赤き旅人の巡る物語 (morumo)
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第1話 旅立ちの日

カントー地方の南に位置する村マサラタウンとその先に位置するトキワシティを繋ぐ1番道路。

 

「むぅ・・・」

 

1人の白衣を着た老人が左手にポケモンを捕まえるための道具モンスターボールを握りしめ、汗を垂らして・・・

 

「ラタ‼︎」

 

紫色の体に大きい前歯を持つねずみポケモン、コラッタと対面していた。

・・・ちなみにコラッタの全長は0.3mである

 

老人は数秒何もせずただ唸り声を上げると一つ息をつく。

 

「やりお「どこがだ‼︎」オブッ⁉︎」

 

老人の一言に間髪入れず癖っ毛の強そうな黒髪の黒いアンダーシャツを着た少年が老人の頭に拳を入れる。

 

「なんするんじゃ、レッド‼︎」

 

殴られた頭を抱えながら老人は自分に意味のない暴力をふるったと認識した少年・レッドに問いかける。

 

「なにするんじゃって・・・こないだ今日研究所に来るようにって約束したのに留守だと思ったらコラッタなんかに手こずって、なにしてるんですか?オーキド博士‼︎」

 

「コラッタなんかとはなんじゃ‼︎コラッタに失礼じゃろ‼︎」

 

「あーはいはい、スミマセン失言でした〜、で、約束を破ってなにやってるんですか?」

 

「見てわからんか‼︎コラッタをゲッ「それは約束を破ってまでしなければならないことですか?」・・・・」

 

あからさまに黙るオーキドにレッドは溜息を吐くとスッと目の前のコラッタに目をやるとその後オーキドの手に握られているモンスターボールを拝借する。

 

「借りま「それカラじゃよ」っ・・・て‼︎手持ちのポケモン持たずにここに来たんですか⁉︎危ないですよ⁉︎」

 

1番道路生息するポケモンは基本自ら人間を襲おうとしないが何かの拍子に怒りをかってしまった場合、たとえコラッタ一匹だろうが不用意に逃がしてコラッタの進化系であるラッタを呼ばれたりなどして更に群れまで呼ばれたりなどしたら人間単体では対処できない状況に追い込まれてしまう。

その為に手持ちのポケモンで倒すか捕まえるか逃げるなどしてその場から離れるなどしなければならない。

なのでこの世界では『ポケモンを持っていなければ草むらに入ってはいけない』という暗黙のルールがある。

 

「そのルールを世界権威の博士が破ってどうするんですか・・・」

 

「いや‼︎持っておるよ⁉︎一匹‼︎」

 

スッとオーキドが腰に装着しているベルトから一つのボールをレッドに見せる。

レッドはそれを受け取ると、開閉ボタンを一回押しサイズを大きくすると中身に存在するポケモンを確認する。

 

「なんで使わないんですか・・・」

 

持ってるのに・・・と少し呆れた視線をオーキドに向けるが、それがどういう理由であれ自分がこのポケモンを使うのは変わらないので直ぐにコラッタに視線を移す。

 

「まぁいいや。頼むぞ‼︎」

 

モンスターボールの開閉ボタンを再び押して投げる、すると空中でボールが開き中から光の塊がコラッタの目の前に落ち、モンスターボールはレッドの右手に返ってくる。

地面に着地した光の塊が徐々に整っていき最後に弾け飛び中にいたポケモンが姿を現わす。

 

「カゲ‼︎」

 

中から現れたのは、橙色の体に大きな瞳、そして長い尻尾の先に灯る炎が特徴のとかげポケモン『ヒトカゲ』

 

「いけ‼︎ヒトカゲ‼︎」

 

「カゲ‼︎」

 

レッドの指示でヒトカゲがコラッタに向かって走り出すと同時にコラッタは体を強張らせ臨戦態勢に入る

 

ーさぁ、まずは

 

レッドは考えていた。

ヒトカゲとは今あったばかりでどれくらいの力量(レベル)なのか、どんな技を使えるのかを全く知らない。

レッドはポケモンバトルにおいて出来るだけポケモンを傷付けず楽しく戦わせるような指示を出すのがポケモントレーナーの義務であると思っている。

その為、このような小さなポケモンバトルにおいてもそれを意識していた。

 

「“ひっかく”だ‼︎」

 

ヒトカゲが小さい体を大きく右側にひねりコラッタに向けて指示された技を放つ。

コラッタは背後にジャンプし避けようとしたがほぼモロに攻撃を受ける。

 

コラッタはそのまま空中に投げ出され地面に激突、立ち上がるもその足取りはさっきよりも大分不安定だ。

 

ー思ったよりダメージが大きいな・・・なら・・・

 

「ヒトカゲ‼︎“ひのこ”だ‼︎」

 

レッドはヒトカゲに先程とは別の技を指示する。

そしてヒトカゲは

 

「・・・・・」

 

沈黙

 

「・・・・・」

 

レッドも沈黙

 

「・・・・カゲェェ・・」

 

そしてヒトカゲ涙目でレッドに振り返る。

 

「あぁぁぁぁぁ⁉︎ごめん⁉︎ごめん⁉︎」

 

ー“ひのこ”が使えないヒトカゲにあれ程のダメージをもらうっていう事はあのコラッタの力量(レベル)はそんなに高くないっていうことか・・・

 

ーそれにしても炎タイプにとって炎が出せないことはよっぽど辛いのか・・・・1つ勉強になった・・・かな?

 

「ヒトカゲ‼︎突っ込んでとにかく連続で“ひっかく”だ‼︎」

 

「カゲ‼︎」

 

ヒトカゲがさっきと同じようにコラッタに迫りひっかくを連続で放つがコラッタはバックステップで次々とかわしていく、ヒトカゲの“ひっかく”は先程とは違い()()()という指示が出ている為前ほどの腰の捻りによるタメはないが次々に放たれるせいでコラッタは反撃出来ずに避けることしかできていない。

 

ー力押しだけど・・・ここは森の中・・・

 

バックステップで避けていくコラッタだが不意に何かにぶつかる。

 

コラッタは思わず背後を見る。そこには大きな木、そして目の前には怯んだ隙に最初の一撃と同じように大きく体を捻っているヒトカゲ。

 

ー障害物ならいっぱいあるんだよ‼︎

 

ヒトカゲの渾身の“ひっかく”が今度はほぼとは言わず完璧にコラッタの急所にヒットする。コラッタはもう一度木に強く激突しそのまま前のめりに倒れる。

 

「今だっ‼︎」

 

レッドは先程間違えて拝借したモンスターボールをコラッタに投げる。

ボールはコラッタの頭部にぶつかると開き、ヒトカゲがボールから出た時に纏っていたものと同じ光が出てきてコラッタを包み込むとボールの中に吸い込まれボールが閉じて地面に落下する。

3回ほど揺れた後、カチッという音とともにボールが静止する。

 

「よっしゃ‼︎コラッタゲット‼︎」

 

レッドはガッツポーズを作ると直ぐに駆け足でボールを取りに行く。

実はレッドは普通にバトルしてポケモンをゲットしたのはこれが初めてだ。

子供は10歳までトレーナーズスクールに通ってポケモンの事などや基本的な倫理や道徳などを学ぶ、その際にポケモンのくりだし方や捕獲の仕方を学んだ時は

 

『くりだす時はボールは戻って来るようにしてるのになんで捕まえた後は戻って来るようにしないんだろう?取りに行くなんて面倒くさいことしなくていいのに。』

 

と疑問に思ったが初めて普通にバトルしてポケモンを捕まえてみた今、そんな疑問を抱いた自分が馬鹿らしく感じる。

 

ー取りに行くまでゲットした後の高揚感が続くからいいんじゃないか‼︎

 

コラッタなんかといって少し馬鹿にしていたが今自分はとてもこの感動を与えてくれたコラッタに感謝してる、

同時にオーキド博士に対しても約束を破った事はどうかと思うがこの感動のきっかけを作ってくれた事を考えれば許してやろう。

 

ニヤニヤと子供らしい年相応の笑みを浮かべて戻ってきたレッドに、オーキドは笑みをこぼすと

 

「研究所に戻ろうか。レッド、そこで大切な話があるんじゃ」

「?」

 

 

 

 

 

 

ーオーキド研究所ー

マサラタウンの離れに位置しており広大な土地を持っているが殆どはポケモン放牧用の庭で、研究所は世界で最も有名な研究者のものとは思えないくらい古びている。

孫娘であるナナミさんに『流石に建て替えたら?』といわれているが断固として拒否している、でも最近話によると先輩の研究者にこの研究所のボロさで怒られて決意が揺らいでいるらしい。

・・ちょくちょく博士の話に登場する先輩ってどんな人なんだろう・・・

まぁそんなことはおいておいて。

 

「で、大事な話って何ですか?」

 

大事な話をする為に結んだ約束を博士自身が破ったのはどうかと思うが

 

「お前にわしの研究の手伝いを「いやです」おぉう・・・即答ぅ・・・」

 

「ナナミさんと違って俺は進学してませんから博士のやってる研究なんて全くわかりませんよ。」

 

ナナミさんは俺より2つ年上でトレーナーズスクールの義務教育終了後も勉強を続け、専門知識を学んでいてその勉強の合間に博士の研究の手伝いをしている。

 

博士のレポートを見ても正直難しい言葉とか数値だらけで全く何書いてあるかわからなかった。

 

「いや、研究の手伝いとは言ったものの内容はいわゆるフィールドワークみたいなものじゃよ、あー、もう実物を見せたほうがいいか」

 

すると博士は自分の仕事用のデスクの金庫から何かを取り出してきた。

 

「これじゃよ。」

 

「これは・・・?」

 

博士が見せてきたのは手のひらサイズの赤い機械だった。

 

「ポケモン図鑑と言ってポケモンの生態や生息地などを記録するハイテクな機械じゃ。レッドにはこれを完成させて欲しいんじゃ。」

 

「・・・・ドユコト?」

 

どうやって完成させるの?。

俺は何をすればいいの?。

そしてそれをやる事に俺にメリットはあるの?。

 

博士は俺の顔を見て、そんな俺の疑問を感じ取ったのか視線を俺から外して少し考えると再び視線を俺に戻して

 

「わかりやすいように簡単に言うと・・・この地方を旅してすべてのポケモンを捕獲して欲しいという事じゃ」

 

「わかりやすい説明どうもありがとうございます」

 

流石博士、俺が子供の頃からずっと面倒見ててくれただけあって俺の考えている事をわかってくれている。・・・メリットについての話はまだかな〜♪

 

「受けてくれるか?」

 

・・・そんな話はしないようだ。まだまだ読みが甘いぞ〜オーキド博士よ。

まぁでも『この村から外に出る』事が十分なメリットなんだけとね。

 

「えぇ、もちろん‼︎」

 

「旅をする為には必要なものが3つある。

一つ目は、最低限の知識とマナー

二つ目は、ポケモン

三つ目は、気合いと根性 じゃ」

 

「最後は精神論ですか・・・」

 

「これは昔ワシがバリバリのポケモントレーナーとして旅に出た時の経験から基づくものじゃ、これでもワシはポケモンバトルの最高峰であるポケモンリーグで優勝した事があるんじゃよ‼︎そんなワシがいう事じゃ信用してくれて構わん‼︎」

 

確かに博士は第何回目か忘れたけど確かにポケモンリーグで優勝している。というか博士の家にその時のトロフィーと写真が飾ってあった。その後、各方面からスカウトがきたそうだがその全てを蹴って研究者の道に進んだそうだ。だけど・・・

 

「今じゃコラッタもロクに捕まえられない人の経験談に基づいてもな・・・」

 

「おぉふ⁉︎」

 

「なんか・・・そこまで衰えたかと思うと・・・歳をとるって虚しいですね。」

 

「はぐぅ⁉︎」

 

正直、そんな事を聞くとコラッタの件が本当に信じられない。あのヒトカゲだって確かに力量(レベル)はそこまでだったかもしれないけど、コラッタに苦戦するはずがって・・・そういえば博士ヒトカゲのモンスターボールを持たずに空のモンスターボールを構えてたよな・・・

なんで博士はヒトカゲを使おうとしなかったんだ?

 

「あ、あー・・・まぁ、そんなことはおいといて・・・この三つの中でお前に足りないものは一つ‼︎ポケモンだ‼︎」

 

「・・・・・」

 

レッドは思わず無言になる。

 

「あっすまん、不謹慎じゃった・・・・・」

 

「いや、構いませんよ。確かにポケモンは足りませんよ。手持ちは6匹までOKなんですから。」

 

ポケモン協会は人が一気に持ち込めるポケモンの数を6匹と決定している。理由は簡単だが人が満遍なく愛情を込められるポケモンの数は6匹だとオーキドによって科学的に証明されたからだ。

 

その為、ポケモンリーグなどのポケモンバトルにおいては昔はキリの良い5匹によるバトルだったが、今では6匹となっている。

しかしそれによって6匹以上のポケモンを持ち歩いているトレーナーは嫌悪されるようになった。

その事についてオーキドとしてはそこまで影響が出るとは思わなかっため少々頭を悩ませる結果となってしまった。

 

「そうじゃのだからレッドにワシから1匹ポケモンを与えようと思う。」

 

スッとオーキドは腰のモンスターボールをレッドに差し出す。

 

「これって・・・さっきのヒトカゲのモンスターボール」

 

すると博士はニッコリ笑みを浮かべて

 

「元々、そのヒトカゲはお前に与えるつもりだったんじゃが、ちょっとトラブルが起こっての・・・」

 

「あぁっ‼︎・・・ありがとうございます‼︎‼︎」

 

レッドは早速モンスターボールの開閉スイッチを押して真上にモンスターボールを投げる

とそこから飛び出したのは先程レッドと共にコラッタを捕獲したヒトカゲだ。

 

「カゲ‼︎」

 

ヒトカゲはそのままレッドの腕の中に包み込まれる、その顔には満面の笑みが浮かんでいる。

 

「おぉっ‼︎本当にありがとうございます‼︎」

 

「喜んで貰えて何よりなんじゃが・・・ちょいとさっき言ったトラブルの件で頼みがあるんじゃ。」

 

ポリポリと右手の人差し指で頬を掻きながらそう話すオーキド

 

「何ですか?」

 

「実は、ヒトカゲ以外にもう2匹用意しとっての、その中から1匹を選んで貰おうと思ってたんじゃ。」

 

ん?何か嫌な予感がする

 

「ナナミに弟がおることは知っておるよな。」

 

「はぁ、確かジョウト地方でポケモン留学をしているんですよね。」

 

ジョウト地方とはカントー地方を西に言った先にある地方で気候が少し違うせいで生息しているポケモンが違うらしい。

そこでオーキド博士の孫息子、ナナミさんの弟はポケモンバトルの為の学校に通っているらしい。

確か、俺と同い年らしい。

 

「そう、そして昨日孫息子が留学から帰ってきての、その祝いとして3匹の中から1匹、ゼニガメを与えたんじゃ。」

 

「別にいいことじゃないですか。」

 

自分の孫にプレゼントをすることは別におかしなことでも理不尽な事でもないし、俺はポケモンをもらえることがとても嬉しいし、選択肢が減ったくらいでグチグチ言うような小さい人間でもないし、何より俺はヒトカゲで十分満足している。

 

「そう、カントーを旅するとも言っておったからついでにこのポケモン図鑑も預けれたおかげでワシの研究にも役立つから良かったんじゃが、問題は次での。」

 

「どうしたんですか?」

 

「残った2匹の中の1匹、フシギダネが逃げてしまったんじゃ。」

 

「・・・・・」

 

レッドは沈黙・・・

 

「・・・・・」

 

・・・いや・・・これは・・・・

 

「なぁぁぁにぃぃいやぁってぇんのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ⁉︎⁉︎」

 

嵐の前の静けさだった。

 

「いや、ちょっと間違えてボールを開けてしまっての、慌ててるうちに・・・テヘ☆」

 

カチンッ‼︎

 

「ヒトカゲ・・・“ひっかく”」

 

「カゲー‼︎」

 

レッドの指示に従いヒトカゲがレッドの腕から飛び降りオーキドに向かって指示された技の構えをとる。

 

「うぁぁぁぁっ⁉︎スマンスマン⁉︎」

 

オーキドはすぐに背後のデスクの隣にある本棚の後ろに隠れる。

 

「何が『テヘ☆』だ‼︎それどころじゃすまされないだろぉぉぉ⁉︎」

 

「本当にすまん‼︎だからもし見つけたらすぐに捕獲して欲しいんじゃ‼︎フシギダネのモンスターボールは渡しておく。」

 

オーキドは恐る恐る自分のデスクを本棚の後ろに隠れたまま探ってモンスターボールをレッドに差し出す。

レッドはそんな情けない姿を見せる世界的権威を持つ研究者に溜息を吐き

 

「わかったよ。」

 

と言ってまだ“ひっかく”の構えをとっていたヒトカゲに静止の合図を送ってフシギダネのモンスターボールを受け取る。

するともう攻撃されないと悟ったオーキドはホッと息を吐いて元の場所へ戻って来る。

 

「それで、出発はいつにするんじゃ?」

 

「今から行こうと思います。」

 

「今から⁉︎」

 

オーキドの上ずった声が研究所内に響く。

 

「何をそんなに驚いているんですか?」

 

「いや、旅立ちを祝って今夜ご馳走でもと思っていたんじゃが・・・」

 

「そんなのいいですよ。別に戻ってきますし。」

 

レッドは今どうしても外の世界に早く踏み出したかった。

自分の目で世界を見て、色々な出会いをして、色々な事を知りたい。

この旅にはそんな事が沢山待ってる。そう思うだけでじっとしている事は不可能だった。

そして旅を続けていく事で・・・・

 

「そうか、じゃあ家に寄ってくれんかの。ナナミが用があるみたいじゃ。」

 

「わかりました。じゃあ、行ってきます。」

 

 

 

 

 

 

ーオーキドの家ー

 

オーキド博士とその孫娘ナナミの家は研究所みたいに古びてはいないが、ここカントーの田舎町であるマサラタウンにふさわしいような風情のある家だ。

 

「レッド君‼︎来てくれたのね‼︎」

 

この人がオーキド博士の孫娘ナナミさん、焦げ茶色の髪の毛を七三に分けて腰まで伸ばしている、正直2つ以上年上なんじゃないかと疑うくらい大人っぽく・・・・・

い・・い・・色っぽい///

ナナミさんは俺を部屋の中へと案内してくれると

 

「これ、レッド君に似合うと思って、旅立ちのお祝いに」

 

クローゼットの中から赤い帽子と、赤色のジャケットとそして黄色の大きいリュックサックを取り出してレッドに渡す。

 

「あ、ありがとうございます‼︎」

 

「こら‼︎」

 

「ふぁいっ⁉︎///」

 

ナナミがレッドの顔を覗き込む。

その距離の近さに思わずレッドの顔も赤く染まる。

 

「確かに私の方が年上だけど、いつも言ってるでしょ?敬語で話すような関係じゃないって」

 

そう、俺は4歳の時に両親が事故で行方不明になりその時から両親と仲の良かったオーキド博士に引き取られ一緒に暮らしていたんだトレーナーズスクールに通っていた去年まで。

 

「あぁ////・・・いや////、でもぉ//////」

 

暮らさなくなった理由は見ての通りこういうことです///・・・

 

「ふふっ、まぁいいわ。早速着てみて」

 

「ふぇっ⁉︎着る///」

 

ーこれを着るってことはここで脱ぐってことであぁううぁぁあ☆¥$%////・・・・

 

スッと黒のアンダーシャツに手をかけたレッドを見てナナミが慌てて止めにかかる。

 

「レッド君⁉︎アンダーシャツの上から着るの‼︎それは‼︎」

 

今までの人生において最も恥ずかしい出来事でした。 ーby REDー

 

着替え終わった後のレッドの姿は帽子によって右側だけツンツン尖っていた癖毛の黒髪が潰れることによって、やんちゃそうな雰囲気が少し落ち着き、ほんの少しクールな雰囲気を醸し出している。

 

「帽子かぶるだけで、結構雰囲気変わったね。いいよ。すごくカッコいいよ‼︎レッド君」

 

「そ、そうですか///」

 

カッコいいって‼︎

カッコいいだって‼︎〜〜〜〜〜〜ヒャッフゥー‼︎‼︎‼︎

惚れてもいいんだぜ‼︎ナナミさん‼︎

 

「ちゃんと中も用意してあるから、気をつけてね。」

 

「はい‼︎」

 

カッコいいと言われたことがとても嬉しかったのだろうレッドの顔は帽子によって生み出されたクールな雰囲気を完全に消す程のやんちゃそうな笑みを浮かべていた。

 

「そういえば、どんなポケモンをおじいちゃんから貰ったの?」

 

「よし、出てこい。ヒッポ‼︎‼︎」

 

レッドはボールを投げずに開閉スイッチを押すだけでヒトカゲを繰り出した。

 

「ヒトカゲね、ニックネームつけたんだ。」

 

「ヒトカゲっていうのは種族名ですから・・・火が灯っている尻尾が印象的だったんで『ヒッポ』てつけました。」

 

「カゲ‼︎」

 

「いい名前ね、フフフッ‼︎」

 

何故かいきなり笑みをこぼし出すナナミ。

 

「何か可笑しいですか?」

 

「いや、違うの。初めてレッド君がポケモンをゲットした時のことを思い出して・・・フフフッ、レッド君あの時と同じ顔してるんだもん」

 

ナナミになんか子供っぽいねと思われたと感じ取ったレッドはさっきカッコいいと言われた所為もあってムスーッと拗ねる。

 

「・・・あの子は連れて行くの?」

 

ナナミのいうあの子がヒッポを指していないことはわかっている。

レッドは膨れっ面から少し悲しげな笑みを浮かべながら話し出す。

 

「はい、一緒に旅をして・・・知らない外の世界を見ることで、外に出てきてくれるかもしれないから。」

 

ナナミもレッドと同じような笑みをこぼす。

 

「気をつけてね、あいつらもこないだ自分達で旅に出たらしいから」

 

「大丈夫ですよ。俺は強くなりますから、守れなかったものを今度は守れる強さを身につけますから、それは一緒に旅をしてくれるポケモン達の為でもあるし、俺の夢の為でもあります。」

 

ナナミが少し驚いたような表情をレッドに向ける。

今までレッドと過ごしてきた中で見たこともない・・・一言で言うと自分の中の慈愛に満ちた眼差しを眼差しじゃなく表情で表しているような。

 

「レ、レッド君の夢はなんなのかな?」

 

ナナミはレッドに見とれていると気付くとすぐに頭をふると、レッドにその事は気付かれていないのに取り繕うように言葉を発した。

 

それが一番の謎を生み出すとは知らずに・・・・・・

 

「命の恩人を捕まえる事です。」




RED
捕まえたポケモン 2匹
手持ちのポケモン
NEW ヒッポ(ヒトカゲ♂)
⁇⁇⁇(⁇⁇⁇⁇)

ちなみにレッドの服装は赤緑のもので髪型はポケスペのレッドのツンツン頭を落ち着かせた感じでポケスペのレッドと違って帽子を浮かせずキチンと被っています
年齢は11歳です


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第2話 醜い女とポッポの脅威

1番道路

緑豊かなこの場所でレッドたちは今

 

「ヒッポ‼︎“ひっかく”‼︎」

 

野生のポケモンとのバトルに明け暮れていた。

 

「カゲ‼︎」

「ポッ⁉︎」

ヒッポは森の木を踏み台にドンドン高く登っていき最終的に空から攻撃を仕掛けてきていたポッポに“ひっかく”を繰り出し、ポッポは回避できずそのまま木々の中に墜落する。

 

「あっ‼︎しまった・・・捕獲し損なった・・」

 

レッドは既にボールを構えていたがポッポがどこかへ墜落してしまったせいで捕まえる事が出来なくなってしまった。

 

「カゲ〜」

 

「いやいや、ヒッポは悪くぞ、ただ運が悪かっただけさ」

 

ヒッポが申し訳なさそうにレッドについてくるのをみてレッドが励ます。

 

「それにしても、思ったよりこれ便利だな。」

 

そう言いながらレッドがポケットから取り出したのはポケモン図鑑

 

「これさえあればわざわざポケモンセンターに行かなくても手持ちのポケモンの技や性格がわかるんだもんなぁ。」

 

手持ちのポケモンの技や性格を確認するには普通、ポケモンセンターやポケモンジムなどに置いてある特殊な装置が必要なのだがこのポケモン図鑑はその機能を内蔵している為、逐一チェックできるのだ。

レッドはポケモン図鑑を操作し、自分の手持ちであるヒッポの状態を見る。

 

ヒッポ(ヒトカゲ♂) Lv.7↑

特性 もうか

技 ひっかく

なきごえ

ひのこ NEW

ひかえめな性格 イタズラが好き

 

控えめな性格?確かに俺の指示に歯向かったりはしないけど・・・自分の意思を押し殺しちゃうって事なのか?

っていうか悪戯が好きって、今のヒッポから全くそんな事思えねぇんだけど・・・でもあのオーキド博士が作った機械だしなぁ〜・・・しかし猫被ってる様子もねぇんだけど・・・あっ

 

「“ひのこ”を覚えてる。良かったなヒッポ‼︎やっと炎タイプの技を使えるぞって・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

ズーン

という効果音があるんじゃないかというくらいの落ち込みを見せるヒッポ。

や・ら・か・し・たぁぁぁぁぁぁ‼︎⁉︎

 

「あー⁉︎ごめん‼︎ごめん‼︎失言だ。ヒッポ‼︎やっとじゃない‼︎やっとじゃないから落ち込まないで⁉︎」

 

予想以上に炎タイプのポケモンにとって炎タイプの技を使えない事は気にするらしい。

これから炎タイプのポケモンを捕まえたら注意しておこう、心のメモ帳にメモメモ〜♪

軽いなぁ〜俺・・・・

 

「これで遠距離からも攻撃ができる分楽「バサ‼︎バサ‼︎」に・・・・なんだ?」

どこからか翼の音がする。

 

と次の瞬間レッドとヒッポの顔色が真っ青になる。

 

上空に大量のオニスズメの群れが

 

「え?え?、なんで⁉︎」

オニスズメとはバトルしてないのに‼︎

 

「ん?」

 

あれ、あのオニスズメの群れの右端にいるのってさっき逃したポッポじゃないか?・・・うん間違いない、うわ〜温厚な性格のポッポとは思えない悪い顔してやがる・・・・あぁ、ははははははっ・・・ハァ〜

 

「あいつ群れ呼びやがったぁぁぁぁぁぁ‼︎」

「カゲェェェェェェェェ‼︎‼︎」

 

俺はヒッポを抱えて全速力で1番道路を駆け抜ける。

逃げなきゃ突かれて死ぬ!絶対死ぬ‼︎

痛い思いをして死ぬのは嫌だ‼︎

ん?痛い目・・・・あっ‼︎

 

「ヒッポ‼︎とにかく“なきごえ”だ」

 

「カァァァゲェェェェ‼︎‼︎」

 

ヒッポは普通の鳴き声とは違う方法で大声を出し特殊な音波を発生させる。

 

「ケグッ‼︎」

 

オニスズメ達はヒッポの音波によって聴覚を刺激され動きを鈍らさせられる。

これによって、オニスズメ達の攻撃の威力を少なからず下げることが出来る。

 

「とにかく逃げるぞぉっ‼︎」

 

「カゲッ‼︎」

 

 

 

 

 

ーオーキドの家ー

 

ナナミは1人家で勉強をしている最中にピタッと手が止まる。

「なんなんだろう・・・」

止まった理由は1人の少年の一言についてだ。

 

ー『命の恩人を捕獲することです。』ー

 

「命の恩人って・・・どんなポケモン?」

 

捕獲する。つまりゲットするという意味であるからポケモンだという事は分かった。

しかしナナミはそれがなんというポケモンかも気になったため質問を投げかけたが

 

「ん〜・・・内緒です!」

 

少年・レッドの答えは教えないというものだった。

 

ー別にそんな気にとめるような事でもないはずなのにー

 

ーどうしてこんなにきになるんだろうー

 

ナナミの中で何かが引っかかっていた。

祖父であるオーキドによく言われていた言葉がある。

 

『ナナミはレッドを心配しすぎじゃよ』

 

正直彼の過去の出来事を考えると心配するなという方が無理な話だ。

それ関係で自分はレッドを一日中監視していた時期もある。

1人力足りず夜な夜なずっと泣き続けた事もある。

 

 

 

ーレッド君は私が守らないとー

 

 

 

いつからかそういう思いが芽生えていた。

 

ー彼が絶望に堕とされるのを救えなかった分

彼がそこから這い上がる手伝いをしようー

 

ー彼が不幸な道に進むのを防ごう、

正しい道を示してしてあげようー

 

けれどもそれは殆ど上手く出来なかった。

彼がトレーナーズスクールを卒業したら1人で暮らすと言い始めた時、断固として拒否した。

 

しかし結局彼は1人で暮らし始めてしまった。

 

唯一自分ができたのは彼のマンションの玄関やバスルーム、トイレ以外の場所に小型カメラを設置する事くらいしか出来なかった。

 

今思っても完全な変質者としか思えないがそう気付いた後でも、彼の監視をする日課を止める事は出来なかった。

 

ー自分は彼を守ろうとしているんじゃない

ただ彼に依存しているだけだー

 

そう気付くのにそれから時間はかからなかった。

祖父が彼を旅に出させようと考えているのを聞いた時、意見を拒否しようとする自分がいたが、彼から離れた方がいいという自分の中の理性が勝った。

 

だけど今、いつも通りに反対しておけば良かったという後悔の念が自分を支配している。

 

依存しているのは認めるが守りたいという思いは真実だ。

 

彼を今からでも取り戻すための手の中で

自分は強力なものを持っている。

 

彼は自分に好意を抱いている。

 

以前から自分に対してだけ挙動不振になる事が多かったが、監視を始めてから何回も自分は彼から愛の告白を夜な夜な聴いている。

 

ーだから私が精一杯頼めば今からでも・・・・ー

 

いや、と自分は頭を振ってその案を止める。

彼の先程のヒッポに対するあの表情を見ると、相当決意は固い。例え自分が頼んでも無駄だろう

 

フッとナナミは笑みをこぼす。

 

人の好意を利用して我儘をとおそうとするなんて・・・・

 

私って醜い女

 

 

 

 

ー1番道路ー

 

「ぜぇ・・・ハァ・・ハァ・ハァ・ぜぇ」

 

「カゲッ・・・カァ・・・ヒィ・・・」

 

1番道路、もう後数100メートルでトキワシティに辿り着くという地点、俺たちはそこで少し休憩をしていた。

 

そして俺たちの周囲は

 

ボロボロな野生のポケモンの群れで埋め尽くされていた。

ポッポにピジョン、オニスズメにコラッタ、ラッタと1番道路に生息する殆どの種類のポケモン達がひんし状態で倒れている

 

「あの、ポッポめぇ〜‼︎次から次へと群れを呼びやがってぇぇぇぇ‼︎‼︎‼︎」

 

オニスズメの群れに囲まれた俺とヒッポは“なきごえ”でオニスズメ達の攻撃を下げながら逃げ回ってたら、その内にオニスズメを呼びやがったポッポが今度はコラッタとラッタの群れを呼び出しやがったせいで挟み撃ちにあって戦うしかなくなったから、攻撃の下がって突破しやすいオニスズメの群れを撃破して、オニスズメの群れと同じように“なきごえ”を浴びせながら逃げ回るもはたまた今度はポッポとピジョンの群れに囲まれ以下省略。

結論だけ言うと、なんとか全部倒した‼︎

 

「ヒィー・・・カァハッ・・・ヒィ〜・・」

 

『なきごえ』の大量使用で喉が枯れてしまったヒッポは仰向けで地面に倒れている。

こんな事になったのも全てあのポッポを逃したせい・・・だけどあんな全力で数の暴力をする必要ないじゃん⁉︎

図鑑にはどう書いてあるんだ?

 

No.16 ポッポ

ことりポケモン

タイプ ノーマル・ひこう

戦いを好まない大人しい性格

 

「ポッポって全然温和な性格のポケモンじゃないじゃん⁉︎腹黒いじゃん⁉︎めっちゃ怖いじゃん⁉︎⁉︎」

 

旅立ち初日にポッポにトラウマを抱いたレッドであった。

 

No.16 ポッポ

ことりポケモン

タイプ ノーマル・ひこう

戦いを好まない大人しい性格

《追記》

だが下手に手を出すと強烈に反撃してくる。

 

 




RED
捕まえたポケモン 7
手持ちのポケモン 2
ヒッポ(ヒトカゲ♂)
⁇⁇⁇(⁇⁇⁇⁇⁇)

ナナミさんがおかしい事になってきた・・・・・
大丈夫かな・・・?


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第3話 マンキーの脅威

トキワシティ

一言でこの街を表すとすると

 

『緑』

 

だろう。

『トキワは緑、永遠の色』

という町のスローガンを掲げており、町の民家の屋根の色は緑一色で埋め尽くされている。

森に囲まれており、この先にあるトキワの森には沢山の虫ポケモンが溢れている。

 

『木の葉の色が常に色を変えない』という意味の言葉『常磐』が名前の由来で時代が変わっていこうと緑を大切に自然を大切にするという心は変わらないようにしようという意味が込められている。

 

そんなトキワシティにレッドとヒッポはやってきた。

 

「やっとついたぁー‼︎」

 

「ヒィーッ‼︎」

 

俺は今、先程のポケモンの群れとのバトルで疲れ切ったヒッポを抱っこしていた。

モンスターボールにいれなかったのはヒッポが拒否した為だ。モンスターボールを出したら俺の足にしがみついて頭をふるふる振る姿を見たら誰だっていう事をきいてしまうよ!

あぁ〜ヒッポは可愛いなぁ〜

・・・あのポッポとは大違いだ。

 

ヒッポは別にモンスターボールの中が嫌いなわけではないが俺の腕の中の方が心地いいのだろうか、少し我儘を言って俺に抱っこさせて貰ってる。

あぁ、本当にヒッポ可愛い・・・///

 

「まずはポケモンセンターに行くか。」

 

ポケモンセンター

ポケモンを回復する為のいわゆる病院だ。

ポケモン協会が町の税金を使って無料でポケモンの回復を行っている。

他にも6匹以上のポケモンを持った時にポケモンを預けるポケモンボックスシステム。一般の人が手持ちのポケモンの技や性格を見るのもこの機械だ。

更にテレビ電話もこの機械で可能となっている。

 

「オーキド博士、トキワシティに着きました」

 

そこで俺は、オーキド博士に電話をしていた。

 

『えらい時間がかかったのぉ』

 

「ポケモンの群れに襲われました。」

 

『大丈夫なのレッド君⁉︎』

 

「ふぁいっ⁉︎///」

 

電話の声から響いたのはナナミさんの声。

思わず声が裏返ってしまう。

 

『おぉーナナミ、来とったのか。じゃあわしはこの辺で。』

 

ニヤニヤすんなよコンニャロー‼︎‼︎

でもありがとう、流石オーキド博士。

俺の気持ちをわかってくれるぅ〜そこに痺れる憧れるぅ〜

 

「大丈夫ですよ。ヒッポが頑張ってくれました。」

 

『そう、それなら良かったわ』

 

少し安心した感じもしたが未だに不安そうな表情を見せるナナミを見て、レッドは話を変える。

 

「俺、ポケモンジムに挑戦するつもりです。」

 

すると少しナナミの目が開かれる。

 

『確かに強さを身につけるの事と得た強さを確かめるにはベストな事ね。』

 

自分が出がけに言った、『強さを身につける』という目標を達成する為にレッドは最も有名な方法をとった。

 

「まずはトキワジム、その後はニビジムに挑戦しようと思っています。」

 

『そうね、あっじゃあ12番道路に寄って行ったらどうかしら?』

 

「12番道路?」

 

12番道路とはトキワシティを西に進んでいくとある道路でそこを進んでいくとポケモンリーグ出場者の最後の試練である『チャンピオンロード』に辿り着く。

緑に囲まれたトキワシティの近くにあるだけあって12番道路は緑に囲まれている。

 

『あそこには確かマンキーが生息していたはずよ。格闘タイプだから岩タイプを扱うニビジムのポケモンには効果は抜群だし、炎タイプのヒッポじゃ、トキワジムが専門としている地面タイプポケモンには相性が悪いでしょ?』

 

ポケモンジムはポケモンの強さを図る施設でそこにはジムリーダーと呼ばれる責任者がおり、ジムリーダーに勝てばポケモンリーグに出場する為に必要なジムバッジをもらう事ができ、それを8つ集める事でポケモンリーグの出場権を得る事が出来る。

 

基本ジムリーダーは1つのタイプを得意としており、ナナミが言っているのは『ジムリーダー対策をしなさい』という事だ。

 

ポケモンは最大2つまでタイプを持っておりそれぞれに得意なタイプや苦手なタイプがある。

 

正直タイプ相性で行くと現在のレッドの手持ちはこの2つのジムには最悪だ。

 

「わかりました。あっ、ヒッポの回復が終わったみたいです。では、また。」

 

『またね。』

 

プツンッと電話の電源が切られる。

 

「カゲー‼︎」

「うぉうっ⁉︎」

 

電話機から振り返った途端、ヒッポが俺に飛びついてくる、抱っこをすると俺の胸に頭をスリスリさせる。

あぁぁぁぁ、本当の本当にヒッポは可愛い‼︎‼︎

 

「フゥ、・・・行くか‼︎」

 

「カゲ‼︎」

 

「キィーッ‼︎」

 

「・・・・キィー?」

 

スッと俺は足元に視線をやると。

 

「ウキャッ‼︎」

 

目つきが悪い豚と猿が合体したようなポケモンがいた。

 

「・・・・・・」

なんだこいつ・・・

 

俺は無言で図鑑を取り出してそのポケモンを調べる。

 

No.56 マンキー

ぶたざるポケモン

いつも怒っている、手頃な獲物を見つけ群れをなして襲いかかる。

 

都合のいい事キター‼︎‼︎

 

ラッキィー‼︎と思いながら俺はマンキーに手を差し伸べる

 

「キキッ」

 

するとマンキーは走り出してポケモンセンターの外に出る。

 

「待てぇーい‼︎」

 

俺はヒッポを下ろしマンキーを追いかける。

マンキーはそのままトキワシティの外へ出て12番道路へ。

するとそこでピタッとマンキーは足を止める。

周りは草木で覆われている、周りに人影はないし存分にバトルできる!

 

「ウキャーッ‼︎」

 

「塞翁が馬って言うからな‼︎さっきの不幸が遂に幸福を」

 

「キキッ‼︎」

「キキィーッ‼︎」

「ウキャッ‼︎」

「ウキィーッ‼︎」

「キィィィーッ!」

「キキッ‼︎」

「キキィーッ‼︎」

「ウキャッ‼︎」

「ウキィーッ‼︎」

「キィィィーッ!」

「キキッ‼︎」

「キキィーッ‼︎」

「ウキャッ‼︎」

「ウキィーッ‼︎」

「キィィィーッ!」

「キキッ‼︎」

「キキィーッ‼︎」

「ウキャッ‼︎」

「ウキィーッ‼︎」

「キィィィーッ!」

 

アリェ〜?コダマガキコエルゾォ〜⁇

 

囲まれた‼︎囲まれました‼︎20匹ぐらいのマンキーに‼︎

 

その瞬間ハッと思い出して図鑑を見る。

 

 

マンキー

いつも怒っている、()()()()()を見つけ群れをなして襲いかかる。

 

手頃な獲物ぉ〜⁉︎何処にそんなものが・・・・

あっ俺らか・・・・・・

 

「って‼︎ふざけんじゃねぇぞぉぉぉぉぉ⁉︎⁉︎」

 

「カゲェェェェェェェェェェ‼︎‼︎」

 

俺のの叫び声と同時にヒッポは“なきごえ”を放ちマンキーたちの攻撃を下げる。

 

「ナイス‼︎ヒッポ‼︎」

 

ー数で来られたらとにかく相手の能力を下げろー

 

これがトレーナーズスクールで学んだ事だ。

数で来られても蹂躙できる力を持っているのなら構わないが、出来ない場合相手の能力を下げる事で1匹にかける時間を減らす。

実際、1番道路の群れバトルではこの方法で勝利を収めた。

 

「“ひのこ”だ‼︎」

「カゲェッ‼︎‼︎」

 

ヒッポが口から細かい火の粉を前方のマンキーに放つ。

 

『キィッ‼︎』

マンキーはそのまま火の粉を直接受ける。

 

「よし‼︎ヒッポ‼︎もう一度“ひの・・・」

 

「キキィーッ‼︎‼︎」

「カッ⁉︎」

 

「ヒッポ⁉︎」

ーしまった⁉︎“けたぐり”を・・・‼︎

 

レッドの指示よりも先に1匹のマンキーがヒッポに格闘タイプの技“けたぐり”を放つ。

“けたぐり”は相手の重さを利用して放つ蹴り技、ヒッポは言うほど大きくない分ダメージは大きくはないだろうが、ここで不味いのはダメージ量ではない。

 

ー体制を崩された‼︎

 

「キキィー‼︎‼︎‼︎」

 

1匹のマンキーの叫び声と共に他のマンキー達が一気にヒッポに襲いかかる。

ヒッポはけたぐりに寄って最悪な事に仰向けに倒されてしまっている。

 

「させっかぁぁぁ‼︎」

 

レッドがヒッポの所へ走りだす、が

 

「キキッ‼︎‼︎」

「あがっ⁉︎」

レッド自身もけたぐりをくらって倒れてしまう。

 

ーこの一瞬が命とりだったー

 

 

「ヒッポォォォォォォォォォッ‼︎‼︎‼︎」

 

 

レッドが立ち上がった時にはすでにヒッポは大量のマンキー達に包まれ見えなくなっていた。

 

ーリンチ

 

恐らくあの中でヒッポはマンキー達の“ひっかく”や“けたぐり”によって徐々にダメージを受けてるだろう。

 

どうする?どうする?どうする?どうする?どうする?

どうする?どうする?どうする?どうする?どうする?

 

でも俺が突っ込んだとしても弾き飛ばされるだけ、“ひのこ”や“ひっかく”じゃ威力が・・・

 

あっ

 

レッドは地面に視線を向けて大きく目を開いた。

 

ーこれだ。これだよ‼︎

 

「ヒッポォォッ‼︎“なきごえ”だぁぁぁっ‼︎」

 

レッド渾身の叫び声そして、

 

「クァァッゲェェェェェェェェェェェェッ‼︎」

 

キィィィィンッとヒッポの“なきごえ”が響き渡る。

その音波によって薄くも空気の壁が出来上がり、マンキー達の体を少し浮かせた。

 

「地面に向かって“ひのこ”だぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎‼︎‼︎」

 

「カッゲェェェェェェェェェェッ‼︎‼︎」

 

ヒッポは地面に向かって“ひのこ”を放つ。そして

 

ー12番道路は緑に囲まれているー

 

地面の草に火が灯り一気に周りの草むらに引火する

 

『キィィィィッ⁉︎』

迫ってくる炎を全身に受けるマンキー。

 

「キィィッ」

 

1匹のマンキー、さっき指令を出していたマンキーが逃げようと走り出す。

 

「いかさねぇぞ‼︎」

「キッ⁉︎」

 

俺は回り込んでマンキーの目の前で通せんぼうをする。

周りのマンキーに指示を出していたって事はこいつがこの群れのリーダーって事だ、こいつをゲットすれば・・

 

「ヒッポ‼︎」

 

火の中心からバッとヒッポが飛び出してくるとマンキーの背後に着地。俺とヒッポでマンキーを挟んでいる形だ。

 

「“ひのこ”‼︎」

「カゲェェッ‼︎」

「キャンッ⁉︎」

 

ヒッポの“ひのこ”を受けたマンキーはそのまま地面に転がりだす。

 

「行けっ‼︎モンスターボール‼︎」

 

レッドはモンスターボールをマンキーに投げてそのままマンキーはボールに吸い込まれあっという間に捕獲が完了した。

 

「よし、マンキーゲット‼︎ニックネームは・・・」

 

 

ゴォォォォォォォォォッ

 

 

「ってニックネーム考えてる場合じゃない⁉︎消すぞ‼︎」

「カゲッ⁉︎」

 

火にまきこまれたマンキー達は逃げたようだが火はまだどんどん広がっていく。

俺とヒッポは砂をかけたり息を吹いたりして消しにかかるが全く止む気配がないというかどんどん勢いは凄くなってる⁉︎

 

「やばい⁉︎やばい⁉︎どうしよぉぉぉぉぉ」

「カァゲェェェェッ⁉︎」

 

その時12番道路近くで1人の少年が2人の様子を見ていた。

 

「何やってるんだ?」




RED
捕まえたポケモン 8
手持ちのポケモン 3

ヒッポ(ヒトカゲ♂)
???(マンキー♂)
⁇⁇⁇⁇⁇⁇⁇⁇


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第4話 Green

俺とヒッポが火をけせずテンパっているその時

 

「ゼニガメ“みずでっぽう”」

「‼︎」

 

ズバァァァァァッ‼︎

 

突如現れた水鉄砲によりあっという間に火は消化された。

 

なんつー威力・・・

 

俺は水鉄砲が放たれた方を振り返る。

 

そこには紫の上着を着た茶色い髪の毛をした『クール』という言葉が最も似合いそうな顔立ちをした少年と水色の亀『ゼニガメ』が立っていた

 

「最後しか見てなかったが、あまり迷惑な戦い方は控えるんだな。」

 

「いや、ごめん。マンキーの群れに襲われてさ、いやーテンパった‼︎ありがどう。俺はレッド‼︎君は?」

 

「レッド・・、ヒトカゲ・・・あぁ。」

 

何かブツブツ呟いて一人で納得した少年は

 

「俺の名前はグリーン、オーキド博士の孫だ。」

 

「・・・・・・・」

えっ?

あっ確かにオーキド博士がゼニガメを孫にあげたって・・・

それにしても・・・

 

「全然似てないんだな。」

「・・・俺は孫だからな。」

 

そりゃそうだ。

 

「お前の話はよく聞いてるよ。ナナミ姉さんやおじいちゃんから。」

 

「えっ‼︎ナナミさんは俺の事どんな風に言っるんだ⁉︎」

 

急にグリーンの方に体を乗り出して話し出すレッドにグリーンは少し体を後ろに反らす。

 

「もう一人の弟みたいだって‼︎って近い⁉︎近い⁉︎気持ち悪い‼︎‼︎」

 

余りに近づいてくるレッドにグリーンは気持ち悪い‼︎と押し戻す。

押し戻されたレッドはグリーンに背中を見せる。

 

弟か〜、いや、嫌われてないだけ良しとしよう‼︎。

うぅ〜‼︎でも旅している間はナナミさんとは会えないし、本当の弟帰って来ちゃったし、このポジションも危ないかもしれないな・・・どうしよう。

・・・いや、これはチャンスだ。実弟であるコイツと仲良くなれば自然にナナミさんの俺への好感度も上がるはず・・・

 

「グリーン‼︎くん?さん?ちゃん?同じ図鑑所有者同士仲良くしようじゃないか‼︎」

 

「下心丸出しなのバレバレだからな。」

 

既にレッドの態度からナナミに好意を寄せているのは明らかであるし、何より今、グリーンに話しかけたレッドの顔には、『ゲスい』という言葉が当てはまるくらい酷いものだった、誰がどう見てもこの状況でレッドの言葉に下心があるとわかるだろう。

 

「シタゴコロ?ナンノコト?」

 

「もう隠す気ないだろお前・・・・」

 

グリーンは話のペースを完全にレッドに握られているのを感じて、長い溜息を吐くことで一旦話の流れを切る。

 

「お前「レッドだ」っ・・レッド、お前は炎の鳥ポケモンを見なかったか?」

 

「炎の鳥ポケモン?ほのお・ひこうタイプのポケモンなら・・」

 

「違う‼︎体が炎で包まれているポケモンだ。」

 

「そんなポケモン居たっけ?」

 

ほのおとひこうの2つのタイプを持つポケモンがいるということは記憶にあるが体が炎で包まれているポケモンがいる記憶がレッドにはなかった。

 

「それがどうしたんだ?」

 

「トキワの森の正規ルート外で俺のポケモンが1匹火を纏った鳥ポケモンにやられたんだ。そいつはその後こっちの方角に飛んで行った筈だ。」

 

「トキワの森の正規ルートから外れることがまず問題なのはさておいて、お前も図鑑を持っているんだろ?」

 

トキワの森には道に迷わないように尚且つそこに住むポケモン達と少しでも交流を持てるようにきちんとした道、正規ルートが作られている。

つまり、迷うことはないのだが正規ルートを通らなずに迷ってしまうと森を抜けることが非常に困難になる。

だからまず、グリーンの正規ルート外の道を行ったことが間違いであるがそれは今は重要ではないためレッドは置いておくことにした。

 

「図鑑ならこういう状態だ。」

 

「おぉ・・・」

 

グリーンがポケットから出した図鑑は完全に赤かったボディをなくして中身しかなく、その中身も焼けてしまっていた。

 

「すぐに消化したおかげで重要なパーツも内臓データも無事だろうがいかんせん起動してくれない」

 

「いや致命的だろ、それ」

 

「おじいちゃんに修理を頼むしかないか。火の鳥ポケモンの情報も何か知ってるかもしれないし。」

 

グリーンはそう言うと図鑑をポケットにしまい、ゼニガメをモンスターボールの中に戻す。

 

「おま「レッドだ」・・・レッド、火事の件の礼として火の鳥ポケモンを発見したら俺に連絡を入れろ。電話番号は・・・おじいちゃんから聞いてくれ、いいな‼︎」

 

「わかったよ。」

 

連絡は入れるけどそれまでに俺が捕獲しちゃえばいいか。

別に先に行動しろって言われてねぇし。

恩を仇で返す‼︎少し憧れがあるんだよなぁー・・・後が怖そうだからやめとくか

 

レッドはそういう事を考えながらふと思った事をグリーンに質問した

 

「そういえば、グリーン、お前はトキワジムに挑戦したのか?」

 

「トキワジムならジムリーダーが行方不明で無期限休業中だ。」

 

「はぁっ⁉︎それだとポケモンリーグはどうするんだよ‼︎」

 

ポケモンリーグに出場するにはジムリーダーに勝利すると貰えるジムバッジを8つ集めなければいけないのだがポケモンジムは各地方8箇所しかなく他地方のジムバッジを持っていても出場権は得られない。

 

「おじいちゃんに聞いた話だとポケモン協会はリーグ開催一ヶ月前になってもこの状態だったらジムバッジ7つで出場権を与えるらしい。」

 

「そう、なら良かったのかな?」

 

「それじゃあ借りは返せよ‼︎いいな‼︎」

 

「お前はちゃんと人のこと名前で呼べよな‼︎」

 

そう言うと、グリーンは火の鳥ポケモンを探しに12番道路を進んでいき、レッドはニビシティに行くためにトキワシティに戻っていく。

 

ートキワの森 正規ルート外ー

 

「ここに捕獲しておいた奴は何処に行った‼︎」

 

数人の黒い団服を着た男達が森の中で一部が跡形もなく焼け焦げた場所を指差し叫んでいた。

 

「せっかく私達が追い詰めておいたのにどうゆうことだ。」

 

周りと同じ団服にセロリアンブルーの髪をした男が身体中を傷だらけにした男達を問い詰める。

 

「申し訳ありません・・・幹部様達が特性モンスターボールを本部に取りに行っている間に、一人の子供に団員が全員やられました。」

 

するとピクッともう一人のセロリアンブルーの髪をした短髪のさっきの男と違い帽子を被っていない男が反応する。

 

「組織の中でも高レベルのウィンディとピジョットを用意していただろう、どうした。」

 

「これです。」

 

団服を着た、恐らく下っ端だろう男が2つのモンスターボールを差し出す。

 

「‼︎」

 

差し出されたボールの中には完全に伸びてしまっている2匹のポケモンがいた。

 

1匹は白いたてがみを持つオレンジ色の獅子の姿をしているでんせつポケモン・ウィンディ。

その姿はでんせつポケモンのなにふさわしい神々しい毛並みを持つポケモンと思えないほど土で酷く汚れ、身体中に痣を作っていた。

 

もう1匹は1番道路に生息したポッポが大きく勇ましくなった姿をしており、実際ポッポの最終進化系であるとりポケモン・ピジョット。

しかしその勇ましい姿や最終進化系のポケモンにふさわしいような圧倒的迫力は皆無でウィンディと同じように土で汚れ、しばらく使えないであろうほど翼は潰れていた。

 

2匹のその姿に短髪の男は驚きの表情を見せる

 

「大型の岩タイプか地面タイプのポケモンだな。その子供の姿は?」

 

「一瞬見えた人影から子供とわかっただけで・・・あとウィンディの炎攻撃でこれを落としていきました。」

 

下っ端が差し出したのは一つの機械のボディ、殆どが焼けて黒く変色しているが、赤い姿が残っているため、何か赤い機械のボディだという事がわかる。

 

「見た事ないボディだ・・・手掛かりになりそうだ保管しておけ、そして子供は見つけ次第排除しろ。」

 

「はっ‼︎」

 

「子供といえど我らロケット団を敵に回したら容赦はしない。」

 

「アポロ」

 

セロリアンブルーの短髪の男性、アポロは自分の名前を呼んだ方を振り返ると、そこには赤い髪の長髪で、扇子を仰いでいる吊り目気味の女性がいた。

 

「なんだアテネ」

 

「幹部の緊急収集だよ、5番道路と6番道路の地下施設がジムリーダー達に落とされた。」

 

その言葉にアポロの眉間に皺が入る。

 

「・・・なんだと」

 

「あのエスパー女よ」

 

「急いで戻るぞ、お前達は次の目的地に向かえ。」

 

『はっ‼︎』

 

アポロの命令に下っ端全員が敬礼する。

 

するとアポロとアテネはモンスターボールからピジョットを繰り出しそれに乗って何処かへ飛んで行った。

 

「次の目的地は?」

 

「ニビシティの先にある山、おつきみやまだ。」



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第5話 トキワの森での出会い

「木だ‼︎、林だ‼︎、森だ‼︎そして何より・・」

 

「虫だらけだー‼︎」

「カゲー‼︎‼︎」

「キキィー‼︎」

 

トキワの森には森というだけあって虫タイプのポケモンが多く生息する。

 

「つまりぃ・・・・」

 

「ヒッポがいれば楽勝だー‼︎‼︎」

「カゲー‼︎」

「キキィー‼︎」

 

「なのにどうしてこうなった・・・⁉︎」

「クゥ〜・・・」

「ブルルッ・・・」

 

レッド達が今いる場所はトキワの森の正規ルートから大きく外れた場所にいた。

 

何故、レッド達が一本道で安全なトキワの森の正規ルートを外れたかと言うと・・・

 

 

ー数分前ー

 

「トキワの森かぁー」

 

レッドは腰に巻いてあるモンスターボールの一つを取り出しジッと見つめる。

 

「反応なしか・・・ここに来ればって思ってたんだけどな・・・」

 

この旅が始まって初めてレッドの表情に曇りが見えた。

このトキワの森はそのモンスターボールに入っているポケモンと何か関係があるんだろうか、何かしらの希望をレッドは持っていたみたいだがそのモンスターボールには何の反応もない。

 

その時

 

「カゲー‼︎」

「うおっ⁉︎」

 

レッドの腰に巻いていたボールからヒッポが勝手に出てくると、すかさずレッドの胸に飛びついてくる。

 

「どうしたんだ?ヒッポ」

 

レッドの問いかけにヒッポはただ自分の顔をレッドの胸に擦り付けるだけの行動をする。

 

「心配してくれてるのか?俺とこいつを」

 

するとヒッポはムクッとレッドの方を見るとニコッと笑みをかえす。

その姿にレッドの顔にも笑みが浮かぶ。

 

「ありがとな。」

 

スッとレッドはヒッポの頭を撫でる。

その瞬間

 

「ゴローニャーッ‼︎‼︎」

「ふぁいっ⁉︎⁉︎」

「ゲッ⁉︎⁉︎」

 

大声が背後から鳴り響き、反射的にレッドはヒッポを抱えたまま前に転がり受け身をしながら声の聞こえた方を振り返る。

レッド達の視界に入ったのは身体中を岩で包まれ、筋肉質でがっしりした手足の持つ巨大なポケモンだった。

 

「こいつは・・・」

 

レッドはポケモン図鑑をそのポケモンにかざし青い球体のボタンを押す。

 

 

No.76 ゴローニャ

メガトンポケモン

タイプ いわ・じめん

高さ 1.4m

重さ 300kg

岩盤のような硬い殻で覆われている。1年に1回脱皮して大きくなる。

 

 

「ゴロニャーッ‼︎‼︎」

 

「やる気満々だなこいつ・・・っていうかこいつトキワの森には生息してないって図鑑にのってんだけど・・・」

 

ゴローニャをその丸い体を大きくそらし雄叫びをあげる。

レッドは自分の手持ちとの体格差と見た感じの纏う空気の凄みから、自分の手持ちのポケモンではかなわないことが分かったが、ここは森の中、自分達の動きは木々で制限されるだろうがゴローニャはその体格と重量で木々を倒していけるだろうから制限されない。

 

「戦うしかないか・・・岩・地面か」

 

レッドはヒッポを地面に降ろし腰のベルトにかけてあるモンスターボールを一つ取り出す。

 

「ニビジム戦のための良すぎる特訓相手だ‼︎頼むぞキーク‼︎‼︎」

 

「キキィー‼︎」

 

レッドがボールから繰り出したのは12番道路でゲットしたマンキーだった。

格闘タイプのマンキーの攻撃は岩タイプを持つゴローニャには効果は抜群だ。恐らく同じ岩タイプを専門に扱うニビジム戦の要のポケモンになるだろう。

ちなみにこのマンキーに付けられたニックネームのキークの意味はこのポケモンの覚えている技“けたぐり”から

蹴り→キック

マンキー+キック=(マン)キーク

である

 

「キーク‼︎“にらみつける”‼︎」

「キャーッ‼︎‼︎」

 

ギロッとキークの元々鋭い目が更に鋭くなって目の前のゴローニャを睨みつける。

同レベルくらいのポケモンであればこの睨みによって怯えさすことで、無意識的にガードが弱くなるのを誘って威力のある攻撃を与えれるのだが・・・

 

ー反応がない・・・

 

ゴローニャは一切の反応もなかった、これはつまりこのゴローニャとキークのレベルの違いを表していた。

 

ー予想はしていたけど・・・これは能力を下げていく手段は殆ど無意味だな・・・なら、

 

「キーク‼︎“きあいだめ”‼︎」

「キャァーッッ‼︎‼︎‼︎」

 

ドォンとキークが体から闘気を醸し出す、キークの体毛が軽く逆立つ

“きあいだめ”は闘気を放つことによって気合いを自分に注入することによって、一時的に集中力が増し、敵の急所に攻撃を与えさせやすくする技だ。

 

「キーク‼︎突っ込め!」

 

ダッと勢いよくキークは走り出す。同時にゴローニャの方も技を放つ準備をしている。

 

ー今、警戒する技は足元を崩させられる可能性の高い地面タイプの技だけだ‼︎‼︎

 

「キーク‼︎“けたぐり”だ‼︎」

 

「ゴローッ‼︎」

「っ⁉︎」

 

レッドの技の指示に従いキークは自分の判断でゴローニャの重心を担っている右足に狙いを定め、それを悟らせないためにゴローニャから見て左側に移動した。

レッドもその考えを読み取ったが次の瞬間ゴローニャの重心が右足から左足に素早く移動した。

 

『けたぐり』は相手の体重を利用して攻撃する技だ、だから300kgあるゴローニャにはとんでもないダメージが通る、そのため重心に技を決められるとけたぐりに抗う術はない。普通なら重心をバトルする相手から遠ざけなければいけないのはポケモンにとっての常識だ。しかしそれをしないということは、

 

ー強力な技を放つ前触れ‼︎

 

「キーク戻れ⁉︎」

 

レベルが違いすぎる相手が強力な技を放つと分かって突っ込むのは危険すぎる、そう判断したレッドはキークに下がる指示を出した。

 

「キッ⁉︎」

 

しかし既にキークは相手の左側から右側へ移ろうとゴローニャの右足元に飛びついていた。

 

「っ⁉︎ヒッポ‼︎“ひの「カゲェェッ‼︎」ナイス‼︎」

 

レッドがゴローニャの攻撃を少しでも、遅らせる、あわよくば止めるためにヒッポに“ひのこ”の指示をしようとしたがヒッポは自分の判断で指示が出る前から準備をしていた。そしてレッドの指示を受ける前に発射していた。

この間レッドが下がる指示を出してから1秒もかかっていない。

 

「ゴッ⁉︎」

 

ひのこはゴローニャの岩に隠れていない顔の中の瞳の部分に命中、そのままゴローニャはよろめき重心が今キークが向かっている右足に再び重心がかかった。

 

「今だ‼︎いっけぇぇぇぇぇ‼︎」

 

「キィッ‼︎‼︎」

「グニャッ!」

 

ゴローニャの右足にキークの蹴りがヒット。ゴローニャは頭から地面に倒れる。

キークはクルクルと回転しながらレッドの足元に着地する。

 

「・・・ヒッポ、今度もさっきと同じの頼むぞ、やっぱり一対一でまともに戦えるレベルの相手じゃなかった。」

 

レッドはポケモン図鑑の画面を見ながら呟く。

レッドもついさっき、トキワシティのポケモンセンターでヒッポとキークの回復をしてもらっている間ポケモン図鑑を弄っていて発見したのだが、ポケモン図鑑にはポケモンのHPが表示されるのだ、自分の手持ちのポケモンはもちろん他のポケモンのもだ。

今、ポケモン図鑑の画面にはヒッポとキークのHPとゴローニャのHPが表示されている。

 

そのゴローニャのHPが余り減っていないのだ。

 

ーなんとかならないのか・・・

 

レッドはポケモン図鑑で自分のポケモンの技を見る。

 

ヒッポ(ヒトカゲ♂) Lv9↑

控えめな性格

悪戯が好き

ひっかく

なきごえ

ひのこ

えんまく NEW

 

キーク(マンキー♂)Lv6

いじっぱりな性格

暴れる事が好き

ひっかく

にらみつける

けたぐり

きあいだめ

 

ー“えんまく”‼︎

 

今さっきの戦闘でヒッポに経験値が入り、力量《レベル》が上がったのだろう。ヒッポの使える技が増えている。

 

ー神様は今度は俺に味方をしてくれたみたいだ。

 

「ヒッポ‼︎“えんまく”だ‼︎」

「カゲッ‼︎」

 

ブワッと黒い煙がレッドとゴローニャを包むように動き出す。

ゴローニャは・・

 

ーそういえばなんでこいつはさっきから倒れたままなんだ。

 

HPが余っているのは図鑑を見てわかっている普通なら立ち上がって反撃をしてくるはずだ。

 

ー気絶してるのか・・・

 

するとゴローニャの身体が赤く熱を帯びていく、

 

「まさか・・・‼︎ヒッポ‼︎、キーク‼︎戻れ‼︎‼︎」

 

レッドは2匹をモンスターボールに戻そうとすぐさま腰に手をやる。

その時、ゴローニャの身体がビクンと大きく跳ねる。

 

ー間に合わ・・・

 

ドゴォォンッ‼︎‼︎

ゴローニャの身体が一瞬光ると同時に爆発を起こす、その爆発にレッド達は巻き込まれる。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

『だいばくはつ』

自分のHPを全て消費することによって爆発を起こし周りのポケモン全てを巻き込む自爆技。

この技によって現在レッドのいるトキワの森正規ルート周辺の森が倒れ、レッド達も何処かへ吹っ飛ばされた。

そのせいでレッド達は正規ルートから外れてしまったのだ

 

「なんだろ・・・本当についてない。」

 

レッドは現在木々に囲まれたいびつな道を進んでいく。襲いかかってくるポケモン達はヒッポで撃退もしくは弱らせ捕獲していた。

 

「現在の俺の手持ちとその技はっと」

 

ヒッポ(ヒトカゲ♂)Lv10↑

ひっかく

なきごえ

ひのこ

えんまく

 

キーク(マンキー♂)Lv7↑

ひっかく

にらみつける

けたぐり

きあいだめ

 

キャタピー♂Lv5

たいあたり

いとをはく

 

ビードル♂Lv5

どくばり

いとをはく

 

「キャタピーとビードルは成長が早いって聞いたことがあるからな、迷ってる間に進化できたら万々歳だ」

 

レッドは手持ちにするポケモンにしかニックネームはつけない。

もしオーキドの研究でそのポケモン達が必要じゃなくなった場合捕まえた土地に逃がすつもりだからだ。幸いなことに図鑑には捕まえたポケモンがどこで捕まえられたかを自動で記録している。

 

「・・・ピジョンを連れとけばよかったかなそうすれば空から抜けれたのに。」

 

ーま、今更後悔しても遅いか。

 

レッドはヒッポとキークをボールから外に出して進んでいく。

レッドがガサッと木と木の間から抜ける。

 

「フシくん‼︎“つるのむち”‼︎」

「ダネフシッ‼︎‼︎」

「ふあっ⁉︎」

「ゲェッ‼︎‼︎」

 

その瞬間、女の子の技の指示とともに鞭のようにしなった攻撃がレッドを襲うがヒッポが“ひっかく”で鞭を弾く。

 

「お、おぉう、ナイス・・・ヒッポ。」

 

「あ、ごめんなさい‼︎」

 

フッとレッドがさっきの技の指示をしていた人と同じ声をした方向を見ると、茶色っぽく腰まで伸びた長い髪に黒色のワンピースを着たレッドと同じくらいの年齢であろう少女とその足元に、青みがかった緑色で所々に濃い緑色の模様のある身体に、背中に大きな種を背負っているポケモンがいた。

 

「いや、あぁ」

 

「カゲッ⁉︎カゲカゲカァァーッ‼︎カゲカゲ‼︎クァーッ‼︎⁉︎」

 

「⁉︎ヒッポ⁉︎どうした⁉︎」

 

ヒッポはいきなり興奮した様子でレッドのズボンを引っ張って何かを伝えようとしている。

ヒッポは右手でレッドのズボンを引っ張り左手で何かを指差して・・・

 

「あのポケモンがどうかしたのか?」

「カゲッ‼︎」

「おおっ⁉︎」

 

ヒッポはレッドのズボンのポケットからポケモン図鑑を取り出し緑のポケモンに向けてかざし青色のボタンを押す。

 

「カゲッ‼︎」

「ん?」

 

ヒッポが図鑑の画面をレッドに差し出す、レッドは中腰になってそれを覗き見る

 

No.1 フシギダネ

たねポケモン

タイプ くさ・どく

高さ 0.7m

重さ 6.9kg

生まれた時から背中に植物の種があって少しずつ大きく育つ。

 

「フシギダネ・・・あぁぁぁぁぁっ‼︎‼︎」

 

レッドがバッと顔を図鑑の画面からフシギダネの方に移す。

フシギダネというポケモンはオーキドの研究所から逃げ出しオーキドがレッドに捕獲をお願いしたポケモンだ。

 

「えぇと・・・そのフシギダネはどこで捕まえたんだ?」

 

先程のレッドの叫び声に驚いていた少女にレッドは恐る恐る問いかける。

もしかしたら普通に野生で捕まえたのかもしれないからだ。

すると少女は・・・

 

「えぇと・・・昨日、トキワシティでポッポの3匹に襲われてたのを助けたら懐かれて・・・でもゲットしようとモンスターボールを投げてもボールがこの子を拒否するから誰か他の人のポケモンなんだと思うんですけど」

 

ービンゴ‼︎

 

レッドはそう確信した。

モンスターボールがポケモンを拒む理由はただ一つ、そのポケモンが既に他人のモンスターボールに入っている場合だけだ。

モンスターボールは捕まえたポケモンにマーキングをつける、そしてモンスターボールはそのマーキングがついたポケモンを拒否するプログラムが入っているため既に他人に捕まえられたポケモンはゲットする事が出来ないのだ。

 

「それじゃあ・・・」

 

ごそっとレッドが腰につけているベルトからオーキドから預かったフシギダネのモンスターボールを取ろうとすると

 

「ダネフシッ‼︎」

「⁉︎」

「カゲッ‼︎」

 

フシギダネがトレーナーの指示もなく“つるのむち”でレッドに攻撃してきた、ヒッポはさっきと同じように“ひっかく”で防御する。

 

「こらっ‼︎フシくん、どうしたの⁉︎」

「ダネダネフシフシッ‼︎‼︎」

 

「・・・・・・・」

 

ーこれは・・・

 

レッドは少し笑みを浮かべてフシギダネのモンスターボールをとる。

 

「君、名前は?」

 

「え、ブルー」

 

「君にこれを授けよう‼︎」

 

オーキドのモノマネをしながらレッドは言い放つ

 

「え?」

 

ブルーが受け取ったのは一つのモンスターボール。レッドの渡す際の変なテンションの物言いもあってブルーの表情に少し困惑と驚きが見える。

 

「フシギダネ・・フシくんのモンスターボールだ」

 

「え、じゃあこの子・・・」

 

「いや、俺のポケモンじゃないよ。そのフシギダネはオーキド博士の研究所から逃げ出したんだよ。俺はオーキド博士からその子の捕獲をお願いされただけ」

 

「いや、なら尚更・・・」

 

オーキドが世界的権威を持つ人だと知っているから抵抗が出来てしまったんだろう。少しミスったかなとレッドは一瞬思ったが話を続ける。

 

 

「フシくんにとってそれはベストな事かな?」

 

 

「え?」

 

「フシくんはもう君にすごくなついてる。俺には君とフシくんの間にはちゃんとした『絆』が生まれているのがわかるよ。その絆を断ち切るような恐れ多い事俺には怖くて出来ないよ。」

 

「それにトレーナーならポケモンが幸せになるような選択をするのは当たり前だろ?オーキド博士だってわかってくれるし大丈夫だって、な?」

 

スッともう少しブルー側にモンスターボールを持つ右手を差し出す。

 

「ありがとうございます・・・‼︎」

 

ブルーは感嘆の表情を見せながら慎重に慎重にボールを受け取る。

 

「敬語じゃなくていいよ。俺はレッドよろしく。」

 

「じゃあ、改めまして。私はブルー、よろしく。」

 

ー切り替えはやっ⁉︎

 

自分で言っときながらそう思うのはどうかと思うが、グリーンと比べるととても素直であると思い。同時に容姿についてもとても綺麗で可愛らしい感じてある。

 

「さぁ、この森をどうやって抜けようか」

 

「レッドはなんで正規ルートから外れたの?」

 

ーううむ・・・本当に切り替えの早い。

 

「ゴローニャの“だいばくはつ”に巻き込まれたんだ。」

 

「私はゴローニャから逃げてたら迷いました。」

 

「なんでトキワの森にゴローニャがいるんだよ・・・」

 

そう呟きながらレッドはキークをモンスターボールに戻して、お互い手持ちを一匹ずつ出したまま進んでいく。

 

 

 

 

 

 

ーレッドが僕の生まれた場所を旅している。

 

ーそこで道に迷っている。

 

ーこれなら僕は役に立てるだろうか・・・・・?

 

 

 

ー役に立てるわけないか・・・

 

ーレッドは僕を置いていくべきだ。

 

ーこんな役に立たないポケモン

 

ーレッドを傷つけるだけのポケモン

 

ー・・・もう僕の居場所なんてないのかもしれない。

 

ーもうレッドには頼れる仲間がいるんだ

 

 

 

ー僕とは違って・・・・・

 

 




ブルー 11歳

手持ちのポケモン

フシくん(フシギダネ♂)

⁇⁇⁇(⁇⁇⁇⁇⁇⁇)


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第6話 VSゴローニャ再び!

今回いつもより長いです。読んでもらえれば幸いです


トキワの森 正規ルート外

 

「ヒッポ‼︎“ひのこ”‼︎」

 

「フシくん‼︎“たいあたり”‼︎」

 

今、ここでレッドとブルーは虫ポケモン達とのバトルに集中していた。

ヒッポの“ひのこ”とフシくんの“たいあたり”がスピアー2匹に命中。ヒッポの攻撃をくらったスピアーは戦闘不能に追い込まれたがフシくんの攻撃を受けたスピアーはまだ体力が残っているようだ。

 

「ヒッポ交代だ。いけっトランセル‼︎」

 

「イヤーン」

 

レッドはヒッポを自分の足元までバックさせることによって戦闘から離脱させ、モンスターボールからキャタピーが進化したポケモン、トランセルを繰り出した。

 

「“いとをはく”‼︎」

 

ビュルルルッとトランセルの口から糸が吐き出され、フシくんの“たいあたり”でひるんでいるスピアーの体を糸でぐるぐる巻きにする。

 

「今よ‼︎フシくん‼︎“つるのむち”‼︎」

「ダネフシッ‼︎」

 

バシィッ‼︎とスピアーに“つるのむち”がヒット、スピアーを戦闘不能に追い込んだ。

 

「「イェーイ‼︎」」

 

パシンッとレッドとブルーはハイタッチをする、同時にヒッポとフシくん、トランセルもハイタッチをし、喜びを分かち合う。

 

「それにしても、本当にキャタピーとビードルの成長スピードは凄まじいわね。もうトランセルとコクーンに進化してるんだもの。」

 

レッドがトキワの森で捕獲した、2匹はトキワの森でバトルをしはじめてすぐに進化した。

 

芋虫型で大きな目に緑色の体、頭部のY型の赤い触覚が特徴のキャタピーは進化時に体に糸を巻きつけ蛹の姿になり緑色の反った硬い体が特徴のポケモン、トランセルへ進化した。

 

一方、濃い黄色の体と頭部の毒針が特徴のビードルはトランセルとは形が違うが黄色い蛹の姿となりこれまたトランセルと同じように硬い体が特徴のポケモン、コクーンへ進化した。

 

「ヒッポがいるおかげで戦闘の回し方が大分楽なおかげでもあるけどな。」

「カゲッ‼︎」

 

「私ももう一匹いるんだけど今はヒッポに甘えてフシくんを鍛えさせて貰うわ。」

 

虫タイプの多いトキワの森ではフシくんの得意なくさタイプの攻撃は相性が悪い。そのため戦闘はやりにくいのだが、ヒッポが戦闘の攻撃の軸兼サポート役を担っているためフシくんが動きやすくなっていた。

 

「ブルーもジム戦に挑戦するのか?」

 

「えぇ、フシくんを中心に頑張りたいと思うわ。」

 

確かにトキワの森を抜けた先にあるニビシティのポケモンジムは岩タイプを専門とするジム、フシくんのくさタイプの技は有効的だ。

 

「・・・・」

 

ジトーと、レッドはブルーを見つめる。

 

「わ、わかっているわよ⁉︎キークよね!わかってるわ⁉︎」

 

ヒッポの攻撃は全て岩タイプには全く効かないため、岩タイプに有効なかくとうタイプの技を使うキークをレッドは鍛えたいのだが、今の状態ではなかなかキークを使えない状態にいることを自分だけ目的のポケモンを鍛えているブルーに訴えるような視線を送っていた。

 

レッドは一つため息を吐くとスッと視線を前に戻した。

 

「とにかく、俺たちの目的は」

 

「この森を抜けるため、進化すれば空を飛べる、トランセルとコクーンを早く進化させて空から正規ルートへの道筋を見つけること。」

 

はやく森を抜けたいのなら、先程のスピアーを捕まえればいいのだが捕まえないのには理由があって。

 

 

ー正規ルート外の方がポケモンがよく出現する。ー

 

 

正規ルートは比較的出現するポケモンの数が少ない、もともと存在するポケモンの巣から一定の距離をとって道を作っているため当たり前だろうが、そのため正規ルート外ではしょっちゅうポケモンが出現する。

つまり、レッド達はポケモンを鍛えながら森を抜けようとしているのだ。

 

「そういうことで、ドンドン進んで行こーう‼︎」

「カゲー‼︎」

「おー!」

「・・・・ダネフシー」

 

このノリにフシくんはついていけないようだ

 

 

 

ートキワシティ ポケモンセンター

 

「おじいちゃん、ロケット団って知ってるか?」

 

ポケモンセンターに設置されている電話機でグリーンとオーキドが通話していた。

 

『カントー中心に活動するポケモンを捕まえ、倫理に反するような実験によってポケモンを強化し、売り出すということをするポケモン密漁売買組織じゃな。長い間、ポケモン協会が全力で組織壊滅のために動いておる』

 

「ポケモン協会が全力で動いているのにどうして追い込めないんだ。」

 

ポケモン協会が全力で動いているということはカントー中のジムリーダーが全力で動いているはずだ。ジムリーダーの使うポケモンもジム戦で行われるような対戦者の実力を図るようなポケモンではなく、確実に『勝つ』ためのベストメンバーのはずだ。そこらのトレーナーじゃあ手も足も出ないはずだ。

 

更にジムリーダーは全体的に顔が広い、例えて言うならニビジムのジムリーダー・タケシはカントーの全ての博物館、採掘組織がバックにいるため、違法採掘、違法売買の対象となりやすく、とてつもない価値のある古代ポケモンの化石や特定のポケモンの進化のために必要な進化の石を狙おうと行動するとすぐにタケシの元に情報が届き、ジムリーダー全員に流されるだろう。

 

『小さな基地なら潰せているのだが、ロケット団が様々な企業の裏に存在するせいで大きな被害というものが出せないんじゃよ。』

 

「関係している企業を問い詰めれば・・・」

 

『企業がロケット団に無意識に協力をしているんじゃよ。だから企業の表はロケット団が自分達の裏にいることを知らないんじゃよ。しかも、協会は一度失敗しているせいであまり早々動けないんじゃ。』

 

「どうゆうことだ?」

 

『とある企業の社長がロケット団に関わっているという証拠、その取引の映像を持って会社に押し入り社長を逮捕したんじゃが・・・』

 

『その社長には当日、そこには居なかったという確実な証拠映像があった。ポケモン協会は徹底的に調べたが覆すことができず、会社に訴えられポケモン協会は大きな損害を得たんじゃ。』

 

ーちょっと待て、ていうことは

 

「同じ日、同じ場所に同じ時間に同じ人物が2人いたっていうことか⁉︎」

 

液晶の中のオーキドは深くうなづき

 

『しかも指紋まで全く同じ・・・おそらくポケモン協会は嵌められたんじゃロケット団に・・・・』

 

「ロケット団には変装の名人がいるってことか。」

 

同じ顔、同じ声、同じ体格に同じ指紋。ここまで完璧にコピーすることが可能なのはアニメや漫画のような二次元の世界でだけだ、三次元の世界であり得るはずがない。

 

ーだが、そうとしか思えない・・・・

 

『グリーン、関わるなといっても関わるのはわかってはおるが、引くところは間違えるんじゃないぞ。その1匹で通用するほどロケット団は・・・』

「わかってる。じゃあ、図鑑の修理はよろしく。」

 

ブツン!と電話が切られる。

 

ー思っているより焦らなければいけないか・・・

 

グリーンはポケモンセンターの天井を見ながらそう思った。

 

 

 

 

ートキワの森 正規ルート外

 

「おおー‼︎」

「わー‼︎」

 

レッドとブルーは目をキラキラさせながらあるものを見つめる。その視線の先にはトランセルとコクーンが2匹並んでいた。

 

パキッ・・パキパキッ・・

 

パキッ・・パカァーッ・・

 

「「おおおおおおっ‼︎」」

 

2匹の蛹の殻にヒビが入りそこから光り輝く身体が現れる、そして間もなくして身体の光が弾け飛ぶ。

 

「フリー‼︎フリー‼︎」

 

「ブウゥーンッ‼︎」

 

「「やったぁぁぁぁぁっ‼︎」」

 

トランセルから現れたのは黒い筋の模様が描かれた大きく白い羽に大きく赤い複眼、紫色の身体を持つ、蝶の中でもモンシロチョウをイメージさせるキャタピーの最終進化系である、ちょうちょポケモン『バタフリー』

 

一方コクーンから現れたのは、円錐状の槍のような形をした巨大な毒針の腕と赤い目に腹部に黒いシマシマ模様の入った黄色い身体を持つ、蜂をイメージさせるビードルの最終進化系である、どくばちポケモン『スピアー』

 

2匹の進化を見届けたレッドとブルーはもう何度したかわからないハイタッチをする。

 

「よぉし‼︎バタフリー‼︎スピアー‼︎空を飛んで正規ルートへの道を探して教えてくれ‼︎」

 

「フリー‼︎」

「ブゥーン‼︎」

 

2匹はレッド達に背中を向け飛び立つ。

 

「これで森を抜け出せるな、ポケモン達も鍛えれたし。」

「そうね。」

 

レッドはポケットから図鑑を取り抱し手持ちのポケモンを確認した。

 

ヒッポ(ヒトカゲ♂)Lv12↑

ひっかく

なきごえ

ひのこ

えんまく

 

キーク(マンキー♂)Lv11↑

けたぐり

にらみつける

きあいだめ

みだれひっかき

etc

 

バタフリー♂Lv10↑

たいあたり

いとをはく

かたくなる

ねんりき

 

スピアー♂Lv10↑

どくばり

いとをはく

かたくなる

みだれづき

 

キークの技欄の最後にetcがついている。これはキークの覚えている技の数が4つを超えたからだ。

なぜ4つなのかというとポケモンの公式バトルではトレーナーは手持ちのポケモンの技をそれぞれ4つ選択してバトルするからだ。

ポケモンジムでは専用の機械があり、現在のバッチの個数を入力し、次に技を4つ選択する。

バトルの最中に変更することは基本認められていない。唯一認められる理由は二つ

 

・バトル中のレベルアップによって新しい技を覚えた場合。

 

・バトル中の進化によって新しい技を覚えた場合。

 

この場合のみ、トレーナーは最初に選択した4つの技と覚えた技から4つその場で選択し戦う。バトル中のため専用機械の使用はできないが審判がそこから使われた技を数える。もし4つを超えた場合はその場で反則負けとなる。

そして図鑑は公式のポケモンジムでも使用可能だ専用機械に図鑑をかざせば一瞬でバッチの個数と図鑑のポケモンの技欄に書かれている4つの技を自動的に登録するつまり今、レッドが専用機械に図鑑をかざすとキークの技では

 

けたぐり

にらみつける

きあいだめ

みだれひっかき

 

が登録されることとなる。

ポケモン図鑑はそういうちょっとした面倒なことの省略のための機能も積んでいるということだ。

 

「そうだ、図鑑の完成度はどうなってるんだろう。」

 

レッドは更に図鑑をいじり、図鑑の図鑑ページを選択する。

 

RED

見つけたポケモン 19

 

捕まえたポケモン 15

 

「まぁ、順調だな。会ってるけどゲットしていない残りの4匹は・・・フシギダネ、ゼニガメ、ゴローニャ・・・そして、」

 

レッドがブルーの足元に目をやる。

 

「コン‼︎」

 

耳に心地いい鳴き声で反応したのは美しい6本の尻尾を持ち、赤い身体をしている狐をイメージさせるポケモン

 

「ロコンか・・・。」

 

「私のコンちゃんは交換しないわよ。」

 

スッとブルーがロコン、コンちゃんを抱え込みレッドに怪しげな視線を与える。

 

「いや、別にそういう意味でいったわけじゃないから・・・」

 

「フゥーン、・・・それにしても本当に便利ねその機械。」

 

ブルーはレッドと一緒に行動していたため、レッドが逐一ポケモン図鑑を確認しているのを見て、レッドからそれがどういう機械なのかを聞いていた。

 

「オーキド博士は3匹のポケモンを用意してたってことはもしかしたらもう一台あるかもな。」

「ほんと⁉︎」

 

グイッとブルーの顔が至近距離に来たため、反射的にレッドの頬が赤くなる。レッドは身体をそらして顔と顔の距離を離し、両手を前に出してこれ以上近づかないでというジェスチャーを取りながら答える

 

「いや・・あの・・あんまり期待しないで・・・・?」

 

その時

「フリーフリー」

「ブゥーンッ」

正規ルートの場所を探していたバタフリーとスピアーがレッド達の元に戻ってきた。

 

「あっもう戻ってきた。」

 

「思ったより近かったんじゃない?行きましょ。」

 

レッドとブルーはバタフリー達に着いていき正規ルートを目指していった。

 

 

 

ーマサラタウン オーキド研究所

 

「ナナミ、何を調べておるんじゃ。」

 

オーキドは研究所では見た事のない資料をナナミが読んで何かを調べていたので気になって声をかけてみた。

 

「最近マサラタウンの市長にお願いしてリストを貰ってマサラタウンから旅に出たトレーナーの今を調べているんです。」

 

マサラタウンでは旅に出る住人の名を記録する決まりがある。

これは旅に出た人達の大成を願って行われる軽い儀式だ、本当に軽いものでそれを儀式とよんでいいのかと思うが決まりだからもうしょうがないと全ての住民が思考を放棄している。

 

「なんでそんなものを・・・ハア、まだそんなにレッドが心配か?ナナミ、大丈夫じゃよ。グリーンがレッドと会ったと話しておった、レッドはいつも通り元気にやっておるよ。」

 

ーいつも通り・・・‼︎

 

ピクッとナナミの眉間にほんの一瞬シワが入る、すぐに戻ったためオーキドは全く気づいていない。

 

「・・・いつも通りじゃダメなんですよ。」

 

「ん?何か言ったか?」

「何も‼︎」

 

ボソッとナナミは呟くがオーキドには届かない、ナナミはそのまま研究所を後にする。

 

その後ナナミは家に戻り、そこでパソコンであるデータを調べていた。その内容はポケモン協会ホームページに記入されている『公認ジムバッチ入手者』のリストだ。ここには次のリーグが始まるまでそれぞれのジムでジムバッチを入手したトレーナーの名が記入されている。

 

ーマサラタウンから旅に出た少年少女は合計7人、その中で現在ポケモンリーグ公認ジムバッチを入手しているのは・・・5人

 

ーグリーンはジムバッチをゲットしてからトキワの森に再度潜ったのね

 

その中にグリーンの名前が記入されていた。グリーンはトキワの森を急いで抜けて遅れを取り戻すといっていたらしい・・・遅れとは恐らくポケモンの鍛えることについてだと思うが。

 

レッド君は今・・・

 

ナナミはパソコンに繋いであるDVDデッキに見せかけた監視カメラと発信機の電波を受信する機械のスイッチを入れる。

するとパソコンの左半分にカントー全域の地図が現れ一瞬でトキワの森の地図に切り替わる。するとトキワの森の正規ルート外から少し離れたところに赤い点が映るが、もう右半分の画面は真っ暗で何も写ってはいない。

 

ートキワの森の正規ルートを抜けてる⁉︎・・・けどそこまで離れてないから大丈夫ね。監視カメラは真っ黒やっぱりこの時間にテントの中にいるわけないか。

 

ナナミはレッドのリュックサックと衣服に洗濯機などに入れても無事な超小型発信器をつけていた。更にテントの中にはレッドにバレないように超小型監視カメラをつけていた。

しかしこの様子だとトキワの森を抜けるのは簡単だろう、しかしナナミの心配は違うところに会った。

 

ーレッド君があいつらに会いませんように。

 

ナナミはある人物とレッドの出会いを心配していた。

 

 

 

 

トキワの森

 

「フリフリー」

「ブゥーンッ」

 

「もうすぐみたいだぞ‼︎」

「えぇ」

 

レッドとブルーはバタフリーとスピアーに案内され森を進んでいっていたが急に2匹のテンションが良い意味で高くなっているのを見て正規ルートの出口が目の前にあることを示しているとレッドは感じ取った。

 

「コン‼︎」

「キィッ‼︎」

 

レッドとブルーはキークとコンちゃんを外に連れて歩いていく。

 

すると

 

ビュッ‼︎

「フリッ⁉︎」

「ブッ‼︎」

「キィッ⁉︎」

「コォーン⁉︎」

 

「なっ⁉︎」

「みんなっ‼︎」

 

急に4つの石の弾丸が4匹を襲い、全て命中。そして4匹は全員吹っ飛ばされ木に激突。

 

ーこの技は・・・

 

「“ロックブラスト”‼︎」

 

“ロックブラスト”とは岩タイプの技で石の弾丸を複数回放つ技だ。一発一発の威力は低いのだが虫タイプを持つスピアー、炎タイプのロコンであるコンちゃんは通常の2倍のダメージを、虫タイプと飛行タイプを持つバタフリーには4倍のダメージが通る。

 

そして今の攻撃によって、バタフリー、スピアー、ロコンが戦闘不能状態になってしまった。岩タイプの攻撃は効果今ひとつの筈の格闘タイプのキークにも相当のダメージが入ったようだ足元がふらついている。

 

「戻れ!バタフリー‼︎スピアー‼︎」

「戻って‼︎コンちゃん‼︎」

 

戦闘不能になった3匹をそれぞれモンスターボールにしまうとレッドはギロッと岩の弾丸が飛んできた方向を睨む。

 

「そんなに俺たちのことを気に入ったのかよ」

 

ドォンッ‼︎と目の前の木々が同じ“ロックブラスト”によって吹き飛ばされる。

そこから現れたのは“だいばくはつ”によってレッドとレッドの手持ちを吹き飛ばしたゴローニャだった。

 

「どうするのレッド」

 

「わざわざ素直に戦う必要ねぇよ‼︎頼むぞヒッポ“えんまく”‼︎」

「カゲッ!」

 

ヒッポの口から黒い煙が放たれゴローニャの視界からレッド達を隠す。

 

「今のうちに・・・」

 

ドォン!

