カカシ「一度死んで目が覚めると教え子達の性格やら何やらが変わっていた。」 (柚子ゴル)
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プロローグ

木の葉の里。

それは、五大国の1つに数えられる火の国と呼ばれる国に存在する忍びの隠れ里であり、火影がその忍びの頂点に立ち里を治める。

そんな里の中で今、6代目火影のはたけカカシが命の灯火を消そうとしていた。これは木の葉の里のとある病院内の出来事である。

 

✳︎

 

「おい…。」

「カカシ先生!」

「気をしっかりもつってばよ!」

 

自分のベットの周りには元教え子達が群がる。昔初めて見た時と比べ皆立派に成長している教え子達を見るとなんだか感慨深いものがある。ナルトはかねてからの夢であった火影の職に就き、サクラは里屈指の医療忍者になり、サスケはいろいろあったが、長い旅を終え今ではナルトの助けになっている。初めてあった時のあの可愛らしい感じはなく、皆シワができ少し老けていた。時の流れは随分速い。

 

昔はもっとずっと遠くまで、どこまででも見えていた目は衰え、身体も重くなり、自慢だった嗅覚ももはや老化した。もうそろそろ自分が死ぬのだろうことが体調でわかる。目が霞みもう教え子達の声さえわからない。

自分のライバルであるガイは寿命で死に、同期はほぼ寿命を迎えた。ついには自分の番が来たというわけだ。未練があるかと聞かれたら全くといってなかった。忍びはいつ死んでも殺されても不思議ではない職業だ。そんな職業にも関わらず、教え子達に囲まれ寿命でこの世を去れるなどなんていうほど幸せなのか。

 

「俺に対する供え物はいちゃいちゃパラダイスにしてね」

 

最後の言葉は自分らしく。

最後の力を振り絞ったせいか言った瞬間瞼が落ちていく。ぼやけていた景色も黒く染まった。

 

 

✳︎

 

 

「オレさ!オレさ!名前はうずまきナルト!好きなものはカップラーメン

将来の夢はァ火影を超す‼︎んでもって里の奴ら全員に俺の存在を認めさせてやるんだ‼︎」

 

 

懐かしいような騒がしい声に瞼を開ければ初めて自分の教え子達と会った時の場面にいた。皆で自己紹介をし下忍選抜試験の説明をしている所だ。

これは…走馬灯?教え子達に看取られて懐かしい走馬灯を見ているのだろうか。随分懐かしい。確かナルトはラーメンの話ばっかりだったな。サスケは復讐をすると語っていた。クールを気取っていたけど、このころは優しさもあったな。サクラはこの時どうしようもなく恋愛脳でサスケばかり追いかけてたっけ。懐かしい。

しかしこの走馬灯はすごく変わっている。まるで自分が此処に存在しているように感じるのだ。ナルトの自己紹介が終わりサスケに自己紹介をするように施す。自身の口も動くし走馬灯とはこういうものなのだろうか…?

 

「じゃあ次!」

(嗚呼、それにしてもこいつらこの時本当初々しくて可愛かったなぁ。)

 

黒髪の少年ことうちはサスケはフっと笑った後に言葉を発した。

 

「俺の名前はうちはサスケ。

まぁ知っていると思うがあの名門中の名門。うちは一族の末裔だ。

容姿端麗成績優秀スポーツ万能…

うちは一族こそ木の葉にて…いやこの世界にて最強。

そして夢、いや夢なんかでは終わらせられないもはや決定事項なのが…春野サクラと結婚し最強な俺の子を産んでもらうことだ。

好きな人というか愛してるのがサクラ。

好きな物はサクラの好きなもの。サクラに関係があるもの。そして桜。

嫌いな物はナルト。」

 

「………は?」

 

カカシは身体が硬直した。こいつは一体何を言っているのかと。言った事を理解しようと頭をフル回転させていると、サクラが勝手に自己紹介を始めた。

 

「私の名前は春野サクラ。

夢はさっきから隣で視線を送ってくるストーカーをぶちのめすこととハルノの者としての仁義を尽くすこと。好きな物というか人物は可愛らしくて堪らないナルト。嫌いなものは最初にうがつく黒髪のナルシ野郎。」

 

嫌いなものに反応したのはサスケだ。眉を寄せてサクラに質問する。

 

「サクラ、嫌いなもの完璧俺の事だよな? 」

 

それにサクラはウンザリしたように答えた。

 

「嫌だな全く自意識過剰は。誰もあんたなんていってないでしょ。」

 

「ふっ、やはりサクラは俺の事を…」

 

サスケが最後まで言葉を発する前にサクラは言葉を続けた。

 

「嫌いじゃ収まらないぐらい大嫌いだから。」

 

周りにズーンとした空気が流れる。それをフォローするのはムードメーカーであるうずまきナルトだ。

 

「サクラちゃんストレートすぎるってばよ!もう少し包んで包んでオブラートに…。」

 

「ナルトが言うならオブラートに包む…。」

 

サクラは渋々といった様子で了解を出したのが気に食わなかったのかサスケはナルトに向かいキレた。

 

「てめぇナルト!調子ぶっこんてんじゃねーぞコラァ?!」

 

「フォローしてやったのにその態度は何だってばよ!」

 

「余計なお世話なんだよ!今サクラとせっかくいちゃいちゃしてたのに!」

 

「何この人頭がわいていらっしゃるのかしら。」

 

「サクラちゃん!言葉使い綺麗にしてもストレートはストレートだってばよ!」

 

「ちょちょちょ、ちょっと待って!」

 

今までおとなしく見ていたカカシが待ったをかける。

色とりどりの6つの目がカカシに注目する。記憶とは明らかに違うカカシが思わず発した言葉は…。

 

「 何これ、幻術? 」

 

 



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第1話 夢であったらどれだけ幸せなのか

 

下忍選抜試験の内容を言ってその場を去り、とりあえずは火影邸を目指す。

幻術ではないかと疑い、全身のチャクラを可能なまでに乱してみたが意味なし。そもそも幻術ならばサクラ等、木の葉の里の忍びが動いてくれるだろう。マダラの限定月読か?とも思ったがそれはない。マダラは死んでるし、うちは一族でそれができる可能性が万が一にもあるとすればサスケだが、老い先短かった自分にそんな事をするとも思えない。

そこで、仮説を立ててみる。

ナルトとサクラが昔、マダラの限定月読にはまった時、別の世界へ行ったと話していた。まるでそこは全く自分の知っている人達ではなかったとも言っていた。それはこの状況に至極当然のように当てはまる。

だからといって、別に限定月読をかけられたと言っているのではなく、ただ単純に似た様な世界が世の中にはあるというわけだ。つまり此処はパラレルワールド。自分はなんらかの影響でパラレルワールドに来てしまったらしい。というのが一番有力である。

 

考え事をしていると、案外はやく火影邸に着いた。こんな風に走るのは久しぶりである。…なんだか嬉しいような、頬が緩んでしまう。筋肉を使い走る。死ぬ一歩手前だったからなかなか出来なかったが今は出来る。

 

(この頃の俺、若いなぁ…。)

 

腕をグッと握るのを見て感慨深くつぶやく。

そのあと、火影室へと向かいノックをし、失礼しますと言って返事を聞く。

 

「入りなさい。」

 

懐かしい三代目火影の声がする。街並みを見てみると、自分がいた所とあまり変わらなかったから教え子以外は普通なのだという安心感にホッとした。

ガチャリと音を立ててドアを開ける。其処には窓から逆光が入り、まるで光り輝いているように見え、蛇を溺愛している三代目火影がいた。

 

 

 

「え?」

 

 

机の両側に蛇を置き、頭を撫でながらこちらを見つめる三代目火影。なんだか少し目のクマが濃いようだが、少し化粧をしている様に見えるし、髪が白くはあるが伸びている三代目火影。猿のようなお顔ではなくなり、何処かあの人物に似ている三代目火影。そう、あの伝説の三忍と呼ばれたあの…。

 

(いやまさかね?)

 

頭を降り視線を落としてから、改めて三代目火影を見る。そしてまた顔を背けた。そして思った言葉が…。

 

 

(ええええええ?!え、何これ大蛇丸?

いや、大蛇丸以外の何物でもないでしょ!え、何で?まさかこの火影様大蛇丸に似てるの?てかまさか本人なの?いやこの匂いや雰囲気は三代目だけども…?!いや、三代目火影だ。これは三代目だ。元の世界と違うけどこれは三代目火影です。)

 

フーッと息を吐くと、三代目火影は自分に話しかけてきた。

 

「どうしたの?カカシ。元気ないじゃない。」

 

ふふっと笑い手を口元へと持っていく。腰をくねらせるその行動はそうまるで…

 

(大蛇丸ー!

やっぱり完璧大蛇丸じゃんこの三代目ぇ!嘘でしょなんで大蛇丸?!

いや、落ち着け。そんな事言ってる場合じゃないし。よし、大丈夫。俺ならこのくらい切り抜けられる。…よし。)

 

「実は三代目……。」

 

まずは訳を話さなければ、やっていけない。というかもうやっていけない。

 

 

✳︎

 

 

「なるほどね、あり得なくもないわ。実は貴方は昨日、とある任務で頭を打ったの。その時の衝撃で記憶喪失になったか、頭が混乱しちゃってるのね。腕のいい医療忍者を紹介するわ。」

 

「はぁ…。」

(頭打ってたんだ俺。)

 

パラレルワールドの事などは一切触れず、記憶がおかしいとだけ言った。すると此処の俺は、昨日頭を打っていたらしい。都合のいいように進み良かった…。

 

「どのくらい分からないの?木の葉の里の事はわかる?」

 

「あ、はい。わかります。」

 

「うーん…と、じゃあ貴方の班員の事はわかる?」

 

「あぁ、うずまきナルトにうちはサスケ、それに春野サクラですよね。」

 

「ええ、詳しい事はわかるかしら?」

 

「詳しい?…嗚呼、此処で言っても大丈夫ですか?」

 

「大丈夫よ、此処にいるのは貴方と私と暗部ぐらいしかいないから。」

 

「そうですか。

えー、うずまきナルトの中には九尾が入っており、里ではあまりよく思われてません…。またナルトの親は英雄四代目とクシナさんです。」

 

「うん、その通りだわ。」

 

「うちはサスケは、兄うちはイタチが犯したうちは一族抹殺事件の生き残りであり………、春野サクラに好意を寄せている。」

 

「ええ、そうね。」

 

「春野サクラは……、特に何もないですよね?」

 

そうサクラは平凡な家庭に生まれながらも、とても優秀な忍びである。

しかしやはり、これといった先程述べた2人に比べあまり特徴がないように感じる。それを述べれば三代目火影は怪訝な表情をした。

 

「貴方それ本気?」

 

「え?」

 

「春野といえば、名門暗殺一家ハルノでしょう?昔は髪が白かったのに今、ピンクなのは人の血を吸いすぎた…という伝説があるくらい血塗られた一族よ。

昔、ハルノは何処の里にも属してはいなかったけれど、二代目火影に恩ができ、木の葉の里で戦力として働いてくれているとても素晴らしい一家。仁義を重んじ何代もそれを受け継いでいく。

春野サクラはそこの一家の長女であり、跡継ぎ。しかもハルノ始まって以来の才能の持ち主よ。この子も凄く重要な子だわ。」

 

当たり前のように言い放つ三代目を他所にカカシは混乱する。新しい情報が多い上に、それはとてつもなく重い内容だ。

 

(サクラが名門暗殺一家…?

