ブラック・ブレット〜天目指す獅子〜 (追憶の英雄)
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神を目指した者たち
序章 敗戦


少年はひび割れた道路の片隅に膝を抱えて座り込み、道行く人を見ていた。

 

少年は、なぜこうなったのかを思い返していた。

 

それは、突然やってきた。

 

ーーウイルス性の寄生生物「ガストレア」

 

数日のあいだに少年の地域はガストレアに進行された。

 

人々は、絶望する暇もなく死んでいった。

 

残った人間は少年を含む数人だけだった。

 

残った人間は、生き延びるためにあらゆる手段をとったが

 

ガストレアの餌食になるか餓死するかだった。

 

少年もそんな人間のなかの一人だった。

 

そして、現在少年はガストレアの難を逃れ拾われた天童家から逃げた。

 

そんなとき、突然咆哮が響き渡った。

 

ガストレアだ!

 

少年は、本能的に察した。

 

そして、頭に警鐘が鳴った。

 

逃げろ!

 

と、しかし・・・

 

それは明確なる姿を現した。

 

大きく恐竜のようにみえる赤みのかかった翼、半円形に張り出した大きな二つの深い赤色の目・・・

 

鳥と昆虫の複合因子(ダブルファクター)

 

それをおってくるようにやってきた鉄の塊ーー自衛隊の支援戦闘機が空対空ミサイル(AAM)を切り離した。

 

ジェットエンジンに点火したスパローミサイルは空中で身を捻ろうとする巨大生物の横っ腹に激突、空中に火焔の華を咲かせる。

 

巨大生物は、軌道を変えながら少年の視界一杯に落ちてきた。

 

しかし、決定打にかけたのか巨大生物は苦しみながらも起き上がった。

 

「まだ、生きていたか・・・しぶとい。」

 

聞き覚えのある声に少年が顔をあげると一人の少年が刀を抜き構えていた。

 

「・・・陽炎義兄さんーー?」

 

天童家の長男、天童陽炎(てんどうかげろう)だった。

 

「わかっておるな?陽炎よ」

 

威厳のある声で陽炎に確認をしたのは齢六十に達しているのにも関わらずがっしりとした肉体の男性だった。

 

「ああ。わかってる・・・」

 

陽炎は、それに返事をすると天童式抜刀術『虚空真海の構え』を取った。

 

『虚空真海の構え』ーー陽炎がつかう攻の型の一つで免許皆伝の際に編み出したものだった。

 

「一撃で、決める!」

 

陽炎のその言葉の通り、刀を一閃させるとガストレアは地に伏せた。

 

「世話のかかる、義弟(おとうと)だ・・・。」

 

陽炎は、刀を鞘に納めるとため息をついた。

 

「死にたくなければ、生きろ蓮太郎・・・陽炎。」

 

男性はそう言うと歩いていった。

 

「たく、相変わらずだなぁ・・・」

 

陽炎は、頭をポリポリと掻くと男性のあとを追っかけていった。

 

そして、少年もーー

 

それから、二ヶ月後・・・

 

日本は事実上の敗北宣言を国民に行い、各地の『モノリス』を閉じ自律防御の構えを取る。

 

日本に続くように世界の列強国が『一時措置』としてモノリスを閉鎖。

 

日本は国土の大半を侵略され、大量の死亡者とそれに数十倍する行方不明者をだした。

 

そうして、二〇二一年、人類はガストレアに敗北した。

 

ーーそれから、十年。



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第一話 出会い

ピンポーン!

 

朝早く、朱炎民間警備会社のチャイムがなった。

 

「はーい!どちら様で?」

 

珍しいな、こんな朝早くからと思いながらも社長である朱炎骸は扉を開けた。

 

「おはよう・・・我が仲間の朱炎骸」

 

たっていたのは、燕尾服、シルクハット、舞踏会用の仮面というふざけた衣装の男だった。

 

「・・・誰だ?」

 

骸は、知らない人物の登場に警戒を強めた。

 

「失礼、自己紹介がまだだったね。私は、蛭子影胤・・・」

 

影胤は、シルクハットに手をかけながら挨拶をしてきた。

 

「で、こちらが私の娘でイニシエーターの・・・」

 

「蛭子小比奈だよ。斬ってもいい?」

 

「指名手配犯がなんのようだ?」

 

「挨拶をしにきたのだよ。」

 

「そうか・・・なら、こちらもおもてなしをしないとな!」

 

「!」

 

骸は、腰に差していた刀を抜くと天童式抜刀術『天龍翔陰の構え』をとった。

 

そして、音も立てずに骸のイニシエーターが現れた。

 

「やるぞ!水玉!」

 

イニシエーターが銃を発砲するのと同時に骸は影胤に斬りかかった。

 

小比奈が骸の一撃を、影胤が水玉の発砲をそれぞれ止めた。

 

「やるな!」

 

「お互い様・・・」

 

子比奈と骸はにやりと笑った。

 

「ふむ・・・なかなかだね。」

 

「・・・」

 

影胤は、仮面越しに不気味な笑みをうかべた。

 

水玉は、それになんの反応もみせず、発砲しつづけた。

 

「あなたは、パパと同じ匂いがする。」

 

「そうかい・・・」

 

子比奈の言葉に表面上は冷静に努めていたが腹の中はマグマのように熱く煮え返っていた。

 

「なぁ、ガキ・・・お前『呪われた子供達』だろ?」

 

「!」

 

「やっぱりか・・・」

 

骸は、小比奈の反応に納得がいったのかうなずいていた。

 

『呪われた子供達』ーーガストレアウイルスを母体を通して空気感染し生まれてきた子供達で姿は人間の形をしているが人を超えた身体能力、再生能力、ガストレア因子、ウイルス抑制因子を有しており特徴としては赤い瞳を持っておりその赤い瞳が人類の天敵であるガストレアを想起させるため迫害をうけている。

 

もちろん、人権などはないに等しい。

 

蛭子小比奈と骸の義妹である朱炎水玉もその『呪われた子供達』である。

 

「なら、少しだけ本気出すか。」

 

骸は、一歩分後ろにさがると天童式抜刀術零の型零番『鬼気天雷』と呟き子比奈を斬った。

 

斬られた瞬間、小比奈はなにをされたかわからなかったが骸が刀を鞘に納めた瞬間大量の血を噴き出し斬られたことを理解した。

 

「どうやら、あっちも決着がついたみたいだ・・・」

 

「あなた、殺して義兄さんに褒められる・・・」

 

水玉は銃をもう一つ抜くと二丁流『地巻・轟』と言い撃った。

 

影胤は、それをよけることもせずに受けた。

 

そして、爆炎に紛れて娘を連れて消えた。

 

「逃げられたか・・・」

 

「どうします?追いかけますか?」

 

「いや、やめておこう・・・」

 

骸は、経験上からあの手の敵は深追いするべきではないと悟っていた。



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第二話 買い物とガストレア

ーー蛭子影胤、蛭子子小比奈親子の襲撃から数日後。

 

おれと水玉は買い物のために街に来ていた。

 

買い物の目的その1

 

数ヶ月分の食料を買う!

