異世界魔王話 (lite-car)
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第1章 伝説を手に入れるまで。
プロローグ+ 第1章 1話 ナメントンの店
投稿していますが、「ハーメルン」でも投稿することにしました!
更新にはあまり期待しないで下さい・・・・
今日は、プロローグを含めて一気に5話を投稿します!
本文が1000文字~という事で、
一話目は、プロローグとくっつけて投稿します!
プロローグ
この世界は人間の平和なる営みのお陰で幸せにあふれていた。
しかし、人間が欲望という感情に心を満たした時、全てが変わった。
人間は争いを生み、それが大きくなり、戦争まで発展した。
その欲は何の罪も無い多くの生命を奪う事になった。
そんな中、世界の果てではその状況を高笑いしながら
見ていた者がいた。
闇の神。「魔神」だ。
魔神は人間の欲を消そうと人間を全て破壊する事を決意するのだった。
□■□■
数年後、3人の子供達が仲良く山に遊びに行った。
その内の1人は、好奇心に負けて山の奥の方へ1人で進み、迷子になった。
その奥で子供が見つけたのは、何も無い遺跡。
怖いもの知らずの子供はその遺跡の中に何も考えず踏み出してしまう。
そして、その遺跡の奥で6歳にみたない子供が見たモノをきっかけに
子供は記憶を封印されることになる。
プロローグ 閉
1話
夏の中頃のこと。エレレン王国では気温が急上昇していた。多くの人達は家に閉じこもり、【風魔法】や【氷魔法】を使って快適に過ごしていた。 そんな中、とある少年がエレレン王国まで父のために誕生日プレゼントの買い出しに来ていた。
「ハァ・・ハァ・・・」
少年は今にも倒れそうに肩で息をしながら王国内の道を歩く。夏とは言え、この年は歴史上一の暑さとなっていた。
「えっと・・・ナメントンの店は・・・」
肩で息をしながら、少年は『ナメントンの店』を探す。ナメントンの店はすごく小さな店だが、王宮から直接注文を受けるくらい有名な店だ。王が護衛の兵士を連れてナメントンの店に訪れていたのを見たのは記憶にまだ新しい。
「イジスさん!」
少年の名前を呼ぶ声が聞こえる。 後ろを振り向くと、そこにはせっかく整えた金髪の髪を乱して腕を振りながら走ってくる少年がいた。
「マラス。 よーく走れる気力が保てるねー」
エレレン王国に父の誕生日のために来た少年---イジスは間抜けな声を出し、マラスに言う。 そんなマラスはイジスをジト目で見ながら汗を拭く。
「いいじゃないですか、珍しくクラスメイトをエレレン国で見かけられたのですから」
そう、実はエレレン国でクラスメイトを見かけるのは珍しい。 特にこの時期・・は暑くなり、モンスターも最近は活発に発生しているため、村に住んでいる子供達は中々エレレン国へ出てこれないのだ。
「まあ、確かに。 それで、マラスは何でここにいるんだ?」
「はぁ・・・イジスさん、僕はエレレン国に住んでいるのですよ」
イジスの質問にマラスは溜息混じりに答える。実を言うと、イジスのこの質問はこれが初めてではなく、何回も同じ質問をしているのにイジスは質問したこと自体覚えてないのだ。
「ああ、ごめん。マラスって大商人カーテルの息子だっけ」
「そうですよ!! 何故、いつも同じ質問をしといて忘れてしまうのですか!?」
呆れ混じりに叫ぶマラス。そんなマラスの態度を他所に、イジスは先へ進もうと歩き始める。
「ごめんごめん、それでマラスはどこに行くんだ?」
「これから、ナメントンさんの店に行こうと・・・そんなイジスさんはどちらへ?」
「ああ、俺もナメントンの店だよ。 今日、親父の誕生日でよ」
「そ、そうでしたね・・・」
イジスの答えにマラスは青い顔をして、途端に変な空気が流れ始める。しかし、KYのイジスはそんな空気も無視してマラスに問う。
「どうしたんだ? 青い顔なんかして」
「え?・・あ。いや、なんでもないですよ・・・はははは」
「変な奴」
「(どちらが変なんだか。 イジスさん、忘れてるのでしょうか? イジスさんが、お父様と同じ誕生日だってこと)」
そう、実は今日はイジスの父の誕生日であって、イジス本人の誕生日でもあるのだ。 本人はまったく覚えてないようだが・・・。
そんなこんなでナメントンの店にたどり着くと、イジスとマラスは店へと入っていく。
