歌が力に!?俺の歌を聴けー!! (小此木)
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第1話

再構成して投稿しました。2016.4.17


 

 

 

「な、何だこの光景は!?」

 

 

 

俺は目の前の光景に呆然としてしまった。ここに集まっていた人々を襲い、灰にして行くバケモノという一種のパニック映画のソレが目の前で起こっていたからだ。このバケモノ共は()()()()でノイズと呼ばれている。ノイズは突然現れ襲ってくる自然災害と認識されていて、発生した際皆各所に配置してあるシェルターに逃げ込んでいる。俺自身ニュースとかではよく見ていたんだが、今日初めて本物を見た。でも、そんな俺でもこんな悲惨な光景(・・)は初めての経験じゃない。...いや、今の俺には初めてだけど...前世(・・)では何度も経験している。新たなフロンティアを探し遥か宇宙へ飛び出していた俺達の船団を襲ってくるバケモノ。それを食い止めるため奮闘する軍。しかし、その船団や様々に変形する戦闘機を駆使する軍はこの世界には存在しないし、目の前に現れたノイズ達に()()()()()()()()()武器は通用しない。故に、

 

「に、逃げるんだよぉー!!」

 

俺はここから一番近くにあるシェルターに向かって一心不乱にその場から逃げ出した。

 

『_________!!』

「う、歌!?」

 

しかし、俺が逃げている後ろで"先程まで歌っていた女性の声"が一瞬聞こえた。それは歌を歌っているようだった。そして、俺はそこで立ち止まりあろう事か会場に向けて走り出していた。久しぶりに感じたこの"熱い想い"を持ったまま。

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

彼は、今日この会場で行われる『ライブ』に来ていた。その歌手が好きとかではなく、唯友人から「急に行けなくなった。けど、捨てるのは勿体無いからお前行って来いよ。何、騙されたと思って一回聞いてみ。凄いから。」と手渡され丁度その日予定もなく暇だったので来たのである。

彼は、前世と言える記憶がある。一度他人に言ったものの信じてもらえず、馬鹿にされそれ以来自分自身の中に留めている。よくある神様の部屋に召喚され特典をもらったなんて記憶にないし、赤ん坊から育ててくれた両親や祖父母も健在だ。しかし、今の彼を形成しているものは、18年間生きてきた確かな経験と、今もはっきりと覚えている前世(・・)の記憶。その記憶は彼にとって大切なものであり、かけがえのないものだ。いつ自分が死んだのか、死因は何だったのかは未だ思い出せない。が、記憶にある超巨大戦艦に乗り込んでいて数多(あまた)の人と宇宙を旅している事。それと、

 

『ん?___________?知らないアーティストだな。何?新人のグループ?』

 

()()()()()誰もが知っていた筈のグループの名前と歌。しかし、中学の頃ネット回線を使って様々な検索サイトで検索しても、彼らの名前はどこにも出てこなかった。でも、彼の記憶...いや、魂には彼らの姿、歌声がはっきりと刻まれている。一時期彼らの歌を歌い友人達に知らないか聞いたら、やれ歌手になれ、お前は作詞の才能があると持て囃された。当然全て断ったが、その曲を友人達が知らない事でますます前世の事とその歌は秘密になっていた。

 

 

■□■□■□■□

 

 

「奏ぇー!!」

 

槍を持ちノイズ達と戦っていた女性、ツヴァイウィングの天羽奏は一人の少女を守るため、自身を盾にノイズ達の攻撃を一身に受けていた。その身体を守っている防具はヒビ割れ、砕けみるみる内に剥がされていく。そして、

 

「おい!死ぬな!!」

 

あろう事か、少女の胸にその破片が刺さり少女は倒れてしまった。

 

「目を開けてくれ!生きるのを諦めるな!!」

「う、ぁ...」

 

辛うじて生きていた少女を助ける為、彼女はノイズ達を一掃出来うる技を使うことを選んだ。そして、

 

『_____!!』

 

歌い、それと同時に、

 

『俺の歌を聴けぇぇぇ―――――――――――――!!』

 

一人の青年の声が会場中に響いた。

 

「う、嘘!?まだ一般人がこの中に!?」

 

ツヴァイウィングの風鳴翼は突如乱入した青年に驚き

 

「...歌が聞こえる。私に流れ込んで...力が、湧いてくる!!」

 

絶唱を歌っている天羽奏は、自分の中に突如湧き出てくる力に驚いた。青年が歌っている曲の名は

 

 

 

『突撃ラブハート!!』

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

俺は、『ツヴァイウィング』ってグループのコンサートに来半分投げやりで来たけど...なんだあの歌声は!?すっげぇじゃねえか!!それに、()()()()のライブでしか熱くならなかった心が久しぶりに燃え上がったぜ。だが、ノイズの野郎ども―ん?奴ら雄か?まぁいい!!―あいつらせっかくのコンサートを邪魔しやがって!!

 

「それと、何を考えてるんだ俺は!」

 

自分自身の行動に今俺は驚いている。そりゃ、憧れのあの人なら間違いなくこう(・・)するけど俺は一般人で戦闘経験も無い。死にに行くようなもんだ。けど...だけど!!

 

「このまま引き下がるなんて出来ない!!この熱い思いを吐き出さずにいられるか!!それに、()()()()の曲には力がある。この歌で彼女達を少しでも援護できるかもしれない!!」

 

馬鹿げている話だけど、()()()()が歌っていたこの歌には力がある。何度か試した結果、俺の歌声でも枯れかけた植物や怪我を負った動物を少し癒す事が出来た。なら、人も動物。少しだけかもしれないけど彼女たちの力になれば...それに、この熱い思い。歌わずにはいられねぇ!!

 

『俺の歌を聴けぇぇぇ―――――――――――――!!』

 

落ちていたギターで状態がましだったのがこの一本だけだったけどやるしかねぇ!!()の演奏に憧れて、指の皮が何度も擦り剥けても諦めずに練習したこの曲で!!

 

『突撃ラブハート!!』

 

さぁ!!楽しいライブの再開だぜ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、多数の犠牲を出したがノイズ達は彼女らツヴァイウィングの働きにより倒され、天羽奏に助けられた少女は、辛うじて一命を取り留めた。

 

彼女達ツヴァイウィングの天羽奏と風鳴翼はシンフォギアと呼ばれる、聖遺物の欠片から作られた鎧型武装でノイズと戦っている。普段首にかけている聖遺物の欠片の中に残った力を、適合者による特定振幅の波動()によって活性化しエネルギーに還元された後、鎧の形で再構成している。そして、シンフォギアを装着する適合者は「装者」と呼ばれている。

だが、天羽奏は適合者ではなく制御薬"LiNKER"を過剰投与した結果、後天的な形で適合者となった。それは、人体への負荷が絶大であり、ギア装着も時間制限付きの限定的なものだった。その影響かは分からないが、"絶唱"を歌った彼女の疲弊は酷く、歌を歌うどころか、動く事もままならないほどに傷ついてしまった。

 

そして、突如乱入してきた青年は何と無傷。彼が歌っていた場所は不思議と彼を中心に、従来(・・)のコンサート会場の地面だった。帰還後の彼女...風鳴翼に聞いてみたところ、歌っている彼の周りに赤い靄の様な物が発生し彼を守っていたそうだ。そして、驚く事にノイズはその靄に触れた瞬間崩れたと言う。直接彼にこちらの事情を話し聞いてみたが、無我夢中で歌っていた彼は全く気付かなかったそうだ。それと、

 

「は、初めまして!赤城(あかぎ)バサラって言います!!」

 

特異災害対策機動部二課に新たなメンバーが加わった。

 

「俺がここの司令官、風鳴弦十郎だ。これからよろしく頼むぞ。」

「はい!!」

 

『ノイズは彼の靄に触れた瞬間崩れた』との翼の証言から、赤城バサラの歌に不思議な力が宿っているかもしれないと言うことで彼をスカウトしその歌を分析、研究することになった。

『FIRE BOMBER』が大好きだった男が死に、この世界で奇しくも憧れの『熱気バサラ』と同じバサラという名前の"赤城バサラ"として転生した。その青年が繰り広げる不思議な物語が今始まる。

 



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第2話

 

 

『・・・バサラ君、収録オッケーです!!』

「分かりました!!」

 

漸く今回の曲の収録が終わった。今回の曲も"俺ソロ"で『REMEMBER 16』。

 

あの事件から2年経ち、20歳になった俺は今"ファイヤーボンバー"というバンド名で活動している。無論、あの銀河中に広まっていた"FIRE BOMBER"の名前を借りたものだ。彼らの歌をこの世界に出すに当たって他の名前じゃあ俺自身納得がいかなかったからだ。楽曲の作詞、作曲は熱気バサラやFIRE BOMBERの面々の名前を使っていて、俺が曲を提供してもらっている事にしている。まぁ、俺の曲じゃねぇから当たり前だがな。

高校を卒業して直ぐにここに入隊?というか、入社。2年前超有名だった(俺はあの事件で見るまで全然知らなかったけど)"ツヴァイウィング"と同じ『特異災害対策機動部二課』って所にいる。あぁ、表向きは同じ事務所の歌手という事だ。両親にはプロの歌手になったと説明している―まぁ、歌手活動をしながらだから間違いじゃないしな―最初の1年間は・・・"地獄"って感じdeath。あの常識をポイしたオッサン...もとい、司令の指示で『どんな状況でも歌える精神と体力を付ける』事を目標に、

 

「お、俺の...歌を、き、聴け~!」

 

ある時はアルプス山脈を登山しながら歌い、

 

「お、ぼぼぼ、ぼぼぼ、ぼぼ(俺の歌を聴け)~!!」

 

またある時はセスナからのスカイダイビング中に歌い、

 

「お、俺の、危な!?」

「そらそら、そんな動きじゃ被弾するぞ。」

「いや、そんな、こと、言ったって!?」

 

終いには司令の攻撃を躱しながら歌うという暴挙までやらされた。・・・いや、最後の歌の特訓?(てか、最初から特訓じゃねぇだろ!?)は、ノイズ達を相手とって歌うことを前提に回避を磨けって事なんだけどあれは正直ヤバイ。今の俺、軍人より過酷な訓練を受けたんじゃねって思えたほどだ。

そして、後の1年はその特訓を行いながらバンドのメンバー集めと、FIRE BOMBER曲をCDにしていく事をやった。今のメンバーはボーカルの俺と、特異災害対策機動部二課音楽好きの職員というあからさまな突貫工事なので、正式なメンバー...特に女性ボーカルが欲しいところ。あと、ここの研究職員と意気投合し様々な機会を注文している。嬉しい事に、俺達のライブにもあのツヴァイウィングと比較するのが恥ずかしい人数だが、少しずつ人が集まりだした。

そうそう、この2年間で櫻井博士?監修の下、俺の歌に関して色々と調査した。分かったことは、弱いノイズに俺の歌を聞かせたら、消滅する。―正直、俺の歌を聴いた奴が消える事は実に不快に感じたが―強力なノイズにはある程度しか効かない事。最後に、俺の歌を聞いた人が少し癒される事は信じてもらえないだろうから秘密にしている。

ノイズの研究者である櫻井了子博士でも俺の歌がノイズに影響を与える事しか分からなかった。なぜ俺の歌が影響するのかが中々解明できないらしい。余談だが、検査を受ける時一々貞操の危機に遭いそうになるのは事に慣れたくなかったぜ...

 

 

■□■□■□■□

 

 

「...これが、2年間彼を調べた結果です。」

「フム、これは間違いないのかね?」

「はい。」

「そうか。」

 

アップにまとめたロングヘアーと白衣、眼鏡が特徴の女性、櫻井了子から受け取った調査資料を手に赤のカッターシャツとピンクのネクタイが特徴の男性風鳴弦十郎はそう答えた。

 

「彼、赤城バサラ君にはこれと言った異能やシンフォギアの様な聖遺物の反応もありません。全く()()の人です。」

「やはりそうか。いや、彼をこの2年ちょっと動けるように修行(地獄という名のスパルタ)していて薄々気付いていたんだが、これで確信したよ。」

「...ですが、彼の"歌"に関しては未知数。と表現するしか出来ません。どうしてあのような事が出来るのかサッパリです。」

「引き続き歌については調査してくれ。」

「分かりました。」

 

 

■□■□■□■□

 

 

「じゃあ、次の曲だ!!俺の、俺達の歌を聴けー!ファイヤー!!」

「「「ボンバー!!」」」

 

『ちょ!?バサラ君!!...もう、仕方ない。収録始めるわよ!!』

『『『はい!!』』』

 

「SEVENTH MOON!!」

 

この2年間で残念だった事がある。ツヴァイウィングだった天羽奏さん(今は19歳。正直俺より若いとは思ってもみなかったぜ)が、あの戦闘があった数日後ツヴァイウィングを引退した事だ。彼女は2年前のあの戦闘の影響がまだ癒えず無期限の療養中だ。少しの会話や散歩するぐらいには回復したもののあまり進展していないそうだ。声は出せるが、意思疎通はあまりできず、たまに吐血をしてしまう。こんな状況では歌うことや動く事は...と言うより普通の生活もままならないらしい。んで、もう一つ。2年前のあの時奏さんの「ガングニール」って対ノイズ兵器のシンフォギア?ってもんが砕けて無くなってしまったらしい。彼女は、それを纏う為色々頑張ったそうだが...辛いだろうけど、今はゆっくり心と体を休ませてほしい・・・次、歌うために。

 

そして、ツヴァイウィングだった風鳴翼さんは単独の歌手として活動をしている。偶に同じ事務所だからライブのギター役で一緒に演奏したりしている。が、俺の目にも分かるように一人で突っ走っている。歌も、ノイズとの戦いも。なので、ノイズとの戦いは彼女とろくに連携も取れず、個々で演奏(戦って)いる。

 

天羽奏さんには、俺の歌の分析や体の調査や修行でやらで、ろくに話もしていない。最近まで檻に入れられた様なものだったから仕方がないのだが...そう言えば、俺の、FIRE BOMBER歌を一曲しか聴いてもらっていない。そうだ!俺の歌を聴いてもらって、少しずつもでも元気になってもらおう!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少女は走る。かつて自身を守ってくれた女性のように。ノイズに襲われていた女の子を連れて。しかし、行く手にはノイズ達が待ち構えておりとうとう工場の中にある一つの施設の屋上に追い詰められてしまった。そして、

 

「_____!!」

 

あの歌を歌った。

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

「反応絞り込めました!!」

「位置特定!!」

「ノイズとは異なる高出量エネルギーを検知!!」

「まさか、これって...」

「ガングニールだと!?」

 

基地内に響く警報音と職員達の迅速な敵位置の確認。そして、奏から失われたシンフォギアのガングニールの反応がその場所から感知された事実。

 

「クッ!!」

 

最後の事実だけで、風鳴翼を動かすには十分だった。

 

「待て、翼ぁ!!一人で無茶を...」

「もう、行ってしまいました!!」

「クソッ!!あの場所に一番近い隊員は!?」

「今調べていま...バサラ君が近くで収録をしています!!」

「よし!!直ちに連絡!!(頼むぞバサラ君!!)」

 

 

 

 

 

けたたましいサイレンが鳴る中、彼らは収録を一旦中止し"楽器のチューニング"を入念にしていた。

 

「ギターは!?」

「調整オッケーです!!」

「バックパックのスピーカーとマイクは!?」

「いつでも行けます!!」

「じゃあ、ファイヤーボンバーとして初めてのノイズ専用ライブと洒落込みますか!!」

「「「はい!!」」」

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

「オイオイ、満員御礼ってやつかよ!!」

 

俺は司令の指示でノイズが発生した所にヘリで来たんだが、何か翼さんの戦闘服を彷彿とさせる姿の少女が女の子を守ってる。こりゃぁ、急いで助太刀しないと子供が危ねぇ!!