え、嘘でしょ?でも、確かに自己紹介でハルノの者として仁義を尽くすことって言ってたような…。)

 

三代目はジッと俺を見つめ心の中を探るように言い放つ。

 

「それにあの子貴方の…」

 

「え?」

 

「「只今戻りました。」」

 

火影室の中にいきなり現れたのは、ピンクの髪に少し特徴的な桜の模様が入った仮面を付けた子と、ターバンのようなものを巻き暗部の仮面をつけていて、身長が180はあるだろう男。

 

「嗚呼、二人ともお帰りなさい。」

 

「これ、例の奴。」

 

ポイと火影の机の上に投げた巻物を見つめていると、ターバンの男は此方を見てカカシじゃねーかと呟いた。

一方俺はというと誰か全く分からずあ、どうもと呟く。ピンクの髪の子がカカシ先輩!と嬉しそうに話しかけてくる。というかこの子…。

 

「カカシ先輩!じゃなかった。明日から先生、ですもんね!よろしくお願いしますね!先生!」

 

「え?てかもしかしなくてもサクラ?」

 

「何言ってるんですか!カカシ先輩がまだ暗部だった頃の後輩じゃないですか私!」

 

「え?!サクラ暗部なの?!」

 

「はぁ?大丈夫ですか?先輩。」

 

「カカシはちょっと昨日頭を打っちまっててね。一部分記憶喪失なんだよ。」

 

少し怪しそうにしているサクラにフォローを入れてくれたのは三代目火影だ。やはりこういうところを見ると三代目火影の面影を感じる。

 

「そうなんですか。大丈夫ですか?任務で分からないことがあったら聞いてくださいね?」

 

へー、と納得しながら優しくしてくれるサクラについ涙腺が緩むが、なんとか持ちこたえる。今まで話を聞いていたターバンの男が此方に向かい話しかける。

 

「カカシお前まさか俺を忘れたなんてことはねーよな?」

 

「え、あ、えと、すみません。どちら様ですっ…?!」

 

言い終わらない内に綺麗な右ストレートが入った。全くもって油断していたためか、崩れ落ちる。というか凄く痛い。まさか此処で暴力を昧うとは…。思わず呆然とターバンの男を眺める。

 

「カカシ、暗部時代何度も命救ってやった俺に対してそれはねーんじゃないの?それに俺お前に金貸してんだぜ?返せよ今すぐ。」

 

「す、すいません…。」

 

思わずカカシは謝る。何故か凄まじいオーラがある。異論は認めないというオーラが…。そもそもこの人は誰なのか、全く見当がつかない。そこにサクラが仲裁に入る。

 

「ちょっと隊長!

あんまりですよ!いきなり殴るなんて!それにお金借りてるなんて嘘ばっか言って!」

 

「叩けば直ると思って。」

 

「古い家電じゃないんですよ!」

 

「え、というか隊長?まさか暗部部隊長ですか?」

 

それに答えたのは今まで巻物を見ていた三代目火影だ。

 

「そうよ。その子の名前はイワナガ。気性が荒いから気をつけてちょうだい。

ちなみにサクラは副隊長よ。」

 

「いや何勝手にバラしてやがるじじぃ。」

 

「あ!またじじぃとか言って三代目火影になんて口の利き方するんですか!」

 

「嗚呼、もうなんか驚くのに疲れました。あ、疑問が一つ。何故暗部のサクラが第七班に?」

 

諦めた目をしたカカシを他所に、巻物に目を通しながら答える。

 

「簡単よ。第七班の中にはうちは一族の生き残りと九尾がいるから、たとえ上忍の中で優秀な忍びをつけようともやはりお荷物三人では些か不安でもあるでしょう。」

 

「まぁ、そうですね…。」

 

「あ、そうだ!カカシせんぱ、いやカカシ先生!明日の下忍選抜試験楽しみにしてますね!」

 

「ああ、下忍選抜試験ね…。」

 

今まで暗部部隊長であるイワナガと話していたサクラは、陽気に此方に話しかけてきた。

というか、すっかり忘れていました。下忍選抜試験。

ニコニコとした雰囲気で此方を見るサクラ。仮面越しでもわかる不機嫌なイワナガ。相変わらず蛇の頭を撫でる三代目火影。

 

(嗚呼もうこれ本当…。)

 

「幻術であって欲しかった…。」

 

「何言ってんだこいつ。」

 

「大丈夫ですか?カカシ先生。」

 

「あんた達用事が済んだらはやく出てきなさいよ。後がつっかえてんのよ。」

 

 



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第2話 キャラが濃過ぎてついていけない

「やぁ諸君おはよう。」

 

「おっそいってばよーっ!2時間遅刻ー!」

 

昔と同じ様に遅刻をしていけばナルトはそれはもう懐かしいなぁそういえばこういう反応だったなぁと思い出す反面、他2人はかなり違った。

サスケはまず苦無を投げてきてニッコリ笑った後、もうそれはイビキ顔負けの暴言を吐いてきた。

サクラは言葉には出さないものの、何か信用的な物が急激に遠ざかったような…複雑な顔をしていた。逆にそれを表現できるサクラは凄い。

 

「いや、ちょっと目の前に荷物を抱えた老人がいて…!」

 

といつもの様に昔のように言い訳をすればサスケは押し黙り、そんな理由があったなんて知らなかったんだよ。あんな事言ってすまなかっな。と謝った。サクラは言葉には出さないが、複雑な表情から歓喜な表情へとチェンジし、尊敬していますと身体のオーラで表現されているみたいだ。ナルトは唯一ジト目で疑っていた。

 

(この子達純粋すぎる…。嘘でしょ?今時あんな嘘本気で受け取るの?

なんか…なんか自分が凄く汚く思える…。)

 

ガックリ肩を落として、これからはあまり遅刻しないようにしないとなと反省した後、下忍選抜試験のルールを説明する。

 

「ルールは簡単!唯探し物をしてもらうだけだ。」

 

「探し物?」

 

「あぁ、俺が情報をあげるからそれをヒントに探していく。気軽に考えてもらっていいよ。」

 

「なんだか面白そうだってば。」

 

「ただし、情報をあげるのは二人だけ。」

 

「「「2人?!」」」

 

下忍三人の声が見事にハモる。

 

「しかもしかも、互いに情報を共有しちゃ駄目だ。」

 

「「「はぁ?!」」」

 

またハモる事で吹き出しそうになったが、カカシはなんとか耐えてにこやかに言った。

 

「さらに更に、俺は無償で情報をあげたりしないよ」

 

「…奪うってこと?」

 

「そう!此処からは複雑だから心して聞いて。

三人の中で人質を決めてもらう。方法は何でもいいぞー。人質が決まったら俺はそいつに錠を掛ける。その枷には無理やり外そうとすれば毒が体内へと入り約半日動けなくなるから無理矢理外そうとはしない方がいい。下忍選抜試験受けれなくなるから。

んで、俺は人質の枷の鍵を腰のチェーンに付けておくからそれを奪うために、残りの2人は俺に戦いを挑め。

見事鍵を奪ったやつには情報をやろう。」

 

「ちょっと待って。そしたら情報は一つだけじゃない…。」

 

「ああ、もう一つの情報は人質にやろう。わざわざ枷まで付けられて大変だからね。ご褒美ぐらいないと!」

 

「そんなの人質が一番最高じゃない!」

 

「はいはい、説明は終わり。さっさと決めて決めて。」

 

渋々といった様子で三人は木の陰に集まる。時々聞こえるサスケのうるさい声はよく響く。それにしても随分遠い所で話し合ってるなぁ。

あ、取っ組み合いが始まった。ナルトがそれを止めやれやれといった様子で提案する。

 

「じゃあもうジャンケンで決めるってばよ!ほら!最初はグー、じゃんけんぽん!」

 

その結果、ナルトグー、サクラチョキ、サスケチョキ。

 

「ナルトが人質ねー。」

 

ガチャリと音をたてナルトに手鎖を掛ける。手鎖を掛ける時ほんの少し震えていた。このような体験はあまり無いから怖いのだろうか。それとも毒が?どちらにせよ毒はほんの痺れ薬ぐらいだし大丈夫だからご安心をと説明すると震えはマシになった。ほどよい重さに不快そうな顔をしているナルトに対し、サスケは叫ぶ。

 

「そこはサクラだろーが!空気よめよウスラトンカチ!そこは俺が華麗に助けてサクラがドキドキする場面だろうが!サクラと俺で二人で下忍になる所だろーが!てめぇがお姫様役じゃあ燃えるもんも燃えねーんだよ!?」

 

「ナルト!絶対助けてあげる!この黒髪野郎より速くね!」

 

「ありがとうってばサクラちゃん…。」

 

苦笑いするナルトを一瞥した後、俺

はナルトを担ぎ始まりの合図をいった後、すぐ様そこを立ち去った。

 

「んじゃ、よーい。スタート‼︎」

 

 

✳︎

 

 

今回、試験を変えた理由は特にないといえばない。答えは結局同じだから。それはチームワーク。まぁ以前やった試験をもう一度やってその差を楽しむのもまたいいとは思うけれどなんだかその差に悲しくなりそうだから止めた。自分のいた世界の人に会いたいと思うのは仕方ない事だ。

ただ、ナルトは前の世界と変わらない様子だから正直癒されるし人質がナルトで凄く嬉しい。なんというか楽だ。つい気が緩んでしまう。

 

移動中そんな事を考えているといい感じのところに出た。今までは森の中というような感じだったが、此処は草原。広くて心地がいい。

担いでいたナルトを地面におき自分も座る。昨日今日でいろいろな事があったから少し…かなり疲れた。こう、ぼーっと出来るのはいいなぁと感じていると、ナルトが話しかけてきた。ふぅっと息を吐き出すかのように言う。

 

「下忍選抜試験って思ってたより難しいってばよ。」

 

手鎖をされて退屈なのもわかるし、サクラやサスケが攻めてくるまで暇なことだし話に乗ろう。

 

「…そりゃ試験だからなぁ。」

 

「俺ってばさ、実力があれば上にあがれると思ってたけど、そうじゃないんだな。精神的な事をついてくるなんてカカシ先生意地悪だってば。きっと暗部だってこんなん難しいってばよ。」

 

その言葉に驚いた。精神的な事…?まさか気付いているのだろうか?まさかそんなナルトに限ってそんな事…あり得るのか?

 

「…ナルト暗部なんて言葉知ってたんだな。」

 

ハハッと笑いとりあえずははぐらかす。そもそも暗部って言葉知っていた事に驚いたのも事実だ。この頃のナルトは本当に何も知らなくて走り出したら止まらない感じがしてたし。

ナルトは空を見ながら答える。

 

「…暗部は昔よく俺の家に来たってばよ?」

 

「ああ、世話係でか?」

 

そういえば、世話係とかでナルトの家にいる奴がいたなぁ。監視役の暗部もいたが、まぁ世話係がうっかり暗部など言ってしまってたら、確かに知っていてもおかしくは…ないかな…?

