしゃくしゃにしながら

 

 

「もっと別の召喚の仕方はなかったのかよォォー!」

 

 

両手で地面をたたきながら言った。

そんな様子をポカンとして見ていた黒ウサギが慌てて、

 

「す、すいません!召喚する方法は黒ウサギは責任外なのですヨ・・・」

 

正直、困惑している。あんな様子を見せなかったから

もっとクールで大人しい奴かと思った。

十六夜は腹を抱えて笑い、暁はやれやれと言ったような様子で

 

 

「あーーそういえば悠って高所恐怖症だったわね」

 

「お前、違う意味でもおもしろいわ!」

 

 

 

そうして俺たちの箱庭生活が始まった。

 




文章って難しい
日本語って難しい
と、思い知らされる毎日です。




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第五話 サウザンドアイズ

なんか沢山投稿されてましたね

すいませんでした。

このようなミスはまだまだたくさんあると思います。

本当に申しわけない


日が傾き、辺りが黄金色に染まるころ、黒ウサギはウサ耳を逆立てて怒っていた。

一切の口出しを許さない獰猛の嵐のような質問と説教が飛び交う。

 

 

「な、なんであの短時間に“フォレス・ガロ”のリーダーと接触した上、さらに喧嘩を売る状況になっているんですか!?」「しかもゲームの日取りは明日!?」「それも敵のテリトリー内で戦うなんて!」「準備している時間もお金もありません!」「一体どういう心積もりがあってのことです!」「聞いているのですか三人とも!」

 

「「ムシャクシャしてやった。反省はしているが、後悔はしていない。」」

 

「黙らしゃい!!」

 

 

事前に打ち合わせをしていたような言い訳に激怒する黒ウサギ。

その様子をニヤニヤしながら見ていた十六夜が止める。

 

 

「別にいいじゃねえか。見境なく喧嘩売ったわけじゃないんだから」

 

「い、十六夜さんはいいかもしれませんが、このゲームで得られるものはただの自己満足だけなんですよ?」

 

 

そういって黒ウサギが手にした契約書類(ギアスロール)と呼ばれる羊皮紙を十六夜に向ける。

それを、悠も並んでみる。

 

 

「・・・うん、確かに」

 

「自己満足だな」

 

今回の事件の顛末を見ると、わざわざこんなゲームをしなくても、いずれ‟フォレス・ガロ”の罪は暴かれただろう。

人質にと攫われていた子供たちは、この世にいないのだから。

このような決定的な証拠がある以上、言い逃れなんてできない。

つまり、罪を裁かれるのが早いか遅いかだけだ。

 

「確かにほっといてもいずれあのコミュニティの罪は暴かれたでしょう。

でも、あんな外道に時間なんてかけたくないないわ」

 

飛鳥は自分の意見を言った。

確かに。箱庭の外にでも逃げられたらここの法で裁くことはできないだろう。

だが、‟契約書類”による強制執行なら、事の張本人であるガルドを必ず追いつめる。

それを分かっているから彼女たちを頭ごなしに叱れない。

 

 

「まあ、‟フォレス・ガロ”相手なら十六夜さんか、悠さんがいてくれたら楽勝でしょう」

 

「は? 俺たちは参加しないぞ?」

 

「当り前よ。貴方たちなんて参加させないわ」

 

その言葉にフン、と鼻を鳴らして応える飛鳥。

黒ウサギは慌てて二人に食ってかかる。

 

「だ、駄目ですよ! 御二人はコミュニティの仲間なんですからちゃんと協力しないと!」

 

「そういう事じゃねえよ黒ウサギ」

 

 

十六夜は真剣な声と眼差しで言った。

 

 

「いいか?この喧嘩は、こいつらが売って、奴らが買った。なのに俺らが手を出すのは無粋だって言ってるんだ」

 

「あら、よくわかってるじゃない」

 

 

十六夜の言葉に満足そうに微笑む飛鳥

悠はそんな黒ウサギを慰める。

 