 

「さ~て、熱気バサラが使っていたやつを模して"あの研究員"に特注で作ってもらったコレの初お披露目だ!!じゃ、行くぜぇ!!『俺の歌を聴けー!!』」

 

ギターとバックパックが一体になった楽器を構えヘリから飛び降りたバサラはノイズと少女のど真ん中に着地し、

 

『突撃ラブハート!!』

 

ノイズと少女達両方に向かって歌い始めた。

 

よし!ギターの音も響きも申し分ない!!・・・ん?バイクの音...

 

<ドゴォ!!>

 

って、翼さんが来たな!!後はあの人と連携して...って一回も一緒に戦ったことないじゃん!!

 

 

■□■□■□■□

 

 

突然ヘリが来たと思ったら、見知らぬ男の人が何か叫んで飛び降りて来て...突然歌いだしちゃいました。でも彼が歌っている周りは薄い膜?みたいなものができていてそれにノイズが触れたら消滅しています。それも、私の様な突然現れた凄い服も着ずに。そして、何故かあの翼さんがここに駆けつけて、私と同じような服で彼と一緒に突然現れた剣を持って一気に...ノイズ達を切り伏せています!?私は女の子を庇いながらその光景を呆然と見るしかできなかったよ...

 

この日、初めて赤城バサラとこの少女、立花響は出会った。そして、運命の歯車は動き出す。

 



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第3話

 

 

ノイズを退治...っても、ほぼ翼さんが倒したけどな。俺、行った意味あったんだろうか?ま、まぁ、し、新人だしぃ~。元一般人だしぃ~。・・・はぁ。

 

「おい、そこに装飾はいいからテーブルを持ってきてくれ!!」

「ちょっと、ここにクラッカー置きっぱなしにしたの誰よ!?」

「早く料理を並べてくれ!!」

 

さて、初めて熱気バサラのようにノイズを相手に突撃ライブを慣行した俺だが、早々に基地に帰って紅茶を片手に優雅なひと時を満喫...

 

「ここに料理を並べればいいんですね?」

「えぇ。そこでいいわよ。帰って早々悪いわね。」

 

出来るはずもなく、さっき少女を助けた立花響ってお嬢ちゃんの歓迎会の準備をしている。なんせ、翼さんと同じような戦闘服を身に着け戦ったんだ。諸々の事情を聞き対処しないといけない。・・・でも、歓迎会って...いや、アットホームなところを見せてこちらから危害は加えないことを見せ、色々聞く手筈なのだろう。流石司令!・・・でも、何故だろう、今寂しく感じるのは。俺の時はこんな大掛かりな歓迎会ってなかった気がするな~。グス。

 

「そろそろ、到着する頃合だ!!全員持ち場に付けー!!」

 

司令の一声で俺達は整列し、歓迎するためにクラッカーを装備した。ちくせう。哀しみと~、切なさと~...やめよう。彼女を歓迎することを優先しよう。じゃあ、

 

『ようこそ、人類守護の砦。特異災害対策機動部二課へ!!』

 

歓迎会の始まりだぁ!!

 

 

 

 

 

あ、あれ?司令直々にするって言ってたから、皆周知の事だと思ったのに...翼さんと緒川さんには言ってなかったのかよ。翼さんちょっと頭を抱えていたぞ。ま、まぁ、博士の次は俺って順番だったから響ちゃんに自己紹介をしよう。

 

「俺はここの職員兼"ファイヤーボンバー"のボーカル赤城(あかぎ)バサラってんだ。赤城でもバサラでも好きに呼んでくれ!!」

「あっ!?貴方はあの時の!!」

「よう!さっきぶり。」

「え、えっ!?ファ、ファイヤーボンバーって最近頭角を表し始めた新人グループじゃないですか!!」

「おぉ!!立花ちゃんのような若い子にも知られるようになったのか~。まぁ、ここに入れば一応君の先輩って事になるんでよろしく。」

「は、はい。」

 

 

 

~翌日~

 

 

 

今日初めて櫻井博士から響ちゃんと一緒にキチンとしたシンフォギアについての説明を受けた。一応司令と翼さんも同席している。

 

何々、シンフォギアってぇのは、聖遺物?の欠片から作られた鎧型武装?で、欠片の中に残った聖遺物の力が、適合者による特定振幅の波動()によって活性化しエネルギーに還元された後、鎧の形で再構成されたもの。んで、シンフォギアを装着する適合者は「装者」って呼ばれている。シンフォギアが装者にもたらす特性は、身体機能上昇、音波振動衝撃によりノイズの侵食を防護するバリアコーティング機能、更にはノイズの在り方を調律し人間界の物理法則下に強制固着させて攻撃を有効化する。んで、補足に位相差障壁の無効化の3つに大別され、これらの機能からノイズに対抗できる唯一の兵器であり、「アンチノイズプロテクター」という別名を持ってるらしい...って難しいわ!!なんだそれ!?こっちの物理法則に固着?わけわかめだ!!

よし!難しいから歌で起動するトンデモ兵器って覚えておこう。

 

 

「どう?貴女に目覚めた力について少しは理解してもらえたかしら?質問はどしどし受け付けるわよ?」

「は~い。櫻井博士質も~ん!!」

「赤城君。何かな~?」

「専門用語がいっぱいあって分からない所が多かったから、後で用語を纏めたレジメが欲しいのと、どうして俺は『適合者』でもないし、シンフォギアも扱えないのにノイズに対抗出来るんですか?」

「「・・・」」

 

え゛?何?この沈黙!?

 

「き、君の"歌"は正直言って現段階では分からないの。でも、シンフォギアではないエネルギーである事が分かったわ...ごめんなさいね。」

「い、いえ。気にしないでください。まぁ、分かるまで気長に待ちますよ。」

「あれ?でも、私も聖遺物というものを持ってません。なのに何故...」

「これが何なのか君には分かるはずだ。」

 

ん?司令が持っているのは・・・誰かのレントゲン写真?

 

「はい、二年前の傷です!!」

 

司令が持っていたのは何と、響ちゃんのレントゲン写真だった。それを皮切りに司令と響ちゃん櫻井博士の話は進んでいく。そして、

 

「...奏ちゃんのガングニールの破片なの。」

「ま、マジかよ...」

 

レントゲンに映っているものの正体に俺と翼さんは驚愕した。ほぼ再起不能と言われている天羽奏さんが纏っていた今は無きシンフォギア、『ガングニール』の破片。それを知ったからかは分からないが、翼さんは部屋から出て行ってしまった。

 

「そ、そう言えば私を助けてくれたお姉さんは何処です?私の中にあるのがあの人のシンフォギアなんですよね!?」

「彼女は絶対安静で病室から出られないわ。」

「え?」

「彼女、ツヴァイウィングの天羽奏君は君を助けたが、無理が祟ったのかベッドから体を動かす事もままならなくなってしまってね。だが、君が責任を感じることは無い。彼女は、今ちょっとだけ休んでいて、次のステージの準備をしているだけだから。」

 

その言葉は誰の耳にも立花響を気遣って発している事が分かった。それを言った司令自身も、無論立花響も例外ではない。

 

「ッ!?わ、分かりました。今度あの時のお礼と、お見舞いに行きます!!」

 

 

 

 

 

 

しばらくして、けたたましい警報音が鳴りノイズが出現した事を知らせる。当然俺達ニ課が出動する事になったけど、翼さんが先行しその後に響ちゃんが追っていく形になった。

 

「置いてきぼりを喰らった。まぁ、二人いるし、翼さんがいれば大丈夫だよな。前もそうだったし。歌とギターの練習...でも...いや、奏さんの所に行こう。俺の、いや。FIRE BOMBERの曲を聴いて元気になって、もう一度歌ってもらうんだ。俺の知らない曲を。翼さんともう一度一緒に!!」

 

俺はここに入るまで平々凡々な高校生で、歌も自分で歌うのは"前世の記憶"の事で控えていた。それが、あの日突然変わった。俺は無我夢中で前世で憧れだった人達..."FIRE BOMBER"の男ボーカル"熱気バサラ"の大名手である『突撃ラブハート』を下手な俺の歌で歌い微力ながらツヴァイウィングの手助けをした...と思う。殆ど歌うのに夢中で何も覚えていないという寂しい事実だけど...でも、俺がもっと上手くそれも、熱気バサラの様に歌えたなら、プロトデビルンや敵兵の心に響くような歌を歌えたなら、奏さんが動けなくなるという事にはならなかったと今も思っている。

 

「もっともっと練習して、熱気バサラの様に歌う!!」

 

今の俺の目標は、熱気バサラの様に自由に、力強く、誰もが聴き入る歌を歌う事。俺の歌はノイズを倒すものじゃない。俺の歌は皆に聴いてもらう為のもの。無論ノイズ達にだって。俺は、歌で宇宙戦争が終わった歴史を知ってる。俺は、歌で異星人と交流した人達を知ってる。俺は、歌で敵だった異星人に交友を開いた人達を知ってる。俺は、俺は!!

 

 

 

 

 

 

『GOOD-BYE!!』

 

立花響と風鳴翼が対峙している時、天羽奏の病室から男の歌声が響き続けていた。

 

そう、こんなベッドに別れを告げようぜ!!

 

人は様々な歌を聴いて、それで元気になった人なんて数え切れない程いる。そうさ!!俺の、俺の歌で!!少しでも奏さんを元気にしよう!だって、歌には不可能なんて無いんだぜ皆ぁ!!

 



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第4話

立花響ちゃんがシンフォギアを発現して一か月。この一か月間俺は、

 

「ども、今日も歌いに来たぜ!」

「あら、いつも悪いわね。奏ちゃん、今日もバサラ君歌いに来たわよ。」

 

天羽奏さんの入院している特異災害対策機動部二課御用達の病院に毎日歌いに来ている。

 

「う、ん。・・・き、今日も来た、んだね。」

「おう!俺の歌を聴けぇってやつだ。まぁ、病院内だからいつもと同じバラード中心の楽曲になっちまうけどな。」

「い、いよ。君の、歌を、き、聴くと、この体に力が戻って、く、くるような・・・感覚な、なんだ。」

「それは良かった。じゃ、今日もおっぱじめるぜ!!ファ「院内では分かっていますよね?」いやぁぁ...ハハハ、何をおっしゃる看護師さん。無論他の人に迷惑がかからないよう細心の注意を払って歌いますですハイ。」

 

こうして看護師さんに釘を打たれる事も慣れ

 

「奏さんの負担になる様な事があれば、即刻叩き出します。分かっていますね。バサラ君?」

「サ、サーイエッサー!!」

 

てませんね。毎回毎回怒られてます。

 

「偶には熱狂系が歌いたいけど...まっ、それはもっと良くなってからの楽しみってことで。『SUBMARINE STREET』」

 

一か月前、響ちゃんと翼さんが対峙してから二人の溝はそのまま。翼さんには響ちゃんが、奏さんを憤死の重症に追い込んで、さらにガングニールを奪ったようにしか見えないからな...こればっかりは本人同士で解決してもらわないとどうにもなりませんわ。まぁ、俺の歌で少しは緩和出来るだろうけど、そんな横槍はダメだな。

 

 

 

 

 

「奏ちゃんは、重病人だから激しい運動を促す歌はあまり看護師的には許可出来ないのよね~。」

 

彼、バサラ君の歌を聴いている奏ちゃんは気持ちよさそうに笑って聞いてた。彼女がここに入院してから、あまり笑わなくなってしまっていたけど彼のお陰ね。歌による心の癒し...かは分からないけど、最近体調も良くなってるし。このまま行けば、普通の生活に戻るのに2年と掛からないかもね。・・・()()()()()はね。

 

 

 

 

 

 

響ちゃんと翼さんの仲はぎくしゃくしているのが現状である。けれど、俺と響ちゃん、俺と翼さんの仲は悪くはない...と信じたい。

 

「じゃあ、今日はこれで帰ります。」

「う、ん。い、いつも、あ、ありがとう。」

「いえいえ。こんな俺の歌を聴いてくれて、有り難いとこっちは思っているんですよ。また明日も来ます。そろそろ、十八番の『突撃ラブハート』をアコギで披露しますよ。」

「うん。期待してるよ。」

 

さて、奏さんの病室を出たのはいいが、どの曲が一番効果的か未だ掴めていない状態だ。バラード系を一週間周期で聴いてもらい確かめているんだが、十八番の熱狂系を試せていないのはちょっといたい。でも、俺の歌治療で大分顔色がよくなってきた。それを、響ちゃんと翼さん両方...いや、この特異災害対策機動部二課全員が喜んでいる事だ。

 

「おや?赤城さん今日も奏に歌を?」

 

考え事をしていたら翼さんが前から歩いてきた。いつものお見舞いだな。

 

「はい。それに"さん"付けはいりませんよ。翼さんは俺の先輩にあたる人なんですから。」

「いや、済まない。年上だから自然と出てしまってな。」

「じゃあ、前言ったように『バサラ』って呼び捨てで呼んでくれたらいいですよ。そっちの方が呼びやすいでしょう?」

「まぁ、考えておく。それに、あか...バサラも敬語はやめてくれ。」

「了解ッス!!」

「「フフ、フフフフ。」」

「じゃ、俺は明日の収録の為に休むわ。」

「ああ。・・・明日も奏に歌を歌ってやってくれ。お前の歌を聴いた後は本当に調子が良いみたいだからな。」

「任せとけ!明日もご機嫌なサウンドを聴かせてやるぜ!!」

 

 

 

 

 

以前より翼さんが俺に接してくる回数が増した。まぁ、誰もが思いつくだろうが、奏さんに歌を歌っているときに病室に入ってきた事が切っ掛けだった。んで、その時から"翼さん"と呼ぶことを了承してもらい、気分転換と称して俺の歌を聴いてもらっていると説明をした。ぶっちゃけ、歌で治すなんて信じてもらえないだろうからそう云う事にしている。

 

「あ!?バサラさん!!」

 

今度は響ちゃんか。

 

「よう!元気か?」

「ええ!元気ですよ!!そう言えば、千葉さんが探していましたよ?何か新しい楽器が出来たって。」

「おお!!早速千葉さん作ってくれたか!!伝言ありがとう!じゃ行ってくるわ!!」

「はい!!」

 

俺はシンフォギアを扱えない。何度か試したが、一度も俺の歌ではシンフォギアが起動することは無かった。だが、俺にはそんなもの無くても"歌"がある。響ちゃんが言っていた千葉さんとは、特異災害対策機動部二課の研究員の一人だ。俺の"歌"に興味を持ち、独自の理論を完成させつつある人物だ。それと、俺の対ノイズ用の楽器を最初に造ってくれていた人で、俺の無理な要望を叶えてくれる唯一の人でもある。

バックパックに楽器をチューニングし、スピーカーを背負(しょ)って戦場で歌う。どう考えてもアホかバカがやることだ。俺はバカだ。断言できる。俺は敵味方関係なく、その場にいる全員に俺の、"FIRE BOMBER"の曲を聴いてもらう。そうすれば、きっと()()()()の奴らも...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノイズと戦っていた二人とは別に()()()()鎧を、シンフォギアを纏った者が出てきた。その鎧は、ネフシュタンの鎧。二年前ツヴァイウイングが居たにもかかわらず奪われた、翼にとっては因縁の鎧。

 