「っ‼︎」

 

走り出したレッド達の行き先に“ロックブラスト”による岩の弾丸がぶつかる。すぐさまレッドはゴローニャの方に視線を向けると、“ロックブラスト”の威力で煙幕が振り払われゴローニャの姿が露わになっていた。

 

ーしょうがない‼︎

 

「ブルー‼︎」

「わかってるわ‼︎フシくんお願い‼︎」

「ダネフシッ」

 

ブルーはフシくんを繰り出す。フシくんの草タイプの技はいわ・じめんタイプのゴローニャに4倍のダメージを与える。

 

「キーク“にらみつける”‼︎ヒッポ“なきごえ”‼︎」

 

レッドはレベル差の大きいゴローニャに攻撃を届かせるため、そして少しでもダメージを軽減するために“にらみつける”と“なきごえ”を指示。

ゴローニャはなんともなくそうだが確実に能力は下がっている筈だ。

 

「フシくん“やどりぎのタネ”‼︎」

「ヒッポ“えんまく”‼︎」

 

フシくんが技を放った瞬間、ヒッポが煙幕を口から発して技を隠す。同時に目くらましにも使う。

 

「キーク“きあいだめ”‼︎」

 

キークが闘志をオーラに変えて放出し気合いを入れる。

 

「ゴロニャ‼︎」

その間に“やどりぎのタネ”が命中、種から芽が生えゴローニャの身体中に巻きつく。

“やどりぎのタネ”は相手に絡みついた種から相手の体力を徐々に奪い体力を回復する技である。

 

「ゴロー‼︎」

 

ゴローニャが両腕を上げて叫ぶするとレッド達の真上に小さな空間の穴が発生しそこからいくつもの岩がレッド達に襲いかかる。

 

ー“いわなだれ”か‼︎

 

レッドはすぐに後方へ下がり避けようとしたが

 

「⁉︎」

 

レッドのすぐ右側に位置していたブルーは場所が悪く自分の周囲すべてに岩が落ちてきていた。これではブルーに逃げ場はないそれどころか・・・

 

「きゃあっ⁉︎」

 

ブルーの真上からも岩が落ちてこようとしているではないか

 

「ブルー‼︎」

「ダネー⁉︎」

 

レッドはブルーに向かって飛びつくフシくんは自分の蔓では2人を捕まえて運ぶほどの時間はないことを察知し“つるのむち”で岩を砕こうと技を放つ。

しかし岩は砕けずそのまま落ちていく。

レッドはブルーを押し倒しブルーに覆い被さるような体制をとる。

 

「あがっ‼︎」

「レッド‼︎」

 

レッドの背中に岩が命中する。

 

「ぁあ・・・」

 

レッドは思った以上の衝撃でそのまま気を失ってしまう。

ブルーもレッドと岩に上に乗っかられているせいで身動きが取れなくなってしまった。

 

「ちょっ⁉︎レッド‼︎レッド‼︎」

 

ブルーはレッドの身体をさすって起こそうとする。

 

「ゴロゴロッ」

「キィッ‼︎‼︎」

「ゴロッ⁉︎」

 

ゴローニャがその様子を見てニヤッと笑みを浮かべた瞬間背後からキークが“けたぐり”を炸裂させる。ゴローニャはそのまま地面に倒れ、すぐさまキークはレッドとブルーを囲んでいる岩のところへ向かう。

 

「カゲェェッ‼︎」

「フシッ‼︎」

 

そこではヒッポがひっかく”、フシくんが“つるのむち”でお互いの主人を助けようとしていた。フシくんの“つるのむちのは徐々に岩を壊していくがさすがに“ひっかく”では壊れない。

 

「キッ‼︎」

キークは“けたぐり”で岩を一撃で壊す、時間はかからずレッドとブルーを救出する。

 

「カゲッ」

 

ヒッポは再び煙幕をはいて目くらましをするとブルーに抱きかかえられているレッドに向かって軽く炎をはいて命中させる。

 

「あちちっ⁉︎」

 

レッドはすぐに目を開けると目の前にブルーの顔が至近距離であったため更にびっくりしブルーの腕を抜けて転がった。

 

「あっそうか俺、気を失って・・」

「ゴローニャッ‼︎」

「っ‼︎ヒッポ“ひのこ”‼︎」

「カゲッ‼︎‼︎」

 

レッドが今の現状を理解すると同時にゴローニャの叫び声が聞こえたためヒッポに技の指示を出す、ヒッポはさっきの叫び声からゴローニャの位置を予測し黒い煙の中に火の粉を吐く。

 

「ゴロッ‼︎」

「当たった‼︎よしキーク回り込んで隙をみて“けたぐり”だ‼︎ヒッポは“ひのこ”でゴローニャの注意を引きつけてくれ。」

「キッ‼︎」

「カゲッ‼︎」

 

「さっきの攻撃で俺たちの居場所は予測された筈だ。すぐに移動するぞブルー‼︎」

 

「え、ええ。フシくん、ヒッポと一緒に注意を引きつけて。」

「ダネフシッ」

 

「さぁ、行こう。」

 

レッドがブルーに手を差し伸べる。

 

ーこいつ・・・

 

その仕草を見てブルーが思ったこと。

 

ーなんか・・・ムカつく・・・

 

そう思いながらレッドの手を取り立ち上がるとすぐに2人は走って移動し始める、さっきまでいた場所に“ロックブラスト”による攻撃がぶつかる。

 

「さっきのは感謝するけど調子にのってもうキザなことしないでよね気持ち悪いから。」

「えっ、別にそんな・・・つかひどっ・・」

 

すると煙がはれてそこからゴローニャの姿が

 

「ゴロー・・・ゴロー・・」

 

「“やどりぎのタネ”が大分体力を吸い取ったみたいだぞ。」

 

ゴローニャに息切れが見え出したのを見てレッドはチャンスだと確信した、レッドはキークがゴローニャの背後に移動して自分の考えで“きあいだめ”をしているのを確認し、心の中でナイス!と褒めると

 

「今だ‼︎」

 

レッドの指示と同時にキークがゴローニャの背後の木から飛びつき蹴りの構えをとる。

 

「ゴロッ‼︎」

「キッ⁉︎」

 

その瞬間ゴローニャがぐるりと背後を向く。

 

「まずい‼︎」

 

ー背後にキークがいることがバレてた⁉︎

 

ゴローニャはそのままキークを片手で地面に叩きつける。

そしてそのまま足を大きくあげて・・・

 

「まずい⁉︎ヒッポ、フシくんこっちへこい‼︎」

 

レッドの指示に従い急いで2匹はレッドの元へ来るとレッドはブルーの手を引っ張り2匹を連れて木の背後へ隠れる。

 

「キーク‼︎ジャンプだ‼︎」

 

しかしキークは立ち上がれない、そしてー

 

「ゴローニャー‼︎‼︎」

 

ゴローニャの足が地面に叩きつけられる。

 

ゴローニャの足元から衝撃波が作り出される。それは大地を揺らし、砂埃を巻き上げて周囲全体を襲う。

 

「キキャッ・・・‼︎」

「キーク‼︎」

 

キークはその衝撃波をもろに受けて木に激突、しかしその木も衝撃波によって倒れてキークは更にダメージをおう。

レッド達の隠れていた木も折れてしまい、レッド達は急いでその場から離れる。

すると衝撃波はやんだが・・・

 

「キィ・・・・」

「っ・・・よくやった。戻れキーク‼︎」

 

キークが戦闘不能に陥っていまった。

 

「ねぇ、今の技・・・」

「地面タイプの全体技“じしん”だ。」

 

「ゴロー・・・ゴロー・・」

 

「だけど、もう少しだやってやる。」

 

ヒッポとフシくんが前に出てくる。

 

「ヒッポ‼︎“ひのこ”」

「フシくん‼︎“つるのむち”」

 

レッド達が選んだのは攻撃技の応酬、能力変化の技は捨て、一気に型をつけにいく。

 

「ゴロニャッ‼︎」

 

ゴローニャも“ロックブラスト”で対抗する。

 

ー 一撃でも当たったら負ける‼︎だけど

 

「ヒッポ‼︎突っ込め‼︎“ひのこ”だ‼︎」

「カゲッ‼︎」

 

ー1番怖いのは“じしん”を撃たれること‼︎

 

レッドはフシくんと比べると速いヒッポをゴローニャに接近させることで“じしん”を撃つ暇をなくさせようと試みる。

実際これは有効で、ゴローニャの攻撃が単調になっていく。

 

ーやっぱりこのゴローニャは知能が高くない。

 

ポケモンは普通覚えた技を使えなくなることはない。しかし、レベルが上がっていくにつれて技の数も増え、使う技は一定になってしまう。

ポケモンが冷静に判断して技を放てる個数が『最低4つ』、それ以上だと、そのポケモンの知能によって止まってしまう場合がある。

ゴローニャが使った技は

“だいばくはつ”“ロックブラスト”“いわなだれ”“じしん”

の4つ、つまりポケモンが冷静に判断して技を使える最低個数なのだ。

 

ー接近して戦っていれば少なくとも“だいばくはつ”“じしん”は止められる。そして戦闘を伸ばしておけば

 

「ゴロッ・・・」

 

ゴローニャの動きが明らかに止まる。

 

ー“やどりぎのタネ”のおかげで勝手に追い込める‼︎

 

「トドメだヒッポ“ひのこ”‼︎」

「こっちも続くわよフシくん連続で“つるのむち”‼︎」

 

「カッゲェェェェ‼︎」

「ダネフシッ‼︎」

 

ドドドドドドドドドッ‼︎‼︎

 

“ひのこ”と“つるのむち”による連打がゴローニャにヒットする。

 

「今だ‼︎モンスターボール‼︎」

「えっ⁉︎ちょっ‼︎」

 

レッドがゴローニャにモンスターボールを放つ。その行動に思わずブルーが驚く。

ゴローニャはモンスターボールに

 

 

吸い込まれなかった。

 

『⁉︎』

ゴローニャはそのまま戦闘不能になり地面に倒れた。

ヒッポとフシくんがレッドとブルーの元に戻ってくる。

 

「モンスターボールが拒絶した・・・」

「ていうことは、この子は誰かのポケモンってこと?」

 

ー確かにトキワの森にゴローニャが生息するなんて聞いたことがなかったけど。

 

「とりあえずこの森を出よう、俺たちが考えても意味ないよ。」

「そうね。」

 

レッドとブルーはそのまま正規ルートへ戻っていく。

 

 

「子供のくせにやるじゃないか。」

 

レッド達が去った後木の背後から男が出てくる、するとモンスターボールをかざすとゴローニャを戻す。

 

「私のポケモンの中で最もザコとはいえ勝利するとは・・・先が楽しみな子達だ。だが・・・」

 

その男の胸には『R』の文字が

 

「我がロケット団に楯突くと言うのなら容赦はしない。」

 

すると男は森の中に消えていった。




ここまで読んでいただきありごとうございました。


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第7話 トラウマの過去

「やっと着いた・・・ここがニビシティかぁー」

 

レッド達はトキワシティを抜け、ニビシティに到着した。

『ニビは灰色石の色、険しい山間の街』

と言われるように所々に岩が置いてある。

 

「まずはポケモンセンターに行きましょ。」

「ん、あぁ。」

 

そしてレッドとブルーはニビシティのポケモンセンターに向かうのだった。

 

 

「お、レッドじゃねぇか。」

 

突然レッドの隣から声をかけられる。

 

「⁉︎」

「ん?知り合い。」

 

レッドは声に驚く、同時にレッドの腰に装着したモンスターボールの1つがピクッと動いた。

レッドがゆっくりと声の方向を振り返ると青い髪にキリリとしたつり目、首に砂嵐防止用のゴーグルを巻いた少年がたっていた。

 

「ナガト・・・」

 

ーレッドの声が軽く震えているー

 

ほんの微かな変化だったがブルーはトキワの森でのゴローニャとの戦闘で彼の凛々しさ、強さを垣間見ていたばっかりのため、その変化に気づいた。

 

「へーお前も旅に出たって母さんから聞いてよ。バッチゲットした後も用があったから残ってたから顔みようと思ってな。」

 

「はぁ・・・」

 

ここまでの話の流れでは別にレッドが怯えるような人ではない気がする、とブルーは思った。

 

「いやー、よくここまで来れたもんだ。褒めてやるよ」

 

ピクッとブルーが軽く反応した。

マサラタウンからニビシティまでの難関といったらトキワの森と言われるがトキワの森は正規ルートを通ればただの一本道。言うほど危険ではない。なのにその台詞を言うということは

 

ー馬鹿にしてる・・・

 

そうとるのは当然だった。

 

「それにしてもよくお前なんかが旅に出られたな、トレーナーズスクールではいっつもビリケツだったお前が」

 

「誰のせい・・・」

 

ー誰のせいだ‼︎

そう言おうとした瞬間。

 

「だとしたら相当差がついたようね。」

 

突然、綺麗でそして少し冷たい声音の声が響く。レッドは声のした方向、ブルーの方を見る。そこでブルーは目を細めてレッドとナガトを見ていた。

 

「レッドは今、あの世界的権威を持つ研究者オーキド博士の研究の手伝いをオーキド博士本人から依頼されて旅をしているの。オーキド博士からポケモンを貰ってね、未だにスクール時代の成績で人を見下すあんたとは大きな違いね。」

 

ブルーの言葉にレッドは背中を押されたみたいな感覚を覚えた。

これはブルーのナガトへの叱責であり自分に向けた叱責なのだと感じた『こんな奴に負けるな』という。

レッドは一つ息を飲むとナガトの方を向く。

 

「俺はスクールの時とは違う。オーキド博士から貰ったヒッポや旅の途中で出会ったキークがいる。もう、ナガトには‼︎お前らには屈しない‼︎‼︎」

 

ピクッとナガトの眉間にシワが寄る。

いける・・・過去に打ち勝てる。レッドはそう思った。

 

しかし

 

 

「ピカチュウは元気かぁ?」

 

 

「⁉︎」

 

ドクンッと心臓がはねた、同時にブルーに背中を押してもらった事で得た強気な気持ちにヒビが入り、そしてあっさり砕け散った。

 

「・・・・・・」

 

レッドは黙る事しか出来なかった。

ニヤッとナガトの顔に満面の嫌な笑みが浮かぶ。

 

「ははははははっ‼︎可哀想になぁ、お前なんかのポケモンになったせいでぇあんな事になっちまって⁉︎‼︎まーあ、そのピカチュウも出来損ないだっただけにお似合いだったけどぉ‼︎。」

 

レッドの拳に力が入る、

 

 

ー言い返せない・・‼︎言い返せない・・‼︎

 

 

レッドは顔をうつむかせジッと黙っている。それを見ているブルーは詳しい事はわからないがとにかく、とにかく調子に乗って全力でレッドを見下して話すナガトをぶっ潰したかった。

 

「なぁ、お前のポケモン俺に寄越せよ。お前なんかが主人じゃあポケモンが可哀想だろ」

 

ピクッとレッドの握られた拳が反応する。

 

「あぁ‼︎ついでにオーキド博士の研究も俺が代わりにやってやるよ。お前はポケモン全部俺に渡してそのままマサラに帰れ。あっ、ポケモンは持たさねえからポケモンなしで帰れよ。」

 

「あんたねぇ‼︎・・・⁉︎」

 

ブルーが我慢できずにナガトに突っかかろうとするとレッドの右手に遮られる。

 

レッドは一つ呼吸をすると

 

「ポケモンは渡さないし、研究の手伝いも代わらない、・・・確かに俺はトレーナーとしてまだ未熟だ。馬鹿にされても仕方がない。・・・・けど」

 

「あ?」

 

「俺の仲間を馬鹿にした事は許せない・・‼︎」

 

スッとレッドが腰に装着しているモンスターボールの1つを取り出す。するとナガトに対して睨みを効かせ。

 

「ポケモンバトルだ‼︎‼︎」

「嫌だよ。」

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「・・・・・・・は?」

 

 

レッドの強気の提案にナガトは即答する。

 

「あんなに俺の事馬鹿にしてた癖に逃げるのか?所詮口だけの奴って事か?」

「そうよ、バトルしなさいよ。」

 

ブルーが更に便乗する、しかしナガトは顔色を全く変える事なく

 

「俺には用があるんだよ。お前をからかうためだけにここにいたわけじゃねぇんだよ。」

 

そう言うとナガトはその場から去っていった。

 

「なによあいつ・・・レッド‼︎あいつとどうゆう関係なの‼︎」

 

「お前には関係・・・」

バシン‼︎

「イテッ‼︎」

「むー‼︎‼︎」

ブルーがレッドの背中を叩く、さっき縮こまっていた背中を押してあげたでしょ‼︎と訴えるような視線もつけて。

レッドはため息を吐くと

 

「ここじゃなくて中で話そう。」

 

そう言ってポケモンセンターに入っていく。

そこでレッドとブルーはお互いにポケモンセンターの中の部屋を借り、レッドの部屋に集まった。

そしてレッドは話し出す。

 

「同じトレーナーズスクールに通っていた奴だよ。関係は見たとおりいじめっ子といじめられっ子だ。」

「あいつの言ってたピカチュウって・・・」

 

レッドの動きが明らかにピタッと止まるがレッドは腰のベルトから1つのモンスターボールを取り出す。

 

「俺が初めて捕まえたポケモンだよ。このモンスターボールの中に入ってる。」

 

 

 

 

 

 

俺は小さい頃に両親が行方不明になってオーキド博士に預けられることになった。

 

オーキド博士は孫娘のナナミさんと2人で暮らしていて俺を温かく迎えてくれた。

 

オーキド博士はポケモンについての知識を色々と教えてくれたし俺を本当の孫のように可愛がってくれた。

 

ナナミさんは俺を本当の弟のように俺と接してくれた。

 

そしてその生活に慣れたある日、俺は少し興味本心でマサラタウンを抜けて1番道路に出てしまったんだ。

そこで・・・

 

「ケーッ‼︎‼︎」

「うわぁ‼︎」

 

オニスズメに襲われたんだ。俺は必死に逃げたけどオニスズメのスピードにはかなわずすぐに追い詰められて、でも・・・

 

「ピチュ‼︎」

「ケッ⁉︎」

 

1匹の小さな薄い黄色の体をしたポケモンが電撃でオニスズメを追い払ってくれたんだ。

先端が黒色の長い耳を持っていてピンクのほっぺたが可愛らしいそのポケモンは、オーキド博士からも聞いたことのないポケモンだった。

 

「ありがとう‼︎おれ、レッドっていうんだよろしく‼︎」

「‼︎・・・ピチュ‼︎‼︎」

 

その日あったばっかりなのにそのポケモンと俺はすごく仲良くなったんだ。

楽しくて楽しくて夢中になって日が沈むまで遊んだせいで、帰るときはあたりが真っ暗でどうしようかと思ったけど・・・

 

「ピッチュー‼︎」

 

ピカーッとそのポケモンがあたりを照らしてくれたおかげで無事に変えることが出来たんだ。

そして家の前で・・・

 

「またあそぼうね!えっーと・・・きみのなまえしらないや・・・」

「ピチュ‼︎」

 

「そうだ、オーキドおじいちゃんがポケモンには『にっくねーむ』をつけるんだって。おれがきみのなまえつけてあげる!」

「ピチュー‼︎」

 

「えっと・・・ピカピカひかってピチューってなくから・・・きみのなまえは『ピカチュー』だ‼︎」

「ピチュピチュピー‼︎」

「またあそぼうねピカチュー!」

「ピチュー‼︎‼︎」

 

これが俺たちのはじめての出会いだったんだ。

 

その次の日

 

コンコン!

「ん?」

ガラッ

「ピチュー‼︎」

「おおっピカチュー‼︎むかえにきてくれたの?」

「ピチュ!」

 

それから毎日、ピカチューは俺を遊びに誘いに来てくれたんだ。

 

「オーキドおじいちゃん‼︎」

「なんじゃ?レッド。ん?そのポケモンは」

「きのうともだちになったんだ‼︎」

「こいつは珍しい。トキワの森でごく稀に見るピカチュウの進化前『ピチュー』じゃあないか!」

「ピカチューってなまえなんだ‼︎」

 

その瞬間のオーキド博士の間抜けな顔は今でも忘れることはできない。

 

「お、おお・・そうか。レッドと仲良くしてくれてありがとうなピカチュウ。」

カチン!

「ピッチュー‼︎‼︎」

「アバババババババババッ⁉︎・・・なんで電撃・・・⁉︎」

「オーキドおじいちゃん、ピカチュウじゃないよピカチューだよ!」

「おお・・・そうかい・・・気をつける。」

 

オーキド博士の話によるとピチューは親のピカチュウが絶対に人に見つからないように育てるらしく滅多に見つけることのできないポケモンらしい。実際、ピチューの発見はピカチュウが発見されてからかなり時間が経ってかららしい。

 

「そのピチューがマサラにやってくるとは・・・恐らく親がいないんじゃろう。」

 

ピチューとピカチュウは迷子になった際に電気の発することでお互いの位置を知ることが出来るので迷子になったとしても大丈夫なのだ、しかしピカチューはオーキド博士に知られてから一日中研究所にいることも多々ある。親が心配してるんじゃないかと聞いたところ親がいないというような反応を見せた。

 

「レッド、ピカチューをゲットして自分のポケモンにする気はないか?ピカチューもレッドと共に暮らす気はないか?」

 

「おれは・・・ピカチューと一緒にいたい‼︎」

「ピチュピチュ‼︎」

 

俺とピカチューの答えは決まっていた。

 

「よし‼︎レッドほれ、モンスターボールじゃピカチューに使ってやりなさい。」

「うん!」

 

オーキド博士はいろんなポケモントレーナーに狙われる可能性を考えて俺にピカチューのゲットを勧めたんだ。

そして俺はピカチューをゲットしたんだ。

 

「でてこい!ピカチュー。」

「ピチュー!」

「これからはずっといっしょだよ‼︎」

「ピチュー‼︎」

カッ‼︎‼︎

「わっ‼︎」

 

「これは・・・進化じゃ。」

 

ピチューは絆で進化する。オーキド博士がそう言っていた。

俺は子供ながらその事がとても嬉しかった。

 

「ピカチュー‼︎」

「わぁ‼︎」

 

「ピカチューはピチューからピカチュウへと進化したんじゃな、・・・ここまで2人の絆が深いとは思わんかった・・・レッド、これからもピカチューを可愛がるんじゃぞ。」

 

「うん‼︎よろしくねピカチュー。」

「ピッカ‼︎」

 

「ピカチューというニックネームのピカチュウか・・・流石に変えてみたら・・・」

『やだ!

ピカ!』

「そうかい・・・」

 

ゲットに進化、この時の俺はとても幸せだったんだ。

ピカチューもそうだろう。

 

ーでもピカチューにはある問題があった。

 

「ピカチュー‼︎ピカチュー‼︎」

「どうゆう事じゃこれは・・・」

 

ピカチューはピカチュウに進化してから電気を放つ事が出来なくなっていた。

 

オーキド博士がすぐにピカチューの体を調べるとある事がわかった。

 

「レッド。」

「オーキドおじいちゃん・・ピカチューは」

 

「レッド、ピカチュウにのみに力を与える石がある事を知っておるか?」

「えっ・・・」

 

「『でんきだま』と言ってな製造方法などは不明なんじゃがピカチュウの作り出したエネルギーのみに反応してその力を倍に引き上げるとっても珍しい道具なんじゃ。」

 

「それが・・どうしたの?」

 

「ピカチューを調べたところ体内に『でんきだま』があったんじゃ。恐らくこのでんきだまのせいでピカチューは電気を放つ事が出来なくなったんじゃろう。」

 

「じゃあそれをとってあげて‼︎」

 

「それが・・・無理なんじゃ。」

「なんで⁉︎」

 

「『でんきだま』は既にピカチューの体内で吸収され体の一部になっておる、取り出す事は不可能じゃ。もう一つ言えばピカチューはピカチュウであってピカチュウではない。」

「どうゆうこと?」

 

「『でんきだま』は本来ピカチュウの攻撃のみ倍にするはずがピカチューの場合体内に『でんきだま』が吸収されたせいで全ての能力が圧倒的に高くなっておるのじゃ。もうピカチュウの域を圧倒的に超えておる。」

 

その後オーキド博士の話によるとピチューやピカチュウが『でんきだま』を飲み込むと体の中で『でんきだま』が体内の電気に反応してしまうため相当危険らしい。

助かる確率は0.00000001%以下らしい

1億匹に1匹の計算だ。

 

それから毎日ピカチューの電気を出すための治療は始まったけどなんせ1億匹に1匹のポケモン、あまりおおっぴらに出来ない。

そして治療はことごとく失敗した。

 

俺としては例え電気が放てなくても構わなかった。いてくれるだけで俺は嬉しかったから。

 

だけど、トレーナーズスクールに通うようになって俺は電気技の使えない出来損ないのピカチュウを持っているという事でピカチューと一緒にクラスのみんなから虐められた。

 

ポケモンバトルの授業はいつもスクールのポケモンを借りていた。

その頃になってピカチューは電気技以外の技でもたまに使えない時が増えてきたせいで強制的にそうなってしまった。

そうなるとイジメはもっと酷くなった。

ピカチューのスペックが高かったためノーマル技のみでも勝つ事が出来た。おかげでバトルの成績もいつも上位に食い込んでいた、だからいじめっ子達もピカチューが怖くて踏み込めない部分があったはずだ。

だけどそれがなくなってしまった。

 

ポケモンバトルの授業ではいつも俺のポケモンは強制的にあいつらに選ばれ、更に言えば持っているポケモンを猛毒状態にする『どくどくだま』や火傷状態にする『かえんだま』を持たされ勝てるはずのない勝負になっていた。

 

先生も見て見ぬフリ、何故ならいじめっ子のリーダーにポケモンバトルの道具を製造、販売している大手企業の社長の息子であるナガトがいたから怖かったんだろう。俺とのバトルで使われた道具は全てあいつのものだ。

 

トレーナーズスクールでの自由時間では無理やり外に引っ張りだされポケモンを使ったイジメにもあった。そのせいで身体中はボロボロ。立ち上がるたびに“けたぐりにを浴びせられたり“すなかけ”や“どろかけ”で地面に埋められた事もあった。そしてそのせいで汚れた体を洗うと称して“みずでっぽう”の集中攻撃にあったりもした。

 

スクールに行きたくない。と思った事は多々あったけど、俺が行かなくなるとピカチューが自分のせいだと思い込んでしまう。だから負けじとスクールに通っていた。

 

俺がオーキド博士と一緒に暮らしているという事もきにくわなかったのだろう。

ナガトは大手企業の社長である父親におねだりしオーキド博士の研究のために必要な機材を提供する事になった。

 

そのせいで俺はオーキド博士に頼る事も出来なくなってしまった。

周りの人に迷惑をかけたくはなかった。

だからオーキド博士やナナミさんには嘘をついてなんとか誤魔化していた。

 

そして俺の全ての手を封じたナガトを中心としたいじめっ子達のイジメは更にエスカレートした。

 

ある日俺は“さいみんじゅつ”で操られいつの間にか裸で1番道路の森の中にいた

操られてる間にピカチューのモンスターボールをとられたらしく俺は裸のまま必死で走って元の場所に戻るとピカチューがナガト達のポケモンからリンチを受けていた。

俺はピカチューを抱きしめ攻撃が当たらないように守った、俺は裸で全ての技を生身で受けてしまったせいで意識がほぼ飛んでいた。

最後は2人揃ってスクールの外に放り出された。

 

痛みで意識が遠ざかる中、俺は腕の中にいるピカチューにいったんだ。

 

「おれは・・・だいじょうぶ・・・だいじょうぶ・・だから・・・」

 

ピカチューを励ますために言ったつもりがそれからピカチューはモンスターボールの外に出る事はなくなってしまった。

 

モンスターボールの開閉スイッチを押してもモンスターボールから出る事を拒否して出なくなってしまった。

 

我慢の限界だった。

 

俺は初めてナガト達に暴力で立ち向かった。今まで同じ土俵に入りたくなかったし、元々喧嘩は好きではなかったけど今回の事は許せなかった

 

「お前らのせいでピカチューが‼︎ピカチューが‼︎」

 

「はははっよかったじゃねえか出来損ないがいなくなって。」

 

そうして俺は返り討にあった。

それから今まで嘘をついて誤魔化してきたオーキド博士に泣きついたがナガトの会社はオーキド博士の力が届く範囲ではなかったので直接スクールを訴えにいったけどスクールは既にナガトの会社が背後にいたため同じくオーキド博士の力は届かなかった。

 

「すまない・・・すまないレッド・・・」

 

その日オーキド博士の涙を初めて見た、俺の前に膝をついて肩を抑えて掠れた声で謝るオーキド博士の姿は未だに忘れることは出来ない。

 

それからもイジメが止むことはなかった。

 

あいつらは“さいみんじゅつ”を使って俺を操ることにはまったらしい。

毎日毎日裸にされて屈辱的な姿を見られ、人の尊厳を奪うような事をさせられた事もがあった。

 

しかし、ある日を境にイジメはなくなる。

 

理由は“さいみんじゅつ”を使うポケモンを持っていた奴が引っ越した事。

そしてトレーナーズスクールが大量の野生のポケモンの群れに襲われ、教員達が怪我を負い、変わりにオーキド博士が代理教員になったおかげでトレーナーズスクールがオーキド博士の権力使用圏内《テリトリー》に入ったからだ。

 

何故穏やかな気性な1番道路のポケモン達がトレーナーズスクールのみを襲ったかわからなかったがこの事件のおかげで俺の心が折れずに済んだのでよかったと思っている。

 

そして俺は無事にトレーナーズスクールを卒業、現在に至る。

 

「旅に出てモンスターボール越しにでもこの世界のいろいろなものを見せたら出てきてくれるかも、故郷のトキワの森に行けば何か良い変化があるかも、この旅はオーキド博士の研究の手伝いでもあり、俺の夢を叶えるためであり、ピカチューと俺の絆を、ピカチューの笑顔を、鳴き声を、感じるために見るために聞くための旅でもあるんだ。」

 

レッドは少し、悲しげな表情と声音で自分の過去を語った。

ブルーは黙ってその話を聞いていた。

両手を握りしめ、今にもさっきの野郎に殴りかかりたくて仕方がない。

だけど、恐らく自分がその行動をとったところでレッドのピカチューが出るとは思えないし、ブルー自身が野郎に手を出したところでスッキリするとは思えない。

 

やるのならレッドがやらなければ。

 

そう思ってレッドの顔を改めて見る。

するとレッドの顔からさっきの表情は消え失せており、口元には笑みが浮かんでいる。

 

「そうだよ。だからこそ、ウジウジしていられないんだ、いつかあいつらをぶっ飛ばすために、ピカチューが安心して外に出られるように俺は早く立派なトレーナーになるんだ」

 

レッドはそう言うと部屋を出ていった。

恐らくジム戦に挑戦しにいくんだろう

ブルーはレッドの変わりように少しぽかんとしている。

 

ー切り替えが早いのはどっちよ。

 

そう今部屋を出ていったレッドに心の中で悪態をつきながらブルーもレッドを追って部屋を出ていった。




RED
手持ちのポケモン
ヒッポ(ヒトカゲ♂)

キーク(マンキー♂)

ピカチュー(ピカチュウ♂)

BLUE
手持ちのポケモン
フシくん(フシギダネ♂)

コンちゃん(ロコン♀)


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第8話 ニビジム!レッドVSタケシ

ニビジム

岩で作られているかのような建物、ニビシティで圧倒的迫力を持つ建物だ。

レッドとブルーは今その建物の目の前に立っていた。

 

「たのもー‼︎おお‼︎」

 

レッドが勢いよく玄関のドアを開けるとそこには巨大なバトルフィールドが広がり所々に岩のオブジェクトが置いてありいかにも『岩のジム』と言っている。

 

「チャレンジャーか」

 

声のする方を見るとバトルフィールドの奥の岩でできた長いソファーに胡座をかいている人物がいた、ツンツンに尖った焦げ茶色の髪に細い目、それと対象に太い眉、オレンジのTシャツに緑色のベストを着た少年だった。

レッドはスゥーと息を吸って勢いをつけて

 

「俺はマサラタウンのレッド‼︎ジムリーダー・タケシにジムバッジをかけてポケモンバトルだ‼︎‼︎」

 

キィーンとレッドの口から放たれてた大声にブルーと声をかけてきた少年は思わず両耳を塞ぐ。

 

「うるさいわよ‼︎」

「イテッ⁉︎」

 

レッドの頭にブルーのチョップが決まる。

 

「元気のある奴は大歓迎だ。」

 

男は息を大きく吸うと

 

「俺がニビジムジムリーダー岩タイプのエキスパート、タケシだ‼︎その挑戦受けてたとう‼︎‼︎」

 

今度はレッドが耳を塞ぐ番だった。

 

「男ってホントバカ・・・」

 

さっきと同じく耳を塞ぐ羽目になったブルーはボソッと呟く。

レッドはジムの扉の横に設置してあるポケモンセンターに置いてあるポケモンボックスと似たような形をした機械のところをに行くと図鑑を画面に当てる。

 

RED AGE 11

BADGE 0

 

ENTRY COMPLETE

 

という画面が現れるとバッとバトルフィールドの上に設置してあるライトがバトルフィールドを照らす。

 

「所有バッジ数は0か、なら使用ポケモンは2体‼︎いいな‼︎」

 

「はい‼︎」

 

タケシは岩のソファーの隣に設置したタンスのような機械から2つのモンスターボールを取り出す。

 

ジムリーダーの使用するポケモンは相手のバッジの個数で決まる、当然バッジの個数が多い方がレベルの高いポケモンを使う。

 

なぜベストメンバーで挑まないのか、それはポケモンジムは相手の力量を試し、さらなる成長を促すための場であるからだ。圧倒的力で叩き潰したとしても新人トレーナーは育たない、実力が拮抗しているバトルにこそトレーナーは成長する、例えレベルが同じだとしてもジムリーダーはポケモン協会に認められるほどのトレーナーとしての技術があり、その道《タイプ》のエキスパートだ、そうやすやすと勝てるはずもない。

 

ジムリーダーのポケモンの扱い方を見て、それを盗み、対策をして、勝利する。そうすることによってポケモンとの絆を深め、さらなる高みを目指すことができる。

 

つまりジムリーダーとはいわゆる教員免許の持っていない先生なのである。

 

ーマサラタウン出身って言っていたな・・・つまりあいつの使うポケモンの1匹はおそらく・・・

 

タケシは先程のレッドの言葉からレッドの使用するポケモンを予想、その対策するための技を選択する。

 

「俺の準備もOKだ、始めよう。」

 

タケシがバトルフィールドの中心線の外側のラインに2つのフラッグを持っている審判に視線を向ける。

その視線を受けると審判は両手を上にあげ

 

「これより、ジムリーダー・タケシとチャレンジャー・サトシのジム戦を開始します。では・・・バトルスタート‼︎‼︎」

 

バトルの開始を宣言する。

 

「頼むぜ、キーク‼︎君に決めた‼︎」

「キキィッ‼︎」

 

「いけっ‼︎イシツブテ‼︎」

「ラッシャイ‼︎」

 

レッドが出したのはニジジム戦のために用意したポケモン、岩タイプに有効な格闘タイプを持つマンキー、ニックネームはキーク。

 

対してタケシのポケモンは石ころと見分けがつかないほど石にそっくりでそのままじっとしていれば少し大きな石で通りそうなポケモンイシツブテ。

 

「先手必勝‼︎キーク“けたぐり”‼︎」

「イシツブテ‼︎“ロックカット”‼︎」

 

ダッとキークがイシツブテに向かって走り出す。その間にイシツブテは自分の周りに砂塵を巻き上げ身体を磨ぐ、これによって素早さが2段階上がる。

しかし“ロックカット”を完了した時にはすでにキークが“けたぐり”をしようと構えていた。

 

「上にかわせ‼︎」

 

バッと先程あげたスピードと両腕を生かして上空へと飛び“けたぐり”をかわす。

 

「チャンスだキーク‼︎上空なら避けることは出来ない‼︎“けたぐり”‼︎」

「キャッ‼︎」

「“ロックブラスト”」

「キャッ⁉︎」

 

レッドの指示を受け、キークが飛び立った瞬間イシツブテの放った岩の弾丸を直にくらいそのまま地面に激突する。

 

更に2発3発4発5発と連続でキークのいる地面に岩の弾丸が放たれる。

 

「空中で避けることが出来ないのはお前のポケモンも一緒だ。何より、イシツブテは相手が空中で仕掛けてきても充分に技が発動できる高さに飛んでいた。今のはイシツブテとマンキーの空中での距離と技の発動時間を考えなかったお前のミスだ。」

「くっ・・・」

 

ー空中戦を誘われていた・・・まんまとそれに乗っちまった・・・

 

「キーク‼︎」

「キャッ‼︎」

 

バッと砂埃の中からキークがバク転をしながら現れる。

 

「ラッシャイ‼︎」

 

同時にイシツブテも地面に着地。

シーンとした時間が流れる。

 

ー今のターンは完全にレッドはタケシさんの掌の上で転がされていた・・・

 

観覧席から2人のバトルを見ていたブルーは現在の状況を確かめると

 

ーそれにしても、レッドは何やってるんだか・・・相性で勝っているからって余裕ぶっこいてるから相手のペースに巻き込まれるのよ。

 

そして再びバトルが動き出す。

 

「“にらみつける”‼︎」

 

「“ロックカット”‼︎」

 

キークはイシツブテの防御を下げに、イシツブテは自分の素早さをあげにかかる

 

「“みだれひっかき”‼︎」

 

「“ロックブラスト”‼︎」

 

キークが突っ込むとイシツブテの岩の弾丸が次々に襲ってくるがキークはそれを“みだれひっかき”によって受け流しながら近づいていく。

 

ー“ロックカット”に“ロックブラスト”自分のスピードを上げる技と相手を近づかせないようにする技、つまりタケシは俺が格闘タイプのポケモンを使うと呼んで格闘タイプの得意な接近戦をさせない技を選択している。

つまりあと2つを予測するなら・・・

 

「“がんせきふうじ”‼︎」

 

ー相手の動きを封じる技‼︎

 

「“けたぐり”で突破だ‼︎‼︎」

 

イシツブテが拳で地面を叩くとキークの周囲の地面から岩が現れキークを完全に囲む、がキークは“けたぐり”で目の前の岩を破壊そして

 

「“けたぐり”‼︎」

「キィッ‼︎‼︎」

「ガッ⁉︎」

 

キークの蹴りがヒットしイシツブテはそのままひっくり返され地面に激突。

 

「よっしゃ‼︎」

 

ーバカレッド‼︎まだよ⁉︎

ジム戦ではチャレンジャーに助言が出来るのはジムリーダーかジムリーダーチャレンジャーが許可した人のみなため、許可を取っていないブルーは心の中でレッドを叱責した。

 

「“がんせきふうじ”」

「キィッ⁉︎」

 

「なにっ⁉︎」

 

キークが再び岩の壁に囲まれる。

そしてその前には地面に腕をついたイシツブテの姿が

 

「俺のイシツブテの特性は『がんじょう』どんなに威力のある攻撃を受けても一撃で戦闘不能にならないんだ。」

「なっ⁉︎・・・いや、でももう体力は殆どないのは変わらないんだ‼︎キークもう一度“けたぐり”で突破だ‼︎」

 

ドカンッとキークが再び岩を蹴散らす。

 

ーバカレッド‼︎それは誘導よ‼︎

 

ブルーが観覧席から立ち上がる、握られた拳はプルプルと震えていた。

 

岩を破壊したキークの目の前には技を構えるイシツブテの姿があった

 

「“じたばた”‼︎」

「ラッッシャイッッッッ‼︎‼︎」

「キャッ⁉︎ァッァッァッァッ⁉︎」

「キーク‼︎⁉︎」

 

無造作に繰り出されるタックルとパンチを連続でくらうキーク、更に“がんせきふうじ”の岩に激突し更に更にめり込んでいく。

そしてついに岩が耐えきれなくなり壊れキークはタケシ側のバトルフィールドからレッド側の端っこまで吹っ飛ばされた。

 

「キーク‼︎大丈夫・・・か・・」

「キュウウウウッ・・・」

 

レッドが側に駆け寄るとキークは目を回して倒れていた。戦闘不能になった証拠だ。

 

「マンキー戦闘不能‼︎イシツブテの勝ち‼︎」

審判のフラッグがタケシの方に上がる。

 

キーク(マンキー♂)

select skill

けたぐり

にらみつける

きあいだめ

みだれひっかき

 

「よくやった・・・ゆっくり休め」

 

レッドはキークをモンスターボールに戻す。

 

「“じたばた”は自分のHPが少ないほど大きなダメージを与えることができる技、だから俺はこの技を岩タイプ対策をしてきたものに対しての対策技として使っている。」

 

ー『がんじょう』によってHPをギリギリ残しての“じたばた”・・・怖いコンボね・・・

 

ブルーはレッドの対戦を見ながら着々とタケシ対策をその眼で見てたてている。

 

ーレッドのポケモンは残り1匹、タケシさんは1匹と体力が殆ど残っていないイシツブテ、逆転できない数字ではないけど・・・レッドのもう1匹は・・・

 

「頼むぞ!ヒッポ‼︎」

「カゲッ‼︎」

 

「ヒトカゲか。」

 

レッドの出したポケモンは岩タイプに対して相性の悪い炎タイプのポケモン、ヒトカゲ。ニックネームはヒッポ。

 

「俺達も相性なんか覆してやるぞ‼︎」

「カゲッ‼︎」

 

ヒッポの尻尾の炎がボォッといつもよりも大きく燃え上がる。

 

「やる気は十分みたいだな。では行くぞイシツブテ‼︎“ロックブラスト”‼︎」

「“えんまく”‼︎」

 

イシツブテが“ロックブラスト”の準備をしている間にヒッポは口から黒い煙を出しイシツブテと自分を包み込ませる。

 

ーイシツブテの技は“ロックブラスト”“がんせきふうじ”“ロックカット”“じたばた”煙幕を払う技はない・・・レッドはヒッポの判断にかけたわね。

 

煙幕の中では相手に標準を当てられない。レッドは煙幕を使うことで、ヒッポの苦手な岩タイプの技を使わせることなくイシツブテの残り少ないダメージを削り切ろうとしているのだ。

 

「イシツブテ‼︎」

 

ー頼むぞ‼︎ヒッポ‼︎

 

やがて煙がはれる。

 

「カゲーッ‼︎」

「ラッッ・・・シャ・・・」

 

「イシツブテ戦闘不能ヒトカゲの勝ち‼︎」

 

そこには爪を立てていたヒッポとそこから少し離れたところでうつ伏せに倒れていたイシツブテの姿があった。

 

イシツブテ♂

select skill

ロックカット

ロックブラスト

がんせきふうじ

じたばた

 

「よくやった。イシツブテ」

 

タケシはイシツブテをボールに戻す。

 

「これで同じ1対1ですよ。」

 

「確かにそうだな、だけど流石にヒトカゲじゃあ・・・」

 

タケシがモンスターボールを投げる

 

「イワァァァァァァァッ‼︎‼︎」

 

「このイワークには勝てないだろう。」

 

そこから現れたのは岩を幾つも繋いで蛇のようになっており、高さはとても高く普通に8メートルを超えているだろう。

迫力からして確実に先ほどのイシツブテよりも強いだろう。

 

「ヘッ、どんなに大きくたって俺のヒッポは・・・」

 

レッドがヒッポの方を見るとレッドはイワークを見たまま一切動くそぶりがない。

 

「」

 

「・・・ヒッポ?」

 

レッドが呼びかけるとヒッポは首だけレッドの方へ持って行き

 

「」フルフル

 

首を振ったそうだ。

 

「諦めるなぁー⁉︎大丈夫‼︎お前なら出来る‼︎俺はそう信じてる⁉︎」

 

これは唯のお世辞ではない、トキワの森で複数で相手にはしたがレベルの全く違うゴローニャを倒したヒッポの姿を思い出すとレッドのイメージにヒッポがイワークに負ける様子が映し出されないのだ。

 

しかし

 

「カゲ・・・」ウジウジ

 

「ヒッポさぁぁぁぁぁん⁉︎⁉︎⁉︎」

 

その思いが届くのには少し時間がいるようだ。

 

 

ー5分後ー

 

 

 

「カゲェーッ‼︎‼︎」

 

「バトル再開お願いします。」

 

「あ、あぁ・・・」

「イワ」

 

5分かかってようやくヒッポにレッドの気持ちが伝わったようだ。最初と同じがそれ以上の炎が尻尾から燃え上がる。

 

「なにやってんだか・・」

 

試合を中断してポケモンを説得するという情けない光景を目にしてブルーはコメカミを抑える。

 

「いくぜ!ヒッポ“えんまく”」

 

先程と同じように煙幕を吐くヒッポ、しかしヒッポにも1回に出せる煙幕の量は決まっているためイワークの大きい身体全てを包むことは不可能なためヒッポを隠すような形で黒い煙が放たれる。

 

「“ロックカット”‼︎」

 

イワークの身体から砂塵が舞起こりそれによって身体が磨かれ空気の抵抗が少なくなり素早さをぐんとあげる。

 

「“ひのこ”だ‼︎」

 

ボボボボボッ‼︎

煙幕の中から火の粉が出てくるとイワークを襲う。

しかし炎タイプの技は岩タイプであるイワークには効果いまひとつ、イワークに言う程のダメージは与えられない。

 

「煙幕の中に突っ込めイワーク‼︎“たいあたり”」

「ワーク‼︎」

 

イワークが“ロックカット”によって上がったスピードを最大限に利用した“たいあたり”が煙幕の中に突入する。

煙幕は体当たりのスピードで全て散らされ、ヒッポはイワークの攻撃を直接食らってしまう。

 

「ヒッポ‼︎っ‼︎」

 

ーこれじゃあ、煙幕で姿を隠しても意味がない・・・⁉︎

 

「自分へのダメージを減らすんだ‼︎“なきごえ”‼︎」

「カゲェェェェェッ‼︎」

 

ヒッポの口から特殊な音波が放たれイワークの攻撃の威力を下げる。

 

「無駄だ‼︎“がんせきふうじ”‼︎」

 

イワークが岩の尻尾を地面に叩きつける。

すると右、左、後ろ、前の順にヒッポの周囲に岩が出現しヒッボの逃げ道を塞ぐ。

 

「まずい・・‼︎ヒッポ上だ‼︎」

「もう遅い‼︎」

 

「イワァァァァァァァッ‼︎」

「カゲッ⁉︎・・グガッ⁉︎⁉︎」

 

ヒッポが岩を飛び越えようと上にジャンプすると真上から岩が出現しヒッポを巻き込んで地面に激突、ヒッポは大ダメージを受け前後左右と上を岩に囲まれてしまう。

 

「“たいあたり”‼︎」

「ワーク‼︎‼︎」

 

ドゴォォォッ‼︎‼︎‼︎

 

イワークの強烈な“たいあたり”は“がんせきふう”じによって出現させた岩を破壊してヒッポに命中。

ヒッポは水切りで投げられた石のように地面に何回もぶつかりながらバトルフィールド外の岩の壁に激突した。

 

「ヒッポォォォォッ‼︎‼︎」

 

レッドの叫び声がニビジム全体に響き渡る。

 

ーレッドには悪いけど・・・勝負ありね。

 

観客席で見ているブルーはこの勝負の全てを悟った。

炎タイプであるヒッポに効果抜群である岩タイプの技“がんせきふうじ”をレッドの指示でジャンプして避けようとしてしまったため威力が追加され、更に“ロックカット”を利用した“たいあたり”を岩による追加ダメージ込みで直撃してまともに戦えるはずがない。

 

壁に激突した際に起こった砂埃がやむ。

 

「カ・・・カゲッ・・カ・・・」

 

ヒッポは四つん這いの状態だった。

身体中は傷まみれ、呼吸のリズムは早く、震える身体から、なんとか戦闘不能状態には陥っていないが

 

「虫の息・・・だな。」

 

タケシはそう呟くと、レッド、トレーナーの方を見る。

 

「ヒ、ヒッポ・・・」

 

ー降参するか、しないか。トレーナーとしての欲をとるか、自分のポケモンの安全をとるか見せてもらう。

 

 

 

 

 

 

ー目が霞む

 

ー身体中が痛い、震えが止まらない。

 

ーでも・・・立たなきゃ・・立つんだ‼︎

 

ヒッポは一生懸命立ち上がろうと力を込める。

その時ふと思い出した。

 

ーなんでヒトカゲを持っているのに使わないんですか?ー

 

レッドが旅立ちの日、1番道路でコラッタの捕獲に苦戦していたオーキドに言った言葉。

ポケモンはポケモンバトルで弱らしてからモンスターボールを投げる、このような常識をオーキドが知らないはずがない。

 

結局レッドは理由は聞けなかったがヒッポはその理由を知っていた。

 

 

フシギダネが逃げ出し慌てて自分のモンスターボールを持って外に出たオーキド博士は間違えて自分を持ってきたと呟いた。

 

ー僕が代わりに戦うよ!

 

モンスターボール越しにその思いをオーキド博士に伝えた。

 

しかし

 

「お前はまだトレーナーとともにバトルをしたことがない。できればレッド・・・お前さんの主人になる人と初めてのトレーナーとのバトルを経験して欲しいのじゃ。」

 

オーキド博士は自分を使う事を拒否した。

 

「・・・お前の主人になるレッドは『痛み』がよくわかる人じゃ、以前ポケモンバトルを見た時、ポケモンが傷つくのを異様に避けてバトルしておった。確かに正しいことじゃがそれに固執し過ぎると逆にポケモンを傷つけることになる。」

 

自分が他の誰かのポケモンになるのは知っていた。それが『レッド』という人物だという事も、オーキド博士はよく自分達に『レッド』の事を楽しそうに喋っていた。だからレッドの事でこんな少し重い空気を出したのは初めてだった

 

「その事を知って欲しい。ポケモンはポケモンバトルで傷つく事を恐れない、その先にある『幸せ』を手に入れるためならばそんな事気にしないって事を」

 

オーキド博士は自分を見ると

 

「まだその『幸せ』を経験していないお前に言ってもわからんじゃろうが、お前さんもすぐにわかるさ。」

 

その通りだった。

 

その幸せを確実に感じ取ったのは1番道路で襲われた大量のポケモンの群れと戦って勝った後だ。

 

 

勝てた事が嬉しい

 

自分が強くなっていく感覚がして嬉しい

 

全てを出し尽くした事による達成感が気持ちいい

 

そして・・・

 

レッドの役に立てて嬉しい

 

自分の頑張りでレッドが笑ってくれる事がとっても嬉しい‼︎

 

 

ーあぁ、これがオーキド博士の言っていた『幸せ』なんだ・・・・・。

 

 

それが今はどうだろう?

レッドの顔は笑顔とは真反対の今にも泣きそうな顔・・・

 

 

ー立つんだ‼︎

 

ー立って勝つんだ‼︎

 

ー勝って・・勝って

 

 

ーレッドに笑って貰うんだ‼︎‼︎ー

 

 

「カッゲェェェェェェェェ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

 

ヒッポが立ち上がり叫ぶと尻尾の炎が今までにない程燃え上がる、その大きさはレッドよりも大きい。

 

「カァァァァァァッ‼︎‼︎」

 

ヒッポの身体から赤いオーラが現れる

 

「これって・・・「ピコン!」‼︎これは・・・」

 

「『もうか』・・・そうよ!ヒトカゲの特性『もうか』が発動したんだわ‼︎」

 

『もうか』

体力が残り少なくなると発動するヒトカゲの特性、使用する炎タイプの技の威力が上がる。

つまりヒッポは体力は限界を迎えることで火事場の馬鹿力を発動するのだ

 

「・・・ただの『もうか』にみえないがな・・・」

 

ー迫力が違いすぎる。・・これは

 

タケシは『もうか』を発動したヒッポの目を見る。するとフッと笑みをこぼし

 

ートレーナーとの絆が見えるな・・・面白くなってきた。

 

「バトルを続けるぞ‼︎」

 

「えぇ‼︎いけっヒッポ‼︎‼︎」

 

「カッゲェェェェェェェェッ‼︎」

 

ヒッポの身体が激しい炎に包まれるとそのままイワークに向かって突進する。

 

「なっ⁉︎」

 

タケシの驚愕と共にイワークに炎の突進が命中する。

 

「今のって・・“ニトロチャージ”⁉︎」

 

「ノーモーションで発動しやがった⁉︎」

 

『ニトロチャージ』

 

炎タイプの物理技で使う度に自分の素早さを上げる能力を持つ技、しかしこの技は使用するために強い力で足踏みをするというモーションが必要なのだが、今のヒッポにはそのモーションがなくいきなり発動したためブルーとタケシは驚きに包まれている。

 

「『もうか』の影響か・・?だが、威力が上がったところで所詮は炎タイプの技‼︎イワークには効果はいまひとつだ‼︎」

 

「ヒッポ‼︎“ニトロチャージ”‼︎」

「カゲェッ‼︎」

 

ヒッポが再び炎を纏いイワークに襲いかかる。

 

「っ‼︎・・またノーモーションで・・・“たいあたり”で迎え撃て‼︎」

 

イワークとヒッポがぶつかる。イワークはそのままヒッポの炎を纏って弾き飛ばされる。

 

「力負けだと‼︎」

 

ー『もうか』の力はこの体格差をものともしなくなるのか・・・‼︎

 

「“がんせきふうじ”‼︎」

「“ニトロチャージ”‼︎」

 

イワークが尻尾を地面に叩きつけ岩を出現させる、ヒッポの目の前に岩を出そうとしたがもう遅く出した時には既にヒッポはその先に行っていた。

 

ー速い・・‼︎

 

「“ロックカット”だ‼︎」

「ワッ‼︎」

 

イワークの周囲に砂塵が巻き起こり、それを使って身体を磨ぎにかかる

 

「そのまま突っ込めヒッポォッ‼︎‼︎」

「カゲェッ‼︎‼︎」

 

ヒッポはイワークを囲んでいる砂塵に突撃、そして

 

「なっ⁉︎」

 

砂塵によって起こった風が“ニトロチャージ”の炎を強化、砂塵の壁を突き破る‼︎

 

「イワッ‼︎」

 

イワークは“ロックカット”を失敗し、ヒッポの攻撃を受けそのまま倒れる。

 

「わからなくなってきた・・・」

 

勝負の行方を悟ったブルーが呟く。

 

レッドのヒッポの体力はもう僅か、現に今も呼吸のリズムは早い、しかしイワークはヒッポの『もうか』の力に押されているし、ヒッポの“ニトロチャージ”のノーモーションと素早さの上昇について行けていない。

更に

 

「ワァァァッ〜‼︎」

 

イワークが地面に突っ伏したまま悶え出す。

よく見るとイワークの身体の一部が熱で赤くなっているところが見られる

 

「なっ・・⁉︎『やけど』だと・・・」

 

やけど状態になったポケモンは少しずつダメージを受け、動きを制限されるため攻撃の威力が半減する。

 

「まだだっ‼︎勝負はわからなくなってきたぞ‼︎ヒッポ“ニトロチャージ”‼︎」

 

「連続で“がんせきふうじ”だ‼︎」

 

ヒッポを阻むための岩が次々と出現するがヒッポは上がった素早さを利用してどんどん避けていく。

 

ー“たいあたり”で迎え撃ったとしても・・・くっ・・ええい‼︎ままよ‼︎‼︎

 

「イワーク“たいあたり”に切り替えろ‼︎‼︎」

「イワッ‼︎」

 

イワークの攻撃と“ニトロチャージ”がぶつかるが『もうか』の力とやけどの影響でイワークは弾き飛ばされる。

 

「踏ん張れイワーク‼︎そのまま“がんせきふうじ”だ‼︎‼︎」

「⁉︎」

 

イワークは飛ばされている状態から尻尾を叩きつけて“がんせきふうじ”を繰り出す。

不意をつかれたレッドとヒッポは前後左右を岩に囲まれてしまう。

 

「とどめだぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎‼︎‼︎」

 

上空から岩がヒッポに向かって落ちてくる。

 

 

 

「ヒッポ“ニトロチャージ”‼︎‼︎」

 

 

 

ピシッ・・・

 

 

 

ピシピシッ・・・

 

 

 

ドゴォォォォッ‼︎‼︎

 

 

 

「カッゲェェェェェェェェッ‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

ヒッポの“ニトロチャージ”が前方の岩を砕く‼︎‼︎

 

 

「なっ⁉︎」

 

 

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇっ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

 

「カゲェッッ‼︎‼︎‼︎」

「イワッ⁉︎」

 

 

イワークはヒッポと共に先程ヒッポが激突した岩壁と正反対の岩壁に激突、大量の砂埃が舞う。

 

「イワーク⁉︎」

「ヒッポ‼︎」

 

両者のトレーナーが自分のポケモンの名前を呼ぶ。

 

 

 

 

 

 

「カゲーッ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 

レッドの声にもならない叫び声をあげ、大きくガッツポーズをする。

 

砂埃が晴れた後にあったのは戦闘不能状態に陥ったイワークとその上で右手を上げているヒッポの姿だった。

 

 

「イワーク戦闘不能‼︎ヒトカゲの勝ち‼︎よって勝者チャレンジャーレッド‼︎‼︎」

 

イワーク♂

select skill

ロックカット

たいあたり

がんせきふうじ

しめつける

 

「いよっしゃぁぁぁぁぁっ‼︎やったぞヒッポ‼︎よくやったぞヒッポ‼︎」

 

「カゲーッ‼︎」

 

ヒッポ(ヒトカゲ♂)

select skill

ひっかく

なきごえ

ひのこ

えんまく

なきごえ

ひのこ

えんまく

ニトロチャージ

 

レッドはヒッポの元に走り出しギュッと抱きしめる。

同時にヒッポの傷だらけの身体を直にみてこんなになるまで頑張ってくれたことに心にきて、思わず目に涙を浮かべてしまう。

 

「いいバトルだった。」

 

パチパチと手を叩きながらタケシがレッドの元に近づいてくる。

 

「あ、ありがとうございます。」

 

レッドはヒッポを抱きしめたまま立ち上がる。

 

「これがニビジムジムリーダー・タケシを倒した証、グレーバッチだ。」

 

レッドは左手でグレーバッチを受け取る、綺麗に磨かれた石のようなバッチだが不思議とレッドには何かしらの力を感じる気がした

 

「君が勝てたのはヒトカゲとの絆のおかげだ。君がヒトカゲのことを大事にしたことによってヒトカゲは君のためにバトルに勝ちたいと強く思ったことによって『もうか』が発動したんだ。『もうか』なんて特性たとえ体力が残り少なくなっても滅多に発動できないからな。」

 

タケシの話によるとポケモンの特性『もうか』『しんりょく』『げきりゅう』は体力が残り少なくなると各々炎、草、水タイプの技の威力が上がるのだが、その発動はポケモンの身体にとても負担をかけるらしい、その為、普段それを発動しないように無意識に力を制限、リミットをかけているらしい。それを自分の意思で解き放つことは本人達でも難しいらしい。

 

「これからもそのヒトカゲを大事にしてやれよ」

 

「はい‼︎」

 

レッドは涙を浮かべた満面の笑みでそう答えた。



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第9話 学ぶべきもの

2話連続投稿です。


ニビジム

 

「フシくん“つるのむち”‼︎」

「ダネフシッ‼︎」

「イワッ⁉︎」

 

ドスン!

 

「イワーク戦闘不能フシギダネの勝ち‼︎よって勝者チャレンジャーブルー‼︎」

「やったぁー‼︎」

「ダネフシッ‼︎」

 

そこではレッドに続きブルーがジム戦を挑みブルーのフシくんがタケシのイワークを倒し、タケシに勝利したところだった。

 

「・・・マジかよ、フシくんだけで2匹倒しやがった・・・」

 

そう、ブルーはフシくんだけでタケシのイシツブテ、イワークを撃破。2匹目のロコン、コンちゃんを使うことなく勝利した

・・・・・2匹使ってギリギリ勝利した俺と違いフシくんの能力を存分に発揮させてだ・・・・ブルーが勝ったことは嬉しいけど・・・なんかトレーナーとしての差をみせつけられたみたいでなんか・・・複雑。

 

「完敗だよ。はいグレーバッチだ。」

 

「ありがとうございます」

 

ブルーはテクテクと俺の元へやってくる。

素直に褒めろ!悔しい気持ちを外に出すな‼︎

もし出したら絶対にからかわれるからな‼︎・・・もしかしたら説教されっかも。

 

「ナ、ナイスバトル・・」

どもっちまったー⁉︎

 

レッドはぎこちない笑顔と軽く裏返った声でブルーに声をかけた。

 

「・・・・・・・・」ニヤッ

 

カッチーン!

今俺カッチーンときました♪

た、確かに俺の方がトレーナーとしての実力は下かもしれないけどさ、そんなあからさまな笑みをみせなくたっていいじゃない!

あぁ〜もう!悔しい悔しい悔しいぃ〜〜〜‼︎‼︎

 

「な、なんだよぉ〜‼︎」

 

「いや、ふふ、可愛いなぁーって」

「そ、それは男に言うセリフじゃねぇよ‼︎」

「でも赤くなってるじゃない。照れちゃってもう、かわいい〜ふふっ」

「う、うっさい‼︎俺をからかって遊ぶんじゃない‼︎」

 

レッドはプイッと顔を反らすと早歩きでジムを後にする。

 

「あっ、ちょっと待ってよ!」

 

ちょっと待ってよ!って言われたって誰が待つか‼︎コンチクショーめ‼︎‼︎

ん?そういえば・・・

 

レッドはピタッと止まりクルッとブルーの方に振り返る。

 

「俺とブルーっていつまで一緒に行動するんだ?」

「へ?」

 

ブルーは目を大きく見開いて動きを止める。

レッドも同じくその場で動きを止める。

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・って長ぇよ沈黙‼︎TV番組だったら放送事故だよ⁉︎」

 

「・・・・・・・・」

「ってまだだんまり⁉︎⁉︎ブルー姐さんどうしたのさ⁉︎しっかりしろよぉ⁉︎」

 

「ぁぁ・・・」

「ど、どうした⁉︎」

 

いきなりなんか色っぽい声出して・・・不覚にもドキッとしてしまっただろう‼︎

俺にはナナミさんがいるのに・・・まだ告白もできてないけど・・・付き合ってもいないけど・・・

 

「姐さんって響き・・・最高ね‼︎」

「そこに反応するんじゃないよぉ⁉︎」

 

もう駄目だ!ブルーは壊れた!

混乱状態だ‼︎いや、もしかしたら思考が戦闘不能状態かもしれん‼︎意味わかんねーよ‼︎

あぁ‼︎もうノリツッコミしちまった⁉︎もう俺のテンションまでおかしな事になってんだろーがぁぁぁぁ‼︎

 

「レッドは私と行動するの・・・嫌?」

「ふぇ⁉︎」

 

何て言った?

Please say one more time?(もう一回言ってください)

 

「だから、私と一緒に旅をする事ってレッドにとって苦痛?」

 

「え?えぇと、あの・・・その・・・うぅぅ・・・・///」

駄目だこりゃ⁉︎

 

「ふふっ」

笑うなぁ〜⁉︎

 

「〜〜〜〜〜〜〜‼︎」

 

「ははははははっ!そんな顔で訴えても『可愛い』としか思わないわよ!ふふっ!」

 

そんな顔って・・・多分俺顔真っ赤だな・・顔熱いもん・・・本当にどうしたんだ?俺・・・

 

「俺が思ったのは男と女が一緒に旅をするってアレだなって思っただけだ‼︎」

「変態」

「えぇぇぇぇ⁉︎⁉︎」

 

ブルーさん⁉︎

目が冷たいっす‼︎目から冷凍ビームでてるっす‼︎・・・え、あの、ちょっと本当に怖いからやめて⁉︎

 

「はぁ〜、レッド考えてみてよ・・・私とあなたの目的。」

「え?えぇと・・・ジムバッチを全てゲットする事、あ」

 

「ポケモンジムはカントーで8つしかないのそしてジム巡りの旅をしていると分かれ道がヤマブキシティまでないのよ。」

 

確かにこの先のおつきみやまを越えた先にあるハナダシティの更に先にある街、カントー1の都会街ヤマブキシティから南に行くとクチバシティ、西に行くとタマムシシティ、ジムはないが東に行くとシオンタウンと分かれ道がある、逆に言えばそこまで分かれ道がないのだ。

ハナダシティにもイワヤマトンネルとヤマブキシティのどちらかで分かれ道があるが、イワヤマトンネルは最近事故があったせいでイワヤマトンネルへの道は塞がれてしまったためイワヤマトンネルへは行けない。

 

「それに私はフシくんの件をオーキド博士に伝えてないし、もしかしたらレッドと同じポケモン図鑑が貰えるかもしれないのならレッドと暫く行動を共にしていた方がよくないかしら?」

「あっ・・・そうだ、それがあった。」

 

完全に忘れてた、ていうか図鑑の件はあんまり期待して欲しくないんだけどなぁ・・・

 

「忘れないでよ、結構楽しみにしてるんだから」

「いやいや、図鑑の件はあんまり期待すんなって言ったろ⁉︎」

 

オーキド博士は一応世界的権威を持つ研究者だから、お願いするっていうのは一般の人から見れば恐れ多い事のはずなんだよ。

俺は小さい頃からオーキド博士と暮らしていたからそれが他の人より無いっていう自覚はあるけどそれでもあまり労力を煩わせるたりするのは気がひける。

・・・そんな俺と同じかそれ以上にオーキド博士に軽い感じのブルーのこの感じは一体何処から来るんだろう・・・。改めてブルーについて考えるとなんか・・・とんでもない奴だな・・・こいつ。

 

「まぁ、いいや。じゃあポケモンセンターでオーキド博士に連絡するか。」

「賛成ー‼︎」

 

とりあえず、俺とブルーはヤマブキシティまで一緒に行動する事になりましたとさ。

 

 

 

ポケモンセンター

 

「ーという事です」

 

『つまりフシギダネは今、ブルー君の手持ちになったっというわけじゃな。』

 

俺たちはオーキド博士にフシくんの件について話していた。

 

『ブルーさん』

「はい」

 

そして驚いた事にブルーの奴、オーキド博士の前でも緊張する事なくいつも通りに喋っている・・・ブルー、恐ろしい子・・・‼︎‼︎

 

『わしにフシギダネを見せてくれんかの?』

「いいですよ。出てきて、フシくん!」

「ダネフシッ‼︎」

 

フシくんがブルーに抱えられる状態でモンスターボールから出てきた

 

 

『おおっ!久しぶりじゃのうフシギダネ‼︎元気にしとる「ケッ‼︎」かぁ・・・・ぉぉ・・・』

 

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

 

え?・・・・フシくん⁇⁇・・・・

 

今、ペッてした・・・すげー顔で・・・フシギダネの外見を止めていない顔で・・・

 

『ぁぁ・・・ぇぇ、うぅ・・・フシ・・ギダネ「ケッ‼︎」?・・・・』

 

再びフシくんがつばを吐く。

するとオーキド博士も再び落ち込んだがすぐに何かひらめいたようでポンっと手を叩いた。

 

『あぁ‼︎そうか‼︎元気にしとったか?フシく「ペッ‼︎‼︎」ん・・・』

 

「ダネダネ、フシフシィ〜‼︎」

 

あぁ・・・なんか、身体中をかきはじめた・・・いかにも『お前にニックネームで呼ばれるのは生理的に無理』と言っているような顔で・・・ていうか実際そう言ってそうだ・・・

 

『うぅ‼︎落ち込んでもしょうがない!フシギダネは君に懐いているようじゃしフシギダネは君にあげよう。どうか、フシギダネを大切にしてやっておくれ。』

 

「はい‼︎」

 

そんな事よりもフシくんの博士への態度の理由がスゲー気になる・・・。

っと、それよりも・・・

 

「それで博士・・えぇと・・・ポケモン図鑑って余ってる?」

『余っとらん‼︎』

「そう・・・」

 

残念ブルー、君の望みは潰えてしまったよ・・。

俺は期待すんなって言ったからな⁉︎言ったよ⁉︎だから責めないでね‼︎・・・てなんなのかなその顔は⁉︎博士に見えないように隠れて俺にジト目を向けるのはやめてもらえるかな⁉︎

 

『しかしあと1台くらいなら作る事は可能じゃ、お前も知ってると思うがグリーンが壊しよった図鑑の修理のためにパーツを購入した際に余分に買っておいた』

 

おおぅ‼︎これは・・・これは・・・

 

「!じゃあ・・・」

 

『ブルー君にも図鑑を渡せるというわけじゃ。』

 

希望の光キタァァァァァァァ‼︎

グリーンさまさま⁉︎Yes‼︎Green samasama‼︎

っておかしなテンションは置いておいて本当によかった・・・

 

「ありがとうございます‼︎」

 

ブルーが博士に感謝の言葉を述べる

 

「・・・ダネフシ」

 

おぉ‼︎フシくんも感謝の言葉を博士にいった‼︎()()に‼︎渋々だけど‼︎()()だけど‼︎

 

『おぉ・・・フ、フシギダネ‼︎わし・・わし頑張るからな‼︎すぐに作るから‼︎』

 

博士の目に涙が浮かんでいる・・・よかったね、博士

 

 

それから俺たちは博士と話をした。

図鑑の完成には少なくとも1週間はかかるみたいなので、俺とブルーはそこまで自由に旅を続けて貰って結構らしい、どうやって届けるのかはわからないが旅を止める必要がないのはありがたい。

 

「さぁ、ブルーどうする?今日はここでポケモンセンターの宿に泊まるか、それとも先に進んで野宿するか」

 

現在の時間は丁度午後4時と先に進むのも進まないのも微妙な時間だったためブルーにその選択をしてもらうために問いかけた。レッドは別に野宿でも気にしないがブルーは女性だ、川辺で水浴びではなくやっぱりちゃんとしたお風呂に入りたいと思うだろう、そのためだ。

 

「進みましょ。」

「!」

 

意外だな・・・絶対に宿に泊まると言うと思ったのに・・・

 

ブルーは正直に意外そうな顔を出したレッドに自分へのフォローのため・・・汚れとかそういう事を気にしない女子に思われないために理由を説明した。

 

「この先の3番道路には川辺があるのはわかってるしコンちゃんに頼めばちゃんとお風呂に出来るし、そのための機材や入浴剤も持ってるから野宿したとしても大丈夫なの。1週間ここに滞在するなんて時間の無駄したくないし、1週間しかないのよ。それだとギリギリハナダシティまでいけるかどうかなの、だから少しでも先に進みましょ。」

 

すげぇ舌を巻いて話し出した・・・

 

ブルーの弁明、フォローよりもブルーの吐く言葉の早さに圧倒されたレッド、ブルーもそれに気づいたのか少し頬を赤くして俯く。

 

「えぇと・・・じゃあ行くか。」

 

「・・・うん」

 

 

 

 

 

 

 

レッドたちが先に進む事を決意した時

 

ー3番道路 おつきみやま側ー

 

「ゼニガメ、“みずでっぽう”」

「ゼニー‼︎」

 

グリーンは野生のポケモン達とバトルしていた。

グリーンがオーキドから貰ったポケモン、ゼニガメの口から勢いよく放たれた水流が野生のポッポ、コラッタに命中そのまま戦闘不能状態に追い込む。

 

「よくやったゼニガメ。」

「ゼニゼニガメガー‼︎」

 

スッとグリーンの手が右腰のポケットに回されるがピタッとグリーンの動きが止まる。

 

「ちっ、図鑑がないせいでいちいちポケモンセンターに行かないとステータスがわからないのか・・・」

 

どうやら図鑑を取り出そうとしたらしいがグリーンの図鑑は壊れ現在オーキド博士に修理を頼んでいた。

どうやらグリーンはレッドよりも図鑑を使いこなすが故に図鑑に頼ってしまっていたようだ。

 

「ダメだ、図鑑は確かに便利だが依存するのはよくない。」

 

グリーンはボソボソと自分を叱責する。

スッとグリーンは周囲を見渡す。

 

そこには1番道路で見かけたポッポやコラッタは勿論、ピンク色の所々に濃いピンク色の斑点がある体に大きな耳と額から伸びだ長いツノが特徴のポケモン ニドラン♂とニドラン♂よりもツノが短く、ピンク色のニドラン♂とは違って薄いブルーと濃いブルーの斑点がある体をしたポケモン ニドラン♀などが生息していた、が・・・

 

「何か慌ただしい・・・」

 

ポケモン達がバトルをふっかけてくるのだがそれも全て自分達の意思でやっているというより『邪魔だからどいてくれ』と言っているかのような雰囲気なのだ。

グリーン達は確かにポケモン達から見たら邪魔者かもしれないが縄張りから追い出すにしてはおかしい、普通ポケモン達が縄張りがかかった勝負をする時は群れでかかってくるはずだからだ。

 

しかもポケモン達の姿にはバトルが始まってもいないのに焦りが目立つのもおかしい。

 

「何かあったのか」

 

ポケモン達がグリーンの進行方向から来るということは

 

「おつきみやま。」

 

おつきみやまで何かが起こっているとグリーンはそう予測した。

 

今の俺の手持ちは2匹・・・力量(レベル)から言っても問題はない・・・

 

「行くか・・・」

 

そう言うとグリーンはゼニガメをモンスターボールに戻しておつきみやまへと続く道を歩いて行った。

 

 

 

 

ー13番道路 ニビシティ側ー

 

最初は木々に囲まれた自然が垣間見えるような道路だがその先にあるおつきみやまに近づくにつれて木々はなくなり岩場の道となるこの道路でレッドとブルーは

 

「ヒッポ“ニトロチャージ”‼︎」

「フシくん“つるのむち”‼︎」

 

13番道路のトレーナーに挑まれたタッグバトルを行っていた。

お互いにオーキド博士から貰ったポケモンを使う事で、ポケモン同士のコンビネーションも見ず知らずのポケモンと行うよりもずっといいものになっている。

 

ヒッポはニビジム戦で見せた『ノーモーションニトロチャージ』をものにしていた、というよりニビジム戦以降、ヒッポが放つ技の溜めやモーションが少なくなっている。

『もうか』発動の反動がいい方向でヒッポの身体に現れたらしい、一瞬の隙が命取りにもなりゆるポケモンバトルにおいてモーションを少なくするということはとても大事なことだ、ヒッポにはこの感覚を忘れないように沢山バトルすることによって体に染み込ませて貰おうとレッドは考えていた。

 

「はやっ⁉︎くっ・・・コタロウ“かみつく”‼︎」

「させるか‼︎“ひのこ”」

「カァッ‼︎」

「コラッ⁉︎」

 

ヒッポの攻撃がコタロウ、コラッタに命中する。

 

今までのヒッポの“ひのこ”は発動時、一瞬の溜めが必要になったが今、放たれた“ひのこ”にはその動作が見られなかった。

 

「くっ、コタロウをフォローするぞ‼︎ポタロウ“かぜおこし”‼︎」

「させない‼︎フシくん“つるのむち”でポッポの動きを封じるのよ。」

「ダネフシッ‼︎」

 

フシくんの蔓がポタロウ、ポッポの体に巻きつき指示された技“かぜおこし”を封じる。

 

「レッド‼︎」

「あぁ‼︎ヒッポ、ポッポに“ニトロチャージ”‼︎」

 

ヒッポは身体に炎を纏い蔓に縛られたポッポに突撃する、フシくんはヒッポの攻撃がポッポに命中する瞬間に蔓を離したことによってダメージを受けることはなかった。

ポッポは戦闘不能状態になって地面に墜落した。

 

「ポタロウ‼︎」

「あとはコラッタだけだ‼︎ヒッポ“えんまく”!」

 

ヒッポとコラッタを黒い煙幕が包み込む。

 

「コタロウ‼︎煙幕から脱出しろ。」

「ヒッポ“ひのこ”‼︎」

 

ヒッポは自身の放った煙幕で周囲が見えないなか火の粉を放つ、しかしコラッタには命中することなくコラッタは煙幕のなかを脱出する。

しかし

 

「とどめよ、フシくん“たいあたり”‼︎」

「フシッ‼︎」

「コハッ⁉︎」

 

 

そこにはフシくんが待ち構えていた、ヒッポは“ひのこ”でコラッタを誘導していたのだ。

コラッタも戦闘不能になり地面に倒れた。

 

「しっ!」

 

「あぁ・・・負けちゃった。バトル受けていただいて有難うございました。」

 

レッドとブルーがタッグバトルをした相手の片方、黒髪を七三に分けたまだレッドよりも随分年下の子供が礼を言いに来た。

トレーナーズスクールの生徒だろう胸にトレーナーズスクール生徒の証であるワッペンがあった。

 

「いや、こちらこそ。いいバトルだったよありがとう。」

「・・・・・」

 

笑顔を見せて子供達と同じ目線に下がり感謝を述べるレッドとは逆にブルーは冷たい目線で少年2人を見つめる。

 

「君達、トレーナーズスクールの生徒よね。」

 

ー冷たい視線に冷たい声ー

 

それによって2人の少年が体をビクッと強張らせる。

 

「おい、ブルー。」

「レッド、あんたもわかってるんでしょ。」

 

明らかにブルーに対して恐怖を抱いた子供達を見てレッドはブルーを制止するために声をかけたがレッドに対してもブルーは子供たちと同じかそれ以上の冷たい視線を向けた。

その迫力とブルーの言っていることを理解しているが故にレッドは黙ってしまう。

 

「この子たちはまだトレーナーズカードを持っていないのよ。」

 

トレーナーズカード

例えて言うならば車の免許証と同じだ。

10歳になると全ての人が貰うことのできるポケモンを扱うことを許可されたカードだ。

これを持ってはじめてポケモントレーナーと言われるのだ

詳しく言えば、ポケモンを扱ってバトルすることを許可するカード、これを持っていないのにバトルをすると警察から注意がくる、2回目からは罰金、そして最悪の場合ポケモンの保護の名目のもとにポケモンを没収される。

 

レッドとブルーはお互い11歳、この少年達は明らかに10歳に至っていない。

つまり、トレーナーズカードを持っていないのだ。

 

「あぁ、わかってる。」

「なら何でバトルを引き受けたの。」

 

ブルーの声に圧がかかる。

 

「断ったとしてもまた別のトレーナーにバトルを申し込むだけだろ?なら、俺たちがバトルして戦闘不能にすれば嫌でもポケモンセンターに行かないといけないだろ?時間からしてポケモン達の回復が終わったら外は暗いから家に帰るだろう。」

 

「ぬるいわよ。レッド」

 

ここからブルーの反論が始まる。

 

「そんなことしてもこの子達は明日また違う誰かに勝負を挑む、そしてこれからずっとそうなるわ、そしていつか取り返しのつかないことになるのよ!」

 

警察にポケモンを没収されるか・・・・・

自分かポケモンが大怪我を負うか

 

ポケモンの扱いは一歩間違えたら危険なものだ。

だからこそ、トレーナーズスクールでポケモンのことを学ばないといけない。

だからトレーナーズカードがある。

 

「君達のせいで君のポッポやコラッタが命の危険にあってもいいの⁉︎」

 

ブンブンと2人の少年は首を振る。

 

「・・・・理由」

 

ポツリとレッドが言葉を発する。

ブルーと少年2人がレッドの方を振り返る。

 

「君達には何か理由があったんじゃないかな?」

 

レッドは少年2人に問いかける。

ブルーとは違い温かい視線と温かい声音で。

 

すると先程感謝を述べた少年が口を開きだす。

 

「俺・・・明日引っ越すんです。カロス地方に」

 

これまた遠いところに・・・と同時に引っ掛かりが取れたと思った。

 

レッドはバトルの最中、ポケモンに集中すると同時にトレーナーである少年2人にも注目していた。

バトルを挑んだ時の2人の姿には何かしら切羽詰まった感じと何が何でもバトルをしたいという思いが感じ取れた。

それはポケモン達にも同様に感じ取れた。

 

戦闘不能にしたのとさっきのブルーへの言葉はポケモンを持つものとしての最低のルールを破ったことをブルーは必ず許さないだろうと思ってやった、いわゆるブルーへの建前だ。

既にレッドの右手にはブルーに見られないように2人のポケモンの体力を回復するには十分な量のオレンの実が握られていた。

 

「俺が・・・提案したんです。」

 

するともう片方の少年、少しつり目気味のコラッタを使っていた少年が前に出て話し出した。

 

「最後に、タッグバトルをしようって、トレーナーズスクールで貸してもらえるポケモンじゃなくて・・・お互い小さい頃から一緒に暮らしてきたコタロウとポタロウでって。」

 

「でも・・・ダメですよねやっぱり、正式なポケモントレーナーにもなれてないのに、やっちゃってから反省しても遅いと思いますけど。」

「・・・・・」

 

レッドは少し黙った後立ち上がる

 

「ブルー‼︎予定変更‼︎」

「はい?」

 

そう呟くとレッドはヒッポとアイコンタクトをとると

 

「カゲッ‼︎」

「ダネダネッ‼︎」

「えっ⁈フシくん⁉︎」

 

ヒッポと声を掛け合ったフシくんがブルーの右手首に蔓を巻きつける。

 

「さあ!お前らも行くぞ‼︎」

「えっ⁉︎」

「はい⁉︎」

 

そう言ってレッドは少年2人を引っ張って走り出す。

フシくんはブルーを引っ張りヒッポはブルーを押してレッドについていく。

 

「ちょっ⁉︎ちょっと‼︎どこ行く気⁉︎」

 

レッドが走っている方向は今進んでいた方向とは逆、つまりニビシティの方向へ向かっていた。

 

 

 

 

ーニビジムー

 

「ポタロウ“かぜおこし”‼︎」

「コタロウ“かみつく”‼︎」

 

「ヒッポ“ひのこ”‼︎

キーク“けたぐり”‼︎」

 

少年2人のポッポとコラッタとレッドのヒッポとキークが2対2のバトルを繰り広げていた。

 

「いいんですか?ポケモン協会公認のジムリーダーがこんな事して。」

 

ブルーが隣に位置する人物に声をかける。

 

「ジムリーダーがトレーナーズスクール生徒にポケモンバトルの事を教える事に何にも問題はないさ、バトルフィールドを貸し出すこともね。」

 

その隣の人物、ニビジムジムリーダー タケシは少年達のバトルを優しく見守っていた。

 

レッドはニビシティへ戻るとすぐにニビジムに直行しタケシに事情を説明し、ジムリーダーの役職を利用して少年達に大きなバトルフィールドでめいいっぱい戦わせてやってくれと頼んだ。タケシはこれを聞き入れるとすぐにジムを閉館し少年達のためにバトルフィールドを貸し出した。

 

「それにあんなに必死にお願いされちゃあ人としても断るわけにもいかないしな」

 

「ポタロウ‼︎」

「コタロウ‼︎」

 

「「“すなかけ”‼︎」」

 

「うおっ⁉︎」

 

そう話している間にも3人は楽しそうにバトルをしている。

 

「あいつはきっと立派なポケモントレーナーになるよ。」

 

タケシがレッドの姿を見て呟いた。

ブルーも黙ってその言葉に耳を傾ける。

 

「ポケモントレーナーとしての技術はまだまだ未熟だけど、そんなものは経験を積めば勝手につくもの、最初のステータスなんてただスタートの切り出しがいいか悪いかの違いだけのこと最後の結果には何の関係もない。」

 

「だけどあいつは、レッドにはたとえ経験を積んでもつく事のないものが沢山ある。人の気持ちを感じ取りそれに親身になって行動する優しさ、行動力、それによって伴う人の痛みにも敏感に感じ取れる。簡単そうに見えるけどそれを本当にやるとすると自分へのリスクを上げる事になるんだ。」

 

この事はブルーは認めていた。

レッドは2人の少年との一瞬の会話だけで違和感を感じ取り、バトル中のポケモン達とのシンクロを見て事情がある事を察知し、自分の旅の予定を遅らせてここにきたレッドにブルーはタケシと同じような事を思っていた。

 

「たった一度のポケモンバトルだけで俺はそれを感じ取ったんだ、俺よりも長く一緒にいる君ならもっと感じ取れただろう。」

 

その言葉にブルーは少しドキッとした。

確かにレッドから感じ取ったものは多い、しかしタケシの言葉には裏がある

 

 

君はレッドから感じ取ったものを学習したか

 

 

そうなるとブルーは怪しい、レッドから感じ取ったものを自分のものへと出来たか

ブルーはそれを学ぼうと思った事さえ怪しい。

心の中でお人好しのレッドを馬鹿にしている自分がいる。

トレーナーの技術という結果とは関係のない最初のステータスで自分より劣っているレッドを少なからず見下し、馬鹿に、上から目線でレッドの全てを見ている自分がいる。

 

心の中でレッドを認めるのを拒んでいる自分がいる。

 

だからこそ

 

「そうですね。」

 

ブルーには心のこもっていない返事しか出来なかった。

普通の人なら流しそうなブルーの返しの変化に流石ポケモン協会が認めたトレーナーであるタケシ、その変化にピクッと反応した。

 

「そうか・・・」

 

「だけど、すぐに認めざるおえなくなるさ。」

 

そう呟くと

 

「おーい!レッド‼︎俺も混ぜてくれ‼︎」

 

タケシはレッド達の元へと走って行った。

 

「・・・・・・・・・」

 

ブルーはその場で黙りジッとする事しか出来なかった。

 

 



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第10話 VSニドラン♂♀

少年2人と1日バトルをしてから3日後、レッド達はやっと3番道路おつきみやま側に辿り着いた。

 

「なぁ、ブルー。」

「何よ、レッド。」

 

唐突にレッドが声をかける。

ブルーがそっけなく用を聞き返す。

 

「俺とブルーってバトルした事なかったよな。」

「そうね」

 

あぁ・・・このパターンは・・・

 

ブルーは心の中でこの次にレッドから放たれる言葉を予想した。

 

「なぁ、バトルしねぇ?」

「いや」

 

即答かよ・・・

『何だよそのいうと思ったわ』みたいな顔・・・まぁ今の会話からだと予想されて当然か・・。

 

それよりも・・・

 

「おかしくないか・・・?」

「何が?」

 

「おつきみやまに近づくにつれてポケモン達の姿が見えない・・・ていうより怯えて姿を見せてない気がする。」

 

「またそんな細かいところまでアンタは・・・まぁ確かに前に比べると静かね。」

 

此処に来るまでに沢山の野生のポケモンと出会ったけどやっぱりおかしい。

ニドラン♂♀の姿もポッポもコラッタの姿も見かけない。

 

いや、見かけたけど・・・身を潜めてジッと俺たちを見ているだけだった

 

「キーク」

「キキッ」

 

レッドは腰のベルトにつけたモンスターボールからキークを繰り出す。

 

キークは12番道路でマンキーの群れのリーダーをしていた、ポケモン達とのコミュニケーション能力もヒッポと比べると優れてとれるはずだ。

特にこういった暗い雰囲気の場合はリーダーシップのあるポケモンの方がいい。

 

「頼むぞ、キーク」

「キキッ‼︎」

 

キークはヒュッと道路の左側にあるゴツゴツした岩の段差を上がっていきそこに隠れているポケモン達を探し出す。

 

「ラッ‼︎」

「ラッ‼︎」

 

「キャッ⁉︎」

 

すると突如キークの左側から現れた2つの影にキークは2発づつ蹴りを入れられる。

キークはそのまま岩の段差を転がり落ちる。

俺はすぐにキークの元に走り、ブルーは急いでフシくんを繰り出す。

 

「キーク⁉︎・・・っ‼︎今の技は・・・」

「“にどげり”よ‼︎」

 

“にどげり”

2発連続で相手に蹴りを入れる技、つまりキークは2×2の合計4発の蹴りを食らったという事だ。

 

「キーク立ち上がれるか⁉︎」

「キキッ!」

 

キークは勢いよく立ち上がったはいいが足元が少しふらついている。

 

「レッド‼︎今のポケモン・・・」

「あぁ、ニドラン♂とニドラン♀だ‼︎」

 

「それだけじゃないわ、キークが見てわかるとおり予想以上にダメージを受けてる・・・力量(レベル)も高いわ。」

 

「わかってる‼︎キーク、“きあいだめ”だ」

「キャッ‼︎」

 

キークは自分の闘志を放出させ次の攻撃に集中し始めた、

 

さあ、どうする。

 

“きあいだめ”による集中力は次の攻撃1回にしか反映されない、ニドランの体重は以前戦ったゴローニャと違って軽い分効果は期待できない。

 

ーなら

 

「キーク、ニドラン♂に“みだれひっかき”‼︎」

 

「ならフシくんはニドラン♀に“やどりぎのタネ”‼︎」

 

キークは器用に岩の階段をスイスイとジグザグに登ると、ニドラン♂を連続でひっかく。

ニドラン♂は自分の住処なだけあってランダムに配置されている岩に戸惑う事なく器用にそれを避けていく。

 

「くっ‼︎フシくん“つるのむち”‼︎」

 

ブルーの方もニドラン♀に攻撃を当てる事が出来なかったみたいだ。

 

その後も俺とブルーは攻撃を指示するが岩に阻まれたり逆に岩を利用して攻撃を当てられたりと地形の慣れによるハンデが大きすぎて自分達のペースに持ち込めないでいる。

 

「キーク⁉︎」

 

キークが再びニドラン♂の“にどげり”を食らって地面に激突する。

 

ピコン!