 

「………。」

 

「ナルト?……っ!」

 

返事がないのに違和感を感じナルトの顔を見た。いつものナルトは元気よくうなづくはずだ。そういつものナルトであれば。今見ているナルトは、表情がない。あんなにも元気で笑顔が絶えない表情豊かなナルトが無表情で俺を見つめてきた。

目が…離せなかった。離したいのに身体が動かなかった。

 

「世話係…ね。俺の家に来る暗部はみーんな俺に暴力を振るっていったってばよ。来る日も来る日も。何度もなんども。でも、俺ってば傷の治りが早いから。どんな事をされても死ねなかった。でも、それが普通だと俺は思ってた。外に連れて行かれたと思えば新しい術の実験台。親切にされた後の裏切り。憂さ晴らしに切り刻まれる。新しい薬の実験台、効果、後遺症。そんな事をするのはいつも暗部の面をつけたやつらだった。顔をバラすことなくあいつらは俺に暴力を振るい素知らぬ顔で帰ってく。

俺ってば暗部ってやつが大嫌いだ。」

 

「ナルトお前それっ…。 」

 

ごくりと、喉がなった。今は下忍選抜試験。なのにこの緊張感はなんだろうか。ナルトの話は本当なのだろうか…?俺の知っているナルトは元気で明るくてひたむきで…

相変わらずナルトは無表情で相変わらず俺は顔をそらせない。

するとナルトはいきなりコロリと態度を変え、あの、いつもの人懐こい笑顔になった。

 

「な〜んて…冗談だってばよ!先生、騙された?騙された?」

 

きゃっきゃっとはしゃぐナルト。

先ほどの冷たい空気などは一切感じられない。そう、俺の知る元気なナルトだ。

 

「あは、は。冗談キツイなもう。此処でこうしててもしょうがないし、サクラ達の様子でも見に行くか。」

 

重たい腰を上げ、ナルトを担ぐ。

 

「サクラちゃん達俺を助ける為に頑張ってくれてっかなぁ!にしし!」

 

「はは、ほら。落ちるぞ。大人しくしてろよ。」

 

「はーい。」

 

いつものナルト。

明るいナルト。

元気なナルト。

笑顔を絶やさず皆を元気にさせるナルト。

でもそれは俺の元の世界のナルトだ。今目の前にいるナルトは元の世界のナルトと同じ…?俺は何を思ってたんだ。

此処の世界のナルトはもっとずっと闇が深く、きっと一番厄介だ。

先ほどまであんなにも重い空気を出していたのに今ではそれを忘れたかのようにはしゃいでいる。

でも、俺は深く追求しない。何故だか、今の世界のナルトを追求するのはとても怖いことに思えたから。

だから俺は気づかないフリをする。

 

 

✳︎

 

 

 

「大体!サクラ!お前の夫がだ!稼ぎが少なかったら嫌だろ?!」

 

「いいえ!私は一緒に働くからいいのよ!」

 

「何だと?!おいサクラ!俺は共働きは認めないぞ!家事や育児に専念してくれ!俺は専業主婦を馬鹿にはしないむしろ崇める!」

 

「あんた今男女差別したわね?!

なんで女は必然的に専業主婦にならないといけないわけ?!

今は男女共同参画社会なのよ!だいたい忍びに男も女もないわ!」

 

「そういうわけじゃない!

そういうわけじゃないんだよサクラ

ていうからちが明かないよ。なんだっけ最初に話してた話題。」

 

「下忍選抜試験の話よ。ナルトを助けるべく私がカカシ先生の所へ向かおうとしたらあんたがいきなり、カカシは俺が倒す。とかなんだか言い出したんじゃない。」

 

「ああ、そうだ。そうだった。と、いうわけでサクラ。俺はお前と争いたくないんだ。俺がなるべくはやく出世して稼いで養うからさ。何もサクラが今下忍になることないだろ?」

 

「うるさいわね、何で私があんたに養われなきゃいけないのよ。自分の事は自分で出来るわ。」

 

「ふぅ、全く素直じゃないがそこもいいなサクラは。」

 

「こいつ本当死んでほしい。」

 

木の陰に隠れ二人の様子を伺う。意外なことに二人はスタート地点から全く動いてなかった。多分ずっとこんな話をしていたに違いない。それに思わず呟く。

 

「あいつらなんて生産性の無い話を…。」

 

「サスケはバカだから仕方がないってばよ。」

 

「サスケだけのせいなのあれ?」

 

それにうなづくナルト。

それにカカシは乾いた笑いで返した。

 

この世界でも、ナルトとサスケは犬猿の仲なのかな。ナルトはなんだかサクラに甘いし、そういう所は変わってないか。

 

話の展開が見えず、思わず二人の前に出て行こうとすると自分の動きが止まった。

 

「だいたいね、あんたいつも子作りとかいうけどどうやって子供出来るか知ってるわけ?!」

 

「そんなの知ってる。」

 

「嘘つくんじゃないわよ!」

 

「嘘じゃない。」

 

これから今にも方法を言おうとしているサスケに、これは幾ら何でも言わせたらいけない!と思ったカカシは待ったをかけるため二人の所へ現れる。

 

「ちょっ!お前らやめなさいそんな話は!まだはやいよ!お前らには!」

「コウノトリが運んできてくれるんだろ?」

 

言葉がサスケと被ってしまったがそれ以上に驚いたのはサスケの言葉だ。こいつ…何言ってんだ。

思わず、ナルトとサクラとカカシは間抜けな顔で驚く。

 

「「「え?」」」

 

「?違うのか?」

 

純粋な目で見つめられ、焦ったようにカカシはそれを肯定する。

 

「いやいや、うんあってるよ。サスケは物知りだなうん。」

 

「何言ってのよ。違うわよ。あんた本当バカ。」

 

折角純粋なサスケに純粋なままでいるよう話を合わせたのに、サクラは容赦無くぶった切ってくる。カカシはサクラに懇願するように言った。

 

「サクラ!やめなさい!12歳同士でそういう話をするのは構わないけど先生の前ではやめて!お願いだから!」

 

「なんで駄目なんだってば?たかだか性行為だろ?」

 

「ナルトー‼︎」

 

「痛って!」

 

カカシは思わず名前を叫びながら、担いでいたナルトを、後ろに放り投げてしまった。

 

「何するんだってば!

生命の神秘だろ?!何もやらしいことなんてないってばよ!」

 

「お前のそういう柔軟性がきいて達観しているところがなんか嫌!」

 

思春期ならば、そういうのは興味はあるが恥ずかしい筈だ。普通ならば。というか、サスケは純粋で、ナルトは割り切っているのが明らかにおかしく感じる。サクラは顔を真っ赤にして黙っているのを見れば相応な正しい反応にひとまず安心する。正常な子がいるということに。

 

「おい、カカシ。

せい行為って何だ?」

 

「もうやめて!これ以上何も聞かないでくれない?!」

 

純粋なサスケを汚すのはなんだか躊躇する。子供が親に子供ならではの残酷な質問をしてくるのと同じような、そんな感じだ。顔を背けていると、サスケがこっち見ながら話せよと言った。見たくはないが、コウノトリであってるよと目を見て言うことで信じさせようと思いカカシは、顔を歪めながらサスケの顔を見た。

サスケはにこりと笑い、カカシに言った。眼を赤くしながら。

 

「掛かったな。カカシ。」

 

「なっ?!これは…写輪眼?!」

 

目の前の景色が歪む。しまったと思った時には遅かった。

こうしてカカシは幻術に掛かった。が、それはものの数秒で解けた。何故ならカカシもまた写輪眼使いだった。

カカシは驚愕の表情を隠しきれないでいた。サスケが写輪眼を開眼させていたことに。自分のいた世界ではまだまだ先であるし、もはや幻術をかけるほどの扱い慣れである。一体いつ開いたのか。色々調査書を確認しなければ。

 

「サスケ、お前なかなかやるじゃないの。」

 

「当たり前だろ。俺は優秀なうちは一族だぞ。」

 

ドヤ顔のサスケを見ながら、腰に手を当てる。当たり前だが、腰についていた鍵はない。鍵は笑顔のサクラが握っていた。

 

(こいつら最初から組んでやがったな…。)

 

俺を混乱させ、油断が出来た所で幻術を掛ける。シンプルだが効率的だ。実力的に2人が俺にかかってきて勝てるとは限らない。それに人質がいる。サクラが本気を出せば分からないが。それにしても、どちらかにしか情報をあげないのに、こいつらは迷わず協力したんだな。全く毎度毎度驚かされる。

嗚呼、まさかこんなにも簡単に鍵を奪われるとは思っていなかった。たかが数秒、されど数秒。その数秒が命取りになるという事を改めてわかった。

 

「さて、と。

じゃあサクラとナルトには情報をあげようか。」

 

情報が書かれた紙を2人に渡す。2人はそれに書かれた内容を見ている。情報を渡されていないサスケはなぜか涼しげな表情だ。

確かに、今まで協力してきたけど、これでどうなるかはわかる筈。

情報は二つある。けれど一つの情報じゃあ探し物は見つからないようにした。つまり協力しなければならない。が、此処が人の心理的に面白い所で、試験など協力プレイを強要されていない場合、人は必ずと言っていいほど、協力はしない。試験という緊張感の中、人を蹴落とし自分がのし上がることを考える。そして互いに情報を共有しあってはいけないということは、教えあえないし、それならばもう情報が書かれた紙を奪いあうしかない。それならば、情報をもらっていないサスケでもチャンスはあるし、ある意味で平等だろう。

今日は驚かされてばかりだから、正直こいつらが自分の策略にハマるのが楽しみである。

いや、楽しみであった。

 

「ふーん、探し物って慰霊碑のことか。」

 

「なるほどね。自分達で見つけ出し、更には忍びの世界は酷だって事を言いたかったのね。」

 

「木の葉の英雄…か。里のため、はたまた仲間のために命をかける。くー!かっこいいってばよ。」

 

「いや、お前ら何でそんな当然の様に見つけ出しちゃってるわけ?」

 

カカシはガックリ肩を落とし、溜息を吐いた。

情報を貰ったサクラは当然の様にナルトに紙を渡した。ナルトは貰った紙を見て、見事探し物を見つけ出したわけだ。確かに、共有しあってはいけないと言った。だから一方的に情報を託すのは正解だ。ただ正解に行き着くまでが速すぎた。ものの数分だ。

 

「まぁ、今更技術的な事を言っても仕方がないだろう。そもそもいまだ下忍になりきれてすらいないアカデミー生が上忍相手に勝てるはずがない。しかもそれをわざわざスリーマンセルに仕立ててだ。忍びの任務は通常チームで行う。チームワークを乱す者は、成功率を下げるどころか仲間を危険にさらし最悪、殺してしまう。忍びになるのには、チームワークも必要になってくる。それは下忍も同じだ。そこで答えは必然的にチームワークになってくるってことだ。」

 

「ああ、もうご丁寧な説明ありがとうございます。サスケ。」

 

わざわざ説明までしてくれて、自分がする手間が省けたが、なんだか悲しい。嬉しいはずなのに。

サスケはふんと生意気な顔をして言った。

 

「まぁ全てナルトの受け売りだがな。」

 

「ナルト?」

 

カカシが驚いた顔でナルトを見ればにこりと笑った。サクラが追加で説明してくれる。

 

「ナルトは最初に気付いてたのよ。

試験が始まる前にね。だからナルトは私たちに説明してくれたの。」

 

「いつのタイミングだ?」

 

「人質を決めるときよ。」

 

そういえば、かなり離れた所で決めていた。時々争ったりしていたのは此方側に如何にも争って人質を決めていますよというカモフラージュなのだろうか。

 

「…だからあんなに離れていたのか。ナルト…、お前なんかさっきから感じてたけど頭いいな。」

 

それにナルトではなく、サクラがドヤ顔で答える。

 

「当たり前よ!ナルトは筆記試験アカデミーの中で一番なんだから!」

 

「は?」

 

ナルトは苦笑いしながら、サクラに言った。

 

「サクラちゃんは、毒草とか暗殺に使われる専門知識が偏り過ぎだってばよ…。」

 

「き、気をつけるわ。」

 

やはりカカシは驚いた顔で感想を言う。

 

「アカデミーで一番なのかナルト…。あれ?サスケは?」

 

今まで黙っていたサスケは肩をびくりと動かし口籠る。

 

「お、俺は…」

 

「サスケは途中までは一位だったんだけど、ある日を境にどんどん成績が落ちたわね。」

 

口籠るサスケにサクラが代わりに答える。

 

「ある日…?」

 

「え、あ、ある日っていうのは…その…」

 

次はサクラが口籠る。もしかしたら、いやもしかしなくてもうちは一族暗殺の事ではないのか…?

酷いことを聞いてしまったと思い、カカシは急いで訂正する。

 

「あ、いや!別にそんな聞きたいわけでは…」

 

「うちは一族暗殺だ。」

 

冷静な顔で答えたのはサスケだ。真っ直ぐカカシを見ながら言った。

それに戸惑うが、この世界のサスケは兄、イタチを恨んでないのかもしれない。何故なら真っ直ぐとこちらを見ているからだ。逆にカカシに戸惑った。

サクラは自分の失態を謝るがサスケは気にしていないと笑顔で答えた。

空気を変えるべく咳払いをし、ナルト達を見つめる。

こいつらは思った以上に厄介だが、優秀で賢く、何が一番大切かわかっている。こいつらを下忍にしなければ一体誰がなるというのだ。

カカシはにこやかに笑いながら言い放った。

 

「うずまきナルト、うちはサスケ、春野サクラ。下忍選抜試験合格!