「私の不手際で、奪われた物を忘れるものか!何より、私の不手際で傷ついた者が居るのに、忘れてたまるか!!」

 

それは、鎧を纏っている彼女に言い放ったのか。それとも、その時何も守れなかった自分への言葉か本人しかしらない。そして、翼は覚悟を決め対峙した相手へ自身の武器の切っ先を向けた。

 

「やめてください翼さん!!相手は人です!!同じ人間です!!」

「「戦場で何をバカなことを!!」」

「「ッ!?」」

「寧ろ、貴女と気が合いそうね。」

「だったら、仲良くじゃれ合うかい!!」

 

謎の少女と翼の戦闘が拮抗していたのは最初だけ。驚いた事に、謎の棒状の物から少女は『ノイズ』を出現させ立花響を確保。謎の少女の目的は初めから響を確保する為だったのだ。その間にも翼は攻撃をし続けるが、ネフシュタンの鎧の武装である鞭でいなされ反撃も喰らっていた。

 

「・・・そうかい。脱がせるものなら、脱がして...何!?」

 

ボロボロの翼だが一瞬の隙を突き、影縫いを相手に仕掛けていた。

 

「防人の生きざま。覚悟を見せてあげる!!貴女の胸に焼き付けなさい!!」

 

 

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

 

 

「翼ちゃん、歌うつもりなのね。」

「・・・」

 

櫻井博士と司令はネフシュタンの鎧を相手が持っていると知り、それを奪還するために車を翼達の所へ走らせている。

 

(間に合ってくれ。

 

 

 

そして、ソレとは別に戦場に向かうヘリが一機。

 

「ノイズの出現警報が鳴って、そこに向かっているけど...状況がさっぱり分からん。んで、緒川さんもう一回状況説明お願いします!!」

『じゃ、最初から。バサラ君は知らなかっただろうけど、二年前のあの日僕達はもう一つあったシンフォギアをあの騒動で取られてしまっていたんだ。』

「で?」

『そ、それが今翼さんと対峙している少女が纏っていて攻撃してきている。そして、何らかの方法でノイズを操り、立花さんが捉えられてしまった。』

「...俺達とは違う組織?何で対立する必要が?ノイズには皆困ってんだぞ!?あ゛ぁ゛ー!!もう分からん!!もういい!!全部まとめて俺の歌を聴かせてやる!!」

『ちょ、まっ!?』

 

ブチィと指令室の緒川と繋いでいたインカムを切り、バサラは楽器のチューニングに入ってしまった。

 

 

 

バサラ君!!)

 

 

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

 

 

「______!!」

 

翼は歌った。絶歌を。今の状況をひっくり返すため。躊躇することなく。

 

「ぐ、あぁぁー!!」

 

ネフシュタンの鎧を纏った少女は数十メートル弾き飛ばされ、翼も

 

「ぐふ...」

 

口から血反吐を出し、倒れてしまった。そして、

 

『熱狂ライブの始まりだぁー!!俺の歌を聴けー!!』

 

彼の声がその戦場を激しく包んだ。

 

 

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

 

 

畜生!!間に合わなかった!!俺の目の前では翼さんがあの"絶歌"を歌ってしまっている。奏さんのような事はもう見たくない!!今の俺は二年前とは違う!!そう、俺にはあの時とは比べ物にならないような声が、歌がある!!

 

「ちょっと遅刻気味だが、そんなの関係ぇねぇ!!この場にいる全員に俺の歌を聴かせてやるぜ!!『熱狂ライブの始まりだぁー!!俺の歌を聴けー!!』」

 

こいつは、まだ収録してないとっておきの一曲だ!!皆存分に楽しんでいってくれよ!!

 

「アァァァァァァァアァァァァァー!!」

 

『HOLY LONELY LIGHT!!』

 

 

 

バサラの歌が聞こえた途端、ノイズ達は次々と消滅していった。それも、逃げ惑うことなく歌っているバサラの方向を見上げながらという奇妙な行動を起こして。

 

「ぐ、うぐ...」

(クソッ、デカいの喰らっちまった。これじゃあ当分まともに動けねぇ・・・あ、あれ?痛みが少しずつ和らいで行く!?シンフォギアの壊れた装甲が修復されていくだと!?)

 

謎の少女は自身に何が起きたか分からず混乱し、

 

「こ、この歌は...」

(間違いない。バサラの歌だ。この、体の中から湧き上がってくる力は何だ!?私は満身創痍で絶唱を歌ったんだぞ!?力が抜ける事はあっても、力が湧いてくるなんて...)

 

翼は満身創痍だった自身の内から湧き上がる力に驚愕した。

 

「す、凄い...」

(バサラさん凄い!!この場を、戦場だったこの場を一気にコンサート会場に変えちゃいました!!)

 

そして、響はバサラの歌に唯々圧倒されていた。

 

 

「ちぃ」

(クソッ、援軍かよ!!もっと呼ばれる前に早くこの場から離れるか。)

 

少女はその場を去ろうと飛び立つが、

 

「おいテメェ!」

「あ゛?」

 

バサラに呼び止められた。

 

「俺の歌を最後まで聴いて行きやがれ!!」

「はっ、知るか!!じゃあな!!」

 

が、そんな事無視し飛び去って行った。

 

「あ、テメェ!俺の歌を聴きやがれー!!」

 

 

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

 

 

「____!!」

 

バサラは歌い続ける。

 

「大丈夫ですか翼さん!!」

「あぁ、何とかな...」

 

傷ついた翼や響の為。

 

奏が言っていた事は本当だった。彼、バサラの歌に癒されたと。こいつの歌は何なんだ...

 

司令と櫻井博士や救護班が来るまで彼は歌い続けた。

 




や、やっと投稿できた...仕事が忙しすぎて倒れそう。次回はもう少し期間が空くかもしれません。


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第5話

Sheeena様誤字報告ありがとうございました。


 

 

 

「さて、二人に集まっていただいたのは私が新たに発見した理論。『サウンドエナジー理論』を聞いてもらう為です!!」

 

特異災害対策機動部二課の研究員『千葉』は司令と櫻井博士を自分の研究室に招いた。

 

「さて、このサウンドエナジー理論には『歌エネルギー』を説明しなければなりません。」

「歌?」

「エネルギーとは、何かね。千葉研究員?」

 

すかさず櫻井、司令が質問を千葉に投げかけた。

 

「私が独自に研究していた『歌の持つ波動』が動植物に与える効果の事を『歌エネルギー』と呼んでいます。これは、シンフォギアを起動する『歌』ではなく、ブドウや野菜に聞かせて育ちを良くさせる音楽や歌の事です。」

「ん?何故、そんなものの説明を私達にするのですか?」

 

『私不機嫌です』と言っている様に櫻井は千葉へそうぶっきら棒に返した。

 

「まてまて、櫻井君。疑問は千葉君の説明を聞いてからにしよう。」

「・・・分かりました。(くだらないモノだったら、とっととこの男を難癖付けて退職させましょう。はぁ、この無駄な時間のせいで少し私の計画が遅くなってしまうわ...)」

 

櫻井が心の中で愚痴っているのを他所に、千葉は自分の発見したエネルギーを説明していく。

 

「では、改めて。『歌エネルギー』を研究していた私はある()()の歌から膨大な歌エネルギーを観測しました!!」

「はぁ、()()()シンフォギアの装者でしょう?そんな分かり「全く違います!!」きった...え?えぇ!?」

「・・・それは誰だね。それと、彼女達の"歌エネルギー"は大きなモノではないのかね?」

 

櫻井の予想は外れ、それに疑問を持った司令が質問をする。

 

「まず、歌エネルギーの単位を仮に『千葉ソング』とします。ここの一般研究員の歌を測定し平均で『100千葉ソング』でした。そして、歌の上手い研究員で『500千葉ソング』。彼女達シンフォギア装者は平均『900千葉ソング』です。」

「ち、千葉ソングって...まぁ、いいわ。装者の彼女達の数値はそれ程低くはないと思うのだけれど?」

「フッフッフ、櫻井博士、甘いですよ。」

「そう、勿体ぶらずに私達に教えてくれないか?」

「ゴホン、では。以前、ツヴァイウィングのコンサートが襲われ奏さんが負傷した事を覚えていますか?」

「・・・ああ。」

「ええ...」

 

司令と櫻井は苦虫を噛み潰したような顔で答えた。

 

「...済みません。不謹慎でした。あの日私は、シンフォギア装者の歌エネルギー観測を行っていました。そして、出会ったんです!()に!!」

「「まさか!?」」

「そうです!()赤城(あかぎ)バサラ君です!!彼の数値は飛び抜けて高いです!!それもなんと『3,000千葉ソング』!!」

「「さ、3,000千葉ソング(ですって)!?」

 

一般人が100。装者が900。1,000でも驚く数値だが、それを超えるバサラの歌。

 

「そして、今日彼に()()()()()()()()()を用意しています!!」

「スペシャル?」

「ステージとは?」

 

困惑する二人を他所に研究員の千葉は続ける。

 

「マイクテスー!マイク、テース!!バサラ君用意はいいかい?」

『いつでも行けます!!』

「宜しい!!では、始めて下さい!!」

『よっしゃー!!俺の歌を聴けぇぇー!!』

 

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

 

いや~、千葉さんに呼ばれて来てみれば...

 

「ちょっと、これはどう言う事ですか!?」

「大丈夫です。医師からは数時間なら問題無いと言われていますから。」

「で、ですが彼女達をこんな所に運ぶなんて...」

 

大怪我を負った翼さんと奏さんが

 

「あ、あの~。千葉研究員から此処に来る様に言われた赤城です。何で怪我人の二人がこの()()()()()()に居るんですか!?それも、ベッドごと!!」

「私が知りたいわよ!!」

 

この女性はいつも二人を看護している看護師さんだ。彼女も同じ疑問を持っていた。

 

「そ、そう言われましても...医師に許可は貰いましたし、彼女達も賛成してくれたので...」

 

彼女の気迫に押され彼はそう口ごもってしまった。経験者として同情するよ。

 

「で、話は戻りますが、俺はここで何をすればいいんですか?」

「おぉっと、悪かったね。千葉研究員から伝言で『君の歌を二人にめいっぱい聴かせてあげてくれ』だそうだ。彼が研究している『歌エネルギー』にも関係しているそうだよ。」

 

オイオイオイオイ!!『歌エネルギー』だって!?千葉さんって本物のDr.千葉さんだったのか!?イヤイヤイヤイヤ、『関係している』って言ってたから別人なのか...

 

「_君!赤城君!!」

「は、はい!!」

 

や、やべぇ。考え事してたら呼ばれてたらしい。

 

「赤城君。彼女達に歌を頼めるか?」

「任せて下さい!とびっきりの歌、届けて見せます!!」

 

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

 

「千葉研究員、これはどう言う事かね?」

「彼女達は重症患者よ!!今すぐ止めさせなさい!!」

 

司令と櫻井が怒るのも無理はない。

 

「彼女達の了承や医師の了解も取っています。彼の歌を聴いて、彼女達を見てからどんなお叱りでも受けます。ですから、彼...バサラ君の『歌』を聴いて下さい!!」

 

翼、奏の二人は病室のベッドごと特異災害対策機動部二課の音響室に入っていたからだ。そして、そこと中継しているモニターにギターを構え歌おうとしている赤城バサラが映っていた。

 

(さぁ、バサラ君。君の歌を世界に、イヤ、宇宙に魅せつけろ!!)

 

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

 

「じゃあ、奏さんに前言っていた『突撃ラブハート』から行くぜ!!」

 

俺は大きく息を吸って、思いっきり叫んだ。

 

『俺の歌を聴けぇー!!突撃ラブハァァァァァァァト!!』

「・・・ファ、ファイ、ヤー...」

「え゛!?か、奏!?・・・も、もう!!やればいいんでしょ!やれば!!ボンバー!!」

 

奏さんと翼さん(奏さんに睨まれて渋々だったけど)の掛け声で俺は歌い始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ち、力が、漲っ、て、来る、よう、だな」

「不思議だ。あれ程だるかった感じが無くなってきている。」

 

『次は、PLANET DANCE!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「か、身体が、軽くな、なった気がする。」

「奏もか?私も少し軽くなったような...」

 

『どんどん行くぜぇ!!HOLY LONELY LIGHT!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「翼、私の声変じゃないか?」

「か、奏!?こ、声が!?」

「バサラの歌、『HOLY LONELY LIGHT』を聴いてから喉の調子が良くなったよ。」

 

『今日はこれで終わりだ。あまり無理させちゃ悪りぃしな。』

 

たった三曲。されど三曲だ。俺の今出せる全てを出したつもりだ。

 

「バサラ、ありがとう。」

「いやいや。気にしなさんな。俺は歌を歌っただけだ。奏さんも俺何かのう、た、を・・・か、奏さん!?」

「ヘヘヘ、何かお前の歌で少し良くなったぜ!!」

「は、はぁぁぁぁぁ!?」

「叫びたいのはこちらの方だぞバサラ。曲を聴く毎に私達の体調が良くなってきて、今なら、奏も私も歩く事ぐらいなら出来そうだ。」

 

開いた口が塞がらないぜ。()()()()ならまだしも

俺の歌は擦り傷やちょっとした切り傷なら治る程度だぞ!?

 

「・・・こ、これは...」

「う、嘘でしょ...」

 

ははは、他の研究員とあの看護師さんも驚いてら...

 

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

 

サウンドエナジー理論と歌エネルギーか。この私が知らない歌の波長や効果。そして、驚くべきは『範囲』。この歌を聴いているもの全てに、微量だが影響を及ぼしている。前言撤回ね。この研究員は使()()()

 

「こ、これがバサラ君の歌。歌エネルギーの効果、なのか?」

「い、いえ。私もこれ程とは思いもよりませんでした。体調が少し良くなる程度を考えていましたから。」

「・・・」

 

そして、赤城バサラ。再起不能だった奏の声を蘇えらせ体をも癒し、重症の翼を軽傷域まで治した。私の計画の要に...

 

「け、計測結果に凄い数値が出てます!!」

「...私にも見せて。」

「は、はい。これです!!」

 

 

 

 

 

 

フ、フハハハハハハハ!!赤城バサラ君!君はなんて素晴らしい存在なんだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

千葉が持っていた計器には、『10,000千葉ソング』と云う数値が映し出されていた。

 




あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。


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第6話

Sheeena様誤字報告ありがとうございました。


 

 

昨日、大規模な戦闘があったらしい。()()は司令からの連絡でそれを知った。デュランダルって完全聖遺物の輸送中に、謎の集団とまた例の少女に襲われたらしい。奇跡的に死人は出てなかったらしい。が、俺は駆けつけたかった!!けど、今は無理だ。でも、響ちゃん一人戦わせるのは俺としちゃあ、黙ってられねえ!!だから!!

 

『今日もご機嫌なサウンドを届けるぜぇー!!ファイヤー!!』

「「ボンバー!!」」

『PLANET DANCE!!』

 

待っててくれ!

 

「早く体を治さなければ、また、立花が...」

「翼、焦るな!バサラが毎日私達に『歌』を歌ってくれてる。それに、」

「それに?」

「私も戦闘以外だったら助けられるからな!!」

「奏...」

 

この二人を連れて、助けに行くからな!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

立花響が司令と(常識をポイした)修行している頃、バサラはその『歌』の力を使って重症の天羽奏と風鳴翼を治療していた。その為、響は修行ばかりで二人の見舞いには行けなかった。そして、今日...

