ゼロと夜天の騎士王 (夜迷eins)
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始まり

感想待ってます(チラッ


某時刻八神家

 

長期に渡って調査していた難事件をやっとの事で解決し自体を収集し、管理局本部に報告する為の書類を纏め終わった。

明日早くに提出し今日は早くこの疲れた体を休めようと思い帰宅した訳だけど。

 

「ただいま〜…なんて言うてもみんな仕事で家には居らんのやけどなぁ。」

 

そう、何の因果かは分からないが生憎と家族は皆急に入った事件や、抱えている調査の為に出払っていた。

 

「うぅ〜。なんやしゃーない事やとはわかってても…疲れた私を迎えてくれる子が一人も居らんのは寂しいなぁ」

 

なんてここには居ない家族の事を思い寂しさを募らせる。

 

「はぁ…ほんま疲れとるみたいやな。こないな事考えるなんて…今日はもう寝てまお……」

 

これ以上起きていたら募る寂しさと、抱えてた事件の自分への不甲斐なさとでぐるぐる巡る思考と、痛み出した頭がどうにかなってしまいそうだった。

 

今回の事件は、あるテロ組織により起こされた事件の調査と、それに伴い便乗した犯罪者集団の組織化を事前に防ぎテロ組織の解体。

テロ自体は良くある事件だが、規模が規模だけに被害も増大で集結させるのにも随分と時間を要した。

 

 

(私がもーちょいしっかりしとったら…もっと多くの命救えたんやないやろか…)

 

良くあるテロ組織の引き起こした事件。

規模は相当のものではあったが、どうしてもあの時ああすれば、ああしていればと思うのを止められる気がしなかった。

 

(私はいつも後悔してばっかりや…あの子の時だってそう、私がもっとしっかりしていればあの子は消えんくても済んだんとちゃうやろか…)

 

後悔した所でもう戻ってはこないと分かってはいても、一人でベットに入り暗闇と静寂に包まれた部屋、強まる頭の痛みと倦怠感でどうにもネガティブ思考になってしまうのを止められない。

 

(ああ…あかん。今日はとことんお疲れモードみたいや……こういう時は早く寝てしまうに限る)

 

止まらない思考を無理やり散らし寝やすい体制に変えて眠りに就く。

疲れていた体は直ぐに睡眠を欲し数秒も立たないうちに部屋にははやての寝息が聞こえるだけとなった。

 

 

 

 

某時刻魔法学園広場

 

 

「我が導きに応え姿を表しなさい!」

 

ピンクブロンドの美しい長髪を風に靡かせて少女が杖を振り下ろす。

それと同時に起こるは地面を揺るがすほどの爆発。

 

「げほっ!ごほっ!…いい加減にしろよ!!ゼロのルイズ!何度失敗すれば気が済むんだ!!」

「そうよ!まったく…いくらやったってゼロに魔法が使えるわけ無いでしょ!!」

「ああ!僕の可愛い使い魔を知らないかい!?今の爆発で何処かに飛んで行ったみたいなんだ!」

 

爆破を引き起こした少女から離れて見ていたであろう少年少女達が、爆風に巻き込まれて煤けた服を整えるのも忘れ、避難の言葉を浴びせる。

 

「うるさいわね!これは…ちょっと失敗しただけよ!!今にも使い魔を召喚してみせるんだから!!!」

 

「なにがちょっと失敗しただよゼロのルイズ!君がいくらやった所で成功なんかするはず無いだろ!」

 

「…っ!」

 

(そんな事…分かってるわ。いくらやっても成功しない魔法、どんなに頑張っても起きるのは爆発。でも…私は諦めない、諦めるわけにはいかないんだからっ!)

 

「ミスヴァリエール心苦しいがそろそろ日も落ちてきた。貴女が真面目で生勉なのは知っています。ですが幾度もの魔法行使で疲れたでしょう。学園長からは私が後日召喚の儀を再度させてもらえる様頼んでおきますので今日の所は…」

 

爆発でふっ飛ばさっれたのか前よりも乏しくなった頭部を擦りながら男が近づいて来て言う。

 

「だ…大丈夫です!ミスタコルベール!!私はまだやれます!ですから…あと少しだけっ!」

 

「そうは言いますがミスヴァリエール…私もこの後次の授業の準備などをしなければなりませんので」

 

「それなら、あと一回。一度でいいのでやらせてください!」

 

ピンクブロンドの少女の必死の様子に折れたのか、男性は次で最後ですよといって少し離れたところへ移動した。

その姿を見届けた少女は広場の中心に向き直ると高々に杖を掲げた。

 

(大丈夫だ、集中しろ。次が最後…必ず成功させる!)

 

瞳を閉じて精神を集中させる、周りの雑音も聞こえなくなるくらいに。

息を大きく吸い、ゆっくりと吐き出す。

それを数度繰り返す。

幾度かやって落ち着いたのか少女は言葉を紡ぐ。

 

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ルブラン・ド・ラ・ヴァリエール。神聖で美しい我が使い魔よ私は心より求め訴えるわ!我が導きに応え姿を表しなさい!」

 

紡ぎ出された言葉と振り下ろされた杖の向かう先は_________

 



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第一話 出会い

なんとか一話が出来ましたが…続けられる気がしません。連載できる人って凄いですね。
勿論この先の話しは出来ていません、プロット?なにそれー。
方向性迷子のこの作品続くと良いですね。


Side__H

 

(ん?なんや妙に明るいなぁ。もう朝なんか?)

 

今だ疲れの残る体に怠さを覚えながら、強い光に眩む目を擦り何とか光の元を捉えようと体を起こす。

 

「…なんやこれ?」

 

体を起こして目を向けた先にあったのは、白く輝く光の鏡のような物だった。

 

「鏡?に見えんくもないけど…それやったら私の姿写るはずやろうし…うーん」

 

(なんやろこれ、なんやものっそい魔力感じるし…明らかに怪しい)

 

触らぬ神に祟り無し、取り敢えずは調査が必要だと判断する。

 

「まだ消える気配はないし…先ずは着替えてしまおうかな」

 

帰って来て直ぐ疲れてベットに入ったおかげで制服のシャツ一枚で寝てしまっていたようだ。

よく見るとベットの下には脱いだ制服が散らばっている。

 

「こんなんリィン辺りに見られたら怒られるなぁ…」

 

ここ最近しっかりしてきた我が家の末っ子を思い浮かべ苦笑いする。

 

「まあ片付けは後や、今は服を着よう」

 

こんな真夜中にシャツ一枚は寒い。

今が夏ならまだ良かったかもしれないが生憎と冬も終わったばかりの春先、シャツ一枚ではこの寒さは凌げそうに無かった。

 

クローゼットから適当に私服を取り出して着る。

 

「なんや制服以外の服を着るん久々やなー」

 

ちょっとした感慨に耽けるが何時までもこうしていられないさっさとベット下に散らばる服を片付けて、この謎の鏡を調査しないと_______

 

そう思い振り返った瞬間 

バランスを崩した。

 

「は?え?ちょおっ!?」

 

何が原因か、何のイタズラかバランスを崩して倒れる先はあの光る鏡。

 

抵抗する間もなく光に包まれた体は静かに光と共に消えてしまった。

まるで最初から何も存在しなかったかのように。

残されたのは床に散らばる制服のみだった。

 

 

 

 

Side____R

 

 

「あんた、誰?」

 

幾度目かの失敗の末、ようやく掴めた僅かな成功の予感。

それとは裏腹に盛大に爆発した召喚魔法は予想道理ただの失敗ではなかったようで。

 

何かが召喚に応えたと喜ぶのもつかの間、私の目の前には肩口まで伸びた栗毛色の髪にばってんに止めた髪飾りが特徴的な一人の女性…いや少女かしら?が居た。

 

「あいたた〜。なんやの急に…てかここ何処やねん!なんやめっちゃ人居るし!!?」

 

何やら特徴的な喋りをする少女(喋ると雰囲気が更に幼いので少女にした)はどうやら気が動転しているようだ。

 

「ちょっとあんた。聞いてるの?この私が話しかけたんだからちゃんと質問に答えなさい!」

 

見た所少女はマントもしていなければ杖も所持していないようだ。

ここらでは見た事も無い様な服装ではあるが、貴族ではない様子。

 

「あ…ああ。ごめんな〜、なんや変な鏡に間違って触れてしもうてな?気が付いたらこないな場所に居ったもんやから、ちょお混乱してたみたいや。悪いんやけどお譲ちゃん、ここが何処なんか教えてくれへんやろか」

 

混乱から立ち直ったらしい少女はこちらに気が付くと簡単な状況説明を要求してきた。

その中にいくつか気になる単語もあったが、光る鏡とか、間違って触れたとか、まあそれはいい…一番気にするところは。

 

「だ…だだだ誰が、お譲ちゃんですってぇ?」

 

見た所少女は私と同い年か少し上くらい。

そんな対して変わらなそうな少女に言うに事欠いてお譲ちゃんなんて言われてはヴァリエール公爵家三女として黙っていられないわ。

 

「ん?お譲ちゃん言われるん嫌やったか?ごめんな〜、見た感じ14歳位やと思ったからつい言ってしもうたんや、許してな?」

 

「じゅじゅじゅ14歳!??あんた!失礼にも程があるわよ!!?平民のくせして貴族である私にお譲ちゃんなんて!ましてや14歳だなんて!!そりゃ確かに私は平均よりちちち小さいかもしれないけど?!私はこれでも16歳よ!!!」

 

大分失礼なことを言うこの少女…いえ平民よ!こいつは平民で十分だわ!!