明日から頑張って働いてください。」



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第3話 新しい設定が随時登場するからカカシの頭は爆発寸前。

「いつからサスケが写輪眼になったって?」

 

「ああ、報告書に書かれてなくてな。」

 

「当たり前ですよ。あんまりそういう大切な個人情報って紙に書かれないようにされてるんですから。誰が見るかわからないでしょ。」

 

「そ、そうなんだ…。」

(俺のいたところとは違うけど一理あるな。)

 

川のせせらぎが気持ちいいお昼頃、カカシ率いるちょっと変わった第七班はDランク任務の川の掃除をしていた。その束の間の休憩のとき、カカシはサクラを呼び出しいつサスケは写輪眼を開眼したのかを聞き出していた。

昨日報告書を見たところ、驚いたのはその報告書の内容の薄さだ。血液型、誕生日、申し訳程度の性格の情報。肝心なことは微塵も書かれていなかった。嗚呼、でも意外な情報は得られた。サクラとサスケの両親は仲が良くて、昔から交流があったそうだ。それでイタチやサスケとサクラは小さい頃からよく遊び、いわゆる幼なじみらしいことが書いてあった。まぁ、だからないよりはマシだったであろう報告書も今となっては単なるゴミだ。

サクラはこちらを一瞥しながら話し出した。

 

「最初に開眼したのは、うちは一族が沢山殺された夜。イタチが両親を殺した時、一つの勾玉文様が浮かび、赤く光りました。」

 

それを聞き、あれ?とカカシは人差し指を立てる。

 

「でも、確か完成形じゃなかった?試験のとき使われてた写輪眼。」

 

それに溜息を吐きイラついた顔をしたサクラは吐き捨てるように言った。

 

「まだ話の途中じゃないですか…。最後まで聞いてくださいよ…。」

 

「すまん」

 

謝るのを意に介してないような態度でサクラは話を再開した。

 

「うちは一族抹殺事件があった後、今じゃ考えられないぐらいサスケは荒れてました。幼なじみの私が何回も慰めたけど、本当に無気力で何を言っても聞いてくれなかった。

カカシ先生も知っての通り私は暗部です。サスケは先ほどを言った通り不安定な状態だったから、私自らサスケの監視役の忍びをやりたいと言いました。サスケは数日後ぐらいから物凄く修行をするようになったんです。毎日朝から晩まで演習場で頑張ってました。そんなある日、サスケを狙う他里の忍びがサスケの前に現れました。うちはを狙う理由なんて沢山ありますがこの時期です。何が目的かなんてものは限られてきます。うちはの血が狙いか、はたまた希少になった目を高く売るためか…。そんなふざけた理由で狙われたサスケを守るのが私の役目ですから。すぐ助けようとしました。だけど…」

 

真っ直ぐカカシの目を見ていたサクラは、地面に目を向け悔しそうに唇を噛み、拳を強く握った。

 

「負けてしまった。私は自惚れてました。負けた事があまりなかったので、当たり前の如く勝つと思ってました。相手は確実に私より強く、また経験豊富な人物でした。今もその人が誰だかなんてわかりません。負けたものの定めは死です。敵はボロボロになり動けない私の首元に苦無を当てていきました。」

 

そういいながらサクラは長い綺麗なピンクの髪をあげる。そこには今の医療忍術では直しきれていない痛々しい傷跡があった。

 

「意識が薄れどんどん息苦しくなる。最後に見た記憶は絶望していたサスケの顔でした。そしてサスケの目には…3つ、勾玉文様が浮かび、とても綺麗に赤く光ってました。

そして、今の暗部部隊長が助けに来てくれて私達は助かりました。私なんて死ぬ一歩手前だったらしいです。」

 

ははっと自称気味に笑った後、真面目な顔をしたサクラは話を続ける。

 

「それからサスケは、写輪眼を扱う練習をしました。写輪眼を得たサスケはメキメキ力をつけていってますよ。…そしてその事件からサスケは私に好きだなんだふざけた様な事を言うようになったんです。私は多分サスケは、女の私に自分の所為で傷をつけさせてしまった。だから自分が責任をとって嫁に取る…という、あのおかしな行動にはそんな意味合いがあるのではないかと思ってます。」

 

その後、勘違いかもしれませんがと笑ったサクラはなんだが健気で女子らしい雰囲気がした。とても暗殺一家の長女には見えない。

 

「そんな事があった訳ね…。」

 

「はい。」

 

「サクラにとっても辛かったでしょそれ。ごめんねわざわざ思い出させるようなこと言って。」

 

「いいえ。もう全ては過去の事です。私はあれから強くなりました。だけどきっと私はまだあの敵には敵いません。だからもっともっと高みを目指し全力で強くなってみせます。」

 

グッと拳を握りにっこり笑うサクラ。それにつられカカシもニコりと笑う。

 

「頼もしい限りだねぇ…。」

 

話がひと段落つけば、サスケが自分達の元へ走り寄ってきた。

 

「サクラ〜!綺麗な石見つけたぞ!いる?」

 

「わー、いらなーい。私の気を引きたいなら甘味どころの餡蜜でも用意しなさいよ。…ナルトは?」

 

笑顔で駆け寄ってきたサスケを一刀両断したサクラはナルトの行方を探す。サスケはつまらなそうに川に指を指し言った。

 

「ナルトなら川で足つってるよ。」

 

「はぁ?!冗談じゃないわよ!ナルト!ナルトー!」

 

サクラがナルトのために駆け出した後サスケは残念そうに呟いた。

 

「あーあ、冗談なのに。」

 

「冗談ってお前ね…。」

 

カカシは呆れた顔をした後、実はずっと気になっていた事柄を聞くか聞かないかで迷っていた。それはもうイタチに復讐するつもりはないのかということだ。元の世界ではサスケが復讐心から色々大変な事を仕出かした。もしそんな心がないのなら、万々歳だ。

お互い無言でいると、サスケは此方を見ずに聞いてきた。

 

「俺の情報嗅ぎ回ってあんた何がしたいんだよ。言いたい事があるなら言え。不愉快だ。」

 

ギクリとカカシの胸が波打つ。

お見通しだった訳だこの少年には。はぁと溜息を吐き出した後、じゃあぶっちゃけさぁと話し出した。

 

「サスケはもううちはイタチの事何とも思ってないわけ?」

 

「……。」

 

サスケは無言で此方を見る。じっと此方の目を見つめ真意を探ろうとしている様子だ。暫く無言が続き、サスケは観念したのかわからないが目線を逸らした後、フンと鼻で笑って言った。

 

 

「復讐は何も生まれない。復讐した後は?イタチを殺した後自分は何を思う?俺は今大切な仲間や好きな人がいる。過去にとらわれていても仕方がない。ならば今いる大切な人を守るために自分は強くなりたい。大切な人が極当たり前の様に明日も生きているとは限らない世界だからな。」

 

そう話すサスケの手は微かに震えていた。

 

 

✳︎

 

 

「カカシ!」

 

ギクリと肩が揺れた。

第七班の任務も終わり報告書を持っていくため火影邸に向かい歩いていると懐かしい声がした。この元気の良さ、野太い声…。言わずともわかる我がライバルであるガイの声だ。

正直自分はガイを見るのは怖い。爽やかなイケメンになってたらどうしようとか、まるでだめな大人になってたらどうしようとか、そんな事を昨日考えていた。そのぐらいガイは自分にとって大きいし存在感が半端ない。そんなガイが後ろに…?見たいような見たくないような…意を決して後ろを振り向けば、普通にいつも通りのガイがいた。濃ゆい眉毛とオカッパ頭が特徴的で、常に一張羅の緑色の全身タイツの上から木ノ葉の忍者ベストを羽織っており、両足にはオレンジ色の脚絆を付けている。そう、まさしく若き頃のガイ!

 

「お前、ガイ…。そのまんまじゃん…。」

 

「ん?どうしたカカシ!いつものようにハキハキ話せ!」

 

「はは、そうだなガイ。その通りだよ!」

 

ワッハッハっと豪快に笑うその姿は元いた世界のガイとはなんら変わらないガイだ。今まで姿形が変わるものもいたし、性格が丸変わりしていたものもいたが、ガイは、ガイだけは変わっていなかった。それに嬉しさを隠しきれないでニコニコとしてしまう。

 

「今日は随分とご機嫌がいいなぁ!」

 

「まぁね、ガイに会えたおかげかな!」

 

冗談を言ってみればまた豪快に笑うガイ。

 

「嬉しい事言ってくれるなぁ!流石は我が…」

 

そうこれだよ、この後ライバルだ!だろ?もうそんな当たり前のくだりに安心する。キャラが変わらないガイは物凄く安心する。

そしてガイはその続きを笑顔で言った。

 

「恋人だ!」

 

「……は?」

 

「そんな照れ臭いこと普段言わないくせにいきなりどうしたんだ?」

 

「え、ちょ、冗談だよね?」

 

「俺は今までカカシに対して冗談なんか言ったことないぞ!いつまでもフォーリンラブだ!」

 

「や、待って。やめてなんかそれ以上何も言わないでくれない?」

 

頭を抱え、首を横に降る。いや、あり得ないでしょ。まさかここにいた俺はガイと付き合ってたわけ?いやいやいやあり得ないでしょ!見た目からして濃ゆいしまず男だし?!いや…こう見えて案外実は女とか?まさかこの濃ゆさで女とか?いやいや落ち着けまず落ち着け自分の鼓動!聞いてみればいいじゃないか…。

 

「あの、ガイさん。もしかして女とかだったり…します?はは。」

 

「女?当たり前だ!俺はこう見えて中身は乙女だ!女子力高くなりたーい。」

 

大声で叫んだと思ったら、女子力のくだりは真顔で言うガイ。これはギャグなのか。夢なのか。どちらにせよ突っ込まずにはいられない。

 

「それ最早おネェじゃん!

ガイもう止めろ!俺の中でお前のイメージがダダ下がりしていく…?!」

 

顔を両手で覆い懇願するカカシの声は切実だ。

うわー!っと騒がしくしているとガイの背後からこれまた懐かしい姿が見える。姿形は変わらない同期のアスマだ。

 

「お、ガイにカカシ。お前ら元気だなぁ。ちょっと以上にうるせーよ。」

 

「アスマじゃないか!」

 

「アスマ…お前も普通に見えてなんか持ってるんだろ?もう勘弁してよ。」

 

「カカシどうした、凄いやつれてるぞ。」

 

「や、もうなんか疲れて。」

 

「疲れてか。嗚呼、まぁガイの相手は疲れるよな。」

 

ちらりとガイを見てから同情したようにカカシに話す。ガイは怒ったように叫ぶがアスマは気にしない。

 

「なんだと?!」

 

「お前今どっちなんだよ。乙女か?それとも漢か?」

 

「どっち?

乙女に決まってるだろ?!女子力高くなりたーい。」

 

やはり女子力のくだりは真顔で言うガイ。アスマもやはり気にせずカカシに同情した。

 

「カカシお前も大変だな、ガイに勝手に恋人認定されてて。」

 

「え?恋人認定?」

 

「?それで疲れてたんじゃないのか?乙女の方の人格はすげー面倒臭いよな。漢の方も暑苦しいけど。」

 

「ねぇ、まさかと思うけどガイって二重人格?なの?」

 

「あ?なんだよどうしたんだよ。忘れたのか?一つはカカシを恋人だと思ってる乙女なガイと、もう一つは暑苦しい青春バカのガイだろ。」

 

「まじですか……」

 

呆然とするカカシを心配しアスマは声をかける。

 

「まじでどうしたんだよ。お前いつもそんなガイをスルーしてただろ?大丈夫か?」

 

「いや、なんか頭打ったらしくてさ。なんか記憶が曖昧なんだよね。」

 

その言葉にガイの目がキラリと光る。

 

「そうなのか?!大丈夫かカカシ!今日俺が看病しに行こうか?!」

 

「黙れガイ。」

「うるさいよもーガイはー。」

 

「二人ともなんか酷いな。」

 

カカシはガイを無視し、ところでと話を戻した。

 

「いつになったら乙女から漢に戻るわけ?」

 

その問いにバツが悪そうな顔をして答えるのはもちろんアスマだ。

 

「ああ…、なんつーか、決まってねぇ。いつどの人格がなるかわからないしよくわからん。」

 

「うわぁ、面倒臭いなぁ。」

 

そこでカカシはあれ?と気付く。このアスマは普通だ。特に変なところはない。これはもしかしたらアスマは普通なのでは?と期待が湧くがあまり期待が多過ぎると裏切られた時辛いためあまり期待しないようにする。

 

ガイは相変わらずうざいし、アスマはまだどんな本性かわからないが元の世界ではとうに死んでしまった同僚達と過ごす時はそこまで悪くなかった。




ランキングをふと見てみるとなんと3位になってました!凄く驚きましたが、かなり嬉しかったです。ありがとうございます!
これからも頑張りますので、感想や評価随時お待ちしてます!