 

買い物の目的その2

 

買い物ついでに喫茶店による!(水玉の目的はこっち)

 

「うわぁ〜久しぶりの街だあ!」

 

数ヶ月ぶりの街に水玉は目を輝かせていた。

 

まぁ、むりもないか。

 

買い物に来るくらいしか、街になんか来ないし。

 

「喫茶店に行きたいか?」

 

「うん!」

 

おれが、喫茶店に行きたいかどうかを水玉に聞くと元気良く返事をした。

 

「げんきがあって、大変良い!」

 

おれがふざけてそう言うと水玉は義兄ちゃんに褒められた!やったぁ!とピョンピョン跳ねた。

 

ーー水玉の機嫌がいいうちに買い物済ませちゃうか。

 

おれは、そんなことを思いながらいつも買い物をしてる店に向かった。

 

〜〜 〜〜

 

おれが、買い物を済ませて外に出ると

 

「蓮太郎の薄情者〜!!」

 

と、叫びながらツインテールの少女が歩いていた。

 

年は、水玉と同じくらいだった。

 

おそらくは、『呪われた子供達』だろう。

 

常に行動をともにしてるはずの相棒(プロモーター)の姿がないということは

 

はぐれたか、おいてけぼりをくらったか、あるいはーー

 

ガストレアによって殺されたか。

 

「うわぁぁぁーん!蓮太郎!」

 

しまいには、泣き出しやがった。

 

まぁ、人の通りが多い場所でないたら当然注目を集めるわけで・・・

 

ヒソヒソとなにかを話始めた。

 

そんな、少女に近づいたのはーー

 

挙動不審で明らかにやばいやつだった。

 

「『ガストレア感染者』か・・・」

 

ああいった、人間関係を放置しとくと次から次へと感染してしまうからほんとうは殺すべきだが・・・

 

やっかいなことに『感染源』はべつなところにいる。

 

そして、理性が残ってる。

 

そんな、残った理性も・・・

 

「うぁぁぁぁ!」

 

人間とは思えない叫び声をあげると手放してクモの形をしたガストレアへとかわった。

 

ガストレアに、なったら最後助ける方法は殺すということだけだ。

 

「水玉・・・」

 

おれは、水玉に目で殺すように合図した。

 

「わかってます。」

 

水玉は、うなずき返し、銃を抜いた。

 

そして、ガストレアの頭に照準を当てるとーー

 

射撃をした。

 

弾丸は1mmもはずすことなく頭を撃ち抜いた。

 

撃ち抜いた瞬間、鮮やかな赤色の血が噴出した。

 

撃ち抜かられたところからグチュグチュとグロイ音をたてて再生をはじめた。

 

しかし、完全に再生しきる前に二発の弾丸が頭を貫いた。

 

今度は、再生することが出来ず・・・死んだ。

 

おれは、ガストレアに近づくと死んだ確認をした。

 

刀を鞘から抜くとガストレアの頭を撥ねた。

 

そして少女のもとへと歩いていった。

 

「大丈夫か?」

 

「妾は、大丈夫だ!」

 

少女は、笑ってVサインをした。

 

「ところで、お義兄さんなんで頭なんかを?」

 

「ん?ああ・・・少しな調べたいことがあって。」

 

感染源見つけられればいいが。

 

「相棒は?どうした?」

 

おれは、少女になぜプロモーターといないのか聞いた。

 

「うむ、実は・・・」

 

少女ーー藍原延珠が言うには、相棒である里見蓮太郎と現場に向かってる途中で自転車が転倒・・・おいてけぼりをくらったらしい。そして、怒り心頭で歩き回っていたらしい。

 

「なるほどねぇ〜」

 

里見蓮太郎・・・まさか、あいつじゃないよな?

 

聞き覚えのある名前に嫌な予感がした。

 

そして、その嫌な予感はすぐに当たることになった。

 

「お!無事だったか・・・延珠」

 

相棒の無事を確認できて蓮太郎は安堵の表情をうかべた。

 

「無事だったか・・・ではないわ!」

 

ばかもの!そう言って蓮太郎のあそこを蹴りあげた。

 

「まぁ、まぁ、落ち着いて。」

 

おれは、延珠をなだめた。

 

「お、お前は?」

 

蓮太郎は、痛みをこらえながらこっちを見てきた。

 

「おれか?おれはお前の同業者だ。」

 

「そうか、あれをやったのも?」

 

「そっ、おれだ。悪かったな獲物横取りして。」

 

「いや・・・問題はない。ところでお金は・・・」

 

「ああ、お詫びとしてきちんとするよ。」

 

おれは、蓮太郎に札束の入った茶封筒を渡した。

 

「そんなかには百万くらい入ってる足りなかったら、ここに電話してくれ」

 

おれは、警備会社の連絡先を渡した。

 

「んじゃあな。延珠ももうはぐれないようにな。」

 

「じゃあね!延珠ちゃん!またね」

 

おれと水玉は、延珠たちに手を振ると駅に向かった。



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第三話 波乱の幕開け

ガストレアを退治してお詫びのお金をあげてから数日後。

 

一本の電話がかかってきた。

 

詳しい仕事の内容は話されなかったが仕事であった。

 

場所は、庁舎。

 

それだけを告げられると電話はきれた。

 

念の為に水玉にもついてきてもらうことにした。

 

そして、二日後の今日の昼下がり、庁舎に来た。

 

名前を告げると黒いスーツをきた男たちに案内されて

 

部屋の前に来た。

 

黒いスーツの男たちは部屋の前まで案内すると入り口に戻っていった。

 

「ここがそうか・・・」

 

おれはつぶやくが当然返事はなかった。

 

ガラリと扉を開いて部屋の中に入ると大勢の社長とそれを護衛するプロモーターとイニシエーターがついていた。

 

どこの席もいっぱいで仕方なく壁にもたれることにした。

 

「お前みたいなお子ちゃまでもこんな場所にはやってこれるみたいだな。」

 

おれの正面の方で体が大きい男がプロモーターと社長に絡んでいた。

 

「〜〜〜」

 

「〜〜〜!」

 