 

「あれ?翼さんと奏さんは?」

 

デュランダルを起動しその力で謎の少女を撃退した立花は、二人が入院している病室へ赴いていた。

 

「あら?貴女は...確か、立花響さん?」

「は、はい!!」

 

声を掛けたのは天羽奏を担当している女性看護師。

 

「今日はお見舞い?」

「はい!!」

「それは、申し訳ないわね。もう、奏ちゃん此処には居ないのよ。翼ちゃんもだけど...」

「え!?そ、それは...」

 

看護師は少し顔をしかめそう言った。

 

「ま、まさか...」

「ちょ、ちょっと待って!!・・・あぁ、行っちゃった...」

 

響は走る。走る!走る!!

 

「(嘘、嘘!!ちょっと前まで元気に話をしてたじゃないですか!!)奏さん!翼さん!!」

 

走る!走る!!

 

「うわぁ!?ちょ、危ねぇじゃねえか!!」

「わわ、済みません!!」

 

病院内を走り抜け、外へ続く通路を走っていた響は出口付近で誰かとぶつかりそうになってしまった。

 

「って、響じゃねぇか!どうしたそんなに急いで...オイオイ、なに泣いてんだ?何か悲しい事でもあったか?」

「う゛っ、そ、それが!聞いてください奏さん!!奏さんと翼さんが!!・・・あれ?奏さん?え?えぇ!?」

 

それは、入院しているハズだった天羽奏だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、いたいた。響さ~ん。何か勘違いされてって...もう、大丈夫ね。」

 

響を追って来た看護師はその光景を見て胸を撫で下ろした。

 

「良かったですね!奏さん!!翼さん!!」

「ハッハッハ、私の後輩は元気一杯だな~。今日で私ら二人とも退院だって連絡してねかったな!悪い、悪い!!戦闘はもう無理だけど後方支援と『歌』なら任せてくれよ!!」

「立花だけに任せていたら、今日の様に先走るからな。わ、私が先輩として...ごにょごにょ。」

 

奏は大いに笑い、翼は今まで距離を取って接してきたからか、何かたどたどしい。

ちなみに、看護師が顔をしかめていたのは、『はぁ~。彼、バサラ君がいたら私達看護師や、医師っているのかしら?』と悩んでいたからである。

 

「そう言えば、バサラさんは何処に行ったんですか?」

「ああ。アイツなら、私達を治療(歌を歌って)した後櫻井博士と一緒に出て行ったよ。」

「バサラは連日私達に歌を歌ってくれていたからな。恐らく、櫻井博士が別室に連れて行って休ませているんだろう。」

「そうなんですか...バサラさんとはここ最近会ってなかったんで、お二人を回復させてくださったお礼や色々お話がしたかったんですけど...」

「まぁ、私が言う立場じゃねえけど、今日は休ませてやってくれ。」

「はい!!」

 

長期療養中だった奏を中心に、三人は今まで話せなかった様々な事を話し、笑い、食べ、今までにない楽しい時間を過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、櫻井博士、用ってなんすか?」

「なに、簡単な事よ。貴方の『歌』、仮に『歌エネルギー』と呼ばせてもらうわ。それを分析する為、この小型マイクを歌う時に付けてくれないかしら?」

「そんなんでいいんすか?勿論大丈夫ですよ。」

「良かったわ。じゃ、頼んだわよ。」

 

これで、直接この子の『歌』の効力を試せるわ。まずは...使えないあの娘に試してみましょう。幾分かはマシになればいいのだけれど・・・

 

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

 

響は謎の少女の攻撃から同級生小日向未来を助ける為、彼女の目の前で『ガングニール』を装着し守った。そして、その場から何も言わずに謎の少女を追って行ってしまう。

二人の装者は激しい戦いの末、新たな力を手に入れた響が勝ったのである。そして、謎の少女はうっかり自分の名前を言ってしまった。『雪音クリス』と。

 

「だって、私達同じ人間だよ!!」

「...くせい...」

「え?」

「青臭ぇんだよ!!」

 

謎の少女、雪音クリスは装いを変え、『イチイバル』と云う名のシンフォギアを纏い響へ攻撃していく。

 

「歌わせたな...」

「えっ!?」

「私に歌を歌わせたな!教えてやる!!私は歌が大嫌いだ!!」

 

装いを変えたクリスの攻撃は以前より激しく、響を近づかせないよう中遠距離型の兵器の形を次々と出していく。

 

『敵とか味方とか、人間や人外も関係ねぇー!!俺の歌を聴きやがれー!!HEART & SOUL!!』

「大丈夫か立花!!」

 

そこに駆けつけたのは赤城バサラと回復した風鳴翼。翼が自身の剣で作った盾で響を守り、バサラが

 

『_________!!』

 

バックパックを背負い、降下しながら歌っていた。

 

「フッ、死に体でおねんねと聞いていたが、足手まといを庇いに来たか?それも、喧しいヤツを連れて!!」

「その情報は古いぞ!私はもう全快だ!!それに、立花は足手まといではない!今歌っているバサラと同じ私の仲間だ!!」

 

いや~。嬉しい事言ってくれるね翼さん。ま、たまたま近くで収録してた俺が、直接司令から連絡を受けて駆け付けた翼さんにばったり会ったから俺は此処に居るだけだけどな!!

 

翼はクリスをいとも簡単に追い詰めていく。何か憑き物が落ちたかのようだ。

 

あれ?俺ってこの場に要らねぇんじゃねえか?って

 

『危ねぇ!!アァァァァァァァアァァァァァー!!HOLY LONELY LIGHT!!』

 

突如クリスを狙って空を飛ぶノイズが攻撃を仕掛けて来た。間一髪、響がクリスを庇いバサラの歌よって迎撃された。そして、幸か不幸かバサラの歌により響、クリス両者とも回復した。

 

(・・・さっきまでの傷がほとんど治っていやがる!?フィーネの言った通りだ。コイツの『歌』は本当に人体に影響し様々な効力を発揮させてやがる。)

 

オイオイどうなってんだ?情報だとこの爆乳の姉ちゃんがノイズを操ってんじゃねぇのかよ!?俺達と同じように襲われてんじゃねえか!!

 

「命じた事さえ出来ないなんて、貴女は私をどこまで失望させるのかしら...」

「フィーネ!?」

 

チィ、今度は金髪美人の姉ちゃんかよ!!って何かへんな杖持って...成程、あれでノイズ達を操ってんのか...

 

「こんな奴が居なくたって戦争の火種くらいあたし一人で消してやる!!そうすれば、アンタの言うように人は呪いから解放されて『俺の、歌を、聴けー!!』ってテメェは五月蠅いんだよ!!」

 

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

 

「こんな奴が居なくたって戦争の火種くらいあたし一人で消してやる!!」

 

ん?()()()()()を消すって言ったなこの娘。でも、戦争の火種を消すんなら!!

 

『俺の、歌を、聴けー!!』

 

俺の、『FIRE BOMBER』の歌なら、争いは何だって消えるんだよぉー!!

 

「ふぅ、少し邪魔が入ったけど、もう貴女に用はないわ。」

「え!?」

 

そう言って金髪美人の姉ちゃんはノイズを翼さんと響ちゃんへけしかけ逃げようと後ろへ飛んだ。だが、俺はあの姉ちゃんに言いたいことがある!!

 

『この歌で、()()()()を止めた男を俺は知ってんだー!!逃げないで、俺の歌を聴きやがれー!!』

「ッ!?...それは、興味深いわね。今度会ったら聞かせてもらうわ!!」

『待ちやがれ!!』

 

・・・逃げられちまったな。

 

「フィーネ!!」

 

爆乳の姉ちゃんも行っちまったぜ。クソ!!何で俺の歌を聴かないヤツがどんどん出てくるんだ!!次会った時は二人纏めて、俺の歌を最後まで聴いてもらうからな!!

 



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第7話

 

 

 

~時は少し遡り、翼が重症を負った次の日~

 

風鳴翼と天羽奏は仲良く同じ病室で横になっていた。

 

「つ、翼...だ、大丈夫だよ。翼なら、直ぐに、な、治って、戦える、様にな、なるから。」

「奏...私は、私は!!」

「い、今なら、何でも、き、聞くよ。さ、さぁ、私に、は、話してみてくれ。」

 

『絶唱』を歌いこの病院へ担ぎ込まれた翼は奏とは違い、全身ボロボロだが奇跡的に喉と内臓類には損傷が全くなかった。これは、バサラが歌い続けた為であるが、二人がそれを知るのはもう少し後になってからだ。

 

翼はこれまで奏が怪我を負ったのは立花響のせいにし、距離を取っていた事を奏に正直に話した。

 

「き、気にするな、って、い、言いたいけど、私も、に、似た様なもん、だ、だから。こ、これで、す、少しは、す、スッキリしたろ。」

「う゛ん」

 

話している途中から涙を流していた翼は、涙声でそう答えた。パートナーだった奏の事は翼も良く知っている。

数年前、長野県皆神山でノイズに襲撃された聖遺物発掘チームの唯一の生き残りが彼女、天羽奏だ。家族を殺したノイズへの復讐を強く望み、シンフォギアの適合者になるべく制御薬『LiNKER』を過剰投与した結果、後天的な形で適合者となったのだ。

 

「わ、私も、此処に、来た、最初の、頃は、そんなだったよ。何で、私なのか。な、何で動けない、の、のか。で、でも、アイツが、バサラが来てから、そんなか、考え、吹き飛んじま、まったよ。」

「そ、それは何故...」

「ぶ、武器は、し、シンフォギアだ、だけじゃないって。あ、アイツの『歌』は、の、ノイズにも、有効、だったし、それに」

「それに?」

「あ、アイツ、と、とんでもない、事、い、言ってた。」

「な、なんて言ってたんだ?」

 

『敵とか味方とか、ノイズや人間なんて括りは関係ねぇ!!そこにいる全員にFIRE BOMBERの歌を聴かせてやる!!』

 

「ってさ。そ、そんとき、堪らず、わ、笑っちま、まったよ。アイツは、笑った私を、お、怒ってた、けどな。」

「て、敵味方関係なく、ぜ、全員に聴かせる!?そ、そんな大それたこと良く思いついたものだ...」

 

この日初めて翼は、バサラの考えを他人からだが聞いたのだった。

 

 

 

 

 

 

~現在~

 

 

 

 

 

ここは夜の公園。赤城バサラは、今日この公園の近くにあるステージで単独ミニライブを行う為、この公園で少し休憩をしていた。

 

「うわーん!!」

「泣くな!泣いたって何にもならないんだぞ!!」

 

何でこんな暗い公園で子供が泣いてんだ?よ~し、ここは俺の歌で...

 

「おい、こら弱いヤツを虐めるな!!」

 

お、この子達の姉ちゃんかな?これで、この子達も...

 

「お兄ちゃんを虐めないで!!」

 

・・・どうなってんだ!?

 

 

 

「お前が兄ちゃんに虐められてたんだろ?」

「違う!!」

「ん?」

「父ちゃんが居なくなったんだ。一緒に探してたけど妹がもう歩けないって、泣き出して...それで...」

「迷子かよ!だったらハナからそう言えよな...」

「だって、だって...」

「おい、こら泣くなって!!」

「妹を泣かしたな!!」

「あ~もうメンドクセェ!!一緒に探してやるから大人しくしやがれー!!」

 

成程、小さい子達は迷子か。ってか、あの姉ちゃん大丈夫か!?・・・あの姉ちゃんだけじゃ心配だ。よし!行くか!!

 

「よう!こんばんは!!俺は通りすがり「あっ、テメェ!!」って、姉ちゃん俺の知り合い?う~ん、どっかで会ったっけ?」

「い、いや...し、知り合いに...に、似てただけだ!!」

「まぁ、そんな事はいいや。「良いのかよ!!」で、話は戻るが、俺そこを通りすがったモンだけど...さっき話は聞いてたからよ、お前らの父ちゃん探すんなら手伝うぜ!あと、そっちの妹は俺が背負ってやる。なに、俺は鍛えてっから二人一緒に背負ってもビクともしないぜ!!」

 

そんなこんなで、俺と薄い紫色の髪の姉ちゃんでこの兄妹の親父さんを探す事になった。

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、お兄ちゃんって何してる人?」

「簡単に言うと、『歌』歌ってるな~。」

「えぇ!?お歌を歌ってるの~!!聴きたーい!!」

「じゃ、バラードって分かりにくいか...優しい感じの曲をちょっとだけな。『My Soul for You』」

 

(...こんな歌もあるんだな。いつもいつもコイツは叫んでばっかだから、こんな曲は歌わねぇと思ってたぜ...コイツの歌は凄い。他人を癒すことが出来る。コイツはやっぱり歌う事が『好き』な奴なんだろうな。歌う事が『嫌い』で壊す事しか出来ない私とは違って・・・)

 

「お兄ちゃん凄い綺麗な歌~!」

「本当に歌、歌えたんだ!!」

「おい、歌えるって言っただろ!!」

 

大分探したけどまだ見つかんねぇな。ヤベッ、そろそろミニライブの時間だ...よし!ミニライブはちょっと時間をずらそう。来てくれた皆には悪いが、ちゃんとこの子達を親父さんの所まで連れて行こう。じゃないと、ライブ中気になっていい歌が歌えないかもしれんしな!!

 

「悪い、ちょっと電話を「お前たち!どこ行ってたんだ!!」...いや、何でねぇ。ほら、親父さん見つかったぞ。」

 

迷子の兄妹を送り届けた俺と薄い紫色の髪の姉ちゃんは、その親子に手を振りながら仲睦まじい三人を見送った。

 

「それじゃ、俺はミニライブに出ねぇとな!流石に主役が居ないとライブも始まらねぇし!!俺は赤城バサラって言うんだ!じゃあな!!」

「ま、待て!!」

「ん?どうした?」

「(な、何で私は引き止めたりしたんだ!!あぁ、もう!!)ひ、一つだけ。一つだけ教えてくれ!!お前は歌う事は『好き』か!!わ、私は嫌いなんだけどよ...」

 

『好き』か『嫌い』かか...

 

「悪い。俺にそれを答える資格はねぇんだ。」

「え!?ど、どうして...好きなんじゃねぇのかよ!!」

「俺の『歌』は憧れていた人の模倣、そんなの所詮『盗作』だな。そんな『歌』しか歌えない俺に、歌が『好き』か『嫌い』かなんて言える訳ねぇだろ...こん事、今まで言えなかったけど。何故だろう?今日、初めてアンタに話したぜ。本当の()()()ってのが出来たら・・・アンタに聴いてもらいたい。おおっと、もう行かねぇと危ねぇ!!じゃ、またどこかで!!」

 

何でだろう...本当にこんな事言ったのは初めてだったな。あの姉ちゃん何か俺と似た感じがしたからか?まぁ、いいや。今は、

 

 

 

 

『熱狂ライブの幕開けだー!!ファイヤー!!』

「「「「ボンバー!!」」」」

『突撃ラブハート!!』

 

 

 

 

あの人達の『歌』を歌う事しか出来ないんだから...