 

図鑑から何かを知らせるような音が発せられる。

この音には聞き覚えがある・・・ヒッポが“ニトロチャージ”を覚えた時に・・・

 

俺はすぐにポケモン図鑑を開いてキークの情報を確認する。

 

キーク(マンキー♂)Lv.13↑

にらみつける

きあいだめ

けたぐり

みだれひっかき

ひっかく

からてチョップ NEW

 

「からてチョップ・・・」

 

キークと同じ格闘タイプの技、“けたぐり”よりも威力が安定しており、敵の急所を狙うのに優れている技だ。

 

これなら・・・

 

「キーク‼︎」

「キャァァァァッ‼︎」

 

キークが俺の呼びかけと同時に“きあいだめ”を発動する。

 

「ラッ・・・‼︎」

 

ニドラン♂の体が強張る。

俺たちが何か仕掛けてくる事を察したんだ。

だけどどう地形を利用したって・・・

 

「“からてチョップ”‼︎‼︎」

「キャァァァァ‼︎」

 

この技を得たキークには無駄だぁぁぁぁ‼︎

 

キークが叫び声と同時に岩をシュタタタタッ‼︎と音を立てて登っていく。

 

「ニッドッ‼︎」

 

ニドラン♂が“にどげり”で器用に岩を落としていく。

 

「キッ‼︎」

 

キークが“からてチョップ”で岩を砕く。

しかし更にニドラン♂は岩を次々と落としまくっていくがキークは次々にそれを“からてチョップ”の連撃で砕いて砕きまくる。

 

「⁉︎」

 

ニドラン♂がこのバトルが始まって初めて動揺した。

 

レッドはそう思ったと同時に自分の立てた作戦、強攻策が成功した事を悟った。

 

“からてチョップ”は“けたぐり”と違って腕を使う分行動しながら使いやすい、今までは止まって蹴りを放って岩を砕いていたため次々に岩を落とされるとその場で立ち止まらなくてはいけなかったため、いずれ落ちる岩のペースに追いつかずに地面に叩きつけられていたが、“からてチョップ”は移動しながら岩を砕けるため、立ち止まる事なくニドラン♂に近づく事が出来る。

 

そしてレッドの思惑どうりキークはニドラン♂の目の前に迫った。

 

「ダメージ量は気にするな‼︎“けたぐり”で体制を崩させる事を優先しろ‼︎」

「キャッ!」

「ラッ⁉︎」

 

キークの蹴りがニドラン♂の体を地面から浮かせる。

 

「真上から振り下ろせ‼︎“からてチョップ”」

「キャァァァァァァァァァァァッ‼︎‼︎」

 

レッドとキークの動きがシンクロする。

 

真上から振り下ろされたチョップはニドラン♂の首部分に命中、そのままキークの腕とニドラン♂の体は地面の岩に叩きつけられ岩にヒビが入る。

 

「ガッ⁉︎」

 

ニドラン♂はそのままキークに捕まれ地面へと投げられる。

 

「いけっ‼︎」

 

レッドはモンスターボールをニドラン♂に投げる。

ニドラン♂は空中で光に包まれボールに入る、そして3回ボールが震えるとカチッという音と共にゲットが完了しレッドの手の中に入る。

 

「ニドラン♂ゲット‼︎」

「フシくん⁉︎」

「⁉︎、どうしたブルー‼︎」

 

ブルーのフシくんの呼ぶ声に思わず振り向く。

 

「フシくんの様子が・・・・」

 

フシくんを見ると体を強張らせその場で立ち止まっている。

 

「ブルー・・・これは・・」

 

 

「ダネフシィィィィィィィィィィィィィィ‼︎」

 

 

フシくんの体が光り輝く、そして徐々に体の形が変化していく、体が一回り大きくなっていき背中の種も変化していく。

 

 

「フシソウ‼︎‼︎」

 

光が弾け飛び現れたのは、フシギダネの風貌を残しながらも凛々しくなった顔つきとフシギダネと比べると更に青みがかった緑の肌、そして背中の種は赤い蕾に変化した事によって華やかになりその周りには草が伸び蕾の華やかさを更に掻立てるような姿に変わったフシくんだった。

 

「これは・・」

 

俺は図鑑を掲げフシくんの新しい姿の情報を得る。

 

No.2 フシギソウ

たねポケモン

タイプ くさ・どく

高さ 1.0m

重さ 13.8kg

蕾が背中についていて養分を吸収していくと大きな花が咲くという。

 

「フシギソウ・・・」

 

ブルーが俺が図鑑の説明を口で言ったのを聞いてフシくんの種族名を口にする。

 

「フシソウ‼︎」

 

「ラッ⁉︎」

 

フシくんがニドラン♀に向かって“たいあたり”以上の強烈なタックルを食らわす。

ニドラン♀は岩に衝突、しかし技を放ったフシくんまで少しよろけ、技の反動によるダメージを受けた様子がある。

 

「これは・・・“とっしん”‼︎」

 

ブルーは俺と違ってまだポケモン図鑑を持っていないため、新しい技を覚えた時フシくんから行動するかポケモンセンターに行かないと知ることはできない、俺のポケモン図鑑もそう、自分の手持ちのポケモン以外の能力が見えないようにロックがかかっているためブルーの手持ちのポケモンであるフシくんの技の構成を見る事ができない。

 

しかしポケモンバトルで新しく覚えたからといってポケモンが勝手にその技を発動してもいいかといえばそれはNOだ。

新しい技は相手の意表をつく事ができる。

しかしそれも一回きりだ、その一回で少なからず相手に新技を意識させる必要がある。

そのためポケモンにも知識が必要となる。

 

トレーナーの指示に従いながら今の状況を把握し自分の技の特性を理解しベストなタイミングで放つ事は、もともと頭のいいポケモンかトレーナーの育て方のいいポケモンじゃないと中々できない。

 

そして今のフシくんの新技の放つタイミングはとてもいいものだった。

進化したことによってトレーナーであるブルーとその傍らにいる俺自身も少し呆然としていた。

ニドラン♀も相手が進化したことによって警戒はしていたがトレーナーが戸惑っている中で新技を発動するとは思えなかっただろう。

下手すれば更に自身のトレーナーを混乱させる羽目になるからだ。

 

しかし、これによってブルーも俺もちゃんと切り替える事が出来た。

 

今のフシくんの“とっしん”の1番の目的はトレーナーであるブルーに新技を教えることじゃなく、ブルーにしっかりしろ‼︎と喝を入れる事が目的だったんだ。

 

 

「あいつ・・」

すげぇ・・・

 

この出来事をそんな簡単な言葉で纏めきれるのかと少し自分の語学力に歯がゆい気持ちでいっぱいだが、この状況の中で普通1番混乱するのは間違いなく自分の姿形が変わったフシくんのはずだ。

フシくんは進化の経験は初めてのはずだから少しくらい動揺が見えるはずなのに、フシくんはその素振りなく冷静に状況を判断して

今の行動を行ったんだ。

 

頭がいいだけじゃない、根性も座っている証拠だ。

 

「フシくん・・」

 

「・・・そうよね、たとえ姿が変わったとしてもフシくんはフシくん、バトルスタイルを変えるつもりはないわ‼︎」

 

フシくんの喝はちゃんとブルーに届いたみたいだ。

 

俺がブルーと一緒に行動している間、ブルーは基本フシくんのみを使っていた。

だからフシくんの使用できる技は知っていた。

 

“たいあたり”

“なきごえ”

“つるのむち”

“やどりぎのタネ”

“どくのこな”

“ねむりごな”

“とっしん”

 

この6つだ。

だけど“やどりぎのタネ”“どくのこな”“ねむりごな”はニドラン♀の領域(テリトリー)であるが故に中々決まらない。

 

恐らく進化してフシギソウになり“とっしん”を覚えたからといってそこは変わらないだろう。

 

つまり、ここから先は新しい技をどう生かして戦うかというブルーのトレーナーとしての実力にかかっている。

 

「フシくん‼︎“ねむりごな”」

「ソウ‼︎」

 

緑色の粉がニドラン♀に向かって放たれる。

 

「ラッ」

 

ニドラン♀は今までと同じように“にどげり”で岩を蹴り上げ降りかかる粉を多少ながらガードしその内に粉のかからない場所へと移動する。

「フシくん“とっしん”‼︎」

「ソッ‼︎」

 

強烈な突進が移動したばかりのニドラン♀に間髪入れずに襲いかかる。

命中してないため反動のダメージはない、突進の威力を殺さずにフシくんは岩に飛びつきそのまま岩を利用して跳ね返り。

 

「“とっしん”‼︎」

 

ブルーの指示を合図にまるでロケットのように爆発的な威力を誇った“とっしん”を繰り出す。

ニドラン♀は不運な事に、いやブルーの誘導通り今まで攻撃をかわすために使用した岩のないところにいたため突進をまともに受けてしまう。

ニドラン♀は二度、三度地面に叩きつけられながら岩に激突し、大ダメージのせいで動けずにいた。

 

「チャンスよ‼︎“つるのむち”‼︎」

 

フシくんの背中から伸びた蔓がニドラン♀の体を跳ね上げる。

 

「お願い‼︎」

 

ブルーがニドラン♀にモンスターボールを投げる。

ニドラン♀はニドラン♂と同じようにボールに包まれ空中で3回動くとカチッという音と共に捕獲された。

 

「ソッ‼︎」

 

フシくんがモンスターボールを蔓で叩き、ブルーの手元にパスした。

ブルーは右手でそれを受け取り、小さく左手でガッツポーズをとる。

 

「でてこい‼︎ニドラン♂」

 

俺はブルーのその姿に思わず笑みをこぼすと新たな仲間、バトルの最中にオーキド研究所に預けず自分の手持ちにすると決めたニドラン♂を繰り出す。

 

「ラァー‼︎」

 

ニドラン♂はまだ俺を認めず、警戒しているようだ・・・身体を強張らせキツく睨みつけてくる。

 

「落ち着けよ、俺達はお前達に危害を加えるつもりはないし、加えてない。」

 

お前達が挑んできたら対処はしたけど・・・自分達からは決して手を加えてはいない!

それでも怒られるとどうしようもねぇけど。

だって正当防衛だもん‼︎自分の安全は大事だもん‼︎

 

「キャッ‼︎」

「ラッニドラッラッ‼︎ニドドッラッ‼︎」

 

するとキークがニドラン♂に向かって何か話し出す、ニドラン♂が一生懸命話しているところからニドラン♂にも何かしら事情があったみたいだ。キークが話を聞いて俺達に関係のない事と説得して俺達の無実を証明してくれているのだろう。

キーク・・・いい子できる子‼︎・・・何の子だって?・・・っていうかそんな言葉あったっけ?

 

「キャッ‼︎」

 

「ドー・・ニド‼︎」

 

納得してくれたようだ。俺に向ける目の種類が変わった。

・・・それでは‼︎

 

「俺はレッド‼︎よろしくな‼︎ニドラン・・・え〜とお前のニックネームはぁ〜」

 

ヒッポのニックネームはヒトカゲの特徴的な炎を灯した尻尾から。

 

キークのニックネームは“けたぐり”の蹴り、キックとマン()()を抜き出して合わせて。

 

ニドラン♂は・・・確かオスしかいないんだよなこの種類は・・・ニ、ド、ラ・・・ニ・・・ラ、ニラ?・・・イヤイヤ確かにニラは好きだけどポケモンにつける名前じゃないだろ・・・。

ニド・・・ニドド・・ニドドラ・・・‼︎‼︎

 

「ドドラ‼︎お前のニックネームはドドラだ‼︎」

「ラッ‼︎」

 

俺はすぐに図鑑にドドラの事を記入、ステータスを確認した。

ドドラ(ニドラン♂)Lv.14

にらみつける

つつく

きあいだめ

にどげり

どくばり

ふいうち

 

「“ふいうち”・・・⁉︎」

 

確か相手がダメージを与える技を発動した時にのみ発動する技

ニドラン♂が覚えているのは珍しい・・・

 

「でも・・なんでキークとのバトルで使わなかったんだ?」

 

俺は画面に表示された“ふいうち”をタップすると

 

PP 0/5

 

「残り使用回数0・・・」

 

PPとはPower Pointの事でポケモンがその技を使用する事のできる回数の事である。

 

ポケモンの技も無限に打てるわけではない、技に溜めが必要なようにどんな技でも反動はある、もちろん強力な技ほど反動が大きい分打てる回数も少ない。

逆に言えば強力でない技は技の使用回数で困ることはないという事だ。

 

つまりドドラは“ふいうち”を俺と戦闘する前にPPが0になるまで使ったことになる。

 

 

やっぱり妙だ。

 

 

キークとの戦闘前のドドラのHPはほぼ満タンだった。しかし“ふいうち”のPPはすでに0、そこまでして倒せないポケモンがこの辺にいるとは思えないというより、そこまで強い相手ならばドドラは戦闘不能に陥っているはずだ。

 

考えられるのは・・・・

 

「攻撃はしたものの相手にはされなかったって事か・・・」

 

さっきのドドラの様子も気になる・・・

 

「レッド・・・・?」

 

ブルーがずっと膝立ちで考え込む俺に声をかけてきた。

どちらにしろ通らなきゃいけない道だ・・首を突っ込んでみるか

 

「ドドラ、この先・・・おつきみやまで何かあったんだよな?」

 

コクリとドドラが深くうなづく。

 

「ブルー、急いでおつきみやまに向かうぞ。」

 

「え、ちょ、ちょっと待ってよぉ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

おつきみやま

 

「何処にあるんだよ‼︎ったく⁉︎」

 

の奥地だろうか、1人の黒い服を纏った男が近くの岩を蹴りつける。

 

「本当にここで化石なんて見つかったのか⁉︎」

 

どうやら黒い服の男達は古代のポケモンの化石を確保するためにこのおつきみやまに出向いたらしい。

 

現代の技術でポケモンの化石は復元可能とされており、古代のポケモンが眠った際のレベルで現代に復活するため最初から力量(レベル)の高いのですぐに実践で戦闘可能なため人々はとても重宝、欲しているポケモンだ。

 

1人がイラついている時もう1人の黒服の男、ここでは黒服2と呼んでおこう。黒服2が黒服の男のイラつきから出た問いに答える。

 

「間違いない、マークしていた化石研究者が2つの化石を入手したと1人喜んでいるところを見た。追跡し、捕縛したのはいいが何処かに隠しやがって、口を割らない。」

 

「拷問すればすぐにでも場所は聞けるだろう‼︎何をやっているんだ‼︎」

 

「それが・・・危害を加えると俺たちが危ない。」

 

「?どういう事だ。」

 

スッと黒服2がタブレットを見せる。

黒服はそれを覗き見ると目を大きく広げた。

 

「なんだぁ⁉︎」

 

1人のボロボロの探検服を着た老人が、おつきみやま内部でこの黒服達が設置したのだろう檻の中に閉じ込められていたのだが、老人の服には背負っているリュックサックの他に、おかしなものがあった。

 

イシツブテだ。

 

大量・・・と言っても6匹なのだが、6匹のイシツブテが老人の体に張り付き全員で手を握って体を強張らせていた。

 

「何をやってんだ。このジジィ。」

 

「自分に手を出したらイシツブテの“じばく”でお前らをおつきみやまの一部にしてやるって言ってんだよ。」

 

「・・・マジ?」

 

たとえイシツブテの“じばく”だろうと6匹目集まればおつきみやまの内部の一部を破壊する事が可能だ、そうなると自分達は下手すれば全員この老人の言う通りおつきみやまの一部になりかねない。

しかしそうすれば確実に老人はタダじゃ済まないどころか確実に死ぬ。命を落としてまでそんな事をするとは思えない。

 

黒服は黒服2に心底嘘ハッタリであってほしいというような顔で問いかけた。

 

「マジマジ、このジジィ自分は死んでも構わないだとよ、こっちはイシツブテ達がマジでいつでも“じばく”出来る状態でいやがるから手が出せねぇんだよ。」

 

そう呟く黒服2の声音にもイラつきが混じってあった。

 

「トキワの森でも失敗したのにここでまた失敗したら・・・」

「この作戦の指揮を任された俺達2人は調教室行き決定だな。」

 

「いやだぁぁぁぁっ‼︎あんなのに成りたくねぇよぉぉ‼︎」

「うるさい‼︎」

 

黒服2のことばに黒服の男が頭を抱えて叫び声をあげる。

それを制止する黒服2の声はいつもと違い震えていた。

 

「こんなに怯えなきゃいけなくなったのも全部あの女が入ったせいで・・・」

 

ぶつぶつと黒服の男が呟いていると

 

 

ドゴォォォッ‼︎

 

黒服の男2人がいる前方から土煙と共に数人の同じ黒い服を着た男達が流れ込む。

 

「なんだ⁉︎何者だ‼︎」

 

「周辺のポケモン達の様子がおかしいのはお前達のせいか、ロケット団」

 

そこから現れたのは向かうぞ焦げ茶色のツンツン頭に紫の上着を着た少年、グリーンだ。

 

そしてこの黒服の男達はカントーに根をはるポケモン密漁売買組織『ロケット団』。

 

「この声・・・お前か‼︎トキワの森で確保しておいたポケモンを逃したのは‼︎」

 

そう、グリーンがレッドに見つけたら連絡するようにと言っていた炎の鳥ポケモンはロケット団がトキワの森で確保していたポケモンだった。

 

グリーンは炎の鳥ポケモンの檻を破壊、その後襲ってきたロケット団の主戦力であろうポケモン、ウィンディとピジョットを撃破すると炎の鳥ポケモンを追いかけたのだ。

 

その際に図鑑は炎のようポケモンの情報を得ようと取り出した際にウィンディの炎によって焼かれてしまったのだ。

 

「別にポケモンを使って犯罪を行う奴らが確保したポケモンを逃しても何の罪にも問われないだろ?」

 

グリーンはスッと右に移動すると背後には精悍な目をし、毛で覆われた水色の耳と尻尾を持ち、青色の体を持ったゼニガメが進化したポケモン カメールがいた。

ゼニガメの時と比べると倍以上の体格になったその姿は頼もしいものとなっている。

 

「カメール“みずでっぽう”」

「メッ‼︎」

 

ドバッと進化した事によって勢いを増した水流が黒服の男と黒服2、改めロケット団下っ端1とロケット団の下っ端2を襲う。

 

「チッ‼︎でてこいケーシィ“まもる”‼︎」

 

下っ端1が繰り出したのは黄土色の体に眠たそうな細い目、姿形は狐を思わせるようなエスパータイプのポケモン ケーシィ。

 

ケーシィは念力で自分の周りに強固な結界をはり、カメールの水鉄砲を無効化する。

 

「いけっカイロス“かわらわり”」

 

下っ端2が繰り出したのは長く鋭いトゲがついたハサミと薄茶色のがっしりとした体を持つクワガタを思い起こすポケモン カイロス

 

カイロスは自慢のハサミとは関係のない腕にエネルギーを集中させ、技を防がれ攻撃に転じる事が出来ない様子のカメールに正拳突きを放つ。

 

「“からにこもる”」

 

しかしその攻撃が当たる瞬間にカメールは自らの甲羅の中に入り、直撃を避ける。

殻にこもったカメールはそのままおつきみやまの内部の壁に激突するも、すぐに甲羅から体を出し立ち上がっている様子からそれ程のダメージは受けていないようだ。

 

「チッ‼︎ケーシィ“めいそう”」

 

コォォォォッ‼︎

ケーシィは精神を集中させ自分の能力を高めにかかる。

 

「カイロス“ビルドアップ”」

 

カイロスは全身の筋肉を活性化させ、ケーシィと同じように能力を高める。

 

「カメール“みずでっぽう”」

「ケーシィ“シャドーボール”‼︎」

「カイロス“きあいパンチ”」

 

ドォン‼︎

 

カメールの放った水鉄砲とケーシィの影を収縮したゴーストタイプの技の代名詞と言われるほど頻繁に使用される技“シャドーボール”が激突しカメール達の視界を奪う。

 

しかし、視界が安定しないその隙にカイロスは自身の腕に“かわらわり”以上のエネルギーを集中させ、技を放つには長い溜めの後に迷わずに水と影の激突で出来た水蒸気に突っ込みカメールに向かって強烈な拳を放った。

 

「ッ・・・“からにこもる”」

 

先程と同じようにカメールは甲羅に閉じこもり防御するが“かわらわり”のようにダメージを軽減するのは無理だったようで、足元がいかにもふらつきHPが残り少ない事は誰の目にも明らかだった。

 

ー“ビルドアップ”をされたのが思った以上に痛かったな・・・

 

グリーンは冷静に自分のミスを確認すると

 

「カメール“こうそくスピン”」

 

カメールはグリーンの指示の後、タッタッと助走をつけると甲羅に潜り回転、そのままケーシィの元に突進していく。

 

ーケーシィの攻撃は協力だがその分守りは弱い

 

しかし

 

「カメッ⁉︎」

 

バシッとカメールの体が突如現れた光によって弾かれる。

 

グリーンがこのバトル始まって初めて目を大きく見開く。

ブワァッとスピンによって巻かれた砂埃と未だに残っていた水蒸気が光と共に消えてなくなり

 

「ユー‼︎‼︎」

 

「なっ⁉︎進化しただと・・・‼︎」

 

そこから現れたのはケーシィの眠そうな雰囲気はなく、しかしケーシィの体の雰囲気は残したまま大きくなり、額には赤い星マークをし片手にスプーンを持ったケーシィの進化したポケモン ユンゲラーがいた。

 

カメールはケーシィがユンゲラーに進化する際に起こった光の波動に弾かれたのだ。

 

「これなら・・・」

 

「⁉︎何するつもりだ・・・」

 

ボソッと呟いた下っ端1の言葉に違和感を感じた下っ端2が下っ端1に問いかける。

 

「これなら俺1人でも勝てるだろ‼︎侵入者を排除するために現場から離れていたなら例えこの作戦が失敗しても俺は調教室行きを回避出来る‼︎」

「まさかお前・・・抜け駆けしようと‼︎」

 

「ユンゲラー“ねんりき”でカメールと一緒にトレーナーに突っ込め!」

 

ユンゲラーは自分の念動力でカメールの動きを封じるとそのままカメールをグリーンの元へ投げつけると自分もグリーンに向かって突進する、更に下っ端1もユンゲラーと共にグリーンの元へ走り出す。

 

「ユンゲラー“テレポート”‼︎‼︎」

 

下っ端1の指示と共にユンゲラーと下っ端1、カメールとグリーンは一瞬にしてその場から消えてしまった。

 

 

 

「ここは・・・」

 

“テレポート”によっておつきみやまから移動させられたグリーンはどこに移動したのかと周囲を見渡す。

 

周りには水辺、そして木々の数々、そして遠くから見えるのは大きな橋、そしてグリーンの背後にはおつきみやまが見えていた。

 

ー3番道路にはこんなところ見かけなかった・・・つまりここはおつきみやまを抜けた先にある道路か

 

スッと目線を下にやるとそこには戦闘不能状態になっているカメールの姿があった。

 

ーやるしかないか。

 

「さぁ、どうする‼︎お前のカメールはもう戦えないぜ‼︎」

 

スッとグリーンが声の方向に目をやるとユンゲラーと下っ端1がグリーンから離れた位置、恐らく遠距離技が得意なユンゲラーの戦闘に最も適した距離に移動していた。

 

「カメールはまだまだ俺の育てが足りなかった・・・だけど」

 

スッとグリーンがモンスターボールを取り出す。

 

「こいつはお前なんか簡単に蹴散らすくらいにしっかり育ててある。」

 

グリーンは静かにそのモンスターボールを地面に落とした。




RED
手持ちのポケモン
ヒッポ(ヒトカゲ♂)Lv.15
主な技
ニトロチャージ
ひのこ
えんまく
ひっかく

キーク(マンキー♂)Lv.13
主な技
からてチョップ
けたぐり
きあいだめ
みだれひっかき

ドドラ(ニドラン♂)Lv.14
主な技
ふいうち
にどげり
どくばり
つつく

ピカチュー(ピカチュウ♂)Lv.?
主な技





しばらくテスト勉強のため更新をお休みさせて頂きます。
10/4


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第11話 レッドの異変

お久しぶりの投稿です。
今まで通りの頻度で投稿できるようにはまだなりませんがこれからもよろしくお願いします‼︎



おつきみやま

 

ニビシティとハナダシティを繋ぐこの山はカントー地方のガイドマップにはこう記されている。

 

『不思議な力を秘めた 星の降る山』

 

この場所はカントーで唯一ポケモンを進化させる為の石『つきのいし』が発掘でき、更に月との関係が深いとされているポケモン ピッピが生息しており宇宙と関わりの深い山として現在も研究が続けられている。

 

しかしこの山のマスコットと言われるポケモン ピッピは滅多に姿を現さず、殆どはイシツブテや超音波で周囲の情報を得て行動するコウモリを思い起こさせる姿をしたポケモン ズバットと、体にキノコを取り付けた特徴的な姿ポケモン パラスが主に見かけられるポケモンだ。

 

普段のおつきみやまは野生のポケモンが襲ってくる事もあるが比較的1番道路と同じように温和な場所である、

しかし今のおつきみやまのポケモン達の様子はそれと真逆をいっていた。

 

ポケモン達はとにかく目の前に現れた人に勝負を挑むといった行為を行っていた。

 

それは何故か?、恐らく今から約一週間前にこのおつきみやまに現れた大勢の黒服の集団、ポケモン密漁売買組織ロケット団が山中を徘徊し時としてここに住む野生のポケモンの巣などを破壊し自分達の生活が脅かされている、そのためポケモン達は自分達の居場所を守るためロケット団に立ち向かったがロケット団の持つポケモン達の前に敗北、しかも目に付いたポケモン達をロケット団は次々と捕獲していった。

 

レッドがゲットしたニドラン♂、ドドラも“ふいうち”というニドラン♂が覚えるのは珍しい技を覚えているためロケット団に狙われていた。

そのドドラの強力な技“ふいうち”も使用できる回数が多くないので大勢のロケット団相手にすぐに使用限界に達し、他の技じゃ大勢に対抗できず逃げる羽目になってしまった。

 

このように圧倒的数の前におつきみやまのポケモン達は敗北したのだ。

 

そしてロケット団に捕獲されることを嫌がるポケモン達は別の住処を探しに山を出る。

 

そのためおつきみやま周辺のポケモン達の様子は慌ただしく、人間に対して警戒心を抱いているため好戦的になっていた。

 

これがおつきみやま周辺がおかしかった理由だ。

 

 

そして

 

 

「ヒッポ!“ニトロチャージ”‼︎

キーク!“からてチョップ”‼︎

ドドラ!“にどげり”‼︎」

 

レッド達はドドラをゲットしてから約2日でおつきみやまの入り口付近まで辿り着いた。

 

錯乱している・・・恐らくズバットが放った相手を混乱状態にする音波を発する技“ちょうおんぱ”で混乱したイシツブテやイワーク達をレッドは3匹のポケモンを駆使して押さえ込んでいた。

 

「レッド‼︎ヒッポ達を下げて‼︎」

 

「あぁ‼︎みんな下がれ‼︎」

 

レッドはポケモン達を下がらせる、そしてそれを支持したブルーの足元には2日前のニドラン♀との戦闘でフシギダネからフシギソウに進化したフシくんが錯乱しているポケモン達に向かって背中の赤い蕾を向けている。

 

「“ねむりごな”‼︎」

 

ブワッと緑色の粉が蕾から放たれ錯乱しているポケモン達に降り注ぐ、ポケモン達はやがて眠気を催しフラッとふらつくと意識を失い、地面に倒れる。

 

「よし、戻れキーク、ドドラ。」

 

俺はヒッポを残して他のポケモン達をボールに戻す。

さっきヒッポの使った“ニトロチャージ”は相手に攻撃すると同時に素早さを上げる技だ。ポケモンの能力変化はモンスターボールに戻すと消えてしまう、そう考えるとこの様子だと更に激しい戦闘がおきそうだから能力の上昇は残しておいたほうがいいだろう。

 

「よし、行こ・・「待ちなさい!」痛い⁉︎痛い‼︎耳を引っ張るなって⁉︎」

 

おつきみやまの入り口へと続く階段を上がろうとしたら急にブルーは俺の右耳を引っ張り出した。引っ張り出したって言葉おかしいな・・・いや、でも耳がちぎれるくらい引っ張ってきたぞこいつ・・・。

 

「何堂々と歩いてるのよ‼︎また野生のポケモンでもひっかけたら厄介でしょ‼︎」

 

そう言うとブルーは俺の袖を引っ張って自分の胸元へ俺を抱き寄せるって⁉︎顔⁉︎顔⁉︎

近い近い近い近い近い近い近い近い近い⁉︎⁉︎

 

ブルーの顔がレッドの丁度斜め上、レッドが視線を上に上げると丁度ブルーの整った綺麗な容貌と口に近い分、ブルーの吐息が間近にレッドに降りかかり、レッドは頭がクラクラしだした。

 

「フシくん戻って、この子の力を借りましょう。」

 

ブルーはフシくんをモンスターボールに戻すと新たに違うモンスターボールを取り出してニコッと笑みを浮かべる。

だから顔が近いって・・・ぁぁ、なんかいい匂いがするぅ〜・・・

 

「ちょっ⁉︎レッド何よその間抜けな顔は⁉︎」

「ふぁい?」

 

にゃんのことかにゃ〜へへへったのしくにゃってきたにょ〜〜ホホホホホホッ‼︎

 

あきらかにレッドの様子がおかしい、

とにかく先に進もうとブルーはすぐにボールを地面に投げつける。

 

「ワァァァック‼︎」

 

ボールから現れたのはイワーク、ブルーは先日おつきみやま付近のポケモンセンターで休んだ時、ある技を使うこのイワークを発見し捕まえていたのだ、レッドは部屋で爆睡していたためこの事は知らない。

 

「“あなをほる”‼︎」

 

ブルーの指示と共にイワークはズボッという音を立てて地面に潜り込む、ブルーは様子のおかしいレッドを抱えてその穴に飛び込む。

 

穴の中に入ったブルーは未だに穴を掘り続けるイワークに届くよう大きな声で指示を出す。

 

「おつきみやまの内部・・・人のいなさそうな小部屋に出て‼︎‼︎」

 

その後にイワークの低い声が鳴り響き、イワークの穴を掘るスピードが速くなる、イワークもブルーの指示を待っていたみたいだ。

 

ブルーはすぐに抱えているレッドと共に地面に座り込む。

 

「レッド‼︎どうしたのよ。」

「ふぁっ?」

 

レッドの頰は赤く染まっており、不思議と呼吸も早い気がする。

 

「ハァ・・ハァ・・ハァ・・ハァ・・ハァ」

 

「本当にどうしたのよ・・・」

 

熱にしては急過ぎるわよね、そんな素振りも様子も全く見られなかったし・・・

技を食らった様子もなかったし・・・

 

「カゲェ・・・」

 

ーヒッポも心配してる・・・

 

レッドがボールの外に出していたヒッポは心配そうな声を上げてレッドに寄り添っている。

 

「レッド・・・キャッ‼︎」

 

ーえ?

 

ブルーはそっとレッドの手のひらに触れたその瞬間、レッドがブルーを押し倒した。

 

「ハァ・・ハァ・ハァ・・」

「ちょ・・・ちょっとレッド⁉︎」

 

両手首を握られ身動きを取れなくさせられるブルー、それを行っているレッドの息はさっきよりも熱っぽく、頰の赤みも増しているが。目も虚ろな状態で一見すれば風邪を疑うようなくらいだが、

 

 

 

 

ーちょっと待って・・・レッド・・・

 

 

 

 

 

ー発情してない・・・・?

 

 

 

 

真正面から間近でレッドの虚ろな瞳を見たブルーにはレッドの瞳の奥に獰猛な気配を感じた。同時に自分の危険信号が一気に真っ赤に染まる。

 

「ハァ、ハフゥッ・・・!」

「あっ・・・!やめてよ‼︎」

 

レッドはブルーの首筋に唇を這わす。

ブルーは両腕を押さえつけられているため両足をバタつかせ抵抗する。

 

レッドは暫くブルーの首筋に唇を這わすとスッと顔を上げる。

 

「ハァ・・ハァ・・・ハァァァァァ・・ン‼︎」

 

するとレッドは熱っぽく、男とは思えないほどの女らしい色っぽさを纏わせた声を発する。元々女顔っぽいため見ている側とすれば今の声が更にそう聞こえただろう。

 

「・・・レッド⁇本当にどうしたのよ‼︎正気に戻りなさいよ‼︎ふぁっ⁉︎」

 

ブルーは叫び声をあげるがその瞬間レッドがブルーの両手首を掴んでいる手を離しギュッと力強く抱きしめた。

ブルーもいきなり抱きしめられ驚きの声を上げる。

 

ブルーの左耳元でレッドの熱を帯びた吐息がかかる。ブルーは目をきつく閉じ脱出するために精一杯暴れ出す。

 

「ハァァァ・・・はむっ・・ンゥゥッ!」

「‼︎⁉︎」

 

レッドが抱きしめたままブルーの耳を甘噛みする、そして何回も丁寧にその行為を繰り返す。

 

ー今のうちに

 

ブルーはレッドが自分の耳を舐めている間、その行為による妙な感覚に耐えながら自由になった右手で腰につけたモンスターボールを取ろうとするが

 

 

ーあれ・・・ない⁉︎

 

 

自分の腰にある筈のフシくんとコンちゃん、そしてレッドのドドラと一緒に自分達を襲ってきて捕獲したニドラン♀、ニドちゃんのモンスターボールがないのだ。

 

ブルーは自分の耳に夢中のレッドにポケモンを使って脱出しようとしていることを悟られないようにスッと右側に視線だけを移動した。

 

ー⁉︎

 

ブルーは目を大きく開く。

ブルーのモンスターボールは全て今のブルーの位置から遠いところにあったのだ。

おそらくレッドが自分に抱えられている間に取って遠くに置いたのだろう。

 

ーマズイ・・・!そうだヒッポ‼︎

 

ブルーはヒッポに助けを求めようと穴の中を照らす光を追いかけオレンジ色の体を見つける。

 

「・・・・・・・・」

 

ヒッポはなぜか両手で耳を塞ぎ小さく縮こまった姿でブルー達が入ってきた穴の入り口方面の隅っこでブルー達に背中を向けていた。

 

ーヒッポさぁぁぁぁぁん⁉︎⁉︎

 

ヒッポはレッドの現在の行動の真意を理解しているようだ。ただ一つ勘違いをしているとすればヒッポはブルーがそれを()()()()()()()と思っている所だろう。

実際は全くの逆だが、もしかするとヒッポがポケモン図鑑に書かれた『控えめな性格』は今のこの状態に現れているのかもしれない。

 

ー手持ちのポケモンは使えない、ヒッポに向かって叫んでもヒッポのボールはレッドが持ってる、戻されたらおしまい・・・

 

 

ーせめてヒッポがこっちを向いてくれたら・・・‼︎

 

 

そうすれば自分が助けを求めているのを知って貰えるのにとブルーが考えた所でレッドがブルーの耳から口を離しまた色っぽい声を上げる。

 

「ふぁぁぁぁぁぁ・・・っん・・・!」

 

「⁉︎」

 

ブルーの耳を舐めている時にレッドの男とは思えない程の艶っぽい声は聞いていたが、ブルーの目が大きく開かれた、しかしそれは別の理由だった。

 

ーウソ・・・ウソ・・・

 

 

 

 

 

『違和感』

 

 

 

 

 

()()が自分の足の付け根の内側に触れている『違和感』

 

 

 

 

ブルーはそれに目を大きく開いて驚いているのだ。

 

 

ブルーはレッドが嫌いではない。

一週間以上も一緒に行動しているのだ、しかも異性同士だ、嫌いな人とはそんなことできるはずがない。

 

しかし好きでもない。

恋愛対象ではないー友達として好きかどうかを聞かれたらブルーは好きだと即答するだろう。

それはレッドも同様だ。

レッドもブルーを異性としてみている節はあるしふとした瞬間にドキッとする事は多々あったがレッドにはナナミという好きな人がいる、そのためそんな事があっても恋愛感情を抱いた事は一度もない。

ブルーもレッドに意中の相手がいる事は知らないが自分の事を恋愛対象で見ていないことを察しているから一緒に行動している節もある。

 

だけど今この状況に陥って、

ブルーはレッドに押し倒され、耳を甘噛みされても不とは思わなかった。

だからこそ体で抵抗しながらも落ち着いてこの状況を打破する方法を考える事が出来た。

 

しかし、それは普通できることではない。

好きでもないと認識している相手にそういう事をされて冷静に対処するなんてことできるものじゃない。

 

『もしかしたら自分はレッドに恋愛感情があるのかもしれない。』

 

頭の中でそういう考えがふとブルーに浮かんだ。実質レッドは顔は少し童顔っぽいが整っていない訳ではない、尊敬している部分もある、だから好きになる条件は揃っているのだ。

 

 

だけどその考えは間違っていた。

 

 

レッドのズボン越しにでもわかるソレを自分の肌で感じてブルーはそう思った、

いや、思うこともできなかった。今のブルーの中は

 

 

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い

 

 

その事で頭がいっぱいだった。

今までバタつかせていた足もピタッと止まり、徐々に恐怖で震えだす。

 

「ハァ・・・・ハァ・・ハァ・・」

「いや・・・いやぁ・・・」

 

レッドが変わらず火照った顔に虚ろな目でブルーの瞳を見つめる。

さっきまでそれ以上のことをされていても冷静でいた筈のブルーは瞳を見つめられる程度の事で目尻に涙を溜め、潤んだ声で拒絶の言葉を吐く。

フッとレッドの口元に笑みが浮かぶ、レッドはそのままブルーの耳元に口を近づけ。

 

 

 

 

「ーー」

 

 

 

 

ある言葉を囁いた。

 

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 

ブルーの顔が一気に蒼白に変わり、何処から出しているのかわからないほどの叫び声を上げる。

 

犯される犯される犯される犯される犯される犯される犯される犯される犯される犯される犯される犯される犯される犯される犯される犯される犯される犯される犯される‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

「カッゲェッ‼︎‼︎」

 

 

 

 

 

 

ドォン‼︎‼︎

 

 

 

その瞬間、レッドの左腕にヒッポが“たいあたり”を繰り出し、ブルーに覆いかぶさっていたレッドを突き飛ばした。

レッドはそのまま数回地面に激突しクタッと意識を失った。

 

「カゲッ⁉︎」

ーやりすぎた⁉︎⁉︎

 

ヒッポは身体中から冷や汗を流しながらフーッフーッと荒い息をしている。

自分の大切なトレーナーに思いっきり技を繰り出し気を失わせた事にとてもとても後ろめたさがあるらしい。

 

しかし明らかにさっきのブルーの悲鳴は異常だった。自分は耳を隙間がないくらい塞いでいたのにキーンと頭蓋骨に響くような声にクラクラしてしまいそうだった。

 

ブルーはすくっと上半身を起き上がらせたものの両手を互いに反対の肩に手を回し胸の前で交差した状態で未だに恐怖で震えている。

 

「ん・・・うぅ・・・」

 

ブルーとヒッポが自分の心の整理をしている間に仰向けで意識を失っていたレッドが目を覚ましたようだ。

ビクッとブルーの体が強張る。

 

「あれ・・・?ここ・・・どこだ・・?」

 

たしかブルーの胸元に抱き寄せられて・・・・なんか視界がグニャグニャして・・・あれ?そのあと・・・何があったんだ?

 

レッドが自分の現状を把握するため記憶を遡っている間にブルーは遠くにやられたフシくん達のモンスターボールを拾いレッドから距離をとる。

 

レッドは周囲をキョロキョロしながら視界にブルーを捉える。

 

なんであいつ俺をじっと見てるんだ・・・

なんか俺・・・やらかしたのか・・?

 

ブルーの視線はレッドに向いていた、しかしレッドにはその理由がわからない。

なぜならレッドにはさっきまでブルーに対して行った行為を覚えていないのだ。

 

自分の記憶の途切れとブルーの態度からレッドは意識がない間に自分が何かしらやらかした事を悟った

 

「なぁ、ブルー・・俺、何かし」

「見つけたぞ‼︎侵入者だ‼︎‼︎」

「っ!」

 

ブルーに俺のしでかした事を聞こうと思って声をかけた瞬間。侵入者のことを伝える声が聞こえたそれと同時に俺達の近くの穴から胸に大きく『R』と書かれた黒服に白い手袋をつけた人物達が降りてくる、いかにも泥棒みたいなダッセー服装だなこいつら・・・

 

「ここら辺のポケモン達の様子がおかしいのはお前らのせいか。」

 

侵入者だと叫んだ瞬間にモンスターボールを構えたあたり怪しいがもしかしたら味方の可能性もあるかもしれない、なら自分達がポケモン達の様子を見てこの場所に来たという事とその原因を追っているということをいっぺんに伝えられるこの台詞を使えばこいつらが敵か味方か判断できるはずだ。

 

多少失礼かもしれないがそんなのはそんな怪しい服を着ているこいつらが悪い。

 

「ここら辺のポケモンがどうなったかなんてこっちにはどうでもいいんだよ。お前らロケット団に楯突くきか‼︎」

 

これで答えは出た‼︎

 

こいつらは敵だ‼︎‼︎

 

「ロケット団なんてダセー名前の組織知らねぇし、これがお前達の所為なら俺は全力でお前らを潰してやる‼︎ヒッポ‼︎」

「カゲッ‼︎」

 

ヒッポが俺とロケット団と名乗る組織の人物3人の間に立つ。

 

「生意気なクソガキが‼︎ゴルバット‼︎」

「アーボ‼︎」

「ドガース‼︎」

 

ロケッド団3人は構えていたボールからモンスターを繰り出した。

 

さっきのポケモン達の混乱の原因となったポケモン ズバットの進化した姿で体が一回り大きくなり、進化したことによって目が現れ少なからずの弱点であった視界がなくなったポケモン ゴルバット。

 

紫の体に鋭くきつく吊り上がった黄色い瞳に長い体、蛇を想像させるポケモン アーボ。

 

アーボと同じく紫の体を持っているが球体に近いような形をしており体に開けられた穴からガスを吹き出すポケモン ドガース。

 

「毒タイプのポケモン3匹か・・・」

 

毒タイプのポケモンの戦闘手段は基本、相手を毒状態にし、徐々にダメージを奪いつつ弱り切ったところに攻撃を当てる事だ、そのため長期戦や1対複数の戦闘に持ち込まれると厄介なポケモンだ。

 

俺の手持ちは3匹、炎タイプのヒッポの攻撃は毒タイプには通るけどキークとドドラが得意な格闘タイプと毒タイプの攻撃は効果いまひとつでしんどいところがある。

おそらくこいつらの他にも同じような奴らがまだおつきみやまにいるはずだ、囲まれないように出来るだけ1回の戦闘にかかる時間を少なくしないといけない、HPとPPの消費もそうだ。

 

俺の手持ちだけじゃしんどいな。

 

俺は自分の斜め前に座り込んでいるブルーに声をかけようと口を開く。

 

「・・・・‼︎」

 

声が出なかった。

座り込んでいるブルーの体はかすかに震え、目から涙が流れていた。

 

いつもの俺ならそれでも声をかけていただろう、そうしないとブルーの身も危険だから。

 

だけど俺の中で俺がその言葉を発することがおかしいと思ってしまった。

理由はわからない、しかしそれを言おうとすると胸の奥に痛みと同時に罪悪感で吐き出しそうになる。

 

俺は今来た吐き気を歯をくいしばる事で押さえ込みそのままブルーの元に走り出す。

 

「ヒッポ‼︎ゴルバットに“ニトロチャージ”!」

 

ゴルバット向かって炎纏ったヒッポが突進する。

しかしゴルバットはそれを避けたが壁に着地したヒッポは壁を利用してまた技を繰り出し命中させる。

しかし間髪入れずにアーボとドガースがヒッポに襲いかかる。

 

1対3ではいくらヒッポが技をノーモーションで出せるといってもキツイ。

なら相手のポケモンの中で1番厄介なゴルバットに狙いを定める。

ゴルバットは相手を混乱状態にさせる技と毒状態にさせる技を持っている。

毒は俺の手持ちにどくけしがあるからいいが混乱状態にさせられると一度モンスターボールに戻す必要がある。

それだと“ニトロチャージ”であげていた能力をリセットしてしまう事になるので避けたい。

 

ゴルバットの混乱状態に陥らせる技といえば『ちょうおんぱ』だ。

これは技を放つための溜めが長いため接近戦をされると出しにくい技だ、これを封じるだけで大分バトルの組み立てが上手くいく。

 

「ブルー、逃げるぞ!」

 

ブルーの元に走ってきた俺はブルーに手を差し伸べるが、

 

「あ・・・・・あ」

 

ブルーから出たのは言葉になっていない声と俺に怯えているような異常に震えた瞳。

 

 

本当に俺の意識がない間に何があったんだよ‼︎

 

 

そう叫びたかったがそんな暇はない、ブルーが俺を怖がっているのならしょうがない、俺はモンスターボールを取り出してキークを繰り出す。

 

「キーク、ブルーを抱えて走れるよな‼︎」

「キャッ‼︎」

 

キークはブルーを抱えてロケッド団のいない方、穴の中を進んでいく。

 

「ヒッポ“えんまく”‼︎」

 

ヒッポは敵のポケモン3匹に向かって黒い煙を吐き出し吐き出された黒い煙は3匹とロケッド団を包み込む。

 

「ヒッポ行くぞ‼︎」

「カゲッ‼︎」

 

俺とヒッポは先に行ったキークとブルーを追って穴の中を進んでいく。

 

「⁉︎イワーク‼︎」

 

そして進んだ先にはキークとブルーを頭に乗せて上の穴の出口に移動させているイワークの姿があった。

 

「カゲッ!」

 

ヒッポが俺のズボンを引っ張ってイワークに指を指している、味方って事か・・・

 

「よくわからないけど、イワーク!俺たちが出たら穴の出口を塞いでくれ‼︎」

 

俺の指示にイワークは俺達を頭に乗せて俺達の背では届かない高さに開けられた穴の出口まで運び、“いわなだれ”で穴を生み出した穴で塞いだ。

 

「ありがとう、とブルー・・・」

「・・・・・」

 

出来るだけ戦闘を避けていく為にはイワークの巨体では無理があるからブルーにモンスターボールに戻してもらおうと思ってブルーの方向を見たはいいがブルーは地面に膝を抱えて座っているのは構わないのだが、纏う空気が重く俺は台詞を途中で中断してしまった。

 

その様子を見ていると俺の胸に鋭い痛みが走るが俺は一旦フゥッと息を吐くことでその痛みを緩和させ再びブルーに声をかける。

 

「イワークをモンスターボールに戻してくれ。」

 

するとブルーはスッと目線をこっちに向ける、その瞳を見るだけで未だに俺に対して恐怖を抱いている事がわかってしまう。

 

しかしブルーは黙ってモンスターボールを取り出しイワークをボールに戻す。

 

「俺が何をしたかは後で聞く。だけど今はロケッド団とかいう輩をこのおつきみやまから追い出す事を優先させてくれ・・・だから・・・その・・・」

 

「・・・・ごめんなさい。」

 

自分が何をしでかしたかはわかってはいないけどそれでもブルーはそれによって傷ついたのは明らかだ。

だからまず俺はブルーに対して謝った。

ていうか俺がブルーに今出来ることはそれしかなかった。

 

「なんで謝るの。」

 

しかしブルーから出た言葉は俺の行為の理由を尋ねるような言葉だった。

 

「え、いや・・・だって俺、ブルーに酷いことしたんじゃないのか?」

 

 

 

「あなたは何もやっていない。」

 

 

 

「へ⁇」

 

「だから別にレッドは何もやっていないから謝る必要がないのよ。」

 

いやいやいやいや⁉︎

じゃあ何なんだよさっきまで俺に対して向けていたあの視線は⁉︎

確実に俺なんかやらかしただろ⁉︎気を使って誤魔化しても無駄だかんな‼︎

 

「仲間が理由もわからず急に気を失ったら気にするに決まっているでしょ、例え意識を戻した後でも。」

 

ブルーは俺の考えを読み取ったかのように言葉をつむ。

 

「私の調子が悪かったのはレッドが意識を失った後にズバットの“ちょうおんぱ”を少し受けちゃっただけ、もう大丈夫だけど。」

 

これはブルーの嘘だ。

 

ブルーは実際ズバットの“ちょうおんぱ”を食らっていない。

しかもレッドに何もされていないというのも嘘だ。

 

なぜブルーはレッドに対して嘘を吐いたのか。

ブルーはレッドの意識が戻ってからずっと彼を観察していた。

 

現状がわかっていない事で起こった挙動不審な態度が演技ではないか?

そう思い警戒、恐怖しながらレッドを見ていくうちにその可能性は消えた。

自分が隠しきれずに放った恐怖を纏った視線に敏感に反応し、意識がない間にレッドが自分に何かしたのではないかと疑い、自分への対応の仕方に迷う様子はレッドの瞳を見ただけでわかった。

そしてブルーはキークに抱かれイワークの作った穴の出口に移動している際に確信に至った。

 

 

レッドは自分の意思であんな行動をしていない。

 

 

恐らくポケモンの技が中途半端に当たった所為だろう、ブルーがレッドにいった嘘と同じ様な事がレッドの身におこったのだろう。

 

それならレッドに非はないがそれによって行った行為が行為だ、確実に自分に後ろめたさを感じ、距離を置きにくるだろう。

それは今から行うミッションに支障をきたしかねない。

だから真実は伝えない。

 

これがブルーがレッドに嘘を吐いた理由だ。

 

 

「それより、これからどうやってあいつらを追い出すかを考えましょ。」

「正面突破は・・」

 

「馬鹿なの?こんな大規模な事をしてるのよ。相当力量(レベル)の高いポケモンを連れてるに決まってるでしょ。そんなのが出たら私達の手持ちじゃ歯が立たないわ。」

 

確かにあっちは以前から裏で名を馳せている巨大組織、旅立ってから1週間とそこらの俺達で対抗できない力量(レベル)のポケモンがいない筈はない。

それに例え力量(レベル)の低い相手だろうと数で責められてはいずれ俺達が底を尽きる。

ていうことは・・・

 

「つまり、強い奴とは戦わず更にそんなに戦闘をせずにあいつらを追い出さなきゃいけないって事か・・」

「そうよ」

 

「・・・・・・・無理じゃね?」

 

戦わないという事は可能だ、ヒッポの“えんまく”で相手の視界を封じている内に逃げる事は十分に可能だ。

 

しかし逃げてばっかでは相手を追い出せる筈がない。

その時点で強い奴とは戦わずに相手を追い出す事は不可能だ。

 

戦う方法も考えたヒッポの“えんまく”で視界を奪い、フシくんの“ねむりごな”で眠らせて俺達のポケモン全員で一気に叩くという手もあるが恐らくこれは1度しか使えない、その1度で相手のHPを削り切れると言い切れないためこれは難しい。

 

 

ー外部から応援を呼ぶか。

 

 

オーキド博士に連絡すれば何かしらの対応をしてくれるだろうけど。

 

「こんなに大事とは思わず連絡してないんだよなぁ・・・」

「この状況じゃあ無事に戻れるのも微妙よね。」

 

「カゲッ‼︎」

 

俺とブルーがこれからの行動について悩んでいるとヒッポがバッとおつきみやま内の個室の出口の方を向いて吠え出した。

 

 

「タイムオーバーみたいだな。」

 

 

軽く笑みを交えて放った言葉と同時に俺は目線をヒッポと同じ方向に向けた。

するとすぐに個室の出口からさっき俺達を襲ってきたロケット団と同じ服装の男3人が入って来た。

 

「気付いたとしてももう遅い、此処は既に囲まれている。諦めて手持ちのモンスターボールを全て渡せば命までは取らないでおいてやる。」

 

ベタな台詞だなと思うと同時にさっき俺たちを襲ってきた奴らの1人と声が一緒っていう事はこいつらさっきの奴らか。

 

「いやだと言ったら?」

 

ベタな聞き方したな・・・その後の台詞はわかってんのに。

思わずこの状況の不味さと自分の余りにもありきたりな、漫画の世界で言うような台詞に思わずもう一度苦しい笑みが溢れる。

 

すると団員3人は腰からモンスターボールを取り出しポケモンを繰り出す。

 

「力づくで奪うだけだ‼︎」

 

それぞれ繰り出したのは先程見たゴルバット、ドガース、アーボの3匹だ。

 

「ねぇ」

「ん?なんだよいきなり。」

 

この緊張した場面、俺たちにとっては絶体絶命の場面でブルーのこの状況には相応しくない気のない軽い声が響く。

 

「さっきタイムオーバーって言ってたけど諦めたの⁈」

「は?」

 

ブルーが挑発的な表情で俺を見つめる、この状況でその顔が出来るなんて本当にお前は恐ろしいよ・・・

ブルーが見せてくれた視覚媒体が今度は俺にこの状況に相応しくない表情を引っ張り出してきた。

 

 

ー満面の笑みをー

 

 

「タイムオーバーとは言ったけどゲームオーバーとは言ってねぇだろ?」

 

 

そう言ったと同時にブルーが少し馬鹿にしたような笑みを浮かべながら自分の手持ちを全て繰り出す。

 

それと同時に俺はヒッポ達と一緒に走り出しロケット団に突っ込む。

 

 

「戦闘開始だ‼︎‼︎‼︎‼︎」



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第12話 恩返し

お久しぶりです。
だいぶ間が空いてしまって申し訳ございません‼︎‼︎



「ヒッポ“ニトロチャージ”‼︎

キーク“からてチョップ”‼︎

ドドラ“にどげり”‼︎」

 

「フシくん“たいあたり”‼︎

コンちゃん“はじけるほのお”‼︎

ニドちゃん“にどげり”‼︎

イワーク“あなをほる”‼︎」

 

ドドドドドドッ‼︎

 

7匹のポケモンによる一斉攻撃がまるで銃の撃ち合いをしているかのような弾ける音を立ててロケット団のポケモン達に襲いかかる。

 

しかしロケット団のポケモン達、ヒッポとフシくんの絶妙なタイミングで放たれたコンビネーションアタックの的にされたゴルバットはヒッポの“ニトロチャージ”を確実にかわしそうすると確実に避けることの出来ないタイミングで突進してきたフシくんの“たいあたり”を羽を生かして力を流す事で最小限のダメージに収めた。

 

さらにアーボに放ったキークの“からてチョップ”はアーボの長い体に腕を巻きつかれその効力を失い、その後に、本当は“からてチョップ”のあとすぐに離脱したキークのあとに追い打ちをかけるかように放たれたコンちゃんの“はじけるほのお”は完璧にキークの技の効力を消したと判断したアーボがキークを炎に向かって投げ出すことで技はアーボではなく味方であるキークに技が直撃し、追加効果によって弾けた火花もアーボには届く事がなかった。

 

ドドラとニドちゃんは俺達が初めて遭遇した時に見せたものと同じ2匹の“にどげり”のコンボを放つが・・・・・

 

「ド、ド、ドー‼︎‼︎‼︎」

 

「なっ⁉︎」

「まずい‼︎ふたりとも下がって‼︎‼︎」

 

ロケット団のドガースの奇妙な発声を聞いた俺は次にドガースがする行動を察したが意表を突かれ思わず怯み、ブルーは驚きながらも怯んでしまった俺の代わりに2匹に指示を出す。

ーしかし

 

 

「ガースッ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 

「ラッ⁉︎」

「ニッ⁉︎」

 

 

ドォォォォォォォン‼︎‼︎‼︎

 

 

 

ー“じばく”ー

 

 

一瞬激しい光が現れ、すぐに一気に大きな爆発音を小部屋内に鳴り響かせ自分のHPを全て消費し爆発を起こす。

その爆発に“にどげり”を繰り出そうとしていたドドラとニドちゃんは回避出来ずに巻き込まれる。

 

「ぐっ‼︎」

 

巻き起こった爆風が俺とブルーを襲う、ヒッポ、フシくん、キーク、コンちゃんは爆発には巻き込まれなかったものの爆風に吹き飛ばされるがヒッポ、フシくん、コンちゃんは俺達の足元で踏ん張り、爆風によるダメージを最小限に抑えたが直前にコンちゃんの“はじけるほのお”を受けてしまったキークは踏ん張りきれず地面に数回激突し壁際に吹き飛ばされてしまう。

 

ドォン‼︎

 

「っ⁉︎」

 

俺達が爆風に襲われて耐えていると2つの黒い影が俺の右側を通り過ぎ壁に大きな音を立てて激突する。

2つの影の正体は俺達にはもうわかりきっていた

 

「ドドラ⁉︎」

「ニドちゃん⁉︎」

 

ドガースの“じばく”に至近距離で巻き込まれた2匹はHPを全て失った状態で吹き飛ばされ壁に激突、そのままずり落ちて2人揃って壁際で意識を失ってしまった。

戦闘不能状態だ。

 

「っ‼︎」

 

戦闘不能になった2匹に少しでも声をかけたかったが俺達にそんな余裕はなかった。

 

 

ー圧倒的実力の差ー

 

 

ポケモンの力量(レベル)の差ではない、積み上げた経験によるポケモン達の身体の使い方や相手の最も嫌がるやり方を見出す機転、それの応酬によって戦闘開始から約2分足らずで俺達は窮地に陥られさせられた。

 

“じばく”によって自分達のポケモンを1匹を道連れに相手を倒す。

この技は一見イーブンに見えても今の俺達には1番やってほしくなかったことだ。

 

なぜなら俺達とこいつらの1匹の重さは全く違うから、相手は何十匹いる中の1匹、比べて俺達は7匹の中の1匹

 

そして最悪な事に俺達は2匹を失った。

 

 

けど

 

 

「っ!立て直すぞ‼︎ヒッポ“えんまく”‼︎」

「カゲッ‼︎」

 

ヒッポの口から黒い煙が吐き出されロケット団員とそのポケモン達を包み込む。

だけど相手には飛行タイプを持つゴルバットがいる・・・

 

「“かぜおこし”‼︎」

「でしょうねっ‼︎‼︎‼︎」

 

黒い煙の中から強い風が舞起こりヒッポの放った煙が全て撒き散らされ目眩しとして意味の無いものへと変えられる。

しかし・・・‼︎‼︎

 

「ゴッ⁉︎」

 

ゴルバットが煙から姿を現した瞬間緑色の蔓がゴルバットの身体を拘束する、フシくんの蔓だ。

 

「今だっ‼︎‼︎‼︎」

 

 

「カッゲッ‼︎‼︎」

「キャッ‼︎‼︎」

 

俺の指示と共にヒッポの“ニトロチャージ”とキークの“からてチョップ”がゴルバットにクリーンヒットする。

ゴルバットはそのまま地面に衝突しダメージによる硬直を受ける。

そこを見逃すはずがないだろ‼︎

 

「コン‼︎‼︎」

 

コンちゃんの“はじけるほのお”が動けないゴルバットに襲いかかる。

 

「アーボ‼︎」

「シャッ‼︎」

 

団員の指示とほど同時に視界が晴れたアーボが動き出しゴルバットの前に出ると放たれた炎を全て身体で受ける。

 

「っ⁉︎まだだ‼︎ヒッポ‼︎」

「カゲッ‼︎」

 

技を命中させた後すぐに自分の意思でポジションを移動し、ゴルバットとアーボの右後ろから少し離れた場所に位置したヒッポは俺の技の使命なしに俺が指示するつもりだった技“ニトロチャージ”を繰り出した。

 

「ちっ‼︎ゴルバット‼︎“ちょう・・・「間に合うかぁぁぁぁぁ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

ゴルバットの放とうとした技“ちょうおんぱ”が発動する前にゴルバットの大きな口に対して小さな2つの瞳に“ニトロチャージ”がクリティカルヒットする。

ゴルバットはそのまま数回地面に叩きつけられフシくんとキーク達の所まで吹っ飛ぶ。

 

「「やれっ‼︎‼︎‼︎‼︎」」

 

つるのむち

からてチョップ

はじけるほのお

ひのこ

 

ブルーと俺の指示でポケモン達の一斉攻撃がゴルバットに命中し視界を奪う煙と少し踏ん張らないと耐えれない位の力の衝撃が俺達を襲う。

 

流石にこれだけの攻撃を受ければ・・・・

 

 

「バッ・・・・・っ」

 

 

倒れるよな!

 

煙が止みゴルバットのいた位置を確認しようとするとそこにゴルバットはいなかったがロケット団の方に視線をやるとアーボの目の前で目を回した状態で倒れているゴルバットの姿があった。

 

「最後・・・」

 

ブルーはそう呟くとスッと鋭い視線をアーボに向ける。

その視線が自分のポケモンに向けられたことを察知したロケット団員が自分にそれを向けられたかのように後ずさる。

 

「行きましょ、レッド勝負はついたわ」

「は?」

 

ブルーは飄々とした感じでそう言うとヒューとロケット団員達が佇むその先にある小部屋の出口に向かっていく。

 

「ちょ⁉︎どゆこと⁉︎⁉︎」

「まさかあんた気付いてないの⁇」

 

ブルーが呆れたような眼差しで俺を見つめる。

俺の視界から見えるロケット団員3人も冷や汗を垂らしながら辺りをキョロキョロして話し合っているあたり気付いていないみたいだ。

 

それと久しぶりに言うよブルー、その目は止めてくれ、ガチで怖いからマジで・・・

 

 

「終了のカウントダウンまで3・・・2・・・1・・・」

 

 

 

 

 

「0‼︎」ドォォォォォォォンッ‼︎‼︎‼︎‼︎

 

 

 

 

 

「のっ⁉︎」

突如アーボのいた場所が爆発したかのように激しい耳を引き裂くような音を立てて隆起する・・・いや・・・あれは・・・

 

 

「ワーク!」

 

「イワークって・・・あぁ⁉︎‼︎」

「やっとわかったようね」

 

フンと腕を組んで俺を相変わらず怖い目で見ながらブルーが自分がこのバトルを始まってから張っていた布石というかなんというかを話し出した。

 

「私はバトルの最初イワークに“あなをほる”の指示を出して地中に待機するように指示していたのよ。」

 

確かにブルーはイワークに“あなをほる”の指示を出していたがその後イワークは今の今まで出てこなかった、つまり・・・

 

「最初に他のポケモン達と同じように指示を出したのは印象に残らないようにする為のカモフラージュよ、『木を隠すなら森の中』っていうでしょ。」

 

つまりブルーがこの戦闘中に俺と違って怯んだり、焦ったりしなかったのはこの奇襲があったからっていう事か。

 

「止めというベストな形で使えて良かったわ。最悪の流れになった時に一旦それを断ち切る為に呼ぶ事になるかと思ったけど」

 

成功した事にホッとしたのかブルーが自身が立てていた作戦の全貌を話している間にも俺はそんな事とは関係なしに別の事を考えていた。

 

 

違いすぎる

 

 

トレーナーとしての技術も精神も俺はブルーに全て劣っている

 

 

トレーナーとしての技術が劣っているのはこの旅を通してつくづくと感じさせられたがそれでも気持ち、トレーナーとしての強い精神では負けていない、勝っているとさえ思っていた。

それはブルーが女で俺が男だったからかもしれない、俺の中で女は男に敵わないという勝手な固定概念があったのかもしれない

 

しかし事実は

 

不意を突かれ怯んでポケモン達への指示を忘れてしまう俺

逆にブルーはその状況下でもポケモンどころかトレーナーである俺の様子さえも広い視野で確認し指示を出した。

 

その差は圧倒的だ。

どうしてこんなに差が生まれた?

 

 

「レッド‼︎なにボーッとしてるのよ‼︎」

「あ、あぁ。」

 

ブルーが考え事をしていた俺に声をかけるスッと周りを見渡すとヒッポ達の視線が俺に向いていた。

 

ー今はそんな事考えてる場合じゃないな

 

フゥッと息を吐いて頭を切り替える。

 

「行くぞ‼︎」

 

そう言うとレッド達はこの洞窟の出口に向かって走り出した。

 

 

 

しかし結論を言えばこの時レッドの今の戦闘による動揺と興奮は消えてはいなかった。

しかしそれはブルーもポケモン達もそうだった

 

レッドの手持ちの中で唯一戦闘に出されていた1匹が自身のモンスターボールを動かして危険を知らせていたが、戦闘による動揺や緊張感に呑まれたままの彼らには気付いていなかったのだ。

 

レッド達は知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

この小部屋の出口の先がどんな部屋にやっているのかを・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な・・・・・・・・・・‼︎」

「うそ・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

周囲に広がるのはニビジムのバトルフィールドの数倍も高くて広いドーム型の部屋

そしてその部屋の側面は二階建てとなっておりそこからだとレッド達を上から見下ろすことが可能だろう。

 

 

 

 

 

そして・・・・・・

 

 

 

 

一階と二階にびっしりとポケモンを整列させて攻撃準備を整えているロケット団

 

ドォン‼︎

 

「⁉︎」

 

レッド達がバッと背後を振り返る、そこにはさっきまでレッド達がいた小部屋の入り口は土砂と岩でないものとされていた。

 

少しの思考停止の後に逃げ道を失った事に気づく。

 

 

「あ・・・あ・・・・・」

 

 

 

ーここは既に囲んである。ー

 

先程倒したロケット団の下っぱはそう俺達に言っていた。

 

正直その言葉をあまり深く捉えていなかった。

 

例え囲まれていたとしても、囲んでいる人数が少なければポケモン達の体力は心配だが突破するのは不可能ではないと思っていた。

 

多ければその多さを逆に利用して突破するテクニックを俺とブルーは持っている、そう思っていた。

 

しかしまさか俺達の逃げ込んだおつきみやま内の小さな部屋の隣にこんなに大きなドームがある事なんて考えてもいなかった。

 

更に言えば俺は奴らの言っていた俺達を囲んでいるという言葉はハッタリだと思っていた。

 

何故ならそれを言った奴らは最初に俺達を襲ってきた奴だったからだ。普通なら効率がいいから仲間に情報を与えて速やかに向かわせるものだ。なのにこいつらはそのまま俺達を追っていきた、つまりこいつらのいう囲んだというのは俺達を抵抗せずに降参させるためのハッタリだと考えていた。

 

 

そんな甘い考えがこの状況を招いた・・・・いや、俺達がおつきみやまに入った時点でこの状況は決まっていたに違いない。

 

ほぼ息だけの、声にならない掠れ声が定期的に俺の口から吐き出される。

 

 

ー怖い

 

 

 

その思いが俺の足のつま先から頭の先まで物凄いスピードで駆け巡っている、今からカントーを騒がせるポケモン密猟売買組織『ロケット団』にやられるという恐怖もあるだろうが、それよりも怖いものが俺の周囲にあった。

 

 

 

ブルーとポケモン達の恐怖に満ち溢れた表情を見るのが怖くて怖くて仕方がないんだ。

 

 

 

更に恐怖に陥る事になった原因が俺という事が更に俺の中のその感情を掻き立てる。

 

「あ・・・・・・あ・・・・・ふぅッ‼︎」

 

空気を一気に吸い込んで口を閉じる。

 

「ブフゥーっ‼︎‼︎‼︎」

 

そして勢いよく吐き出す、汚い音を立ててしまったが・・・

 

切り替えれた‼︎

 

 

「いくぞ・・・」

「カゲッ‼︎」

 

俺が微かに呟いた声にヒッポが勢いよく返事する、どうやら俺の心配はいらないみたいだったな。

 

「ブルーいけるか?」

「っ・・・えぇ、流石に度肝を抜かれたけど・・・動かなきゃ光は掴めないでしょ。」

 

そこには苦笑も何もない、完全にスイッチが入った。

 

「あいつらのポケモンは・・・」

 

俺はこっそりと奴らの唯一の死角・・・俺の腰でポケモン図鑑を開き奴らのポケモンの情報を得る。

 

黄金じみた黄色の体に黒の稲妻マークが刺繍されている二足歩行の人型の電気タイプのポケモン『エレブー』。

 

炎を纏っているかのように見えるエレブーと立ち姿の似た二足歩行の人型の炎タイプのポケモン『ブーバー』。

 

そしてニビジムでタケシの使っていたポケモンで、この戦いにおいてブルーも使用している身体中が岩で形成された蛇型の岩タイプのポケモン『イワーク』。

 

そして先程まで俺達が戦っていたアーボ、ゴルバット、ドガース。

 

殆どがこの種類のポケモン達で形成されていた。

 

「遠距離攻撃でトレーナーの俺達もろともやるつもりだな。」

「あいつらも1人1匹しか持っていない訳ないでしょうね。」

 

「それはいいんだ。」

「どこがいいのよ⁉︎」

 

 

「重要なのはあいつらが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()っていうことだ」

 

「それって」

 

「普通じゃタブーだけど・・・あいつらは俺達をポケモン達の攻撃の標的にするんだ俺達があいつらを標的にしても文句はないはずだろ?」

「確かにトレーナーを倒しちゃえば2匹目を考える必要がないわね。」

 

「俺はヒッポの“えんまく”で視界を奪う。フシくんには“ねむりごな”“どくのこな”で敵の誘導とヒッポの護衛をお願いしたい。」

 

「わかった。なら煙幕を吹き飛ばす技を持っていそうなゴルバットからやった方がいいわね。」

 

「キークには煙幕を利用してヒットエンドランを繰り返してもらう。」

「じゃあコンちゃんは煙幕の中から遠距離攻撃、イワークには岩を生成する技で相手にダメージを与えながら移動範囲を制限させるわ。」

 

「この戦闘のキーはヒッポ、お前だ。お前がおちたら俺らは終わりだ。頼むぞ!」

「カゲッ‼︎」

 

ヒッポの『えんまく』による目潰しは圧倒的絶望的この状況ではレッド達を勝利に導く事の出来る唯一の光だ、レッドは自分達を取り囲むロケット団達の動きをチェックしながらブルーと小声で作戦会議を始めポケモン達一匹一匹の行動を話し合ったが唯一ヒッポについては『煙幕で視界を奪う』以外の役目を与えていない。

 

レッドはこの戦闘においてヒッポを攻撃に参加させないつもりだ、今まで“ニトロチャージ”で上げた素早さを全て回避に使わせるつもりだ。

 

それ程今回ヒッポが担う責任は大きいのだ。

 

「俺の合図で1度散会してドームの中心に集まれ、3・・・2・・・1・・・GO‼︎‼︎」

 

レッドの合図と共に2人が左右にばらける。

 

「ヒッポ‼︎“えんまく”‼︎」

 

レッドの指示を受けたヒッポは回転をしながら勢いよく黒い煙幕をこの広いドーム一階中に蔓延させた、これで上からは下がどうなっているのかわからないはず、そして下にいる奴らは密集状態で視界を完全に奪わたせいでて迂闊に手を出せないだろう。

 

しかし周囲が見れないのはレッド達も同じだが・・・・

 

「キーク!連続で“からてチョップ”‼︎」

 

「コンちゃん!“はじけるほのお”‼︎

フシくん!“ねむりごな”からの“つるのむち”‼︎

イワーク“がんせきふうじ”‼︎」

 

ボフッとキークは黒い煙の中へ消え、力を溜めた腕を地面と水平に構えてとにかく真っ直ぐ走っていくと煙の中に黒い影を発見しそれに向かってチョップを繰り出す。

 

「シヤッ⁉︎」

 

どうやら影の正体はアーボだったようだ、横でトレーナーのロケット団が大丈夫か⁉︎と声をかけている。

しかしキークはそんなの御構い無しに今度は部屋の壁を見つけそれに沿う様に走り続ける、途中で見つけたものにはとにかく“からてチョップ”で攻撃をし、悲鳴をあげさせるとすぐに走り出す、レッドの言っていたヒットエンドランだ。

 

「ゴバッ⁉︎」

 

走っていくうちにゴルバットに遭遇し同じ様に声を上げさせる。

しかし

 

「コン‼︎」

「フシッ‼︎フシッ‼︎」

 

ゴルバットに黒い影から突然現れた炎と緑色の粉、そして蔓の鞭が命中する。

 

ダメージを受けながらゴルバットは襲ってくる睡魔に負け、地面に着地する。

 

「ワーク‼︎‼︎」

 

イワークの雄叫びと同時にゴルバットの前後左右に岩が出現しゴルバットを取り囲むとその後唯一空いていた上空から岩が落とされる。ニビジムでタケシが使っていた岩タイプの技“がんせきふうじ”だ。

ゴルバットは眠っているため効果抜群のその技をもろにくらいそのまま戦闘不能状態になった。

 

「この調子でいくぞ‼︎」

「えぇ!」

 

キークがとにかく空手チョップで相手を攻撃し声を上げさせる。

 

それがゴルバットまたはロケット団であればコンちゃんとフシくん、イワークが技を繰り出しどんどん倒していくという戦法だ。

 

 

 

「くっ⁉︎煙が振り払えないぞ‼︎」

「どうゆうことだ⁉︎」

 

ロケット団は煙を振り払えない事に狼狽えている様だ、それもその筈

 

「ゲェェー‼︎‼︎」

 

戦闘開始からずっと休まずにヒッポは煙幕を放ち続けている、その勢いはゴルバットの使用する飛行タイプの技の勢いを凌駕している。

 

「このままいくぞ‼︎

キーク“からてチョップ”‼︎」

「コンちゃん‼︎“はじけるほのお”

フシくん‼︎“ねむりごな”からの“つるのむち”

イワーク‼︎“がんせきふうじ”‼︎」

 

再び螺旋状にキークの水平空手チョップが連続ヒットし、鳴き声を聴き取るや電光石火の如く攻撃を放つ。

ポケモン達は自分達から見ても見事なコンビネーションアタックに徐々にテンションを上げていった。

 

絶望、諦め、どん底の状態から火が付いたその心意は動きのキレに大きく作用する。

 

徐々に動きは速くなる

 

運動エネルギーの公式は

2分の1×重さ×()()()2()()

 

つまり速くなれば速くなるほど技の威力は上がっていく。

 

しかしそれは時間が経つにつれて自分の意思ではなかなか歯止めの効かない物へとなっていく、この状況においては諸刃の剣となりうる危険な感情の高ぶりでもある。

 

「落ち着け‼︎」と言う一声をレッドがかければリスクは無くなるが、同時にこの感情の高ぶりによる力の増強を失う事になる。

 

 

レッドは黙る事をとった。

 

 

レッドは目を閉じ視界を封じ耳を潜める。

 

そして頭の中で聞こえてくる音を整理する。

()()()()()()()()()()()()()ため

 

 

 

 

ー舞起こる煙幕によって砂が吹き飛ばされる音・・・・・・排除。

 

ーロケット団の声・・・・・・排除。

 

ーフシくん、コンちゃん、イワークの指示はブルーがいれば大丈夫だ、ポケモン達の鳴き声、技を放つ際の爆発音、空気を切り裂く音・・・・・・排除。

 

 

 

タッ!

タッ!

シュドッ‼︎

タンッチュドッ‼︎

 

 

 

ー聞こえる、キークの足音が・・・敵に技を当てた時の衝突音が・・・・‼︎‼︎

 

 

意識を集中させろ、この状態を保つんだ。

この諸刃の剣の能力上昇数値は高いがそれを扱えるかどうかは別だ、自分の許容数値以上の能力は余った力が必要無い所にかかり逆に動きを悪くする。

 

必要の無い方向に力がかかる時、必然的にリズムが崩れる。

そこからすぐに立て直さなければ力は必要な場所から徐々に無駄な場所に移動し、最終的に能力上昇が能力低下の原因となってしまう。

 

そうならないようにリズムが狂った時に指示するのが俺の、トレーナーとしてのこの戦闘での役目だ。

 

 

タッ!

 

ー集中しろ

 

タッ!

 

ー些細な音でも逃さないように

 

チュドッ‼︎

 

ーもっと周囲のノイズを排除しろ

 

チュドドッ‼︎

 

ー集中‼︎、集中‼︎、集中‼︎だ。

 

タッ!

タッ!