なにやら、言い争っているらしく気に触ったのか男がバスタードソードを抜いた。

 

流石に、武器を抜かれたんじゃ止めないわけにはいくまい。

 

おれはため息をつくと止めるべく歩いていった。

 

ー蓮太郎sideー

 

俺たちが部屋のなかに入ると巨大の男にいきなり絡まれた。

 

「お前みたいなお子ちゃまでもこんな場所にはやってこれるみたいだな。」

 

最初は、無視していたのだが、それさえも気に入らなかったのか男はさらに絡んできた。

 

いい加減、ムカついたので

 

「名前名乗れよ」

 

と、言ったら

 

「ああん?『名前名乗れよ』だと?生意気なんだよ!」

 

男の気に触ったらしく背中に背負っていたバスタードソードを抜いた。

 

「まぁ、待てよ。そう熱くなんなって」

 

つい、先日お世話になった男が仲裁に入って来た。

 

蓮太郎side out

 

おれが歩いていくと男がバスタードソードを抜いて斬ろうとしていたので男と蓮太郎のあいだに

 

「まぁ、待てよ。そう熱くなんなって」

 

と、言って割って入った。

 

「誰だ?てめぇは」

 

男は、バスタードソードを握る手に力を込めた。

 

「おれかい?おれはーー」

 

「やめたまえ将監(しょうげん)!」

 

おれが名乗ろうとしたら雇い主と思われる男が助け舟をだした。

 

「おい、そりゃねぇだろ三ヶ島さん!」

 

「君は実力の判断もできないのかい?IP序列1位に喧嘩をうるなんて。」

 

三ヶ島さんの言葉に会場内にどよめきがはしった。

 

「それだけは、ばらさないでほしかったよ。」

 

「いやぁ、すまないね。こうでも言わないと彼は納得しないから」

 

「ちっ・・・」

 

将監は、舌打ちをするとこちらを睨みつけて引き下がった。

 

「なるほどね・・・」

 

「ほんとうにすまなかった。謝ってすむ問題ではないかもしれないけど。そっちの君たちも」

 

三ヶ島社長は、おれたちのほうにやってくると頭を下げて謝罪をしてきた。

 

「べつに、いいよ。こっちもあんたも特に被害はないわけだし。」

 

おれは、蓮太郎たちをちらっとみた。

 

「あ、ああ。」

 

蓮太郎は、文句の一つでも言ってやろうとしていたので困惑していた。

 

「そうね。でも、ちょっかい出さないように教育はしてね。」

 

「わかったよ。」

 

三ヶ島は、そう言って名刺をおれと木更に渡した。

 

「ありがとうな。えっと・・・」

 

「朱炎骸だ。よろしくな。」

 

おれは、挨拶を兼ねて手を差し出した。

 

「ええ、よろしく。私は天童民間警備会社の社長の天童木更よ」

 

「おれは、社員の里見蓮太郎だ。」

 

木更は、社交的な笑みをうかべると握手をした。

 

蓮太郎も続くようにして握手をしてきた。

 

「そういや、お前んとこの社長は?」

 

蓮太郎はキョロキョロとあたりを見渡しながら聞いてきた。

 

「社長は、いないよ?だっておれが社長券社員だもん。」

 

おれの言葉に二人は驚いていた。

 

「っと、そろそろ戻るとしよう。」

 

おれは、そう言うとさっきの場所に戻った。

 

「伊熊将監・・・朱炎骸。ずいぶんな大物が揃ったわね。」

 

木更は、骸の後ろ姿を見ながら呟いた。

 

おれがもとの場所に戻り壁にもたれた瞬間、禿頭(とくとう)の男がやってきた。

 

木更たち、社長クラスの人間が一斉に立ち上がった。

 

そのことからわかるように禿頭の男はそうとうの権力者だろ。

 

「本日、集まってもらったのはほかでもない。」

 

禿頭の男は社長たちに座るように促すと説明をはじめた。

 

「諸君たち民警に依頼がある。依頼は政府からのものと思ってもらって構わない。」

 

政府という単語を聞いて、おれや木更たち以外の社長たちはどよめいていた。

 

「粛清に!」

 

禿頭の男の一声で静まり返った。

 

鶴の一声ならぬ、権力者の一声ってか・・・

 

「本件の依頼内容を説明する前に、依頼を辞退する者はすみやかに席を立ち退席してもらいたい。依頼の内容を聞いてからは棄権することは認めないと思え!」

 

禿頭の男の言葉に退席するものは一人もいなかった。

 

「権力者の言う言葉は違うってか・・・」

 

おれは、聞こえない声でそう呟いた。

 

「一つだけ、質問させろ!」

 

おれは、手をあげると質問をした。

 

「金額はいくらだ?場合によっちゃ下りるぜ?おれほどの人間呼んだんだ。それなりじゃないとな・・・」

 

「質問は、それだけか?」

 

おれは、うなずいた。

 

「よろしい、質問をするものも辞退するものもいないな?」

 

禿頭の男はそう言って見渡すが誰も口を開かなかった。

 

「ならば、後のことはこの方に説明してもらおう。」

 

禿頭の男は身を引いた。

 

『ごきげんよう、みなさん』

 

特大パネルに一人の美少女が写った。

 

木更をはじめとした社長格の人間は立ち上がった。

 

蓮太郎も信じられないという目で見ていた。

 

「聖天子か・・・」

 

まぁ、無理もないだろ。なにせいまの東京エリアを統治してるのだからな。

 

『お久しぶりです!骸さん!』

 

「ああ。久しぶりだな。」

 

聖天子は、プロモーターのなかにおれの姿を確認して嬉しそうな声で挨拶をしてきた。

 

みんなが一斉におれのほうを見てきた。

 

『さいきん、聖居に来てれないから寂しいのですよ?』

 

「いやぁ、わりぃわりぃ仕事が忙しくてな。」

 

『あまりの寂しさに死んでしまうかと思いました。』

 

「まぁ、そのうち行くからそんときにでもデートしようぜ。」

 

『はい!楽しみにしてます。』

 

聖天子は、完全に乙女になっていた。

 

「・・・」

 

天童菊之丞は、嫉妬の目をこっちに向けてきた。

 

「おいおい、じいさん。年寄りの嫉妬は醜いだけだぜ?ただでさえ醜いくせによ。」

 

菊之丞は、目を吊り上げると怒りを顕にしていた。

 

そして、木更の存在に気づいた瞬間さらに怒りがふくれあがった。

 

『話がそれてしまい申し訳ありません。』

 

聖天子は、皆に謝ると話を再開した。

 

『楽にしてくださいみなさん、私から説明します。』

 