大体なんなのこの平民随分と馴れ馴れしく貴族である私に話しかけてくるし!

 

「16!?…そうか〜。そりゃお譲ちゃん呼びしたら怒るやんな。ほんまごめんな〜。お姉さん勘違いしとったわ」

 

そう言って両手を合わせて困った顔で笑う平民。

 

「ふんっ。分かればいいのよ、大体あんたも私と同じ位の年でしょ。お姉さんなんて…」

 

そう言うと何だか引きつった笑いになる平民。

なにかおかしな事でも言っただろうか?

 

「同い年くらいってことは、私の事16、7歳位に思っとるん?」

 

「そうだけど、違うの?」

 

どう見てもそれ位の年齢にしか見えない。

もしくはもう少し上くらいには見えなくもないけど。

 

「私これでも24やで…」

 

少し困ったような顔でそう言う平民。

その表情が更に幼さを感じさせ言葉の意味を理解する事が一瞬出来なかった。

 

「……へ?」

 

いま24って言ったわよね?

24?それってちー姉様と同い年よね。

同い年って…

 

「ええええええええ!!?」

 

 

Side____H

 

 

うっかり足を滑らせ入った光の鏡の中。

一瞬の浮遊感の後目前に広がる砂煙。

 

(なんや?砂煙?って事はここは外なんか?)

 

ここが外ならばあの光る鏡はゲートであった可能性が高い。

 

「あいたた~。なんやの急に…てかここ何処やねん!なんやめっちゃ人居るし!!?」

 

いつの間にか打ちつけていたお尻の痛みに耐えながらも周囲の状況を確認する。

 

いたる所に、なにやら爆発でも起きたかの様な穴が開いている以外には、どうやら普通の広場のようだ。

そして気になるのは少し離れた所で囲むようにいる複数の少年少女達。

 

(なんやこの子達、全員に魔力反応あるし…あの光の鏡、もしかしてこの子等がやったことなんかな?)

 

触れた者を別の場所へ移動させる転移の魔法。何故自分の前に転移魔法を展開したかは分からない。

もしかしたら前の事件での恨み事かも知れない…そう思い観察してみるが少年少女達からは悪い感情は見受けられない。

 

そんなことを考えていると、なにやら人の近付いてくる気配がしたのでそちらへ顔を向ける。

 

「ちょっとあんた。聞いてるの?この私が話しかけたんだからちゃんと質問に答えなさい!」

 

そこにはピンクブロンドの小さな女の子が少し憤慨した様子で立っていた。

 

「あ…ああ。ごめんな~、なんや変な鏡に間違って触れてしもうてな?気がついたらこないな場所に居ったもんやから、ちょお混乱してたみたいや。悪いんやけどお嬢ちゃん、ここが何処なんか教えてくれへんやろか」

 

少しばかり憤慨してはいるが、少女からは負の感情を見受けられないので今回の件は前の事件の報復ではないと辺りをつける。

 

(どうやら私の事知らんみたいやし、また別の事件に巻き込まれたのか…それともただの事故か、どちらにせよ目の前のお嬢ちゃんはちょっと我の強いところはありそうやけど、悪い子ではなさそうやね)

 

それに、もしかしたら此処にいる少年少女達も自分と同じ様に巻き込まれただけかもしれない。

なんてことを思いながらピンクブロンドの少女に意識を戻す。

 

「だ…だだだ誰が、お嬢ちゃんですってぇ?」

 

先程とはうって変わって少しどころでなく大分憤慨していた。

 

「ん?お嬢ちゃん言われるん嫌やったか?ごめんな~、見た感じ14歳位やと思ったからつい言ってしもうたんや、許してな?」

 

 

身長は同じ位ではあるが自身が平均より少し、ほんの少しだけ低いせいもあり、自身と同じ位の背丈ならば中学生位と判断し、目の前の少女が自分より幾分年下であると思ったのだが、どうやら違った様子。

 

「じゅじゅじゅ14歳!??あんた!失礼にも程があるわよ!!?平民のくせして貴族である私にお譲ちゃんなんて!ましてや14歳だなんて!!そりゃ確かに私は平均よりちちち小さいかもしれないけど?!私はこれでも16歳よ!!!」

 

「16!?…そうか〜。そりゃお譲ちゃん呼びしたら怒るやんな。ほんまごめんな〜。お姉さん勘違いしとったわ」

 

どうやら目の前の少女を大分怒らせてしまったようだ。

まさか16歳だったとは…少女の体型にこっそりと目をやる。

 

(まあ、まだ将来に希望は持てる年齢やな)

 

平坦なある部分にたいし、本人に知られれば爆発でもしそうな事を考える。

 

「ふんっ。分かればいいのよ、大体あんたも私と同じ位の年でしょ。お姉さんなんて…」

 

そういう少女の言葉に、就任先や上司、部下との間で幾度となく行われたあのやり取りを思い出す。

 

「同い年くらいってことは、私の事16、7歳位に思っとるん?」

 

「そうだけど、違うの?」

 

幾度となく行われたやり取り、簡潔に言えば実年例より幼く見られる。女性としては嬉しいことなのであろうが、この容姿のお陰で上司には馬鹿にされこき使われ、部下からは嘗められ子供扱いされる。

一番酷かったのは就任先で子供に間違われ保護されかけたことだ。

 

「私これでも24やで…」

 

「……へ?」

 

少女の年齢を見誤った自分が人の事は言えないかもしれないが、幾らなんでも16歳の少女に同年代にしか見えないと言われると、少々傷付くものである。

 

(一応結構な人生歩んでる筈なんやけどな…そんなに威厳ないんかな…)

 

「ええええええええ!!?」

 

落ち込む自身を包むのは今日会ったばかりのピンクブロンドの少女の驚愕の声。

 

 

これが最後の夜天の主八神はやてと、魔法成功率ゼロのルイズのファーストコンタクトなのであった。

 

勘違いから始まった彼女達の進む先は________

 




地の文とか良く分からない。取り合えず適当に書いていますが楽しめていますか?この作品大丈夫ですかね?
すこしでも楽しんでいただければ幸いです。

因にこの話しはルイズとはやての年齢のやり取りを書きたかっただけです。最初は24でなく23でしたがカトレアさんと同い年にしました。


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第二話 契約

ぼきゃぶらりーを下さい。

慣れない携帯での執筆。誤字脱字が多そうで見返すのが恐い。
小説なんて書けないです私の頭はパンク寸前。
なんて弱音を吐きましたがきっと私は出来る子!