シュドッッ‼︎‼︎

 

ー⁉︎強い

 

 

ータタッタッ‼︎‼︎ー

 

崩れた‼︎‼︎

 

 

 

「キーク‼︎離脱しろ‼︎」

 

 

レッドは刮目し大声でキークに指示を出す。

キークの一撃の音が前触れなく急に大きく強くなった瞬間、攻撃の反動に耐え切れず着地を失敗した様な音がレッドの耳に響いた。

 

キークが大きく地面を蹴った音が聞こえる、バックステップでその場から離脱した音だ。

 

その音が聞こえたと同時にレッドは一旦、音の遮断を止め

 

「ブルー‼︎」

 

「っ!フシくん‼︎“ねむりごな”

イワーク連続で“いわおとし”‼︎‼︎」

 

ブルーは急なレッドの指示の理由をよく理解できないまま瞬時に頭を回転させこの状況に相応しいであろう2匹の技を選択した。

 

最低でも相手の動きを止める事の出来る“ねむりごな”とキークの居場所と方向感覚を隠す、おかしくさせる事を目的とした“いわおとし”が相手のポケモンとトレーナーを襲った。

 

「落ち着けっ‼︎奴らの攻撃はワンパターンだ‼︎危険かもしれないが動け‼︎このままじゃ俺達は格好の獲物だ‼︎‼︎」

 

「好きには動かさないに決まってるでしょ‼︎イワーク‼︎‼︎」

「ワー‼︎‼︎」

 

ブルーの呼び声が高々に響き、イワークの岩を落とすペースが徐々に上がっている。

 

 

「そろそろ上の奴らも動いてくる頃だな・・・」

 

レッドは黒い煙の上に更に砂埃が舞い上がり立ち込める中、上を見上げ、仲間の状態がわからず動くに動けない状態にいる2階のロケット団がそろそろ動き出すのでは無いかと踏んで対処の仕方を考えていた。

 

「キャッ‼︎」

するとキークがレッドのジーンズを引っ張って再び攻撃に参加したいという意思を表現する。

レッドは黒い視界の中的確にいつもキークを撫でている頭をガジガジと撫でる

 

ーまずは今と同じ方法で攻めてみるか。

 

「よし行けっ‼︎」

そう言って背中を押して再び戦闘に繰り出した。

キークはイワークの生成した岩に飛び移り2階にいるロケット団の元へと襲いかかる。

 

ー頼むぞキーク・・・‼︎

 

レッドも流石に煙幕が立ち込める中離れた2階で戦闘を行うキークに指示を出す事は難しい。つまり、今2階で戦闘を行うにはそのポケモンのセンスが高くなければ行けない。

 

「ブルー‼︎」

「わかってる‼︎キークのサポートよね‼︎‼︎コンちゃん‼︎‼︎‼︎」

「コン‼︎‼︎‼︎」

 

コンちゃんもキークに続いて2階の戦闘に参加する。

 

「これで・・・」

 

 

 

 

ポタッー

 

 

 

 

「?」

 

 

 

ポタッー

 

 

 

 

レッドの頬に何かが当たった。

レッドはスッと左手でそれを確認しようとすると

 

 

 

ポタッポタポタポタポタッ

 

 

 

「雨・・・・?・・・・‼︎‼︎まずい⁉︎⁉︎」

 

 

 

 

 

 

「離れろ‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

レッドが叫んだ瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドォォォォォォォォンッ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎

 

 

 

 

 

「あがぁぁぁぁぁぁっ⁉︎⁉︎⁉︎」

一瞬にして黒い視界が白く染まり同時にレッド達の身体の内部を破壊するかのような強烈な電撃が走った。

 

「うぐっ!・・・ぁぁ・・はぁ・はぁ・・・」

 

激しいスパークに一時的に眼を潰されたレッドだが徐々に回復していった。

 

 

そして周囲を見てレッドは体の芯が冷たくなった。

 

 

 

黒い霧は晴れ周囲にロケット団の姿が見える。しかし一階にいたロケット団とロケット団のポケモン達はさっきの電撃によってトレーナー数人を残して全滅だった。

 

 

しかし

 

 

 

それはレッド達も同じだった

 

 

レッドの左側の視界には成長した蕾を酷く焦がした状態で戦闘不能状態になっているフシくんの姿があった。

 

イワークは地面タイプであるから電気タイプの技を弾きかえす事が出来たため未だに健在だだが問題は別にあった。

 

 

「ブルー⁉︎ヒッポ⁉︎」

 

 

レッドは倒れているブルーとヒッポの元へと駆け寄った。

レッドに抱えられたブルーは微かな小さな声で

 

「ごめん・・・体が痺れて・・・動けない」

「っ・・・」

 

その言葉を聞いたレッドはすぐにヒッポの元へと駆け寄った。

 

「ひどい・・・」

 

運悪く直撃してしまったのだろう身体中からバチバチッと許容量を超えた電気が空気中にスパークしている。

図鑑を開かなくてもわかる、確実にHPが全て吹っ飛んでいる。

 

レッドはスッと周囲、2階を見渡した。

 

そこには現在の状況に驚愕の顔を浮かべているキークとコンちゃんそしてニヤついた笑みを浮かべているエレブーの集団だった。

 

「“あまごい”からの“かみなり”・・・」

 

“あまごい”はその名の通り雨を降らせる技だ、この技によって地面を濡らす事によって電気を通しやすくし更に電気タイプの強力な技“かみなり”の一斉発射で一気に煙を払いなおかつ1階にいるイワークを除いた全てのポケモン達を戦闘不能に追い込んだ。

 

「やれ」

 

「ブバッ‼︎‼︎」

「バッ‼︎‼︎」

「シャー‼︎‼︎」

「ドガッ‼︎‼︎」

 

「キャッ⁉︎」

「コン⁉︎⁉︎」

「イワッ⁉︎⁉︎」

 

「っ・・・・⁉︎みんな‼︎‼︎‼︎」

 

ロケット団の指示でブーバー、ゴルバット、アーボ、ドガースの一斉攻撃が始まり、隠れる煙もなくなったキーク達は今までの善戦など嘘かのように呆気なく1階に叩き落とされ戦闘不能状態に追い込まれた。

 

「くっ⁉︎」

 

レッドは即座にポケモン達をモンスターボールに戻す、その際にブルーのモンスターボールも勝手に使わせて貰ったがそこは了承願う。

 

「おとなしくそのモンスターボールを全てよこせ、そしたら2人とも()()保障しよう。」

 

()()()保障してもらわない限りそれは出来ないね。」

 

「お前達は俺たち相手にやりすぎた。それは保障できない、十分に痛みつけてずっと奴隷のような扱いを受けてもらう事になるだろう。ロケット団には見ての通り男も女も多いからね。」

 

ニヤッと笑みを浮かべるそのロケット団の表情にレッドは軽く寒気と嫌悪が走った。

 

「どういう意味だよ。」

 

「子供にはまだ早い話だよ、まぁ話はだけどな。ははははっ‼︎‼︎」

 

「ブルー逃げるぞ。」

「私は置いていって。」

 

その言葉は『ブルーは体が痺れて動けないからブルーを連れて行くと俺は絶対に逃げられない』という考えから成り立っている、確かに全てのポケモン達を失った俺達があと20人近くいるだろう相手に逃げる事は難しい。それも1人は動けないから一方が抱えなければいけない。

 

だけど

 

 

「一緒に行動してきてそれをYesっていう様な男だと思うか?」

 

 

 

「・・・・・でも!」

「その事について俺に何を言っても無駄だよ。絶対に置いてかない。」

 

「やれ。」

 

 

「失礼‼︎」

「きゃっ・・・」

 

ロケット団の攻撃が開始された瞬間、レッドはブルーを抱えて走り出す。

出口は何処にあるかわからない、いやおそらく2階にあるのだろう、1階と2階を繋ぐ坂をレッドは見つけた。

 

しかしロケット団もそれは承知している、雨によって視界が軽く奪われる中、電撃が炎撃が毒針が風が行かせまいとレッドに襲いかかる。

 

「あぐっ⁉︎⁉︎」

 

一つ一つの技を避けるのはポケモンじゃなくても可能だ、がレッドに襲いかかる技の間隔はブルーを抱えている状況だと不可能に近かった。

 

レッドは当たれば確実に両方にダメージがいく電撃は確実に避け、それ以外で避ける事が不可能だと感じた技はブルーに当たらぬ様全て背中で受ける。

 

「っ・・・しぶとい。」

 

ドスッ‼︎‼︎

 

「あっ・・・」

 

ブルーの悲しい声が小さいながらも遠くまで響く。

 

レッドの足に毒針が命中したのだ。

レッドは咄嗟にブルーを上にして背中から地面に倒れた。

 

「エレッブー‼︎‼︎‼︎」

 

「っ⁉︎あがぁぁぁぁぁぁっ⁉︎⁉︎」

 

追い打ちをかけるかのようにエレブーの電撃がレッドに炸裂。

 

「レッドォ‼︎‼︎‼︎」

 

ブルーが叫び声を上げる。

 

「ブーッ‼︎‼︎ブーッ‼︎‼︎」

 

「あがぁぐぁぁぁぁあぁ⁉︎⁉︎⁉︎」

 

更にエレブーが出力を上げて何回も何回も過剰に攻撃を放つ、その度にレッドの叫び声にも似た悲鳴が轟く。

 

「もう止めて‼︎‼︎命までは取らないって言ったでしょ⁉︎⁉︎このままだと・・・‼︎‼︎‼︎」

 

「それは大人しくポケモン達を渡したらと言った筈だ。こいつはそれを拒否したんだ命の保証などする訳がないだろぉ⁉︎ははははははははは‼︎‼︎‼︎」

 

「そんな・・・⁉︎」

 

「こいつが泣きわめいて土下座してポケモン達を渡せばまだ許してやってもいいけどなぁ‼︎‼︎まぁ、もちろんこの状態でそれが出来ればだけどなぁ‼︎‼︎ははははははっ‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

 

「ははははっ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

 

「レッド⁉︎」

 

レッドはエレブーの電撃を受けながら立ち上がる、その顔に笑みを浮かべて。

 

「こいつ・・・・‼︎」

 

「この程度の電撃がなんだってんだよ‼︎‼︎この程度の痛みで今まで一緒に旅をしてきた仲間を渡せってか⁉︎

笑わせんじゃねぇよ‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

「自分のポケモンが・・・‼︎仲間が戦えない、力を出せない時は全力で守ってやるのがポケモントレーナーの義務なんだ‼︎‼︎

いつも俺たちの代わりに戦って傷ついてくれるポケモン達にやってやれる恩返しなんだ‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

「ポケモン達からの恩を仇で返すような真似をするなら俺はポケモントレーナーを辞めたほうがましだ‼︎‼︎‼︎」

 

「何を言ってやがるお前はもうポケモントレーナーとしても普通の人間としても生きていけなくなるんだよ‼︎俺達ロケット団に刃向かった事によってな、ポケモン達に恩返しだぁ⁇ポケモンは人間よりも下位に位置する生物だ人間のために働いて当然だろ‼︎」

 

「そうだよなぁ⁉︎⁉︎お前達は自分達の利益しか考えてない‼︎お前らみたいな奴らがいるから正しい奴が傷つかなきゃいけなくなるんだ‼︎そんなの間違ってるだろ‼︎‼︎」

 

「それが弱肉強食という名の世の中の摂理だ‼︎どんなにいい奴だろうと負ければ全てを失う‼︎この世界は何処までも卑怯で残忍な奴が成り上がるように出来ているんだよ‼︎‼︎‼︎」

 

「そんな世界なら俺がぶっ壊してやる、お前らがその原因なら地の果てまで追いかけて欠片も残さない程に潰してやる‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

「だから‼︎‼︎・・・もういい殺せ‼︎‼︎‼︎」

 

「エレッ・・ブーツ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

「っ」

 

「レッドぉぉぉぉぉぉ‼︎‼︎‼︎」

 

レッドに放たれる確実に命を狙う程の大きさを持った強烈な『かみなり』先程までに負ったダメージが大きすぎてレッドにはそれを避ける力は残っていなかった。

 

思わず目を強く閉じる

 

 

 

 

「・・・・・?」

 

技が・・・こない?

 

 

 

「防がれた・・・だと・・・‼︎」

 

防がれた?

 

 

レッドはスッと閉じていた目を開け、大きく見開いた。

 

 

 

 

 

 

 

「出て来てくれたのか・・・・

 

ピカチュー」

 

 

 

 

 

そこにいたのは小さな黄色い体に赤いほっぺ、茶色のギザギザ模様と体色と同じギザギザな尻尾を持った、今までずっとモンスターボールに閉じ籠っていた相棒、ピカチューの姿があった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーレッドは恩返しをするって言ってたけど僕にはその権利はないよ、だって今まで閉じこもって戦おうとしなかったから・・・・

 

 

だけどレッドは僕を見捨てなかった、毎日僕に話しかけてくれた、

 

 

僕は溜まりに溜まったこの恩を返すために

 

 

レッドの為にはじめて戦うんだ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎



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第13話 相棒の力

「ピカチュー・・・‼︎」

 

「ピッカ‼︎」

 

出て来てくれた・・・・‼︎

出て来てくれたんだ・・・‼︎‼︎

 

突如レッドのボールから現れた、ずっとボールに閉じ籠っていた相棒ピカチューの姿を見て、レッドはこの旅が始まって初めて涙を流した。

 

 

「こいつ・・・‼︎エレブーやれ‼︎」

「エレッ・・ブー‼︎‼︎‼︎」

 

バリバリバリッ‼︎‼︎っとさっきレッドに向けたような強烈な“かみなり”がピカチューを襲う

 

ー無駄だよ。

 

パシュン‼︎‼︎

 

しかし電撃が直撃した筈のピカチューはなんとでもないかのようにケロッとしている。

 

「嘘だろ・・・効果いまひとつとはいえ雨の中の電撃だぞ。」

 

「効果いまひとつでもないんだよ」

「⁉︎」

 

 

「ピカチューの特性は『ひらいしん』、全ての電気タイプの技を自分に引きつけ、無効化し、能力を上げる特性を持っているんだよ。」

 

普通のピカチュウの特性は『せいでんき』

直接攻撃してきた相手を稀に『まひ』状態にする特性だがピカチューは違った

 

『ひらいしん』、電気タイプの技を自分の元へ引きつけ、無効化し同時に自分の特殊攻撃を上げる特性、ピカチューはピカチュウの中でも特別珍しい特性を持っていた。

 

「チッ‼︎なら別の奴らで攻めるだけだ‼︎」

 

ーどうする。

 

レッドは心の奥でずっとその事を考えていた。

 

ピカチューがボールに閉じこもった原因ー

 

電気タイプである筈なのに電気タイプの技が使えないという事に対して行われた酷いイジメ。

 

レッドは図鑑を取り出しピカチューの状態を確認する。

 

 

ピカチュー(ピカチュウ♂) Lv.4

やんちゃな性格

物音に敏感

しっぽをふる

でんきショック

フラッシュ

ボルテッカー

 

 

「っ⁉︎」

 

最後の項目に知らない技が記入されていたが恐らくこれも電気タイプの技なのだろう、電気タイプの技が使えないこの状況でピカチューが使えるのはノーマルタイプの技である“しっぽをふる”だけである。

“フラッシュ”もノーマルタイプの技だがピカチューが使用する際に自分の電気回路を使わなければいけないため使用できない。

 

「ピカチュー‼︎とにかくかわせ‼︎」

 

この指示しか出来なかった。

 

「ピッ‼︎ピッ‼︎ピッ‼︎」

 

ピカチューは小さい体と素早さを生かして軽々と繰り出される技を交わしていく。

 

「ゴルバット‼︎」

 

「バッ‼︎」

「チャッ⁉︎」

ゴルバットの空気を翼で切り裂き空気のヤイバを放つ技“エアカッター”がピカチューに命中する。

ピカチューは吹き飛ばされるものの空中で体制を立て直し綺麗に着地し再び走り出す。

 

「くっ・・・・‼︎」

 

このまま逃げ続けても勝てるわけがない・・・・どうにかしないと、でもどうしようも・・・・

 

ええい‼︎ままよ‼︎‼︎

 

「ピカチュー‼︎“でんきショック”だ‼︎‼︎」

「ピカッ⁉︎」

 

ピカチューが少し驚いた表情をするが、すぐにゴルバットの方に視線を向け歯を食いしばりながら体を強張らせる。

 

「ピカッチュー‼︎‼︎」

 

ピカチューの掛け声が洞窟内に響き渡る。

 

「・・・・・?」

 

しかし電撃の光が洞窟内を満たす事はなかった。

 

ーダメか⁉︎

 

「ッ・・・チャァー‼︎‼︎‼︎」

 

ピカチューは叫ぶと同時に再びまた走り出す、先程よりもスピードを上げ横の壁を地面に引き寄せようとする重力に逆らって敵に近づいていく。

 

敵の陣地に近づくという行為は普通トレーナーの指示に従ってするものだ、敵に近づくという事はそれだけ敵の攻撃が当たるまでの時間が短くなるからだ。

 

勝手な行動ととれるそれを見たレッドは少々目を見開いた。

 

「ピカチュー⁉︎」

 

「チャー‼︎‼︎」

 

ピカチューが再び体を強張らせ電撃を放つ動作を繰り出した。

 

ー何をしようとしてるんだ⁉︎

 

レッドよりもピカチュー自身の方が自分が電気を放つ事が出来ないのを分かっているはずだ。

この状況下で自分の力では役に立つ事が出来ないと思って混乱したのか、しかし

 

 

ー目は理性を保っている。

 

 

長い間会う事はなかったピカチューだが、それでも一緒に過ごしてきた日々はレッドにとって一番の宝物だったため、ピカチューの目や仕草を見ただけで状態を判断する事が出来た。

 

スッとピカチューがレッドに視線を向ける。

 

「‼︎」

 

違う、ピカチューが勝手に敵に近づいたのは敵を倒すためじゃない・・・・

 

 

 

俺に何かを伝えようとしているのか・・‼︎

 

 

 

何だ?何だ?何を伝えようとしているんだ?

考えろ、ピカチューがしている行動の真意を考えろ、俺は電気技の指示を出しだけど、ピカチューは撃てなかった、そしたらいきなり自分で敵に近づいて・・・近づいて?

 

 

「ピカッ‼︎」

 

ピカチューはまた走り出し、部屋の隅っこにまでくると再び電撃を放つ構えを見せる。

 

 

 

 

違う、ピカチューは敵に近づいたんじゃない・・・

 

 

俺から離れたんだ

 

 

 

 

事実現在のピカチューとレッドの距離はレッドとロケット団達の距離よりも離れていた。

レッドが位置しているのは広いドーム状の部屋の1階と2階を繋ぐ階段を上がったあたり、つまりほぼ壁際に位置しており、それに対してピカチューのいるのはレッドの位置から真っ直ぐ直線を引いた所にある壁際だ。

 

 

『敵に近づいたんではなくレッドから離れた』

 

そう捉えるとピカチューの行動の意図がはっきりと見えてきた。

 

 

ーなぜ俺から離れる必要があった?

 

俺を逃がすため・・・?いやそうだとしたらわざわざ俺達の目指している出口の近くで敵を引きつける筈が無い。

 

 

ーじゃあ何で?

 

危険だから?俺に被害がこうむるのを防ぐため・・・?

 

 

ー何で危険なの?どうして俺に被害がこうむるの?ピカチューは電撃を放つ事が出来ないのに

 

その認識が間違っていたのかもしれない。

 

 

ーどういうこと?

 

ピカチューは電撃を放てないっていう俺の認識は間違っていたのかもしれない。

ピカチューは本当は電撃を放てるんじゃないか・・・・⁉︎

 

ーじゃあ何で出さないの?被害がこうむるっていってもこんなに距離があれば大丈夫だよね、何で撃たない?

 

大丈夫じゃないんだよ。

ピカチューは毎回離れて打つふりをしてまた離れてる、自分の放つ電撃の範囲を身体の中で計算しているんだ。

 

それに大丈夫って・・・・忘れてないよな?

 

 

俺のピカチューは普通のピカチュウじゃないんだ。

 

「っ‼︎‼︎」

 

レッドはピカチューと逆方向に走り出す、そこに未だに痺れが取れずに倒れているブルーを抱いて、登ってきた階段を降りて1階に向かう。

 

「何やってるの⁉︎ピカチューを見捨てる気⁉︎⁉︎」

 

急に戦っているピカチューを置いて逃げるレッドにブルーが声を荒げていう。

 

「俺達が近くにいるとあいつは電撃を放てない‼︎‼︎」

 

それにレッドは力強く答える。

まるで自分の中の何かを押さえつけるかのように。

 

「どんだけ離れてると思っているのよ‼︎‼︎そんなに離れるなきゃいけない程のエネルギーをあの小さな身体が持っている訳がないでしょう‼︎‼︎‼︎」

 

ブルーの叫びに一瞬グッとレッドは歯を食いしばり

 

「俺のピカチューは普通のピカチュウじゃないんだよ‼︎‼︎身体の中にピカチュウの能力を高める石『でんきだま』を体内に取り込んでいるんだ。能力値も普通のピカチュウじゃありえない程の能力を持っているんだよ‼︎‼︎」

 

ブルーよりも大きくはっきりとした声で何かを振り払うかのように声を上げた。

 

 

「だとしても・・・‼︎

・・・・怖くないの?」

 

 

その言葉にうっと少しレッドの表情が硬くなる。

 

ーしかし

 

「怖いよ・・・だけど俺は信じてる‼︎」

 

今、自分の中で最も強い思いをレッドは口にした、心配するブルーに、そして未だに迷っている自分自身に対して

 

「俺の中のピカチューとの楽しかった宝物のような思い出を‼︎」

 

「固く結んだ絆を‼︎」

 

「そう思っている俺自身を‼︎」

 

「何より・・・・」

 

「確実に命を落とす『でんきだま』を体内に取り込む事に成功した‼︎不可能を可能にしたピカチューの力を‼︎‼︎

ピカチュー自身を信じてる‼︎‼︎‼︎」

 

レッドはスッとブルーを抱えたまま振り返り

 

 

 

「ピカチュー‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

相棒の名を叫んだ。

 

 

「ピッカァァァァァ・・・・」

 

 

相棒はそれに対して

 

 

微笑みと

 

 

 

「チュゥゥゥゥゥゥゥッ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

目の眩むような激しく大きな電流で返した。

 

 

 

さっきのエレブーの“かみなり”なんて足元にも及ばないほど大きく激しくスパークする電撃がこの部屋全体に流れ出す。

地面が電気を吸収仕切るのを待たずに先へ先へと進んでいく電気の流れはロケット団のポケモン達を次々と戦闘不能にしていく。

 

電気タイプの技を無効化する地面タイプを持つイワークでさえ電圧による熱によってダメージを受け身動きできない状態にし、部屋に散らばった石や岩が電気によって一時的に磁石と化しイワークに襲い掛かり他のポケモン達と同じように戦闘不能にする。

 

「すげぇ・・・・」

 

 

レッドがスパークによる光で目を奪われて再び目を開けた時にはロケット団のポケモン8割以上が戦闘不能の状態で倒れていた。

 

「ピカチューッ‼︎」

 

ピカチューが見たかと言っているのかロケット団を睨みつける、ロケット団は小さな体の中に秘められた力を目の当たりにしたばっかりに思わずひるむ

 

そこをレッドは見逃さなかった

 

「ピカチュー‼︎“でんきショック”‼︎」

「ピカッチャー‼︎‼︎‼︎」

 

レッドの指示を聞くとピカチューは体内の『でんきだま』によって異常に強化された素早さを生かし敵陣営の懐に飛び込み、先程の爆発的な威力のものではないがそれでも普通の“でんきショック”とは思えない威力の電撃を放つ。

 

「よし・・・‼︎」

 

レッドはブルーを抱えたまま片方の手をグッと握りしめる、的を倒したことでもない、ピカチューの技の威力でもない・・・

 

ピカチューがでんき技をコントロール出来たことにガッツポーズをした。

 

 

いける・・・‼︎いける・・・‼︎

これが俺の・・・

 

相棒の力だ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎

 

「ピカチュー‼︎“ボルテッカー”‼︎‼︎‼︎」

 

レッドの指示とともにピカチューは走り出す、するといきなり雷で出来た巨大な黄金の球体をピカチューが纏い、ロケット団陣営に襲いかかる。

ピカッと周囲が真っ白になったと同時に大きな爆発音がレッド達の耳に届く。

 

「なんて威力・・・⁉︎⁉︎コントロールされているおかげで私達の所にはいかなかったけど最初の電撃の数倍はあるわよ⁉︎⁉︎⁉︎威力。」

 

「俺もビックリだよ

ピカチューは力量(レベル)はそんなに高くないからここまで威力のある技を覚えてるとは思わなかった・・・」

 

爆発による土煙が止みブルーを基調抱えたままレッドが近付くとそこには全て戦闘不能状態となっているロケット団のポケモンとポケモンと一緒に気絶している全てのロケット団員が転がっていた。

 

そこに立っているのは一匹のピカチュウ

 

「ピカチュー‼︎」

 

レッドが駆け寄る

 

「ピカ・・・ピィッ⁉︎⁉︎⁉︎」

 

レッドが自分を呼ぶ声に反応した瞬間ピカチューの体に大量の電気が流れ始めた。

 

「ピカチュー⁉︎⁉︎」

 

レッドが声をかけたのも束の間ピカチューは身体中が自分の電熱で火傷をした状態で地面に倒れた。

 

「これは・・・」

「技の反動よ・・・早くモンスターボールに戻してこの山を出ましょ‼︎」

 

「っ、あぁ」

 

 

「ピッ‼︎」

 

 

「⁉︎」

 

レッドがピカチューのモンスターボールを取り出した時、不意にレッドのジーパンが引っ張っられている違和感に気づきその方向に顔を向けるとそこには

 

 

 

 

「ピッピ・・・⁉︎」

 

 

 

ピンク色の体に茶色い耳、頭と尻尾がとぐろを巻いているその姿はおつきみやまのシンボルとも言われている妖精ポケモンそのものだった。

 

「ついてこいって言ってるのか?」

「ピッ」

 

「よし」

「レッド、私もう大丈夫よ、降ろして頂戴」

「ん、あぁ」

 

レッドがブルーを降ろす、ブルーは少しストレッチをするとスッとレッドを見つめてクイッとピカチューの方に目をやるようにジェスチャーを繰り出した。

 

 

俺が首をひねるとピッピがピカチューに小さな黄色い欠片を飲ませていた。

 

「あれは・・・『げんきのかけら』」

 

ポケモンを戦闘不能状態から回復させる事の出来る道具の中でもとても高価なものだ

 

「ピカチュー‼︎」

 

体が少し煌いた後ピカチューはさっきのダメージが何だったのかと思う程元気になっていた。

 

「ピッピッ‼︎」

 

ピッピがこの部屋の1つの壁を指差し、そこに向かう、ピッピはその壁を叩き話しかける。

 

「壁の向こうに誰かいるのかしら?」

 

「壊してみるか?」

 

「ピカチュピカピカチューッ⁉︎⁉︎⁉︎」

 

「違うみたいよ」

 

「そうですか。」

 

するとゴゴゴッという音を立ててその壁が横にスライドされた。

そこから現れたのは2匹のピッピ。

 

「隠し通路・・・!」

 

俺がまるでフィクションの世界にいるような感覚に少し高揚していると、隣でブルーがカツカツと歩いてその通路を進んでいく。

少しは興奮したらどうなんだこいつは・・・

少し心の中で悪態をつきながら俺もブルーの後を追って通路を進む。

 

「いえ、違うわね、これは・・・」

 

フッと笑みを浮かべながら目を細めてこちらを見るブルーに思わず目を見開いてしまう。

 

 

「ピッピの住処よ」

 

 

次に俺が目にしたものは巨大な純白の岩、ところどころが光を受けてキラキラと輝いている、そしてその周りにいるのはピッピとその進化系ピクシーの群れ。

みんなで純白の輝く鉱石を囲み踊りを踊っている、

まるで何か1つの脅威が過ぎ去ったみたいに

 

「おつきみやまでも滅多に見られないて言われてたのはこんな所にいたからか。」

 

「誰にも言っちゃダメよ。」

 

「当たり前さ、こいつらにはこいつらの生活がある。脅かすような真似するわけないだろ?」

 

「そうね。」

 

「ピッピー‼︎」

 

「‼︎・・・・これは・・・‼︎」

 

俺とブルーが喋っていると巨大な純白の岩の頂上から綺麗なオーロラが現れた。

オーロラはゆらゆらと暫く空を舞うとスッーと俺達の方へ降りてきて小さく纏まり俺とブルーの周囲をくるくると回り出す。

 

「ポケモン・・・?」

 

俺はポケモン図鑑を取り出しオーロラにかざすも反応はない。

 

「不思議な岩・・・月の石、でもないわよね月の石はグレーに輝く鉱石、純白ではないわ。」

 

オーロラは今度はスゥーとピッピやピクシー達の元へと行きその姿を大きく広げてピッピや、ピクシー達と踊りだす。

 

 

 

 

「チャッチャッチャ♪」

「カゲッカゲッカッ♪」

「ニッドニッドニッドッド♪」

「キッキッキキキッウキャー♪」

 

「ソッウフッシソウソウソー♪」

「ニッドニッドニッドッド♪」

「コンコンコンコンッココン♪」

 

暫くすると戦闘不能状態に陥っていたポケモン達もある程度動けるようになり、そこにピッピ達が体力を回復する為にオレンのみやオボンのみをくれたおかげで完全に回復し、今ではピッピやピクシー、オーロラと一緒に踊っている。

 

「あの戦いが嘘みたいにみんな元気になりやがって。」

 

あまりのはしゃぎっぷりに思わず悪態を吐く俺、混ざって踊りたい気持ちもあるが今は眺めていたい気持ちの方が強い。

 

「ピカチューも溶け込めてるみたいだしよかったじゃない。

それとも何?久しぶりに出てきてくれた相棒がとられちゃって寂しいの?」

 

「馬鹿いうな! そんな訳ないだろ、逆に望んでたくらいさ、やっと観れたんだこの景色を・・・俺のポケモン達みんながこうやって元気でいる姿を」

 

そうだよ、だから眺めていたい気持ちの方が強いんだよ、わかる?、今の俺の気持ちは海で水着の女の子達を眺めている時よりも清々しい気持ちで満たされているんだ‼︎‼︎・・・・・例えが悪くてあんまりそんな風に思えないかもしれないけどぉ‼︎‼︎

 

「あら?まるであなたの旅の目的が達成された言い方じゃない?このままマサラに帰る?」

 

「・・・からかうなよ

やっと始まるのさ、みんなで歩んでいく冒険のな」

 

「ふふっ」

 

「・・・んだよぉ」

 

「なーんでもない」

 

こいつ・・・いつも俺の事からかいやがるからなぁ・・・そうだぁ

 

「あのさブルー」

 

「何?」

 

今だ‼︎‼︎言え‼︎‼︎‼︎‼︎

 

「お前の綺麗な表情、俺、結構好きだよ」

 

「・・・・・・はぁ⁉︎⁉︎⁉︎」////

 

レッドの煽てる攻撃‼︎効果は抜群だ‼︎‼︎‼︎

ブルーはやけどをおった。

 

ブルーはひるんで動けない‼︎

 

「そういう照れた顔も好きだな」

 

更にレッドの煽てる攻撃‼︎

 

「だから何言って・・・」////

 

またもや効果は抜群だ‼︎‼︎‼︎

 

 

「冗談だよぉぉぉぉん‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

「・・・・・・・・は?」

 

通信エラー通信エラー、相手の通信が切断されました。

 

 

「ブルーってさ俺の事毎回からかって面白がるだろう?だから仕返ししたのさ、そしてたらマジで照れてやがんの!あぁ、すっきりしたぁ・・・これでお互「・・・・・・・・・・・」いぃ・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「あ、あの・・・前にも言ったと思いますけど・・・・あの・・・えぇと・・・放送事故起こしてます、姐さん」

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・死ね」

 

 

「ごめんなさぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁああああい⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」

 

 

 

ついでにレッドの意識も切断されました。

 



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第14話 ブルーの本音

 

「うぅん?・・・あれ、此処は・・・」

 

オーロラとポケモン達の踊りを見ながらいつも俺をからかって楽しんでいるブルーに仕返しをして意識を切断された俺は現在ブルーの手持ちのイワークの頭の角に縄で縛り付けられて移動していた。

 

「あら?起きたようね。」

「ひいっ⁉︎」

 

突然ブルーという名の悪魔に声をかけられて思わず情けない声を上げてしまう俺、いや、でも仕方ない。だって悪魔だもん、普通の悪魔よりも悪魔だもんこいつ

 

「何か失礼な事考えてない?」

 

流石悪魔‼︎人の思考が読めるんだね‼︎

 

「め、滅相もございません‼︎そのようなこと悪魔に言えるわけが・・・「悪魔?」あ・・・・」

 

墓穴を掘ったみたいです、だってなんかブルーから黒いオーラが溢れ出てるもん

 

「何?またからかってるの・・・ふふふふ」

 

「いやいやいや⁉︎俺は心の中で悪魔悪魔悪態をついていただけであって‼︎決して口に出すつもりはなかったんですはい‼︎‼︎」

 

「へぇ〜心の中で悪魔悪魔言ってたんだ。」

 

・・・あ、詰んだ

 

「ふふふふふふふふふふふふ」

 

あれ、おかしいな・・・ブルーの背後にいるのが悪魔じゃない・・・・

 

「イワーク、レッドを振り落として『いわおとし』‼︎」

 

 

ドゴォォシャァァァッ‼︎‼︎‼︎

 

 

魔王・・・・だった・・・・・

 

 

「さぁ、バカは意識がどこかに行ったみたいだし、さっさとこの山を抜けましょ」

 

無残に岩の下敷きとなり意識を失ったレッドをイワークの頭の角に再び縛り付け、先に進んでいく。

 

レッドがブルーの攻撃で意識を切断された後、ポケモン達はレッドが意識を手放した理由を知っていたらしく、何事もなかったかのように自然に自身のモンスターボールの中に戻っていき、ダンスパーティーは終了、最後にピクシーから珍しい石『つきのいし』を受け取るとブルーはレッドを今のような状態にしてピッピ達の住処を後にした。

 

気絶していたロケット団の姿は見えず恐らく撤退したのだろう。

おつきみやまのポケモン達もその事を感じ取ったのかいつものように姿を現したまにブルーにバトルを挑んでくる。

 

「やっと活気を取り戻し始めた。・・・・それもこれも・・・」

 

スッとブルーはイワークの角に縛り付けられて白目をむいて気を失っているレッドを見つめる。

 

ロケット団との戦闘中レッドはブルーとのトレーナーとしての実力と精神の差に悔やむ瞬間があったがそれはブルーにも同じ事だった。

 

ー私自身ポケモン達との絆は深いと思っているけど、彼とポケモン達には私とポケモン達の絆よりも深いそれを感じる。

 

ー特にレッドとピカチュー、あの短時間の戦闘だけでも他のポケモン達よりも特別なそれが感じられた。

能力についても元々レッドの話からただのピカチュウではないと思っていたけど、まさかこれ程とは・・・・

 

 

ブルーは少し上を見上げて息を大きく吸う

 

 

ー今、レッドとバトルをしても勝てる気がしない

 

『最初のトレーナーの技術なんて最初のスタート切り出しが良いか悪いだけで最後の結果には関係ない』

 

ニビジムでタケシに言われた事が未だにブルーの胸に突き刺さり、ブルーの心に毒のようにジワジワとダメージを与える。ダメージと同時に自分とレッド、どちらが先のステージに進み、その先の栄光を掴み取るにふさわしいか?という自分の中で答えの分かっている痛い質問がいつも突き刺さってくる。

 

それでも自分よりトレーナーとしての技術で劣っているレッドを見下す自分がいる、自分の事を考え見ず行動するお人好しのレッドを馬鹿にしている自分がいる。

 

いや、()()の間違いか、もう自分はレッドには敵わない。

 

レッドの弱さを拠り所にして愉悦に浸る事は出来なくなった。

自分でも馬鹿みたいだ。

見下していた人に抜かされ苦しめられるなんて・・・滑稽じゃないか。自業自得じゃないか。

そんな人間が次のステージへ進むにふさわしいか?栄光を掴むにふさわしいか?

言わなくても、考えなくても答えは出てる。

 

ーもう、限界ね

 

自身以上の原石が徐々に徐々に研がれていく様子を見る事に正直ブルーは耐えられそうになかった。

 

ー図鑑を手に入れたら、この気持ちから解放される。

 

 

 

ーレッドの事、別に嫌いじゃないのよ。

 

 

 

ーだけど、ごめんね

 

 

 

 

 

ー私が弱くてー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブルーは図鑑を貰ったらレッドと別れるつもりだ。

 

 

 

 

 

 

ニビジム

 

挑戦者のいない静かなフィールドで1つの電話が鳴り響く、すると別室から汗だくでやってきたジムリーダータケシがやってくる

 

「なんだこんな時間に」

 

ーまたポケモン協会からの別地方からやってきたお偉いさんの相手を任されるのか、俺はジムリーダーであって偉い人の相手をする人じゃないんだぞ。

 

ポケモン協会はカントージムリーダーの中で礼儀正しく、我慢強く、何事にも冷静に対処が出来るニビジムのタケシとタマムシジムのエリカによく別地方からやってきた名家の人々などの相手をよく頼んでいた。

『ジムリーダー』が自分達の相手をするという待遇を行う事でポケモン協会は名家に媚びを売っているのだ。

 

他のジムリーダーは色々と問題があるためにこの2人は結構な頻度で呼び出されており2人とも金持ちの自慢話にうんざりしているのだ。

 

確か以前にポケモン協会の会長がシンオウ地方のウラヤマ?氏が観光に来るとかなんとか言っていた気がする。ウラヤマって名前からして自慢話が多そうだ。

 

スッとある程度の予想はつけてるが一応電話主を確認してみる。

 

「ん?オーキド博士⁉︎」

 

予想外の人からの電話に少し驚きながらも受話器を手に取る。

 

「はい、こちらタケシですが。」

『おう、タケシくんお久しぶりじゃの!』

 

この世界的権威のある博士とは思えぬ明るく少しおバカっぽい声は間違いなくオーキド博士の声だ。

 

「オーキド博士が僕に電話なんて珍しいですね、何か要件でも・・」

『あー大丈夫じゃ、協会が依頼するような媚びを売るような頼みはワシはせんよ。ウラヤマ氏の件ならエリカくんに任すと会長が以前電話でぼやいとったわ。』

 

どうやらウラヤマ氏という俺の記憶は間違ってはいないようだ。

・・・・エリカ、ドンマイ‼︎

 

『実は孫から連絡があっての、おつきみやまの化石を狙ってロケット団の奴等が山を占拠しとるみたいでの、化石を発見した人物を拉致しとるみたいじゃ、今すぐ助けに行ってくれんかの。』

 

「おつきみやまに⁉︎」

 

その瞬間タケシの頭によぎったのは最近自分を倒し、ジムバッチを手に入れ2人の子供のためにニビジムの施設を借りにわざわざ戻ってきた心優しい男女のトレーナーの姿だった。順調に旅を進めればおそらく今頃おつきみやまにいる頃だろう。

 

ーロケット団と戦闘になっているかもしれない・・・

いや、正義感の強いレッドの事だおそらく戦闘になっているだろう。

ブルーが止めにかかったとしても止められないだろう

正直、今の実力でロケット団相手に戦うのは危険すぎる・・・

 

「おつきみやまの管理は俺の仕事です、これは俺のミス、今すぐ行きます。」

 

タケシにはニビシティ全体の災厄の対処と博物館の管理、そしておつきみやまの管理が言い渡されている。

最近、さっき言ったようなポケモン協会の頼みの他に、ポケモンリーグに向けての会議や新人トレーナーへの指導、そして今回は特別例年に見えぬ程ジムに挑戦するトレーナーが増えたことにより、おつきみやまにまで気がまわらなかったのだ。

 

タケシはスッとモンスターボールをジム戦用ボールケースではなく別の、1つのベルトと共に並べられた6つのボールを取り出した、この6つのモンスターボールに入ってるポケモンは

 

タケシのベストメンバーだ。

 

「行くぞ!」

 

出てきたのは紫色の身体に黄色の目、細いかガッチリとしている羽を持ったこうもりポケモン『クロバット』

 

「ノイズ、おつきみやまへ飛んでくれ‼︎」

 

タケシはクロバット・ニックネーム『ノイズ』の下腹部にある腕につかまり、クロバットと共におつきみやまへと飛び立った

 

 

 

 

 

ーおつきみやまー

 

 

「ピカチュー『でんきショック』‼︎」

 

「フシくん『つるのむち』‼︎」

 

黄色い電光と緑の鞭が周囲のズバットとイシツブテ達に命中する。

 

「こいつら今までロケット団に怯えて暴れられなかったストレス一気に解放し過ぎだろ⁉︎大量発生かよ⁉︎」

 

現在、レッド達は大量のイシツブテとズバットに囲まれていた。

ピカチューがズバット、フシくんがイシツブテを相手にして戦っている。

 

「何ビビってるのよ、男でしょ⁉︎」

 

「どこかの魔王に気絶させられて目が覚めたらこの状況だったら誰だってビックリするわ⁉︎⁉︎ビビるわ⁉︎⁉︎

はじめてだよ⁉︎気絶して目覚めた後にもう一度気絶しようとしたのは⁉︎⁉︎」

 

レッドは大量のズバットの羽音で目を覚まし、その瞬間攻撃を受けて縄を脱し、そのまま見事に着地するも、この状況を見た瞬間、テンパり『イワーク、俺の意識を『いわおとし』で切断してくれ』と頼みだすという奇行を行っていた。

 

「いいから集中しなさい‼︎」

 

バッと背後からイシツブテ達が襲いかかる。

 

「ドドラ‼︎」

「ニドちゃん‼︎」

 

 

「「にどげり‼︎‼︎」」

 

 

レッドとブルーが同時にボールを繰り出し指示を飛ばす。

そのトレーナー同士のコンビネーションにつられるように繰り出されたドドラとニドちゃんはお互い同時にイシツブテに技を命中させる。

 

「イシツブテはドドラとニドちゃん本人に任せよう。」

 

イシツブテの中にはレッドがニビジム戦でタケシにしてやられた特性『がんじょう』を持つ個体がいる。

この大勢を相手にする中、1匹相手に時間をかけてはいられない。

ドドラとニドちゃんの『にどげり』は瞬時に2発相手に攻撃する技なので『がんじょう』を無効化する事が可能だ。

 

そして2匹の相性の良さを見た上でレッドは2匹にはトレーナーの指示なく戦闘をしてもらおうと考えた。

 

「ならズバットは‼︎」

「こいつがいるだろ‼︎」

 

「ピカッチュー‼︎‼︎」

 

バチバチバチッとピカチューの『でんきショック』がズバットの軍団を一気に感電させ戦闘不能に陥らせる。

 

「・・・ホントえげつい・・・・。」

 

ズバットを倒した後に放った黄色い悪魔の黒い笑みを見てブルーはそう評した。

 

「まぁ、今は敵じゃない分頼もしいか・・・フシくん『つるのむち』で誘導して」

 

「誘導?」

 

ーまたイワーク奇襲作戦か・・・いや、イワークはモンスターボールに戻したっきり出してない・・・そうか、でも・・・

 

「レッドもヒッポを出して」

「え、あぁいけっ‼︎ヒッポ‼︎」

 

ポンッとヒッポがボールから繰り出される時には既にフシくんが自らのツルで、ピカチューは電撃でドドラとニドちゃんがこぼしたイシツブテや、ズバットを一箇所に集めていた。

 

「トレーナーと違って気がきく頭のいいポケモンね、ピカチューは」

 

「何だよ、俺がバカって言いたいのか?わかってるぞ、一箇所に集めてフシくんの『ねむりごな』でみんな眠らすんだろ?」

 

その瞬間ブルーの目がスゥーッと細くなる

 

「・・・・ヒッポを出すように言った意味は?」

「知らん」

 

「私はコンちゃんをこの後に出すんだけど」

「・・・炎タイプの攻撃はイシツブテには効果今はひとつだぞ。」

 

「・・・ちなみにコンちゃんの特性はご存知で?」

「『もらいび』、炎タイプの攻撃を無効にする特性だろ?」

「・・・・・・・・・」

 

あれ?ブルーが完全に俺を軽蔑してる・・・

 

「あんた、本当にバカよね。」

「え⁉︎」

 

「コンちゃん‼︎」

 

ポンッとコンちゃんが元気よく飛び出てくる。

 

その瞬間ー

 

 

コオッ‼︎とコンちゃんの周囲が明るくなり洞窟内を照らす。

 

「あれ・・・コレは・・・『ひでり』⁉︎」

 

特性『ひでり』

出てきてから暫くの間天候を『日差しが強い』状態にする天候を操る特性だ。

太陽の日差しがそのポケモンを中心として広範囲に強くなる特性なのだが、それが光の届かない洞窟内にまで作用するのは謎に包まれている。

ていうより天候を変える技や特性については全てその理由について何一つ解明されていない。ひとつ言えるのがこれは『人間には理解できないポケモンの神秘の力』であるという事だ。

 

そんな事より俺にとって問題なのは

 

「気づかなかった・・・‼︎‼︎」

 

「バカレッド」

「そこ繋げるのやめてもらえる⁉︎なんかバカな戦隊ヒーローのレッドみたいじゃないか⁉︎」

 

「そうよその中で最もバカなレッドよ良かったわね。」

「全然良かないよ‼︎」

 

「ちなみにそんなバカレッドのあまりのバカさに呆れて他のみんなはヒーロー止めちゃったから戦隊ヒーローと言いつつ実質あんた1人よ」

「設定まで凝ってんなこの野郎⁉︎⁉︎

泣くよ⁉︎子供のかんしゃくくらい泣きわめくよ⁉︎、引くくらい泣くよ⁉︎もういいよね⁉︎」

 

「コンちゃん、ヒッポお願いね。」

「スルーかよ⁉︎⁉︎⁉︎」

 

『日差しが強い』状態の特徴は2つ、炎タイプの技の威力の上昇と水タイプの技の威力の減少。

つまり炎タイプのポケモンにとっては弱点である水タイプのポケモンに有利な戦闘を可能にする事ができる。

 

今回のブルーの目的はつまり

 

「『ニトロチャージ』‼︎」

「『はじけるほのお』‼︎」

 

炎技による一掃‼︎

 

威力の上がった炎タイプの技はブルーの計画通り上手くいき、『がんじょう』で耐えた数匹のイシツブテもピカチューとフシくんの前に撃沈。

 

見事ズバットとイシツブテ達の群れを撃破した

 

「ポケモン達に殆どダメージないようだし上手くいったわね。」

「・・・俺の心は大ダメージを受けたけどね・・・・。」

 

コンちゃんの特性に気づかなかった事は結構痛いよ・・・コレ、

ブルーにバカにされても文句言えねぇよ・・・コレ

 

でもまぁ・・・

 

「フシくんの『ねむりごな』で全然眠らせるっていう作戦じゃなくてよかったよ。」

 

スッと慈愛の目を戦闘不能状態で倒れているポケモン達に向けるレッドの姿にブルーの心は嫌な意味で高鳴った。

 

「どうして?」

 

ー何で聞き返したの、自分を追い込むだけなのに

嫌な予感がする嫌な予感がする嫌な予感がする。

 

「せっかくロケット団がいなくなって暴れられるようになったのに、眠らして戦闘から逃げたらこいつら可哀想だろ?今回は正々堂々バトルして全員倒したかったんだよ。だから良かった。」

 

その言葉を聞いた瞬間ブルーの中で何かが切れた

 

「・・・私は違う。」

 

「?」

 

「私は()()ストレスを解消したかっただけ‼︎、眠らして逃げるんじゃない‼︎とにかく倒したかった‼︎、倒して自分の強さに浸りたかったの‼︎」

 

ブルーの大声が響く

 

「お?、おい⁉︎どうした⁉︎⁉︎」

 

「レッドと違ってポケモン達の事なんか一切考えてなかった‼︎私のため‼︎私のためだけにこの作戦を実行したの‼︎レッドに強制したの‼︎‼︎」

 

今まで見た事のない、ブルーの取り乱し方にレッドは目を見開く。

 

 

「ちょっとブルー⁉︎落ち着けって⁉︎」

 

「落ち着けないわよ‼︎

私よりもトレーナーとしての技術は劣っているのに私よりも優れているものを・・トレーナーの実力以上に大事なものをレッドはいっぱい持ってる‼︎それを見ると・・・私が惨めで小さくて・・・自分が嫌いになりそうなのよ‼︎‼︎‼︎」

 

「ブルーは惨めでも小さくもな「笑わせないでよ‼︎‼︎」っ‼︎」

 

止められない、レッドは自分が何を言ってもブルーのこの状態を止めれる気がしなかった。

 

「本当の事、教えてあげようか?私ね、レッドとゴローニャが戦っている時頭の隅でずっとレッドを囮にして逃げることを考えてたの‼︎必死に戦ってるレッドの姿を見ても私は自分のことしか考えてなかったのよ‼︎‼︎」

 

「トレーナーズスクールの子達の時だってルールを破った彼らのためにわざわざニビにまで戻るレッドをお人好しって本気で馬鹿にしてた‼︎‼︎」

 

「今回の件もそう‼︎レッドのピカチューの強さを見て・・・まともにバトルしたら勝てないって、今までレッドを見下してきたのにそれが出来なくなったから・・・‼︎だから私はこのバトルでそのストレスをぶつけるために戦ったの‼︎‼︎」

 

「ズバットやイシツブテの事なんか考えてない‼︎私のポケモンがきず」

 

 

パァン‼︎‼︎‼︎

 

 

「‼︎」

 

ブルーが言葉を口にした時レッドの中でも何かが切れた、それと同時に手が出ていた、ブルーの顔をはたいていた。

 

「お前のポケモン達の前でそれは言っちゃいけないだろ‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

レッドとブルーの周囲にはまだフシくんとコンちゃん、ニドちゃんそしてピカチュー、ヒッポ、ドドラがいた。

 

「っ・・・‼︎‼︎」

 

唇を噛み締めたブルーはダッと走り出す

レッドは追わない、ブルーをはたいた体勢のまま動かない。

ポケモン達も2人の空気に戸惑っている

 

 

「何が惨めだ何が小さいだ・・・俺はそこまで立派でも大きくもねぇよ・・・」

 

ブルーをはたいた手を自分の目の前に持ってくる

 

 

 

 

「そんな奴だったら・・・女に手なんか出すかよ・・・・‼︎‼︎」

 

 

 

 

レッドはジンジンと痛む手をギュッと握りブルーを追いかけた。

 




RED
見つけたポケモン 31
捕まえたポケモン 18

手持ちのポケモン
ピカチュー(ピカチュウ♂)Lv.6
やんちゃな性格 物音に敏感

でんきショック
フラッシュ
なきごえ
しっぽをふる
など

ヒッポ(ヒトカゲ♂)Lv.15
控えめな性格 悪戯が好き

ニトロチャージ
ひのこ
ひっかく
えんまく
など

キーク(マンキー♂)Lv.16
いじっぱりな性格 暴れることが好き

けたぐり
からてチョップ
みだれひっかき
きあいだめ
など

ドドラ(ニドラン♂)Lv.15
無邪気な性格 少しお調子者

ふいうち
にどげり
つつく
どくばり
など


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第15話 三色混合・二色戦闘 赤VS緑

投稿遅くなりました・・・申し訳ございません
そして今回書きたいところまで書いたせいでいつもよりだいぶ長いです・・・あ、だから遅くなったのか・・・・



おつきみやまを抜けた先に待っているのは何か?

という質問に大抵の人はこう言う

 

『ハナダシティ』

 

しかしそれは誤りだ。

 

おつきみやまを抜けた先に待っているのはハナダシティではなく

 

『4番道路』

 

おつきみやまを抜けてきたトレーナー達の最後の関門。

その距離は短く、既にその先にはハナダシティが見えている。

これだけ見ると抜けるのも簡単に思えるかもしれない。

 

しかし、油断するとパーティーを全滅する羽目になる。

 

その原因は4番道路に生息するポケモン達だ。

いや、詳しく言うとアーボの群れだ。

 

アーボ達はおつきみやまで疲労したトレーナーやポケモンを狙って毒攻撃を仕掛けてくる。

ただでさえ疲労しているのに毒状態にされると例え毒状態に行動を縛るような効果がなくてもそのポケモンはまともに行動する事は出来ない。

 

しかし対処法がない訳ではない。

 

アーボは気性が荒いが臆病なポケモンだ、確かに襲われると恐ろしいがおつきみやまを出る際に自信を持って、堂々とした風格をしていれば、アーボは警戒して襲ってくる事はない。

 

今日もアーボの群れはおつきみやまの出口の周囲に身をひそめる。

あるものは出口の真上にで、あるものは出口近くの左右の岩で、そして殆どは出口正面の草木で、獲物が来るのをじっと待つ。

 

 

すると1人の少女が出口から出てきた。

泣いているのか顔を隠しながら走っていく。

その周囲に手持ちのポケモン達はいない

 

弱っている・・・・‼︎

 

 

アーボの口元に笑みがこぼれる。

 

 

さぁ、狩りの始まりだ・・・‼︎‼︎‼︎‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ

 

 

思わず自らの心の内を吐露してしまった。

今まで自分のために戦ってくれたポケモン達に酷い事を言おうとしてしまった。

 

そして何より・・・

 

逃げてしまった。

 

 

 

怖かった、レッドに向けられた怒りが

悔しかった、レッドに怒られた事が

 

 

そして、

 

 

 

嫌だった、ポケモン達に向けられた視線が

 

 

別にポケモン達が冷たい目で自分の事を見ていた訳ではない。

純粋に、取り乱した私を心配する目だ。

 

それが辛かった。

 

自分が酷い事を言おうとした事は理解しているはずだ、ポケモンは人の言葉を理解できる。

レッドの制止があったものの、あそこまで言ってしまったらその制止も意味をなしてないに違いない。

 

そんな自分を心から心配してくれているポケモン達をして見ると、申し訳なくて申し訳なくて・・・・

 

自分のポケモン達だけではない、レッドのポケモンも同じように自分を見つめていた。

 

 

1匹を除いて。

 

 

ピカチューだけは違った、ピカチューだけはスッと達観したような目で自分を見つめていた。

 

ピカチューは気づいてたのかもしれない。

自分がレッドの強さに、才能に嫉妬している事を。

 

今思えばピカチューはずっと見ていたんだ。

レッドのモンスターボールの中で、レッドの事を、そしてそのレッドと一緒に旅をしている自分の事を。

 

だとしたら

 

 

ー本当に大好きなのね、レッドの事が。

 

 

 

それに比べて私はどうだろう

 

 

 

 

そう思った矢先ー

 

 

 

『シャァァァァッ‼︎‼︎‼︎‼︎』

 

 

「⁉︎キャァァァァァァァッ‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

 

無数のアーボの群れがブルーに襲いかかる。

ブルーは思わず叫んでしまうが、すぐにイワークのモンスターボールを手に・・・

 

 

バチッ‼︎‼︎‼︎

「⁉︎」

 

 

アーボの放った“どくばり”がイワークのモンスターボールを撃ち抜く。

しかも運悪く開閉スイッチが撃ち抜かれている。

 

ーこれじゃあ、イワークが出せない!

 

周囲には既に自分に襲いかかっているアーボ達の姿が

 

 

ーあぁ、これは天罰だ。

 

 

 

ーポケモン達の気持ちを裏切った私への

 

 

 

ーポケモン達の思いを拒絶した私への

 

 

 

 

 

ブルーはスッと目を閉じて、アーボの攻撃を待つ。

 

 

 

 

 

「ごめんなさい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「謝る相手が違うだろバカヤロー‼︎」

 

 

 

 

「⁉︎⁉︎」

 

 

その声の主に、いやその声のした方向にブルーは驚き目を見開く。

 

 

そして目の前に

 

 

 

 

無数のアーボ達の牙を己が身体で受け止めるレッドの姿があった。

 

 

「バカッ⁉︎⁉︎」

 

 

アーボの牙に毒があるのは常識、そしてアーボは毒で敵が弱るまで牙を離さないのも常識。

 

「バカで結構‼︎」

 

ブルーの背後からタタタタッと足音が近づいてくる。

 

「コケコッコーってな‼︎ピカチュー‼︎‼︎‼︎」

 

バッとピカチューがレッドに飛びかかる。

 

「俺ごとやれ‼︎“でんきショック”‼︎‼︎」

 

「ピカァッチューッ‼︎‼︎‼︎」

 

黄色い閃光がレッドとレッドに噛み付いているアーボ達を襲う。

 

レッドの細胞の1つ1つが悲鳴をあげる、意識を持っていかれそうなのを歯を食いしばり耐える。

ピカチューは体内に吸収された『でんきだま』によって、異常な強化がされている。

ピカチュー自身、コントロールは出来るがそれは相手を倒す上でのコントロールだ。

ダメージを最小限に抑えるようなコントロールは出来ない。

 

そのためレッドの身体には尋常じゃない痛みが走っている。

 

「シャァッ⁉︎」

 

アーボが電撃に耐え切れずレッドから離れるのを確認するとすぐにピカチューは電撃をやめ、レッドの前まで移動しアーボ達を威嚇する。

するとアーボ達は敵わないと見て一目散に逃げていく。

 

「ふぅっ・・・」

 

「レッド⁉︎⁉︎」

 

レッドがふらっと倒れたのをブルーが受け止める

 

レッドの息は荒く、身体中から汗が出ている。

 

「アーボの毒⁉︎」

 

ブルーは自分のバッグから毒消し作用のある木の実『モモンの実』を取り出すとレッドに食べさせる。

すると呼吸が落ち着き、悪かった顔色も良くなっていくのが目に見えて確認できた。

状態が良くなってきたレッドはブルーに向けてニヤッと笑みを浮かべる。

 

「バカッ⁉︎本当にバカ‼︎‼︎」

 

「バカで結構コケコッコ〜って言っただろ?」

 

「ふざけないでよ‼︎」

 

「ふざけてないよ。」

 

うっ、とブルーが言葉に詰まる。

 

「俺はブルーと違ってバカだからこうやって行動に移すしかないんだ。

さっきブルー言ったよな、自分は俺よりも惨めで小さいって。」

 

コクっとブルーは静かにうなづく。

 

「そんな事ないよ、俺もブルーのトレーナーとしての実力に嫉妬してたし、俺が大きな人間だったらあの時ブルーに手なんかださねぇよ。」

 

「でも私はレッドを見下して「そんなの当たり前じゃん、俺が見上げてるもん」!」

 

「トレーナーの実力でブルーが俺を見下してるのは構わない、実際俺はブルーを見上げてるんだ、ブルーが俺を見るには見下すしか方法はないだろ?」

 

「お人好しだって馬鹿にしたって構わない、

実際俺は馬鹿だから。それに俺は・・・」

 

「人の為に行動できる馬鹿ならそれでいい」

 

 

ー綺麗事。

 

ブルーはそう思った、だけど我慢できなかった、酷いことを言った自分を許そうとしてくれているレッドに、そんな自分を受け入れてくれるレッドに・・我慢できなかった。

 

ブルーの瞳から涙がこぼれる。

 

スッと毒が抜け少しブルーから離れたレッドが両手を広げブルーに差し出した、が、すぐに顔を真っ赤にしてその手を後ろに隠した。

 

 

ー包まれたかった。

 

 

そう思ったブルーはレッドの胸に顔をうずめた、恥ずかしいという感情はなかった、あったのはレッドに包まれたいという思いだけ

 

ブルーがレッドの胸に顔をうずめた瞬間、真っ赤だった顔を更に赤くし、小さく甲高い声を上げたレッドも笑みを浮かべて1度隠した両腕でブルーを包み込む。

 

 

 

トクン、トクン、トクン

ーレッドの鼓動が聞こえる。

 

トクントクン、トクントクン

ー早くなってきた・・・。

 

レッドの顔を覗いてみる。

するとレッドはブルーと目があうと、鼓動が早くなっていた事がバレた事に気付いて頬を赤く染めて目をそらす。

 

ー嬉しい。

 

ブルーは恥ずかしがる事なくそう思った、レッドが自分を1人の女性としてみている事が

 

ブルーの両手が少しづつ上がり、レッドが自分にしているようにレッドを包み込む。

恥ずかしいという感情はなかった、包まれたいという思いよりも今のブルーにあったのは、

 

レッドの温もりをもっと深くもっと長く感じたいという思いだけ。

 

その理由には気づかずに・・・・

 

 

 

 

 

 

マズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイ

ばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれた

 

 

レッドは焦っていた。

 

確かにブルーを1人の女性としてみている事は認める、ナナミさんという好きな人がいながらもそういう目で見てしまう自分がいた事も認める。

 

だけどそれをバレるのは男としてなんというかどうというかとにかく恥ずかしい‼︎

 

ナナミさんと系統は違うがブルーも美人だ、そんな女性が涙を流し、頬を赤く染めながら自分の胸に顔をうずめたらどうなるだろうか?それで無意識に抱きしめてしまったらどうなるだろうか⁇

 

いろんな意味で鼓動が早くなるに決まってる‼︎‼︎

 

こうなって考えている間にも鼓動は早くなる一方だ‼︎

 

だけどこの状態をやめるのも抵抗がある。

 

なんでかって?

 

 

 

 

もったいないだろ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎

 

 

 

 

 

ブルーが珍しくわかる弱さを見せてんだよ⁉︎こんな事滅多にないよ⁉︎おつきみやまでからかい返した時よりもずっと気分がいいよいろんな意味で‼︎‼︎‼︎

 

とにかく‼︎

 

 

この温もりを少しでも長く感じていたいんだよ⁉︎⁉︎⁉︎

 

 

フッーと興奮してきた心を落ち着かせるためにブルーに気づかれないように軽く息をはき、上を見上げる

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

そこにはものすごく冷たい目で俺を見つめるグリーンの姿があったとさ。

 

「・・・・・・・・」スゥー

 

「違うんだ⁉︎グリーン⁉︎誤解だ‼︎誤解‼︎‼︎‼︎」

 

無言で立ち去ろうとするグリーンにレッドがブルーを抱きしめたまま弁解を図る。

 

「ブルーがアーボの群れに襲われてそれを俺が庇って毒を受けて」

「抱き合ったまま言っても説得力がないんだが」

 

バッとお互いに離れるレッドとブルー。

どちらともその顔は赤く染まっている。

 

 

そしてそれを見るグリーンの目は冷たいまま・・・・

 

「何よりそうだとしても抱きしめあう必要はないだろ。」

 

何にも言い返せないような指摘をした。

 

 

「いや!、その、あのぉ〜エェ〜ト・・」

「・・・・・・」

 

レッドはどもり、ブルーはだんまり。

 

「ナナミ姉さんの事が好きなんだと思っていたんだが違うようだな・・・・

一応ナナミ姉さんに報告しておくよ。」

「それは勘弁して下さい⁉︎グリーン様⁉︎⁉︎」

 

レッドは目にも止まらぬ速さで土下座をする、何回も何回も頭を地面に打ちつけたせいで今ではトレードマークとなっている帽子も取れてしまいツンツンのくせ毛が露わになる。

 

「俺は女を取っ替え引っ替えするような奴が殺したいほど嫌いなんだ。姉さんがそんな奴に巻き込まれそうなら絶対に阻止する。」

 

とんでもなく冷たい目にとんでもなく冷たいオーラーをバンバンに放ちながらグリーンはとんでもなく冷たい声でレッドのは身体に言葉という名の槍を突き刺す。

 

「本当に俺とブルーはそんな関係じゃないんだ⁉︎」

 

その言葉にピクッとブルーが反応した事をレッドもグリーンもはたまたブルー自身も気付くことはなかった。

 

「信じられるか。」

 

その言葉に今度はレッドが反応した。

 

「この分からず屋がぁ〜‼︎‼︎‼︎それだからテメェはモテねぇんだよ‼︎‼︎」

 

2回しか会った事のないくせにレッドはグリーンの何を知っているのだろうか?

 

レッドは取れた帽子を乱暴に拾い被り、ビシッとグリーンを指差し叫ぶ

 

「ならポケモンバトルで決着をつけようぜ‼︎‼︎俺が勝ったらナナミさんにこの事は言うな‼︎そして俺とブルーがそういう関係じゃない事を信じろ‼︎‼︎‼︎」

 

後半のレッドのセリフにまたもやブルーが以下省略。

 

「いいだろう・・・」

 

「!」

 

ー驚いたまさか受け入れるとは思わなかった。まぁ、無理やりにでも受け入れさせるつもりだったけど・・・。これを受け入れたっていう事は思ったよりグリーンは俺を怒っていないのではないか?。

 

「ただし」

「なんだよ。」

 

「お前が使うポケモンはあそこにいるヒトカゲ、対して俺が使うのはカメール、一対一のバトルだ。それでいいな」

 

前言撤回、こいつ相当怒ってる。

 

「いや、でもそれは・「さぁ、ナナミ姉さんに報告しに行くか」それでいいです、お願いします。」

 

追記、こいつ相当性格悪い。

 

「ブルー、審判頼む。」

「えぇ。」

「審判は不要だ、完全に決着をつける。」

 

目がマジだよこいつ。

 

「ヒッポ‼︎頼むぞ」

「カゲッ‼︎‼︎」

 

おつきみやまの出口からヒッポが駆け寄ってくる。

それにつられて他のポケモン達も同じように俺とブルーの元に戻ってくる。

・・・ピカチューのやつわざわざおつきみやまの出口にまで戻ってやがった・・・。

 

「ごめんね、みんな。」

 

ブルーが自分のポケモン達に謝っている、それを『気にしなくていいよ』と言っているような仕草をするポケモン達を見ると、頑張らなければいけないなと思った。

 

ブルーとポケモン達との絆を確認したこのイベントが俺との変で勘違いな色恋沙汰という不名誉なイベントにならないために。

 

「絶対に勝つぞ、ヒッポ」

「カゲッ‼︎」

 

(目つきが変わったな・・・)

 

グリーンはレッドの目が変わった事に気づく、そして変わる前にレッドの見ていた少女の方を見る。

 

そこには少女が目に涙を浮かべながらポケモン達とじゃれ合っている姿があった。

 

(違うな、目的が変わったのか。)

 

フッと軽く笑みを浮かべると同時に、2人が抱き合っていた件は勘弁してやろうとグリーンは思った。

 

(だが、それはそれ、バトルはバトルだ。全力で倒してやる。)

 

「行けっ!カメール‼︎」

「カメッ‼︎」

 

「あのゼニガメが進化した姿か。」

 

カメールは水タイプ、炎タイプのヒッポは不利だ。

そしてカメールは進化してパワーアップしているのに対してヒッポはまだ進化していない。

 

これは俺のトレーナーとしての実力が大きく勝敗を左右するぞ・・・‼︎

 

ブルーとグリーンがオーキド博士から貰ったポケモンを進化させてるのに対して俺はまださせれてない時点でその差は明らかなのかもしれない。

 

だけどヒッポにはノーモーションで放てる“ニトロチャージ”がある。グリーンはこれを知らない。

 

だけど進化してるカメールとヒッポじゃ、ステータスの差は明らか、“ニトロチャージ”による素早さの上昇を詰まずに勝てる相手じゃない。

 

勝負の鍵は“ニトロチャージ”を使うタイミング‼︎‼︎

 

「先手必勝‼︎ヒッポ“ひのこ”‼︎」

「カゲッ!」

 

ボゥッと無数の細かい火の粉がカメールを襲う。

 

「カメール“みずでっぽう”」

「カメッ」

 

ボシュッと音を立ててカメールの放った水鉄砲があっという間に火の粉を消火しそのままヒッポに襲いかかる。

 

「まずい⁉︎避けろ‼︎」

 

ヒッポはバッと尻尾を地面に叩きつけた勢いを利用して水鉄砲を避ける。

 

「先手なんだっけ?」

「このヤロー・・・‼︎ヒッポ‼︎」

 

ヒッポは俺の指示を待たずに既に口に何かをためる。

 

「“えんまく”‼︎」

 

黒い煙がヒッポの姿をグリーンとカメールから隠す

 

「先手必勝と言っておきながら逃げ腰だな」

「うっせぇ‼︎“ひのこ”‼︎」

 

煙幕の中から一撃目と同じように火の粉が発射される。

 

「同じ事だ“みずでっぽう”」

 

バシュッと放たれた水流が火の粉を全て打ち消すと思ったが

 

「⁉︎」

 

火の粉の半分が打ち消される前に下に急降下し草むらの一箇所に集中的に当てられそこから火がおこる。

ちょうど火の粉が放たれた位置と被る、

 

「小癪な、そのままヒトカゲごと打ち抜け‼︎“みずでっぽう”‼︎」

「カメッ‼︎」

 

三たび放たれた水流は火を消しそのまま火の粉が出てきたところを煙を払いながら撃ち抜く。

 

しかし

 

「残念ハズレ〜‼︎‼︎」

 

「何⁉︎」

 

煙のはれた場所にはヒッポの姿はなくただの水溜りのみができていた。

 

「カメッ‼︎」

「⁉︎上か‼︎」

 

カメールが指差した方向を見るとヒッポが空高く飛び上がっていた。

 

煙幕から“ひのこ”を放った際に最初に“みずでっぽう”を回避したように長い尻尾をバネのように器用に使って空高くジャンプしていた。

煙幕もそれが気づかれないように横に広くではなく縦に長く放っていた。

 

「放て‼︎“ひっかく”‼︎」

「カゲーッ‼︎‼︎」

 

ヒッポが三たび尻尾を大きく振って勢いをつけてカメールに向かって急降下する。

 

「高く上がりすぎだ‼︎この距離なら間に合う‼︎“みずでっぽう”‼︎」

「っ、」

 

高く飛ぶように指示をしたせいで隙を狙うはずが逆に隙を見せてしまった。

だけど・・・

 

「大丈夫だ。」

 

「カッゲェェェ‼︎」

「!」

 

突然ヒッポの差し出した右爪を中心に風が舞起こりそれがヒッポの爪に集まり長い爪を形成する。

 

更に

 

「スピードが上がっただと⁉︎」

 

突然スピードが上がりだし

 

シュンッ‼︎

 

消えた。

 

「この技は・・・」

 

ブルーが呟いた瞬間

 

 

ズドッ‼︎‼︎‼︎

 

 

「カッ⁉︎」

「なっ⁉︎」

 

攻撃が命中した音と共に一瞬の動揺をみせ“みずでっぽう”を放つタイミングが遅れたカメールの呻き声がグリーンと俺の耳に届く。

 

「ヒッポ‼︎」

「カゲッ‼︎」

 

カメールの方を見るとカメールの背後にはヒッポが既に攻撃を命中させ地面に着地していた。

 

今のは・・・

 

「レッド、今の技“つばめがえし”よ‼︎」

 

「“つばめがえし”・・‼︎」

 

『つばめがえし』

 

目にも留まらぬ速さで攻撃する飛行タイプの物理攻撃、余りの速さにほぼ確実に攻撃が命中すると言われている。

 

「“ひっかく”から派生されて覚えたのか」

グリーンは驚きの声で呟く。

 

 

この技のスピードがあれば“ニトロチャージ”との組み合わせで弱点の水タイプのカメールとでも戦える‼︎

 

 

ーこれがレッドのトレーナーとして技術以上の力

 

このバトルを冷静に見ていたブルーは改めてレッドの、そしてレッドのポケモンの凄さを感じていた。今度は嫉妬の眼差しではなく純粋な尊敬の眼差しで。

 

“えんまく”と指示をする前からヒッポが技の準備をしていた事。

そしてその放ち方もレッドが指示をしなくても感じ取っていた事。

 

“ひのこ”の半分を草むらの一箇所に集中して打つ事も指示なしでレッドの考えを読んでやっている事。

 

そしてレッドがヒッポが新しい技を覚える事を無意識に感じ取り『大丈夫だ。』といった事。

 

確かに詳しい指示をしなくてもポケモンが技を思い通りに出す事だったらそれはブルーにもある。しかしレッドとレッドのポケモン達はそれをほぼ毎回やっているし、その規模が違う。

 

『ポケモンには少なからず人間の考えを感じ取る事ができる。』

 

とオーキド博士が学会で発表した事は有名だがレッド達のやっている事はそれを逸している。

 

まるでお互いが1つになっているのではないかというようなコンビネーション。

 

この世界でそんな芸当ができるのはレッド以外いないと思う。

 

ふふッとブルーが笑みをこぼす。

 

ー最初からこうやってレッドを見とけば自分を追い込む事がなかったのに。

 

ーレッドと比べる事が間違いだったのよ。

 

ポケモン達と1つになるなんて芸当はレッドだからできる事、あれがレッドの個性。

 

ブルーは心の中の雲が全てなくなり、大きな日輪が心の中を明るく照らし出したように感じた

 

 

「ヒッポ‼︎」

 

グオッと再び風の爪を作り出し一瞬にしてスピードMAXとなる、このスピードの0からMAXの切り替えの速さがまるで消えたように見える理由だ。

 

「“つばめがえし”‼︎‼︎」

 

カメールに再び刹那の攻撃が炸裂する。

 

 

 

ように思われた。

 

「“こうそくスピン”」

 

キィン‼︎‼︎

 

「カゲッ⁉︎」

「なっ⁉︎」

 

ヒッポの“つばめがえし”が命中する直前にカメールが自身の甲羅の中に隠れる事によって攻撃をガードし、更に素早く回転する事でガードした後の反動を無に変えた。

 

「突っ込め‼︎」

「メッル‼︎‼︎」

 

ドカッ‼︎‼︎

受け止めた右腕を弾き飛ばしヒッポの体に強烈な体当たりをモロに命中する。

 

「カゲッ⁉︎」

 

「“みずでっぽう”‼︎」

 

ヒッポが高速スピンで空中に飛ばされている最中にカメールは甲羅から身体を出すと強烈な水流を発射しヒッポは高速スピン同様クリティカルヒットしてしまう。

 

「カゲェー⁉︎⁉︎」

「ヒッポ⁉︎‼︎」

 

ヒッポはそのままおつきみやまの出口横の岩に激突そのまま地面に倒れる、カハッと唸りつつも立ち上がるが大ダメージを受けたのは明らかだ。

 

「確かにほぼ避ける事が不可能な“つばめがえし”は苦手なタイプのポケモン相手には有効な技だ。」

 

レッドがヒッポからグリーンへ視線を向ける。

 

「レッド、お前油断しただろ、安心しただろ、甘くてぬるいんだよお前は。」

 

いつものように冷静に響くその声に、レッドは思わずおののいてしまう

 

「避ける事が出来なくても、防御する事が出来ないわけじゃないんだ。そこを見余ったのがお前のトレーナーとしての実力のなさの現れだ。」

 

「っ・・・ヒッポぉぉぉぉぉ‼︎‼︎」

 

「カゲェェェッ‼︎」

 

すさまじい砂煙と共にヒッポが風の爪を纏いながら刹那の攻撃を繰り出す。

“つばめがえし”だ。

 

「言い返せなくなってやけになったか、カメール“こうそくスピン”」

「カメッ‼︎」

 

カメールが刹那の攻撃を受け止めるために甲羅にもぐる、

 

しかし

 

ピタッ‼︎

 

「⁉︎止まった」

 

ヒッポは“つばめがえし”をカメールの手前で中断する、そしてー

 

「“ニトロチャージ”‼︎‼︎」

「カッゲ‼︎」

 

炎を纏い、ノーモーションで繰り出された炎の突撃はカメールに熱によるダメージを与えカメールは思わずその甲羅から身体を出す。

 

「何っ⁉︎」

 

「隙だらけだ‼︎行けっ“つばめがえし”‼︎‼︎」

 

再び風の爪を作り出し放たれた攻撃を避ける術も防御する術もカメールにはなかった。

 

「カッメッ⁉︎」

 

カメールはおつきみやまの出口の反対側の森の木に激突する。

 

「“つばめがえし”を餌に使った・・‼︎」

 

「グリーン、お前油断したろ?安心したろ?甘くてぬるいんだよお前は。」

 

グリーンがカメールからレッドへ視線を向ける

 

「あれ?これどこかの誰かさんが言ってたセリフだな?まあいいやお前、人の事言えねぇんじゃねえの?」

 

「わざわざ挑発しなくても・・・」

 

してやった顔で笑みを浮かべるレッドにブルーは呆れた声を放つ。

 

 

「でも確かに俺は未熟だ‼︎だけどそれはまだまだ成長できる、進化できる証拠だ‼︎」

 

「油断するんだったら集中し続ければいい、甘くてぬるいんだったら、苦くて熱くなればいい‼︎」

 

「俺はポケモン達と一緒に強くなる‼︎」

「カゲッ‼︎」

 

フッとレッドの言葉に笑みを浮かべるグリーン。

 

「そこがぬるいんだよ、お前は」

 

バッとカメールが飛び出すとヒッポに向かって突進してくる。

 

ー“つばめがえし”でいくと“こうそくスピン”で受け止められる可能性がある、ならグリーンに奥の手があったとしても・・・・

 

「“ニトロチャージ”‼︎」

 

ー能力を上げさせて貰えば万々歳だ‼︎

 

ヒッポは炎を纏い猛烈な突進を繰り出す。

 

しかし

 

スルッ

「カゲッ⁉︎」

「なっ⁉︎すり抜けた⁉︎⁉︎」

 

カメールに技が当たった瞬間ヒッポがカメールの身体をすり抜けたのだ。

 

「“みがわり”」

 

「“みがわり”だと⁉︎」

 

“みがわり”は自分の体力を削って暫くの間敵の攻撃を代わりに受けてもらう技だ。

 

「隙だらけだ“こうそくスピン”」

 

「しまっ・・・⁉︎」

 

上にジャンプしていたカメールの本体が上空から滑り台のように高速スピンでヒッポの背後から激突する。

しかも滑り台のように上に上げるように攻撃されたためヒッポが身動きの取れない上空に放り出されてしまった。

 

 

「止めだ“みずでっぽう”‼︎」

「カメッ‼︎‼︎」

 

 

カメールが技を放つ瞬間

 

 

「“えんまく”だ‼︎」

「‼︎、カッゲェッ‼︎‼︎‼︎」

 

 

ヒッポが大量の煙幕を放ち、自分の姿を完全に隠した。

 

「カメッ⁉︎⁉︎」

「落ち着け‼︎落下スピードを予測して放て‼︎」

「カメッ‼︎‼︎」

 

黒い煙の中に強烈な水流が吸い込まれるように入っていった。

 

「・・・・・・」

 

ブルーは1人何かを悟ったような表情を見せる。

 

ドシャッ‼︎

 

 

「‼︎」

「‼︎」

「・・・・・・」

 

何が地面に倒れた音にレッドとグリーンが反応するが煙が地面にまで行っているため目視することが出来ない。

ヒッポは戦闘不能になったのかなっていないのか、今わかっているのは冷静にバトルを見ているブルーだけだった。

 

(このバトル・・・)

 

 

 

 

 

(まだわからないわよ。)

「カッゲェェェェェェッ‼︎‼︎‼︎」

 

 

「ヒッポ‼︎」

「っ・・・外したか‼︎」

 

 

ーさっきの攻撃、カメールの“みずでっぽう”はヒッポの少し上に外れた、これはグリーンって人のミスね。

どうせ空中で体制の崩れている状態でヒッポができる事は口から放つ“ひのこ”と“えんまく”あとは“なきごえ”だけ、だから“えんまく”で的が隠れたことによって出来たカメールの動揺を落ち着かせる時間を取らなければならなかった。

そうしていれば動揺した状態であれだけ惜しかったのだから落ち着いていれば当たっていたはず。

 

 

ブルーの見てる方からもヒッポの姿は見えないはずだがブルーはそういう面に優れていた。ヒッポが落ちていく姿も、“みずでっぽう”の行方も完璧に頭の中でイメージされていた。

 

もしブルーがトレーナーであれば確実にこのシチュエーションで技を命中させるような指示を出していただろう。

 

ーヒッポに当たらなかったのは良かったものの・・・

 

スッとヒッポを見る。

 

「カァッ・・・ハァ・・・ハァ・・・」

 

ー肩で息をしてる。もう体力は殆ど残っていないわ・・・あと一撃当たれば確実にやられる。

体全体で技を繰り出す“ニトロチャージ”や“つばめがえし”は恐らくどちらか一方、しかも一回した放てないでしょうね。

 

 

「お前のヒトカゲはもう虫の息だ、しかもカメールにはまだ身代わりが残っている。もう詰みだ。」

 

“みがわり”で作り出した身代わりは作り出した時に消費した体力の分だけ続く、水タイプに対して効果いまひとつの炎タイプの技“ニトロチャージ”ではその分の体力を削りきれなかったのだ。

 

ー普通なら降参してもいい状況ね

 

ーでも

 

「俺は諦めない」

 

ーレッドは諦めない

 

「ヒッポがまだ立ってる。」

 

ーポケモンの気持ちがわかるから

 

「ヒッポの瞳にまだ炎が灯っている。」

 

ーポケモンの意志の強さを知っているから

 

「バトルが始まる前よりも熱く輝いてるんだ‼︎」

 

ーそして

 

「だからトレーナーの俺が諦める訳にはいかない‼︎‼︎」

 

ーそれを背負うトレーナーの重さを知っているから

 

 

 

ーレッドは負けない。だって

 

 

「お前の力はそんなもんじゃないだろ‼︎‼︎」

 

 

ーポケモンを大切にするその思いの強さに

 

 

 

「ヒッポォォォォォォォォォォォ‼︎‼︎‼︎‼︎」

「カッゲェェェェェェェェェェェ‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

ーポケモンが答えてくれるから

 

 

 

キュォォォォォォォォォォォッ‼︎‼︎‼︎

 

ヒッポの身体が光り輝く‼︎

 

「‼︎この光は⁉︎」

グリーンが驚く。

 

「ほらね」

ブルーが笑みを浮かべる。

 

「進化の・・・光‼︎‼︎」

レッドは見つめる。

 

逃さないように

 

ヒッポの新しい姿に変わる瞬間を

 

 

 

「リッザァァァァァド‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 

光が弾け飛び現れたのはヒトカゲの倍の大きさとなった赤く筋肉質な身体に精悍な目つき、そして雰囲気はヒトカゲの時のような可愛らしいさはなくなり、攻撃的な見た目となっている。

 

レッドはその変わりようと、その凛々しさに戦闘中だということを忘れて図鑑をかざす。

 

 

No.5 リザード

かえんポケモン

尻尾を 振り回して 相手を なぎ倒し 鋭い ツメで ズタズタに ひきさいてしまう。

 

 

 

「リザード「ガァウッ‼︎‼︎」うぉう⁉︎」

 

レッドがリザードと呼んだ瞬間呼ばれた本人が激しく怒り出す。

遠目でもその迫力は凄まじい。

 

「ごめん、ヒッポ!」

「リッザァァド‼︎」

 

レッドがニックネームで呼ぶとリザードに進化したヒッポは喜んで空に炎を吐き出す。

ピカチューがレッドやオーキド博士にピカチュウと種族名で呼ばれる事を嫌う(レッドはピカチュウと呼んだ事はないが)のと同じようにヒッポも種族名で呼ばれる事が嫌いみたいだ。

 

そこまでニックネームを気に入って貰えた事がレッドは怒られたけどとても嬉しくてだらしない笑みを浮かべた。

そしてグリーンの方を向く

 

「さぁグリーンにここからが本番だ‼︎」

 

「進化したからといってこの状況は変わっていないぞ‼︎」

 

グリーンの言う通り進化したからといって体力は回復しない、リザードは進化した事により体力の上限が上がった事でさっきのように肩で息はしてないがそれでも呼吸のペースは早い。

 

「いくぜ“つばめがえし”‼︎」

 

ドシュッ‼︎

 

「くっ⁉︎速い‼︎」

 

一瞬にして間合いを詰められ身代わりに風の爪が炸裂、消費した体力を消費しきった身代わりは空気中に四散した。

 

「カメール“みずでっぽう”‼︎」

「カメッ‼︎‼︎」

 

カメールの水流がヒッポを襲う。

 

「頼むぜヒッポ‼︎進化したお前の新たな力を見せつけろ‼︎」

 

「リザッ!」

 

ザッとヒッポが右足を少し下げる。

 

 

「“りゅうのいかり”‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

「リッザドォォォォォォォォォォォッ‼︎‼︎‼︎」

 

 

リザードの口から竜の形をした青い炎が放たれる。

“りゅうのいかり”はタイプ相性関係なく同じダメージを与える事ができる特殊な効果のあるドラゴンタイプの技。

ヒッポの放ったその炎は『火は水に消える』という考えを覆すかのように水を飲み込みカメールの元に襲いかかる。

 

「⁉︎」

 

「竜の炎は水じゃ消せないぜ‼︎‼︎‼︎」

 

「カメェェェッ⁉︎⁉︎⁉︎」

ドゴォォォォォォォォッ

 

青い炎の龍がカメールを飲み込み爆発を引き起こす。

 

 

「カメール‼︎・・・!」

 

 

グリーンがカメールの名を叫んだ後に見たのは身体をボロボロにして倒れているカメールの姿だった。

 

 

「カメール戦闘不能ね。」

 

 

「・・・・・・」

グリーンは無言でモンスターボールにカメールを戻す。

 

 

「〜ッ‼︎勝ったぁぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎」

 

「ザッドォォォォォォッ‼︎‼︎」

 

 

レッドとヒッポが飛び上がって喜びを分かち合う。

 

「本当に偶然だらけの勝利ね。」

「む、そんな言い方ねぇだろ!運も実力のうちって言うだろ‼︎」

 

ブルーはレッドの勝利をからかうと同時に負けたグリーンのほうに視線を向けていた。

 

グリーンはカメールのモンスターボールに向かって小さな声で何かを呟いていた。

洞察力の高いブルーはそのセリフを読んで、笑みをこぼす。

 

ー自覚はしてるみたいね。

 

「グリーン!約束通りナナミさんには黙っとけ‼︎そして俺とブルーが色恋的な中でない事を信用しろよ‼︎いいな‼︎」

 

「わかったよ。わかりました。」

 

スッとグリーンがブルーに視線を向ける。

 

「レッドの件ですっかり忘れていたが、お前ブルーなんだよな。」

「初対面の人に向かっていきなりお前はないでしょう。」

 

「恋仲でもない癖に男と抱き合ってる時点で俺の中ではお前はお前だ。」

 

ーこのウニ頭・・・

 

どついてやろうという気がしたがそこは堪える、だって私大人だから

天然バカやウニ頭と比べて大人だから、ワタシ コイツラヨリモ オトナ All right?