 

 

 

 

 

今日もバサラは歌う。『FIRE BOMBER』の歌を。

 

(今、新たな可能性を秘めたモノは、聖遺物と融合した立花響。それに、この私も原理が未だ掴めていない『歌エネルギー』をもつ存在。)

 

「待ってなさいよ『赤城バサラ』。私が隅々まで調べて、あ・げ・る。」

 



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第8話

 

 

 

聖遺物『イチイバル』の反応を検知した特異災害対策機動部二課は、司令が最前線に立ち持ち主である『雪音クリス』の足取りを追っている。

響は親友である小日向未来に日本の機密である『シンフォギア』の事が知られ、二人の関係はギクシャクしていた。

 

「私は、ここだ...だから、関係ねぇ奴の所になんて行くんじゃねぇ!!」

 

そして、ノイズと戦い傷ついた雪音クリスを偶然発見した小日向未来は彼女を介抱した。だが、クリスを消すために『フィーネ』が寄越したか、はたまた偶然かノイズ達はクリスが助けられた街の近くに出現したのだった。

 

『_________!ぅ、ゴホッ!!』

 

ノイズ達を誘い込み、シンフォギアで撃退しようと歌うクリスだったが、介抱されても十全な状態ではなかったクリスはシンフォギアを纏う事が出来ず絶体絶命。

 

「フン!!」

 

そこに現れたのは、常識と云うモノは遥か彼方にフッ飛ばした我らが司令『風鳴弦十郎』。何時もの赤のカッターシャツとピンクのネクタイ姿でクリスとノイズの間に現れた。踏み込むだけで地面を隆起させノイズ達からの攻撃を防御。そして、隆起した地面を拳圧で相手にぶつけるサービスも忘れない。流石O・TO・NAである。

 

「大丈夫か?」

 

クリスを抱え離れたビルへひと跳躍し、クリスを心配する。だが、

 

『_________!!』

 

今度こそシンフォギアを装着出来たクリス。

 

「御覧の通りさ。私の事はいいから他の奴らの救助に向かいな!」

「だが...」

『司令はその姉ちゃんの言ったように他へ向かってくれ!後は俺がバックアップする!!』

 

そこに現れたのは赤城バサラ。バサラは丁度、この街の近くで喉が治った奏のボイストレーニングと自身の新曲の収録を行っていた。

 

「バサラ君...分かった!後は頼んだぞ!!」

「弦十郎の旦那ぁ!!この車両に乗ってくれ!直ぐに出る!!」

「奏君!今行く!!」

 

弦十郎は、バサラ達が乗って来た特殊車両に乗り込み各所に指示を出しながら自らも戦って行く。

 

「私は、一人で十分だけどな!!」

『まぁ、そう言うなよ...って、あれ!?迷子の時の姉ちゃんか!?』

「は~、今更気付いたのかよ...まぁ、私の『歌』に遅れんなよ!!」

『分かってるぜ!よっしゃあぁ!!行くぜぇ!!熱狂ライブの始まりだぁ!!POWER TO THE DREAM!!』

 

ハハッ、この()だ!この()ぁ!!私の中にある全てを出す手助けをしてくれるコイツの()...みるみるうちに私の傷を癒し、力を取り戻させ、私を魅了させるコイツの()。でも、コイツは『模倣』だと『盗作』だと言いやがった。でも、私はコイツが歌う()が羨ましい・・・私の、壊す事しか出来ない歌よりも...

 

『まだまだ消えるんじゃねぇぜノイズの観客達ぃ!!最後まで聴いてけぇ!!1.2.3.4.5.6.7 NIGHTS!!』

 

は?コイツ何て言った!?『消えるな』『観客』だと!?あのノイズ達をよりにもよって観客扱いかよ!!

 

「おい!何でノイズなんかが観客になるんだよ!!」

『そんなもん、俺の歌を聴くヤツは動植物だろうとなんだろうと全て観客だからさ!!』

「は?・・・馬鹿かテメェ!?」

『あぁ、自覚してるよ!大馬鹿野郎ってな!!』

 

自覚してんのかよ!本当に、大馬鹿野郎だな!!

 

「しゃあねぇ!今日はお前の歌ぁ、最後まで聴いて行ってやるよ!!...ノイズのクソ野郎の分もな!!」

『そりゃ、大歓迎だ!!俺の歌を聴けぇぇぇぇぇぇぇ!!過激にファイヤー!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

叔母を助ける為、ノイズの囮役を買って出た小日向未来。そして、叔母を安全な場所へ届け未来を助けに行く響。

 

「ハァ、ハァ...(もう、ダメ...走れない)」

 

だが、まだ響は未来と合流出来ていない。

 

「キャ!!」

 

ノイズの攻撃と走り続けた疲労の為、未来は倒れてしまった。

 

「ゴメン、響!!」

 

倒れた未来へ容赦なく襲い掛かるノイズ。

 

『まだ、諦めるのは早いぜ!ORBITAL BEAT!!』

「こ、この歌って!?」

「歌でバサラの様にノイズを倒す事は出来ねぇけど、元々鍛えてた身体だ!人ひとり抱えて飛ぶのなんざ朝飯前だぜぇ!!」

「あ、天羽、奏、さん!?」

 

そこへ駆けつけたのは長期療養中だった『天羽奏』。司令から街の人を助けるよう指示され偶然見つけた未来を助けに来たのだ。それに、ノイズ達と戦っていた奏の身体能力はO・TO・NAの司令には劣るが、バサラの歌のお陰で以前と変わらないまで回復している。

 

「っと、いけねぇ。何時も歌いながら戦ってたのが染みついてら。ま、気にすんな!!」

「キャア!!」

 

次々と襲い掛かるノイズの攻撃を未来を抱えながら躱す奏。

 

「そろそろ、後輩が...来た来た!!響!後は頼んだよ!!」

『はい!任せて下さい!!』

「こ、後輩って!?」

 

響の纏ったシンフォギアの一撃であっけなく倒されたノイズ。

 

「はぁ~、分かっちゃいたけど...あんだけ私が手こずってたのに一撃とは・・・もう一度『LiNKER』投与してもらおうかな~。」

「絶っ対ダメです!!」

「わ、悪い響!冗談だ、冗談!!じゃ、私は弦十郎の旦那の所に戻るぜ。...響、友達は大切にしな!!」

「わ、分かってます!!」

 

ニシシと笑いながらその場から立ち去った奏。シンフォギア以外にもノイズに対抗出来るモノを知った奏はバサラと同じ『歌』で対抗する事にした。もう一度LiNKERの投与も考えたが、バサラの歌の影響かボロボロだった内臓が健康体になっていた為、LiNKERを再び投与し、またボロボロになる事を良しとしなかった司令や翼達により反対されたのだった。

 

(後は、二人でしっかり話し合いな響!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのぅ~、師匠ぅ~。」

「お?」

「この娘にまた戦っている所を、じっくりばっちり目の当たりにされてしまって...」

「違うんです!私が首を突っ込んでしまったから...」

 

あの後、響と未来は漸く仲直りが出来た。が、再び戦っている響を見てしまった未来は、響の師匠『風鳴弦十郎』の元へ行き響と一緒に事情を話した。

 

「詳細は、後で報告書の形で聞く。まぁ、不可抗力と云うやつだろう。それに、人命救助の立役者に五月蠅い小言は言えないだろうよ。」

 

そこへ、突貫してくるピンクの車が1台。

 

「主役は遅れて登場よ!!」

 

櫻井博士が運転している車だった。

 

「後は頼りがいのある大人達の出番だ。響くん達は帰って休んでくれ。」

「「はい。」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あの!私、避難の途中で友達とはぐれちゃって、『雪音クリス』と言うんですけど...」

 

介抱し避難の時離れてしまったクリス。その事を心配した未来はそう弦十郎に聞いた。

 

「無事だよ。クリスくんから君に会ったらそう伝えてくれと頼まれてね。」

「良かった!!」

「今すぐには会えないが、私達が保護し此処とは別のシェルターにいる。」

「分かりました!!連絡が来たら直ぐに呼んでください!!」

 

そう言うと未来は響の後を追って帰って行った。

 

「・・・だ、そうだ。」

「ふ、フン!!れ、礼は改めて私から直接言うぜ!!で、私はこれからどうすりゃいいんだ?」

「君にはここから少し離れたバサラ君が住んでいるマンションの一室で生活してもらう。フィーネがいつ仕掛けてくるか分からないからな。一応、そこには奏君...以前のガングニールの装者も住んでいる。」

「分かったよ。」

 

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

 

『こ、この反応はアニマスピリチア!?』

『どうされました__様?』

『アニマスピリチアの反応が微弱だが観測した。』

『どうされます?』

『無論、行く以外選択肢はない。』

『御意。』

 



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第9話

最後、台本形式になっています。


 

 

 

さてさて、奏さんと翼さんが復活し活気づく特異災害対策機動部二課。更に、不可抗力とは言え、響ちゃんのシンフォギアが親友である小日向未来ちゃんに知られてしまい...

 

「こ、小日向、み、未来って言います!!さ、サイン下さいん!!」

「ちょ、未来緊張しすぎだよ!!」

「アハハハ、気軽に言ってくれればいつでも受けるぜ。」

 

特異災害対策機動部二課の保護下に入って俺の目の前にいます。

 

「でも、良いのかい?俺よりも翼さんや奏さんのサインの方が「既に頂いています!!」...こ、行動が早いね~。」

 

廊下を歩いていたら、鬼気迫る形相で俺に走り寄って来て今の状況になっちまった。何故だろう。この娘に苦手意識を持ってしまってる...

 

「はいよ。こんなんでいいか?」

「ありがとうございます!!」

「バサラさんありがとうございました!そうだ、今日私達翼さん達と遊びに行くんです!!一緒にどうですか?」

 

あ~、そう言や奏さんがそんな事言ってたな。

 

「悪い。今日は約束があるんだ。また今度誘ってくれ。」

「え!?先約があるなら仕方がないですね・・・は、は~ん。さては彼女さんとデートですね!!」

「おぉっと!もう予定の時間が迫ってる!!じゃ!!」

「あ、バサラさん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

翼、奏、響、未来の四人が楽しくショッピングをしている頃バサラは...

 

「は~、彼女とデートなら良かったんだがな...」

「おいコラ!私も女だぞ!!デ、デートじゃないけどな!!でも!一緒に買い物に来ている事に感謝しな!!」

「いや、俺の方が一緒に来てる側だけど...」

 

クリスと買い物に来ていた。無論、荷物持ちで。

 

「雑貨と食料の買い出しはこんなもんだろ...後は、クリスちゃんの服だな。」

 

ちくせう。分かってた!分かってたんだ!!こんな事だろうと...昨日急にクリスちゃんが「私と付き合ってくれ!!」って言って来たから即「いいぜ!!」ってドヤ顔で言ってホイホイ付いて来たんだ。とうとう俺にも「彼女が!?」って思ったんだ。そしたら...やっぱ荷物持ち。もう一度言おう。ちくせう。

 

「オイオイ、何落ち込んでんだ?次は私の服買うの付き合えよ!」

「ヘイヘイ、仰せのままにお姫様...」

「お、お姫様って!?...ごにょごにょ」

 

 

 

 

 

クリスの私服を買い、昼食を済ませ帰路に付いた二人。街の大通りを歩くバサラは大量の荷物を持たされ、その半歩先をクリスが歩いていた。

 

「悪かったな。私の買い物に突き合わせちまって!!」

「気にすんなよ。何だかんだあったけど、今はご近所さんだ。また、何かあったら俺か奏さんに相談しろよな!・・・ちょっと役得だったし(小声)」

「ま、慣れるまでよろしく頼むぜ!!」

 

不安だったクリスの他人との付き合いは、姐御肌の奏が率先して世話をした為、最初は少しギスギスしたが今は問題なく他人と話せるようになった。しかし、司令以外の大人はまだ苦手らしく、あまり話をしたがらないらしい。

 

『アニマスピリチア。貴様はそんなものなのか?』

 

マンションまでの帰路を歩いていると突如男が二人に...バサラに話しかけてきた。

 

「な...んだと!?」

「テメェ、何もんだ!!」

『何者など、そんな事はどうでもいい。お前の()はその程度のモノなのか?そんなものでアニマスピリチアだと云うのか?』

 

予想はしていた。俺以外に()()の記憶をもった人物がいる可能性を。だが、この男はそれとは別、あの()()()()()を直接見たことがある。或いは、会った事のある様な言い回しだ。それに、何処かで見た事のあるような・・・

 

「あ、アンタは...」

『ゼントラーディ達には"プロトデビルン"と呼ばれていた者だ。』

「プロトデビルン?何だそりゃ?そんなもん知ら「プ、プロトデビルンだって!?」ど、どうしたんだバサラ!?」

 

プロトデビルンと聞いて驚愕を隠せないバサラ。

 

『ほぅ、お前も()()()と云うのか。この()に危害を加えるつもりは無い。興味があるのはお前だ。お前の持っている"スピリチア"だ。なに、今は()()にお前の存在を連絡するだけ...ではな。』

 

そう言い残し、男は人ごみの中に消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何なんだよアイツ!!一方的に喋ってどっかに行きやがった!!」

「・・・」

 

男が去った後、クリスはその男に悪態を吐きバサラは時が止まったかのように沈黙を守っている。

 

「_!!__オイ!バサラ!!」

「お、おお!な、何だ?」

「さっきから声掛けてんだろうが!それより、顔色悪いぞ。調子でも悪くなったか?」

「い、いや何でもないぜ。そろそろ帰ろう!!」

「ああ!帰って、私も料理ぐらい出来ることをお前と奏に教えてやるぜ!!」

「お、お手柔らかに頼むぜ...」

 

プロトデビルン。異次元宇宙「サブ・ユニバース」において、紀元前100万年代に発生・進化した知的エネルギー生命体でプロとカルチャー星間共和国によって付けられた名称だ。俺の前世の世界で()()()()7()という宇宙移民船団を襲い『スピリチア』なるエネルギーを求め争った相手でもある。数多(あまた)の争いを重ね漸く歌うことで発生する『歌エネルギー』によって俺達は彼らと和平を築くことが出来た。そう、その()は俺が歌わせてもらっている『FIRE BOMBER』のボーカル()()()()()の歌。

 

でも、何で地球にプロトデビルンがいるんだ!?それに俺の()に...『スピリチア』に興味があると言っていたぞ。俺、プロトデビルンの実験材料になって延々とスピリチアを吸われ続けるのか...

てか、その前にクリスの料理(劇物)を倒さないといけない。奏さん...一緒に生き残れるよう頑張りましょう・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、響です!」

『ノイズの出現パターンを検知した!!』

 

突如響に伝えられたノイズが出現した連絡。奇しくも今日は翼がソロで再出発するライブがあり、響自身もそのライブのチケットを渡されていた。

 

『翼にも連絡を「師匠!!」ん?どうした?』

「現場には私一人で『そいつは聞けねぇ相談だ!!』ク、クリスちゃん!?」

『現場には私と』

『俺で行くぜぇ!!』

「バサラさんまで!?」

『事情は何となく把握した!司令!翼さんへの連絡は無しだ!!』

『私らでノイズへの対処...ノイズへの熱烈なシンフォギアと歌の()()()は私らで行く!!いいな!!』

「バサラさん。クリスちゃん!!」

『分かった。ノイズの方はバサラ君とクリス君に行ってもらう!!』

 

 

 

 

 

 

 

「うぉぉぉ!俺の歌を聴けぇぇ!!『LIGHT THE LIGHT』!!」

「ヘッ、今日はバラードからかよ!!オラオラ、私の弾丸を喰らいやがれ!!」

 

海岸近くの工場密集地に現れたノイズを倒すため、バサラとクリスは()っている。

 

「何体集まろうとアイツらの出る幕はねぇぜ!!」

「そう言うこった!今日は俺らのライブで大いに盛り上がっていけ!!」

 

ノイズを撃ち崩すクリス。ノイズ全体に聴こえるよう声を張り歌い、その歌でクリスを支援するバサラ。

 

「特別サービスだ!もう一曲行くぜぇ!!『HELLO』!!」

 

俺の歌は、一応クリスのサポートは出来てる。でも、()()()()()の歌はサポートなんてチャチな事じゃなくて、あの歌声だけでこの一帯をライブ会場に出来る...もっと、もっと彼の歌に近づけないとあのプロトデビルンが、俺以外の奴を襲わせないようにさせれねぇじゃねぇか!!