そんなわけで良かったら読んでください(チラッ


Side_____H

 

少女に同年代に見られ若干落ち込んだのも束の間、まあ何時もの事だとなんとか立直る。

 

「所で幾つか聞きたいことがあるんやけど、ええかな?」

 

自分の置かれた状況を思いだし、未だ混乱している様子のピンクブロンドの少女に話しかける。

 

「へ?な、何かしら?」

 

意識が此方へ向いたことを確認する。話しかけたことでどうやら少女も少し落ち着いた様だ。

 

「まずは、自己紹介からしよか、私は時空監理局所属の海上警備部捜査司令、八神はやていいます」

 

「私はトリステイン魔法学院所属、ヴァリエール家が三女、ルイズ•フランソワーズ•ルブラン•ド•ラ•ヴァリエールよ」

 

互いの自己紹介をし、再度思考を巡らせる。

 

(トリステイン魔法学院?てことは此処に居る子達は学生なんか。それなら全員に魔力反応があるんも頷けるな。でもトリステインなんて国聞いたこと無いけど…)

 

此処が学院で少年少女達が学生ならば、事件に巻き込まれた可能性は低くなる。

そうするとあの光る鏡は転移魔法の練習中に何らかの事故、もしくは失敗で自身の前に展開されただけかもしれない。

 

「さっき言った通り、変な光る鏡にうっかり触れてしもうてな、ルイズちゃんは何か知っとらんかな?」

 

幾つかの可能性を考えつつも何かしら知っている可能性の高いルイズへと訪ねる。

 

「…その光る鏡っていうのは恐らく召喚のゲートよ」

 

「召喚のゲート?」

 

少しうつ向き気味に話すルイズの様子が気になりつつも召喚のゲートと言うことに疑問を覚える。

 

(召喚のゲートっていうことは転移魔法の一種であるのは間違いないやろうけど、召喚…一方通行の転移魔法か。少なくとも遠くへ転移するには、それなりの装置か回数を重ねる必要があるし、そんな遠くの次元には飛ばされてへんやろ)

 

先程ルイズはトリステインと言っていたが自分が知らない国など山ほどある。そしてその山ほどの中の一つであるだろうと思い、遠くへは飛ばされていないと辺りをつけ、更に詳しい情報を得るための質問をしようとルイズをみやる。

 

「召喚のゲートっていうのは…」

 

「うん?」

 

なにやら質問をせずとも召喚魔法について詳しく教えてくれる様だ。

 

「使い魔を召喚するためのものなの」

 

「使い魔?それって…」

 

ルイズの説明に少なくない嫌な予感を、それでも勘違いであって欲しいと思いつつ続きを促す。

 

「私達魔法学生の進級課題の一つで、春のこの時期に二年生に成るために一人ずつ使い魔を召喚するの」

 

「進級課題に使い魔召喚、それはええけど使い魔って普通動物やらが召喚されるんやないの?一応私人間なんやけど…」

 

「そ…それは……」

 

押し黙るルイズ。それをみて更に警笛が脳内に鳴り響くがもう一つ重大なことを聞かねばならない。

 

「もう一つ聞かなあかんことがあるんやけど…その、送り返す転送魔法とかってあるんかな?」

 

その言葉を聞いたルイズはますます表情を暗くする。

 

「無いの…」

 

「え?」

 

「だから無いのよ!召喚したものを送り返す魔法なんて!!」

 

先ほどの様子から一変、癇癪を起こしたように大声でとんでも無いことを言うルイズ。

 

(返す魔法がないなんてどないせえっちゅうねん、せめてこの星の座標が分かれば自分で転移すればええかもしれんけど。リミッター付いた状態やし、そうはやくは帰れんかなぁ)

 

自力で帰るとすると暫く準備やらに時間が掛かる、思えば自分の居る場所も分かっていないのだ。

トリステインと言う国は聞いたことがない、そして自己紹介の時に感じたもう一つの疑問。

時空管理局と言う言葉を聞いてもなんの反応も無かったことだ。

 

(自分で言うんもあれやけど、これでも結構名の通っている自負はあるし。先ほどの会話から察するに転移系の魔法は召喚魔法とやらだけみたいやし。管理世界であるなら少なくともある程度の魔法技術が発展している筈や…)

 

これまでの会話から出される答え。魔法があるにも関わらず管理局の手が入っていないことや、トリステインという自分の知らない国名。

 

(ここは私が居ったミッドよりも遠い、管理局ですら認知していない程遠くの管理外世界なんやな)

 

導き出された答と今後についてを考え、深く溜め息をつくのであった。

 

Side____R

 

返す魔法が無いと告げた途端、盛大に溜め息をついた目の前の女性八神ハヤテ。

 

本来動物や魔物等が召喚される筈の魔法で人間を召喚してしまったのは、自分が魔法成功率ゼロのルイズだからであろうか。

 

「すいません、ミス八神ハヤテ。少し宜しいかな?」

 

自身の魔法について落ち込んでいたルイズだが、今まで自分達のやり取りを見ていた中年の男性の声で意識を戻される。

 

「はい、なんですか?それと八神は名字…えーと、ファミリーネームなのではやてで良いですよ」

 

「ファミリーネーム?貴女平民なのに家名があるの?」

 

本来平民は家名を持たず名前だけの筈だが、もしかして貴族なのだろうか?

 

それにしては杖も無いしマントもしていない。杖は隠し持っているとしても、マントをしていないとなるともしかしたら家名を剥奪された没落貴族かもしれない。

 

没落してもなお家名を名乗る貴族は結構いるし。

 

「私は平民でも貴族でもないよ。それにしても、ここにはそういった階級制度があるんやね」

 

「平民でも貴族でも無いってどういうことよ?」

 

「私が居った所は平民も貴族もない、中にはそう言う貴族制度のある国もあったけど、基本は皆平等な所やったんよ」

 

そういって笑うハヤテの言葉は信じられない事だった。

 

「貴族制度も無くどうやって国を纏めるのよ」

 

「それは話せば長くなるんやけど、まあ簡単に説明すると国の代表を決めてその代表者が国民の意見を聞き多数決で国の方針を決める。みたいな感じやね」

 

そんな事で国を保つことが本当に出来るのであろうか。貴族は魔法と言う強大な力を持ってして民や国を守り、その見返りに平民は貴族に尽くす。

 

そういった世界で育ってきたルイズには到底理解できないことではあった。だが一つだけその様な国が有ることを思い出す。

 

ゲルマニア、金さえあれば誰でも貴族になれる野蛮な国。彼女はそこから来たのかもしれない。それならば杖も無いのに家名があるのも頷ける。マントをしていない事には疑問を覚えるが…

 

(貴族に成り立てでマントをする習慣に慣れていないのかしら)

 

そう憶測する。

 

「おっほん!…そろそろ宜しいかな?」

 

話に夢中になってしまいすっかり忘れていた。

 

「す、すいませんミスタコルベール」

 

「いえ、いいんですよ」

 

話を遮ってしまったことを謝るがコルベールはそれを笑顔で許してくれた。

 

「それでは改めてミスハヤテ、私はこの学院の教師をしておりますコルベールです。さっそくで悪いのですが先程ミスヴァリエールが言っていたように、私共は使い魔召喚の義をとり行っておりました」

 

ハヤテに向き直ったコルベールは簡単なあらましを説明していく。

 

「使い魔召喚の義はこの学院の生徒が二年生へと進級するためのものですが。使い魔は召喚主と生涯を過ごす大切なパートナーを呼ぶための神聖な儀式でもあるのです」

 

コルベールの話を聞いているハヤテへと視線を向ける。そこには先程まで優しく微笑んでいた表情は消え、硬い真剣な表情になっていた。

 

その顔には見覚えがあった、自身の母親、烈風カリンと唱われた騎士の顔。

 

「神聖な儀式ちゅうことは…やり直しはきっと出来へんのですよね?」

 

優しい微笑みを称えていた彼女の真剣な眼差しに、少しばかり引き込まれていた自身に驚愕しつつも、ハヤテとコルベールのやり取りを緊張した面持ちで見つめる。

 

「はい、使い魔と主は一心同体。この義は何も無差別に召喚するものではございません。双方共に必要とするもの同士が選ばれるのです」

 

「まあ、何の因果かは知りませんけど…私が選ばれたからには何らかの意味がある。それに契約をせなルイズちゃんは進級出来へんくなるんですよね?」

 

「はい、使い魔召喚の義はコントラクトサーヴァントまでして初めて成功となります。それが出来なければ進級は出来ません」

 

コルベールの一通りの説明をハヤテと一緒に聞いていたルイズであったが、コントラクトサーヴァントの話で不安を覚える。

 

(ハヤテが契約をしてくれなかったら私はきっと実家に連れ戻されて結婚させられる)

 

貴族足らんと貴族の証である魔法の習得のために無理言ってこの学院へ入ったのだ。そうまでして入ったにも関わらず相変わらず魔法が使えないままであったなら、家族は自分に失望してしまう。

 

そんなのは絶対に嫌だ。初めて杖を握ったときから成功しない魔法に挫折し、枕を涙で濡らしたことも数えきれないほどだが、それよりも多くの鍛練をしてきたのだ。

 