『リン----』
店に入ると店は静まり返っており、商品はほとんど並んでいなかった。 奥の方で箱が山積みになっていて、ナメントンが見当たらない。こんな時間に店が静まり返っているのは非常に珍しく、イジスとマラスは目を白黒させた。
「いらっしゃい、何をお探しかな?」
「う、うわあ! 箱が喋った!?」
驚いていると、不気味にも箱の山積みの方から声が聞こえてきて、マラスが声に反応して大きく後退る。そして、箱の下の方から白髪の老婆が出てくる。
「失礼だねー、こんな老婆の事を驚くなんて」
「な、ナメントンさんでしたか・・・脅かさないで下さいよ!!」
「悪いね―、探し物をしておってのー。それで、何をお探しだい?」
マラスの言葉に反省しつつ、イジスとマラスが何を探しているのか箱を片付けながら問うナメントン。
「えっと、俺は・・・なんだっけ?」
「イジスさん、忘れ気味が相変わらずで・・・」
「ホッホッホ。 そんな事、儂に聞かれても分からんよ」
イジスの言葉に呆半分のマラスと面白そうにイジスを観察する老婆ナメントン。マラスの言うように、イジスは昔から忘れ気味であって、一時は「病気ではないか?」と疑われたほどである。
「えっと・・・あった、これだ。 水の結晶を頼む」
イジスはマラスから目線を逸し、ポケットの中からメモ用紙を取り出し、買いに来たものを告げる。
「僕は【火魔法】と【闇魔法】付属の双剣セットと強化ハンマーランクAをお願いします。 双剣の方は階級D級で。」
「ほいほい」
イジスとマラスの注文を聞き取ると、ナメントンはレジの奥の方へと消えていった。しばらく、時間がかかるだろうと思い、イジスは店の中を探索し始めた。
「ん?」
そして、高値で売られている不気味な顔の石像を見つける。
「懐かしい・・・・」
不意にもイジスの口から漏れたのはそんな言葉だった。しかし、これを聞き取った人はいなかった。
「イジスさん、どこですかー? ナメントンさんが水の結晶を持ってきましたよー」
しばらく、ボーっと石像を見つめているとマラスの声で意識が覚醒していく。そして、完全に意識が戻るとレジの方へと歩き始める。レジの上には水の結晶と赤い魔法文字と黒い文字で掘られた目立つ剣、謎の魔法陣が刻まれたハンマーが置かれていた。
「はいイジス、水の結晶は銀貨50枚ね。それから、マラス双剣セットとハンマー金貨1枚でいいよ」
イジスはレジの上に銀貨50入った袋をレジの上に置き、水の結晶を持ってきたカバンに慎重に入れる。しかし、マラスは何か迷っているようだ。
「えっと、ナメントンさん。双剣セットD級だけで金貨2枚だったはずですが・・・」
「いいよ。カーテル坊にはお世話になっているからのー」
「しかし、さすがに5割以上の割引きは・・・」
「はいはい、年上の親切は素直に受ける!金貨一枚だよ!」
マラスの疑問に親切に答えながらも納得しないマラスに双剣を押し付けるナメントン。こう見ていると、なかなか面白い光景だ。
「あ、ありがとうございます!」
マラスは喜んでいながらも、負けた顔をして金貨一枚をレジの上に置くと双剣を包みに入れてイジスと店を出る。
「またいつでもおいでよー」
ナメントンの声を後ろに、イジスとマラスは来た道を戻り始める。
「さて、また夜な。絶対、親父のパーティーに来てくれよ!ご馳走を用意してるから!」
「は、はい!また夜に・・・ハハハ・・・で、ではー」
イジスの言葉に呆れを誤魔化しながら手を振るマラスに手を軽く振り返し、イジスはまた道を歩き始める。そして、エレレン国の門をくぐり抜け村へ帰るのだった。
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第1章 2話 変異モンスター
イジスは家に到着すると、すぐに父へ贈るプレゼントを倉庫の奥に押し込み、父・の誕生日パーティの準備を始めた。
「ふふ~ん♪」
楽しそうに鼻歌を歌いながらパーティの準備を進めるイジス。しかし、平和はそこまで。家のドアが勢い良く開けられた。
「大変や!怪物の大群が草原から押し寄せてきよる!避難するで!」
「なんですって!?」
勢い良くドアを開けてそんな事を言ったのは、イジスと同じ学校のファバロである。ファバロは身長145cmくらいの小柄な少年だ。黒い髪の毛と黒い目が良く目立つ。