先ほどまでの聖天子とは違い風格が備わっていた。

 

公私を混合しないか・・・

 

『といってもシンプルです。民警のみなさんに依頼するのは、昨日東京エリアに侵入して感染者を一人だした感染源ガストレアの排除です。もう一つは、このガストレアに取り込まれていると思われるケースを無傷で回収してください。』

 

『そして、報酬はーー』

 

10000000000という破格の数字が現れた。

 

「0が十個・・・百億か。」

 

「そのケースとやらがガストレアの体内ある可能性は?」

 

『あります。』

 

「ありがとうな。わかったよ」

 

『いいえ』

 

聖天子は頬を紅くしながらそういった。

 

続いて質問したのは木更だった。

 

「回収するケースの中にはなにが入っているのか聞いてもよろしいですか?」

 

木更のその質問は全員の意見を代弁していた。

 

「話の途中で、悪いがどうやらこの会場にはネズミが迷い込んだみたいだ。」

 

不気味な笑い声が部屋に響き渡った。

 

「ネズミとはずいぶんだね。ククク」

 

影胤は、卓の上に土足で踏み上がる。

 

「いや、ドブネズミの間違いか。蛭子影胤」

 

「おやおや、ずいぶん余裕みたいだね。」

 

「動かないで・・・斬るよ。」

 

「そっちこそ。」

 

刹那、天井に穴がたくさん開き一人の少女が降りてきた。

 

ーー水玉だった。

 

 

「動かないで・・・撃つよ?」

 

そう言った水玉の目は赤かった。



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第四話 再戦

ーー先に動いたのは、蛭子親子だった。

 

頭に銃を突きつけられた影胤は動じることはなかった。

 

「クスクス・・・」

 

「なにが、おかしい?」

 

突然、笑い出した影胤を水玉は訝しんだ。

 

「いやね、こんなにも人がいるのに発砲しようとするとはなかなかだなと」

 

「周りは関係ない。義兄さまに褒められれば充分。」

 

水玉が発砲した瞬間あさっての方向に弾き返された。

 

「!」

 

水玉はなにがおきたか理解できてなかった。

 

「では、お返しをしよう。」

 

影胤は水玉のお腹に回し蹴りをした。

 

水玉は、吹き飛ばされた。

 

「水玉!」

 

「よそ見禁止、斬ってもいい?」

 

小比奈は、返事を聞く前に斬りかかって来た。

 

「させるか!」

 

おれは、刀を抜くと防いだ。

 

「あなたは厄介・・・殺しておく。」

 

小比奈の瞳が赤くなった。

 

ガキィィィーン!

 

骸の刀と小比奈の2本の小太刀がぶつかり合う度に金属の擦れる音と火花が散った。

 

「義兄さま伏せて!」

 

おれが伏せると頭上を二発の弾丸が飛んでいった。

 

それは、小比奈の小太刀に当たるとあさっての方向に弾き飛ばした。

 

「水玉・・・あなた殺す!」

 

小比奈は、ひとっ飛びで水玉の元に行った。

 

「なら、おれは・・・」

 

おれは、影胤の元に向かった。

 

「ククク、やはり君だったか。僕の相手は」

 

こうなることがわかっていたかのような口調でそう言った。

 

「お前の目的はなんだ?」

 

「『七星の遺産』と、言えばわかるかい?」

 

その単語を発した瞬間、おれと聖天子以外のやつは首を傾げた。

 

「おや、その様子だとみんなはわからずに依頼をうけさせれようとしていたんだね、可哀想に。君らが言うジュラルミンケースの中身だよ」

 

「なら、てめぇを殺せば済むだけ・・・だろ?」

 

「そういうこったァ!てめぇが死ねばすむ話だ!」

 

将監がバスタードソードを抜いて割って入ってきた。

 

「邪魔・・・」

 

おれは、バスタードソードを受け止めるとその力を利用して将監を吹き飛ばした。

 

将監の手から離れたバスタードソードは卓の真ん中に突き刺さり真っ二つにした。

 

「てんめぇ!何しやがる!」

 

「何しやがるはこっちのセリフだ。敵の能力もわかってねぇのにむかってくなんざバカのやることだ。てめぇが死ぬのは勝手だが処理するのは三ヶ島さんや聖天子なんだぞ少しは考えろ!」

 

「ククク、まるで君はわかってるみたいな言い方だね。」

 

「ああ。」

 

「骸くん、下がって!」

 

三ヶ島さんに言われた通り下がると社長やプロモーター、蓮太郎たちが一斉に発砲をした。

 

三百六十度あらゆる方向からの射撃。

 

「無駄だよ。」

 

影胤が、そう言うと雷鳴音と共に先程よりもはっきりとした青白い燐光が見えた。

 

「やっぱりか・・・」

 

2度目の使用でやっと確信がもてた。

 

「『斥力フィールド』か・・・」

 

「ご名答。さすがは我が同志だ」

 

「てめぇの同志?笑わせんな!」

 

「ククク、君だってあの『新人類創造計画』の被験者なのに・・・」

 

「・・・」

 

「『殺人獅子(キラーライオン)』だったかな?」

 

「なぜ、てめぇがそれを・・・!」

 

柄を握る手に力が入った。

 

「知らない者はいないよ?牙をむかれたら最後死ぬのだからね・・・」

 

「噛み殺してやるか?」

 

「それは、ご遠慮願いたい。」

 

影胤は万歳のポーズをとって首を横に振った。

 

「小比奈、帰るよ。」

 

影胤は、水玉と遊んでいる小比奈に声をかけた。

 

「わかった。じゃあね、水玉・・・そして、怖いお兄さん」

 

影胤と小比奈は、机に置き土産をしていくと鮮やかな手つきで窓を割り飛び降りた。

 

「あの野郎・・・とんでもない置き土産をしていきやがった。」

 

木箱の中に入っていたのは空席のところに座っていたはずの社長の首だった。

 

「義兄さま・・・これからどうなるのでしょうか。」

 

水玉が不安そうな声で聞いてきた。

 

「さあな。ただ・・・」

 

「厄介なことに巻き込まれちまったのは間違いないだろうな。」

 

これから、起こるであろう厄介事にため息が出た。



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第五話 命の恩人

ちなみに、夏世ちゃんと火垂ちゃんと青空教室の子供たちは死にません。


影胤が去って行った後、社長たちが帰っていくなかおれは聖天子に呼び止められた。

 

水玉には、先に帰るように伝えた。

 

「で、話しって一体なんだい?」

 

まぁ、大体は予想できるけど

 