(それに私は、私が理想とする貴族に成るために諦めたくなんてない)

 

人間を召喚してしまったのは魔法が失敗したからであろうかとも思ったが、例え失敗でも彼女は此処に居る。

 

爆発しか起こせなかった失敗魔法が初めて別の可能性を起こしたのだ。

 

「ハヤテ!」

 

「うん?何かなルイズちゃん」

 

意を決して話しかけたハヤテの顔にあるのは微笑み。

 

「無茶な事を言っているのは分かっているわ…ハヤテが帰れるようにも力を貸すし、生活面も安心して良いわ。だから…」

 

「ええよ、使い魔契約しよか」

 

最後まで言い切る前にハヤテは、まるで夜の帳の様に全てを包み込む笑顔でそう言った。

 

 

Side____H

 

 

「ほ…本当にいいの?」

 

「ええよ~」

 

少し信じられないと言った顔と拍子抜けしたような顔でルイズが確認する。

それに対しはやては軽い調子で了承の意を示した。

 

「まあ、使い魔契約するんはええんやけど、どうやるん?私は何かすることあるんかな?出来れば痛くない方法がええんやけど」

 

(了承したは良いけど契約が猟奇的なことだったら嫌やな~。まあそんなことは無さそうやし大丈夫やんな)

 

痛いのは慣れてはいるが好き好んでやるつもりは無いので念のため、契約方法について確認する。

 

「そ…それは。え~と…」

 

なにやら顔を染めもじもじし始めるルイズ。

 

(ん?んん~?なんや、この初デートの帰り際みたいな反応は…まさか、な)

 

文学少女であるはやてはジャンルを問わず結構な本を読んでいる。その中でも多いのが恋愛小説。自身は未だ結婚の事など考えてはいないが、それでも女性ならば誰しもが興味あることだろう。

 

「大丈夫、相手は女。同性よ…それにこれは儀式、そんな甘酸っぱい事ではないの。だから大丈夫、ノーカンよノーカン」

 

未だ赤い顔のまま、何やらぶつぶつと言っているルイズ。

 

「ハヤテ!」

 

「は、はい?!」

 

油断していたところに、ルイズが勢い良く自身の名前を呼んだことでうっかり声が裏返ってしまった。

 

「貴女は何もしなくて良いわ…ただ目をつむっていて欲しいの」

 

「目を瞑るだけでええんやね?」

 

(目を瞑るっていよいよあれかなぁ…あれなんかなぁ。まあ契約に必要ならしゃぁないもんな。痛くないだけましやんな)

 

導き出される答えにどきまぎしながらも、痛くないだけましと考え覚悟を決める。

 

「我が名はルイズ•フランソワーズ•ルブラン•ド•ラ•ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え我の使い魔と成せ」

 

長々と語られた契約の言葉に少し間が空き、目を閉じていたはやてに近付く気配。

ルイズとはやての距離は近付きやがてゼロとなる。

 

体感的には長く感じられた契約の余韻に浸りながら、二人の距離は再び開く。

 

両者共に頬を朱に染め気まずい雰囲気が流れる。

 

(やっぱり契約はキスやったんか、初めてでは無いにしてもなんや気恥ずかしいなぁ)

 

そんな呑気なことを考えていたはやてだったが、不意に左手の甲に熱に焼かれたような痛みを感じる。

 

「あっ…つぅ!なんや!?」

 

「大丈夫よ、使い魔の印が刻まれているだけだから」

 

そういうルイズの言葉に納得しつつも、

 

(やっぱ痛い目には合うんやな)

 

そう涙目ではやては痛みが引くのを待った。

 

暫くして、痛みが引いた頃合いを見計らったのかコルベールが近付く。

 

「どうやらコントラクトサーヴァントは一発で成功したようですね。ミスハヤテ、使い魔のルーンを写させて貰っても宜しいかな?」

 

「はい、ええですよ」

 

そういわれはやては左手の甲をコルベールへ見せる。

 

「ふむ、これは何と…珍しいルーンですね。ありがとうございます、もう宜しいですよ」

 

「さて、大分時間が経ってしまいましたね。それでは皆さん早急に学院へ戻り、残りの時間は使い魔との親睦を深める時間に使ってください。それでは解散!」

 

コルベールの言葉に遠くで思い思い時間を潰していた生徒達は空へと上がり帰って行く。

 

「はぁー、やっと終わったよ」

 

「全く、ゼロのルイズの居る授業は時間がかかったりするから嫌なんだよ」

 

「ルイズ!お前は歩いて来いよ!その平民の使い魔と一緒にな!」

 

ルイズに幾つかの罵倒を浴びせる生徒達、その様子に眉を潜めたが事情が分からない自分には何を言えばいいのか分からない。

 

「なあルイズちゃん…」

 

あの生徒達の言葉の意味を聞こうとルイズへと向くが、ルイズは顔を下へ向け此方を向こうとはしない。

 

「行くわよ、ハヤテ」

 

それどころかさっさと先へ歩いていってしまうルイズを慌てて追い掛ける。

 

 

 

それぞれの不安を胸に、使い魔契約を結んだ二人の行く先は______




構成能力の無さのせいで生徒と先生が前半空気に!?
この先やっていけるであろうか…

この様な作品をお気に入り登録していただき誠にありがとうございます。
友人に言われてしか小説(短編)は書いたこと無いので、連載形式のこの作品を評価して頂けるのは、恐縮です。
宜しければ今後ともお付き合い願いますよう、宜しくお願いします(低姿勢


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第三話 使い魔と今後について

はやてちゃん誕生日なので書きました。
途中で飽きたのは内緒、今日は仕事が早く終わったので良かったです。
ささやかなお祝いも出来ました。

諸事情により今回はキーボードを変えたので、誤字が多いと思います。一応簡単に見なおしてはいますが。

それでは続きどうぞ。


Side_____H

 

 

「それじゃここが私の部屋だから、覚えておいて」

 

大人しくルイズの後へ付いて行くと、案内されたのはこの学院でルイズに割り当てられた部屋らしい。

 

ルイズが扉を開け中へ入り続けてはやても入室した。

 

「お邪魔しま〜す」

 

中に入ると一人で過ごすには十分過ぎる程の部屋の中央に、天蓋付きの大きなベット、そして入り口とベットとの間に椅子と机が配置されていた。

 

「はぁ〜。大きなベットやね…」

 

(これならヴィータやリィンと一緒に寝ても余裕がありそうやな。…今頃私の騎士達はどないしてるやろか。急に居なくなったから心配してるやんなぁ…)

 

家族に何も伝えられぬまま見知らぬ地へと飛ばされ、目の前の少女、ルイズと使い魔の契約を結んだのは良いものの…。

 

(帰ったら怒られるやろうなぁ…それに仕事も投げっ放しみたいな感じになってしもうた。せめて通信が繋がれば良かったんやけど、生憎全然繋がらへんし…)

 

家族や自分の立場を考えたら、本来ならルイズと使い魔の契約を結ぶのは良くない事であることは分かっていた。何時帰れるともしれぬ状況で見知らぬ土地…不安が無いとは言い切れない。だが…例え偶然でも自身の前に現れた召喚のゲート、そしてゲートに入った先で出会ったルイズ。

 

広場でコルベールが言っていた事を思い出す。

 

(互いに必要とする者同士が選ばれる、か…)

 

選ばれた理由はまだ分からないが、自身に使い魔の契約を頼んで来たルイズの表情を見たら…断る事なんて出来なかった。不安と期待と少しの恐怖。

 

例えどんな理由でも少しでも悲しみを減らすのが自身の夢。あの場で断っていたらルイズは悲しんだであろう。出会って間もないが悪い子には感じられなかった事もあり、ルイズの悲しむ顔は見たくなかった。

 

(闇の書の時も偶然選ばれただけやった、それでもそのお陰で私は大切な家族が出来た。悲しい別れもあったけど、あの子は最後は笑って逝ってくれた。)

 

今回の使い魔の件もきっと、闇の書事件の時と同じ位もしくはそれ以上の大きな出来事が起こる気がする。

長年培ってきた調査官としての感がはやてに告げる。

 

(なにはともあれ、選ばれてしもうたからには精一杯の事をやるだけや!)