 

「(どうしたんだバサラのヤツ。あのプロト何とかって奴に会ってから焦っている様に見えるぜ)...今日は飛ばしてんな!!」

「・・・もっと、もっと熱気バサラの様に(小声)・・・観客が多いからな!!」

「ハッ、そりゃ、そうだ!!」

 

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

 

バサラとクリスがノイズの対応を請け負ってくれた為、少し開演時間から過ぎはしたが翼のライブに間に合った響。

 

『今日は私のライブに来てくれてありがとう!!』

 

流っ石、翼さん!!このライブは大成功です!!って、あれ?翼さんの後ろって、え?えぇ??

 

『この曲で最後で『オイオイ、私の曲は無しか!!』えぇ!?奏!?』

 

な、何で奏さんがこのライブに!?そんな事誰も言ってませんでしたよ!?

 

『なに、サプライズゲストだよ。さぁ、皆ぁ!!今日は翼のソロ転身とツヴァイウイング最後のライブだぜ!!』

『な、何ぃ!?』

「「「嘘ぉ~!?」」」

『皆に心配かけたけど、この通り治療も終わった!!私は翼の様にソロにはならないけど、歌は続けて行くつもりだ!!』

『か、奏!?』

 

な、何々!?この状況を誰か教えてー!!

 

『最後になるけど私達ツヴァイウイングをここまで応援してくれてありがとう!!最後の歌は"逆光のフリューゲル"』

 

な、何が何だか分からない事が多すぎるよ~!!

 

『あ、そうそう。私は今度"ファイヤーボンバー"の女性ボーカルになりま~す!!』

「「「はぁ!?」」」

 

さ、最後にトンデモナイ爆弾を落としていったよぉぉぉぉ!?奏さんフリーダムすぎ!!

 



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第10話

 

 

 

「クソッ、何で空の敵がこうも多いんだよ!!」

「愚痴は後で好きなだけ言え!だが、お前に頼らなければならないのも事実!!」

「ごめんねクリスちゃん!!」

「謝るなら、対空戦の一つでも覚えやがれ!!ってか、バサラはこんな時何してんだぁー!!」

 

数多の空飛ぶノイズを相手にする翼、響、クリスの三人。敵の目的であろう『カ・ディンギル』と云う塔を捜索している途中、突如現れた超大型飛行ノイズ4体とノイズの集団。そして、彼女達が敵ノイズに向かう中『東京スカイタワー』が『カ・ディンギル』ではないかと予測が立てられたのだった。そして、ノイズを倒すため三人は出動したがバサラと奏は

 

「・・・何で俺ら捕まってんだ?」

「いや、私が聞きたいよ...寝て起きたらこの状態になってたんだぜ?」

「そっちもか...」

 

敵の捕虜として何処かの施設の一室で椅子に括り付けられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだ、二人と連絡が付かないのか!!」

 

司令が気になっているのは、カ・ディンギルの捜索と並行していたバサラと奏、二人の捜索。

 

「住んでるマンション、近隣のレコーディング施設も探しましたが見つかりません!!」

「ケータイは!?」

「先ほど、マンションの部屋で手つかずのまま充電中の二人の端末を発見!!争った形跡も見当たりません!お、恐らく寝ている隙を付いて拉致されたと考えられます!!」

「な、なにぃー!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそ、私の研究施設へ。」

 

二人が捕まっている施設へ一人の女性の声が響いた。

 

「ようこそってアンタが拉致って来たんじゃねえか!ってか、あのマンションの警備をどうやって掻い潜って俺らを此処に連れだしたんだ?」

「何、簡単な事よ。()()に入って()()に出て来たわ。」

「普通にって...チィ、やっぱりアンタだったか金髪の姉ちゃん。フィーネさんよぅ!!」

 

現れたのは、以前バサラ達の前に現れたノイズを操っていた金髪の女性フィーネ。以前と同じように白いワンピースを纏い、ノイズを操る杖も持っていた。

 

「あらあら、随分嫌われたようね。私はバサラ君の()の大ファンなのに...」

「そりゃ、嬉しい事だな。で、俺らを攫って何がしたいんだ?」

「ま、只の時間稼ぎよ。」

 

あっけらかんと答えるフィーネ。

 

「あり?そんだけ?私ら攫って、拷問して何か聞き出すんじゃねぇのか?」

「天羽、奏ちゃん。貴女の事は調べさせてもらったわ。歌手『ツヴァイウイング』の一人。でも本当は、薬の投与で後天的に『シンフォギア』を纏えるようになった防人。」

「な、何!?」

 

奏が驚くのも無理はない。シンフォギアは政府の中でも一部の者しか知らない極秘のモノ。そして、それを後天的とは言え纏えるようになった事実など知っている者はそれよりも少ないからだ。

 

「そして、二年前の時、私の予想外の事態で死んでしまいそうになった事。...ごめんね(小声)」

「お、お前があの時の首謀者だったのか!!ぶっ倒して「動かないで!!」...ハッ、関係ないね!!私もバサラも弦十郎の旦那に鍛えて貰ってんだ!!こんなロープへでもないね!!」

「そんな事は百も承知よ。でも、これを見てもそう言えるかしら?」

 

フィーネは持っていた何かのリモコンのスイッチを押した。

 

「う、嘘だろ...」

「チィ、動いたらソコにまたノイズを出現させるってか!?」

「そう、そこを動けばノイズ達をあの場所へもっと送ってあげる!!」

 

そこに映っていたのは、空飛ぶ大型ノイズや陸上型のノイズ達と戦う翼達が映っていた。

 

「それと、君が言っていた()()()()って何の事かしら?私はそれなりに様々な知識や情報を集めてるのだけど、そんな()()どんな文献にも記していなかったわ。」

「(少しでも時間を稼いであの"杖"を奪わないと...)そりゃ、そうだ。遠い()()の出来事。プロトカルチャーが生み出した巨人の人工生命体ゼントラーディとメルトランディ。そして、銀河系を巻き込んだ宇宙規模の戦争。プロトカルチャーの滅亡。第一次星間大戦。まだまだありますよ。どこから聞きたいです?」

「じゃあ、プロトカルチャーから...」

 

それからバサラは隙を作る為様々な話をした。

 

「・・・ま、一応こんな所か?」

「そ、壮大な話だな...」

「プロトカルチャー、銀河系の一大星間国家...知らない、知らないわ!そんな文明!!そんな科学!!」

 

感情があらわになった!今だ!!

 

「隙あり!!」

「隙なんてねぇよ!!」

 

マジか!?

 

「グゥ!!」

「バサラ!?」

 

バサラはフィーネの隙を付いたつもりだったが、それはフィーネがワザと作ったもの。そこに話し中ロープを抜け出し"杖"を奪おうとしたが、フィーネの蹴りを逆に喰らってしまった。

 

クソッ、ワザと隙を作ったな!!

 

「バサラ!お前にはもっと話してもらう事がある!!」

「ヘッ、何熱くなってんだ?今までの話は全部アンタの隙を作るための"作り話"だよ!!」

「チィ、ガキが調子に...」

 

掛かった!!

 

「悪りぃがこの"杖"は貰った!!」

 

フィーネとバサラが言い合いをしている隙を付き、奏が杖を奪ったのだ。この作戦は二段階。バサラがダメだったら奏がという風に見えないよう手でサインを送っていたのだ。

 

「チィ、でも当初の目的通り()()()()は出来たみたい。」

「な、何!?」

「画面を見てみなさい。」

「バ、バサラ!翼達が!!」

 

バサラが画面を見たがそこには...

 

「翼さん!響ちゃん!!クリスちゃん!!」

 

シンフォギアを纏った三人がノイズ達に追い詰められている光景だった。

 

「そう、本当に私は貴方を...彼女達を()()できる赤城バサラを此処に留めるのが目的。それに、さっきの話は()()の話よね。所々感情移入する場面や事細かな戦闘の描写、そして科学や文明の数々。作ったにしては出来すぎている。どうやってソレを知ったか本当に知りたいわね。」

「・・・俺が」

「ど、どうしたバサラ?」

「俺が、もっと上手く歌えたなら...」

「バサラ君?」

 

そうだ、俺がもっと上手く()()()()()の様に歌えたなら!もっと早く()()()()()の歌を歌っていればこんなことにはならなかったのに!!

 

「そうだ!俺がもっと上手く()()()()()の様に歌えたなら!こんなことにはならなかった!!」

「バ、バサラ!?」

「うぉぉぉぉぉぉぉ!!今は歌なんて歌ってられるか!!フィーネをぶっ倒して!翼さん達に加勢に行く!!」

「私に勝てると思っているの?」

「やってみないと分かんねぇだろうが!喰らえ!!」

 

バサラは大きく拳を振りかぶりフィーネへ襲い掛かった。司令との修行のお陰か無意識に震脚を使って一瞬のうちに距離を縮めた。

 

「(早い!?けど、対処はできる)当たってやるとでも...「ウグッ!!」な、何してるのアナタ!?」

 

が、突然奏が間に入りバサラの拳を両腕使って止めた。しかし、咄嗟に動いたため、勢いは殺しきれず腹部に少しパンチを喰らってしまっている。

 

「か、奏さん...」

「オイ、テメェ!今、何んつった?『歌を歌ってられるか』だぁ!?ふざけんなテメェ!!」

「・・・」

「何に負い目を感じているか知らねぇが、テメェは『歌う』んだろが!!私に歌ったみたいに歌うんだろうが!!」

「だけど!()()()()()みたいに歌え「んな事は知らねぇ!!」...」

「テメェは熱気バサラって奴じゃねぇ!()()()()()だ!!歌バカで私や翼達を『歌』で癒すことが出来る、年上で、後輩の()()()()()なんだよ!!」

「・・・奏さん。」

「フィーネは私が引き受ける!!テメェはあいつ等の所に行って歌えぇぇぇ!!」

 

・・・俺は何してるんだ?熱気バサラに憧れて、ギター弾いて、歌って...でも、俺は()()()()()じゃねぇ!そう!そうだ!!

 

「俺は()()()()()ニ十歳!!好きな歌は『突撃ラブハート』好きな歌手は熱気バサラ!!そう、俺は熱気バサラじゃない!!赤城バサラだ!!うぉぉぉぉぉぉ!!俺の歌を聴けぇぇ!!アァァァァァァァアァァァァァー!!『HOLY LONELY LIGHT』!!」

「ヘッ、それでこそバサラだ!行くぜフィーネ!!元防人を見くびるんじゃねぇぜ!!」

「・・・」

 




後日、変更するかもしれません。


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第11話

 

 

 

クリスのとっておきの一撃『MEGA DETH SYMPHONY』を使いノイズの数を減らしたが、ノイズが現れ続ける現象は止まっていない。対して、大きな被害を食い止めてはいるが、彼女らシンフォギアの装者達は休むことなく戦い続けている為疲弊している。

 

「絶体絶命って感じだな...」

「あ、諦めちゃダメです!!」

「立花の言う通りだ!私達防人が倒れたら、多くの一般人が犠牲になってしまうのだぞ!!」

「そんな事言ったって、オラァ!!『BILLION MAIDEN!!』弾丸の雨を喰らいな!!数が多すぎだっつうの!!」

 

飛び交うノイズをクリスが次々と撃ち落とし、翼と響が地上と低空飛行しているノイズ共を倒している。が、多勢に無勢。倒しても、倒しても次々現れるノイズに嫌気がさして来たクリスが愚痴りだしてしまった。

 

「バサラは来ねぇし、ノイズは湧いてくるし今日は厄日かよ!!」

「そう、愚痴を言っても、ハァ!!『蒼ノ一閃!!』何もならないぞ雪音!!」

「そうだよクリスちゃん。この!!今はこのノイズ達を何とか...危ないクリスちゃん!!」

 

翼達三人の連携を、仲間たちを盾にする事で一体のノイズが掻い潜って来た。狙われたのは対空戦が得意なクリス。

 

「クリスちゃ『突然美!!そして、殲滅美!!』な、なに!?」

「ひ、人型兵器だと!?」

 

だが、クリスを狙っていたノイズは、突如現れた紫色の人型兵器のビームによってあっけなく灰になっていった。

 

「た、助かったのか?」

『この()の知的生命体...貴様達は『アニマスピリチア』になり得る可能性を持っている。みすみす殺されるような事があれば()()()()()()様に顔向けできん!!故に援護美!!』

「そ、そんなものにまで"美"を付けるのか!?」

「つ、翼さんがツッコンでる!?」

『空の敵はこの()()()()()()()に任せ、地上の敵の殲滅に専念しろ!!』

 

人型兵器から男の声でそう一方的に言われ困惑する翼達。

 

「で、でもノイズは私達シンフォギアの装者じゃなきゃ倒せないんです!!」

 

そう、翼達が戦っているのは"ノイズ"。通常の兵器ではかすり傷一つ付かない敵である。

 

『そんな妙な格好しなくても、我らの"攻撃"はこのモノ達に通用する。先程もこの兵器を媒介にし放ったが、私の攻撃で敵を倒しただろう。』

「そ、そう言えばさっき助けてもらったな。」

「で、でも空飛ぶ敵はまだまだいるんですよ!それなら私をその兵器の手に乗せて『ミ、ミンメイアタックだと!?驚愕美!!』な、何ですかその危なそうな攻撃名は!!」

 

四人(?)が言い争っている間にもノイズは現れ街を破壊していく。

 

『えぇい!!説明するのも面倒だ!見ていろ!!行くぞ()()()()!!』

『グァア!!』

 

デカい!!そして、凄まじい威圧感を放っている生物が出て来た。

 

「な、何だよあれ...」

「か、怪獣!?」

「ノ、ノイズの大型種より大きな生物だと!?」

 

醜悪な顔に巨木をも超える腕、そして大きな翼。怪獣、モンスター、バケモノその名を体現している生物が翼達の上空に出現した。

 

『射線上に人型生物の反応なし!!やれ!グラビル、殲滅美!!』

『グァァァァァァァァ!!』

 

一閃。

 

「マ、マジかよ...」

「こ、これ程の攻撃力を有した生物が存在するのか!?」

「そ、空飛ぶノイズが殲滅されちゃいましたぁ!?」

 

グラビルと云う名の生物がたった一閃放っただけで空飛ぶノイズは殲滅されてしまった。

 

『さぁ、地上戦では私とグラビルの攻撃で逆に被害が大きくなってしまう!!私にこの星の"歌う美"を魅せてみろ!!』

「ヘッ、言われなくても!!」

「我らの()を聴いてみろ!!」

「違いますよ翼さん!こう言う時は...」

「「「私の歌を聴けぇぇぇぇぇぇ!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翼達に助太刀が入った同時刻、バサラ達にも援軍がやってきていた。

 

『届いたぞ貴様の()。あの男と違わぬスピリチアだった。』

「何だ貴様ぁ!!」

 

施設の壁をぶち破り、奏とフィーネの間に降りt...落ちて来た男はバサラに向けてそう言い放った。ちなみに、天井の壁が破壊され、それに巻き込まれた翼達を映していたモニターはあっけなく壊れてしまっている。

 

「何だこの男!弦十郎の旦那同様鍛えているのか!?」

「やはり俺が目的か!プロトデビルン!!」

 

奏は警戒を怠らず落ちて来た男とフィーネを睨み、バサラはその男に敵意を向けている。

 

「プ、プロトデビルンだと!?この者がエネルギー生命体...私をも上回る存在・・・」

 

フィーネは先程バサラが話した内容から一つのキーワードを思い出していた。

 

『ほぅ、この()にも我らが記されている文献があったのか。まぁ、そんな事はいい。そこの男は()()に合わせる約束をしている。女、悪いが敵対するなら容赦しないぞ...』

「チィ、まあ当初の目的は達成できたわ。此処は引くのが得策ね。じゃあな!!」

「あっ、待ちやがれ!!」

 

フィーネは何処かに逃げていき、謎のプロトデビルンと奏、バサラの三人が半壊状態の施設に残っている。

 

「・・・アンタの言う()()には会う。でも、今じゃねぇ。」

『それでいい。では連絡を「でも!!」何だ?』

「でも、さっきの女をこのまま放っていたら大変なことになる...俺を連れてさっきの女を追ってくれないか。それが終わったら煮るなり、焼くなり、スピリチアを搾り取ろうと好きにすればいい。」

 

このままあのフィーネって奴の好きにさせて堪るか!今度こそFIRE BOMBERの...いや、俺の()を聴かせてやるぜ!!