 

 

「ハナダシティで姉さんがお前の図鑑を用意して待ってる。」

 

「‼︎」

 

「それだけだ、じゃあな。」

 

「バイバイ、グリーン‼︎」

 

その時ブルーは心の中に迷いが生じたのを自覚した。

 

 

 

 

 

ーおつきまやまー

 

 

「こんなものか」

 

ニビジムジムリーダー・タケシはオーキド博士の連絡を受け、おつきみやまにいるロケット団を殲滅しに来たのだが、行ってみるとロケット団は殆どおらず、監禁されていた化石を発見した人物も助け、現在タケシの手持ちのクロバット、『ノイズ』が出口まで送って行っている。

 

「残党はあとで警察に届けるとして、そろそろポケモン達を集合させるか。」

 

タケシは自身のポケモン4匹をおつきみやまに放ちパトロールさせていた。

タケシに鍛えられたポケモン達はトレーナーであるタケシの指示がなくてもロケット団の団員に劣らぬ強さを持っていた。

 

「さぁ、みんなを呼んできてくれ『ドゴォォォォォォォォッ‼︎‼︎‼︎』⁉︎なんだ‼︎」

 

強烈な音の方へタケシは走っていく。

 

「⁉︎ヘルメ‼︎‼︎‼︎」

 

そこには戦闘不能状態で壁に埋まっているタケシのカブトプスの姿があった。

その頑丈な甲羅にはビビが入っており、戦闘不能状態よりはるかに危険な『瀕死状態』である事が伺えた。

 

タケシはすぐにカブトプス・ニックネーム『ヘルメ』をモンスターボールにしまう。

 

その瞬間

 

 

ドゴォン‼︎ゴォン‼︎ガゴォンッ‼︎

 

タケシの周囲に何かが3回投げつけられた。

 

「・・・・そんな・・・バカな・・・」

 

投げつけられたのはタケシの手持ちのポケモンである、ゲンガー・ウソッキー・ゴローニャの姿だった。

3匹ともカプトプス同様、瀕死状態であった。

 

「俺のポケモン達が・・・ここまでやられただと・・・‼︎」

 

スッとタケシがポケモン達が投げつけられた方へ向き直る、そして

 

「ドサイドォーン‼︎‼︎」

 

出てきたポケモンは巨大な身体、その身体を包む橙色の鎧、二本のドリルのようなツノを持ったポケモン

 

「ドサイドンだと・・・」

 

おつきみやまに生息していないそのポケモンを見た瞬間、タケシの身体から寒気が走った。

 

ーなんという迫力・・・‼︎

 

 

その迫力に逃げる事が不可能だと、タケシは今までの経験から感じ取った。

戦うしかないと。

 

 

本気で行かなければ・・・負ける‼︎

 

 

何故ドサイドンがおつきみやまにいるのか、そんな事を考える余裕はタケシにはなかった。

タケシはすぐに最後のモンスターボールに手をかけた。

 

「ロック‼︎」

 

 

 

「ネェェェェェェル‼︎‼︎‼︎」

 

 

モンスターボールから出てきたポケモンはてつへびポケモン『ハガネール』

イワークが進化した姿で岩だった身体はダイヤモンドよりも硬くなっており、そして立派な顎はあらゆるものを噛み砕く。

タケシの1番のパートナーであり最強の1匹である。ニックネームはロック

 

「“ロックカット”‼︎」

 

ロックの周囲に砂嵐が起こりロックの身体を砥ぐ事で素早さをグンっと上昇させる。

 

「ドッサッ‼︎‼︎」

 

ドサイドンは頭のドリルを回転させながらロックに向かって突進してくる。

地面タイプの技『ドリルライナー』だ。

 

「“まもる”‼︎」

 

しかしドリルライナーはロックの繰り出した鉄壁の壁によって阻まれる。

特定の技以外全ての攻撃技を無効にする強力な防御技“まもる”。

圧倒的力を誇るドサイドンでもこの壁は壊せない。

 

「“いやなおと”‼︎」

 

キュイーンっと耳が潰れるようなノイズの波動がドサイドンを襲う。

この技によってドサイドンの防御はガクンっと下がる。

 

「今だ‼︎“アクアテール”‼︎‼︎」

 

ロックの尻尾に大量の水が発生しそれを“いやなおと”によってガードの下げられたドサイドンにぶつける。

 

ドサイドンは岩・地面タイプ、そのため水タイプの攻撃である“アクアテール”は最も苦手とするタイプ技の1つだった。

 

「よしっ‼︎・・・⁉︎」

 

自分のイメージ通りに技が決まった事に驚いたその瞬間、タケシは驚愕する。

 

 

「ドッサァァ・・・」

 

 

「受け止めた・・・だと⁉︎」

 

 

ーロックの重さと“ロックカット”で上昇したスピード、更に“いやなおと”で防御を下げた隙だらけの状態で放たれた“アクアテール”だぞ⁉︎

倒せないならまだしも・・・受け止めるなんてそんなバカな⁉︎

 

 

キィィィィィッ‼︎

 

ロックの尻尾をガッシリ掴んだドサイドンの身体が明るく輝き出す。

 

「⁉︎、まずい‼︎」

 

タケシはドサイドンの放とうとしている技を察知しロックをモンスターボールに戻そうとするが・・・

 

 

遅かった。

 

銀色の光がロックを包み込み爆発する。

 

 

 

 

 

“メタルバースト”

 

 

 

 

ドサイドンの進化前であるサイドンの進化前のサイホーンが卵から生まれた際に親からの遺伝によって稀に覚える鋼タイプの技。

 

1つの攻防で最後に受けた技のダメージを1.5倍にして相手に返すという特殊な技。

 

ドサイドンが最後に受けた技は今受け止めた“アクアテール”、ドサイドンの持つタイプの岩にも地面にも効果抜群な水タイプの技のダメージ量は通常のおよそ4倍と言われている。

更にドサイドンは“いやなおと”によって防御をガクンと下げられていた。

 

防御技の使っていないドサイドンがそれでもこの攻撃を耐えたのは、ロックとドサイドンの間には大きな力量(レベル)の差があったからである。

もし力量(レベル)が同じだったならドサイドンは確実に戦闘不能になっていただろう。

 

つまりドサイドンはロックと同じ力量(レベル)なら戦闘不能になる程のダメージを受けているのである。

 

そのダメージの1.5倍がロックに返ってくるとしたら・・・・

 

 

結果は明らかである。

 

 

 

 

ロックのダイヤモンドよりも硬く輝くその身体はビビが入りところどころ砕け、その輝きも失っていた。

そしてロックはタケシの手持ち4匹と同じ道を辿ってその場で倒れた。

 

 

「ロックぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ‼︎‼︎‼︎」

 

 

タケシの悲しい叫び声が洞窟内に響き渡るが、瀕死状態となったロックに返事をする術はなかった。

 

「ドッサッ‼︎」

 

ロックの瀕死を確認したドサイドンはトレーナーであるタケシの上空に大量の岩を生成した。

タケシはそれを見て顔をクシャクシャに歪めた。

 

「待ってくれ・・・⁉︎、瀕死状態のポケモンが5匹もいるんだ・・・‼︎‼︎、早くポケモンセンターで治療して貰わないと死んでしまう・・・⁉︎‼︎」

 

「・・・・・」

 

タケシの懇願、自分のポケモンの命を危険に晒したポケモンに頼むのはおかしい事だか、それでも同じポケモン、話せばわかってもらえる、

 

 

 

「ドッサッ‼︎‼︎」

 

 

 

しかし現実は無情だった。

 

 

 

ドサイドンは腕を振り下ろし生成した大量の岩をタケシに落とす。

 

 

 

岩タイプの技“いわなだれ”

 

自分を守ってくれるポケモンのいなくなったタケシに広い範囲で発動できるこの技はどうしようできない。

 

タケシは両手を握りしめ歯を食いしばり、涙を流した。

 

この技をくらえば最低でも確実に意識を失うだろう。

そうなった場合、例え自分が助かったとしても、駆け出しのトレーナーだった頃からの仲間達の命はない。

 

 

 

ークソッ・・

 

ークソッ・‼︎

 

ークソッ‼︎‼︎

 

 

 

「くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ‼︎‼︎‼︎

『ガラガラガラガラガラドゴォォォォォォォォッ‼︎‼︎‼︎』・・・・・・・・・」

 

 

 

 

タケシの悲しい叫びは岩の落ちる音にその身ごと飲み込まれ、再び聞こえる事はなかった。

 

 

 

 

 

「ジムリーダーのベストメンバーといってもこの程度か」

 

1人の男の声が響く

 

「ドッサッ」

 

ドサイドンは背後から聞こえたその声の主の元に近づきはしたものの襲う事はなかった。

 

「私が指示をするまでもない程の雑魚共の集まりが我々の1番の敵とは笑わせる。」

 

「我々ロケット団がこの世界を支配するのは思っているよりも簡単そうだ。」

 

そう呟いた男の胸には何処かで見た『R』の文字が

 

男はドサイドンをモンスターボールに戻すとどこかの時と同じように洞窟の闇へと消えていった。

 




ここまで読んでくださりありがとうございます‼︎
そしてお疲れ様でした‼︎



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第16話 レッド=巨乳好きの変態

更新遅くなってすみません。
そして既になっていますが忙しくなってきたので更新は遅くなっていきます・・・。



ハナダシティ

 

『ハナダは 水色 神秘の色 花咲く 水の 町』

というキャッチフレーズを掲げている理由はこの町のジムリーダーが歴代水タイプのエキスパートであることせいであろう。

 

特に現在のハナダジムのジムリーダーはまだ若いのにもかかわらず、歴代最強と言われている。

元気いっぱいのジムリーダーに影響されてかこの町の人々は他の町よりも明るい人が多い。

 

「ハナダシティ・・・いい町だ」

「どうしたのよいきなり・・・」

 

爽やかな笑みを浮かべながら今ハナダシティの門をくぐったはずのレッドが呟くいている理由をブルーがジト目で聞く。

 

レッドの視線は落ち着いた感じのお姉さんからやんちゃそうなお姉さんまで、ありとあらゆる美女に向いていた。

 

ブルーは集中力を高めている!

 

「綺麗なお姉さんでいっぱいだ。」

「・・・・・・・・」

「もう放送事故してるよなんてツッコまないぜ、そんなことより俺は今この素晴らしい景色を堪能したいんだ。」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

「・・・放送事故してるんですけど姐さ「ツッコんでるじゃない」『バキッ』のべっ⁉︎」

 

ブルーの“きあいパンチ”!

 

効果はバツグンだ!

 

「俺だって男なんだよ⁉︎そういうことに興味津々なんだよ⁉︎」

「それを女子の前で曝け出すっておかしいでしょ?ねぇ?」

 

「それくらい俺はブルーに心を開いてる証拠じゃないか、喜べよ」

「親しき中にも礼儀ありっていうでしょ?この発情犬」

「発情犬ってなんだよ⁉︎発情はしてない‼︎・・・興奮はしてるかもだけど・・・」

「そうですよね〜、多感な時期ですもんね〜誰彼かまわず女の子なら興奮できますもんね〜。」

「別に誰彼かまわずじゃねぇよ‼︎」

 

スッとレッドは周囲を見回すと

 

「こんなペッタン胸女には興奮しねぇよ‼︎」

 

そう言って偶然前を通りかかった、オレンジ色の髪を1つにくくった、レッドと同じくらいの年齢のおてんばそうな女の子を指差してそう発言したとさ。

 

「・・・・・・・・・」

 

女の子は集中力を高めている

 

「あっ、やべっ・・・・『ゴチンッ‼︎』おふん⁉︎⁉︎」

 

女の子の“きあいパンチ”!

 

効果はバツグンだ!

 

急所に当たった。

 

レッドは倒れた。

 

 

 

「・・・・・バカ」

 

 

ブルーの言葉は戦闘不能になってもなお殴られているレッドの耳には届かなかった。

 

 

 

ーおつきみやまー

 

 

 

「・・・ウソだろ」

 

そこでグリーンは驚愕していた。

 

グリーンの目の前に広がっているのは瓦礫の山、そしてそこには身体中傷だらけあざだらけで気絶しているニビジムジムリーダー・タケシと瀕死状態のその相棒ハガネール・ロックの姿だった。

 

「瀕死状態から時間が経ってる・・・マズイ、このままだと・・・」

 

グリーンがモンスターボールに手をかけたその時、

 

「クロバッ⁉︎⁉︎」

 

「タケシのクロバットか!」

 

タケシのクロバット・ノイズは化石を見つけた人をおつきみやまの外まで案内していたため、1匹被害にあわなかった。

 

ノイズの目には涙が溢れ・必死に意識を失っているタケシとロックに声をかけているが反応はない。

 

「悲しいのはわかるが今は外に助けを求めてるのが先決だ!そうじゃないと2人とも危ない‼︎」

「クロバッ‼︎」

 

ノイズは頷き、すぐさま外に助けを求めに行く。

 

グリーンはロックをモンスターボールに戻すためにタケシの腰についてあるモンスターボールを取ろうとした時

 

「⁉︎」

 

ロック以外の残り4匹のポケモン達もロックと同じ瀕死状態に陥っているのに気づいた。

 

しかもこの4匹はロック以上に重傷だ。

 

ーこれは・・・

 

ー瀕死状態に成った後も激しく痛めつけられてる・・・‼︎‼︎

 

モンスターボール越しでもわかるその傷にグリーンはタケシのモンスターボールを取ろうと差し出した右手をきつく握りしめる。

 

ーどんなにポケモンが人間よりも頑丈とはいえ、瀕死に陥った後も攻撃するとは・・・

 

ギリっと歯を噛み締める

 

ー外道め‼︎‼︎‼︎‼︎

 

グリーンは元々鋭い眼を更に鋭くしポケモンに対して、生き物に対してこのようなことをした顔も知らぬ人物を睨みつけた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

「ごめんなさい。」

 

レッドは現在、ハナダシティのポケモンセンターにて土下座を披露していた。

 

そしてー

 

「・・・・・・・」

 

「コロス・・・・‼︎」

 

目の前には般若が2人。

 

放送事故を起こし続けているブルーと先程レッドに自分の身体のとある部位が粗末だと言われたオレンジ色の髪の女性が背後に悪鬼を出現させてレッドの弱き心を完全に制圧していた。

 

「あの・・・ペッタン胸女とか言ってしまって『ゴキィッ‼︎‼︎‼︎』アベシッ⁉︎⁉︎」

 

「なんて言ったの?きこえなかったなぁー」

 

オレンジ髪女の強烈な拳がレッドにヒット‼︎

 

「だから「あ?」ヒィッ⁉︎、ですから・・・」

 

すでにレッドはこの2人に逆らえない。

・・・・・男として情けないとは思ってはいけない、レッドも弱いなりに頑張って生きているのだから・・・

 

「本当に申し訳ございませんでした。」

 

「もうそのへんで許してあげてください。」

「ブルー・・・」

 

ふっとブルーがオレンジ髪の女性とレッドの間に入ってレッドを庇う

 

「この巨乳好きの変態も巨乳好きの変態らしく反省してるみたいなんでもうこの巨乳好きの変態は許してやってもいいじゃないですか?巨乳好きの変態でも」

 

前言撤回

別に庇うつもりはないようだ・・・

 

「あの・・・ブルーさん?」

 

「何?巨乳好きの変態」

 

「いや・・・あのぉ・・・まだ怒ってます?」

 

そう言うレッドの目にはおつきみやまでレッドに恐怖を植え付けたあの魔王の姿がハッキリと見えていた。

 

「何で私が巨乳好きの変態を怒るのよ、怒ってたら巨乳好きの変態を庇う筈がないでしょ?ねぇ巨乳好きの変態」

 

「怒ってるよね⁉︎確実に怒ってるよね⁉︎もういいよ⁉︎普通に怒ってよ‼︎‼︎そんな真顔で巨乳好きの変態って言われると本当に傷つくから⁉︎俺のガラスのハートをこれ以上壊さないで⁉︎⁉︎」

 

「巨乳好きの変態・・・」

 

「レッド・・・みたいな感じで巨乳好きの変態って言わないで⁉︎俺の名前は巨乳好きの変態じゃなくてレッド‼︎‼︎マサラタウンのレッドだから⁉︎⁉︎⁉︎」

 

「マサラタウンのレッドなんて名前私は知らないわ、私が知っているのはマサラタウンの巨乳好きの変態だけよ‼︎‼︎」

 

「嘘つけェェェッ⁉︎あとその言い方やめろぉぉぉぉ⁉︎俺がなんかマサラタウンで有名な巨乳好きの変態みたいじゃないか⁉︎」

 

「そうじゃないの?」

 

「違うよ⁉︎なんだよ⁉︎今まで放送事故おこしてたくせに喋りだしたら今度は違う放送事故おこしやがって⁉︎⁉︎何?番組出禁になりたいの⁉︎」

 

「違うわよ、私はただレッドをこの社会から抹殺したいだけよ。」

 

「怖えぇぇよ⁉︎⁉︎ブルー怖えぇぇよ⁉︎女怖えぇぇよ⁉︎そんなんだから女と接することを怖がる男が増えるんだろ⁉︎⁉︎少子高齢化を進ませるんだろ⁉︎⁉︎もっと男の理想に近づけてくれてもいいでしょ⁉︎⁉︎」

 

「男の理想に沿った女ほど裏は真っ黒で怖いのよ。」

 

「やめてくれー⁉︎それ以上は言わないで〜⁉︎俺の理想を壊さないで〜⁉︎⁉︎」

 

「・・・なに?このコント・・・。」

 

ピリリリリリッ

 

「!」

 

呆れて巨乳好きの変態への怒りが何処かへ飛んだオレンジ髪の女性のポケットの中から電話音が鳴り響き、女性はポケットの中から鳴り響いている原因の物を取り出すとそれを見たレッドの目が大きく見開かれる。

 

「ポケギア⁉︎」

 

女性の取り出したのは水色とオレンジ色で彩られた上方が時計のような形で下方にはスピーカーがつけられた機械だった。

 

『ポケギア』

電話機能や時計機能を兼ね揃えており、更に拡張カードというこの機械専用のカードを使用する事によって様々な機能を使用することが出来る()()()()()の機械。

オーキド博士も少し協力しているらしくレッドはその機械のことを知っていた。

しかし、

 

「なんでお前がそれを・・・持っているのは確かポケモン協会の上層部とジムリーダーだけのはず。」

 

「だからよ」

 

「は?」

 

「私がハナダジムジムリーダーだからよ」

 

「・・・・・え」

 

「レッド・・・ウソでしょ?、まさか知らなかったの⁉︎」

 

ブルーが驚いた顔でレッドを見る。

どうやらブルーは最初から女性の正体に気付いていたらしい。

 

「いや、だってこいつ俺とそんな歳変わらないだろ⁉︎」

 

「レッド、ポケモンリーグ目指してるくせにジムリーダーをチェックしてないのってどうかと思うわよ。

この人はハナダジムジムリーダーのカスミ、水タイプのエキスパートよ。」

 

「おてんば人魚カスミとは私のことよ。」

 

『その声はレッドか⁉︎』

 

聞いたことのある声がレッドとブルーの耳に届く。

 

「オーキド博士!」

「ちょっ⁉︎近い近い⁉︎」

 

「・・・・・・」

 

レッドは開発中のポケギアを使えるチャンスだ!とポケギアのマイク部分に近づいたため、必然的にカスミと密着している、普段純情(ウブ)なレッドなら顔を赤くして大袈裟に離れていただろうがそんなことよりも今はポケギアの方に興味津々だった。

それを見ているブルーは・・・もう説明しなくてもいいであろう。

 

『カスミがおるということは無事にハナダシティについたようじゃな!ブルーも一緒か』

 

「はい「一緒ですよ博士‼︎」のぉう⁉︎」

 

「あんたも近い⁉︎⁉︎」

 

チャンスとばかりにブルーが密着しているカスミとレッドの間をこじ開けて2人と密着する。

 

『そうか、それはよかった。おつきみやまをロケット団が占領しておると聞いたんじゃがお前達は大丈夫じゃったか』

「ロケット団なら俺たちが追っ払ったよ」

 

『そうかそうかお前達が追っ払ったか・・・』

 

 

『なぁぁぁぁぁぁぁにぃぃぃぃぃぃぃぃぃ⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎』

 

「うっせぇうっせぇ⁉︎マイクわれてる‼︎‼︎博士マイクわれてるから⁉︎⁉︎⁉︎」

 

キィィィィンと脳に響く嫌な音にカスミとブルーはポケギアから遠ざかり

 

「そのことについては報告しておきたいことがあるから後でこっちから電話する‼︎」

 

そう言ってレッドは強制的にピッとポケギアの電話機能を終了させる。

 

「よかったの?きっちゃって」

 

ブルーがまだ耳を押さえながらレッドに話しかける。

 

「いいんだよ。多分おつきみやまのロケット団を追い払う依頼をするつもりだったんだろ、そのロケット団は俺たちが追い払ったんだしその必要はないし、例え残っていたとしてもオーキド博士はタケシにも連絡を入れてるだろうし大丈夫だ。」

 

「私にかかってきた電話なのにこいつに聞くっておかしくない?・・・」

 

カスミが納得のいかなさそうな表情でブルーに文句をいっているが、レッドとブルーの耳には届かずそのままスルー。

 

「まぁいいや、とにかくナナミさんの所にいって図鑑を貰ってそして・・・」

 

くるっとレッドが首をカスミの方に向ける。

 

「ハナダジムにレッツゴーだ。」

 

ニヤリと笑みを浮かべた。

 

「なんかすごく頭にくるのはなぜなのかしら・・・」

 

水タイプのエキスパートであるカスミとのジム戦、レッドの中では勝利の道筋は見えていた。

 

水タイプの弱点とする電気タイプの技での殲滅、つまりピカチューの強力な電気技で圧倒するという道筋だ。

 

ポケモンバトルがタイプ相性だけでどうにかなるものじゃない、ジムリーダーが専門タイプの弱点を補っていないはずがないことはニビジムのジムリーダー・タケシとの戦いで痛いほど痛感した。あの時はヒッポの特性『もうか』が偶然発動したことにより勝利を収めただけで、その時のレッドのトレーナーの技術はバッチをゲット出来る程のレベルじゃないことも理解している、タケシがレッドの将来に期待して敗北後も素直にバッチを渡してくれたことも理解している。

 

ーだからこそ完璧な勝利が欲しいー

 

自分のトレーナーとしての実力がバッチを貰えるレベルにまで達していることを実感したかった。

 

相手に不利なタイプで戦いを挑む場合、自らがその対策を練り『奇策』を行う必要がある、それに対して崩れたところで流れを掴む。

 

逆に言えば有利なタイプで挑む場合、相手の『奇策』に動揺せず冷静に対処する心の強さが必要になる。

 

相手に有利なタイプに不利なタイプが行う行動は未知だ。

考えても考えても尽きることはない、すべてを考えて対策しようとしてもポケモンの種類と技の数が多すぎる。

 

つまり、有利なタイプで戦闘する場合、相手の対策に対しての対策が出来ないのだ。

そして相手はジムリーダー、苦手なタイプとのバトルする場合の『奇策』の数は普通の人の比ではないはずだ。

 

だからこそレッドはその『奇策』を破り、自分の力を証明する。

 

ーポケモン達が力を発揮するための『足場』を作れる証が欲しいんだー

 

これは前述の『勝利の道筋』というのは少し違うようだったので訂正しよう。

 

 

レッドの瞳には『越えるべき壁』がはっきりと見えていたと・・・

 



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第17話 ピカチューのデメリット

ポケモンセンターはポケモンの回復を無償で行う他にお金はかかるが人が泊まるための部屋が用意されている。

街によっては更にレストランなどと言った施設もあり、宿としてポケモンセンターを利用する人は多い。

 

そして、ハナダシティのポケモンセンターのとある一室で俺とブルーはあの女性とあっていた。

 

そして現在、その女性の目は大きく見開かれその瞳には水と光の錯覚によりゆらゆらと形を変えていた。

 

「ピカ・・・チュー?」

 

「ピカッチュー」

 

その原因を作っているのは俺の頭の上に乗っている、重さ6キロの赤いほっぺに黄色のシャツ、ギザギザ模様の僕のベストフレンドだった。

 

「本物よね?別個体じゃないわよね?」

 

声が震えている、そして俺も喜びに震えている。

その女性の喜びの涙が見れることへの喜びが血液のように全身に流れている。

 

僕のベストフレンドが俺の頭の上からおりて、その女性と俺の丁度真ん中に立って、ジッとその女性を見つめる。

 

「違うよ、正真正銘ピカチューさ。」

 

「・・・・・‼︎」

 

そう言うとその女性、ナナミさんは堪えていた涙をすべて流しながら赤いホッペに黄色のシャツ、ギザギザ模様の僕のベストフレンド・ピカチューを抱きしめた。

 

「よかった・・‼︎‼︎・・・よかった‼︎」

 

俺達はブルーのポケモン図鑑を貰うため、ナナミさんとハナダシティのポケモンセンターで待ち合わせをしていた。

その時、俺はあらかじめピカチューをモンスターボールから出して報告の準備をしていた。

 

ピカチューが引きこもっていたことを知っているのはマサラタウンで近所に住んでいた人達なら全員が知っている、そしてその中でピカチューのことに気を配ってくれた人は俺の親代わりになってくれたオーキド博士とナナミさんだけだった。

 

そして現在に至る。

 

とても微笑ましい

とても微笑ましいんだけど・・・

 

なんかイライラする・・・‼︎

 

理由はわかっている。

ピカチューとナナミさんが密着しているからだ。

 

つまり嫉妬しているのだピカチューに、ナナミさんの成長途中の体に抱きしめられているピカチューに・・・

 

|ω・`)チラッ

「!」

 

ピカチューがナナミさんに抱きしめられながら俺を一瞥。

 

|ω・`)チラッ

「!」

 

再び一瞥、どうしたんだこいつ・・・・

 

|ω・`)チラッ

「・・・」

 

だから何がしたいん・・・

 

 

ニヤーリ♡(´^ิ∀^ิ`*)

「・・・・・」

 

 

 

 

 

 

d(#´∇`)´`ィ(#´∇`)σキミ(#´∇`)σシバクョ??

 

 

 

 

 

「レッド君」

「ふぁい⁉︎」

 

危ない危ない、意識がナナミさんそっちのけで危ない方向に行っていたよ。

とにかくピカチューは後でシバクと心に誓ってナナミさんの方に意識を向ける。

 

「それでどうやってピカチューは出てきてくれたの?」

「そうですねー!」

「チャッ⁉︎」

 

ナナミさんの腕の中からピカチューを奪い取りギュッと俺の腕の中で固定する。

もういい思いはさせんぞピカチュー、ナナミさんの温もりはいずれ俺が全て独り占めするんだ、成長途中の身体の感触から温もりまで、髪の毛一本から足の爪の先まで全て俺のものにするんだ、だから俺の目の光るうちはもうあんな羨ましい体験は二度とさせんぞ!

・・・あ、俺がナナミさんを独り占めする代わりに俺の全てをナナミさんにあげるからそれでイーブンだから、俺はヤンデレじゃないから、嫉妬深いだけだから。

ナナミさんが俺の全てを独り占め・・・ひひひひひひひひひひひひひひひ

 

「・・・レッド君?」

「あ、いや、すみません。そうですね」

 

俺はナナミさんに全てを説明した、おつきみやまにロケット団がいて、襲ってきたこと、そして一度は全滅にまで追い込まれたこと、そしてその時にピカチューが出てきてくれて俺とブルーを助けてくれたこと

 

話していくうちにナナミさんの表情が暗くなっていくのが目に見えてわかった。

当たり前だ、下手すれば命を奪われていた、いや、それ以上に酷い目にあっていたかもしれないんだ、あいつらが言っていたように人権を無視した酷い仕打ちを。

 

しかしナナミさんはスッと一瞬でその表情を司る感情を自らの心に押し込んで優しく包み込まれるような瞳を俺に向けた。

 

「そう・・・、おじいちゃんに言ってピカチューがどうしていきなり体内の『でんきだま』による悪影響を克服できたか調べてもらうわ」

 

「博士には俺からも連絡するんで」

 

「おじいちゃん絶対泣いて喜ぶわよ、ピカチュー‼︎って泣いてレッド君の話そっちのけになるわよ。」

「うわー、簡単に想像できる・・・」

 

オーキド博士を大嫌いなフシくんがデレたときの反応が永遠に続きそうだ。

 

「あまり無茶はしないでね?」

「え」

 

オーキド博士の泣いている姿を想像しているとナナミさんが再び悲しみを秘めた瞳で俺を見つめながら話しかける。

 

「レッド君はまだ子供なんだから、将来があるんだから、危ない事に関わってほしくないの」

「ナナミさん・・・」

 

「それでもレッド君はまたロケット団にあったら戦うでしょ?レッド君は正義感が強いから、ポケモンが大好きだから、ロケット団みたいな人達を前に何もせずにじっとすることなんてできないでしょ・・・」

 

そう言っているナナミさんの瞳には言わずともロケット団に関わらないで欲しいという願いが込められていた。

俺の事を心配してくれているその気持ちは、普段ほがらかでどこかミステリアスなナナミさんでも隠せない事に惚れている人ながらとても嬉しく思う。

けど・・・いや、だからこそ

 

「ごめん、それはできない・・です。

俺、許せないんだ。ポケモンで人を傷つけるような、人とポケモンの絆を馬鹿にするような奴らが・・・確かに子供の俺が突っ込むべき問題じゃないのかもしれないけど、目の前に奴らが現れたら・・・戦います。」

 

俺は本当の気持ちを伝えるべきなんだ。

 

「・・・そうよね、やっぱり。じゃあ約束して、誰にも負けないくらい強くなって。」

「!・・・はい‼︎」

 

この返事をした瞬間、俺の身体にビリビリと電撃が走った、元々夢の為に強くなろうと思っていたのが、それが人のために、好きな人の為に強くなろうと思うと、何故か身体の芯が痺れるくらいのやる気が湧き出てくるのを感じた。

 

「レッド君」

「はい、なんですか?ナナミさん」

 

「大丈夫なの?、それ・・・」

「へ?」

 

ナナミさんの指差す方、俺の腕の中を見ると、俺にナナミさんに抱きしめられているのを取り上げられて俺に抱きしめられているピカチューが電気を放出していた。

 

・・・ああ、この痺れは・・・

 

「お前のせい・・・かぁ・・・」

 

その事に気づくと一瞬にして身体に今まで忘れていた電撃の痛みが走りそのまま前かがみに倒れる。ツマリィ・・・?

 

 

ナナミさんにダーイブ‼︎‼︎

 

ラッキースケベ堪能させて貰ってもいいよね‼︎

OK‼︎

そういうことで〜( ´´ิ∀´ิ` )

 

ダ〜〜〜〜〜イブッ‼︎

 

ガシッ

「へ?」

 

誰かに首元を引っ張られナナミさんの胸に包み込まれる瞬間に元の位置へと持ってこさせられる


「いい加減私の存在を思い出して欲しいんだけど」

 

その正体はずっと部屋の隅っこにいたらしいブルーだった。いたらしいって言っても一緒に部屋に入ってきたのだからいたのは知っていたのだが・・・完全に忘れてた。いや、ナナミさんの魅力によって完全に存在を消されていたと言ってもいいだろう・・・それよりも

 

「ブルー‼︎せっかくのラッキースケベのチャンスを「ラッキースケベ?」(◎-◎;)!!」

 

あ、やらかしたぁ・・・

ナナミさんがいること忘れてた・・・

ラッキースケベしようとしてましたって宣言したよ・・・俺( º﹃º )

 

「ラッキースケベをできると思った時点でそれはラッキースケベじゃないのただのセクハラなの?わかる?巨乳好きの変態」

 

「巨乳好きの変態?」

 

「違う⁉︎ナナミさん‼︎違うから⁉︎⁉︎」

 

「どこが違うのよ。この街に着いた瞬間年上の女の人をエロい眼で見ていたのはどこの誰でしたっけ?」

 

「わかったブルー‼︎土下座するよ‼︎泣いて土下座するから許して⁉︎これ以上俺のガラスのハートを壊さないで⁉︎」

 

「巨乳好きの変態の心に壊すことによって快感を得られること以外に何か利点があるの?教えて欲しいわね。」

 

「ははははっ‼︎こいつ悪魔だ、魔王だ!、俺の心をなんだと思ってんだよぉ‼︎」

 

「汚物」

 

「」

 

その眼、その声のトーン、そして発した言葉。言い返すべきだったのに言い返せないのはこの3つの他に俺のガラスのハートが砕け散った以外に何か理由があるのですか?いや、ない(反語)

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

「土下座人形ができたところで話を始めましょう。」

 

説明しよう!

土下座人形とはブルーの存在を忘れ、ナナミさんにセクハラしようとした俺が土下座の体制のまま動かないことで、まるで人が土下座している人形のようになるという屈辱的な罰である。

そして土下座人形とは何があっても動いてはならず(もちろん声も出してはいけない)それを破ると俺の上に乗っている体重6キロ、高さ0.6メートルの黄色い悪魔が電撃を浴びせてくるのだ・・・ピカチュー後で絶対シバク‼︎‼︎

 

「ピカァチュー‼︎‼︎」

「あびばばばばばばば⁉︎⁉︎

なんでだよ⁉︎俺動いてねーだろ⁉︎」

 

「人形が喋るな、ピカチュー」

「ピカッチュー‼︎」

「あぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ⁉︎⁉︎⁉︎」

 

はははは、人の心を読む黄色い悪魔にそれを従える魔王・・・もう何だろう・・・笑うしかねぇよ。あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)‼︎‼︎‼︎

 

 

「・・・もう許してあげたら?」

「ナナミさん・・「チュー‼︎」のばばばばばばばっ⁉︎⁉︎⁉︎」

 

「セクハラしようとしたんですよ」

「わざとじゃないでしょ、偶然そんな状況になりかけちゃったから、レッド君も男の子だし少し期待しちゃっただけよ。」

 

ナナミさんマジ天使‼︎もう一生貴女に惚れ続けます‼︎いやもういっそ今すぐ結婚しよう‼︎まだ11歳だけど借金してメチャクチャ高い婚約指輪買うから‼︎じゃあ早速、式の準備をしよう!初夜はどうしよう・・・初夜・・・ナナミさんと・・・初夜・・・グヘヘへへへへへへへへへ( ´´ิ∀´ิ` )


「・・・この顔を見てもそう思いますか?」

「ちまちまレッド君のこういう顔を見てきたから大丈夫よ・・・多分」

 

大丈夫ですよ( ´´ิ∀´ิ` )


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

そんなわけでぇ〜・・・

 

復活(リ・ボーン)‼︎」

 

「本当にいいんですか?アレ、私が一緒に旅して見てきた中でぶっ飛んで壊れてますけど。」

「ふふふふ、やっとレッド君らしくなってきたわね。」

「貴女といるときのレッドって一体・・・」

 

「基本的にオドオドしてるけど急にテンションが上がるの。」

「・・・情緒不安定ってことですよねそれ。」

 

とにかく明るいレッドです。ははははっ

 

「それじゃあブルーちゃん。これ」

「やっと・・・」

 

ナナミさんが渡したのはポケモン図鑑、しかしブルーのは俺のと違い色が青色で、目の前でポケモンを調べるときにポケモンを捉えるカメラの部分は青色ではなく緑色になっていた。

おそらくブルーという名前からボディを青にし、カメラの色はフシくんの緑からとったんだろう。・・・宣言通り、頑張ったみたいだな、オーキド博士。そんなにフシくんがデレたことが嬉しかったんだな。

 

「よかったな、ブルー。俺に感謝しろよ、お前とオーキド博士を繋いだのは俺なんだから「フシくんが私の前に現れてくれたおかげよ本当にありがとうね」おい。」

 

俺が「俺に感謝しろよ」と言った瞬間、モンスターボールからフシくんを繰り出して、俺の台詞をわかってて無視しやがった。

 

「ふふふふっ仲が良いのね。」

 

口元に手を当ててナナミさんが微笑む。うん、美しい可愛い愛らしい‼︎俺はそんな貴女と1番仲良くなりたいんです。

 

「フッシソー!」

「ふふ、フシギダネも進化したのね。凛々しくて素敵よ。」

「ソウソー♡」

 

フシくんが異様に懐いてる・・・。

 

「レッド君のポケモン達も見たいんだけど・・・いいかしら?」

「あたりまえだのクラッカーですよ「うわっ寒っ‼︎」・・・あたりまえですよ!みんな‼︎出てこい‼︎」

 

そう言ってモンスターボールから全てのポケモン達を繰り出す。

 

ヒッポ(リザード♂)Lv.17

控えめな性格 イタズラが好き

ニトロチャージ

りゅうのいかり

つばめがえし

えんまく

など

 

キーク(マンキー♂)Lv.16

いじっぱりな性格 暴れることが好き

からてチョップ

けたぐり

みだれひっかき

きあいだめ

など

 

ドドラ(ニドラン♂)Lv.15

無邪気な性格 少しお調子者

ふいうち

にどげり

つつく

どくばり

など

 

ピカチュー(ピカチュウ♂)Lv.6

やんちゃな性格 物音に敏感

でんきショック

フラッシュ

なきごえ

しっぽをふる

など

 

「ヒッポ!あなた進化したのね‼︎」

「ザーッド‼︎」

 

「これで博士が与えたポケモン3匹みんな進化したことになるわね。」

 

俺が貰ったポケモン、炎タイプのヒトカゲはリザードに

ブルーが貰ったポケモン、草タイプのフシギダネはフシギソウに

グリーンが貰ったポケモン、ゼニガメはカメールに

 

「あなた達の進化した姿が楽しみだわ。」

 

そう言ってナナミさんはキークとドドラの頭を撫でる。

 

「ぴかちゅう‼︎」

 

ピカチューもパチパチと他のポケモン達の足を叩く。

 

「お前・・・他人事だなぁ・・・」

 

お前にも進化した姿はあるのに。

 

「・・・ピカチューにとって進化は他人事なのよ、レッド君?」

 

「え?」

 

突然ナナミさんが話を切り出す。

 

「他人事って・・・ピカチュウはライチュウに進化することが可能ですよね。」

 

そう、ピカチュウは『かみなりのいし』という特殊な力・・・特定のポケモンの進化を促す能力のある『進化の石』を与えることによってライチュウに進化することが出来るはずだ。

 

「普通はね・・・でもピカチューは普通じゃないの。ピカチューの体内には『でんきだま』が吸収されている。」

 

「・・・それがなんでピカチューが進化できない理由なんですか・・・。」

 

軽くナナミさんにイラついているのがわかる。

ポケモンにとって進化というものは1つの夢であり楽しみだ、確かに進化するのを嫌うポケモンもいるがそれはごく少数、進化しないポケモンもいる中で進化の可能性があるピカチューにそれができないと言われれば、先程シバクと言った手前なんか関係なくそちらに思いがいくに決まっている。

 

「『でんきだま』はピカチューにのみ力を与える特殊な石、つまりライチュウになると『でんきだま』はたとえ元々がピカチューであった姿だとしても力を与えない・・・。

博士はピカチューが閉じ篭もっちゃったあともずっとピカチューのことを調べていたの、ピカチュウと『でんきだま』に関わる全ての資料を集めてね。」

 

ああ、聞きたくない。もうやめてくれ・・・。

 

正直もうその話が嘘であるという強がりも出来なくなってしまった。

俺とピカチューの事をずっと悔やんでいたオーキド博士が調べ、結論付けたその話を疑う事は出来ない。

 

 

ぎゅっ

 

 

「!」

 

 

「ぴかちゅ・・・」

 

 

俺がナナミさんの話を無理矢理切ろうとした瞬間、ピカチューが俺のズボンの裾を引っ張りながらまっすぐ俺を見る。

 

ー最後まで聞こうー

 

さっきのキーク達への態度といいピカチューは気付いているのかもしれない、自分の身体の事を・・・

 

そうだよな

 

一番しんどいのはピカチューなんだ、そのピカチューが耐えてるのに俺が逃げ出すのはおかしいよな・・・。

 

グッと息を飲んでまっすぐナナミさんを見つめる。

ナナミさんは一瞬フッと笑みを浮かべると再び話を始めた。

 

「博士が言うには『でんきだま』の中に眠るエネルギーは持っているだけでピカチュウの能力を急激に上昇させるほど強力、しかしライチュウになると突然その力がなくなるのは『でんきだま』とピカチュウが進化するために必要な石である『かみなりのいし』が全く逆の意志からでる力で構成されているからだと考えられるの」

 

「逆の意志からでる力?」

 

「『でんきだま』は『ピカチュウをピカチュウのまま強くする』目的で創造された石、対して『かみなりのいし』は『ポケモンの姿を変化させることによって強くする』という目的で創造された石。」

 

「?」

 

「わからないわよね?えーと・・・あぁ・・・ここからはオーキド博士の仮説になっちゃうんだけど・・・」

 

「かまいません」

「ちゃっ」

 

 

 

「ライチュウはピカチュウ本来の進化ではないのかもしれない。」

 

 

 

「それってつまりピカチュウには本来その後の進化なんてなくて・・・ライチュウは『かみなりのいし』が創造されておこった本来のピカチュウの系列と異なった進化っていうことですか?」

 

「博士の仮説だけどね。でも、だからピカチュウの力を高める『でんきだま』はピカチュウとは違う系列に進化したライチュウには効果をなさないっていうのも頷ける。

だから体内に『でんきだま』を吸収したピカチューに『かみなりのいし』を与えても『でんきだま』が拒絶してしまうせいでピカチューはライチュウには進化できないの。」

 

「・・・」

 

確かに芯は通っている。

しかし、それが本当だとすると他の進化の石を使う事によって進化する事ができるポケモン達にも、その節は成り立ってしまう。

 

それはポケモンの進化の種類を1つ否定しているようなもの

 

そして

 

その話が本当だとすると進化の石はまるで数多くのポケモンとひとつになる事でその姿を表す1つの生き物・・・

 

ポケモンみたいじゃないか。

 

「ぴかぴ」

「ピカチュー・・・!」

 

ピカチューがテクテクと俺の足を通じて俺の肩までやってくる。

 

「ぴかちゅ、ぴかぴか。ぴかっちゅ!」

 

そして至近距離で俺の目をその愛らしい瞳の奥に確かな意志を宿して話し出す。

 

言葉は通じないが、気持ちは通じる、その気持ちの強さも、それは口で言うよりも正確に、種族の垣根を越えて俺に届く。

 

「お前はピカチュウである事に誇りを持ってるんだな。」

 

「チャッチャッチャ」"d(-x・)チッチッチ

 

「違うのか?」

 

「ぴかちゅう?チャー!ぴかちゅー‼︎‼︎」

 

ーレッド違うよ。

僕は別にピカチュウである事に誇りはない。

 

ー僕は()()()()()である事に誇りを持ってるんだよ。

 

ー僕の初めての友達で、僕の事をどんな人よりも思ってくれたレッドが付けてくれた名前を持つポケモンである事が一番の誇りなんだ。

 

ーそれに進化の有無なんて関係ない

 

ーレッドが僕の事をピカチューと呼んでくれる限り僕は僕を誇る事ができるんだ。

 

 

「・・・ありがとう。」

 

自然とその言葉が出た、ピカチューが発した言葉は少ない、だけどそこから伝わってきた意志は強く、暖かかった。

 

「さ、それじゃあハナダジムに行きましょうか!」

 

ブルーが俺たちを見て微笑んだ、いや、ブルーだけじゃない、ナナミさんやヒッポ、キークにドドラ、フシくんまで、俺とピカチューを見て笑みを浮かべている。

 

「・・・別に見せもんじゃねぇぞ。」

 

「勝手に見せたのはあんたでしょ?さっさと支度しなさい。」

 

からかうような笑みを俺に見せるとブルーはフシくんをボールに戻して部屋をあとにした。

 

「あんにゃろ・・・」

 

俺もみんなをボールに戻して腰のベルトに装着するとリュックを背負い部屋を出ようとした時

 

「本当に仲が良いのね。」

 

ナナミさんが声をかけてきた。

 

「俺をからかう事を旅の楽しみにしてるような嫌な奴ですよ。」

 

そして・・・

 

「好きなの?」

 

その突然の質問に

 

 

「好きですよ。」

 

 

自然とその言葉が出てきた事に俺自身驚いた。

 

 

 

 

・・・・・コノアトノフォロー、トッテモトッテモタイヘンダッタ・・・

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

ーやっぱり反対しておけばよかった。

 

ーそうすればレッド君の心に私以外の女が入り込む事がなかったのに・・・あぁ・・・あの女・・・

 

 

邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔

死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね

 

 

 

 

 

 

・・・排除しましょう。

 

レッド君の側から・・・ね♡

 

 

 

レッド君・・・私ね、貴方がいない事には慣れたの・・・だって離れていたって貴方のカバンや簡易テントの中には気づかれないように盗聴器や小型カメラをつけてるんだから♡

いつだって私のパソコンで見れるもの♡・・・貴方のあられもない姿を、ね♡・・・

ふふふっ♡、昨日も私でしたみたいね?

 

だけど最後・・・

 

 

 

 

ナンデアノオンナノナマエヲツブヤイタ・・・

 

 

 

 

私、耐えられない。

 

レッド君は私のもの

 

心も体も、全て私のもの

 

他の女が貴方の中に入ってくるなんて許さない。

 

 

待っててレッド君♡

 

 

スグワタシノモノニシテアゲルカラ♡

 



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第18話 レッド(ナナミ)VSカスミ

ハナダジム戦です、しかしメインはそれではありません。
・・・読んで下さればわかると思います・・・。


「たのもー‼︎‼︎‼︎」

 

大声をあげて俺はハナダジムの扉を開ける。

そして俺の背後には耳を押さえつけているブルーとナナミさんの姿が・・・ナナミさんごめんなさい。

 

「・・・それ毎回やるの?」

 

「これは俺なりの気合いの入れ方なんだよ。しまるだろ?」

 

「・・・逆に鼓膜が開ききっちゃいそうよ」

 

うんうん、やっぱりこいつとは合わない。

・・・さっきの言葉は何かの間違いだ、うん間違い。

俺がこいつに恋愛感情を抱くはずはない。

 

俺が先程ポケモンセンターの一室での発言を思い返しながら次からは自らの変なノリで誤解を招くような発言をしないと自分の心に深く誓ったところで

 

「来たわね、巨乳好きの変態とその彼女」

 

「それもういいから⁉︎勘弁してくれよ⁉︎⁉︎しかも彼女って⁉︎ナナミさん見に来てくれてるんだから誤解を招くような事を言わないでくれ‼︎‼︎」

 

「か、カノジョ・・・カノ・・」

 

「ほら⁉︎ブルーが彼女扱いされたショックで壊れたじゃないか⁉︎⁉︎」

 

(レッド君、それ逆だと思うんだけど・・・)

 

「あれ?もう1人いるじゃない・・・二股?」

「違うから、もうお前黙れ。」

 

俺の視線の先にいる、オレンジの髪を1つに束ねた貧乳娘はハナダジムジムリーダー・カスミ。

通称

おてんば人魚カスミ(笑)

 

「・・・今すごくバカにされた気がしたのは気のせいかしら?」

 

「プッ自意識過剰(笑)」

「バカにしてるのはわかった、ちょっとこっち来い、人魚を怒らせるとどうなるかあんたの身体に直接味あわせてあげる」

 

「自分のこと人魚って・・・(笑)

ぶりっ子もいいとこだよな(笑)」

 

「お、ま、えェェェェェェェェェ‼︎‼︎」

 

「ブルーもそう思うよな。」

「まぁ・・・少し痛いわね」

 

「あんたもそっち側か‼︎‼︎」

 

俺とブルーを敵に回したお前にもう勝ち目はねぇ・・・口でもバトルでもな(-_☆)キラーン

 

「さあ、茶番もこれくらいにしてさっさとジム戦を始めようや、ぶりっ子カスミ‼︎」

 

「潰す・・・!絶対に潰してやる・・・‼︎」

 

カスミを煽ったところでまずは俺は玄関を進んですぐに設置してあるエントリーボックスにポケモン図鑑をかざし、ジム戦に使用するポケモンと技を入力する。

 

RED AGE 11

BADGE 1

 

ENTRY COMPLETE

 

「エントリーボックスに表示されていたと思うけど使用ポケモンは2体!いいわね?

そしてバトルフィールドは・・・」

 

「もう見えてるよ。」

 

俺の目の前にあるバトルフィールドであるそれはバトルフィールドよりもプールといったほうがいいのではないかというほどのものだ。

水タイプを専門(エキスパート)とするジムのバトルフィールドだけあって水タイプのポケモンが戦いやすいフィールドになっている。

 

唯一の救いは全てが水に埋め尽くされているんじゃなくて所々に水ポケモン以外のポケモンの足場となるシマが設置されている事だろう。

 

これなら俺のポケモン達が高速で動く分には大丈夫だろうが・・・

 

 

(死角が多すぎるな)

 

水中に潜って戦うであろう相手のポケモンに対してシマの上にいると360度どこから攻撃されるかわからない。

プールの水深も深い分相手のポケモンが移動した時の波を見て判断するのも難しい。

 

(相手を水中に潜らせないかが重要だな)

 

 

 

「これより!マサラタウンのレッドとジムリーダー・カスミのジム戦を行います。それでは・・・」

 

 

審判の掛け声とともにスッとレッドとカスミがモンスターボールを構える。

 

「バトルスタート‼︎」

 

「ピカチュー‼︎」

「ヒトデマン‼︎」

 

レッドが繰り出したのは水タイプに相性のいいポケモンであり相棒のピカチュー。

 

対してカスミが繰り出したのは星型の形をした黄色いボディの中心に赤く光る(コア)をつけたほしがたポケモン『ヒトデマン』

 

「レッドの選抜はやっぱりピカチューね。」

 

「ピカチューなら相性もいいし相手の様子を見るのにも最適だからでしょうね。」

 

観客席でブルーとナナミはレッドのバトルを眺める。

 

「何よりピカチューは電気タイプ、水は電気をよく通すからヒトデマンは水に潜ることは出来ない。」

 

「水タイプに有利なこのフィールドが逆に不利な状況を作り出しているわけですね。」

 

「まぁ、相手も自分のバトルフィールドで対策していないわけがないでしょうけどね。」

 

「ピカチュー‼︎“でんきショック”‼︎」

 

ピカチューの体から鋭く尖った電気の槍がヒトデマンに向かって放たれる。

 

「水面に向かって“みずのはどう”‼︎」

 

コォォッとヒトデマンのコアに水の塊が現れそれを水面に向かって放つ、すると水が弾けとび水の壁となって襲ってくる電気の槍を水中へと放電させた。

 

「⁉︎」

 

「電気は抵抗の少ないものに流れようとする、だから自分より抵抗の少ないものでカバーすれば何も怖くないのよ‼︎」

 

ー電気の性質を利用した防御ってことか・・・だけど

 

「どちらにしろ水中に潜れないのは変わらねぇ‼︎突っ込めピカチュー‼︎」

 

ピカチューがヒトデマンとの距離を詰めんと高速でシマを移動する。

 

ー水を使ってのガードはピカチューとの距離があってこそできる技、接近戦に持ち込めばヒトデマンに電気技を防ぐすべはない‼︎

 

「それが狙いだって気付かないの‼︎ヒトデマン“あやしいひかり”‼︎」

「何⁉︎」

 

ピカチューが次のシマに乗りうつらんと飛び上がった瞬間“みずのはどう”と同じようにコアから放たれたその名のとおりあやしいひかりがピカチューの目の前に来ると一気に弾け飛んだ。

 

「しまった・・・⁉︎ピカチュー‼︎大丈夫か⁉︎」

 

“あやしいひかり”はポケモンを混乱状態にする技、混乱状態に陥ったポケモンはトレーナーの声が届かなくなり、最悪我を忘れて自らを攻撃するという自滅行為を行なってしまうのだが・・・

 

 

「・・・・・」

 

攻撃を受け、シマを着地した瞬間からピカチューはじっとして動かない。

 

「ピカチュー‼︎大丈夫か⁉︎」

 

もう一度レッドが声をかける。

 

「・・・・」スッ

「おぉ!」

 

ピカチューはレッドの声に応えるかのように右手を上にあげた。

 

「さすがピカチュー‼︎ダテに普通のピカチュウやってないぜ‼︎」

「ピカッチュ(;,;;  ิ;;◞౪◟;; ิ;)) 」

「アウトぉぉぉぉぉ‼︎‼︎顔アウトぉぉぉぉぉ‼︎」

 

ピカチューが振り向いた瞬間、レッドの目に見えたピカチュウとは思えない顔はレッドに人の限界を超えたスピードでモンスターボールにピカチューを戻すことを可能にさせた。

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

そしてピカチューのその顔はハナダジムに凍りつく世界(ザ・ワールド)を創り出した。

 

「なんか・・・ごめんなさい」

 

「しょうがないよ・・・真剣勝負だし・・・。」

 

レッドは虚ろな目でカスミの謝罪に答える、レッドはこの時頭の中で今のピカチューの表情を必死に記憶から消そうと頑張っていた。

これを覚えていることがピカチューに悪いと思ったからである。

しかし忘れようと思えば思うほど記憶とは定着してしまうもの・・・人の脳はなんと不便なものなのか。

 

「ブルーちゃんはレッド君の2匹目はなんだと思う?」

 

「ヒッポですね。」

「?、水タイプが苦手なヒッポを?」

 

水タイプを苦手とする炎タイプのヒッポをこの戦闘において使用するのはこのバトルフィールドの都合も考えてないのではないかと普通なら考える、しかし

 

「確かにヒッポは水タイプが苦手です、だけどそれは『受け身』が苦手なだけで実は『攻め』に関してはピカチュー以外のポケモンよりも優秀なんです。」

 

「説明してくれるかしら?」

 

「ヒッポの使用する主な技は“ニトロチャージ”“つばめがえし”“りゅうのいかり”“えんまく”です、運がいいことにヒッポはバランスよくいろんなタイプの技を覚えているんです。」

 

「“えんまく”で相手の視界を奪いつつ“ニトロチャージ”で相手を攻撃し自分の素早さを上げほぼ確実に相手に命中する“つばめがえし”とフェアリータイプ以外のタイプ相性を無効化してダメージを与える“りゅうのいかり”で攻撃していく・・・この戦法で戦えばある程度のタイプ相性の不利も関係なく有利に戦うことができるんです。」

 

しかもジムなどの室内では外の風の影響などを受けないため“えんまく”がうまく機能しやすい。

しかし

 

「私は違うわね。」

「ナナミさんはなんだと思うんですか?」

 

「私はー」

 

ナナミが言葉を発しようとした時、我を取り戻したレッドが2体目のポケモンを繰り出そうとしていた。

 

「ドドラかしら♡」

 

「頼むぞ‼︎ドドラ‼︎」

 

出てきたのはナナミが予想した通りニドラン♂・ニックネーム・ドドラだった。

 

「⁉︎」

 

ブルーも驚いている。

確かにブルーの考えはタイプ相性を度返しした比較的柔軟な考えをしないと選択しないものだ、しかしブルーはポケモンの選択や柔軟な考えにおいてこの域にまで上り詰めていると思っていた。

 

「さっきね、ブルーちゃんが出て行った後少し話したの、そしたらレッド君もピカチューとヒッポで行くって言ってたわ。

だけどね、私少しアドバイスしたの。」

 

「・・・何をですか。」

 

ブルーが不機嫌になるのは最もだ、レッドの2匹目を聞く以前にナナミはレッドパーティー構成を知っていた、いや、誘導していたのだから

 

「それはちょっとまだ先かしら?

けど、レッド君がこの博打に乗ってくるとは思わなかったわ♡」

 

「ヘェ〜ヨカッタデスネ。」

 

 

「ドドラ‼︎“どくばり”を放ちながら近づくんだ‼︎」

「らっ‼︎」

 

紫色の針を放ちながら小さな体にある強力なバネを存分に利用してシマを次々に飛んでいく。

 

「ヒトデマン!プールに潜って‼︎」

「ヘアッ!」

 

ヒトデマンがプールの中に潜る、ドドラのどくばりはギリギリ届いていない。

 

レッドはクッと歯を食いしばる。

 

ーどうする⁉︎どうする⁉︎

この水深じゃ“どくばり”は届かない・・・

 

‼︎・・・そうだ‼︎

 

 

「ドドラ、集中しろ‼︎」

「らっ」

 

「ピカチューの時はフィールドの状況もあったけどジムリーダーとして弱点に対しての対策はしっかりしているというアピールをするためにわざと派手な方法で技を逃れた、けど今度は別に自分が得意なタイプでも苦手なタイプでもない、なら最善の手をとるはずだわ。・・・プールに潜るっていうね。

そうしたら・・・」

 

「“みずのはどう”‼︎」

 

パッとドドラの背後からヒトデマンがコアに水球を溜めて水中から姿を現した。

 

「“ふいうち”で攻撃するチャンスね」

 

 

 

「“ふいうち”‼︎」

 

 

 

「らっ‼︎」

「へがっ⁉︎」

 

ドドラの強烈な蹴りがヒトデマンの水球を潰し、水球の中の水エネルギーが逆方向に流れヒトデマンをプールサイドへと吹き飛ばす‼︎

 

「追撃だ‼︎“にどげり”‼︎‼︎」

 

レッドの指示を受けるとドドラは空中で一回転しその勢いを利用して空中から蹴りを放つ。

 

2回の大きな音と共にプールサイドの一部にヒビが入り、その勢いでプールが波打つ。

 

「“ふいうち”ですって⁉︎」

 

「ドドラ!連続で“にどげり”‼︎」

 

1回2回、3回4回、5回6回

 

合計3回の“にどげり”がヒット、一撃一撃の威力は先程の攻撃よりも低いが塵も積もれば山となる、相手に攻撃する暇がないうちにダメージを蓄積させる。

 

「相手はヒトデマン・・・ダメージを蓄積されたら・・・」

 

 

「ドドラ‼︎下がれ!」

「ヒトデマン!“こうそくスピン”‼︎」

 

ヒトデマンがドドラの蹴りの乱舞から脱するために放った回転攻撃はドドラに次の攻撃の起点になるダメージを与えることなく回避される。

 

「回復したくなるわよね。」

 

「ヒトデマン“じこさいせい”‼︎」

 

ヒトデマンの身体が光りだし1,2秒たち光が消えた後にはドドラの攻撃によって傷ついた身体はほぼなくなっていた。

 

「体力を回復する技か・・・」

 

 

 

「ふふふ、大丈夫よレッド君♡」

 

「・・・さっきの“ふいうち”を起点にした攻撃の乱舞がレッドにしたアドバイス・・・てわけじゃないみたいですね。」

 

「そうね、それ()()じゃないわね。」

 

(この人・・・一体何者?)

 

ナナミは今の攻防、更にはこの先の未来まで見通しているかのように話している。

 

正直、ブルーには理解できない。

“じこさいせい”を持つ相手にドドラが勝つという事を余裕を持って言えることが。

 

確かに“ふいうち”による先程の連続攻撃はカスミにも相当堪えただろう。

しかし、カスミも若いとはいえ立派なジムリーダー、次は確実に“ふいうち”を考慮した戦法でくるはずだ。

 

そうなるとドドラの他の攻撃で“じこさいせい”の回復力を上回る攻撃を出来るかどうか・・・正直、厳しいとしか思えない。

 

ーだいたいこの人は自慢気に話してるけどやっぱりドドラには悪いけどヒッポで行ったほうが絶対良かったに決まってる!

 

ブルーが心の中でナナミに悪態をついていたその時

 

「!くるわよ」

「へ?」

 

「ヒトデマン“みずのはどう”‼︎」

「避けるんだドドラ‼︎・・・ドドラ⁉︎」

 

ヒトデマンの攻撃を避けるようにとレッドはドドラに指示したがドドラはその場を動かない。

 

いや、動かないのではない。

 

 

 

()()()()()()()()()()()

 

 

「ドラぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎」

 

 

 

「‼︎」

「⁉︎嘘でしょ⁉︎これは・・・‼︎」

 

 

 

「進化の光・・・‼︎‼︎」

 

「知ってる?ブルーちゃん。」

 

スッと声のした方向・・・ナナミの方にブルーは顔を向ける、驚きのあまり立ち上がってしまったためブルーはナナミの魅惑的な上目遣いを目にした。

しかし、これは別にブルーをピンク色な世界に突入させるものではなかった。

どちらかといえばブラックな世界・・・何処か挑発的な視線だった。

 

「ポケモンの進化のタイミングはそれぞれ個体によって違うため正確には測れないの、ポケモンの中には進化することを嫌がるポケモンもいるしね。

 

だけど平均の数値はわかるの。」

 

無意識のうちにブルーは喉を鳴らした。

 

「ニドラン♂の進化する平均力量(レベル)は16って言われているわ。」

 

「〜〜〜〜‼︎」

 

 

ドドラを包む光が弾けとび姿を現したのは、ニドラン♂だった頃より身体が2倍近く大きくなり、ヒトカゲのリザードへの進化と同じようで顔が可愛らしいものから少し強面なものへと変わりそしてニドラン♂よりも鋭く長く尖った角を持つ

どくばりポケモン・ニドリーノ

 

「リッノォォォォォォォッ‼︎」

 

ニドラン押すだった頃とは違い重く低い声がハナダジムに響き渡る。

 

レッドは顔を下にして体を震わせている。

 

「〜〜〜‼︎いくぜドドラ‼︎‼︎進化したお前の力を見せてくれ‼︎‼︎‼︎」

 

「くっ・・・!ヒトデマン“みずのはど「“ふいうち”‼︎」しまっ・・・!」

 

ヒトデマンが技を発動せんと構えた瞬間、ドドラの成長した角が突き刺さる、バキッという音と共に今度はプールサイドを超えてジムの壁まで衝突する。

 

「“にどげり”‼︎」

 

ドゴゴォォォォッ

 

「ヒトデマンッ‼︎‼︎・・・あぁ・・・」

 

ニドリーノへと進化を遂げたドドラの放った“にどげり”はヒトデマンのHPを全て削り取り戦闘不能状態に陥らせていた。

 

「ヒトデマン戦闘不能ニドリーノの勝ち!」

 

ヒトデマン

select skill

みずのはどう

こうそくスピン

じこさいせい

あやしいひかり

 

「ふふっドドラが進化したことだけに気を取られて“ふいうち”への警戒を忘れるなんて・・・まだまだ若いってことかしら?」

 

「レッドにドドラがもう直ぐ進化するって教えたんですか。」

 

「そうね、あとは諸々の戦い方をぼやかして教えただけよ、私の発したキーワードを繋げて戦法にしたのはレッド君自身よ。」

 

ふふっと笑みを浮かべてレッドとカスミのジム戦を見つめるナナミにブルーの肌は限界を迎え鳥肌が立っていた。

 

(レッド・・・あんたの好きな女はとんでもない人よ。)

 

そう思った瞬間、自分の手をグッと握りしめるブルーは自分とナナミとの様々な事の差に嫉妬し悔しがっているのだと気づきはしなかった。

 

「やるわね、でもこの子が相手ならどうかしら?」

 

ブルーが繰り出したのはヒトデマンと形状が似た、五芒星が2つ重なった形の紫色の身体の中心に八角形の赤い(コア)を持つヒトデマンの進化形

なぞのポケモン・スターミー

 

「確か・・・エスパータイプを持ってたよなそいつ。」

 

レッドの言う通りスターミーは水タイプの他にエスパータイプを持っているそして

 

「あんたのニドリーノは毒タイプ!残念ながら私のスターミーとの相性は悪いわよ。」

 

毒タイプのポケモンはエスパータイプの技に弱い。

 

「・・・いや、まだだ。」

 

レッドは呟く。

 

「それでいいのよ、レッド君♡」

 

ナナミは笑みをこぼす。

 

(交代させろ交代させろ交代させろ交代させろ交代させろ交代させろ交代させろ交代させろ交代させろ交代させろ交代させろ交代させろ交代させろ交代させろ交代させろ交代させろ交代させろぉぉぉぉぉぉぉ‼︎)

 

そしてブルーは心の中で呪文を唱える。

 

「まだドドラには仕事が残ってる‼︎」

 

「スターミー‼︎“スピードスター”‼︎」

 

「ドドラ‼︎“どくばり”で向かい打て‼︎‼︎」

 

煌く星の攻撃に紫の針が次々と突き刺さり消滅する。

 

「ドドラ決めろ‼︎

 

“あまごい”‼︎‼︎‼︎」

 

「なっ⁉︎」

 

ドドラのいる上空を中心に雨雲が姿を現しバトルフィールドを包み込む、そして大量の雨が降り注ぐ。

 

「“あまごい”って・・・」

 

「私がレッド君に『技マシン』をあげたの♡」

「またあんたか・・・」

 

『技マシン』とはポケモンの潜在意識の中に眠る技を呼び起こす道具である。

 

ポケモンは様々な技を覚えることが可能だがそのポケモンがその種類のポケモンが覚える全ての技を覚えるとは言えないのである。

例えていうならレッドのヒッポが覚えている技“ニトロチャージ”と“つばめがえし”はヒトカゲやリザードが必ずしも自然に覚える事の出来る技ではない、他のヒトカゲやリザードによっては自然にこの技を覚えないポケモンもいるのだ。

 

しかし、それは自然に覚えることが出来ないだけであってその技を扱うための素質や潜在能力は持ち合わせているのだ。

 

その潜在能力を引き出すのが『技マシン』という道具である。

 

引き出したい技によって別々の波動を流し込みその潜在能力をポケモンに一切の負担をかけることなく引き出すことが出来る。

 

ポケモンの道具においてモンスターボールや転送システムに続いて有名で役に立っているものである。

 

「これさえあれば・・・再び出番よ。」

 

「ドドラ戻れ!頼むぞピカチュー‼︎‼︎」

 

「ピカッチュー‼︎\\\\(۶•̀ᴗ•́)۶////」

 

混乱状態による顔面崩壊によりボールに戻されたピカチューだが混乱状態はモンスターボールに戻ることにより治る状態異常なためもう事故は起こしていない。

 

「さぁ、舞台は整った。やろうじゃないか、お前の痺れるバトルを‼︎」

 

「チャー‼︎」

 

「バカね!スターミーはヒトデマンの進化形なの‼︎

同じような技を覚えてる可能性だってあるのよ‼︎“あやしいひかり”‼︎‼︎」

 

先程ピカチューを混乱状態に陥らせた技がスターミーによって繰り出される。

 

しかし

 

「光には光だ‼︎ピカチュー“フラッシュ”‼︎」

 

カッと強烈な光がピカチューから放たれ混乱状態に陥らせる“あやしいひかり”を完全に打ち消す。

 

そしてその強烈な光は同時にスターミーとトレーナーであるカスミの目を眩ます‼︎

 

「今だピカチュー!スターミーを水中に叩き落とせ‼︎」

 

その指示が言い終わる前にすでにピカチューは動き出していた、シマをテンポ良く飛び移りスターミーに近づく。

 

しかしスターミーの目が慣れるの方がはやかった、スターミーはピカチューの突撃を交わしピカチューの背後をとる。

 

「スターミー!“みずのはどう”‼︎」

「“でんきショック”で迎え撃て‼︎」

 

電気の槍と水と空気の塊が衝突、しかし

 

「貫けぇぇぇぇぇ‼︎」

 

電気の槍が水と空気の塊を貫きスターミーに突き刺さる。

 

“あまごい”は雨を降らせることによって水タイプと電気タイプの技の威力をあげ、炎タイプの技の威力を下げる技、ピカチューとスターミーの強化されたもの同士の技の衝突は相性と貫通性に富んだ電気タイプの技が勝利した。

 

「スターミー‼︎」

 

「今だピカチュー!“でんきショック”‼︎」

「避けて⁉︎」

 

バチィッと電気の槍がスターミーのいるシマに突き刺さるがスターミーは身体を回転させることによって空中に浮いてそれを避けた。

 

「ピカチュー‼︎」

「スターミー‼︎」

 

 

「“でんきショック”‼︎」

「“みずのはどう”‼︎」

 

 

電気の槍を通さんが如く“みずのはどう”で巨大な水の壁が作り出される。

しかし天候は雨、そして激しくバトルを繰り広げたせいでシマは水浸しになっている。

 

「“じこさいせい”‼︎」

 

全ての電気を放電するのが不可能だと判断したカスミは放電しきれなかった電気分のダメージを回復させる為に“じこさいせい”を発動させる。

 

「っ‼︎これじゃあ・・・」

 

ピカチューの力こそ強いがそのステータスの割に力量(レベル)が低いため覚えている技は少ない。

普通の“でんきショック”を超える威力を放っていても、元々の技の威力が低い分、今のピカチューの力をフルパワーで使うには技のスペックが劣っている。

 

ー“ボルテッカー”を使えれば・・・‼︎

 

おつきみやまでロケット団を一網打尽にした強力な技“ボルテッカー”。

ピカチュウが夫婦が“でんきだま”をして持った状態でピチューを産むことによって唯一ピチュー系列のポケモンが覚えることができる電気タイプ最大級の技。

 

しかしこの技は反動が大きく、何よりもピカチューのピカチュウを超えたステータスを持たせている原因は体内の“でんきだま”にあった、その技の根源である“でんきだま”の影響でピカチューの“ボルテッカー”は“でんきショック”以上に強化されている、言うなればピカチューのステータス並みにだ。

その技の反動は今のピカチューでは耐えられない、しかも、おつきみやまで放った“ボルテッカー”もピカチューの力量(レベル)が足りずに未完成の状態なのだ、それなのに反動に耐えられないその技をレッドはピカチューの力量(レベル)が十分になるまで間違っても使わないようにしようと図鑑のピカチューの技登録の4つの技の中に“ボルテッカー”の名はなく『ほか』に分類していたが・・・

 

ジム戦前にピカチューが“ボルテッカー”を選択して欲しいと頼んできたのだ。

 

レッドがピカチューを先発にしたのはそのためである、

ピカチューは自分がピンチに陥った時に“ボルテッカー”を放ち最低相手を道連れにするつもりでいたのだ。

 

正直ピカチューにそんなバトルをレッドは望んではいない。

 

しかしピカチューの意志に負けてしまい、“ボルテッカー”を選択してしまった。

 

そして今、唯一の電気タイプの技である“でんきショック”が相手に通じないとわかった今、ピカチューの耐え切れない大技にすがってしまっている自分が嫌で嫌で、情けなくて情けなくて仕方がない。

 

ーこの程度なのか・・・!俺自身の実力はこの程度なのかよ‼︎

 

 

 

「ピカッチュ‼︎‼︎‼︎」

 

 

「!・・・ピカチュー・・・。」

 

ピカチューはレッドを呼ぶと後ろ足で地面を蹴るポーズをとる。

 

「ピカチュー、それは・・・」

 

 

それはピカチューが“ボルテッカー”を選択してくれと頼んだ時に“ボルテッカー”を示したポーズであった

 

ボルテッカーは全力で走ることにより発動する為、唯一ピカチューが走ることによって放てる技というとそれしかない。

 

「でも⁉︎」

 

「チュッ‼︎」

 

ピカチューは天井を指差す、天井にはドドラが引き際に放った“あまごい”による雨雲が・・・

 

「チャッ‼︎」

 

そして次に下を指差す、そこには激しいバトルによって波打つプールがなった。

 

 

「雨・・・プール・・・!そういうことか・・・でも⁉︎それでも・・・」

 

「ピッピカッチュ!」

 

最後にピカチューは自分の胸をトントンっと叩きニヤッとやんちゃそうな笑みを浮かべる。

 

「信じろってか・・・」

 

「ピカッチュ!」

 

ーピカチューが覚悟を決めたんだ、俺がオロオロしてんのはおかしいよな・・・。

 

頼むぜ相棒‼︎

 

 

「ピカチュー‼︎接近しながら“でんきショック”だ‼︎」

 

「何度やっても同じよ‼︎“みずのはどう”で防御よ‼︎」

 

水の壁が雷の槍をやはりスターミーに届かせることなく抑え込む、

 

「“スピードスター”‼︎」

 

「走れピカチュー‼︎」

 

水の壁のサイドと上から星の輝きを纏った攻撃がピカチューを襲うがピカチューは走るスピードをあげ一気にプールサイドまで飛び移ると更にスピードをあげる。

 

「させないわよ‼︎“みずのはどう”‼︎」

 

「ボルテッカぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎」

 

 

ピカチューが巨大な黄金の雷に包まれ水浸しの周囲に放電しながらスターミーに突撃する、そしてスターミーが放った“みずのはどう”と激突するが

 

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ‼︎‼︎‼︎」

 

「ピカッチャァァァっ‼︎」

 

突き破る‼︎

 

黄金の閃雷はそのままスターミーとともにプールの中へと消え・・・

 

 

ドゴォォォォォッ‼︎‼︎‼︎

 

 

プールの中が激しい爆発音とともに黄金の光を放つ‼︎

 

 

「なんて威力・・・‼︎予想以上だわ⁉︎」

 

「でも反動が・・・⁉︎」

 

ナナミとブルーが目を凝らせながらバトルフィールドを見つめる、やがて光は収まり雨雲も消え去った。

 

そして全員が息を殺してバトルのどちらかポケモンが出てくるのを待つ。

 

 

そして真っ先に出てきたのは

 

 

 

「・・・スターミー」

 

 

身体中を黒く焦がしながら現れた戦闘不能状態のスターミーだった。

 

「これでレッド君の勝利は決定したわ。」

「相打ちでもレッドにはドドラがまだ残ってますからね。」

 

でも・・・ピカチューを犠牲にしての勝利なんてレッドは望んでいない。

 

全員が再び息を飲んでピカチューが出てくるのを待つ・・・すると

 

「ピィカぁ・・・( ̄u ̄;)」

 

身体中をスターミーと同じようにボロボロにしながらもHPを僅かに残したピカチューの姿があった。

 

「スターミー戦闘不能ピカチューの勝ち!よって勝者、チャレンジャー・マサラタウンのレッド‼︎」

 

スターミー

select skill

みずのはどう

じこさいせい

スピードスター

あやしいひかり

 

「ピカチュー‼︎‼︎」

 

レッドはプールに飛び込むとピカチューの元にまで行ってピカチューをギュッと抱きしめる。

 

「良くやったぞ!良くやった‼︎」

「ピカチュ❤︎」

 

「ドドラも良くやった‼︎」

「ドッラ!」

 

レッドはピカチューを褒めるとボールからドドラを繰り出しピカチューと同じように抱きしめる。

 

ピカチュー(ピカチュウ♂)

select skill

でんきショック

フラッシュ

しっぽをふる

ボルテッカー

 

ドドラ(ニドラン♂→ニドリーノ)

select skill

どくばり

ふいうち

にどげり

あまごい

 

「私の負けね。お互いいいバトル・・・いや、あんたの一方的な勝利よ。」

 

カスミがプールサイドに上がろうとしていたレッドの腕をとって引き上げ、レッドのことを称賛した・・・その顔には隠しきれない悔しさが浮かんでいる。

 

「自分のペースに持ち込もうとした瞬間にニドラン♂が進化するなんて・・・動揺して“ふいうち”のこと完全に忘れていたわ。・・・私の未熟さが全面に出ちゃったわね。」

 

「そんなこというなら俺もだよ、ピカチューに叱責されるまでうじうじと悩んでいたから。・・・もっとしっかりしないと。」

 

ふふふっと笑みを零しながらお互いの反省点を話し合う2人、そしてそれを眺める観客席では

 

「ピカチューが“ボルテッカー”の反動に耐えた・・・」

 

ブルーがボソッと呟いた言葉にナナミがいつものような微笑みでその答えを教える

 

「やった事は相手のポケモンがやった電気技封じと同じよ、水中に敵を引きづりこんで技を炸裂させ、プールの水を通じて雨粒に至るまでに放電させる事によって技の反動を減らしたのよ。・・・それでもギリギリだったけどね。」

 

「この威力でまだ未完成なんて・・・」

 

恐ろしい。

 

「ブルーちゃんはこの後どうするの?」

「え?」

 

「ブルーちゃんはハナダジムに勝利した後どうするの?」

「え、それはレッドと一緒に・・・」

 

「それでいいの?」

 

「え?」

 

何を言ってるんだこの人は?

 

「私がレッドと一緒に旅をする事に何か文句があるんですか・・・!」

 

ブルーは軽くナナミを睨みつけて言葉を放つ。

バトルの最中からナナミへの敵意は着々と募っていったがまさか直接こんな事を言われるとは思いもしなかった。

 

しかしナナミはいつもの笑みを崩す事はなく

 

「別に文句なんてないわよ?私が言いたいのはレッド君とブルーちゃんが一緒にいてもお互いこの先いい結果は得られないわよって事よ。」

 

「どういうこと・・・‼︎」

 

「ブルーちゃんはレッド君と一緒に旅をしている間に思ったんじゃない?お互い足りない部分が見えてきただとか、お互いのいいところを自分のものしていこうだとか。」

 

「‼︎」

 

確かにレッドとの旅を通じて学んだものはいくつもある、その中でナナミの言う通りに思ったことも幾度とある。

 

「それのどこが悪いのよ。」

 

「そう思うことは悪いことじゃないわ、だけど一緒にいてもそれをアウトプットが出ないのよ。」

 

「アウトプット・・・?」

 

「インプット・アウトプットって言ってねビジネス用語でインプットは関する知識や技術を取り込む、学習するという意味でアウトプットは吸収した経験や学習を元にして出来た、成果や実績のことを言うの。」

 

「・・・レッドと一緒に旅をしていても結果には結びつかないって事ですか・・・‼︎」

 

「人と一緒にいるっていう事はインプットする事に関しては効率がいいの、だけど取り込んだ知識の使い方を知らなければそれは無駄な知識。

人は無意識のうちに楽をする方を選んでしまう、だから自分が足りないと思っている事は自覚できても、その部分のフォローをもう片方、レッド君に任せてしまう節があるんじゃないの?」

 

何も言えなかった。

 

レッドと旅をして学んだ事は・・・インプットした事は沢山ある、だけどそれが結果・・・アウトプット出来てるというとそれはわからない。

 

正直、レッドから学んだものは勉強で問題を解くみたいに簡単に証明できるものではない。

しかし、ナナミの言っている事は的を得ている。

 

 

だけど、ブルーの心の中でナナミのいう事に従っては行けないという信号が出ている。

理由は今のレッドのジム戦だ。

 

レッドの喜びようからするに本人は気づいていないみたいだがレッドを勝たせたのは間違いなくナナミだ。

 

ドドラの進化しかり、“ふいうち”による戦法、そして恐らく・・・いや、確実に“あまごい”の技マシンを託し“あまごい”とこの水のバトルフィールドを利用して“ボルテッカー”を放てるように誘導したのも彼女だ。

 

ー悔しい・・・!

 

ブルーは自分から溢れんばかりに湧き出る悔しさがナナミのトレーナーとしての実力が完全に自分を上回っていた事ではない事くらいわかっていた。

 

ブルーが悔しいのは

 

旅の中で自分が『ライバル』として認めたレッドをまるで操り人形のように簡単に操作している事だ。

 

 

 

ー・・・・・。

 

 

「そうですね、決めました。」

 

 

スッと視線をレッドの方に向けてブルーは更に言葉を・・・自らの意志を口にする。

 

 

 

「このジム戦が終わったらレッドとは別れます。」

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

「そろそろ始まりますね、ブルーのジム戦。」

 

今度はブルーのいた席にレッドが今から始まるブルーのハナダジム戦を目に焼き付けんと少し前かがみの姿勢で座る。

 

「ふふふっ♡」

 

「機嫌がいいですね、ナナミさん」

 

ーそんなに俺がジム戦に勝利した事が嬉しかったのかな?そうなんじゃないかな⁉︎ていうかそれ以外ありえないんじゃないかなぁ⁉︎⁉︎

 

レッドが心の中でデヘヘヘッとしている中ナナミは一体目のポケモンのモンスターボールを握るブルーの姿をジッと見ていた。

 

 

ーまずこれで1つ抑えた。

 

 

ーあとは・・・

 

 

スッと今度はレッドの方に顔を向け、ふふふっと笑みをこぼす。

 

それを見たレッドに再び変な思考のスイッチが入り顔を真っ赤に染める。

 

 

 

ーレッド君、あなたよ♡♡♡

 

 

スッとナナミは自らのポーチの中のモンスターボールをその指でさする。

 

 

 

ーあぁっ♡楽しみっ!

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

−このジム戦が終わったらレッドとは別れる。

 

ブルーは持っているモンスターボールを強く握りしめる。

 

 

−だけど、例え離れていたって私とあなたが一緒に過ごしてきた時間が消えるわけじゃない。

 

 

「これより!マサラタウンのブルーとジムリーダー・カスミのジム戦を行います。それでは・・・」

 

審判の声がジム内に響き渡る。

 

 

−時間が消えないのなら、そこで作り上げた絆も消えない。

 

「バトルスタート‼︎」

 

−なら私は誓う。

 

 

ブルーとカスミが同時にポケモンを繰り出す。

 

「ヒトデマン‼︎」

 

カスミが繰り出したのはレッドと戦った時とは違う個体のヒトデマン。

 

 

−あなたを守れるくらいに強くなると!

 

−あの女の支配からあなたを解き放ってみせると‼︎

 

 

「ニドちゃん‼︎」

 

そしてブルーが繰り出したのはレッドとの旅の最中にゲットしたポケモン、ニドラン♀・ニックネーム ニドちゃん。

 

しかしー

 

 

−だから、しっかり私のバトルを見て、このバトルは私とあなたが・・・

 

 

もうニドちゃんはニドラン♀ではなかった

 

 

「嘘でしょ⁉︎また⁉︎」

 

「・・・」

 

「ハハッ‼︎流石だよ。」

 

 

−今日まで同じ道を歩んできた証になるから‼︎

 

 

 

 

「流石俺のライバル(ブルー)だ・・・‼︎」

 

 

 

 

「リッナァァァァァァァァァッ‼︎」

 

 

 

ブルーの思いに応えるかのように自らの姿を変えたニドちゃんの姿は、自らの角を成長させ突進による攻撃を得意とする形へ進化したニドリーノと違い二本足で立つその姿を見ると、殴る蹴るの肉弾戦を得意とする形へ進化したとわかるその姿は、ブルーの思いの強さを現していうかのように凛々しく輝いている。

 

ニドちゃんはニドラン♀からニドリーナへと進化を遂げた。

 

 

 

「さあ、始めましょう・・・‼︎」

 




ナナミさんが今回色々行動を起こしている原因は主に15話のレッドとブルーの出来事をレッドにつけていた盗聴器ですべて聞いていたからだったり・・・。

前の話で引きこもっていたピカチューが出てきたのもヒッポがヒトカゲからリザードへ進化していたのも実はレッドに会う前から知ってたり・・・つまりその時のナナミさんの反応は・・・?

・・・ナナミ、恐ろしい女・・・‼︎


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第19話 ブルーVSカスミ ニドちゃんの目覚め!

ポケモン映画の前売り券を購入

久しぶりに3DS起動

本体更新

エラー

......