 

「黒ウサギもうあきらめろ。何を言っても無駄だ。なっ?」

 

「もういいです、好きにしてください・・・」

 

丸一日振り回されて疲弊しきった黒ウサギ

ウサ耳をへにょらせて、どうにでもなれと肩を落とした。

 

 

 

 

               ◆

 

 

 

 

 

「さて、そろそろ行きましょうか。本当は皆さんを歓迎する為に素敵なお店を予約していたのですけど・・・・不慮の事故続きで、今日はお流れとなってしまいました。また後日、きちんと歓迎を」

 

「いいわよ無理しなくて。だって私達のコミュニティって、それはもう崖っぷちなんでしょう?」

 

 

 飛鳥が答えると、驚いた黒ウサギはすかさずジンを見る。

 彼の申し訳なさそうな顔に、すでに飛鳥達はコミュニティの事情を知っているのだと理解する。

 ウサ耳まで赤くした黒ウサギは、恥ずかしそうに頭を下げた。

 

 

「も、申し訳ございません。皆さんを騙すのは気が引けたのですが・・・・黒ウサギ達も必死だったのです」

 

「もういいわ。私は組織の水準なんてどうでもよかったもの。春日部さんはどう?」

 

 黒ウサギは恐る恐る耀の顔を窺うかがう。

 耀は無関心なまま首を左右に振った。

 

「私も怒ってない。そもそもコミュニティがどうの、というのは別にどうでも・・・・あ、けど」

 

 思い出したように迷いながらも呟く耀。

 ジンは身を乗り出しながら問い詰める。

 

「どうぞ気兼ねなく聞いてください。僕らに出来る事なら最低限の用意はさせてもらいます」

 

「そ、そんな大それた物じゃないよ。只ただ私は……毎日三食お風呂付きの寝床があればいいな、なんて思っただけだから」

 

 カチン、とジンの表情が固まった。

 この箱庭では水一つ手に入れる際もお金を払うか、あるいは数キロートルも離れた大河から汲くんで来なければならない。

 現状において日々の生活を送るのがやっとである“ノーネーム”では、当然ながらお風呂に使える余分な水など在りはしない。

 察した耀は慌てて取り消そうとしたが、先に黒ウサギが嬉々とした顔で水樹を持ち上げた。

 

「それなら大丈夫です!十六夜さんと悠さんがこんな大きな水樹の苗を手に入れてくれましたから!これで水を買う必要もなくなりますし、水路を復活させることも出来ます♪」

 

嬉々として話す黒ウサギ。安堵したような様子の女性陣

よかったと呟くジン

 

「あはは・・・それじゃあ今日は、このままコミュニティへ帰る?」

 

「あ、ジン坊っちゃんは先にお帰りください。ギフトゲームが明日なら“サウザンドアイズ”に皆さんのギフト鑑定をお願いしないと。」

 

 

悠たち4人は首をかしげる。そして聞き直す。

 

「“サウザンドアイズ”? コミュニティの名前なのか?」

 

「YES。“サウザンドアイズ”とは多くが特殊な“瞳”のギフトを持つ者達の群体組織。箱庭の東西南北・上層下層の全てに精通する超巨大商業コミュニティです。」

 

「ギフトの鑑定と言うのは?」

 

「勿論、ギフトの秘めた力や起源などを鑑定することデス。自分の力の正しい形を把握していた方が、引き出せる力はより大きくなります。皆さんも自分の力の出処は気になるでしょう?」

 

悠たちは複雑な表情だが、拒否する声は上がらない。

そして、‟サウザンドアイズ”に向かい始める。





ノーネームの説明をすっ飛ばしてました。(笑)

次回 白夜叉編 悠は自分の能力に目覚めるか?



アドバイスなど、お願いします。


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第六話 挑戦

靴下をはいてなく、物凄く寒がってるcornerです。

いや、靴下はけよ とツッコんだ人



ナイス ツッコみだ!