 

『分かった。では私に捕まれ行く「待ちな!!」今度は何だ。私はこれでも忙しい身だぞ。』

「私も連れて行け。何、足でまといって自覚してるが...ファイヤーボンバーの女ボーカル天羽奏!!相棒が行くってのに一人置いてきぼりってのは我慢ならねぇ!!」

『ファイヤーボンバー...成程、お前もいいスピリチアを秘めている。良いだろう私に捕まれ。』

 

その場の流れで、プロトデビルンの男に逃げて行ったフィーネの所まで送ってもらう事になった二人。

 

「連れて行ってもらう礼だ。私の歌、聴いてくれ『君ト云ウ、音奏デ、尽キルマデ』!!」

『お、おぉぉ!?アニマスピリチア!!・・・この者も()と引き合わせよう(小声)』

 

な、なにアニマスピリチアだって!?か、奏さんに何で...ま、まさか俺の歌治療の影響でか!?

 

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

 

カ・ディンギルは存在を隠匿するため、リディアン音楽院から特異災害対策機動部二課本部をつなぐエレベーターシャフトにカモフラージュして建造され、無限にエネルギーを発生するデュランダルを動力としており、何度でも発射が可能である。

 

「驚いたわ、あのノイズ達を退けるなんて...」

 

カ・ディンギルの存在に気付いた緒川慎次とその場にたまたま居合わせた小日向未来は、フィーネの強襲に会い負傷し、それを止めに入った風鳴弦十郎も不意を突かれて重傷を負ってしまっている。今は半壊したリディアン音楽院の一室で手当てを受けている。

 

「助けてくれた人が居たんです!!(すぐどこかに行ってしまったけど)」

「助け?まぁ、良いだろう!!私はこのカ・ディンギルで今宵の月を穿つ!!」

 

カ・ディンギルはフィーネが密かに建造していた、塔を模した巨大な荷電粒子砲であった。フィーネはこれにより"バラルの呪詛"の源である月を破壊することで、人類の統一言語回復と惑星重力バランス崩壊に伴う混乱によって、世界を統一することを目論んでいたのだった。

 

「フ、永遠を生きる私が余人に歩みを止められる事などあり得ない。」

「「「クッ、_________!!」」」

 

翼達はカ・ディンギルの発射を止める為歌い、戦う。この星の、世界の為に。それは、風鳴弦十郎が治療している部屋に偶然いた生徒たちも復活したモニター越しに見てしまっている。

 

「チィ、させるかぁ!!」

 

クリスが放ったミサイルをフィーネはネフシュタンの鎧を駆使し二つとも破壊した。

 

「時は満ちた!行けぇ!!カ・ディンギル!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんかあれはヤベェ!!オイ!俺をあの中心に投げ込んでくれ!!」

「しょ、正気かバサラ!?」

「ああ!!頼む!!それに、あそこでなきゃフィーネに俺の()を聴かせれねぇんだ!!頼む!!」

『・・・分かった。お前のスピリチア、存分に堪能させてもらうぞ。』

「へッ、任せとけ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『うぉぉぉぉぉぉぉ!!俺の歌を聴けぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!TRY AGAIN!!』

 

 



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第12話

 

 

 

『うぉぉぉぉぉぉぉ!!俺の歌を聴けぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!TRY AGAIN!!』

 

プロトデビルンの男に投げてもらい、その後バックパックを使ってカ・ディンギルの射線上に辿り付き歌いだしたバサラ。

 

「ば、馬鹿野郎!!私達の"絶唱"じゃねぇと対抗できるか!!」

「バサラ早くそこから逃げろ!!」

「バサラさん逃げて下さい死んじゃいます!!」

「ハッ、お前の『歌エネルギー』でもデュランダルで増幅され月をも穿つエネルギー、押し返せるものか!!」

 

は?何言ってんだ皆?

 

『エネルギーが何だとか、月を穿つとか、んなもん関係ねぇ!!此処にいる奴全員に()()()を聴かせるだけだぁ!!_________!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、嘘だろ...」

「こ、こんな事が・・・」

「す、凄いです!!」

「こんな事があってたまるかー!!」

 

驚く事にバサラの歌はカ・ディンギルの砲撃を止め...イヤ、止めるどころの騒ぎじゃない。徐々に押し返している。

 

漸く、漸くこの()を歌う決心が付いた。本当はこの歌は死ぬまで歌うつもりは全くなかった。でも...だけど!!

 

「やっぱ、この()()()()はこの()じゃねぇと伝わんねぇぜ!!」

 

奏さんに発破掛けられてやっと気付けた・・・俺は熱気バサラじゃねぇ!赤城バサラだ!!熱気バサラが好きな一人の人間なんだって...

 

 

 

 

 

 

 

<ボン!!>

 

「ん?なんか不吉な音が...げぇ!?バックパック燃えてんじゃん!?」

 

バサラの歌とカ・ディンギルの砲撃の威力に耐えられなかったバックパックは炎を上げ、みるみるうちに高度を下げている。

 

「ま、まだだ!!まだ落ちんじゃねぇ!!俺はまだ歌い切ってねぇんだよぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

バサラが叫ぶが一向に降下が止まる気配はない。

 

「俺はまだ諦めちゃい『バサラ君!!』な、何だ千葉さん!!今、絶賛落下中ぅ!!」

『それは復活したモニターで確認してるよ。だから!前言われて製作していた例の装置を君に届けるよ!!』

「ああ、それならバックパックも付いてるから問題ねぇけど...今俺は、でっかい砲撃のど真ん中だぜ!!誰に持ってこさせるんだよ!!」

『...アハハ、その点も問題ないよ。そろそろ、そちらに着くころだから。』

 

だ、誰が来るんだよ!?って、そんな事は後だ!!この高度を保ちながら歌い続ける!!

 

「うぉぉぉぉ!!俺の歌を『私の歌を聴けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』セリフ取られたぁ!?」

 

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

 

「ヘッ、一人だけいいカッコ付けさせるかよ!!千葉のオッサンから無理やりぶん取った()()。私でも扱えて助かったぜ!それに、プロトデビルンって男も気が利くじゃねぇか。知らなかったとは言え、基地の近くに降ろしてくれるなんてな!!おぉっと、そろそろ私の新ステージの開演だ!!『私の歌を聴けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』」

 

バサラが徐々に降下しているより上空から女の声が聞こえてくる。

 

「こ、この声は!?」

「う、上から聞こえてきます!!」

「オイオイ、ここの先輩方は飛ぶのが趣味なのか!?」

 

その声に困惑する翼と響。クリスに至っては、声のする方向を見て呆れながら叫んでいる。

 

「何故、何故だ!!お前たちが居るソコは、高エネルギーの渦巻く死地だぞ!!何故そんなところで歌ってられる!?」

『は?死地?笑わせてくれるぜ!!俺は()()()()の事は何度も経験してんだよ!!それに!!』

『今此処は、私達"ファイヤーボンバー"のライブ会場だ!!御託並べるより私達の歌を聴いてけぇぇぇぇぇ!!バサラ受け取れぇぇ!!』

 

彼女がバサラに投げたのは新型バックパック。

 

『助かったぜ()さん!!』

『もう"さん"はいらねぇぜ!!なんたって同じグループの相棒だろ?バサラ!!』

『あ、ああ!!じゃあ、()()()で行くぜ奏!!』

『任せろ!!』

 

新型バックパックを千葉研究員からパク...受け取り届けたのは天羽奏。ファイヤーボンバーの新人女性ボーカルだ。

 

『さあ!"サウンドブースター"の初お披露目だ!!』

『『俺(私)の歌を聴けぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!アァァァァァァァアァァァァァー!!HOLY LONELY LIGHT!!』』

 

新型バックパックの名前はサウンドブースター。その名の通り『歌エネルギー』を増幅する為の装置である。歌の持つ波動を高出力エネルギーに変換する本場Dr.千葉の『歌エネルギー変換システム』を採用し、歌エネルギーが1,000未満の者には起動できない使用になっている。

 

「か、奏が遠い存在に...」

「流石(?)先輩!!そこに痺れるぅ!憧れるぅ!!です!!」

「此処の司令は常識をかなぐり捨ててるし、馬鹿は馴れ馴れしいし、先輩は上から目線だし、バサラは良いヤツだし(小声)...でも、奏さんよぅそりゃ無いぜ!?(畜生!奏にバサラの隣、先越されちまった!!)」

 

奏から受け取ったサウンドブースターを装着し、初めてデュエットで歌っているバサラ。

 

「な、何故だ!奏の『歌エネルギー』量では起動すら出来ないはず!?...まさか、バサラの歌治療がこんな所にも影響を!?」

 

そう、バサラが行った歌治療により声が回復した奏は、今では『10,000千葉ソング』を叩き出すアニマスピリチアとなっていた。

 

「チィ、いい気になるなよガキ共が!!」

『んな事知ったこっちゃねぇ!!とっとと攻撃を止めて俺達の歌を聴きやがれってんだ!!』

「減らず口を...」

 

バサラの言葉を無視し、翼達を攻撃する手を止めないフィーネ。

 

「クソッ!バサラ達の歌のお陰で、辛うじてカ・ディンギルの攻撃を防いでいるけどこのままじゃジリ貧だ!!」

「分かっている!分かっているが、私達はフィーネを此処に留める事しかできない!!」

「三対一なのに、了子さん強すぎですよ!!」

 

クリスの砲撃の雨をネフシュタンの鎧の鞭で相殺。隙をついて翼が切りかかるが、今まで翼らシンフォギア装者を研究してきたデータを元に巧みな体捌きで攻撃を躱し蹴りや掌底を入れている。真っ直ぐで迷いの無い響の拳は二人の作った隙で的確に当たるが、バサラ達の歌とネフシュタンの鎧を取り込んだフィーネには効かない。

幸か不幸かバサラ達が歌っている為、双方傷を負っても直ぐに治ってしまう。だが、歌っているバサラと奏の二人は本人達は気付いていないが、徐々に精神的に疲れていっている。それに、バックパックが新しくなったとしても、二人の『歌』には無機物を癒す効果は無く、このままの状態が続けば墜落は免れない。

 

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

 

「クソッ、我々は黙ってみているしか出来ないのか!!」

 

彼らの上司たる風鳴弦十郎は、治療されながらそう吐き捨てた。

 

「司令・・・ッ!?し、司令!!カ・ディンギル近辺に謎の人型兵器を確認!!」

 

翼達が戦っている後方からのモニターに映った人型兵器。

 

「このタイミングで!?」

「ひ、人型兵器が...カ、カ・ディンギルに狙いを定めて自身より大きいバズーカを構えています!!」

「何としてでも止めろ!!全周波数の無線で攻撃中止を呼びかけ続けるんだ!!」

「間に合いません!!既に発射体制に入っています!!」

「南無三!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翼達が戦っている後方に突如現れた()()人型兵器。そして、翼達が戦っている戦場にその攻撃は無慈悲に放たれた。

 



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第13話

 

 

 

まだ、まだだ!!こんな所で音を上げるようじゃ、俺はあの人を...いや、()自身を超えられない!!

 

『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!俺の歌を聴けぇぇぇぇぇぇ!!』

「ヘッ、今度の相棒は頼もしい歌バカだぜ!!『私の歌を聴けぇぇぇぇぇ!!』」

『『突撃ラブハァァァァァァァァァト!!』』

 

赤城バサラと天羽奏の歌はカ・ディンギルの砲撃を留め続けている。

 

「クソッ!歌エネルギー...ここまで厄介なモノだとは思わなかったわ!!早くこのガキ共を黙らせてぇ!?」

「フィーネ何処を見ているうぅ!?」

「テメェら何やってん...だあぁぁぁぁ!?」

「み、皆さんどうしたんです、かぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

フィーネ、翼、クリス、響の視線がその一点から離れなくなった。

 

「な、何だあの起動兵器は!?」

「真っ赤な人型!?」

「つ、強そうです!!」

 

()()は赤い人型起動兵器。そして、空中に留まり、起動兵器より大きな()()()()をカ・ディンギルへ向けた。

 

「や、やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

<ガコン!ドカーン!!>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふ、不発弾!?」

「不発弾で良かったぜ!爆発したらここら一帯火の海だったぞ!!何だあのイカレた奴は!!」

「で、でもカ・ディンギルが少し傾きました!これで、月を壊す事は不可能です!!」

「こ、こんな事で私の計画が...」

 

バズーカは寸分狂わずカ・ディンギルに着弾。着弾の衝撃で少し傾き、月の射線上から外れバサラ達もその砲撃から外れた。そして、動力であったデュランダルは何故か沈黙してしまった。これで、フィーネの野望は潰え月が破壊される事は無くなったのだ。

 

 

 

が、

 

 

 

本当の『ライブ』はここから始まるのだ!!

 

 

 

『俺より先に俺の歌を歌うなんてやるじゃねぇか!!でも、歌っつうのは、こうゆう風に聴かせることも出来んだぜぇぇぇぇぇぇ!!』

 

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

 

カ・ディンギルの砲撃がバズーカの衝撃でバサラ達から大きく逸れ何故か沈黙した直後、バサラと奏は突然のことに戸惑っていた。そして、その人型兵器を目の当たりにしたバサラは、

 

・・・う、嘘だろ!?あの機体はVF-19!?それも赤い...まさか、まさか、まさか、まさか、まさか!?