 

帰る方法が見つかるその時までは、この少女の支えになろう。そう決意したはやて。

 

「ちょっと、なに入口付近で突っ立て居るのよ。今後のこと話すから早く座りなさい」

 

ルイズに促され慌ててベットに座るルイズの目の前にある椅子に腰かける。

 

「さて…それじゃ先ずは使い魔について説明するわね」

 

そう言われ真っ先に思い浮かぶのは自身の親友の一人である金髪の女性の使い魔。

 

(ここでの使い魔の定義が変わらなければ主を守るのが主やと思うんやけど。ここの人達がどんな魔法を使うのかとか、どんな魔物が居るのか分からないと、護りぬく自身はないなぁ…)

 

後方残滅型支援の自分が接近戦等に持ち込まれたら、勝てる見込みは格段に低い。

 

「使い魔には大きく3つの役目があるの。一つ目は、使い魔には主人の目となり耳となる能力が付くわ」

 

「目となり耳となる?て事は私が見たものや聞いたことはルイズちゃんにも見聞きできるっちゅうことなんかな?」

 

(聞いたものはまだ良いにしても、見たものがルイズちゃんにも見えるんは、流石に勘弁してほしいなぁ。あ…でも、私も騎士達の考えを読もうと思えば読めるし、人の事は言えんなぁ)

 

自身の騎士達との繋がりを考え、若干の恥ずかしさはあるものの納得するはやて。

 

「うーん…でも駄目ね。私にはハヤテが見ているものは見えてこないし聞こえないわ。やっぱ人間だと効果が付かないのかしらね」

 

試した結果見えないと言うルイズに、つい安堵の溜息をつく。

 

「それじゃ、2つ目ね。使い魔は主人の求める秘薬や素材を採ってくるんだけど…」

 

「私は素材の種類もある場所も分からんよ?土地勘皆無や!」

 

少し胸を張って言ってみた。

 

「それは胸を張って言うことじゃないでしょ!まあいいわ、私も別にポーションとか作らないから必要ないわ」

 

軽く怒られてしまったようだが、素材を集めなくても良いと言われまたも安堵する。

 

「それで3つ目!これが一番重要なんだけど…主人を守る。まあ、ハヤテには無理よね」

 

「せやね〜。出来なくも無いけど…私にはちょお無理かもしれんな〜。簡単な魔物くらいなら行けるかもやけど…」

 

自身の魔法を考え、未知の地での魔物の事を考えまだ確信するには早いと感じ、簡単な護衛くらいなら出来るとルイズに告げる。

 

「簡単な魔物って、ハヤテは平民でしょ?魔法も使わずどうやって魔物を倒すのよ」

 

(ん?もしかしてこの世界では魔法が使えない者を平民。使える者が貴族なんかな?別に隠す事でもないけど…)

 

言うか言うまいか悩んでいた時ふと、何故ルイズはこうも自分を平民というのか気になった。

 

「質問で返す様で悪いんやけど。なんで私の事を平民って言うん?もしかしたら貴族かも知れんやん?」

 

「はぁ?だってあんたマント付けていないじゃない。貴族ならマントと杖を身に着けているものなの!そんな事も知らないなんてやっぱりあんた平民でしょ。どんだけ田舎の方から来たのよ…」

 

そう言うとはぁ…と溜息をつくルイズ。

 

(なる程、マントか〜。杖ならあるけどマントは無いもんな)

 

そう言えば広場にいた生徒達もコルベールと言う先生もマントを身に着けていた。

 

「別に田舎から来た訳ではないけど、取り敢えず私は平民でも貴族でもないで」

 

「それはさっきも聞いたわ。でもそんな国、私が知っている限り存在しないわよ。あの野蛮なゲルマニアでさえ貴族制度はあるんだから!」

 

また新たな国の名前が出てきて思わずはやては、ゲルマニアについてルイズへ尋ねる。

 

「そのゲルマニアって言うんはどんな国なん?」

 

そう言った途端ルイズは信じられないと言ったような顔ではやてを見つめる。

 

「あ…あんたねぇ!貴族について知らないだけでなくともゲルマニアも知らないなんて!!」

 

「ついでに言うとトリステインについても知らんのやけど」

 

火に油を注ぐとはこのことを言うのだろう。はやての言葉を聞いたルイズは爆発した。

 

 

Side_____R

 

 

ハヤテを連れて自室に戻り、使い魔についての説明をしたまでは良かった。

 

正直言って契約を結んで貰えると思っていなかったので、すんなり了承してくれたハヤテに、これなら今後もこの使い魔と上手くやっていけるだろうと考えていた数刻前の自分を諭したい。

 

「出来たばかりのゲルマニアを知らないのはともかく、歴史あるトリステインを知らないなんて!!あんた家から出た事あったの!!?」

 

「そんな人を引き篭もりみたいに言わんといてや〜。ちゃんと家から出た事はあるで、寧ろ家にいる方が少なかったかな」

 

緩やかな笑顔でそう言うハヤテ。でも家から出たとか出てないとかこの際どうでもいい。

 

「そんな事どうでもいいわ!大体あんた一体どこから来たのよ!!」

 

「それはな…」

 

どこから来たのかという私の質問に対し、何故かハヤテは深刻でそれでいて真剣な顔になって私を見つめる。

真っ直ぐと見つめる深い夜空のような瞳に吸い込まれ、先程まで募っていた怒りが振散してゆく。

 

「それは?」

 

出会ってから見たことも無いような深刻な表情に、もしかして何か世間知らずになってしまうような環境にいたのかもしれない。

 

(幼い頃に誘拐されて今まで閉じ込められていたとか…少なくない事例だし)

 

そんな事を考えてしまい悲しい気持ちになりながらも、ハヤテの言葉の続きを待つ。

 

「実は私は……。異世界から来たんよ!」

 

きりっとした表情。硬く結んでいた唇から紡ぎ出された答えは、全然まったく予想していなかった答え。

 

「ごめんなさい、ちょっと耳の調子が悪かったみたいなの…。もう一度言ってもらえるかしら?」

 

自身の唇が引きつく感覚を感じながらも、ルイズはもう一度ハヤテへ問う。

 

「せやから私は異世界から来たんよ!」

 

(どうしよう、予想外にこの使い魔は深刻だわ。早急にヴァリエール家お抱えの医者に見せた方が良いかしら)

 

自信満々に告げられた答えにルイズは己の使い魔の頭を心配した。

 

 

Side_____H

 

 

「ふぅ…取り敢えず明日やる事は決まったわ。医者に見せに行くことから始めた方が良いみたいね。それじゃもう遅いし、それ以上頭に異常をきたしても困るから早く寝ましょう」

 

異世界から来たと告げたルイズの反応は予想以上に辛辣なものだった。

 

「いや、まあ気持ちは分かるけど私は正気やで?気が触れてるとか厨二病だとかは発症してへんで?!」

 

「そうは言うけどハヤテ…いくら何でも異世界から来たなんて信じられる訳無いでしょ?そこまで言うなら何か証拠を見せなさいよ」

 

証拠を見せろと言うルイズにしばし考え、確かここへ来る前に関わっていた事件の資料があったはず。

その資料の中には一般の街の様子が映っていたはずなのでその部分だけ見せれば良いだろうと、端末を開く。

 

「!?ハ…ハヤテ!?何それ、なんかのマジックアイテムか何か!??」

 

はやての目の前に展開されたウィンドウを指さしながら狼狽するルイズ。

 

「いや…これは私のいた世界では一般にも普及されている簡単な端末やで。これで遠くに居る人とかと連絡を取り合ったり、簡単な映像や記録を残して置けるんよ」

 

簡単に説明している間に目当ての映像を探し当てたはやては早速ルイズへ見せる。

 

映像には高層ビルが立ち並び一般の人達の生活の様子が映しだされていた。

 

「なにこれ!?鉄の箱みたいなのが動いているし、この建造物一体どんな名のある土メイジが作ったのよ!!」

 

「動いている箱は車って言うてな、これを使えば遠くへ行くんも楽になるんよ。それとビルを建てたのは一般の大工さん達でメイジでは無いよ」

 

心底驚愕しているルイズに微笑みながら疑問に答えていく。

 

「これで少しは信じて貰えたかな?」

 

「正直まだ信じられないけど…でもこれを見たら少しは信じるしかないわね。こんな光景私は見た事無いもの」

 

未だ画面を食い入る様に見ているルイズ。

 

(少ししか信じて貰えへんのはあれやけど。まあ、急に言われても異世界なんてそうそう信じられへんわなぁ〜)