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第4話 第七班のメンバーは思ったよりもずっと忍び的な考えだった。

 

「迷子猫トラ捕獲完了。いつものことながら第七班は仕事が速くていいわぁ。次は芋掘りと工事現場の視察と…。」

 

「ちょっと待てよ。」

 

第七班は火影邸にて、任務の報告を伝え次の任務を承ろうとしていた。

相変わらず首に蛇をまいている姿は気味が悪いが慣れとは恐ろしいものでそこまで気にならなくなった。

火影はいつもの通り任務を言い渡そうとすしたが、Dランク任務にそろそろ飽きてきているサスケが待ったをかける。

 

「猫探しとか川のゴミ拾いだとか、忍びらしさを感じられないんだが。もっとなんか他になんかないのかよ。三代目。」

 

「あら嫌だサスケくん。気に入らないのかしら今の任務。」

 

「ちょっとあんた三代目に何言ってんのよ。謝りなさいよ。」

 

サスケに注意をするサクラだが、サスケと三代目は聞いていなかった。

ふふっと笑ってサスケを舐めるように見つめる三代目にサスケはぞくりと鳥肌をたてカカシの後ろに逃げ込んだ。

 

「それにしても、サスケくん。貴方随分と美味しそうになったわね…。」

 

「やめろふざけんな!だから俺はあんまり此処に来たくないんだ!」

 

頬を紅色に染め、はぁと吐息をつく三代目。それにサスケは恐怖を感じ拳をカカシの背中あたりに叩きつける。いつも2人はこんな感じであり、サスケはどうやらかなり三代目が苦手らしい。三代目も三代目で止めればいいのに、サスケを煽る。

はぁ…と溜息を吐いたカカシはとりあえず後ろで自分の背中を殴っているサスケを無視し、話を進めた。

 

「それで、三代目。次の任務を教えてください。」

 

「嗚呼、そうね。どうしようかしら。折角サスケくんがそこまで言うんだったら用意してあげなくもないわね。あれなんでどうかしら。ほらさっき来た波の国の…。」

 

「ちょっと何言ってるんですか?!駄目ですよ!彼等は下忍です。」

 

依頼人が誰か分かるとアカデミー時代の担任、うみのイルカが猛反発した。ちなみにカカシが知る限り彼は前と変わらず生徒想いで良い先生だ。変わった所と言えば、此方ではモテてモテてモテまくりという事だろう。彼の爽やかな笑顔や柔らかい雰囲気。人を安心させる表情。それに魅せられる人物は数多くいる。しかしイルカは特に恋愛をしている様子もなく、その様な事をしているならば子供達の問題を解決していきたいと言うほどだ。話は逸れたが、三代目は淡々とイルカに話す。

 

「いいじゃない。大丈夫よ。だって彼等は下忍の中でもより優れている子達よ?中忍にだって余裕でなれる器よ。それなら経験を積んだ方がいい。私はね、可愛い子ほど谷底に突き落としてその成長を見てみたいの。」

 

ふふっと笑うその表情は柔らかいものではない。イルカはもう仕方がないなぁと呟き依頼人を呼ぶ。

 

「全くもう知りませんよ私は。

すみません。入って来てもらえますか?」

 

(ああ、やっぱりタズナさんか…。)

 

がちゃりと音を立てて入ってきたのは予想通りといえば予想通りだが、小綺麗なしわくちゃなおじさんだ。

背は高いが髪は白くしわも多い。笠をかぶりじっとこちらを見つめる。探るような視線にカカシは違和感を感じた。この人は本当にあのタズナなのか?と。

タズナと目が合い、にっこり笑ってきたので愛想笑いで返す。

 

「わしはタズナじゃ!数日間護衛をしていただきたい。超大変かもしれんがよろしく頼む。」

 

✳︎

 

木の葉の里を出てためあんと書かれた大門を出た。

空は天気がよく、快晴だ。

だが、カカシの心は晴れやかではない。これから再不斬達と戦わなければならない。この依頼人が嘘をついているかとは今の所わからないが、何かを隠している。

溜息をつきながらタズナを見るが、和やかそうにサクラ達と話していた。

 

「へー!じゃあタズナさん今手怪我してるんですか!」

 

「そうなんじゃ。超不便でなぁ。素早く指は動かないわ、手は回らないわで…。」

 

「タズナさんって普段何をしてるんだってば?」

 

「俺は普段橋を作っとるよ。超楽しいぞ!」

 

「じゃあ橋を作れないんじゃないか?手を怪我してるんなら。」

 

「いや橋ぐらいは作れるんじゃが…

どうもなぁ。肝心な時に役に立たん手よ。」

 

「肝心な事?」

 

「はいはい。そのぐらいにしなさいっての。今は任務中だよ?緊張感持って。」

 

あまりに自分の教え子たちがずかずか依頼人に質問をしているので、止める。忍と依頼人は仲良くするのはあまりよろしくないと俺は思ってる。情をお互い持つといざという時が大変だ。まぁタズナさんは絶対守るし、教え子たちもかなり強いから大丈夫だろうが。

 

それにしても、前はこの辺りに水溜りがあったのに。何故今はないのか。これではタズナさんに確信をもって責められない。

そわそわしながらも、歩き続ければナルトがいきなり苦無を投げつけた。そこには身代わり用の白うさぎがいた。

 

「まじかよ、いきなりってのは流石にひどいんじゃないの?」

 

ボソリと呟けば、くるくると巨大な大刀・断刀首斬り包丁が襲ってきた。すぐさま伏せろと叫び、刀は全員の頭を通過した。

 

敵から攻撃をうけ相手を見やると巨大な大刀・断刀首斬り包丁を担ぎ、口を覆う包帯の奥には残忍な表情を浮かべている男。霧隠れの抜け忍、かつて霧の忍刀七人衆の一人、鬼人・再不斬としてその名を轟かせた実力者がいた。

 

「やーっぱり出て来ちゃうわけね。君は。」

 

「ふっ、随分と馴れ馴れしいな。何処かであったことがあったか?はたけカカシ。」

 

「いやー、まぁなんつーか、会ったことはないね。」

 

前の世界ではあった事がある。そもそもこの再不斬はそのまんまな気がする。此処に暫くいてわかったのが、変わった人と変わらなかった人がいる。残念ながら自分の知り合いはほぼ変わってしまっていたが…。

 

「悪いがタズナ…を渡してもらおう。」

 

「タズナさんね〜…。」

 

「ああ。その前にどうやらお前らを殺さなきゃいけないがな。忍法 霧隠れの術。」

 

ちらっとタズナを見れば、居心地が悪そうにニカリと笑った。

それには呆れる。やっぱりタズナさん任務内容誤魔化してたな。

全く…。勘弁してよ本当。

とりあえず、ナルト達には注意点を言った。

 

「まずはオレを消しにくるだろうが…桃地再不斬、こいつは霧隠れの暗部で無音殺人術の達人と知られた男だ。気がついたらあの世だってことになりかねない。

オレも写輪眼を全て上手く使いこなせるわけじゃない…お前達も気を抜くな!」

 

話しているうちにも霧がどんどん濃くなってきており周りが余り見えない程になっていた。

 

「8カ所、脊柱 肺 肝臓 頸静脈に鎖骨下動脈 腎臓 心臓…さて、どの急所がいい?くく…」

 

ふと聞こえてくるのは再不斬の声。今、この状況がたまらないというような声を出している。

が、カカシが印をくんだときその空気が一変した。

 

殺気だ。

眼球の動きひとつでさえ気取られ殺される。そんな空気。

小一時間もこんなところに居たら気がどうにかなってしまうようだ。

上忍の殺気。自分の命を握られてる感覚。

カカシは自分教え子を見る。前のサスケは震えていたが、ここのサスケは全く震えずいつでも迎えうつ構えをしていた。

サクラは言うまでもない。ナルトも意外なことに冷静だ。だがそれ以上に意外なのは、タズナが震えもなにもなくじっとこの戦いを見ていることだった。まるで戦いは慣れている様なそんな様子だ。明らかにおかしいが、実力がなさすぎてこの殺気がわからないほどなのか?

いや、そんなこと考えている暇はない。今はとにかく再不斬の事を考えるべきだ。

 

再不斬は下忍とタズナの間に出現しすぐさま首切り包丁で殺そうとした所カカシに止められた。

しかしそれは水分身でカカシの後ろに再不斬が現れた。けれどもそれはカカシの影分身で再不斬の首元に苦無を突きつけた。流石はオリジナルというべきかその再不斬は水分身であり本体であるカカシの首元に包丁を突きつける。

カカシはとっさに池に逃げる。その途中でまきびしも巻いたが効果なし。水の中に入ってしまった時点で勝負は決まっていた。

 

きっと前の世界のやつがこれを知ったらお前何同じことしてんだよ!同じことに引っかかってんじゃないよ!と怒られるだろうが、勿論わざとだ。俺はまだいまいちナルト達が理解しきれていない。強さや性格。誰が司令塔に向いているか。いろいろ知りたいがためにわざと捕まったのだ。前の世界では、ナルトとサスケが力を合わせ助けてくれた。今回も助けてくれるだろうことを見越して捕まった。これで三人の実力がわかるはずだ。試すようなことをして悪いが今後のために是非知っておきたい事である。

 

今まで閉じていた目を開け、とりあえず俺にかまわず行けと言おうとした。

 

「お前ら!俺にかまわず行……け…。」

 

最後の言葉が掠れる。何故ならいるはずの教え子とタズナさんがいないからだ。再不斬が可愛そうなものを見る目でカカシを見て言った。

 

「残念だがカカシ。あいつらはお前が捕まった瞬間、瞬身の術で逃げたぞ。」

 

「え?」

 

「更にいうならばマキビシ巻いたあたりからもう指を動かしていた。」

 

「……。」

 

「おいあんまり落ち込むなよ…。

木の葉の里はあまちゃんばかりだと思っていたがなかなか骨のあるやついるじゃねーか。」

 

敵に慰められ更に悲しくなる。

 

「わかってるよ!忍としてそれがあってることも!よく俺を見捨てれたと褒めるべきだということもわかるさ!だけど…、だけどなんかカルチャーショックだよ‼︎」

 

絶対に自分を助けるために動くという謎の自信があったことが恥ずかしくなる。それにマキビシまいたあたりから負けだなと思われ逃げる準備を始めた事にも驚きだしそもそもあいつら瞬身の術使えたのかよという驚きもある。

 

「ああ!もうなんか本当最近駄目だな俺!」

 

叫ぶカカシをわずわらそうに見ながら再不斬は言った。

 

「まぁ、とりあえず死んどけカカシ。」

 

カカシの首元へ再不斬の刀が動いた。

 

✳︎

 

「おいお前ら。先生置いてきてよかったのか?」

 

「いいんです。

大丈夫だ。

心配ないってばよ。」

 

「そ、そうなのか?」

 