是非ともお友達にもツッコんでやってくれ


「桜の木・・・ではないよね?真夏に咲き続けてるはずがないもの」

 

「いや、まだ初夏になったばかりだぞ。気合の入った桜が残っていてもおかしくないだろ」

 

「・・・? 今は秋だったと思うけど」

 

「なにいってんだ? ベストシーズンじゃないか だよな?」

 

「ええ、ちょうど見ごろの筈よ」

 

 

話が噛み合わないことに黒ウサギはクスクス笑いながら説明してくれた。

 

 

「皆さんはそれぞれ違う世界から召喚されているのデス。元いた時間軸以外にも歴史や文化、生態系など所々違う箇所があるはずですよ」

 

「パラレルワールドってやつか?」

 

「近しいですね。正しくは立体交差平行世界論というものなんですが・・・・説明をすると長いのでまたの機会にいたしましょう」

 

そうこうしている内に大きな店がみえてきた。

だが店の前の割烹着姿の女の人が暖簾を片付け始めている。

慌てて制ししにいく

 

「待ってく」

 

「待ったなしですお客様。うちは時間外営業はやっておりません」

 

「なんて商売っ気のない店なのかしら」

 

「そ、そうです閉店前にお客を締め出すなんて舐めすぎです」

 

 

不満をあらわにした飛鳥、それに便乗する黒ウサギ

割烹着姿の女の人は少し考えるような、考えてないような。

 

 

「それもそうですね。ではどこのコミュニティなのか名前をよろしいでしょうか」

 

グッと黙り込む黒ウサギ。

 

(そうでした。サウザンドアイズは、基本‟ノーネーム”お断りでした)

 

悶々と悩んでいたが十六夜が躊躇いもなく名乗る。

 

「俺たちは‟ノーネーム”ってコミュニティなんだが」

 

「ほう、それはどこの‟ノーネーム”様でしょう。よかったら旗印を確認させていただいてもよろしいでしょうか?」

 

 

十六夜は黙り込む。

名と旗印ないコミュニティのリスクとは、このようなことだ。と分からされてしまった

だが、悠は何の問題もなさそうに言う。

 

 

「ああ、悪いな俺たちノーネームに入ったばっかなんだ。だから証明できる()はなに一つ持っていない。

でも、箱庭の貴族がいる(・・・・・・)コニュミティって言えばわかるか?」

 

 

今度は女の人がグッと黙り込む

 

 

「そのようなコミュ二」

 

「いぃぃやっほぉぉぉぉ! 久しぶりだ黒ウサギィィィ!!」

 

 

店内から突如、爆走してきた着物風の服を着た白髪の少女のフライングボディアタックを食らった。

そしてそのまま、クルクルと飛んでいき川に落ちた。

 

 

(すげえ何回転したんだあれ)

 

「おい店員。この店にはドッキリサービスでもあるのか?なら俺も別バージョンで是非。」

 

「ありません。」

 

「なんなら有料でも。」

 

「やりません。」

 

十六夜と店員は割とマジだったりする。お互い目の色が違う。

フライングボディアタックで黒ウサギを強襲した少女は黒ウサギの胸に顔を埋めていた。ヘンタイだなあいつ。

 

「し、白夜叉様⁉︎どうしてこんな下層に!?」

 

「そろそろ黒ウサギが来る予感がしておったからに決まっておるだろうに!やっぱり黒ウサギは触り心地が違うのう!」

 

 

黒ウサギは白夜叉を無理やり引き剥がし頭をつかんで投げる。それを十六夜が

 

「てい」

 

蹴り飛ばしていた。悠のほうに

 

「HA?はあああ!?」

 

ドボォンと黒ウサギよりも盛大に落ちた。

川から這い上がった悠は

 

「テンメェ~、今の絶対にワザとだろう!」

 

そう、かなり計算された角度から飛んできた。

ワザと以外あり得ない。

その証拠に腹を抱えて笑っている。

 