 

初めて騎士達とであって意識を失った幼き頃の事を思い出す。

 

(懐かしいな〜。それにルイズちゃんの反応は素直で可愛らしいわ〜)

 

暫くして画面から目を離したルイズがはやてへ向き直る。

 

「あ、あんたが異世界から来た事はまぁ…信じてあげるわ!でも他の人には異世界から来た事は秘密にしておきなさいよ!いろいろ面倒な事になりそうだし下手したら異端扱いされちゃうわ…」

 

「まあ私も無闇に話すつもりは無いけど…異端扱いってどう言う事や?」

 

「それについてはまたいつか話すわ。取り敢えず今日は疲れたし少し頭の整理をさせて」

 

今までのやり取りや異世界の話で許容量を越えたらしく、額を押さえつつルイズは服を脱ぎ始める。

 

「まあ、時間はまだあるやろうし色々あって疲れたんは私もやから、休む事には賛成や。んで…私は何処で休めばええんかな?そこに敷かれている藁か?」

 

そういってベッドの横に敷かれた藁を指さす。

 

「それは…魔物が召喚されるものだとおもっていたから用意していただけよ。あんたは、しょうが無いから暫くは私と同じベッドで寝ていいわ」

 

「さよか?ほんならお言葉に甘えて…」

 

先にベットに入ったルイズに続き、軽く服を脱ぎラフな格好になったはやてもベッドへ入る。

 

「最後に…異世界出身じゃまずいから、明日からはロバ・アルカリイエから来たと言いなさい。あと明日は私が起きる前にそこに置いた服を洗っておきなさい。」

 

横になろうとした所へルイズが話しかける。

 

「ロバ・アルカリイエ?あと服洗うって…」

 

「それと私が起きる時間になったらおこす事。それじゃ、お休み。」

 

言われた事について詳しく聞こうとしたのもつかの間、早々にルイズは寝息をたてて眠りについてしまった。

 

(しょうがない、分からないことは明日聞くとしよか。それにしてもルイズちゃんが起きる時間は何時頃なんやろか…)

 

せめて普段起きる時間位は言って欲しかったと思いながら、ふと窓の外を見る。

 

隙間の開いたカーテンの向こうには、淡く輝く双月が輝いていた。

 

(月が二つある世界…。次元世界でも珍しい二つの月がみれるせかい。)

 

月が二つ同時に見えるのはとても珍しい事だ。幾つもの偶然が合わさって奇跡として起こる。この双月もそう、星の位置だとか時期だとか…この出会いもそんな幾つもの偶然が合わさった結果なのだろう。

そう感慨に更けるはやてだが、明日に備えてもう寝ようと眼を閉じる。

 

 

部屋には二人分の寝息が微かに聞こえるだけとなった。

 

故郷や家族に思いを馳せながらはやての使い魔としての生活が始まる。

 

 

 

それぞれの思いを胸に二人の仲の行く末は_____

 




いやー、回を重ねるに連れ構成が適当になっていますね。

あと書きながら考えているせいか伏線とか腫れないし回収できない。
この先の展開も予想出来ない。

1話ごと一気に書いているので後半は集中力のなさで適当に…
でも間を開けると書けなくなっちゃうので勘弁してくださいorz


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第四話 メイドとはやて

だいぶ長い期間空いてしまいましたねぶっちゃけもう続かないのではないかと自分ですら思っていたくらいですがギーシュ戦までは頑張りたいと言っていましたからね、ギーシュまでは頑張りますよ。じゃないと登場人物が五人にも満たなくなってしまいますからね。脇役は別として…。
そんなこんなで今までの内容をほとんど忘れてしまいましたがそんなことお構いなしに本編どうぞ。


 

「う…うぅ~ん…。なんや…あさか~」

 

 カーテンの隙間から差し込む早朝の木漏れ日を浴びたことにより、未だに覚醒しきれていない寝ぼけ眼を擦りながら八神はやては目を覚ました。

 

「ふぁ…あぁ~。なんや久々にちゃんとしたベッドで眠ると、体が未だに睡眠を欲している感じやな~」

 

 長期にわたる任務や些細な仕事ですらも真面目にやり遂げるはやては睡眠時間が異様に少なく、ちゃんとしたベッドでちゃんとした睡眠を取るのは随分と久々だった。

これまでに蓄積した疲労も手伝って体がベッドから離れることを拒否しているかの如く、この布団の温もりに包まれて居たい衝動に駆られる。

布団の魔力に一度囚われたが最後、二度寝という人類にとって至福なひと時が過ごせるが下手したら目も当てられないような大失態に繋がる事になるのではやては数分布団の中でもぞもぞとした後、ようやくベッドから抜け出した。

 

 ベッドから出て早速着替えようとクローゼットに目を向ける。だがそこではやては思考を巡回させた。

寝起きでうっかり忘れていたことだがそもそもここは自分が慣れ親しんだ家でも局の仮眠室でもない、ここは昨日知り合いはやてと使い魔契約を交わした少女、ルイズの部屋だ。

その部屋に着の身着のままでこの世界にやってきたはやてには昨日来ていた服以外に着替えなんてないのである。

 

「…あー。着替えどないしよ」

 

 別に一日くらいなら昨日来ていた服を着るくらいなんともないが、衛生面的にも精神面的にもやはり着替えは欲しいところである。

ルイズに借りるという考えがよぎったが思えばルイズは学生である、制服着用義務があるのだろう昨日遠巻きに見ていた学生は制服を着ていた、無論ルイズも例外ではない。

おまけに学園に寮まであるということは普段から制服で過ごしていると考えても不思議ではない。

 

 そう考えると私服はほぼ持っていないと推測することができる。

 

「流石にこの歳で高校生程の子らが着ている制服着るんは抵抗があるなぁ…」

 

 24歳にもなって高校生の制服を着る、しかもここは自分が幼少の頃居た世界とは違い魔法のある世界、そして今いる場所は魔法学院ときたものだ、制服にマント付けるとか完全にコスプレだ。

別にここの人たちの格好を貶している訳ではなくここの人達にとっては普通のことなのである、なんならここの人たちから見たらはやての方が変な格好をした人に見られているであろう。

 

(まあ、別にマントが嫌なわけやないけど、そもそも付けなきゃええ話やしな…)

 

 そう、制服にマントという格好がここでの正式な格好ではあるが別にマントをつけなければならない訳ではない、なぜならはやては貴族ではないからである。

この世界の貴族の定義はマントと杖を身につけているのが前提である。その状況の中でもしルイズの制服を借りれたとしてマントをつけなかったら悪目立ちしてしまうだろう。

貴族の通う学園で貴族の子息が身にまとう制服を着用し貴族が身に付けるマントを着用しない人物などどう考えても目立ってしまう。

 

「それにこの歳で学生の制服着るとか悪目立ちどころやない、完全に痛い人や」

 

 なんやかんやいってもはやてが一番嫌なのはマントがどうのこうのということではなく年齢的に学生服を着るのが嫌なだけなのである。

それにはやてが制服を嫌がる理由はそれだけではない。

 

「昨日ルイズちゃんにも言われたけど、どうも実年齢より若く見られてまうのは嬉しい半面複雑やわ…」

 

(それこそ制服着たら違和感なく学生に溶け込めるんちゃうかな?)