「ええ、あんな覇気の無い戦いをしてるから駄目なんです。本気を出したカカシ先生は凄いですよ。負けるわけないんです。」

 

「あんぐらいでやられるようじゃ、担当上忍なんて降りてもらうしか無くなる。」

 

「その通りだってばよ!そもそもあれが実力ならあそこで死ぬのも定めだってば。」

 

「お前ら結構厳しいな…。」

 

サクラが先頭を走り、サスケが真ん中、ナルトが後ろの配置で走っていた。サスケがタズナをおんぶして、タズナの家に向かう。話題はやはりカカシのことだ。手を抜いているのがまるわかりというように第七班はカカシを批判した。

それにタズナは驚いたような反応をしめす。

 

「それはそうともうすぐ家着きますよね?」

 

「ああ、あと1キロぐらい…。」

 

タズナが距離を答えた瞬間、サクラの足元に千本が飛んでくる。それをサクラは苦無でとめ、立ち止まる。

苦無が来た方を見れば、木から同じ歳ぐらいの綺麗な顔をした子供が立っていた。

 

「タズナさんを置いてってもらえますか?」

 

その子がにこりと笑い、腰にさしてある刀を抜いた。

 

「とある任務で貴方を殺さなければならない。悪いが貴方方には死んでもらう。」

 

ふぅとサクラは溜息をつき、綺麗な顔をした子をじろじろ値踏みしたように見つめる。

 

「ナルト、サスケ。先に行きなさい。私が相手になるわ。自分の実力もわからない馬鹿がこのハルノを相手にして勝てると思ってるのかしらね。」

 

「サクラちゃん、お手柔らかにね?」

 

「最近暗殺とかしてないもんなお前。」

 

「たまにしないとね。技術が落ちそうで。」

 

やれやれというサクラ。タズナはこの会話の異常に何も言えないでいた。こいつらはこの年でそんな話をするのかと。

ナルトはサクラをちらっと見た後、一言言い、サスケもそれに続く。

 

「でも一応残るってばよ。」

 

「まぁ大丈夫だろうが、相手を知らないのも此方は同じだ。もしかしたらとんでもない技を持ってるかもしれない。」

 

「そうね。ならそこで見学してて。

さぁ、始めましょう?命をかけた闘いをね!」

 

サクラは改めて苦無を握り思いっきり白に投げつけた。その表情はまるで戦いが楽しくて仕方がないというような満面の笑みであった。

 

 

 





話のスピードが速いかもしれない…
次は丁寧に書こう。

カカシvs再不斬
サクラvs白

みたいな感じですかね。まぁここの戦いはあっさり終わらせようと思います。


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第5話 タズナと再不斬の関係性。

「チッ。影分身だったのかよ…。」

 

再不斬は1人になった川の上で舌打ちをし、呟いた。

一体いつから影分身になっていたのか。自分の部下に見切りをつけられ、落ち込んでいたはたけカカシを水の中に閉じ込め殺そうと刀を首元に持っていけば、はたけカカシであったものはボフンと音をたてて消えた。自分は写輪眼のような影分身を見極める力もないし、はたけカカシとは初めて会った。影分身かどうかは殺し合いの中で分かるだろうが…。影分身は一回でも攻撃されれば音をたてて消える。つまり再不斬はこの戦いの中捕まえるまで一回も攻撃を当てる事は出来ていなかった。まるでこちらの手の中がまるわかりのような反応に思わず気持ち悪さが出てくる。写輪眼は相手の動きが一歩手前でわかる。しかしこれは異常だ。今まで写輪眼を相手に戦った事などなかったから。

だがそれにしたって…。

 

「俺相手に影分身一体とは随分舐めた真似してくれるじゃねーか。」

 

イラついた口調で呟いたあと再不斬は、下忍、つまりナルト達が向かった道へと走り出した。ナルト達はタズナの家に向かっている。カカシもその後を追うだろう。家の道のりの途中で白に足止めされているはずだから走れば間に合うだろう。白に殺されてなきゃいいが…。あいつは少し乱暴なところがあるから…。まぁあんなガキども死のうがそんなもんどうでもいい。この屈辱を果たすためにもカカシをぶっ倒してやる。

 

✳︎

 

「その程度なわけ?雪一族ってのはさ!」

 

「っぐ…?!」

 

そういいながらサクラは白の頭を狙い思いっきり蹴る。白は腕で防御するもその威力に負け型が崩れる。

その隙を逃す筈がないサクラは崩れた腕の隙間から思いっきり顔を殴った。白は足が浮き、綺麗な顔はもう何発目かわからないほど歪んでいた。

 

「容赦無いってばよ。サクラちゃん。」

 

「やらなきゃやられる。当たり前だろ。」

 

その様子を見てナルトとサスケは呟いた。

 

「んー、でも女の子が女の子を殴っているのは見るに堪えないってばよ。」

 

「お前なぁ、忍びに女も男も関係ねーよ。見ろよサクラを。傷一つないぞ。」

 

サスケは冷静にサクラの方に指を指す。サクラの服装は汚れひとつなく綺麗な格好のままだ。ナルトは苦笑いをしながらサスケに答えた。

 

「さっすがサクラちゃん。ちょっと怖い。」

 

「だいたい最初にサクラがあいつの血継限界破った時点で結果はわかってるよな。」

 

サスケの問にナルトはうんうんと首を縦に振って答える。

 

「そうだってばよ。奥の手最初に使う時点でまずどうなの?ってサクラちゃんが言ってから素早く氷の鏡の中を移動する途中のほんの一瞬、鏡と鏡を移動するため鏡から身体を出した瞬間にサクラちゃんが思いっきり殴って破られちゃったってばよ。速さでサクラちゃんに勝とうだなんてそれこそ一万年早いってばよ。」

 

ナルトの事細やかな説明にサスケは鼻で笑ったあと答えた。

 

「それから一方的に殴られまくって…。今現在か。」

 

サクラと白の戦いを傍観しているナルトとサスケはぼんやりしながらその試合の経過と感想を言い合っていた。タズナを真ん中に挟みいつ加勢が来ても平気な様に佇むその様子は一応きちんと忍びらしいことはしているようだ。それにしても、その戦いは明らかにサクラの優勢でもはやなんだか軽いいじめ現場にも思える。タズナは驚いていた。こんな事があり得るのか。この少女は本当に下忍なのか。明らかにその実力はその辺の上忍を遥かに凌駕しているように見える。この二人に至ってもこの落ち着きよう。今日が初めての実戦と聞いていたのにこの冷静さ。話を聞いていれば、最近の忍びには珍しい残虐さ。人を殺す事を任務と割り切る理解力の良さ。明らかにこの班はタズナが知る中でも飛び抜けて可笑しかった。その奇妙さに思わずタズナはゴクリと喉が動く。

そんなタズナを他所に、話は進んでいく。一方的にやられていた白が、ぼそぼそと何かを言った。

 

「…は…じゃ…ない。」

 

「え?何?」

 

ごほごほと咳き込みながら白は立ち上がる。ナルト達が会話している中、サクラは容赦無く腕に蹴りをいれ腹を殴り足を蹴った。腹を蹴られ足を蹴られた白はその衝撃を耐えることができず思わず倒れこむが、震えながら立ち上がる。何かを呟きながら。そして白はナルト達の方を向きながら叫んだ。

 

「僕は男だ!ふざけるなこの野郎!いつもいつもいつもナンパしてくる癖に男だと知ると舌打ちをしてくる!ざけんじゃねーよ!いちいちそういう反応とられたらイラついてしょうがねーだろうが!そんなやつはぶっ殺してやる!僕と再不斬さんの邪魔する奴は殺す!まずはそこの女からだ!僕の得意技はもう一つある!この愛刀摩殺翔だ!」

 

最初に登場したあの言葉遣いが綺麗で何処と無く上品が漂っていた白はもはやそこに居なくて、いたのはブチ切れて語尾が荒くなっている顔がデコボコの白だ。

あまりの変わりようにナルトとサスケは吹き出しサクラは哀れんだ目を向ける。しかしそんな余裕もすぐ無くなる。白は素早く動きサクラに近づく。そして剣をサクラに向け言った。

 

「秘術千殺水翔‼︎」

 

「なっ?!」

 

サクラを中心に四方八方から千本の針が飛んでくる。上右左抜け出れる所はない。サクラは致し方なしといった様子で苦無でその千本を弾く。弾き終わるとすぐ目の前には刀を構えた白がいた。

 

「これでさよならだ。」

 

白は素早く刀を振りかざす。しかしそれは空ぶった。いや少しだけなら手応えがあった。

サクラはすぐさま後ろに下がった。しかし少し出遅れてしまったおかげで首から一本の赤い線が出来ている。つまり少し切られてしまったのだ。サクラは手を首元に持って行き血に濡れた手を見る。そんな様子を見て白は残念そうに首を振った。

 

「残念。首は落とせなかったですね。でも、貴方の未来は死です。何故ならこの刀には…毒が刷り込まれていますから。一滴でもふれれば成人男性でも40秒で死んでしまう曲者。どうですか苦しいでしょう?君はもってあと20秒。何か言い残した事はあります?」

 

「あ、あ…。血。私の血…?」

 

白はにっこりした笑顔でサクラに話しかける。その笑顔は慈悲深く先ほどの人物とはまるで違う雰囲気だった。サクラは自分の首から流れる血に狼狽えている。

 

「まずいってばよ。」

「まずいな。」

 

ナルトとサスケがそんな二人の戦いを見て言った。タズナは思わず話しかける。

 

「おい…!駈け寄らんでいいのか?!死んでしまうぞ!」

 

「ああ、サクラは大丈夫だ。それよりも…。」

 

ちらりと白の方を見るサスケ。ナルトはそんなサスケに同調するかのように言った。

 

「うん。あいつタダでは死ねないってばよ。」

 

そんな二人の言葉の意味がわからないタズナは困惑の表情を浮かべる。そんな時白の叫び声が聞こえた。

 

「うぐぁ!」

 

タズナはハッとしたようにサクラ達の方を見る。

サクラは毒をくらったのにも関わらずまだ生きている。サクラは、今まで以上の速さで白を攻撃し続けた。そのサクラはゾッとするような無表情だった。機械的に動き機械的に殺す。まさに感情を制御した殺すだけに作られた暗殺に特化したロボット。いつのまにか白は倒されてその上にさくらが乗る。サクラはチャキリと白に馬乗りになり喉仏に苦無を押し当てる。その苦無は良く研いであり少し力を入れるだけで首が落ちそうだ。白はじっとサクラの顔を見つめる。忌々しげに言った。

 

「どうしてそんなに動けるのですか?毒は確かに入ったはずなのに。」

 

サクラは何てことでもないような表情で淡々と答えた。

 

「……。教えてあげる。ハルノはね、小さい頃から食べ物に毒を入れられるの。免疫をつけるためにね。時にはお腹を下したし血を吐いたりしたけど、今役に立ったから良しとしようかな。もう一つ教えてあげる。ハルノの掟の中に、ハルノのものが一滴でも血を流したならばその人物を可能な限り速く殺すべし。よ。ハルノは血塗られた家。自分が流した以上の血を相手に流させないと気分が悪くなっちゃうの。可笑しな話。でもね現に私は貴方の血が見たくてしょうがない。だから貴方を殺すわ。血が見たくて……ゾワゾワしてるの。」

 

正気の沙汰ではない。けどなんだか少し艶めかしい…。

白は思った。先ほどとは違い、頬を赤らめ甘い吐息をしながら言ってくいるサクラに何故か白はドキリとした。胸が熱くなりなんだか火照りそうだ。胸が波打ち耳元で心臓の音煩わしく聞こえる。それはサクラの頭の可笑しさのせいか、はたまた別の事か。

それからサクラは白の首ではなく、心臓目掛け苦無を振りかざした。

 

「超すまんなお嬢さん。それは待ってな。」

 

「え?」

 

