【完結】遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~ (不知火新夜)
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キャラクター紹介

◎ランサーズ

正式名称『LanceDefenceSoldiers』、アカデミアの侵略に対抗すべく、LDSが中心となって設立された私兵組織。

代表は、最高指揮官である遊矢と、最高顧問である零児のツートップ体制(零児は「鎌倉幕府における将軍(遊矢)と執権(零児)の様な物」としている)。

現在、シンクロ次元と同盟を結ぶべく潜入し成功、次なる作戦に向けて遊矢達はエクシーズ次元、フォースハウンドと第4部隊はアカデミアに潜入している。

 

(さかき)遊矢(ゆうや)/ユシウス

今作の主人公で、ランサーズ最高指揮官。

元々はOCGプレイヤー『勅使河原(てしがわら)遊士(ゆうし)』だったが、ある日突然の死を遂げてしまう。しかし遊戯王GXの世界に十代として転生、その後も遊戯王5D'sの世界に遊星、ZEXALの世界に遊馬、そしてARC-Vの世界に遊矢、という様に死を遂げる度に遊戯王の世界の、主人公キャラへの転生を続けていき、それまでに得た特殊能力やカードプールを受け継いでいった(が、遊星時代に起こった『ゼロ・リバース』のトラウマも受け継いでしまっている他、300年余りの人生の影響か倫理観などが吹っ飛んでいる)。

OCG仕込み且つこれまでの人生で積み重ねた経験を基にした構築とプレイングで積み上げた実績と、小学生時代に舞網チャンピオンシップ・ジュニアクラスを3連覇、中学生となった1年前に舞網チャンピオンシップ・ジュニアユースクラスで優勝した際に付いた『完全決闘者(パーフェクト・デュエリスト)』の異名、そして3年前に失踪した父の代打として、1話にてアクションデュエルの現役チャンピオン、ストロング石島からの挑戦を受け、その場でペンデュラム召喚を披露、これに勝利する。

これが切っ掛けで様々な騒動に巻き込まれる中、4つの次元の存在と、アカデミアによる各次元への侵略を零児から聞き、ランサーズの最高指揮官に就任する事を求められて快諾、その後自らの過去を暴露、それによって思い詰めていた柚子に告白し、受け入れられた。

舞網チャンピオンシップ・ジュニアユースでは順調に勝ち進む一方、ARC-Vメンバーと共にジュニアユースクラス及びジュニアクラスに出場しているデュエリストからランサーズ候補生の選出を行い、結果として選んだメンバーの中でアカデミアに囚われた素良、遊香に殺されたデニスを除く全員が加入した。

ランサーズ発足後、潜入したシンクロ次元では、英雄として語られている不動遊星として振る舞った事で行政評議会から協力的な回答を引き出す事に成功、その後のアカデミアとの戦いでは『アンドバリの指輪』作戦によってアカデミア側を混乱状態に陥れたのもあって大勝利を収めた。

その後エクシーズ次元に潜入、アカデミア派遣軍の総司令官であるエドや、助っ人として送り込まれていたタイラー姉妹を立て続けに破る。

実はその(遊矢としての)正体は『覇王龍ズァーク』の欠片で、エドとの再戦の際にその意志に呑み込まれそうになるも逆に呑み込み、消化に成功した。

使用するデッキは、当初は計10個(うち3つは、とある理由から封印している)で、アカデミアとの戦いに向けて新たに2個構築したが、シンクロ次元にてサムから預かった『調律の魔術師』を活かす為に更に2個、そしてとある理由から2個、新たに構築した。

【HERO's】

【ウォリアー】

【オノマトホープ】

【オッドアイズ】

EM(エンタメイト)

【ユベル】

完全決闘(パーフェクト・デュエル)

【マテリアル1キル】

【ネオス】

Em(エンタメイジ)

【魔術師】

【次元結集】

【スターダスト】

【三幻魔】(封印していたデッキの1つ)

【聖刻ツィオルキン】(封印していたデッキの1つ)

【バリアン】(封印していたデッキの1つ)

 

ユベル

遊矢の相棒兼恋人で、モンスターカード『ユベル』の精霊。

実は遊士だった頃に使用していた同名カードの精霊で、GXに登場するユベルとは全く関係ない(容貌も海外版のそれで、遊矢曰く『デビルマンレディが更に悪魔っぽくなった感じ』)。

遊士の突然の死を目の当たりにして悲しみに暮れ、それを哀れに思った神に遊士の転生を懇願、遊士の死が世界にとって予定外だった事もあって神が快諾した事で、この物語は始まりを告げた。

 

アストラル

遊矢の相棒で、遊馬時代からの遊矢の半身と言える存在。こっちは(ほぼ)原作通り。

 

赤馬(あかば)零児(れいじ)

ランサーズ最高顧問。LDSの経営母体であるレオ・コーポレーションの社長で、LDSの最高責任者も務めている。

遊矢がペンデュラム召喚を披露して以降、内外で起こる騒動に自ら足を踏み入れて行く一方で、かねてより練っていたランサーズの構想を立ち上げる決意をし、遊矢に最高指揮官就任を打診して快諾された。

父であり先代レオ・コーポレーション社長で、アカデミアのトップである『プロフェッサー』こと赤馬(あかば)零王(れお)に関しては、尊敬する気は0で、むしろ憤怒の感情を抱いている。

使用するデッキは【DD】。

 

 

ARC-V(アーク・ファイブ)

最高指揮官である遊矢が隊長を兼務している、ランサーズの精鋭部隊。

数年前から遊矢の指導を受けて来た5人で構成された『伝家の宝刀』と目される部隊だが、一方でアカデミアにとって重要な存在らしい柚子を保護する役目も併せ持っている。

 

(ひいらぎ)柚子(ゆず)

今作のヒロイン。

遊矢の指導をずっと受けていた影響で、物語開始以前から有力選手として騒がれる程の実力を誇り(また、既に融合召喚を修得していた)、LDSとの3番勝負の2番手として真澄とデュエルした際も、原作とは逆に1ダメージも受けずに圧倒した。

24話にて当麻達と共にARC-Vへの加入を打診され受け入れるが、その際に遊矢の過去を聞き、自分が遊矢の側に居て良いのかと思い悩むも、当の遊矢からの告白もあって受け入れられた。

その後夢の世界で、ユベルと、過去の遊矢の恋人であった3人とのデュエルを通じて遊矢を託され、エクシーズ次元ではその遊矢とのタッグデュエルでタイラー姉妹を圧倒する。

実はその正体は覇王龍ズァークを封印したデュエリスト、レイの欠片で、遊矢がズァークを呑み込んで消化した事からレイへと統合、それに伴い消滅の危機に瀕していたが遊矢の尽力で消滅する事無くレイは蘇った。

使用するデッキは、当初は【幻奏】のみだったが、シンクロ次元潜入後に入手した【堕天使】も使う様になる。

 

冴木(さえき)当麻(とうま)

遊矢の親友。イメージモデルは、とあるシリーズの上条当麻。

同じ時期に遊勝塾に加入した一行とは口論が絶えず、その度にデュエルを行ったり、イメージモデルさながらの不幸な目にあったりするのがお約束となっている。

学力の低さを露呈する場面が多い一方で「デュエルの実力と学力は別」と公言する通りその実力は高い。

LDSとの3番勝負では3番手で出場する予定だったがその前に2連勝した為に出番なしに終わる…筈だったが、刃の希望で急遽行われたエキシビションマッチの1回戦に出場、刃の行動を次々に妨害した末に、1ダメージも受けずに圧倒した。

使用するデッキは【PSYフレーム】。

 

上村(うえむら)一行(いっこう)

遊矢の親友。イメージモデルは、とあるシリーズの一方通行(アクセラレータ)

ガラの悪い口調と喧嘩っ早い気性に反して、プレイングは正確無比(時には演出と称して態とプレイングミスをする事も)で、その実力は遊矢にも引けを取らない。

北斗とのデュエルでは、中の人ネタもあって色々と因縁を付けていたが、1戦目(LDSとの三番勝負)と2戦目(舞網チャンピオンシップ。どちらも北斗の使用デッキは『セイクリッド』)では圧倒するも、3戦目(北斗の加入試験。北斗の使用デッキは『超量』)では惨敗を喫した。

使用するデッキは計2個。

【ヴェルズ】

【インヴェルズ】

 

権現坂(ごんげんざか)(のぼる)

遊矢の幼馴染。

所属は他のARC-Vメンバーと違って遊勝塾では無く、権現坂道場(跡取り)だが、一方で遊矢の指導をずっと受けて来た影響で物語開始以前から有力選手として騒がれる程の実力を付けた(また、既にシンクロ召喚を修得していた)。

使用するデッキは【超重武者】。

 

エレン・アヴェニール

遊矢の義弟。イメージモデルは、進撃の巨人のエレン・イェーガー(幼少期)。

孤児だった幼少期に遊矢のデュエルに感銘を受けて弟子入りを志願、榊家に引き取られる。

その後遊矢の指導をずっと受け、周囲から『完全決闘者の一番弟子』と呼ばれる様になり、自らも公言している。

今年度の舞網チャンピオンシップ・ジュニアクラスでは順調に勝ち上がり、準々決勝ではタツヤ、準決勝では零羅、そして決勝ではアユに勝利し、2連覇を果たした。

フレンドシップカップへの出場メンバーの1人で、前夜祭でクロウとデュエルするも、後攻1ターンキルで敗北してしまう。

使用するデッキは計4個。

【シャドール】

【アーティファクト】

【レッドアイズ】

【幻獣機】

 

 

V-CRAN(ファイブ・クラン)

最高顧問である零児が隊長を兼務している、ランサーズの特殊部隊。

忍者の末裔である風魔兄弟や、サイコデュエリストの様な力を持つ遊香等、特殊技能を有したメンバーが名を連ねる一方、一方でアカデミアにとって重要な存在らしいセレナを保護する役目も併せ持っている。

シンクロ次元潜入後に再編、フォースハウンドと分離した事で部隊としては活動休止状態に入っていたが、素良達の加入により活動再開した。

 

セレナ

デュエルアカデミアに所属していたデュエリストで『融合次元の柚子』。

とある理由からずっと軟禁状態だったが、4章前後で脱出に成功、スタンダード次元にバレット、一美と共に侵入し、北斗にデュエルを挑むも、遊香に襲撃され、バレットの犠牲もあって難を逃れ、零児に保護される。

その後、アカデミアによる侵略の真相を知りアカデミアに反旗を翻し、一美と共にランサーズに加入する。

フレンドシップカップへの出場メンバーの1人。

実はその正体は覇王龍ズァークを封印したデュエリスト、レイの欠片で、遊矢がズァークを呑み込んで消化した事からレイへと統合、それに伴い消滅の危機に瀕していたが遊矢の尽力で消滅する事無くレイは蘇った。

使用するデッキは【月光(ムーンライト)】。

 

紫雲院(しうんいん)素良(そら)

7話にて新たに加入した遊勝塾生。

実はデュエルアカデミア所属のデュエリストで、スパイ活動の命を受けて侵入するも、エンタメデュエルに目覚めた事が切っ掛けで裏切る。

その咎を受けて牢に入れられた後洗脳を施され、ユーリにつき従っていたが、遊矢によって救い出され、ランサーズに正式加入した。

使用するデッキは【ファーニマル】。

 

マージョリー・アトラス

シティに突如として現れたD―ホイーラー。イメージモデルは灼眼のシャナの、マージョリー・ドー。

ジャックとは同じファミリーネームの様だが、本人曰く面識は無いとの事。

その正体はアカデミアに属していた『元』デュエル戦士、だがカードの精霊『フォーゼ』との出会いが切っ掛けで離反、シンクロ次元へと転移し、フレンドシップカップに出場するも1回戦で雪乃に敗れ、その後遊矢のスカウトを受けてランサーズに加入した。

使用するデッキは【メタルフォーゼ】。

 

葛西(かさい)月行(げっこう)

フレンドシップカップ参加者で、夜行の兄。イメージモデルは遊戯王Rの天馬月行。

遊矢のスカウトを受けてランサーズに加入した。

使用するデッキは【ドラグニティ】。

 

赤馬零羅(れいら)

零児の義弟。

舞網チャンピオンシップ・ジュニアクラスでは順調に勝ち上がっていたが、その振る舞いが違和感を覚えたのか、エレンから気に掛けられる。

準決勝でそのエレンと対戦、自らのデッキと相性が最悪なレッドアイズ達の前に心が折れ欠けるも、エレンの激励で立ち直り、デュエルの楽しさを知る(尚、結果は敗北で、ベスト4に終わる)。

ランサーズにはV-CRANメンバーとして加入したが、何故V-CRAN所属かは不明(遊矢曰く「零児の狙いが見えない」との事から零児の一存らしいが…)。

使用するデッキは【CC】。

 

 

○フォースハウンド

シンクロ次元に潜入後にV-CRANを再編、分離する形で結成されたランサーズの潜入・工作部隊。

遊矢曰く「フォースを狩る者」という意味らしい。

 

風魔(ふうま)日影(ひかげ)

フォースハウンド隊長で、風魔兄弟の兄。

極度のメタルギアマニアで、潜入任務の際には段ボール箱は欠かさない。

使用するデッキは、当初は【忍者】のみだったが、融合次元でのスパイ活動で入手した【マジェスペクター】も使う様になる。

 

風魔(ふうま)月影(つきかげ)

風魔兄弟の弟。

使用するデッキは、当初は【忍者】のみだったが、融合次元でのスパイ活動で入手した【ダイナミスト】も使う様になる。

 

平井(ひらい)遊香(ゆか)

『灼眼のガンスリンガー』の主人公で、エクシーズ次元からスタンダード次元へと侵入したデュエリストの1人。イメージモデルは、灼眼のシャナの、シャナ(但し普段の姿は、髪が総白髪になっている)。

その正体は、融合次元のデュエリストを標的とする暗殺などのテロ行為を行うテロリスト『炎髪灼眼の討ち手』(彼女単独で活動している為、厳密には違う)。

舞網チャンピオンシップ・ジュニアユースクラスに出場し、順調に勝ち進んでいった一方で、侵入したアカデミアのデュエリストを射殺する等のゲリラ活動に明け暮れていた(バレットも、その標的となった)が、バトルロイヤルの最中に、一美とのデュエルに敗北、確保され、そのままランサーズに加入した(尚、その折にデニスを殺害した)。

使用するデッキは、当初は4個だったが、融合次元でのスパイ活動で1つ増えた。

陽炎獣(ヘイズ・ビースト)

【ヴォルカニック・バーン】

【炎星】

【????】

【イグナイト】

 

セルゲイ・ヴォルコフ

嘗て『デュエリストクラッシャー』として恐れられた凶悪犯罪者。

その後原作通りロジェの配下として全身サイボーグと化したが、ロジェの意識を乗っ取った遊矢の配下となり、その際に新たなる素体『合成生体仕様素体』に組み込まれる。

シンクロ次元におけるアカデミアとの戦いでは『アンドバリの指輪』作戦のキーパーソンとして奔走、アカデミア側を混乱に陥れた。

その後ランサーズのフォースハウンドに正式配属され、アカデミアに潜入している日影達と合流した。

使用するデッキは【アモルファージ】。

 

 

○第1部隊

 

バージル・レッドグレイヴ

ランサーズ第1部隊長で、ダンテの双子の兄。イメージモデルは、DevilMayCryシリーズのバージル。

3回戦のバトルロイヤルに前後して、海外から呼び寄せられた。

使用するデッキは【インフェルノイド】。

 

島村(しまむら)文録(ぶんろく)

ランサーズ第1部隊副隊長。イメージモデルは、サイボーグ009の島村ジョー。

ユースクラスからランサーズに加入した1人。

使用するデッキは【ブンボーグ】。

 

灰原(はいばら)征矢(ゆきや)

ユースクラスからランサーズに加入した1人。

使用するデッキは【ワイト】。

 

ユーゴ

シンクロ次元から侵入したデュエリストで『シンクロ次元での遊矢』。

遊矢を、自らの幼馴染である『リン』を拉致した犯人と決め込んで(実際はユーリの犯行)問い詰め、デュエルする事になるも、遊矢のシンクロモンスター達の前に行動を殆ど封じられて敗北、確保され、身柄を零児に引き渡された。

その後、アカデミアの侵略の話を聞いてランサーズへの加入を決意した。

フレンドシップカップへの出場メンバーの1人で、前夜祭でジャックとデュエルするも、粘り及ばず敗北してしまう。

その後、順調に勝ち進んでいたが行方不明になっていたが、エクシーズ次元で発見される。

使用するデッキは【SR(スピードロイド)】。

 

葛西夜行(やこう)

フレンドシップカップ参加者で、月行の弟。イメージモデルは遊戯王Rの天馬夜行。

遊矢のスカウトを受けてランサーズに加入し、行方不明となったユーゴの代わりとして第1部隊に配属された。

使用するデッキは【スクラップ】。

 

方中(ほうちゅう)ミエル

同じ儀式モンスター使いとして遊矢を「運命の方」と見ており、事ある毎にアプローチしている。

使用するデッキは【占術姫】。

 

石動(いするぎ)美琴(みこと)

遊矢達の1年後輩。イメージモデルは、とあるシリーズの御坂美琴。

5話にて遊勝塾に加入し、其処で遊矢達の本格的な指導を受けてめきめきと実力を付ける。

使用するデッキは【磁石の戦士】。

 

 

○第2部隊

 

ダンテ・レッドグレイヴ

ランサーズ第2部隊長で、バージルの双子の弟。イメージモデルは、DevilMayCryシリーズのダンテ。

3回戦のバトルロイヤルに前後して、海外から呼び寄せられた。

使用するデッキは【彼岸】。

 

メアリ・アーカム

ランサーズ第2部隊副隊長。イメージモデルは、DevilMayCryシリーズのレディ(メアリ・アン・アーカム)。

3回戦のバトルロイヤルに前後して、海外から呼び寄せられた。

使用するデッキは【影霊衣(ネクロス)】。

 

刀堂(とうどう)(やいば)

13話にてLDSから移籍した遊勝塾生。

遊矢のファンで、当初は遊勝塾への加入を希望していたが諸事情により入れず、代わりにLDSに加入した。

そのLDSとの3番勝負ではLDS側の3番手で登場する予定だったが、前の2人が共に敗北した為に出番なし…となる筈だったが、その想いからエキシビションマッチを要求、受け入れられて当麻と対戦、度重なる妨害によって実力を発揮出来ないまま敗北するも、その初手を見た遊矢から「当麻以外なら負けていた」とその実力を絶賛され、その後念願叶って遊勝塾に移籍した。

使用するデッキは【X-セイバー】。

 

聖沢(ひじりさわ)一美(かずみ)

デュエルアカデミアに所属していたデュエリストで、セレナの監視役。イメージモデルは、灼眼のシャナの吉田一美。

セレナに同行してスタンダード次元に侵入するも遊香に襲撃され、死に際のバレットにセレナの護衛を一任される。

その後、バレット達を殺害した遊香とのデュエルに勝利して確保するも、共にランサーズに加入した。

使用するデッキは【霊獣】。

 

沢渡(さわたり)シンゴ

LDS総合コース所属の生徒。

LDS上層部からの指示で遊矢のペンデュラムモンスターを強奪しようと遊矢に接近するも、なけなしの原作知識によって見抜いていた遊矢によって逆に追い詰められて逆上、屑カード発言によって遊矢の怒りを買ってデュエルする事になり、ワンショットキルならぬワンショットデスによって敗北した上に、その際の腹部へのダメージが原因で嘔吐するという醜態をさらしてしまった挙げ句、その時の上層部との通信を遊矢に傍受され、その後に遊矢への復讐を企てていた事に関する証拠と合わせてLDSの首を締める結果になった。

この一件をアニメさながらに逆恨みをぶつけようとするも観客から大ブーイングを浴びる等扱いが悪かったが、遊矢と互角の勝負を繰り広げ、その実力からランサーズメンバー候補に挙げられ、結果的に加入した。

その中でエンタメデュエルに目覚め(た他、過去の自分の行いを改め)、シティの収容所で徳松とデュエルした際、彼に『エンジョイデュエル』の信条を思い出させた。

使用するデッキは、当初は2個だったが、舞網チャンピオンシップ出場の折に1つ増えた。

【ダーツ】

【帝王】

【妖仙獣】

 

志島(しじま)北斗(ほくと)

LDSエクシーズコース所属の生徒。

当初は連戦連勝でトップクラスの成績を誇っていたが、一行とのデュエルに負け続けて行く内に見向きされなくなってしまう。

その後、失意の中でセレナにデュエルを挑まれた際に遊香に助けられ、数々の次元に関する事実を彼女から教えられた事でアカデミアとの戦いを決意、ランサーズの門を叩き、入隊試験でやっと一行に勝利した。

フレンドシップカップへの出場メンバーの1人。

使用するデッキは、当初は【セイクリッド】のみだったが、ランサーズ加入の折に入手した【超量】も使う様になる。

 

 

○第3部隊

 

トリッシュ

ランサーズ第3部隊長。イメージモデルは、DevilMayCryシリーズのトリッシュ。

3回戦のバトルロイヤルに前後して、海外から呼び寄せられた。

使用するデッキは【クリフォート】。

 

ユート

ランサーズ第3部隊副隊長で『エクシーズ次元の遊矢』。

エクシーズ次元からスタンダード次元へと侵入したデュエリストの1人。

遊矢に捕まりそうになった隼を助け出す為にデュエルを挑むも、遊矢の『完全決闘』の前に惨敗を喫し、隼と共に確保され、身柄を零児に引き渡された。

その後、LDSとの協力を申し出、ランサーズに加入した。

フレンドシップカップへの出場メンバーの1人で、前夜祭で鬼柳とデュエルするも、ハンドレスコンボに圧倒されて敗北してしまう。

その後、順調に勝ち進んでいたが行方不明になっていたが、エクシーズ次元で発見される。

使用するデッキは【幻影騎士団(ファントム・ナイツ)】。

 

徳松(とくまつ)長次郎(ちょうじろう)

嘗て『エンジョイ長次郎』として名の知られたデュエリスト。

デュエル中のイカサマが原因で収容所に入れられ、其処で必勝コンボを編み出し、ボスとして君臨していた。

入って早々に目立つ行いをしていたダンテ達に目を付けてデュエルを仕掛けるも、必勝コンボが破られて3連敗を喫するが、3回目である沢渡のデュエルを通じて嘗ての信条を思い出した。

その後、沢渡の推薦を受けた遊矢の要請に応じる形でフレンドシップカップに出場、また、遊矢個人からカードを提供され、ランサーズ関連の依頼を受けていた。

その後ランサーズに正式加入し、行方不明となったユートの代理として副隊長に就任した。

使用するデッキは【花札衛(カーディアン)】。

 

鎧坂(よろいざか)白哉(びゃくや)

ユースクラスからランサーズに加入した1人。

使用するデッキは【カオス・ソルジャー】。

 

大海(ひろみ)王牙(おうが)

物語開始以前から有力選手として騒がれていたその実力からランサーズ候補に挙げられ、舞網チャンピオンシップでは美琴に敗北するも、結果として加入した。

使用するデッキは【海皇水精鱗(マーメイル)】。

 

光津(こうつ)真澄(ますみ)

LDS融合コース所属の生徒。

遊勝塾との3番勝負や舞網チャンピオンシップで原作通り柚子と対戦、結果として連敗するも、遊矢も唸らせるプレイングを見せ、その結果、ランサーズに加入した。

使用するデッキは、当初は【ジェムナイト】のみだったが、シンクロ次元潜入後に入手した【クリストロン】も使う様になる。

 

龍宮(たつみや)流星(りゅうせい)

LDSシンクロコース所属の生徒。

刃とはLDS時代からのライバル。

使用するデッキは【竜星】。

 

 

○第4部隊

 

藤原(ふじわら)雪乃(ゆきの)

ランサーズ第4部隊長。

18話にて、遊勝塾に講師として加入したプロデュエリスト。

その後、零児からの要請を受けてランサーズに加入する。

フレンドシップカップへの出場メンバーの1人。

使用するデッキは【デミスガイア】。

 

七夜(ななや)(つるぎ)

ランサーズ第4部隊副隊長。

ユースクラスからランサーズに加入した1人。

使用するデッキは【不知火】。

 

辰巳(たつみ)雷牙(らいが)

ユースクラスからランサーズに加入した1人。

使用するデッキは【VWXYZ(ヴィトゥズィ)】。

 

黒咲(くろさき)(しゅん)

エクシーズ次元からスタンダード次元へと侵入したデュエリストの1人。

零児を引きずり出す為にLDS関係者を襲撃していた折、それを装った遊矢にデュエルを挑むも、『完全決闘』の前に惨敗を喫して確保、身柄を零児に引き渡された。

その後、ユートに同行する形でランサーズに加入し、デュエルアカデミアに囚われていた妹の瑠璃(るり)の救出に成功した。

使用するデッキは【RR(レイド・ラプターズ)】。

 

七種(さえぐさ)亮太郎(りょうたろう)

LDS総合コース所属の生徒。イメージモデルは、ジョジョの奇妙な冒険第3部『スターダストクルセイダーズ』の空条承太郎。

使用するデッキは【サイバー・ドラゴン】。

 

星宮(ほしみや)舞衣(まい)

LDSエクシーズコース所属の生徒。

使用するデッキは【テラナイト】。

 

 

◎遊勝塾

遊矢達が所属するデュエルスクール。塾長は柚子の父、柊修造。

3年前に遊矢の父、榊遊勝が失踪した事で塾生の大半が脱退、スポンサーからも支援を打ち切られる等によって規模の縮小を余儀なくされるも、塾生である遊矢達の活躍、特に物語開始から1年前の舞網チャンピオンシップではジュニアユースクラスに属する4人全員がトップ8入り(うち遊矢は優勝、一行は準優勝)、ジュニアクラスのエレンが優勝するという目覚ましい活躍を見せた事から、最近では中学生以下のデュエリスト及びその保護者から、LDSに並ぶ人気を得ている。

 

原田(はらだ)フトシ

ジュニアクラスに属する遊勝塾生。

舞網チャンピオンシップ・ジュニアクラスでは順調に勝ち上がるも、準々決勝でアユに敗北し、ベスト8に終わる。

使用するデッキは計2個。

【らくがき】

【エレキ】

 

鮎川(あゆかわ)アユ

ジュニアクラスに属する遊勝塾生。

舞網チャンピオンシップ・ジュニアクラスでは順調に勝ち上がり、準々決勝でフトシ、準決勝でマリアに勝利するも、決勝でエレンに敗北し、準優勝に終わる。

使用するデッキは【水族アクアリウム】。

 

山城(やましろ)タツヤ

ジュニアクラスに属する遊勝塾生。物語開始1年前(フトシ、アユとほぼ同時期)に加入した。

舞網チャンピオンシップ・ジュニアクラスでは順調に勝ち上がるも、準々決勝でエレンに敗北し、ベスト8に終わる。

使用するデッキは計2個。

E(エンタ)M(マシン)

【バーンガジェット】

 

マリア・デックス

18話にて新たに加入した塾生。イメージモデルは、とあるシリーズのインデックスと、僕は友達が少ないの高山マリア。

かなり口が悪いが根は素直で、遊矢からもその実力を評価されている。

舞網チャンピオンシップ・ジュニアクラスではその実力を発揮、準決勝まで勝ち上がるも、アユに敗北し、ベスト4に終わる。

使用するデッキは【魔力カウンター】。

 

(ひいらぎ)修造(しゅうぞう)

柚子の父で、遊勝塾の塾長。

かつてはプロデュエリストだったが、遊勝塾の立て直しの為にプロを引退していた。

その後、遊勝塾の立て直しにメドが付いた事から現役復帰を決意、遊矢とのデュエルを見たニコにその実力を評価され、サポートを約束された。

51話にて、ランサーズの防衛部隊長への就任を要請された事を明かしている。

使用するデッキは計2個。

BK(バーニングナックラー)

【ガッツマスター】

 

 

◎デュエルアカデミア

融合次元にある、デュエル戦士の養成機関。そのトップは零児の父、赤馬零王。

とある理由から様々な次元への侵攻を企てており、3年前にエクシーズ次元へ侵攻、壊滅的な打撃を与える。

 

バレット

デュエルアカデミア所属のデュエリストで、セレナの監視役。

セレナに同行してスタンダード次元に侵入するも遊香に襲撃され、狙われたセレナを庇う形で致命傷を喰らい、一美にセレナの身を守る様言い残して息を引き取った。

 

デニス・マックフィールド

LDSブロードウェイ校所属の生徒だが、実際はデュエルアカデミア所属のデュエリストで、素良と同じくスパイ活動の命を受けて侵入した。

舞網チャンピオンシップ・ジュニアユースクラスに出場、3回戦まで勝ち進むも、バトルロイヤルの最中に遊香の銃撃を受けて絶命する。

使用するデッキは【Em(エンタメイジ)】。

 

ユーリ

デュエルアカデミア所属のデュエリストで『融合次元の遊矢』。

ユート、ユーゴの証言から、瑠璃やリンの拉致に直接関わった犯人とされている。

デニスが遊香に殺害された折、側に居た事が原因で遊矢から犯人と決めつけられてデュエルを仕掛けられ、アクショントラップ『先手必殺』を悪用した先攻1ターンキルを受けそうになり、アカデミアに強制送還されるが、その件で零王からも疑われている。

その後、シンクロ次元への侵攻作戦の司令官に就任、しかしその任を放りだして遊矢の始末に向かうも、その遊矢とのデュエルで行方不明になるも、エクシーズ次元で発見される。

使用するデッキは【捕食植物(プレデター・プランツ)】。

 

エド・フェニックス

デュエルアカデミア所属のデュエリストで、エクシーズ次元に派遣されている軍の総司令官。

遊矢曰く、GX時代のエドとは別人との事。

使用するデッキは【D-HERO】。

 

グロリア・タイラー

デュエルアカデミア所属のデュエリストで、グレースの姉。

グレースと共にエクシーズ次元に派遣され、其処で遭遇した遊矢達とデュエルするも圧倒されて敗れる。

使用するデッキは【アマゾネス】。

 

グレース・タイラー

デュエルアカデミア所属のデュエリストで、グロリアの妹。

グロリアと共にエクシーズ次元に派遣され、其処で遭遇した遊矢達とデュエルするも圧倒されて敗れる。

使用するデッキは【アマゾネス】。

 

 

○ホルアクティ・フォース

キサラが隊長を務める、デュエルアカデミア近衛部隊。首脳陣を中心とした、アカデミアでも一部にしかその存在は知られいないが、隊長であるキサラが遊矢と互角のデュエルを繰り広げ、他のランサーズメンバーとのデュエルで全員勝利する等、その実力は抜きんでている。

 

キサラ・カルメル

ホルアクティ・フォースのリーダー。イメージモデルは灼眼のシャナの、ヴィルヘルミナ・カルメル(但し眼は青で、服装は青のロングドレス)。

赤馬零王からの命を受けて、遊矢を始末しようと暗躍している。

アカデミアによるシンクロ次元への侵攻の際に同行、遊矢を呼び出して一騎打ちを仕掛け、互角の戦いを繰り広げるもユーリの乱入で中断してしまう。

使用するデッキは【ブルーアイズ】。

 

フリアグネ

ホルアクティ・フォースのメンバー。イメージモデルは灼眼のシャナの『狩人』フリアグネ。

使用するデッキは計2つ。

【竜剣士】

【絵札の三剣士】

 

ヘカテー

ホルアクティ・フォースのメンバー。イメージモデルは灼眼のシャナの『頂の座』ヘカテー。

使用するデッキは計2つ。

【伝説の騎士】

【ブラック・マジシャン】

 

ベルペオル

ホルアクティ・フォースのメンバー。イメージモデルは灼眼のシャナの『逆理の裁者』ベルペオル。

使用するデッキは【方界】。

 

カムシン

ホルアクティ・フォースのメンバー。イメージモデルは灼眼のシャナの、カムシン・ネブハーウ。

使用するデッキは【召喚獣】。

 

 

◎遊勝塾(融合次元)

融合次元ある、デュエルスクール。塾長は遊矢の父、榊遊勝。

 

遊勝(ゆうしょう)

遊矢の父。

3年前に行方不明になっていたが、実は零王との直談判の為に他次元に飛んでいた。

その後、紆余曲折を経て融合次元にて遊勝塾を設立、アカデミアから離反したデュエリスト達の拠点として行った。

使用するデッキは【EM】。

 

天上院(てんじょういん)明日香(あすか)

『遊戯王GXの世界』での遊矢(十代)の恋人。

使用するデッキは【サイバー・ブレイダー】。

 

十六夜(いざよい)アキ

『遊戯王5D'sの世界』での遊矢(遊星)の恋人。

使用するデッキは【植物族】。

 

観月(みづき)小鳥(ことり)

『遊戯王ZEXALの世界』での遊矢(遊馬)の恋人。

原作とは違い、幼い頃からデュエルをしている。

使用するデッキは【代行者型天空の聖域】。

 

 

◎シンクロ次元のデュエリスト

 

ジャック・アトラス

シンクロ次元で、3大デュエリストスターとして活躍しているデュエリスト。

その正体は『遊戯王5D'sの世界』で遊星として生きていた頃の遊矢の仲間であったジャック本人で、それ故に『龍の翼』の痣を有し、融合召喚を用い、遊矢が渡したカードを使用していた。

使用するデッキは【E―HERO】と【リゾネーター】の混成デッキ。

 

クロウ・ホーガン

シンクロ次元で、3大デュエリストスターとして活躍しているデュエリスト。

その正体は『遊戯王5D'sの世界』で遊星として生きていた頃の遊矢の仲間であったクロウ本人で、それ故に『龍の尾』の痣を有している。

使用するデッキは【BF(ブラックフェザー)】。

 

鬼柳(きりゅう)京介(きょうすけ)

シンクロ次元で、3大デュエリストスターとして活躍しているデュエリスト。

その正体は『遊戯王5D'sの世界』で遊星として生きていた頃に色々な因縁があった鬼柳本人(だがその為かどうか不明だが、ダークシグナー時代の切り札である『地縛神CcapacApu』を所有している)。

使用するデッキは【インフェルニティ】。

 

シュドナイ・デュナス

デュエルバー『バルマスケ』のオーナー兼、ジャック・アトラスのマネージャー。イメージモデルは灼眼のシャナの『千変』シュドナイ。

シンクロ次元に転送された遊矢とARC-Vメンバーを「何かの縁」と店に案内した。

使用するデッキは【バスター・ブレイダー】で、シンクロ次元のデュエリストながら融合召喚も用いる(ジャックから教わったらしい)。

 

シンジ・ウェーバー

クロウ・ホーガンのマネージャー。

使用するデッキは【B・F(ビー・フォース)】。

 

ソラト・アイゼン

ティリエルの双子の兄で、鬼柳のマネージャー。イメージモデルは灼眼のシャナの『愛染自』ソラト。

生まれつき耳が全く聞こえず、会話にも苦労した事からデュエルディスクに組み込まれた音声文字変換アプリによってやりとりを行っている。

使用するデッキは【ライトロード】。

 

ティリエル・アイゼン

ソラトの双子の妹で、鬼柳のマネージャー。イメージモデルは灼眼のシャナの『愛染他』ティリエル。

使用するデッキは【森羅】。

 

ジャン・ミシェル・ロジェ

シティの治安維持を担う『セキュリティ』長官。

その正体はアカデミアに属していた元デュエル戦士で、アカデミア、引いては赤馬零王に反発してシンクロ次元に潜入、以後数年の間、自らの権力を高めていったが、遊矢によって洗脳され、彼の手駒となる。

使用するデッキは【古代の機械(アンティーク・ギア)

 

不動(ふどう)遊星(ゆうせい)

作中から数百年前にシンクロ次元を救ったとされる伝説のデュエリスト。

使用するデッキは【シンクロン】と思われる。

 

 

◎エクシーズ次元のデュエリスト

天城(てんじょう)カイト

エクシーズ次元のデュエリスト。

その正体は『遊戯王ZEXALの世界』で遊馬として生きていた頃の遊矢のライバルであったカイト本人である。

尚、遊矢よりも60年以上前に生まれた。

使用するデッキは【フォトン】と【ギャラクシー】の混成デッキと思われる。



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1章『新たなる可能性!ペンデュラム召喚!』
1話_俺、参上!


「行くぞ遊矢!俺はレベル8の『超重武者ビッグベン―K』に、レベル2の『超重武者ホラガ―E』をチューニング!」

 

権現坂の宣言と共に、ほら貝らしき物を持った機械武者が2つの緑の環となり、平安時代末期にその名を轟かせた僧兵、武蔵坊弁慶をモチーフにしたような機械武者に纏われ、やがて纏われた方の機械武者の身体が8つの光の球と化す。

この状況で、権現坂のデッキテーマ、となると出て来るのはアイツか!

 

「荒ぶる神よ、千の刃の咆哮と共に煌びやかな戦場に現れよ!シンクロ召喚、いざ出陣!レベル10!『超重荒神スサノ―O』!」

 

超重荒神スサノ―O

シンクロ・効果モンスター

地属性

機械族

レベル 10

守備力 3800

 

光の球が輝き、それが晴れた後には、暗色を基調とし、左手に巨大な長刀を持った機械武者の姿があった。

ここでエースの一角、スサノ―Oを出してくるとはやるじゃねぇか。

3800という驚異的な守備力、その守備力を攻撃力扱いとして、表側守備表示の状態で攻撃出来るという、どっかの邪神涙目な効果もさることながら、

 

「スサノ―Oの効果発動!

遊矢、お前の墓地にあるアクションマジック『回避』を俺の場にセットさせて貰う!」

 

自分の墓地に魔法・罠カードが無い場合という厳しい条件ながら、相手の墓地にある魔法・罠カードを1枚自分の物にする事が出来る効果も、1ターンに1度セット出来るという無茶苦茶な効果も持っている。

しかもこの効果は相手ターンでも使えるフリーチェーン、挙げ句セットしたカードはフィールドを離れると除外されるので、アクションデュエルにおいては、後になってセットしていた魔法・罠カードを発動した所為で効果が使えなくなる事も無いと、厄介極まりない。

だけどそんな効果の応酬もデュエルの醍醐味って奴だ!

 

「俺はこれでターンエンド!さあ遊矢、この権現坂と1対1の本気の勝負だ!」

 

言われなくても分かっているぜ、権現坂!

さて、観客もいるし、権現坂も普段はしないシンクロ召喚を見せたんだ、俺も派手にやるぜ!

 

「Ladies and Gentleman!Boys and Girls!これより私、榊遊矢によるヒーローショーをご覧に入れましょう!」

『良いぞぉ遊矢兄ちゃぁん!やれやれぇ!』

『権現坂のスサノ―Oと遊矢兄ちゃんのヒーローとの激突!痺れるなぁ!』

『頑張って遊矢兄ちゃん!』

「私のターン!ドロー!」

 

俺の宣言に応える様に、マイク越しに聞こえる観客席からの歓声に乗り、ドローしたカードは、魔法カード『融合』。

よし、絶好のタイミングで来てくれたぜ!

 

「私は魔法カード『融合』を発動!」

 

融合

通常魔法

1:自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

俺が融合を発動すると共に、背後に神秘的な色で光輝く渦が現れる。

そういえば融合の演出も、俺が十代だった頃、遊星だった頃から随分と変わったなぁ。

それに遊馬だった頃からも、だよな、ユベル?アストラル?

 

『そうだね遊矢。随分と長く融合の演出は見て来たけど、ヤケにコロコロ変わっているよね、コレって』

『確かにその通りだな。カイトが使っていた融合の時とも大きく違う』

 

俺が背後に語り掛けると、其処で控えていた、俺にしか見えない2人(?)の相棒が応えた。

デビルマンレディーかと突っ込みたくなる、いや、それ以上に悪魔化した様な姿のモンスターにして俺の相棒兼恋人『ユベル』の精霊と、アストラル世界と呼ばれる世界出身の、俺の半身とも言える存在、アストラル。

2人の答えに頷きつつ、俺は目前のスサノ―Oを倒す為のモンスターを呼び出す。

 

「手札の『E・HEROエアーマン』と『E・HEROシャドー・ミスト』を融合!

風を司るヒーローよ!その暴風で、全てを薙ぎ払え!融合召喚!『E・HERO GreatTORNADO』!」

 

E・HERO GreatTORNADO

融合・効果モンスター

風属性

戦士族

レベル 8

攻撃力 2800

 

俺の背後に出現した光輝く渦、其処に俺の手札にあったエアーマンとシャドー・ミストのカードが吸い込まれていくと、次の瞬間にはその渦が風を纏わせ、それが周囲へと吹き荒れると共に、緑と黄色の縞模様で、マントを着用したヒーロー、GreatTORNADOの姿が其処から出現した。

よし、行くぜ権現坂!

 

「融合召喚に成功したGreatTORNADOの効果発動!それにチェーンして、融合素材として墓地へ送ったシャドー・ミストの効果も『な、なにこれ!?きゃぁ!?』ゆ、柚子!?」

 

俺がGreatTORNADOとシャドー・ミストの効果処理を行おうとした(そしてそれに権現坂が、スサノ―Oの効果をチェーンしようと身構えていた)所に、管制室にいるであろう柚子の悲鳴が聞こえて思わず振り向く。

その次の瞬間、フィールド内に爆発音が鳴り響き、表示されていたソリッドビジョン(主にアクションフィールド)にノイズが走る等、不安定な状態になる。

こりゃヤバいな。

 

『何やってんだ柚子!?』

『ご、ごめんなさいお父さん!』

『コイツが壊れちまったらソリッドビジョンが消えちまうぞぉ!』

 

猛暑の原因とか良く言われる某テニスプレイヤーの様な暑苦しい声が響いたかと思ったら、ソリッドビジョンが消滅、実体を持っていた事もあってその門の上に立っていた俺は一瞬にして宙に放り込まれた形となり、重力に従う形で落下してしまう。

常人なら下手をすれば怪我では済まない高さ、だけど俺はこの程度、どうと言う事は無い。

この事態を予想していて着地態勢がとれていたのもあるが、サテライトにいた頃にもこれ位の高さから飛び降りるなんて良くあったからな。

故に俺は何事も無く着地、身体全体を使って衝撃を逃がしたので怪我など無かった。

その際、服が舞い上がり、俺の右腕が、龍の頭を模している赤いシグナーの痣が刻まれた、右腕が露わになった。

 

俺の名は(さかき)遊矢(ゆうや)、皆は知っていると思うけど、遊戯王ARC-Vの主人公だ。

いや、遊矢に転生した元遊戯王OCGプレイヤーと言った方が良いな。

あ、それだけじゃあ不十分か。

もう今の時点で権現坂がシンクロ召喚を使っていたり、俺が融合召喚を使っていたり、ユベルやアストラルがついていたり、右腕にシグナーの痣が刻まれていたりと、原作ARC-Vを知っている人から「まるで意味が分からんぞ!」と突っ込まれる要素満載だからな。

実を言うと、俺が転生したのは榊遊矢だけじゃ無いんだ。

遊戯王GXの遊城十代、遊戯王5D’sの不動遊星、遊戯王ZEXALシリーズの九十九遊馬と、遊戯王DMの武藤遊戯以外の、遊戯王シリーズの歴代主人公に転生し、その度に手に入れたカードと異能を全て、今も尚有している。

例えば、覇王の力を宿し、ダメージを実体化させる事ができる(その際に眼が金色になる)。

例えば、赤き龍の力を宿し『セイヴァー・ドラゴン』を作り出したり、スタンディングの状態でアクセルシンクロが出来たりできる。

例えば、胸元には遊馬時代の父さんから貰った『皇の鍵』があり、アクションフィールドではアストラルとオーバーレイしてZEXALにエクシーズチェンジする事が出来る。

他にも十代時代の驚異的ドロー運が遊星時代以降も受け継がれている等、まさに『俺の考えた最強の遊戯王主人公』な状態に俺はなっていると言っても良い。

この世界ではまだ殆ど広まっておらず、最もデュエル関連の技術が発展していると言って良い此処『舞網市』でも指導しているのは最大手のデュエルスクール『LDS(レオ・デュエル・スクール)』だけに留まっている融合・シンクロ・エクシーズ召喚を、権現坂達が使っているのも、俺が持っているカードプールと知識を基に教えていった賜物、という訳。

といっても一部、それら原作とはずれた部分もあるんだけど、それはまたの機会にな。

そんな俺は、塾の一室にて運命の選択を迫られていた。

 

「おやおや?何やらお困りの様子」

 

俺達の塾、遊勝塾のソリッドビジョンが破損してしまい、俺と、俺の幼馴染で同じく塾生の(ひいらぎ)柚子(ゆず)、柚子の父さんで遊勝塾の塾長を務めている(ひいらぎ)修造(しゅうぞう)おじさん、そして今しがたデュエルした俺の幼馴染の権現坂(ごんげんざか)(のぼる)(実を言うと『権現坂道場』というデュエル塾の跡取りなので本当は部外者なんだけどな)の4人で今後の対応を話し合っていると、其処に黄色と黒のストライプ模様のスーツに、黄色がかったレンズの眼鏡(いや、グラサンか?)を掛けた如何にも胡散臭い男が入って来た。

 

「ええと、どちら様で?」

 

塾長は何処か戸惑い気味ながらも一先ずは、突如入って来たその男に名前を訪ねる。

普段の暑苦しさもなりを潜めてのしっかりした対応、流石は大人のコミュニケーションだな。

 

「申し遅れました。私、アクションデュエル現役チャンピオン、ストロング石島のマネージャー兼プロモーターをしております、ニコ・スマイリーと申します」

 

ニコニコからニコ、スマイルからスマイリー、うん、明らかに仕事上の名前だな、もしこれが本名だったらどんなキラキラネームだよ。

と、そんな事はどうでも良い、

 

「ストロング石島、ですか!?」

 

ストロング石島。

俺の父さんでプロデュエリスト、榊遊勝が失踪する前に、チャンピオンの座を賭けて戦う筈だったプロデュエリスト。

紫を基調としたトゲトゲヘアーにフェイスペイント、世紀末のヒャッハーな連中が着用しそうな服装をしたデュエリストで、確かデッキはバーバリアンだったか?

父さんならまず勝てると言っても過言じゃ無い程度の相手だったけど、何故かその試合に出場する事無く、失踪してしまった。

それ故に、俺は臆病者の息子と言われたけど、それにブチ切れして、俺の持つ3つのデッキ(本当は10あるんだけど、大半が融合・シンクロ・エクシーズを主軸としていて、それらがメインじゃないのがその3つだけだった)でそいつらをフルボッコにし、その勢いで、舞網市で毎年行われる大会『舞網チャンピオンシップ』を、ジュニアの部で3連覇(父さんが失踪する前から優勝していた)、中学に進学した去年、初めて参加したジュニアユースの部で早速優勝したのは記憶に新しい(それによって嘲笑の声も無くなり、逆にその時使っていたデッキに因んで『完全決闘者(パーフェクト・デュエリスト)』という異名で恐れられる様になった)。

まあそれは良いとして、どうしてそのストロング石島のマネージャーが俺達の所に来たか、此処が重要だ。

話を聞いてみないとな。

 

「今回此処を訪ねたのは他でもありません。LDSのイメージキャラクターを務めるストロング石島の、そのファン感謝デーに是非、遊矢君をお招きしたいのです」

 

それが何を意味するか、遊星時代の経験から結構頭が回る様になった俺には、その答えを導き出すのは簡単だった。

つまり、失踪した父さん、榊遊勝の代わりに俺とデュエルしろ、完全決闘者という大層な異名で最近ブイブイ言わしている俺の実力を見せてみろ、というストロング石島からの挑戦状だという事。

 

「其処で遊矢君には、ストロング石島と戦って貰いたいのです!あの三年前の願い、いや、完全決闘者と現役チャンピオンの対決という夢のカードが現実の物に…!」

 

俺は、やっぱしかという思いと共に、その問いに、向こう側も満足するであろう答えを既に持っていた。

そしてその答えを今すぐに言おうとした、が、

 

「駄目だ、遊矢をそんな場所に出す訳には行かない」

「なっ!?」

「え、何故です!?」

 

俺の答えは塾長の言葉に遮られ、その言葉に俺とニコ・スマイリーは驚いた。

どうして断るんだ、塾長?

俺にとって、これ程待っていたチャンスは無いと言って良い程の事なのに!?

 

「あの榊遊勝の息子が、いや、ジュニアユースはおろかユースクラスでも敵う相手はいないと言われる完全決闘者が登場するとなれば、お客様も大喜び!」

「遊矢を見世物には出来ん!」

 

成る程、そういう事か…

塾長は、プロデュエリストにして現役チャンピオンであるストロング石島と俺が戦って、無様な敗北をし、それで見世物になる可能性を考えて、断ってくれたのか。

確かに今の俺は完全決闘者という異名で恐れられているとは言ってもまだジュニアユースクラス、そんな俺がプロ相手に勝てるか?第三者はまず無理だ、ときっぱり言うだろう。

そして塾長もまたその考えが頭にあり、そして俺の事を考えて断ったのか。

だけどさ塾長、それは違うぜ。

 

「塾長」

「どうした遊矢?」

「塾長が何と言おうと、俺は出るぜ。ストロング石島からの挑戦状、受けて立つぜ!」

「なっ遊矢!?」

 

俺は、そんな図抜けた実力者と、強いデュエリストと戦いたいんだよ。

この世界に転生してからというものの、融合とかシンクロとかエクシーズとかが使われない(これは仕方ないが)以前に、様々な世界のデュエルを見て来た俺から見ればお粗末極まりないデュエルばかりで、ちっとも満足してなかったんだ。

といっても、柚子達遊勝塾の面々や、権現坂とのデュエルは、俺の指導の甲斐あって十分に満足出来るんだが、それははっきり言って師匠()弟子(柚子達)的な意味合い、今の俺が求めているのは、俺と初見で渡り合うライバル的な意味合いで満足するデュエルだ。

その点、プロデュエリストなら融合とかを使うかどうかはともかく、その抜群の構築とプレイングで俺を満足させてくれるはずだ。

だからこそ、このストロング石島とのデュエルは願っても無い話なんだ。

 

「おお、ご承諾頂けますか!でしたらお礼として、レオコーポレーション社製の最新型ソリッドビジョンシステムを、無料でご提供いたしましょう!」

 

これは満足出来そうだ…!

心の底からやりたいと思っていたデュエルをするだけで、壊れちまった遊勝塾のソリッドビジョンシステムの代わりが、いや、それのアップグレード版が無料で提供される。

これぞまさに一石二鳥、いや、棚ぼただぜ。

俺は間違い無く、心からの笑みを浮かべていた。



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2話_俺、出陣!

『いよいよ、メインイベントの時間がやってまいりました!チャンピオン、ストロング石島に挑戦しますのは、あの伝説のデュエルスター・榊遊勝の1人息子にして、完全決闘者(パーフェクト・デュエリスト)、榊遊矢君であります!』

 

戦いの日が来るまで、俺が心から待ちわびていた日が来るまで、あっという間だった。

今日は完全決闘者としてもそうだが、父さんの代わりとして舞台に立つ、ならば使うデッキはコレ。

ユベルやアストラル達にも手伝って貰い、改良を重ねたこのデッキで、今日は勝ちに行く!

 

『遊矢、出番だね?』

「ああ、ユベル。この世界において、俺にとって最初のビッグステージだ!」

『遊矢、分かっていると思うが、油断するなよ?』

「当然だ、アストラル。油断も慢心もしないで、俺はストロング石島に立ち向かう!」

 

俺は2人の相棒の言葉に答え、笑みを浮かべる。

なにしろこれが、今世において俺の、本当の意味での始まりとなるデュエル。

これまで舞網市内では知らない人はいない、程度の知名度しか無かった俺の名が、この世界に知れ渡るデュエルとなる筈だ。

現役チャンピオンであるプロデュエリストとのデュエルは、それだけ影響力が大きい。

緊張もやる気も、良い感じで充分、よし行くか!

 

『このスペシャルマッチは、アクションデュエルの公式ルールに則って行われます!フィールド魔法『辺境の牙王城』発動!』

 

このイベントのMCをやっているニコ・スマイリーさんの手に光が集まりカードが出現、それが翳されるとカードが輝き、アクションフィールドが、ソリッドビジョンシステムによって形成される。

城が中心にある森、これがこのアクションフィールドの特徴か?

成る程、辺境の城という名に相応しい、面白いアクションデュエルが出来そうなフィールドだな。

 

『ご覧下さい!この本物と見誤るレベルのリアルな質感、これがレオ・コーポレーションの最新型ソリッドビジョンシステムです!』

 

おお、こいつは凄い。

今まで塾にあったソリッドビジョンシステムもリアルだったが、これは比べ物にならない程のリアルさだ。

これと同じ物を、俺がやりたいデュエルをするだけで、タダでくれるとか太っ腹だな!

 

『おおっと!あの城の上に現れたのは、この3年間、アクションデュエルの頂点に君臨し続ける最強王者、ストロング石島だぁ!』

「うぉぉぉぉぉぉ!」

 

み、耳が、耳がぁぁぁぁ!

こんだけ離れていても耳が凄く痛いって、どんな大声出してんだ!

まさかの精神攻撃に、遊馬時代の親友だったシャークっぽくイラッとしつつも、俺の出番を待つ。

 

『この最強王者に挑むは、若き完全決闘者、榊遊矢!』

 

よし、俺の出番だな!

此処はエンターテイメントを意識した登場をしよう。

そう思い立ち、俺は階段を駆け上がりながら、観客に向けて言い放つ。

 

「Ladies and Gentleman!Boys and Girls!今日はこの俺、榊遊矢のデュエルに来ていただき、ありがとうございます!どうぞ、この俺とチャンピオン、ストロング石島とのデュエルをお楽しみ下さい!」

「「「「うぉぉぉぉぉ!」」」」

 

よし、掴みは完璧だ、俺の自己紹介に、観客席の人達は歓声を上げてくれた。

後は、俺のデュエルを見せるだけ!

 

『役者は揃いました!さあ、手札5枚のご用意を!』

 

俺とストロング石島は、ニコさんの指示に従ってデッキからカードを5枚ドローする。

おっとそうだ、

 

「ストロング石島!3年前に父さんが来なかったお詫びとして、先攻を譲ります!」

「譲るだと…

舐めた口を!良いだろう、プロの技でお前を躾け直してやる!」

 

そこ、はいはいリスペクトリスペクト言わない。

正直言うと、先攻ドローが無いから後攻の方が好き、というのが大きいんだけどな。

無論アクションデュエルにおいてはその限りでは無いんだが、まあその話は後で。

そんな俺達のやり取りを見たニコさんは少し戸惑いつつも、

 

『おおっと!いきなり意外な展開になりましたが、両者気合十分の様子です!

それでは始めましょう!

戦いの殿堂に集いしデュエリストが!

モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!

フィールド内を駆け巡る!

見よ、これぞデュエルの最強進化系!

アクショーン!』

 

「「デュエル!」」

 

先攻 Ishizhima LP 4000 VS 後攻 Yuya LP 4000

 

デュエルの開始宣言と共にニコさんが指を弾くと、それと共にアクションマジックがフィールド中に舞い落ちる。

ストロング石島、俺を満足させてくれよ?

 

「直ぐにとっ捕まえてやる!俺のターン!

まずは魔法カード『蛮族の狂宴LV5』を発動!」

 

蛮族の狂宴LV5

通常魔法

1:自分の手札・墓地から戦士族・レベル5モンスターを2体まで選んで特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、このターンそのモンスターは攻撃出来ない。

 

お、此処でいきなりLV系カードを使って来るか。

一定のレベルに作用するカードって、専用デッキじゃないと使いづらいんだよな。

 

「手札から戦士族・レベル5モンスター2体を、効果を無効にして特殊召喚する!

現れろ、『バーバリアン1号』『2号』!」

 

バーバリアン1号

効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 5

攻撃力 1550

 

バーバリアン2号

効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 5

攻撃力 1800

 

うぉ、俺が言えた話じゃ無いけど、初手で蛮族の狂宴LV5と、その対象となるモンスターを2枚も引くとか凄いドロー運だな。

俺がそんな風に感心している所でストロング石島の近くに登場したのは、頭から2本の角を生やし、毛深い体毛で覆われた戦士、バーバリアン1号と2号。

 

『レベル5モンスターが2体、来るぞ遊矢!』

 

ああ、相手はチャンピオン、それにLDSの広告塔もやっている、故にエクシーズモンスターの存在も認知している筈だし、出してくるに違いない。

さて場にいるのは2体の地属性・戦士族・レベル5モンスター、となると出て来るのは恐らくランク5。

『セイクリッド・プレアデス』は属性的に無理だし、『紅貴士―ヴァンパイア・ブラム』とかは種族的に駄目。

一応『マドルチェ・プディンセス・ショコ・ア・ラ・モード』は出せるが、効果とかステータスとかを考えて出すメリットは余り無いし、ストロング石島のイメージ的にも無理がある。

『発条装攻ゼンマイオー』とかも出せるが、効果を考えるとこのターンには出さないだろう。

『No.』は論外だ、此処ARC-Vの世界では(少なくとも俺が持っていたカードは)OCGと殆ど変わらない物となっていたが、そもそも作られたなんて話、聞いた事が無い。

となれば出してくるのは『始祖の守護者ティラス』か、或いは…

 

「そしてこの2体をリリースしてアドバンス召喚!」

 

…へ?

 

「密林の奥地から巨木をなぎ倒し、現れるがいい!異界の王国に君臨する蛮族の王!『バーバリアン・キング』!」

 

バーバリアン・キング

効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 8

攻撃力 3000

 

…え、え?

 

『来なかったぞ遊矢!』

「来ねぇのかよ!」

 

っておい、お前本当にプロデュエリストなのかよ!?

手札4枚も消費して、出したのが最上級モンスター1体だけ!?

其処は何かしら強い効果を持ったエクシーズモンスターを出す所だろ!?

帝とかならまだ分からなくも無いが、それにしてもどうして其処でアドバンス召喚なんだ!

本当にイラッと来るぜ!

 

『出たぁ!いきなりチャンピオン、ストロング石島のエースモンスターの登場だ!』

 

アレがエースモンスター…?

確かにバーバリアン・キングの攻撃力は3000と高い。

クロノス先生のエースである『古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)』、ジャックのエースである『レッド・デーモンズ・ドラゴン』、カイトのエースである『銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン)』等々と同じクラスではある。

今挙げたモンスター達はそれに加えて強烈な効果を併せ持っているし、バーバリアン・キングの効果も決して弱くは無いんだが…

これがストロング石島の後攻なら、此処からまた蛮族の狂宴LV5を使って、墓地にいるバーバリアン1号・2号を蘇生、そしてキングの効果で2体ともリリースして後攻ワンターンキルを決めると想定できる分、今の流れは理解出来る。

だけど攻撃出来ない、つまりキングの効果を全く活かせない先攻1ターン目で、手札4枚も消費してまで態々棒立ちさせたのをエースモンスターと呼ばれても。

はぁ、プロデュエリスト、それも現役チャンピオンだから期待したけど、こんなんじゃぁ満足出来ねぇぜ…

カイザー、ジャック、カイト…

お前達みたいな、才能あふれたデュエリストは何処かにいないのか?

こんなんじゃ、ワクワクやかっとビングなんて言葉、忘れちまうよ。

 

「親父には逃げられちまったが、お前は逃がさん!俺はカードを1枚セットして、ターンエンドだ!」

 

Ishizhima

LP 4000

手札 0

モンスター バーバリアン・キング(攻撃表示)

魔法・罠カード セット

 

セットカードもたった1枚か…

本当に、本当に満足出来ねぇ!

俺はずっと、俺の指導によって育ったデュエリストとのデュエルで満足するしか無いのか!?

 

「俺を、満足させろよ…?」

「何?」

「俺を満足させろと言ったんだチャンピオン!」

 

手札0、最上級モンスター1体、セットカード1枚でターンエンドとか、確かにアクションデュエルの都合上、アクションマジックの存在からそれも良いかも知れないが、だけど、だけどな!

 

「そんなんじゃ、満足できないぜ!俺の心を揺らす様な、そんなデュエルをして見せろ、チャンピオン!」

「ふん、戯けた事を!どうせ口だけだろう?」

 

口だけか、本当にそう思うのなら、俺のデュエルを見せてやる、俺のエンタメデュエルをな!

そう思い、俺がデッキに手を掛けようとした瞬間だった、それが起こったのは。

 

「なっ!?」

『ペンダントが輝いている!?』

『皇の鍵と同じく、特別な力を持ったペンダントだったのか!?』

 

俺の首に、皇の鍵と共に掛けられていたペンダントが光輝き出す。

と同時に、俺はこれまでのデュエルでは感じられなかった満足感を感じていた。

榊遊矢としての俺、今世の俺に与えられた新たなる異能の目覚め、それを感じていた。

 

「これは、満足出来そうだな。俺のターン、シャイニングドロー!」

 

実際にシャイニングドローしている訳じゃ無いが、そのつもりでデッキトップのカードを引き抜いた瞬間、

 

『何!?カードが書き変わった!?』

『ま、まるでリ・コントラクト・ユニバースの様だね…』

「一応言って置くけどさ、ZEXALじゃないからそれ出来ないからな」

 

俺の手札、更にはドローしたカードが書き換わったんだ。

それこそ『RUM(ランクアップマジック)―リミテッド・バリアンズ・フォース』を『RUM―ヌメロン・フォース』に書き換えた時の様に、いや、それ以上の奇跡かも知れない。

あの時は1枚きりだったけど、今は俺の手札が全て、それどころかデッキの大半のカードすらその姿を変化させたのだから。

というか、アニメのARC-Vといえばこれが始まりといっても差支えなかったよな。

 

「だけど、気分は前世だな。かっとビングだ、俺!

俺はスケール1の『龍脈の魔術師』と、スケール5の『慧眼の魔術師』を、ペンデュラムスケールにセッティング!」

 

ペンデュラムスケール(青):1(龍脈の魔術師)

ペンデュラムスケール(赤):5(慧眼の魔術師)

 

俺の宣言と、デュエルディスクの両端にペンデュラムモンスターカード(上半分がモンスターカードとしての色、下半分が魔法カードとしての色のグラデーションとなったカード)となった2枚のカードをセットすると共に、青い光の柱が2つ出現、其処に龍脈の魔術師と慧眼の魔術師が登っていき、其々の柱にNo.の数字とも違った、独特の書体で1と5の数字が刻まれる。

このままペンデュラム召喚、と行きたいけど!

 

「更に、手札のペンデュラムモンスター、『貴竜の魔術師』を捨て、バーバリアン・キングを対象にペンデュラムスケールにセットされた龍脈の魔術師の効果発動!

このカードはペンデュラムスケールにセットされていて、もう片方のペンデュラムスケールに魔術師が存在する時、手札のペンデュラムモンスターを捨てる事で対象のモンスターを破壊する!」

「な、何!?」

「地脈の気を感じ取る龍脈の魔術師よ!その荒ぶる力で敵を討て!ドラゴニック・ウェーブ!」

「なっバーバリアン・キングが!?」

 

まずは下準備だ、と言わんばかりに俺は龍脈の魔術師のペンデュラム効果を発動すると、1と刻まれた柱から発せられた空気の波がバーバリアン・キングを捉え、その振動によってバーバリアン・キングは倒れ伏した。

 

「更にペンデュラムスケールにセットされた慧眼の魔術師の効果発動!

このカードも龍脈の魔術師と同じ条件で発動出来、その効果は、自らを破壊し、デッキから慧眼の魔術師以外の魔術師ペンデュラムモンスターを1体、ペンデュラムスケールにセッティングする!

此処でセットするのは、スケール8の『時読みの魔術師』!

物事の本質を見抜く慧眼の魔術師よ!その冷徹なる眼で架け橋を書き換えろ!リライティング・スケール!

尚、フィールド上で破壊されたペンデュラムモンスターはエクストラデッキへ送られる!」

 

ペンデュラムスケール(赤):8(時読みの魔術師)

 

よし、5と刻まれた柱の数字が8に変わった、これで準備は完了!

後は、もう300年振りか?そんなペンデュラム召喚のお披露目だ!

 

「これでレベル2から7のモンスターが同時に特殊召喚可能!

揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!」

 

俺の宣言と共に、青い光の柱の後ろで巨大な振り子が揺れ、その後ろに大きな穴が開くと3つの光が飛び出して来る。

 

「ペンデュラム召喚!出でよ、我が僕のモンスター達よ!

レベル4、物事の本質を見抜く魔術師『慧眼の魔術師』!レベル7、竜の魂を呼び覚ます冷静な魔術師『竜穴の魔術師』!そして同じくレベル7、世にも珍しき2色の眼を持ちし竜『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!」

 

慧眼の魔術師

ペンデュラム・効果モンスター

光属性

魔法使い族

レベル 4

攻撃力 1500

 

竜穴の魔術師

ペンデュラム・通常モンスター

水属性

魔法使い族

レベル 7

守備力 2700

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2500

 

何となく思うんだが、ペンデュラムモンスターと化したコイツら、凄く回るよな。

と俺は、出現した3体のモンスターを満足げに見ていた。

だけど、まだまだ俺は満足しないぜ!

 

「更に墓地の『貴竜の魔術師』の効果発動!俺のフィールドにいるレベル7以上のオッドアイズモンスター1体、そう、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンのレベルを3下げる事で、手札か墓地にいるこのカードを特殊召喚する!

現れろ、『貴竜の魔術師』!」

 

貴竜の魔術師

ペンデュラム・効果モンスター/チューナー

炎属性

魔法使い族

レベル 3

守備力 1400

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル 7→4

 

「まだまだ終わらない!俺はレベル4の慧眼の魔術師に、レベル3の貴竜の魔術師をチューニング!2色の眼の龍よ!その赤き輝きを解き放ち、味方に活力を、敵に絶望を与えよ!シンクロ召喚!レベル7!『オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン』!」

 

オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン

シンクロ・効果モンスター

炎属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2500

 

「なっシンクロ召喚だと!?馬鹿な、LDSでも教え始めてそれ程時が経っていない召喚方法だぞ!」

 

あ、シンクロ召喚は知っているみたいだな。

恐らくエクシーズ召喚だって知っている筈、だったら入れとけよと突っ込みたいが、それは後でも出来るし、今は俺のデュエルをするまでだ!

 

「オッドアイズ以外のシンクロ素材を使用してシンクロ召喚した事で、貴竜の魔術師は、俺のデッキの一番下に戻る!

更にシンクロ召喚に成功したメテオバースト・ドラゴンの効果発動!このカードの攻撃権を放棄する事で、ペンデュラムスケールにセットされたカード1枚を特殊召喚する!

この効果で特殊召喚するのは、龍脈の魔術師!」

 

龍脈の魔術師

ペンデュラム・通常モンスター

地属性

魔法使い族

レベル 4

攻撃力 1800

 

よし、最後の仕上げだ!

 

「そして、スケール1の『星読みの魔術師』をペンデュラムスケールにセットして、バトルフェイズ!」

 

ペンデュラムスケール(青):1(星読みの魔術師)

 

「龍脈の魔術師でダイレクトアタック!ドラゴニック・バースト!」

「させるか!アクションマジ(ビーッ!ビーッ!)な、何故発動出来ない!?」

「天空を見定める星読みの魔術師よ!その深淵なる力であだなす敵を封じよ!ホロスコープ・ディビネイション!

星読みの魔術師がペンデュラムスケールにセットされていて、俺のペンデュラムモンスターが戦闘を行う場合、相手はダメージステップ終了まで魔法カードを発動出来ない!」

「何っ!?ならば罠カー(ビーッ!ビーッ!)またか!?今度はなんだ!?」

「時空を見定める時読みの魔術師よ!その緻密なる力で我を守護せよ!インバース・ギアヴィス!

これはいわば、星読みの魔術師の効果の、罠カード版と言える効果!」

「なっ!?ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

Ishizhima LP 4000→2200

 

「さあ、次の攻撃によって、俺のワンターンキルが完成となります!皆さん、ご唱和下さい!

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンのダイレクトアタック!」

 

龍脈の魔術師のダイレクトアタックによってストロング石島のLPが、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの攻撃力以下となった事で、俺は手を振り上げて、観客にフィニッシュをアピールする。

そして、振り下ろしながら、

 

「「「「螺旋のストライク・バースト!」」」」

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

Ishizhima LP 2200→-300 LOSE

 

WINNER Yuya

 

攻撃を宣言、勝負を決めた!

そして、フィールド及びストロング石島に背を向け、観客席へと手を広げ、

 

「これにて俺、榊遊矢のエンターテイメントデュエルの幕を閉じさせて頂きます!次のエンターテイメントデュエルの機会をお楽しみに!」

「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」

 

勝利宣言をすると、再びの大喝采、俺もそれに笑顔で応え、観客へと手を振った。

これが始まりなんだと、噛みしめる様に。



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3話_俺達、紹介!

「それじゃあ、遊矢の勝利を祝ってェ!」

「「「「乾杯!」」」」

「ありがとう、皆!」

 

ストロング石島とのデュエルが終わり、夜の遊勝塾では、俺の祝勝会が急遽行われ、遊勝塾生総出で祝われる事となった。

正直な事を言うと本当にプロと戦っているのかと思う状態だったあのデュエルで、勝った事を祝われるのは複雑な気分なんだが、それでも知名度抜群な相手に圧勝したという事は、俺の実力を世界中が目の当たりにしたという事、いずれ俺が望んでいる様な相手と会う事もあるだろう、故に今日のデュエルは決して無駄じゃないと、素直に祝われる事にした。

 

「やっぱおめェすげェな、遊矢!おめェなら勝てると信じてたけど、まさかプロ相手にワンターンキルとかさァ!」

「はは、ありがとうな、一行」

 

今、俺にどっかの一方通行さんの様な口調で話し掛けて来たのは、ジュニアユースクラスの塾生で、俺と同級生の上村(うえむら)一行(いっこう)

モノクロを基調とした服装にイヤホン(スマホと繋いでいるそうだ)、銀髪で赤目とどっからどう見ても一方通行さんなコイツは、俺が舞網チャンピオンシップ・ジュニアクラスで初めて優勝した小学4年生の時、そのデュエルを見て衝撃を受けたそうで、俺や父さんからエンターテイメントデュエルを教わりたいと加入した。

あのデッキでのデュエルの真意を小学4年生で見抜くとか、当時のお前どんだけマセてんだよ…

 

「やったな、遊矢!あ、でもおおっぴらな場面でシンクロ召喚しても良かったのか?」

「別に良ィじゃねェか当麻!シンクロ召喚なンざLDSとかで普通に教わるもンなンだし、去年の舞網チャンピオンシップだって使って来た奴いたじゃねェか!全くこまけェンだよおめェは!」

「いや細かくねーだろ!遊勝塾内と、権現坂道場との交流戦以外では余り使うなって塾長から言われていただろ!その辺り知らない相手に使うのはフェアじゃねぇからって事で!」

「プロ相手にフェアもクソもあっかバカタレ!第1ストロング石島はLDSの広告塔だからそこら辺知ってンだろォし、問題ねェだろ!いちいち噛みつきやがって、やンのかおめェ!」

「上等だ!表に出てデュエルだ!」

「お前ら程々にな」

「諍いからのデュエルで絆が深まる、これぞ熱血だ!」

 

次に声を掛けて来たのは、同じくジュニアユースクラスの塾生で、同級生の冴木(さえき)当麻(とうま)

黒のツンツンヘアーに黒目、私服には全く頓着していないと言わんばかりに、中学の制服を何時も着用しているという、こっちはこっちでどっかの上条さんみたいな姿のコイツも、一行と同じ時期に、俺のプレイングに圧倒されたそうで、加入した。

因みに、今の光景を見ても明らかではあるが、一行と当麻は同期のライバル意識からか、口論から良くデュエルに発展する。

決して仲は悪くないんだが、やっぱ同じ時期に遊勝塾に入ったとか、同級生だとか、そういった『同じ』要素を持っているからか、ふとしたきっかけでケンカ紛いのデュエルに発展する。

周りも何時もの事と分かって居るし、リアルファイトになる事は無いと言って良い為、半ば放任状態、というか塾長を中心に「良いぞもっとやれ」状態だ。

 

「遊矢兄ちゃん!プロとのデュエルの勝利、おめでとう!」

「遊矢兄ちゃんのオッドアイズが見せた最後の一撃、痺れたなぁ!」

「格好良かったよ、遊矢兄ちゃん!」

「あの時見せた、えーとペンデュラム召喚でしたっけ、凄く綺麗でした、遊矢兄ちゃん!」

 

そして、ジュニアクラスに属する塾生の『4人』。

「痺れるぅ!」が口癖の太った男の子、原田(はらだ)フトシと、赤毛の髪にカシューシャをつけた女の子、鮎川(あゆかわ)アユ、そして眼鏡を掛けた男の子、山城(やましろ)タツヤ、と、此処までならタツヤがやけに早く加入しているなと、原作を知っている人から突っ込まれそうな以外は原作通りの面々だが、他にも、

 

「ありがとうな、フトシ、アユ、タツヤ、そしてエレン」

「まああれがもしストロング石島の本気だとしたら、俺でも勝てそうだけどなぁ」

「え、エレン、それは言い過ぎだよ」

「何処がだよ、アユ。あんなプレイング、プロにしちゃお粗末にも程があるだろ」

 

生意気そうな口調でストロング石島をバッサリ切り捨てた、黒髪にエメラルドの様な眼の男の子、エレン・アヴェニール。

この4人は全員同級生だが、エレンだけ他の3人よりも塾生としてのキャリアは、『圧倒的』が付くほど長い、というか、ジュニアユースに属している一行や当麻と同期だ。

実を言うとこのエレン、物心ついた時から親がおらず、遊勝塾に加入するまでは施設で過ごしていたんだけど、ふとしたきっかけで、大会での俺のデュエルを見て感動し、「このお兄ちゃんの所でデュエルをやりたい!」と、施設を通じて遊勝塾、というか我ら榊家に養子(という名の弟子)入りをお願いして来た。

突然の事でびっくりはしたけど、父さんの意向もあってそれに応じ、以来榊家のもとで勉強やデュエルにのめりこみ、実力もジュニアクラスでも飛びぬける、というかジュニアユースクラスに属している俺達にすらある程度の勝率を叩き出す程にまで成長し、昨年初めて参加した舞網チャンピオンシップ・ジュニアクラスでは他のデュエリストを圧倒、優勝するに至り、『完全決闘者の一番弟子』という異名で呼ばれる様になった。

まあ他にも色々とあるんだが、それはまたの機会にな。

 

以上の、俺、柚子、一行、当麻のジュニアユースクラスの4人と、エレン、フトシ、アユ、タツヤのジュニアクラスの4人、合計8人が、此処遊勝塾の塾生だ。

さて、遊勝塾のメンバー紹介は此処までにして、

 

「なぁ、柚子」

「ん?どうしたの、遊矢?」

「ペンデュラム召喚の事なんだけどな、恐らく明日はそれ見たさに、多くの加入希望者が押し寄せて来ると思う」

「あー、そうね。融合やシンクロ、エクシーズまではLDSでも指導をしていたし、それほど目立たないけど、遊矢が初めて行った全く新しい召喚方法、それが見たいが為、来るのは予想できるわね…」

「ごめんな、お前に余計な仕事をさせる事になっちまって」

「い、良いわよ、そんな。元はと言えば私がソリッドビジョンシステムを壊しちゃったのが原因なんだし…」

「いや、それは関係ないだろ。そもそもストロング石島からのデュエルのオファーはそれとは全く関係なく来たんだし」

「で、でも…」

 

とりあえず柚子と、明日の事を話し合う。

今日、大々的に披露された、全く新しい召喚方法『ペンデュラム召喚』、それを目の当たりにした人々はどうなるか、まず間違い無く、もう1回見たいと俺の所に押し寄せるに違いない。

それを披露して塾生が増えました、と普通に考えれば、塾生8人しかいない俺達にとっては、切磋琢磨していく存在が増えて良い事なんだが、そうは問屋が卸さない事情がある。

塾としての規模だ。

3年前に父さんが失踪して以来、俺が『臆病者の息子』と言われた事の話は以前したよな?

そう、それまではそれなりの規模を誇っていた遊勝塾、しかしその事件以降、塾生は勿論、父さんに付く形で資金や施設の提供をしてくれたスポンサー等が次々と離れて行き、規模の縮小を余儀なくされた。

塾生の問題こそ、俺が、いや俺達が大会において暴れ回った事でその指導力が知れ渡り、加入希望者は大いに集まって来ているんだけど、資金力、それを提供してくれるスポンサーまではどうしようも無い。

結果としてソリッドビジョンシステムは、柚子がこの前ぶっ壊しちゃった1つをやりくりせざるを得ず(それはストロング石島とのデュエルの報酬として貰った最新型に代わりはしたが、依然1つのままだ)、故に塾生の受け入れを制限せざるを得なくなり、加入希望者たちを泣く泣く門前払いする事になってしまった。

受け皿を広く出来なければ、水はその程度しかゲットできないんだ。

 

「まあそれは良いとして、明日はそういったペンデュラム召喚見たさに押し寄せるに違いない。よって、明日は俺と塾生でデュエルをして、ペンデュラム召喚のデモンストレーションをしたいんだ」

「成る程ね、分かったわ。そしたら相手はどうしようかしら?私のデッキだと、ペンデュラムモンスターの詳細を教えられる状況を作るのは難しいし…

そうだ、一行か当麻が良いわ。あの2人のデッキなら、より詳しく教えられる状況を作り出せるし」

「そうだな、さてあの2人のデュエル、終わったかな?」

 

よし、明日の予定は決まった。

因みに明日の対戦相手となる2人の様子を見ると、へとへとの状態で、背中合わせで座っている姿があった、まあこれもデュエルが終わった後の、何時もの光景だが。

 

------------

 

「こちらの書類にお名前をご記入ください!ちゃんと並んで下さーい!」

「押さないで押さないで!希望者の方全員、受付は必ず行いますので!」

「デュエルフィールドにて、ペンデュラム召喚のデモンストレーションを行いますので、受付を済ませた方は観客席へどうぞ!こちらです!」

 

翌日、其処には予想していた光景が広がっていた。

塾の入り口前には加入希望者が殺到、その受付を柚子と当麻が、受付を済ませた希望者の誘導を俺が担い、てんてこ舞いだった。

一行?アイツ平時でも口調が荒いからこういうの向いていないので、代わりに別の仕事を任せている。

 

「よし、これで希望者は全員か?」

「そうね、予想はしていたけど、随分と集まったわね…」

「本当だぜ、行列を捌くのってこんな大変なんだな…

あ、そろそろデモンストレーションの時間だろ?早くスタンバイして来いよ」

「分かった、当麻。2人とも、後はよろしくな」

 

後の対応を2人に任せつつ、俺はアクションフィールドへと向かう、と、其処には、

 

「おォ、逃げねェで良く来たなァ、完全決闘者(パーフェクト・デュエリスト)さンよォ!」

 

既に展開されていた(柚子から『プレイン・プレーン』という、広大な草原のフィールドだと聞いた)アクションフィールドのど真ん中で、『ヴェルズ・オピオン』の顔を模した仮面で、顔の上半分を覆った1人の男がいた…

まあ、一行なんだけどね。

 

「誰が逃げるか!ヴェルズ・イッコー!」

「はっその心意気だけは認めてやンよォ!まァ、喋りは終わりにして、とっとと始めっかァ!」

 

言うまでも無く、俺をヒーロー、一行をアンチヒーローに見立てたエンターテイメントデュエルのつもりである。

 

「戦いの殿堂に集いしデュエリストがァ!」

「モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!」

「フィールド内を駆け巡るゥ!」

「見よ、これぞデュエルの最強進化系!」

「「アクショーン、デュエル!」」

 

先攻 Ikko LP 4000 VS 後攻 Yuya LP 4000



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4話_俺、披露!

「俺のターン!先攻はドローが無ェ。

まずはコイツだァ!『ヴェルズ・カストル』を召喚!」

 

ヴェルズ・カストル

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1750

 

一行が出したのは、端末世界(ターミナルワールド)での伝説の騎士団『セイクリッド』に属していた騎士カストルが、死後ヴェルズにその身を侵食されて生まれ変わった姿、ヴェルズ・カストル。

そう、一行のデッキは『ヴェルズ』、レベル4の下級モンスターを中心とした展開力と、其処から登場するランク4エクシーズモンスターでフィールドを制圧するデッキだ。

そしてカストルは、このエクシーズ召喚を行う上で欠かせない効果を持っている、それは、

 

「ヴェルズ・カストルの効果で、俺はヴェルズをもう1体召喚するぜェ!『ヴェルズ・サラマンドラ』を召喚!」

 

ヴェルズ・サラマンドラ

効果モンスター

闇属性

恐竜族

レベル 4

攻撃力 1850

 

ヴェルズ限定の『二重召喚(デュアルサモン)』を内蔵している事。

コイツや『ヴェルズ・ケルキオン』、『ヴェルズ・マンドラゴ』が、さっき言っていた、下級ヴェルズの展開力の源、と言って良い。

その効果で一行が次に召喚したのは、端末世界におけるヴェルズ及びそのウィルスのキャリアーであるインヴェルズの侵攻の前に繰り広げられた魔轟神との戦いで命を落としたジュラック達、その怨念がヴェルズによって具現化し、『ジュラック・タイタン』がヴェルズ化した様な姿、ヴェルズ・サラマンドラ。

 

「さァて、もういっちょ行くかァ!俺はヴェルズ・カストルとヴェルズ・サラマンドラをオーバーレイ!2体のレベル4・ヴェルズモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!わりィがこっから先は、上級モンスターお断りの一方通行だァ!『ヴェルズ・オピオン』!」

 

ヴェルズ・オピオン

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

ランク 4

攻撃力 2550

ORU 2

 

出たよ、ヴェルズデッキの中核と言える存在が。

一行の宣言と共にデュエルフィールドに出現したブラックホールの様な空間ことオーバーレイ・ネットワーク、其処にヴェルズ・カストルとヴェルズ・サラマンドラが入って行き、それが解放されると其処には、端末世界の勢力である氷結界が封印していたドラゴン、『氷結界の龍グングニール』がヴェルズによって侵食された姿、ヴェルズ・オピオンが、2つの紫色の光球、オーバーレイ・ユニットを周囲に衛星の如く漂わせて現れた。

 

「更にオピオンのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!デッキから『侵略の』と名の付いた魔法・罠カードを1枚サーチするぜェ!この効果で手札に加えるのは、『侵略の汎発感染』だァ!

カードを2枚セットして、ターンエンド!

分かってるたァ思うが、オーバーレイ・ユニットを持ったオピオンがいる限り、レベル5以上のモンスターは特殊召喚出来ねェから、気ィ付けなァ!」

 

ヴェルズ・オピオン ORU 2→1

 

Ikko

LP 4000

手札 2

モンスター ヴェルズ・オピオン(攻撃表示)

魔法・罠カード セット×2

 

最初から飛ばすなぁ、一行。

さて、オーバーレイ・ユニットを持ったオピオンがいるからレベル5以上のモンスターはアドバンス召喚するしか無い、つまり俺の切り札であるオッドアイズ達は、オピオンを何とかしない限り出す事は無理に近い。

なら此処は、

 

「俺のターン!ドロー!

スケール1の龍脈の魔術師と、スケール5の慧眼の魔術師を、ペンデュラムスケールにセッティング!」

 

ペンデュラムスケール(青):1(龍脈の魔術師)

ペンデュラムスケール(赤):5(慧眼の魔術師)

 

「更に、手札の『貴竜の魔術師』を捨てて、オピオンを対象に、ペンデュラムスケールにセットされた龍脈の魔術師の効果発動!」

「させねェよ!それにチェーンして速攻魔法『侵略の汎発感染』発動!」

 

侵略の汎発感染

速攻魔法

自分フィールド上の全ての『ヴェルズ』と名の付いたモンスターは、このターンこのカード以外の魔法・罠カードの効果を受けない。

 

「侵略の汎発感染の効果で、俺のオピオンはコレ以外の魔法・罠カードの効果を受けねェぜ!ペンデュラムスケールに置かれたペンデュラムモンスターは魔法扱い!よってオピオンは破壊されねェぜ!」

「くっやるな…!」

 

あ、このデュエルはあくまでペンデュラムに関するデモンストレーション、一行が汎発感染を握っていると分かっていながら、セットしただろうと思いながら龍脈の魔術師の効果を使ったのも、その方が説明しやすいからと思ったからだ。

此処で顔をしかめたのも演出だ。

 

「ならばペンデュラムスケールにセットされた慧眼の魔術師の効果発動!このカードを破壊し、デッキから慧眼の魔術師以外の魔術師ペンデュラムモンスター、時読みの魔術師をペンデュラムスケールにセットする!リライティング・スケール!

此処で破壊したペンデュラムモンスター、慧眼の魔術師はエクストラデッキへ送られる!」

 

ペンデュラムスケール(赤):8(時読みの魔術師)

 

「此処で、双方のペンデュラムスケールの間のレベル、此処では1から8の間、つまりレベル2から7のモンスターを、手札及びエクストラデッキからペンデュラム召喚する!」

「だがペンデュラム召喚は特殊召喚!オーバーレイ・ユニットを持ったオピオンがいる限りレベル5以上のモンスターを出す事は出来ねェぜ!実質、ペンデュラム召喚出来るのはレベル2から4だ!」

「分かっているさ!ペンデュラム召喚!出でよ、我が僕のモンスター達よ!

レベル4、物事の本質を見抜く魔術師『慧眼の魔術師』2体!」

 

慧眼の魔術師

ペンデュラム・効果モンスター

光属性

魔法使い族

レベル 4

守備力 1500

 

昨日のストロング石島とのデュエルを再現したかの様なこのターンのプレイング、しかしストロング石島のバーバリアン・キングがこっちのプレイングには何の障害にもならなかった(むしろ『貴竜の魔術師』を墓地送りに出来たという意味で助かった)のに対し、一行のオピオンは大きすぎる楔となった、此処は守りに徹しよう。

 

「カードを1枚セットして、ターンエンド!」

 

Yuya

LP 4000

手札 1

Pスケール(青):1(龍脈の魔術師)

Pスケール(赤):8(時読みの魔術師)

モンスター 慧眼の魔術師(守備表示)×2

魔法・罠カード セット

 

「俺のターン!ドロー!

此処はこォすっかァ!オピオンのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!効果はさっき説明したから飛ばすぜェ!手札に加えるのは2枚目の汎発感染!

更に『ヴェルズ・ケルキオン』を召喚!」

 

ヴェルズ・ケルキオン

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1600

 

攻め手を緩めはしないと言わんばかりに、一行が召喚したのは、セイクリッドの後方支援をしていた魔法使いハワーが、『ヴェルズ・バハムート』と『ヴェルズ・ウロボロス』、そしてオピオンのヴェルズ3龍と融合して誕生した姿、ヴェルズ・ケルキオン。

 

「ケルキオンの効果発動!俺の墓地にあるヴェルズモンスター、サラマンドラを除外する事で、俺の墓地にあるヴェルズモンスター、カストルを手札に加えるぜェ!

更にこの効果を適用した事で、ケルキオンの2つ目の効果が使えるぜェ!

この効果で、今手札に加えたカストルを召喚!」

「させるか!その召喚にチェーンしてカウンター罠発動!『神の宣告』!」

「ンなァ!?」

 

神の宣告(制限カード)

カウンター罠

1:LPを半分払って以下の効果を発動出来る。

●魔法・罠カードが発動した時に発動出来る。その発動を無効にし破壊する。

●自分または相手がモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚する際に発動出来る。それを無効にし、そのモンスターを破壊する。

 

Yuya LP 4000→2000

 

「神の宣告の効果で、カストルの召喚は無効だ!」

「くっやってくれンじゃねェかァ!

カードを1枚セットしてターンエンド!」

 

Ikko

LP 4000

手札 2

モンスター ヴェルズ・オピオン(攻撃表示)

      ヴェルズ・ケルキオン(攻撃表示)

魔法・罠カード セット×2

 

よし、オピオンのオーバーレイ・ユニットが無くなり、2体目を立たされなかった(まあこの辺は態とだろうが)、これでレベル5以上のモンスターが、このデッキの、俺の切り札であるオッドアイズが出せる!

 

「俺のターン、ドロー!

それでは、このデュエルの幕引きと行きます!

まずは、ペンデュラム召喚のその先、その1つの可能性をお見せしましょう!

2体の慧眼の魔術師をリリースして、ペンデュラムアドバンス!

世にも珍しき2色の眼を持ちし竜『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2500

 

「更に墓地の『貴竜の魔術師』の効果発動!俺のフィールドにいるレベル7以下のオッドアイズモンスター、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンのレベルを3下げて、特殊召喚!」

 

貴竜の魔術師

ペンデュラム・効果モンスター/チューナー

炎属性

魔法使い族

レベル 3

守備力 1400

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7→4

 

「更に更に、俺はレベル4となったオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンに、レベル3の貴竜の魔術師をチューニング!2色の眼の龍よ!その赤き輝きを解き放ち、味方に活力を、敵に絶望を与えよ!シンクロ召喚!レベル7!『オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン』!」

 

オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン

シンクロ・効果モンスター

炎属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2500

 

まだまだ展開は終わらない、というか始まったばかりだぜ!と意気込みつつ、シンクロ召喚の、遊星だった時とあまり変わっていない演出の後に出現した、炎の様な真紅の身体に2色の眼を持ったドラゴン、オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴンの効果を発動させる。

 

「シンクロ召喚に成功したメテオバースト・ドラゴンの効果発動!このカードの攻撃権を放棄し、ペンデュラムスケールにセットされたカード1枚を特殊召喚する!

この効果で特殊召喚するのは、龍脈の魔術師!」

 

龍脈の魔術師

ペンデュラム・通常モンスター

地属性

魔法使い族

レベル 4

攻撃力 1800

 

「まだまだ!スケール1の『星読みの魔術師』を、ペンデュラムスケールにセッティング!

これで再び、レベル2から7のモンスターが同時に特殊召喚可能!

今一度揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!

ペンデュラム召喚!出でよ、我が僕のモンスター達よ!

レベル3、ドラゴンと同体となり心を調和させる魔術師、貴竜の魔術師!レベル4、物事の本質を見抜く魔術師、慧眼の魔術師!そしてレベル7、世にも珍しき2色の眼を持ちし竜、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!

まだ終わりじゃない!俺はオッドアイズ・メテオバースト・ドラゴンとオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンでオーバーレイ!

2体のレベル7モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!

これが、ペンデュラム召喚のその先、2つ目の可能性、ペンデュラムエクシーズ!

2色の眼の龍よ!その青き輝きを解き放ち、絶対零度で敵を制圧せよ!『オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン』!」

 

オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン

エクシーズ・効果モンスター

水属性

ドラゴン族

ランク 7

攻撃力 2800

ORU 2

 

今度はエクシーズ召喚の、遊馬だった時と余り変わっていない演出の後に、氷の様な蒼い身体に2色の眼を持ったドラゴン、オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴンが、1つずつある赤と紫のオーバーレイ・ユニットと共に現れた。

よし、此処で決める!

 

「そして、レベル4の慧眼の魔術師にレベル3の貴竜の魔術師をチューニング!これが、ペンデュラム召喚のその先、3つ目の可能性、ペンデュラムシンクロ!

再び現れよ!『オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン』!

他のシンクロ素材にオッドアイズ以外のモンスターを使用した事で、貴竜の魔術師は俺のデッキの一番下に戻り、バトルフェイズ!

龍脈の魔術師で、オピオンを攻撃!」

「は、はァ!?此処に来て自爆特攻かァ!?」

「と見せかけて、オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴンのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!

今の攻撃を無効にし、俺の墓地からオッドアイズモンスター、たった今墓地に送られたオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを蘇生します!

オッドアイズ・リボーン!」

「な、何ィ!?」

 

アブソリュート・ドラゴンの効果によってペンデュラム・ドラゴンが蘇生した事で、俺のフィールドに3体のオッドアイズ・ドラゴンが並んだ。

こう見ると壮観だよな、巨大なドラゴンが3体並び立つってのは。

 

「続いて、今蘇生したペンデュラム・ドラゴンでケルキオンを攻撃!この際、ペンデュラム・ドラゴンが相手モンスターと戦闘を行う場合、相手に与える戦闘ダメージは倍になる!

螺旋のストライク・バースト!」

「ぐぁぁぁぁぁぁ!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力 2500 VS ヴェルズ・ケルキオン 攻撃力 1600

 

Ikko LP 4000→2200

 

「更にアブソリュート・ドラゴンでオピオンを攻撃!

氷結のブリザード・イラプション!」

「うぉぉぉぉぉぉ!」

 

オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン 攻撃力 2800 VS ヴェルズ・オピオン 攻撃力 2550

 

Ikko LP 2200→1950

 

「これでラスト!メテオバースト・ドラゴンでダイレクトアタック!

灼熱のバーニング・インフェルノ!」

「ぎゃぁぁぁぁぁ!」

 

Ikko LP 1950→-550 LOSE

 

WINNER Yuya

 

------------

 

ペンデュラム召喚のデモンストレーションは無事に終了、したのだが、本当にペンデュラム召喚が見たかっただけなのか、或いは所々グダグダになったっぽいのが(演出の為とはいえ一行がプレイングミスしたり、俺が後攻2ターン目で遊星時代ばりのソリティアをしたりしたからか?)まずかったのか、その後、遊勝塾に加入を希望する人はほとんどおらず、大半はそのまま帰って行った。

まあ殆ど、といっても全員帰った訳では無く、

 

「えーっと、せきどうみこと、さん(スパァン!)あいたぁ!?」

「いするぎでしょ、いするぎ!はぁ、ともかく石動(いするぎ)美琴(みこと)さん、ね。遊勝塾への加入を希望するって聞いたけど?」

「はい、宜しくお願いします!」

 

どっかの電撃姫の様な風貌の女の子、石動美琴が、遊勝塾への加入を希望して来た。

あと当麻、漢字の読みはちゃんと覚えような、カードにはルビが振っていると言っても小さいから、覚えておいて得になる機会は沢山あるんだぞ。



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5話_磁石姫、加入!

「遊勝塾へようこそ!俺の名は榊遊矢。今日は塾長がいないから、代わりに俺達が代表して君を歓迎するよ」

「ありがとうございます、遊矢先輩!先輩の活躍、何時も見させて貰っています!昨日のストロング石島とのデュエル、凄く格好良かったです!」

 

昨日は遊勝塾の現状としてああは言ったが、ソリッドビジョンシステムが代替わりした事、その処理速度の向上によって準備に掛ける時間が格段に減った事も相まって、実は加入希望者のうち何人かを、新たに加えようと考えていた。

其処に、単にペンデュラム召喚見たさだけでは無く、デモンストレーションが終わっても残って加入を希望して来た彼女、石動美琴の存在は、嬉しい限りだ。

なんでも以前から俺の、いや俺達のエンタメデュエルに興味があったらしく、何度か加入希望は送っていて、その都度断られて来たが諦め切れず、今日というタイミングで再度加入を希望して来たとか。

ごめんな、状況が状況とは言え、今まで門前払いをしちゃって。

 

「ただ、此処に加入するにあたって、ちょっとお願いがある」

「は、はい。何でしょうか?」

「君のデュエルを見せて欲しいんだ。人が何に楽しさを覚えるかは千差万別、どの様に楽しませるかもしかり、どんなデッキ、どんなプレイングをするかで、目指すべきエンタメデュエルは変わって来るからね」

「はい、分かりました!」

 

ハイステータスモンスター同士の激突に心踊らせる人もいれば、逆境からの大逆転劇に目を輝かせる人もいる、アクションデュエルならではのアクロバティックな戦闘に感嘆の息を漏らす人もいれば、圧倒した末の蹂躙劇にゾクゾクする人だっている。

デュエリストもそうだ、戦略(デッキ)戦術(プレイング)はそれこそ星の数ほどあり、それによってどう観客や相手を楽しませるかも違う。

石動美琴というデュエリストにとってのエンタメデュエルはどんなものとなるか、それをこのデュエルで見定めてみたい。

 

「それで、相手はどうする?」

「そしたら、其処のバカっぽい先輩で」

「ば、バカ!?幾ら名前読み間違えたからって、バカ呼ばわりは無いだろ!」

「それは仕様が無いでしょ、当麻」

「せきどうはねェだろ、せきどうは。あれか、一年中暑苦しィのか?ンなの塾長だけで充分だっつーの!」

「流石に俺もフォロー出来ないな…」

「皆してひでぇ!くそっ覚えていろ!デュエルの実力と学力は関係ないって事教えてやる!」

 

大丈夫か、当麻が相手で?

 

------------

 

まあ、一悶着あった末に、デュエルは開始された。

 

「戦いの殿堂に集いしデュエリストが!」

「モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!」

「フィールド内を駆け巡る!」

「見よ、これぞデュエルの最強進化系!」

「「アクショーン、デュエル!」」

 

先攻 Toma LP 4000 VS 後攻 Mikoto LP 4000

 

「俺の先攻!カードを3枚セットしてターンエンド!」

 

Toma

LP 4000

手札 2

モンスター なし

魔法・罠カード セット×3

 

「あれだけ大仰に言っていた癖に慎重な動きね」

 

美琴が、当麻のプレイングに訝しむ様な表情を見せるも、当麻のデッキからして、先攻1ターン目、というか全体的に自分から余り動かない事が多いんだ。

 

「なら、こちらから動かせて貰うわ!私のターン、ドロー!

まずは魔法カード『予想GUY』発動!」

 

予想GUY

通常魔法

1:自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動出来る。デッキからレベル4以下の通常モンスター1体を特殊召喚する。

 

レベル4以下の通常モンスター限定、しかも『サイバー・ドラゴン』とかの特殊召喚と良く似た発動条件とはいえ、出したモンスターにデメリットがかされないリクルート魔法か。

中々良いカードを使う、けど、

 

「この効果で『磁石の戦士(マグネット・ウォリアー)β』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

磁石の戦士β

通常モンスター

地属性

岩石族

レベル 4

攻撃力 1700

 

「その特殊召喚成功時、手札の『PSY(サイ)フレームギア・α』の効果発動!

それにチェーンして速攻魔法『終焉の地』発動!」

「なっ手札からモンスターカードの効果ですって!?」

 

終焉の地

速攻魔法

相手がモンスターの特殊召喚に成功した時に発動する事が出来る。自分のデッキからフィールド魔法カード1枚を選択して発動する。

 

知らないとは言え、当麻相手には迂闊だったな。

 

「チェーン処理に入る!まずは終焉の地の効果で、デッキからフィールド魔法『PSYフレーム・サーキット』を発動する!因みに、アクションデュエル中は、フィールド上では永続魔法扱いになる!」

 

PSYフレーム・サーキット

フィールド魔法(永続魔法扱い)

1:自分フィールドに『PSYフレーム』モンスターが特殊召喚された場合に発動出来る。自分フィールドの『PSYフレーム』モンスターのみをシンクロ素材としてシンクロ召喚する。

2:自分の『PSYフレーム』モンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時に、手札の『PSYフレーム』モンスター1枚を捨てて発動出来る。その戦闘を行う自分のモンスターの攻撃力はターン終了時まで、この効果を発動するため捨てたモンスターの攻撃力分アップする。

 

美琴が磁石を模した岩石戦士を特殊召喚すると同時に、当麻の背後に電流の渦が発生する。

更に、

 

「次にPSYフレームギア・αの効果でこのカードと、デッキの『PSYフレーム・ドライバー』を攻撃表示で特殊召喚し、デッキからα以外のPSYフレームカード、『PSYフレームギア・δ』を手札に加える!」

「じ、上級モンスターをリクルートですって!?」

 

PSYフレームギア・α

効果モンスター/チューナー

光属性

サイキック族

レベル 1

攻撃力 500

 

PSYフレーム・ドライバー

通常モンスター

光属性

サイキック族

レベル 6

攻撃力 2500

 

当麻の場に電流を纏った戦士、PSYフレーム・ドライバーと、頭部を中心に装着する増幅器、PSYフレームギア・αが現れた。

そう、当麻のデッキは『PSYフレーム』、相手のプレイングに応じて手札のPSYフレームギアの効果を発動、自らは展開しつつ相手の行動を妨害するのをメインとしたカウンタービートデッキだ。

そして、PSYフレームの真価は、これだけに留まらない。

 

「更にPSYフレームモンスターの特殊召喚に成功した事で、PSYフレーム・サーキットの効果発動!レベル6のPSYフレーム・ドライバーに、レベル1のPSYフレームギア・αをチューニング!お前のモンスターの力が、フィールドを思い通りに出来るってんなら、まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!シンクロ召喚、レベル7!『PSYフレームロード・Z』!」

「し、シンクロ召喚まで!?しかも私のターンなのに!?」

 

PSYフレームロード・Z

シンクロ・効果モンスター

光属性

サイキック族

レベル 7

攻撃力 2500

 

当麻の場に登場したPSYフレーム・ドライバーとPSYフレームギア・αが背後の、電流の渦に直ぐ様飛び込み、其処からシンクロ召喚の演出と共に、電流を纏った機械人間の様な戦士が飛び出して来た。

そう、専用サポートカードであるPSYフレーム・サーキットを用いての、相手ターンでのシンクロ召喚だ。

本来シンクロ召喚は、自分のメインフェイズにしか出来ない。

一応相手ターンにシンクロ召喚を行えるカードとして『緊急同調』があるがそれはバトルフェイズ限定だった、が、このPSYフレーム・サーキットはPSYフレームモンスターが特殊召喚された場合にシンクロ召喚が出来る。

こういった奇襲戦法が、PSYフレームデッキの醍醐味なんだ。

一方の美琴のデッキは、磁石の戦士か?

となれば切り札は、

 

「くっだけどその攻撃力じゃ、私の切り札の足元にも及ばないわ!フィールドの磁石の戦士βと、手札の『磁石の戦士α』、『磁石の戦士γ』をリリースして、合体召喚!『磁石の戦士マグネット・バルキリオン』!」

 

磁石の戦士マグネット・バルキリオン

効果モンスター

地属性

岩石族

レベル 8

攻撃力 3500

 

やっぱり持っていたか、元祖デュエリストキングこと武藤遊戯が持っていたエースモンスターの一角、マグネット・バルキリオンを。

フィールドにいたβと、美琴の手札から飛び出して来たαとγ、3体の磁石の戦士がそれぞれ分解、合体し、美琴のフィールドに舞い降りた、マグネット・バルキリオン。

その攻撃力もさることながら、

 

『マグネット・バルキリオン、か。彼女がエクシーズ召喚を会得すれば、あのカードは、あれを主軸としている彼女は、間違いなく化けるぞ』

 

現環境下では、むしろその効果の方が強烈だ。

その効果は、自分自身をリリースする事で、墓地にある3体の磁石の戦士を蘇生させるという物。

磁石の戦士は3体ともレベル4・地属性・岩石族、つまり即座にエクシーズ召喚につなげる事が出来る。

しかも同属性・同種族・同レベルが3体、挙げ句に複数のレベル4モンスターを用いるランク4モンスターは強烈な効果を持ったモンスター揃い、となれば、

 

・そのターン中にプトレノヴァインフィニティ、おまけに蘇生カードがあればもう1回出来る。

・他にレベル4モンスターがいればホプライ量産可

 

他にも様々なあくどい事が出来る。

見た所美琴のエクストラデッキにはカードが無かったから、まだその真価は発揮出来無さそうだが、アストラルが言った通り、彼女は間違いなく化ける。

惜しむべきは、

 

「その特殊召喚成功時、PSYフレームロード・Zの効果発動!相手フィールドの、特殊召喚された表側攻撃表示モンスター、ここはお前のマグネット・バルキリオンと、このモンスターを、次の俺のスタンバイフェイズまで除外する!」

「な、また私のターンで動くの!?」

 

彼女が今の実力を見せようと選んだデュエルの相手が、徹底してカウンターを仕掛ける当麻だった事か。

美琴が手札4枚消費してフィールドに出したマグネット・バルキリオン、しかし即座にその身をPSYフレームロード・Zが捕まえ、そのまま持ち前の瞬発力を活かして2体揃って消えて行ってしまった。

 

「ならもう1回、予想GUYを発動!」

「それにチェーンして、さっき手札に加えた『PSYフレームギア・δ』の効果発動!

手札のこのカードと、墓地のPSYフレーム・ドライバーを攻撃表示で特殊召喚し、その発動を無効にして破壊する!」

「つ、次から次へと私の行動が…!」

「まだまだ終わらない!PSYフレームモンスターの特殊召喚に成功した事で、PSYフレーム・サーキットの効果発動!レベル6のPSYフレーム・ドライバーに、レベル2のPSYフレームギア・δをチューニング!お前のカードの力が、状況を思い通りに出来るってんなら、まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!シンクロ召喚、レベル8!『PSYフレームロード・Ω』!」

 

PSYフレームロード・Ω

シンクロ・効果モンスター

光属性

サイキック族

レベル 8

攻撃力 2800

 

『当麻の奴、えげつないね…

余程バカ扱いされたのが腹に据えかねていたのかな…?』

「それは…

無い、とは言えないかもな。とは言えどんな相手にも常に最善のプレイングをする、そんなうちの方針に則っているだけだろう、と信じたいな」

 

美琴の魔法カードの発動にチェーンしての、PSYフレーム・ドライバーと、両腕に装着する増幅器、PSYフレームギア・δの特殊召喚と効果無効破壊、そして其処からのシンクロ召喚と、本気のプレイングで美琴の動きを阻害しまくる当麻の姿に、俺やユベル達を含め、観客席にいた皆がドン引きしていた。

 

「た、ターンエンドよ!」

 

Mikoto

LP 4000

手札 1

モンスター なし

魔法・罠カード なし

 

------------

 

「PSYフレームロード・Ωでダイレクトアタック!

イマジン・クラッシャー!」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

Mikoto LP 1200→-1600 LOSE

 

WINNER Toma

 

「分かったか?学力だけでデュエルの実力は測れないって事が(スパァン!)あいたぁ!?」

「当麻!幾ら何でもやりすぎよ、やりすぎ!」

 

結局、事態が好転する事は無く、美琴は当麻の前にボロ負けを喫してしまった。

まあ、あれだけ自らの行動を妨害されまくった挙げ句に相手の良い様に動かれて負けたんだ、相当なショックに違いない、と思いきや、

 

「覚えてなさい…!」

 

デュエルに負け、倒れ伏していた彼女の口から聞こえて来たのは、反骨心むき出し、と言わんばかりの気迫に満ちた声だった。

更に、

 

「覚えてなさい、冴木当麻!何時かアンタをデュエルでボッコボコにしてやるんだから!」

 

即座に立ち上がり、当麻に敵意を前面に宣言した。

宣言された当麻も当麻で、

 

「良いぜ、ビリビリ1年生!何時だってデュエルの相手してやるよ!」

 

と返していた。

俺達がフォローしなくても大丈夫そうだな、この様子なら。

 

こうして遊勝塾に、9人目の塾生、石動美琴が加わった。



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6話_沢渡、来襲!

注:今話は、あるキャラへの重大なアンチが入っています。
そのキャラのファンの方、ご容赦ください。


「あの、榊遊矢さんですよね!ストロング石島とのデュエル、凄く格好良かったです!」

「ん?ああ、榊遊矢は俺だけど、君は?」

 

唐突で悪いが、このやりとりをどう思う?

これだけでピンときた読者は、アニメのARC-Vを良く知っているな、と答えておこう。

まあ事の経緯を説明すると、

 

学校での授業が終わりました

帰り支度をして、遊勝塾へ向かいました

其処に、金髪交じりのナルシストっぽい雰囲気の奴が、俺を呼び止めました←今ココ

 

そしてそのナルシストっぽい奴は、

 

「俺ですか?俺の名は沢渡(さわたり)シンゴと言います」

 

そう、ARC-Vでも屈指のネタキャラとして名高い、あの沢渡シンゴだ。

原作ARC-Vだと確か3話だったっけ、LDS(レオ・デュエル・スクール)の上層部からの指令で俺、というかアニメの遊矢からペンデュラムモンスターをパクる為に接近、LDSに誘い込んでひったくった挙げ句に取り巻き達を使って柚子達を人質に取り、遊矢とデュエルをしたんだよな。

で、結局負けて、今度は力ずくでカードを奪い取ろうとしたけど、其処にさっそうと現れた、確か素良だっけ?に撃退されて撤退、その後「ネオ沢渡」と称して悪だくみを考えている所に…

その後どうなったんだかは正直分からない、ぶっちゃけショップデュエルの開催時間的に放送に間に合わない事から、アニメは専らレンタルDVDで見ていた事が多かったからな。

でもまあやれ「俺カードに選ばれ過ぎィ!」だの、やれ「それがこの俺」「「「沢渡さぁーん!」」」だの、やれ「ネオ沢渡」だのと、初登場した頃からネタ要素満開だから、今でもアニメではギャグキャラ枠としてメインを張っているんだろうな。

まあ、最初に死ぬ前の話を今更してもしょうがない、此処は一先ず原作通りに進ませるか。

ユベルにアストラル、コイツらが何か仕出かそうとしたら頼むな?

 

『勿論さ、遊矢。コイツには少し痛い目に会って貰わないとねぇ』

『任せろ、遊矢。カードを屑と罵る奴を見過ごすわけには行かない』

 

俺の背後にいる(普通の人には見えない)2人の相棒をスタンバイさせつつ、

 

「それで、どうしたの沢渡君?」

「えーとですね、ストロング石島とのデュエルで見た、ペンデュラム召喚なのですが、是非とも俺や、俺の親友たちに見せて頂きたのですが、宜しいですか?」

 

話を進める。

 

「ああ、良いよ。で、その親友は何処にいるんだい?」

「ありがとうございます!では、案内しますよ」

 

俺があっさりと乗ってくれた事で上手くいったと思ったのか、本当にうれしそうな声で俺を案内する沢渡。

途中、柚子達にも会いはしたが、「ちょっと野暮用があるから、先に塾に行ってくれ」と一言いれ、沢渡の指示にそのまま従って行った。

で、案内されたのが、

 

「LDSか。君の親友は此処の所属なのかい?」

「はい、そうですよ」

 

沢渡たちのホームグラウンドたるLDS、此処で原作通りにパクろうって算段か。

仮に失敗しても逃げ切れるという考えからだろうが、甘いぜ?

内心そう思いつつも顔に出さないようにしつつ、沢渡の案内でフィールドへの道を進んでいく俺。

周囲を見渡してみると、様々なコースの、様々なクラス分けがされた教室が目に入る。

総合コースに、融合コース、シンクロコースに、エクシーズコース…

なんで儀式コースが無いんだ、俺が去年の舞網チャンピオンシップ・ジュニアユースクラスで優勝した時に使ったのは儀式メインのデッキなんだけど。

今のご時世、儀式だって環境を突っ走る事が出来るんだぞ?

デミスドーザーしかり、リチュアしかり、ネクロスしかり、俺のデッキの1つしかり、だ。

と、憤慨していると着いた様で、其処には沢渡の親友(という名の取り巻き)が3人スタンバイしていた。

 

「彼らが、君の親友?」

「ええ。さて、そろそろ…

 

ペンデュラムモンスターをこっちに渡して貰おうか「「あいだだだだだだだ!」」「な、なんだこれ!動けねぇ!」なっ!どうしたんだお前達!?」

 

取り巻きと合流した事で遂に本性を見せ、俺からペンデュラムモンスターを強奪しようとした沢渡、だがそれに合わせて俺に近づこうとした取り巻きの3人は何かに阻まれたかの様に動けず、その様に沢渡は戸惑いの表情を浮かべていた。

 

「やっと本性を見せたか、LDSの狗め」

「なっ!この俺様に向かって狗だと!?俺様を誰だと思ってやがる!」

 

いや、喰いつくの其処かよ。

 

「LDSの施設に俺を誘い込んで、ペンデュラムモンスターを強奪しようって算段だったんだろうが、はっきり言ってバレバレだぜ。ペンデュラム召喚が本気で見たいんならこの前の遊勝塾でやっていたデモンストレーションを見に来ただろうし、その後でもウチに来れば見せる予定だったんだ、丁度最新式のソリッドビジョンを導入したしな。そうせずに自分の関係先であるLDSで見たいとか、怪しさ満載だぜ。そして此処で事を成そうってんだから、狗と呼ぶしかねぇよな?」

「さ、最初から知っていたのか!?」

 

やっとバレている事に気付いた沢渡、ちょっと遅くないか?

あ、ちなみに俺に近づいてペンデュラムモンスターを強奪しようとした取り巻き達が何故動けないのかと言うと、取り巻きの内2人はユベルから(見えない)アイアンクローを喰らい、残りの1人はアストラルによって羽交い絞めにされているからだ。

遊矢に転生した際、ユベルとアストラルは、実体化する事無くこうした物理干渉が出来ると言う、どっかのスタンドの様な事が出来る様になったそうだ。

 

「さて、俺からペンデュラムモンスターを強奪しようとしたとして、強盗未遂で警察に突き出しても良いんだぜ?見た所俺と同年代、なら検挙の対象にする事も出来「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!(ビュゥン!)」おっと!」

 

罠に嵌めたと見せかけて実は逆に嵌められたと思い知った沢渡を更に揺さぶるべく、警察の存在をちらつかせたその時だった、沢渡が何かを俺に向かって投げつけて来たのは。

突然の攻撃とはいえ沢渡と俺とはある程度距離があったし、遊星時代のライディング・デュエル等で動体視力及び反射神経に磨きが掛かっていた俺は難なくそれを避ける、が、

 

「そんな凄いカードは俺みたいな選ばれた奴が使うべきなんだ!お前みたいな奴なんてそんな屑カードで充分なんだよ!」

 

投げられた物、それは、『モリンフェン』、『ハングリーバーガー』、『六武衆―ヤリザ』、『ブロックスパイダー』といった、カードの束、それを見た瞬間、ブツン、という音が聞こえた気がした。

 

「おい、デュエルしろよ」

「はぁ?急に何を言い出すかと思えば「お前が勝てば、望み通りペンデュラムモンスターをやる。お前が負けたら、今の言葉を土下座で謝罪、これで良いな?」良いだろう、その話、のってやるよ!」

「そうそう、今回俺が使うデッキは、メインデッキのモンスターは全て攻撃力2000未満、エクストラデッキは無しだ」

「なんだと!?舐めやがって、絶対に後悔させてやる!」

 

舐めているかどうか、それは直ぐに思い知る事になるぜ?その身でな!

 

------------

 

「戦いの殿堂に集いしデュエリストが!」

「モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!」

「フィールド内を駆け巡る!」

「見よ、これぞデュエルの最強進化系!」

「「アクショーン、デュエル!」」

 

先攻 Shingo LP 4000 VS 後攻 Yuya LP 4000

 

フィールドは、確か『ダークタウンの幽閉塔』、スラム街の様な雰囲気のフィールドで、此処はゲットした瞬間に効果を発揮し、その殆どがデメリット効果のアクショントラップカードしか配置されていないんだよな。

初見だと絶対に引っ掛かりそうなフィールドを選ぶとか、本当にクズだなこいつ。

 

「俺の先攻!おぉ、やっぱ俺ってカードに選ばれてるぅ!

フィールド上にモンスターが存在しない事で、手札の『ソニック・ダーツ・シューター』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

ソニック・ダーツ・シューター(今作オリジナルカード)

効果モンスター

地属性

機械族

レベル 5

攻撃力 1600

 

沢渡が最初に出して来たのは、白いボディ、右腕にダーツ状の弾を装填した大砲を装備している機械兵。

そういえば沢渡が最初に登場した時に使っていたデッキって、アニメオリジナルの『ダーツ』デッキだっけ。

 

「更にコイツをリリースする事で効果発動!

このターン、ダーツモンスターを召喚する時に必要なリリースが無くなる!

この効果で、出て来い!『アルティメット・ダーツ・シューター』!」

 

アルティメット・ダーツ・シューター(アニメオリジナルカード)

効果モンスター

地属性

機械族

レベル 7

攻撃力 2400

 

ソニック・ダーツ・シューターがまるで忍者の如くドロンと消える、と、次の瞬間にはフィールドに白い靄が掛かり、其処から唐突に青いボディの機械兵が姿を現した。

 

「カードを2枚セットして、ターンエンド!

エンドフェイズに、アルティメット・ダーツ・シューターの効果発動!

このターンに効果でリリースしたダーツモンスターを蘇生する!

出て来い!ソニック・ダーツ・シューター!」

 

と思ったら、沢渡のターンエンド宣言と共に、ソニック・ダーツ・シューターが瞬時に戻って来た。

 

Shingo

LP 4000

手札 1

モンスター アルティメット・ダーツ・シューター(攻撃表示)

      ソニック・ダーツ・シューター(攻撃表示)

魔法・罠カード セット×2

 

さて、俺の手札にはもう、俺の切り札を出す為の算段は付いている。

後は、出て来るまでに妨害されなければ良いが…

 

「俺のターン!ドロー!

まずは『ダーク・グレファー』を召喚!」

 

ダーク・グレファー

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1700

 

俺の側に、最初に出現したのは、ドラゴンを操る才能を持つと言われている『戦士ダイ・グレファー』が、『運命の分かれ道』において道を踏み外してしまった事で現れた新たなる選択肢『苦渋の転生』によって選んだ可能性の1つ、ダーク化した姿『ダーク・グレファー』。

 

「墓地肥やしの定番モンスターか。随分とまた贅沢なカードを」

「ダーク・グレファーの効果発動!

手札の闇属性モンスター『レベル・スティーラー』を捨てる事で、デッキから闇属性モンスター、『ヘルウェイ・パトロール』を墓地へ送る!」

 

俺が効果を処理して行くとダーク・グレファーの、剣を持っていない方、つまり左手に黒い炎が灯り、やがてそれを握りつぶした。

まあ演出に関してはスルーして、沢渡が言った通りダーク・グレファーは、此処ARC-Vの世界においても闇属性を扱うデッキにおいて、制限カード入りした『終末の騎士』と同じく墓地肥やしの定番と化している。

俺の今使っているデッキにおいてもこの動きは重要、何故なら、

 

「更に今、墓地へ送ったヘルウェイ・パトロールの効果発動!

コイツを除外する事で、手札から攻撃力2000以下の悪魔族モンスター1体を特殊召喚する!

来い、俺の相棒『ユベル』!」

『フフ、ボクの出番だね。さあ、遊矢を馬鹿にした事を後悔させてあげるよ!』

 

ユベル

効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 10

攻撃力 0

 

今しがた俺の側に(実体化した状態で)出現した俺の相棒、それをいち早く出す為のキーだからだ。

 

「うわぁ、気色悪いなソイツ!しかもレベルが10もある癖して攻撃力0かよ!とんだ屑カードだな!ま、お前にはピッタリだろうな!」

『遊矢…

そろそろコイツ、黙らせても良いかな?』

 

待て待てユベル、気持ちは分かるし俺もそんな気持ちで一杯だが落ち着け、コイツを黙らせる為の方程式はまだまだ完全じゃ無い。

 

「バトルフェイズに入る!

ダーク・グレファーで、ソニック・ダーツ・シューターを攻撃!」

「はっ!セットカードが目に入らないとか、馬鹿にも程があるだろ!セットカードオープン!『聖なるバリア―ミラーフォース―』!」

 

聖なるバリア―ミラーフォース―

通常罠

1:相手モンスターの攻撃宣言時に発動出来る。相手フィールドの攻撃表示モンスターを全て破壊する。

 

お、此処でミラフォか、普通ならやっちまったと嘆く場面だろうが、

 

「ミラフォの効果で、お前の攻撃表示モンスターを全て破壊する!

折角出したお前の相棒とやらもこれ一発で…

 

な、何で生きていやがる!?ミラフォの効果処理は行われた筈だろ!?」

 

俺の相棒にとっては、むしろ好都合だ!

 

「ユベルの効果発動!

このカードが効果で破壊された事で、デッキから『ユベル―DasAbscheulichRitter(ダス・アプシェリッヒ・リッター)』を特殊召喚する!その真の姿を現せ、ユベル!」

『フフフ、痛いじゃないか…

ちょっと本気出しちゃおうかな…!』

 

ユベル―DasAbscheulichRitter

効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 11

攻撃力 0

 

沢渡が発動したミラフォは、そのまま攻撃しようとしていたダーク・グレファーを飲み込んで消滅させ、その余波がユベルにも襲い掛かるも、それが晴れた後には、悪魔というよりドラゴンと言った方が良い、双頭の悪魔、ユベルの進化した姿があった。

 

「この為に態と俺のセットカードを無視したってのか!?だがそれでも攻撃力は0の屑カードのままか!驚かせやがって!」

「それはどうかな?」

「あぁ?」

「ユベル―DasAbscheulichRitterは、俺のターンのエンドフェイズに、フィールドにいる自分自身以外のモンスターを全て破壊する効果を持っている!いわば生きた『ブラック・ホール』だ!」

「な、なんだって!?じゃあ俺のモンスター達はこのターンのエンドフェイズに…!」

 

「とは言え、このままターンエンドを宣言するのも面白くない、という事で、アクショントラップ発動!『次元の牢獄』!」

 

次元の牢獄(今作オリジナルカード)

アクショントラップ

1:自分フィールド上のモンスター1体を除外する。

 

「次元の牢獄の効果で、ユベル―DasAbscheulichRitterを除外する!」

「は、はぁ!?自分から態々アクショントラップを掴むとか馬鹿にも「その瞬間、ユベル―DasAbscheulichRitterの効果発動!」まだあるのかよ!?」

「このカードがフィールドを離れた事で、デッキからユベル―Das(ダス・)Extremer(エクストレーム・)Traurig(トラウリヒ・)Drachen(ドラッヘ)を特殊召喚する!最凶の姿へと変貌せよ、ユベル!」

『フフフ、ボクと遊矢の愛を、ボクと遊矢の怒りを、その身に刻むがいい!』

 

ユベル―DasExtremerTraurigDrachen

効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 12

攻撃力 0

 

次元の牢獄の効果によって、その姿が薄くなっていくユベル、と思いきや、より禍々しい姿となって再臨した。

この姿こそ、ユベルの最凶形態。

 

「れ、レベル12!?融合モンスターでも無いのにレベル12だと!?だ、だがそれでも攻撃力は0か!は、待てよ、さっきの奴が生きた『ブラック・ホール』だから、コイツはまさか…!」

「ああ、安心しろよ。コイツはエンドフェイズに発動する効果は無い。というか、あるタイミングでしか効果は発動されない」

「は、はは、ああびっくりしたぜ!散々驚かせた挙げ句、残ったのはレベル12なだけの見掛け倒しか!運は俺にとことん向いている様だな!ほら、さっさとターンエンドしろよ!」

「言われなくても。

カードを2枚セットして、ターンエンド!」

 

Yuya

LP 4000

手札 1

モンスター ユベル―DasExtremerTraurigDrachen(攻撃表示)

魔法・罠カード セット×2

 

「さぁて、とっととこんなデュエルを終わらせるか!

俺のターン、ドロー!」

「スタンバイフェイズに(トラップ)『バトルマニア』発動!」

 

バトルマニア

通常罠

相手ターンのスタンバイフェイズ時に発動する事が出来る。相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターは全て攻撃表示になり、このターン表示形式を変更する事は出来ない。また、このターン攻撃可能な相手モンスターは攻撃しなければならない。

 

よし、これで勝利の方程式は揃った!

 

「バトルマニアを発動したこのターン中お前は、攻撃可能なモンスターを全て攻撃させなければならない!」

「はぁ?今更そんな意味の無いカード使ってどうするんだよ?

まあいいや、このままバトルフェイズに入る!

アルティメット・ダーツ・シューターでユベル―DasExtremerTraurigDrachenを(ごすぅ!)がぁ!?ごほっ!げほっ!?ぐげぇ、な、何が…」

 

Shingo LP 4000→1600

 

ユベルに向けて自分のモンスターを攻撃させた沢渡、だが次の瞬間には、腹を抱えて蹲る。

それはそうだ、何故なら攻撃させたアルティメット・ダーツ・シューターの『右腕』が、沢渡の腹に直撃したからだ。

 

「ユベルは全形態通じて戦闘破壊されず、コイツとの戦闘によって発生する俺への戦闘ダメージは0になる共通効果を持っている!

更に相手モンスターと戦闘を行ったユベル―DasExtremerTraurigDrachenの効果発動!ダメージステップ終了時に、相手モンスターの攻撃力分のダメージを相手に与え、そのモンスターを破壊する!死の悪夢(ナイトメア・ダイ)!」

『フフフ、ボクの事を屑カードと馬鹿にした事、遊矢を馬鹿だと見下した事、今此処で後悔するがいい!』

「が、あ、な、なんだとぉぉぉぉぉ!?な、ならバトルフェイズを…

 

お、おい!ソニック・ダーツ・シューター!お前何をしているんだ!」

 

おいおい沢渡、俺がさっき発動したカードの効果をもう忘れたのか?

 

「このターンはバトルマニアの効果適用中だ!よってソニック・ダーツ・シューターにも攻撃して貰う!」

「や、やめろソニック・ダーツ・シューター(ずごぉ!)ぎゃぁぁぁ!」

 

Shingo LP 1600→0 LOSE

 

WINNER Yuya

 

よっし、勝ったぜ!

 

「さぁ沢渡、約束通りさっきの言葉を土下座で「お、ご、おげぇぇぇぇぇぇ!」無理そうだな、こりゃぁ。まあ良いや、これ以上に無い程の醜態を見られたんだ、これで良しとしよう」

 

先の約束通りに土下座を要求しようとした俺だったが、蹲っていた所に更にソニック・ダーツ・シューターの右腕が腹部に直撃した事で遂に決壊したのか、思いっきり嘔吐し出した。

流石にこの状況で土下座謝罪は無理だなと思いつつ、もっと凄い醜態を見られたと思う事にし、持っていたスマホでその様子を撮影しつつ、フィールドを後にした。

と、そうだ、

 

「おい、何時まで其処で隠れているんだ?」

「あれ、バレた?いや、隠れているつもりは無かったんだけど、話しかけるタイミングを逃しちゃって、ついね」

 

フィールドの入り口側で、まるでスパイの如くこちらの様子を伺っていた水色の髪の少年に声を掛けて置く。

そう、紫雲院(しうんいん)素良(そら)に。




オリジナルカード紹介

ソニック・ダーツ・シューター
効果モンスター
地属性
機械族
レベル 5
攻撃力 1600
守備力 1600
1:フィールド上にモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚出来る。
2:メインフェイズに発動出来る。自分フィールド上のこのカードをリリースする。このターン、自分は『ダーツ』モンスターをリリース無しで通常召喚出来る。


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7話_素良、来訪!

「という訳で、遊勝塾への加入を希望して来た、紫雲院素良君だ。素良、遊勝塾へようこそ!」

「紫雲院素良です!宜しくね!」

「ちょ、ちょい待て、遊矢。何が、という訳で、だ?まるで意味が分かんねェぞ?」

「そうだぞ遊矢、加入希望は嬉しいけど、それにしてもちゃんと説明してくれないと」

「詳しくは前回を読み直してくれ(スパァン!)おうふ」

「これが小説だからって、メタ発言で済ませないで!大体前回を読んでもどうしてその子が加入を希望する事になったか書いていないじゃない!」

 

柚子も柚子で思いっきりメタ発言しているじゃないかと思うが、確かに柚子の言う通りだ。

沢渡をデュエルという名の制裁でボコした後、フィールドの入り口付近にいた素良を呼び止め、話を聞いてみると、素良は元々LDSへ加入しようと訪れていたのだが、偶々俺と沢渡がフィールドに入って行く所を見かけ、その時の会話で出て来た、ペンデュラムモンスターが気になったとの事。

で、ペンデュラムモンスターについて沢渡の取り巻きに聞こうとしたけど(俺と沢渡は口論でヒートアップしているだろうから、という理由から止めたらしい)、なんやかんやあって聞きそびれてしまい、ならばデュエルを終えた後に俺か沢渡に聞こうと考え、あそこで待っていたそうだ。

で、デュエルの結果は俺の圧勝、その時俺が見せた類稀なプレイングに感銘を受け、更にペンデュラムモンスターにも興味を覚えLDSへの加入を撤回、「僕を弟子にして下さい!」と遊勝塾への加入と俺の弟子になる事を希望して来た。

まあ加入に関してはもうちょっと塾生を増やしたいと丁度思っていた所だし、弟子入りに関しても既にエレンという前例があるから今更「弟子は取っていない」は通じないし、色々理由付けて断るのも気が引ける。

という訳で、此処まで付いて来た、それが事の顛末だ。

 

「まあ、事情は分かったわ。で、素良君だっけ?遊矢からも聞いていると思うけど、加入するにあたって、ちょっとお願いしたい事があるの」

「はい、僕のデュエルを見たいんですよね!分かりました、それじゃあ師匠、宜しくお願いしま「ちょっと待てやぁぁぁぁ!(ヒュン!)」うわっと!?」

 

柚子のお願いに応じ、遊勝塾へのフィールドに向かおうとした素良、だがそんな素良へと向かって何かが飛来、それに気付いた素良は何とか回避に成功するも、

 

「話は聞かせて貰ったぜ!おいお前、遊矢兄ちゃんの一番弟子である俺を差し置いて、遊矢兄ちゃんとデュエルしようだぁ!?生意気な事言いやがって!」

 

その飛来して来た物、というか奴は、素良に向けてドロップキックを放って来たエレンだった。

 

「な、なんだい君!?危ないなぁ!」

「敬語使えよこのちんちくりん!弟弟子なら敬うのは当然(スパァン!)痛ぁ!?」

「先輩風を吹かすとか、何時からそんなに偉くなったんだ、エレン?」

 

全くコイツは、俺との関係となるとリアルファイトも辞さないからな、この癖どうにかならないか?

 

「けどよ遊矢兄ちゃん、こんなその場のノリで遊勝塾に入ろうとか考える、遊矢兄ちゃんの弟子になろうとか考える奴に、遊矢兄ちゃんたちの指導を受け止められるのかよ?ずっと入りたい言っていたみこっちゃんはともかく、どうせ泣きべそかいてやっぱやめるとか言うのがオチじゃねーの?そんな甘ちゃんが遊矢兄ちゃんの下に付いていたら、遊矢兄ちゃんの師匠としての資質まで疑われちまうよ?そんなの一番弟子である俺には耐えられねぇよ」

 

成る程な、確かにエレンの言う事も一理ある、だからってリアルファイトは許される事じゃ無いが。

なら、

 

「だったらエレン、素良の相手はお前がやれ。素良が甘ちゃんかどうか、お前が見極めたらどうだ?」

「え、お、俺が!?」

「僕は誰でも良いですよ、師匠!僕に好き勝手言ってくれたこの子でも」

 

その答えを、デュエルを通じて見つければいい、そんな提案を、エレン達にする。

その提案に乗り気の素良に対して、戸惑い気味のエレンだったけど、やがて意を決した様だ。

 

「分かったよ、遊矢兄ちゃん!おいお前、お前のデュエル、俺が見極めてやるよ!」

「お前じゃなくて素良って名前があるんだけどね、まあ良いや、宜しくね!」

 

2人はフィールドへと足を踏み入れる。

 

------------

 

「戦いの殿堂に集いしデュエリストが!」

「モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!」

「フィールド内を駆け巡る!」

「見よ、これぞデュエルの最強進化系!」

「「アクショーン、デュエル!」」

 

先攻 Sora LP 4000 VS 後攻 Elen LP 4000

 

「僕のターン!先攻はドロー無し、と。

まずは『ファーニマル・ドッグ』を召喚!」

 

ファーニマル・ドッグ

効果モンスター

地属性

天使族

レベル 4

攻撃力 1700

 

素良のフィールドに最初に登場したのは、背中に天使の羽が生えた犬、ファーニマル・ドッグ。

素良のデッキは確か融合を専門とした『ファーニマル』デッキだったな。

その可愛らしい姿に、観客席にいる柚子達女性陣は何処か和んでいる様子な一方、対峙しているエレンは「お前、キショいなぁ」とこぼしていた。

後になって分かるぜ、ファーニマルの、色んな意味で衝撃的な真の姿が。

 

「召喚されたファーニマル・ドッグの効果発動!

デッキから『エッジインプ・シザー』を手札に加えるよ!

更に手札の『ファーニマル・シープ』を捨てて魔法『ワン・フォー・ワン』発動!」

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

「ワン・フォー・ワンの効果で、デッキから『ファーニマル・ラビット』を守備表示で特殊召喚するよ!」

 

ファーニマル・ラビット

効果モンスター

地属性

天使族

レベル 1

守備力 1200

 

続いて登場したのは、背中に天使の羽を生やし、肩にポシェットを下げた兎、ファーニマル・ラビット。

 

「これで準備は整ったよ!魔法『融合』発動!」

「お前融合モンスターを使うのか?」

「そうだよ、なんか驚いていないみたいだね?僕の所はともかく、こっちでは余り知られていないみたいだから、意外だね」

「まあな。遊勝塾でも結構流行っているし」

「へぇ、ますます楽しみだよ!」

 

融合

通常魔法

1:自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

此処で出て来るか、ファーニマルの真の姿が。

 

「手札の『エッジインプ・シザー』と、フィールドの『ファーニマル・ラビット』を融合!

悪魔の爪よ!諸刃の牙よ!今1つとなりて新たな力と姿を見せよ!融合召喚!現れ出ちゃえ、全てを仕留める孤独の魔獣!『デストーイ・シザー・ウルフ』!」

 

デストーイ・シザー・ウルフ

融合・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 6

攻撃力 2000

 

「な、何あれ…!」

「う、うわ…!」

「きゃぁぁぁ!」

「お、お前、それキショいを通り越してグロいな…!」

 

※暫くお待ちください

 

まあ、その、融合魔法を発動した際に出て来る神秘的な色の渦、其処に素良の手札にあった『エッジインプ・シザー』とファーニマル・ラビットが吸い込まれた後、12歳未満の子供、特に女の子には絶対見せちゃいけない様な光景が広がった後に登場したのは、狼の様な色々ヤヴァイ悪魔、デストーイ・シザー・ウルフ。

そう、ファーニマルの真の姿であるデストーイ、それはグロ的な意味で衝撃的なのだ。

さっきまでファーニマルの可愛らしい姿に和んでいた女性陣はそのグロテスクな光景に顔を真っ青にさせているし(大丈夫か?)、対峙しているエレンも若干引いていた。

そんな周囲の光景を何ら気にする事無く、素良は効果処理を進めて行く。

 

「僕の墓地の『ファーニマル・シープ』を対象に、融合素材に使ったファーニマル・ラビットの効果発動!

この効果で、『ファーニマル・シープ』を手札に戻し、僕のフィールドにファーニマル・ドッグがいるからそのまま守備表示で特殊召喚するよ!」

 

ファーニマル・シープ

効果モンスター

地属性

天使族

レベル 2

守備力 800

 

グロテスクな融合召喚シーンによって雰囲気が凍り付いたフィールドに登場したのは、これまた天使の羽が生えた羊、ファーニマル・シープ。

此処でシープを出したと言う事は、覚悟した方が良いな、色々な意味で。

 

「僕のフィールドにいるファーニマル・ドッグを手札に戻して、ファーニマル・シープの効果発動!僕の墓地からエッジインプ・シザーを攻撃表示で蘇生するよ!」

 

エッジインプ・シザー

効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 3

攻撃力 1200

 

まだまだ終わらない、と言わんばかりに登場したのは、さっきの惨劇を生み出したハサミの悪魔、エッジインプ・シザー。

 

「そして再び融合発動!」

「またかよ!?またあのグロいのか!?」

「フィールドのエッジインプ・シザーとファーニマル・シープを融合!

悪魔の爪よ!丈夫な鎧よ!今1つとなりて新たな力と姿を見せよ!融合召喚!現れ出ちゃえ、全てを引き裂く密林の魔獣!『デストーイ・シザー・タイガー』!」

 

デストーイ・シザー・タイガー

融合・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 6

攻撃力 1900→2500

 

デストーイ・シザー・ウルフ 攻撃力 2000→2600

 

「も、もう止めて…!」

「あ、あんなに可愛かったあの子達が…!」

「も、もう駄目…!」

 

※暫くお待ちください

 

締めと言わんばかりに、さっきのデストーイ・シザー・ウルフと良く似た演出と共に登場したのは、虎の様な色々ヤヴァイ悪魔、デストーイ・シザー・タイガー。

 

「ターンエンドだよ」

 

Sora

LP 4000

手札 1(ファーニマル・ドッグ)

モンスター デストーイ・シザー・ウルフ(攻撃表示)

      デストーイ・シザー・タイガー(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

さて、エレンの今回のデッキは何だ?

 

「随分と動き回ってくてたなぁ。俺のターン、ドロー!

まずは魔法『テラ・フォーミング』を発動!」

 

テラ・フォーミング

通常魔法

1:デッキからフィールド魔法カード1枚を手札に加える。

 

「テラ・フォーミングの効果で、デッキからフィールド魔法『影牢の呪縛』を手札に加えて、そのまま発動するぜ!ちなみにフィールド魔法は、アクションデュエル中は永続魔法扱いだ!」

 

影牢の呪縛

フィールド魔法(永続魔法扱い)

1:このカードがフィールドゾーンに存在する限り、『シャドール』モンスターが効果で墓地へ送られる度に、1体につき1つこのカードに魔石カウンターを置く。

2:相手ターン中、相手フィールドのモンスターの攻撃力は、このカードの魔石カウンターの数×100ダウンする。

3:このカードがフィールドゾーンに存在する限り、自分が『シャドール』融合モンスターを融合召喚する度に1度、このカードの魔石カウンターを3つ取り除き、相手フィールドの表側表示モンスター1体を融合素材に出来る。

 

今回のエレンのデッキは『シャドール』か。

片方はシャドールモンスター、もう片方は各属性モンスターと緩い融合素材、効果で墓地に送られた時に発動される効果、何より影牢の呪縛によって相手を融合素材に出来たり、影依融合によってデッキから融合が出来たり等の其々のカードパワー、これらが無茶苦茶なシナジーを発揮し、アニメARC-Vが放送され始めた頃に登場して以後環境を支配した。

今では光属性担当の『エルシャドール・ネフィリム』が禁止、各種キーカードが軒並み制限化と、一時の勢いは鈍ってしまったが、それでも使いこなせば強烈なのは間違い無い。

後エレン、さっきの光景でびっくりするのは分かるが、噛んでいるぞ。

 

「更に魔法『手札抹殺』発動!」

 

手札抹殺(制限カード)

通常魔法

お互いの手札を全て捨て、其々自分のデッキから捨てた枚数分のカードをドローする。

 

「此処で手札抹殺!?くっ僕の手札は1枚だから1枚捨てて、1枚ドロー!」

「俺の手札は4枚だから4枚捨てて、4枚ドロー!この時、墓地に送ったのは全てシャドールモンスターだから、影牢の呪縛に4つ魔石カウンターが乗るぜ!」

 

影牢の呪縛 魔石カウンター 0→4

 

残っていた4枚ともシャドールモンスターとか、手札抹殺が無かったら事故だぞ。

ともかく始まるぞ、シャドール劇場が…!

 

「手札抹殺の効果で墓地に送られた『シャドール・ビースト』の効果発動!それにチェーンして『シャドール・リザード』の効果発動!更にチェーンして『シャドール・ヘッジホッグ』の効果発動!まだまだぁ!チェーンして『シャドール・ファルコン』の効果発動!」

「ど、どんだけ墓地でチェーンを組むのさ!?」

「これがシャドールの力だぜ!

まずはファルコンの効果で、コイツを裏側守備表示で特殊召喚するぜ!

次にヘッジホッグの効果で、デッキから『シャドール・ドラゴン』を手札に加えるぜ!

更にリザードの効果で、デッキから『シャドール・ハウンド』を墓地に落とし、影牢の呪縛に1つ魔石カウンターが乗るぜ!

最後にビーストの効果で、ドロー!

この後、リザードの効果で墓地に落としたハウンドの効果も使えるけど、今回は使わないぜ」

 

影牢の呪縛 魔石カウンター 4→5

 

「更に魔法『影依融合(シャドール・フュージョン)』発動!」

 

影依融合

通常魔法

『影依融合』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:自分の手札・フィールドから『シャドール』融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。エクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが相手フィールドに存在する場合、自分のデッキのモンスターも融合素材とする事が出来る。

 

「影依融合の効果で、お前のフィールドにエクストラデッキから出したモンスターが存在するから、まずデッキから『シャドール・ビースト』と…

此処で影牢の呪縛の魔石カウンターを3つ取り除いて、お前のフィールドにいる闇属性モンスター、デストーイ・シザー・タイガーを融合する!」

「な、なんだって!?」

 

影牢の呪縛 魔石カウンター 5→2→3

 

エレンの宣言に素良がびっくりする間もなく、エレンの背後に現れた、これまでの融合とは違いどす黒い渦から射出された無数の糸が、素良のフィールドにいたデストーイ・シザー・タイガーと、デッキから『シャドール・ビースト』のカードを捉え、渦に引きずり込み、

 

「闇を司る人形の怨念が、外敵の侵入を食い止めるぜ!融合召喚!『エルシャドール・ミドラーシュ』!」

 

エルシャドール・ミドラーシュ

融合・効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 5

攻撃力 2200

 

そこから登場したのは、端末世界の勢力である『ガスタ』に属する巫女ウィンダと酷似した、ドラゴンに乗る人形の少女『エルシャドール・ミドラーシュ』。

強烈な個性を持つシャドール融合モンスターの中でも、効果破壊耐性、存在する限り1ターンに1度に特殊召喚が制限されるルール介入効果、墓地送りになった時に『シャドール』魔法・罠カードをサルベージする効果、と、もう頭がおかしいと言うしかない羅列で、これによって猛威を振るい、一時は制限カード入りした。

 

「更に速攻魔法『神の写し身との接触(エルシャドール・フュージョン)』発動!」

「くっこれ以上奪わせないよ!それにチェーンしてデストーイ・シザー・ウルフを対象にアクションマジック『キャンディ・コート』発動!」

 

神の写し身との接触(制限カード)

速攻魔法

『神の写し身との接触』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:自分の手札・フィールドから『シャドール』融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

キャンディ・コート

アクションマジック

1:自分フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。このターン、そのモンスターは相手の魔法・罠カードの対象にならず、戦闘では破壊されない。

 

お、此処でキャンディ・コートか。

今更だが今回のアクションフィールドは、マドルチェの住民が住んで良そうなお菓子だらけのフィールド『スウィーツ・アイランド』、今しがた素良がゲットしたキャンディ・コート等のお菓子に因んだアクションカードが多く、そしてその効果はキャンディ・コート等、強烈な物も少なくない。

が、

 

「キャンディ・コートの効果でこのターン、デストーイ・シザー・ウルフは対象にならない!これで影牢の呪縛で取られる事は「おいおい、融合使いの癖して何勘違いしてやがんだ?」え?」

「影牢の呪縛、その3つ目の効果は、融合の際に相手フィールドの表側表示モンスター1体を融合素材にしても良いという効果!そして融合素材に選ぶのは対象に取る事にならないんだぜ!」

「し、しまった!」

「神の写し身との接触の効果で、俺のフィールドにいるシャドール・ファルコンと、此処で影牢の呪縛の魔石カウンターを3つ取り除いて、お前の場にいる闇属性モンスター、デストーイ・シザー・ウルフを融合するぜ!

再び現れろ!融合召喚!エルシャドール・ミドラーシュ!」

 

影牢の呪縛 魔石カウンター 3→0→1

 

エレンのシャドール達の前には無力だったな。

 

「バトルフェイズに入るぜ!2体のミドラーシュでダイレクトアタック!

フォール・ダウンバースト、二連打ァ!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

Sora LP 4000→1800→-400 LOSE

 

WINNER Elen



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8話_不審者、夜襲!

「エレン、素良、お疲れさん。で、エレン、お前から見て素良はどうだった?」

 

デュエルが終わり、フィールドから出て来たエレンと素良を出迎える俺、其処で俺はエレンに、素良について聞いてみた、すると、

 

「あー、ちょっとあの融合召喚の、グロい演出はあれだったけど、でも良い感じで動かしていたと思うぜ、遊矢兄ちゃん。アドの取り方も様になっているし、あのデッキをどういう風に回せば良いか、というのも良く理解していたみたいだぜ。まあ攻撃出来ない先攻1ターン目に耐性もロック効果も持っていない奴を突っ立てるのはどうかと思うけどな、どこぞの現役チャンピオンじゃあるまいし」

 

大体は的を射ている意見が帰って来た、小学5年生とは言え流石に4年も俺の弟子をやっていない、という事か。

ただエレンが最後に指摘していた、先攻1ターン目に耐性やロック効果を持っていないモンスターを棒立ちさせるプレイング、確かにスタンディングデュエルなら落第点も良い所だが、ことアクションデュエルともなれば話は違って来る。

前口上でも良く口にする通り、アクションデュエルは自らが召喚したモンスターと共に地を蹴り宙を舞い、フィールド内を駆け巡ってアクションマジックを取って行くのが基本だ、単純にハンド・アドバンテージが1枚増えるだけじゃなく、相手ターン中であっても予めセットせずに発動出来る便利さ、こんなカードを手にしない理由は殆ど無い。

だが幾ら鍛え上げていたとしても、デュエリストは基本的に生身の人間(基本的、としたのはまあ、察してくれ)、広大なフィールドをくまなく探すのは時間が掛かるし、時間制限によってジャッジキルされる可能性もある。

其処で重要となるのが、自らが召喚したモンスターの存在だ。

召喚したモンスター達はソリッドビジョンの力によって実体化していて、そいつに触ったり背に乗ったりと、殆ど実際の生物と変わらない扱いが出来る。

そしてそんなモンスター達の中には、例えば巨体を有していたり、例えば翼が生えていて大空を飛びまわったり、例えば物凄く脚力が高かったりと、フィールドを探索する上で重要な特徴もある。

そんなモンスターを先攻1ターンで出しておけば、それだけ早くアクションマジックを探しに行ける、その点を踏まえるとエレンの指摘は100%正しいとは言えない、実際に素良はシザー・ウルフに乗ってフィールドを探し回った事でアクションマジックを手に出来たのだから(それが全く以て意味を成さなかったじゃないかというツッコミは無しな)。

勿論、その移動役が速攻で除去されたら元も子も無いので、その辺の判断は俺でも時折迷うのだが。

 

「素良はどうだった?」

「ぷ、プレイングのレベルが凄かったです…

これが、これが遊勝塾のデュエル…」

「まあな。俺達遊勝塾が掲げる理念はエンタメデュエル、観客や相手を楽しませるデュエルを理想としてはいるけど、それを成し遂げる為には、この状況でこうなれば盛り上がるだろうなと言った感じの、要所要所のシナリオ構成の力が求められるし、実際にそれを成し遂げる為に、盤面をそっち方向へとコントロールするプレイングも必要だ。勿論、それらはデュエルにおいてどういう動きがしたいか、それを基に構築したデッキがあって初めて成り立つ。『良い選手は良い役者であれ』ってどっかの元スポーツ選手も言っているけど、これをデュエリスト風に言うなら『良いデュエリストは良い役者であれ』『良い役者は良いデュエリストであれ』って事だ」

「な、成程…」

 

一方の素良だが、エレンが見せた年不相応と言っても良いデュエルに目を丸くしていた。

と言ってもあの時のエレンのプレイングは、シャドールにおいてはオーソドックスな物なのだが、オーソドックスという言葉を良い意味で説明するなら『基本、こうすれば間違いは無い』という事、オーソドックスのオの字も出来ない奴に、其処からの応用的なプレイングは、エンタメデュエルは期待できない。

手札やフィールド、墓地(あと、強いて言うなら除外やライフ)のアドバンテージを稼ぐ、この基本的な事が出来てこそ良いデュエリストになれると、エンタメデュエリストとしての道は開けると、俺はそう思っている。

と言うと素良がその辺分かっていないと思われそうだが、サーチカードであるファーニマル・ドッグの使い回しを画策したり、融合素材にした事をトリガーにサルベージを行うファーニマル・ラビットをリクルートしたりと、素良もまたそういった基本を理解していたぜ。

 

「じゃあ今後も宜しくな、素良!」

「はい、師匠!」

 

------------

 

「よし、お菓子はこのくらいで良いか」

「そうね、遊矢。御免ね、美琴ちゃんや素良君の歓迎会の買い出し、付き合わせちゃって。遊矢が言っていた沢渡とか言う卑怯者の百流デュエリストと色々あって、疲れているのに」

「構わねぇよ、女の子1人に買い出しさせる訳には行かねぇしな。素良と美琴は歓迎される側だし、一行と当麻は何時も通りデュエル始めちまうしな」

「本当に御免ね、全くあの2人は何時もケンカデュエルなんだから…!」

 

素良が遊勝塾に加入し、ふと遊勝塾に加入した美琴と素良の歓迎会をやろうという話になってそれが通り、甘い物が大好きな素良のリクエストもあってキャラメルポップコーンやチョコフレーク、き○この山やたけ○この里といった、摘んで食べられる甘いお菓子や、ジュースの買い出しに行く事となった。

出来れば一行や当麻といった男手が行くべきだったんだが(俺は今柚子が言った通り沢渡との件で少し疲れていた)、まあ例の如く口論の末にデュエルに発展してしまい、結果として俺と柚子が担当に。

美琴や素良といえば、思えば俺がペンデュラム召喚を披露して以来、色々な事が起こっているな。

次の日にペンデュラム召喚のデモンストレーションをやり、其処で美琴が遊勝塾に加入し、沢渡に絡まれ、それを見ていた素良が遊勝塾に加入して俺に弟子入りし…

あ、ペンデュラム召喚のインパクトが大きすぎて余り考えていなかったが、今はまだ指導しているのがLDSだけという事になっているシンクロ召喚をストロング石島とのデュエルで披露した挙げ句、デモンストレーションの場で一行と共にエクシーズ召喚を披露し、ペンデュラムのその先の可能性であるペンデュラムシンクロ、ペンデュラムエクシーズも見せた以上、遊勝塾でもそれをやっているという情報は公の下に晒されただろうし、今はまだ公になっていない融合召喚も、素良の加入とかもあって指導しているという情報が伝わるのも時間の問題。

今後また、遊勝塾への加入希望者が殺到するだろうな、そろそろ受け入れ態勢を強化しないといけないけど、今の状況ではそれも叶わない、何とかしないと…!

 

「柚子、ちょっと」

「え?どうしたの、遊矢」

 

今後の塾の運営に向けて決意を新たにしていた俺、その時目に入って来た2人組の姿を確認すると、柚子と共に咄嗟に物陰に隠れた。

あのはた目からも目立つ緑髪と茶髪(俺のトマトみたいな髪の方が目立つって?ほっとけ!)、おそろいで着用している制服の様な服、間違い無い。

 

「柚子、あの2人、さっき言っていた沢渡の取り巻きだ」

「あ、あの2人が?卑怯者の屑ナルシストになんで付いているのかしら」

 

柚子って、時折とことん毒吐くなぁ、と苦笑いしつつも何か会話しているっぽい2人の話に聞き耳を立ててみると、

 

「沢渡さん、相当気合入ってんなぁ」

「どんな事をしてでも、榊遊矢をぶちのめすってなぁ」

「あの人、相当卑劣な事しそうだな」

「ウィークポイント、徹底的に攻めるってよ」

「余程あそこでゲロったのが屈辱だって事だよな、まあそれも無理ないか」

 

ちっ全然懲りていない様だな、いっそあのゲロ画像、ネットに放出して引き籠りにしてやろうか?

と考えていると、

 

「御免ね遊矢、荷物を持って遊勝塾に戻ってくれない?私はあの2人を追うわ」

「ゆ、柚子!?何を言っているんだ!危険だ、あの野郎が何を仕出かすか分からないぞ!」

「大丈夫よ、遊矢。何年、遊矢の幼馴染をやってきたと、遊矢の指導を受けて来たと思っているの?そんなデュエリストの屑に、私が負ける訳無いわ」

「いや、デュエルとかの方面じゃなくてだな…」

「お願い、遊矢。行かせて」

「柚子…

わ、分かった。でも危なくなったら直ぐ連絡しろよ」

「ええ、分かっているわ」

 

柚子が後を追うと言い出した。

それに危険だ、態々こちらから向こうの土俵に出向く必要は無いと説得をしようとするも、柚子の意志は固く、こうなった時の柚子は梃子でも動かない。

このまま説得を試みて時間を潰したらあの取り巻きを見失ってしまう、いやそれはそれで柚子を留まらせる事が出来なくも無いが、それで鬱屈のたまった柚子が何かを仕出かすかも分からない…

仕方ない、そう判断し、一先ず柚子の提案に従い、緊急の際の連絡を忠告し、その場を後にした。

何事も無ければ良いんだが…

 

------------

 

Side 柚子

 

遊矢が言っていた沢渡という奴の取り巻き達の後を追って数分、港にある『52』と記された倉庫に入って行くのを確認した私は、其処でもう1人の取り巻きと共に2人と合流した、金髪の如何にもナルシストな雰囲気を漂わせる男の姿を見つけた。

あれが、アレが沢渡シンゴ…!

LDSに所属する百流デュエリストで、遊矢の持っているペンデュラムモンスターを取り巻き達と共に強奪しようとした卑怯者で、使えないという理由でカードをぶん投げて『屑』と罵るデュエリストの屑。

あんな奴に、あんな奴に遊矢を襲わせはしない!

私が、幼馴染の私が遊矢を守って見せる!

私にだって遊矢の指導を何年も受けて来て、去年の舞網チャンピオンシップ・ジュニアユースクラスで入賞した位の腕はあるんだから!

と決意し、倉庫の中へ乗り込もうとしたその時、

 

「貴様、LDSの者だな?」

 

ぼろぼろのマントにスカーフ、顔全体を覆うゴーグルとマスクを着用した男が、既に乱入していた…



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9話_俺達、抗争!

昨日の夕暮れに沢渡の、取り巻き達の追跡から帰って来た柚子なんだが、その様子が何処かおかしい。

一応「港の方にある倉庫で沢渡らしき男を見つけて乗り込もうとしたけど、倒れているみたいだった」と、事の顛末を聞きはしたが、その説明すらも何処か言いにくそうにしていた。

何かあったんじゃないか、沢渡に何かされたんじゃないか?

俺がそう聞くと「それは無いわ。あんな奴にやられる様なヘマはしないわ」と返って来た、その様子から嘘を言っている様に見えなかったのでまあ安心したんだが、だったらどうしたんだろう?

何か嫌な予感がするな、此処から先の原作知識が全く無いから、尚更気になる。

と思ったのがフラグになったのか分からないが、それは今日、美琴と素良の歓迎会の準備をしていた時だった。

 

「榊遊矢、出て来い!此処にいるのは分かっているんだ!」

「沢渡さんに怪我させやがって、許せねぇ!」

「闇討ちなんて卑怯だぞ!」

 

塾の外から恐らく俺に対してであろう怒号が、何処か聞き覚えのある声で聞こえて来たので、玄関を見てみると、其処には沢渡の取り巻き3人がいた。

 

「なんだ、沢渡の取り巻き3人衆。俺が沢渡を闇討ちして怪我させたとか聞こえたんだが」

「お前がやったんだろう!昨日の夕暮れ、港の52番倉庫で!」

「そうだ!忘れたとは言わせねぇよ!」

「俺達もその場にいてこの目で見たんだ!いや、俺達だけじゃねぇ!」

 

昨日の夕暮れ、52番倉庫…あっ。

 

「「「だよねぇ、柊柚子ちゃ~ん!」」」

「っ!」

 

取り巻き3人衆の指摘に図星を刺されたのか、びっくりした様な表情を浮かべる柚子。

成る程、それで様子がおかしかった訳か。

その52番倉庫で沢渡が襲撃したのが俺らしき人物、ひょっとしたら俺が沢渡を襲撃したんじゃないか、そんな考えが過っていたんだろうな。

確かに襲撃のあったっぽい時刻は、俺は買い出しから帰る最中、だがそのアリバイを証明できる奴は此処にいないし、動機の面で言うと、俺が沢渡を襲撃する理由としては充分だ。

が、

 

「仮に俺がその沢渡襲撃の犯人だとしよう、だがそうだとしてもそれは、そっちが行って来た強盗傷害行為に対する防衛行為って事になるぜ。実際昨日の放課後にはLDSからの指示で俺からペンデュラムモンスターをパクろうとしたし、更に昨日の夕暮れ時に、俺に闇討ちを仕掛けようとしているのをこの耳で聞いているしなぁ」

「なっ!?何を証拠に」

「これ、その時にそっちの上層部と沢渡による通信を傍受したのと、闇討ちを仕掛けようとしているのを会話する様を録音したのが入ったメモリーなんだが。ねぇ、LDSの上層部さん?」

「な、何故それを持っているのですか!?」

 

そっちのクロを隠ぺいして、こっちのグレーを突こうなんざ千年早いんだよ、遊星時代に鍛え上げられたメ蟹ックスキルを甘く見るな!

 

「上層部も絡んだ組織的なペンデュラムモンスターの強盗傷害未遂、逆恨みによる闇討ち、まだこの件に関して俺がグレーとは言っても、クロだと判明しても罪に問われる可能性が低い防衛行為に対する恫喝…

これが明るみに出ればLDSはどうなるか、まあ深く考えずとも分かるでしょう?」

「なっ我々を脅迫するのですか!?」

 

いや、先に脅迫しようとして来たのはそっちだろ。

とは言え、恐らく今回の件で遊勝塾に抗議(という名の脅迫)をしに到着したであろうLDSの上層部らしき女性を論破するのはなんとも気分が良い。

今の俺は、遊星時代の妻であるアキもびっくりの悪い顔になっている筈だ。

 

「まあ、こっちの要求とそっちの要求のどっちを通すか、そのデュエルを受けて頂けるのなら、一先ずは保留にしましょう。丁度、あれやこれやと要求を突きつけてデュエルをする積もりで、そちらのデュエリストが何人かスタンバイしているみたいですし」

「良いでしょう…!

貴方達、出て来なさい!」

 

LDS上層部の女性は俺の提案に乗り、恐らくあれでこっちまで来たのであろうVIPカーから、俺と同じ位の、3人の少年少女に降りる様呼びかけ、双方の要求を話し合う。

 

「まず、我々LDSは…

貴方が持っているメモリーを要求します!」

「なら俺達遊勝塾は、今回の件の賠償金として、そちらの最新式ソリッドビジョンシステムを3基と、それを設置する為に行う遊勝塾のリフォーム工事の費用、そしてそれに伴い必要となる土地の代金を要求します」

「なっ!?幾ら何でもそちらの要求額が高すぎるのでは…!」

「果たして高いでしょうか?このメモリーに記録されたデータが外部に流出した時に発生するそちらの色々な損害の大きさ、それを考えれば充分釣り合っていると思いますが?」

「くっ分かりました…!

その要求で構いません…!」

 

あら、ちょっと揺さぶっただけであっさり要求を呑んでくれたな、上層部だとしても一旦、他の上層部に相談するとかしそうだが、もしかしてこの女性、LDSのトップの人?

まさかトップが来るとは思いも寄らなかったな、これは好都合だ。

 

「それでは始めましょうか、貴方達LDSの面子と、俺達遊勝塾の繁栄を賭けた、文字通りの決闘(デュエル)を!」

 

そう言い放ち、俺は、というか俺達は遊勝塾内に戻って行った。

その際に、LDSのトップらしき人から「おのれ榊遊矢…!どこまで私の計算を越えるの…!」とどっかのガイアメモリ製造組織トップの元妻らしき台詞をぶつけられたり、出るタイミングを失って様子を伺っていた塾長から「遊矢、俺は時折、お前が本当に中学2年生なのかと思うぞ…」とドン引きされたりしたが、まあ些細な事だ。

 

------------

 

「LDSエクシーズクラス所属の志島(しじま)北斗(ほくと)だ!此処星の聖域(コスモ・サンクチュアリ)にて、君には僕の41連勝の踏み台になって貰おう!」

「遊勝塾の上村一行だァ、宜しくなァ」

 

LDSから最初に出て来たのは、もう何と言ったらわからない奇抜な形状の紫髪、名前の元となったであろう北斗七星を象ったイヤリングを左耳に付けた少年、志島北斗。

対して俺達遊勝塾からは、一行が出て来た。

最初は俺が、様々なデッキを出して1人で勝負しようと準備していた。

事の発端となった沢渡が襲撃される事件、俺はやっていないとは言えそれが今回のデュエルのきっかけとなった訳だから俺が解決すべきだろうと考えていたが、其処に一行達が「アイツら相手に遊矢が出るまでも無ェよ!俺達に任せてくれよなァ!」と出場を志願し、結果として俺は最後までスタンバイする事となった、と言う訳。

 

「お前に教えてやるよォ、兄に勝る弟なンていねェって事をなァ、春市ィ!」

「春市って誰!?僕の名は北斗だ!」

「戦いの殿堂に集いしデュエリストがァ!」

「無視するな!ああもう、モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!」

「フィールド内を駆け巡るゥ!」

「見よ、これぞデュエルの最強進化系!」

「「アクショーン、デュエル!」」

 

先攻 Ikko LP 4000 VS 後攻 Hokuto LP 4000

 

「俺のターン!先攻はドローが無ェ。

まずは『ヴェルズ・カストル』を召喚!」

 

ヴェルズ・カストル

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1750

 

初手でカストルを出したという事は、やっぱり開幕オピオンか?

 

「カストルの効果で、俺はヴェルズをもう1体召喚するぜェ!『ヴェルズ・サラマンドラ』を召喚!」

 

ヴェルズ・サラマンドラ

効果モンスター

闇属性

恐竜族

レベル 4

攻撃力 1850

 

「更にカストルとサラマンドラでオーバーレイ!」

「お、オーバーレイだって!?馬鹿な!」

 

いや、何を驚いているんだコイツ、というかLDS陣営の皆して?

まさか此処舞網市でエクシーズを扱っているのがLDSだけだと未だに信じこんでいるのか?

いやエクシーズだけじゃない、もしかしたらシンクロや融合についてもそう信じていそうだ。

 

「2体のレベル4・ヴェルズモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!わりィがこっから先は、上級モンスターお断りの一方通行だァ!『ヴェルズ・オピオン』!」

 

ヴェルズ・オピオン

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

ランク 4

攻撃力 2550

ORU 2

 

「ば、馬鹿な!?なんでお前がエクシーズ召喚を!それはLDSでしか扱っていない筈…!」

「逆に聞くけどよォ、なンでエクシーズ召喚がLDSしか扱ってねェとか思ってンだ?とンだロマンチストだなァ!

ヴェルズ・オピオンのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!デッキから『侵略の』と名の付いた魔法・罠カード1枚、『侵略の汎発感染』をサーチするぜェ!」

 

ヴェルズ・オピオン ORU 2→1

 

一行が披露したエクシーズ召喚に、対峙している北斗をはじめLDS陣営から驚きの声があがった辺り、やっぱりそうか。

 

「さァて、安全航行で頼むぜェ、オピオン!カードを1枚セットして、ターンエンドォ!

そうそう、オーバーレイ・ユニットを持ったオピオンがいる限り、レベル5以上のモンスターは特殊召喚出来ねェから、気ィ付けなァ!」

 

Ikko

LP 4000

手札 3

モンスター ヴェルズ・オピオン(攻撃表示)

魔法・罠カード セット

 

一行はオピオンの背に乗り、ターンエンド宣言までの処理を行うと共に上空へと飛び立った。

オピオンって、スタンディングデュエルでも上級モンスターをほぼ出せなくなるロック効果が強いけど、アクションデュエルではそのモンスター効果に加えて、飛行を想定した巨大な翼に、人を乗せるのに適した四足歩行の体型から、移動や探索にも最適なんだよなぁ。

正直、アクションデュエル限定で良いから制限にして欲しい。

 

「くっ!だがエクシーズ召喚はこのLDSに一日の長がある事を教えてやる!僕のターン!ドロー!

まずは君の場にだけモンスターが存在する事で、『セイクリッド・シェアト』を守備表示で特殊召喚!」

 

セイクリッド・シェアト

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 1

守備力 1600

 

北斗のデッキは『セイクリッド』か、これは中々強そうだな。

北斗のフィールドに登場したのは、端末世界の伝説の騎士団『セイクリッド』に属する、巨大な瓶を持った天使シェアト。

 

「続いて『セイクリッド・ポルクス』を召喚!」

 

セイクリッド・ポルクス

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 4

攻撃力 1700

 

次に出て来たのは、一行が使うカストルの双子の弟、ポルクス。

 

「ポルクスの効果で、僕はセイクリッドをもう1体召喚出来る!『セイクリッド・グレディ』を召喚!」

 

セイクリッド・グレディ

効果モンスター

光属性

魔法使い族

レベル 4

攻撃力 1600

 

更に出て来たのは、セイクリッドの女戦士グレディ。

 

「更にグレディの効果で、僕は手札のレベル4・セイクリッドモンスター、『セイクリッド・カウスト』を攻撃表示で特殊召喚する!」

 

セイクリッド・カウスト

効果モンスター

光属性

獣戦士族

レベル 4

攻撃力 1800

 

まだまだ終わらないと言わんばかりに出て来たのは、セイクリッドの弓兵カウスト。

此処でカウストを出して来たか、しかもレベル4が3体、残りの1体であるシェアトもレベル変更効果をもっている、となると…

 

『カウストが出たという事は間違いなく、アイツが来るぞ遊矢!』

 

アストラルの言う通り、アイツを出すに違いない。

 

「まだだ!カウストの効果発動!ポルクスとグレディのレベルを1ずつ上げる!」

 

セイクリッド・ポルクス レベル 4→5

セイクリッド・グレディ レベル 4→5

 

「この効果でレベルを上げたポルクスとグレディでオーバーレイ!2体のレベル5・光属性モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!星々の光よ、今大地を震わせ降臨せよ!エクシーズ召喚、ランク5!『セイクリッド・プレアデス』!」

 

セイクリッド・プレアデス

エクシーズ・効果モンスター

光属性

戦士族

ランク 5

攻撃力 2500

ORU 2

 

やっぱり此処でプレアデスか…!

北斗の場に、セイクリッドの中でも図抜けた実力を持つとされる上級戦士、プレアデスが、黄色のオーバーレイ・ユニットを2つ漂わせて出現した。

 

「やけにモンスターを並べて来たじゃねェか。だがどれもオピオンの攻撃力には届かねェぜ!」

 

おい一行、それフラグや。

 

「戦闘で倒せないなら、効果でどかせば良いだけだ!プレアデスのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて、オピオンを対象に効果発動!そのカードを手札、いやエクシーズモンスターだからエクストラデッキに戻して貰う!」

「おォっと、そンなのは読めてンだよォ!チェーンしてアクションマジック『アブソーブ・パルサー』を、オピオンを対象に発動!」

 

アブソーブ・パルサー(今作オリジナルカード)

アクションマジック

1:モンスター1体を対象に発動出来る。このターン、そのモンスターは効果を受けない。

 

セイクリッド・プレアデス ORU 2→1

 

ワザとか、ワザとなのか、あのフラグ発言は?オーバーレイ・ユニットのうち1つが光輝き、それがオピオンを飲み込もうとしたが、一行が発動したアクションマジック、それによって発生した白い球体に全て吸い込まれた。

 

「ちぃっ!だがこれでシェアトの効果が使える!今しがた墓地へ送ったグレディを対象にシェアトの効果発動!シェアトのレベルは、グレディと同じ4になる!」

 

セイクリッド・シェアト レベル 1→4

 

シェアトが持っていた瓶を北斗のデュエルディスクに向けると、まるで瓶に吸い込まれる様に、墓地にあたる部分から4つの光球が放出され、実際にその光球は瓶に取り込まれた。

シェアトのレベル変化能力ってこんな演出なんだな、ともかくこれでレベル4が2体、という事は、

 

「更にシェアトとカウストをオーバーレイ!2体のレベル4・セイクリッドモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!数多の光よ、今雷鳴を轟かせ降臨せよ!エクシーズ召喚、ランク4『セイクリッド・ビーハイブ』!」

 

セイクリッド・ビーハイブ

エクシーズ・効果モンスター

光属性

機械族

ランク 4

攻撃力 2400

ORU 2

 

やっぱり此処はビーハイブか。

プレアデスに並び立つように登場したのは、沢山のハチ型攻撃端末を従えたセイクリッドの上級戦士、ビーハイブ。

 

「更にプレアデスのオーバーレイ・ネットワークを再構築!眩き光もて降り注げ!エクシーズ召喚!現れろ、ランク6!『セイクリッド・トレミスM(メシエ)7』!」

 

セイクリッド・トレミスM7

エクシーズ・効果モンスター

光属性

機械族

ランク 6

攻撃力 2700

ORU 2

 

プレアデスの身体が、自分の身から出現したブラック・ホールの様な空間、オーバーレイ・ネットワークに吸い込まれ、全身が取り込まれると共に解放されると其処には、セイクリッドの騎士達が合体して誕生した伝説の神星龍、トレミス。

強烈な効果を持っているプレアデスを素材に使ってまでトレミスを出したという事は、此処は何が何でもオピオンを除去する腹積もりか。

 

「自分の効果でエクシーズ召喚したトレミスはこのターン自分の効果を使えないが、オピオンを倒してしまえば問題無い!バトルフェイズに入る!

トレミスでオピオンを攻撃!

スターライト・バースト!」

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!アクションマジック『回避』発動!対象はトレミス!」

 

回避

アクションマジック

1:フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターの攻撃を無効にする。

 

トレミスが上空にいるオピオンへと向けて放出されたビーム、だがそれはオピオンが見せたバレルロールによって避けられる。

何時も思うんだがそんな無茶苦茶な動きをするオピオンもオピオンだが、それに振り落される事無く掴まっていられる一行も人間だったよな、おい?

 

「回避の効果でトレミスの攻撃は無効にされるぜェ!残念だったなァ!折角オピオンを倒せるモンスターを出したってのに、それが無駄になってよォ!」

「何を勘違いしているんだ?まだビーハイブの攻撃が残っている!ビーハイブでオピオンを攻撃!」

「はァ?自爆特攻とか、頭おかしィンじゃねェか?」

「策なしに突っ込む訳無いだろ!ダメージステップ開始時、ビーハイブのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!

ビーハイブの攻撃力を、ターン終了時まで1000アップする!」

「は、はァ!?コンバットトリックかよ!」

 

セイクリッド・ビーハイブ 攻撃力 2400→3400

             ORU 2→1

 

読者の皆、恐らくこう思ったんじゃないか?

 

「フラグ回収乙」、と。

 

「これでオピオンを倒せる!アクセリオン・バースト・フルブースター!」

「オピオン!うわっち!」

 

セイクリッド・ビーハイブ 攻撃力 3400 VS ヴェルズ・オピオン 攻撃力 2550

 

Ikko LP 4000→3150

 

これまで一行の移動役として、ロックカードとして存在感を示していたオピオン、しかしそれがビーハイブの、オーバーレイ・ユニットを吸収して放った極太のビームによって撃破された事で、一行は地面に戻され、自分の足でアクションマジックを探さざるを得なくなってしまった。

いやそれだけじゃない、北斗が呼び出したトレミスとビーハイブ、それらの妨害を潜り抜けてつつ探さないといけない。

 

「カードを1枚セットしてターンエンド!さあ、この陣営を突破できるかな?」

 

Hokuto

LP 4000

手札 1

モンスター セイクリッド・トレミスM7(攻撃表示)

      セイクリッド・ビーハイブ(攻撃表示)

魔法・罠カード セット

 

一見すると、一行にとってかなり不利な状況だが、

 

「面しれェ…!」

 

当の一行は、不利な状況に立たされた一行は、

 

「面白くなって来たじゃねェかァ!やってやるぜゴルァ!」

 

笑っていた、心の底からといった感じで、笑っていた。

 

「俺のターン!ドロー!

まずはお前のモンスターの方が多い事で『ヴェルズ・マンドラゴ』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

ヴェルズ・マンドラゴ

効果モンスター

闇属性

植物族

レベル 4

攻撃力 1550

 

まっさらとなった一行側のフィールドに新たに登場したのは、端末世界でワーム侵攻時から『創星神Sophia』復活による大戦の後も生存を維持していたという勢力『ナチュル』にて生息する秋桜(コスモス)の様な生物『ナチュル・コスモスビート』がヴェルズ化した姿。

 

「更に『ヴェルズ・ケルキオン』を召喚!」

 

ヴェルズ・ケルキオン

効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 4

攻撃力 1600

 

既に手札にあったのか、ケルキオンが。

 

「召喚したケルキオンの効果発動!俺の墓地にあるヴェルズモンスター、サラマンドラを除外する事で、俺の墓地にあるヴェルズモンスター、カストルを手札に加えるぜェ!

更にこの効果を適用した事で使えるケルキオンの効果で、今手札に加えたカストルを召喚!

更にカストルの効果で『ヴェルズ・オランタ』を召喚!」

 

ヴェルズ・オランタ

効果モンスター

闇属性

炎族

レベル 4

攻撃力 1650

 

更に一行が出したのは、端末世界でインヴェルズ大戦の際、討伐軍に参戦した勢力『ラヴァル』に所属していた戦士『ラヴァル・キャノン』がヴェルズ化した姿。

これでレベル4モンスターが4体、さっきの北斗が見せたのに匹敵する大量展開だな。

 

「よォし、反撃開始だ!まずはケルキオンとマンドラゴでオーバーレイ!2体のレベル4・ヴェルズモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!また頼むぜェ、オピオン!」

「またそいつか!だが今更出した所でもう戦闘でそいつには負けない!」

「焦るなっての!更にカストルとオランタでオーバーレイ!2体のレベル4・ヴェルズモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!わりィがこっから先は、俺の支配という名の一方通行だァ!『ヴェルズ・バハムート』!」

 

ヴェルズ・バハムート

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

ランク 4

攻撃力 2350

ORU 2

 

これで並び立ったな、ヴェルズの3龍、その内の2体が。

オピオンに並び立つように出現したのは、『氷結界の龍ブリューナグ』がヴェルズ化した姿、ヴェルズ・バハムート。

 

「おいおい、オピオンより攻撃力が低いじゃないか!それでどうするって言うのさ!」

「こォするンだよォ!バハムートのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて、お前のトレミスを対象に効果発動!

手札の『ヴェルズ・カイトス』を捨てて、

 

 

 

お前のトレミスは俺のモンだァ!」

「な、と、トレミス!?」

 

本当に、本当にブリューナグ関係のモンスターは悪い事しかしない、本人(禁止カード)然り、憑依させる奴(制限カード)然り。

バハムートのオーバーレイ・ユニットがトレミスに取り込まれると、途端にトレミスの身体が黒ずんでいき、それに合わせてトレミスが一行の方に移動して行く。

 

「ほォほォ、良ィ能力じゃねェか、トレミスって。なら遠慮なく使わして貰うぜェ!

トレミスのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて、お前のビーハイブを対象に効果発動!エクストラデッキに帰って貰うぜェ!」

「くっ…!」

 

そして、寝返ったトレミスのオーバーレイ・ユニットが光輝き、それがビーハイブを飲み込み、後には、北斗のモンスターは1体もいなくなっていた。

 

「さァ、バトルフェイズだァ!

まずはバハムートでダイレクトアタック!

イーヴィル・フレア!」

「させるか!罠『次元幽閉』発動!」

「そりゃァこっちの台詞だァ!チェーンして速攻魔法『侵略の汎発感染』発動!」

「な、何っ!?」

 

次元幽閉

通常罠

相手モンスターの攻撃宣言時、攻撃モンスター1体を選択して発動出来る。選択した攻撃モンスターをゲームから除外する。

 

侵略の汎発感染

速攻魔法

自分フィールド上の全ての『ヴェルズ』と名の付いたモンスターは、このターンこのカード以外の魔法・罠カードの効果を受けない。

 

「侵略の汎発感染の効果で、俺のヴェルズモンスターは魔法・罠カードの効果を受けねェぜ!つまり次元幽閉は通じねェし、回避も攻撃モンスターを対象にするから意味ねェぜ!」

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

Hokuto LP 4000→1650

 

「そしてオピオンでトドメだァ!

イーヴィル・サンダー!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

Hokuto LP 1650→-900 LOSE

 

WINNER Ikko

 

「うっしゃァ!勝ったぜェ!」

 

これで、まずは1勝か。



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10話_抗争、決着!

「LDS融合クラス所属の光津(こうつ)真澄(ますみ)よ。宜しく頼むわ」

「遊勝塾の柊柚子よ。全力で行かせて貰うわ!」

 

第2試合、遊勝塾からは柚子が、LDSからは、本当に日本人なのかと突っ込みたくなる褐色の肌に、黒のおかっぱ頭の少女、光津真澄。

当初、沢渡襲撃事件の事もあって迷いを抱えている柚子を出すのはどうかと思い、エレンが立候補しようとしたのだが、それを押しのけて自分が出ると言い出した。

本当に大丈夫なのかと思ったが、こうと決めた時の柚子は梃子でも動かないし、最近空気気味だった塾長が「今のお前は、輝いて見えるぞぉ!」と褒めちぎっちゃったからなぁ。

まあ、普段のデュエルを貫いてくれれば勝てない相手はいない、柚子、頑張ってくれ。

 

「戦いの殿堂に集いしデュエリストが!」

「モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!」

「フィールド内を駆け巡る!」

「見よ、これぞデュエルの最強進化系!」

「「アクショーン、デュエル!」」

 

先攻 Yuzu LP 4000 VS 後攻 Masumi LP 4000

 

さて、真澄はどんなデッキか…

と、思案を巡らしていると、

 

「ふふふ」

「な、何が可笑しいの?」

 

突然、真澄が笑い出し、それに気付いた柚子がムッとしたのか突っ込みを入れる。

 

「いや、ごめんなさい。でも、今の貴方が輝いて見えるって言っていた貴方のお父さん、相当な親バカだと思って」

「何ですって?」

 

いや、確かにそれは分からんでも無いが、初対面の存在にバッサリと指摘するのはどうなんだ?

 

「確かにお父さんは親バカよ。それでも私の為に一生懸命になってくれる人よ!それを笑うなんて許せないわ!」

「許せない、ねぇ?今の貴方に、目のくすんでいる貴方に、その気持ちが貫けるのかしら?」

「っ!」

 

それに反論する柚子に向けて真澄が言い放った言葉、それは柚子の図星を突いた。

目がくすんでいる、気持ちが貫けるのか?つまり、迷いを抱えている柚子の心の内を、心の澱みを、目の輝きに例えた今の言葉。

それをずばりと指摘された柚子、反論できないのか俯いてしまう、が、

 

「確かに、そうね…

今の私の目は、貴方が言っている様にくすんでいるのかも知れない、澱みを抱えているのかも知れない。けれど、それでも気持ちを貫いて見せるわ!貴方を倒して見せるわ!

私の先攻!

まずは魔法『独奏の第1楽章』発動!」

 

独奏の第1楽章

通常魔法

『独奏の第1楽章』は1ターンに1枚しか発動出来ず、このカードを発動するターン、自分は『幻奏』モンスターしか特殊召喚出来ない。

1:自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動出来る。手札・デッキからレベル4以下の『幻奏』モンスター1体を特殊召喚する。

 

「独奏の第1楽章の効果で、デッキからレベル4の幻奏モンスター『幻奏の音女セレナ』を守備表示で特殊召喚するわ!」

 

幻想の音女セレナ

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 4

守備力 1900

 

直ぐに向き直ると同時に決意したかの様にデュエルを進行させる。

で、最初に使ったのが予想GUYの幻奏モンスター版とも言うべき『独奏の第1楽章』、その効果で出て来たのが、ピンクの長髪、暖色系のドレスを身に纏った幻奏の音女、セレナ。

 

「セレナを特殊召喚したターン、私は通常召喚に加えて幻奏モンスターを1回召喚出来るわ!

更に、天使族モンスターをアドバンス召喚する際、セレナは2体分のリリースにする事が出来るわ!この効果でセレナをリリースして、アドバンス召喚!天上に響く妙なる調べよ、眠れる天才を呼び覚ませ!出でよ、レベル8!『幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト』!」

 

幻想の音姫プロディジー・モーツァルト

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 8

攻撃力 2600

 

そのセレナをリリースして登場したのは、赤を基調としたドレスを身に纏い、右手に指揮棒を構えている幻奏の音姫、プロディジー・モーツァルト。

その様子に、さっきから笑みを浮かべたままの真澄が、その笑みを深めた様に見えた。

 

「へぇ、いきなりエースモンスターを立てるなんて、随分余裕が無いのかしら」

「誰が、プロディジー・モーツァルトがエースだって言ったかしら?確かに彼女はこのデッキのキーマンではあるけど、キーマンとエースは別物だって事、教えてあげるわ!」

「何ですって?」

 

が、その指摘は的を射ておらず、柚子に突っ込まれていた。

まあ、あんな口上を聞いたら誰だってエースだと誤解すると思うんだが。

だが実際の所、柚子の言葉に嘘は無い。

 

「プロディジー・モーツァルトの効果発動!この効果を発動するターン、私は光属性モンスターしか特殊召喚出来なくなるけど、元から幻奏モンスターしか出せないから関係ないわ!

この効果で、手札から光属性・天使族モンスター、『幻奏の音女タムタム』を守備表示で特殊召喚!」

 

幻奏の音女タムタム

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 4

守備力 2000

 

プロディジー・モーツァルトが指揮棒を振ると、その近くに、幻奏モンスターにしては珍しく楽器の一種、銅鑼を持った幻奏の音女、タムタムが出現した。

さあ来るぞ、柚子のエースが…!

 

「幻奏モンスターがフィールドにいる状態で特殊召喚したタムタムの効果発動!

私のデッキから、

 

 

 

『融合』を1枚、手札に加えるわ!」

「ゆ、融合ですって!?馬鹿な、なんで貴方が!?」

 

またその反応かよ、観戦中のLDS陣営の皆まで。

とは言え、それまでニコニコしながら柚子に精神攻撃を仕掛けていた真澄が此処で初めて、驚愕の表情を浮かべた。

これで柚子のペースに持っていけると尚良いな。

 

「貴方がさっき言っていた言葉、そっくり返すわ。『貴方の目、くすんでいるわ』!」

「っ!?」

「私の心が迷い、澱んでいた事によって私の目がくすんでいたとしたら、貴方の心は驕りという水槽に閉じこもって、澱んだままの状態よ!そんな目で、よく私の目のくすみが見えた物ね!」

「う、うるさいうるさいうるさい!さっさとターンを進めなさい!」

 

意趣返しと言わんばかりに語る柚子を遮るかの如くデュエルの進行を促す真澄、間違いなくデュエルのペースは、柚子が握り出している…!

 

「言われなくても分かっているわ。今手札に加えた魔法『融合』発動!」

 

融合

通常魔法

1:自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「手札の『幻奏の音女アリア』と、フィールドのタムタムを融合!

響き渡る歌声よ!魂の響きよ!タクトの導きにより力を重ねよ!融合召喚、今こそ舞台へ!『幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト』!」

 

幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト

融合・効果モンスター

光属性

天使族

レベル 6

攻撃力 2400

 

融合召喚の演出を経て、フィールドに舞い降りたのは、オレンジ色の長髪、黒を基調としたドレスを身に纏い、左手に指揮棒を構え、顔の上半分を仮面で覆った幻奏の音姫、マイスタリン・シューベルト。

来たか、柚子のエース、その一角が…!

 

「タムタムには融合素材に使うと発動出来る効果があるけど、此処では使わないわ。

カードを1枚セットして、ターンエンド!」

 

Yuzu

LP 4000

手札 0

モンスター 幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト(攻撃表示)

      幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト(攻撃表示)

魔法・罠カード セット

 

「融合召喚が出来るからってつけ上がらない事ね!私のターン、ドロー!

私は手札から魔法『ジェムナイト・フュージョン』発動!」

 

ジェムナイト・フュージョン

通常魔法

1:自分の手札・フィールドから『ジェムナイト』融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

2:このカードが墓地に存在する場合、自分の墓地の『ジェムナイト』モンスター1体を除外して発動出来る。墓地のこのカードを手札に加える。

 

ジェムナイト・フュージョンって事は、真澄のデッキは『ジェムナイト』か。

 

「手札の『ジェムナイト・ルマリン』と『ジェムナイト・オブシディア』を融合!

雷帯びし秘石よ!鋭利な漆黒よ!光渦巻きて新たな輝きと共に1つとならん!融合召喚!現れよ、勝利の探求者!『ジェムナイト・パーズ』!」

 

ジェムナイト・パーズ

融合・効果モンスター

地属性

雷族

レベル 6

攻撃力 1800

 

真澄の場に登場したのは、端末世界の勢力である『ジェムナイト』に所属する、黄玉(トパーズ)を司る黄金の輝石戦士、パーズ。

そのステータスはレベルの割にしょぼいが、2回攻撃に、俺が十代だった頃のエースの一角だった『E・HEROフレイム・ウィングマン』の様なバーン効果を持っている等、戦闘におけるポテンシャルはかなり高い。

真澄だって、素のステータスの低さを分かった上でこうして出したのだ、恐らく効果を活かす為の手段が初手に入っているのだろう。

が、

 

「此処で手札から墓地に送られた『ジェムナイト・オブシディア』の効果発動!墓地にあるレベル4の通常モンスター『ジェムナイト・ルマリン』を…

な、無い!?何で墓地にカードが無いの!?たった今融合で墓地に送った筈!」

 

柚子の場にいるエース相手にそれは、悪手だ。

墓地から効果を発動しようとした真澄だが、真澄の左腕に装着されたデュエルディスク、その墓地の部分に送られた筈のカードは無くなっていた。

良く見ると其処から何か光の様な物が放出されていて、それはどういう訳か指揮棒を振るっているマイスタリン・シューベルトに取り込まれていった。

 

「私はオブシディアの効果にチェーンして、マイスタリン・シューベルトの効果を発動したわ!

このカードがフィールドに表側で存在する間に1度だけ、私と貴方の墓地のカードを3枚まで除外し、除外したカードの数×200だけ攻撃力をアップ出来るの!

その効果で私は、貴方の墓地に送られたオブシディアとルマリン、そしてジェムナイト・フュージョンを除外し、マイスタリン・シューベルトの攻撃力を600アップさせて貰ったわ!」

「な、何ですって!?」

 

幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト 攻撃力 2400→3000

 

出た、遊戯王名物「発動していた」。

まあネタに突っ込むのは野暮という事でスルーして、柚子のマイスタリン・シューベルトには墓地肥やしメタと言うべきこの効果がある。

恐らく真澄は、オブシディアの効果でルマリン蘇生、更に墓地のジェムナイト・フュージョンを、オブシディアを除外してサルベージして更なる融合に繋げようとしたのだろう(多分、マスター・ダイヤ辺りか?)が、マイスタリン・シューベルトがいる所でそれは少し迂闊だったな。

 

「くっ…!モンスターをセットしてターンエンド!」

 

Masumi

LP 4000

手札 2

モンスター ジェムナイト・パーズ(攻撃表示)

      セット

魔法・罠カード なし

 

「私のターン、ドロー!よし…!

Ladies and Gentleman!Boys and Girls!これより私、柊柚子と我が幻奏モンスター達による華麗なる歌劇、そのフィナーレと参ります!」

「なっ!?もう勝ったつもり!?」

 

ここで予告フィナーレか、余程良い引きだったのか?

 

「そのフィナーレに相応しい女優に、ステージへと上がって貰いましょう!

プロディジー・モーツァルトの効果発動!

手札から『幻奏の音女エレジー』を攻撃表示で特殊召喚!

特殊召喚したエレジーがモンスターゾーンに存在する限り、私のフィールドにいる天使族モンスターの攻撃力は300アップします!」

 

幻奏の音女エレジー

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 5

攻撃力 2000→2300

 

幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト 攻撃力 2600→2900

幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト 攻撃力 3000→3300

 

プロディジー・モーツァルトが指揮棒を振ると、その近くに、名を体現したかの様な暗い色調のドレスを身に纏った幻奏の音女、エレジーが出現した。

これでさっき融合素材として墓地に送ったアリアが蘇生したら、アリアエレジーロックの完成だな。

 

「それではバトルフェイズに入ります!

マイスタリン・シューベルトでパーズを攻撃!

ウェーブ・オブ・ザ・グレイト!」

「させないわ!アクションマジック『ステルスマイン』を発ど、な!?避けられた!?」

「エレジーがモンスターゾーンに存在する限り、特殊召喚されたモンスターは効果では破壊されません!融合召喚は特殊召喚、よってマイスタリン・シューベルトはステルスマインの効果で破壊されません!」

「な!?きゃぁ!」

 

ステルスマイン(今作オリジナルカード)

アクションマジック

1:相手モンスターの攻撃宣言時に発動出来る。その攻撃モンスターを破壊する。

 

幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト 攻撃力 3300 VS ジェムナイト・パーズ 攻撃力 1800

 

Masumi LP 4000→2500

 

「更にエレジーでセットモンスターを攻撃!」

「セットモンスターはルマリン、よって破壊されるわ…!」

 

幻奏の音女エレジー 攻撃力 2300 VS ジェムナイト・ルマリン 守備力 1800

 

「そしてプロディジー・モーツァルトでダイレクトアタック!

グレイスフル・ウェーブ!」

「きゃぁぁぁぁ!」

 

Masumi LP 2500→-400 LOSE

 

WINNER Yuzu

 

「これにて私、柊柚子と幻奏モンスター達による歌劇は幕引きとなります!次の開演を、お楽しみに!」

 

予告通り、柚子が勝負を決め、これで遊勝塾の2連勝、勝ち越しとなった。

 

------------

 

「ば、馬鹿な、こんな事が…!」

「貴方には受け入れがたい事実でしょうが、これが遊勝塾の塾生達の力です。ところで、約束は守っていただきますが、宜しいですね?」

 

LDSと遊勝塾による3番勝負、それは俺達遊勝塾の2連勝という形で幕を閉じ、LDSの理事長らしい女性、赤馬(あかば)日美香(ひみか)と、塾長の会談が、遊勝塾の事務所にて始まった。

敗北を受け入れられない赤馬理事長に対し、こういう交渉の場故に普段の暑苦しさも何処へやらといった感じの落ち着いた対応をする塾長、だが睨みつけるかの様なその目、有無を言わさぬ口調からは、表に出さない様にしている激情がにじみ出ていた。

俺が率先して対応に当たったせいで塾長にしてみれば何が何だか分からない内に話が進んでしまっていたが、塾長もまた今回の件で相当怒っているんだな、俺が濡れ衣を着せられた事、俺に対してLDSが仕出かした事に。

其処へ、

 

「良いでしょう。その約束、お守りします」

『!?』

 

突如、事務所のドアからIVに良く似た声が聞こえて来た。

其処に、中にいた全員が振り向くと、其処には一行の様な銀髪で赤眼鏡を掛け、暗い色調の服装にマフラーを巻いた1人の男がいた。

なんか見覚えがあるな、この人、確か…

 

「零児さん、一体何を!?」

「母様。いくら私と言えど、一度約束した取り決めを覆す事は出来ません、それを行えばLDSにとって、わが社にとってマイナスになります。第一、榊遊矢の機嫌を悪くする事にもなります」

「くっ…!」

 

赤馬、零児…

あぁ、原作ARC-Vにおいてのライバルキャラと言われている赤馬(あかば)零児(れいじ)か!

まさか此処で会う事になるとは。

そんな風に、原作におけるライバルキャラとの邂逅にびっくりしている間に近づいたのだろうか、その赤馬零児が俺に声を掛けて来た。

 

「君が、榊遊矢だな」

「はい、貴方は?見た所、LDS関係者の様ですが」

「ああ。私は赤馬零児、LDSの経営母体である『レオ・コーポレーション』の社長をしている者だ」

「そうでしたか。それで、決闘前の約束をお守り頂けるとの事ですが?」

「無論だ。約束通り、今回の件で君や、遊勝塾に多大な迷惑を掛けたお詫びとして、わが社の最新式ソリッドビジョンシステム3基、遊勝塾のリフォーム工事の際に掛かる諸費用を負担しよう。本当に申し訳なかった」

 

俺達が決闘前に其々提示した要求、その場に彼はいなかったにも関わらず、それらを全て呑むと言ってくれた挙げ句、頭を下げて来た。

立場とか面子とかこだわらず、罪を認めて頭を下げられるとか立派な人だな、まあだからってペンデュラムモンスターの強奪は、関わっていようとそうでなくても、やったら駄目だが。

 

「それと、これは私個人としての、君への『お願い』なんだが」

 

と突っ込んでいると、突然零児から『お願い』を持ち込まれた。

 

「君とデュエルがしたい。完全決闘者と呼ばれたその実力を、この目で見てみたい」

「は、はい!是非お願いします!」

 

確かこの人、俺と2歳しか違わないけど、現役バリバリのプロデュエリストなんだよな。

そんな人とデュエルが出来るチャンス、これを逃す訳には行かな「待って下さい!」ん?

 

「刀堂?一体なんだ?」

「その前に、俺と遊勝塾の塾生とのデュエル、やらせて下さい!お願いします!」



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11話_延長戦、開始!

俺達遊勝塾とLDSとの3番勝負は、遊勝塾の2連勝という形で幕を閉じ、要求していた遊勝塾のリフォーム費用等を勝ち取ったのだが、其処へ現れた零児のお願い、更にそれに割り込んで来たLDSシンクロコースの塾生、無造作に伸びた茶髪、黒基調の服装にノースリーブに改造した白いジャケットを羽織り、竹刀を担いだ少年、刀堂(とうどう)(やいば)のお願いによって、急遽エキシビションマッチが2試合組まれる事となった。

で、その第1試合、刃の相手に選ばれたのは、同じくシンクロ召喚を主軸とする当麻。

 

「悪いな、俺の我儘を聞いて貰って」

「構わないぜ。順番的に戦うだろうなと準備していたし」

 

先にお願いしていた零児を差し置いてのデュエルの申し込みを謝罪する刃、いや謝罪する位なら何で急ぐようにお願いして来たんだよ、土下座を通り越して五体投地までして?

 

「実を言うとさ俺、本当は遊勝塾に入りたかったんだ」

「え、そうだったのか?」

 

もしかして美琴みたいなクチか?

 

「デュエルを始めようかと思っていた頃に、榊遊矢のデュエルを見たんだよ、舞網チャンピオンシップ・ジュニアクラスでのそれを。そん時、父親の榊遊勝が失踪して、色々言われていただろ、『臆病者の息子』ってさ?俺もそんな奴の息子のデュエルなんて大したことないだろって思って、あんまり期待していなかったんだよ、見るまでは。ところがどっこい、其処で見た榊遊矢のデュエルは、もう盤面を支配するなんて物じゃねぇ、まるで洗練された人形劇を見ているかのような、そんな綺麗な物だった」

 

え、あのデッキにそんな感想を覚えるの?

3年前のお前の年幾つだったんだよ。

 

「で、そんな圧倒的な展開のままデュエルは榊遊矢の勝利で決着したんだが、俺はそんな綺麗なデュエルに、拍手も忘れて見とれていたよ。盤面を支配し、己の思うままに進める正確無比なプレイング、それこそが俺がやりたいデュエルなんだと!けど他の観客は、デュエル中もなんか文句ばっかり言っていた。やれ『正々堂々とデュエルしろ!』、やれ『パーミッションなんて卑怯だ!』、やれ『インチキ効果もいい加減にしろ!』、やれ『そんな無茶苦茶なデッキを使って恥ずかしくないのか!』とさ。もうふざけんじゃねぇと思ったよ、ルール違反していないんだから正々堂々じゃねぇのか、戦略としてあるんだから卑怯もラッキョウもあるか、本当にインチキだと思うんなら榊遊矢にじゃなくてカードを作った奴に言えや、どんなデッキを使おうがそいつの勝手だろ、もう言いたい事が山ほどあった。そんな俺の鬱憤を、榊遊矢は晴らしてくれた。

「外野でキャンキャンと吠える事しか出来ない負け犬ども、貴様らなぞ先攻1ターンで、容易に勝負を付けられよう。文句があるなら、俺を打ち破って見せろ!」

と、ウザい連中に言い放ってくれたんだ。その言葉に黙りこくっちまった連中の姿が痛快だったなぁ」

 

デュエル後に言い放った言葉まで、一字一句覚えているのかよ。

 

「それ以来、榊遊矢という存在は俺にとって憧れになり、憧れの存在と一緒の塾に入りたい、そう思って遊勝塾の門を叩いたんだが、断られちまってさ。諦められなくて何度も出向いたけど結果は同じ。そんな或る日、俺は何時までも遊勝塾の門を叩くままで良いのかって思う様になった。唯単に遊勝塾の門を叩いて断られて、俺はそんな繰り返しのままで本当に良いのかってさ。此処舞網市には、遊勝塾以外にもデュエルスクールは幾らでもある、其処で学んで、公式戦で遊勝塾生と戦って俺の実力を見せるのも手じゃないかって、思う様になったんだ。で、その事を親に相談して、勧められたのがLDSって訳だ」

 

その話、最近になってよく聞くようになったな。

去年の舞網チャンピオンシップ・ジュニアユースクラスで俺が優勝、一行が準優勝、柚子が4位、当麻が5位と皆揃って上位入賞を果たした事で遊勝塾の指導力が知れ渡る事となり、加入希望が殺到したんだが、規模的な問題でその殆どをお断りせざるを得ず、結果そういった人達が第2希望であるLDSへと流れて行ったんだっけな。

梁山泊?知らん、それは俺の管轄外だ。

しかし結構前からそんなケースがあったなんてな、仕方が無かったとは言え、悪い事したな。

 

「LDSシンクロコースのトップに上り詰め、此処遊勝塾にデュエルをしに来るまで、思えば長い道のりだったけど、今此処でデュエル出来る事を考えれば全然、苦じゃ無かったぜ。さっきまでの、行儀良いだけの連中とのデュエルを見て、やっぱり此処のレベルが相当な物だってのは分かった。だから今日は、

 

胸を借りる積りで行くぜぇ!」

「よしっ!全力で掛かって来い!」

「戦いの殿堂に集いしデュエリストが!」

「モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!」

「フィールド内を駆け巡る!」

「見よ、これぞデュエルの最強進化系!」

「「アクショーン、デュエル!」」

 

先攻 Yaiba LP 4000 VS 後攻 Toma LP 4000

 

「俺のターン!

まずは手札の『XX-セイバー フォルトロール』を捨てて魔法『ワン・フォー・ワン』発動!」

「おっと!その魔法カードにチェーンして手札の『PSYフレームギア・δ』の効果発動!」

「早速手札誘発モンスターかよ!?」

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

刃が捨てたカードからして、デッキは『X-セイバー』か、北斗がセイクリッド、真澄がジェムナイトで、刃がX-セイバーって、皆して端末世界の勢力じゃねぇか、流行っているのか?

そういえば一行のヴェルズも、エレンのシャドールも、端末世界の出だったな。

 

「PSYフレームギア・δの効果で、手札のこのカードと、デッキから『PSYフレーム・ドライバー』を攻撃表示で特殊召喚し、ワン・フォー・ワンを無効にして破壊する!」

「んなっ!?」

 

PSYフレーム・ドライバー

通常モンスター

光属性

サイキック族

レベル 6

攻撃力 2500

 

PSYフレームギア・δ

効果モンスター/チューナー

光属性

サイキック族

レベル 2

攻撃力 1200

 

「流石に手札全部はやらしてくれねぇか…

だが1枚だけでも削らして貰うぜ!『XX-セイバー ボガーナイト』を召喚!」

 

XX-セイバー ボガーナイト

効果モンスター

地属性

獣戦士族

レベル 4

攻撃力 1900

 

マジか、レイジレベ3フォルトロループが出来る状態だったのかよ、これは今妨害して良かったな。

そんな物騒な事を仕出かそうとした刃、妨害された事に気を留める事無く召喚したのは、X-セイバーに所属する獣戦士、だがむしろ海馬社長愛用として知られる『ブラッド・ヴォルズ』に良く似ている事の方が有名なんじゃないか?と言われるボガーナイト。

 

「召喚に成功したボガーナイトの効果発動!手札からレベル4以下のX-セイバーモンスターを1体、特殊召喚するぜ!」

「ならそれにチェーンして手札から『幽鬼うさぎ』の効果発動!効果を発動したボガーナイトを破壊する!」

「また手札誘発かよ!?お前、デッキの中にどんだけ手札誘発モンスター積んでんの!?」

「ざっと半数弱だったかな?まあでも、効果までは無効にしないから、モンスターを出しな」

「マジかよ…

俺はレベル3の『XX-セイバー フラムナイト』を守備表示で特殊召喚して、ターンエンドだ!」

「エンドフェイズに、自分の効果で特殊召喚したPSYフレームギア・δと、一緒に出たPSYフレーム・ドライバーは除外される」

 

XX-セイバー フラムナイト

効果モンスター/チューナー

地属性

戦士族

レベル 3

守備力 1000

 

ボガーナイトが指笛で仲間を呼ぼうとしたその時、当麻の手札からお札みたいな物が飛び出してボガーナイトに直撃、爆破させるも、その指笛が聞こえたのか、オレンジ色の鎧、赤いマントを見に纏った金髪の戦士、フラムナイトが現れた。

で、刃がターンエンドすると共にフィールド内に謎の裂け目が発生、其処にPSYフレーム・ドライバーとPSYフレームギア・δが吸い込まれていった。

 

Yaiba

LP 4000

手札 1

モンスター XX-セイバー フラムナイト(守備表示)

魔法・罠カード なし

 

「俺のターン!ドロー!

まずは魔法『サイコ・フィール・ゾーン』発動!」

 

サイコ・フィール・ゾーン

通常魔法

ゲームから除外されている自分のサイキック族のチューナー1体とチューナー以外のサイキック族モンスター1体を墓地に戻し、そのレベルの合計と同じレベルのサイキック族のシンクロモンスター1体をエクストラデッキから表側守備表示で特殊召喚する。

 

「サイコ・フィール・ゾーンの効果で、除外されているPSYフレーム・ドライバーとPSYフレームギア・δを墓地に戻してコイツを呼び出すぜ!

お前のカードの力が、状況を思い通りに出来るってんなら、まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!『PSYフレームロード・Ω』!」

 

PSYフレームロード・Ω

シンクロ・効果モンスター

光属性

サイキック族

レベル 8

守備力 2200

 

当麻がサイコ・フィール・ゾーンを発動すると、フィールドに突然、電流が発生し、其処からPSYフレームロード・Ωが出現した。

 

「やっぱりシンクロモンスターも扱っているみてぇだな、遊勝塾は」

「へへっどうも。PSYフレームロード・Ωの効果発動!

このカードと、お前の手札1枚、そう、今握っている最後の1枚を、次の俺のスタンバイフェイズまで除外する!」

「な、何!?あ、握っていたフォルトロールが!」

 

当麻の宣言に驚く間もなく、PSYフレームロード・Ωから最後の1枚をひったくられ、そのまま逃げられてしまった刃。

というか最後の1枚はフォルトロールだったのか、つまり初手はフォルトロール×2、ワン・フォー・ワン、ボガーナイト、そしてフラムナイト、うわ本気でハンデス狙える初手じゃん!

これ当麻以外だったら絶対に負けているよな、エレンのシャドールも、墓地に送られた時の効果ではモンスター破壊出来ないし…

 

「俺はこのままターンエンドだ」

 

Toma

LP 4000

手札 3

モンスター なし

魔法・罠カード なし

 

「やっぱり遊勝塾生のデュエルは違うぜ、さっきからそっちのペースに乗せられっ放しだ。

俺のターン、ドロー!

此処はもう1度ボガーナイトを召喚!

更にレベル4のボガーナイトに、レベル3のフラムナイトをチューニング!光差す刃持ち屍の山を踏み超えろ!シンクロ召喚!出でよ、レベル7!『X-セイバー ソウザ』!」

 

X-セイバー ソウザ

シンクロ・効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 7

攻撃力 2500

 

シンクロ召喚の演出と共に出現したのは、X-セイバーの創設者にして初代リーダー、ソウザ。

 

「その特殊召喚成功時、手札の『PSYフレームギア・α』の効果発動!

手札のこのカードと、デッキからPSYフレーム・ドライバーを攻撃表示で特殊召喚し、デッキから『PSYフレームギア・γ』を手札に加える!」

「やっぱ来るか、どんだけ手札誘発するんだか」

 

PSYフレームギア・α

効果モンスター/チューナー

光属性

サイキック族

レベル 1

攻撃力 500

 

もう3度目になる当麻の手札誘発に、刃は「うん、知っていた」と言いたげな顔になっていた。

 

「これでターンエンドだぜ」

「エンドフェイズに、今だしたPSYフレーム・ドライバーとPSYフレームギア・αは除外される」

 

Yaiba

LP 4000

手札 0

モンスター X-セイバー ソウザ(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

「俺のターン、ドロー!

スタンバイフェイズに、除外されていたPSYフレームロード・Ωと、お前の手札1枚は戻って来るぜ」

 

当麻がそういうと共に、フィールドに突如発生した電流からPSYフレームロード・Ωが出現、当麻の側に戻って行った。

ちなみにさっきひったくった刃のフォルトロールだが、戻る際にぽろっと落としていった。

其処の演出雑だな!

 

「更にサイコ・フィール・ゾーンを発動!

効果で、除外されているPSYフレーム・ドライバーとPSYフレームギア・αを墓地に戻してコイツを呼ぶぜ!

お前のモンスターの力が、フィールドを思い通りに出来るってんなら、まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!『PSYフレームロード・Z』!」

 

PSYフレームロード・Z

シンクロ・効果モンスター

光属性

サイキック族

レベル 7

守備力 1800

 

さっきΩが登場した時と同じく、フィールドに突如発生した電流からPSYフレームロード・Zが出現した。

 

「更にPSYフレームロード・Zの効果発動!

このカードと、お前のフィールドにいるソウザを、次の俺のスタンバイフェイズまで除外する!」

「ま、マジかよ!」

 

美琴のマグネット・バルキリオンの時と同じ様に、PSYフレームロード・Zがソウザを羽交い絞めにしてそのまま飛び去って行った。

これで刃のフィールドはがら空き、一方の当麻のフィールドには、PSYフレームロード・Ωがいる。

そして、当麻の攻め手はこれだけに留まらない。

 

「更に『幽鬼うさぎ』を召喚!」

 

幽鬼うさぎ

効果モンスター/チューナー

光属性

サイキック族

レベル 3

攻撃力 0

 

「え、攻撃力0のモンスターを召喚だと?」

「まあ見ていな。

PSYフレームロード・Ωを攻撃表示にして、バトルフェイズに入るぜ!

PSYフレームロード・Ωでダイレクトアタック!

イマジン・クラッシャー!」

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

Yaiba LP 4000→1200

 

「更に速攻魔法『瞬間融合』発動!」

「速攻魔法で融合だと!?」

 

瞬間融合

速攻魔法

1:自分フィールドから融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。この効果で融合召喚したモンスターはエンドフェイズに破壊される。

 

「フィールドのPSYフレームロード・Ωと、幽鬼うさぎで、シンクロ融合だ!」

「し、シンクロ融合だって!?聞いた事ねぇぞそんなの!」

「此処から先は、俺による支配というシナリオでやらせて貰う!シンクロ融合!『アルティメットサイキッカー』!」

 

アルティメットサイキッカー

融合・効果モンスター

光属性

サイキック族

レベル 10

攻撃力 2900

 

俺でも遊星時代にドラゴエクィテスを召喚する位しか使わなかったシンクロ融合、これによって当麻の場に登場したのは、ディヴァインが使用していたらしい『メンタルスフィア・デーモン』、それが進化した様な姿、アルティメットサイキッカー。

 

「アルティメットサイキッカーでダイレクトアタック!

イマジンバースト!」

「ぐぁぁぁぁぁぁ!」

 

Yaiba LP 1200→-1700 LOSE

 

WINNER Toma

 

------------

 

「あー、やっぱつえぇな、遊勝塾は。本当にありがとうな、俺とデュエルしてくれて」

「良いって事よ。良かったらまたデュエルしような!」

「おう!それまでまた腕磨いとくぜ!」

 

後攻2ターン目で、1ダメージも当麻に与える事無く敗北した刃、だがその顔は何処か晴れ晴れとした様子で、一応は悔しさをにじませながらもしっかりした足取りでフィールドを後にして行った。

さあ、いよいよ俺と零児とのデュエルだ!



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12話_延長戦、決着?

何だろう、今からやる零児とのデュエル、すげーわくわくする。

柚子達遊勝塾生や権現坂とのデュエルとは違う、このわくわく感、ひょっとしたら零児こそが、俺が求めていた『ライバル』に、十代時代のカイザー、遊星時代のジャック、遊馬時代のカイトと同等の存在となり得るのかも知れない。

さあ行くぜ零児、俺を満足させてくれよ!

 

「戦いの殿堂に集いしデュエリストが」

「モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!」

「フィールド内を駆け巡る」

「見よ、これぞデュエルの最強進化系!」

「「アクショーン、デュエル!」」

 

先攻 Reizi LP 4000 VS 後攻 Yuya LP 4000

 

「私の先攻か。

まずは永続魔法『地獄門の契約書』を発動」

 

地獄門の契約書

永続魔法

『地獄門の契約書』の1の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。

1:自分メインフェイズに発動出来る。デッキから『DD』モンスター1体を手札に加える。

2:自分スタンバイフェイズに発動する。自分は1000ダメージを受ける。

 

契約書って事は、零児のデッキはDDか。

永続魔法・永続罠である各種契約書を使ってアドバンテージを稼ぎ、テムジンアレクサンダーで大量蘇生を狙ったりするのが特徴的なDDデッキ。

嵌ればソリティアに発展する一方、生命線となる契約書はどれも永続魔法・永続罠だからサイクロンとかに滅法弱いし、放置していてもスタンバイフェイズにセルフバーンを喰らうんだよな。

無論、ダルク等の踏み倒し手段はあるんだけど。

観客席からも『1000ポイントも自分でダメージを受けるなんて』という声や『永続魔法でのサーチとか有りかよ、維持したら爆アドじゃねぇか』という声、更に『サイクロンとか幽鬼うさぎぶちこめば損じゃね?』という声まで上がる。

 

「地獄門の契約書の効果発動。デッキから『DDナイト・ハウリング』を手札に加える」

 

そんな声を他所に零児が手札に加えたのは、DDナイト・ハウリング。

確かDDモンスター唯一のチューナーだったっけ?

それにしても演出がおどろおどろしいな、零児が地獄門の契約書を発動すると共に出現した、悪魔のレリーフで囲った門の入り口(紫色の空間になっている)からカードが出て来るとか。

 

「次に永続魔法『魔神王の契約書』を発動」

 

魔神王の契約書

永続魔法

『魔神王の契約書』の1の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。

1:自分メインフェイズに発動出来る。自分の手札・フィールドから、悪魔族の融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。『DD』融合モンスターを融合召喚する場合、自分の墓地のモンスターを除外して融合素材とする事も出来る。

2:自分スタンバイフェイズに発動する。自分は1000ダメージを受ける。

 

続いて魔神王の契約書を発動すると、今度は融合素材代用モンスターとして名高い『沼地の魔神王』が石板を持って出現した。

持っている石板が契約書なのか?

そしてその効果だが、1ターンに1度且つ悪魔族限定とはいえ素材さえあればポンポンと融合モンスターを正規融合出来、しかもDD融合モンスターなら墓地にまで手が出せるとか爆アドにも程があると思うのは俺だけか?

 

「魔神王の契約書の効果で、手札の『DDケルベロス』と『DDリリス』を融合。

牙剥く地獄の番犬よ、闇夜に誘う妖婦よ!冥府に渦巻く光の中で、今一つとなりて新たな王を生み出さん!融合召喚、生誕せよ!『DDD烈火王テムジン』!」

 

DDD烈火王テムジン

融合・効果モンスター

炎属性

悪魔族

レベル 6

攻撃力 2000

 

出た、大量蘇生コンビの一角が。

石板製の契約書にくっついていた沼地の魔神王に、零児が手札2枚を取り込ませると、その身に大きな穴が空き(え、液体だから穴を作ったの方が正しい?そうだな)、其処から黒を基調とした鎧に身を包み、赤を基調とした剣と盾を装備した悪魔、テムジンが出現した。

ん?そういえばこの融合で素材としたモンスターの中に、俺の持っているペンデュラムモンスターの様な色合いのカードがあった様な…

 

「続いて『DDナイト・ハウリング』を召喚」

 

DDナイト・ハウリング

効果モンスター/チューナー

闇属性

悪魔族

レベル 3

攻撃力 300

 

次に登場したのは、狼を思わせる大顎と目だけという異様な姿の悪魔、ナイト・ハウリング。

 

「召喚したナイト・ハウリングの効果発動。

墓地の『DDリリス』を守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したリリスの攻守は0となり、破壊された場合、私は1000ダメージを受ける」

 

DDリリス

効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 4

守備力 2100→0

 

次に登場したのは、薔薇を思わせる鎧を身に纏った女性の上半身と、蛇にも植物の蔦にも見える下半身の悪魔、リリス。

 

「更に私は、レベル4のリリスに、レベル3のDDナイト・ハウリングでチューニング。闇を切り裂く咆哮よ、疾風の速さを得て新たな王の産声となれ!シンクロ召喚、生誕せよ!レベル7『DDD疾風王アレクサンダー』!」

 

DDD疾風王アレクサンダー

シンクロ・効果モンスター

風属性

悪魔族

レベル 7

攻撃力 2500

 

俺が言えた話じゃ無いが、大量蘇生コンビを揃えて来るとは、やっぱ凄いな。

シンクロ召喚の演出の後に出現したのは、青を基調とした服装に、緑のマントを羽織、レイピアに良く似た直刀を構える悪魔、アレクサンダー。

 

「私のフィールドにテムジン以外のDDモンスターが特殊召喚された事で、テムジンの効果発動。墓地のリリスを守備表示で特殊召喚する。

更に私のフィールドにアレクサンダー以外のDDモンスターが特殊召喚された事で、アレクサンダーの効果発動。墓地の『DDケルベロス』を攻撃表示で特殊召喚する」

 

DDケルベロス

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 4

攻撃力 1800

 

『恐ろしい物だな、テムジンとアレクサンダーのコンボは。1回特殊召喚するだけで、レベル4モンスターを2体揃えられ、しかもどちらかが立っているだけでコンボが成立するとは…!』

『本当にそうだね、アストラル。これでもしテムジンとアレクサンダーが共にレベル4だとしたら、ナイアルラアザトートで遊矢のSAN値がピンチだよ…!』

『ユベル、SAN値とは何だ?カウンターの一種か?』

『えーと、確かライフポイントの一種だったかな?』

『なんだと!?それは確かにピンチだ!』

 

おいユベルにアストラル、デュエル中にクトゥルフTRPGの話しない。

まあそれは兎も角、アストラルの言う通り、テムジンアレクサンダーの脅威が発揮された…!