「あなたが、『新人類創造計画』の被験者だと言うことについてです。」

 

やっぱりな。

 

「それだったか・・・」

 

「これから、話すことは他言無用で頼むわ。それと後ろにいるじじいにも退席してもらおう。」

 

「わかりました。菊之丞さん・・・」

 

じじいは、一瞬だけこちらを睨むと無言で退席した。

 

さてと、どこから話すかね。

 

「あんたは、おれの正体には気づいてんだろ?」

 

「ええ・・・」

 

聖天子は、うなずいた。

 

「おれは、天童陽炎だ。」

 

「・・・」

 

「おそらくは、じじいも気づいてると思う。」

 

だから、退席させたんだけどね。

 

「あんたなら、(木更)祖父(菊之丞)の確執がどれだけのものかも知っているだろう。だが、おれとじじいの確執はそれ以上だ。」

 

なぜなら、

 

「おれは、あいつに左腕と左足を斬られたからな。」

 

「!」

 

聖天子は、顔を青くさせた。

 

それもそうだろ、なにせ祖父が孫を殺そうとしたんだからな。

 

「幸いにも付き人が発見してくれて病院に連れていかれて命は助かったが左腕と左足は戻って来ることはなかった。」

 

あの時は、本当に死ぬかと思ったぜ。

 

「おれは絶望したね。祖父に殺されかけたことではなく自分の弱さに・・・」

 

「だから、死のうと思ったよ・・・」

 

でも、そんな時に現れたのがあの人だった。

 

「四賢人って知ってるか?」

 

「ええ。」

 

またしても、うなずいた。

 

「その一人の室戸菫がおれの病室にやってきて告げたんだ・・・『新人類創造計画』の手術を受けてみないかと。」

 

今思えば、あの人がいなかったら死んでいたかもな。

 

「おれは、受けることにしたよ。」

 

そして、

 

「『瞬発力』を手に入れた。」

 

「そうでしたか・・・」

 

聖天子は、今にも泣きそうな表情をしていた。

 

「最後にもう一つだけ聞かせてください・・・」

 

「この世界を恨んでいますか?」

 

「・・・・・・・・・前までのおれなら恨んでいると答えたかもな。」

 

「でも、今は違うと答えるだろう。大切なものがたくさんできちまった。」

 

水玉、蓮太郎、木更、未織・・・

 

それに、

 

「あんたも、その一人だよ。」

 

「そう、ですか・・・」

 

聖天子は、おれの答えに満足したのか嬉しそうな表情になった。

 

「だから、あんたはあんたで『あの』法案を頑張ってくれ・・・」

 

おれは、その支援(バックアップ)をするからさ。

 

「わかりました!頑張ります!」

 

「それと、蛭子影胤についても安心しろおれが・・・おれたちがいる限りは東京エリアには指一本たりとも触れさせねぇよ。」

 

おれは、この義足と義手を手に入れたときからそう誓ったんだ。

 

「ああ、それとデートのこと楽しみにしてますね?」

 

フフッと笑いながら聖天子はそう言った。

 

「・・・・・・・・・・はい」

 

おれは、とんでもない約束をしてしまったのではないかと後悔した。

 

〜〜 〜〜

 

それから、数日後・・・

 

おれたちは、再び聖天子に集められた。

 

「すみませんでした!」

 

聖天子の第一声はそれだった。

 

当然、みんなは困惑した。

 

「どういうことだ?」

 

聖天子は実は・・・と言って話し始めた。

 

「と、いう事なんです。」

 

「・・・んなこったろうと思ってたよ。」

 

みんなの視線がおれに集まった。

 

「どういうこと?」

 

「おかしいだろ、どう考えても序列が上のやつがたくさん集められてる時点で・・・」

 

「それは、そうだけど・・・」

 

「それにだ・・・あのケースの中に入ってるのを狙っているのがおれたちだけじゃないことからおそらくは聖天子の言ってることは本当だろ。」

 

「・・・」

 

それにしても・・・また、大事になっちまったな

 

ステージⅤのガストレアをよびたぜるなんざ・・・



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第六話 ステージⅤガストレア

おれと木更は、蓮太郎に教えるために病院に向かっている最中だった。

 

木更は聖天子からの説明が終わるとすぐに出ていったのでどこに行くのかと問うとケースの中身がステージⅤガストレアを呼び出す代物だということを蓮太郎に教えるために病院に行くと言ったのでお金があるか確認すると「うっ!」と言葉がつまったのでタクシーを呼んだ。

 

そして、運転手に行き先を告げた。

 

「ステージⅤか・・・」

 

おれは、外を見ながらステージⅤガストレアの対策を練り始めた。

 

ーーステージⅤガストレア

 

『ゾディアック』と呼ばれ十年前、人類が敗北したときに大絶滅を起こした十一体のガストレアだ。

 

大きさは、ステージⅣの何十倍もあり一体だけでも厄介だ。

 

だが、それ以上に厄介なのは全ゾディアックガストレアに共通して皮膚が硬く通常兵器では到底歯がたたない。

 

おれが倒した『金牛宮』のタウルス、Ip序列二位のやつが倒した『処女宮』のヴァルゴもそうだったがバラニウムは通じるという点ではそこらへんの雑魚ガストレアと同じだ。

 

人類が有するバラニウムの塊である(モノリス)の発する磁場の影響を受けない・・・

 

それが意味するのは、モノリスは人類の仮染めの平和を保っているただの壁に過ぎないということだ。

 

「ねぇ・・・」

 

「ねぇ・・・ったら!」

 

「んあ?どした?」

 

おれが、考えふけていたら木更に呼ばれた。

 

「なぜ、あなたが私たちが儲かってないってわかったのよ?」

 

「・・・序列が低いのは仕事の量が少ない証拠、仕事が少ないのは儲かってないだから金がない貧乏人だとわかったのさ。」

 

まさか、お前の兄さんだからわかるんだよとは言えないからな。

 

「ふふふ、わかってはいたけど思いのほかダメージが大きいわね。」

 

木更は、自虐的な笑みをうかべていた。

 

「ねぇ・・・骸あなたはーーー」

 

「お客さん、病院に着きましたよ?」

 

木更がなにかを言おうとしたら運転手が病院に到着したのを教えてくれた。

 

「ん、ありがと」

 

木更は、運転手にバレないように舌打ちをした。

 

「運転手、これやる釣りはいらん」

 

おれが渡したのは福沢諭吉・・・一万円札だった。

 

「!?」

 

運転手(ドライバー)は、まさかの福沢諭吉に驚いていた。

 

〜〜 〜〜

 

病院の中に入ると、看護師に蓮太郎のいる病室の番号を聞いた。

 

「ここか・・・」

 

病室の前に来るとコンコンとノックをして「どうぞー!」と返事があったので入ることにした。

 

「よっす!」

 

「大丈夫?里見くん」

 

「木更さんに・・・骸!?」

 

おれがいることに蓮太郎は驚いた。

 

「・・・」

 

「・・・」

 

木更と蓮太郎のあいだに気まずい雰囲気が漂いはじめた。

 

『か〜な〜し〜み〜の』

 

空気の読めない着メロがなった。

 

この曲は、あの人しかいなかった。

 

ディスプレイをみたら『室戸菫』とかかれていた。

 

「・・・もしもし」

 

「ハッハッハ!聖天子様じゃなくて残念だったな。」

 

電話に出ていきなりからまれるとか・・・

 

「・・・ハァ」

 

おれは、ため息をついた。

 

「ため息をつくと幸せが逃げるぞ・・・」

 

あんたと会話してる時点で幸せが逃げてるわ!