「やっぱ、お前おもしろいわ!」

 

「後でおまえ一発殴らせろ」

 

「生身でか?」

 

「両方だ」

 

「お、おんし、飛んできた初対面の美少女を足で蹴り飛ばすとは何様じゃ!」

 

「十六夜様だぜ。和服ロり。」

 

痛そうに頭を抱える店員。久遠が思い出したように話しかける。

 

「貴女はこの店の人?」

 

「おお、そうだとも。このサウザンドアイズの幹部で白夜叉様じゃ。ふふん。お前達が黒ウサギの新しい同士か。ここに来たという事は・・・遂に黒ウサギが私のペットに!」

 

「なりません‼︎」

 

やはり痛そうに頭を抱える店員。苦労している様だ。

 

「まあいい。話があるなら店内で聞こう」

 

「!?お、オーナー。ノーネームなのですよ!」

 

「仕方ないじゃろう。おんしが店を潰しかけたんじゃから」

 

「!?」

 

 

そう、悠の問いかけに、知らないと言いかけた。人気の多い場所で

規則だ。何としても追い出さなければと思ったのだろう。

もし、あそこで白夜叉が出てこなかったら、「箱庭の貴族のいるコミュニティを知らないって

どれだけ世間知らずな店なんだ」と思われてしまうだろう。

そうなれば店の信用を失ってしまう。商業コミュニティにはもう潰れたと同じことだろう。

 

 

「ま、真面目すぎるのがおんしの悪いとこじゃな」

 

「・・・」

 

 

顔を俯かしている。そこに悠がやってくる

 

 

「わるかったな」

 

「いえ、こちらもいいすぎました」

 

「うむ、よろしい」

 

 

そうして店内に入っていった。

 

 

「生憎と店は閉めてしまったのでな。私の私室で勘弁してくれ」

 

 

案内されたのは和室。そりゃもう和室。広いなここ。

上座に腰を下ろした白夜叉は、悠たちに向き直る。

 

 

「さて、念のためにもう一度自己紹介しておこうかの。私は四桁の門、三三四五外門に本拠を構えている“サウザンドアイズ”幹部の白夜叉だ。この黒ウサギとは少々縁があってな。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやってる器の大きい美少女と認識しておいてくれ」

 

「はいはい、お世話になっておりますよ本当に」

 

 

 投げやりな返答で受け流す黒ウサギ。

 その隣で耀が小首を傾げて問う。

 

 

「その外門、って何?」

 

「箱庭の階層を示す外壁にある門ですよ。数字が若いほど都市の中心部に近く、同時に強大な力を持つ者達が住んでいるのです」

 

 

 言葉で説明しつつ、黒ウサギは室内に備え付けられたボードに箱庭の概略図を描き込んでいく。

 彼女が描く上空からの箱庭の図は、外門によって幾重いくえもの階層に別れていた。

 その図を見た四人は口を揃そろえて、

 

「……超巨大タマネギ?」

 

「いえ、超巨大バームクーヘンではないかしら」

 

「バームクーヘンだな」

 

「コマだな、柱みたいなのがあるし」

 

 

身も蓋もない感想に肩を落とす黒ウサギ。

対して、笑って二度三度頷いて

 

「ふふふ、中々うまいこと例える。その例えならば、今いる七桁の外門はバームクーヘンの一番薄い皮の部分に該当するな。更に説明するなら、東西南北四つの地区の区切りの東側にあたり、外門のすぐ外側“世界の果て”と向かい合う場所になる。あそこにはコミュニティに所属こそしていないものの、強力なギフトを持った者達が棲ひそんでおるぞ──その水樹の持ち主などな」

 

 

白夜叉は薄く笑って黒ウサギの持つ水樹の苗に視線を向ける。

彼女が指すのは、先ほど悠や十六夜が大滝で出くわした、あの白き蛇神のことだろう。

 

 

「して、一体誰が、どのようなゲームで勝ったのだ? 知恵比べか? 勇気を試したのか?」

 