零児の場にはテムジンの効果で登場したリリス、アレクサンダーの効果で登場した、三つ首の犬の上半身と、どう見ても人間にしか見えない下半身という異様な姿の悪魔、ケルベロス。

しかし、やはり見間違えじゃ無かったか、ケルベロスのカードフレームの色は。

 

「そのケルベロスのカードフレーム、もうペンデュラムカードを作り上げたのですか?」

『ぺ、ペンデュラムだって!?』

 

俺の質問に観客席の面々から驚きの声が上がる、主に遊勝塾サイドから。

そんなに驚く事か?確かに俺がペンデュラムモンスターを手にして披露した、ストロング石島戦からまだ一週間しか経っていないが。

 

「ああ、まだプロトタイプではあるが。しかし全然驚いていない様だな?」

「驚いていますよ、ヤケに早く導入したなぁ、とは」

「其処に驚くのか?」

 

あれ、俺なんか的外れな事でも言ったのか?

もしかしてあれか、俺しか持っていない筈のペンデュラムモンスターを零児が所持している事自体に驚いた、とでも思っていたのか?

 

「恐らく貴方が想像している俺は、自分しかペンデュラムモンスターを持っていないと、自分にしかペンデュラム召喚を扱えないと思っているのでしょうが、そいつはとんだロマンチストですね」

「ロマンチスト?」

「はい、己の空想通りに事が進むと思い込んだロマンチストです。ペンデュラムモンスターは、一週間前の俺とストロング石島とのデュエルで初めて存在が確認され、そしてその場で俺がペンデュラム召喚を披露しましたが、それから未だにデュエルディスクを用いて使用できますし、ペンデュラムスケールも存在しています。ならばペンデュラムモンスター、及びペンデュラム召喚はデュエルのルール上使用出来ると、公式で認められている物です。使って良いと言われたら使いたくなるのはデュエリストの真理、そんなカードを作りたくなるのはカードデザイナーの真理って物では無いですか?それを、自分にしか扱えないと思い込むのは傲慢ですし、俺にしか使えないから駄目だと口を出すのは横暴です、そんな奴はデュエリストの風上にも置けません。俺はあくまでペンデュラムモンスターを初めて手にし、ペンデュラム召喚を初めて披露した、ただそれだけの第一人者に過ぎません」

 

そんなアンフェアな事をして俺TUEEEE!とか、そんなの俺が望んだ事じゃ無い。

そんな俺の想いを聞いて少しの間驚いた顔をした零児だったが、直ぐに表情を戻し、いや少し微笑んだようにも見えるな?

 

「そうか、重ね重ね済まないな。私は君という存在を見誤っていた様だ。君は私が思っている以上に、デュエリストとして、人間として見上げた存在の様だ」

「そ、そうですか?あ、ありがとうございます」

「では、話は此処までにしてデュエルを続行しよう。

私はリリスとケルベロスでオーバーレイ。2体のレベル4・悪魔族モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。この世の全てを統べるため今、世界の頂に降臨せよ!エクシーズ召喚、生誕せよ!ランク4!『DDD怒涛王シーザー』!」

 

DDD怒涛王シーザー

エクシーズ・効果モンスター

水属性

悪魔族

ランク 4

攻撃力 2400

ORU 2

 

エクシーズ召喚の演出と共に登場したのは、紫の鎧に身を包み、大剣を構える悪魔、シーザー。

あ、水属性だけど波紋を纏わせたシャボン玉を武器にしたりはしないからな?

それにしても此処でシーザーか、俺のアブソリュート・ドラゴンは発動タイミングの関係で、バトルフェイズに入らないと使えないけど、始めちゃうとシーザーの効果が発揮出来るし…

 

「私はこれでターンエンド」

 

Reizi

LP 4000

手札 1

モンスター DDD烈火王テムジン(攻撃表示)

      DDD疾風王アレクサンダー(攻撃表示)

      DDD怒涛王シーザー(攻撃表示)

魔法・罠カード 地獄門の契約書

        魔神王の契約書

 

すげぇ、先攻1ターン目なのに3体ものDDDモンスターを並べ、しかもシーザーの効果でモンスター破壊に対する牽制もばっちり、そしてプロトタイプとは言えペンデュラムモンスターを持っている事から、レオニダスを手札に握っている可能性もある。

これだよ、これこそ俺が求めていたデュエル、初見で俺と肩を並べる『ライバル』とのデュエルを、俺は今まで待ち望んでいたんだ、これなら満足出来るぜ!

 

「俺のターン!ドロー!」

 

お、この初手か、ちょっと面白い事してみようか。

 

「まずは魔法『オッドアイズ・フュージョン』発動!」

「フュージョン、という事は融合か」

 

オッドアイズ・フュージョン

通常魔法

『オッドアイズ・フュージョン』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:自分の手札・フィールドから、ドラゴン族の融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。相手フィールドにモンスターが2体以上存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、自分のエクストラデッキの『オッドアイズ』モンスターも2体まで融合素材とする事が出来る。

 

「オッドアイズ・フュージョンの発動時、貴方のフィールドにモンスターが3体存在し、俺のフィールドにモンスターが存在しない為、エクストラデッキの『オッドアイズ』モンスターを2体まで融合素材にする事が出来る!」

「何、メインデッキからなら聞いた事があるが、エクストラデッキから融合素材だと?」

「俺はエクストラデッキの『オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン』と、手札の『貴竜の魔術師』を融合!2色の眼の龍よ!その碧の輝きを解き放ち、荒ぶる風で敵を惑わせ!融合召喚!『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』!」

 

オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン

融合・効果モンスター

風属性

ドラゴン族

レベル 7

守備力 3000

 

融合召喚の演出と共に俺の場に登場したのは、エメラルドを思わせる緑の体躯に2色の眼を持ったドラゴン、オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン。

 

「特殊召喚に成功したボルテックス・ドラゴンの効果発動!貴方のフィールドに表側攻撃表示で存在するモンスターを1体、此処はアレクサンダーを、貴方の手札、いやシンクロモンスターなのでエクストラデッキに戻って貰います!ハリケーン・フォース!」

「何っ!?くっ…!」

 

よし、バウンスならシーザーの効果は通じない、これで大量蘇生コンビの片割れはいなくなった!

 

「次に、スケール1の『星読みの魔術師』と、スケール8の『竜穴の魔術師』を、ペンデュラムスケールにセッティング!」

 

ペンデュラムスケール(青):1(星読みの魔術師)

ペンデュラムスケール(赤):8(龍穴の魔術師)

 

「来るか、ペンデュラム召喚」

「はい、行きますよ!これによってレベル2から7のモンスターが同時に特殊召喚可能!

揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!

ペンデュラム召喚!出でよ、我が僕のモンスター達よ!

レベル7!世にも珍しき2色の眼を持ちし竜、『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2500

 

よし、どんどん行くぜ!

 

「更に俺は「なんだ中島?今デュエル中だが…何?分かったが、しかし…」どうかしましたか?」

「いや、こちらの話だ、気にせず続けてくれ」

 

いや、そう言われてもLDS、或いはレオ・コーポレーション関係で何か良からぬ事が起こっているというのは、通信傍受に使っているスマホの電源を切っていても、深刻そうな顔で分かる。

そんな状況下で零児はデュエルを、本気の状態で続行できるか?否だ。

 

「このデュエル、貴方に預けます」

「何?」

「今現在LDS、或いはレオ・コーポレーション関係にて良からぬことが起こったのでしょう?ならば社長として現場に急行し、対応に当たってはどうです?」

「君の気遣いはありがたいが、私もデュエリストだ、一度やると決めたデュエルをこっちの都合で投げ出す訳には…」

「何を言っているんです!俺とのデュエルは機会があればいつでも出来ますが、LDS関係で今起こっている事への対応は、一たびそれを誤ればそちらにとって大打撃になりかねない、そうでしょう!?今貴方がすべきは事態の対応に当たり、早急に収束させる事、そうでしょう!

それに、そんな大事を気にした状態の貴方と、デュエルに集中出来ない状態の貴方とデュエルをしても俺は満足しない!俺は貴方と本気のデュエルがしたいんだ!」

「っ!分かった、済まないが、この勝負は預からせて貰う…

中島、今そちらに向かう。それでは遊矢、また今度、デュエルをしよう」

 

そう言いつつ、本気で申し訳なさそうな顔で、零児はフィールドを後にした。

 

こうして、零児とのデュエルは無効試合となった。

沢渡を襲った俺似の不審者の件もあるし、この決着を付ける機会は大分先の事かな。



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2章『暗躍!舞網チャンピオンシップへ向けて!』
13話_もっと、熱くなれよぉぉぉぉ!


「それじゃあ、美琴に素良、そして刃の3人!」

『ようこそ!遊勝塾へ!』

「改めて宜しくゥ、3人共!」

「此処での事で何か困った事があったら何でも聞いてね!」

「一緒に切磋琢磨して行こうぜ!」

「遊勝塾の事なら、何でも俺に聞いてくれよ!」

「一気に3人も増えるなんて、これは凄くシビれる日常が待っているぜ!」

「まあ、うちこんなテンションだけど、ともかく宜しくね!」

「3人共、宜しくお願いします!」

「はい!皆さん、ありがとうございます!」

「えへへ、ありがとう皆!これからも宜しく!」

「えーと、一応此処に入る事は決まったけど、まだ俺の所属LDSだぜ?俺も祝われて良いのか?」

「案ずるな、刃よ。それを言えば、そもそもこの権現坂は部外者だ」

「いや、それを胸張って言うのはどうなんだ?」

「気にするな、刃!部外の者とも切磋琢磨していく、これこそ熱血だぁ!」

 

LDSとの3番勝負も終わり、改めて美琴と素良の歓迎会が始まった。

因みになんでLDSに所属している筈の刃がいるのか(権現坂がいるのは、まあ何時もの事だ)と言うと、ちょっと前に連絡をくれた零児曰く「LDSも今後、他のデュエルスクールに人材を出向かせて、互いに切磋琢磨して行かないといけないと、この3番勝負で痛感した」との事、その第1弾として遊勝塾に塾生を移籍させる事となったのだが、其処で白羽の矢が立ったのが、遊勝塾に対する熱い想いを持っていた刃、という訳。

その動きに一部からは「他のデュエルスクールを偵察させ、その秘密裏になっている指導方針を探るのが目的じゃないか?」と警戒する声、つまり刃がLDSのスパイなんじゃないかと警戒する声もあった。

まあさっきあんな事が起こったばっかりだからやむを得ないけどさ、俺達の指導方針はオープン、というか決まった物が存在していないし、だったら権現坂はどうなんだって事になるよな、アイツ権現坂道場の跡取りだぞ。

それにもし俺達の指導方針が流出したとしてもだ、それで強いデュエリストが育って、将来俺達を満足させてくれるほどの奴になったとしたら大歓迎だ、むしろ俺達にとって壁となれるまで、位の意気込みでも構わないぞ(あ、カードをパクるとかは駄目だからな、それは立派な犯罪)。

だから俺達は、刃の移籍を快く受け入れたんだ。

 

「そういえば、もうそろそろ舞網チャンピオンシップだな。うちはジュニアユースで遊矢、柚子、一行、当麻が去年ベスト8に入ったからシード権を4つ得ているが、確か刃は資格を持っているんだよな?」

「そうっす。50戦以上やって勝率7割記録しましたんで」

「美琴と素良はこれから、という所か。今からじゃあ50戦して勝率6割は厳しいから、もう1つの条件である6連勝を狙うしかないか」

「は、はい!頑張ります!」

「師匠達に鍛えられているから、楽勝ですよ!」

「去年の躍進もあって今じゃ加入希望者が殺到する程になったが、やっぱり結果を残していかないとな、去年の躍進が一過性の物と言われない為にも」

 

歓迎会が始まってから大分時間が経ち、ふと今度開催される舞網チャンピオンシップの話となった。

何度もさらっと話題にしている舞網チャンピオンシップ、それは年1回開催される、LDSが主催するデュエルの大会で、小学生以下が参戦するジュニアクラス、中学生以上(基本的に高校生まで)が参戦するジュニアユースクラス、そしてプロへの登竜門と言われているユースクラスの3つの部門がある。

ユースクラスで勝利すればプロへの道が開けるとあって大人気のこの大会だが、そのハードルは高い。

まずプロへの登竜門と言われているユースクラスに出場する為には、ジュニアユースクラスで好成績を収めてユースへの昇格試験を受けなければならず、そしてジュニアユースクラスに出場する為には、それまでに行われている公式戦において、『50戦以上行って勝率6割』か『直近で6連勝』のどちらかの条件を満たさなければならない(俺達の様な例外もあるが)。

そして今の時期となると、出場資格を満たしている奴はそれをキープする為にデュエルを自粛したり、満たしていない奴が互いにつぶし合ったりと、新たに出場資格を満たすのが難しくなる。

実力が知れ渡り過ぎてしまっている遊勝塾所属となったら尚更、公式戦を受けてくれるかどうか難しくなる、余程勝率に余裕があれば「実力者揃いの遊勝塾を相手にデュエルする事、これほど良い経験は無い」と受け入れてくれそうだが…

 

「おやおや?何やらお困りの様子」

 

あれ、何かこの場面、記憶にあるんだが。

その声に皆して振り向くと事務所の入り口から、黄色と黒のストライプ模様のスーツ、黄色がかったレンズの眼鏡を掛けた、

 

「に、ニコ・スマイリーさん!?」

 

そう、ストロング石島のマネージャー兼プロモーターであるニコ・スマイリーさんが入って来た。

こんな狙ったかの様なタイミングで出て来るとか、貴方は地獄耳ですか?

 

「ど、どうして貴方が此処に!?」

「いやぁそれがですね、ストロング石島があのデュエルの後にチャンピオンの座を返上し、私に何の連絡も無く修行の旅に出てしまったので、その代わりと言ってはあれですが、遊勝塾の方々を一流のプロにしたいという想いを抱き、はるばる参上しました!」

 

マネージャーに何の連絡も無いって大丈夫か、色んな意味で?

 

「それで、話は聞きましたよ。こちらのお二方、美琴さんと素良さんの対戦相手ですね?」

「はい。宜しければ、デュエルの相手の斡旋をして頂けますか?」

「お任せください!不肖このニコ・スマイリーが、相手をご用意いたしましょう!」

 

しかしながらアクションデュエルの、チャンピオンの座を3年間守り続けたストロング石島のマネージャーをずっと務めて来たのだ、その手腕は高い筈、こんな人が遊勝塾に付いてくれるとは心強いな。

美琴と素良の対戦相手に関しては、大丈夫そうだ。

 

「それでニコさん、もう1つ、これは俺個人としての頼みなのですが…」

「はいはい、何でしょうか?」

「かくかくしかじかで…」

「これこれうまうま、という訳ですね!分かりました、それでは今の貴方の実力を拝見いたしますが、宜しいですね?」

「はい。遊矢、俺とデュエルをして欲しい。フィールドに来てくれるか?」

「分かりました、塾長」

 

塾長とニコさんが何やら会話を交わしていると、ふと俺と塾長がデュエルする事になった。

傍目からは唐突な話、だが俺達にはその訳が直ぐに分かった。

それは…

 

------------

 

「戦いの殿堂に集いしデュエリストが!」

「モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!」

「フィールド内を駆け巡る!」

「見よ、これぞデュエルの最強進化系!」

「「アクショーン、デュエル!」」

 

先攻 Yuya LP 4000 VS 後攻 Shuzo LP 4000

 

何気に俺が先攻になるの久々だな。

 

「俺のターン!先攻はドロー無し。

まずは手札を1枚墓地へ送って魔法『オノマト連携(ペア)』発動!」

 

オノマト連携

通常魔法

手札を1枚墓地へ送って発動出来る。デッキから以下のモンスターの内1枚ずつ、合計2枚までを手札に加える。『オノマト連携』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

●『ズババ』と名の付いたモンスター

●『ガガガ』と名の付いたモンスター

●『ゴゴゴ』と名の付いたモンスター

●『ドドド』と名の付いたモンスター

 

「オノマト連携の効果で、俺は『ゴゴゴジャイアント』と『ドドドウィッチ』を手札に加える!

モンスターをセット、カードを1枚セットしてターンエンド!」

 

Yuya

LP 4000

手札 3

モンスター セット

魔法・罠カード セット

 

今回使っているのは、遊馬時代にメインで使用していた『オノマトホープ』デッキ。

希望皇ホープとの連携が強力な『ズババ』『ガガガ』『ゴゴゴ』『ドドド』といったオノマトモンスターを主力としたデッキだ。

ただ、塾長が恐らく今使っているだろうデッキ相手に、先攻で展開するのはちょっと不味いんだよな…

 

「やけに動きが慎重だな。ならば俺から行かせて貰う!

俺のターン、ドロー!

まずは魔法『おろかな埋葬』発動!」

 

おろかな埋葬(制限カード)

通常魔法

1:デッキからモンスター1体を墓地へ送る。

 

「おろかな埋葬の効果で、デッキから『BK(バーニングナックラー)ヘッドギア』を墓地へ送る!」

 

そう、塾長が使っているのは『BK』デッキ。

遊馬時代、バリアン七皇の1人ではあったが同時に俺の親友だったアリトが使っていたデッキで、ボクシングをモチーフにしたBKモンスターを用いた、蘇生を主とする展開力と其処からのエクシーズ召喚、カウンターで相手を迎撃するのを主戦略としている。

嘗ては『ガッツマスター』というスポ魂漫画をモチーフにした、炎属性・戦士族のカテゴリを使用していた塾長だったが、遊勝塾にて融合やシンクロ、エクシーズ召喚を取り入れ始めた頃に「何時までも高みを目指す事を忘れない心、これぞ熱血だ!」と、俺に指導を頼んできて、その際に「ピンと来た」のが、このBKだったそうだ(何気にガッツマスターと同じ炎属性・戦士族だしな)。

それ以来エクシーズ召喚を必死で学び、そして自らのデュエルを見つめ直し、

 

「済まないな、遊矢。塾生の指導は殆どお前頼みどころか塾長の俺すら遊矢に指導を仰ぐ始末、それなのに俺の我儘を押し通す為に今、お前とデュエルをしている。男として、先輩から塾を預かった身として、情けない限りだ。だがお前達が逆境にもめげないどころか敢然と立ち向かい、互いに切磋琢磨し、そして全力でデュエルをしている姿を見て、俺も血が騒いだ。遊矢、俺はもう1度、プロのリングに立ちたい!その為に、お前に勝つ!」

 

そして今、プロデュエリストに復帰する為に、俺と対峙している。

嘗ては父さんと同じくプロデュエリストだった塾長、だが父さんが失踪した3年前、塾長が不在となり、スポンサーが相次いで離脱する等の激震に見舞われたこの遊勝塾を存続させる為にプロを引退、塾長となって立て直しに奔走した。

塾長は自分を情けないと言っているがそんな事は無い、塾長が塾の存続の為に奔走してくれたからこそ、今があるんだ。

そんな、今まで遊勝塾の為に全力で頑張って来た塾長の想いを否定する存在は此処にはいない。

遊勝塾だって去年の大躍進以後人気はLDSと肩を並べる位になったし、資金的な面でもLDSから貰った賠償金によって余裕が生まれ、規模を大きくする事が出来た。

ニコさんという敏腕マネージャーも付いた今、このタイミングを逃せば、塾長の想いを実現する機会はもう訪れないと言っても過言じゃ無いんだ。

だがデュエルはデュエル、仮に手加減をしてニコさんに見抜かれたりしたら本末転倒だ、全力で相手をさせて貰うぜ!

 

「次に『BKスイッチヒッター』を召喚!」

 

BKスイッチヒッター

効果モンスター

炎属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1500

 

塾長の場に登場したのは、『両利き』を意味する言葉を冠した戦士、スイッチヒッター。

 

「召喚に成功したスイッチヒッターの効果発動!

今墓地へ送ったヘッドギアを蘇生する!」

 

BKヘッドギア

効果モンスター

炎属性

戦士族

レベル 4

守備力 1800

 

スイッチヒッターの効果で登場したのは、自らの名前の元となった防具を装着した戦士、ヘッドギア。

 

「続いて、スイッチヒッターとヘッドギアでオーバーレイ!2体のレベル4・BKモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!魂に秘めた炎を拳に宿せ!『BK拘束蛮兵リードブロー』!」

 

BK拘束蛮兵リードブロー

エクシーズ・効果モンスター

炎属性

戦士族

ランク 4

攻撃力 2200

ORU 2

 

その後、エクシーズ召喚の演出と共に出現したのは、2つのオーバーレイ・ユニットが拘束具となってその身を封じられた戦士、リードブロー。

 

「更に魔法『ブラック・ホール』発動!」

 

ブラック・ホール(制限カード)

通常魔法

1:フィールドのモンスターを全て破壊する。

 

と、此処でモンスターの全体破壊魔法として名高い、ブラック・ホールが発動した。

普通ならエクシーズ召喚した所に自爆させるという正気とは思えない行動、だが、

 

「ブラック・ホールの効果でフィールドにいるモンスターを全て破壊する!

だがこの時リードブローの効果で、リードブローが破壊される代わりにコイツに纏わりつく拘束具(オーバーレイ・ユニット)を1つ取り除く!」

 

BK拘束蛮兵リードブロー ORU 2→1

 

リードブローにとっては、その真価を発揮する為にてっとり早い策だ。

が、それは俺にとっても好都合だ!

 

「破壊されたのは『ゴゴゴゴーレム』!そのゴゴゴゴーレムを対象に罠『ガードゴー!』発動!」

「それを伏せていたか!だがこっちも拘束具を取り除いたリードブローの効果発動だ!」

 

ガードゴー!

通常罠

1:自分フィールドの『ガガガ』『ドドド』『ゴゴゴ』モンスターのいずれかが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた場合、そのモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを特殊召喚する。その後、手札から『ガガガ』『ドドド』『ゴゴゴ』モンスターを合計2体まで守備表示で特殊召喚出来る。

 

「リードブローの効果で、攻撃力を800アップさせる!」

「ガードゴー!の効果で、ゴゴゴゴーレムを守備表示で蘇生する!更に手札から『ドドドウィッチ』と『ゴゴゴゴラム』を守備表示で特殊召喚!更に特殊召喚に成功したゴゴゴゴラムの効果発動!このカードを攻撃表示にする!」

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力 2200→3000

 

ゴゴゴゴーレム

効果モンスター

地属性

岩石族

レベル 4

守備力 1500

 

ドドドウィッチ

効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 4

守備力 1600

 

ゴゴゴゴラム

効果モンスター

地属性

岩石族

レベル 4

攻撃力 2300

 

リードブローの拘束具が1つ取り外された事でその真の力が一部解放された一方、俺の場にも鈍色を基調とした岩石巨人ゴゴゴゴーレムと、バイキングを思わせる出で立ちの魔術師っぽい戦士ドドドウィッチ、そして赤色を基調とした岩石巨人ゴゴゴゴラムが出現した。

 

「まだまだだ!手札の『BKシャドー』の効果発動!

リードブローの拘束具を1つ取り除き、攻撃表示で特殊召喚する!」

 

BKシャドー

効果モンスター

炎属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1800

 

BK拘束蛮兵リードブロー ORU 1→0

 

更にもう1つの拘束具が破損、其処からそれを突き破る様に、名前の如く黒を基調としたカラーリングの戦士、シャドーが出現した。

まさか初手で握っていたとはな…

 

「更に、もう1つの拘束具を取り除いたリードブローの効果発動!

これでリードブローの封印された真の力が解放される!」

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力 3000→3800

 

そして、拘束具が全て外れたリードブロー、その全力が解放される。

 

「更に更に!デッキの一番上のカードを墓地へ送って魔法『バーニングナックル・スピリッツ』発動!」

 

バーニングナックル・スピリッツ

通常魔法

デッキの一番上のカードを墓地へ送って発動出来る。自分の墓地の『BK』と名の付いたモンスター1体を選択して表側守備表示で特殊召喚する。『バーニングナックル・スピリッツ』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

 

「バーニングナックル・スピリッツの効果で、墓地のヘッドギアを表側守備表示で蘇生する!

俺は今蘇生したヘッドギアとシャドーでオーバーレイ!2体のレベル4モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!魂の炎が宿った拳よ、もっと熱くなれよぉぉぉぉ!『No.(ナンバーズ)79BK新星のカイザー』!」

 

No.79BK新星のカイザー

エクシーズ・効果モンスター

炎属性

戦士族

ランク 4

攻撃力 2300→2500

ORU 2

 

塾長がどっかの炎の精霊丸出しな口上と共に登場した無限大の記号型の赤い機械物体、それに『79』と刻印が刻まれたと共に変形して出現したのは、両腕に名前の由来にもなった打撃武器を装着した赤き戦士、新星のカイザー。

あ、前にも言ったかと思うけど、No.達は遊矢に転生した際、特に変わった力を持っていないOCG効果のカードに変わったから、欲望を増幅されて暴走するとか、アクションデュエルでも無いのにダメージが実体化するとか、そんな事は無いからな?後、

 

「そして!今出した新星のカイザーを対象に魔法『RUM(ランクアップマジック)―バリアンズ・フォース』発動!」

 

RUM―バリアンズ・フォース

通常魔法

自分フィールド上のエクシーズモンスター1体を選択して発動出来る。

選択したモンスターと同じ種族でランクが1つ高い『CNo.(カオスナンバーズ)』または『CX(カオスエクシーズ)』と名の付いたモンスター1体を、選択したモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

その後、相手フィールド上にエクシーズ素材が存在する場合、相手フィールド上のエクシーズ素材1つを、この効果で特殊召喚したエクシーズモンスターの下に重ねてエクシーズ素材とする。

 

このバリアンズ・フォースの様なカードも、洗脳させる効果があるとか、そんな事も無い、というか初手に引いていたのかよ!?

 

「バリアンズ・フォースの効果で、新星のカイザーのオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオスエクシーズ・チェンジ!現れろ、BKの絶対王者!『CNo.105BK彗星のカエストス』!」

 

CNo.105BK彗星のカエストス

エクシーズ・効果モンスター

炎属性

戦士族

ランク 5

攻撃力 2800

CORU 3

 

トドメと言わんばかりに塾長が繰り出したのは、バリアン七皇の『呪い』ことオーバーハンドレッドナンバーズの1体がカオスエクシーズ・チェンジした黒き戦士、彗星のカエストス。

 

『流石に君が指導しただけの事はあるな、遊矢。柊修造、彼はアリトと比べても遜色ない位にBKデッキを使いこなしている。プロに復帰しても良い結果は残せそうだ』

『これは流石の遊矢も厳しいんじゃ…』

 

そのプレイングを感心したように話すアストラルと、戦慄を覚えるユベル。

確かにこのままなら厳しいかもな、ユベル、だけどそれこそデュエルの醍醐味って物だろ?

 

「バトルフェイズに入る!

リードブローでドドドウィッチを攻撃!

更にアクションマジック『ガードクラッシュ』発動!」

 

ガードクラッシュ(今作オリジナルカード)

アクションマジック

1:自分フィールドのモンスターが、相手フィールドのモンスターを対象に攻撃宣言した時、その攻撃モンスターを対象に発動出来る。その攻撃は無効化されず、守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 

「ガードクラッシュの効果でリードブローの攻撃は無効化されず、更に貫通効果を得る!

ライトニング・ストレート!」

「ドドドウィッチ!うわぁ!」

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力 3800 VS ドドドウィッチ 守備力 1600

 

Yuya LP 4000→1800

 

「更に彗星のカエストスでゴゴゴゴラムを攻撃!

コメット・エクスプロージョン!」

「くっ!」

 

CNo.105BK彗星のカエストス 攻撃力 2800 VS ゴゴゴゴラム 攻撃力 2300

 

Yuya LP 1800→1300

 

「破壊されて墓地へ送られたゴゴゴゴラムの効果発動!」

「ならそれにチェーンして、ゴゴゴゴラムを戦闘破壊して墓地へ送った彗星のカエストスの効果発動!

まずは彗星のカエストスの効果で、ゴゴゴゴラムの元々の攻撃力の半分、つまり1150ダメージを受けて貰うぞ!」

「ぐぁっ!」

 

Yuya LP 1300→150

 

「ゴゴゴゴラムの効果で、デッキからゴゴゴモンスター、『ゴゴゴギガース』を墓地へ送る!」

「あとちょっとか、これで俺はターンエンド!」

 

Shuzo

LP 4000

手札 0

モンスター BK拘束蛮兵リードブロー(攻撃表示)

      CNo.105BK彗星のカエストス(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

あ、危なかったなぁ。

塾長が繰り出す2体のBKエクシーズモンスターの猛攻によって、俺のライフは風前の灯火状態、というか正直、もし彗星のカエストスが『No.105BK流星のセスタス』からカオスエクシーズ・チェンジされていたら、ホープレイVと全く同じ効果で残っているゴゴゴゴーレムを破壊されると同時にバーンダメージで俺はもうやられていた。

後攻1ターンキルされなかったとはいえ厳しい事には変わりない、俺のフィールドにはゴゴゴゴーレムただ1体、手札もさっきのオノマト連携で手札に加えた1枚であるゴゴゴジャイアントとばれている。

だが、それでこそ面白い、それでこそデュエルだ!

デュエルは、残りLPが1でも残っていれば、其処から大逆転できるゲームなんだ!

 

「俺のターン!ドロー!」

 

よし、これなら!

 

「Ladies and Gentleman!Boys and Girls!これより私、榊遊矢と、このデッキのエースたる希望の聖騎士による剣舞をお見せしましょう!」

「お、来るか!そのデッキのエースが!」

「まずは、先程手札に加えた『ゴゴゴジャイアント』を召喚します!」

 

ゴゴゴジャイアント

効果モンスター

地属性

岩石族

レベル 4

攻撃力 2000

 

ゴゴゴゴーレムに並び立つように登場したのは、土色を基調とした岩石巨人(決して先行者とか言ってはいけない)、ゴゴゴジャイアント。

 

「召喚したゴゴゴジャイアントの効果発動!私の墓地からゴゴゴモンスター、ゴゴゴゴラムを表側守備表示で蘇生します!

その後、ゴゴゴジャイアントは守備表示に、ゴゴゴゴラムは攻撃表示になります!」

 

ゴゴゴジャイアントがその手を、俺のデュエルディスクの墓地に当たる部分に突っ込んで何かを探していると、探し物が見つかったのか手を抜き取り、其処からゴゴゴゴラムの腕、そして全身が飛び出して来た。

これなんて四次元ポケット…?

 

「次にフィールド魔法『希望郷―オノマトピア―』発動!

尚、アクションデュエル中、フィールド魔法は永続魔法扱いとなります!」

 

希望郷―オノマトピア―

フィールド魔法(永続魔法扱い)

1:このカードがフィールドゾーンに存在する限り、自分フィールドに『希望皇ホープ』モンスターが特殊召喚される度に、このカードにかっとビングカウンターを1つ置く。

2:自分フィールドのモンスターの攻撃力・守備力は、このカードのかっとビングカウンターの数×200アップする。

3:1ターンに1度、このカードのかっとビングカウンターを2つ取り除いて発動出来る。デッキから『ズババ』『ガガガ』『ゴゴゴ』『ドドド』モンスターの内いずれか1体を特殊召喚する。

 

よし、かっとビングだ、俺!

 

「更に、ゴゴゴゴーレムとゴゴゴジャイアントでオーバーレイ!2体のレベル4モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!我が戦いは此処から始まる!白き翼に望みを託し、現れろ!『No.39希望皇』」

「『『『ホープ』』』!」

 

No.39希望皇ホープ

エクシーズ・効果モンスター

光属性

戦士族

ランク 4

攻撃力 2500

ORU 2

 

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター 0→1

ゴゴゴゴラム 攻撃力 2300→2500

No.39希望皇ホープ 攻撃力 2500→2700

 

俺の側に出現した塔、それに『39』と刻印が刻まれたと共に変形して出現したのは、遊馬時代の俺の相棒である希望を司る騎士、ホープ。

だが、コイツの登場はほんの序の口!

 

「更に、ホープのオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオスエクシーズ・チェンジ!現れよ、混沌を光に変える使者!『CNo.39希望皇ホープレイ』!」

 

CNo.39希望皇ホープレイ

エクシーズ・効果モンスター

光属性

戦士族

ランク 4

攻撃力 2500→2700

ORU 3

 

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター 1→2

ゴゴゴゴラム 攻撃力 2500→2700

CNo.39希望皇ホープレイ 攻撃力 2700→2900

 

ホープがオーバーレイ・ネットワークに吸収された後に出現したのは、全身が灰基調に染まり、どっしりさが加わった姿、ホープレイ。

 

「まだまだここからです!ホープレイのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!エンドフェイズまでホープレイの攻撃力を500アップ、彗星のカエストスの攻撃力を1000ダウンさせます!これを2回!オーバーレイ・チャージ!」

「何っ!くぅ、ダメージを与え過ぎたか…!」

 

CNo.39希望皇ホープレイ ORU 3→2→1

攻撃力 2900→3400→3900

CNo.105BK彗星のカエストス 攻撃力 2800→1800→800

 

本当なら3つ消費する所だけど、まだ続きが残っている!

 

「更に更に!希望皇ホープレイのオーバーレイ・ネットワークを再構築!シャイニングエクシーズ・チェンジ!一粒の希望よ!今、電光石火の雷となって闇から飛び立て!現れよ!『SNo.(シャイニングナンバーズ)39希望皇ホープ・ザ・ライトニング』!」

 

SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング

エクシーズ・効果モンスター

光属性

戦士族

ランク 5

攻撃力 2500→2900

ORU 2

 

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター 2→3

ゴゴゴゴラム 攻撃力 2700→2900

SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング 攻撃力 2900→3100

 

ホープレイがオーバーレイ・ネットワークに吸収された後に出現したのは、青白さを基調とした色合いとなった姿、ホープ・ザ・ライトニング。

よし、これで決める!

 

「バトルフェイズに入ります!

ホープ・ザ・ライトニングで、彗星のカエストスを攻撃!

この瞬間、ホープ・ザ・ライトニングのオーバーレイ・ユニットを2つ取り除いて効果発動!

ホープ・ザ・ライトニングの攻撃力を5000にする!」

「ホープ・ザ・ライトニングが戦闘する時は、俺はカードの効果を使えない…!

ああ、また負けたぁ!」

「ホープソード・ライトニングスラッシュ!」

「うぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング 攻撃力 3100→5000 VS CNo.105BK彗星のカエストス 攻撃力 800

 

Shuzo LP 4000→-200 LOSE

 

WINNER Yuya

 

------------

 

「いやぁ、お見事でした修造さん!負けはしたとはいえ、あの流れる様なモンスターの展開とエクシーズ召喚、そして高パワーモンスターによる真っ向勝負!素晴らしい物です!」

「ありがとうございます、ニコさん!では、俺のプロへの復帰に関しては…」

「お任せください!不肖このニコ・スマイリー、貴方のマネージャー兼プロモーターとして、プロへの復帰に向けて全力でバックアップさせて頂きます!これからも宜しくお願いしますよ!」

「は、はい!ありがとうございます!」

「塾長、おめでとう!」

「良かったわね、お父さん!これでまたプロデュエリストね!」

「プロ復帰おめでとさン、塾長!」

「これからも頑張ってくれよ、塾長!」

「この男権現坂、修造さんのプロ活動、全力で応援致します!」

「塾長さん、おめでとうございます!」

「プロでも頑張って下さいよ、塾長!」

「まさかこの目でプロの誕生、いや復帰か、それをこの目で見られるなんてな…」

「塾長と遊矢兄ちゃんのデュエル、くぅ~痺れたなぁ!」

「塾長、遊矢兄ちゃんとのデュエルでの姿、凄く格好良かったです!」

「遊矢兄ちゃんのホープもそうだけど、塾長のBKモンスターも格好良かったぜ!」

「そうだねエレン、あのストレートパンチの迫力!凄かったなぁ」

 

まああと一歩の所で負けた塾長だったけど、そのプレイングはニコさんの評価を得るには充分な物だった事で、プロへの復帰が確約された。

塾長もステップアップした事だし、次は俺達だな。

けどその前に…



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14話_なんなのだこれは、どうすれば良いのだ!?

今回は三人称視点となっています。


それは夜、舞網市内にある、大通りから少し外れた路地での事だった。

其処を歩いていた1人の少年、彼は何処かへと向かっているのか、一直線にその路地を歩いていた。

見た感じは中学生くらいの少年だ、きっと家路についているのかも知れない。

だが、其処に、

 

「貴様、LDSか?」

 

黒を基調とした服装に、夜にも関わらずグラサンを掛けた男が、その少年に声を掛けて来た。

夜という時間を全く考慮していないグラサンも勿論だが、その男から発せられる只ならぬ気配は、その男がまともな人間では無い、物騒な方面の人間ではと誰もが思うだろう。

そんな男に声を掛けられたとあれば、警戒したり、驚いたりするものだが、

 

「ああ、そうだ…といったらどうする?」

 

その少年は、何処か落ち着いた様子でそう返した。

そんな少年の落ち着き払った反応を見て男は何処か戸惑った様子を僅かに見せるも、

 

「ならば話は早い、デュエルだ!」

 

持っていたデュエルディスクを構え、少年にデュエルを申し込む。

それに少年は応じるかの様にデュエルディスクを装着し、構えを取った事で、デュエルは開始される(ヒュン!)、

 

「(ガチャァ!)なっ!?こ、これは!?」

 

筈だった。

が突如、少年のデュエルディスクから発射された何か、それが男のデュエルディスクに差し込まれた。

良く見るとそれは鎖の様な物で、これによって少年と男のデュエルディスク同士が連結し、簡単に外す事が出来なくなった。

想定外の事態に動揺を隠せない男、其処へ、

 

「始めに言って置く。俺はこれがデュエルだと思ってはいない」

 

この想定外の事態を引き起こしたであろう少年の、落ち着き払った声が聞こえた。

何かを男に告げる様に、いや、それはまるで男に『宣告』するかの如く。

 

「これは断罪(パニッシュ)だ」

「何だと、貴様!」

 

そして、その『宣告』によって、デュエルのゴングは鳴らされた…!

 

「「デュエル!」」

 

先攻 ????(少年) LP 4000 VS 後攻 ????(男) LP 4000

 

「俺のターン。先攻はドロー無し。

まずは魔法『フォトン・サンクチュアリ』発動」

「何、『フォトン』だと!?馬鹿な、何故貴様がそんなカードを!?」

「今から裁きが下る貴様が知る必要は無い」

 

フォトン・サンクチュアリ

通常魔法

このカードを発動するターン、自分は光属性以外のモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚出来ない。自分フィールド上に『フォトントークン』(雷族・光属性・レベル4・攻撃力2000・守備力0)2体を守備表示で特殊召喚する。このトークンは攻撃出来ず、シンクロ素材にも出来ない。

 

「フォトン・サンクチュアリの効果で、俺の場に2体のフォトントークンを守備表示で特殊召喚」

 

フォトントークン

光属性

雷族

レベル 4

守備力 0

 

少年が発動したフォトン・サンクチュアリによって、少年のフィールドに2体の球体、フォトントークンが現れた。

その発動の際に男が驚きの声を上げて少年に問い詰めるも、当の少年は軽く受け流した。

 

「2体のフォトントークンをリリースし、『轟雷帝ザボルグ』をアドバンス召喚」

 

轟雷帝ザボルグ

効果モンスター

光属性

雷族

レベル 8

攻撃力 2800

 

その2体のフォトントークンを1枚のカードに吸収させると、少年の場には新たに、雷を司る6帝の一角『雷帝ザボルグ』が進化した姿、轟雷帝ザボルグが出現した。

 

「アドバンス召喚に成功したザボルグの効果発動。

ザボルグ自身を破壊」

「何…?」

 

が、その姿は自らに宿りし雷の力が暴発した事で自爆した。

一見すると手札2枚を使って出した最上級モンスターを直ぐに投げ捨てるという暴挙と言える動作、だが、

 

「この効果で光属性モンスターを破壊した事で、そのモンスターのレベルもしくはランクの数だけ、俺と貴様のエクストラデッキからカードを墓地へ送る」

「エクストラデッキのカードを墓地へ送るだと!?」

「破壊されたザボルグのレベルは8、よって俺も貴様も8枚のカードを墓地へ送る。この時、本来送るカードを選ぶのはそのエクストラデッキの持ち主だが、ザボルグのアドバンス召喚の際に光属性モンスターをリリースしている為、貴様のエクストラデッキから墓地へ送るカードを選ぶのは俺だ。さあ、エクストラデッキを見せろ」

「な、何だと!?くっ…!」

 

これこそが進化したザボルグの真骨頂、相手のエクストラデッキをピーピングした上での墓地送り。

少年に効果を告げられた男は怒りを全開にしながらも少年に自らのエクストラデッキを公開する。

 

RR(レイド・ラプターズ)、聞きなれないカテゴリだが、貴様のデッキはエクシーズモンスター主体か。ならば『RR-ブレイズ・ファルコン』3枚と『RR-フォース・ストリクス』3枚、そして『RR-ライズ・ファルコン』2枚を墓地へ送って貰う」

「お、おのれ…!」

「俺は『虹光の宣告者(アーク・デクレアラー)』3枚と『神聖騎士(ホーリーナイト)パーシアス』3枚、そして『ゼラの天使』2枚を墓地へ送る」

「そのカード、貴様、シンクロ使いか!?」

「貴様が知る必要は無い、そう言った筈だ」

 

だが、少年の動きは留まる事を知らない。

 

「墓地へ送った虹光の宣告者の効果を3枚発動。

俺のデッキから儀式モンスター1枚か儀式魔法1枚を手札に、これを3回行う。

この効果で俺は儀式モンスター『神光の宣告者(パーフェクト・デクレアラー)』2枚と儀式魔法『宣告者の預言(デクレアラー・プロフェシー)』を手札に加える」

「儀式モンスターと儀式魔法だと?」

「今手札に加えた儀式魔法『宣告者の預言』発動」

 

宣告者の預言

儀式魔法

『神光の宣告者』の降臨に必要。

自分の手札・フィールド上から、レベルの合計が6になるようにモンスターをリリースしなければならない。

このカードの効果によって『神光の宣告者』が儀式召喚に成功した時、自分の墓地のこのカードをゲームから除外する事で、その儀式召喚の為にリリースしたモンスター1体を選択し、自分の墓地から手札に戻す。

 

「宣告者の預言の効果で、手札のレベル6『神光の宣告者』をリリースし、『神光の宣告者』を儀式召喚」

 

神光の宣告者

儀式・効果モンスター

光属性

天使族

レベル 6

守備力 2800

 

墓地へ送った事で発動した効果により、儀式モンスターと儀式魔法をサーチしていく少年。

そのすぐ後に発動した儀式魔法、その上空から光が少年に差し込むと共に、球体を2つ繋げた様な体躯に様々な色の翼を生やした天使、神光の宣告者が舞い降りた。

が、それは少年にとってはまだ序の口だった。

 

「儀式召喚に成功した事で、宣告者の預言を除外し、リリースした神光の宣告者を手札に戻す。

続いて魔法『貪欲な壺』発動。対象は虹光の宣告者3枚と、パーシアスとザボルグ1枚ずつだ」

 

貪欲な壺

通常魔法

1:自分の墓地のモンスター5体を対象として発動出来る。そのモンスター5体をデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから2枚ドローする。

 

「貪欲な壺の効果で、対象となったモンスターをデッキに、ザボルグ以外はエクストラデッキ戻し、シャッフルを終えた後に2枚ドローする。

ボチテンシヨンタイ、よって『大天使クリスティア』を手札から攻撃表示で特殊召喚」

 

大天使クリスティア

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 8

攻撃力 2800

 

神光の宣告者に並び立つように現れたのは、深紅の羽を持った大天使、クリスティア。

 

「この効果で特殊召喚したクリスティアの効果発動。

墓地のパーシアスを手札、いやシンクロモンスターだからエクストラデッキに戻す。

カードを2枚セットしてターンエンド」

 

????(少年)

LP 4000

手札 3

モンスター 神光の宣告者(守備表示)

      大天使クリスティア(攻撃表示)

魔法・罠カード セット×2

 

「随分と好き勝手動いてくれたみたいだが、もう貴様の好きにはさせん!

貴様には赤馬零児を誘い出す餌になって貰う!

俺のターン!ドロー!」

「スタンバイフェイズに永続罠『王宮の鉄壁』発動」

「何、此処で鉄壁だと!?」

 

王宮の鉄壁

永続罠

1:このカードが魔法・罠ゾーンに存在する限り、お互いにカードを除外出来ない。

 

意気込みを新たに男がドローする、が男は知らない、これで少年の必勝の布陣、いや『完全決闘(パーフェクト・デュエル)』の布陣が完成した事に…!

 

「だがそんな物を今発動した所でどうと言う事は無い!

まずは『RR-バニシング・レイニアス』を召喚!」

 

RR-バニシング・レイニアス

効果モンスター

闇属性

鳥獣族

レベル 4

攻撃力 1300

 

そんな事はお構いなしと言わんばかりに男が登場させたのは、翼に無数の銃身を組み込んだ戦闘機の様な猛禽、バニシング・レイニアス。

 

「バニシング・レイニアスの効果発ど(ビーッ!ビーッ!)な、なんだこの警告音は!?」

「クリスティアがいる限り、俺も貴様もモンスターを特殊召喚出来ない」

「な、何だと!?ならばカードを1枚セットしてターンエンドだ!」

 

????(男)

LP 4000

手札 4

モンスター RR-バニシング・レイニアス(攻撃表示)

魔法・罠カード セット

 

「俺のターン、ドロー」

「スタンバイフェイズにバニシング・レイニアスをリリースして罠『ゴッドバードアタック』発ど(ヒュン!)(ザシュゥ!)なっバニシング・レイニアス!?」

「ゴッドバードアタックの発動にチェーン、手札の『センジュ・ゴッド』を墓地へ送って神光の宣告者の効果発動。

貴様の効果モンスターの効果・魔法・罠カードの発動を無効破壊する。

これでゴッドバードアタックは無効だ」

「な、な…!」

 

ゴッドバードアタック

通常罠

1:自分フィールドの鳥獣族モンスター1体をリリースし、フィールドのカード2枚を対象として発動出来る。そのカードを破壊する。

 

お分かりいただけたであろうか、少年の場にいる神光の宣告者、大天使クリスティア、王宮の鉄壁、これが何故、少年の必勝の布陣なのか、何故『完全決闘』と呼ばれているのかが?

手札の天使族1枚をコストにカウンター罠を除く殆どのカードの効果を無効に出来る神光の宣告者、特殊召喚を許さないクリスティア、そして除外を許さない王宮の鉄壁…

 

纏めると以下の様になる。

●神光の宣告者によって、殆どのカードの効果は使えない。

●クリスティアによって、神光の宣告者によって無効化出来ない『超融合』、効果を使わずに『溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム』といった相手の場のモンスターをリリースして相手の場に特殊召喚するモンスター等によって除去(という名のリリース)が出来ず、またクリスティアや神光の宣告者を戦闘破壊出来るモンスターを出すのも至難。

●王宮の鉄壁によって、墓地にモンスターを送れなくする『マクロコスモス』等の除外カードが役立たずと化し、罠カードの効果の発動である墓地の『ブレイクスルー・スキル』も発動出来なくなる。

 

この布陣に対し、対処法は主に以下の3つのみ。

 

●効果モンスターの効果発動を無効にするカウンター罠

●『コアキメイル・デビル』等のモンスター効果を無効にする永続効果をもったモンスター

●発動出来るカードをつぎこむ事による手札の枯渇(無論、特殊召喚効果を持ったカード、除外に関わるカードは使えない)

 

正に、『完全決闘』の布陣である。

 

「なんなんだ、なんなんだこれは、どうすればいいんだ…!」

「神光の宣告者を攻撃表示に変える。

バトルフェイズ、さあ断罪の時間だ。

神光の宣告者でダイレクトアタック」

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

????(男) LP 4000→2200

 

「クリスティアで、とどめだ」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

????(男) LP 2200→-600 LOSE

 

WINNER ????(少年)

 

そして、デュエルは呆気なく終了し、モンスター達の攻撃によって男は倒れ、気絶した。

そんな男に、

 

「さて、零児をおびき出す餌になって貰うと言っていたが。ならば(ヒュン!)(パシィ!)不意打ちとはやってくれるな。コイツの仲間か?」

「隼を捕まえさせはしない、こっちに渡して貰おうか」

 

少年は近づいてその身を確保しようとした、が其処に、隼と呼ばれた男の仲間と思しき存在の奇襲を受ける。

それを難なく掴み取って防ぐ少年だったが、

 

「っ!その顔、その服装…

成る程、貴様が、柚子が言っていた『俺そっくりの不審者』か…!」

「なっ!貴様は!?」

 

その顔を互いに見やるとその様子が一変、互いに敵意をむき出しにして対峙する。

一方は、『眼が金色になった』遊矢、そしてもう一方は『遊矢そっくり』の、黒ずくめの男…!



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15話_何の事だ、まるで意味が分からんぞ!

柚子からの話で知った、沢渡を襲った俺似の不審者が言っていたLDS関係者かどうかを問う言葉、その翌日、つまりLDSとの3番勝負の最中にも発生し、その後も短い期間に、立て続けに発生している、LDS関係者が行方不明となる事件、もしかしなくてもソイツ或いはその仲間がLDS関係者を襲っているのは明らかだ。

これ以上、その『俺そっくりの不審者』やその仲間に良い様に動かれては俺への疑いは強くなるばかり、遊勝塾の面々や零児は俺ではないとと信じてくれてはいるが(特に被害者的な意味で当事者であるLDS、その最高責任者である零児が潔白を主張してくれていると、刃から聞いた時は凄く有難いと思ったが)、それも限界だろう。

いち早くそいつらを見つけ出して捕まえ、俺の潔白を証明しなくてはならない。

そう決意し、向こうが狙うLDS関係者(ある意味そうだが)だと分かる目印をつけ、夜の舞網市を捜索していたら案の定、引っ掛かった。

俺を呼び止めたソイツは、見た感じでは柚子が遭遇した『俺そっくりの不審者』ではなかったがそれでもこの事件に関わっているのは間違い無い(というより、如何にも不審者だと言わんばかりの格好と言動からして、そうではないと思う方がおかしい)、その呼び止めに思わせぶりな答えを返すと、直ぐにソイツはデュエルディスクを構え、俺にデュエルを仕掛けて来た。

これは確保のチャンスだと思い、デュエルディスクを装着しつつそれに応じる様に構えた瞬間、デュエルディスクに組み込んだデュエルアンカーを射出してソイツを拘束、更に覇王の力を解放して(喋り方がやけに落ち着き過ぎているなと思うだろうが、これは覇王の力の副作用だ)、ダメージを実体化させる事でソイツの気絶を狙い、そしてそれを確実に実行する為に、遊矢に転生してから2人(柚子とエレンだ)にしか破られていないデッキ『完全決闘』を使用した。

結果は(事実上の)先攻1ターンキル、クリスティアによるダイレクトアタック(腹パン)で気絶したソイツを確保するべく近づいた瞬間、背後からの奇襲に気付いてそれを防いだが、その奇襲を仕掛けた者がまさかの『俺そっくりの不審者』だったとはな…

今日はなんとも運が良い、今回の事件の犯人を一網打尽出来、そして俺の濡れ衣を晴らせるのだから…!

 

「今回の事件に関して、貴様も(ヒュン!)逃がす訳には行かない」

「(ガチャ!)くっ!だがそれはこっちの台詞だ!瑠璃を何処へやったか、話して貰う!」

 

瑠璃、一体誰の事だ?まあいい、デュエルで決着を付け…!

 

「む?これは…?」

「なっ!?お、俺のデッキ、いや、コイツが…!?」

『ゆ、遊矢、何だろう、この不気味な力は…!』

『一体何が起こっているんだ…!?』

 

俺のデッキの1つ、これは『魔術師オッドアイズ』か、これと、『俺そっくりの不審者』のデッキが、共に謎の光を発していた。

何やら俺を使えと言わんばかりにその存在を主張している様だが、成程、戦いたいという事か…

 

「「デュエル!」」

 

先攻 Yuya LP 4000 VS 後攻 ???? LP 4000

 

「俺のターン。先攻はドロー無し。

まずは魔法『フォトン・サンクチュアリ』発動」

「『フォトン』だって!?何故それを…!」

 

フォトン・サンクチュアリ

通常魔法

このカードを発動するターン、自分は光属性以外のモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚出来ない。自分フィールド上に『フォトントークン』(雷族・光属性・レベル4・攻撃力2000・守備力0)2体を守備表示で特殊召喚する。このトークンは攻撃出来ず、シンクロ素材にも出来ない。

 

が、此処で空気を読んでお前を使うと良からぬ事が起きそうだからな、それに目の前にいる『俺そっくりの不審者』もこの事件の加害者的な意味での関係者、逃がす訳には行かない。

そう判断して俺は、さっき隼と呼ばれていた男とデュエルした時と同じく『完全決闘』デッキを使っている。

その初手で出したフォトン・サンクチュアリに、隼と同じく「何でお前が持っているんだ」的な反応を見せるが、気にする必要は無い。

 

「フォトン・サンクチュアリの効果で、俺の場に2体のフォトントークンを守備表示で特殊召喚」

 

フォトントークン

光属性

雷族

レベル 4

守備力 0

 

フォトン・サンクチュアリの効果で俺のフィールドに出現した2体の球体、フォトントークン。

それを使って出すは、

 

「2体のフォトントークンをリリースし、『轟雷帝ザボルグ』をアドバンス召喚」

 

轟雷帝ザボルグ

効果モンスター

光属性

雷族

レベル 8

攻撃力 2800

 

このデッキのキーカードの1体、雷を司る6帝の一角『雷帝ザボルグ』が進化した姿、轟雷帝ザボルグ。

 

「アドバンス召喚に成功したザボルグの効果発動。

ザボルグ自身を破壊」

「何?アドバンス召喚したモンスターを自爆させるだと?」

 

俺のプレイングに疑問を呈されるが、コイツの真価はその破壊後の効果だ。

 

「この効果で光属性モンスターを破壊した事で、そのモンスターのレベルもしくはランクの数だけ、俺と貴様のエクストラデッキからカードを墓地へ送る」

「何!?エクストラ破壊だと!?」

「破壊されたザボルグのレベルは8、よって俺も貴様も8枚のカードを墓地へ送る。この時、本来送るカードを選ぶのはそのエクストラデッキの持ち主だが、ザボルグのアドバンス召喚の際に光属性モンスターをリリースしている為、貴様のエクストラデッキから墓地へ送るカードを選ぶのは俺だ。さあ、エクストラデッキを見せろ」

「何だと!?その為に出したザボルグを犠牲に…!」

 

さて、『俺そっくりの不審者』のエクストラデッキは…!

 

「『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』、そうか、コイツが…!」

『ゆ、遊矢!?なんかそのカード、只ならぬ気配がする…!』

『大丈夫か遊矢?それにしても、No.以外のエクシーズモンスターで、こんな只ならぬ気配を発するカードがあったとはな…』

 

ユベルやアストラルが言う通り、相手のエクストラデッキの中から現れた1種類のカード達から只ならぬ気配がし、それが俺に呼びかけようと、意志を支配しようと、何か仕出かしてして来た。

それ自体は覇王の力で捻じ伏せて見せたが、恐らくこのダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンの気配と、俺のオッドアイズ達の気配が共鳴をしたのかも知れない、それで互いに光り出したのだろう。

ならば、コイツをこのままエクストラデッキに残しておくわけには行かないな。

 

「『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』3枚と『幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ブレイクソード』3枚、そして『幻影騎士団シューティングランサー』2枚を墓地へ送って貰う」

「くっ…!」

「俺は『虹光の宣告者(アーク・デクレアラー)』3枚と『神聖騎士(ホーリーナイト)パーシアス』3枚、そして『ゼラの天使』2枚を墓地へ送る」

「そのカード、シンクロモンスターか…」

 

さあ、『完全決闘』の開始だ…!

 

------------

 

「クリスティアで、トドメだ」

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

その後は先程の隼とのデュエルと同じ展開となり、先攻2ターン目のダイレクトアタックで俺の勝利となった。

そしてこれまた先程の隼と同じく『俺そっくりの不審者』はダイレクトアタックによるダメージで気絶、周囲に他の人物の気配が無い以上、これで2人の確保が出来るな。

と、その前に、

 

「もしもし、零児?今、大丈夫ですか?」

『遊矢か、一体どうした?』

 

零児に連絡を取って置く、零児達LDSにとってコイツらは自分達の関係者を襲撃して来た襲撃犯、それが確保されたという情報が無ければ、不安で仕方がないだろうと思ってだ。

因みになんで零児の連絡先を知っているのかと言うと、刃を通じて自らの電話番号を教えてくれたからだ。

 

「今回の事件、沢渡が襲撃され、LDS関係者が相次いで行方不明となっている事件の犯人と思しき存在を確保しました。直ちに引き取りをお願いします」

『本当か?それは済まないな、君の手を煩わせる事になって。分かった、後は私達に任せてくれ』

「いえ、俺としても『俺そっくりの不審者』に色々動かれると都合が悪かったので。じゃあ、後はお願いします」

 

そう連絡して、俺は電話を切った。

まあこの襲撃事件は一先ず解決のメドが立った(まだ他に協力者がいる可能性が否定できない以上、解決したとは言い切れない)が、一方でさっきのダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンと俺のオッドアイズ達との謎の共鳴現象、あれが一体何なのか俺は気になり、『俺そっくりの不審者』のデュエルディスク、その墓地に当たる部分に入って居たダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンを取り出し、俺のオッドアイズ達と見比べてみる、と、

 

「あれ?『覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン』?こんなカード入っていたっけ?」

『いや、ボクの記憶が正しければ、そんなカード無かった筈だよ?』

『エクシーズのペンデュラムモンスターだと?私もそんなカードがあるなど知らないが…』

 

俺がいれた覚えのない、どころか持っていた覚えすらないオッドアイズモンスター『覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン』が、俺のエクストラデッキに入っていた。

もしやメインデッキにも影響が?そう思いメインデッキを広げると、

 

「こっちにもか…

『相克の魔術師』に『相生の魔術師』、俺が手にした覚えのない魔術師が入っているなんて…」

『これは随分と不気味だな…』

『うん、何だか嫌な予感がする…』

 

やはりメインデッキにも影響があった、『相克の魔術師』と『相生の魔術師』、俺が持っていない筈の2体の魔術師が入っていたのだから。

これまでの人生でも色々な、カードにまつわる超常現象に遭遇して来た俺だが、ZEXALにもなっていないのにカードが創造されているとか、何時の間にかそれが成されているとか、それらは正直初めてだ。

ユベルが言った事が現実の物とならなければ良いんだが…



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16話_恋する乙女に、不可能は無い!

「『覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン』、『相克の魔術師』、『相生の魔術師』…

あの『俺そっくりの不審者』が持っていた『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』を見てから、俺のデッキに入って来たカード達…

何時、何が切っ掛けで、何が目的で、俺のデッキの中に、『オッドアイズ』や『魔術師』のカードとして入って来たのか…

オッドアイズ達とダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンとの共鳴…

アイツらにどんな関係があるのか、もしかしたら、それが関係しているのかも知れないな…」

『オッドアイズ達もそうだったけど、何だか不思議なカード達だね。効果だって今まで見た事が無い、ヘンテコな物だし』

『ああ。『相克の魔術師』のペンデュラム効果は、エクシーズモンスターのランクをレベルに替え、『相生の魔術師』のペンデュラム効果は、レベル5以上のモンスター1体のレベルの数だけエクシーズモンスターのランクを変える…

如何にもこの組み合わせてペンデュラムスケールをセッティングし、レベル揃えてエクシーズ召喚しろと言いたげな効果だな、それも一旦出したエクシーズモンスターによって。

『覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン』の効果も、エクシーズモンスターを使ってエクシーズ召喚をしないとその効果を発揮出来ないというのは、もうこの1対を狙っているとしか思えない』

 

LDS関係者が次々と襲撃されていた事件は、俺がその犯人を確保し、零児達LDS上層部に引き渡した事で一応のメドは付いたが、その折に俺のオッドアイズ達とダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンとの共鳴したっぽい現象があったり、『魔術師オッドアイズ』デッキに覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン達が入り込んでいたり…

何故そんな事が起こったのか、ユベルやアストラルとも話し合ったが、正直今の情報だけでは皆目見当も付かない。

一応、『俺そっくりの不審者』と、ソイツが持っていたダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンも関係があると思う、其処から探って行けばこの謎も分かるかも知れない。

だがソイツらは今、今回の襲撃事件の犯人として取り調べを受けている最中、其処から聞き出した情報を零児経由で聞くしか方法は無い。

当分この件は保留とし、何か分かるまでは『魔術師オッドアイズ』デッキは対戦で使わない方が良いな。

さて、そうと決まれば…

 

------------

 

「あっ貴方はあの『完全決闘者』榊遊矢様!?今日、此処で会えるなんて正に運命の導き、遊矢様こそミエルの運命の相手なのね!」

「あの、えーと、君は?」

「申し遅れました、遊矢様!ミエルは此処『海野占い塾』所属の方中(ほうちゅう)ミエルです!あの、結婚を前提に付き合って下さい!」

「ウェ!?いきなりどうしてそうなるんだ!?君と俺、初対面だよな!?」

「恋するのに関わった時間なんて関係ないです!それに貴方にとっては初対面でも、ミエルにとってはずっと憧れていた存在です!というか君じゃなくてミエルって呼んで!」

「ちょっと貴方、遊矢が困っているじゃない!一先ず離れなさい!」

「ワケわかんないよ…」

 

どうしてこうなった…?

俺達は美琴の舞網チャンピオンシップへ向けてのデュエルの為に、ニコさんが選出したデュエリストの所属する塾を訪ねたんだが…

その対戦相手として紹介された、「ふわふわ」という擬音が聞こえて来そうな赤毛、猫かと突っ込みたくなる大きな眼、リンゴ型の水色の水晶を首に掛けた少女、方中ミエルと会ったは良いのだが、向こうが俺を見つけた途端に、こうして「ラブラブ」という擬音が聞こえて来そうな位にすり寄って来た。

しかも話を聞こうとしたら唐突にプロポーズされるし、突っ込みをいれても気に留めないしで、柚子が割って入るまで話が全く進まなかった。

で、落ち着いた所で話を聞いてみたんだが、俺が舞網チャンピオンシップにて、彼女がエースとしているカードと同じ天使族・儀式モンスターである『神光の宣告者』を使って相手を圧倒する様に心を射抜かれて以来ファンとなり、それ以来俺との出会いを待ちわびつつ勉強やデュエル、占いに明け暮れていたとか。

まあ聞いた話だけだと、俺を知る切っ掛けは美琴や刃と同じって事かな、しかし其処から恋に発展するとか、何百年という人生を歩んでいても、恋愛の切っ掛けって分からない所があるもんだなぁ。

え、明らかにベタなパターンだろって?いや案外そうでも無いぞ。

 

「まあアンタが遊矢先輩をどう想おうがそっちの勝手だけど、今日は私とアンタがデュエルする予定で、此処に来たのよ。其処を勘違いしないで欲しいわね。分かったならデュエルの準備をして」

「なによアンタ、そんなカリカリして。まあ良いわ、待っていて下さい、ダーリン!」

 

いや、まだ俺付き合うとは一言も言ってないんだが!?

とはいえ話題を変えてくれて助かったぜ美琴、ミエルから話を聞いている間も彼女はすり寄っているし、柚子と(俺にしか見えなかったが)ユベルはそんなミエルに怒り心頭といった様子だし、アユは「気色悪い」と言いたげなジト眼でこっち見るだけだし、一行達男子勢は「ヒューヒュー!」とはやし立てたり「こりゃァ昼ドラ的展開に突入ってかァ?」と勘繰ったり等面白がるだけだしで、どうにも居心地が悪かったからな。

 

------------

 

「戦いの殿堂に集いしデュエリストが!」

「モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!」

「フィールド内を駆け巡る!」

「見よ、これぞデュエルの最強進化系!」

「「アクショーン!デュエル!」」

 

先攻 Mieru VS 後攻 Mikoto

 

「ダーリン!貴方に勝利を捧げます!

ミエルのターン!ミエルの先攻だからドローは無しね。

ミエルはモンスターをセット、カードを2枚セットしてターンエンドよ」

 

Mieru

LP 4000

手札 2

モンスター セット

魔法・罠カード セット×2

 

ミエルの初手はモンスターのセットと、魔法・罠カード2枚セットで終わったか。

さて美琴は、これを見てどう出るか…

 

「あんなはっちゃけた言動をしていた割に、堅実な動きね。けど、その判断が命とりだと言う事を教えて上げる!

私のターン、ドロー!

まずは魔法『予想GUY』発動!」

 

予想GUY

通常魔法

1:自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動出来る。デッキからレベル4以下の通常モンスター1体を特殊召喚する。

 

来たか美琴の十八番、初手予想GUYが。

 

「予想GUYの効果で、デッキから通常モンスター『磁石の戦士(マグネット・ウォリアー)α』を守備表示で特殊召喚!」

 

磁石の戦士α

通常モンスター

地属性

岩石族

レベル 4

守備力 1700

 

予想GUYの効果でデッキから登場したのは、剣と盾を構えた磁石の戦士、α。

 

「次に『レスキューラビット』を通常召喚!」

 

レスキューラビット

効果モンスター

地属性

獣族

レベル 4

攻撃力 300

 

次に登場したのは、工事現場とかで使いそうなヘルメットとゴーグルを頭に装備し、首にトランシーバーをぶら下げた兎、レスキューラビット。

見た目は可愛いのだが、その効果はOCGで一時、準制限カードに指定された程の凶悪な物だ。

それは、

 

「レスキューラビットを除外して効果発動!私のデッキからレベル4以下の、同名の通常モンスター2体を特殊召喚するわ!この効果で『磁石の戦士β』2体を攻撃表示で特殊召喚するわ!」

 

磁石の戦士β

通常モンスター

地属性

岩石族

レベル 4

攻撃力 1700

 

同名の通常モンスター、つまり同レベル・同属性・同種族のモンスターを2体リクルートする、という物。

一時期、『兎○○』或いは『○○兎』と呼ばれた、このモンスターをキーカードに据えたデッキが環境で大暴れする程流行した位、と言えばその脅威が分かるだろう。

効果自体は禁止カードである『レスキューキャット』の調整版、という事になってはいる(そして設定的にもキャットが上司となっている)が、エクシーズ召喚が出て来た関係で調整になっていないと思ったのは俺だけじゃ無い筈だ。

そして、美琴のデッキでは、それだけがメリットじゃない。

 

「よし、これで私のエースを呼び出す準備が出来たわ!私はフィールドの磁石の戦士αとβ、そして手札の『磁石の戦士γ』をリリースして、合体召喚!『磁石の戦士マグネット・バルキリオン』!」

 

磁石の戦士マグネット・バルキリオン

効果モンスター

地属性

岩石族

レベル 8

攻撃力 3500

 

そう、リクルート手段が増える事により、エースであるマグネット・バルキリオンの登場をサポート出来るのだ。

 

「攻撃力3500…

磁石の力で互いがひかれあい、繋がる事で力を増大させたって訳ね。まるでミエルとダーリンみたい!」

「あえて其処には突っ込まないけど、磁石は、

 

惹かれて繋がる時もあれば、反発して離れる時もあるわ!

マグネット・バルキリオンをリリースして効果発動!私の墓地から磁石の戦士、α、β、γを1体ずつ特殊召喚するわ!戻りなさい、磁石の戦士達!」

「え?今出したエースを態々リリースして分解した…?」

 

美琴の行動にミエルが疑問を投げ掛ける。

まあ普通ならそう思うのも無理は無いが、今の美琴にとってはこれこそが最善の行動なんだ。

後だから、付き合うって言ってないっての!

 

「見せてあげるわ、私の新しい力を!

私は磁石の戦士αとβでオーバーレイ!2体のレベル4モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!金剛石に覆われし強大なる狼よ、全てを喰らい尽くせ!『恐牙狼ダイヤウルフ』!」

「え、エクシーズ召喚!?何なのそれ!?」

 

恐牙狼ダイヤウルフ

エクシーズ・効果モンスター

地属性

獣族

ランク 4

攻撃力 2000

ORU 2

 

エクシーズ召喚を初めて見たのか驚きの声を上げるミエルを他所に、エクシーズ召喚の演出を経て登場したのは、身体がダイヤモンドになっている狼、ダイヤウルフ。

 

「まあ私も最近覚えたばっかりで上手く説明できないから、詳しくは遊矢先輩かLDSにでも聞いて。

それは良いとして、ダイヤウルフのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて、このカードと、アンタのセットモンスターを対象に効果発動!

対象のカードを破壊するわ!行きなさい、ダイヤウルフ!レックレス・ファング!」

「きゃあ!ミエルの『占術姫コインノーマ』が…!」

 

ミエルのデッキは『占術姫』、か。

リバースモンスター達を中心とした下級モンスター達と、それらの効果を能動的に使える効果を有する儀式モンスター『聖占術姫タロットレイ』を駆使した、長期戦を得意とするデッキ。

だが、美琴のデッキはどちらかと言うとマグネット・バルキリオンを主軸とした短期決戦タイプ、それに加えてキーマンであるコインノーマが効果を発揮する事無く除去されては、分が悪かったかな…

 

「そして、反発して離れる事があれば、再び惹かれ合うこともあるわ!

通常モンスターの磁石の戦士γを墓地へ送って、装備魔法『戦線復活の代償』発動!対象はマグネット・バルキリオンよ!」

 

戦線復活の代償

装備魔法

自分フィールド上の通常モンスター1体を墓地へ送り、自分または相手の墓地のモンスター1体を選択して発動出来る。選択したモンスターを自分フィールド上に特殊召喚し、このカードを装備する。

このカードがフィールドから離れた時、装備モンスターを破壊する。

 

「戦線復活の代償の効果で、再び現れなさい!マグネット・バルキリオン!」

 

美琴の側に再び現れたマグネット・バルキリオンと、磁石の戦士β…

これは、アクションカードを手にしていなければ決まったな。

 

「よし、バトルフェイズに入るわ!

磁石の戦士βでダイレクトアタック!マグネットタックル!」

「きゃあ!」

 

Mieru LP 4000→2300

 

「マグネット・バルキリオンでダイレクトアタック!マグネットソード!」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

Mieru LP 2300→-1200 LOSE

 

WINNER Mikoto

 

------------

 

「良かったぜ美琴!ナイスデュエル!」

「ありがとうございます、遊矢先輩!」

「頑張ったわね美琴!これであの娘も少しは大人しく」

「ダーリン、ミエル負けちゃいました…」

「ちょっと待って何で、其処で俺に引っ付くの!?一応俺美琴側なんだけど!?」

「ビリビリ1年生のデュエル程度じゃ、この熱い想いは止められないわ!って訳か」

「ちょっとどういう意味よ、冴木当麻!」

「ハハハ、こりゃァ柚子に強力なライバル出現(スパァン!)あべしィ!?」

「だ、誰がどんなライバルよ、それ!?」

「なあ素良、遊勝塾の日常ってこんなカオスだっけ…?」

「入ったばっかの僕に聞かれても困るんだけど…」

 

刃に素良、嘆くばかりじゃなくて止めてくれ…



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17話_ソロモンよ、私は帰って来た!

この前の海野占い塾では、美琴の対戦相手となったミエルのプロポーズ等の騒動があったが(丁重に断っておいたが、「ミエルは諦めませんから!」と言っていた辺り、まだアプローチが来そうだな…)、美琴も素良も順調に連勝を伸ばしているし、2人の出場はかたいだろう。

そんなこんなで、今度の舞網チャンピオンシップに向けて色々と準備を進めたりしつつも普段と余り変わらない日常を過ごしている俺達遊勝塾、だが今日はそれとは別の意味で「待ちに待った日」。

そう、俺達遊勝塾の塾長で柚子の父である修造おじさん、この前の俺とのデュエルによってニコさんに実力を買われ、プロへの復帰の足掛かりを掴もうとしていたおじさんの、待ちに待った復帰戦の日がやって来た!

伝説のデュエルスターと言われた俺の父さんである榊遊勝と親交深く、若手有望株がゴロゴロといる新進気鋭のデュエルスクール・遊勝塾の塾長を務めているとあって会場は、かなりの観客で席が埋まっていた。

 

「ふぅ、何気にこんなに多くの観客に囲まれるのは滅多に無かったから、少し緊張するな」

「塾長、此処で固まっていたら後々持たないぜ。プロで勝ち上がって行けば行くほど、もっと多い観客が待っているんだから」

「遊矢の言う通りよ、お父さん!何時も通り、熱血だぁ!って感じで行こうよ!」

「そうだな遊矢、柚子!さぁ、行くか!」

 

何処か緊張していた塾長だったが、セコンドとして一緒に来た俺と柚子(他の面子には塾で待機して貰った)の励ましで決意を新たにし、今日のMCをやっているニコさんの入場アナウンスを待つ。

 

『会場に集まった皆様、これより本日のメインイベントとなる、エキシビションマッチを行います!このエキシビションマッチは、アクションデュエルの公式ルールに則って行われます!フィールド魔法『ビッグブリッジ』発動!』

 

ニコさんのアナウンスと共にアクションフィールドが形成される。

今日のフィールドは、その名の通り巨大な橋が1本あるだけというシンプルな物、純粋なデュエルの実力が試される、という事か。

 

『まずは青コーナー!その蠱惑的なオーラに反し、デュエルは正に『破壊』!ミステリアスな破壊者!藤原(ふじわら)ぁぁぁぁ、雪乃(ゆきの)ぉぉぉぉ!』

「うふふ、会場の皆、今日はこのデュエルを楽しんでいってね」

 

藤原雪乃、タッグフォースをプレイした事のある読者で、この名を知らない奴はいないだろう。

やや紫掛かったツインテール、出る所は出たナイスバディ、色々とエロチックな話し方等、ニコさんの紹介の通り蠱惑的な雰囲気を発する少女だが、一時期OCG環境で暴れ回った『デミスドーザー』を駆使するそのプレイングは正に破壊神だ。

 

『対する赤コーナー!あの新進気鋭のデュエルスクール・遊勝塾のトップが、プロの世界に帰って来た!熱血おやじボクサー!不屈のおやじデュエリスト!柊ぃぃぃぃ、修造ぉぉぉぉ!』

「プロの世界よ!俺は帰って来た!」

 

塾長、それ何処のロボットアニメの名言だよ?そしてニコさんは何故に『おやじ』を連呼するんだ?

と心の中で突っ込みつつ、塾長の入場を見送る。

さあ、全力で勝ちを掴んできてくれ、塾長!

 

『それでは始めましょう!

戦いの殿堂に集いしデュエリストが!

モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!

フィールド内を駆け巡る!

見よ、これぞデュエルの最強進化系!

アクショーン!』

 

「「デュエル!」」

 

先攻 Shuzo LP 4000 VS 後攻 Yukino LP 4000

 

「俺のターン!先攻はドロー無し。

まずは『BK(バーニングナックラー)ヘッドギア』を召喚!」

 

BKヘッドギア

効果モンスター

炎属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1000

 

「BK…

成る程、確かにボクサーね」

「召喚に成功したヘッドギアの効果発動!

デッキからBKモンスター、『BKグラスジョー』を墓地へ送る!」

 

塾長が出したヘッドギアの姿に、成程と言いたげな言葉を吐いた雪乃を意に介す事無く、ヘッドギアの効果処理を行っていく塾長。

 

「更に、デッキの一番上のカードを墓地へ送って魔法『バーニングナックル・スピリッツ』を発動!」

 

バーニングナックル・スピリッツ

通常魔法

デッキの一番上のカードを墓地へ送って発動出来る。自分の墓地の『BK』と名の付いたモンスター1体を選択して表側守備表示で特殊召喚する。『バーニングナックル・スピリッツ』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

 

「バーニングナックル・スピリッツの効果で、今墓地へ送った『BKグラスジョー』を守備表示で蘇生!」

 

BKグラスジョー

効果モンスター

炎属性

戦士族

レベル 4

守備力 0

 

更に塾長の側に、かなり筋肉質な緑肌の戦士、グラスジョーが登場した。

ちなみにグラスジョーの意味は『ガラスの顎』、つまり顎が弱点のボクサーを意味している。

そのデメリット効果もある意味で名を体現していると言って良いかもな。

 

『おおっと修造選手!レベル4モンスターを2体並べました!これは来ますか!?』

「よし!俺はヘッドギアとグラスジョーでオーバーレイ!」

「オーバーレイ、という事はエクシーズ召喚ね。

まさかLDS所属のデュエリスト以外にも使い手がいたなんて…」

「2体のレベル4・BKモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!魂に秘めた炎を拳に宿せ!『BK拘束蛮兵リードブロー』!」

 

BK拘束蛮兵リードブロー

エクシーズ・効果モンスター

炎属性

戦士族

ランク 4

攻撃力 2200

ORU 2

 

『現れました!修造選手が持つBKモンスター、そのエースの一角であるエクシーズモンスター、リードブローが!身体をがんじがらめにしているオーバーレイ・ユニットから異様な雰囲気を感じます!』

 

一度塾長のデュエルを見たニコさんのアピールと共に、リードブローはその姿を現した。

相手の雪乃が使うデッキ、それが予想通りならこのデュエル、上手く行きそうだが…

 

「俺はこれでターンエンド!」

 

Shuzo

LP 4000

手札 3

モンスター BK拘束蛮兵リードブロー(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

「あら、エクシーズモンスターを出しただけで終わりかしら?何が目的か知らないけど、遠慮なく行かせて貰うわ。

私のターン、ドロー。

まずは儀式魔法『高等儀式術』を発動」

 

高等儀式術

儀式魔法

手札の儀式モンスター1体を選び、そのカードとレベルの合計が同じになる様にデッキから通常モンスターを墓地へ送る。その後、選んだ儀式モンスター1体を特殊召喚する。

 

「高等儀式術の効果で、手札の『終焉の王デミス』を選び、デッキからレベル4の『甲虫装甲騎士(インセクトナイト)』2体を墓地へ送るわ。これで合計レベルは8。現れなさい、『終焉の王デミス』!」

 

終焉の王デミス

儀式・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 8

攻撃力 2400

 

『雪乃選手も負けていない!悪魔の王を降臨させる儀式、それによって、全てを終焉に導く王が、デミスが現れました!』

 

やっぱり『デミスドーザー』か、雪乃のデッキは?

雪乃の側に登場したのは、モノクロの鎧に身を包み、巨大な斧を持った悪魔、デミス。

 

「更にデミス、貴方に私のライフを2000捧げるわ」

 

Yukino LP 4000→2000

 

「ん、んあ…

これで、デミスの効果を発動するわ。

その効果で、このカード以外の全てのカードを破壊する。

やりなさいデミス、『終焉の嘆き』!」

『雪乃選手、早速デミスの効果を発動しました!このターンで勝負を決めるという事でしょうか!?』

 

雪乃からライフを吸い取り(その際にTFではもうお決まりと言って良い、悶える様な挙動を見せていた)、その終焉の力を解放したデミス、その力が爆発となってフィールド中に広まり、後には何も、

 

「ふふふ、これで貴方の場は…

 

なっ!?何故そのモンスターが生き残っているの!?デミスの効果は発動された筈!」

 

残ってい『た』。

 

「デミスの効果は確かに発動された!だがこの時リードブローの効果で、リードブローが破壊される代わりにコイツに纏わりつく拘束具(オーバーレイ・ユニット)を1つ取り除いたんだ!」

 

BK拘束蛮兵リードブロー ORU 2→1

 

「回数制限があるとは言え破壊耐性を持っていたなんてね…

だけどリードブローの攻撃力は2200、デミスの攻撃力があれば」

「更に此処で、拘束具を取り除いたリードブローの効果発動!

それにチェーンして、効果で墓地へ送られたグラスジョーの効果発動!」

 

リードブローが残った事に驚きの声を上げた雪乃だったが、その理由を聞いて再びプレイを進めようとするも、まだ塾長の効果処理は終わっていないぜ?

 

「まずはグラスジョーの効果で、墓地の『BKスイッチヒッター』を回収する!」

「い、何時それが…

まさか、バーニングナックル・スピリッツのコストで?」

「そういう事だ!次にリードブローの効果で、攻撃力を800アップさせる!」

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力 2200→3000

 

『何と言う事でしょう!雪乃選手、デミスの効果が空振りに終わったばかりか、逆に修造選手の手助けをしてしまいました!LPを2000も支払ってこれは余りにも痛い!』

「こ、攻撃力3000…!

なら、モンスターをセット、カードをセットしてターンエンドよ」

 

Yukino

LP 2000

手札 2

モンスター 終焉の王デミス(攻撃表示)

      セット

魔法・罠カード セット

 

攻撃力3000となったリードブロー、その効果を知った雪乃は、モンスターとカードをセットしただけでターンを終わらせた。

流石にこれ以上動いても駄目だと思ったんだろう。

 

「俺のターン!ドロー!

まずはさっき手札に加えた『BKスイッチヒッター』を召喚!」

 

BKスイッチヒッター

効果モンスター

炎属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1500

 

スイッチヒッターを出したって事は、此処で勝負を決めるか?

 

「召喚に成功したスイッチヒッターの効果発動!

墓地のグラスジョーを攻撃表示で蘇生する!

更に手札の『BKシャドー』の効果発動!

リードブローの拘束具を1つ取り除き、攻撃表示で特殊召喚する!」

 

BKシャドー

効果モンスター

炎属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1800

 

シャドーの登場によって、リードブローの拘束具を全て外したのもそうだが、レベル4モンスターを3体並べたって事は、もしかしてアイツを出すのか?

 

「もう1つの拘束具を取り除いたリードブローの効果発動!

これでリードブローの封印された真の力が解放される!」

 

BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力 3000→3800

 

「こ、攻撃力3800…!」

『修造選手、攻め手を緩めません!リードブローの拘束具を全て解いたばかりか、レベル4のBKモンスターを3体も並べて来ました!これはまた、エクシーズモンスターが登場するのでしょうか!?』

「俺は、スイッチヒッターとグラスジョー、そしてシャドーでオーバーレイ!3体のレベル4モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!魂の宿った蒼炎の拳が、「諦めんなよ!」と鼓舞する!『No.(ナンバーズ)105BK流星のセスタス』!」

 

No.105BK流星のセスタス

エクシーズ・効果モンスター

炎属性

戦士族

ランク 4

攻撃力 2500

ORU 3

 

『やはり出て来ました!2体目のBKエクシーズモンスターです!しかしNo.とは私も聞きなれないカテゴリです。無限大の記号を模したと思われる青い機械物体から変形すると言うのも珍しい演出です!』

「確かにそうね。エクシーズモンスターを使うプロデュエリストとは何回か当たった事があるけど、No.なんてカテゴリのモンスターは初めてね」

 

リードブローの隣に並び立ったのは、『105』と刻印が刻まれた青き戦士、流星のセスタス。

だが、自分自身の効果がハッキリ言って汎用性の低いセスタスを態々出した、という事は、

 

「此処で会場にいる皆に、我々遊勝塾のエクシーズ召喚が一味違う事をお見せしよう!今出した流星のセスタスを対象に魔法『RUM(ランクアップマジック)―バリアンズ・フォース』発動!」

「ら、ランクアップマジック!?一体何なの、それ!?」

 

RUM―バリアンズ・フォース

通常魔法

自分フィールド上のエクシーズモンスター1体を選択して発動出来る。選択したモンスターと同じ種族でランクが1つ高い『CNo.(カオスナンバーズ)』または『CX(カオスエクシーズ)』と名の付いたモンスター1体を、選択したモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。その後、相手フィールド上にエクシーズ素材が存在する場合、相手フィールド上のエクシーズ素材1つを、この効果で特殊召喚したエクシーズモンスターの下に重ねてエクシーズ素材とする。

 

「バリアンズ・フォースの効果で、流星のセスタスのオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオスエクシーズ・チェンジ!現れろ、BKの絶対王者!『CNo.105BK彗星のカエストス』!」

 

CNo.105BK彗星のカエストス

エクシーズ・効果モンスター

炎属性

戦士族

ランク 5

攻撃力 2800

CORU 4

 

『おっと!此処でRUMという魔法カードによって、今出した流星のセスタスが新たなる姿へと変わりました!周りを漂っていたオーバーレイ・ユニットも十字架が埋め込まれた形となり、先程よりも強大な力を感じます!これがカオスエクシーズ・チェンジの力なのでしょうか!』

「か、カオスエクシーズ・チェンジ…」

 

塾長が発動したバリアンズ・フォース、それによってカオスエクシーズ・チェンジした流星のセスタス、いや、彗星のカエストスの姿に、対戦相手である雪乃や観客たちは勿論の事、一度見ている筈のニコさんも騒然となっている。

まあ、この前のデュエルでは披露できなかったが、素材となったモンスターがこの前と違う事により、それも使える。

それは、

 

「彗星のカエストスのカオスオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!

このカードは流星のセスタスをカオスオーバーレイ・ユニットに持っている場合、ある効果が使える!

それは、相手のモンスターを破壊し、その攻撃力分のバーンダメージを相手に与える!

この効果でデミスを破壊し、君にその攻撃力分、2400ダメージを与える!

行け、彗星のカエストス!スターライト・エクスプロージョン!」

「そ、そんな!きゃぁぁぁぁぁぁぁ…!」

 

CNo.105BK彗星のカエストス CORU 4→3

 

Yukino LP 2000→-400 LOSE

 

WINNER Shuzo

 

俺が持っているホープレイVと同じ除去・バーン効果。

その効果によって、彗星のカエストスの、背中の突起物から放出された光が拳に宿り、デミスを殴り飛ばした末に、雪乃を巻き込んで吹っ飛ばした。

 

『(カーンカーンカーンカーンカーン!)決まりました!柊修造選手のプロ復帰戦!その記念すべき勝利は、彗星のカエストスによる豪快な一撃で決めました!』

「ふふふ、流石はあの新進気鋭と噂されている遊勝塾の塾長さんね」

 

プロ復帰戦を、鮮やかな一撃でモノにした塾長、そんな塾長へと向けられた拍手喝采は、暫く鳴り響いた。

ところで、吹っ飛ばされた雪乃が直ぐに復帰して、自分に勝利した塾長を称えつつも何やら意味深な言葉を言っている様なんだが…



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18話_出たな、この○○○○○○(自主規制)!

「さて、今日は皆に紹介したい人がいる。今日から遊勝塾の講師となった、プロデュエリストの藤原雪乃さんと、塾生となった、マリア・デックスちゃんだ。皆、仲良くしてくれよ!」

「昨日の塾長さんとのデュエルを見ていて知っている人も多いと思うけど、藤原雪乃よ。宜しくね」

「マリア・デックスだよ~!遊勝塾の皆、宜しくなのだ!」

『ゑ?』

 

塾長のプロ復帰戦から1日経った今日、現在リフォームと言う名の建て替え真っ最中な遊勝塾の代替施設としてLDSから用意された塾舎にて、塾長から新しい講師と塾生を紹介されたんだがまず、講師となったその人物とはなんと、昨日のデュエルで対戦した雪乃だった。

な、何がどうなって急に、講師になるって話になったんだ?

 

「なんでも雪乃さん曰く、自分を鍛え直したいとの事でな、プロとしての活動は続けながら、此処に講師として加入したいとニコさんを通じて頼まれて、ウチとしてもプロが俺を含めて2人所属しているとなれば、ネームバリュー的にもプラスになると思って承諾したんだ」

「昨日のデュエルで、私もまだまだデュエリストとして未熟と痛感したのよ。全く新しい召喚方法の数々、それらを知っていたつもりだったけど、まだまだ私の見立ては甘かったと言わざるを得ないわ。だから此処で自分を鍛え直そうと思って、此処のマネージャーを務めているというニコさんにお願いしたの」

 

成る程そういう事だったのか。

でも確かに遊勝塾としても、今度の建て替えで受け入れ人数も増えたし、今までみたいに余裕が無いから門前払いという事態も少なくなる、となれば塾生は増えて来るが、今の指導方針を考えると講師も増やしておかないと行けなかったし、丁度良かった。

と、思っていると、

 

「貴方が榊遊矢君ね、塾長さんやニコさんが太鼓判を押していた。何でも、貴方がいたからこそ遊勝塾は今の実力を得られたとか、遊勝塾の指導方針を考案したのは貴方だとか、色々言っていたわ。この街で『完全決闘者』として噂になっているし、あのストロング石島に後攻ワンターンキルで勝利したのも聞いていたとは言え、此処で会うまでそれは半信半疑だったけど…

年不相応だけど、その綺麗な見た目と合っている、その冷静で堂々とした佇まい、それでいて年相応の熱さとひたむきさを感じる眼…

ふふふ、やっぱりこの塾に加入して正解だったわ、ご指導の程、宜しく頼むわね、遊矢君」

「あ、はい。宜しく」

 

急に近寄って来て声を掛けて来た。

まさか、気にいられちゃったとか?ミエルとかと同じパターン?

まあその話は後で考える事にしよう。

 

「それで、ちょっと私のデッキを見て欲しいんだけど、良いかしら?塾長さんの指導も受け持っているという貴方の意見を聞いてみたいの」

「俺の意見を?」

 

その提案はちょっと意外だった。

この世界に限らず、俺が人生を歩んで来た各世界のデュエリスト達(一部を除いて)にとってデッキは一張羅の正に「自身の魂」、殊にプロデュエリストとなればその辺の拘りは強く、安易に人に見せる事を嫌う。

そんなプライドを捨てて、まだジュニアユースの俺にデッキ診断を頼むと言う事は、それだけ雪乃は「このままじゃいけない」と危機感を感じているのかも知れない。

ならばその要望に応えるのが、デュエリストって物だろ!

 

「分かった。じゃあデッキを見せてくれ」

「ええ。これが私のデッキよ」

 

さて、雪乃のデッキは『デミスドーザー』だと分かっているが、基本戦略と言う名の幹がそうなっているだけで、サポートと言う名の枝葉はどうなっているか…

要である『高等儀式術』と『終焉の王デミス』、そして『デビルドーザー』は3積みされているな。

後は各種コストとなっている『甲虫装甲騎士(インセクトナイト)』と『ネオバグ』、儀式サポートの定番である『センジュ・ゴッド』と『マンジュ・ゴッド』、『ソニックバード』…

ん?『アームズ・ホール』?『巨大化』サーチの為だろうが、マンジュ・ゴッド等との兼ね合い的に不味くないか?

後、『鉄鋼装甲虫(メタルアーマードバグ)』、これもコスト要員だろうが、手札に来ると確実に事故原因になってしまうぞ。

…そうだ!

 

「今の雪乃のデッキを見てまあ色々と思う所はあるが、それよりも1つ提案があるんだ」

「提案?何かしら?」

「一先ずデミスの効果は強力だし、主軸はこのままでも良いと思う。その後の動きなんだが…

コレなんてどうだ?」

「これって、融合モンスター?召喚制限が厳しいみたいだけど、これが私のデッキとどんなシナジーが?」

 

俺が雪乃に見せた融合モンスター、それは『E(イーヴィル)-HEROダーク・ガイア』。

俺が十代時代に持っていたHEROカテゴリ『E-HERO』の融合モンスターの1体で、魔法『ダーク・フュージョン』の効果でしか特殊召喚出来ないという、雪乃が言う通りの厳しい召喚制限が課されている(まあこれはE-HERO融合モンスター全体に言える事だ)が、

 

「融合素材を読んで見てくれ」

「何々…

悪魔族モンスターと岩石族モンスターで融合出来るの!?随分と素材指定が緩いわね…」

「そうだ、そして何もコイツを融合召喚するには『ダーク・フュージョン』でなければならない、という訳じゃ無い。これを見てくれ」

「これも融合魔法みたいだけど…

え、これ『ダーク・フュージョン』による融合召喚扱いになるの!?しかも墓地のカードを除外する事で融合素材に出来るなんて…

つまりこれで、高等儀式術で墓地に送った悪魔族と岩石族の通常モンスターを融合素材に使うって事かしら?」

 

E-HEROを使っている読者ならもう分かっていると思うが、雪乃に見せたのは『ダーク・コーリング』。

E-HERO版『ミラクル・フュージョン』とも呼ばれている(但しフィールドのモンスターを融合素材に出来ない代わりに、手札のモンスターを素材に出来る)カードだ。

 

「そう、そして融合召喚したダーク・ガイアの『元々の』攻撃力は、融合素材としたモンスターの元々の攻撃力の合計となる。つまり『巨大化』が適用できるって訳だ」

「つまり融合素材にもよるけど、『デビルドーザー』を上回る爆発力を得られるわけね…」

 

この様に、デミスの儀式召喚及び全体破壊効果の後にダーク・ガイアを呼び出して後攻1ターンキルを決めるデッキ、それが『デミスガイア』。

まあ一言で言うと『デミスドーザー』の、『デビルドーザー』の代わりにダーク・ガイアを突っ込んだ派生デッキだが、その爆発力は派生元をも上回る一方、『トレード・イン』が使いにくくなる等、安定性に問題が出て来るのが弱点だな。

 

「まああくまでこれは俺からの『提案』だ、実際に使うかどうかは、雪乃が決めてくれ」

「分かったわ、検討してみる」

 

一先ず雪乃の頼みはこれで大丈夫かな。

次は新しく入って来た塾生、マリアの事だな。

当麻、一行、美琴と来てやっぱり来たかと一瞬思った、シルバーブロンドの長髪に碧眼と、まあどっからどう見ても某禁書目録さんか、言動がアレ過ぎる10才の飛び級シスターのどっちかにしか見えないこの少女、現在小学4年生でエレン達とは1学年下、クラスはジュニアに該当するとの事。

さてその実力の程はどれ位かな?

 

「さてマリアちゃん、此処遊勝塾に加入するにあたって、君に頼みがある」

「ん?頼みって何なのだ、塾長のおじちゃん?」

「君のデュエルを見せて欲しい!どんなデュエルかで、君に合ったエンタメデュエルが見つかるという物!相手は君が選んで良いぞ!」

「分かったのだ!じゃあ其処の緑色の眼したお兄ちゃんで!」

「緑色の眼ってお前もだろ。まあ良いぜ!俺のデュエルを、遊勝塾のデュエルを見せてやるぜ!」

 

エレンが相手か、普通のジュニアクラスにエレンの相手は荷が重いが、果たしてマリアはその『普通』か、或いは…



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19話_この体は、無限の剣で出来ていた

「じゃあ行くぜマリア!戦いの殿堂に集いしデュエリストが!モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!フィールド内を駆け巡る!見よ、これぞデュエルの最強進化系!アクショーン!

と、此処までがアクションデュエルの時の掛け声だ。実際はこれを交互に言うんだぞ、分かったか?」

「うーん、なんか色々突っ込み所が多すぎるかも。まあいいや、それじゃあ行くのだ!」

「「デュエル!」」

 

先攻 Maria LP 4000 VS 後攻 Elen LP 4000

 

「先攻は私からなのだ!先攻はドローが無いんだよね。

じゃあまずは『召喚僧サモンプリースト』を召喚!

あ、召喚した時効果で守備表示になるのだ」

 

召喚僧サモンプリースト(制限カード)

効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 4

守備力 1600

 

うわ、いきなりガチカード!?

マリアのフィールドに登場したのは、紫色の司祭服に身を包んだ僧侶、サモンプリースト。

 

「わわ!す、すごいのだ!召喚僧のジジィが私の側に出て来たのだ!これがソリッドビジョン…

おっとっと、そういえばアクションフィールドにはアクションマジックとかいう魔法カードが散らばっているんだよね」

 

自分の側に、ソリッドビジョン製のサモンプリーストが登場した事に驚くマリアだったが、直ぐにアクションデュエルの特色を思い出し、アクションマジックを探し出した。

でも、余り時間が掛かると遅延行為でジャッジキルされるぞ?

 

「あ、これかも。

よし、じゃあ今ゲットしたアクションマジック、えーと、『奇跡』を捨ててサモンプリーストの効果発動!

デッキから『マジカル・コンダクター』を守備表示で特殊召喚!」

 

マジカル・コンダクター

効果モンスター

地属性

魔法使い族

レベル 4

守備力 1400

 

いや、見つけるの早くない?

そう突っ込む間もなくサモンプリーストの効果によって登場したのは、法衣に身を包んだ女性の魔法使い、マジカル・コンダクター。

確かマジカル・コンダクターは魔法カードを発動させる度に、自分に魔力カウンターを2個乗せるモンスターだったよな、ひょっとしたら…

 

「更に魔法『テラ・フォーミング』を発動!」

 

テラ・フォーミング

通常魔法

1:デッキからフィールド魔法カード1枚を手札に加える。

 

「テラ・フォーミングの効果で、デッキから『魔法都市エンディミオン』を手札に加えるのだ!」

 

マジカル・コンダクター 魔力カウンター 0→2

 

サーチしたのが魔法都市エンディミオン、という事は間違い無い、マリアのデッキは『魔力カウンター』だな。

魔法カードを発動する事で『魔力カウンター』を貯めていき、それを様々なカードの効果で使用するデッキ。

例えば『メガトン魔導キャノン』で相手フィールドを「全て壊すんだ」したり、『熟練の黒魔術師』で『ブラック・マジシャン』を特殊召喚したり、『魔導戦士ブレイカー』や『魔法の操り人形』等で相手の状況をズタズタにしたり、『王立魔法図書館』を使って「エグゾディア揃いました」したり等、色々と出来るんだが、果たしてマリアの場合は…

 

「更に今手札に加えたフィールド魔法『魔法都市エンディミオン』を…

あ、あれ、フィールド魔法ゾーンが開かないのだ!これどうなっているんだよ!?」

「おいおいマリア?アクションデュエル中は既にアクションフィールドが、フィールド魔法として発動されているから上書きは出来ないぜ?その代わりフィールド魔法は永続魔法として、魔法・罠ゾーンで発動するんだ。分かったな?」

「へーそーなのかー。分かったのだ、じゃあ発動!」

 

魔法都市エンディミオン

フィールド魔法(永続魔法扱い)

自分または相手が魔法カードを発動する度に、このカードに魔力カウンターを1つ置く。

魔力カウンターが乗っているカードが破壊された場合、破壊されたカードに乗っていた魔力カウンターと同じ数の魔力カウンターをこのカードに置く。

1ターンに1度、自分フィールド上に存在する魔力カウンターを取り除いて自分のカードの効果を発動する場合、代わりにこのカードに乗っている魔力カウンターを取り除く事が出来る。

このカードが破壊される場合、代わりにこのカードに乗っている魔力カウンターを1つ取り除く事が出来る。

 

マジカル・コンダクター 魔力カウンター 2→4

 

初めてだから無理も無い、今手札に加えた魔法都市エンディミオンを発動出来ず四苦八苦していたマリアを、エレンは分かりやすく説明してくれた。

それは良いとして、マジカル・コンダクターの魔力カウンターが4になったか。

 

「よし、此処でマジカル・コンダクターの魔力カウンターを4つ使って効果発動!

手札からレベル4の魔法使い族モンスター、『王立魔法図書館』を守備表示で特殊召喚!」

 

王立魔法図書館

効果モンスター

光属性

魔法使い族

レベル 4

守備力 2000

 

マジカル・コンダクター 魔力カウンター 4→0

 

マジカル・コンダクターがため込んでいた魔力を使って何かを呼び出した、ら、其処に無数の本棚が何らかの『動力』によってマリアの側に出現した。

なんか、某仮面探偵の検索バカが使う地球内のデータベースみたいだな。

 

「よーしぶん回しちゃうのだ!

魔法『トゥーンのもくじ』発動!」

 

トゥーンのもくじ

通常魔法

自分のデッキから『トゥーン』と名の付いたカード1枚を手札に加える。

 

「トゥーンのもくじの効果で、デッキから2枚目のトゥーンのもくじを手札に加えるのだ!」

 

マジカル・コンダクター 魔力カウンター 0→2

魔法都市エンディミオン 魔力カウンター 0→1

王立魔法図書館 魔力カウンター 0→1

 

で、出たぁ、魔力カウンターでは常套手段(atOCG)の、トゥーンのもくじの使い込み…

 

「今手札に加えた2枚目のトゥーンのもくじ発動!

効果で3枚目のトゥーンのもくじを手札に加えるのだ!

更に今手札に加えた3枚目も発動!

効果で『トゥーン・ワールド』を手札に加えるのだ!」

 

マジカル・コンダクター 魔力カウンター 2→4→6

魔法都市エンディミオン 魔力カウンター 1→2→3

王立魔法図書館 魔力カウンター 1→2→3(Full)

 

「王立魔法図書館の魔力カウンターを3つ取り除いて効果発動!ドロー!

更にもう1回、今度は魔法都市エンディミオンの効果で、エンディミオンに乗っている魔力カウンターを3つ取り除いて効果発動!もう1枚ドロー!」

 

王立魔法図書館 魔力カウンター 3(Full)→0

魔法都市エンディミオン 魔力カウンター 3→0

 

「更に魔法『闇の誘惑』発動!」

 

闇の誘惑(制限カード)

通常魔法

1:自分はデッキから2枚ドローし、その後手札の闇属性モンスター1体を除外する。手札に闇属性モンスターが無い場合、手札を全て墓地へ送る。

 

「闇の誘惑の効果で、2枚ドローして、手札の闇属性モンスター『魔法の操り人形』を除外するのだ!」

 

マジカル・コンダクター 魔力カウンター 6→8

魔法都市エンディミオン 魔力カウンター 0→1

王立魔法図書館 魔力カウンター 0→1

 

マリア…おそろしい子!

 

「更に更に魔法『魔力掌握』発動!」

 

魔力掌握

通常魔法

フィールド上に表側表示で存在する魔力カウンターを置く事が出来るカード1枚に魔力カウンターを1つ置く。その後、自分のデッキから『魔力掌握』1枚を手札に加える事が出来る。『魔力掌握』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

 

「魔力掌握の効果で王立魔法図書館に魔力カウンターを1個置いて、デッキから『魔力掌握』1枚を手札に加えるのだ!」

 

マジカル・コンダクター 魔力カウンター 8→10

魔法都市エンディミオン 魔力カウンター 1→2

王立魔法図書館 魔力カウンター 1→2→3(Full)

 

「まだまだ終わらんのだ!王立魔法図書館の魔力カウンターを3つ取り除いて効果発動!ドロー!」

 

王立魔法図書館 魔力カウンター 3(Full)→0

 

手札を5枚に戻した、モンスターを展開しながら…

エレンといいマリアといい、最近の小学校ではソリティアでも教えているのだろうか(エレンに関してはお前だろって?悪いか!)。

 

「カードを1枚セットしてターンエンド!」

 

Maria

LP 4000

手札 4

モンスター 召喚僧サモンプリースト(守備表示)

      マジカル・コンダクター(守備表示)

      王立魔法図書館(守備表示)

魔法・罠カード 魔法都市エンディミオン(永続魔法扱い)

        セット

 

「随分とまあ回していたじゃねぇか。なら今度は俺の番だな!

俺のターン!ドロー!

カードを5枚セットしてターンエンド!」

 

Elen

LP 4000

手札 1

モンスター なし

魔法・罠カード セット×5

 

カードを5枚セットという事は、今回のエレンのデッキは…

 

「うわぁ、ガン伏せとか勘弁して欲しいのだ…

私のターン!ドロー!」

「スタンバイフェイズに手札の『アーティファクト―ロンギヌス』の効果発動!

コイツをリリースする事で、このターン、俺もお前も除外出来なくなるぜ!」

「へ?え!?手札からモンスター効果で除外ダメとかどんな効果なんだよぉぉ!」

 

エレンのガン伏せに警戒する様にドローしたマリア、しかしスタンバイフェイズにエレンが発動したカード、その効果を聞いて明らかに動揺していたが、何か除外を封じられると困る事があるのか?

まあそれは追々分かるとして、エレンが今日使用しているデッキは『アーティファクト』、神話に登場する英雄が使用していた武器を模した機械兵器(の様に見えるが種族は皆天使族だ)で構成されているカテゴリのデッキだ。

それがどれだけ恐ろしいか、それはマリアがどう動くかで分かるだろう…

 

「えーと、まあいいや、とりあえず伏せカードをどうにかしてから考えるのだ!

まずは魔法『ハーピィの羽根帚』発動!」

 

ハーピィの羽根帚(制限カード)

通常魔法

1:相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。

 

此処で使って来るか、今やリセットカードの定番であるハーピィの羽根帚を。

普通ならエレンの伏せカードを5枚全て除去出来て最高、なのだが、

 

「サンキュー!ならチェーンして速攻魔法『アーティファクト・ムーブメント』発動!

対象は、俺のセットカード1枚だ!チェーンはあるか?」

「へ、え、自分のカード?あ、チェーンは無いのだ」

「ならこっちが更にチェーンして罠『アーティファクトの神智』発動!」

 

アーティファクト・ムーブメント

速攻魔法

フィールド上の魔法・罠カード1枚を選択して破壊し、デッキから『アーティファクト』と名の付いたモンスター1体を選んで魔法カード扱いとして魔法・罠ゾーンにセットする。

また、このカードが相手によって破壊された場合、次の相手のバトルフェイズをスキップする。

 

アーティファクトの神智

通常罠

デッキから『アーティファクト』と名の付いたモンスター1体を特殊召喚する。『アーティファクトの神智』は1ターンに1枚しか発動出来ず、このカードを発動するターン、自分はバトルフェイズを行えない。

また、このカードが相手によって破壊された場合、フィールド上のカード1枚を選択して破壊出来る。

 

エレンのアーティファクト相手には、最悪と言って良い悪手だ。

 

「まずは神智の効果で、デッキから『アーティファクト―カドケウス』を守備表示で特殊召喚!」

 

アーティファクト―カドケウス

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 5

守備力 2400

 

神智の効果によって、エレンの背中に装備されたのは、杖の様な形状のアーティファクト、カドケウス。

 

「続いてムーブメントの効果で、俺のセットカードを1枚破壊し、デッキから『アーティファクト―フェイルノート』をセットするぜ!」

「ちょちょちょ、待つのだ!それモンスターカードだよ!何でセット出来るのだ!?」

「アーティファクトモンスターは、魔法カードとしてセット出来るんだぜ!

そしてお前が発動したハーピィの羽根帚の効果で、俺の魔法・罠カードは全て破壊だな」

「な、なんか色々あり過ぎて訳わかんないんだよ…」

 

マジカル・コンダクター 魔力カウンター 10→12

魔法都市エンディミオン 魔力カウンター 2→3

王立魔法図書館 魔力カウンター 0→1

 

さっきからエレンのアーティファクトがおりなす奇想天外な事態、それがひと段落したと思ったのか、一息つくマリアだが、

 

「だがまだまだ終わっていねぇぜ!

此処で、お前のターンで破壊されたカード達の効果を発動するぜ!

まずはムーブメントの効果発動!それにチェーンして神智の効果発動!更にチェーンして『アーティファクト―モラルタ』の効果発動!またまたチェーンして『アーティファクト―アキレウス』の効果発動!更に更にチェーンして『アーティファクト―フェイルノート』の効果発動!まだ終わらないぜ!チェーンして『アーティファクト―アイギス』の効果発動!」

「ど、どんだけチェーンを組むんだよ!?」

「へへっこれがアーティファクトの真骨頂なのさ!

まずはアイギスからモラルタまでを蘇生するぜ!」

 

アーティファクト―アイギス

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 5

守備力 2500

 

アーティファクト―フェイルノート

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 5

攻撃力 2000

 

アーティファクト―アキレウス

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 5

守備力 2200

 

アーティファクト―モラルタ

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 5

攻撃力 2100

 

自らの効果で続々とエレンに装備されていくアーティファクト達。

短刀型であるモラルタは右腰、弓型であるフェイルノートは背中、円形の盾型であるアキレウスは左腕、盾型であるアイギスは右腕、といった感じに。

 

「更に神智の効果で、サモンプリーストを破壊!」

「あぁ!?ジジィがやられたのだ!」

「そしてムーブメントの効果で、このターンお前はバトルフェイズを行えないぜ!」

「な、なんだってぇぇぇぇぇぇ!?」

 

※まだ折り返し地点です。

 

「更に特殊召喚されたアーティファクトの効果発動!

まず、チェーン1から4でカドケウスの効果発動!それにチェーンしてフェイルノートの効果発動!更にチェーンしてアキレウスの効果発動!またまたチェーンしてアイギスの効果発動!最後にチェーンしてモラルタの効果発動!」

「今、私のターンなんだよね…?」

 

※マリアのターン中です。

 

「まずはモラルタの効果でマジカル・コンダクターを破壊!」

「え、えぇぇぇぇぇぇ!?また破壊されたのだ!」

 

魔法都市エンディミオン 魔力カウンター 3→15

 

「次にアイギスの効果で、このターンお前は俺のアーティファクトを、カードの効果対象に選べないぜ!後効果破壊も出来ないからな!」

「え、ちょ、ま」

「更にアキレウスの効果で、このターンお前は俺のアーティファクトを攻撃対象に選べないぜ!まあバトルフェイズがスキップされるから意味ないけどな!

更に更にフェイルノートの効果で、俺の墓地からロンギヌスを魔法カードとしてセットするぜ!

そしてカドケウスの効果で4枚ドロー!」

「わ、わけがわかんないんだよ…」

 

マリア、その気持ちは分かるが、これがアーティファクトだ。

 

「と、と、とりあえずドローして考えるのだ!

さっき手札に加えた魔力掌握を発動!

効果で王立魔法図書館に魔力カウンターを1個置いて、デッキから『魔力掌握』1枚を手札に加えるのだ!」

 

魔法都市エンディミオン 魔力カウンター 15→16

王立魔法図書館 魔力カウンター 1→2→3(Full)

 

「王立魔法図書館の魔力カウンターを3つ取り除いて効果発動!ドロー!

更にもう1回、今度は魔法都市エンディミオンの効果で、エンディミオンに乗っている魔力カウンターを3つ取り除いて効果発動!もう1枚ドロー!」

 

王立魔法図書館 魔力カウンター 3(Full)→0

魔法都市エンディミオン 魔力カウンター 16→13

 

「…

た、ターンエンドなのだ…」

 

Maria

LP 4000

手札 6

モンスター 王立魔法図書館(守備表示)

魔法・罠カード 魔法都市エンディミオン(永続魔法扱い)

        セット

 

あの様子だと、打開できそうなカードは引けなかったか。

こりゃあエレンの勝ちか?

 

「俺のターン!ドロー!

じゃあアイギス以外全部攻撃表示にして、バトルフェイズに入るぜ!

まずはモラルタで王立魔法図書館を攻撃!おりゃぁ!」

「じ、自分で攻撃するとか有り!?」

 

モラルタを握ったエレンが、マリアを囲っていた無数の本棚を滅多切りにし、

 

「次にアキレウスでダイレクトアタック!ビーム放射!」

「あばばばば!?」

 

Maria 4000→2500

 

アキレウスの中心部から放たれたビームがマリアを包み込み、

 

「更にカドケウスでダイレクトアタック!たらい落下!」

「あべし!?」

 

Maria 2500→900

 

カドケウスから放たれた魔力が色々やったのか、上空からたらいが落下してマリアに当たり、

 

「フェイルノートでトドメだ!発射!」

「あいたぁ!?」

 

Maria 900→-1100 LOSE

 

WINNER Elen

 

フェイルノートから弓矢型のエネルギーが発射され、勝負は決した。

 

------------

 

「くっそー!今度は絶対に負けないからなこのクソアメリカン!」

「ちょっと待て!?俺アメリカ人じゃねぇし!」

「うるさーい!外人デュエリストは大体アメリカンだぁい!」

 

あんな訳が分からない内に圧倒され、どうなるかと思ったが、美琴と同じくデュエリストとしての意地に火が付いた形で良かった。

こうして、講師として雪乃が、塾生としてマリアが新たに加わった。

あ、エレンがアメリカ人じゃないのは本当な、血縁的にフランス人とドイツ人のハーフだ。



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20話_くすくすわらってごーごー…!

「それでは師匠、宜しくお願いします!」

「何時でも良いぜ素良、全力で掛かって来い!」

 

雪乃とマリアが加わり、講師2人(どちらも現役プロ)、ジュニアユースクラスの塾生7人、そしてジュニアクラスの塾生5人となった遊勝塾の、仮の塾舎にあるアクションフィールドにて、俺と素良によるアクションデュエルが行われようとしていた。

当初は素良の加入と同時に予定していたのだが、エレンの介入でお流れになってしまった。

とはいえやはりコイツの師匠として、俺自らその実力を体感しておかないとなぁ、と思って素良の要望に応じて今日、デュエルする事となった。

 

「戦いの殿堂に集いしデュエリストが!」

「モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!」

「フィールド内を駆け巡る!」

「見よ、これぞデュエルの最強進化系!」

「「アクショーン、デュエル!」」

 

先攻 Sora LP 4000 VS 後攻 Yuya LP 4000

 

「行きますよ師匠!僕の先攻!

まずは『ファーニマル・ドッグ』を召喚!」

 

ファーニマル・ドッグ

効果モンスター

地属性

天使族

レベル 4

攻撃力 1700

 

素良が出したファーニマル・ドッグの姿に、観客席の女性陣の大半がこの前のデュエルでのスプラッタな光景を思い出したのか顔を青くしている中、その時いなかった雪乃とマリアは周囲の様子が理解出来ず何処か戸惑っている様だった。

いずれ分かるさ、その意味が。

 

「召喚されたファーニマル・ドッグの効果発動!

デッキから『エッジインプ・シザー』を手札に加えます!

次に、今手札に加えたエッジインプ・シザーを捨てて魔法『ワン・フォー・ワン』発動!」

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

「ワン・フォー・ワンの効果で、デッキから『ファーニマル・ラビット』を守備表示で特殊召喚します!」

 

ファーニマル・ラビット

効果モンスター

地属性

天使族

レベル 1

守備力 1200

 

これ、皆下げた方が良いかな?

なんか皆して顔の青ざめ方が尋常じゃ無い、事情を知らない雪乃やマリアと比べてそれは明らかだ。

 

「更に、手札1枚をデッキの上に戻して、墓地のエッジインプ・シザーの効果発動!

効果で自分自身を守備表示で蘇生します!」

 

エッジインプ・シザー

効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 3

守備力 800

 

あ、当麻たちが女性陣を引き下がらせた。

此処から先はあんな光景だからなぁ、雪乃達にも下がる様言っているみたいだが、2人は状況を理解出来ないのか留まったままだ。

 

「そして魔法『融合』発動!」

 

融合

通常魔法

1:自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

さて、此処で出すのはウルフか、タイガーか?

 

「フィールドのエッジインプ・シザーと、ファーニマル・ドッグとラビットを融合!くくく…!

悪魔の爪、猟犬の刃、諸刃の牙、今1つとなりて新たな力と姿となる…!融合召喚、現れ出ちゃえ、全てを仕留める孤独の魔獣…!『デストーイ・シザー・ウルフ』!」

 

デストーイ・シザー・ウルフ

融合・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 6

攻撃力 2000

 

あ、デストーイ・シザー・ウルフの融合の様子を見ていた雪乃が卒倒した。

そういえばTFの雪乃ってホラーが大嫌いだったっけな。

あとマリア、なんでお前は「おぉ…」と言いたげな顔で興味津々に見ているんだ、ホラー大好きっ娘なんかお前は?

ちなみにエレンとデュエルした時と口上の様子が変わっていると思うだろうが、これは「ホラー映画とかで良く見る殺人鬼っぽく振る舞ってみたらどうだ?」と演出面のアドバイスをした結果、まあベクター程ではないが強烈な顔芸を披露しつつやや狂気が滲み出た口調で口上を言う様になったんだ(なんだ作者?え、アニメの様な感じだって?『院ゲス』?アニメの素良、顔芸やっていたのかよ、ていうかベクターっぽく言うなや!)。

 

「僕の墓地のファーニマル・ドッグを対象に、融合素材に使ったファーニマル・ラビットの効果発動…!

効果でファーニマル・ドッグをサルベージします…!

カードを1枚セットしてターンエンド…!」

 

Sora

LP 4000

手札 1(ファーニマル・ドッグ)

モンスター デストーイ・シザー・ウルフ(攻撃表示)

魔法・罠カード セット

 

この前のエレンとのデュエルと比べると落ち着いたスタートだな、この前みたいに折角出した奴を吸い込まれたらたまったものじゃないから、か?

 

「俺のターン!ドロー!

まずは『EM(エンタメイト)ドクロバット・ジョーカー』を召喚!」

 

EMドクロバット・ジョーカー

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 4

攻撃力 1800

 

俺の場に登場したのは、ピエロとかが着そうな黒い服に身を包み、継ぎはぎのあるシルクハットを被った魔法使い、ドクロバット・ジョーカー。

 

「召喚したドクロバット・ジョーカーの効果発動!

デッキから『EMセカンドンキー』を手札に加える!

次に俺は、スケール2の『EMペンデュラム・マジシャン』と、スケール5の『EMシルバー・クロウ』を、ペンデュラムスケールにセッティング!

この時、セットされたシルバー・クロウの効果で、ドクロバット・ジョーカーの攻撃力は300アップする!」

 

ペンデュラムスケール(青):2(EMペンデュラム・マジシャン)

ペンデュラムスケール(赤):5(EMシルバー・クロウ)

 

EMドクロバット・ジョーカー 攻撃力 1800→2100

 

俺が手札に加えたモンスター、そしてペンデュラムスケールにセットされたカード達を見て分かったと思うが、今日の俺が使用しているデッキは『EM』。

『魔術師オッドアイズ』と同じく、俺が遊矢となってから持つようになったデッキだ。

 

「此処でペンデュラムスケールをセッティングしたという事は、来ますか…?」

「ああ、これでレベル3と4のモンスターが同時に特殊召喚可能!

揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!

ペンデュラム召喚!出でよ、我が僕のモンスター達よ!

レベル4、愛らしき毒蛇『EMウィップ・バイパー』!同じくレベル4、灼熱の地からやってきた駱駝『EMラクダウン』!そして同じくレベル4!仲間の足となる縁の下の力持ち!『EMセカンドンキー』!」

 

EMウィップ・バイパー

効果モンスター

地属性

爬虫類族

レベル 4

攻撃力 1700→2000

 

EMラクダウン

ペンデュラム・効果モンスター

地属性

獣族

レベル 4

守備力 1800

 

EMセカンドンキー

効果モンスター

地属性

獣族

レベル 4

守備力 2000

 

「俺の場にEMモンスターがペンデュラム召喚された事により、ペンデュラムスケールにセットされたペンデュラム・マジシャンの効果発動!

それにチェーンしてセカンドンキーの効果発動!

まずはセカンドンキーの効果で、デッキからシルバー・クロウを、ペンデュラムスケールにカードが2枚セットされているので手札に加える!

続いてペンデュラム・マジシャンの効果で、俺のEMモンスターの攻撃力を、ターン終了まで1000アップさせる!」

 

EMドクロバット・ジョーカー 攻撃力 2100→3100

EMウィップ・バイパー 攻撃力 2000→3000

EMラクダウン 攻撃力 1100→2100

EMセカンドンキー 攻撃力 1300→2300

 

「更にシザー・ウルフを対象にウィップ・バイパーの効果発動!

シザー・ウルフの攻撃力と守備力を、ターン終了まで入れ替える!混乱する毒(コンフュージョン・ベノム)!」

「なっ!?」

 

デストーイ・シザー・ウルフ 攻撃力 2000→1500

              守備力 1500→2000

 

よし、これでうまく行けばワンキルも出来るが…

 

「バトルフェイズに入る!」

「させませんよ…!バトルフェイズ開始時にライフを半分払って、アクションマジック『仁王立ち』発動!」

 

仁王立ち(今作オリジナルカード)

アクションマジック

1:バトルフェイズ中にライフを半分払って、『発動出来ない』効果を無視して発動出来る。バトルフェイズを終了する。

 

Sora LP 4000→2000

 

「仁王立ちの効果で、バトルフェイズを終了させますよ、師匠…!」

 

あら、このアクションフィールド『市街戦』の目玉カードと言われている仁王立ちをゲットしていたか。

LPを2000減らせたとはいえ、此処で決められなかったのは惜しいな。

 

「ならばメインフェイズ2に入る!

まずはドクロバット・ジョーカーとウィップ・バイパーでオーバーレイ!2体のレベル4モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!ペンデュラムエクシーズ!魔人オーケストラの女王よ、今こそ戦場に華麗なる音色を奏でよ!『竜魔人クィーンドラグーン』!」

 

竜魔人クィーンドラグーン

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

ランク 4

攻撃力 2200

ORU 2

 

エクシーズ召喚の演出と共に出現したのは、人間の女性の上半身と、炎に包まれたドラゴンの胴体を持ち、右手にハープを抱えたドラゴン、クィーンドラグーン。

まあ今の口上で言った魔人オーケストラは、基本的に遊馬時代に使っていた『魔人』と名が付いた、楽器を持つ悪魔族エクシーズモンスターが属するんだが、クィーンドラグーンもハープを持っているから間違ってはいない、と思う。

 

「更にラクダウンとセカンドンキーでオーバーレイ!2体のレベル4モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!ペンデュラムエクシーズ!魔人オーケストラの指揮者よ、今こそ戦場を平定し、己が指揮する音楽を届けよ!『交響魔人マエストローク』!」

 

交響魔人マエストローク

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

悪魔族

ランク 4

守備力 2300

ORU 2

 

更に出現したのは、軍服に身を包み、指揮刀を右手に装備した悪魔、マエストローク。

まあ今言った通りのイメージだと指揮者と言うより軍人なのだが、魔人エクシーズモンスターに破壊耐性を付ける効果等で魔人オーケストラの面々を奮い立たせる様は正に指揮者と言って良いだろう。

 

「カードを1枚セットしてターンエンド!エンドフェイズ時に、ウィップ・バイパーの効果を受けていたシザー・ウルフの攻守は元に戻る」

 

Yuya

LP 4000

手札 1(EMシルバー・クロウ)

Pスケール(青):2(EMペンデュラム・マジシャン)

Pスケール(赤):5(EMシルバー・クロウ)

モンスター 龍魔人クィーンドラグーン(攻撃表示)

      交響魔人マエストローク(守備表示)

魔法・罠カード セット

 

デストーイ・シザー・ウルフ 攻撃力 1500→2000

              守備力 2000→1500

 

一先ず、これで後に繋げるか…

 

「さあ、反撃開始ですよ、師匠…!

僕のターン、ドロー…!

まずはファーニマル・ドッグを召喚…!

効果でデッキから『ファーニマル・シープ』を手札に加えます…!

更に、手札1枚をデッキの上に戻して、墓地のエッジインプ・シザーの効果発動…!

効果で自分自身を守備表示で蘇生します…!

そして融合発動…!

フィールドのエッジインプ・シザーとファーニマル・ドッグを融合…!くくく…!

悪魔の爪、猟犬の刃、今1つとなりて新たな力と姿となる…!融合召喚、現れ出ちゃえ、全てを引き裂く密林の魔獣…!『デストーイ・シザー・タイガー』!」

 

デストーイ・シザー・タイガー

融合・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 6

攻撃力 1900→2500

 

デストーイ・シザー・ウルフ 攻撃力 2000→2600

 

流石に此処まで来ると女子でただ一人残っていたマリアの顔にも青さが出て来たが、それでもなお目が釘付けになっていた、何処までホラー好きなんだ…

 

「クィーンドラグーンとマエストロークを対象に融合召喚したシザー・タイガーの効果発動…!

このカードは融合素材に使ったモンスターの数まで、フィールドのカードを破壊する効果があるんですよ…!

さあやっちゃおうか、シザー・タイガー!」

「くっ!マエストロークの効果で、クィーンドラグーンとマエストロークが破壊される代わりに、其々のオーバーレイ・ユニットを取り除く!」

 

竜魔人クィーンドラグーン ORU 2→1

交響魔人マエストローク ORU 2→1

 

シザー・タイガーが場に現れると共にクィーンドラグーンに、素良自身が巨大なハサミを持ってマエストロークに襲い掛かったが、2人共にオーバーレイ・ユニットの1つによって展開されたバリアでそれを防御した。

マエストロークを出しておいて良かったぜ、OCGだとArkKnight(アーク・ナイト)やカステルによって環境から追い出されたマエストロークだが、やっぱ魔人を使う上でこの耐性は心強いな。

 

「あらら、防がれちゃいましたか、流石は師匠です…

ならバトルフェイズに入りますよ…!」

「おっと、こっちもライフを半分払って仁王立ちを発動させて貰うぜ!」

 

Yuya LP 4000→2000

 

そしてこの仁王立ち、『発動出来ない』効果を無視して発動出来、バトルフェイズを強制終了する、というのも強いよな、まあ『市街戦』限定とはいえ、ホープ・ザ・ライトニング等の攻撃も通るとは限らなくなったし。

 

「これも防がれちゃいましたか…

ならこれでターンエンド…!」

 

Sora

LP 2000

手札 0

モンスター デストーイ・シザー・ウルフ(攻撃表示)

      デストーイ・シザー・タイガー(攻撃表示)

魔法・罠カード セット

 

よし、何とか持ったか。

 

「俺のターン!ドロー!

まずは『EMシルバー・クロウ』を召喚!」

 

EMシルバー・クロウ

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

獣族

レベル 4

攻撃力 1800

 

これで『アイツ』を呼び出す準備は完了だ!

 

「更に、俺のフィールドのクィーンドラグーンとシルバー・クロウを融合!

誇り高き銀狼よ、魔人オーケストラの女王と1つになりて新たな力を生み出さん!これがペンデュラム召喚のその先の1つ、ペンデュラム融合の、特異なる形、ペンデュラムコンタクト!出でよ、野獣の眼光りし獰猛なる龍!『ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!」

 

ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン

融合・効果モンスター

地属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 3000

 

クィーンドラグーンとシルバー・クロウ、2体の姿が1つに重なろうとした瞬間、其処から光が噴出し、それが晴れた後には、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンが猛獣の如き姿へと変貌した様なドラゴン、ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴンが姿を現した。

 

「こ、ペンデュラム召喚からの可能性の1つ、ペンデュラムコンタクト…

融合魔法を使わない、チェーンブロックを作らない融合なら聞いた事があるけど…」

 

おーい素良、余りの事態に呆けるのも分かるが、今デュエル中だぞ?

 

「更に罠『エクシーズ・リボーン』発動!対象は今の融合素材に使ったクィーンドラグーンだ!」

 

エクシーズ・リボーン

通常罠

自分の墓地のエクシーズモンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターを特殊召喚し、このカードを下に重ねてエクシーズ素材とする。

 

「エクシーズ・リボーンの効果で、クィーンドラグーンは再び舞い戻る!

バトルフェイズに入るぜ!

ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴンでシザー・タイガーを攻撃!ヘルダイブバースト!」

「はっ!?うわぁぁぁぁ!」

 

ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力 3000 VS デストーイ・シザー・タイガー 攻撃力 2500

 

Sora LP 2000→1500

 

「よし、これで戦闘破壊したビーストアイズの効果発動!融合素材としたシルバー・クロウの元々の攻撃力、1800のバーンダメージを与えるぜ!」

「わぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

Sora LP 1500→-300 LOSE

 

WINNER Yuya

 

------------

 

「ありがとうございました、師匠!やっぱり師匠は強いですね!」

「そうか?素良もかなりいい動きしていたぜ、仁王立ちなんてレアなカードを見つけたのもそうだが、あそこで俺が同じく仁王立ちを引いていなかったら、かなりヤバかったな」

「あ、ありがとうございます!」

 

負けたとはいえ互角以上に立ち回れた事、自分なりのエンタメデュエルへの手ごたえを感じた事からか、素良は心からの笑みで俺に礼を言って来た。

ところでだ、俺がエクシーズ召喚をする度に何処か複雑そうな表情をしていたのは俺の気のせいか…?



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21話_さあ、戦え!

『遊矢、今の時間は大丈夫か?』

「零児?はい、大丈夫ですが、どうかしましたか?」

『大事な話をしたい。済まないが、LDSに来てくれないか?受付に話は通しておく』

「分かりました、直ぐに行きます」

 

或る日、零児から突然の呼び出しを受けた。

随分と急な呼び出しだなぁと思ったが、レオ・コーポレーションの社長という立場である筈の零児が自ら電話を掛けて来た事、電話越しに伝わった声音が余りに真剣味があった事から、これは何か重大な事があるんじゃないかと思い、二つ返事で応じる事にした。

LDSと言えばこの前の襲撃事件の件があるし、その犯人である2人を捕縛する際、隼と呼ばれていた奴が口にした「赤馬零児を誘い出す餌になって貰う」という言葉、俺そっくりの奴が口にした「瑠璃を何処へやったか」という言葉、それらが心に引っ掛かっていたから、丁度良い。

 

「塾長。今からちょっと出かけて来るぜ。零児から緊急の呼び出しが掛かってさ」

「零児?ああ、レオ・コーポレーションの社長さんか。分かった、皆にはその事伝えて置く」

「サンキュー。じゃ、行って来るぜ」

 

塾長に一言断ってから、塾を出た。

 

『遊矢、良いのかい?そんな二つ返事で出向くなんて。LDSと言えば、ペンデュラムモンスターに関して色々あったばかりじゃないか。襲撃事件の件があると言っても、少し警戒した方が良いんじゃないかい?』

「其処は大丈夫だろ。少なくとも零児は信頼できるし、他のLDS上層部もあの時のゴタゴタから、俺には下手に手を出さない方が良いと思い知っただろうし」

『そう簡単に、楽観的な結論を下さない方が良いと私は思うが。相手は赤馬零児ら上層部だけじゃない。あの沢渡という男、また遊矢に対して何か仕出かすのではないか?』

「アストラルは少し悲観的過ぎるんじゃないか?まあ一応警戒して置くけどさ、零児からお灸を据えられて大分おとなしくなったって聞いたぜ」

『お灸?遊矢、ユベル、お灸とは何だ?いつ発動する?』

『アストラル、デュエルのカードじゃないから。良いかい?「お灸を据える」と言うのはね…』

 

そんな俺の身を案じたユベルとアストラルが俺を諌めて来て、それに俺が「大丈夫だ、問題無い」と返答して、それが何時の間にか、根本的にデュエル脳なアストラルが(素で)ボケ、ユベルがツッコミという漫才と化している内に、零児が待っているだろうLDSに到着した。

 

「すいません、今日、そちらの社長である赤馬零児様から呼び出しを受けた、榊遊矢と申します」

「榊遊矢様、ですね。社長、榊様がお見えになりました。はい、了解しました。榊様、こちらへご案内致します」

 

普段、殆ど使わない敬語で受付の人に尋ねると、案の定話は通っていた様で、即座に零児がいる部屋へと案内された。

 

「社長、榊様をお連れ致しました」

「分かった。後は私が対応する」

「それでは榊様、こちらです」

 

受付の人に案内されるまま部屋に入ると、やはり其処には零児がいた。

此処は応接室か何かか?結構小さめだな。

 

「急に呼び出して済まないな」

「いえ、火急の用との事ですし、遠慮しないで下さい。それで、話というのは?」

「ああ、その事だが…

今から君に話す事、それらが余りに突拍子も無いと感じるだろうが、最後まで聞いてくれ」

「あ、はい。分かりました」

 

まあ零児は知らないが、俺はその『突拍子も無い』を、枚挙に暇が無い位経験しているから大丈夫だ。

 

「まず、いきなり空想的な話になるが、君は並行世界(パラレルワールド)をご存じかな?」

「並行世界って、確か「もし○○が××だったら」という可能性を分岐点に生まれた、この世界と並行して存在する世界、って事ですよね?」

「そうだ、知っているなら話は早い。それを念頭に置いて、次の話を聞いて欲しい。デュエルモンスターズには今、強力なモンスターを召喚する方法として主に、アドバンス召喚、儀式召喚、融合召喚、シンクロ召喚、エクシーズ召喚、ペンデュラム召喚がある。この内、融合召喚とシンクロ召喚、エクシーズ召喚、そしてペンデュラム召喚に関しては、まず融合召喚が3年前に、次にシンクロ召喚、エクシーズ召喚が導入されていって、そしてつい最近、君がペンデュラム召喚を初めて行った。君は私がペンデュラムモンスターを持っている事に対して、ルールで認められているなら使いたくなるのがデュエリスト、カードを作りたくなるのがカードデザイナーの真理だ、と言って大して驚いていなかったな。その言葉の通り、私達レオ・コーポレーションはペンデュラムモンスターのカード製作に取り組み、私はそれをデッキに導入していっている。それに遊勝塾においてペンデュラムモンスターに関するデモンストレーションを行った所、塾を埋め尽くさんばかりの参加希望者だったそうじゃないか。つまり誰もがデュエリストとして、またはカードデザイナーとして、ペンデュラムモンスターと言う存在を求め、手にして使おうと、作ろうとしている。いずれ、誰もがペンデュラム召喚を使いこなす日が来るだろう」

 

だな、実際OCGではペンデュラム召喚とペンデュラムアドバンスを主体にした『クリフォート』デッキが環境を支配していた時期があった。

環境に残れるのは、流行するのは文字通り『強い』デッキだけのOCGでもペンデュラム召喚に手を出すデュエリストが少なくなかったのだ、「最強のデュエリストのデュエルは必然!ドローカードさえもデュエリストが創造する!」等といったオカルトじみた理論がまかり通るアニメ世界のデュエリストがこれに手を出すのは必然と言えるし、また、第一人者としてはそうなって欲しい思いもある。

 

「だが、融合召喚とシンクロ召喚、エクシーズ召喚に関してはそうはならなかった。融合召喚に関しては梁山泊が昨年から取り入れたという話を聞いたが、残るシンクロ召喚とエクシーズ召喚は、つい最近まで我々LDSしか扱っていないとされて来た。それが何故か分かるか?」

 

確かに、言われてみれば変だ。

融合召喚とシンクロ召喚、エクシーズ召喚は、どれもその導入が大々的に報じられておらず、周囲の認識も「LDSでしか取り扱っていない、レアな召喚方法」という程、浸透していなかった。

俺達遊勝塾も、権現坂道場も、そんな状況下で使うのはフェアじゃないという事で、塾内以外での使用を自粛していた位だし。

普通あんな強力な召喚方法があったら広めようとするのが製造元だし、それに合ったカードを作るのがカードデザイナー、そしてそれらを購入してデュエルで使って行くのがデュエリストだろう。

融合召喚は今や「カップ麺早食いノーデン」だの「ZEROチェンジアシッド」だのといった混沌と化しているOCG環境の、原因の片棒を担っているし、エクシーズ召喚はエクシーズ召喚で「プトレノヴァインフィニティ」だの「クラウンブレード」だのといった、原因のもう片棒を担っている。

シンクロ召喚は上2つと比べてやや下火だが、それでも「サモサモキャットベルンベルンDDB(だれがどうみてもぶっこわれ)」だの「ワンターンクェーサー」だのといった、地獄とも言えるOCG環境を作り出した時があった。

OCGでそうならアニメ世界のデュエリストがこれに手を出すのは必然な筈なんだが…

まさか?

 

「さっきの話を踏まえると、この世界には元々融合モンスターやシンクロモンスター、エクシーズモンスターが存在しておらず、また2体以上のモンスターを魔法カードで1つにしたり、チューナーとそれ以外のモンスターのレベルを合わせたり、同じレベルのモンスターを重ねたり等、そういった発想も無かった、それどころかエクストラデッキという概念自体無かったという事でしょうか?」

「そう、融合モンスターやシンクロモンスター、エクシーズモンスターはこの世界の物では無い、この世界の並行世界からもたらされた物だ。この世界と同じくデュエルモンスターズが盛んな3つの世界、此処からは『次元』と呼ばせて貰う、其処では独自の召喚方法が発達して行ったんだ。融合召喚が発展していった融合次元、シンクロ召喚が発展していったシンクロ次元、エクシーズ召喚が発展していったエクシーズ次元、という様に。余談だが、私達がいるこの次元はスタンダード次元と呼ばれているらしい」

 

成る程、特殊な召喚方法が無い、普通の(スタンダード)次元って訳か、少しカチンと来るな。

 

「私達がいる次元を含めた4つの次元は、本来はこうして交わる事無く、其々独立した発展を遂げながら、独立した平穏の時を過ごしていく、筈だった。それが崩れたのは3年前の、或る日の事だ。その日、融合次元にある組織『デュエルアカデミア』が、所属しているデュエリスト達を率いてエクシーズ次元へと侵略を始めた」

「デュエルアカデミアだって!?」

「遊矢、どうかしたのか?」

「あ、いえ、続けて下さい」

 

そんな馬鹿な、十代だった頃の俺がいたあのアカデミアが、純粋に『デュエルを学び、デュエリストを鍛え上げる』事を理念としていたアカデミアが、そんな事するはずが…

確かに元はあの影丸理事長による、三幻魔復活の為に設立された学校だとは言え、その三幻魔は今や俺の手の中、そんな邪な面での理由はとうの昔に無くなった筈なのに…!

 

いや、考えすぎかも知れない、少なくとも今の零児の話を踏まえると、シンクロ次元もエクシーズ次元も、遊星だった頃の俺が過ごした世界や、遊馬だった頃の俺が過ごした世界とはまるで違う。

確かに遊星だった頃にはエクシーズモンスターは存在しなかったし、遊馬だった頃は逆にシンクロモンスターやチューナーが存在しなかったが、どっちの時代にも融合モンスターや融合魔法は存在していた。

遊馬だった頃にカイトが『ツイン・フォトン・リザード』を使って来たし、俺自身、遊星だった頃に機皇帝対策としてシンクロ融合モンスター『波動竜騎士ドラゴエクィテス』を使っていた。

零児が言っているシンクロ次元もエクシーズ次元も、俺が知る世界では無いと断定して良い、となれば融合次元もまた違うと思って良いかも知れない。

 

「分かった、ならば話を続けよう。それに対してエクシーズ次元のデュエリスト達も応戦はしたが、それまでデュエルは文字通りの『娯楽』だったエクシーズ次元の住人に成す術は無く、或る者はカードへと変えられ、或る者は殺され、そして戦場となった世界は荒れ果てた。この前起こった、LDS関係者が次々と行方不明になった事件で君が確保した2人の男だが、実はそのエクシーズ次元から移動して来た者達だ」

「エクシーズ次元から、ですか」

 

あの2人の様子から、単に逃亡して来たとは思えない。

一体何が目的でこっちに来て、あんな事件を起こしたのだろうか、隼と呼ばれた男の方は零児に用があるみたいだったし、俺そっくりの奴が言っていた事も、もしかしたら融合次元による侵略と関係があるのかも知れない。

 

「ああ。そして融合次元は4つの次元を統一させようと、シンクロ次元や私達の次元にも攻め込む準備をしている。近い内にこちらにも攻め込んで来るに違いない…

以上が、君が確保した2人から聞き出した情報と、それの裏付けを取る為に我々レオ・コーポレーションが調査した末に導き出した結論だ」

 

成る程、確かに普通の人が聞いたら余りにも突拍子も無い話、だがそれを話す零児の真剣味を帯びた口調と表情からそれが出鱈目では無いのは明らかだし、俺自身、そんな突拍子も無い話、デュエルが関わって来る『世界規模』の厄介事には慣れっこだ。

十代だった頃には三幻魔、破滅の光、ダークネスと、何度も世界の存亡を賭けた戦いをして来たし(え、一部飛ばしている?まあそれについて詳しい話は後な)、遊星だった頃には生まれたばかりの時に起こった『ゼロ・リバース』を起点とした戦いに明け暮れたし、遊馬だった頃にはNo.(ナンバーズ)を巡っての戦いとか、バリアン世界とアストラル世界の存亡を賭けた戦いとかに身を投じて行ったんだ、そんな俺が真っ先に思った事、それは「またかよ」である。

 

『赤馬零児の話を踏まえると、随分と排他的な事だ。アドバンス召喚や儀式召喚、融合召喚やシンクロ召喚、エクシーズ召喚やペンデュラム召喚、どれが優れてどれが劣っているかなど、そもそもの論点が違う。其々の召喚法には其々の利点がある、それらを組み合わせてこそデュエルモンスターズだと言うのに…』

 

そんな零児の話を聞いて、呆れた様な口調でアストラルが話した事に、俺も同感だし、第一、世界征服だけが目的かどうかは知らんが、デュエルをそんなふざけた目的で使って良い訳が無い!

デュエルはデュエリスト同士が敬い合い、全力を出し合って戦い、終わった後にはデュエリスト同士だけではなく、それを見ていた観客が笑い合う、関わった人達を繋ぐ、そんな神聖な物であるべきなんだ!

 

「無論、我々とてそれを聞いて何の対策もしていない訳では無い。その調査と並行して、融合次元からの侵略に対抗する術となる組織の構想を、我々は練っていた」

 

そう憤っていた所に再び話始めた零児の言葉に、俺は再び耳を傾ける。

確かに、俺の想いを叫んだところで聞くような相手では無いのは明らかだ、となれば侵略に対抗する為の戦力は必要となって来る。

が、まだその組織は構想段階、それを俺に話す、という事は、だ。

 

「正式名称『LanceDefenseSoldiers』、まあ『ランサーズ』とでも呼んでくれ。この世界を守る為の槍、その意を込めて、そう命名した組織だ。我々は近々この組織を発足させ、融合次元の侵略に対する迎撃戦力とする積りだ。君の事だ、此処まで聞けば何が目的で此処に呼ばれたか察しが付いているだろうが、敢えて聞かせて貰う。

 

君にはこのランサーズに、最高指揮官として所属して貰いたい」

 

やっぱり、そう来たか。

そして、それに対する答えも決まっている。

 

「分かりました。俺にも守りたい、大事な存在がこの次元にいます、融合次元の好き勝手にさせる積りはありません。

 

 

 

 

 

ですがその前に、この前の決着を付けましょう、零児」



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22話_覚悟とは、暗闇の荒野に進むべき道を切り開く事だ!

あ…ありのまま昨日から今日までに起こった事を話します!
『僕は批判を覚悟で遊矢が外道過ぎる展開を書こうとしたら、何時の間にか想定とはまるっきり違う展開になっていた』
な…何を言っているのか分からないとは思いますが、僕も何をされたのかが分かりませんでした…
頭がどうにかなりそうだった…
マインドスキャンだとかシャイニングドローだとか、そんなチャチな物では断じてありません。
もっと恐ろしい物、そう、ドン・サウザントの書き換えの様な、そんな物の片鱗を味わいました…!

おのれ、おのれ許せるぞドン・サウザントぉぉぉぉ!

※色々とおかしいテンションになっていますが、簡単に言うと予定とは違った展開になっている、という事です。ご了承ください。

※2 感想での指摘と共に、オッドアイズ・グラビティ・ドラゴンの名前を間違えていたので修正しました(10/17)。


「戦いの殿堂に集いしデュエリストが!」

「モンスターと共に地を蹴り宙を舞い」

「フィールド内を駆け巡る!」

「見よ、これぞデュエルの最強進化系」

「「アクショーン、デュエル!」」

 

先攻 Yuya LP 4000 VS 後攻 Reizi LP 4000

 

「俺のターン!先攻はドロー無し。

まずは『EM(エンタメイト)ドクロバット・ジョーカー』を召喚!」

 

EMドクロバット・ジョーカー

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 4

攻撃力 1800

 

「召喚したドクロバット・ジョーカーの効果発動!

デッキから『オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン』を手札に加える!」

「その青いカード、まさか儀式モンスターか?」

「ええ、このオッドアイズは儀式魔法によって降臨するオッドアイズです」

 

そして、今日のデュエルにおいて重大な役目を持ったオッドアイズでもある。

故に今日は、『覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン』の件で掛けていた自粛を、解く。

 

「続いて、儀式魔法『オッドアイズ・アドベント』発動!」

 

オッドアイズ・アドベント

儀式魔法

ドラゴン族の儀式モンスターの降臨に必要。『オッドアイズ・アドベント』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:レベルの合計が儀式召喚するモンスターのレベル以上になる様に、自分の手札・フィールドのペンデュラムモンスターをリリースし、自分の手札・墓地からドラゴン族の儀式モンスター1体を儀式召喚する。相手フィールドにモンスターが2体以上存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、自分のエクストラデッキの『オッドアイズ』モンスターをリリースの代わりに墓地へ送る事が出来る。

 

「オッドアイズ・アドベントの効果で、俺のフィールドのドクロバット・ジョーカーと手札の『貴竜の魔術師』をリリースする事で、俺は『オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン』を降臨させる!2色の眼の龍よ!その鈍色の輝きを解き放ち、フィールドを圧殺せよ!儀式召喚!『オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン』!」

 

オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン

儀式・効果モンスター

地属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2800

 

俺のフィールドに、鈍色の輝きを放つオッドアイズ・グラビティ・ドラゴンが出現した、その瞬間、

 

「がっ!?な、何だこれは!?」

「っ!」

 

俺達のいるアクションフィールド『決闘の祭壇』から、ズンっという擬音が聞こえて来そうな事態が発生した。

 

「な、なんだ中島、何!?フィールド内の重力が、4Gまで増大化している、だと!?ま、まさか…」

「ええ、グラビティ・ドラゴンの、グラビティとは重力。グラビティ・ドラゴンの力によって、フィールド内の重力が増大化されました。下手な動きをすれば直ぐ、この重力の餌食となります。そう、グラビティ・ドラゴンの前で、生半可な覚悟での戦いは、デュエルは許されない。零児、貴方の覚悟を、見せて頂きたい」

 

そう、これが自粛を解いてまで『魔術師オッドアイズ』デッキを持ち出した理由。

実を言うと零児の話を聞いて、俺は少しばかり、訳の分からない違和感を覚えた。

それの原因が一体何なのか、それは未だに分からないが、とにかく零児の様子に違和感を覚えたんだ。

それは、零児が語る次元間の戦いに対して、零児自身の覚悟が感じられなかったのが原因なのか、或いはもっと別の原因なのか…

この前のデュエルの決着を付けたかったのもそうだが、この違和感の原因をはっきりさせたかったのも、零児にデュエルを申し込んだ理由だ。

今、グラビティ・ドラゴンの力によってフィールド全体に掛かっている4Gという重力は、一般的なジェットコースターの最大重力と同等クラス、これに晒され続けていると人間は立っているのがやっとだとか、視界が狭まってくるとか、色彩が薄れて来るとか言われている、つまり、強固な意志が無ければデュエルする事は容易じゃ無いクラスだ。

もし零児の覚悟が、この状況下でデュエルが出来ない程度の生半可な物なら、さっきの零児の様子に違和感を覚えた原因がそれなら、俺は今回の件、きっぱりと断らせて貰う。

人や世界の運命を賭けた戦いに、生半可な覚悟で臨むトップは、はっきり言って足手まといなんだ!

 

「成る程、私は君に試されている訳か。私がランサーズのトップに相応しい器かどうか、私が君にとって上司とするに相応しい存在か、それを試している訳か。ならば、それに応えようではないか!」

「その言葉、デュエルが終わるまで忘れないで頂きたい!スケール4の『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』をペンデュラムスケールにセッティングしてエンドフェイズ!ペンデュラムスケールのオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを破壊し、デッキから『竜穴の魔術師』を手札に加える!

零児、1つ言って置きます。グラビティ・ドラゴンがフィールドにいる間、貴方はLPを500ポイント払わなければカードの効果を発動出来ません。強制効果が発動する時は必ず500ポイント失われます」

 

Yuya

LP 4000

手札 2

モンスター オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

「それは厄介な効果だな…!

私のターン!ドロー!

ならば私は、LPを1000支払い、スケール3の『DDD反骨王レオニダス』と、スケール10の『DD魔導賢者ケプラー』を、ペンデュラムスケールにセッティング!ぐぅ…!」

 

Reizi LP 4000→3500→3000

 

ペンデュラムスケール(青):3(DDD反骨王レオニダス)

ペンデュラムスケール(赤):10(DD魔導賢者ケプラー)

 

「これによってレベル4から9のモンスターを同時に特殊召喚可能!

この前のデュエルでは君に見せる事叶わなかったが、私のペンデュラム召喚を今お見せしよう!

我が魂を揺らす、大いなる力よ!この身に宿りて闇を引き裂く新たな光となれ!

ペンデュラム召喚!『DDD死偉王ヘル・アーマゲドン』!『DDD壊薙王アビス・ラグナロク』!」

 

DDD死偉王ヘル・アーマゲドン

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 8

攻撃力 3000

 

DDD壊薙王アビス・ラグナロク

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 8

攻撃力 2200

 

ペンデュラム召喚と共に零児の場に登場したのは、何と言うべきか、石柱から顔を出した様な姿の悪魔、ヘル・アーマゲドンと、玉座に座し、漆黒の鎧に身を包んだ悪魔、アビス・ラグナロク。

 

「此処はいち早く、グラビティ・ドラゴンの力を削ぐ必要がある…!

ヘル・アーマゲドンとアビス・ラグナロクでオーバーレイ!2体のレベル8・DDモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!2つの太陽が昇る時、新たな世界の地平が開かれる!ペンデュラムエクシーズ!現れ出でよ、ランク8!『DDD双暁王カリ・ユガ』!」

 

DDD双暁王カリ・ユガ

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

悪魔族

ランク 8

攻撃力 3500

ORU 2

 

零児が何か良からぬことを口走って直ぐに、エクシーズ召喚の演出と共に、玉座に座し、赤紫色の鎧に身を包んだ悪魔、カリ・ユガが登場したその時、

 

「む?重力が戻った?」

「カリ・ユガのエクシーズ召喚に成功した事でこのカード以外の、フィールドにあるカードはこのターン、効果を発動出来ず、その効果も無効となった!これはルール効果だから私はLPを払う必要が無い!」

 

グラビティ・ドラゴンによってフィールド中に掛かっていた重力が、瞬時に元に戻った。

随分と厄介な効果だな、これで零児はこのターン、ライフコストを気にする事無く効果が使える、という訳か。

 

「更に手札の『DDスワラル・スライム』の効果発動!

このカードと手札の『DDバフォメット』を融合!

自由に形を変える神秘の渦よ!異形の神に融け込み、真の王と生まれ変わらん!融合召喚!出でよ、神の威光伝えし王!『DDD神託王ダルク』!」

 

DDD神託王ダルク

融合・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 7

攻撃力 2800

 

更に融合召喚の演出と共に、白き鎧に身を包み、背中と後頭部に蝙蝠の様な翼を生やした女悪魔、ダルクが出現した。

もしグラビティ・ドラゴンが残った時の事を考え、ライフコストを確保する為か?

 

「バトルフェイズに入る!

カリ・ユガでグラビティ・ドラゴンを攻撃!

ツインブレイクショット!」

「させませんよ!アクションマジック『回避』発動!」

 

回避

アクションマジック

1:フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターの攻撃を無効にする。

 

「回避によって、カリ・ユガの攻撃は無効となります!」

「くっ避けられたか、ダルクで相打ちにするのは危険か…!

ならばアクションマジック『ホーリー・エルフの治癒魔術』発動!」

 

ホーリー・エルフの治癒魔術(今作オリジナルカード)

アクションマジック

自分は自分フィールド上に存在するカードの数×500ライフポイント回復する。

 

「ホーリー・エルフの治癒魔術の効果で、私の場にあるカード×500ポイント、2000ライフポイント回復してターンエンド!ぐぅ…!」

「っ…!」

 

Reizi

LP 3000→5000

手札 0

ペンデュラムスケール(青):3(DDD反骨王レオニダス)

ペンデュラムスケール(赤):10(DD魔導賢者ケプラー)

モンスター DDD双暁王カリ・ユガ(攻撃表示)

      DDD神託王ダルク(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

アクションマジックでLPを回復してターンエンドを宣言すると共にグラビティ・ドラゴンの効果が復活、再び4Gの重力がフィールド中に掛かり、苦悶の声を上げる零児だったが、それでもその気迫は、強い覚悟を示すかの様な気迫はしっかり伝わって来る。

ダルクを相討ちさせず残したのも、重力の影響とか関係なしに、グラビティ・ドラゴンのライフコストを考えて立てたのだろう、其処には本気で俺から勝利を掴もうとしている、そんな零児の、鬼気迫る姿があった、そしたら!

 

「俺のターン!ドロー!

まずは手札の『オッドアイズ・セイバー・ドラゴン』を捨て、魔法『ペンデュラム・コール』発動!」

 

ペンデュラム・コール

通常魔法

『ペンデュラム・コール』は1ターンに1枚しか発動出来ず、『魔術師』ペンデュラムモンスターのペンデュラム効果を発動したターンには発動出来ない。

1:手札を1枚捨てて発動出来る。カード名が異なる『魔術師』ペンデュラムモンスター2体をデッキから手札に加える。このカードの発動後、次の相手ターン終了時まで自分のペンデュラムゾーンの『魔術師』カードは効果では破壊されない。

 

「ペンデュラム・コールの効果で、デッキから『相克の魔術師』と『慧眼の魔術師』を手札に加えます!」

 

本当はコイツを使うつもりは無かったが、零児が本気で俺と対峙しているのに、俺が本気を出さなかったら、そんなのデュエリストじゃ無い!

 

「次に、スケール3の『相克の魔術師』と、スケール8の『龍脈の魔術師』を、ペンデュラムスケールにセッティング!

これでレベル4から7のモンスターが同時に特殊召喚可能!

揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!

ペンデュラム召喚!出でよ、我が僕のモンスター達よ!

レベル4、華麗なる軽業師、EMドクロバット・ジョーカー!そしてレベル7、世にも珍しき2色の眼を持ちし竜『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2500

 

「続いて、墓地の『貴竜の魔術師』の効果を、フィールドのグラビティ・ドラゴンを対象に発動!

グラビティ・ドラゴンのレベルを3つ下げて、コイツを守備表示で特殊召喚します!」

 

貴竜の魔術師

ペンデュラム・効果モンスター/チューナー

炎属性

魔法使い族

レベル 3

守備力 1400

 

オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン レベル 7→4

 

よし、次はコイツだ!

 

「更に、レベル4のドクロバット・ジョーカーに、レベル3の貴竜の魔術師をチューニング!2色の眼の龍よ!その赤き輝きを解き放ち、味方に活力を、敵に絶望を与えよ!ペンデュラムシンクロ、レベル7!『オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン』!」

 

オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン

シンクロ・効果モンスター

炎属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2500

 

「オッドアイズ以外のシンクロ素材を使用した事で、貴竜の魔術師はデッキの一番下へ送られ、シンクロ召喚したメテオバースト・ドラゴンの効果発動!

ペンデュラムスケールにセットされている『竜穴の魔術師』を、守備表示で特殊召喚!」

 

龍穴の魔術師

ペンデュラム・通常モンスター

水属性

魔法使い族

レベル 7

守備力 2700

 

まだまだ俺のターンは終わらないぜ、零児!

 

「更に更に!今出したメテオバースト・ドラゴンと、龍穴の魔術師をオーバーレイ!2体のレベル7モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!ペンデュラムエクシーズ!2色の眼の龍よ!その青き輝きを解き放ち、絶対零度で敵を制圧せよ!『オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン』!」

 

オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン

エクシーズ・効果モンスター

水属性

ドラゴン族

ランク 7

攻撃力 2800

ORU 2

 

「バトルフェイズに入ります!

グラビティ・ドラゴンでダルクを攻撃!」

「何っ!?グラビティ・ドラゴンで相打ちさせるのか!?」

「と見せかけて、アブソリュート・ドラゴンのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!

今の攻撃を無効にし、墓地から『オッドアイズ・セイバー・ドラゴン』を攻撃表示で特殊召喚します!オッドアイズ・リボーン!

2色の眼の龍よ!その白き輝きを解き放ち、絶望の暗闇に眩き救いの光を差し込め!『オッドアイズ・セイバー・ドラゴン』!」

 

オッドアイズ・セイバー・ドラゴン

効果モンスター

光属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2800

 

そして、俺の場に4体目のオッドアイズが登場した。

オッドアイズ・ドラゴンが、白き鎧に身を包んで進化した姿、オッドアイズ・セイバー・ドラゴン。

もし次のターン、零児が攻撃を仕掛ければ、アブソリュート・ドラゴンの効果で、俺の場のモンスターは、オッドアイズで埋め尽くされるだろう。

 

「攻撃をトリガーとした蘇生効果、そして手札コストとして、蘇生するカードを送っていたか…!」

「はい。メインフェイズ2に入って、スケール5の『慧眼の魔術師』をペンデュラムスケールにセッティング!ターンエンドです!」

 

Yuya

LP 4000

手札 0

ペンデュラムスケール(青):3(相克の魔術師)

ペンデュラムスケール(赤):5(慧眼の魔術師)

モンスター オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン(攻撃表示)

      オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン(攻撃表示)

      オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン(攻撃表示)

      オッドアイズ・セイバー・ドラゴン(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

4体のオッドアイズ、更にそれらを戦闘破壊しようものならアブソリュート・ドラゴンの効果で5体目が登場しかねないという構図、今の零児の布陣でそれを突破する術は無いと言って良い。

故に零児の運命は、トップデックに掛かっていると言って良い。

だがそんな状況下でも、零児からは勝利を諦めた様子が微塵も感じられない、絶対に俺に勝つんだという気迫がひしひしと伝わって来る。

悪かった、零児、俺は貴方の覚悟の程を疑っていた。

貴方の、融合次元との戦いに対する覚悟は、本物だ!

 

「私のターン!ドロー!

っ!これなら!

だがその前に、スタンバイフェイズにペンデュラムスケールにセットされたケプラーの効果が、LPを500消費して発動される!

ケプラーのペンデュラムスケールを2下げる!ぐぅ…!」

 

ペンデュラムスケール(赤):10→8(DD魔導賢者ケプラー)

 

Reizi LP 5000→4500

 

ケプラーの強制効果によって下がったペンデュラムスケール、その際にライフコストを払った事による脱力感が零児に襲い掛かるも、それでも零児は、膝を折る事をしなかった。

 

「メインフェイズに入って、LPを500払って永続魔法『魔神王の契約書』発動!くっ…!」

 

魔神王の契約書

永続魔法

『魔神王の契約書』の1の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。

1:自分メインフェイズに発動出来る。自分の手札・フィールドから、悪魔族の融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。『DD』融合モンスターを融合召喚する場合、自分の墓地のモンスターを除外して融合素材とする事も出来る。

2:自分スタンバイフェイズに発動出来る。自分は1000ダメージを受ける。

 

Reizi LP 4500→4000

 

此処で今引き魔神王か!

 

「LPを500払って、魔神王の契約書の効果発動!っ…!

私のフィールドにいるダルクとカリ・ユガを融合!神の名の下に森羅万象を『無』に帰し、新たな世界を切り開け!融合召喚!出現せよ、極限の独裁神!『DDD怒涛壊薙王カエサル・ラグナロク』!」

 

DDD怒涛壊薙王カエサル・ラグナロク

融合・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 10

攻撃力 3200

 

Reizi 4000→3500

 

契約書を抱えていた『沼地の魔神王』に、ダルクとカリ・ユガが取り込まれると其処から穴が開き、飛び出して来たのは、『DDD怒涛王シーザー』のそれと、アビス・ラグナロクのそれを融合させた様な鎧を身に纏った悪魔、カエサル・ラグナロク。

やっぱり俺の目に狂いは無かった、零児は間違いなく俺が求めていた『ライバル』、俺と初見で肩を並べる程の力を持ったデュエリストだ!

 

「バトルフェイズに入る!

カエサル・ラグナロクでアブソリュート・ドラゴンを攻撃!

この時、LPを500支払ってカエサル・ラグナロクの効果発動!くっ…!

私のフィールドにある魔神王の契約書を手札に戻し、君のグラビティ・ドラゴンを装備カードとして、カエサル・ラグナロクに装備させる!」

「なっ!?だがこっちもチェーンしてアブソリュート・ドラゴンのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!

カエサル・ラグナロクの攻撃を無効にし、たった今墓地へ送ったメテオバースト・ドラゴンを攻撃表示で特殊召喚します!オッドアイズ・リボーン!

これによって戦闘が発生しなくなったので、カエサル・ラグナロクの装備効果は無効になります!」

「くっ、やはり回避されるか…!

だがこれで、アブソリュート・ドラゴンのオーバーレイ・ユニットは無くなった!」

 

Reizi LP 3500→3000

 

オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン ORU 1→0

 

「これでターンエンド!」

 

Reizi

LP 3000

手札 1(魔神王の契約書)

ペンデュラムスケール(青):3(DDD反骨王レオニダス)

ペンデュラムスケール(赤):8(DD魔導賢者ケプラー)

モンスター DDD怒涛壊薙王カエサル・ラグナロク(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

零児の言う通り、これでオッドアイズ・アブソリュート・ドラゴンのオーバーレイ・ユニットは0、つまり、エクストラデッキからもう1体出さない限りはカエサル・ラグナロクの攻撃は防げなくなった。

こっちから仕掛けようにも、俺のフィールドにいるオッドアイズ達はどれもカエサル・ラグナロクの攻撃力には少しばかり及ばない、もしカエサル・ラグナロク以外にモンスターを出してくれればセイバー・ドラゴンの効果でどうにか出来そうではあるが、グラビティ・ドラゴンもいる中でそれを出すとは思えない、出したとしてもライフコストを確保する為のダルク位だろう、そしてセイバー・ドラゴンの効果は、ダルクと相打ちしたら使えない。

正にジリ貧なこの状況を打破する為には、俺もまた今引きで融合魔法を引き、『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』を出し、カエサル・ラグナロクをバウンスするしか無い、それも早いタイミングで。

と、此処で地の文を使って説明すると敗北フラグが立ちそうだがしかし、そんな状況だからこそ面白い!

行くぜ、零児!

 

「俺のターン!ドロー!」

 

 

 

 

カンコーン!という、擬音が聞こえた気がした。

 

 

 

 

「俺は、今引いた魔法『オッドアイズ・フュージョン』発動!」

「何っ!?この状況でそれを引き当てたのか!?」

 

オッドアイズ・フュージョン

通常魔法

『オッドアイズ・フュージョン』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:自分の手札・フィールドから、ドラゴン族の融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。相手フィールドにモンスターが2体以上存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、自分のエクストラデッキの『オッドアイズ』モンスターも2体まで融合素材とする事が出来る。

 

「俺はフィールドのセイバー・ドラゴンとペンデュラム・ドラゴンを融合!2色の眼の龍よ!その碧の輝きを解き放ち、荒ぶる風で敵を惑わせ!ペンデュラム融合!『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』!」

 

オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン

融合・効果モンスター

風属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2500

 

よし、これで!

 

「融合召喚したオッドアイズ・ボルテックス・ドラゴンの効果発動!カエサル・ラグナロクを手札に、いや、融合モンスターだからエクストラデッキに戻して貰います!ハリケーン・フォース!」

「くっ!カエサル・ラグナロクが…!」

 

ボルテックス・ドラゴンが吹き荒らす暴風によって、カエサル・ラグナロクは吹っ飛んでエクストラデッキに戻り、零児の場はがら空きとなった。

 

「バトルフェイズに入ります!

ボルテックス・ドラゴンで、ダイレクトアタック!神速のウィンド・ラプチャー!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

Reizi LP 3000→500

 

「そしてグラビティ・ドラゴンで終わりです!鋼鉄のマッド・カタクラズム!」

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

Reizi LP 500→-2300 LOSE

 

WINNER Yuya

 

勝った…!

俺が、零児に、勝った…!

っと、そうだ、零児は大丈夫か、今まで4Gの重力に晒され続けるという、初めての過酷な状況に陥っていたのだ、無事なら良いが…

 

「零児、大丈夫ですか?」

「いたた、ああ、大事は無い。所々が少し痛むが、それよりも今は充実感が圧倒的に勝っている。

 

ありがとう、遊矢。あの何時均衡が破れるか分からない緊迫感、トップデックに掛けた想い、今まで味わった事の無い位に、最高のデュエルだった」

 

近寄って来た俺に無事を伝えつつ、このデュエルの感想と共に礼を言って来た零児、その顔は、心からの笑顔となっていた。

そんな最高の笑顔、エンタメデュエリストとして最高のご褒美だぜ!

 

「ガッチャ!俺も、最高のデュエルでした!また、デュエルして下さい!」

「勿論だ!だが今度は私が勝たせて貰うぞ!

 

それで、私は君にとって、身柄を預けるに相応しい存在だったかな?」

 

と、互いに再戦を誓い合いつつも、今回のデュエルのもう1つの本題の答えを求められた。

 

「はい。すいません零児、貴方の覚悟を疑ってしまって。実を言うと、貴方の言動に少なからず違和感を覚えてしまいまして、それがもしかしたら零児の覚悟が伴っていなかったからではないか、と疑ってしまい、今回のデュエルを申し込んだのです」

「違和感、か…

やはり、君に隠し事は出来ないな。

いや、君に話しても全く問題ない内容だったんだが、私にも見栄があった」

 

俺が零児の問いに答えると、零児は苦笑いを浮かべながら、俺の違和感の原因となったであろう事を話し始めた。



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23話_ジャンジャジャーン、今明かされる衝撃の真実ゥ!

「実を言うと、だ…

各次元への侵略を行っている融合次元の組織『デュエルアカデミア』、そのトップは私の父で、レオ・コーポレーションの先代の社長、赤馬(あかば)零王(れお)なんだ」

 

デュエルが終わり、事の真相を話始めた零児だったが、その内容は最初から俺の度肝を抜く物だった。

 

「エクシーズ次元から来たデュエリストの内の1人、黒咲(くろさき)(しゅん)という名前だが、そいつが君に、私を誘い出す餌になって貰う、と言っていただろう。実は彼らは私を、赤馬零王の息子であるという情報を何処からか入手していて、その私を捕える事で人質とする腹積もりだったらしい。尤も私にその価値は無いが」

 

確かにそれなら、あの時の隼が言っていた言葉の理由も説明は付くが、零児のお父さんって事は、元はこの次元の出身の筈、それがどう転んで融合次元にあるデュエルアカデミアのトップになって、各次元に攻め込もうなんて事に?

 

「3年以上前になるか、突如父がレオ・コーポレーション社長としての座等の何もかも投げ捨てて、失踪してしまったんだ。私は父を探している内に偶然、融合次元のデュエルアカデミアに転移し、其処で何者かに追いかけられている1人の少女と、失踪していた父を見つけたんだ」

 

3年前…

まさかとは思うが、父さんが失踪したのと何か関係があるのかな?

 

「その少女と父の会話から、その時には父は既にデュエルアカデミアのトップとなっていて、各次元への侵略を予定していた様だが、当時の、まだ中学生になったばかりで、この次元の外の事は一切知らなかった私に其処までの知識は無く、その少女と父との会話で出た言葉について父を問い詰めたんだ。「アクションフィールドでも無いのになんで質量が」とか、「エクシーズやシンクロを滅ぼすってどういう事だ」とか、色々とだ。だが父の答えは「今のお前が知る必要は無い」、「いずれ分かる時が来る」、まるで返答になっていない、取り合うつもりは無いという意志が丸見えだった。挙げ句、強制的に私はこの次元に戻され、デュエルアカデミアへと通じるルートも強引に封鎖された。それから父が率いるデュエルアカデミアがやってきた事は、先程君に話した通りだが、その折に黒咲の妹である黒咲瑠璃(るり)が、「この計画における重要なピースだ」として、デュエルアカデミアに囚われたそうだ。この写真の少女が黒咲瑠璃だ」

 

失踪してからデュエルアカデミアのトップとなり、今に至るまでの赤馬零王の足跡を零児から聞く中で、1枚の写真を見せられたが、其処に写っていた少女の姿に、俺はびっくりした。

 

「ゆ、柚子!?髪の毛の色とかは違うけど、顔はまるっきり柚子じゃないですか!?」

「やはり、柊柚子にそっくりだったか。実を言うと私がデュエルアカデミアに転移した時に出会った少女、名をセレナと言うんだが、その少女もまた、柊柚子や黒咲瑠璃とそっくりな顔をしていた」

 

う、嘘だろ…

それってつまり、各次元には柚子とそっくりな顔の奴が必ず1人存在するって事か!?

 

「それだけじゃない、その黒咲瑠璃を拉致したデュエリストの事だ。エクシーズ次元からこちらに来たもう1人のデュエリスト、君にそっくりな方で、名をユートと言うんだが、そのユートの話によると、君達にそっくりな顔をしていたらしい。それと、そのデュエリストや君とは髪型が違っていたが、やはり君達にそっくりな顔のデュエリストと遭遇したという情報も入っている。もしかしたらシンクロ次元における『君そっくりな存在』と思って良いかも知れない」

 

ま、マジかよ…

俺や柚子と同じ顔をした奴が、各次元に必ず1人ずつ存在するとか、それなんてドッペルゲンガー!?

けれどそれなら、あの時ユートだっけか、エクシーズ次元の『俺』が俺に問い詰めた訳が分かった、その黒咲瑠璃を拉致したデュエルアカデミアの、融合次元の『俺』と俺を勘違いしたって事か。

 

「話を戻そう。そんな父及びデュエルアカデミアの目的がどの様な物かは分からないし、分かろうとするつもりは、分かりたいと言う気持ちは微塵も無いが、そんなデュエリストとして、人としてあるまじき行いを私達は許せず、それを阻止するべく、ランサーズを構想、今結成に向けて動き出している。一応はこの次元を防衛する為と言ったが、いずれ父をトップとしたデュエルアカデミアを打ち滅ぼし、本当の意味での平穏を、各次元にもたらす為に…!」

 

そう、ランサーズ結成の真意を語る零児、その表情には隠すつもりが無い憤怒で染まっていて、其処からも零児がどれだけこの事に怒りを覚えているかが、決意が本物かが伝わって来た。

 

「この事を君に話すのを怠り、結果として君に疑念を持たせてしまった事、済まないと思っている。何回か君と話を交わす中で、君にこの事を話しても全く問題無いとは思っていたんだ。君は溢れんばかりの情熱を持っていながら、私が思っている以上に理性ある人間だと考えている、これを話した所で疑われる事も、情にほだされる事も無いだろうとは思っていた」

 

まあ伊達に何百年も人生を歩んでいないからなぁ。

でも俺に対しては「話しても問題は無い」と言っていたって事は、俺以外に話すのは問題ありという事、そもそもなんで内密にしようと考えていたんだ?

零児の想いを疑われかねないから?いやそれは無いだろう、あの憤怒の表情を見たら…

 

「だがランサーズの構成員は私や君、LDS上層部だけでは無い。デュエルアカデミアの戦力は、エクシーズ次元が成すすべも無く蹂躙され、今や壊滅的な状況になっている事を鑑みても相当な物に違いない、ならばそれに対抗しうるだけの戦力が、圧倒的な実力と確固たる覚悟を併せ持ったデュエリスト達が必要だ。その中で、今の事を話したとしよう。果たして君みたいに疑いを持たず、情にほだされずに加入してくれる、圧倒的な実力を持ったデュエリストはどれ位いるだろうか?もしかしたら片手で足りるかも分からない。大抵は、私と父が繋がっているのではないか、ランサーズはデュエルアカデミアの補完勢力では無いかと疑うか、私を父の横暴に立ち向かう悲劇のヒーローと見て、情にほだされて加入するかのどちらかだ。前者の『疑う』存在はまだ良い、ランサーズへの加入は志願制だ、戦力を確保しにくくなるのは痛いが、後で説明する様な統率が取れなくなる事態よりはずっとマシだ。だが後者の『情にほだされる』存在はどうだ?そんな存在の大半は覚悟が伴わないまま加入しているに違いない、ランサーズに在籍する中で、覚悟を持った状態で戦場に立てればそれに越した事は無いが戦いは待ってくれない、覚悟が伴わないまま戦場に立たされ、そして戦いの現実を知り、それに腰を抜かして逃げ出す存在も出て来るだろう。その事実は不安としてウィルスの様に広がり、やがて不安は恐怖に昇華して行くだろう。そうなってしまったら統率は取れなくなり、防衛どころか自滅に陥ってしまう。人や世界の運命を賭けた戦いに、生半可な覚悟で臨む兵士は、このランサーズにはいらない」

 

その理由を「バッサリ」という擬音が聞こえて来そうな口調で語る零児、言っている事はランサーズの理念に共感し、戦いに臨む事を希望しているデュエリスト達に対してあんまりじゃないかと突っ込まれそうだが、零児が語った事は俺自身も思っていた事だ、実際俺もさっきのデュエルで零児に覚悟の程を試していたからな。

何故俺がそう思ったのか、それは遊星だった頃、というか遊星として転生して直ぐに起こった『ゼロ・リバース』がある。

アニメの5D’sの年代から17年も前に発生した、永久エネルギー機関『モーメント』の暴走によって起こった大規模災害『ゼロ・リバース』、当時遊星として生まれたばかりの俺は、アニメの知識でその事を知ってはいたのだが、それを認識する暇も無く、両親によって脱出ポッドに入れられサテライト側に避難、結果としてその様子を文字通り「指をくわえて見ている」しか無く、これから先の「茨の道を歩む運命」を覚悟する事も出来なかった。

衝撃波によって崩壊するネオ童実野シティ、それに巻き込まれて死んでいく人達、分断されるシティとサテライトの大地…

生き残りながらも、その日の命を長らえる為に賭けデュエルに明け暮れ、或いは喧嘩や私刑、強盗と言った犯罪が横行し、荒んでいく人達…

それらを直視し、あるいはこの身で体感して行く内に、何時しか俺の心まで荒み切り、十代だった頃には絶やした事が無いと言って良い笑顔も忘れ、そんな俺の様子に耐えられなくなったユベルは自らを責め、俺への接し方が何処かよそよそしいそれに変わって行った。

もしジャック達との出会いが無かったら今の俺は無かったと言って良い位、その時の俺は本当に酷い有様だった、ひょっとしたらアニメの遊星も、同じだったかも知れないな。

そしてその時の記憶はトラウマとなり、遊馬、遊矢と転生を続けた今も尚、脳裏にこびり付いている。

けれども、そのトラウマがあるからこそデュエルの楽しさ・神聖さを改めて認識出来たと言って良いかも知れないな。

まあそれは置いてだ、デュエルアカデミアとの戦いは正に世界の命運を賭けた『戦争』、いち早くそれを経験したエクシーズ次元は荒れ果てたと零児は言っていたし、俺達が今いる次元も遠くない内にそれを体験する事になる。

その前線に立つランサーズのデュエリストには何より、『戦争』に臨む覚悟が求められる。

それが出来ないならば、『戦争』の前線で腰を抜かす様ならば、遊星だった頃の俺の様に壊れていってしまう様ならば、そいつは足手まといにしかならない。

それを危惧し、零児は純粋にランサーズの理念に共感し、『戦争』の前線に立つ覚悟を決めたデュエリストを集める為に、この話を秘密にしようとしている訳か、なるほどな。

 

「零児、その件で色々と思う所はあるでしょうが、何はともあれ話してくれてありがとうございます。共にランサーズのメンバーとして、この次元を守り抜いて行きましょう!」

「遊矢、受けてくれるか、最高指揮官就任の話を!そうか、ありがとう!君が就いてくれるならば、ランサーズの力も一気に増大するという物だ!」

 

零児から話を聞いた俺はランサーズの最高指揮官就任の話を受け、零児と誓いの握手を交わした。

 

 

 

デュエルアカデミアとの戦い、か…

そろそろ、俺の今までの人生を明かす時だな。



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2.5章『幕間の短編集』
24話_ARC-V結成と、『俺だった者』の物語その1


今話より、遊矢の過去編が始まります。


「今日は集まって貰ってありがとうな。皆に此処に集まって貰ったのは他でも無い、大事な話があるんだ。零児を交えてのだ」

「今から君達に向けて、私と遊矢が話す内容、突拍子も無い物と思うだろうが、最後まで聞いてくれ」

 

LDSのとある応接室、此処には柚子、一行、当麻、エレン、そして権現坂の5人が其々の席に座り、俺や零児からの説明を今か今かと待っていた。

この次元を含めた4つの次元の事、その1つである融合次元の組織『デュエルアカデミア』による侵略の事、それに対処する為の『ランサーズ』構想の事を零児から聞き、そしてランサーズ最高指揮官への就任を打診されて了承した昨日から1日経ち、俺と零児は5人に同様の話をしていた。

俺の義弟であるエレン、幼馴染である柚子と権現坂、そして長年遊勝塾に籍を置いている一行と当麻、この5人に、とある打診を行う為に。

まあその内容を話始めた頃は5人揃って半信半疑と言った様子だったが、実際にエクシーズ次元が侵略によって崩壊した様を撮った監視映像、必ず1人存在している各次元の『俺』と『柚子』、ユートとセレナ、そして黒咲瑠璃の写真を提示された時には驚きながらも納得してくれた。

その際、沢渡を襲撃するユートを見ていた柚子の驚きは顕著だった、まあ自分そっくり、それどころか各次元における『自分自身』や『俺』がいるなんて、余りに現実離れした話だからな。

その驚きを落ち着かせつつ、俺達は本題に入る。

 

「ランサーズは融合次元からの侵略からこの次元を防衛し、そして反攻する為の組織だ、それには実力と覚悟を兼ね備えたデュエリストが大いに求められる。だがその中でも、『伝家の宝刀』『大逆転の切り札』と呼べる、圧倒的な実力を持った精鋭が控えているとあれば、例えば敵の猛攻をがっちりと止めて反撃ののろしをあげたり、手薄になっている敵陣を確実に仕留めたりする事による士気向上、例えばそういった大黒柱が存在する現場の安心感等、ランサーズにとって様々な恩恵をもたらしてくれるだろう。そしてそれが、複雑な指揮系統から独立した『特殊部隊』の体制を取っていれば尚良い。

君達にはランサーズにおけるこの『特殊部隊』に当たる、最高指揮官である遊矢直属の部隊『ARC-V(アーク・ファイブ)』への加入をお願いしたい」

 

ARC-Vという名は、「天に掛かる虹を駆け上り、勝利を掴み取る5人衆」という意味合いを込めて付けた物だ、決して遊星だった頃に結成した5D’sみたくアニメタイトルからとった訳じゃ無いからな!

 

「遊矢兄ちゃん、零児さん、俺やるよ!あんな人の命を、デュエルの神聖さを屁とも思っていない連中を駆逐してやる!俺が、この手で!」

 

その打診に、集まった中で最も年少のエレンが怒りの声を上げながら真っ先に乗り、

 

「同感だ、エレン!この男権現坂、デュエルアカデミアによるこんなけしからん行いを見過ごすわけにはいかん!遊矢、零児殿、非才ながら全力を尽くそう!」

「俺もだ!俺達の次元は弱くない!俺達が住んでいる次元には、アイツらを倒す力があるって事をアイツらに教えてやる!」

「やってやろォぜ、遊矢、社長さン!世界征服なンて馬鹿げた考えしたデュエルアカデミアなンざ、ぶっ潰してやらァ!」

 

一行や当麻、権現坂といった男子陣も同調し、

 

「今こうしている間にも、アカデミアが戦いの準備を進めていたり、エクシーズ次元に残っている人達が苦しんでいたりしている…

正直怖い思いもあるけど、私も守りたい!皆を、皆の笑顔を!」

 

柚子もまた怖さから若干迷う素振りはあれど、決意を固めてくれた。

良かった、皆同じ想いの様だ。

 

「そうか、我々の構想に加入して貰えるか!そしたら「零児、他に話があるのですが、宜しいですか?零児にも聞いてもらいたいのですが」遊矢、私も含めてか?分かった」

 

ランサーズ、その精鋭部隊であるARC-Vへの皆の加入が決まり、デュエルアカデミアとの戦いに向けて決意を1つにした今こそ、俺の過去を明かすべき時、そう思い立ち、零児が話すのを一旦遮って、話を始めた。

 

「さて、皆に紹介したい人物(?)がいます。ユベル!」

「やあ皆、初めましてと言うべきかな?ボクは皆の事を知っているけどね」

『!?』

 

俺が呼ぶと同時に、某未来からやって来たアンドロイドがヒロインを守るドラマにおいてアンドロイド達の移動手段として用いられた『ウージングアウト』の如く、ユベルが実体化した事に、応接室内の6人全員が驚きの表情を浮かべるが、これは今まで何度も見て来た光景だ、予想は付いている。

 

「彼女は俺の切り札の一角、『ユベル』のカードに宿った精霊です。彼女について色々と聞きたい事はあるでしょうが、まずは聞いて下さい、『俺だった者』の物語を、たった今零児が話した『4つの次元』とはまた違った、けれどデュエルモンスターズが発展した『異世界』で生まれ育って来た4人の『俺だった者』の物語を…」

 

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最初の『俺だった者』、今俺達がいる世界や、俺が嘗て生まれ育った世界のうち3つとそっくりな世界観・人物がアニメとなっていて、それらに登場するデュエルモンスターズをモチーフにした『遊戯王(ゆうぎおう)OCG(オフィシャルカードゲーム)』が大規模な娯楽の1つとして発展していた世界の『俺だった者』、勅使河原(てしがわら)遊士(ゆうし)は、正直言って何処にでもいそうな、遊戯王OCGをこよなく愛する大学生だった。

ただその愛し方はちょっと独特で、強いデッキを組んで大規模な大会に出場し優勝を目指す『ガチデッカー』では無く、例えばアニメに登場していたキャラクターの、このカードを使ってみたい!というコンセプトを基にデッキを組み、それで友人たちと和気藹々と言った雰囲気でデュエルする『ファンデッカー』といった感じ、しかも結構前に登場したキャラクターのそれへの想いを追及するタイプだった。

俺のデッキの1つ『ユベル』は当時の俺がガキの頃からずっと使っているデッキで、時には小規模な物ではあったけど大会に出場して、意外と良い実績を残していったな。

友達からは「ガチデッキとかに興味無いの?」とか「そんな扱いにくいデッキでよくそんな実績残せるなぁ」とか言われているが、それに対して「好きなんだから良いじゃねぇか!」とか「愛が成せる業だ!」とか返答していて、その一途振りから周りからは「ユベッシー」なんてあだ名をつけられたな。

そんな平凡だけど楽しい毎日、けれどそんな生活はある日突然、交通事故という形で終わってしまった。

信号が青になったのを確認して横断歩道を渡った所に信号無視したトラックにはねられる、という転生モノのテンプレパターンで、勅使河原遊士という『俺』は死んだ。

でも現実でそんな神様転生だとか起こる訳も無く、そのまま天国へと行く、事にはならなかった。

 

次に目覚めた時には、俺は赤ん坊になっていたんだ。

普通だったら赤ん坊の時など覚えている筈が無い、というか赤ん坊の状態で『自分』を認識できる筈が無いのに赤ん坊である自分を『俺』は認識できた、その時、俺は転生した事に気付いたんだ。

そしてその要因となった存在も、直ぐに分かった。

遊士だった『俺』が切り札としていたユベルのカード、それに宿っていた精霊が、俺の死を目の当たりにして悲しみに暮れ、それを哀れに思った神に俺の転生を懇願、俺の死が世界においても予想外だった事もあって神はそれを快諾し、遊士だった頃の『俺』がいた世界で『遊戯王デュエルモンスターズGX』という題名のアニメとして放送されていたのとそっくりな世界に、その主人公として扱われたデュエリスト『遊城(ゆうき)十代(じゅうだい)』として転生して貰った、との事だ。

けれど此処で俺は、十代としての『俺』という存在に、何点か疑問に思ったんだ。

アニメにおける十代は、『破滅の光』から宇宙を守る救世主『覇王』としての力『正しき闇』を持った某国の王子という前世を持ち、それが現代における十代にも受け継がれていて、その力がアニメにおける重要な要素となっているのだが、その前世を押しのけて十代となった『俺』、アニメそっくりという関係上『破滅の光』という存在もあっておかしくない中でそこら辺大丈夫なのかと。

あと、十代の前世における親友というか恋人だったユベル、前世の十代を守る為に自らを怪物に改造させ、後に十代の持っていた同名カードの精霊となって彼を守り続けた彼女だったが、その想いが暴走してしまった末に壮絶な運命に叩き落とされ、それが原因で想いが歪んでいってしまい、それも(色んな意味で)アニメにおける重要な要素となったのだが、俺が持っていた同名カードの精霊であるユベルはアニメの彼女とは全くの別人、そこら辺もどうなっているのかと、俺は彼女に聞いてみたんだ。

それに対してユベルは、十代の前世である少年が持っていた『正しき闇』を宿した『肉体』に、俺という『魂』が宿った結果、十代という『俺』が誕生し、それと同時にユベルがこの世界の彼女に『憑依』して取り込んだ、と答えたんだ。

そんな馬鹿なと思ったがまあ神様転生自体がそんな馬鹿なと言える物だったし、そこら辺は神様の力である程度は何とかできたんだろうと納得した。

そんなこんなで十代として転生した『俺』、やっぱりデュエルモンスターズが元の世界以上に普及している世界となれば、デュエルをやらない訳にはいかないだろうって事で、ガキの頃からデュエルに明け暮れていたな。

転生した際の特典かどうかわからなかったけど、元の世界で使っていた『ユベル』デッキはそのまま持っていて、しかも前世の記憶から来るプレイング能力もあって近所の友達とは連戦連勝、小規模な大会でも優勝続きだった。

そんな現状に満足せず、もっと強いデュエリストと戦ってみたい、そう思った俺は、小学校卒業と共に、その世界のカード製造最大手である会社『海馬コーポレーション』社長である海馬(かいば)瀬人(せと)がオーナーを務めているデュエリスト養成学校『デュエルアカデミア』中等部に入学したんだ、あ、デュエルアカデミアと言っても融合次元のそれとは全然違うからな。

デュエルアカデミアはカード製造最大手の会社が出資している事もあって入学するデュエリスト達のレベルも中々の物、その中であっても俺は『ユベル』デッキ、更に十代となってから組んだデッキ『E(エレメンタル)・HERO』も駆使して、抜群の実績を叩き出したんだ。

この『E・HERO』デッキなんだけど、大会とかで好成績を出した際に景品で『E・HERO』融合モンスターカードをプレゼントされた事が良くあったんだ、其処で折角だからデッキを作って見ようと思い立って構築した物だったって、これは蛇足だったな。

そんな俺だったけど、やはりレベルの高いデュエリストが集うデュエルアカデミア、そう簡単に勝てない相手も、1人だけだけどいたんだ。

俺にとっては2年先輩にあたる人で、『アカデミアの帝王(カイザー)』と呼ばれ畏怖されていた、丸藤(まるふじ)(りょう)

カイザーのデッキは『サイバー流』、その戦術は主に『ハイステータスモンスターによる真っ向勝負』という、至ってシンプルな物。

一見すると相手のステータスを逆手に取るユベルとの相性は抜群な筈だけど、其処をカイザーは『禁じられた聖杯』や『スキルドレイン』等を駆使して効果を無効にさせたり、『次元の裂け目』で墓地からの展開を妨害されたりしたし、『E・HERO』においても『安全地帯』を出されて全体破壊効果を回避されたり、『サイバー・ネットワーク』で除外を逆手に取られたりで、勝つのは容易じゃ無かった。

そんな事もあって、俺は何時しか『アカデミアの王子(プリンス)』と呼ばれる様になった。

他にも、カイザーからの紹介で、彼の親友だった天上院(てんじょういん)吹雪(ふぶき)さんと、吹雪さんの妹で俺とは同級生、後に妻となる天上院明日香(あすか)を紹介され、彼女とは紆余曲折を経て恋人同士になったんだ。

けれど中学2年になった或る日の事、吹雪さんが行方不明になったんだ。

表向きにはアメリカに留学、として発表されてはいたけど、実際には当時吹雪さんが住んでいた、絶海の孤島に建てられているアカデミア高等部、其処の『特待生寮』の寮生が次々と行方不明になる事件の被害者の1人となってしまったんだ。

その原因は2年経って俺達が高等部1年となった時に判明し、アニメで見ていたそれと同じだったんだが、十代としての『俺』の立ち位置が既に逸脱している以上、アニメの流れは無い物と思っていた俺は、明日香やカイザーと共にその原因を自分達なりに探していた。

けれど有力な手掛かりは見つからないまま2年が経過し、俺と明日香は高等部に進学した。

蛇足だけど俺も明日香もクラスは中等部で好成績を叩き出した生徒が所属するオベリスク・ブルーだった、といっても女子生徒は人数が少なかった事もあって全員がオベリスク・ブルーだけどな。

其処で俺達は行方不明事件の手掛かりを探し続けたんだが、その折に絶海の孤島に建てられているアカデミアの地下に封印された『三幻魔』と呼ばれている無茶苦茶な力を持ったカードの存在を知り、それを狙う集団『セブンスターズ』との戦いに、俺と明日香、カイザーに加えて、カイザーの弟で俺にとっても弟分として、高等部進学の折に知り合ったのが切っ掛けで可愛がっていた丸藤(しょう)、中等部時代から俺を勝手にライバル視していた万丈目(まんじょうめ)(じゅん)、高等部出身で最高と言われる程の秀才だった三沢(みさわ)大地(だいち)、そしてアカデミアの実技最高責任者だったクロノス・デ・メディチ先生と共に臨み、その戦いで『ダークネス』として操られた状態の吹雪さんと再会、闇のデュエルの果てに開放する事に成功したんだ。

その後もセブンスターズと闇のデュエルを繰り広げ、最後にはアカデミア理事長にして、セブンスターズの黒幕だった影丸とのデュエルとなり、それに俺は勝利して、三幻魔を巡る戦い、そして2年越しの行方不明事件にもケリを付けたんだ。

その後も2年の時にアカデミアにて開催された、プロも参戦する世界規模のデュエル大会『ジェネックス』の中で繰り広げられた『光の結社』という組織との戦いと、そのトップである斎王(さいおう)琢磨(たくま)にとりついていた『破滅の光』との死闘、3年の時に起こったデュエルディスクの異変に端を発したカードの裏側『ダークネス』との戦い、そして卒業してから起こった、未来からの侵略者パラドックスとのデュエルモンスターズその物を巡る戦いを俺は、いや俺達は繰り広げて行ったんだ。

え、十二次元での戦い?ユベルがヤンデレを拗らせなかった影響でそんな物は無かった。

後また蛇足だが、パラドックスとの戦いの時に同じく未来から来たデュエリスト『不動(ふどう)遊星(ゆうせい)』が、俺の姿を見るなり、「これを受け取って下さい、後の貴方にとって必要な物です」と、シンクロモンスターである『虹光の宣告者(アーク・デクレアラー)』を渡されたんだ。

一体何のつもりだ?とその時は思ったんだが、理由は後になって分かった、けどそれは後で説明するぜ。

で、中等部から交際していた明日香とは高校卒業と同時に結婚、時にプロリーグに1シーズン限定で参戦したり、時に世界の色んな場所を旅したりした末に、十代としての『俺』は天寿を全うした。



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25話_『俺だった者』の物語その2

今回は遊星編、そして過去編1の鬱話です。


けれど俺は再び、赤ん坊として目覚めたんだ。

普通、神様転生モノって転生先で生涯を終える物だと思っていたし、十代としての天寿を全うしたからこれで充分だなと思っていたから、これには、十代に転生したばかりの時とは別の意味でびっくりした。

其処でまたユベルに聞いてみると、どうやら俺を十代として転生させた神はその折に『遊戯王(ゆうぎおう)シリーズの主人公として転生し続け、その力を受け継いでいく』という特典を俺にうっかりくっつけちゃったそうで、それによって事故で死のうが、天寿を全うしようが、俺は遊戯王シリーズが変化を続ける限り転生し続ける事になるという運命となったそうだ。

なんじゃそりゃと突っ込んだが、同時に十代だった頃にやり残した事があったから嬉しかった。

OCGで使えていたシンクロ召喚やエクシーズ召喚、ペンデュラム召喚と言った、十代だった頃には無かったギミック、十代だった頃のデュエルも面白かったが、やっぱりそういったギミックの入ったデュエルもやりたいという想いがあったし、パラドックスとの戦いで渡された『虹光の宣告者(アーク・デクレアラー)』の事もあったから、正に渡りに船、とユベルから聞いた時には思っていたんだ。

 

けど、転生先がアニメ『遊戯王5D's(ファイブディーズ)』そっくりの世界で、言わずもがなではあったが俺が転生したのはその主人公として扱われたデュエリスト『不動(ふどう)遊星(ゆうせい)』だったと気付いた時には、全てが遅かった。

遊星としての『俺』を認識する暇も無く、両親と思しき存在によって俺はカプセルらしき物に入れられ、それが何らかの動力によって何処かへと飛び立ち、一体何だと思って窓らしき部分から外を覗いてみたら、

 

其処に広がっていた光景は、俺の生まれ故郷であろう街がリアルタイムで崩壊して行く光景だった。

街の中心部から発生したであろう衝撃波が瞬く間にドーム状に広がり、街に建造された建物を、其処に住む人たちを飲み込む様、大地がひしゃげ、大地が中心部と郊外とで分断されていく様、それらをまざまざと見せつけられた。

後にそれは、当時実用段階に入ろうとしていた永久エネルギー機関『モーメント』が暴走した事に端を発した大災害『ゼロ・リバース』として(表向きには自然災害として)歴史に刻まれた。

俺自身ゼロ・リバースを、アニメの中で『知識』として知ってはいたんだが、生まれたばかりで認識が遅れたのと、また赤ん坊だったから出来る事が殆ど無かったのも災いして、その光景を、ただ指を加えて見るしか出来なかった。

目の前で繰り広げられた、『地獄』とも言うべき凄惨な光景に、それに何も手を打つ事が出来なかった赤ん坊の自分に、俺は泣き崩れた。

けれど、本当の意味での『地獄』は、此処からが始まりだった。

俺がカプセルによって送られたのは所謂『サテライト』と呼ばれた場所、崩壊して分断された街の郊外部にあたる場所で、中心部の復興が優先された事、その為の工場や廃棄物処理施設が建てられた事等から、其処は『スラム』と言っても良い状態、其処に住む奴も例えば犯罪者、ゼロ・リバースで家財や職を失った失業者、同じくゼロ・リバースによって天涯孤独となった孤児、色々居て、その誰もが今日を生きる為に必死だった。

それなりの価値があるカードを巡っての賭けデュエルや強盗、縄張り争いから来る喧嘩や私刑(リンチ)、時には殺人や放火と、犯罪と言える行為が日常茶飯事で行われていた。

そして其処に流れ着いた俺も例外なく、今日を生きる為にやれる事は何でもやった、「やりたい放題やりやがって」と恨みを買われる程に。

前世から引き継いだ『ユベル』デッキと『E(エレメンタル)・HERO』デッキ、前世で遊星から貰った虹光の宣告者を組み込んで構築した『完全決闘(パーフェクト・デュエル)』デッキ、そして遊星になってから構築した『クジャド・ウォリアー』デッキを駆使して賭けデュエルは連戦連勝、私刑や殺人によって強奪しようと襲い掛かって来た奴は『覇王の力』で逆に捻じ伏せてやった。

前世で出会った遊星が何であのカードを渡してくれたかが今更ながら良く分かった、あの時の遊星は『俺』で、この状況を体感していたが故に生きて欲しいという願いを込めて、俺に渡してくれたんだろう、まあ今更分かった所で、な感じが漂うが。

そんな毎日を過ごしていた俺の心は案の定と言うべきか荒んでいき、当然だが楽しいと思いながらデュエルをするなんて事は無くなり、何時しか俺は笑顔を浮かべる事は無くなった。

そんな俺の歪んでいく姿に耐えられなくなったのだろう、或る日突然ユベルが、俺に謝りながら泣きじゃくった。

 

「ごめん、ごめんなさい、遊星…!

ボクの、ボクの所為で遊星が…!

ボクが、ボクがこうなる事を望んだから、こうなると分かっていながら尚、一緒にいたいと願っちゃったから、だから遊星は、遊星は…!」

 

違う、そんな事は無い、これはユベルの所為でも、誰の所為でも無いんだと、俺は言いたかった。

人ってこうした生きるか死ぬかの瀬戸際、と言わんばかりの極限の状況に追い込まれると、此処に追いやった原因が何なのかを探り、それが極めて偏執的で、逆恨みとかであっても「アイツの所為だ」と恨む事があるが、俺は不思議とそういう気持ちにはならなかった。

けれど、それを声に出して言える程の気力が俺には無かった、生きるのに必死な生活によって気力は大いに削られていたんだ。

それ以来、ユベルは何処か、俺への態度がよそよそしくなっていった。

俺自身が、俺とユベルとの関係が壊れて行く最悪の状態、そんな或る日、俺が8歳の時の事だった。

その日も賭けデュエルや喧嘩に明け暮れた俺だったが、度重なる戦いの日々に気力は限界に達し、俺は倒れた。

こんな状況下で倒れたとあらばもう助からないだろう、俺自身周りから恨みを買われる行いを続けていたし、遅かれ早かれ死ぬ事になるだろうと思っていた。

そんな俺を、『マーサハウス』という孤児院を運営していた女性、マーサが助けてくれた。

俺についての噂を色々聞いていたマーサだったが、にも関わらず俺に親身になって接してくれて、俺をマーサハウスに住まわせてくれた。

このマーサハウスには俺と同じ位の、ゼロ・リバースによって天涯孤独となった子供達が住んでいて、その中には後の親友にしてライバルのジャック・アトラスと、同じく親友となるクロウ・ホーガンもいた。

其処で皆の優しさに触れ、それまでの極限状態な生活に身を置いていた俺の荒んだ心は修復して行き、笑顔を取り戻す事が出来た。

けれど、俺の両親が開発したモーメントが暴走した所為でゼロ・リバースが起こった事、原作知識として知っていながらそれを防ぐことが出来なかった事で、マーサハウスにいる皆は天涯孤独の身になったんだと罪の意識に苛まれ、彼らに何か出来る事は無いかと思い立って、或いはその意識を振り払う様に、「散歩行って来る」と出掛けては賭けデュエルや喧嘩に明け暮れ、日銭を稼いでいった。

それはマーサ達も気付いてはいただろうけど、特に何も言っては来なかった。

そんな日々が続き、ジャックやクロウ、ユベルと共に徒党を組んでサテライトをブイブイ言わせていた頃、1人の男と出会ったんだ。

名を鬼柳(きりゅう)京介(きょうすけ)、後に色々と関わり合いになるその男と意気投合し『チームサティスファクション』を結成、サテライトの勢力統一という満足を追求する為に活動して行き、その勢力を広げて来た。

だが、サテライトの勢力を統一した頃から、鬼柳は何処か満たされない想いを抱いていた様で、セキュリティにテロを企てる等暴走を始め、その罪により捕えようとしたセキュリティから逃がそうと奔走したんだが失敗、逆にその時のセキュリティとの会話の様子が鬼柳に「自分をセキュリティに売った」と誤解を生んでしまい、それが後々の騒動に繋がっていったんだ。

で、更に時が流れ、街の中心部『シティ』で一旗上げようとジャックが考えている事を察知した俺は「シティの最上段へ上がって行け!」と、何枚かのカードを餞別にシティへと送り飛ばし、遅れて2年後、ジャックがどうしているのか気になった俺がシティへ潜入すると、其処には俺に宣言した通り『キング』となったジャックの姿があった。

だが当時のシティは、サテライトからの不法侵入は犯罪、俺も例外なくシティの警察組織『セキュリティ』に追われる身となりながらも奔走、其処で後の仲間になる龍亞(るあ)龍可(るか)の双子の兄妹、そして後に遊星としての『俺』の妻となる十六夜(いざよい)アキと出会い、そして当時のシティで事実上のトップにあたる治安維持局長官だったレクス・ゴドウィンに、当時の仲間を人質に取られた事と、優勝する事でジャックとのデュエルを行えるという誘い文句から、『デュエル・オブ・フォーチュンカップ』への出場を決め、その際に3000年前の戦乱を治めるべく降臨した『赤き竜』の伝説、その力を受け継いだ『赤き竜の痣』を持った戦士『シグナー』の存在、そして邪悪な神の力を受け継いだ『ダークシグナー』との5000年周期の壮絶な戦いの話を聞いた。

で、フォーチュンカップでも前世、更にはサテライトで実力を付けていた俺は連戦連勝を遂げた末にジャックにも勝利して新たなキングとなったんだが、その際に『赤き竜』のビジョンが出現し、俺、ジャック、アキ、龍可の4人がシグナーとして覚醒した。

その折、デュエルの際のモンスターの攻撃が実体化する力を持った『サイコデュエリスト』だったアキの、その制御出来ない力への苦しみを感じ取り、俺もまた『覇王の力』を解放、制御された『力』の使い方を見せ付け、自らの力や内面に向き合う事の大切さを説いたが、これはまあ蛇足だな。

で、シグナーとして覚醒したのと時を同じくして、ダークシグナーの傀儡となったデュエリストにデュエルを挑まれ、ダークシンクロという新たなシンクロ召喚を見せられはしたけど難なく倒した、はいいのだが、これがきっかけでダークシグナーとの戦いが始まった。

その中にはセキュリティに逮捕されていた筈の鬼柳の姿もいて、その時の誤解から俺への復讐心を前面にデュエルを挑まれ、邪悪な神の力がカードに宿った姿『地縛神』を出される等の苦戦を強いられたが辛勝利を収め、誤解が解けたのもあってやっと和解する事が出来た。

その後もシグナーとなったジャックとアキと龍可、そして旧友だったクロウと龍亞とも合流して戦いを続け、最後はシグナーでありながらダークシグナーでもあるレクス・ゴドウィンとの最終決戦の末、勝利を収め、彼が持っていた『竜の頭』の痣は俺、それによってあぶれる格好となった『竜の尾』の痣はクロウが受け継ぐ事になった。

ダークシグナーとの戦いが終わってからアキと龍亞、龍可はデュエルアカデミアに通う様になり、一方で俺とジャック、クロウは1年後にシティで開かれる『W(ワールド)R(ライディングデュエル)GP(グランプリ)』への出場へ向けて準備を進めていた。

その折に俺は、ゴーストと呼ばれている謎のデュエリストにデュエルを挑まれ、シンクロモンスターの力を吸収する効果を持つ『機皇帝』というモンスターの効果に苦戦しながらも勝利したんだが、そのゴーストの存在から、世界規模で歴史を操作して来たと言われている組織『イリアステル』の存在を察知したんだ。

その不穏な気配が気になる中でWRGPは開催、俺とジャック、クロウとアキ、龍亞と龍可、そしてふとしたきっかけで知り合ったメカニックのブルーノと共に『チーム5D’s』を結成して出場した俺達は連戦連勝で勝ち上がり、その際に俺はシンクロ召喚の更なる先『アクセルシンクロ』を、ジャックはそれとは別の新たなる可能性『ダブルチューニング』を会得したんだが、その度重なるデュエルによって蓄積したエネルギーによって、俺達の街を、引いては世界を崩壊へと誘う巨大都市『アーク・クレイドル』が出現、破滅の運命をたどった未来から来たと言う存在によって結成され、未来世界を救おうとアーク・クレイドルを、世界を破滅させた原因であるモーメントがあるシティへ直撃させようとするイリアステルとの決戦に俺達は臨んでいった。

因みに、さっきの話ででたパラドックスとの戦いで、俺はイリアステルの最高幹部と言える存在だったパラドックスから『スターダスト・ドラゴン』を奪われそうになるも何とか回避し、それを追って過去へと飛び立った際に、過去の俺、十代だった『俺』と出会い、以前俺が貰った様に『虹光の宣告者』を何枚か渡したんだが、まあそれは蛇足だな。

5D’sで共に戦ったブルーノも、実はイリアステルの最高幹部『アンチノミー』で、アーク・クレイドルの中心部へと行こうとする俺達の前に立ちはだかったが、俺はこれも倒して見せ、ジャック達も最高幹部『アポリア』との戦いで勝利し、俺はイリアステルの黒幕であるZ-ONEとの最終決戦に臨んだ。

Z-ONEとの戦いは熾烈を極めたが、最後はアクセルシンクロの更なる可能性『リミットオーバー・アクセルシンクロ』を会得した俺の大逆転で勝利を収め、俺はZ-ONEから未来を託され、アーク・クレイドルはZ-ONEの命がけの働きかけで消滅、シティは救われた。

戦いが終わって俺はアキと結婚、生まれたばかりだった頃のゼロ・リバースや、未来における世界の崩壊要因となったモーメントをより安全・安定した物へとするべく研究に没頭、結果として制御システム『フォーチュン』を完成させ、それからは引き続きモーメント関連の研究を行ったり、アキと共に各地のデュエル大会に出場したりして人生を過ごした末に、遊星だった『俺』もまた、天寿を全うした。



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26話_『俺だった者』の物語その3、そして…

その後俺は三度、赤ん坊として目覚めた。

転生も3回目とあってどんな世界のどんな人物に転生したのか予想が付いていた、でも念の為ユベルに聞いてみたら案の定と言うべきか、アニメ『遊戯王(ゆうぎおう)ZEXAL(ゼアル)』そっくりの世界に、その主人公として扱われたデュエリスト『九十九(つくも)遊馬(ゆうま)』として転生したそうだ。

予想はしていたが、此処でまた疑問点が浮かんだ。

アニメにおける遊馬は、異世界『アストラル世界』で生まれ育った生命体『アストラル』と、アストラル世界から追放した『カオス』によって形成されたもう1つの異世界『バリアン世界』の神『ドン・サウザント』との戦いによって2つに分割されたアストラルの『半身』と言える存在、どう折り合いを付けたのか聞いてみると、まあ十代だった『俺』と似た様なパターンで、アストラルが2つに分割された際、その1つに『俺』の魂が入り込んだ事で、遊馬としての『俺』が誕生した、との事だそうだ。

理由がどうあれまたデュエルモンスターズが発展した世界で生まれ、今度は遊星だった頃の様な大災害も(少なくとも人間世界では)発生していなかったから物凄く久々に、近所の友達との楽しいデュエルを満喫した。

ZEXALの世界では融合召喚とエクシーズ召喚が発展していた一方で、5D’sの世界にあったシンクロ召喚が無かったので、一部デッキは封印せざるを得なくはなったが、それでも前世から持ち込んだ『ユベル』と『E(エレメンタル)・HERO』、更に遊馬となってから構築した『オノマト』デッキを駆使して、ガキの頃からの友達だった『武田(たけだ)鉄男(てつお)』や委員長こと『等々力(とどろき)(たかし)』、『表裏(おもてうら)徳之助(とくのすけ)』やキャッシー、そして遊馬としての『俺』の妻となる『観月(みづき)小鳥(ことり)』とのデュエルではやはり連戦連勝だった。

でもこの時は、其処からの一歩を中々踏み出せずにいたんだ。

デュエリストとしての純粋な欲求として、もっと強いデュエリストと戦いたいという想いもありはしたんだけど、この世界でそれを成し遂げようとなればプロデュエリストを目指していかないといけない。

プロデュエリストは文字通り、デュエルでメシを食って行く存在、また遊星だった『俺』の様に生きる為のデュエルに終始してしまうんじゃないか、またデュエルに対する楽しい想いを失ってしまうんじゃないか、またあの時の様に笑顔を失ってしまうんじゃないかってネガティブな考えに終始しちゃって、あの光景がトラウマになって蘇って来るのもあって、一歩を踏み出す事が出来なかった。

そんな俺の葛藤と言うか不安を、父さんはどう見抜いたかは分からないけど、そんな俺にこんな言葉を教えてくれたんだ。

 

『かっとビング』。

 

どんな事にも諦めずに全力で挑戦していく、そんな意味が込められたその言葉に俺は助けられ、以来デュエル・チャンピオンになってデュエルの純粋な楽しさ、神聖さを伝えていこうという想いでデュエルに臨むようになって行ったんだ。

それからは規模の大きい大会に出場する様になって其処でも結果を残して行き、その折に、後に色々と関わり合いになる存在、シャークこと『神代(かみしろ)凌牙(りょうが)』と、その双子の妹である『神代璃緒(りお)』と知り合い意気投合、親友になった。

そんな日常を過ごしていた或る日、俺が中学1年になった頃、ひょんな事から俺の目の前に幻影で出来ていたっぽい扉が出て来て、『扉を開く者には無限の力を与えるが、その代償に一番大切な物を失う』と呼びかけられたんだ。でもそれアニメでも放送されていたシーンだった事もあって、かっとビングだ!と気合を入れつつ、嘗て父さんからプレゼントされた首飾り『皇の鍵』を使って扉を開けると、そこからアストラルが出現すると共に正面衝突、その際にアストラルの記憶が数十枚の『No.(ナンバーズ)』エクシーズモンスターカードとして飛散してしまい、アストラルは記憶喪失に陥ってしまった。

これが、遊馬だった『俺』と、今尚俺の相棒であるアストラルとの出会いだった。

飛散してしまったアストラルの記憶が入っているNo.エクシーズモンスターカードを集めるべく、俺は諸々の事情を皆に話し、俺、ユベル、小鳥、シャーク、璃緒、鉄男、委員長、徳之助、キャッシーの9人でナンバーズクラブを結成、収集にあたった。

そんな時に現れたのが『ナンバーズハンター』としてNo.の収集を行っているデュエリスト『天城(てんじょう)カイト』。

お互い事情は違えどNo.を集めている存在同士とあって、互いの持つNo.を賭けてデュエルをする事になったんだが、カイトの実力はこれまでに戦って来たデュエリストとは次元が違い、流石の俺も苦戦を強いられた。

カイトのデッキは『フォトン』と『ギャラクシー』という、其々がサポートし合うカテゴリ同士の混成デッキ、その戦術は一言で言うと『エクシーズキラー』。

当初俺はそれに対して『E・HERO』デッキを使ったんだが、カイトの切り札『銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトンドラゴン)』の効果によって全体破壊効果を回避される、サーチしたHEROカードを『マインドクラッシュ』でハンデスされる、『融合』や『マスク・チェンジ』を発動しようにも『虚無空間(ヴァニティー・スペース)』で封じ込まれる、といった感じで俺は追い込まれていった。

結局初戦はカイト側に緊急事態があったみたいで無効となったんだが、もしかしたら負けていたかも分からなかった。

アストラル曰く「今まで体感した事の無い絶体絶命の状況」にアストラルは意気消沈していたが、当の俺は久々のライバルの存在に会って、負けん気に火が付いた。

アイツもNo.の収集を行っている以上、また戦う時が来ると思い立った俺は引き続きNo.の収集に当たり、一方でアイツを倒す為に一部デッキの再構築を試みて、迎えたカイトとのリターンマッチ、其処で俺は不思議な体験をしたんだ。

元はと言えばアストラルと遊馬としての『俺』は同一の存在、元の鞘に戻ったと言えばそれまでなんだが、俺はアストラルと一体化、『ZEXAL』と呼ばれる姿となり、想いの通りのカードを創造する『シャイニング・ドロー』という力を編み出し、カイトとのデュエルに勝利したんだ。

その後、俺達が住む街『ハートランドシティ』で行われる事となった世界規模の大会『WDC(ワールド・デュエル・カーニバル)』に俺達ナンバーズクラブメンバーは全員出場、其処で俺達は、嘗て大会で戦った事のあるIV(フォー)こと『トーマス・アークライト』達アークライト一家、主催したカイトの父『Dr.フェイカー』が送り込んだデュエリスト達、そしてカイトと激戦を繰り広げた末に俺は優勝、その後、WDCを開いた真の目的がNo.と、それが持つエネルギーを利用してのアストラル世界の滅亡だったDr.フェイカーの野望を止めるべくデュエルに臨み、それにも俺は勝って、アストラル世界を救う事に成功したんだ。

だけどそれは、そのDr.フェイカーの野望を裏で手引きしていたバリアン世界の存在達との戦いの幕開けだった。

バリアン世界の存在、特にその幹部であるバリアン七皇とのデュエルは熾烈を極めたけど、その戦いにカイトやアークライト一家が加わり、俺とアストラルもZEXALの新たなる力『ZEXALⅡ』『ZEXALⅢ』に目覚めて行った。

だけどその戦いの最中、とんでもない事実が俺達に明かされた。

なんと、ナンバーズクラブのメンバーだったシャークがバリアン七皇のリーダーであるナッシュ、璃緒もまたバリアン七皇の一角であるメラグだったんだ。

その事実を思い出したシャークと璃緒は俺達から離れ、バリアン七皇として俺達に立ちはだかったがデュエルの中で、ナンバーズクラブで共に戦った思い出を呼びかけた末に一度はシャークも璃緒も戻って来た。

その勢いのままドン・サウザントに挑み、死闘の末に勝利した俺達だったが、バリアン世界とアストラル世界の、存亡の運命が天秤に掛かっていた事が判明、シャークはバリアン世界を守る為に、また俺達の前に立ちはだかった。

シャークとの戦いは、俺が勝てばバリアン世界は滅亡、かと言ってシャークが勝てばアストラル世界は滅亡、という様にどちらが勝ってもどっちかの世界が滅亡するという状況の中、俺は『どっちの世界も救い出す方法が見つかるまでデュエルを続ける』という方法を思いつき、粘りのデュエルを行ったが、最終的には俺の勝利に終わり、バリアン世界は滅亡、シャーク達バリアン七皇も運命を共にしてしまった。

シャーク達を救えなかった事で流石の俺も意気消沈したけど、その折にシャーク達からとあるカードを「記憶の片隅にでも置いていてくれ。俺達が、バリアン世界があったという事を…」というメッセージと共に渡され、俺は改めて前を向いて行こうと決意を固めたんだ。

その後、新たなる敵にも仲間達と一緒に立ち向かい、戦いの後に俺は小鳥と結婚、プロデュエリストとして活躍した末に、遊馬だった『俺』もまた、天寿を全うした。

 

------------

 

「そして俺はこの世界で、遊矢として4度目の転生を果たし、今に至る、という訳です」

「まあ大分端折っちゃったけど、遊矢の今までの人生はこんな感じって所かな」

「遊士だった時に全うできなかった人生を、十代だった時に満喫し、遊星だった時にどん底に落とされ、遊馬だった時に本当の意味で立ち直った…

そして遊矢となった今、デュエルのあるべき姿を、本当の意味で確認できました。デュエルとは、デュエリスト同士は勿論、それを見ている観客が心から楽しみ、そして終わった後には勝敗関係なく互いの健闘をたたえ合い、そして関わった人達全てが分かり合う、そんな、そんな神聖な物であるべきなんだと。決して、戦争の道具とする物じゃないんだ、人を傷つける物じゃないんだ!俺がランサーズに加入したのは、そんな想いがあるからです」

 

そう締めくくられた俺の身の上話、ずっと黙って聞いていた6人は話が終わった後も暫く黙り込んでいた、が、

 

「成る程そォだったか、まァ二次創作とかでお馴染みの神様転生だとはちょっと予想外だったが、お前が余り口外しちゃ行けねェ様な経歴を辿っていたのは分かっていたし、其処まで驚かねェぜ」

「一行の言う通りだな、この街で殆ど出回っていなかった融合モンスターやシンクロモンスター、エクシーズモンスターをずっと前から持っていた時点で、そうなんじゃないかと俺は思っていたぜ」

「うむ、2人の言う通り。第1、遊矢の前世がどうであろうとも、此処そっくりの世界観がアニメとして放送していた世界から来たとしても、遊矢は遊矢だ、過去を知った所でこの男権現坂、お前との友情を捨てる事は無い!」

「そうだぜ遊矢兄ちゃん!遊矢兄ちゃんは遊矢兄ちゃんだ!」

「その4人分の人生が、今の遊矢となった、その事実だけで良いではないか。私はそのキャリアを経た今の遊矢に友情を抱いているのだから」

 

一行を皮切りに、5人の男性陣はあっさり受け入れてくれた。

そんな中、

 

「遊矢、ちょっと来て貰っても良いかな?」

「柚子?分かった、良いぜ」

 

何処か思い詰めた様な表情をしていた柚子が、俺を連れ出しつつ外へと出た。

やっぱり衝撃的過ぎたか?