 

 昨日のルイズの言葉を思い返してそんなことをつい考えてしまうはやて。

 

(見た感じここは地球で言うところのヨーロッパっぽいし、私みたいな日本人より顔も大人びている子も結構おったしな、私がその気になったらほんまに学生として溶け込める気がしてきたわ)

 

 元々地球の日本出身のはやてはアジア人特有のベビーフェイスである。

そんな顔の作りのアジア人が中学生ですら大人びている顔立ちのヨーロッパ地方に行けば、中年の大人でさえ子供に見られてしまうことがあるのだ。

それに加えて日本出身親友たちにまで童顔と言われてしまうほどのはやての幼い顔立ちもあいまってどっからどう見ても子供にしか見えないのだろう。

 

「それはそれで面白そうではあるけど、まあすぐばれてまうやろなぁ…」

 

 ちょっとしたイタズラ心がうずいたはやてだが、流石にこの歳で学生服を着て学生としてまかり通ってしまうのは威厳もなにもあったものではない。

確かにはやては童顔のそれであるが流石に16、17歳そこらに見られてしまうのははやて自信不本意である、そのせいで大変な目にもあってきたので尚更。

 

「とりあえず今日のところは昨日の服を着るとして、今後の他の着替えについてはルイズちゃんが起きてから考えよかな」

 

(その他に生活品なんかも軽く揃えたいし、でもそうなるとお金の問題が出てまうなぁ…どないしよ)

 

 はぁ…と一つため息をついたはやては、今後の身の回りの生活品や雑貨に思いを巡らし、金銭面の問題に直面してついため息をついてしまう。

 

(ルイズちゃんに言えば少しくらいは何とかなるやろうけど、流石にずっとというわけにも行かへんし何より申し訳ない…)

 

 ルイズがどれほどの貴族かは分からないが、少なくとも貴族であるならばはやての生活品を揃えるくらい分けないかもしれない。

だがそれは流石に大人として人としてお世話になりっぱなしではいけないだろうと考えはやては困ってしまう。

 

「この世界で私でも稼げる方法って何かないやろか…」

 

 そう独りごちて服を着終えたところで、はたとはやては昨日ルイズに言われたことを思い出した。

 

「ああ、そう言えばルイズちゃんに起きる前に服洗っといてって言われてたなぁ…」

 

(服洗う場所ってどこやろ?)

 

 そう考えながら籠に乱雑に入っている衣服を見て、はやてはまた一つため息をついた。

 

「まあ考えてても分からんもんは分からんし散策ついでに適当にぶらついとればなんとかなるやろ」

 

 今後のことを考えるとこの学院に暫くお世話にならざる負えない。ならば今のうちに構造やらを把握しておいて損わないだろうと考え、衣服の入ったかごを持ち部屋を出る。

 

(とりあえず最初に洗い場が目的やから…)

 

「洗濯物の洗い場となるとそとやろか?」

 

 外にあるのであれば早速外に出ようと、昨日ルイズと歩いた道を歩き出す。

 

(やっぱ早朝とあって誰かが起きとる気配は全くせんなぁ)

 

 まだ日も登り始めたばかりの早朝、家での立ち位置や役職柄はやては早起きではあるが、学生にとってはまだ早いのか全員未だに夢の中のようだ。

静寂に包まれた寮の廊下を歩いているとついに前方に外へ通じる扉が見えてきた。

 

(昨日の広場は学園からは離れたところにあったし、ここに来るまでに洗い場みたいなもんは存在せんかったから、とりあえず昨日とは逆方向に行ってみよか)

 

 昨日ルイズに寮まで連れられてきた道すがらを思い出しつつ、扉を開け外へと出たはやて。

 

「昨日とは逆っちゅうことは…こっちやな、って…うわっ!!」

 

 昨日来た道を確認し体を反転させたはやてめがけて白い塊が襲ってきた。

油断していたところのとっさの出来事に為すすべもなく白い塊に視界を遮られ、体を反転させた後のためかその場に尻餅をついてしまう。

 

「あいっ、たた~。なんやの急に…てかなんやこれ?タオル?」

 

 昨日今日と自分はやたらと転んでばっかりだと少しばかり自分の不注意さに呆れつつも、視界を覆っていた謎の白い物体を引き剥がす。

見たところその白い物体はタオルのようだ。なんの変哲もないタオルがなぜこんな場所に、それもはやて自身に降りかかってきたのかがわからずきょとんとしてしまう。

 

「あああああの!申し訳ありません!!大丈夫ですか!!?」

 

 突然の自分を気遣う言葉に、手元のタオルから声のあった方へと顔を向ける。

そこには肩口でキレイに切りそろえた黒髪でメイド服姿の少女が頭を下げものすごい勢いで謝っていた。

 

「あ、いやまぁ、大したことはないんで大丈夫やけど…」

 

 おしりは昨日今日と強かに打ち付けたせいで若干痛いがこの程度の痛みならば別段気にするほどでもない。

他に打ち付けたところも無いと簡単に確認したはやては目の前の少女に自分は大丈夫だと告げる。

少女はそれを聞いて安心したのか顔を上げホッとした様に良かった…と呟いた。

 

「あの、本当にすみませんでした。その、まさかこの時間のこの場所で人が居るなんて思わなかったもので…」

 

 そうはやてに少女はつげたかと思うと、何かに気がついたのかはやての顔をまじまじと見始める。

 

「えっと…私の顔になんやついとります?」

 

 少女に顔を見つめられるいわれのないはやては少女の視線に困惑してしまう。

 

(あ、そう言えば顔洗う場所わからんかったから顔洗ってへん、もしやよだれとか盛大についとるんやろか?)

 

 ふと、自身が起き抜けの顔のままここまで来てしまったことを思い出し、よだれの跡とかがないのかをペタペタと顔を触り確認する。

しかし触った感触ではどうやらよだれとかは付いていないようだ、ならば何故この目の前の少女は自分をこんなにも見つめるのか?

 

「あっ、えっと失礼しました。初めて見る顔だったものでつい…。えっと貴女は新しく入ったメイドですかね?見たところ貴族様ではないようですし」

 

 黒髪の少女は再度はやての格好をみる。見慣れない格好だが貴族の証であるマントも杖も身につけていないさまを見るとどうやら貴族ではない様子。

それにはやての傍らには少女のはんこでいたものとは別に、これから洗濯するのであろう衣服もあった。

そのことからはやてを新しく入ったばかりの新人メイドとあたりをつけた。

 

「いや、私はメイドってわけでは…」

「すみません!こんなことをしている場合ではなかったですね、すぐに洗濯を終わらせて次の仕事に取り掛からないと間に合わなくなってしまいます!!急ぎましょう!」

 

 なにやら勘違いをしているらしい黒髪の少女に、自分は新人メイドではないと告げようとしたところで本来の目的を思い出したらしい少女が慌てたように落ちた物を拾い始め、はやての傍に落ちていた籠に衣服をいれたかと思うとはやてに籠を渡し足早に歩き始めた。

 

 突然の少女の機敏な動きにしばし唖然としていたはやてだが、少女が歩き出したのを見て自身も慌ててその少女を追いかけた。

 

 

 

____________________

 

 

 

 黒髪メイドの少女を追いかけてやってきた場所はどうやら洗い場のようだ。

そこには簡素な水汲み場と既に先客が来ていたのか洗った衣類が物干し竿にキレイに種類ごとに分けて干されて、風にあおられ少しなびいている様子が見て取れた。

 

「ここが洗い場でええんかな?」

 

「はい、そうですよ。ここで学園で出た洗濯物を毎日洗っているんです」

 

 どう見ても洗い場なのは明らかだが念のため黒髪の少女に確認を取る。

どうやら確かにここが洗い場のようだ。再度はやては辺りを見渡した。そこにはシーツやら衣類やらが既に干されているが、まだ早朝のためかなにも干されていない物干し竿が多く目立つ。

むしろ干されている竿の方が少ないほうだ、はやては少し学園を歩いただけだがその大きさは結構なものであろうと思ってはいたが洗濯物の状況を見てその推測は間違ってはいないと確信する。

 

「学園で出た洗い物を毎日なんて、相当大変やろ?」

 

(学生の衣服はもちろん学院に努めている先生やこの子らメイドさん等の分までとくれば、そうとうなもんやろなぁ)

 

 はやては幼き頃一人で暮らしていた時と騎士たちがやって大人数になった我が家での洗濯事情を思い出した。

一人で暮らしていた時は体が不自由だったこともあってか洗濯一つでも大変な思いをしたが、優しい騎士たちが現れてからは随分と楽にはなったものだ。

ただしそれは彼女たちがはやてとの生活になれたあとでの話だが、なれる前は随分と手をやかされた。

 

(最初の頃はヴィータが食べこぼしで良く衣服を汚しとったし、シャマルも料理に失敗してはエプロンの意味がないほどに汚しとったし、シグナムはシグナムで鍛錬を怠るわけには行かないと出かけては衣服を汚して帰ってきとってたなぁ…)

 

 そんな彼女らとの思い出に浸りつつもはやては隣の黒髪の少女を見やる。

 

「そうですね、学園内の洗濯物は量もありますし何より貴族様の衣服なんかは生地もいいですから洗うのにも細心の注意をしないといけませんから、大変ではありますね」

 

 すこし困り顔で黒髪の少女ははやてに返答をした。

そして少女の答えを聞いたはやては、思えばここには自身の故郷ではあった文明の利器洗濯機がまだないのだということに気がついた。

 