十字キーの上、A、L、Rを押しながら電源をつけ本体更新を行う

エラー

.........どうしよう



 

「行くわよ!ニドちゃん‼︎」

「リィナァッ!」

 

「私はジムリーダー!そんなポンポンと負けるわけにはいかないのよ‼︎」

「デアッ‼︎」

 

 

ニドリーナへと進化を遂げたニドちゃんに臆する事なくカスミの1匹目、ヒトデマンは体を回転させ戦意を醸し出している。

 

「ヒトデマン“こうそくスピン”!」

 

先手はカスミのヒトデマン、体を回転させ中に浮くとそのまま真っ直ぐニドちゃんに襲いかかる。

 

「“にどげり”で迎え撃って‼︎」

 

真っ直ぐ襲いかかってくる星型ブーメランをニドちゃんは進化する事によって成長した逞しい足の連続二回攻撃で対応せんと両足に力をためる。

 

しかし

 

「ヒトデマン、ストップ‼︎」

「えっ⁉︎」

 

高速回転しながら襲いかかってきたヒトデマンがその回転を止め攻撃を中断する。

 

そして

 

「リィッー⁉︎」

 

タイミング悪く...いや相手の攻撃を中断するタイミングが良すぎた為、既に蹴りのモーションに入っていたため中断できずにヒトデマンのいる場所ギリギリの空気に蹴りが入る。

 

「“みずのはどう”‼︎」

 

「デアッ‼︎」

「リナッ⁉︎⁉︎」

 

その隙を突いてヒトデマンのコアに収縮された水の球体がまるで弾丸の如くニドちゃんに襲いかかり、ニドちゃんの体に触れた瞬間弾けとび進化し大きくなったニドちゃんの体を包み込みシマからプールのへ流す。

 

「もう1発!“みずのはどう”‼︎」

 

再び破裂する水の弾丸がニドちゃんを襲う‼︎

今度は技で凌ごうとすることも出来ずにニドちゃんはプールの水面から水中奥深くへと姿を消した。

 

「ニドちゃん⁉︎」

 

 

「火に油を注いじゃったわね。」

「え?」

 

速攻苦戦を強いられているブルーを見ていたナナミがポロっと言葉を発する。

 

「見るからにジムリーダーのカスミさんはアクティブな性格、レッド君とのバトルで呆気なく負けちゃった事を悔しがってレッド君とのバトル以上に集中する事はわかってたけど、まさかニドラン♀が進化しちゃうなんて...」

 

「自分が負ける原因となった心の乱れの原因をつくった奇跡が再び目の前で起こった、これは戦う相手は違えどカスミさんにとってはリベンジマッチになる。負けず嫌いな性格のカスミさんが自分がそれに2度負けるなんて事許せるはずがない。」

 

「確かに...」

 

レッドが心の中でブルーに対し罪悪感を抱いたその時。

 

「ヒトデマン!水中でトドメを刺すわよ‼︎」

「ヘアッ‼︎」

 

ブルーの指示と共にヒトデマンが水中へと潜って行く。

 

「畳み掛けに来た!」

 

「攻撃のテンポが早い!、ポケモンに指示をする隙を与えない戦い方を素でやってる‼︎」

 

相手のポケモンを水に巻き込んで動きを封じたり、アウェーなフィールドに引きづり込んだりと相手のポケモンが行動を起こさせないような攻撃を連続で行う事でトレーナーがポケモンに指示を出せない状況を作り出す。

 

これを当たり前の様に行う、これがカスミが若くしてジムリーダーとなれた所以であり歴代ハナダジムジムリーダー最強と言われる所以でもある戦い方。

 

「ポケモン育てるにもポリシーがあるやつだけがプロになれるの!貴方はポケモン捕まえて育てる時何を考えてる?」

 

カスミがブルーに問いかける。

 

「私のポリシーはね…」

 

プールの水面に波紋が広がる。

 

「水タイプポケモンで攻めて攻めて…攻めまくることよ!」

 

ドパァッ‼︎と高く水しぶきが上がる、そこから出てきたのは水中で放たれた“みずのはどう”により吹き飛ばされたニドちゃんだ、身体中を傷だらけにしているという事は水中で恐らく“こうそくスピン”の連打を食らったのだろう。

 

「ニドちゃん‼︎」

 

ブルーの声も虚しくニドちゃんはそのまま再びプールの中へと消えていく。

 

「もう一度行くわよヒトデマン‼︎」

「ヘアッ‼︎」

 

ニドちゃんが水中へ消えていった跡が残るプールの波紋に向かってヒトデマンが再び体をブーメランとかして突撃する。

 

「大丈夫」

 

「レッド君?」

 

「落ちる瞬間見えたんです、ニドちゃんの顔が」

 

レッドの脳裏にプールの水面にぶつかる瞬間のニドちゃんの表情がフラッシュバックする。

 

「ニドちゃんの眼は輝いてた...‼︎」

 

 

 

「にどげりぃぃぃぃぃ‼︎‼︎」

 

 

ドパァッ‼︎

 

「リッ・・・・「ヘアッ⁉︎」ナァァァァァァァァ‼︎‼︎‼︎」

ドゴゴジャァァァァァァッ‼︎‼︎‼︎

 

 

ブルーの叫びと共に出てきたニドちゃんが渾身の“にどげり”でヒトデマンを吹き飛ばした。

 

 

「さぁ、あなたの新しい力を見せて‼︎」

「ニッドォッ‼︎」

 

 

 

「“ひみつのちから”‼︎」

 

 

ニドちゃんの右腕がエネルギーを集中させられた事で白い光を纏う、そして...‼︎

 

「すげぇ...‼︎」

 

その光に引き寄せられるかの様にプールの水がニドちゃんの腕に龍の如くとぐろを巻きながら集って行く。

 

そして‼︎

 

「いっけぇぇぇぇぇぇぇ‼︎‼︎」

 

遠くで“にどげり”で吹き飛ばされ未だ動けないヒトデマンに向かってその白く輝く腕で殴るモーションをとると引き寄せられていた水流がまるでドリルの如く回転しながらヒトデマンに襲う

 

「ヒトデマンっ‼︎」

 

ヒトデマンに攻撃は直撃し、ヒトデマンは高く吹き飛ばされる

 

「もう一度‼︎“ひみつのちから”‼︎」

 

再び水流のドリルが中に投げ出されたヒトデマンを貫く!

 

「ヘアッ⁉︎」

「水中に逃げて‼︎」

 

貫かれたダメージにより自由落下していたヒトデマンがカスミの指示により未だに身体中に流れるダメージを気力で押し付けて再び“ひみつのちから”による追撃に合わない様に身体をスピンさせてプールに潜る。

 

「地形によってその効果を変化させる特殊な技“ひみつのちから”、この技のおかげで...」

 

「フィールドを利用する攻撃が可能になった、これで...!」

 

進化する事によってできなかった流れを掴むことができる...‼︎

 

(なんて思っていたら...)

 

「大間違いよ‼︎ヒトデマン‼︎」

 

ドパッと水しぶきを上げてヒトデマンが出でくる、その体は今までの戦闘が何だったんだと思えるくらいに光り輝いている。

 

「“じこさいせい”...‼︎」

 

「貴女のポケモンと私のポケモンの違いはそこよ、水の中での戦略を封じられたさっきの戦いと違ってこの戦いではそれを有効的に活用できる!

このフィールドの外でどんな奇策を貴女がうとうとそれは水の外でだけ‼︎水中に無限に入られる私達には意味はないのよ‼︎」

 

「ニドちゃん“ひみつのちから”‼︎」

「“こうそくスピン”で回避して‼︎」

 

回転には回転‼︎

 

水流の回転を利用して自らの回転数を上げながらヒトデマンがニドちゃんに近づく。

 

“ひみつのちから”はノーマルタイプの物理技、しかしこのフィールドにおいては水タイプの技へと変化している。

ヒトデマンにとってそれは効果今ひとつ、“ひみつのちから”によって相手のペースに持って行かれるくらいだったら少々のダメージを受けてでもこの技を封じる方が得策だとカスミは考えて、いや、ほぼ無意識のうちに選択した。

 

「ニドちゃん“にどげり”‼︎」

「“みずのはどう”‼︎」

 

「悪手⁉︎」

レッドが声を発する。

 

そしてレッドの言葉の通りブルーのこの指示は悪手だった。

 

ニドちゃんの蹴りが入るよりも先にヒトデマンの水の弾丸がニドちゃんを貫き爆散、ニドちゃんを空中に吹き飛ばす。

 

ひみつのちからは元々の性質上、片方の拳に力を集中させて相手を殴る技、しかしこのフィールドにおいてニドちゃんは右拳に力を集中させ周囲の水を制御していた、そしてこの状態から蹴り技である“にどげり”を放つにはその制御を解き、今度は両足に力を集中させなければならず時間のロスが起こる。

 

それは“みずのはどう”が炸裂するのには十分な時間だった。

 

「ニドちゃん“ひみつのちから”‼︎」

「その技はもう通じない‼︎“こうそくスピン”...⁉︎」

 

カスミが先程の“ひみつのちから”封じを行おうと指示したが...

 

「水流が起こらない⁉︎」

 

「これは...‼︎」

 

今まで右手のエネルギーに惹きつけられるかの様にニドちゃんの元に螺旋状に回転しながら集いヒトデマンを貫かんが如く攻撃していた“ひみつのちから”が今回はニドちゃんの腕に白く輝くエネルギーが纏うだけで何も起こらない。

 

「嵌められた!」

 

カスミが気付いた時にはもう遅くヒトデマンは何の障害もないままニドちゃんに襲いかかる。

 

「いけっ!」

 

「ニッドォ‼︎」

 

高速回転するヒトデマンに()()の“ひみつのちから”が炸裂する‼︎

ヒトデマンの高速回転は意味を成さずそのままシマに一直線に落下し激突する!

 

「ヒトデマン‼︎」

 

「“じこさいせい”させる暇を与えないわ!ニドちゃん“ひみつのちから”‼︎」

「ナァッ‼︎」

 

今度はニドちゃんがダメージで動けないヒトデマンに向かって一直線に落下する。

 

「“じこさいせい”!...は間に合わない...ヒトデマン‼︎“あやしいひかり”‼︎」

 

ドォンッ‼︎

激しい激突音と共にシマに亀裂が入る音が周囲の耳に届く。

 

「っ...」

 

そしてそこには戦闘不能となり倒れているヒトデマンと“あやしいひかり”によって混乱状態に陥ったままグッタリと倒れているニドちゃんの姿があった。

 

「ヒトデマン戦闘不能!ニドリーナの勝ち‼︎」

 

ヒトデマン

select skill

みずのはどう

こうそくスピン

じこさいせい

あやしいひかり

 

「混乱し攻撃の進路を変えて自らを攻撃することはギリギリなかったみたいね。」

 

「良くやったわヒトデマン戻って」

「良くやったわニドちゃん、1度休んどいて。」

 

カスミは戦闘不能になったヒトデマンを、ブルーは混乱状態に陥った体力の残り少ないニドちゃんをお互いボールに戻した。

 

「頼むわよ!スターミー‼︎」

「フシくん!お願い‼︎」

 

 

 

繰り出されたポケモンはカスミの得意とする水タイプに有効な草タイプであるフシギソウ・ニックネームはフシくん

 

しかし

 

「カスミのスターミーは水タイプだけどエスパータイプでもある、草タイプの他に毒タイプであるフシくんの方も優勢とは言えない。」

 

レッドの言う通り、スターミーは水・エスパータイプのポケモン、対してフシギソウは草・毒タイプ、お互いがお互いの弱点を持っている。

 

「さっきはエスパータイプの技を選択していなかったとはいえ、油断は出来ないぞ...」

 

「フシくん!“はっぱカッター”‼︎」

「ソウッ‼︎」

 

フシくんは自分の背中に背負っている蕾の付け根から高速で鋭く尖った葉をスターミーに向かって放つ、高速で放たれた葉はとても切れ味の良い刃物となってスターミーに襲いかかる‼︎

 

「“みずのはどう”‼︎」

 

最早カスミの使うポケモンの十八番(おはこ)となった水タイプの特殊技“みずのはどう”が襲いかかってくる葉の刃を迎え撃つ。

 

「斬り裂けっ‼︎」

「⁉︎」

 

しかし水の弾丸はその身を破裂させることなくスパッと音を立てて葉の刃に切り裂かれる。

そしてその刃はスターミーをも切り裂く‼︎

 

「スターミー⁉︎」

 

「“みずのはどう”の波動は接触した瞬間に凝縮された水が破裂しその水流の流れる圧力で相手や相手の攻撃を封じ込める技‼︎

なら破裂する前にそれを破壊できれば何も怖くはないわ‼︎」

 

「...それをするのに“はっぱカッター”は最適ってことね。」

 

「フシくん、いつの間に“はっぱカッター”を覚えていたんだ...?」

 

フシくんはおつきみやまでの戦闘のあとバトルする機会は殆ど無かったためレッドは知らなかったがフシくんはおつきみやまを抜けた時には既に“はっぱカッター”を覚えていたのだ、ブルーは新しく得たポケモン図鑑でそれを確認し、同時にレッドのジム戦でカスミの戦い方を見てそれを使った対策を練ったのだ。

 

そして自分の十八番(おはこ)を完璧に封じられたカスミは...

 

「スターミー“サイコキネシス”‼︎」

 

口元に僅かに上に上がっていた。

 

スターミが放ったのは自らのサイコパワーを相手の身体に直にぶつけるエスパータイプの強力な技“サイコキネシス”。現在発見されているエスパータイプの技でこの技より安定して威力の高い技は発見されていない。

 

「ソッ...‼︎」

 

放たれたサイコパワーの波動はフシくんの防衛本能が働き繰り出した“はっぱカッター”をいとも簡単に弾き返しフシくんの身体を波動が通過、フシくんの身体にサイコパワーが流れ込みその力が暴れ出し、フシくんに効果抜群の大ダメージが与えられる。

 

「フシくん‼︎」

 

「フッ...フッ...ソォォッ‼︎」

 

たった一撃でフシくんの足元はおぼつかなくなり息も切れている。

 

今のフシくんに“サイコキネシス”を連続で耐え切る力はない事がはっきりと示されている。

 

「...っ‼︎そんな強力なエスパー技を覚えているなんて...‼︎」

 

「あんまり選択したく無かったんだけどね・・・ポケモン協会にとやかく言われるのも面倒だから」

 

ジムリーダーがジム戦で使用するポケモンにはチャレンジャーのバッチ数で規制がかけられているがそのポケモンが使用する技に関して明確な規制はない、しかしバッチ所持数が少ないチャレンジャー相手に強力な技を選択し使用すると少々ポケモン協会からお小言を言われるのだ。

 

基本自由奔放に戦いたいカスミだがあまりお小言を言われると自分が短気な性格であることを無意識に自覚しているため自分の立場に対する防衛本能であまり強力な技を覚えさせはしたもののジム戦で選択したことは殆ど無い。

 

しかし今回レッド相手に自らの戦闘が出来なかった事が原因でカスミのうちにある自らの立場を守ろうという防衛本能よりも自由奔放に戦いという思いの方が強くなってしまったため流石に自分の専門である水タイプの技では無かったがエスパータイプの強力な技を選択したのだ。

 

「・・・」

 

ーどうする?エスパータイプの技はフシくんと同じ毒タイプであるニドちゃんに対しても効果は抜群、それにニドちゃんの体力は残り少ない...“サイコキネシス”を1度でも食らったら耐え切れない。

かといってフシくんじゃ“サイコキネシス”を封じる術はない・・・

 

ブルーは思考を巡らせる、自らの勝利の方程式を導くために。

 

ー私のポリシーはね...水タイプポケモンで攻めて攻めて...攻めまくることよ!ー

 

ーっこれしかない‼︎

 

「フシくん接近しながら“はっぱカッター”」

 

「無駄よ“サイコキネシス”‼︎」

 

再び先程と同じ様に葉の刃が念力の波動に弾かれる。

 

「プールに潜って逃げて‼︎」

 

ブルーの指示に従いフシくんはシマからプールに飛び込み“サイコキネシス”をかわす。

 

「スターミーあなたも潜って追撃して‼︎」

 

フシくんに続き今度はスターミーがフシくんを追ってプールに飛び込む。

 

ー頼むわよフシくん‼︎

 

水中に潜ったスターミーがフシくんが飛び込んだ方向をみる。

 

しかしそこにフシくんの姿はなくスターミーは周囲を見回す。

 

そして...

 

ビシィッ!

「!」

 

スターミーの身体に蔓が巻きつけられる、スターミーはすぐに自分に蔓を巻きつけた相手の正体とその方向に気づき体を向ける。

 

フシくんがいたのはスターミーの真下、スターミーが水中に飛び込んだ位置に素早く移動しスターミーが飛び込むだ際に起きる僅かな気泡をカモフラージュに使ってその位置を隠していたのだ。

 

「ソォォッ‼︎」

 

フシくんは蔓を巻きつけたスターミーを力一杯振り回す。

 

スターミーは反撃しようにも壁にぶつけられるせいで技を発動する事が出来ない。

更にスターミーは身体を回転させる事で逃れようともするが巻きつけられている蔓の力が強くて抜け出す事が出来ない。

 

スターミーは壁に激突する事を繰り返していく、やがてフシくんの息が限界に達した時、フシくんは更に力を振り絞ってスターミーを水中から今度は空中へと投げとばす‼︎

 

「スターミー⁉︎」

 

「隙だらけ!今よフシくん‼︎」

 

ドパッとフシくんが水中から飛び出すと背中に背負っている蕾をスターミーの方へ向ける。

 

「“ねむりごな”‼︎」

 

そこから放ったのは緑色の粉、そしてそれは空中に投げ出されたスターミーを包み込む‼︎

 

「スターミーっ‼︎」

 

スターミーは“ねむりごな”によって眠り状態にされ力を失ってそのままシマへと落下、激突する。

 

「チャンスだ‼︎」

 

レッドが叫ぶ。

 

「フシくん連続で“はっぱカッター”‼︎」

「フッソゥ‼︎」

 

眠ったスターミーに容赦ない葉の刃の雨が襲いかかる。

 

スターミーの特性は『しぜんかいふく』モンスターボールに戻す事によって全ての状態異常を回復する事が出来る特性。

カスミとしてはすぐにでもスターミーをモンスターボールに戻して眠り状態から回復させたいところだがこのバトルは2対2のシングルバトル、既にヒトデマンを倒されておりカスミは残り1匹、ルール上ポケモンを戻して同じポケモンを出すことは禁止されているためスターミーの特性『しぜんかいふく』を発動させることは出来ない。

 

つまりカスミはスターミーが起きるのを待つしか出来ないのだ。

 

「スターミー!起きて‼︎」

 

カスミは必死にスターミーに声をかけるがスターミーは起きる様子がない、その間にもフシくんの放つ草タイプの技によって効果抜群の大ダメージを蓄積させられている。

 

「スターミぃぃぃぃぃぃぃぃ‼︎」

 

「!」

「ソッ⁉︎」

 

スターミーの(コア)に再び光が灯る。

 

「目を覚ました!

スターミー!“サイコキネシス”‼︎」

 

スターミーの(コア)に光が灯りスターミーが立ち上がる前にカスミは技を指示、そしてスターミーは立ち上がると同時に指示された技“サイコキネシス”を放つ‼︎

 

「ソォォッ⁉︎」

キュイィッ‼︎

 

その速さに連続で技を発動し疲労が蓄積されていたフシくんに避ける事は出来なかった...

 

「フシくん⁉︎」

 

そしてフシくんは身体に力を入れる事が出来なくなった...

 

「フシギソウ戦闘不能!スターミーの勝ち‼︎」

 

フシくん(フシギソウ♂)

select skill

はっぱカッター

ねむりごな

つるのむち

とっしん

 

「くっ...フシくん、ありがとう。」

 

そう言ってブルーはフシくんをボールに戻す。

 

「まずいぞブルー...あと残っているのは...」

 

「ニドちゃん‼︎」

 

ブルーが繰り出したのは先程ヒトデマンを撃破し、その直前に混乱状態にさせられたためボールに戻った、毒タイプのポケモンニドリーナ。

 

「リッナァァァッ!」

 

ニドちゃんは雄叫びを上げるがその身体は先程のバトルでのダメージがフシくんがバトルしている間に回復する事が出来なかった事を隠す事は出来ていなかった。

 

「貴女が最後の砦よ‼︎“ひみつのちから”‼︎」

 

ヒトデマンを倒す要となった技が今度はその進化系であるスターミーに牙をむく‼︎

 

「“サイコキネシス”で迎え撃って‼︎」

 

スターミーのサイコパワーの波動が螺旋状に回転しながら襲ってくる水流とぶつかり、相殺する‼︎

 

しかし

 

「今よ‼︎“ひみつのちから”‼︎」

「えっ⁉︎」

 

弾けた水流から現れたのは右拳にエネルギーを集中させたニドちゃんの姿...

 

「水流と一緒に突っ込んできたの⁉︎“サイコキネシス”が怖くなかったの⁉︎」

 

カスミの言う通り、ニドちゃんは水流を放つと同時にカスミとスターミーの視線が水流に向いた事を確認してすぐに水流の背後に隠れてスターミーに突撃していたのだ。

 

もしスターミーの“サイコキネシス”がフシくんの“はっぱカッター”と同様、“ひみつのちから”で作り出した水流を突破していたらそのまま“サイコキネシス”は確実にニドちゃんを捉えていた、そして確実にニドちゃんは戦闘不能になっていただろう。

 

「賭けに出ないと勝てる状況じゃないのよ‼︎それに私は信じてた!ニドちゃんの“ひみつのちから”は“サイコキネシス”に負けないと‼︎」

 

「っ...‼︎スターミー‼︎」

 

「狙うは一箇所!スターミーの弱点」

 

ニドちゃんが白く光る拳を...

 

(コア)‼︎‼︎」

 

「ナアァッ‼︎‼︎」

 

スターミーの赤く光る(コア)を正確に撃ち抜く‼︎‼︎

 

「よしっ‼︎」

 

「きぃまっっったぁぁあぁぁぁ‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

レッドが叫ぶ‼︎

 

(あぁ、速く終わんないかなぁ〜、どうでもいいんだよなぁ〜このバトル、ていうか負けて欲しいんだけどなぁ〜どっちかっていうと。)

 

ナナミは心の中で悪態を吐く‼︎そう‼︎

 

 

 

 

まだバトルは終わっていない...‼︎

 

 

 

「“みずのはどう”‼︎」

 

 

 

「っ⁉︎ニドちゃん‼︎」

「ナアっ...ガッ⁉︎」

 

放たれた“みずのはどう”をニドちゃんが咄嗟に“にどげり”を発動し粉砕しにかかるが一撃目が当たった瞬間水の弾丸が爆散、そのままニドちゃんを巻き込もうとするがニドちゃんは“にどげり”の2発目を地面にぶつけ、そのまま飛び上がり巻き込まれるのを防いだ。

 

そして再びシマに足をつけるとスッと前を見据える。

 

そこにはまるでエネルギーのす少なさを表しているのか(コア)がピコンピコンと音を鳴らしながら点滅している。

 

「どうやって今の攻撃を耐えしのいだのかしら?」

 

確実にクリーンヒットした筈だった、フシくんとの戦闘でニドちゃんに負けず劣らず体力を消耗したスターミーなら弱点である(コア)にクリーンヒットされれば確実に倒れていたはず...

 

するとカスミはフッと笑みをこぼして言った。

 

「特別に教えてあげるスターミーはニドリーナの攻撃を受ける前に“リフレクター”を発動したの。」

 

「“リフレクター”⁉︎」

 

“リフレクター”

 

相手の物理攻撃のダメージを暫くの間半減させることの出来る防御技。

スターミーはこれを発動することによって物理攻撃である“ひみつのちから”を受けても戦闘不能にならなかったのだ。

 

「流石に時間がなくてダメージ半減とまではいかなかったけど...」

 

「チェックじゃない?コレ。」

 

カスミがブルーに問いかける。

 

ーどうするー

 

“リフレクター”は物理攻撃のみを半減させる技、つまり特殊攻撃にはこの技は意味をなさない、しかし...

 

ーニドちゃんの選択した技に特殊攻撃は...

 

ブルーが選択したニドちゃんの技は

“ひみつのちから”

“にどげり”

“どくばり”

“しっぽをふる”

 

相手のステータスを下げる変化技である“しっぽをふる”以外は全ての物理攻撃技である。

 

ーもうさっきの攻撃は...いや、今まで使った策は全て通用しない。

 

お互いのポケモンの体力が少ない今、1度見せた策は返される可能性が高すぎる。

ましてや相手は若いとはいえジムリーダー、舐めてかかって勝てる様な相手じゃない。

 

ーどうすれば...‼︎

 

ブルーの思考が見えない壁によってせき止められる。

 

それは同時にポケモンとトレーナーの見えない繋がり...言葉を交わすことなく意思疎通出来る特殊な関係性を断ち切ることと同意。

 

「!、スターミー‼︎」

 

そこをカスミは見逃さない。

 

「⁉︎しまっ...」

「ナッ‼︎」

 

スターミーが“サイコキネシス”を放つ、反応の遅れたニドちゃんもブルーの指示なく“ひみつのちから”で対応する、そして技の攻防は先程と同じ様に両方が打ち消しあって終了した。

 

しかし

「いけっ‼︎」

 

「⁉︎」

 

打ち消しあった後にニドちゃんが目にしたのは自分に向かって既に放たれている“みずのはどう”、

 

「しまっ⁉︎」

 

それは“サイコキネシス”の後にスターミーが放っていた一撃、

 

先程、ブルー達がした技の背後に技を潜ませる攻撃方法。

 

“ひみつのちから”で力の重心が右手にかかっている今のニドちゃんに“にどげり”を利用した先程の回避行動は行えない。

 

「っ...‼︎“ひみつのちから”‼︎」

 

苦し紛れに放ったのは水流を操らずに使用する形の“ひみつのちから”

 

「ナアッ‼︎」

 

パァンッ‼︎と音を立てて“みずのはどう”は水滴へと姿を変えて打ち消された。

 

「っ...‼︎」

 

カスミの表情に動揺が見える。

 

ニドちゃんに遠距離攻撃可能の“ひみつのちから”がある限り大きな隙を見せる“じこさいせい”による体力の回復は出来ない、下手をすれば回復している間に大技を食らってやられてしまうからだ。

 

ー体力の回復が出来る“じこさいせい”は必ず選択している筈、だとしたらスターミーがこのバトルで使える技は“みずのはどう”“サイコキネシス”“リフレクター”“じこさいせい”の4つ。

 

つまり攻撃方法は“みずのはどう”と“サイコキネシス”の2つだけ、

 

問題は...

 

「“リフレクター”...!」

 

再びブルーの思考方向が“リフレクター”へと傾く。

 

その時

 

 

 

「考えすぎるなぁー‼︎‼︎」

 

 

 

「⁉︎レッド...」

 

 

突然、ブルーに向かって叫んできたのは今まで真剣にカスミとブルーの戦闘を見ていたレッド。

 

「“リフレクター”だかなんだか知らねぇけど‼︎ダメージを半減させるだけだろ⁉︎

ダメージの半減がなんだよ‼︎威力の半減がなんだよ‼︎

攻撃することに変わりはねぇだろ‼︎

ダメージが2分の1なら2回攻撃すればいいだろ‼︎100発必要だったら200発殴ればいい話だろ‼︎

 

ニドちゃんはお前の指示を待ってるんだ‼︎トレーナーのお前が硬直してどうするんだよ‼︎」

 

レッドの言葉は滅茶苦茶な言い分に過ぎない

しかしそれは...

 

「...‼︎‼︎」

 

 

ブルーの心に火をつけるには最も有効的な()()だった。

 

 

()()()()()()という火種を与えるという

 

 

ー何言ってんのかしら、あいつ...

それが大変だから迷ってんるじゃない、考えてるんじゃない...

 

ーでもそれ以上に...

 

ブルーが自分の拳を強く握る、その僅かな音に反応したのかニドちゃんがブルーの方を振り向く。

 

ー何をやってるのかしら私は...‼︎‼︎

 

 

ーバトルが始まるときに誓ったじゃない

 

 

スッと目の前の()を見据える。

 

ーレッドを守れるくらいに強くなるって、あの女の支配から救い出すって‼︎

 

 

 

ーそして私とあなたが歩んできた道の大切さと思いを証明するって‼︎‼︎‼︎

 

 

「ニドちゃん‼︎」

 

ブルーの呼び声、その音波の振動に当てられたニドちゃんの瞳に光が灯る。

 

 

『赤い光』が

 

 

 

「ニッドぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

その光はニドちゃんの体に纏わされ周囲の空気に熱を帯びさせる‼︎

 

「嘘っ...⁉︎これってまさか...」

 

ポケモンにはそのポケモンの種類によってある程度決まっていることがある。

 

そのポケモンのステータス。

 

そのポケモンの技。

 

そのポケモンの性格。

 

そして...

 

 

そのポケモンの特性ー

 

 

ポケモンには産まれた時から特殊な能力を宿す特性を持っている。

しかし極稀に特性が使えないポケモンが産まれてくることがある、しかしこれは特性を()()()()()()のではなくまだ特性が()()()()()()()だけだった。

 

そしてその現象は特殊な特性を持つポケモンに多く起こっていた。

 

ニドちゃんもそれに当てはまる。

 

「“ひみつのちから”‼︎」

 

その特性はー

 

「ナァァッ‼︎」

 

「“サイコキネシス”‼︎」

「無駄よ‼︎」

 

サイコパワーの波動と白きエネルギーを纏った拳が衝突、そして

 

「ガアッ‼︎」

 

ニドちゃんの拳が“サイコキネシス”を粉砕する‼︎

 

「なっ...⁉︎」

 

 

『はりきり』

 

自らの命中精度を犠牲にして攻撃能力を()()上昇させる特性。

 

これによってニドちゃんの得意とする物理攻撃の威力が上がり、今まで互角の力を誇っていた“サイコキネシス”を打ち破ったのだ。

 

「例え『はりきり』で攻撃力を上げたとしても“リフレクター”のダメージ減量の値を上回る事はないわ‼︎

状況は全然変わってないのよ‼︎」

 

カスミはこれまでの戦いからブルーがニドちゃんの技の選択に特殊攻撃技が入っていないのを確信していた。

 

『はりきり』による攻撃力の平均上昇数値はおよそ1.5倍、“リフレクター”による物理攻撃半減の数値を上回ってはいない。

 

その差にカスミは勝利の光の在り処を見据えていた。

 

しかし

 

「ダメージ半減なんて気にするのはもう止めたわ...これから私も単純になってみるの」

 

ブルーも同じ様に勝利の光の在り処を見据えていた。

 

それは『はりきり』による攻撃力上昇によって見えたものではなく...

 

「自分のポケモンの事だけを考えて動く強さを()()()()見せてあげる‼︎」

 

レッドとの旅を通じて感じたレッドの強さからくる勝利の光からだった。

 

「ニドちゃん!突っ込め‼︎‼︎」

「らっ‼︎」

 

ニドちゃんがまるでこれが最後の攻撃(ラストアタック)であるかの様にシマを移動しスターミーに近づく。

 

「『はりきり』で攻撃力は上がった代わりに命中率が下がってる...お互いに消耗しきっている中、攻撃を相手の抵抗無しに外す事は相手に流れを持っていかれることを意味してる...ニドちゃんの特性の発動で流れがブルーにきてるこの状況で流れを持っていかれたら...確実に負ける‼︎」

 

レッドがこのバトルで何回目かわからない行為...額に汗を流し、両手をきつく握りしめる。

 

「“みずのはどう”」

「“にどげり”‼︎」

 

ニドちゃんは一撃で水の弾丸を無効化しもう一撃で空高く飛び上がる。

 

「“サイコキネシス”からの“リフレクター”‼︎」

 

「“ひみつのちから”‼︎」

 

急降下で放たれた“ひみつのちから”は“サイコキネシス”を突き破りそのまま一直線に“リフレクター”で防御壁を張ったスターミーに襲いかかる‼︎

 

「貫けエェェェェ‼︎‼︎」

 

「ナァァァァァァァァッ‼︎‼︎」

 

 

 

 

ガキィィイッ‼︎‼︎‼︎

 

 

 

 

「⁉︎」

「ニッ⁉︎」

 

 

 

しかしその攻撃は防御壁によって弾かれてしまう。

 

「スターミーのタイプ一致の“サイコキネシス”を打ち消した事で威力を落としたのよ‼︎止めよ‼︎“みずのはどう”‼︎‼︎」

 

攻撃を弾かれ空中に投げ出されたニドちゃんは重力に逆らえず落下、そしてそこを狙って放たれる水の弾丸。

 

カスミは勝利を確信した。

 

しかし

 

2人と1匹は違った。

 

 

レッドは叫ぶ、まだだ‼︎と

 

ブルーは叫ぶ、ニドちゃん‼︎と

 

 

そしてニドちゃんは...

 

 

ーまたその技ですか...?もうその技は...

 

 

ー見飽きましたー

 

 

「ドォッー‼︎」

 

「⁉︎」

 

カスミの目が大きく見開かれる、そしてそれは諦めずにニドちゃんを信じた2人そうだった。

 

 

ニドちゃんが自らの掌に作り出したのは水の弾丸、そしてそれを投げるかの様に空中で向かってくるスターミーの水の弾丸にぶつける。

 

 

「“みずのはどう”⁉︎」

 

 

ニドちゃんがカスミのヒトデマンやスターミーの放つところを見て覚えたその技はタイプ一致で放っているスターミーの“みずのはどう”よりも威力は低いが軌道を逸らすには十分だった。

 

「ブルーッ‼︎‼︎」

 

今度はレッドがブルーに声をかける...今だ‼︎ニドちゃんに指示を‼︎と

 

「ニドちゃん“みずのはどう”‼︎」

 

再びニドちゃんが水の弾丸を放つ。

 

「舐めないで!スターミー‼︎こっちも“みずのはどう”‼︎」

 

ドォンと再び2つの弾丸が炸裂し今度は互いに爆発し打ち消しあう

 

そして...

 

「スターミー“サイコ...」

 

カスミが指示をしようとした時、

 

「ナァァァッ‼︎」

 

爆風の中からニドちゃんが現れ驚きの速さでスターミーに迫っていた、その両手には“ひみつのちから”によるエネルギーのオーラが纏わされていた。

 

「ニドリーナの着地地点は確実にシマじゃなかったのになんでこんなに速いのよ⁉︎⁉︎」

 

プールに着地、もとい飛び込んでからスターミーに飛びついてきたにしては速すぎると感じたカスミが思わずその動揺を隠さずに大声で叫ぶ。

 

「“にどげり”で水面を蹴ったのよ‼︎」

「なっ...⁉︎」

 

同時攻撃である“にどげり”の速さを利用して着地した片足が水に沈む前に蹴り出すことで水に沈むのを防ぎ更に意表をつく奇襲を可能にした。

 

そして

 

「ニドちゃん“ひみつのちから”‼︎‼︎‼︎」

 

「リッナァァァァァァァァァッ‼︎‼︎‼︎」

 

 

最後はスターミーの()に“ひみつのちから”の2連撃が決まりそのままカスミを横切り背後の壁に激突した。

 

「スターミー...」

 

そしてスターミーは力を失って倒れてしまった。

 

スターミー

select skill

みずのはどう

サイコキネシス

リフレクター

じこさいせい

 

「スターミー戦闘不能!ニドリーナの勝ち‼︎よって勝者チャレンジャー・ブルー‼︎」

 

「いやぁぁぁたぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎」

「リッナァァァァァ‼︎」

 

ニドちゃん(ニドラン♀→ニドリーナ)

select skill

ひみつのちから

にどげり

どくばり

しっぽをふる

ひみつのちから

にどげり

どくばり

みずのはどう

 

「おめでとう、ナイスバトルだったわ。これが私に勝った証拠、ブルーバッジよ」

 

そう言ってカスミが差し出したのは、水の雫の形をした青いバッジ。

 

「いやぁ、今日もう驚きの連続よ、ジム戦中に2回も進化を見て、新しい技を覚えてってもう...」

 

 

「カスミさん‼︎‼︎」

 

 

「?何よそんなに慌てて...」

 

カスミが笑みをこぼしながら話していた時、先程まで審判を務めていた人が一度別室に帰った後に再び今度は大きな音を立てて扉を開け、カスミの名を口にした。

 

 

「今ポケモン協会から連絡がありまして...」

 

「ポケモン協会?」

 

ーまさか“サイコキネシス”を選択したことがもう伝わったの⁉︎速すぎない⁉︎

ていうかチクったのはダレよ⁉︎⁉︎

 

「おつきみやまがロケット団に占拠されていると連絡があって対処しに行ったニビジムジムリーダー・タケシさんと手持ちポケモンが意識不明の重体で発見されました‼︎」

 

「なっ⁉︎」

 

「嘘だろ...」

 

その話を聞いていたレッドが思わず呟く。

それもそうであるレッドにとってはブルーとともにおつきみやまのロケット団は追い払ったと思っていたからだ。

 

タケシがやられたのはそれとは次元の違う相手だというのに。

 

 

「幸いタケシさんは意識を取り戻しましたが...手持ちのポケモン達は...」

 

 

止めろ...止めろ...

 

レッドがカチカチと歯と歯の衝突音を起こしながら身体を震えさす。

 

油断していた...愉悦に浸っていた...

 

その結果オーキド博士がカスミにも連絡を入れようとしたのを必要ないという結論に持って行ってしまった...俺がぁ...‼︎

 

敵はまだ残っていたのに...‼︎

 

 

 

 

 

 

 

「6匹中3匹の死亡が確認されました。」

 

 

 

 

 

レッドの目の前が真っ暗になった。

 



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第20話 カスミ(それにしてもレッドって…)

ニビシティ・ポケモンセンター

 

「うぅ...」

 

一室の病室に数時間ぶりにそよ風によるカーテンの靡く音以外の音が発せられた。

 

「!」

 

バッとハッキリとした音を立ててニビジムジムリーダー・タケシが起き上がる。

その顔には目が覚めたばかりにもかかわらず既に眉間に皺が寄り冷や汗をかいている。

 

「みんな...‼︎」

 

そう言うとタケシはベッドを降りて慌しく病室を後にする。

 

白く綺麗な筈のポケモンセンターの通路が今のタケシの視界には自分を地獄に落としかねない負の黒道に見えている。

 

ー無事でいてくれ...‼︎頼む...‼︎

 

そう願いながら徐々に目に見えない...タケシが無意識のうちに幻想した闇に足を取られながらも一歩ずつポケモンセンターの集中医療室へと向かっていく。

 

ドサイドンによって瀕死状態にされたポケモン達が治療されているとしたら集中医療室以外考えられない、そしてハガネール...ロックとクロバット...ノイズ以外のポケモン達は瀕死状態にされた上で更に追い討ちを食らっていた、だとしたら治療後も集中医療室に設置してあるベッドで安静にしている筈だ。

 

タケシは必死に走った、最悪の結果を恐れて自らの足を止めようとする心の闇の妨害に遭いながらも、自分のポケモン達は無事でいるという希望の光で闇の侵食を防ぎながら目指す場所へと進んでいく。

 

 

ーそして

 

 

 

 

 

「あ...」

 

 

 

 

 

 

「!タケシ君...」

「っ...」

「......」

 

 

 

 

 

タケシが見たのは最悪の地獄だった。

 

 

 

 

 

「嘘だろ…なぁ…なぁ‼︎‼︎」

 

 

 

タケシはベッドに…いや、身体の腐敗を防ぐためのベッドに横たわっている自分のポケモン達に足を引きずるように歩きながら近づいていく。

 

そのベッドの上で横たわっているのはカブトプス、ゴローニャ、ゲンガーの3匹。

 

違うベッドに眠らされているウソッキーとその巨体ゆえモンスターボールに入ったまま治療されているハガネールはモンスターボールに入っているポケモンの状態を表すランプが正常の緑である事から命に別条はない事は分かった。

 

 

がそんな事は今のタケシには無意味

 

 

失ったものの大きさによる傷はタケシの中の心の闇と共鳴しタケシの全てを包み込む。

それは全てタケシの心情を表すための比喩でしかないが、タケシの自身自分でも制御の利かないほどドス黒い感情が溢れ出ている事に気づいていた。

 

「…ごめんなさい、ウソッキ「何も言わないでください。」……」

 

ジョーイの言葉をタケシが制す、ジョーイはタケシの言葉通り何も言わない、言いたくない。それはその場にいたオーキドとグリーンも同じ。

 

「…うぅっ…!」

 

 

 

タケシの悲しみの音だけが病室に響く。

 

 

 

 

しかしその場にいたオーキドとジョーイだけにはガラスが割れる音が聞こえた気がした。

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

「レッド…」

 

タケシのポケモン達におこった悲劇を聞いた後、レッドは1人ポケモンセンターの自分の部屋に篭ったきり出てこなくなった。

ブルーやナナミの更に心配してきたカスミが言葉をかけても一言もかえってこない。

 

「おつきみやまで私とレッドはロケット団と戦ったんです。」

 

「!」

 

ブルーの言葉にカスミが反応する。

 

「最終的に大勢のロケット団に囲まれて全滅にまで追い込まれた所で今まで引きこもっていたレッドのピカチューが出てきてあの強力な電撃で逆にロケット団を全滅させたんです。」

 

「あのピカチューが…?

確かにピカチュウにしては能力が高かったけど…そこまで…」

 

ブルーは詳しくは言葉にしない、ピカチューの強さを、ピカチューの力量(レベル)はレッドの手持ちポケモンの中で一番低い事を、そしてその力量(レベル)は未だに10に届いていないことも。

 

「まさか敵が残っていたなんて…思いもしなかった。タケシさんを倒せるなんて思いもしなかった…」

 

「あなた達のせいじゃない。悪いのは全部ポケモンの命を奪ったロケット団よ。」

 

「そうですけど…そう簡単にどうこう出来る問題じゃないんですよ。

子供ですから…私達。」

 

そう言いながらブルーはずっとレッドの部屋の扉を見つめていた。

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

ブルーとカスミが話していた頃、部屋に閉じこもっているレッドはピカチューを抱き抱えてベッドに横になっていた。

 

「なぁピカチュー…」

「ぴかちゅ?」

 

ピカチューが首を傾げる。

 

「俺…どうしよう。」

「ぴ?」

 

ーどういうこと?

 

ピカチューが問いかける。

言葉は通じなくてもニュアンスはレッドに伝わる。

 

「タケシのポケモン達の事を聞いて、最初はロケット団に対する怒りや恨みで一杯だったんだ…けど」

 

ギュッとレッドのピカチューを抱きしめる腕に力が入る。

 

「今は…怖いんだ。

ロケット団と戦う事が…」

 

ピクッとピカチューの長い耳が反応する。

そしてその瞳に映るのは部屋の微かな光を反射させているレッドの瞳。

 

その瞳は揺らいでいた。

 

光の反射で、涙で、そして心の揺らぎによって

 

「お前達を失う事が怖いんだよ…。」

 

ジムリーダーであるタケシが鍛え上げてきた1番の仲間達が全滅し、更にその半分の命を奪われた。

 

ポケモントレーナーとして駆け出しのレッドがそんな相手と対峙したら自分を含めてみんなの命は無いだろう。

 

ただでさえおつきみやまの件で自分はロケット団に楯突いている、あの人数からして大きな作戦だったに違い無い。

それを滅茶苦茶にした自分達をお咎めなしにはしないだろう、するような奴らならポケモンの命を奪う真似はしないだろう。

 

「俺の中でもうタケシの気持ちを考える余裕なんて無いんだ…ははっ、俺が愉悦に浸ってオーキド博士に確証の無い事を言った所為なのに…最低だよ。…色々と」

 

吐きすてるかのように言葉を放つレッド、そしてそれをピカチューは黙ってジッと…

 

 

 

「ぴぃかぁちゅーっ‼︎‼︎」

 

「あびあばばばばばばばばば⁉︎⁉︎」

 

 

 

 

見つめることはしなかった…。

 

 

ー部屋の外ー

 

『ぴぃかぁちゅーっ‼︎‼︎』

 

『あびあばばばばばばばばば⁉︎⁉︎』

 

「⁉︎」

「何⁉︎ピカチュー⁉︎レッド⁉︎」

 

ー部屋内ー

 

 

「ぬぁぁにぃぃすぅぅんだぁぁぁ⁉︎⁉︎」

「ぴかぴかちゅっちゅ( ̄‥ ̄)=3 フン」

 

「何怒ってんだよ…?」

 

顔を背けるピカチューにレッドが電気の痺れによって体を硬直させながら問いかけているとレッドの腰のモンスターボールの1つから真っ赤な体をした厳ついあいつが出てきた。

 

「リザッ」

「ぬおっ⁉︎ヒッポ⁉︎いきなりどうし…」

 

 

 

「リッザァァァァァァァッ‼︎」

「のぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ⁉︎⁉︎」

 

 

リザードの“りゅうのいかり”‼︎

グリーンのカメールにトドメを刺した現在のヒッポの切り札である青い炎がレッドに襲いかかる、というかすでにレッドは食らっていた。

 

「ヒッ⁉︎ヒッポさぁぁぁん⁉︎それ洒落になんないから⁉︎死んじゃうから⁉︎天国に召されちゃうから⁉︎」

 

既に食らった後にそんな事を言っても説得力は0である。

 

 

 

ー部屋の外ー

 

『リッザァァァァァァァッ‼︎』

『のぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ⁉︎⁉︎』

 

「ねぇ、レッドってまさかマz…」

「違います‼︎」

 

 

 

ー部屋内ー

 

そしてヒッポに留まらずキークとドドラがレッドのモンスターボールからその姿を表す。

 

「ははっ…やあ、キーク、ドドラ…えーと、お前ら暇か?」

 

 

 

「キィィッ‼︎」「ニッドォォォッ‼︎」

 

「やっぱりねぇ⁉︎アブゴブサブナブゥッ⁉︎」

 

 

キークの“からてチョップ”とドドラの“にどげり”がレッドに炸裂‼︎

レッドはそのまま部屋の壁に激突‼︎

 

 

 

ー部屋の外ー

 

 

『キィィッ‼︎』『ニッドォォォッ‼︎』

 

『やっぱりねぇ⁉︎アブゴブサブナブゥッ⁉︎』

 

「ねぇ、やっぱりレッドって…」

「だから違いますって‼︎レッドォォォッ⁉︎」

 

 

 

ー部屋内ー

 

「なぁぁぁぁあん⤴︎なんだぁぁぁぁぁぁ⤴︎⁉︎

お前らぁぁぁぁぁ⁉︎

俺は今悲しんでんの悩んでんの不安がってるの⁉︎ただでさえ少ない俺のプラトニックな何ちゃらな時間を滅茶苦茶にしないでくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ⁉︎⁉︎⁉︎」

 

 

 

ー部屋の外ー

 

「プラトニックって恋愛において肉欲を問わずに相手を思うさまのことよね。

…言葉間違ってない?」

 

「そこは突っ込まないであげて下さい…。」

 

 

ー部屋内ー

 

「ぴっかぴかぴかぴかっちゅ‼︎」

 

「何なんだよぉ〜俺のHPはもう0だよぉ〜俺のプラトニックな時間を返してくれよぉ〜。」

 

直訳

俺の{肉体上の欲望(=性欲)を関係なく相手を思う}(=純愛)の時間を返してくれ。

 

レッドの言いたい事

俺の真剣に悩んでいる時間を返してくれ。

 

注意!:決してレッドは今、恋愛について悩んでいるわけではございません。

レッドがこの様な言葉回しをしているのはただただレッドの頭が緩い(=バカ)だけです。

ご了承下さい。

 

「リッザァ!ザッザリッザッド‼︎ーーー」

 

–俺達を信じろよ⁉︎レッド‼︎

 

–確かに俺達はまだまだ弱いかもしれない!危険な戦いに身を置く事になるかもしれない‼︎

 

だけどっ‼︎‼︎

 

俺達は恐れはしない‼︎俺達はこれから強くなると信じてる!お前と一緒にいることで共に強くなれると信じてる‼︎お前と一緒ならロケット団なんて怖くない‼︎

 

「ぴかちゅぴちゅ」

 

–タケシのイワークにびびってたクセによく言うよ。

 

「リザリードリザッ⁉︎ーーー

ザッザリザリッ‼︎ーーー」

 

–ピカチュー⁉︎お前はこいつを励ましたいのか励ましたくないのかどっちなんだよ⁉︎⁉︎

そしてあの時は俺がまだ未熟だっただけだ‼︎

 

「ぴかちゅぴかぴかーーー

ぴかかかかッ‼︎」

 

–もちろん励ましたいさ。ただ僕は君がしゃしゃり出てレッドを励まそうとする事が気にくわないだけだよ。

で、イワークの時は君がまだ未熟だっただけだって?

それだとしたらこれからの君にとってあの出来事は相当な黒歴史だろうね❤︎

『無理だよ〜⁉︎無理無理⁉︎⁉︎僕にあんなでかい奴倒せるわけないよぉ〜⁉︎⁉︎

きっとあの尻尾で叩きつけられて死んじゃうんだ⁉︎紙みたいにペラペラになって死んじゃうんだぁぁぁぁぁ〜⁉︎⁉︎⁉︎』

クククククッ( ^∀^)ゲラゲラ

あぁ〜あの時の君はボール越しから見てても滑稽だったよ( ´,_ゝ`)プッ!

 

「リザァァァァァァド‼︎‼︎」

 

–あぁそうか、お前そんなに死にたいのか…なら素直に俺が殺してやらぁぁぁぁぁぁ‼︎

何が『でんきだま』を吸収して強くなってるだぁ⁉︎そんなの上にディグダ(体長0.1m)が止まってるかキャタピー(体長0.2m)がとまってるかの違いだろ?

そんなクソみたいな電撃、俺の炎で焼き尽くしてやるぜ‼︎‼︎

 

「ぴかぴかぴかっちゅちゅちゅーーー」

 

–"( ´゚,_」゚)プッ、ヒッシダナ"

進化して一人称が僕から俺に変わったくらいで調子に乗らないでよね。

一人称が変わったくらいで強くはならないから、そんなので変わるのは君みたいに自分の実力も知らずに威張り散らしたくせに何も出来ずに負けた時の絶望感だけだから

( ^∀^)ゲラゲラ。

 

 

「リッザァァァァァァァァァァァァッ‼︎‼︎‼︎」

 

–この社会不適合者がぁぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎‼︎

 

「ぴっかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎‼︎‼︎」

 

–この(にわ)かかっこつけ野郎ぉぉぉぉぉ‼︎‼︎‼︎

 

ピカチューとヒッポがレッドに自らの思いを打ち明けるという行為を忘れ借りている部屋でバトルを開始しようとする。

 

「キィィッ⁉︎」「ニッドォッ⁉︎」

 

–やめるんだ⁉︎お前ら‼︎

 

–本来の目的を忘れるな‼︎

 

それをキークとドドラが止めに入る…

 

 

「ピィッガァァォァァッ‼︎‼︎」

 

–邪魔するな進化すらしてない豚猿がぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎

 

「キャキャキャキャキャッ⁉︎⁉︎⁉︎」

 

–あばばばばばばばばばばばば⁉︎⁉︎⁉︎

 

「リッザァァァァァァァ‼︎‼︎」

 

–邪魔すんじゃねぇよネズミの石コロぁぁぁぁぁ‼︎‼︎

 

「ニドォォォォォォォ⁉︎」

 

–“あまごい”覚えてるからってそれは酷くない⁉︎

 

ドドラは“あまごい”によってピカチューの電気技の威力を上げるための()()

布石→石→石コロ

確かに酷い。

 

キークはピカチューの怒りの電撃によって一撃にして戦闘不能、ドドラはヒッポの“ニトロチャージ”を受けても耐え忍ぶが…

 

「ニドォ・・」

 

–確かにさ、さっきの戦闘では完全に最後ピカチューのお膳立てして終わったけどさ!

石コロっていい方はなくない?なんか俺、すげえ遠回しに捨て駒って言われてるみたいじゃん?ていうか石コロって捨て駒以下だよね、そうだよね、勝利の為に犠牲にする価値もないってか?…( ̄。 ̄;)ブツブツ

 

拗ねていた‼︎‼︎‼︎

 

 

そして既に2匹から忘れられたレッドは…

 

 

 

「ピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨ‼︎」

 

 

 

壊れてルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ⤴︎⤴︎‼︎‼︎

 

 

ー部屋の外ー

 

『ピィッガァァォァァッ‼︎‼︎』

 

『キャキャキャキャキャッ⁉︎⁉︎⁉︎』

 

『リッザァァァァァァァ‼︎‼︎』

 

『ニドォォォォォォォ⁉︎』

 

『ピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨ‼︎』

 

「え、何この混沌(カオス)…」

 

「ちょっと待ってよレッドおかしくない⁉︎

壊れてない⁉︎ポケモン達とハードSMプレイやり過ぎて壊れちゃった⁉︎⁉︎」

 

「あんたは黙ってロォォォォォォォォォ‼︎‼︎

レッドぉぉぉぉぉぉ‼︎戻ってきてェェェェ

カァァァァムバァァァァァァァァック‼︎‼︎‼︎」

 

今までの結論!:カスミは変態‼︎

 

 

 

「……何この状況。……混沌(カオス)?」

 

 

 

ポケモンセンターに戻ってきたナナミは今の現状を見て一言でそう言った。

 

「レッド君⁉︎今どういう状k…「リッザドォォォォォ」っ‼︎三○))д゜*) バキッ」

 

「ピヨピヨ、あっ…」

 

ヒッポの放った“ニトロチャージ”がレッドの部屋の扉を粉砕しそのままナナミをブレイク‼︎‼︎‼︎

 

「ナ、ナナミさぁーん?」

 

 

「…レッド君?ちょっといいかな。」

 

 

人生\(^o^)/オワタ

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

ニビシティ・ポケモンセンター

 

「グリーン!」

「!じいちゃん。」

 

グリーンがポケモンセンターを出ようとするとオーキド博士が声をかける。

 

「わしからのお願いだ、ロケット団と戦闘になった時は迷わずにあいつで戦ってくれ。」

 

オーキドのその言葉に驚くようにグリーンの目が見開かれる。

 

「…普通はロケット団とは関わるなって言うんじゃないのか?それ。」

 

「確かにお前は長い間留学しとったけどな、お前はわしの孫だ、そんな事言っても聞かない事はわかっとる。

それに…留学したからこそお前はロケット団を野放しにはしないだろ?

お前はそこで学んだはずじゃ、ポケモンの大切さを…」

 

フッとグリーンから笑みがこぼれる。

そして再びオーキドの方を見る、その表情は普段はクールなグリーンが思想もないとても優しさに満ちた表情だった。

 

「そうだな、確かに留学先で学んだ事は俺に力を与えてくれた、けど1つ俺は失っていたものがあったんだよ。ポケモンの大切さを知ったあまりにな…」

 

グリーンの脳裏に浮かんだのは同じ図鑑所有者であるレッドとのバトル。

 

トレーナーとしての技術もポケモンの力量(レベル)も確実に上回っていたのに、負けたのはグリーンだった。

 

敗因はわかっていた。

 

「俺は俺がしっかりしないとと思って少し閉鎖的になっていたんだ、それがカメールとの心の差を生み出してしまった。」

 

無意識ではわかっていた、自分とカメールがお互いを確実に信頼していないと、そしてそれはレッドのバトルで自覚する事になった。

 

だけど、そんなのは負けた理由の一部分だけでしかない。

グリーンとカメールの心の差が現れたその瞬間はバトル後半の1つの攻撃だけ、その1つだけで負けるほどグリーンの留学先で学んだトレーナーとしての技術は低くない。

そして同じくカメールの力量(レベル)もだ。

 

初めて見たよ、師匠(せんせい)よりも絆を力に変える事の出来る関係を持った奴は…

 

再びグリーンが笑みを零す。

 

その笑みは優しさに満ち溢れた先程の笑みではないが、より熱く深いものからくる笑みであるとオーキドは感じ取った。

 

「じいちゃん、俺…先輩面するのはどうかと思うけど…あいつの将来が楽しみだよ。」

 

「あいつ…?」

 

「じいちゃんの人を見る力は最高だって事さ!」

 

そう言ってグリーンは走り出す、片手にカメールのモンスターボールを握りしめて、そしてカメールもまたモンスターボール越しに伝わったグリーンの思いに応えるかのようにモンスターボールからその姿を現した。

 

「…!ふははははははっ‼︎」

 

オーキドはどんどん小さくなっていくグリーンとカメールの姿を赤い少年と重ねながら嬉しいそうに大きく笑みを浮かべた。

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 

くそぉっ…くそぉっ…くそぉっ…

 

 

 

ポケモンセンターの個室に鳴り響く殴打音。

 

 

 

 

やるしかない…やるしかない…いや、やるんだ、やるんだ…

 

 

 

 

殺るんだ

 

 

 

 

 

仲間の命を奪ったロケット団を…あいつらにも同じ苦しみを味あわせてやるんだ。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

「で、いったいどういう事?これは。」

 

現在の状況を説明しよう!

 

俺は現在ピカチュー、ヒッポ、キーク、ドドラと共に怒るナナミさんの前に正座&お座りをしている。

 

理由は簡単だ。

 

ちょっと精神的にナイーブになった俺は部屋に閉じこもりピカチューに悩みを打ち明けたところ、ピカチューの電撃をくらい、更にヒッポ、キーク、ドドラの攻撃をくらい、面を食らっていたところで突然ピカチューとヒッポの喧嘩が勃発、止めに入ったキークとドドラはお互い別々の意味で戦闘不能に追い込まれ、混乱した俺は壊れることによってその状況を切り抜けようとしたわけだ。

 

そんな事では喧嘩を止める事は出来ないのは当たり前、ピカチューとヒッポはここが人様のものである事を忘れて大暴れ、瞼を閉じれば蘇る、炎が燃えて風が舞い、鳴き声轟くあのバトルが昨日の敵は今日の友って古い言葉があるけど今日の友は明日も友達そうさ永遠に(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)アヒャヒャヒャヒャ

 

「レェェェドくぅぅぅぅん?

話聞いてるかなぁ〜?」

 

「はひっ!聞いてます‼︎もう耳の穴にかっぽじって聞きすぎて鼓膜破れるくらい聞いてます」

 

「それって全く聞いてないって言ってるのと同じだよね?」

 

ナナミさんの周囲に闇がかかる、あ、コレマズイパターンダ…。

 

ピカチューとヒッポの喧嘩は激しく暴れまわった末ヒッポの“ニトロチャージ”によって扉がぶち壊され扉の側で俺に現状を聞こうとノックしようとしたナナミさんにも激突、そして現在にイタァール‼︎‼︎

 

「ちょっと真剣に話をしようか。私の部屋に来て」

 

「いや、でもぉ…「キナサイ」はい⁉︎」

 

ナナミさんの後ろに子分のようについていく俺、そしてナナミさんの部屋に入る。

 

流石に今のナナミさんの雰囲気はマズイよな、顔面に突っ込んだもんなヒッポの奴。

 

ナナミの雰囲気から自分の立場や何やらかんやらの危うさを感じ取ったレッドは恐る恐るナナミの表情を伺う。

そしてそこには不気味な笑顔が写っていた。

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

ガチャッと音を立ててレッドがナナミの部屋から出てくる。

 

「レッド」

 

「ピカピ」

「ザッ」

「キヤッ」

「ニドォ」

 

ナナミの雰囲気から同じようにレッドの身の危険を感じていたブルーとポケモン達がレッドの元へ近づき声をかける、そして声をかけられたレッド自身は

 

「もう大丈夫だよ。目が覚めた。」

 

そう言ってブルーにいつもと変わらぬ笑みを浮かべる。

 

「…怒られたんじゃないの?」

 

「…思い出させないでくれるか…必死に涙を我慢している事を察してくれ…」

 

「御意。」

 

おもったよりも清々しく出てきたレッドの顔がブルーの予想以上にやつれた表情へと変化を遂げる。

 

「流石はレッド君、立ち直りも早いのね。」

「ヒィッ⁉︎」

 

ズザッとレッドが悲鳴をあげてナナミから遠ざかる。

 

「…レェェェドくぅぅぅぅん?

何故遠ざかるのかしらぁ〜?」

 

「いや、あの、えぇーと…気分?」

「…」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 

「トラウマ刻まれちゃってる…」

 

死んだ魚のような目でひたすら謝り続けるレッドを見て、本格的にナナミの部屋で起こった事を聞く事はよそうとブルーは思った。

…この件については関わらない方が身の為だと

 

「俺には夢がある、その夢を叶えるのにロケット団なんかに臆してたら叶うわけがない」

 

グッとレッドは自分の右拳を力強く握りしめる。

 

「俺は強くなる事を疑わない」

 

 

「…」

 

 

心の中に眠るその強い意志をそのまま瞳に表したかのような瞳。

 

 

その力強さにブルーもポケモン達も思わず笑みをこぼす。

そしてブルーは…

 

「ねぇ、レッド」

 

「ん?」

 

 

 

 

「私ね…

 

レッドと別れようと思うの。」

 

 

 

「え…」

 

 

 

その次のレッドの表情を忘れる事はないだろう。




ナナミ「…レッド君?ちょっといいかな。」

カスミ(あ、これマズイ雰囲気だ…逃げよ。)

スタスタスタスタスタ…

カスミ(それにしてもレッドって…マゾだったんだ…)

タイトル回収


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第21話 レッドvsブルー 別れのバトル‼︎

お久しぶりです、遅くなって申し訳ございません。
最近のポケモンの熱さに興奮しておりますmorumoでございます。
映画も良かったしサンムーンのリージョンフォームも素晴らしいしアニメなんかスッゲーしクネクネ動くしもう最高です。

今年1年は本当に忙しいので更新はとても遅くなると思います。
現在も忙しい合間を縫ってポケモンを楽しんでおります本当にポケモンは僕にとってのオアシスでございます。
改めて遅くなってしまい申し訳ございませんでした。


「別れようって…」

 

「私とレッドが一緒に旅をしていたのは私がポケモン図鑑を貰うため、その目的が叶った今、私がレッドと一緒に旅をする理由がなくなったの。」

 

「…そうか、そうだよな。」

 

レッドは自分の中で何かを認めたかのように呟くとブルーに対して笑みを浮かべる。

 

「別れる前にレッドにお願いがあるの。」

「お願い?」

 

スッとブルーがレッドの前に差し出したのはモンスターボール。

 

「ポケモンバトル、受けてもらうわ‼︎」

 

「!…そういえばまだした事なかったよな、いいぜ、バトルしようぜ!」

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

俺とブルーはポケモンセンターの外にあるバトルフィールドに移動し対面する。

 

「ルールは3対3の非公式シングルバトルいいわね!」

 

「おう!」

 

俺の手持ちは4匹いるけどブルーの手持ちは3匹、このルールになる事は分かっていた、公式ルールじゃない分、ポケモンの技の制限はない。

 

この勝負でキーになるのは変わらずトレーナーの技術‼︎

 

「バトルスタート‼︎」

 

審判を頼んだハナダシティポケモンセンターのジョーイさんがバトルの開始を宣言する。

 

そしてその宣言と同時に…

 

「ドドラ‼︎」

「ニドちゃん‼︎」

 

俺とブルーが1匹目のポケモンを放つ。

 

「“なきごえ”‼︎」

「“ふいうち”‼︎なっ⁉︎」

 

ドドラがニドちゃんの攻撃時の隙を狙うべく4足歩行の脚力を生かして急接近するもニドちゃんが放ったのは攻撃の隙を突く“ふいうち”を無効化する変化技、相手の攻撃能力を下げる“なきごえ”。

 

そして“なきごえ”による音波を至近距離で受けたドドラが僅かに怯む。

 

「“ひみつのちから”‼︎」

 

「リッナァァァァァッ‼︎」

「ドッ⁉︎」

 

強烈な拳がドドラの腹にクリーンヒット、そのままドドラは吹き飛び俺を横切りそのままポケモンセンターの塀に激突、その衝撃で砂埃が凄まじく舞い、俺の視界からドドラを隠す。

 

「ドドラ!大丈夫か‼︎」

 

「リッノォォォォォォォッ‼︎」

 

凄まじく舞った砂埃を吹き飛ばすかのような雄叫びをあげてドドラが姿を表す。

 

まだまだいけそうだ…それにしても、

 

俺はドドラからニドちゃんの背後で挑発的な笑みを浮かべながら俺を見るブルーに視線を移す。

 

先手に迷わず“なきごえ”を支持してきた、“ふいうち”を完全に読んで、でも今の攻防はお互いにポケモンを繰り出しすのとほぼ同時に技を指示していた…お互いに相手のポケモンを確認する暇もなかったはずだ…なのになんで…

 

「舐めないでよ。」

「!」

 

「レッドのバトルを1番近くで見てきたのはこの私よ、レッドのポケモンの使える技や戦法、そしてトレーナーであるレッドのバトルスタイルは熟知しているわ。」

 

「つまり俺が先発にドドラを繰り出す事も“ふいうち”を始めに指示するって事も今までの俺の戦いからわかってたって事か…」

 

「ドドラの得意とする戦法は“ふいうち”からの速攻、先発のポケモンとして最もレッドのバトルスタイルとしてマッチしているポケモンだけどそれは逆に“ふいうち”によって相手の隙を突かないと決定力に欠けている証!」

 

「っ⁉︎」

 

ブルーの言う通り、ドドラの使用出来る攻撃技は“ふいうち”の他には“つつく”“にどげり”“どくばり”、どれも決定力に欠ける技だ。

“にどげり”は相手に攻撃の隙を与えない事が可能だがそれも相手が大きな隙を見せないと難しい。

 

だけど、“ふいうち”は初手でしか使えない技じゃない

 

「ドドラ、まずは“にらみつける”だ」

 

ドドラの鋭い目が更に鋭利なものへと変わりその視線がニドちゃんに向けられる。

 

これでニドちゃんの防御力を下げることは出来た。

 

「攻撃力を下げられた分をこっちの防御力を下げる事でイーブンにしようって事?それとも…」

 

「私のニドちゃんの攻撃を待っているのかしら‼︎“みずのはどう”‼︎」

「“ふいうち”‼︎」

 

ドドラの速攻、しかし

 

「「⁉︎」」

 

ドドラが接近するよりも先にニドちゃんが水の弾丸を()()()叩きつける。

 

「ドドラァー!」

 

水の弾丸はニドちゃんの手前で弾け接近していたドドラを弾けた水の波で押し返す。

 

「くっ⁉︎“にどげり”を利用して回避だ‼︎」

「“ひみつのちから”‼︎」

 

ドドラが2発の強烈な蹴りを利用して“みずのはどう”の余波を途中回避したところをニドちゃんが先程の強烈な拳を空中で身動きが取れなくない隙を狙ってドドラに地面に叩きつける様に繰り出す。

 

ドドラはそのまま一直線に地面へ落下。

 

「連続で“みずのはどう”‼︎」

 

ニドちゃんが上空で幾つもの水の弾丸を生成し地面へ落下し砂埃が舞ってドドラの姿が定かではない中畳み掛けるかの様にその水の弾丸を撃ち放つ。

 

バトルフィールドに砂埃と大量の水が巻き起こる。

 

「ドドラっ⁉︎」

 

「ガハッ、ニッドォ…」

 

ドドラが水の弾丸に襲われながらやっとのおもいで姿を表す。

 

その姿を見る限り体力は残り僅か…

 

「ドドラ!一旦戻れ‼︎」

 

ドドラをモンスターボールに戻す、“ふいうち”による乱舞を使えそうにない今、ニドちゃんの技の種類の豊富さをドドラで受け持つのはキツイ。

 

ならこっちも…

 

「ヒッポ!」

「ザァッ‼︎」

 

技の豊富さで勝負だ‼︎

 

「“ニトロチャージ”‼︎」

 

ヒッポがノーモーションで体に炎を纏いそのまま突撃する。

ニドちゃんは発達した二本脚を広げ受け止める体制に入る。

 

「“みずのはどう”‼︎」

 

ブルーがその技をニドちゃんに指示した瞬間思わず俺の口元が緩くなる。

 

「“つばめがえし”に切り替えろ‼︎」

 

俺の指示でヒッポは“ニトロチャージ”を能力上昇領域まで進んだ後に技を中断し、そのままリザードに進化した事によって得た鋭い爪に空気を纏い風の爪を創り出す。

そしてグッと脚を踏ん張ると…

 

「⁉︎」

 

一瞬にして水の弾丸を作り出したニドちゃんの目の前にまで移動。

 

そして

 

「いっけぇっ‼︎‼︎」

「ザァッドォォォッ‼︎‼︎」

 

作り出した水の弾丸ごとニドちゃんを斬りつける‼︎

 

ヒッポに斬られた“みずのはどう”はそのままニドちゃんの手元で弾け飛びニドちゃん自身が余波で水に流される。

 

「“りゅうのいかり”‼︎」

 

ヒッポの口から青い炎が吐き出されニドちゃんに襲いかかりながら徐々にその形を竜を模したものへと変化させる。

 

「ニドちゃん“みずのはどう”‼︎」

「無駄だぜ‼︎竜の炎は水じゃ消せない‼︎」

 

水に流されながら放たれた水の弾丸を飲み込みそのままニドちゃんをも飲み込み爆発する。

 

「まだだ!攻撃の手を緩めるな‼︎“ニトロチャージ”‼︎」

「“にどげり”を利用して回避して‼︎」

 

ヒッポの素早さ上昇+ノーモーションで放たれた“ニトロチャージ”をニドちゃんは“りゅうのいかり”のダメージを1度堪え、両足に力を入れて地面を2回蹴る力をジャンプに利用してかわす。

 

ニドちゃんはそのままブルーの前に着地、やはり“つばめがえし”と“りゅうのいかり”のダメージが効いているのか息が上がっている。

 

「ニドちゃん一旦下がって。」

「!」

 

ブルーがモンスターボールにニドちゃんを戻す。

 

ヒッポの技の豊富さに対応できるポケモンは正直、同じように“ひみつのちから”“みずのはどう”“にどげり”と色んなタイプの技を覚えているニドちゃん以外に思いつかないけど…

 

まぁ、確かに俺のポケモンがまだ1匹も戦闘不能になっていないこの状況でまず最初にニドちゃんを失うのは避けたい事だよな。

 

だけど今の攻防でブルーの手持ちの中で1番怖いニドちゃんがヒッポに対応出来ないと証明された、ならこのまま“ニトロチャージ”で素早さを上げながらヒッポで行けるとこまで行って…

 

不意にバトルフィールドのセンターラインを超えた先にいるブルーと目があった。

その瞳には遠目からでも確かに自分の勝利の可能性を強く信じる生きた炎が灯っていた。

 

…何考えてんだろ俺。

 

「ヒッポよくやった、1度休んで戻ってくれ。」

 

「あら、変えちゃうの?せっかく“ニトロチャージ”で素早さを上げてたのに…慎重ね。」

「…うっせぇ!」

 

…相手がお前だからだろ。

 

「行くわよコンちゃん!」

「頼むぜキーク!君に決めた‼︎」

 

ブルーが繰り出したのは炎タイプのロコン・コンちゃん。

そして俺が繰り出したのは格闘タイプのマンキー・キーク。

 

するとブルーがその目を大きくしていた。

 

「へぇ〜、ピカチューは出さないんだ。」

 

このバトルは3対3のバトル、手持ちポケモンを4匹連れてる俺は1匹お休みのポケモンがいるわけだ。

そして俺がブルーとの初バトルで選択した3匹はヒッポ、キーク、ドドラの3匹。

 

確かに体内に“でんきだま”を吸収して能力が桁違いに上がっているピカチューは普通なら外すなんて事はないだろう。

 

だけど今回俺はどうしてもこのメンバーで戦いたかった。

 

「このバトルは俺とブルーがお互い一緒に旅をしてきて始めてのバトルなんだ。

なら俺とブルーが一緒に旅をしてきた期間が長いポケモン達で戦いたかったんだ。」

 

ピカチューは最初から一緒にはいたもののずっとモンスターボールの中に引きこもっていたためブルーやブルーのポケモン達とコミュニケーションをとって一緒に過ごしてきた期間は1番短い。

 

ブルーと出会った時から一緒にいたヒッポとキーク、そしてブルーと旅をしていく中で仲間にしたドドラ。

 

「俺はずっと前からブルーと最初にバトルする時はこのメンバーでって決めてたんだよ!」

 

「ふふっ、レッドらしいわね。」

 

(キーク、レッドの話だと以前はマンキーの群れのリーダーをやっていたみたいだけど、それはマンキー達の中での話、キークには悪いけど今のレッドの手持ちの中では1番力が劣っているポケモン…)

 

(ここは確実に落とさせてもらうわよ‼︎)

「コンちゃん“おにび”!」

 

コンちゃんの口から淡い水色の不気味な火の玉がキークに向かって放たれる。

 

相手を『やけど』状態にさせる炎タイプの変化技“おにび”

やけど状態にさせられたポケモンは攻撃力が半分に低下してしまう近接攻撃を得意とする格闘タイプであるキークから見るととても厄介な技だ。

 

「かわせっ‼︎」

 

キークは左右交互に動き火の玉を交わしながら確実にコンちゃんに近づいていく。

 

「コンちゃん“でんこうせっか”!」

「キヤッ⁉︎」

 

ブルーの技の指示を受けた後にもかかわらず速攻でまるでキークの体を突き抜けんが如く突進してきたコンちゃんの速攻をキークはかわす事が出来ずに直撃する。

 

だけど…!

 

「そこはキークの攻撃圏内(テリトリー)だ!“からてチョップ”‼︎」

「カッ‼︎」

 

キークはコンちゃんの突撃を直撃しながらもその両足で踏ん張り耐えきると右手に力を溜め上方にあげると一気に振り下ろす。

 

「コッ⁉︎」

 

コンちゃんはキークと同じように攻撃を直撃、キークとコンちゃんの周囲の砂がその威力によって2匹から逃げるかのように舞う。

 

「足元がガラ空きだ!“にどげり”‼︎」

 

まず始めにキークの蹴りがコンちゃんの腹部に直撃しその赤い体が少し宙に浮く、そしてそこに再び射抜くかのような素早い蹴りがヒットしコンちゃんは一直線にトレーナーであるブルーを横切り塀にぶつかると思ったが。

 

「クォッ!」

「⁉︎」

 

コンちゃんはそれを4本の足と6つに分かれた尻尾を利用して吹き飛ばされる勢いを消し更にその力を利用して再びキークに一直線に突撃。

 

「“しっぺがえし”‼︎」

 

突撃中にコンちゃんは体から黒紫色のオーラを放ち、キークに先程の“でんこうせっか”を思い出させるかのような突進を見せる、が

 

「キーク⁉︎」

 

この技は“でんこうせっか”ではなく“しっぺがえし”。“しっぺがえし”は後から攻撃を放つことによって威力を倍増させる悪タイプの物理攻撃技、キークは倍になったコンちゃんの攻撃の威力に先程と同じように踏ん張る事が出来ずに弾き飛ばされる。

 

「っ…!“おにび”と“しっぺがえし”を覚えていたのか…」

 

おつきみやまで追い詰められた状態でのロケット団の戦闘では使っている姿は見たことがないということは恐らくおつきみやまでの戦闘で得た経験値によるレベルアップで使用できるようになったのだろうけど…誤算だった、コンちゃんの技のバリエーションがこんなにも豊富になっていたとは…

 

「…作戦を立て直す必要があるな。」

 

“ニトロチャージ”によって素早さを上げてからほぼ必中の“つばめがえし”やタイプ相性を無視する“りゅうのいかり”で攻撃するヒッポだと後から攻撃を放つ事によって威力を倍増させる“しっぺがえし”は痛い…。

 

ドドラの“ふいうち”からの“にどげり”で相手に攻撃の隙を与えないっていう戦法もあるけど…コンちゃんの技は別に“しっぺがえし”だけじゃない、同じ炎タイプであるヒッポと違って体力の残り少ないドドラでコンちゃんの特性『ひでり』によって威力の上がった炎タイプの技を受けきる事は不可能だ。

 

苦しいけどここは…

 

「お前で行くしかない…!頼むぜキーク‼︎」

「キャッ‼︎」

 

キークの長い足を利用した格闘タイプのフットワークなら“はじけるほのお”や“おにび”を交わす事は難しくはない。

問題は…

 

「“でんこうせっか”をどうするか…!」

 

キークのフットワークによるリズムをその技の速さから先制技と呼ばれる“でんこうせっか”で崩されてしまっては勝利の流れを作る事は不可能。

“でんこうせっか”と“しっぺがえし”対処の難しい技が2つも…

 

「…トレーナーの性格の悪さが満ち溢れてるな。」

「殺すわよ」

「⁉︎」

 

聞こえたの⁉︎この距離で⁉︎

 

「感じたの。」

 

悪魔めぇ…

 

「キーク突っ込め‼︎」

 

キークが俺の指示を受けてフットワークを生かしながら駆け出す。

 

「コンちゃん“でんこうせっか”‼︎」

 

来たっ‼︎

 

「“からてチョップ”で迎え撃て‼︎」

 

キークは軽く地面を蹴ってジャンプするとその勢いを利用して速さを威力に変えて突撃してくるコンちゃんの勢いを完全に殺しにかかった…しかし

 

「“しっぺがえし”に切り替えて‼︎」

「⁉︎」

 

キークの機転は()()突撃してきたコンちゃんには十分過ぎるほどの効果を発揮したが…

 

「コォンッ‼︎」

「グァキャゥ⁉︎⁉︎」

 

コンちゃんはそれを根性で耐えきりそのまま黒いオーラを纏い倍返しだとばかりに強烈なタックルをキークに食らわしキークを空中へと投げ出す。

 

「キーク⁉︎」

「“おにび”‼︎」

 

コンちゃんから放たれた不気味な炎が空中に投げ出されたキークを包み込む。

 

「マズイ⁉︎」

 

地面へと自由落下していくキークの状態を見ると確実にやけど状態になってしまった事が確認できた。

 

これでキークの攻撃力は半減…更に徐々にダメージを負っていく…

 

俺は咄嗟にヒッポのモンスターボールに手をかける。

 

しかし

 

「キャィィィィッ‼︎」

「‼︎」

 

キークは空中で雄叫びをあげるとその場でクルクルと回転し地面に着地、そして再び雄叫びを上げた。

 

「キーク…」

 

俺は手にかけていたヒッポのモンスターボールから手を放す。

 

慎重になるあまりポケモンの意思を無視するのはそれはトレーナー()のやるべき事じゃない。

 

「コンちゃん“でんこうせっか”‼︎」

「キーク受け止めろ‼︎」

 

キークを襲う突進ー

 

しかし

 

「キャッ‼︎」

 

キークはそれを長い手足に力を入れて抑え込む。

 

そしてー

 

「カァァァァァッ‼︎」

 

キークが押さえ込んだコンちゃんの“でんこうせっか”のスピードを利用して飛び上がり、そして空中で1回転しそのまま地面に向かって一直線に落ちていく‼︎

 

「これって⁉︎」

「まさか…これは…‼︎」

 

ブルーが今まで見たことのないキークの行動に驚きを、そして俺はそこから新たなる希望をー

 

 

「「“ちきゅうなげ”‼︎」」

 

 

見出した‼︎

 

 

その微かな希望の光という名の技名を俺とブルーが言葉にしたと同時にキークが抱えているコンちゃんを地面に勢いよく投げつけ地面に叩きつける‼︎

 

格闘タイプの技“ちきゅうなげ”

“りゅうのいかり”と同様、格闘タイプの技が効果のないゴーストタイプ以外のタイプ相性を無視して効果的なダメージを与える事の出来る技。

 

覚えてから基本的に威力の変わらない“りゅうのいかり”とは違い“ちきゅうなげ”は使うポケモンの強さによって明確に威力を変える。

 

「能力の変化を無視して放てるこの技なら例えやけど状態で攻撃力が半減してもまともに戦える‼︎」

 

「……」

(流れがレッドに傾いた…

レッドは自分のテンションとポケモンの力をバトルの流れに乗せるのが上手い。

だからこそ流れに乗ったレッドは強い…

 

ならここは…)

 

ブルーはコンちゃんと目を合わせる、するとコンちゃんはブルーの考えを理解したかのように頷く。

 

「キークこの調子で行くぞ‼︎」

「キャッ‼︎」

 

キークの使える攻撃技は“ちきゅうなげ”“からてチョップ”“けたぐり”“みだれひっかき”“ひっかく”の5つ、そして変化技に“きあいだめ”と“にらみつける”の2つ、そして現在キークはコンちゃんの“おにび”によってやけど状態。

 

ほぼ攻撃手段は“ちきゅうなげ”に絞られたか…でもキークには

 

「キーク“きあいだめ”‼︎」

 

これがある‼︎

 

キークが自らの内にある闘志を力に変え外に放つ、これで次の攻撃に対する集中力を極限まで高める。

 

「次の攻撃に対する集中力を高めて急所を狙うって作戦?

やけど状態の攻撃力半減を補うにしては少々無理矢理過ぎない?」

 

「別に無理矢理じゃないさ、“きあいだめ”は気持ちだよ、別に“きあいだめ”で自らの闘志を再び燃やさなくても」

 

「キャィィィィッ‼︎」

 

「キークの闘志は何時(いつ)でもMaxさ!」

 

俺の心から来る自信に応えるかのようにキークはコンちゃんに向かって走り出す。

 

「じゃあその闘志何時までもつのかしらね‼︎

コンちゃん“たたりめ”‼︎」

「⁉︎」

 

コンちゃんの両目が紫色にゆらりと光り出しコンちゃんのすぐ上方に大きな1つ眼が現れ紫の波動を放つ。

 

「それはマズイ⁉︎キーク‼︎」

「遅い‼︎」

 

不気味な濃紫の波動がキークを襲う、そしてキークのやけど部分が大きく火を放って燃え上りキークを包み込む!

 

「2倍のダメージを味わいなさい‼︎」

 

「キーク⁉︎」

 

ゴーストタイプの特殊攻撃技“たたりめ”

その効果は状態異常の相手の状態を一時的に最大級に悪化させ普通の倍の威力となる技。

 

今のはやけど状態のキークのやけど部分が最大限に悪化したことにより傷が炎を発しキークを包み込むことによって更にダメージを与えた。

 

「“おにび”とのコンボ攻撃…」

 

ブルーが必要に“おにび”を指示しなかったのも恐らく相手を状態異常にした後何かあると気付かせないための作戦、物理攻撃技を得意とするキークに物理攻撃力を半減させる効果のあるやけど状態にする“おにび”はこれ以上考えられないくらい有効な技のはずなのにそれを全然指示しなかった時点で意図があると気付かないといけなかったのに…くそっ‼︎

 

「俺が散々悩んだ“でんこうせっか”と“しっぺがえし”はこのコンボに気付かせないためのただの囮って事か…コノ野郎…‼︎」

「あら?さっきまでの笑顔は何処に行ったのかしら?それとも‼︎」

「コォン‼︎」

 

未だ“たたりめ”の2倍ダメージでまともに動く事の出来ないキークにコンちゃんの特性『ひでり』によってパワーアップした“はじけるほのお”が連続で襲いかかる‼︎

 

(確かに流れに乗ったレッドとポケモン達の力は私達の予想を遥かに超える力を持っている。だけどそれはその事を知らない相手だから有効だった…‼︎)

 

ブルーの脳内でレッドと共に戦った日々が思い出される。

その短く濃かったその思い出を自らの力に変え、その思い出を共に過ごしたレッドとポケモン達に感謝の気持ちを伝えるかのように攻撃をする。

 

(だけど私は貴方の強さを知っている。)

 

レッドの強さを知った上で強力なコンボを封印してレッドの強さが現れる瞬間がまるで封印を解く鍵のようにその姿を晒したそのコンボ。

 

(さあどうするの!レッド‼︎)

 

「大丈…!」

 

コンちゃんの炎攻撃の嵐に遭いながらも未だに二本足で立ち続けるキークの姿に俺は声をかけようとした。

 

 

–そしてそれは不要だと知った。

 

「“たたりめ”‼︎」

「“きあいだめ”で弾け飛ばせ‼︎」

 

再び濃紫の波動がキークを襲うが、闘気を放つことによってそれを弾き返す‼︎

 

ゴーストタイプの攻撃はノーマルタイプに干渉する事は出来ない、それを応用しノーマルタイプの変化技であり体全体で行う“きあいだめ”で防御壁を作り出した。

 

「…滅茶苦茶な。」

 

「キーク“からてチョップ”‼︎」

「“しっぺがえし”で迎え撃って‼︎」

 

攻撃力が半減したキークの“からてチョップ”と後から出すことによって威力を上げている“しっぺがえし”ブルーはこう思っているだろう。

 

 

–負けるはずはないって。

 

 

 

「キィィィィィィヤァッ‼︎‼︎」

「ォン⁉︎⁉︎」

 

 

「⁉︎」

 

吹き飛ばされるコンちゃんに大きく目を開くブルー。

そして技の競り合いに勝利したキークの()

 

「どうして競り負けたの…!キークの攻撃は半減しているはずなのに…」

 

 

 

()()()()()()()()()()。」

 

 

 

「?」

 

「さっきの“はじけるほのお”の1発がキークのいかりのつぼを押したんだよ。」

「⁉︎」

 

 

 

 

「キィィィィィィヤァァァァァウゥッ‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

 

ブルーが叫び出したキークの姿を見る、その表情はいつもよりも眉間に皺が寄り、闘気とは別の…目に見えるほど濃密な怒りのオーラを身体に纏っていた。

 

 

 

特性『いかりのつぼ』

自分への攻撃が急所に当たると物理攻撃力が限界まで跳ね上がる特性。

 

俺はキークが“はじけるほのお”の嵐にあっている中この特性が発動したのを確認したんだ。

 

「でも、それでもやけど状態による攻撃力半減は続いているはず!どうして…」

 

「さあ、何ででしょう?キーク‼︎」

「キャィィィィッ‼︎」

 

「くっコンちゃん攻撃する隙は与えない‼︎“でんこうせっか”‼︎」

 

コンちゃんがキークの攻撃を止めるべく先制技を発動しその距離を縮める。

 

だけど…

 

「⁉︎」

「なっ⁉︎」

 

キークに突撃するコンちゃんとそのトレーナーであるブルーがほぼ同時にその目を見開く。

 

その理由は1つ…

 

「もうエネルギーが溜め終えてる⁉︎」

 

キークの右拳が白い闘気で覆われていたからだ。

 

ブルーが俺の事を知った上でこの勝負を受けてきているのはわかった。

だけど俺だってマサラタウンを出て殆どの時間をブルーと過ごしたんだ。

だからお前が“でんこうせっか”でキークの攻撃をする隙を与えようとしない事は

 

「わかってるんだよ‼︎キーク‼︎」

「キィィィィィィヤァッ‼︎‼︎」

 

 

「“からげんき”‼︎‼︎」

 

 

キークの右腕に纏う白く輝く闘気が赤く燃え上がるように形を変えて突撃してきたコンちゃんを殴り飛ばす!