サクラの背後に回り手を掴んだのは、依頼主であるシワシワのタズナだった。第七班は驚いた。このタズナが移動したのに素早く気付かなかったからだ。おそらくこのタズナは瞬身の術をした。一般人であるはずのタズナがだ。いや、第七班は優秀故本当はどこかわかっていた。このおじさんの奇妙さに。戦い慣れしていて、自分たちが瞬身の術をした時のあの全く混乱していなかった忍術慣れ。明らかに一般人ではない。しかし忍びは信頼関係が第一。依頼主を信頼しなければ全てが始まらないと言っても過言ではない。その不信感はあくまで憶測。容易に疑うことなど出来ない。しかし、この敵である人物を庇った事でその予感はなんらかの形で確実なものになってしまった。下忍からの不信感は高まるばかり。だが、それを中々言えるものはいない。サクラに至ってはお預けを食らったようなものだ。落胆が目に見える。暗くなった雰囲気の中、突如として今までいなかった銀髪の声が挙がる。

 

「これはちょっといただけないなぁ。タズナさん。どういうことなの?」

 

「カカシ先生?!」

「いつのまに?!」

「存在感薄すぎるだろ。」

 

第七班であるサクラ、ナルト、サスケは各自感想を言うが、最後のサスケの言葉はいただけない。

 

「そこは忍びらしいと言って欲しいね。」

 

空気を破ったのは、彼らの担当上忍。はたけカカシである。いつのまにか来ていたのやら。第七班は驚きを隠せない。タズナはバツが悪そうに、また作り笑いを浮かべる。

 

「それはちょっと複雑での。

何、ワシの家に来た後茶でも出して話す。とりあえず申し訳ないが、ワシの家に来てはくれないか。」

 

手を後ろに回しながら首を掻く。申し訳なさそうには全く見えない。カカシは厳しい視線でそんなタズナを非難し言った。

 

「悪いが、信用なりませんね。一度嘘をつかれると忍びは信用出来なくなる。忍びは嘘が嫌いでね、その情報一つで自分等の命が無くなる可能性があるんだ。当たり前じゃないですか?」

 

「うむ、その通りじゃ。」

 

ふむ…と顎に手を置き考えているのタズナにサクラが苦情を言う。

 

「あの、とりあえず手離してもらっていいですか?退くに退けなません。」

 

「嗚呼、これはすまない。」

 

パッとタズナはサクラの手を離す。サクラは名残惜しそうに退こうとした。しかしそんな表情を見た白はなんとなくぼそりと呟いた。

 

「ぼ、僕はあの…別にこのまま馬乗りでもあの…構わないっていうかあの…。」

 

しかしその言葉はサクラの耳には届かない。もう一度なんて言ったのかを聞いた。

 

「は?ごめんぼそぼそしすぎてなんて言ってるかわからないわ。」

 

相変わらず顔が赤い白は、ハッとした表情になり先程とは違う言葉を話した。

 

「い、いえ。は、速く退けてください!重くて胃が潰れそうです!」

 

「なっ!そんな重くないわよ!失礼ね?!」

 

耳まで赤くしている白にサクラはイラつきながら白の上を退ける。サクラとて暗殺一家ではあるが女の子。そんな事を言われてはイラつきもする。深呼吸している白は辺りを見回しあることに気付いた。

 

「あれ?再不斬さんは?まさか再不斬さんに限ってやられるような真似は…。」

 

チラリとカカシを見ながら言う。自分は逃げてきたと言うために口を開こうとする。しかし何かの気配を感じてカカシは立っていた位置から素早く離れた。

 

「よう、カカシィ。俺から逃げるだなんて調子ぶっこいてんじゃねーよ。」

 

カカシがいた場所はドゴォオンという音をたて地面がめり込み、再不斬があらわれた。その顔には明らかに不満ですという表情が丸わかりである。カカシは今から本題だったのに…と苦い顔をした後再不斬に顔を向けた。勘弁してよと言うために。しかしタズナが再不斬に注意を呼びかけた。

 

「再不斬。もう終わりじゃ。その殺気を止めなさい。」

 

「あ?なんだよまさかもう終わりなのかよこれからって時によう。」

 

明らかに不機嫌になっている再不斬にタズナは気にせず自分の意見を言った。

 

「後でやれ。いまはそれより説明が先だ。」

 

「チッ。しゃーねーな。」

 

再不斬は重たそうな首斬り包丁を肩にかけ、殺気をしまった。カカシはその光景に違和感があって仕方がない。あの再不斬が、あの再不斬が大人しくしている。敵対関係で殺す側と殺される側だったのに…。立場が違すぎる。カカシは我慢できず気になっていることを聞いてしまった。

 

「タズナさん。貴方達一体どういう関係ですか…?」

 

一瞬辺りがシンとなった。第七班は何も話さないし白や再不斬だって話さない。もちろんカカシも。タズナはああとそういえばというような感じで答えた。

 

「再不斬達はワシの弟子じゃ。」

 



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第6話 タズナの過去と任務と弟子


ここからはかなりオリジナル要素が出てきます。おそらく原作で出てきた人がいなくなったり原作で起こったことがいろいろ変わっています。そんなの邪道と思う方は申し訳ありませんが、ここから先見ることをあまりお勧めしません。


 

 

「でっか…」

 

タズナの家を見て思わず呟いたナルト。第七班の他のメンバー2人も同様の反応を見せる。カカシも例外ではなく驚きの表情が隠せないでいた。カカシの記憶では海に浮かぶ質素ではあるが、一般家庭の普通の一軒家であったはずの家が、普通の一般家庭の家の3、4倍はありそうな家になっていた。このタズナは一体何者なのだろうかという疑問が絶えない。

 

あれから一旦家に引くことになった。サクラは不満気な表情をしていたが、タズナはこちらに悪意があるように思えない。火影様には連絡鳥を飛ばしたし、素直についていくことにした。勿論警戒をしながら。

 

豪華な家に入るとタズナはただいまと大きな声で言う。すると小さな足音が聞こえてきて、その主がタズナに抱きついた。

 

「おかえりじいちゃん!白に再不斬もおかえり!」

 

タズナの孫、イナリだ。俺の中では初めはこんなに明るい子ではなかった。ぎょっとしていると再不斬と白がイナリに答える。

 

「ああ。」

「ただいま戻りました。」

 

おかえりと言われなんの違和感もなく返事をし、柔らかい雰囲気を作っている再不斬と白。イナリと話の花を咲かせている。

一方カカシ達は居間に通された。

居間は意外に質素で落ち着いた雰囲気だ。居間の真ん中にある木のテーブルを拭いている女の人がこちらを見て微笑んで言った。タズナの娘ツナミだ。

 

「あら。お父さん、白くん、再不斬さん。おかえりなさい。」

 

タズナ達は先程と同様の反応をして、ツナミがいた木のテーブルに集まり、木の椅子に腰掛けた。

ツナミは此方に気付き挨拶をする。

 

「初めまして。お疲れ様です。お茶でもいれますね。ゆっくり寛いでください。」

 

「あ、お構いなく…」

 

カカシはそう言って、ツナミに勧められた木の椅子に座る。

タズナはカカシ達が座ったのを見て、ツナミとイナリをその場から居なくならせてから真剣な表情で言った。

 

「お主達は超質問したい事が山ほどあるだろうが、それは待っていただきたい。とりあえず、わしの昔話を聞いてもらいたいのじゃ。」

 

カカシ含める第七班は頭を縦に振りうなづいた。それを確認したタズナは話し始めた。

 

 

「あれはわしがまだ霧隠れで忍びとして働いていたときのことじゃ。」

 

「え、忍び?!」

 

タズナはしっかりとナルト達の方を見て言う。しかしカカシは思わず反応してしまった。それを非難するように周りの教え子達の視線がまとわりつく。カカシは苦笑いしながら、話の腰をおり申し訳ありませんと言った。

タズナも大丈夫と言いながらも苦笑いを浮かべる。咳払いをし、タズナは話を続けた。

 

✳︎

 

霧隠れの忍びだった時、わしは情報が漏れないようにするため仲間の護衛につき、暗号部が生きたまま捕まりそうになったり情報を吐くのを防止するため仲間殺しの任についていた。

そう驚くな。どこの里でもこのような任務はある。ん?辛かったですか?そりゃあ辛かったさ。毎日毎日うなされていた。高め合ってきた仲間をこの手で殺すんだからの。それに絶望していた時、愛してやまないわしの妻を殺さないといけなくなった。わしは殺したよ。…悪逆非道か。まさにその通り。家に帰ると妻との間の子、ツナミが笑顔ではしゃいでいた。なんだかこのままではこの子までいずれ殺してしまう気がしての。わしは里抜けをした。里抜けは重罪人じゃ。隠れて生きようと思った。あいにく仲間を殺して得た金は山程あったから生活するには苦ではなかった。その時この波の国にきての。暫くしてわしは旅に出た。そして旅から帰ってくると波の国が荒れていた。ガトーとかいう不届き者が国を荒らしていたらしい。わしはすぐに殺したさ。ガトーとかいう男を殺すのはなんの苦でなかった。久々の人殺しは案外呆気なかった。そこに雇われていた忍びが、再不斬と白じゃ。その時刀の使い方がなってなくて教えて欲しいと言ってきた。これでもわしは一時期刀の使い手として世に名が通っていた。そしてわしは今、二人を見ているんだ。

 

これを頭の隅に入れておいて欲しい。これはあくまで序章だ。依頼はここからだ。

わしには、再不斬と白以外に弟子がいた。それこそまだわしが里に居た時、つまり一番弟子だ。それは干柿鬼鮫じゃ。…。先程からうるさいぞカカシ上忍。上忍ならば上忍らしくせい。其処におる下忍達の方が遥かに静かじゃ。何謝るな。静かに聞いてくれたらいいんじゃ。

鬼鮫は随分とわしに懐いてくれた。刀を扱う才能も桁外れに凄かった。わしは刀を作るのが趣味での。そこの再不斬が使っている刀もわしが作ったものじゃ。わしは忍刀を作っていた。そのうちの一つ、大刀•鮫肌を鬼鮫のために作った。わしは里抜けをする前に鬼鮫にそれを渡し、去った。里抜けをし、波の国で暮らしている時風の噂を聞いた。わしの代わりにあいつが仲間殺しの任務をしていると。わしは酷く罪悪感に溺れ、いてもたってもいられず、旅に出て霧隠れへと行ったが、やはり荒れに荒れていたせいか近づくことも出来ず旅は終わった。また風の噂で鬼鮫は里抜けをし、わしを探していると聞いた。そしてこの前、とある手紙が来た。

「6日後そちらへ向かいます。」

鬼鮫からじゃった。鬼鮫はきっとわしを殺しに来るだろう。何も言わずに里を抜け、挙げ句の果て後釜をやらされて。腸煮え繰り返っているだろう。わしを護衛してくれとは言わない。ツナミとイナリを守って欲しい。鬼鮫はわしだけじゃ足りず、二人を殺すかもしれん。子供には罪はない。どうか二人を守ってやって欲しい。木の葉にあの子らが住む家を用意させた。明日の朝あの子らを連れて木の葉へと向かって欲しい。それがこの任務内容じゃ。

Cランクどころの話ではない?当たり前じゃ。そもそもちゃんとこの任務内容にあった報酬は出している。強いていうならば、わしも下忍ばかりで驚いたがそれ以上にこの子らの実力に驚いた。じゃから安心してあの二人を任せられる。再不斬と白も連れて行ってくれ。この二人はここで死ぬには惜しいからの。

 

✳︎

 

ニコリと微笑みタズナは言った。

再不斬と白は黙ったままだ。

カカシは頭が痛かった。鬼鮫は再不斬と白より遥かに厄介な相手だ。

それよりもあの火影は一体何を考えているのか…。カカシの悩みの種は増えるばかりだ。



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第7話 再不斬の決意

 

 

広い自然豊かな森の中、サスケは眼を赤くしながらナルトと対峙していた。タズナからの本当の任務を受けたのはいいが、今は昼頃。タズナ達は準備があるため、今は時間がある。時間を持て余すのは勿体無いとの事で、タズナ宅の近くの森で修行をしていた。ナルトとサスケはお互い試合をしていて、サクラは白と。カカシと再不斬はその様子を見ている。