「いえいえ。この水樹は悠さんと十六夜さんがここに来る前に、蛇神様を素手で叩きのめしてきたのですよ。あ、悠さんは違いますね」

 

 

 ウサ耳を自慢げに伸ばしながら黒ウサギが説明すると、白夜叉は瞳を丸くして驚いた。

 

 

「なんと!? クリアしたのではなく直接的に倒したのか!? ではその小僧どもは神格の持ち主のか?」

 

「いえ、黒ウサギはそう思えません。神格なら一目見れば分かりますし」

 

「む、それもそうか・・・」

 

「白夜叉様は、あの蛇神様とお知り合いだったのですか?」

 

「知り合いも何も、アレに神格を与えたのはこの私だぞ。もう何百年も前の話だがの」

 

 小さな胸を張り、豪快に笑う白夜叉。

 だがそれを聞いた十六夜達は、物騒に瞳を光らせて問いただす。      

 

「へえ? それじゃあオマエは、あのヘビより強いのか?」

 

「ふふん、当然だ。私は東側の“階層支配者”だぞ。この東側四桁以下にあるコミュニティでは並ぶもののない、最強の主催者なのだからの」

 

最強の主催者   その一言に、十六夜、飛鳥、耀の三人は一層瞳を輝かせる

 

「そう・・・ふふ。ではつまり、貴方のゲームをクリア出来れば、私達のコミュニティは東側で最強のコミュニティという事になるのかしら?」

 

「無論、そうなるのう」

 

「そりゃ景気のいい話だ。探す手間が省けた」

 

抜け目のない童達だ。依頼しておきながら、私にギフトゲームで挑むと?」

 

「え? ちょ、ちょっと御三人様!?」

 

 慌てる黒ウサギを、白夜叉は右手で制す。

 

「よいよい黒ウサギ。私も遊び相手には常に飢えている」

 

「ノリがいいわね。そういうの好きよ?」

 

「ふふ、そうか。──しかし、ゲームの前に一つ確認しておく事がある」

 

「なんだ?」

 

 白夜叉は着物の裾すそからカードを取り出し、壮絶な笑みで一言、

 

「・・・おんしらが望むのは“挑戦(・・)”か───もしくは、“決闘(・・)”か?」

 

刹那、視界に飛び込んだのは、白い雪原と凍る湖畔―――――そして、水平に太陽が廻る世界(・・・・・・・・・・)だった。

 

 

「・・・なっ・・・!?」

 

 

あまりの異常さに、十六夜たちは息をのんだ。

唖然と立ちすくんでいる問題児たちを前に、白夜叉は再度問いかける。

 

「今一度名乗り直し、問おうかの。私は“白き夜の魔王”──太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんしらが望むのは、試練への“挑戦”か? それとも対等な“決闘”か?」

 




コミュニティをコニュニティと書き間違えてるところがありました。

直せてないとこがあるかもしれません。


最近、飯が上手く感じる。


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第七話 白夜叉

本格的に授業が始まってきました。


内容がハンパなくて泣きそうです。


「おんしらが望むのは、試練への“挑戦”か? それとも対等な“決闘”か?」

 

しばらくの間、驚きで動くことができなかった。

 

 

「はっ、参った。やられたよ。今回は黙って試されてやるよ」

 

「私も試されてあげてもいいわ」

 

「・・・以下同文」

 

「よかろう」

 

 

白夜叉は満足そうに微笑んだ。

 

 

「して、おんしはどうする?」

 

「・・・お前、なにもんだ? 俺と似たような感じがする・・・」

 

 

白夜叉は大きく目を見開いた

 

 

「ほう、やはりおんしもか。その問いの答えはこの挑戦を受けることだ」

 

「上等」

 

 

かつてないやる気に満ち溢れている悠に、みんな少し身震いをした。

 

 

「それでは、ゲームに移ろうか。おんしたちにはあれの相手をしてもらう」

 