 

「遊矢、あのね…

さっき一行や当麻が言った通り、私も遊矢が普通の人とは違うんじゃないかって予感はしていたし、それでも権現坂やエレンが言う通り、遊矢は遊矢だって思っている。けど、遊矢の前世で遊矢の周りにいた人達、その人達が知っている、私の知らない遊矢がいる。その遊矢は、ゼロ・リバースの時の事で、其処からの地獄の様な生活で、ずっと、ずっと苦しんでいた。他にもシャークっていう人達との戦いで救えなかった事への苦悩もあった。

そんな遊矢を、私では助ける事が出来ないのかなって、ちょっとね…

遊勝おじさんが行方不明になって、遊勝塾が危機に陥った時にも遊矢は率先して立て直そうと奔走して、私達に融合やシンクロ、エクシーズと言った未知の力に付いて親身に指導してくれて、私達のデュエルはどうあるべきかを其々に説いてくれて、ずっと頑張ってくれた。そんな遊矢を、今度は私が守りたい!って思っていた。でも遊矢はずっと私の知らない所で苦しんでいて、その度にそれに真正面から向き合って克服して来て、今の遊矢がある。けど私はそんな遊矢を、沢渡を襲撃したユートが遊矢そっくりだったからと言っても、一度は疑っちゃった…

そんな私なんかが側にいちゃ、駄目だよね「そんな訳無いだろ!」っ!?」

 

何を馬鹿な事を言っているんだ柚子は、一度は疑った?そんなの仕方がないだろ!

一緒にいてはいけないだって?それを誰が何の権限で決めるんだ!?

 

「柚子…

これから先デュエルアカデミアとの戦いが待っている中だ、これから忙しくなるし、言うのが後になっては不味いと思う。後回しにしてもしアカデミアの連中にやられたとしたら俺は絶対後悔すると思う、だから今言わせて貰う。

 

好きだ、柚子!ずっと俺の側にいてくれ!」

「え…?」

 

俺が柚子に抱いている想い、それが何なのか此処最近、分かりかねていた。

今まで『幼馴染の女の子で、同じ遊勝塾に属する弟子』としか想っていなかった柚子、だけど此処最近は「本当にそう思っているのか?」と考え込む時があった。

沢渡が俺への闇討ちを計画していると聞いて柚子がそれを阻止しようと挑んでいった時、一度は折れて塾に帰ろうとしたけど、内心柚子を心配する気持ちで一杯だった。

帰って来た柚子の様子がおかしい事を察知、何かあったのかと気になって仕方が無かった。

ミエルから告白された時も、別にフリーなんだし「まずは友達から」って感じで良いんじゃねぇ?的発想は全く無くきっぱり断った。

何故か、それは今ようやく分かった。

 

「単刀直入に言わせて貰う、俺は柚子の事が好きだ!アニメキャラとしてじゃ無い、1人の女の子『柊柚子』として好きだ!俺が好きだと言っているんだから、側にいて良いじゃないか!」

「遊矢、良い、の…?

側に居て、良い、の…?」

「ああ!むしろずっと側にいてくれ!」

「ゆ、遊矢…

ありがとう…!

私も、私も遊矢の事が好き!1人の男の子として好き!」

 

ランサーズ精鋭組織『ARC-V(アーク・ファイブ)』の結成、その裏で榊遊矢の人生、『俺だった者』の物語は封印を解かれ、そして俺と柚子は結ばれた。

これから先、どんな険しい戦いになるかは分からないけど、俺は守って見せる!

この世界を、世界の皆を、皆の笑顔を、そして柚子を!




これで過去語りは終了となりますが、2.5章はまだまだ続きます(訳:舞網チャンピオンシップ編はもうちょっと待ってください)!


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Ex1話_空から舞い降りた、紋章獣の使い手

今話から数話、此処ハーメルンにて瑞田高光さんが連載している『遊戯王ZEXAL 知られざる八人目の七皇』とのコラボとなります!

(題名にExと付いている話は、コラボとなります)


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

『ま、マスター!?大丈夫!?』

 

舞網チャンピオンシップの開幕が残り一週間に迫り、美琴と素良のジュニアユースクラス出場権獲得も決まり、大会に向けて準備をしていたこの日、俺達遊勝塾が間借りしている塾舎の敷地に、2人の少年が舞い降りた。

 

「痛っててて、またこのパターンかよ…

一体なんなんだこの白いカードは。プルート、お前何処でこんなのゲットしたんだよ…」

『カードは拾った(キリッ)。なんちゃって』

「お前は何処のメ蟹ックだよ!?てゆーかどこでそんなネタを覚えたんだ!?」

 

着陸するなり何故か漫才を始めている2人、というか、1人と1体か?ライトブラウンのセミロング、ダークブラウンの瞳の、俺より大分身長が高い、マスターと呼ばれた少年の方は人間だが、もう一方の、青いセミロング、赤い瞳の、プルートと呼ばれた少年の方は、何故かぷかぷかと浮かんでいるし、何か半透明だし、感じ取れる力からしてカードの精霊の様だな。

一先ず、声を掛けて置くか。

 

「一体其処でどうしたんだ?」

「ん?その声、もしかして遊矢か……

って、アイエエエエ!?ユベルにアストラル!?ユベルナンデ!?アストラルナンデ!?」

『マスター、ニンジャとエンカウントした所為でNRS(ニンジャリアリティショック)引き起こしちゃった一般人(モータル)じゃないんだから…』

『随分と失礼だね、ボクを化け物みたいに。確かにアニメでのボクは自ら化け物に改造させたけどさ…』

『遊矢、ユベル。ニンジャと言うと闇川が使っていたあの機甲忍者の事か?あれは中々の強さだった』

『アストラル、そこの精霊の男の子が言っているニンジャはそれじゃ無いと思うよ…』

 

ん?そういえば俺の姿を見るなり遊矢って呼んでいなかったか?俺とお前、初対面だよな?

というか、カードの精霊がいるからユベルが見えているのはまあ分かるにしても、ユベルがいて何か不都合でもあるのかお前は?

そしてアストラルは少し自重してくれこのデュエル脳。

 

「ん、どうやら初対面(?)みたいだな。前に会った奴がお前にそっくりで、勘違いしていたな。改めて、俺の名は七穂氏(ななほし)大輔(だいすけ)。その様子だとコイツが見えているだろうからコイツも。コイツはプルート、俺に付いているカードの精霊だ」

『初めまして!ボクの名はプルート、宜しくね!』

「俺は榊遊矢。んで、俺の隣にいるデビルマンレディみたいな奴がユベル、で、その隣にいる青い幽霊みたいな奴はアストラルだ。まあさっきの口振りから知っていたみたいだが」

『ユベルだよ、宜しくね』

『アストラルだ、こちらこそ宜しく頼む』

「それで大輔、なんか空から舞い降りた的な登場をしていたが、何があったんだ?」

「名前まで一緒同一人物か平行世界(パラレルワールド)の住人か……?

って、ああそうそう。この真っ白いカードなんだけどさ…」

 

一先ず何かぼそっと呟いていた大輔に事の次第を聞いてみる事にした、すると何かを思い出した様に大輔が見せて来たのは、白枠である以外は全くの更地、そう、シンクロモンスターだと分かるフレーム以外には全く以て情報が掛かれていないカードだった。

 

「な、なんぞこれ?」

「さあな。実を言うとさあ、コイツが持って来たこれを手にしたら、此処の上空にテレポートしちゃったみたいなんだよなぁ。一体全体これは何なんだ…」

『見た事も無いカードだ。かろうじてシンクロモンスターだという事はフレームで分かるが』

『いやいやアストラル、ひょっとしたら色塗っていないだけかも知れないよ?もしかしたら何らかの作用でカードフレームも変わるかも分からないよ?』

 

ああ確かに、俺が持っているペンデュラムモンスターもそのクチだしな。

けどそれは良いとしても、さっきの口振りからして俺とそっくり且つ同姓同名の存在と会っていたそうだな、それに俺の相棒であるユベルとアストラルの、その存在は知っていた様子だった。

増して、事の発端である白紙のカードを持って来たプルートが、遊星のネタ発言を使っていたのに対して大輔はそのネタが分かる奴しか入れないだろう突っ込みを入れていたし、逆に大輔が『ニンジャスレイヤー』で一般人がニンジャに遭遇した際の絶叫ネタを叫んでいた所にプルートがそのネタを分かる奴しか入れないだろう突っ込みを入れていた。

となるとコイツ転生者か?でも知らずに来ちゃった可能性もあるし、其処は一先ず飛ばすか。

 

「まあ事情は何となくだが分かった。そういった手の方面で詳しい知り合いがいるから、そいつに相談するとして…

一先ずうちの塾来るか?」

「塾?お前の家、塾を経営しているのか?」

「ああ、まあ正確には違うけどな。此処舞網市で新進気鋭と言われているデュエルスクール、遊勝塾に!」

 

------------

 

「零児。かくかくしかじかで、調査をお願いしたいのですが」

『これこれうまうまと言うわけだな、分かった、そちらに調査員を派遣しよう』

「ありがとうございます、零児。すいません、舞網チャンピオンシップも近い中で」

『構わない。その大輔と言う少年が持っていた白紙のカード、その少年をこの次元へと飛ばした力を有しているとあらば、下手に放置しては危険だからな』

 

一先ず零児との連絡は終わり、「折角だから遊勝塾でやっているデュエルを見てみたい」という要望から塾長と同行している大輔に報告へ向かうと、

 

「な、なんだここ……

OCGばりのハイレベルじゃねぇか…!」

 

其処にはアクションフィールドに、呆然としている大輔の姿があり、その視線の先には、

 

『マジックテンペスターの効果発動!私のフィールドにいるカード達のカウンターを全て取り除いて8000バーンダメージ!

喰らえクソアメリカン!スターライト・○レイカー!』

『甘いぜ!チェーンしてアクションマジック『火の粉払い』!このターン、俺が受ける効果ダメージは0になるぜ!』

『あ゛ぁぁぁぁぁ!?ななな、なんで持っているのだそれを!?』

 

マリアが覚えたてのシンクロ召喚で『マジックテンペスター』を出し、その効果で先攻1ターンキルを決めようとしてエレンに阻止されたり、

 

『ヴェルズ・ケルキオンを召喚!召喚時に効果発動!』

『オピオンを出されちゃ堪らないからな!それにチェーンして手札から『幽鬼うさぎ』の効果発動!』

『ンなァ!?やってくれンじゃねェか!』

 

一行がヴェルズお得意の大量展開をしようとして当麻がそれを妨害したり、

 

『デストーイ・シザー・タイガーの効果発動…!

フィールド上のカードを破壊しますよ…!』

『させないわ!それにチェーンして速攻魔法『融合解除』発動!

マイスタリン・シューベルトをエクストラデッキに戻して、融合素材にした墓地のアリアとエレジーを蘇生するわ!これで私の幻奏モンスターは戦闘破壊も効果破壊もされず、効果対象にも選べないわ!』

『あらら、やってくれますね…!』

 

素良がシザー・タイガーの効果で柚子の場を荒そうとして、柚子がアリアエレジーロックを完成させてそれを防いだり、

 

『よしっ手札全部捨ててやったぜ!カードを1枚セットしてターンエンド!』

『くっ、やってくれますね刃先輩!私のターン、ドロー!』

『あ、それ『強烈なはたき落とし』な』

『ちょっ!?』

 

刃が先攻全ハンデスループを披露しただけでは飽き足らず、美琴がドローしたカードをカウンター罠『強烈なはたき落とし』で手札に加えさせなかったりと、大輔がぽつりとつぶやく通り、OCGでたまによくある光景が広がっていた。

 

「大輔。一先ずこっちの連絡は済んだ。近いうちにそいつの関係者が来るそうだ」

「分かった、何から何まで済まないな。それで此処のデュエルなんだが、何と言うかすげぇな」

 

で、報告の為に声を掛けてみると案の定、目の前で繰り広げられていたOCGばりのガチデュエルに心なしか興奮気味に見えた。

 

「……なぁ、物は相談なんだが

 

おい、デュエルしろよ」

 

うん、知ってた。



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Ex2話_紋章獣使いとのデュエルその1

「どうしたんだ?急に…?」

「いやぁ…

ちょっとここのデュエリストのレベルが高いから俺もデュエルをしたくなっただけだ」

 

デュエリストとしての血が騒いだんだろうが、余りに唐突だったので一応大輔に訊ねると、まあ案の定と言うべきか、大輔は笑いながら予想通りの答えを「ダメか?」と付け加えながら言って来た。

 

「むしろ大歓迎さ。デュエルやろうぜ!」

 

予想通りだったし、それに俺としても大輔とデュエルしてみたかったから、笑って快諾した。

 

「後、折角だしアクションデュエルでやらないか?」

「あれか、塾長さんが言っていた奴?なんか黒髪で緑の眼した奴が拾ったカードで銀髪の女の子が仕掛けたテンペスター1Killを阻止していたけど」

「ああ、マリアとエレンのデュエルか。その拾ったカードは『アクションカード』って言う奴で、基本的にこのカードを、ソリッドビジョンによって実体化したモンスターと共に探していく感じなんだが…」

「成る程、さっき見たし、大体わかった。折角だからそれでやろうぜ!」

 

序にアクションデュエルを提案すると快諾してくれ、其処にタイミングよく刃と美琴のデュエルが終わったフィールドへと移動した。

 

「ん、遊矢の奴の相手…

誰なんだ?」

「さぁ?折角ですし、見ていきますか」

 

その様子を見ていた刃と美琴が観客席に入って行ったが、まあ余談だ。

 

------------

 

「そう言えばデュエルディスクは持っているのか?」

「あぁ、自前のならあるぞ」

 

ふと、大輔がデュエルディスクを装着していない事に気付いた俺は持っているのか聞いてみたが、大丈夫そう、

 

「そうか、それならいいんd「デュエルディスクセット、D-ゲイザーセット」ちょっ!?ストップ、ストップ!!」

 

じゃなかったぁぁぁぁぁ!

大輔が遊馬だった頃の『俺』っぽくD-パッドやD-ゲイザーを起動させる姿に思わずストップを掛ける。

どうやら大輔は遊馬だった頃の『俺』と同じく『遊戯王(ゆうぎおう)ZEXAL(ゼアル)』そっくりの世界から来たみたいだな。

となるとルールも先攻ドロー有りのマスタールール2か?

 

「ん…

どうした?」

「いや…

多分それ使えないから…

塾長、遊勝塾の予備のデュエルディスク、持ってきてくれないか?」

「分かった!デュエルディスクが無いとアクションデュエルはままならないからな」

「ちょっと、デュエルのルール…

再確認させてくれ」

「おう、分かった!」

 

俺に止められて軽く首をかしげる大輔に理由を伝えて、塾長にデュエルディスクを持ってきてもらうと同時に大輔の覚えているであろうデュエルルールが同じものかの確認をすることにした。

 

『…何ですか、さっきの…』

『わかんねぇ…

けど、スタイリッシュだった感じがする…』

 

観客席にいた美琴と刃も、今の光景には(別の意味で)唖然としていた。

 

------------

 

「…さて、大輔。準備は良いか?」

「あぁ、ちょっと迷った部分はあるが…

大丈夫だ」

『行くぞ、二人とも!アクションフィールド、オン!『封印の岩場』!』

 

改めて俺と大輔の準備が整うと、塾長がアクションフィールドの起動をする。

で、其処で現れたフィールド、は、

 

「あれ…

何処かで見たこと、あるっけ…?」

『確か、何かあったよね?』

『何処だっただろうか…』

 

ああ、思い出した、WDCで、IV(フォー)の弟で(スリー)こと『ミハエル・アークライト』とデュエルした時のフィールドだ!

あの時は色々あったな、紋章の力でアストラルが封印されたり、『かっとビング』も消されたりして、もし『かっとビング』が無かった場合の、遊馬だった『俺』が出て来たっけ。

その時の俺の姿と言うと、その光景を見ていたシャーク曰く、強いデュエリストとの戦いたいというデュエリストとしての欲求と、遊星時代のトラウマに思い悩んだ末に発狂、ベクターばりの外道キャラと化したらしい。

寸での所でアストラルが復活、『かっとビング』も思い出して、その後は本気のデュエルでⅢに勝ったが、その時のフィールドが再現されるとはな。

 

「行くぞ…

戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が」

「モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!」

「フィールド内を駆け巡る」

「見よ、これぞデュエルの最強進化系!」

「「「アクショーン、デュエル!」」」

 

先攻 Daisuke LP 4000 VS 後攻 Yuya LP 4000

 

「先攻は俺だ!

…と言っても手札があまり良くないし、早速手札交換と行こう。

『手札抹殺』発動!」

 

手札抹殺(制限カード)

通常魔法

お互いの手札を全て捨て、其々自分のデッキから捨てた枚数分のカードをドローする。

 

げ、いきなり手札抹殺!?

 

「手札抹殺の効果で、互いに手札をすべて捨てて、同じ枚数ドローする!」

「くっ…

ちょっと良い手札だったし辛いな…」

 

初手が良かっただけにキツイが…

お、これならまだ行ける!と思っていたら、

 

「さて、行くぞ!墓地に送った『紋章獣レオ』のモンスター効果発動!」

「も…

紋章獣!?」

『バカな!?アレはトロンの使っていたカテゴリの筈!何故、D-パッドやD-ゲイザーを持っていた大輔が持っているんだ!?』

『何だって……

彼についてた精霊も気になるけど、これはかなり興味深いね』

 

大輔の発動したモンスター効果、と言うより、効果発動したそのモンスターの『カテゴリ』名に俺達は驚愕した。

アストラルの言う通り、『紋章獣』はZEXALにおいてアークライト一家の長であるトロン・アークライトが使っていたカテゴリの筈、ZEXALそっくりの世界から来た大輔が使っているという事は、やはり大輔は転生者か?

とは言えそれを気にするのは後、まずはこのデュエルを楽しむまでだ!

 

「コイツは墓地に送られたときにデッキから紋章獣をサーチする効果がある。デッキから『紋章獣アンフィスバエナ』をサーチ!そしてすかさず今手札に加えたアンフィスバエナのモンスター効果!手札の紋章獣1体を墓地に送ることで手札から特殊召喚出来る。俺は『紋章獣アバコーンウェイ』を墓地に送り…

アンフィスバエナを特殊召喚!!」

 

紋章獣アンフィスバエナ

効果モンスター

風属性

ドラゴン族

レベル 4

攻撃力 1700

 

「アンフィスバエナとか懐かしいな、最後に見たの何年前だっけ…」

『あの大輔という人物は一体何者なんだ…』

『さぁね?恐らくだけど…

過去の遊矢と同じだったのかも知れないし、そうじゃないのかも知れない』

 

黒を基調としたカラーリングの、4足歩行のドラゴン、紋章獣アンフィスバエナ、これは実を言うとアニメでは登場していない『OCGオリジナル』の紋章獣、収録されたのは確か『No.101S・H・ArkKnight』が収録されていたパックだったよな、友達がそれをゲットする為にパックを買いあさって、しばしばこれが出て来て「紋章獣使いの奴いる?」って周りに聞いていたっけ。

 

「さぁ、どんどん回させてもらうぞ。俺は墓地の『馬頭鬼』の効果を使う!

墓地にあるコイツを除外して…

墓地のアンデットを蘇生する!蘇れ、『ゾンビ・マスター』!」

 

ゾンビ・マスター

効果モンスター

闇属性

アンデッド族

レベル 4

攻撃力 1800

 

準制限に指定されている『馬頭鬼』に、今出て来たゾンビ・マスター、と言う事は大輔のデッキは『紋章アンデ』か!

サーチエンジンとして強力な『紋章獣レオ』を、ゾンビ・マスターのコストにする事で展開力と持久力を強化したデッキで、サポートカードの範囲が合致しないとは言え強力なランク4エクシーズモンスターをポンポンと出せるのが強かったなぁ。

あぁ、『超融合』でドラゴネクロ出したいな、持っていないけどw

 

「ゾンビ・マスターの効果発動!

手札のモンスターを1体墓地に送り墓地のアンデットを蘇生する。来い、『蒼血鬼』!」

 

蒼血鬼

効果モンスター

闇属性

アンデッド族

レベル 4

守備力 1700

 

『レベル4のモンスターが3体揃ったね』

『来るぞ、遊矢!』

 

ああ、というか、蒼いカラーリングの蝙蝠みたいなアンデッド、蒼血鬼がいるのに来ない筈が無い。

来なかったら蒼血鬼の効果はどうなるとか、蒼血鬼の出した意味とかを小一時間問い詰めなければならない。

 

「さぁ、俺の展開はこれからだ! レベル4の紋章獣アンフィスバエナとゾンビ・マスターでオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!

その紅き目は弧高の証、祖の力を今ここに示せ!『No.18紋章祖プレイン・コート』!」

 

No.18紋章祖プレイン・コート

エクシーズ・効果モンスター

光属性

サイキック族

ランク 4

攻撃力 2200

ORU 2

 

「な、No.18…」

『な、なんだあのNo.…

初めて見るぞ…!』

 

あ、そういえば遊馬だった『俺』はNo.18を使用される事無くゲットし、結局使用する事は無かったっけ、そしたらアストラルが初めて見るのも無理は無いか、アンフィスバエナと同じパックに収録されてはいたけどな。

 

『成る程、遊矢。さっき大輔の近くにいた精霊、アレはあのNo.だよ』

「そうだったのか…

これは厄介だな…

もしかしたら、あの紋章No.達を持っているのかも知れないな」

 

ああ成る程、確かに髪の色がカッターみたいな部分の色だし、眼が核の色だしな。

そしてそれを持っているとなると、ゲノム・ヘリター持っていそうだな、あれの効果スゲー厄介なんだよなぁ…

 

「俺は更に蒼血鬼のモンスター効果!

オーバーレイユニットを1つ墓地に送り…

墓地のアンデットを蘇生する!

俺は今墓地送りにしたオーバーレイユニットのゾンビ・マスターを即座に復活させる!」

 

No.18紋章祖プレイン・コート ORU 2→1

 

「なっ…

でもそれなら墓地にアンデットがいなくちゃ使えないんじゃあ…!」

 

さっきの手札抹殺の時に送られたのは、サーチエンジンとして使った『紋章獣レオ』、既に除外された『馬頭鬼』、今しがた過労ルートに入っている『ゾンビ・マスター』、そして今フィールドに留まっている『蒼血鬼』、他にアンデッド族モンスターが墓地に送られては…!

 

「そうか、あの時!」

「あぁ、ゾンビ・マスターのモンスター効果の時にな!そして俺は復活させたゾンビ・マスターの効果で手札の『紋章獣ツインヘッド・イーグル』を墓地に送りさっき墓地に送ってた2体目の蒼血鬼を特殊召喚!そして、1体目の蒼血鬼とゾンビ・マスターでオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!

唸れ、炎の力を得し海竜…『ラヴァルバル・チェイン』!」

「TUEEEE!」

「ちょ、遊矢、なんでそのネタ知っているんだ!?」

 

ラヴァルバル・チェイン

エクシーズ・効果モンスター

炎属性

海竜族

ランク 4

攻撃力 1800

ORU 2

 

いやいや大輔、遊戯王TCG(アメリカとかでの遊戯王)でゴヨウ(禁止カード化)されたラヴァルバル・チェインに『TUEEEE!』は常識だろ?

 

『アイツ…

一人で回してるぞ』

『刃ァ、お前に言われたく無いだろォが!』

 

うん、一行の言う通り刃には言われたくない、お前はヴェーラーとか幽鬼うさぎで妨害しない限り無限ループするだろ。

 

「まだまだ展開は止まらない。

チェインの効果、オーバーレイユニットを1つ使って【デッキから1枚墓地に送る】効果を選択し、デッキから『紋章獣ユニコーン』を墓地に送る」

 

ラヴァルバル・チェイン ORU 2→1

 

「そして蒼血鬼の効果発動!チェインのオーバーレイユニットを1つ墓地に送り墓地のゾンビ・マスターを蘇生!」

 

ラヴァルバル・チェイン ORU 1→0

 

大分並べて来たな、プレイン・コートとチェインを並べて、まだレベル4モンスターが2体いる。

あぁ『超融合』でノーデン、は無理か、今度の舞網チャンピオンシップから禁止なんだよなぁ…

何でノーデンを、カップ麺で出せる様な奴にしたんだよKONMAIは…!

次の禁止制限では『上記の融合素材を使った融合召喚でしか特殊召喚出来ない』のエラッタ入れて釈放しろよな。

 

「これで展開は多分最後だ。蒼血鬼とゾンビ・マスターでオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!闇をも絡めとるクモの糸、今こそその全てを絡めとれ!『No.70デッドリー・シン』!」

 

No.70デッドリー・シン

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

昆虫族

ランク 4

攻撃力 2400

ORU 2

 

そう思っていたら、何か蜘蛛みたいなNo.エクシーズモンスターが出て来たぞ!?

 

「なっ…

No.70!?あんなの見たこと無いぞ!?」

『何故だ…

何故彼はこうも私達の知らないNo.を所有しているんだ…』

『流石にこれは驚きを隠せないね…

益々謎は深まるばかりだよ』

 

あんなのOCG化どころかアニメにも出ていなかった筈…!

漫画版で出ていたのかも知れないが、一体全体どんな効果何だ…!

 

「手札も1枚だけ…

なら、これを使って手札を補充しよう。『エクシーズ・トレジャー』発動!」

 

エクシーズ・トレジャー(アニメオリカ)

通常魔法

フィールド上に表側表示で存在するモンスターエクシーズの数だけ自分のデッキからドローできる。

 

「フィールド上に表側表示のエクシーズモンスターは3体! よってデッキから3枚ドロー!!」

「「「「ノーコストで3枚ドローだと(だって)!?インチキ効果も大概にしろぉ!!」」」」

 

インチキですまん、俺も遊馬だった頃に良く使っていたカードだから突っ込みに参加出来ん。

 

「俺はカードを伏せてターンエンド。シン、アクションカードを探しに行くぞ!」

 

Daisuke

LP 4000

手札 2

モンスター No.18紋章祖プレイン・コート(攻撃表示)

      ラヴァルバル・チェイン(攻撃表示)

      No.70デッドリー・シン(攻撃表示)

魔法・罠カード セット



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Ex3話_紋章獣使いとのデュエルその2

随分と動き回ってくれたなぁ、今度はこっちの番だ!

 

「俺のターン!ドロー!」

「あ、あのさ遊矢、こんなのゲットしちまったんだが…

これ発動しなきゃいけない奴だよな…」

 

俺がデッキからカードをドローした所、大輔からそんな困った様な口調で、手にしたアクションカードを見せながら尋ねられた。

どうしたんだ、ってこれ、

 

「ああ、アクショントラップだな。それはゲットした瞬間に強制発動されるアクションカードで、大概はデメリット効果なんだよな…」

「わ、分かった…

なら『封印』発動」

 

封印(オリジナルカード)

アクショントラップ

1:自分フィールドのモンスター1体を墓地に送る。この効果で墓地に送ったモンスターとその同名モンスターはこのターン中、特殊召喚出来ない。

 

あらら封印か、これは結構痛い、

 

「効果で、プレイン・コートを墓地へ送る…

更に墓地へ送られたプレイン・コートの効果で、デッキからアバコーンウェイとレオを墓地へ送り、レオの効果でデッキから『紋章獣エアレー』を手札に加える!」

 

訳無かったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

封印の特殊召喚封じも、セットカードが『リビングデッドの呼び声』とかじゃ無い限り意味ないし、デッキ圧縮及びアバコーンウェイの効果を使えるようにするとか、明らかに悪用じゃねぇか…

やってくれるぜ大輔、凄いプレイングだな。

さて、俺の初手だが、やっちゃうか、ユベル、アストラル?

 

『これは良い手札だね遊矢、やっちゃおっか』

『ああ、これは勝利の方程式が揃ったと言っても過言では無いな』

 

よし、やっちゃうか!

その前に、あのセットカードがもし召喚反応系の罠だったら不味いから、勿体無いけど使う!

今なら例えセットカードがカウンター罠でも防げない、というか使う意味が殆ど無い!

 

「メインフェイズに入って、魔法『ハーピィの羽根帚』発動!」

「は…?

アイエエエエ!?ハーピィの羽根帚!?羽根帚ナンデ!?

それ禁止カードじゃねぇか!なんで入れてんのそれ!?ルール違反じゃねぇの!?」

『ノーコストで3枚ドローしている奴が何言っているんだ?』

『ハーピィの羽根帚なんて必須カードですよね?あれ入れないデッキなんてデッキじゃないですよ』

『あァ、折角制限カードとは言え入れられるンだ、あンな爆アドカード、入れねェ奴なンざ当麻位だ』

『何だと一行、ケンカ売っているのか!?』

『一般論だ。それに売っているンだったらなンだ、買うってのかァ?上等だァ!表出やがれ当麻ァ!』

「あれ、止めなくて良いのか…?」

「大丈夫、何時もの奴だ。リアルファイトには絶対ならないし、塾内でも『良いぞもっとやれ』って雰囲気だから」

 

ハーピィの羽根帚(『制限』カード)

通常魔法

1:相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。

 

まあ恒例となった当麻と一行のケンカデュエルは放って置いて、そういえばZEXAL時代はハーピィの羽根帚がずっと禁止で、大嵐すら禁止の時があったな。

で、大輔が伏せていたのは…

『激流葬』!?あぶねー、羽根帚使っていなかったらホープ出した所を狙われていたじゃねぇか!

よし、これで心置きなく展開出来る!

 

「次に…

 

手札の『ドドドウィッチ』を墓地へ送って魔法『オノマト連携(ペア)』発動!」

 

オノマト連携

通常魔法

手札を1枚墓地へ送って発動出来る。デッキから以下のモンスターの内1枚ずつ、合計2体までを手札に加える。『オノマト連携』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

●『ズババ』と名の付いたモンスター

●『ガガガ』と名の付いたモンスター

●『ゴゴゴ』と名の付いたモンスター

●『ドドド』と名の付いたモンスター

 

「なっドドドウィッチだって!?まさか、お前…!」

 

おや、俺の正体に感づいたか?まあユベルとアストラルが一緒にいた事、大輔が使っていた紋章獣に対して驚きを隠さなかった事、トロンも使っていなかったアンフィスバエナに対してうっかり「懐かしいな」と呟いちゃった事、某日本で最も有名なカードショップでのネタを思わず使っちゃった事等、OCG経験者相手にはバレバレにも程があったし、隠す程の事じゃ無いしな、この前だって零児や柚子、それにARC-V(アーク・ファイブ)の皆にはこっちからカミングアウトした位だし。

 

「オノマト連携の効果で、デッキから『ドドドバスター』と『ゴゴゴジャイアント』を手札に加える!

続いて今手札に加えた『ゴゴゴジャイアント』を召喚!」

 

ゴゴゴジャイアント

効果モンスター

地属性

岩石族

レベル 4

攻撃力 2000

 

「ゴゴゴジャイアントの効果発動!俺の墓地に、さっきお前が発動した手札抹殺で送られた『ゴゴゴゴーレム』を守備表示で蘇生する!来い!『ゴゴゴゴーレム』!」

 

ゴゴゴゴーレム

効果モンスター

地属性

岩石族

レベル 4

守備力 1500

 

俺の側に出現したゴゴゴジャイアントが、俺が効果発動を宣言すると同時に俺のデュエルディスクの墓地に当たる部分に手を突っ込むという、このデッキを使う時の何時もの光景なんだが、これは四次元ポケットか?

そして強引にゴゴゴゴーレムを両手で釣り上げるな!ほら、ぎっくり腰、というかデッドボールを喰らった初期のパワ○ロ君みたく身体が崩れちゃったじゃねぇか!

 

「…効果を使用したゴゴゴジャイアントは守備表示になる。

更にフィールド魔法『希望郷―オノマトピア―』発動!

尚、アクションデュエル中、フィールド魔法は永続魔法扱いとなる!」

 

希望郷―オノマトピア―

フィールド魔法(永続魔法扱い)

1:このカードがフィールドゾーンに存在する限り、自分フィールドに『希望皇ホープ』モンスターが特殊召喚される度に、このカードにかっとビングカウンターを1つ置く。

2:自分フィールドのモンスターの攻撃力・守備力は、このカードのかっとビングカウンターの数×200アップする。

3:1ターンに1度、このカードのかっとビングカウンターを2つ取り除いて発動出来る。デッキから『ズババ』『ガガガ』『ゴゴゴ』『ドドド』モンスターの内いずれか1体を特殊召喚する。

 

よし、かっとビングだ、俺!

 

「さあ行くぜ大輔!俺はゴゴゴジャイアントとゴゴゴゴーレムでオーバーレイ!2体のレベル4モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!我が戦いは此処から始まる!白き翼に望みを託し、現れろ!『No.39希望皇』」

「『『『ホープ』』』!」

「希望皇ホープ…

やっぱり、お前は…!」

 

No.39希望皇ホープ

エクシーズ・効果モンスター

光属性

戦士族

ランク 4

攻撃力 2500

ORU 2

 

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター 0→1

No.39希望皇ホープ 攻撃力 2500→2700

 

俺が出したホープの姿を見て、何か確信めいた表情を浮かべる大輔。

ZEXAL世界から来たならやっぱ気付くよな、コイツを見れば嫌でも。

けれど、此処で驚くのは早いぜ!

 

「更に、ホープのオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオスエクシーズ・チェンジ!現れよ、混沌を光に変える使者!『CNo.39希望皇ホープレイ』!」

 

CNo.39希望皇ホープレイ

光属性

戦士族

ランク 4

攻撃力 2500→2700

ORU 3

 

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター 1→2

CNo.39希望皇ホープレイ 攻撃力 2700→2900

 

「まだまだ行くぜ!ホープレイのオーバーレイ・ネットワークを再構築!シャイニングエクシーズ・チェンジ!一粒の希望よ!今、電光石火の雷となって闇から飛び立て!現れよ!『SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング』!」

「ら、ライトニングだって!?マジかよ!?」

 

SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング

エクシーズ・効果モンスター

光属性

戦士族

ランク 5

攻撃力 2500→2900

ORU 4

 

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター 2→3

SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング 攻撃力 2900→3100

 

ホープ・ザ・ライトニングの姿を見て驚きの声と、焦りの表情を浮かべつつ、デッドリー・シンに急ぐよう催促して、アクションカードを探す大輔。

流石にOCG出身なら、コイツの効果がどれだけえげつないか、分かっているよな?

だが俺は本気、OCG出身だと分かれば尚の事だ、まだ終わらせはしない!

 

「このままでは終わらねぇぜ!希望郷―オノマトピア―に乗っているかっとビングカウンターを2つ取り除いて効果発動!

デッキから現れろ!『ドドドバスター』!」

 

ドドドバスター

効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 6

攻撃力 1900

 

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター 3→1

SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング 攻撃力 3100→2700

ドドドバスター 攻撃力 1900→2100

 

ホープ・ザ・ライトニングに並び立つように現れたのは、真鍮の様な色合いの鎧を身に纏い、棘の付いた鉄球を先端に持つ杖を武器とする戦士、ドドドバスター。

 

「どんどん行くぞ!魔法『死者蘇生』発動!」

 

死者蘇生(制限カード)

通常魔法

1:自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

「死者蘇生の効果で、『ドドドウィッチ』を守備表示で蘇生する!」

 

ドドドウィッチ

効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 4

守備力 1600→1800

 

「特殊召喚したドドドウィッチの効果で、手札から2体目のドドドバスターを攻撃表示で特殊召喚!

そして、2体のドドドバスターでオーバーレイ!2体のレベル6モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!

人が希望を越え、夢を抱く時、遥かなる彼方に、新たな未来が現れる!

限界を超え、その手に掴め!『No.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープ』!」

 

No.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープ

エクシーズ・効果モンスター

光属性

戦士族

ランク 6

攻撃力 3000→3200

ORU 2

 

そして俺の場に舞い降りた、三対の黄金の翼と、三対の黄金の剣を持った白き希望の騎士、ビヨンド・ザ・ホープによって、俺の勝利の方程式、遊勝塾内で、これを完成させられると絶対に勝てないとか噂になっている『究極奥義』が完成した…!

 

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター 1→2

SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング 攻撃力 2700→2900

ドドドウィッチ 守備力 1800→2000

No.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープ 攻撃力 3200→3400

 

「エクシーズ召喚したビヨンド・ザ・ホープの効果発動!大輔、お前のモンスターの攻撃力を全て0に変える!絶望(ビヨンド・ホープ)!」

「なっ!?くっ…!」

 

ラヴァルバル・チェイン 攻撃力 1800→0

No.70デッドリー・シン 攻撃力 2400→0

 

『で、ででで、出たぁぁぁぁ!遊矢兄ちゃんの究極奥義!これは痺れるぅ!』

『ゆ、遊矢兄ちゃん、すごく、えげつないです…』

『遊矢兄ちゃんのライトニングとビヨンド、並ぶと何時見ても格好いい…!』

『良いぞ遊矢兄ちゃん!やれやれ!やっちまえ!』

『遊矢兄ちゃんのホープ達の前には、他のモンスターなんてウ○コなのだ!』

『うわぁ。遊矢の奴、今日会ったばかりの奴に究極奥義使うか、歪みねぇな』

『手札を全く持たせてくれない刃先輩に言われたくありません』

 

観客の声は賛否両論って所か?まあ良い、先手であれだけの腕前を見せてくれたんだ、ならこっちも本気で戦うまで!

それに、こんな布陣を見せられて尚、大輔の眼には勝利を諦めない気持ちが前面に出ている、ならばそれに応えなきゃデュエリストじゃねぇ!

 

「バトルフェイズに入る!ホープ・ザ・ライトニングでデッドリー・シンを攻撃!

ホープ・ザ・ライトニングが戦闘を行う場合、お前はダメージステップ終了までカードの効果を発動出来ない!行くぜ、究極奥義!ホープソード・ライト・ザ・ライトニング!」

 

ホープ・ザ・ライトニングが剣を構え、その身を青い雷球で包み込み、大輔を乗せたデッドリー・シンへと突っ込んでいく…!

 

 

 

キィィィィィィィン、という音と共に、辺り一面を白い光が覆った…

やったか…?

 

 

 

白い光が晴れたその後には、

 

 

 

「あ、危ねぇ…

危機一髪って所か…」

 

 

 

デッドリー・シンを庇う為にホープ・ザ・ライトニングの前に立ちはだかる大輔、そしてその身を覆う透明なバリアによって自慢の剣撃を受け止められ、それでも刃を振ろうと悪戦苦闘しているホープ・ザ・ライトニングの姿があった。

まさか、あのカードを手にしたというのか…?

 

「ホープ・ザ・ライトニングの攻撃宣言時に、俺はこのカードを発動していたぜ!確かこれ、『発動出来ない』効果は無視されるんだよな?」

 

そう言って大輔が見せたカードは、やはりと言うべきか、

 

仁王立ち(今作オリジナルカード)

アクションマジック

1:バトルフェイズ中にライフを半分払って、『発動出来ない』効果を無視して発動出来る。バトルフェイズを終了する。

 

仁王立ち、だった。

すげぇぜ大輔、アクションデュエル初心者で、土壇場でそのカードを引き当てるとか。

 

Daisuke LP 4000→2000

 

「仁王立ちの効果でバトルフェイズは終了!だからホープ・ザ・ライトニングの攻撃は無かった事になるぜ!」

「やるな、大輔!ならメインフェイズ2に入って、カードを1枚セットしてターンエンド!行くぜ、ビヨンド・ザ・ホープ!」

 

Yuya

LP 4000

手札 0

モンスター SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング(攻撃表示)

      ドドドウィッチ(守備表示)

      No.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープ(攻撃表示)

魔法・罠カード 希望郷―オノマトピア―(永続魔法扱い かっとビングカウンター:2)

        セット

 

ターンエンドを宣言すると同時に、俺はビヨンド・ザ・ホープに肩車される形で空中に飛び立った…!



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Ex4話_紋章獣使いとのデュエルその3

さて、大輔が『仁王立ち』を発動した事によって決着を付ける事は叶わなかったが、それでも俺のフィールドにはライトニングとビヨンドがスタンバイし、ドドドウィッチも壁として立ち塞がっている、魔法・罠カードだって希望郷―オノマトピア―にはかっとビングカウンターが2つ、つまりリクルートの準備は出来ているし、いざと言う時の『アレ』もセットしてある、さあ大輔、この布陣をどう崩す?

 

「俺のターン、ドロー!

俺は魔法カード『エクシーズ・ギフト』を発動!

俺の場にエクシーズモンスターが2体以上いる時、俺の場のオーバーレイ・ユニットを2つ消費して2枚ドローする!」

 

エクシーズ・ギフト

通常魔法

自分フィールド上にエクシーズモンスターが2体以上存在する場合に発動出来る。自分フィールド上のエクシーズ素材を2つ取り除き、デッキからカードを2枚ドローする。

 

それはねぇ、それは通せないなぁ大輔、ハンドアドバンテージが1増やされるだけでも結構キツイのに、オーバーレイ・ユニットを消費とか書いているけど実質墓地アドバンテージを2増やされるそれはなぁ、だから此処は、

 

「またアドを稼がれるのはな…

だからライフを半分払ってカウンター罠『神の宣告』発動!」

 

神の宣告(制限カード)

カウンター罠

1:LPを半分払って以下の効果を発動出来る。

●魔法・罠カードが発動した時に発動出来る。その発動を無効にし破壊する。

●自分または相手がモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚する際に発動出来る。それを無効にし、そのモンスターを破壊する。

 

2000ライフポイントの消費は少なくないが、此処は阻止する!

 

「ふむ…

それなら、手札のアンフィスバエナのモンスター効果発動!手札の『紋章獣ツインヘッド・イーグル』を墓地に送って特殊召喚!」

 

紋章獣アンフィスバエナ

効果モンスター

風属性

ドラゴン族

レベル 4

攻撃力 1700

 

「更に、墓地のアバコーンウェイのモンスター効果!

1ターンに1度、自身とは別のアバコーンウェイを除外する事で、墓地から回収することが出来る!

そして通常召喚!」

 

紋章獣アバコーンウェイ

効果モンスター

風属性

ドラゴン族

レベル 4

攻撃力 1800

 

『ん…?

そォいや、さっきのアイツのターン、通常召喚してたっけかァ?』

『してただろ…

あれ、してたか?』

 

していないぞ2人共。

 

「さぁて、天にこのデュエルの行く末を尋ねよう…

俺はアバコーンウェイとアンフィスバエナでオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚!全てを天に委ねよ『No.85クレイジー・ボックス』!」

 

No.85クレイジー・ブッ…ボックス

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

悪魔族

ランク 4

攻撃力 3000

ORU 2

 

あれ?なんか今…

 

「な、なぁ…

今、h「表記は一切ブレてない、良いね?」あっはい」

『表記が気になったが…

また知らないNo.…』

『ホント、次々とよく出てくるね…

感心するよ』

 

これも確か使う事無く回収されたNo.だったっけな、これ自体はZEXAL放送中にパック収録されてはいたんだが。

 

「クレイジー・ボックスのモンスター効果!オーバーレイ・ユニットを1つ使って、ダイスを1回振る。そして、出た目によってその効果が決まる!」

 

大輔が効果の宣言をすると共に、手のひらの上にダイスが1つ現れた。

デスティニー・ドローならぬ、デスティニー・ロールってか?

 

「ここで運だめしか。だけど、外れの確率はそこそこあるぞ?」

 

そう、この状況下で『外れ』と言える確率は結構高い。

素でデメリット効果である1と6は勿論の事、3のハンデスは手札0の俺に対して無意味な物、4の効果無効だって、ライトニングに打っても肝心のクレイジー・ボックスは自身の効果によって攻撃出来ないし、それ以外はビヨンドの効果によって攻撃力0、つまり2を出してトップデッキに賭けるか、5を出してライトニングを破壊し、後続に賭けるしか無い。

かなり分が悪い賭け、だがそんな俺の忠告にも、

 

「俺は、俺の勝利への道筋を自分で切り開く!! ダイス……ロール!!」

 

大輔は臆する事無く、ダイスを転がした…!

そして、

 

「出た目は2!よってデッキから1枚ドロー!フ…

ハハハッ」

「ど、どうした?」

 

出た目は俺が一応『当たり』の可能性があるとした2、これによって大輔の手札は、レオの効果によって手札に加わったエアレーの他に1枚、となったんだが、それを見た瞬間、大輔が笑い声を上げた。

ま、まさかこの状況を覆す1枚を引いたと言うのか!?

 

「いやぁ、今日はヤケにヘイトを稼ぐなぁと思ってな…

今引いたこのカードを発動する…

2枚目のエクシーズ・トレジャー!!」

 

エクシーズ・トレジャー(アニメオリカ)

通常魔法

フィールド上に表側表示で存在するモンスターエクシーズの数だけ自分のデッキからドローできる。

 

は…?

 

「『『『『『『ハアアアアアアアッ!?』』』』』』」

 

ま、マジか!?此処でエクシーズ・トレジャーを今引きするとか流石の俺でも遊馬時代にそうそう無かったぞ、十代だった頃からのチートドローを以てしても!

 

「フィールド上に存在するエクシーズモンスターは5体!よって5枚ドロー!!」

『デュエルモンスターズで5枚ドローとか、今まであったっけ…?』

『しかも手札抹殺の効果じゃねェ、純粋に手札アド4枚増加とか…』

『あぁ、ハンデスループしてぇ』

『止めてください刃先輩』

『自分だけ天からの宝札って…』

 

ほんとそれなユベル。

と、俺と周囲が驚きを通り越して呆れかえった中、大輔は新たなるアクションカードを引いた、が、

 

「またかよ…

アクショントラップ『封印』発動」

 

封印(オリジナルカード)

アクショントラップ

1:自分フィールドのモンスター1体を墓地に送る。この効果で墓地に送ったモンスターとその同名モンスターはこのターン中、特殊召喚出来ない。

 

それは2枚目の封印だった。

今度はさっきのプレイン・コートの様な、墓地送りした際に効果を発動出来る奴はいないらしく、苦虫をかみつぶした様な表情で、

 

「そうだな、今度は…

ラヴァルバル・チェインだ。すまないな、チェイン…」

 

チェインはいなくなった。

 

「俺は『死者蘇生』を発動」

 

死者蘇生(制限カード)

通常魔法

1:自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

「2体目の蒼血鬼を守備表示で特殊召喚!」

 

蒼血鬼

効果モンスター

闇属性

アンデッド族

レベル 4

守備力 1700

 

何気に蒼血鬼も過労ルートに入っちゃっているな。

 

「俺は蒼血鬼の効果でデッドリー・シンのオーバーレイ・ユニットを使い、オーバーレイ・ユニットだった蒼血鬼を守備で特殊召喚。

そして『蘇生紋章』発動!」

 

蘇生紋章

通常魔法

自分の墓地の『紋章獣』と名の付いたモンスター1体を選択して発動出来る。選択したモンスターを特殊召喚する。

 

「これにより墓地に眠りし紋章獣レオを特殊召喚!」

 

紋章獣レオ

効果モンスター

地属性

獣族

レベル 4

攻撃力 2000

 

あれ、レオって墓地に投げ捨てる物じゃなかったっけ(すっとぼけ)?

と、すっとぼけている場合じゃ無い、レベル4モンスターが並んできたという事は何か仕掛けて来る筈、今しがた手にしたアクションカードで何とかなれば良いが…

 

「俺は蒼血鬼2体とレオで、オーバーレイ!3体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚!全てを焦がす(いかずち)、電撃の速さで敵を焦がせ、『No.91サンダー・スパーク・ドラゴン』!」

 

No.91サンダー・スパーク・ドラゴン

エクシーズ・効果モンスター

光属性

ドラゴン族

ランク 4

攻撃力 2400

ORU 3

 

なっ!?此処でサンダー・スパーク・ドラゴンだって!?

 

『一体彼は何体、私の知らないNo.を持っているんだ…』

 

おいアストラル、呆けている場合じゃ、

 

「俺はサンダー・スパーク・ドラゴンの効果発動!オーバーレイ・ユニットを3つ使って、コイツ自身以外の、フィールド上の表側表示のモンスター全てを破壊する!」

「っ!しまっ…

アクションマジック発動!」

「サンダー・スパーク!全てを…

焦がせっ!」

 

サンダー・スパーク・ドラゴンの効果によってフィールド中に雷が落ちる前に、俺は肩車されていたビヨンド・ザ・ホープから飛び降りつつ、アクションマジックを発動する…!

 

「…危ない所だったぜ。

アクションマジック『ミラー・バリア』の効果でホープ・ザ・ライトニングを守らせてもらった!」

「っ…」

 

ミラー・バリア

アクションマジック

1:フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターはカードの効果では破壊されない。

 

正直ビヨンドとライトニング、どっちを守るか迷った。

移動手段であるビヨンドを失うのは余りにも痛いし、効果でビヨンド自身を除外してライトニングを蘇生し、ライフアドバンテージを稼ぐ、という考えもあったが、そうすると希望郷―オノマトピア―を除去された上で戦闘破壊されかねない、大輔の主力であろうランク4エクシーズには、ライトニングの元々の攻撃力を上から叩き潰せる奴は少なくない、それを踏まえると攻撃力5000の壁を立てて置いた方が良い。

故に俺は、移動手段を放棄してまでライトニングを守った、が、

 

「…って!

何でデッドリー・シンが!?」

 

雷撃によって発生した黒煙が晴れた後には、自分自身は破壊対象に入って居ないサンダー・スパーク・ドラゴンはともかく、何故かデッドリー・シンの姿まで。

一体何故!?

 

「デッドリー・シンの効果で自身のオーバーレイ・ユニットを1つ使って破壊を無効にして、トークンを1体守備表示で特殊召喚する!」

 

スパイダー・トークン

闇属性

昆虫族

レベル 1

守備力 0

 

ああ、リードブローの様な破壊耐性、と言ってもコイツは壁を出せるのか。

そのレベルも1、シンクロ召喚デッキで良い潤滑油になりそうだな。

 

「全員倒せないなら今度は!

魔法カード『高等紋章術』を発動!

 

高等紋章術

通常魔法

自分の墓地の『紋章獣』と名の付いたモンスター2体を選択して発動出来る。選択したモンスター2体を特殊召喚し、その2体のみを素材としてエクシーズモンスター1体をエクシーズ召喚する。

 

「俺の墓地のユニコーンとレオを特殊召喚して、この2体でエクシーズ召喚する!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚!漆黒の闇から出でし反逆狙いし龍よ、その牙で敵を噛み千切れ!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

ランク 4

攻撃力 2500

ORU 2

 

まだまだ終わらんと言わんばかりに更なるエクシーズモンスターを出して来た大輔、だが、

 

「なっ…

ダ、ダーク・リベリオン…

だと!?」

『ば、馬鹿な!?あれは確かユートしか持っていないカードの筈!』

『ちょっと待って遊矢、アストラル。感づいているとは思うけどどうやらユートの持っているダーク・リベリオンとはまるで違うみたいだね。あれと同じ様な力は感じられないし、効果もなんか書き換わっている。もしかしたらOCGのダーク・リベリオンかも知れないよ』

 

その出て来たモンスターの姿に俺やアストラルは勿論、観客席にいて、尚且つこのカードの、エクシーズ次元の事を知っている当麻と一行、エレンが驚くも、いち早くその違和感に気付いたっぽいユベルが冷静に分析してくれたおかげで平静を取り戻せた。

なんだ、OCGから持ち込んだのか、なら大丈夫だな、と安堵しているとまた大輔はアクションカードを手にした。

 

「アクショントラップ『封印せし呪縛』」

 

封印せし呪縛(オリジナルカード)

アクショントラップ

1:自分の場のモンスターを1体選択して破壊する。エンドフェイズ時に攻撃に参加していないモンスターの表示形式を強制的に変更する。

 

「自分の場のモンスターを破壊してエンドフェイズに攻撃に参加していないモンスターの表示形式を強制的に変更する。俺はスパイダー・トークンを破壊する」

 

またアクショントラップか、しかも地味に痛い系、

 

「更に2枚目の高等紋章術!」

 

でも無かった、スパイダー・トークンがいたままだったら高等紋章術を使えない所だったな。

今度は何だ…?

 

「ツインヘッド・イーグルとレオを特殊召喚してエクシーズ召喚!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚!闇を撃ち抜け、『鳥銃士カステル』!」

 

鳥銃士カステル

エクシーズ・効果モンスター

風属性

鳥獣族

ランク 4

攻撃力 2000

ORU 2

 

「ゲッ…」

 

此処でランク4屈指のガチカード!?今度の禁止制限でゴヨウ(禁止カード化)されるプトレマイオスに変わって環境に返り咲くとか咲かないとか言われているカステルかよ!?

やばい、ライトニングを処理されたりしたら…!

 

「俺はオーバーレイ・ユニットを1つ使い、ホープ・ザ・ライトニングを裏側守備表示にっ!」

「なっ…

しまった!?」

 

まずい、ホープ・ザ・ライトニングの守備力は2000、希望郷―オノマトピア―の効果でパワーアップしていると言っても2400止まり、ダーク・リベリオンで突破される…!

 

「バトル!ダーク・リベリオンで裏側モンスターへ攻撃!反逆の牙、ライトニング…

ディスオベイ!」

「くっ…

させるか!」

 

間に合え、間に合(ドゴォォォン!)わな…!?

 

「うわっ!?ライトニング…!」

『くっまさかあの布陣を突破して見せるとは…!』

「まだ攻撃は終わってない!サンダー・スパークで直接攻撃!」

「まだ、だぁっ!アクションマジック『回避』発動!」

 

回避

アクションマジック

1:フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターの攻撃を無効にする。

 

「回避の効果で、攻撃を無効にするっ!」

 

サンダー・スパークの攻撃は防いだが、まだカステルの攻撃が待っている!

届け、届け…

 

「…ここはバトルを終了」

 

届…あれ?

 

「俺もアクションマジック『封印の神秘』を発動!」

 

封印の神秘(オリジナルカード)

アクションマジック

1:自分フィールド上のモンスター1体をリリースする。リリースしたモンスターの攻撃力の数値だけ、自分のライフポイントを回復する。

 

「コイツはいわゆる攻撃力だけしか選べない神秘の中華鍋だ。俺はサンダー・スパークをリリースして2400ポイントライフを回復する!そしてカードを1枚セット。ターンエンドだ!そしてこの瞬間、デッドリー・シンとカステルは攻撃に参加していないため封印せし呪縛の強制効果で表示形式が変更される」

 

Daisuke

LP 4400

手札 1(紋章獣エアレー)

モンスター No.70デッドリー・シン(守備表示)

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン(攻撃表示)

鳥銃士 カステル(守備表示)

魔法・罠カード セット

 

カチン、という音が頭の中で反芻した。

アクションデュエル初心者の癖して舐めプとかやってくれるじゃねぇか…!

次のターン、その選択を後悔させてやるぜ!



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Ex5話_紋章獣使いとのデュエルその4

さて、全力で叩き潰すとは言ったが、現時点で俺のフィールドは希望郷―オノマトピア―ただ1つ、一応かっとビングカウンターが2つ乗っていて、リクルートは出来る。

一方の大輔は、ダーク・リベリオンにデッドリー・シン、カステルがいて、セットカードもある。

実質的にこのドローが運命を分けると言っても過言じゃ無い、正にこのドローはデスティニー・ドロー。

だが、それが何だ?運命(デスティニー)とは向こうからやって来るものでは無い、こっちから引き寄せる物だ!

 

「俺のターン!ドロー!」

 

よし、これなら!

 

「メインフェイズに入って、魔法『貪欲な壺』発動!」

 

貪欲な壺(制限カード)

通常魔法

1:自分の墓地のモンスター5体を対象として発動出来る。そのモンスター5体をデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから2枚ドローする。

 

「貪欲な壺の効果で、ビヨンドとライトニング、ホープレイとホープ、そしてゴゴゴジャイアントをデッキに戻す!」

 

俺が選んだ5枚のモンスター達がデッキに戻り、デュエルディスクのオートシャッフルが起動する。

と、一つ忘れていた。

 

「大輔、1つ言って置く」

「な、なんだ急に?」

「お前が何処から来たのか、俺の想像が正しければこの言葉を聞いた事が有る筈だ!

かっとビング!それは勇気を持って一歩踏み出す事!

かっとビング!それはどんなピンチにも決して諦めない事!

かっとビング!それはあらゆる困難にチャレンジする事!

お前に見せてやる!俺のかっとビングを!」

「っ!?」

「デスティニー・ダブルドロー!」

 

宣言しつつ、俺は貪欲の壺の効果で、カードを2枚引く。

よし、来てくれた…!

 

「次に、今引いた『ゴゴゴジャイアント』を召喚!」

 

ゴゴゴジャイアント

効果モンスター

地属性

岩石族

レベル 4

攻撃力 2000

 

「召喚に成功したゴゴゴジャイアントの効果発動!俺の墓地から、『ゴゴゴゴーレム』を守備表示で特殊召喚する!」

 

ゴゴゴゴーレム

効果モンスター

地属性

岩石族

レベル 4

守備力 1500

 

これで準備万端だ!

 

「効果を発動したゴゴゴジャイアントは守備表示になる!続いて、ゴゴゴジャイアントとゴゴゴゴーレムでオーバーレイ!2体のレベル4モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!再び現れろ!『No.39希望皇ホープ』!」

 

No.39希望皇ホープ

エクシーズ・効果モンスター

光属性

戦士族

ランク 4

攻撃力 2500→2900

ORU 2

 

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター 2→3

No.39希望皇ホープ 攻撃力 2900→3100

 

よし、行くぜ!

 

「ホープ、あそこだ!(ガシィ!ブンブンブンブン!)うぉぉぉ!(ビュゥン!)かっとビングだ俺ェェ!」

『フォォォォォォ!#$%&+¥=○@*!ウォォォォォォ!』

「あ、アイエエエエ!?ハンマー投げ!?ハンマーナンデ!?」

『ほ、ホープが遊矢をハンマー投げみたくぶん投げたぁぁぁ!』

『お、おいィィィィィィ!遊矢おま、正気かァァァァァァ!?』

『な、何をしているんですか師匠ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?』

『ゆ、遊矢先輩身体を張り過ぎですよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』

『ゆ、遊矢おま、一体何をしているだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

『ゆ、遊矢!?何でそんな身体を張る様な事態になったの!?』

『うぉぉぉぉぉ!遊矢兄ちゃんすっげぇ、ロケットみたいだ!』

『うひょぉぉぉぉぉぉぉ!遊矢兄ちゃんが空飛んでいるのだ!』

『こ、これが遊矢兄ちゃんのかっとビング、これ痺れすぎる…』

『遊矢兄ちゃんって、こんな体当たり芸する人でしたっけ…?』

『うん、多分違う』

『遊矢、一体何をやっているんだ…』

『何百年も一緒にいるけど、遊矢ってたまにこんなバカ丸出しな事をするよね。でも遊矢のそんなバカさ加減もボクは大好きだよ』

「バトルフェイズに入るぅぅぅ!

ホープでカステルを攻撃ぃぃぃ!ホープソード・スラッシュぅぅぅ!」

「…はっ!?くっアクションマジック『回避』発動!攻撃は無効だ!」

 

回避

アクションマジック

1:フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターの攻撃を無効にする。

 

ありゃ、この攻撃は失敗か、だが今、ホープによってぶん投げられたお蔭で狙いのアクションカードを取れたぜ!

その後、壁に激突しそうにはなったが、其処は態勢を強引に変えて両脚で着地する!

それに、まだ俺のバトルフェイズは終わっていないぜ!

 

「更に速攻魔法『RUM-クイック・カオス』発動!」

「く、クイック・カオスだって!?」

 

RUM-クイック・カオス

速攻魔法

1:『CNo.』モンスター以外の自分フィールドの『No.』エクシーズモンスター1体を対象として発動出来る。その自分のモンスターよりランクが1つ高く、同じ『No.』の数字を持つ『CNo.』モンスター1体を、対象のモンスターの上に重ねてエクストラデッキからエクシーズ召喚する。

 

「クイック・カオスの効果で、ホープのオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオスエクシーズ・チェンジ!希望に輝く魂よ!森羅万象を網羅し、未来を導く力となれ!『CNo.39希望皇ホープレイ・ヴィクトリー』!」

 

CNo.39希望皇ホープレイ・ヴィクトリー

エクシーズ・効果モンスター

光属性

戦士族

ランク 3

攻撃力 2800→3400

CORU 3

 

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター 3→4

CNo.39希望皇ホープレイ・ヴィクトリー 攻撃力 3400→3600

 

そして、壁から落ちかけた俺を、二対の腕、巨大な翼を持った騎士、ホープレイ・ヴィクトリーが掴み、肩車される形となった。

サンキュー、後はトドメ頼むぜ、ヴィクトリー!

 

「ヴィクトリーで、ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンを攻撃!コイツが攻撃する時、お前はダメージステップ終了まで魔法・罠カードを発動出来ない!更に、ヴィクトリーのオーバーレイ・ユニットを1つ使って効果発動!

それにチェーンして、アクションマジック『漆黒の宝札』発動!」

「そ、それは!?」

 

漆黒の宝札(オリジナルカード)

アクションマジック

1:自分の場のエクシーズモンスターが攻撃を宣言した時、発動出来る。デッキからカードを1枚引き、引いたカードがモンスターカードなら墓地に送る事が出来る。墓地に送った場合は送ったモンスターの攻撃力分を自分の場のモンスターに加える事が出来、デッキからカードを2枚ドローする。

 

よし、これで攻撃力800以上のモンスターを引けば、俺の勝ちだ!

 

「まずは漆黒の宝札の効果で、ドロー!(カンコーン!)来たぜ!」

「ま、まさか!?」

「俺が引いたカードは攻撃力1900のドドドバスター!よって墓地に送り、ヴィクトリーの攻撃力を1900アップさせる!更に2枚ドロー!」

 

CNo.39希望皇ホープレイ・ヴィクトリー 攻撃力 3600→5500

 

「続いてヴィクトリーの効果で、ダーク・リベリオンの効果を無効にし、ヴィクトリーの攻撃力を2500ポイントアップさせる!ヴィクトリー・チャージ!」

 

CNo.39希望皇ホープレイ・ヴィクトリー 攻撃力 5500→8000

 

「こ、攻撃力8000!?」

「さあこれでトドメだ!ホープソード・ヴィクトリースラッシュ!」

「うわぁぁぁぁぁ!?」

 

CNo.39希望皇ホープレイ・ヴィクトリー 攻撃力 8000 VS ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 攻撃力 2500

 

Daisuke LP 4400→-1100 LOSE

 

WINNER Yuya



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Ex6話_紋章獣使いとの…

辛くも大輔とのデュエルに勝利した俺だった、が、

 

「ガッチャ!楽しいデュエルだ(スパァン)あべし!?」

 

其処に待っていたのは、決着と同時に突撃して来た柚子のハリセンだった。

 

「遊矢!一体全体なんであんな事仕出かしたの!?」

「いやぁ、狙いのアクションカードが空高くにあったし、空飛べるモンスターがいなかったからつい」

「つい、じゃないわよ遊矢!怪我でもしたらどうするの!?」

「悪い、柚子。極力気を付けるよ」

 

あの時は勝利したい一心でホープにぶん投げさせたが、傍から見たら危険を顧みない暴挙、増して柚子は彼女だしな、俺の身を案じるが故に怒っているに違いない。

俺も何百年と人生過ごして、その中で幾度と己の命どころか世界の存亡まで賭けた戦いに明け暮れたからか、そこら辺麻痺しちゃっているな、今度から気を付けないと。

と、そうだ、

 

「じゃあ改めて大輔。ガッチャ!楽しいデュエルだったぜ!でも、あの舐めプは頂けないな」

「ああ、あれか。舐めプしたつもりは微塵も無かったんだが…

言い訳だったな、すまん。でもこちらこそ、楽しい物だな、アクションデュエルって」

 

俺は大輔と健闘をたたえ合い、アクションフィールドを後にした。

後に待っていたのは遊勝塾生達によるさっきホープにさせたハンマー投げに関する突っ込みだったのは、言うまでも無い。

 

------------

 

「成る程な、やっぱりOCGからZEXALの世界に転生したのか。それにしても『異端な存在だから』って理由でZEXALの世界に転生されたとか、それはまた斬新な…」

「まあな。そっちはそっちで武藤(むとう)遊戯(ゆうぎ)にこそ転生していなかったとは言え、それ以外は俺の想像通り、遊戯王シリーズの全主人公を経験していたとはな。『遊戯王シリーズの主人公に転生し続ける』って特典も、そうそう無いんじゃないか?増してやずっと『強くてニューゲーム』状態って…」

『こう聞くと神様転生といっても、色んなシチュエーションがあるね。まあ転生前の世界での『都合あわせ』的な面は何処も一緒みたいだけど』

 

大輔のZEXAL世界に転生した際の話を聞くと、本当にそれだよなユベル。

遊士だった頃の俺が所謂『転生トラック』というテンプレにも程があるシチュエーションで死んだけど、それが元の世界にとってイレギュラーだったので転生したかと思えば、大輔という存在自体が元の世界にとってイレギュラーだったので、転生させても影響の無さそうな世界、この場合はZEXALの世界に転生させる等、経緯はバラバラだがその全てが元の世界にとってイレギュラー、つまり『不都合な事態』に対する回答的な物になっている。

まあ言うなれば『アラヤ』と『ガイア』という、TYPE-MOON作品における『抑止力(カウンターガーディアン)』が取る手段って事なんだろうな。

 

『ガイア?『暗黒騎士ガイア』カテゴリの事か?』

 

違うからなアストラル、いい加減そのデュエル脳は自重してくれないか?

 

「にしても、大輔をこの世界に呼びよせたあの白紙のカード、一体なんだろうな。そろそろ零児が向かわせた関係者が此処に来る頃だし、その時に分かればいいか」

「ん、零児?ああ、さっき遊矢が言っていた、この手の方面で詳しい知り合いって奴か?」

「ああ。赤馬零児、この世界において、アクションフィールド等といったデュエル関連機材の開発・製造を手掛ける大手企業レオ・コーポレーションの社長で、プロデュエリストなんだ。傘下にLDSっていうデュエルスクールも持っていて、刃も元々其処の出身なんだぜ」

「デュエル関連の大手企業の社長!?傘下にデュエルスクール!?海馬社長みたいな感じか!?」

「ま、まあその認識で合って、るか?」

『合っていると思うよ。あのブルーアイズ命の社長も、デュエル関連事業の大手企業の社長で、デュエルスクール、というかデュエルアカデミアのオーナーだし』

 

たしかにそうだな、と納得していると、

 

「遊矢、お客さんだ。何でもレオ・コーポレーションの社長さんからの命で来たそうだ」

「お、噂をすればなんとやらって奴だな。分かったぜ塾長、今行く。大輔」

「分かった。じゃあ行きますか!」

 

良いタイミングで到着したらしく、塾長から呼び出されたので応じて向かう。

 

「榊遊矢様と、七穂氏大輔様ですね。社長がお待ちです。どうぞこちらへ」

「はい、了解しました」

「分かりました」

 

其処に待っていた黒服の人、零児が言っていた調査員だろうか、その人の案内に応じて俺達は車に乗り込み、一路LDSへと向かった。

 

「あ、そうそう遊矢、色々と気になったんだけどさ、さっきのデュエルで使っていたホープデッキ、見せて貰っても良いか?」

「ん?ああ、良いぜ。そうだ、大輔も見せてくれよ」

「分かった、良いぜ」

 

その途上、大輔からデッキを見せてくれと頼まれ、俺達はデッキを見せ合う事になった。

さて、大輔が使っている『紋章アンデ』、どんなデッキ構成になっているのか、って、

 

「うぉ、このメインデッキ、少し厚いんじゃないか?下限の40枚を超えているみたいだが」

「確か45枚かな?まあこれでも減らした方なんだけどな、ちょこちょこ入れていた奴を外してさ」

「これで、か。ちなみにどんなカードを入れていたんだ?」

「ざっと挙げると、『オーバーレイ・イーター』だろ、『テイク・オーバー5』だろ、『ダブル・アップ・チャンス』に『地獄の暴走召喚』、それから…」

「ああ、成る程。そっちの世界の『俺』とかカイトとかの対策に良さそうな奴だな。それにしても『テイク・オーバー5』は墓地肥やしとして中々良いと思うけどな。ネクロ・ガードナーが入って無いんだし、エンドサイクとかで使う事無く除去されそうな『針虫の巣窟』より良いんじゃないか?」

 

テイク・オーバー5(アニメ登場カード)

通常魔法

自分のデッキの上からカードを5枚墓地に送る。次の自分のスタンバイフェイズ時に墓地のこのカードが存在する場合、手札・デッキ・墓地のこのカードと同名のカードをゲームから除外する事で、デッキからカードを1枚ドローする事が出来る。また、このカードが墓地に存在する限り、自分のカードの効果でデッキからカードを墓地に送る効果を無効にする。

 

テイク・オーバー5、上にも書いてある通り、魔法版『針虫の巣窟』と言える効果である。

アニメ『遊戯王デュエルモンスターズGX』にて登場してからもう何年経ったか分からないアニメオリカだが、未だにOCG化されていない、解せぬ。

まあそれは置いて、大輔の『紋章アンデ』デッキとは、罠である『針虫の巣窟』以上に好相性だと思うんだけどな…

 

「それなんだけどさ、どうも最近その落ち方が良くないんだよ。『死者蘇生』が何連続も落ちてさ…」

「ひょっとして大輔、『貪欲な瓶』ってカードを知らないか?」

「ああ、これか。一応知っているけど、余り入れようとは思わないな。紋章獣の大半やアンデッドモンスター達は墓地に落ちていてナンボだし」

「でも魔法や罠カードを、デッキを通してとは言え即座に回収できるのは強いと思うぜ。俺、今使っているデッキ達の殆どに制限カードを結構積んでいるから重宝するんだよ。ライブラリアウトするかどうかって場面で使えば戻したカードを即ドローするって事もしょっちゅうだし」

 

まあ、そうなるのは十代だった頃からのチートドローがあってこそだと思うが、それでもピン刺しの魔法・罠カードをリサイクル出来る上にハンドアドバンテージ+1は大きい。

え、今度の舞網チャンピオンシップから無制限になる『転生の予言』?あれは戻した奴を直ぐにドロー出来ないから駄目だ、まあ相手が墓地肥やしを積極的にするなら対策として良いかも知れんが。

 

「やっぱ『ハーピィの羽根帚』がピン刺し、一体こっちでの禁止制限はどうなっているんだ…

ん?RUMはクイック・カオスだけなのか」

「ああ。速攻魔法のRUMなんてそう無いだろ?俺のデッキは『希望皇ホープ』を出してナンボだし、ベストなのはコイツかと思ってさ」

「あれ?エクストラデッキはNo.39しか無いのか。ホープ・ドラグーンとかホープ・ゼアルは無いのか?」

「アイツら『希望皇ホープ』じゃないからな。ホープ・カイザーは出す意味が薄いし」

「ヲイヲイ、それで良いのか?」

「そういう大輔こそ、紋章No.はプルートだけなんだな。ゲノム・ヘリターとかコート・オブ・アームズとかどうしたんだ?」

「ああ、それだけどさ、ZEXALの世界で紋章獣を使っているのは俺だけじゃない、トロンもいる。今遊矢が挙げた奴は元はと言えばトロンのNo.だろ?それと辻褄を合わせる為じゃないか?」

「成る程な」

 

俺と大輔が、互いのデッキ構成に対してああだこうだと持論を述べている中、俺達を乗せている車は順調にLDSへの道を進んでいた…

 

------------

 

「初めまして。遊矢から話はあったと思うが、此処レオ・コーポレーションの社長を務めている、赤馬零児だ。宜しく頼む」

「七穂氏大輔です。宜しくお願いします」

「さて、早速だが君をこの世界へと転移させたと言う、真っ白なカードを見せては貰えないか?」

「はい、これです」

 

LDSへ到着し、零児の元へ案内された俺と大輔、其処で待っていた零児と大輔の自己紹介もそこそこに、大輔は零児にあの白紙のカードを見せた。

 

「ふむ、カードフレームを見るとシンクロモンスターの様だが、遊矢が持っているペンデュラムモンスターの様に、カードフレームが変わる可能性もある。カードの種類も現状では判別しがたいな」

「ペンデュラムモンスターと言うと、確か魔法カードとしても使えるモンスターカード、でしたっけ?」

「ああ、まだこちらの世界でも実用化されるかされないかといった段階の、カードの種類だが。それにしても良く知っているな、君がいた世界では実用化されているのか?」

「いえ、此処とは別の異世界で、それを使うデュエリストがいたので」

 

もしかして、大輔が言っていた俺と『同姓同名』の奴って、異世界、というかパラレルワールドの『俺』か?ひょっとしたらアニメでの『俺』だったりしてな。

 

「何にしても、詳しく解析してみないと話は進まない。其処で、そのカードの召喚エネルギーを計って見ようと思う。急で済まないが、目の前のアクションフィールドに入っては貰えないか?」

「あ、はい。分かりました」

 

召喚エネルギーとは、零児曰く、カードが持つ力が現実世界に干渉する際に発生するエネルギー、との事。

そのエネルギーの『性質』によって、シンクロ召喚やエクシーズ召喚、融合召喚や儀式召喚、果てはペンデュラム召喚の判別も可能だとか。

詳しくは零児にも良く分かっていないらしいが、まあ俺の経験則から一言でいっちゃえば、カードに宿る精霊が持つエネルギーって所か?

それを計測して、あの真っ白なカードがどの様な種類か判別出来ないかという零児の提案に乗り、大輔はアクションフィールドへと入っていく。

が、

 

『はい、スタンバイOKです』

「了解した。それでは(ビーッ!ビーッ!)む、どうした!?」

「社長、緊急事態です!あの白いカードから膨大な召喚エネルギーの反応が!」

「だ、大輔!?そっちは大丈夫か!?」

『わ、分からない!一体何が、こ、この穴はまさかさっきと同じ…』

 

突如としてあの真っ白なカードから強烈なエネルギーと共に眩しい光が発生、大輔の声が途中で途切れると共にそれが晴れた後には、大輔も、あの真っ白なカードも、アクションフィールドにいなかった。

 

「エネルギー反応、ロスト…」

「そ、そんな馬鹿な!たった今まであの少年も、あのカードも我々の目の前にあるアクションフィールドにいた筈!周囲の反応を探せ!」

「はいっ!」

 

その不可解な事態に零児の秘書である中島さんが、居合わせたオペレーター達に指示を飛ばしていく。

だけどその中で俺と零児は、ある結論に達していた。

 

「遊矢、彼は帰ったのだろうな。あのカードの力によって、元いた世界に」

「はい。いなくなる間際に言っていたあの言葉、恐らくこっちの世界に来た時と同じ様に、元の世界に帰って行ったんだと思います」

「根拠は無いが、何故かそうだと思える。ところで遊矢、やけに充実した顔をしているが、彼とのデュエルは、君にそんな顔をさせるほどの物だったのか?」

「はい。零児と互角か、或いはそれ以上のデュエリストでした。結果は俺の勝利でしたが、どっちに転んでもおかしくなかったです」

「ほう、君に其処まで言わせる実力だとは。デュエルする機会なく帰ってしまったのが悔やまれる」

 

周りの喧騒を他所に俺と零児は、異世界から来たデュエリストである大輔の実力で会話を弾ませていた。

大輔、今度会った時はまたデュエルしような。




はい、今話を持ちまして瑞田高光さん投稿の『遊戯王ZEXAL 知られざる八人目の七皇』とのコラボは終わりとなります、瑞田高光さん、ありがとうございました!


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3章『いざ開幕!舞網チャンピオンシップ!』
27話_DirtyDeedsDoneDirtCheap


『いよいよ開幕しました舞網チャンピオンシップ、ジュニアユースクラス!今日までに各地で行われた公式戦にて勝率6割以上、或いは6連勝という厳しい参加条件をクリアした57人の精鋭と、前回大会にて好成績を叩き出した7人のシード選手の、合計64人によって、将来デュエル界を引っ張って行くであろうデュエリストの座を賭けて争うこの大会!果たして今回は、誰がその座を掴むのでありましょうか!?尚、司会進行はこの私、ニコ・スマイリーが担当します!』

 

ニコさんの司会進行によって始まりを告げた、舞網チャンピオンシップ。

舞網市で髄一、いや、世界でも有数の規模で行われるこの大会、その最高部門であるユースクラスで優勝したともなれば、それ即ちプロへの道を約束されたと言っても過言では無く、故に参加条件をクリアする為に、公式戦にて激闘を繰り広げた目の前のデュエリスト達の目からはギラギラという擬音が聞こえて来る。

ただ今回はそれだけでは無い、いずれ訪れるであろう融合次元の組織『デュエルアカデミア』との、世界の存亡を賭ける戦いで前線に立つ私兵組織『ランサーズ』、その選抜試験という側面もある。

最高指揮官である俺や、柚子達ARC-Vの面々も、参加者且つ試験官という、WDCでのゴーシュ達の様な立場で参加者達の選別を行う事になっている。

純粋に己の実力を試そうとしている参加者たちの想いを利用する形で、同じデュエリストとして少なからず心は痛むが、この光景を、デュエルの『真理』を変えさせない為に、今は心を鬼にする時だ!

 

------------

 

『舞網チャンピオンシップ、ジュニアユースクラス1回戦、記念すべき第1試合を開始いたします!

その第1試合に臨むデュエリスト達の入場です!まずは1人目!前回大会ではベスト8に入り、今回第7シードに入った、梁山泊のホープ!その実力を、今回も発揮出来るか!勝鬨(かちどき)勇雄(いさお)選手!

続いて2人目!この春、LDSから遊勝塾に移籍した異色の選手!そのデュエルは『えげつない』、これに尽きます!刀堂刃選手!』

 

開幕試合に出場する事となった刃、とその相手、中国拳法とかの大会で目にしそうな拳法着で身を包んだ、紫色のツンツンヘアーの少年、勝鬨勇雄。

実を言うと勇雄が所属する梁山泊というデュエルスクール、アクションデュエルの際の暴力行為は当たり前で、あの手この手で優位に立とうとするリアリストっぷりで有名だ。

その悪名さで良い顔をされない一方、数多くのプロデュエリストを輩出して来た指導力から嘗てはLDSに並ぶ人気があった、が、

 

「貴様、遊勝塾生か。此処で対戦カードが巡って来るとは、運命だったのかも知れないな…!」

「な、なんだお前?随分と剣呑な雰囲気出しているなぁ…」

「おのれ遊勝塾!貴様らの所為で、自分達梁山泊は謂れの無い風評被害を被ったぞ!許せん!」

 

去年の舞網チャンピオンシップ、ジュニアユースクラスで、俺と一行がワンツーフィニッシュした上に柚子が4位、当麻が5位と、トップ5のうち4つを遊勝塾が占めた(3位が権現坂である事を考えると、事実上の独占だな)一方、梁山泊所属での入賞は勇雄の8位のみ、という事で「梁山泊はリアルファイトにばかり精を出した所為で落ちぶれた」と言われる様になり、元々の悪名もあって人気は急落した。

故に因果応報とはいえ、梁山泊は今の勇雄の様に、俺達遊勝塾に恨みを抱いているみたいなんだが、そんな奴に、つい最近入ったばかりの刃が当たる事になるとはな…

 

『それでは始めましょう!ランダムセレクト!アクションフィールド、オン!『仙界竹林』!

戦いの殿堂に集いしデュエリストが!モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!フィールド内を駆け巡る!見よ、これぞデュエルの最強進化系!アクショーン!』

「「『デュエル』!」」

 

先攻 Yaiba LP 4000 VS 後攻 Isao LP 4000

 

「俺のターン!

まずは手札の『X-セイバー エアベルン』を墓地へ送って魔法『ワン・フォー・ワン』発動!」

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

「ワン・フォー・ワンの効果で、デッキからレベル1の『XX-セイバー レイジグラ』を守備表示で特殊召喚!」

 

XX-セイバー レイジグラ

効果モンスター

地属性

獣戦士族

レベル 1

守備力 1000

 

「特殊召喚したレイジグラの効果発動!

今墓地へ送ったエアベルンを手札に戻し、そのまま召喚するぜ!」

 

X-セイバー エアベルン

効果モンスター/チューナー

地属性

獣族

レベル 3

攻撃力 1600

 

「次に、俺の場に『X-セイバー』モンスターが2体いるから、手札の『XX-セイバー フォルトロール』2体を攻撃表示で特殊召喚するぜ!」

 

XX-セイバー フォルトロール

効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 6

攻撃力 2400

 

本当に運が無いな、あっちの方が(笑)。

2足歩行で、両手に其々短刀を持ったカメレオンの様な姿の戦士レイジグラと、某アメリカンコミックに登場するヒーローみたいな武装を装着したライオンの様な姿の戦士エアベルン、そして巨大な剣を上段に構える筋骨隆々な戦士フォルトロールが2体、という刃の必勝パターンが、竹林が生えた数々の浮島というアクションフィールドに展開され、俺はそう思った。

まあ身から出た錆と言う事で、梁山泊は一旦落ちる所まで落ちて、その錆を落として出直して欲しい物だ、うん。

 

「行くぜ!俺はレベル6のフォルトロールに、レベル3のエアベルンをチューニング!白銀の鎧輝かせ、刃向う者の希望を砕け!シンクロ召喚、レベル9!『XX-セイバー ガトムズ』!」

 

XX-セイバー ガトムズ

シンクロ・効果モンスター

地属性

獣戦士族

レベル 9

攻撃力 3100

 

『な、なんと先攻1ターンで4体のモンスターを展開したばかりかシンクロ召喚、刃選手の切り札であるガトムズが現れました!そして観客の皆さん、此処から先の光景に引かないようお願いします…』

 

シンクロ召喚の演出と共に出現した、白銀の鎧に身を包んだ嘗てのX-セイバーの初代副官にして2代目リーダー、ガトムズの姿に、或る者は驚きに呆然とし、或る者は歓喜の声を上げ、そしてある者は、この陣容を見た事があるニコさんの不穏な言葉に戸惑い、

 

「さぁてさて観客席にお集りの皆さん、これからこのガトムズと、彼が率いる傭兵部隊『X-セイバー』達によるビックリ人間芸をお見せ致しましょう!

まずはレイジグラをリリースしてガトムズの効果発動!

対戦相手の手札を1枚、ランダムに捨てさせます!そぉい!」

『ウォォォォォォ!(ビュゥン!)』

『シャァッ!(げしっ!)』

「ぐぁっ!?」

『ぶ、ぶん投げたァァァァァ!?』

「次にフォルトロールの効果発動!俺の墓地にあるレベル4以下の『X-セイバー』、今墓地に送ったばかりのレイジグラを守備表示で蘇生します!せぇの!」

『ウォォォォォォォ!(グィッ!)』

『シャッ!(キリッ!)』

「蘇生したレイジグラの効果発動!先程シンクロ素材として墓地へ送ったフォルトロールを手札に加えます!」

『シャッ(すっ)』

「サンキュー、レイジグラ。更に今手札に加えたフォルトロールをそのまま特殊召喚します!」

 

そして凍り付いた、ガトムズがレイジグラを勇雄に向けて軽くぶん投げ、投げられたレイジグラが勇雄の手札を1枚蹴り飛ばし、フォルトロールが刃のデュエルディスクの墓地に当たる部分に片手を突っ込んで(だから四次元ポケットかっつーの)、レイジグラを軽々と持ちあげ、そして持ちあげられたレイジグラがドヤ顔を決めながら、持っていたフォルトロールのカードを刃に渡すと言う光景に。

お分かり頂けるだろうか、この陣容の意味が、これが何故、刃の必勝パターンなのかが。

この陣容、良く見ると、

 

ガトムズ、レイジグラ、フォルトロール(効果未使用)、フォルトロール(効果使用済)

 

そう、さっきと一緒、というか効果を既に使ったフォルトロールも加わっているのだ。

これが刃の必勝パターン、『X-セイバー全ハンデスループ』。

レイジグラとフォルトロールのコンボによって無限ループを完成させ、ガトムズが持つハンデス効果によって相手の手札を全て墓地送りにするというこのパターン、この全ハンデスがどれだけ無茶苦茶かは、全盛期の『ゼンマイハンデス』を例に挙げるまでも無く分かるだろう。

 

「まだまだこれからですよ!効果を使ったフォルトロールをリリースしてガトムズの効果発動!やれ、ガトムズ!」

『(ガシィ!ブンブンブンブン!)ウォォォ(ビュゥン!)ォォォ!』

『フォォォォォォ!#$%&+¥=○@*!ウォォォォォォ!』

『あ、アイエエエエ!?ハンマー投げ!?ハンマーナンデ!?』

『オォォォォ(ドゴォォォォン!)』

「ぐぁっ!?」

 

そして、異世界から来たデュエリストである大輔とのデュエルで俺がホープにやらせたハンマー投げ(ハンマー役:俺)に何かしらのインスピレーションを得たのか、ガトムズにハンマー投げ(ハンマー役:フォルトロール)をやらせ、投げられたフォルトロールが、勇雄の手札めがけてぶん殴るという光景、最早ギャグ漫画のそれになった。

 

※此処から先、先程と同じ光景が繰り広げられます。暫くお待ち下さい。

 

こうして、勇雄の手札が無くなるまであの光景は繰り返され、

 

「カードを1枚セットしてターンエンド!」

 

Yaiba

LP 4000

手札 0

モンスター XX-セイバー ガトムズ(攻撃表示)

      XX-セイバー レイジグラ(守備表示)

      XX-セイバー フォルトロール(攻撃表示)

      XX-セイバー フォルトロール(攻撃表示)

魔法・罠カード セット

 

「くっやってくれる!自分のターン!ドロー!」

「あ、それ『強烈なはたき落とし』で」

『ウォォォォォォォォォ!(ごすぅ!)』

「ぎゃぁぁぁ!?」

 

強烈なはたき落とし

カウンター罠

相手がデッキからカードを手札に加えた時に発動出来る。相手は手札に加えたそのカード1枚を墓地へ捨てる。

 

ドローしたカードすら、突進して来たガトムズの、はたき落としというより勇雄の腕を折る勢いの『殴り飛ばし』によって捨てられた。

 

「た、ターン、エンド…」

『刃選手、無限ループコンボによって手札を全て捨てさせるだけでは飽き足らず、ドローカードすらも狩りました!これこそ刃選手の真骨頂!先程の『えげつない』発言の真相です!本当にえげつない!』

 

Isao

LP 4000

手札 0

モンスター なし

魔法・罠カード なし

 

「俺のターン!ドロー!

このままバトルフェイズに入って全軍出撃!アニメ本編でボコしてくれたお返しじゃぁぁぁぁぁぁぁ!」

「な、なんの話だ(ビシバコドガバキズゴドンガラガッシャァン!)ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

Isao LP 4000→1600→-1500→-3900 LOSE

 

WINNER Yaiba

 

刃の圧倒的勝利に終わったこのデュエル、然しながらその、ニコさんが本当にえげつないと言ったその光景に、観客の誰もが凍り付き、

 

『き、決まったぁ!第1試合の勝者は、傭兵部隊の絆によって圧倒した、刃選手!それにしてもこのデュエルは本当の意味で『圧倒』と言える物でした!』

 

ニコさんの勝利宣言も、少し遅れた。

というかアニメ本編でボコされたって、やっぱりリアルファイトしていたんかい。



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28話_動かざること山の如し

Side 権現坂

 

今日の俺の相手は、嘗てこの権現坂道場で教えを共にした元兄弟子、暗黒寺(あんこくじ)ゲン。

だが数年前にあの男は、権現坂道場の教えを非難した挙げ句、足蹴にする様に出て行った。

挙げ句、その後に起こった遊矢の父上である榊遊勝殿が失踪した事件をきっかけに起こった遊矢への一方的な中傷、その最前線にあの男は立ち、遊矢を執拗に侮辱した。

尤もそれは、その中傷に腹を立てた遊矢によって袋叩き(無論デュエルで、だが)にされた事で、表立ってする事は無くなったが。

だがそれはあくまで表向きの事、その裏では遊矢のデュエルに関して『インチキ効果をふんだんに使った卑劣な物』やら、『エンタメデュエルとうたっていながら相手に何もさせないパーミッションをする嘘つき』やら、『禁止カードをバンバン使うルール違反モノ』やらと、謂れの無い噂を流したそうだ。

実際、刃が遊矢のファンとなった切っ掛けである舞網チャンピオンシップ・ジュニアクラスのとある試合で起こった観客のブーイング、あれの原因に一枚噛んでいるという情報もある。

その真偽の程はこの際どうでも良いが、それから数年が経ち、遊矢及び、遊矢の指導を受けた遊勝塾生達、そしてこの男権現坂もまた大会で大いに結果を残した事で、遊勝塾がLDSに並ぶ人気を博し、権現坂道場もまたそれに便乗させて貰った今も尚、変わる事は無いらしい。

何ともけしからん話だ、嘗て教えを共にした者として、これ程恥ずかしい事は、嘆かわしい事は無い。

嘗ての同門としての情けの下、その腐りきった心根を、凝り固まった思考を、曇りに満ちた視界を、我が全力を以て打ち砕くしかあるまい。

それが俺の、権現坂道場の跡取りたるこの男権現坂のすべき事。

そして、融合次元との戦が迫る中、ARC-Vメンバーとして名を連ねる俺にとって、今すぐにせねばならぬ事…!

 

「では行くぞ!我が不動の(つわもの)達よ!」

 

そう決意を固め、俺はデュエルディスクに我がデッキをセットし、親父殿から貰った新たなる襷を締め、デュエルフィールドへ歩みを進めた…!

 

------------

 

Side 遊矢

 

『それでは舞網チャンピオンシップ、ジュニアユースクラス1回戦、第8試合を開始いたします!まずは1人目!前回大会はなんと第3位に輝き、今回第3シードに入った、権現坂道場の跡取り!不動のデュエルが、今宵も発揮される!権現坂昇選手!

続いて2人目!無所属ながら公式戦で6連勝を遂げた新鋭!あのストロング石島のデッキを受け継ぎ、今回、暴れ回るか!暗黒寺ゲン選手!』

 

午後の部の最初のデュエルとなった第8試合に出場する権現坂、とその相手、嘗て権現坂道場で教えを共にしていた、権現坂以上にガタイの良い少年(?)、暗黒寺ゲン。

そういえば父さんが失踪して周囲が俺に対して誹謗中傷してきた時、特に執拗に中傷して来たのがコイツだったっけ、まあ直ぐにデュエルでフルボッコにしてやったら(表向きは)大人しくなったけど。

それにしても暗黒寺が何処かそわそわしているな、顔付きも何処か焦りを浮かべているみたいだし。

 

「どうした?デュエルとはすなわち頭脳の死合、気を落ち着かせねば勝てる物も勝てぬぞ?」

「う、うるせぇ!第3シードだか何だか知らねぇが、結果を残した途端に偉そうにしやがって!」

 

その様子が気に掛かったのだろう、権現坂が(例えが少し物騒だが)忠告するも、暗黒寺にそれを聞き入れる余裕は無いみたいだ。

それもその筈、観客席にいる俺の『前の席』には、暗黒寺の依頼で俺を罠に嵌めようとした連中が手錠を嵌められ、それをユベルに掴まれる形で拘束されているのだから。

恐らく俺を人質に取って権現坂を揺さぶろうとか言う、リアリストにも程がある魂胆だろうが、そうは問屋が卸さないってね。

 

『それでは始めましょう!ランダムセレクト!アクションフィールド、オン!『絶海の孤島』!

戦いの殿堂に集いしデュエリストが!モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!フィールド内を駆け巡る!見よ、これぞデュエルの最強進化系!アクショーン!』

「「『デュエル』!」」

 

先攻 Gen LP 4000 VS 後攻 Noboru LP 4000

 

「何だって良い、勝ちゃあいいって事だ!俺のターン!

『バーバリアン3号』を召喚!」

 

バーバリアン3号(アニメオリジナルカード)

効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 3

攻撃力 1000

 

暗黒寺が最初に出したモンスターは、ストロング石島が使っていたバーバリアンを彷彿とさせる(同じバーバリアンだから当たり前だが)戦士、バーバリアン3号。

レベルやステータスはそれ程高くなく、効果も、

 

「召喚した3号の効果発動!

手札の『バーバリアン4号』を攻撃表示で特殊召喚するぜ!」

 

バーバリアン4号(アニメオリジナルカード)

効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1200

 

単体ではそれ程、と疑問符を付けざるを得ない物だ。

これが暗黒寺の後攻で、権現坂の場にモンスターがいたとしたら、『地獄の暴走召喚』で4号を3体並べてショック・ルーラーを出せたりするのだが(そしてモンスター効果を指定され、権現坂は詰んでしまうのだが)、それでもドルべが使っていた『光天使ウィングス』の方が有用だと思う、あっちはレベルや種族、属性が合っているし。

というかあのパターン、数年前に俺がフルボッコにした時に見た様な気がするんだが、リアリスト振りに磨きを掛け過ぎて、肝心のデュエルタクティクスが数年前のままじゃ笑えないぞ…

 

「カードを2枚セットしてターンエンドだ!」

(アイツが本戦シードを取っていたのは予想外だった。その所為でろくに情報が取れなかったが、俺が伏せたカードは『バーバリアン・ハウリング』と『バーバリアンの呪術』!アイツらのデッキに魔法・罠カードが入っている訳が無いから『ブラック・ホール』も『ハーピィの羽根帚』も怖くねぇ!よって俺の場のバーバリアンがこのターンに効果でいなくなる事はねぇし、攻撃して来ても弾き飛ばせる!仮にアイツが融合やシンクロ、エクシーズ召喚に手を出したとしても、どれもフィールドに2体以上モンスターがいなけりゃ使えねぇ、アイツが2体並べた瞬間に奪っちまえばこっちの物だ!そして次のターンでこの『バーバリアン・マッド・シャーマン』を出せれば俺の勝ちだ!)

 

Gen

LP 4000

手札 1(バーバリアン・マッド・シャーマン)

モンスター バーバリアン3号

      バーバリアン4号

魔法・罠カード セット(バーバリアン・ハウリング)

        セット(バーバリアンの呪術)

 

ん?何かフラグが盛大に立ったような気がしたんだが気のせいか?

 

「では行くぞ、俺のターン!ドロー!

まず、『超重武者タマ―C』を召喚!』

 

超重武者タマ―C

効果モンスター/チューナー

闇属性

機械族

レベル 2

攻撃力 100

 

権現坂が最初に出したモンスターは、右手に槍を持った球状の機械武者、タマ―C。

レベル2の超重武者チューナー、とこれだけでも有用ではあるのだが、

 

「タマ―Cの効果発動!

コイツは、俺のフィールドに『超重武者』以外存在せず、俺の墓地に魔法・罠カードが存在しない場合、コイツとお前のモンスター1体をシンクロ素材にシンクロ召喚出来る!」

「な、何だと!?」

「俺はレベル4の、お前のフィールドのバーバリアン4号に、レベル2のタマ―Cをチューニング!雄叫び上げよ、神々しき鬼よ!見参せよ、荒波渦巻く戦場に!シンクロ召喚、いざ出陣!レベル6『超重神鬼シュテンドウ―G』!」

 

超重神鬼シュテンドウ―G

シンクロ・効果モンスター

地属性

機械族

レベル 6

守備力 2500

 

『おおっと権現坂選手!暗黒寺選手の展開を逆手に取って自らのシンクロ召喚に繋げた!これぞ権現坂道場が掲げる『不動のデュエル』の新たなる可能性、相手の素早い動きを最小限の動きで裁く合気道の如きデュエルタクティクスという事でしょう!』

 

1ターンに1度という制限こそあるが、シンクロ版『超融合』ともいうべき、相手モンスターをシンクロ素材として除去する効果を持っている。

それによるシンクロ召喚の演出と共に出現したのは、深紅の鎧に身を包み、左手に巨大な棍棒を持った機械武者、シュテンドウ―G。

タマ―Cによって暗黒寺のバーバリアンを1体除去しつつ出て来たこのシュテンドウ―Gもまた、無茶苦茶な効果を持っている、それは、

 

「シンクロ召喚したシュテンドウ―Gの効果発動!

俺の墓地に魔法・罠カードが無い状態でコイツをシンクロ召喚した時、お前の魔法・罠カードを全て破壊出来る!やれ、シュテンドウ―G!」

「な、何だと!?ぐぁっ!?」

 

そう、生きた『ハーピィの羽根帚』。

如何にもフルモンスターで使えと言わんばかりの条件こそあるが、これだけ破格な効果を持っていてレベルは6、タマ―Cのレベルが2なのでもう一方のモンスターのレベルは4、つまり下級モンスターで主力と言われるモンスターの大半はパクれるという事になる。

そう考えると、何の考えも無しにレベル4モンスターを出せないな、権現坂相手に。

しかし、破壊されたのは『バーバリアン・ハウリング』と『バーバリアンの呪術』か、権現坂がモンスターを複数並べたら呪術、1体出してそのまま攻撃させようモノならハウリング、と言う腹積もりだったようだが、これでその目論見も潰えたな。

 

「このままバトルフェイズに入る!シュテンドウ―Gでバーバリアン3号を攻撃!」

「ば、バカな、こんな、こんなバカな事があってたまるか「ダメージステップ良いか?」な、無い!」

 

此処でダメステ良いかって聞いて来たという事は…!

 

「シュテンドウ―Gがモンスターと戦闘するダメージステップ開始時、手札の『超重武者装留バスター・ガントレット』を捨てて効果発動!

シュテンドウ―Gの守備力を5000に引き上げる!

これで終わりだ、暗黒寺ゲンよ!オーガトンファー・大破(メガクラッシュ)!」

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

超重神鬼シュテンドウ―G 守備力 5000 VS バーバリアン3号 攻撃力 1000

 

Gen LP 4000→0 LOSE

 

WINNER Noboru

 

「ふざけんな…!

ふざけんな!こんな事がありえる筈がねぇ!そうだ、お前のカードのインチキ効果で負けたんだ!そうに決まっている!でなきゃチャンピオンたるストロング石島のデッキを持った俺が負ける筈が…!」

 

圧倒的、と言わんばかりのデュエルで勝利した権現坂だったが、その結果を認めようとせず、往生際の悪さを見せる暗黒寺、それを、

 

「な、なんだよその目は…!

何なんだよその、養豚場の豚でも見るかの様な目は!『かわいそうだけど、スーパーの精肉コーナーに並ぶ運命なんだな』と言いたげなその目は!その目をやめろぉ!」

 

権現坂は、無関心さを前面にした様な目で見るだけだった。

 

『き、決まったぁ!第8試合の勝者は、鮮やかな後攻1ターンのジャストキルを決めた、権現坂選手!対戦相手の往生際の悪さにも動じない、正に不動のデュエルを体現した、王者の風格です!』

 

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Side 権現坂

 

何とも哀れな姿だった、俺の兄弟子だった者の成れの果ては。

自分を中心に世界が動いていると勘違いし、それを否定する論調を認めようとせず、何が何でも叩き潰そうとする、それが出来る筈も無いと理解しようせずに。

デュエルモンスターズは『日進月歩』という言葉そのままに日々進化を遂げる、我ら権現坂道場も『不動のデュエル』という理念を掲げつつも、蛹が成虫へと羽化するが如く進化して来た、そんな中であの男は全く以て変わらなかった、変わろうともせず、変わりゆく周囲を否定しようと無駄にあがき続けた。

何と救い様の無い、哀れなる姿だろうか。

あそこまで堕ちてしまった姿は、デュエルの前にした、あの男を叩きなおすと言う決意を萎えさせるには十分すぎた、あの様な男は一度死んで生まれ変わりでもしない限り、立ち直る事は無いだろう。

そしてそんな男を放って置いた所で、我らには何の影響もあるまい。

とは言え、今まで心の内に引っ掛かっていた物はこれで無くなった。

俺はARC-Vのメンバーに名を連ねる者として、この世界の平和の為に、この身を戦地に投じよう!



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29話_俺の側に近寄るなぁぁぁぁぁぁぁぁ!

『さあ、舞網チャンピオンシップ、ジュニアユースクラスの初日も盛り上がって来ました!この雰囲気の中で行われる次の試合ですが、1つ注意点があります。

 

ホラーが苦手な方は、このデュエルが終わるまで退席する事をお勧めします…

 

観客席に残られた皆様、このデュエルを最後まで見届ける覚悟がおありと見て宜しいですね。それではジュニアユースクラス1回戦、第12試合を開始いたします!まずは1人目!昨年大フィーバーを巻き起こした遊勝塾が新たに送り込んだ刺客!そのデュエルは、『ホラー』の極み…!

これもまた、エンタメデュエルの1つの形と言う事か!遊勝塾の『ブギーマン』!紫雲院素良選手!

続いて2人目!此処の所凋落著しい梁山泊、今回擁立した選手達が次々と脱落する中、最後の砦となるか!梅杉(うめすぎ)(けん)選手!』

 

ニコさんの、異例とも言える警告の後に開始宣言された第12試合、それに出場するのは素良と、第1試合に出た勇雄と同じく拳法着に身を包み、弁髪(満州族が清朝樹立と共に敵味方の区別の為に導入・強要した、後頭部が物凄く長い三つ編みになっている以外は剃り上げられた髪型)の様な髪型をした少年、梅杉剣。

然しながら、ニコさんの恐怖を煽るかの様な紹介と共に出て来た素良の姿は何処か異様だった。

ジュニアユースに属する年代には見えない位の可愛らしい顔立ちは白塗りのマスクで覆われ、服装は青いツナギ、デュエルディスクを装着した左手には包丁(おもちゃ)を握るその姿に、観客及び対戦相手の梅杉は言い知れぬ恐怖感から言葉を失いつつも、その視線を離せないでいる…!

無論これは素良なりの演出なのだが。

俺のアドバイスを基に、ホラー映画の殺人鬼っぽい振る舞いで観客を『恐怖感』によって引きつける『ホラーデュエル』を自らのデュエルスタイルとした素良、それを確立すべく、ホラー映画屈指の名作『ハロウィン』シリーズに登場する殺人鬼『ブギーマン』の様な服装に身を包む様にしたとか。

確かにその雰囲気は完璧だ、実際その姿に小さい子が泣きそうになっているんだが。

 

「な、なんなんだその異様な姿と雰囲気は…!

だが、そんな映画を真似た虚仮脅しが通ずると思うな!謂れの無い風潮で危機に立たされた梁山泊の恨み、貴様の同門に良い様に甚振られた勝鬨の恨み、此処で晴らさせて貰うぞ!」

「くくく、虚仮脅しかどうか直ぐに分かるよ、僕の『ホラーデュエル』で直ぐに、ね…!」

『何やら異様な雰囲気に支配されてきていますが、始めましょう!ランダムセレクト!アクションフィールド、オン!『グレイブヤード』!』

 

いや此処のソリッドビジョンシステムや、雰囲気がこうだからってアクションフィールドを、『空気読みました』と言いたげに仄暗い墓場の様な地形『グレイブヤード』にしなくても。

 

『戦いの殿堂に集いしデュエリストが!モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!フィールド内を駆け巡る!見よ、これぞデュエルの最強進化系!アクショーン!』

「「『デュエル』!」」

 

先攻 Ken LP 4000 VS 後攻 Sora LP 4000

 

「俺の先攻!

モンスターをセット、カードをセットしてターンエンド!」

 

Ken

LP 4000

手札 3

モンスター セット

魔法・罠カード セット

 

「あんな大口叩いた割に、随分と消極的だねぇ…

じゃあ僕のターン、ドロー…!

まずは手札から『エッジインプ・チェーン』を墓地へ送って『ワン・フォー・ワン』発動…!

それにチェーンして墓地へ送られたエッジインプ・チェーンの効果発動…!」

「なっ!?墓地で発動するモンスター効果だと!?」

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

「チェーン処理に入って、エッジインプ・チェーンの効果でデッキから『デストーイ・ファクトリー』を手札に加えるよ…!

そしてワン・フォー・ワンの効果で『ファーニマル・ラビット』を守備表示で特殊召喚…!」

 

ファーニマル・ラビット

効果モンスター

地属性

天使族

レベル 1

守備力 1200

 

これも見慣れたな、素良の開幕ワン・フォー・ワンによるラビットのリクルート。

その後の展開が容易に想像できた俺達の一方、『ホラーデュエル』とは程遠い、ラビットのファンシーな姿に他の観客はポカンとしていた。

そうやってポカンとしていられるのも今の内、だぜ?

 

「次に『ファーニマル・ドッグ』を召喚…!」

 

ファーニマル・ドッグ

効果モンスター

地属性

天使族

レベル 4

攻撃力 1700

 

「ファーニマル・ドッグの効果で、デッキから『ファーニマル・ベア』を手札に加えるよ…!」

 

ん?今日は珍しいな、ベアを手札に加えたぞ?

 

「今手札に加えたファーニマル・ベアを墓地へ送って効果発動…!

デッキから永続魔法『トイポット』を僕の魔法・罠ゾーンにセットして、そのまま発動…!」

 

トイポット

永続魔法

1:1ターンに1度、手札を1枚捨てて発動出来る。自分はデッキから1枚ドローし、お互いに確認する。確認したカードが『ファーニマル』モンスターだった場合、手札からモンスター1体を特殊召喚出来る。違った場合、そのドローしたカードを捨てる。

2:このカードが墓地へ送られた場合に発動出来る。デッキから『エッジインプ・シザー』1体または『ファーニマル』モンスター1体を手札に加える。

 

素良がセットされていたトイポットを表側表示に変えると、その背後に巨大なガチャガチャマシーンが姿を現し、

 

「続いて手札の『エッジインプ・ソウ』を墓地へ送ってトイポットの効果発動…!

まずはドロー…!

今ドローしたカードは『ファーニマル・オウル』、よってオウル自身を守備表示で特殊召喚するよ…!」

 

ファーニマル・オウル

効果モンスター

地属性

天使族

レベル 2

守備力 1000

 

排出されたカプセルから、フクロウの様なファーニマルモンスター、オウルがフィールドへと飛び出して来た。

 

「『手札から』特殊召喚されたオウルの効果発動…!

デッキから『融合』を手札に加えるよ…!」

「融合!?まさか貴様も融合使いなのか!?」

「そうだよ…!

尤も、君達なんかの融合と一緒にしないで欲しいけどね…!」

「何だと!?馬鹿にしやがって!」

 

貴様『も』って、確か梁山泊も最近、融合召喚を取り入れたって、この前零児がそういっていたな。

それにしても素良の奴、これだけ動いているけど、手札がまだ4枚(うち1枚がエッジインプ・チェーンの効果で加えた『デストーイ・ファクトリー』、もう1枚がオウルの効果で加えた『融合』)残っている、『不動性ソリティア』で知られる遊星としての人生を歩んで来た俺でもびっくりだ。

多分、此処で決着が着くかな。

 

「さあ此処からが本番だよ…!

今手札に加えた『融合』発動…!」

 

融合

通常魔法

1:自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「フィールドのドッグと、手札の『エッジインプ・シザー』を融合…!」

「何!?素材をフィールドに揃えないと融合召喚出来ないのではないのか!?」

「はぁ?確かにそんなカードも結構あるけど、基本的に融合素材にするモンスターは、融合召喚を行うカードで指定された領域にあるカードだよ、融合召喚使っている癖にそれも分からないのかなぁ…?

まあ良いや、悪魔の爪、猟犬の刃、今1つとなりて新たな力と姿となる…!

融合召喚、現れ出ちゃえ、全てを引き裂く密林の魔獣…!『デストーイ・シザー・タイガー』!」

 

デストーイ・シザー・タイガー

融合・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 6

攻撃力 1900→2800

 

『な、何だこれ…!』

『あの可愛かったワンコが、ヤヴァイ姿に…!』

『い、嫌ァァァ…!』

「い、一体何なのだコイツは…!」

 

※暫くお待ちください

 

まあ、その何だ、俺達遊勝塾関係者にはお馴染みの光景が広がった後に、デストーイ・シザー・タイガーが登場したんだが、初めて見た観客の大半はその『見せられないよ!』という看板が出て来そうな光景に恐怖を覚えて騒乱が起こった、が、

 

「融合召喚したシザー・タイガーの効果発動…!

このカードの融合素材にしたモンスターの数まで、フィールドのカードを破壊するよ…!

勿論対象は君のカード2枚…!

チェーンするなら今の内だよ…!」

「な、何!?くっチェーンは無い…!」

「そう、なら(ザシュゥ!)死ねェェェ!」

『ギャァァァァァァァ(ズバァ!)ァ…!』

『き、きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

『く、首が…!』

『お、おげぇぇぇぇぇぇぇぇ!』

「な、な(ゴトリ)わ、わぁぁぁぁぁ!」

 

※暫くお待ちください

 

恐怖の時間はまだ終わりじゃ無かった。

一体何が起こったのかと言うと、シザー・タイガーが梅杉の魔法・罠ゾーンにセットされたカードを、素良自身がエッジインプ・シザーらしき得物を持ってセットモンスターに突撃し、まずは裏側表示のカードの上から突き刺し、その激痛からセットモンスターが実体化し、戦士族っぽい出で立ちのモンスターが現れたタイミングで、その首に突き刺し、更にハサミを開いて両断、序にその生首を梅杉の方へとぶん投げた、という一連の流れが数秒で繰り広げられた。

心臓にダイレクトアタックを決めると言わんばかりに繰り広げられたスプラッタな光景に、或る者は言葉を失い、或る者は叫び声を上げ、或る者は人前にも関わらず嘔吐し、或る者は気絶し、対峙している梅杉は腰を抜かし、そして司会進行のニコさんは空気を読んだと言うより気持ち悪くなったのか実況を止めた。

まあ、その、気持ちは分かる、今では慣れた俺達ですら最初の頃は似た様な状況になったし。

 

「まだまだ終わらないよ…!

魔法『魔玩具融合(デストーイ・フュージョン)』発動…!」

 

魔玩具融合

通常魔法

『魔玩具融合』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:自分のフィールド・墓地から『デストーイ』融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを除外し、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「墓地のベアとエッジインプ・チェーンを除外して融合…!

悪魔の鎖、野獣の牙、今1つとなりて新たな力と姿となる…!

融合召喚、現れ出ちゃえ、全てを封じる鎖のケダモノ…!『デストーイ・チェーン・シープ』!」

 

デストーイ・チェーン・シープ

融合・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 5

攻撃力 2000→2900

 

デストーイ・シザー・タイガー 攻撃力 2800→3100

デストーイ・チェーン・シープ 攻撃力 2900→3200

 

此処で使って来るか、素良の切り札である魔玩具融合を。

デストーイ版『ミラクル・フュージョン』と言って良い魔玩具融合によって出て来たのは、エッジインプ・チェーンが絡みつく等して改造され、羊の様な色々ヤヴァイ悪魔となったモンスター、デストーイ・チェーン・シープ。

然しながらさっきの首の切断という凄惨な光景がまだまだ目に焼き付いているのか、その融合召喚に驚く観客は極僅かだった。

 

「そして、永続魔法『デストーイ・ファクトリー』発動…!」

 

デストーイ・ファクトリー

永続魔法

『デストーイ・ファクトリー』の1,2の効果は其々1ターンに1度しか使用出来ない。

1:自分の墓地から『融合』魔法カードまたは『フュージョン』魔法カード1枚を除外してこの効果を発動出来る。自分の手札・フィールドから『デストーイ』融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

2:このカードが墓地へ送られた場合、除外されている自分の『魔玩具融合』1枚を対象として発動出来る。そのカードを手札に加える。

 

しめくくりと言わんばかりに、ずっと握っていたデストーイ・ファクトリーを発動させると、その背後に、イラストに描かれていたデストーイの工場、その生産ラインが再現される形でコンベア等の設備が出現した。

 

「墓地の魔玩具融合を除外して、デストーイ・ファクトリーの効果発動…!

フィールドのチェーン・シープ、オウル、ラビットを融合…!

鎖のケダモノ、煉獄の眼、諸刃の牙、今1つとなりて新たな力と姿となる…!

融合召喚、現れ出ちゃえ、全てに牙剥く魔境の猛獣…!『デストーイ・サーベル・タイガー』!」

 

デストーイ・サーベル・タイガー

融合・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 8

攻撃力 2400→3400

 

デストーイ・シザー・タイガー 攻撃力 3100→2900

 

そしてその設備に、チェーン・シープとオウル、ラビットが入り込み、色々な工程の後に出現したのは、シザー・タイガーと同じく虎の様な外見の、身体中から刃物が飛び出したヤヴァイ悪魔、デストーイ・サーベル・タイガー。

 

「融合召喚したサーベル・タイガーの効果発動…!

それにチェーンして融合素材にしたラビットの効果発動…!

まずはラビットの効果で、墓地のドッグを手札に戻すよ…!

そしてサーベル・タイガーの効果でチェーン・シープを蘇生するよ…!」

 

デストーイ・シザー・タイガー 攻撃力 2900→3200

デストーイ・サーベル・タイガー 攻撃力 3400→3700

デストーイ・チェーン・シープ 攻撃力 2000→3300

 

改めてフィールドを見渡すと無茶苦茶だなこれ、後攻1ターン目なのに素良の場にはデストーイ融合モンスターが3体、しかもサーベル・タイガーは3体以上の融合素材を使ったから破壊耐性完備、チェーン・シープは効果で自己再生可能、更に発動されている2枚の永続魔法は放って置いてもアドを稼がれ、破壊してもアドを稼がれる、正にOCGなら絶望モノの布陣…

え、ライトニングとビヨンドを並べたお前が言うなって?ほっとけ!

 

「さあバトルフェイズに入るよ…!

やれ、僕のデストーイ達、アニメ本編で師匠の心身をフルボッコにしたアイツに地獄を見せちゃえ!」

「な、何を言って『ガァァァァァァァァァァァァァ!』う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

Ken LP 4000→800→-2500→-6200 LOSE

 

WINNER Sora

 

『決まったぁ!第12試合の勝者は、恐怖の魔獣たちによる『ホラーデュエル』で圧倒した、素良選手!そしてこの瞬間、今回エントリーした梁山泊所属のデュエリストは早くも全滅!古豪がいち早く姿を消し、新鋭がその勢いを強めた今こそ、新時代の到来と言って良いでしょう!』

「如何でしたか観客の皆さん、僕のモンスター達による『ホラーデュエル』の恐怖の程は…!

さぞ、背筋が凍る感覚を何度となく味わい、そして恐怖の時間が終わった今、あの恐怖感から解放された今、「ああ、怖かった…!」と安堵の笑みを浮かべているのでしょう…!

それでは次回の『ホラーデュエル』を、お楽しみに…!」

 

ニコさんの勝利宣言と共に素良は、ストーリーテラーの様に語りつつフィールドを去って行った。

というか刃も素良も何メタ発言しているんだ、アニメ本編での梁山泊のやり方はどんだけ酷いんだ…?



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30話_死闘のダイビングデュエル、前編!

今回は今までと比べて長丁場になるので、前後編で分けています。


『舞網チャンピオンシップ、ジュニアユースクラス初日、いよいよ最後のデュエルとなりました!そしてこの試合、今日のクライマックスに相応しいカードと言って良いでしょう!

ジュニアユースクラス1回戦、第16試合を開始いたします!まずは1人目、前回大会で7位に輝き、今回第6シードに入った、デュエルダイバースクールのエース!その制圧力が今宵も発揮されるか!大海(ひろみ)王牙(おうが)選手!

続いて2人目!遊勝塾第3の刺客!そのデュエルは磁石が引きつけ合ったり、反発し合ったりするかの如く!石動美琴選手!』

 

今日最後のデュエルとなった第16試合、それに出場するは美琴と、黒のオールバック、青を基調とした服装の少年、大海王牙。

美琴にとっては今日のデュエル、遊勝塾に加入してからどれだけ実力を上げて来たかを図る上で最高の相手と言って良い。

なにしろ王牙のデッキは、OCGでも屈指のガチデッキと呼ばれていたテーマデッキで、その力は去年の舞網チャンピオンシップ、ジュニアユースクラスでも実証されたのだから…!

 

「宜しく頼むぜ、遊勝塾のお嬢ちゃん」

「ええ、相手にとって不足は無い、全力で行かせて貰うわ」

『フィールド内も盛り上がって来た様ですので早速始めましょう!ランダムセレクト!アクションフィールド、オン!『スフィアプール』!』

 

ニコさんがアクションフィールドとして発現したフィールド魔法カードを発動させると、アクションフィールドがドーム状に覆われ、内部が水状のソリッドビジョンで満たされた。

これがこのアクションフィールド『スフィアプール』最大の特徴、この水状のソリッドビジョンによって、フィールド内をまるで潜水しているかの如く泳ぎ回る事が出来る。

これは即ち、空中に浮いているアクションカードを、モンスターの補助なしで取りに行く事も出来る一方、一般的なアクションフィールドと比べてモンスター達の挙動が大きく変わるという事、これらの要素はかなり重要だ。

あ、因みに呼吸は普通に出来るし、会話も可能、服を着ていてもプレイヤー自身に影響は無いからな。

 

『戦いの殿堂に集いしデュエリストが!モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!フィールド内を駆け巡る!見よ、これぞデュエルの最強進化系!アクショーン!』

「「『デュエル』!」」

 

先攻 Orga LP 4000 VS 後攻 Mikoto LP 4000

 

「ありゃりゃ、俺が先攻か…

まあいいや、俺のターン!

まずは手札の『水精鱗(マーメイル)―リードアビス』を墓地へ送って魔法『ワン・フォー・ワン』発動!」

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

「ワン・フォー・ワンの効果で、デッキから『海皇子ネプトアビス』を守備表示で特殊召喚!」

 

海皇子ネプトアビス

効果モンスター

水属性

海竜族

レベル 1

守備力 0

 

ワン・フォー・ワンのコストとして墓地へ送られたカード、効果でリクルートされた男性っぽい外見の海竜族モンスター、そう、王牙のデッキは『海皇水精鱗』。

水属性モンスターの効果コストとして墓地へ送られる事をトリガーに発動するという、一風変わった発動条件を持つ海皇モンスター達と、水属性モンスターを墓地へ送る事を効果発動のコストにした水精鱗モンスター達を中心としたこのデッキ、これを構成する『海皇』と『水精鱗』という2つのテーマはバックストーリーの関係もあって互いのシナジーが強く、ほぼ同時に登場するや否や環境の前線に立ち続けており、作者もこのデッキが大の苦手だったとか。

 

「デッキから『海皇の竜騎隊』を墓地へ送って、今出したネプトアビスの効果発動!

デッキから2枚目の竜騎隊を手札に加えるぜ!

次に、コストとして墓地へ送った竜騎隊の効果発動!

デッキから『水精鱗―メガロアビス』を手札に加えるぜ!」

 

出た、海皇水精鱗のエースと言われているモンスターが。

 

「今手札に加えたメガロアビスの効果を使わせて貰うぜ!

手札の竜騎隊と、2枚目のネプトアビスを捨てて効果発動!

コイツを攻撃表示で特殊召喚!行くぜ、メガロアビス!」

 

水精鱗―メガロアビス

効果モンスター

水属性

海竜族

レベル 7

攻撃力 2400

 

『おぉっと!早速現れました!王牙選手の切り札、メガロアビスが!』

 

サーチするや否や王牙の側に登場したのは、半魚人と言えなくも無い風貌、真鍮のカラーリングの鎧を身に纏い、左手に魚のヒレを模した鋸を装備した戦士、メガロアビス。

この、如何にも海皇と組み合わせて使って下さいと言わんばかりのコストで特殊召喚する効果と、

 

「コストとして墓地へ送った竜騎隊の効果発動!

それにチェーンして、同じくコストとして墓地へ送ったネプトアビスの効果発動!

更にチェーンして自分の効果で特殊召喚したメガロアビスの効果発動!

まずはメガロアビスの効果で、デッキから装備魔法『アビスケイル―クラーケン』を手札に加えるぜ!

次にネプトアビスの効果で、墓地の竜騎隊を攻撃表示で蘇生するぜ!

最後に竜騎隊の効果で、デッキから2枚目のメガロアビスを手札に加えるぜ!」

 

海皇の竜騎隊(準制限カード)

効果モンスター

水属性

海竜族

レベル 4

攻撃力 1800

 

この『アビス』魔法・罠カードをサーチする効果、そして『海皇水精鱗はワンキルデッキ』と言われている所以の1つとなっている、2回攻撃効果(自分フィールドにいる水属性モンスターをリリースする事をコストに発動する。つまりこれも海皇の効果を発動するトリガーになる)も併せ持っているという、1枚のモンスターカードが持っていい範疇を越えている(しかも1ターンに1回の制限が事実上『無い』)トンデモスペックである。

無論手札があればこそ、そのスペックも活かせる訳だが。

 

「更に手札の『海皇の狙撃兵』と『海皇の重装兵』を捨てて、今手札に加えたメガロアビスの効果発動!

コイツを攻撃表示で特殊召喚するぜ!

本来ならコストとして墓地へ送った重装兵と狙撃兵の、お嬢ちゃんのフィールドにあるカードを破壊する強制効果が発生するんだが、まだ先攻1ターン目だから無かった事になるぜ。

まあそれは置いて、自分の効果で特殊召喚したメガロアビスの効果発動!

デッキから装備魔法『アビスケイル―ミズチ』を手札に加えるぜ!

そして、アビスケイル―クラーケンを、最初に出したメガロアビスに、アビスケイル―ミズチを今出したメガロアビスに装備させてターンエンドだ!」

 

アビスケイル―クラーケン

装備魔法

『水精鱗』と名の付いたモンスターにのみ装備可能。

装備モンスターの攻撃力は400ポイントアップする。

このカードがフィールド上に存在する限り、相手フィールド上で発動した効果モンスターの効果を無効にする。その後、このカードを墓地へ送る。

 

水精鱗―メガロアビス(A) 攻撃力 2400→2800

 

アビスケイル―ミズチ

装備魔法

『水精鱗』と名の付いたモンスターにのみ装備可能。

装備モンスターの攻撃力は800ポイントアップする。

このカードがフィールド上に存在する限り、相手フィールド上で発動した魔法カードの効果を無効にする。その後、このカードを墓地へ送る。

 

水精鱗―メガロアビス(B) 攻撃力 2400→3200

 

Orga

LP 4000

手札 0

モンスター 海皇子ネプトアビス(守備表示)

      海皇の竜騎隊(攻撃表示)

      水精鱗―メガロアビス(A)(攻撃表示 アビスケイル―クラーケン装備)

      水精鱗―メガロアビス(B)(攻撃表示 アビスケイル―ミズチ装備)

魔法・罠カード アビスケイル―クラーケン(装備対象 水精鱗―メガロアビス(A))

        アビスケイル―ミズチ(装備対象 水精鱗―メガロアビス(B))

 

こ、これかなりマジな布陣じゃねぇか!

モンスター効果を1回だけ無効に出来るクラーケンと、魔法カードの効果を1回だけ無効に出来るミズチ、それらを装備するメガロアビスが2体に、リリース要員として控えるネプトアビスと竜騎隊…

さて、この布陣に美琴はどう動くか…!

 

「随分と展開したわね…

私のターン、ドロー!

早速行くわよ!私の手札にある『磁石の戦士』α、β、そしてγをリリースして、合体召喚!『磁石の戦士マグネット・バルキリオン』!」

 

磁石の戦士マグネット・バルキリオン

効果モンスター

地属性

岩石族

レベル 8

攻撃力 3500

 

『おぉっと!美琴選手、初手で切り札であるマグネット・バルキリオンを出す為のパーツを揃えていたぁ!この特殊召喚は効果として扱われませんので、クラーケンの効果は適用されません!美琴選手、王牙選手の包囲網を見事にかいくぐりました!』

「へぇ、そいつがお嬢ちゃんの切り札か、中々強そうじゃねぇか」

「そう?でも、マグネット・バルキリオンの役目はそれだけじゃないわ。まあそれは後でやるとして、次に『レスキューラビット』を召喚!」

 

レスキューラビット

効果モンスター

地属性

獣族

レベル 4

攻撃力 300

 

「続いてレスキューラビットを除外して効果発動!本来なら此処でデッキからレベル4以下で同名の通常モンスターを2体リクルート出来るけど…」

「それはクラーケンの効果で無効になり、クラーケンは墓地へ送られるぜ」

 

クラーケンがある状態でレスキューラビットの効果を使った…?

いや、クラーケンを始めとしたアビスケイルシリーズの無効効果は強制効果、つまりそういう事か。

 

「よし、これで心置きなくマグネット・バルキリオンの真の力が使えるわ!

マグネット・バルキリオンをリリースして効果発動!私の墓地から磁石の戦士、α、β、γを1体ずつ攻撃表示で特殊召喚するわ!戻りなさい、磁石の戦士達!」

 

磁石の戦士α

通常モンスター

地属性

岩石族

レベル 4

攻撃力 1400

 

磁石の戦士β

通常モンスター

地属性

岩石族

レベル 4

攻撃力 1700

 

磁石の戦士γ

通常モンスター

地属性

岩石族

レベル 4

攻撃力 1500

 

「ん?たった今出した切り札をリリースした、だと?」

 

美琴が、マグネット・バルキリオンをリリースして素材3体を蘇生した事に疑問を覚える王牙と、観客の皆。

まあ普通に考えたら王牙のフィールドにいるモンスターの中で、素材である磁石の戦士達が突破できるのは守備表示のネプトアビスだけ、そのままなら次のターンで全滅されてしまう。

だが、それはあくまで此処の次元の『エクストラデッキを使わない』デュエリストだったらの話。

 

「Ladies and Gentleman!Boys and Girls!これより私、石動美琴と、輝きに満ちた私のモンスター達による、華麗なるショーをお見せ致しましょう!」

「な、何だ!?」

「それでは行きます!私は磁石の戦士αとγでオーバーレイ!2体のレベル4モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!金剛石に覆われし強大なる狼よ、全てを食らい尽くせ!『恐牙狼ダイヤウルフ』!」

「エクシーズ召喚!なるほど、その為に態々バラした訳か!」

 

恐牙狼ダイヤウルフ

エクシーズ・効果モンスター

地属性

獣族

ランク 4

攻撃力 2000

ORU 2

 

『現れました!美琴選手が最近会得した召喚方法、エクシーズ召喚によって呼び出される、エクシーズモンスター!その1番手であるダイヤウルフですが、水中のステージであるが故でしょうか、この前私が拝見した時より輝いて見えます!』

 

美琴の、ショーの開演を告げるかの様な口上と共に出現したのはダイヤウルフ。

その体躯はニコさんの言う通り、乱反射でいつもより光輝いていた。

 

「続いて、ダイヤウルフのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて、このカードと、ミズチを装備したメガロアビスを対象に効果発動!

対象のカードを破壊します!行きなさい、ダイヤウルフ!レックレス・ファング!」

「な、何!?うわっ!」

 

尤も、その輝きも数瞬の物だった訳だがしかし、王牙の魔法・罠ゾーンにあったミズチが、装備対象であるメガロアビスごと墓地送りとなった事で、美琴は心置きなく魔法カードを使える様になった。

 

「更に、フィールドの磁石の戦士βを墓地へ送って、装備魔法『戦線復活の代償』発動!対象は墓地のマグネット・バルキリオン!」

 

戦線復活の代償

装備魔法

自分フィールド上の通常モンスター1体を墓地へ送り、自分または相手の墓地のモンスター1体を選択して発動出来る。選択したモンスターを自分フィールド上に特殊召喚し、このカードを装備する。このカードがフィールド上から離れた時、装備モンスターを破壊する。

 

「戦線復活の代償の効果で、再び現れなさい、マグネット・バルキリオン!

まだまだ終わりではありません!マグネット・バルキリオンを再度リリースして効果発動!α、β、γ、3体の磁石の戦士は再び舞い降ります!

磁石の戦士αとγでオーバーレイ!2体のレベル4・地属性モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!光輝く玉座に座する妖精王よ、その威光の下に外敵を制圧せよ!『妖精王アルヴェルド』!」

 

妖精王アルヴェルド

エクシーズ・効果モンスター

地属性

植物族

ランク 4

攻撃力 2300

ORU 2

 

マグネット・バルキリオンを墓地から出し入れして再び磁石の戦士達を蘇生し、呼び出したエクシーズモンスターは、口上の通り光輝く玉座に座した、一見すると種族である植物族の特徴が全く見られない銀髪の、高貴な服装に身を包んだ男性、妖精王アルヴェルド。

 

「そして、アルヴェルドのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!地属性以外のモンスターの攻守を500ポイント下げます!王の威光!」

「な、何だって!?俺のフィールドのモンスターは水属性しかいないから全員適用されるのか!」

 

海皇の竜騎隊 攻撃力 1800→1300

水精鱗―メガロアビス 攻撃力 2400→1900

 

OCGだと縛りがキツイ割に微妙な効果しかない事から殆ど見かけなかったコイツだが、この状況では中々有用だ。

これでアルヴェルド自身はどのモンスターも戦闘破壊出来、βも竜騎隊を戦闘破壊出来る。

それに、ガチに流れ過ぎてもエンタメデュエルのし甲斐が無いだろ?テーマを追求し切ったデッキでそれを行ってこそ、そのテーマの奥深いバックボーンを伝えられ、それが皆を引きつけ、笑顔に出来るって物さ。

 

「バトルフェイズに入ります!アルヴェルドでメガロアビスを攻撃!王の魔導!」

「させるか!アクションマジック『回避』発動!」

 

回避

アクションマジック

1:フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターの攻撃を無効にする。

 

「回避の効果でアルヴェルドの攻撃を無効にする!」

 

王牙、というよりデュエルダイバースクールは此処スフィアプールでのデュエルを得意としている、流石にこのフィールドでの立ち回りは手慣れた物って訳か、美琴のエクシーズ召喚に驚き、切り札であるメガロアビスの片方を失っても落ち着いてアクションカードを取る程は。

 

「くっ!なら磁石の戦士βで竜騎隊を攻撃!マグネットタックル!」

「うおっと!」

 

磁石の戦士β 攻撃力 1700 VS 海皇の竜騎隊 攻撃力 1300

 

Orga LP 4000→3600

 

「ターンエンドです!」

『美琴選手、連続してのエクシーズ召喚により、王牙選手の包囲網を突破して見せました!流石は精鋭揃いの遊勝塾に名を連ねるデュエリストです!』

 

Mikoto

LP 4000

手札 1

モンスター 妖精王アルヴェルド(攻撃表示)

      磁石の戦士β(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

さあ、この状況で王牙はどう動く?



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31話_死闘のダイビングデュエル、後編とその後

「へへっやってくれるじゃねぇか!俺のターン、ドロー!

よし、俺は今引いた魔法『サルベージ』発動!」

 

サルベージ

通常魔法

自分の墓地の攻撃力1500以下の水属性モンスター2体を選択して手札に加える。

 

い、今引きサルベージだって!?

これはひょっとしたら、厳しい展開になりそうだ…

 

「サルベージの効果で、墓地の『海皇の重装兵』と『海皇の狙撃兵』を手札に加えるぜ!

次に、今手札に加えた重装兵を召喚!」

 

海皇の重装兵

効果モンスター

水属性

海竜族

レベル 2

攻撃力 0

 

サルベージで回収を行った王牙が召喚したのは、両手に巨大な盾を装備した半魚人、海皇の重装兵。

 

「コイツがフィールドに表側で存在する限り、おれは追加で1回、レベル4以下の海竜族モンスター1体を召喚出来るぜ!

この効果で狙撃兵を召喚!」

 

海皇の狙撃兵

効果モンスター

水属性

海竜族

レベル 3

攻撃力 1400

 

続いて登場したのは、クロスボウの様な弓矢を持った半魚人、海皇の狙撃兵。

 

「更に、俺のフィールドにいる重装兵をリリースして、メガロアビスの効果発動!

このターン、コイツは2回攻撃出来るぜ!

更にリリースした重装兵の効果で、アルヴェルドを破壊するぜ!」

「なっ!?きゃぁ!」

 

俺の予想通り、王牙も立て直して来た。

これで美琴を守るモンスターは磁石の戦士βだけ、だがメガロアビスは攻撃力が下がったとはいえそれでも下級アタッカークラス、それが2回攻撃可能で、しかも狙撃兵は戦闘ダメージを与える事で下級海皇モンスターをリクルート出来る、つまりこれを防げなければ美琴は…

 

「バトルフェイズに入るぜ!メガロアビスで磁石の戦士βを攻撃!アビスラッシャー!」

「きゃぁ!」

 

水精鱗―メガロアビス 攻撃力 1900 VS 磁石の戦士β 攻撃力 1700

 

Mikoto LP 4000→3800

 

「更にもう1発!アビスラッシャー!」

 

バトルフェイズに入り、メガロアビスの刃が磁石の戦士を難なく切り裂き、それだけでは止まらないと言わんばかりに刃が美琴に迫る(ガギィン)…!

 

 

 

ん?今の音は?

 

「直接攻撃宣言時、手札の『速攻のかかし』を捨てて効果発動!その攻撃は無効になり、バトルフェイズを終了します!」

「あらら、躱されたか。行けるかと思ったんだけどな。

まあいいや、他にする事無いし、ターンエンドだ!」

 

ふぅ、危なかったなぁ、まさか最後の1枚がかかしだったとは。

 

Orga

LP 3600

手札 0

モンスター 海皇子ネプトアビス(守備表示)

      水精鱗―メガロアビス(攻撃表示 攻撃力500ポイントダウン)

      海皇の狙撃兵(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

『王牙選手も負けていません!美琴選手のカードによって決着にまでは至りませんでしたが、それでも美琴選手の場を一掃!流石は去年の舞網チャンピオンシップ、ジュニアユース第7位の実力者と言う事か!』

 

何とかこのターンでの決着は阻止したとはいえニコさんの言う通り、美琴のフィールドも手札も無し、となればこのドローが勝負を分けると言っても過言じゃ無い、さあどうなるか…!

 

「私のターン!ドロー!

来た!私は今引いた魔法『死者蘇生』発動!」

 

死者蘇生(制限カード)

通常魔法

1:自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

「死者蘇生の効果で、マグネット・バルキリオンを蘇生します!」

 

磁石の戦士マグネット・バルキリオン

効果モンスター

地属性

岩石族

レベル 8

攻撃力 3500

 

此処で今引き死者蘇生、効果でマグネット・バルキリオンを蘇生か。

 

「次にマグネット・バルキリオンをリリースして効果発動!三度蘇りなさい!3体の磁石の戦士達よ!」

「おいおい、またエクシーズでもする気か?マジか…」

 

磁石の戦士α

通常モンスター

地属性

岩石族

レベル 4

守備力 1700

 

磁石の戦士β

通常モンスター

地属性

岩石族

レベル 4

攻撃力 1700

 

磁石の戦士γ

通常モンスター

地属性

岩石族

レベル 4

守備力 1800

 

磁石の戦士達もご苦労様だな、これで何度目の蘇生だろう。

 

「続いて磁石の戦士αとγでオーバーレイ!2体のレベル4モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!鋼鉄のドラゴンよ、その鋭利なる刃で全てを切り裂け!『カチコチドラゴン』!」

 

カチコチドラゴン

エクシーズ・効果モンスター

地属性

ドラゴン族

ランク 4

攻撃力 2100

ORU 2

 

エクシーズ召喚の演出と共に登場したのは、身体が鋼鉄で出来たドラゴン、カチコチドラゴン。

かなり硬そうな見た目だが、効果やステータスが明らかに攻撃的なのは何でだろうな?

 

「バトルフェイズに入ります!カチコチドラゴンでメガロアビスを攻撃!カチコチクロー!」

「メガロアビス!うわっち!」

 

カチコチドラゴン 攻撃力 2100 VS 水精鱗―メガロアビス 攻撃力 1900

 

Orga LP 3600→3400

 

「よし!相手モンスターを戦闘破壊して墓地へ送った事で、カチコチドラゴンのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!

もう1度カチコチドラゴンで攻撃!今度は狙撃兵です!カチコチクロー、2発目!」

「げ、二回攻撃かよ!?あだっ!」

 

カチコチドラゴン 攻撃力 2100 VS 海皇の狙撃兵 攻撃力 1400

 

Orga LP 3400→2700

 

「そして磁石の戦士βでネプトアビスを攻撃!マグネットタックル!」

「ネプトアビス!」

 

磁石の戦士β 攻撃力 1700 VS 海皇子ネプトアビス 守備力 0

 

「ターンエンドです!」

 

Mikoto

LP 3800

手札 0

モンスター カチコチドラゴン(攻撃表示)

      磁石の戦士β(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

『た、互いに凄まじい応酬です!今度は逆に美琴選手が王牙選手の場を一掃しました!二転三転する互いのフィールド!正に今日のクライマックスに相応しいデュエルと言えるでしょう!』

 

本当、ニコさんの言う通り見ごたえ抜群のデュエルだよな。

美琴は遊勝塾に入って日が浅いとはいえ、加入当初に喫した、当麻とのデュエルでの圧倒的な敗北、その結果に対して負けん気に火が着いたのか、その後はめきめきと実力を付けて来た。

とはいえ王牙も、昨年の結果に満足する事無くプレイングを鍛え上げているのは、海皇水精鱗というテクニカルなデッキをまるで手足の如く扱っている事からも伺える。

正に拮抗した実力者同士の一進一退の攻防、その勝敗を掴むのは、どっちだ…!

 

「本当、お前ら強いよな。俺を此処までワクワクさせる相手は久々だ!俺のターン!ドロー!

 

 

 

カードを1枚セットしてターンエンド!」

 

Orga

LP 2700

手札 0

モンスター なし

魔法・罠カード セット

 

『おおっと!王牙選手、此処はカードをセットしただけで終わりました!狙いのカードが引けなかったのか、或いは何かの罠か!?』

「何を考えているのか分からないけど、臆さず攻める!私のターン!ドロー!

このままバトルフェイズに入って全軍攻撃!」

「うぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

Orga LP 2700→1000→-1100 LOSE

 

WINNER Mikoto

 

お、どうやら勝利の女神は、美琴に微笑んだって事か。

 

『決まったぁ!今日の締めくくりとなる第16試合の勝者は、光輝くエクシーズモンスター達を展開した美琴選手!然しながら王牙選手も、大海原を支配する海竜達を展開し、美琴選手と互角の戦いを繰り広げました!観客の皆さん、両者の健闘に、惜しみない拍手をお願いします!』

『わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

『王牙!王牙!王牙!王牙!』

『美琴ちゃーん!最高だぁ!』

 

今日一番と言って良い好デュエルを見た観客のテンションは最高潮と言って良く、その勝者である美琴は勿論、負けはしたが互角に立ち回った王牙へもまた大いなる声援が送られた。

 

------------

 

「皆、お疲れさん」

「ういーっす、お疲れェ」

「それにしても、最高の出だしだな、権現坂。使ったカード3枚だけでワンキル決めるとか」

「うむ。今回は初手が格別に良かった上に、暗黒寺の奴もうってつけの盤面にしてくれたからな」

「俺達も勝って来たぜ!まあ相手が相手だけどな…」

「権現坂達が最高のスタートを切った以上、同じARC-Vメンバーの私達も負けていられないわね」

 

舞網チャンピオンシップの、今日の日程が終了し、俺とARC-Vメンバーは、遊勝塾の仮の塾舎、その事務所で集まっていた。

集まった理由は無論、祝勝会、では無く、これまでのデュエルを見た中でランサーズのメンバーとして招聘するのに良さそうなデュエリストを話し合う為だ。

 

「で、だ。皆から見て、今日出場したデュエリスト達はどうだった?」

「まァ去年と比べてマシになったンじゃねェか?俺達の活躍で尻に火が着いたって感じか」

「ただまあ俺達から言わせるとまだまだってレベルかな」

「うむ。実際に出た俺から言わせれば、どうもデュエルの方を鍛えず、姑息な手段を用いようとする輩が多い。梁山泊の連中然り、暗黒寺然り」

「エレンはどうだったの?ジュニアクラスのレベルは?」

「うーん、ジュニアの方は去年と大差ないって感じかな。まあ俺達はともかく、出ている奴皆して、ただ『楽しむ』って感じだったしな」

 

まあ、OCG的戦略を基本から叩きこまれた皆の視点を通せば、辛口になるよな。

ただその中でも、

 

「でもまあ、見どころのあるデュエリストもいたよな。美琴と戦った王牙の奴、去年と比べて動きがスムーズな感じだったし」

「あァ、あいつか、ありゃァ一瞬、美琴の奴負けンじゃねェかと冷や汗かいたぜ」

「だな。あ、ビリビリ1年生と言えば、予選でアイツとデュエルした、ミエルだっけ?あいつも中々良さそうだよな」

「まさか儀式召喚を使って来るとは思わなかったわね。しかもリバースモンスターを主軸にして、禁止カード級の効果をバンバン使って来るなんて…」

「挙げ句主軸となるモンスターのレベルは共に9、これでエクシーズ召喚を覚えたら大いなる戦力となるだろうな」

 

ミエルのデュエルか、あれは凄まじかったなぁ。

美琴とのデュエルでは何もできずに敗北した彼女だが、今回は初手が物凄く良かったのか、先攻1ターン目で切り札である『聖占術姫タロットレイ』を儀式召喚、しかもその素材として墓地へ送ったレベル9のリバースモンスター『禁忌の壺』をエンドフェイズにセットした。

で、後攻1ターン目で彼女は怒涛のラッシュを見せる。

相手がドローしたその瞬間、セットしていた罠『硫酸のたまった落とし穴』を発動して禁忌の壺をリバースし、リバース効果の1つ『強引な番兵』的な物でピーピングデッキハンデスをして再セット、その後相手がモンスターを展開してターンエンドしようとしていた所にタロットレイの効果を発動して禁忌の壺を再びリバース、今度は別のリバース効果『サンダー・ボルト』的な物で相手のフィールドを一掃した。

これで相手は万事休す、最後は禁忌の壺とタロットレイの直接攻撃で決着、となった。

美琴とのデュエルでは偶々事故ったのか、或いはあの敗北を機にデッキを構築し直したのかは本人に聞かないと分からないが、彼女もまたランサーズのメンバーとして招聘しても良さそうな実力だ。

他にも今日は、テラナイトデッキを使う女子とか、竜星を使う男子が凄まじいプレイングを見せ付けたが、2人共LDSに所属していたし、俺達が言うまでも無く零児が目を付けているだろう。

後そうだ、

 

「そういえば、平井(ひらい)遊香(ゆか)だったっけ。あの陽炎獣デッキを使っていた子」

「あァ、そいつか!何処のデュエルスクールにも属していないのにエクシーズ召喚を使っていたっけなァ。ひょっとしたら黒咲達と同じくエクシーズ次元から来たンじゃねェか?」

 

その線は考えられるな、今の所、この次元でエクシーズ次元を教えているの、俺達遊勝塾とLDSだけで、他は存在すら知らない人が殆どだし。

アカデミアが何時こちらに攻め込んで来るか分からない以上、なるべく早めに接触して、こちらで保護しないとな。

 

「そうそう、遊矢兄ちゃん。ジュニアクラスに、赤馬(あかば)零羅(れいら)っていうデュエリストが出場していてさ、そいつ融合やエクシーズを使っていて、すげープレイングだったんだけど、そいつひょっとして赤馬の兄ちゃんの関係者かな?」

「ああ、考えられるな。でも零児はそんな事言っていなかったけど…」

 

まあ、特に言う必要は無いという事かも知れんが。

案外、エレンと同じくランサーズのメンバーの候補に上がっていたりしてな。



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32話_わりィが、こっから先は一方通行だ

『舞網チャンピオンシップ、ジュニアユースクラスも2日目に入りました!昨日も様々な激闘が繰り広げられたこの大会、今日も昨日に匹敵する程の激闘を期待しましょう!その記念すべき最初の試合となる、1回戦第17試合を開始いたします!

まずは1人目、昨日も快進撃を遂げた遊勝塾、その本命と言えるデュエリスト達が今日、続々と登場します!その一番手は、前回大会で準優勝に輝き、今回第2シードに入った、遊勝塾のダークヒーロー!その圧倒的な制圧力を誇る軍勢が今日もまた、出陣する!上村一行選手!

続いて2人目、昨日は遊勝塾に負けじとその力を見せ付けたLDS、その中でも指折りの実力者が登場します!その変幻自在のデュエルはまるで、日によって光景を変える星空の如く!志島北斗選手!

今日最初のデュエルは、遊勝塾とLDS、今のジュニアユースクラスでの覇権を争う2大デュエルスクールの、今大会最初の激突となりました!』

 

いやいやニコさんや、確かにペンデュラムモンスターを巡って一悶着あったり、沢渡の件とかで対抗戦やる事になったりしましたけども、今じゃあ刃が移籍して来たり、俺と零児が仲良かったり、ランサーズ結成に関して互いに交流していたりと、争うとかそういう間柄じゃ無くなっているんですが。

 

「来たな、上村一行!この前は不覚を取ったが、今日この場でリベンジさせて貰うぞ!」

「ハッ!お前如きが俺に敵うと思っているとはなァ、舐められたもンだぜ!何度だって教えてやる、兄に勝る弟はいねェとなァ、春市ィ!」

「だから春市って誰!?僕の名は北斗だ!」

「気にすンな!」

「気にするよ!」

 

一行、中の人ネタで挑発しない、あの対抗戦の時もそうだったけど、北斗が訳分からないと言いたげな状態になっているから。

 

『えーと、何かメタ発言が出た様な気がしますが気にせず始めましょう!ランダムセレクト!アクションフィールド、オン!『星の聖域(コスモ・サンクチュアリ)』!』

 

って、また此処かい。

 

『戦いの殿堂に集いしデュエリストが!モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!フィールド内を駆け巡る!見よ、これぞデュエルの最強進化系!アクショーン!』

「「『デュエル』!」」

 

先攻 Hokuto LP 4000 VS 後攻 Ikko LP 4000

 

「先攻は僕だ!

まずは『セイクリッド・ポルクス』を召喚!」

 

セイクリッド・ポルクス

効果モンスター

光属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1700

 

初手でポルクスが来たか、となると次に来るのはカウストか、それともグレディか?

 

「ポルクスを召喚した事で、僕はこのターン、『セイクリッド』モンスターをもう1回召喚出来る!この効果で『セイクリッド・カウスト』を召喚!」

 

セイクリッド・カウスト

効果モンスター

光属性

獣戦士族

レベル 4

攻撃力 1800

 

此処でカウストを出したって事は、出て来るのはプレアデスだよな。

 

「次にカウストの効果発動!ポルクスとカウストのレベルを1ずつ上げる!」

 

セイクリッド・ポルクス レベル 4→5

セイクリッド・カウスト レベル 4→5

 

「この効果でレベルを上げたポルクスとカウストでオーバーレイ!2体のレベル5・光属性モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!星々の光よ、今大地を震わせ降臨せよ!エクシーズ召喚、ランク5!『セイクリッド・プレアデス』!」

 

セイクリッド・プレアデス

エクシーズ・効果モンスター

光属性

戦士族

ランク 5

攻撃力 2500

ORU 2

 

『早速現れました!北斗選手の十八番、エクシーズ召喚!それによって現れる、光の戦士が!』

 

この前の対抗戦と同じく初手で登場したプレアデス、だが今回は北斗の先攻1ターン目、故にその脅威は対抗戦の比では無い。

さあ、このOCGでも絶賛活躍中の戦士を前に一行はどう動く?

 

「カードを2枚セットしてターンエンド!」

「おいおい、トレミスだっけ?お前のエースモンスターを出さなくていィのかァ?」

「ふん、そう言って僕が出したトレミスをバハムートでコントロール奪取しようという魂胆は分かっている!それにプレアデスの効果は相手ターンでも使える、フリーチェーンなのさ!」

「ほォ成る程なァ、ちゃンと考えているじゃねェか。ただ、それで俺に勝てると思ったら大間違いだぜェ!」

 

Hokuto

LP 4000

手札 1

モンスター セイクリッド・プレアデス(攻撃表示)

魔法・罠カード セット×2

 

「行くぜ!俺のターン、ドロー!

そンじゃァ、そのセットカードには退場願おォか!魔法『ハーピィの羽根帚』発動!」

「なっさせるか!それにチェーンだ!ライフを半分払ってカウンター罠『神の宣告』発動!」

 

ハーピィの羽根帚(制限カード)

通常魔法

1:相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。

 

神の宣告(制限カード)

カウンター罠

1:LPを半分払って以下の効果を発動出来る。

●魔法・罠カードが発動した時に発動出来る。その発動を無効にし破壊する。

●自分または相手がモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚する際に発動出来る。それを無効にし、そのモンスターを破壊する。

 

Hokuto LP 4000→2000

 

「神の宣告の効果で、羽根帚の発動を無効にする!」

「ほほォ、其処で使って来るか…」

 

相手の魔法・罠カードのみを一掃する爆アドカードと言って良い羽根帚を無効にされた一行だったが、

 

 

 

その顔はまるで「計画通り」と言いたげに、にやけていた。

 

 

 

「最初に言って置くぜ、お前も、観客席にいる皆も、良く聞きなァ。

 

 

 

このターンで俺の勝ちだァ!」

「何だと!?」

『おおっとぉ!一行選手、いきなりの勝利宣言です!此処からどう勝利の方程式を書いて行くと言うのでしょうか!』

「まずはお前のモンスターの数が俺より多い事で『ヴェルズ・マンドラゴ』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

ヴェルズ・マンドラゴ

効果モンスター

闇属性

植物族

レベル 4

攻撃力 1550

 

「次に『ヴェルズ・カストル』を召喚!」

 

ヴェルズ・カストル

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1750

 

「エクシーズ召喚させはしない!罠『強制脱出装置』発動!」

「おォっとォ!それにチェーンして速攻魔法『侵略の汎発感染』発動!」

「何!?」

 

強制脱出装置

通常罠

1:フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを持ち主の手札に戻す。

 

侵略の汎発感染

速攻魔法

自分フィールド上の全ての『ヴェルズ』と名の付いたモンスターは、このターンこのカード以外の魔法・罠カードの効果を受けない。

 

「侵略の汎発感染の効果で、俺のヴェルズモンスター達は魔法と罠の効果を受けねェぜ」

「くっ!」

「更に、カストルを召喚した事で、俺はこのターン、『ヴェルズ』モンスターをもう1回召喚出来る!この効果で『ヴェルズ・オランタ』を召喚!」

 

ヴェルズ・オランタ

効果モンスター

闇属性

炎族

レベル 4

攻撃力 1650

 

オランタを呼び出したその時、にやけていた一行の顔が、更に笑みで歪んだ。

 

「1つ言って置くぜ。オランタは自分自身をリリースする事で、相手フィールドの表側表示モンスターを1体破壊する起動効果を持っているぜェ!」

「な、何だと!?使わせて堪るか!召喚成功時に、プレアデスのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!今出したオランタを戻して貰う!」

 

あ。

 

「あーあ、1ターンに1度だけしか使えない、貴重なプレアデスの効果を使っちまったなァ」

「はっ!?しまった!」

「じゃァこのまま押し切らせて貰うぜ!マンドラゴとカストルでオーバーレイ!2体のレベル4・ヴェルズモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!わりィがこっから先は、俺の支配という名の一方通行だァ!『ヴェルズ・バハムート』!」

 

ヴェルズ・バハムート

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

ランク 4

攻撃力 2350

ORU 2

 

『一行選手も十八番のエクシーズ召喚です!そして皆さん、先程の一行選手の勝利宣言を覚えているでしょう。そう、今しがたエクシーズ召喚によって現れたあの漆黒のドラゴンによって、一行選手の勝利の方程式が完成したのです!』

 

ニコさんの言う通り、一行の場には今しがた出したばかりのバハムート、2枚ある手札にはプレアデスの効果によって戻された『ヴェルズ』・オランタ、そして北斗の場には効果を使っちゃったプレアデス…

これは、決まったな。

然し、OCGでもかなりの力を持ったセイクリッドデッキを使いこなしている様に見えた事もあって、北斗もランサーズのメンバーとして招聘しても良いかなと思っていたんだが、マストカウンターのタイミングを見失い、一行の話術にまんまと嵌められて致命的なプレイングミスをするとなると、ちょっと考え直さざるを得ないな。

一行とは過去に対戦して、持っているエクシーズモンスターをある程度把握していながら(特にバハムートに関しては効果の凶悪さを、身を以て味わったにも関わらず)あの行動となれば尚更だ。

 

「そしてバハムートのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!

手札のオランタを捨てて、お前のプレアデスは俺の物だァ!」

「ぷ、プレアデスが!」

「せめてもの慈悲だ、お前のエースモンスターにトドメを刺させてやるぜェ!

バトルフェイズに入って、プレアデスでダイレクトアタック!」

「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

Hokuto LP 2000→-500 LOSE

 

WINNER Ikko

 

『決まったぁ!第17試合の勝者は、巧みな話術とプレイングに裏打ちされた、『遊勝塾のダークヒーロー』ならではのエンタメデュエルを見せてくれた一行選手!流石は前回準優勝した一行選手、その実力を如何なく発揮したデュエルでした!』

「ははっ!じゃァな!」



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33話_恋人は(も)エンタメデュエリスト

今話は、当初の予定を変更してお送りします(笑)


「PSYフレーム・ロードΩでダイレクトアタック!イマジン・クラッシャー!」

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

『決まったぁ!第24試合の勝者は、手札から突如飛んでくるモンスターの数々で圧倒した当麻選手!流石は今大会の第5シード!当麻選手を含め、遊勝塾の快進撃は留まるところを知りません!』

 

え、当麻のデュエル?ニコさんの言う通り、何時も通りPSYフレームを中心とした手札誘発モンスターをぶん投げまくり、シンクロ召喚しまくっていた、以上。

 

「何か俺の格好良いシーン全部削られている!?不幸だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

------------

 

『さあ、舞網チャンピオンシップ、ジュニアユースクラスの1回戦も大詰めとなって来ました!この盛り上がって来た状況の中で行われる第25試合に相応しいと言って良いデュエリストに登場して頂きましょう!

まずは1人目、快進撃の続く遊勝塾、その第3の本命!前回大会でベスト4に輝き、今回第4シードに入った、遊勝塾のスーパーヒロイン!そのバトンを、後に控える恋人に渡せるでしょうか!柊柚子選手!』

 

ってニコさん、さらりと俺と柚子の仲をすっぱ抜かないでくれますか!?

ほら、柚子も顔を真っ赤にしちゃっているじゃん!

 

『続いて2人目!LDSが送り込んだ指折りの実力者、そのデュエルは光輝く宝石の如く、強烈な輝きを放ちます!光津真澄選手!

遊勝塾とLDSの、今大会2回目の激突です!』

 

いやだから遊勝塾とLDSは争うっていう間柄じゃないんですが。

それにしてもさっきの一行と北斗の試合同様、対抗戦と同じカードになったか。

 

「あら、MCの言葉に否定しないなんて、見せ付けてくれるわね」

「え!?あ、いや、えーと、その…」

「まあ、これ以上は突っ込まないわ。貴方と戦うまで、確かに私の目はくすんでいたわ。貴方に負け、貴方に指摘されるその時まで。貴方とのデュエルでの敗北が、私の目のくすみを取ってくれた。とは言え、それで恩を返す為に手加減しようって話では無いわ。むしろ、これで恩を返すには、全力を以て貴方とのデュエルを勝ちに行く事のみ!全力で行かせて貰うわ、柊柚子!」

「良いわね、その気概!それでこそデュエリストよ!けれど私だって勝って見せるわ!」

『両者のボルテージも最高潮に達した所で始めましょう!ランダムセレクト!アクションフィールド、オン!『無限架橋』!

戦いの殿堂に集いしデュエリストが!モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!フィールド内を駆け巡る!見よ、これぞデュエルの最強進化系!アクショーン!』

「「『デュエル』!」」

 

先攻 Yuzu LP 4000 VS 後攻 Masumi LP 4000

 

先攻後攻まで一緒か。

ただ唯一違うのがアクションフィールド、対抗戦の時は王宮の廊下を模したフィールド『クリスタル・コリドー』だったが、今回は読んで字の如く無数の橋がかけられた『無限架橋』となった。

 

「私の先攻!

まずは魔法『独奏の第1楽章』発動!」

 

独奏の第1楽章

通常魔法

『独奏の第1楽章』は1ターンに1枚しか発動出来ず、このカードを発動するターン、自分は『幻奏』モンスターしか特殊召喚出来ない。

1:自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動出来る。手札・デッキからレベル4以下の『幻奏』モンスター1体を特殊召喚する。

 

「幻奏の第1楽章の効果で、デッキから『幻奏の音女セレナ』を守備表示で特殊召喚!」

 

幻奏の音女セレナ

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 4

守備力 1900

 

最初にセレナを出したって事は、手札にプロディジー・モーツァルトを握っているか?

 

「天使族モンスターをアドバンス召喚する際、セレナは2体分のリリースとする事が出来るわ!この効果でセレナをリリースして、アドバンス召喚!天上に響く妙なる調べよ、眠れる天才を呼び覚ませ!出でよ、レベル8!『幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト』!」

 

幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 8

攻撃力 2600

 

本当に握っていたよ。

 

「早速キーマンのお出ましという事は、更に展開する気かしら?」

「ええ!プロディジー・モーツァルトの効果発動!手札から光属性・天使族の『幻奏の音女タムタム』を守備表示で特殊召喚!」

 

幻奏の音女タムタム

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 4

守備力 2000

 

「幻奏モンスターがフィールドにいる状態で特殊召喚したタムタムの効果発動!

デッキから『融合』1枚を手札に加えるわ!」

『おおっと!此処で柚子選手、『融合』を手札に加えました!となれば次は融合召喚でしょうか!』

 

それにしても此処までの展開、対抗戦と全く同じだな。

このままマイスタリン・シューベルトを融合召喚するかな?それとも…

 

「今手札に加えた魔法『融合』発動!」

「!来た…!」

 

融合

通常魔法

1:自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「フィールドのプロディジー・モーツァルトとタムタムを融合!

至高の天才よ!魂の響きよ!タクトの導きにより力重ねよ!融合召喚、今こそ舞台に勝利の歌を!『幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ』!」

「!?マイスタリン・シューベルトじゃない!?」

 

幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ

融合・効果モンスター

光属性

天使族

レベル 6

攻撃力 1000

 

柚子が融合召喚した幻奏モンスターは、対抗戦で出したマイスタリン・シューベルトでは無く、淡い色調のドレスに身を包んだ少女、ブルーム・ディーヴァ。

ステータスは、同レベルのマイスタリン・シューベルトと比べるまでも無く低い、というか今しがた融合素材に使ったタムタムと全く変わらないという弱さだが、この手のモンスターは効果が強烈である事が少なくない、ユベル然り、Z-ONEの『時械神』然り。

え、『神龍の聖刻印』?あれは、ほら、聖刻デッキでのサポートとして最適なレベル8通常モンスターだから(震え声

 

「攻撃力、1000…?」

『やはり融合召喚を使いました!柚子選手の場に、融合召喚によって現れたのは、可憐さを漂わせる歌姫!果たしてその力や如何に!』

「融合素材に使ったタムタムの効果発動!ブルーム・ディーヴァの攻撃力を500下げて、貴方に500のバーンダメージを与えるわ!」

「きゃあ!?」

 

幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ 攻撃力 1000→500

Masumi LP 4000→3500

 

「更にフィールド魔法『天空の聖域』を永続魔法として発動!

カードをセットして、ターンエンドよ!」

 

天空の聖域

フィールド魔法(永続魔法扱い)

このカードがフィールド上に存在する限り、天使族モンスターの戦闘によって発生する天使族モンスターのコントローラーへの戦闘ダメージは0になる。

 

Yuzu

LP 4000

手札 0

モンスター 幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ(攻撃表示 攻撃力500ポイントダウン)

魔法・罠カード 天空の聖域(永続魔法扱い)

        セット

 

此処で天空の聖域か、ブルーム・ディーヴァの効果を考えると、単体では正直発動する意味は無いが、同時にセットしたカード、まさか『アレ』か?

 

「どんなモンスターかは知らないけど、私は私のデュエルをするまでよ!私のターン、ドロー!

早速行くわ!永続魔法『ブリリアント・フュージョン』発動!」

 

ブリリアント・フュージョン

永続魔法

『ブリリアント・フュージョン』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:このカードの発動時に自分のデッキから『ジェムナイト』融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体を、攻撃力・守備力を0にしてエクストラデッキから融合召喚する。このカードがフィールドから離れた場合にそのモンスターを破壊する。

2:1ターンに1度、手札の魔法カード1枚を捨てて発動出来る。このカードの効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力・守備力は相手ターン終了時まで元々の数値分アップする。

 

って、初手でブリリアント・フュージョンかよ!?

真澄が発動した永続魔法、それは禁止カードとして名高い『未来融合―フューチャー・フュージョン―』のジェムナイト版、というか即座に融合召喚出来る時点でより凶悪化していると言って良い物だった。

 

「ブリリアント・フュージョンを発動した時の効果で、デッキのジェムナイト・ラズリーと、ルマリンとガネットを墓地へ送って、融合召喚!

蒼き友情の片割れよ!雷帯びし秘石よ!紅の真実よ!光渦巻きて新たな輝きと共に1つとならん!融合召喚!現れよ、輝きの淑女!『ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ』!」

 

ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ

融合・効果モンスター

地属性

岩石族

レベル 10

攻撃力 3400→0

 

で、出たぁ!

真澄が融合召喚したのは、金剛石(ダイヤモンド)を司る女性戦士、ブリリアント・ダイヤ。

ジェムナイト融合モンスターの中でも屈指と言える融合素材の多さに見合ったステータスを誇るこのカード、だがそのステータスはブリリアント・フュージョンの効果で立ち消えになっている、が、

 

「ブリリアント・フュージョンの効果で墓地へ送ったラズリーの効果発動!墓地にあるルマリンを手札に加えるわ!

次に、今出したブリリアント・ダイヤの効果発動!グラインド・フュージョン!

『ジェムナイト』モンスター1体、ブリリアント・ダイヤ自身を墓地へ送って、現れよ!全てを照らす至上の輝き!『ジェムナイトマスター・ダイヤ』!」

 

ジェムナイトマスター・ダイヤ

融合・効果モンスター

地属性

岩石族

レベル 9

攻撃力 2900→3200

 

それよりも重大なのはその効果、ぶっちゃけた話、これまた禁止カードとなっている『突然変異』のジェムナイト版である。

効果の強烈さ故の素材の多さだとは思うが、正直ブリリアント・フュージョンの所為で代償どころかメリットにすらなっちゃっているってどういう事なの…

これによって出て来たのはブリリアント・ダイヤ同様に金剛石を司る、ジェムナイトのリーダーである戦士マスター・ダイヤ、ブリリアント・ダイヤと同等の素材の多さを誇るが、やはり相応のステータスと効果を有している。

まあそれは置いておくが、マスター・ダイヤという重量級のモンスターが場に(融合召喚では無いが)出たにも関わらず、真澄の手札は未だ6枚(うち1枚はラズリーの効果で回収したルマリン)、対抗戦の様な墓地除外するモンスターがいない中、此処からどう展開して行くのか…

 

「更に魔法『ジェムナイト・フュージョン』発動!」

 

ジェムナイト・フュージョン

通常魔法

1:自分の手札・フィールドから『ジェムナイト』融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

2:このカードが墓地に存在する場合、自分の墓地の『ジェムナイト』モンスター1体を除外して発動出来る。墓地のこのカードを手札に加える。

 

「手札のルマリンと『ジェムナイト・オブシディア』を融合!

雷帯びし秘石よ!鋭利な漆黒よ!光渦巻きて新たな輝きと共に1つとならん!融合召喚!現れよ、勝利の探求者!『ジェムナイト・パーズ』!」

 

ジェムナイト・パーズ

融合・効果モンスター

地属性

雷族

レベル 6

攻撃力 1800

 

「手札から墓地へ送られたオブシディアの効果発動!私の墓地にあるレベル4の通常モンスター、ガネットを攻撃表示で蘇生するわ!」

 

ジェムナイト・ガネット

通常モンスター

地属性

炎族

レベル 4

攻撃力 1900

 

「更に墓地のラズリーを除外して、墓地のジェムナイト・フュージョンの効果発動!

ジェムナイト・フュージョンを回収するわ!」

 

出た、ジェムナイトの黄金パターン。

この前の対抗戦ではマイスタリン・シューベルトの効果で妨害されたからか、気合入っているな。

 

「まだまだ行くわ!今回収したジェムナイト・フュージョン発動!

フィールドのガネットと、手札のオブシディアを融合!

紅の真実よ!鋭利な漆黒よ!光渦巻きて新たな輝きと共に1つとならん!融合召喚!現れよ、魂燃え盛る豪傑!『ジェムナイト・ルビーズ』!」

 

ジェムナイト・ルビーズ

融合・効果モンスター

地属性

炎族

レベル 6

攻撃力 2500

 

怒涛の融合ラッシュ、今登場したのは紅玉(ルビー)を司る、深紅の輝石戦士、ルビーズ。

 

「手札から墓地へ送られたオブシディアの効果発動!私の墓地にあるレベル4の通常モンスター、ルマリンを攻撃表示で蘇生するわ!」

 

ジェムナイト・ルマリン

通常モンスター

地属性

雷族

レベル 4

攻撃力 1600

 

「続いて墓地のオブシディアを除外して、墓地のジェムナイト・フュージョンを回収するわ!

更に、パーズをリリースしてルビーズの効果発動!

ルビーズの攻撃力を、ターン終了時までパーズの攻撃力分、1800ポイントアップさせるわ!」

 

ジェムナイト・ルビーズ 攻撃力 2500→4300

 

「まだまだ行くわよ!たった今墓地へ送られたパーズを除外して、マスター・ダイヤの効果発動!

エンドフェイズまでマスター・ダイヤはパーズとして扱い、同じ効果を得るわ!」

 

今更だが、マスター・ダイヤの効果はジェムナイト融合モンスター版『ファントム・オブ・カオス』と言うべき物。

元となったファントム・オブ・カオスと比べてコピー対象が大幅に狭まれている一方、戦闘ダメージは普通に通るので、マスター・ダイヤ自身の高いステータスによってパーズによる2回攻撃等、戦闘面で強烈なパワーを発揮出来る、厄介な効果だ。

 

「まだまだこれからよ!ジェムナイト・フュージョン発動!

フィールドのルマリンと、手札のオブシディアを融合!

雷帯びし秘石よ!鋭利な漆黒よ!光渦巻きて新たな輝きと共に1つとならん!融合召喚!現れよ、雷光の鎧纏いし戦士!『ジェムナイト・プリズムオーラ』!」

 

ジェムナイト・プリズムオーラ

融合・効果モンスター

地属性

雷族

レベル 7

攻撃力 2450

 

まだまだ終わらないと言わんばかりに登場したのは、ジェムナイト・クリスタが端末世界の勢力であるヴァイロンの生命体、プリズムと合体した事で誕生した、人工宝石(オーラクリスタル)を司る輝石戦士、プリズムオーラ。

ジェムナイトでは珍しい除去効果持ちだ。

 

「手札から墓地へ送られたオブシディアの効果発動!私の墓地にあるレベル4の通常モンスター、ルマリンを攻撃表示で蘇生するわ!

更に墓地のオブシディアを除外して、墓地のジェムナイト・フュージョンを回収して発動!

フィールドのルマリンと、手札の『ジェムナイト・サフィア』を融合!

雷帯びし秘石よ!堅牢なる蒼き意志よ!光渦巻きて新たな輝きと共に1つとならん!融合召喚!現れよ、不屈の守護者!『ジェムナイト・アクアマリア』!」

 

ジェムナイト・アクアマリナ

融合・効果モンスター

地属性

水族

レベル 6

守備力 2600

 

ジェムナイトマスター・ダイヤ(ジェムナイト・パーズ) 攻撃力 3200→3400

 

『なんという圧倒的な展開力!これぞ真澄選手が使うジェムナイトの底力!これは決まったかぁ!?』

 

締めくくりで登場したのは、藍玉(アクアマリン)を司る蒼穹の輝石戦士、アクアマリナ。

これで4体ものジェムナイト融合モンスターがフィールドに並び立った格好だ、そのうちルビーズは自身の効果で攻撃力が4300になり、マスター・ダイヤは3400の2回攻撃持ち、そして除去効果持ちのプリズムオーラに、アクアマリナも壁として控えている。

まさに絶望的な布陣と言って良いだろう、普通なら。

 

「バトルフェイズに入るわ!パーズとなったマスター・ダイヤで、ブルーム・ディーヴァを攻撃!」

 

その身に電気を纏ったマスター・ダイヤが、その剣から光線をブルーム・ディーヴァに向けて放った…!

 

 

 

 

 

 

 

「ブルーム・ディーヴァは戦闘や効果では破壊されず、戦闘で発生する私のダメージは0になるわ!

更に特殊召喚されたモンスターと戦闘を行った場合、元々の攻撃力の差の数だけダメージを相手に与え、そのモンスターを破壊するわ!跳ね返しなさい、ブルーム・ディーヴァ!リフレクト・シャウト!」

「なっ!?きゃぁぁぁぁぁ!」

 

Masumi LP 3500→1600

 

ただ、ブルーム・ディーヴァにその『普通』は通じなかった。

 

『あぁっと跳ね返されました!マスター・ダイヤの攻撃で勝負あったかと思いましたが、此処でどんでん返しが待っていました!』

 

マスター・ダイヤが放った光線、だがそれはブルーム・ディーヴァが展開したバリアみたいな物によって跳ね返され、マスター・ダイヤ自身を貫き、その余波が真澄に降りかかった。

ブルーム・ディーヴァの効果、それは『魔王龍ベエルゼ』と同等の破壊耐性と、ユベルと良く似た戦闘ダメージの反射効果。

 

「くっ!ならメインフェイズ2に入って、墓地のオブシディアを除外してジェムナイト・フュージョンを回収して発動!

フィールドのルビーズとアクアマリナを融合!

魂燃え盛る豪傑よ!不屈の守護者よ!光渦巻きて新たな輝きと共に1つとならん!融合召喚!現れよ、灼熱の荒武者!『ジェムナイト・マディラ』!」

 

ジェムナイト・マディラ

融合・効果モンスター

地属性

炎族

レベル 7

攻撃力 2200

 

今のプレイングは上手いな。

黄水晶(マディラシトリン)を司る、身体の一部が焼けている輝石戦士、マディラを出す為にアクアマリナを素材とした事で、ブルーム・ディーヴァを除去出来る。

 

「フィールドから墓地へ送られたアクアマリナの効果発動!

ブルーム・ディーヴァを手札、いや融合モンスターだからエクストラデッキに戻して貰うわ!」

「させないわ!その効果にチェーンして、カウンター罠『神罰』発動!」

「なっ!?神罰ですって!?」

 

神罰

カウンター罠

フィールド上に『天空の聖域』が表側表示で存在する場合に発動する事が出来る。効果モンスターの効果・魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する。

 

が、それは柚子がセットしていた『アレ』によって阻まれた。

柚子が発動したカウンター罠『神罰』、俺の完全決闘デッキへの対抗策として柚子(とエレン)が入れたカードだ。

とはいえ俺も『効果モンスターの効果を無効にするカウンター罠』の導入は読めていたので神宣をピン刺ししていた、が、或る日の柚子とのデュエルで、

 

『フィールド魔法『天空の聖域』発動!』

『甘い!それにチェーン、手札の天使族モンスターを捨てて『神光の宣告者』の効果発動!』

『させないわ!更にチェーンしてカウンター罠『神罰』発動!』

『それはこちらの台詞だ!更にチェーンして、カウンター罠『神の宣告』発動!』

『今よ!更にチェーンして2枚目の神罰発動!』

『な、なん…だと…!?』

 

となって神光の宣告者を破壊され、クリスティアも『サンダー・ブレイク』で除去された末に敗北、これが完全決闘デッキでの最初の敗北となった。

以来、完全決闘デッキ対策に天空の聖域と神罰のセットを導入しようって動きが遊勝塾内で出ていたけど、明らかに汎用性の低い天空の聖域を、神罰の為だけに導入するのは無理があるって事で、殆ど流行らなかったな、柚子の場合も、幻奏モンスターが天使族だったが故に無理なく導入出来たんだし。

読者の皆も今言った様な無茶は控えような、今なら確か最新パックで、1500LPをコストにモンスター効果の発動とモンスターの特殊召喚を無効破壊出来る『神の通告』があるし。

 

「神罰の効果で、アクアマリナの効果は無効よ!」

「くっ…!

ターンエンドよ!」

 

Masumi

LP 1600

手札 0

モンスター ジェムナイト・プリズムオーラ(攻撃表示)

      ジェムナイト・マディラ(攻撃表示)

魔法・罠カード ブリリアント・フュージョン(対象不在)

 

「私のターン!ドロー!

(カンコーン!)来た!」

 

お、これは決まったか?

 

「Ladies and Gentleman!Boys and Girls!これより、幻奏の音姫達と、輝石戦士達による舞台、そのフィナーレと参ります!」

「な!?まさか、今のドローで…!?」

「私は、今引いた速攻魔法『融合解除』発動!」

 

融合解除

速攻魔法

フィールド上の融合モンスター1体を選択してエクストラデッキに戻す。更に、エクストラデッキに戻したそのモンスターの融合召喚に使用した融合素材モンスター1組が自分の墓地に揃っていれば、その1組を特殊召喚出来る。

 

「効果で、ブルーム・ディーヴァをエクストラデッキに戻し、融合素材であるプロディジー・モーツァルトとタムタムを蘇生します!

更に、蘇生したタムタムの効果で、デッキから融合を手札に加えてそのまま発動します!

フィールドのプロディジー・モーツァルトとタムタムを融合!

融合召喚、今一度舞台へ!ブルーム・ディーヴァ!

更に融合素材として墓地へ送られたタムタムの効果で、ブルーム・ディーヴァの攻撃力を500ポイント下げて貴方に500ダメージを与えます!」

「きゃぁ!?」

 

幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ 攻撃力 1000→500

Masumi LP 1600→1100

 

今、真澄の場にいるモンスターは全て元々の攻撃力が2100を超えている、このまま攻撃が通れば決まったな。

 

「このままバトルフェイズに入ります!

ブルーム・ディーヴァでプリズムオーラを攻撃!

効果で1450ダメージ!リフレクト・シャウト!」

「きゃぁぁぁぁぁぁ!」

 

Masumi LP 1100→-350 LOSE

 

WINNER Yuzu

 

『決まったぁ!第25試合の勝者は、真澄選手の輝石戦士の猛攻を逆手に取り、正に柔よく剛を制した柚子選手!流石は第4シード、前回ベスト4入りした実力は伊達ではありません!』

「これにて私、柊柚子と、幻奏の音姫達による舞台はフィナーレとなります!観客の皆様、ご鑑賞ありがとうございます!」

『おぉぉぉぉぉぉぉぉ!』

「また、勝てなかったわね。流石と言うべきか…

此処まで言われているんだから、最後まで勝って来なさいよ」

 

勝負が決まり、柚子は観客に挨拶をし、真澄の激励を背に会場を後にした。

最高だったぜ、柚子のエンタメデュエル、さっきのニコさんの言葉に乗るようだが、柚子から最高の形で貰ったバトン、絶対に繋いで見せる!



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34話_ネオ・ニュー沢渡だ!

※ 感想欄での指摘に伴い、内容を変更しました。


『さあ、舞網チャンピオンシップ、ジュニアユースクラス2日目も、そして様々な激戦が繰り広げられた1回戦も、いよいよ最後の試合となりました!ではこの第32試合に、1回戦最終試合に、今日最後の試合に、最も相応しいと言えるデュエリストに登場して頂きましょう!』

『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』

 

ニコさんのMCによって今大会最高潮と言って良い位に盛り上がる会場、その地下に、第1シードとしてこの試合に出場する俺はスタンバイしていた。

 

『それでは1人目!快進撃止まらぬ遊勝塾の、文字通りのスーパーエース!ある時はド派手な展開力で人々を魅了するエンタメデュエリスト!またある時は圧倒的な制圧力で人々を畏怖させる完全決闘者!その実力を以て前回大会で優勝し、今年あのアクションデュエルのチャンピオンであるストロング石島を圧倒した事は皆さんも良く知る所でしょう!』

 

ニコさんの紹介と共に、俺がスタンバイしていた場所が、まるでエレベーターの如く上昇して行く。

無論、俺がスタンバイしていたのは、舞台とかで良くある昇降装置だ。

それによって真上にあるアクションフィールドへ、ディフェンディングチャンピオンである俺を登場させると言う、在り来りだがそれでも尚インパクト十分な演出の為に、俺は此処にいたって訳。

 

『果たして今日のデュエルで彼が見せるのは、エンタメデュエリストとしての彼か、はたまた完全決闘者としての彼か!皆様、期待を胸に抱きながら彼の名を呼びましょう!第1シード!舞網チャンピオンシップ、ジュニアユースクラスディフェンディングチャンピオン!

(プシュゥゥゥゥゥゥゥ!)

榊ィィィィィィ!遊矢ァァァァァァ!』

『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』

 

そして、炭酸ガスのジェットスモークという、これまたベタな演出と共にアクションフィールドに現れた俺の姿に、観客もこれ以上に無いって位の熱い声援をあげてくれた。

 

「Ladies and Gentleman!Boys and Girls!今日はこの俺、榊遊矢のデュエルに来ていただき、本当にありがとうございます!」

『わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

『遊矢!遊矢!遊矢!遊矢!』

『頑張って、遊矢きゅーん!』

 

それに応えるべく、観客へと感謝の意を込めて挨拶をすると、観客もそれに最大限の声援を返してくれた、うん、やっぱりこの雰囲気は最高だ!

 

『その王者に挑むは、LDSが送り込む最後の刺客!そのデュエルは変幻自在!沢渡シンゴ選手!』

 

なんかニコさんの紹介、やけにあっさりしているなぁ。

まあ良いか、沢渡だし、と思っていたら、

 

「沢渡?なんだその格好?」

「このネオ・ニュー沢渡、今日はお前への数々の恨みを晴らす為に此処に来た!」

 

いや話聞けよ。

そう突っ込む俺に相対する沢渡の格好はと言うと、時代劇とかで良く見かける編み笠を被り、着流しを身に纏う、というどっからどうみても風来坊のコスプレだ。

というか数々の恨みって、あれか、お前とのデュエルでゲロ吐かせた事か?それは元はと言えばお前の所為だろう。

 

「生まれて今日に至るまでこのネオ・ニュー『さっさと帰れサワガニ!』『ウザいんだよさかあがり!』『遊矢きゅんにいちゃもん付けないでさるすべり!』最後まで言わせろ!というか人の名字をワザと間違えるな!」

「皆さん、今回は何か前置きを並べているミスターネオ・ニュー沢渡とこの俺とのデュエルを、どうぞお楽しみ下さい!」

「勝手に話を進めるな貴様『流石王者は違うぜ!』『遊矢きゅん格好いい!』『ほらさっさと進行しろよMC!』まだ無視するかぁ!もう許さんぞ貴様ぁ!」

 

まあこれまでの行いを考えると仕方ない(俺から見ればであって、観客の皆はそれを殆ど知らない筈なんだが)とはいえ、皆して沢渡の扱いひでぇな。

 

『どうやら観客もデュエルの開始を心待ちにしている様なので始めましょう!ランダムセレクト!アクションフィールド、オン!『夕日の荒城』!』

 

なんか荒廃したフィールドだな、此処。

 

『戦いの殿堂に集いしデュエリストが!モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!フィールド内を駆け巡る!見よ、これぞデュエルの最強進化系!アクショーン!』

「「『デュエル』!」」

 

先攻 Shingo LP 4000 VS 後攻 Yuya LP 4000

 

「俺のターン!見せてやる、俺の新たなる力を!

まずは永続魔法『修験の妖社』発動!」

 

修験の妖社

永続魔法

『修験の妖社』の2の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。

1:このカードが魔法・罠ゾーンに存在する限り、『妖仙獣』モンスターが召喚・特殊召喚される度に、このカードに妖仙カウンターを1つ置く。

2:このカードの妖仙カウンターを任意の個数取り除いて発動出来る。取り除いた数によって以下の効果を適用する。

●1つ:自分フィールドの『妖仙獣』モンスターの攻撃力はターン終了時まで300アップする。

●3つ:自分のデッキ・墓地から『妖仙獣』カード1枚を選んで手札に加える。

 

うぉい、新たなる力って『妖仙獣』デッキの事かい。

影霊衣(ネクロス)』が初登場し、その無茶苦茶なスペックによって大人気となり即座に品薄となった事で知られる『ブースターSP―トライブ・フォース―』で同じく初登場したテーマである妖仙獣、ペンデュラム召喚や、『手札の妖仙獣を召喚する』効果を持ったモンスター達による大量展開を持ち味とするテーマで、同時期に登場した影霊衣と比べると地味な印象があったが、それでも大会で結果を残していたなぁ。

なにしろ特殊召喚する事無く大量展開出来るから『虚無空間』や『ライオウ』等をすり抜けられる(前者は逆に自分で入れる始末)、墓地や除外ゾーンを利用しないから『マクロコスモス』や『王宮の鉄壁』等が通じない(逆に自分でry)、除去方法が主にバウンスだから除去メタが無意味、とメタを張る手段が大いに限られ、逆にメタを張られるから厄介なんだよな。

あ、そういやトライブ・フォースのCMナレーション、どっかで聞いた事あるなと思ったら沢渡の声だ、成る程その縁もあって使っている訳か(というより、アニメで使っていたからCMに起用されたのか?)。

 

「さあ行くぜ!『妖仙獣 鎌壱太刀(カマイタチ)』を召喚!」

 

妖仙獣 鎌壱太刀

効果モンスター

風属性

獣戦士族

レベル 4

攻撃力 1600

 

修験の妖社 妖仙カウンター 0→1

 

出た、妖仙獣の要と言って良いカマイタチ三兄弟、その長男が。

 

「召喚した鎌壱太刀の効果発動!手札の『妖仙獣 鎌弐太刀(カマニタチ)』を召喚!」

 

妖仙獣 鎌弐太刀

効果モンスター

風属性

獣戦士族

レベル 4

攻撃力 1800

 

修験の妖社 妖仙カウンター 1→2

 

今度は次男が出て来たか。

 

「召喚した鎌弐太刀の効果発動!手札の『妖仙獣 鎌参太刀(カマミタチ)』を召喚!」

 

妖仙獣 鎌参太刀

効果モンスター

風属性

獣戦士族

レベル 4

攻撃力 1500

 

修験の妖社 妖仙カウンター 2→3

 

初手で三兄弟揃えていたんかい。

 

「召喚した鎌参太刀の効果発動!鎌弐太刀をリリースして、手札の『妖仙獣 凶旋嵐(マガツセンラン)』をアドバンス召喚!」

 

妖仙獣 凶旋嵐

効果モンスター

風属性

獣族

レベル 6

攻撃力 2000

 

修験の妖社 妖仙カウンター 3→4

 

更に出て来たのは、荒法師の様な出で立ちをしたイタチ、凶旋嵐。

 

「召喚した凶旋嵐の効果発動!デッキから、

 

ペンデュラムモンスター『妖仙獣 左鎌神柱(サレンシンチュウ)』を守備表示で特殊召喚!」

 

妖仙獣 左鎌神柱

ペンデュラム・効果モンスター

風属性

岩石族

レベル 4

守備力 2100

 

修験の妖社 妖仙カウンター 4→5

 

そして凶旋嵐の効果で、妖仙獣に効果対象にならない効果を付加させる左鎌神柱をリクルートか、中々堂に入ったプレイングだな。

と、此処で、観客が騒めき出した。

 

『さ、沢渡選手のフィールドに、ペンデュラムモンスターが登場しました!まさかペンデュラム召喚を披露すると言うのでしょうか!』

 

あ、そういえばまだペンデュラムモンスターを使うの俺と零児だけ(その内、零児が使っている事は公になっていない)だったな、それならビックリするのも致し方ないか。

でも妖仙獣の場合、ペンデュラム召喚を使わずともカマイタチ三兄弟によって十分に大量展開出来るし、ペンデュラムモンスターである左鎌神柱も、ペンデュラムスケールにセッティングするよりフィールドに出した方が仕事するんだよなぁ。

 

「そして修験の妖社の妖仙カウンターを3つ取り除いて効果発動!デッキから『妖仙獣 大幽谷響(オオヤマビコ)』を手札に加えてターンエンド!エンドフェイズに、このターンに召喚した鎌壱太刀と鎌参太刀は手札に戻る!」

 

Shingo

LP 4000

手札 3(鎌壱太刀、鎌参太刀、大幽谷響)

モンスター 妖仙獣 凶旋嵐(攻撃表示)

      妖仙獣 左鎌神柱(守備表示)

魔法・罠カード 修験の妖社(妖仙カウンター:2)

 

守りも念頭に置いている上手いプレイングだ、これでエクシーズ召喚を覚えたら大いなる戦力となるに違いない。

性格的に難はあるが、この前のデュエルで使っていた『ダーツ』デッキ、柚子曰くユートとのデュエルで使っていたらしい『帝コントロール』デッキ、そして今回の妖仙獣デッキと、様々なデッキを使用するデュエリストはOCG世界ではともかくこの世界、いや今まで渡り歩いたどの世界でも貴重だ(俺の身近にいるデュエリストではエレンしかいないし、当のエレンも俺がマルチデッカーである事から真似ている様な物だし)、後はデュエルアカデミアとの戦いへの覚悟を持てるかどうか。

お前がその覚悟を持てる存在か見せて貰うぜ、このデッキでな!

 

「俺のターン!ドロー!

まずは『EMドクロバット・ジョーカー』召喚!」

 

EMドクロバット・ジョーカー

効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 4

攻撃力 1800

 

「召喚したドクロバット・ジョーカーの効果発動!デッキから『オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン』を手札に加えます!

次に儀式魔法『オッドアイズ・アドベント』発動!」

 

オッドアイズ・アドベント

儀式魔法

ドラゴン族の儀式モンスターの降臨に必要。『オッドアイズ・アドベント』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:レベルの合計が儀式召喚するモンスターのレベル以上になる様に、自分の手札・フィールドのペンデュラムモンスターをリリースし、自分の手札・墓地からドラゴン族の儀式モンスター1体を儀式召喚する。相手フィールドにモンスターが2体以上存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、自分のエクストラデッキの『オッドアイズ』モンスターもリリースの代わりに墓地へ送る事が出来る。

 

え、何で後半の効果を使わないんだって?

グラビティ・ドラゴンが初手に無かったんだよ。

 

「オッドアイズ・アドベントの効果で、俺のフィールドにいるドクロバット・ジョーカーと、手札の『貴竜の魔術師』をリリースする事で、たった今手札に加わった『オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン』は降臨します!2色の眼の龍よ!その鈍色の輝きを解き放ち、フィールドを圧殺せよ!儀式召喚!『オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン』!」

 

オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン

儀式・効果モンスター

地属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2800

 

「(ズン!)がぁっ!?な、なんだこれは!?」

「っ!」

『おっと、両者共にどうしたと言うのでしょうか!何かが圧し掛かった様な素振りを見せている様ですが、え、はい、何々…

な、なんと会場の皆さん!たった今入りました情報によりますと、遊矢選手が儀式召喚したオッドアイズ・グラビティ・ドラゴンですが、アクションフィールド内の重力を操作する力を有しており、それによってフィールドの重力が増大しているとの事です!グラビティとは重力、その名を冠したグラビティ・ドラゴンが舞い降りた事によって、このデュエルはより過酷な物と化しております!』

「くっそういう事か!だがこれしきの事で俺がくたばると思ったら大間違いだ!」

「その言葉、デュエルが終わるまで忘れないで頂きたい!儀式召喚したグラビティ・ドラゴンの効果発動!貴方のフィールドにある魔法・罠カードには、全て手札に戻っていただきます!」

「何っ!?ちぃっ!」

 

グラビティ・ドラゴンが降臨すると同時に増大した4Gもの重力、だが沢渡はそれをモノともせず、儀式召喚成功時の効果で吹っ飛ばされた修験の妖社を、舌打ちしながら手札に加えつつも、そのデュエルへの思いは全く以て失われていなかった。

なら、これはどうかな?

 

「続いて魔法『オッドアイズ・フュージョン』発動!」

 

オッドアイズ・フュージョン

通常魔法

『オッドアイズ・フュージョン』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:自分の手札・フィールドから、ドラゴン族の融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。相手フィールドにモンスターが2体以上存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、自分のエクストラデッキの『オッドアイズ』モンスターも2体まで融合素材とする事が出来る。

 

「俺は、手札の『オッドアイズ・セイバー・ドラゴン』と『法眼の魔術師』を融合!2色の眼の龍よ!その碧の輝きを解き放ち、荒ぶる風で敵を惑わせ!融合召喚!『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』!」

 

オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン

融合・効果モンスター

風属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2500

 

このままボルテックス・ドラゴンの効果でバウンス、と行きたかったが、凶旋嵐は左鎌神柱がいる事で対象に選べず、その左鎌神柱は守備表示だからこれも無理、よってバウンス効果は使えない。

だが俺の場には、効果を発動する為に500LPを要求し、アクションカードの探索を困難にさせるグラビティ・ドラゴンと、その効果を1ターンに1度無効化出来るボルテックス・ドラゴンの2体がいる。

この状況を切り抜けるには、1000LPという少なくないライフコストを駆使して、打開可能なカードを2枚も使わなければならない、これぞ、

 

「今この時、このデッキの最強タッグ、『オッドアイズ・ディザスター』が完成しました!ミスターネオ・ニュー沢渡、貴方にこのタッグを突破出来ますか?」

「ふん!どんな陣を敷こうと突破して見せる!」

 

言ったな?なら行くぜ!

 

「ならばバトルフェイズに入ります!

グラビティ・ドラゴンで凶旋嵐を攻撃!鋼鉄のマッド・カタクラズム!」

「させるか!アクションマジック『回避』を発(ガクッ!)くっ、なんのこれしき、発動…!」

「おっと!それにチェーンして、エクストラデッキのドクロバット・ジョーカーを戻してボルテックス・ドラゴンの効果発動!それを無効にします!」

「何っ!?ぐぁっ!」

 

回避

アクションマジック

1:フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターの攻撃を無効にする。

 

オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン 攻撃力 2800 VS 妖仙獣 凶旋嵐 攻撃力 2000

 

Shingo LP 4000→3500→2700

 

「更にボルテックス・ドラゴンで左鎌神柱を攻撃!神速のウィンド・ラプチャー!」

「左鎌神柱!」

 

オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン 攻撃力 2500 VS 妖仙獣 左鎌神柱 守備力 2100

 

よし、これで沢渡の場はすっからかんだ。

 

「俺はこれでターンエンドです!」

 

Yuya

LP 4000

手札 0

モンスター オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン(攻撃表示)

      オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

さあ沢渡、この局面をどう突破する?



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35話_ネオ・ニュー沢渡とのデュエルと、その後…

「俺のターン!ドロー!

まずはさっき手札に戻された修験の妖社を発動!っ…!」

 

修験の妖社

永続魔法

『修験の妖社』の2の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。

1:このカードが魔法・罠ゾーンに存在する限り、『妖仙獣』モンスターが召喚・特殊召喚される度に、このカードに妖仙カウンターを1つ置く。

2:このカードの妖仙カウンターを任意の個数取り除いて発動出来る。取り除いた数によって以下の効果を適用する。

●1つ:自分フィールドの『妖仙獣』モンスターの攻撃力はターン終了時まで300アップする。

●3つ:自分のデッキ・墓地から『妖仙獣』カード1枚を選んで手札に加える。

 

Shingo LP 2700→2200

 

「次に『妖仙獣 鎌壱太刀』を召喚!」

 

妖仙獣 鎌壱太刀

効果モンスター

風属性

獣戦士族

レベル 4

攻撃力 1600

 

修験の妖社 妖仙カウンター 0→1

 

「召喚した鎌壱太刀の効果発動!手札から『妖仙獣 鎌参太刀』を召喚!ぐぅ…!」

 

妖仙獣 鎌参太刀

効果モンスター

風属性

獣戦士族

レベル 4

攻撃力 1500

 

Shingo LP 2200→1700

修験の妖社 妖仙カウンター 1→2

 

「召喚した鎌参太刀の効果発動!鎌参太刀自身をリリースして、手札から『妖仙獣 凶旋嵐』をアドバンス召喚!ぐぁ…!」

 

妖仙獣 凶旋嵐

効果モンスター

風属性

獣戦士族

レベル 6

攻撃力 2000

 

Shingo LP 1700→1200

修験の妖社 妖仙カウンター 2→3

 

「召喚した凶旋嵐の効果発動!デッキから『妖仙獣 閻魔巳裂(ヤマミサキ)』を攻撃表示で特殊召喚!がぁ…!」

 

妖仙獣 閻魔巳裂

効果モンスター

風属性

獣族

レベル 6

攻撃力 2300

 

Shingo LP 1200→700

修験の妖社 妖仙カウンター 3→4

 

グラビティ・ドラゴンがいる事によるライフコストを何度と支払い、それによる脱力感に苦しみながらも展開を続ける沢渡がリクルートしたのは、右手に巨大な太刀を担いだ荒武者の様な出で立ちのモンスター、閻魔巳裂。

観客はその、ライフコストを削りまくる展開を無謀というかやけくそというか、そう見ているのかあきれ顔をしているが、対峙している俺は違う。

沢渡は、何が何でもこのターンで決めて見せると、本気になっている。

いいねその気概、それでこそ真のデュエリストだ!

 

「これで決める!鎌壱太刀の効果発動!ぐぉ…!

この俺に幾度と苦しみを味あわせた、そのグラビティ・ドラゴンを手札に戻して貰おう!」

「むっやってくれますね」

 

Shingo LP 700→200

 

『沢渡選手、LPを2500も削りながら怒涛の展開!それによって遊矢選手の『オッドアイズ・ディザスター』の片方がいなくなりました!ですがもう片方であるボルテックス・ドラゴンは未だ健在!その攻撃力を突破出来るモンスターは、今の沢渡選手のフィールドにはいません!これをどう突破すると言うのでしょうか!』

「今突破出来ないなら、突破出来る様にすれば良いだけだ!修験の妖社の、妖仙カウンターを1つ取り除いて効果発動!俺の場にいる妖仙獣の攻撃力は300アップする!」

『おっとこれで閻魔巳裂の攻撃力は2600!ボルテックス・ドラゴンの攻撃力を僅かながら上回りました!』

 

修験の妖社 妖仙カウンター 4→3

妖仙獣 鎌壱太刀 攻撃力 1600→1900

妖仙獣 凶旋嵐 攻撃力 2000→2300

妖仙獣 閻魔巳裂 攻撃力 2300→2600

 

うぉ、これは何か良いアクションマジックを引かないと1ショットキルされかねないな。

 

「更にアクションマジック『成金の宝札』発動!」

 

成金の宝札(今作オリジナルカード)

アクションマジック

1:フィールド上に存在するカウンターを全て取り除いて発動する。取り除いたカウンター3つにつき、デッキから1枚ドローする。

 

修験の妖社 妖仙カウンター 3→0

 

「成金の宝札の効果で修験の妖社から妖仙カウンターを3つ取り除いて1枚ドロー!

良し来た!今引いた魔法『死者蘇生』発動!」

 

死者蘇生(制限カード)

通常魔法

1:自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

此処で今引きしたんかいそれ。

 

「死者蘇生の効果で、鎌参太刀を攻撃表示で蘇生!」

 

修験の妖社 妖仙カウンター 0→1

 

「このままバトルフェイズ!

閻魔巳裂で、ボルテックス・ドラゴンを攻撃!」

 

沢渡の宣言と共に、閻魔巳裂の刃がボルテックス・ドラゴンに迫る…!

 

 

 

 

 

「攻撃宣言時、アクションマジック『大脱出』発動!」

「な、何っ!?」

 

大脱出

アクションマジック

1:バトルフェイズを終了する。

 

前に、俺を乗せたボルテックス・ドラゴンが緊急回避した事で、攻撃は当たらなかった。

 

「大脱出の効果で、バトルフェイズは終了します!よって閻魔巳裂の攻撃は無かった事になります!」

「くっ!ならこのままターンエンド!エンドフェイズに、召喚した鎌壱太刀と、特殊召喚した閻魔巳裂は手札に戻り、凶旋嵐の攻撃力は元に戻る!」

『あぁっと!もう少しでボルテックス・ドラゴンを討ち取る事が出来ましたが、叶わず!沢渡選手、これは万事休すか!』

 

Shingo

LP 200

手札 3(鎌壱太刀、閻魔巳裂、大幽谷彦)

モンスター 妖仙獣 凶旋嵐(攻撃表示)

      妖仙獣 鎌参太刀(攻撃表示)

魔法・罠カード 修験の妖社(妖仙カウンター:1)

 

ニコさんにそう言われながらも、沢渡はまだまだ勝負を諦めた様子は無く、フィールドにいる凶旋嵐と鎌参太刀と一緒に、手分けしてアクションカードを探し出した。

 

「俺のターン!ドロー!

このままバトルフェイズに入ります!

ボルテックス・ドラゴンで、鎌参太刀を攻撃!神速のウィンド・ラプチャー!」

「くっ!届け!」

 

ボルテックス・ドラゴンが放った真空の刃が鎌参太刀に迫る中、沢渡は必死こいてアクションカードに手を伸ばし…

 

「あぁ、また負けか!アクションマジック『奇跡』発動!」

 

奇跡

アクションマジック

1:フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターは戦闘では破壊されず、戦闘ダメージは半分になる。

 

掴んだは良いが、それはこの状況を打開するには至らなかった。

 

オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン 攻撃力 2500 VS 妖仙獣 鎌参太刀 攻撃力 1500

 

Shingo 200→-300 LOSE

 

WINNER Yuya

 

『決まったぁ!1回戦最終試合の勝者は、ディフェンディングチャンピオン、遊矢選手!沢渡選手は後一歩及ばず、惜しい敗北となりましたが、遊矢選手が圧倒するであろうという下馬評を見事に覆した善戦でした!』

「皆さん、今回の俺と、ミスターネオ・ニュー沢渡とのデュエル、如何でしたでしょうか!」

『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!最高だったぜ!』

『遊矢きゅん、今日も格好良かったわぁ!』

『サワガニの奴も中々よかったぜ!』

「おいこらぁ、最後まで間違えるな!榊遊矢、今日は負けたが、今度こそは貴様に勝って見せる!その時まで首を洗って待っていろ!」

「何時でもお待ちしておりますよ、ミスターネオ・ニュー沢渡」

 

観客のさっきと変わらない扱いに突っ込みつつ、そう捨て台詞を残して去って行く沢渡に、俺もそう返してフィールドを後にした。

こうして、舞網チャンピオンシップ、ジュニアユースクラス1回戦の全試合が終了した。

 

------------

 

「零児。こちらが、今回の舞網チャンピオンシップの、ジュニアユース以下のクラスに出場している選手の中で、ランサーズに招聘するに相応しいと此方で判断したデュエリストの資料です。どうぞ」

「ありがとう、遊矢」

 

それから数時間後、昨日と今日の全試合を見ての、舞網チャンピオンシップに出場しているデュエリストの中から、ランサーズに招聘するに相応しいと言える実力を持って居ると見た『候補生』のリストを零児に手渡した。

その内容は以下の通りだ。

 

石動(いするぎ)美琴(みこと)

所属:遊勝塾

使用デッキ:『磁石の戦士(マグネット・ウォリアー)

エースカードである『磁石の戦士マグネット・バルキリオン』の効果を用いてレベル4モンスターを大量展開してからエクシーズ召喚する事を主戦略としている。遊勝塾に加入してまだ数ヶ月ながら、エクシーズ召喚を早くもモノとする等呑み込みが早く、負けん気の強さも融合次元との戦いで活かされるだろう。

 

紫雲院(しうんいん)素良(そら)

所属:遊勝塾

使用デッキ:『ファーニマル(主軸となるカテゴリは他にも存在するが便宜的にこの名とする)』

『デストーイ』融合モンスターを大量展開し、盤面を制圧する事を主戦略としている。此方も遊勝塾に加入してまだ数ヶ月ながら、元々その素地が出来上がっていたのか、実力面では凄まじい物がある。尚、融合モンスターを加入前から持っている事に関しては『以前住んでいた所では普通にあった』との事。

 

刀堂(とうどう)(やいば)

所属:遊勝塾

使用デッキ:『X-セイバー』

『X-セイバー』シンクロモンスターを展開し、その効果によって相手の戦略を妨害する事を主戦略としている。ハンデスを得意とする一方、各種除去にも長けており、その苛烈さは、ARC-Vメンバーとも互角に立ち回る程。

 

星宮(ほしみや)舞衣(まい)

所属:LDS本校エクシーズコース

使用デッキ:『テラナイト』

各種『テラナイト』モンスターの効果によって息の長い展開力を見せ、其処からエクシーズ召喚する事を主戦略としている。堅実ながらも盤面を確実に支配して行くプレイングは『正確無比』の一言。

 

龍宮(たつみや)流星(りゅうせい)

所属:LDS本校シンクロコース

使用デッキ:『竜星』

各種『竜星』モンスターの効果によるリクルートで前線を維持しつつ、其処からシンクロ召喚する事を主戦略としている。『竜星』モンスターの効果を活かした受け身的な展開が基本ではあるが、一方で自ら竜星モンスターを破壊して能動的に効果を使う等、戦略面の柔軟性が感じられる。

 

光津(こうつ)真澄(ますみ)

所属:LDS本校融合コース

使用デッキ:『ジェムナイト』

『ジェムナイト』融合モンスターを大量展開し、盤面を制圧する事を主戦略としている。舞網チャンピオンシップでは1回戦敗北となったものの、その展開力に追いつけるデュエリストはそうそうおらず、盤面をしっかり見渡せる冷静さは重要だ。

 

七種(さえぐさ)亮太郎(りょうたろう)

所属:LDS本校総合コース

使用デッキ:『サイバー・ドラゴン』

『サイバー・ドラゴン』を素材とした融合モンスターや『サイバー・ドラゴン』に関連したエクシーズモンスターによる速攻、更にはシンクロモンスター『ダーク・ダイブ・ボンバー』によるバーン等、様々な戦略を実行している。その対応力はまるで人工知能だ。

 

沢渡(さわたり)シンゴ

所属:LDS本校総合コース

使用デッキ:『ダーツ』『帝コントロール』『妖仙獣』

上記の使用デッキ欄でも挙げた通り、様々なデッキを用い、其々のデッキに合った戦略を実行するマルチデッカー。舞網チャンピオンシップでは1回戦敗北となったものの、その柔軟さ・多才さは貴重。自己顕示欲の高さ等、性格面には難があるが、『デュエルは最後まで諦めない』を地で行くその精神力は合格点を上げられる。

 

デニス・マックフィールド

所属:LDSブロードウェイ校

使用デッキ:『Em(エンタメイジ)

各種『Em』モンスターの効果で大量展開し、其処からエクシーズ召喚する事を主戦略としている。その展開力もさる事ながら、榊遊勝のファンを公言しており、それを意識した振る舞いが見受けられる。

 

風魔(ふうま)日影(ひかげ)、風魔月影(つきかげ)

所属:風魔デュエル塾

使用デッキ:『忍者』

双子の兄弟であり、両者共に殆ど同一デッキ・戦略である為、併記する。『忍者』モンスターに対応した各種効果によって展開、盤面を制圧する事を主戦略としている。現時点でも両者ともにワンターンキルで1回戦を突破する等実力は十分だが、『忍者』カテゴリにはエクシーズモンスターも存在し、効果も『忍者』モンスターに対応した物である為、モノとすれば多大な戦力となるだろう。

 

方中(ほうちゅう)ミエル

所属:海野占い塾

使用デッキ:『占術姫』

各種『占術姫』を始めとしたリバースモンスターの効果で盤面を整え、エースカードである『聖占術姫タロットレイ』を儀式召喚する事を主戦略としている。もう1つのエースカードである『禁忌の壺』の無茶苦茶なリバース効果を使い回す等こちらも実力は十分だが、タロットレイと禁忌の壺は共にレベル9、また各種『占術姫』モンスターでもレベルが揃っている組み合わせがあり、エクシーズ召喚を覚えれば大いなる力となるに違いない。

 

大海(ひろみ)王牙(おうが)

所属:デュエルダイバースクール

使用デッキ:『海皇水精鱗(マーメイル)

各種『海皇』モンスターが持つ効果と、『水精鱗』モンスターが持つ効果のシナジーで盤面を制圧する事を主戦略としている。舞網チャンピオンシップでは1回戦敗北となったものの、その制圧力は、相手にとって脅威となるに違いない。また、シンクロ召喚やエクシーズ召喚を覚える事で更なる強化が期待される。

 

「ふむ。星宮と龍宮に関しては私も目を付けていた所だ。1回戦で両者ともに使用しなかったとはいえ、2人には其々のデッキに合ったペンデュラムモンスターを、沢渡同様渡していたからな」

 

渡していたカードって、まさか『セフィラ』モンスターか?

というか妖仙獣ってLDSで製作していたんかい。

と、心中で突っ込んでいたりしていると、ふと資料を読み進めていた零児の手が止まった。

その止めた地点の資料は、

 

平井(ひらい)遊香(ゆうか)

所属:不明(無所属と思われる)

使用デッキ:『陽炎獣(ヘイズ・ビースト)

各種『陽炎獣』モンスターの効果で大量展開し、其処からエクシーズ召喚する事を主戦略としている。その実力も招聘するに十分ではあるが、何処のデュエルスクールにも属していないと思われるにも関わらずエクシーズモンスターを手にしている点が気に掛かる。エクシーズ次元出身と思われ、早急な保護が求められる。

 

平井遊香に関するモノだった。

 

「やはり君達も、彼女がエクシーズ次元出身と見ているか。実を言うと我々も彼女がエクシーズ次元からのデュエリストだと見ていて、居場所を捜査させているのだが、依然その足取りが掴めない。防犯カメラを解析しても、彼女らしい姿が見えないんだ…」

「そうでしたか…」

 

確かに何処のデュエルスクールにも属していないのに、この次元ではLDSと遊勝塾でしか扱っていないエクシーズ召喚を使っている時点で違和感満載だ。

俺もその防犯カメラの映像、舞網市に設置されている防犯カメラをハッキングしてコピーし、それを解析して彼女の足取りを追おうとしたんだが、零児が言っている通り、彼女の姿は何処にも無かった。

あんな若干14歳位にも関わらず総白髪なヘアスタイル、見落とす筈は無いんだが…



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36話_シンクロ次元から来た男

※今話は某特撮ヒーローのネタが入っております。


「ユベル、そっちはどうだった?」

『全然駄目だったよ、彼女らしき姿は何処にも見当たらない。一体何処ほっつき歩いているんだか…』

『ユベルの能力を以てしても尻尾を掴めないか。一体彼女は何者なんだ…』

 

零児と、ランサーズの候補メンバーに関する話し合いを終え、LDSから出て来た俺とアストラルは、今日ずっと市街地を探索していたユベルと合流、零児との話し合いでも話題となったデュエリスト、平井遊香の足取りを掴めたかどうか聞いてみたが結果は芳しくなかった。

昨日、防犯カメラの映像を解析してもその姿が全く以て見当たらなかったので、ユベルに探索させれば手掛かりが掴めるかなと思ったんだけど、彼女ですら駄目となれば…

 

「こうなったら、彼女が試合に出場するタイミングを見計らって接触を図るしかないか?」

『まあ、それがベストだろうね』

『そうだな。となれば今日は早く家に帰って明日に向けて「おい、其処のお前!」む、誰だ!?』

 

平井遊香と接触する為の方策を練っていた所に、突如俺を呼び止めるかの様な声が聞こえた。

一体何者だと思ってその方へと顔を向けると、

 

「その顔…!

やっぱりお前か、リンを攫ったのは!リンを何処へやった!」

 

バナナを彷彿とさせる前髪が特徴的なヘアスタイル、白を基調としたライダースーツという服装である以外、俺そっくりの奴、ユートが遭遇した『シンクロ次元の俺』らしき存在がいた、というかまたこのパターンかよ!

『融合次元の俺』の奴、色んな所で良からぬ事をやってくれるな、全く!

とはいえ向こうは激昂の余り、こっちの話を聞き入れる様子は無い、なら、

 

「おい、デュエルしろよ」

「はぁ!?…

成る程そういう事か、デュエルで勝ったらリンの居場所を教えてくれる訳だな!良いぜ、乗ってやる!」

『何これ、デュエル万能説にも程があるでしょ。まあ此処がアニメそっくりの世界だからと言われればそれまでだけどさ』

 

デュエルを仕掛けてみたが、予想以上に食いつきが良かった(後ユベル、それは言っちゃダメだ)、後は、

 

「「デュエル!」」

 

先攻 Yuya LP 4000 VS 後攻 Hugo LP 4000

 

ん?名前の表記…

 

「ヒューゴー?」

「誰が熱血の大巨人レスラーだ!俺の名前はユーゴだ!」

「融合?」

「何が融合だ!ユーゴだっつーの!」

 

はいそこ、「テンプレ乙」とか言わない。

 

「俺のターン!先攻はドロー無し。

まずは手札の『ダンディライオン』を墓地へ送って魔法『ワン・フォー・ワン』発動!」

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

「ワン・フォー・ワンの効果で、デッキから『ジェット・シンクロン』を守備表示で特殊召喚!」

「シンクロンだと!?それは不動遊星が持っていたカテゴリの筈、何でお前がそれを!?」

 

ジェット・シンクロン

効果モンスター/チューナー

炎属性

機械族

レベル 1

守備力 0

 

ワン・フォー・ワンの効果によって俺のフィールドに登場した、ジェットエンジンを模した胴体に手足が生えた様な姿の機械兵士、ジェット・シンクロンの姿を見るや否や、ユーゴの顔が驚愕に染まる。

そう、今回俺が使うのは『ウォリアー』デッキ。

俺が遊星だった頃に使っていた奴で、各種シンクロンを始めとした低レベルモンスターを大量展開し、其処からシンクロ召喚して行くデッキだ。

まあ遊星だった時の切り札は『スターダスト・ドラゴン』及びその進化形態だったけど、現状『ウォリアー』というデッキ名を名乗っている通り、このデッキの切り札はスターダスト・ドラゴン達ではない。

というか遊星の名前が出て来たけど、まさかシンクロ次元でも遊星は有名人なのか?

まあいい、それは後で聞き出せば済む事だ。

 

「ワン・フォー・ワンを発動する為に墓地へ送ったダンディライオンの効果発動!

『綿毛トークン』を2体、守備表示で特殊召喚!」

 

綿毛トークン

風属性

植物族

レベル 1

守備力 0

 

このままシンクロ召喚、の前に1つお膳立てをしないと。

 

「次に『シンクロン・キャリアー』を召喚!」

「またシンクロンモンスター…!」

 

シンクロン・キャリアー

効果モンスター

地属性

機械族

レベル 2

攻撃力 0

 

続いて俺の場に登場したのは、背中にクレーンの様な機構を背負い、両手がウィンチになっている機械戦士、シンクロン・キャリアー。

さあ、行くぜ!