そんなファバロの言葉を耳にしたイジスの母のマノブはあっという間に避難の準備を終わらせる。
「イジス!行くわよ!」
「分かった!」
イジスはドア付近に置いてある緊急用の長剣を手にすると、マノブとファバロの後を追いかけていく。
「なんだこれ・・・」
家から出ると、怪物が目に飛び込んできた。
村にはすでに変異・・したモンスターが入り込んでいて、一部の家が崩壊している。近くにはモンスターと戦っている兵士も多く見える。しかし、兵士でも変異したモンスター相手だと中々手強いようだ。中には、すでに片腕がちぎれそうになっていて大量の血を流していたり、すでに手遅れの兵士も見える。
イジスはその光景を目にすると決心したのか、持っていた長剣を強く握りしめる。
「母さん、俺行ってくる! さすがに見過ごせねえ!」
イジスはそう母に言うと、母の返答も待たないでモンスターが襲ってきていると言う草原の方へかけ始める。
「イジス!!」
背後からは母の声が聞こえたが、イジスは母の声をスルーして長剣で一番近くに居たモンスターを薙ぎ払う。
『GRAAH!』
モンスターは痛みに悲鳴を上げると、バランスを素早く整える。モンスターの見た目は比較的オオカミに似ているが、サソリの尻尾をしていてクビが少し長い。変異したモンスターとは言え、モンスターはこんなに早く変異---- 進化はしないのだ。
しかし、今はそんな事を考えている暇はない。イジスは、剣の実力こそ高い物の実戦はあまり経験が無いのだ。今は何よりも、目の前の敵を倒してより多くの命を助ける事を目的とした方が良い。
イジスは、モンスターの噛み攻撃をギリギリ避けると素早く腰を回転させてモンスターを横に斬る。
『GAAAH!』
再度悲鳴を上げるモンスターだが、イジスは攻撃の手を緩めずモンスターの横に足を踏み出すと、素早く【火魔法】の魔法剣の詠唱をする。
「我が剣の火の力を働かす! 《フレイムソード》!」
『GRAAAAAH---』
モンスターは最後の悲鳴を上げるとそのままその場に倒れる。イジスはモンスターが倒れるのを確認すると、草原の方へと振り向く。そこには、先ほどいた兵士達が、先ほどまでいたモンスターを倒し、他のモンスターより二回り大きいモンスターと戦っている姿が見えた。
「大きい・・・」
イジスが言葉を口から漏らした直後、そのモンスターはどこから出したのか巨大な手で兵士達を横に吹き飛ばす。そして、モンスターの周りに黒い空間がいくつか現れたかと思うと、その中からおよそ10体のモンスターが出てくる。
「あれが親玉か!!」
イジスは声を上げると力いっぱいに地面を踏み、モンスターの方へ駆けていく。
先ほど飛ばされた兵士達も立ち上がり、モンスターの方へ駆けていく。しかし、先ほどの空間から出てきたモンスター達で手が一杯のようだ。
「お、おい!坊主!逃げるんだ!馬鹿な真似はよせ!!!!」
イジスの姿を見た兵士がイジスに叫ぶが、イジスは兵士の言葉も無視するとさらに足に力を入れて変異したモンスターのボスへとジャンプする。そして、長剣を空中で横に構えて《力魔法》の魔法剣を詠唱し始める。
「我が剣の秘められた力を解放す! 《パワーソード》!」
イジスが詠唱すると、横に構えていた長剣の周りに赤色のオーラが現れるとそのオーラが剣に吸い込まれる。そして、力任せにイジスは長剣をモンスターに突き刺す。
『GUUAAAAGHHHHH!!!』
「うわっ!!」
しかし、実力が足りないようだ、モンスターは悲鳴を上げながらもイジスを剣ごと吹き飛ばす。イジスは、吹き飛ばされると空中で姿勢を整えて見事着地をする。
「手強いな・・・」
イジスは、弱気の言葉を口にすると敵に向かって《鑑定》と念じる。実は、イジスは小さい頃から戦闘術が得意で、魔法も覚えが早いのだ。そして、《鑑定》は気づいたら覚えていたのだ。
〈敵を鑑定しますか? YES/NO 〉
YESと念じると、すぐに鑑定結果が出てくる。
---------------------------------------------
変異種 マスターウルフ
Lv23
状態異常あり
【闇魔法】デビルトランスフォーム 進行中 89%完了 追加効果あり
└攻撃力2倍 防御力2倍 エネミーデッド (発動率1%)
闇の神の祝福 追加効果あり
└【闇魔法】メイクボディー 【闇魔法】キルゾーン