サスケは自分に倒され、地面でバテているナルトに対して冷静に呟いた。

 

「これだから頭だけいいやつは実践に向かないんだよ。頭の運動もいいが身体の運動した方がいいんじゃないか?」

 

サスケの目の前で地面に伏していたナルトはカチンときたのか舌打ちをし土を握りしめボロボロになりながらも立ち上がろうとする。ナルトは言われっぱなしの性格ではない故に、サスケに言い返す。

 

「くっ…!調子乗ってんじゃねーぞ!馬鹿サスケ!」

 

それに対しサスケはフンと鼻で笑った後、ニヤニヤしながら言い放つ。

 

「負け犬の遠吠えにしか聞こえないな!今日サクラの隣は俺だ!」

 

「うるせー!お前を隣にしたら何するわからないだろ?!絶対負けないってばよ!次はお前を地面に擦り付けてやるってば!」

 

ナルトはサスケの言葉の途中で、サスケに殴りかかった。

しかしサスケはそれを簡単にひらりと避けナルトの足を掛ける。ナルトはぶへぇと情けない声を出しながら倒れた。

 

それを見てカカシは溜息を吐く。

ナルトは本当に頭がいいのだろうかと疑問を抱く。頭がいいのならなぜ真正面から馬鹿正直に行くのだろうか。少しは工夫すれば良いものを。ナルトは勉強面での頭はいいが、どうやら戦闘関係に関しては…元の世界のナルト以下というところだろう。正直他の二人同様強いものかと思っていたがどうやらそれは見当違いのようだ。そもそもの理由が、今日の任務での立ち位置でサクラの隣の場所を賭け戦っているのだ。ナルトとサスケの戦いは、そのレベルや理由が幼稚で頭が痛くなる。

それに比べサクラと白の戦いは…。

 

「もはや全然下忍のレベルじゃないんだけど…?」

 

カカシはチラリとサクラと白の戦いを見る。白は白で見事な剣さばきで素晴らしいのだが、やはりサクラが圧倒的すぎる。

サクラは苦無で白の剣を受けにこやかに笑いながら戦っている。白の白い肌に赤くうっすらした線が出来ているのはサクラが徐々にいたぶっているからだろう。…いい性格をしてる。精一杯の白に対しサクラは余裕そうだ。流石暗部の副隊長とでもいえばいいのか…。

サクラに感心しながら、本気で戦っている部下達にそんな本気で戦ったら体力なくなるでしょーが。温存しときなさいと注意をした。が、そんなもの誰一人として聞いてはなかった。カカシは上司というものは何たるかを小一時間ほど説明したくなった。

うなだれていると、再不斬が話しかけて来た。

 

「おい、カカシ。話があるんだが。」

 

カカシの肩がびくりと揺れる。

遂に来た。やけに大人しいから大丈夫だろうと思っていたがやはりきた。戦う事が三度の飯より好きそうな再不斬の事だ。戦いを挑んでくるに違いない。それはさせない!っと内心熱くなりながらも、カカシは冷静を装いクールに言い放つ。

 

「戦いならしないよ。流石に体力温存したいし。」

 

それに対し再不斬はイラつきながら不機嫌そうに答えた。

 

「んなこたぁ分かってんだよ。確かに戦いたいがその事じゃねぇ。任務のことだ。」

 

「任務?」

 

任務という言葉を聞きカカシの顔が真面目になる。再不斬はそんなカカシを見ながら話を続けていく。

 

「ああ、俺はタズナの所に残っていく。」

 

任務内容はタズナさんを残し鬼鮫と対決させイナリ達を木の葉へと連れて行く。タズナさんの実力はわからないがきっと鬼鮫の方が強いだろう。現役と元現役だ。差は明らかになるだろう。つまりいい難いがタズナさんは…死ぬつもりなのかもしれない。話を戻し、もし再不斬が残るのなら死ぬ可能性は弱まるかもしれないということだ。

カカシは率直な疑問を問う。

 

「…。それは鬼鮫と戦うってこと?」

 

再不斬は目をキっと強め嬉々とした表情で話した。

 

「ああ、そうだ。鬼鮫と戦ってみたいんだよ。強いともっぱらの噂だがどんなもんなのか気になるしな。…それにタズナは手を怪我しててまともに戦える状態じゃねーし。」

 

最後の方はボソボソと照れながら話す再不斬にカカシはマスクで顔の表情こそ見えづらいものの目元をニヤニヤさせながらからかった。

 

「へー、心配なんだ?」

 

からかうカカシに再不斬は焦ったように否定する。

 

「なっ!別に心配とかそんなんじゃねーよ?!ただ…。」

 

「ただ…?」

 

「タズナにはいろいろ教わったからな。俺は貸しを作りたくねー。これでプラマイゼロになるだろ。」

 

「…ふーん。」

 

カカシは再不斬がタズナがいる方角をしっかりと見、呟いているのを見てここの再不斬はなんだか元にいた再不斬に似ているような気がした。

それがなんとなく嬉しくてまたニヤニヤとしていると再不斬がチラリとカカシを見て舌打ちをし、言った。

 

「なんだようぜーな。やっぱりヤるか?」

 

それなカカシは慌てて拒否する。

 

「いやいや。白君はどうなの?」

 

話を逸らし再不斬の気を紛らせる。

再不斬はチラリと白を見て言った。

 

「白は連れてってくれ。あいつはああ見えていい奴だから。ちっと腹黒いかもしれんが、木の葉の役にたつだろう。」

 

「わかった。だけど白君は知ってるのそれ?」

 

きっと白君は再不斬が来ないとなると自分も残ると言いそうだ。もし話をして納得してくれているのなら、余計な混乱はせず済むのだが。

しかし再不斬はバッサリと期待を裏切った。

 

「いや知らねーよ。だから俺の影分身でも連れてけ。俺の言うことはよく聞くんだよ白は。それにあいつにはこんなところでくたばってほしくねーしな。なんたって俺とタズナが指導した弟子だからな。」

 

ニヤっと笑い再不斬は自信満々で誇らしげに言ってのけた。カカシはそんな様子の再不斬に驚きつつも、ここの再不斬は結構熱い奴なのだとわかった。

それにしても、カカシは正直この任務が上手くいかないような気がして仕方がなかった。

 

(嫌な予感がするんだよなぁ)

 

最近思い通りにいくことがないためかなり心配だ。

なんとなく今戦っている自分の教え子たちを見る。するとナルトとサスケは何故か呑気にジャンケンをしていた。そんな様子を見て考えるのが馬鹿らしくなってしまった。

 

「うんまぁ、なるようになるでしょ。」

 

✳︎

 

 

カカシに任務についての話をした後、俺は白たちから離れ、タズナと初めて会った場所、ガトーの元アジトに来ていた。なんだか懐かしくその建物を見つめる。いつのまにかそこには草が生えて随分と野生的になっていた。しかしそこにはタズナが暴れた証拠である、もはや壁や床に染み付いてしまっている血が今でも生々しく残っている。それが初めてタズナと会った時のことを思い出させた。

 

あの頃の俺は、自身の力が強いがために里に見切りをつけられた。昔は強いものこそが最高であるとされ、俺はいい意味で注目を集めた。だが、時は流れ平和を愛する里へと変貌を遂げた途端 、俺は悪い意味で注目を集めた。同胞殺し、仲間殺しと罵られ、里に見切りをつけられた。そんな里を俺自身が見切りをつけ水影を殺し白を連れ里抜けをした。しかし貯めていた資金はすぐ尽きるもので、働かなければいけなくなった。そこで自慢の強さで雇われ雇い主の敵を殺す日々に戻った。その頃の目標は、故郷霧隠れの里を手中にすることだった。しかし今思えば、ただ霧隠れの里に必要とされたい、認めらたかっただけなのかもしれない。だけどその頃の俺はその事しか頭になく、里を手中にするのには金が必要でただただ雇い主の敵を殺す日々だった。しかし、そんな日が続いていたある日いきなり俺の世界にあの人が飛び込んできた。それは、霧隠れの里や他里でも伝説の刀の遣い手、仲間殺しのタズナだった。噂通りの実力で、白と二人掛かりでヤっても敵わなかった。白はボロボロになりながら、俺の前に立ち小声で僕が相手にしますから逃げてください。ようやく道具としてお役に立てることが出来そうです。と笑顔で言ってきた。白の身体は俺よりも酷くやられており立っているのもやっとという感じなのに、白は俺を庇った。その瞬間、俺は自分が死んでもいいから白をなんとか助けたいと心から思った。俺に背を向けている白の首に手刀を落とし、気絶させた。白は驚いた表情をしていたが、このぐらいの敵、逃げなくても勝てんだよと言えばなんで…と言って目を閉じた。

気絶したのを確認した後、俺は仲間殺しのタズナに目を向ける。この人は里の裏切り者として霧隠れの里では受け継がれていた。鬼鮫はそれに対し異様なまでに否定していたが、俺も里のものと同じ、こいつは単なる弱虫だと思っていた。が、今は何故里抜けをしたのかなんとなくわかる。勿論こいつの時代は強さは崇めらていたが、俺と同じでこいつは大切な人が出来たのだろう。どうしても殺せない大切な人が。だから止むを得ず里抜けをした。大切な人とというのはとても恥ずかしいが、俺にとっては白…の様な存在がいたわけだ。

そして同じような立場のタズナなら話を聞いてくれる気がした。

交渉をした。俺を殺させてやるからこの子は見逃してほしいと。俺の頭には多額の金がかけられている。がこの子には何もかけられていない。だからこんな小僧見逃してはくれないか。と。

勿論忍びとして甘いのもわかっている。本当に俺を殺した後白を殺さないとは限らない。けれど何故かこいつは約束を守る気がした。真っ直ぐ真剣な目をしてこちらを見つめるこの老人が俺には約束を破るようには見えなかったから。

すると、タズナは突拍子もないことを言い始めた。

 

「刀の使い方がなっとらんなぁ…。」

 

その一言からタズナと俺と白の奇妙な関係が始まった。タズナはお前等を弟子にすると公言し俺達を家へと連れて行き手当てをした。白が動くようになった日にあまりに怪しすぎるタズナの元で生活なんて出来ないと逃げ出そうとした時もあった。しかしタズナはそれを力、つまり己の強さで止めた。此処から逃げたいのなら俺よりも強くなり倒していけばいいと言って。それから白と俺は死に物狂いで修業をした。最初は此処から出るために。しかしそれは次第にタズナに認められるためにへと変わった。そしてその途中、刀がどうしても2人の力に耐えられず壊れてしまうので、タズナは2人に刀を与えた。それは今や俺の相棒とも言える大刀・断刀首斬り包丁だ。それからその相棒と一緒に日々鍛錬した。

守りたいものがいて、タズナという師があり、家ではおかえりと言ってくれるイナリとツナミがいて、疲れて帰ると暖かいご飯があり寝床がある。明日が来るのを楽しみにしながら就寝する。それは今までにないぐらい充実した毎日だった。しかしそんな毎日が続くはずもなかった。鬼鮫がタズナを殺しに来る。今までの夢が一気に元の現実世界へと変わる。鬼鮫は強い。俺よりもずっと。戦えばきっと勝てないだろう。けれど怪我をしているタズナを見殺しにするほど、弟子になった期間は浅はかな物ではなかった。この人が死ぬのなら、俺はこの人に代わり死んでやろう。それが俺が唯一出来るあの幸せな空間を与えてくれた恩人に対する感謝だろう。どうせガトーに雇われてタズナに会った時一度死んでいた命。使い捨てることなど容易いことだ。

ただ、 白が少し気掛かりだ。が、白は賢く強い。だから木の葉の里でも上手くやっていける。

 

そう確信をして、再不斬はタズナ達のところへと戻って行った。

 

 

 




かなり遅れて申し訳ないです。
なるべくはやく更新できるよう頑張りますので、応援の程よろしくお願いします。


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