 

「俺はレベル1の綿毛トークンに、レベル1のジェット・シンクロンをチューニング!集いし願いが、新たな速度の地平へ誘う。光差す道となれ!シンクロ召喚、レベル2!希望の力、『フォーミュラ・シンクロン』!」

「シンクロモンスターも持っていやがるとは、しかもまたシンクロン…!」

 

フォーミュラ・シンクロン

シンクロ・効果モンスター/チューナー

光属性

機械族

レベル 2

守備力 1500

 

シンクロ召喚の演出と共に現れたのは、F1カーを模した胴体に手足が生えた機械戦士、フォーミュラ・シンクロン。

 

「シンクロンモンスターをシンクロ召喚の素材に使用した事で、シンクロン・キャリアーの効果発動!

それにチェーンして、シンクロ召喚したフォーミュラ・シンクロンの効果発動!

まずはフォーミュラ・シンクロンの効果で、ドロー!

次にシンクロン・キャリアーの効果で、『シンクロントークン』を守備表示で特殊召喚!」

「シンクロ召喚したのにモンスターが全然減っていねぇ…!」

 

シンクロントークン

地属性

機械族

レベル 2

守備力 0

 

驚く気持ちも分からなくは無いけど、まだまだ早いぜ!

 

「シンクロン・キャリアーが俺の場にいる限り、俺は通常召喚に加えてシンクロンモンスター1体を召喚出来る!この効果によって、シンクロン・キャリアーをリリースして『クイック・シンクロン』をアドバンス召喚!」

 

クイック・シンクロン

効果モンスター/チューナー

風属性

機械族

レベル 5

攻撃力 700

 

更に登場したのは、ガンマン人形の様な姿の機械戦士、クイック・シンクロン。

本来なら自分が持っている特殊召喚能力で出るのが普通だけど、どの道キャリアーの効果はこれ以上使えないし、今は手札を確保して置きたいからな。

 

「俺はレベル2のシンクロントークンと、レベル1の綿毛トークンに、今出したレベル5のクイック・シンクロンをチューニング!集いし希望が、新たな地平へ誘う。光差す道となれ!シンクロ召喚、レベル8!駆け抜けろ、『ロード・ウォリアー』!」

 

ロード・ウォリアー

シンクロ・効果モンスター

光属性

戦士族

レベル 8

攻撃力 3000

 

次にシンクロ召喚したのは、背中にマントらしき機構を羽織った黄金の機械戦士、ロード・ウォリアー。

まだまだ展開出来るけど、下準備は何時だって大事だ!

 

「ロード・ウォリアーの効果発動!デッキから『チューニング・サポーター』を守備表示で特殊召喚!」

 

チューニング・サポーター

効果モンスター

光属性

機械族

レベル 1

守備力 300

 

まだまだ終わらないと言わんばかりに、ロード・ウォリアーの背中のマントらしき機構から放たれた光から、鍋蓋を被った機械戦士、チューニング・サポーターが現れた。

ロード・ウォリアーって3000ある攻撃力もそうだけど、こういうリクルート効果もあるのが便利だよな、その分素材がきついがリクルート効果はカード毎にしか発動制限が掛かっていない、よって使い回しも出来なくは無い。

よし、此処で行くか!

 

「俺はレベル8のシンクロモンスター、ロード・ウォリアーに、レベル2のシンクロモンスター、フォーミュラ・シンクロンをチューニング!レベル10!集いし力が拳に宿り、鋼を砕く意志と化す!光差す道となれ!アクセルシンクロォォォォ!現れろ、『スターダスト・ウォリアー』!」

「あ、アクセルシンクロまでやりやがった!?俺にも出来ねぇのに!?」

 

スターダスト・ウォリアー

シンクロ・効果モンスター

風属性

戦士族

レベル 10

攻撃力 3000

 

今までのシンクロ召喚とは違い、フォーミュラ・シンクロンの身体から生成された2つの緑の環が直線状に並び、其処にロード・ウォリアーが背中の機構からブースターを吹かし突進、加速しながら潜り抜けるとその身が白く輝き、それを解き放った後には、スターダスト・ドラゴンを彷彿とさせる青白いボディの機械戦士、スターダスト・ウォリアーの姿があった。

これこそがこのデッキの『今』の切り札、スターダスト・ウォリアー。

だが、これで終わりだと思うなよ?

 

「更に魔法『貪欲な壺』発動!」

 

貪欲な壺(制限カード)

通常魔法

1:自分の墓地のモンスター5体を対象として発動出来る。そのモンスター5体をデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから2枚ドローする。

 

「貪欲な壺の効果で、俺の墓地にあるロード・ウォリアー、フォーミュラ・シンクロン、クイック・シンクロン、シンクロン・キャリアー、そしてダンディライオンをデッキに戻し、シャッフルの後に2枚ドロー!

更に更に今引いた魔法『機械複製術』発動!」

 

機械複製術

通常魔法

自分フィールド上に表側表示で存在する攻撃力500以下の機械族モンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターと同名モンスターを2体まで自分のデッキから特殊召喚する。

 

いやぁ、今引きで機械複製術が出て来るなんてな。

 

「機械複製術の効果で、俺のフィールドにいるチューニング・サポーターを、2枚デッキから守備表示で特殊召喚!

まだまだ行くぜ!手札の『シンクロン・エクスプローラー』を捨ててクイック・シンクロンを守備表示で特殊召喚!

俺はレベル1のチューニング・サポーター3体に、レベル5のクイック・シンクロンをチューニング!シンクロ召喚!再び駆け抜けろ、ロード・ウォリアー!

シンクロ召喚の素材に使った3体のチューニング・サポーターの効果発動!3枚ドロー!

まだまだ終わらねぇぜ!手札のダンディライオンを墓地へ送って、墓地のジェット・シンクロンの効果発動!コイツを守備表示で蘇生!

この効果のコストとして墓地へ送ったダンディライオンの効果で、2体の綿毛トークンを守備表示で特殊召喚!

俺はレベル1の綿毛トークンに、レベル1のジェット・シンクロンをチューニング!再び現れろ、フォーミュラ・シンクロン!

この時、自分の効果で蘇生したジェット・シンクロンは除外される!

シンクロ召喚したフォーミュラ・シンクロンの効果発動!ドロー!

ロード・ウォリアーの効果発動!デッキからシンクロン・キャリアーを守備表示で特殊召喚!

俺はレベル8のシンクロモンスター、ロード・ウォリアーに、レベル2のシンクロモンスター、フォーミュラ・シンクロンをチューニング!レベル10!アクセルシンクロォォォォ!並び立て、スターダスト・ウォリアー!」

「ま、またアクセルシンクロだと!?つーかどんだけ回すんだよお前!?」

『何時も思うが、なんと複雑怪奇な勝利の方程式だ…』

 

悪かったなアストラル、ごちゃごちゃ感満載で。

 

「まだまだぁ!魔法『死者蘇生』発動!」

 

死者蘇生(制限カード)

通常魔法

1:自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

「死者蘇生の効果で、墓地のフォーミュラ・シンクロンを守備表示で蘇生!

そしてフィールド魔法『スターライト・ジャンクション』発動し、カードを1枚セットしてターンエンド!」

 

スターライト・ジャンクション

フィールド魔法

『スターライト・ジャンクション』の1、2の効果は其々1ターンに1度しか使用出来ない。

1:自分フィールドのチューナー1体をリリースしてこの効果を発動出来る。リリースしたモンスターとレベルが異なる『シンクロン』モンスター1体をデッキから特殊召喚する。

2:相手ターンに自分がエクストラデッキからシンクロモンスターを特殊召喚した場合、フィールドのカード1枚を対象として発動する。そのカードを持ち主のデッキに戻す。

 

Yuya

LP 4000

手札 0

モンスター スターダスト・ウォリアー(攻撃表示)×2

      フォーミュラ・シンクロン(守備表示)

      綿毛トークン(守備表示)

      シンクロン・キャリアー(守備表示)

魔法・罠カード セット

フィールド魔法 スターライト・ジャンクション

 

それにしても、確かに先攻1ターン目とは思えない図だわな。

アクセルシンクロモンスターであるスターダスト・ウォリアーが2体並び立ち、他にも3体のモンスターが壁となって立ちはだかっている、魔法・罠カードには1枚だけとは言えセットカードがあり、俺の背後にはハイウェイを模したフィールド『スターライト・ジャンクション』が展開されている、これを無茶苦茶と言わずして何と言えばいいか、と相手は思うわな。

 

「随分とまあ回してくれたな、今度はこっちの番だ!俺のターン!ドロー!」

「スタンバイフェイズに罠『貪欲な瓶』発動!」

 

貪欲な瓶

通常罠

『貪欲な瓶』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:『貪欲な瓶』以外の自分の墓地のカード5枚を対象として発動出来る。そのカード5枚をデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから1枚ドローする。

 

そのセットカードはこの貪欲な瓶、罠カードとなり、ドロー出来るカードが1枚に減った代わりに、カードの種類関係なくデッキに戻す事が出来る様になった貪欲な壺、と言えばいいか。

やっぱこの『カードの種類関係なく』デッキに戻せるのは結構強い、何しろ制限カードとなっている魔法・罠カードも使い回し可能だからな。

 

「貪欲な瓶の効果で、俺の墓地にある貪欲な壺、ワン・フォー・ワン、死者蘇生、機械複製術、そしてシンクロン・エクスプローラーをデッキに戻し、シャッフルの後にドロー!」

「まだ動くとはな。だがもうセットカードは無い、こっちも動かさして貰うぜ!

まずは、俺のフィールドにモンスターが存在しない事で、『SR(スピードロイド)ベイゴマックス』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

SRベイゴマックス

効果モンスター

風属性

機械族

レベル 3

攻撃力 1200

 

スピードロイド?どっかで聞いた事ある様な…

 

「特殊召喚したベイゴマックスの効果発動!

デッキから『SRタケトンボーグ』を手札に加えるぜ!」

 

それにしても今出て来たベーゴマの様な機械モンスター、ベイゴマックスはサイバー・ドラゴンに似た様な条件で特殊召喚出来、其処から同じカテゴリのモンスターをサーチ出来るのか、中々強いな。

 

「次に、俺のフィールドに風属性モンスターが存在する事で、今手札に加えたタケトンボーグを守備表示で特殊召喚!」

 

SRタケトンボーグ

効果モンスター

風属性

機械族

レベル 3

守備力 1200

 

次に出て来たのは、竹とんぼを模した体躯の機械戦士、タケトンボーグ。

 

「タケトンボーグをリリースして効果発動!

デッキから『SR三つ目のダイス』を守備表示で特殊召喚!」

 

SR三つ目のダイス

効果モンスター/チューナー

風属性

機械族

レベル 3

守備力 1500

 

此処でチューナーをリクルートして来たか。

それにしても目のマークが3つある正四面体のダイスとは、どうも気色悪い感じだな。

 

「俺はレベル3のベイゴマックスに、レベル3の三つ目のダイスをチューニング!」

『誰だお前は!?』

 

ってユベル、いきなりどうした!?

 

「シンクロ召喚、レベル6!悪のカラクリを粉砕する『HSR(ハイスピードロイド)』、『魔剣ダーマ』ッ!」

「何処のス○イ○ー○ッだよそれ!?」

 

HSRマケンダーマッ…魔剣ダーマ

シンクロ・効果モンスター

風属性

機械族

レベル 6

攻撃力 2200

 

と、その口上と、何処からともなく聞こえて来たのど自慢の鐘っぽい音色、そして何故か起こった表記のブレに(俺から)突っ込まれながら登場したのは、けん玉を模した胴体、両手には其々その球を模した半球型の盾を持った機械戦士、魔剣ダーマ。

ああ、どっかで聞いた事あるなと思ったらコイツの事だった、その某アメリカンコミックを原作に持つ特撮ヒーローの様な名前で、ネタになっていたっけな。

それは兎も角、シンクロ召喚成功時に誘発する効果は持っていなかった筈、なら!

 

「魔剣ダーマのシンクロ召喚時、フォーミュラ・シンクロンの効果発動!

コイツは相手のメインフェイズ時、このカードを素材に含めたシンクロ召喚が出来る!」

「な、何だって!?俺のターンにもシンクロ召喚かよ!?」

「この効果で俺は、レベル2のシンクロン・キャリアーと、レベル1の綿毛トークンに、レベル2のフォーミュラ・シンクロンをチューニング!集いし願いが、新たな大空へ誘う。光差す道となれ!シンクロ召喚、レベル5!希望の風、『アクセル・シンクロン』!」

 

アクセル・シンクロン

シンクロ・効果モンスター/チューナー

闇属性

機械族

レベル 5

守備力 2100

 

ユーゴの驚きを他所に出現したのは、バイクを模した胴体に手足が生えた機械戦士、アクセル・シンクロン。

シンクロモンスターのチューナーである事、その効果が中々厄介な事もさることながら、今このタイミングで出したのは、

 

「相手ターン中に俺のエクストラデッキからシンクロモンスターを特殊召喚した事で、スターライト・ジャンクションの効果発動!

魔剣ダーマにはデッキに戻って貰うぜ!」

「な、何!?くっ!」

 

今出して来た魔剣ダーマを戻す為だ(ゲス顔)。

 

「だったら『SRダブルヨーヨー』を召喚!」

 

SRダブルヨーヨー

効果モンスター

風属性

機械族

レベル 4

攻撃力 1400

 

あ、そういえばまだ通常召喚していなかったっけ。

そんな俺を他所に登場したのは、両手にヨーヨー型の武器を持った機械戦士、ダブルヨーヨー。

 

「召喚したダブルヨーヨーの効果発動!

墓地にいる三つ目のダイスを守備表示で蘇生!」

 

これでまたシンクロ召喚の手筈は整ったか、と思った瞬間、

 

「む?この感じは…」

『遊矢、気を付けて。アイツのエクストラデッキから不穏な気配がする…』

『この気配、まさか…!』

「何だ?ああ、成る程、お前が行きたいわけか、良いぜ!存分に暴れて来い!」

 

何か言い知れぬ気配がした、それは何と言うか、ユートとデュエルした時と似ている様な…

 

「俺はレベル4のダブルヨーヨーに、レベル3の三つ目のダイスをチューニング!その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚、レベル7!『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』!」

 

その事態に警戒を強める俺達を他所に、ユーゴはシンクロ召喚を宣言、その只ならぬ気配がするモンスターが姿を現す…

 

 

 

 

 

事は無かった。

 

「あ、あれ?クリアウィング!?お前何処行ったんだよ!?」

 

シンクロ召喚の演出と共に現れる筈だったシンクロモンスターの姿が無い事に慌てふためくユーゴ。

それはそうだ、何故なら、

 

「はははは、ふははは、ふははは…無かった事にして置いたのさ!

お前が特殊召喚する際にスターダスト・ウォリアーをリリースして効果を発動した!その効果は、その特殊召喚を無効にして破壊するという物だ!」

「な、何ィ!?」

「情け無用の男、サカキユーヤッ!(キリッ)」

「何キメ顔でポーズしてんだよ!?」

 

いや、これ言うならやらないと駄目だろと思って。

 

「くそっ!ならカードを2枚セットしてターンエンド!」

「エンドフェイズに、このターンに自分の効果でリリースしたスターダスト・ウォリアーを攻撃表示で蘇生!」

 

Hugo

LP 4000

手札 2

モンスター なし

魔法・罠カード セット×2

 

セットカード2枚か、だけど!

 

「俺のターン!ドロー!

まずは魔法『ハーピィの羽根帚』発動!」

「な、何だって!?此処で羽根帚!?」

 

ハーピィの羽根帚(制限カード)

通常魔法

1:相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。

 

「ハーピィの羽根箒の効果で、お前の魔法・罠カードを全て破壊するぜ!」

「ぐぁっ!」

 

えーと、セットカードは『リミッター解除』と、『ダイスロール・バトル』か、後の奴は初めて見るが、モンスターがいないのにリミッター解除をセットしていたという事は、恐らく蘇生系か?

何にしろ除去しておいて良かった、これで心置きなく展開出来る!

 

「次にジャンク・シンクロンを召喚!」

 

ジャンク・シンクロン

効果モンスター/チューナー

闇属性

戦士族

レベル 3

攻撃力 1300

 

更にフィールドに登場したのは、オレンジ色の装甲を身に着けた機械戦士、ジャンク・シンクロン。

 

「召喚したジャンク・シンクロンの効果発動!墓地にいるシンクロン・キャリアーを守備表示で蘇生!」

 

コイツを出し、効果で蘇生した、となれば締めを飾るはアイツだ!

 

「俺は今蘇生したレベル2のシンクロン・キャリアーに、レベル3のジャンク・シンクロンをチューニング!集いし星が、新たな力を呼び起こす。光差す道となれ!シンクロ召喚、レベル5!出でよ、『ジャンク・ウォリアー』!」

 

ジャンク・ウォリアー

シンクロ・効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 5

攻撃力 2300

 

よし、行くぜ皆!

 

「バトルフェイズに入る!ジャンク・ウォリアーでダイレクトアタック!スクラップ・フィスト!」

「がはぁ!?」

 

Hugo LP 4000→1700

 

「スターダスト・ウォリアーでトドメだ!シューティング・ブラスト!」

「こうなったら徹底的にあがく!墓地にいる三つ目のダイスを除外して効果発動!その攻撃を無効にするぜ!」

「無駄なあがきだ!もう1体のスターダスト・ウォリアーでトドメだ!シューティング・ブラスト!」

「ぐは!?あ…」

 

Hugo LP 1700→-1300 LOSE

 

WINNER Yuya

 

スターダスト・ウォリアーによるストレートパンチによって敗北が決まると同時に、余りの衝撃で気絶したユーゴ。

さて、色々聞きたい事はあるがこの状況では無理、となれば、

 

「零児。打ち合わせの後すぐの連絡ですいませんが、宜しいでしょうか?」

『遊矢か。一体どうしたんだ?先程の打ち合わせの件で、何かあるのか?』

「いえ、それとは直接関係ないのですが、帰る途上で、恐らくは『シンクロ次元の俺』と思われるデュエリストと接触、デュエルを行い確保しました。早急な保護をお願いします」

『何?そうか、分かった。ならば関係の物を直ぐに向かわせる。しかしシンクロ次元からもやって来たか、まさかアカデミアの魔の手が…』

「そのデュエリストなのですが、俺の姿を見るや否や、「リンを何処へやった」と問い詰めて来ました。恐らくは…」

『少なくとも『融合次元の君』の魔の手はもう伸びている、という事か…』

 

零児を通じて色々聞き出すしかないか。



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37話_方舟の騎士達と、痺れる猛獣達

※今話以降、エレン視点となります


Side エレン

 

『続いてのニュースです。昨夜、舞網市の路地にて、男性と思われる、焼け焦げた遺体が見つかりました。男性の年齢は20代近く、焼損が激しい為衣服の特徴は分からず、腹部と思われる部分に外傷が見られる事から、死因は腹部に出来た傷による物と推定されています。また、左手に起動中のデュエルディスクを装着していた事から、男性はデュエル中に外部からの襲撃を受けたと、警察は見解を示しております。この事件に関して、一昨日の夕方にも同じ様な遺体が見つかっている事から、警察は同一犯による犯行の可能性も視野に、遺体の身元の確認と、事件のいきさつを詳しく調べております』

「またこの事件、なんてひどい事を…!」

「だよな母さん、信じらんねぇよ、これ…!」

 

本当、なんつー事件だよ、全く…!

朝早くに放送されている情報番組で流れた1つのニュースに、俺の向かい側の席で共に憤りを覚えている(遊矢兄ちゃんは昨日の夜『シンクロ次元の遊矢兄ちゃん』ことユーゴといざこざがあったそうでまだ寝ている)、金髪ロング(遊矢兄ちゃん曰く「結構前に染めた」)の美人でナイスバディな女性は、俺の義理の母さんで、遊矢兄ちゃんの実の母である(さかき)洋子(ようこ)

今じゃあ「お腹すいてそうな子を見るとついつい拾ってしまう」と言っては色んな動物を拾って来る(当の俺も遊矢兄ちゃんの所へ行きたいと思っていたのを、母さんが快諾して父さんや遊矢兄ちゃんを説得してくれたし)優しい人だけど、父さんと結婚する前はもう信じられない位に荒れていたそうで、此処舞網市で悪名を轟かせていた暴走族『舞網クィーンズ』のヘッド『流れ星洋子』としてブイブイ言わせていたらしく、それで色々トラブルもあったんだけど、その折に父さんと知り合い、色々ある内に改心、父さんと相思相愛となって結婚したとか。

その後も、遊矢兄ちゃんが生まれたりとか、俺が養子に入ったりとか、父さんが失踪したりとかで色々あったけど、それにもめげず女手1つで遊矢兄ちゃんや俺を見守ってくれている、自慢の母さんだ。

 

「ところでエレン、今日の大会、準々決勝から決勝まで一気に行うのよね?」

「ああ。結構ハードスケジュールだぜ」

「全力で戦ってきなさい!応援に行くから!」

「ははっサンキュー、母さん」

 

何処にでもありそうな親子の会話、もう少ししたらランサーズのデュエリストとして、デュエルアカデミアと戦う日々が来る、それまではこの時を大事にして行くぜ。

 

 

 

 

 

だけど俺達はまだ気付いていなかったんだ、デュエルアカデミアの魔の手は、もう入り込んでいる事に、そしてその結果が『今のニュース』となっている事に…

 

------------

 

『それでは舞網チャンピオンシップ、ジュニアクラスの準々決勝を開始します!まずは第1試合、おぉっとぉ、観客の皆が待ち望んだカードの実現だぁ!

まずは1人目、ジュニアユース、ジュニア共に快進撃の止まらない遊勝塾のトップバッター!今日もまた相手モンスターをしまっちゃうのか!鮎川アユ選手!

続いて2人目、こちらも遊勝塾が送り込んだスーパーデュエリスト!今日もまた相手のハートを直接痺れさせる!原田フトシ選手!

準々決勝第1試合は、遊勝塾生同士の激突となったぁ!』

「今日は負けないよ、フトシ!悪いモンスターはしまっちゃうからね!」

「それは僕の台詞だよ!アユをビリビリに痺れさせてあげる!」

『頑張れぇ!アユ!』

『頑張りなさいよ!フトシ!』

 

いよいよ始まった舞網チャンピオンシップ、ジュニアクラスの準々決勝、最初の対戦はアユとフトシの激突か。

2人共結構癖のあるデッキなんだよなぁ、さてどう転ぶか。

 

『ランダムセレクト!アクションフィールド、オン!『おひさまの谷』!

戦いの殿堂に集いしデュエリストが!モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!フィールド内を駆け巡る!見よ、これぞデュエルの最強進化系!アクショーン!』

「「『デュエル』!」」

 

先攻 Ayu LP 4000 VS 後攻 Futoshi LP 4000

 

「よしっ!私の先攻!

じゃあ、まずは手札の『コアキメイル・アイス』を墓地へ送って魔法『ワン・フォー・ワン』発動!」

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

「ワン・フォー・ワンの効果でデッキから『アクアアクトレス・テトラ』を守備表示で特殊召喚!」

 

アクアアクトレス・テトラ

効果モンスター

水属性

水族

レベル 1

守備力 300

 

ワン・フォー・ワンの効果で登場したのは、熱帯魚の一種であるネオンテトラがお洒落した様な姿のモンスター、アクアアクトレス・テトラ。

本来なら水中に居る筈の熱帯魚が、陸に打ちあげられてぴちぴち跳ねているのは何ともシュールな光景だけど、

 

「次にテトラの効果発動!

デッキから永続魔法『水舞台(アクアリウム・ステージ)』を手札に加えてそのまま発動するよ!」

 

水舞台

永続魔法

1:自分フィールドの水属性モンスターは、水属性以外のモンスターとの戦闘では破壊されない。

2:自分フィールドの『アクアアクトレス』モンスターは相手モンスターの効果を受けない。

3:このカードがフィールドから墓地へ送られた場合、自分の墓地の水族モンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを特殊召喚する。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は水族モンスターしか特殊召喚出来ない。

 

カンカン照りだったアクションフィールドが一瞬の内に、みこっちゃんが1回戦でデュエルした時のフィールド『スフィアプール』の様な水中フィールドと化し、テトラは一瞬の内に活発に泳ぐ様になった。

これがアユのデッキ『水族アクアリウム』の戦略、テトラの効果で永続魔法である『アクアリウム』カードをサーチし、それで場を整えていき、展開して行くという物だぜ。

 

「続いて、墓地のアイスを除外して『水の精霊アクエリア』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

水の精霊アクエリア

効果モンスター

水属性

水族

レベル 4

攻撃力 1600

 

その水の一部が何やら凝縮したように集まり、人型に形成されると、其処に水で出来た人の様な姿の精霊、アクエリアが登場した。

此処まででまだアユは通常召喚権を使っていない、という事は、

 

「更に『豪雨の結界像』を召喚!」

 

豪雨の結界像

効果モンスター

水属性

水族

レベル 4

攻撃力 1000

 

「そして、アクエリアと結界像でオーバーレイ!2体のレベル4モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!満たされない魂を乗せた箱舟が、光の届かない深淵より浮上する!さあ悪いモンスターはしまっちゃうよ!『No.101S(サイレント)H(オナーズ)Ark(アーク)Knight(ナイト)』!」

 

No.101S・H・ArkKnight

エクシーズ・効果モンスター

水属性

水族

ランク 4

攻撃力 2100

ORU 2

 

『で、出たぁ!アユ選手の切り札、S・H・ArkKnightが、この水で満たされたフィールドに浮き上がってまいりました!果たして今日はどんなモンスターをしまっちゃうのか!』

 

やっぱりArkKnight出してキター!

アユがアクエリアと、蛙みたいな姿の像を使ってエクシーズ召喚したのは、どっからどう見ても機械族にしか見えない戦艦型エクシーズモンスター、遊矢兄ちゃんの前世である九十九遊馬の親友だったシャークって人の切り札であるArkKnight。

MCの人が言っている通りArkKnightの効果は、相手フィールドの特殊召喚された表側攻撃表示のモンスターを、自分自身のオーバーレイ・ユニットとして文字通り「しまっちゃう」強烈な物。

とは言えまだ先攻1ターン目、フトシの場には勿論、モンスターなどいないけど…

 

「これでターンエンドだよ!」

 

Ayu

LP 4000

手札 1

モンスター アクアアクトレス・テトラ(守備表示)

      No.101S・H・ArkKkight(攻撃表示)

魔法・罠カード 水舞台

 

「いきなりArkKnightとか痺れるなぁ!だけど僕も負けないよ!僕のターン!ドロー!

こっちも手札の『エレキリギリス』を墓地へ送ってワン・フォー・ワン発動!

効果でデッキから2枚目のエレキリギリスを守備表示で特殊召喚!」

 

エレキリギリス

効果モンスター

光属性

雷族

レベル 1

守備力 0

 

うわ、フトシの奴あのロックを使う気かよ…

フトシの場に登場したのは、キリギリスの姿を模した電流、エレキリギリス。

レベルはワン・フォー・ワンで出せるレベル1で、ステータスは攻守ともに0、なんだけど、

 

「次に魔法『死者蘇生』発動!」

「え゛!?」

 

死者蘇生(制限カード)

通常魔法

1:自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

アユ、思わず固まる気持ちも分かるぜ。

 

「死者蘇生の効果で、たった今墓地へ送ったエレキリギリスを攻撃表示で特殊召喚!

よしっ!これでエレキリギリスロックの完成だよ!くぅ~2体のエレキリギリスのコンビ愛、痺れるぅ!」

『あぁっと完成してしまった!フトシ選手が出した、エレキリギリスの効果がダブった事による、強固なロックが!これはアユ選手、大ピンチ!』

 

エレキリギリスの効果、それは『自分自身以外の『エレキ』モンスターを攻撃・効果対象に出来ない』という物で、この『自分自身以外の『エレキ』モンスター』は、他のエレキリギリスも含まれる。

つまりアユは現時点で、フトシの場の『エレキ』モンスターを攻撃出来ず、効果の対象にも選べない。

良く知られている『切り込み隊長ロック』よりも強烈なこのロック、突破するとしたら『ブラック・ホール』の様な全体除去、『地砕き』や俺のアーティファクトデッキに入っているモラルタ等の『対象を取らない』除去カードを使うしかない。

このエレキリギリスを始めとした低ステータスながら強力な効果を持った『エレキ』モンスターを展開して行くのが、フトシの『エレキ』デッキの戦略だぜ。

あ、そういえばまだ手札3枚残っていて、通常召喚権も使っていない。

 

「続いて『エレキングコブラ』を召喚!」

 

エレキングコブラ

効果モンスター

光属性

雷族

レベル 4

攻撃力 1000

 

で、その通常召喚権を使って出したのは、エレキデッキのメインエンジンと言って良い、毒蛇の姿を模した電流、エレキングコブラ。

 

「バトルフェイズに入るよ!

エレキングコブラで、自分自身の効果によってダイレクトアタック!」

「あばばばば!?」

 

Ayu LP 4000→3000

 

「よしっ!ダイレクトアタックでダメージを与えたからエレキングコブラの効果発動!

デッキからチューナーモンスター『エレキンギョ』を手札に加えるよ!」

 

そう、エレキングコブラはダイレクトアタッカーである事に加え、ダイレクトアタックでダメージを与えれば『エレキ』モンスターをサーチ出来る。

これだけでもエレキデッキでは必須級の効果なのだが、今フトシの場はエレキリギリスロックが完成している状態、つまりこのダイレクトアタックを妨害する術は限られている(アクションマジック『回避』は何故か攻撃モンスターを『対象に取る』し、カウンター罠である『攻撃の無力化』も同様)ので、このサーチを実行できるのは、デッキによっては確定的に明らかなんだよなぁ。

 

「メインフェイズ2に入って、永続魔法『平和の使者』発動!カードを1枚セットしてターンエンドだよ!」

 

平和の使者

永続魔法

フィールド上に表側表示で存在する攻撃力1500以上のモンスターは攻撃宣言をする事が出来ない。

このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に100ライフポイントを払う。または、100ライフポイントを払わずにこのカードを破壊する。

 

Futoshi

LP 4000

手札 1(エレキンギョ)

モンスター エレキリギリス(守備表示)

      エレキリギリス(攻撃表示)

      エレキングコブラ(攻撃表示)

魔法・罠カード 平和の使者

        セット

 

しかも『念の為のお守り』的に平和の使者も発動しやがった、これはアユにとっては物凄く動きにくい、フトシにとっては恐らく次のターンに、手札のエレキンギョを召喚して行うシンクロ召喚の為に心強い布陣だぜ。

さあどうする、アユ?

 

「くっ!私のターン!ドロー!お…?」

 

ん?なんか今『カンコーン!』なんて効果音が聞こえて来たんだけど…

 

「よし!まずは魔法『ハーピィの羽根帚』発動!」

「えぇ!?」

 

ハーピィの羽根帚(制限カード)

通常魔法

1:相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。

 

「ハーピィの羽根箒の効果で、フトシの魔法・罠カードを全て破壊するよ!」

「わわ!『エレキャンセル』が!」

 

セットしていたのそれかよ。

 

「あ、危ないなぁ、でもこれで心置きなく展開出来るよ!

次にテトラの効果発動!

デッキから永続魔法『水舞台装置(アクアリウム・セット)』を手札に加えてそのまま発動するよ!」

 

水舞台装置

永続魔法

1:自分フィールドの水属性モンスターの攻撃力・守備力は300アップする。

2:自分フィールドの『アクアアクトレス』モンスターの攻撃力・守備力は300アップする。

3:このカードがフィールドから墓地へ送られた場合、自分の墓地の水族モンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを特殊召喚する。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は水族モンスターしか特殊召喚出来ない。

 

アクアアクトレス・テトラ 守備力 300→600→900

No.101S・H・ArkKnight 攻撃力 2100→2400

 

テトラによってサーチされた水舞台装置が発動されると、水で満たされたアクションフィールドに、竜宮城を模したと思われる舞台装置が出現し、テトラとArkKnightがパンプアップされた。

 

「続いて『RUM-バリアンズ・フォース』発動!」

「や、やば!?」

 

RUM-バリアンズ・フォース

通常魔法

自分フィールド上のエクシーズモンスター1体を選択して発動出来る。選択したモンスターと同じ種族でランクが1つ高い『CNo.』または『CX』と名の付いたモンスター1体を、選択したモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。その後、相手フィールド上にエクシーズ素材が存在する場合、相手フィールド上のエクシーズ素材1つを、この効果で特殊召喚したエクシーズモンスターの下に重ねてエクシーズ素材とする。

 

まさかとは思うが、ドローフェイズでドローしたのそれだったのか?

だとしたらあの効果音が聞こえて来たのも分かるぜ。

 

「バリアンズ・フォースの効果で、ArkKnightのオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオスエクシーズ・チェンジ!満たされない魂の守護者が、暗黒の騎士となって光を砕く!さあ悪いモンスターはドンドンしまっちゃうよ!『CNo.101S・H・Dark(ダーク)Knight』!」

 

CNo.101S・H・DarkKnight

エクシーズ・効果モンスター

水属性

水族

ランク 5

攻撃力 2800→3100

CORU 3

 

アユのArkKnightが、バリアンズ・フォースの効果で変身(というか進化?)したのは、さっきまでの機械族っぽい外見から一転して戦士族っぽい姿になった(だけど種族は相変わらず水族)エクシーズモンスター、DarkKnight。

元となったArkKnightが持っていた「しまっちゃう」効果は、守備表示であろうと裏側表示であろうと関係なくなった上にオーバーレイ・ユニットを使う必要が無くなり(ArkKnightの時は2つ必要、つまり実質的に1回ぽっきりだった)、破壊耐性の代わりに自己再生効果も付いた、まさに強化形態だぜ。

とは言っても「しまっちゃう」効果はArkKnight同様に『対象を取る』効果、エレキリギリスロックが未だ健在の中でそれは無理。

だけどそれが分かっていながら、アユが今回DarkKnightを出したのは、そしてフトシが狼狽えたのは、それが理由じゃないぜ。

 

「更に、DarkKnightのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて、オーバーレイ・ネットワークを再構築!エクシーズ召喚!正義の氷剣が、あらゆる妨害をも打ち破るよ!『No.21氷結のレディ・ジャスティス』!」

「や、やっぱりそれぇ!?」

 

No.21氷結のレディ・ジャスティス

エクシーズ・効果モンスター

水属性

水族

ランク 6

攻撃力 500→3500→3800

ORU 3

 

そう、本当の理由は今出した、騎士の様な姿の女の子(しつけぇ様だが水族だぜ)、レディ・ジャスティスの、

 

「そして、レディ・ジャスティスのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!

フトシの守備表示モンスターを全て破壊するよ!」

「う、うわぁ!?」

 

No.21氷結のレディ・ジャスティス 攻撃力 3800→2800

 

この効果の為だぜ。

相手の守備表示モンスターを全て破壊するという、『邪悪なるバリア―ダーク・フォース―』みたいな効果、今フトシの場にいる守備表示モンスターは、2体いるエレキリギリスの片方だけだが、全体破壊効果は『対象を取らない』、これによってエレキリギリスロックは一部崩壊。

何時も思うけど、トップデックTUEEEE!

 

「よし!テトラを攻撃表示にしてバトルフェイズに入るよ!テトラでエレキリギリスを攻撃!」

「うわぁ!?」

 

アクアアクトレス・テトラ 攻撃力 900 VS エレキリギリス 攻撃力 0

 

Futoshi LP 4000→3100

 

「レディ・ジャスティスでエレキングコブラを攻撃!ジャッジメント・アイス!」

「わぁぁぁぁ!?」

 

No.21氷結のレディ・ジャスティス 攻撃力 2800 VS エレキングコブラ 攻撃力 1000

 

Futoshi LP 3100→1300

 

「これでターンエンドだよ!」

 

Ayu

LP 3000

手札 0

モンスター アクアアクトレス・テトラ(攻撃表示)

      No.21氷結のレディ・ジャスティス(攻撃表示)

魔法・罠カード 水舞台

        水舞台装置

 

「ぼ、僕のターン!頼むよ、ドロー!

モンスターをセットしてターンエンド…」

 

Futoshi

LP 1300

手札 1

モンスター セット

魔法・罠カード なし

 

ありゃ、こりゃぁアユの勝ちか?

 

「私のターン!ドロー!

まずはテトラの効果発動!

デッキから永続魔法『水照明(アクアリウム・ライティング)』を手札に加えてそのまま発動するよ!」

 

水照明

永続魔法

1:『水照明』は自分フィールドに1枚しか発動出来ない。

2:自分の『アクアアクトレス』モンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算時に発動する。その自分のモンスターの攻撃力・守備力はダメージ計算時のみ倍になる。

3:このカードがフィールドから墓地へ送られた場合、自分の墓地の水族モンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを特殊召喚する。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は水族モンスターしか特殊召喚出来ない。

 

展開を緩めるつもりは無いと言わんばかりに、テトラによってサーチされた水照明を発動すると、水で満たされたフィールドに光を放つ球体が投入された。

 

「このままバトルフェイズに入るよ!テトラでセットモンスターを攻撃!」

「セットモンスターはエレキンギョだよ…」

「この時、水照明の効果発動!テトラの攻撃力・守備力が倍になるよ!」

 

アクアアクトレス・テトラ 攻撃力 900→1800 VS エレキンギョ 守備力 0

 

水照明によって投入された球体から放たれた光がテトラを照らすと、それによって元気になったテトラが、フィールドに出現した金魚の姿を模した電流、エレキンギョを突進して吹っ飛ばした。

まあ最善を尽くすと言う意味ではデュエリストとして当然だけど、見知った仲と考えるとオーバーキルだよなぁ。

 

「レディ・ジャスティスでトドメだよ!ジャッジメント・アイス!」

「ま、負けた…!」

 

Futoshi LP 1300→-1500 LOSE

 

WINNER Ayu

 

『決まったぁ!準々決勝第1試合の勝者は、フトシ選手のロックを見事に打ち破った、アユ選手!』

「いやぁ負けちゃったか、でも痺れる位良いデュエルだったよ、アユ!次も頑張ってね!」

「うん!フトシの分も頑張って来るよ!」



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38話_可能性の竜と、爆発力の不死鳥

「マジックテンペスターの効果発動!私のフィールドにいるカード達のカウンターを全て取り除いて4000バーンダメージ!ディ○イン・○スター!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

『決まったぁ!第2試合の勝者は、先攻1ターンで超巨大魔力砲を発射して1ターンキルを決めたマリア選手!いやぁ、物凄い砲撃でした!』

 

「CCC鎧重化身ロック・アーマーでダイレクトアタック」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

『決まったぁ!第3試合の勝者は、相手の力を利用した合気道の如きデュエルを見せた零羅選手でした!』

 

マリアと零羅は勝ったか、まあ順当な結果だな。

 

「ちょっと待って明らかに私のデュエルシーン殆ど無くなっているのだ!おいこれクソアメリカンの陰謀か何かか!?」

 

何かマリアがメタい事言っているけど気にする事は無いな、零羅の使っているデッキだけど、『CC』ってカテゴリのカードが多く入っているんだよな。

その戦略もMCの人が言っていた通り相手のカードの効果をコピーしたり、それに対するメタ的な効果を発揮するカードを使ったりと、とにかく『相手に合わせたデュエル』って感じだった。

中々トリッキーで面白いデュエルだったけど、1つ気になる事があった。

 

なんか零羅の奴、表情が出ないのはまだしも(遊矢兄ちゃんも『完全決闘』デッキを使う時とかはポーカーフェイスだし)、無感情と言うか、機械的と言うか、ともかくまるで『デュエルロボがやっている様な』デュエルをしているんだ。

それだけならまだ冷静さの裏返しと言えるんだけど、デュエルを始めた時、何処か怯えた様な素振りも見せていたんだ、まるで誰かに強制されているかの様な。

何でそんな風にデュエルするんだよ、デュエルはお互いに楽しむ為のモノじゃねぇか…

 

------------

 

『舞網チャンピオンシップ、ジュニアクラスは早くも準々決勝の最終試合となりました!果たして準決勝への最後の切符を手にするのは、前回のディフェンディングチャンピオンか、或いは新鋭か!

まずは1人目、前回のディフェンディングチャンピオンが前評判通りの実力を見せ付けながら再び舞い降りた!その無限の可能性の一端を、今日もまた見せるのか!エレン・アヴェニール選手!

続いて2人目、遊勝塾が送り込んだリーサルウェポン!今日もまた相手フィールドを爆破する!山城タツヤ選手!

第1試合に続き、またしても遊勝塾生同士の激突となったぁ!』

「おっしゃあ!負けないぜタツヤ!」

「僕だって負けませんよ、エレン!」

 

零羅について色々気になる事はあるけど、それもこのデュエルでタツヤに勝たない限りは何ともしようが無い、今はこのデュエルで勝って見せるぜ!

行くぜタツヤ!

 

『両者ともに気合十分の様です、それでは行きましょう!ランダムセレクト!アクションフィールド、オン!『トゥーンストリート』!』

 

な、なんだこのアクションフィールド?

どっかの鼠楽園の某エリアみたいな、アニメチックな空間だなぁ。

 

『戦いの殿堂に集いしデュエリストが!モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!フィールド内を駆け巡る!見よ、これぞデュエルの最強進化系!アクショーン!』

「「『デュエル』!」」

 

先攻 Elen LP 4000 VS 後攻 Tatsuya LP 4000

 

よしっ俺の先攻か!

 

「俺のターン!

まずは手札の『Sin真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)』を墓地へ送って魔法『紅玉の宝札』発動!」

 

紅玉の宝札

通常魔法

『紅玉の宝札』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:手札からレベル7の『レッドアイズ』モンスター1体を墓地へ送って発動出来る。自分はデッキから2枚ドローする。その後、デッキからレベル7の『レッドアイズ』モンスター1体を墓地へ送る事が出来る。

 

今大会で俺が使っているデッキは『レッドアイズ』。

『真紅眼の黒竜』という、デュエルモンスターズでも最も有名だと言っても過言じゃ無いモンスターカードと、その関連カードで構成されたデッキで、その『蒼き龍は勝利をもたらす。しかし、紅き竜がもたらすのは勝利にあらず、可能性なり』という逸話(遊矢兄ちゃんから聞いた。ちなみにその逸話に出て来た『蒼き龍』は『青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)』らしい)の通り、幅広い切り札と戦略が特徴だ。

 

「紅玉の宝札の効果で2枚ドローし、その後デッキから『真紅眼の黒炎竜(レッドアイズ・ブラックフレアドラゴン)』を墓地へ送るぜ!」

 

えーと、引いたカードは…

お、これは『アイツ』を出せそうだ!

 

「次に手札の『真紅眼の黒竜』を墓地へ送って魔法『ワン・フォー・ワン』発動!」

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

「ワン・フォー・ワンの効果でデッキから『伝説の黒石(ブラック・オブ・レジェンド)』を守備表示で特殊召喚!」

 

伝説の黒石

効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 1

守備力 0

 

ワン・フォー・ワンの効果によってデッキから出て来たのは、何やら赤いオーラを放つ黒い石(但しドラゴン族だ)。

レベル1でステータスも攻守0と、どこら辺が『伝説』なんだと突っ込まれそうだけど、

 

「今出した伝説の黒石をリリースして効果発動!デッキから『真紅眼の凶雷皇(レッドアイズ・ライトニング・ロード)―エビル・デーモン』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

真紅眼の凶雷皇―エビル・デーモン

効果モンスター/デュアル

闇属性

悪魔族

レベル 6

攻撃力 2500

 

その赤いオーラが強大化すると共に、その姿を、黒い龍の様な出で立ちの悪魔、エビル・デーモンへと変えて行く。

まあ演出を見ると変身したみたいだけど、実態は『レッドアイズ』のリクルート。

といっても上級モンスターをリクルート出来る効果が無茶苦茶なのは勿論(レベル1しか出せない上に手札コストを要求するワン・フォー・ワンですら制限カードである事を考えればなぁ)であり、それを考えれば『伝説』という名に恥じないと思うぜ。

ただ、今回コイツを出したのはそのまま壁になって貰うとかでは無いんだ。

 

『更に魔法『融合』発動!』

 

融合

通常魔法

1:自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「俺のフィールドの、通常モンスター扱いとなっているエビル・デーモンと、手札の『レッドアイズ』通常モンスター、真紅眼の黒竜を融合!

古より伝わりし可能性の竜と雷鳴を司る悪魔が交わりし黒き悪魔竜よ、新たなる力を得て再び降臨せよ!融合召喚!『悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴン』!」

「で、出たぁ!エレンの切り札の1枚が!」

 

悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴン

融合・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 9

攻撃力 3200

 

出した理由は、今しがた降臨した龍とも悪魔とも言える姿の黒と赤のドラゴン、ブラック・デーモンズ・ドラゴンを出す為だ。

そして、まだ終わりじゃないぜ!

 

「そして魔法『龍の鏡(ドラゴンズ・ミラー)』発動!」

「最後の1枚がそれ!?ま、まさか…!」

 

龍の鏡

通常魔法

1:自分のフィールド上または墓地から、融合モンスターカードによって決められたモンスターをゲームから除外し、ドラゴン族の融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

そう、そのまさかだぜタツヤ!

 

「墓地にある、伝説の黒石、Sin真紅眼の黒竜、真紅眼の黒竜2枚、そして真紅眼の黒炎竜を除外して融合!

ありとあらゆる龍の力を得た、最強のドラゴンよ!今こそ共にその降臨を宣言する!

『粉砕』!

『玉砕』!

『大喝采』!

融合召喚!『F(ファイブ)G(ゴッド)D(ドラゴン)』!」

『ぎゃぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!』

 

F・G・D

融合・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 12

攻撃力 5000

 

『で、出たぁ!エレン選手、2体のドラゴン族融合モンスターを出したばかりか、その2体目に強大なるステータスを誇るF・G・Dを君臨させた!そのレベルは12、攻守は5000!共にデュエルモンスターズ史上最大です!』

 

いやぁ、ステータスが全てでは無いと言っても、やっぱ此処までの弩級モンスターを出すのは気持ちいいな。

ブラック・デーモンズ・ドラゴンに並び立つ様に登場したのは、流星の岩龍(メテオ・ドラゴン)蒼き海龍(アクア・ドラゴン)暴虐の炎龍(タイラント・ドラゴン)碧石の風龍(エメラルド・ドラゴン)、そして邪悪な闇龍(エビルナイト・ドラゴン)の首を持った巨龍、F・G・D。

 

「俺はこれでターンエンドだ!行くぜ、F・G・D!」

『ギャオッ!』

 

Elen

LP 4000

手札 0

モンスター 悪魔龍ブラック・デーモンズ・ドラゴン(攻撃表示)

      F・G・D(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

「うわぁ、いきなり無茶苦茶なフィールドですね…

ですが僕も負けませんよ!僕のターン!ドロー!

僕も手札の『ヴォルカニック・カウンター』を墓地へ送ってワン・フォー・ワン発動!

デッキから『ヴォルカニック・バレット』を守備表示で特殊召喚!」

 

ヴォルカニック・バレット

効果モンスター

炎属性

炎族

レベル 1

攻撃力 0

 

俺の場に並ぶ2体のドラゴンにたじろぎながらも、己のデュエルをする!と言わんばかりにドローしたタツヤ、そのフィールドに最初に出て来たのは、炎を纏った弾丸の様なモンスター、ヴォルカニック・バレット。

 

「次に、『グリーン・ガジェット』を召喚!」

 

グリーン・ガジェット

効果モンスター

地属性

機械族

レベル 4

攻撃力 1400

 

「召喚したグリーン・ガジェットの効果発動!

デッキから『レッド・ガジェット』を手札に加えます!」

 

次に出て来たのは、緑色のボディに所々歯車状の機構が組み込まれたロボット、グリーン・ガジェット。

そう、タツヤのデッキは『ガジェット』。

各種ガジェットの、召喚・特殊召喚された時に発動するサーチ効果を用いて戦線を維持したり、『二重召喚』等の召喚権を増やすカードを駆使してエクシーズ召喚したりといった戦略が基本なんだけど、

 

「続いてこっちも融合発動!

今手札に加えたレッド・ガジェットと、フィールドのヴォルカニック・バレットを融合します!

全てを木っ端微塵にする爆撃機が、不死鳥の炎を纏って今飛来します!融合召喚!『重爆撃禽ボム・フェネクス』!」

 

重爆撃禽ボム・フェネクス(制限カード)

融合・効果モンスター

炎属性

炎族

レベル 8

攻撃力 2800

 

『タツヤ選手も切り札を出した!フィールドに現れし、炎を纏った爆撃機、ボム・フェネクス!いやぁ、何とも熱そうな身体、見ているこっちが暑くなります!』

 

炎族モンスターも混ぜ、コイツをエースカードとした本人曰く『バーンガジェット』という物。

その効果は制限カードに指定される程の物で、

 

「カードを2枚セットしてボム・フェネクスの効果発動!

フィールドに存在するカードの数×300、合計1800のバーンダメージを、エレンに与えます!不死魔鳥大空襲(フェネクス・ビッグ・エアレイド)!」

「うぉぉ(ドガガガガガガァン!)ぉぉぉ!」

 

Elen LP 4000→2200

 

場にカードがあればある程デカくなるバーンダメージを与える、という物、ていうかすげー痛いんだけど、爆破その物より爆風で吹っ飛んできたがれきで痛いんだけど!

遊矢兄ちゃん曰く、コイツが無制限だった頃は、コイツの効果を使い回した先攻1ターンキルが横行していたらしく、その度に関連カードが制限入りした一方で、コイツ自体は暫く放置されたとか何とか、おい運営、頭おかしいだろ!

 

「更に、今セットした魔法『融合回収』発動!」

 

ってセットしていたカードそれかよ!

 

融合回収

通常魔法

自分の墓地に存在する『融合』魔法カード1枚と、融合に使用した融合素材モンスター1体を手札に加える。

 

「融合回収の効果で、融合とレッド・ガジェットを手札に加えて、その融合を発動!

フィールドのボム・フェネクスとグリーン・ガジェットを融合します!

機械仕掛けの猛獣が、巨大爆弾を自らに組み込んで今特攻します!融合召喚!『起爆獣ヴァルカノン』!」

 

起爆獣ヴァルカノン

融合・効果モンスター

地属性

機械族

レベル 6

攻撃力 2300

 

うわ出たぁ!

タツヤが更に出して来たのは、両肩にバルカンの様な機構を持った機械仕掛けの猛獣、ヴァルカノン。

ヤヴァイな、この効果を防げないと…!

 

「融合召喚したヴァルカノンの効果発動!

エレンの場にいるブラック・デーモンズ・ドラゴンと、ヴァルカノンを破壊します!融爆!」

「させるか!それにチェーンしてアクションマジック『透明』発動!」

「なっ!?」

 

透明

アクションマジック

1:自分フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。このターン、そのモンスターは相手の効果の対象にならず、効果も受けない。

 

まあ、既に持っているんだけどな。

身体に組み込んだ爆弾を着火させつつ、ブラック・デーモンズ・ドラゴンに突進して行ったヴァルカノンだったけど、突如として標的であるブラック・デーモンズ・ドラゴンの姿が消え、

 

「透明の効果で、ブラック・デーモンズ・ドラゴンは効果を受けない!よってヴァルカノンだけが破壊されるぜ!」

「ヴァ(チュドォォォォォ!)、ヴァルカノン!」

 

後に残ったヴァルカノンだけが自爆した。

その無念すぎる自爆に気が折れそうになったタツヤだけど、

 

「くっ!だけど僕のターンは終わっていませんよ!500ライフポイントを払って、墓地にあるヴォルカニック・バレットの効果発動!

デッキから2枚目のヴォルカニック・バレットを手札に加えます!

まだまだ!セットしていた魔法『貪欲な壺』発動!」

 

Tatsuya LP 4000→3500

 

貪欲な壺(制限カード)

通常魔法

1:自分の墓地のモンスター5体を対象として発動出来る。そのモンスター5体をデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから2枚ドローする。

 

「貪欲な壺の効果で、僕の墓地のヴォルカニック・バレット、ヴォルカニック・カウンター、グリーン・ガジェット、ボム・フェネクス、ヴァルカノンをデッキに戻して、2枚ドロー!

よし、今引いた2枚目の融合発動!

手札のレッド・ガジェットとヴォルカニック・バレットを融合します!

融合召喚!再び舞い降りて下さい、ボム・フェネクス!」

 

持ち直して再び行動した、って今引きで融合引いたのかよ!?

 

「カードを1枚セットしてボム・フェネクスの効果で1200ダメージ!不死魔鳥大空襲!」

「またか(ドガガガガガガァン!)ぁぁぁぁ!」

 

Elen LP 2200→1000

 

「ターンエンドです!行きますよ、ボム・フェネクス!」

 

Tatsuya

LP 3500

手札 0

モンスター 重爆撃禽ボム・フェネクス(攻撃表示)

魔法・罠カード セット

 

何とか1ターンキルは防げたか、なら今度はこっちの番だ!

 

「俺のターン!ドロー!

このままバトルフェイズだ!

ブラック・デーモンズ・ドラゴンでボム・フェネクスを攻撃!

更にアクションマジック『巨大化の茸』発動!対象は、ブラック・デーモンズ・ドラゴンだ!」

 

巨大化の茸(今作オリジナルカード)

アクションマジック

1:フィールド上のモンスター1体を対象として発動する。そのモンスターの持ち主のライフポイントが対戦相手より少ない場合、そのモンスターの攻撃力は元々の攻撃力を倍にした数値になる。そのモンスターの持ち主のライフポイントが対戦相手より多い場合、そのモンスターの攻撃力は元々の攻撃力を半分にした数値になる。

 

え、どっかの配管工じゃねぇかって!?気にすんな!

 

「巨大化の茸の効果で、ブラック・デーモンズ・ドラゴンの攻撃力は倍になるぜ!」

「や、やば!?チェーンしたいけどブラック・デーモンズ・ドラゴンの効果で出来ないんだった!」

「そういう事だぜ、タツヤ!行くぜ!シューティングスター・フレア!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴン 攻撃力 3200→6400 VS 重爆撃禽ボム・フェネクス 攻撃力 2800

 

Tatsuya LP 3500→-100 LP

 

WINNER Elen

 

『決まったぁ!準々決勝最終試合の勝者は、タツヤ選手のバーンの嵐を凌ぎ切ったエレン選手!いやぁ、鮮やかなワンショットキルでした!』

「あいたたた、負けちゃいましたか…。

エレン、絶対に2連覇して下さいね!」

「おぅ、タツヤ!絶対にやって見せるぜ!」

 

これでベスト4、2連覇の夢も近いぜ!



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39話_INNOCENT STARTER、無垢なる始動者

いよいよ舞網チャンピオンシップ、ジュニアクラスも準決勝、その第1試合となる次の試合で、アユとマリア、勝った方が、決勝で俺か零羅とチャンピオンの座を賭けて戦う事になる。

さあこのデュエル、どっちに転ぶかな?

 

『舞網チャンピオンシップ、ジュニアクラスもいよいよ大詰めとなってまいりました!準決勝第1試合を開始いたします!その準決勝に臨む、ベスト4に名を連ねたデュエリスト達を紹介します!

まずは1人目!その可愛いルックスとは裏腹な、トリッキーなデュエルで勝ち上がって来た遊勝塾のプリンセス!これまで様々なモンスターを「しまって」来ましたが、このデュエルでもそうなるのか!鮎川アユ選手!

続いて2人目!此処までのデュエル全てバーンダメージによる1ターンキルで勝ち上がって来た遊勝塾の魔砲少女!今回、どれだけのバーンダメージを叩き込んで勝負を決めるのか!マリア・デックス選手!』

「負けないよ、マリア!絶対に勝って、エレンと決勝でデュエルするんだからね!」

「アユお姉ちゃんが相手でも絶対に負けないのだ!決勝であのクソアメリカンをボコボコにするまで!」

『両者白熱しています!それでは始めましょう!ランダムセレクト!アクションフィールド、オン!『ビッグブルー』!』

 

おお、中々格好良いフィールドじゃん!

MCの進行と共に展開されたのは、海洋都市と言う表現がピッタリな水上アクションフィールド。

 

『戦いの殿堂に集いしデュエリストが!モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!フィールド内を駆け巡る!見よ、これぞデュエルの最強進化系!アクショーン!』

「「『デュエル』!」」

 

先攻 Maria LP 4000 VS 後攻 Ayu LP 4000

 

うわ、マリアの奴が先攻かよ…

 

「私の先攻!お…!

そしてファイナルターン!」

「え゛!?もうキーパーツが揃っているの!?」

『あぁっとマリア選手!初手を見ただけでファイナルターン宣言です!まさか、先攻1ターンキルする為のパーツが揃ったと言うのか!』

 

マリアのファイナルターン宣言を聞いて、すかさずアクションフィールドを探しに出たアユ。

マリアの性格的にあの言葉はハッタリでは無い筈、良いカードを見つけないとやばい!

 

「まずは『召喚僧サモンプリースト』を召喚!召喚時にぎっくr…守備表示にするのだ」

 

召喚僧サモンプリースト(制限カード)

効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 4

守備力 1600

 

最初に登場したのは、明らかによぼよぼを通り越して人間なのか(肌の色的に)と言いたくなるようなジーサン、サモンプリースト。

その効果は手札の魔法カード1枚をコストに、レベル4モンスターをリクルートするという強力な物。

ただでさえリクルート効果は強いのに、呼び出せるのは自らと同じレベル4(つまり即座にエクシーズ召喚したり、レベル8モンスターをシンクロ召喚したり出来る)、コストは手札の魔法カード(アクションデュエルなら実質コスト無し)と、制限カードになるべくしてなったと言っても過言じゃ無い奴だ。

 

「次に手札のアクションマジック『回避』を捨ててサモンプリーストの効果発動!

デッキから『マジカル・コンダクター』を守備表示で特殊召喚!」

 

マジカル・コンダクター

効果モンスター

地属性

魔法使い族

レベル 4

守備力 1400

 

そのサモンプリーストの効果で出て来たのは、緑色の法衣を身に纏った魔女、マジカル・コンダクター。

コイツもサモンプリーストと同じくモンスターを特殊召喚する効果を持っている、が、マリアのデッキではむしろ、それを行う為の『手段』が『目的』と化しちゃっている。

 

「さぁて此処で、皆をびっくりさせちゃうのだ!

 

 

 

『スケール3』の『マジカル・アブダクター』を、ペンデュラムスケールにセッティング!」

「「「『ゑ』?」」」

 

ペンデュラムスケール(青):3(マジカル・アブダクター)

マジカル・コンダクター 魔力カウンター 0→2

 

マリアが行った1つのプレイ、それによってマリアの左後方に『3』と数字が刻まれた光の柱が立ち、更に魔法カードが発動された事によって、マジカル・コンダクターに魔力カウンターが2つ乗った、って、

 

『ぺ、ペンデュラムモンスター!?なんとマリア選手、ペンデュラムモンスターを、デュエルディスクのペンデュラムスケール部分にセットした!というかペンデュラムモンスターを持っていたのか!?』

「ま、マリア!?何時ペンデュラムモンスターをゲットしたの!?」

 

アユの言う通りだよ!マリア、お前何時の間にペンデュラムモンスターをゲットしたんだ!?

ペンデュラムモンスターを今持っているデュエリストは遊矢兄ちゃんの他に、赤馬の兄ちゃん、サワガn「沢渡だ!」サルスベリ、後は赤馬の兄ちゃんが言っていた2人だけだった筈!

そんな俺達の疑問にマリアは、

 

「カードは拾った!(キリッ!)なんちて」

 

ドヤ顔で(不動遊星だった頃の)遊矢兄ちゃんの名言を言い放った。

う、うぜぇ、すかさずなんちてとか言っている所が余計にうぜぇ、ていうか何でお前がその言葉知っているんだよマジで…

 

「さぁて、ドンドン回しちゃうのだ!今たまったマジカル・コンダクターの魔力カウンターを2つ取り除いて効果発動!

手札からレベル2の『ナイトエンド・ソーサラー』を守備表示で特殊召喚!」

 

ナイトエンド・ソーサラー

効果モンスター/チューナー

闇属性

魔法使い族

レベル 2

守備力 400

 

マジカル・コンダクター 魔力カウンター 2→0

 

やっぱり初手で握っていたか、これでマリアのフィールドには、魔力カウンターを溜める為のマジカル・コンダクター以外に、マジックテンペスターをシンクロ召喚する為のモンスターが揃った…!

 

「私はレベル4のサモンプリーストに、レベル2のナイトエンド・ソーサラーをチューニング!黒き魔法使いの、荒れ狂う魔力が全てを飲み込む!シンクロ召喚、レベル6!全力全開!『マジックテンペスター』!」

 

マジックテンペスター

シンクロ・効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 6

攻撃力 2200

 

マジックテンペスター 魔力カウンター 0→1

 

『で、出ました!マリア選手のエース、マジックテンペスターが!何と言うべきでしょうか、この無茶苦茶な雰囲気を!』

 

で、出たぁ!マリアの新しいエース、漆黒の法衣を身に纏い、龍の骨をあしらった杖を持った魔法使い、マジックテンペスターが!

 

「更に魔法『テラ・フォーミング』発動!」

 

テラ・フォーミング

通常魔法

1:デッキからフィールド魔法カード1枚を手札に加える。

 

「テラ・フォーミングの効果でデッキからフィールド魔法『魔法都市エンディミオン』を手札に加えるのだ!」

 

マジカル・コンダクター 魔力カウンター 0→2

マジカル・アブダクター(ペンデュラムスケール(青)) 魔力カウンター 0→1

 

ん、今マジカル・コンダクターの他に魔力カウンターがのっかった様な…

 

「ペンデュラムスケールにセットされたマジカル・アブダクターは、マジカル・コンダクターと同じ条件で、魔力カウンターを1つ乗っけられるんだよ!

ペンデュラム召喚するだけがペンデュラムモンスターの使い方じゃないって事を見せてやるのだ!」

 

な、何ィ!?

つまりこれまでマジカル・コンダクターとエンディミオン位しか無かった魔力カウンターの、メインの貯蓄元が増えたって事かよ!

 

「今手札に加えたフィールド魔法『魔法都市エンディミオン』を永続魔法として発動!」

 

魔法都市エンディミオン

フィールド魔法(永続魔法扱い)

自分または相手が魔法カードを発動する度に、このカードに魔力カウンターを1つ置く。

魔力カウンターが乗っているカードが破壊された場合、破壊されたカードに乗っていた魔力カウンターと同じ数の魔力カウンターをこのカードに置く。

1ターンに1度、自分フィールド上に存在する魔力カウンターを取り除いて自分のカードの効果を発動する場合、代わりにこのカードに乗っている魔力カウンターを取り除く事が出来る。

このカードが破壊される場合、代わりにこのカードに乗っている魔力カウンターを1つ取り除く事が出来る。

 

マジカル・コンダクター 魔力カウンター 2→4

マジカル・アブダクター(ペンデュラムスケール(青)) 魔力カウンター 1→2

 

「さあ行くのだ!魔法『トゥーンのもくじ』発動!」

 

トゥーンのもくじ

通常魔法

自分のデッキから『トゥーン』と名の付いたカード1枚を手札に加える。

 

手札の、最後の1枚がそれか!

 

「トゥーンのもくじの効果で、2枚目のトゥーンのもくじを手札に加えるのだ!」

 

マジカル・コンダクター 魔力カウンター 4→6

マジカル・アブダクター(ペンデュラムスケール(青)) 魔力カウンター 2→3

魔法都市エンディミオン 魔力カウンター 0→1

 

「さて此処で、ペンデュラムスケールにセットされたマジカル・アブダクターの魔力カウンターを3つ取り除いて効果発動!

デッキから2枚目のマジカル・アブダクターを手札に加えてそのままペンデュラムスケールにセッティング!」

 

ペンデュラムスケール(赤):3(マジカル・アブダクター)

マジカル・コンダクター 魔力カウンター 6→8

マジカル・アブダクター(ペンデュラムスケール(青)) 魔力カウンター 3→0→1

魔法都市エンディミオン 魔力カウンター 1→2

 

うわ、サーチの為に消費した魔力カウンターが、結果的におつりも付いて帰って来たよ。

しかも新たに貯蓄元が増えたし…

 

「まだまだ行くのだ!2枚目のトゥーンのもくじ発動!

効果で3枚目のトゥーンのもくじを手札に加えてそのまま発動!

効果で永続魔法『トゥーン・ワールド』を手札に加えて、そのまま1000LP払って発動!」

 

トゥーン・ワールド

永続魔法

1000ライフポイントを払って発動する。

 

マジカル・コンダクター 魔力カウンター 8→10→12→14

マジカル・アブダクター(ペンデュラムスケール(青)) 魔力カウンター 1→2→3→4

マジカル・アブダクター(ペンデュラムスケール(赤)) 魔力カウンター 0→1→2→3

魔法都市エンディミオン 魔力カウンター 2→3→4→5

Maria LP 4000→3000

 

こ れ は ひ ど い。

いやこれは本気で殺意溢れているとしか思えねぇ、これでマリアのフィールドにある魔力カウンターは合計27個、マジックテンペスターの効果を使えば13500という無茶苦茶な量のバーンダメージになる、もう3回殺すだけでは済まなくなっちゃってんじゃねぇか!

 

「さあこれでフィニッシュなのだ!マジックテンペスターの効果発動!私のフィールドにある魔力カウンターを全て取り除いて13500ダメージ!

これが私の全力全開!エ○セリオン○スターA.C.S!行っけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

その殺意溢れる膨大な魔力カウンターを全て乗せ、マリアとマジックテンペスターは、アクションカードを探して色々と回っていたアユへと突っ込んでいく(ドゴォォォォォォォォン!)…!

 

 

 

 

 

マジックテンペスター 魔力カウンター 1→0

マジカル・コンダクター 魔力カウンター 14→0

マジカル・アブダクター(ペンデュラムスケール(青)) 魔力カウンター 4→0

マジカル・アブダクター(ペンデュラムスケール(赤)) 魔力カウンター 3→0

魔法都市エンディミオン 魔力カウンター 5→0

Ayu LP 4000→1300

 

 

 

 

 

ん?1300?

 

「え゛!?ななな、何で今のバーンダメージを喰らって生き残っているのだ!?」

『あぁっと!此処で信じられない事態が発生しました!マリア選手のマジックテンペスターのバーンダメージがアユ選手を飲み込んだかと思い、実際にアユ選手、大ダメージを受けてはいますが、それでも尚生き残っている!』

 

予想外な展開に、今しがた超弩級バーンダメージをぶち込んだマリアは勿論、観客もMCも驚き戸惑っている(かくいう俺もびっくりしている)。

そんな観客にアユは、1枚のカードを取り出し、

 

「私はマジックテンペスターの効果にチェーンしてアクションマジック『クィンテットウォール』を発動したよ!」

 

クィンテットウォール(今作オリジナルカード)

アクションマジック

1:自分にダメージを与えるカードの効果が発動した時に発動出来る。そのダメージを5分の1する。

2:このカードを発動したターン、効果で受けたダメージと同じダメージを相手ライフに与える。

 

そう説明した。

成る程それで13500÷5で、2700ダメージで済んだ(済んだ、という表現も変だな。これでも『黒炎弾』1発撃つより多いからな)のか。

そしてその効果処理はまだ続いている。

 

「さあ、お返しの2700ダメージを受けて貰うよ!」

「あべし!?」

 

Maria LP 3000→300

 

「た、ターンエンドなのだ!」

 

Maria

LP 300

手札 0

ペンデュラムスケール(青):3(マジカル・アブダクター 魔力カウンター 0→1)

ペンデュラムスケール(赤):3(マジカル・アブダクター 魔力カウンター 0→1)

モンスター マジカル・コンダクター(守備表示 魔力カウンター 0→2)

      マジックテンペスター(攻撃表示)

魔法・罠カード 魔法都市エンディミオン(魔力カウンター 0→1)

        トゥーン・ワールド

 

予告ファイナルターンが見事にずっこけたばかりか、逆に自分自身のライフが風前の灯火となったマリア。

慌ててアクションカードを探しに行くが、

 

「さあ、次は私の番だよ!私のターン!ドロー!来た!

ならこっちも、ファイナルターン!」

「ゑ!?」

『おぉっと!アユ選手もファイナルターン宣言だ!これは余程良いカードをドローしたのか!』

「私が引いたカードは、『RUM-七皇の剣(セブンス・ワン)』!」

 

RUM-七皇の剣

通常魔法

自分のドローフェイズ時に通常のドローをしたこのカードを公開し続ける事で、そのターンのメインフェイズ1の開始時に発動出来る。

『CNo.』以外の『No.101』~『No.107』のいずれかをカード名に含むモンスター1体を、自分のエクストラデッキ・墓地から特殊召喚し、そのモンスターと同じ『No.』の数字を持つ『CNo.』と名の付いたモンスターを、その特殊召喚したモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

『RUM-七皇の剣』の効果はデュエル中に1度しか適用出来ない。

 

って、引いたカードがそれかよ!すげー今引きだぜ、アユ!

 

「メインフェイズに入って七皇の剣を発動!カオスエクシーズ・ワープチェンジ!満たされない魂の守護者が、暗黒の騎士となって光を砕く!さあ、悪いモンスターはドンドンしまっちゃうよ!『CNo.101S・H・DarkKnight』!」

 

CNo.101S・H・DarkKnight

エクシーズ・効果モンスター

水属性

水族

ランク 5

攻撃力 2800

CORU 1

 

マジカル・コンダクター 魔力カウンター 2→4

マジカル・アブダクター(ペンデュラムスケール(青)) 魔力カウンター 1→2

マジカル・アブダクター(ペンデュラムスケール(赤)) 魔力カウンター 1→2

魔法都市エンディミオン 魔力カウンター 1→2

 

『出ました!アユ選手の真のエース、S・H・DarkKnightです!それにしても1枚でDarkKnightを出せるとは凄まじいカードです、七皇の剣!』

 

ホントそれな。

デュエル中1回限りという制約はあるけど、今引きするだけでDarkKnightとか、塾長が持っているカエストスとかが急に出て来ると言うのは本当に凄い。

 

「バトルフェイズに入るよ!DarkKnightでマジックテンペスターを攻撃!ハー○ン・セイバー!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

CNo.101S・H・DarkKnight 攻撃力 2800 VS マジックテンペスター 攻撃力 2200

 

Maria LP 300→-300

 

WINNER Ayu

 

『決まったぁ!準決勝第1試合の勝者は、マリア選手の超弩級バーンダメージを凌いだ末の大逆転劇を見せてくれたアユ選手!本当に鮮やかな逆転でした!』

「えへへ、ありがとう!DarkKnight!」

「ま、負けたのだ…」

 

これで決勝戦の相手はアユか。

と、その前に零羅とのデュエル、全力で行かないとな。



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40話_ETERNAL BLAZE、永遠の炎

※某魔法少女が出るとは言っていません


『舞網チャンピオンシップ、ジュニアクラスも残すは2試合です!その1つ目、準決勝最終試合を開始します!このデュエルで勝利したデュエリストが、先程の試合で勝利したアユ選手と決勝戦で激突します!それでは、決勝戦最後の切符を賭けたデュエルに臨むデュエリストを紹介します!

まずは1人目!前回のディフェンディングチャンピオンが、連覇という偉業に手を伸ばそうとしている!3連覇という前人未踏の偉業を成した師匠に並び立つ、その挑戦権を得る事が出来るのか!エレン・アヴェニール選手!

続いて2人目!ディフェンディングチャンピオンに立ちはだかるは、LDSが送り込んだ秘蔵っ子!その合気道の如きデュエルで全てを組み伏せる!赤馬零羅選手!』

 

さあ、零羅とのデュエルだ!

準々決勝はタツヤとやって、決勝はアユとやる事が決まっているから、何気に上位陣では唯一と言って良い、手の内が良く分からない相手。

それだけでも気になる奴ではあるんだけど、零羅のデュエル中の振る舞いが、余計に気になった。

零羅の過ごしている環境で何があるのか、それが零羅の振る舞いに繋がっているのか、それは俺には分からないけど、だけど零羅をどうすれば笑顔に出来るか、楽しませる事が出来るか、それは何となく分かる。

遊矢兄ちゃん譲り、いや、遊矢兄ちゃんの教えをベースにした『俺なりのエンタメデュエル』をして、零羅を笑顔にして見せる!

 

「行くぜ零羅!全力でデュエルしようぜ!」

「…」

 

あら、無反応かよ、何となく予想ついていたけどやりにくいな。

 

『そ、それでは始めましょう!ランダムセレクト!アクションフィールド、オン!『エンタープラズニル』!』

 

え、此処がこのデュエルのアクションフィールドなのかよ!

あちゃー、これが来ると分かっていたら『あのデッキ』持って来たのに!

そう「やっちまった」と心中でがっくりしながらも、エクシーズモンスター『幻子力空母(ミラージュフォートレス)エンタープラズニル』の滑走路部分を模したフィールドで、零羅と対峙する。

 

『戦いの殿堂に集いしデュエリストが!モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!フィールド内を駆け巡る!見よ、これぞデュエルの最強進化系!アクショーン!』

「『デュエル』!」

「…デュエル」

 

先攻 Elen LP 4000 VS Layra LP 4000

 

流石にデュエリスト、掛け声は言ったけどテンション低いなぁ。

冷静さを保つ為だったらそれも良いんだけど…

っと、俺の初手は…

よし、まずはコイツだな。

 

「俺のターン!先攻はドロー無し。

まずは手札の『真紅眼の黒竜』を墓地へ送って魔法『紅玉の宝札』発動!」

 

紅玉の宝札

通常魔法

『紅玉の宝札』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:手札からレベル7の『レッドアイズ』モンスター1体を墓地へ送って発動出来る。自分はデッキから2枚ドローする。その後、デッキからレベル7の『レッドアイズ』モンスター1体を墓地へ送る事が出来る。

 

「紅玉の宝札の効果で、2枚ドロー!その後、デッキから『真紅眼の黒炎竜』を墓地へ送るぜ!」

 

さてドローしたのは、お、これは行ける!

さあ行くぜ零羅、俺のデュエルに食いつけるか!?

 

「次に儀式魔法『レッドアイズ・トランスマイグレーション』発動!」

 

レッドアイズ・トランスマイグレーション

儀式魔法

『ロード・オブ・ザ・レッド』の降臨に必要。

1:自分の手札・フィールドから、レベルの合計が8以上になる様にモンスターをリリース、またはリリースの代わりに自分の墓地の『レッドアイズ』モンスターを除外し、手札から『ロード・オブ・ザ・レッド』を儀式召喚する。

 

此処で墓地にある2体のレッドアイズ達を除外しても良いんだけど、此処で使うのは手札のレベル10『レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン』!

 

「鋼の鱗を纏いし闇竜、俺に力を貸してくれ!儀式変身!『ロード・オブ・ザ・レッド』!」

 

ロード・オブ・ザ・レッド

儀式・効果モンスター

炎属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 2400

 

『へ、へ、変身したぁ!?エレン選手、儀式魔法を発動したかと思ったら突如炎に包まれ、自分自身がそのモンスターとなった!まるで何処かの特撮ヒーローです!』

「変身キター!ロード・オブ・ザ・レッド!全力全開で行かせて貰うぜ!」

 

俺が行った儀式召喚、それによってフィールドに起こった事に、会場は一時騒然となった。

そりゃそっか、今発動したレッドアイズ・トランスマイグレーションによって俺に、儀式召喚の演出で降り注ぐ光が当たり、次の瞬間には俺の身に炎(ソリッドビジョンだぜ、念の為に言って置くけど)が纏われ、それが晴れた後には俺が、儀式モンスターであるロード・オブ・ザ・レッドの、青い全身鎧を身に着けた人間がドラゴンの尻尾や翼を生やした様な姿(但しドラゴン族)に『変身していた』のだから。

しかしこの様子を見ても、MCの驚きに便乗してどっかの特撮ヒーローの様な名乗りを上げても、零羅は無反応か、なんか寂しいな。

 

「続いて魔法『死者蘇生』発動!」

 

死者蘇生(制限カード)

通常魔法

1:自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

「死者蘇生の効果で、今墓地へ送ったレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを攻撃表示で蘇生!」

 

レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン(制限カード)

効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 10

攻撃力 2800

 

無論、リリースしたレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン、ああ、長ったらしいから『レダメ』で良いか、レダメも無駄にしない。

 

「更に『伝説の黒石』を召喚!」

 

伝説の黒石

効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 1

攻撃力 0

 

「今出した伝説の黒石をリリースして効果発動!デッキから2枚目の真紅眼の黒竜を攻撃表示で特殊召喚!」

 

真紅眼の黒竜

通常モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2400

 

そして最後はレダメの、制限カードとなった要因と言える効果と、

 

「まだまだ行くぜ!レダメの効果発動!俺の墓地にある真紅眼の黒竜を攻撃表示で蘇生!

そして、2枚の真紅眼の黒竜でオーバーレイ!2体のレベル7モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!鋼の鎧を纏いし炎竜よ!今全てを焼き尽くし、世界を制圧しろ!『真紅眼の鋼炎竜(レッドアイズ・フレアメタルドラゴン)』!」

 

真紅眼の鋼炎竜

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

ランク 7

攻撃力 2800

ORU 2

 

これによって並んだモンスター達による、俺の『もう1つの』エースカード、レダメの様に鋼の鎧を身に纏った黒きドラゴン、真紅眼の鋼炎竜のエクシーズ召喚。

 

『エレン選手、いや、ロード・オブ・ザ・レッドと呼ぶべきでしょうか!そのフィールドに、自分自身を含めた3体のドラゴンが並び立った!何とも壮観な光景です!』

「へへっありがとうな!俺はこれでターンエンド!(バサァッ!)ハァッ!」

 

Elen

LP 4000

手札 0

モンスター ロード・オブ・ザ・レッド(攻撃表示)

      レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン(攻撃表示)

      真紅眼の鋼炎竜(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

ターンエンドを宣言すると共に背中の翼で飛び立ち、アクションカードを探しつつ零羅を見据える。

さあ零羅、お前はどんなデュエルを見せてくれるんだ?

 

「ボクのターン、ドロー…

まず、永続魔法『ペルソナ・シャッター・レイヤー1』発動…

このカードは相手モンスター1体を全てコピーする…

対象はレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン…」

「おっと!それにチェーンして『俺』の効果発動!

今出したそのペルソナ・シャッター・レイヤー1を破壊する!『蒼炎弾』!

永続カードは場を離れた瞬間、効果を適用出来なくなるからレダメはコピペ出来ないぜ!」

「っ!?」

 

ペルソナ・シャッター・レイヤー1(アニメオリジナルカード)

永続魔法

1:相手モンスター1体を対象として発動出来る。このカードは発動後、効果モンスターとなり、モンスターゾーンに特殊召喚される。この効果で特殊召喚したこのカードは対象のモンスターと同名カードとして扱い、同じ属性・種族・レベル・攻撃力・守備力・効果・効果として扱わないテキストを持つ(魔法カードとしても扱う)。

2:対象となった相手モンスターがフィールドを離れた場合、フィールドのこのカードを破壊する。

 

なんか変わった効果の永続魔法だなぁ。

モンスターになる罠カード自体は罠モンスターとして結構知られているし、確か『コピー・ナイト』ってカードは自分のフィールドに召喚したレベル4以下の戦士族の名前とレベルをコピーするんだったな。

しかしあぶねぇな、もしレダメのコピペをスルーしていたら大量展開されるところだったぜ。

そして永続カードは破壊された瞬間に効果は消えるけど、効果が『無効になった』訳じゃ無いから、

 

「更に、お前が魔法カードの効果を発動した事で、鋼炎竜の効果で500ダメージだ!『鋼炎弾』!」

「っ!?うぅ…」

 

Layra LP 4000→3500

 

こうして鋼炎竜のバーン効果を使用出来る!

 

『これは凄い!ロード・オブ・ザ・レッドと鋼炎竜の効果によって、零羅選手はカードを1枚使うごとにバーンと除去を受ける事になります!』

「しゃあ!さあ零羅、俺達をどう対処するんだ?」

「2枚目のペルソナ・シャッター・レイヤー1を発動…

今度の対象はロード・オブ・ザ・レッド…」

「だからさせねぇよ!チェーンしてアクションマジック『M・W・空・襲(ミラージュ・ウィング・エア・レイド)』発動!」

 

M・W・空・襲(今作オリジナルカード)

アクションマジック

『M・W』アクションマジックは、1ターンに1枚しか使用出来ない。

1:相手フィールド上のカード1枚を選んでゲームから除外する。

 

またコピペ、今度は『俺』をコピーして来るか、だがそれを簡単に許すと思うか?

 

「M・W・空・襲の効果でペルソナ・シャッター・レイヤー1を除外!

更にお前が魔法カードをの効果を発動した事でもう1回『鋼炎弾』だ!」

「っ!?くぅ…」

 

Layra LP 3500→3000

 

「うぅ…

カードを2枚セットしてターンエンド…」

「エンドフェイズに鋼炎竜のオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!

俺の墓地にある、通常モンスター扱いの『真紅眼の黒炎竜』を攻撃表示で蘇生!」

 

真紅眼の黒炎竜

効果モンスター/デュアル

闇属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2400

 

Layra

LP 3000

手札 2

モンスター なし

魔法・罠カード セット×2

 

『あぁっと!零羅選手、フィールドを制圧せんと跋扈するロード・オブ・ザ・レッド達の威圧感に成す術無しか、意気消沈してしまった様です!』

 

このターン見てみると、結構永続カードの使用が多かったな、そういうデッキなのか?

だとすっとレッドアイズデッキはえげつなかったな、効果からして永続カード封殺しますと言わんばかりの奴ばっかだし。

だけど、さ、『デッキの相性が悪い』のと、『絶対に勝てない』のは違うと思うぜ、というか、デュエルに限らず『絶対に勝てない』はあり得ないんだ、なのに何でもう勝負を諦めた様に意気消沈しているんだよお前は…!

 

「零羅。俺が榊家の養子である事、多分、赤馬の兄ちゃんから聞いていると思う」

「…兄様?」

「ああ、その兄ちゃんから聞いたよな、俺の事。んで、これは俺の義理の兄ちゃんの受け売りなんだけど、さ…

 

かっとビング!それは勇気を持って一歩踏み出す事!

かっとビング!それはどんなピンチでも決して諦めない事!

かっとビング!それはあらゆる困難にチャレンジする事!

決着はまだついていないんだ、見せてみろよ!お前のかっとビングを!」

「っ!」

 

正確には遊矢兄ちゃんの前世の受け売りだろってツッコミは無しな、実際この前、どっかの異世界から来た大輔ってデュエリストとデュエルした時も言っていたし!

 

「俺のターン!ドロー!」

 

俺のデッキも変な所で空気読むなぁ、此処で『ハーピィの羽根帚』が来ないとか、まあ良いけど。

 

「俺はフィールドにいる黒炎竜をデュアル召喚してバトルフェイズに入る!

今デュアル召喚した黒炎竜でダイレクトアタック!ブラック・フレア!」

「させない!ダイレクトアタック宣言時、永続罠『ペルソナ・シャッター-インスタント』発動!」

「こっちがさせねぇよ!チェーンして『俺』の効果発動!今発動したペルソナ・シャッター-インスタントを破壊する!」

「させないと言った筈!更にチェーンして1500LPを支払いカウンター罠『神の通告』発動!」

 

ペルソナ・シャッター-インスタント(アニメオリジナルカード)

永続罠

1:相手モンスターの直接攻撃宣言時、その相手モンスター1体を対象として発動出来る。このカードは発動後、効果モンスターとなり、モンスターゾーンに特殊召喚する。この効果で特殊召喚したこのカードは対象のモンスターと同名カードとして扱い、同じ種族・属性・レベル・攻撃力・守備力になる(罠カードとしても扱う)。また、このカードはバトルフェイズ終了時に破壊される。

 

神の通告

カウンター罠

1:1500LPを払って以下の効果を発動出来る。

●モンスターの効果が発動した時に発動出来る。その発動を無効にし破壊する。

●自分または相手がモンスターを特殊召喚する際に発動出来る。その特殊召喚を無効にし、そのモンスターを破壊する。

 

うわ、此処で『かみつ』か!

 

「神の通告の効果で、ロード・オブ・ザ・レッドの効果を無効にし、破壊する!

更にペルソナ・シャッター-インスタントの効果で、黒炎竜と同じモンスターとなって自分フィールドに攻撃表示で特殊召喚!」

「(ズガァァァァァン!)へぶぁ!?くっ、変身解除されるとはやるじゃねぇか!だがかみつのライフコストと、『鋼炎弾』2発喰らって貰うぜ!」

「くっ!」

 

Layra LP 3000→1500→1000→500

 

「じゃあそのまま、黒炎竜で、黒炎竜となったペルソナ・シャッター-インスタントを攻撃!ブラック・フレア!」

「迎え討て、黒炎竜!ブラック・フレア!」

 

真紅眼の黒炎竜 攻撃力 2400 VS ペルソナ・シャッター-インスタント(真紅眼の黒炎竜) 攻撃力 2400

 

「よし、突破口が開いた!鋼炎竜でトドメだ!」

「徹底的にあがく!M・W・空・襲発動!鋼炎竜を除外する!」

 

くっ!流石に簡単には通してくれないか…

モンスターもセットカードも無くなり、今だと言わんばかりに鋼炎竜で突進させたけど、M・W・空・襲は除外効果、効果破壊耐性しか持っていない鋼炎竜では防げないし、これでバーンダメージ効果も無くなった。

それにしても、さっきまでとは大違いな位テンション上がっているじゃねぇか、さっきの一喝が効いているのか?

だが、

 

「やるじゃねぇか!だがまだコイツの攻撃が残っているぜ!レダメでダイレクトアタック!ダークネスメタルフレア!」

「うわぁぁぁぁぁ!?」

 

Layra LP 500→-2300 LOSE

 

WINNER Elen

 

『決まったぁ!準決勝第2試合の勝者は、特撮ヒーローの様な姿で零羅選手の場を荒しまわったエレン選手!それにしても格好良かった!』

「ふぅ。零羅、これも遊矢兄ちゃんの受け売りなんだけどさ…

 

 

 

ガッチャ!楽しいデュエルだったぜ!最後は凄く格好良かったぜ、お前も!」

「…うん!」

 

ははっやっと笑ってくれた。

展開的には俺の圧勝ではあるけど、やっぱ最後まで食いついたデュエルは楽しさもひとしおだよな。

さあ、待っていろよ、アユ!




零羅が使用している『ペルソナ・シャッター』カードですが、作中での描写を基に「こんな感じのテキストになるかな」と推測して書きました。


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41話_PHANTOM MINDS、空想

『舞網チャンピオンシップ、ジュニアクラスも残すは、この決勝戦のみとなりました!これまで様々な激闘が繰り広げられたこの大会、その最後に相応しい2名を今、此処にお呼び致しましょう!』

 

いやぁ、この光景は去年も見たけど、やっぱあと少しで優勝に手が届くとなると緊張して来るなぁ。

ましてや今回の相手はアユ、互いにデッキ構成とかプレイングは知っている間柄だから、勝負は正にその時々の運が左右すると言っても過言じゃ無い。

 

『まずは1人目!ディフェンディングチャンピオンが再びこの決勝の地へ舞い降りた!連覇と言う夢まであと1勝!その勝利を、可能性の竜と共に掴めるか!

(ぷしゅぅぅぅぅぅぅぅぅ!)

エレェェェェェェェェェン!アヴェニィィィィィィィル!』

『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』

『エレンきゅーん!頑張ってぇ!』

「エレン、此処まで着たら全力で勝ちに行きなさい!」

 

俺を呼ぶMCの声と共に炭酸ガスのジェットスモークが、俺がスタンバイしている出入り口から吹き出し、それが晴れた後に俺はフィールドへと入って行った。

然し母さんはまあ当然とは言え、全体的に女性の声援が多いな。

 

『続いて2人目!エレン選手が所属する遊勝塾のプリンセスが、エレン選手の連覇に待ったをかける!その勝利を、方舟の騎士に「しまっちゃう」のか!

(ぷしゅぅぅぅぅぅぅぅぅ!)

鮎川ァァァァァァァァァァ!アユゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!』

『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』

『アユたぁん!ファイトォ!』

「頑張ってねアユ!」

「今のアユは一段と輝いて見えるぞ!」

 

アユも同様に、MCの呼び出しと共に炭酸ガスのジェットスモークが出て、それが晴れた後にフィールドへと入って来た。

今度は(アユの両親もそうだが)男性の声が多いな、てか俺の「きゅん」呼びもそうだがアユの「たん」呼びェ…

 

「行くぜアユ!お前に勝って兄ちゃんの様に連覇して見せる!」

「させないよエレン!エレンに勝って、優勝カップを持つんだから!」

『両者気合十分の様です!それでは始めましょう!ランダムセレクト!アクションフィールド、オン!『未来都市ハートランド』!』

 

って此処遊矢兄ちゃんが九十九遊馬だった頃に住んでいた街と同じ名前じゃねぇか!なんであんの!?

 

『戦いの殿堂に集いしデュエリストが!モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!フィールド内を駆け巡る!見よ、これぞデュエルの最強進化系!アクショーン!』

「「『デュエル』!」」

 

先攻 Elen LP 4000 VS 後攻 Ayu LP 4000

 

よしっ俺の先攻か!

 

「俺のターン!先攻はドロー無し。

まずは手札の『Sin真紅眼の黒竜』を墓地へ送って魔法『紅玉の宝札』発動!」

 

紅玉の宝札

通常魔法

『紅玉の宝札』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:手札からレベル7の『レッドアイズ』モンスター1体を墓地へ送って発動出来る。自分はデッキから2枚ドローする。その後、デッキからレベル7の『レッドアイズ』モンスター1体を墓地へ送る事が出来る。

 

「紅玉の宝札の効果で、2枚ドロー!その後、デッキから『真紅眼の黒炎竜』を墓地へ送るぜ!」

 

うお、この手札さっきの零羅とのデュエルと同じ感じじゃん。

つまりあの展開にしちゃえって事だな?

 

「次に儀式魔法『レッドアイズ・トランスマイグレーション』発動!」

「うわ、キター!?」

 

レッドアイズ・トランスマイグレーション

儀式魔法

『ロード・オブ・ザ・レッド』の降臨に必要。

1:自分の手札・フィールドから、レベルの合計が8以上になる様にモンスターをリリース、またはリリースの代わりに自分の墓地の『レッドアイズ』モンスターを除外し、手札から『ロード・オブ・ザ・レッド』を儀式召喚する。

 

「鋼の鱗を纏いし闇竜、俺に力を貸してくれ!儀式変身!『ロード・オブ・ザ・レッド』!」

 

ロード・オブ・ザ・レッド

儀式・効果モンスター

炎属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 2400

 

「変身、」

「『キター!』」

「ロード・オブ・ザ・レッド!全力全開で行かせて貰うぜ、アユ!」

『エレン選手、此処で変身だぁ!エレン選手を応援する観客と一緒のコール、凄い迫力です!』

 

勿論、まだこれで終わりじゃねぇぜ!

 

「続いて魔法『死者蘇生』発動!」

 

死者蘇生(制限カード)

1:自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

「死者蘇生の効果で、今墓地へ送ったレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを攻撃表示で蘇生!」

『おや?何やら先程の零羅選手とのデュエルと殆ど同じ動きの様ですが…』

 

レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン(制限カード)

効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 10

攻撃力 2800

 

いやぁ、初手がものの見事にさっきの零羅とのデュエルを再現できる状態になっちゃってなぁ…

 

「更に『伝説の黒石』を召喚!」

 

伝説の黒石

効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 1

攻撃力 0

 

「今出した伝説の黒石をリリースして効果発動!デッキから『真紅眼の黒竜』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

真紅眼の黒竜

通常モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2400

 

「まだまだ行くぜ!レダメの効果発動!俺の墓地にある『真紅眼の黒炎竜』を攻撃表示で蘇生!」

 

真紅眼の黒炎竜

効果モンスター/デュアル

闇属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2400

 

「そして、真紅眼の黒竜と真紅眼の黒炎竜でオーバーレイ!2体のレベル7モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!鋼の鎧を纏いし炎竜よ!今全てを焼き尽くし、世界を制圧しろ!『真紅眼の鋼炎竜』!」

 

真紅眼の鋼炎竜

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

ランク 7

攻撃力 2800

ORU 2

 

『エレン選手!まるで先程の零羅選手とのデュエル、その先攻1ターン目を見ているかの様な動きです!アユ選手、零羅選手が成す術無く敗れたこの布陣を突破できるか!』

「俺はこれでターンエンド!(バサァッ!)ハァッ!」

 

Elen

LP 4000

手札 0

モンスター ロード・オブ・ザ・レッド(攻撃表示)

      レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン(攻撃表示)

      真紅眼の鋼炎竜(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

よし、これでドローフェイズに七皇の剣をドローされない限り俺の勝利は近い!

 

「うわぁ、まるで積み込みしているかの様なドロー力だね。でも私だって負けないんだから!私のターン、ドロー!よし!

私が引いたカードは『RUM-七皇の剣』!」

「ゑ?」

 

RUM-七皇の剣

通常魔法

自分のドローフェイズ時に通常のドローをしたこのカードを公開し続ける事で、そのターンのメインフェイズ1の開始時に発動出来る。

『CNo.』以外の『No.101』~『No.107』のいずれかをカード名に含むモンスター1体を、自分のエクストラデッキ・墓地から特殊召喚し、そのモンスターと同じ『No.』の数字を持つ『CNo.』と名の付いたモンスターを、その特殊召喚したモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

『RUM-七皇の剣』の効果はデュエル中に1度しか適用出来ない。

 

うそん。

 

「メインフェイズに入って七皇の剣を発動!カオスエクシーズ・ワープチェンジ!満たされない魂の守護者が、暗黒の騎士となって光を砕く!さあ、悪いモンスターはドンドンしまっちゃうよ!『CNo.101S・H・DarkKnight』!」

 

CNo.101S・H・DarkKnight

エクシーズ・効果モンスター

水属性

水族

ランク 5

攻撃力 2800

CORU 1

 

『アユ選手も負けていない!後攻1ターン目の通常ドローで七皇の剣を引き当てました!心なしか、エレン選手の布陣をも打ち砕かんと言わんばかりの威圧感を感じます!』

「やばっ!だけど魔法カードの効果を発動した事で『鋼炎弾』だ!」

「あいたっ!」

 

Ayu LP 4000→3500

 

うわこれマジやばい、実況の言葉が的を射ている位にやばい、どうにかしないと…!

 

「だけどこれ位どうって事無いよ!

バトルフェイズに入って、DarkKnightでロード・オブ・ザ・レッドを攻撃!ハー○ン・セイバー!」

「くっ!届け!」

 

あのアクションカード、手に取れば…!

よし!

 

「させねぇぜ!アクションマジック『回避』発動!

それにチェーン!魔法カードの効果を発動した事で『俺』の効果発動!」

「あら!?」

 

回避

アクションマジック

1:フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターの攻撃を無効にする。

 

「まずは『俺』の効果でDarkKnightを破壊する!『蒼炎弾』!」

「だ、DarkKnight!?」

「続いて回避の効果で、DarkKnightの攻撃は無効だ!尤もDarkKnightは既にいねぇけど、DarkKnightの蘇生効果は『時の任意効果』!よって蘇生は出来ねぇぜ!」

『あぁっとぉ!アユ選手、此処で痛恨の一撃!エースカードであるDarkKnightを破壊されてしまった!これは万事休すか!?』

 

確かにDarkKnightが破壊され、他にモンスターがいない以上、これでアユはもう攻撃出来ない。

だが今のターン、アユがやった行動は『今引きした『七皇の剣』を使った』だけである。

 

「くぅ…!

ならメインフェイズ2に入って、こっちも死者蘇生を発動!DarkKnightを攻撃表示で蘇生するよ!」

 

Ayu LP 3500→3000

 

え゛!?

 

「よーし、行くよ!今蘇生したDarkKnightの効果発動!

ロード・オブ・ザ・レッドをCORUとして「しまっちゃう」よ!ダーク・ソウル・ローバー!」

「なっ!?うわぁ!?(ぽすっ)サンキュー、レダメ」

 

CNo.101S・H・DarkKnight CORU 0→1

Ayu LP 3000→2500

 

『おぉっと、アユ選手!DarkKnightを蘇生し、ロード・オブ・ザ・レッドをしまいました!これで戦況はアユ選手に傾いたか!』

「もっと動きたいけど鋼炎竜がいるからなぁ、じゃあ永続魔法『水舞台』を発動してターンエンドだよ!」

 

水舞台

永続魔法

1:自分フィールドの水属性モンスターは、水属性以外のモンスターとの戦闘では破壊されない。

2:自分フィールドの『アクアアクトレス』モンスターは相手モンスターの効果を受けない。

3:このカードがフィールドから墓地へ送られた場合、自分の墓地の水族モンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを特殊召喚する。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は水族モンスターしか特殊召喚出来ない。

 

Ayu

LP 2500→2000

手札 3

モンスター CNo.101S・H・DarkKnight(攻撃表示)

魔法・罠カード 水舞台

 

おいおい、此処で『水舞台』かよ、これじゃあ『ハーピィの羽根帚』を引かない限りDarkKnightにしまわれているロード・オブ・ザ・レッドを戻せないな。

俺のフィールドにいるレダメも鋼炎竜も、DarkKnightに戦闘を仕掛けても一方的にやられるのが席の山、だからと言ってDarkKnightを何とかしない限りは、次のターンで再びアユは俺のモンスターを「しまっちゃう」だろう。

此処で何か糸口となるカードをドローしなければ…!

 

「俺のターン!ドロー!」

 

こ、これは…!

成る程、上手く行けば…

 

「此処でレダメの効果発動!今引いた黒炎竜を攻撃表示で特殊召喚し、その黒炎竜をデュアル召喚してバトルフェイズ!」

「え、此処でバトルフェイズに入るの!?」

 

今の状況下ではDarkKnightを倒せない事が分かり切っている上でのバトルフェイズ突入に、驚きを隠せないアユ達を他所に、レダメを飛ばしてアクションフィールドを回る。

おしあった、これなら…!

 

「黒炎竜でDarkKnightを攻撃!ブラック・フレア!」

「え、自爆特攻!?迎え討って、DarkKnight!ハー○ン・セイバー!」

「と思うだろう?だけど違うぜ!アクションマジック『奇跡』発動!」

 

奇跡

アクションマジック

1:フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターは戦闘では破壊されず、戦闘ダメージは半分になる。

 

「奇跡の効果で黒炎竜は破壊されないぜ!」

「なんで態々…?

まあいいや、ダメージは受けて貰うよ!」

「あだっ?!」

 

真紅眼の黒炎竜 攻撃力 2400 VS CNo.101S・H・DarkKnight 攻撃力 2800

 

Elen LP 4000→3800

 

『今引いたアクションマジックによって黒炎竜の破壊を防いだエレン選手ですが、果たして今の攻撃の意味は一体…』

「よし、これで黒炎竜は『戦闘した』からバトルフェイズ終了!」

「え゛!?あ゛ぁぁぁ!?」

 

俺の行動の真意に気付いたアユが急ピッチでアクションマジックを探し出したがもう遅い!

 

「バトルフェイズ終了時に黒炎竜の効果発動!2400ダメージ!ブラック・フレア・バレット!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

Ayu LP 2000→-400 LOSE

 

WINNER Elen

 

------------

 

『今年度の舞網チャンピオンシップ、ジュニアクラスの優勝は、前回からの2連覇を果たした、エレン・アヴェニール選手です!最後はド派手なバーンダメージでの勝利でしたね!』

「やったぜぇ!来年、遊矢兄ちゃんの記録に挑むんで宜しく!」

「エレン、今年は負けたけど、来年は絶対、此処でリベンジして見せるからね!」

「エレン、来年は負けない!絶対に勝って見せる!」

「そう言う訳だからクソアメリカン!首洗って待っているのだ!」

「ああ、掛かって来いよ!全力で相手してやるぜ!」

 

そして、俺の連覇と言う結果で舞網チャンピオンシップのジュニアクラスは幕を閉じ、表彰台で喜びの声を上げたり、表彰台を囲うアユ、零羅、マリアからリベンジを宣言されたりと、賑やかな時を過ごしていた。

 

 

 

 

 

だけどまだこの時の俺達は気付いていなかったんだ。

俺達の世界に『悪意』の手がもう直ぐそこまで迫っている事に…

 

------------

 

Side ????

 

「覚悟しろ、エクシーズ使い!」

 

舞網チャンピオンシップのジュニアユースクラスで1回戦敗北に終わり、失意に暮れていた僕に、唐突に仕掛けられたデュエル。

だがそれは、

 

「「デュエr(キィン!)」」

「な、こ、これは何だ!?おいお前、一体何をした!?」

「え、ぼ、僕!?僕は何もしていない!」

 

突如として僕達の周囲が白く染まり、僕達以外の物体が全く動かなくなるという不可解な現象と、

 

「嘘をつくな!此処にいるのは私達とお前だけだ!お前がしたn」

「セレナ様!危ない!(ズダァン!)がっ!ぐぅ…!」

「ば、バレット!?」

「バレットさん!?」

「へ、え…?」

 

僕にデュエルを仕掛けて来た、髪の毛や服装以外はあの遊勝塾にいる柊柚子そっくりの『セレナ』と呼ばれたデュエリスト、その側に居たうちの1人である軍人の様な男の腹部に大穴を開けた原因が発したであろう謎の銃声、そして、

 

「まさか融合次元のクズ共がスタンダードのデュエリストにまで手を出して来るなんてね…!あなた、大丈夫?」

「あ、はい…」

 

其処に赤い眼と髪の少女が乱入して来た事で有耶無耶になった。

これが、僕の『非日常』の始まりだった…



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4章『遂に激突!融合次元との戦い(バトルロイヤル)!』
42話_バレット、死す!


新章の導入部(且つデュエル無し)という事で、今話は短いです。


Side ????

 

目の前で繰り広げられた信じられない出来事の数々と、僕の身を案じてくれている様子の少女が口にした不可解な言葉に、正直理解が及ばなかった。

ただ1つ分かったのは、これは色んな意味でヤバい状況だって事位…!

 

「き、貴様、まさか…!」

「ちっ随分としぶといわね。貴方、此処は危ないわ、さっさと離れましょう。色々と聞きたい様子だけど、アイツらを撒いたら話すわ」

「あ、はい…」

「き、貴様!逃げるのか!?」

「そう思ってくれて構わないわ。だけど私達を追うよりその男の身を案じた方が良いんじゃない?まだ息しているみたいだし。さ、行くわよ」

「あ、待て!」

「セレナさん!それよりもバレットさんを!」

「くっ分かった…!」

 

僕にデュエルを仕掛けて来たセレナという少女が、逃げる僕達を追いすがろうとしたけど、先程銃撃っぽい攻撃を受けた男がまだ息をしていたのが幸い(?)したのか、何とか撒く事が出来た。

 

一美(かずみ)、セレナ様を、頼んだぞ…!

あの『炎髪灼眼の討ち手』から、セレナ様を(ガクッ)…!」

「え、炎髪灼眼!?ま、まさかあの…!?

バレットさん!?バレットさん!?い、嫌ァァァァァァ!」

「バレット!?バレット!?しっかりしろ!」

 

------------

 

「ふぅ、何とか撒く事が出来たわね。大丈夫?怪我は無い?」

「は、はい、助けてくれて、ありがとうございます…」

 

何とかあのヤバい現場を離れる事が出来て、安堵した。

 

「ぼ、僕、志島北斗と言います」

「知っているわ。今年の舞網チャンピオンシップ、そのジュニアユースに出場していたでしょう?」

「知っているんですか!?」

 

そのお礼を兼ねて自己紹介したけど、まさか僕の名前を知っているとはびっくりした。

その舞網チャンピオンシップ本戦では惨敗だった事もあるし…

 

「舞網チャンピオンシップは、私も出場しているしね。戦うかもしれないデュエリストの情報は、少しでも欲しかったから」

 

え、彼女も出場しているだって?

いや、まるで炎の様な髪に、ルビーの様な眼と、此処まで特徴的な姿、出場者にいなかった筈だけど…

 

「あぁ、この姿だと分からないわね。これなら分かるかしら?」

 

と彼女が言った瞬間、またしても僕の目の前に信じがたい光景が繰り広げられた。

彼女の赤い髪と眼が、まるで炎が消えるかの如くその色を失い、燃え尽きた灰の様な白髪と、焼け焦げて炭になったかの様な黒眼となったって、この姿確か…!

 

「初めましてと言うべきかしらね。平井遊香よ」

「あ、思い出しました!確か陽炎獣ってデッキの使い手で、LDS所属でも無いのにエクシーズ召喚を使っていた!」

 

そうだった、確か陽炎獣モンスターを並べてエクシーズ召喚し、其処からワンキルしていたんだっけ。

LDSどころか、何処のデュエルスクールにも属していないにも関わらずエクシーズ召喚をしていた事で話題になっていたなぁ。

でもその彼女は、今僕の目の前にいる彼女と同じく、中学生位の年代にも関わらず総白髪というかなり珍しい髪型と、こっちは日本人にありがちな黒眼だった、ならさっきまでの赤い髪と眼をした彼女は一体…

 

「色々と聞きたい事はあるでしょう、さっき落ち着いたら話すって約束したし。順を追って話すわ」

 

そんな疑問点ばっかりな僕の様子を察してくれたのか、彼女は話を始めてくれた。

僕達のいる世界と同じくデュエルモンスターズが発展した、それでいて色んな部分が違う『次元世界』の事、その1つである『融合次元』のデュエリスト達によって引き起こされた3年前の『エクシーズ次元』への侵略の事、そのデュエリストとの戦いの中で彼女が目覚めた『超能力』の事、そして『融合次元』が『スタンダート次元』と呼ばれている僕達の世界に侵略を始めようとしている事…

何から何まで非現実的過ぎて何処から突っ込んだらいいんだと普通なら思っただろうけど、たった今目の当たりにした光景の数々が、それが現実の物だと思い知らせた。

同時に許せなかった、デュエルによって面白半分に、建物を破壊し、人々を甚振り、殺害した末に、エクシーズ次元を荒らし尽くした融合次元のデュエリスト達が…!

 

「遊香さん…!

僕、戦います!僕も融合次元のデュエリストと戦います!」

「止めておきなさい、気持ちは分かるけど」

 

その怒りゆえに遊香さんに協力を申し出たけど、返って来た言葉はまさかの拒否だった。

な、何で…?

 

「融合次元のデュエリストとの戦いは文字通りの『戦争』、デュエリストとしての誇りやプライドなんてモノは全く存在しない、何でもアリの戦いよ。其処に乱入するとなれば、『融合次元という巨悪を、どんな手を使ってでも打ち砕いて見せる』と言う揺るぎない覚悟をしなければならないわ。貴方にそれが出来るの?」

「それは「出来そうも無い、と断言して置くわ。舞網チャンピオンシップ本戦でのあのデュエルを、相手の口八丁にまんまと揺さぶられて自滅した様を見た限りではね」っ…!」

 

出来ると言おうとしたけど、あのデュエルでの醜態を挙げられては、押し黙るしか無かった。

実際、彼女にずばりと言われた事で少し冷静になったら、融合次元との戦い、いや『戦争』に臨むという事がどういう事か、彼女の言っている事の真意が分かって来た。

それに、僕は何の躊躇いも無く行けるのか、戦い続ける事が出来るのか…?

正直自信が持てなかった、そんな僕が『協力する』と言っても、彼女にとっては迷惑極まりないだろう。

そう、頭では理解出来る、けど…!

 

「だったら教えて下さい…!

遊香さんは、遊香さんはその覚悟があるんですか…!

遊香さんは何で、そんな覚悟を持てるんですか…!」

 

思わずそう問い返したのは、彼女の容赦ない拒絶に、心が納得出来なかったからだと思う。

『超能力』を持っていると言っても、僕と大して変わらない年代の彼女が何故、融合次元を相手取るのに全く躊躇しない程の覚悟を持てたのか、それが知りたかった…

 

「そうね…

今からちょっと話が長くなるけど、時間の方は大丈夫?」

 

その問いに、少し暗くなった様な素振りを見せながらも、彼女は話始めた。

1人の少女の『悲劇』を…

 

------------

 

Side Yuya

 

「おかしいな、本戦には出場していた筈、会場内で捕まえられる筈なんだが…」

『一体どこをほっつき歩いているんだろうね…』

『手掛かり無し、か。平井遊香、一体彼女は何者なんだ…』

 

舞網チャンピオンシップの、ジュニアユースクラスの2回戦が行われている今日、俺達は自分自身の試合に臨んだ(結果は皆して勝利だ)一方で、同じく2回戦に進出し、そこでも勝利した平井遊香の行方を追っていたんだが、その足取りは全くつかめなかった。

デュエルフィールドに足を踏み入れるタイミングをも考慮し、手分けして張り込んでいたんだが、それすら空振りに終わっているとなると、彼女は俺達が思っている以上に底の知れない存在かも分からないな(ピリリリリ!)ん?零児から、か?

 

「もしもし、零児?一体どうしました?」

『遊矢、緊急事態だ!融合次元より、以前話したデュエリスト、セレナと、その護衛と思しき1人の少女がこちらに保護されているのだが、2人の話によって、

 

アカデミアのデュエリストが近々此方に侵入する予定である事、

 

そして、融合次元のデュエリストを狙ったテロリストが此処、舞網市に潜伏している事が判明した!至急ARC-Vメンバーと共に、指定の場所へ集合して欲しい!』

「な、何ですって!?」

『て、テロリスト!?こ、この街にだって!?』

『テロリストとは一体何だ、何時発動す『ボケかましている場合じゃないんだよアストラル!緊急事態なんだよ!具体的に言うと、バリアンの連中が引っ掻き回している真っ最中な位の!』何だって!それは大変だ!急ぐぞ!』

 

相変わらずなアストラルのデュエル脳振りをユベルが窘めつつ、俺達は零児が待っているだろう場所へと向かった。

テロリストが、この街にいるだと…!



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43話_集結する戦士(デュエリスト)

Side 刃

 

「塾長、遊矢達は何処行ったんすか?会場で別れたっきり、帰って来ないっすねぇ」

「何でも、LDSの社長さんにまた呼ばれたらしい。重大な用事があるそうだ。刃は何か聞いていないか?」

「社長が?いや、俺は何も聞いていないっすけど?」

「そうか…

エレンの祝勝会、準備万端なんだがなぁ…」

 

そういや遊矢に柚子、一行に当麻、そしてエレンは最近、権現坂と共に、社長に呼び出されたとか言って塾を開ける事が多くなったなぁ。

社長が一体何の用事で頻繁に呼び出しているんだろうな、それも色々関わり合いが深くなっているとはいえ『部外者』を、ましてや舞網チャンピオンシップという、自ら主催している大会の真っ只中に?

 

『続いて熱戦が繰り広げられている、舞網チャンピオンシップの速報です。ジュニアクラスは今日で全日程が終了し、遊勝塾所属のエレン・アヴェニール選手による2連覇で幕を閉じました!また同じく遊勝塾所属の鮎川アユ選手が準優勝、同じく遊勝塾所属のマリア・デックス選手と、LDS所属の赤馬零羅選手がベスト4に輝きました!躍進著しい遊勝塾、まずはジュニアクラスでその力を見せ付けた結果となりました!』

『エレン選手を始め、アユ選手にマリア選手、そして今回ベスト8に入った原田フトシ選手に山城タツヤ選手と、所属するデュエリストの皆が皆、出るクラスを間違えていると言わんばかりの大人びたプレイングをしながらも、心の底から笑顔になれる、生き生きとしたデュエルをしていましたね!』

 

お、始まった!

まあ遊矢の教えを最も間近で受けているエレンが勝つと言う、順当っちゃあ順当な結果なんだが、こうして難なく勝ち続けるって本当にすげーよな。

でもそのエレンに負けはしたけど、アユもタツヤも、エレン相手に互角以上のデュエルをしていた。

アユに至っては、フトシのエレキリギリスロックを前にしても切り崩して見せたし、マリアの13500ダメージという超弩級のバーン攻撃に耐えて返り討ちにしたしと、改めてお前らみたいなガキんちょがいるかって突っ込みたくなったぜ。

まあそれを言えば、そのガキんちょを育て上げて来た遊矢も、エレン達位の時にはもう『完全決闘者』として暴れ出していたし、そのデュエルを見て俺や一行、当麻が遊矢のファンになって、遊勝塾に加入して行ったんだけどな(俺はつい最近までLDSにいただろってツッコミは無しな、俺だって何度も遊勝塾の門を叩いたんだ)…

 

『続きましてジュニアユースクラスですが、今日で2回戦までの全試合が終了し、ベスト16が出そろいました!』

『今年は嘗てLDSと双璧を成していた梁山泊が1回戦で全滅するという、波乱の幕開けとなりました!然しながら、ジュニアクラスで表彰台をほぼ独占した遊勝塾が、出場している7選手全員ベスト16入りしている事を考えれば、それも頷ける物です!』

 

ははは、梁山泊の扱いが何気に酷いな、このニュース。

まあでもアニメ本編で俺や遊矢をフルボッコにしたんだ、それも当然か(え、メタ発言するなって?悪いか!)。

 

『ではその顔ぶれを紹介しましょう!まずは遊勝塾に所属する7選手から行きましょう!

まずは1人目!今や精鋭揃いと言って良い遊勝塾でも、やはり彼を抜きには語れません!小学生時代にはジュニアクラスを3連覇し、昨年のジュニアユースクラスでは初出場にして初優勝を遂げた『完全決闘者』!今年もまたその勢いは止まりません!榊遊矢選手!』

『昨年までは異名の元となった通称『完全決闘』デッキで出場していましたが、今年は『オッドアイズ』と名の付くドラゴンモンスターを主力にしたデッキで出場し、融合召喚にシンクロ召喚にエクシーズ召喚、そしてペンデュラム召喚といった、数々の珍しい召喚を駆使しています。また、入って来た情報によりますと、他にも様々なデッキを使用しているとか。様々なエンタメデュエルの引き出しを有しているという事でしょう!今後の彼のデュエルに注目です!』

 

おいおい、3年前は失踪した榊遊勝の事をネタに『臆病者の息子』と罵倒していたとは思えない持ち上げ方だな。

といっても、このニュース番組が、今出ているキャスターがそうした記憶は無いんだけどな。

 

『2人目は、昨年のジュニアユースクラスで初出場にしてベスト4に入った『遊勝塾のスーパーヒロイン』!遊矢選手との交際も順調で、今公私ともに充実しています!柊柚子選手!』

『今年は融合召喚を駆使し、その華麗なるデュエルに磨きが掛かっています。正に遊矢選手と想いを融合した、という事でしょう!』

 

って、幾らニコさんがすっぱ抜いたからって、異性の交際が『パパラッチーす』されたアイドルじゃねーんだから、というか「上手い事言った」的にドヤ顔してんじゃねぇ!

 

『3人目は、昨年のジュニアユースクラス決勝で、惜しくも遊矢選手に敗れるも初出場で準優勝に輝いた『遊勝塾のダークヒーロー』!遊矢選手へのリベンジを胸に秘め、順調に勝ち上がっております!上村一行選手!』

『前回もその制圧力は驚異の一言でしたが、今年はエクシーズ召喚を駆使し、圧力が強大化しております。遊矢選手に勝ちたいという想いが、強化させているのでしょうか…』

 

まあ、うん、その真相は本人のみぞ知る、だな。

 

『4人目は、昨年のジュニアユースクラスで初出場にして第5位に輝いた『優勝塾のイマジンブレイカー』!手札誘発カードを連発し、相手に何もさせない様は、ウザいを通り越して清々しさすら覚えます!冴木当麻選手!』

『今年はシンクロ召喚を駆使し、ウザさが倍増しております!以上!』

 

当麻の扱いェ…

 

『今紹介した4選手は昨年も結果を残していた強豪ですが、其処に加わった3選手も負けていません!

5人目は、1回戦で第6シードの大海王牙選手を破った『遊勝塾のサンダーガール』!石動美琴選手!』

『今年遊勝塾に加入し、エクシーズ召喚を覚えたばかりながら、既にモノとした吸収力で、今や遊勝塾でもトップクラスの実力を有する程になりました!』

 

磁石の戦士シリーズって結構前からあるけど、アレを別の方向に発展させられるとか、凄い発想だよな。

 

『6人目は、1回戦で第7シードの勝鬨勇雄選手を破った『遊勝塾の荒武者』!今年LDSから移籍したという変わり種!刀堂刃選手!』

『シンクロ召喚を駆使し、相手に手札を握らせない、フィールドにモンスターを並ばせない様はウザいの一言!遊勝塾に所属するシンクロ召喚の使い手はウザい選手しかいないのでしょうか!』

 

おいコラ、俺の扱い酷いな!

ある程度対処出来る点でまだ良い方だろうが、当麻なんて対処しようとしたら返り討ちにされるんだぞ、マジで!

 

『そして7人目は、エンタメデュエルの新たなる可能性『ホラーデュエル』を引っ提げて参戦した『遊勝塾のブギーマン』!紫雲院素良選手!』

『融合召喚を駆使し、恐ろしさ満載のモンスターを展開し、それらが繰り広げるスプラッタな光景、今後素良選手のデュエルを見る際は、その光景を覚悟して下さい…!』

 

あぁ、アレは怖い。

見慣れている俺すら、大会での素良のデュエルには背筋が凍った、今まで見た事の無い奴、それも普通のガキんちょが見たらトラウマ確定だな。

 

『さて、最大手のLDS。昨年のジュニアユースクラスでは、現在ユースクラスに出場している桜樹ユウ選手のみがベスト8入りする結果に終わり、今年のジュニアクラスでは赤馬零羅選手のみが表彰台に上がりましたが、其処は最大手と名高いLDS、ベスト16に4選手が入りました!最大手の底力は伊達ではありません!

1人目は、LDSの総合コースに所属する『LDSの特攻隊長』!七種亮太郎選手!』

『融合、シンクロ、エクシーズ、様々な召喚方法を駆使して素早くケリを付けるデュエルは、正に音速の領域!ついて行くので精いっぱいです!』

 

確か七種のデッキは『サイバー・ドラゴン』だっけ、アイツの速攻の噂は、LDSにいた頃から耳にしていた。

 

『2人目は、LDSのシンクロコースに所属する『LDSの自衛隊』!龍宮流星選手!』

『効果破壊にも対応したリクルーターで前線を維持しつつ、シンクロ召喚を駆使して場を整える様は、防衛力の強固さが伺えます!』

 

成る程、防衛力の強固さ=自衛隊って訳ね。

龍宮とはシンクロコースでトップの座を競っていたな、セットされるともうアイツの術中だからその前にハンデスしたら、あっさり回収されるわ、墓地に色んな属性のモンスターカードがいる事を利用されるわで、結構苦戦したのは良い思い出だ。

 

『3人目は、LDSのエクシーズコースに所属する『LDSの舞姫』!星宮舞衣選手!』

『確実にアドバンテージを稼ぎながら、エクシーズ召喚を駆使してフィールドを制圧して行く、正に洗練された舞を見ているかの様です!』

 

エクシーズ、か。

そういやあ北斗の奴、1回戦で一行に惨敗してから元気なくなったって、真澄の奴が言っていた(同じく1回戦で負けたアイツはそうでも無かった)けど、今どうしてんのかな…

 

『4人目は、LDSのブロードウェイ校からこの大会の為にはるばる来日した『LDSのエンターテイナー』!デニス・マックフィールド選手!』

『ド派手な花火(バーン)あり、大迫力の奇術(ビートダウン)あり、エクシーズ召喚も駆使して繰り広げられるは正にエンタメデュエル!本人がファンと公言する榊遊勝と、その息子である榊遊矢選手を彷彿とさせます!』

 

おいおい、コイツも俺達と同じ穴の狢ってか?

 

『遊勝塾とLDS、この2校だけで、ベスト16の3分の2に当たる11選手を占めております!遊勝塾とLDSによる2強時代を迎えると言わんばかりの構図ですが、其処に待ったをかけるべく、他校もまた有力選手を送り込んできました!』

『その急先鋒と言って良い、権現坂道場が送り込むは、『不動のデュエルの後継者』!昨年のジュニアユースクラスでは初出場にして、表彰台に上がりました!権現坂昇選手!』

『シンクロ召喚を取り入れ、まるで合気道の様に相手の動作を最大限利用するデュエル、これも不動のデュエルの可能性と言う事でしょう!』

 

あぁ、シンクロ版『超融合』として塾内でも恐れられているタマ―Cの事か、俺もソウザとかを出そうモノならぶんどられる運命だから、迂闊に動けねぇんだよ…

 

『風魔デュエル塾が送り込むは、『忍者ツインズ』風魔日影選手と月影選手、双子の兄弟!』

『モンスターを変幻自在に繰り出すデュエルは、正に忍者!珍しい召喚方法を駆使していないながらランク16に食い込むその実力は凄まじい!』

 

忍者って昔からあるカテゴリだけど、当初は色んな種族で出ていたのに最近は専ら戦士族なんだよな、風の噂じゃあエクシーズモンスターもあるみたいだし…

 

『海野占い塾が送り込むは、『禁忌(パンドラ)を操る少女』!方中ミエル選手!』

『『サンダー・ボルト』に『ハリケーン』、『強欲な壺』に『強引な番兵』、嘗てデュエルモンスターズで猛威を振るった禁止カードの数々ですが、ミエル選手のエースカードは、これらを使えるという驚きの効果を持っております!それを何度も使い回す様は圧巻です!』

 

うん、これは強い。

何で美琴とのデュエルでは何もできずに敗北したんだろうな…

 

『そして、無所属ながらその実力でベスト16に食い込んだダークホース!その経歴は謎に包まれています!平井遊香選手!』

『今わかっているのは、エクシーズ召喚を駆使し、相手の盤面を荒らしまわって圧倒する戦略でしょうか、謎は深まるばかりです…』

 

平井遊香、か…

一体アイツは何者なんだろうな、色んな意味で今後気を付けなければならない存在だぜ…

 

------------

 

Side ????

 

「ふぃー、長い空の旅だったぜ」

「ダンテ、だらける暇は無いぞ。これからLDSへの車の旅の始まりだ」

「おいおい兄貴、メンタルだけでも息抜きさせてくれ」

「ダンテの言う通りね、これから息抜きする暇は到底訪れないわ」

「だろ、トリッシュ?」

「でも2人共、程々に頼むわよ。一度気が緩んだら、戻すのに時間かかるんだから」

 

舞網市郊外にある空港、此処に、4人のデュエリストが降り立った…!



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44話_バトルロイヤル開始、そして始まる地獄デュエル…!

今話は3人称視点です。


『それでは舞網チャンピオンシップ、ジュニアユースクラスの3回戦に出場する16人による、バトルロイヤルを開始いたします!今日は、此処舞網市をデュエルフィールドとした大規模な戦いが繰り広げられます!』

 

急遽、バトルロイヤルルールに変更された舞網チャンピオンシップ、ジュニアユースクラスの3回戦。

発表されたルールは以下の通りとなっている。

 

・フィールド内にランダムに配置されたペンデュラムカードの獲得数を競う。

・所持しているペンデュラムカードが双方とも2枚以上無ければ、デュエルを仕掛けられない。

・デュエルは全て、所持しているペンデュラムカードを賭けたアンティデュエルとなる。

・制限時間は24時間。

・対戦形式は自由。1vs1は勿論、2vs2のタッグデュエル、1vs2等のハンディキャップマッチや、3人以上の乱戦もOK。

・既に開始されているデュエルに乱入するのも可。その場合、誰ともデュエルしていない状態であれば、ペナルティとして2000ポイントのダメージを受けた状態で始める。

 

「へぇ、こういうのも悪くねぇな。道行く参加者にデュエルを仕掛ける、シンプル且つスリリングで良いじゃねぇか」

「待っていてねダーリン、ダーリンに纏わりつく外敵はミエルがムッコロしちゃうんだから!」

 

唐突なルール変更にも関わらず、意気込みの強さが感じられる参加者達。

その一方、

 

「各自散開し、アカデミアのデュエル戦士と思しきデュエリストと遭遇次第、各自のデュエルディスクに組み込んだデュエルアンカーを射出、拘束した上でデュエルを仕掛けろ。権現坂は北方向、一行は東方向、当麻は南方向、そしてエレンは西方向へ。デュエル戦士の特徴は、各自が着用している共通の服装と、顔に着用された仮面だ。尤も、今回のバトルロイヤル中は外出を自粛する様要請されている、関係者以外でうろつくデュエリスト=デュエル戦士だと疑って良い。尚、それら融合次元のデュエリストを狙うテロリストが潜伏しているという情報もあるから気を付けてくれ。良いな、では出撃!」

「「「「了解!」」」」

 

舞網市の中心近くにあるLDS、その一角でランサーズの最高指揮官たる遊矢及び精鋭部隊『ARC-V』のメンバーは、侵入して来るであろうデュエルアカデミアのデュエル戦士に対処すべく打ち合わせを行い、程無く権現坂達、出撃方向を言い渡された4人が走り去った。

舞網チャンピオンシップの最中に行われるだろうアカデミアの侵略に、唐突なルール変更と、想定外な事態にありながらも彼らが冷静なのは言うまでも無い、このルール変更を、『アカデミアの侵攻に対処するランサーズメンバーが、周囲に違和感を与える事なく行動出来る』ルール変更を決行したのが大会本部、というよりLDSの上層部であり、ARC-Vもそれに関わっているからだ。

そんな中、

 

「あの、遊矢、私の出撃方向、聞いていないけど…」

「言っていないからな。柚子は俺と一緒に中心部を探索だ。今日は俺と2人で行動して貰う」

 

1人取り残された柚子が戸惑った様に、遊矢に疑問をぶつける。

そんな柚子に遊矢は迷いなく、同行を指示する。

 

「え、ど、どうして!?私もARC-Vの一員よ、デュエル戦士の1人や2人、どうって事は無いわ!」

「シンクロ次元のリン、エクシーズ次元の黒咲瑠璃がアカデミアに拉致され、融合次元のセレナが最近まで監禁されていた事を鑑みて、各次元の『柚子』がアカデミアにとって重要な存在だと考えられる。つまり柚子の存在を認知次第、拉致せんと動くに違いないんだ。柚子を1人にすれば向こうの思うつぼだ」

「で、でも…!」

「柚子(ガシッ!)」

 

その指示に反発する柚子だが、遊矢は落ち着き払った様子でその理由を説明する。

尚も抵抗する柚子だったが、

 

「最高指揮官命令だ。

(キィン!)

俺のそばから離れるな」

「(ゾクッ!)ゆ、遊矢…?」

 

遊矢は柚子の片手を掴み、『金色に染まった眼で』見据えつつ言い放った。

その遊矢の只ならぬ気配、覇王の力を解放した遊矢の気配に、柚子は立ちすくんでしまった。

 

「あ、怖がらせて済まない…

色々と御託を並べたが、単に柚子を失いたくない、それだけだ。柚子は俺が守る、誰にも柚子に手を出させはしない」

「遊矢…

分かったわ、ごめんね遊矢、私ったら遊矢の気持ちも知らないで1人で突っ走っちゃって…」

「良いんだ。俺も我を通し過ぎた。さあ、そろそろ始まるぞ」

『それでは始めましょう!アクションフィールド、オン!『ワンダー・カルテット』!』

 

2人の間に若干気まずい空気が流れる中、ニコ・スマイリーの声と共に、舞網市の市街地が、火山、氷山、ジャングル、古代遺跡という、4つのアクションフィールドに変化して行き、

 

『火山!氷山!ジャングル!古代遺跡!4つのエリアが出そろい、準備は整いました!』

「じゃあ、俺達も行くぞ!柚子!」

「うん、遊矢!」

 

遊矢と柚子もまた、フィールドを駆けていった…!

 

------------

 

「始まった様だな、アニキ」

「あぁ、ダンテ。トリッシュもメアリも動き出した様だ、俺達も動くとしよう」

「OK!Let’s Rock!」

 

同時刻、舞網市のとある一角で2人の男が、アクションフィールドが展開されるのを見届け、動き出した。

ダンテと呼ばれた、黒い服装の上に赤いロングコートを羽織った、銀髪蒼眼の男の名はダンテ・レッドグレイヴ、そのダンテにアニキと呼ばれた、黒い服装の上に青いロングコートを羽織、銀髪をオールバックにした蒼眼の男の名はバージル・レッドグレイヴ、お気づきだとは思うが2人は双子の兄弟だ。

そんな2人の目の前に、

 

「Jack Pot!まさかこうも早くターゲットをロック出来るとはLuckyだぜ!」

「ふっ違いない。行くぞ、ダンテ!(ヒュン!)」

「OK、アニキ!(ヒュン!)」

「(ガチャァ!)な、なんだこの鎖は!?」

「(ガチャァ!)くっデュエルディスクに纏わりついている!?」

「どうした!?一体何が!?」

 

赤、青、黄色、様々な色の仮面を装着し、青い軍服の様な物を身に着けた3人の男が移動しているのを見つけ、其々が装着していたデュエルディスクから拘束用の鎖、デュエルアンカーを射出して捉えた。

突然の事態に慌てふためく3人の男、其処に、

 

「Hey you!Let’s Duel!」

「デュエルを受けるか、降参するか、今の内に選べ。逃げると言う選択肢は無い、その鎖はデュエルの決着がつくまで外す事は不可能だ」

「何だ貴様らは!?」

「この鎖、貴様達がやったのか!?」

「スタンダードの分際で、姑息な真似を…!」

 

ダンテとバージルは、まるでその様が目に入って居ないかの如く(自分が仕掛けた事だから当然だが)デュエルを仕掛け、

 

「さあどうする?受けるか、負けを認めるか?」

「はぁ~、融合次元とやらのデュエリストはチキンか?」

「何だと貴様!?」

「我ら融合次元を愚弄するか!?」

「良いだろう、デュエルだ!」

 

挑発に乗った事でデュエルは成立した。

 

「Heaven or Hell!」

「「「「「デュエル!」」」」」

 

1番手 Dante LP 4000

2番手 Vergil LP 4000

3番手 ????(赤) LP 4000

4番手 ????(青) LP 4000

5番手 ????(黄) LP 4000

 

「Let’s Rock!俺のターン!

まずは『彼岸の悪鬼スカラマリオン』を召喚!」

 

彼岸の悪鬼スカラマリオン

効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 3

攻撃力 800

 

乱戦方式で始まったこのデュエル、1番手となったダンテが最初に呼び出したのは、地獄に巣食う悪魔の集団『マレブランケ』の一角、スカルミリョーネを模した悪魔、スカラマリオン。

 

「続いて手札にある『彼岸の悪鬼ラビキャント』のモンスターエフェクト!

俺のフィールドに魔法・罠カードが無いから、コイツを守備表示で特殊召喚!」

 

彼岸の悪鬼ラビキャント

効果モンスター/チューナー

闇属性

悪魔族

レベル 3

守備力 2100

 

次に呼び出したのは、マレブランケの一角、ルビカンテを模した悪魔、ラビキャント。

 

「更に行くぜ!俺はレベル3のスカラマリオンに、同じくレベル3のラビキャントをチューニング!地獄に舞い降りた詩人が、お前らを天国にご案内するぜ!シンクロ召喚、レベル6!『彼岸の詩人ウェルギリウス』!」

 

彼岸の詩人ウェルギリウス

シンクロ・効果モンスター

光属性

魔法使い族

レベル 6

攻撃力 2500

 

「シンクロ召喚だと?」

 

シンクロ召喚の演出と共に出現したのは、吟遊詩人の様な出で立ちの魔法使い、ウェルギリウス。

 

「俺はカードを2枚セットしてターンエンドだが、エンドフェイズに、墓地に送られたスカラマリオンのモンスターエフェクト!

デッキから『彼岸の悪鬼バルバリッチャ』をサーチするぜ!」

 

Dante

LP 4000

手札 2(うち1枚はバルバリッチャ)

モンスター 彼岸の詩人ウェルギリウス

魔法・罠カード セット×2

 

「俺のターン、ドロー!

ダンテ、お前の盤面を利用させて貰う!」

「OK、アニキ!あれを出すんだろ?」

「ああ。永続魔法『煉獄の虚夢』発動!」

 

煉獄の虚夢

永続魔法

1:自分フィールドの元々のレベルが2以上の『インフェルノイド』モンスターは、レベルが1になり、相手に与える戦闘ダメージは半分になる。

2:表側表示のこのカードを墓地へ送って発動出来る。自分の手札・フィールドから、『インフェルノイド』融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。エクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが相手フィールドにのみ存在する場合、自分のデッキのモンスターも6体まで融合素材とする事が出来る。

 

「続いて煉獄の虚夢をリリースして、第2の効果を発動!この時、俺から見た相手プレイヤー、この乱戦ルールでは俺以外の全員、つまりダンテを含めて相手全員のフィールドに、エクストラデッキから出て来たモンスターが存在するから、俺はデッキのモンスターを6体まで融合素材に出来る!」

「な、何!?デッキから融合素材だと!?」

「何なんだそのインチキ効果は!?」

「俺はデッキの『インフェルノイド・シャイターン』『インフェルノイド・ベルフェゴル』『インフェルノイド・ヴァエル』『インフェルノイド・アドラメレク』『インフェルノイド・リリス』『インフェルノイド・ネヘモス』と、手札の『インフェルノイド・ベルゼブル』『インフェルノイド・ルキフグス』『インフェルノイド・アスタロス』『インフェルノイド・アシュメダイ』を融合!煉獄より放たれし10の悪魔が集いし時、その力が極限まで解放される!融合召喚!『インフェルノイド・ティエラ』!」

 

インフェルノイド・ティエラ

融合・効果モンスター

炎属性

悪魔族

レベル 11

攻撃力 3400

 

2番手となったバージルが最初に発動した魔法、その効果によって発生する莫大なアドバンテージに驚きの声を上げる仮面の男たちを他所に、融合召喚の演出と共に出現したのは、端末世界を作り上げた『創星神Sophia』を模した姿の、機械の様な悪魔、インフェルノイド・ティエラ。

 

「融合召喚されたティエラの効果発動!コイツは融合素材としたモンスターの種類数によって様々な効果を発動出来る!

まずは3種類以上素材にした事で、デュエル中のプレイヤー全員はエクストラデッキからカードを3枚墓地へ送らなければならない!」

「何だと!?ならば私は『古代の(アンティーク・)機械(ギア・)参頭(トリプルバイト・)猟犬(ハウンドドッグ)』を3体墓地へ送る…!」

「俺も同じ組み合わせで墓地へ送る…!」

「私も同じくだ…!」

「俺は『彼岸の旅人ダンテ』と『旧神ヌトス』、そして『虹光の宣告者』を墓地へ送るぜ!」

「俺はエクストラデッキの残り2枚全て、どちらもティエラだ、これを墓地へ送る。

続いて5種類以上素材にした事で、全員デッキトップから3枚墓地に送らなければならない!」

「くっまだあるのか…!」

「おっ!良い落ち方だぜ!」

「俺の落ちも悪くないな…

続いて8種類以上素材にした事で使える効果もあるが、この盤面では意味が無いからスキップする。

そして10種類以上素材にした事で、

 

全員の手札を全て墓地へ送る!さあ、握っているカードを全て捨てろ!」

「な、何!?」

 

ティエラの効果によって、大いに荒らされていく盤面。

だが、

 

「おっと、まだ終わりとか思って無いだろうな?確かにティエラのモンスターエフェクトは終わりだが、今度は俺のカードによるエフェクトが待っているぜ!

まずはチェーン1、バルバリッチャのモンスターエフェクト!対象はラビキャントとファーファレル!

チェーン2、ガトルホッグのモンスターエフェクト!対象はグラバースニッチ!

チェーン3、リビオッコのモンスターエフェクト!

チェーン4、グラバースニッチのモンスターエフェクト!

チェーン5、ダンテのモンスターエフェクト!対象はスカラマリオン!

チェーン6、旧神ヌトスのモンスターエフェクト!対象はウェルギリウス!

チェーン7、虹光の宣告者のモンスターエフェクト!

チェーン8、ファーファレルのモンスターエフェクト!対象はティエラ!

更にチェーン9と10でセットカードオープン!『連鎖爆撃(チェーン・ストライク)』ダブル!」

 

連鎖爆撃(準制限カード)

速攻魔法

チェーン2以降に発動出来る。このカードの発動時に積まれているチェーンの数×400ポイントダメージを相手ライフに与える。同一チェーン上に複数回同名カードの効果が発動している場合、このカードは発動出来ない。

 

「一体どれだけチェーンを組むのだ!?」

 

仮面の男の1人が驚愕するのも無理は無いチェーンの数。

召喚権を3つにする『サモンチェーン』はチェーン3以降、速攻魔法の上に禁止制限も掛かっていない『死者蘇生』こと『奇跡の蘇生』や、罠カード版『強欲な壺』こと『積み上げる幸福』はチェーン4以降に発動出来る(既に同一のカードが2枚以上チェーンに入って居る場合は発動出来ない)が、普通だったら此処まで積み上げるのは、『チェーンバーン』等の専用構築を要する。

これを、チェーン1~9まで別々のカードで積み上げる事、それがどれだけ無茶苦茶かはお分かりいただけるだろうか?

そして、そのチェーンで放たれる連鎖爆撃は、

 

「まずは2枚の連鎖爆撃のエフェクトからだ!最初に其処の黄色い奴に4000ダメージ!次に其処の青い奴に3600ダメージだ!」

「「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」

 

????(黄色) LP 4000→0 LOSE

????(青) LP 4000→400

 

文字通りの一撃必殺。

 

「次にファーファレルのエフェクトで、ティエラをエンドフェイズまで除外するぜ!

続いて虹光の宣告者のエフェクトで、デッキから『善悪の彼岸』をサーチするぜ!

更にヌトスのエフェクトで、ウェルギリウスを破壊するぜ!これで俺は、このチェーン処理が終わった後にドローが約束された!

更に更に、ダンテのエフェクトでスカラマリオンをサルベージするぜ!

まだまだぁ!グラバースニッチのエフェクトでデッキからラビキャントを守備表示でリクルートだ!

まだこれからだぜ!リビオッコのエフェクトでさっき回収したスカラマリオンを守備表示で特殊召喚!

まだまだ行くぜ!ガトルホッグのエフェクトでグラバースニッチを守備表示でリアニメイトだ!」

 

彼岸の悪鬼グラバースニッチ

効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 3

守備力 1500

 

先程ウェルギリウスを出す前に、ダンテの側で並んでいたモンスターが再び展開されると共に現れたのは、マレブランケの一角、グラッフィアカーネを模した悪魔、グラバースニッチ。

 

「そして、バルバリッチャのエフェクトで墓地のラビキャントとファーファレルを除外して、600ダメージを其処の青い奴に与えるぜ!」

「な!?がぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

????(青) LP 400→-200 LOSE

 

「な、な、我らをこうもたやすく…」

 

一連のチェーン処理で、仲間の2人が敗北、気絶していく様を見て動揺を隠せない、赤い仮面の男。

 

「おっと、まだ終わりじゃないぜ!さっきヌトスの効果で破壊されたウェルギリウスのモンスターエフェクト!ドロー!」

「漸く終わりか。ならば俺も動くとしよう!まずは墓地にあるシャイターンとベルゼブルを除外し、墓地のアドラメレクを攻撃表示で蘇生!」

 

インフェルノイド・アドラメレク

効果モンスター

炎属性

悪魔族

レベル 8

攻撃力 2800

 

更に呼び出されたのは、端末世界にそびえたつ『神星樹』に封印されていた悪魔達『インフェルノイド』の一角で、貪欲(ケムダー)を司る機械の様な悪魔、アドラメレク。

 

「続いて墓地にある2枚のティエラとルキフグスを除外し、墓地のネヘモスを攻撃表示で蘇生!」

 

インフェルノイド・ネヘモス

効果モンスター

炎属性

悪魔族

レベル 10

攻撃力 3000

 

まだ終わらないと言わんばかりに呼び出されたのは、インフェルノイドの一角で、物質主義(キムラヌート)を司る機械の様な悪魔、ネヘモス。

 

「俺はこのままターンエンド!エンドフェイズに、ファーファレルの効果で除外されたティエラが帰還する」

 

Vergil

LP 4000

手札 0

モンスター インフェルノイド・アドラメレク(攻撃表示)

      インフェルノイド・リリス(攻撃表示)

      インフェルノイド・ティエラ(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

「くっ…!

私のターン!ドロー!

これで態勢を立て直す!魔法『古代融合(アンティーク・フュージョン)』を発動「チェーンしてティエラをリリースし、ネヘモスの効果発動!その発動を無効にし、除外する!」な、な…!」

「どうした?まだお前のターンだぜ」

「た、ターンエンド…!」

 

????(赤)

LP 4000

手札 0

モンスター なし

魔法・罠カード なし

 

その余りにも圧倒的な布陣を前に、今引きで引いた魔法カードを使って活路を見出そうとするも、呆気なく捻じ伏せられる。

最早万事休す、赤い仮面の男もまた、先に倒れた2人の仲間と運命を共にする事となる…!

 

「さあてFinishだ!俺のターン、ドロー!

俺はレベル3のグラバースニッチに、同じくレベル3のラビキャントをチューニング!シンクロ召喚、レベル6!再び現れろ、ウェルギリウス!

更に今墓地へ送られたグラバースニッチのモンスターエフェクト!

デッキからガトルホッグを攻撃表示でリクルートだ!」

 

彼岸の悪鬼ガトルホッグ

効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 3

攻撃力 1600

 

「さあバトルフェイズ!All-out Attackだ!」

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

????(赤) LP 4000→2400→-100 LOSE

 

「よしっ!まずは3人だ!」

「順調な出だしだ。この勢いで行くぞ、ダンテ!」

 

気絶した3人を捕縛しつつ、2人はフィールドを移動して行く…



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45話_(OCGの)嘗ての英雄達

ダンテとバージルが、3人の仮面の男を圧倒していた同時刻、別エリアにスタンバイしていた、金髪蒼眼で、グラマラスな体躯を強調するぴっちりした黒い服装を着用する女性、トリッシュもまた、

 

「「デュエル!」」

 

先攻 Trish LP 4000 VS 後攻 ????(赤) LP 4000

 

ダンテ達が遭遇した仮面の男とそっくりなデュエリストとデュエルを行っていた。

 

「先攻は私ね。

まずはスケール1の『クリフォート・アセンブラ』と、スケール9の『クリフォート・ツール』をペンデュラムスケールにセッティングするわ」

「ペンデュラムスケール?」

 

ペンデュラムスケール(青):1(クリフォート・アセンブラ)

ペンデュラムスケール(赤):9(クリフォート・ツール)

 

トリッシュが手始めに行った行為に疑問符を浮かべる仮面の男、どうやらペンデュラムモンスターに関して全く知らない様だ。

 

「ライフポイントを800支払って、今セットしたクリフォート・ツールの効果を発動するわ。デッキから『機殻の再星(リクリフォート)』を手札に」

 

Trish LP 4000→3200

 

「さあ見せて上げるわ、この次元ならではの召喚方法、ペンデュラム召喚を。

Cディスク、ティエラディレクトリ開封、クリフォート.exe起動。例外検出、無視して起動続行。

ペンデュラム召喚。クリフォート・アーカイブ、クリフォート・ゲノム」

「ぺ、ペンデュラム召喚だと!?何なんだそれは!?」

 

クリフォート・アーカイブ

効果モンスター/ペンデュラム

地属性

機械族

レベル 6→4

攻撃力 2400→1800

 

クリフォート・ゲノム

効果モンスター/ペンデュラム

地属性

機械族

レベル 6→4

攻撃力 2400→1800

 

ペンデュラム召喚の演出と共にトリッシュの場に登場したのは、インフェルノイドと共に神星樹にて封印されていた機械モンスター達『クリフォート』の一角で、『色欲(ツァーカブ)』を司るモンスター、アーカイブと、『貪欲』を司るモンスター、ゲノム。

 

「更に今ペンデュラム召喚した2体をリリースして、ペンデュラムアドバンス。『クリフォート・ディスク』」

 

クリフォート・ディスク

効果モンスター/ペンデュラム

地属性

機械族

レベル 7

攻撃力 2800

 

その2体をリリースする事で登場したのは、クリフォートの一角で、『無感動(アディシェス)』を司るモンスター、ディスク。

 

「フィールドから墓地へ送られるペンデュラムモンスターは、代わりにエクストラデッキへ送られるわ。更にクリフォートモンスターをリリースしたアドバンス召喚したディスクの効果発動。

デッキからアーカイブと、ゲノムを特殊召喚するわ。

カードを1枚セットして、ターンエンド。

エンドフェイズに、ディスクの効果で特殊召喚されたアーカイブとゲノムを破壊、その後、ペンデュラムスケールにセットされたアセンブラの効果で、2枚ドローするわ」

 

Trish

LP 3200

手札 2

ペンデュラムスケール(青):1(クリフォート・アセンブラ)

ペンデュラムスケール(赤):9(クリフォート・ツール)

モンスター クリフォート・ディスク(攻撃表示)

魔法・罠カード セット(機殻の再星)

 

「ふっ!何をするかと思えば、最上級モンスターをたかだか1体アドバンス召喚しただけか!ならば俺のターン!ドロー!

まずは『古代の(アンティーク・)機械(ギア・)猟犬(ハウンドドッグ)』を召喚!」

「ならその召喚成功時にセットカードオープン。『機殻の再星』」

「何、このタイミングで発動だと?」

 

古代の機械猟犬(アニメオリジナルカード)

効果モンスター

地属性

機械族

レベル 3

攻撃力 1000

 

機殻の再星

永続罠

1:モンスターが召喚・反転召喚された時、そのモンスターがレベル4以下の場合にこの効果を発動する。そのモンスターの効果をターン終了時まで無効にする。

2:モンスターが特殊召喚された時、そのモンスターがレベル5以上の場合にこの効果を発動する。そのモンスターの効果をターン終了時まで無効にする。そのモンスターはフィールドから離れた場合に除外される。

3:フィールドに『機殻の再星』以外の『クリフォート』カードが存在しない場合にこのカードは墓地へ送られる。

 

「機殻の再星の効果で、今召喚した古代の機械猟犬は、レベルが4以下だから効果が無効になるわ。残念だったわね」

「何っ!?」

 

恐らく仮面の男は、今だした猟犬の姿をした機械仕掛けのモンスターの効果で盤面を覆そうとしたのだろうが、トリッシュはそれを見越して、先程サーチした機殻の再星を発動した。

 

「ならば『融合』発動!」

 

融合

通常魔法

1:自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「俺はフィールドに1枚、手札に2枚ある古代の機械猟犬を融合!

古の魂受け継がれし、機械仕掛けの猟犬達よ!群れ成して混じり合い、新たなる力と共に生まれ変わらん!融合召喚、レベル7!『古代の機械参頭猟犬』!」

 

古代の機械参頭猟犬(アニメオリジナルカード)

融合・効果モンスター

地属性

機械族

レベル 7

攻撃力 1800

 

「その融合召喚成功時に、機殻の再星の効果で、そのモンスターはレベルが5以上だから、効果は無効になるわ」

「ふん、構わん!どちらにせよこのカードでは貴様のモンスターを突破する事は叶わない、だからこうするまでだ!魔法『死者蘇生』発動!」

 

死者蘇生(制限カード)

通常魔法

1:自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

「死者蘇生の効果で、たった今融合素材として墓地へ送った古代の機械猟犬を守備表示で蘇生する!貴様のフィールドにあるその永続罠も、『特殊召喚』された『レベル4以下の』モンスターには対応していまい!」

「あら、案外頭が回るみたいね」

 

機殻の再星の新たなる効果には意も介さず、逆にその死角を見抜いた仮面の男は、融合召喚した機械仕掛けの三つ首の猟犬の他に、先程出したばかりの古代の機械猟犬を並べ、

 

「その余裕ももう直ぐ終わりだ!今蘇生した古代の機械猟犬の効果発動!600ポイントのバーンダメージ!」

「あちっ…

これ位、どうって事は無いわ」

 

Trish LP 3200→2600

 

「だろうな。だが塵も積もれば山、コイツの姿を見てもまだ軽口が叩けるか!?古代の機械猟犬の、もう1つの効果で俺は、古代の機械猟犬と、古代の機械参頭猟犬を融合!

古の魂受け継がれし、機械仕掛けの猟犬達よ!群れ成して混じり合い、究極の力と共に生まれ変わらん!融合召喚、レベル9!『古代の(アンティーク・)機械(ギア・)究極(アルティメット・)猟犬(ハウンドドッグ)』!」

 

古代の機械究極猟犬

融合・効果モンスター

地属性

機械族

レベル 9

攻撃力 2800

 

死角を突いた事でモンスター効果が有効になった古代の機械猟犬の効果を立て続けに使い、それによって呼び出されたのは、禍々しさすら感じる三つ首の機械の猟犬。

 

「貴様の永続罠の所為でこのカードの融合召喚成功時の効果は使えないが、それでも貴様のモンスターを倒すステータスは持っている!コイツの力を持ってすれば…!?

な、無い!?融合素材に使った古代の機械参頭猟犬が、無くなっているだと!?」

「コイツの力を持ってすれば、何かしら?そうそう、機殻の再星の2つ目の効果には続きがあって、特殊召喚されたレベル5以上のモンスターは、効果が無効になるだけでなく、フィールドを離れた場合に除外されるのよ」

「な、何だと!?(これでは今握っている『リビングデッドの呼び声』が使えないでは無いか!)

な、ならばカードを1枚セットしてターンエンド…!」

 

その佇まいに自信を深める仮面の男だったが、墓地の様子がおかしい事に慌てふためき、トリッシュから新たなる事実を聞いた瞬間、その自信が打ち砕かれた様に、ターンエンドを宣言してしまう。

 

????(赤)

LP 4000

手札 0

モンスター 古代の機械究極猟犬(攻撃表示 『機殻の再星』適用中)

魔法・罠カード セット(リビングデッドの呼び声)

 

「さて、これで終わりにしてあげるわ。私のターン、ドロー。

クリフォート.exe再起動。ペンデュラム召喚、今度はゲノム2体とアーカイブ2体よ。

更にゲノム2体とアーカイブをリリースしてペンデュラムアドバンス。さあ現れなさい、邪悪なる樹の核を司る、神をも滅ぼす知能よ。『アポクリフォート・カーネル』」

 

アポクリフォート・カーネル

効果モンスター

地属性

機械族

レベル 9

攻撃力 2900

 

そんな男を前に、これで最後だと言わんばかりにトリッシュが出したモンスターは、クリフォートの中核を担う『アポクリフォート』の一角で、『無神論(バチカル)』を司るモンスター、カーネル。

 

「リリースされたゲノムの効果発動。貴方のセットカードを破壊するわ」

「ぐぁっ!?」

「更にカーネルの効果発動。貴方のモンスターを貰うわ」

「な、何だと!?俺のモンスターが…!」

「そして速攻魔法『リミッター解除』発動」

 

リミッター解除(制限カード)

速攻魔法

このカードの発動時に自分フィールド上に表側表示で存在する全ての機械族モンスターは、ターン終了時まで攻撃力が倍になる。このターンのエンドフェイズ時、この効果を受けたモンスターを全て破壊する。

 

古代の機械究極猟犬 攻撃力 2800→5600

クリフォート・ディスク 攻撃力 2800→5600

クリフォート・アーカイブ 攻撃力 2400→4800

 

そして、勝負が決まったも同然だとしても、容赦しない。

 

「な、な…!」

「バトルフェイズよ。古代の機械究極猟犬でダイレクトアタック」

「ぐぁぁぁぁぁぁ!」

 

????(赤) LP 4000→-1400 LOSE

 

「まずは1人、ね。それにしても、やっぱりこのデッキは使いやすくて良いわね。流石は今巷を賑わせているペンデュラム召喚、といった所かしら」

 

そう呟きながら仮面の男を捕縛しつつ、トリッシュは再び移動を始めた。

 

------------

 

一方、白を基調とした服装、右目が青で左目が赤というオッドアイが特徴的な女性、メアリも、

 

「「デュエル!」」

 

先攻 ????(青) LP 4000 VS 後攻 Mary LP 4000

 

「先攻は私か。

ならば魔法『融合』発動!」

 

融合

通常魔法

1:自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「私は手札の、2枚の古代の機械猟犬を融合!

古の魂受け継がれし、機械仕掛けの猟犬の番いよ!互いに混じり合い、新たなる力と共に生まれ変わらん!融合召喚、レベル5!『古代の(アンティーク・)機械(ギア・)双頭(ダブルバイト)猟犬(ハウンドドッグ)』!」

 

古代の機械双頭猟犬

融合・効果モンスター

地属性

機械族

レベル 5

攻撃力 1400

 

仮面の男が最初に出したのは、機械仕掛けの二つ首の猟犬。

 

「次に死者蘇生発動!効果で、今融合素材として墓地へ送った古代の機械猟犬を守備表示で蘇生する!

そして今蘇生した古代の機械猟犬の効果で、このカードと、手札にあるもう1枚の古代の機械猟犬を融合!

融合召喚!並び立て!古代の機械双頭猟犬!

私はこれでターンエンド」

 

????(青)

LP 4000

手札 1

モンスター 古代の機械双頭猟犬(攻撃表示)×2

魔法・罠カード なし

 

ステータスが高くないモンスター2体を態々攻撃表示にした事、それを守る為のセットカードも無い事に対して、怪訝な顔を隠そうともしないメアリ。

 

「そのモンスターがどんな得体の知れない効果を持っているか知らないけど、私は私のデュエルをするまでよ!私のターン、ドロー!

まずは手札の『ブリューナクの影霊衣(ネクロス)』を捨てて効果発動!

デッキから『影霊衣の術士シュリット』を手札に加えるわ!

次に儀式魔法『影霊衣の反魂術』発動!」

 

影霊衣の反魂術(制限カード)

儀式魔法

『影霊衣』儀式モンスターの降臨に必要。『影霊衣の反魂術』の1の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。

1:レベルの合計が儀式召喚するモンスターと同じになる様に、自分の手札・フィールドのモンスターをリリースし、自分の手札・墓地から『影霊衣』儀式モンスター1体を儀式召喚する。

2:自分フィールドにモンスターが存在しない場合、自分の墓地からこのカードと『影霊衣』モンスター1体を除外して発動出来る。デッキから『影霊衣』魔法カード1枚を手札に加える。

 

「さっき手札に加えたシュリットは、『影霊衣』儀式モンスター1体を儀式召喚するなら、このカード1枚で必要なレベルを賄う事が出来るわ!私はシュリットをリリースする事で、墓地のブリューナクの影霊衣を降臨させる!

禁断の氷龍、その力を纏いし戦士よ!今君臨し、降りかかる火の粉を吹き飛ばせ!儀式召喚!ブリューナクの影霊衣!」

「墓地から儀式召喚!?しかもリリース1枚でだと!?」

 

ブリューナクの影霊衣(制限カード)

儀式・効果モンスター

水属性

戦士族

レベル 6

攻撃力 2300

 

メアリが呼び出したのは、端末世界に存在する勢力『氷結界』が封印していた三龍の一角『氷結界の龍ブリューナク』の力を纏った、同じく端末世界に存在する勢力『影霊衣』の戦士。

 

「リリースに使ったシュリットの効果発動!デッキから戦士族の『影霊衣』儀式モンスターを1体、手札に加えるわ!」

「おっと、それにチェーンだ!

貴様が特殊召喚に成功した事で、古代の機械双頭猟犬の効果を発動する!

今貴様が出したモンスターに、ギア・アシッドカウンターを乗せて貰おう!」

「構わないわ。ならチェーン処理で、デッキから『クラウソラスの影霊衣』を手札に加えるわ!」

 

ブリューナクの影霊衣 ギア・アシッドカウンター 0→1(MAX)

 

メアリが出したブリューナクの影霊衣めがけて、古代の機械双頭猟犬の身体から歯車が飛び出し、それはブリューナクの影霊衣に埋め込まれる。

実を言うと、この状態で戦闘を行うとブリューナクの影霊衣は、古代の機械双頭猟犬の効果で自壊してしまう。

故に仮面の男は2体を並べ、仮にメアリが複数のモンスターを並べようと対処出来る様にしたのだ。

が、

 

「此処は臆さずに行くわ!今出したブリューナクの影霊衣の効果発動!

エクストラデッキから特殊召喚されたモンスター2体、アンタの古代の機械双頭猟犬2体にはデッキに帰って貰うわ!」

「な、何だと!?」

 

フィールドからいなくなってしまえば効果は発動されない。

 

「更に手札のクラウソラスの影霊衣を捨てて効果発動!

デッキから儀式魔法『影霊衣の万華鏡』を手札に加えて発動!」

 

影霊衣の万華鏡

儀式魔法

『影霊衣』儀式モンスターの降臨に必要。『影霊衣の万華鏡』の1の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。

1:儀式召喚するモンスターと同じレベルになる様に、自分の手札・フィールドのモンスター1体をリリース、またはエクストラデッキのモンスター1体を墓地へ送り、手札から『影霊衣』儀式モンスターを任意の数だけ儀式召喚する。

2:自分フィールドにモンスターが存在しない場合、自分の墓地からこのカードと『影霊衣』モンスター1体を除外して発動出来る。デッキから『影霊衣』魔法カード1枚を手札に加える。

 

「私はエクストラデッキの『虹光の宣告者』を墓地へ送って手札の『ユニコールの影霊衣』を降臨させる!

異界の神に仕えし一角の魔獣、その力を纏いし戦士よ!今君臨し、盤面を統治せよ!儀式召喚!『ユニコールの影霊衣』!」

 

ユニコールの影霊衣(制限カード)

儀式・効果モンスター

水属性

魔法使い族

レベル 4

攻撃力 2300

 

これで決めると言わんばかりにメアリが出したのは、端末世界に嘗て存在した勢力『魔轟神』の使い魔『魔轟神獣ユニコール』の力を纏った、影霊衣の戦士。

 

「墓地へ送った虹光の宣告者の効果発動!

デッキから『トリシューラの影霊衣』を手札に加えてバトルフェイズに入るわ!

2人共、やってしまいなさい!」

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

????(青) LP 4000→1700→-600 LOSE

 

「ふん、異世界からの侵略者だと聞いていたけど、どうやら下っ端連中みたいね。大して手こずらなかったわ」

 

メアリもまた、仮面の男を捕縛し、そう呟きながら、移動を再開した。



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46話_対岸では…

舞網チャンピオンシップ、ジュニアユースクラスの3回戦バトルロイヤルにて、ARC-Vメンバーや、海外から来日したデュエリスト達が、融合次元から侵入して来たデュエリストの対処に当たっている中、それを知らない参加者達は、別の意味で暗躍していた。

或る者はフィールド内に散らばっているペンデュラムカードを探し回り、また或る者はペンデュラムカードを持っているデュエリストを探しまわり、そして今、

 

「久々だな、流星。まさかこの場でデュエルする事になるとはな」

「ああ、刃。此処で今までの決着付けようぜ!」

「「デュエル!」」

 

先攻 Ryusei LP 4000 VS 後攻 Yaiba LP 4000

 

刃と、LDSシンクロコースに所属するぼさぼさな茶髪の少年、龍宮(たつみや)流星(りゅうせい)、嘗て切磋琢磨した者同士が今、此処に激突した…!

 

「俺の先攻!

まずは『闇竜星―ジョクト』を召喚!」

「うわいきなりそれか!」

 

闇竜星―ジョクト

効果モンスター/チューナー

闇属性

幻竜族

レベル 2

攻撃力 0

 

流星が最初に出した、端末世界の勢力で、中国の伝説で語られる竜の子『竜生九子(りゅうせいきゅうし)』をモデルとした幻竜族モンスターの集まりである『竜星』、その一角の椒図をモデルとしたモンスターの姿に、あからさまな驚きを見せる刃。

それもその筈、このジョクトには、

 

「手札の『地竜星―ヘイカン』と『風竜星―ホロウ』を墓地へ送って、今出したジョクトの効果発動だ!

デッキから『炎竜星―シュンゲイ』を攻撃表示、『水竜星―ビシキ』を守備表示で特殊召喚!」

 

炎竜星―シュンゲイ

効果モンスター

炎属性

幻竜族

レベル 4

攻撃力 1900

 

水竜星―ビシキ

効果モンスター

水属性

幻竜族

レベル 2

守備力 2000

 

複数のモンスターをリクルートする効果を持っている。

自分以外のモンスターが存在しない時限定で、2枚の手札コストが必要とはいえ、デッキから好きなモンスターを持って来られるのは強力、それがシンクロ召喚を行うデッキであればなおさらだ。

実際に流星が場に出した、竜星の一角で竜生九子の一匹『サン猊』をモデルとしたモンスターと、同じく竜星の一角で竜生九子の一匹『贔屓』をモデルとしたモンスター、これによってレベル4、6、8のシンクロモンスターをシンクロ召喚出来る様になった。

が、

 

「次に魔法『ブラック・ホール』発動だ!」

「此処でか、他のモンスターをリクルートでもすんのか?」

 

ブラック・ホール(制限カード)

通常魔法

1:フィールドのモンスターを全て破壊する。

 

流星は此処で展開を止めなかった。

折角召喚権を使ったり、手札2枚をコストに使ったりして展開したモンスター達を態々投げ捨てるという暴挙に一見見えるが、大半の竜星には共通効果として、戦闘・効果破壊による墓地送りをトリガーとしたリクルート効果を持っている。

刃も今までデュエルし合った仲だ、それは予想の範疇だと言わんばかりの反応を見せる。

が、

 

「破壊されたシュンゲイの効果と、それにチェーンして、同じく破壊されたビシキの効果発動だ!

まずはビシキの効果でデッキから、

 

ペンデュラムモンスターの『宝竜星―セフィラフウシ』を攻撃表示で特殊召喚!

次にシュンゲイの効果でデッキから、

 

同じくペンデュラムモンスターの『秘竜星―セフィラシウゴ』を守備表示で特殊召喚!」

「…え?」

 

宝竜星―セフィラフウシ

ペンデュラム・効果モンスター

地属性

幻竜族

レベル 3

攻撃力 1500

 

秘竜星―セフィラシウゴ

ペンデュラム・効果モンスター

地属性

幻竜族

レベル 6

守備力 2600

 

出て来たモンスターは予想外だった様だ。

 

「ぺ、ペンデュラムモンスターだと!?お前、何処でそれを!?」

「社長から『テスト品として作ってみた物だが、良かったら使ってくれ』と貰ったんだ。今までのデュエルで使う機会は無かったんだが、お前とのデュエルでは出し惜しみしねぇぜ!

今出したセフィラフウシの効果発動だ!

同じく今出したばかりのセフィラシウゴをチューナーに変えるぜ!

俺はレベル3のセフィラフウシに、レベル6のセフィラシウゴをチューニング!この星の元素と、空に輝く星の光が、幻影を司る鳳凰を生み出すぜ!今こそ降り立ち、幻影の力で惑わせ!シンクロ召喚、レベル9!『幻竜星―チョウホウ』!」

「げ!?そ、そいつかよ!?」

 

幻竜星―チョウホウ

シンクロ・効果モンスター

光属性

幻竜族

レベル 9

攻撃力 2800

 

その効果を駆使して呼び出した、竜星の一角で竜生九子の一匹『嘲風』をモデルとしたモンスターの姿に、明らかに「やばい」と言いたげな様子を見せる刃。

 

「榊遊矢も言っていたけど、シンクロ召喚の素材に使ったペンデュラムモンスターは、墓地へ送られる代わりにエクストラデッキへ送られるぜ。尤も、自分自身の効果を使ったセフィラフウシはデッキの一番下へ送られるけどな。

そして永続魔法『竜星の気脈』を発動してターンエンド!分かっているとは思うけど、地属性モンスターを素材にシンクロ召喚したチョウホウがいる限り、お前は地属性モンスターの効果を使えないぜ!」

 

竜星の気脈

永続魔法

1:自分の墓地の『竜星』モンスターの属性の種類の数によって以下の効果を得る。

●2種類以上:自分フィールドの『竜星』モンスターの攻撃力は500アップする。

●3種類以上:自分フィールドの『竜星』モンスターが戦闘・効果で破壊される場合、代わりにこのカードを墓地へ送る事が出来る。

●4種類以上:相手はモンスターをセット出来ず、相手フィールドの表側表示モンスターは全て攻撃表示になる。

●5種類以上:このカードを墓地へ送って発動出来る。フィールドのカードを全て破壊する。

 

刃の『X-セイバー』は、全てが地属性。

よってチョウホウを除去しない限り刃は、あらゆるモンスター効果が無効にされたと言っても良い状態に置かれているが、当のチョウホウは『竜星の気脈』によって1回限りとはいえ破壊耐性を有している。

 

刃、絶体絶命のピンチ。

 

------------

 

一方、別のエリアでも、

 

「行くわよ!貴方をムッコロしてダーリンに会いに行くんだから!」

「随分と物騒なお嬢さんだな。だが、誰が相手であろうと俺は全力を尽くすのみ!」

「「デュエル!」」

 

先攻 Mieru LP 4000 VS 後攻 Ryotaro LP 4000

 

ミエルと、LDS総合コースに所属する緑掛かった髪色の、学ラン姿の少年、七種(さえぐさ)亮太郎(りょうたろう)が激突した。

 

「よし、良い手札!ミエルのターン!

まずは儀式魔法『聖占術の儀式』発動!」

 

聖占術の儀式

儀式魔法

『聖占術姫タロットレイ』の降臨に必要。

1:自分の手札・フィールドから、レベルの合計が9以上になるようにモンスターをリリースし、手札から『聖占術姫タロットレイ』を儀式召喚する。

2:自分メインフェイズに墓地のこのカードを除外して発動出来る。デッキから『占術姫』モンスター1体を手札に加える。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動出来ない。

 

「ミエルは手札のレベル9『禁忌の壺』をリリースして、『聖占術姫タロットレイ』を降臨させるわ!

全てを見通す太古の巫女よ、古の秘術によりて今蘇れ!儀式召喚、レベル9!『聖占術姫タロットレイ』!」

 

聖占術姫タロットレイ

儀式・効果モンスター

光属性

天使族

レベル 9

攻撃力 2700

 

ミエルが発動した儀式魔法、その演出と共に出現したのは、魔法使いを思わせる姿の天使、タロットレイ。

 

「更にモンスターをセット、カードを1枚セットしてエンドフェイズにタロットレイの効果発動!

墓地にある『禁忌の壺』を裏側守備表示で特殊召喚!」

 

Mieru

LP 4000

手札 0

モンスター 聖占術姫タロットレイ(攻撃表示)

      セット

      セット(禁忌の壺)

魔法・罠カード セット

 

「では俺のターン、ドロー!

メインフェイズ、そっちの場にのみモンスターが存在するので『サイバー・ドラゴン』を攻撃表示で特殊召喚」

 

サイバー・ドラゴン

効果モンスター

光属性

機械族

レベル 5

攻撃力 2100

 

亮太郎が最初に呼び出したのは、機械仕掛けの白い龍、サイバー・ドラゴン。

 

「次に、手札の『サイバー・ドラゴン・ドライ』を墓地へ送って『銀河戦士(ギャラクシー・ソルジャー)』の効果発動。

このカードを守備表示で特殊召喚」

 

銀河戦士

効果モンスター

光属性

機械族

レベル 5

守備力 0

 

「特殊召喚した銀河戦士の効果発動」

「同じレベルが2体並んだ…!

させないわ!チェーンしてタロットレイの効果発動!裏側表示になっている禁忌の壺を表側攻撃表示に変えるわ!」

 

禁忌の壺

効果モンスター/リバース

地属性

岩石族

レベル 9

攻撃力 2000

 

「ならばチェーン処理で、デッキから2枚目の銀河戦士を手札に加える」

「チェーン処理は終わりだけど、此処でリバースした禁忌の壺の効果発動!

貴方の場のモンスターを全て破壊するわ!」

「何…!?

『サンダー・ボルト』と同等のリバース効果だと…!」

 

その後、機械仕掛けの戦士を出してエクシーズ召喚の準備を進めるも、ミエルがセットしていた、禍々しき雰囲気を放つ壺が新たなる効果を発動した事で、寸での所で除去される。

 

「だがこれで出せなくなったと思ったら大間違いだ。

2枚目のサイバー・ドラゴンを攻撃表示で特殊召喚。

更に魔法『死者蘇生』発動」

 

死者蘇生(制限カード)

通常魔法

1:自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

「死者蘇生の効果で、さっき破壊された銀河戦士を攻撃表示で蘇生する」

 

が、すぐさま先程と同じ様な布陣に立て直した。

 

「俺はサイバー・ドラゴンと銀河戦士でオーバーレイ。2体のレベル5・機械族モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。超量の力を得た機光竜が、新星の如き光を解き放つ!エクシーズ召喚、ランク5!『サイバー・ドラゴン・ノヴァ』!」

「エクシーズ召喚、やっぱり使って来たわね…!」

 

サイバー・ドラゴン・ノヴァ

エクシーズ・効果モンスター

光属性

機械族

ランク 5

攻撃力 2100

ORU 2

 

更にエクシーズ召喚の演出と共に、バリアユニットと、レーザー砲と、車輪状のパーツを取りつけた姿となったサイバー・ドラゴンを呼び出し、

 

「更にサイバー・ドラゴン・ノヴァのオーバーレイ・ネットワークを再構築!超量の力を得た機光竜が更なる進化を遂げ、無限の如き光を放つ!エクシーズ召喚、ランク6!『サイバー・ドラゴン・インフィニティ』!」

 

サイバー・ドラゴン・インフィニティ

エクシーズ・効果モンスター

光属性

機械族

ランク 6

攻撃力 2100→2700

ORU 3

 

それが更なる進化を遂げ、洗練された姿となったサイバー・ドラゴン・インフィニティとなった。

 

「今出したサイバー・ドラゴン・インフィニティの効果発動!そっちの場にある禁忌の壺を、サイバー・ドラゴン・インフィニティのORUに変える!」

「な、何ですって!?」

 

サイバー・ドラゴン・インフィニティ ORU 3→4

                  攻撃力 2700→2900

 

「バトルフェイズに入る。

サイバー・ドラゴン・インフィニティでタロットレイを攻撃!エヴォリューション・バースト・インフィニティ!」

「きゃぁ!?」

 

サイバー・ドラゴン・インフィニティ 攻撃力 2900 VS 聖占術姫タロットレイ 攻撃力 2700

 

Mieru LP 4000→3800

 

「メインフェイズ2に入って、カードを1枚セットしてターンエンド」

 

Ryotaro

LP 4000

手札 1(銀河戦士)

モンスター サイバー・ドラゴン・インフィニティ(攻撃表示)

魔法・罠カード セット

 

ミエルと亮太郎のデュエルも、互いにモンスター効果の応酬で盛り上がりを見せていた。

 

 

 

 

 

そんな中、事件は起こった。



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47話_放たれた、凶弾

今話はかなり短いです。


舞網チャンピオンシップ、ジュニアユースクラスの3回戦であるバトルロイヤルが行われている此処舞網市で突如、ズダァン!という銃声が聞こえた。

 

「じゅ、銃声!?一体なんでこんな所で!?」

「もしかしてセレナ達が遭遇した、融合次元のデュエリストを狙うテロリストの仕業か…!?

柚子、音からして大分近い、急いで向かおう!」

「うん、遊矢!」

『まさか大会中にも関わらずテロを起こそうとはね…!』

『気を付けろ遊矢、柚子!相手はテロリストだ、何を仕出かすか分かった物じゃない!』

「当然だ、アストラル。(キィン!)覇王の力を使わねばな…」

 

その音がした方向へと、柚子にユベル、アストラルと共に向かい、道中で覇王の力を解放した。

其処に、最悪の光景が広がってしまう前に対処すべく…!

だが、其処には…

 

「な、何これ、一体…!

い、嫌ァァァァァァァァァァァァァ!」

 

腹部を境目に上半身と下半身が分断され、既に息絶えたデニスの遺体が…!

そしてその側には…!

 

「お前、か?お前がデニスを…!

貴様かぁ!貴様が皆をぉぉぉぉ!」

「へ、え?いや、ちょ(ガチャァ)なっ!?」

「俺は、許さない…!

瑠璃を、リンを、デニスを、エクシーズ次元を陥れたお前を、許さない!デュエル!」

「全くうるさい奴だな、デュエル!」

 

先攻 Yuya LP 4000 VS 後攻 Joeri LP 4000

 

恐らくコイツが、紫の髪と眉、軍人みたいな服装をしている以外は俺そっくりのコイツが、瑠璃やリンを捕えた『融合次元の俺』、ならば絶対に此処で拘束する!

 

「俺の先攻!

手札から永続魔法を4枚発動!『王家の神殿』!『デッキロック』!『悪夢の拷問部屋』!永続魔法扱いの『神縛りの塚』!」

「4枚の永続魔法を並べた…?」

 

王家の神殿

永続魔法

『王家の神殿』の1、2の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用出来ない。

1:自分は罠カード1枚をセットしたターンに発動出来る。

2:自分フィールドの表側表示の『聖獣セルケト』1体とこのカードを墓地へ送ってこの効果を発動出来る。手札・デッキのモンスター1体またはエクストラデッキの融合モンスター1体を特殊召喚する。

 

デッキロック

永続魔法

このカードがフィールド上に存在する限り、お互いにドロー以外の方法でデッキからカードを手札に加える事は出来ず、デッキからの特殊召喚も出来ない。

発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ時にこのカードを破壊する。

 

悪夢の拷問部屋

永続魔法

相手ライフに戦闘ダメージ以外のダメージを与える度に、相手ライフに300ポイントダメージを与える。『悪夢の拷問部屋』の効果では、このカードの効果は適用されない。

 

神縛りの塚

フィールド魔法(永続魔法扱い)

1:フィールドのレベル10以上のモンスターは効果の対象にならず、効果では破壊されない。

2:フィールドのレベル10以上のモンスターが戦闘でモンスターを破壊し墓地へ送った場合に発動する。破壊されたモンスターのコントローラーは1000ダメージを受ける。

3:フィールドのこのカードが効果で破壊され墓地へ送られた時に発動出来る。デッキから神属性モンスター1体を手札に加える。

 

『融合次元の俺』が何か怪訝な様子を見せているが、俺の手札に残った最後の1枚を見ても、それを維持出来るか?

そう、融合次元にとっては禁忌と言っても良い、『コイツ』を…!

 

「俺は今発動した王家の神殿、デッキロック、悪夢の拷問部屋をリリースする!」

「さ、3枚の永続魔法をリリースだって!?馬鹿な、それを行うのは『アレ』しか…!」

「太陽神の翼竜の力、雷となりて新たな姿を成す!今こそ封印を解き放ち、世界を破滅に導く号砲を響かせよ!君臨せよ、三幻魔の一柱よ!『降雷皇ハモン』!」

『ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…!』

「さ、三幻魔!?何故君がそれを持っている!?」

 

降雷皇ハモン

効果モンスター

光属性

雷族

レベル 10

攻撃力 4000

 

俺の場に登場した、三幻神の一角『ラーの翼神竜』が骨だけの姿になったような三幻魔の一角『降雷皇ハモン』の姿に驚きの声を上げる『融合次元の俺』だが、これで終わりじゃ無い!

 

「更にアクショントラップ『先手必殺』発動してバトルフェイズに入る!」

「ば、バカな!?今はそっちの先攻1ターン目の筈…!?」

 

先手必殺

アクショントラップ

1:手札を全て捨てる。その後、このターンのバトルフェイズに入る(この時、『バトルフェイズを行う事が出来ない』ルールと効果を無視する)。

 

「さあ食らうが良い、三幻魔の怒りを、俺の怒りを!

降雷皇ハモンでダイレクトアタック!『失楽の霹靂』!」

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ(ヒュン!)」

 

先手必殺の効果で先攻1キルを決めようとハモンにダイレクトアタックを指示した俺、だがその攻撃が当たろうとしたその瞬間、デュエルアンカーで捕縛した筈の『融合次元の俺』は光に包まれると同時に消え去ってしまった。

くそっ逃がしたか…!

 

「デニス…!

お前の無念、俺が晴らして見せる!だからお前の力、俺に貸してくれ!父さんのエンタメデュエルを追いかけて来た、お前の(カード)を!」

 

------------

 

その、デニスを手に掛けたのは『融合次元の遊矢』では無く、

 

「何故だ…!?

何故バレットを、アカデミアのデュエリスト達を殺した!?何故そんな平気な顔をして人を殺せる!?貴様それでもデュエリストか!?」

「何とでも言うが良いわ。デュエリストとしての誇りは、故郷に置いた身だから。

 

でも、その言葉そっくりそのまま返させて貰うわ!」

「な、何だと!?誇り高きアカデミアのデュエリストがその様な事をする筈が(パァン!)わっ!?」

「セレナ様!?無事ですか!?」

「誇り高きデュエリスト?寝言が言いたいなら寝かしつけて上げるわ。永眠という名のね。

 

その融合次元のデュエリスト達が面白半分に、エクシーズ次元を荒らし回り、人々を殺したんだ!

そして今この世界においてもゲームをやっているかの様に同じことをやろうとしているんだ!

お前達の所為で、お前達のおふざけの所為で私の家族は、遊児は殺されたんだ!

 

 

 

返してよ…!

遊児を、私の弟を、私の一番大好きな人を返してよ!」

「な、なん…だと…?」

 

『髪と眼を真っ赤にし』、対峙しているセレナに憎悪をぶつける、遊香だった。



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48話_裏切り、復讐、そして…

「これは…!

オベリスク・フォースが使っている『古代の機械(アンティーク・ギア)』カード…!?」

「え!?それって確か…!

何で、何でデニスのデッキに入っているの…?」

 

『融合次元の俺』に殺されたデニスの無念を晴らす為に、遺品となったデニスのデッキを回収していた俺の目に、信じられない物が映った。

デニスのデッキに、アカデミアの精鋭部隊『オベリスク・フォース』が使っているらしい、『古代の機械』カテゴリのカードが入っていたんだ。

古代の機械と聞くと、俺が十代だった頃に色々とお世話になった(原作の様な『悪い意味で』じゃないからな)クロノス先生が愛用するカテゴリ、というイメージがあるんだが、融合次元のデュエルアカデミアでも大分メジャーなカテゴリであるが、オベリスク・フォースに選ばれる位の実力を持ったデュエル戦士にしか提供されない特別な物、というのはセレナから聞いた話だ。

それをデニスが持っている、という事は、デニスは融合次元出身の、それも精鋭に選ばれる程のデュエリストって事になる。

だけどアカデミアのデュエリストが融合モンスター以外の、エクストラデッキに入るカード(シンクロやエクシーズ)を入れているという情報は聞いた事が無い(セレナや一美が「そんな奴はアカデミアの恥」と言っていたし)が、デニスの『Em(エンタメイジ)』はエクシーズ召喚を主戦略としたデッキだ。

何より精鋭として将来を嘱望されている筈のデニスを『融合次元の俺』に殺させる等、余程の事(瑠璃やリンを拉致する際に自ら出向く等、アカデミアにとって重要人物らしいし)の筈、つまり…

 

 

 

デニスはこの次元に来るずっと前にアカデミアを裏切った事で『裏切り者』としてマークされ、その咎に対する『罰』の名目で今、『融合次元の俺』に殺されたって事だ…!

 

「柚子、デニスの敵をとろう…!

アカデミアの精鋭として将来を嘱望されながら、アカデミアの行動に対して真っ先に疑問を抱いて異を唱え、エクシーズ次元に翻った事で『裏切り者』のレッテルを張られた、彼の無念を晴らそう…!

父さんのエンタメデュエルをリスペクトし、自分なりのエンタメデュエルを貫こうとした彼の信念を、俺達が引き継いでいこう…!」

「うん、遊矢「師匠達に手を出すなぁぁぁぁ!(ドゴォ!)」「ぐはぁっ!?」え!?」

「そ、素良!?」

 

柚子と共に、改めてデニスの敵をとろうと決めた矢先の事だった、背後から素良の声と、何かが激突する音が聞こえ、その方へ振り向くと、其処にはオベリスク・フォースの1人に体当たりを決める素良の姿があった。

 

「師匠!コイツは僕に任せて行ってください!早く!」

「そ、素良「良いから早く!お願いします!」わ、分かった!」

 

------------

 

Side 素良

 

「何の真似だ、素良!貴様裏切るのか、我らデュエルアカデミアを!」

「だったら何だって言うんだい?僕を裏切り者として、プロフェッサーに報告でもすれば良いさ。まぁ生き残れたら、の話だけどね」

 

今のやり取りで感づかれたかな?まあ色々な連中が嗅ぎまわっていたみたいでバレバレだろうけどね。

今のでピンと来た人も多いと思うけど、僕も、目の前にいるオベリスク・フォースも、此処『スタンダード次元』とは違う世界『融合次元』にあるデュエルアカデミアから来たんだ。

僕はスタンダード次元への斥候という形の特別任務をプロフェッサーから受けて、目の前のオベリスク・フォースは恐らくエクシーズ次元の残党を狩る任務で。

正直、「スタンダード次元は敵では無い」とプロフェッサーが言う通り、そのレベルは余りにも低いと思っていたからその任務は気が進まなかった、プロフェッサー直々に任務を受けて無かったら今頃すっぽかしていた位に。

実際に此処のレベルは、アカデミアはおろか、エクシーズ次元の連中にも及ばない位低かった、けど、何事も例外は存在した。

この舞網市で最大手と言われているLDSのデュエルフィールドで見た師匠のデュエルは、アカデミアでも偶にしか見かけない位に洗練された、凄まじい物だった。

師匠曰く「エクストラデッキ無し、モンスターは全て攻撃力2000未満」のデッキで互角以上、というか優位に立ち回ったその姿だけでも当時の、僕の気を惹かせるには充分だったのに、『ペンデュラム召喚』という全く新しい召喚方法を編み出したとあればもう、くっついて行きたいと思うのはデュエリストの性って奴かな。

でもまだこの時は師匠が異常なほどレベルが高いだけで他は、と思っていたけど、甘かった。

師匠が所属しているデュエルスクール『遊勝塾』に加入、僕の実力を見せる事になったんだけど、その相手で「師匠の一番弟子」を自称し、師匠にくっ付いていた僕にドロップキックを仕掛けるというリアリストもいい加減にして!と言いたい出会いをしたエレンの実力も凄まじい物だった。

僕がデストーイ達を展開して行った事を逆手に取り、融合素材モンスターとして奪い取って行くプレイングに圧倒されたあのデュエルで、僕は遊勝塾のレベルが、師匠の指導を受けたデュエリスト達の腕前が、アカデミアにも勝るクラスなんじゃないかってこの時感じ、其処の一員としてこれから過ごしていく事に、ついて行けるかという不安も無くは無かったけど、それが霞む位にワクワクしていたんだ。

師匠を始め、柚子、当麻、一行、エレン、みこっちゃん、エレン、フトシ君、アユちゃん、タツヤ君に塾長、後から入って来たマリアちゃんや刃、雪乃先生、それと一応『部外者』のゴンちゃん…

皆してレベルが物凄く、一方で遊勝塾の理念である『エンタメデュエル』を全うするド派手なプレイングは、僕を魅了させるのにそう時間はかからなかった。

まあ、融合召喚やシンクロ召喚、エクシーズ召喚を(内向きで)バンバン使うのには別の意味で驚かされた(ペンデュラム召喚は、まだ師匠しか使っていなかった)し、師匠の『完全決闘』デッキ相手に何も出来ずに負けたり、それに必死こいて対策を練ったりする塾生の姿には流石にドン引きしたよ(師匠も師匠で『対策の対策』を練っていたし)。

何より、師匠がエクシーズモンスターを積極的に使っている姿を見た時には、何時か師匠と敵対する時が来るのかな、なんて嫌な考えも浮かんで複雑だった。

 

そんな僕を変えたのは、僕なりのエンタメデュエル『ホラーデュエル』を、師匠と一緒に編み出したあの時だったかな。

僕のデッキの要である『デストーイ』融合モンスター達、それを融合召喚する際に繰り広げられる『ファーニマル』モンスターと『エッジインプ』モンスターによるR-15指定間違いなしな演出をどうエンタメデュエルに生かしていくか、その問題の答えとして師匠と共に導き出したのが『ホラーデュエル』だった。

どっかのホラー映画の殺人鬼の様な出で立ちに扮し、不気味さ満載な口調でデュエルを進める、それによって観客や対戦相手の恐怖を、ホラー映画を見ている時の様な恐怖を煽り、其処からのスプラッタな展開で震撼させ、終わった後に「こ、怖かった…」と安堵の笑いを引き起こす、そんなホラーデュエルで震え上がり、そして笑顔になる、そんな周りの人達の姿に、僕は何時しか「これが、僕がしたかったデュエルなんじゃないか?此処が、僕がいるべき場所じゃないのか?」と思う様になり、それはやがてアカデミアの、引いてはプロフェッサーの、各次元への侵略に対する疑問となっていった。

勿論、アカデミアを、プロフェッサーを、アカデミアにいる仲間達を裏切る様なこの思いには抵抗はあった。

エクシーズ次元のデュエリスト達を散々狩っておいて今更真っ当な道を進む等許されない事だとも分かっていた。

所詮僕は融合次元から任務で来た者、スタンダード次元にそのまま住みつく事は出来ないと分かっていたさ。

 

けど、僕はもう揺るがない。

僕は、『遊勝塾生』紫雲院素良は、皆を、皆の笑顔を守る為に戦う!

 

 

 

師匠、今まで、ご指導ありがとうございました…!

 

 

 

「殺してやるよ、アカデミアの狗め!」

「くっ!やむを得ないか!」

「「デュエル!」」

 

------------

 

「私達の仲間が、貴方達の大事な存在を奪い尽くしたのは変えがたい事実です…

ですがそれで、私にとって大事な存在を殺されても黙っていろと言われて、はいそうですかと従うと思ったら大間違いです…!

炎髪灼眼の討ち手!貴方は、私が止めます!」

「やれるものならやってみなさい!貴方も、仲間達の後を追わせてあげるわ!」

「「デュエル!」」

 

先攻 Kazumi LP 4000 後攻 Yuka LP 4000

 

「私の先攻です!

まずは永続魔法『魂吸収』発動!」

 

魂吸収

永続魔法

このカードのコントローラーはカードがゲームから除外される度に、1枚につき500ライフポイント回復する。

 

「次に『霊獣使いの長老』を召喚!」

 

霊獣使いの長老

効果モンスター

風属性

サイキック族

レベル 2

攻撃力 200

 

遊香の言葉によって打ちひしがれたセレナを庇うかの如く立ちはだかった一美と、遊香のデュエル、先攻となった一美が、魂吸収を発動した後に出したのは、端末世界の勢力『霊獣』に属する年老いた男性。

 

「長老の効果によって私はもう1回、霊獣モンスターを召喚出来ます!

この効果で『精霊獣カンナホーク』を召喚!」

 

精霊獣カンナホーク

効果モンスター

風属性

雷族

レベル 4

攻撃力 1400

 

次に登場したのは、同じく霊獣に属する、雷を纏った鷹の様な鳥、カンナホーク。

 

「今出したカンナホークの効果発動!

デッキから『精霊獣アペライオ』を除外します!」

 

Kazumi LP 4000→4500

 

「続いて、長老とカンナホークを除外して融合!ガスタの意志を受け継ぎし老戦士と、雷を纏いし鷹よ!今こそ力を合わせて、反撃ののろしを上げて下さい!融合召喚!『聖霊獣騎カンナホーク』!」

 

聖霊獣騎カンナホーク

融合・効果モンスター

風属性

雷族

レベル 6

守備力 1600

 

Kazumi 4500→5500

 

既にフィールドにいる長老が、カンナホークの背に飛び乗ろうとした瞬間、両者の姿が光輝き、それが晴れた後には、長老を背に乗せた、巨大化して逞しくなったカンナホークの姿があった。

 

「今融合召喚したカンナホークの効果発動!対象は除外されている、長老とカンナホーク!

それにチェーン、カンナホークをエクストラデッキに戻して2つ目の効果発動!

まずは2つ目の効果で除外されている長老と『精霊獣アペライオ』を帰還させます!」

 

精霊獣アペライオ

効果モンスター

風属性

炎族

レベル 4

守備力 200

 

長老を乗せたカンナホークが、上空に出来た穴に入って行くと同時に其処から出て来たのは長老と、炎を纏ったライオンの様な獣、アペライオ。

 

「次に1つ目の効果でカンナホークを墓地へ送り、デッキから『霊獣の相絆』を手札に加えます!

更に今帰還させたアペライオの効果発動!墓地のカンナホークを除外し、このターン、私のフィールドにいる霊獣モンスター達の攻撃力・守備力は其々500アップします!」

 

Kazumi LP 5500→6000

霊獣使いの長老 守備力 1000→1500

精霊獣アペライオ 守備力 200→700

 

「まだまだ行きます!魔法『封印の黄金櫃』発動!」

 

封印の黄金櫃(準制限カード)

通常魔法

1:デッキからカード1枚を選んで除外する。このカードの発動後2回目の自分スタンバイフェイズに、この効果で除外したカードを手札に加える。

 

「封印の黄金櫃の効果で、デッキから『霊獣使いウェン』を除外します!」

 

Kazumi LP 6000→6500

 

「まだまだ終わりませんよ!長老とアペライオを除外して融合!再び現れて下さい、カンナホーク!」

 

Kazumi LP 6500→7500

聖霊獣騎カンナホーク 守備力 1600→2100

 

再び、長老を乗せて現れたカンナホーク、ただ先程と違うのは、突如現れた大穴に長老とアペライオが飛び込んで行くと同時に、カンナホークが現れた、という光景だろうか。

 

「此処は融合召喚したカンナホークの効果を、もう1回使います!対象は除外されている、『霊獣使いウェン』とアペライオ!

それにチェーン、カンナホークをエクストラデッキに戻して2つ目の効果発動!

まずは2つ目の効果で除外されている『霊獣使いウェン』とカンナホークを帰還させます!」

 

霊獣使いウェン

効果モンスター

風属性

サイキック族

レベル 3

守備力 1000→1500

 

先程と同じく大穴が出現してカンナホークが入って行き、其処から元の姿に戻ったカンナホークと共に現れたのは、霊獣に属する、物憂げな雰囲気を纏った少女、ウェン。

 

「次に1つ目の効果でアペライオを墓地へ送り、デッキから『霊獣使いレラ』を手札に加えます!

まだまだ続けます!今帰還させたカンナホークの効果発動!

デッキから『精霊獣ペトルフィン』を除外します!」

 

Kazumi LP 7500→8000

 

今しがた展開している真っ最中の一美や、対峙している遊香は知る由も無いが、今の効果処理によって一美のLPは、OCGの初期LPである8000に達した…

一美のデッキである『霊獣』が、どれだけ除外を重視するデッキかが分かる数値である。

 

「そして、ウェンとカンナホークを除外して融合!物憂げな霊獣使いと、大波を操るイルカよ!今こそ力を合わせて、敵の猛攻からお守り下さい!融合召喚!『聖霊獣騎ペトルフィン』!」

 

聖霊獣騎ペトルフィン

融合・効果モンスター

風属性

水族

レベル 6

守備力 2800→3300

 

Kazumi LP 8000→9000

 

またしても大穴が出現し、其処にウェンとカンナホークが入って行くと同時に出現したのは、ウェンと共に海を駆け抜ける、鎧を身に纏った『精霊獣ペトルフィン』。

 

「カードを2枚セットしてターンエンドです!」

 

Kazumi

LP 9000

手札 1(霊獣使いレラ)

モンスター 聖霊獣騎ペトルフィン

魔法・罠カード 魂吸収

        セット×2

 

「随分と動き回ったわね。なら次は私の番ね。私のターン、ドロー!」

「スタンバイフェイズに永続罠『マクロコスモス』発動!」

「なっ!?」

 

マクロコスモス

永続罠

このカードの発動時に、手札・デッキから『原始太陽ヘリオス』1体を特殊召喚出来る。

また、このカードがフィールド上に存在する限り、墓地へ送られるカードは墓地へは行かずゲームから除外される。

 

自分のターンとなり、展開を始めようとした遊香だったが、それを制すかの様に、一美は墓地メタカードとして名高い、マクロコスモスを発動させた…!

 

------------

 

「もしもし、遊矢か。一体どうし、何!?デニス・マックフィールドが…!

分かった、後の対応は私に任せてくれ(ピッ)…

さて、バトルロイヤルが行われている中、君達に集まって貰ったのは他でも無い。君達には、とある任務を受け持って貰いたい「待って下さい、社長!」志島?君は呼んでいない筈だ。それに今はバトルロイヤル中、外出は自粛する様言われている筈だが」

「話は聞きました…!

4つの次元の事、アカデミアが他次元を侵略している事、その全てを…!

社長!僕も、その戦いに加えさせて下さい!」

「何…?」

「北斗、一体何の話よ?」

「4つの次元?他次元への侵略?そんなSFじゃあるまいし」

「いやお前ら、社長さんの顔を見てみろ、「何故知っている」と言いたげだ。恐らく俺らが呼ばれたのも、その口って事か?」

 

其々の思惑が交錯する中、時は刻まれていく…

 

 

 

そして…



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49話_集結する戦士達

舞網チャンピオンシップ、ジュニアユースクラスの3回戦バトルロイヤルが、スタートしてから一夜明けた今、会場には俺と零児、ARC-Vメンバー、零児が海外から呼び寄せたという某悪魔ハンターが活躍するスタイリッシュアクションゲームのメインキャラにそっくりな4人、同じく零児が選抜したユースクラス参加者の中でランサーズへの加入を表明した5人、既に敗北してはいたが俺達の選考によってメンバー候補に挙げられた3人(と、零児の元に押しかけて来た北斗)、更にはプロデュエリストとして勧誘され加入を表明した雪乃に、ユート達別の次元から来たデュエリスト達の姿があった。

その中に、昨日まで探していた平井遊香の姿があり、彼女をデュエルの末に確保したという一美の話によって、彼女こそが融合次元のデュエリストを標的にしたテロリストだと分かった時にはびっくりした。

でも、テロリストに身を落としたその理由、親兄弟を殺されて尚、アカデミアのデュエリスト達に追われる中で覚醒させた、サイコデュエリストの様な力、それを用いてアカデミアに侵略の意志を萎えさせる為に、惨い殺害を企てる様になったという話を聞いて、俺は他人事とは思えなかった。

俺自身、遊星だった頃に両親を『ゼロ・リバース』によって失って(後にこれは意図的に起こされた、つまり両親は『殺された』事になった)以来、生きる為になりふり構わず振舞っていたからな。

そんな彼女を、俺は責める気になれなかった、彼女の存在が、アカデミアの思想に染まっていたセレナ達(一美は何処か疑念を抱いていたみたいだが)を此方に引き入れる事が出来たのもあるし。

まあそれは後にするとして、その俺達は今、バトルロイヤルに臨んでいた参加者たちの帰りを、今か今かと待ち構えている。

俺とARC-Vメンバーが既に会場に引き返し、遊香が確保され、デニスがその命を絶った今、バトルロイヤルに臨んでいたのは『8』人。

その8人が帰って来た事を以て3回戦は終了し、同時に舞網チャンピオンシップの幕は閉じる。

既にアカデミアのデュエリスト、それも精鋭として知られているらしい『オベリスク・フォース』が乗り込んで来たのだ、最高指揮官として一刻も早く事態を説明し、事に当たらなければならないんだ。

 

ん?人数が少ないじゃないかって?いや、実を言うとこれで合っているんだ…

俺達を庇ってオベリスク・フォースとのデュエルに臨んだ素良、だが零児の話によると、それから数分が経って突然、素良のエースカードである『デストーイ』モンスター、その召喚エネルギーが消失してしまい、其処を監視カメラで見ると、直前までいた筈の素良の姿が忽然と消えてしまったとの事だった。

まるで煙の如く消えてしまった素良、だけどその原因は分かっている。

 

デニスと同じく『アカデミアを裏切った』素良は、その咎を受けてアカデミアに強制送還されたんだ…!

 

この世界では殆ど流通していない融合関連のカードを所持している理由を「以前住んでいた所では普通にあった」としていた事、ランサーズメンバーの候補にも挙げられる程の類稀なデュエルタクティクス、それらから、素良は融合次元から来たんじゃないか、と何となく想像はしていたんだ。

それもかなりの実力からして、アカデミアから何らかの命を受けてこの世界に潜入したスパイだ、と。

だけど、遊勝塾生として日々、エンタメデュエルを追求し、皆とハイレベルなデュエルを繰り広げ、そして終わった後には互いに笑っている、そんな素良の姿を見ているせいか、そんなの嘘だ!と、信じたくなかった。

けど、そんな俺の考えは当たっていて、想いは外れていた。

素良と分かれてから数十分経った後だったか、エレンが「家にこれが置いてあったんだ」と、1枚の手紙を差しだして来た、其処には、

 

『師匠へ

師匠がこの手紙を読んでいる時には、僕はもう此処にはいないかも知れません。

多分気付いていると思いますが、僕はこのスタンダード次元の人間ではありません。

融合次元の組織『デュエルアカデミア』から、とある任務の為にこの次元に潜入しました。

スタンダードと融合を含む4つの次元の話は、これも気付いていると思うので説明は省きますが、そんな経緯でこの次元に入り、そして此処のデュエリスト達のレベルがどれ程のモノかを調査している内に、師匠と会いました。

初めて見た師匠のデュエルは、僕も息を呑むくらい凄まじく、案内されて来た遊勝塾の皆も同じ位で、入ったばかりの時は色んな意味で付いて行くのに必死でしたけど、同時に楽しかったです。

正直、任務じゃ無かったらどれだけ良かったかと思ったり、いつか師匠達と敵対する時が来てしまうんじゃないかと悩んだりしました。

僕はアカデミアからの任務でこっちに来ている存在、師匠達はスタンダード次元に元からいる存在、ずっと一緒って訳にも行かなかったんです。

でも、皆と過ごしている中で、本当にこのままでいいのか、アカデミアの兵士として一生を送る人生で良いのか、その想いが芽生えました。

そして、この手紙を書いている今、僕の心は決まりました。

 

師匠。

貴方や、遊勝塾生の皆との思い出は、数える程しか無いかも知れませんが、貴方達を思い出させるものは、数えきれない位出来ました。

そして何より、皆の笑顔が、デュエルの後で広がる笑顔が、忘れられません、忘れる事なんて出来ません。

 

僕は、僕は皆といられて幸せでした…!

 

貴方の弟子 素良より』

 

こう、書き記されていた。

素良…!

 

------------

 

その後、バトルロイヤルに臨んでいた8人が会場に帰って来て3回戦は終了、それと共にその8人を別の場所に集め、零児が事の真相を説明した。

無論、デュエリスト達にとって力試しの場である大会、尚且つプロデュエリストへの道が開ける事を売り文句にした舞網チャンピオンシップが、実は他の次元との戦いに対処するランサーズの、戦闘員の選抜でしたと聞いて驚き戸惑う面子ばかりだったけど、俺達に混じっていた沢渡に北斗、真澄の姿を見つけた刃が「アイツらがやるってんなら俺もやる!」と一番に加入表明、それに続けと言わんばかりに皆が加入表明してくれた。

これで、現時点でランサーズのメンバーは、最高指揮官である俺と最高顧問である零児、精鋭部隊『ARC-V』メンバーである柚子と当麻、一行と権現坂、そしてエレン、新たに零児直属の特殊部隊として創設された『V-CRAN』メンバーとして、セレナや遊香、そして零児の義弟である零羅を含めた5人、その他のメンバー合わせて35人という、結構な大所帯となった(この時、俺と零児という、ダブルトップと言って良い体勢に、沢渡達から「どっちが上なんだ?」と突っ込まれたけど、それに対して零児は「立場的には互角だが、一部を除いて、君達の直接的な上司は遊矢だ。まあ、鎌倉幕府における『将軍』と『執権』みたいな物だと思ってくれ」と回答していた)。

とは言え、これでメンバー確定、ではない。

デュエルアカデミアの戦力がどれほどか分からない現状、幾ら精鋭揃いだと言ってもまだまだ足りないと言って良い、今後はLDSにてランサーズ候補生の育成にあたるそうだ。

が、それより何より、この場には1人、『正式加入』していない存在がいる。

 

そう、北斗だ。

 

「北斗。君の事はさっき零児から聞いた。ランサーズに加入し、デュエルアカデミアのデュエリスト達との戦いに加わりたいそうだな」

「はい!どうか僕を、ランサーズに加えさせて下さい!」

「君の熱意は良く分かった。

 

だが、今のままではウンとは言えないな」

「…僕の実力では、アカデミアのデュエリストと戦うのは荷が重いから、ですか?」

 

随分と聞き分けが良いな、普通だったら其処は「何故だ!?」と掴みかかる所だけどな。

 

「僕がアカデミアと戦うには実力が不足していると言う事、自分でも良く分かっています…

上村一行に2連敗した上、2敗目を喫した時には彼の口車にまんまと乗せられての敗北、それがどれだけ無様な物か、それをやってしまう自分がどれだけ未熟か、あのデュエルで痛感しました…

遊香さんから4つの次元に関する話を聞いて、アカデミアに対する敵意にかられて協力を申し出た時にも、其処を指摘されて断られました…

 

でも、いや、だからこそ、僕は戦います!

弱いまま、目の前の事から逃げ出したまま終わりたくないんです!」

「…分かった、ならばこうしよう。

 

今から君には、ARC-Vメンバーの中から1人とデュエルして欲しい。デュエルで、今の君がどれほどの実力者か、見せて欲しい」

 

まあ、簡単に言うなら『何時もの遊戯王』って奴だけど、北斗の熱意が見掛け倒しか否か、やっぱりデュエルで見極めた方が良い、と思ってさ。

 

------------

 

「本当に俺で良かったのかァ?今まで2回戦って2回も負けている俺でよォ」

「だからこそ、さ。因縁ある君が相手だからこそ、僕は僕の弱さを乗り越える事が出来る、そう思っている」

 

急遽始まった北斗の加入試験、その相手として指名したのは、これまで2度対戦した事のある一行だった。

さあ北斗、今の君のデュエルを見せて貰う!

 

「「デュエル!」」

 

先攻 Hokuto LP 4000 VS 後攻 Ikko LP 4000

 

「僕の先攻!

まずは速攻魔法『緊急テレポート』発動!」

 

緊急テレポート

速攻魔法

1:手札・デッキからレベル3以下のサイキック族モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターは、このターンのエンドフェイズに除外される。

 

「緊急テレポートの効果でデッキから、

 

『超量士ブルーレイヤー』を守備表示で特殊召喚!」

「ちょ、超量士!?おま、『セイクリッド』はどうしたンだよ!?まさかランサーズに入りたいばっかりに捨てたとか言わねェだろォな!?」

 

超量士ブルーレイヤー

効果モンスター

水属性

サイキック族

レベル 3

守備力 2000

 

一行が驚くのも無理は無かった、周りでも北斗と関係が深かった刃や真澄、沢渡らが驚いているし。

そんな周囲の驚きを他所に北斗の場に登場したのは、セイクリッドモンスター、では無く、どっかの戦隊モノのヒーローみたいな武装を身に着けた青い戦士、ブルーレイヤー。

それにしても超量士?聞いた事無いカテゴリだな…

 

「捨てたつもりは無いさ、セイクリッド達は今も僕の側にある。けど、舞網チャンピオンシップで、君に無様に敗れた後、僕はふと考えたのさ。

何で榊遊矢、いや遊矢隊長はあれ程の強さを持っているのか、何で沢渡は、そんな隊長にあそこまで喰らいついたのか。

その答えは、遊香さんと会った時に、何となく分かったんだ。

 

本当に強いデュエリストは、色んな召喚方法、色んなデッキ、色々な戦術を使いこなして勝利を重ねて行く存在の事を言うのだと!

 

セイクリッドデッキで勝ちを重ね、それで天狗になっていた以前の僕だったら気付かなかっただろうけど、その時の僕はセイクリッド達におんぶにだっこの状態で勝っていただけだった。

そんなのは本当の強さじゃ無い、セイクリッド達に頼り切った強さだった、君にボロ負けするのも無理は無かった。

 

だから僕は、もう1度やり直す!この超量モンスター達と共に!

特殊召喚したブルーレイヤーの効果発動!

デッキから『超量士グリーンレイヤー』を手札に加えてそのまま召喚!」

 

超量士グリーンレイヤー

効果モンスター

風属性

魔法使い族

レベル 4

攻撃力 1600

 

「召喚したグリーンレイヤーの効果発動!

手札から『超量士レッドレイヤー』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

超量士レッドレイヤー

効果モンスター

炎属性

戦士族

レベル 5

攻撃力 2000

 

決意を述べたと共に召喚した、ブルーレイヤーと同じく戦隊モノのヒーローみたいな恰好の緑の戦士、グリーンレイヤーと、その効果によって、同じ様な恰好の赤い戦士、レッドレイヤーが展開された。

改めて見ると本当に戦隊モノそっくりだよな、コレ。

 

「次にフィールド魔法『超量機艦マグナキャリア』発動!」

 

超量機艦マグナキャリア

フィールド魔法

1:手札を1枚捨て、自分フィールドの『超量士』モンスター1体を対象としてこの効果を発動出来る。その自分のモンスターと同じ属性の『超量機獣』エクシーズモンスター1体を、対象のモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

2:フィールドゾーンのこのカードを墓地へ送り、自分のフィールド・墓地の『超量機獣』エクシーズモンスター3種類を1体ずつ対象として発動出来る。エクストラデッキから『超量機神王グレート・マグナス』1体を特殊召喚し、その下に対象のモンスターとそのエクシーズ素材を全て重ねてエクシーズ素材とする。

 

と思ったら、北斗の背後に、空中を浮かぶ巨大戦艦が姿を現した。

 

「さあ、此処からが超量デッキの見せ場だ!

手札の『ヴォルカニック・バレット』を捨ててブルーレイヤーを対象に、マグナキャリアの1つ目の効果を発動!

発進せよ、青きイルカの機獣よ!今こそ青き戦士と共にフィールドを潜り抜け、敵の罠を粉砕せよ!超量召喚!『超量機獣グランパルス』!」

 

超量機獣グランパルス

エクシーズ・効果モンスター

水属性

機械族

ランク 3

守備力 2800

ORU 1

 

その巨大戦艦から青い、2体のイルカを並べた様なメカが射出されたとか思うと、すかさずブルーレイヤーがそれに乗り込み、戦場へと降り立った、ってもう本格的に戦隊モノのそれじゃねぇか!

 

「今捨てたヴォルカニック・バレットの効果を、500ライフポイント払って発動!

デッキから2枚目のヴォルカニック・バレットを手札に加える!」

 

Hokuto LP 4000→3500

 

「更に今手札に加えたヴォルカニック・バレットを捨てて、マグナキャリアの1つ目の効果発動!今度の対象はグリーンレイヤーだ!」

「ちょ、ちょ待てよ!そのカード、1ターンに1度の制限とかねェのか!?」

「マグナキャリアにそんな物は無い!僕の手札が尽きない限り、何度だってその力を振るう事が出来るのさ!

発進せよ、緑のドラゴンの機獣よ!今こそ緑の戦士と共にフィールドを飛び回り、敵をひれ伏せよ!超量召喚!『超量機獣エアロボロス』!」

 

超量機獣エアロボロス

エクシーズ・効果モンスター

風属性

機械族

ランク 4

守備力 2400

ORU 1

 

巨大戦艦から今度は緑の、ドラゴンの様なメカが射出され、すかさずグリーンレイヤーが乗り込み、戦場へと降り立った。

そして北斗の口振りからして、今度は…

 

「今捨てた2枚目のヴォルカニック・バレットの効果を、500ライフポイント払って発動!

デッキから3枚目のヴォルカニック・バレットを手札に加える!」

 

Hokuto LP 3500→3000

 

「まだまだ行くぞ!今手札に加えたヴォルカニック・バレットを捨てて、マグナキャリアの1つ目の効果発動!対象はレッドレイヤーだ!

発進せよ、赤きライオンの機獣よ!今こそ赤き戦士と共にフィールドを駆け抜け、敵を打ち砕け!超量召喚!『超量機獣マグナライガー』!」

 

超量機獣マグナライガー

エクシーズ・効果モンスター

炎属性

機械族

ランク 5

攻撃力 2600

ORU 1

 

そして、巨大戦艦から赤の、ライオンの様なメカが射出され、すかさずレッドレイヤーが乗り込み、戦場へと降り立った事で、現状並んでいた超量士達の専用メカが並び立った。

 

「そしてマグナキャリアを墓地へ送って、グランパルス、エアロボロス、マグナライガーを対象に2つ目の効果発動!

青きイルカの機獣、緑のドラゴンの機獣、赤きライオンの機獣、3体が1つとなる時、真の力が解放される!今こそ君臨せよ!超量合体!『超量機神王グレート・マグナス』!」

 

超量機神王グレート・マグナス

エクシーズ・効果モンスター

光属性

機械族

ランク 12

攻撃力 3600

ORU 6

 

ああ、やっぱ合体するのか。

巨大戦艦から光が放出され、それを超量機獣達が浴びると、其々変形を始め、マグナライガーが変形した胴体らしき部分に、エアロボロスが変形した翼と腕らしき部分と、グランパルスが変形した両脚らしき部分が合体し、巨大ロボ、グレート・マグナスへと変形した。

 

「ら、ランク12ィ!?マジかよ…」

 

その前代未聞(と言っても俺は、ドン・サウザントとのデュエルでランク13という無茶苦茶なエクシーズモンスターを見て来ているし、ランク12もホープ・カイザーを持っているから、今更感があるが)のランクに驚愕の色を隠せない一行。

それにしてもあれだけ大掛かりな展開をした末に出したグレート・マグナス、だけどそのステータスはやや控えめな感がある。

このカードよりもランクが2低い『巨大ロボ』に、『超次元ロボ ギャラクシー・デストロイヤー』というエクシーズモンスターがいるけど、そいつは攻撃力5000という化け物級のステータスに、オーバーレイ・ユニット1つで『ハーピィの羽根帚』を打てる(しかも発動時に魔法・罠カードを発動出来ない)という強烈な効果を持ち、挙げ句蘇生制限を満たせばまた出せる(代わりにレベル10モンスターが3体いないとエクシーズ召喚出来ないけど)。

それ程のモンスターが2ランク下にいるのだからコイツはどれ程かと思ったが、少なくともステータス的には其処まで高くは無い、という事は…

 

「カードを1枚セットしてターンエンド!」

 

Hokuto

LP 3000

手札 0

モンスター 超量機神王グレート・マグナス(攻撃表示)

魔法・罠カード セット

 

コイツの効果、一体どの様な物なんだ…?



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50話_結成、ランサーズ!

「随分とでけェモンスターだが、セットカード1枚で守り切れると思ったら大間違いだぜェ!

俺のターン、ドロー!

まずはお前のフィールドのモンスターの方が多いから『ヴェルズ・マンドラゴ』を守備表示で特殊召喚!」

 

ヴェルズ・マンドラゴ

効果モンスター

闇属性

植物族

レベル 4

守備力 1450

 

「次に『ヴェルズ・カストル』を召喚!」

 

ヴェルズ・カストル

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1750

 

「カストルを召喚した事で、俺はヴェルズをもう1体召喚出来るぜェ!

この効果で『ヴェルズ・サラマンドラ』を召喚!」

 

ヴェルズ・サラマンドラ

効果モンスター

闇属性

恐竜族

レベル 4

攻撃力 1850

 

一行がデュエルしている時で最早おなじみとなった、ヴェルズならではの大量展開。

これによって一行は様々なヴェルズエクシーズモンスターを呼び出す事が出来る。

さて、北斗の場にはグレート・マグナスが1体と、セットカードが1枚だけ、手札は0、スタンディングデュエルだからアクションカードの心配は無い、という状況だが、一行はどうする…?

 

「此処はコイツで行くかァ!俺はカストルとサラマンドラでオーバーレイ!2体のレベル4・ヴェルズモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!わりィがこっから先は、俺の支配という名の一方通行だァ!『ヴェルズ・バハムート』!」

「バハムート…!

やはり出して来たか…!」

 

ヴェルズ・バハムート

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

ランク 4

攻撃力 2350

ORU 2

 

一行がエクシーズ召喚したバハムートの姿を見るや否や、表情が厳しい物になった北斗。

まあそれも無理は無い、一行と2回行ったデュエルは共に、バハムートの効果によって煮え湯を飲まされたのだから。

けどその表情は、厳しくはあれど、焦りらしきものは微塵も感じられない。

この余裕は、一体…?

 

「更にバハムートのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!

手札の『ヴェルズ・サンダーバード』を捨てて、お前のグレート・マグナスを貰うぜェ!」

 

そんな北斗を他所に、一行は早速バハムートの効果を発動、オーバーレイ・ユニットがグレート・マグナスへと飛んでいく…

 

 

 

 

 

「それはどうかな?」

『フン!(パァン!)』

「な、なァ!?お前、何をしたァ!?」

 

が、それはグレート・マグナスが突き出した拳によって、粉砕された。

今のは、一体…?

 

「グレート・マグナスは、自分のオーバーレイ・ユニットの『種類』によって発揮出来る、3つの効果がある!今グレート・マグナスのオーバーレイ・ユニットとなっているモンスターは、レッドレイヤー、マグナライガー、グリーンレイヤー、エアロボロス、ブルーレイヤー、グランパルスの6種類!よって3つの効果全てを発揮出来る!

1つ目の、オーバーレイ・ユニットが2種類以上ある時に使える効果は、このカードのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて、フィールドのカードをデッキバウンスする効果!これは対象をとらず、メインフェイズであれば僕のターン、君のターン関係なく発動出来るフリーチェーン効果!

2つ目の、オーバーレイ・ユニットが4種類以上ある時に使える効果は、このカードは『超量』と名の付かないカードの効果を受けない耐性だ!この効果でバハムートの効果を不発にさせて貰った!」

「な、何ィ!?」

 

『効果を受けない』耐性持ち、しかも『超量』以外の全カードか!