 

山の向こうから鷲の翼と獅子の体を持つ獣、耀が歓喜の籠った声を上げる。

 

 

「あれは・・・グリフォン!」

 

「如何にも。あやつこそ鳥の王にして獣の王。“力”と“知恵”と“勇気”の全てを備えた、ギフトゲームを代表する獣だ」

 

 

すると、十六夜の手元に一枚の輝く羊皮紙が現れる。

 

 

 

 

『ギフトゲーム名 “鷲獅子の手綱”

 

 ・プレイヤー一覧 逆廻 十六夜

          久遠 飛鳥

          春日部 耀

 

 ・クリア条件

   グリフォンの背に跨またがり、湖畔を舞う。

 

 ・クリア方法

   “力”“知恵”“勇気”の何れかで

   グリフォンに認められる。

 

 ・敗北条件

   降参か、プレイヤーが上記の勝利条件

   を満たせなくなった場合。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホスト

    マスターの名の下、ギフトゲームを

    開催します。

         “サウザンドアイズ”印』

 

 

「さて、だれがやる?」

 

「私がやる」

 

耀が挙手した。

 

 

 

******

 

 

結論、耀の勝ち。

グリフォンのギフトを手に入れたそうだ。

 

「さて、次はおんしの番じゃ。 まずはおんしの問に答えよう」

 

白夜叉の手元のギフトカードが光る。

そして、影から禍々しい機械が出てきた。

悠は右目が、赤く染まって、口を三日月に曲げている。

 

「そうゆうことか・・・」

 

「そうゆうことじゃ。こいつは‟鋼”じゃ」

 

すると、悠の前に羊皮紙が出てきた。

 

 

『ギフトゲーム名 ‟白夜での鬼ごっこ”

 

・プレイヤー一覧 綾木 悠

 

・クリア方法

   プレイヤーが追い手、ホストが逃げ手

 

・クリア条件

   プレイヤーがホストに触れる。

 

・敗北条件

   降参か、プレイヤーが上記の勝利条件

  を満たせなくなった場合。

 

・宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホスト

    マスターの名の下、ギフトゲームを

    開催します。

         “サウザンドアイズ”印』

 

 

 

******

 

「では、始めるとするかの。合図はよろしく黒ウサギ」

 

「では、よーい・・・ドン」

 

黒ウサギが合図を出した瞬間、悠の影が伸びる

 

 

「暁、鋼を抑え込め! 機動力(シフト) (ゾルフ) 二倍(ダブル)

 

 

暁を覆い囲む赤いドーム。

機械とは思えないスピードで飛び込んでいき、鋼を抑え込んだ。

白夜叉が驚いた顔をした。

 

「ほう、それが、魔人の力か。」

 

「これは俺の能力だ。こいつには何もない!」

 

「なにもないわけあるか! 魔人には何かしらの能力が備わっている」

 

「何もない、先代もなにもなく死んでいった」

 

 

悠は説明しながら、白夜叉を追尾している。

もっとも白夜叉は、この間隔を一定している。

 

(まだ、余裕そうだな。クソ!)

 

だが、このまましてても、永遠に続くだけだ。

暁のほうは。

まだ、抑え込めてい・・・ !!

なんだ、あれは?手から漆黒の球が形成されている。

それを、暁の後ろに投げる。

 

 

「まずい、暁。逃げろ!!」

 

 

暁は無事に回避した。

悠は念のため機動力(シフト)を付けたことに安堵した。

驚きを隠せていない悠に白夜叉は笑う。

 

 

「だから、言ったじゃろ。『何かしらの能力がある』と」

 

 

万事窮す。か、仕方ない

 

 

(暁 合図したら 俺のとこに来い)

 

機動力(シフト) 三倍(トリプル)

 

「ほう、まだあがるのか」

 

 

悠は、無暗に追いかけるのを止めた。

フットワークを使い少しづつタイミングをずらす。

そして、悠が叫ぶ。

 

 

「暁!!」

 

 

暁が飛び込んできた。そして、暁の影に隠れたとき

白夜叉の後ろをとる。

 

 

(取った!!)