 

おれは、心の中でそうつぶやいた。

 

「それより、なんのようだ?」

 

「せっかちな男は嫌われるよ?まぁ、それは置いとくとして・・・」

 

「あれが完成したとパトロンから電話が来てね。ぼやいてたよ?最近あってくれないから寂しいと」

 

「ハハハ・・・」

 

なんで、おれのまわりの女こうなんだろ・・・

 

「今から、取りに行くよ・・・」

 

「そうかい、待っているよ」

 

そう言って、室戸先生は電話をきった。

 

「わりぃ、おれ帰るわ!」

 

おれは、木更に帰りのタクシー代な、と言って福沢諭吉を渡した。

 

〜〜 〜〜

 

勾玉大学病室ーーそれがおれの命の恩人がいる病院だ。

 

恩人の名前は室戸菫。

 

四賢人の一人でおれも受けた『新人類創造計画』に携わった一人だ。

 

イカレてる天才医師(マッドサイエンティスト)とおれは呼んでいる。

 

「あいかわらず、趣味が悪いな。」

 

もはや、芸術の域に達してるといっても過言ではないほどの不気味さが漂う扉を開けて中に入った。

 

「こ・ん・に・ち・は」

 

「・・・趣味悪すぎだッ!」

 

死体が喋ったかと思ったじゃねぇか!

 

「普通過ぎてつまらん。」

 

室戸先生は、やれやれと肩をすくめた。

 

「あいかわらず、不健康そうだな。」

 

「ハッハッハ!天才というのはそういうものだ。」

 

「へぇへぇ、そんな大天才のために心優しいおれが料理つくってやるよ。」

 

おれは、キッチン(らしき)に行くと買物袋から買ってきたものを取り出して料理をはじめた。

 

そして、数分後・・・

 

「ほい、できたぞ。」

 

おれは、料理を資料が乱雑に置かれてる机の上の上においた。

 

「ふむ、あいかわらずうまそうだね。」

 

室戸先生は、マイスプーンで掬うと美味しそうに食べていた。

 

「ごちそうさま。さて・・・と、あれをもってくるか。」

 

先生は、立ち上がると手術室のほうにあれを取りに行った。

 

「ほら、これだ・・・」

 

室戸先生が渡してきたのは『侵食抑止剤』だった。

 

「助かる!」

 

これさえあれば



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第七話 合流

「んじゃ、行ってくる!」

 

おれは、『侵食抑止剤』をポケットにしまうと室戸先生に敬礼をした。

 

「逝ってらっしゃい!死ぬなよ?」

 

口では、死ぬなよ?と言ってるが表情はそうではなかった。

 

どちらかといえば『死体は綺麗な感じで頼む!』という感じだった。

 

「あっ!」

 

「!」

 

おれが大学病院を出ると蓮太郎がすれ違いでやってきた。

 

おそらくは、あの女のところでつくった武器を取りに来たんだろう。

 

一瞬、目が合ったが今は挨拶してる暇がないので蓮太郎に構わず水玉に電話した。

 

「もしもし、水玉か?いまどこにいる?」

 

『・・・?事務所にいますが』

 

「なら、今すぐ銃と銃弾を詰めれるだけ詰めてもってこい!」

 

水玉は、いきなりそんなことを言われて困惑していたがおれの焦ってるようすが伝わったのかわかりました!といい電話をきった。

 

「あとは・・・」

 

移動手段だが・・・

 

『ありのままの〜』

 

「もしもし?」

 

『もしもし〜久しぶりやね。』

 

・・・いま、一番聞きたくない声だ。

 

「どうした?」

 

『いやぁ、なんか移動手段に困ってるみたいやしヘリ貸してあげてもええんよ?』

 

なんで、そんなことを知ってるんだよ?ストーカーか?

 

「まじか!助かる!」

 

「た・だ・し・や!」

 

「?」

 

なぜ、だろういやな予感がするのは・・・?

 

「1日だけ私とデートするっていうんなら貸してあげるで?」

 

「1日だけならいいぜ!」

 

なんだ、1日デートか・・・

 

もっと、やばいやつ要求してくるかと身構えたぜ。

 

しかし、おれはこの時予想していなかった・・・

 

この約束が、あのようなことになるとは・・・

 

「ところで、ヘリはいつ手配すんだ?」

 

まさか、もう?

 

「もう、手配済みやで?」

 

「なん・・・だと・・・!?」

 

てか、もしおれが断ってたらどうしてたんだ?

 

ふと、疑問に思ったので聞いてみたら

 

「ウチのむっくんが断るわけ無いやろ?」

 

「さいですか・・・」

 

ゾゾゾ!

 

なんだ?いま寒気が・・・

 

ああ、むっくんていうのはおれのあだ名な?

 

骸→むく→むっくんみたいな

 

「もうそろ、つくはずやから。頑張ってな〜」

 

そう言って電話をきった。

 

バババ!という空を割くような音をたてながらヘリが降りてきた。

 

ヘリが降りてきたことにより生じた風におれは腕で顔を覆って耐えた。

 

「あなたが、朱炎骸様ですね?」

 

黒いスーツの男が歩み寄ってきた。

 

「そうだが?」

 

「こちらへ・・・送り届けるようにお嬢様に言われましたので。」

 

おれは、うなずくと黒いスーツの男のあとをついていってヘリに乗り込んだ。

 

「なんか、忘れているような・・・?」

 

なんだっけ?思い出せない・・・

 

思い出したのは、ヘリが離陸してからだった。

 

「!」

 

・・・・・・水玉を忘れてた!

 

どうしよ!?