これは凄く厄介だな、実質ミラーマッチか、攻撃力が相当高いモンスターを使うデッキでしか除去出来ないって事だからな。

 

「そして3つ目の、オーバーレイ・ユニットが6種類以上ある時に使える効果!君はカードの効果で、デッキからカードを手札に加える事が出来ない!ドローもサーチも関係なく、だ!」

「な、何だとォ!?」

 

って事は『ライオウ』の様にサーチを封じられるばかりじゃなく、『貪欲の壺』の様な大量ドローも出来ないって事か!?

ランクの割に控えめなステータスから、どれ程の効果を持っているのかと思ったが、これはかなり恐ろしいな…!

 

「(つまりアイツがいる限り、オピオンのサーチ効果も使えねェ、手札の『侵略の侵喰感染』も死に札、となると…!)カードを2枚セットしてターンエンド!」

「ならばエンドフェイズに罠『超量機神剣―マグナスレイヤー』発動し、グレート・マグナスに装備!効果によってグレート・マグナスの攻撃力は、自分のランクの数×100、1200アップする!」

「こ、攻撃力4800!?」

 

超量機神王グレート・マグナス 攻撃力 3600→4800

 

Ikko

LP 4000

手札 0

モンスター ヴェルズ・マンドラゴ(守備表示)

ヴェルズ・バハムート(攻撃表示)

魔法・罠カード セット×2(うち1枚は『侵略の侵喰感染』)

 

周りで見ている俺ですら感じる威圧感を放つ、グレート・マグナスが装備した光の大剣、マグナスレイヤー。

でもパワーアップしたとはいえ攻撃力は4800、このターンでの決着は無さそうだけど…

 

「僕のターン、ドロー!

このままバトルフェイズに入る!

グレート・マグナスでマンドラゴを攻撃!マグナスレイヤーを装備したグレート・マグナスは、貫通能力を得ている!喰らえ、超神剣マグナスラッシュ!」

「な、ぐはァァァァァァァァァ!?」

 

超量機神王グレート・マグナス 攻撃力 4800 VS ヴェルズ・マンドラゴ 守備力 1450

 

Ikko LP 4000→650

 

グレート・マグナスが、装備していたマグナスレイヤーを振り下ろすと、マンドラゴを一刀両断しただけでなく衝撃波が周囲を襲い、一行に大ダメージを喰らわせた。

風前の灯火にはなったけど、まだ立て直す術は…

 

「マグナスレイヤー!その真の力を解放しろ!

バトルフェイズ中、このカードを墓地へ送る事で、装備していたモンスターは3回攻撃出来る!」

「な、何だってェェェェ!?」

 

超量機神剣―マグナスレイヤー

通常罠

1:自分フィールドの『超量』エクシーズモンスター1体を対象としてこのカードを発動出来る。このカードを装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。

2:このカードを装備したモンスターは、攻撃力がそのモンスターのランクの数×100アップし、守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ相手に戦闘ダメージを与える。

3:自分バトルフェイズに、装備されているこのカードを墓地へ送って発動出来る。このカードを装備していたモンスターはこのターン、1度のバトルフェイズ中に3回攻撃出来る。

 

「悪よ滅びろ!超量機神剣撃、グレート・マグナスラッシュ!」

「ぐあァァァァァ!」

 

超量機神王グレート・マグナス 攻撃力 4800→3600 VS ヴェルズ・バハムート 攻撃力 2350

 

Ikko LP 650→-600→-4200 LOSE

 

WINNER Hokuto

 

「勝った…!

遂に、上村一行に勝った…!

ありがとう、『超量』デッキ…!」

 

超量、恐ろしいデッキ!

 

------------

 

「今や我々の世界は、融合次元の理不尽な侵略に晒されようとしています!それを企てる組織『デュエルアカデミア』はデュエルモンスターズを侵略の手段として利用し、市街地を荒らし回り、人々を虐殺し、或いはカードへと変えて行く、卑劣なる敵です!彼らには、デュエリストとしての誇りも信念も存在しません!あるのは己の欲望のままに破壊や虐殺を行う、歪んだ性根のみです!我らランサーズは、この様な侵略者を許しません!その侵略を食い止め、世界の住人達を守り、或いは押し返し、元いた場所へと突き返します!この旗に描かれし2つの槍『カシウス』と『ロンギヌス』、この2つが司る『(リビドー)』と『(デストルドー)』、我らの使命『守護』と『反攻』、相反する2つの強大なる力に集いし鋭利なる槍達の力によって!我こそはと思い立ったデュエリストの皆さんは、この鋭利なる槍達に名を連ねんと思い立ったデュエリストの皆さんは、是非ともLDSの門を叩かれる様、お願いします!」

『ウォォォォォォォォォォォ!』

 

北斗の加入が決まり、一先ず36人の戦闘員(デュエリスト)と、それをサポートする非戦闘員で結成する事となったランサーズ、その記者会見の場で、最高顧問である零児の説明が終わった今、最高指揮官である俺は、ランサーズのロゴ(黒の下地に、エヴァンゲリオンで登場した『カシウスの槍』と『ロンギヌスの槍』が交差した絵柄、その間に『Lancers』と刻まれた物だ)が刻まれた旗を権現坂に掲げてもらいつつ、演説をしていた。

その経緯からどうなるかと思ったが、会場外からの歓声からして好意的に受け入れてくれたみたいで良かった、そう好感触を覚え、会見は終了した。

 

「さて、突然の事で戸惑っている者もいるだろうが、明日、LDSにて正式に発足式を上げた後には活動を開始する事になる。明日になってしまえば最後、アカデミアとの壮絶な戦い、いや、戦争の日々が待っている。それまでは連戦の疲れを癒しながら、決意を固めて欲しい」

 

そして零児の言葉によって、集結していたランサーズメンバーは解散となり、明日再集合する運びとなった。

素良、デニス、お前達の無念は、俺達が晴らす…!



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51話_そして時は、動き出す…

新年最初の投稿ですね。

今年も宜しくお願いします!


ランサーズ結成の記者会見が終わり、遊勝塾の、仮の塾舎として借りていた施設へと戻った俺達、それから程無くして、俺は塾生の皆と、母さんを事務所に集めた。

 

「まあ、テレビでの記者会見とか、事前の説明で皆知っていると思うけど、ランサーズが正式に結成されて、俺と零児をトップに、柚子や一行、当麻やエレン、刃や美琴、雪乃や権現坂が戦闘員(デュエリスト)として、発足メンバーに加わる事となったんだ」

「ああ。俺もその件で、新たに発足する予定の、防衛部隊の隊長をやってくれないかって、社長さん、いや、最高顧問殿から話が来たんだ。それにしても遊矢が最高指揮官で、柚子達が精鋭部隊か!遊矢は昔からだが、柚子も皆もデュエリストとして立派になったもんだ!塾長としてこれ程嬉しい事は無いぞ!」

『…』

 

俺が切り出した話の内容に、塾長が付け加えつつ柚子達の成長を何時も通りの調子で称えるも、事務所に漂っていた重たい空気を払うには至らなかった。

此処に『いる筈の』素良の姿が無い事、その原因を皆、一部なんとなくではあれど感づいているが、それを聞くのが怖いからか、或いは…

 

「あの、遊矢兄ちゃん…

素良お兄ちゃんは…」

 

このまま黙り込んだままなのも駄目だと思ったのか、アユが素良の安否を聞いて来た。

何時か切り出されるとは思っていたけど、どう返せばいいか…

 

「素良は俺達を庇って、この世界に侵入したアカデミアのデュエリストにデュエルを挑んでいったよ。その後は…」

「うん、分かった…

ごめんね、遊矢兄ちゃん。話しづらい事、聞いちゃって…」

 

途中まで返したら、沈痛な面持ちをしたアユに「大体わかった」的に遮られた。

やっぱり、皆この事の真相は感づいているよな…

そんな中でこんな話をするのは、余計に重苦しくさせるかも知れない、けど!

 

「素良だけじゃない…

ランサーズ戦闘員の候補として名前が上がっていた、LDSブロードウェイ校のデニスってデュエリストも、アカデミアのデュエリストによって…

2人共、元はアカデミア出身のデュエリストだったんだけどさ、アカデミアの方針に異を唱え、裏切ったんだ。2人共気付いたんだよ、デュエルは人を傷つけたり、建物をぶっ壊したりする兵器じゃないって。

 

デュエルは、デュエルモンスターズは、自分や対戦相手が勝利を目指して全力でぶつかり合い、その中で自分や相手、周りの人達を白熱させる、笑顔にさせる、心の底から楽しい思いにさせる、そんな神聖な物なんだって!

デュエリストは、己が全力を尽くして勝ちを掴みに行き、その中で皆を笑顔にさせる存在なんだって!

 

俺は、アカデミアの様な、デュエルを兵器としてしか思っていない連中の為に、デュエルを己が腐った野望の為に利用する連中の為に、これ以上素良やデニスの様な存在を失いたくない!誰かの悲しみの涙を見たくない!デュエルを通じて、皆に笑顔でいて欲しいんだ!

 

だから俺はランサーズの最高指揮官として、別の次元へと渡る!アカデミアを、倒す!アカデミアに囚われた皆を、救い出す!皆の笑顔を、守る!」

 

それが、それが俺の、ランサーズに入った理由。

ランサーズの最高指揮官のオファーを受けた理由だ。

 

------------

 

Side ????

 

「ユーリ、随分と憔悴しきった顔だが、スタンダードで一体何があった?」

『何もアレも無いよ、スタンダードにあんな無茶苦茶なデュエリストがいるなんて聞いてないよ!オベリスク・フォースの連中も役立たずだし、裏切り者は出るし、とんだくたびれ儲けだよ!スタンダードは敵じゃ無かったって言わなかったかい、プロフェッサー!?』

「何だと?」

 

とある一室にて、紫を基調とした軍服に身を包んだ、『プロフェッサー』と呼ばれた男と、『融合次元の遊矢』と思しき『ユーリ』と呼ばれた少年が、通信機による連絡を取っていたが、そんな中で、ユーリが慌てふためいた様子で言った言葉に、男は怪訝の表情を浮かべる。

ユーリの言う通り、男はかねてより「スタンダード次元は敵では無い」と公言していた通り、遊矢達がいる世界を脅威と見ていなかった、故に、ユーリの報告に思いも寄らなかったという表情を浮かべた。

 

「そのデュエリストの名は?」

『確か『ユーヤ』だったかな、感づいたと思うけど『スタンダード次元の僕』だよ。何でか知らないけど、三幻魔のカードを持っているみたいなんだ!』

「三幻魔だと!?馬鹿な、それは我がアカデミアで封印されている禁断のカードの筈!?」

 

ユーリの更なる報告に、今度は驚愕の表情となった男。

正確に言うと、遊矢の持っている三幻魔のカードは、十代として『遊戯王GX』の世界にいた時にユベルを通じて入手した物なのだが、そうとは知らない男は大急ぎで誰かに指示を飛ばしていた。

 

「ともかく、その様なデュエリストがいると分かればスタンダードへの認識も、計画も修正をせねばならん。報告、感謝する。ゆっくり休んでくれ。

 

君がデニスを殺害したという報告に関しても後で聞かなくてはならないからな」

『ちょ、ちょっと待って!デニスを殺したのは僕じゃない!』

「君の言い分もその時に聞く」

『いや聞いてよプロフェッサー!突然銃声がしたかと思ったら何時の間にかデニスが倒れて(プツン)』

 

ユーリの弁明を遮るかの様に、男は通信を切った。

男とて、アカデミアにおいて重大な存在であるユーリが、同じくアカデミアにおいて精鋭として騒がれているデニスを殺害した理由が思い当たらないが故、彼が犯人だと決めつけている訳では無いが、現にその様な報告が多数寄せられている以上は、慎重に考慮せざるを得ない。

それよりも今は、

 

「ユーヤ…

まさか、榊遊矢か?まあいい、彼女に任せるとしよう。(ピッ)私だ」

『プロフェッサー?一体どの様な用件でありますか?』

「キサラ、急に呼び出して済まない。君にはスタンダードに出向き、とあるデュエリストの始末をして貰いたい」

『スタンダード、でありますか?其処に私が出向く程のデュエリストがいるとは思えないでありますが』

「それが報告によって、君の力が必要な程の存在がいた事が判明したのだよ。私も認識を改めなければ」

『成る程、了解であります。それで、そのデュエリストの名は?』

 

遊矢という存在への対処だ、と言わんばかりに男は別の存在との通信を行う。

その通信に応じたのは、ピンク掛かったセミロングヘアーに、青い眼が特徴の容貌、青のロングドレスを身に纏った、『キサラ』と呼ばれた少女だった。

 

「そのデュエリストの名は榊遊矢。『スタンダードのユーリ』と言えば分かりやすいかな?」

『榊遊矢、でありますね。了解したであります』

 

了解の意志を表明したのを最後に、キサラは通信を切った。

通信を終えた男は、今後の計画に向け、思案を巡らしていた。

 

「榊遊矢、彼を見たのは、4年も前の舞網チャンピオンシップ、そのジュニアクラスだったか。かなり玄人好みのデッキとプレイングをしていた様だったが、何故スタンダードのデュエリストである彼が三幻魔を…?」

 

思案を巡らせる男、彼こそがこのデュエルアカデミアのトップにして、周囲からは『プロフェッサー』と呼ばれる、零児の父、赤馬零王…!

 

------------

 

「榊、遊矢…

いけ好かない男であります。スタンダードの癖につけ上がって…」

 

一方、零王から指令を受けた彼女、キサラ・カルメルは、遊矢に対する恨み言を呟きつつ、とある場所へと足を進めていた。

 

「確か、スタンダードでスパイ活動していたデュエリストがいたでありますな。尤も、裏切りを働いた事で、今は牢の中にいるらしいでありますが」

 

向かった先の、アカデミアにおいて裏切り等の罪を犯した者が収容されている牢獄、其処に足を踏み入れ、

 

「ん…?

裏切り者の僕に、一体何の用だい?」

 

数ある牢の1つ、素良が入れられている牢の前で足を止めた…!



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52話_いざ行かん、シンクロ次元へ!

ランサーズ結成の記者会見から一夜明けた今日、此処レオ・コーポレーション本社、その会議室にて、ランサーズの戦闘員全員が集結していた。

 

「全員集まったな。じゃあ点呼を兼ねて、自己紹介をして貰うぜ。まずは俺から。知っている奴が大半だとは思うが、ランサーズ最高指揮官兼、ランサーズ精鋭部隊『ARC-V』隊長、榊遊矢だ。まあまだ中学2年で、歳的に下から数えた方が早い俺がトップに就いている事に不満とか、戸惑いとかあるかも知れないけど、宜しく頼むな」

 

よくよく考えたらランサーズの戦闘員で、俺より年下は美琴とエレン、零羅しかいないなぁ。

一方で最高顧問の零児もそうだが、各部隊の隊長に就いているダンテにバージル、トリッシュに雪乃、それに副隊長もユート以外全員と、主要幹部は皆して年上だ。

そんな俺が(零児とのツートップとは言え)ランサーズのトップを張る事で結束に綻びが出ないか懸念していたが、ダンテの「アンタ程プレジデントに相応しい奴は他にいないぜ」という言葉を皮切りに、皆して好意的な反応を見せてくれた。

 

「ランサーズ最高顧問兼、ランサーズ特殊部隊『V-CRAN』隊長、赤馬零児だ。最高顧問として、最高指揮官である遊矢を全力でサポートして行く所存だ。以後宜しく頼む」

 

零児はブレないなぁ、俺がランサーズに加入する際のデュエルで見せた負けん気と、その後で見せた、アカデミアのトップにして自分の父である赤馬零王に対する激情は、今の表情からは欠片も感じられない。

零児はその事実を、墓まで持っていくつもりなんだろうな。

 

「ARC-V所属、柊柚子よ。私もランサーズの一員として、アカデミアとの『戦争』に全力で立ち向かうわ!これからも宜しくね!」

 

そういえば昨日、LDS関係者の行方不明事件に関して確保されていた隼達や、ユーゴが解放された際、柚子の姿を見た隼が「瑠璃!なぜ瑠璃が此処に!?」と詰め寄ろうとして零児から「彼女は黒咲瑠璃では無い」と腹に肘をぶち込まれていたっけ。

お前は零児から何を聞いていたんだ、そして零児は鬼柳の作画崩壊パンチじゃないんですからw

 

「ARC-V所属、上村一行だァ。デュエルを、デュエリストを戦争の道具としか思っていねェアカデミアを、皆でぶちのめしてやろォぜ!」

「ARC-V所属、冴木当麻だ。アカデミアのふざけた幻想を、俺達でぶち壊しにしてやろう!」

 

一行も当麻も心意気は充分、後は何時ものケンカデュエルが無ければ良いんだが…

 

「ARC-V所属、権現坂昇だ。デュエリストとしての誇りを捨てたアカデミアの者どもの行い、実にけしからん!この男権現坂、アカデミアを討つべく力を振るおう!」

 

権現坂も良い意味で相変わらずだな、その揺るがぬ熱血、頼りにしているぜ。

 

「ARC-V所属、エレン・アヴェニールだ!ランサーズでは一番ガキだけどさ、遊矢兄ちゃん直伝のデュエルタクティクスで、アカデミアをフルボッコにしてやんよ!」

 

『一番ガキ』と謙遜しているが、エレンのデュエルタクティクスも、精神面も、此処にいる誰にも負けないと俺は思っている。

第一、 そうで無かったら精鋭部隊であるARC-Vには入れないぜ。

と、これでARC-Vメンバーの紹介は終了、次はV-CRANだな。

 

「V-CRAN所属、風魔日影と」

「同じくV-CRAN所属、日影兄上の弟、風魔月影」

「「我ら、アカデミアを討つべく全力を尽くそう!」」

 

迷宮兄弟に、龍亞と龍可に、コイツら、遊戯王世界での双子って、ハモるのが流行っているのか?

まあそれは良いとして、如何にも忍者だと言わんばかりのそっくりな服装(ただ、兄である日影が赤く短めのマスクなのに対して弟である月影は青く長いマスク、額当てのマークも其々の名前に因んだ物になっている)をしたこの風魔兄弟、融合もシンクロもエクシーズも会得していなかった中でバトルロイヤルを生き残った凄腕だ。

そして忍者一族の末裔らしい2人のスパイ的な能力も、特殊部隊であるV-CRANにはぴったしだ。

 

「V-CRAN所属、平井遊香よ」

 

…あれ、自己紹介それで終わり?

 

「V-CRAN所属、セレナだ。元々はアカデミアにいたが、其々の次元で行っているアカデミアの蛮行、許す訳には行かない!私もランサーズの一員として、アカデミアを止めて見せる!」

 

そして今こうして意気込み十分だと言わんばかりの自己紹介をしたセレナと何で同じチームに、って普通は思うよな。

まあでも、アカデミアに対するゲリラ活動の実績と、それを実現させたサイコデュエリストの様な力、それを持っている遊香と、アカデミアの内情に詳しい(のか?)セレナ、2人をV-CRANに入れない理由は無いって事で。

 

「V-CRAN所属、赤馬零羅。宜しく」

 

そして零羅も、エレンから聞いていた通りの無表情だな、って、

 

「エレン。これからはランサーズの一員として、宜しくね」

「おう、零羅!何か困った事があったら何でも言ってくれよ!出来るだけ相談に乗るからさ!」

 

すぐさまエレンに挨拶していたけど、それに応じたエレンの言葉に頬を赤らめていた様な…?

と、ともあれV-CRANの紹介はこれで終わりか。

 

「ランサーズ第1部隊の隊長、バージル・レッドグレイヴだ。アカデミアを滅ぼし、この世界を再び平穏で満たそう!」

「ランサーズ第1部隊副隊長、島村(しまむら)文録(ぶんろく)だ。デュエルで世界を破滅に導こうとするアカデミアを、許す訳には行かない!皆の力を結集し、立ち向かおう!」

 

バージルと、某9人のサイボーグが巨悪と立ち向かう漫画の主人公の様な風貌をした男性で、現在はユースクラスで活躍するデュエリストの島村文録、この2人が第1部隊の幹部だ。

文録のデッキは確か『ブンボーグ』だったかな?

 

「ランサーズ第1部隊所属、灰原(はいばら)征矢(ゆきや)だ…

アカデミアを、灰塵へと変えてやろうぜ…!」

 

何やら暗さと狂気を併せ持ってそうな雰囲気を纏わせた、灰色のロングヘアーが特徴の男性で、彼もまたユースクラスで活躍するデュエリストの灰原征矢、彼のデッキは確か『ワイト』だったな。

 

「ランサーズ第1部隊所属、ユーゴだ!最初に言って置くが融合じゃねぇぞ、ユーゴだ!」

 

『シンクロ次元の俺』ことユーゴは第1部隊か、というかそのネタ、まだ引っ張る気か?

 

「ランサーズ第1部隊所属、石動美琴です!色々と超展開過ぎてまだ少し戸惑っていますが、面白半分に人の願いを踏みにじるアカデミアを許す訳には行かないという事は理解しています!私もランサーズの一員として、戦います!」

 

まあ、普通は美琴の様な反応だよな、「此処はアニメ世界だから」と突っ込まれたらそれまでだが。

 

「ランサーズ第1部隊所属、方中ミエルよ。デュエルで人々をムッコロしているアカデミアは絶対に許せないわ!こんなの絶対おかしいわ!」

 

ミエルは一時の様なアプローチも控えているみたいだし、意気込みもさりげなく中の人ネタが入ってはいるけど充分だし、大丈夫そうだな。

これで第1部隊の紹介は終わり、と。

 

「ランサーズ第2部隊の隊長、ダンテ・レッドグレイヴだ。Let’s Fight!アカデミアの連中をノしてやろうぜ!」

「ランサーズ第2部隊副隊長、メアリ・アーカムよ。宜しく頼むわ」

 

第2部隊の幹部は、ダンテとメアリの2人。

 

「ランサーズ第2部隊所属、聖沢一美です。私もセレナ様と同じくアカデミアに属していましたが、前々からアカデミアの方針には疑問を持っていました。その疑問は、この世界に来た事で確信となりました。私も、アカデミアを止めます!」

 

あ、さっきの話を蒸し返す様だけど、セレナと一美を何故離したしってツッコミは無しな。

 

「ランサーズ第2部隊所属、刀堂刃だ。アカデミアのふざけた野望、俺達で打ち砕いてやろうぜ!」

「ランサーズ第2部隊所属、志島北斗です!急に押し入った僕をランサーズに加入して頂き、ありがとうございます!これからもランサーズの一員として、全力を尽くします!」

 

よくよく考えたら元が付くとは言えLDS本校の、各コースのトップ張っていたな、この2人。

ランサーズの候補に上がるのも、こうして今ランサーズのメンバーとなったのも、必然と言う訳か。

 

「俺はランサーズ第2部隊所属!ネオニュー」

「「「沢渡さぁん!」」」

「Oh Yes!アカデミアの、有象無象の連中などこの俺が吹っ飛ばして見せよう!」

 

取り巻きを連れて来たんかい、お前。

まあこの派手好きと言うか、ナルシストと言うか、この辺は注意した方が良いが、それでも舞網チャンピオンシップでの俺とのデュエルで見せた闘志を持った、重要な存在だ。

これで第2部隊の紹介は終了。

 

「ランサーズ第3部隊の隊長、トリッシュよ。アカデミアがどの様な存在かは兎も角、私達ランサーズの力を結集すれば、恐れる事は無いわ」

「ランサーズ第3部隊副隊長、ユートだ。アカデミアとの戦いへの協力、感謝する。共にアカデミアの侵略に立ち向かおう!」

 

トリッシュと、『エクシーズ次元の俺』ことユートが、第3部隊の幹部だ。

 

「ランサーズ第3部隊所属、鎧坂(よろいざか)白哉(びゃくや)だ。デュエリストの誇りを忘れたアカデミアの塵共を、皆で消し去ろう!」

 

一見クールそうで、その内心に秘めた激情を声に乗せた、黒のウルフカットと、純白のスーツが特徴的な男性で、文録らと同じくユースクラスで活躍するデュエリストの鎧坂白哉、確か彼のデッキは『カオス・ソルジャー』だったな。

 

「ランサーズ第3部隊所属、大海王牙だ。アカデミアの奴等に、デュエルの神聖さを叩きこんでやろうぜ!」

「ランサーズ第3部隊所属、光津真澄よ。心が腐り切ったアカデミアの野望、私達で打ち砕いてあげましょう!」

「ランサーズ第3部隊所属、龍宮流星だ。デュエルは戦争の道具じゃねぇ!デュエルは本気でぶつかり合う事を楽しむモノなんだ!」

 

三者三様の意気込みを以て、第3部隊の紹介は終わりか。

 

「ランサーズ第4部隊の隊長、藤原雪乃よ。アカデミアのデュエリストに、誇りの欠片も無い彼らに、盛大なお仕置きをしてあげましょう」

「ランサーズ第4部隊副隊長、七夜(ななや)(つるぎ)。デュエリストの風上にも置けぬアカデミアを、我がモンスターの、刀の錆にしてくれよう」

 

雪乃と、赤毛の長髪に着流しを纏った、侍みたいな風貌の男性で、ユースクラスで(ry)デュエリストの七夜剣、彼のデッキは確か『不知火』だっけ、なんか作者の名字が付いているけど…

この2人が、第4部隊の幹部だ。

 

「ランサーズ第4部隊所属、辰巳(たつみ)雷牙(らいが)だ!やってやろうぜ、皆!」

 

それと、ユースクラスで活躍するデュエリストで加入表明した5人の最後、金髪のモヒカンが特徴的な、ブラックスーツを身に纏った男性、辰巳雷牙。

使用するデッキは、万丈目も使っていた『VWXYZ』だ。

 

「ランサーズ第4部隊所属、七種亮太郎だ。全くやれやれな連中だ、アカデミアは。俺達の全力を叩きこんで、二度と侵略なんて馬鹿な真似は出来ない様にしてやろう」

 

しかし亮太郎を見ていると、某黄金の精神を抱く一族の物語、その第3部の主人公を思い浮かべるのは俺だけか?

 

「ランサーズ第4部隊所属、黒咲隼…」

 

ありゃ、名前言っただけでそっぽ向いちゃったよ。

まだまだ俺達に、完全に気を許した様子は無いって感じだな。

 

「ランサーズ第4部隊所属、星宮舞衣です。非力ながら、ランサーズの為に私も力を尽くします」

 

そして舞衣の紹介を以て、ランサーズメンバーの自己紹介は終わった。

 

「よし、これで全員集合だな。ならこれより作戦会議を始める。各自、部隊毎のテーブルに着いて欲しい」

 

自己紹介を終えた皆は、俺の指示に従ってテーブルに着く、同時に俺と零児も、大型スクリーンの前に移動した。

 

「それでは作戦会議を始めるぜ。皆も知っている通り、3年前よりアカデミアはエクシーズ次元への侵略を開始、それによってエクシーズ次元はほぼ焦土と化してしまった。そしてその魔の手はこの世界にも伸ばされ、舞網チャンピオンシップ開催中、僅か数十名ではあったが侵入した。尤も撃退は済んでいるが。

一方で各次元にいる、柚子と同じ顔をした4人を『計画に重要な存在』として、拉致しようと目論んでいる。実際『融合次元の柚子』であるセレナはつい最近まで軟禁状態に置かれ、『エクシーズ次元の柚子』である黒咲瑠璃と、『シンクロ次元の柚子』であるリンは既にアカデミアに囚われてしまった。そうだな、セレナ、ユーゴ、隼」

「(ギリッ)そうだ…!」

「そうだぜ。突然さ、多分『融合次元の俺』だっけか?そいつがリンを攫いやがったんだ!」

「ああ。私達はプロフェッサーにとって大事なものらしい。故に大切に扱われていたから、瑠璃やリンに手荒な真似はしないだろう」

 

まあ柚子がARC-V、セレナがV-CRANに所属しているのは、この件からランサーズのトップである俺と零児直属の部隊に属して置いた方が良いというのも理由なんだけどな。

 

「さて、それらを踏まえて我々の方針を発表する。この会議が終了次第、速やかにこの世界を立つ。今この作戦会議に集まった、ランサーズ6部隊36人は、異世界に渡る!」

「お、俺達でアカデミアに殴り込みって事か?よっしゃ、腕が鳴るぜ!」

 

ユーゴ、気持ちは分からんでもないが落ち着け。

 

「静かに。我々が向かう先は融合次元では無い、シンクロ次元だ」

「え、戻るのかよ!?」

「シンクロ次元だと!?融合次元では無いのか!?」

 

俺の方針発表にユーゴと隼が噛みついて来て、他にもちらほらと不満げな表情を見せる存在がいた。

ただ全体的に見れば俺が発表した方針に否定的なのは極少数といった所か、状況がよく読めているな。

 

「ユーゴの話から、次元間の争いの影響が少ない事が判明しているし、融合次元と手を組んだと言う話も出ていない。其処で俺達の世界との絆を結び、融合次元に対抗する為の同盟関係を築くのが目的だ」

「同盟だと!?そんな悠長な事を言っている場合では無い!侵略の手が迫っている以上、俺達は一刻も早く融合次元に乗り込み、アカデミアを叩き潰す!その為のランサーズだろう!」

 

俺の詳しい説明にユーゴは「確かに、俺の世界にはジャック・アトラスやクロウ・ホーガン、鬼柳京介がいる。これ程の力が付けば…!」と、何か意味深な呟きをしながら納得してくれたが、一方の隼は尚も噛みついて来た。

全く、自分にとって大事な存在である瑠璃が囚われていて気が気でないのは分かるが、少し落ち着け。

 

「私達は勝てる勝負しかしない」

「何だと!?」

「勝つにはそれに向けての十分な準備が必要だ。確かに我々は精鋭揃いだと自負しているが、それだけでアカデミアに挑んだ所で、我々に勝利は無い!」

「零児の言う通りだ!今回はたった数十人だったが故に、被害を抑えての撃退が出来たが、それ故に向こうも『スタンダードは敵では無い』という認識を改めるに違いない!アカデミアにはデュエリストの誇りなど無いも同然、デュエルを仕掛ける事無くモンスターを実体化させて攻撃させるリアリストな手段に移る事も考えられる!それを数百、数千の連中から組織的に仕掛けられて我々で太刀打ちできるか!?出来る訳無いだろう!」

 

零児が言った通り、此処にいる俺以外の35人は皆、俺も本気出さないと勝てない程の精鋭だが、それでもアカデミアが有する戦力は相当な数だと考えられる。

零児が持っているペンデュラムモンスター『DDD反骨王レオニダス』のモデルとなった(らしい)、古代ギリシャの国スパルタの王『レオニダス一世』は、何百万とも言われたペルシャ軍に対して、僅か数百とも言われたスパルタ軍で果敢に立ち向かい、結果としてペルシャ軍の野望を断念させたと言われているが、それは『スパルタ教育』という単語の元となった位の厳しい訓練を積み重ねた精鋭揃いの軍勢を有していただけでは無く、狭い地形でペルシャ軍を迎え撃つ等の軍略もあったからだ。

まあ俺の場合、覇王の力を解放しさえすれば、舞網チャンピオンシップで乱入して来た『オベリスク・フォース』までなら幾ら束になろうと圧倒出来るが、アカデミア側にも俺や遊香の様に、モンスターを自分で実体化させる、膨大な力を有する奴を抱えているかも知れない。

それをぶつけられたりしたら戦いは厳しい物になる、アカデミアの野望を打ち砕くとなればやはり、シンクロ次元との同盟は不可欠なんだ。

 

「くっ!確かに貴様らの言う通りかも知れない…!

だが俺は例え1人でもアカデミアに乗り込み瑠璃を救い出す!」

 

零児と俺の説得にも聞く耳持たずと言った感じか、隼が会議室を飛び出そうとした、が、

 

「はっ!お前1人で何が出来るんだよ!『この世界の俺』に手も足も出なかったお前1人で!」

「な、何だと貴様!」

 

意外な奴がそれを止めた、ユーゴだ。

 

「赤馬零児から聞いたぜ。お前『この世界の俺』とのデュエルで何も出来ずにフルボッコにされたそうじゃねぇか。やった事と言えばモンスター1体を召喚しただけ、そのモンスターも罠の無駄撃ちをする際に、無駄にコストにしたそうだな」

「っ(ギリッ)…!」

「少なくとも俺は『この世界の俺』とのデュエルでシンクロ召喚を成功させたり、攻撃を1度食い止めたりはしたぜ。まあ結果はお前と同じく先攻2ターンキルだった、それが出来る『この世界の俺』が無茶苦茶強い事は認めるぜ。そんな『この世界の俺』が慎重になる位アカデミアは無茶苦茶な所なんだろ!?そんな所にお前が1人で行った所で犬死にするだけだ!」

「くっ…!」

 

いや使ったデッキが全く違うんだがそれは。

隼とのデュエルでは、その時起こっていた行方不明事件に対処すべく『完全決闘』デッキを使用していたのに対し、ユーゴとのデュエルで使用したのは『ウォリアー』デッキだ。

その違うデッキでの結果、というか過程は比べようが無いと思うが…

ともあれ、結構喧嘩っ早そうな気性の割に、状況を良く理解している様だな。

 

「隼!彼らの言う通りだ!アカデミアの力は強大だ、1人や2人は対処できても大多数で組織的に仕掛けられたらひとたまりも無い!今は彼らの言う通り、シンクロ次元に渡って戦力を増強する事が先決だ!」

「ユート…!

ちっ分かった…」

 

そして、ユートからも宥められた隼は、不本意だと言わんばかりの態度ながらも席に戻ってくれた。

今更だが、大丈夫かなこの状態で。

 

「では、諸君に1枚のカードを配る。これをデュエルディスクにセットして欲しい。そうすれば、シンクロ次元への道は開ける」

 

ともかく、皆が方針に納得してくれたのを見計らって、零児が1枚のカードを差し出した。

そのカードは『ディメンジョン・ムーバー』。

 

その後、所定の説明を受けた俺達36人は、ディメンジョン・ムーバーの力で、シンクロ召喚へと飛びだった…!

さあ、異次元への旅立ちだ!

 

------------

 

「行きましたか、遊矢君達は」

「ええ、ニコさん。遊矢達はランサーズのメンバーとして、全力を尽くしてくれる筈です。俺達もこの世界を預かった身として、全力を尽くさねば!行くぞ、熱血だぁ!」

「遊矢、エレン、皆…

笑顔で、頑張って来なさい!」

「おいこらクソアメリカン、必ず帰って来い!勝ち逃げなんか許さんからな!」

「異世界でも頑張って下さい、遊矢兄ちゃん達…!」

「遊矢兄ちゃん、柚子お姉ちゃん、皆…

帰って来るの、ずっと待っているから!」

「僕達も痺れる位の声援を送るから、頑張って!」

 

スタンダード次元に残された者達の声援を受けて、36人の戦士達は今、シンクロ次元へと旅立った…

彼らに待ち受ける未来は、果たして…




これで第4章は終了、次回からシンクロ次元です!


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4.5章『幕間の短編集2』
53話_少女の不安


今話から暫くは、シンクロ次元へと突入するまでの出来事を書いて行きます。

余り、というか現状全く影響は有りませんが、今話から禁止制限は2016年1月改訂の物となっております。


「遊矢、色々とあった中で済まないが、ちょっと良いか?」

「セレナ?まあ良いけど」

 

それはランサーズ結成の記者会見が終わり少し経った時、今後に向けて色々と準備をして、さあ帰ろうとした時の事だった、セレナから声が掛かったのは。

それにしても流石は『融合次元の柚子』、本当に柚子そっくりだよな、性格とかは色々違うけど。

 

「どうしたんだ、急に?」

「私とデュエルして欲しい。私の今の実力を見て欲しいんだ、今の私が、ランサーズの特殊部隊であるV-CRANの一員として通ずるかどうか」

 

やけに急だな、まあデュエルとあらば大歓迎だが。

 

「良いぜ。でも何でだ?」

「…私は今までアカデミアで、プロフェッサーの教えのままにデュエルの腕前を磨いて来た。

にも関わらず、プロフェッサーは私を前線へと送ろうとしなかった、今ではその訳も何となくは分かるが。それに不満を抱き続けた結果、この世界に逃げ込んだエクシーズ次元の残党を狩ればプロフェッサーも私の実力を認めてくれると、バレットと一美を連れて、この世界に侵入したんだ。これまでも何度か脱出を企てたが、あの2人は監視役でありながら、初めて私を止めず、むしろ乗り気で同行したな」

 

おいおいそれは監視役として良いのか一美。

共に同行していたバレットって奴も、それが切っ掛けで遊香に殺されたのだし、何て軽はずみな事を、とアカデミアでは、もしかしたら思われているかもしれない。

 

「その後私達は、エクシーズ次元の残党を狩るべく捜索に乗り出し、其処で出会った北斗を件の残党だと勘違いしてデュエルを仕掛けようとした。

 

…その時だった、遊香からの襲撃を受けて、バレットが身を挺して犠牲になったのは」

 

そう話し続けるセレナの手は、少しばかり震えていた。

何しろ人が目の前で銃殺されるなど初めての事だろうし、それが浅からぬ縁の存在とあれば尚更だ、恐怖等の色んな感情が混ぜこぜになるのも無理は無い。

 

「その後、バレットの敵を討とうと一美と共に遊香を探しまわり、見つけて問い詰めたんだが、其処で私は初めて、アカデミアのデュエリストによる、誇りもプライドも何も無い、一方的な虐殺の事実を思い知らされた。私は、その真実に唯打ちひしがれるだけで何も出来なかった。

 

私は、なんと世間を知らない奴だろうと、この世界に来る時には持っていた自信、いや今考えれば自惚れだな、そんな物は一瞬の内に消え去ってしまった」

 

まあ、それを知る事が無い様に今まで軟禁状態に置かれたのだから、それも当然か。

戦闘狂、というかデュエル狂な所があったり、世間知らずなお嬢様にありがちな傍若無人振りがあったりするが、やっぱり『融合次元の柚子』なだけあって、根は素直だな。

 

「そんな井の中の蛙な私が、このランサーズの一員としてやって行けるか、正直不安なんだ。だから遊矢、零児が自らを脇に置いて最高指揮官に指名する程の実力を持っているらしいお前とのデュエルで、私がどこまで出来るかを見定めて欲しい!」

 

そんなセレナに面と向かって、デュエルのお願いをされれば断る理由は無い!

 

「良いぜ、じゃあ始めるか!」

「「デュエル!」」

 

先攻 Serena LP 4000 VS 後攻 Yuya

 

「私のターン!

まずは永続魔法『炎舞―天璣』発動!」

 

炎舞―『天璣』

永続魔法

『炎舞―『天璣』』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:このカードの発動時の効果処理として、デッキからレベル4以下の獣戦士族モンスター1体を手札に加える事が出来る。

2:このカードが魔法・罠ゾーンに存在する限り、自分フィールドの獣戦士族モンスターの攻撃力は100アップする。

 

と、こうして始まったセレナとのデュエルだが、その初手で発動した魔法の名に、俺は首を傾げた。

炎舞って事は炎星デッキ?いや、炎星デッキはシンクロとエクシーズをメインとしたデッキ、というか遊香が持っているデッキの1つだ。

と言う事はセレナのデッキは恐らく『獣戦士族』だろうが、それにしても遊香とは今しがた話していた通り色々あった筈、何時の間にカードを貰う位仲良くなったんだ?

 

「天璣を発動した時の効果処理で、デッキから『月光黒羊(ムーンライト・ブラック・シープ)』を手札に加える!

次に、今手札に加えた黒羊を捨てて効果発動!デッキから『融合』を手札に加える!

続いて『月光白兎(ムーンライト・ホワイト・ラビット)』を召喚!」

 

月光白兎

効果モンスター

闇属性

獣戦士族

レベル 2

攻撃力 800→900

 

サーチと手札交換の末にセレナが召喚したのは、兎を思わせるフードを被り、顔の上半分を仮面で覆い、杵の様な武器を持った少女、月光白兎。

セレナのデッキには『月光(ムーンライト)』と名の付く獣戦士族モンスターが多いのか?

 

「召喚した白兎の効果発動!さっき捨てた黒羊を守備表示で蘇生する!」

 

月光黒羊

効果モンスター

闇属性

獣戦士族

レベル 2

守備力 600

 

次にセレナのフィールドに登場したのは、肩から羊を思わせる角を生やし、顔の大部分を仮面で覆った少女、月光黒羊。

さっき天璣で手札に加えた黒羊を手札交換に使いつつ、白兎の効果を活かす為に墓地を肥やしたか、『融合次元の柚子』という立場を抜きにしても、アカデミアで大事にされる程の事はあるな。

 

「更に魔法『融合』発動!」

 

融合

通常魔法

1:自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「私はフィールドの黒羊と白兎を融合!

漆黒の闇に潜む獣よ!月光に映え躍動する兎よ!月の引力により渦巻きて新たなる力と生まれ変わらん!融合召喚!現れ出でよ、月明かりに舞い踊る美しき野獣!『月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)』!」

 

月光舞猫姫

融合・効果モンスター

闇属性

獣戦士族

レベル 7

攻撃力 2400→2500

 

まだまだ展開するぞと言わんばかりに、融合召喚の演出と共に登場したのは、煌びやかな衣装を身に纏い、某怪盗を思わせる仮面を装着し、両手に短刀を持った少女、月光舞猫姫。

 

「融合素材として墓地へ送った黒羊の効果発動!

墓地の白兎を手札に加える!

更に魔法『融合回収(フュージョン・リカバリー)』発動!」

 

融合回収

通常魔法

自分の墓地に存在する『融合』魔法カード1枚と、融合に使用した融合素材モンスター1体を手札に加える。

 

「融合回収の効果で、墓地の融合と黒羊を手札に加える!」

 

うぉい、これで初期の5枚に手札が戻ったんだが。

 

「まだまだ行くぞ!融合発動!

フィールドの舞猫姫と、手札の『月光紅狐(ムーンライト・クリムゾン・フォックス)』を融合!

月明かりに舞い踊る美しき野獣よ!妖しき紅で惑わす狐よ!月の引力により渦巻きて新たなる力と生まれ変わらん!融合召喚!現れ出でよ、月光の原野で舞い踊るしなやかなる野獣!『月光舞豹姫(ムーンライト・パンサー・ダンサー)』!」

 

月光舞豹姫

融合・効果モンスター

闇属性

獣戦士族

レベル 8

攻撃力 2800→2900

 

そして2回目の融合召喚で登場したのは、魅惑的な衣装を身に纏い、手足から豹を思わせる爪を生やした少女、月光舞豹姫。

 

「そして、手札の黒羊を捨てて、デッキから融合を加え、カードを1枚セットしてターンエンドだ!」

 

Serena

LP 4000

手札 2(うち1枚は月光白兎)

モンスター 月光舞豹姫(攻撃表示)

魔法・罠カード セット

 

2回の融合召喚を決めて尚手札を2枚残している、しかもその内1枚は白兎、もう1枚は、セットカードがブラフでなければ融合、と、仮に舞豹姫が突破されたとしても大丈夫な様に後続を確保している。

上手いプレイングだ、これは本気で行かないとな。

 

「俺のターン!ドロー!」

 

よし、この手札なら!

 

「Ladies and Gentleman!これより俺、榊遊矢with魔人オーケストラによる即興ライブを行います!」

「な、なんだ急に!?」

「まずは、スケール6の『EMギタートル』と、同じくスケール6の『EMリザードロー』を、ペンデュラムスケールにセッティング!

此処で、リザードローをセッティングした事で、ギタートルの効果発動!ドロー!」

 

ペンデュラムスケール(青):6(EMギタートル)

ペンデュラムスケール(赤):6(EMリザードロー)

 

俺がペンデュラムスケールにカードを2枚セットすると、俺の背後に『6』と刻まれた2本の光の柱が出現、すると同時に、俺が持つ形でギターが出現した。

 

「それがペンデュラムモンスターか!だがペンデュラム召喚は確か、2つのペンデュラムスケールの間のモンスターのみ出せる召喚方法の筈!それでは出来ないぞ!」

「まだまだ下準備は終わっていませんよ!ペンデュラムスケールにセットされたリザードローの効果発動!

破壊してドロー!

次に、今空いたペンデュラムスケールに、スケール1の『EMモンキーボード』をセッティング!」

「手札交換しつつスケールを空けたか!上手いプレイングだ…!」

 

ペンデュラムスケール(赤):1(EMモンキーボード)

 

「今ペンデュラムスケールにセットしたモンキーボードの効果発動!

デッキから『EMセカンドンキー』を手札に加えます!」

 

良し、これで準備万端!

 

「それではお見せしましょう!ペンデュラム召喚を!

今更ですが、俺のペンデュラムスケールには、スケール6のギタートルと、スケール1のモンキーボード!よってレベル2から5のモンスターが同時に特殊召喚可能!

揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!

ペンデュラム召喚!出でよ、我が僕のモンスター達よ!

レベル4、仲間の足となる縁の下の力持ち!『EMセカンドンキー』!レベル4、誇り高き銀狼『EMシルバー・クロウ』!レベル4、魅惑の奇術師!『EMペンデュラム・マジシャン』!レベル3、燃え盛る魂を宿す獅子!『EMファイア・マフライオ』!そしてレベル3、無限の可能性を引き出すエンターテイナー!『EMリザードロー』!」

「一気に5体のモンスターを並べて来ただと!?凄まじい展開力だな…!」

 

EMセカンドンキー

効果モンスター

地属性

獣族

レベル 4

守備力 2000

 

EMシルバー・クロウ

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

獣族

レベル 4

攻撃力 1800

 

EMペンデュラム・マジシャン

ペンデュラム・効果モンスター

地属性

魔法使い族

レベル 4

攻撃力 1500

 

EMファイア・マフライオ

ペンデュラム・効果モンスター

炎属性

獣族

レベル 3

攻撃力 800

 

EMリザードロー

ペンデュラム・効果モンスター

地属性

爬虫類族

レベル 3

攻撃力 1200

 

ペンデュラム召喚によって5体ものモンスターが並んだ事に驚きの声を上げるセレナだが、お楽しみはこれからだぜ!

 

「ペンデュラム召喚したペンデュラム・マジシャンの効果発動!それにチェーンして、同じくペンデュラム召喚したセカンドンキーの効果発動!

まずはセカンドンキーの効果で、デッキから『EMドクロバット・ジョーカー』を、ペンデュラムスケールにカードが2枚セットされているので手札に加えます!

次にペンデュラム・マジシャンの効果で、自分自身と、ペンデュラムスケールにセットされたモンキーボードを破壊し、デッキから『EMヘルプリンセス』と、2枚目のモンキーボードを手札に加えます!」

「此処まで展開したと言うのに、手札が殆ど減っていないだと…!」

 

セカンドンキーが何時の間にか咥えていたドクロバット・ジョーカーのカードと、ペンデュラム・マジシャンが自分のマントに包まったと思ったら何時の間にか消失した後に残った2枚のカードを加えて、今の俺の手札は5枚、その様にセレナは戦慄を覚えた様だ。

だが、これ『だけ』で戦慄を覚える様ではまだまだだぜ!

 

「更に『EMドクロバット・ジョーカー』を召喚!」

 

EMドクロバット・ジョーカー

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 4

攻撃力 1800

 

「召喚したドクロバット・ジョーカーの効果発動!

デッキから2枚目のリザードローを手札に加えます!」

「フィールドが全て埋め尽くされて尚、手札が5枚…!?」

「さあ、俺が率いる魔人オーケストラの団員たちを紹介しましょう!

まずはファイア・マフライオとリザードローでオーバーレイ!2体のレベル3モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!ペンデュラムエクシーズ!魔人オーケストラの伊達男よ、今こそ戦場に軽快なリズムを刻め!『弦魔人ムズムズリズム』!」

 

弦魔人ムズムズリズム

エクシーズ・効果モンスター

風属性

悪魔族

ランク 3

攻撃力 1500

ORU 2

 

エクシーズ召喚の演出と共に出現したのは、俺と同じくギターを抱え、口と思われる部分には薔薇を咥えた悪魔、ムズムズリズム。

 

「次に、ドクロバット・ジョーカーとセカンドンキーでオーバーレイ!2体のレベル4モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!ペンデュラムエクシーズ!魔人オーケストラの女王よ、今こそ戦場に華麗なる音色を奏でよ!『竜魔人クィーンドラグーン』!」

 

竜魔人クィーンドラグーン

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

ランク 4

攻撃力 2200

ORU 2

 

「更に、今出したクィーンドラグーンとシルバー・クロウを融合!

誇り高き銀狼よ。魔人オーケストラの女王と1つになりて新たな力を生み出さん!ペンデュラムコンタクト!出でよ、野獣の眼光りし獰猛なる龍!『ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!」

「コンタクト融合か!一美が使っているのを見てはいたが、まさかこの世界にもあったとはな…」

 

ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン

融合・効果モンスター

地属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 3000

 

まだまだ展開は続くぞと言わんばかりに登場したクィーンドラグーンと、スタンバイしていたシルバー・クロウが重なろうとした瞬間に放たれた光、それが晴れた後に登場したビーストアイズの姿、というかコンタクト融合の様子に驚きの様子を見せたセレナ。

確かに珍しいよな、融合魔法を使わない『コンタクト』融合は、ランサーズで他に使っている奴は、今言っていた一美と雷牙位だからな。

 

「まだまだ行きますよ!速攻魔法『イリュージョン・バルーン』発動!」

 

イリュージョン・バルーン

速攻魔法

1:自分フィールドのモンスターが破壊されたターンに発動出来る。自分のデッキの上からカードを5枚めくる。その中から『EM』モンスター1体を選んで特殊召喚出来る。残りのカードはデッキに戻してシャッフルする。

 

「イリュージョン・バルーンの効果で、デッキの上からカードを5枚めくり…

この中から『EMラクダウン』を守備表示で特殊召喚します!」

 

EMラクダウン

ペンデュラム・効果モンスター

地属性

獣族

レベル 4

守備力 1800

 

「此処で、ラクダウンを特殊召喚した事で、手札の『EMヘルプリンセス』を守備表示で特殊召喚!」

 

EMヘルプリンセス

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 4

守備力 1200

 

展開はまだ続く、と言わんばかりに出現した風船に乗って登場したラクダウンと、その背中に乗って登場した、手を模したステッキを持つ少女、ヘルプリンセス。

 

「そして、今だしたラクダウンとヘルプリンセスでオーバーレイ!2体のレベル4モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!魔人オーケストラの指揮者よ、今こそ戦場を平定し、己が指揮する音楽を届けよ!『交響魔人マエストローク』!」

 

交響魔人マエストローク

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

悪魔族

ランク 4

攻撃力 1800

ORU 2

 

「い、1ターンで3回もエクシーズ召喚、それに加えてコンタクト融合まで…」

 

俺のフィールドに存在するムズムズリズムとビーストアイズ、そして今しがた登場したマエストロークの姿に唖然とした様子のセレナ。

まあ、此処までの事をやってのけないと、最高指揮官にはなれないからな。

 

「よし、バトルフェイズに入ります!

まずはビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴンで月光舞豹姫を攻撃!ヘルダイブバースト!」

「舞豹姫!?くっ!」

 

ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力 3000 VS 月光舞豹姫 攻撃力 2900

 

Serena LP 4000→3900

 

「モンスターを戦闘破壊した事でビーストアイズの効果発動!融合素材としたシルバー・クロウの元々の攻撃力、1800のバーンダメージを与えます!」

「なっ!?ぐあっ!?」

 

Serena LP 3900→2100

 

「続いてマエストロークでダイレクトアタック!」

「これ以上の攻撃は通さん!永続罠『リビングデッドの呼び声』発動!」

 

リビングデッドの呼び声

永続罠

1:自分の墓地のモンスター1体を対象としてこのカードを発動出来る。そのモンスターを攻撃表示で特殊召喚する。このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは破壊される。そのモンスターが破壊された時にこのカードは破壊される。

 

セットカードはリビングデッドだったか、これで蘇生制限を満たしている舞豹姫を蘇生、攻撃を中断させて次のターンに、という算段だろうが…

 

「リビングデッドの呼び声の効果で、今破壊された舞豹姫を攻撃表示で蘇生する!」

「ならばそのままマエストロークで、舞豹姫を攻撃!」

「何っ!?攻撃力は舞豹姫の方が圧倒的に上の筈!」

「その瞬間ムズムズリズムのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!

マエストロークの攻撃力を倍にします!リズミカル・チャージ!」

「な、何!?」

「行け、マエストローク!ジェネラルソード!」

「ぐぁっ!?」

 

交響魔人マエストローク 攻撃力 1800→3600 VS 月光舞豹姫 攻撃力 2900

 

Serena LP 2100→1400

 

俺とムズムズリズムによる激しいギターデュオでノリに乗ったマエストロークの素早い剣撃が舞豹姫を捉えた。

よし、これでトドメだ!

 

「ムズムズリズムでダイレクトアタック!リズミックストリング!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

Serena LP 1400→-100 LOSE

 

WINNER Yuya

 

------------

 

「胸を借りる積りで当たって行ったが、強いな、遊矢。まさか後攻1ターンで決められるとは…」

「セレナも、中々良いプレイングしていたぜ。アドを考えて動き回りながらも、融合を2回も決めて、保険のリビングデッドもセット出来るんだからな」

「その保険を掛けても結局突破されたんだがな…」

 

俺の評価にジト眼で突っ込むセレナだが、でもランサーズの一員としてやっていける実力はある、今のデュエルで、俺はそう確信しているぜ。



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54話_少女の覚悟~試練の始まり~

Side 柚子

 

不思議な夢を見た。

姿や声は遊矢と似ても似つかない、けど雰囲気は遊矢そっくり、そんな3人の男性が、遊矢の側でずっと一緒にいるモンスターカード『ユベル』の精霊と、其々違う姿の女性と一緒に過ごしていく一生をダイジェストにまとめた様な、そんな夢。

1人目は、クラゲみたいな茶髪、青を基調とした制服の様な服装を身に着けた小柄な男性で、側にはセミロングの金髪に抜群のプロポーションと、日本人離れした姿の女性が居る。

その2人は、デュエルアカデミア(融合次元のそれとは違うみたい)で出会い、共に過ごしていく内に互いの想いに気付き、恋人同士となった。

抜群のデュエルタクティクスで校内でも指折りの実力を誇り『アカデミアの王子』と呼ばれた男性と、同じく『アカデミアの女王』と呼ばれた女性というカップルは、周囲から「これ程お似合いの組み合わせは無い」と、その恋を祝福された。

けど、彼らが歩む道は、決して平たんでは無かった。

2人が恋仲となってから暫くたった或る日、女性の兄が突如として行方知れずとなってしまう。

2人とユベル、更には女性の兄の親友であり、男性のライバルであった、人呼んで『アカデミアの帝王』と呼ばれた存在の捜索も空しく2年が経ち、2人はアカデミアの高等部へと進学。

其処で彼らは女性の兄と再会する、敵同士として。

女性の兄を救うべく、男性はデュエル、それも敗者には死がもたらされると言われている『闇のデュエル』を挑み、激闘の末に勝利を掴んで、彼を解放する事が出来た。

その後も、アカデミアに封印されていた3体のモンスターを巡る戦い、大宇宙に存在する強大な『破滅の光』と男性の身体に宿りし『正しき闇』との戦い、カードの裏側に潜む邪悪な意志との戦い、そして未来からデュエルモンスターズを消し去るべく襲撃して来た侵略者との戦いなど、彼らの行く先々で戦乱が待ち受けていたけど、男性はその戦乱にも真っ向から立ち向かい、そして解決して行き、そんな中で女性と結婚、幸せな家庭を築き、人生を全うした。

 

2人目は、何と言うか、カニっぽい黒髪の男性で、側には赤みがかった髪にこれまた抜群のプロポーションの女性がいる。

その2人には、人とは違った力を持っている事、幼き頃から互いが出会うまでに数奇な運命に振り回され続けて来た事といった共通点があった。

男性は生まれたばかりの時に起こった災害、その魔の手から避ける為に、最早スラム街だと言うしかない場所に放り込まれるという不幸に見舞われながらも、生きる為にその力を振るい続けた。

女性はその力の存在が、それまで親しかった存在を突き離す要因となった事から力を嫌悪しつつも、やり場のない怒りのままに力を振るい続けた。

そんな2人はやがて大人になり、或る日行われたデュエルの大会で対峙する事となった。

女性は今まで通り怒りのままに、一方で男性はそんな女性に喝を入れるべく、互いに力を振るい、更に男性は女性の力を難なく捌いていき、力の在り方を説いて行った結果、男性は勝利、女性の頑なな心を開かせるきっかけとなった。

その後も2人やユベル、2人を取り巻く仲間達には様々な困難が待ち受けていた。

2人や仲間達は『シグナー』と呼ばれる選ばれしデュエリスト達、その運命に導かれるまま騒乱の渦に巻き込まれていったけど、彼らは全力でそれに立ち向かい、その最中に2人は想いを通じ合わせ、恋人同士となった。

5000年周期で繰り広げられるシグナーと『ダークシグナー』との宿命の戦い、破滅の運命を変える為に過去を変えようと暗躍して来た組織との戦い、そして『未来の自分』との死闘、男性は己の運命とも重大な関わりのあるそれらの戦乱に立ち向かい、解決して行った。

そして男性は女性と結婚、『未来の自分』との約束を、破滅の運命を変えると言う約束を守るべく奔走、その波乱に満ちた人生を、最後は幸せな形で人生を全うした。

 

3人目は、前髪にエビみたいなメッシュが入った男性で、側には横から見ると鳥みたいなシルエットの緑髪の女性(プロポーションは…うん)がいる。

その2人やユベル、彼らを取り巻く仲間達は幼馴染で、小さい頃からデュエルに明け暮れていた。

その中でも男性は抜群の実力を有していたけど、デュエルの楽しさを忘れたくないという想いから、大会に出る事、プロデュエリストを目指す事に関しては消極的だった。

だけど『かっとビング』という言葉に出会った事で少年は何事にも積極的になり、大会に出ては結果を残して行った事で周囲から『天才少年デュエリスト』と称される様になった。

けどそんな中でも、女性や仲間達との絆、デュエルの楽しさを忘れた事は一時も無く、むしろその想いは一段と強まり、大会で対峙した事を切っ掛けとして新たなる絆も生まれて行った。

その男性が或る日、とある『存在』との出会いを遂げた事で、そんな楽しい日常は変化を迎える事になる。

その存在『アストラル』との出会いの際に飛び散ってしまった、『No.』と呼ばれるカテゴリのカード達。

アストラルにとってNo.は自らの記憶の欠片、それを集めるべく男性と仲間達は力を合わせて収集にあたった。

だけどNo.は多大なる力を有しており、手にした物はその力に呑まれ、欲望のままに力を振るって行く事になるとの事、彼らの前に沢山の騒乱が待ち受けているのは火を見るより明らかだった。

時にNo.の力を狙う組織同士の戦いに巻き込まれる事もあった。

時に仲間だった存在との悲しい別れもあった。

そして最後は、アストラルが生まれ育った世界と、仲間だった存在が生まれ育った世界の、存亡の運命が天秤に掛けられ、男性は仲間だった存在との悲しいデュエルに臨まざるを得なかった。

結果として男性が勝利、仲間だった存在は、生まれ育った世界と運命を共にした。

大事な仲間を失った悲しみに暮れる男性、けどそんな男性を支えたのも、女性を始めとした仲間達だった。

女性の告白や、仲間達の励ましもあり男性は立ち直り、新たなる敵との戦いにも全力で立ち向かい、その後に女性と結婚、幸せな家庭を築いて、人生を全うした。

 

これ、以前遊矢が言っていた『遊矢の前世』の話にどれも似ている…

という事は、1人目の男性が『遊戯王GXの世界での遊矢』こと『遊城十代』で、2人目の男性が『遊戯王5D’sの世界での遊矢』こと『不動遊星』、3人目の男性が『遊戯王ZEXALの世界での遊矢』こと『九十九遊馬』、で、其々の側に居た女性が各世界で遊矢と恋仲を結んだ人達、って事になるわね。

何となく想像していたけど、遊矢って物凄い人生を歩んでいるわね…

 

「どうだったかな、遊矢のこれまでの人生は?」

「ユベル!?其処にいるのは、まさか…」

 

遊矢の前世での人生、そのダイジェスト映像を見ていた私の背後に突如として聞こえたユベルの声、それに驚いて振り向くと其処にはユベルの他に、さっきまで見ていたダイジェスト映像で見ていた、其々の世界での遊矢の側にいた女性たちがいた。

あ、でもこれは夢だからいてもおかしくは無いわね、つい驚いちゃったけど。

 

「まあ、夢だという認識で間違いは無いよ。今、現実の君は眠りについている訳だからね」

「え、ちょ、ユベル、私の考えが読めるの!?」

「やっぱりそうか。ボクの呼びかけに驚いたかと思ったら急に冷静になるもんだから、カマをかけてみたらドンピシャだったね」

 

うわ、何だか恥ずかしい。

 

「ユベル、そろそろ本題に移ったらどうなの?」

「そうね、でないと私達が何で呼び出されたか分からないわ」

「ですよね、失礼しちゃう!」

「まあまあ、ボク何だか最近空気気味だったからさ、こうして存在をアピールして行かないと読者に忘れ去られそうで…

全く、遊矢と一番長い付き合いなのはこのボクだと言うのに…」

「ちょっと、メタ発言止めなさい」

 

うん、それを私達に愚痴られても。

 

「さて、本題に入るとしよう。今日、君の夢にボク達4人が出て来たのは他でも無い。君に、遊矢の側に立つ覚悟があるのか、それをボク達とのデュエルで見せて欲しい」

 

ボケに突っ込まれて、気持ちを切り替えたユベルが切り出した事、それはデュエルの申し込みだった。

私の覚悟を、デュエルで…?

 

「柚子。まあ遊矢から聞いてはいるし、今その様をダイジェストとはいえ見ていただろうけど、遊矢は、デュエルモンスターズが大いに発展している3つの世界を渡り歩き、其々の世界で人生を全うして来た。実年齢で行ったらもう300歳を越えているだろうね。無論、其々の世界で彼は色んな出来事に直面して来た。それは楽しい事、嬉しい事、幸せな事ばかりじゃない。悲しい事、辛い事、怒りを覚える事。実に様々な出来事が、彼に降りかかって来たんだ」

「十代、いや、遊矢って呼んだ方が良いかしらね。出会った頃から彼は心の底からデュエルが大好きで、屈託のないその笑顔が、デュエルを心の底から楽しんでいるその姿が、私は大好きだったわ。それはどんな困難に直面しても、変わる事無かった」

「私が出会った頃の遊星、違ったわ、遊矢の眼には、言い知れぬ憂いがにじみ出ていた。後から聞いたけど、幼い頃にはその日その日を生き残る為に色んな事を仕出かしたそうよ。その時の彼が感じていた絶望感、無力感、並大抵の物では無かった筈、それがあの眼から感じ取れた。けど心根は真っ直ぐで、デュエルバカと言える程デュエルが好きで、何事にも一生懸命なその様に、私は心惹かれて行ったわ。その姿はずっと、私の脳裏に焼き付いている」

「遊馬、じゃなかったわ、遊矢はちっちゃい頃からデュエルが強くて、そしてデュエルを根っこから愛していた。でも時折、本当に私達と同い年なのかなって思う位、陰のある表情になって、何か思い込む所もあったわ。だけど何事にも諦めず、全力で取り組むその姿が、そんな一生懸命な遊矢が好き!」

「ボクに明日香、アキに小鳥、そして柚子、君達が遊矢に抱いた第一印象は皆違う。デュエルモンスターズを、カード達を心から愛しているという根っここそ変わっていないけどね。それだけの人生を遊矢は経験して来たし、そんな中で少しずつだけど変化している所があった」

 

ユベルの言う通り、私が何時も見ている遊矢の姿と、明日香さん、アキさん、そして小鳥さん、3人が話してくれた遊矢の印象は、少し違っている。

遊矢が歩んで来た300年余りの人生は、確実に遊矢という存在を変化させている。

ましてや、

 

「それに…

遊星として『遊戯王5D’sの世界』に転生した遊矢は、その余りにも壮絶な幼少期を過ごさなければならなかった事で、遊矢がどういう存在だったかを揺るがしかねない位に荒んでしまったんだ。ボクは、遊矢をそんな状態にしてしまったのはボクの所為だと、自分を責めたよ。あんな筈じゃ無かったんだ。ボクは、ボクはそんな遊矢が見たくて遊矢を転生して欲しいと、神様に頼んだ訳じゃ無かったのに…!」

 

生きる為だけにアンティデュエルを繰り返し、生きる為だけに犯罪に手を染めると言う、想像も付かない位荒れた生活、それは例え、その時点で既に1世紀もの人生を歩んで来た遊矢であっても、自分を見失ってしまう程のインパクトがあったに違いない。

でもユベル、それはユベルの所為じゃないわ、誰の所為でも無い、ただ、運命の巡り合わせが悪かったとしか言いようが無いわ。

 

「そんな遊矢の心には、どんな事があろうと揺るがぬ意志を抱いてはいるけど、同時に物凄く深い闇が、奥底まで根を張っている。そんな遊矢の側に立つとなれば、支えるとなれば、それは物凄く大変な事になるよ。ハッキリ言って、並大抵の覚悟では無理だ」

 

それは、周りの皆と比べて遊矢と過ごした時が短い私にも十分わかっている。

私は遊矢の事を、遊矢がどんな人生を歩んで来たのかを、遊矢の天才的なデュエルタクティクスはどうやって身について来たのかを、最近まで殆ど知らなかった。

遊矢が融合、シンクロ、エクシーズという、舞網市は勿論この世界の何処にもほぼ出回っていなかったモンスターカード達やその関連カード達を大量に持っていた事、ストロング石島とのデュエルでペンデュラムモンスターを手にしてあっさり使いこなした事、それに疑問を覚えはしたけど大して気にする事無く教わり、そして使って来た。

遊矢の事を、知ろうともしなかったと言われても文句は言えない。

けど、けど!

 

「私は、デュエルを心から愛し、心から楽しみ、心から熱くなれる遊矢が好き!誰よりも一生懸命で、誰よりもひたむきな彼が好き!そんな遊矢が迷った時は支えになりたい!遊矢が落ち込んだ時は側にいたい!その為の、その為の覚悟は出来ています!」

 

その覚悟があるからこそ、遊矢の、一見するとアニメや漫画の話だと突っ込みそうな身の上話を聞いても納得出来たし、それを受け入れて尚、遊矢へのこの気持ちは揺るがなかった!

今も、この気持ちに嘘は無い!

 

「良い眼だよ。明日香も、アキも、小鳥もそんな眼をしていた。遊矢が好きなら、そうでなくっちゃ!なら、その覚悟がある前提で聞くよ。

 

 

おい、デュエルしろよ」

「ええ、受けて立つわ!」



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55話_少女の覚悟~女王の風格~

「最初は私ね。宜しく頼むわ、柚子」

「はい、宜しくお願いします、明日香さん!」

 

私の夢の中で始まった、私と、遊矢の其々の前世で一生を共にした人達とユベルとのデュエル、最初の相手は、『遊戯王GXの世界』での遊矢と一緒にいた天上院明日香さん。

間近で対峙すると改めて思うんだけど、染めている様には見えない自然な色合いの金髪といい、グラビアアイドルとして活躍出来そうな抜群のプロポーションといい、本当に日本人なのかな…

明日香さんの兄である天上院吹雪さんは確か黒髪だったよね、だとしたら染めているのかな…?

え、だったらピンク髪の私とか、トマトみたいな髪型の遊矢はどうなんだって?そ、それは言わない約束で(汗)

 

「「デュエル!」」

 

先攻 Asuka LP 4000 VS 後攻 Yuzu LP 4000

 

「先攻は私の様ね。

まずは魔法『予想GUY』発動!」

 

予想GUY

通常魔法

1:自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動出来る。デッキからレベル4以下の通常モンスター1体を特殊召喚する。

 

「予想GUYの効果で、デッキから『ブレード・スケーター』を守備表示で特殊召喚!」

 

ブレード・スケーター

通常モンスター

地属性

戦士族

レベル 4

守備力 1500

 

明日香さんの先攻で始まったこのデュエル、その明日香さんが初手で発動した予想GUYで出て来たのは、両腕に刃を装着したフィギュアスケーターの様な女戦士、ブレード・スケーター。

私のデッキに入っている『独奏の第1楽章』もそうだけど、条件付きとはいえ好きなモンスターを好きなタイミングでリクルート出来るカードってかなり強いと思う。

美琴もこれを起点にマグネット・バルキリオンを出してくるし、私自身『独奏の第1楽章』はキーカードと言っても過言じゃ無い。

明日香さんが今出したブレード・スケーターも、ステータスこそパッとし無さそうだけど、だからこそ何かある筈…

 

「次に『融合呪印生物―地』を召喚!」

 

融合呪印生物―地

効果モンスター

地属性

岩石族

レベル 4

攻撃力 1000

 

次に出て来たのは、何か岩みたいな物体を色んな所から生やした球体。

確か融合呪印生物シリーズって、名前を指定した融合素材モンスターの代わりになれる共通効果を持っていたっけ(一応光属性の物もあるけど、私の『幻奏』融合モンスターはどれもカテゴリしか指定していないから使えないのよね…)。

となると明日香さんのデッキは融合召喚が主軸なのかな…?

 

「今出した融合呪印生物―地の効果を発動するわ!

このカードと、ブレード・スケーターをリリースし、現れなさい!『サイバー・ブレイダー』!」

 

サイバー・ブレイダー

融合・効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 7

攻撃力 2100

 

そんな私の予想に応える様に明日香さんが効果を発動すると、融合呪印生物がスライムの様に変形を始め、その過程でブレード・スケーターを取り込み、その身を、太腿まで届くほどの長髪が特徴的なフィギュアスケーターの様な女戦士、サイバー・ブレイダーへと変えた。

なんか今の演出、ちょっと気持ち悪い感が…

 

「カードを3枚セットして、ターンエンドよ」

 

Asuka

LP 4000

手札 0

モンスター サイバー・ブレイダー(攻撃表示)

魔法・罠カード セット×3

 

うわ、初手でガン伏せ…

こういう時『ハーピィの羽根帚』を打ちたいけど、エレンの『アーティファクト』の様に破壊させる為にセットした可能性もあるし、『神の宣告』とかで防がれる可能性もあるけど…

まあ良いわ、引いてから考える!

 

「私のターン、ドロー!」

 

ハーピィの羽根帚は無い、けど此処は臆さずに動く!

 

「まずは魔法『独奏の第1楽章』発動!」

 

独奏の第1楽章

通常魔法

『独奏の第1楽章』は1ターンに1枚しか発動出来ず、このカードを発動するターン、自分は『幻奏』モンスターしか特殊召喚出来ない。

1:自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動出来る。手札・デッキからレベル4以下の『幻奏』モンスター1体を特殊召喚する。

 

「独奏の第1楽章の効果で、デッキから『幻奏の音女セレナ』を守備表示で特殊召喚!」

 

幻奏の音女セレナ

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 4

守備力 1900

 

今更だけど『融合次元の私』ことセレナと、このカードは全く関係ないからね、髪色とか違うし。

 

「貴方のフィールドにモンスターが1体存在する事で、サイバー・ブレイダーは戦闘では破壊されないわ!パ・ド・ドゥ!」

 

と、誰とも分からない存在に突っ込んでいると、明日香さんの場にいるサイバー・ブレイダーが緑色のオーラを纏い出した。

今の明日香さんの口振りからして、サイバー・ブレイダーは私のフィールドにいるモンスターの数によって発揮する効果が違うみたいね…

 

「次に、セレナをリリースしてアドバンス召喚!天上に響く妙なる調べよ、眠れる天才を呼び覚ませ!出でよ、レベル8!『幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト』!」

「リリース1体でレベル8モンスターを?ああ成る程、セレナはダブルコストモンスターなのね」

 

幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 8

攻撃力 2600

 

そういえば言い忘れたわ、セレナが天使族モンスターに対応したダブルコストモンスターだという事。

このまま攻め込んで、サイバー・ブレイダーの更なる効果を発揮させる前に倒したいけど、私のフィールドにいるモンスターは未だに1体、よってサイバー・ブレイダーを戦闘破壊出来ないし、破壊効果を持つカードは私のデッキに無い、となれば動く!

 

「今召喚したプロディジー・モーツァルトの効果発動!

手札から『幻奏の音女タムタム』を守備表示で特殊召喚!」

 

幻奏の音女タムタム

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 4

守備力 2000

 

サイバー・ブレイダー 攻撃力 2100→4200

 

え、攻撃力4200!?何時の間に!?

 

「貴方のフィールドにモンスターが2体存在する事で、サイバー・ブレイダーの攻撃力は倍になるわ!パ・ド・トロワ!」

 

2体だとそんな効果なの!?

プロディジー・モーツァルトの効果で手札のタムタムを特殊召喚した瞬間、サイバー・ブレイダーのオーラが赤色に変色し、同時に攻撃力の表記が倍になった事にびっくりした。

まさか『巨大化』を内蔵しているなんて思わなかったわ、だけど!

 

「特殊召喚に成功したタムタムの効果発動!

私のフィールドに幻奏モンスターがいる状態で特殊召喚した事で、デッキから『融合』を手札に」

「おっと、その効果にチェーンして罠『ギブ&テイク』発動よ!」

 

ギブ&テイク

通常罠

自分の墓地に存在するモンスター1体を相手フィールド上に守備表示で特殊召喚し、そのレベルの数だけ自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体のレベルをエンドフェイズ時まで上げる。

 

ギブ&テイク?

確か『リビングデッドの呼び声』の逆バージョンじゃなかったっけ?何でそんなカードを?

 

「ギブ&テイクの効果で、貴方のフィールドにブレード・スケーターを守備表示で蘇生し、サイバー・ブレイダーのレベルを11にするわ!」

「なら改めてタムタムの効果でデッキから『融合』を…

 

あ、あれ?タムタムの効果が無効になっている!?」

 

明日香さんが発動したカードに驚きつつ効果処理を進めようとしたその時だった、タムタムの効果が無効になっていて、デッキから『融合』をサーチする事が出来なくなってしまった。

いや、タムタムだけでは無い、私のフィールドにいるモンスター全ての効果が、無効になっている…

一体、どうして…!?

 

サイバー・ブレイダー レベル 7→11

           攻撃力 4200→2100

 

「貴方のフィールドにモンスターが3体存在する事で、貴方のカードの効果は全て無効になるわ!パ・ド・カトル!」

「なっ!?」

 

な、何そのインチキ効果!?

良く見るとサイバー・ブレイダーのオーラは青色に変色していて、それにあてられたのか私のフィールドにいるモンスター達がやや青み掛かっていた。

この効果を発揮する為にギブ&テイクなんてカードを入れていたという事ね、してやられたわ…

だけどサイバー・ブレイダーの攻撃力は2100に戻っているし、戦闘破壊耐性も無い。

私のフィールドに、サイバー・ブレイダーを超えられる攻撃力(2600)を持ったプロディジー・モーツァルトがいる今なら行ける!

 

「バトルフェイズに入ります!プロディジー・モーツァルトでサイバー・ブレイダーを攻撃!」

「掛かったわね!罠『破壊輪』発動!」

 

破壊輪(制限カード)

通常罠

『破壊輪』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:相手ターンに、相手のLPの数値以下の攻撃力を持つ相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動出来る。その表側表示モンスターを破壊し、自分はそのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを受ける。その後、自分が受けたダメージと同じ数値分のダメージを相手に与える。

 

し、しまった!破壊輪までセットしていたなんて…!

 

「破壊輪の効果で、貴方のフィールドにいるブレード・スケーターを破壊して、1400のバーンダメージよ!(ドガァァァァン!)くっ…!」

「きゃぁぁぁぁぁぁ!」

 

Asuka LP 4000→2600

Yuzu LP 4000→2600

 

私の攻撃宣言に合わせて明日香さんが発動した破壊輪、それは、私のフィールドに登場していたブレード・スケーターの首に巻き付き、爆破した。

これで互いに少なくないバーンダメージを喰らった、だけじゃない。

今の私のフィールドには、たった今攻撃宣言したプロディジー・モーツァルトを含めて2体のモンスター、つまりサイバー・ブレイダーの攻撃力は4200へと上昇している。

そして此処が重要で、モンスターの数が変化したのは『ターンプレイヤーの、私のフィールド』、この場合は攻撃宣言の巻き戻しが出来ない。

つまり、

 

「貴方のフィールドのモンスターは2体!よってサイバー・ブレイダーの攻撃力は倍になるわ!パ・ド・トロワ!

返り討ちにしなさい、サイバー・ブレイダー!グリッサード・スラッシュ!」

「きゃぁぁぁぁぁ!」

 

サイバー・ブレイダー 攻撃力 2100→4200 VS 幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト 攻撃力 2600

 

Yuzu LP 2600→1000

 

サイバー・ブレイダー 攻撃力 4200→2100

 

オーラが赤に変色したサイバー・ブレイダーの飛び回し蹴りを防ぐ術は無く、プロディジー・モーツァルトがやられたばかりか、私も多大なダメージを負ってしまった。

う、上手い…

明日香さん、物凄く上手い、流石に『アカデミアの女王』と騒がれていただけの事はあるわ…!

けど、私だって負けていられない、遊矢の側で支える為にも、遊矢の帰る場所になる為にも!

 

「なら、カードを1枚セットしてターンエンド!」

 

Yuzu

LP 1000

手札 2

モンスター 幻奏の音女タムタム(守備表示)

魔法・罠カード セット

 

「私のターン、ドロー!

…このターンでの決着は無理そうね、まあ良いわ、このままバトルフェイズに入るわ!

サイバー・ブレイダーでタムタムを攻撃!グリッサード・スラッシュ!」

「タムタム!くっ…!」

 

サイバー・ブレイダー 攻撃力 2100 VS 幻奏の音女タムタム 守備力 2000

 

「カードを1枚セットしてターンエンドよ」

 

Asuka

LP 2600

手札 0

モンスター サイバー・ブレイダー(攻撃表示)

魔法・罠カード セット×2

 

サイバー・ブレイダーの攻撃によってタムタムがいなくなり、これで私のフィールドからモンスターはいなくなった。

それは裏を返せば、サイバー・ブレイダーが何の効果も持たない攻撃力2100モンスターとなったという事だけど、どの道私のデッキは、モンスターを出していかないと勝てない。

かと言って、余り出し過ぎるとサイバー・ブレイダーの効果を発動させちゃう、そして明日香さんのフィールドにある2枚のセットカード、あの中にもしかしたらギブ&テイクがあるかも分からない。

だからと言って躊躇したら勝てるデュエルも勝てない、そんな心構えじゃ、遊矢の側に立つ資格なんて無いわ!

 

「私のターン!ドロー!」

 

よし、これなら!

 

「私は今引いた魔法『ハーピィの羽根帚』を発動!」

「なっ此処で羽根帚!?させないわ、カウンター罠『神の宣告』発動!」

 

ハーピィの羽根帚(制限カード)

通常魔法

1:相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。

 

神の宣告(制限カード)

カウンター罠

1:LPを半分払って以下の効果を発動出来る。

●魔法・罠カードが発動した時に発動出来る。その発動を無効にし破壊する。

●自分または相手がモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚する際に発動出来る。それを無効にし、そのモンスターを破壊する。

 

Asuka LP 2600→1300

 

「神の宣告の効果で、ハーピィの羽根帚を無効にするわ!」

「くっ!まさか最初のターンにセットしたカードの最後の1枚が神宣だったなんて…」

 

いや、逆に考えるのよ、これで明日香さんのLPは1300、これなら…!

 

「なら次はセットしていた魔法『死者蘇生』発動!」

「死者蘇生をセットしていたの!?随分とハイリスクなブラフね…」

 

死者蘇生(制限カード)

通常魔法

1:自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

明日香さんの言う通り、制限カードである死者蘇生をブラフとしてセットするのはかなりリスクが高い、もし明日香さんが除去カードを引いていたら躊躇なく破壊され、このターンで行う筈のプレイングが出来なくなっちゃうからね。

でもカードを1枚もセットせずに、もし明日香さんが攻撃力1000以上のモンスターを引かれていたら確実に負けていた、なら躊躇はしないわ!

 

「死者蘇生の効果で、プロディジー・モーツァルトを蘇生!

続いて、今蘇生したプロディジー・モーツァルトの効果発動!

手札から『幻奏の歌姫ソプラノ』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

幻奏の歌姫ソプラノ

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 4

攻撃力 1400

 

サイバー・ブレイダー 攻撃力 2100→4200

 

プロディジー・モーツァルトの効果によって登場したのは、目の部分を覆った赤毛の歌姫、ソプラノ。

これで、私のフィールドにはモンスターが2体、サイバー・ブレイダーの攻撃力は4200になった。

 

「特殊召喚したソプラノの効果発動!

墓地にあるタムタムを手札に加えます!」

 

此処でセットカードを使わない、いや、使うのをためらわざるを得ないって感じ、かな…?

此処でギブ&テイクを使って私のフィールドにいるモンスターの数を3体にし、ソプラノの効果を無効にする事も出来るけど、そうなると明日香さんのセットカードはもう無い、プロディジー・モーツァルトの攻撃でサイバー・ブレイダーは終わり、その後ソプラノのダイレクトアタックを受けて私の勝ちになっちゃうからね。

 

「よし、これで決めます!

ソプラノの効果発動!

私のフィールドにいる、ソプラノ自身と、プロディジー・モーツァルトを融合!

天使のさえずりよ!至高の天才よ!タクトの導きにより力重ねよ!融合召喚、今こそ舞台に勝利の歌を!『幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ』!」

「融合召喚!やっぱり使って来たわね…」

 

幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ

融合・効果モンスター

光属性

天使族

レベル 6

攻撃力 1000

 

サイバー・ブレイダー 攻撃力 4200→2100

 

これで今の私のフィールドには、ソプラノの歌声によって引き起こされた融合召喚の演出と共に登場したブルーム・ディーヴァ1体のみ、サイバー・ブレイダーは破壊耐性を得た、けど!

 

「このままバトルフェイズに入ります!ブルーム・ディーヴァでサイバー・ブレイダーを攻撃!」

「なっ!?此処で自爆特攻!?」

「いいえ、これこそ勝利への布石です!

ブルーム・ディーヴァは戦闘・効果では破壊されず、戦闘によって発生する私へのダメージは0になります!

更にブルーム・ディーヴァの効果発動!ブルーム・ディーヴァが特殊召喚されたモンスターと戦闘を行った場合、ダメージ計算後にその元々の攻撃力の差の数だけダメージを貴方に与え、相手モンスターを破壊します!リフレクト・シャウト!」

「なっ!?きゃぁ!」

 

Asuka LP 1300→200

 

よし、これでトドメよ!

 

「これで最後です!速攻魔法『融合解除』発動!」

「融合解除まで…

これはやられたわね…」

 

融合解除

速攻魔法

フィールド上の融合モンスター1体を選択してエクストラデッキに戻す。更に、エクストラデッキに戻したそのモンスターの融合召喚に使用した融合素材モンスター1組が自分の墓地に揃っていれば、その1組を特殊召喚出来る。

 

「融合解除の効果でブルーム・ディーヴァをエクストラデッキに戻し、舞い戻りなさい!ソプラノ!プロディジー・モーツァルト!

そしてプロディジー・モーツァルトでダイレクトアタック!グレイスフル・ウェーブ!」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

Asuka LP 200→-2400 LOSE

 

WINNER Yuzu

 

よし、これでまずは1勝よ!



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56話_少女の覚悟~魔女の侵略~

「次は私ね。行くわよ、柚子」

「負けませんよ、アキさん!」

 

明日香さんに勝利し、幸先良いスタートとなった4連戦、次の相手は『遊戯王5D’sの世界』での遊矢と一緒にいた十六夜アキさん。

確かアキさんも、遊矢と同じく『赤き龍』に選ばれしデュエリスト『シグナー』の1人で、赤き龍に仕えていたドラゴンの一角『ブラック・ローズ・ドラゴン』というシンクロモンスターをエースとしていたのよね。

その効果は、シンクロ召喚成功時に発動される『カードの』全体破壊効果と、墓地の植物族モンスター1体を除外する事で発動出来る弱体化効果、この2つ。

となると…

 

「「デュエル!」」

 

先攻 Yuzu LP 4000 VS 後攻 Aki LP 4000

 

「私の先攻!」

 

よし、この初手なら行ける!

 

「早速行きます!魔法『融合』発動!」

「いきなり融合!?凄まじいドロー力ね…」

 

融合

通常魔法

1:自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「手札の『幻奏の音女アリア』と『幻奏の音女エレジー』を融合!

響き渡る歌声よ!悲哀の旋律よ!タクトの導きにより力重ねよ!融合召喚、今こそ舞台へ!『幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト』!」

 

幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト

融合・効果モンスター

光属性

天使族

レベル 6

攻撃力 2400

 

「次に、私のフィールドに『幻奏』モンスターがいるので、『幻奏の音女ソナタ』を守備表示で特殊召喚します!」

 

幻奏の音女ソナタ

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 3

守備力 1000→1500

 

幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト 攻撃力 2400→2900

 

「特殊召喚されたソナタがフィールドに存在する限り、私のフィールドにいる天使族モンスターの攻守は500アップします!

カードを1枚セットして、ターンエンド!」

 

Yuzu

LP 4000

手札 0

モンスター 幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト(攻撃表示)

      幻奏の音女ソナタ(守備表示)

魔法・罠カード セット

 

私のフィールドにはマイスタリン・シューベルトと、緑を基調とした髪型、青をベースとしたドレスを身に着けた幻奏の音女、ソナタの2体。

そしてセットしたカードは『アレ』、これでブラック・ローズ・ドラゴンの効果に対処できる!

 

「行くわよ、私のターン!ドロー!

まずは手札の『薔薇恋人(ラヴァー)』を墓地へ送って魔法『ワン・フォー・ワン』発動!」

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

む、今墓地へ送られた薔薇恋人って確か、墓地から除外する事で植物族モンスターを手札から特殊召喚する効果を持っていたわね、そしたら、

 

「ワン・フォー・ワンの効果で、デッキから『グローアップ・バルブ』を守備表示で特殊召喚!」

 

グローアップ・バルブ(制限カード)

効果モンスター/チューナー

地属性

植物族

レベル 1

守備力 100

 

グローアップ・バルブって、アキさん、えげつないチューナーをデッキに入れているわね…

と、ひいている場合じゃ無い、使うならこのタイミングよ!

 

「グローアップ・バルブの特殊召喚成功時に、マイスタリン・シューベルトの効果発動!

アキさんの墓地から薔薇恋人とワン・フォー・ワンを除外して、マイスタリン・シューベルトの攻撃力を400アップします!」

「墓地メタ効果を持っていたとは、これは厄介ね…」

 

幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト 攻撃力 2900→3300

 

よし、これで植物族上級モンスターの特殊召喚は阻止できた、筈。

 

「本当だったらもう少し動けていたけど、贅沢は言っていられないわね。

『ローンファイア・ブロッサム』を召喚!」

 

ローンファイア・ブロッサム

効果モンスター

火属性

植物族

レベル 3

攻撃力 500

 

「今召喚したローンファイア・ブロッサムをリリースして効果発動!

デッキから『ギガプラント』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

ギガプラント

効果モンスター/デュアル

地属性

植物族

レベル 6

攻撃力 2400

 

あ、あれ?

アキさんが召喚した、爆弾に蔦が生えた様なモンスターが、爆発しながらタネみたいな物を発射したら、それが、植物がゴジラと化した様な姿のモンスターへと変貌した。

ま、まあでもデュアルモンスターらしいギガプラントの効果を使わせなかった、と考えればOKかな。

とはいえ、これでアキさんのフィールドにいるモンスターの合計レベルは7、来る…!

 

「私は今出した、レベル6のギガプラントに、レベル1のグローアップ・バルブをチューニング!

冷たい炎が世界の全てを包み込む。漆黒の花よ、開け!シンクロ召喚!現れよ、『ブラック・ローズ・ドラゴン』!」

 

ブラック・ローズ・ドラゴン

シンクロ・効果モンスター

炎属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2400

 

来た、アキさんのエースカード、ブラック・ローズ・ドラゴン…!

 

「シンクロ召喚したブラック・ローズ・ドラゴンの効果発動!

フィールド上のカードを全て破壊するわ!ブラック・ローズ・ガイル!」

「なら、それにチェーンして速攻魔法『融合解除』発動!」

 

融合解除

速攻魔法

フィールド上の融合モンスター1体を選択してエクストラデッキに戻す。更にエクストラデッキに戻したそのモンスターの融合召喚に使用した融合素材モンスター1組が自分の墓地に揃っていれば、その1組を特殊召喚出来る。

 

よし、これで…!

 

「融合解除の効果で、マイスタリン・シューベルトをエクストラデッキに戻し、融合素材として墓地へ送られたアリアとエレジーを守備表示で特殊召喚!」

 

幻奏の音女アリア

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 4

守備力 1200→1700

 

幻奏の音女エレジー

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 5

守備力 1200→1700

 

「一体何を…?

まあ良いわ、全て壊しなさい!ブラック・ローズ・ガイル!」

 

アキさんのフィールドに、シンクロ召喚の演出と共に出現した黒い薔薇の様な姿のドラゴン、ブラック・ローズ・ドラゴンの効果によって、フィールドが一掃、

 

「なっ!?何故生き残っているの!?」

 

されなかった。

 

「エレジーがフィールドにいる限り、私のフィールドにいる特殊召喚された『幻奏』モンスターは、効果破壊されません!この効果はエレジー自身も含まれます!

更に、特殊召喚されたアリアがフィールドにいる限り、私のフィールドにいる『幻奏』モンスターは、効果対象にならず、戦闘破壊されません!

これが私のデッキが誇るコンボ『アリアエレジーロック』!」

「その為に態々『融合解除』を使った訳ね…」

 

このロックがあれば、アキさんのエースであるブラック・ローズ・ドラゴンの効果は全て使えない。

後は戦線を維持しつつ、手札が整うのを待って、

 

「でもそのコンボ、貴方の『幻奏』モンスターを攻撃対象にする事は出来るのよね?

なら魔法『死者蘇生』発動!」

 

死者蘇生(制限カード)

通常魔法

1:自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

「死者蘇生の効果で、ブラック・ローズ・ドラゴンを攻撃表示で蘇生!

更に今蘇生したブラック・ローズ・ドラゴンに装備魔法『憎悪の棘』を装備!」

 

憎悪の棘

装備魔法

『ブラック・ローズ・ドラゴン』または植物族モンスターにのみ装備可能。

装備モンスターの攻撃力は600ポイントアップする。

装備モンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

装備モンスターがモンスターを攻撃した場合、ダメージ計算後に攻撃対象モンスターの攻撃力・守備力は600ポイントダウンする。

装備モンスターと戦闘を行った相手モンスターは、その戦闘では破壊されない。

 

ブラック・ローズ・ドラゴン 攻撃力 2400→3000

 

と考えていた所に、アキさんが何やら不穏な様子を見せたと思ったら、今しがた効果で墓地へ送ったばかりのブラック・ローズ・ドラゴンを蘇生、更に装備魔法によるものか、その身に生える棘が鋭くなっていった、って、

 

「バトルフェイズに入るわ!

ブラック・ローズ・ドラゴンでソナタを攻撃!

ヘイト・ローズ・ウィップ!」

「なっ(パシィィィィン)きゃぁ!?」

 

ブラック・ローズ・ドラゴン 攻撃力 3000 VS 幻奏の音女ソナタ 守備力 1500

 

Yuzu LP 4000→2500

 

「更に憎悪の棘の効果で、ソナタの攻守を600ポイントダウンするわ!」

『あ(ガクッ!)、あぁ…』

「そ、ソナタ!?」

 

幻奏の音女ソナタ 守備力 1500→900

 

よ、よりによって貫通効果に加えて、弱体化効果も持った装備魔法を付けてくるなんて、これじゃあロックの上から押し込まれかねないわ、アキさんが聞いた事の真意は其処だったのね…

こうなると、私の猶予はあと2ターン、それまでに状況を打開するカードを揃えないと…!

 

「カードを1枚セットして、ターンエンドよ」

 

Aki

LP 4000

手札 0

モンスター ブラック・ローズ・ドラゴン(攻撃表示)

魔法・罠カード 憎悪の棘(装備対象:ブラック・ローズ・ドラゴン)

        セット

 

「私のターン!ドロー!

モンスターを全て攻撃表示に変更してターンエンド!」

 

Yuzu

LP 2500

手札 1

モンスター 幻奏の音女アリア(攻撃表示)

      幻奏の音女エレジー(攻撃表示)

      幻奏の音女ソナタ(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

今は、受けるダメージを少しでも減らさないと行けないわね…

 

「私のターン!ドロー!

…今来ても仕方が無いわね。

まあ良いわ、バトルフェイズに入るわ!

ブラック・ローズ・ドラゴンでソナタを攻撃!

ヘイト・ローズ・ウィップ!」

「きゃぁ!」

『う(ガクリ)、うぅ…』

 

ブラック・ローズ・ドラゴン 攻撃力 3000 VS 幻奏の音女ソナタ 攻撃力 1400

 

Yuzu LP 2500→900

 

幻奏の音女ソナタ 攻撃力 1400→800

 

「カードを1枚セットして、ターンエンドよ」

 

Aki

LP 4000

手札 0

モンスター ブラック・ローズ・ドラゴン(攻撃表示)

魔法・罠カード 憎悪の棘(装備対象:ブラック・ローズ・ドラゴン)

セット×2

 

私のライフポイント的にも、これがラストターン。

此処であのカードを引けば…!

 

「私のターン!ドロー!」

 

 

 

 

 

カンコーン!って音が聞こえた様な気がした。

 

「アキさん、このターンで勝負です!融合発動!」

「勝敗を賭けた融合召喚って事ね。良いわ、来なさい!」

「はい!私は手札の『幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト』とフィールドのアリアを融合!

至高の天才よ!響き渡る歌声よ!タクトの導きにより力重ねよ!融合召喚、今こそ舞台に情熱の歌を!『幻奏の華歌聖ブルーム・プリマ』!」

「ブルーム・プリマ…

さっき明日香とのデュエルで出したブルーム・ディーヴァとはまた違った感じのモンスターね…」

 

幻奏の華歌聖ブルーム・プリマ

融合・効果モンスター

光属性

天使族

レベル 7

攻撃力 1900→3300

 

「さ、3300!?えーと、ソナタの効果で500上がっているのは分かるけど、残りの900ポイントは…?」

「ブルーム・プリマの攻撃力は、融合素材としたモンスターの数×300アップします!

あと、今更ですが特殊召喚したエレジーが私のフィールドにいる限り、私のフィールドにいる天使族モンスターの攻撃力は300アップします!」

 

融合召喚の演出と共に登場した、花を思わせる明るい色合いのドレスを身に纏った少女、ブルーム・プリマ。

自分自身の効果と、並び立つソナタとエレジーの効果も相まってその攻撃力は、装備魔法によって強化されたブラック・ローズ・ドラゴンをも上回った、けど、それだけじゃ無いわ!

 

「バトルフェイズに入ります!

ブルーム・プリマでブラック・ローズ・ドラゴンを攻撃!」

「くっ!」

 

幻奏の華歌聖ブルーム・プリマ 攻撃力 3300 VS ブラック・ローズ・ドラゴン 攻撃力 3000

 

Aki LP 4000→3700

 

よし、このまま畳みかける!

 

「ブルーム・プリマは2回攻撃出来ます!この効果でダイレクトアタック!」

「なっ!?きゃぁ!」

 

Aki LP 3700→400

 

セットカードは使って来ない、って事は…

 

「エレジーでトドメです!」

「まさか、1ターンでひっくり返されるなんてね。

完敗だわ、強いのね」

 

Aki 400→-2400 LOSE

 

WINNER Yuzu

 

やった、これで2連勝よ!



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57話_少女の覚悟~天使の聖域~

「明日香さんやアキさんを倒すなんて、やるじゃない柚子。でも私だって負けないわ!」

「行きますよ、小鳥さん!」

 

アキさんに勝利した事で2連勝となった私、3戦目の相手は『遊戯王ZEXALの世界』での遊矢と一緒にいた観月小鳥さん。

この勢いに乗って、3連勝と行きたい所ね。

それにしても、明日香さんやアキさん、ユベルと比べて小鳥さんのp

 

「柚子、何か変な事考えなかったかな?」

「(ゾクッ!)い、いえ何も!」

 

び、びっくりした…

うん、余計な事は考えずにデュエルに集中しよう。

 

「「デュエル!」」

 

先攻 Kotori LP 4000 VS 後攻 Yuzu LP 4000

 

「先攻は私ね。

まずは手札から『英知の代行者マーキュリー』を除外して、魔法『天空の宝札』発動!」

 

天空の宝札

通常魔法

手札から天使族・光属性モンスター1体をゲームから除外し、自分のデッキからカードを2枚ドローする。このカードを発動するターン、自分はモンスターを特殊召喚する事が出来ず。バトルフェイズを行う事も出来ない。

 

光属性・天使族モンスター1体の除外をコストに2ドロー出来る天空の宝札に、その発動の際に除外したマーキュリー、小鳥さんのデッキは『代行者』の様ね。

でも一言で代行者と言ってもそのデッキタイプは様々、小鳥さん達がいた世界ではシンクロ召喚は無かったみたいだからその辺りは無さそうだけど…

 

「天空の宝札の効果で、2枚ドロー!

次に『天空聖者(エンジェルセイント)メルティウス』を召喚!」

 

天空聖者メルティウス

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 4

攻撃力 1600

 

メルティウスを召喚したって事は、小鳥さんのデッキは『代行者型天空の聖域』かしら?

小鳥さんのフィールドに登場した、天使が付けていると言われている環をフラフープの様に浮かせた天使、メルティウスの姿に、私は警戒を強めた。

メルティウスはカウンター罠の効果処理直後にLPを1000ポイント回復させるだけじゃなくて、『天空の聖域』があれば同じタイミングで相手フィールドのカードを1枚破壊出来る効果もある(ちなみにこの効果はどちらも永続効果、よって対象を取らない上にチェーンも作らない)。

『天空の聖域』は私も使っている(最初は遊矢の『完全決闘』対策に『神罰』とのセットで入れたのよね)から、このカードの存在は知っていた、そのパーミッションで使いなさいと言わんばかりの効果は。

 

「更にフィールド魔法『天空の聖域』発動!」

 

天空の聖域

フィールド魔法

このカードがフィールド上に存在する限り、天使族モンスターの戦闘によって発生する天使族モンスターのコントローラーへの戦闘ダメージは0になる。

 

やっぱりメルティウスを出す以上、天空の聖域も握っているわよね。

これは心して動かないと…

 

「カードを2枚セットして、ターンエンドよ」

 

Kotori

LP 4000

手札 1

モンスター 天空聖者メルティウス(攻撃表示)

魔法・罠カード セット×2

フィールド魔法 天空の聖域

 

「私のターン!ドロー!」

 

さて、2枚あるあのセットカード、恐らくカウンター罠の類だと思う。

此処は動き過ぎないように気を付けないとね。

 

「まずは魔法『独奏の第1楽章』発動!」

 

独奏の第1楽章

通常魔法

『独奏の第1楽章』は1ターンに1枚しか発動出来ず、このカードを発動するターン、自分は『幻奏』モンスターしか特殊召喚出来ない。

1:自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動出来る。手札・デッキからレベル4以下の『幻奏』モンスター1体を特殊召喚する。

 

セットカードは…

使って来ない、わね。

 

「独奏の第1楽章の効果で、デッキから『幻奏の音女セレナ』を守備表示で特殊召喚!」

「セレナ…

確か、明日香さんとのデュエルで使っていたダブルコストモンスターね」

 

幻奏の音女セレナ

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 4

守備力 1900

 

此処で使って来ないなら、この動きも大丈夫そうね。

 

「明日香さんとのデュエルでは説明していませんでしたけど、セレナは天使族モンスターをアドバンス召喚する際、2体分のリリースとする事が出来ます!この効果でセレナをリリースしてアドバンス召喚!天上に響く妙なる調べよ、眠れる天才を呼び覚ませ!出でよ、レベル8!『幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト』!」

 

幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 8

攻撃力 2600

 

出来ればもっと動きたかったけど『神罰』の存在が考えられる以上、此処でストップした方が良いわね。

攻撃も『攻撃の無力化』からメルティウスで除去、なんて事になったら笑えないから控えよう。

 

「カードを3枚セットして、ターンエンド!」

 

Yuzu

LP 4000

手札 1

モンスター 幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト(攻撃表示)

魔法・罠カード セット×3

 

「やけに慎重な立ち回りね、まさか私の狙いがバレた…?

まあ良いわ、私のターン!ドロー!

まずは『奇跡の代行者ジュピター』を召喚!」

 

奇跡の代行者ジュピター

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 4

攻撃力 1800

 

メルティウスに並び立つように登場したのは、『木星』の名を冠した褐色肌の代行天使ジュピター。

攻撃力自体も下級モンスターとしては十分だけど『天空の聖域』が発動されている今、ジュピターはその真価を発揮する事が出来る。

 

「次に、手札の『創造の代行者ヴィーナス』を捨てて、ジュピターの効果発動!

さっきのターンで除外した『英知の代行者マーキュリー』を守備表示で特殊召喚!」

 

英知の代行者マーキュリー

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 4

守備力 1700

 

ジュピターの真価、それは手札の天使族モンスター1体をコストとした帰還効果。

似た様な効果を持っている装備魔法『D・D・R』と比べて、帰還したモンスターには束縛の様な物は無い事を考えると結構強いよね。

その効果でフィールドへと現れたのは、水星の名を冠した、緑色の肌の代行天使マーキュリー。

 

「明日香さんとのデュエルでも使っていたけど、プロディジー・モーツァルトは手札の天使族モンスターを展開出来る効果を持っていたわね…

セットカードも多分、プロディジー・モーツァルトを戦線に維持する為の手段かも知れないわね…

ならこの子で行くわ!私はメルティウスとジュピター、そしてマーキュリーでオーバーレイ!3体のレベル4モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!天上より君臨し、地上に秩序をもたらす機械兵器、その身が邪念に染まりし時、負の感情を吸い取る堕天使と化す!『ヴァイロン・ディシグマ』!」

 

よし、今よ!

 

「エクシーズ召喚はさせません!カウンター罠『神の宣告』発動!」

 

神の宣告(制限カード)

カウンター罠

1:LPを半分払って以下の効果を発動出来る。

●魔法・罠カードが発動した時に発動出来る。その発動を無効にし破壊する。

●自分または相手がモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚する際に発動出来る・それを無効にし、そのモンスターを破壊する。

 

Yuzu LP 4000→2000

 

「やっぱり神宣をセットしていたわね…

でもそのまま通す訳には行かないわ!それにチェーンしてカウンター罠『神罰』発動!」

 

神罰

カウンター罠

フィールド上に『天空の聖域』が表側表示で存在する場合に発動する事が出来る。効果モンスターの効果・魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する。

 

やっぱりセットしていたのは神罰だったわね、だけど!

 

「エクシーズ召喚させないと言った筈です!それにチェーンして私も神罰を発動!」

「ゆ、柚子!?あ、貴方も天空の聖域を!?」

 

小鳥さんの神罰にチェーンして同じく神罰を使って来た私、そのデッキ構成に小鳥さんは驚きを隠せていない様子だった。

確かに天空の聖域自体は、天使族モンスター(のコントローラー)にしか恩恵をもたらさないカード、それによって真価を発揮するカード達も、40枚以上あるデッキの中に3枚(サーチ効果を駆使しても2桁には届かない程だった、かな?)しかない天空の聖域がフィールドにある事を前提としたカードデザイン、ない時は弱かったり、発動出来なかったりと、効果が強力でも安定して力を発揮するのは難しいのよね。

まあ私自身は関連カードで入れているのは『神罰』だけなんだけどね(幻奏モンスター達は皆して天使族だから一応恩恵は受けられる)。

 

「だ、だけど通さないと言った筈よ!チェーンして2枚目の神罰を発動!」

「だからエクシーズ召喚させないと言った筈ですよ!私もチェーンして2枚目の神罰を発動!」

「え!?ま、まさかカウンター罠が3枚も来ていたなんて…」

 

度重なるカウンター罠の応酬、だけどセット出来た枚数が明暗を分けた格好となり、結果として小鳥さんのエクシーズ召喚は無効になった。

しかもその際、モンスターもセットカードも使い果たしてしまった事で、小鳥さんの手札も場もまっさら、残ったのは天空の聖域のみ。

アクションデュエルならまだまだ分からなかったけど、これはスタンディングデュエル、このまま決めさせて貰うわ!

 

「くっ…

ターンエンドよ…」

 

Kotori

LP 4000

手札 0

モンスター なし

魔法・罠カード なし

フィールド魔法 天空の聖域

 

「私のターン!ドロー!

まずはプロディジー・モーツァルトの効果発動!

手札から『幻奏の音女タムタム』を守備表示で特殊召喚!」

 

幻奏の音女タムタム

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 4

守備力 2000

 

「特殊召喚されたタムタムの効果発動!

デッキから『融合』を手札に加えてそのまま発動します!」

 

融合

通常魔法

1:自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「私はフィールドにいるプロディジー・モーツァルトとタムタムを融合!

至高の天才よ!魂の響きよ!タクトの導きにより力重ねよ!融合召喚、今こそ舞台に情熱の歌を!『幻奏の華歌聖ブルーム・プリマ』!」

「そのモンスターはアキさんとのデュエルでも勝負を決めた…

まさか、ここまでとはね」

 

幻奏の華歌聖ブルーム・プリマ

融合・効果モンスター

光属性

天使族

レベル 7

攻撃力 1900→2500

 

「バトルフェイズに入ります!ブルーム・プリマでダイレクトアタックを2回行います!」

「きゃぁぁぁぁぁ!」

 

Kotori LP 4000→1500→-1000

 

WINNER Yuzu

 

これで3連勝、残りはユベルとのデュエルのみね。



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58話_少女の覚悟~悪魔の大罪~

「3連勝を決めるとはやるじゃないか、柚子。さあ、最後はボクとのデュエルだよ」

「行くわよ、ユベル!」

 

明日香さん、アキさん、小鳥さん、嘗ての遊矢と一生を共にした人達とのデュエルで勝利を重ねた私、最後となる4戦目の相手は、遊矢の最も側に居たと言って良い存在であるユベル。

遊矢が『本当の意味で』デュエルモンスターズを始めてから300年近く、その全ての時間を共にした唯一人(?)の存在、いついかなる時も遊矢を見守り、側で手助けして来たんだと思う。

デュエルの実力だって伊達じゃ無い筈、全力でぶつかって行かないと!

 

「さて。今回のデュエルでボクが使うデッキだけど、このデッキは遊矢が、ランサーズのトップとしてアカデミアと戦う為に、ボクやアストラルと共に組み直したデッキの1つさ。お遊び要素をなるべく削ぎ落し、『デュエルの勝利』その一点を追求した、正にガチ構築。柚子、これからも君は遊矢と共にその人生を歩んでいく事となるだろう、目前に迫っているアカデミアとの全面戦争を始め、その行く先には様々な困難が待っているとボクは思っている。その困難に全力で立ち向かう、その覚悟をボクに見せて貰うよ、このデュエルで!」

「ええ、望む所よ!」

「「デュエル!」」

 

先攻 Yuzu LP 4000 VS 後攻 Yubel LP 4000

 

使っているデッキは遊矢のそれ、実力的にも遊矢のデュエルをずっと見守って来た存在故に遊矢と遜色ない筈、事実上、私が対峙しているのはユベルの姿を借りた遊矢だと思って良い。

なら、序盤から気を引き締めて行くわ!

 

「私のターン!

まずは魔法『独奏の第1楽章』発動!」

 

独奏の第1楽章

通常魔法

『独奏の第1楽章』は1ターンに1枚しか発動出来ず、このカードを発動するターン、自分は『幻奏』モンスターしか特殊召喚出来ない。

1:自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動出来る。手札・デッキからレベル4以下の『幻奏』モンスター1体を特殊召喚する。

 

「独奏の第1楽章の効果で、デッキから『幻奏の音女セレナ』を守備表示で特殊召喚!」

 

幻奏の音女セレナ

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 4

守備力 1900

 

もう何度と見た、独奏の第1楽章によるセレナのリクルート、この夢の中のデュエルでも、アキさんとのデュエル以外では決めているわね。

勿論、その後に行うのも、

 

「次に、今出したセレナをリリースしてアドバンス召喚!天上に響く妙なる調べよ、眠れる天才を呼び覚ませ!出でよ、レベル8!『幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト』!」

 

幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 8

攻撃力 2600

 

このデッキのキーマンである、プロディジー・モーツァルトのアドバンス召喚。

尤も、この後の動きはちょっと違うけどね。

 

「続いてプロディジー・モーツァルトの効果発動!

手札から『幻奏の歌姫ソプラノ』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

幻奏の歌姫ソプラノ

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 4

攻撃力 1400

 

「特殊召喚したソプラノの効果発動!

墓地にあるセレナを手札に加えるわ!」

 

さて、アカデミアとの戦いに向けてデッキを組み直した、と言っても、大元は恐らく変わっていない筈。

遊矢の使っているデッキは10個もあり(その内2つは未だに私も、使っている所を見た事が無いけど…)、更に最近、新たに2個組んだらしい。

その中でユベルが使うとなれば、やっぱり自分自身のデッキかな?

そのユベルの効果を考えると、

 

「更に、ソプラノのもう1つの効果発動!

私のフィールドにいる、ソプラノ自身と、プロディジー・モーツァルトを融合!

天使のさえずりよ!至高の天才よ!タクトの導きにより力重ねよ!融合召喚、今こそ舞台に勝利の歌を!『幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ』!」

「やっぱりブルーム・ディーヴァを出して来たか…」

 

幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ

融合・効果モンスター

光属性

天使族

レベル 6

攻撃力 1000

 

戦闘や効果で破壊されない、ブルーム・ディーヴァね。

 

「私はこのままターンエンドよ!」

 

Yuzu

LP 4000

手札 3(うち1枚はセレナ)

モンスター 幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

「さあ行くよ。ボクのターン、ドロー!

まずは手札の『トラゴエディア』を捨てて『ダーク・グレファー』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

ダーク・グレファー

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1700

 

ユベルのフィールドに出て来た、戦士ダイ・グレファーが闇落ちした姿の戦士、やっぱりユベル自身をエースカードとしたデッキの様ね。

でもさっきも言っていた通りアカデミアとの戦いに向けて組み直したと言っていたし、今まで無かった筈のエクストラデッキのカードも、なんかユベルの腕から生えている様にしか見えないデュエルディスク(みたいな物)から確認出来る、一体どんなデッキになっているのかしら…?

 

「手札の『レベル・スティーラー』を捨てて、ダーク・グレファーの効果発動!

デッキから『ヘルウェイ・パトロール』を墓地へ送るよ。

次に『終末の騎士』を召喚!」

 

終末の騎士(制限カード)

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1400

 

そのダーク・グレファーが、自らの手から生成した黒い炎を握りつぶしている横に登場したのは、赤黒いマフラーみたいな物を首に巻き、さび付いた鎧を身に纏った騎士。

 

「召喚した終末の騎士の効果発動!

デッキから2枚目のレベル・スティーラーを墓地へ送るよ」

 

この終末の騎士、闇属性モンスターを中心としたデッキでは、ダーク・グレファーに並ぶ墓地肥やし要員として人気が高いけど、こと墓地肥やしの点だけを見れば『安定感の終末、爆発力のダーク』と言われ、ダーク・グレファー以上に人気が高い。

それは何故かと言うと、墓地肥やし効果の発動タイミングが関係している。

今の効果処理を見れば分かるけど、終末の騎士は召喚・反転召喚・特殊召喚をトリガーとした誘発効果、一方のダーク・グレファーは、手札1枚をコストとした起動効果。

よって『落とし穴』や『激流葬』等の召喚誘発カードに邪魔される事が無い(フィールドには残れないけどね)し、バトルフェイズに出す事が出来ればエフェクト・ヴェーラーも怖くない、と言った感じになる。

その安定感が過ぎた結果、制限入りになっちゃったのも仕方の無い事かも知れないわね。

 

「続いて、墓地のヘルウェイ・パトロールを除外して効果発動!

手札から、ボク自身を攻撃表示で特殊召喚!」

 

ユベル

効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 10

攻撃力 0

 

ユベル、ボク自身と言っているけど、実際にフィールドに出ているのは『別の』ユベルよね?

 

「更に『死者蘇生』発動!」

 

死者蘇生(制限カード)

魔法

1:自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

「死者蘇生の効果で『トラゴエディア』を守備表示で蘇生!」

 

トラゴエディア

効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 10

守備力 0

 

そんな私の(心の中での)ツッコミを気にする事無く、死者蘇生の効果で蘇生したのは、何と言うか名状しがたい姿の悪魔、トラゴエディア。

レベル10で守備力0?となると効果が相当凄いって事なのかしら?

 

「さて、此処からが本番だよ、柚子。

まずは、終末の騎士とダーク・グレファーでオーバーレイ!2体のレベル4モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れろ、No.80!猛りし魂に取りつく、呪縛の鎧!『狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク』!」

 

No.80狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

悪魔族

ランク 4

守備力 1200

ORU 2

 

エクシーズ召喚、それもNo.ですって!?

エクシーズ召喚の演出と共に出現したのは、頑丈そうな鎧を身に纏い、肩から紫色のマントを羽織り、その襟の部分に自らのナンバー『80』の文字が刻まれた悪魔、ラプソディ・イン・バーサーク。

 

「ラプソディ・イン・バーサークのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!

柚子、君の墓地にあるソプラノを除外させて貰うよ!やれ、ラプソディ・イン・バーサーク!」

『フン!(ドゴォォォォン!)ヌゥン!(グシャァ!)』

「マイスタリン・シューベルトと同じ、墓地メタ効果を持っているなんて…」

 

No.80狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク ORU 2→1

 

ユベルが効果発動をした途端、ラプソディ・イン・バーサークが地面を殴り飛ばして地割れを引き起こし、そこから出て来たソプラノのカードを殴り潰して(実際は除外ゾーンに送られただけよ、念の為)しまった。

 

「おっと、驚くのはまだ早いよ。ラプソディ・イン・バーサークの除外効果は1ターンに2度まで使える!今度はプロディジー・モーツァルトだよ。やれ、ラプソディ・イン・バーサーク!」

『フン!(ドゴォォォォン!)ヌゥン!(グシャァ!)』

「に、2回も使えるの!?」

「一体何を驚いているのさ?柚子、君のマイスタリン・シューベルトは最大3枚を一度に除外出来るばかりか、フリーチェーンで使えるじゃないか。それと比べたらラプソディ・イン・バーサークはオーバーレイ・ユニットを使った起動効果、可愛い物だよ」

 

No.80狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク ORU 1→0

 

純粋な除外枚数だったらマイスタリン・シューベルトの方が多いのは確かだし、相手の展開を妨害する意味ではフリーチェーンなのも優れている点だけど、それ以前に1ターンに2回も効果を使える所にびっくりした。

この手の効果って大抵は1ターンに1度の制限が付いているからね。

 

「まだまだ行くよ。次はボク自身とトラゴエディアでオーバーレイ!2体のレベル10モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れろ、No.35!暴食を司る大蜘蛛が、全てを絡め取り、喰い荒らさん!『ラベノス・タランチュラ』!」

 

No.35ラベノス・タランチュラ

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

昆虫族

ランク 10

攻撃力 0

ORU 2

 

な、何か気色悪い蜘蛛が出て来たんだけど!?

ラプソディ・イン・バーサークの横に、エクシーズ召喚の演出と共に登場したのは、異世界から来たと言うデュエリスト、大輔が使っていた『No.70デッドリー・シン』の様な、蜘蛛みたいな姿のNo.、ラベノス・タランチュラ。

それにしてもランク10で攻撃力0?

 

「ラベノス・タランチュラの攻守、というかボクのフィールドにいるモンスター全員の攻守は、ボクと柚子のLPの差の数だけ上がるんだけど、まあ今は無用の長物だね。

本題は此処からさ。今出したラベノス・タランチュラのオーバーレイ・ネットワークを再構築!エクシーズ召喚!現れろ、No.84!嫉妬を司る大蜘蛛が苦痛を得る時、あらゆる物に分け与えん!『ペイン・ゲイナー』!」

 

No.84ペイン・ゲイナー

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

昆虫族

ランク 11

守備力 0→3000

ORU 3

 

ま、また蜘蛛みたいなNo.…

それにさっきのラベノス・タランチュラと比べて、色とナンバーが変わっただけの様な気が…

でも守備力が0から3000も上がっている…?

 

「ペイン・ゲイナーの守備力は、ボクのフィールドにいるエクシーズモンスターのランクの合計×200アップするんだ。これはペイン・ゲイナー自身も含まれるよ。今ボクのフィールドにいるエクシーズモンスターのランクの合計は15、よってペイン・ゲイナーの守備力は3000、となる訳さ。

尤も、ペイン・ゲイナーもまた布石、次に出すモンスターこそが、このデッキの真のエースだよ!

今出したペイン・ゲイナーのオーバーレイ・ネットワークを再構築!エクシーズ召喚!現れよ、No.77!化天を司る糸よ!儚き無幻となりて我が滅び行く魂を導け!『ザ・セブン・シンズ』!」

 

No.77ザ・セブン・シンズ

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

悪魔族

ランク 12

攻撃力 4000

ORU 4

 

こ、今度は何か、遊矢の持っているホープみたいな色合いの、それでいて蜘蛛みたいなNo.…

でも種族は悪魔族になっているし、攻撃力もさっきまでとは打って変わって素で4000、度重なるエクシーズ召喚によってオーバーレイ・ユニットも4つにまで増えている、其処からどんな効果が…

 

「このまま効果発動、と行きたいけど、この方法で特殊召喚しちゃうとこのターンに効果が使えないんだよね、いち早くブルーム・ディーヴァを対処したいんだけどさぁ…

まあ良いや、ラプソディ・イン・バーサークの2つ目の効果発動!

このカードを、ザ・セブン・シンズに装備するよ!」

 

No.77ザ・セブン・シンズ 攻撃力 4000→5200

 

あ、直ぐには使えないんだ、と安堵したその時、ザ・セブン・シンズの横に立っていたラプソディ・イン・バーサークが突如分解、ザ・セブン・シンズの鎧として再構築され、装着された。

それによって攻撃力が5200…

ブルーム・ディーヴァがいるからまだ大丈夫そうだけど、凄い攻撃力ね…

 

「ボクはこのままターンエンドだよ」

 

Yubel

LP 4000

手札 0

モンスター No.77ザ・セブン・シンズ(攻撃表示)

魔法・罠カード No.80狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク(装備対象: No.77ザ・セブン・シンズ)

 

なんか今、ユベルが不穏な事を言っていた様な…

よし、やられる前にやるわ!

 

「私のターン!ドロー!

『幻奏の音女ソナタ』を攻撃表示で特殊召喚してバトルフェイズに入るわ!」

 

幻奏の音女ソナタ

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 4

攻撃力 1200→1700

 

幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ 攻撃力 1000→1500

 

「ブルーム・ディーヴァでザ・セブン・シンズを攻撃!ブルーム・ディーヴァの効果は説明しなくてもいいわね?」

「うん、通すよ」

「ブルーム・ディーヴァの効果発動!ブルーム・ディーヴァとザ・セブン・シンズの元々の攻撃力の差、3000ダメージを貴方に与えて、ザ・セブン・シンズを破壊!リフレクト・シャウト!」

「ならザ・セブン・シンズの効果で、破壊される代わりにオーバーレイ・ユニットを1つ取り除くよ。オーバーレイ・サクリファイス(ザシュゥ!)ぐぁっ!?」

 

Yubel LP 4000→1000

 

No.77ザ・セブン・シンズ ORU 4→3

 

ま、まさか破壊置換効果を持っていたなんて…

このターンでの決着は無理になっちゃったし、返しのターンでソナタを標的にされちゃうけど、それでもその攻撃力の差は3500、ギリギリ持ちこたえそうね。

 

「私はこのままターンエンドよ!」

 

Yuzu

LP 4000

手札 3(うち1枚はセレナ)

モンスター 幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ(攻撃表示)

      幻奏の音女ソナタ(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

「ボクのターン!ドロー!

それじゃあ、このターンで決めちゃおうか!」

 

なっこのターンで勝利宣言!?一体どうやって!?

 

「ザ・セブン・シンズのオーバーレイ・ユニットを2つ取り除いて効果発動!

柚子、君のフィールドにいる特殊召喚されたモンスターを全て除外して貰うよ!スパイダー・シルク・レイン!」

「なっ何ですって!?」

「この効果は全体除外効果、よってアリアやエレジーのロック効果は通じないし、ブルーム・ディーヴァの効果も関係ない!後、追加効果として、ブルーム・ディーヴァをザ・セブン・シンズのオーバーレイ・ユニットにするよ」

 

No.77ザ・セブン・シンズ ORU 3→1→2

 

ま、まさかの全体除外効果!?

こ、これは負けたわね、ユベルの言う通り、これではアリアもエレジーも抗い様が無いし、ブルーム・ディーヴァも耐えられない…

 

「さあフィニッシュだよ、柚子!ザ・セブン・シンズでダイレクトアタック!

ジェノサイド・スパイダー・シルク・バーサーク!」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

Yuzu LP 4000→-1200 LOSE

 

WINNER Yubel

 

------------

 

最後の最後で負けちゃった、やっぱりまだまだ遊矢の壁は厚いって事かな…

 

「よく頑張ったね、柚子。最後の最後はボクが勝たせて貰ったけど、その覚悟、しっかり見させて貰ったよ。君なら、遊矢の心の支えになれる。遊矢を宜しくね、ボクも、しっかりサポートするよ」

「彼の事、宜しくね、柚子」

「これから4つの次元での戦いが始まるってユベルから聞いていたけど、彼なら、貴方なら、貴方達なら切り抜けられるわ。シグナーとして一緒に戦った、私達の様に…」

「全力で頑張ってね!そして、皆に笑顔をお願いね!」

「はい、頑張って来ます!」

 

まだまだユベルに、実力的には及ばなかったけど、それでも私の覚悟を認めてくれたのか、皆して激励してくれた。

遊矢、私も、彼女達みたいに貴方の支えになるわ!



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59話_少年が思い描いた理想(前編)

「では行くぞ、遊矢!この前のリベンジをさせて貰う!」

「そうは行きませんよ、零児!返り討ちにさせて貰います!」

『頑張って、遊矢!』

『この男権現坂、遊矢達の奮闘、しかと見守っておるぞ!』

『やれェ、遊矢!最高指揮官の貫禄見せ付けたれェ!』

『全力でやってやれ、遊矢!』

『行けぇ、遊矢兄ちゃん!』

『頼みますよ、零児さん。此処から飛び立つ前に、ランサーズ最高顧問として、LDSのトップとしての意地を見せて下さい』

『社長!応援しています!』

『兄様、勝って!』

『凄まじい気迫だ、遊矢も赤馬零児も、刃の如き鋭さ、弾丸の如き威圧がこれでもかと感じられる…!』

『うはぁ、ランサーズのツートップによるデュエルか、こりゃあスゲーモノになるぜ!』

『遊矢も零児も、私達とは群を抜いた実力の持ち主だ、果たしてどう転ぶか…』

『結果がどう転ぶにせよ、今まで見た事も無い熱戦になるでしょう、楽しみですね、セレナ様!』

『ふん…』

『まさか、ランサーズとしての活動を始める前にまた赤馬零児とデュエルする機会が来るとは。遊矢、これまでの2戦で、互いに大方の戦略は見えている筈。心して掛かれ』

『遊矢、知っているだろうけど、零児は強敵だよ、ライバルとして遊矢を満足させる位に!さ、頑張って行ってね!かっとビングだよ!』

 

ランサーズ結成の記者会見から一夜明けた今日、俺と零児は、LDSにあるデュエルフィールドにて対峙していた。

その外側にある観客席には、柚子達ARC-Vの面々に、LDS関係者たち、あとセレナやユート達異世界からの来訪者が詰めかけ、背後ではユベルとアストラルがスタンバイしていた。

さあ、行くぜ零児、俺のライバル!

 

『それでは始めます。アクションフィールド、オン!『決闘の祭壇』!』

「戦いの殿堂に集いしデュエリストが」

「モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!」

「フィールド内を駆け巡る」

「見よ、これぞデュエルの最強進化系!」

「「アクショーン、デュエル!」」

 

先攻 Reizi LP 4000 VS 後攻 Yuya LP 4000

 

使用しているデッキは、零児は言うまでも無くDD、一方の俺は魔術師オッドアイズ、アクションフィールドは、リターンマッチの時と同じ『決闘の祭壇』、一方で先攻後攻は第1戦の時と同じ、さてこれがどう転ぶか…

 

「私のターン。先攻はドロー無し。

まずは永続魔法『地獄門の契約書』発動」

 

地獄門の契約書

永続魔法

『地獄門の契約書』の1の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。

1:自分メインフェイズに発動出来る。デッキから『DD』モンスター1体を手札に加える。

2:自分スタンバイフェイズに発動する。自分は1000ダメージを受ける。

 

早速来たか、DDデッキのサーチエンジンこと『地獄門の契約書』が。

さて、何をサーチするのか…

 

「地獄門の契約書の効果発動。

デッキから『DDナイト・ハウリング』を手札に加える。

次に手札の『DDスワラル・スライム』の効果発動。

このカードと手札の『DDネクロ・スライム』を融合。

自在に形を変え、亡者の魂をも取り込む神秘の渦達よ!今ひとつとなりて新たな王を生み出さん!融合召喚、生誕せよ!『DDD烈火王テムジン』!」

 

DDD烈火王テムジン

融合・効果モンスター

炎属性

悪魔族

レベル 6

攻撃力 2000

 

地獄門の契約書の、おどろおどろしい演出と共にナイト・ハウリングのカードが加わると同時に、零児の手札から飛び出た緑色と紫色のスライムが混ざり合うと形を変えて行き、やがてあの大量蘇生コンビの一角であるテムジンへとなった。

 

「続いて魔法『おろかな埋葬』発動」

 

おろかな埋葬(制限カード)

通常魔法

1:デッキからモンスター1体を墓地へ送る。

 

しかも初手でおろ埋と来たか、零児のDDデッキは墓地をよく使うから余計厄介だ。

 

「おろかな埋葬の効果で、デッキから『DDバフォメット』を墓地へ送る。

更に、『DDナイト・ハウリング』を召喚」

 

DDナイト・ハウリング

効果モンスター/チューナー

闇属性

悪魔族

レベル 3

攻撃力 300

 

で、ナイト・ハウリングから、今のおろ埋で墓地へ送ったバフォメットを蘇生してアレクサンダー、かな?

 

「召喚したナイト・ハウリングの効果発動。

墓地の『DDバフォメット』を守備表示で蘇生する」

 

DDバフォメット

効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 4

守備力 1800→0

 

そんな俺の予想通りに出て来たのは、遊戯さんが使っていたモンスター『バフォメット』そっくり、いやカード名からして同一人物(悪魔族だから人じゃないか)なのかも知れない(レベル以外のステータスが一緒だし)、そんなモンスター、DDバフォメット。

 

「私は、レベル4のバフォメットに、レベル3のナイト・ハウリングをチューニング。闇を切り裂く咆哮よ、疾風の速さを得て新たな王の産声となれ!シンクロ召喚、生誕せよ!レベル7『DDD疾風王アレクサンダー』!」

 

DDD疾風王アレクサンダー

シンクロ・効果モンスター

風属性

悪魔族

レベル 7

攻撃力 2500

 

さて、大量蘇生コンビが揃ったけど、今の墓地にはレベル4(バフォメット)、レベル3(ナイト・ハウリング)、レベル2(スワラル・スライム)、レベル1(ネクロ・スライム)其々1体ずつ、このままではエクシーズ召喚は出来ない、となるとまたシンクロ召喚か?

 

「私のフィールドにテムジン以外のDDモンスターが特殊召喚された事で、テムジンの効果発動。

墓地のバフォメットを守備表示で蘇生する。

更に私のフィールドにアレクサンダー以外のDDモンスターが特殊召喚された事で、アレクサンダーの効果発動、

墓地のナイト・ハウリングを守備表示で蘇生する。

まだまだ行くぞ、今蘇生したバフォメットの効果発動。

バフォメットは、バフォメット以外のDDモンスターのレベルを1~8にする事が出来る。

この効果で、ナイト・ハウリングのレベルを4にする」

 

『ガガガマジシャン』みたいなレベル変動効果持ちだったのか。

これでレベル8のシンクロ召喚は勿論、ランク4のエクシーズ召喚も出来る様になった。

 

「私は、ナイト・ハウリングとバフォメットでオーバーレイ。2体のレベル4・悪魔族モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。この世の全てを統べるため今、世界の頂に降臨せよ!エクシーズ召喚、生誕せよ!ランク4『DDD怒涛王シーザー』!」

 

DDD怒涛王シーザー

エクシーズ・効果モンスター

水属性

悪魔族

ランク 4

攻撃力 2400

ORU 2

 

そしてエクシーズ召喚の演出と共に出て来たシーザー、と此処までは、其処までに至る経緯が違うとはいえ、最初にデュエルした時と同じ展開。

だけど、

 

「更に私は、シーザーのオーバーレイ・ネットワークを再構築。英雄の名賜りし者、深淵なる大義もて、この世の全てをいざ射抜かん!エクシーズ召喚、降臨せよ!ランク5『DDD狙撃王テル』!」

 

DDD狙撃王テル

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

悪魔族

ランク 5

守備力 2000

ORU 3

 

此処からが違った。

シーザーに代わってフィールドに登場したのは、リンゴが矢で貫かれた様な意匠の胸当てを身に着け、右手にクロスボウを持った悪魔、テル。

あ、ロックバンドのボーカルの方じゃないからな、見た感じからして『ウィリアム・テル』の方だ(と思う)からな、くれぐれも気を付けろよ。

それにしてもフィールドに登場するや否や、守備表示である事を示す様に伏射の構えを取っているんだが、これはあれか、ボルテックス・ドラゴン対策か?

 

「そして、墓地のネクロ・スライムの効果発動。

このカードは墓地にある時、このカードを含む融合素材を墓地から除外する事で、その融合素材に合ったDDD融合モンスターを融合召喚出来る」

 

うわぁ、DDD版『ミラクル・フュージョン』みたいに使えるDDモンスターかよ…

さっきのスワラル・スライムといい、融合召喚の原型何処行った…

 

「私は墓地のネクロ・スライムとスワラル・スライムを除外して融合。

亡者の魂をも取り込み、自在に形を変える神秘の渦達よ!今ひとつとなりて真の王と生まれ変わらん!融合召喚!出でよ、神の威光伝えし王!『DDD神託王ダルク』!」

 

DDD神託王ダルク

融合・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 7

攻撃力 2800

 

「カードを1枚セットし、アクションマジック『ホーリー・エルフの治癒魔術』発動してターンエンド」

 

ホーリー・エルフの治癒魔術(今作オリジナルカード)

アクションマジック

自分は自分フィールド上に存在するカードの数×500ライフポイント回復する。

 

Reizi

LP 4000→7000

手札 0

モンスター DDD烈火王テムジン(攻撃表示)

      DDD疾風王アレクサンダー(攻撃表示)

      DDD狙撃王テル(守備表示)

      DDD神託王ダルク

魔法・罠カード 地獄門の契約書

        セット

 

1ターンに5体ものDDDモンスターをエクストラデッキから呼び出したばかりか、俺がグラビティ・ドラゴンを出してくるのを見越してホーリー・エルフの治癒魔術も使って来たか、今日の零児は何時にも増してガチって事だな!

 

「俺のターン!ドロー!」

 

ん?この初手、これをこうすれば…!

よし、零児の妨害が無ければ『アレ』を出せるな、ものは試しだ。

 

「Ladies and Gentleman,Boys and Girls。それではお見せしましょう、

 

(カッ!)

 

本物のデュエルを」

『な、なんか遊矢兄ちゃんの口上が、何時と違って落ち着いている…』

『そ、そうねエレン、何時もならハキハキした感じなのに…』

『なンつゥかさ、遊矢が覇王の力を解放した時にちょっと似ていねェか…?』

『そ、そうか?確かにそれっぽいけど、あんな風にエンタメデュエルを意識した発言じゃ無かったぞ?何て言うか、まさに暴君って感じだった様な…』

『今の遊矢の様子は、何時もの、エンターテイナーとしての遊矢と、覇王と化した遊矢との間と言える。この男権現坂、遊矢とは幼き頃からの付き合いではあるが、今の遊矢の心持が如何ばかりかまでは分からぬ…』

『遊矢?本物のデュエル、と言ったが、その心は一体何だ?』

『本物のデュエル、か。今の佇まいからして、新たなエンタメデュエルの境地に至ったみたいだね』

「遊矢…?

何やらいつもと様子が違う気がするが…?」

「行きますよ、零児。まずは『EMドクロバット・ジョーカー』を召喚」

 

EMドクロバット・ジョーカー

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 4

攻撃力 1800

 

まずは『アレ』を出す為に必要な面子を集める。

 

「召喚したドクロバット・ジョーカーの効果発動。

デッキから『オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン』を手札に加えます」

「やはりグラビティ・ドラゴンをサーチして来たか…」

「次に魔法『オッドアイズ・フュージョン』発動」

「その魔法、という事は…!

ならばそれにチェーンして罠『契約洗浄』発動」

 

オッドアイズ・フュージョン

通常魔法

『オッドアイズ・フュージョン』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:自分の手札・フィールドから、ドラゴン族の融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。相手フィールドにモンスターが2体以上存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、自分のエクストラデッキの『オッドアイズ』モンスターも2体まで融合素材とする事が出来る。

 

契約洗浄

通常罠

1:自分の魔法・罠ゾーンの『契約書』カードを全て破壊する。破壊した数だけ自分んはデッキからドローする。その後、自分はドローした数×1000LP回復する。

 

零児がセットしていたのは契約洗浄、これで地獄門の契約書のデメリット効果は無くなったばかりか、逆にアドバンテージを得られる様になった、か。

 

「契約洗浄の効果で、地獄門の契約書を破壊し、ドロー。

その後、ライフポイントを1000回復する」

 

Reizi LP 7000→8000

 

「俺は今手札に加えた『オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン』と、今召喚したドクロバット・ジョーカーを融合。

2色の眼の龍よ、その碧の輝きを解き放ち、荒ぶる風で敵を惑わせ。融合召喚、『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』。

 

疾風よ、あれ」

 

オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン

融合・効果モンスター

風属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2500

 

本当だったら『アレ』の効果を受けないテルをバウンスしたかったが、件のテルは守備表示、ボルテックス・ドラゴンの効果対象に出来ない。

なら此処は、

 

「特殊召喚したボルテックス・ドラゴンの効果発動。

テムジンをエクストラデッキに戻して貰います」

「バウンスだからテムジンの効果が使えないか…」

 

地獄門の契約書のサルベージを阻止する為、テムジンには帰って貰う。

 

「続いて儀式魔法『オッドアイズ・アドベント』発動」

「来るか、グラビティ・ドラゴンが…!」

 

オッドアイズ・アドベント

儀式魔法

ドラゴン族の儀式モンスターの降臨に必要。『オッドアイズ・アドベント』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:レベルの合計が儀式召喚するモンスターのレベル以上になるように、自分の手札・フィールドのペンデュラムモンスターをリリースし、自分の手札・墓地からドラゴン族の儀式モンスター1体を儀式召喚する。相手フィールドにモンスターが2体以上存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、自分のエクストラデッキの『オッドアイズ』モンスターもリリースの代わりに墓地へ送る事が出来る。

 

「オッドアイズ・アドベントの効果で、俺は手札の『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』をリリースする事で、墓地の『オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン』を降臨させます。

2色の眼の龍よ、その鈍色の輝きを解き放ち、フィールドを圧殺せよ。儀式召喚、『オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン』。

 

重力よ、あれ」

「(ズン!)くっ、来たか…!」

 

オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン

儀式・効果モンスター

地属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2800

 

グラビティ・ドラゴンが登場した事で、沢渡とのデュエルでも見せた『オッドアイズ・ディザスター』が完成したが、今回はその先を行く。

 

「更に、手札の『貴竜の魔術師』を捨てて魔法『ペンデュラム・コール』発動」

 

ペンデュラム・コール

通常魔法

『ペンデュラム・コール』は1ターンに1枚しか発動出来ず、『魔術師』ペンデュラムモンスターのペンデュラム効果を発動したターンには発動出来ない。

1:手札を1枚捨てて発動出来る。カード名が異なる『魔術師』ペンデュラムモンスター2体をデッキから手札に加える。このカードの発動後、次の相手のターン終了時まで自分のペンデュラムゾーンの『魔術師』カードは効果では破壊されない。

 

「ペンデュラム・コールの効果で、デッキからスケール3の『相克の魔術師』とスケール8の『龍穴の魔術師』を手札に加え、そのままペンデュラムスケールにセッティング」

 

ペンデュラムスケール(青):3(相克の魔術師)

ペンデュラムスケール(赤):8(龍穴の魔術師)

 

「これで、レベル4から7のモンスターが同時に特殊召喚可能。

魂のペンデュラム揺れし時、光のアークが天空へと描かれる。ペンデュラム召喚、出でよ、我がモンスターよ。

レベル4、華麗なる軽業師、EMドクロバット・ジョーカー」

 

よし、これで準備完了だ。

 

「まだ終わりではありません。墓地の『貴竜の魔術師』の効果を、フィールドのグラビティ・ドラゴンを対象に発動。

グラビティ・ドラゴンのレベルを3つ下げて、貴竜の魔術師を守備表示で蘇生します」

 

貴竜の魔術師

ペンデュラム・効果モンスター/チューナー

炎属性

魔法使い族

レベル 3

守備力 1400

 

オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン レベル 7→4

 

「俺は、レベル4のドクロバット・ジョーカーに、レベル3の貴竜の魔術師をチューニング。

2色の眼の龍よ、その赤き輝きを解き放ち、味方に活力を、敵に絶望を与えよ。ペンデュラムシンクロ、レベル7『オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン』。

 

灼熱よ、あれ」

 

オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン

シンクロ・効果モンスター

炎属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2500

 

「オッドアイズ以外のシンクロ素材を使用した事で、貴竜の魔術師はデッキの一番下へと送られます。

特殊召喚に成功したメテオバースト・ドラゴンの効果発動。

ペンデュラムスケールにセッティングされた『竜穴の魔術師』を守備表示で特殊召喚」

 

竜穴の魔術師

ペンデュラム・通常モンスター

水属性

魔法使い族

レベル 7

守備力 2700

 

これで布石は揃った。

 

「更に行きますよ。俺は、今出したメテオバースト・ドラゴンと竜穴の魔術師をオーバーレイ。2体のレベル7モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。ペンデュラムエクシーズ。2色の眼の龍よ、その青き輝きを解き放ち、絶対零度で敵を制圧せよ。『オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン』。

 

氷河よ、あれ」

 

オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン

エクシーズ・効果モンスター

水属性

ドラゴン族

ランク 7

攻撃力 2800

ORU 2

 

「何時も思うが、随分と回転力の高いデッキだ、遊矢。

あらゆる召喚方法を1ターンで一気に使い、此処までの展開力を見せるとは…」

「いえ、零児。これからが俺の、このデッキの本番ですよ。

ペンデュラムスケールにセッティングされた相克の魔術師の効果発動。

今出したアブソリュート・ドラゴンを、レベル7モンスターとしてエクシーズ召喚の素材に出来る様にします」

「何?ランクをレベルに変えてエクシーズ召喚を…?」

 

そう、これこそが『アレ』の真価を発揮する為の力…!

 

「それではお見せしましょう、このデッキの切り札を、『本物のデュエル』の真骨頂を、そして、俺がランサーズ最高指揮官として思い描く、4つの次元のあるべき姿を…!

俺は、アブソリュート・ドラゴンとボルテックス・ドラゴンでオーバーレイ!2体のレベル7・ドラゴン族モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!ペンデュラムエクシーズ!」

『な!?何なんだよこの得体の知れねぇ感じは!?』

『ダーク・リベリオンが、反応している…!?』

『まさか遊矢、アレを出すとでも言うのかい?』

 

俺が今出そうとしている『アレ』、その力にあてられたのか、観客席に居るユートとユーゴが戦慄し、特にユートはダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンだと思われるカードを見て驚愕していた。

それ程の力を有する『アレ』、扱いを間違えれば全てを無に帰すだろうと忠告されてもおかしくはないが、使いこなせば、これ程頼もしい力は無い。

 

「2色の眼の龍よ!その黒き輝きを解き放ち、敵を殲滅せよ!これぞ、融合、儀式、シンクロ、エクシーズ、そしてペンデュラム、あらゆるモンスターの力によって生まれし覇王!俺のデッキの真の切り札にして、『本物のデュエル』の最終形態!そして、4つの次元のあるべき理想の化身!『覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン』!

 

雷鳴よ、あれ!」

「凄まじい、何と凄まじい力…!

だが同時に、これ程までに心強いと感じた事は無い…!

これが、これが遊矢の『本物のデュエル』の果て…!」

 

覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン

ペンデュラム・エクシーズ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

ランク 7

攻撃力 3000

ORU 2

 

あの時、ユートとのデュエルが切っ掛けで手にした新たなるオッドアイズ、結局使わずじまいで此処まで来てしまったが、折角だ、此処でお披露目と行こうじゃないか。

ユートが持つダーク・リベリオンを更に強大化させた、赤と緑のオッドアイを持つ漆黒のドラゴンを、俺が思い描く理想の化身と言うべきコイツを…!



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60話_少年が思い描いた理想(後編)

「エクシーズモンスターを素材にエクシーズ召喚したリベリオン・ドラゴンの効果発動!

零児、貴方のフィールドにいる、レベル7以下のモンスターを全て破壊し、その数×1000ポイントのバーンダメージを与えます!オーバーロード・ハウリング!」

『ギャオォォォォォン!』

「なっ!?くっ…!」

 

遂にフィールドへと降り立った『覇王』、リベリオン・ドラゴンが降り立つと同時に、その咆哮が零児のフィールドに襲い掛かり、それが、伏射の構えをしていた事で無事だったテル以外を粉微塵にし、その余波が零児へと襲い掛かった。

 

Reizi LP 8000→6000

 

『あ、あれ?何であのドラゴンの効果を受けて、あの伏せている奴だけ生き残ったんだ?』

『ユーゴ、今しがた遊矢が言った通り、あのドラゴンの効果は『レベル7以下』のモンスターを破壊する効果。エクシーズモンスターであるテルはレベルを持たない、よって効果の範囲には入らないんだ』

『あ、そっか!レベルを持たない=レベル0じゃねぇんだった!『マジカル・シルクハット』でモンスターになった魔法・罠カードと同じ扱いになるんだったっけな、確か!』

『例えがマニアック過ぎない…?』

 

まあ、この理由からテルが守備表示で(伏せていて)攻撃表示で(伏せていなくて)も関係ないんだけどな、だけどボルテックス・ドラゴンを警戒された事が此処で仇になるとは。

と、今の演出とかユーゴの発言とかに(心の中で)補足していると、

 

「だが、タダではやられない!効果ダメージを受けた事で、LPを500払って手札の『DDD反骨王レオニダス』の効果発動!

このカードを攻撃表示で特殊召喚し、受けたダメージの数値分、私のLPを回復する!」

 

DDD反骨王レオニダス

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 7

攻撃力 2600

 

Reizi LP 6000→5500→7500

 

あら、契約洗浄でドローしたのがレオニダス、凄い今引き力だな…

零児のフィールドに現れた、真鍮の全身鎧に身を包み、大剣とラウンドシールドで武装し、深紅のマントを羽織った悪魔、レオニダスの力によって、俺が与えた効果ダメージはほぼ相殺されてしまった(ほぼ、と言ったのはグラビティ・ドラゴンによってライフコストを支払わせたから)。

 

「更にLPを500払い、テルのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!

遊矢、今しがたエクシーズ召喚したリベリオン・ドラゴンの攻守を1000下げ、君に1000ダメージを与える!ピアシング・アロー!」

「させません。アクションマジック『透明』発動」

「悪いが通させて貰う!LPを500払い、アクショントラップ『カウンターアクション』発動!」

「なっ!?」

 

透明

アクションマジック

1:自分フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。このターン、そのモンスターは相手の効果の対象にならず、効果も受けない。

 

カウンターアクション

アクショントラップ(カウンター罠)

1:アクションマジック、アクショントラップが発動する場合に発動する。その発動を無効にし、破壊する。

2:自分ドローフェイズ時に発動する。カードをドローする代わりにデッキの一番下へ送る。

 

其処で『カウンターアクション』を持っていたとは、本当に凄い今引き力だ…

アクションマジック『メタ』と言…い難い(大概はデメリットなアクショントラップも強制的に無効破壊しちゃうからな)上に、保持し続けるとドローフェイズのドローをすっ飛ばされちゃう凶悪なデメリット持ちの『カウンターアクション』、まさかこのピンポイントなタイミングで発動して来るとは思わなかった。

 

「カウンターアクションの効果で透明は無効!よって改めてテルの効果を受けて貰う!ピアシング・アロー!」

『(ドズッ!)ガァァァァァァァァ!』

「リベリオン・ドラゴン!(ドズッ!)ぐっ!」

 

覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン 攻撃力 3000→2000

Reizi LP 7500→7000→6500

Yuya LP 4000→3000

 

これでこのターンでの決着は、あ、どの道厳しいか。

だけどテルの効果によって傷を負ったリベリオン・ドラゴンの攻撃力は2000まで減った、これではレオニダスもテルも突破出来ず、今しがた発動した効果の続きである『発動したターン限定の3回攻撃』も意味が無い。

此処は少しでも、零児の戦略を崩していかないと。

 

「バトルフェイズに入ります!

グラビティ・ドラゴンでテルを攻撃!鋼鉄のマッド・カタクラズム!」

「テル、良くやった…」

 

オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン 攻撃力 2800 VS DDD狙撃王テル 守備力 2000

 

「俺はこのままターンエンドです!」

 

Yuya

LP 3000

手札 0

ペンデュラムスケール(青):3(相克の魔術師)

モンスター オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン(攻撃表示)

      覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン(攻撃表示)

魔法・罠カード 無し

 

「このターンで決めなければ、このデュエルの運命は確実に遊矢に傾く…

応えよ、我がデッキよ!私のターン!ドロー!

っ!来た!」

 

な、何か『カンコーン!』って効果音が聞こえたんだが、まさか?

 

「私はLPを500払い、今引いた永続魔法『魔神王の契約書』発動!」

 

魔神王の契約書

永続魔法

『魔神王の契約書』の1の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。

1:自分メインフェイズに発動出来る。自分の手札・フィールドから、悪魔族の融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

2:自分スタンバイフェイズに発動する。自分は1000ダメージを受ける。

 

Reizi LP 6500→6000

 

また今引き魔神王!?

まずいな、魔神王の契約書は『DD』融合モンスターを出すとき限定ではあるけど、今さっき除外されたネクロ・スライムの様に墓地のカードも融合素材に出来る、となれば勝負を決める為にカエサル・ラグナロクを出すに違いない。

この前はアブソリュート・ドラゴンがいたからその効果を発揮させずに済んだけど、既にリベリオン・ドラゴンの素材になっているからいない。

となれば…!

 

「LPを500払って、魔神王の契約書の効果発動!

墓地のダルクとアレクサンダーを除外して融合!神の名の下に疾風の如く世を平定し、新たな世界を切り開け!融合召喚!出現せよ、極限の独裁神!『DDD怒濤壊薙王カエサル・ラグナロク』!」

 

DDD怒濤壊薙王カエサル・ラグナロク

融合・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 10

攻撃力 3200

 

Reizi LP 6000→5500

 

「バトルフェイズに入る!

カエサル・ラグナロクで、リベリオン・ドラゴンを攻撃!

この時、LPを500払いカエサル・ラグナロクの効果発動!」

「させません!チェーンしてアクションマジック『回避』発動!」

「悪いがこのデュエル、私のリベンジが成されるという結末にさせて貰う!チェーンしてLPを500払い、透明発動!」

「な!?まずい!」

 

回避

アクションマジック

1:フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターの攻撃を無効にする。

 

Reizi LP 5500→5000→4500

 

「透明の効果で、カエサル・ラグナロクはこのターン、君のカードの効果対象にならず、効果も受けない!回避はモンスターを対象に、その攻撃を無効にさせる効果!よってその効果は受けない!

そしてカエサル・ラグナロクの効果で、フィールドにいるレオニダスを手札に戻し、グラビティ・ドラゴンをカエサル・ラグナロクの装備カードにする!」

「ぐ、グラビティ・ドラゴン!」

「これで決める!行け、カエサル・ラグナロク!ジ・エンド・オブ・ジャッジメント!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

DDD怒濤壊薙王カエサル・ラグナロク 攻撃力 3200→6000 VS 覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン 攻撃力 2000

 

Yuya LP 3000→-1000 LOSE

 

WINNER Reizi

 

------------

 

あぁ、モノの見事にリベンジされちゃったなぁ、遊勝塾の皆、というか俺の指導を受けて来たデュエリスト以外に負けたの何時振りだろう。

でも、その負けた悔しさこそあれど、それ以上に何処か充実した気分だ。

流石は零児、俺のライバル、幾ら俺が本気を出そうと簡単に勝たせてくれる相手じゃ無い、けどそれ故に、倒し甲斐がある。

やっぱり零児に会えてよかった、零児こそが『ライバル』として俺を満足させてくれるデュエリストだ。

カイザー、ジャック、カイト、この世界にもいたよ、お前達みたいな才能あふれるデュエリストが。

 

「零児!今回は負けましたが、次は勝たせて貰いますよ!」

「私こそだ、遊矢!今回勝ったとはいえ、これでイーブンとなっただけ。次は勝ち越させて貰う!」




【悲報】遊矢、(物語内で)初敗北!

そういえばアニメでも零児に敗北したのは、この時期でしたね。

さて、これで4.5章(の本編)は終了、61話からいよいよシンクロ次元への突入です、が…?


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Ex7話_遭遇!並行世界からのデュエリスト

今話から再び、コラボ話を書いて行きます!
今回は、AMsさんが投稿している『遊戯王ARC-V 次元漂流者』とのコラボです。

尚今回の話は、42~44話の間の出来事です。


「全員集まった様だな。個々の試合等で忙しかった所での呼び出し、済まない」

「いえ。この街にテロリストが侵入したと聞いたら、そうも言っていられませんから」

「遊矢の言う通りだぜ、社長さンよ。まァ無駄話はこの辺にして、早く報告してくれや」

「分かった。ではセレナに一美、報告を頼む」

「分かっている…」

「了解しました…」

 

零児からの『テロリスト出没』という火急の呼び出し、それに応じて俺とARC-Vメンバーは、零児達がスタンバイしていたレオ・コーポレーションの会議室に集結した。

その中の1人である一行の催促に従うままに零児が報告を求めた、『融合次元の柚子』ことセレナと、彼女の護衛として一緒にこの世界へとやって来たアカデミアのデュエリスト、聖沢一美、だけど零児に求められるままに起立した2人の顔には、何処か憔悴の色が浮かんでいた。

件のテロリストと間近で遭遇し、そしてこの世界に来る際に連れて来たもう1人の護衛であるバレットを目の前で射殺されたんだ、恐怖、憤怒、憎悪、とにかく色んな感情が渦巻いているに違いない。

 

「まず、テロリストの外見的な特徴なんだが、髪と眼は真っ赤で、黒っぽいスーツの上に黒のコートを羽織っていた。銃声の様な物の直後にバレットが撃ち抜かれた事を考えると、何か銃の様な物を所持しているに違いない…」

「その直後に私達の前へと姿を現したのですが、其処で私達の事を『融合次元のクズ共』と呼んでいました。恐らくテロリストは、4つの次元の事を知っていて尚且つ、私達融合次元のデュエリストに対して相当な恨みを持っていると思われます。もしかしたら、エクシーズ次元のデュエリストかも知れません。私達がやっている事は、やはり…」

 

そんな様子でありながらも、2人はテロリストの特徴を話してくれたが、その中で一美は特に、沈痛な面持ちだった。

アカデミアが行っている各次元への侵略、アカデミアに属する存在であっても、その方針に関して思う所のあるデュエリストはいるのかも知れないな。

 

「それで、他にそのテロリストとの遭遇に関する変わった事は無かった?例えば、遭遇前後で何か異変があったとか…」

「あ、そうだ!そのテロリストと遭遇する少し前の事だ。私はとあるデュエリストにデュエルを挑んだんだが、その瞬間に周りの空間が真っ白と化し、私達以外が全く動けなくなるという、不可解な現象が発生したんだ」

 

周りの空間が真っ白?セレナ達以外が全く動かなくなる?カイトに付き従っていたロボット『オービタル7』みたいな奴がテロリストと手を組んでいるのか?いや流石にそれは考えすぎか…?

と、考えていたら、

 

「社長、緊急事態です!舞網市にて、次元転送の反応が!」

「何!?中島、詳しい話を聞かせろ。テロリストとの関係性もあるかも知れない、皆も聞いて貰いたい」

 

零児の秘書である中島さんが、次元転送の反応をキャッチしたと言う報告を持って来た。

次元転送の反応、零児の言う通りテロリストとの繋がりも考えられる、急いで捜索しないと…!

 

「はい。たった今、舞網市において次元転送の反応をキャッチしました。大まかな地点は既に把握しておりますが、詳細は現在特定中です」

「分かった。その次元転送した存在が件のテロリストとの繋がりがあるとも考えられる。直ぐに捜索メンバーを派遣しろ」

「はっ!直ぐに向かわせます!」

 

一通りの報告を終え、零児からの指示を受けて中島さんは去って行った。

それを見やるや否や、

 

「さて諸君。聞いていた通り、この舞網市で次元転送の反応をキャッチした。テロリストの繋がりが考えられる以上、早急な対応が必要だ。今しがた中島に捜索メンバーの派遣を指示したが、遊矢、それとARC-Vメンバー諸君にも、同じくその地点への捜索をお願いしたい。良いだろうか?」

「「「「「「了解!」」」」」」

「零児、私もその捜索メンバーに」

「セレナ様、テロリストの標的が私達融合次元のデュエリストである以上、無闇に動くのは危険です!此処は彼らの実力を信じましょう!」

「一美、しかし…!」

 

俺達にそう言い渡した。

勿論、それを受けない理由は無い!

…同行を言い出しているセレナの対応は一美に任せて置くとしよう。

 

------------

 

Side エレン

 

「中島さんの報告によると、この近辺から反応をキャッチしたそうだが…

む?この感じ、カードの精霊か?いや、何か違う様だが…」

 

赤馬の兄ちゃんの秘書だと言っていた中島のおっさんからの報告で挙がった、何というか如何にも路地裏、と言わんばかりの場所へと来た俺達、もしかしたら『融合次元の柚子姉ちゃん』ことセレナ姉ちゃん達に襲い掛かったテロリストと関係がある奴かも知れねえからと『覇王の力』を解放していた遊矢兄ちゃんが、ふとそんな事を呟いた。

テロリスト関係かどうかまでは分からないけど、どっちみちヤバそうな奴が来ちゃったか…

とはいえ、俺もARC-Vメンバーの1人なんだ、これ位で躊躇していられっかよ!

 

「む?何処かへと移動している様だな。このまま振り切られると厄介だ。当麻、一行、エレン、3人は向こう側へ回り込んでくれ。俺達は正面から件の存在を追う。挟み撃ちにしよう。ユベル、3人の道案内を頼む」

「勿論さ、遊矢」

「了解だぜェ、遊矢!」

「OK、遊矢兄ちゃん!」

「分かった。そっちも頼むぞ!」

「よし、行くぞ!」

 

遊矢兄ちゃんの指示で、俺は当麻兄ちゃん、一行兄ちゃんとユベルで、裏の道を走り出した。

 

「当麻、エレン、デュエルアンカーの準備は出来てっかァ?」

「勿論、分かっているさ!」

「準備万端だぜ!」

 

その途上で一行兄ちゃんが聞いて来た装備の確認、それも怠らない。

もし相手がテロリストで、この場を強行突破しようとして来たらやばい、俺達はデュエリストとしての実力は兎も角、リアルファイトとなると自信は無い(俺自身が小学5年のガキだしな)、抑え込むためにも遊矢兄ちゃんがデュエルディスクを改造して取り付けてくれたこのデュエルアンカーは欠かせねぇ。

 

「皆、どうやら遊矢達が件の存在と遭遇したみたいだよって、あ、逃げた!皆、こっちの道を行こう!」

「分かった、ユベル!」

「ったく、逃げ足のはえェ奴らだぜ!」

「うん、こっちだな!」

 

と、その時、ユベルを通じて遊矢兄ちゃんたちが件の連中と遭遇した事、その連中が即座に逃げ出した事を言われた。

これはクロだと思って良いかも知れないな、覚悟しやがれ!

 

「皆、アイツらだよ!」

「しゃァ!見つけたぜェ!」

「大人しくこっちに来て貰うぜ!」

「逃がさねぇぜテロリスト共!」

「くっ!こっちもか!」

 

ユベルの声に前を向くと其処には、恐らく遊矢兄ちゃん達から逃げていた存在であろう3人組の姿があった。

1人は俺位の女の子かな?2人目は赤馬の兄ちゃんと同じ位の赤毛の兄ちゃん、で最後の1人はなんかスケボーみたいな物に乗った紫髪の女の子。

まさか俺とそんなに変わらないコイツらがテロリスト…?

いや、それを言ったらアカデミアもセレナ姉ちゃんと同い年位のデュエリストがデュエル戦士として各次元に侵略しているんだし、可笑しくは無い、な!

 

「囲まれちまったぞ!どうすんだ、海音!っておい、海音!?」

「はっ!?す、すまん櫂!とにかくここから逃げるぞ!」

「こっちです、こっちから逃げましょう!」

 

あっ逃げられちまう!

 

「「「逃がすか(ヒュン!)!」」」

「(ガチャァ!)な!?なんだよ、コレ!?」

「(ガチャァ!)くっ!?これは、デュエルアンカー!?」

「(ガチャァ!)な、なんですかコレ!?外れないです!」

「お、実戦で初めて使ったにしては良い線いっているじゃないか」

 

よし、捕縛成功っと!

俺達が一斉に発射したデュエルアンカー、俺の分は海音と呼ばれた女の子、一行兄ちゃんの分は櫂と呼ばれた兄ちゃん、そして当麻兄ちゃんの分は残った1人の女の子、其々のデュエルディスクに食いついた。

これでコイツらは俺達とのデュエルが終わらない限り逃げる事は出来ない!

 

「其処か!って、エレン達が既に捉えていたか。よし、当麻、一行、エレン!俺と柚子、権現坂は周辺の捜索を続ける!お前達は、

 

奴等をデュエルで拘束せよ!」

「「「了解!」」」

 

そのすぐ後に到着し、状況を確認した遊矢兄ちゃん達は、俺達に指示を飛ばしつつこの場を去った。

任してくれよ、遊矢兄ちゃん!

 

「よしっ!腕がなるぜ!」

「覚悟しなァ!侵入ゥゥゥゥ者くゥゥゥゥン!」

「行くぜ、テロリスト共!」

「エレン、まだテロリストって決まった訳じゃ無いから…」

「くっ!本当は揉め事にしたくないが!」

「まっこうなったらしょうがないか」

「そうですね!」

 

ユベルが何か言っているみたいだけど、どの道デュエルで倒して捕まえてやるぜ!

 

「気を付けろよ、こいつらは間違いなく強いはずだ!」

「おれはどんな相手でも全力で戦うだけだ!」

「いきます!」

「「「「「「デュエル!」」」」」」



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Ex8話_一行VS櫂!並行世界のドラゴン

注:このコラボではオリジナルカードが多数登場します。
能力については『遊戯王ARC-V 次元漂流者』にて確認お願いします(但し一部、並行世界への転移の影響で能力が変化した物があります)。


Side 一行

 

「「デュエル!」」

 

先攻 Ikko LP 4000 VS 後攻 Kai LP 4000

 

さァて、俺の先攻となった訳だが、相手の櫂とか言ったか?ソイツのデッキ傾向が分からン、ひょっとしたら数々の世界を渡り歩いた遊矢すら知らンカードが出て来る可能性だってある、手札もなンつーか微妙だし、此処はこォすっかな。

 

「俺のターン!先攻はドローが無ェ。

まずはフィールド魔法『混沌空間(カオス・ゾーン)』発動!」

 

混沌空間

フィールド魔法

モンスターがゲームから除外される度に、1体につき1つこのカードにカオスカウンターを置く。

1ターンに1度、自分フィールド上のカオスカウンターを4つ以上取り除く事で、取り除いた数と同じレベルを持つ、ゲームから除外されているモンスター1体を選択し、自分フィールド上に特殊召喚する。

フィールド上のこのカードが相手の効果によって墓地へ送られた時、このカードに乗っていたカオスカウンターの数以下のレベルを持つ光属性または闇属性のモンスター1体をデッキから手札に加える事が出来る。

 

俺がフィールド魔法を発動した瞬間、何か周囲がぐにゃぐにゃする様になった。

このカードのこの演出、何とかならねェか?

 

「次に魔法『闇の誘惑』発動!」

 

闇の誘惑(準制限カード)

通常魔法

1:自分はデッキから2枚ドローし、その後手札の闇属性モンスター1体を除外する。手札に闇属性モンスターが無い場合、手札を全て墓地へ送る。

 

「闇の誘惑の効果で2枚ドロー!その後、手札の『ヴェルズ・カイトス』を除外するぜェ」

 

混沌空間 カオスカウンター 0→1

 

ンー、まだ動けそうにねェな。

 

「闇の誘惑をもォ1回発動!2枚ドロー!その後、手札の『ヴェルズ・オランタ』を除外するぜェ」

 

混沌空間 カオスカウンター 1→2

 

うし、こっから動くとするかァ。

 

「続いて『ヴェルズ・カストル』を召喚!」

 

ヴェルズ・カストル

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1750

 

「カストルを召喚したターン、俺はヴェルズモンスターをもォ1回召喚出来るぜェ!この効果で『ヴェルズ・サンダーバード』を召喚!」

 

ヴェルズ・サンダーバード

効果モンスター

闇属性

雷族

レベル 4

攻撃力 1650

 

カストルと並び立つよォに俺のフィールドに出て来たのは、端末世界の勢力『ミスト・バレー』のトップだったらしィ『霞の谷の巨神鳥』がヴェルズ化した姿、サンダーバード。

 

「カードを1枚セットして、ターンエンド!」

 

Ikko

LP 4000

手札 1

モンスター ヴェルズ・カストル(攻撃表示)

      ヴェルズ・サンダーバード(攻撃表示)

魔法・罠カード セット

 

さァて侵入者くンよォ、お前のデュエルを見させて貰うぜェ。

 

「俺のターン!ドロー!

K(かげろう)―バーニングホーン・ドラゴン』を召喚!」

 

K―バーニングホーン・ドラゴン(オリジナルカード)

効果モンスター

炎属性

ドラゴン族

レベル 4

攻撃力 1900

 

か、かげろう?やっぱり俺の知らねェカードが出て来やがったぜ…

櫂のフィールドに出て来たのは、炎を纏い、身体中から角生やしたドラゴン、バーニングホーン・ドラゴン。

攻撃力は1900か、中々のパワーじゃねェか。

これ位のステータスの効果モンスターは「効果がショボイから」なンて先入観を持たれがちだが(実際『ヒュート』とかがそォだけどな)とんでもねェ、ライオウだの、エアーマンだの、ステータスが高い癖して厄介な効果持ちなンざ探せばいるモンだぜ。

果たしてコイツは、どォなんだ…?

 

「バトル!

バーニングホーンでサンダーバードにアタック!」

「通すぜ!」

 

K―バーニングホーン・ドラゴン 攻撃力 1900 VS ヴェルズ・サンダーバード 攻撃力 1650

 

Ikko LP 4000→3750

 

ちっサンダーバードを狙って来やがったか、これはちィと面倒だ…

 

「カードを2枚セットしてターンエンド」

 

お、チャーンス!

 

「おっと!エンドフェイズにカストルを除外して罠『侵略の侵喰崩壊』発動!」

 

侵略の侵喰崩壊

通常罠

自分フィールド上に表側表示で存在する『ヴェルズ』と名の付いたモンスター1体を選択してゲームから除外し、相手フィールド上のカード2枚を選択して持ち主の手札に戻す。

 

混沌空間 カオスカウンター 2→3

 

「侵喰感染の効果で、今セットした2枚共、手札に戻して貰おォか!」

「特に何も無い。改めてターンエンド」

 

Kai

LP 4000

手札 5

モンスター K―バーニングホーン・ドラゴン(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

「俺のターン!ドロー!」

 

此処でコイツかァ…

よし、行くか!

 

「まず、お前のフィールドにいるモンスターの方が多いから、『ヴェルズ・マンドラゴ』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

ヴェルズ・マンドラゴ

効果モンスター

闇属性

植物族

レベル 4

攻撃力 1550

 

「次に『ヴェルズ・サラマンドラ』を召喚!」

 

ヴェルズ・サラマンドラ

効果モンスター

闇属性

恐竜族

レベル 4

攻撃力 1850

 

これでレベル4モンスターが2体、このままエクシーズ召喚、とは行かねェ。

 

「今召喚したサラマンドラの効果発動!

墓地のサンダーバードを除外して、コイツの攻撃力を300アップするぜェ!」

 

ヴェルズ・サラマンドラ 攻撃力 1850→2150

混沌空間 カオスカウンター 3→4

 

サラマンドラが俺のデュエルディスクの、墓地にあたる部分から何か吸ったかと思ったら、その身を包む炎が強くなった、これでバーニングホーンを倒せる、だけじゃねェ!

混沌空間に乗るカウンターが4つ、て事はァ…!

 

「更に混沌空間に乗っているカオスカウンターを4つ取り除いて効果発動!

たった今除外したレベル4のサンダーバードを、攻撃表示で帰還させるぜェ!帰って来やがれェ!サンダーバード!」

 

これで一気に削るぜェ!

 

「バトルフェイズに入るぜェ!

サラマンドラでバーニングホーン・ドラゴンを攻撃!」

 

ヴェルズ・サラマンドラ 攻撃力 2150 VS K―バーニングホーン・ドラゴン 攻撃力 1900

 

Kai LP 4000→3750

 

「マンドラゴとサンダーバードでダイレクトアタックだァ!」

「ノーガード!」

 

Kai LP 3750→2200→550

 

よし、後少しだァ!

けど、こォ言う時こそ油断は禁物、此処は更に盤面を固めるに限る!

 

「メインフェイズ2に入って、俺はマンドラゴとサラマンドラでオーバーレイ!2体のレベル4・ヴェルズモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!わりィがこっから先は、上級モンスターお断りの一方通行だァ!『ヴェルズ・オピオン』!」

 

ヴェルズ・オピオン

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

ランク 4

攻撃力 2550

ORU 2

 

「今エクシーズ召喚したオピオンのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!デッキから2枚目の侵喰崩壊を手札に加えてそのままセット!ターンエンド!」

 

Ikko

LP 3750

手札 0

モンスター ヴェルズ・サンダーバード(攻撃表示)

      ヴェルズ・オピオン(攻撃表示)

魔法・罠カード セット(侵略の侵喰崩壊)

 

まァ、セットカードはバレバレだが、これで何とか…

 

「俺のターン!ドロー!

マジックカード『オーバーロードロー』!」

 

オーバーロードロー(オリジナルカード)

通常魔法

1:手札から『K』モンスターを1枚墓地に送りデッキから2枚ドローする。

2:自分フィールドに『K』モンスターが存在する時、墓地のこのカードを除外して発動出来る。自分フィールドの『K』モンスターのレベルを8~10から任意の数値に出来る。

 

Kモンスター1枚と自分自身を、2枚ドローに変える手札交換とか強くねェ?

 

「手札のかげろうを1枚墓地に送り、デッキから2枚ドローする。

相手フィールドにのみモンスターが存在する場合、手札から『K―リザードソルジャー・コンロー』を特殊召喚出来る」

 

K―リザードソルジャー・コンロー(オリジナルカード)

効果モンスター

炎属性

ドラゴン族

レベル 1

守備力 300

 

俺のフィールドにだけモンスターがいる時って、この前同じ様な条件で出て来たモンスターがいたなァ。

ソイツとレベルも一緒って事はだ、ただ単に出て来て終わり、な訳が無ェ。

櫂のフィールドに出て来た、正に読んで字の如くトカゲの戦士、コンローの姿に俺はそう警戒した。

 

「更に『K―ドラゴニック・バーンアウト』を召喚!」

 

K―ドラゴニック・バーンアウト(オリジナルカード)

効果モンスター

炎属性

ドラゴン族

レベル 4

攻撃力 1800

 

またさっきみてェな炎のドラゴンか!

今度は何か頭から刀みてェな角生えていンなァ。

 

「バーンアウトの効果発動!このカードの召喚に成功した時、墓地のオーバーロードローをデッキに戻して相手の魔法・罠カードを2枚まで破壊する!俺が破壊するのは混沌空間とお前のセットしている侵略の侵喰崩壊だ!さあどうする?」

 

マジか…

複数展開するから侵喰崩壊使ってやろォかと考えたが、これじゃァ意味無さそォだな…

 

「ちィ!通すぜ!」

「ならその2枚を破壊。さらにその後このカードのレベルを8にする」

 

K―ドラゴニック・バーンアウト レベル 4→8

 

レベル変動効果まで付いて来るだとォ?て事は…

 

「コンローの効果を発動!俺の場のかげろうと同じレベルにする」

 

同じレベル、って事はエクシーズ召喚軸か!

 

「だったらそれにチェーンしてサンダーバードの効果発動!コイツを除外するぜェ!逃げろ、サンダーバード!」

 

K―リザードソルジャー・コンロー レベル 1→8

 

あぶねェあぶねェ、サンダーバードを残したら確実にボコされる所だったぜ。

 

「俺はレベル8となったコンローとバーンアウトでオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!不撓不屈の皇帝竜!揺るがぬ闘志を宿し牙で、絶望を光に変えよ!エクシーズ召喚!現れろ、ランク8!『K―ドーントレスドライブ・ドラゴン』!」

「やっぱエクシーズ召喚か!」

 

K―ドーントレスドライブ・ドラゴン(オリジナルカード)

エクシーズ・効果モンスター

炎属性

ドラゴン族

ランク 8

攻撃力 2600

 

な、何かエクシーズ召喚の演出の後に、赤色のゴツイ鎧纏ったドラゴン出て来たンだが!

 

「バトル!ドーントレスドライブでオピオンにアタック!」

「オピオン!ちィ!」

 

Ikko LP 3750→3700

 

「メイン2。カードを3枚伏せてターンエンドだ」

 

Kai

LP 550

手札 1

モンスター K―ドーントレスドライブ・ドラゴン(攻撃表示)

魔法・罠カード セット×3

 

こりゃァ不味いな、俺のフィールドは、次のスタンバイフェイズに帰って来るサンダーバードだけ、手札も今の時点で無し。

対して櫂のフィールドは、ドーントレスドライブ1体、セットカード3枚、手札も1枚ある。

望みはもう薄っぺら程度しか無ェが、俺だってARC-Vのメンバーだ、その面子に掛けて、薄っぺらな望みを繋いでやらァ!

 

「俺のターン!ドロォォォォォォォォォォォォォォォ!

スタンバイフェイズに、サンダーバードは帰って来る!」

 

引ィたカードは、良いね、コイツか!

 

「俺は、今引いた『ヴェルズ・ケルキオン』を召喚!」

 

ヴェルズ・ケルキオン

効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 4

攻撃力 1600

 

「次に、墓地のオピオンを除外して、ケルキオンの効果発動!

墓地からサラマンドラを手札に加える!」

 

さァて、此処からどォすっか…

このターンで決めるとしたらこのままバハムートを出して、効果でドーントレスドライブを奪ってダイレクトアタックなンだが、セットカードから不穏な感じしかしねェんだよな…

かといって『ハーピィの羽根帚』が無いから、一掃は無理だしなァ…

いや、此処は突っ込む!で、躱されたら諦める!

 

「ケルキオンの追加効果は使わねェ!

俺はサンダーバードとケルキオンでオーバーレイ!2体のレベル4・ヴェルズモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!わりィがこっから先は、俺の支配という名の一方通行だァ!『ヴェルズ・バハムート』!」

 

ヴェルズ・バハムート

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

ランク 4

攻撃力 2350

ORU 2

 

「バハムートのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!さっき手札に加えたサラマンドラを捨てて、ドーントレスドライブを貰うぜ!」

「…」

 

うっしゃァ、ドーントレスドライブのコントロール奪取だ!って、自分のモンスター奪われたってェのにだンまりか、一体何を企ンでいやがる…?

まァ良い、えー効果は、と…

うはァ、破壊効果を無効にする効果に、モンスター攻撃且つ自分しかいない時とはいえ2回攻撃かよ。

で、オーバーレイ・ユニットになったモンスターは…

コンローは予想通りの効果だったが、バーンアウトの効果に書かれている『オーバーロード』モンスターって一体何なンだ?

まさかとは思うが、このドーントレスドライブが櫂のエースでは無ェって事か?

オイオイ、仮にそォだとしたらバーンアウトで毎ターン『ツインツイスター』をぶっぱしつつ、そのオーバーロードで粉砕ってのが櫂のデッキ、その本当の戦略って事じゃねェか、恐ろしィぜ…!

となれば、この攻撃が最後の賭けだ!

 

「バトルフェイズに入る!折角だ、仲間の手でくたばりやがれェ!ドーントレスドライブでダイレクトアタック!」

 

これでやったか…?

 

「罠発動!『ドラゴニック・スピリット』!ダイレクトアタック時に発動しその攻撃を無効にしバトルフェイズを終了させる!」

「な、何だとォ!?」

「更に墓地からかげろうモンスター2体を特殊召喚する!甦れ!バーニングホーン・ドラゴン!ドラゴニック・ネオフレイム!そしてこの効果で特殊召喚したモンスターのレベルは8となる!」

「ンなァ!?」

 

ドラゴニック・スピリット(オリジナルカード)

通常罠

1:相手モンスターの直接攻撃時発動出来る。その攻撃を無効にしてバトルフェイズを終了する。その後、自分の墓地からレベル4以下の『K』モンスター2体を選択して特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターのレベルは8となる。

 

K―煉獄竜ドラゴニック・ネオフレイム(オリジナルカード)

効果モンスター

炎属性

ドラゴン族

レベル 4→8

攻撃力 1600/守備力 1000

 

K―バーニングホーン・ドラゴン レベル 4→8

 

ま、マジかよ!?

こりゃァとンだ落とし穴だぜ!

 

「俺はこれでターンエンドだ!」

 

Ikko

LP 3700

手札 0

モンスター ヴェルズ・バハムート(攻撃表示)

      K―ドーントレスドライブ・ドラゴン(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

此処はしのがれちまった挙げ句展開を許す事になったが、それでも俺のフィールドには櫂からパクったドーントレスドライブがいる、櫂のデッキは破壊効果がメインの筈、コイツで何とか持つたァ思うが…

 

「ファイナルターン!」

「!?」

 

な、ファイナルターンだとォ!?

まさか、オーバーロードモンスターはそれが出来るポテンシャルを有しているってェのか!?

 

「ドロー!俺はレベル8となったネオフレイムとバーニングホーンでオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズTHE召喚!この世の全ての物を燃やし尽くす黙示録の炎!『K―ドラゴニック・オーバーロード』!」

 

K―ドラゴニック・オーバーロード(オリジナルカード)

エクシーズ・効果モンスター

炎属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 3000

ORU 2

 

コイツがオーバーロードモンスター、なンか、さっきパクったドーントレスドライブも迫力負けしているみてェだぜ…

櫂のフィールドに出て来た真っ赤な体躯に大剣を持ったドラゴンの姿に、俺はそォ思った。

 

「ソイツがオーバーロードモンスター、てめェのエースカードか!たった今ファイナルターンだとかほざきやがったンだ、それが出来る様な能力は有るンだろうなァ!」

「今に分かる。ドラゴニック・オーバーロードの効果を発動!オーバーレイ・ユニットを1つ使い、攻撃力をエンドフェイズまで500ポイントアップし、このターン特殊召喚された相手モンスター全てに1度ずつ攻撃出来る!」

 

K―ドラゴニック・オーバーロード 攻撃力 3000→3500

 

ま、マジか!

特殊召喚されたモンスター限定とは言え、3500もの攻撃力で全体攻撃とはなァ。

これじゃァ確かにこのターンで俺の成す術はほぼ無くなる、これで事実上ファイナルターンだわな。

 

「バトル!ドラゴニック・オーバーロードでヴェルズ・バハムートとドーントレスドライブに攻撃!エターナルフレイム!」

「へぶァ!」

 

K―ドラゴニック・オーバーロード 攻撃力 3500 VS K―ドーントレスドライブ・ドラゴン 攻撃力 2600

K―ドラゴニック・オーバーロード 攻撃力 3500 VS ヴェルズ・バハムート 攻撃力 2350

 

Ikko LP 3750→2850→1700

 

「罠発動『ドラゴニック・バックアップ』!このカードは俺の場にオーバーロードが存在する時に発動出来、相手のモンスターゾーン全てにドラゴニックトークンを攻撃表示で特殊召喚させる!」

 

ドラゴニック・バックアップ(オリジナルカード)

通常罠

『ドラゴニック・バックアップ』は1ターンに1度、自分のターンにしか発動出来ない。

1:自分フィールドに『オーバーロード』モンスターが存在する時に発動出来る。相手フィールドの空いているモンスターゾーン全てに『ドラゴニックトークン』(炎属性・炎族・レベル8・攻撃力3000・守備力2000)を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターは攻撃出来ず、発動したターン終了時に破壊される。このトークンが『オーバーロード』モンスターの戦闘または効果で破壊された場合、破壊したモンスターの攻撃力をエンドフェイズまで500アップする。

 

ドラゴニックトークン

炎属性

炎族

レベル 8

攻撃力 3000

 

うはァ、『事実上』では無くて『本当の意味』でファイナルターンだわな、こりゃァ。

 

「お前の場にモンスターが増えた事によりオーバーロードは更なる攻撃が可能になる。更にドラゴニックトークンがオーバーロードによって破壊された場合、破壊したモンスターの攻撃力をエンドフェイズまで500上げる効果がある。尤もこの状況では意味が無いがな」

「まァ良い、こォなりゃ腹を決めた!てめェの全力をぶち込ンで来やがれェ!」

「ならば受けるが良い!全ての物を燃やし尽くす黙示録の炎を!」

 

K―ドラゴニック・オーバーロード 攻撃力 3500→4000→4500→5000→5500→6000 VS ドラゴニックトークン 攻撃力 3000

 

Ikko LP 1700→1200→200→-1300→-3300→-5800 LOSE

 

WINNER Kai



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Ex9話_当麻VS????!並行世界の騎士

当麻の対戦相手が????となっているのは、単に物語中で名前が出ていなかっただけです、深い意味はありません(笑)


Side 当麻

 

「「デュエル!」」

 

先攻 ???? LP 4000 VS 後攻 Toma LP 4000

 

俺の後攻か、後攻はちょっとやりづらいんだよなぁ…

まあ良いや、嘆いていてもしょうがない、今は俺と対峙している女の子の動きを見極める!

 

「私のターン!

私は『SP(シャドウパラディン)―無情の撃退者・マスカレード』を召喚!」

 

SP―無情の撃退者・マスカレード(オリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1700

 

シャドウパラディン?シャドウって確か英語で闇って意味だよな、で、パラディンって、騎士だっけ?

まあそれは後で遊矢から聞いてみるか、正に『闇の騎士』って付いているだけに黒ずくめな姿だな、今出て来たモンスター。

 

「カードを2枚伏せてターンエンドです」

 

????

LP 4000

手札 2

モンスター SP―無情の撃退者・マスカレード(攻撃表示)

魔法・罠カード セット×2

 

結構堅実なプレイングだな、攻撃力が普通クラスのモンスターを考え無しに棒立ちさせるとは思えねぇ、恐らくあのセットカードにマスカレードを守る手段がある筈。

と言っても、俺が自分から動ける事なんて限られているんだけどな。

 

「俺のターン!ドロー!

俺もカードを2枚セットしてターンエンド!」

 

Toma

LP 4000

手札 4

モンスター なし

魔法・罠カード セット×2

 

さぁて、アンタはこれを前にどう動く?

 

「私のターン!

このままバトル!マスカレードでダイレクトアタック!」

 

そのまま突っ込んで来たか!

普通そこは『ハーピィの羽根帚』とかでセットカードを除去してからじゃね?

まあ受けてやるけど!

 

「通すぜ!あだっ!」

 

Toma LP 4000→2300

 

「メイン2にモンスターをセットしてターンエンドです!」

 

????

LP 4000

手札 2

モンスター SP―無常の撃退者・マスカレード

      セット

魔法・罠カード セット×2

 

このターンは最低限の展開しかして来ないか、ちょいと慎重過ぎねぇ?

 

「俺のターン!ドロー!」

 

引いたカードは、あー、コレか。

周りからさんざん入れとけ入れとけ五月蝿くされるわ、財力があるのに入れねぇのは俺位のモノだと馬鹿にされるわで、ARC-Vに入ったのをきっかけに入れる事にしたが、折角だ、このまま膠着状態なのも良くないし、使うか!

 

「魔法『ハーピィの羽根帚』発動!」

 

ハーピィの羽根帚(制限カード)

通常魔法

1:相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。

 

「ハーピィの羽根帚の効果で、アンタの魔法・罠カードを全部破壊するぜ!さあどうする!?」

「通します!」

 

ありゃ、これもアクションは無しか、どぉすっかなぁ。

 

「ふーむ…

カードを1枚セットしてターンエンドだ!」

「えっ…」

 

Toma

LP 2300

手札 3

モンスター なし

魔法・罠カード セット×3

 

さぁて、此処までカードをセットしたんだ、そろそろこれ警戒して何かアクションしてくれるだろう。

 

「私のターン!

そしてそのままバトル!マスカレードでもう1度ダイレクトアタックよ!」

「ちったぁ勝負に出て来いよ…

速攻魔法『緊急テレポート』発動!」

 

緊急テレポート

速攻魔法

1:手札・デッキからレベル3以下のサイキック族モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターは、このターンのエンドフェイズに除外される。

 

「緊急テレポートの効果で、デッキから『幽鬼うさぎ』を守備表示で特殊召喚!」

 

幽鬼うさぎ

効果モンスター/チューナー

光属性

サイキック族

レベル 3

守備力 1800

 

「全くモンスターを出してこない貴方には言われたくありません!」

 

ははは、確かにな。

まあ俺の場合『出さない』んじゃなくて『出せない』…

いや、そっちの攻撃にノーリアクションだったから『出さない』で合っているのか?

まあいいや。

 

「バトルは終了します。

私はカードを1枚伏せてターンエンド」

「エンドフェイズに、緊急テレポートの効果で特殊召喚した幽鬼うさぎは除外されるぜ」

 

????

LP 4000

手札 2

モンスター SP―無常の撃退者・マスカレード

      セット

魔法・罠カード セット

 

「俺のターン!ドロー!

…そっちが仕掛けて来ないってんなら、このままだらだら続けて、遊矢達が戻って来るのを待つかな。

そうすりゃ仮に俺が負けても逃げられないだろうし。

カードを1枚セットして、ターンエンド!」

「エンドフェイズに罠発動!『エンド・オブ・トルネード』!このカードは相手がカードをセットしたターンのエンドフェイズに発動出来、相手の魔法・罠を全て破壊します!この効果に相手はチェーンは出来ません!」

 

エンド・オブ・トルネード(オリジナルカード)

通常罠

1:相手が魔法・罠ゾーンにカードをセットしたターンのエンドフェイズに発動出来る。相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。この効果に相手はカードをチェーンして発動出来ない。

 

「うはぁ…改めてターンエンドだ!」

 

Toma

LP 2300

手札 3

モンスター なし

魔法・罠カード なし

 

やっちまった。

まあ良い、これで俺のフィールドにはモンスターも魔法・罠カードも無い、これが切っ掛けで動いてくれれば…

 

「私のターン!

私はモンスターを反転召喚!殲滅せよ、私の分身!『SP―ブラスター・ダーク・撃退者』!」

 

SP―ブラスター・ダーク・撃退者(オリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1800

 

今度は漆黒の鎧に身を包んだ騎士が出て来た。

これで彼女のフィールドには、攻撃力1700のマスカレードと攻撃力1800のブラスター・ダーク、2体のダイレクトアタックが決まれば、俺の負けって事だ。

 

「バトル!

マスカレードでダイレクトアタック!」

「その攻撃宣言時、手札から『PSYフレームギア・β』の効果発動!」

「っ!?手札からモンスター効果ですって!?」

 

尤も、そう易々と通す訳無いけどな!

 

「自分フィールドにモンスターが存在せず、相手モンスターの攻撃宣言時に発動出来、手札のこのカードとデッキの『PSYフレーム・ドライバー』を特殊召喚し、その攻撃モンスターを破壊するぜ!」

「マスカレード!」

 

PSYフレーム・ドライバー

通常モンスター

光属性

サイキック族

レベル 6

攻撃力 2500

 

PSYフレームギア・β

効果モンスター/チューナー

光属性

サイキック族

レベル 1

攻撃力 700

 

相手のマスカレードが攻撃しようとした瞬間、俺のフィールドに、ベルトみたいなPSYフレームギアを装着したPSYフレーム・ドライバーが一瞬で登場し、マスカレードを殴り倒した。

 

「その後、バトルフェイズを終了させるぜ」

「メイン2!

私はチューナーモンスター『SP―黒衣の撃退者・タルトゥ』を召喚!」

 

SP―黒衣の撃退者・タルトゥ(オリジナルカード)

効果モンスター/チューナー

闇属性

戦士族

レベル 3

攻撃力 1300

 

彼女の場に新たに出て来た黒い鎧を身に纏った女の子、タルトゥはチューナーか、という事はシャドウパラディンって、俺のPSYフレームと同じくシンクロ召喚軸なんだな。

 

「レベル4のブラスター・ダークにレベル3のタルトゥをチューニング!大いなる野望を刀身に乗せ、道を切り拓け!シンクロ召喚、レベル7!『SP―幽幻の撃退者 モルドレッド・ファントム』!」

 

SP―幽幻の撃退者 モルドレッド・ファントム(オリジナルカード)

シンクロ・効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 7

攻撃力 2400

 

そしてチューナーを出したからにはシンクロ召喚するわな。

シンクロ召喚の演出と共に出て来たのは、例によって暗い色合いの鎧を身に纏った騎士、モルドレッド・ファントム。

 

「モルドレッド・ファントムの効果発動!このカードのシンクロ召喚に成功した時、デッキからシャドウパラディン1体を特殊召喚する!私は『SP―ブラスター・ジャベリン』を特殊召喚する!」

 

SP―ブラスター・ジャベリン(オリジナルカード)

効果モンスター/チューナー

闇属性

戦士族

レベル 2

攻撃力 1200→1700

 

ん?攻撃力が500アップした?

 

「この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力はエンドフェイズまで500上がりますが今は関係ありません!」

 

成る程な、攻撃力を増強してのリクルートか。

この効果で出て来たのは、やっぱり暗い色合いの鎧(けど今までの奴と比べて軽装っぽい)を身に纏った、ジャベリンの名の通り槍を持つ騎士、ブラスター・ジャベリン。

そしてコイツもチューナーって事は、まだ動いて来るか?

 

「そしてブラスター・ジャベリンの効果発動!このカードの特殊召喚に成功した時、墓地からブラスター・ダーク・撃退者を特殊召喚!更にブラスター・ダーク・撃退者の効果発動!このカードの特殊召喚に成功した時、相手フィールドの攻撃力の最も低いモンスターを破壊する!」

「俺のフィールドで最も攻撃力が低いのはPSYフレームギア・β、よってコイツが破壊されるぜ」

 

その攻撃力で『地割れ』内蔵って、強くないか?

 

「レベル4のブラスター・ダークにレベル2のブラスター・ジャベリンをチューニング!呪われし竜よ、出でて邪悪な力を振るえ!シンクロ召喚、レベル6!『SP―ファントム・ブラスター・ドラゴン』!」

 

SP―ファントム・ブラスター・ドラゴン(オリジナルカード)

シンクロ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 6

攻撃力 2200

 

で、最後に出て来たのはデカい槍を持った騎士っぽい出で立ちのドラゴン、ファントム・ブラスター・ドラゴン、か。

俺の反撃に備えて場を整えて来たって訳だな。

 

「私はこれでターンエンド」

「エンドフェイズに、墓地の罠『PSYフレーム・オーバーロード』を除外して効果発動!

デッキからフィールド魔法『PSYフレーム・サーキット』を手札に加えるぜ!

そして、PSYフレームギア・βの効果で特殊召喚されたPSYフレーム・ドライバーは除外されるぜ」

 

????

LP 4000

手札 2

モンスター SP―幽幻の撃退者 モルドレッド・ファントム(攻撃表示)

      SP―ファントム・ブラスター・ドラゴン

魔法・罠カード なし

 

あれ、魔法・罠カードのセットは無しか、セットする奴が無かったのか、或いは俺の様に手札誘発を狙っているのか、どっちにしろ、動くぜ!

 

「俺のターン!ドロー!

よし、まずは魔法『サイコ・フィール・ゾーン』発動!」

 

サイコ・フィール・ゾーン

通常魔法

ゲームから除外されている自分のサイキック族のチューナー1体とチューナー以外のサイキック族モンスター1体を墓地に戻し、そのレベルの合計と同じレベルのサイキック族のシンクロモンスター1体をエクストラデッキから表側守備表示で特殊召喚する。

 

「サイコ・フィール・ゾーンの効果で、除外されているPSYフレーム・ドライバーと幽鬼うさぎを墓地に戻してコイツを呼び出すぜ!

100回破壊されたら、100回起き上がる。1000回破壊されたら、1000回起き上がる!たったそれだけの事を果たして見せる!『メンタルオーバー・デーモン』!」

 

メンタルオーバー・デーモン

シンクロ・効果モンスター

闇属性

サイキック族

レベル 9

守備力 3000

 

サイコ・フィール・ゾーンの効果で登場したのは、緑を基調とした悪魔(但しサイキック族)が鎧を纏った姿、メンタルオーバー・デーモン。

 

「今出したメンタルオーバー・デーモンの効果発動!

墓地のPSYフレーム・ドライバーを除外する!」

「?」

 

メンタルオーバー・デーモンの効果処理に、疑問を覚えた様子の彼女だが、その理由が直ぐに分かるぜ!

さあ、此処からが本番だ!

 

「効果を使ったメンタルオーバー・デーモンをリリースしてアドバンス召喚!

主人公(ヒーロー)気取りじゃねぇ、コイツこそがこのデュエルの主人公だ!PSYフレーム・ドライバー!」

「シンクロモンスターをリリースしてアドバンス召喚?」

「これがその理由だ!此処でリリースしたメンタルオーバー・デーモンの効果発動!

さっきコイツの効果で除外したPSYフレーム・ドライバーを帰還させる!帰って来い、PSYフレーム・ドライバー!

更にフィールド魔法『PSYフレーム・サーキット』を発動!」

 

PSYフレーム・サーキット

フィールド魔法

1:自分フィールドに『PSYフレーム』モンスターが特殊召喚された場合に発動出来る。自分フィールドの『PSYフレーム』モンスターのみをシンクロ素材としてシンクロ召喚する。

2:自分の『PSYフレーム』モンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時に、手札の『PSYフレーム』モンスター1体を捨てて発動出来る。

 

「そして魔法『ミラクルシンクロフュージョン』発動!」

「えっ!?」

 

ミラクルシンクロフュージョン

通常魔法

1:自分のフィールド・墓地から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを除外し、シンクロモンスターを融合素材とするその融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

2:セットされたこのカードが相手の効果で破壊され墓地へ送られた場合に発動する。自分はデッキから1枚ドローする。

 

「俺は墓地のメンタルオーバー・デーモンと幽鬼うさぎを除外してシンクロ融合だ!

此処から先は、俺による支配と言うシナリオでやらせて貰う!シンクロ融合!『アルティメットサイキッカー』!」

 

アルティメットサイキッカー

融合・効果モンスター

光属性

サイキック族

レベル 10

攻撃力 2900

 

よし、行くぜ!

 

「バトルフェイズに入る!

1体目のPSYフレーム・ドライバーでファントム・ブラスター・ドラゴンを攻撃!イマジン・ブレイカー!」

「くっ!」

 

PSYフレーム・ドライバー 攻撃力 2500 VS SP―ファントム・ブラスター・ドラゴン 攻撃力 2200

 

???? LP 4000→3700

 

「アルティメットサイキッカーでモルドレッド・ファントムを攻撃!イマジン・バースト!」

「きゃぁ!」

 

アルティメットサイキッカー 攻撃力 2900 VS SP―幽幻の守護者モルドレッド・ファントム 攻撃力 2400

 

???? LP 3700→3200

 

「此処でモンスターを戦闘破壊したアルティメットサイキッカーの効果発動!破壊したモルドレッド・ファントムの攻撃力、つまり2400ポイント回復する!」

 

Toma 2300→4700

 

「そして2体目のPSYフレーム・ドライバーでダイレクトアタック!イマジン・ブレイカー!」

「きゃぁぁぁぁぁ!」

 

???? LP 3200→700

 

「よしっ!メイン2に入って、2体のPSYフレーム・ドライバーでオーバーレイ!2体のレベル6モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!お前の効果(ちから)が、デュエルを思い通りに出来るってんなら、まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!『フォトン・ストリーク・バウンサー』!」

 

フォトン・ストリーク・バウンサー

エクシーズ・効果モンスター

光属性

戦士族

ランク 6

攻撃力 2700

ORU 2

 

「融合だけじゃ無くてエクシーズまで使うなんて…」

 

連撃によって向こう側のフィールドが真っ新となったのを尻目に、エクシーズ召喚の演出と共に登場したのは、赤い鎧を身に纏った光の戦士、フォトン・ストリーク・バウンサー。

 

「俺はこれでターンエンド!」

 

Toma

LP 4700

手札 0

モンスター アルティメット・サイキッカー(攻撃表示)

      フォトン・ストリーク・バウンサー(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

フィールド魔法 PSYフレーム・サーキット

 

手札こそ無く、セットカードも無いが、俺のフィールドにはモンスター効果を無効にする上にバーンダメージも与えられるフォトン・ストリーク・バウンサー、効果破壊耐性を持っているアルティメットサイキッカーがいる、俺のフィールドは盤石だ!

モンスター効果を使ったタイミングで、勝負を決めてやるぜ!

 

「私のターン!

私は『SP―真黒の賢者 カロン』を召喚!」

 

SP―真黒の賢者 カロン(オリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 3

攻撃力 800

 

そう意気込んだ俺を尻目に、彼女のフィールドに登場したのは、読んで字の如く賢者と言うしかない姿の男(?)カロン。

攻撃力がそんなに無いとならば、強烈な効果を持っている筈。

使うなら此処だ!

 

「このカードの召喚に成功した時、墓地のブラスターを特殊召喚出来ます!」

「悪いがこれで終わりだ!『フォトン・ストリーク・バウンサー』のオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!カロンの効果を無効にし、お前に1000ポイントのダメージを与える!これで決める!ストリーク・ブレイク!」

「まだです!墓地からトラップカード『ブレイクスルー・スキル』を発動!このカードを除外して、相手モンスターの効果を無効にします!私はフォトン・ストリーク・バウンサーを選択!」

 

え゛!?ブレスルなんて何時の間に、あ、さっきの羽根帚か!

っておい、誰だ「説明死フラグ乙」とか言った奴!?デュエルはまだ終わってない!

 

「これで邪魔はされません!カロンの効果で墓地からブラスター・ジャベリンを特殊召喚!更にジャベリンの効果で三度現れろ!SP―ブラスター・ダーク・撃退者!そして効果によってフォトン・ストリーク・バウンサーを破壊!」

 

さっき自分の分身だと言っていた通り、随分な活躍だな、あの黒騎士。

 

「まだよ!私の場にブラスター・ダーク・撃退者が存在する時、手札からチューナーモンスター『SP―督戦の撃退者・ドリン』を守備表示で特殊召喚します!」

 

SP―督戦の撃退者・ドリン(オリジナルカード)

効果モンスター/チューナー

闇属性

戦士族

レベル 2

守備力 1200

 

まだまだ展開させると言わんばかりに出て来たのは、今までのシャドウパラディン男性戦士モンスターの様な全身鎧姿じゃ無い、槍を構えた男、ドリン。

 

「マジックカード『死者蘇生』!」

 

死者蘇生(制限カード)

通常魔法

1:自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

って、手札の最後のカードがそれかよ!?

 

「私は墓地から…

モルドレッド・ファントムを特殊召喚します!

レベル7のモルドレッド・ファントムに、レベル2のドリンをチューニング!彼方より現れし幻獣!心を惑わし、魂諸共裂き砕け!シンクロ召喚、レベル9!『SP―撃退者・ドラグルーラー・ファントム』!」

 

SP―撃退者・ドラグルーラー・ファントム(オリジナルカード)

シンクロ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 9

攻撃力 2900

 

うはぁ、また騎士の様な姿のドラゴンか。

シンクロ召喚の演出と共に出て来たのは、漆黒の鎧に身を包み、右手に剣を、左手にチェーンを装備したドラゴン、ドラグルーラー・ファントム。

 

「ドラグルーラー・ファントムの効果発動!このカードがモルドレッド・ファントムをシンクロ素材とした場合、墓地からレベル4以下のシャドウパラディンを守備表示で特殊召喚します!甦って!マスカレード!

ドラグルーラーのもう1つの効果発動!ブラスター・ジャベリンとカロンをリリースしてこのカードの攻撃力を1000ポイント上げ、相手に1000ポイントのダメージを与えます!ミラージュ・ストライク!」

「あべし!」

 

SP―撃退者・ドラグルーラー・ファントム 攻撃力 2900→3900

Toma LP 4700→3700

 

「ドラグルーラー・ファントムのこの効果は1ターンに何度でも発動出来ます!私はブラスター・ダークとマスカレードをリリースして効果発動!再び受けろ!ミラージュ・ストライク!」

「ひでぶ!」

 

SP―撃退者・ドラグルーラー・ファントム 攻撃力 3900→4900

Toma LP 3700→2700

 

まさか2回も使われるとはな…

これでアルティメットサイキッカーとの攻撃力の差は2000、余裕で突破されるな。

 

「バトルです!ドラグルーラー・ファントムでアルティメットサイキッカーにアタック!幻を喰らい、幻を生み出す獣よ!混沌を破壊し、幻想世界へと誘え!ファナティック・イリュージョン!」

「アルティメットサイキッカー!たわば!」

 

SP―撃退者・ドラグルーラー・ファントム 攻撃力 4900 VS アルティメットサイキッカー 攻撃力 2900

 

Toma LP 2700→700

 

うはぁ、これでデッドラインか…

だけどお前ら「説明死フラグ乙」の言葉は撤回しろよな、ライフはぎりぎりだけど向こうは手札もセットカードも無い、ドラグルーラー・ファントムの攻撃も終わった今、このターンの生き残りには成功したんだからさ!

 

「私はこれでターンエンド。エンドフェイズにドラグルーラー・ファントムの攻撃力は元に戻ります」

 

SP―撃退者・ドラグルーラー・ファントム 攻撃力 4900→2900

 

「俺のターン!ドロー!」

 

ライフは危機一髪状態、手札もモンスターもセットカードも無い、あるのはフィールド魔法である『PSYフレーム・サーキット』だけ、この中でドローしたのは…

よし、行ける!

 

「俺は今引いた魔法『貪欲な壺』発動!」

 

貪欲な壺(制限カード)

通常魔法

1:自分の墓地のモンスター5体を対象として発動出来る。そのモンスター5体をデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから2枚ドローする。

 

「俺は墓地のPSYフレーム・ドライバー2体とPSYフレームギア・βをメインデッキに、アルティメットサイキッカーとフォトン・ストリーク・バウンサーをエクストラデッキに戻す!

そしてメインデッキをシャッフルした後、2枚ドロー!

俺はこれでターンエンドだ!」

 

Toma

LP 700

手札 2

モンスター なし

魔法・罠カード なし

フィールド魔法 PSYフレーム・サーキット

 

さあ、どっからでも掛かって来い!

 

「私のターン!

『SP―ブラスター・レイピア』を召喚!」

 

SP―ブラスター・レイピア(オリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1800

 

今度は全身鎧を身に纏い、名前の通り細剣(レイピア)を装備した女性か。

まあ良いや、誰が出てこようとこのタイミングだ!

 

「ブラスター・レイピアの召喚時、俺は手札の『PSYフレームギア・α』の効果発動!

俺のフィールドにモンスターが存在しない状態でアンタがモンスターを召喚した事で、このカードとデッキのPSYフレーム・ドライバーを特殊召喚するぜ!」

「今度は召喚時に発動!?」

 

PSYフレームギア・α

効果モンスター/チューナー

光属性

サイキック族

レベル 1

攻撃力 500

 

まあ、俺のモンスター達は相手のアクションに応じて動く奴ばっかだし。

 

「その後、デッキから『PSYフレームギア・β』を手札に!

まだ行くぜ!PSYフレームモンスターの特殊召喚に成功した事で、PSYフレーム・サーキットの効果発動!

レベル6のPSYフレーム・ドライバーに、レベル1のPSYフレームギア・αをチューニング!お前のモンスターの力が、フィールドを思い通りに出来るってんなら、まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!シンクロ召喚、レベル7!『PSYフレームロード・Z』!」

「相手ターンにシンクロ召喚!?」

 

PSYフレームロード・Z

シンクロ・効果モンスター

光属性

サイキック族

レベル 7

攻撃力 2500

 

いや、そんなに驚く事か?相手ターンにシンクロ召喚するカードって結構あると思うけどな、バトルフェイズ限定だけど『緊急同調』とか、遊矢が持っている『シンクロン』シンクロモンスターとか…

まあそれは良いとして、向こうが余りに勝負に出ないもんだから、出すのが遅くなっちまった。

悪いな、ロードZ。

 

「攻撃力はまだ私のモンスターの方が上です!バトル!

ドラグルーラー・ファントムでPSYフレームロード・Zに攻撃!」

「ダメージステップ良いか?」

「え?」

 

PSYフレームロード・Zの攻撃力が僅かながらドラグルーラー・ファントムに劣っているのを見て攻撃して来たが、俺が、攻撃対策をPSYフレームギア・βだけに頼っていると思ったら、大間違いだ!

 

「PSYフレームロード・Zがアンタのモンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時、手札からPSYフレーム・ドライバーを捨てて、PSYフレーム・サーキットの『2つ目』の効果発動!

ターン終了時までPSYフレームロード・Zの攻撃力は、発動コストとして捨てたモンスターの攻撃力分アップする!

PSYフレーム・ドライバーの攻撃力は2500!よってPSYフレームロード・Zの攻撃力は、2500アップして5000だ!」

「攻撃力…5000!」

「歯を食いしばれよ撃退者、俺の強襲者は、ちっとばっか響くぞ。

強襲者の一撃、その身でしっかり味わいやがれ!イマジン・ダブルブラスター!」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

SP―撃退者・ドラグルーラー・ファントム 攻撃力 2900 VS PSYフレームロード・Z 攻撃力 2500→5000

 

???? LP 700→-1400 LOSE

 

WINNER Toma



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Ex10話_エレンVS海音!並行世界の忍者

デュエル中、フェイズやチェーンの確認は確実に行う様にしましょう。


「「デュエル!」」

 

先攻 Kanon LP 4000 VS 後攻 Elen LP 4000

 

「先攻は貰う!

N(ぬばたま)―忍竜コクジョウ』を召喚!」

 

N―忍竜コクジョウ(オリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 4

攻撃力 1700

 

先攻は向こうか、まあこのデッキなら丁度いいな。

で、海音のフィールドに出て来たのは、何か忍者っぽい姿をしたドラゴン、コクジョウ。

それにしてもぬばたまって、聞いた事ねぇカテゴリだな、遊矢兄ちゃんに後で聞いてみよっと。

 

「カードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

Kanon

LP 4000

手札 3

モンスター N―忍竜コクジョウ(攻撃表示)

魔法・罠カード セット

 

「俺のターン!ドロー!」

 

手札は、バンバン動くにはちょっとアレかな…

あのセットカードから不穏な気配しかしないし、かと言って除去手段無いし…

まあ良いか。

 

「俺はモンスターをセット。

カードを3枚セットしてターンエンド!」

 

Elen

LP 4000

手札 2

モンスター セット

魔法・罠カード セット×3

 

さぁて、此処からどう動いて来るか…

 

「ドロー!

『N―忍獣タマハガネ』を召喚」

 

N―忍獣タマハガネ(オリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

獣族

レベル 4

攻撃力 1500

 

今度は同じく忍者みたいな出で立ちの、クマみたいなモンスター、タマハガネか。

コクジョウとタマハガネ、レベルは共に4でどちらも闇属性、となるとエクシーズ軸か!

だったらこれを、

 

「このカードが場に出た時、相手フィールドのセットされたカードを1枚裏側のまま除外する。この効果に相手は魔法・罠を発動出来ない。右のセットカード選択」

「『ナイト・ショット』内蔵かよソイツ!?」

 

うわマジか、これじゃあこのカードをチェーン出来ないし、向こうがエクシーズ召喚しようとしても、優先権の関係で防げないじゃん!

まあ良いや、防げないなら防げないでまだ手はあるし。

 

「マジックカード『禁術の仕込み』を発動。このカードは場にぬばたまが存在する時に発動出来、デッキから2枚ドローして、手札1枚を裏側で除外する」

 

禁術の仕込み(オリジナルカード)

通常魔法

1:自分フィールドに『N』モンスターが存在する時に発動出来る。デッキから2枚ドローする。その後手札1枚を裏側表示で除外する。

2:自分のメインフェイズ中にこのカードが裏側表示でゲームから除外されている時、このカードを表側表示にして発動出来る。デッキからカードを1枚選んで裏側表示でゲームから除外する。

 

手札交換カードか、だがそれは悪手だぜ!

 

「それにチェーンして速攻魔法『神の写し身との接触(エルシャドール・フュージョン)』発動!

更にチェーンして罠『影依の原核(シャドールーツ)』発動!」

 

神の写し身との接触(制限カード)

速攻魔法

『神の写し身との接触』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:自分の手札・フィールドから『シャドール』融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

影依の原核

永続罠

1:このカードは発動後、効果モンスター(魔法使い族・闇属性・レベル9・攻撃力1450/守備力1950)となり、モンスターゾーンに特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたこのカードは、『シャドール』融合モンスターカードに記された属性の融合素材モンスターの代わりに出来る。このカードは罠カードとしても扱う。

2:このカードが効果で墓地へ送られた場合、『影依の原核』以外の自分の墓地の『シャドール』魔法・罠カード1枚を対象として発動出来る。そのカードを手札に加える。

 

「何も無いならチェーン処理に入るぜ!

まずは影依の原核を守備表示で特殊召喚!」

 

影依の原核

効果モンスター/永続罠

闇属性

魔法使い族

レベル 9

守備力 1950

 

「その後、手札の『シャドール・ドラゴン』と今出した影依の原核を融合!

炎を司る岩石戦士の怨念が、外敵の降臨を許しはしないぜ!融合召喚!『エルシャドール・エグリスタ』!」

 

エルシャドール・エグリスタ

融合・効果モンスター

炎属性

岩石族

レベル 7

攻撃力 2450

 

融合召喚の演出と共に俺のフィールドに出て来たのは、端末世界の勢力である『ジェムナイト』の戦士クリスタの成れの果て『暗遷士カンゴルゴーム』そっくりな、炎の力を纏った岩石戦士、エグリスタ。

これで、お前のエクシーズ召喚を妨害出来るぜ!

 

「…改めて、禁術の仕込みの効果で2枚ドローし、その後手札を1枚、裏側で除外する」

「チェーン処理は終わったな、なら今度は墓地へ送られた『シャドール・ドラゴン』の効果発動!

それにチェーンして同じく墓地へ送られた影依の原核の効果発動!

まずは影依の原核の効果で墓地の影の写し身との接触を回収するぜ!

次にシャドール・ドラゴンの効果でそのセットカードを破壊!

さっさとエクシーズ召喚しちまえばエグリスタの効果で妨害される事なんて無かったのにな、とんだプレミだなぁ!

あ、お前みたいなガキんちょにあれこれ説教するのは可哀想か?」

「何勝手に進めているのかな?影依の原核にチェーンして永続トラップ『暗黒への手招き』を発動!」

 

暗黒への手招き(オリジナルカード)

永続罠

『暗黒への手招き』の1・2の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用出来ない。

1:自分フィールドに『N』モンスターがいる時に自分・相手のメインフェイズ中に発動出来る。自分の手札・墓地からカードを1枚選んで除外し、自分の除外されているカードを1枚手札に加える。

2:自分フィールドに『N』モンスターがいる時に発動出来る。相手の墓地のカード1枚を裏側で除外する。

 

「このカードは1ターンに1度、場にぬばたまがいる時に発動出来、その効果でお前の墓地の、影の写し身との接触を裏側で除外する!」

「何!?」

 

うわ、マジか!

 

「ちゃんとチェーンが無いか確認しろよな!チェーン処理によりまず影の写し身との接触を裏側で除外!次に影依の原核の効果が入るが対象カードが無くなった事により不発に終わる。そしてシャドール・ドラゴンの効果で暗黒への手招きが破壊される」

 

まさかの墓地メタカード…

だが、エグリスタの攻撃力を突破出来るモンスターは今の所いねぇ、エクシーズ召喚しようとコイツの効果で妨害するぜ!

 

N―忍竜コクジョウ 攻撃力 1700→2300

 

あれ、何でコクジョウの攻撃力が上がっているんだ?

 

「マジックカード『タイムカプセル』発動。発動時デッキから1枚裏側で除外する」

 

タイムカプセル

通常魔法

自分のデッキからカードを1枚選択し、裏側表示でゲームから除外する。発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ時にこのカードを破壊し、そのカードを手札に加える。

 

タイムカプセル?『封印の黄金櫃』の方が強くねぇか?

 

N―忍竜コクジョウ 攻撃力 2300→2500

 

てか、またコクジョウの攻撃力が上がった!?しかもエグリスタをも突破されるレベル!?一体何でだよ!?

 

「君は1つ勘違いしている様だな」

「勘違い?」

「あのタイミングでエクシーズ召喚をするつもりは無かったんだよ。まあ予定は狂ったがな。それと言い忘れていたが、コクジョウの攻撃力は、互いの裏側で除外されているカード1枚につき200ポイントアップする。今裏側で除外されているカードの合計は4枚。よって攻撃力は800アップする」

「な、何!?やば、シェキナーガを守備で出せば良かった!プレミしていたのは俺の方って訳か…!」

 

そういう事かよ!だから封印の黄金櫃じゃなくてタイムカプセルを使っているのか…

てか、相手のデッキがエクシーズ軸なのは間違い無かったみたいだな、それを出すつもりが無かったと言うのは何処か引っ掛かるが。

 

「そういう事だ!バトル!コクジョウでエグリスタを攻撃!」

 

N―忍竜コクジョウ 攻撃力 2500 VS エルシャドール・エグリスタ 攻撃力 2450

 

Elen LP 4000→3950

 

「ちぃ!だが墓地へ送られたエグリスタの効果発動!墓地の影依の原核を回収するぜ!」

「タマハガネでセットモンスターに攻撃!」

「『シャドール・リザード』のリバース効果発動!」

 

シャドール・リザード

効果モンスター/リバース

闇属性

魔法使い族

レベル 4

守備力 1000

 

これ以上コクジョウに居座られるのは不味い、此処はコクジョウを破壊する!

 

「このカードがリバースした場合、フィールドのモンスター1体を破壊する!俺はコクジョウを破壊だ!」

 

N―忍獣タマハガネ 攻撃力 1500 VS シャドール・リザード 守備力 1000

 

「メイン2、カードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

Kanon

LP 4000

手札 1

モンスター N―忍獣タマハガネ

魔法・罠カード タイムカプセル(発動から0ターン経過)

        セット

 

まさかあっさり返されるとは思わなかったぜ、向こうにはエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターがいないから『影依融合(シャドール・フュージョン)』が出て来てもしょうがない、さあ、何が来る…

 

「俺のターン!ドロー!」

 

っ!よし、来た!

 

「俺はモンスターをセットし、さっき回収した影依の原核を捨てて、今引いたこの速攻魔法を発動する!」

 

これが来るんだったら、さっきのリザードの効果をタマハガネに使って、リザードを残しておけば良かったな。

まあ良い、もう過ぎ去った話だ、制限カードであるこのカードが来るとは限らない、確実にコクジョウを除去するなら、あれで良かったんだ。

さあ、モンスターを棒立ちさせた事、後悔するんだな!

 

「絶対無敵!究極の力を解き放て!解放しろ!『超融合』発動!」

 

超融合(制限カード)

速攻魔法

このカードの発動に対して魔法・罠・モンスターの効果は発動出来ない。

1:手札を1枚捨てて発動出来る。自分・相手フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「俺は、今フィールドにセットした『シャドール・ヘッジホッグ』と、お前のフィールドにいるタマハガネを融合する!貰うぜ、貰うぜお前のモンスター!

闇を司る人形の怨念が、外敵の侵入を食い止めるぜ!融合召喚!『エルシャドール・ミドラーシュ』!」

 

エルシャドール・ミドラーシュ

融合・効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 5

攻撃力 2200

 

「効果で墓地へ送られたシャドール・ヘッジホッグの効果発動!デッキから『シャドール・ファルコン』を手札に!

このままバトルフェイズに入るぜ!ミドラーシュでダイレクトアタック!