 

 

勝利を確信した瞬間、空間がさけた。

その狭間から腕が伸びる。

そして、悠が鋼に触れた瞬間。

 

 

 

―――――――プツン・・・

 

 

 

          ◆

 

 

 

 

 

「・・・ここは?」

 

 

悠が目を開けると、和室の天井、白夜叉の部屋のようだ。

周りにはみんながいる。

悠は、少しづつ起き上がる。

 

 

「ゆ、悠のばかぁぁ!! すっごく心配したんだからねぇ!」

 

「おれ、どうなったんだ?」

 

 

悠の胸で泣き叫ぶ暁を慰めつつ

その問いに黒ウサギは、答えた。

 

 

「悠さんが白夜叉様の魔人に触ったとき、倒れこんだのです。一体どうしたんですか? それに白夜叉様もなぜそんな魔人を持っていたのですか!」

 

「いや、おれは、さっぱり」

 

「ふむ、まあ、答えようか。おんしも、なんか滾ってからの。

あれは、東の森の奥深くに落ちてたったのじゃ。ボロボロじゃったからの

修理しようと持って帰ったのじゃ、調べたが全くわからなかった。わかったのは何かしらの能力を持っているということじゃ」

 

「んで? 勝負の続きは?」

 

「勝利条件を満たせなくなってしまったからの。おんしの負けじゃ」

 

「そうか・・・」

 

 

もともと負けず嫌いの悠だ。ショックは大きいだろう。

 

 

「それは、さておきおんしらには褒美をやらんとな」

 

 

白夜叉が柏手を打つ

悠たちの前に輝くカードが出現する。

 

 

 

 コバルトブルーのカードに逆廻十六夜

 ギフトネーム “正体不明(コード・アンノウン)

 

 ワインレッドのカードに久遠飛鳥

 ギフトネーム “威光(いこう)

 

 パールエメラルドのカードに春日部耀

 ギフトネーム “生命の目録(ゲノム・ツリー)

        “ノーフォーマー”

 

 ダークスレートグレイのカードに綾木悠

 ギフトネーム ‟機巧魔神(アスラ・マキーナ) 暁”

        ‟ギア”

        ‟リプリケーション”

 

 

黒ウサギが驚き、興奮したような顔で叫んだ。

 

「ギフトカード!」

 

「お中元?」

 

「お歳暮?」

 

「お年玉?」

 

「ギフトカードね・・・」

 

「ち、違います。皆さんいきぴったしすぎです。 悠さんがあっているので逆につっこにみくいです!このギフトカードは顕現しているギフトを収納可能で、それも好きな時に再顕現させることの出来る超高価なカードなのですよ!」

 

「つまり、素敵アイテムでってことでオーケーか?」

 

「あーもーそうです、 素敵アイテムなんです!」

 

 

投げやりになった黒ウサギ

 

 

「なんで、負けた俺まで?」

 

「なに、久々に楽しかったから、その礼じゃ」

 

「釣り合ってないと思うんだが・・・」

 

「わしがいいと言ったらいいのじゃ!」

 

可愛らしい声でさけんだ白夜叉

しかしすぐにコホンと咳払いをして説明した。

 

 

「そのギフトカードとは、正式名称を“ラプラスの紙片”──即ち全知の一端だ。そこに刻まれるギフトネームとは、おんしらの魂と繋がった“恩恵”の名称。鑑定は出来ずとも、それを見れば大体のギフトの正体が分かるというもの」

 

「へえ? じゃあ俺のはレアケースなわけだ?」

 

「身に覚えのないものがある」

 

 

ん? と白夜叉が十六夜のギフトゲームを覗き込む。

 

 

「・・・・そんな馬鹿な」

 

 

パシッと白夜叉はギフトカードを奪い取る。

 