└【闇魔法】デビルトランスフォーム
称号
闇の神に誓ったモノ
仲間を犠牲にするモノ
---------------------------------------------
〈通常ステータスが表示出来ませんでした〉
「なんだこれ!?」
こんなステータスを初めてみたイジスは、その場で驚きを言葉に表わしてしまう。何故なら、こんなステータスのモンスターは初めてみたからである。
「やばい、はやく倒さなきゃ一種の魔王になるぞあれ!」
イジスはその場を今度こそ全力で踏み出し、自分でも驚くほどの早さでモンスターに近づく。【限界突破】だ。
限界突破は死ぬ可能性を身近に感じると戦闘術を身につけている者なら誰でも自然発生するものだ。
しかし、驚いている暇などない。目の前にいるモンスターはここで消さなければいけないのだから。
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第1章 3話 死闘と伝説
「ぶはっ!」
イジスが【限界突破】を使ってから約半時間。【限界突破】は10分前に終了してしまい、イジスは体のところどころに血を流していた。マスターウルフは倒せず、魔王化してしまい先ほどより手ごわくなってしまった。ちなみに、現在のマスターウルフのステータスは以下の通りだ。
---------------------------------------------
魔王ダークマスターウルフ
Lv50←Lv23
スキル
【闇魔法】全般Lv6
【力魔法】全般Lv5
【呪魔法】全般Lv3
闇の神の祝福 追加効果あり
└攻撃力4倍 防御力4倍 魔法全般攻撃力90%カット
└エネミーデッド(発動率5%)
称号
闇の神に誓ったモノ
仲間を犠牲にするモノ
闇の神の部下となったモノ(NEW)
---------------------------------------------
先ほどより確実に強くなっており、厄介な事に【闇魔法】をほとんど覚えてしまった。それから、自分を強くする【力魔法】や相手を戦闘不能にすることも出来る【呪魔法】なども増えている。攻撃力は4倍になっていて一回一回の攻撃が凄く重い。しかも防御力が4倍に多くなっているから、頭を切り落とす勢いで剣を突いてもかすり傷程度しか負わせる事ができない。魔法は得意な【火魔法】を試したが、ほとんど無効だった。兵士は全員死んでしまい、今なんとか生き残って戦っているのはイジスのみだ。
「ガハっ!」
イジスは吹っと飛ばされ、背後にあった家の壁に背中をぶつけてしまう。言うまでもないが、イジスはボロボロだ。
「クソッ!歯がたたない!」
イジスは撤退を考えるが、背後にはまだ逃げ遅れている人たちや家の下敷きになっていて逃げ出せない何人もの人たちがいるのだ。ここで逃げて、その人達を見殺しにするわけにはいかない。
「どうすれば--- グワッ!!」
急いで思考を巡らせようとするも、相手にしているモンスター ---魔王ウルフは容赦無いようだ。イジスが倒す方法を探ろうとするも魔王ウルフによる巨大な手にまた吹っ飛ばされ、違う壁に当たってしまい、多量の血を吐き出してしまう。
「ウウウゥぅ・・・」
今の一撃は今までの中で一番強く、一気に体力が失せてしまった。自分の体力がどれくらい残っているか知りたいところだが、【鑑定】には短点があり、自分が鑑定できないのだ。
「ここで、終わりか・・・・」
イジスはまだ戦いたいが体が無理をしたからか、思うように反応してくれない。イジスは、少しずつ静かに近づいてくる魔王ウルフを見やる。魔王ウルフはイジスの前で止まると、片腕を大きく上げる。
「これで終わりか---」
イジスは、魔王ウルフが片腕を下げるところで目を閉じて意識を失った。
□■□■
(マラス視点)
エレレン王国の避難場所でマラスはイジスの手当をしていた。マラスは戦場に行くと、巨大なモンスターに叩き潰されそうになっているイジスを発見して、イジスを素早く【光魔法】の【転移】で助けたのだ。
目の前のベッドで横になっている少年---イジスは、激しい戦いを繰り広げたのが目に見えるかのように体のあちこちを傷つけている。片足は曲がってはいけない所に曲がっていたり、上半の所々に紫色のアザが出来ていたり、口から吐き出したのだろう血の跡が生々しく残っている。