 

「まぁ、なんとかなるっしょ」

 

 

それから、しばらくしてーー

 

 

「申し訳ありませんが、送ることができるのはここ迄です。」

 

そう言って、ヘリの操縦士は森の限りなく近くに止めてくれた。

 

「ああ、ありーー」

 

おれがお礼を言って扉を開こうとしたら何かの爆発音が伝わってきた。

 

そして、一拍遅れで爆風がヘリを襲った。

 

「ちぃ、どっかのバカ野郎が爆発物使いやがった!」

 

爆発の音により目を覚ましたヘビのガストレアは赤色の瞳に怒りを滲ませていた。

 

「おい!お前ら、おれが3秒間だけ時間稼ぎしてやるそのあいだに逃げろ。」

 

おれは、扉を開いてカウントをした。

 

いーち!

 

にー!

 

さーん!

 

「今だ!」

 

おれが3秒数え終えるとヘリの操縦士は急いで離陸した。

 

そして、瞬く間にヘリは見えなくなった。

 

獲物を逃がしたガストレアは赤色の瞳でおれのことを睨みつけてきた。

 

「・・・『無月輪煌』!!」

 

「悪く、思わないでくれ・・・」

 

骸が鞘に刀を納めるとヘビのガストレアはバラバラになった。

 

ギロッ!

 

ヘビのガストレアの血の匂いを嗅ぎつけた他のレベルⅣのガストレアたちがやってきた。

 

「チェリオッ!」

 

ガストレアの群れの一体がおれに飛びかかってきた瞬間、勢いのある声とともに蹴りがガストレアにーー

 

ではなく、おれにきまった。

 

「ひでぶ!」

 

不意をつかれたせいもあって十メートルくらい吹き飛んだ。

 

「ひどいではないですか!義兄さま!」

 

水玉は泣きながらおれを蹴り続けた。

 

・・・地味に痛い。

 

「義兄さまがっ!謝るまで、蹴るのをやめないっ!」

 

水玉は、某奇妙な冒険風に言いながら微妙に力をこめて男のあそこを蹴りあげた。

 

「やっと、追いついたと思ったら・・・なにやってんだよ」

 

そこへ、蓮太郎がやってきて呆れられた。

 

「・・・ごめんっ!謝るから蹴らないで。」

 

ピタッ!

 

一瞬、蹴るのをやめてくれた。

 

「ごめんなさい!謝りますからやめてっ!」

 

「・・・はぁ、わかりました。これ以上やっても無駄だとわかりましたから」

 

そう言って、蹴るのをやめてくれた。

 

「ただし、次は・・・」

 

目が据わっていた。

 

あっ、これは次はないパターンだ。

 

「ーーギャオオオーー」

 

ガストレアたちは吠えると、一斉に飛びかかってきた。

 

「逃げろぉぉぉ!」

 

流石のおれでもあの数は無理だわ。

 

「あそこから、降りろぉぉぉ!」

 

おれが指さした先には崖があった。

 

おれたちが崖から降りるとガストレアがあとを追いかけてきて降りてきた。

 

「・・・『鎌鼬風雷』!!」

 

おれは、振り向きあとをおってくるガストレアを一閃した。

 

そして、ガストレアは重力に従い落ちていった。

 

「飛び降りたのはいいが・・・この後はどうするつもりだ?」

 

「!」

 

蓮太郎は、この後のことを聞いてきたが、しかし・・・

 

「なにも、考えてませーん!」

 

とりあえず、ガストレアたちから逃げることしか考えてなかった。

 

「あほかぁーーー!」

 

蓮太郎は落ちながらもツッコミを入れてきた。

 

器用だな・・・

 

 



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第八話 天の梯子

「どわぁぁぁぁ!」

 

「うわぁぁぁぁ!」

 

おれと蓮太郎は、重力に従って落下を続けていた。

 

ん?あれは・・・

 

その途中、天に向かって伸びてる棒状の人工物ーー『天の梯子』が目に入った。

 

あれをうまく使えれば、ガストレアをなんとかできるかもしれない。

 

などと、考えている間に地面が迫っていた。

 

「蓮太郎、妾に掴まっておれ!」

 

「わ、わかった。」

 

蓮太郎は、言われたとおりに延珠に掴まった。

 

そして、手頃な木の枝に掴まるとそしてその下の木の枝を掴んだ。

 

しかし、落下のスピードは殺しきれず森の中へとものすごい勢いで突っ込んでいった。

 

おれと水玉は、腕をクロスにして落下したときに顔に枝などが当たらないようにガードしながら落ちていった。

 

「大丈夫か?みんな」

 

おれは、体の痛みに耐えながらも立ち上がると周りを見渡した。

 

「ああ、なんとかな」

 

「大丈夫だ!」

 

「大丈夫です、お義兄さま」

 

三人ともなんとか無事だった。

 

「しっかし、随分と落ちたみたいだな。」

 

上を見上げてみるもまったくもって見えなかった。

 

「どうする・・・?」

 

蓮太郎はあたりを警戒しながらもたずねてきた。

 

「そうだな・・・まずはここから移動しよう。」

 

いつまでも、同じところにいたんじゃガストレアに出くわさないともかぎらねぇしな。

 

「気をつけなきゃいけねぇのは対戦車地雷、スプリング式跳ね上げ地雷、誘導型機雷、クラスター爆弾なんかの不発弾だ。こいつらはガストレア大戦のときに自衛隊がばらまいていったやつだ。」

 

蓮太郎が警戒物を除去しながら延珠と水玉に講釈を垂れていた。

 

「では、なぜそのようなことを後で自分たちが困るということに気づかなかったのですか?」

 

水玉のもっともな質問に蓮太郎は虚を突かれて考え込んでしまった。

 

「まぁ、当時の東京エリアは壊滅状態だったからな。なんでもござれで非道なことも当たり前のように起きていたからな・・・」

 

水玉も延珠も首をかしげていた。

 

これが、あの地獄をしるおれたち『奪われた世代』と平和な時代に生まれた『無垢の世代』の違いなのだと思わずにはいられなかった。

 

まぁ、だからといって『無垢の世代』を恨むのもお門違いなんだがな・・・

 

「お義兄さま。なんだか気分が高ぶるのですが・・・」

 

なぜでしょうか?そう言って首をかしげた。

 

「おそらくは、モノリス()のそとに出たからだろうな。」

 

わずかながらもガストレアウイルスに感染してる水玉たちにはモノリスの発してるバラニウムの磁気が影響する。

 

しばらく歩いていると、遠くに灯る灯りを見つけた。

 

用心しながら歩みを進めると明らかに人工物と思える建物に行き着いた。

 

ーー防御陣地(トーチカ)だ。

 

おれは、水玉に・・・蓮太郎は、延珠にそれぞれハンドサインでサインを送った。

 

そして、蓮太郎に目で合図すると慎重な足取りで蓮太郎は裏からおれは正面から近づいていった。

 

「動くなっ!」

 

「動くんじゃねぇッ」

 

蓮太郎のXDと相手のショットガンが交差したのはほぼ同時だった。

 

「っ!おまえは……」

 

「お義兄さま……知り合いなのですか!?」

 

「誰だっけ……?」

 

ズコーッ!