 

「‟正体不明”だと・・・いいやありえん。全知である“ラプラスの紙片”がエラーを起こすはずなど」

 

「何にせよ、鑑定は出来なかったってことだろ。俺はこの方がありがたいさ」

 

 

しかし白夜叉は未だ納得できていないのか、探るような視線を二人を向けていた。

 

(ギフトを無効化した……? いや、まさかな)

 

 

「して、おんしは?」

 

 

悠は、ギフトカードを見せる。

それにつられ十六夜たちも見る。

 

 

「はっ こりゃまたすっげーギフトだな」

 

「そうなんだよなあ、replication 訳して オリジナルでないコピー

でも、まったく、わからん」

 

「まさか・・・お、おんし!ちょっと。あれをだせ!」

 

「出すって何を?」

 

「機巧魔人じゃ 早く!」

 

「こんなところじゃ 潰れちまうぞ」

 

「あー、そうだったー」

 

 

裾からカードを取り出し、ゲーム盤へと向かった。

 

 

「暁」

 

「おんし、わしが鋼でやった。重力操作を、イメージしてやれ。」

 

「えーと、たしか・・・」

 

 

あの、勝負を思い出す。手のひらから漆黒の球が出てたやつだな。

悠と連動して暁が左手に集中させる。

すると、白夜叉とは色が違うが、重力玉が形成された。

 

 

「え? できた・・・なんで?」

 

「それは、この、機巧魔人の能力じゃな、でもただ使えるもんじゃなさそうじゃな」

 

「どうゆうこと?」

 

「つまり、優れた観察眼とその情報を支える脳が必要ってことじゃな」

 

 

まだ、納得できてないが、少しずつ理解していこう。

 

 

「って、もしかして、俺が倒れたのって・・・」

 

「そうじゃろな、鋼は物凄い量の情報があったのだろう。それで頭がショートしたのだろう」

 

「よかったー、な、暁」

 

 

暁は気まずそうに目をそらす。

やがて、ゲーム盤から元の世界に戻り、暖簾の下げられた店の前から出て、お礼を言った。

 

「今日はどうもありがとう。また遊んでくれると嬉しい」

 

「あら、駄目よ春日部さん。次に挑戦する時は対等な条件で挑むのだもの」

 

「ああ。吐いた唾を呑み込むなんて、恰好付かねえからな。次は懇親の大舞台で挑むぜ」

 

「リベンジは果たしに来るぜ?」

 

「ふふ、よかろう。楽しみにしている。……ところで」

 

 白夜叉はスッと真剣な顔で悠達を見る。

 

「今更だが、一つだけ聞かせてくれ。おんしらは黒ウサギ達のコミュニティの現状を把握はあくしているのか?」

 

「あん? ああ、名前とか旗とかの話か? それなら聞いたぜ」

 

「ならそれを取り戻すために、“魔王”と戦わねばならんことも?」

 

「勿論だ。全てを承知した上で、俺達は黒ウサギ達に協力することにした」

 

「そうか。・・・ふむ、黒ウサギは良き同士と巡り会えたようだの」

 

 

白夜叉は優しげな笑みを黒ウサギに向けたが、一転して厳しい表情になる。

 

 

「じゃが、だからこそ言っておく。仮に今後、おんしらが魔王と一戦交える事があるとすれば・・・そこの娘二人は確実に死ぬぞ」

 

 

 咄嗟に言い返そうとする飛鳥と耀だったが、白夜叉の放つ有無を言わせない威圧感に押し黙る。

 

 

「・・・ご忠告ありがと。肝に命じておくわ」

 

 

 白夜叉はそれだけを伝えると、再び柔和な笑みに戻った。

 

 

「うむ、くれぐれも用心するようにな。私は三三四五外門に本拠を構えておる。いつでも遊びに来るといい」

 

 

そうして、サウザンドアイズを後にした。

 

 




またもや

寒くなってきた。

いい加減にしろ天気!!


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