フォール・ダウンバースト!」

「ライフで受ける!」

 

Kanon LP 4000→1800

 

これでLPは半分、フィールドには効果破壊耐性を持ち、特殊召喚を1ターンに1回だけに制限するミドラーシュがいる、仮に戦闘破壊とかされても、墓地から影依の原核をまた回収すりゃあ良い。

だがまだまだ油断は出来ねぇ、またコクジョウを出される可能性がある。

通常召喚で出せるデメリットなしの攻撃力2500とか、オーバースペック過ぎやしねぇか!?

 

「俺はこれでターンエンドだ」

 

Elen

LP 3950

手札 1(シャドール・ファルコン)

モンスター エルシャドール・ミドラーシュ(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

「ドロー!

マジックカード!『ダーク・バースト』!」

 

ダーク・バースト

通常魔法

1:自分の墓地の攻撃力1500以下の闇属性モンスター1体を対象として発動出来る。その闇属性モンスターを手札に加える。

 

ダーク・バースト、闇属性専門のサルベージカードか。

思ったんだけどさ、属性の違いこそあるけどそれ以外は同じ条件の『サルベージ』が1:2交換なのは何でだろうな?

 

「墓地のタマハガネを手札に加える!

そしてタマハガネは相手の場にのみモンスターが存在するなら手札から特殊召喚出来る!」

 

サイバー・ドラゴンみたいな特殊召喚モンスターだったのか、それ。

ともあれ、これでこれ以上の展開は出来、

 

「更にタマハガネをリリースして、『N―六道忍竜ゲダツラカン』をアドバンス召喚!こいつはレベル7だが、相手の場にモンスターがいる時、ぬばたま1体でアドバンス召喚出来る」

 

N―六道忍竜ゲダツラカン(オリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2600

 

って、アドバンス召喚にも対応しているカテゴリだったのかよ!

出て来たのは、最早忍者というより軽装の武者と言った方が良いドラゴン、ゲダツラカン。

攻撃力は2600、ミドラーシュをも突破されるな…

 

「バトル!ゲダツラカンでミドラーシュに攻撃だ!」

 

N―六道忍竜ゲダツラカン 攻撃力 2600 VS エルシャドール・ミドラーシュ 攻撃力 2200

 

Elen LP 3950→3550

 

「くっ!だが破壊されたミドラーシュの効果で墓地から再び影依の原核を手札に…」

「無駄だ。ゲダツラカンがバトルする時、相手よりも手札が少なければ、相手はカードの効果を発動する事が出来ない」

「なっ!?」

 

うわ、マジかよ!

遊矢兄ちゃんのホープ・ザ・ライトニングと比べて条件こそ付いているとは言え、これはきついな…

 

「更にゲダツラカンのもう1つの効果。このカードが相手モンスターを破壊した時、相手は手札を1枚選んで捨て、俺は1枚ドローする」

「何だよそれ!インチキ効果もいい加減にしろよな!」

「何とでも言え。相手の戦力を削りつくし、相手を確実に倒す。それがぬばたまの戦い方だ。でも良かったじゃないか。捨てるカードがそいつで」

「くっ『シャドール・ファルコン』を墓地へ…」

「それじゃ、俺は1枚ドローする」

「そしてファルコンの効果発動!このカードが効果で墓地へ送られたから、コイツを裏側守備表示で特殊召喚する!」

 

シャドール・ファルコン(裏守備表示)

効果モンスター/チューナー/リバース

闇属性

魔法使い族

レベル 2

守備力 1400

 

「このままターンエンドだ」

 

Kanon

LP 1800

手札 1

モンスター N―六道忍竜ゲダツラカン(攻撃表示)

魔法・罠カード タイムカプセル(発動から1ターン経過)

        セット

 

くそー、汚いな流石忍者汚い、って奴だな!

 

「俺のターン!ドロー!」

 

よし!ドローしたのは『魂写しの同化(ネフェシャドール・フュージョン)』!

ファルコンを反転召喚して融合素材を揃えて、コイツの効果でシェキナーガを融合召喚しちまえばこっちの物(ドズゥ!)d、え…?

 

「罠『光の封殺剣』。これでお前のドローしたカードは3ターンの間封印する」

 

光の封殺剣

通常罠

相手の手札をランダムに1枚選んで裏側表示でゲームから除外する。発動後、相手のターンで数えて4ターン目の相手のスタンバイフェイズ時に、そのカードを相手の手札に戻す。

 

うそん。

こうなるとファルコンを反転召喚するのは危険だ…!

 

「くっ!俺はターンエンドだ…」

 

Elen

LP 3550

手札 0

フィールド セット(シャドール・ファルコン)

魔法・罠カード なし

 

「ドロー!

このスタンバイフェイズに、タイムカプセルで除外したカードが手札に加わる。

『N―嵐の忍鬼フウキ』を召喚!」

 

N―嵐の忍鬼フウキ

効果モンスター

闇属性

アンデット族

レベル 4

攻撃力 1200

 

新たに出て来たのは、何か悪魔みたいな角とか翼を生やした和服姿の男、フウキ。

コイツのどこら辺にアンデット族要素があるんだ…?

 

「更に俺の場にぬばたまが存在する時『N―忍竜ドレッドマスター』を特殊召喚出来る!」

 

N―忍竜ドレッドマスター

効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 4

攻撃力 1200

 

ぬばたまが存在する時って、柚子姉ちゃんが持っているソナタかよ!?

と、心の中で突っ込んでいる俺を他所に出て来たのは、今までのぬばたまと比べて忍者要素が見えないドラゴン、ドレッドマスター。

これでレベル4モンスターが2体、来るか!?

 

「レベル4のフウキとドレッドマスターでオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!闇に生きる忍びよ!その鎖で敵の全てを封じ込めろ!エクシーズ召喚!ランク4!『N―修羅忍竜カブキコンゴウ』!」

 

N―修羅忍竜カブキコンゴウ

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

ランク 4

攻撃力 2500

ORU 2

 

やっぱりエクシーズモンスターが来たー!

エクシーズ召喚の演出と共に出て来たのは、鎧武者の様な出で立ちの、右手に鎖を装備したドラゴン、カブキコンゴウ。

とは言え俺の場にはまだファルコンがいる、ファルコンのリバース効果を使っちまえばまだ1ターンは、

 

「カブキコンゴウの効果発動!オーバーレイ・ユニットを2つ使い、フィールド上でセットされたカードを全て裏側で除外する!異次元の鎖!更にその後、裏側で除外されたカード1枚につき300ポイントアップする」

 

N―修羅忍竜カブキコンゴウ ORU 2→0

              攻撃力 2500→4000

 

え゛!?

 

「悪いな、少し大人げなかったかも知れないが、こっちだって揉め事は御免なんでね、だから此処は大人しく倒されていろ!バトルだ!カブキコンゴウでダイレクトアタック!蜘蛛糸梓弦!」

「ウソダドンドコドーン!?」

 

Elen LP 3550→-450 LOSE

 

WINNER Kanon



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Ex11話_任務完了!並行世界の舞網市とは…

モデルがモデルである以上、この事態は避けられなかったのです…w


Side 遊矢

 

む?この感じ…

今までとはかなり異質なモンスターの感覚がする…

 

「権現坂、そっちの様子はどうだ?」

「問題無い。気配を探ってはみたが、大した物は見当たらん。どうやらテロリスト関係では無さそうだ」

「俺達の方も大丈夫だ。そしたら、一行達と合流しよう。そろそろデュエルが終わっているかも知れない」

「うむ、了解した」

「分かったわ、遊矢」

 

そう伝え、俺達3人は、一行達がデュエルしている場所へと向かった。

あの3人なら、そう簡単に負ける筈は無いが、それよりも俺が感じた異質なモンスターの感覚、もしかして4つの次元の何処かからもたらされた物か?

そう考えつつも移動し、到着した、が其処には、

 

「ドラグルーラー・ファントムでPSYフレームロード・Zを攻撃!」

「ダメージステップ良いか?」

「え?」

 

当麻とデュエルしていた紫髪の女の子が、騎士みたいな姿のドラゴンをPSYフレームロード・Zに攻撃させた、は良いがPSYフレーム・サーキットの効果で強化されたロード・Zの反撃で返り討ちにあい、当麻の勝利で終わった、此処までなら、女の子が使っていたモンスターが見た事無い奴である事を除けば何時も通りの光景だ。

それにしても『SP(シャドウパラディン)』?『撃退者』?何処かで聞いた事がある気がするな…

まあそれは置いて、本題は此処からだ。

 

「まァ良い、こォなりゃ腹を決めた!てめェの全力をぶち込ンで来やがれェ!」

「ならば受けるが良い!全ての物を燃やし尽くす黙示録の炎を!」

 

一行とデュエルしていた赤毛の男のフィールドにいる、赤いドラゴンの炎が一行へと襲い掛かり、LP8000のOCGルールでも一撃必殺級の一撃を叩きこまれた。

一行の方もLP550まで追い込んではいたが、其処からの大逆転劇からは、この男の凄まじい位の運命力を感じるな…

コイツが使ったモンスターのカテゴリは『K(かげろう)』か…

まさか、ひょっとしたら…

 

「悪いな、少し大人げなかったかも知れないが、こっちだって揉め事は御免なんでね、だから此処は大人しく倒されていろ!バトルだ!カブキコンゴウでダイレクトアタック!蜘蛛糸梓弦!」

「ウソダドンドコドーン!」

 

そしてエレンとデュエルしていた少女のフィールドにいる、鎧武者みたいな姿のドラゴンの攻撃が、エレンとのデュエルの決着を付けた。

こっちは『N(ぬばたま)』、成る程な…繋がった。

というかエレン、お前は何処のオンドゥル星人だ。

 

「さあ大人しく、事情聴取に来て貰う「3人共、其処までだ!どうやら彼らと、テロリストとの繋がりは無さそうだ!」え、そうなのか遊矢!?」

「え゛!?遊矢兄ちゃん、コイツらテロリストじゃねぇの!?」

「え、何!?じゃァ俺、意味も無くデュエルして意味も無く負けたって事かァ!?」

「いや一行、意味は大いにあるぞ!テロリストが暗躍する中、迷い込んだこの者達を保護するという意味が!」

「そういう事だ。君達には、手荒な真似をして済まない。ほら当麻、彼女を解放するんだ」

「あ、ああ分かった(ずるっ!)うおっ!?(ばたっ!)」

「(ばたっ!)きゃぁ!」

 

デュエルを終えた一行とエレン、勝利して相手の女の子を拘束していた当麻に事情を説明、次元転送されて来たと思われる3人にも一先ず謝罪しつつ、当麻に女の子を解放する様指示したその時だった、当麻が何かに足をとられたのか、女の子を巻き込むように転び、

 

「いたた、悪い、ちょっと足滑らせたみたい(むにゅ)ん?何だ、今むにゅって音がしたんだが?それに右手から(むにゅむにゅ)何かやわらかい感触が…」

「あっ…ああ…」

 

謝罪しつつ急いで起き上がろうと、

 

「と、とととととととと、当麻、アンタ…!」

「と、当麻、貴様何をしとる!けしからん!実にけしからんぞ!」

「当麻ァ、お前とはケンカデュエルばっかだったが、こンな事する奴じゃねェと信じていたンだぞ!俺の信頼を裏切りやがってェ!」

「当麻兄ちゃん…(ジトー)」

「へ(むにゅむにゅ)、あ(むにゅむにゅ)…」

「あぅ…」

「最初の所だけはラッキースケベって事にしようかと一瞬思ったが…

お前最低だな」

「き…

 

 

 

きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

している様に見せかけて、女の子の胸を思いっきり触りまくっていやがった!

お前、何思いっきりセクハラしまくっているんだ!

そういうのは想いを通じ合わせた関係になってから…じゃなかった!

 

「其処に直りなさい当麻ぁぁぁぁ!」

「デュエルに勝ったのに何でこんな目に遭わなきゃならないんだぁぁぁぁぁぁ!不幸だぁぁぁぁぁぁ!」

 

------------

 

「バトル!モンスター全員で『ミスト・ボディ』と『魔界の足枷』を装備させたPSYフレーム・ドライバーに攻撃!」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

テロリストが暗躍している最中という状況なので、一先ず次元転送されて来たらしい3人をレオ・コーポレーションで保護する事にした俺達。

その折、当麻から思いっきりセクハラ行為をされた、レナという女の子がリベンジデュエルを仕掛け、流石の俺達も当麻のあの行動には少し灸を据えてやらないと、と思っていたので強制的に了承させた。

そして行われたデュエル、当麻のデッキは手札誘発効果を持つモンスターばかりだと気付いて『メンタルドレイン』を投入、当麻に殆ど何もさせずに、最後は『シャドウパラディン』シンクロモンスターによるフルボッコでリベンジ成功、あの場でのセクハラの報復を見事果たした。

と、当麻(変態)の話は此処までにして、だ。

そのデュエル中、俺達は海音という、エレンとデュエルしていた男の娘(実は男で、歳も俺達より3つも上だそうだ)と、櫂という、一行とデュエルしていた男から粗方の事情を聞いた。

海音と櫂、そしてレナは、俺達がいる世界と良く似ている世界、つまりは並行世界の舞網市から次元転送装置のテスト運用の為に転送されたそうなのだが、予定では(櫂がいた)エクシーズ次元へ転送される予定が、何らかの不具合で俺達の世界へと転送されてしまったとの事。

で、その次元転送には莫大なエネルギーを使用する為、元の世界に戻るにはあと半日弱掛かるらしい。

まさか、この街にテロリストが暗躍している最中に転送されてくるとは思いも寄らなかったな、まあ3人の中で融合召喚専門のデュエリストがいないのが幸いだが、下手したらテロリストの餌食になっていたかも分からない。

その事を説明すると2人は青ざめていた、まあ融合次元のデュエリスト狙いとはいえ、人を簡単に銃殺する輩が潜伏していると聞いたら怖いどころの話じゃ無いからな。

 

「不幸だ…

何で俺がこんな目に…」

「まだ言うか。最初は兎も角、後々になってもやり続けたお前が悪い」

「フフフ、まだ反省していない様ですね…

もう一度殺りますか?」

「ふ、不幸だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

尚、全く反省していない変態(当麻)を、レナが引き続きデュエル(処刑)していったのは、言うまでも無い。

で、だ。

海音達がいる『舞網市』、其処はどんな場所なのか、『其処での俺達』がどんな奴か聞いてみたんだが…

まず『其処での俺』だが、まあ何と言うか原作ばりのガラスメンタルといった感じだった。

海音が初めて会った時のデュエルでの話だが、結構なダメージを負った途端に弱気になったとか、全く、闇のデュエルとかでも無いのに何で直ぐ諦めるかな、デュエルはLPが0を切ったり、デッキがすっからかんになったりするまで分からない物だろうが…

尚、当麻や一行、エレンに美琴、マリアは遊勝塾に加入しておらず、刃も未だLDSに在籍、雪乃も講師じゃなかったそうだ(簡単に言うと、原作アニメと同じ面子+海音)、そこら辺は俺が転生して来た影響なのかな…?

それと向こうの『舞網市』についてだが、それはまあこっちと余り変わらない状態で、どうやら向こうも舞網チャンピオンシップの、ジュニアクラスの全日程が終了し(優勝したのは零羅で、準優勝はタツヤだったとの事)、ジュニアユースクラスは2回戦の途中だそうだ。

余談だが、ニュースで俺が『完全決闘者』と呼ばれていた事が気になった海音に、そのネーミング元である『完全決闘』デッキを見せた所「こんなのどう対処しろと?」とドン引きされた、解せぬ。

 

まあそれは置いて、今、向こうの『舞網市』について、こっちと余り変わらないと言ったが、「余り」と含みを持たせた最大の理由が、向こうで流通しているカードだ。

こっちで流通しているカードは、アニメで登場したり、OCG化したりしたカードが殆どなんだが(流石に融合、シンクロ、エクシーズ関連のカードは流通していない、最近までこの世界で扱っているのLDSだけと言われていたし)、海音達が使っているカードはそれとはまったく違った。

此処からは推測だが、向こうの『舞網市』では、俺が遊士だった頃にデュエルモンスターズ、いや『遊戯王OCG』に迫る人気を博したカードゲーム『カードファイト!ヴァンガード』のカードがデュエルモンスターズのカードと化した物が流通しているんじゃないかと思う。

『遊戯王GXの世界』に十代として転生してから3世紀近く、カードゲーム=デュエルモンスターズの生活が余りにも長すぎた影響で直ぐにはピンと来なかったが、遊士だった頃には遊戯王OCG程では無いにしろ、ヴァンガードもやっていた(使っていたのは『根絶者』だ)から、黎明期から登場していたクランである『むらくも』のフレイムドラゴン達、『ぬばたま』の忍者達、そして『シャドウパラディン』の影の騎士達の姿を見て、きっとそうだと思ったんだ。

そんなヴァンガードのキャラクターがデュエルモンスターズに殴り込みを掛けている向こうの『舞網市』から来た海音達…

先に戦った一行達が羨ましい、俺もデュエルしたいぜ!

 

「海音」

「なんだ、遊矢?」

 

 

 

 

 

「おい、デュエルしろよ」

「良いぜ。でもさっき見せたデッキだけは止めろよな」

「分かった」

 

勿論さ、あれは『勝たなきゃいけない』場面でのみ使うべきデッキだ、このデュエルには余りにも相応しくない。

代わりに使うのは、このデッキだ!

 

「「デュエル!」」



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Ex12話_遊矢VS海音!並行世界のアイドル

いよいよ主人公対決です!


「「デュエル!」」

 

先攻 Kanon LP 4000 VS 後攻 Yuya LP 4000

 

お、海音の先攻か。

それじゃあ、お手並み拝見と行きますか。

 

「俺のターン!

俺は『BT(バミューダ・トライアングル)―プリティセレブ・シャルロット』を召喚!」

 

BT―プリティセレブ・シャルロット(オリジナルカード)

効果モンスター

水属性

魚族

レベル 4

攻撃力 1700

 

今回の海音のデッキは『バミューダ(トライアングル)』か、確か人魚アイドルのグループだったよな、養成学校もあるとか何とか。

で、そんな海音の場に出て来たのは、煌びやかなドレスを身に纏った人魚の少女、シャルロット。

 

「更に永続魔法『トゥインクル・パウダー』を発動!」

 

トゥインクル・パウダー(オリジナルカード)

永続魔法

1:自分フィールドに『トライアングル学園』または『プリズム・パール』が存在しない場合、自分フィールド上の『BT』モンスターの効果は無効になる。

2:このカードがフィールド上に存在する限り、自分フィールド上の『BT』モンスターは戦闘では破壊されない。

3:このカードがフィールドから墓地へ送られた場合、デッキから『BT』カード1枚を手札に加える。

 

「人魚達は海中に住む為地上ではまともに行動する事が出来ない。だがこれを尾に振る事で地上でも自由に行動が出来る足を得られる神秘の粉。トゥインクル・パウダーがフィールドに存在する限り、俺の場のバミューダ△は戦闘では破壊されない。但しバミューダ達は地上では美しい歌声は失う事になり、モンスター効果は無効になる」

 

海音の説明と共にシャルロットの、尾びれだった部分が人間の足へと変わり、シャルロットは人魚から人間の女の子になった。

人間の足が生える変わりに声を失うって、それ『人魚姫』じゃん。

 

「愛した存在が別の人と結婚したら海の泡に…

ってそれは、アイドルは恋愛禁止って良く言われるから無いと思うけど、歩くと足に激痛が走るなんて事は無いのか?」

「これはあくまで地上でライブしたり、プライベート等で使う物であって別にそういう設定は無いぞ。それに普通に靴やサンダルぐらい持っているに決まっているだろ」

 

デスヨネー、そんな裏設定があったら怖いわ。

それにしても自分のモンスター効果を無効にする代わりに戦闘破壊耐性を付けるのか、『神竜騎士フェルグラント』みたいな効果だな、まああれは表側表示モンスター1体のみを指定する上、ターン終了時までを限定としたフリーチェーン、挙げ句オーバーレイ・ユニットを1つ使うけどな。

 

「カードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

Kanon

LP 4000

手札 2

モンスター BT―プリティセレブ・シャルロット(攻撃表示)

魔法・罠カード トゥインクル・パウダー

        セット

 

「俺のターン!ドロー!」

 

お、この手札…

成る程なオッドアイズ、お前も俺と同じ想いなのか。

並行世界の舞網市から来た海音達、きっと、俺達と同じくデュエルアカデミアとの戦いが待っているんだろう、そんな彼らに、このメッセージを届けよう!

俺がランサーズの最高指揮官として、いや俺達ランサーズが4つの次元の侵略を目論むアカデミアとの戦いに臨む戦士として、思い描く『あるべき理想』を!

 

「Ladies and Gentleman!Boys and Girls!今宵この俺、榊遊矢が、Pararel Worldよりお越しいただいたゲストに向けて、とあるメッセージを送ります!ミスター火野、俺からの、いや、俺達からのメッセージを、受け取って頂きたい!」

「!?」

「まずは『EMドクロバット・ジョーカー』を召喚!」

 

EMドクロバット・ジョーカー

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 4

攻撃力 1800

 

海音が随分とびっくりした様子だったけど、そっちの俺も『エンタメデュエル』を信条としていた筈だよな?

まあいいや、続けるぜ。

 

「召喚したドクロバット・ジョーカーの効果発動!デッキから『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』を手札に加えます!

次に魔法『オッドアイズ・フュージョン』発動!」

「それにチェーンして永続トラップ発動!『デルタ・ブラスト』を発動!発動時に効果は無いからそっちの処理をどうぞ」

 

デルタ・ブラスト(オリジナルカード)

永続罠

『デルタ・ブラスト』の1、2の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用出来ない。

1:自分フィールドの『BT』モンスターがフィールドから手札に戻った場合にこの効果を発動出来る。フィールド上のモンスター1枚を破壊する。

2:墓地のこのカードを除外し、自分フィールドの『BT』カード1枚を対象として発動出来る。そのカードを手札に戻す。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動出来ない。

 

「では、手札の『オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン』と、フィールドのドクロバット・ジョーカーを融合!

2色の眼の龍よ!その碧の輝きを解き放ち、荒ぶる風で敵を惑わせ!融合召喚、『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』!」

 

オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン

融合・効果モンスター

風属性

ドラゴン族

レベル 7

守備力 3000

 

何か今発動した永続罠から不穏な気配しかしないけど、臆さずに動く!

 

「融合召喚したボルテックス・ドラゴンの効果発動!

ミス・シャルロットには、手札という名の控室に一旦お戻り頂きます!」

「控室か…

それは違うな」

「何と?」

「何故なら…

彼女らにとって手札もサイコーのステージの1つだからだ!『デルタ・ブラスト』の効果発動!自分フィールドのバミューダ△が手札に戻った時にフィールド上のモンスター1体を破壊する!更にそれにチェーンしてシャルロットの効果発動!フィールドのこのカードが手札に戻った時、フィールドのカード1枚を手札に戻す!勿論選択するのはどちらもボルテックス・ドラゴンだ!」

「成る程、彼女達のステージは、フィールドと言う名の正面ステージだけでは無い、両脇の通路すらも彼女達にとってはステージ、という訳ですね!良いでしょう、通します!よってチェーン2、シャルロットの効果でボルテックス・ドラゴンは手札、いやエクストラデッキに戻ります!その後チェーン1でデルタ・ブラストの効果処理ですが、対象がいなくなったので不発ですね」

 

バウンスをトリガーとした効果か、こりゃあ沢渡の奴にとっては天敵だな。

なら、

 

「では続いて儀式魔法『オッドアイズ・アドベント』発動!」

 

オッドアイズ・アドベント

儀式魔法

ドラゴン族の儀式モンスターの降臨に必要。『オッドアイズ・アドベント』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:レベルの合計が儀式召喚するモンスターのレベル以上になる様に、自分の手札・フィールドのペンデュラムモンスターをリリースし、自分の手札・墓地からドラゴン族の儀式モンスター1体を儀式召喚する。相手フィールドにモンスターが2体以上存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、自分のエクストラデッキの『オッドアイズ』モンスターもリリースの代わりに墓地へ送る事が出来る。

 

ライブは体力勝負、効果をタダで使わせる訳には行かないな!

 

「オッドアイズ・アドベントの効果で、俺は手札の『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』をリリースする事で、墓地の『オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン』を降臨させます!

2色の眼の龍よ!その鈍色の輝きを解き放ち、フィールドを圧殺せよ!儀式召喚、『オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン』!」

 

オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン

儀式・効果モンスター

地属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2800

 

「儀式召喚したグラビティ・ドラゴンの効果発動!ミスター火野、折角並べて頂いた舞台装置の数々ですが、暫しお引き取り願います!

バトル!グラビティ・ドラゴンでダイレクトアタック!」

「そうは行かない!手札から『BT―照れ隠しの微笑プーモ』の効果発動!相手モンスターの攻撃時にこのカードを捨てる事で手札からバミューダ△1体を特殊召喚する!俺は手札に戻ったシャルロットを特殊召喚し、バトルさせる!この効果で特殊召喚したモンスターの守備力は600アップする!」

 

成る程、バウンスによって効果を発揮するカードもあれば、逆に手札から誘発するカードもあるって訳か、だが!

 

「ですがグラビティ・ドラゴンの永続効果により、プーモの効果発動の際に500ライフポイント払っていただきます!ライブは体力がモノを言う場所、タダで観客の心を掴めるとは思わないで頂きたい!」

 

Kanon LP 4000→3500

BT―プリティセレブ・シャルロット 守備力 1300→1900

 

「ぐっ!これ位必要経費だ!」

「では改めてグラビティ・ドラゴンでシャルロットを攻撃!鋼鉄のマッド・カタクラズム!」

 

オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン 攻撃力 2800 VS BT―プリティセレブ・シャルロット 守備力 1900

 

「ぐっ!」

 

それにしても特殊召喚しつつバトルか、攻撃されるタイミングで誘発するにしてはやけにアグレッシブな効果だな。

 

「メインフェイズ2に入って、2枚目の、スケール4のオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンをペンデュラムスケールにセッティングし、カードを1枚セットしてエンドフェイズにオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンのペンデュラム効果発動!

自分自身を破壊し、デッキから『貴竜の魔術師』を手札に加えます!」

 

Yuya

LP 4000

手札 1(貴竜の魔術師)

モンスター オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン(攻撃表示)

魔法・罠カード セット

 

さて、海音の手札は3枚、うち2枚はグラビティ・ドラゴンでバウンスした『トゥインクル・パウダー』と『デルタ・ブラスト』、どちらもバミューダ△モンスターがいて初めて力を発揮するカードの様だ。

残りの1枚と、次にドローする奴がカギになるな…

 

「俺のターン!

マジックカード『ギャラクシー・サイクロン』!その伏せカードを破壊する!」

 

ギャラクシー・サイクロン

通常魔法

『ギャラクシー・サイクロン』の2の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。

1:フィールドにセットされた魔法・罠カード1枚を対象として発動出来る。そのカードを破壊する。

2:自分メインフェイズに墓地のこのカードを除外し、フィールドの表側表示の魔法・罠カード1枚を対象として発動出来る。そのカードを破壊する。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動出来ない。

 

Kanon LP 3500→3000

 

あら、折角セットした『神の宣告』が…

これじゃあグラビティを除去するカードが出て来ても防げないな。

 

「マジックカード『手札抹殺』!これで手札を入れ替える!」

 

手札抹殺(制限カード)

通常魔法

お互いの手札を全て捨て、それぞれ自分のデッキから捨てた枚数分のカードをドローする。

 

Kanon LP 3000→2500

 

此処で手札抹殺、これで活路を開くか。

だが『貴竜の魔術師』は手札か墓地にさえあれば効果を使える、こっちにとってもアド+1で助かるぜ。

 

「チューナーモンスター『BT―着ぐるみ七変化・アルク』を召喚!」

 

BT―着ぐるみ七変化・アルク(オリジナルカード)

効果モンスター/チューナー

水属性

魚族

レベル 3

攻撃力 400

 

恐らく今の手札抹殺で良いカードを引いたであろう、気合を入れなおした海音のフィールドに登場したのは、着ぐるみを着た人魚の少女、アルク。

それにしてもチューナーって事は、バミューダ△はシンクロ軸のデッキなのか?

 

「このカードの召喚に成功した時、墓地からバミューダ△1体を特殊召喚する!シャルロットをもう1度特殊召喚!」

 

Kanon LP 2500→2000

 

蘇生能力を持ったチューナーって、クロウが持っていた『BF―極北のブリザード』か!

 

「レベル4のシャルロットにレベル3のアルクをチューニング!あらゆる着ぐるみを着こなす名優を今こそ着ぐるみを脱ぎ捨てて真の姿を現せ。シンクロ召喚!レベル7!『BT―着ぐるみアイドル・アルク』!」

 

BT―着ぐるみアイドル・アルク(オリジナルカード)

シンクロ・効果モンスター

水属性

魚族

レベル 7

攻撃力 2500

 

その効果で並び立った2体によるシンクロ召喚の演出と共に登場したのは、着用していた着ぐるみを外した、アルクの姿。

 

「アルクの効果発動!シンクロ召喚に成功した時、フィールド上のカードを手札に戻し、攻撃力をエンドフェイズまで500アップする!戻すのは勿論オッドアイズ・グラビティ・ドラゴンだ!そろそろ退場願おうか!」

 

Kanon LP 2000→1500

BT―着ぐるみアイドル・アルク 攻撃力 2500→3000

 

わお、此処に来てグラビティ・ドラゴンを除去されたか、しかも蘇生出来ない様にバウンス…

 

「バトル!アルクでダイレクトアタック!」

「受けましょう!」

 

Yuya LP 4000→1000

 

「俺はこれでターンエンド。エンドフェイズにアルクの攻撃力は元に戻る」

 

BT―着ぐるみアイドル・アルク 攻撃力 3000→2500

 

Kanon

LP 1500

手札 1

モンスター BT―着ぐるみアイドル・アルク(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

グラビティ・ドラゴンをバウンスされはしたが、それまでに海音のライフを2500も払わせる事が出来た、後は、海音のフィールドにいるアルクをどう突破するか、だ。

幸い、海音のフィールドに魔法・罠カードは無い、カウンター罠等の妨害を受ける心配は無いと言って良いかも知れないが、恐らくあのアルクも、バウンスに対応した効果を持っている筈、となれば…!

 

「俺のターン!ドロー!」

 

よし、行ける!

 

「俺は今引いた魔法『ペンデュラム・コール』を、手札のグラビティ・ドラゴンを捨てて発動します!」

 

ペンデュラム・コール

通常魔法

『ペンデュラム・コール』は1ターンに1枚しか発動出来ず、『魔術師』ペンデュラムモンスターのペンデュラム効果を発動したターンには発動出来ない。

1:手札を1枚捨てて発動出来る。カード名が異なる『魔術師』ペンデュラムモンスター2体をデッキから手札に加える。このカードの発動後、次の相手ターン終了時まで自分のペンデュラムゾーンの『魔術師』カードは効果では破壊されない。

 

「ペンデュラム・コールの効果で、俺はデッキからスケール1の『竜脈の魔術師』とスケール8の『竜穴の魔術師』を手札に加え、そのままペンデュラムスケールにセッティング!」

「来るか!」

 

ペンデュラムスケール(青):1(竜脈の魔術師)

ペンデュラムスケール(赤):8(竜穴の魔術師)

 

「これでレベル2から7のモンスターが同時に特殊召喚可能!

揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!

ペンデュラム召喚!出でよ、我が僕のモンスター達よ!

レベル4、華麗なる軽業師、EMドクロバット・ジョーカー!そしてレベル7、世にも珍しき2色の眼を持ちし竜『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2500

 

このままバトルすればアルクを戦闘破壊した上で『バトルフェーダー』等の手札誘発が無ければドクロバット・ジョーカーによるダイレクトアタックが決まって勝利、だけどまだまだ動く!

 

「次に2枚目のオッドアイズ・アドベントを発動!」

「墓地のデルタ・ブラストの効果を発動!このカードを除外してフィールド上のバミューダ△を手札に戻す!俺はアルクを選択!」

 

アルクをエクストラデッキに戻した?

何の考えも無しにフィールドをがら空きにするとは思えない、という事はアルクもまた、バウンスをトリガーとした効果を…?

 

「今フィールドに現れたオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンをリリースし、再び降臨せよ!これが、ペンデュラム召喚のその先、ペンデュラム儀式!オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン!」

「だがこっちもアルクの効果を発動!このカードがフィールドを離れた場合、手札からバミューダ△を特殊召喚する!人と時代と世界、全てに愛された星の歌姫。『BT―トップアイドル・リヴィエール』!」

 

BT―トップアイドル・リヴィエール(オリジナルカード)

効果モンスター

水属性

魚族

レベル 8

攻撃力 2900

 

Kanon LP 1500→1000

 

やっぱり持っていたか、しかもそれで最上級モンスターを出してくるとはな…

アルクの効果で出て来たのは、正に星の歌姫という表現が似合う人魚の少女、リヴィエール。

この攻撃力を突破出来るモンスターは、今の俺のフィールドにはいないし、デッキの中にも…

いや、『アレ』は止めておこう、この状況ではその力を十分に発揮出来ないし、何よりこのステージには相応しくない、となれば!

 

「更に、墓地の『貴竜の魔術師』の効果発動!

今出したグラビティ・ドラゴンのレベルを3つ下げ、このカードを守備表示で蘇生します!」

 

貴竜の魔術師

ペンデュラム・効果モンスター/チューナー

炎属性

魔法使い族

レベル 3

守備力 1400

 

オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン レベル 7→4

 

今度はコイツだ!

 

「俺は、レベル4のドクロバット・ジョーカーに、今出したレベル3の貴竜の魔術師をチューニング!

2色の眼の龍よ!その赤き輝きを解き放ち、味方に活力を、敵に絶望を与えよ!ペンデュラムシンクロ!レベル7!『オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン』!」

 

オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン

シンクロ・効果モンスター

炎属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2500

 

「シンクロ召喚したメテオバースト・ドラゴンの効果発動!

このカードの攻撃権を放棄する事で、ペンデュラムスケールにセットされた竜穴の魔術師を守備表示で特殊召喚!」

 

竜穴の魔術師

ペンデュラム・通常モンスター

水属性

魔法使い族

レベル 7

守備力 2700

 

さあて、シメはコイツ!

 

「そして俺は、メテオバースト・ドラゴンと竜穴の魔術師でオーバーレイ!2体のレベル7モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!ペンデュラムエクシーズ!2色の眼の龍よ!その青き輝きを解き放ち、絶対零度で敵を制圧せよ!『オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン』!」

 

オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン

エクシーズ・効果モンスター

水属性

ドラゴン族

ランク 7

攻撃力 2800

ORU 2

 

一か八か、このバトルフェイズで決める!

 

「バトルフェイズに入ります!グラビティ・ドラゴンで攻撃、する時にアブソリュート・ドラゴンのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!

グラビティ・ドラゴンの攻撃を無効にします!

その後、オーバーレイ・ユニットとして墓地へ送られたメテオバースト・ドラゴンを攻撃表示で蘇生します!」

「ならその効果にチェーンしてリヴィエールの効果発動!手札のバミューダ△を1枚捨て、フィールド上のバミューダ△2体まで選び攻撃力をエンドフェイズまで800アップさせる!」

 

BT―トップアイドル・リヴィエール 攻撃力 2900→3700

 

攻撃力を上げたか、やっぱり『アレ』を出さなくて正解だった、もしアブソリュートじゃなくて『アレ』を出していたら負けていた。

 

「カムバック・アーンド・リボーン!メテオぉぉぉぉ!

かっとビングだ、俺!続いてアブソリュート・ドラゴンでリヴィエールを攻撃!氷結のブリザード・イラプション!」

「自爆特攻か!面白い!ならばこの一撃を喰らえ!」

 

オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン 攻撃力 2800 VS BT―トップアイドル・リヴィエール 攻撃力 3700

 

Yuya LP 1000→100

 

アブソリュート・ドラゴンを自爆特攻させた事に何かあると勘繰る海音、そう、これこそが、勝利への布石だ!

 

「墓地へ送られたアブソリュート・ドラゴンの効果発動!エクシーズ召喚されたこのカードが墓地へ送られた場合、エクストラデッキから『オッドアイズ』を呼び出す事が出来ます!

再び現れよ!オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン!

特殊召喚されたボルテックス・ドラゴンの効果発動!リヴィエールには一旦ステージからお下がり願います!」

 

これで、仮にリヴィエールのバウンス効果があったとしても、グラビティがいる以上、俺の勝ちは確定だ!

 

「もう何もする事が無いな…来い!」

「メテオバースト・ドラゴンでダイレクトアタック!灼熱のバーニング・インフェルノ!」

 

Kanon LP 500→-2000 LOSE

 

WINNER Yuya



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Ex13話_伝える…!並行世界からの来訪者へのメッセージ

遊矢からのメッセージとは一体何か…


いやぁ、勝利したとは言え、残りLPが100にまでなる、ギリギリのデュエルだった。

此処まで追い込まれる白熱したデュエルは、そうだ、海音達と同じく異世界(海音達は『並行世界』だが)から来た大輔とのデュエル以来だな。

あの時はアクションデュエルでやったけど、アクションカードを使った直後で無防備な俺に対して大輔がダイレクトアタックを躊躇したから勝ちを拾った(後で聞いてみたら「何かあるんじゃねぇかと思った」そうだ)と言える。

今回も、グラビティ・ドラゴンの効果で徹底的にライフポイントを削った事で、あの場面でのリヴィエールの(あったかも知れない)バウンスによる誘発効果を阻止した(尤もメテオバースト・ドラゴンがいたから発動出来ないけど)事で勝利した。

まだまだ色んな世界があるな、俺と初見で渡り合う様な存在が、俺を満足させてくれる『ライバル』と言える存在がこんなにもいるなんて、本当にびっくりだよ。

だからこそ、デュエルモンスターズを始めて3世紀経った今でも俺はデュエルが大好きだ、デュエルを心の底から愛している。

一時その想いを忘れかけた事もあったけど、いや、だからこそ、この想いは未だ色あせない。

と、そうだ、まだ海音達に送るメッセージを言っていなかったな。

それに、デュエルが終わったと言うのにその挨拶も済んでいない。

 

「ミスター火野。ガッチャ!実に最高のデュエルでした!」

「こっちもだ。ありがとうございました、良いバトルでした」

「はい!」

 

とりあえず十代の時の決め台詞と共に挨拶と握手を交わして、本題に入る。

 

「さて、デュエル中は制限時間の事もあって貴方達へメッセージを送る事叶いませんでしたが、少しお時間宜しいでしょうか?」

「メッセージ?」

 

俺の問い掛けにポカンと言いたげな様子を見せる海音。

あれ、俺のターンの開始時にメッセージを送る、と言ったよな、結局今になるまで言えなかったけど。

ともかく大丈夫そう、か?

 

「はい。先程のデュエルでも披露いたしましたが、俺が今回用いたデッキは、融合、儀式、シンクロ、エクシーズ、そしてペンデュラム、そう、デュエルモンスターズに存在する、ありとあらゆる召喚方法を取り入れた構築となっております。これが何故かお分かり頂けますでしょうか?」

「何故かって…

ただ単に全ての召喚法が可能なデッキだからじゃないの?」

 

まあ、それもあるけどな。

 

「40点、と言って置きましょう。確かにオッドアイズというカテゴリは、あらゆる種類のモンスターが揃っておりますし、ハマれば1ターンに全ての召喚方法を披露する事も可能です、それを活かし、『創星神Sophia』を速攻で呼び出す、なんて事も夢ではないでしょう。

 

ですが、可能だからと言ってバカ正直に導入する必要はあるでしょうか?

答えは否、必ずしもそうしなければならないという事はありません。

例えば先程シンクロ召喚したメテオバースト・ドラゴン、その効果はペンデュラムスケールにセットされたモンスターを呼び出すという物。ですがその代償として自らの攻撃権を消費してしまいます、故にそれを活かしてレベル7モンスターを呼び出し、エクシーズ召喚の素材に使ってしまおうというのは至極当然の考えと言えるでしょうが、ならばペンデュラムチューナーを呼び出してシンクロ召喚の素材にしたり、融合素材にしたりしても良い筈です、むしろペンデュラム召喚の長所を生かす上ではそちらの方が効果的ですし、其処からまた新たなるエンタメデュエルの形が広がる、俺はそう思っています。

 

では何故、俺はこのデッキに、あらゆる種類のオッドアイズ達をバカ正直に導入しているか。

それは、俺が今後臨んでいくであろう戦いに向けてのある想いが込められているからです。それを今、貴方達Pararel Worldからのゲストに向けて、メッセージとして送ります」

 

そう、これこそが俺がこの『魔術師オッドアイズ』をこの様な構築にした理由だ。

 

「つまり何が言いたいんだ?」

「俺にとって相棒と呼べる存在は嘗て、4つの次元の事、アカデミアの侵略の事を聞いて、こう話しておりました。『随分と排他的な事だ。アドバンス召喚や儀式召喚、融合召喚やシンクロ召喚、エクシーズ召喚やペンデュラム召喚、どれが優れていてどれが劣っているかなど、そもそもの論点が違う。其々の召喚法には其々の利点がある、それらを組み合わせてこそデュエルモンスターズだと言うのに…』と。俺もそう思います。其々の召喚法には其々利点がありますが、一方で其々の召喚法は、別の召喚法に繋げる手段にもなります。かの有名な『カップ麺早食いノーデン』という呪文も、其処からランク4エクシーズモンスターを呼び出す素材を手軽に揃えられるからこそ猛威を振るったのですし、俺自身も先程言った通りメテオバースト・ドラゴンからランク7エクシーズモンスターを呼び出すギミックを導入しております。逆もまたしかりで、融合モンスターの中にはシンクロモンスターやエクシーズモンスターを指定した物が幾つか存在します。流石にエクシーズ召喚からシンクロ召喚に繋げるのは、エクシーズモンスター自身がレベルを持たない以上、直接は無理ですが」

『遊矢…』

 

自らの言葉に俺が共感していた事を改めて知ったアストラルが何処か感慨深げに俺の名を呼ぶ。

と、話がちょっと逸れたか。

 

「この様に、融合、儀式、シンクロ、エクシーズ、そしてペンデュラム、様々な種類のモンスターが互いに支え合う事で、デュエルはより白熱した、面白い物となり得るのです。4つの次元もまたしかり、これまで各次元ならではの召喚法しか使って来なかった各次元の人々が、他次元と交流して行き、其々の文化を取り入れ、分け与える事で互いに切磋琢磨し、更なる発展を遂げて行くのだと、それこそが4つの次元のあるべき姿だと、俺は思いますし、それを体現したのが今回使用した『魔術師オッドアイズ』デッキなのです。ですが愚かなるアカデミアは、デュエリストの風上にも置けぬアカデミアのデュエル戦士はそれが分からず、他次元に対する侵略を行い、エクシーズ次元を荒らし回った。何とも痛ましく、嘆かわしく、腹立たしい事です」

 

そして、俺は、伝える。

 

「ミスター火野。今回の俺とのデュエルでシンクロ召喚を披露されておりましたが、一方で我が一番弟子エレンとのデュエルで用いられた『ぬばたま』デッキは、エクシーズ召喚を軸とした物。様々な召喚法を駆使する貴方は言わずとも分かっておいででしょう。

であればこのメッセージを、ミスター三和やミス月影、そして貴方達の帰りをお待ちしておられる方々にお伝え願いたい。

 

貴方達が滅するべきはアカデミアの腐った思想であり、討つべきはアカデミアのデュエル戦士です。融合モンスターや関連カード、それらを生み出した融合次元その物に罪は無く、むしろ手を取り合うべき存在なのです。

それをはき違えないで頂きたい、と」

「とりあえずこれだけは言わせて貰おうか…

長いわ!」

「え?」

「さっきから黙って聞いていたが長すぎて結局何が言いたいのか解らないのだけど。つまり要するに1つの召喚法に孤立していたらデュエルの新たな可能性を引き出せないって事か?」

 

あら、前置きが長すぎて上手く伝わらなかったか、これは俺の落ち度だな。

少し、俺自身の理想に酔っていた所があるかも知れない、これじゃあ後々、他次元の人々を説得するのも苦労する事になるな、今後気を付けないと。

 

「申し訳ありません、前置きが長すぎましたね。一言で纏めましょう。

俺からのメッセージ、それは、4つの次元は『友情 YU-JYO』の名の下に『結束 UNITY』すべきであり、それの障害となる危険思想を持ったアカデミア『のみ』を討つべきである、という事です」

「つまり、敵のだからと言って、その全てが悪いって訳じゃ無いって事を言いたいのか?」

「はい。それを決して忘れないで頂きたい」

「だったらそう言えばいいじゃないか?わざわざ分かりにくい例えしなくて」

 

まあそうなんだけど、

 

「俺も1人の中学2年生、という事です」

「なるほど。ただの中二病か」

 

おい誰だ『黙れ300歳オーバーのジジィ』とか言ったの!

肉体的には中学2年生だから中二で間違い無いだろ!

 

「そうだ。お前にもう1つだけ言っておく事がある」

「何でしょうか?」

「このデッキだが実はこのデッキの実力の殆どを見せられなかったんだよな。ちなみにこのデッキはどちらかと言えばお前のデッキに近い形のデッキなんだよなこれが。だから、もし次戦う時があったら、その時はこのデッキの本当の力を見せてやる」

「おいそれって…」

 

シンクロ召喚だけじゃ無い、融合召喚やエクシーズ召喚、ひょっとしたらペンデュラム召喚も駆使するって事だよな!

次があれば、それらも見てみたい物だぜ!

 

「さてと…

デュエルも終わった事だし、皆の所に戻るか」

 

デュエルも終わったので、俺達が皆の所へ戻ると、

 

「バトル!モンスター5体でダイレクトアタック!」

「ぎゃあああああああああああああああ!!!!!」

 

レナによるドスケベ(当麻)デュエル(処刑)は終わっていなかったw

 

------------

 

海音とのデュエル、その後で海音達に(物凄く長ったらしい)メッセージを送ってから数時間後、海音達をこの世界へと転送させた装置のエネルギー充填が完了し、3人は元の世界に帰る事となった。

尚、その間にもレナによる当麻(ドスケベ)処刑(デュエル)は続いた(笑)事で、当麻は深い眠りについた。

時折「不幸だ…」と言っているので死んではいないだろうし、放って置いて大丈夫だなw

 

「じゃあな、海音達。達者でな」

「ああ、色々世話になったな」

「うむ!この男権現坂、お主らの武運長久を祈っておるぞ!」

「皆、向こうの世界でも元気でね!レナ、その、当麻には私からもキツーく言って置くから!」

「はい!思う存分殺っておいてください」

「おい櫂!今度会った時にはリベンジさせて貰うかンなァ!」

「いいぜ!尤も今度も勝つのは俺だがな」

「海音兄ちゃん、で良いんだよな?さっきは悪かった。今度またデュエルしようぜ!次はまた別のデッキで、な!」

「何故疑問形なのかあえて聞かないでおこう。ならその時はこっちも別のデッキで挑む事にしよう」

 

互いに別れの挨拶を交わしたのを最後に、3人はこの世界を飛び立った。

皆、またな!




今回でAMsさんの小説『遊戯王ARC-V 次元漂流者』とのコラボは終了となります、其処でAMsさんに、この場をお借りして。

コラボして頂き本当にありがとうございました!


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5章『突入!歪みだらけのシンクロ次元!』
61話_異世界での出会い


今話からいよいよシンクロ次元に突入です!


零児から渡されたカード『ディメンジョン・ムーバー』を発動した瞬間、俺の視界は眩い光に包まれた。

暫くそのままの状態だったが、ある時突然、視界が晴れ、何処かの路地裏みたいな光景に変わっていた。

周囲には柚子、当麻、一行、権現坂、そしてエレンといったARC-Vメンバー。

他のメンバーはどうしたかとスマホを起動すれば、まず画面の中央には俺達を示しているであろう6つの光点、其処からそんなに離れていない2地点に、俺達を示す場所と同じく6つずつの光点、大分離れた3地点にも同じく6つずつの光点があった。

レーダーの情報が確かなら、全員分の転送は成功したみたいだな。

 

「転送は成功したみたいだ。皆、体調に変化は無いか?」

「うん、大丈夫よ」

「何のこれしき。この男権現坂、この程度でへこたれる様な生活は送っておらん」

「おォよ!俺は大丈夫だぜ!」

「ああ、遊矢兄ちゃん!」

「流石に転送先が川の中ってのは無かったな」

『当麻、幾ら何でもそれは無いと思うけど…』

 

よし、ARC-Vは大丈夫そうか、そしたら他の部隊はどうだろうか…

そう思い立ち、各部隊との連絡を取る。

まずはV-CRANの零児からだ。

 

「こちらARC-V。V-CRAN、応答せよ」

『了解、こちらV-CRAN。ARC-V、そちらの様子は?どうぞ』

「ARC-V、異常なし。何処かの路地裏に到着した様です。V-CRAN、そちらはどうですか?どうぞ」

『V-CRANも異常なし。こちらも同じ様な場所だ』

 

零児と連絡がとれたし、その際レーダーで、俺達を示していた光点の、直ぐ近くの地点の光点が反応していた事から、座標もばっちりだな。

次は第1部隊のバージルだな。

 

「了解です。第1部隊、応答せよ」

『了解、こちら第1部隊だ。隊員達に異常は無い。場所は地下街の様な場所と言えば良いか。無線が繋がっている関係から、深さはそれ程無さそうだ』

 

第1部隊とも、連絡、座標(もう1つの、俺達から然程離れていない地点)、共にOKだ。

続いて第2部隊のダンテ。

 

「了解。第2部隊、応答せよ」

『Yes Boss、こちら第2部隊。Memberに異常は無いぜ。此処はどっかのunder the bridgeみてーな場所だな』

 

第2部隊の座標は、俺達の場所から真北、といった所か。

今度は第3部隊のトリッシュだ。

 

「OK。第3部隊、応答せよ」

『分かったわ、隊長。こちら第3部隊。隊員達に異常は無いわ。今ビルの物陰にいるわ』

 

第3部隊の座標は、俺達の場所から南西方向の場所か。

よし、最後は第4部隊の雪乃だ。

 

「了解。第4部隊、応答せよ」

『はい、遊矢君。こちら第4部隊。隊員達は異常無しよ。此処は駐車場かしらね』

 

第4部隊の座標は、第2部隊と然程離れていない、か?

 

「分かった。そしたら各部隊に指令を送る。第1~第4部隊はこのシンクロ次元の都市と思しきこの街の調査に当たれ。V-CRANも他部隊同様調査を行いつつ、我々ARC-Vと合流せよ。その間に俺の方でこの都市のネットワーク接続を試みる。その他、指令に関して要望があればどうぞ」

『じゃあ良いか?第2部隊は、under groundなplaceの調査をしたいんだが』

『そしたら、第4部隊も同行して良いかしら?ある程度の人員は必要だと思うけど』

『OK、ミス藤原。そしたら第2、第4部隊はそっち方面の調査をするぜ』

 

大丈夫かな、聞いていた情報によればその辺の取り締まりが厳しい筈、治安組織に捕まるリスクを考えると…

いや、捕まったら捕まったで怪我の功名になるかも知れない、拘置所内の様子だとか、拘置されている人達からの情報も掴めるかも分からないからな。

勢力の裏情報は、案外こういった場所からしか取れない物だ、『虎穴に入らざれば虎子を得ず』の精神で行って貰うか!

 

「了解した。では任務開始!」

『了解!』

 

さて、指令を送った所でシンクロ次元の情報を整理しないとな。

シンクロ次元、その名の通りシンクロ召喚が大いに発展した世界。

その中心部には『シティ』と呼ばれる大都市が繁栄しているけど、その実、上流階級『トップス』とそれ以外『コモンズ』との無茶苦茶と言わんばかりの格差が(外から見ると)問題になっているそうだ。

そのトップス、シティでも全人口の1%しか存在しないのだが、シティの資産の実に99%も有していて、文字通りの贅沢三昧な生活を送っているのに対し、コモンズは極貧生活を余儀なくされ、生活の為に犯罪に手を染めてしまう事もあるのだとか。

その格差は治安組織『セキュリティ』の対応にも現れていて、コモンズはトップスの居住区に入っただけで罪に問われ、逆にトップスがコモンズの居住区等で行われている違法なデュエルを観戦していたとしても罪に問われず、逆に保護対象となるんだとか。

尚、シティではライディングデュエルがデュエルの主流となっており、ハイウェイには専用レーンが併設されているらしい。

なんか聞けば聞くほど、俺が遊星だった頃に住んでいたネオドミノシティと(特に俺がシティに入ったばかりの頃に)良く似ている。

ともあれ、レオ・コーポレーションで零児から聞いた事前情報はこれ位だな。

他にも、ユーゴから色々聞いて、その内容に俺は仰天した物だが、と、余り考え込むのもアレだな、この辺は後にしよう。

 

「さて、V-CRANとの集合場所も確保したい。行こうか、皆」

『了解!』

 

------------

 

『―デュエルが開始されます。ルート上を走行している一般車両は、直ちに退避して下さい。繰り返します―』

「やっぱり此処はシンクロ次元、その中心地たる『シティ』か…」

 

路地裏から出た俺達の耳にまず飛び込んで来たのは、ライディングデュエル開始を告げるアナウンス、次元転送が予定通り行われた事を物語るアナウンスだった。

 

「此処がシンクロ次元の『シティ』…

近未来的って言うのかな、そんな場所ね…」

「うむ。しかしどうも居心地が悪いな…」

「お、デュエルの中継が始まったぜ!どんなデュエルが、どんなシンクロモンスターが出て来るんだ!?」

「おい当麻。お前よそ者っぽさ丸出しだぜ、ちィと気を付けなァ」

「まあまあ一行兄ちゃん、折角なんだし」

 

当麻の余りの興奮っぷりに呆れながらも、エレンの言葉にそれもそうかと納得しつつ、その中継映像を見てみる。

デュエルはセキュリティのライディングデュエル専門部隊『デュエルチェイサー』と、恐らくコモンズ出身と思われるDホイーラー(デュエルディスクを搭載したバイク『Dホイール』のドライバー、と言えばいいか)による物だが、遊星だった頃に『遊戯王5D’sの世界』でライディングデュエルを間近で見て来た俺には目を疑う光景ばかりが映っていた。

先に任意のチェックポイントを通過した方が先攻、と此処までは同じだったんだが、両者ともに『SP(スピードスペル)』(ライディングデュエル専用で使える魔法カードの事だ)は一切なく、通常の魔法カードを使っており、にも関わらずそのペナルティであるセルフバーンは一切なかった。

というか『SP』を使うにあたって必要と言えるスピードカウンターの存在すらなかった。

まあぶっちゃけ言うと『バイクに乗ってやるだけの普通のデュエル』と化していた。

 

『止めろ!こんなのライディングデュエルじゃない!ボクの知っているライディングデュエルはバイク要素があるからこその戦略が…!』

『理解に苦しむ。デュエルに集中出来る訳が無い』

「危ないって!降りてデュエルした方が良いって!」

「尤もだ。何故態々バイクに乗りながらデュエルを…」

「ホントそれだよな、柚子姉ちゃん。デュエルアンカーぶっぱして拘束した方が良いと思うんだけど」

「だなァ。訳が分かンねェ…」

「それ用の専用レーンまで作るなんてさ、税金の無駄じゃん」

 

うん、本当にそう思う、こんなのをライディングデュエルと呼んじゃいけない。

と俺以外の皆が突っ込み、俺が心中で嘆いているのを他所にデュエルは続き、

 

『『ゴヨウ・プレデター』でダイレクトアタック!』

『うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

 

最後はデュエルチェイサーが出したシンクロモンスター『ゴヨウ・プレデター』によるダイレクトアタックで決着、相手は逮捕となった。

『ゴヨウ』と聞くと、牛尾が使っていたシンクロモンスター『ゴヨウ・ガーディアン』を思い出すな、あれは禁止カードになって当然だと言えるスペックだ。

と、ちょっと見入り過ぎたか、一行がさっき当麻に突っ込んでいた通り、余りよそ者っぽい振る舞いをしては駄目だ。

 

「さて、行こうぜ皆」

「其処の少年少女達。アンタら、見ない顔だな」

 

そう思い、この場を離れようとしたら、懸念していた通りの事が起こった。

俺達の様子に何かしらの違和感を覚えたのだろう、1人の男らしき声の主が、呼び掛けて来た。

その声の方に振り向くと、

 

「『シティ』は初めての様だな。何か困った事があったら、相談に乗るぞ」

 

その男、銀髪のオールバックにサングラスを掛けた『ダンディ』という言葉がピッタリな顔立ち、身に纏うブラックスーツがやけに様になっている長身、そしてどっかの『魔術師』の名を冠したスタンド使いの様な渋い声…

 

「俺の名はシュドナイ・デュナス。『シティ』の一角でデュエルバー『バルマスケ』を営んでいる。良かったら、ウチで話を聞こう」

 

そして今しがた名乗った名前と、何処からどう見ても某仮面舞踏会の将軍『千変』な男、シュドナイ。

彼との出会いが、俺達の運命を動かしていく事になろうとは、この時まだ誰にも分からなかった。



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62話_シュドナイという男(デュエリスト)

「此処が俺の店、デュエルバー『バルマスケ』だ。営業時間外だが構わん、さあ入ってくれ」

「あ、はい」

 

シンクロ次元の『シティ』に降り立った俺達、そんな俺達に声を掛けて来たシュドナイさんに誘われ、彼が営んでいるというバーに案内された。

まあランサーズメンバーである俺達の立場以前に、知らない人の誘いにホイホイ付いて行くのはどうなんだと小学生にすら突っ込まれそうだが、300年もの人生を歩んで来た俺の、その間ずっとデュエリストとして活動して来た俺のカンが、彼を大丈夫だと告げていたから、俺達はそれに従う事にした、どの道V-CRANや第1部隊と待ち合わせる場所が欲しかったし(その件で聞いてみたら「後でちょっと頼みごとがある、受けてくれたらいいぞ」と条件付きながら快諾してくれた)。

ともかく彼に促される形で店内に入った俺達、その目に映った店内の光景は、所謂ゆったりと酒を嗜むのが目的のオーセンティックバーというよりは、小洒落たスポーツバー、といった感じだった。

様々なドリンクを並べた棚を背にしたカウンター、と此処までは一般的なバーだが、その後ろには何やら機械的なテーブルが十数台位並べられ、そして壁際にはスクリーンが掛けられていた。

それにしてもこのテーブル、まさか…?

 

「そのテーブルが気になるか?まあ、今となっては殆ど見かけない様な代物だからな。ここいらに並んでいるテーブルは全て、デュエルテーブルだ」

「デュエルテーブル?何だそれ?」

「聞いた事が無いわね…」

「俺も分かンねェなァ…」

「名前に『デュエル』ってつけられているからデュエルに関わる設備って事だよな…?」

 

シュドナイさんの説明にも分からないと言いたげな柚子、当麻、一行、そしてエレン。

一方で、

 

「デュエルテーブルか。我が権現坂道場の蔵に確か保管されていた様な…

結構な骨董品だったと思うが…」

「確かに、今じゃお目にかかる事は殆ど無いよな」

 

デュエルモンスターズが『遊戯王OCG』だった頃の世界から来た俺は無論、どうやら道場に保管されていたらしい権現坂もピンと来ていた。

その様子に、

 

「ははは、現代の少年少女には、名前を言ってもピンと来ない代物って訳か。まあ今はデュエルディスクを用いたスタンディングデュエルですらややマイナー、主流はDホイールを用いたライディングデュエルだからな…」

 

シュドナイさんは寂し気な様子で苦笑いしていた。

 

「まあ其処のちびっ子の予想通り、このデュエルテーブルは文字通り『デュエルする為の一通りの機能を搭載したテーブル』だ。先攻後攻のオートチョイス、各種効果処理や進行、ソリッドビジョンも完備している。まあその辺はデュエルディスクにも搭載している物だし、第1こいつはオートシャッフルに対応していないが」

「何でそンな古っちくて不便な物体を所狭しと並べてンだ?」

 

シュドナイさんの説明に、いの一番に突っ込んだのは一行だ。

まあ今となってはそういった面倒くさい動作をオートでやってくれるデュエルディスクがあるのに、態々そんな不便な物を並べるという考えが理解出来ない、というのも分からなくはない。

其処はデュエルディスクを用いたデュエルが当たり前となった現代人の感覚、と言えばいいか。

 

「確かにコイツは古臭くて不便だ。ルール処理等は機械がやってくれるが、シャッフルは自分の手でやらなくてはならない。其処にイカサマの余地がある以上カットという形で、自分のデッキを他人に触らせなければならない。人の手垢を付けられる事に苦痛を覚える奴もいるだろう。だが、この決して大きくないテーブルで向かい合い、何処を境目にカットするかで最初の駆け引きが生まれる。そして対峙する相手デュエリストのプレイング、表情、口調、其処からどんな動きをして来るか、自分はどんな動きをすればいいかを考える。それこそがデュエルの原流って物じゃないか?お手軽なスタンディングデュエルや、乗り物で移動しながら出来るライディングデュエルも良いが、偶にはそんな忙しないデュエルから目を背け、このテーブルでゆったり、ドリンク片手に、時には軽食をつまみながらデュエルするというのも、中々良い物だぞ。此処バルマスケも、そんなテーブルデュエルを売りにしている」

 

シュドナイさんの説明に納得したかの様に「へー」と呟いた一行達。

あ、ドリンク片手に、とか軽食をつまみながら、と言っているけど俺が遊士だった頃、ショップデュエルでそれは厳禁だったぞ。

 

「さて、お前さん達と出会ったのも、此処に案内したのも何かの縁だ、良かったら俺とデュエルしてくれないか?」

 

と、心中で突っ込んでいると、シュドナイさんからデュエルの誘いが来た。

これが、さっき言っていた頼み事かな?

まあ良い、

 

「はい、喜んで」

「そうか、ありがとう。そっちからは誰が出ても構わないぞ」

「そしたら遊矢、私から出ても良いかな?」

「柚子?ああ、良いけど」

 

その勝負、受けて立つぜ!

 

------------

 

「「デュエル!」」

 

先攻 Sydonay LP 4000 VS 後攻 Yuzu LP 4000

 

「俺のターン。先攻はドロー無し。

まずは手札の『バスター・ブレイダー』を墓地へ送って魔法『ワン・フォー・ワン』発動」

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

急遽(テーブルデュエルで)始まった、柚子とシュドナイさんによるデュエル、先攻となったシュドナイさんが最初に発動した魔法、というかそのコストとなったカードに、俺は首を傾げた。

バスター・ブレイダーって遊戯さんがエースの一角としていたカードで、融合モンスター『超魔導剣士―ブラック・パラディン』の素材だった筈だよな、何でそれがシンクロ次元に?

 

「ワン・フォー・ワンの効果で、デッキから『破壊剣士の伴竜』を守備表示で特殊召喚」

 

破壊剣士の伴竜

効果モンスター/チューナー

光属性

ドラゴン族

レベル 1

守備力 300

 

流石にシンクロ次元のデュエリスト、メインデッキにチューナーは入っているよな。

色々と疑問に思っている俺を他所にシュドナイさんのフィールドに登場したのは、白い体毛に覆われた6本足の、可愛らしいドラゴンの子供。

伴竜って事はその『破壊剣士』モンスターに付き従っている設定なんだよな、その破壊剣士ってどんなモンスターだ?

 

「今出した伴竜をリリースして効果発動。

俺の墓地から『バスター・ブレイダー』を攻撃表示で蘇生する」

 

バスター・ブレイダー

効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 7

攻撃力 2600

 

破壊剣士ってバスター・ブレイダーの事かよ!?

バスター・ブレイダーってドラゴン族と対峙すると攻撃力が上がる効果を持っていて『竜破壊の剣士』と謳われていた筈、それが何故、幼いとは言えドラゴンを連れているんだ?

何にせよ、シュドナイさんのデッキはシンクロ召喚を組み込んだ『バスター・ブレイダー』って事になるかな?

 

「今蘇生したバスター・ブレイダーを対象に、手札の『破壊剣―ウィザードバスターブレード』の効果発動。

コイツを装備カードとしてバスター・ブレイダーに装備させるぞ」

 

と、シュドナイさんのデッキ構成を推理していると、バスター・ブレイダーが突如フィールドに現れた双剣を装備した。

あの双剣、見た感じユニオンモンスターっぽいけど、その表記が見えないな、何でだ?

 

「今装備したウィザードバスターブレードを墓地へ送って効果発動。

墓地の『破壊剣』モンスター、伴竜を手札に加えて、そのまま召喚。

召喚した伴竜の効果発動。

デッキから『破壊剣―アームズバスターブレード』を手札に加える」

 

結構デッキや手札、フィールドや墓地をぐるぐる回っているな。

今更だがシンクロ召喚軸のデッキってこういうソリティア要素が結構見受けられるよなぁ(あ、当麻のPSYフレームは別な)。

ともあれ、これでフィールドにはチューナーである伴竜と、そうではないバスター・ブレイダーが揃った、という事は来るな、シンクロ召喚が。

 

「さて、目の当たりにさせてやろう、俺のデッキの全力を!

俺はレベル7のバスター・ブレイダーにレベル1の伴竜をチューニング!

がんじがらめな規律に縛られぬ野蛮な竜よ、今こそ破壊剣士に力を与えよ!シンクロ召喚、レベル8!『破戒蛮竜―バスター・ドラゴン』!」

 

破戒蛮竜―バスター・ドラゴン

シンクロ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 8

守備力 2800

 

そう宣言したシュドナイさんのフィールドに、シンクロ召喚の演出と共に登場したのは、破壊剣士の伴竜が成長した様な姿の、6本足のドラゴン、バスター・ドラゴン。

あの口振りからして、このデッキの全力を発揮する効果を、このドラゴンは持っていると言う事か…

 

「今シンクロ召喚したバスター・ドラゴンの効果発動。

たった今シンクロ召喚の素材として墓地へ送ったバスター・ブレイダーを攻撃表示で蘇生する。

今蘇生したバスター・ブレイダーを対象に、手札の『破壊剣―ドラゴンバスターブレード』の効果発動。

コイツを装備カードとしてバスター・ブレイダーに装備させ、直ぐ様効果発動。

コイツを守備表示で特殊召喚」

 

破壊剣―ドラゴンバスターブレード

効果モンスター/チューナー

闇属性

ドラゴン族

レベル 1

守備力 300

 

成長して蛮竜と呼ばれる様になっても、バスター・ブレイダーとの絆は忘れない、といった感じか。

その効果でバスター・ブレイダー再び登場すると同時に何処からともなく出現した太刀を装備、その直後にその太刀が意志を持ったかのようにバスター・ブレイダーの手を離れ、宙を浮いた。

しかしまたチューナー、という事は、

 

「俺はレベル7のバスター・ブレイダーにレベル1のドラゴンバスターブレードをチューニング!

並び立て、2体目のバスター・ドラゴン!

今シンクロ召喚した2体目のバスター・ドラゴンの効果発動。

たった今シンクロ召喚の素材として墓地へ送ったバスター・ブレイダーを攻撃表示でみたび蘇生する」

 

で、デスヨネー!

俺の予想通り、シュドナイさんのフィールドには2体目のバスター・ドラゴンが登場し、そしてその効果でまたもバスター・ブレイダーが蘇生された。

どんだけ墓地とフィールドを往復させるのか…

 

「今蘇生したバスター・ブレイダーを対象に、手札の『破壊剣―アームズバスターブレード』の効果発動。

コイツを装備カードとしてバスター・ブレイダーに装備させるぞ。

カードを1枚セットしてターンエンドだ」

 

Sydonay

LP 4000

手札 0

モンスター バスター・ブレイダー(攻撃表示)

      破戒蛮竜―バスター・ドラゴン(守備表示)×2

魔法・罠カード 破壊剣―アームズバスターブレード(対象:バスター・ブレイダー)

        セット

 

「随分と動き回ったわね…

私のターン!ドロー!

まずは魔法『独奏の第1楽章』発動!」

 

独奏の第1楽章

通常魔法

『独奏の第1楽章』は1ターンに1枚しか発動出来ず、このカードを特殊召喚するターン、自分は『幻奏』モンスターしか特殊召喚出来ない。

1:自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動出来る。手札・デッキからレベル4以下の『幻奏』モンスター1体を特殊召喚する。

 

「独奏の第1楽章の効果で、デッキから『幻奏の音女セレナ』を守備表示で特殊召喚!」

 

幻奏の音女セレナ

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 4

守備力 1900

 

お、出た出た、柚子の鉄壁パターン。

セレナを出したという事は、柚子の手札には間違いなくプロディジー・モーツァルトがいるな。

 

「セレナを特殊召喚したターン、私は通常召喚に加えて幻奏モンスターを1回召喚出来ます!更に、天使族モンスターをアドバンス召喚する際、セレナは2体分のリリースにする事が出来ます!」

「要は天使族に対応したダブルコストモンスターか。そしてそれを態々説明するという事は、天使族最上級モンスターを手札に持っているな?」

「はい!この効果でセレナをリリースして、アドバンス召喚!天上に響く妙なる調べよ、眠れる天才を呼び覚ませ!出でよ、レベル8!『幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト』!」

 

幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 8

攻撃力 2600

 

俺の予想、そしてシュドナイさんの予感に応えるかの様に柚子のフィールドに登場したプロディジー・モーツァルト。

だが、柚子にとってはこれがスタートと言っても過言じゃ無い。

 

「今アドバンス召喚したプロディジー・モーツァルトの効果発動!

手札から『幻奏の歌姫ソプラノ』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

幻奏の歌姫ソプラノ

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 4

攻撃力 1400

 

ソプラノが出て来たって事は出すのか、融合モンスターを?

 

「特殊召喚したソプラノの効果発動!

墓地のセレナを手札に加えます!

更にソプラノのもう1つの効果を発動!

フィールドのソプラノ自身とプロディジー・モーツァルトで融合!」

 

此処で行くか、シンクロ次元で初の融合召喚を。

シンクロ次元では見た事も無い融合召喚、これにはシュドナイさんも驚くに違いない。

 

「融合召喚、まさか『ジャックと俺』の他に使い手がいたとはな…!

だが甘い!それにチェーンしてバスター・ドラゴンの効果発動!

墓地のドラゴンバスターブレードをバスター・ブレイダーに装備させるぞ!」

 

と思っていた時期が俺にもあったし、実際驚いた様子も見せていた、が、今なんて言った?

「他に使い手がいたとはな…!」だって?どういう…事だ…?

それにソプラノの融合召喚効果にチェーンしての装備、まるで融合召喚対策だと言わんばかりの口調、一体どんな意図が…?

 

「私のターンでも動いて来るなんて…

ならチェーン1、ソプラノの効果で(ビーッ!ビーッ!)な、何なのこの警告音!?」

 

柚子もシュドナイさんの動きに驚きの様子を見せつつも、ソプラノの効果処理を行おうとしたその時、突如警告音が鳴り、

 

「ゆ、融合召喚出来ない!?な、何で!?」

 

柚子の言う通り、融合召喚が出来なくなってしまった、一体何で…!?

 

「ドラゴンバスターブレードの効果だ。コイツが装備されている限り、お前さんはエクストラデッキからモンスターを特殊召喚出来ないぞ。例えそれがシンクロ召喚であろうと、融合召喚であろうとな!」

「な!?」

 

それ『真帝王領域』かよ!?

しかもそれをフリーチェーンで出せるなんて(あ、『終焉の地』なら真帝王領域も出せるな)…

 

「くっなら私のフィールドに幻奏モンスターが存在するから『幻奏の音女ソナタ』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

幻奏の音女ソナタ

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 3

攻撃力 1200→1700

 

幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト 攻撃力 2600→3100

幻奏の歌姫ソプラノ 攻撃力 1400→1900

 

「これでプロディジー・モーツァルトの攻撃力はバスター・ブレイダーの攻撃力も、バスター・ドラゴンの守備力も超えた。此処からバトルフェイズで戦闘破壊すれば…」

「おっと、その台詞はバスター・ブレイダーの攻撃力を見てから言って貰おうか」

「え?なっ!?」

 

バスター・ブレイダー 攻撃力 2600→4100

 

ならばとソナタを特殊召喚する事で攻撃力を上げて突破を試みようとした柚子だったけど、シュドナイさんに突っ込まれてバスター・ブレイダーのステータスを見たら、なんとその攻撃力は1500も上がっていた。

確かバスター・ブレイダーには、相手のフィールド・墓地にあるドラゴン族×500ポイントもの攻撃力をアップさせる効果はあったけど、でも柚子の幻奏モンスター達は天使族の筈、ならこれは一体…?

 

「バスター・ドラゴンが表側表示でいる限り、お前さんのフィールドにいるモンスターは全てドラゴン族として扱うぞ。今お前さんのフィールドには3体のモンスター、よってバスター・ブレイダーの攻撃力は1500アップする」

「まさかそんな効果が…」

 

その効果に驚愕の様子を見せる柚子だったけど、尚もその表情から切迫した様子は無い、まだ打つ手はあると言った感じの物だ。

 

「バトルフェイズに入ります!」

「ならばメインフェイズ終了時に速攻魔法『破壊剣士融合』発動!」

「ゆ、融合!?」

「融合だとォ!?」

「な、何で融合が!?」

「融合!?そんな馬鹿な!?」

「嘘だろ!?融合だって!?」

「マジか…」

 

破壊剣士融合

速攻魔法

『破壊剣士融合』の1、2の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用出来ない。

1:自分の手札及び自分・相手フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、『バスター・ブレイダー』を融合素材とするその融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

2:このカードが墓地に存在する場合、手札を1枚墓地へ送って発動出来る。墓地のこのカードを手札に加える。

 

が、シュドナイさんの更なる手に、柚子は勿論、俺達も驚愕せざるを得なかった。

さっき言っていたけど、本当に融合を使うなんて…

此処ってシンクロ次元だよな?シンクロ召喚以外にエクストラデッキからモンスターを呼び出す召喚法は無かった筈だよな?

 

「俺はフィールドのバスター・ブレイダーと、バスター・ドラゴンの効果でドラゴン族となっているお前さんのフィールドのプロディジー・モーツァルトを融合!

竜を打ち破る剣士が今、オトモ達と共に狩場に降り立つ!融合召喚、さあ一狩り行くぞ!『竜破壊の剣士―バスター・ブレイダー』!」

 

竜破壊の剣士―バスター・ブレイダー

融合・効果モンスター

光属性

戦士族

レベル 8

攻撃力 2800→4800

 

驚愕する俺達を尻目に、融合召喚の演出と共に、伴竜を彷彿とさせる色合いの鎧を装着したバスター・ブレイダーが現れた。

と、同時に、また信じられない光景が広がった。

 

「竜破壊の剣士―バスター・ブレイダーは、お前さんのフィールド・墓地にいるドラゴン族モンスターの数×1000ポイント、攻守をアップさせる。

今お前さんのフィールドには、バスター・ドラゴンの効果でドラゴン族と化したモンスターが2体いる、よって攻守は2000ポイントアップだ。

更にコイツが俺のモンスターゾーンに存在する限り、お前さんのフィールドにいるドラゴン族モンスターは守備表示になり、効果を発動出来ないぞ!」

「え、ええ!?」

 

な、なんだそのドラゴン族メタにも程がある効果のオンパレードは!

しかもそのメタ効果も、バスター・ドラゴンの効果で相手フィールドのモンスターなら誰でも良い状態になっている、まさに竜破壊の剣士とそのオトモ、凶悪なタッグだな…!

流石に柚子の表情からも焦りの色が見える、この状況を打開するのは厳しいのだろうか。

攻撃もモンスター効果の発動も出来ない、となると…

 

「バトルフェイズは終了します…

カードを1枚セットして、ターンエンド…!」

「ならエンドフェイズに2体目のバスター・ドラゴンの効果発動。

墓地のアームズバスターブレードを、竜破壊の剣士―バスター・ブレイダーに装備させるぞ」

 

Yuzu

LP 4000

手札 2(うち1枚は幻奏の音女セレナ)

モンスター 幻奏の歌姫ソプラノ(守備表示)

      幻奏の音女ソナタ(守備表示)

魔法・罠カード セット



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63話_無かった筈の融合召喚

ふとした切っ掛けで出会ったシュドナイさんが営んでいるデュエルバー『バルマスケ』で始まった柚子とシュドナイさんとのデュエル、バスター・ブレイダーを主軸としたシュドナイさんに対して柚子が融合召喚を駆使して攻め込もうとしたんだが、どういう訳かそれが見切られたかの様に封じられ、挙げ句の果てに逆に融合召喚をされる、という事態になった。

一体どうしてシュドナイさんが、この次元に『無い筈』の融合召喚を使えるのか、さっき言っていた言葉の意味は一体何なのか、気になる事は沢山あるけど、今はこのデュエルの行方を見守るしかない。

 

「俺のターン、ドロー。

俺は今引いた『破壊剣士の伴竜』を召喚」

 

破壊剣士の伴竜

効果モンスター/チューナー

光属性

ドラゴン族

レベル 1

攻撃力 400

 

「召喚した伴竜の効果発動。

デッキから『破壊剣一閃』を手札に加えるぞ」

 

確か『破壊剣一閃』ってバスター・ブレイダーの攻撃技だよな…

 

「次に伴竜をリリースして効果発動。

俺の墓地から『バスター・ブレイダー』を攻撃表示で蘇生する」

 

バスター・ブレイダー

効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 7

攻撃力 2600→3600

 

改めて見ると物凄いフィールドだな…

シュドナイさんのフィールドには、今しがた蘇生したバスター・ブレイダーと、先程融合召喚された竜破壊の剣士―バスター・ブレイダー(アームズバスターブレードを装備している)、そしてバスター・ドラゴン2体。

一方の柚子はソプラノとソナタの2体、どちらも竜破壊の剣士―バスター・ブレイダーの効果で強制的に守備表示にされたばかりか効果発動すら許されていない。

これは厳しいか…

 

「続いてさっき手札に加えた『破壊剣一閃』を墓地へ送って、墓地の『破壊剣士融合』の効果発動。

コイツを手札に加えるぞ」

 

てか回収能力も持っているのかよ、それ!?

 

「そして装備カードとなっているアームズバスターブレードを墓地へ送って効果発動。

このカードを装備していた竜破壊の剣士―バスター・ブレイダーの攻撃力を1000アップする。

そうそう、コイツは相手プレイヤーをダイレクトアタックする事は自分の効果によって出来ないが、代わりに貫通効果を持っているぞ」

 

竜破壊の剣士―バスター・ブレイダー 攻撃力 4800→5800

 

挙げ句に、貫通効果持ちかよ…

まあ、そうでなかったらあの守備表示を強制する効果は何なんだ、という話になるな。

だがそうなると竜破壊の剣士―バスター・ブレイダーの一撃を何とかしないとこれで決まる、という訳か…

 

「バトルフェイズに入る。

竜破壊の剣士―バスター・ブレイダーでソナタを攻撃!竜破壊剣一閃!」

 

竜破壊の剣士―バスター・ブレイダーの攻撃が、ソナタに迫る…!

 

 

 

 

 

「そのダメージステップ開始時、手札の『幻奏の音女スコア』を墓地へ送って効果発動!

竜破壊の剣士―バスター・ブレイダーの攻守をターン終了時まで0にします!」

「む、『オネスト』の様な手札誘発カードを握っていたか(カァン!)うぉっ!?」

 

竜破壊の剣士―バスター・ブレイダー 攻撃力 5800→0 VS 幻奏の音女ソナタ 守備力 1500

 

Sydonay LP 4000→2500

 

が、寸での所で出現したバリアが剣撃を跳ね返し、その余波がシュドナイさんを襲った。

フィールドアド的に圧倒され、融合召喚を封じられて尚、余裕を見せていたのはスコアを握っていたからか、だが先制パンチを喰らわせただけで、ソナタが守備表示だったが故に戦闘破壊出来なかった、やっぱり竜破壊の剣士―バスター・ブレイダーの存在が痛いな…

 

「このターンでの決着は無理だな。

ならさっき手札に加えた『破壊剣士融合』をセットしてターンエンド」

 

竜破壊の剣士―バスター・ブレイダー 攻撃力 0→4800

 

Sydonay

LP 2500

手札 0

モンスター 竜破壊の剣士―バスター・ブレイダー(攻撃表示)

      破戒蛮竜―バスター・ドラゴン(守備表示)×2

      バスター・ブレイダー(攻撃表示)

魔法・罠カード セット(破壊剣士融合)

 

「私のターン!ドロー!

モンスターをセットしてターンエンド!」

「ならエンドフェイズに2体いるバスター・ドラゴンの効果発動。

まずは1体目の効果で、墓地のアームズバスターブレードを竜破壊の剣士―バスター・ブレイダーに装備させるぞ。

次に2体目の効果で、墓地のウィザードバスターブレードを、これも竜破壊の剣士―バスター・ブレイダーに装備させるぞ」

 

Yuzu

LP 4000

手札 1

モンスター 幻奏の音女ソプラノ(守備表示)

      幻奏の音女ソナタ(守備表示)

      セット

魔法・罠カード セット

 

ドローしたカードが狙っていた物では無かったのか厳しそうな表情をし、モンスターをセットしただけで終わった柚子に対して、シュドナイさんは盤面を着々と整えていた。

これは万事休す、か…

 

「俺のターン、ドロー。

此処は臆さずに行くか。

装備カードとなっているアームズバスターブレードを墓地へ送って効果発動。

このカードを装備していた竜破壊の剣士―バスター・ブレイダーの攻撃力を1000アップさせて、バトルフェイズに入る」

 

竜破壊の剣士―バスター・ブレイダー 攻撃力 4800→5800

 

「今度こそ決めさせて貰う!竜破壊の剣士―バスター・ブレイダーでソナタを攻撃!竜破壊剣一閃!」

「きゃぁ!?」

 

竜破壊の剣士―バスター・ブレイダー 攻撃力 5800 VS 幻奏の音女ソナタ 守備力 1500

 

Yuzu LP 4000→-300 LOSE

 

WINNER Sydonay

 

------------

 

「教えて下さい、シュドナイさん。融合召喚を前から知っている様な素振りでしたけど、何処でそれを知ったのかを…」

 

柚子とのデュエルが終わったタイミングで、俺はシュドナイさんに先程から気になっていた事を聞いた。

くどい様だがシンクロ次元は文字通りシンクロ召喚が発展している世界、融合召喚やエクシーズ召喚、ペンデュラム召喚など無かった筈なのだ(実際ユーゴは融合召喚を知らず、自分の名前を変に解釈されたと思っていたみたいだし)。

当然、今のデュエルでソプラノの効果で何が行われるか、それを予測出来る訳が無い、筈だった。

だがシュドナイさんはまるで予測したかの様に、先手を打って来た。

挙げ句の果てにはバスター・ブレイダー専用、とはいえ融合魔法を使って来た。

言うまでも無く、シュドナイさんは融合召喚を知っている。

「他に使い手がいてびっくりした」と言う感じの、素直な驚き方からして、彼が融合次元からのスパイだとは思えない、だからこそ、シンクロ次元の住人であるシュドナイさんが、この世界に無い筈の融合召喚を知っているのかが気になった。

 

「気になるか。まあ、この界隈で融合召喚を使うデュエリストは極まれと言った位だ、気にするなと言う方が無理だな」

 

そう言いつつ、デュエルテーブルから何かパネルみたいな物を開いて操作を始めたシュドナイさん、一体何を?

 

「俺の昔なじみに融合召喚を使う奴がいて、ソイツから教わったんだ。ただ今言った様にこの界隈では殆ど知られていない召喚方法、無闇に披露するなと、ソイツからは釘を刺されているが、まあお前さん達も知っていたから今回は許してくれるだろう。その昔なじみの奴のデュエルログがある、それを見てくれ」

 

シュドナイさんの昔なじみとなると、かなり前から融合召喚について知っていたって事だよな…

一体、どんな奴なんだ…?

そんな想いでシュドナイさんの操作を見守り、完了したと同時に展開されたソリッドビジョン、其処には、

 

『『デュエル!』』

 

先攻 Crow LP 4000 VS 後攻 Jack LP 4000

 

「な、ジャック…!?それに、クロウ…!?」

「驚いたか?シティが誇るトリプルスター、その内の2人が此処でデュエルしていた事が」

 

其処には『遊戯王5D’sの世界』で俺と共に戦った仲間にしてライバルである、ジャック・アトラスとクロウ・ホーガン、2人のソリッドビジョンが、対峙していた。

まさか、そんな…

いや、ユーゴが『この次元の』遊星を知っていた事もある、もしかしたらジャックもクロウも『この次元の』存在であって、俺の知る2人では無いかも知れない。

と、思っていた時期が俺にもあった。

 

『俺の先攻!

まずは永続魔法『黒い旋風』を2枚発動!』

 

黒い旋風

永続魔法

1:自分フィールドに『BF(ブラックフェザー)』モンスターが召喚された時にこの効果を発動出来る。そのモンスターより低い攻撃力を持つ『BF』モンスター1体をデッキから手札に加える。

 

『次に『BF―精鋭のゼピュロス』を召喚!』

 

BF―精鋭のゼピュロス

効果モンスター

闇属性

鳥獣族

レベル 4

攻撃力 1600

 

『BFモンスターを召喚した事で、2枚ある黒い旋風の効果発動!

デッキから『BF―白夜のグラディウス』と『BF―疾風のゲイル』を手札に加えるぜ!

今手札に加えたグラディウスを守備表示で特殊召喚!コイツは俺のフィールドの表側表示モンスターが、『BF』1体だけなら特殊召喚出来るぜ!』

 

BF―白夜のグラディウス

効果モンスター

闇属性

鳥獣族

レベル 3

守備力 1500

 

『同じく今手札に加えたゲイルも攻撃表示で特殊召喚!コイツは俺のフィールドに『BF』モンスターがいれば特殊召喚出来るぜ!』

 

BF―疾風のゲイル

効果モンスター/チューナー

闇属性

鳥獣族

レベル 3

攻撃力 1300

 

『俺はレベル3のグラディウスに、レベル3のゲイルをチューニング!星降る丘に吹く黒き疾風よ、今こそ刃となって舞い戻れ!シンクロ召喚、レベル6!『BF―星影のノートゥング』!』

 

BF―星影のノートゥング

シンクロ・効果モンスター

闇属性

鳥獣族

レベル 6

攻撃力 2400

 

『シンクロ召喚したノートゥングの効果発動!

ジャック、お前に800のバーンダメージだ!舞い戻る剣(ホーミング・ソード)!』

『ぬぅっ!』

 

Jack LP 4000→3200

 

『更にノートゥングが俺のフィールドにいる限り、俺はもう1度BFを召喚出来る!

この効果で『BF―極北のブリザード』を召喚!』

 

BF―極北のブリザード

効果モンスター/チューナー

闇属性

鳥獣族

レベル 2

攻撃力 1300

 

『ブリザードを召喚した事で、2枚ある黒い旋風の効果と、ブリザード自身の効果発動!

まずはブリザードの効果で、墓地からゲイルを守備表示で蘇生する!

更に黒い旋風の効果で、デッキから『BF―砂塵のハルマッタン』と『BF―突風のオロシ』を手札に加えるぜ!

俺はレベル4のゼピュロスに、レベル3のゲイルをチューニング!黒き旋風よ、天空へ駆け上がる翼となれ!シンクロ召喚、レベル7!『BF―アーマード・ウィング』!』

 

BF―アーマード・ウィング

シンクロ・効果モンスター

闇属性

鳥獣族

レベル 7

攻撃力 2500

 

『今シンクロ召喚の素材に使った、墓地のゼピュロスの効果を、黒い旋風1枚を手札に戻して発動!

コイツを攻撃表示で蘇生し、俺は400のバーンダメージを受ける!あだっ!』

 

Crow LP 4000→3600

 

『まだまだ行くぜ!さっき手札に加えたハルマッタンを守備表示で特殊召喚!コイツは1ターンに1度だけだが、ゲイルと同じ条件で特殊召喚出来るぜ!』

 

BF―砂塵のハルマッタン

効果モンスター

闇属性

鳥獣族

レベル 2

守備力 800

 

『俺はレベル4のゼピュロスと、レベル2のハルマッタンに、レベル2のブリザードをチューニング!吹き荒べ嵐よ!鋼鉄の意志と光の速さを得て、その姿を昇華せよ!シンクロ召喚、レベル8!『BF―孤高のシルバー・ウィンド』!』

 

BF―孤高のシルバー・ウィンド

シンクロ・効果モンスター

闇属性

鳥獣族

レベル 8

攻撃力 2800

 

『俺はこれでターンエンドだ!』

 

Crow

LP 3600

手札 3(うち2枚は『黒い旋風』と『BF―突風のオロシ』)

モンスター BF―星影のノートゥング(攻撃表示)

      BF―アーマード・ウィング(攻撃表示)

      BF―孤高のシルバー・ウィンド(攻撃表示)

魔法・罠カード 黒い旋風

 

先攻となったクロウは、BFお得意の大量展開でジャックを圧倒する、と此処までなら正直ありふれた光景だった。

BF自体、クロウだけのカテゴリ、という訳では無く、クロウの友人だったロバートも使っていた様だし。

だが、

 

『俺のターン!ドロー!

まずは俺のフィールドにモンスターが存在しない事で、『E(イーヴィル)―HERO ヘル・ブラット』を攻撃表示で特殊召喚!』

「い、E―HERO!?」

「ど、どうしたの遊矢?」

 

E―HERO ヘル・ブラット

効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 2

攻撃力 300

 

ジャックのターンとなり、最初に出したカード、その名に俺は驚きの余り開いた口が塞がらなかった。

あれは遊星だった頃、シティに乗り込むジャックに餞別として渡した数枚のカードの1つ…!

 

『次にクロウ、お前のフィールドにモンスターが存在する事で、ヘル・ブラット1体のみをリリースしてアドバンス召喚!邪悪に堕ちた英雄よ、その研ぎ澄まされた刃で立ちはだかる者を切り捨てるが良い!『E―HERO マリシャス・エッジ』!

この時、ヘル・ブラットの効果により俺はエンドフェイズのドローが約束された!』

 

E―HERO マリシャス・エッジ

効果モンスター

地属性

悪魔族

レベル 7

攻撃力 2600

 

これも渡したカードの1つだ、と言う事はまさか…!

 

『続いて手札にある2枚目のマリシャス・エッジを墓地へ送って魔法『ワン・フォー・ワン』発動!』

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

『ワン・フォー・ワンの効果で、デッキから『ミラー・リゾネーター』を守備表示で特殊召喚!』

 

ミラー・リゾネーター

効果モンスター/チューナー

光属性

悪魔族

レベル 1

守備力 0

 

『俺は、レベル7のマリシャス・エッジに、レベル1のミラー・リゾネーターをチューニング!王者の鼓動、今此処に列を成す。天地鳴動の力を見るが良い!シンクロ召喚、レベル8!我が魂、『レッド・デーモンズ・ドラゴン』!』

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン

シンクロ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 3000

 

『更に魔法『ダーク・コーリング』発動!』

 

ダーク・コーリング

通常魔法

自分の手札・墓地から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターをゲームから除外し、『ダーク・フュージョン』の効果でのみ特殊召喚出来るその融合モンスター1体を『ダーク・フュージョン』による融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

 

『俺は墓地にあるマリシャス・エッジ2体を除外して融合!最凶の英雄よ、今こそ邪悪なる力を解き放ち、災厄を全て薙ぎ払うが良い!融合召喚、我が絆の証!『E―HERO マリシャス・デビル』!』

 

E―HERO マリシャス・デビル

融合・効果モンスター

炎属性

悪魔族

レベル 8

攻撃力 3500

 

ジャックが融合召喚した、両手に鉄の爪を装着したHEROの姿、そしてその時の口上…

間違い無い、この世界のジャック・アトラスは、俺の知っているジャック・アトラスだ…!



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64話_俺の運命は嵐を呼ぶぜ!

「…と、まあコイツが俺に融合召喚を教えてくれた昔なじみだ。効果処理を挟む必要があるから『神の宣告』とか『魔宮の賄賂』とかに妨害される可能性こそあるが、逆に言えば『昇天の黒角笛』や『神の通告』など怖くない。必要なパーツこそ多く、その指定も厳しい物が多いが、合計レベルを合わせる必要が無いし、チューナーも必要ない、というかフィールドに揃える必要すらも無い。シンクロ召喚にもシンクロ召喚の良い所が有るが、この融合召喚も中々良い物だな。このアイデアを生み出した奴は良い仕事したな」

 

そう、ジャックとクロウが過去に此処で行ったデュエルの記録映像を止めながら話したシュドナイさん。

その姿からはアカデミアのデュエリストの様な、融合召喚を過剰に賛美する様子も無ければ、シンクロ召喚に肩入れした様子もない。

これにはこれ、それにはそれの利点がある、と言った様子だ。

この人も「分かっている」な、デュエルモンスターズのあるべき姿を。

そして柚子に対し殆ど何もさせなかったプレイング、凄いな、シンクロ次元のトップクラスの実力は。

 

「さて、他にデュエルを受けてくれる奴はいるか?」

「そしたら、俺が行きますよ!」

 

そんな人の誘いを受けないのは、デュエル出来るチャンスを活かさないのは損だ!

 

------------

 

「「デュエル!」」

 

先攻 Yuya LP 4000 VS 後攻 Sydonay LP 4000

 

さて、俺の初手は、お、最高な感じだ!

 

「俺のターン!先攻はドロー無し!

まずはライフを半分払って『ヒーローアライブ』発動!」

 

ヒーローアライブ

通常魔法

1:自分フィールドに表側表示モンスターが存在しない場合、LPを半分払って発動出来る。デッキからレベル4以下の『E(エレメンタル)・HERO』モンスター1体を特殊召喚する。

 

Yuya LP 4000→2000

 

「ヒーローアライブの効果で、デッキから『E・HEROシャドー・ミスト』を守備表示で特殊召喚!」

 

E・HEROシャドー・ミスト(制限カード)

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 4

守備力 1500

 

ヒーローアライブの効果で俺の場に登場したのは、黒ずくめと言って良い姿のヒーロー、シャドー・ミスト。

ステータス的には正直貧弱その物だけど、その効果は制限入りになる程の物だ。

 

「特殊召喚したシャドー・ミストの効果発動!

デッキから速攻魔法『フォーム・チェンジ』を手札に加えます!

次に『E・HEROエアーマン』を召喚!」

 

E・HEROエアーマン(制限カード)

効果モンスター

風属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1800

 

次に出て来たのは、プロペラを組み込んだ翼を持つヒーロー、エアーマン。

あ、『遊戯王GXの世界』で十代としてアカデミアにいた頃の友達だった三沢の事じゃ無いし、某アクションゲームの倒せない事を嘆いた歌で有名なボスキャラでも無いからな。

コイツもその効果で制限入りしているんだが、よりによって何でメインデッキに入るE・HEROでは手薄な属性のコイツらばっかり制限入りするんだよ、特に闇属性は他に上級モンスターのネクロダークマンしかいないってのに、お蔭でエスクリダオが出しにくいのなんのって…

 

「召喚したエアーマンの効果発動!

デッキから『E・HEROバブルマン』を手札に加えます!

続いて手札の『E・HEROキャプテン・ゴールド』を捨てて効果発動!

デッキから『摩天楼―スカイスクレイパー―』を手札に加えてそのまま発動!」

 

摩天楼―スカイスクレイパー―

フィールド魔法

『E・HERO』と名の付くモンスターが攻撃する時、攻撃モンスターの攻撃力が攻撃対象モンスターの攻撃力よりも低い場合、攻撃モンスターの攻撃力はダメージ計算時のみ1000ポイントアップする。

 

俺がフィールド魔法を発動すると、デュエルテーブルの俺側半分が、高層ビルが立ち並ぶ大都市へと変化した。

へぇ、テーブルデュエルだとこんな感じで映し出されるんだな。

 

「カードを3枚セットして…

手札がコイツ1枚のみになった事から、さっき手札に加えた『E・HEROバブルマン』を守備表示で特殊召喚してターンエンド!」

 

E・HEROバブルマン

効果モンスター

水属性

戦士族

レベル 4

守備力 1200

 

Yuya

LP 2000

手札 0

モンスター E・HEROシャドー・ミスト(守備表示)

      E・HEROエアーマン(攻撃表示)

      E・HEROバブルマン(守備表示)

魔法・罠カード セット×3(うち1枚は『フォーム・チェンジ』)

フィールド魔法 摩天楼―スカイスクレイパー―

 

そして、魔法・罠カードゾーンにカードを並べ、泡を発射する銃を武器としたヒーロー、バブルマン(コイツも某アクションゲームのボスキャラじゃないからな)、を自らの効果で特殊召喚し、俺はターンを終えた。

 

「随分とサーチ効果を乱発し、並べた物だな。とても初手とは思えない。

なら俺も行かせて貰う。俺のターン、ドロー」

「スタンバイフェイズに速攻魔法『マスク・チェンジ』発動!対象はシャドー・ミスト!」

 

マスク・チェンジ

速攻魔法

1:自分フィールドの『HERO』モンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを墓地へ送り、そのモンスターと同じ属性の『M(マスクド)・HERO』モンスター1体をエクストラデッキから特殊召喚する。

 

「マスク・チェンジの効果で、シャドー・ミスト、変身召喚だ!」

「何、変身召喚だと?」

「闇の正義を司る仮面の力で、裁きの刃を振るえ!変身召喚!『M・HEROダーク・ロウ』!

Crash the invader!」

「…それ何処のメンヘラ仮面ライダーだ?」

 

M・HEROダーク・ロウ

融合・効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 6

攻撃力 2400

 

シュドナイさんの突っ込みを他所に登場したのは、正義を司るとか言いながら、悪魔を思わせる仮面を纏ったヒーロー、ダーク・ロウ。

その効果は、とその前に、

 

「墓地へ送られたシャドー・ミストの効果発動。

デッキから『E・HEROブレイズマン』を手札に加えます。

そうそう、ダーク・ロウが場にいる限り、貴方の墓地へ送られるカードは、墓地へは行かずに除外されますので、気を付けて下さい」

「何?つまりは俺だけ『マクロコスモス』が適用されている、と言う事か?これは厄介だな…」

 

そう、シュドナイさんが言った通り「相手だけマクロコスモス」、そんな効果をダーク・ロウは持っている。

しかもヒーローアライブからシャドー・ミスト、という流れだけで出せるという手軽さを併せ持っている、ぶっちゃけシャドー・ミストの制限入りの原因はこの流れじゃねぇか?

 

「となると…

まずは『破壊剣士の伴竜』を召喚!」

 

破壊剣士の伴竜

効果モンスター/チューナー

光属性

ドラゴン族

レベル 1

攻撃力 400

 

「召喚した伴竜の効果発動!効果説明はさっき其処のお嬢さんとのデュエルでもしたから省くな」

 

ああ知っている、『破壊剣』カードをサーチ出来るんだよな、だったら、

 

「ならそれにチェーンして、さっき手札に加えたブレイズマンを捨ててこの速攻魔法を発動!」

「お、来た来た!遊矢兄ちゃんの切り札!」

「絶対無敵!究極の力を解き放て!解放しろ!『超融合』!」

 

超融合(制限カード)

速攻魔法

このカードの発動に対して魔法・罠・モンスターの効果は発動出来ない。

1:手札を1枚捨てて発動出来る。自分・相手フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「超融合は、自分及び相手フィールドのモンスターを素材にして、融合召喚を行います。簡単に言えば、手札コストが付いて、自分の手札から融合素材を出せなくした代わりに出せる融合モンスターの制限がほぼ無くなった『破壊剣士融合』ですね」

「これはヤバいな、ならそれにチェーンして速攻魔法『破壊剣士融合』発d(ビーッ!ビーッ!)何だ、この警告音は?」

「無駄です、超融合の発動に対して魔法・罠・モンスターの効果は発動出来ません。例えそれがカウンター罠だとしても、封じ込めます」

「何!?」

 

俺の説明に、驚愕した様子のシュドナイさん、あの様子からして後続が出せ無さそうか?

 

「俺はエアーマンと、シュドナイさんの伴竜を融合召喚!

光を司るヒーローよ!その太陽の如き光で、全てを浄化せよ!融合召喚!『E・HERO Theシャイニング』!」

 

E・HERO Theシャイニング

融合・効果モンスター

光属性

戦士族

レベル 8

攻撃力 2600

 

融合召喚の演出と共に現れたのは、背中に太陽を模した輪みたいな物が付いたヒーロー、シャイニング。

 

「くっ!だが伴竜の効果処理はさせて貰う!

デッキから『破壊剣一閃』を手札に(ザシュゥ!)なっ!?」

 

尚も諦めないと言わんばかりに伴竜の効果処理を終えたシュドナイさん、だが次の瞬間、手札のうちの1枚がダーク・ロウによって真っ二つに切り裂かれた。

 

「その時、ダーク・ロウの『2つ目』の効果発動!

相手がドローフェイズ以外でデッキからカードを手札に加えた場合、その手札からランダムに1枚選んで除外します!」

「よりによってそれで『破壊剣士融合』を飛ばされるとはな…!」

 

うぉ、此処でそれをハンデス出来たか、これは良い引きだったかな?

 

「仕方ねぇ、カードを2枚セットしてターンエンドだ!」

「ならエンドフェイズに、速攻魔法『フォーム・チェンジ』発動!対象はさっき融合召喚したシャイニング!」

 

フォーム・チェンジ

速攻魔法

1:自分フィールドの『HERO』融合モンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターをエクストラデッキへ戻し、そのモンスターの元々のレベルと同じレベルでカード名が異なる『M・HERO』モンスター1体を、『マスク・チェンジ』による特殊召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

 

このタイミングで出すのは、アイツだ!

 

「フォーム・チェンジの効果で、シャイニング、変身召喚だ!

酸を司る仮面の力で、あらゆる障害を溶かしつくせ!変身召喚!『M・HEROアシッド』!

Fight power!Fight power!Fight!Fight!Fight!Fight!FFFFFight!」

「…今度は何処のマッドサイエンティスト仮面ライダーだ(シュゥゥゥゥゥ…!)な、俺がセットしたカードが、本当に溶けている…!?」

 

シャイニングが変身して登場したのは、某『怒りの王子』の様な仮面を纏ったヒーロー、アシッド。

その登場にシュドナイさんが突っ込んだ事に反応したかどうかは分からないが、右手に持っていた拳銃型の武器でシュドナイさんの魔法・罠カードを溶かしていった。

無論これは、

 

「特殊召喚したアシッドの効果発動!相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊します!本来なら追加効果で、相手フィールド上の全モンスターの攻撃力を300ポイントダウンさせるのですが、今は関係ないですね」

「事実上フリーチェーンで使える『ハーピィの羽根帚』って事か…

今度こそターンエンドだ…」

 

Sydonay

LP 4000

手札 3

モンスター なし

魔法・罠カード なし

 

よし、これで俺のフィールドにはダーク・ロウとアシッド、序にバブルマンがいる。

手札誘発の危険こそ無くは無いが、このまま突っ込んでも大丈夫だろう。

 

「よし、俺のターン!ドロー!

このままバトルフェイズに入ってダーク・ロウとアシッドで攻撃!ダブルアタック!」

「うぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

Sydonay LP 4000→1600→-1000 LOSE

 

WINNER Yuya

 

------------

 

「いやぁ、負けた負けた。お前さん、年端も行かねぇって感じだろうに、強いな。まさか先攻2ターンで仕留められるとは思わなかった」

「いや、あれは俺の運も味方したからこそです。初手が良かったし、ダーク・ロウの効果でハンデスしたのが『破壊剣士融合』だったのも大きかった。シュドナイさん、手札に素材を握っていたでしょ?」

「ははは、バレたか。当たりだ、あの時握っていた残り3枚の手札は、バスター・ブレイダーとドラゴンバスターブレード、後はアームズバスターブレードだ。だが、それを引き当てるのも実力って奴だ、お前さん、本当に強いな」

 

デュエルが終わり、俺とシュドナイさんは、互いの健闘をたたえ合い、

 

「ともかくありがとうな、デュエルの誘いを受けてくれて。最近じゃあ中々乗ってくれる奴がいないし、いるとしても骨のある奴がいない、旧知の奴は今忙しい様子で、デッキを持て余していた所なんだ」

「こちらこそ、ありがとうございます!」

 

握手を交わした、ら、

 

「ん…?

お前さん、その痣は一体?」

「へ?ああ、これですか?生まれつき付いている痣です」

 

俺の右手に刻まれた赤き龍、その頭を模した痣を見たシュドナイさんが、何か驚いた様な様子を見せた。

この反応、更に『俺の知っているジャック』と旧知の間柄、まさか…?

 

「悪い、少し場を空ける」

 

そう断りながらシュドナイさんは、店の奥に入って行った。

このシュドナイさんの行動が、この後の俺達ランサーズの運命を大きく動かす…!

 

「ジャックか?俺だ、シュドナイだ。唐突で悪いが、お前達に会わせたい奴がいるんだ。お前とクロウの右手に刻まれているのと関連のありそうな痣を持った少年なんだが…」



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65話_地下デュエル

「へぇ、コイツがRiding Duel、バイクに乗って行うデュエルか…

中々Stylishじゃねぇか」

「いやちょっと待てダンテ(ピシッ!)あだっ!?」

「Sirを付けろよ、デコスケ野郎。で、何だ?質問なら早くしろよ」

「いや俺達なんでこんな場所に、さも関係者だと言わんばかりに足を踏み入れているんだ!?」

「なんでも何も、俺達此処のStakeholderだぜ?」

「今更何を騒いでいるんだ、沢渡?あ、ひょっとしてお前ビビってんのか?だらしねぇな、全く」

「僕達はランサーズの一員としてこのシンクロ次元に来ているけど、それは何の為だい?この次元で戦力となれるデュエリストを探し、仲間とする為だろう。その目的を果たす為に、こんな場所にも入る必要はある。違うかい?」

「ですね。『虎穴に入らざれば虎子を得ず』ですよ」

「まあ仕方ないんじゃない?舞網市長の息子だか何だか知らないけど、温室育ちのおぼっちゃんには荷が重かったかもね」

「い、言いたい放題言いやがって!俺だって赤馬零児からのオファーを受けてランサーズに入ったんだ!これ位どうって事は無い!」

 

遊矢とARC-Vメンバーが、デュエルバー『バルマスケ』のオーナーであるシュドナイと運命的な出会いを果たしていたその頃、ダンテ達第2部隊と、

 

「お前さん達、今日は期待しているぜ。最高のデュエルを見せてくれよ!」

「ええ、楽しみにしていると良いわ」

「某達のデュエル、きっとお主達を満足させるであろう」

「そろそろ雷牙と舞衣のデュエルか、まあライディングデュエルは初めてだが、きっと2人共、面白い物を見せてくれるぜ」

「フン…」

 

雪乃達第4部隊は、とある場所に入っていて、特に第4部隊は何やらド派手な格好をした、ギャラガーと名乗る黒人男性と共にいた。

第2部隊と第4部隊が潜入している場所、それはギャラガーが仕切っている非合法の地下デュエル場。

非合法、となっている通り、此処ではデュエルに対する賭けや、無許可のライディングデュエルなど、表沙汰には出来ない様な事が繰り広げられている。

其処に行けば、有力なデュエリストや、それに関する情報が得られるかも知れない、ダンテと雪乃はそう判断し、ひょんな事で知り合ったギャラガーの誘いに乗って此処に案内されたのだ。

 

「来た来た。さあ、俺達を満足させるデュエル、楽しみにしているぜ!」

 

ギャラガーの楽しみだと言わんばかりの声、それに応える様に、此処にはいない2人、雷牙と舞衣が準備を始めた…

 

------------

 

『さて今回は、このシティに新風を巻き起こす2人のデュエリストの登場だ!まずは1人目!モンスターを次々と変形させ、巨大ロボを呼び出すメカニック!辰巳雷牙!』

「Wryyyyyyyyyyy!行くぜ、俺のロボ達!」

 

所変わってデュエル場に設けられた、ライディングデュエル用のフィールド、其処にギャラガーのコールに応じて最初に登場したのは、何時もの服装にヘルメットを付けただけの出で立ちの、雷牙。

 

『続いて2人目!星空を司る騎士達を天より降臨させる女史!星宮舞衣!』

「行きますよ、皆!」

 

続いて登場したのは、純白のライダースーツとヘルメットを身に着けた舞衣。

 

『それじゃあ皆、この2人のデュエル、その眼に焼き付けな!行くぜ!』

「「『ライディングデュエル、アクセラレーション』!」」

 

2人がバイク型のデュエルディスク『D―ホイール』に乗り込み、スタートラインでスタンバイを完了させたのを見計らってのギャラガーのコール、それと共に、2人はD―ホイールを起動させ、コースへと入って行った…!

 

先攻 Mai LP 4000 VS 後攻 Raiga LP 4000

 

「よし、私の先攻です!

まずは『星因士(サテラナイト)ベガ』を召喚!」

 

星因士ベガ

効果モンスター

光属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1200

 

先手を取った舞衣が最初に召喚したのは、夏の大三角の一角である『こと座α星』を司る女騎士、ベガ。

 

「召喚したベガの効果発動!

手札から『星因士ウヌク』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

星因士ウヌク

効果モンスター

光属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1800

 

そのベガの効果によって新たにフィールドに降り立ったのは、『へび座α星』を司る騎士、ウヌク。

 

「特殊召喚したウヌクの効果発動!

デッキから『星因士デネブ』を墓地へ送ります!

次に速攻魔法『天架ける星因士』発動!対象はウヌクです!」

 

天架ける星因士

速攻魔法

『天架ける星因士』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:自分フィールドの『テラナイト』モンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターとカード名が異なる『テラナイト』モンスター1体をデッキから特殊召喚師、対象のモンスターを持ち主のデッキに戻す。この効果で特殊召喚したモンスターが表側表示で存在する限り、自分は『テラナイト』モンスターしか特殊召喚出来ない。

 

「天架ける星因士の効果で、デッキから『星因士アルタイル』を攻撃表示で特殊召喚!

その後、ウヌクはデッキに戻ります」

 

星因士アルタイル

効果モンスター

光属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1700

 

まだまだ終わらないと言わんばかりに、ウヌクと入れ違いで登場したのは、ベガと同じく夏の大三角の一角である『わし座α星』を司る騎士、アルタイル。

 

「特殊召喚したアルタイルの効果発動!

先程ウヌクの効果で墓地へ送ったデネブを守備表示で蘇生します!」

 

星因士デネブ

効果モンスター

光属性

戦士族

レベル 4

守備力 1000

 

そのアルタイルの効果で登場したのは、夏の大三角の残り1つである『はくちょう座α星』を司る騎士、デネブ。

 

「特殊召喚したデネブの効果発動!

デッキから『星因士プロキオン』を手札に加えます!

続いて、アルタイル、ベガ、そしてデネブでオーバーレイ!3体のレベル4モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!夏の大三角が集いし時、終焉の刻が訪れる!エクシーズ召喚、ランク4!『星輝士(ステラナイト)デルタテロス』!」

 

星輝士デルタテロス

エクシーズ・効果モンスター

光属性

戦士族

ランク 4

攻撃力 2500

ORU 3

 

『此処で登場したぞ!これが舞衣の切り札たる、最新鋭の召喚方法!エクシーズ召喚だ!』

『おぉぉぉぉぉぉ!』

 

ギャラガーの紹介、それに沸く観客に応える様に登場したのは、夏の大三角の力を結集した騎士、デルタテロス。

 

「カードを1枚セットしてターンエンドです!」

 

Mai

LP 4000

手札 2(うち1枚はプロキオン)

モンスター 星輝士デルタテロス(攻撃表示)

魔法・罠カード セット

 

「ほぉ、やるじゃないか。俺のターン!ドロー!

まずは永続魔法『異次元格納庫』発動!」

 

異次元格納庫(アニメオリジナルカード、効果調整)

『異次元格納庫』の1の効果は、1ターンに1度しか発動出来ない。

1:自分メインフェイズ時に発動出来る。デッキからレベル4以下のユニオンモンスターを3体までゲームから除外する(同名カードは1枚まで)。この効果はこのカードがフィールド上に表側表示で存在する限り1度しか使用出来ない。

2:この効果以外で、自分フィールド上にモンスターが召喚・特殊召喚に成功した時、そのモンスターを対象に発動出来る。このカードの1の効果でゲームから除外したユニオンモンスターの中から、対象のモンスターの名前が効果テキストに記されているユニオンモンスターを1体まで特殊召喚する。この効果で特殊召喚したユニオンモンスターは攻撃出来ず、リリースする事は出来ず、モンスターゾーンに存在する限り特殊召喚の素材に出来ない。

 

「異次元格納庫の1つ目の効果発動!

デッキから『W―ウィング・カタパルト』『Y―ドラゴン・ヘッド』『Z―メタル・キャタピラー』を除外する!

次に魔法『予想GUY』発動!」

 

予想GUY

通常魔法

1:自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動出来る。デッキからレベル4以下の通常モンスター1体を特殊召喚する。

 

「予想GUYの効果で、デッキから『X―ヘッド・キャノン』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

X―ヘッド・キャノン

通常モンスター

光属性

機械族

レベル 4

攻撃力 1800

 

雷牙が最初に登場させたのは、両肩部分に大砲を装着したロボ、X―ヘッド・キャノン。

 

「X―ヘッド・キャノンを特殊召喚した事で、異次元格納庫の2つ目の効果発動!

コイツの1つ目の効果で除外した、『Y―ドラゴン・ヘッド』を守備表示で特殊召喚!」

 

Y―ドラゴン・ヘッド

効果モンスター/ユニオン

光属性

機械族

レベル 4

守備力 1600

 

その召喚に反応したのか、突如として発生した電流と共に登場したのは、赤い龍を模したロボ、Y―ドラゴン・ヘッド。

 

「次に『Z―メタル・キャタピラー』を召喚!」

 

Z―メタル・キャタピラー

効果モンスター/ユニオン

光属性

機械族

レベル 4

攻撃力 1500

 

次に登場したのは、キャタピラ機構を両脇に装着した蜘蛛型のロボ、Z―メタル・キャタピラー。

 

「此処でさっき特殊召喚したY―ドラゴン・ヘッドの効果発動!

X―ヘッド・キャノンの装備カードにする!」

 

X―ヘッド・キャノン 攻撃力 1800→2200

 

「尤も、この効果はオマケでしかない!コイツらの本気は此処からだ!

俺はX―ヘッド・キャノンとZ―メタル・キャタピラー、そして今しがた装備カードとなったY―ドラゴン・ヘッドを融合合体!今こそ終末の号砲を放て!3身合体、世界を終焉させる砲火!『XYZ―ドラゴン・キャノン』!」

 

XYZ―ドラゴン・キャノン

融合・効果モンスター

光属性

機械族

レベル 8

攻撃力 2800

 

『雷牙も負けちゃいないぜ!これが雷牙の切り札たる召喚方法、融合合体だ!』

『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』

 

こっちも負けられないと言わんばかりに、ギャラガーの紹介、それに沸く観客に応える様に3体のモンスターが変形合体したのは、重戦車を思わせる姿のロボ、XYZ―ドラゴン・キャノン。

 

「さあ、この一撃を喰らうが良い!

手札の『V―タイガー・ジェット』を捨ててXYZ―ドラゴン・キャノンの効果発動!

お前のデルタテロスを破壊する!XYZハイパー・デストラクション!」

「きゃぁ!?」

 

そのXYZ―ドラゴン・キャノンの1対の砲塔、ドラゴンの咢、キャタピラユニットに内蔵した1対の砲が、雷牙の号令で一斉に火を噴き、舞衣に同行していたデルタテロスを飲み込んだ。

が、舞衣もタダではやられない。

 

「くっ!ですが破壊されたデルタテロスの効果発動!

デッキからアルタイルを守備表示で特殊召喚!

次に特殊召喚したアルタイルの効果発動!

墓地のベガを守備表示で蘇生!

続いて蘇生したベガの効果発動!

手札からデネブを守備表示で特殊召喚!

そして特殊召喚したデネブの効果発動!

デッキからウヌクを手札に加えます!」

『おおっとぉ!あの砲撃でエースがやられたと思ったら、瞬時に3体ものモンスターを展開した!これがテラナイトの底力だぁ!』

 

まるでデルタテロスを特殊召喚する前に巻き戻ったかの様に、舞衣のフィールドに夏の大三角を司る騎士たちが再び並び立った。

自分のターンに繰り広げられたまさかの大量展開、しかしそれでも雷牙の顔に動揺は見られない。

 

「ほほぉ、まさかXYZ―ドラゴン・キャノンの砲撃にも屈しないとはな。だが、これはどうだ!

魔法『アイアンコール』発動!」

 

アイアンコール

通常魔法

1:自分フィールドに機械族モンスターが存在する場合、自分の墓地のレベル4以下の機械族モンスター1体を対象として発動出来る。その機械族モンスターを特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、エンドフェイズに破壊される。

 

「アイアンコールの効果で、さっき捨てた『V―タイガー・ジェット』を守備表示で蘇生!」

 

V―タイガー・ジェット

通常モンスター

光属性

機械族

レベル 4

守備力 1800

 

そんな雷牙が新たに登場させたのは、虎を模した戦闘機の様なメカ、V―タイガー・ジェット。

 

「V―タイガー・ジェットを特殊召喚した事で、異次元格納庫の2つ目の効果発動!

コイツの1つ目の効果で除外した、『W―ウィング・カタパルト』を守備表示で特殊召喚!」

 

W―ウィング・カタパルト

効果モンスター/ユニオン

光属性

機械族

レベル 4

守備力 1500

 

先程のY―ドラゴン・ヘッドと同じく、電流と共に登場したのは、カタパルト機構を搭載した飛行機型のメカ、W―ウィング・カタパルト。

 

「今しがた特殊召喚したウィング・カタパルトの効果発動!

V―タイガー・ジェットの装備カードにさせる!」

 

V―タイガー・ジェット 守備力 1800→2200

 

「尤もこれもオマケだ!

俺はV―タイガー・ジェットと、コイツの装備カードとなったW―ウィング・カタパルトを融合合体!今こそ勝利のアクロバットを見せろ!2身合体、栄光に導く神風!『VW―タイガー・カタパルト』!」

 

VW―タイガー・カタパルト

融合・効果モンスター

光属性

機械族

レベル 6

攻撃力 2000

 

まだまだ終わらないと言わんばかりに2体のモンスターが変形合体したのは、爆撃機を思わせる姿のロボ、VW―タイガー・カタパルト。

 

「そして、これがコイツらの本気の姿だ!

俺はVW―タイガー・カタパルトと、XYZ―ドラゴン・キャノンを融合合体!

君臨せよ、絶対的な破壊神!今こそ圧倒的な力を見せ付けよ!5身合体、究極形態!『VWXYZ(ヴィドゥズィ)―ドラゴン・カタパルトキャノン』!」

 

VWXYZ―ドラゴン・カタパルトキャノン

融合・効果モンスター

光属性

機械族

レベル 8

攻撃力 3000

 

『な、なんかどっかの戦隊ロボみたいな姿に変貌したぞ!ここまで合体するかぁ!』

 

そして、ギャラガーの驚きの声と共に変形合体したのは、言った通りの巨大ロボ、VWXYZ―ドラゴン・カタパルトキャノン。

 

「このままバトルフェイズ、と行きたい所だが、セットカードが気になるな…

なら、今出したVWXYZ―ドラゴン・カタパルトキャノンの効果発動!

そのセットカードを除外する!」

「なっ!?きゃぁ!」

 

その眼から放たれたレーザーが、舞衣のセットカードに降り注ぐと、それは一瞬の内に黒焦げとなり、直ぐにぼろぼろに崩れて行った。

これで舞衣はセットカードによって対処する事が出来なくなった…

 

「バトルフェイズに入る!VWXYZ―ドラゴン・カタパルトキャノンでベガを攻撃!

この時VWXYZ―ドラゴン・カタパルトキャノンの効果でベガを攻撃表示に変える!」

「なっ!?」

「更にダメージステップに入って速攻魔法『リミッター解除』発動!」

 

リミッター解除(制限カード)

速攻魔法

このカードの発動時に自分フィールドに表側表示で存在する全ての機械族モンスターは、ターン終了時まで攻撃力が倍になる。このターンのエンドフェイズ時、この効果を受けたモンスターを全て破壊する。

 

そして、その攻撃が放たれようとした時、雷牙は最後の一手を使った…!

 

「守備表示なら凌げるとでも思ったかマヌケがぁ!

VWXYZ―アルティメット・デストラクション(ブツン!)のわっ何だ!?」

「なっ停電ですか!?」

 

だがその時、突如としてフィールドの電気が全て遮断され、2人が乗っていたD―ホイールが動力を失った。

動きを止め、横転するD―ホイールから何とか飛び降りて難を逃れた2人だった、が、

 

「こちらはセキュリティだ。非合法ライディングデュエルの現行犯で全員確保する!」

 

既に会場は、シティの治安組織『セキュリティ』によって包囲されていた…!




異次元格納庫についてですが、アニメ版そのままでやるのは強すぎるかな(VWXYZならランク4エクシーズを大量生産出来ますし)と思ったので、調整しました。


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66話_地獄の沙汰もカード次第

「と、まあ俺達は抵抗空しくシティの治安組織『セキュリティ』に捕まりました、て事だ」

「誰に向かって話しているのよ、ダンテ。大体抵抗らしい抵抗していないじゃない、私達」

 

唐突にメタ発言を言い放つダンテとそれに突っ込むメアリ、2人を含めたランサーズ第2部隊と第4部隊の面々は今、セキュリティの護送車に入れられ、何処かへと連れて行かれている。

 

「漫才はそれ位にしましょう?こういった超格差社会、其処を統治する治安機関が捕まえた存在を連れて行く場所と来たら…」

「刑務所、それも脱獄しにくさだけは一級品の粗悪な所でござろうな、隊長殿」

「まさかプリ○ン・ブレイクさながらの場所に行くとはね。中々ゾクゾクするじゃない」

「隊長殿。これは作り話では無く、現実でござる」

 

そんな2人に突っ込みを入れつつ、第4部隊の幹部である雪乃と剣は、今自分達が何処へ向かっているのかを冷静に話し合っていた。

途中、色々と危ない会話が出ていたが気にしてはいけない。

 

「ったくよぉ、セキュリティも空気読みやがれや。あとちょっとでデュエルの決着がつくって所で介入しやがって」

「私も何だか不完全燃焼です、雷牙さん。あの場面はアクションデュエルで無ければもう負けも同然でしたが、それでも決着を付けたかったです…」

 

一方で、同じ第4部隊の、先程までライディングデュエルをしていた雷牙と舞衣の2人は、不本意な形でデュエルが流れた事に憤慨していた。

 

「おいコラぁ、俺を誰だと思ってやがる!俺は舞網市長の息子だぞ!こんな小さい護送車にすし詰めにしやがって!」

「いや沢渡、お前の親父の権力は此処では通じないからな」

「普通に考えれば分かると思いますけど…」

「沢渡、ちょっと落ち着きなよ。そんな所で意味無い事喚いているより、状況把握をした方が良いんじゃない?」

「やれやれ、この期に及んでそんなぶっ飛んだ内容で喚けるのは、ある意味大物だなこりゃ…」

 

更に一方で、捕まった事自体よりも、乗せられている護送車の現状に喚いている沢渡に、刃達第2部隊のメンバーと亮太郎は、様々な反応を見せていた。

そんな謎の賑やかさの中、護送車は目的地へと向かう…!

 

------------

 

護送車が到着した場所、其処は剣達が予想していた通りの収容所であった。

流石に男女ごちゃ混ぜに収容するなんて事は無く、ダンテ達男性陣と、雪乃達女性陣は別々となったが、その内部の様子は古ぼけ、内装は質素を通り越して殆ど何も無し、

 

「おい新入り、挨拶はねぇのか」

「よぉ。これから短い付き合いかも知れねぇが宜しくな」

「おいおい、挨拶つったら地べたに座って「あ?(ヒュッ!)」ひぃ!?」

 

新しく入って来たダンテ達に対するいちゃもん、

 

「おい、これだけか?」

「おい、ストロベリーサンデーはねぇのか?けっ、しけたムショだぜ」

「後がつかえているんだ、というかそんな物は無い」

 

給食に対する露骨な差別、

 

「おっと、足がすべ(ゴシャァ!)え…?

ぎゃぁぁぁぁぁぁ!?お、俺の足「Shut up!(ガシィ!)」ムグォォォォ!?」

「おい看守、コイツ騒がしいから独居房にぶちこんどけ」

「ああ、新入り。全くこれだからドロップアウトのクズは…」

 

明らかな虐めと言わんばかりのいびり、

 

「よし!お前ら今から此処をピッカピカに掃除しろ」

「あの俺今朝から風邪気味で(すっ)」

「俺も筋肉痛で(すっ)」

「俺も栄養不足で(すっ)」

「俺も疲れ目で(すっ)」

「お前らは戻って良し。後はお前らでやっておけ」

 

レアカードを用いた看守や係の者の買収、と荒んでいた。

 

「全く、色々と腐りきってやがるな、此処は。舞網市長の息子たる俺を虚仮にしやがって…!」

「お前またそれかよ。まあ色々アレなのは認めるけどよ」

「まして、カードがお金替わりとは信じられませんでしたよ。でも、これで看守が僕達のデュエルディスク『だけ』を没収した訳が分かりました。看守もこの状況を黙認、いやむしろ嬉々としてそうしているという訳ですね…!」

「捕まっている連中も連中だ、掃除係サボる為だけにカードを貢いでいやがる、ふざけているな…!」

「アイツら、デュエリストの誇りなんざ彼方に消え尽くしてやがる…!」

「セキュリティの、いやシティの『負』を具現化したと言わんばかりの場でござるな、此処は…」

「…」

 

そんな収容所の現実を(色々と違和感ある部分こそあれど)見て来たダンテ達男性陣は、その感想を話し合っていた。

犯罪者として捕まると言う不本意な形ではあれど、剣の言う通りシティの『負』を具現化したと言える施設の潜入、これもまた調査の1つだと、皆して割り切っていた。

と、其処へ、

 

「お呼びだ、出ろ」

 

突如、房の扉を看守が開き、とある場所まで付いて来る様、ダンテ達に命じて来た。

それに従い、看守の案内でその場所へと向かうと、

 

「来たな、ボスの徳松さん直々のお呼びだ」

 

畳が敷かれた房の中心に居座る、徳松と呼ばれた着流し姿の壮年男性と、その取り巻きらしき同じく着流し姿の2人の男がいた。

 

------------

 

「お前らは分かっちゃいねぇ、トップに逆らう奴は必ず潰される」

「御託は良い、さっさと構えろ」

「「デュエル!」」

 

先攻 Tokumatsu LP 4000 VS 後攻 Syun LP 4000

 

「俺のターン!

まずは魔法『花合わせ』発動!」

 

花合わせ(アニメオリジナルカード)

通常魔法

1:デッキから攻撃力100の『花札衛(カーディアン)』モンスター4体を攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターは特殊召喚の素材に出来ず、『花札衛』モンスターの効果以外ではリリース出来ない。

 

「花合わせの効果で、俺はデッキから4体の花札衛、『松』『芒』『柳』『桐』を攻撃表示で特殊召喚する!」

 

花札衛―松―(アニメオリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 1

攻撃力 100

 

花札衛―芒―(アニメオリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 8

攻撃力 100

 

花札衛―柳―(アニメオリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 11

攻撃力 100

 

花札衛―桐―(アニメオリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 12

攻撃力 100

 

囚人の身ながらも収容所のボスとして君臨する徳松と、彼によって呼び出されたダンテ達、その彼らに徳松達はカードを要求するもダンテ達は突っぱね、ならば叩き潰してやると言わんばかりに始まった徳松と隼のデュエル。

その先攻となった徳松のカードの効果で一気に展開されたのは、其々名前の由来となった花札をモチーフとしたカード型のモンスター達。

余談だが、芒には何故か地面に1対の眼が、柳には魔法『ハリケーン』を彷彿とさせる顔が、そして桐には通常モンスターである『テンタクル・プラント』が描かれていた。

 

「次に魔法『花積み』発動!」

 

花積み(アニメオリジナルカード)

通常魔法

1:自分のデッキから『花札衛』モンスター3体までを選んで発動出来る。そのカードを好きな順番でデッキの上に戻す。

 

「花積みの効果で、俺はデッキから3体の花札衛、『芒に月』『桐に鳳凰』『柳に小野道風』をデッキトップに置く。

続いてフィールドの松をリリースして手札の『花札衛―松に鶴―』の効果発動!

コイツを攻撃表示で特殊召喚し、1枚ドローする」

 

花札衛―花に鶴―(アニメオリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 1

攻撃力 2000

 

その後自らの効果で松と入れ替わって登場したのは、先程と同じく名前の通り、花札の1枚『松に鶴』をモチーフとしたカード型のモンスター。

因みに其処に描かれている鶴は効果モンスターである『クレーンクレーン』(機械族)そっくりである。

その動きに「徳松さんの必勝パターンだ!」「あの新入り終わったな」等と外野から声が聞こえたが、隼は相手の出方を伺う事に集中する余り全く聞いていなかった。

 

「ドローした『花札衛―芒に月』の効果を、フィールドの芒をリリースして効果発動!

コイツを攻撃表示で特殊召喚し、1枚ドローする」

 

花札衛―芒に月―(アニメオリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 8

攻撃力 2000

 

先程の松に鶴と同じ様に登場したのは、これもまた名前の通り、花札の1枚『芒に月』をモチーフとしたカード型のモンスター。

尚、その月の部分が三邪神の一角である効果モンスター『邪神アバター』そっくりの黒い球体である。

 

「ドローした『花札衛―桐に鳳凰―』の効果を、フィールドの桐をリリースして効果発動!

コイツを攻撃表示で特殊召喚し、1枚ドローする」

 

花札衛―桐に鳳凰―(アニメオリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 12

攻撃力 2000

 

更に桐と入れ替わって登場したのは、やはり名前の通り、花札の1枚『桐に鳳凰』をモチーフとしたカード型のモンスター。

尚、鳳凰は鳳凰でも、効果モンスターである『鳳凰』そっくりなのは余談である。

 

「ドローした『花札衛―柳に小野道風―』の効果を、フィールドの柳をリリースして効果発動!

コイツを攻撃表示で特殊召喚し、1枚ドローする。

俺がドローしたのは『花札衛―桜に幕』!しかしフィールドにレベル3の花札衛はねぇ。

よって柳に小野道風の効果で、このカードは墓地へ送られる」

 

花札衛―柳に小野道風―(アニメオリジナルカード)

効果モンスター/チューナー

闇属性

戦士族

レベル 11

攻撃力 2000

 

まだまだ終わらないと言わんばかりに、柳と入れ替わって登場したのは、予想通りと言うべきか、花札の1枚『柳に小野道風』をモチーフとしたカード型のモンスター。

 

「おいおい、攻撃力100を攻撃表示とは言え、たった1枚のカードエフェクトで4体ものモンスターを並べたばかりか、それを全部攻撃力2000モンスターにChangeするとはなぁ…」

「しかもうち1枚はチューナー、て事は…!」

「察しが良いな、其処の新入り。そう、此処からが本番だ!

俺は松に鶴、芒に月、桐に鳳凰に、柳に小野道風をチューニング!この時、柳に小野道風の効果でコイツらのレベルを全て2として扱う!涙雨、光となりて、降り注げ!シンクロ召喚!出でよ、レベル8『花札衛―雨四光―』!」

 

花札衛―雨四光―(アニメオリジナルカード)

シンクロ・効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 8

攻撃力 3000

 

そして、シンクロ召喚の演出と共に登場したのは、番傘を持った武士の様な出で立ちの戦士、雨四光。

 

「俺はカードを2枚セットしてターンエンド!

教えてやろう新入り、カードはトップの証明、デュエルは力の証だと!」

 

Tokumatsu

LP 4000

手札 0

モンスター 花札衛―雨四光―(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

「ふん、下らんな!俺のターン!ドロー!」

「甘ぇんだよ小僧!その瞬間、雨四光の効果発動!松に鶴、芒に月、桐に鳳凰、柳に小野道風をシンクロ素材としたコイツが場にいる状態で、相手がドローした時1500のダメージを与える!」

「何?ちぃっ!」

 

Syun LP 4000→2500

 

先攻1ターン目にしては大きく動いた徳松のターンも終了、隼のターンとなりカードをドローしたその時、雨四光の番傘からカードの弾丸が放たれ、それが隼に襲い掛かった。

 

「この程度のバーンダメージ、どうと言う事は無い!

まずは『RR(レイド・ラプターズ)―バニシング・レイニアス』を召喚!」

 

RR―バニシング・レイニアス

効果モンスター

闇属性

鳥獣族

レベル 4

攻撃力 1300

 

雨四光の効果によるダメージに怯む事無く隼が登場させたのは、緑を中心とした色合い、戦闘機を思わせる出で立ちの猛禽類、バニシング・レイニアス。

 

「バニシング・レイニアスの効果発動!

手札から『RR―トリビュート・レイニアス』を攻撃表示で特殊召喚!」

「フン…

それにチェーンして永続罠『イカサマ御法度』発動!」

 

イカサマ御法度(アニメオリジナルカード)

永続罠

1:自分フィールドに『花札衛』シンクロモンスターが存在し、相手フィールドに手札から特殊召喚されたモンスターが存在する場合にこの効果を発動出来る。その相手モンスターを全て持ち主の手札に戻す。

2:自分フィールドに『花札衛』シンクロモンスターが存在しない場合、このカードを破壊する。

 

「このタイミングで永続罠か。まあ良い、チェーン処理に入る!

来い、トリビュート・レイニアス!」

 

RR―トリビュート・レイニアス

効果モンスター

闇属性

鳥獣族

レベル 4

攻撃力 1800

 

そのバニシング・レイニアスの効果で、青を基調とした色合い、戦闘機を思わせる出で立ちの猛禽類、トリビュート・レイニアスが姿を現した、

 

「だがその瞬間、イカサマ御法度の効果で、今手札から出て来たトリビュート・レイニアスを手札に戻して貰う!」

「くっそういう事か!」

 

が、その瞬間、徳松が予め発動していたイカサマ御法度の効果で、即座に手札に戻されてしまった。

 

「これぞ10年間無敗の、俺のデュエルだ!新入り、お前がどんなデュエルをして来ようと、そんなモンへし折ってやる!」

 

隼の動きを遮るかの様に姿を現した徳松の布陣、その姿に「あれぞ『秋雨の長次郎』が誇る無敵の布陣だ!」「徳松さんのあの布陣の前に、勝てた奴は居ねぇ。あの新入りも涙を流すんだろうなぁ」と、再び外野が騒ぎだした。

だがその時、

 

「フン、これで10年間無敗だと?こんな穴だらけどころか城壁にすらなっていない布陣で、無敵の布陣だと?笑わせるな!」

「何だと…?」

「やはり貴様の、貴様らのデュエルは下らない…!

貴様のデュエルには、鉄の意志も鋼の強さも感じられない!そんな貴様如きに10年もの間、無惨に散っていった連中も同類だ!」

「フン、所詮は口だけだろう。その無意味な特殊召喚効果しか持たねぇ雑魚だけで何が出来る!」

「良いだろう、今からそれを思い知らせてやる!

俺は魔法『RR―コール』を発動!対象はバニシング・レイニアスだ!」

 

RR―コール

通常魔法

『RR―コール』は1ターンに1枚しか発動出来ず、このカードを発動するターン、自分は『RR』モンスターしか特殊召喚出来ない。

 

「RR―コールの効果で、デッキから2枚目のバニシング・レイニアスを守備表示で特殊召喚する!

その様子だと、その永続罠が対応しているのは手札からの特殊召喚『だけ』の様だな」

「ああ。だが所詮同じ奴が1体増えただけの話、今出て来た奴の効果も事実上使えないぞ?」

 

そんな周囲を片腹痛しと言いたげに切って捨てた隼、余程自分の布陣に自信があるのか尚も余裕を崩さない徳松を他所に更なる展開を始める。

徳松達は知らない、隼がシンクロ次元に来る前、今はランサーズにおいての上司である遊矢とのデュエルで、何も出来ずに無惨にやられたという、生まれ故郷ではプロデュエリスト養成校に通っていた身には余りにも屈辱的な過去がある事を、その時遊矢が敷いた、人呼んで『完全決闘』という布陣は、今の徳松が敷いている布陣とは比べ物にならない位、えげつない拘束力があった事を…

 

「今に分かる。だがその前に、永続魔法『RR―ネスト』発動!」

 

RR―ネスト

永続魔法

『RR―ネスト』の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。

1:自分フィールドに『RR』モンスターが2体以上存在する場合にこの効果を発動出来る。自分のデッキ・墓地の『RR』モンスター1体を選んで手札に加える。

 

「RR―ネストの効果発動!

デッキから『RR―ファジー・レイニアス』を手札に加える!

さて見せてやろう、俺のデュエルを!

俺は2体のバニシング・レイニアスでオーバーレイ!」

「オーバーレイ?一体何を?」

「2体のレベル4モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!冥府の猛禽よ、闇の眼力で真実を暴き、鋭き鉤爪で栄光をもぎ取れ!エクシーズ召喚!飛来せよ、ランク4!『RR―フォース・ストリクス』!」

 

RR―フォース・ストリクス

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

鳥獣族

ランク 4

攻撃力 100

ORU 2

 

そして、隼の決意を込めた宣言と、徳松の疑問、そしてエクシーズ召喚の演出と共に、フクロウの様な姿の機械仕掛けの猛禽類、フォース・ストリクスが姿を現した…!

 

「ほぉ、娑婆じゃこんな召喚方法を使ってんのかい。

だがソイツでどう突破するって言うんだ?」

「急かすな。まだコイツは布石の1つに過ぎん。

フォース・ストリクスのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!

デッキから『RR―シンギング・レイニアス』を手札に加える!」

 

RR―フォース・ストリクス ORU 2→1

 

「そしてコイツが貴様に引導を渡すカードだ!魔法『RUM―スキップ・フォース』発動!対象はフォース・ストリクスだ!」

 

RUM―スキップ・フォース

通常魔法

1:自分フィールドの『RR』エクシーズモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターよりランクが2つ高い『RR』モンスター1体を、対象の自分のモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚としてエクストラデッキから特殊召喚する。

2:自分の墓地からこのカードと『RR』モンスター1体を除外し、自分の墓地の『RR』エクシーズモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを特殊召喚する。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動出来ない。

 

「俺はフォース・ストリクスのオーバーレイ・ネットワークを再構築!誇り高きハヤブサよ、英雄の血潮に染まる翼翻し、革命の道を突き進め!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!現れろ、ランク6!『RR―レヴォリューション・ファルコン』!」

 

RR―レヴォリューション・ファルコン

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

鳥獣族

ランク 6

攻撃力 2000

ORU 2

 

そしてフォース・ストリクスの身が炎に包まれ、その身がハヤブサを思わせる姿、レヴォリューション・ファルコンへと、変貌した…!

 

「コイツが貴様の『無敵』というまやかしを打ち砕くモンスターだ!レヴォリューション・ファルコンの効果発動!

貴様の雨四光を破壊し、その攻撃力の半分、1500ダメージを受けて貰う!

さっきのお返しだ!革命の炎に焼かれるが良い!」

「な、何だと!?(もう1枚のセットカードは戦闘破壊にしか対応していない『札改め』、コイツでは防げな(ヒュゴォ!))ぐぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

Tokumatsu LP 4000→2500

 

その翼に仕込まれた火炎放射器で雨四光を丸焦げにし、その余波が徳松にも及んだ。

余談だが雨四光がいなくなった事でイカサマ御法度は維持できなくなり、破壊された。

その様子に徳松も、隼の発言で憤慨してした様子の外野も「嘘だろ…?」「あの『秋雨の長次郎』の必勝パターンが、たった1ターンで…?」と、呆然としていた。

だが、そんな中でも隼は動きを止めない。

 

「これで俺は手札から特殊召喚出来る!

まずは手札の『RR―シンギング・レイニアス』を守備表示で特殊召喚!コイツは俺のフィールドにエクシーズモンスターがいれば、手札から特殊召喚出来る!」

 

RR―シンギング・レイニアス

効果モンスター

闇属性

鳥獣族

レベル 4

守備力 100

 

徳松のフィールドがほぼ一掃された事で、改めて展開して行く隼、その第一手として登場したのは、金色を基調とした色合いの、機械仕掛けの猛禽類、シンギング・レイニアス。

 

「次に手札の『RR―ファジー・レイニアス』の効果発動!

コイツも守備表示で特殊召喚!コイツは俺のフィールドにコイツ以外のRRモンスターがいれば効果処理によって特殊召喚出来る!」

 

RR―ファジー・レイニアス

効果モンスター

闇属性

鳥獣族

レベル 4

守備力 1500

 

次に出て来たのは、紫を基調とした色合い、戦闘機を思わせる出で立ちの猛禽類、ファジー・レイニアス。

 

「続いてシンギング・レイニアスとファジー・レイニアスでオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚、今一度飛び立て!フォース・ストリクス!」

 

RR―フォース・ストリクス 攻撃力 100→600

 

「今更だが、フォース・ストリクスの攻守は、コイツ自身以外の、俺のフィールドの鳥獣族モンスターの数×500アップする!

更にフォース・ストリクスのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!

デッキから3枚目のバニシング・レイニアスを手札に加える!

この時、墓地へ送ったファジー・レイニアスの効果発動!

デッキから2枚目のファジー・レイニアスを手札に加える!」

 

RR―フォース・ストリクス ORU 2→1

 

「バトルフェイズに入る!2体で一斉攻撃だ!」

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

Tokumatsu LP 2500→1900→-100 LOSE

 

WINNER Syun



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67話_そのふざけた幻想をぶち壊す!

注:タイトルはこうなっていますが、当麻は出ません。


「う、嘘だろ、あの徳松さんが、新入りに負けた…?」

「しかも、『秋雨の長次郎』の必勝パターンを前に、後攻1ターンで…?」

 

囚人ながら収容所のトップに君臨していた徳松と、今日収容されたばかりの隼、囚人達にとって結果は火を見るより明らかだと思っていた、思い込んでいたこのデュエル、だがその結果は、その囚人達が思い描いていた物とは正反対の物であった。

外野で見守る囚人の1人が言っていた『花札衛―雨四光―』と『イカサマ御法度』の必勝パターン、隼もそれによって展開を妨害されはした。

だが隼にとっては『少しばかり妨害があった程度』、過去に殆ど何もさせて貰えないという屈辱的な敗北を喫した身には、どうと言う事は無かったのである。

 

「フン。だから俺はあの時、一刻も早くアカデミアを叩き潰すべきだと言ったんだ。こんな雑魚が10年も負けなしでいられる程度の所に寄り道している暇は無いと。とんだ無駄骨だ、榊遊矢も赤馬零児も、好機を見出せない無能だったか」

「何だとテメェ、遊矢や社長を馬鹿にしやがって!」

「ちょっとばかり此処を見回しただけで隊長や社長を無能呼ばわりは聞き捨てならないね…!」

「おい、その遊矢にボロ負けしたのお前だったよな、あぁ?」

「待たれよ、皆の衆。この場での揉め事は控えるでござる」

「おいおい、落ち着けよお前ら。色々とヤヴァい状況なのは分かるけどさ」

「やれやれだぜ、全く…」

「Be quiet。まあ人材は無さそうだが、人員確保には行けそうじゃねぇか」

 

一方で勝利した隼は、徳松達を『雑魚』と吐き捨て、シンクロ次元に来た事を無駄骨と断じ、その決断を下した遊矢と零児を批判、それに我慢ならなかった刃と北斗、シンゴが食って掛かり、それ以外の4人が宥めようとしたその時だった。

 

「い、インチキだ!こんなの、インチキしたからに決まっている!」

「エクシーズ召喚なんてルールに無い召喚法を使いやがって!」

「ルールに無い事なんて反則だ!だからこのデュエルは無効だ!」

「正々堂々と勝負しやがれ、このインチキ野郎共!」

 

自分達の代表たる徳松の敗北という現実を受け入れられないのか、口々に非難の声を上げる外野の囚人達、その内容ははっきり言って言い掛かりにも程がある物であり、中には『お前が言うな』と突っ込みたくなる物まであった。

その余りの酷さに、もし徳松が普段の調子であったら、そんな外野に大喝を浴びせて黙らせていたであろう状態、だが当の徳松は自らの惨敗とも言える敗北に項垂れたままで、外野の様子に反応した素振りすらない。

歯止めになれる存在がその力を発揮出来なければ勢いづくのは必定、外野の非難も段々と激しくなっていた、が、

 

「待たれよ、皆の衆!ならば、シンクロ召喚を使えば問題無かろう!」

 

剣が言い放った一喝に、周囲は静まり返った。

徳松ならともかく、入って来たばかりの新入りの言葉に耳を貸さなそうにも見えたが、剣が放つ威圧感にあてられたか、非難を再開する者はいなかった。

 

「沈黙は是、と捉えるでござるよ。なれば徳松殿、某がお相手いたそう」

「ん?あ、ああ。さっきのリベンジとさせて貰おうか!」

「「デュエル!」」

 

先攻 Tokumatsu LP 4000 VS 後攻 Tsurugi LP 4000

 

「俺のターン!

まずは魔法『花合わせ』発動!」

 

花合わせ(アニメオリジナルカード)

通常魔法

1:デッキから攻撃力100の『花札衛(カーディアン)』モンスター4体を攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターは特殊召喚の素材に出来ず、『花札衛』モンスターの効果以外ではリリース出来ない。

 

「花合わせの効果で、俺はデッキから4体の花札衛、『松』『芒』『柳』『桐』を攻撃表示で特殊召喚する!」

 

花札衛―松―(アニメオリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 1

攻撃力 100

 

花札衛―芒―(アニメオリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 8

攻撃力 100

 

花札衛―柳―(アニメオリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 11

攻撃力 100

 

花札衛―桐―(アニメオリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 12

攻撃力 100

 

「次に魔法『花積み』発動!」

 

花積み(アニメオリジナルカード)

通常魔法

1:自分のデッキから『花札衛』モンスター3体までを選んで発動出来る。そのカードを好きな順番でデッキの上に戻す。

 

「花積みの効果で、俺はデッキから3体の花札衛、『芒に月』『桐に鳳凰』『柳に小野道風』をデッキトップに置く。

続いてフィールドの松をリリースして手札の『花札衛―松に鶴―』の効果発動!

コイツを攻撃表示で特殊召喚し、1枚ドローする」

 

花札衛―花に鶴―(アニメオリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 1

攻撃力 2000

 

「ドローした『花札衛―芒に月』の効果を、フィールドの芒をリリースして効果発動!

コイツを攻撃表示で特殊召喚し、1枚ドローする」

 

花札衛―芒に月―(アニメオリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 8

攻撃力 2000

 

「ドローした『花札衛―桐に鳳凰―』の効果を、フィールドの桐をリリースして効果発動!

コイツを攻撃表示で特殊召喚し、1枚ドローする」

 

花札衛―桐に鳳凰―(アニメオリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 12

攻撃力 2000

 

「ドローした『花札衛―柳に小野道風―』の効果を、フィールドの柳をリリースして効果発動!

コイツを攻撃表示で特殊召喚し、1枚ドローする。

俺がドローしたのは『花札衛―桜に幕』!しかしフィールドにレベル3の花札衛はねぇ。

よって柳に小野道風の効果で、このカードは墓地へ送られる」

 

花札衛―柳に小野道風―(アニメオリジナルカード)

効果モンスター/チューナー

闇属性

戦士族

レベル 11

攻撃力 2000

 

「俺は松に鶴、芒に月、桐に鳳凰に、柳に小野道風をチューニング!この時、柳に小野道風の効果でコイツらのレベルを全て2として扱う!涙雨、光となりて、降り注げ!シンクロ召喚!出でよ、レベル8『花札衛―雨四光―』!」

 

花札衛―雨四光―(アニメオリジナルカード)

シンクロ・効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 8

攻撃力 3000

 

「カードを2枚セットしてターンエンドだ!」

 

Tokumatsu

LP 4000

手札 0

モンスター 花札衛―雨四光―(攻撃表示)

魔法・罠カード セット×2

 

剣の提案で始まった、徳松と剣のデュエル、先手を取った徳松は、先程の隼とのデュエルと同じ様な展開でターンを終えた。

 

「某のターン!ドロー!」

「その瞬間、雨四光の効果発動!1500のダメージを受けて貰う!」

 

Tsurugi LP 4000→2500

 

「ふむ、何とも貧弱な一の太刀でござるな」

「何ィ!?」

「納得いかぬ、と言いたげな顔でござるな。ならば某がお見せしよう、我が剣、『薩摩示現流』の剣の教えを体現した、一の太刀を!

某はまず、魔法『封印の黄金櫃』発動」

 

封印の黄金櫃(準制限カード、2016年4月禁止制限より制限解除)

通常魔法

1:デッキからカード1枚を選んで除外する。このカードの発動後2回目の自分スタンバイフェイズに、この効果で除外したカードを手札に加える。

 

「封印の黄金櫃の効果で、デッキから『妖刀―不知火』を除外するでござる。

次にフィールド魔法『不知火流転生の陣』発動」

 

不知火流転生の陣

フィールド魔法

『不知火流転生の陣』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:1ターンに1度、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、手札を1枚墓地へ送り、以下の効果から1つを選択して発動出来る。

●自分の墓地の守備力0のアンデット族モンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを特殊召喚する。

●除外されている自分の守備力0のアンデット族モンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを墓地に戻す。

 

「今発動した不知火流転生の陣の効果を、手札の『不知火の隠者』を墓地へ送って発動。

先程除外した妖刀―不知火を墓地へ戻すでござる」

「『おろかな埋葬』で直接墓地送りにした方が良くないか?」

「アイツ、プレミか?それともおろ埋を引けなかったか?」

 

剣が行っている一連の動きに、外野は訝しむ様な声を上げだした。

一見、手札3枚も使ってやった事は、デッキから除外した1枚のモンスターカードを態々墓地へ戻す、という回りくどい動き、これなら制限カードではあるが『おろかな埋葬』を使った方が効率的に見える。

だが、この動きには剣なりの戦略がある。

 

「続いて『ユニゾンビ』を召喚」

 

ユニゾンビ

効果モンスター/チューナー

闇属性

アンデット族

レベル 3

攻撃力 1300

 

そんな周囲の声を他所に剣が召喚したのは、互いに同じ歌を歌っている筈なのだが何処かずれている、でっぷり肥えたのと華奢なの、2人組のゾンビ。

 

「今しがた召喚したユニゾンビの効果発動。

デッキから『不知火の宮司』を墓地へ送り、ユニゾンビのレベルを1つ上げるでござる」

 

ユニゾンビ レベル 3→4

 

「更に魔法『生者の書―禁断の呪術―』発動!」

 

生者の書―禁断の呪術―

通常魔法

自分の墓地に存在するアンデット族モンスター1体を選択して特殊召喚し、相手の墓地に存在するモンスター1体を選択してゲームから除外する。

 

「生者の書―禁断の呪術―の効果で、たった今墓地へ送った宮司を攻撃表示で蘇生するでござる。

そして徳松殿、貴殿の墓地にある『花札衛―柳に小野道風―』を除外して貰おう」

「ちっ」

 

不知火の宮司

効果モンスター

炎属性

アンデット族

レベル 4

攻撃力 1500

 

剣が発動した魔法カードから出現した緑の表紙の本から禍々しいエネルギーが噴出し、それによって墓地から蘇ったのは、赤い法衣を身に纏った宮司。

 

「此処からが某の本領発揮でござるよ、徳松殿。

某はレベル4の宮司に、同じくレベル4のユニゾンビをチューニング!戦の神が現に降りて、今振り下ろす、死の刃!シンクロ召喚、レベル8!『戦神―不知火』!」

 

戦神―不知火

シンクロ・効果モンスター

炎属性

アンデット族

レベル 8

攻撃力 3000

 

シンクロ召喚の演出と共に登場したのは、左手には禍々しいオーラを纏う妖刀、右手には燃え盛る火炎が刀となった物を構える、武将の様な出で立ちの戦の神。

 

「シンクロ召喚した戦神―不知火の効果発動!

たった今シンクロ召喚の素材に使った宮司を除外し、攻撃力を1500アップするでござる!」

「攻撃力で雨四光を越えて来たか!」

 

戦神―不知火 攻撃力 3000→4500

 

「おっと、これだけで終わりと思うたら大間違いでござるよ。

此処で、除外された宮司の効果発動!

雨四光を破壊するでござる!神の呪炎!」

「な、何ィ!?」

 

その効果に徳松が驚く間もなく、戦神―不知火の右手の炎が勢いを増したかと思ったら、その炎に雨四光が何時の間にか飲み込まれていった。

徳松のエースである雨四光がまたしても突破され、このまま攻撃すれば文字通り『一の太刀』で勝負ありとなるこの場面、だが、

 

「示現流の教え、それは『一の太刀疑わず』、全てを込めた一撃こそが至高でござる!某のデッキの『一の太刀』は、まだまだこの程度のなまくらでは無い!

墓地の妖刀―不知火の効果発動!

このカードは、自分自身とチューナーでは無いアンデット族1体を除外する事で合計レベルと同じレベルのアンデット族シンクロモンスターを特殊召喚出来るでござる。

この効果は本来、このカードが墓地へ送られたターンには発動出来ないでござるが、この妖刀―不知火は不知火流転生の陣の効果により、

 

このターンに墓地へ『戻った』カードでござる、故に発動可能!」

「な、何だってェェェェェェェェェ!?」

「一度も墓地へ行っていないのに『送る』じゃねぇのかよ!?そんなのアリか!?」

「だからあんな回りくどいやり方を…!」

 

剣の展開は止まらない。

次は、俗にKO○MAI語と呼ばれるカード表記の裏を突いて、新たなるシンクロモンスターを出す。

 

「某はこの効果で、隠者と妖刀―不知火を除外し、アンデット・スカル・デーモンを攻撃表示で特殊召喚!」

 

アンデット・スカル・デーモン

シンクロ・効果モンスター

闇属性

アンデット族

レベル 6

攻撃力 2500

 

その妖刀―不知火の効果で登場したのは、名前の通り骨と皮だけの姿となった悪魔。

 

「まだまだ行くでござる!

除外された隠者の効果発動!

除外されている宮司と妖刀―不知火を共に攻撃表示で特殊召喚!」

 

妖刀―不知火

効果モンスター/チューナー

炎属性

アンデット族

レベル 2

攻撃力 800

 

「そしてこれが最後でござる!

某はレベル4の宮司に、レベル2の妖刀―不知火をチューニング!刀に宿る付喪の神が、あらゆる敵を地に伏せん!シンクロ召喚、レベル6!『刀神―不知火』!」

 

刀神―不知火

シンクロ・効果モンスター

炎属性

アンデット族

レベル 6

攻撃力 2500

 

そして、宮司と只ならぬ気配を放つ妖刀によるシンクロ召喚の演出と共に登場したのは、刀に宿りし神。

 

「バトルフェイズに入るでござる!

戦神―不知火でダイレクトアタック!チェストぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

Tokumatsu LP 4000→-500 LOSE

 

WINNER Tsurugi

 

「これが某のデュエル、『薩摩示現流』の教えを体現した、一の太刀でござる!」



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68話_ドロー(フェイズ)を捨て(てい)た男

「な、なんだよこれ、徳松さんが、10年間無敗を誇った徳松さんが、2連敗、だと…!?」

「一体何なんだアイツら、とんでもない奴等が来ちまった!」

「やべぇよ、俺、アイツらにケンカ売っちまったんだがさっき!」

 

隼に続き、剣にも後攻1ターンキルによって敗北した徳松、しかも先程の隼の様にいちゃもんを付ける要素が無い事もあり、隼に一方的な非難を浴びせていた外野の囚人たちもその結果を認めざるを得ず、今日入ったばかりであるダンテ達8人に恐れ慄いていた。

そして2連敗、それも完敗と言える敗北を喫した徳松自身も、絶望感から再び項垂れた。

シティの収容所、その1つの房の空気を支配する、重苦しい空気、それは恐怖か、絶望か、或いは…

だが、そんな空気は、

 

「あぁ重苦しいな全く!さっきから一体何なんだ此処は!」

 

先程から何処か苛立っていた様子の、沢渡の怒りの声で吹き飛んだ。

 

「レアカードを金みたく取引の道具にして、レアリティの低いカードをドブに捨てて、先輩面してカードを巻き上げて、デュエルモンスターズを、デュエルモンスターズのカードを蔑ろにするだけでも許しがたい行為だが、

だが俺が何より許せないのは、デュエルを支配の道具にして、勝利こそが全てだと言わんばかりに振る舞って、1回や2回の負け位で無様に項垂れているお前と、そのイエスマンと化している外の奴等だ!お前らデュエルを、デュエルモンスターズを何だと思っている!」

 

怒りのままに想いをぶちまける沢渡、とはいえその大部分は、彼のランサーズに加入するまでの人となりを知っている存在から「お前が言うな」と総ツッコミを食らいそうな物だが、

 

「俺も以前はそうだった!レアカードで取り巻きを従えて、レアリティの低いカードをばら撒いて、取り巻き達を使ってカードを強奪しようとした!だから今の俺がイライラしているのは、同族嫌悪って奴かも知れない…!

だが俺は変わった!俺の、俺達のリーダーたる奴との出会いが、デュエルが俺を変えてくれた!ソイツのデュエルは、簡単に言えば『自分も対戦相手も、見ている皆すらも笑顔に導くデュエル』!ソイツの手に掛かればどんなカードも強いカードに見え、どんなデッキも強いデッキに思え、どんな局面も打開し、どんな時も必要なカードを引き当てる!そしてどんな状況でも己の根幹、己のデュエルを見失わない!例えそれが、ソイツにとって殆ど無い『負けた時』であろうと!それこそがデュエルの、デュエルモンスターズのあるべき姿だと、俺はソイツから教わった、いや、ソイツによって思い出したんだ!ソイツとの出会いが切っ掛けで、俺は変われた!俺もソイツの様なデュエル、エンタメデュエルがしたいと変われたんだ!お前らだってそうだった筈だ!」

 

沢渡自身もそれを認めながらも、遊矢との出会いを切っ掛けに自らの過ちに気付き、改める事が出来たと声高に語り出した。

 

「黙れ!デュエルで未来を、何かを変える事何ざ出来やしねぇ!」

 

だが徳松はそれを否定する。

そして語り出した、自らの過去を。

嘗ては『エンジョイ長次郎』として名を馳せた徳松、『デュエルとは即ち人生なり。人生は一度きり、勝つ日もあれば負ける日もある。負けを恥じず勝って驕らず、即ちレッツエンジョイ!』を信条としたその姿からコモンズでは知らぬ男はいないとまで言われる人気を誇ったが、一方でシティに根付いてしまっているトップスとコモンズの格差に嫌悪感を抱き、デュエルで変えようと挑むも、其処に待っていたのは金に物言わせたレアカードの数々と、5VS1というルール違反どころでは無い、正に『数の暴力』、しかもそれに圧倒される徳松に何故か向けられる非難と嘲笑であった。

その出来事が切っ掛けで『デュエルでは何も変えられない』という想いを抱き、また負けられない焦りからイカサマに手を出した事で収容所行きとなり、そして『デュエルは収容所で生きていくための単なる道具』とした。

 

「俺はこの10年でそれを知った!デュエルでは所詮、何も変えられないと!」

「はっ!それが本当かどうか、勝負だ!」

「「デュエル!」」

 

先攻 Tokumatsu LP 4000 VS 後攻 Shingo LP 4000

 

「俺のターン!

まずは魔法『花合わせ』発動!」

 

花合わせ(アニメオリジナルカード)

通常魔法

1:デッキから攻撃力100の『花札衛(カーディアン)』モンスター4体を攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターは特殊召喚の素材に出来ず、『花札衛』モンスターの効果以外ではリリース出来ない。

 

「花合わせの効果で、俺はデッキから4体の花札衛、『松』『芒』『柳』『桐』を攻撃表示で特殊召喚する!」

 

花札衛―松―(アニメオリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 1

攻撃力 100

 

花札衛―芒―(アニメオリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 8

攻撃力 100

 

花札衛―柳―(アニメオリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 11

攻撃力 100

 

花札衛―桐―(アニメオリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 12

攻撃力 100

 

「次に魔法『花積み』発動!」

 

花積み(アニメオリジナルカード)

通常魔法

1:自分のデッキから『花札衛』モンスター3体までを選んで発動出来る。そのカードを好きな順番でデッキの上に戻す。

 

「花積みの効果で、俺はデッキから3体の花札衛、『芒に月』『桐に鳳凰』『柳に小野道風』をデッキトップに置く。

続いてフィールドの松をリリースして手札の『花札衛―松に鶴―』の効果発動!

コイツを攻撃表示で特殊召喚し、1枚ドローする」

 

花札衛―花に鶴―(アニメオリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 1

攻撃力 2000

 

「ドローした『花札衛―芒に月』の効果を、フィールドの芒をリリースして効果発動!

コイツを攻撃表示で特殊召喚し、1枚ドローする」

 

花札衛―芒に月―(アニメオリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 8

攻撃力 2000

 

「ドローした『花札衛―桐に鳳凰―』の効果を、フィールドの桐をリリースして効果発動!

コイツを攻撃表示で特殊召喚し、1枚ドローする」

 

花札衛―桐に鳳凰―(アニメオリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 12

攻撃力 2000

 

「ドローした『花札衛―柳に小野道風―』の効果を、フィールドの柳をリリースして効果発動!

コイツを攻撃表示で特殊召喚し、1枚ドローする。

俺がドローしたのは『花札衛―桜に幕』!しかしフィールドにレベル3の花札衛はねぇ。

よって柳に小野道風の効果で、このカードは墓地へ送られる」

 

花札衛―柳に小野道風―(アニメオリジナルカード)

効果モンスター/チューナー

闇属性

戦士族

レベル 11

攻撃力 2000

 

「俺は松に鶴、芒に月、桐に鳳凰に、柳に小野道風をチューニング!この時、柳に小野道風の効果でコイツらのレベルを全て2として扱う!涙雨、光となりて、降り注げ!シンクロ召喚!出でよ、レベル8『花札衛―雨四光―』!」

 

花札衛―雨四光―(アニメ版効果)

シンクロ・効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 8

攻撃力 3000

 

「カードを2枚セットしてターンエンドだ!」

 

Tokumatsu

LP 4000

手札 0

モンスター 花札衛―雨四光―(攻撃表示)

魔法・罠カード セット×2

 

遊矢とのデュエルが切っ掛けでエンタメデュエルに目覚めた沢渡と、過去の惨敗を切っ掛けに信念を捨てた徳松、2人のプライドを賭けたデュエル、先攻となった徳松は、やはり先程の隼や剣とのデュエル同様の展開を見せた。

 

「やっぱそのパターンで来るか。

なら、俺のターン!ドロー!」

「その瞬間、雨四光の効果発動!1500のダメージを受けて貰う!」

「へぶぁ!」

 

Shingo LP 4000→2500

 

「良い先制パンチだな。だが、最後に勝つのはこの俺さ!

まずは『天帝従騎イデア』を召喚!」

 

天帝従騎イデア

効果モンスター

光属性

戦士族

レベル 1

攻撃力 800

 

雨四光の効果によるバーンダメージにたじろぎながらも態勢を立て直した沢渡が最初に召喚したのは、天帝に仕えし白き騎士イデア。

 

「召喚したイデアの効果発動!

デッキから『冥帝従騎エイドス』を守備表示で特殊召喚!」

 

冥帝従騎エイドス

効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 2

守備力 1000

 

そのイデアの効果で登場したのは、冥帝に仕えし黒き騎士エイドス。

 

「俺はカードを2枚セット!

エイドスを特殊召喚したターン、俺は通常召喚に加えて1度だけ、アドバンス召喚出来る!この効果でイデアとエイドスをリリースしてアドバンス召喚!天より舞い降りた帝王よ、今こそ戦いの幕を明ける号令を鳴らせ!出でよ、レベル8!『天帝アイテール』!」

 

天帝アイテール

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 8

攻撃力 2800

 

そのエイドスと、イデアが天へと昇って行った直後、その天から現れたのは、イデアが仕えている天帝、アイテール。

 

「アドバンス召喚したアイテールの効果発動!

デッキから『汎神の帝王』と『帝王の凍気』を墓地へ送って、デッキから『光帝クライス』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

光帝クライス

効果モンスター

光属性

戦士族

レベル 6

攻撃力 2400

 

そのアイテールの力によって、天より舞い降りたのは、黄金の鎧を身に纏った、光を司る帝王、クライス。

 

「特殊召喚したクライスの効果発動!対象は俺がさっきセットしたカード2枚だ!

クライスは召喚、特殊召喚された時、対象のカードを破壊し、その持ち主に破壊した枚数分ドローさせる事が出来る!」

「な、何!?お前、正気か!?」

「そんな事したら雨四光の効果でバーンダメージを喰らって、次のターンで…!」

「アイツ、血迷ったか!?」

 

そう、此処でクライスの効果を使ってしまうと、雨四光の効果で沢渡は1500ダメージ(あくまで2枚のドローを『1回』行っただけなので、ダメージも『1回分』の1500である)を受けてしまい、次の自分のターンまでに何とかしなければ負ける状況。

だがそんな事は、沢渡も承知の上だ。

 

「言っただろう、俺はデュエルで、お前らを変えて見せる、と!手札は無限の可能性!ドローはその可能性を引き寄せる、大いなる力だ!」

「っ!」

「このドローは重いぜ!このデュエルの勝敗を分けると言って良い位重い!

でも俺は引く!たとえこの指がペッキリ折れ、この腕もメッキリ折れ、全身までもがバッキリ逝こうとも!見せてやる!真紅を通り越して、蒼穹に燃え盛る、俺のデュエ魂を!

ドロドロドロドロドロドロ、ドロォォォォォォォォォォ!」

 

Shingo LP 2500→1000

 

気迫満載と言わんばかりの凄味と共にドローした沢渡、それと共に雨四光の効果によるバーンダメージを受けてしまうが、

 

「これを待っていたぜ!このデュエルを、俺の勝利という結果に変えるカードが!」

「何っ!?」

「一体、どんなカードを引き当てたんだ!?」

「まさか、さっきの奴とは比べ物にならない位のエースカードを!?」

 

そんなの関係ない、と言わんばかりに宣言した。

その沢渡の自信たっぷりな様子に、徳松は勿論、外野の囚人たちにも戦慄が走る…!

 

「カードを3枚セットしてターンエンド!エンドフェイズに、アイテールの効果で特殊召喚したクライスは手札に戻る!」

『…ゑ?』

 

Shingo

LP 1000

手札 2(うち1枚はクライス)

モンスター 天帝アイテール(攻撃表示)

魔法・罠カード セット×3

 

が、その後に沢渡が行ったのは魔法・罠カードのセットだけだった。

 

「さあ、アンタのターンだ。そしてこのターンで、アンタのその布陣を打ち崩すと予言しよう!」

「随分な自信だが、俺のターン!っ…!」

 

自信満々にターンを明け渡した沢渡、その様子に徳松は逡巡した。

狙いのカードを引いた様子ながらもそのターンに発動せずセットした、という事はその狙いのカードは罠カード、それもフリーチェーンのカードと思われる。

だが仮にそうだとしても、今の徳松のセットカードや手札に、それを防ぐ術は無い。

ならば、デッキからドローするしか無い、が、

 

(奴がハッタリをかましている可能性もある、なら此処はドローせず、雨四光の効果を維持するのがベスト、だが…)

 

そう、沢渡達は知るすべも無いが、雨四光の効果でドローフェイズをスキップする事も出来るが、ドローする事を選ぶと雨四光のバーンダメージ効果は失われてしまう。

それを考えると、ドローせずに雨四光の効果を維持し、次の沢渡のターンで決着、というのも選択肢ではあるのだが…

 

「っは!あれこれ考えていても仕方ねぇな!まさか久々に、ドローフェイズにカードを引く事になろうとはな!ドロー!」

「今、徳松さんが笑った…?」

 

徳松は、ドローした。

これによって雨四光の、バーンダメージの効果は無効となった、が、

 

「来たぜ、その必勝カードとやらを撃ち抜くカードが!魔法『ナイト・ショット』発動!」

 

ナイト・ショット

通常魔法

1:相手フィールドにセットされた魔法・罠カード1枚を対象として発動出来る。セットされたそのカードを破壊する。このカードの発動に対して相手は対象のカードを発動出来ない。

 

「キター!奇跡のドロー!」

「長次郎!長次郎!」

 

長次郎が引いたカードは、フリーチェーン対策カードとして名高いナイト・ショット、その引きに周囲から歓声が上がる。

 

「俺は、そうだな…

真ん中のセットカードを選ぶ!」

「行くか、行くか…?」

 

長次郎の選択と共に、周囲に緊張が走る。

もし選択したカードが、沢渡の狙いのカードであったとしても、ナイト・ショットの効果によってチェーン出来ない、が、そうである確率は正直な所、低く見積もって1/3。

果たして選ばれたカードは…!

 

「あ、それに選ばれていない『神の宣告』で」

『…ゑ?』

 

神の宣告(制限カード)

カウンター罠

1:LPを半分払って以下の効果を発動出来る。

●魔法・罠カードが発動した時に発動出来る。その発動を無効にし破壊する。

●自分または相手がモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚する際に発動出来る。それを無効にし、そのモンスターを破壊する。

 

Shingo LP 1000→500

 

が、現実は選ばれる選ばれない以前の問題だった。

 

「ふ、ふ…」

『ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

「お前其処は空気読めよ!」

「選ばれたカードは何だろうな、と思っていた俺達のドキドキを返しやがれ!」

 

徳松が発動したナイト・ショットに対して神宣で無効にした沢渡の行動に外野の囚人達の怒りが爆発、沢渡への非難が殺到する、が、

 

「静まれぃ!カウンター罠で己が想い描く戦略を押し通すのもまたデュエルの醍醐味!それを非難するのはデュエルを非難するのと一緒だ!新入り、今回はお前さんの初手が上回ったって事か。なら使いな、お前さんが引いた、勝利という結果を導くカードとやらを!」

「ああ、早速使わせて貰う!

まずはさっきのクライスの効果で引いた手札の、2枚目のアイテールの効果発動!

それにチェーンして速攻魔法『帝王の烈旋』発動!

更にチェーンして墓地の『帝王の凍気』を除外して、同じく墓地の罠『真源の帝王』の効果発動!」

「そのカード、何時の間に墓地に…!

成る程、クライスの効果で破壊した奴か!」

 

帝王の烈旋

速攻魔法

『帝王の烈旋』は1ターンに1枚しか発動出来ず、このカードを発動するターン!自分はエクストラデッキからモンスターを特殊召喚出来ない。

1:このターン、アドバンス召喚の為に自分がモンスターをリリースする場合に1度だけ、自分フィールドのモンスター1体の代わりに相手フィールドのモンスター1体をリリース出来る。

 

真源の帝王

永続罠

『真源の帝王』の2の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。

1:1ターンに1度、自分の墓地の『帝王』魔法・罠カード2枚を対象として発動出来る。そのカードをデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから1枚ドローする。

2:このカードが墓地に存在する場合、このカード以外の自分の墓地の『帝王』魔法・罠カード1枚を除外して発動出来る。このカードは通常モンスター(天使族・光属性・レベル5・攻撃力1000/守備力2400)となり、モンスターゾーンに守備表示で特殊召喚する(罠カードとしては扱わない)。

 

「まずは墓地の真源の帝王の効果で、コイツを通常モンスターとして特殊召喚!」

 

真源の帝王

通常モンスター

光属性

天使族

レベル 5

守備力 2400

 

「次に帝王の烈旋の効果で、俺はこのターン、お前のモンスターを1体、アドバンス召喚の為にリリース出来る!

そしてアイテールの効果で、俺はコイツをアドバンス召喚する!」

「何!?つまり、この状況を打開するってのは…!」

「そう、コイツのアドバンス召喚の為のリリースでって事だ!俺は今特殊召喚した真源の帝王と、お前の雨四光をリリースしてアドバンス召喚!並び立て、アイテール!」

 

それを一喝によって黙らせた徳松、それを見た沢渡がカード達を、この状況を打開するとしていたカード達を発動した。

その一連の効果処理によって、徳松のフィールドにいた雨四光と、沢渡のフィールドに今しがた特殊召喚された光のベールに包まれたモンスターがリリースされ、2体目のアイテールは舞い降りた。

 

「ははっまさか俺が10年掛けて確固たるものとしていた筈の必勝コンボが3連続で破られるとはな。だが、此処まで楽しかったデュエルは久しぶりだ!俺はこのままターンエンド!さあ新入り、お前さんの全力をぶつけて来い!」

 

Tokumatsu

LP 4000

手札 0

モンスター なし

魔法・罠カード セット×2

 

雨四光がいなくなり、手札も尽きた今、出来る事の無くなった徳松は潔くターンエンドを宣言した。

 

「ああ!行くぜ、俺のターン!ドロー!

そのままバトルフェイズに入って、アイテール2体で攻撃!」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

Tokumatsu LP 4000→1200→-1600 LOSE

 

WINNER Shingo

 

「へっ負けたぜ。だが楽しかったぜ」

 

沢渡のアイテール2体の総攻撃を食らって敗北した徳松、だがその顔はむしろ清々しい物だった。

 

「今のお前さんの姿からは、さっき語っていた様な過去なんざ想像もつかねぇな。つまりそれ位、そのデュエリストと会った時の衝撃が凄かったって事だろう。叶う事なら、お前さんを変えたと言うデュエリストに合って、デュエルしてみたいもんだ。今までで一番楽しいデュエルが出来そうだ!」

 

その衝撃から身を起こしながらも沢渡に語るその姿、其処からは10年前の敗北によって捨て去った信念を取り戻したように見えた。

 

「エンジョーイ!」

『エンジョーイ!』



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69話_まさかの再会

「その『龍の頭』の痣…!

遊星、なのだな、お前は…」

「びっくりだぜ、お前も別の世界とは言え転生して来たなんてな…」

「まさか、前世でのチームサティスファクションの面子が、こうして再び相まみえるとはな…」

「ああ、久しぶりだな、ジャック、クロウ、そして鬼柳」

「約1世紀振りだね、皆」

 

ダンテ達第2部隊と雪乃達第4部隊がシティの治安部隊『セキュリティ』によって捕まり、収容所に入れられている頃(ぶっちゃけこれも任務の中に入れていた事もあって冷静に対処できたが)、シュドナイさんの呼び出しを受けたらしい一団と俺達は会う事になったんだが、その中に、シティでデュエリストスターとして君臨しているジャックとクロウ、そして鬼柳の3人が、俺と同じく『遊戯王5D’sの世界』から転生して来た3人がいたのには、正直驚いた。

まあジャックに関してはさっきのデュエルログの映像で多分そうだろうとは思っていた(そして『龍の翼』の痣があった事で確信した)んだが、クロウ(『龍の尾』の痣があった)と鬼柳(何でか知らんが『地縛神CcapacApu』を持っていたし、ダークシグナーとしての記憶も持っていた。尚、『遊戯王5D’sの世界』でのそれとは違って、OCGのそれと変わらない感じだ)までそうだとは予想外だった。

 

「ジャック・アトラスにクロウ・ホーガン、それに鬼柳京介…

3人共、夢で見たままの人達ね。遊矢の場合と、どう違うのかしら…」

「大スターだと言われていた連中が、まさか遊矢の前世の仲間が転生した奴だったとはなァ」

「ほんと驚きだぜ、これ」

「ああ。ランサーズの任務で向かった先で出会うとは、これもまた運命と言う奴だろうか」

「運命って分かんないもんだよな。転生するの、遊矢兄ちゃんだけじゃねぇんだ」

「うぉぉぉ!この男権現坂、時も世界も越えた友情に今、猛烈に感動しておる!」

 

俺に関しての事情を知っている柚子達ARC-Vメンバーや、零児(シュドナイさんとのデュエルの後、V-CRANと合流した折、シュドナイさんに事情を話してこの件に入れて貰った)もその事にびっくりした様子だった。

 

「しかし驚きだな、まさかジャック達の前世の仲間が、別世界からやってきて再会するとは」

「運命とは分からない物だな、シュドナイ」

「本当にそうですわね。ですが1世紀の時を経てまた会えた、何だか心に響きますわね、お兄様」

『そうだね、ティリエル』

 

そしてジャック、クロウ、鬼柳の3人から諸々の事情を聞いていた、ジャックのマネージャーも兼ねていたシュドナイさんと、紫を基調としたツンツンヘアーが特徴的なライダースーツ姿の男性で、クロウのマネージャーであるシンジ、そしてまたかと言うべきか、どっかの愛染の兄妹そっくりな鬼柳のマネージャーの2人組(名字もまた『アイゼン』な辺り、狙っているとしか思えない)、ソラトとティリエルの兄妹もまた、俺とユベルの事や、その俺達が異世界から渡って来たという事実にびっくりしていた。

あ、シュドナイさん達には4つの次元の事、アカデミアによる各次元への侵略に関して話しているんだが、それ自体は「また世界の存亡を賭けた戦いが始まるって訳か」とクロウが即座に状況を読み込んだのを始め、皆してあっさり納得してくれた。

ジャックとクロウ、鬼柳は経験者だから分かるとしても、順応するの早くないか?

それと、ソラトの声が人工音声になっているのは、彼が全ろう(聴覚が全く無い状態の事)で、喋っても聞いている側は何言っているのか分からずトラブルになる事が多かったそうで、デュエルディスクに組み込まれた音声文字変換機能によってやりとりを行っているんだとか。

まあそれは良いとして、本題だ。

 

「それで、ジャック、クロウ、鬼柳。先程も言った通り、現在4つの次元の1つ『融合次元』の組織、デュエルアカデミアが各次元への侵略を行っている。既にエクシーズ次元が壊滅的な被害を受け、そして最近、俺達がいた次元もまた、斥候程度とはいえ侵略を受けた。撃退こそ成功したが、向こうもまた態勢を整えて再び攻め込んでくるに違いない。各部隊の調査の結果、侵入したと思われる形跡は余り無かったが、恐らくこの次元もまた標的にされるだろう。その前にこの事、この次元の皆に公表し、我々ランサーズを架け橋として2つの次元で同盟を結びたい。お前達3人はこのシティで『トリプルスター』として君臨していると聞いた。その影響力を駆使して、何とか協力を取り付けられないだろうか?」

 

それが、俺達ランサーズがこのシンクロ次元に入った目的。

それを考慮すると、ジャック達が、俺の前世の仲間がこの次元に転生して来たのは、しかもこの世界でもデュエリストスターとして名を馳せていたのは僥倖だったな、こうして昔の馴染みで出会えて、そしてその影響力から事を上手く運べる。

 

「お安い御用だ!俺達のつてを使えば余裕だぜ!」

「良いだろう、俺もこの世界で成さねばならぬ事がある。その邪魔をさせはしない!」

「ああ。折角この世界での人生に、デュエリストスターとしての人生に満足し始めて来たと言うのに、それを台無しにされる訳には行かないからな…!」

 

そんな俺の頼みに、3人共快く応じてくれた。

ジャックとクロウは勿論、鬼柳も乗ってくれたのは嬉しいな、誤解とは言え生前は色々と蟠りがあったし。

と思っていたら、

 

「ただ遊星、いや、遊矢と呼ぶべきか。その代わりとは言わんが、お前にデュエルを挑む!折角この世界で、再び相まみえたのだ!嘗てのライバルとして、何処まで実力を上げて来たのか、1度見てみたいという物だ!」

「あ、おいずるいぞジャック!抜け駆けすんじゃねぇ!」

「ジャック、いの一番に遊星とのデュエルで満足しようとは聞き捨てならねぇな!」

「皆血気盛んだね、まあ気持ちは分かるけど」

 

案の定と言うべきか、ジャックからデュエルを仕掛けられ、それに「抜け駆けはさせんぞ」と言わんばかりにクロウや鬼柳もやりたいと言わんばかりの様子で身を乗り出して来た。

だな、折角来たんだ、デュエルしないなんて選択肢は無い!

 

「良いぜ!ジャック、クロウ、鬼柳!早速デュエルを…」

「まあ待て。今すぐ、という訳では無い」

「うぉい!?」

 

と応じて、デュエルディスクを構えようとしたその時、何故か申し込んで来たジャックから制止された。

一体どうしたんだ?

 

「キングのデュエルはエンターテイメントでなければならない!そしてエンターテイメントは、大勢の聴衆無くしては成り立たん!明日、ライディングデュエルのサーキットにてお前を迎え撃つ!準備を整えて来い!」

「成る程な、分かったぜ!」

 

その後の『遊戯王5D’sの世界』そのまんまな言動からジャックの意図を察知した俺は、改めてジャックのデュエルの申し込みを快諾した。

ジャックと1世紀振りの、それもライディングデュエルでの勝負か、明日が楽しみだ!

 

------------

 

その日の夜、

 

『緊急放送です!シティが誇る3人のデュエリストスターの一角、ジャック・アトラスが明日、ライディングデュエルによるエキシビションマッチを行うと、急遽発表しました!その時の会見映像をお送りします!』

『シティの住人達よ!俺は明日、シティのデュエリストスターの一角としてでは無く、1デュエリスト『ジャック・アトラス』として伝説に挑む!俺の雄姿を見たくば、会場に集まるが良い!其処で明日、伝説の瞬間を目撃するであろう!』

 

ジャックの緊急会見が、シティ中に響き渡った。

 

「ランサーズ諸君、緊急連絡だ。今、シティのデュエリストスターとして知られているジャック・アトラスの緊急会見を聞いただろうが、明日のエキシビションマッチの対戦相手として、出場する事となった」

『え゛!?おい遊矢、おまえどうやってあのジャック・アトラスと』

『煩いぞユーゴ。隊長からの連絡の最中だ』

『失礼した、隊長』

『凄いわね、隊長。根回しが早かったじゃない』

『本当にそうだな、遊矢。それで、この世界のトップとの接触は図れたのか?』

 

その会見が響き渡る中、俺は第1部隊と第3部隊と回線を繋ぎ、そのエキシビションマッチに出場する旨を明かした。

それにはしゃいだ様子のユーゴはまあ放って置くとして、だ。

 

「いや、まだシティのトップ、行政評議会との接触は出来ていない」

『何、そんな悠長に構えていて大丈夫なのか!?先程隼達第4部隊と第2部隊が捕まっているという連絡が入ったと言うのに…!』

『落ち着きなさいユート、貴方が焦った所で事は運ばないわ』

「大丈夫だユート、収容所に侵入した風魔兄弟と遊香の話から第2部隊、第4部隊共に無事な状態だ。彼らを解放する手立て、行政評議会と接触する手立てもある」

 

今現在の状況は、第2部隊と第4部隊がセキュリティによってシティの収容所に入れられ(後、其処からの情報伝達の為に日影と月影、遊香が潜入していて不在)、ランサーズメンバーの半数弱は自由に動けない。

そんな状況下で悠長に構えていられないというユートの気持ちも分かる(それに、エクシーズ次元にいた頃からの仲間である隼が捕まっているのもあるだろう)が、

 

「ジャック・アトラスが『明日、伝説の瞬間を目撃するであろう!』と言っていただろう。それを実現して見せる。俺の『封印されていた』2つ目のデッキでな!」

 

------------

 

そして翌朝、

 

『さて、急遽始まりました、我らが誇る3大デュエリストスターの一角、ジャック・アトラスと正体不明のデュエリスト、榊遊矢によるエキシビションマッチ!まずは挑戦者の入場です!』

 

シティ中心部にあるライディングデュエル用サーキット、そのゲート内で、急遽こしらえたD―ホイールに乗りながらスタンバイしていた俺は、このデュエルのMCを務めるメリッサ・クレールの進行に応じる様に、発進させる。

 

『今回ジャック・アトラスに立ち向かうは、経歴も実力も一切不明!果たしてどの様なデュエルを繰り広げるのか!榊遊矢!

対するは、その榊遊矢を対戦相手に指名した、3大デュエリストスターの一角!会見では『伝説の瞬間を目撃するであろう!』と予言じみた事を宣言しておりましたが、果たしてその真意や如何に!ジャック・アトラス!』

 

更に続くメリッサの進行の最中に、俺、続いてジャックがスタートラインに付いた。

 

『両者ともに準備万端の様です!』

「行くぞ、遊矢。今のお前の全力を、このジャック・アトラスにぶつけて見せろ!」

「勿論だ」

『それでは始めましょう!』

 

 

 

 

 

「「『ライディングデュエル・アクセラレーション!』」」

 

そして、後にシンクロ次元で伝説として語り継がれていくデュエルは幕を開けた…!



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70話_伝説の始まり

先攻 Yuya LP 4000 VS 後攻 Jack LP 4000

 

『おぉっとぉ!挑戦者である遊矢選手、第1コーナーを制した!よってこのデュエルは遊矢選手の先攻となります!』

「私の先攻。

まず『聖刻龍―アセトドラゴン』を妥協召喚。妥協召喚したアセトドラゴンの元々の攻撃力は1000となる」

 

聖刻龍―アセトドラゴン

効果モンスター

光属性

ドラゴン族

レベル 5

攻撃力 1000

 

俺が先手を取った事を知らしめるMCの声と共に召喚したのは、エジプトの九柱神『エネアド』の一柱である女神『アセト』をモチーフとした聖刻龍、アセトドラゴン。

聖刻モンスターはその身に、初代からの遊戯王ファンならお馴染みのウジャト眼の様なマークが刻まれたドラゴン族モンスター達で、その共通効果が持つ高い展開力とエクシーズモンスターによる制圧力で、一時はOCG環境のトップに君臨していた時期もあった。

その後禁止制限の改訂だったり、より高い展開力を誇るテーマが登場したりでトップから退きはしたが、『とある』モンスターの登場により、それとの相性の良さから再び使われたとか何とか。

 

「次にアセトドラゴンをリリースして『聖刻龍―シユウドラゴン』を攻撃表示で特殊召喚。このカードは自分フィールドの『聖刻』モンスター1体をリリースする事で手札から特殊召喚出来る」

 

聖刻龍―シユウドラゴン

効果モンスター

光属性

ドラゴン族

レベル 6

攻撃力 2200

 

アセトドラゴンと入れ替わらせる形で特殊召喚したのは、エネアドの一柱である大気の神『シュウ』をモチーフとした青き聖刻龍、シユウドラゴン。

 

「リリースされたアセトドラゴンの効果発動。このカードはリリースされた時、手札・デッキ・墓地からドラゴン族通常モンスターを、攻守を0にして特殊召喚出来る。

この効果でデッキから『ラブラドライドラゴン』を守備表示で特殊召喚」

 

ラブラドライドラゴン

通常モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 6

守備力 2400→0

 

『此処で遊矢選手、チューナーモンスターをリクルートして来ました!今の遊矢選手のフィールドにはチューナーであるラブラドライドラゴンと、チューナーでは無いシユウドラゴンの2体!これは来ますでしょうか!?』

 

そう、聖刻龍上級モンスターは自分自身がリリースされた時、除外さえされていなければ何処からでもドラゴン族通常モンスターを1体特殊召喚するという効果を持っている。

無論、手札からだけではなく蘇生、リクルートまで出来るとなれば便利すぎる為か、攻守を0にするというデメリットこそあるが、各種特殊召喚の素材にする等してフィールドから直ぐに離してしまえば、それはあって無い様な物と化している。

この効果によってリクルートされたのは、ラブラドレッセンスと称される美しい輝きを放つ鱗を持ったドラゴン、ラブラドライドラゴン。

 

「続いてシユウドラゴンをリリースして『聖刻龍―ネフテドラゴン』を攻撃表示で特殊召喚。このカードはシユウドラゴンと同じ条件で特殊召喚出来る」

 

聖刻龍―ネフテドラゴン

効果モンスター

光属性

ドラゴン族

レベル 5

攻撃力 2000

 

『おっと遊矢選手、シユウドラゴンをリリースしてレベルが1低いドラゴンを呼び出しました。レベルの調整でしょうか?ですがそれなら、直接出した方が良い筈ですが…』

 

MCの疑問の声を他所に、シユウドラゴンと入れ替わらせる形で特殊召喚されたのは、最初に召喚したアセトドラゴンと対になった姿の、エネアドの一柱である女神『ネフティス』をモチーフとした聖刻龍、ネフテドラゴン。

 

「リリースされたシユウドラゴンの効果発動。このカードはリリースされた時、アセトドラゴンと全く同じ効果処理を行う。

この効果でデッキから『エレキテルドラゴン』を守備表示で特殊召喚」

『成る程、リクルート効果を発揮する為のリリースの様ですね!これは失礼しました!』

 

エレキテルドラゴン

通常モンスター

光属性

ドラゴン族

レベル 6

守備力 1000→0

 

先程のラブラドライドラゴンの時の様にリクルートされたのは、古代より生きる電気を帯びたドラゴン、エレキテルドラゴン。

 

「更にネフテドラゴンをリリースして2枚目のシユウドラゴンを攻撃表示で特殊召喚。

リリースされたネフテドラゴンの効果発動。このカードもリリースされた時、アセトドラゴン達と全く同じ効果処理を行う。

この効果でデッキから2枚目のラブラドライドラゴンを守備表示で特殊召喚」

『遊矢選手、一連の展開によってフィールドに4体ものレベル6ドラゴン族モンスターを揃えました!その内2体はチューナーであるラブラドライドラゴン、残りの2体はチューナーではありません!さあ、どんなモンスターを出してくるのか!』

 

MCの言う通り、今現在俺のフィールドには、シユウドラゴン、エレキテルドラゴン、2体のラブラドライドラゴンが存在する。

このままレベル12モンスターをシンクロ召喚、と行きたい所だが、生憎普通のシンクロ召喚で出せるレベル12モンスターは、俺のこのエクストラデッキには存在しない。

ならばどうするか。

 

「私はレベル6のシユウドラゴンに、レベル6のラブラドライドラゴンを、

 

 

 

マイナスチューニング!」

『ま、マイナスチューニング?』

 

MCの困惑した様な声を他所に、シユウドラゴンは白き光に包まれ、一方のラブラドライドラゴンは黒き闇に包まれ、互いに近づいて行く。

そしてその2体が重なり合った瞬間、白と黒が入り混じった奔流が解き放たれる。

これにより、さっき言っていた『とある』モンスターが降臨する…!

 

「混沌の次元より沸き出でし力の源、原点にして全ての頂点!この現世でその無限の渇望を暫し潤すが良い!神臨せよ、赤き竜よ!『アルティマヤ・ツィオルキン』!」

 

アルティマヤ・ツィオルキン

シンクロ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 0(ルール上は12)

攻撃力 0

 

『あ、赤き竜…!?』

 

MCが呟いたのを起点に周囲が上空を向けると其処には、俺が呼び出した『赤き竜』の姿があった。

赤き竜、それは『遊戯王5D’sの世界』において大昔、邪悪な戦乱を治めるべく君臨、遊星だった頃の俺達シグナーに『龍の痣』と、力を分け与えた存在である。

その『伝説』の存在は、

 

『何という事でしょう…!

遊矢選手、あの伝説の赤き竜を、嘗てこの世界を救った『救世の神』を、君臨させました…!』

 

このシンクロ次元でも知られている、下手したらその異名は『遊戯王5D’sの世界』以上に轟いているかも知れないな。

 

「この場に集まりし観客達よ!今この場に君臨した赤き竜が、決してまやかしでは無いと言う事、あの姿から感じる圧倒的な力から分かるであろう!その赤き竜と共に戦ったデュエリストは、この世界の有史において1人しかおらん!そう、

 

『神の相棒』『創世主』『決闘竜の使い手』様々な異名で今尚語り継がれる伝説のデュエリスト、不動遊星ただ1人!今俺が対峙しているデュエリスト、榊遊矢は、

 

その不動遊星が生まれ変わりし存在である!」

『な、』

「何だってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

「何…だと…あの…不動…遊星が…!」

 

赤き竜の登場を待ち構えていたかの様に行われた、ジャックの宣言によって会場は驚きに包まれた。

 

「そうだ!私は嘗て不動遊星として赤き竜と共に、この世界を滅亡に導かんとする存在『Z-ONE』と戦い、打ち破って見せた!だが今、この世界に再び滅亡の危機が迫っている!それを防ぐために私は此処とは別の世界で生まれ変わり、其処で仲間を募り『ランサーズ』を結成し、再びこの世界へと舞い戻って来た!」

 

そしてそれに便乗する様に、俺もまた宣言した。

 

不動遊星。

『遊戯王5D’sの世界』ではシグナーの1人として様々な敵と戦い、滅亡の危機から世界を救った伝説のチーム『5D’s』の一員として、アニメ本編にあたる期間での出来事が終わった後に語られ、その後は研究者として永久機関『モーメント』の制御装置『フォーチュン』を開発した『世界最高のエンジニア』とも呼ばれる様になった。

其処でも英雄として後世に語られる名前ではあるのだが、殊にこのシンクロ次元においては、その名前の重みは全く違う。

今から数百年位前、このシンクロ次元にも滅亡の危機が迫っていた。

『今の世界を全て破壊、再構築する事で理想の世界を実現する』との名目で天より舞い降りた存在『Z-ONE』が、『時械神』モンスターの力を駆使して全世界に侵略を開始したからだ。

それに対し当時のシンクロ次元の人々も対抗はしたが、Z-ONEが従える時械神達の余りにも強大な力の前に成すすべなく蹂躙されていった。

もう駄目かと人々が絶望しかけていたその時、不動遊星は現れた。

時械神すらも凌駕する程の力を誇る赤き竜を相棒とし、それに仕えし竜『決闘竜』を従えた遊星はZ-ONEや時械神モンスター達と互角の戦いを繰り広げ、激戦の末にZ-ONEを打ち破った。

シンクロ次元は滅亡の危機を脱したのだが、長きにわたるZ-ONEの侵略によって世界は破壊しつくされ、生き残った人々も決して多くなかった。

そこで遊星はその生き残った人達のリーダーとして、ある時は世界の復興に心血を注ぎ、ある時は生き残った人々を束ねる為の政治構造を構想する等奔走し、皆の協力もあって今のシティの、シンクロ次元の中心たるこの街のひな型を作り上げた。

人々はそんな遊星の姿に崇拝とも言える敬意を抱き、彼がデュエルの際に愛用していたという理由で『シンクロン』モンスターの半分くらいは禁止か制限カード、また赤き竜を神臨させる際の素材カードとして使われた『太陽風帆船』も禁止カードとなり、その流通数も極僅かだとか。

…以上がシンクロ次元における不動遊星と言うデュエリストの逸話だと、俺は以前、ユーゴから聞いていた。

 

「だが今はデュエルを続けよう!私がいない数百年もの間に、この世界のデュエリストがどれ程の力を得たか、見定めねばならない!

私はカードをセット!

この瞬間、赤き竜の力が解放される!

私がカードをセットした事で、赤き竜の力により、エクストラデッキからレベル7か8のドラゴン族、或いは『パワー・ツール』シンクロモンスターを現出させる!

星海を切り裂く一筋の閃光よ、魂を震わし、世界に、仲間に、友の心に響け!『閃珖竜スターダスト』!」

 

閃珖竜スターダスト

シンクロ・効果モンスター

光属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 2500

 

ともあれ今はデュエルだ、と、余りの急展開に固まっていたMCや観客に告げ、俺自身も切り替えてプレイを続行した。

その俺が赤き竜の力によって現出させたのは、遊星だった頃の俺の相棒であったシンクロモンスター『スターダスト・ドラゴン』そっくりな姿の決闘竜、スターダスト。

 

「此処で私は、今セットした魔法『タンホイザーゲート』発動!」

 

タンホイザーゲート

通常魔法

自分フィールド上の攻撃力1000以下で同じ種族のモンスター2体を選択して発動出来る。選択した2体のモンスターは、その2体のレベルを合計したレベルになる。

 

「タンホイザーゲートの効果で、共に攻撃力が0となっているエレキテルドラゴンとラブラドライドラゴンのレベルを12に変える」

 

エレキテルドラゴン レベル 6→12

ラブラドライドラゴン レベル 6→12

 

「そして私は、レベル12となったエレキテルドラゴンに、同じくレベル12となったラブラドライドラゴンをマイナスチューニング!」

 

その後も展開を続けた俺、セットした魔法を発動してレベルを変えた2体で、新たなる神を呼び出す。

先程赤き竜を呼び出したのと同じく、エレキテルドラゴンは白き光、ラブラドライドラゴンは黒き闇に包まれ、互いに近づいて行き、

 

「決闘の地平に君臨する最初にして最後の神、混沌を束ね姿なき身を現世に映さん!舞い降りよ、赤き竜の現身よ!『究極幻神アルティミトル・ビシバールキン』!」

 

究極幻神アルティミトル・ビシバールキン

シンクロ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 0(ルール上は12)

攻撃力 0→3000

 

『流石は『創世主』不動遊星の生まれ変わりである遊矢選手、と言うべきでしょうか、私達の目の前で今、信じがたい事が起こっております…!

赤き竜に、決闘竜の一角であるスターダストは勿論の事、赤き竜の現身すらも今、このフィールドに君臨いたしました…!』

 

重なり合った瞬間に先程とは比べ物にならない位の勢いを誇る、白と黒の奔流が解き放たれ、それが晴れた後には、巨人の様な上半身と、大蛇の様な下半身を持った赤き竜の現身が姿を現した。

その、赤き竜と並び立った姿は、MCすらも余りの驚きで震え声になる等の存在感があった。

 

「赤き竜の現身、その攻撃力は、フィールドのモンスターの数×1000ポイントとなる。私はこれでターンエンド」

 

Yuya

LP 4000

手札 0

モンスター アルティマヤ・ツィオルキン(攻撃表示)

      閃珖竜スターダスト(攻撃表示)

      究極幻神アルティミトル・ビシバールキン(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

…はっきりと言って置こう、正直、これはジャックとのデュエルを利用した政治的な宣伝、いわばプロパガンダだ。

不動遊星としてZ-ONEと戦い勝利し、世界を滅亡の危機に救った、というシンクロ次元とは関係ないにしても決して間違っていない前世を持ち出し、ひょんな事から手にした赤き竜とその現身、そして『決闘竜』の数々を用いた『今まで封印していた』デッキを使う事で、俺がこの世界の英雄『不動遊星』の生まれ変わりとして振る舞い、その俺が今シンクロ次元に再び来た、つまりシンクロ次元にとって滅亡の危機が再び迫っているという事をシンクロ次元の人々に伝えて不安を煽りながらも、ランサーズの存在を明らかにして人々の希望となり、シティのトップである行政評議会との接触をスムーズに、優位に進める、というのが目的だ。

正直デュエリストとして、今やっている事は最低だと思う。

デュエルを政治の道具として利用する事、それははっきり言ってしまえば、戦争の道具として利用しているアカデミアと余り変わらないからだ。

デュエルは、デュエルモンスターズは自分と対戦相手が勝利を目指して全力でぶつかり合い、その中で自分や相手は勿論、周りの人々も白熱させ、笑顔にさせ、心の底から楽しい想いにさせる、そんな神聖な物だという俺の信条に真っ向から反する行為。

それを体現したエンタメデュエルを掲げる俺が今行っている事を、もし父さんが見ていたとしたら、失望して親子の縁を切ろうと言うかも知れない、或いはその歪んだ精神を叩きなおすと指導に乗り出すかも知れない。

だけど俺はこの事を後悔していない。

ランサーズのトップ、最高指揮官『榊遊矢』として、アカデミアの侵略の魔の手から俺達の次元、シンクロ次元を守る為にはどうすれば良いか、考えた末に出した最善の手がこれだからだ。

 

嘗て遊星だった頃は、生まれて直ぐに起きた大災害『ゼロ・リバース』を食い止める事が出来なかった。

遊馬だった頃は、シャークや璃緒達、バリアン世界の面々を、ドン・サウザントによって運命を弄ばれた存在達を救う事が出来なかった。

遊矢となった今でも、デニスを救う事が出来なかったし、素良も、恐らくは…!

俺はもう、誰かを救えなかった事を後悔したくない、だから俺は、今の俺に出来る事を精一杯する!



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71話_始まりは終わり、そして伝説は動き出す…!

「流石は伝説の存在として名高き赤き竜に、その現身、凄まじき威圧感だ…!

だが俺は、その伝説を越えて見せよう!俺のターン、ドロー!

まずは俺のフィールドにモンスターが存在しない事で『E―HEROヘル・ブラット』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

E―HEROヘル・ブラット

効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 2

攻撃力 300

 

究極幻神アルティミトル・ビシバールキン 攻撃力 3000→4000

 

俺が呼び出した赤き竜達、その姿に怯むどころか気迫に火を付けたように立ち向かう決意を見せたジャックが最初に呼び出したのは、蝙蝠の様な翼を背中と頭から生やしたヒーロー、ヘル・ブラット。

 

「次にお前のフィールドにモンスターが存在する事で、ヘル・ブラット1体のみをリリースしてアドバンス召喚!邪悪に堕ちた英雄よ、その研ぎ澄まされた刃で立ちはだかる者を切り捨てるが良い!『E―HEROマリシャス・エッジ』!」

 

E―HEROマリシャス・エッジ

効果モンスター

地属性

悪魔族

レベル 7

攻撃力 2600

 

そのヘル・ブラットと入れ替わらせる様に呼び出したのは、某アメコミヒーローの様に両腕から鉄爪を生やし、身体の至る所にスパイクベルトを装着したヒーロー、マリシャス・エッジ。

 

「ヘル・ブラットをリリースしてマリシャス・エッジをアドバンス召喚した事で、俺はエンドフェイズのドローが約束された!

続いて手札にある2枚目のマリシャス・エッジを墓地へ送って魔法『ワン・フォー・ワン』発動!」

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚出来る。

 

「ワン・フォー・ワンの効果で、デッキから『バリア・リゾネーター』を守備表示で特殊召喚!」

 

バリア・リゾネーター

効果モンスター/チューナー

光属性

悪魔族

レベル 1

守備力 800

 

究極幻神アルティミトル・ビシバールキン 攻撃力 4000→5000

 

『レベル7とレベル1チューナー、来るぞ遊矢!』

 

そうだなアストラル、ジャックのエースである『レッド・デーモンズ・ドラゴン』のレベルは8、となればシンクロ召喚しない方がおかしい。

そう思った俺の視界に、右手に音叉、左手に音叉を叩く棒を持ち、背中に2本の角を生やした様な形状の機械を背負った悪魔、バリア・リゾネーターが姿を現した。

 

「俺はレベル7のマリシャス・エッジに、レベル1のバリア・リゾネーターをチューニング!王者の咆哮、今天地を揺るがす」

 

ん?何か口上が違う様な…

 

「唯一無二なる覇者の力をその身に刻むが良い!シンクロ召喚、レベル8!荒ぶる魂『レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト』!」

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト

シンクロ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 3000

 

究極幻神アルティミトル・ビシバールキン 攻撃力 5000→4000

 

『あの伝説のデュエリスト、不動遊星が生まれ変わった遊矢選手と、彼が呼び出した赤き竜、及びその現身を前にしてもジャック選手、怯む事がありません!これがデュエリストスターの底力でしょうか!最早鉄壁とも言えるパターンで、決闘竜の一角『琰魔竜レッド・デーモン』をモチーフにしたと思われるドラゴン、レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトをシンクロ召喚しました!』

 

だけど出て来たのはレッド・デーモンズ・ドラゴンだよな、属性も種族も、レベルも攻撃力も一緒だし…

でも何か、ズタボロになっていないか…?

 

「スカーライトの効果発動!」

 

何、このタイミングで発動する効果!?

 

「スカーライトを下回る攻撃力を持つ、特殊召喚された効果モンスターを全て破壊する!その後、その効果で破壊したモンスター×500のバーンダメージを、お前に与える!」

 

うわ何だその強力な全体破壊効果!?

不味いな、赤き竜の現身は効果破壊耐性を持っている(尤も、攻撃力を上回っているから効果の範囲外だけどな)が、赤き竜のシンクロモンスターが存在する時の耐性はあくまで『対象を取らない』だけ、しかもそれが災いして、スターダストによる破壊耐性付加効果の対象に取れない!

だったら、

 

「それにチェーンしてスターダストの効果発動!

スターダストは1回だけ、効果では破壊されない!波動音壁(ソニック・バリア)!」

「ならば改めて、スカーライトの一撃を喰らえ!アブソリュート・パワー・フレイム!」

「っ!」

 

Yuya LP 4000→3500

究極幻神アルティミトル・ビシバールキン 攻撃力 4000→3000

 

『おぉっと!赤き竜が、スカーライトが放つ業火の前に消え去った!ジャック選手、伝説に挑むという会見の時の言葉は伊達では無いと言う事でしょうか!』

 

赤き竜の現身は勿論、スターダストも自らが生成したバリアで身を守ったが、赤き竜はジャックのスカーライトが放つ灼熱のブレスによって姿がかき消されてしまった。

なんかあのスカーライトだっけ、ズタボロになった癖して、元のレッド・デーモンズ・ドラゴンより強力になっていないか?

 

「更に『シンクローン・リゾネーター』を守備表示で特殊召喚!このカードはシンクロモンスターがフィールドにいれば特殊召喚出来る!」

 

シンクローン・リゾネーター

効果モンスター/チューナー

闇属性

悪魔族

レベル 1

守備力 100

 

究極幻神アルティミトル・ビシバールキン 攻撃力 3000→4000

 

そんな俺のちょっとした疑問を他所に新たに登場したのは、左手に音叉、右手に音叉を叩く棒を持ち、何か名状しがたい形状のオブジェを背負った悪魔、シンクローン・リゾネーター。

此処でチューナーを出して来たと言う事は『スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン』をシンクロ召喚するつもりだろう、が、

 

「その特殊召喚成功時、私は赤き竜の現身の力を解放する!」

「何、このタイミングで発動する効果だと!?」

「これは1ターンに1度、自分か相手のメインフェイズに解放出来る!お互いのフィールドに同じ数だけ『邪眼神トークン』を可能な限り、守備表示で生成する!

今、私とお前のフィールドには共に3つ、モンスターゾーンの空きがある!よって3つずつ、邪眼神トークンを生成する!

この効果を発動するターン、赤き竜の現身は攻撃出来ないが、相手ターンであれば問題無い!」

「なっ!?くっ!」

 

邪眼神トークン

闇属性

悪魔族

レベル 1

守備力 0

 

究極幻神アルティミトル・ビシバールキン 攻撃力 4000→10000

 

『皆さん、ご覧ください!赤き竜の現身、その攻撃力が驚異の10000となりました!何とも凄まじい値、流石は伝説に聞こえし赤き竜、その現身という事でしょう!』

 

そうは問屋が卸さないってね!

ジャックがシンクローン・リゾネーターを出したのに合わせて、俺とジャック、互いのモンスターゾーンに一つ目のモンスターが3体生み出された。

これで互いにモンスターゾーンは満杯、例えジャックの手札に『クリエイト・リゾネーター』がいたとしても出す事は出来ない、

 

「だがこの俺が対処出来ないと思ったら大間違いだ!

俺はレベル1の邪眼神トークン3体に、レベル1のシンクローン・リゾネーターをチューニング!王者の波動、今世界に響き渡る。新たなる進化を音に聞け!シンクロ召喚、レベル4!『波動竜フォノン・ドラゴン』!」

 

波動竜フォノン・ドラゴン

シンクロ・効果モンスター/チューナー

闇属性

ドラゴン族

レベル 4

攻撃力 1900

 

究極幻神アルティミトル・ビシバールキン 攻撃力 10000→7000

 

と思っていた時期が俺にもありました。

ジャックは自分のフィールドに生成された邪眼神トークンを逆に利用し、身体が音響粒子で出来たドラゴン、フォノン・ドラゴンをシンクロ召喚して来た。

 

「シンクロ召喚したフォノン・ドラゴンの効果発動!

それにチェーンして墓地へ送られたシンクローン・リゾネーターの効果発動!

まずはシンクローン・リゾネーターの効果で、俺の墓地にあるバリア・リゾネーターを手札に加える!」

 

しかもシンクローン・リゾネーターの効果でバリア・リゾネーターが回収されたか、これじゃあ次のターンで赤き竜の現身でフォノン・ドラゴンを殴って勝利、が出来ないな。

 

「次にフォノン・ドラゴンの効果でこのカードのレベルを1にする!」

 

波動竜フォノン・ドラゴン レベル 4→1

 

おまけにフォノン・ドラゴンのレベルを1まで下げたか、こりゃあ本気で『クリエイト・リゾネーター』を握っていたか、他にレベル3チューナーを持っているかで、次のターンに意地でも『スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン』を出すつもりだな。

 

「バトルフェイズに入る!まずはフォノン・ドラゴンで邪眼神トークンを攻撃!」

 

波動竜フォノン・ドラゴン 攻撃力 1900 VS 邪眼神トークン 守備力 0

 

究極幻神アルティミトル・ビシバールキン 攻撃力 7000→6000

 

「次にスカーライトでスターダストを攻撃!灼熱のクリムゾン・ヘル・バーニング!」

「くっ!」

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト 攻撃力 3000 VS 閃珖竜スターダスト 攻撃力 2500

 

Yuya LP 3500→3000

究極幻神アルティミトル・ビシバールキン 攻撃力 6000→5000

 

「俺はこれでターンエンド!

エンドフェイズにヘル・ブラットの効果で、ドロー!」

『ジャック選手、未だ健在の赤き竜の現身が持つ力を前にしても、一歩も引きません!』

 

Jack

LP 4000

手札 2

モンスター レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト(攻撃表示)

      波動竜フォノン・ドラゴン(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

「私のターン、ドロー」

 

これは…!

よし、行くか!

 

「私は今引いた魔法『貪欲な壺』発動」

 

貪欲な壺(制限カード)

通常魔法

1:自分の墓地のモンスター5体を対象として発動出来る。そのモンスター5体をデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから2枚ドローする。

 

「私は墓地のアセトドラゴン、ネフテドラゴン、シユウドラゴン2体、そしてラブラドライドラゴンをデッキに戻してシャッフルし、2枚ドロー」

 

此処でこのカード達か、『スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン』をデュエルで見るのは後にしろって訳だな。

 

「私は今引いた魔法『召集の聖刻印』発動」

 

召集の聖刻印

通常魔法

デッキから『聖刻』と名の付いたモンスター1体を手札に加える。

 

「召集の聖刻印の効果で、デッキからアセトドラゴンを手札に加え、そのまま妥協召喚」

 

聖刻龍―アセトドラゴン

効果モンスター

光属性

ドラゴン族

レベル 5

攻撃力 1000

 

究極幻神アルティミトル・ビシバールキン 攻撃力 5000→6000

 

「これで最後だ、ジャック・アトラスよ!今召喚したアセトドラゴンをリリースし、シユウドラゴンを攻撃表示で特殊召喚!」

「何っ!?」

 

聖刻龍―シユウドラゴン

効果モンスター

光属性

ドラゴン族

レベル 6

攻撃力 2200

 

『あぁっとぉ!遊矢選手が引き当てたのは先程の大量展開を繰り広げた聖刻モンスター達!そして観客の皆さん、赤き竜の現身の力は、モンスターが多ければ多い程発揮します!つまり…!』

「リリースされたアセトドラゴンの効果発動!デッキからラブラドライドラゴンを守備表示で特殊召喚!」

 

ラブラドライドラゴン

通常モンスター/チューナー

闇属性

ドラゴン族

レベル 6

守備力 2400→0

 

究極幻神アルティミトル・ビシバールキン 攻撃力 6000→7000

 

『赤き竜の現身の、今の攻撃力は7000!スカーライトの上からでもジャック選手を一撃で捻じ伏せる数値です!ジャック選手、万事休す!』

「やはり伝説に聞こえしデュエリストの実力は全くさびていないと、赤き竜、その現身の力は伊達では無いと言う事か!だがこのジャック・アトラス、逃げも隠れもせん!さあ、全力で来るが良い!」

「ではバトルフェイズに入る!行け、赤き竜の現身よ!天撃『天聖雷撃(マヤクール・カクター)』!」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

究極幻神アルティミトル・ビシバールキン 攻撃力 7000 VS レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト 攻撃力 3000

 

Jack LP 4000→0 LOSE

 

WINNER Yuya

 

『伝説は再び舞い降りた!遊矢選手、流石はあの不動遊星の生まれ変わりと言わんばかりの実力で、デュエリストスターであるジャック選手を下しました!ジャック選手、互角に立ち回りましたが一歩及ばず!流石に伝説の壁は厚すぎたか!』

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

「不動遊星様、バンザーイ!」

「流石は創世主様、素晴らしきデュエルです!」

 

ジャックとのデュエルに勝利した俺に向けられる、恐らくは『不動遊星の生まれ変わり』としての俺を称賛した声援に応えつつ、俺はフィールドを後にした。

 

------------

 

「遊矢、素晴らしきデュエルだった。流石は俺の前世でのライバル、実力は健在の様だな!今回は圧倒されはしたが、次は負けんぞ!」

「ありがとうなジャック、良いデュエルだった。だけど次も勝たせて貰うぜ!」

 

フィールドを後にし、控室に戻った俺とジャック、さっきは観客の目とかあったので此処で改めて先程のデュエルを称え合った。

いやぁやっぱり、ライバルとのデュエルは良い物だな。

これが、ランサーズの活動を円滑にする為のプロパガンダという背景が無ければより面白い物になれたんだけどな…

まあそれは良いとして、そろそろかな?