 

ノーマルタイプの物理攻撃技“からげんき”

自分が状態異常の時に放つ事によって威力が2倍となる技、そしてこの技はやけど状態による攻撃力半減の効果を無効化して放つ事が出来る。

 

よってキークは特性『いかりのつぼ』による攻撃力が最大限に上がっている状態で威力2倍のこの技を放つ事が出来ているのだ。

 

そしてこの攻撃を受けたコンちゃんはブルーを通り抜けて塀に激突、そしてそのまま地面に力尽きる。

 

「ロコン戦闘不能マンキーの勝ち‼︎」

 

「…っありがとうコンちゃん」

 

ブルーがコンちゃんをモンスターボールに戻す。

 

「頼むわよ、ニドちゃん‼︎」

「リッナァァァァッ‼︎」

 

再び登場したニドちゃんがフィールドを揺るがすような雄叫びを上げる。

…普段は女の子らしい大人しい子なんだけどなぁ〜、バトルになると人が変わるっていうか…いやこの場合ポケモンが変わるっていうのか?

 

「さあ行こうぜキーク…キーク⁉︎」

 

俺がキークに視線を移すとキークはその場で力尽き、その場にうつ伏せで倒れていた。

 

「火事場の馬鹿力だったみたいね。」

 

「本当によくやったゆっくり休んでくれ。」

 

俺はキークをモンスターボールに戻しすぐに先程ニドちゃんを圧倒したヒッポを手に取る…しかし

 

「!」

 

ヒッポのモンスターボールとは違うもう1つのモンスターボールがまるで自分を出してくれと言わんばかりにガタガタと揺れていた。

 

……

 

「行けるか?」

 

俺のその質問に揺れていたモンスターボールが大きく揺れた(うなずいた)

 

「よしっ!ドドラ、君に決めた‼︎」

「リッドォォォォォォッ‼︎‼︎」

 

繰り出したのは俺が先手で出しニドちゃんに圧倒されたドドラ。

出頭に放った咆哮は先程のニドちゃんよりも大きくその場の空気を揺らした。

 

「へぇ、ドドラでいくのね?」

「俺は相性とかよりもポケモンの気持ちを優先するトレーナーなんでね。」

 

「知ってるわよ!“みずのはどう”‼︎」

「“どくばり”からの“にどげり”‼︎」

 

ニドちゃんが放った水の弾丸をドドラが口から放った紫色に光る針で潰し、その後に襲いかかってくる余波の水流を“にどげり”をジャンプに利用し回避、着実にニドちゃんとの距離を縮めていく。

 

「力比べなら負けない!ニドちゃん“ひみつのちから”‼︎」

「“ふいうち”‼︎」

 

メキッと音を立ててニドちゃんの顔面にドドラの蹴りがめり込む。

 

「あ」

 

ブルーが珍しく間抜けな声を発する。

そしてそのままニドちゃんは先程のコンちゃんと同じくブルーを横切り塀に激突する。

 

「おしっ‼︎いいぞドドラ‼︎」

 

「ちょっと女の子の顔蹴り飛ばしといておしっはないでし「⊂=⊂=⊂(┛゚Θ゚)┛ビューーーーンッ!!」…え?」

 

「ドッ?」

 

 

 

「リリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリッ‼︎‼︎‼︎‼︎」

ヽ(╬☉Д⊙╬)ノゴルァ!!ヽ(╬☉Д⊙╬)ノゴルァ!!ヽ(╬☉Д⊙╬)ノゴルァ!!ヽ(╬☉Д⊙╬)ノゴルァ!!

 

「ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ‼︎‼︎‼︎‼︎」

≡○)゚д。)ノ≡○)゚д。)ノ≡○)゚д。)ノ≡○)゚д。)ノ≡○)゚д。)ノ≡○)゚д。)ノ≡○)゚д。)ノ≡○)゚д。)ノ≡○)゚д。)ノ

 

「( ꒪⌓꒪)え…」

 

「あぁ…( ꒪⌓꒪)」

 

あれ?おかしいなおかしいな、ドドラの相手をしているのがポケモンじゃないぞ…鬼だ…鬼がドドラを目に見えないほどの“ひみつのちから”の連打で滅多打ちにしている…

 

「…って硬直してる場合じゃない⁉︎ドドラ“ふいうち”だ‼︎」

 

「ドラッ⁉︎」

「☆(゜o°(○=(-_-;」

 

再びドドラの足がニドちゃんの顔を以下省略。

 

「あー…( ꒪﹃ ꒪)」

「( ꒪﹃ ꒪)…」

 

 

「(◞≼◉ื≽◟◞౪◟,◞≼◉ื≽◟)」

「人生\(^o^)/オワタ」

 

 

 

「リリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリッ‼︎‼︎‼︎‼︎」

(╬⓪益⓪)(╬⓪益⓪)(╬⓪益⓪)(╬⓪益⓪)

(╬⓪益⓪)(╬⓪益⓪)(╬⓪益⓪)(╬⓪益⓪)

(╬⓪益⓪)(╬⓪益⓪)(╬⓪益⓪)(╬⓪益⓪)

 

「ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ‼︎‼︎‼︎‼︎」

≡○)゚д。)、;’.・≡○)゚д。)、;’.・≡○)゚д。)、;’.・

≡○)゚д。)、;’.・≡○)゚д。)、;’.・≡○)゚д。)、;’.・

≡○)゚д。)、;’.・≡○)゚д。)、;’.・≡○)゚д。)、;’.・

 

 

 

「ドドラぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎‼︎‼︎」

 

 

自分で言うのもなんだがこの時の俺の叫び程虚しいものはなかった。

 

「ナァッ‼︎」

 

最後の拳はドドラをそのまま吹き飛ばし、ドドラは本日2度目の塀との激突事故を起こす。

 

「大丈夫か⁉︎」

 

“ひみつのちから”を連続で殴られたものの元々その技はある程度溜めが必要な技、それを溜めなしで放っていた事から一撃一撃のダメージは少ないはずだ…多分。

 

「ドォッ…」

 

ヨレヨレの状態で立ち上がるドドラ、大丈夫だまだHPは残っている。

 

「女って恐ろしい…」

「その女ってニドちゃん以外にも入ってるわよね?誰のことかしら…?」

「もちろんおm「殺すわよ」…何でもないです。」

 

俺とブルーがそんな会話をしている内に、ドドラはそのふらついた足をしっかりと踏ん張り、何時(いつ)でも攻撃に入れる状態に持ち直した。

ニドちゃんも先程の怒りの連続攻撃で荒れた息を整え終えたみたいだ。

 

「ドドラ!“にどげり”‼︎」

「受け止めて‼︎」

 

ドドラの1発目の蹴りをまずはニドちゃんがドドラの足を右脇に抱える形で威力を殺す、そして2発目を残った左腕で受け止める。

ドォンッと音を立てて逃げ場のないエネルギーが弾け飛び空気を揺らす。

そしてその場に残ったのは右腕にドドラの左足を挟み込むニドちゃん、完全に“にどげり”は破られてしまった。

左右の後ろ足を封じられた状態じゃ“ふいうち”によるカウンターは出来ない…!

 

「“どくばり”‼︎」

「“みずのはどう”‼︎」

 

ドドラの放った毒の千本針がニドちゃんの創り出した水の弾丸に突き刺さり破裂、そのまま余波の水流がドドラを襲う。

 

少々のダメージはこの際しょうがない、まずはニドちゃんのロックから外れないと…⁉︎

 

しかしそんな俺とドドラの捨て身の策はニドちゃんの予想以上の腕力によって無駄に終わる。

 

「なんつー馬鹿力⁉︎」

「止めよニドちゃん‼︎“ひみつのちから”‼︎」

 

ニドちゃんの低い雄叫びと共に砂を撒き散らしながら白く輝く拳がドドラの顔面に減り込む。

 

そして–

 

「ドドラッ⁉︎」

 

ドドラはニドちゃんの腕の中で静かにその意識を失った。

 

「ニドリーノ戦闘不能!ニドリーナの勝ち‼︎」

 

「くっ、よくやったドドラ、ゆっくり休んでくれ。

さあ‼︎お前が最後の砦だ‼︎ヒッポ君に決めた‼︎」

 

「ザッドォォッ‼︎」

 

二番手として登場し先程ニドちゃんを圧倒して戻ったため、HPは満タンであるヒッポ。

そしてブルーの残りは体力を先程ヒッポに削られドドラとの戦闘で疲労しているニドちゃんと未だ戦闘に出ていないフシくん。

ここは流石に草タイプのフシくんに交代はないだろう。

 

「ヒッポ“えんまく”からの“ニトロチャージ”‼︎」

「ニドちゃん“みずのはどう”」

 

ヒッポが口から黒い煙を放つと黒い煙がヒッポを飲み込む。

 

「“みずのはどう”を潰してガードよ‼︎」

 

そうとんだブルーの指示で煙幕の所為で詳しくは見えないが黒い煙の外へ水流が流れてきたという事は恐らくその場で水の弾丸を潰して凝縮していた水で水流を起こし炎タイプの物理攻撃技である“ニトロチャージ”を鎮火しようとしたのだろう。

 

だけど…

 

「残念☆」

 

煙幕が晴れる…そして、

 

「いない⁉︎」

 

ブルーの視線の先に見えたのは何時まで経っても煙幕から出てこないヒッポを警戒していたニドちゃんとヒッポのトレーナーである俺だけだ。

 

俺は上空を指差す。

 

「!」

 

ニドちゃんとブルーの視線が上へ向く、そしてその視線の先には上空へと飛んでいるヒッポの姿があった。

 

ヒッポは俺の意図を感じ取り“ニトロチャージ”を発動しながら飛び上がった、これでさっきの“みずのはどう”の攻撃を避けながら更に自らの素早さを上げ更に…

 

「“ニトロチャージ”」

 

上空からの奇襲を可能にした‼︎

 

ヒッポは身体を炎で包み込むと一気にニドちゃんに向かって急降下、その等加速度運動の加速度の変化の大きさにニドちゃんは対応できずクリーンヒット。

そのまま地面にヒビが入り砂埃と切り裂いた空気が2匹から逃げるように舞い起こり、俺とブルーに襲いかかる。

 

「これで2回…ヒッポ、離れるんだ!」

「ニドちゃん、立ち上がって‼︎」

 

ニドちゃんがその身体にまるで幾つもの重りを背負っているかのような力んだ様子で必死に立ち上がる。

恐らく次の一撃で…

 

「“つばめがえし”‼︎」

「“ひみつのちから”‼︎」

 

同時に指示された技。

 

しかしニドちゃんの拳に力が溜まる前に刹那の一閃がヒッポの肩の高さに一直線でニドちゃんに入る。

 

そしてニドちゃんの拳にためられていたエネルギーが空気中に分散しその光の粒子を身体に浴びながらそのまま地面に倒れる。

 

「ニドリーナ戦闘不能リザードの勝ち‼︎」

 

「力を溜める隙も与えてくれないのね…ありがとうニドちゃん。」

 

今の戦闘、俺にとっては最善の勝ち方をできた…。

炎タイプのヒッポに効果抜群の水タイプの技を使うニドちゃんを一撃も喰らわずに倒し、更に“ニトロチャージ”による素早さ上昇も2回行えた。

 

これで次に出て来る…

 

「頼むわよフシくん‼︎」

 

「フシソッ‼︎」

 

フシくんに素早さで翻弄できる。

お互いオーキド博士から貰ったポケモン同士、そしてお互いの手持ちの中で1番戦法を理解しているポケモン。

 

俺のヒッポは“えんまく”によって相手を撹乱しながら“ニトロチャージ”で着実に素早さを上げ、回避不可の“つばめがえし”とタイプ相性を無効化する“りゅうのいかり”で全範囲(オールレンジ)から怒涛の攻撃を繰り出すのが基本の戦法。

 

そしてフシくんの戦法は主に粉関係の技を使用し“つるのむち”や“はっぱカッター”で、攻撃する、主に遠距離攻撃を得意とする戦法。

だからと言って策なしに近づくと“とっしん”の餌食になる。

 

トレーナーの指示としては俺は技の選択を重視、大してブルーは自分とポケモンとの距離を測る事を重視とする戦法に切り替わる。

 

恐らく今回のブルーもそうだ。

 

だから俺は近遠の入れ替わりを読ませないため、そして更に精度の高い全範囲攻撃(オールレンジアタック)を可能にするためにニドちゃんとの戦闘から素早さを上げたんだ。

 

 

「フシくん“ねむりごな”」

「ヒッポ“えんまく”」

 

フシくんはその立派な蕾から睡眠作用のある緑色の粉を、そしてヒッポは黒い煙を相手に向かって放つ。

 

「“ニトロチャージ”‼︎」

 

ヒッポはその身体に炎を纏いそのまま一直線に突進する。

ヒッポに向かって放たれた“ねむりごな”は纏う炎によって焼き消され無効化される。

 

そしてヒッポはフシくんが包まれている煙幕の中へ突っ込む。

 

「“とっしん”‼︎」

 

煙幕の中からドガッ‼︎という激しい激突音が鳴り響く…ここはヒッポの様子を見るために

 

「フシくん下がれ‼︎」

 

俺のその指示した瞬間、煙の中からヒッポが姿を表す。

 

「競り合いに勝ったのか?」

「グゥ…」

 

俺の問いに対するヒッポの反応とヒッポの外傷のなさから恐らく今の突進系物理攻撃技同士の激突は引き分けに終わったんだろう。

こちらはタイプ一致の技を打っているとはいえ“ニトロチャージ”は“とっしん”の威力には及ばない。

 

今のは恐らく周囲の見えない中急遽放ったために本来の威力を出せず更に打点も外れていたに違いない。

 

本来なら“ニトロチャージ”をしているヒッポを吹き飛ばしていたはず。

この攻防は運が良かっただけだ…

 

「大技による決定打のなさ…それがヒッポの弱点。」

 

「!」

 

俺がその考えに至ろうとした瞬間にブルーがその言葉を俺に聞こえる様に呟き、思わず視線がヒッポからブルーの方へと移る。

 

「多彩な技を持っていたとしても威力が低ければ威力の高い技に押し負ける。

ヒッポの技は確かに多彩よ、だけどね。決定打が無いのよ…ピカチューの“ボルテッカー”のようなね。」

 

ブルーの意見はもっともだ、しかし同時に仕方ないという部分もある。

 

旅を続けて強くなってきたとはいえヒッポはまだ力量(レベル)的に言えばまだ低い。

つまり、高威力の技に耐えきれるほど身体が出来ていないのだ。

 

その力量(レベル)による技の制限の中、フシくんの“とっしん”は恐らくまともにぶつかればヒッポのどんな技を使っても押し負ける程高威力の技。

 

しかし…

 

「別にヒッポの技は物理攻撃技だけじゃねーぞ。それに“とっしん”は自分も反動によるダメージを受けるデメリットがある、相性的に不利なヒッポ相手に連発はできねーだろ?」

 

やっすい挑発だなぁ…俺。

 

ブルーがそんな事を理解していない筈はない。

だからこれは線引きだ。

あいつが“とっしん”を使って何か策を練っているか練っていないか…。

 

いつの間にか晴れていた煙幕、そして目の前にはフシギダネだった頃よりもキリッとした瞳でヒッポと俺を見つめるフシくん。

そして背後からでも痛いほど伝わってくるリザードになって赤くなった体皮が更に燃え上がっているかの様に見えるほどの闘志を放つヒッポ。

 

ポケモン達の気持ちは互角。

 

「ヒッポ“ひのこ”‼︎」

 

「“はっぱカッター”‼︎」

 

火の粉の雨と葉の刃の激突、相性では不利な葉の刃がその威力で火の粉の雨を強引に抑えつける!

 

“ひのこ”<“はっぱカッター”

 

「“ニトロチャージ”‼︎」

「ザッ‼︎」

 

ヒッポが火を纏い上空へと飛び上がる。

これで素早さ+3

そしてこれで…

 

「“ニトロチャージ”‼︎」

「“とっしん”‼︎」

 

ヒッポが上空から一気に急降下し3回上げた素早さを利用して威力を上げながら隕石の如く燃え上りながら突撃する。

そしてそれを迎え撃つフシくんの突撃。

 

「ザァッ‼︎」

「ソォッ‼︎」

 

そしてその結末は…

 

 

「ドォォォォォッ‼︎‼︎」

「ソォッ⁉︎」

 

 

飛び上がって突進してきたフシくんを地面に再び激突させそのまま地面にめり込ませる。

これで“とっしん”に対する対策は練ってきたとブルーに示す。

ヒッポを倒すための切り札となる技である“とっしん”を防がれた…これでブルーは本格的に苦しくなるはずだ。

 

この状況でブルーとフシくんはどう動くか…

 

今度は俺が受け身の立場になって様子を見る。

 

「ヒッポ下がれ‼︎」

 

ヒッポがフシくんから離れ、モンスターボールから出てきた位置に戻る。

デジャヴを感じる…それもそうだろう。

 

これは先程ニドちゃんとの戦闘で行った作戦だ。

 

相手の行動を見てから後出しだとしてもほぼ確実に先に攻撃を当てれる技“つばめがえし”でその作戦を潰すのもよし、“ニトロチャージ”による空中ジャンプで自分の素早さを上げながら回避するという手を使えるヒッポの受け身の体勢のベストポジション。

 

野球のリードと同じく全てをギリギリでこなせる位置にいる事が大切になる。

 

そうこう考えているうちに効果抜群の炎タイプの技を受けたフシくんがその足にこのバトルに対する意思と力を込めているかのようにしっかりと踏ん張って立ち上がる。

 

「タフだな…」

「男の子だからね。」

 

そんなに関係ないだろ…それ。

 

「じゃあブルーがタフなのもブルーは本当はo「さぁフシくん、レッドに“はっぱカッター”よ」ごめんなさいお遊びが過ぎました本当にすみません。」

 

「ザッ…┐( -"-)┌ヤレヤレ...」

「ソゥ…┐('~`;)┌」

 

何故だろう?

ヒッポとフシくんが呆れている様に見えるのだが…

 

まぁ、いいや。

 

 

俺とブルーの纏う空気が再び切り替わる、そしてそれに気づいたのかヒッポとフシくんも再び臨戦状態に入る。

 

「フシくん“はっぱカッター”‼︎」

「“ニトロチャージ”‼︎」

 

遠距離から打ち出された葉の刃をヒッポは数回目になる炎を纏いながらの高ジャンプを行ってそれを回避。

 

そして…

 

「“えんまく”‼︎」

 

空中で纏っていた炎を霧散させたヒッポが口から黒い煙、煙幕を放ち自分の姿を隠す。

これでブルーとフシくんからヒッポのすがたは見えない。

 

「50度から53度!

連続で“はっぱカッター”‼︎」

 

「⁉︎っ“ひのこ”で迎え撃て‼︎」

 

突如ブルーの口から出てきた今までとは別種の指示の仕方に思わず戸惑った俺は反射的に“はっぱカッター”と同じ遠距離攻撃技を指示する。

 

そしてそれを指示した瞬間、俺は自分のミスに気づいた。

 

急を突かれたこのタイミング…流石に予備動作が極端に少なくなったヒッポだとしても流石に本来の威力で放てない。

そして技の相性的には勝っていたとしても“ひのこ”と“はっぱカッター”では元々の威力が違う。

 

そして俺の考えは見事に現実になった。

 

葉の刃が火の粉の雨を切り裂きながら煙幕に隠れているヒッポ目掛けて飛んでいく。

 

 

そして今度は俺の嫌な予感。

 

 

 

煙幕で隠れているヒッポにクリティカルヒットするという事までもが当たってしまった。

 

 

「ヒッポ⁉︎」

 

 

ヒッポは空中でバランスを崩しそのまま地面に落下。

 

「フシくん“とっしん”‼︎」

 

体制を崩し無防備なヒッポに強烈な突進がクリーンヒット。

ヒッポはそのまま水平に、ポケモンセンターの塀に向かって落ちるかの様に吹き飛ばされる。

 

「そして…」

「くっ⁉︎ヒッポ“ニトロ…」

 

 

 

「“どくのこな”‼︎」

 

 

フシくんの蕾から放たれる紫色の粉、そしてそれはダメージを受けて動けずにいるヒッポにふりかかる。

 

「ザアゥゥッ⁉︎」

 

身体に紫色の粉を受けたヒッポの身体から紫色のスパークが起こる。

 

毒状態になった証拠だ…⁉︎

 

毒状態になってしまったら一定ペースでダメージを受け続けてしまう。

更にはそれによる怯みによって行動も制限されてしまう。

 

「持久戦じゃ勝ち目はなくなったな…元々やるつもりはねーけど。」

 

毒状態になったならやる事は1つ。

 

 

「上げた素早さを生かして走りまくれ‼︎」

 

 

毒状態によるダメージの怯みを恐れずにいつも以上に動き回る‼︎

 

「素早さを利用して揺さぶるつもりね。」

 

(たとえ怯んだとしてもそこを狙う事が出来ないくらいのスピードでねぇ〜、だけど‼︎)

 

「あんたの性格は理解してるって言ってるでしょ‼︎フシくん‼︎“あまいかおり”‼︎」

 

フシくんの周囲をグルグルと超スピードで走り回るヒッポに目もくれずフシくんは蕾から甘ったるい視覚出来るピンク色の香りを放つ。

 

それはフシくんを中心に走り回っていたヒッポに届きその香りを吸ったヒッポの注意が一瞬どこかて飛んでいき全体的な回避能力が下がってしまう。

 

そして能力が下がった際に起こった一瞬の隙を

 

「フシくん“つるのむち”でヒッポを捕まえて‼︎」

 

ブルーは見逃さない。

 

 

フシくんの放った蔓はヒッポの右足に巻きつきそしてヒッポを上を持ち上げぶら下げる状態にさせる、そして

 

「“とっしん”‼︎」

 

再び強烈な突進がヒッポにヒット、そして…

 

「嘘だろっ⁉︎」

 

吹き飛ばされたヒッポは右足を蔓で巻きつかれ上で吊るされているせいでまるで振り子の様にフシくんの元へと戻っていく。

 

「連続で“とっしん”‼︎」

 

ドゴォッと先程よりも強烈な衝突音が響き渡る。

振り子の様に戻ってきたヒッポのスピードを利用して更に大きなダメージを与えた証拠だ。

 

ヒッポは強烈な技を連続でまともに受けたダメージとその中で定期的に起こる毒のダメージとが重なって為すがままの状態でいる。

 

「…ヤバイ」

 

 

ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ ⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎

 

 

ブルーが“どくのこな”を選択した理由はこういう事だったのか⁉︎

 

“ねむりごな”の場合ある程度したら起きてしまうがその間は相手を無抵抗のまま好き放題に攻撃する事が出来る。

ヒッポ相手にタイプ相性的に不利なフシくんの場合普通ならそっちを選択する筈だ。

 

だけど今回わざわざブルーはヒッポに“どくのこな”を指示した。

 

それは何故か?

 

自分に対する怒りとブルーに対するなんとも言えぬ行き場のない強い感情が俺の身体から汗を発生させ無意識にその汗で湿った手を強く握らせる。

 

そして抑えきれない悔しさが俺にブルーを睨みつけさせた。

 

 

全ての掌の上だったって事かよ…‼︎

 

 

 

あいつは…ブルーはわかってたんだ。ヒッポが毒状態になった時俺はどんな指示をするかを。

走り回る様に指示されたヒッポを確実に捕らえられる技をその瞬間まで隠し持ち、捕らえたところで吊るし上げ完全な突進攻撃の無限ループを作り出した。

 

 

そして驚くべき事はもう1つある。

 

 

強烈な突進の威力の反動を受けながらもヒッポを固定し続けるフシくんの力。

しかもフシくんは未だに余裕の表情だ。

 

ヒッポが予備動作を殆ど無しに技を放てるという特徴を持つ様にフシくんにも個性があったっていう事か…

 

「ヒッポ“ニトロチャージ”で突破するんだ‼︎」

 

俺の指示がヒッポの耳に届きその瞳が鋭く尖り、体の中の炉を燃やし身体中に纏わせようとする…

 

 

「ソォッ‼︎‼︎」

「ガアッ⁉︎」

 

「ヒッポ⁉︎」

 

その瞬間にヒッポの腹にフシくんの頭がめり込む。

 

 

しかし

 

 

 

「グォッッッ‼︎‼︎‼︎」

「ソゴッ⁉︎」

 

 

ドォォンッッ‼︎‼︎

 

 

体内で炊いていた炉の炎が暴発し突進して来たフシくんごと炎で包み込む。

流石に弱点である炎を食らったら…

 

「舐めないで‼︎‼︎」

 

「フッソォォォォォォッッ‼︎‼︎」

 

一瞬、ヒッポを吊るし上げている蔓が動いたがフシくんの大きな叫びが轟いた瞬間、再び元の位置へと伸ばされ再びヒッポを固定する。

 

そして蔓の主であるフシくんは身体から煙を放ちつつも背負っているその立派な蕾同様、ガッシリと炎の暴発による爆風に耐えきり、脚の筋肉を最大限に利用して再びヒッポに向かって突進‼︎

ヒッポは“ニトロチャージ”の暴発の影響で身体中から煙を放ち半分意識が飛んでいる状態に陥っていた。

 

「“ニトロチャージ”だ‼︎」

 

 

俺の指示…と言うよりも追い込まれ過ぎた者が必死に助けを求める様な声をあげて叫んだ一言は…

 

 

 

「ウグォォォォガァァァォォァァッッ‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

ヒッポに違う火を付けた。

 

一気に大きな炎が身体中から燃え上がりヒッポが大きな火の玉と姿を変えると今まで身動きの取れないくらいに空中で固定されていたのが嘘みたいに右足に巻きついてある蔓から空中で力づくで抜け出すと一気にロケットの様に後方に煙を放ちながら加速し、数え切れないほどの突進を繰り出して来たフシくんにまるで倍返しだ‼︎と言わんばかりの炎の突進を繰り出した‼︎‼︎

 

フシくんは水切りの石の様に何回も地面にぶつかりながらポケモンセンターの塀へと激突し大量の砂埃と煙を大量に巻き上げる。

 

「ッッ⁉︎」

 

ブルーの何とも言えぬ声が耳に入る。

 

そして俺の瞳に映るのは身体中に真紅のオーラを纏い自らの象徴である尻尾の炎が自身の2倍の大きさに燃え上がっているヒッポの姿。

 

俺はこの姿を見た事がある。

 

 

「『もうか』…‼︎‼︎」

 

 

ニビジム戦でまだヒトカゲだった時のヒッポが発動し猛威を奮った強力な特性がリザードに進化を遂げたヒッポにも現れた。

 

「特性も進化してねぇか…これ…」

 

以前の『もうか』に比べると纏う真紅のオーラが大きく更に迫力を増している。

スッと俺は図鑑を確認し、ヒッポのステータスを確認する。

 

「やっぱり『もうか』を発動しても毒状態は回復されないか…。」

 

ステータスを確認すると未だにヒッポの欄には毒という文字が。

 

「タイムリミットは近い…一気にかたをつける‼︎」

 

『もうか』が発動した時点でヒッポのHPが残り少ない事は分かっている。

更にその状態でも襲いかかってくる毒のダメージ。

 

時間がない事は明らかだった。

 

 

「ヒッポ“ニトロチャ…」

 

俺が技を指示しようと言葉を発した瞬間。

 

俺の目が大きく開かれる。

 

 

その大きく開かれた瞳に映っているのは『緑』。

 

大量の葉の刃がヒッポに向かって放たれていた。

 

「ッッ⁉︎」

 

範囲が広過ぎて交わす事は不可能。

 

「“ニトロチャージ”‼︎」

 

迎え撃つしか手がなかった。

 

 

巨大な火の玉と大量の葉の刃が激突し力が拮抗したのか大きな爆発を起こしてその身で迎え撃ったヒッポを吹き飛ばす、しかしヒッポは最小限のダメージに抑えるために空中で回転しながら着地する。

 

「いったい何が⁉︎」

 

 

 

 

「フッソォォォォォォォォォォォォッ‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

 

砂煙の中からフシくんの叫び声が轟いたと同時に再び大量の葉の刃…“はっぱカッター”が襲いかかってくる。

 

「“ひのこ”だ‼︎」

 

さっきの攻防の反省点を踏まえ今度は遠距離炎技である“ひのこ”を指示、特性の発動により強化された火の粉は1つ1つ葉の刃を燃やし、灰へと姿を変えさせる。

 

「…コレはまさか…」

「そのまさかよレッド。」

 

ギリッと歯をくいしばる音が俺の身体の内部から発せられ内側から鼓膜を揺らす。

 

(これが私達の切り札…レッドが例えどんなに逆境を乗り越える光を見つけたとしてもその光を更に消すための大きな闇を作り出す。)

 

レッドとの別れを考えてから数刻しか経っていないのにも関わらずブルーは対レッドの戦略を幾つも考え付いていた。

 

今まで一緒に旅をして来る中でレッドを見てきて、レッドのポケモン達を見てきて、どれだけ密の濃い時間を過ごしてきたのか、経験を積んできたのかを心のそこから感じ取った。

 

思い出すだけで笑みを零してしまうような楽しい日々。

それと同時に同時に流れ込んでくる強い思い達。

 

 

 

 

ー別れたくない。

 

 

 

ーもっとレッドと一緒に旅をしたい。

 

 

 

 

自分が思っている以上に大きかったその感情に、自分にとって本当に楽しく大切な日々だったんだという事をブルーは自覚させられた。

 

しかしー

 

不意にブルーは自分の左側を見つめる。

 

 

そこにいるのは『ジムバッチを持った人達のバトルを間近で見れるんなら是非喜んで‼︎』と言ってポケモンセンターの仕事をサポート役のポケモン・ラッキーに頼んでまで審判をしてくれているジョーイさんと、

ベンチに座っていつも通り優し()()な目で、このバトルを見つめるナナミの姿が…

 

レッドがナナミにメロメロなのは明らか、そしてレッドの人を見る眼が優れている事はおつきみやまに向かう道中で出会った少年2人の件から知っている。

 

そんなレッドが好意を抱く相手だ、普通は疑う事はない。

 

 

だけど何が引っかかる。

 

 

この女の奥底に潜む何かがある。

 

 

そしてそれはとても危険だという事も。

 

 

 

レッドには無いブルーの女の勘がそれを敏感に感じ取っている。

 

 

 

そしてその危険からレッドを守る力が自分には無い事も感じ取っている。

 

 

だから、この別れたくないという思いを押さえつける必要があった。

レッドを守る為に1人で強くならなければいけないんだ。

 

(だからこのバトルは私がレッドと共に旅してきた思い出と感謝をぶつけるためのバトルであり次に会った時に私とポケモン達の成長を感じてもらうためのバトル‼︎‼︎)

 

例え大きな博打を打つ事になってでも私達は実力を一滴も残さずに出し切る‼︎‼︎

 

「行くわよフシくん‼︎‼︎‼︎」

「ゾォォォォォッ‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

砂塵の中から出てきたのは背中に背負っている赤い蕾を更に赤く輝かせ、身体から緑色の畝るオーラを放っているフシくんだった。

 

「やっぱり…『しんりょく』を発動したのか⁉︎⁉︎」

 

特性『しんりょく』

 

その効果は『もうか』と同じ

体力が残り少なくなると草タイプの技の威力を上げる特性だ。

 

「“とっしん”をあそこまで連続で打っていたのは『しんりょく』を発動させるため…⁉︎

その特性は体力が残り少なくなったからって必ず発動する技じゃないのにそんな賭けに出たってのか⁉︎⁉︎⁉︎」

 

 

トレーナーである私が強く思っていれば。

 

 

ポケモン達も私の思いに応えてくれる‼︎

 

 

 

それはレッド、貴方と旅をしてきて学んだ1番の宝物よ…?

 

 

「フシくん“エナジーボール”‼︎‼︎」

「ソォォォッッ‼︎‼︎」

 

フシくんがその蕾の先から緑色に輝く草エネルギーの球体を作り出すと、勢いよくそれをヒッポに向かって撃つ‼︎

 

威力は“とっしん”に匹敵する草タイプの特殊攻撃技“エナジーボール”、『しんりょく』を発動した事による力のレベルアップでフシくんは新たなる技を解放した‼︎

 

「ヒッポ“ほのおのパンチ”で迎え撃て‼︎‼︎」

「ザァァッ…‼︎‼︎」

 

ヒッポが右腕に大きな炎を纏わせながらフシくんから放たれた草エネルギーの弾丸に向かって突っ込んでいく‼︎

炎タイプの物理攻撃技“ほのおのパンチ”

ヒッポも同じく特性の発動によって新たな技を開眼した‼︎

 

そして…‼︎

 

「ドォォォッ‼︎‼︎」

 

粉砕‼︎‼︎

 

尚もヒッポはフシくんに向かって突撃する!

 

「“つるのむち”‼︎」

「“つばめがえし”‼︎」

 

槍のように突き出されたフシくんの幾つもの蔓をヒッポは刹那の攻撃の連撃で弾き飛ばしていく。

 

「“ほのおのパンチ”‼︎」

「“つるのむち”で足を弾いて‼︎」

 

バシッと炎を拳に纏ったヒッポの左足を蔓の槍が弾き飛ばす、それによってヒッポの体制が崩れる。

 

「“エナジーボール”‼︎」

 

「“ニトロチャージ”‼︎‼︎」

 

ヒッポが不発に終わりかけた“ほのおのパンチ”残さずに炎を一気に全身に巡らせ崩れた体制による揺らぎを利用して擬似的な暴発を作り出しフシくんの頭上をまるでジェット機の様に超えていき、“エナジーボール”を交わす‼︎

 

「“りゅうのいかり”‼︎」

 

そしてそこから繰り出される竜の形をしたタイプ相性無効の竜の炎。

 

「“つるのむち”‼︎」

 

そしてそれを今度はフシくんが自らの蔓をトレーナーであるブルーの腕に巻きつけその反動を利用して先程のヒッポと同じくヒッポの頭上を越える事で竜の炎を逃れる。

 

「一旦後退だヒッポ‼︎」

「ザッ‼︎」

 

“りゅうのいかり”をかわされ、至近距離からの攻防に区切りをつけるべきだと判断したレッドがヒッポに後ろに下がるよう指示、ヒッポはレッドの指示に従うが…

 

「グォォッ⁈」

 

襲い来る毒のダメージ。

紫色のスパークがヒッポの身体で起こる。

 

「あと、一回…」

 

ヒッポの様子を見てレッドは確信した、あと一回の攻撃でケリをつけなければ毒のダメージに耐え切れず負けると。

 

「やってやろうじゃねぇか…いくぜ‼︎ヒッポ‼︎‼︎」

 

「ザァァァァァァァァァァァッド‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

尻尾の炎が大きく燃え上がる。

 

「“ニトロチャージ”‼︎」

 

大きな炎球がフシくんに襲いかかる‼︎

 

「私達だって負けない‼︎フシくん‼︎“エナジーボール”‼︎‼︎」

 

フシくんが草タイプのエネルギーボールを放つ。

 

ー私は貴方に教えられた‼︎

 

「“ほのおのパンチ”に切り換えろ‼︎‼︎」

 

全身に纏っていた炎がヒッポの右拳に集中、“エナジーボール”を爆散させる‼︎

 

ーポケモンとトレーナーの絆の大切さを‼︎

 

「“はっぱカッター”‼︎」

「“りゅうのいかり”‼︎」

 

無数の葉の刃と竜の青炎が激突、爆散‼︎

 

ーそして…‼︎‼︎

 

「“えんまく”‼︎」

「“つるのむち”で貫いて‼︎」

 

ヒッポが黒い煙を吐くとそこを蔓の槍が貫き風穴が空きその後一瞬にして煙を振り払う‼︎

 

そしてそこに既にヒッポはいない‼︎

 

 

「いくぜヒッポぉぉぉっ‼︎‼︎」

「ッ‼︎‼︎」

 

ブルーとフシくんが上空を見上げるとそこには…

 

「リッザァッ‼︎‼︎」

 

身体中の『もうか』のオーラごと自身の拳に宿し大きく燃え上がらせているヒッポの姿が…‼︎‼︎

 

「“ほのおのパンチ”ッッッッ‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

急降下で降りてくるヒッポ、そして大きな炎を纏うその拳はまるで隕石の様に威力を増して落ちてくる‼︎‼︎

その落ちてくるスピードは…既にフシくんの回避能力を上回っている‼︎

 

 

 

「いっけえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

ー最後までポケモンを信じて諦めなければ…

 

 

「フゥゥッソぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッッ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

ーポケモン達は必ず応えてくれるって言うこと‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎

 

 

「なっ⁉︎⁉︎」

 

 

突如とフシくんの蕾の先端から放たれた巨大な光線。

 

 

それは隕石の如く襲ってくるヒッポを飲み込み…

 

 

 

 

空に一本の光の柱を作り出した。

 

 

 

 

そして…

 

 

 

ドシャァァァァァァァッ‼︎‼︎

 

 

 

光の柱が消えた後、レッドの目の前に『もうか』による真紅のオーラが消え戦闘不能状態となったヒッポが落ちた。

 

「リザード戦闘不能‼︎フシギソウの勝ち‼︎よって勝者ブルー‼︎‼︎‼︎」

 

 

「…勝った…?。…勝った‼︎‼︎」

「フシソッ‼︎‼︎」

 

一瞬のうちに大きな奇跡が起こったことにより脳の処理が追いつかなかったブルーだが瞬く間に自分の勝利を認識してフシくんを抱きしめ喜び合う。

 

「よくやった、ありがとな?ヒッポ…。」

 

レッドは絶体絶命の状況に陥りながらも何度もその状況を跳ね除けてくれたヒッポに心からの感謝を言うとモンスターボールに戻した。

 

そして今度は自分に勝利したブルーの元へと歩いていく。

 

「最後の技…あれって“ソーラービーム”だよな?」

「えぇ、多分。」

 

“ソーラービーム”

草タイプの超高威力特殊攻撃技であるが、太陽の光を吸収して放つためチャージに時間がかかり、時間帯や天候によって必要な時間が変わる技だ。

 

「図鑑で確認してもフシくんの覚えている技に“ソーラービーム”の名前はないわ、多分さっきのは偶然発動したものだと思うわ。」

 

「…ブルーとフシくんの思いが本来発動できない筈の技を呼び起こしたんだ…。

なんだよ、どちらにしろ完敗じゃないか。」

 

ニヤッと悪戯っぽい笑みを浮かべるレッドに思わずニヤッと同じ様な笑みを返すブルー。

 

2人はお互いの健闘をたたえ合う様にギュッと握手を交わした。

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

「じゃあ私、行くわね。」

 

バトルで疲れたポケモン達をポケモンセンターに預けた後、ブルーのポケモン達の方が早く回復し終えたので、先にブルーはこのハナダシティを出る事になった。

因みにピカチューもついでにポケモンセンターに預けている。

ー何か言わないと、えぇと…

 

「俺の旅の初黒星はブルーにやるよ。だけど次にバトルする時はお前の初黒星は俺が貰ってやるよ。」

 

そう言うとレッドは頬を赤らめ右手で頭を掻きながら言葉を発した。

 

「だからそれまで…負けんなよ…誰にも。」

 

その言葉にブルーは大きく眼を開き、その後ニヤッと 笑みを浮かべると。

 

「いいわよ、その代わりあんたも負けないでよ?」

 

「あぁ、約束だ。」

 

そしてお互いに固い約束を誓い合った。

 

「じゃあね、レッド。

貴方との旅、とても楽しかったわ。

本当にありがとう。」

 

「ふぁっ⁉︎////

え、えぇ⁉︎、おおぅ…こちらこそありがとう…////」

 

突然のブルーの言葉にレッドの顔が真っ赤に染まる。

 

「何よ、私が素直な気持ちを口にするのってそんなに驚くこと⁉︎」

 

「いや、違くて…まあ、確かにそうでもあるけど…」

 

レッドがこの様な状態にあるのは別の理由なのだがそれを口にするのが小っ恥ずかしくしどろもどろな状態になる。

 

「やっぱり、もう‼︎…ふふふっ

本当にありがとね、じゃあね‼︎」

 

 

そう言って駆け出して行くブルーの姿を見ると、レッドにとってブルーと一緒に旅をしてきた日々が終わってしまう悲しみにすこし心を飲まれそうになっていたが…

 

「それは駄目だよな。」

 

そう言うとレッドは自分に背中を向けて走るブルーに向かって聞こえない様に囁いた

 

 

 

「本当にありがとう。」

 

 

 

 

 

 

RED

 

手持ちのポケモン

 

ヒッポ(リザード♂)Lv.19

 

特性:もうか

ひかえめな性格 イタズラが好き

 

ほのおのパンチ

かみなりパンチ

ニトロチャージ

つばめがえし

など

 

 

キーク(マンキー♂)Lv.18

 

特性:いかりのつぼ

いじっぱりな性格 暴れることが好き

 

からげんき

ちきゅうなげ

からてチョップ

けたぐり

など

 

 

ドドラ(ニドリーノ)Lv.17

 

特性:???

無邪気な性格 少しお調子者

 

ふいうち

にどげり

あまごい

どくばり

など

 

 

ピカチュー(ピカチュウ♂)Lv.7

 

特性:ひらいしん

やんちゃな性格 物音に敏感

 

でんきショック

フラッシュ

なきごえ

しっぽをふる

など

 

 

 

BLUE

 

手持ちのポケモン

 

フシくん(フシギソウ♂)Lv.24

 

特性:しんりょく

がんばりやな性格 力が自慢

 

エナジーボール

はっぱカッター

つるのむち

どくのこな

など

 

 

ニドちゃん(ニドリーナ)Lv.18

 

特性:はりきり

ゆうかんな性格 ちょっと怒りっぽい

 

ひみつのちから

みずのはどう

にどげり

どくばり

など

 

 

コンちゃん(ロコン♀)Lv.28

 

特性:ひでり

れいせいな性格 とてもきちょうめん

 

はじけるほのお

おにび

たたりめ

しっぺがえし

など

 

 

 

「さて、俺もヒッポ達を迎えに行ってやるか」

 

そう言ってレッドがポケモンセンターの方へ振り向いた瞬間

 

「あ……」

 

一瞬、気の抜けたレッドの声が聞こえたと思ったら一瞬にしてレッドの瞳が虚ろに変わる。

 

「…いかなきゃ。」

 

そう呟くと、レッドはおぼつかない足並みでポケモンセンターの中に入っていく。

 

そしてポケモンセンターの中に入ると階段を登り、宿の方へと向かっていく。

 

そして1つの部屋の前に行くと、その扉を開ける。

 

そしてそこにいたのは…

 

 

「やっと来たわね、レッド君…」

 

レッドが好意を抱いている相手、ナナミだった。

虚ろな表情をしたレッドが向かったのはナナミの泊まっている部屋だった。

 

「ここに座りなさい」

「はい…わかりました…。」

 

ナナミに支持された通りレッドはナナミの座っているベッドの隣に座った。

 

「ふふふ、後催眠もちゃんと聞いてるみたいね。」

 

レッドがこの様な状態に陥っている理由は先刻、レッドがタケシの事件で落ち込み部屋に篭った時に起こったナナミとの事件の後、ナナミの部屋に呼び出された時にあった。

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

《数時間前》

 

「お邪魔しま…す」

 

レッドが恐る恐るナナミの部屋に入る、顔が真っ青なのも無理は無いだろう、何故なら自分のポケモンであるヒッポがナナミの顔を部屋のドアでぶん殴ってしまったのだから…

 

「?」

 

しかしレッドが部屋の中で見たのは先程の怒っているナナミの姿ではなく、少し笑みを浮かべているナナミ、内心そんなに怒ってなかったんだ…よかったと思いつつもナナミの纏う雰囲気が何故か不気味だ…。

 

「ナナミ…さん?」

「別に私、怒って無いわよ、部屋に呼んだのはレッド君に見てもらいたい子があっただけ」

「へ?」

 

そう言ってナナミが取り出したのは1つのモンスターボール、そしてそこから飛び出てきたのは…

 

 

 

「スリーパー…⁉︎」

 

 

 

レッドの顔が恐怖に染まる。

 

 

自分がトレーナーズスクールで学んでいた頃にいじめっ子達に散々催眠術をかけられ操られいじめられていた辛い記憶が蘇る。

 

その時にいじめっ子達が使っていたポケモンがスリープ。

そして今レッドの目の前にいるポケモンはその進化系であるスリーパー、肥満体型のスリープがシュッとスリムになり、催眠能力が上昇したポケモンだ。

 

「…嫌だ…」

 

「…」

 

レッドが一歩後ずさる

ナナミがそれを見て黒い笑みを浮かべる

 

「スリーパー」

「嫌だ…嫌だ嫌だ…!嫌だ…嫌…‼︎」

 

 

 

「“さいみんじゅつ”」

 

 

 

「嫌だ…嫌、あ…⁉︎」

 

スリーパーの振り子が揺れそこから発せられる波動に当てられたレッドの瞳から光が消える。

恐怖に囚われ、部屋を飛び出そうとしたレッドはその抵抗をやめその場で大人しくなる。

 

「こっちに来なさい」

「はい…わかりました…」

 

催眠状態に堕とされたレッドはナナミの言う通りナナミの目の前に来る。

 

「ふふふ、久しぶりだったけど深くかかってるわね❤︎」

 

スッとナナミが右手でレッドの顎を上げる。

 

「レッド君は覚えて無いけど、実はレッド君は何回も私のスリーパー…その時はまだスリープだったけど“さいみんじゅつ”にかかっているのよ?

レッド君のいじめられて傷ついた心をカウンセリングする為にね。」

 

グイっと顎を上げている右手の親指でレッド唇を右から左に上唇からなぞる。

レッドは虚ろな目でそれを受け入れるが、顔は赤くなり、熱を帯びた吐息が漏れている。

 

「最後は何時だったかな?

レッド君の家に監視カメラと盗聴器をつけた時以来かな?

あの時も催眠状態にして設置するのを手伝って貰ったり、監視カメラと盗聴器に気づかないよう暗示をかけたんだよ。」

 

グイッとナナミがレッドを引き寄せてギュッと抱きしめる。

 

「あぁ〜…レッド君の匂いがする❤︎」

 

ナナミがレッドの匂いを嗅いでいると催眠状態のレッドの腕がナナミの腰に巻かれる。

 

「ふふっ❤︎、そんなに私の事が好きなの?」

「すきぃ…♡、だいすきぃぃ♡」

 

レッドの顔は真っ赤に染まり熱の篭った吐息を吐き、ナナミと同じ様にナナミの匂いを嗅ぐ。

その瞳には涙が浮かんでいる。

 

「じゃあ、そんなレッド君に私が1つ暗示を与えます。

レッド君がブルーちゃんと別れたら全ての手持ちのポケモンを置いて私の所に来なさい。」

 

「はい…わかりました…」

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

「あの後も落ち込んだレッド君を催眠術で励ましてあげれたし…ふふっ❤︎

じゃあその時の借りを返してもらうっていう事で…レッド君。」

 

「…はい…」

 

「私の事好き?」

 

「はい…好きです…」

 

ふふふっ❤︎レッド君は私が初めて催眠状態にした時から暗示をかけなくてもずっと私の事好きって言うんだから…

 

じゃあ…

 

 

「ブルーちゃんの事は…?」

 

 

 

「…わかりません…」

 

「わからない?それはどういう事?」

 

 

「…ブルーは…ナナミさんに抱く感情とは違うけど…他の人よりもずっと大きい…とても大切な人…」

 

……………………………………

 

レッド君の中の私の位置にあの女が近づいてきてる…

 

 

 

気にくわない…

 

 

キニクワナイ…キニクワナイ…

 

 

 

キニクワナイキニクワナイキニクワナイキニクワナイキニクワナイキニクワナイキニクワナイキニクワナイキニクワナイキニクワナイキニクワナイキニクワナイキニクワナイキニクワナイキニクワナイキニクワナイキニクワナイキニクワナイキニクワナイキニクワナイキニクワナイキニクワナイキニクワナイ

キニクワナイ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎

 

 

 

 

 

「消しちゃいましょう、その感情。」

 

 

 

 

 

 

「レッド君、君はブルーちゃんを友達以上に思っている感情を綺麗さっぱり消してしまいます。

その後に残っているのはブルーちゃんを友達として抱いている感情だけ…いいわね?」

 

あの女は私を敵対視している、下手にあの女に対する思いを全て消したら疑われる。

 

だけどそっちの方が好都合。

 

 

あの女は気づかない内にレッド君からあの女の存在は消えていくんだから。

 

 

 

 

「…いや…です…。」

 

 

 

 

「‼︎‼︎」

 

なんですって…

 

 

「…この思いは…大切な…もの…忘れたく…ない…!」

 

 

…………………………

 

 

「レッド君」

「あっ…」

 

 

ナナミの右手の人差し指がレッドの額に触れる。

 

それと同時にレッドの虚ろな瞳が揺れ始め更に暗い所と落ちていく。

 

 

 

「服を脱ぎなさい

 

 

服を脱いでいく内にレッド君の心はドンドン開かれていって、下着も全て脱いだら…私の言う通りに行動する…奴隷になるわよ。」

 

「あっ…あ…あぁ…」

 

 

 

 

「さぁ、裸になりなさい。」

 

 

 

レッドはスッと立ち上がり、シュルシュルと服を脱いでいく。

 

ナナミは人間が人前で裸になるという羞恥心を人に従わなければいけないという従属感に変える事でレッドを一時的に自分の奴隷にしようと考えた。

 

そして残念ながらレッドはブルーへの思いを消す事以外にナナミに逆らう力はない。

 

レッドは服を脱いでいくたびにナナミの言う通りに動く事を喜びとする奴隷へと心を変えていく。

 

そして下着一枚になった時には既に後一枚脱ぐ事でナナミの完全な奴隷になれる事に喜びと興奮を抱いていた。

 

 

そしてレッドは最後の一枚を脱ぎ去り、異性であり思い人であったナナミの前に生まれたままの姿で直立する。

 

 

「いい子ねレッド君。」

 

ナナミがレッドの頭を優しく撫でる。

 

そうするとレッドは顔を赤くし瞳に涙を溜め口元を緩ませる。

 

 

「あぁっ❤︎…ありがとうございます…❤︎…ナナミ様…❤︎❤︎」

 

 

既にナナミの奴隷となったレッドはご主人様であるナナミに褒められるだけで身体を震えさせ、性的興奮を抱くようになってしまった。

既に身体の一部がその事を強く主張している。

 

「レッド君は今、どうなってるの?」

 

「はい❤︎レッドはナナミ様の奴隷です❤︎❤︎」

 

「じゃあ私の言う事には逆らわないの?」

 

「はい❤︎ナナミ様の言う事には絶対逆らいません❤︎❤︎」

 

 

ふふっとナナミが再び黒い笑みを浮かべる

 

そして…

 

 

「じゃあブルーに対する普通の友達以上に思っている感情を全て消しなさい。」

 

 

「はいっ❤︎❤︎❤︎わかりました❤︎❤︎❤︎❤︎」

 

 

レッドの心がその命令を許した事を確認し、ナナミはレッドの額に指を当てる。

 

 

するとレッドは裸のままその場で意識を失い記憶の整理をし始めた。

 

 

 

 

「まだかけたい暗示があるから付き合ってもらうわね❤︎

 

レッド君、大好き♡」

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

《1時間後》

 

 

「じゃあ、ナナミさん俺行ってきます。」

 

ポケモン達の回復も終え、レッドはハナダシティをでて1度ハナダの岬を目指して出発しようとしていた。

 

「いってらっしゃい、気をつけてね」

 

ナナミが見送りに来る、いつもと変わらぬ優しい笑顔にレッドの頬が薄いピンク色に染まる。

 

するとナナミが突然、

 

「ブルーちゃんと約束、覚えてる?」

 

と、レッドから持ちかけたブルーとの約束の話を持ち出してきた。

 

 

 

「えっと…なんの事でしたっけ?」

 

 

 

しかし、レッドは覚えがないみたいにキョトンとした顔を浮かべる。

 

「今度バトルする時までお互い誰にも負けるなって約束!バトルが終わった後してたでしょ!」

 

するとレッドは思い出した様で。

 

「あぁ〜、ありましたね、()()()()()

 

どうでも良さそうな声音でそう言った。

 

 

「じゃあ、いってきます‼︎」

 

 

そうしてレッドはナナミに背を向けて手を振りながら走り出す、

 

ナナミもそんなレッドを

 

 

満面の笑みを浮かべて見送った。

 

 

 

 

 

 

ブルーと別れたその日…

 

 

 

 

 

レッドはブルーに対する思いを失った。

 




これ…大丈夫だよね…大丈夫であってください。


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第22話 陰謀の影 前編

24番道路

 

「ピカチュー“でんきショック”!」

 

ピカチューから放たれた電撃がポッポにヒット、効果抜群の電気タイプの攻撃を受けたポッポはそのまま戦闘不能になる。

 

「あぁ⁉︎、チッチ⁉︎」

 

ーチッチと呼ばれたポッポの元にミニスカートの少女が近づいていく…見えるかな?見えないかな?…

 

スッとレッドが目を細めて男の下劣な欲を一点に浴びがちな布がチラッと見えるのを待つ…

 

そしてミニスカートの少女が座り込んだ瞬間

 

「!」

 

ースパッツ…だと…⁉︎

 

そこから覗いたのはレッドが全ての男が求めるものを守るための黒い鉄壁。

 

レッドの望みはそのスパッツに阻まれてしまった。

 

「……」

 

レッドは真剣な表情で黙り込む。

 

そして…

 

 

ーそれもいい…

 

 

幸せそうな表情を浮かべた。

 

 

24番道路にある豪勢な道、その名もゴールデンボールブリッジ…卑猥な名前だと思ったお前ら…ド変態だな‼︎

 

 

 

…俺もな!

 

 

 

「あぁ、それにしても…」

 

俺は視線を左右に向けると見えるのは人、ポケモン、人、ポケモン。この卑猥橋のあちらこちらには何故か目をキラキラさせてバトルしているトレーナーの姿があり、そしてポケモンバトルに負けた者は次々と橋を降りて行っている。

 

「一体何なんだ?これ…」

「みんな賞品を欲しがっているのよ。」

「!」

 

 

背後からの聞いたことのある声に思わず振り返る。

 

そしてそこにはオレンジ色の髪を右上に1つに束ねた俺と同い歳くらいの…っていうか俺と同い歳の水タイプのエキスパート

 

「カスミ!」

 

の姿があった。

 

「昨日ぶりねレッド!」

 

その姿はジム戦で見た水着姿ではなくへそだしルックの黄色いノースリーブTシャツに赤いサスペンダー付きのショートパンツ姿だ…どちらにしろ露出が多い事に違いはないが…

 

 

「相変わらず色気を感じねぇ…」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

「本当に申し訳ございませんでした…許してください…俺みたいなゴミがカスミ様の溢れんばかりの色気に気づくはずがないですよね…死んでるしっていうか生物じゃないから…ははっ…ははははははははは。」

 

身体中痣だらけずぶ濡れ混乱状態のレッドは仰向けで倒れながらブツブツと同じ台詞を繰り返す。

 

「ぴかちゅぴ…┐('~`;)┌」

 

ピカチューは頭が逝かれたレッドの元に近づくと…

 

「ぴ〜か〜っちゅー‼︎」

「あびあばばばばばばばばばっ⁉︎⁉︎」

 

電気ショーック‼︎

 

水浸しになり電気をよく通す体となったレッドに強烈な電撃が身体中を走り抜ける!

 

 

「殺す気かぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」

 

 

 

「起きたわね」

「ぴかちゅ」

 

 

 

「お前ら2人揃って俺を殺す気か⁉︎⁉︎」

 

「そのまま死ねばよかったのに。」

 

カスミは冷たい瞳で吐き棄てるかのように言葉を口にした。

 

「冗談だよな⁉︎冗談だと言ってくれ⁉︎あんなに熱いバトルを交わした仲じゃないか⁉︎」

 

「ジョウダンダヨー」

 

「心のこもった棒読みありがとぉぉぉっ…」

 

 

 

俺、本気でデリカシー学ぼう。

 

 

 

「でぇ…賞品って一体どゆ事?」

 

「『きんのたま』が貰えるのよ。」

 

金の玉…⁉︎

 

「お⁉︎…女の子がそんな破廉恥な事言うんじゃありません‼︎‼︎ゲボォ⁉︎≡○)゚д。)、;’.・」

 

「破廉恥なのはアンタでしょ‼︎

そっちのきんのたまじゃないわよ‼︎」

 

 

 

「え?そっちってどっちの事かなぁ〜⁇

ニヤーリ♡(´^ิ∀^ิ`*)」

 

「(◞≼◉ื≽◟◞౪◟,◞≼◉ื≽◟)」

 

「申し訳ございません、許してください、土下座するんで⁉︎ていうかもうしてるんで⁉︎」

 

 

 

《悲報》俺、本気でデリカシーを学ぼうと決意して僅か10秒でデリカシーのない事を放ち土下座する。

 

 

「『きんのたま』っていうのはショップで高く売れる金色の球体の事よ。

それをこのゴールデンボールブリッジの橋にいるトレーナーに全勝したら貰えるっていう事よ。」

 

「全勝って…」

 

見渡す限り30人近くはいるぞ⁉︎

 

これを連続で相手する事になるっていう事は…

 

「やってやらぁ‼︎」

 

俺とポケモン達にとってこれ以上ない試練になるじゃねぇか‼︎

まてよ…てことは…

 

「じゃあカスミも賞品を取りに…」

 

「違うわよ、私はこの先にある25番路に住んでるマサキって奴に会いに行くのよ。

あるポケモンについての情報を貰いにね。」

 

「マサキってポケモンセンターとかにある『ポケモン預かりシステム』の開発者のあのマサキ?」

 

ポケモン預かりシステムは俺が図鑑完成のためにポケモンを捕まえては博士に送っている転送装置のシステム。

そしてそれを開発した若き開発者の名前がマサキ。

 

「そうよ。」

 

「確かジョウト地方のコガネシティにいるはずじゃあ…」

 

オーキド博士からの話に出てきた時は確かジョウト地方の大都市コガネシティ特有の訛り…コガネ弁で話すという事を聞いた事がある。

 

研究者という立場上、標準語を使わなければならない筈なのに本人はどれだけ練習してもコガネ弁が抜けないらしくマサキの研究内容を賞賛していたオーキド博士はそれに少々頭を抱えていた覚えがある。

 

「それは出身がコガネシティってだけで今はこのハナダシティの北に進むとある25番路の民家でひっそりと暮らして居るのよ。」

 

「へぇ〜…」

 

カスミはポケモンの情報をマサキに貰いに行くためにこの道を通る必要があったと…ジムリーダーが欲しがるポケモンの情報を持っている奴にねぇ〜。

 

「じゃあ私はお先に…「俺も行く!」ふぁっ⁉︎」

 

「俺もマサキに会いに行く!

俺はオーキド博士の家族みたいなもんだ!問題はない‼︎」

 

「駄目よ⁉︎だいたいどうして問題ないって断言できるのよ⁉︎」

 

「だからオーキド博士の「関係ないわよ駄目。」…」

 

「じゃあついていってもいい…「駄目」…」

 

断固として同行する事を許してくれそうにないな…ましてやその最中にポケモンバトルの指導して欲しいって言ったらもっと拒否されそうだ…

 

「!」

 

そうだ…ニヤーリ♡(´^ิ∀^ิ`*)

 

何かを思いついたようにゲスい顔をするレッド、そして…

 

 

 

「ハナダジム・ジムリーダーのカスミはSMプレイ好き」

 

 

 

「⁉︎⁉︎⁉︎」

 

カスミの顔が一気に青く染まる

 

「お転婆人魚カスミはSMプレイ好きの超ド変態」

 

「⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」

 

カスミの顔が紫色に染まる。

 

「これ…色んな人達に言いふらしちゃおっかなぁ〜」

 

実はこのレッド、ブルーから色々話を聞いていたのだ。

俺が部屋に閉じ籠った時に俺のポケモン達が俺に叱責した時に起こったポケモン達の叫びと技を発した時に起こった音と俺の叫びを聞いてこいつ・カスミはレッドがポケモン達とSMプレイをしている⁉︎レッドってマゾだったんだ⁉︎⁉︎と1人興奮していた事を‼︎‼︎

 

事実じゃないにしろ、こんな噂はたてられたくないはずだ。

 

「ふ、ふん!言いふらすなら言いふらしなさいよそんなデマ‼︎私はジムリーダー、あなたはただの子供、どっちを信用するかなんて目に見えてるじゃない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあオーキド博士を通じてポケモン協会理事長に…」

 

「申し訳ございません本当にすみませんでした許してくださいお願いします…‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

–そうだこいつには超偉い家族(オーキド博士)がいたんだった⁉︎⁉︎

 

 

 

 

微妙に正しくないとはいえ世界的権威を持つオーキド博士と上司であるポケモン協会理事長にそんな疑いを持たれるのはさすがにまずい。

 

 

そのカスミの態度に思わず俺の心の内の何かに怪しい光が灯り思わずニヤッと笑みを浮かべる。

 

「え〜どうしよったかなぁ〜?いいネタだしなぁ〜」

 

ワザとらしく煽ってやるとカスミの顔が真っ赤に染まる。

 

 

「あー‼︎わかったわよマサキのところまで案内してあげるわよ」

()()()()()?」

「〜〜⁉︎…案内させてください、お願いします。」

 

顔を真っ赤にし、俺をその瞳でしっかりと睨みつけながら言葉にするカスミ、その表情が逆に俺のS心を刺激しているとは知らずに…。

 

俺はニヤッと笑みを浮かべるとそのまま同じ様な笑みを浮かべているピカチューを肩に乗せて言った。

 

「じゃあ、俺が優勝するまでアドバイスよろしくぅー!…断ったら…わかるよな?」

 

「…わかったわよ‼︎」

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

ハナダシティ

 

レッドが出発してからしばらくして、1人の女性・ナナミはハナダシティの外れにある小さな草むらであるポケモンを待っていた。

 

するとナナミに近づいてくる小さな翼を羽ばたかせる音。

 

ナナミは顔を上げるといつもと変わらない優しい笑みを浮かべた。

 

「やっときたわね、ピート」

 

ピートと呼ばれたポケモン、ポッポはナナミの元に失速しながら近づいていきその右腕に乗る。

 

「モンスターボールの外で放し飼いにしてても呼んだらスグに飛んできてくれるなんて本当に良い子ね。」

 

ナナミは自身の腕に止まっているポッポを撫でる、そしてそれに喜んでいるポッポの足にはよく見ると小さな機械がつけられている。

 

このポッポはナナミが()()()()()でマサラタウンを上方に進んでいくとある1番道路で捕まえ、それからしばらく躾けた後、そのまま放し飼いにしているのだが呼び出すときに一々1番道路まで行って探すのが面倒なのでナナミは無線機能を搭載した腕輪型の機械をポッポ・ニックネームピートの足に装着さしたのだ。

 

その無線で連絡をし、ここまで来るように連絡したのだ。

 

「本当に良い子…だけど…」

 

優しく微笑んでいたナナミの雰囲気が一変、ドス黒いオーラをピートに放ち優しく撫でていた手はスッと人差し指を鉤爪の様な形にするとそれでガッガッガッ‼︎と引っ掻いて痛みを与える。

しかしピートはそんな痛みよりもナナミの纏うオーラ、優しい笑顔の裏に隠された激しい怒りの方に自分の身の危険を感じ身体を震わす事しかできない。

 

 

ナナミが怒っている理由は1つ。

 

 

 

 

 

 

「レッド君を襲ったのは許せないわ」

 

 

 

 

 

スーッとピートの体全体が恐怖で青く染まる。

 

 

 

そう、このポッポはレッドが1番道路でゲットに失敗し、傷付けられた腹いせに大量のポケモンの群れで襲い、旅立ち初日のレッドにポッポの恐怖を刻みつけたあのポッポである。

 

 

「レッド君を守る為に貴方を捕まえて躾けたのに貴方がレッド君を傷つけたら意味がないでしょ。」

 

 

ナナミがこのポッポを捕まえてきっちり躾けてまでやりたかった事、それは…

 

 

『レッドをいじめていた奴らのいるトレーナーズスクールの襲撃』

 

 

ナナミは時間をかけピートを躾け、1番道路にいる全てのポケモン達と深い仲を作らせ、集団でトレーナーズスクールを襲わせたのだ。

 

これによってイジメを見て見ぬ振りをしていた教員や子供達に怪我をさせ+αオーキド博士を代理教員にする事が出来た。

 

つまり、レッドは気づいていないがナナミはレッドの心の支えであり、それと同時にイジメからレッドを救った恩人でもあるのだ。

 

「まあ、もう済んだ事だし何も言わないわ、後でしっかり再教育してあげるわ」

 

その言葉を聞いてナナミの腕の上で白目をむいて自分の未来に絶望しているピートを他所にナナミは今回ピートを呼んだ理由を話し出す。

 

「この女を襲って欲しいの。」

 

ナナミが差し出したのは一枚の写真、そしてそこに写っているのは焦げ茶色の長い髪を振るい黒いノースリーブ型ワンピースをきた青い瞳の少女が写っていた。

 

「今頃5番道路にいるはずだわ、ヤマブキシティに向かっているんだとすればその後に向かうのはあの女の手持ちを見るにクチバシティのはず、だから6番道路で打ち取りましょう。」

 

「ヤマブキジムに挑戦するんだとしたら今のあの女には時間がかかるはずよ、なんてたって不在のトキワジムのジムリーダーを除けばヤマブキジムのジムリーダーは全ジムリーダー最強だから…。」

 

そう言うとナナミはピートの首元に手を手をかけピートの思っているより深いフサフサの体毛を漁る。

 

「枷を外してあげるわ。」

 

カチッと何かが外れた音が聞こえ、そしてナナミの手が引き抜かれるときにチラッと首元に見えたのは赤い首輪、そしてナナミが体毛を漁っていた手には小さな石が、恐らく首輪にその石を固定し更に体毛で覆っていたのだろう。

 

そして一つ間をおいてピートの身体がビクンッ‼︎と跳ねる。

 

するとピートの身体が光で包まれ徐々に形を変えていく。

 

進化の光。

 

 

「ピジョッ‼︎」

 

 

光が弾け姿を表したのはポッポの進化系、ピジョン。

 

 

そしてピジョンへと進化を遂げたばかりのピートの身体が再び光で包まれる。

 

 

『かわらずのいし』

 

 

持っているポケモンの進化を止める特殊な石。

 

ナナミがピートから取り出したのは(まさ)しくその石だった。

つまりピートは今までかわらずのいしに押さえつけられていた進化のためのエネルギーを一気に解放しているのだ。

 

 

 

「ピジョットォォォォォッ‼︎‼︎」

 

 

 

姿を現したのはポッポの最終進化系ピジョット。

 

大きく美しい翼に赤と黄色の二色に変化した頭部の羽は見る人を魅了する程の美しさを誇っている。

 

全鳥ポケモンの中で最も最高速度が速いポケモン・ピジョット。

 

その美しさとは相反してピートから普通のピジョットには見られないドス黒いオーラが溢れでている。

 

その姿はまるで別のポケモンに見えるくらいに顔つきが悪かった。

 

 

「…育て方を間違ったのかしら?」

 

その通りです。

 

 

 

最終進化したピートはその大きな翼を羽ばたかせナナミの元を離れ、6番道路の方へと飛んでいった。

 

 

それを見つめるナナミはボソッと呟いた。

 

 

 

「レッド君…」

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

2番道路

 

バシィッ‼︎

 

トキワの森を抜けてちょっと歩いた所には鋭い棘で構成された棘の道があった。

そしてそこに響くのは高速で回転する甲羅が次々と棘を切り裂いていくカット音。

 

「よくやったカメール。」

「メッ‼︎」

 

完全に棘を切り裂いたカメールがトレーナーであるグリーンの目の前に着地する。

 

「ここがディグダの穴か…」

 

グリーンがその視線の先に捉えているのは少し盛り上がった小さな洞窟。

11番道路と2番道路を繋ぐ野生のディグダとダグトリオが掘った穴である。

 

グリーンはロケット団による事件で少し旅のスペースが遅れたため、その遅れを取り戻す為に旅の経路を変更する事にした。

ハナダシティを後回しにしディグダの穴を通じて11番道路にでて先にクチバシティのジムを攻略するという流れに変更した。

 

しかしこの経路を通るには一つ大きな問題があった。

 

「ダグトリオをどう攻略するか…」

 

このディグダの穴には主であるディグダの進化系ダクトリオがおり、その力量(レベル)はかなり高いと有名である。

 

しかもその力量(レベル)のダクトリオはうじゃうじゃといるため、いくらグリーンの手持ちには地面タイプであるダクトリオに相性のいい水タイプのカメールがいたとしても対処しきる事は難しい。

 

「…」

 

 

スチャッとグリーンはオーキド博士に直してもらったポケモン図鑑を開ける。

 

 

カメール(カメール♂)Lv.24

勇敢な性格 体が丈夫

特性 げきりゅう

 

主な技

みずてっぽう

まもる

こうそくスピン

かみつく

 

「…」

 

「カメッカァー‼︎」

 

「いや、お前を信用してないってわけじゃない。けど最悪の事態が起こった時にお前1匹じゃ対処しきれないだろ。」

 

自分の力を信用してくれよと訴える様に声をかけてきたカメールにグリーンは優しく現実を説明する。

 

「さぁ、どうするか…」

 

「コラッ」

 

「そんな怒るなよ、ちゃんと自分の実力を判断しないとっ……コラッ?」

 

スッとグリーンが突如聞こえたカメールのものとは違う鳴き声の方向を向く。

 

 

 

「コラッタ…?」

 

 

 

そこにいたのはグリーンの故郷マサラタウンからトキワシティまでによく見かけていたポケモン、コラッタなのだが

 

 

その体皮は鮮やかな紫色ではなく霞んだ黄色で赤いはずの瞳は落ち着いた青色になっている。

 

「色違いの個体…⁉︎」

 

ポケモンにはごく稀に普通のその個体ではありえない色彩のポケモンが生まれる事がある、そのポケモンは色違いのポケモンとしてとても希少なポケモンである。

 

「一生に一度会うことも難しいポケモンだ、カメール!捕獲するぞ。」

「コラッ‼︎」

 

カメールとグリーンが臨戦態勢に入った瞬間、色違いのコラッタの身体が炎で包まれそのまま突撃してくる。

 

「カメッ⁉︎」

「っ⁉︎“かえんぐるま”だと⁉︎⁉︎」

 

コラッタが今放った技は身体中に炎を纏い回転しながら相手に突撃する炎タイプの物理攻撃技“かえんぐるま”

 

「流石色違い、覚えている技も珍しいな…」

 

グリーンは笑みを浮かべるとカメールに視線を向ける。

 

カメールは“かえんぐるま”の直撃を受けたものも効果は今ひとつ、すぐに立ち上がり臨戦態勢に入る。

 

「“こうそくスピン”」

 

カメールは甲羅の中に入り回転しながらコラッタに向かって突進攻撃を繰り出す。

 

しかし

 

「コラッ‼︎」

 

コラッタは“かえんぐるま”をカメールの“こうそくスピン”と逆回転に放ちその勢いを粉砕、お互いに突進の反動で弾き飛ばされる。

 

「今だ“みずでっぽう”」

 

カメールが“みずでっぽう”の態勢に入った瞬間…

 

「ラッ‼︎」

 

コラッタが急接近し、その隙に重い一撃をカメールの顎にヒットさせそのまま上空に投げ出す。

 

「“ふいうち”か…カメール‼︎“からにこもる”だ‼︎」

 

この後の連続攻撃を予想したグリーンは防御力を上げ相手を流れに上手く乗せない様にするが…

 

それはコラッタの狙い通りだった。

 

「ラァッ‼︎」

 

「⁉︎」

 

コラッタの叫びとともにコラッタの身体に強力な電気が纏わされそのまま殻にこもって防御力を高めているカメールに向かって飛び上がり突進する。

 

 

“ワイルドボルト”

電気タイプの強力な物理攻撃技

 

 

「⁉︎カメール“こうそくスピン”で回避しろ!」

 

グリーンの指示も虚しくコラッタの強烈な一撃はカメールにクリーンヒット。

 

そのままカメールは地面に向かって急降下し墜落。

 

「カメール⁉︎」

 

カメールはなんとか耐えたものも大ダメージを受けまともに動く事が出来ない。

 

隙をつくなら今だが、コラッタは“ワイルドボルト”の反動のダメージでカメールと同じく動く事が出来ない。

 

「ラァッ!」

 

いち早く動ける様になったのは色違いのコラッタ、そしてコラッタは三たび炎を身体に纏わせ回転し、地獄車さながら突撃してくる。

 

「カメールっ“まもる”‼︎」

 

一足遅れて動けるようになったカメールは周囲にシールドを貼り火炎車を受け止める。

 

「“みずでっぽう”‼︎」

 

炎の威力をシールドでうち消すとすぐさま強烈な水流をコラッタにヒットさせる。

コラッタはそのまま三回地面に激突して地面に伏せる。

 

「ラァッッ‼︎」

 

 

バチバチバチィッ‼︎‼︎

コラッタの身体に電気が纏わされそのままカメールに突進。

 

グリーンはスッとその鋭い瞳を更に鋭く尖らせるとカメールに指示をする。

 

 

 

「地面に向かって“みずでっぽう”」

 

 

 

グリーンの指示通りカメールは地面に向かって水鉄砲を放つと水流の勢いでカメールの身体が浮き上がりそのまま飛び上がる。

 

コラッタは上空に飛び上がって突進する事が出来ずそのまま“ワイルドボルト”の威力に任せて水流を貫く。

 

「⁉︎」

 

しかし次の瞬間コラッタのその普通の個体とは違う鮮やかなブルーの瞳が大きく見開かれる。

 

 

 

コラッタの目の前にはカメールのトレーナーであるグリーンが空のモンスターボールを持って突進してきたコラッタを待ち構えていた。

 

 

グリーンが軽くボールを投げるとそのままコラッタはボールの中に吸い込まれる。

 

「?」

 

グリーンはその瞬間に違和感を感じたのか妙な表情を見せる。

 

するとコラッタが入ったモンスターボールは一切揺れる事なく捕獲完了の合図である少し低めの音が鳴った。

 

「こいつ…」

 

グリーンはそのモンスターボールを拾うと少しご不満そうに先程感じた違和感を呟いた。

 

 

「最初から俺にゲットされるつもりでいたな…!」

 

グリーンがコラッタがモンスターボールに入る瞬間に見たのは

 

グリーンに視線をやりニヤリと笑みを浮かべるとスッと瞳を閉じてなすがままにゲットされようとするコラッタの姿だった。

 

「どういう事だ…ていうか最初からゲットされるつもりなら…」

 

スッとグリーンはポケモン図鑑を取り出すとカメールのステータスを確認する。

 

 

「バトルしなくてよかっただろ…」

 

 

カメールのHPは既に4分の3失われていた。

 

 

「キズぐすりもタダじゃないんだぞ…」

 

 

グリーンはディグダの穴に備えて買い貯めておいた回復道具を思わぬ所で消費する事になり1人嘆いた。

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

24番道路

 

 

「ピカチューとどめの“でんきショック”‼︎」

「ぴかちゅーっ‼︎‼︎」

 

ピカチューの強烈な電撃がニドリーナにヒットしそのままニドリーナは力尽き目を回して倒れる。

 

ぐるぐるお目目は戦闘不能の証だ

 

「うおっしゃぁぁぁっ‼︎」

 

レッドはこの高級な道具きんのたまを巡る大会?に見事勝利した。

 

倒したトレーナーの数は30を超えた。

 

使ったポケモンはピカチューのみ。

成績としては良すぎる結果だ。

 

その嬉しさを分かち合うかの様に2人はお互いに抱きしめ合う。

 

「…」

 

しかしそれをジッと見つめているハナダジムジムリーダー・カスミは何やら言いたげな表情を見せている。

 

「…どうしたんだよカスミ?そんな難しい顔をして…」

 

そのカスミの表情に気づいたのかレッドはカスミに声をかける。

 

「レッド、そのピカチュー“でんきショック”以外に電気技を覚えているの?」

「…“ボルテッカー”」

 

その言葉にカスミの表情が更に硬くなる。

 

「“でんきショック”と“ボルテッカー”だけって…公式戦用とはいえ私のスターミーを倒したほどの力量(レベル)をして持っている筈なのにどうして…?」

 

その言葉に今度はレッドの表情が硬くなる。

 

ピカチューは体内に『でんきだま』を取り込んでいるため『でんきだま』の効力が攻撃技だけでなくステータス全体に影響を及ぼしているためとてつもない能力を持っている反面、一つ問題があった。

 

 

 

 

力量(レベル)が上がらない

 

 

 

 

ポケモンの力量上昇(レベルアップ)のために必要な経験値の量がピカチューは初めの段階から多いのだ。

 

普通、ポケモンは力量(レベル)が上がっていくにつれてその量が多くなる。

特に力量(レベル)が40を超えるとその量は著しく多くなる。

そのため一般の人のポケモンは高くてもLv.35〜42までの間に止まっている。

 

しかしプロ…ジムリーダーやその先の四天王になるとLv.50は当たり前、チャンピオンクラスになるとLv.60越えのポケモンだって持っているという程だ。

 

そしてピカチューは恐らくもう既にLv.40に必要な程の経験値量が必要な状態になのかもしれない。

 

今現在力量(レベル)が低くてもピカチューのステータスの高さでなんとかなっているが…どうしようもない事が一つある。

 

 

使用できる技の数が少ない事だ。

 

 

ポケモンは力量(レベル)が高くなる程新しい技を覚え、その数はどんどん増えていく。

その多くの数の技を瞬時に出せるかどうかはトレーナーの技量とポケモンの知能に左右される。

 

しかしピカチューはステータスが高くとも力量(レベル)は低いため覚えている技の数が少ない、そのため対戦相手が強い程、ピカチューがよく覚えよく指示され使われるであろう電気技を“でんきショック”一つと反動が大きく多用しにくい“ボルテッカー”のみで戦う事に違和感を感じるだろう。

 

そしてそれが現在のこの状況だ。

 

俺自身、そしてピカチューのためにもあまり『でんきだま』の件を話したくない。

 

カスミには悪いけどここは話を濁させてもらおう。

 

 

「いや、あの…えぇと…」

「レッド?」

 

 

こういう時になんでスラスラと言葉がでないのかなぁ⁉︎俺はっ‼︎‼︎‼︎

 

 

言葉を発しようとすればする程頭が真っ白になりいい籠もる事しか出来なくなる典型的なコミュ障を発症したレッドを見たカスミはフッと呆れた様にため息を吐くと

 

「言いたくないのならいいんだけど、一つ言わせてもらうわ。」

 

 

「どんなにそのピカチューが強くてもまともな電気技が“でんきショック”だけじゃこの先勝ち進めないわよ。」

 

ピクッと俺が抱きしめているピカチューの長い耳がカスミのその言葉に反応した。

 

「この先あとアンタが挑戦するとしたらヤマブキジムだと思うけど、あそこのジムリーダーは私達トキワジム・ジムリーダーを覗くと私達カントー地方ジムリーダーの中で最強よ。」

 

ヤマブキシティ…ハナダシティを南に進むとあるカントー屈指の大都会。

 

俺が次に挑戦しようとしたジムだ。

 

「それだけじゃないいずれアンタが挑戦するであろうクチバジムは電気タイプのジム、あそこのジムリーダーは他のジムリーダーと同じ様に一つのタイプの専門(エキスパート)…電気タイプのね。

その際にピカチューを使おうと思っていたんなら辞めときなさい、まともな電気技一つじゃクチバジムジムリーダーには、マチスには勝てないわ。」

 

「っ…」

 

じゃあどうしろって言うんだよ‼︎

 

と言いたいところだがそれを言うともうピカチューの件を言わないと事情をちゃんと理解してもらえない気がするため口には出せない。

 

するとカスミはその視線を細め…

 

「私に聞かれてもわからないわよ、アンタみたいな状況なんて知らないんだし、あるとしたら…技マシンを使うか…」

 

 

 

「頭を使うか…かしら?」

 

 

 

そういうカスミはフッと笑みを浮かべると頭に銃を突きつけているポーズをとってそう言った。

 

「さぁ、さっさと優勝賞品を貰いに行きましょ!」

「お、おう‼︎」

 

カスミとピカチューを抱いた俺はそのままゴルーデンボールブリッジを渡りきった先にいる黒いコートを着て、更に黒の帽子を深く被った男に声をかけかける。

 

「!…ジムリーダーのカスミ…⁉︎」

 

その男はカスミを見た瞬間に小さく驚いた声をあげた。

するとカスミは後ろから走ってやってくる俺を指差して

 

「トレーナーを全員倒したのはこいつよ、さぁ私はその付き添い。」

 

「…好都合だ…。」

 

「!」

 

何やら怪しい言葉が俺の耳に届いた。

同じくピカチューにも聞こえた様で俺はピカチューを地面に放した。

 

すると案の定…

 

 

「いけっ‼︎」

 

男がそのコートから3つのモンスターボールを取り出すと地面に向かって投げる。

 

現れたのは紫色で胴体が広くその胴体には奇妙な模様が描かれてある蛇型のポケモン、アーボの進化系アーボック。

 

そしてドガースの進化系で2つの顔が繋がり身体中からガスを発生させている毒ガスポケモン・マタドガス。

 

そして黄土色の身体に長い髭、そして額に刻まれた赤い星の模様に、腹部の赤い波の模様、片手にスプーンを持ち、すでに臨戦態勢となりサイコパワーを放っている念力ポケモン・ユンゲラー。

 

「何よ⁉︎」

 

急に襲いかかってきたその男に向かってカスミが叫ぶ。

 

「なんだかんだと聞かれたら答えてあげるが世の情けってな‼︎」

 

その男はバッと黒のコートを脱ぎ去るとそこには見た事のあるRの文字が胸にプリントされた黒い団服が…

 

「ロケット団⁉︎」

「ピカチュー‼︎“フラッシュ”‼︎」

 

カスミが驚いている間に俺はピカチューに敵の目をくらますために“フラッシュ”を指示。

指示に従いピカチューは少し駆け出すと飛び上がり目をくらます様な強烈な閃光を発する。

 

「グッ⁉︎」

 

強烈な閃光にロケット団の団員含め3匹のポケモン達も怯む。

 

「ホスタ“ハイドロポンプ”‼︎」

 

閃光の中放たれたのは水タイプの技“みずでっぽう”とは比べ物にならないほどの水流いや、激流。

 

「っ…ユンゲラー“まもる”だ‼︎」

 

その技名に危機感を覚えたロケット団団員はすぐにユンゲラーに技名を指示、ユンゲラーもそのサイコパワーを生かして激流の位置をサーチし、その場所…アーボックの目の前に立つと防御壁を展開する…しかし…。

 

「ユッ⁉︎」

 

防御壁は突き破られそのままアーボックとともに吹き飛ばされる。

 

「なにっ⁉︎」

 

視界の戻ったロケット団団員は吹き飛ばされるユンゲラーとアーボックを目にして驚きの声をあげる。

“まもる”は絶対防御の技の筈…

 

しかし

 

「レベルが違うのよ‼︎」

 

技を放ったのはジムリーダーであるカスミのベストメンバーの1匹、レッドがジム戦で戦った同じ種類のポケモンとは纏う雰囲気も力量(レベル)も天と地ほどの差がある。

 

 

スターミー・ニックネーム『ホスタ』

 

 

絶対防御の技など存在しない、レベルの高い相手の攻撃を前に“まもる”は無意味だった。

 

「くそっ⁉︎大丈夫かユンゲラー‼︎アーボック‼︎」

 

ユンゲラーとアーボックは“まもる”によってダメージ軽減したおかげでなんとか戦闘不能にならなかったがHPを半分以上削られたのは目に見えていた。

 

「ピカチュー‼︎“でんきショック”‼︎」

「ぴかっ‼︎」

 

ロケット団団員の視線が2匹に向いた瞬間ピカチューが“フラッシュ”を放った位置から飛び上がり残り1匹マタドガスに向かって強烈な電撃を浴びせる。

 

「マタドガス⁉︎」

「もう1発だ‼︎」

 

今度は技のダメージで動けないマタドガスに捕まり、再び強烈な電撃を浴びせる。

 

「マ〜タドガ〜〜ス…⁉︎」

 

マタドガスは間髪入れずに放たれた強力な電気に耐え切れずそのまま力尽き地面に浮いていたその身体を地面につけた。

 

「まず1匹‼︎」

 

レッドとピカチューの鋭い視線が今度はアーボックとユンゲラーに向く。

 

「ちっ⁉︎ユンゲラー“テレポート”‼︎」

 

ユンゲラーはアーボックを連れ、そのままロケット団団員の元へと飛ぶ、そして

 

「もう1度だ‼︎」

 

そう言うと再びユンゲラーはテレポートの体制に入る。

 

「させるか‼︎ピカチュー‼︎」

「ホスタ‼︎」

 

ピカチューの電撃とホスタの激流がユンゲラーとロケット団団員に向かって襲いかかるが一足遅くロケット団団員は30メートル先にテレポートする。

 