 

今までにない、大きな衝撃を受けていた。

 

「か、奏。今俺は夢を見てるのか?」

「...どうしたバサラ?突然現れた人型起動兵器が気になるのは分かるけど「いいから俺の質問に答えてくれ!!」お、おう。夢でも何でもないぜ。今、此処に存在している。もう一度言う、夢なんかじゃねぇぞ。」

「そうか、そうか...」

「お、おいバサラ!?」

 

奏の言葉を聞いて漸くこれが夢じゃない事に気付けた。とめどなく溢れる涙と感情が抑えきれない。

 

「大丈夫、これは、うれし涙だ。まさか、彼に出会えるなんて...」

「一体どうした『俺より先に俺の歌を歌うなんてやるじゃねぇか!!でも、歌っつうのは、こうゆう風に聴かせることも出来んだぜぇぇぇぇぇぇ!!』今度は何なんだ!?」

 

突如響いた男の声。それは、

 

「...やっぱり、ファイヤーバルキリー。」

「あのバズーカ不発弾じゃねぇのかよ!!」

「アハハ、あれはバズーカじゃなくて、敵艦...大きな船に歌と映像を直接繋ぐ装置だよ。」

「何でバサラがそんな事知ってんだよ!?」

「...話しただろ。遠い宇宙の不思議な話。」

「ま、まさか!?」

「そう!!今、目の前の機体名はVF-19改エクスカリバー熱気バサラスペシャル!!俺が憧れていたFIRE BOMBERの男ボーカル()()()()()の愛機なんだよ!!」

 

赤城バサラが憧れ追い続けていた男、熱気バサラの声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ程我らの連絡を待てと言ったのに。忠告美!!」

()()()らしいではないか。それに、止めて止まるような男ではないだろう?」

「...同意いたします()()()()()()様。」

「さて、この()()のバサラ...ファイヤーボンバーは彼の歌を聴いて熱くなってくれるかどうか...」

「何を言っているのですゲペルニッチ様。あの男の歌を聴いて何も響かない"モノ"などいなかったではないですか!ゾクゾク美!!」

「それもそうだな。さて、楽しい『ライブ』の再開と行こうではないか!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『この()()に俺のサウンドを響かせてやるぜ!!俺の歌を聴けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』

 

カ・ディンギルを中心に響くサウンド。

 

「こ、これは...司令!全電波をジャックされています!!」

「状況確認!!」

「全映像端末が次々と()の人型兵器を映し出しています!!」

「い、一体何が始まろうとしてるんだ!?」

 

 

 

「歌、ですよ。ライブです。一方的ですけどね。」

「千葉研究員!?」

「私が造った歌エネルギー計測装置が限界突破して壊れてしまいました。司令、彼は今から歌を歌おうとしています。」

「歌を?」

「はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『弾丸ソウル!!』

 

その歌はここ一帯に留まらず、世界へ発信されている。

 

「新曲だと!?」

「ど、どうしたんだバサラ!?さっきからお前の行動に付いていけないんだが...」

 

『バサラ!!私も一緒に歌う!!』

『シビルも来たか!!よし!』

『『俺(私)の歌を聴けぇぇぇぇぇぇ!!』』

 

突如赤い人型兵器の肩に舞い降りた女性。

 

「か、完全に飛んでやがる...」

「最近は空飛ぶのが主流ナノカ...私のライブにも取り入れてみよう...」

「つ、翼さんしっかりしてください!!」

 

翼やバックパックを持たず普通に空を飛ぶ女性に驚愕するクリス。先程バサラ、奏が空を飛んで駆けつけてきた事を思い出し、空を飛ぶことが流行の最先端だと勘違いし、自身のライブに取り入れようとしている放心状態の翼。それを宥める響。此処は混沌(カオス)である。

 

「そ、それよりデュランダルはどうなったのだ!?私の計画は!?」

 

カ・ディンギルの中心部。デュランダルを置いてある場所でそれは起こった。

 

<ガシャン!!>

 

デュランダルは熱気バサラの歌声に共鳴するかのようにそこから飛び出し、

 

「あ、あれはデュランダル!?」

 

フィーネ達の目の前に出現した。

 

「ど、どうなってやがる!?この『歌』はバサラと同じように私らを癒してるが...このマグマの様な感情が抑えきれない!!」

「私もだ雪音。この感情、抑えようにも抑えきれない!!」

「わ、私も!!何て言うか、(あった)かい気持ちです!!」

 

それぞれ感じ方は違えど、思った事は同じだった。

 

「「「この熱い思い!歌わずにはいられない!!」」」

 

歌う。彼女達は歌う。歌詞も歌い手も知らない筈の歌を。

 

『『『弾丸ソウル!!』』』

 

<パリーン!!>

 

そして、それに呼応するかの様にデュランダルは砕け散り、

 

「な、何故デュランダルが!?」

 

彼女達に吸い込まれて行った。

 

『へ、へへへ。これで、バサラのいる空へ飛びたてる!!』

『流行の最先端は貰った!!』

『翼さん帰ってきてください!!』

 

三人のシンフォギアはデュランダルと融合し、装いを新たに空中でも行動可能になったのだ。

 

「何だそれは!?お前達は何を纏っている!?それは私が造ったものなのか?それは何なのだ!?」

 

『『『シンフォギアァァァァァァァァァ!!』』』

 

フィーネの問いに三人は答えた。そして、

 

『『『私達の歌も聴けぇぇぇぇぇぇ!!』』』

 

奏とバサラが居る上空へと飛び立っていった。

 

 

 

 

 

「・・・私はもう眼中にないようだな...」

「貴様は歌わないのか?」

「お前は...」

「名乗っていなかったな。私の名はゲペルニッチ。そして、今一度問おう。貴様は歌わないのか?」

 

フィーネの前に現れたのは、ついさっきバサラ達を拘束している所に乱入してきたプロトデビルンの男。

 

「今、計画を邪魔され失意のどん底にいる私に歌えと?ハハハ、お前は何を言っているんだ!!」

「だからこそだ。私の()()は我々に守っている人々が襲われ、自身も深く傷つき失意のどん底にいるときでも...いや、だからこそ『歌い』、我々にそのスピリチアを魅せた。一度、その思いを『歌』に乗せ伝えるといい。その思い届くかもしれぬぞ?」

 

ゲペルニッチはそう言い残し、上空で待機していたガビルと共に宇宙へ飛び出して行った。

 

「・・・やってやろうじゃない!!私があんなガキ共に後れを取ってたまるか!!私の、私の...『私の歌を聴けぇぇぇぇぇぇ!!』」

 

フィーネが叫ぶと同時に空中を漂っていた残りのデュランダルが呼応した。そして、ネフシュタンの鎧と融合。翼達と同じように羽を纏い翼達の後を追って飛び立っていった。

 



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第14話

黄金拍車様、ジャックオーランタン様、死神の逆位置様誤字の連絡ありがとうございました。


 

 

 

「恋を知らぬ小娘共が!大人の女性の色香を魅せてやる!!『私の歌を聴けぇぇぇぇぇ!!』」

 

『ambivalent world!!』

 

翼達を追って飛んできたフィーネ。今まで抑え込んできた感情が熱気バサラの歌で爆発し、今まさに炎の様に燃え上っている。

 

『いい歌だったぜ、あんた!』

「櫻井博士...」

「フィーネ。」

「了子さん。素晴らしい歌でした!!」

 

熱気バサラ、翼、クリス、響はその歌を称賛し

 

『ヘッ、漸く吹っ切れたか櫻井博士!』

『やっぱ、熱い思いは歌にして伝えるのが一番だな!!』

 

奏、赤城バサラは、憑き物が落ちた様に歌うフィーネに何故か安心していた。

 

「・・・褒められても、月を破壊できず、目的を達成できなかった事には変わりないわ。一つ面白い事を教えてあげましょう。『ノイズ』の正体は太古の昔、『バラルの呪詛』により統一言語を失い、協力よりも互いの殲滅を選んだ先史文明期の人類により作り出された人を殺す為の殺戮兵器よ。『惑星環境を損なわず、他者を殺戮する』事が目的...だから人間しか攻撃しないのよ。」

「う、嘘だろ...」

「そ、そんな同じ人間同士で!?」

「そんなの間違っています!!」

 

何を思ったかフィーネは自然災害として認知されている『ノイズ』の正体を翼達に教えた。

 

「・・・そう、間違っているわ。統一言語さえ無くならなければ!バラルの呪詛さえ無ければ!!そんな事は起こりえなかった!!」

『でも、そのおかげで()()()()が生まれた。』

「バサラ貴様ぁ!!」

 

赤城バサラが呟いた言葉を聞き過剰に反応したフィーネが鬼気迫る表情で詰め寄った。

 

『フィー...あ゛ぁ゛もう、面倒(めんど)くせぇ!!了子さん聞いてくれ!!そのお陰で様々な"言葉""文化""生活"が生まれ、『歌』が生まれたんだ!!様々なリズムや別の国、地域の言葉、それを混ぜ合わせ今も歌が昇華していってる!!これは疑わざる事実だ!!』

「・・・」

『それに、言葉なんざ分からなくても熱い歌を歌っていれば通じ合える!!』

『その通りダ!!』

 

赤城バサラの言葉を肯定する熱気バサラとシビル。赤城バサラにその存在を聞き、目の前に存在する宇宙を飛び回るプロトデビルンとその者と『歌』で交流を可能にした存在に言われれば、さすがのフィーネもぐうの音も出ない。

 

「では、私の今までは何だったのだ!!これからどうすればいいのだ!!」

『アンタの今まではこの事を知るためにあった。これからは...『バラルの呪詛』ってモンを創った存在を見返してやるために、永遠に近い生ってヤツを謳歌してやればいい。幸いシビルさん達プロトデビルンも似た様な存在だから、何かあったら連絡してみればいい。歌を歌いながらな!!』

「歌を歌いながらだと...」

 

赤城バサラの提案に困惑するフィーネ。

 

『あぁ!!やっと見つけたー!!バサラ!勝手に行動しないでっていつも言ってるでしょ!!』

『言っても無駄だミレーヌ。今までそうだったろう?ん?この星の人間か...何でこんな上空に集まってんだ?』

 

そこに現れたのはピンク色と緑色の人型兵器。ピンクの機体名はVF-11MAXL改ミレーヌ専用機。乗っているのは、女性ボーカルのミレーヌ・フレア・ジーナスとグババ。緑色の機体名はVF-17T改ナイトメア。乗っているのは、キーボードのレイ・ラブロックとドラムのビヒーダ・フィーズ。今FIRE BOMBERのメンバーが揃った。

 

『そんなん決まってらぁ!!歌を歌う為だぁぁぁぁ!!TRY AGAIN!!』

『『『『TRY AGAIN(アニマスピリチア)!!』』』』

 

突然歌い出しても、赤城バサラと熱気バサラで慣れてしまっている翼、響、クリスは熱気バサラ達につられて歌いだす。

 

『またいつの間にか仲良くなって!!私も歌うわ!!TRY AGAIN!!』

『お、おいミレーヌ!?仕方ない。やるぞビヒーダ!!』

<ダダダ!!>

 

ミレーヌ、レイが続きビヒーダはいつもの様にドラムで答える。

 

『俺達も加わるぜ!!奏!!』

『ああ任せろ!!』

『『TRY AGAIN!!』』

 

赤城バサラ、奏もそれに続く。

 

「歌う、か。一度すべてを忘れて歌ってみるか...TRY AGAIN!!」

 

そして、この場にいる者全てが歌いだした。全世界に中継していた映像だったが、爆発的に増えて行った『歌エネルギー』に耐え切れず全てホワイトアウトし映していた映像端末は全て壊れてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お久しぶりです。ゲペルニッチ。」

「久しいなマックス。よく別の銀河まで来てくれた。」

「新たなアニマスピリチアの発見と聞けば、誰だって飛んできますよ。」

 

ここは宇宙。今ゲペルニッチはマクロス7という戦艦の艦長と戦艦の一室で話をしていた。

 

「私が見つけ出したこの星のアニマスピリチア。この後交渉するが、広い世界を見せてやりたい。彼らに多くの経験を積ませれば、今後の歌手活動にも役立ってくるだろう。お前達と共に行動するのもいいだろうが、我々と様々な銀河を渡ってもらおうと思っている。」

「それで我々は何をすればいいでしょうか?」

「サウンドブースターの付いているバルキリーを何機か譲ってほしい。」

「バ、バルキリーを...今年の軍予算でどうにか...」

 

二人の話は地球での騒動が収まるまで続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

~三か月後~

 

 

 

 

 

 

 

突如来日した歌姫、マリア・カデンツァヴナ・イヴとの合同ライブ中だった翼の前に、ノイズが出現する。驚愕する翼と観客たちの前で、マリアはシンフォギア『ガングニール』を纏った。

 

「私は、私達はフィーネ。終わりの名を持つものだ!!」

 

 

 

『あら、奇遇ね。私もフィーネって言うのよ?』

『衝撃美!今のお前はその櫻井了子だた一人ではないのか!?』

『そうよ。どこの誰かは知らないけれど、私の名を騙るなんていい度胸ね。ノイズ達を相手した後、覚悟してもらうわ!!』

 

そこに現れたのはネフシュタンの鎧を纏った櫻井了子と人型兵器に乗ったガビル。

 

「う、嘘...し、死んだはずじゃ!?」

『悪いわね。永遠に近い生を持っている私に死などありはしない。でも、今はそんな事どうでもいいのよ。・・・私の新婚旅行中に騒動を起こして弦十郎君とのハネムーンを邪魔した罪、死よりも恐ろしい地獄を魅せてやるわ!!』

 

今此処に怒れる猛獣が出現した。

 

「ちょ、了子君それは秘密じゃ『ソッコーでケリを付けるわ!!ガビルさん行くわよ!!』『ま、まて!勝手に行動『喧しい!!』...驚愕美!!』・・・さて、俺も参戦して早めに旅行に戻ろうか。」

 

櫻井了子、風鳴弦十郎、ガビルの素早い対処でノイズ達はあっけなく塵になって行った。

 

「て、撤退よ!!」

 

マリア達は止む無く撤退していった。

 

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

 

「だから、マムの体は...」

「ヘッ、そんなもんバサラの『歌』を聴けばたちまち良くなっていくぜ!!」

「ほ、本当なのデス!?」

「ああ。ちょっと待ってな。今から呼んでみるから。」

 

ひょんな事で出会った暁切歌と雪音クリス。クリスは切歌達の事情を知り奏と翼の体を癒した治療をナスターシャへ行ってもらう為、赤城バサラの持っている通信端末へ掛けた。余談だが、登録名の最後にハートの絵文字があったのは見なかったことにしよう。

 

<ガチャ>

 

「よう!クリスだけど『俺の歌を聴けー!!何だクリス。って危ねぇ!?くそバジュラ達俺の歌を聴けー!!』・・・お取込み中悪いな。ちょっといいか?」

『手短に頼む!!『おい!バサラ!!マクロスのピンポイントバリヤパンチに合わせてアイツ突っ込むつもりだ!!』分かった!!悪い一時間後に掛けなおす!!うぉぉぉぉ!!突撃ラブハート!!』

「「・・・」」

 

「わ、悪い。何かアイツ戦闘中っぽい。」

「せ、戦闘中って何処にいるのデス!?」

「あ~アイツならゲペルニッチさんと一緒に()()()()で突撃ライブの経験積んでんだ。熱気バサラを超える為に。」

「べ、別の銀河!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁて、ギターのチューニングOK!!」

「こっちも大丈夫だぜ!!バサラ!!」

 

赤城バサラと天羽奏は今日も突撃ライブを慣行する。

 

「機体の整備もマックス艦長直々指名した人だから完璧だぜ!!」

「さぁ!行こうぜバサラ!!」

「あぁ!!突撃ライブの始まりだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バジュラと呼ばれる生命体と繰り広げられる数々の戦闘。

 

『クソッ!!早くランカを助け出さないと...』

『オズマ!アルトが!!』

『アルト!!』

 

マクロスとバルキリーやバジュラの攻撃が飛び交う中、ソイツらは現れた。

 

『所属不明機がこの宇域へ接近しています!!』

『敵か、味方か!!』

『分かりません!!』

 

現れたのは、真っ黒いバルキリーとオレンジ色のバルキリー。当然武器は「スピーカー」。乗っているのは、赤城バサラと天羽奏。正式にFIRE BOMBERから活動を認められた地球のファイヤーボンバーチームだ。

 

『『突撃ライブの始まりだぁぁぁぁぁ!!俺(私)の歌を聴けぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』

 

今日も何処かの銀河で突撃ライブを行っている。

 



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