「まったく、無茶するんですから・・・」
マラスはそう呟くと、目の前の少年の胸部に手をかざすと【治療魔法】の【ディア】を唱える。
「女神の優しさをここに示す 〈ディア〉!」
唱えると、イジスの傷が少しだけ閉ざされていく。しかし、やはり意識は戻らないようだ。
「いつも無茶をしますよね・・・・まあ、これがあれば次回は何とかなるでしょうか・・・」
マラスはそう言うと、ナメントンさん(・・)の店で買った【火魔法】と【闇魔法】付属の双剣をイジスの手元に置く。
「にしても、あの巨大モンスターの近くにこんな物が落ちているなんて・・・」
マラスはまた声を漏らすと、ポケットの中から小さい茶色の紙を取りさす。紙には、真ん中にこの大陸---デズワルス大陸の地図が書かれており、紙の端にはそれぞれ【炎魔法】【氷魔法】【嵐魔法】【地魔法】を表す4つの魔法陣が描かれている。そして、大陸の端に赤い罰で記された場所がある。
「裏は何も・・・っ!?」
紙の裏をみてみると、そこには4人の名前が書かれていた。その名前は「【炎魔法】イジス。【氷魔法】リシア。【嵐魔法】マラス。【地魔法】テラト」と書かれている。
「さっきまでは、書かれていなかったのに・・・」
そう、先ほどこの紙を拾った時裏には何も(・・)書かれていなかった。それが今こうして書き足されるとなると---
「これは、人類が危機になった時に現れると言う・・・伝説の武具・・の地図? いや、でもまだそうと決まったでは・・・」
地図の裏側をボーっと見ながらあれこれ考えてると、不意にも紙がパーっと光る字を表し、字が光終えるとそこには「この4つの武具を『マスターマニア』という」と書き足されていた。
「大変な物を拾ってしまったみたいですね・・・」
そして、マラスはそう呟いてしまう。偶然とはいえ、今日はついていないようだと思うマラス。
「重大な事とはいえ、これは後にするべき。今はイジスさんの回復ですね」
そう言い、またイジスの胸部に手をかざすマラス。そして、また【治療魔法】の【ディア】を唱える。
「女神の優しさをここに示す 〈ディア〉!」
そして、今度は閉じかけていた傷も全て閉じられて見事イジスの完治が終わった。だが、意識を取り戻すかどうかの問題だ。
「ううぅぅ・・・」
「イジスさん!!」
しかし、心配は無用のようだ。傷が閉じると、直後にイジスは意識を取り戻す。
イジスは部屋を軽く見回すと納得したのか、縦に首を振る。
「ここ、天国の訪問室かな?」
「違うに決まってます!!!」
イジスの途端な言葉にマラスは一瞬意味が分からなかったのか、顔を歪ませるがすぐに言葉の意味が分かり、ツッコミを入れる。
「あれ?そうなのか? じゃあ、ここは?」
マラスの言葉を聞いて、納得しないイジスに呆れ気味の視線を向けるとイジスは「何故怒っているんだ?」とでも言いたげに顔色を変える。
「はぁ・・・イジスさんのことですから、これくらいは予想してましたよ・・」
それだけ言ってマラスはさっきまで手に持っていた茶色の紙をポケットから取り出し、イジスに見せる。
「なんだこれ?」
「多分・・・伝説の地図だと思います・・・」
イジスの疑問にマラスは普通に答え、その紙を強引にイジスに押し付けるとマラスは部屋を出て行く。
「さて、どうしたもんか・・・ ここまでを整理するかな・・」
1人、部屋に残されたイジスはそう呟いたのだった。
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第1章 4話 イジス回想:謎の場所にて
イジスが魔王ウルフに止めの一撃を食らう事を覚悟して目を閉じた時だった。時が止まり、周りの動きが無くなる。不思議に思ったイジスは目を開けてギョッとする。魔王ウルフの腕が頭の上1cmの所で止まっていたのだ。しかし、それだけではない。イジスは光の輪に包まれており、その光の輪に少しずつだが確かに光が集まっている。
「え・・?---う、うわぁ!---」
そして、直後。光の輪が眩しい光に変わり、イジスは空・へ飛ばされた。
□■□■
「ん、ん・・・」
イジスが目を覚ましたのは何もなく、ただ薄暗い遺跡・・の中のような場所だった。壁に変な模様が幾つも彫られていて、【魔法文字】と呼ばれる文字も見える。
「なんだここ・・・?」