「⁉︎短っ⁉︎」

 

あまりに近い距離へのテレポートにカスミのツッコミが入る。

 

「ダメージで長距離移動が出来ないんだ‼︎

カスミ‼︎追い詰めて取っ捕まえるぞ‼︎」

「ええ‼︎」

 

そう言うとレッドは腰のモンスターボールを1つ取り出しポケモンを繰り出す。

 

「ザッ‼︎」

 

繰り出したのはヒッポ。

 

「ピカチューは連続で“でんきショック”

ヒッポは“ニトロチャージ”で素早さを上げ続けろ‼︎」

 

隙を見せた瞬間上げた素早さを活かした“つばめがえし”でユンゲラーをおとす‼︎

 

そしてカスミは…

 

「ホスタ戻って‼︎」

 

移動する相手にスターミーじゃ無理だと判断したカスミはホスタを戻し

 

 

「トゲピ‼︎お願い‼︎」

 

 

繰り出されたポケモンは真っ白なまるで全翼機の様なフォルムをし、腹部には赤色と青色の三角形が散りばめられた模様をしている、何か見てると心が暖かくなる様な天使のオーラを纏ったポケモンが現れた。

 

「なっ…?」

 

レッドの間抜けな声が響く。

カントー地方以外のポケモンに基本的に疎いレッドだが、このポケモンは知っていたのだ。

 

レッドが最もポケモントレーナーとして尊敬し、憧れ、そして魅了されたトレーナーの手持ちの一匹。

 

お互いの存在を認め合い無駄に争わない人の為に様々な恵みを分け与え、揉め事の起こる場所では決して現れない

 

 

 

祝福ポケモン トゲキッス

 

 

 

カスミが繰り出したのは正にそのポケモンだった。

 

「トゲピ“エラスラッシュ”‼︎」

 

空をも切り裂く空気の刃がユンゲラーに襲いかかる。

 

「っ⁉︎アーボック‼︎」

 

ロケット団団員は一旦戻したアーボックを再び繰り出したが…

 

 

「シャーボック⁉︎⁉︎」

 

 

アーボックはどうする事も出来ずに空気の刃を直に受けそのまま戦闘不能。

更にレッドの指示を受けたピカチューとヒッポが襲いかかる。

 

「“テレポート”だっ‼︎」

 

ヒュンッと音を立ててユンゲラー達は姿を消した。

 

「どこだっ‼︎」

 

レッドとカスミは辺りを見回すもその姿は見当たらない。

 

「逃げられたか…」

 

「さっきよりもエネルギーのチャージ時間が長かった…恐らくもうこの周辺にはいないと思うわ。」

 

カスミはトゲキッス、ニックネーム『トゲピ』をモンスターボールに戻し、レッドにそう言った。

 

「っ…」

 

レッドも血眼になって探すのを諦め大人しくヒッポをボールに戻す。

 

「今は切り替えてマサキの元へ行きましょ、それまでにアンタはアンタでやらなきゃいけない事がなるでしょ?ヤマブキシティに行くまでにね。」

 

「…あぁ。」

 

そう言うとレッドとカスミはマサキの元を目指して歩き続ける。

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

どこがわからない、機械音のする

 

「部下から連絡が入ったわ、現在ハナダジムはジムリーダーが不在だそうよ。」

 

以前にトキワの森で耳にした女の声…アテネの声が耳に入る。

そしてその声の先にはその時と同じ話し相手、セロリアンブルーの髪色のシュッとした男・アポロは右手を顎に当て何かを考えると

 

「そうか、少し計画とは違うが…まずはハナダから攻めようか。」

 

 

物騒な言葉を口にした。

 

「5分で準備をしろ、すぐに出発する。

使用するポケモンは水タイプのポケモンに相性のいい電気タイプ、草タイプのポケモンを中心に奇襲を得意とする()()()()を使用する。」

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

「なんだこれは…⁉︎」

 

 

グリーンの驚きの声が穴の中に響きわたる。

 

 

 

グリーンが目にしたのは…

 

 

 

散々に荒らされたディグダの穴の姿だった。

 

 



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第23話 過去の清算

陰謀の影 後編にしようと思ったのにそこまでが長かった…流石に陰謀の影が全然ないんで後編は次話で‼︎


25番道路

 

「ナッゾ!」

 

24番道路を越えた先にあるその道路で、レッドとカスミは25番道路をずっと進んだ奥地にあるマサキの家を目指して一緒に行動していた。

 

そしてその道中、レッドはオーキド博士に頼まれたポケモン図鑑完成の為にこの周辺のポケモンの捕獲を行っていた。

 

そして現在、レッドの目の前には青色の身体につぶらな赤い瞳、そして頭部からは逆立った髪の毛のように草を生やしているポケモン・ナゾノクサの姿があった。

 

それに相対するのはピカチュー。

 

先程カスミに忠告を受けてからそのピカチューの弱点を補う為のヒントを得る為にレッドはずっとピカチューを使用し続けている。

 

「“でんきショック”‼︎」

 

ピカチューの電撃がナゾノクサに吸い込まれるように襲いかかり直撃、ナゾノクサは身体中に電気が行き渡り痺れて動けない。

 

「いけっ‼︎モンスターボール‼︎」

 

レッドはその隙にモンスターボールを投げナゾノクサを無事に捕獲する。

 

「ナゾノクサゲットだぜ。」

 

パカッとレッドはポケモン図鑑を確認する。

 

RED

捕まえたポケモン

 

004ヒトカゲ

005リザード

010キャタピー

011トランセル

012バタフリー

013ビードル

014コクーン

015スピアー

016ポッポ

017ピジョン

019コラッタ

020ラッタ

021オニスズメ

022オニドリル

023アーボ

025ピカチュウ

027サンド

029ニドラン♀

032ニドラン♂

033ニドリーノ

039プリン

041ズバット

043ナゾノクサ NEW

046パラス

048コンパン

049モルフォン

056マンキー

069マダツボミ

070ウツドン

074イシツブテ

075ゴローン

 

合計31匹

 

見つけたポケモン

(捕まえていないポケモン)

 

001フシギダネ

002フシギソウ

007ゼニガメ

008カメール

024アーボック

030ニドリーナ

035ピッピ

036ピクシー

037ロコン

038キュウコン

042ゴルバット

064ユンゲラー

076ゴローニャ

096イワーク

109ドガース

110マタドガス

113ラッキー

120ヒトデマン

121スターミー

125エレブー

126ブーバー

129コイキング

 

合計22匹

 

見つけたポケモン

合計53匹

 

「結構捕まえたけどまだまだだな。」

 

実際レッドの見つけたポケモンは54匹なのだが097スリーパーはナナミがレッドを催眠術で操っている間にデータを消去したため載ってはいない。

 

やはり見つけたポケモンの中で捕まえていないポケモンは殆どがロケット団とジムリーダーのポケモンだ。

タケシの使用していたイワークはイワヤマトンネルに生息していると情報があるがヒトデマンやスターミーは明確な生息地がわかっていないため、捕獲は難しい。

 

「オーキド博士よぉ〜、これは…」

 

カントー地方をくまなく回らんと成し遂げられんぞ…

 

レッドが図鑑が埋まっていくにつれて本格的にその困難さを表してきたその目的に少々やつれたところ、ポンポンと自身の右肩が叩かれる。

振り向くとカスミが右方向に指を指してレッドに何かを知らせようとしていた。

 

「なんだよ…」

 

レッドはカスミの指差す方向に視線をやると…

 

 

そこには黄土色の身体に眠そうな瞳、そして体から放出しているサイコパワーによって座りながらも宙を浮くことで移動することができるそのポケモンの名は…

 

 

「ケーシィ…⁉︎」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

ニビジム・トレーニングルーム

 

 

「ロック“アイアンテール”

ノイズ“クロスポイズン”‼︎」

 

鋼の身体を更に硬質化させた尻尾をぶつける事で強烈な威力を誇る技とその翼から放たれる猛毒の斬撃は鉄を溶かし真っ二つにする威力を持つ強力な技がニビジム内部の施設、トレーニングルームの(まと)にヒットする。

 

「…」

 

ポケモン達の技の質を確認しているのはニビジムジムリーダー・タケシ

タケシは静かに頷くとトレーニングルームの隅にあるポケモンボックスを手にかける。

 

そして自分のポケモンの状態を確認する

 

 

ロック(ハガネール♂)Lv.53

真面目な性格 暴れることが好き

 

ノイズ(クロバット♂)Lv.50

せっかちな性格 物音に敏感

 

ウッド(ウソッキー♂)Lv.51

寂しがりな性格 力が自慢

 

 

「…やはりジムに篭ってトレーニングするだけじゃあ強くはなれないか…」

 

 

タケシのポケモンの力量(レベル)は上がっていなかった。

やはり力量(レベル)40を越えたポケモン、そうそう簡単にレベルが上がる事は無いのだろう。

 

するとタケシは3匹をモンスターボールに戻すとトレーニングルームを出る…そしてトレーニングルームを出たところには大きな1つのリュックサックが…

 

「ポケモン協会からの許可は下りた、これから俺達はあそこに向かうぞ。」

 

手持ちのポケモン達に語りかけるように呟くタケシ、そしてタケシの視線の先にはニビジムの窓から見える大きな山。

強力で凶暴なポケモン達が生息するためポケモン協会の認めた強者しか入ることの許されないカントーとジョウト地方の間にある山。

 

 

シロガネ山

 

 

タケシは退院後ポケモン協会に連絡をとり、3ヶ月間のジムの休止を申し出ると共にシロガネ山への入山の許可を申請した。

 

その際ポケモン協会の理事長に言われた一言は今でもタケシを焚き立てる。

 

 

 

『君の力では到底敵わない。』

 

 

 

比較的子供達のカントー地方やジョウト地方での冒険が許されているのはこのシロガネ山にあった。

 

周囲のポケモンの勝負の環境に飽きたポケモン達は強さを求めてシロガネ山へ向かう。

シロガネ山へ登る事は野生のポケモンが出てこなくても厳しい、かつて空を飛んで頂上を目指すポケモンやトレーナーも存在したには存在したがある一定の高度を越えるとその激しい気候、そして特殊かつ激しい気流のせいで余程の力がない限りまともに空中で移動する事は出来ない。

そしてそんな厳しい環境の中、シロガネ山で毎日のように起こっているのはポケモン達の激しい縄張り争いと周囲を気にすることなく行われる力比べ。

 

鳥ポケモン達は一般のポケモンではまともに飛べなくなる特殊かつ激しい気流や気候の中で自由自在に飛び回り激しいバトルを繰り広げ、地上では凶暴なポケモン達が強力な技の撃ち合い、1対多勢での戦闘も当たり前のため自然とシロガネ山のポケモン達はその激しい環境や様々な周囲のポケモン達の技に対抗するために知能が高く、様々な種類の技を瞬時に判断し放つ事が出来る。

その力量(レベル)は四天王クラスだと言われている。

 

戦闘を好む強いポケモンはみんなシロガネ山へと向かうためカントー地方やジョウト地方本土には本当の強者はいない。

いたとしてもシロガネ山の厳しい環境についていけず下山したポケモンや理由はわからぬがシロガネ山を追放されたポケモンだ。

そしてそれらのポケモンは滅多に野生のポケモンやポケモントレーナーと問題を起こす事はない。

 

レベルが違いすぎるのだ。

その為本土のポケモンやトレーナーは眼中にない。

それ程のポケモン達が生息するのだ、ポケモン協会がタケシにその様な言葉をかけるのも頷ける。

 

しかしタケシはその言葉を聞いた瞬間、余計シロガネ山に入山したいと思った。

 

シロガネ山に潜りそこで野生のポケモンをゲットし手持ちに加え、同時に自分のポケモン達を育てる。

思っているほど簡単な事ではないという事は分かっている。

 

 

しかし復讐のためだ。

 

 

自分のポケモン達の命を奪ったロケット団への復讐のためなら無茶だってしてやる。

 

タケシはギュッと拳を握り締める。

 

 

 

 

「行くぞ。」

 

 

 

そう言ってタケシはシロガネ山に向かって出発した。

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

24番道路を越えた先にあるのは25番道路そしてそこにはあるポケモンが稀に現れる。

 

再び言おうそのポケモンの名は…

 

 

 

 

「ケェェェェェシィィィィィィィッッ‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

 

念力ポケモン ケーシィ

 

先刻レッドとカスミを襲ったロケット団団員が使用してきたユンゲラーの進化前の姿だ。

ケーシィはとても臆病な為、出会ったら直ぐに“テレポート”で逃げてしまう。

その為捕獲するのが困難なポケモンなのだ。

 

そして現在レッドは

 

 

 

「ちょこまかとこのヤローっ⁉︎」

 

臆病なケーシィに完全に遊ばれていた。

 

“テレポート”でレッドの近くを転々としながら挑発してくるケーシィにレッドは冷静な思考力を失いムキになっている。

 

その原因は少し離れたところで爆笑しているカスミにもあるのだが。

 

「ピカチューとにかく“でんきショック”だ。あいつの体を痺れさせてしまえ‼︎‼︎」

 

ピカチューの電撃がケーシィ目掛けて放たれるが電気の速さよりも速く移動できる瞬間移動によってかする事なくかわされる。

 

そしてケーシィは

 

「(笑)(笑)(笑)」

「⁉︎っこのヤロォォォッ⁉︎⁉︎」

 

レッドの真後ろに移動してクスクスとバカにした笑みを浮かべる。

 

「ピカチュー“でんきショック”‼︎」

 

指示通りに放ったピカチューの電撃はレッドの頭上を越えてその先にいるケーシィを襲う

 

「…」

ガシッ

「ふぁっ⁉︎」

 

しかしケーシィはレッドのリュックを掴むと…

 

「ぴっ⁉︎」

 

「あばばばばばばばばばっ⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」

 

“テレポート”を発動し電撃の向かう先にレッドを移動させ盾にした。

 

ケーシィに向かって放たれた電撃の筈がトレーナーであるレッドに命中、レッドは口から煙を吐きながらその場に倒れる。

それを見たケーシィは再びクスクスクスと笑みをこぼし少し離れてこれを見ていたカスミは…

 

 

 

「あはははははははっ‼︎‼︎」

 

 

 

大爆笑。

 

 

「こいつぅぅ…⁉︎」

 

少しフラッとよろけつつも立ち上がり、舐めた真似をしてくれたケーシィにガン垂れるレッド。

ケーシィはクスクスクスと笑い続けているもその身体には少しの緊張が残っている。

 

少しでも油断をすればピカチューの電撃の餌食になってしまうからだ。

そしてピカチュー自身もその事を理解しており隙を見せた瞬間、レッドの指示がなくても電撃を放つ為にケーシィと同じく、トレーナーであるレッドに軽く呆れつつも身体の緊張は解いていない。

 

そしてその事に気付いているのは少し離れたところから観察しているカスミのみ。

 

レッドは本格的にムキになっている為、ケーシィの行っている()()に気付いていない。

 

(フツーにおかしいのよねーこの状況)

 

カスミがおかしいと言っているのはこの状況、つまりケーシィが直ぐに逃げずにレッドをからかって遊んでいるこの状況だ。

 

(このカントー地方にいるポケモンの中で最も警戒心の高いポケモンとも言ってもいい野生のケーシィがここまで人と触れ合うのなんて滅多にある事じゃない。

つまり…)

 

 

ケーシィはレッドに心を開いている。

 

 

(ケーシィは自分の身を賞品としてレッドと遊んでいるのだ、『鬼ごっこ』で。それは正にケーシィがレッドになら捕獲されても構わないと言っている事と同意。つまりここでレッドがこの事に気付いて『俺と来ないか?』と聞けば今直ぐにでも…)

 

 

そう思った瞬間、カスミは首を横に振った。

 

 

(違う、そんな事を考えれないレッドだからこそケーシィは心を開いているんだ。)

 

 

全くどんだけ純粋なんだかバカなんだか…

とカスミが思った時

 

「?」

 

レッドの表情が少し鋭いものへと変化した。

同時にレッドは腰のモンスターボールを取り出しそのままケーシィに向かって投げる。

 

ケーシィはそのまま“テレポート”でそれを回避

 

 

しかしその後カスミの目が大きく開かれる。

 

 

レッドがケーシィに向かって投げたモンスターボールをピカチューがその長い尻尾っで弾き飛ばしたのだ。

 

カスミはその行動からレッドがケーシィの瞬間移動する場所を完全に読んでピカチューに次にケーシィが現れる場所に向かってモンスターボールを弾かせたのかと思ったが…

 

弾かれたモンスターボールは近くの大きな木に向かって飛んでいき…

 

 

モンスターボールが開かれると…

 

「ザァッ‼︎」

 

ヒッポが姿を現した。

 

 

「⁉︎」

 

 

カスミの瞳が再び大きく開かれる。

空のモンスターボールだと思ったそれはヒッポが入ったモンスターボールだったのだ。

 

(一体何のために⁉︎)

 

「ヒッポ!引きずり出せ!」

 

「ザァッ‼︎」

⁉︎

 

ヒッポは“なきごえ”を発動しレッドの指示にあった引きずり出す対象を威圧する。

 

すると木の周辺の林がガサガサと揺れる。

 

「ちょっ⁉︎何⁉︎」

 

カスミがあわあわと動揺の色を示す。

 

そして…

 

「ナッゾォ…」

 

恐る恐る出てきたのは先程レッドが捕まえたポケモン・ナゾノクサ。

 

「!」

 

今度はレッドが大きく目を見開いた。

 

「っ…勘違いか…いや、そんなことより…まずは」

 

レッドは急いでナゾノクサの元へ行くとヒッポと共に驚かせた事について謝り、モモンの実を渡す、するとナゾノクサは喜び草むらへと戻っていった。

 

「ちょっ⁉︎いったいどうしたのよ⁉︎」

 

カスミがレッドの元へと駆け寄る。

するとレッドは頭を掻きながら言葉を口にする。

 

「あのケーシィ、人のポケモンだよ。」

「は?」

 

カスミの目が今度は点になる。

 

「戦っている最中、何回もケーシィの中にトレーナーの存在を感じた。

多分間違いない。」

 

 

 

こいつは何を言っているんだろうか?

 

 

 

カスミは素直にそう思った。

自分は若いがジムリーダーだ、見てきた触れ合ってきたポケモンの数はレッドよりも遥かに多い。

しかし自分はこのケーシィからトレーナーの存在を全く感じない。

確かにこんなに人に慣れるケーシィは初めて見るがそれはレッドにだけだ。

自分が距離をとってレッドとケーシィのバトルを見ていたのはケーシィは自分の警戒を解いていないからだ。

 

つまり、人に慣れているとは言いにくい。

 

 

(しかもトレーナーの存在を感じたって…あんたはただ技をかわされて挑発されてただけでしょうに…)

 

そうカスミが思ったのも束の間。

 

 

 

「だははははははははははははっ⁉︎ダッセーの⁉︎⁉︎ハハハハハハハハハハハっ‼︎‼︎」

 

 

 

カスミの耳に大きな笑い声が響き渡る。

カスミはその声の方向に顔を受けようとする時に不意にレッドの表情が目に入った。

 

 

 

「…」

 

 

 

「っ…‼︎」

 

 

 

冷たい瞳…

 

 

 

一瞬、ほんの一瞬だけだったが普段のレッドとは似ても似つかぬ程の冷たい瞳。

 

普段の明るいレッドとのギャップもあり、思わずカスミの身体が震える。

 

もうこの時点で笑っている相手の事などカスミの頭の外にあった。

しかしそれも一瞬、今度はカスミはその相手の事に興味を持った。

 

レッドをここまで変えてしまうその存在に。

 

 

そうしてカスミは今度こそちゃんと声のする方向に顔を向ける。

 

 

 

「久しぶりだなレッド。」

 

 

 

 

 

「…ナガト。」

 

 

 

レッドを笑い、けなした人物は過去にレッドをいじめ、ピカチューを引きこもった原因を作り、そしてニビシティで再び再開した男、ナガトだった。

青い髪に鋭くキリリとした目つき、そして首には相変わらず砂嵐防止用のゴーグルを下げている。

そして前回会った時と違うのはきているジャケットのポケットには自分の実力を鼓舞するかのようにつけられているジムバッジの姿だった。

 

 

その数は3つ。

 

 

レッドの所持しているニビジムのグレーバッジ、そしてブルーがレッドにこのままでは到底勝てないと豪語したクチバジムのオレンジバッジ、ヤマブキシティのゴールドバッジ。

 

「相変わらずダッセーなお前、ケーシィなんかに遊ばれてやんの⁉︎

いや、違うか?俺のケーシィが優秀すぎるんだな!ははははっ‼︎」

 

「何こいつ…」

 

「お前のケーシィか…」

 

レッドがスッとナガトからケーシィに視線をやるとケーシィは“テレポート”を発動しナガトの隣へ瞬間移動する。

 

「俺がここで捕まえたポケモンだ。どうだ?いいだろう?お前はまともに攻撃を当てる事が出来なかったろ?」

 

「最初はな。」

 

ピクッとナガトの眉が少し吊り上がる。

 

「途中からトレーナーの存在を感じたんだよ、中途半端に俺に気を許し続けてるのに対してカスミに対しては異様に警戒している。…ちょっと訂正、ケーシィは中途半端に俺を舐めてかかってるんだよ、最初から。

もし俺のここまでの戦いを見てあまりにも情けなくて楽勝だと思ったんならまだしも残念ながら俺はこの道中そんな情けない戦いをしていない。

つまり、トレーナーから『俺は舐めていい』って指示があっての行動だと思ったんだよ。

あと…なんだ…とにかく!なんとなく感じたんだよトレーナーの存在を。

だからピカチューにはわざと攻撃を外してもらってトレーナーの居場所を探したんだ。

…ハズレだったけどな。」

 

レッドの挑発的な視線…カスミやブルーに対して行う様な愛のあるものではない、本気で相手を嫌な気分にさせるための視線。

 

それを受けたナガトはフッと笑みを浮かべて。

 

「なになに?お前まさか旅に出て調子に乗ってる?子供だなぁ〜!」

 

顔を上に向けて大笑いするナガトは笑いながら眼球を下に向け見下ろす形でレッドに視線をやると明らかに怒りと嫌悪の表情を見せているピカチューとヒッポに視線をやる。

 

するとブハッと大きく息を吐いて1つ笑う。

 

「そうかそうか!、トレーナーが調子に乗ったのに吊られてピカチュウも調子に乗って出て来ちゃったか⁉︎

それともピカチュウが出て来た事でお前が調子に乗ったのか⁉︎

まぁどちらにしても…」

 

 

 

 

 

「出来損ないなのは変わらねぁけどなぁ‼︎」

 

 

 

 

 

「ちょっとあんたねぇ‼︎」

「ザッドォォォッ‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

カスミとヒッポがナガトの言葉に耐え切れず前に出る、しかし…

 

 

「「!」」

 

 

レッドとピカチューが2人を止める。

 

「ナガト…お前の目は唯の飾りか?

お前も見ただろ?ピカチューはもう電気技が使えるんだ。」

「ぴかちゅうーっ`・∀+´・)b !!」

 

そうだそうだとピカチューはその赤いほっぺからビリビリと軽く電気を放電する。

 

 

「ここまで来て“でんきショック”しか使えねぇ電気タイプのポケモンなんて出来損ないに決まってんだろ‼︎」

 

 

ピクッと反応するピカチュー、レッドは表情を変えない。

 

「残念ながら、ピカチューはまだ“でんきショック”以外の電気技を使えない…だけどそれでも十分戦えるぜ?

ピカチューのおかげでハナダジムのジムバッジもゲット出来た。」

 

スッとレッドは赤いジャケットの左胸部分をめくる。

そこにはナガトも持っているグレーバッジとまだナガトの持っていないブルーバッジの姿があった。

 

それを見たナガトはプッと笑いだす。

 

「はははははっ⁉︎そんな弱小ジムでバッジをゲットしたからって調子に乗ってやんの‼︎

俺のつけてるバッジが見えないの⁉︎お前の目こそ飾りなんじゃねぇの⁉︎それとも馬鹿なの⁉︎はははははははっ⁉︎⁉︎」

 

ナガトは大笑いしながら自分の胸ポケットにつけてあるバッジを指差す。

 

「これはカントージムリーダー最強と言われるヤマブキジムのジムバッジだ‼︎

このジムバッチをつけてるって事はもう俺は全てのジムバッチを手に入れたも同然‼︎

ハナダジム?タマムシジム?セキチクジム?グレンジム?もうそんな弱小ジムリーダー達なんざ俺の眼中にもねぇ‼︎」

 

「俺の敵はもう四天王とチャンピオンしかいねぇんだよ‼︎」

 

 

「よし、こいつ殺そう(╬ಠ益ಠ)」

「言葉に出すなよ…落ち着けって…。」

 

 

()()()()()()()()()()()であるカスミがナガトの言い分にブチ切れた。

 

「言っときますけどね‼︎ジムリーダーはジムバッジ毎にどんどん強くなるの‼︎確かにナツメは強いけどねぇ、私達だってポケモンバトルのプロ‼︎制限によって力量(レベル)の低いポケモンを使ったナツメよりも確実に強いわよ‼︎」

 

するとハッとナガトは鼻で笑う。

 

「ジムリーダーの力量(レベル)が上がっていくのに俺の力量(レベル)が上がらない訳ないだろ?

つまりヤマブキジムジムリーダーの強さを5としてそれを倒した俺の強さを()()()()()()()8としよう、他のジムリーダーの強さはヤマブキジムジムリーダーと同じ条件での強さは劣るから4、そしてバッジが1つ上がることにポケモンの力量(レベル)が上がる分、強さが5上がるとしよう、そしてそれまでに俺の強さも()()()()()()()5上がるとすれば…」

 

「次のジムリーダーの強さは4+5=9に対して俺の強さは8+5=13ほら、()()()()()()()もこれだぜ?他のジムなんて楽勝さ。」

 

 

「なぁぁぁぁぁにぃぃぃぃぃっぬぅくぁしぃてんのぉぉぉアンタはぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎‼︎(╬ಠ益ಠ)(╬ಠ益ಠ)(╬ಠ益ಠ)(╬ಠ益ಠ)」

 

カスミの顔が真っ赤に染まり浮き出た血菅は余りの怒りにブチ切れカスミの顔の左半分を真っ赤に染める。

 

「ゲームじゃないのよ‼︎そんな簡単にいく訳がないでしょ‼︎ジムリーダーってのはね1つバッジが増えていく毎に何倍にも強くなるの‼︎そんな甘っちょろい考えでこの先やっていけると思わないで‼︎‼︎」

 

「何?お前ジムリーダーなの?あっそうか…レッドと一緒にいるからハナダジムが一旦しまってたのか…」

 

その言葉を聞いてカスミがドンと自分の左胸を叩く

 

「そう!私がハナダジムジムリーダー・お転婆人魚カス「自己紹介なんていらねぇから、覚える気ねえし。それに…」

 

スッとナガトはピカチューを指差す。

 

「こんな出来損ないに負けるジムリーダーなんざたかが知れてる。」

 

「ちゅーッ‼︎‼︎\(◣д◢)/ワシャー」

 

ピカチューは身体を逆立たす‼︎

同時にヒッポもその長い爪を構えて臨戦態勢をとる。

 

 

 

 

「そこまで言うならバトルしようぜ。」

 

 

 

「!」

 

カスミがすぐ左を向く。

そこには帽子のつばを右手で抑え下からナガトを睨みつけるレッドの姿があった。

 

 

「ハッ、嫌だね」

 

 

 

しかしナガトから出た言葉は拒否の一言。

 

「何?ビビってんの?」

 

「違えよ、ただ単にバトルするだけじゃつまらないってだけさ。」

 

ピクッとレッドが反応する。

 

するとニヤッとナガトの表情がドス黒い物へと変化した。

 

「お前、オーキド博士の研究の手伝い、まだ続けてんのか?」

 

(あぁ、そういう事か。)

 

レッドはナガトの表情、そして今の台詞、そして今までの台詞回しから全てを察した。

 

「あぁ」

 

くくくくくっとナガトの不気味な引き笑いが耳につく。

 

「いいぜ、バトルしようぜ。

その代わり、お前が負けたらそのオーキド博士の研究の手伝い、俺にやらせろ。いいな」

 

「あんた何言って…⁉︎「カスミ!」レッド⁉︎」

 

文句を言い出したカスミをレッドが制止する。

そして変わらずナガトを睨みつけたまま…

 

「この前は俺のポケモンも欲しがってたな…それはもういいのか?」

 

 

するとナガトは再び鼻で笑う。

 

 

「お前の育てたポケモンなんてもういらねぇよ。」

 

「そうか」

 

するとレッドは視線をヒッポにやる。

ヒッポはコクっと頷く。

 

 

「まずはお前だ。頼むぞヒッポ!」

「ザッドォォォッ‼︎」

 

レッドに指名されたヒッポが雄叫びを上げ、前へ出る。

 

「じゃあ俺は小手調べにこいつでいくぜ。」

 

ナガトはバシッと自分の隣にいるケーシィの肩を叩く。

どうやらナガトは1匹目をケーシィにするみたいだ。

 

「ルールは2対2のシングルバトル、いいな?」

「あぁ」

 

ナガトのバトルのルールにレッドは返事をしながらスッと目を細めケーシィに意識を集中する。

 

「ヒッポまずは“ニトロチャージ”だ。」

「ザァッ‼︎」

 

ゴォッと炎をその身体に纏いヒッポがケーシィに向かって突進攻撃を繰り出す。

 

「“テレポート”だ!」

 

ケーシィはサイコパワーを利用し、一瞬にしてその姿を消し、ヒッポの背後に移動する。

 

「“えんまく”で身を隠せ‼︎」

 

ガラ空きの背後に攻撃を受けないためにヒッポは咄嗟にレッドの指示を受け、黒い煙を吐き出し身を隠す、そのついでにケーシィの黒い煙により視界を奪う。

 

「レッドらしい貧弱な指示だn「“ニトロチャージ”‼︎」っ!」

 

レッドはヒッポで戦闘をする際“えんまく”による目眩し戦法をよく使用する。

その甲斐あってかヒッポは煙の中でも相手の居場所を感覚で察知することが出来るようになっていた。

 

そしてそのヒッポの感覚は見事に的中、ケーシィの腹にめり込む形で炎の突進が命中、ケーシィはレッドの足元にまで吹き飛ばされる。

 

「っ!反撃だケーシィ‼︎立ち上がれ‼︎」

「“つばめがえし”‼︎」

 

 

刹那の一撃

 

 

ヒッポは立ち上がろうとしたケーシィを風で形成した鋭い爪ですくい上げるかのように切り裂いた。

 

ケーシィは一瞬時間が止まったかのように静止しその後力なく倒れた。

 

「まず1匹」

 

レッドがナガトに見せつけるかのように右手の人差し指で作った1を差し出す。

同時にヒッポも雄叫びを上げ勝利を喜ぶ。

 

「へっ!、まぁ最近捕まえたばっかだからな、最低限の強さは身につけてたみたいじゃねぇか、レッドよ。」

 

(まだ挑発をやめないのねコイツ…)

 

カスミが呆れた表情でナガトを見る。

 

 

「俺の2匹目はコイツだ‼︎」

 

ナガトがモンスターボールを投げる。

 

そしてそこから出てきたのは…

 

 

 

 

「ゴローニャー‼︎」

 

 

 

 

身体中を石で覆われ、そこから腕と足を生やしている岩・地面タイプのポケモンでありイシツブテの最終進化系であると同時にレッドがトキワの森でブルーと協力して倒したポケモン・ゴローニャ。

 

「ウソ…」

 

「っ…⁉︎」

 

カスミの目が大きく開かれ、レッドの額には汗が流れる。

 

(ゴローニャとは戦った事はあるが…こいつはトキワの森で戦った奴とは力量(レベル)が違う。)

 

「何であんたがこんな力量(レベル)のポケモンを持ってるのよ⁉︎」

 

カスミとレッドが驚いた理由はただ1つ。

ゴローニャの纏う雰囲気が只者ではなかったのだ。

 

レッドはポケモン図鑑を開きゴローニャのレベルを確認する。

 

 

ゴローニャ♂Lv.46

 

 

力量(レベル)46…⁉︎」

 

するとナガトが笑みを浮かべる。

 

「パパから貰ったポケモンだ」

 

その言葉にハッとカスミが何かに気づく

 

「そういえばタケシが言ってたわ、実力に合わない力量(レベル)のポケモンを使ってジムを攻略したトレーナーがいるって…」

 

「実力に合わないって?馬鹿なこと言うなよこれだから弱い奴は…」

 

ナガトが鼻でカスミを笑う。

 

「ゴローニャは俺の言うことをちゃんと聞いて動いてんだよ」

 

ポケモンはモンスターボールに入ることでトレーナーの言う事を聞くようになるわけではない、ポケモンが捕まえた瞬間から言う事を聞くようになるのは自分を捕まえた事でそのトレーナーの実力を認めるからだ。

決してモンスターボールにポケモンを強制的に言う事をきかす効力はない。

そのため他人から貰ったポケモンが言う事を聞くことは貰った人のトレーナーとしての技術や人柄がちゃんとしていないと言う事を聞かない。

 

そして今のゴローニャにはナガトに反抗する意思は感じられない。

しかし

 

「それはあんたのお父さんの育て方がすこぶる良いってだけであんたの実力じゃないわ‼︎」

 

カスミの言う通り、ゴローニャからはナガトに対するいわゆるトレーナーとポケモンの繋がりを感じられない。

 

「はっ、悔しいからっていちゃもんつけんな‼︎さぁ、どうする?」

 

「…」

 

レッドは一瞬黙り込むそして…

 

「ヒッポ“えんまく”‼︎」

 

最も堅実な作戦で行くことに決めた。

ヒッポとゴローニャを包む形で黒い煙が巻き上げられる。

 

(どんな技を選んでも効果は今ひとつ…ならヒッポが1番得意とするタイプの技で勝負を挑む‼︎)

 

「“ほのおのパンチ”‼︎」

 

激しく燃え上がる炎を拳に纏い、重い一撃を視界の封じられたゴローニャにぶつける。

 

しかし…

 

「ゴロー…」

「ザッ⁉︎」

 

ニヤッと笑みを浮かべるゴローニャ、炎の拳の拳圧で少し吹き飛んだ煙幕の間からヒッポの姿を捉えた。

ゴローニャの両手がヒッポを捕らえにかかる

 

「ヒッポ、“ニトロチャージ”!」

 

しかしそこで届いたのはレッドの技の指示、レッドはヒッポの姿が見えないながらにヒッポのピンチを感じ取り技を指示した。

 

ヒッポは指示を受けその身体に炎を纏い一気にスピードを上げて後ろにダッシュ、ゴローニャの腕から逃れる事に成功した。

 

ヒッポはそのまま煙幕の外に出て、レッドに姿を見せる。

 

「…っやっぱりキツイか…‼︎」

 

レッドはヒッポの姿を見てこの戦いの難しさを確認する。

 

「…」

 

再びレッドは思考を巡らす。

 

 

ヒッポの使える技は

“ひっかく”

“なきごえ”

“ひのこ”

“えんまく”

“ニトロチャージ”

“つばめがえし”

“ほのおのパンチ”

“かみなりパンチ”

 

これをどう使ってゴローニャを打ちのめす?

“ニトロチャージ”を使ってスピードを武器にしながらヒット&ランを繰り返す?

…いや、おそらくゴローニャは範囲技を持っている、地面タイプの範囲技は足場を崩す技が多い、そこを狙われたらスピードを上げても意味はない。

同時におんなじ意味で“えんまく”を使って攻撃するのも無理がある。

 

あと1つ…

 

レッドはヒッポと目を合わせる。

同時にヒッポはコクっと頷く。

 

レッドは覚悟を決めた。

 

「ヒッポ“ニトロチャージ”‼︎」

 

ゴォッと炎を纏った突進が繰り出される。

 

「ゴローニャ“いわなだれ”‼︎」

 

ゴローニャの上空に岩が生成されヒッポめがけて落ちてくる。

 

「“ほのおのパンチ”に切り替えて岩を砕け‼︎」

 

ギュオッとヒッポは身体に纏っていた炎を右腕に集中させる、そして目の前に現れた岩を粉砕…そして

 

「“つばめがえし”‼︎」

 

刹那の一撃

 

その一撃はすべての岩を紙一重で通り抜けゴローニャに向かって放たれた。

しかし、ゴローニャはほぼダメージを受けていない。

 

「“なきごえ”‼︎」

 

レッドの叫びと同時にヒッポの強烈な音波がゴローニャを襲う、そしてゴローニャの攻撃を一段階下げる。

 

「まだだっ‼︎“えんまく”‼︎」

 

ブワッと黒い煙が舞起こりゴローニャとヒッポを包み込む。

 

「“ロックブラスト”‼︎」

「“ほのおのパンチ”‼︎」

 

煙の中、5発に渡って放たれた強烈な岩の弾丸は虚しくも全て外れ、逆にレッドとナガトの耳に炎の燃え盛る音と何かが岩にぶち当たった音が届く。

ヒッポの炎の拳がヒットした証拠だ。

 

「“なきごえ”‼︎」

 

再びヒッポの特殊な音波がゴローニャの攻撃を下げる。

 

「今の“なきごえ”でゴローニャに位置が割れた‼︎撹乱するぞ“ニトロチャージ”‼︎」

 

ヒッポは煙幕を突き抜け上空に飛び上がる。

 

そしてそれを見たナガトは…

 

「いい的だぜ‼︎“ロックブラスト”‼︎」

 

しめた‼︎

 

レッドの顔に笑みが浮かぶ。

 

その理由は1つ。

 

煙幕から岩の弾丸が上空に向かって放たれる。

 

 

 

お前にヒッポの姿が見えていたとしても…

 

 

 

ヒッポは体を硬ばらせると一気に急降下‼︎

 

 

 

ゴローニャにはヒッポの姿は見えてないんだよ‼︎‼︎

「“ほのおのパンチ”‼︎」

 

ヒッポは全体重と空中での勢いを利用して強力な炎の一撃を身に纏う。

ゴローニャの放った岩の弾丸はヒッポにかすりもしない‼︎

 

 

 

「いけぇぇぇぇぇっ‼︎‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

ガァンッ‼︎‼︎

 

「⁉︎」

 

岩とは違う何かより硬いものにぶつかった音がレッドの耳に届く。

 

急降下“ほのおのパンチ”の威力ですべての煙幕が吹き飛ばされる。

 

 

そしてそこには炎の拳をその身体で受け止めている鋼鉄のゴローニャの姿があった。

 

「なっ…⁉︎」

 

 

 

「“てっぺき”…‼︎」

 

 

ナガトとレッドの驚く声が上がる。

ゴローニャは自らの意思で“てっぺき”を発動、ヒッポの攻撃を防いだのだ。

 

「ナイスゴローニャ‼︎決めろ‼︎“アームハンマー”だ」

 

「ゴロッ…ニャッ‼︎‼︎」

「ゴギャッ⁉︎」

 

ヒッポの頭に強烈な拳が入る、ヒッポはそのまま回転しながら吹き飛ばされ、近くの湖にまるで水切りの石のように数回跳ね上がるとそのまま湖の中に沈む。

 

 

「ヒッポぉぉぉぉぉッ⁉︎⁉︎」

 

 

「ホスタ‼︎お願い‼︎」

 

カスミは咄嗟にスターミーを繰り出し湖に沈んだヒッポの救出に向かわせる。

 

そしてすぐにホスタはヒッポを湖から引き上げる。

ヒッポは白目をむいて完全に意識を失っていた。

 

「大丈夫か⁉︎ヒッポ⁉︎」

 

レッドがヒッポの元に駆け寄る。

 

「大丈夫よ、強力な一撃を頭にもらって意識を失っているだけじきに起きるわ。

…でもレッド…」

 

カスミはゴローニャの方に視線をやる

 

「ヒッポが一撃でやられるほどの力量(レベル)差の相手よ…?」

 

そっとカスミにしては珍しく優しい瞳でレッドに対して声をかける。

 

現実を突きつけるのと同時に深く同情しているかのような視線。

 

 

 

「…それでも」

 

 

レッドは俯き、ギュッと拳を握りしめ力のこもった声を振り絞る様に出す。

 

 

 

 

「勝ちたいんだ…‼︎」

 

 

 

 

そう言うとレッドは再びナガトとゴローニャの方に体を向ける。

 

「さぁ、2匹目は?」

 

挑発する様なナガトの声、

 

 

レッドは再び思考の海の中へ潜る。

 

 

岩タイプの苦手とする格闘タイプの技を覚えているドドラとキークでこの力量(レベル)のゴローニャの相手になるのか…

 

キークの“いかりのつぼ”が発動すれば…いや、ヒッポが一撃でやられる程の力量(レベル)差の相手の技を急所に食らったら同じ様に一撃で終わりだ。

 

ならここは“ふいうち”と“にどげり”を覚えているドドラで…

 

そうしてドドラのモンスターボールにレッドが手をかけた瞬間…

 

 

 

「ぴかぴ‼︎」

 

−レッド‼︎

 

 

「ピカチュー…」

 

 

不意にかけられた声。

すぐ下を向けば強い意志をその瞳に宿しているピカチューの姿があった。

 

レッドはブンブンと無我夢中で頭を振るとキリッとピカチューに向かって視線をやる。

 

「そうだよな…そうだよ。

元々はこれは俺とお前との戦いなんだよな。」

 

「ちゅっ‼︎」

 

ピカチューは強く頷く。

 

 

 

「よっしゃ!ピカチュー‼︎君に決めた‼︎」

 

 

「ぴかーちゅーっ‼︎」

 

 

ピカチューを指名した事によってナガトには満面の笑みが、そしてカスミの顔は真っ青に変わった。

 

「ははははっ!そんな雑魚に何ができんだよ一瞬で終わらせてやる“ロックブラスト”!」

 

「ゴロッ…」

 

ゴローニャが岩の弾丸を生成し放とうとした瞬間

 

 

 

 

ゴローニャの視界が黄色で覆い尽くされる

 

 

 

 

ドゴォッ‼︎

 

 

 

その衝突音は光速の速さでピカチューがゴローニャに突撃した音。

 

ゴローニャは完全に不意を突かれそのまま後ろに倒れる、そして同時に岩の弾丸がゴローニャの真上に放たれ…

 

自ら放った5発の岩の弾丸が発射した際の威力そのままでゴローニャに降り注いだ。

 

 

「“でんこうせっか”よね…今の…⁉︎」

 

 

“でんこうせっか”

自らの呼吸を整え一気に加速し相手に突撃するノーマルタイプの技。

その速さ故に必ず先制する技『先制技』の1つに数えられている。

 

「一瞬で…なんだって?」

 

レッドの笑みがナガトに突きつけられる。

 

「調子に乗りやがってゴローニャ‼︎」

 

ゴローニャは自ら食らった岩をなぎ払って起き上がる。

同時にシャっと音を立てる様にピカチューが臨戦態勢に入る。

 

(先制技の“でんこうせっか”を覚えたといっても、ダメージはそこまで大きくない…さっきのように隙を突かないと捕まってお終いだ。)

 

不意にレッドの視界の中心に無数の岩が入る。

 

“いわなだれ”や“ロックブラスト”でゴローニャが生成した岩だ。

 

(これなら…)

 

「ピカチュー“でんきショック”だ‼︎」

 

ピカチューの強烈な電撃はピカチューを中心に円形に放出され周囲の岩にぶち当たりその電気の力で岩を一時的に磁石の様にコントロールすることを可能にした。

 

「いけっ‼︎」

「ちゅっ‼︎‼︎」

 

電磁力によって地面から浮き上がった岩はピカチューの長い尻尾がゴローニャに向かって振られるのと同時にゴローニャに向かって弾丸の如く襲いかかる。

 

「見様見真似の“ロックブラスト”だ‼︎」

 

「“てっぺき”だ‼︎」

 

カッとゴローニャの身体が鋼の光沢を放つとピカチューの放った岩の弾丸をその身体で受け止める。

 

「残念ながらダメージはほぼゼロだぜ‼︎」

 

「…」

 

今のでゴローニャは防御力が4段階上がっている。

そしてピカチューの電気技は地面タイプを持つゴローニャに効果はない。

 

だけど…地形を活かして戦う事は出来るのは今の攻撃でわかった。

 

なら…

 

「ピカチュー!“でんこうせっか”‼︎」

 

レッドはピカチューの新たに覚えた技でゴローニャに勝負を挑む。

超高速でジグザグに移動しながら突進する事でゴローニャの目をくらます、“ロックブラスト”や“いわなだれ”の標的にならない為にだ。

 

「撹乱したって無駄だぜ!ゴローニャには…」

 

スッとナガトがレッドに向かって指を指す。

 

「“じしん”があるからなぁ‼︎」

 

ゴローニャは一瞬身体を強張らせた後に大きく四股踏みをする。

大地を揺るがす程の強烈な波動が辺り一帯に大きく広がっていく。

 

地面タイプの範囲技“じしん”。

 

力量(レベル)の大きく劣るピカチューに効果抜群のこの一撃を喰らう事は敗北を意味する。

 

しかしレッドは…

 

「スピードを利用して跳ぶんだ‼︎」

 

冷静だった。

 

ピカチューはレッドの指示通りそのスピードを生かして飛び上がり“じしん”を交わすとそのまま再びそのスピードにブーストをかけそのまま突撃する。

 

「ゴッ‼︎」

 

ピカチューの急下降“でんこうせっか”はゴローニャに命中するも、ゴローニャは倒れる事なくそのガッシリとした足で耐えきる。

 

「!」

 

レッドはその瞬間にあるものに気づく。

 

「ピカチュー!ゴローニャの足に“でんきショック”だ‼︎」

 

ピカチューの電撃がゴローニャの右足目掛けて放たれる。

その隙をついた電撃にゴローニャは思わず自分に電気技が聞かないことを忘れ回避にかかる、しかし…

 

「ゴッ⁉︎」

 

ゴローニャの右足は先程のピカチューの“でんこうせっか”によって地面にめり込んでおり、そこから無理に抜け出そうとした結果その体重を支えきれず再び仰向けに倒れる。

 

「今だピカチュー!“でんきショック”そして“でんこうせっか”‼︎」

 

ピカチューは強力な電撃で再び周囲の岩を制御し、擬似“ロックブラスト”を放つと自らも加速し高速の突進技を繰り出す。

 

その攻撃はゴローニャの剥き出しの両腕、両足、画面に全発命中、ゴローニャも不意を突かれた攻撃+岩で守られていない部分を攻撃されダメージを受けた素振りを見せる。

 

「こっちは電気で岩を制御(コントロール)してる分命中率はいいんだよ‼︎」

 

ピカチューの放つ擬似“ロックブラスト”はゴローニャの放ったものよりも威力は劣るが、岩を電気で制御出来る分相手の急所に的確に技を当てることが出来る。

 

怒涛の6連撃に怯むゴローニャ。

 

「もう一度だ!いけっ‼︎」

 

そこを見逃さず再び同じ技を支持するレッド。

 

「ちっ…‼︎“ころがる”だ‼︎」

 

仰向けに寝ているゴローニャは両手足をしまうとそのまま丸くなり高速回転しその回転力を利用して地面から抜け出し突撃してきたピカチューを弾き飛ばす。

 

「ピカチュー‼︎」

 

ピカチューはゴローニャの回転力に当てられ回転しながらレッドの元へ吹き飛んでいく。

レッドは吹き飛ばされるピカチューの状態から例え着地に失敗し余分なダメージを受けたとしても無事だと予想し次の手を考える。

 

ーやっぱり電気技の活用法がわかったとはいえ直接当てられないのは辛い…

岩・地面タイプに有効な水タイプ・草タイプの技を覚えていれば楽なんだけど…水…?

 

レッドは何かに気づいたかのように顔を右に向ける。

 

そこにはヒッポが吹き飛ばされた湖の姿が…

 

 

「一か八か…ピカチュー‼︎」

 

レッドが考えている間にピカチューは回転を自分のものとしていた、ピカチューはレッドの指示に頷く。

 

「“でんこうせっか”‼︎」

 

ピカチューは回転を利用して一気に空気を蹴りそのまま勢いよく湖へ飛び込む。

そしてその勢いで大量の水しぶきが舞い上がり…

 

「ロニャっ⁉︎」

 

ゴローニャに降り注ぐ。

 

「今だピカチュー‼︎“でんきショック”‼︎」

 

ピカチューの電撃がゴローニャにぶち当たる。

そして…

 

 

「ゴロォォォォォォォっ⁉︎⁉︎」

 

 

ダメージが通る‼︎

 

「なんでだよ⁉︎地面タイプに電気技は効果がないはずだろ⁉︎」

 

「全く効果がないわけじゃないんだよ。」

 

ナガトの驚く声にレッドが答える。

 

「地面タイプのポケモンは電気を体内で分散させ無力にする性質を持っている、そして電気が身体に流れてから無力化するまでの時間が限りなくゼロに近い、だから地面タイプのはポケモンに電気技は効果が無いと言われている。

だけどこれに電気をよく通す水がかかると話は別だ。

地面タイプのポケモンは水を浴びる事で一時的に電気を通す能力が弱まり電気が身体に流れてから無力化するまでにタイムラグが生じ電気技が効くようになるんだ。」

 

似たような現象で更に追加補足をするならピカチューの特性“ひらいしん”は電気タイプの技を受けるとその力を自分の力に変える事の出来る能力だが、その能力は自分の容量を超える威力や量のものを受けると自らの力に変える事が出来ずその能力は意味を成さなくなる。

 

「身体が水に濡れている今がチャンスだ‼︎ピカチュー‼︎」

 

強烈な電撃の応酬、流石のゴローニャもこの電撃はキツイのかダメージに動けていない。

 

「“じしん”だ‼︎」

「かわせっ‼︎」

 

ピカチューは電撃をやめ次に来る大地を揺るがす波動を交わすために飛び上がる。

 

しかし

 

「!」

 

ピカチューの視界に入ったのは、トレーナーの指示を無視してピカチューに突撃し、右腕に強烈なエネルギーを溜め込んでいるゴローニャの姿だった。

 

“アームハンマー”

 

ヒッポを一撃で葬り去った強烈な拳がピカチューを地面に叩きつける様に放たれた。

 

「ピカチュー‼︎」

 

レッドの叫びも虚しくピカチューは叩きつけられる。

 

そしてなおも拳を振り上げるゴローニャ。

 

ナガトは自らの指示を無視されたのにも関わらずまるで自分の作戦通りと言っているかの様な笑みを浮かべる。

 

レッドは…カスミは感じ取った。

ゴローニャとナガトの間にある関係。

 

 

 

ゴローニャはナガトをフェイクの道具にしか思っていないということを…。

 

 

ナガトの指示を聞いて咄嗟に指示をしたトレーナーのポケモンの隙を作り出し、その隙に攻撃をぶつけるための道具。

 

 

ナガトはこのバトルにおいて高力量(レベル)のポケモンを使っていながら自分のバトルが出来なかった今までの鬱憤を晴らすかのように高笑いをしながら技を支持する。

 

「“アームハンマー”“アームハンマー”“アームハンマー”“アームハンマー”“アームハンマー”‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

ゴローニャの大鎚の様な拳は連続でピカチューに命中、既にレッドの視界からはピカチューの姿はゴローニャの拳と地面にめり込んでいるせいで殆ど何も見えなかった。

 

しかし分かっている事がある。

 

 

 

バトル中になんとなく感じていたピカチューを感じない。

 

 

 

レッドがこの感覚に陥った時は必ず戦闘に出ているポケモンが戦闘不能になった時だ。

 

 

 

「やめろ…やめてくれぇぇぇぇぇぇっ‼︎‼︎」

 

 

 

「ははははははっ‼︎死んじゃえ‼︎“じしん”‼︎‼︎」

 

 

 

高笑いをしながら指示されたピカチューの弱点を突く大技、タダでさえ地面にめり込んでいるのに至近距離でその技を食らったらピカチューの命が危ない。

 

しかしナガトは指示を止めない。

 

まるでピカチューが次の攻撃で死ぬと考えて喜んでいるかのよう…

 

その後にレッドの心が壊れる事を想像して喜んでいるかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

「“ハイドロポンプ”‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

バズーカのような衝撃を纏った水流がゴローニャに命中、ゴローニャはそのまま吹き飛ばされナガトの横を通って遥か遠方へと吹き飛ばされる。

 

「なっ…⁉︎」

 

ナガトの驚く声。

 

レッドは水流が放たれる直前に響いた声の主の方を振り向…

 

「サニー“しろいきり”‼︎」

 

レッドとナガトの周囲に白い霧が舞起こり視界を奪う。

 

レッドが唖然としていると…

 

「キッス!」

 

突如トゲキッスがレッドの横を横切る。

それと同時にレッドの右腕が誰かに掴まれる。

 

「走るわよ‼︎」

 

腕を掴んだ正体はカスミ、そしてその隣にはヒッポを抱えているスターミーと白い霧を放ち続けている美しいピンク色のポケモン・サニーゴ。

 

そして…

 

「キッス!」

 

「ピカチュー‼︎」

 

先程レッドの隣を横切ったトゲキッスは戦闘不能状態となり意識を失ったピカチューをその背中に乗せて飛んできた。

 

レッドはカスミの手を払いすぐにピカチューを両手で抱えカスミと共に霧の中を走っていく。

 

 

「ちょっお前ら⁉︎何なんだ‼︎おい‼︎ゴローニャ‼︎助けろ‼︎」

 

ナガトは白い霧の中、ゴローニャに助けを求めるがゴローニャは遥か遠方で目をグルグル回して気絶しているため助けには来なかった。

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

レッドとカスミは25番道路の奥地まで辿り着いていた。

 

その間に気を失っていたヒッポとピカチューは回復しモンスターボールの中に戻っている。

 

「…」

 

しかしレッドはずっと黙ったまま、カスミはピカチュー達が回復した今でも暗いレッドに重苦しい空気の中声をかけた。

 

「ポケモン図鑑の事なら問題ないわよ、あいつが賭けを申し出た時あんたは一切それを肯定する言葉は吐かなかった=あのバトルに賭けなんて存在しなかったんだから…」

 

明るい感じで言った言葉もレッドには届かずカスミの声も徐々にか細くなる。

 

 

「勝ちたかったんだ…どうしても…勝ちたかったんだ…っ‼︎」

 

 

カスミの瞳が大きく揺れる。

 

レッドは拳を握りしめ、歯を食いしばり、瞳には涙が今にも落ちんばかりに溜まっている。

 

「その結果がこのザマだ…一緒になって怒ってくれたヒッポを傷つけて…ピカチューには傷に塩を塗った…2人のプライドを傷つけた…‼︎」

 

レッドの瞳から遂に涙が溢れる。

 

「っ…!」

 

カスミは何も言えない。

 

さっきのナガトという生意気な小僧とレッドとの間に何があったのか?その過去を知らないからだ。

 

「俺は…俺は…‼︎うぐぅっ…」

 

 

過去を背負う日々を抜け出したかった。

 

あの時のことがフラッシュバックする今の日々を抜け出したかった。

 

暗い過去の原因の主な原因を作った奴らを見返したかった。

 

 

そうしないと…俺とピカチューはその過去を背負って生きていかなきゃいけない。

 

だから清算したかった。

 

奴らをポケモンバトルで見返して背負っている過去を綺麗さっぱり消し去りたかった。

 

 

 

だけど

 

 

 

 

結果がこれだ。

 

 

 

また背負うものが増えただけ、そして旅を始めてからの自分の仲間たちを巻き込んだだけ。

 

「うぅ…‼︎」

 

レッドは溢れ出てくる涙をふかずずっと下を向いて泣き続ける、いや、泣いていることにすら気付ないほどずっと後悔の念に呑まれているのかもしれない。

 

 

しかし次の瞬間

 

 

 

「‼︎」

 

 

 

レッドは暖かい何かにつつまれる。

 

 

思わず下を向いていた顔が上を向く。

 

 

そこにはカスミの顔が

 

この温もりの正体はカスミがレッドを抱きしめることによって現れたものだった。

 

 

「ちょっ…////」

 

ギュッ!

 

「ふわッ⁉︎////」

 

 

レッドが事の重大さに気付いてカスミから離れようとしたが逆に強く抱きしめられる。

 

「私はレッドの過去に何があったかなんて知らない…」

 

カスミの自他共にお転婆人魚と呼ばれているいつもの声色とはかけ離れた優しい声色、その声と抱きしめられている間に聞こえるカスミの鼓動に、レッドの中で徐々に抱きしめられている事への恥ずかしさが消えていく。

 

「だけどね、私はあんたが強い事だけは知ってる。ポケモンと普通の人以上に深い絆で結ばれているのを知ってる。」

 

カスミは言葉を続ける。

 

「私がレッドについて知ってることって素敵な事だらけよ。だからそんな…過去だけに目を取られないで…先を見て…」

 

 

 

「あんたならどこへでもいけるよ。」

 

 

 

 

 

その言葉にレッドの目が大きく開かれそして…

 

 

「うぐっ…うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ…っ」

 

 

レッドはカスミの腕の中で泣いてることを自覚して涙を流した。

 

 

 




ポケモンXY&Zももうすぐ最終回…時が経つのは早いなぁ…。


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第24話 陰謀の影 後編

ポケモンXY&Z終わりましたね…とても良かったです、見終わった後2日ほど余韻に浸れました。
もう…なんか…スタッフにありがとうしか言えない。


「ここがマサキの家…」

 

俺とカスミが見上げるのはどこにでもありそうなごく普通の家、しかしこんなごく普通の家に超有名人?が暮らしているとは到底思えない。

 

ポケモン転送システムを開発した研究者マサキ。

 

俺が図鑑完成の為に捕まえたポケモンをすぐにオーキド研究所に送れるのもポケモン図鑑にそのマサキの開発した転送システムが組み込まれているからだ。

と言ってもポケモン図鑑は携帯用に持ち運びできるように俺からオーキド研究所の一方通行でしか使えないのだが。

 

それでも大いに助かっている、それがなければ俺は次の町のポケモンセンターまで腰に数十個のモンスターボールを携帯する羽目になるのだから…重くてしゃあなかったろう。

 

「ぴかちゅ?」

 

「どうした?ピカチュー?」

 

ピカチューの耳がピクピクと動く。

何かを察知したようだ。

 

「…早速中に入ってみるか」

 

俺はピカチューが異変を感じたものはマサキの家にあると感じ取りすぐさまドアノブに手をかけようと手を伸ばす。

 

しかし…

 

 

パシッ‼︎

 

 

「イテッ⁉︎」

 

突如とドアノブに触れようと手を伸ばした俺の右手首にチョップが上から炸裂。

 

 

「なんでまずドアノブなのよ⁉︎普通インターホンからでしょ⁉︎」

 

「あっ…そうだそうだ。」

 

今まで他人の家に行った事がないから完全に忘れていた。

…そうだよ!俺はぼっちだよ‼︎友達の家に行った事なんてないんだよ!ていうかそんな友達もいなかったよ‼︎バカヤロー‼︎

 

俺が心の中で見知らぬ誰かに八つ当たりをしているうちにカスミがインターホンを押す。

 

 

リンゴーン‼︎

 

 

リンゴーンって珍しいインターホンの音だな。

 

リンゴーン…リンゴ・ン…リンゴ

 

「…マサキってリンゴ好きなのかな?」

「くだらない事言う暇があるなら一般常識学んだら?」

 

ははは一刀両断キッツー…

 

そんな事を思っている内に玄関の向こうからドタドタと言う音が…

 

 

テケテケテケテケ

 

 

いや、テケテケテケテケって音が…どんなつま先走りしてんだ…?

 

人が廊下を移動する音にしては軽すぎるその足音に思わず突っ込んでしまう。

 

『あかん⁉︎鍵が開けられへん⁉︎このっ!このっ!』

 

鍵が開けれないってどういう事⁉︎あんたここの住人だよね⁉︎

 

「泥棒か⁉︎…ピカチュー」

 

ビリッとピカチューの赤いほっぺから微量の電気が流れる、臨戦態勢に入った証拠だ。

しかしそこでカスミが困惑しながら俺を止めにかかる。

 

「いや、これはマサキの声よ。間違いない」

 

ガチャッ

 

鍵の開いた音が耳に届く。

それと同時に俺は玄関の扉を開け…

 

「⁉︎」

 

にゃんと! にゃんだー? にゃんですとー⁉︎

俺が咄嗟ににゃんだ比較級(何処かの珍しい喋る猫ポケモンが一時期流行らせようとしたらしい)を頭の中に思い浮かべたその原因は…

 

目の前になんか茶色の髪の毛が生えている薄ピンク色の生物…おそらくピッピが俺に向かって突撃していためであった。

 

 

「のべし⁉︎」

 

そして俺の顔面にピッピの攻撃がクリーンヒット、俺は玄関のドアから2メートルほど吹き飛ばされる。

因みにピカチューは咄嗟に俺の肩から離れていたため無事である…助けろよぉ…。

 

 

「いたた…「アホか己はぁぁぁぁぁぁぁッ‼︎」へぶっ⁉︎」

 

 

起き上がった俺にピッピの“はたく”攻撃が襲いかかる。

 

 

「なんで玄関の扉を開けたんや」

 

バシッ‼︎

 

いや違う…これは…

 

「いや、だって鍵が開いたから「アホか己はぁぁぁぁぁぁぁッ‼︎」ベシッ⁉︎」

 

“おうふくビンタ”だ…⁉︎

 

「一般常識が足りとらんのちゃうか⁉︎脳みそ足りとらんのちゃうか⁉︎」

 

罵声を浴びせながらも俺に襲いかかるビンタの応酬は止まらない。

と言うかこいつポケモンなのに喋ってるよね?絶対喋ってるよね⁉︎⁉︎罵声を浴びせるタイミングと唾が飛んでくるタイミングが完璧に一致してるんだが⁉︎これで喋ってなかったらどんだけ近くにこいつのトレーナーがいるんだよ⁉︎て言うかビンタされるたびに首が180度回転してんだけど一切トレーナーの姿見えねーんだけど…て言うかどう考えても音源目の前なんすけど⁉︎

 

「普通は家主が開けるまで待つもんやろがぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎‼︎‼︎」

 

トドメの一撃は俺の顎にヒットしそのまま俺は上空に投げ出される。

 

「フゥー!フゥー!おぉ〜体が軽い…流石ポケモ「ちゅー‼︎」ギャァァァァァァァァァァッ⁉︎⁉︎⁉︎Σ(゜ロ゜ノ)」

 

いきなり主人を攻撃した喋るポケモンにしばらくポカーンとしていたピカチューだが主人が吹っ飛ばされたのを見て正気を取り戻し主人を攻撃したポケモンの排除に行動を移す。

ピカチューの電撃を受けたその喋るピッピは電撃が終わる頃には気おつけの姿勢でそのピッピとはかけ離れた部位…頭の茶色の髪の毛は焦げチリチリになり静電気を帯び、そのまま倒れる。

 

「殺す気かァァァァァァっ⁉︎⁉︎わいがポケモンやなかったら死んどるぞぉぉっ⁉︎」

 

叫ぶピッピの周囲に暗がかかる。

喋るピッピは口を閉じ、背後から感じる謎の殺気に寒気を感じながらも恐る恐る背後を振り向く。

 

そこにいたのは…そう…

 

 

 

 

 

 

ブチギレた俺でーす☆★(*⌒∇⌒*)テヘ♪

 

 

 

 

 

「ギャァァァァァァァァァァァァ⁉︎⁉︎⁉︎」

 

その日25番道路に男性の甲高い断末魔が響いた。

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

ディグダの穴を抜けた先には分かれ道があり右に進むとクチバシティ、左に進むと11番道路に出る。

 

そして現在、グリーンはクチバジムに向けて11番道路でポケモン達の最終調整をしていた。

 

「カメール“みずのはどう”

コラッタ“かえんぐるま”」

 

カメールは水のエネルギーを凝縮させた球体を放つ、ディグダの穴を抜ける最中に新たに会得した技だ、この技は相手に触れると同時に破裂し凝縮した水が水流となって襲いかかる二段構えの攻撃技。

“みずでっぽう”と違い少々エネルギーを溜めるのに時間がかかるがそれをカバーするのはトレーナーである俺の役目だ。

カメールには“まもる”といった防御技を覚えさせている、相手の攻撃を完全に防いだ後“みずでっぽう”でカウンター、そして更にこの“みずのはどう”で追い討ちをかける。

 

そしてコラッタ、こいつはイマイチ何を考えているのか全くわからんがディグダの穴では俺の指示にきちんと従っていた。

“かえんぐるま”“ワイルドボルト”“ふいうち”といったバリエーション豊富な技と抜群の素早さは俺の理想とするバトルスタイルとは少しタイプは違うがそれでも1番求める安定したバトルを行うことが出来る。

 

俺は2つ目のバッジをかけて勝負する…ということは2対2のバトルになるはずだ。

勿論この2匹で挑むが相手は電気タイプの使い手、そうするとカメールは電気タイプが苦手なため自然とコラッタを中心として戦うことになるのだが…

 

「おいおい…」

 

コラッタには電気タイプに有効な技を覚えていないと思った瞬間に俺にとってとてもいいことと驚くべきことが起こった。

 

コラッタが急に地面を引っ掻き始めたと思ったら引っ掻くスピードが桁違いに速くなり地面に潜るとすぐさま全く違う場所から姿を現したのだ。

 

「“あなをほる”か…⁉︎」

 

ディグダの穴に生息するポケモン・ディグダとダグトリオが得意とする技、本来ならこの2匹を捕まえて俺のポケモンに伝授させようと思ったのだがディグダの穴は何者かに荒らされておりそのせいか俺がディグダの穴で見かけたポケモンはこの11番道路から興味本位でこのディグダの穴に訪れたポケモンのみで一切ディグダとダグトリオを見ていない。

 

そのため今回の“あなをほる”習得は難しいと判断していたが、まさかの奇跡が起こってくれた。

この技一つで試合運びが出来やすくなった。

 

そう俺が思っているとスッとコラッタがこちらを振り向く。

そして…

 

「⁉︎」

 

ニヤッと不敵な笑みを浮かべた。

 

まるで…俺が“あなをほる”の習得を望んでいた事を知っていたかのように、そしてそれをやってやったぞ感謝しろと言わんばかりの挑発的な笑み。

因みにおれは一切俺はこの事をポケモン達には話していない。

 

「…色違いってみんなこうなのか…?」

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

「…アレ?」

 

目を覚ますとそこはいつものわいの家、相変わらず資料やレポートで足場のない汚ったない部屋、「明日片付けるわ」を何回も続けた結果の部屋…明日はいつ来るんやろ…。

 

スッと自分の体を見るとやっぱりピンクや。

悪夢はまだ終わっとらんのか…どないしよどないしよ?

こんなに目線がいつもより下で手足が短いと体の微妙な感覚の違いにホンマに苦しめられんねんけど…さっきも鍵開けんので一苦労やったし…鍵?

 

「泥棒ー「誰がだ‼︎」げぷっ⁉︎」

 

突然わいの頭に強烈なチョップが入る、わいの唯一の救い?である周りからワックスつけてへんのに「研究者なのにワックスつけてオシャレに気を使ってるなんて素敵ね。」なんて言われるほど決まっているこの髪型!ワックスなんかつけなくてもどんなに寝癖が酷くてもこの髪型になるというこの超超超自覚しているわいの髪の毛が背後からのチョップによって潰される。

 

「何しとんじゃ己はぁぁぁぁぁっ⁉︎⁉︎」

「何で喋っとんじゃ己はぁぁぁぁぁっ⁉︎⁉︎」

 

再びわいの超自覚毛にチョップが入る。

 

あぁ…

 

「2回やったな⁉︎仏の顔も3度までっていうけどなぁ!わいの髪の毛は2度までなんじゃ3度目はないんやぞ⁉︎そんなことも知らんのか⁉︎スカポンタン‼︎

もう怒ったで‼︎喰らえ‼︎わいの髪の毛の怒りの“おうふくビ「“でんきショック”」ギャァァァァァァァァァァっス⁉︎⁉︎⁉︎」

 

再びわいの身体中にあの赤帽子のピカチュウの電撃が入る⁉︎

あかんあかんあかん⁉︎これあれや⁉︎尾骶骨に来とる⁉︎尾骶骨に来とる⁉︎ヤバイヤバイ⁉︎意識飛ぶ意識飛ぶ意識飛ぶ⁉︎

いや、でもわいも今はポケモン‼︎この電撃たえてみせ…

 

「ちゅーっ‼︎」

「のギャァァァァぁぉ⁉︎」

 

アカン⁉︎これ無理⁉︎無理無理無理⁉︎インドアなわいには例えポケモンになってもこんな電撃耐えられへん⁉︎⁉︎

 

もういっその意識飛ばしてしまったほうが楽や…ふふっ今回はお前に勝ちを譲ってやるわ。

 

だが次は負けへんぞ‼︎次に会う時はわいは最強のピッピ…いやピクシーになっとるからな

 

 

 

「ってなんの話じゃぁぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎‼︎次会うときまでこの姿のままでいるきかわいはぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎‼︎しかも進化する気なんかぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎‼︎」

 

 

 

 

…………………………あれ?

 

ビリビリせぇへん…尾骶骨になんの衝撃もあらせん…もしかしてこれ…

 

わいこのピカチュウの電撃を耐えきったんちゃうん‼︎‼︎

 

 

「がははははははっ‼︎‼︎ほら見ろ‼︎わいの勝ちや‼︎完勝や‼︎そんな電気ネズミにやられる程わいはやわじゃないん「ちゅーっ‼︎」やばばばばばばばばばばっ⁉︎⁉︎」

 

 

「お前の情緒不安定さに引いて電撃を止めただけだっつーの…」

 

さっきから叫んだり変顔したり叫んだり白目向いたり叫んだりと忙しい情緒不安定喋る髪の毛ピッピ(命名 俺)は今現在ピカチューの電気地獄の刑に処されている。

 

因みに説明しよう電気地獄の刑とは強烈な電撃を浴びせ相手が意識が飛ぶ寸前で電気を止め少々飛びかけた意識が戻ったところでまた意識が飛ぶ寸前まで電撃を喰らわすという無限ループを行うことである、相手は寸止めを繰り返されるためその苦しみはまるで無限地獄…こういう事をニヤニヤ笑いながらやるからなピカチュー(こいつ)は…。…正に黄色い悪魔…!

 

「レッドもういいでしょ、ピカチューも…レッド、ピカチューに止めるように言ってあげて…。」

 

チキリやがった…。

 

ピカチューの悪魔の笑みは流石のお転婆人魚(自称(爆笑))も恐ろしいのか…そうかそうか…

 

「最初はg≡○)゚д。)ノゲフッ⁉︎」

 

カスミの“メガトンパンチ”!効果は抜群だ!

レッドは怯んで動けない(“メガトンパンチ”にそんな効果はない)

 

「トレーナーのあんたがビビってどうすんのよ⁉︎あんたのポケモンでしょ⁉︎責任とりなさいよ‼︎」

「1番身近にいるから恐ろしさを知ってるんだよ⁉︎こいつの電撃どんだけ痛いかわかってる⁉︎尾骶骨に来るんだよ⁉︎」

 

 

 

 

 

 

「いいからはよやめさせろぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎‼︎」

 

 

 

 

 

情緒不安定喋る髪の毛ピッピの悲痛な叫びが部屋中に響いた。

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

「いやーっ散々やった散々やった。…ちょい待てそこの赤帽子!モンスターボールを構えるなモンスターボールを⁉︎確かに弱っているけれども⁉︎ポケモンの捕獲の基本にそった行動はやめて⁉︎⁉︎」

 

ピカチューに情緒不安定喋る髪の毛ピッピの電撃を止めるように言うとピカチューは素直に指示に従い電撃をやめた…その後に舌打ちをしながら指を鳴らすピカチューの姿など俺は決して見ていない…見ていないぞ…。

 

「それにしてもまさか合成マシンの不具合でわいがピッピと合体してまうとは…」

 

「合成マシン?ピッピと合体⁉︎」

 

確実にこの世界に震撼が起こるような言葉が発せられ心の叫びに落とし込めず思わず口に出してしまう。

すると隣で腕を組んでいるカスミははぁーっと長いため息をつくと今の言葉によって俺の頭によぎったこの情緒不安定喋る髪の毛ピッピの正体を口にした。

 

「ちょっとは警戒しなさいよ…マサキ!」

 

やっぱり…こいつが…マサキか。

 

…今はピッピだけど。

 

「別に構わんやろ、アンタがこいつを連れてきたのも信用できるからやろ。」

「いや…私がレッドを連れてきた理由はそう言う意味じゃないだけど…」

 

『俺に自分の趣味について脅されたせいデース☆』なんて言えないよな…ふひひひひっ

 

「?…なんや、そっちも人の事言われへんやろ…それに自分の事をお転婆人魚なんて言える方が色々…主に頭を心配した方がええと思うけど、とにかくわい1人じゃ元に戻られへんからわいが転送マシンに入るさかい分離プログラム頼むで「「いやだ」」そんなぁ…冷たい事言わんといて、よっ…色男!憎いねぇーっ大統領!ほな!オッケーやな!決まりや!頼むで。」

 

おいおい俺はともかくカスミに色男は駄目だろ…。

 

この情緒不安定喋る髪の毛ピッピもといコガネ弁研究者マサキのなんと言うか…この軽さに軽くイラっとしつつも大人しく俺はマサキが部屋の奥にあるよくわからん機械の片方に入ったのを確認してパソコン画面に映っている分離プログラムの起動、するとドュイーンッと言う音と同時にマサキの入った電話ボックス的なやつともう片方のそれがガタガタと揺れ始めそして…

 

「戻ったどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ‼︎‼︎」

 

勢いよく出て来る自然と髪の決まった男、水色の薄い長袖のシャツを着て、下は少し黒く濁った緑色のジーパンを履いている。

何故だろう凄くイライラする…俺がどうしようが常に一部ツンツン頭になるからだろうか…もうその事は自分の中で諦めようと決心がついたはずなんだけどな…。

 

「いやぁー、おおきにおおきに!」

 

俺たちの目の前に来るとへこへこ頭を下げ…じゃない肩を上に上げ下げして例の言葉を述べるマサキ…あぁ、なんとなくオーキド博士の心配していた理由がわかった気がする…人に対する礼儀がなってない、軽すぎるんだ。

 

「ほんで、カスミ、情報を聞きに来たんやろうけどもう一度再確認する。

そのガキは信用なるんか…?」

 

ガキって言われるほどテメェと歳の差はねぇっつーの‼︎。

そう突っ込みたい気持ちを俺はこのシリアスな空気を読んで押さえ込む、するとカスミはフッと笑みを浮かべると…

 

「まだ腕も未熟だけど…ポケモンに対する思いやポケモン達との絆の深さは私が見て来た人達の中で誰にも負けない強いものよ…旅を始めてそんなに時間が経っていないのにこれだけポケモン達との信頼関係を築ける人間が信用に足りなかったらこの世界は疑心暗鬼に満ちて終わっているわよ。」

 

カスミの言葉に少しだけ胸を打たれているのを実感する俺、ナガトの件があった関係上素直に嬉しい。

 

それを聞いたマサキは同じようにフッと笑みを浮かべると

 

「まぁ、カスミがそこまで言うんやったら信じたる、戦力は多いに越した事はないからな。」

 

「戦力…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「まずぶっちゃけるとわい元ロケット団やねん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…は⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁあああああっ⁉︎」

 

その衝撃的な発言とその内容に俺は一瞬でマサキと距離を取り身体を強張らせ臨戦態勢に入る、同じくピカチューもその赤い両ほっぺに電気を貯め始めた。

 

「待て待て待て待て⁉︎()()⁉︎」

 

俺とピカチューのとった行動に焦りを見せるマサキ

 

「わいの研究を手伝ってもらう側あいつらの研究を手伝っどったんや⁉︎もちろん‼︎もっ!ちっ!ろっ!ん!あいつらがそないなマフィアなんて知らんかった‼︎それに今は奴らの正体に気づいて手を切っとる⁉︎」

 

 

 

………

 

 

 

「…ほんと?」

「ほんまやほんまや‼︎神に誓うわ…」

 

 

 

 

………

 

 

 

「じゃあその言葉通りピカチューの電撃の後に神に誓えよ」

 

 

 

「そないな事一言も言っとへん⁉︎」

 

 

落ち着いてきたのか軽いジョークを言えるようになってきた「ぴかぁーちゅー‼︎」「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎⁉︎⁉︎」よ…おい、ピカチュー?

 

「お前ら⁉︎驚いたフリまでして…そんなにしてわいをボロボロにしたいんかっ⁉︎⁉︎なんかわいに恨みがあんのかいなっ⁉︎」

 

「お前()じゃないこいつだこいつ。」

「٩(๑❛ᴗ❛๑)۶」

 

そんな可愛い顔しても今の行いを誤魔化すことは不可能だぞピカチュー。

 

「まぁ、いいから話を続けてくれ。」

「え…」

 

マサキは一瞬魂を抜かれたような表情を見せたが再びピカチューがビリッと頰の電気をスパークさせると小さく悲鳴をあげて口を動かしだした。

 

「まぁ、さっき言った通りわいは元ロケット団…と言うより奴らの正体に気づかず利用されとった哀れな研究者&ポケモンマニアやねんけど…奴等の正体に気づいた時、すぐにわいは奴等から逃げ出したんや…一目散にな。」

 

「ロケット団の内部にいたはずなのになんの情報も奪って来ずに情けなく本当に情けなく逃げてきたのよね。」

「おふっ⁉︎」

 

カスミの“どくばり”攻撃‼︎

効果は抜群だ‼︎

 

「ほんでまず最初に権力を持っている+単純な子供に匿ってもらうと思ったんや…大人を信用できんくなっとったからな。」

 

「権力を持っていて単純…あぁー!カスミに匿ってもらったのか」

「おいゴラ…まあ、そして私はタマムシジムのジムリーダーのエリカに連絡を入れてマサキを匿う環境を作ってもらったのよ…それがここ。なんの変哲もない一軒家だけどマサキや私やエリカ以外の誰かが無断で入ってきたら玄関の床が抜けて地下に閉じ込められる仕組みになっているのよ。だからマサキの家がひっそりと知られているのはロケット団をおびき寄せるためだったんだけど…匿い始めてはや4ヶ月そんなそぶりは一切無いわね。…餌としての価値はなかったわ。」

 

「ちょっと待て…じゃあなんでカスミは玄関でまず自分から開けに行かなかった⁉︎、それが本当ならあのまま俺が入っていったらそのまま地下に…」

「更に地下にはエリカ特製のモンジャラの巣が出来上がっているから大変な事になっていたわね。」

「おいゴラ…」

 

確信犯かこの野郎。

 

「まぁ、ほんであいつらが動くの待ってても仕方ないと思ってな、奴等の動向を探っていたらや、ロケット団の奴等着々と計画を進めていたんや。

奴らは5番道路と6番道路、そして7番道路と8番道路をそれぞれ繋げるように基地をつくっとったんや。」

 

「またそれは大胆な場所に…」

 

「恐らく現時点で奴等の最大の脅威となっているヤマブキジム・ジムリーダーのナツメをヤマブキシティごと四方から叩くためだと思うのだけど…あんたの言う通りそんな大胆な場所に作っていたのに誰にも気づかれずにほぼ完成していたのよ。

 

超能力を使用できるナツメはごく稀に起こる未来予知でその場所を特定、そしてハナダジム・ジムリーダーの私とコンピューターに詳しいマサキ、タマムシジム・ジムリーダーのエリカ、クチバシティ・ジムリーダーのマチスとナツメの4人をch…違うわね、ジムリーダー3人を中心にその基地を殲滅にかかったわ。」

 

「結果は完勝、だけど最後の最後に奴等、基地を爆発させたの…幸いみんな“ひかりのかべ”や“リフレクター”のような壁を貼れるポケモンがいたおかげで無事だったんだけど…中にあったであろう情報は殆どの爆発でチリとかしたわ。」

 

地下で大組織の基地が爆発したのに地上で何も起こらなかったと言うことは恐らく相当頑丈な作りの基地だったんだろう、ジムリーダーとはいえ街一つ挟んで繋がっている馬鹿でかい基地の全てに壁を貼れるポケモンなんて持っていないだろう…それなのに地上に影響がなかったと言うことはつまりそう言うことだ。

 

「その基地は…?」

 

「今ではそれぞれの道路を繋ぐただの地下通路よ…危険はないからもう誰でも通れるようになっているわ。」

 

「ふぅん…そして?」

 

俺がその先の情報を聞こうとするとバシッとマサキが自分の太ももを両手で叩いてよっしゃっ‼︎と叫び出す…やっぱりこいつのテンションはなんか…苦手だ。

 

「ここからがわいの見せ場や‼︎」

「あーハイハイそうですかどうでもいいから早く喋れ。」

「…わいの扱い酷ない…?」

 

ソンナコトナイヨー

 

「…わいは1人その基地のメインコンピューターにハッキングして少しだけやったけど奴等の情報を奪ってきたんや…ついでにロケット団にお願いされて作った装置…この合成マシンも奪ってきたんや。

合成マシンを何に使おうとしていたのかはわからへんかったけど…恐らく奴等の最大の目的はわいの奪った情報に入っとった。」

 

マサキは地べたに広げてあるプリント用紙を俺に渡しカスミと一緒にそれを見る。

 

まずそこに写っていたのは空、そして次に写っていたのはそれの拡大写真、

 

「火の鳥ポケモン…?」

 

「他の二枚も見てみ。」

 

マサキの言う通りに紙をめくるとそこには同じく空…それも雷雲が一面に広がっているの写真、そして次に写っているのはその拡大写真だが今度は体から炎をだし、青空をオレンジ色に変えていた炎の鳥ポケモンではなく、雷雲の間にかすかに姿を見せている黄色い鳥ポケモン…その身体にはビリビリと電気が流れている…

 

「雷の鳥ポケモン」

 

そして最後の一枚、それも他二枚と同じ構成だが写っている空は雪雲に覆われ、先程の雷の鳥ポケモンのように雲と雲の間から少し姿を現しているのではなく堂々とその美しい姿をさらしている…その身体は鮮明な画像とは程遠い拡大写真からでもわかるくらい冷気を放っている。

 

「氷の鳥ポケモン…」

 

「ファイヤー・サンダー・フリーザー

カントー地方に生息すると言われている伝説の鳥ポケモンや。」

 

「伝説の…ポケモン。」

 

「ロケット団はこの3匹を捕獲しようとしてるの⁉︎」

「そうやろな…でも流石にそれは奴らにとっても厳しい戦いになるやろう…なんせ相手は伝説のポケモン…

それにこの3匹は伝説において1匹で街を一つ滅ぼす程の力を持っていた記録がある、その力量(レベル)は言わずとも高い。」

 

「それでも奴等は必ずこの3匹を捕獲するために動いてくる…それを阻止するために戦力が必要っていうわけか…」

 

するとマサキは心配そうな顔で俺の方を見る。

 

「別に強制やない、100パー危険な戦いになる…参加したくないんやったら参加せんでも…「馬鹿なこと言うなよ」!」

 

 

 

「奴等は平気で人のポケモンを殺すような奴等なんだ…そんな奴等の手に伝説のポケモンが渡った多くのポケモンが犠牲になる…それを黙って見てるなんて真似…俺には出来ない‼︎…なっピカチュー」

「ぴっぴかちゅ‼︎d((≧□≦)」

 

こいつは親指を立ててGOODサインをしているが話の重大さを理解しているのだろうか…?

 

俺とピカチューの一瞬の戯れをみたマサキはフッと似合わない静かな笑みを浮かべると

 

「…あんたみたいなトレーナーがこの世界にあふれていたらどれだけポケモンが幸せな世界になった事やろう…いい主人を持ったなピカチュウ「ちゅーっ‼︎」あばばばばばばばばばっ⁉︎」

 

 

「ピカチュ()じゃないぞピカチュ()だ。」

 

「…そんなの殆ど変わらんやろ…⁉︎」

 

マサキは立ち上がろうとしていたその身体を電撃によって再び膝をつかされる。

喜べマサキ、ピカチューがニックネームを呼ぶ事を求める電撃を放つと言うことは気に入られた証拠だぞ!。

 

「まぁ、ええわ、そんなあん「レッドだ」…レッドにこれやるわ」

 

マサキから差し出されたのは1枚のチケットそこには

 

「サントアンヌ号…」

 

「わいのところに届いたんやけどわいはパーティーとか苦手やから代わりに言っといてくれへん?」

「俺も堅苦しいの苦手なんだけど…」

 

わざわざマサキに招待状が届いたと言うことは絶対にお友達同士でやる様な純粋な余興のパーティーじゃないに決まっている、品とか何ちゃらが絡むパーティーなんかお断りだ。

 

「面白い人がおるで…会えばいい経験になるはずや」

「?どう言うことだ?」

 

「それは乗ってからのお楽しみや。」

 

何なんだよ…

 

 

俺が『教えてくれなきゃ絶対に乗ってやんない!』と子供みたいな駄々をこねてみようと思った矢先にカスミのポケギアが着信を受ける。

 

 

そしてその内容は…

 

 

 

 

 

ハナダシティがロケット団に攻撃されていると言うものだった。

 

 

 



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