「ああ…そうか。全部手洗いでやっとるんやな、そら大変やわぁ…」

 

 はやて自信、手洗いは今までに何度もしてきた。だが流石に衣服すべてを手洗いしたことはない。普段は洗濯機に入れてボタンを押すだけですむのだ、だがここには洗濯機はないとなると…。

そこまで考えがいたりはやては軽く眩暈を覚えた。それと同時にそんな大変なことを毎日やっているというここのメイドさん達の過ごさに感嘆してしまう。

 

「もしかして、いままで洗濯をしたことがないんですか?」

 

 そんなはやての独り言を聞いた黒髪少女は何を勘違いしたのかはやてがこれまでに洗濯をしたことがないものだと判断したようだ。

 

「いや別に、そお言う訳やないんやけど…でもまあこんなええ生地使っとる服は洗濯した事はないなぁ」

 

「そうなんですか?それなら私が簡単にですけど洗い方をお教えしますね」

 

「ええの?ほなお言葉に甘えて教えてもらおうかな」

 

 貴族用の衣服を洗ったことがないというはやてに黒髪の少女が洗い方を教えてくれるという。

その言葉に甘えてはやては少女と二人選択に取り掛かる。

 

「学生服はある程度頑丈にできていますから特に注意すべき点はありません、強いて言うならボタンが取れないように注意しながら洗うことですね。まあこれはほかの衣服にも同じことが言えますから大丈夫ですよね」

 

「そやね、制服ならまあ私でも手洗い可能な範疇や!お茶の子さいさいってやつやで!!」

 

 黒髪の少女の言う注意点に気をつけながらはやては意気揚々と制服を洗い始める。その顔はなぜか少し楽しそうだ。

そんな様子のはやてに少女は疑問を抱きながらも微笑みを持って洗濯しているはやての様子を見守りつつ自身の洗濯も始める。

 

「よし!こんなところやな!!」

 

 少しして制服を洗い終えたはやては、次に少し煤けた様子のマントを手に取る。

 

「貴族様のマントは色落ちしにくくはありますが絶対にというわけではありませんのでその点に注意をしながら洗ってくださいね。貴族様はマントが色落ちするのをあまり快く思っていませんので、色落ちしてしまったらすぐに新しいものと交換してしまいますから」

 

 マントを手に取ったはやてに黒髪の少女はマントを洗う際の注意をはやてに告げる。

 

「色落ちしたくらいでこんなええ生地の布を捨ててまうなんて、もったいないことするんやね~」

 

 生粋の日本人のはやてにはもったいない精神が深く根付いている、黒髪少女の言葉を聞いて自身には貴族の物の価値観は合わない気がするなと考える。

黒髪の少女とそんなやり取りをしながらもはやては早々に汚れを落としマントの洗濯を終了させた。

 

「よし、終わった。ほな最後は…これやな」

 

 そう言ってはやてはやたらと触り心地の良い小さめの布を籠から取り出す。

 

「貴族様が使用なさるショーツは特に生地が良く繊細ですからあまり強く擦らず優しく洗ってください。特にゴムの入っている部分なんかはゴムが切れやすいので注意してくださいね、ゴムは貴族様用の衣類等にしか使用されていないので慣れるまでは大変でしょうけど」

 

 はやてがてにとったショーツを見て洗濯時の注意点を黒髪の少女が言う、そんな少女の言葉に気になるワードが入っていた為はやては少女に問いかける。

 

「ゴムって貴族さん等の衣服にしか使われてへんの?」

 

「はい、そうですよ。もしかしてゴムの事知らないんですか?まあ確かに私たち平民には高価で余り縁のないものですけど…それなら手本として私が洗い方を見せますね」

 

 はやての問いに答えた黒髪の少女はその質問の内容にはやてがゴムのことを知らないとあたりをつけたようではやての手にするショーツを手に取り洗い始める。

そんな少女の手元を見ながらはやては思考を巡らす。

 

(建物や調度品なんかは結構立派なもんやったから油断しとったけど、まさかゴムが貴重品でかつ余り普及していないっちゅうことは、この世界あんまり生活用品なんかも発展が進んどらんのか?)

 

 昨日この世界に来てまだ学園しか建物を見たわけではないが昨日はやての行った世界の発展した社会の光景を見せた時にたいそう驚いていたルイズ。

その様子と学園の建物を見て更にルイズの部屋の調度品なんかを見て大体中世期ころのヨーロッパを思い浮かべていたが、ゴムがそこまで浸透していない点を見ると細かな雑貨品などの技術面はそれほど発展していないのかもしれない。

 

(やけど、まだ総断定するんは早いか…もしかしたら単純にゴムの材料が少ないだけとも考えられるしな)

 

 ゴムだけでこの世界の技術力を判断するのは早急すぎるとはやては結論づけた。

 

「と、こんな感じで洗うとゴムが切れにくくかつ汚れもきれいに落ちますよ」

 

 はやてが考え事をしているうちに黒髪の少女はショーツを洗濯し終えたようだ。

とは言ってもはやては考え事をするときマルチタスクを使用しているので、しっかりと少女の話や洗っている所はちゃんと聞いていたし観察していた。

 

「こんな洗い方があったんやねー、勉強になったわありがとうな」

 

 さすが貴族の子息が生活する学園に勤めるだけはある、はやてが見ていた少女の洗濯技術は確かなものであった。

その証拠に少女に渡されたショーツには汚れ一つなく、少女自身が言っていた切れやすいというゴムも切れてはいない様子。

 

「いえ、そんな…貴方も慣れればこれくらいできる用意なりますよ」

 

 黒髪の少女は少し照れたように頬を赤らめはやてに笑いかける。そんな少女の様子に素直に可愛らしい子だなと思い、ふとそう言えば自分はこの少女の名前を聞いていないことに気がついた

 

「そう言えば、ここまでして貰ってまだ自己紹介してへんかったな。私は八神はやて言います。おかげで洗い場もわかったし洗濯の仕方まで教わってしもうて…ありがとうございます」

 

 偶然とは言えあの場でこの黒髪の少女にあっていなかったら自分は未だに洗い場を探し続けていたかもしれないと思い、自己紹介もかね丁重にお礼の言葉を告げるはやて。

今までのフランクな態度と違い急に丁重な言葉を告げられ黒髪の少女は少し驚愕し、それから確かに自己紹介がまだだったことをはやてに言われ思い出したのか慌てて少女も自己紹介をする。

 

「私の方こそ初対面でいきなりぶつかってしまいすみませんでした!それに久々に誰かとお話しながらの洗濯は楽しかったので気にしないでください。そして申し遅れましたが私はシエスタといいます」

 

 

 黒髪の少女もといシエスタは柔らかい笑みでもってはやてに自己紹介をした。

 

 

 

__________

 

 

 

 

 この世界に来て二日目の早朝。学院の生徒たちや教師たちがまだ眠りの中にいる最中に偶然の出会いを果たしたはやてとシエスタ。

互いにこの者とは仲良くなれそうだと確信しつつも、各々のやることを思い出し自己紹介を終えたあとは早々に別れシエスタは仕事へと、はやてはまだルイズを起こすまで時間があることを確認し学園内を軽く散策し始めた。

 

「シエスタちゃんか~。なかなか優しくて良い感じの子やったな」

 

 それに胸も結構大きかったな。シャマルより少し小さいくらいか?等と考える管理局のおっぱいマイスターはやて。

 

(いつか揉ませてくれんかな~)

 

 家族や友人、同僚が聞いたら呆れ顔で小言を言われそうなことを考えつつ、そろそろルイズを起こさねばならぬ時間だと気付く。

その証拠に先程よりも人の動く気配や音が大きくなったように感じる。

 

「ほな、眠れるご主人様を起こしに行ったろかな~」

 

 口ではご主人と言っているもののその実、はやてはねぼすけなヴィータを起こしに行くノリでルイズの部屋へとその足を向けるのであった。

 

 

 

 寮前での新たな出会い、黒髪の少女シエスタとはやての関係は_____

 

 

 




自己満足から始まったこの小説投稿期間を見ればわかるように大分気まぐれです。

はっきり言って終わる気がしない。
というより自分自身簡単な日常パートが書きたいだけなので戦闘とかよくわからないですし、もしかしたら争いごとなんて起きない(書き起こせない)気がします。

とかいいつつも戦闘は頑張ってかけたら書きたいなーとは思っています。
でも多くは日常編がいいですねー。


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