 

「榊遊矢様、いや、不動遊星様とお呼びした方が宜しいでしょうか?」

「む、どうやら来た様だな。ならば俺はこれで帰るとしよう」

「ああ、それじゃあ」

 

ノックと共にドアの向こう側から聞こえて来た、俺を呼ぶ声、それにジャックは応じる様に反対側のドアから出て行った。

さあ、行きますか。

 

「はい、私ですが」

「行政評議会の使いの者です。少々お時間宜しいでしょうか?」

「ええ、構いませんよ」



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72話_伝説と現実と

「遊星様、こちらで行政評議会の方々がお待ちです」

「はい。お迎えの方、ありがとうございます」

 

ジャックとのデュエルの後、行政評議会の使いの者を名乗る男性の送迎によって、シティの中心部にある行政評議会の議事堂へと連れて来られた俺、あのデュエルを用いたプロパガンダは成功したな。

とはいえ本番は此処から、此処では『シンクロ次元の英雄』不動遊星としての振る舞いや、俺自身の交渉力が求められる。

成否によって今後のランサーズの影響力が大きく変化する大事な状況、失敗すれば今後が厳しくなる。

 

「ホワイト議長。不動遊星様をお迎えいたしました」

「御苦労。後は私達が遊星様のお相手を」

「はっ。それでは遊星様、私はこの辺りで」

 

よし、行くか。

 

「ようこそ遊星様、遠路はるばるお越しくださいまして、ありがとうございます。私、このシティを束ねる行政評議会の議長を務める、ホワイト・タキと申します」

「不動遊星です。と言っても、今は榊遊矢という名ですが」

「存じております。先程のジャック・アトラスとのデュエル、拝見しました」

 

俺を招き入れるかの如くひとりでに開かれた議事堂の扉の前で俺を迎えてくれたのは、白い服に身を包んだ好々爺と言わんばかりの風貌の男性、ホワイト。

 

「行政評議会議員、ゲールと申します。先程のジャック・アトラスとのデュエル、実に素晴らしい物でした。流石は創世主様、往年の実力は健在である、と」

「同じく評議会議員、アスールと申しますわ。まさかこの目で赤き竜とその現身、その御姿を拝見する日が来るとは思いもしませんでした」

「評議会議員、グレイと申します。赤き竜とその現身が持つ圧倒的な力、正に伝説の通りでした。いやぁ、凄まじい物です」

「評議会議員、ボルドーと申します。さて遊星様、我々の自己紹介はこれ位として、先程のデュエルでおっしゃった事の真意をお尋ねしたいと申し上げます。ですな議長?」

 

ホワイト議長に続く様に自己紹介をした議員の面々も、議長と比べてやや年下、と言った感じかな。

ゲール議員は黄色の服に身を包んだ男性、アスール議員は青色の服に身を包んだ評議会では唯一の女性、グレイ議員は灰色の服に身を包んだ茶髪の男性、最後に自己紹介したボルドー議員は赤に近いオレンジの服に身を包んだ男性。

 

「おっと、そうでしたな。では遊星様、お越しいただいて早速で申し訳ありませんが、宜しいですかな?」

「はい。では順を追って説明します」

 

そのボルドー議員に同意を求められて同調したホワイト議長の問いに答える形で、俺はこれまでの経緯の説明を始めた。

4つの次元の存在、アカデミアによる各次元への侵略の事、それに対抗するべく結成されたランサーズの事等。

尤も今回は『不動遊星の生まれ変わり』としての振る舞いが求められる、それに辻褄を合わせる為に「アカデミアの侵略に対抗する為に、生まれ変わった次元において最大手のデュエル関連企業であるレオ・コーポレーションとの協力でランサーズを設立した」と、少し改変して説明したが。

そして、此処からがシンクロ次元に来た目的だ。

 

「今この次元へ潜入しているランサーズのメンバーは私を含め計36名、その誰もが私とて慢心していては、敗北は必至と言える程の、デュエルの実力を有しております。ですがまだまだアカデミアの蛮行を打ち破るには戦力が足りません。アカデミアは個々の実力こそ我らランサーズに劣る者ばかりですが、何百、何千ものデュエリストを抱えております、その頭数を活かした1対多による蹂躙や、デュエルせずに物理的に捻じ伏せる手段も講じて来るでしょう。それに対抗するとなれば今以上の人員増強が必要です。其処で是非とも我らと手を組み、アカデミアの侵略に共に立ち向かいましょう!」

 

説明を終え、議員達を見てみると、驚いたり、悩んだり、焦ったりといった様々な表情を浮かんでいたが、誰も俺の話を疑う様子を見せていなかった。

不動遊星というバックボーンを持っていると此処まで説得力が出る物なんだな。

 

「ふむ。俄かには信じがたい話ですが、遊星様が言うのであれば間違いは無いのでしょう。我らも、シティの住民達も、そのアカデミアの侵略に対して覚悟を決めねばなりませんな」

「シティが今あるのは遊星様のお力あってこそ、その遊星様の呼びかけとあらば住人達も、セキュリティもこぞってアカデミアとの戦いに志願してくれるでしょう」

「だがアカデミアとは何とも恐ろしい所だ、遊星様に此処まで言わせるとは…!

遊星様が此処まで危機感を持つアカデミアに、セキュリティは安全を守れるのか…!」

「遊星様のお眼鏡にかなった実力者揃いのランサーズを以てしても戦力不足、となると、我らの力添えは大して効力をもたらさないのでは…?

それこそシティが誇るデュエリストスター程の実力者で無ければ…!」

 

議員達の意見は、俺の呼びかけとあらばという賛成派と、アカデミアの強大さに尻込みしたり、ランサーズとの実力差を考慮したりの慎重派、半々といった感じかな。

と、其処へ、

 

「遊星様、恐れながら申し上げたい事がございます。近々、このシティにおいて『フレンドシップカップ』と呼ばれる大会が開かれる予定で、只今参加者を募っている所です。シティの融和を図った大会で、優秀な戦績を挙げた者には我らが誇るデュエリストスター、ジャック・アトラス、クロウ・ホーガン、そして鬼柳京介とのデュエルを行えます。その事から人気の大会となっており、毎回多数の参加者希望者が集います。其処で今回の大会を通じて、遊星様にその実力を図って頂き、お眼鏡にかかるデュエリストをアカデミアとの戦いに招聘する、というのはどうでしょう?」

 

ホワイト議長が提案して来た。

まあ、言うなればつい最近俺達の次元で行われた舞網チャンピオンシップみたいな位置づけにしたいって事か。

 

「良いですね。その提案、お受けいたしましょう」

「おお、お受け頂けますか!ありがとうございます!」

「ですが昨日にこの次元に入ってからランサーズのメンバーに調査させた所、実力的な水準は中々の物と思われます。心配せずとも、この次元のデュエリスト達も中々の実力を有していると断言出来ますよ」

「そうですか、それなら一先ずは安心ですな」

 

昨日、柚子を圧倒したシュドナイさんとかが良い例だ、見た感じだとシンクロ次元の一般的なデュエリスト>俺達の次元の一般的なデュエリスト、かな。

おっとそうだ、

 

「そうそう、調査と言えば、ランサーズの第2部隊及び第4部隊による調査の折、そちらの治安部隊『セキュリティ』によって逮捕されてしまったとの情報を受けました」

「な、なんとそうでしたか!事情を知らなかったとは言え、セキュリティの者がご無礼を致しました!直ぐに、釈放する様命じます!」

 

第2部隊と第4部隊の面々が捕まっている事を伝えると、ホワイト議長は慌てた様子で端末を操作しだした。

 

「ロジェ長官。昨日セキュリティが捕縛した収容者の内、今から指定する12人の方達を即座に釈放する様に、頼みますよ」

『議長!?お言葉ですが昨日捕まったのは違法なライディングデュエルに講じた者達で』

「ロジェ長官。その中に、大義の為に身を投じた方達がいるのです。その方達を即座に釈放しなさい」

『ですが議長!昨日摘発したのは前々より違法性が指摘されたデュエル施設です、其処にいてデュエルに講じていたという事は』

「ロジェ長官。これは『創世主』不動遊星様の命です。直ぐに従いなさい」

『しかし議長!』

「ロジェ長官。

 

 

 

この命に背くという事は、シティへの、世界への反逆の意ありと受け取りますよ」

『っ!了解しました…!』

 

と思ったら連絡を始めたら一転、連絡先である、紫の服に身を包んだ金髪の、ロジェと呼んでいた男に対して、有無を言わさぬ威圧感で押し通してくれた。

 

「ホワイト議長、今のは?」

「ロジェ長官の事でしょうか?彼はジャン・ミシェル・ロジェ。セキュリティを束ねる治安維持局の長官を務める男なのですが、どうもシティの、この世界の価値観が理解出来ない様でして…」

 

いや、いきなり治安組織のトップに「犯罪者を釈放しろ」と言っても聞き入れる訳が無いと思うんですがそれは。

しかしホワイト議長の口振りからして、ロジェという男はこのシティの、いやシンクロ次元の出身では無いみたいだな。

ジャン・ミシェル・ロジェ、彼が何者なのか調べてみる必要があるな。

 

------------

 

「おのれ不動遊星、老いぼれ共を良い様に操って…!」

 

遊矢が思案を巡らしていた頃、当の治安維持局長官、ジャン・ミシェル・ロジェは怒りに震えていた。

 

「あの男がいては私の計画に支障が出るのは目に見えている、早めに対処せねば、私が築いたこの3年が水の泡と化してしまう…!

何の為に赤馬零王から離反したと言うのだ…!」

 

そう呟くロジェ、そう、ロジェは遊矢が考えた通り、このシンクロ次元の出身では無い。

元々は融合次元、それもアカデミアの出身である。

だがアカデミアが他次元への侵略を開始した3年前に離反、このシンクロ次元へと舞い降り、紆余曲折を経て今の地位に上り詰めた。

その地位が今、遊矢の登場によって揺らごうとしている、故にロジェは怒りの表情を浮かべ、遊矢を陥れようと画策していた。

 

『成る程ね、まさかアカデミアから離反して来たとは』

 

それを、遊矢の相棒である精霊、ユベルが見ていたとは気付かずに…

 

------------

 

一方その頃、

 

『プロフェッサー、報告であります』

「キサラ、どうした?」

『榊遊矢の始末の命でスタンダードに潜入したでありますが、其処で幾つかの情報を入手したであります』

「そうか。では聞こう」

 

融合次元にあるデュエルアカデミアのとある一室にて、零王はキサラから報告を受けていた。

 

『まずは件の榊遊矢でありますが、どうやら既にスタンダードにいない様子であります。スタンダードのデュエリストに吐かせた所、どうやら榊遊矢達数十名のデュエリストは、ランサーズという部隊を結成して、他次元へ向かった様であります』

「ランサーズだと?」

『そうであります。ランサーズ、正式名称『LanceDefenceSoldiers』は、我々アカデミアの進撃を阻止するべく設立された私兵組織であり、プロフェッサーの子息である赤馬零児や、レオ・コーポレーションが設立を主導した様であります』

「成る程、零児の差し金だったか。となると、柊柚子やセレナもまたそのランサーズに加わっていると考えた方が良いな。分かった、では次の報告を」

 

遊矢達が既に他次元へ飛んだ事、自らの目的を阻むかの様な目的で、息子である零児がランサーズを結成した事に渋い顔をした零王であったが、キサラに次の報告を促した。

 

『その吐かせたデュエリストでありますが、我々の知らぬモンスターカード、及びそれを用いた召喚方法を駆使していたであります。何でも、ペンデュラムモンスターと、それを駆使するペンデュラム召喚、だとか言っていたであります』

「ペンデュラム?」

『こちらがそのペンデュラムモンスターであります』

 

2つ目の報告を始めたキサラ、その内容に疑問を覚えた零王の反応を待っていたかのように、キサラが転送したカードは『マイルド・ターキー』と『ゴースト・ビーフ』、いずれもサイコロの目によってペンデュラムスケールを変動させる事が出来るカードだ。

 

マイルド・ターキー

通常・ペンデュラムモンスター

炎属性

鳥獣族

レベル 4

攻撃力 1000/守備力 2000

ペンデュラムスケール 青:7/赤:7

【ペンデュラム効果】

1:1ターンに1度、自分メインフェイズに発動出来る。サイコロを1回振る。ターン終了時まで、このカードのペンデュラムスケールを出た目の数だけ下げる(最小1まで)。

 

ゴースト・ビーフ

通常・ペンデュラムモンスター

闇属性

獣族

レベル 7

攻撃力 2000/守備力 1000

ペンデュラムスケール 青:4/赤:4

【ペンデュラム効果】

1:1ターンに1度、自分メインフェイズに発動出来る。サイコロを1回振る。ターン終了時まで、このカードのペンデュラムスケールを出た目の数だけ上げる(最大10まで)。

 

「通常モンスターの様だが、む?下半分が魔法カードの様な緑のカードフレームになっている?」

『そうであります。ペンデュラムモンスターはいわば『魔法カードでもあるモンスターカード』であり、普通にモンスターゾーンに出すだけではなく、魔法カードとして発動する事も出来るのであります。尚、魔法カードとして発動する場合は、デュエルディスクの両脇にあるペンデュラムゾーンと呼ばれる場所に表側表示でセットする形になっているであります』

「言わばフィールド魔法の様な専用エリアにセットする、永続魔法としても使えるモンスターカードか…」

『そして1ターンに1度、そのペンデュラムゾーンにペンデュラムモンスターが2枚セットされている時、セットされたペンデュラムモンスターに記されたペンデュラムスケールの間、例えば4と7であれば5と6、といった感じで、その数値に合ったレベルを持つ手札か、エクストラデッキに表側表示で存在するモンスターを好きな数だけ特殊召喚する、これがペンデュラム召喚であります。尚、フィールドから墓地へ送られるペンデュラムモンスターは、代わりにエクストラデッキに表側表示で送られるであります』

「ペンデュラム召喚、か。融合やシンクロ、エクシーズともまた違った、エクストラデッキを活用する召喚法という訳か。そして他の召喚法と比べて持久力に特化している、厄介な物を生み出してくれた様だ。報告は他にあるか?」

『報告は以上であります』

「分かった。どうやら障害は榊遊矢1人だけではない、最早スタンダード自体が、我々にとって脅威の存在と化したという事になる。我々も本腰を入れねばならん。報告、感謝する。キサラ、引き続き任務に当たって欲しい。必要ならば他の『ホルアクティ・フォース』も同行させるが?」

『今は大丈夫であります』

「そうか。では健闘を祈る」

 

その言葉を最後に零王は通信を切り、すかさず、他の場所へと連絡を入れた。

 

「私だ。早速だが、いまからとあるカードのサンプルを送る。それをベースに新たなるカードカテゴリの開発に当たれ」

 

この指示が、新たなる騒乱の号令になるとは、この時はまだ、誰も分からなかった…



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73話_消える事の無い傷

Side 柚子

 

私達ランサーズがシンクロ次元において中心都市と言える『シティ』に入ってから数日経ち、ランサーズの活動は当初からは考えられない程スムーズに進んでいた。

治安部隊『セキュリティ』に捕まっていた第2部隊と第4部隊の無条件での釈放、シティを始めとしたこの次元への情報発信、私達の次元との同盟関係の締結、色々な重要施設への視察、私達の次元での流行である『アクションデュエル』の導入(どう言う訳かこの次元での流行である『ライディングデュエル』と組み合わせた形になった。どれだけバイクが好きなの、この世界!?)、何より今度開催されるシティでトップクラスの大会『フレンドシップカップ』を通じてのランサーズメンバー候補生の選定許可や、シティにおいてLDS系列校の開校許可等、全てがランサーズにとって思い通りの展開。

この次元において英雄として語られている不動遊星に扮した(『遊戯王5D’sの世界』で不動遊星だった頃の遊矢との相違点がそれ程ないから強ち間違いでは無いけど)遊矢が前面に立っての交渉が何よりも大きいんだと思う、それだけ『不動遊星』の影響力は大きいんだと、私達は痛感した。

痛感し、同時に私は何処か、無力感を感じる様になった。

この次元に来て最初に知り合ったシュドナイさんとのデュエル、ランサーズの精鋭部隊ARC-Vメンバーの実力を、3世紀に及んでデュエルに明け暮れていた遊矢仕込みのデュエルを見せる時だと意気込んで臨んだ私だったけど、現実は甘くなかった。

『バスター・ブレイダー』を中心としたデッキでの展開を見せたシュドナイさんに負けていられないと、私もまたプロディジー・モーツァルトを1ターンでアドバンス召喚し、其処からソプラノを出して融合召喚をしようとした、けどそれを見越していたシュドナイさんに妨害され、その後の動きも良い様に捌かれた。

結局、私が出来たのは手札からスコアの効果を発動して、ちょっとばかりの反射ダメージをシュドナイさんに与えただけ。

此処までならシュドナイさんの実力の高さを凄いと思うだけで終わったけど、続いて対戦した遊矢は、そんなシュドナイさんを完封して見せた。

私が必死こいても突破出来なかった壁を、遊矢はあっさり越えて見せた、そんな遊矢と私の埋まる事の無い実力差に、無力感を感じた瞬間だった。

確かに遊矢は、3世紀に及んでデュエルに明け暮れ、その殆ど全てで周囲を圧倒して来た。

そのキャリアから来るデッキ構築(戦略)プレイング(戦術)ドロー力(時の運)、その全てが相当なレベルなのは言うまでも無いと思う。

それでも私だって、そんな遊矢から物心ついた頃よりデュエルをみっちり教わって来た、その教わった事を土台に、これまで誰も勝った事の無かった遊矢の『完全決闘』デッキにも勝って見せた(今でも、他に勝ったのはエレンくらいしかいない)。

夢の中の出来事とは言え、遊矢の嘗ての恋人であった明日香さん、アキさん、そして小鳥さんからもデュエルで勝って見せ、ユベルには流石に勝てなかったけど、遊矢の事を託された。

 

遊矢を支える様、頼まれた、のに…

 

現実は、遊矢に支えられっ放しだった。

あの時、遊矢が迷った時は支えになりたい、落ち込んだ時は側にいたい、と覚悟を決めた私だったけど、よく考えたら遊矢のそんな姿を見たのは、少なくとも現実では一度たりとも無かった。

遊矢は、私が考えている以上に泰然としている、泰然としてしまっているのかも知れない。

既に遊矢は、過去のトラウマによる恐怖をも乗り越え、揺るがない心を持っているのかも知れない。

遊矢は私にとって、見上げても何処にいるか分からない位に、とてつもなく高い存在になってしまったのかも知れない。

 

「遊矢…」

 

行政評議会から客人として迎えられた私達ランサーズのメンバーが今滞在している、迎賓館的な施設。

その中でもシティに、いやシンクロ次元においての英雄『不動遊星』の生まれ変わりという事になっている遊矢は最大級の来賓としてトップクラスの部屋が割り当てられ(一応は)恋人である私も一緒に滞在している。

今はその寝室のベッドの、遊矢と一緒のベッドで眠りにつこうとしている所なんだけど…

 

正直言って、眠れない。

 

普通に考えたら、いくら恋人同士だからと言って年頃の少年少女が寝床を共にするなんてと突っ込まれそうな状況、それにドギマギして、なんて事になりそうだけど、実際はそうじゃない。

 

私は今、自分の無力感に悩むあまり、眠れなくなっている。

 

明日香さん、アキさん、小鳥さんから聞いた遊矢の事は、夢の中で見たダイジェスト映像からも分かっていたけど、少なくとも私から見た遊矢は、はっきり言って『完璧超人』だった。

誰かに力を借りる事こそあっても依存する事までは無く、己の手腕で物事を全て良い方向へと導いて行ける、どんな状況であっても諦める事も、折れる事も無く突き進める…

私なんかがいなくても、遊矢は己を見失う事無く前を進めるのかも知れない。

3世紀という遊矢の人生は、それを成せる程の説得力があるし、その中で『ゼロ・リバース』のトラウマを乗り越える時間だって十分にあった。

きっと私がいなくても、1人で皆を引っ張って行けると思う、むしろ私がいたら…

 

思い出すと止まらない、私の頭の中で、悪いイメージばかりが浮かぶ。

そんな事は無いという想いも無くは無い、恋人同士になれたのも遊矢からの告白が切っ掛けだったのだから、遊矢にとって私は必要な存在なのだから、と。

でも…

 

「う…ぐぁ…うぁぁ…あぁぁぁ…!」

 

悪いイメージを振り払おうとしても振り払えずにむしろ悪化する、そんな悪循環に陥っていた時だった、隣で眠りについていた筈の遊矢が、そんな苦しそうな声を上げていたのは。

 

「遊矢…?」

 

一体どうしたんだろう、何か、悪い夢でも…?

 

「うわぁぁぁ!(がばっ!)はぁ、はぁ、夢、か…」

「大丈夫、遊矢?」

 

悪い夢に魘されていたらしい遊矢の事が気掛かりで、声を掛けてみたけど、

 

「柚子(ガシィ!)…」

「へ、え、遊矢!?」

 

呼びかけに気付いた遊矢が、いきなり私に抱き付いて来た、て、ふぇ!?

 

「ゆ、遊矢?あ、あの、その」

「柚子、何も聞かないでくれ。何も聞かず、暫くこうさせてくれ」

 

遊矢の突然の行動に混乱していた私、そんな私を現実に引き戻してくれたのは、何時もと明らかに様子が違う、遊矢の声だった。

何時もの気力に満ちた様な声じゃ無い、憔悴しきった様な、そんな声。

そして、私を抱き付いた体勢のまま、私の肩に顔を埋め「ごめんなさい」とうわ言の様に繰り返し呟きながら泣きじゃくるその様子に、私は無意識の内に遊矢を抱きしめていた。

 

------------

 

「遊矢として生まれ変わってからは初めてだったけどさ、時々、夢で思い起こされるんだ…

『遊戯王5D’sの世界』で遊星として生まれたばかりの頃に起こった、ゼロ・リバースの光景を…」

 

私の肩に顔を埋めながら暫く泣きじゃくっていた後、遊矢は事の次第を語り出した。

その口調はやっぱり何処か疲れ果てた様なそれだったけど、それも仕方の無い事だと思う。

 

「建物が崩れ落ちて、人々が木っ端みじんになって、大地がひしゃげて分断されて、車とか色んな物が吹き飛んで、遊星としての俺にとって生まれ故郷であるネオ童美野シティが、地獄へと変わって行く、凄惨な光景だった…」

 

その光景は私も、夢の中のダイジェスト映像という形だったけど見た。

ハルマゲドンでの最終戦争だとか、恐竜が絶滅する要因となった巨大隕石だとか、それらに匹敵する位の凄まじい光景には、当時を体感するどころか『遊戯王5D’sの世界』の生まれですらない私すらも絶句した。

 

「その光景を見た後、何時も考えちゃうんだ…

俺なら、『ゼロ・リバース』の真相をアニメで見知っていた俺なら、止める事が、未然に防ぐ事が出来たんじゃないか、何万とも何十万とも言える人々の命が失われずに済んだんじゃないか…

俺が、『ゼロ・リバース』の顛末を知っていながら何もしなかった俺が、その数えきれない人達を見殺しにしたんじゃないか、その何十倍もの人達を、例えばジャックやクロウ、鬼柳達を地獄の様なあのサテライトに突き落としたんじゃないか、ってさ…」

「そんな、そんな事は!」

「無い、って言いたいんだろ?俺もそう思いたい。けど夢の中で聞こえて来るんだ、『ゼロ・リバース』で亡くなった人達と思しき怨嗟の声が。『お前の所為だ』『何故何もしなかった』『お前さえ動けば私は死なずに済んだのに』『お前の怠けで沢山の人が死んだんだ』『この怠け者殺人鬼が』ってさ…

耳を塞いでも聞こえて来る、振り払おうとしても聞こえて来る、そしてその一言一言が心に突き刺さって来るんだ…

俺の感覚的に2世紀近く経った今でこそそんな夢自体、見る機会が殆ど無くなってはいたけど、遊星だった頃には頻繁に見聞きしていたな、特にマーサに保護された直後から。余りにしつこいもんだから追い詰められて、リストカットも結構やらかしていたな」

「り、リス!?」

 

リストカットって自殺の仕方で有名な奴よね、手首を切り裂くあの!

 

「そうそう、こう右手首をスパっと」

「遊矢、ジェスチャーしなくて良いから。今の遊矢がやると笑えないから」

 

其処までの事態に至る位『ゼロ・リバース』は遊矢の心に大きすぎる傷を刻み、未だ傷口が塞がっていないのかも知れない、むしろその傷口が化膿し『心の闇』という名の膿が湧き出ているのかもしれない。

遊矢の奥底に湧き出る膿は、ユベル達が目の当たりにして来た遊矢の『心の闇』は、私が思っていた以上に根深いのかも知れない。

 

「けど、さ。まあこう言うと未だに2世紀近くも前にあった『ゼロ・リバース』の事を引きずったままかよとか突っ込まれそうだけどさ、同時にこの事は俺の教訓にもなっている。

 

自分で言うのはどうかと思うけどさ、俺はデュエルに関して天才的な実力がある。十代だった頃、遊星だった頃、遊馬だった頃、そして遊矢である今、其々の時に得た超常的な力を使える。3世紀も生きて来た人生のキャリアも、その際に身に着けた豊富なスキルもある。

 

それでも俺は1人の人間でしか無い、この身1つで出来る事は意外と少ないんだ」

 

でも遊矢は、自ら進んでそれを塞ごうとは思っていないみたい、それをも受け入れて、前に進もうとしている。

それを語る遊矢の口調に、何時もの気力が戻って来た様な気がした。

なら、私も前を見据えなきゃ!

 

「柚子。俺、柚子を守って見せる。時には誰かの力を借りてでも、さ」

「じゃあ私は、遊矢の帰る場所になるわ。遊矢が迷っているときは支えになり、落ち込んでいるときは側に寄り添いたい。そんな存在でいたい、な」

「ありがとう、柚子。俺、柚子と恋人になれて、本当に幸せ者だよ」

「私もよ、遊矢」

 

------------

 

Side 遊矢

 

「答えは得たよ。大丈夫だ、柚子。俺、頑張るから」

 

あの『ゼロ・リバース』の光景を夢として久々に見た時から、それで柚子に抱き付いて泣きじゃくり、その事を打ち明けた時から一夜明けた今、俺は某『正義の味方』という理想を追い求めた弓兵の台詞っぽい言葉を、未だ眠っている柚子に向けて呟きながら、1つの決心をした。

 

「アドバンス、儀式、融合、シンクロ、エクシーズ、そしてペンデュラム…

今のデュエルモンスターズにおいて強力なモンスターを召喚する方法である、これら全てを司る『オッドアイズ』達こそが、『榊遊矢』としての俺のデュエル、俺のエンタメデュエルの極致だ」

 

そう決心した俺の手には、新しい『オッドアイズ』ドラゴン族ペンデュラムモンスターカードが、3種類握られていた。

 

------------

 

Side ????

 

その頃、

 

『プロフェッサー!緊急事態です!』

「一体どうした、急に?」

『サンプルを基に開発していたカードカテゴリなのですが、デッキごと忽然と姿を消してしまった模様なのです!』

「何だと?それはたった今の話か?」

『はっ!たった今発生した事案です!』

「ならばそれ程遠くには飛んでいない筈、直ぐに数十名のデュエル戦士達に捜索の指令を出そう」

『ははっ!ありがとうございます!』

 

アカデミアでは、1つの騒動が発生していた。

 

「アンタの力、期待しているわ。私達の自由なデュエル、アカデミアの連中に見せ付けてやるわよ!」

『応よ姉さん!俺達2人で、真っ赤に燃え上がる魂のデュエルをやってやろうぜ!』

 

その騒動を尻目に、レーシングカーを2輪にした様な出で立ちの赤いバイクに乗った1人の女性が、1つのデッキを手に、誰かと決意の言葉を交わしながらアカデミアを後にした…!



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74話_パクられたペンデュラム召喚

あの『ゼロ・リバース』を思い起こさせる夢を、遊矢に転生してから初めて見て、その事を柚子に打ち明け、ある決意を固め、今日もまたシティの重要施設を視察する為に送迎の車に乗せられていた俺、ふと何気なく外の景色を眺めていたら、どうやらまた得体の知れないD―ホイーラーがシティを闊歩していたそうで、セキュリティとのライディングデュエルが始まったみたいだ。

だが其処で、俺は思いもしない物を見たんだ。

 

先攻は、何と言えば良いかな、某さん付けで呼ぶ事を強要する健康優良不良男子が搭乗するバイクっぽい、特異な形状の赤いD―ホイールに搭乗したD―ホイーラー。

背丈はかなり高いが、その群青のライダースーツを纏った身体の線からして女性か?

で、その初手はカードフレーム及びイラストからして魔法『予想GUY』だろうな。

 

予想GUY

通常魔法

1:自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動出来る。デッキからレベル4以下の通常モンスター1体を特殊召喚する。

 

其処からデッキのカードを広げて中を確認していた事から、やはりそうだろう。

その中から1枚の、恐らくは通常モンスターが持つ黄色いフレームのカードを取り出した、が、

 

「ペンデュラムモンスター、だと?」

 

その『カードフレーム』の色合いに、俺は驚いた。

上半分こそ通常モンスターである事を示す黄色いフレームだが、中間地点辺りでグラデーションが掛かり、下半分に至るころには魔法カードである事を示す緑にかわっていたのだから。

バカな、少なくともペンデュラムモンスターは俺達の次元でしか開発が進んでいなかった筈、この次元でばら撒いた覚えはないのに、ペンデュラムモンスターを使用するデュエリストがいる筈が…!

 

「運転手さん、今行われているライディングデュエルの放送、受信出来ますか?」

「はい、遊星様。何か気になる事が出来た様ですね、了解しました」

 

俺の様子を察したのか、運転手さんが早速、今のライディングデュエルを中継しているであろう放送局にチャンネルを合わせた。

さて、どんなデュエルが…

 

『予想GUYの効果でデッキから『メタルフォーゼ・ゴルドライバー』を攻撃表示で特殊召喚!』

『うっしゃぁ!燃えて来たぁ!』

「む、モンスターから…?」

「どうかなさいましたか、遊星様?」

「いえ、何でもありません」

 

メタルフォーゼ・ゴルドライバー

通常・ペンデュラムモンスター

炎属性

サイキック族

レベル 4

攻撃力 1900

 

何やら今出て来たモンスターからはっきりとした声が聞こえたんだが、運転手さんに聞こえた様子は無い、となるとあのモンスター、カードの精霊か…?

そんな俺の懸念を他所に登場したのは、バギーの様なビークルに乗る戦士、ゴルドライバー。

 

『次に速攻魔法『緊急テレポート』発動!』

 

緊急テレポート(制限カード)

速攻魔法

1:手札・デッキからレベル3以下のサイキック族モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターは、このターンのエンドフェイズに除外される。

 

『緊急テレポートの効果で、デッキから『メタルフォーゼ・スティエレン』を守備表示で特殊召喚!』

 

メタルフォーゼ・スティエレン

通常・ペンデュラムモンスター

炎属性

サイキック族

レベル 2

守備力 2100

 

次に出て来たのは、バイクの様なビークルに乗る戦士、スティエレン。

 

『続いて私は、スケール1の『メタルフォーゼ・シルバード』と、スケール8の『メタルフォーゼ・ヴォルフレイム』をペンデュラムスケールにセッティング!』

 

ペンデュラムスケール(青):1(メタルフォーゼ・シルバード)

ペンデュラムスケール(赤):8(メタルフォーゼ・ヴォルフレイム)

 

此処でペンデュラムスケールをセッティングしたか、だが彼女の手札は残り1枚、その1枚はひょっとして最上級モンスターなのか?

 

『ここで、今セットしたシルバードの効果発動!スティエレンを破壊し、デッキから魔法『錬装融合(メタルフォーゼ・フュージョン)』をセットするわ!』

 

融合だと、それも名前的にカテゴリ専用融合カード!

何と言う事だ、ペンデュラムモンスター自体、俺達の次元でしか開発が進んでいなかったのに、ペンデュラムのその先の可能性の1つ、ペンデュラム融合まで!?

一体、どうなっている…!

 

『更に、同じくセットしたヴォルフレイムの効果発動!ゴルドライバーを破壊し、デッキから永続罠『メタルフォーゼ・コンビネーション』をセットするわ!

さあ行くわよ!自由の下に集いし錬装の戦士達よ!今こそ音すらも振り切り、極限の速さで道を駆け抜けなさい!目指すは勝利という名のチェッカー!ペンデュラム召喚!ゴルドライバー!スティエレン!』

『行くぜぇ!』

 

俺が驚きと疑問を覚える中、たった今、ペンデュラムスケールにセットされた2枚のペンデュラム効果によってクラッシュしていた筈の2体が、その光の導きによって即座に復帰、持ち主であるD―ホイーラーに追いついた。

 

『まだまだ行くわよ!魔法『錬装融合』発動!』

 

錬装融合

通常魔法

『錬装融合』の2の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。

1:自分の手札・フィールドから『メタルフォーゼ』融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

2:このカードが墓地に存在する場合に発動出来る。墓地のこのカードをデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから1枚ドローする。

 

『私はフィールドのゴルドライバーとスティエレンを融合!錬装の戦士達が集いし時、新たなる戦士が誕生する!今こそ音すらも振り切り、障害物を吹き飛ばしなさい!ペンデュラム融合!『メタルフォーゼ・オリハルク』!』

『灯娥の如く燃え尽きろォ!』

『融合召喚…!』

「融合召喚!?遊星様、これはもしや…!」

「ええ、運転手さんが考えている事がありえる可能性も無くは無さそうです」

 

メタルフォーゼ・オリハルク

融合・効果モンスター

炎属性

サイキック族

レベル 8

攻撃力 2800

 

てか今出て来た奴、なんかイリアステルのリーダー格であるホセがD―ホイールと合体した姿に似ているんだが(汗

そんな感じで唖然としている俺と、何か良からぬ可能性が頭に浮かんだのか驚いた様子の運転手さんの目前で融合召喚されたのは、正に今言った通りホセがD―ホイールと合体した姿の様なモンスター、オリハルク。

というか、この次元には『無い筈』の融合召喚を行ったにも関わらず、相手であるデュエルチェイサーは特に驚いた様子は無いな、もしやアカデミアから離反した(と、ユベルから聞いていた)治安維持局のロジェ長官が、融合召喚の情報をセキュリティ内にばら撒いたとか?

 

『これで終わりでは無いわ!墓地へ送られた錬装融合の効果発動!

このカードをデッキに戻し、ドロー!

カードを1枚セットして、ターンエンドよ』

 

????

LP 4000

手札 1

ペンデュラムスケール(青):1(メタルフォーゼ・シルバード)

ペンデュラムスケール(赤):8(メタルフォーゼ・ヴォルフレイム)

モンスター メタルフォーゼ・オリハルク(攻撃表示)

魔法・罠カード セット×2(うち1枚は『メタルフォーゼ・コンビネーション』)

 

『私のターン、ドロー!

まずは手札の『ヒーロー・キッズ』を墓地へ送って魔法『ワン・フォー・ワン』発動!』

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

『ワン・フォー・ワンの効果で、デッキから『アタック・ゲイナー』を守備表示で特殊召喚!』

 

アタック・ゲイナー

効果モンスター/チューナー

地属性

戦士族

レベル 1

守備力 0

 

後攻となったデュエルチェイサーのターン、その初手で発動したワン・フォー・ワンによって出て来たのは、ジャックもかつて使用していたチューナー、アタック・ゲイナー。

 

『次に魔法『死者蘇生』発動!』

 

死者蘇生

通常魔法

1:自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

『死者蘇生の効果で、さっき墓地送りにした『ヒーロー・キッズ』を守備表示で蘇生!』

 

ヒーロー・キッズ

効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 2

守備力 600

 

次に出て来たのは、パワードスーツに身を包んだ子供、ヒーロー・キッズ。

 

『蘇生したヒーロー・キッズの効果発動!

デッキから残り全てのヒーロー・キッズを守備表示で特殊召喚!

私は今特殊召喚したレベル2のヒーロー・キッズに、レベル1のアタック・ゲイナーをチューニング!御上の力を思い知れ!シンクロ召喚、レベル3!『ゴヨウ・ディフェンダー』!』

 

ゴヨウ・ディフェンダー

シンクロ・効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 3

攻撃力 1000

 

その後、シンクロ召喚の演出と共に出て来たのは、顔には隈取が付けられ、右手に十手、左手に機動隊とかが使いそうな巨大な盾を装備したポリスモンスター、ゴヨウ・ディフェンダー。

しかし、効果こそ流石ゴヨウの称号は伊達じゃ無いと絶句した物だが、攻撃力1000のモンスターを攻撃表示だと?

 

『シンクロ召喚の素材としたアタック・ゲイナーの効果発動!

貴様のメタルフォーゼ・オリハルクの攻撃力を1000ポイントダウンする!』

 

メタルフォーゼ・オリハルク 攻撃力 2800→1800

 

『続いて『ジュッテ・ナイト』を召喚!』

 

ジュッテ・ナイト

効果モンスター/チューナー

地属性

戦士族

レベル 2

攻撃力 700

 

そんな俺の疑念は画面越しに届く訳も無くデュエル続行、登場したのは牛尾も使っていた、背中に提灯みたいな機械を背負い、右手に十手を装備したモンスター、ジュッテ・ナイト。

と、その時、

 

『その召喚成功時、永続罠『メタルフォーゼ・コンビネーション』発動!

それにチェーンして、手札を1枚捨てて速攻魔法『超融合』発動!』

『何?』

 

メタルフォーゼ・コンビネーション

永続罠

1:1ターンに1度、融合モンスターが特殊召喚された場合、その融合モンスターよりレベルが低い、自分の墓地の『メタルフォーゼ』モンスター1体を対象としてこの効果を発動出来る。そのモンスターを特殊召喚する。

2:このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動出来る。デッキから『メタルフォーゼ』モンスター1体を手札に加える。

 

超融合(制限カード)

速攻魔法

このカードの発動に対して魔法・罠・モンスターの効果は発動出来ない。

1:手札を1枚捨てて発動出来る。自分・相手フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

D―ホイーラーが動いた。

 

『私はオリハルクと、アンタの場にいる2体の攻撃力3000以下のモンスター、ジュッテ・ナイトとゴヨウ・ディフェンダーを融合!』

『何だと!?』

 

うわ何だその緩すぎる融合素材は!?

 

『錬装の戦士が数多の魂をも取り込み、新たなる戦士へと転生する!今こそ音すらも振り切り、一直線に駆け抜けなさい!融合召喚!『メタルフォーゼ・カーディナル』!』

『素手で勝負しやがれェ!』

 

メタルフォーゼ・カーディナル

融合モンスター

炎属性

サイキック族

レベル 9

攻撃力 3000

 

いや、でかいロボみたいな奴に乗ったお前が言うな。

効果が無いからって素手とは到底言えんぞ。

 

『墓地へ送られたオリハルクの効果発動!

それにチェーンしてメタルフォーゼ・コンビネーションの効果発動!

まずはメタルフォーゼ・コンビネーションの効果で、オリハルクを攻撃表示で蘇生!

次にオリハルクの効果で、メタルフォーゼ・コンビネーションを破壊するわ!』

『ビビってんのか、アァ!?』

 

ん?自分の永続罠を破壊しただと、しかもたった今発動した様な強力な蘇生効果を持った奴を?

 

『此処で破壊したメタルフォーゼ・コンビネーションの効果発動!

デッキから2枚目のゴルドライバーを手札に加えるわ』

 

成る程、墓地送りによって発動するサーチ効果を使う為に敢えて破壊した訳か、無駄が無いな。

ただそれでも、相手のヒーロー・キッズ1体を破壊した方が、次のターンに相手の場を真っ新にしつつダイレクトアタック出来、更にエクストラデッキにあるゴルドライバーをペンデュラム召喚する事でLPを0に出来る筈だが…

 

『くっ私はカードを2枚セットしてターンエンド…』

 

DuelChaser227

LP 4000

手札 0

モンスター ヒーロー・キッズ(守備表示)×2

魔法・罠カード セット×2

 

『私のターン、ドロー!

じゃあ今引いた魔法『ハーピィの羽根帚』発動!』

『な!?』

 

ハーピィの羽根帚(制限カード)

通常魔法

1:相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。

 

此処で今引き羽根帚か、凄い引きの良さだな。

 

『ハーピィの羽根帚の効果で、そのセットカードを全て破壊して貰うわ!

そしてバトルフェイズ!オリハルクでヒーロー・キッズを攻撃!』

 

何、ハーピィの羽根帚を使っただけでメインフェイズを終わらせた?

 

『この攻撃で終わりよ!オリハルクは守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分の、

 

倍の数値分相手に戦闘ダメージを与えるわ!』

『な、なん、だと…!』

 

そう言う事か、それでさっきから一見して不可解なプレイングを…

 

『さあ行きなさい、オリハルク!』

『行くぜェ、真っ赤に燃えろォ!』

『ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

 

メタルフォーゼ・オリハルク 攻撃力 2800 VS ヒーロー・キッズ 守備力 600

 

DuelChaser227 LP 4000→-400 LOSE

 

「メタルフォーゼ、か…

何故ペンデュラムモンスターを我々以外に持っている存在がいるのか、それに加えて専用融合カードまで組み込まれている物を…

これは少し、警戒を強めなければならないな」

 

今のデュエルを見た俺は、其処で繰り広げられた信じがたい事態に警戒心を高めた。

 

------------

 

「『トラゴエディア』、やれ」

「ん?(ガシィ!)な、がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!な、何を…!」

「ジャン・ミシェル・ロジェ、貴様の下らない野望、我々の大志を果たす為の踏み台となって貰おう」

「あ、が、ぐぁぁ、おのれ、貴様ぁぁぁ…!

 

 

 

先程は立場を弁えぬ暴言失礼いたしました、これより私ジャン・ミシェル・ロジェ、非才ながら貴方様の大志の為にこの身を捧げる所存にございます」

「ああ、宜しく頼むぞ、ロジェ。我々の大志の為に、存分にその力を振るうが良い」

 

その日、シティの治安、引いてはシティの社会構造を揺るがしかねない事件が、密かに発生した…




(追記)
今話で第5章は終了、次回より第6章となります。
そして第6章より、2016年4月改訂の禁止制限が適用されます。


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6章『開催!フレンドシップカップ、その裏で…』
75話_前夜祭の始まり


今話から6章の始まりです!
尚、今話より禁止制限は2016年4月の物となります。


Side ユーゴ

 

『此処シティの中心部にそびえたつデュエルパレスには、実に20万人以上もの大観衆が詰めかけ、フレンドシップカップの開幕を待つ熱気で盛り上がっています!シティ最大のデュエルの祭典、フレンドシップカップの前夜祭を思いっきり楽しみましょう!』

 

俺達ランサーズがこの次元に入って(俺に限って言えば『帰って来て』)から2週間近くが経ち、このシティにおける最大規模のデュエルの祭典、フレンドシップカップの開催を待ちわびる様になった今、俺は、というか俺達は控室で出番を待っていた。

 

「ユーゴさん。そろそろ時間ですので、会場に案内します」

「お、もうそんな時間か。あいよ、案内頼むぜ」

 

側で控えていた奴に促される様に、俺は控室を後にし、出番の為のスタンバイに移る。

その出番と言うのは、

 

『それでは本日のメインイベント!シティが誇るトリプルスターであるジャック・アトラス、クロウ・ホーガン、鬼柳京介によるスペシャルマッチの開幕です!』

『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』

『今年の前夜祭で、3人の対戦相手に選ばれしデュエリストをご紹介しましょう!

まずは1人目、ジャック・アトラスの対戦相手となったのは、

 

伝説の英雄、不動遊星が生まれ変わりし存在、榊遊矢率いる『ランサーズ』第1部隊メンバー!この世界で唯一、ランサーズの創設メンバーとなった選ばれし存在!ユーゴ!』

 

そう、俺はフレンドシップカップの前夜祭に開かれるこのスペシャルマッチの1つ、シティが誇るトリプルスターの一角たるジャックとのデュエルの対戦相手に選ばれたんだ!

まさかシティのトリプルスターの中でも、俺が一番好きだったジャックとデュエルする日が来るとは、俺自身ちょっと信じらんねぇ。

この世界に帰って来て以来、遊矢達はランサーズの目的を果たすべく色々と飛びまわって来た(その中で遊矢があの不動遊星の生まれ変わりだと知った時はすげぇびっくりしたが、シンクロンモンスターを使っていた事もあって嘘だとは思わなかった)。

このフレンドシップカップへの出場も、此処でのデュエルを通じてランサーズメンバーに相応しい人材の選定と言う名目こそあるが、それでも出たかった大会なのは間違い無いし、増してその出場メンバーの中でも3人しか選ばれない、このスペシャルマッチの対戦相手に選んでくれた、まさに遊矢さまさまだな!

本当だったら此処にリンがいてくれたら、どれだけ良かっただろうな…

まあいいや、今日はそんな話は抜きにして、ジャックとのデュエルに全力で臨むまで、それこそこの大会に出場させてくれ、スペシャルマッチの対戦相手に選出してくれたランサーズの皆への恩返しだ!

 

『続いて2人目、クロウ・ホーガンの対戦相手となったのは、

 

榊遊矢の一番弟子!『ランサーズ』の中でも選りすぐりの精鋭部隊『ARC-V』メンバー!弱冠10歳ながらそのデュエルタクティクスは師匠譲り!エレン・アヴェニール!』

 

クロウの相手はエレンか、なんでも6歳の頃に遊矢の家に養子として入るまで施設で過ごしていたんだってな、俺自身施設で育っている身だし、他人の様な気がしねぇな。

 

『最後に3人目、鬼柳京介の対戦相手となったのは、

 

ランサーズ第3部隊副隊長!その身に宿す反逆の牙は覚悟の力!ユート!』

 

思うんだけどさ、やっぱユートと遊矢と俺、そっくりな顔だよな、どっちも其々の次元での『俺』とは言ってもだ。

それを言ったら柚子もセレナも、其々の次元でのリンらしいし、実際すげぇ似ているけどさ。

 

『それではご紹介しましょう、我らシティが誇るトリプルスター達を!

まずは1人目!ジャック・アトラス!』

『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』

『ジャック!ジャック!ジャック!』

 

お、遂にジャックのお出ましか、やっぱいつ見ても、ジャックとD―ホイール『ホイール・オブ・フォーチュン』の組み合わせは格好良いぜ!

 

「貴様が俺の相手か。ランサーズの創設メンバーは皆、遊矢とて一筋縄では行かぬ程の実力者揃いだと遊矢本人から聞いた。それが本当かどうか、この場で披露して見るがいい!」

「ああ、ジャック!俺は今までずっと、アンタを目指して来たんだ!この思いを今日、全力でアンタにぶつけに行くぜ!」

『両者気合十分な様なので、早速始めましょう!尚、今回から一部ルールが改正され、アクションデュエルと呼ばれる、ランサーズの方々がいた世界でのデュエルのルールが導入されたフィールド魔法『クロス・オーバー・アクセル』を使用する事となっております!』

 

アクションデュエルか、確か至る所にアクションカードとか言う魔法・罠カードが散らばっていて、デュエル中にそれをゲットする事で使えるんだよな。

それがライディングデュエルのフィールドにばら撒かれるのか、こりゃあ中々面白そうだ!

 

「「『ライディングデュエル・アクセラレーション!』」」

 

デュエルの開始を告げる掛け声と共に、俺とジャックは、互いのD―ホイールを起動させ、サーキットへと入って行った…!

 

「先攻はチャレンジャーからだ!貴様のデュエルタクティクス、俺達に見せるがいい!」

「そうかい、なら遠慮なく行かせて貰うぜ!」

 

先攻 Hugo LP 4000 VS 後攻 Jack LP 4000

 

さて、俺の初手は、と…

よし、これは早速行かせて貰うか!

 

「俺のターン!

まずは、俺のフィールドにモンスターが存在しない事で、手札から『SR(スピードロイド)ベイゴマックス』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

SRベイゴマックス

効果モンスター

風属性

機械族

レベル 3

攻撃力 1200

 

先攻を取った(ていうか譲られた)俺が最初に出したのは、刃を仕込んだベーゴマ型のSR、ベイゴマックス。

ステータスこそそんなに強くは無いが、俺にとってコイツの効果は生命線だと言っても過言じゃねぇ。

 

「特殊召喚したベイゴマックスの効果発動!

デッキから『SRタケトンボーグ』を手札に加えるぜ!

そのタケトンボーグを、俺のフィールドに風属性モンスターが存在する事で、守備表示で特殊召喚!」

 

SRタケトンボーグ

効果モンスター

風属性

機械族

レベル 3

守備力 1200

 

その効果はSRなら何でもOKなサーチ効果、それで手札に加え、特殊召喚したのは竹とんぼがロボット化した様な姿のSR、タケトンボーグ。

此処でもしユートとか隼とか、エクシーズ召喚を使う奴ならランク3エクシーズモンスターを出す所だろうが、生憎俺のデッキにエクシーズモンスターは入っていねぇ。

 

「今特殊召喚したタケトンボーグをリリースして効果発動!

デッキから『SR赤目のダイス』を守備表示で特殊召喚!」

 

SR赤目のダイス

効果モンスター/チューナー

風属性

機械族

レベル 1

守備力 100

 

ならどうするかと言うと、タケトンボーグの効果でデッキのチューナーとバトンタッチする、これだ。

その効果でリクルートしたのは、1の目が人間の眼(赤目)になったサイコロ型のSR、赤目のダイス。

 

「特殊召喚した赤目のダイスの効果発動!」

 

で、コイツもステータスこそさっきまでのSR同様貧弱でしかないが、効果はかなり強い。

その効果は、コイツ以外のSRのレベルを1から6まで、好きな数に変更できるという物。

これを使えばレベル2から7までのシンクロ召喚を直ぐに行えるという便利な物だ。

無論、コイツと他のSRでランク1エクシーズモンスターを出す事も出来る。

さて、コイツの他に俺のフィールドにいるSRはベイゴマックスのみ、ベイゴマックスのレベルをどうするかな…

よし、ジャックに全力でぶつかると宣言したんだ、なら出すのはコイツしかいねぇだろ!

それに何かあったとしても、遊矢が後始末してくれるだろうし。

 

「赤目のダイスの効果で、ベイゴマックスのレベルを6に変える!」

 

SRベイゴマックス レベル 3→6

 

「俺は、レベルを6にしたベイゴマックスに、レベル1の赤目のダイスをチューニング!その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!現れろ、レベル7!『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン

シンクロ・効果モンスター

風属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2500

 

『此処でユーゴ選手、光輝くドラゴンをシンクロ召喚しました!何とも美しいモンスターです!』

 

シンクロ召喚の演出と共に登場したのは、その名の通り透き通った翼を持った、白を基調としたドラゴン、クリアウィング。

コイツこそが俺のエースモンスター、その第1形態だ!

さて、此処からどうするか…

ジャックのエースモンスター達は、モンスターを破壊する効果を持った奴等ばっかりだ。

この前のデュエルで、遊矢が呼び出した赤き竜を掻き消したレッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトは勿論、その元となったレッド・デーモンズ・ドラゴンもまた、確か守備表示モンスターを根絶やしにする効果があった筈。

それに耐えるとなれば…!

 

「更に『SRダブルヨーヨー』召喚!」

 

SRダブルヨーヨー

効果モンスター

風属性

機械族

レベル 4

攻撃力 1400

 

決意と共に召喚したのは、カッターを仕込んだヨーヨーを2つ持ったSR、ダブルヨーヨー。

コイツもステータスこそ他のSR同様(ry

 

「召喚したダブルヨーヨーの効果発動!

墓地の赤目のダイスを守備表示で蘇生!

その蘇生した赤目のダイスの効果発動!

ダブルヨーヨーのレベルを5に変える!」

 

SRダブルヨーヨー レベル 4→5

 

「俺はレベルを5にしたダブルヨーヨーに、レベル1の赤目のダイスをチューニング!不死身の『HSR(ハイスピードロイド)』、『魔剣ダーマ』ッ!」

『え、ちょ、何このBGM!?』

「歌は気にするな!」

 

HSRマケンダーマッ…魔剣ダーマ

シンクロ・効果モンスター

風属性

風属性

レベル 6

攻撃力 2200

 

あぁ、何処からともなく某アメコミ原作の特撮ヒーローの登場曲が流れているのも、表記がブレているのも置いていてくれ。

そのBGMと共に登場したのは、けん玉型のHSR、魔剣ダーマ。

 

「墓地のベイゴマックスを除外して、魔剣ダーマの効果発動!

ジャック、お前に500ポイントのバーンダメージを与える!マケンダーストリング!」

「っ!」

 

え、効果名がダサくないか、だと?許さん!

 

Jack LP 4000→3500

 

「俺はこれでターンエンドだ!」

 

Hugo

LP 4000

手札 3

モンスター クリアウィング・シンクロ・ドラゴン(攻撃表示)

      HSR魔剣ダーマ(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

「行くぞ!俺のターン、ドロー!

まずは手札の『E―HEROマリシャス・エッジ』を墓地へ送って魔法『ワン・フォー・ワン』発動!」

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

「ワン・フォー・ワンの効果で、デッキから『ミラー・リゾネーター』を守備表示で特殊召喚!」

 

ミラー・リゾネーター

効果モンスター/チューナー

光属性

悪魔族

レベル 1

守備力 0

 

な、なんだあのリゾネーター、バカでかい鏡を背負っているな。

ジャック・アトラスと言えば『レッド』シンクロモンスター、と答える奴がこのシティには多いけど、少ないながらも同じく代名詞として知られているのが『リゾネーター』というカテゴリに属する、音叉とそれを叩く棒を持った悪魔族チューナーモンスターで、今出て来たのもそれを持ってはいるんだが、背負っている鏡が背丈とまるで合っていない、なんだこれ。

 

「次に魔法『死者蘇生』発動!」

 

死者蘇生(制限カード)

通常魔法

1:自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

「死者蘇生の効果で、今墓地へ送ったマリシャス・エッジを攻撃表示で蘇生する!」

 

E―HEROマリシャス・エッジ

効果モンスター

地属性

悪魔族

レベル 7

攻撃力 2600

 

ん?今日はちょっとジャックの動きが違うな。

このデュエルの様にジャックが後攻の時、普段ならヘル・ブラットを特殊召喚してからのマリシャス・エッジのアドバンス召喚、がジャックのメイン戦略だった筈、これで手札消費を最小限に抑え、エースモンスターを出していくのがジャックのデュエルだ。

けど今回はいきなりワン・フォー・ワンを使ってレベル1のリゾネーターを出してから死者蘇生でマリシャス・エッジを蘇生して来た、召喚権こそ使わなかったが手札消費が荒くないか?

 

「俺は今蘇生したレベル7のマリシャス・エッジに、レベル1のミラー・リゾネーターをチューニング!王者の咆哮、今天地を揺るがす。唯一無二なる覇者の力をその身に刻むが良い!シンクロ召喚、レベル8!荒ぶる魂『レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト』!」

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト

シンクロ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 3000

 

『ジャック選手も負けていない!エースの一角であるスカーライトをシンクロ召喚しました!いやぁ、両者のエースたるドラゴンが相対する構図、凄い迫力ですね!』

 

本当にそれだな、この光景は。

それはそうと、早速来やがったか、ジャックのエースの一角、レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトが!

 

「スカーライトの効果発動!スカーライトを下回る攻撃力を持つ、特殊召喚された効果モンスターを全て破壊し、その数×500のバーンダメージを貴様に与える!」

 

やっぱ使って来るか、その効果、アブソリュート・パワー・フレイムを、だが!

 

「おっと!それにチェーンしてクリアウィングの効果発動!1ターンに1度、コイツ以外のフィールド上にいるレベル5以上のモンスター効果が発動された時、それを無効にして破壊するぜ!ダイクロイックミラー!」

「何!?」

 

それを待っていたぜ、ジャック!

スカーライトが右手に炎をチャージして放とうとしたその時、俺の宣言と共にクリアウィングの翼から放出された粒子がスカーライトを取り込んだ。

 

「更にクリアウィングは、自分自身の効果で破壊したモンスターの元々の攻撃力分、ターン終了まで攻撃力をアップさせるんだ!」

『あぁっとぉ、ユーゴ選手のクリアウィングが、ジャック選手のスカーライトによるアブソリュート・パワー・フレイムから身を守ったばかりか、逆に自らの力に変えました!』

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン 攻撃力 2500→5500

 

「ほぉ、今までずっと俺を目指して来たと言っていたのは偽りでは無い様だな。だが甘い!

『レッド・スプリンター』召喚!」

 

レッド・スプリンター

効果モンスター

炎属性

悪魔族

レベル 4

攻撃力 1700

 

だがスカーライトの効果を無効化された事に驚いたのも一瞬、攻撃力を5500にもアップさせたクリアウィングには目もくれずといった感じで召喚したのは、炎を纏った馬みたいなモンスター、レッド・スプリンター。

確かアイツは召喚・特殊召喚成功時、アイツ自身しか自分フィールドにいなければ効果を発動出来るんだった、よな…?

 

「召喚したレッド・スプリンターの効果発動!

手札から『レッド・リゾネーター』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

レッド・リゾネーター

効果モンスター

炎属性

悪魔族

レベル 2

攻撃力 600

 

あ、そうだった、手札か墓地にあるレベル3以下の悪魔族チューナーモンスターを出せるんだった!

その効果で出て来たのは、身体が炎になったリゾネーター。

ん?今出て来たレッド・リゾネーターはレベル2チューナー、それを出す為の効果を発動したレッド・スプリンターはレベル4、合計レベルは6、あ、ヤバっ!?

 

「特殊召喚したレッド・リゾネーターの効果発動!対象はレッド・スプリンターだ!」

 

しかもバレてるだと!?

俺のクリアウィングのモンスター効果を無効にする効果は『レベル5以上のモンスター効果の発動』の他に『レベル5以上のモンスター1体のみを対象としたモンスター効果の発動』にも通じる、これで俺のクリアウィングか、魔剣ダーマを対象にとってくれれば或いはって奴だったんだが…!

 

「レッド・リゾネーターの効果で、対象となったレッド・スプリンターの攻撃力分、つまり1700LP回復する!」

 

Jack LP 3500→5200

 

おまけにマケンダーストリングのダメージも帳消しどころか2倍くらいのお釣りになっちまったし!

 

「俺はレベル4のレッド・スプリンターに、レベル2のレッド・リゾネーターをチューニング!赤き魂、此処に1つとなる。王者の雄叫びに震撼せよ!シンクロ召喚、レベル6!『レッド・ワイバーン』!」

 

レッド・ワイバーン

シンクロ・効果モンスター

炎属性

ドラゴン族

レベル 6

攻撃力 2400

 

『ジャック選手、エースであるスカーライトを破壊されても微動だにせず、新たなるドラゴンを呼び出しました!これで突破口を開くと言うのか!』

 

俺の焦りを他所にシンクロ召喚で登場したのは、身体の所々から炎を吹き出した、名前の通り赤いカラーリングの飛竜。

やべぇ、レッド・ワイバーンの効果は『攻撃力の1番高いモンスターの破壊』で、これは対象を取らない効果、よってクリアウィングの『レベル5以上のモンスター1体のみを対象としたモンスター効果の発動』を無効破壊する効果は使えないし、『レベル5以上のモンスター効果の発動』を無効破壊する効果はさっきのスカーライトに使っちまった!

こうなったら…!

 

「レッド・ワイバーンの効果発動!フィールドにいる、攻撃力が一番高いモンスターを破壊する!今攻撃力が一番高いのは、攻撃力5500の、貴様のクリアウィングだ!バーニング・シュート!」

「クリアウィング!」

 

レッド・ワイバーンが放つ火球が、クリアウィングに迫る…!

 

 

 

 

 

「させるか!アクションマジック『ミラー・バリア』発動!」

「馬鹿め!アクショントラップ『カウンターアクション』発動!」

「な、何!?」

 

ミラー・バリア

アクションマジック

1:フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターはカードの効果では破壊されない。

 

カウンターアクション

アクショントラップ(カウンター罠)

1:アクションマジック、アクショントラップが発動する場合に発動する。その発動を無効にし、破壊する。

2:自分ドローフェイズ時に発動する、カードをドローする代わりにデッキの一番下へ送る。

 

それを防ぐべく、間一髪の所で手にしたアクションマジックを発動したが、まるでそれを見越していたジャックの『カウンターアクション』で無効にされてしまい、抵抗空しくクリアウィングはレッド・ワイバーンの火球に焼かれてしまった。

 

「バトルフェイズに入る!レッド・ワイバーンで魔剣ダーマを攻撃!バーニング・スマッシュ!」

「魔剣ダーマ!がっ!?」

 

レッド・ワイバーン 攻撃力 2400 VS HSR魔剣ダーマ 攻撃力 2200

 

Hugo LP 4000→3800

 

「俺はこれでターンエンド!」

 

Jack

LP 5200

手札 1

モンスター レッド・ワイバーン(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

まさか一瞬にして丸裸にされちまうとはな、だが勝負はこっからだぜ!



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76話_ジャックのユーゴー

『流石はシティが誇るトリプルスターと言うべきでしょうか、ジャック選手、ユーゴ選手の布陣を一瞬にして無に帰しました!ユーゴ選手、此処から巻き返せるか!』

「やってやるぜ!俺のターン、ドロー!

まずは、墓地にある魔剣ダーマの効果発動!

俺のフィールドにカードが存在しない事で、コイツを攻撃表示で蘇生する!

血は人間の絆、愛の証!愛の為に、血も流す『HSR』、『魔剣ダーマ』ッ!」

 

HSRマケンダーマッ…魔剣ダーマ

シンクロ・効果モンスター

風属性

機械族

レベル 6

攻撃力 2200

 

「さっきの口上で言っていた不死身の異名は偽りでは無かったか。だが何度来ようと俺は打ち砕き、ソイツの血で墓場を染めてやる!」

 

ノリがいいなジャック、この口上にそれで返すとか。

MCの言う通り、ジャックによってたった1ターンで真っ新になってしまった俺のフィールド、だが魔剣ダーマの蘇生効果は、俺のフィールドが真っ新になってこそ出来る。

尤もこれを使うと通常召喚権を失っちまうが、俺の手札的に全く問題はねぇ!

 

「墓地のタケトンボーグを除外して、魔剣ダーマの効果発動!

もう1度500ポイントのバーンダメージだ!マケンダーストリング!」

「ちっ!」

 

Jack LP 5200→4700

 

さっきのレッド・リゾネーターの効果もあって、まだスタート時のLPを下回ってはいないが、塵も積もれば山、だよな、そんな諺があるんだ、使えるモンは使って行く!

 

「次に、2枚目のタケトンボーグを守備表示で特殊召喚!さっきも出したから、何で出来るかを言う必要は無いよな?」

 

SRタケトンボーグ

効果モンスター

風属性

機械族

レベル 3

守備力 1200

 

「今特殊召喚したタケトンボーグをリリースして効果発動!

デッキから2枚目の赤目のダイスを、守備表示で特殊召喚!」

 

SR赤目のダイス

効果モンスター/チューナー

風属性

機械族

レベル 1

守備力 100

 

自分の効果で特殊召喚されたタケトンボーグと入れ替わる様に登場した赤目のダイス、これで俺のフィールドにはレベル6の魔剣ダーマと、レベル1チューナーの赤目のダイス。

これで準備は万端、クリアウィング、もう1回来てくれ!

 

「俺はレベル6の魔剣ダーマに、レベル1の赤目のダイスをチューニング!シンクロ召喚、再び現れろ!『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン

シンクロ・効果モンスター

風属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2500

 

『ユーゴ選手のエース、クリアウィングが再臨しました!フィールドが真っ新な状態からの立て直し、これぞユーゴ選手の、ランサーズ創設メンバーの底力か!』

「へへっ!バトルフェイズに入る!

クリアウィングで、レッド・ワイバーンを攻撃!旋風のヘルダイブスラッシャー!」

「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン 攻撃力 2500 VS レッド・ワイバーン 攻撃力 2400

 

Jack LP 4700→4600

 

よし、これで今度はジャックのフィールドが真っ新、手札も1枚だけだ!

 

「俺はこれでターンエンド!」

『ユーゴ選手、先程とは逆にジャック選手のフィールドを真っ新に変えました!』

 

Hugo

LP 3800

手札 3

モンスター クリアウィング・シンクロ・ドラゴン(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

「俺のターン!ドロー!

 

遊矢が言っていた事は事実の様だな。クロウや鬼柳達以外で、此処まで喰らいつくデュエリストは初めてだ!」

 

へ、え?な、何だか照れるな、ジャックにこんな感じで褒められるとはな。

 

「故にこのデュエルで、ゲストを迎えるとしよう!ずっと前に俺のデッキへと迎え入れた、ゲストを!

 

 

 

魔法『ダーク・コーリング』発動!」

 

ダーク・コーリング

通常魔法

自分の手札・墓地から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターをゲームから除外し、『ダーク・フュージョン』の効果でのみ特殊召喚出来るその融合モンスター1体を『ダーク・フュージョン』による融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

 

「俺は手札と、墓地に1枚ずつ存在するマリシャス・エッジを除外して融合!」

 

ゑ?

 

「最凶の英雄よ、今こそ邪悪なる力を解き放ち、災厄を全て薙ぎ払うが良い!融合召喚、我が絆の証!『E―HEROマリシャス・デビル』!」

 

E―HEROマリシャス・デビル

融合・効果モンスター

炎属性

悪魔族

レベル 8

攻撃力 3500

 

え、そ、それって融合モンスターだよな、何でそれをジャックが持っているんだよ、アンタこの次元で生まれ育っていたはずだよな!?

 

『まさか、まさかです!ジャック選手、今発動した魔法カードの効果により、エクストラデッキから何とも禍々しいモンスターを呼び出しました!これが、これが融合召喚…!』

「これぞ、ランサーズにとって戦う敵とされているアカデミア、その本拠である世界で発展した融合召喚。だが俺の融合召喚は、そんなデュエリストの誇りなど欠片も存在せぬ連中とは違う!これは、今そのランサーズに属する者から譲り受けた絆の証!邪悪に堕ちつつも英雄としての矜持を捨てぬ者が極限まで至った姿!」

 

ああ、それなら納得だけどよ、それにしても今融合召喚の演出の後に出て来た奴の姿からは、そんな印象は持てねぇぞ…

名前からしてマリシャス・エッジが強化されたんだろうが、最早人間っぽくすらない華奢な体格に纏われた刺々しい装甲、両腕に装着された巨大な爪、正に悪魔だと言わんばかりのデカい翼、そしてそんな一見貧弱そうな見た目を裏切る禍々しいオーラ…

ぶっちゃけジャックの口上にあったような、今の話にあった様な『絆の証』にするの間違えちゃっているぜ、如何にも『悪役』なコイツを。

 

「バトルフェイズに入る!

マリシャス・デビルでクリアウィングを攻撃!エッジ・ストリーム!」

「クリアウィング!ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

E―HEROマリシャス・デビル 攻撃力 3500 VS クリアウィング・シンクロ・ドラゴン 攻撃力 2500

 

Hugo LP 3800→2800

 

「俺はこれでターンエンド!」

 

Jack

LP 4600

手札 0

モンスター E―HEROマリシャス・デビル(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

くっどうする、俺のデッキにあのマリシャス・デビルを突破出来るモンスターは『アイツ』しかいねぇ、もし『発動する』効果持ちなら、クリアウィングでそれを吸収できるんだが、バレた以上は使って来る訳が無い、使うにしてもクリアウィングの効果を無効にしてからだ。

となれば…!

 

「俺のターン!ドロー!

まずは、墓地にある魔剣ダーマの効果発動!

俺のフィールドにカードが存在しない事で、魔剣ダーマを守備表示で特殊召喚!」

 

魔剣ダーマを守備表示で出して、マケンダーストリングによるバーンダメージを積み重ねるしか無い!

幸い、手札にはその効果のコストとなる墓地のSRを増やしてくれる『コレ』がある。

 

「墓地のタケトンボーグを除外して、魔剣ダーマの効果発動!

マケンダーストリング!」

「ぬぉ!」

 

Jack LP 4600→4100

 

「次に速攻魔法『異次元からの埋葬』発動!」

 

異次元からの埋葬(制限カード)

速攻魔法

1:除外されている自分及び相手のモンスターの中から合計3体までを対象として発動出来る。そのモンスターを墓地に戻す。

 

「異次元からの埋葬で除外されているベイゴマックスと、2枚のタケトンボーグを墓地へ戻してターンエンド!」

『ユーゴ選手、ジャック選手のマリシャス・デビルを倒す術が今は無い、という事でしょうか!此処は雌伏の時、防御を固めています!』

 

Hugo

LP 2800

手札 3

モンスター HSR魔剣ダーマ(守備表示)

魔法・罠カード なし

 

本当にそうだよ、マジで。

 

「俺のターン!ドロー!

 

 

 

楽しいデュエルであったぞ、ユーゴよ。だがそれもこのターンで終わりだ!」

 

な、何!?

 

「俺は今引いた『E―HEROヘル・ゲイナー』を召喚!」

 

E―HEROヘル・ゲイナー

効果モンスター

地属性

悪魔族

レベル 4

攻撃力 1600

 

ファイナルターンを宣言したジャックが召喚したのは、何だか骸骨を思わせる鎧、所々角が生えた兜と肩当て、爪が組み込まれたゴツい籠手等々の装甲に覆われた悪魔、ヘル・ゲイナー。

攻撃力は見た目に反して1600と、守備表示である魔剣ダーマをギリギリ突破出来ないが、これを引いた事でジャックがファイナルターンを宣言したんだ、それを実現する様な効果がある筈…!

となると、アクションカードを探さないとそれが実現しちまう…!

 

「ヘル・ゲイナーを除外して効果発動!対象はマリシャス・デビルだ!

マリシャス・デビルはこのターン、2回攻撃出来る!

この効果で除外したヘル・ゲイナーは、この後2回目の俺のスタンバイフェイズに帰還するが、それが発揮する事は無いだろう!」

 

な、攻撃力3500の2回攻撃!?

確かにそれなら何か不測の事態が起こらない限りは、魔剣ダーマを突破しつつ、俺へのダイレクトアタックでジャックの勝利が決まる…!

 

「バトルフェイズに入る!

マリシャス・デビルで魔剣ダーマを攻撃!エッジ・ストリーム、第1波!」

「何の!アクションマジック『回避』発動!」

「無駄な事を!アクションマジック『ノーアクション』発動!」

「んなぁ!?またかよ!?」

 

回避

アクションマジック

1:フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターの攻撃を無効にする。

 

ノーアクション

アクションマジック

1:アクションマジックの効果が発動する時に発動出来る。その発動を無効にし、破壊する。

 

また俺が発動したアクションマジックを無効化しただと!?

どんだけ引きが良いんだジャックは、確か初めてだよな、アクションデュエルは…

 

「ノーアクションの効果によって回避は無効!よって攻撃は続行される!やれ、マリシャス・デビル!」

「くっ!」

 

E―HEROマリシャス・デビル 攻撃力 3500 VS HSR魔剣ダーマ 守備力 1600

 

「これでトドメだ!マリシャス・デビルでダイレクトアタック!エッジ・ストリーム、第2波!」

「ぐぁぁぁぁぁぁ!」

 

Hugo LP 2800→-700 LOSE

 

WINNER Jack

 

『決まったぁ!流石はシティが誇るトリプルスターの一角と言うべきでしょうか!ジャック選手、ユーゴ選手との白熱したデッドヒートを制しました!』

 

あいててて、やっぱ強いな、ジャックは。

確かに、展開的にはデッドヒートとも言えるかも知れねぇが、終わって見ればライフ的に大差の負け、トリプルスターと言う存在は、ジャックという存在は、やっぱり高い所だ。

けど同時に、ジャックとのデュエルはすげー白熱する物で、楽しかった!

だからこそ、このフレンドシップカップで勝ち上がって、その高い所まで這い上がって、またジャックとデュエルがしてぇ!

 

「ユーゴよ。貴様のデュエルタクティクス、見事であった。もう1度デュエルしたい物だ。

 

必ずや這い上がって来い!」

「ああ、ジャック!ぜってーに勝ち上がって、また勝負を挑みに行くぜ!」



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77話_クリア・マインド

Side エレン

 

やっぱすげーな、『遊戯王5D’sの世界』で不動遊星として生きていた頃の遊矢兄ちゃんにとってライバルだった、ジャック・アトラスのデュエルは。

ジャックのデュエルは、正に見る者を圧倒する迫力に満ちていて、それでいて終わった後に「また見たい!」と笑顔にさせる物、初めて会った時に「キングのデュエルはエンターテイメントでなければならない!」と遊矢兄ちゃんに豪語していたのも頷けるデュエルタクティクスだった。

あんなすげーデュエル、遊矢兄ちゃんとやった時以来だ。

そして、この後にデュエルする俺の相手は、そんなジャックと同様、遊矢兄ちゃんの嘗ての仲間であるクロウ・ホーガン。

バルマスケで見たデュエルログの映像で前以て知っているけど、クロウのデッキは『BF(ブラックフェザー)』というカテゴリに属する闇属性・鳥獣族を中心とした物。

なんでも遊矢兄ちゃんが色んな世界に転生する前にいた世界では、実に2年もの間環境トップに居座り続けたとか何とか。

それも納得だぜ、あんな何時終わるんだよと突っ込みたくなるソリティア的展開を見せ付けられたら。

けど俺だって負けねぇぜ、この展開力は勿論、耐久性も十分なこのデッキでアンタに勝ちに行くぜ!

 

『それでは盛り上がって来た所で次のデュエルを始めましょう!

シティが誇るトリプルスター、2人目は、クロウ・ホーガン!』

『キタァァァァァァァァァ!』

『クロウ!クロウ!クロウ!』

 

来たな、クロウ!

俺のデッキでスタンバイしている狩人達で、アンタのデッキに潜む烏達を駆逐してやる!

 

「エレン。お前、遊矢の一番弟子なんだってな。それがまやかしじゃねぇかどうか、このデュエルで証明してみな!」

「望む所だ!遊矢兄ちゃん直伝のデュエルタクティクスで、アンタに勝つぜ!」

『此処でも両者火花を散らしています!ともに気合十分、早速始めましょう!』

 

うおっと、幾らD―ホイールがオートパイロットだとは言っても、やっぱガキんちょの俺にはちょっとやりにくいな、ライディングデュエルは。

そう考えると幾ら前世で経験があるからって、中二の体格でオートパイロットも無しなのに、事も無げにライディングデュエルを繰り広げていた遊矢兄ちゃんはすげーよな。

 

「「『ライディングデュエル・アクセラレーション!』」」

 

よし、行くぜ!

 

「お前の先攻で良いぜ!お前のデュエル、俺に見せてくれよ!」

「じゃあ期待に応えて、しょっぱなから行かせて貰うぜ!」

 

先攻 Elen LP 4000 VS 後攻 Crow LP 4000

 

「俺のターン!

まずは手札の『幻獣機オライオン』を墓地へ送って魔法『ワン・フォー・ワン』発動!」

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

「ワン・フォー・ワンの効果でデッキから『幻獣機ウォーブラン』を守備表示で特殊召喚!

このコストとして墓地へ送ったオライオンの効果で、幻獣機トークンを守備表示で特殊召喚!」

 

幻獣機ウォーブラン

効果モンスター/チューナー

風属性

機械族

レベル 1

守備力 300

 

幻獣機トークン

風属性

機械族

レベル 3

守備力 0

 

先攻を取った、というか譲られた俺が最初に出したのは、ウグイスをモチーフにした宇宙船、ウォーブランと、虹の様な色合いをしている飛行機みたいなトークン。

俺がこのデュエルで使っているのは『幻獣機』デッキ、動物と航空機を組み合わせた様なデザインのモンスターを主軸としたデッキで、独自の『幻獣機トークン』を並べたり、それを使ってアドバンテージを稼いだりするのが特徴だ。

 

「次に、墓地のオライオンを除外して効果発動!

手札から『幻獣機テザーウルフ』を召喚!」

 

幻獣機テザーウルフ

効果モンスター

風属性

機械族

レベル 4→7

攻撃力 1700

 

次に、オライオンの効果によって召喚したのは、狼の頭みたいな機首のヘリコプター、テザーウルフ。

 

「召喚したテザーウルフの効果発動!

幻獣機トークンを守備表示で特殊召喚!

テザーウルフのレベルは、俺のフィールドにいる幻獣機トークンのレベルの合計分上がる!」

 

幻獣機テザーウルフ レベル 7→10

 

そう、大半の幻獣機モンスターはこんな特徴がある、それを活かして各種幻獣機のレベルを調整してエクシーズ召喚やシンクロ召喚に繋げるのが、このデッキのセオリーな戦略だ。

 

「俺はレベル3の幻獣機トークン2体に、レベル1のウォーブランをチューニング!いざ飛び立て、超音速の翼!その速さ、神鳥の如し!シンクロ召喚、レベル7(ヒュゥゥゥン!)!『幻獣機コンコルーダ』!」

 

幻獣機コンコルーダ

シンクロ・効果モンスター

風属性

機械族

レベル 7

攻撃力 2400

 

『エレン選手、物凄いスピードで空を翔ける航空機をシンクロ召喚しました!(ヒュゥゥゥン!)わわ!実に速い!姿を捉えるのも一苦労です!』

 

シンクロ召喚の演出と共に出現し、俺のフィールド、というか俺の直ぐ上をハイスピードで飛行しているのは、細長い機体の先端に顔の様なパーツが組み込まれた幻獣機、コンコルーダ。

遊矢兄ちゃん曰く、音の2倍位のスピードで飛ぶ飛行機『コンコルド』がモデルだとか、それならあの無茶苦茶なスピードも納得だな。

と、今はデュエルの続きだ。

 

「シンクロ召喚の素材に使ったウォーブランの効果発動!

幻獣機トークンを守備表示で特殊召喚!」

 

幻獣機テザーウルフ レベル 10→4→7

 

よし、これでレベル7モンスターが2体、この布陣で出すのは、このデッキの切り札!

 

「俺はコンコルーダとテザーウルフでオーバーレイ!」

『お、オーバーレイ?まさか、また新たなる召喚方法が繰り広げられるのでしょうか!?』

「2体のレベル7モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!いざ飛び立て、強大なる翼!その威風堂々とした姿、竜の如し!『幻獣機ドラゴサック』!」

 

幻獣機ドラゴサック

エクシーズ・効果モンスター

風属性

機械族

ランク 7

攻撃力 2600

ORU 2

 

『で、でかぁぁぁぁぁぁぁい!エレン選手のコンコルーダとテザーウルフが、何やらブラックホールみたいな物に吸い込まれたかと思いきや、其処から何だか物凄く大きい航空機が姿を現しました!これがエクシーズ召喚、異世界の召喚方法!』

 

そうだろ、何せ遊矢兄ちゃん曰く『世界で一番重い航空機』等の様々なギネス記録を持つ飛行機『コサック』がモデルらしいからな。

エクシーズ召喚の演出と共に登場したのは、モデルに恥じない巨大な図体の機首にドラゴンを模した頭部パーツが組み込まれている幻獣機、ドラゴサック。

ただ、コイツを出して終わりじゃないぜ!

 

「続いて『幻獣機メガラプター』召喚!」

 

幻獣機メガラプター

効果モンスター

風属性

機械族

レベル 4→7

攻撃力 1900

 

ドラゴサックに並ぶように登場したのは、恐竜の頭の様な機首をした戦闘機、メガラプター。

その下級モンスターにしては高いステータスもさることながら、

 

「更に、幻獣機トークンをリリースして、メガラプターの効果発動!

デッキから2枚目のメガラプターを手札に加えるぜ!」

 

幻獣機メガラプター レベル 7→4

 

幻獣機トークン1体をコストにする必要こそあるけど、幻獣機モンスターをサーチ出来る、それも同名カードOKだ。

この辺は遊矢兄ちゃんが持っている、どれも制限カードに指定されているエアーマンやドクロバット・ジョーカー、ペンデュラム・マジシャンには出来ない芸当だな。

 

「まだまだ行くぜ!ドラゴサックのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!

幻獣機トークンを2体、守備表示で特殊召喚!

この時、トークンが特殊召喚された事で、メガラプターの効果発動!

幻獣機トークンをもう1体、守備表示で特殊召喚!」

 

幻獣機ドラゴサック ORU 2→1

幻獣機メガラプター レベル 4→10→13

 

「カードを1枚セットしてターンエンド!」

 

Elen

LP 4000

手札 1(幻獣機メガラプター)

モンスター 幻獣機ドラゴサック(攻撃表示)

      幻獣機メガラプター(攻撃表示)

      幻獣機トークン×3(守備表示)

魔法・罠カード セット

 

俺のターンが終わった今、俺の真上でドラゴサックが雄々とした佇まいで飛び、その周りをメガラプターと3機の幻獣機トークンが飛びまわっている。

そしてセットカードが1枚、先攻1ターン目だが、俺の布陣は万全だ!

 

「へぇ、流石はアイツの一番弟子って所か、えげつない布陣だな。だったら俺も手加減無しだぜ!

俺のターン!ドロー!

まずは永続魔法『黒い旋風』を3枚発動!」

 

黒い旋風

永続魔法

1:自分フィールドに『BF』モンスターが召喚された時にこの効果を発動出来る。そのモンスターより低い攻撃力を持つ『BF』モンスター1体をデッキから手札に加える。

 

さ、3枚!?

遊矢兄ちゃん曰くBFデッキで必須と言っても過言じゃ無いサーチエンジン、それを3枚も引き当てるとか、マジかよ…

 

「次に『BF―残夜のクリス』召喚!」

 

BF―残夜のクリス

効果モンスター

闇属性

鳥獣族

レベル 4

攻撃力 1900

 

そんな驚きを他所にクロウが召喚したのは、漢服って言えば良いのか?そんな感じの服装をしていて、右手(?)にジグザグ形状のナイフを持ったBF、残夜のクリス。

 

「クリスを召喚した事で、3枚ある黒い旋風の効果発動!

デッキから『BF―白夜のグラディウス』、『BF―疾風のゲイル』、『BF―精鋭のゼピュロス』を手札に加えるぜ!」

 

うわほんと恐ろしいな、モンスターを召喚しただけでカテゴリモンスターを3枚もサーチするとか。

 

「今手札に加えたグラディウスを守備表示で特殊召喚!コイツは俺のフィールドにいる表側表示モンスターが、グラディウス以外のBF1体だけなら特殊召喚出来るぜ!」

 

BF―白夜のグラディウス

効果モンスター

闇属性

鳥獣族

レベル 3

守備力 1500

 

次に出て来たのは、鎧を身に纏い、両手(?)にそれぞれ短剣を持ったBF、白夜のグラディウス。

 

「同じく手札に加えたゲイルも攻撃表示で特殊召喚!コイツは俺のフィールドにゲイル以外のBFモンスターがいれば特殊召喚出来るぜ!」

 

BF―疾風のゲイル

効果モンスター/チューナー

闇属性

鳥獣族

レベル 3

攻撃力 1300

 

更に出て来たのは、緑の羽毛に覆われた頭部を持つBF、疾風のゲイル。

此処でレベル3チューナーが来たか。

 

「今特殊召喚したゲイルの効果発動!対象はドラゴサックだ!

ゲイルの効果で、攻守を半分にさせて貰うぜ!」

「なっ!?させるか、それにチェーンしてアクションマジック『透明』発動!対象はドラゴサックだ!」

 

透明

アクションマジック

1:自分フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。このターンそのモンスターは相手の効果の対象にならず、効果も受けない。

 

流石に攻撃力半減されたら不味い、此処は帳消しにさせて貰うぜ!

 

「透明の効果で、ドラゴサックはアンタのカードの効果対象にならず、効果を受けないぜ!」

「あら、やってくれるじぇねぇか」

 

まあこれで、このターンに突破される事は無いだろうけど…

 

「それじゃ行くぜ!俺はレベル3のグラディウスに、レベル3のゲイルをチューニング!星降る丘に吹く黒き疾風よ、今こそ刃となって舞い戻れ!シンクロ召喚、レベル6!『BF―星影のノートゥング』!」

 

BF―星影のノートゥング

シンクロ・効果モンスター

闇属性

鳥獣族

レベル 6

攻撃力 2400

 

『クロウ選手も負けていない!BFシンクロモンスターの一角、ノートゥングが場に現れました!』

 

なんつーか、コイツ本当に鳥獣族なのか?

シンクロ召喚の演出と共に登場したノートゥングは、黒い服装から見える筋肉質な体格、大剣を握る手をはどう見ても人間のそれ、両脚も装甲で覆われているから鳥のそれなのか分からない。

まあ背中の翼とか、嘴とかで辛うじて鳥獣族だと言われても納得だけどさ。

 

「特殊召喚したノートゥングの効果発動!お前に800ポイントのバーンダメージを与え、更にモンスターの攻守を800ポイント下げるぜ!」

「何!?ならそれにチェーンして速攻魔法『リミッター解除』発動!」

 

リミッター解除(制限カード)

速攻魔法

このカードの発動時に自分フィールド上に表側表示で存在する全ての機械族モンスターは、ターン終了時まで攻撃力が倍になる。このターンのエンドフェイズ時、この効果を受けたモンスターを全て破壊する。

 

やべぇ、この効果をそのまま通したらメガラプターのサンドバッグ化が確定じゃねぇか!

 

「まずはリミッター解除の効果で、俺のフィールドにいるモンスター達の攻撃力は倍になるぜ!」

「じゃあ改めて食らえ!舞い戻る剣(ホーミング・ソード)!」

「ぐぁっ!」

 

Elen LP 4000→3200

幻獣機メガラプター 攻撃力 1900→3800→3000

          守備力 1000→200

幻獣機ドラゴサック 攻撃力 2600→5200

 

さっきアクションマジックを使ったばかりのタイミングでの効果だから間に合わなかったけど、これで何とか持ちそう、

 

「まだまだ行くぜ!手札に加えていたゼピュロスを墓地へ送ってワン・フォー・ワンを発動!

デッキから『BF―突風のオロシ』を守備表示で特殊召喚!」

 

BF―突風のオロシ

効果モンスター/チューナー

闇属性

鳥獣族

レベル 1

守備力 600

 

と思っていたら、今度は如何にも烏だと言わんばかりのBF、突風のオロシが登場した。

今度はレベル1チューナーか。

 

「俺はレベル6のノートゥングに、レベル1のオロシをチューニング!漆黒の風を操りし戦士よ、空を読み、風を読み、戦場を読み、盤面を制圧しろ!シンクロ召喚、レベル7!『BFT(テイマー)―漆黒のホーク・ジョー』!」

 

BF T―漆黒のホーク・ジョー

シンクロ・効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 7

攻撃力 2600

 

『クロウ選手、その展開は留まる事を知りません!BF唯一の戦士族であるシンクロモンスター、ホーク・ジョーが姿を現しました!』

 

ん?戦士族だって?

BFって鳥獣族のカテゴリの筈、だけど今出て来たインディアンの様な姿のBF、ホーク・ジョーは種族が戦士族になっている。

確かに風貌は戦士族っぽいし、Tという新しいカテゴリ表記があるけど、BFならではの黒翼があるし…

 

「今シンクロ召喚の素材として墓地へ送ったオロシの効果発動!幻獣機トークン1体を攻撃表示に変えるぜ!」

「なっ!?しまった!」

 

やべぇ、これは大ダメージ一発を覚悟しないと…!

 

「更にホーク・ジョーの効果発動!

たった今シンクロ素材として墓地へ送ったノートゥングを攻撃表示で蘇生するぜ!」

 

ああ、それでノートゥングを態々シンクロ素材にしたのか。

今のクロウの盤面を整理すると、ホーク・ジョーとノートゥングという2体のシンクロモンスターと、クリスの計3体。

まさか此処まで動いて来るとはなぁ。

 

「これで終わりと思ったら大間違いだぜ!

クリスを手札に戻して、墓地にいるゼピュロスの効果発動!

コイツを攻撃表示で蘇生し、俺は400ポイントのバーンダメージを受けるぜ!あだっ!」

 

BF―精鋭のゼピュロス

効果モンスター

闇属性

鳥獣族

レベル 4

攻撃力 1600

 

Crow LP 4000→3600

 

ってまだ動くのかよ、しかもそのカード、さっきのワン・フォー・ワンのコストになっていたカードじゃねぇか!

あ、そういえばノートゥングの効果は他に…!

 

「ノートゥングが俺のフィールドにいる限り、俺はBFモンスターをもう1回召喚出来るぜ!

この効果で、今手札に戻したクリスをもう1度召喚!

クリスを召喚した事で、3枚ある黒い旋風の効果発動!

デッキからオロシと、『BF―月影のカルート』2枚を手札に加えるぜ!」

 

な、なんつー展開力だよ、フィールドには4体ものモンスターがいるにも関わらず手札は4枚、遊矢兄ちゃんのEMデッキでも、此処までの動きが出来たのはあのモンキーボードが制限を受けていない時くらいだぞ…

 

「今手札に加えたオロシを守備表示で特殊召喚!コイツは1ターンに1度の制限こそあるが、ゲイルと同じ条件で特殊召喚出来るぜ!

俺はレベル4のゼピュロスに、レベル1のオロシをチューニング!黒き烈風よ、絆を紡ぐ追い風となれ!シンクロ召喚、レベル5!『A(アサルト)BF―五月雨のソハヤ』!」

 

A BF―五月雨のソハヤ

シンクロ・効果モンスター

闇属性

鳥獣族

レベル 5

守備力 2000

 

うわぁ、もう笑うしかねぇな、此処までの動きを見せられると…

今出て来たのは、青い色合いの鎧を身に着け、右手(?)に刀を持ったBF、五月雨のソハヤ。

見た感じだと、ホーク・ジョーとそれ以外のBFの間といった印象かな?

 

「シンクロ召喚の素材となったオロシの効果発動!2体目の幻獣機トークンを攻撃表示に変えるぜ!」

 

あ、俺オワタ\(^o^)/

 

「エレン。折角だ、本場のシンクロ召喚って奴を見せてやるぜ!」

 

だけどまだまだ動く気の様で、そう言いながら今までずっと背後で様子を伺っていたみたいな状態から、アクセルを全開にしたのかクロウのD―ホイールが急速に迫って来た。

これって、まさか…!?

 

「クリアマインド!

俺はレベル7のシンクロモンスター、ホーク・ジョーに、自身の効果でシンクロチューナーとなったレベル5のソハヤをチューニング!レベル12!漆黒の翼よ!雷の力宿して鮮烈に轟け!アクセルシンクロォォォォ!切り裂け、『A BF―神立のオニマル』!」

 

A BF―神立のオニマル

シンクロ・効果モンスター

闇属性

鳥獣族

レベル 12

攻撃力 3000

 

『で、出ましたぁ!クロウ選手が至った境地、クリアマインドから呼び覚まされる、アクセルシンクロ!其処から、クロウ選手のエース・オブ・エース、オニマルが姿を現しました!』

 

あ、アクセルシンクロ、やっぱ本場はすげぇな…

遊矢兄ちゃんが見せてくれたそれと同様、サーキットの走路上に並んだ、ソハヤの身体から生成された5つの緑の環、其処にクロウのD―ホイールを追走する様に飛行していたホーク・ジョーがスピードを上げて潜り抜けて行くとその身が白く輝き、それが晴れた後には、何だか覇王を思わせる様な鎧を身に纏ったBF、神立のオニマルが姿を現した。

 

「じゃあ決めるぜ!バトルフェイズに入る!

オニマルで攻撃表示になっている幻獣機トークンを攻撃!この時、アクセルシンクロで呼び出したオニマルは攻撃力が3000アップするぜ!行け、オニマル!サンダーボルト・アクセルフラップ!」

「くっ!こうなったら徹底的にあがく!アクションマジック『ステルスマイン』発ど(ひょい!)よ、避けられた!?」

「どうやらそれ、モンスターを破壊するカードの様だな、だが無駄だ!オニマルは効果では破壊されねぇ!」

「ま、マジか(ビュゥン!)うわぁぁぁぁ!」

 

A BF―神立のオニマル 攻撃力 3000→6000 VS 幻獣機トークン 攻撃力 0

 

Elen LP 3200→-2800 LOSE

 

WINNER Crow

 

『決まったぁ!クロウ選手、エレン選手の鉄壁の布陣を前にも自慢の展開力で突破して見せました!先程のデュエルで勝利したジャック選手同様、シティが誇るトリプルスターの名は伊達ではないという事でしょう!』

 

うはぁ、まさか後攻1ターンキルされるとは思わなかった…

だけど普通ならあのソハヤをシンクロ召喚した場面、アクセルシンクロする事無くそのまま殴っても勝てた筈(というか、アクションカードを拾わせる猶予を与えないという意味でむしろそっちの方が良かった筈)のあの場面で、遠慮なくアクセルシンクロして来た、それ程俺の実力を買ってくれた事、認めてくれた事は嬉しかったな。

今度は、今度のデュエルでは負けねぇぜ!

 

「楽しいデュエルだったぜ、エレン!フレンドシップカップを勝ち上がった時、またやろうぜ!」

「ああ、クロウ!今度はアンタに勝って見せる!」



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78話_ハンドレスコンボ

Side ユート

 

これ程の物なのか、シンクロ次元でトップクラスだと言われているデュエリストの実力の高さは…

ランサーズから俺を含めて6人が出場するフレンドシップカップ、その前夜祭である今行われている、このシティにおける3人のデュエリストスターとのスペシャルマッチに俺は3番手として出番を待っていたんだが、其処で目の当たりにした、ジャック・アトラスとクロウ・ホーガンのデュエルタクティクスに、俺は驚愕した。

まず『この次元の俺』ことユーゴとデュエルしたジャック、まさか融合召喚をして来るとは思いも寄らなかったが(しかもそのやり方が、アカデミアのそれとは明らかに違っていた)、それを抜きにしてもユーゴのエースカードであるクリアウィングの効果を受けて尚怯む事無く、むしろその死角を突いて突破して来る、させないと言わんばかりにアクションデュエルを覚えたばかりだとは思えない挙動でアクションカードを手にし、発動したユーゴに対しても、まるでそれを読んでいたかのように、かなり扱いにくいアクショントラップ『カウンターアクション』を手にしていて、それを無効にする、何度でも蘇る魔剣ダーマを壁として粘って来れば2回攻撃を付加して上から押し潰す、そんな一見すると真っ向勝負に見えながらも緻密なプレイングに俺は目を見張った。

その次の『スタンダードの俺』こと遊矢の一番弟子だと言うエレンとデュエルしたクロウ、先攻でほぼ万全の布陣としたエレンに対して、正直何時終わるのかと思いたくなるソリティアで盤面を整え、その中でエレンの布陣を少しずつ崩して行き、そして『シンクロ召喚のその先』との事らしいアクセルシンクロで勝負を決めた、そのデッキの爆発力もそうだが、それを手足の如く使いこなすクロウのプレイング、そしてどんなデュエルにも全力で臨むその心意気に、俺は再び目を見張った。

ランサーズにおいて精鋭と言われているエレンすらも後攻1キル出来るその実力、やはり遊矢や赤馬零児の判断は正しかった、あの時、隼を宥めて正解だったな。

さて、次の第3戦で俺と戦うのは鬼柳京介、聞く所によると鬼柳の使うデッキは『インフェルニティ』というカテゴリのカードを中心としたデッキだそうで、その爆発力は先程クロウが使っていた『BF(ブラックフェザー)』にすら勝るとの事だが…

まあ良い、誰が相手であろうと俺は俺のデュエルで立ち向かうまでだ!

 

『さて、スペシャルマッチも最後のデュエルとなりました!

その最後を飾るトリプルスター、3人目は、鬼柳京介!』

『鬼柳!鬼柳!鬼柳!鬼柳』

『サティスファクション!』

 

来たか、鬼柳。

 

「さあやろうぜユート。俺を、満足させてくれよ…!」

「望む所だ。俺のデュエルで、お前に満足と敗北を同時にもたらして見せる!」

『前夜祭最後のデュエル、それでは行きましょう!』

 

さあ、行くぞ!

 

「「『ライディングデュエル・アクセラレーション!』」」

「お前の先攻だ。お前のデュエル、じっくりと見させて貰う…」

「分かった。なら遠慮なく行かせて貰う!」

 

先攻 Ute LP 4000 VS 後攻 Kiryu LP 4000

 

「俺のターン!

まず『幻影騎士団(ファントムナイツ)ダスティローブ』召喚!」

 

幻影騎士団ダスティローブ

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 3

攻撃力 800

 

先攻となった俺が最初に召喚したのは、ぼろぼろのローブを身に纏った幻影騎士、ダスティローブ。

 

「次に手札の『幻影騎士団サイレントブーツ』を守備表示で特殊召喚!コイツは俺のフィールドに幻影騎士団がいれば特殊召喚出来る!」

 

幻影騎士団サイレントブーツ

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 3

守備力 1200

 

次に呼び出したのは、西部劇の登場人物にいそうな出で立ちの幻影騎士、サイレントブーツ。

 

「俺はダスティローブとサイレントブーツでオーバーレイ!2体のレベル3モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!戦場に倒れし騎士たちの魂よ、今こそ蘇り、闇を切り裂く光となれ!エクシーズ召喚!現れろ、ランク3!『幻影騎士団ブレイクソード』!」

 

幻影騎士団ブレイクソード

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

戦士族

ランク 3

守備力 1000

ORU 2

 

『ユート選手、早速エクシーズ召喚です!何やら伝説に聞く首なし騎士の様な、異様なモンスターですが…』

 

流石に先程エレンがエクシーズ召喚した事、そのエクシーズモンスターが余りにデカい図体というインパクトもあって、MCの解説は驚きよりも不気味な物を見ているかの様な感じだ。

それも当然だろう、俺の幻影騎士団は亡霊が衣服を纏った、某今現在放送されている仮面ライダーを導く存在の様な出で立ちなのだから。

それは置いて、俺がエクシーズ召喚したのは、MCの言う通り首なし騎士(デュラハン)の様な幻影騎士、ブレイクソード。

 

「カードを3枚セットしてターンエンド!」

 

Ute

LP 4000

手札 0

モンスター 幻影騎士団ブレイクソード(守備表示)

魔法・罠カード セット×3

 

「俺のターン、ドロー…

まず手札の『インフェルニティ・ジェネラル』を捨てて『ダーク・グレファー』を攻撃表示で特殊召喚…」

 

ダーク・グレファー

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1700

 

ダーク・グレファーという事は、インフェルニティは墓地肥やしが重要なデッキか。

 

「次に、手札の『インフェルニティ・ミラージュ』を捨ててダーク・グレファーの効果発動…

デッキから『インフェルニティ・ネクロマンサー』を墓地へ送る…

続いて、手札の『インフェルニティ・リベンジャー』を墓地へ送って魔法『ワン・フォー・ワン』発動…」

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

「ワン・フォー・ワンの効果で、デッキから2体目のミラージュを守備表示で特殊召喚…」

 

インフェルニティ・ミラージュ

効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 1

守備力 0

 

次に鬼柳が呼び出したのは、何やらインディアンみたいな姿の悪魔、インフェルニティ・ミラージュ。

それにしても、着々と墓地が肥えているな…

 

「更に『終末の騎士』召喚…」

 

終末の騎士(制限カード)

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1400

 

あれ?あ、そういえば召喚権を使っていなかったな。

これで鬼柳の手札は0でセットカードも無い、しかし鬼柳のフィールドにいるのは攻守0のモンスターと、墓地肥やしとしての定番である2体の下級モンスターのみ、遊矢の言っていたBFをも上回る爆発力、との触れ込みには疑問符を覚えるんだが…

 

「召喚した終末の騎士の効果発動…

デッキから『インフェルニティ・デーモン』を墓地へ送り…

 

 

 

ハンドレスコンボの完成だ!」

「何!?」

『此処で準備完了です、鬼柳選手の代名詞、ハンドレスコンボが!』

 

ハンドレスコンボ、だと!?

だが手札0、セットカードも無しでどう動くと言うのだ…?

 

「ミラージュをリリースして効果発動!

コイツは俺の手札が0枚の時、自分自身をリリースする事で墓地のインフェルニティ2体を蘇生する!蘇れ!リベンジャー、ネクロマンサー!」

 

インフェルニティ・リベンジャー

効果モンスター/チューナー

闇属性

悪魔族

レベル 1

守備力 0

 

インフェルニティ・ネクロマンサー

効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 3

守備力 2000

 

な、手札0枚で発動する蘇生効果だと、しかも2枚も!?

 

「蘇生したネクロマンサーの効果発動!

コイツも手札0枚の時、墓地のインフェルニティ1体を蘇生する!蘇れ!デーモン!」

 

インフェルニティ・デーモン

効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 4

攻撃力 1800

 

また蘇生効果!?

 

「蘇生したデーモンの効果発動!

コイツは手札0枚で特殊召喚した時、デッキからインフェルニティカード1枚をサーチ出来る!

この効果でデッキから永続魔法『インフェルニティガン』を手札に加えて発動!」

 

インフェルニティガン(制限カード)

永続魔法

1ターンに1度、手札から『インフェルニティ』と名の付いたモンスター1体を墓地へ送る事が出来る。

また、自分の手札が0枚の場合、フィールド上のこのカードを墓地へ送る事で、自分の墓地の『インフェルニティ』と名の付いたモンスターを2体まで選択して特殊召喚する。

 

今度はカテゴリに属する物なら何でもアリのサーチ!?

よくよく考えたら今の鬼柳のフィールドはモンスターで埋まっていて、1体だけだがチューナーもいる、となると…!

 

「俺はレベル4のデーモンと、レベル3のネクロマンサーに、レベル1のリベンジャーをチューニング!漆黒の帳下りし時、冥府の瞳は開かれる。舞い降りろ闇よ!シンクロ召喚、レベル8!出でよ、『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』!」

 

ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン

シンクロ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 3000

 

やはり此処で出して来たか、シンクロモンスターを…!

シンクロ召喚の演出と共に登場したのは、ワンハンドレッド・アイの名の通り、身体中に眼を持った漆黒のドラゴン。

 

『鬼柳選手、此処でワンハンドレッド・アイ・ドラゴンをシンクロ召喚しました!ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンを出したという事は、まだ満足していない、という気持ちの現れなのか!』

「そうだ、俺はこの程度では満足しちゃいねぇ!墓地のミラージュを除外して、ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンの効果発動!

コイツはエンドフェイズまで、ミラージュと同名モンスターとして扱い、同じ効果を得る!」

 

何、という事は…!

 

「ミラージュの効果を得たワンハンドレッド・アイ・ドラゴンをリリースして効果発動!

再び蘇れ!リベンジャー、ネクロマンサー!

蘇生したネクロマンサーの効果発動!

お前も再び蘇れ!デーモン!

蘇生したデーモンの効果発動!

デッキから罠『インフェルニティ・バリア』を手札に加えてそのままセット!

俺はレベル4のデーモンと、レベル3のネクロマンサーに、レベル1のリベンジャーをチューニング!シンクロ召喚、再び舞い降りろ!ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン!

墓地のミラージュを除外して、ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンの効果発動!

コイツはエンドフェイズまで、ミラージュと同名モンスターとして扱い、同じ効果を得る!

ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンをリリースして効果発動!

三度蘇れ!リベンジャー、ネクロマンサー!

蘇生したネクロマンサーの効果発動!

お前も三度蘇れ!デーモン!

蘇生したデーモンの効果発動!

デッキから罠『インフェルニティ・ブレイク』を手札に加えてそのままセット!

俺はレベル4のデーモンと、レベル3のネクロマンサーに、レベル1のリベンジャーをチューニング!シンクロ召喚、三度舞い降りろ!ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン!」

『まるで永遠に続くのでは無いかと思いたくなるこのループコンボ!その中でも鬼柳選手の盤面は着々と整えられて行きます!』

 

1回まわす毎に『インフェルニティ』カードがフィールドにセットされていく、ループコンボ…!

だ、だがもう墓地へ送ったミラージュはもう無い、ループコンボも打ち止めの筈…!

 

「このまま行くのも良いが、モンスターゾーンの余裕が無くなって来たな…

よし、さっき貰ったコイツを使うか!

俺はダーク・グレファーと終末の騎士でオーバーレイ!」

 

な、何、だと…!?

 

「2体のレベル4モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚、ランク4!『インヴェルズ・ローチ』!」

 

インヴェルズ・ローチ

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

悪魔族

ランク 4

攻撃力 1900

ORU 2

 

エクシーズ召喚、だと!?

あの口振りからして誰かから貰った様だが、一体…!?

 

『おぉっと、鬼柳選手もエクシーズ召喚だ!けど何だか、生理的に嫌悪感を覚えるのは何故でしょうか…?』

 

それは分からなくも無い、何せ見た目が二足歩行しているゴ○ブリだからな…

 

「案外役に立ちそうだな、コイツは。さて、まだ行かせて貰うぜ!

インフェルニティガンをリリースして効果発動!

コイツはいわば永続魔法版ミラージュ!」

 

何!?その効果はミラージュだけの物じゃ無かったのか!?

 

「まだまだ動いてもらうぜ!リベンジャー、ネクロマンサー!

蘇生したネクロマンサーの効果発動!

お前も頼むぞ!デーモン!

蘇生したデーモンの効果発動!

デッキから2枚目のインフェルニティ・バリアを手札に加えてそのままセット!

俺はレベル4のデーモンと、レベル3のネクロマンサーに、レベル1のリベンジャーをチューニング!死者と生者、ゼロにて交わりし時、永劫の檻より魔の竜は放たれる!シンクロ召喚、レベル8!出でよ、これが死神の真の恐怖!『インフェルニティ・デス・ドラゴン』!」

 

インフェルニティ・デス・ドラゴン

シンクロ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 3000

 

今度のシンクロモンスターは、サボテンみたいなトサカを持った、黒いドラゴンか。

 

『今度は鬼柳選手のエース、インフェルニティ・デス・ドラゴンが姿を見せました!盤面が固まって来ました!』

「まだだ、まだ俺は満足していねぇ!墓地のジェネラルを除外して効果発動!

コイツは手札0枚の時、墓地のコイツを除外する事で、墓地のレベル3以下のインフェルニティ2体を、効果を無効にして蘇生できる!

これで最後だ、頼むぞ!リベンジャー、ネクロマンサー!」

 

あれ、2体ものモンスターを蘇生するというインチキじみた効果の筈なのだが、先程のミラージュ(とインフェルニティガン)の効果と、それをコピーしたワンハンドレッド・アイ・ドラゴンによるループコンボを見せられたせいか、地味に見える…

 

「俺はレベル3のネクロマンサーに、レベル1のリベンジャーをチューニング!シンクロ召喚、レベル4!頼むぜ、『波動竜フォノン・ドラゴン』!」

 

波動竜フォノン・ドラゴン

シンクロ・効果モンスター/チューナー

闇属性

ドラゴン族

レベル 4

攻撃力 1900

 

あのドラゴンは、確か遊矢がジャックとデュエルした際、ジャックがシンクロ召喚したドラゴン…!

 

「フォノン・ドラゴンの効果は使わねぇ!

墓地のネクロマンサーを除外して、ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンの効果発動!

コイツはエンドフェイズまで、ネクロマンサーと同名モンスターとして扱い、同じ効果を得る!」

 

ま、まだ動くのか!?

 

「ネクロマンサーの効果を得たワンハンドレッド・アイ・ドラゴンの効果発動!

お前もこれでラストだ、頼むぞ!デーモン!

蘇生したデーモンの効果発動!

デッキから2枚目のインフェルニティ・ブレイクを手札に加えてそのままセット!

俺はレベル4のデーモンに、レベル4のフォノン・ドラゴンをチューニング!地獄と天国の間、煉獄より、その姿を現せ!シンクロ召喚、レベル8!太古の英雄よりもたらされし力、『煉獄龍オーガ・ドラグーン』!」

 

煉獄龍オーガ・ドラグーン

シンクロ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 3000

 

『な、ななな、なんとぉ!鬼柳選手、決闘竜の一角であるオーガ・ドラグーンをシンクロ召喚しました!もたらされし力、と言っておりましたが…』

「ああ。つい最近、あの不動遊星から授かったカードだ。『お前にこそこのカードは相応しい』、とな」

 

締めくくりだと言わんばかりにシンクロ召喚された、焦げ茶色の色合いを持ち、身体の様々な場所に宝玉らしき物体が埋め込まれたドラゴン、オーガ・ドラグーンの姿に、観客がどよめいた。

まあ確かに、このシンクロ次元で伝説となっている決闘竜の一角を、トップクラスの実力者とは言え現代のデュエリストである鬼柳が持っていたらそれはびっくりする。

俺自身も、嘗て遊矢とデュエルした時、俺達の次元において『生きる伝説』として語られている天城カイト博士しか持っていない筈の『フォトン』カードを遊矢が使っていた事に驚愕した身なのだから(それに関して遊矢は「結構前に、とある人物から譲り受けた」と説明していたが…)。

それはともかく、今の鬼柳の盤面は、レベル8・攻撃力3000のドラゴン族シンクロモンスター3体と、エクシーズモンスターであるインヴェルズ・ローチの計4体、まさかこの盤面が、手札0枚、セットカード無しの状況から作られた物だと言って、誰が信じるだろうか。

これが、これがハンドレスコンボ、何とも凄まじい物だ…!

 

「さて、そろそろ攻め込むとするか。

インフェルニティ・デス・ドラゴンの効果発動!対象はブレイクソード!

コイツは手札0枚の時、1ターンに1度、モンスター1体を破壊し、その攻撃力の半分のダメージを与える!インフェルニティ・デス・ブレス!」

 

何!?だったら…!

いや、此処は受けよう!

 

「ぐぁっ!?」

 

Ute LP 4000→3000

 

インフェルニティ・デス・ドラゴンによるブレスを受け、ブレイクソードはその身が消滅、その余波を食らってしまったが、これこそが狙い通りだ!

 

「破壊されたブレイクソードの効果発動!

エクシーズ召喚されたコイツが破壊された場合、レベルが一緒の幻影騎士団モンスター2体を蘇生出来る!これは場合の任意効果だから、タイミングを逃さない!」

「何!?此処はトリシューラを出すべきだったか…!」

「俺はこの効果で、ブレイクソードと一緒に墓地へ送られたダスティローブとサイレントブーツを守備表示で特殊召喚!その後、ブレイクソードの効果により、2体のレベルを1つ上げる!」

 

幻影騎士団ダスティローブ レベル 3→4

幻影騎士団サイレントブーツ レベル 3→4

 

ただ、コイツらだけでは鬼柳の猛攻を受け止めるには心もとない、となれば…!

 

「まあ良い、正面から突破すればいいだけの話だ!バトルフェイズに入る!

インヴェルズ・ローチでダスティローブを攻撃!」

「おっと!その攻撃宣言時、罠『幻影騎士団ダーク・ガントレット』3枚発動!」

 

幻影騎士団ダーク・ガントレット

通常罠

1:デッキから『ファントム』魔法・罠カード1枚を墓地へ送る。

2:自分フィールドにカードが存在しない場合、相手モンスターの直接攻撃宣言時に墓地で発動出来る。このカードは効果モンスター(戦士族・闇属性・レベル4・攻撃力300/守備力600)となり、モンスターゾーンに守備表示で特殊召喚する(罠カードとしては扱わない)。この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。

3:このカードの効果で特殊召喚したこのカードの守備力は、自分の墓地の『ファントム』魔法・罠カードの数×300アップする。

 

此処は、アドバンテージを稼ぐ!

 

「何をするつもりかは知らんが、オーガ・ドラグーンの効果発動!

コイツは俺の手札が0枚の時、1ターンに1度、魔法・罠カードの発動を無効破壊する!

コイツの効果で、3枚目のダーク・ガントレットの発動を無効だ!」

「くっ!だが残りの2枚の効果処理はさせて貰う!効果でデッキから罠『幻影騎士団シャドーベイル』2枚を墓地へ!」

 

流石に全部墓地送りには出来なかったか、だがこれで十分だ!

 

「改めて、インヴェルズ・ローチの攻撃!」

 

インヴェルズ・ローチ 攻撃力 1900 VS 幻影騎士団ダスティローブ 守備力 1000

 

「続いてワンハンドレッド・アイ・ドラゴンでサイレントブーツを攻撃!インフィニティ・サイト・ストリーム!」

 

ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン 攻撃力 3000 VS 幻影騎士団サイレントブーツ 守備力 1200

 

『鬼柳選手の猛攻は止まらない!先程ブレイクソードの破壊時効果で展開された2体の幻影騎士団も、事も無げに突破されました!そしてまだオーガ・ドラグーンの攻撃が残っています!』

「行くぜ!オーガ・ドラグーンでダイレクトアタック!」

 

よし、此処だ!

 

「そのダイレクトアタック宣言時、墓地のダーク・ガントレット3枚と、シャドーベイル2枚の効果発動!」

「このタイミングで墓地から効果を発動する罠だと!?」

「ダーク・ガントレット、シャドーベイル共にダイレクトアタック宣言時に、墓地からモンスターとして守備表示で蘇生出来る!蘇れ!ダーク・ガントレット、シャドーベイル!」

 

幻影騎士団ダーク・ガントレット

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 4

守備力 600

 

幻影騎士団シャドーベイル

通常モンスター

闇属性

戦士族

レベル 4

守備力 300

 

よし、これで俺のフィールドには5体の幻影騎士団が守備表示で並んだ!

 

「まさか此処から粘って来るとは思わなかったな、だがそれでこそ、お前に勝った時の満足感は計り知れない物だろうな…!

バトルフェイズは続行!オーガ・ドラグーンでダーク・ガントレットを攻撃!煉獄の混沌劫火(インフェルニティ・カオス・バースト)!」

「させるか!アクションマジック『回避』発動!」

 

回避

アクションマジック

1:フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターの攻撃を無効にする。

 

「回避の効果で、オーガ・ドラグーンの攻撃は無効だ!」

「とことん粘るじゃねぇか、なら俺はこれでターンエンド!」

 

Kiryu

LP 4000

手札 0

モンスター インヴェルズ・ローチ(攻撃表示)

      ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン(攻撃表示)

      インフェルニティ・デス・ドラゴン(攻撃表示)

      煉獄龍オーガ・ドラグーン(攻撃表示)

魔法・罠カード セット×4(うち2枚はインフェルニティ・ブレイク、残り2枚はインフェルニティ・バリア)



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79話_計画通り…!

Side ユート

 

さて、改めて鬼柳の陣営を見ると、その異様さに笑うしかない。

彼と共にサーキットを駆け抜ける4体ものモンスター、そのうち3体が攻撃力3000を誇り、更にその1体であるオーガ・ドラグーンはスペルスピードが1下がった上に条件が付いた代わりにデメリットが無くなった『魔宮の賄賂』内蔵、残りの1体であるインヴェルズ・ローチも中々厄介な能力を持っている、尤も俺のデッキに引っ掛かるモンスターはいないが。

セットカードもデーモンを散々使い回した事で罠カードが4枚もセットされている、それらは無論、このターンから使用可能だ。

対して俺のモンスターは、先程墓地から蘇生したダーク・ガントレット3体とシャドーベイル2体、いずれも元々罠カードだったのが自らの効果で墓地から特殊召喚された奴で、フィールドを離れたら最後、自らの効果で除外されてしまう。

だがそれは『フィールドを離れたら』の話、一たびエクシーズ召喚によってオーバーレイ・ユニットと化せば、大元を破壊されようと、効果やコストで墓地へ送られようと『フィールドを離れた』扱いにならない、このルールを活かせば…!

 

「俺のターン!ドロー!」

「スタンバイフェイズに、たった今手にしたアクションマジック『次元駆動(ワープ・ドライブ)』発動!」

 

次元駆動

アクションマジック

1:このカードを発動したターン、お互いのプレイヤーは墓地へカードを置く事が出来ず、墓地へ行くカードは代わりにゲームから除外される。

 

何、このタイミングでそのアクションマジックだと!?

不味いな、これではエクシーズ素材云々に関係なく除外されてしまう、厄介な状況になった…!

だが此処は行くしかない、保険は掛けるとしよう!

 

「俺はシャドーベイル2体でオーバーレイ!2体のレベル4モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!衝動に駆られ、心を失いながらも、輝石戦士の誇りは永遠に不滅!エクシーズ召喚、ランク4!『暗遷士カンゴルゴーム』!」

 

暗遷士カンゴルゴーム

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

岩石族

ランク 4

守備力 1950

ORU 2

 

俺の側に登場した、俺の部下である真澄が使っているジェムナイトモンスターの、様々なパーツが継ぎ接ぎになった様な姿のモンスター、カンゴルゴーム。

コイツはフィールドのカード1枚を対象に取る効果が発動された時、オーバーレイ・ユニット1つでその対象を俺が決められる(無論、発動した効果の指定した範囲内でだが)。

もしあのセットカードに除去効果を持つ物があったとしても、コイツの効果で狙いを逸らしてしまえば、

 

「ソイツの特殊召喚成功時、罠『インフェルニティ・ブレイク』発動!対象は墓地のデーモンと、ソイツだ!」

「させるか!それにチェーンしてカンゴルゴームのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!その罠の対象は俺が決める!」

「させねぇのは俺の方だ!更にチェーンしてカウンター罠『インフェルニティ・バリア』発動!」

 

インフェルニティ・ブレイク

通常罠

自分の手札が0枚の場合に発動出来る。自分の墓地の『インフェルニティ』と名の付いたカード1枚を選択してゲームから除外し、相手フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。

 

インフェルニティ・バリア

カウンター罠

自分フィールド上に『インフェルニティ』と名の付いたモンスターが表側攻撃表示で存在し、自分の手札が0枚の場合に発動する事が出来る。相手が発動した効果モンスターの効果・魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する。

 

な、モンスター効果にも対応したカウンター罠だったのか!?

これでは防ぐ事が出来ない…!

 

「インフェルニティ・バリアの効果でソイツの効果を無効にして破壊だ!」

「くっカンゴルゴーム…!」

 

このターンにこれ以上動くと却って危険だ、とは言えこのカードを使った所で今のカウンター罠がもう1枚セットされているのは分かっている、勝負は見えたも同然だが、それでも俺は足掻く!

 

「カードを1枚セットしてターンエンド!」

 

Ute

LP 3000

手札 0

モンスター 幻影騎士団ダーク・ガントレット×3(守備表示)

魔法・罠カード セット

 

「俺のターン!ドロー!

来たぜ…!

俺が引いたのは、2枚目の『インフェルニティ・デーモン』!

コイツは手札0枚の状態でドローした時、お前に見せる事で特殊召喚出来る!」

「な、何だと!?」

『鬼柳選手、凄まじい引きです!先程はユート選手のスタンバイフェイズ中に狙いのアクションマジックを引き当て、このドローフェイズではデーモンをドローした!』

 

インフェルニティ・デーモン

効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 4

攻撃力 1800

 

MCの言う通りだと言うしかない、鬼柳の今引きの強さ、もう笑うしかないな。

だが、それでも俺は最後までやりぬく!

 

「特殊召喚したデーモンの効果発動!」

「ならそれにチェーンして罠『ワンダー・エクシーズ』発動!」

「おっと!それにチェーンしてインフェルニティ・バリア発動!」

 

ワンダー・エクシーズ

通常罠

1:自分フィールドのモンスターを素材としてエクシーズモンスター1体をエクシーズ召喚する。

 

無駄な足掻きと突っ込まれそうだがそれでもとの決意で発動したワンダー・エクシーズ、だがそれもやはり、あのカウンター罠に阻まれる形となった。

万事休す、か…!

 

「インフェルニティ・バリアの効果でワンダー・エクシーズは無効だ!

その後、デーモンの効果で3枚目のバリアを手札に加えるぜ!

メインフェイズに、今手札に加えたバリアをセットしてバトルフェイズ!

デーモンで1体目のダーク・ガントレットを攻撃!ヘルプレッシャー!」

 

インフェルニティ・デーモン 攻撃力 1800 VS 幻影騎士団ダーク・ガントレット 守備力 300

 

「インヴェルズ・ローチで2体目のダーク・ガントレットを攻撃!」

 

インヴェルズ・ローチ 攻撃力 1900 VS 幻影騎士団ダーク・ガントレット 守備力 300

 

「インフェルニティ・デス・ドラゴンで3体目のダーク・ガントレットを攻撃!デス・ファイア・ブラスト!」

 

インフェルニティ・デス・ドラゴン 攻撃力 3000 VS 幻影騎士団ダーク・ガントレット 守備力 300

 

「オーガ・ドラグーンでダイレクトアタック!煉獄の混沌劫火(インフェルニティ・カオス・バースト)!」

「うわぁぁぁぁぁぁ!」

 

Ute LP 3000→0 LOSE

 

WINNER Kiryu

 

------------

 

Side 遊矢

 

「それでは、フレンドシップカップの成功を祈って、

 

『乾杯!』」

 

ジャックが勝負に徹する余り融合召喚を披露しちゃったり、クロウがアクセルシンクロを成功させるというサプライズを見せてくれたり、鬼柳が早速エクシーズ召喚を実践したりといった前夜祭のスペシャルデュエルから少し経ち、俺達ランサーズメンバーと行政評議会の面々、そしてジャック達はとある会場を貸しきり、フレンドシップカップの成功を祈願する壮行会を開き、各自で様々な話が繰り広げられていた。

それにしてもジャックのマリシャス・デビルはまあ5D’s時代からのエースカードの1つではあったし、鬼柳のインヴェルズ・ローチも最近渡した奴なんだが、クロウがクリアマインドの境地に達し、アクセルシンクロを披露するまでになっていたとは驚いた。

このシンクロ次元に転生してから、その境地に至る程の事があったのだろうか(prrrr)、む、電話だ、発信先は月影か。

 

「少し失礼します。(ガチャ)もしもし、俺だ。どうした、月影」

『隊長殿、先程アカデミアに潜入していた兄上達が、驚くべき情報を手にしたでござる。先日のライディングデュエルにてデュエルを行ったD―ホイーラーが所有していた『メタルフォーゼ』なるペンデュラムテーマの出所にも関わる話でござる』

「何!?詳しく教えてくれ」

 

月影を通して日影達がもたらしてくれた情報、それは俺を驚愕させるには充分だったが、その前に日影達が何故融合次元にある筈のアカデミアに潜入しているのかを話そう。

 

------------

 

あのペンデュラムモンスターを主軸にしたと思われるカテゴリのデッキを使っていたD―ホイーラーのデュエルを目の当たりにした日、丁度その日の視察先がシティの治安維持局だった事もあり、この件を問題提起しようと考えた。

 

「初めまして、ロジェ長官。不動遊星です」

「お初にお目にかかります、遊星様。私は治安維持局の長官を務めております、ジャン・ミシェル・ロジェと申します」

 

如何にもシティの治安を守る組織のトップであると言わんばかりの理性的な対応、だがその裏で色々と真っ黒な考えを巡らせているんだろうなと勘繰りながらも、案内に従って治安維持局の局舎へと入って行った。

そこで先のD―ホイーラーの件で暫くやり取りを続けていた所、2人きりになるタイミングが出来た、この状況で俺は、

 

「『トラゴエディア』、やれ」

「ん?(ガシィ!)な、がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!な、何を…!」

 

『覇王の力』を顕現させてトラゴエディアのカードに宿りし力(モンスター効果)を引き出し、ロジェの脳神経を侵食、生体ハッキングにより記憶の読み取り及び洗脳を仕掛けた。

思いの外上手く行ったと内心ほくそ笑みながらも、読み取った記憶を見てみると出て来るわ出て来るわ、融合次元、それもあろう事かあのデュエルアカデミアから離反してからのロジェの振る舞いが手に取る様に分かった。

自分こそがトップに立ちたいという幼稚としか言い様のない野望でアカデミアを離反、それを満たせる場所としてシンクロ次元のシティに潜入、元はレオ・コーポレーションが作り上げた物であるリアルソリッドビジョンシステムを始めとした技術と、馬鹿げた野望を本気で抱けるだけはある手腕で今の地位へと上りつめたロジェ。

だがそれだけでは野望を満たすには飽き足らず、表向きは行政評議会の下でその手腕を発揮して信頼を得る一方、いざと言う時の手段『キングス・ギャンビット』によってセキュリティ隊員を自らの『駒』と出来る様、ちょっとしたサイボーグ処置を施し、更にはシティにおいて嘗て『デュエリスト・クラッシャー』の異名で恐れられていた凶悪犯罪者、セルゲイ・ヴォルコフを全身サイボーグに改造、自らの懐刀とした、いざ決起する時の切り札とする為に。

 

何とも、何とも下らない奴だ。

だがその下らない奴がシンクロ次元に潜入してから3年と言うそう長くない時間で築き上げた功績がある事で、そしてそれを俺がトップの洗脳と言う形で掌握した事で、俺達ランサーズは此処シンクロ次元と緊密な同盟関係になったも同然(行政評議会は俺のイエスマンと化しているし)。

その時の俺は、某名前を書かれたら死ぬノートを手にした天才児が、自らを追う天才探偵を殺す事に成功し彼の目の前で勝利宣言した時に見せた様な凶悪な笑みを浮かべていたに違いない。

 

「ジャン・ミシェル・ロジェ、貴様の下らない野望、我々の大志を果たす為の踏み台となって貰おう」

「あ、が、ぐぁぁ、おのれ、貴様ぁぁぁ…!

 

先程は立場を弁えぬ暴言失礼いたしました、これより私ジャン・ミシェル・ロジェ、非才ながら貴方様の大志の為にこの身を捧げる所存にございます」

「ああ、宜しく頼むぞ、ロジェ。我々の大志の為に、存分にその力を振るうが良い。我らランサーズの大志、かの『真の愛国者』の如き大志の為にな!」

 

------------

 

こうしてシンクロ次元のトップを掌握、更に(悪い意味での)反乱の芽を摘み取る事に成功した俺はシティでの情報収集を終結させ、次の懸案、他次元へと流出したペンデュラムモンスターの事への対策に乗り出し、其処で浮かんだ可能性が融合次元、それもアカデミアが送り込んだスパイによる物では無いかという物、それの調査の為にランサーズは新たなる部隊を結成した。

それが、日影、月影、遊香といった『元』V-CRANメンバーで構成された潜入・工作部隊『フォースハウンド』。

忍者の末裔である風魔兄弟と、サイコデュエリストとしての能力を有する遊香、この3人で構成されているフォースハウンドは結成後直ぐに融合次元へと転送、アカデミアにて潜入捜査を行っており、それから報告の為に戻って来た月影から今、話を聞いている所だ。

 

『アカデミアに潜入した兄上からの報告によると、研究所と思われる施設にてペンデュラムモンスターの特徴や、ペンデュラム召喚のルールを書き記したと思われるメモとデータメディア、そしてペンデュラム関連の研究が始まった経緯を記した日記を見つけたとの事でござる。どうやら我らがシンクロ次元に入って幾ばくも経たぬ内に、アカデミアからスパイが我らの次元に潜入、その者がペンデュラムモンスターの詳細な情報を入手した様でござる』

「そうか…

ペンデュラム召喚の概念はともかく、ペンデュラムモンスターカード等の重要情報はレオ・コーポレーションのセキュリティシステムの下にあった筈だ。それを盗み出すとは余程腕の立つ輩、ソイツを送り込む程、アカデミアの俺達に対する警戒度は大幅に増したと考えて良いな」

『左様でござるな、その警戒度を如実に示している証拠も兄上が発見したでござる。

 

 

 

試作と思われる、ペンデュラムモンスターを主軸としたテーマデッキが『6つ』完成している事が発見され、その内の『4つ』が我らの手元にあるでござる』

「何!?もうそんなに完成していたのか!?」

 

俺達がシンクロ次元に潜入してから其処まで長い時間は経っていなかった筈、その時間で俺達の次元からペンデュラムモンスターの情報を奪取して研究、試作テーマデッキを6つも完成させた、だと…!

その余りにも早すぎるフットワーク、余程アカデミアは俺達を警戒しているという事だが…

 

『発見されなかった2つでござるが、1つはどうやらアカデミアのデュエリストに、既に渡ってしまっている様でござる。今から回収が出来るかどうか…』

「仕方ないさ。それより、もう1つの行方は?」

『もう1つのテーマデッキ、その1つこそが、かの『メタルフォーゼ』でござる』

「っ!あのデッキが、か…」

 

あの超融合で吸い込める範囲が広すぎる融合モンスターと、ペンデュラムの特性を十二分に理解しているデッキの回し方、あのデッキを持ったアカデミアのデュエリストがこの次元に…!

 

「そうか。それで、回収した4つは?」

『はっ。1つ目は『イグナイト』、炎属性・戦士族モンスターで構成されたテーマデッキでござる。遊香殿は『何時までもソリティア出来そうね』と申していたでござるな』

 

イグナイト?何か聞いた事ある様な…

 

『2つ目は『マジェスペクター』、風属性・魔法使い族モンスターで構成されたテーマデッキでござる。兄上は『共感できるテーマでござる』と申していたでござるな』

 

マジェスペクター、これも何だか聞き覚えが…

 

『3つ目は『ダイナミスト』、水属性・機械族モンスターで構成されたテーマデッキでござる。堅実なビートダウンデッキ、といった趣でござるな。

そして4つ目は『アモルファージ』、地属性・ドラゴン族モンスターで構成されたテーマデッキでござる。何とも嫌らしいロック効果持ちでござる』

 

この2つは聞いた事無いな…

 

『良ければこれらのデッキを送るでござる』

「なら1つだけこっちに転送してくれ。後は君達が持っていると良い」

『た、隊長殿!?まこと宜しいのでござるか!?』

「ああ。アカデミアにペンデュラムモンスターの情報が知られてしまった以上、向こうも遅かれ早かれ導入して来るに違いない、現に試作デッキの1つがアカデミアのデュエリストに渡ってしまっている。月影達にもペンデュラムモンスターを用いたデュエルに慣れて貰わないとな」

『御心遣い、かたじけない。それでは、アモルファージデッキをそちらに』

「ありがとうな。引き続き任務を続行せよ!」

『ははっ!ではこれにて』

 

月影との連絡は終わり、数瞬後に1つのデッキが転送されて来た。

これが、アカデミアが試作していた、ペンデュラムモンスターを主軸としたテーマデッキの1つ、アモルファージか…

うわ、こりゃあかなり癖のあるデッキだな、レベルが2(2体)・4(4体)・6(1体)・8(1体)とばらけている癖してペンデュラムスケールが3と5しか無い、実質カテゴリ内でペンデュラム召喚出来るのは半分の4体、となればスケール1や7以上のペンデュラムモンスターが欲しくなるが、良くも悪くも強烈なメタ能力を持つペンデュラム効果がそれを妨害する。

パワーは其処まで高くは無く、かと言って除去手段は無い、パンプアップカードもあるにはあるが、といった状態。

だがさっき言っていた強烈なメタ能力は、ハマれば相手に何もさせない状態にまで持ち込む事も出来る、更に共通効果であるエクストラデッキ封じ…

運が悪ければ『何も出来ずに』負ける可能性もある、だが運が良ければ『何もさせずに』勝つ事も出来る、中々面白いテクニカルデッキだな。

よし、これは…

 

「もしもし、私です。『奴』の、調整の程はどうですか?」

『遊星様、『奴』の調子は良い感じです!これなら直ぐにでも遊星様のお役に立てるかと…』

「そうですか、では直ぐにそちらへと向かいます」

 

アイツにプレゼントしよう。

このランサーズへの加入、及びこれから臨む任務に対する餞別だ。



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80話_潜入者は蛇ですか?いいえ忍者です

今回はデュエル無し&短めです。


Side 月影

 

兄上と遊香殿からの報告を受け、シンクロ次元で待っていた隊長殿へそれを伝えた拙者は、其処で受けた隊長殿の指示を受け、兄上達が潜入しているアカデミアへと舞い戻った。

その懐に、隊長殿へと転送したアモルファージデッキ以外の、アカデミアから鹵獲した3つのデッキ、イグナイト、マジェスペクター、ダイナミスト、其々のペンデュラムテーマデッキを携えて。

それにしても、でござる。

我らランサーズがシンクロ次元へと渡ってまだ半月も無いにも関わらず、我らの世界にスパイを侵入させ、ペンデュラムモンスターに関する情報を奪取、そして研究の末に6つものペンデュラムテーマデッキを完成させたアカデミアのフットワーク、そして我らに対する警戒の強度、驚嘆の極みでござる、その1つ、否、2つがアカデミアのデュエリストに渡ってしまった以上、今後の戦いは厄介極まりないでござるな…

拙者達も小康状態と言える今の内に、ペンデュラム召喚に慣れ親しんでおかねば、隊長殿より託されしこの3つのデッキを用いて。

 

「こちら月影。兄上に遊香殿、隊長殿への報告完了したでござる」

『御意。それで月影、隊長殿は何と?』

「兄上が鹵獲した4つのデッキの内、アモルファージを除いた3つを託されたでござる。ペンデュラムモンスターを用いたデュエルになれる為に、と」

『それはまことか、月影!?』

『何となく託して来るとは思っていたけど、嬉しい心遣いね』

「今そのデッキは拙者の懐に。御二方に1つずつ手渡しをしたいので、一先ずアカデミアから脱出をお願い出来るでござろうか?」

『分かったわ。アカデミア内部で転送なんてしたら、嗅ぎ付かれるもの』

『御意。それでは、アカデミア後方の搬入口にて』

 

搬入口?まさかとは思うでござるが…

 

------------

 

「待たせたでござる!」

「やはりでござるか…!」

 

兄上の要求通り、アカデミア後方にあった搬入口へとたどり着いた拙者と遊香殿、其処へやって来たのは…

 

「…段ボール?」

「左様。段ボールを隠れ蓑として荷物に扮し、搬入口を通じて出入りを行う。特別な力を持たぬ我らの、潜入の常套手段でござる」

 

カモフラージュとして用意していた段ボールに入ったまま、搬入口から出て来た兄上でござった。

 

これを見てピンと思った読者もおられるでござろうが、兄上は某潜入のスペシャリストが活躍するゲームシリーズの大ファンなのでござる。

兄上曰く「世界中で暗躍する様々な組織の思惑、その渦中にありながらも、察知される事無く粛々と潜入任務を遂行する。これぞまさしく我ら現代忍者の手本でござる」との事であり、それが高じたかどうかは兄上のみぞ知る、でござるが、隊長殿が声高に宣言した「各次元が其々交流し、其々の文化を取り入れ、分け与える事で互いに切磋琢磨し、更なる発展を遂げる事こそ4つの次元のあるべき姿」というランサーズの理念に「まこと素晴らしいでござる!この理想こそ『真の愛国者』の意志を体現した物!」と感銘を受けた様でござる。

流石に、潜入の為に段ボールを愛用すると言うのは傾倒し過ぎではと苦言を呈したくなるでござるが、ランサーズの理念に感銘を受ける兄上の気持ちは分かるでござる。

そのゲームシリーズにおける重要人物である『真の愛国者』、彼女の意志である「世界を変える事では無く、ありのままの世界を残す為に最善を尽くす事。他社の意思を尊重し、自分の意思を信じる事」、これこそが世界にとって進むべき道では無いか、と4つの次元と其々の次元で独自に発展して来た其々の召喚方法、アカデミアによる各次元への侵略等と言った事柄を知った今、そう感じたからでござる。

 

「兄上、遊香殿。此方に隊長殿より託されし3つのデッキが」

「御意。それでは拙者はマジェスペクターを頂くでござる」

「私はイグナイトを貰おうかしら」

「では拙者はダイナミストを」

 

ひとまず隊長殿より託されたデッキを1つずつ手渡したでござる。

さて、改めて其々のデッキの構築を見ると、その完成度の高さに驚嘆せざるを得ないでござる。

まず遊香殿へと手渡したイグナイトデッキでござるが、属するモンスターの全てが炎属性・戦士族で、大半がレベル3~6が2体ずついる通常ペンデュラムモンスターであり、ペンデュラムスケールは2か7(つまり『イグナイト』ペンデュラムモンスターは全てペンデュラム召喚出来るでござる)、共通効果としてペンデュラムスケールにセットされた2枚のイグナイトカードを破壊しての炎属性・戦士族モンスターのサーチかサルベージを行うペンデュラム効果を持っているでござる。

まず戦士族であり通常モンスターでもある為、魔法カードである『増援』や『召喚師のスキル』に対応したモンスターが存在し、ペンデュラムスケールへのセッティングは魔法カードの発動扱い、よって『王立魔法図書館』の効果を発動する為の魔力カウンターを稼ぐ事が出来るでござる。

これを応用すると、先攻1ターン目でソリティアと化し『封印されしエクゾディア』を揃える事も珍しい事では無くなるでござる。

そればかりでは無く、ペンデュラムモンスターの特性を活かしての大量展開と、同じレベルを揃えやすい点を活かしたエクシーズ召喚で押し切れるのもこのイグナイトデッキの特徴でござるな。

 

次に兄上へと手渡したマジェスペクターデッキでござるが、属するモンスターは全てが風属性・魔法使い族の効果ペンデュラムモンスターであり、レベルは6が1体、4が3体、3が2体、ペンデュラムスケールは2か5(つまりレベル6の1体以外はペンデュラム召喚出来るでござる)、ペンデュラム効果は無いでござるが、共通効果として相手の効果に対し『対象にならない』耐性と破壊耐性を持ち、他に様々なアドバンテージを稼ぐモンスター効果を持っているでござる。

これらの効果で手札に加えるなどした『マジェスペクター』魔法・罠カードの強力な効果(代償として風属性・魔法使い族モンスター1体のリリースを要求しているでござるが、ペンデュラムモンスターという立場上、大したデメリットでは無いでござるな)で相手の盤面を制圧出来る、それがマジェスペクターデッキの特徴でござるな。

 

そして拙者が持つダイナミストデッキでござるが、属するモンスターは全てが水属性・機械族の効果ペンデュラムモンスターであり、レベルは4と5が4体ずつ、ペンデュラムスケールは3か6(つまり全ての『ダイナミスト』モンスターをペンデュラム召喚出来るでござる)、スケールが3のペンデュラムモンスターには『ダイナミスト』カードを相手の効果や戦闘による破壊の身代わりとなり、スケールが6のペンデュラムモンスターには『ダイナミスト』カードを対象に取った効果を無効破壊する(その後、自分自身は破壊されるでござる)ペンデュラム効果を持っているでござる。

モンスター効果及びサポートカードも多種多様で、主に展開を補助したり、戦闘に関わったりといった物が占めてござる。

そして機械族と言えば攻撃力を倍増させる『リミッター解除』、戦闘に関わる効果の多いダイナミストとは好相性で、エンドフェイズに破壊されるデメリットも、ペンデュラムモンスター故に気にする程の物では無いでござる(それにスケールが3のペンデュラムモンスターによるペンデュラム効果である程度防げるでござるからな)し、水属性故に手札交換手段として強力な『強欲なウツボ』も使えるでござる。

これらの特性を活かした粘り強いビートダウンで相手を追い詰めて行く、それがダイナミストデッキの特徴でござるな。

 

これ程の完成度を誇るデッキ達を、ペンデュラムモンスターと言う概念をしっかり取り入れたテーマを、ペンデュラム召喚に関する情報を入手して幾ばくも経たぬ内に6つも作り上げるアカデミアの研究者達の凄さ、改めて驚嘆を禁じ得ない、単に我々の次元に対する警戒心だけで出来る物では無いでござる。

それを成せる程アカデミア、いや融合次元に住まう存在のミーム(文化的遺伝子)は、融合次元におけるデュエルモンスターズという文化は育まれていたのでござろう。

それ程までに誇るべきミームを抱きながら、侵略によって各次元を1つに支配せんとする『真の愛国者』の意志を間違った解釈で捉えた一方の如く振舞うアカデミア、その過ちに気付くのは一体何時になるのでござろうな…

そしてその時までに、遊香殿の兄上である遊児殿の様な屍をどれ程築くと、我々ランサーズ及び同盟勢力と血生臭いデュエルを繰り広げると言うのでござろう…



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81話_調律の魔術師

今回もデュエル無しです。


『デュエルパレスへ御集りの皆さん、お待たせしました!本日、このシティにおける最大規模のデュエルの祭典、フレンドシップカップを開催します!前夜祭に引き続き、司会は私、メリッサ・クレールがお送りします!シティは1つ、みんな友達!』

『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』

 

会場全体へと告げられたフレンドシップカップの開催、それに応じるかの様に響く歓声。

此処デュエルパレスには、数十万もの観客が詰め掛け、デュエルの始まりを今か今かと待ちわびていた。

というか、結構大きなデュエルイベントで司会進行をしていない姿を見かけないって位やっているな、あのMC。

 

『それでは、開催の言葉をこの方より頂きましょう!

 

今再びシティの、この世界の危機に舞い降りた伝説の英雄!創世主、不動遊星!』

『おぉぉぉぉぉぉぉ!』

『遊星!遊星!遊星!』

『創世主様ぁぁぁぁ!』

 

そんなメリッサの呼び出しに応じる様に、俺は会場の中央に設けられたステージへと上がる。

…それにしてもだ、こういう場だから仕方ないとは言え、どうも燕尾服は何処か慣れないな。

まあいい、このスピーチと、その後の振る舞いが、このシンクロ次元での活動の集大成だと、我々ランサーズの理想を実現させる為の『始まりの終わり』だと言っても過言じゃ無いんだ、気を引き締めないと。

 

「皆様、今このシティ、いや世界全体に、未曽有の危機が迫っております。デュエリストの誇りも、デュエルの楽しさも何も無い『融合次元』に本拠を構えるテロ組織、デュエルアカデミアが今、4つの次元を1つにせんと各地で侵略を繰り広げています。既にその1つ、エクシーズ次元は3年前からの侵略により数多の命が散り、或いはアカデミアへと捕まり、そして独自の文化は、『結束(エクシーズ)』のミームは見るも無残な物と化してしまいました。その魔の手は今、我々ランサーズがいた次元にも伸ばされ、このシンクロ次元にまで及ぼうとしております。

 

嘗ての私がZ-ONEを打ち破り、基礎を築き上げたこのシティは、その死後数百年が経ち、この様な姿へと変化を遂げました。その姿に思う所がある方もいるでしょう、その社会構造に不満を覚える方もいるでしょう。そのひな形を作り上げた私に反感を持つ方もいるでしょう。

ですが今こそ、このフレンドシップカップの理念、「シティは1つ、みんな友達」の理念の下に、財あるトップスと、バイタリティあるコモンズが手を取り合い、アカデミアの侵略から立ち向かう時!互いが手を取り合わずして、アカデミアの侵略を打ち破るは困難を極めるでしょう!それ程までにアカデミアの力は強大なのです!

 

守りましょう、この次元を!

守りましょう、シンクロ召喚を!

守りましょう、皆さんのミームを!

 

我々ランサーズもデュエリストの誇りを、デュエルの底力を胸に、全力で戦います!

力ある方はその腕前を!

財ある方はその資金を!

我こそはと思う方は、是非とも自らの力を、我々の下にお与え下さいませ!

 

ともあれ、今は目の前のデュエルを通じ、皆が白熱し、皆が笑い合い、シティが1つとなるべき時!

皆様、大変長らくお待たせしました!フレンドシップカップ、開催いたします!」

『おぉぉぉぉぉぉぉ!』

 

スピーチを終えると共に響き渡る歓声、それを背に俺は会場を後にした。

 

------------

 

『盛り上がって来た所で、今回出場する16人のデュエリスト達を紹介します!

まずは1人目、あの不動遊星の一番弟子!前夜祭ではクロウ・ホーガンに成すすべなく敗れましたが、そのデュエルタクティクスは師匠譲り!ランサーズ精鋭部隊『ARC-V』メンバー、エレン・アヴェニール!

次に2人目、ランサーズ第1部隊所属!前夜祭では惜しくも敗れましたが、粘りのデュエルでジャック・アトラスに食らいつきました!その諦めない精神が、本戦でも発揮される事を期待しています!ユーゴ!

続いて3人目、ランサーズ第3部隊副隊長!前夜祭では鬼柳京介のハンドレスコンボに圧倒されながらも、真っ向から立ち向かいました!その反骨精神が、再び発揮される!ユート!』

「悪いな柚子、ちょっと遅くなった」

「大丈夫よ遊矢、お疲れ様。今のスピーチ、凄く格好良かったわ」

『ふふふ、もう既に夫婦って感じだね。遊矢が柚子に告白して付き合い出したの、つい最近の事だと言うのにね』

『ああ。とは言え2人共長年の付き合いだ、遊矢の過去も柚子が受け入れた以上、この間柄に至る方程式は揃っていたのだろう』

『おや、デュエル脳の塊なアストラルにしては中々上手い事言うじゃないか』

 

スピーチを終え、デュエルパレスの最上段にあるテラスルームに戻った俺は、柚子の出迎えを受け(その際にユベルとアストラルから色々言われたが、状況が状況なのでスルーした)て、会場を見下ろす位置にあるチェアに腰を下ろした。

さて、出場者の顔ぶれはどんな感じか…

 

『4人目、ランサーズ特殊部隊『V-CRAN』所属!可愛い顔に似合わずそのデュエルはパワー溢れる凄まじい物!セレナ!』

「セレナ、結局出る事になったのね…

あの娘、自分の立場が分かっているのかしら…」

「本当、それだよな。V-CRAN自体がセレナのガードマン的な位置づけでもあったと言うのに、それが余り意味を成さない状況の今にか…」

 

セレナの出場には、今言った様な事情もあってランサーズ全体から難色を示す声が上がっていたのだが、本人の熱意(と、零児の推薦)で出る事になったんだ。

まあいざとなれば控えているメンバーをガードに回す準備は出来ているが…

 

『5人目、ランサーズ第2部隊所属!そのデュエルは緻密にして豪快!今こそデッキに眠る、強大なるロボが目覚める!志島北斗!

6人目、ランサーズ第4部隊隊長!妖艶な姿からは想像も付きませんが、デュエルは殺伐としています!元いた世界ではプロとして活躍していた強豪、その実力で勝ち上れるか!藤原雪乃!』

 

これでランサーズが送り込んだ6人の紹介は以上か。

 

『7人目、あの伝説のエンジョイデュエリストが、新たなるエースを引っ提げて帰って来ました!果たしてその力や如何に!徳松長次郎!』

 

お、来た来た。

第2部隊と第4部隊が収容所にぶち込まれた際に出会った彼、嘗てはシティでも名の知られたデュエリストで、コモンズ出身ながらトップスにも熱狂的なファンがいたとか何とか(実際、ホワイト議長がそうらしい)。

つい最近まで収容所のボスとして君臨していたとの事だが、今回、沢渡達の推薦を受けて出場を要請した所快諾してくれ、今こうして選手紹介でその名が読み上げられている。

ところで、沢渡達の話から聞いた、彼の信条である『エンジョイデュエル』、その俺達の信条であるエンタメデュエルにも通ずるものを掲げていた彼に共感した俺は、彼のデッキに合いそうなカードを何枚か提供すると共に、ランサーズに関するとある依頼をしたのだが、彼は「デュエルを虐殺の、大量破壊の道具にするとは許せねぇ!お前さんに影響を受けた奴に、エンジョイデュエルを思い出させてくれたばかりか、俺を再び陽の当たる道に戻してくれた恩だ、俺に出来る事なら何でも協力する!」と、これも快諾してくれた。

実に頼もしい限りだ、沢渡が熱心に推していたのも頷けるな。

まあ何が言いたいのかと言うと、彼は事実上、ランサーズが選出した6人と同じ立場という事だ。

 

「それにしても、『調律の魔術師』か。シンクロ次元にも魔術師モンスターカードがあったとはな」

「遊矢?どうしたの、そのカード?」

「ああ。これ、此処に戻る時に案内をしてくれたドアボーイから預かったんだ。なんでも、嘗てジャックから『お前に一番相応しいカードだ』と、貰ったらしいんだ」

「へぇ。でもチューナーみたいだけど、攻守0はともかく、強制発動されるデメリット効果…

『お前に一番相応しいカードだ』という言葉、ジャックは一体どんな意図で…」

 

其処から先の出場者は、事前情報が少ない事から実力は未知数と判断、メンバー達の報告を待とうと一旦会場から目を離し、先程、サムと名乗ったドアボーイから預かったカードを眺めていた。

サム曰く、ふとしたきっかけで出会ったジャックから渡された物らしいのだが、その真意を未だに考え続けているとの事。

『全てのカードには生まれた意味がある。この世に不必要な、役立たずなカードなど存在しない』という『不動遊星』のモットーが人々に根付いているシティ、彼もまたジャックが自分自身に何かしらの(良い)意味を見出してこのカードを渡したのだろうが、未だにそれが何なのかが分からないらしい。

そんな折、俺付きのドアボーイに抜擢された事を良い機会だと捉えたそうで、俺にこのカードを使って、その意味を見出して欲しいと、託されたんだ。

 

さて、その能力を見ると、まずレベルは1、これ自体は『ワン・フォー・ワン』や『ワンチャン!?』等のサポートカードの存在、レベル調整のしやすさ、チューナーと言う立場等からシンクロ召喚する上ではむしろメリットだ。

属性も闇なのでボチヤミサンタイの呪文で知られる『ダーク・アームド・ドラゴン』や『闇の誘惑』、『ダーク・グレファー』のコストに出来る。

魔法使い族だから『見習い魔術師』によるリクルートも可能、ではあるんだが、上に挙げた特徴はぶっちゃけ他のモンスターで良くね?と突っ込まれるのが関の山だ。

その他、攻守0という毒にも薬にもなるステータスも気になるが、何より問題なのが召喚・特殊召喚成功時に強制発動される効果だ。

400のLPを、相手には回復、自分にはダメージ、と、デメリットしか書かれていない。

後デメリットとは言い難いが、ペンデュラムモンスターでは無いので『魔術師』カテゴリには厳密に言うと入らない(苦笑)

確かにこれは、ジャックが何の意図で渡したのか、普通のデュエリストなら分かりかねるだろう。

 

だが、俺はこれを初めて見た時、「中々面白いカードだ」と感じたんだ。

 

確かにこのカード単体ならデメリットでしか無いだろう、だがそれはあくまで『単体』なら。

着目すべきは強制効果による相手へのライフゲインと、自分へのセルフバーン。

そう、あの悪名高き呪文『クラウンブレード』を例に挙げるまでも無く、自分へのバーンダメージをトリガーに効果を発動するカードは意外と存在する。

俺が遊馬だった頃に使っていた『ダメージ・メイジ』や、璃緒が使っていた『ガード・ペンギン』、零児が使っている『DDD反骨王レオニダス』や、今言った呪文の片割れである『H・Cサウザンド・ブレード』がそうだな。

そういったカードにとってコレは、召喚か特殊召喚を行うだけで発動条件を満たし、尚且つ最終的な効果処理は『自分がダメージを受けた』、よってチェーン2以降で発動さえしなければ『時の任意効果』であってもOKと、かなり使い勝手の良い『相方』となり得る、増してやコイツ自身がチューナー、という事は場に出すだけでシンクロ素材を揃えられるという訳。

 

そう考えて見ると、ジャックがサムに見出した意味が分かった気がするな、後はコイツの特徴を活かしたデッキで、彼にその意味を、ジャックの真意を見せよう!

と、意気込んだその時だった。

 

『そして16人目、突如としてシティに舞い降りた女D―ホイーラー!果たしてその実力や如何に!マージョリー・アトラス!』

「あ、アイツは!」

「ど、どうしたの遊矢?」

 

ふと会場に、最後の出場者紹介が行われていた会場に目を向けると、其処にはあの赤いD―ホイールと、あの『メタルフォーゼ』デッキを使っていた女D―ホイーラーと思しき存在のソリッドビジョンが映し出されていた。

まさか、フレンドシップカップに出場していたとはな…!



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82話_彼と彼女の『意味』

「よし、完成だ」

 

フレンドシップカップの本戦が、目下の会場にて繰り広げられている中、俺は先程サムから預かった『調律の魔術師』を活かす為のデッキを構築していた。

ランサーズ関係者以外のフレンドシップカップ出場者を見なくていいのかとか、あの『メタルフォーゼ』使いの動向を調べなくていいのかとか色々と突っ込まれそうだが、前者は高みの見物で収集できる情報などたかだか知れている、対峙したメンバーの感想とか行政評議会を通じて入手した情報とかがあれば充分だし、後者はセキュリティに一任してある、緊急事態でも無ければ俺が出るまでもないし無闇に出向いたら逆に騒ぎになること間違い無いからな。

それよりも今は目の前の問題に取り組む、エンタメデュエリストとして悩める少年に笑顔を、『意味』をもたらす。

 

「柚子。唐突だけど、デュエルしよう」

「ほ、本当に唐突ね。でも良いわよ、折角の遊矢からの誘いだもの。それに今しがた出来たデッキがどんな物か気になるし」

 

そんな想いを胸に、柚子にデュエルを申し込むと快諾してくれた。

役者は揃った、後は観客だ。

 

「サム。少し入って貰って良いか?」

「は、はい。どうしました、遊星様?」

「君に見せたい物がある。悩める君の為に、問題の答え合わせだ」

「は、はぁ…」

 

------------

 

「「アクションフィールド、オン!『クロス・オーバー』!」」

「ま、周りにカードが…!

これがアクションデュエル…!」

 

サムを室内に招き入れ、柚子と対峙する形で位置に付いた俺と柚子は、予めデュエルディスクにセットされていたフィールド魔法を発動した。

 

このシンクロ次元へと渡る直前、俺達ランサーズメンバーは零児から次元跳躍用の魔法『ディメンション・ムーバー』の他にもう1枚、他次元での戦いを優位にするためのカードを配布された。

それがこのフィールド魔法『クロス・オーバー』、周囲の空間にリアルソリッドビジョンを展開、一瞬の内にアクションフィールドへと変えるという無茶苦茶な力を持ったカードで、今しがた会場にて行われているデュエルで発動されているフィールド魔法『クロス・オーバー・アクセル』も、このカードの力を流用した事でライディングデュエルとアクションデュエルを両立出来ている。

現状は俺達の土壇場であるアクションデュエルを仕掛ける事によって他次元の敵対者に優位に立ち回る、という理由で俺達に配布されたカードだが、見方を変えれば、大掛かりな仕掛けを考慮しなければ、高価なリアルソリッドビジョンシステムを使わずともアクションデュエルが出来る。

その無茶苦茶な力を内包した代償として、今でこそ俺達ランサーズに配布する分しか作れなかった程の代物だが、いずれ量産が進めば手軽にアクションデュエルが出来る、あの躍動感と逆転要素に満ちたド派手な展開が身近な物になるんだ。

そう、俺達の次元のミーム、それを体現したもう1つの原石が今、光輝く宝石になりつつあるんだ。

その宝石は俺達ランサーズが、アカデミアと言う鉄槌から守って見せる!

 

「戦いの殿堂に集いしデュエリストが!」

「モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!」

「フィールド内を駆け巡る!」

「見よ、これぞデュエルの最強進化系!」

「「アクショーン、デュエル!」」

 

先攻 Yuzu LP 4000 VS 後攻 Yuya LP 4000

 

「行くわよ遊矢、私のターン!

まずは魔法『独奏の第1楽章』発動!」

 

独奏の第1楽章

通常魔法

『独奏の第1楽章』は1ターンに1枚しか発動出来ず、このカードを発動するターン、自分は『幻奏』モンスターしか特殊召喚出来ない。

1:自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動出来る。手札・デッキからレベル4以下の『幻奏』モンスター1体を特殊召喚する。

 

最早お決まりになって来た、初手で独奏の第1楽章、此処で出してくるのは恐らく…

 

「独奏の第1楽章の効果で、デッキから『幻奏の音女セレナ』を守備表示で特殊召喚!」

 

幻奏の音女セレナ

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 4

守備力 1900

 

セレナ、と言う事はプロディジー・モーツァルトを握っているな?

 

「天使族モンスターをアドバンス召喚する時、セレナは2体分のリリースとして扱えるわ!この効果でセレナをリリースしてアドバンス召喚!天上に響く妙なる調べよ、眠れる天才を呼び覚ませ!出でよ、レベル8!『幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト』!」

 

幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 8

攻撃力 2600

 

「す、凄い、先攻1ターン目からレベル8のモンスターが…!」

 

何だかもうパターン化しちゃっている、柚子の開幕プロディジー・モーツァルト、その光景を初めて見たサムが感嘆の声を上げるけど、柚子にとってはむしろこれでスタートだぞ。

 

「まだまだ始まったばかりよ!プロディジー・モーツァルトの効果発動!

手札から『幻奏の歌姫ソプラノ』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

幻奏の歌姫ソプラノ

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 4

攻撃力 1400

 

ソプラノまで初手に入っていたのか、これで融合召喚の下準備は万全だな。

 

「特殊召喚したソプラノの効果発動!

さっきアドバンス召喚のリリースに使ったセレナを手札に戻すわ。

更にソプラノの2つ目の効果発動!

私はフィールドにいるソプラノ自身と、プロディジー・モーツァルトを融合!

天使のさえずりよ!至高の天才よ!タクトの導きにより力重ねよ!融合召喚、今こそ舞台に勝利の歌を!『幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ』!」

 

幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ

融合・効果モンスター

光属性

天使族

レベル 6

攻撃力 1000

 

「こ、これが融合召喚…

で、でもさっきのプロディジー・モーツァルトよりレベルが下がっている…?

それに攻撃力たったの1000のモンスターを攻撃表示で…

何か攻撃表示の方が都合の良い効果があるって事だよね…?」

 

柚子が融合召喚したブルーム・ディーヴァの姿に何やら考えを巡らせたように独り言を喋っているサム、ここら辺は分かっている様だな。

 

「カードを1枚セットしてターンエンドよ」

 

Yuzu

LP 4000

手札 2(うち1枚はセレナ)

モンスター 幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ(攻撃表示)

魔法・罠カード セット

 

さあ、行くぜ!

 

「私のターン、ドロー!

まずは『召喚僧サモンプリースト』召喚!

コイツは召喚時、自らの効果で守備表示となる」

 

召喚僧サモンプリースト(制限カード)

効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 4

守備力 1600

 

ブルーム・ディーヴァを立たせてターンエンドした柚子の布陣を前に、俺が初手で召喚したのは、マリアも使っている僧侶のじーさん。

ほんとコイツ強すぎるよな、自分と同じレベルのモンスターをリクルート出来るとか。

コストとして指定されている魔法カードも、アクションマジックを拾って置けば実質ノーコストだし。

 

「次に手札の『Emハットトリッカー』を攻撃表示で特殊召喚!

コイツはフィールド上にモンスターが2体以上いれば特殊召喚出来る」

「え、Em(エンタメイジ)?そ、それってデニスの…?」

「ああ。このデッキにはデニスの魂と言えるEmモンスターを入れている」

 

Emハットトリッカー

効果モンスター

地属性

魔法使い族

レベル 4

攻撃力 1100

 

自らの効果で、サモンプリーストに並び立つ様に登場したのは、マジシャンが着ていそうなマントや帽子、手袋や眼鏡が宙に浮いた様に見えるエンタメイジ、ハットトリッカー。

そう、このデッキにはサムから託された『調律の魔術師』の効果を活かす為に、デニスが使っていたEmモンスターもふんだんに導入されている。

ランサーズのメンバー候補として期待していたが、『融合次元の俺』によって無念の死を遂げてしまったデニス、アカデミアを裏切った事で抹殺されてしまった彼の無念を晴らす為、俺は彼の魂と言えるEmモンスターをデッキに入れ、実戦に使っている。

デニス、俺に力を貸してくれ…!

 

※遊矢達は未だにユーリがデニスを殺害したと思い込んでいます。遊香がデニスを殺した事は遊香本人しか知りません。

 

「続いて手札の『Emトリック・クラウン』を墓地へ送って魔法『ワン・フォー・ワン』発動!」

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

まだまだ続けるぞと言わんばかりに発動したワン・フォー・ワン、これで出すのは…!

 

「サム、良く見ているがいい。これが、君が探し求めていた『意味』、ジャック・アトラスが君から見出した『意味』だ!」

「は、はい!」

「ワン・フォー・ワンの効果で、デッキから『調律の魔術師』を守備表示で特殊召喚!」

 

調律の魔術師

効果モンスター/チューナー

闇属性

魔法使い族

レベル 1

守備力 0

 

無論、先程サムから託された、音叉を思わせる杖を持ち、白い服装に身を包んだ魔術師の女の子。

今こそその効果の使い方を、サムの『意味』を披露する時…!

 

「特殊召喚した調律の魔術師の効果発動!

それにチェーンして、墓地へ送られたトリック・クラウンの効果発動!

更にチェーンしてハットトリッカーの効果発動!」

「一気にチェーン3まで…!?」

「まずはハットトリッカーの効果で、コイツ自身にEmカウンターを1つ置く!」

 

Emハットトリッカー Emカウンター 0→1

 

「次にトリック・クラウンの効果で、コイツ自身を守備表示で蘇生!この効果で蘇生したモンスターの攻守は0になる。本来ならこの後、私は1000ポイントのバーンダメージを受けなければならないが、たった今行われたハットトリッカーの効果処理によって私が受けるダメージは0だ!」

 

Emトリック・クラウン

効果モンスター

光属性

魔法使い族

レベル 4

守備力 1200→0

 

と(チェーン処理の関係で)その前に、新たに俺のフィールドに登場したのは『クラウンブレード』という悪名高きコンボの片割れを担った、?マークの杖を持ったピエロっぽいエンタメイジ、トリック・クラウン。

本来ならこの1000ポイントのセルフバーンを悪用してサウザンド・ブレードを出すのがクラウンブレードの流れだが、今回その役目を担うのは、

 

「そして調律の魔術師の効果で400ポイント、柚子のLPを回復し、私にダメージを与える!っ!」

 

Yuzu LP 4000→4400

Yuya LP 4000→3600

 

「これで一連のチェーン処理は終了したが、最終的に私がバーンダメージを受けた事で、手札の『ダメージ・メイジ』の効果発動!

このカードを守備表示で特殊召喚し、私が受けたダメージ分、LPを回復する!」

 

ダメージ・メイジ

効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 3

守備力 1200

 

Yuya LP 3600→4000

 

調律の魔術師だ。

その効果によって自らの効果が誘発され、フィールドに登場したのは、黒衣に身を包んだ魔法使い、ダメージ・メイジ。

 

「ジャック・アトラスが君に授けた調律の魔術師…

単体で見れば全く以て役に立たないモンスターだ。デメリットしか書かれていない効果、攻守ともに0の貧弱極まりないステータス…

それを考えれば、このカードは自分自身がスポットライトを浴びる存在では無い。

だが今呼び出されたダメージ・メイジの様に、このカードの存在があってこそ活躍できる、このカードを求めているカードもある。

そしてこのカードはチューナー、という事は、その求める存在と共鳴する事で更なる可能性が広がる!

私は、レベル3のダメージ・メイジに、レベル1の調律の魔術師をチューニング!

いあ!いあ!はすたあ!はすたあ、くふあやく、ぶるぐとむ、ぶぐとらぐるん、ぶるぐとむ、あい!あい!はすたあ!シンクロ召喚、レベル4!『古神ハストール』!」

 

古神ハストール

シンクロ・効果モンスター

風属性

爬虫類族

レベル 4

攻撃力 2300

 

「な、何、今の名状しがたい物が出て来そうな口上は…?」

 

元ネタ的に仕方ないね(汗

まあそれはともあれ、シンクロ召喚の演出と、俺の呪文っぽい口上と共に登場したのは、クトゥルフ神話に登場する古神の一角で『名状しがたい物』『黄衣の王』等の異名を持つ風の神『ハスター』をモチーフとしたシンクロモンスター、ハストール。

 

「表舞台に立てずとも、誰かのサポートとしてその手腕を発揮する『縁の下の力持ち』…

誰かにとっての『支え』、それこそがジャック・アトラスが、君から見出した『意味』だ」

「誰かにとっての『支え』、それが僕の『意味』…」

 

俺の言葉を、ジャックが見つけて俺が見せた『意味』を、噛みしめるかの様に呟くサム。

こっちは大丈夫そうだな、後は柚子とのデュエルに集中するのみだ!

 

「バトルフェイズに入る!ハストールでブルーム・ディーヴァを攻撃!」

「しょ、正気なの、遊矢?ブルーム・ディーヴァの効果は分かっている筈よね?」

「ああ。ブルーム・ディーヴァは戦闘及び効果では破壊されず、戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になる永続効果と、特殊召喚したモンスターと戦闘を行ったダメージ計算後、そのモンスターとブルーム・ディーヴァ自身の元々の攻撃力の差分のダメージを相手に与え、相手モンスターを破壊する効果だ」

「分かっていながら何で…?

まあ良いわ、そのブルーム・ディーヴァの効果発動!遊矢、ハストールとブルーム・ディーヴァの元々の攻撃力の差、1300ダメージを貴方に与えて、ハストールを破壊するわ!リフレクト・シャウト!」

「ぐっ!」

 

Yuya LP 4000→2700

 

事実上の自爆特攻に疑問を覚えた様子の柚子だったが、臆せず効果によって俺にバーンダメージを与え、ハストールが破壊された。

よし、これを待っていた!

 

「破壊されたハストールの効果発動!

このカードを装備カードとしてブルーム・ディーヴァに装備させる!

装備されたブルーム・ディーヴァは攻撃出来ず、効果は無効になる!」

「な!?その為の自爆特攻だったのね…!」

 

効果処理の宣言と共に、ブルーム・ディーヴァに絡みつく術式みたいな帯。

これによってブルーム・ディーヴァは時が止まったかの様に動かなくなった。

 

「次にハットトリッカーでブルーム・ディーヴァを攻撃!」

「ブルーム・ディーヴァ!」

 

Emハットトリッカー 攻撃力 1100 VS 幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ 攻撃力 1000

 

Yuzu LP 4400→4300

 

よし、これで柚子のフィールドにはセットカード1枚のみ、此処は動くか!

 

「メインフェイズ2に入る!

先程拾ったアクションマジック『回避』を捨ててサモンプリーストの効果発動!

デッキから『Emミラー・コンダクター』を守備表示で特殊召喚!」

 

Emミラー・コンダクター

ペンデュラム・効果モンスター

光属性

魔法使い族

レベル 4

守備力 1400

 

サモンプリーストの効果で出て来たのは、鏡に手足が生えてマントを羽織、鏡面に顔が映っているエンタメイジ、ミラー・コンダクター。

 

「私は今出したミラー・コンダクターとサモンプリーストでオーバーレイ!2体のレベル4モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!いつもニコニコ隣に這い寄る無貌の神!『外神ナイアルラ』!」

 

外神ナイアルラ

エクシーズ・効果モンスター

地属性

悪魔族

ランク 4

守備力 2600

ORU 2

 

「な、何だか気味悪いエクシーズモンスターね…」

 

まあそうだな、ハストールと同じくコイツもモチーフがクトゥルフ神話だから(汗

そんな感じで若干引いている柚子を他所に、エクシーズ召喚の演出と共に登場したのは、クトゥルフ神話に登場する外神の一角で『無貌の神』等の異名を持つ、狂気と混沌を司る神『ニャルラトホテプ』をモチーフとしたエクシーズモンスター、ナイアルラ。

 

「ナイアルラの効果発動!

このカードのオーバーレイ・ユニットを全て取り除き、墓地のダメージ・メイジをこのカードのオーバーレイ・ユニットにする!

その後、このカードの属性を闇に、種族を魔法使い族に変更する!」

 

外神ナイアルラ ORU 2→0→1

        属性 地→闇

        種族 悪魔族→魔法使い族

 

尤も、これはあくまでオマケなんだけどな。

 

「続いてハットトリッカーとトリック・クラウンでオーバーレイ!2体のレベル4・魔法使い族モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!天空の奇術師よ、華やかに部隊を駆け巡れ!お楽しみは、これからだ!『Emトラピーズ・マジシャン』!」

 

Emトラピーズ・マジシャン

エクシーズ・効果モンスター

光属性

魔法使い族

ランク 4

攻撃力 2500

ORU 2

 

そのナイアルラに並び立つ様にエクシーズ召喚されたのは、白い服装を身に纏ったエンタメイジ、トラピーズ・マジシャン。

 

「更に魔法『エクシーズ・ギフト』発動!」

 

エクシーズ・ギフト

通常魔法

自分フィールド上にエクシーズモンスターが2体以上存在する場合に発動出来る。自分フィールド上のエクシーズ素材を2つ取り除き、デッキからカードを2枚ドローする。

 

「エクシーズ・ギフトの効果で、ナイアルラとトラピーズ・マジシャンのオーバーレイ・ユニットを1つずつ取り除いて、2枚ドロー!」

 

外神ナイアルラ ORU 1→0

Emトラピーズ・マジシャン ORU 2→1

 

よし、まだまだ手札補充できる!

 

「まだまだ終わらない!魔法『貪欲な壺』発動!」

 

貪欲な壺(制限カード)

通常魔法

1:自分の墓地のモンスター5体を対象として発動出来る。そのモンスター5体をデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから2枚ドローする。

 

「貪欲な壺の効果で、墓地にある調律の魔術師、ダメージ・メイジ、サモンプリースト、ハットトリッカー、ミラー・コンダクターをデッキに戻してシャッフルし、2枚ドロー!」

「一気に3枚まで戻した…」

「相変わらずだけど、凄いドロー運ね…」

 

まあ『GXの世界』で十代として生きていたからなw

お、ベストタイミングで来てくれた!

 

「そして魔法『死者蘇生』発動!」

 

死者蘇生(制限カード)

通常魔法

1:自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

「死者蘇生の効果で、柚子の墓地にあるブルーム・ディーヴァを攻撃表示で蘇生!」

「あ、ブルーム・ディーヴァが!」

 

蘇生制限を満たせちゃっているのが運の尽きってね。

 

「カードを2枚セットしてターンエンド!」

 

Yuya

LP 2700

手札 0

モンスター 外神ナイアルラ(守備表示)

      Emトラピーズ・マジシャン(攻撃表示)

      幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ(攻撃表示)

魔法・罠カード セット×2



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83話_SAN値直葬

下の会場でフレンドシップカップ本戦が行われている中、俺付きのドアボーイであるサムの悩みに答える為に始まった俺と柚子のデュエル、互いの1ターン目が終わった今の状況は…

まず俺の状況だが、ライフポイントは先程のハストールによる(事実上の)自爆特攻で受けたダメージによって2700ポイント、フィールドにはその後に展開したナイアルラとトラピーズ・マジシャン、そして『死者蘇生』の効果で柚子からパクったブルーム・ディーヴァの3体、セットカードも2枚、手札こそ無いが盤石と言っても過言じゃ無いだろう。

一方の柚子は、ライフポイントこそ先程の調律の魔術師によるライフゲインの貯金がまだ残って4300ポイントだが、フィールドにあるのはセットカード1枚のみ、手札は次のドローを含めて3枚(その内1枚はセレナ)だが、さあどう動く?

 

「私のターン、ドロー!」

 

む、何かこの状況をどうにかしそうなカードが来た予感…!

だったらこのタイミングで!

 

「スタンバイフェイズに罠『貪欲な瓶』発動!」

 

貪欲な瓶

通常罠

『貪欲な瓶』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:『貪欲な瓶』以外の自分の墓地のカード5枚を対象として発動出来る。そのカード5枚をデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから1枚ドローする。

 

「3連続でドローソースを引いた…!」

「貪欲な瓶の効果で、墓地にある『ワン・フォー・ワン』、『エクシーズ・ギフト』、『貪欲な壺』、『死者蘇生』をデッキに戻し、『回避』をアクションフィールドの何処かへと飛ばし、その後デッキをシャッフルし、ドロー!」

 

さて、柚子は何を引いたのか…

 

「読んで先に動くとは、流石遊矢ね…

でも此処は臆さずに行くわ!魔法『融合』発動!」

 

融合

通常魔法

1:自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

此処で手札融合か、今引いたのは融合か、或いは素材となるモンスターか?

って、あ、

 

「私は手札の『幻奏の音女アリア』と『幻奏の音女セレナ』を融合!

響き渡る歌声よ!情愛の旋律よ!タクトの導きにより力重ねよ!融合召喚、今こそ舞台へ!『幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト』!」

 

幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト

融合・効果モンスター

光属性

天使族

レベル 6

攻撃力 2400

 

うわマジか、此処でマイスタリン・シューベルトを出して来たか…!

ハストールを墓地に残したのは失敗だったな。

 

「融合召喚したマイスタリン・シューベルトの効果発動!

遊矢の墓地にある『古神ハストール』と貪欲な壺、そして私の墓地にある融合を除外して、マイスタリン・シューベルトの攻撃力を600アップするわ!」

 

幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト 攻撃力 2400→3000

 

これでトラピーズ・マジシャンは勿論、ナイアルラも突破出来る様になったか…

 

「バトルフェイズに入るわ!

マイスタリン・シューベルトでトラピーズ・マジシャンを攻撃!ウェーブ・オブ・ザ・グレイト!」

 

む、此処でトラピーズ・マジシャンを攻撃した?

まあ良い好都合だ、敢えて受けよう!

 

幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト 攻撃力 3000 VS Emトラピーズ・マジシャン 攻撃力 2500

 

Yuya LP 2700→2200

 

「今の戦闘で破壊されたトラピーズ・マジシャンのORUとして一緒に墓地へ送られたトリック・クラウンの効果発動!

それにチェーンして罠『トリック・ボックス』発動!対象はマイスタリン・シューベルトだ!」

 

トリック・ボックス

通常罠

1:自分フィールドの『Em』モンスターが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた場合、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。自分はそのモンスターのコントロールをエンドフェイズまで得る。その後、自分の墓地の『Em』モンスター1体を選んで相手フィールド上に特殊召喚する。このターンのエンドフェイズに、この効果で特殊召喚したモンスターのコントロールは元々の持ち主に戻る。

 

これで次のターン、トラピーズ・マジシャンを2500打点としてダイレクトアタックさせる事が、

 

「させないわ!それにチェーンして罠『幻奏のイリュージョン』発動!対象はマイスタリン・シューベルトよ!」

 

幻奏のイリュージョン

通常罠

1:自分フィールドの『幻奏』モンスター1体を対象として発動出来る。このターン、その自分のモンスターは相手の魔法・罠カードの効果を受けず、1度のバトルフェイズ中に2回攻撃出来る。

 

と思っていた時期が俺にもありました。

まさか最初にセットしていたのがそれだったとはな…

 

「幻奏のイリュージョンの効果によって、マイスタリン・シューベルトはトリック・ボックスの効果を受けないわ!そしてこのチェーン処理終了後、もう1度攻撃出来る!」

「やるじゃないか、柚子。その後トリック・ボックスの効果処理に入るが、マイスタリン・シューベルトが効果を受けない以上、不発になる…

その後、トリック・クラウンの効果でトリック・クラウン自身を守備表示で蘇生し、私は1000ダメージを受ける!っ!」

 

Emトリック・クラウン

効果モンスター

光属性

魔法使い族

レベル 4

守備力 1200→0

 

Yuya LP 2200→1200

 

本当だったらこの場面でダメージ・メイジが欲しかったが、さっきの貪欲な瓶で引いたのはそれじゃないんだよな…

まあかなり強いカードだったのは間違い無いんだけどな。

 

「さっきのエクシーズ・ギフトでトリック・クラウンを取り除かなかったって事は、恐らくトリック・クラウンの効果は名称指定のターン1制限、それを次のターンにまた使われると厄介ね…

ならマイスタリン・シューベルトで今蘇生されたトリック・クラウンを攻撃!ウェーブ・オブ・ザ・グレイト・デュオ!」

 

幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト 攻撃力 3000 VS Emトリック・クラウン 守備力 0

 

良い推理力だ柚子、正にその通り、だが、

 

「私はこれでターンエンド!」

 

Yuzu

LP 4300

手札 0

モンスター 幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

「私のターン!ドロー!」

 

ナイアルラを残したのは致命的なプレミだ!

 

「私はナイアルラのオーバーレイ・ネットワークを再構築!エクシーズ召喚!君臨せよ、宇宙の真の創造主よ!外神を統べる者、這い寄る混沌!『外神アザトート』!」

 

外神アザトート

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

悪魔族

ランク 5

攻撃力 2400

ORU 1

 

「ま、まさかホープ達みたいな条件でエクシーズ召喚出来るエクシーズモンスターがいたなんて…!

しかもさっきより気色悪くなっているし…」

 

モチーフがクトゥルフ神話だからな(苦笑

そんな柚子を他所に登場した、クトゥルフ神話に登場する邪神の支配者『アザトース』をモチーフとしたエクシーズモンスター、アザトート、その凶悪さは見た目だけじゃないぜ。

 

「柚子。アザトートをエクシーズ召喚したターン、お前はモンスター効果を発動出来ない!」

「なっ!?」

 

尤も、マイスタリン・シューベルトは既に効果を使った後だし、柚子の手札が0枚である以上、スコアが飛んでくる心配は無いから、全くの無意味な効果なんだけど。

それよりも凄いのがもう1つの効果。

融合、シンクロ、エクシーズモンスターをオーバーレイ・ユニットとして持っていれば、オーバーレイ・ユニット1つで『黒・爆・裂・破・魔・導(ブラック・バーニング・マジック)』を発動出来るのだが、無論今のORUではそれを満たせない。

今は効果云々では無く、2400打点である事と『エクシーズモンスターである』事の方が重要だ。

 

「次に魔法『禁断のトラペゾヘドロン』発動!」

 

禁断のトラペゾヘドロン

通常魔法

『禁断のトラペゾヘドロン』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:自分フィールドの融合、シンクロ、エクシーズモンスターが、その内2種類のみの場合、その組み合わせによって以下の効果を適用する。

●融合、シンクロモンスター:エクストラデッキから『外神』エクシーズモンスター1体を特殊召喚し、このカードを下に重ねてエクシーズ素材とする。

●シンクロ、エクシーズモンスター:エクストラデッキから『旧神』融合モンスター1体を特殊召喚する。

●エクシーズ、融合モンスター:エクストラデッキから『古神』シンクロモンスター1体を特殊召喚する。

 

「今の私のフィールドには融合モンスターであるブルーム・ディーヴァと、エクシーズモンスターであるアザトートが存在する!よってエクストラデッキから『古神』シンクロモンスターを特殊召喚する!生ける炎、全てを焼き尽くす灼熱の神!『古神クトグア』!」

 

古神クトグア

シンクロ・効果モンスター

炎属性

炎族

レベル 4

攻撃力 2200

 

「何だか、今までと比べるとまともそうな見た目の『古神』ね…」

 

まあ、ベースとなったクトゥグアの見た目は炎だからな。

これで俺のフィールドには、ブルーム・ディーヴァとアザトート、そして今しがた特殊召喚された、クトゥルフ神話に登場する古神の一角で『生ける炎』等の異名を持つ炎の神『クトゥグア』をモチーフとしたシンクロモンスター、クトグアが並んだ。

 

「バトルフェイズに入る!ブルーム・ディーヴァでマイスタリン・シューベルトを攻撃!

此処でブルーム・ディーヴァの効果発動!ブルーム・ディーヴァとマイスタリン・シューベルトの元々の攻撃力の差、1400ダメージを柚子に与え、マイスタリン・シューベルトを破壊する!リフレクト・シャウト!」

「きゃぁ!」

 

Yuzu LP 4300→2900

 

「クトグアとアザトートでダイレクトアタック!」

「やっぱり強いわね、流石遊矢…」

 

Yuzu LP 2900→700→-1700 LOSE

 

WINNER Yuya

 

------------

 

「僕が今の仕事に就いているのは、僕の『意味』に合った仕事に就いているのは、もしかしたら運命だったのかも知れません。遊星様、ありがとうございました。漸く、ジャックが僕に見出した意味が理解出来ました」

 

柚子とのデュエルが終わり、その中で調律の魔術師を渡したジャックの真意を理解したサムが俺に歩み寄り、そうお礼を言って来た。

はは、こう晴れやかな笑顔で言ってくれると、エンタメデュエリスト冥利に尽きるな。

 

「疑問が晴れた様で何よりだ。なら、このカードは君に返そう。元々君の意味を見せる為に君から預かった物なのだから」

「いえ、その御返しと言うにはちっぽけ過ぎるかも知れませんが、宜しければ遊星様が使って下さい」

「良いのか?君のカードだろう?」

 

そんなこみ上げて来る嬉しさは内面に秘めつつ、彼から預かっていた調律の魔術師を返そうとしたが、何と彼は、これを俺に使って欲しいと言って来た。

 

「はい。遊星様と柚子さんのデュエルで、このカードの可能性を見させて頂きましたが同時に、僕にその可能性を引き出すのは荷が重いと感じました。遊星様の下で可能性を引き出して頂いた方が、そのカードにとっても幸せなのではと思ったので」

「そうか。ありがとう、大事に使わせて貰う」

 

その言葉は本心なのだろう、その顔に浮かぶ名残惜しさがそれを物語っている。

ともあれ、考えたうえで譲ってくれると言うのなら受け取らない方が失礼だろう、そう思って俺は受け取り、仕事に戻るサムを見送り、会場へと目を移した。

調律の魔術師の効果欄に、新たな一文が記入されている事に気付かずに…




ヌトス「私は?」
ノーデン「私は?」

片方は禁止カードじゃないですか(汗


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84話_新生!エンジョイ・エクシーズ長次郎!

『それでは盛り上がって来ました、フレンドシップカップ1回戦!それでは第4試合を始めましょう!まずは1人目!新たなるエースを引っ提げたエンジョイ長次郎、今こそその実力を披露する時!徳松長次郎!

続いて2人目!これまで色んなデュエリストがデュエリストスターへとのし上がって来たこのフレンドシップカップ、彼もまたその道を辿れるのか!トニー・シモンズ!』

 

丁度徳松さんの番か。

その相手は、ちょっと小太りな感じの男か。

さあ、沢渡が絶賛したその実力、見せて貰う!

 

『それでは始めましょう!』

『ライディングデュエル・アクセラレーション!』

 

先攻 Tokumatsu LP 4000 VS 後攻 Tony LP 4000

 

お、先攻を取ったか。

 

『俺の先攻!

まずは魔法『花合わせ』発動!』

 

花合わせ

通常魔法

『花合わせ』は1ターンに1枚しか発動出来ず、このカードを発動するターン、自分は『花札衛』モンスターしか特殊召喚出来ない。

1:デッキから攻撃力100の『花札衛』モンスター4体を攻撃表示で特殊召喚する(同名カードは1枚まで)。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、アドバンス召喚の為にはリリース出来ない。

 

出た、沢渡達が言っていた超インチキリクルート魔法。

攻撃力100のモンスターのみを必ず4体(全て別のモンスター)攻撃表示でしか出せない上、花札衛モンスター以外の特殊召喚をこのターン禁止する誓約、効果無効且つアドバンス召喚のリリースに使えない制限等、色々と書かれたテキストによって後々がんじがらめにはなるが、それでもコスト無しで条件も緩い通常魔法でこの展開力は無茶苦茶だ。

制限カードであるワン・フォー・ワンは手札コスト1枚(しかもモンスターを指定)でレベル1を1体、予想GUYは自分フィールドにモンスターが存在しないという条件付きでレベル4以下通常モンスターを1体、機械複製術は自分フィールドにいる攻撃力500以下の機械族を2体まで、地獄の暴走召喚は相手にも展開を許して尚3体まで(サイバー・ドラゴン・コア等の「○○としても扱う」モンスターを使って)と考えると、これがどれだけぶっ壊れているかが分かる筈だ。

それに今言った誓約はあくまでこのカードを発動するターン、つまり次のターンになってしまえばこれらを使った特殊召喚に制限は無くなる、つまり…

 

『花合わせの効果で、俺はデッキから4体の花札衛、『松』『芒』『柳』『桐』を攻撃表示で特殊召喚する!』

 

花札衛―松―

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 1

攻撃力 100

 

花札衛―芒―

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 8

攻撃力 100

 

花札衛―柳―

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 11

攻撃力 100

 

花札衛―桐―

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 12

攻撃力 100

 

と、思わずあのカード達を活かしたコンボを思い浮かべているのを他所に彼の場に登場したのは、花札をモチーフとした、というかほぼそのまんまなモンスター達。

 

『次に今特殊召喚した柳をリリースし、手札の『花札衛―柳に小野道風―』を攻撃表示で特殊召喚!』

 

花札衛―柳に小野道風―

効果モンスター/チューナー

闇属性

戦士族

レベル 11

攻撃力 2000

 

その1枚と入れ替わる様に登場したのは、こちらも花札の1枚『柳に小野道風』をモチーフとした、というかほぼそのまんまなモンスター。

それにしてもメインデッキに入るレベル11のチューナーか、今は先程発動した花合わせの効果で出来ないが、もし今しがたリリースした柳を蘇生出来たら、この2枚で赤き竜の現身を出せるな。

俺が使っている『聖刻ツィオルキン』デッキでも、手札使い果たしてやっと出せたと言うのに、この手軽さはなんなんだ。

尚この時沢渡第2、第4部隊の男達が「あれ、何か効果違うんじゃねぇか?」と騒いでいたらしいが、何、アニメで出て来たカードがOCG化するにあたって効果がそれと同化するのは良くある事だ、気にするな。

 

『特殊召喚した柳に小野道風の効果発動!

ドロー!よし、俺がドローしたのは『花札衛―松に赤短―』!よって攻撃表示で特殊召喚!』

 

花札衛―松に赤短―(今作オリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 1

攻撃力 500

 

更にその効果によって登場したのは、これまた花札の1枚『松に赤短』をモチーフとした、というか(ry

 

『俺は松、芒、桐に、柳に小野道風をチューニング!この時、柳に小野道風の効果でコイツらのレベルを全て2として扱う!涙雨、光となりて、降り注げ!シンクロ召喚!出でよ、レベル8!『花札衛―雨四光―』!』

 

その後、シンクロ召喚の演出と共に登場したのは、番傘を持った武人、雨四光。

 

『徳松選手、早速エースカードをシンクロ召喚しました!正に武人であるといった、凛々しい出で立ちです!』

『そして俺は2枚目の松を召喚!

召喚した松の効果発動!

ドロー!俺がドローしたのは2枚目の桐!よってこのまま手札に加わる!

カードを2枚セットしてターンエンド!』

 

Tokumatsu

LP 4000

手札 1(花札衛―桐―)

モンスター 花札衛―松―(攻撃表示)

      花札衛―松に赤短―(攻撃表示)

      花札衛―雨四光―(攻撃表示)

魔法・罠カード セット×2

 

さあ、今の徳松さんのフィールドにはシンクロモンスターである雨四光の他に、レベル1モンスターが2体、セットカードもある、と来れば…

 

『俺のターン!ドロー!』

『その瞬間、雨四光の効果発動!

それにチェーンして罠『ワンダー・エクシーズ』発動!』

 

ワンダー・エクシーズ

通常罠

1:自分フィールドのモンスターを素材としてエクシーズモンスター1体をエクシーズ召喚する。

 

『それって確かランサーズの奴が使っていたカード!って事は…!』

『ワンダー・エクシーズの効果で俺は松と松に赤短でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!秘められし、数字の脅威、今解かれん!『No.78ナンバーズ・アーカイブ』!』

 

No.78ナンバーズ・アーカイブ

エクシーズ・効果モンスター

光属性

魔法使い族

ランク 1

守備力 0

ORU 2

 

『おぉっとぉ!徳松選手がまさかのエクシーズ召喚です!何やら図書館の本棚みたいな姿のエクシーズモンスターですが…』

 

そう、俺が彼に渡したのは、花札衛モンスターを使って容易に出せる12枚のNo.エクシーズモンスターと、3枚のワンダー・エクシーズ。

その内の2枚が今、お目見えとなった。

 

『その後、雨四光の効果でお前に1500ダメージを与える!』

『ぐぁっ!』

 

Tony LP 4000→2500

 

『くっ!やってくれるな、今度はこっちの』

『まだメインフェイズに入って良いとは言ってないぞ!スタンバイフェイズにナンバーズ・アーカイブのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!これが俺のエクストラデッキだ、さあ1枚選びな!此処で選んだカードが『No.』モンスターなら、ナンバーズ・アーカイブはそのモンスターに変身するから気を付けて選ぶんだぞ』

『その効果は何と言いましょうか、エンジョイ長次郎に相応しいと言うべきギャンブルタイプ!さあトニー選手、恐らくこれが運命の選択となるでしょう!』

 

No.78ナンバーズ・アーカイブ ORU 2→1

 

さあ、どのカードが選ばれるか…

 

『なら俺は、真ん中のカードを選ぶ!』

『真ん中だな…

どうやら、運命は全面的に、俺に味方した様だな!お前が選んだのは『No.24竜血鬼ドラギュラス』!よってナンバーズ・アーカイブのオーバーレイ・ネットワークを再構築!エクシーズ召喚!仄暗い、血吸いの竜が、闇を舞う!竜血鬼ドラギュラス!』

 

竜血鬼ドラギュラス

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

幻竜族

ランク 6

攻撃力 2400

ORU 2

 

『これが俺の新しいデュエル、エンジョイエクシーズデュエルだ!エンジョーイ・エクシーズ!』

『あぁっと、どうやらトニー選手にとって『大凶』、徳松選手にとって『大吉』と言える選択となった様です!それにしても楽しみ(エンジョイ)超越する(エクシーズ)、正に新しいエースでパワーアップした徳松選手に相応しいフレーズと言えるでしょう!それでは皆さんご唱和下さい!』

『エンジョーイ・エクシーズ!』

 

トニーが引き当てたカード、それがナンバーズ・アーカイブの効果によってフィールドへと登場すると共に、会場の盛り上がりは最高潮に達した。

そんな盛り上がりと共に登場したのは、ドラキュラを思わせる風貌のドラゴン、ドラギュラス。

確かに、この状況では最高に良いカードだな。

 

『流石はエンジョイ長次郎、そのデュエルは健在か!だが俺だって負けねぇ!

まずは手札の『ペインぺインター』を墓地へ送って魔法『ワン・フォー・ワン』発動!』

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

『ワン・フォー・ワンの効果で、デッキから『ヘルバウンド』を守備表示で特殊召喚!』

 

ヘルバウンド

通常モンスター

闇属性

アンデット族

レベル 1

守備力 200

 

今しがた出して来た亡霊と、墓地へ送られたカードからして、トニーのデッキはアンデット族か。

 

『次に『ゾンビ・マスター』召喚!』

 

ゾンビ・マスター

効果モンスター

闇属性

アンデット族

レベル 4

攻撃力 1800

 

次に出て来たのは、某アイドル育成ゲームを彷彿とさせる名前の、ゾンビの青年(?)。

これでペインぺインターを蘇生してシンクロ、か?

 

『今召喚したゾンビ・マスターの効果を、手札の『ゾンビキャリア』を墓地へ送って発動!

墓地にあるペインぺインターを、守備表示で蘇生する!』

 

ペインぺインター

効果モンスター/チューナー

闇属性

アンデット族

レベル 2

守備力 200

 

で、案の定と言うべきか、出て来たのはオーバーオールを身に着け、右腕に巨大な絵筆を持った太っちょなゾンビ。

 

『ペインぺインターの効果発動!俺のフィールドにいるヘルバウンドとゾンビ・マスターのレベルを2にする!』

 

ヘルバウンド レベル 1→2

ゾンビ・マスター レベル 4→2

 

『俺はレベル2のヘルバウンドとゾンビ・マスターに、同じくレベル2のペインぺインターをチューニング!シンクロ召喚、レベル6!『アンデット・スカル・デーモン』!』

 

アンデット・スカル・デーモン

シンクロ・効果モンスター

闇属性

アンデット族

レベル 6

攻撃力 2500

 

その効果を発動した直後にシンクロ召喚したのは、正に骨と皮だけと化した悪魔。

コイツが持つ効果破壊耐性でその場を切り抜けよう、という算段だろうか。

 

『トニー選手もシンクロ召喚です!何とも不気味なモンスターですね…』

『バトルフェイズに入る!アンデット・スカル・デーモンでドラギュラスを攻撃!』

『おっと!その攻撃宣言時、ドラギュラスのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!

コイツ自身を裏側守備表示に変える!』

『『月の書』内蔵モンスターか、仕方ない、このまま攻撃だ!』

 

が、ドラギュラス相手にそれは致命的と言って良い悪手だ。

 

アンデット・スカル・デーモン 攻撃力 2500 VS No.24竜血鬼ドラギュラス 守備力 2800

 

Tony LP 2500→2200

 

『ドラギュラスのリバース効果発動!

お前のアンデット・スカル・デーモンを墓地へ送る!』

『無駄だ!アンデット・スカル・デーモンが場にいる限り、俺のアンデット族モンスターは、カードの効果では破壊されない!アンデット・スカル・デーモンはアンデット族、よってコイツはフィールドに』

『何を勘違いしてやがる!ドラギュラスのリバース効果は『墓地へ送る』であって『破壊する』じゃねぇ!効果破壊耐性が有ろうと無かろうと知った事か!やれ、ドラギュラス!』

『な、何!?』

『あぁっとぉ!トニー選手のアンデット・スカル・デーモン、あっさりと徳松選手のドラギュラスに喰われました!これはトニー選手、ピンチ!』

 

その宣言と共に、ドラギュラスによってバリバリと捕食されていくアンデット・スカル・デーモン。

これでトニーのフィールドはがら空き、手札も残り2枚か。

 

『くっ!ならメインフェイズ2に、手札1枚をデッキの上に置いて、墓地のゾンビキャリアの効果発動!

ゾンビキャリア自身を守備表示で蘇生してターンエンド!』

『エンドフェイズに、雨四光の効果で、雨四光自身の効果を無効にする!』

 

ゾンビキャリア

効果モンスター/チューナー

闇属性

アンデット族

レベル 2

守備力 200

 

Tony

LP 2200

手札 1

モンスター ゾンビキャリア(守備表示)

魔法・罠カード なし

 

何とかがら空きのままターンを明け渡す事は回避したが、それでもこのままなら徳松さんの総攻撃で決着が付きそうな展開だ。

 

『俺のターン!ドロー!

ドラギュラスを攻撃表示に変更してバトルフェイズだ!

ドラギュラスでゾンビキャリアを攻撃!

この攻撃宣言時にアクションマジック『ガードクラッシュ』発動!』

 

ガードクラッシュ(今作オリジナルカード)

アクションマジック

1:自分フィールドのモンスターが、相手フィールドのモンスターを対象に攻撃宣言した時、その攻撃モンスターを対象に発動出来る。その攻撃は無効化されず、守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 

そしてその状況下でも手加減はしないと言わんばかりにアクションマジックをゲットし、発動する徳松さん。

そのカードは嘗て、塾長がプロ復帰する為にニコさん達を観客として行ったデュエルで俺に大ダメージを与えるきっかけとなったガードクラッシュ。

 

『ガードクラッシュの効果により、コイツの攻撃は無効化されず、貫通効果を得る!

行け、ドラギュラス!』

『うわぁぁぁぁぁぁ!』

 

No.24竜血鬼ドラギュラス 攻撃力 2400 VS ゾンビキャリア 守備力 200

 

Tony LP 2200→0 LOSE

 

WINNER Tokumatsu

 

『決まったぁ!フレンドシップカップ1回戦第4試合の勝者は、新たなるエースの力を見せ付けた徳松選手!それでは皆さん、もう一度ご唱和下さい!』

『エンジョーイ・エクシーズ!』

 

デュエルの決着が付き湧き上がる会場、更にMCのメリッサに促される様に放たれた掛け声に会場は一体となった。

 

「融合召喚を使いこなすシュドナイさんに、エクシーズ召喚に目覚めた徳松さん…

シンクロ召喚しか知らなかったこの次元の人達が、他次元の召喚方法に触れてその実力が更なる高みへと上がり、そして今こうして、新たなエンタメデュエルの形が生まれた…

シンクロ次元の住人も自ずと理解する筈だ、これこそが4つの次元のあるべき形、俺達ランサーズの掲げる理想こそが正しき物だと。トップスとコモンズが少しずつ蟠りを解いて行き、力を合わせてアカデミアの侵略に対抗する事こそが自分達の進むべき道だと、な」




花札衛―松に赤短―
特殊召喚・効果モンスター
闇属性
戦士族
レベル 1
攻撃力 500/守備力 500

このカードは通常召喚出来ない。
1:自分のレベル1の『花札衛』モンスター1体をリリースして発動出来る。このカードを手札から特殊召喚する。その後、自分はデッキから1枚ドローし、お互いに確認する。それが『花札衛』モンスター以外だった場合、それを墓地へ送る。
2:このカードが攻撃対象になった場合に発動出来る。このカードを表側守備表示にし、自分はデッキから1枚ドローする。


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85話_錬装戦士VS邪悪大地

『フレンドシップカップ1回戦もいよいよ大詰め!最終試合を始めます!まずは1人目、その魅惑的な外見に反し、デュエルは殺伐としています!果たして後攻ワンキルを決めるか!ランサーズ第4部隊長、藤原雪乃!

続いて2人目!突如としてシティに現れたD―ホイーラー!果たしてその実力や如何に!マージョリー・アトラス!』

 

フレンドシップカップ2日目の今日、フィールドでは1回戦最後の試合となる、雪乃とあのメタルフォーゼ使いと思われるD―ホイーラーとのデュエルが始まろうとしていた。

え、それまでの試合の様子は、だって?

まあランサーズ関係者が順当に勝ち上がっていたな、他の参加者にも有望そうな存在はいなくは無かったが、他はと言うと…

まあそれは置いて、2人のデュエルを見させて貰うか。

 

『それでは始めましょう!』

『ライディングデュエル・アクセラレーション!』

 

先攻 Mergery LP 4000 VS 後攻 Yukino LP 4000

 

相手が先攻を取ったか。

雪乃のデッキはド派手な後攻1キルを持ち味としているから譲ったのかも知れないが、相手の『メタルフォーゼ』デッキの構成を考えると余り良い選択じゃ無いな…

 

『私のターン!

早速行かせて貰うわ!私はスケール1の『メタルフォーゼ・ゴルドライバー』とスケール8の『メタルフォーゼ・ヴォルフレイム』をペンデュラムスケールにセッティング!』

 

ペンデュラムスケール(青):1(メタルフォーゼ・ゴルドライバー)

ペンデュラムスケール(赤):8(メタルフォーゼ・ヴォルフレイム)

 

『それは『メタルフォーゼ』ペンデュラムモンスター!まさか貴方が持っていたなんてね…!』

『な、なんと!マージョリー選手、まさかのペンデュラムモンスターをセットです!これは一体どういう事でしょうか…』

 

俺達の次元にしか無く、使い手は俺達ランサーズだけだとシンクロ次元で言われていた筈のペンデュラムモンスター、それが得体の知れぬD―ホイーラーが使っているという事実に騒然となる会場。

一方で雪乃は、第4部隊長という立場から事前にその情報を伝えていた事もあってその驚き具合は薄く、即座に警戒態勢に入った。

 

『今セットしたゴルドライバーの効果発動!

同じく今セットしたヴォルフレイムを破壊して、デッキから魔法『錬装融合』をセットするわ!

次にスケール8の『メタルフォーゼ・スティエレン』をペンデュラムスケールにセッティング!』

 

ペンデュラムスケール(赤):8(メタルフォーゼ・スティエレン)

 

『今セットしたスティエレンの効果発動!

ゴルドライバーを破壊して、デッキから永続罠『メタルフォーゼ・コンビネーション』をセットするわ!

続いてスケール1の『メタルフォーゼ・シルバード』をペンデュラムスケールにセッティング!』

 

ペンデュラムスケール(青):1(メタルフォーゼ・シルバード)

 

自分フィールド上のカードを破壊して魔法・罠カードをデッキから引っ張って来る一連の効果処理、素の状態でも1:1交換になっている上、破壊したのはペンデュラムモンスター、よって無駄なくアドを稼げる、アカデミアの連中も厄介な物を開発してくれたものだ…

 

『さあ行くわよ!自由の下に集いし錬装の戦士達よ!今こそ音すらも振り切り、極限の速さで道を駆け抜けなさい!目指すは勝利という名のチェッカー!ペンデュラム召喚!ヴォルフレイム!ゴルドライバー!』

『よっしゃぁ!』

 

メタルフォーゼ・ヴォルフレイム

ペンデュラム・通常モンスター

炎属性

サイキック族

レベル 7

攻撃力 2400

 

メタルフォーゼ・ゴルドライバー

ペンデュラム・通常モンスター

炎属性

サイキック族

レベル 4

攻撃力 1900

 

その後、ペンデュラム召喚によって登場したのは、ゴルドライバーと、何やら戦車みたいな姿のビークルに乗り込んだ戦士、ヴォルフレイム。

 

『更に、セットしていた魔法『錬装融合』発動!』

 

錬装融合

通常魔法

『錬装融合』の2の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。

1:自分の手札・フィールドから、『メタルフォーゼ』融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

2:このカードが墓地に存在する場合に発動出来る。墓地のこのカードをデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから1枚ドローする。

 

やっぱり此処で使って来るか…!

 

『私はフィールドのヴォルフレイムと、ゴルドライバーを融合!錬装の戦士達が集いし時、新たなる戦士が誕生する!今こそ音すらも振り切り、障害物を吹き飛ばしなさい!ペンデュラム融合!『メタルフォーゼ・オリハルク』!』

『灯娥の如く燃え尽きろォ!』

 

メタルフォーゼ・オリハルク

融合・効果モンスター

炎属性

サイキック族

レベル 8

攻撃力 2800

 

『マージョリー選手、たった今ペンデュラム召喚を繰り広げたと思いきや、展開したモンスターで融合召喚も行いました!マージョリー選手、一体何者なのでしょうか!』

 

ほんとそれだよ、本当にな。

 

『シルバードの効果発動!

スティエレンを破壊して、デッキから罠『メタルフォーゼ・カウンター』をセットするわ!

そして墓地の錬装融合の効果発動!

このカードをデッキに戻し、ドロー!

カードを1枚セットして、ターンエンドよ』

 

Mergery

LP 4000

手札 1

ペンデュラムスケール(青):1(メタルフォーゼ・シルバード)

モンスター メタルフォーゼ・オリハルク(攻撃表示)

魔法・罠カード セット×3(うち2枚は『メタルフォーゼ・コンビネーション』と『メタルフォーゼ・カウンター』)

 

過程は大違い、結果も片方のペンデュラムスケールが空いている代わりに、新たに罠『メタルフォーゼ・カウンター』がセットされているという違いがあるが、これは何処かデュエルチェイサーとのライディングデュエルで見せたあの布陣に似ている。

さて、雪乃はこの状況をどうするのか…

 

『私のターン、ドロー!

まずは『マンジュ・ゴッド』召喚!』

 

マンジュ・ゴッド

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 4

攻撃力 1400

 

雪乃が最初に召喚したのは、名前の通り身体に1万本もの腕を持った天使、マンジュ・ゴッド。

ステータスはやや控えめではあるが、一時は制限カードに指定される程の効果をコイツは持っている。

それは、

 

『召喚したマンジュ・ゴッドの効果発動!

デッキから儀式魔法『高等儀式術』を手札に加えてそのまま発動!』

 

高等儀式術

儀式魔法

手札の儀式モンスター1体を選び、そのカードとレベルの合計が同じになる様にデッキから通常モンスターを墓地へ送る。その後、選んだ儀式モンスター1体を特殊召喚する。

 

儀式関連のカードであれば何でもサーチ出来るという物。

レベル4と通常召喚可能な下級モンスターでありながらエアーマンも真っ青なサーチ効果、それ故に儀式召喚軸デッキでは必須カードで、特にメアリが使っている『影霊衣(ネクロス)』デッキではサーチエンジンとして一強時代の片翼を担った。

制限行きも納得である。

その効果によってサーチしたのは高等儀式術、て事は…

 

『高等儀式術の効果で、手札の『終焉の王デミス』を選び、デッキからレベル4の『デーモン・ソルジャー』と『ヴェルズ・ヘリオロープ』を墓地へ送って儀式召喚!現れなさい、デミス!』

 

終焉の王デミス

儀式・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 8

攻撃力 2400

 

やっぱりデミスを握っていt

 

『おっと!その儀式召喚の成功時に永続罠『メタルフォーゼ・コンビネーション』発動!

それにチェーンして、手札を1枚捨てて速攻魔法『超融合』発動!』

『っ!来たわね…!』

 

メタルフォーゼ・コンビネーション

永続罠

1:1ターンに1度、融合モンスターが融合召喚された場合、その融合モンスターよりレベルが低い、自分の墓地の『メタルフォーゼ』モンスター1体を対象としてこの効果を発動出来る。そのモンスターを特殊召喚する。

2:このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動出来る。デッキから『メタルフォーゼ』モンスター1体を手札に加える。

 

超融合(制限カード)

速攻魔法

このカードの発動に対して魔法・罠・モンスターの効果は発動出来ない。

1:手札を1枚捨てて発動出来る。自分・相手フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

と、思っていたのもつかの間、相手は更に動いて来た。

このパターンは…!

 

『私はオリハルクと、アンタの場にいる2体の攻撃力3000以下のモンスター、マンジュ・ゴッドとデミスを融合!錬装の戦士が数多の魂をも取り込み、新たなる戦士へと転生する!今こそ音すらも振り切り、一直線に駆け抜けなさい!融合召喚!『メタルフォーゼ・カーディナル』!』

『素手で勝負しろォ!』

 

メタルフォーゼ・カーディナル

融合モンスター

炎属性

サイキック族

レベル 9

攻撃力 3000

 

いや、でかいロボみたいな奴に乗ったお前が(ry

これを切っ掛けにまた動いて来るな…

 

『墓地へ送られたオリハルクの効果発動!

それにチェーンしてメタルフォーゼ・コンビネーションの効果発動!

まずはメタルフォーゼ・コンビネーションの効果で、オリハルクを攻撃表示で蘇生!

次にオリハルクの効果で、メタルフォーゼ・コンビネーションを破壊するわ!』

『墜ちやがれ!』

 

このパターンもあの時と一緒、この後はサーチか。

 

『破壊したメタルフォーゼ・コンビネーションの効果発動!

それにチェーンして罠『メタルフォーゼ・カウンター』発動!』

 

メタルフォーゼ・カウンター

通常罠

1:自分フィールドのカードが戦闘・効果で破壊された場合に発動出来る。デッキから『メタルフォーゼ』モンスター1体を特殊召喚する。

2:墓地のこのカードを除外して発動出来る。自分のエクストラデッキから表側表示の『メタルフォーゼ』ペンデュラムモンスター1体を手札に加える。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動出来ない。

 

って、まだ動くカードがあったか!

 

『まずはメタルフォーゼ・カウンターでデッキから2枚目のヴォルフレイムを守備表示で特殊召喚!

次にメタルフォーゼ・コンビネーションの効果で2枚目のスティエレンを手札に加えるわ』

『あぁっとぉ!マージョリー選手、雪乃選手のターンにも関わらず大きく動いたぁ!雪乃選手、折角のエースモンスターを呼び出したにも関わらず、むしろそれが相手の展開を許す事に!』

 

一連の効果処理が終わり、見直してみると、相手のフィールドにはカーディナルとオリハルク、そして守備表示のヴォルフレイムと3体もの大型メタルフォーゼモンスターが並び、手札にはペンデュラムスケールを揃える為のスティエレンを握っている、盤石の態勢になったと言っても過言じゃ無いだろう、その切っ掛けが雪乃の儀式召喚だとはなんという皮肉だろうか。

と、普通なら思うだろう、実際、デミスの儀式召喚自体は裏目に出た、が、

 

『まだ終わってはいないわ。魔法『ダーク・コーリング』発動!』

『…ゑ?』

 

ダーク・コーリング

通常魔法

自分の手札・墓地から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターをゲームから除外し、『ダーク・フュージョン』の効果でのみ特殊召喚出来るその融合モンスター1体を『ダーク・フュージョン』による融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

 

『私は墓地のデミスとヴェルズ・ヘリオロープを除外して融合!

溶岩の鎧を纏いし邪悪なる英雄よ、今こそ強大なる力で、全てを打ち砕きなさい!融合召喚、さあお仕置きの時間よ!『E―HEROダーク・ガイア』!

その元々の攻撃力は、融合素材となったモンスターの、元々の攻撃力の合計よ!』

 

E―HEROダーク・ガイア

融合・効果モンスター

地属性

悪魔族

レベル 8

攻撃力 4350

 

『な、ななな、なんとぉ!雪乃選手も負けじと融合召喚です!しかもその攻撃力は驚異の4350!無茶苦茶な高さです!』

 

今までのは、真のエースが登場するまでの『前フリ』に過ぎない、デミスの登場含めて。

そう、今の雪乃が使っているデッキは、以前俺が勧めたダーク・ガイアの融合召喚ギミックを取り入れた『デミスガイア』。

今出て来たのは、そのエースモンスターである、溶岩の鎧を纏ったヒーロー、ダーク・ガイア。

 

『あら、トラップを掴まされちゃったわね…

手札を1枚捨ててアクショントラップ『引火』発動』

 

引火(オリジナルカード)

アクショントラップ

1:手札を1枚捨てて発動する。自分は200ダメージを受ける。

 

『引火の効果で、私は200のバーンダメージを受けるわ。ん…!』

 

Yukino LP 4000→3800

 

と、突破の準備をしていた最中に、アクショントラップを引き当ててしまった様だが、残念そうな口ぶりに反して、顔はにこやか、ダメージを受ける時の様子も嬉しそうだ。

それもその筈、

 

『まだまだ終わりじゃ無いわ。魔法『死者蘇生』発動!』

 

死者蘇生(制限カード)

通常魔法

1:自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

『死者蘇生の効果で、たった今墓地へ送られた『The despair URANUS』を攻撃表示で蘇生するわ!』

 

The despair URANUS

効果モンスター

光属性

岩石族

レベル 8

攻撃力 2900

 

それこそが雪乃にとって好都合な展開を生み出すのだから。

その前フリとして登場したのは、天王星を司る『プラネットシリーズ』の1体、URANUS。

そのステータス自体高い物だが、

 

『そして、装備魔法『巨大化』発動!これをダーク・ガイアに装備させるわ!』

『させないよ!アクションマジック『ソニックカッター』発動!』

 

巨大化

装備魔法

自分のライフポイントが相手より少ない場合、装備モンスターの攻撃力は元々の攻撃力を倍にした数値になる。

自分のライフポイントが相手より多い場合、装備モンスターの攻撃力は元々の攻撃力を半分にした数値になる。

 

ソニックカッター(オリジナルカード)

アクションマジック

1:フィールドの魔法・罠カード1枚を選んで破壊する。

 

『巨大化でその融合モンスターを8700までパワーアップして叩き潰そうなんて考えは通じな(ガギィン!)な、何!?』

『無駄よ、URANUSがいる限り表側表示の魔法・罠カードは効果では破壊されないわ!』

『おぉっとマージョリー選手、此処でアクションマジックが不発!これは痛い!そしてこれが阻まれた以上、ダーク・ガイアにその効果は適用され、』

 

E―HEROダーク・ガイア 攻撃力 4350→8700

The despair URANUS 攻撃力 2900→3200

 

『その攻撃力は何と、驚異の8700!遊星様が呼び出した赤き竜の現身にも迫る攻撃力です!』

 

何と言っても、所謂永続系の魔法・罠カードを守る効果持ち(後、そんなカード1枚につき攻撃力が300ポイントアップするオマケ付き)なのが強い。

永続系の魔法・罠カードは、効果処理までにフィールドに存在していなければその効果を適用できない。

セレナが以前使っていた天璣も、カードの発動にサイクロンをチェーンされたら、カードの発動時に使えるサーチ効果が適用できなくなってしまうんだ。

そんなカード達にとってURANUSは正に守護神だ。

え、コズミック・サイクロン?ハリケーン?何の事だか分からないなぁ(棒

 

『バトルフェイズに入るわ!ダーク・ガイアでカーディナルを攻撃!』

『きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

『姐さん!』

 

E―HEROダーク・ガイア 攻撃力 8700 VS メタルフォーゼ・カーディナル 攻撃力 3000

 

Mergery LP 4000→-1700 LOSE

 

WINNER Yukino

 

『決まったぁ!フレンドシップカップ1回戦最終試合の勝者は、ド迫力の一撃必殺を見せてくれた雪乃選手!いやぁ、物凄い一撃でしたね!』

 

よし、雪乃が勝ったか、これで2回戦に進出する顔ぶれは揃ったな。

しかし対戦カード編成の関係上、1人を除いて皆ランサーズ関係者になっちゃったな、これはスカウトしたい人はいなさそうか…?