イジスはまだクラクラして、痛い頭を抑えつつも何とか上半を起こして周りの状況を確認してみる。
「・・・遺跡?」
今度は下半身も起こし、不思議な事に傷一つ無・い体で一歩前進しようとする。
〈ここは未探検エリアです。エリア情報を確認しますか? YES/NO〉
一歩前進しようとした所で【鑑定】の念話が聞こえてくる。イジスは考えもしないで心の中でYESと念じてみるが---
〈ここは探知不可能エリアです。探知可能エリアに移動してから【鑑定】と念じて下さい。〉
と、また念話が聞こえてくる。
「やっぱりか・・・さて、どうしたものか」
イジスはそうつぶやき、先ほども踏みだそうとした一歩を踏み出して奥に見えるドアの方へと歩き出す。
「にしても、何も無いところだなー・・・」
そして、ドアの前にたどり着いた。ドアには4つの剣の絵が上から下まで並んでいて、剣の絵の横にはそれぞれの【魔法】を表す【魔法陣】が描かれている。
「【炎魔法】、【氷魔法】、【嵐魔法】、【地魔法】だな。ま、入ってみるか」
見知れない場所の中とは言え、ドアはこのドア一つだけであって、他に出る手段が見つからない。だから、『ドアを開ける』という手段しか無いのだ。
『ぎいいぃぃ』
ドアを開けてみると、もう一つの部屋に繋がっており、他のドアが見当たらない。部屋の真ん中辺りには赤に光っている剣がふわあっと浮かんでいる。イジスはその剣に近づき、手を伸ばしてみる。
『よく、ここまで来たな。選ばれし者よ』
剣に手を伸ばしてみると、そんな声が聞こえてきた。声に出さず、その声の正体を探ってみるがどこにも誰も見当たらない。「誰だ!?」と驚きつつも周りを見渡していると、剣の方からまた声が聞こえてきた。
『声の正体は我だ。我は炎の力を司る剣『プラチナム』と言う。そなたは我を使うマスターとして選ばれたのだ』
おそるおそる顔を剣の方に向けると、赤に光っている剣の光が少し強くなって声をかけてくる。実にも不思議な光景に驚くイジス。腰を抜かしていて、何もいえないのだ。
『驚いていても構わないが、そなたは我を使うことになる。よく、話を聞くが良いぞ』
喋る剣---プラチナムにそう言われると、イジスはこくこくと2回頷く。そして、イジスの反応を確認したかのようにプラチナムはまた語り始めた。
『先ほども言ったが、我は炎の力を司る剣『プラチナム』というモノだ。人間でもなく、魔物でもない。神だけに作られた神器だ。そして、我の他にも3の剣が存在する。氷の力を司る『ウェスピア』。嵐の力を司る『アンムード』。そして、地の力を司る『テイラー』だ。我はこの4の剣の代表だ。そして、我はそなたを呼び出して、ここで語りかけているが・・・・そなたは、我を持ち出すことは出来ない。』
あまりにも、一方的な会話にイジスは腰を抜かしたままプラチナムが何を言おうとしているか考えるが、まったくさっぱり分からない。
『ここまでは良いとして、重要なのはここからだ。』
プラチナムの言葉にイジスはまた頷いて、今までの話を切り捨てる。
『そなたの友達に神からの地図が届いている筈だ。そなたが目覚めた時、そなたの友達がその地図を渡してくれよう。』
「・・・わ、分かった。それで一体どうすればよいんだ?」
『選ばれし4人(イジスを含む)を地図が示す場所へ連れてくるのだ。そうすれば、彼らに新しき力を授けるとしよう。』
なんとか驚きから立ち直ったイジスは質問をしてみる。そして、丁寧に答えてくれたプラチナムに感謝をしつつも、イジスの意識が遠くなっていく。
『そろそろ時間だな。良いか、そなたは生き返る。そして、ここにまた来るのだ。連れてくる者の名前は地図の裏に書いてある筈だ。待っているぞ』
そのプラチナムの声を最後にイジスは気を失い、今に至るのだ。
□■□■
全てを思い出し、マラスに渡された紙により夢ではなかったことを認めざるを得なくなる。
プラチナム・・・・『炎の力を司る剣』と言っていたが、精霊のようなモノだろうか。そういえば、他にも剣が3本あると言っていた。とにかく、今後の事が決まった。それに、『選ばれし者』と言われたが『何に選ばれた』のかは聞いていない。全てを説明してもらうためにも行く必要がありそうだ。
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第1章 5話 貴族のお嬢様テラトが見た
本日、最後の投稿です!