 

「貴方が仲裁にはいった伊熊将監のイニシエーターです」

 

ああ……あいつか

 

「んで?なんでこんなとこに?」

 

「実は……」

 

〜 〜 〜

 

「なるほどねぇ……」

 

要約すると、灯りを使って人間を捕食するガストレアにおびき寄せられ危うく食われそうになったところを夏世が咄嗟に手榴弾を使ったらしい

 

さっきの爆音はそれだったのか……

 

「やれやれ……なんつーことやってくれたんだか」

 

まぁ、やってしまったことをせめても仕方ないけどな

 

「んで、はぐれちまったと……」

 

「はい……」

 

これだから脳筋は好きになれない……てめーがやらかしたことをてめーが後始末できねーなら最初から首突っ込むなって話だからな

 

「さて……と」

 

「?お義兄さま……どこかに行かれるのですか?」

 

「ん?ああ……ガストレアがここに来ないように見回りに行ってくる。」

 

焚火の明かりにつられてやってくるかもしれないし……

 

「なら、着いていきます……」

 

スッと立ち上がるとおれの後をついてくる

 

〜 〜 〜

 

「水玉……」

 

「はい、お義兄さま……」

 

トーチカからだいぶ離れたら突然風が変わった

 

「あいつらだな……」

 

水玉は銃を二挺をホルスターから引き抜き俺は刀を抜きそれぞれ戦闘態勢にはいる

 

「そこかっ!」

 

ある木に狙いを定め刀を振る

 

「お見事……」

 

クククと不気味な笑い方をしながら暗闇から姿を現す

 

「てめぇらだったか……」

 

この前、会場を荒らしに来た指名手配犯の蛭子影胤、小比奈親子だった

 

「お義兄さま……刀女は私に殺らせて……」

 

「りょ……なら、俺はこいつか」

 

蛭子小比奈VS朱炎水玉

 

蛭子影胤VS朱炎骸

 

東京エリアの未来をかけた戦いが始まった



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第九話 再々戦

「やってるみたいやなー」

 

骸たちの戦いの様子が映されているモニターのある部屋に着物をきた少女が黒服の男を引き連れやってきた

 

聖天子はそれが誰なのかを知らなかったが助かったと思った。

 

なぜなら、聖天子は天童木更と天童菊之丞の確執を知っているからだ

 

そんな中現れた少女の存在はありがたかった。

 

しかし天童木更とこの少女もまた不仲だったため生きた心地がしないのはこの時の聖天子は知る由もなかった

 

〜 〜 〜

 

「ククク……やはりな……君もこちら側に相応しい」

 

銃弾と斬撃の応酬を繰り広げる中蛭子影胤が笑う

 

「ふざけるな……てめーみてぇな犯罪者野郎と一緒にすんじゃねーよ」

 

俺と影胤みてーな犯罪者野郎が一緒にされたことに怒りを隠しきれなかった

 

だからなのか……敵の一撃をくらってしまった

 

「マキシマムペイン……!」

 

「ッ!」

 

青白いフィールドが扇状に膨張し恐ろしい勢いで俺に殺到する

 

「ガッ……!」

 

あまりの威力に吹き飛ばされる。

 

「お義兄さま!」

 

その様子に気をとられた水玉の不意をついて小比奈が回転斬りする

 

2本の小太刀が水玉を斬り裂く

 

「貴方の相手は私……余所見だめ……」

 

「ククク……きみの実力はその程度ではないのだろ?かかってきたまえ」

 

両手をひろげ余裕の笑みを影胤がうかべる

 

「……お返しだ……『天童式抜刀術』」

 

「『気流円斬』……!」

 

俺の放った一撃は気流を生み出し円をつくり影胤を切り刻む

 

「さて……そろそろ俺も本気をださせてもらうよ」

 

反撃はここからだ……!ってか

 

柄にもないこと言うんじゃなかった……(恥ずかしい)

 

「(どういうこと……なんで()が天童式抜刀術を!?)」

 

そんな戦いを見ていた天童木更が骸がなぜ天童式抜刀術を使っていたのか疑問に感じていた

 

しかしそんな疑問もやがてはれることになるがそれは別の話だ

 

〜 〜 〜

 

「あなたを射殺して私……お義兄さまに褒められる!」

 

斬られた箇所が治っていく

 

そして起き上がると同時に銃爪を引く

 

「ガッ……!」

 

小比奈の両肩に穴が開く

 

そして、続け様に両手を撃ち抜く

 

「あとは両足と心臓……それだけで貴方が死ぬ……貴方が死ねばお義兄さまに褒められる」

 

私が戦う理由はそれだけ……お義兄さまに褒めてもらえるなら殺人でも何でもできる

 

私を救ってくれたあの日から私の命は……いいえ私の全てはお義兄さまに捧げると誓ったのだから

 

「……アハハ、貴方面白い♪」

 

ちぃ……すこしお喋りが過ぎたかしら……お話してる間に回復してるし

 

このままだとお義兄さまに褒めてもらえない……!どうしようどうしよう!!

 

「アハッ♪貴方のお兄さん面白いね♪お父さんと同じだ♪」

 

その言葉を聞いた私は私の中のなにかがプツンときれる音がした

 

「殺す……よくも私のお義兄さまをあんなゲス野郎と一緒にしたな……許さない……」

 

私のお義兄さまをよくも……貶したなぁ!!

 

もう、何のためらいもなく撃ち殺す

 

まぁもともとなんの躊躇いもないのだけれどね

 

あの刀女を如何にして苦しめながら殺すか……

 

心臓や頭などは最後までとっておくとして……両手両足を撃ち抜くか……

 

そうと決まったら……さっそく撃ちますか

 

「アハッ♪やっと本気になってくれ……た?」

 

小比奈は話している最中自分の体に違和感を感じた

 

「あらあら……喋っていたらそのぶん早く死ぬわよ?クスス」

 

私はそういいながらも銃爪を引く

 

撃っても撃っても再生する体……これほどまでに面白い的はないわね

 

「調子に……のらないで……ガハッ!」

 

 



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