「起きて下さいませ。朝でございますよ」
毎日聞くメイドの声で夢から目覚める。目の前にはボクの顔を覗き込んでいる人が見える。良い夢を見ていたのに・・・
「おはようございます、レザ」
意識を覚醒させると、背中の位置を少し上げて目の前のメイドに挨拶をする。
「おはようございます、お嬢様。朝食の方はすでに準備が出来ております。ご主人様は玄関で待って下さっています。」
「お父様が・・・?」
まだ意識がはっきりしていなくて、聞き返してしまう。そういえば、今日はお父様が戦闘会議の見学をさせてくださるのでしたっけ・・・?
今は何時でしょう?
く、9時半!?
まずいですわ! 遅刻してしまいますっ!!
「お嬢様。そんなに焦らないで下さい。外出の準備はすでに済ませております。本日着る服はそちらのテーブルの上に用意しておりますよ」
「ご、ごめんなさい・・・・。今日のことをすっかり忘れてしまいまして・・・」
言い訳を考えようとしてみるけど、何も思いつきません。早くしなければお父様に叱られてしまいます!
着替えようと、ベッドから思いっきり飛び出す。ベッドにはまだ『寝る』という未練を残している気がしますが、今は急がなければまずいです。
ベッドから起き上がると、着替えが置いてあるというテーブルの方へ移動する。メイドの方は、ボクが起きたのを確認したので部屋を出て行った。
今日は戦闘会議の見学だけであって、晩餐会があるわけでは無いのでドレスなどではなく、少し動きやすい服装のようです。
服を着替え、部屋から出て早く階段を駆け下りる。
「お嬢様、そんなに慌てないでも時間はまだありますよ」
レザに注意されてしまう。今の私はそんなに慌てているのでしょうか・・?今の私は、どっちかというと始めて軍の人たちの行いを詳しく見ることが出来て嬉しいのかもしれません。
「ごめんなさい。でも、前からこの日を待ってて、すごく楽しみですの。軍の方たちがどういった行いをして、ボク達を助けてくださるのか、見せていただけるのがすごく嬉しいの。」
うそなんて、一言も言ってませんわ。でも、朝食はどうしましょう。お父様は、すごく前から待って下さっている筈なので、のんきに朝食なんて食べてられませんわ。
「お嬢様、朝食は時間がかかりますので、お弁当を用意しました。馬車の中で食べて行ってください」
と、ボクの考えを読み取ったのかレザがそう言ってお弁当箱を渡してくれた。
「ありがとう。では、行ってきますね」
「行ってらっしゃいませ」
玄関に近づき、挨拶をして玄関をでる。玄関前にはお父様の馬車が止まっていて、お父様が馬車の中で何かの本を読んでいるのが見える。
ボクは、馬車に近づいて申し訳そうにお父様に挨拶をする。
「おはようございます。お父様」
ボクの声が聞こえたお父様は本を閉じてこちらを見る。
「おはよう、テラト。時間がかかったね・・・」
□■□■
あの後、お父様は読書をやめて御者の方に馬車の出発を命じました。
今、ボク達はホルケンという小さな村の近くの道を通ってます。この道はマンプマイ王国とエレレン王国のどちらにも続いていて、多く利用されているようです。馬車の左右に多くの商人の方が歩いておられます。
お父様はボクの隣で何やら、難しそうな本を読んで顔を引き攣っています。本の題名は・・・『戦場によく使われる作戦及び、計算法』・・・?
本の題名だけを見てボクは『絶対に読みたくない』と本気で思いました。
と、馬車が進んでいると周りの人たちが叫びながら前へ走って行くのが見えます。何が起こったのでしょう??
「何があった?」
お父様が、叫びのせいで本に集中出来なくなったようで御者の方に訪ねました。御者の方はお父様の声を聞いても何も問い返して来ません。
お父様は頭に血が登ったのか、立って御者の方に近づきました。
「おい、だから----」
お父様が外に顔を出して言葉を止めました。どうやら、本当に驚くべき状況のようです。先ほどまで叫びながら走っていた人たちはもうすでに、見えなくなり、国道を進んでいるのはボク達だけのようです。
「ご主人様、大変な事態のようです。どうか、席について何かに掴まって下さい。速度を上げます」
御者の方は、しばらくしてから口を開きました。言葉を発声するのに時間をかけ過ぎた御者の方をお父さまを怒るかと思いましたが、お父様は御者の方の言う通りに席につきました。改めて顔を見ると真っ青です。
「お父様、いったい何が?」
「いいか、テラト。絶対に外に顔を出すな。それから、耳を塞げ」
お父様は、ボクに何を見たのか教えてくれませんでしたが、『見るな』『聞くな』と言ってくるくらいですから、よっぽどの事が起こっているのでしょうか。
ボクは、お父様の言葉に従い耳を塞いで馬車の窓から離れました。直後、馬車は急に速度を上げて走り始めました。馬車は大きく揺れていますが、早く走っているので仕方がないでしょう。
「お父様、何を見たのですか?」
耳を塞ぎながらも、放心状態のお父様に問いかけました。が、答えてくれません。
「助けてくれー!!」 『グシャ! ベチャベチャ』
「この、化け物!! グァアアアアアア!!!!」『グチュっ ベチャ』
耳を塞いでる筈なのに、遠くの音が正確に聞こえてしまいます。どうやら、モンスターが出現したようです。でも、兵士の声を聞いている限り、心配になってきます。そもそも、兵士の悲鳴の後に聞こえる水っぽい音は何でしょう・・・?
ボクは、恐る恐る窓から外を見てみました。そこには、多くの建物は倒れていて、火があがっています。原因であろうモンスターの方に目を向けると、多くの兵士が吹き飛ばされる所を見てしまいました。飛ばされた兵士は全員、意識を失ってしまって動きません。
「うりゃあああ!!!」
そんな中、すごい速度でモンスターに突っ込んでいく小さい影が見えました。その影は、モンスターに剣を振るうと、モンスターの方が飛ばされます。
あれは・・?
目を凝らしてよく見ると、兵士でもなんでもなく、ただの少年が長剣を振ってました。驚く他ないですが、モンスターの方は軽・く飛ばされただけで、反撃をされると少年の方が飛ばされてしまいました。
100メートルくらい飛ばされた少年は壁に背中をぶつけると、動けなくなってしまいました。まだ息をしているのが見えるので、死んでいないはずです。モンスターはその少年に近づくと触手のような太い片腕を上げます。
まさか、少年を潰すつもり!?
「逃げて!!!」
ボクは窓から体上半を出して力一杯に声を出しますが、聞こえないようです。悲劇を見ないように目を瞑ろうとすると---
「き、消えた!?」
少年が光に包まれて消えました。
モンスターは腕を振り下ろし、少年の背後にあった壁が崩壊。
そして突如、街のあちらこちらから光が空に向かって飛んでいきます!あれは、いったい・・・?
滅んだ家の下からも光が出てきては空に向かって飛んでいきます。
まさか・・・転移魔法!? でも、そんな術者は100年に1度生まれるか否かの問題ですよ!?
王国についたら、いろいろ大変な事になりそうです。
これは、楽しい見学どころじゃないですっ!!
今日は、ここまでです・・・
更新にはまったく期待しないで欲しいです・・・
学生である事があって、忙しいのです!
脱字や誤字があれば、是非感想までお願いします!
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