っと、その心配は後にして、

 

「もしもし。私だ」

『はっ遊星様!どういった命でしょうか?』

「マージョリー・アトラスを保護せよ。抵抗する様なら強硬手段に出ても構わない」

『ははっ!了解しました!』

 

今は、彼女と話を付けなければな。



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86話_シンクロ次元での候補生達

今話はデュエル無しです。


「遊星様。マージョリー・アトラスの身柄確保の件ですが、先程のデュエルでのクラッシュで負傷しているとの事です。命に別状は無いようですが、打ち所が良くなかったのか、意識が無いとの事です」

「そうか、分かった。治療が済み次第、此方へと身柄を移すよう話を付けて置く。それまでは引き続き監視に当たれ」

「はっ!」

 

流石に雪乃の新たなるエース、ダーク・ガイアの一撃必殺攻撃を食らって無事では済まなかったか、話を付けるのは後になりそうだな。

雪乃とのデュエルで敗北したマージョリー・アトラスの保護を命じたセキュリティ担当者からの報告を受け、俺は一先ずこの件を後回しにし、その他の懸案を考える事にした。

さっき(前話)も言ったが、今回のフレンドシップカップ、その1回戦で勝利したのはランサーズ関係者以外ではたった1人、2回戦に進出した8人にランサーズ関係者7人全員が入っていて、それ以外の存在、シンクロ次元のデュエリストが1人しかいない。

これがどう言う事か、詳しく言わずとも分かるだろう。

このシティにおいて、ジャック達デュエリストスターや、シュドナイさん達や徳松さんの様な存在を掘り出すのは、そういった存在をランサーズにスカウトするのは厳しそうだ、と言う事だ。

 

無論、敗北したデュエリストの中にそんな存在がいない訳じゃ無い。

たった今負傷したという報告を受けたマージョリー・アトラスは勿論だが、他にも実際に対戦した、或いは観客の立場として見ていたランサーズメンバーから、有望だと報告を受けたデュエリストもいる。

それが、この2人。

 

葛西(かさい)月行(げっこう)

使用デッキ:『ドラグニティ』

『ドラグニティナイト』シンクロモンスターや『ドラグニティアームズ』モンスターを展開、その効果を用いたハイビートを主戦略としている。その展開力で対戦相手を圧倒、フレンドシップカップで、ランサーズ関係者以外で唯一2回戦進出を決めた。そのプレイングはランサーズメンバーにも見劣りしない。

 

葛西夜行(やこう)

使用デッキ:『スクラップ』

葛西月行の双子の弟。各種『スクラップ』カードが持つ蘇生やサルベージ効果を駆使しての粘り強い展開、其処からシンクロ召喚されるモンスターの除去効果で相手をじわじわと追い詰める事を主戦略としている。フレンドシップカップ1回戦ではその持久力を発揮しきれずに敗北するも、その粘り強さは兄にも引けを取らない。

 

…その、何だ、色々突っ込みたい所はあるだろう。

名前を聞いてピンと来た人もいるだろうが、初代遊戯王こと『遊戯王デュエルモンスターズ』の外伝作品である『遊戯王R』に登場した、ペガサス・J・クロフォードの養子『ペガサスミニオン』の一角である天馬兄弟と顔がそっくりなんだ、2人揃って。

まあ顔が似ているだけでデッキは全くの別物だが、そのデュエルタクティクスは相当な物だそうだ。

ある程度落ち着いたら、スカウトに動いても良いかも知れないな。

 

その他のデュエリスト?まあちょっとな…

と言っても、どの参加者も各種アドバンテージ、特にアニメとかだと軽視されがちな墓地アドバンテージ(一部では除外アドバンテージも)を重要視していたり、単なるパワー一辺倒では無く効果を駆使した緻密さも見受けられるなど、決して弱くは無い。

一般的なデュエリストのレベルで言えば、俺達の次元よりも上だ。

だが、シンクロ主軸デッキと言えばソリティア、という環境で育って来た俺から見れば何とも物足りない展開しか出来ないデュエリストが多い。

徳松さんの対戦相手だったトニーの様に後攻1ターン目でシンクロ召喚出来るならまだ良い方、大半は素早い展開について行けず、どんなデッキなのか分からずじまいのまま敗れた、というパターンだ。

とは言えこれは、デュエルタクティクス云々でバッサリ斬れるケースでは無い。

今更だが、このシティでは99%の富を占める富裕層である1%のトップスと、残り1%の富を巡って死力を尽くす日々を送る貧困層である99%のコモンズ、という格差が大きな問題と化している。

その格差は経済面、引いては保有できるカードプールにも現れていて、例を挙げれば、

・トップスのデッキはレアリティの高い物ばかり、一方コモンズのデッキは(ごく一部を除いて)ノーマルカードしか無い

・コモンズのデュエリストは基本的にエースモンスターを複数体用意できない

といった感じであり、それがこの格差の続いていた原因だと言われている(徳松さん及びジャック達の活躍でやや薄れてきた感はあるが)。

そんな中でも必死に食らいつこうとしていたデュエリストもいる、そういった存在はカードプールの充実によって化けるかも知れない。

時間はかかるかもしれないが、そういった面にも手を加えて行かないとな。

 

「遊星様。マージョリー・アトラスの治療、終了したとの事です」

「分かった、報告ありがとう。では、案内を頼む」

「はっ!」

 

さて、こっちの用件に移るとしよう。

 

------------

 

「ん…?此処は…」

「気が付いたか。流石はアカデミアの関係者、怪我からの立ち直りは早いな」

「っ!(ズキィ!)いたっ…!」

『姐さん、警戒するのは分かるが少し落ち着け。まだ怪我が癒えきってねぇんだから』

 

怪我の治療が終わったマージョリーを俺が滞在している部屋へ運んでもらい、意識が戻るの見計らって声を掛けたら、いきなり警戒するかの様に身構えられた。

この様子だと、彼女がアカデミアの関係者だと見て間違いは無いだろう。

そんな彼女が此処にいるのは、スパイとしての任務か、或いは…

 

「アンタ、不動遊星ね。シティで『創世主』だの『伝説の英雄』だのと祭り上げられていた。それならアカデミアの事を知っていても不思議じゃ無いわね」

「察しが良いな、なら話は早い。お前には何個か問わねばならない事がある。偽りなく答えて貰おう」

「アンタもアカデミアがどういう組織か知っている筈よ、そう言われた所ではいそうですかと応じると思っているの?」

『やめとけ姐さん、コイツ相手にどんな抵抗も無駄だ。俺もさっき抵抗を試みたが、コイツが連れているカードの精霊にあっさり抑え込まれちまった。今でもアイツのアイアンクローの傷が、あ痛たた…!』

 

アカデミア関係者相手に舐められるわけには行かないと高圧的に対応する俺、その俺に反発する様に返した彼女だが、ついていたカードの精霊がそれを諌めた。

それもその筈、彼女の治療がひと段落したタイミングで入って来た俺に対し、お偉いさんを吹っ飛ばせば混乱が生じて隙が生まれるだろうと思ったのだろうか突進して来たソイツ、だがそれを見越していたユベルが足払いで態勢を崩しつつのアイアンクローを決めた事で、その目論見は呆気なく崩れたからな。

尚も『俺様や姐さんに何をする気だ!放しやがれ!』と暴れるソイツに対し『レベル1桁如きの君が、レベル2桁のボクに命令なんて千年早いんだよ!』とユベルが自らの効果で痛めつけた事で折れ、抵抗を止めてくれた。

そんなソイツの様子に彼女も観念したのか、

 

「フォーゼが其処まで言うなんて…

分かったわ。答えられる範囲でなら」

 

抵抗する様な構えを解き、応じてくれた。

 

「そうか。ならば1つ目、といってもこれは確認だが、お前はアカデミアだな?」

「ええ、そうよ。でも先頭に『元』が付くけど」

 

ん?『元』?

 

「元、とは?もしやデニス・マックフィールドの様にアカデミアの方針に反感を覚えて離反した、という事か?」

「まあそんな感じかしらね。アカデミアの方針も、それに嬉々として、或いは黙々と従う連中にも嫌気が差してね」

 

口振りからして何だか直情的だなと思った。

こういうクチは物語が進むと実はスパイでした、というパターンが多いが、感じる気配からして嘘では無さそうだ、コイツは信用しても良さそうだ。

 

「では2つ目。お前が今持っている『メタルフォーゼ』のデッキだが、それはアカデミアにおいて開発されていた物だという情報を得ている。それを何処で入手した?」

「何処でと言われても、ね…

詳しくはフォーゼに聞いて。私に聞かれても、或る日突然持っていました、としか言えないわ」

『いや俺に振られても困るんだが!俺だって気付いたら姐さんの下に向かっていた、としか言えねぇし!ただ言うなれば、運命って奴か?』

「かも知れないわね。私がアカデミアを出て行ったのも、アンタとなら何処へでも行ける、と何となく思えたからだし」

 

何だそれは、真面目に答えろ、と普通なら思うだろうが、似た様なシーンに何度となく遭遇している俺はそれを信じても良いと判断した。

虹光の宣告者、スターダスト・ドラゴンやその進化形態、ホープシリーズやZW、そしてオッドアイズ達、そういったカード達との出会いを重ねて来た俺だから、彼女達の出会いを他人事とは思えなかった。

 

「3つ目。アカデミアに関する重要な情報を、知っている限り教えて貰う」

「重要情報ねぇ…

といっても私はアカデミアでも下っ端だったし、知っている事でアンタが欲しそうな事は無いわ。今だってこのデッキがアカデミアで開発されていた物だった事、初めて知ったし」

 

まあこの辺りは得られればOK程度にしか思っていなかったし、仕方ないか。

でも、最近知ったばっかりだと考えられるペンデュラム召喚を駆使するテーマデッキで、あそこまで回せる程の技量がありながらアカデミアにおいて下っ端だと?

今までその技量が評価されなかったのか、或いはデッキとの相性が悪くて下っ端に甘んじていたのか…

まあそれは後で判断しよう。

 

「4つ目。この写真の男に見覚えはあるか?」

「ん?誰よこの男?」

 

いや、知らないでこのフレンドシップカップに出ていたのかよ、というか何日このシティに滞在しているんだ、ジャックを映像とかで見る機会はこのシティにおいて大いにあった筈なんだが。

 

「ジャック・アトラス。このシティにおけるデュエリストスターの一角だ」

「アトラス…

成る程、私と同じファミリーネームだから、気になったと言う訳ね?」

「ああ。4つの次元には其々、ドッペルゲンガーと言える位そっくりな存在がいるというケースもある、別々の次元に飛んでいった家族がいても不思議じゃ無い」

 

というか、アカデミアのトップである赤馬零王がそうだしな。

 

「へぇ。でも私、この男に見覚えは無いわ」

「そうか。質問は以上だ」

 

これ以上は有用な情報は無さそうだと判断した俺は、質問を切り上げた。

といっても、彼女への用はまだまだあるんだが。

 

「それで、これは要望だが、

 

 

 

 

 

二振りの槍(カシウスとロンギヌス)を手にする気、あるか?」




今話で第6章は終了、次回から第7章となります。
予定では第7章でシンクロ次元編は終了し、エクシーズ次元編に突入します。

それとは別件ですが、活動報告にてとある発表があります。
宜しければそちらにも。


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7章『正面衝突!ランサーズ&セキュリティVSアカデミア』
87話_全面戦争、開始


「元いた次元でアカデミアのデュエル戦士と戦った者も、ランサーズの中には少なからずいる。彼らの話を踏まえると、アカデミアにおけるエリート部隊と言われている『オベリスク・フォース』であろうと、個々の実力は我々ランサーズのメンバーには及ばない。デュエルチェイサーとして日々ライディングデュエルに明け暮れる諸君も、1対1であれば勝てない相手では無い。だが奴等は『決闘者(デュエリスト)』でも『警察官(デュエルチェイサー)』でも無い、デュエルを戦争の道具としか思っていない野蛮な『侵略者(テロリスト)』だ。1対多によるリンチ、プレイを妨害するリアルファイトは日常茶飯事、デュエルでも無いのにモンスターを実体化させての破壊活動も平気で行い、その過程で人々を殺害したり、カードに封印したりといった行為を繰り返して来た。3年前、真っ先にその標的とされたエクシーズ次元は壊滅状態に陥り、今でも残党狩りと称して侵略行為を続けていると言う情報もある。その様な輩に好き勝手させてはならない!今こそ我々が一致団結し、このシティを、シンクロ次元を、侵略者から守り、そして突き返す!我々の力を、文化を、デュエルをアカデミアに見せ付ける時だ!」

『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』

 

フレンドシップカップ2回戦の真っ只中で最高潮の盛り上がりを見せるデュエルパレスから少し離れた所にある広場、其処で俺達ランサーズメンバー25人(フレンドシップカップに出場している6人の他、零児と零羅にはデュエルパレスに待機して貰っている)と、デュエルチェイサーの総員が集結し、いずれ起こる戦いに向けて決起集会を開いていた。

何故、フレンドシップカップというシティ最大の祭典が行われているこのタイミングで集会を開いているのかと言うと、前日の夜に月影から入った連絡がその要因だ。

アカデミアに潜入していた月影からの連絡、それは今日、アカデミアがこのシンクロ次元に潜伏している柚子とセレナを確保するべく仕掛けると言う物。

日影や遊香が、数多のデュエル戦士が準備に騒々しい様を目撃していた事、その指揮官として『融合次元の俺』等が組み込まれていた事等から、俺達の次元に潜入して来た時とは比べ物にならない程の規模で攻め込んでくる、そんな情報を入手した俺は緊急でランサーズメンバー及びセキュリティに連絡、フレンドシップカップ中のシティで無用な混乱を招かない様、ある程度の人員はデュエルパレスに留め、残ったメンバーで今、間もなく来るであろうアカデミアの大軍勢との戦いに向けて戦意を高めていた。

 

「その意気や良し!各隊、其々の持ち場に付き、出撃の報を待て!」

『はっ!』

 

俺の号令と共に散開して行く各部隊、その足は皆、アカデミアの下種極まりない行いに対する憤りや、自分がこのシティを守るという使命感というか正義感からか、はつらつとしていた。

そんな様子に良い感じだと一種の満足感を覚えつつ、各隊が其々の拠点に到着したのを機器で確認してから数十分経過した時、

 

「遊星様!シティ内の数か所から強大な次元転送反応を探知しました!」

「座標パターン、パープル!アカデミアです!」

 

敵が、アカデミアからの侵略者が、来た…!

 

「総員、第一種戦闘配備!各隊、侵入者を1人残らず駆逐せよ!」

『おぉぉぉぉぉぉぉぉ!』

 

------------

 

「行くぜ、変態仮面共!」

「さあ、懺悔の用意は出来たか!」

「な、なんだこれ、ぐぁ!」

「く、外せな、がぁ!」

 

遊矢からの号令と共に出撃を開始したデュエルチェイサー及びランサーズのメンバー、ランサーズ第3部隊に属する白哉と流星もまた同じで、その途上で発見した2人のデュエル戦士にデュエルアンカーを射出、拘束に成功した。

 

「さぁて始めますか、白哉さん!」

「ああ、奴等を処断するぞ!」

「貴様らか、ランサーズだとか言うスタンダード生まれの烏合の衆は!」

「さっさと片づけるぞ!」

「「「「デュエル!」」」」

 

1番手 Ryusei LP 4000 & 3番手 Byakuya LP 4000

VS

2番手 ????(青) LP 4000 & 4番手 ????(赤) LP 4000

 

「よしっ1番手は俺!

まずは『闇竜星―ジョクト』を召喚!」

 

闇竜星―ジョクト

効果モンスター/チューナー

闇属性

幻竜族

レベル 2

攻撃力 0

 

2人のデュエル戦士とのタッグデュエルに突入した流星と白哉、その1番手となった流星が召喚したのは、刃とのデュエルでもその力を発揮したジョクト。

 

「次に手札の『水竜星―ビシキ』と『光竜星―リフン』を墓地へ送ってジョクトの効果発動!

デッキから『秘竜星―セフィラシウゴ』を守備表示、『炎竜星―シュンゲイ』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

秘竜星―セフィラシウゴ

ペンデュラム・効果モンスター

地属性

幻竜族

レベル 6

守備力 2600

 

炎竜星―シュンゲイ

効果モンスター

炎属性

幻竜族

レベル 4

攻撃力 1900

 

「そいつが報告にあったペンデュラムモンスターか!」

「確かフィールドから墓地へ送られる時、代わりにエクストラデッキに送られ、その送られた奴もペンデュラム召喚なる方法で特殊召喚出来るらしいな、面倒臭い物を作りやがって…!」

 

そのジョクトが持つリクルート効果によって呼び出された2体の竜星モンスターの中で、ペンデュラムモンスターであるセフィラシウゴの姿に忌々しいと言わんばかりの様子を見せるデュエル戦士達。

彼らも今回の侵攻に伴い、その力が伝えられている様である。

 

「俺はレベル6のセフィラシウゴに、レベル2のジョクトをチューニング!この星の元素と、空に輝く星の光が、煌く龍を生み出すぜ!今こそ降り立ち、輝きの力で惑わせ!シンクロ召喚、レベル8!『輝竜星―ショウフク』!」

 

輝竜星―ショウフク

シンクロ・効果モンスター

光属性

幻竜族

レベル 8

攻撃力 2300

 

その様子を意に介さず、シンクロ召喚の演出と共に呼び出したのは、竜星の一角で竜生九子の一角『蚣蝮』をモデルとしたモンスター、ショウフク。

 

「続いてショウフクの効果発動!

フィールドのシュンゲイを破壊し、ビシキを守備表示で蘇生するぜ!」

 

水竜星―ビシキ

効果モンスター

水属性

幻竜族

レベル 2

守備力 2000

 

「自分のアタッカーを破壊して壁を蘇生した…?」

 

一見するとアタッカーとして有用なシュンゲイを破壊し、レベルが2低いビシキを蘇生した、という不可解なプレイング、だが、

 

「破壊されたシュンゲイの効果発動!

それにチェーンして、竜星カードが破壊された事でリフンの効果発動!

まずはリフンの効果で、コイツ自身を守備表示で蘇生するぜ!」

 

光竜星―リフン

効果モンスター/チューナー

光属性

幻竜族

レベル 1

守備力 0

 

「次にシュンゲイの効果で、デッキから2枚目のセフィラシウゴを守備表示で特殊召喚!」

「なっ!?一気に2体のモンスターを増やしただと!?」

「その内1体はチューナー、という事はまたシンクロ召喚か…!」

 

そう、これこそが流星の狙い。

これによってビシキの他、セフィラシウゴと、竜星の一角で竜生九子の一匹『チ吻』をモデルとしたモンスター、リフンが流星の場に登場した。

 

「俺は、レベル6のセフィラシウゴと、レベル2のビシキに、レベル1のリフンをチューニング!この星の元素と、空に輝く星の光が、幻影を司る鳳凰を生み出すぜ!今こそ降り立ち、幻影の力で惑わせ!シンクロ召喚、レベル9!『幻竜星―チョウホウ』!」

 

幻竜星―チョウホウ

シンクロ・効果モンスター

光属性

幻竜族

レベル 9

攻撃力 2800

 

その後のシンクロ召喚で登場したのは、刃とのデュエルでその効果をいかんなく発揮したチョウホウ。

 

「自分の効果で蘇生したリフンは、フィールドから離れると除外されるぜ。

更に永続魔法『竜星の気脈』発動し、カードを1枚セットしてターンエンド!」

 

竜星の気脈

永続魔法

1:自分の墓地の『竜星』モンスターの属性の種類の数によって以下の効果を得る。

●2種類以上:自分フィールドの『竜星』モンスターの攻撃力は500アップする。

●3種類以上:自分フィールドの『竜星』モンスターが戦闘・効果で破壊される場合、代わりにこのカードを墓地へ送る事が出来る。

●4種類以上:相手はモンスターをセット出来ず、相手フィールドの表側表示モンスターは全て攻撃表示になる。

●5種類以上:このカードを墓地へ送って発動出来る。フィールドのカードを全て破壊する。

 

輝竜星―ショウフク 攻撃力 2300→2800

幻竜星―チョウホウ 攻撃力 2800→3300

 

Ryusei

LP 4000

手札 0

モンスター 輝竜星―ショウフク(攻撃表示)

      幻竜星―チョウホウ(攻撃表示)

魔法・罠カード 竜星の気脈

        セット

 

「くっ俺のターン!ドロー!

まずは『古代の機械猟犬』を召喚!」

 

古代の機械猟犬(アニメオリジナルカード)

効果モンスター

地属性

機械族

レベル 3

攻撃力 1000

 

流星のターンが終わり、青い光石をはめ込んだ仮面を着けているデュエル戦士のターン、その初手で登場したのは、最早アカデミアご用達となった古代の機械猟犬。

 

「今召喚した古代の機械猟犬の効果発ど『ビーッ!ビーッ!』な、なんだこの警告音は!?」

「おっと!シンクロ召喚したチョウホウがいる限り、お前らはコイツの素材となった竜星モンスターと元々の属性が同じモンスターの効果を発動出来ないぜ!コイツのシンクロ素材となったモンスターの属性は地、水、光だ!」

「な、何!?」

 

だがその効果は、チョウホウの永続効果によって使えない状態。

古代の機械カテゴリモンスターはその殆どが地属性、よってお得意のバーン攻勢や、大量展開はこれで制限されたといっても過言では無い。

 

「くっならば魔法『融合』発動!」

 

融合

通常魔法

1:自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「俺はフィールドと手札に1枚ずつ存在する古代の機械猟犬を融合!古の魂受け継がれし、機械仕掛けの猟犬の番いよ!互いに混じり合い、新たなる力と共に生まれ変わらん!融合召喚!『古代の機械双頭猟犬』!」

 

古代の機械双頭猟犬

融合・効果モンスター

地属性

機械族

レベル 5

守備力 1000

 

「カードを1枚セットしてターンエンド!」

 

????(青)

LP 4000

手札 1

モンスター 古代の機械双頭猟犬(守備表示)

魔法・罠カード セット

 

「私のターン、ドロー!

まずはフィールド魔法『混沌の場(カオス・フィールド)』発動!」

 

混沌の場

フィールド魔法

『混沌の場』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:このカードの発動時の効果処理として、デッキから『カオス・ソルジャー』儀式モンスターまたは『暗黒騎士ガイア』モンスター1体を手札に加える。

2:このカードがフィールドゾーンに存在する限り、お互いの手札・フィールドからモンスターが墓地へ送られる度に、1体につき1つこのカードに魔力カウンターを置く(最大6つまで)。

3:1ターンに1度、このカードの魔力カウンターを3つ取り除いて発動出来る。自分はデッキから儀式魔法カード1枚を手札に加える。

 

結局融合モンスター1体を守備表示で融合召喚し、セットカード1枚でターンを明け渡したデュエル戦士、それを受けて自分のターンとなった白哉が最初に発動したのは、何とも言い難い白い光を放つフィールド魔法。

 

「混沌の場を発動した時の効果処理で、デッキから『超戦士カオス・ソルジャー』を手札に加える。

次に手札の『開闢の騎士』を墓地へ送って魔法『ワン・フォー・ワン』発動!」

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

混沌の場 魔力カウンター 0→1

 

「ワン・フォー・ワンの効果で、デッキから『超戦士の魂』を守備表示で特殊召喚!」

 

超戦士の魂

効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 1

守備力 0

 

その後に登場したのは、何やら荘厳な気を放つ鎧が浮いている様な姿のモンスター。

本来なら此処で古代の機械双頭猟犬の効果を発動する事も出来るが、チョウホウの効果によりそれを禁じられている以上、このターンに白哉がどれだけモンスターを展開しようと、デュエル戦士にそれを妨害するタイミングは無い。

 

「流星、お前の墓地のモンスターを使いたい。良いか?」

「勿論です、白哉さん!この状況下なんだ、出し惜しみは無しですよ!」

「ああ、そうだな!私は墓地の『開闢の騎士』とジョクトを除外!光と闇、2つの魂を生け贄に、今こそ降臨せよ!開闢を告げる混沌の戦士よ!『カオス・ソルジャー―開闢の使者―』!」

 

カオス・ソルジャー―開闢の使者―(制限カード)

効果モンスター

光属性

戦士族

レベル 8

攻撃力 3000

 

其処に並び立つように君臨したのは、光と闇、相反する2つの力を取り込んだ混沌の戦士。

 

「除外された開闢の騎士の効果発動!

デッキから儀式魔法『超戦士の儀式』を手札に加える。

貰いっ放しは悪い、これで返そう。速攻魔法『異次元からの埋葬』発動!」

 

異次元からの埋葬(制限カード)

速攻魔法

1:除外されている自分及び相手のモンスターの中から合計3体まで対象として発動出来る。そのモンスターを墓地に戻す。

 

「異次元からの埋葬の効果で、除外されているジョクトとリフン、そして開闢の騎士を墓地に戻す!」

「あ、どうもっす!これで墓地にある竜星モンスターの属性は4種類、よって!」

 

古代の機械双頭猟犬 守備力 1000→攻撃力 1400

 

「な、古代の機械双頭猟犬が攻撃表示に!?」

「竜星の気脈の効果で、ソイツは攻撃表示になって貰うぜ!」

「何!?」

 

白哉のお返しという名のアシストにより、その更なる力が発揮される竜星の気脈。

これによって守備表示で耐えるというプレイングは通じなくなった。

 

「まだまだ行くぞ!儀式魔法『超戦士の儀式』発動!」

 

超戦士の儀式

儀式魔法

『カオス・ソルジャー』儀式モンスターの降臨に必要。

『超戦士の儀式』の2の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。

1:自分の手札・フィールドから、レベルの合計が8になるようにモンスターをリリースし、手札から『カオス・ソルジャー』儀式モンスター1体を儀式召喚する。

2:自分の墓地からこのカード及び光属性モンスター1体と闇属性モンスター1体を除外して発動出来る。手札から『カオス・ソルジャー』儀式モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動出来ない。

 

「私はフィールドの超戦士の魂と、手札の『疾走の暗黒騎士ガイア』をリリース!光と闇を司る魂は混沌の場を創り出し、今フィールドに君臨する!疾走れ、暗黒騎士ガイア!カオス・フィールドを駆け抜け、そして超戦士の力を得よ!儀式召喚、レベル8!『超戦士カオス・ソルジャー』!」

 

超戦士カオス・ソルジャー

儀式・効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 8

攻撃力 3000

 

混沌の場 魔力カウンター 1→3

 

だがそれでも白哉の展開は留まるところを知らない。

先程サーチしたカード達によって儀式召喚されたのは、混沌を司る戦士の、その力の果ての姿。

 

「リリースされた疾走の暗黒騎士ガイアの効果発動!

デッキから2枚目の超戦士カオス・ソルジャーを手札に加える。

そして混沌の場の魔力カウンターを3つ取り除いて効果発動!

デッキから2枚目の超戦士の儀式を手札に加える。

此処で行くか!バトルフェイズに入る!

開闢の使者で古代の機械双頭猟犬を攻撃!開闢双破斬!」

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

カオス・ソルジャー―開闢の使者― 攻撃力 3000 VS 古代の機械双頭猟犬 攻撃力 1400

 

????(青) LP 4000→2600

 

「モンスターを戦闘破壊した開闢の使者の効果発動!

コイツはもう1度攻撃出来る!」

「な、何!?」

「喰らえ、デュエリストの誇りを忘れた塵屑よ!時空突刃・開闢双破斬!」

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

????(青) LP 2600→-400 LOSE

 

「う、嘘だ、我らオベリスク・フォースが、こんなスタンダード生まれ如きに、たった1ターンで…!」

 

たった2ターンの間に4体もの大型モンスターを展開、しかもその内の1体のみで仲間が敗北、捕縛される様を目の当たりにした、赤い光石をはめ込んだ仮面を着けているデュエル戦士は呆然としていたが、まだ白哉のバトルフェイズは終了していない。

 

「その思い上がりが貴様の身を滅ぼす禍となる!超戦士カオス・ソルジャーとチョウホウでダイレクトアタック!」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

????(赤) LP 4000→1000→-2300

 

「よしっ一丁上がり!」

「良い調子だ、このまま削り切るぞ!」

 

タッグデュエルに勝利し、デュエルアンカーから放出された電撃によって気絶した2人のデュエル戦士を捕縛しつつ、2人は再び動き出す…!




引き続き、7.5章にてコラボしてくれる方を募集しています。
詳しくは活動報告にて。


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88話_前線ニ異常アリ

アカデミアによるシンクロ次元への大規模な侵攻軍と、それを阻止する為に結成されたランサーズ&デュエルチェイサーの連合部隊、シティ郊外で激突した両陣営の戦いは、各地でその戦火を挙げていた。

 

------------

 

「そこだ」

「く、鎖だと!?」

「おい、大丈夫か!」

「其処の輩の仕業か、姑息な真似を…!」

 

ランサーズ第1部隊に属する灰原征矢もまたアカデミアのデュエル戦士を発見、早速デュエルアンカーを射出して拘束するも、その様子を目撃していた他のデュエル戦士が応援に駆け付ける。

これで状況は1VS3、アカデミアが得意とする1対多の構図となってしまったが、その状況下で、征矢の不気味な笑顔は、よりその笑みが深まっていた。

 

「追手がいやがったか。まあ良い、纏めて相手してやるぜ…!」

「ふん、どうせハッタリだ!」

「我ら3人を相手に何処まで持つかな?」

「早く片付けて合流するぞ!」

「「「「デュエル!」」」」

 

1番手 ????(緑)

2番手 Yukiya

3番手 ????(黄)

4番手 ????(赤)

 

「俺のターン!

まずは魔法『融合』発動!」

 

融合

通常魔法

1:自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「俺は手札の『古代の機械(アンティーク・ギア・)猟犬(ハウンドドッグ)』3体を融合!古の魂受け継がれし、機械仕掛けの猟犬達よ!群れ成して混じり合い、新たなる力と共に生まれ変わらん!融合召喚!『古代の機械参頭(トリプルバイト)猟犬』!」

 

古代の機械参頭猟犬(アニメオリジナルカード)

融合・効果モンスター

地属性

機械族

レベル 7

攻撃力 1800

 

1番手を取った緑の光石をはめ込んだ仮面を着けているデュエル戦士は、早速古代の機械参頭猟犬を融合召喚した。

無論、攻撃力1800程度で、攻撃時にしか効果を発揮しないモンスターを、先攻1ターン目に何の考えも無しに棒立ちさせている訳じゃ無い。

 

「次に魔法『死者蘇生』発動!」

 

死者蘇生(制限カード)

通常魔法

1:自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

「死者蘇生の効果で、たった今墓地へ送られた古代の機械猟犬を攻撃表示で蘇生する!」

 

古代の機械猟犬

効果モンスター

地属性

機械族

レベル 3

攻撃力 1000

 

「今蘇生した古代の機械猟犬の効果で、俺は、古代の機械猟犬と、古代の機械参頭猟犬を融合!古の魂受け継ぎし、機械仕掛けの猟犬達よ!群れ成して混じり合い、究極の力と共に生まれ変わらん!融合召喚!『古代の機械究極(アルティメット)猟犬』!」

 

古代の機械究極猟犬

融合・効果モンスター

地属性

機械族

レベル 9

攻撃力 2800

 

「融合召喚した古代の機械究極猟犬の効果発動!

貴様のLPを半分にする!喰らえ!」

「ちぃ」

 

Yukiya LP 4000→2000

 

初手で融合召喚した古代の機械参頭猟犬と、その素材として送った物を蘇生した古代の機械猟犬、それによる更なる融合召喚によって登場したのは、トリッシュとのデュエルでも登場した古代の機械究極猟犬。

その効果は相手のLPを半分にしてしまう恐ろしい物だった。

 

「どうだ、サレンダーするなら今の内だぞ?」

「はっ俺のLPを半分にした位で随分と余裕だなぁ」

「チャンスをフイにするとはな、まあ良い。これでターンエンドだ」

 

????(緑)

LP 4000

手札 0

モンスター 古代の機械究極猟犬(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

征矢の余裕そうな態度を強がりだと決めつけ、上から目線で進行するデュエル戦士、だがこれが彼、いや彼らにとって絶望タイムの始まりになる…!

 

「俺のターン、ドロー。

まずは手札の『ワイトプリンス』を墓地へ送って魔法『ワン・フォー・ワン』発動」

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

「ワン・フォー・ワンの効果で、デッキから『ワイトキング』を攻撃表示で特殊召喚」

 

ワイトキング

効果モンスター

闇属性

アンデット族

レベル 1

攻撃力 1000

 

「ふん、何をするかと思えば攻撃力1000程度のモンスターを攻撃表示、やはりハッタリだったか」

「そう思い込んでればいい。墓地へ送られたワイトプリンスの効果発動。

デッキから『ワイト』と『ワイト夫人』を墓地へ送る」

 

ワイトキング 攻撃力 (1000→)3000

 

「さ、3000だと!?何故…!」

「ワイトキングの元々の攻撃力は、墓地のワイトとワイトキングの数×1000だ。そしてワイト夫人とワイトプリンスは墓地ではワイトとして扱う。よって墓地にあるワイトの数は3、ワイトキングの攻撃力は3000となる」

「な、何だと!?」

 

2番手となった征矢がワン・フォー・ワンの効果でリクルートした、群青のローブを身に纏った骸骨の様なモンスター、ワイトキングの姿に嘲笑の声を上げるデュエル戦士だったが、一連の効果処理を終えた後に発覚したワイトキングの真価に一転、戦慄を覚えた。

 

「後悔しても遅いぜ…!

次に『ユニゾンビ』を召喚」

 

ユニゾンビ

効果モンスター/チューナー

闇属性

アンデット族

レベル 3

攻撃力 1300

 

次に登場したユニゾンビ、このモンスターもまたワイトキングの真価を発揮するのに大いに役立つ。

 

「ユニゾンビの効果発動。

デッキから2枚目のワイトプリンスを墓地へ送り、ユニゾンビ自身のレベルを1上げる」

 

ユニゾンビ レベル 3→4

 

「ちょ、ちょっと待て!今墓地へ送られたのは…!」

「ああ、そうだ。墓地へ送られたワイトプリンスの効果発動。

デッキから2枚目のワイトとワイト夫人を墓地へ送る」

 

ワイトキング 攻撃力 (3000→)6000

 

その効果によって、並び立つワイトキングの力は更に上昇して行く…

その攻撃力は6000、既に3人のデュエル戦士の誰であろうと、何も無ければこのターンで決められる数値に、デュエル戦士達は恐怖を露わにし始める。

 

「続いて魔法『おろかな埋葬』発動」

 

おろかな埋葬(制限カード)

通常魔法

1:デッキからモンスター1体を墓地へ送る。

 

「ま、まさかそれで墓地に送るのは…!」

「そう、おろかな埋葬の効果で、3枚目のワイトプリンスを墓地へ送る。

そして墓地へ送られたワイトプリンスの効果でデッキから3枚目のワイトとワイト夫人を墓地へ送る!」

 

ワイトキング 攻撃力 (6000→)9000

 

それでも尚、征矢の墓地肥やしは留まるところを知らず、これによってワイトキングの攻撃力は9000まで上昇した。

最早オーバーキルの領域、征矢達は知らないが、仮にOCGであれば1番手のデュエル戦士だけは辛うじて、という状態にまで達した。

 

「更に、墓地のワイトとワイト夫人、そしてワイトプリンスを除外してワイトプリンスの効果発動!

それにチェーンして速攻魔法『異次元からの埋葬』発動!」

 

異次元からの埋葬(制限カード)

速攻魔法

1:除外されている自分及び相手のモンスターの中から合計3まで対象として発動出来る。そのモンスターを墓地に戻す。

 

「まずは異次元からの埋葬の効果で、たった今除外した3枚を墓地へ戻す。

そしてワイトプリンスの効果で、2体目のワイトキングを攻撃表示で特殊召喚!」

「に、2体目だと!?」

「こ、攻撃力9000の化け物が、2体も…!」

「やめろ、止めてくれ…!」

 

そして墓地肥やしの次は大量展開、墓地アドバンテージの消費を無くしつつ、2体目のワイトキングが姿を現した。

これで何も無ければ、最低2人はこのターンで決着が、

 

「此処でもう一度、ワイトとワイト夫人、そしてワイトプリンスを除外して効果発動!

デッキから3体目のワイトキングを攻撃表示で特殊召喚!」

 

ワイトキング×3 攻撃力 (9000→)6000

 

此処で留まる征矢では無く、3体ものワイトキングを並べた。

その攻撃力は9000から6000まで下がりはしたがそれでも一撃で勝負を決められるクラス。

 

「さぁ、覚悟は出来たかぁ?」

「ひ、ヒィ!」

「や、止めろ、止めてくれ!」

「助けてくれ…!」

「バトルフェイズに入る!全員でフルボッコだぁ!」

「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」」」

 

ワイトキング 攻撃力 6000 VS 古代の機械究極猟犬 攻撃力 2800

 

????(緑) LP 4000→800→-500 LOSE

????(黄) LP 4000→-2000 LOSE

????(赤) LP 4000→-2000 LOSE

 

「ちっ2人逃げたか。まあ良い、コイツは縛り上げとくか」

 

デュエルアンカーによる拘束で敵をも纏めて内部へ飛ばしてしまう事への危惧、というかダメージを受けた際にデュエルアンカーから流れる高圧電流の所為で破損した事で、今までデュエル戦士のデュエルディスクに搭載されていた次元跳躍システムが作動せず、結果としてランサーズはデュエル戦士達を捕縛する事が出来た、今回もデュエルアンカーで繋がれていなかった2人の逃走こそ許すも、征矢が拘束していた残りの1人の確保に成功、征矢はそのデュエル戦士を捕縛しつつ、再び前線へと向かった…

 

------------

 

上記の様な形で、各地での戦いが繰り広げられ始めていた中、とある戦線では、異常な事態が発生していた。

 

「ちょっと待て!俺だ、俺達はアカデミアだ!戦うべき敵は向こうだろ!」

「古代の機械参頭猟犬でダイレクトアタック!」

「ぐはぁ!?一体どうしたんだお前は、血迷ったのか!?」

「古代の機械参頭猟犬はバトルフェイズ中に3回攻撃出来る!喰らえ!」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

 

「一体、何が起こっていると言うんだ、これは…?」

 

その戦線で戦いに参加しようとしていたランサーズ第1部隊副隊長の文録が、思わずぽつりとつぶやく事態、それは前方にいたデュエル戦士が、何故か味方である筈の、他のデュエル戦士にデュエルを仕掛け、一方的に攻撃しているという物だった。

仕掛けられた側も何が何だかわからないといった表情で、相手の説得を試みているが全く成果が無くサンドバッグにされている光景、それには文録を始め、その戦線に集まっていた部隊員全てが戸惑いを見せていた。

 

「はっ、これはひょっとしたら俺達の意表を突き、横から攻撃を仕掛ける作戦かも知れん!現に俺自身、少しの間戸惑ってしまった!各員、周囲の警戒を怠るな!」

「はっ!」

 

だがこれは敵の罠かも知れない、そう思い立った文録は気持ちを切り替え、周囲に警戒を促す。

が、神経を張り詰めても周囲から敵の気配は探れない、おかしいと思ったデュエルチェイサーが周囲を探索しても、同じだった。

 

「これは、どういう事なんだ…?」

 

このまさかと言うしかない状況に、文録は首をかしげていた。

 

------------

 

「遊星様、重要な報告があります」

「どうした?」

「戦線に出動した各部隊から、アカデミアの軍勢で仲間割れが発生しているという連絡が相次いで送られて来ております。如何なさいますか?」

 

文録が見聞きした様な状況が各地で起こっているという連絡を受けた、そんな報告を、今回の戦いの総指揮を担う遊矢へと告げる1人のデュエルチェイサー。

それを聞いた遊矢は、

 

「そうか、『奴等』はしっかりと働いているという事だな。報告ご苦労。引き続き任務を続行せよと、各部隊に連絡を送れ」

「は、ははっ!」

 

それがまるで予定通りだと言わんばかりの様子で応答し、そのデュエルチェイサーに連絡を指示した。

そんな様子に戸惑いながらも応じるデュエルチェイサー。

 

「我々ランサーズに喧嘩を売る事が、全てをやり直せる2振り(カシウスとロンギヌス)を持つ我らに刃向う事が如何に愚かで命知らずな無謀である事、この戦いでアカデミアは思い知るだろう。全て、全てが俺の、計画通り…!」

 

去り際に遊矢が何か恐ろしい事を呟いていた様な気がしたが、デュエルチェイサーは連絡を急いでいた為に殆ど聞こえなかった。

 

------------

 

「貴様が、貴様が皆を…!

許さん!デュエル!」

「デュエル…!」

 

先攻 ???? LP 4000 VS 後攻 ????(青) LP 4000

 

「俺の先攻…

俺はスケール3の『アモルファージ・プレスト』と、スケール5の『アモルファージ・ガストル』を、ペンデュラムスケールにセッティング…!」

「ペンデュラムモンスターか…!」

 

ペンデュラムスケール(青):3(アモルファージ・プレスト)

ペンデュラムスケール(赤):5(アモルファージ・ガストル)

 

とある戦線で、1人のデュエル戦士が、不気味な雰囲気を纏わす1人の大男に敵愾心を向けて仕掛けたデュエル、先攻となった大男が行ったカードの効果処理に、その後に繰り広げられるであろう光景に、デュエル戦士は一層身構えた。

 

「これで俺はレベル4モンスターを同時に特殊召喚可能…!

さあ行け、8の罪を躯とせし、歪ながらも美しき魔獣達よ!あらゆる美しさをぶち壊し、自らの糧とするがいい!ペンデュラム召喚!何物をも寄せ付けぬ憂鬱『アモルファージ・キャヴム』!姑息な手を許さぬ傲慢『アモルファージ・ヒュペル』!」

 

アモルファージ・キャヴム

ペンデュラム・効果モンスター

地属性

ドラゴン族

レベル 4

守備力 2050

 

アモルファージ・ヒュペル

ペンデュラム・効果モンスター

地属性

ドラゴン族

レベル 4

攻撃力 1750

 

その想像通り繰り広げられたペンデュラム召喚の演出、それによって登場したのは、イカの様な生物を無理矢理組み込んだ姿の青いドラゴン、キャヴムと、鷹の様な生物を無理矢理組み込んだ姿の緑のドラゴン、ヒュペル。

 

「次にフィールド魔法『チキンレース』発動…!」

 

チキンレース

フィールド魔法

1:このカードがフィールドゾーンに存在する限り、相手よりLPが少ないプレイヤーが受ける全てのダメージは0になる。

2:お互いのプレイヤーは1ターンに1度、自分メインフェイズに1000LPを払って以下の効果から1つを選択して発動出来る。この効果の発動に対して、お互いは魔法・罠・モンスターの効果を発動出来ない。

●デッキから1枚ドローする。

●このカードを破壊する。

●相手は1000LP回復する。

 

「LPを1000ポイント払って、チキンレースの効果発動…!ぐ、うぅ…!

効果で俺は1枚ドロー…!

そして今引いた永続魔法『アモルファージ・インフェクション』を発動してターンエンド…!」

 

???? LP 4000→3000

 

アモルファージ・インフェクション

永続魔法

『アモルファージ・インフェクション』の2の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。

1:フィールドの『アモルファージ』モンスターの攻撃力・守備力は、フィールドの『アモルファージ』カードの数×100アップする。

2:自分の手札・フィールドのモンスターがリリースされた場合、または戦闘・効果で破壊された場合に発動出来る。デッキから『アモルファージ』カード1枚を手札に加える。

 

アモルファージ・キャヴム 守備力 2050→2550

アモルファージ・ヒュペル 攻撃力 1750→2250

 

????

LP 3000

手札 0

ペンデュラムスケール(青):3(アモルファージ・プレスト)

ペンデュラムスケール(赤):5(アモルファージ・ガストル)

モンスター アモルファージ・キャヴム(守備表示)

      アモルファージ・ヒュペル(攻撃表示)

魔法・罠カード アモルファージ

フィールド魔法 チキンレース

 

「俺のターン、ドロー!

まずは『古代の機械猟犬』を召喚!

今召喚した古代の機械猟犬の効果発ど『ビーッ!ビーッ!』け、警告音だと!?」

「無駄だ…!

ペンデュラムスケールにセットされたガストルは、俺のフィールドにアモルファージモンスターがいる限り、アモルファージモンスター以外の効果発動を禁じる…!」

「な、何だと!?」

 

ライフポイントを削りながら(今の状況ではむしろ好都合だが)も、場をしっかりと整えてターンを明け渡した大男、それを受けてデュエル戦士もまた展開を開始、しようとしたが、早速モンスター効果の発動を封じられた。

 

「ならば魔法『融合』発動!」

 

融合

通常魔法

1:自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「俺はフィールドに1枚、手札に2枚存在する古代の機械猟犬を『ビーッ!ビーッ!』またか!今度は何なんだ!?」

「どうしたんだ…?俺が憎いんだろう…?仲間の頭を弄った俺を倒したいんだろう…?俺を叩き潰せる融合モンスターを出したいんだろう…?ならさっさと出せ…!

そうそう、ペンデュラム召喚されたキャヴムとヒュペルがいる限り、アモルファージモンスターしかエクストラデッキから出せないぞ…!」

「ば、馬鹿な!?それじゃあ俺は融合召喚出来ないではないか!」

「本当か…?なら証拠を見せろ…!お前が融合召喚出来ない証拠を、エクストラデッキと手札全てを…!これはデュエルのルールで決められた事だ、ルールには従って貰わないとな…!」

「く、くそぉ!」

 

ならばと融合召喚をしようとしたが、アモルファージ達の恐るべき効果により出来なくなってしまった挙げ句、ルールによってエクストラデッキと手札を公開せざるを得なくなってしまう。

 

「成る程、これで出せない事は分かった…

残念だな、仲間の仇の俺を前に奮い立ったは良いが、やる事成す事全てが裏目に出る…

さぞ悔しいだろうなぁ…!」

「く、くぅ…!ターン、エンドだ…!」

 

????(青)

LP 4000

手札 3(うち2枚は古代の機械猟犬×2)

モンスター 古代の機械猟犬

魔法・罠カード なし

 

「仲間の仇討ちに奮い立つ姿、中々美しそうだと思ったが所詮は下っ端か、期待外れだ…

こんなデュエル、さっさと終わらせるに限る…!

俺のターン、ドロー…!

スタンバイフェイズ、まずはガストルの誓約により、キャヴムをリリースする…!

此処でインフェクションの効果発動…!

デッキから『アモルファージ・ノーテス』を手札に加える…!

次にプレストの誓約だが、此処はコイツ自身を破壊する…!」

 

アモルファージ・ヒュペル 攻撃力 2250→2050

 

その光景を前に絶望感に打ちひしがれた様子を見せるデュエル戦士、その姿に失望を覚えたかの様にターンを進める大男。

 

「メインフェイズに入り、さっき手札に加えたスケール3のノーテスを、ペンデュラムスケールにセッティング…!」

 

ペンデュラムスケール(青):3(アモルファージ・ノーテス)

 

アモルファージ・ヒュペル 攻撃力 2050→2150

 

「次にLPを1000ポイント払って、チキンレースの効果発動…!ぐ、あぁ…!

効果で俺は1枚ドロー…!」

 

???? LP 3000→2000

 

さっさと終わらせると言いながらもやれるだけの事はやろうと言わんばかりの光景、大男はLPを再び削りながらアドを稼いでいく。

 

「さあ再び舞い降りろ!ペンデュラム召喚!罠を見破る強欲『アモルファージ・プレスト』!無用な殺生を憎む憤怒『アモルファージ・オルガ』!そしてキャヴム!」

 

アモルファージ・プレスト

ペンデュラム・効果モンスター

地属性

ドラゴン族

レベル 4

守備力 1950→2650

 

アモルファージ・オルガ

ペンデュラム・効果モンスター

地属性

ドラゴン族

レベル 4

攻撃力 1650→2350

 

アモルファージ・ヒュペル 攻撃力 2150→2450

アモルファージ・キャヴム 守備力 2050→2750

 

それを裏付けるかの様に新たに登場するモンスター達、1体目は針鼠の様に数多の針を持った赤茶色のドラゴン、ヒュペル、2体目は狼の様な生物を無理矢理組み込んだ姿の銀色のドラゴン、オルガ。

 

「そしてプレストとキャヴムをリリース!さあ君臨せよ、無様なる屍を消し去る虚飾の龍よ!ペンデュラムアドバンス!『アモルファージ・イリテュム』!」

 

アモルファージ・イリテュム

ペンデュラム・効果モンスター

地属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 2750→3350

 

アモルファージ・ヒュペル 攻撃力 2450→2350

アモルファージ・オルガ 攻撃力 2350→2250

 

そして決め手とばかりに君臨したのは、禍々しい気配を発する紫色のドラゴン、イリテュム。

 

「バトルフェイズに入る!

ヒュペルで古代の機械猟犬を攻撃!」

「ぐぁ!?」

 

アモルファージ・ヒュペル 攻撃力 2350 VS 古代の機械猟犬 攻撃力 1000

 

????(青) LP 4000→2650

 

「イリテュムでトドメだ!」

「がはぁ!?」

 

????(青) LP 2650→-700 LOSE

 

「さて、美しくない奴は美しくない奴らしく、無様に生きながらえて貰おうか…!」

 

自らの勝利でデュエルを終えた大男は、指先から『何か』を伸ばしながら、デュエル戦士に近づいて行く…!




現在活動報告にて、100話到達記念コラボ祭でコラボしていただける方を募集していましたが、多くのコメントを頂きましたので締め切りとさせて頂きます。


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89話_アンドバリの指輪

注:今話では遊矢がかなりゲスいです(今に始まった事ではありませんが)。


「申し上げます!各交戦地点でデュエル戦士が次々と謀反を引き起こしております!」

「各地で反旗を翻したデュエル戦士達が、近くにいるデュエル戦士達を次々と襲撃している模様!」

「ユーリ様、謀反人共の勢いは留まる事を知りません!各地で大混乱が発生しております!」

 

シティ郊外に設けられた、アカデミアの侵攻作戦本部。

ランサーズに加入する形でシンクロ次元に潜入している柚子とセレナを確保すべく派遣された部隊の本拠たるこの場所で、前線でのピンチを知らせる連絡が次々と、指揮官である『融合次元の遊矢』ユーリに報告された。

ペンデュラム召喚の発見等で最近その脅威を増してきているスタンダード次元でアカデミアの侵略に対抗すべく結成された私兵部隊『ランサーズ』と、弱肉強食の文化が良くも悪くも根付いているシンクロ次元の精鋭部隊『デュエルチェイサー』の存在はあれど、百戦錬磨のデュエル戦士を数百、数千と抱えたアカデミア、その組織的な進撃を以てすれば楽勝だと、当初は誰もがそう思っていた。

『古代の機械』カテゴリデッキに統一する事で、味方同士で融合素材を融通し合う事で融合モンスターを並べつつ、攻撃時に特定のカードの発動・効果を封じる事で抵抗を許さない、そんなチームワークを重視した数の暴力で各個撃破をしていけば勝てない相手はいないと、誰もが信じて疑わなかった。

だが蓋を開ければどうだ、開戦早々に前線でそのチームワークを揺るがしかねない事態が、数の暴力が逆の意味で成されそうな事態が、立て続けに報告されている。

そんな状況にユーリは、不機嫌だと言わんばかりの表情を隠さない。

 

「榊遊矢、そうだ、アイツだ…!」

 

その脳裏には、今回と同じ様な任務でスタンダード次元に降り立った際に同行していたデニスが突如殺害され、その場で遭遇して問答無用でデュエルを挑まれ、アカデミアにて封印されていた筈の『三幻魔』を駆使した先攻1キル、しかもアクショントラップなるカードを駆使したルール破りによるそれを行った、『スタンダード次元の自分』遊矢の存在が過っていた。

ペンデュラム召喚を最初に実行したとか、『ランサーズ最高指揮官』としてその設立に関与したとか、とにかく色々とアカデミア内で噂になっている遊矢、だが何よりユーリにとっては、アカデミアでもトップクラスの実力を誇る自分が文字通り何もさせて貰えず、尻尾撒いて逃げるしか無かった屈辱を受けた存在として、任務だとか仕事だとかの前に誰よりも潰すべき存在と化していた。

そんな遊矢がまたしても自分の、アカデミアの脅威として立ちはだかっているという事実に、その機嫌は急降下して行った。

 

「榊遊矢、君は何処まで僕を邪魔する気なのかな…!

其処までやると言うなら、僕にも、いや僕達にも考えがあるよ…!」

 

そんな中、そう呟くユーリの側に、1人のデュエリストが転送されて来た。

 

「待っていたよ。じゃあ行こうか、素良(・・)

「かしこまりました、ユーリ様…」

 

------------

 

さて、その報告で挙げられたデュエル戦士の謀反は、どの様に繰り広げられるか。

 

「う、うぅ、が、あぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「さあ仕事の時間だ。俺の期待を裏切ったんだ、その落とし前は身体で払って貰うぞ…!」

 

先程のデュエルで勝利を手にした、アモルファージ使いの大男、セルゲイ・ヴォルコフが指先から伸ばした『何か』をデュエル戦士の首筋に突き当てたその瞬間、デュエル戦士は苦悶の声を上げるもセルゲイはそれを意に介す事無く、作業を進めて行く。

そして、

 

「あ、あぁぁ…」

「さあ行って来い。敵はアカデミアだ」

「はっ!さあ行くぞ!」

『了解!』

 

従う筈も無い命令を下して来たセルゲイに、先程まで敵対していた筈のセルゲイに対して何の疑問も抱く事無く従い、全隊が1つの方向、アカデミアの本拠地点がある方向へと向かって行く。

まさかの事態を引き起こしたであろうセルゲイ、その指先、正確には指と爪の間からは触手の様な物が伸びていた。

 

「便利で、尚且つ美しい物だ。この『合成生体仕様素体』だったか、俺の新しい身体は。こんな物を思い付き、瞬く間に作り上げた榊遊矢…

エンタメデュエリストを称するだけはある『魅せる』デュエルスタイル、『世界はありのままで良い』を掲げる優しさに満ちた精神、だが一方でこの身体を作り上げる無茶苦茶な発想、障害を潰す為にあらゆる手段を尽くすその凶悪な戦略眼、実に歪で、それでも尚、格別に美しい…!

榊遊矢、お前の側に居れば、俺は最高の『美しさ』を味わえるだろう!」

 

その触手を引っ込めつつ、セルゲイは狂った様な笑みを浮かべながら、新たなる標的が待っている前線へと向かって行く。

 

------------

 

セルゲイが遊矢と出会ったのはほんの数日前の事、自らを管理下に置いていたロジェに連れられた遊矢との顔合わせの場だった。

その場でロジェが、遊矢がシティの創世主である不動遊星の生まれ変わりである事、デュエルアカデミアなる組織が企てている別次元への侵攻を阻止する為にスタンダード次元にて結成された私兵部隊『ランサーズ』の最高指揮官である事、そして今、ロジェに代わって自らを管理する存在となった事を説明していたが、当のセルゲイは全く聞く耳を持っていなかった。

その時のセルゲイは、髪色こそ奇抜極まりないが『美少年』という概念を徹底的に具現化したと言って良い端正な顔立ちに秘められた、遊矢の美しき精神を一目で見抜き、心を奪われていたのだ。

 

「彼を抑え込んでいる制御装置を全て外しておくように。これでは宝の持ち腐れだ」

「遊星様、宜しいのですか?コイツはあの『デュエリストキラー』、数十ものデュエリストを再起不能に追い込んだ凶暴な犯罪者ですよ?」

「仮にそうなっても私が鎮圧する。それよりも彼の実力を殆ど発揮出来ない事態が問題だ。

 

無理矢理抑え込み、強引に動作させるのではない、彼が実力を発揮しやすい様、此方の思いの通りに動いてくれる様、お膳立てする事こそ最優の制御だ。その為の、素体の設計案を出しておく。彼の身体を、これに換えて置くように。厳しそうなら、私も開発に加わる」

「は、ははっ!」

 

そんな遊矢と研究員のやり取りも、セルゲイの耳には入っていなかった。

 

------------

 

こうした経緯で開発された、全身サイボーグであるセルゲイの新しい身体『合成生体仕様素体』、所謂一般的なサイボーグのイメージとは違い、その見た目は人間とほぼ変わらないが、その全身には細胞型生体ナノマシンが組み込まれており、常人を逸した身体能力と感覚等々を、セルゲイ本人の意志で適時発揮する事が出来る(分かりやすい例で言えば、メタルギアライジングのラスボスであるスティーブン・アームストロング)。

更にそのナノマシンを増殖、爪の間から触手の様な物として射出し、生物に突きたてる事でナノマシンを感染させ、血液を循環する中で骨格や内蔵、脳神経にまで侵食し、セルゲイの、引いてはその管理者である遊矢の思いのままに動かす事まで出来る様になる。

現在各地で発生しているデュエル戦士の謀反、それはセルゲイが前線のデュエル戦士にナノマシンを感染させた他、スタンダード次元において捕えたデュエル戦士達をもナノマシンを感染させ、前線に送り込んだ結果、遊矢が立案した『アンドバリの指輪』作戦の結果なのだ。

 

「ついさっきまで味方であった隣のデュエル戦士が、ふとした瞬間に容赦なく自分に刃を振るう。これがアカデミアにとって、チームワークを重視するデュエル戦士達にとって余りにも強烈な打撃となるだろう。その士気や戦力は大幅に弱体化するに違いない。そんな中でアカデミアの方針に疑問を呈し、自らの意志で離反するデュエル戦士も少なからず出る筈だ。これまではエクシーズ次元とかで好き勝手してくれた様だが、これからはずっと俺の、俺達『ランサーズ』のターンだ…!」

 

そんな、自分の思い通りの展開となっている状況に、遊矢は邪悪な笑みを隠す事無く声を上げる。

その様子からは、エンタメデュエリストとして知られる彼の姿は何処にも、

 

「カード手裏剣か、この世界にも使い手がいたとはな…」

 

と、そんな彼を狙って何処からともなく飛んで来た、1枚のカード。

それを事前に察知し、飛来する様を見る事無くキャッチした遊矢は、何気なくそれを見た。

カードフレームは白、イラストも効果テキストも、というかアイコンもカード名すらも無い、所謂『ブランク』カード、だがその効果テキスト欄に、何やらメッセージらしき物が書かれていた。

 

「お、メッセージが書かれているな。何々…

『東広場にて待つ。勇気があるなら来るが良い。K』か、これはまたベタな挑発だな…」

 

------------

 

「榊遊矢、でありますか?まさか本当に来るとは思わなかったであります」

「ああ。そう言うって事はアンタか、この果たし状をぶん投げて来たのは」

「ええ、そうであります」

 

遊矢の下へ、メッセージが書かれたカード手裏剣が飛来してから僅か数分の事、遊矢はそのメッセージに従って東広場に到着、其処にはアカデミアのデュエリスト、キサラが待ち受けていた。

 

「罠の可能性や、最高指揮官として本部を空ける事のリスクは考えなかったのでありますか?」

「考えたが、ああもあからさま過ぎて、却ってそれは無いと判断した、仮に仕掛けられていても俺にはそれに対処し切る術があるし。それに戦局は既に俺達の手中だ、俺があれこれ言わずとも俺達の勝利は揺るがない物となっている」

「随分な自信でありますな、ですがそう言い切れる状況なのも事実、何とも歯がゆい気分であります。プロフェッサーが貴方を、貴方達ランサーズを脅威と見ていたのもこれで思い知ったであります」

 

自らの挑発にあっさり乗った遊矢の行動に疑念を覚えたのか、色々と問いかけるキサラに対し、全て考慮した上での事だと答える遊矢、事実、アンドバリの指輪作戦によってアカデミア勢は壊滅状態に陥っている、撤退も秒読み段階となっていた。

 

「さて、前置きは此処までにするであります。私もデュエリストの端くれ、ならば此処から先はデュエルで語るであります!」

「OK、そうこなくっちゃな!」

 

その応答を早めに切り上げたキサラ、次の瞬間には自らのデッキを装填したデュエルディスクを構え、それを見た遊矢もまた同じく構えを取った…!

 

「そう言えば名乗っていなかったでありますな。私はデュエルアカデミア近衛部隊『ホルアクティ・フォース』リーダー、キサラ・カルメル!榊遊矢、貴方を討つであります!」

「なら俺も名乗るか!俺はランサーズ最高指揮官、榊遊矢!次元世界を混乱に陥れるアカデミアの兵よ、此処で倒す!行くぞ!」

 

そして、ランサーズとアカデミア、両陣営で最強クラスの決闘者同士によるデュエルが今、始まった…!



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90話_青き眼の女帝

「アクションフィールド、オン!『クロス・オーバー』!」

「周囲にカードがばらまかれた…!

成る程、アクションデュエルでの、そっちの土俵での戦いと言う事でありますな。良いでしょう、受けて立つであります!」

 

俺がクロス・オーバーを発動すると同時に周囲にばらまかれたアクションカードの存在を見て一瞬驚いたが、直ぐに状況を理解して身構えたキサラ。

成る程『ホルアクティ・フォース』という名の部隊は初めて聞いたが(セレナや一美、マージョリーは知らなかったみたいだし)、近衛部隊を称する集団のリーダーな事はある、これは本気で行かないとな…!

 

「戦いの殿堂に集いしデュエリストが!モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!フィールド内を駆け巡る!見よ、これぞデュエルの最強進化系!アクショーン!」

「「デュエル!」」

 

先攻 Kisara LP 4000 VS 後攻 Yuya LP 4000

 

「私の先攻であります!

まずは手札の『太古の白石(ホワイト・オブ・エンシェント)』を墓地へ送って魔法『ワン・フォー・ワン』発動!」

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

太古の白石?何処かで聞いた様な、いや違うか…?

 

「ワン・フォー・ワンの効果で、デッキから『青き眼の乙女』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

青き眼の乙女

効果モンスター/チューナー

光属性

魔法使い族

レベル 1

攻撃力 0

 

あ、青き眼の乙女!?

青き眼の乙女と言ったら、効果対象になるだけであの『青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)』を何処からでも特殊召喚出来るモンスターじゃねぇか!

と言う事はキサラのデッキは恐らく『青眼の白龍』、このデッキで上手く立ち回れるかどうか…!

と言うか、

 

「チューナーモンスター?アカデミアでは融合召喚しか扱っていないと聞いていたが…」

「何を言っているでありますか?良いカードは良いカード、其処に融合も儀式も、シンクロもエクシーズも無い。ただそれだけの事であります」

 

成る程、アカデミアに属するデュエル戦士も皆が皆、融合召喚マンセーな奴では無い、という事か。

もし立場が違っていたら良い話し相手になれたんだがな…

 

「次にフィールド魔法『光の霊堂』を…

あ、あれ、開かない…!

こんな時に故障でありますか…!」

 

あれ、何だこのデジャヴ。

 

「アクションデュエル中、フィールド魔法ゾーンにはアクションフィールドが既に発動された状態となっていて、如何なる手段でもそれをフィールドから離す事は出来ない!その代わりにフィールド魔法は、永続魔法として魔法・罠ゾーンで発動する事が出来る!」

「そ、そうでありましたか、見苦しい所を見せたであります。では改めてフィールド魔法『光の霊堂』を永続魔法として発動!」

 

光の霊堂

フィールド魔法(永続魔法扱い)

1:このカードがフィールドゾーンに存在する限り、自分は通常召喚に加えて1度だけ、自分メインフェイズに光属性・レベル1チューナー1体を召喚出来る。

2:1ターンに1度、自分フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動出来る。手札・デッキから通常モンスター1体を墓地へ送る。対象のモンスターの攻撃力・守備力はターン終了時まで、墓地へ送ったモンスターのレベル×100アップする。

3:墓地のこのカードを除外して発動出来る。デッキから『滅びの爆裂疾風弾(バーストストリーム)』1枚を手札に加える。

 

遊勝塾に入ったばかりの頃のマリアみたいなドジを披露したキサラの姿にほっこりしつつも、発動されたフィールド魔法がどの様な物か、警戒を強めつつ、アクションカードを取りに行く。

 

「続いて今発動した光の霊堂の効果発動!対象は乙女であります!」

 

っ!対象を取る効果持ちだったのか!

 

「それにチェーンして対象となった青き眼の乙女の効果発動!

まずは青き眼の乙女の効果でデッキから『青眼の白龍』を攻撃表示で特殊召喚!」

『ギャォォォォォォォォォォォォ!』

 

青眼の白龍

通常モンスター

光属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 3000

 

コイツが、コイツが青眼の白龍、それをリアルソリッドビジョンで映し出した姿…!

その流麗な白き体躯に、アニメでの海馬瀬人さながらに『ふつくしい』と呟きそうになるが、一方でその威圧感は半端ない、流石は未だ通常モンスターで文字通り『強靭・無敵・最強』を誇るドラゴンだ…!

 

「その後、光の霊堂の効果でデッキから2枚目の青眼の白龍を墓地へ送り、青き眼の攻守を800アップさせるであります」

 

青き眼の乙女 攻撃力 0→800

 

まあこのパンプアップ効果はオマケと言っても良いだろう、それよりもフィールドと墓地に其々1体、青眼の白龍がいるという事、フィールドには更にレベル1チューナーがいるという事を重く見るべきだ。

 

「更に『青き眼の祭司』を召喚!」

 

青き眼の祭司

効果モンスター/チューナー

光属性

魔法使い族

レベル 1

攻撃力 300

 

またレベル1のチューナー、しかも『青き眼』モンスターか。

キサラの場に登場した、祭司というカード名の通りの出で立ちをしたおっさんを前に、俺はキサラがまだ暫く動いて来そうだと直感した。

 

「では行くであります!私はレベル8の青眼の白龍に、レベル1の祭司をチューニング!いざ飛来せよ、青き眼を持ちし龍の精霊よ!その眼は亡者を、団結を否定する!シンクロ召喚、レベル9!『青眼の精霊(スピリット)龍』!」

 

青眼の精霊龍

シンクロ・効果モンスター

光属性

ドラゴン族

レベル 9

守備力 3000

 

その読み通りシンクロ召喚の演出が繰り広げられ、その後には透き通った体躯のブルーアイズ、青眼の精霊龍がいた。

 

「まだまだこれからであります!光の霊堂がフィールドにある限り、私は通常召喚に加えて光属性のレベル1チューナーを召喚出来るであります!この効果で『青き眼の巫女』を召喚!」

 

青き眼の巫女

効果モンスター/チューナー

光属性

魔法使い族

レベル 1

攻撃力 0

 

まさか召喚権を増やす効果まであるとはな…

まだまだ止まりそうにないキサラの展開、今度は名前の通り巫女の出で立ちをした少女が出て来た。

 

「此処からがこのデッキの真骨頂であります!先程シンクロ召喚の素材として墓地へ送られた祭司をデッキに戻して効果発動!対象は巫女であります!

それにチェーンして巫女の効果発動!」

 

って、巫女も対象に取った時の効果持ちか!

 

「まずは巫女の効果で、フィールドの乙女を墓地へ送り、デッキから3枚目の青眼の白龍と、『青眼の(オルタナティブ)白龍』を手札に加えるであります!

次に祭司の効果で、巫女を墓地へ送り、青眼の白龍を攻撃表示で蘇生するであります!蘇れ、我が最強の僕!青眼の白龍!」

『ギャォォォォォォォォォォォォ!』

 

まさか対象に取るだけで『ドラゴン・目覚めの旋律』を使えるとは驚きだ、まあフィールドのモンスターを墓地送りにするというコストは決して安くは無いが。

そしてまた来たか、青眼の白龍…!

 

「まだまだ行くでありますよ!今手札に加えた青眼の白龍を貴方に見せる事で、手札の青眼の亜白龍を攻撃表示で特殊召喚!」

『グォォォォォォォォォォォォォ!』

 

青眼の亜白龍

効果モンスター

光属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 3000

 

まだ出て来るか、今度は青眼の白龍そっくりな出で立ちの、でも何処か違和感がある龍か。

 

「青眼の亜白龍は、フィールド上では『青眼の白龍』として扱うであります!

そして、私はフィールドに2体入る青眼の白龍を墓地へ送って融合!2体の青き眼を持ちし白き龍達よ、今こそ1つとなり、強靭なる力で敵を蹂躙せよ!融合召喚!『青眼の双爆裂(ツイン・バースト)龍』!」

『『ギャォォォォォォォォォォ!』』

 

青眼の双爆裂龍

融合・効果モンスター

光属性

ドラゴン族

レベル 10

攻撃力 3000

 

その龍と青眼の白龍が融合召喚の演出と共に混ざり合った後には、2つ首となった青眼の白龍の姿。

青眼の白龍の融合モンスターと言うと、3体融合させたあの『青眼の究極竜(アルティメットドラゴン)』がいるが、他にもいたのか。

それにしても、レベルが2上がっているにも関わらず攻撃力は3000のまま、という事は強烈な効果を持っている、という事か…?

 

「私はこれでターンエンドであります。エンドフェイズに、ワン・フォー・ワンのコストで墓地へ送った太古の白石の効果発動!

デッキから『白き霊龍』を攻撃表示で特殊召喚!本来ならブルーアイズモンスターしか特殊召喚出来ないでありますが、白き霊龍はルール上ブルーアイズ扱い、よって特殊召喚出来るであります!」

 

白き霊龍

効果モンスター

光属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 2500

 

Kisara

LP 4000

手札 1(青眼の白龍)

モンスター 青眼の精霊龍(守備表示)

      青眼の双爆裂龍(攻撃表示)

      白き霊龍(攻撃表示)

魔法・罠カード 光の霊堂(永続魔法扱い)

 

いやこれ俺が言えた話では無いが、本当に先攻1ターン目の動きなのか?

キサラのフィールドにはシンクロモンスターである精霊龍、融合モンスターである双爆裂龍、そして今しがたリクルートされた真っ白な色合いのドラゴンの3体。

どれもが最上級モンスターで、そのステータスは凄まじい物がある。

だが、それを突破してこそデュエルだ!

 

「俺のターン!ドロー!」

「スタンバイフェイズに精霊龍をリリースして効果発動!

エクストラデッキからドラゴン族・光属性のシンクロモンスター1体を守備表示で特殊召喚するであります!いざ君臨せよ、蒼き眼を持ちし白銀の龍よ!その眼は仲間を守り、蘇らせる!『蒼眼の銀龍』!」

 

蒼眼の銀龍

シンクロ・効果モンスター

光属性

ドラゴン族

レベル 9

守備力 3000

 

と意気込んでドローした次の瞬間、キサラはまたも動いた。

精霊龍が眩い光を放ち、それが晴れた後には、銀色の龍が君臨していた。

コイツの効果は知っている、確か、

 

「特殊召喚に成功した銀龍の効果発動!

これで次の私のターン終了まで、私のドラゴン族モンスターは効果対象にならず、効果破壊もされないであります!貴方が手にしたそのアクションカードが何であろうと、私のドラゴン達を除去するのは出来ないであります!更に双爆裂龍は自身の効果で戦闘破壊されないであります!このターンで私のフィールドを真っ新にするのは不可能であります!」

 

そう、特殊召喚した段階で自分のフィールドにいるドラゴン族モンスターに効果耐性と破壊耐性を与えるんだよな。

後やっぱり、双爆裂龍には厄介な効果があったか。

だが、

 

「それで行いたい効果処理は終わりか?ならメインフェイズに入る。まずはアクションカード『奇跡』を捨てて魔法『ペンデュラム・コール』発動!」

「ゑ?」

 

ペンデュラム・コール(制限カード)

通常魔法

『ペンデュラム・コール』は1ターンに1枚しか発動出来ず、『魔術師』ペンデュラムモンスターのペンデュラム効果を発動したターンには発動出来ない。

1:手札を1枚捨てて発動出来る。カード名が異なる『魔術師』ペンデュラムモンスター2体をデッキから手札に加える。このカードの発動後、次の相手ターン終了時まで自分のペンデュラムゾーンの『魔術師』カードは効果では破壊されない。

 

「ペンデュラム・コールの効果で、デッキから『星読みの魔術師』と『慧眼の魔術師』を手札に加える!」

「(し、しまったであります!このまま精霊龍を残しておけば、その永続効果で榊遊矢のペンデュラム召喚による大量展開を制限出来たばかりか、墓地で発動するカードも1回だけながら無効に出来たであります!これはとんだプレイミス、このキサラ・カルメル、一生の不覚であります!)」

 

そもそも銀龍の効果による耐性付与は特殊召喚が成功した後にチェーンブロックを組む誘発効果、もし今の状況で、俺が除去系のアクションカードを持っていたとしても、精霊龍の効果で銀龍を出そうとした所でそれにチェーンして発動していた、アクションマジックはスペルスピードが2、発動条件にもよるが基本的にフリーチェーンだからな。

此処はサクリファイス・エスケープの形で発動するのがベストだったな、勿論、通常魔法である『地割れ』や『ブラック・ホール』の存在を考えるとプレミとは言えないが。

 

「次に『EMドクロバット・ジョーカー』を召喚!」

 

EMドクロバット・ジョーカー(制限カード)

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 4

攻撃力 1800

 

そんな話は一先ず置いて、まずはもうお馴染みの万能サーチカードであるドクロバット・ジョーカーを召喚する。

それにしてもコイツも制限行きか、召喚時だけなら大丈夫だろうと思ったんだが、エアーマンといいシャドー・ミストといいコイツといい、自分と同名以外のカテゴリに属する奴なら何でもサーチ可能なモンスターは制限行きになる運命なのか…

え、セプター?メガラプター?アーアーキコエナーイ(棒

 

「召喚したドクロバット・ジョーカーの効果発動!

デッキから『竜脈の魔術師』を手札に加える!

続いて手札の『調律の魔術師』を墓地へ送ってこっちもワン・フォー・ワン発動!

デッキから2枚目の調律の魔術師を守備表示で特殊召喚!」

 

調律の魔術師

効果モンスター/チューナー

闇属性

魔法使い族

レベル 1

守備力 0

 

「特殊召喚した調律の魔術師の効果発動!

400ライフポイントを、お前は回復し、俺はダメージとして受ける!っ!」

 

Kisara LP 4000→4400

Yuya LP 4000→3600

 

「俺がダメージを受けた事で手札の『ダメージ・メイジ』の効果発動!

このカードを守備表示で特殊召喚し、受けたダメージ分のLPを回復する!」

 

ダメージ・メイジ

効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 3

守備力 1200

 

Yuya LP 3600→4000

 

次は、柚子とのデュエルでも行った調律の魔術師によるコンボでモンスターを並べる。

ところで気付いただろうか、今回使っているデッキは、この前の柚子とのデュエルで使った『調律Em』では無く、かと言って『オッドアイズ』でも無い。

今回使っているのは、つい最近新しく構築した『魔術師』デッキだ、と言っても今まで使っていたカードが多過ぎてイマイチそうだとは思えないが。

何故新たにデッキを構築したか、それはまた後で説明しよう。

 

「俺はレベル4のドクロバット・ジョーカーに、レベル1の調律の魔術師をチューニング!集いし知識が、新たなる可能性へと導く!光差す道となれ!シンクロ召喚、レベル5!『TG(テックジーナス)ハイパー・ライブラリアン』!」

 

TGハイパー・ライブラリアン(制限カード)

シンクロ・効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 5

攻撃力 2400

 

今しがた展開した調律の魔術師とドクロバット・ジョーカーを用いてシンクロ召喚したのは、遊星時代の仲間であったブルーノ、その正体にしてイリアステルの幹部であったアンチノミーが使用していた『TG』モンスター、その中でも図抜けた汎用性を誇るシンクロモンスター、ハイパー・ライブラリアン。

レベル5でありながら攻撃力2400というハイパワーさもさる事ながら、シンクロ召喚の度にドロー出来るというその無茶苦茶な能力、しかもそれを容易に準備出来る素材の緩さから猛威を振るい、登場から1年を待たずに制限カードとなり、未だに解除されていない。

 

「更に俺は、スケール1の『星読みの魔術師』と、スケール5の『慧眼の魔術師』を、ペンデュラムスケールにセッティング!」

「シンクロ召喚の後にペンデュラム召喚…

まさか、まだ存分に動ける余地があると言うのでありますか…?」

 

ペンデュラムスケール(青):1(星読みの魔術師)

ペンデュラムスケール(赤):5(慧眼の魔術師)

 

ああ、その通りだ、それを今から見せてやる!

 

「これでレベル2から4のモンスターが同時に特殊召喚可能!

揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!出でよ、我が僕のモンスター達よ!レベル4、竜の魂と心通わす快活な魔術師『竜脈の魔術師』!そしてレベル2、52の絵札を司る少女『EMトランプ・ガール』!」

 

竜脈の魔術師

ペンデュラム・通常モンスター

地属性

魔法使い族

レベル 4

攻撃力 1800

 

EMトランプ・ガール

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 2

攻撃力 200

 

よくよく考えたらシンクロ次元に来てからペンデュラム召喚するの初めてだな。

そう思いながらペンデュラム召喚の演出と共に展開したのは龍脈の魔術師と、服の様々な所にトランプのスートを思わせる装飾が散りばめられた少女、トランプ・ガール。

だが、準備はまだ終わりじゃ無い。

 

「まだまだ行くぞ!俺のペンデュラムゾーンに『魔術師』が2枚セットされている事で、墓地にいる調律の魔術師の効果発動!

コイツを守備表示で蘇生する!

その後、特殊召喚したコイツの効果で、400ライフポイントを、お前は回復し、俺はダメージとして受ける!っ!」

 

Kisara LP 4400→4800

Yuya LP 4000→3600

 

これが、サムからこのカードを託されたばかりの時には無かった筈の効果が、このデッキを新たに構築した理由だ。

自己蘇生するチューナーがどれだけ凶悪か、それは嘗て厳しい制限を課されたゾンビキャリアやグローアップ・バルブ、スポーアを思い出せば分かるだろう。

この効果で蘇生すると、フィールドを離れた際に除外されてしまい、再利用が難しくなるし、蘇生した際にセルフバーンを受ける事になるが、それでも強力なのは間違い無い、その新たなる一面を活かす為に俺はこのデッキを構築した、無論この際、元々の一面を活かしたコンボはちゃんと組み込んだ。

さあ、此処からがスタートだ!

 

「俺は、レベル4の龍脈の魔術師と、レベル3のダメージ・メイジに、レベル1の調律の魔術師をチューニング!剛毅の光を放つ勇者の剣!今此処に閃光と共に目覚めよ!ペンデュラムシンクロ!現れろ、レベル8!『覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)』!」

 

覚醒の魔導剣士

シンクロ・効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 8

攻撃力 2500

 

シンクロ召喚の演出と共に、ハイパー・ライブラリアンに並び立つように登場したのは、モノクロを基調とした鎧に身を包み、双剣を武器とした魔導剣士。

え、髪型が遊星時代の俺そっくりだって?ああ、言われてみればそうだな。

 

「シンクロ召喚した覚醒の魔導剣士の効果発動!

それにチェーンしてハイパー・ライブラリアンの効果発動!

まずはハイパー・ライブラリアンの効果で、ドロー!

次に覚醒の魔導剣士の効果で、墓地からワン・フォー・ワンを回収する!」

 

そのステータスこそレベル8にしてはそれ程高くなく、故に効果の1つをこのデュエルで活かす事は難しいが、もう一方の効果である魔法カードのサルベージ、これが中々強い。

『魔術師』ペンデュラムモンスターをシンクロ素材にしなくてはならないとは言え、魔法カードを即座に回収できるのは強いよな、増してやそれが制限カードでもOKとなれば。

とは言えこれではまだ目前のブルーアイズ達を突破出来ない。

ならば、

 

「更に俺は、今シンクロ召喚したレベル8のシンクロモンスター、覚醒の魔導剣士に、レベル2のトランプ・ガールをチューニング!」

「な!?待つであります!そのモンスターはチューナーでは無いであります!」

「今からシンクロ召喚するシンクロモンスターは、俺のフィールドに存在する、ペンデュラム召喚されたペンデュラムモンスター1体をチューナーとして扱える!よってこれでシンクロ召喚出来る!平穏なる時の彼方から、あまねく世界に光を放ち、蘇れ!ペンデュラムシンクロ!現れろ、レベル10!『涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)』!」

 

涅槃の超魔導剣士

ペンデュラム・シンクロ・効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 10

攻撃力 3300

 

その魔導剣士とトランプ・ガールによってシンクロ召喚されたのは、青を基調とした服装と鎧に身を包み、右手に大剣を装備した魔導剣士。

その召喚条件こそ厳しめだが、その分効果は強烈だ。

 

「シンクロ召喚した涅槃の超魔導剣士の効果発動!

それにチェーンしてハイパー・ライブラリアンの効果発動!

まずはハイパー・ライブラリアンの効果で、ドロー!

次に涅槃の超魔導剣士の効果で、墓地からダメージ・メイジを回収する!」

「手札が4枚に戻った…!

なんて供給力でありますか…!」

 

ほんとそれな、何しろ1回のシンクロ召喚でドローとサルベージを同時に行っているんだから。

しかもそれで、更なる展開が出来る!

 

「そして、魔法『ミラクルシンクロフュージョン』発動!」

 

ミラクルシンクロフュージョン

通常魔法

1:自分のフィールド・墓地から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを除外し、シンクロモンスターを融合素材とするその融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

2:セットされたこのカードが相手の効果で破壊され墓地へ送られた場合に発動する。自分はデッキから1枚ドローする。

 

「ミラクルシンクロフュージョンの効果で、俺は墓地にいる覚醒の魔導剣士と、調律の魔術師を除外して融合!覇の理を会得せし神秘の魔導士よ、今こそ内に眠りし膨大なる魔力を解放せよ!シンクロ融合!『覇魔導士アーカナイト・マジシャン』!」

「し、シンクロ融合まで…!」

 

覇魔導士アーカナイト・マジシャン

融合・効果モンスター

光属性

魔法使い族

レベル 10

攻撃力 1400

 

覇魔導士アーカナイト・マジシャン 魔力カウンター 0→2

                     攻撃力 1400→3400

 

よし、これで双爆裂龍以外は倒せる!

 

「バトルフェイズに入る!まずは涅槃の超魔導剣士で銀龍を攻撃!トゥルース・スカーヴァティ!」

「くっ!」

 

涅槃の超魔導剣士 攻撃力 3300 VS 蒼眼の銀龍 守備力 3000

 

「戦闘破壊した涅槃の超魔導剣士の効果発動!

お前のLPを半分にする!フォルサティ・スカーヴァティ!」

「なっ!きゃぁ!」

 

Kisara LP 4800→2400

 

「続いてアーカナイト・マジシャンで白き霊龍を攻撃!」

「せめて受けるダメージは最小限に抑えさせて貰うであります!その攻撃宣言時、霊龍をリリースして効果発動!

手札から青眼の白龍を守備表示で特殊召喚!」

「ならそのままアーカナイト・マジシャンで青眼の白龍を攻撃!ヴォーパルブラスター!」

 

覇魔導士アーカナイト・マジシャン 攻撃力 3400 VS 青眼の白龍 守備力 2500

 

さて、此処でメインフェイズ2に入って、どうするか…

アーカナイト・マジシャンには、魔力カウンターを1つ取り除く事でカードを破壊するかドローするかを選べるんだが、銀龍の効果が残っている以上、破壊は無理、ならドローと行きたい所だが、此処で魔力カウンターを取り除くと、攻撃力が2400まで下がり、次のターンで戦闘破壊されてしまう。

かと言ってそのまま残しても、青眼の究極竜が出て来たら結局戦闘破壊される、というかブルーアイズにはあの条件付きサンダー・ボルトこと『滅びの爆裂疾風弾』がある。

よし、此処は動く!

 

「メインフェイズ2に入って、アーカナイト・マジシャンの魔力カウンターを1つ取り除いて効果発動!ドロー!」

 

覇魔導士アーカナイト・マジシャン 魔力カウンター 2→1

                     攻撃力 3400→2400

 

「カードを2枚セットしてターンエンド!」

 

Yuya

LP 3600

手札 2(うち1枚はダメージ・メイジ)

ペンデュラムスケール(青):1(星読みの魔術師)

ペンデュラムスケール(赤):5(慧眼の魔術師)

モンスター TGハイパー・ライブラリアン(攻撃表示)

      涅槃の超魔導剣士(攻撃表示)

      覇魔導士アーカナイト・マジシャン(攻撃表示)

魔法・罠カード セット×2

 

『遊矢も勿論だけど、あのキサラとか言う奴、凄まじい実力だね…

アクションデュエル未経験と言うハンデもあって一見遊矢が押している様に見えるけど、遊矢と互角に立ち回っていて尚、まだまだ手の内を全て明かしているとは思えない。『ホルアクティ・フォース』だか何だか知らないけど、アカデミアの近衛部隊を引っ張ると称する事はあるね…』

『ああ。運命とは分からない物だ、もし彼女がアカデミアで無ければ、赤馬零児に並ぶ遊矢のライバルとなっていただろうに…』

 

そうだな、ユベル、アストラル。

だから今この時だけは、それとは関係なしにこのデュエル、全力で臨む!

 

「私のターン!ドロー!

っ!来た…!」

 

俺のターンエンド宣言の後、キサラがドローした瞬間、カンコーンって効果音が聞こえた気がした。

まさか…!

 

「私は今引いた魔法『龍の鏡(ドラゴンズ・ミラー)』発動!」

 

龍の鏡

通常魔法

自分のフィールド上または墓地から、融合モンスターカードによって決められたモンスターをゲームから除外し、ドラゴン族の融合モンスター1体をエクストラデッキから特殊召喚する(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)。

 

やっぱり今引き龍の鏡か、となると出してくるのはやっぱり…!

 

「私は、墓地にある青眼の白龍3体を除外して融g」

 

キサラは俺の予想通り、青眼の究極竜を融合召喚して来る、そう身構えたその時だった。

 

「殺気!」

「くっ!誰だか知らないでありますが、とんでもない邪魔を…!」

 

アクションフィールド全体を包むかの様な殺気に、俺もキサラも飛び退き、

 

 

 

次の瞬間には俺達のいたアクションフィールドから何かが直撃した様な衝撃とそれによる土煙、

 

「やぁ榊遊矢、こんな所でデュエルしていたとはねぇ。お蔭で探す手間が省けたよ」

「お前…!」

「何のつもりでありますか、ユーリ…!」

 

それが晴れた後には『融合次元の俺』ことユーリが、歪んだ笑みを浮かべながらこっちに近寄って来る姿があった。



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91話_覇王襲来

「さぁて、この前の復讐(リベンジ)をさせて貰うよ。あの時は先攻1キルなんてふざけた事仕出かしてくれたけど、今度はそうは行かないさ。僕のエースも、君への怒りに燃えていてねぇ」

 

ホルアクティ・フォースのリーダーを名乗るデュエル戦士、キサラ・カルメルとのアクションデュエルの最中に乱入して来たユーリ、その強引にデュエルを中止させるやり方への怒りは勿論の事、デニスを殺害した事に対する憎悪、リンや瑠璃を強制拉致した事に対する敵意、色々な感情が俺の心中で渦巻いている。

コイツだけは、絶対に倒す!その想いを胸に抱き、デュエルディスクを構え、ユーリを待ち受ける。

が、それは、

 

「ユーリ、何様でありますか…!?」

「おや、君は確かホルアクティ・フォースのリーダーだっけ?邪魔だ、直ぐにその手を離しなよ」

「邪魔は貴様の方であります…!

私はプロフェッサーの命を受けて榊遊矢の始末を行っている身、貴様は柊柚子とセレナの確保を目的とした今作戦の指令を命ぜられた身、本部を離れて此処にいるのは筋違いであります…!」

 

同じくデュエルを中断された怒り等で憤りを隠そうともしないキサラがユーリの胸倉を掴みかかった事で水入りとなった。

俺と互角に立ち回り、ユベルやアストラルを感嘆させたデュエルタクティクス、そして中断された事に怒りを覚える程の決闘者としての誇りの高さ、そんな彼女の姿にアカデミアにも決闘者として素晴らしい存在がいるのだなと思い、だからこそ彼女とは決着を付けたかったと、ユーリへの怒りは増すばかりだった。

 

「その作戦が榊遊矢の策略でもうオジャンなんだよ、原因を叩き潰すのは当然の流れじゃないかな?」

「だとしても榊遊矢の始末を命ぜられたのは私、貴様はサポートに回るのが筋って物であります…!」

「あぁもう煩いなぁ、やっちゃってよ、素良(・・)

「はい、ユーリ様」

「っ、ちぃ!」

 

そんなキサラとユーリの押し問答が続いていた中、痺れを切らしたユーリが誰かに指示を送り、キサラへと殴りかからせた。

それを即座に察知したキサラが飛び退くも、その際に掴んでいた手を放した事でユーリはフリーとなり、再び俺へと向き直った。

って、ん?今、なんて…?

 

素良(・・)、とりあえずソイツを抑え込んでよ。僕は榊遊矢を叩き潰してくるから」

「はい、ユーリ様」

「くっ、まさか裏切り者を洗脳して従えていたとは…!」

 

素良、だと…!?

 

「さて、これで邪魔者はいなくなった。始めようか、榊遊矢。僕と君のデュエr」

「素良を…

 

 

 

返せ!」

 

その時、俺の頭の中で、何かがブツンと切れた様な音がした。

 

------------

 

「ユベル、結界を展開しろ!アストラル、ゼアルチェンジだ!」

『こっちは任せてよ!遊矢達は、其処のクズを叩き潰して!』

『ああ、任せろ!私としても、あのデュエリストの風上にも置けないクズを許しはしない!私は、私自身と遊矢でオーバーレイ・ネットワークを構築!行くぞ、遊矢!』

「い、一体何が起こっているでありますか…?」

 

ユーリに掴みかかっていたキサラが、洗脳によってユーリに従っていた素良の襲撃を受けて少しばかりの時間が経過した時だった。

何かが切れる音と共に遊矢を中心とした半径数十メートルが謎の威圧感に包まれ、その遊矢が何らかの指示を飛ばすと共に、何故か彼を媒体としたエクシーズ召喚をするかの様な演出が繰り広げられる。

そして何かが遊矢へと入り込むと同時に、彼の身体が変化を遂げた。

トマトの様な髪型が逆立つと同時に、赤毛の部分が全て金色に染まり、眼の色が右目は金色、左目は青のオッドアイと化し、額のゴーグルはスカウターの様な形状に変化して装着され、左腕に装着されたデュエルディスクは巨大な赤い籠手となって遊矢の左腕を全て覆い、オレンジ色のアンダーシャツは真紅の装甲と化す。

そして何にも覆われていない右腕には、赤い回路の様な物が『龍の頭』を模したシグナーの痣を起点に張り巡らされ、背中から翼の様な赤いエネルギーが噴出された。

 

「『絆は世界をも越える!強靭にして無敵!最強の絆はあらゆる障害を超越する!エクストラ・エクシーズ・チェンジ!ZEXAL(ゼアル)!』」

 

今この時、遊馬(遊矢の前世)の伝説は形を変えて、舞い降りた…!

 

「『我は貴様を許しはしない。我が審判の下、貴様に処断を下す!』」

「くっ所詮は虚仮脅しだ!勝つのはこの僕さ!」

「「『デュエル!』」」

 

先攻 Joeri LP 4000 VS 後攻 Yuya LP 4000

 

「僕の先攻!

まずは手札の『にん人』を墓地へ送って魔法『ワン・フォー・ワン』発動!」

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

「ワン・フォー・ワンの効果でデッキから『イービル・ソーン』を守備表示で特殊召喚!」

 

イービル・ソーン

効果モンスター

闇属性

植物族

レベル 1

守備力 300

 

先攻をとったユーリがワン・フォー・ワンの効果で特殊召喚したのは、緑色の蔦から花と手榴弾の様な物をぶら下げた植物、イービル・ソーン。

 

「次にイービル・ソーンをリリースして効果発動!

君に300ポイントのバーンダメージを与えて、デッキからイービル・ソーンを2体、攻撃表示で特殊召喚!イービル・バースト!」

 

Yuya LP 4000→3700

 

レベルが1と低く、攻守も最低ランクのイービル・ソーン、その効果も同名カード2枚を同時にリクルート出来はするが、どちらも攻撃力100のモンスターを攻撃表示で出さざるを得ず、おまけの様に付いているバーンダメージも場合によってはデメリットと化してしまう場合もある。

が、この2体リクルートこそがユーリにとっては重大なメリットとなる。

 

「さあ行くよ、僕のエースよ!魔法『置換融合』発動!」

 

置換融合

通常魔法

このカード名はルール上『融合』として扱う。

1:自分フィールドから融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

2:墓地のこのカードを除外し、自分の墓地の融合モンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターをエクストラデッキに戻す。その後、自分はデッキから1枚ドローする。

 

「僕はフィールドにいる2体のイービル・ソーンを融合!魅惑の香りで虫を誘う二輪の美しき花よ、今ひとつとなりて、その花弁の奥の地獄から、新たな脅威を生み出せ!融合召喚!現れろ、飢えた牙持つ毒龍!『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』!」

 

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン

融合・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 2800

 

それはとある融合モンスターの素材を簡単に揃えられるという事、この2体を素材とし、融合召喚の演出と共に登場したのは、紫を基調とした禍々しい体躯とオーラを持つドラゴン。

 

「カードを1枚セットしてターンエンド!」

 

Joeri

LP 4000

手札 1

モンスター スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン(攻撃表示)

魔法・罠カード セット

 

「『我のターン!最強のデュエリストによるデュエルは、全てが必然!ドローカードさえも、デュエリストが創造する!シャイニング・ドロー!

我はまず、今引いたカードを捨てて魔法『ペンデュラム・コール』発動!』」

「はっ、あんな勿体ぶったドローをした割に、それを手札コストにするの?笑えるね」

 

ペンデュラム・コール(制限カード)

通常魔法

『ペンデュラム・コール』は1ターンに1枚しか発動出来ず、『魔術師』ペンデュラムモンスターのペンデュラム効果を発動したターンには発動出来ない。

1:手札を1枚捨てて発動出来る。カード名が異なる『魔術師』ペンデュラムモンスター2体をデッキから手札に加える。このカードの発動後、次の相手ターン終了時まで自分のペンデュラムゾーンの『魔術師』カードは効果では破壊されない。

 

「『ペンデュラム・コールの効果で、デッキから『貴竜の魔術師』と『相克の魔術師』を手札に加える。

次に『EMドクロバット・ジョーカー』を召喚!』」

 

EMドクロバット・ジョーカー(制限カード)

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 4

攻撃力 1800

 

後攻である遊矢のターン、そのドローでZEXALの力の1つ『シャイニング・ドロー』を繰り出しながらあっさりとそれを捨てるという不可解なプレイングに、ユーリが疑問を混ぜた形で挑発するも、遊矢はそれを意に介す事無く展開を進めて行く。

 

「『召喚したドクロバット・ジョーカーの効果発動!

デッキから『オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン』を手札に加える。

続いてフィールド魔法『天空の虹彩』発動!』」

 

天空の虹彩

フィールド魔法

『天空の虹彩』の2の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。

1:このカードがフィールドゾーンに存在する限り、自分のペンデュラムゾーンの、『魔術師』カード、『EM』カード、『オッドアイズ』カードは相手の効果の対象にならない。

2:このカード以外の自分フィールドの表側表示のカード1枚を対象として発動出来る。そのカードを破壊し、デッキから『オッドアイズ』カード1枚を手札に加える。

 

「『天空の虹彩の効果発動!

我がフィールドにいるドクロバット・ジョーカーを破壊し、デッキから『オッドアイズ・セイバー・ドラゴン』を手札に加える。

更に我は、スケール3の『相克の魔術師』と、スケール8の『オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン』を、ペンデュラムスケールにセッティング!』」

 

ペンデュラムスケール(青):3(相克の魔術師)

ペンデュラムスケール(赤):8(オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン)

 

「『これによりレベル4から7のモンスターが同時に特殊召喚可能!

揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!出でよ、我が僕のモンスター達よ!レベル4、華麗なる軽業師、EMドクロバット・ジョーカー!レベル7、世にも珍しき2色の眼を持ちし竜『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!同じくレベル7、異世界より舞い降りた2色の眼を持ちし竜『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』!そして同じくレベル7!白き輝きを纏った2色の眼を持ちし竜『オッドアイズ・セイバー・ドラゴン』!』」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2500

 

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2500

 

オッドアイズ・セイバー・ドラゴン

効果モンスター

光属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2800

 

そして、ペンデュラム召喚の演出と共に、ドクロバット・ジョーカー、ペンデュラム・ドラゴン、セイバー・ドラゴン、そして遊矢が新たに手にした、幻影の力を纏った新たなるオッドアイズ、ファントム・ドラゴンが姿を現した。

が、

 

「おっと、そのペンデュラム召喚の成功時、手札を1枚捨てて速攻魔法『超融合』発動!」

 

超融合(制限カード)

速攻魔法

このカードの発動に対して魔法・罠・モンスターの効果は発動出来ない。

1:手札を1枚捨てて発動出来る。自分・相手フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「僕は君のフィールドにいるドクロバット・ジョーカーと、スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンを融合!闇の力を取り込み、その真の力を呼び覚ませ、スターヴ・ヴェノム!

闇の力を取り込んだスターヴ・ヴェノムの効果発動!

君のフィールドにいるセイバー・ドラゴンの攻撃力分、ターン終了時までこのカードの攻撃力をアップさせる!」

 

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン 攻撃力 2800→5600

 

ユーリもまた動いた。

セットしていた超融合により、スターヴ・ヴェノムがドクロバット・ジョーカーを吸い込み、自らの身体に取り込んだ事でその力が解放、その攻撃力を倍増させた。

 

「『ならば手札の『貴竜の魔術師』の効果発動!

ペンデュラム・ドラゴンのレベルを3つ下げ、このカードを守備表示で特殊召喚!』」

 

貴竜の魔術師

効果モンスター/チューナー

炎属性

魔法使い族

レベル 3

守備力 1400

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル 7→4

 

だがその光景を目の当たりにして尚、遊矢は平静を崩す事無く展開する。

 

「『我はレベル4となったペンデュラム・ドラゴンに、レベル3の貴竜の魔術師をチューニング!2色の眼の龍よ!その赤き輝きを解き放ち、味方に活力を、敵に絶望を与えよ!ペンデュラムシンクロ、レベル7!『オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン』!』」

 

オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン

シンクロ・効果モンスター

炎属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2500

 

「『そして我は、セイバー・ドラゴンとファントム・ドラゴンでオーバーレイ!2体のレベル7モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!ペンデュラムエクシーズ!2色の眼の龍よ!その青き輝きを解き放ち、絶対零度で敵を制圧せよ!『オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン』!』」

 

オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン

エクシーズ・効果モンスター

水属性

ドラゴン族

ランク 7

攻撃力 2800

ORU 2

 

「『バトルフェイズに入る!メテオバースト・ドラゴンでスターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンを攻撃!』」

「はぁ?攻撃力5600のスターヴ・ヴェノムに攻撃だって?正気かい?」

「『その攻撃宣言時、アブソリュート・ドラゴンのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!

この攻撃を無効にし、たった今オーバーレイ・ユニットとして我の墓地へ送られたファントム・ドラゴンを守備表示で蘇生する!オッドアイズ・リボーン!』」

「まさか攻撃をも展開手段にするとはね…」

 

オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン ORU 2→1

 

そして、準備は整った…!

 

「『メインフェイズ2に入り、ペンデュラムスケールにセットされた相克の魔術師の効果発動!

これによりアブソリュート・ドラゴンはこのターン、レベル7モンスターとしてエクシーズ召喚の素材に使用出来る!

我はそのアブソリュート・ドラゴンとメテオバースト・ドラゴンでオーバーレイ!2体のレベル7モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!ペンデュラムエクシーズ!2色の眼の龍よ!その黒き輝きを解き放ち、刃向う敵を殲滅せよ!『覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン』!』」

「な、何なんだそのモンスターは、が、あぁぁぁぁぁぁ!?あ、頭が…!」

 

覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン

ペンデュラム・エクシーズ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

ランク 7

攻撃力 3000

ORU 2

 

流れる様なオッドアイズモンスターの展開、相克の魔術師によるサポートによって君臨した覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン、その姿を前に、ユーリは突如として頭を抱えて苦しみ出した。

 

「『我はこれでターンエンド』」

 

Yuya

LP 3700

手札 0

ペンデュラムスケール(青):3(相克の魔術師)

ペンデュラムスケール(赤):8(オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン)

モンスター 覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン(攻撃表示)

      オッドアイズ・ファントム・ドラゴン(守備表示)

魔法・罠 なし

フィールド魔法 天空の虹彩

 

「くっ!僕のターン、ドロー!」

 

だがユーリはそれを堪え、自らのターンを進めようとする。

 

「僕は墓地の置換融合を除外して効果発動!

墓地にある1枚目のスターヴ・ヴェノム・フュージョンをエクストラデッキn」

 

だが、置換融合の効果で更にドローしようとした瞬間だった。

 

「『それにチェーンし、我は墓地の『反旗の逆鱗ストライク・ディスオベイ』を除外して効果発動!

その効果を無効にし、除外する!』」

「な、何!?」

 

その効果は遊矢の墓地にあったカード、そう、ペンデュラム・コールのコストとして捨てたカード、もっと言えばシャイニング・ドローで創造したカードの効果によって阻まれた、だけではない。

その瞬間、何時の間にか遊矢の側に並び立った覇王黒竜の口に溜められている、膨大なエネルギーを込めた光がその大きさを増していっている。

 

「『数多の次元から力を得た竜達よ、今こそ我が名の下に集うのだ!』」

 

そして遊矢がそう叫んだ時、

 

「っ!

 

はい、今こそ覇王様の下に」

 

ユーリの眼から突如として生気が感じられなくなり、遊矢の言葉に呼応するかの様な言葉を呟き、

 

「『行け、覇王黒竜よ!反旗の逆鱗ストライク・ディスオベイ!』」

 

覇王黒竜の口に溜められていた光が放出され、それが晴れた後には、

 

 

 

 

 

「ユーリが、消えた、でありますか…?」

 

ユーリの姿は消え去っていた。

 

「『我が下で、永久の苦しみを彷徨うが良い』」

 

それを見届けた遊矢はそう呟きつつゼアルチェンジを解除し、余りの事態に呆けていたキサラを他所に、何時の間にか気絶していた素良を抱えつつ、その場を後にした。

 

------------

 

同時刻、デュエルパレスにて、

 

「「はい、今こそ覇王様の下に」」

 

次の出番に向けてスタンバイしていたユートとユーゴ、だがその言葉を呟くと共に、控室から忽然と姿を消した。

その事態に気付いた雪乃達ランサーズのメンバーが捜索するも、2人の姿が見つかる事は無かった。




オリカ紹介

反旗の逆鱗ストライク・ディスオベイ
通常罠
『反旗の逆鱗ストライク・ディスオベイ』の1の効果はデュエル中に1度しか使用出来ず、××××××××××
1:××××××××××
2:自分フィールド上に『オッドアイズ』ドラゴン族モンスターが存在し、カードの効果が発動された時、墓地のこのカードを除外して発動出来る。そのカードの効果を無効にして除外する。この効果は『反旗の逆鱗ストライク・ディスオベイ』が除外されたターンには発動出来ない。


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92話_作戦の意義

今回はデュエル無し&短めです。


「素良と離れ離れになってからもう数週間か。意外と長かったな…」

 

キサラとのデュエルに乱入して来たユーリとのデュエルが終わり、そのユーリに、洗脳を施された形で付き従っていた素良を連れ出した俺は、その折に俺が放った威圧感にあてられて気絶した素良をおんぶした状態で、本部への道を進んでいた。

アカデミアに反旗を翻したデニスの末路を見ていただけに、あの時アカデミアへの敵意を明確にした素良もまた、という考えがあり、ずっと素良は既にいなくなってしまったものとして動いていたから、こうしてまた会えたのは本当に嬉しい。

まあアカデミアによって洗脳された状態という物ではあったが、それに関してどうこう言う資格は、俺には、この防衛戦で『アンドバリの指輪』作戦を実行させた俺には無い。

このシンクロ次元に来てから、まずはセキュリティの長官であるロジェに対して俺自ら洗脳を施し、その紹介で知り合ったセルゲイを、洗脳を施せる素体に組み換え、今回の防衛戦においてデュエル戦士を次々と洗脳させたのだ、向こうもまた誰かしら洗脳を施すだろうという考えは持っていたし、それが俺にとっての弟子である素良だからって、その行為を非難するのは虫が良すぎる。

これは俺達ランサーズとアカデミア、互いの理念とか野望とかを賭けた文字通りやるかやられるかの『戦争』、俺達がどう思っていようと向こうはそのつもりで臨んで来るんだ、だったら俺達もそれに断固たる姿勢で臨むのが当然だ。

 

無論デュエリストとして、デュエルを戦争の、破壊と殺戮の道具としてしか思っていない奴を、そしてそれを面白半分に繰り出す奴等を許容出来る訳が無い。

あの時俺がブチ切れてゼアルチェンジしたのは、そんな想いを頑なに否定する、自らの野望の為に否定し続けるアカデミアの、引いてはそのトップである赤馬零王の振る舞いを目の当たりにした事で湧き上がった怒りからだ。

3年くらい前に赤馬零王が俺達の次元から融合次元へと渡り、アカデミアのトップとなってから引き起こされた各次元への侵略、その中でデニスや素良の様な赤馬零王の野望に疑問を覚えるデュエル戦士、キサラの様な野望に賛同しつつもデュエリストとしての誇りを忘れぬデュエル戦士も少なからずいた筈だ。

中にはアカデミアの、赤馬零王の方針に疑問を呈した存在だっていたかも知れない、が、それが聞き入れられなかったのは、今尚侵略に突き進む現状から明らかだ。

そしてそんな考えの持ち主、いわばアカデミアにおける『危険分子』は、例えばデニスの様に問答無用で射殺され、例えば素良の様に洗脳を施され、従順なデュエル戦士に作り替えられていったのだろう。

 

赤馬零王、貴様は何故、下らない野望の為に、アカデミアで其処までの事をするのだ…!

何故、己のやっている事が理に反している事に、余りにも馬鹿げているという事に気付かないのだ…!

そして大多数のデュエル戦士は何故、その野望が間違った物だと気付かない…!

何故デュエルの楽しさに、神聖さに気付かない…!

この、『真の愛国者』の意志をはき違えた『小僧(トム)』とその腰巾着め…!

 

------------

 

「ゆ、遊矢!?そのおぶっているのは、まさか、素良…!?」

「どうしたのだ、柚子?む、遊矢、まさかそ奴は、素良か…!?」

「何だってェ!?素良が、生きていたって…!?」

「本当なのか、遊矢!?素良は、生きていたのか…!?」

 

素良をおぶった状態で本部へと帰還した俺を出迎えたのは、柚子達ARC-Vメンバー、そう、素良との遊勝塾での日々を共にした面々の、驚きと喜びに満ちた声だった。

 

「ああ。この侵攻に、アカデミア側で参加していた様だ。洗脳を施されて、な」

「っ!そォか、俺達が言えた話じゃねェが、ひでェ事しやがる…!」

「素良が、何をしたと言うのだ…!

素良は身を呈して、アカデミアの方針に異を唱えただけではないか、それを…!」

「素良に、素良に何の落ち度があったと言うの!?ただ異議を唱えただけでこんな事をするなんて、独裁政治じゃない!」

「ふざけんな、アカデミア…!

お前らがしたい事は、こんな事を平気で出来る位大事な事なのか…!」

 

そんな皆に返した俺の返事、それに対する皆の反応は、やはりアカデミアへの憤りに満ちていた。

ただまあ俺の予想通りと言って良いか、洗脳行為自体に対する非難は抑え目だった。

 

俺が発案した『アンドバリの指輪』作戦、この実態を知っているのは俺と零児、そしてARC-Vメンバーだけだ。

当初この作戦を皆に、事前に相談した時、皆からの反応は賛否両論、いや否の意見が優勢だった、まあ当然だろう。

曰く「敵を強引に操って同士討ちを引き起こさせる等、言語道断!」「これじゃァアカデミアがやっている事と本質的に変わらねェじゃねェか!」「幾らアカデミアが外道極まりない敵だからって、何をしても許されると言うのか!」等々…

発案した俺ですら身震いした位に凶悪極まりないこの作戦、こういった意見が出るのは明らかだった。

 

「俺だって、この作戦が余りにも凶悪極まりない事、正しくない事位は分かっている。この作戦が明るみに出た時、俺の、俺達ランサーズの信頼は地に落ちると言っても過言じゃ無い。

 

じゃあ正しい作戦って何だ?一体どんな作戦が最善なんだ?

デュエルによる真っ向勝負で無力化する事か?アカデミアの野望が間違っている事を、俺達の理念が素晴らしい事を語り、説得する事か?

 

それでこの次元の人々に多大な犠牲が出ようとも、この次元の建物が破壊されつくそうとも、

この次元がエクシーズ次元の二の舞になってしまおうと、それが正しい作戦、最善の手と言えるのか!?」

 

それに対する俺の反論、それには流石に皆黙りこくってしまったが。

戦争と言うのはその時その時で一番良い手がコロコロと変化する物、時として非道な、外道な手段こそが最高の手と化す事もある。

今回はアンドバリの指輪作戦こそが、最高な手だったんだ。

 

実際それは戦況からも見て取れる。

開戦当初の俺達の陣営は、ランサーズメンバーが25人とデュエルチェイサーが数百人、一方でアカデミアは一個旅団(少なくとも2000位)程の戦力だったという報告が上がっている。

普通に考えれば桁違いにも程がある戦力差、幾ら精鋭揃いのランサーズを擁していようと此方の被害も甚大になるのは避けられなかった筈だった。

だが蓋を開ければ各地でデュエル戦士による同士討ちが多発、此方は難なく敵の無力化を進める事が出来、此方の被害は0、一方のアカデミア側は大半がカード化(洗脳されたデュエル戦士及びソイツとデュエルする羽目になったデュエル戦士の物らしい)されるか捕虜として此方に捕まるかという結果になった。

それにこの勝利は単にアカデミアの戦力を大きく削いだだけでは無い。

カードカテゴリを統一したデッキによって融合素材を分け合い、連携して各個撃破を遂げる、そんな集団戦法を主に用いて来たアカデミア、その強みであった筈の連携体制がまさかの同士討ちによって瓦解したのだ、戦略の立て直しに四苦八苦するのは想像に難くない。

そしてその立て直している真っ最中な時こそ、隙が大いに生まれる物、其処を突けば更なる戦果も期待できよう。

 

アンドバリの指輪作戦は確かに正しいとは言えない、というか間違っていると断言できるだろう、だがそれによって守れた存在は、果たした意義は途轍もなく大きいんだ。



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93話_BRIGHT STREAM、一筋の光

アカデミアとの戦いでシティの防衛に成功した遊矢達ランサーズメンバーは、気絶した素良を連れて、今しがたフレンドシップカップが行われているであろうデュエルパレスへと帰還した。

そこでランサーズメンバーは零児より、フレンドシップカップに出場していた筈のメンバー、ユートとユーゴが忽然と姿を消した事、それを重く見た大会運営組織が中断を決定した事を聞かされる。

更に、

 

「遊矢。フレンドシップカップの中断を穴埋めする形でエキシビションマッチを実施する事となり、そのランサーズ側の代表として、運営が君の出場を要請して来た。だが君はアカデミアとの戦いで疲れただろう。私もランサーズの最高顧問だ、良ければ私が出よう」

 

エキシビションマッチの実施、それへの遊矢の出場要請が来た事を告げる。

何とも唐突な展開、その詳細はと言うと、どうやらアカデミアの侵入及び戦闘を察知したらしい運営の中から、ランサーズの壮行会的な物を行おうでは無いかという意見が出て、それがあっさりと通ったらしい。

それはともかく、当の遊矢は先程アカデミアとの全面戦争に司令官として臨んだばかり、その体調を考慮した零児が出ると申し出る、が、

 

「いえ、零児。折角、俺を指名して頂いたのです。ならばその要請に応えるのがエンタメデュエリストという物でしょう?それに経緯がどうあれ我々ランサーズを快く出迎えて頂けると言うのに、其処に最高指揮官である私が出ないのは良くないです」

 

と、遊矢はそれを断り、自ら出場すると宣言した。

 

------------

 

『遊星さん、宜しくお願いします!今日は、胸を借りる積りで行きます!』

「ああ、ソラト!全力で掛かって来い!」

『それではエキシビションマッチ1回戦!ライディングデュエル・アクセラレーション!』

 

先攻 Sorath LP 4000 VS 後攻 Yuya LP 4000

 

『僕の先攻!

まずは『ライトロード・サモナー ルミナス』を召喚!』

 

ライトロード・サモナー ルミナス

効果モンスター

光属性

魔法使い族

レベル 3

攻撃力 1000

 

まあ色々と唐突な展開で始まったエキシビションマッチ、その1回戦の相手は鬼柳のマネージャーを務めるアイゼン兄妹の兄、ソラト。

そのソラトが最初に召喚したのは、異世界からやって来ると言われている正義の集団『ライトロード』の1人で、白い衣服に身を包んだ召喚師、ルミナス。

という事は、ソラトのデッキはライトロードか、これまた(元)ガチデッキを使って来るとはなぁ…

 

『次に手札の『ライトロード・アサシン ライデン』を捨てて魔法『ソーラー・エクスチェンジ』発動!』

 

ソーラー・エクスチェンジ

通常魔法

手札から『ライトロード』と名の付いたモンスター1体を捨てて発動出来る。デッキからカードを2枚ドローし、その後自分のデッキの上からカードを2枚墓地へ送る。

 

『ソーラー・エクスチェンジの効果で2枚ドローし、その後デッキの上からカードを2枚墓地へ送ります。

よし!今デッキから墓地へ送られた『ライトロード・ビースト ウォルフ』の効果発動!

このカードを攻撃表示で蘇生!』

 

ライトロード・ビースト ウォルフ

効果モンスター

光属性

獣戦士族

レベル 4

攻撃力 2100

 

次に登場したのは、ライトロードの1人、いや獣戦士族だから1匹か?所々に白銀の装甲を身に着けた獣戦士、ウォルフ。

ライトロードモンスター及びそのサポートカードは、その殆どがデッキトップからカードを墓地へ送る効果を持ったり、デッキから墓地へ送られた時に効果を発動したり、墓地のカードを参照したりといった効果を持っている。

それを活かして積極的に墓地肥やしを行い、大量のアドバンテージを得る、それがライトロードデッキの特徴で、一時はその爆発力から環境の最前線を走り、今でも嵌った時の爆発力は群を抜く。

最初に召喚したルミナスも、制限カードに指定された時期があったし、コストである墓地送りがコストになっていないサーチエンジン『光の援軍』に至っては未だに準制限カードである事も、その強さが分かると思う。

 

『続いてさっき拾ったアクションマジック『回避』を捨ててルミナスの効果発動!

墓地のライデンを攻撃表示で蘇生!』

 

ライトロード・アサシン ライデン

効果モンスター/チューナー

光属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1700

 

で、ルミナスの力によって現れたのもライトロードの1人で、上半身裸で右手に大きなナイフを装備した暗殺者、ライデン。

ライデンで暗殺者、と言っても某潜入ゲームに登場するサイボーグじゃないからな。

まあ冗談は兎も角、ライデンもライトロードでは有用な効果を持っている。

それは、

 

『ライデンの効果発動!

デッキの上から2枚を墓地へ送ります。

よし!デッキから墓地へ送られたカードの中にライトロードモンスターである『ライトロード・アーチャー フェリス』があるのでライデンの攻撃力を200アップさせます!

更にライデンの効果でデッキから墓地へ送られたフェリスの効果発動!

このカードを守備表示で蘇生!』

 

ライトロード・アーチャー フェリス

効果モンスター/チューナー

光属性

獣戦士族

レベル 4

守備力 2000

 

ライトロード・アサシン ライデン 攻撃力 1700→1900

 

ライトロードでは意外と少ない、起動効果での墓地肥やし。

それによってオマケとして付いて来るパンプアップ効果は、下手したら一部サポートカードの発動タイミングを逃してしまうという難点こそあるが、それでも能動的に墓地肥やしできるのは強い。

しかもその効果で、ライトロードの1人、というか1匹で、身軽そうな服装の射手、フェリスを蘇生する条件を満たせたのだから凄い。

まあフェリスもまたモンスター除去の序でに墓地肥やしが出来る(しかもこっちはチェーン1であれば、墓地へ送ったカードの効果発動タイミングを逃さない)が、こっちは自身をリリースする必要があるし、何より今の俺のフィールドにはモンスターがいないからな。

しかしよくよく考えて見ると、一気に4体ものモンスター(うち2体はチューナー)を展開したけど手札アドバンテージの消費はルミナスを召喚した事による1枚だけなんだよな、ほんと凄い。

 

『行きます!僕はレベル3のルミナスに、レベル4のフェリスをチューニング!正義の指揮官よ、今こそ邪悪なる敵を浄化せよ!シンクロ召喚、レベル7!『ライトロード・アーク ミカエル』!』

 

ライトロード・アーク ミカエル

シンクロ・効果モンスター

光属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2600

 

『ソラト選手、墓地肥やしからの凄まじい展開!其処から何やら神々しい姿の天使がシンクロ召喚されました!これがライトロードの底力なのか!』

 

無論4体もいると言っても下級モンスターだけの状態、このままで終わる訳が無く、ソラトは更なる手を打って来た。

シンクロ召喚の演出と共に登場したのは、ライトロードの創始者である天使(『裁きの龍』に乗っている関係でドラゴン族だが)、ミカエル。

 

『更に、ライデンとウォルフでオーバーレイ!2体のレベル4モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!正義を司る乙女は今、正義を守る天使へと転生する!『ライトロード・セイント ミネルバ』!』

 

ライトロード・セイント ミネルバ

エクシーズ・効果モンスター

光属性

天使族

ランク 4

攻撃力 2000

ORU 2

 

『おぉっと、ライトロードにはエクシーズモンスターも存在した様です!今度は聖女の様な姿をした天使がエクシーズ召喚されました!』

 

更に、エクシーズ召喚の演出と共に登場したのは『ライトロード・メイデン ミネルバ』が成長し、守護天使として転生した姿。

 

『今エクシーズ召喚したミネルバの効果を、オーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて発動!

デッキの上から3枚を墓地へ送ります。

よし!デッキから墓地へ送られたカードの中にライトロードカードである『ライトロードの裁き』が1枚あるので1枚ドローします!

更にミネルバの効果で墓地へ送られた『ライトロードの裁き』の効果発動!

デッキから『裁きの龍』1枚を手札に加えます!』

 

ライトロード・セイント ミネルバ ORU 2→1

 

うわ来た、ライトロードのエースモンスターが。

まあ今召喚しても意味は薄いが、次のターンには必ずや出してくるだろう。

シンクロ召喚及びエクシーズ召喚によってソラトの墓地には少なくとも3種類のライトロードモンスターがいる、それに加えて何が何だか分からないカードが4枚、墓地に眠っている。

それが一体何なのか、それによってこのデュエルの行方を左右すると言っても過言じゃ無い。

 

『僕はこのままターンエンド、エンドフェイズにミカエルの効果発動!

デッキの上から3枚を墓地へ送ります。

よし!今デッキから墓地へ送られた2枚の『ライトロード・レイピア』の効果発動!

このカードをミカエルとミネルバに其々装備します!』

 

ライトロード・レイピア

装備魔法

『ライトロード』と名の付いたモンスターにのみ装備可能。

装備モンスターの攻撃力は700ポイントアップする。

このカードがデッキから墓地へ送られた時、このカードを自分フィールド上に存在する『ライトロード』と名の付いたモンスター1体に装備する事が出来る。

 

ライトロード・アーク ミカエル 攻撃力 2600→3300

ライトロード・セイント ミネルバ 攻撃力 2000→2700

 

Sorath

LP 4000

手札 6(うち1枚は裁きの龍)

モンスター ライトロード・アーク ミカエル(攻撃表示)

      ライトロード・セイント ミネルバ(攻撃表示)

魔法・罠カード ライトロード・レイピア×2(ミカエル、ミネルバに1枚ずつ装備)

 

そしてエンドフェイズに強制発動されたミカエルの効果で、ソラトのフィールドにいる2体のモンスター其々にライトセーバーみたいな細剣が装備され、墓地に眠る何が何だか分からないカードは5枚に増えた、か。

セットカードこそ無いが、今時墓地で誘発するカードは結構ある、油断は禁物だな。

というか信じられるか?先攻1ターン目にミカエルをシンクロ召喚し、ミネルバをエクシーズ召喚し、その2体に装備魔法を装備させ、2桁に達する程の墓地肥やしをしたにも関わらず、手札アドは減るどころか増えているんだぜ…

 

「私のターン!ドロー!

私が引いたカードは魔法『RUM―七皇の剣』!」

 

RUM―七皇の剣

通常魔法

自分のドローフェイズ時に通常のドローをしたこのカードを公開し続ける事で、そのターンのメインフェイズ1の開始時に発動出来る。『CNo.』以外の『No.101』~『No.107』のいずれかをカード名に含むモンスター1体を、自分のエクストラデッキ・墓地から特殊召喚し、そのモンスターと同じ『No.』の数字を持つ『CNo.』と名の付いたモンスターをその特殊召喚したモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。『RUM―七皇の剣』の効果はデュエル中に1度しか適用できない。

 

ならばこのデッキの本気を見せないとな、これから本格的にアカデミアとの戦いに臨む俺達の決意を見せる為に持ち出した『封印された』最後のデッキ、その本気を!

 

「メインフェイズに入って七皇の剣を発動!カオスエクシーズ・ワープチェンジ!現れろ、CNo.101!満たされぬ魂の守護者よ、暗黒の騎士となって光を砕け!『S・H・DarkKnight』!」

 

CNo.101S・H・DarkKnight

エクシーズ・効果モンスター

水属性

水族

ランク 5

攻撃力 2800

CORU 1

 

『おぉっとぉ!遊星様、カード1枚でいきなりのエクシーズ召喚です!それにしても何だかオーバーレイ・ユニットの形状がソラト選手のミネルバと違う様な…』

 

それはそうだ、これはオーバーレイ・ユニットではなくカオスオーバーレイ・ユニットなのだから。

 

「今エクシーズ召喚したDarkKnightの効果発動!

ミカエルをこのカードのカオスオーバーレイ・ユニットに変える!ダーク・ソウル・ローバー!」

『なっ!?』

『ソラト選手のミカエルが、あっさりとDarkKnightに吸い込まれてしまった!この効果は強烈です!』

 

CNo.101S・H・DarkKnight CORU 1→2

 

「次に手札の『銀河眼の(ギャラクシーアイズ・)光子(フォトン・)(ドラゴン)』を捨てて魔法『トレード・イン』発動!」

 

トレード・イン

通常魔法

1:手札からレベル8モンスター1体を捨てて発動出来る。自分はデッキから2枚ドローする。

 

「トレード・インの効果で2枚ドロー!

続いて装備魔法『銀河零式(ギャラクシー・ゼロ)』発動!」

 

銀河零式

装備魔法

自分の墓地の『フォトン』または『ギャラクシー』と名の付いたモンスター1体を選択して発動出来る。選択したモンスターを表側攻撃表示で特殊召喚し、このカードを装備する。装備モンスターは効果を発動出来ず、攻撃も出来ない。装備モンスターがバトルフェイズ中に破壊される場合、代わりにこのカードを破壊出来る。このカードがフィールド上から離れた時、装備していたモンスターの攻撃力は0になる。『銀河零式』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

 

「銀河零式の効果で、たった今墓地へ送った銀河眼の光子竜を攻撃表示で特殊召喚!その後、このカードを装備させる!来い、ギャラクシーアイズ!」

『ギャォォォォォォォォォォォォォォォォン!』

 

銀河眼の光子竜

効果モンスター

光属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 3000

 

前世での親友だったシャークのエースモンスターであるDarkKnightに続いて登場したのは、これまた前世の親友にして最大のライバルだったカイトのエースモンスターである銀河眼の光子竜。

 

「更に魔法『銀河遠征(エクスペディション)』発動!」

 

銀河遠征

通常魔法

『銀河遠征』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:自分フィールドにレベル5以上の『フォトン』モンスターまたは『ギャラクシー』モンスターが存在する場合に発動出来る。デッキからレベル5以上の『フォトン』モンスターまたは『ギャラクシー』モンスター1体を守備表示で特殊召喚する。

 

「銀河遠征の効果で、デッキから『銀河騎士(ナイト)』を守備表示で特殊召喚!」

 

銀河騎士

効果モンスター

光属性

戦士族

レベル 8

攻撃力 2600

 

其処に並び立つように登場したのは、銀河の力を纏った騎士。

これでレベル8が2体だ。

 

「私は銀河眼の光子竜と銀河騎士でオーバーレイ!2体のレベル8モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!宇宙を貫く雄叫びよ、遥かなる時を遡り銀河の源より蘇れ!顕現せよ、そして私を勝利へと導け!『No.107銀河眼の時空(タキオン)竜』!」

 

No.107銀河眼の時空竜

エクシーズ・効果モンスター

光属性

ドラゴン族

ランク 8

攻撃力 3000

ORU 2

 

『遊星様がまたもエクシーズ召喚!今度は何やら異様な雰囲気を放つドラゴンです!光属性とはとても思えないカラーリングです…』

 

その2体でエクシーズ召喚したのは、バリアン七皇の一角で、同じギャラクシーアイズ使いであるカイトと数々の死闘を繰り広げたミザエルのエースである銀河眼の時空竜。

 

「まだ終わらない!魔法『RUM―バリアンズ・フォース』発動!」

 

RUM―バリアンズ・フォース

通常魔法

自分フィールド上のエクシーズモンスター1体を選択して発動出来る。選択したモンスターと同じ種族でランクが1高い『CNo.』または『CX』と名の付いたモンスター1体を、選択したモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。その後、相手フィールド上にエクシーズ素材が存在する場合、相手フィールド上のエクシーズ素材1つを、この効果で特殊召喚したエクシーズモンスターの下に重ねてエクシーズ素材とする。

 

「私は銀河眼の時空竜のオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオスエクシーズ・チェンジ!顕現せよ、CNo.107!我が魂に宿りし粒子!今、光を超えた力となりて時を逆巻け!『(ネオ・)銀河眼の時空龍』!」

 

CNo.107超銀河眼の時空龍

エクシーズ・効果モンスター

光属性

ドラゴン族

ランク 9

攻撃力 4500

CORU 3→4

 

ライトロード・セイント ミネルバ ORU 1→0

 

『あっ!?ミネルバのオーバーレイ・ユニットが!?』

「バリアンズ・フォースの追加効果で、ミネルバのオーバーレイ・ユニットはこの超銀河眼が頂く!」

『遊星様の銀河眼、今度は金ぴかのキングギ○ラみたいな姿へと変貌しました!その攻撃力はなんと4500!圧巻のステータスです!』

 

さて、今の俺のフィールドにはDarkKnightと超銀河眼がいる、だが気付いているか?

俺がまだ、通常召喚権を使っていない事を…!

 

「勝負は此処からだ!私はこのカードを召喚する!来い、『光天使(ホーリー・ライトニング)ブックス』!」

 

光天使ブックス

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 4

攻撃力 1600

 

その通常召喚権を使って召喚したのは、バリアン七皇の一角で、ナッシュとしてのシャークの親友であったドルべの使うカテゴリ『光天使』の一角、ブックス。

ん?ブックス、の所の発音がやけに力強いって?気のせいだ。

 

「光天使モンスターを召喚した事で、手札の『光天使スローネ』の効果発動!

このカードを守備表示で特殊召喚し、ドロー!

よし!今引いたのは『光天使セプター』!よってこのカードを攻撃表示で特殊召喚!」

 

光天使スローネ(制限カード)

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 4

守備力 2000

 

光天使セプター

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 4

攻撃力 1800

 

「特殊召喚したセプターの効果発動!

デッキから『光天使ウィングス』を手札に加える!」

 

更に登場したのは、共に光天使の一角で、玉座の様な姿のスローネと、杖の様な姿のセプター。

光天使の全盛期、というかスローネが無制限だった頃は所謂『セプスロ』と呼ばれるコンボで爆発的なアドバンテージを稼いでいたっけな。

それが祟って制限カードに指定されたが、そのコンボを抜きにしても光天使専用とは言えカゲトカゲの様な特殊召喚効果を持つ上に其処からの1枚ドローは強い。

これでレベル4モンスターは3体。

 

「私はブックスとスローネ、セプターでオーバーレイ!3体のレベル4・光属性モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!光の使いよ!今、悠久の時を超え、輝きの衣を纏いて、かの地に降臨せよ!『No.102光天使グローリアス・ヘイロー』!」

 

No.102光天使グローリアス・ヘイロー

エクシーズ・効果モンスター

光属性

天使族

ランク 4

攻撃力 2500

ORU 3

 

そのセプスロとブックスを用いてエクシーズ召喚したのは、ドルべのエースモンスターであるグローリアス・ヘイロー。

 

『遊星様、なんと1ターンで3回目のエクシーズ召喚です!今度は名前の通り天使の様な姿です!』

「セプターを用いてエクシーズ召喚したグローリアス・ヘイローの効果発動!ミネルバが装備しているレイピアを破壊し、ドロー!」

『おや?遊星様、此処で装備しているミネルバ本人では無く、レイピアだけを破壊しました。一体どの様な意図が…』

「ミネルバは破壊された際に、デッキの上から3枚を墓地へ送り、その中にあるライトロードカードの数だけフィールドのカードを破壊する効果を持っている。これは場合の任意効果、故にタイミングを逃さない」

『おっと失礼、展開したエクシーズモンスター達を守りつつ、ソラト選手の布陣を少しずつ削ぐ為の決断でした!』

 

尤も、今のドローでそのミネルバを除去する算段も付いた。

 

「私は今引いた速攻魔法『RUM―クイック・カオス』発動!」

 

RUM―クイック・カオス

速攻魔法

1:『CNo.』モンスター以外の自分フィールドの『No.』エクシーズモンスター1体を対象として発動出来る。その自分のモンスターよりランクが1つ高く、同じ『No.』の数字を持つ『CNo.』モンスター1体を、対象のモンスターの上に重ねてエクストラデッキからエクシーズ召喚する。

 

「私はグローリアス・ヘイローのオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオスエクシーズ・チェンジ!闇を纏いし光の使いよ!今こそ漆黒より裁きの刃を振るえ!『CNo.102光堕天使(アンホーリー・ライトニング)ノーブル・デーモン』!」

 

CNo.102光堕天使ノーブル・デーモン

エクシーズ・効果モンスター

光属性

天使族

ランク 5

攻撃力 2900

CORU 4

 

『流石は遊星様と言うべきでしょうか、凄まじいドローです!これで遊星様のフィールドにはカオスと名の付くエクシーズモンスターが3体並び立ちました!』

 

無論、超銀河眼や今出したノーブル・デーモン、そして既に効果を使ったDarkKnightだけではミネルバを安全に突破出来ない。

と言っても、敢えてバトルフェイズで戦闘破壊し、ノーブル・デーモンの耐性やDarkKnightの蘇生効果で押し切る、という手もある。

だが、俺は更に動く!

 

「私はDarkKnightと超銀河眼、そしてノーブル・デーモンでオーバーレイ!3体のカオスオーバーハンドレッド・ナンバーズでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

シャーク、ドルべ、ミザエル、そしてカイト…!

俺に力を貸してくれ!

 

「混沌の具現たる軍神よ、切なる望みを我が元へ!七皇の力が集いし時、一筋の光が冀望を生み出す!『CX(カオスエクシーズ)冀望皇バリアン』!」

 

CX冀望皇バリアン(効果調整)

エクシーズ・効果モンスター

光属性

戦士族

ランク 7

攻撃力 3000

CORU 3

 

『な、なんと!遊星様のフィールドにいた3体のエクシーズモンスターが結集し、1人の戦士に生まれ変わりました!』

 

DarkKnightと超銀河眼、そしてノーブル・デーモンを結集させてのエクシーズ召喚で呼び出したのは、シャークとの最終決戦でシャークが繰り出した最強のカオスエクシーズモンスター、冀望皇バリアン。

もう気付いていると思うだろうが、このデッキは、シャーク達バリアン七皇から譲り受けたこのバリアン及びオーバーハンドレッドナンバーズ、そして各種RUMをベースに構築した『バリアン』デッキ。

そのエースであるバリアン、それが持つ効果はOCG版とも、シャークが使ってた物とも違う。

 

「DarkKnightをカオスオーバーレイ・ユニットに持つバリアンの効果発動!ミネルバをこのカードのカオスオーバーレイ・ユニットに変える!ダーク・ソウル・ローバー!」

『み、ミネルバまで…!』

『遊星様、再びソラト選手のモンスターをカオスオーバーレイ・ユニットに変えました!これでソラト選手のフィールドはがら空き!破壊時効果を使わせる事無く除去しました!』

 

CX冀望皇バリアン CORU 3→4

          攻撃力 (3000→)4000

 

『おや?どうやらバリアンの攻撃力も変わっている様ですが…』

「バリアンの元々の攻撃力は、このカードが持つカオスオーバーレイ・ユニットの数×1000ポイントとなる!更にこのカードのカオスオーバーレイ・ユニットとなっているエクシーズモンスターと同名カードとしても扱い、同じ効果を得る!」

『と言う事は今のバリアンは、DarkKnightを取り込んでいる事により、相手が特殊召喚したモンスターを自らの糧として行く、という事です!凄まじいモンスターの登場です!』

 

まあ言うなれば、OCG版とシャークが使っていた物、両者の効果を良い所取りした感じだ。

その代わりと言っては何だが、エクシーズ素材にカオスオーバーハンドレッド・ナンバーズを3体以上使う事が必須になっている。

それは一先ず置いて、これでバリアンの攻撃力は4000となった。

 

「バトルフェイズに入る!

バリアンでダイレクトアタック!ランドチャリオッツスラッシュ!」

 

この攻撃が通れば後攻1ターンキル、迷わずバトルフェイズに突入し、バリアンを攻撃させる…!

 

 

 

 

 

『その攻撃宣言時に墓地の『超電磁タートル』を除外して効果発動!

バトルフェイズを終了します!』

 

が、その攻撃はソラトを守るかの様に出現した電磁力のバリアに阻まれた。

やっぱり入っていて、墓地に落ちていたか、超電磁タートルが…

 

「ならば私はこれでターンエンド!」

 

Yuya

LP 4000

手札 1(光天使ウィングス)

モンスター CX冀望皇バリアン(攻撃表示)

魔法・罠カード なし




◎効果調整カード

CX冀望皇バリアン
エクシーズ・効果モンスター
光属性
戦士族
ランク 7
攻撃力 ?/守備力 0
『CNo.101』~『CNo.107』のいずれかを元々のカード名に含むエクシーズモンスター×3体以上
このカードのエクシーズ召喚及び効果は無効化されない。
1:このカードの元々の攻撃力は、このカードのエクシーズ素材の数×1000ポイントとなる。
2:このカードは、このカードのエクシーズ素材となっているエクシーズモンスターと同名カードとしても扱い、同じ効果を得る。また、『(其々の条件)場合、以下の効果を得る』という条件を満たしている物とする。
3:このカードのエクシーズ素材を取り除く場合、代わりに取り除くエクシーズ素材1つにつき400ライフポイントを払う事が出来る。


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94話_七皇の結束

急遽始まったエキシビションマッチ、その1回戦であるソラトとのデュエルは互いに1ターン終えた状況、俺のフィールドにはDarkKnightとノーブル・デーモン、超銀河眼とミネルバ、計4体のエクシーズモンスターをオーバーレイ・ユニットに持ったバリアンがいて、手札はセプターの効果で加えたウィングスのみ。

一方のソラトのフィールドには何も無く、手札は先程ライトロードの裁きの効果で手札に加えた裁きの龍を含めて6枚、次のドローフェイズで7枚となり、墓地にいるライトロードは分かっているだけでもライデン、ルミナス、フェリス、ウォルフ、ミカエルの計5種類、よって裁きの龍を特殊召喚可能。

さあソラト、このバリアンをどう突破する?

 

『僕のターン!ドロー!』

「もしかしたら墓地にブレイクスルー・スキルが落ちているかも知れないから言って置く。バリアンの効果は無効化されない!バリアン自身の効果も、バリアンのオーバーレイ・ユニットになったエクシーズモンスターの効果もだ!」

『そうでしたか、説明ありがとうございます。

ならばメインフェイズに入って、手札の『裁きの龍(ジャッジメント・ドラグーン)』を攻撃表示で特殊召喚!』

 

裁きの龍

効果モンスター

光属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 3000

 

出たか、ライトロードの切り札、裁きの龍が。

 

『今出した裁きの龍の効果を、LP1000払って発動!

フィールド上にある、このカード以外のカードを全て破壊します!裁きの光(ジャッジメント・レイ)!』

 

Sorath LP 4000→3000

 

その効果は、嘗ての遊戯王OCGで猛威を振るった混沌帝龍やデミスを彷彿とさせる、全体破壊。

まあ混沌帝龍は破壊では無く墓地送りだが、自分だけが残る上に払うLPも1000で済む等、その強烈さは上記の2体をも上回る、実際、ルミナスが規制されるまではこっちが制限カードになっていたし。

が、

 

『ソラト選手のフィールドに眩い光を放つ白いドラゴンが召喚され、その口から膨大なエネルギーを持つビームが放出された!遊星様、これを耐えきれるかぁ!?』

 

Yuya LP 4000→3200

 

『おっとどうした事でしょう、何故か遊星様のLPも800減っております。そしてあぁっとぉ!バリアン、健在!裁きの龍が放ったビームを受けて尚、バリアンのその堂々とした佇まいは健在です!』

『なっ!?何故です、裁きの龍の効果は発動された筈!』

 

確かに裁きの龍の効果は発動され、それは無効化されていない。

だがその放出されたビームによって撒き散らされた土煙が晴れた後には、俺のバリアンが今も尚健在だ。

 

「裁きの龍の効果は確かに発動された!だがバリアンのオーバーレイ・ユニットになっているノーブル・デーモンの、破壊される代わりにオーバーレイ・ユニットを2つ取り除く効果を適用した!更にその際バリアン自身の、取り除くオーバーレイ・ユニット1つの代わりにLP400を払う効果も適用した!よって今のバリアンは、私のLPを800払う事で破壊から身を守れる!」

『遊星様、耐えたぁ!ソラト選手、これではバリアンを突破する事は叶わない!さあ、どうする!?』

『ならLPをとことん削るまで!裁きの龍の効果はLPさえあれば何度も発動出来ます!2回払って発動!裁きの光、2連打!』

「ならばこちらもLPを払って破壊を無効にする!」

 

Sorath LP 3000→2000→1000

Yuya LP 3200→2400→1600

 

裁きの龍の効果、それから身を守る為のバリアンの効果、それが何度も適用され、削られていく俺とソラトのLP。

だが今のままではバリアンを突破する事は、まさか!?

 

『次に、裁きの龍をリリースしてアドバンス召喚!正義の光を纏いし龍よ!今こそ同士の想いを力に!『ライトロード・ドラゴン グラゴニス』!』

 

ライトロード・ドラゴン グラゴニス

効果モンスター

光属性

ドラゴン族

レベル 6

攻撃力 2000→4400

 

『ななな、何と!ソラト選手がアドバンス召喚したモンスターが、バリアンの攻撃力を越えました!一体これはどういう事でしょう!?』

『グラゴニスの攻守は、僕の墓地にあるライトロードモンスターの種類×300ポイントアップします!今の僕の墓地には、ライデン、ルミナス、フェリス、ウォルフ、ミカエル、ガロス、ライラ、エイリンの8体!よって2400アップします!』

 

効果破壊出来ないなら正面突破で来るか。

ソラトがアドバンス召喚したのは、ライトロードの一角で、ペガサスの様な姿のドラゴン、グラゴニス。

それにしても何か分からなかった4枚の墓地のカードの内3枚がライトロードモンスターだったk、

 

『更にデッキの上からカードを3枚墓地へ送って魔法『光の援軍』発動!』

 

光の援軍(準制限カード)

通常魔法

1:自分のデッキの上からカードを3枚墓地へ送って発動出来る。デッキからレベル4以下の『ライトロード』モンスター1体を手札に加える。

 

ライトロード・ドラゴン グラゴニス 攻撃力 4400→5300

 

『光の援軍の効果で、デッキから2枚目のライデンを手札に加えます!

更に墓地へ落ちた『ライトロード・メイデン ミネルバ』の効果発動!

デッキの上からカードを1枚墓地へ送ります!

よし!この一連の処理で落ちたのは全て別々のライトロードモンスター、ジェインとジェニス、ミネルバとライニャン!よってグラゴニスの攻撃力は更に1200アップします!』

 

ライトロード・ドラゴン グラゴニス 攻撃力 5300→5600

 

『ソラト選手が呼び出したグラゴニス、その攻撃力は今、5600を叩き出しました!これでバリアンの上から遊星様をジャストキル出来ます!遊星様、これをどう凌ぐか!』

 

ま、マジか、凄い落ち方だったな。

 

『バトルフェイズに入ります!グラゴニスでバリアンを攻撃!黙示録の光(アポカリプス・レイ)!』

 

が、

 

『その攻撃宣言時、アクションマジック『奇跡』発動!』

 

奇跡

アクションマジック

1:フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターは戦闘では破壊されず、戦闘ダメージは半分になる。

 

この状況下で何もしないと思ったら大間違いだ。

 

「奇跡の効果で、バリアンは戦闘破壊されず、戦闘ダメージは半分になr(バシュゥ!)ぐぁ!」

『耐えられましたか…!』

『遊星様、文字通り奇跡を引き当てました!これで今も尚バリアンは健在!』

 

ライトロード・ドラゴン グラゴニス 攻撃力 5600 VS CX冀望皇バリアン 攻撃力 4000

 

Yuya LP 1600→800

 

『ならば僕はこれでターンエンド!』

 

Sorath

LP 1000

手札 4

モンスター ライトロード・ドラゴン グラゴニス(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

さて、これは厄介な事になった。

ソラトのフィールドにいるのは、アドバンス召喚によって登場したグラゴニス。

アドバンス召喚、という事はバリアンのオーバーレイ・ユニットになっているDarkKnightの効果で吸収する事は出来ない、故にバリアンのオーバーレイ・ユニットは事実上、増やせない。

尤もグラゴニスの突破自体はノーブル・デーモンの効果で無力化すれば良いがこのデュエルはアクションデュエルだ、『回避』や『大脱出』等で攻撃を躱されるとなると、なるべくならオーバーレイ・ユニットを消費したくない。

となると…

 

「私のターン!ドロー!」

 

此処で『貪欲な壺』か、さて何が出るか…

 

「私は今引いた魔法『貪欲な壺』発動!」

 

貪欲な壺(制限カード)

通常魔法

1:自分の墓地のモンスター5体を対象として発動出来る。そのモンスター5体をデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから2枚ドローする。

 

「貪欲な壺の効果で、私の墓地に存在するArkKnight、グローリアス・ヘイロー、銀河眼の時空竜、スローネ、ブックスをデッキに戻してシャッフルし、2枚ドロー!」

 

っ!よし、これなら!

 

「次に『光天使ウィングス』を召喚!」

 

光天使ウィングス

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 4

攻撃力 1200

 

「召喚したウィングスの効果発動!

手札から『光天使ソード』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

光天使ソード

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 4

攻撃力 1400

 

貪欲な壺で増えた手札を基に展開したのは、共に光天使の一角で、翼の様な姿のウィングスと、剣の様な姿のソード。

これでレベル4が2体。

 

「私はウィングスとソードでオーバーレイ!2体のレベル4モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れろ、No.103!万物が凍てつく虚無の力が今、解き放たれる!『神葬零嬢ラグナ・ゼロ』!」

 

No.103神葬零嬢ラグナ・ゼロ

エクシーズ・効果モンスター

水属性

天使族

ランク 4

攻撃力 2400

ORU 2

 

『遊星様、此処で新たなるオーバーハンドレッド・ナンバーズをエクシーズ召喚しました!そして手札はまだ1枚残っています!という事は…』

 

その2体を使ってエクシーズ召喚したのは、バリアン七皇の紅一点で、シャークの妹であった璃緒のバリアンとしての正体、メラグのエースモンスター、ラグナ・ゼロ。

コイツも今回のデュエルでこれまでにエクシーズ召喚した3体同様オーバーハンドレッド・ナンバーズ、それによって恐らく新たなるカオスオーバーハンドレッド・ナンバーズの登場を期待するかの様な声が会場から上がって来る。

なら、それに応えるのがエンタメデュエリストだ!

 

「続いて速攻魔法『RUM―クイック・カオス』発動!」

 

RUM―クイック・カオス

速攻魔法

1:『CNo.』モンスター以外の自分フィールドの『No.』エクシーズモンスター1体を対象として発動出来る。その自分のモンスターよりランクが1つ高く、同じ『No.』の数字を持つ『CNo.』モンスター1体を、対象のモンスターの上に重ねてエクストラデッキからエクシーズ召喚する。

 

「私はラグナ・ゼロのオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオスエクシーズ・チェンジ!現れろ、CNo.103!時をも凍らす無限の力が今、蘇る!『神葬零嬢ラグナ・インフィニティ』!」

 

CNo.103神葬零嬢ラグナ・インフィニティ

エクシーズ・効果モンスター

水属性

天使族

ランク 5

攻撃力 2800

CORU 3

 

『やはり来ましたぁ!遊星様、4体目のカオスオーバーハンドレッド・ナンバーズをエクシーズ召喚しました!その威圧感、先の3体に引けを取りません!』

 

そして、このデュエルを決着させるカードでもある!

 

「ラグナ・インフィニティのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!

グラゴニスの今の攻撃力と、元々の攻撃力の差分のバーンダメージを与え、グラゴニスを除外する!」

『な!?させません!その効果にチェーンしてアクションマジック『透明』発動!』

「悪いが通させて貰う!アクションマジック『ノーアクション』発動!」

 

透明

アクションマジック

1:自分フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。このターン、そのモンスターは相手の効果の対象にならず、効果も受けない。

 

ノーアクション

アクションマジック

1:アクションマジックの効果が発動する時に発動出来る。その発動を無効にし、破壊する。

 

「ノーアクションの効果により、透明は無効になる!そして3600のバーンダメージを喰らえ!ガイダンス・トゥ・パーガトリィ!」

『うわぁぁぁぁぁぁ!』

 

Sorath LP 1000→-2600 LOSE

 

WINNER Yuya

 

『決まったぁ!エキシビションマッチ1回戦の勝者は、カオスオーバーハンドレッド・ナンバーズ達との絆を見せた遊星様!ソラト選手もライトロード達との絆で互角に立ち回りましたが、一歩及ばなかったか!』



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95話_フルモンスターVSフルモンスター

Side 権現坂

 

ランサーズの一員として臨んだアカデミアとの大規模戦、それから帰還した俺達に来た、エキシビションマッチのオファー。

いの一番でそれを受けた遊矢に続く形で、この男権現坂もまたそれを受けた。

零児殿からは「アカデミアとの戦いで疲れている中、無理に出る事は無い」と言われはしたが、今の俺は寧ろ、このどうしようもない複雑な想いに向き合いたいが為に、受諾の意志を変えなかった。

 

アカデミアとの戦いの折に遊矢が実行した『アンドバリの指輪』作戦。

嘗てこのシティにおいてデュエリストクラッシャーとしてその悪名を轟かせたセルゲイ・ヴォルコフ、紆余曲折を経てサイボーグと化した彼に、遊矢が設計した新たなる素体を身に着けさせ、その能力を活かしてデュエル戦士達を瞬時に洗脳、他のデュエル戦士と同士討ちさせるという、俺の知る遊矢が立案したとは到底信じられぬ程の外道極まりない作戦、その実行を遊矢から持ちかけられた時、俺や一行、当麻は無論の事、強い反対意思を表明した。

其処までの外道な行いはアカデミアと一緒では無いか、相手がアカデミアだからと言って何をしても良いと言うのか、そんな言葉が飛び交った。

だが俺が此処まで強い反対意思を示したのは、それだけが理由では無かった。

遊矢は嘗てこのシンクロ次元へと転移する前、ランサーズの掲げる理念として『各次元が其々交流し、其々の文化を受け入れ、分け与える事で互いに切磋琢磨し、更なる発展を遂げる事こそ4つの次元のあるべき姿』と宣言した。

その4つの次元には、俺達の次元や此処シンクロ次元、今しがたアカデミアの侵略に晒されしエクシーズ次元は無論、アカデミアを擁する融合次元も含まれている筈だ。

このアンドバリの指輪作戦はそのアカデミアの、其処に属するデュエリストの精神を、下手をすれば融合次元の在り様を徹底的に叩き潰しかねない暴挙、これでは理念と行動の矛盾では無いか、そう思い至った俺は、反対意思を示さずにはいられなかったのだ。

 

だが遊矢の反論、それを声高に叫ぶ遊矢の悲愴なる面持ちを見た俺達は、黙らざるを得なかった。

遊矢(と、何故かそれに賛同していた零児殿と柚子)とて、この作戦が正しくない事位は重々承知していた、誰をも犠牲にしない、真に正しい作戦があればそれを実行するに越した事は無いとも考えていた。

だがアカデミアに侵略の意志を変えるつもりが無いのは火を見るよりも明らかな以上は『真に正しい作戦』など無い、なれば他に最高の手は無いかと考えた上での、遊矢の苦渋の決断だったのだろう。

そして遊矢が、そうまでしてもこの次元の人々を、我らランサーズを守らねばならないという決意に至った経緯も容易に想像が付いた。

 

遊矢の前世の前世、『遊戯王5D’sの世界』の不動遊星として生まれたばかりの頃の遊矢が直面した未曽有の大災害『ゼロ・リバース』、それ以来生きる為に様々な悪行に手を染めて来た幼少期の生活…

それらの記憶はトラウマとなって当時の遊矢を蝕み、リストカットを行うまでに精神を粉々にし、今尚遊矢の心に深い傷として残り、悪夢や幻聴といった膿を吹き出し続けているのだと、あの後柚子から聞いた(遊矢自身が教訓として治そうとしていないとも言っていたが)。

そのトラウマと『原作知識として持っていながら何もせずに、ゼロ・リバースが引き起こされるのを見ているしか無かった』という後悔が、遊矢を此処までの外道な手段を決断させたのだろう。

そう考えるとこの作戦もやむを得ないと、俺も一行も当麻も一応は納得したが、それでも胸の内に引っ掛かる物はある。

それに折り合いを付ける為、そう思い至った俺は、この後に待っているエキシビションマッチのデュエルに向けて、決意を新たにした…

 

------------

 

「権現坂様、宜しくお願いしますわ。互いの全力を尽くしましょう!」

「望む所だ、ティリエル殿!この男権現坂、何時如何なるデュエルでも全力!」

『それではエキシビションマッチ2回戦!ライディングデュエル・アクセラレーション!』

 

先攻 Tiriel LP 4000 VS 後攻 Noboru LP 4000

 

遊矢とソラト殿によるエキシビションマッチ1回戦が終わり、この男権現坂と、ソラト殿の双子の妹で、鬼柳殿のマネージャーを務めるティリエル殿による2回戦、それはティリエル殿の先攻で始まった。

まあ良い、権現坂道場が掲げるは『不動のデュエル』、慌てず騒がす常にどっしりと構え、無駄に動かぬ事こそ至上、むしろ俺のデッキの理想からして後攻となった事が幸いだ。

さてティリエル殿、貴殿のデュエル、この目で見させて貰うぞ。

 

「私の先攻!

まずは『森羅の水先リーフ』を召喚!」

 

森羅の水先リーフ

効果モンスター

水属性

植物族

レベル 3

攻撃力 1500

 

先攻を取ったティリエル殿が召喚したのは、リーフの名の通り、葉っぱみたいな頭のモンスター。

 

「召喚したリーフの効果発動!

デッキの上から2枚めくって…

どちらも植物族モンスターでしたから、2枚とも墓地へ送りますわ。

次に手札の『ダンディライオン』を墓地へ送って、たった今墓地へ送られた『にん人』の効果発動!

このカードを攻撃表示で蘇生しますわ」

 

にん人

効果モンスター

闇属性

植物族

レベル 4

攻撃力 1900

 

次に登場したのは、人参が人の様になった、名前のまんまの出で立ちのモンスター。

 

「にん人の効果コストで墓地へ送られたダンディライオンの効果発動!

『綿毛トークン』2体を守備表示で特殊召喚!」

 

綿毛トークン

風属性

植物族

レベル 1

守備力 0

 

今度は名前の通り綿毛のモンスタートークンか。

 

「続いて墓地の『グローアップ・バルブ』の効果発動!

デッキの一番上のカードを墓地へ送り、このカードを守備表示で蘇生しますわ」

 

グローアップ・バルブ

効果モンスター/チューナー

地属性

植物族

レベル 1

守備力 100

 

そして5体目として出て来たのは、球根に眼が付いている様な姿のチューナー。

これでレベル2から10までのシンクロモンスターをシンクロ召喚出来るな、たった2枚の手札消費で、凄まじい展開力だ。

 

「私はレベル3のリーフと、レベル1の綿毛トークン2体に、レベル1のグローアップ・バルブをチューニング!地獄に咲き誇る野薔薇の女王よ、己が縄張りを荒す不届き者を排除しなさい!シンクロ召喚、レベル6!『ヘル・ブランブル』!」

 

ヘル・ブランブル

シンクロ・効果モンスター

光属性

植物族

レベル 6

攻撃力 2200

 

『ティリエル選手、一挙に5体ものモンスターを並べ、シンクロ召喚しました!何やら不気味な雰囲気を漂わせている様な…』

 

其処からシンクロ召喚したのは、巨大な薔薇を身体中に絡ませた貴婦人の様なモンスター。

何やらこのモンスター、不穏なオーラを纏わせているな…

 

「更に、グローアップ・バルブの効果で墓地へ送られた『薔薇恋人(ラヴァー)』を除外して効果発動!

手札の『ローンファイア・ブロッサム』を守備表示で特殊召喚!」

 

ローンファイア・ブロッサム

効果モンスター

炎属性

植物族

レベル 3

守備力 1400

 

まだまだ展開は終わらないと言わんばかりに登場したのは、実と思われる部分が爆弾みたいになったモンスター。

 

「ローンファイア・ブロッサムをリリースして効果発動!

デッキから2体目のローンファイア・ブロッサムを守備表示で特殊召喚!

そのローンファイア・ブロッサムをリリースして効果発動!

デッキから3体目のローンファイア・ブロッサムを守備表示で特殊召喚!

更にそのローンファイア・ブロッサムをリリースして効果発動!

デッキから『森羅の番人オーク』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

森羅の番人オーク

効果モンスター

地属性

植物族

レベル 6

攻撃力 2400

 

『おや、ティリエル選手、デッキのローンファイア・ブロッサムを使いきって上級モンスターをリクルートしました。一体どの様な意図が…』

 

ティリエル殿の行動の意図が分からんのか。

ターンが始まってからティリエル殿は墓地肥やしを繰り返している、中でもデッキからの墓地肥やしが多い。

恐らくティリエル殿は、デッキからローンファイア・ブロッサムを全て墓地へ送る事でデッキを圧縮し、狙いのカードが墓地へ送りやすくしているのだろう。

他にも今は制限カードに指定されている装備魔法『継承の印』による蘇生も考えられる。

そんな事も分からんとは実にけしからん、この非常時に。

まあそんなMCへの突っ込みはさて置き、ローンファイア・ブロッサムの効果でリクルートされたのは、棍棒を持った巨人の様なモンスター。

風貌からして頼りになりそうな番人だ。

 

「特殊召喚したオークの効果発動!

デッキの上から3枚めくって…

3枚ともに植物族モンスターですから、全て墓地へ送りますわ。

その墓地へ送られた『森羅の花卉士ナルサス』、『森羅の葉心棒ブレイド』の効果発動!

それにチェーンして手札の『森羅の賢樹シャーマン』の効果発動!

まずシャーマンの効果で、このカードを攻撃表示で特殊召喚!」

 

森羅の賢樹シャーマン

効果モンスター

風属性

植物族

レベル 7

攻撃力 2600

 

まだまだ行くぞと言わんばかりに登場したのは、大樹に顔があるかの様なモンスター。

 

「次にブレイドの効果でこのカードを手札に戻しますわ。

そしてナルサスの効果で、デッキの一番上に『森羅の実張りピース』を置きますわ。

まだまだ行きますわ!グローアップ・バルブを除外して、オークの効果で一緒に墓地へ送られた『スポーア』の効果発動!

このカードを守備表示で蘇生し、このカードのレベルを、除外したグローアップ・バルブのレベル分上げますわ!」

 

スポーア

効果モンスター/チューナー

風属性

植物族

レベル 1→2

守備力 800

 

更に登場したのは、毛玉に顔が出来たかの様なモンスター。

それにしてもさっきから植物族モンスターばかりが墓地へ送られるな…まさか!?

 

「ティリエル殿、1つお聞きしたいのだが、もしやお主のデッキは…」

「察しが良いですわね、権現坂様。そう、私のデッキは植物族モンスターだけで構成されていますわ。私のデッキの主力である森羅モンスター達はデッキの上をめくり、植物族モンスターであればそれを墓地へ送る効果を持つ者たちばかり、その効果を活かす為にフルモンスター構築にしているのですわ」

 

やはりティリエル殿のデッキは、植物族のフルモンスターでっきであったか…

まさかこのシンクロ次元にも我らと同じフルモンスターデッキの使い手がいたとは、感慨深い。

 

「さて、デュエルを続行しますわ!私は、レベル4のにん人に、レベル2となったスポーアをチューニング!聖なる森に潜みし華麗なる棘の狩人よ、戒めの鞭を持ちて今こそ姿を現しなさい!シンクロ召喚、レベル6!『スプレンディッド・ローズ』!」

 

スプレンディッド・ローズ

シンクロ・効果モンスター

風属性

植物族

レベル 6

攻撃力 2200

 

『ティリエル選手、2回目のシンクロ召喚です!今度は薔薇を思わせる姿の女戦士です!先程自らのデッキをフルモンスターであるとカミングアウトしましたが、本当にフルモンスターデッキなのかと思いたくなる展開力です!』

 

だが今はデュエル中、感慨に浸るのは後だと気を引き締めた俺の前で繰り広げられたシンクロ召喚の演出、それと共に登場したのは、両手から薔薇を思わせる鞭を装備した女戦士。

 

「まだまだ行きますわ!私はヘル・ブランブルとオーク、そしてスプレンディッド・ローズでオーバーレイ!」

「オーバーレイ、と言う事はエクシーズ召喚か!」

 

我らがこのシンクロ次元に来てまだ半月余りだが、こうして他次元の召喚方法を少しずつ、然しながら自然と導入するその様、何やら以前の我らを見ている様だ。

遊矢の前世である不動遊星の仲間であったジャック・アトラス達の尽力が土台となったか、我らランサーズが紹介したのが切っ掛けか、どちらにせよこうしてすんなりと受け入れられるのは嬉しい限りだ。

遊矢がランサーズの掲げる理念として宣言した『各次元が其々交流し、其々の文化を受け入れ、分け与える事で互いに切磋琢磨し、更なる発展を遂げる事こそ4つの次元のあるべき姿』、少なくとも俺達の次元や此処シンクロ次元では、それが根付き始めている様に思える。

 

「3体のレベル6モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!数多の妖精を統べる騎士よ、あらゆる外敵を薙ぎ払いなさい!『妖精騎士イングナル』!」

 

妖精騎士イングナル

エクシーズ・効果モンスター

地属性

植物族

ランク 6

守備力 3000

ORU 3

 

そのエクシーズ召喚の演出と共に登場したのは、緑を基調とした装備、同じく緑色の長剣を持った騎士。

 

「まだまだこれからですわ!シャーマンの効果発動!

デッキの一番上に置いたピースをめくり、墓地へ送りますわ。

墓地へ送られたピースの効果発動!

それにチェーンして手札にある、2枚目のシャーマンの効果発動!

まずはシャーマンの効果で、このカードを攻撃表示で特殊召喚!

次にピースの効果で、墓地のローンファイア・ブロッサムを守備表示で蘇生しますわ!

今特殊召喚したシャーマンの効果発動!

デッキの一番上をめくり…

植物族モンスターですから、墓地へ送りますわ。

その墓地へ送られた『森羅の姫芽君スプラウト』の効果発動!

このカードをレベル8モンスターとして守備表示で蘇生しますわ!」

 

森羅の姫芽君スプラウト

効果モンスター

光属性

植物族

レベル 1→8

守備力 100

 

それにしても、ティリエル殿のデッキは本当にフルモンスターなのかと疑いたくなる展開力だ。

此処までに2回のシンクロ召喚と、その2体のシンクロモンスターを用いて1回のエクシーズ召喚を行い、今のフィールドにはイングナルの他、2体のシャーマン(どちらもレベル7)、リクルート出来るローンファイア・ブロッサムに、レベル8となった、今しがた蘇生した平安時代の姫を思わせるモンスターもいる。

 

「私は2体のシャーマンでオーバーレイ!2体のレベル7モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!森羅の霊峰、その森に住まう精霊を鎮めし神よ、今こそフィールドに君臨し、平穏を乱す輩を追放しなさい!『森羅の鎮神オレイア』!」

 

森羅の鎮神オレイア

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

植物族

ランク 7

攻撃力 2800

ORU 2

 

その内の2体であるシャーマン2体を用いたエクシーズ召喚で登場したのは、グリフォンを思わせる巨大な鳥の様なモンスター。

 

「まだ行きますわよ!ローンファイア・ブロッサムをリリースして効果発動!

デッキから『森羅の仙樹レギア』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

森羅の仙樹レギア

効果モンスター

炎属性

植物族

レベル 8

攻撃力 2700

 

そして、ローンファイア・ブロッサムの効果でリクルートされたのは、シャーマン以上に巨大な大木の様なモンスター。

 

「たった今特殊召喚したレギアの効果発動!

デッキの一番上をめくり…

植物族モンスターですから、墓地へ送り、1枚ドローしますわ!

私はレギアとスプラウトでオーバーレイ!2体のレベル8モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!森羅の霊峰を守護する神よ、今こそフィールドに君臨し、外敵を追放しなさい!『森羅の守神アルセイ』!」

 

森羅の守神アルセイ

エクシーズ・効果モンスター

光属性

植物族

ランク 8

守備力 3200

 

『ティリエル選手、これで3回目のエクシーズ召喚です!果たしてこれが本当に、フルモンスターデッキの動きなのか!?』

 

MCの驚きを他所にエクシーズ召喚されたのは、強大な神獣を思わせる姿(神を名乗っているのだから実際そうなのだろう)のモンスター。

 

「先程ドローした『フェニキシアン・クラスター・アマリリス』を墓地へ送って、オレイアの効果発動!

墓地へ送ったフェニキシアン・クラスター・アマリリスのレベルの数、つまり8枚、デッキの上からめくり、それを好きな順番で並び替えますわ。

そしてアルセイの効果発動!宣言するのは、3枚目の『森羅の賢樹シャーマン』!

デッキの一番上をめくり、宣言した3枚目のシャーマンでしたので、手札に加えますわ!

私はこれでターンエンドですわ」

 

Tiriel

LP 4000

手札 2(シャーマン、ブレイド)

モンスター 妖精騎士イングナル(守備表示)

      森羅の鎮神オレイア(攻撃表示)

      森羅の守神アルセイ(攻撃表示)

魔法・罠カード なし



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96話_不動のデュエル(ソリティアしないとは言っていない)

注:今後の展開の関係で、ティリエルが使用したアクションカードが変更されています(7/5)。


Side 権現坂

 

それにしても実況の言う通り、俺と同じフルモンスターとは思えない展開力だ。

一時はモンスターゾーンを一杯にし、其処からシンクロ召喚を2回、エクシーズ召喚を3回も行い、今のティリエル殿のフィールドには3体のエクシーズモンスターが鎮座している。

何とも凄まじい、そして厄介な布陣だ。

だがこの男権現坂の手札には、それを打開する手が有る。

 

「俺のターン!ドロー!

まずは手札の『超重武者ヒキャ―Q』を守備表示で特殊召喚!コイツは俺の墓地に魔法・罠カードが無ければ手札から特殊召喚出来る!」

 

超重武者ヒキャ―Q

効果モンスター

地属性

機械族

レベル 5

守備力 1800

 

後攻である俺のターン、最初に登場させたのは、江戸時代に貨物の運搬を担っていた飛脚をモチーフとした超重武者、ヒキャ―Q。

見た目といいモチーフといい『不動のデュエル』に似合わなさそうではあるが、このカードも重要な役割がある。

 

「今特殊召喚したヒキャ―Qをリリースして効果発動!

手札の『超重武者ビッグベン―K』と『超重武者ツヅ―3』を守備表示で、

 

 

 

ティリエル殿のフィールドに特殊召喚し、2枚ドロー!」

「わ、私のフィールドにですか?」

 

超重武者ビッグベン―K

効果モンスター

地属性

機械族

レベル 8

守備力 3500

 

超重武者ツヅ―3

効果モンスター/チューナー

地属性

機械族

レベル 1

守備力 300

 

『おぉっとぉ、これはどういう事でしょう!?権現坂選手の手札にあったモンスターが、何故かティリエル選手のフィールドに出現しました!正に『敵に塩を送る』諺そのままの行為、一体何の意図があるのでしょう…?』

 

ヒキャ―Qの効果、それは実況の言う通り『敵に塩を送る』、手札の超重武者モンスター達を相手のフィールドに送る行為だ。

その効果でティリエル殿のフィールドに出現したのは、この超重武者デッキのエースの一角で『不動のデュエル』の要、平安時代末期の英雄、武蔵坊弁慶をモチーフとした超重武者、ビッグベン―Kと、鼓をモチーフとした超重武者チューナー、ツヅ―3。

手札交換こそなったが相手にモンスターを、それもエースを送りつけるという正気の沙汰には見えないこの効果処理、だがこれこそがこの状況を打開する為の手、その手は、今のドローで揃った。

 

「次にスケール1の『超重輝将ヒス―E』とスケール8の『超重輝将サン―5』をペンデュラムスケールにセッティング!」

 

ペンデュラムスケール(青):1(超重輝将ヒス―E)

ペンデュラムスケール(赤):8(超重輝将サン―5)

 

『権現坂選手、此処でペンデュラムモンスターをセットしました!さあ一体どんなモンスターがペンデュラム召喚されるのか!』

「それではお見せしよう!我が『不動のデュエル』の理に集いし兵たちを!ペンデュラム召喚!いざ戦場へ集え、我が武者達よ!レベル2『超重武者タマ―C』!レベル2『超重武者ホラガ―E』!そしてレベル3『超重武者カゲボウ―C』!」

 

超重武者タマ―C

効果モンスター/チューナー

闇属性

機械族

レベル 2

守備力 800

 

超重武者ホラガ―E

効果モンスター/チューナー

地属性

機械族

レベル 2

守備力 600

 

超重武者カゲボウ―C

効果モンスター

地属性

機械族

レベル 3

守備力 1000

 

『権現坂選手、一挙に3体のモンスターをペンデュラム召喚しました!その内2体はチューナー、残りの1体はチューナーではありません、という事はレベル7シンクロモンスターをシンクロ召喚するつもりでしょうか…?』

 

いや、シンクロ召喚するのは合っているが、レベルは大いに違うぞ。

そう心の中で突っ込みを入れるのを他所にペンデュラム召喚されたのは、モチーフである魂の様な球体の超重武者、タマ―Cと、モチーフであるほら貝を構える超重武者、ホラガ―E、そして尺八を吹く虚無僧の様な出で立ちの超重武者、カゲボウ―C。

さあ行くぞ、ティリエル殿!

 

「今ペンデュラム召喚したタマ―Cの効果発動!

ティリエル殿のフィールドに特殊召喚したビッグベン―Kとタマ―Cを墓地へ送ってシンクロ召喚を行う!」

「わ、私のフィールドのモンスターを!?」

『何とこれは驚きです!前代未聞、相手モンスターをシンクロ素材にしてしまう効果、この為に態々ティリエル選手のフィールドにモンスターを送りつけた訳ですね!』

 

そう、それこそが俺の狙いだ。

先程、ティリエル殿のフィールドを『厄介』と感じた要因の1つは、エクシーズモンスターしかいなかった事。

今更説明するまでも無いが、エクシーズモンスターはレベルを持たない、よってシンクロ召喚の素材にする事が出来ず、このタマ―Cの効果対象にも選べない、故にレベルを持たないモンスターしかいないティリエル殿のフィールドを厄介と感じたのだ。

だがそれなら、レベルを持つモンスターが存在する状態にしてしまえば良い、そう思い立ち、ヒキャ―Qの効果で送りつけたのだ。

そしてその一方であるビッグベン―Kを用いてシンクロ召喚するは、この男権現坂の真のエース!

 

「俺は、レベル8のビッグベン―Kに、レベル2のタマ―Cをチューニング!荒ぶる神よ、千の刃の咆哮と共に煌びやかな戦場に現れよ!シンクロ召喚、いざ出陣!レベル10!『超重荒神スサノ―O』!」

 

超重荒神スサノ―O

シンクロ・効果モンスター

地属性

機械族

レベル 10

守備力 3800

 

『権現坂選手、タマ―Cの効果で何やら巨大な機械武者をシンクロ召喚しました!実に大きい姿です!』

 

シンクロ召喚の演出と共に現れたのは、日本神話に登場する荒ぶる神スサノオをモチーフとした超重武者(このカードに限らず、『超重』シンクロモンスターはルール上『超重武者』扱いだ)、スサノ―O。

だが、まだ終わらんぞ!

 

「次に俺は、レベル3のカゲボウ―Cに、レベル2のホラガ―Eをチューニング!今こそこの決闘の場に、ズバッと現れよ、万人を超越せし剣豪よ!シンクロ召喚、いざ出陣!レベル5!『超重剣聖ムサ―C』!」

 

超重剣聖ムサ―C

シンクロ・効果モンスター

地属性

機械族

レベル 5

守備力 2300

 

『続いてシンクロ召喚したのは、二刀流を駆使する機械武者です!それにしても口上は何処かの仮面○イダーのオマージュでしょうか…?』

 

口上は気にするな。

そんな突っ込みを置いて、次にシンクロ召喚したのは、二刀流で知られる剣豪、宮本武蔵をモチーフとした超重武者、ムサ―C。

 

「シンクロ召喚したムサ―Cの効果発動!

俺の墓地にいるヒキャ―Qを手札に加え、そのまま守備表示で特殊召喚し、バトルフェイズに入る!」

「バトルフェイズ?権現坂様のフィールドにいるモンスターは全員守備表示ですが…」

『ティリエル選手の言う通り、権現坂選手のフィールドには守備表示モンスターしかいません!これでは攻撃出来ない中、何故バトルフェイズに…?』

「スサノ―Oとムサ―Cは守備表示の時、守備力を攻撃力扱いとして攻撃出来る!

この効果により、ムサ―Cでツヅ―3を攻撃!ムラマサ・十字斬(クロススラッシュ)!」

「きゃぁ!?」

 

超重剣聖ムサ―C 守備力 2300 VS 超重武者ツヅ―3 守備力 300

 

「破壊されたツヅ―3の効果発動!

墓地のビッグベン―Kを守備表示で蘇生する!

そしてビッグベン―Kがフィールドにいる限り、俺のフィールドにいる超重武者モンスターは、スサノ―O達と同じく守備表示で攻撃出来る!」

「な!?」

『権現坂選手、全く無駄のないプレイングで4体のモンスターを並べ、全員が守備表示で攻撃出来る様になりました!ティリエル選手といい権現坂選手といい、これが本当にフルモンスターの展開力なのか!?』

 

ムサ―Cの剣舞によって切り裂かれたツヅ―3の効果により蘇生したビッグベン―K、これで俺のフィールドにはスサノ―Oとビッグベン―K、ヒキャ―Qにムサ―Cが並んだ(うちムサ―Cは既に攻撃したが)、それにサン―5のペンデュラム効果を使えばこの内1体がもう1度攻撃出来る、これを使えばティリエル殿のフィールドを一掃する事も不可能では無い…!

 

「次にビッグベン―Kでアルセイを攻撃!不動(フィスト)!」

「くっ!」

 

超重武者ビッグベン―K 守備力 3500 VS 森羅の守神アルセイ 守備力 3200

 

よし、通ったぞ!

 

「ビッグベン―Kがモンスターを戦闘破壊した事で、ペンデュラムスケールにセットされたサン―5の効果発動!

ビッグベン―Kはもう1度攻撃出来る!

この効果でイングナルを攻撃!不動拳、第2打!」

「な、きゃぁ!?」

 

超重武者ビッグベン―K 守備力 3500 VS 妖精騎士イングナル 守備力 3000

 

これでティリエル殿のフィールドに残るは攻撃表示のオレイアのみ!

 

「続いてスサノ―Oでオレイアを攻撃!クサナギソード・斬!」

「これ以上は通しませんわ!アクションマジック『奇跡』発動!」

 

奇跡

アクションマジック

1:フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターは戦闘では破壊されず、戦闘ダメージは半分になる。

 

「奇跡の効果で、オレイアは戦闘破壊されず、私が受けるダメージは半分になりますわ!くっ!」

 

超重武者スサノ―O 守備力 3800 VS 森羅の鎮神オレイア 攻撃力 2800

 

Tiriel LP 4000→3500

 

このまま突破するぞと言う気迫が伝わったかの様に、スサノ―Oの剣が振り下ろされたが、それは寸での所で受け止められてしまったか。

文字通り『奇跡』が起こった訳だが、タダでは転ばぬぞ!

 

「スサノ―Oの効果発動!

この効果は1ターンに1度、俺の墓地に魔法・罠カードが無ければ、相手の墓地にある魔法・罠カードを1枚、俺のフィールドにセット出来る!

これは相手ターンにも使えるフリーチェーン効果で、この効果でセットした魔法・罠カードがフィールドを離れると除外される!」

「え!?」

「この効果で、たった今ティリエル殿が使用した奇跡をセットする!

そして俺はこのままターンエンド!」

『権現坂選手、ティリエル選手のモンスターを一掃する事こそ叶いませんでしたが、タダでは転びません!ティリエル選手が発動した奇跡を奪い取ってターンを明け渡しました!それにしてもティリエル選手に負けじと、権現坂選手もフルモンスターとは思えない展開力を見せました!このデュエルは正に、現代のフルモンスターデッキの底力を垣間見たと言って良いでしょう!』

 

Noboru

LP 4000

手札 0

ペンデュラムスケール(青):1(超重輝将ヒス―E)

ペンデュラムスケール(赤):8(超重輝将サン―5)

モンスター 超重荒神スサノ―O(守備表示)

      超重剣聖ムサ―C(守備表示)

      超重武者ヒキャ―Q(守備表示)

      超重武者ビッグベン―K(守備表示)

魔法・罠カード セット(奇跡)

 

さあティリエル殿、俺はティリエル殿の布陣を崩しつつ、4体もの兵を呼び出して見せたぞ。

ティリエル殿はこの布陣、どう突破する?



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97話_権現坂の信念

さて、ティリエル殿のフィールドには攻撃表示のオレイアのみ、手札はシャーマンとブレイドの2枚と、ドローフェイズに加わる1枚、そして次のドローで何が来るか、その後の森羅モンスターの効果によって墓地へ送られるであろうカードは何か、上から7枚までティリエル殿は把握済みだ。

その7枚、それによってこのデュエルの戦局が左右されると言っても過言では無い。

例えそれが、モンスターを除去する効果を持っていたとしても、墓地のカゲボウ―Cを除外する事で、1回は無効破壊出来るが…

まあいい、ティリエル殿、全力で掛かって来るが良い!

 

「私のターン、ドロー!

まずは、オレイアのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!

最初に言って置きますわ、権現坂様。この効果は、デッキトップから3枚めくり、その中に植物族モンスターがあればそれら全てを墓地へ送り、その数だけフィールド上にあるカードをバウンスしますわ。

これは対象を取らない効果です、何か使いたい効果があればどうぞ」

 

森羅の鎮神オレイア ORU 2→1

 

対象を取らない効果か、これではカゲボウ―Cの効果が使えない…!

 

「いや、無い」

「ならばデッキの上から3枚めくって…

3枚ともに植物族モンスターですから、全て墓地へ送り、権現坂様のフィールドにいるスサノ―O、ムサ―Cにはエクストラデッキに、ビッグベン―Kには手札にお戻り頂きますわ!」

「くっ…!」

『ティリエル選手、権現坂選手が展開した上級モンスターの大軍を一気に除去しました!凄まじい効果です、権現坂選手、先程オレイアを戦闘破壊出来なかった事が仇となった!』

 

まさに実況の言う通りだが、これもアクションデュエルの醍醐味、致し方ない面もある。

 

「この効果で墓地へ送られた2枚目の『森羅の姫芽君スプラウト』、『フラボット』、『スナップドラゴン』の効果発動!

それにチェーンして手札にある3枚目の『森羅の賢樹シャーマン』の効果発動!

まずはシャーマンの効果で、このカードを攻撃表示で特殊召喚!」

 

森羅の賢樹シャーマン

効果モンスター

風属性

植物族

レベル 7

攻撃力 2600

 

やはり仕込んでいたか、森羅モンスターを。

 

「次にスナップドラゴンの効果で、たった今手札に戻りましたビッグベン―Kをエンドフェイズまで除外させて頂きますわ」

 

エンドフェイズまで手札を除外するカードか、ビッグベン―Kには手札誘発効果が無いから意味は無いが、今時手札から誘発して効果を発揮するカード等幾らでもある、この男権現坂のデッキにも超重武者版『リミッター解除』と言うべきバスター・ガントレットを入れている、それの対策だろうか。

 

「続いてフラボットの効果で、ドロー!

その後、手札を1枚、デッキトップに置きますわ。

そしてスプラウトの効果で、このカードをレベル7モンスターとして守備表示で蘇生しますわ!」

 

森羅の姫芽君スプラウト

効果モンスター

光属性

植物族

レベル 1→7

守備力 100

 

これでレベル7モンスターが2体、という事はこの2体で…

 

「今出したシャーマンの効果発動!

デッキの一番上をめくり…

植物族モンスターですから、墓地へ送りますわ。

その墓地へ送られた『森羅の葉心棒ブレイド』の効果発動!

このカードを手札に戻しますわ。

私はシャーマンとスプラウトでオーバーレイ!2体のレベル7モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!並び立ちなさい!2体目のオレイア!」

 

森羅の鎮神オレイア

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

植物族

ランク 7

攻撃力 2800

 

これで俺のフィールドは丸裸になるか…

 

「今出したオレイアのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!

デッキの上から3枚めくって…

3枚ともに植物族モンスターですから、全て墓地へ送り、権現坂様のフィールドにいるヒキャ―Qと、ペンデュラムスケールにセットされたサン―5とヒス―Eには手札にお戻り頂きますわ!」

『これで権現坂選手のフィールドからはモンスターがいなくなりました!権現坂選手、万事休すか!』

「まだ終わりませんわ!墓地へ送られた2枚目のフラボットと『森羅の実張りピース』の効果発動!

まずはピースの効果で、墓地の『森羅の花卉士ナルサス』を攻撃表示で蘇生しますわ!」

 

森羅の鎮神オレイア(B) ORU 2→1

 

森羅の花卉士ナルサス

効果モンスター

地属性

植物族

レベル 4

攻撃力 1800

 

「次にフラボットの効果で、ドロー!

その後、手札を1枚、デッキトップに置きますわ」

 

勝利は目前と誰もが思っているその状況下、だがそれでもティリエル殿の展開は留まるところを知らない、恐らく俺がアクションマジックを手にした事で決めきれなかった、という可能性を少しでも減らす為か。

2体のオレイアの護衛だと主張するかの様に登場したのは、至る所に花を模した装飾が施された装備に身を包んだ騎士、ナルサス。

 

「続いて手札のブレイドを墓地へ送って、墓地の『にん人』の効果発動!

このカードを攻撃表示で特殊召喚!」

 

にん人

効果モンスター

闇属性

植物族

レベル 4

攻撃力 1900

 

「私はナルサスとにん人でオーバーレイ!2体のレベル4モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れなさい、No.50!強大なる大砲を有した帆船よ、今こそ戦場に出航し、敵に壊滅的な打撃を与えなさい!『ブラック・コーン号』!」

 

No.50ブラック・コーン号

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

植物族

ランク 4

攻撃力 2100

ORU 2

 

『ティリエル選手の展開は止まらない!今度は大砲を装備した帆船がエクシーズ召喚されました!それにしても船体は黒いトウモロコシみたいです!夏はやっぱり焼きトウモロコシですよね!』

 

其処、幾らこの話が夏場に投稿されたからと言っても、季節ネタに走るな。

 

「まだまだこれからですわよ!墓地へ送られた2枚目の『薔薇恋人』を除外して効果発動!

手札から『森羅の仙樹レギア』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

森羅の仙樹レギア

効果モンスター

炎属性

植物族

レベル 8

攻撃力 2700

 

「今出したレギアの効果発動!

デッキの一番上をめくり…

植物族モンスターですから、墓地へ送り、ドロー!

今墓地へ送られた『アマリリース』を除外して効果発動!

このターンにモンスターを召喚する際に必要なリリースを1体少なくしますわ!

この効果で、2枚目の『森羅の番人オーク』を通常召喚!」

 

森羅の番人オーク

効果モンスター

地属性

植物族

レベル 6

攻撃力 2400

 

『何と言う爆発力でしょうか!ティリエル選手のフィールドには攻撃力2000を超えるモンスター達がフィールド一杯の5体も並びました!其処まで展開するか!』

 

正にそうだな、遊矢とてこれ程の展開を見せる事はそれ程多くない。

さて、これをどう切り抜けるか…

 

「それでは満を持してバトルフェイズに入りますわ!まずはブラック・コーン号でダイレクトアタック!」

 

む、あれはアクションカード…

あれがもし『大脱出』であれば、この局面を切り抜け、次のターンに繋げられる…!

 

『ティリエル選手、5体ものモンスターを並べてバトルフェイズに突入!このままでは権現坂選手の敗北が確定してしまいます、が、権現坂選手の目前にはアクションカード、それが何かによっては切り抜けるのも不可能ではありません、さあ一体あのアクションカードは何なのか!?』

 

…何を血迷っているんだ、俺は。

 

『あぁっとぉ!?権現坂選手、取りません!素通りです、これは一体どういう事か!?』

「ぐぉ!」

 

Noboru LP 4000→1900

 

「権現坂様、一体どういうお積もりで…?」

 

どういう積もり、か。

確かに今の状況は俺にとっては絶望的、普通のデュエルであるならもう敗北は確定と言える、だがこれはアクションデュエル、狙いのアクションカードを引き当てれば切り抜ける事も不可能では無いだろう。

そのチャンスとも言うべき先程のアクションカードを素通りしたのだ、デュエルを捨てたとか、ティリエル殿を舐めているとか、色々言われてもおかしくは無い。

 

だがこの状況を切り抜けたとして、一体何が出来る?

俺の『超重武者』デッキに入っているカードの半数以上は墓地に魔法・罠カードが無い事を条件に強力な効果を発揮する者、アクションカードを使えば単なるバニラ、通常モンスター以下の存在と化してしまう。

『超重』シンクロモンスターはその傾向が顕著で、魔法・罠カードを使った後まともにその力を発揮出来るのはムサ―Cしかいない、効果を発揮出来なければ守備表示で攻撃出来るモンスターでしか無い。

仮にこの状況をアクションカードで切り抜けたとしても、結局はティリエル殿の布陣を突破する事叶わず敗北する運命だろう。

ティリエル殿の圧倒的な布陣を前に華々しく散るか、それとも無様に決着を引きのばすか、どちらが良いかはその時々で変わるだろうが、少なくとも今は前者であろう。

それに目先の勝利の為になら何をやっても、それこそ己にとって何よりも重大な物を捨てても良いのか?否、断じて否!

 

「この男権現坂、このデッキに潜む超重武者達を、我が『不動のデュエル』の信念を誇りに思っている。目先の勝利の為にアクションカードを取りに行く等、我が誇りを捻じ曲げる等出来ぬ!」

 

もしかしたら遊矢も、同じ思いかも知れぬ。

常日頃からデュエルの楽しさ、尊さ、神聖さを語っていた遊矢。

だがランサーズの最高指揮官として、時にはあの『アンドバリの指輪』作戦の様な悪事も行う判断を下さねばならぬのだろう。

時にはデュエルを政治的に利用せねばならぬ事もあるだろう。

時にはデュエルを自衛の手段として用いねば、用いらせねばならぬ事もあるだろう。

そんな状況下であっても遊矢は、デュエルに対する思いを見失う事は無い。

4つの次元の平和を、其処に暮らす人々とその笑顔を、そしてデュエルモンスターズの存在意義を守る為に、そしてランサーズが掲げる理念を実現する為に全力で奔走する遊矢、そんな遊矢だからこそ皆に慕われ、同年代や年上が殆どなランサーズの中でもトップとして受け入れられ、その剛腕を振るう事が出来るのだろう。

なればこの男権現坂も、不動のデュエルの信念を捨てたりはせぬ!

 

「この布陣を前にしてその心意気…

実に素晴らしいですわ。ですがこれはデュエル、情け容赦は致しません!」

「望む所だ!全力で俺を叩き潰して来い!この男権現坂、受け止めて見せよう!」

「では残りのモンスターで一斉攻撃!」

「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

Noboru LP 1900→-500→-3200→-6000→-8800 LOSE

 

WINNER Tiriel

 

『決まったぁ!エキシビションマッチ2回戦の勝者は、森羅モンスター達の絆、それが生み出す爆発力を存分に発揮したティリエル選手!権現坂選手、敗れはしましたが、その信念と、超重武者モンスター達の絆は見事の一言です!』



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98話_SECRET AMBITION、秘めたる想い

Side 柚子

 

先程のアカデミアによる侵略を阻止する為の防衛戦で遊矢が実行した『アンドバリの指輪』作戦。

その子細を遊矢から最初に聞かされた時、私はその余りの非道さに、そんな非道な作戦を思いついた遊矢の様子に驚いた。

権現坂達が強硬に反対し、遊矢自身も認識していたその非道さ、幾らこのシティを守る為とはいえ、其処までの事をしなくてはいけないのか、其処までの事を最高指揮官として決断しなくてはいけないのか、と思った。

 

でも私は、そんな遊矢の決断に反対しなかった。

そんな決断をした遊矢、その余りにも壮絶すぎる過去を、それによるトラウマに未だに苦しめられる、いや『教訓』として今も苦しみに耐え続ける遊矢を知っているが故に、普段からは信じられない程憔悴しきったあの姿を、涙を見ていたが故に、反対する事等出来る訳が無かった。

むしろ賛成の意を示し、強硬に反対する権現坂達の説得を進んで行っていた。

 

例え悪逆非道な発想をしようと、それを躊躇なく実行しようと、それが考えに考え、悩んだ末の遊矢の決断であるなら、私はそんな遊矢の想いを尊重したい。

例えそんな決断の数々が原因であらゆる存在が遊矢の敵になろうと、私だけは遊矢の味方で、変える場所でありたい。

遊矢の恋人、いや妻として、ずっと側に居て、遊矢の支えになりたい。

そんな決意を込め、シンジさんとのエキシビションマッチ3回戦に臨むべく、私は会場へと向かった。

髪をポニーテールにし、今日の為に新調した黒地にスカーレットのライダースーツを身に纏い、何やら仄暗いオーラを纏わせるデッキを携えて…

 

------------

 

「柚子?一体どうしたんだ、その格好は…」

「ちょっとしたイメチェン、という事で。まあ詳しい事は後で分かります」

『それではエキシビションマッチ3回戦!ライディングデュエル・アクセラレーション!』

 

先攻 Yuzu LP 4000 VS 後攻 Shinji LP 4000

 

よし、先攻は私!

 

「私の先攻!

まずは手札の『堕天使イシュタム』と『堕天使スペルビア』を墓地へ送ってイシュタムの効果発動!

2枚ドロー!」

「堕天使だと?お前のデッキは確か『幻奏』だった筈…」

『おぉっと、これはどうした事でしょう!?シンジ選手の言う通り、柚子選手のデッキは幻奏デッキであるという事前情報がありましたが…』

 

確かに幻奏デッキは私のメインデッキだし、今までこれだけしか使って来なかった。

一方で遊矢やエレン、一行の様に他のデッキを使う事にも興味があった私が、このシティにてちょっとした事から手にしたのが、この『堕天使』デッキ。

今までは仲間内でのデュエルだけだったから使う機会は無かったけど、今日このデュエルは、私の決意を示す場でもある。

私の決意、遊矢の帰る場所となり、遊矢が迷っている時は支えになり、落ち込んでいる時は側に寄り添う、そんな決意を、この堕天使デッキと共に示すわ!

時には私自身迷う事もあるかも知れない、時には真っ当な道を敢えて踏み外す事もあるかも知れない、時には茨の道を突き進む事もあるかも知れない、けれど私は遊矢と共に前を進む!

遊矢と一緒なら、遊矢が側にいてくれるなら、もう何も怖くないわ!

 

「見せて上げるわ、私の新たなるデッキに潜む、堕天使達の力を!

次に魔法『手札抹殺』発動!」

 

手札抹殺(制限カード)

通常魔法

1:手札があるプレイヤーは、その手札を全て捨てる。その後、それぞれ自身が捨てた枚数分デッキからドローする。

 

「手札抹殺の効果で、私は5枚の手札を捨てて5枚ドローする!」

「咄嗟にアクションマジックを手にしていたか…

俺も5枚の手札を捨てて5枚ドローする」

 

これで準備は万端!

 

「続いて魔法『ソウル・チャージ』発動!」

 

ソウル・チャージ(制限カード)

通常魔法

『ソウル・チャージ』は1ターンに1枚しか発動出来ず、このカードを発動するターン、自分はバトルフェイズを行えない。

1:自分の墓地のモンスターを任意の数だけ対象として発動出来る。そのモンスターを特殊召喚し、自分はこの効果で特殊召喚したモンスターの数×1000LPを失う。

 

「ソウル・チャージの効果で、墓地の『堕天使スペルビア』2体と『堕天使ゼラート』を攻撃表示で蘇生し、3000LPを払うわ!くっ…!」

 

堕天使スペルビア

効果モンスター

闇属性

天使族

レベル 8

攻撃力 2900

 

堕天使ゼラート

効果モンスター

闇属性

天使族

レベル 8

攻撃力 2800

 

Yuzu LP 4000→1000

 

『柚子選手、一挙に3体ものレベル8モンスターを蘇生しました!現在は柚子選手の先攻1ターン目、バトルフェイズを行えないデメリットも関係有りません!此処からエクシーズ召喚か…?』

 

と、思うでしょうけど、まだ効果処理は終わっていないわ!

 

「蘇生した2体のスペルビアの効果発動!

まずは1体目の効果で、墓地のイシュタムを守備表示で蘇生するわ!」

 

堕天使イシュタム

効果モンスター

闇属性

天使族

レベル 10

守備力 2900

 

「次に2体目の効果で、墓地の『堕天使ナース―レフィキュル』を攻撃表示で蘇生するわ!」

 

堕天使ナース―レフィキュル

効果モンスター

闇属性

天使族

レベル 4

攻撃力 1400

 

「レフィキュル、だと…!」

『柚子選手、たった1枚の魔法カードから一挙に5体もの堕天使モンスターを並べました!』

 

MCの言う通り、これで私のフィールドには、七つの大罪の1つ『傲慢』を司る堕天使スペルビアが2体と、大天使ゼラートが闇堕ちした様な姿の堕天使ゼラート、自殺を司る神がモチーフとなった堕天使イシュタム、そして堕天使で唯一の下級モンスターであり、とあるコンボデッキのキーカードでもあるレフィキュルの5体が並んだ。

そのレフィキュルの姿を見るや否や、アクションカードを急いで探す様になったシンジさんの様子からして、そのコンボの恐ろしさを知っている筈、なら直ぐに動くわ!

 

「更に魔法『成金ゴブリン』発動!」

「やはり持っていたか…!」

 

成金ゴブリン

通常魔法

自分のデッキからカードを1枚ドローする。その後、相手は1000LP回復する。

 

「成金ゴブリンの効果で、ドロー!その後、相手に1000LP回復させる予定だけど、レフィキュルの効果でそれをバーンダメージに変えるわ!」

「くっ!?」

『柚子選手、これは恐ろしいコンボです!しかし札束でシンジ選手の頬を引っぱたくとか、ちょっと汚い様な…』

『そうだそうだ、汚ねぇぞ!』

『もうちょいまともな演出は無いのか!』

 

Shinji LP 4000→3000

 

確かに、イラストに出ている金持ちみたいな出で立ちのゴブリンがシンジさんの乗るD―ホイールにずかずかと近寄って札束ビンタなんて、コモンズの皆の感情を逆撫でしている様にしか見えない演出ね。

後で演出を修正して貰おう、というか1000ダメージも与えるとかどんな札束なの!?

 

「この効果でドローした2枚目の成金ゴブリン発動!」

「これ以上はやらせん!アクションマジック『火の粉払い』発動!」

 

火の粉払い

アクションマジック

1:このターン、カードの効果によって自分が受けるダメージは0になる。

 

あら、此処でそれを引かれたとはね…

 

「火の粉払いの効果で、このターン俺は効果によるダメージを受けない!」

「その後、成金ゴブリンの効果でドロー!この後の効果をレフィキュルによってバーンダメージに変えるけど、火の粉払いの効果によって0になるわね。

その効果で引いた3枚目の成金ゴブリン発動!ドロー!」

 

流石にLPを一気に削る事は出来なかったけど、手札交換という本来の役目は果たされた。

何か防がれていると分かっていながら尚もシンジさんをビンタしようと札束を振り回すゴブリンの姿があったけど、放って置こう。

 

「まだまだ行くわよ!私はレフィキュルとゼラートをリリースしてアドバンス召喚!傲慢を体現した最凶の堕天使よ、眼前の愚者に鉄槌を下せ!出でよ、レベル11!『堕天使ルシフェル』!」

 

堕天使ルシフェル

効果モンスター

闇属性

天使族

レベル 11

攻撃力 3000

 

『柚子選手、何とも強大な威圧感を持つ堕天使をアドバンス召喚したぁ!その攻撃力は3000、レベルは11!初めてではないでしょうか、アドバンス召喚出来るレベル11モンスターは』

 

いや、徳松さんの持っている『花札衛―柳―』も通常召喚出来るレベル11モンスターよ。

まああれはアドバンス召喚して出す様なモンスターじゃないし、アドバンス召喚『しか』出来ないモンスターという意味では確かに初だけどね。

そのアドバンス召喚した、如何にも堕天使だと言わんばかりの黒ずくめの姿をした美青年、ルシフェル。

そのステータスもさる事ながら、その効果は凶悪よ。

まずこのモンスターは、アドバンス召喚する事で相手フィールドにいる効果モンスターの数まで、手札かデッキから堕天使を特殊召喚出来る。

まあ今は先攻1ターン目、シンジさんのフィールドにモンスターなんていないけど、下手したら徳松さんの『花合わせ』が可愛く見える程の爆発力を見せる事だってあるわ。

次に、私のフィールドに他の堕天使モンスターがいれば効果対象に選ばれない耐性を得るの。

これ程のステータスを持ったモンスター、あと残っている1つの効果も考えると出来れば『破壊輪』等で除去したり『エフェクト・ヴェーラー』で効果無効にしたりしたい所だろうけど、他に堕天使がいるとそれも出来なくなる、そう考えるとかなり厄介ね。

そして今言った様にもう1つあるけど、その前に下準備しないと。

 

「まだ終わらないわ!魔法『死者蘇生』発動!」

 

死者蘇生(制限カード)

通常魔法

1:自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

「死者蘇生の効果で、墓地のゼラートを攻撃表示で蘇生するわ!

そしてルシフェルの効果発動!

フィールドにいる堕天使の数分、デッキの上から墓地へ送るわ!

今フィールドにいる堕天使はルシフェルを含めて5体!よってデッキの上から5枚墓地へ送るわ!」

「事実上毎ターン使える『針虫の巣窟』か…」

 

そう、ルシフェルの最後の効果は、自分のターン毎に1回、フィールドにいる堕天使の数だけデッキの上から墓地肥やし出来るという物、シンジさんの言う通り『針虫の巣窟』を毎ターン使えるって感じね。

だけど、それだけじゃないわ!

 

「ルシフェルの効果はまだ続くわ!この効果で墓地へ送った堕天使カードの数×500LP、私のLPを回復するわ!

今墓地へ送られたのは『堕天使テスカポリトカ』、『堕天使エデ・アーラエ』、『堕天使の施し』、『堕天使降臨』、『堕天使の幻惑』、全て堕天使カード!よって2500LP回復よ!」

「何!?」

『柚子選手、先程のソウル・チャージで減ったLPを、完済とまでは行きませんがルシフェルの効果で穴埋めしました!墓地肥やしの序でにライフゲインとは凄まじいモンスターです!』

 

Yuzu LP 1000→3500

 

「カードを1枚セットしてターンエンド!」

 

Yuzu

LP 3500

手札 1

モンスター 堕天使スペルビア(攻撃表示)×2

      堕天使イシュタム(守備表示)

      堕天使ルシフェル(攻撃表示)

      堕天使ゼラート(攻撃表示)

魔法・罠カード セット

 

「凄まじい展開力だな、なら今度は俺の番だ!

俺のターン、ドロー!」

「スタンバイフェイズに罠『貪欲な瓶』発動!」

 

貪欲な瓶

通常罠

『貪欲な瓶』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:『貪欲な瓶』以外の自分の墓地のカード5枚を対象として発動出来る。そのカード5枚をデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから1枚ドローする。

 

「貪欲な瓶の効果で、墓地の成金ゴブリン3枚、手札抹殺、ソウル・チャージをデッキに戻してシャッフルし、ドロー!」

「回収されたか、だがその前にけりをつければ良いだけの話だ!

まずは『B・F(ビー・フォース)―毒針のニードル』を召喚!」

 

B・F―毒針のニードル(アニメオリジナルカード)

効果モンスター/チューナー

風属性

昆虫族

レベル 2

攻撃力 400

 

確かシンジさんのデッキは、蜂を模した『B・F』を中心としたデッキだったわね。

今出て来たニードルも、蜂のロボットと言いたげな姿だし。

 

「次に手札の『B・F―連撃のツインボウ』2体を守備表示で特殊召喚!このカードは自らの効果により手札から特殊召喚出来る!」

 

B・F―連撃のツインボウ(アニメオリジナルカード)

効果モンスター

風属性

昆虫族

レベル 3

守備力 500

 

ちょ、ちょっと待ちなさい、何の制限も無く手札にさえあれば簡単に特殊召喚出来るとか一体どうなっているの、これをデザインした人明らかに頭おかしいでしょ!?

しかも風属性・レベル3というステータスなので『トーテムバード』のエクシーズ召喚も手軽に出来るのだから、無茶苦茶としか言いようが無いわね…

 

「俺はレベル3のツインボウに、レベル2のニードルをチューニング!蜂出する憤激の針よ、閃光と共に天をも射抜く弓となれ!シンクロ召喚、レベル5!現れろ、『B・F―霊弓のアズサ』!」

 

B・F―霊弓のアズサ(アニメオリジナルカード)

シンクロ・効果モンスター/チューナー

風属性

昆虫族

レベル 5

守備力 1600

 

『シンジ選手も負けじとシンクロ召喚です!さながら蜂の弓持ちと言った感じでしょうか』

 

そんな私の心の中でのツッコミを他所に、シンジさんがシンクロ召喚したのは、擬人化した蜂がお姫様が着る様なドレスを身に纏い、弓を装備したモンスター、アズサ。

レベルと比べて低めなステータスだし、今のままでは私のどの堕天使も突破出来ない、けど、シンクロチューナーなのよね。

多分このままでは終わらない筈…

 

「俺はレベル3のツインボウに、今出したレベル5のアズサをチューニング!呼応する力、怨毒の炎を携え反抗の矢を放て!シンクロ召喚、レベル8!『B・F―降魔弓のハマ』!」

 

B・F―降魔弓のハマ(アニメオリジナルカード)

シンクロ・効果モンスター

風属性

昆虫族

レベル 8

攻撃力 2800

 

今度は擬人化した蜂が鎧を纏い、弓を装備したモンスター、ハマ。

レベル8で攻撃力2800、ゼラートなら相討ち出来るけど、それだけで出したとは思えないわね…

 

「続いて俺も死者蘇生発動!

たった今シンクロ素材にしたアズサを守備表示で蘇生してバトルフェイズ!」

 

此処でバトルフェイズ!?

という事はハマかアズサのどちらかに、私のフィールドにいる堕天使達を突破する効果が…!

 

「だが攻撃は行わずにバトルフェイズを終了する!」

 

…え?

 

『おや、シンジ選手、攻撃を行う事無くバトルフェイズを終了させました!これは一体どういう事でしょうか!?』

「全てはこの為だ!バトルフェイズ終了時、ハマの効果発動!

戦闘ダメージが発生しなかったバトルフェイズ終了時、俺の墓地にいるB・Fモンスターの数×300のバーンダメージを相手に与える!

更にその時、アズサの効果によりダメージは倍になる!」

「なっ!?」

 

戦闘ダメージを発生させない為に攻撃しなかったって訳ね…!

 

「今の俺の墓地にいるB・Fモンスターは、シンクロ素材にしたツインボウ2体とニードルの他、さっきの手札抹殺で捨てられた『早撃ちのアルバレスト』と『必中のピン』の計5体!よって3000のバーンダメージを与える!喰らえ、革命の一撃を!」

「きゃぁぁぁぁ!」

 

Yuzu LP 3500→500

 

さっきルシフェルの効果で回復していなかったら負けていたわね…!

 

『シンジ選手、強烈な一撃で柚子選手を追い込みました!しかし柚子選手のフィールドには相変わらず5体もの堕天使が、最上級モンスターが居並んでおります!これをどう切り抜けるのか!』

「メインフェイズ2に入って、魔法『蘇生の蜂玉』発動!」

 

蘇生の蜂玉(アニメオリジナルカード)

通常魔法

1:自分の墓地の『B・F』モンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、このターンそのモンスターは戦闘及び効果では破壊されない。

 

「蘇生の蜂玉の効果でニードルを守備表示で蘇生し、カードを1枚セットしてターンエンド!」

(セットしたカードは『B・F・N(ビー・フォース・ネスト)』。流石にハマやアズサの戦闘破壊までは免れないだろうが、コイツの効果でニードルを特殊召喚しつつバトルフェイズを終了させれば切り抜けられる。その後はドロー次第、だな)

 

Shinji

LP 3000

手札 0

モンスター B・F―霊弓のアズサ(守備表示)

      B・F―降魔弓のハマ(攻撃表示)

      B・F―毒針のニードル(守備表示)

魔法・罠カード セット(B・F・N)

 

「私のターン、ドロー!」

 

よし、これで決める!

 

「手札のイシュタムを墓地へ送って、ゼラートの効果発動!

相手フィールドのモンスターを全て破壊するわ!」

「な、何!?」

『あぁっとぉ!此処でゼラートの効果が発動された!その効果は、生きた『サンダー・ボルト』とも言って良いでしょう!』

 

これで何だかさっきフラグを建てた様子の、シンジさんのモンスターを一掃した。

この効果を発動したターンのエンドフェイズに、ゼラートを破壊しなきゃならないけど、その前に決めれば何の問題も無いわ!

 

「バトルフェイズに入るわ!

ルシフェルでダイレクトアタック!ラグ○ロク・ブレイカー!」

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

Shinji LP 3000→0 LOSE

 

『決まったぁ!エキシビションマッチ3回戦の勝者は、堕天使達の強大な力を見せた柚子選手!シンジ選手もB・F達の力で柚子選手をあと一歩まで追い込んだ!』



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99話_MASSIVE WONDERS、大いなる奇跡

「柚子、ちょっと良い?」

「真澄?一体どうしたの此処で?」

 

シンジさんとのデュエルに勝利して会場を後にした私、其処へ何故か待ち構えていた真澄が声を掛けて来た。

それにしても何でまた此処で待ち構えていたのかしら?

 

「後で私とデュエルして欲しいの。良いかしら?」

「ず、随分と唐突ね。まあデュエルとあらば受けて立つけど、何でまた?」

「それは後で話すわ。今、此処ではちょっとね」

 

だったら部屋に戻った後に申し込んで来ても良いんじゃないかしら?まあ良いけど。

 

「ともかく分かった。部屋で待っているわ」

 

そう言い残し、私はシティに用意されていた部屋へと戻って行った。

 

------------

 

「「アクションフィールド、オン!『クロス・オーバー』!」」

 

私と真澄がデュエルディスクを構え、予めセットしていたクロス・オーバーを発動すると、たちまち部屋の中はアクションフィールドと化す。

 

「戦いの殿堂に集いしデュエリストが!」

「モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!」

「フィールド内を駆け巡る!」

「見よ、これぞデュエルの最強進化系!」

「「アクショーン、デュエル!」」

 

先攻 Masumi LP 4000 VS 後攻 Yuzu LP 4000

 

こうして唐突に始まった、真澄とのデュエル。

そう言えば真澄とのデュエルは3回目だけど、私が後攻になるのは初めてね。

さあ真澄、ランサーズメンバーとしてこのシンクロ次元に来てからどう変わったのか、見せて貰うわ。

 

「私のターン!

まずは手札の『水晶機巧(クリストロン)―プラシレータ』を墓地へ送って魔法『ワン・フォー・ワン』発動!」

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

…ん?クリストロン?

 

「ワン・フォー・ワンの効果で、デッキから『水晶機巧―クオン』を守備表示で特殊召喚!」

 

水晶機巧―クオン

効果モンスター/チューナー

水属性

機械族

レベル 1

守備力 500

 

ワン・フォー・ワンの効果で出て来たのは、身体が水晶で出来たチューナー。

というか、

 

「真澄、ジェムナイトはどうしたの?」

「勿論持っているわ。ジェムナイト達は、私にとって相棒とも言える存在だもの。でも隊長にエレン・アヴェニールに沢渡に、そしてフォースハウンドの皆…

ランサーズの中でも凄まじい実力を持ったデュエリスト達には、メインのデッキの他にもデッキを持っているマルチデッカーが多かった。そして今日も貴方は自らの新たなる覚悟の現れとして『堕天使』を使っていたし、上村一行も確か他にデッキを持っていた筈。そんな彼らを見て、思ったの。1つのデッキを徹底的に磨くのも1つの道だけど、他のデッキに触れて自分の新たなる可能性を見出すのも1つの道じゃないかって。

北斗もランサーズへの加入を直談判して、入隊試験で『超量』デッキを使って合格、殻を破って見せた。刃もデッキこそX―セイバー1つだけなのは変わりないけど、遊勝塾に移籍して、エンタメデュエルの極意を学んでいった事でその新たなる可能性を開花させた。そんな2人を見て、私もランサーズのメンバーとして、今のままで胡坐をかいている訳には行かないと思った。

ダイヤモンドの研磨方法で知られるブリリアントカットは、バリエーションこそあれどその全てが57或いは58面体にカットされている、土台こそしっかりと持ちながらも、様々な可能性に触れて己の道を見つけ出す事で、私のデュエルタクティクスは磨かれるんじゃないか…

そう考えていた折に、社長から渡されたのが、この『クリストロン』デッキなの。今まで融合召喚しか使って来なかった私だけど、折角の機会だし、シンクロ召喚に触れてみるのも悪くないと思ってね」

 

成る程、そういう事だったのね。

それはともかく、まだ真澄は通常召喚を行っていない、という事は次にチューナーじゃ無いモンスターを通常召喚してシンクロ召喚、かな?

 

「次に『水晶機巧―シトリィ』を召喚!」

 

水晶機巧―シトリィ

効果モンスター/チューナー

水属性

機械族

レベル 2

攻撃力 500

 

あれ、チューナー?

真澄が召喚したのは予想に反して、身体が黄色い水晶で出来たチューナーだった。

 

「そしてフィールド魔法『クリスタルP(ポテンシャル)』を永続魔法として発動し、ターンエンドよ!」

 

クリスタルP

フィールド魔法(永続魔法扱い)

1:自分フィールドの『クリストロン』モンスターの攻撃力・守備力は300アップする。

2:自分・相手のエンドフェイズに発動出来る。このターン自分がシンクロ召喚した『クリストロン』シンクロモンスターの数だけ、自分はデッキからドローする。

 

水晶機巧―クオン 守備力 500→800

水晶機巧―シトリィ 攻撃力 500→800

 

Masumi

LP 4000

手札 1

モンスター 水晶機巧―クオン(守備表示)

      水晶機巧―シトリィ(攻撃表示)

魔法・罠カード クリスタルP(永続魔法扱い)

 

え、攻守300しか上がらないフィールド魔法を使って終わりなの?シンクロ召喚せずに、セットカードも無しで?

手札事故かしら、幾らアクションデュエルとは言え、無防備にも程があるわね。

 

「私のターン!ドロー!

まずは魔法『融合』発動!」

 

融合

通常魔法

1:自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「私は手札の『幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト』と『幻奏の音女エレジー』を融合!至高の天才よ!悲哀の旋律よ!タクトの導きにより力重ねよ!融合召喚、今こそ舞台に情熱の歌を!『幻奏の華歌聖ブルーム・プリマ』!」

「新しい『幻奏』融合モンスター…!」

 

幻奏の華歌聖ブルーム・プリマ

融合・効果モンスター

光属性

天使族

レベル 7

攻撃力 1900→2500

 

とはいえこっちは手加減しないわ、そんな事、貴女も望んでいないでしょ?

 

「ブルーム・プリマの攻撃力は融合素材の数×300ポイントアップするわ!

次に永続魔法『フォルテッシモ』発動!」

 

フォルテッシモ

永続魔法

1:1ターンに1度、自分フィールドの『幻奏』モンスター1体を対象としてこの効果を発動出来る。そのモンスターの攻撃力は次の自分スタンバイフェイズまで800アップする。

2:魔法・罠ゾーンの表側表示のこのカードを墓地へ送って発動出来る。『幻奏』融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを自分フィールドから墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「今発動したフォルテッシモの1つ目の効果発動!

ブルーム・プリマの攻撃力を800ポイント上げ、バトルフェイズに入るわ!」

 

幻奏の華歌聖ブルーム・プリマ 攻撃力 2500→3300

 

バトルフェイズに入り、ブルーム・プリマが持つ2回攻撃効果で真澄のフィールドを一掃させよう、そう思った時、

 

「掛かったわね!そのバトルフェイズ開始時、クオンの効果発動!

それにチェーンして、シトリィの効果発動!」

 

え、このタイミングで発動する効果持ちなの!?

 

「先に言って置くわ。クリストロンチューナーは相手のメインフェイズかバトルフェイズ中に、其々特定の場所からモンスターを、効果を無効にして特殊召喚しつつシンクロ召喚を行う効果を持っているわ!クオンは手札から、シトリィは墓地からモンスターを特殊召喚しつつ、シンクロ召喚するの」

「な!?」

 

それで敢えて自分のターンでシンクロ召喚しなかったって事!?

 

「まずはシトリィの効果で、さっき墓地へ送ったレベル2のプラシレータを守備表示で蘇生し、レベル2のシトリィをチューニング!集いし結晶が、新たな可能性を生み出す!光輝く道となれ!シンクロ召喚、レベル4!『水晶機巧―クオンダム』!」

 

水晶機巧―プラシレータ

効果モンスター

水属性

機械族

レベル 2

守備力 2000→2300

 

水晶機巧―クオンダム

シンクロ・効果モンスター/チューナー

水属性

機械族

レベル 4

守備力 2000→2300

 

そんな驚きを他所に、シトリィが自らの力で蘇生した、緑の水晶を纏った亀みたいなモンスター、プラシレータと共にシンクロ召喚して登場したのは、水晶の様に透き通った身体に白い機械鎧を纏ったモンスター、クオンダム。

 

「次にクオンの効果で、手札にあるレベル4の『水晶機巧―ローズニクス』を攻撃表示で特殊召喚し、レベル1のクオンをチューニング!集いし結晶が、外敵を阻む壁となる!光輝く道となれ!シンクロ召喚、レベル5!『水晶機巧―アメトリクス』!」

 

水晶機巧―ローズニクス

効果モンスター

水属性

機械族

レベル 4

攻撃力 1800→2100

 

水晶機巧―アメトリクス

シンクロ・効果モンスター

水属性

機械族

レベル 5

攻撃力 2500→2800

 

次にクオンが呼び寄せた、赤い水晶を纏った鳥みたいなモンスター、ローズニクスと共にシンクロ召喚して登場したのは、水晶の様に透き通った身体に紫の機械鎧を纏ったモンスター、アメトリクス。

こっちのターンに、フィールド以外のモンスターを呼び寄せつつシンクロ召喚するという効果処理にこそ驚いたけど、それでもブルーム・プリマの攻撃力には届かない、このターンで纏めて、

 

「シンクロ召喚したアメトリクスの効果発動!

貴方の特殊召喚したモンスターを全て守備表示に変えるわ!ブルーム・プリマは融合召喚されたモンスター、よって守備表示になって貰うわ!」

「え!?」

 

シンクロ召喚を誘発条件にした『つまずき』持ちだったなんて、これじゃ攻撃出来ないわね…

 

「ならバトルフェイズを終了、メインフェイズ2に入って、カードをセットしてターンエンド!」

「おっと!メインフェイズ2終了時にクオンダムの効果発動!

このカードも相手のメインフェイズかバトルフェイズ中にシンクロ召喚を行うわ!尤もこのカードはフィールド以外のモンスターを特殊召喚出来ず、フィールドのモンスターを使うしか無いけどね」

 

そういえばクオンダムもクリストロンチューナーだったわね。

と、それよりも今の真澄のフィールドにはシンクロモンスターであるアメトリクスと、シンクロチューナーであるクオンダムの2体のみ。

ま、まさか…!?

 

「ま、真澄、貴方まさか…!」

「ええ、そのまさかよ!クリア・マインド!

クオンダムの効果で、レベル5のシンクロモンスター、アメトリクスに、レベル4のシンクロモンスター、クオンダムをチューニング!レベル9!集いし結晶が1つになる時、眩き不死鳥が今舞い降りる!光輝く道となれ!アクセルシンクロォォォォ!現れなさい、『水晶機巧―フェニキシオン』!」

 

水晶機巧―フェニキシオン

シンクロ・効果モンスター

水属性

機械族

レベル 9

攻撃力 2800→3100

 

あ、アクセルシンクロ…!

遊矢や、このシンクロ次元でもトップクラスと言われるデュエリストにしか出来ないと言われている、高度なシンクロ召喚…

まさかシンクロ召喚を覚えたての真澄が、使えるとはね…

 

「シンクロ召喚したフェニキシオンの効果発動!

柚子、貴方のフィールド及び墓地の魔法・罠カードを全て除外するわ!」

「な、何ですって!?」

 

アクセルシンクロでなきゃシンクロ召喚出来ず、効果を使えないとは言え、出た時に除外版『ハーピィの羽根帚』+αを使えるなんて…!

 

「あ、改めてターンエンドよ!」

「ならエンドフェイズにクリスタルPの効果発動!

このターンに私がシンクロ召喚したクリストロンシンクロモンスターの数分、つまり3枚ドロー!」

 

Yuzu

LP 4000

手札 1

モンスター 幻奏の華歌聖ブルーム・プリマ(守備表示)

魔法・罠カード なし

 

「私のターン!ドロー!

此処はいち早く攻め込むに限るわね。バトルフェイズに入るわ!

フェニキシオンでブルーム・プリマを攻撃!」

「させないわ!アクションマジック『ヒット&アウェイ』発動!」

 

ヒット&アウェイ

アクションマジック

1:自分フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを任意の表示に変更する。

 

「ヒット&アウェイの効果でブルーム・プリマを表側攻撃表示に変更するわ!返り討ちにしなさい、ブルーム・プリマ!」

 

今現在ブルーム・プリマの攻撃力は、フォルテッシモの効果がまだ適用されているから3300のまま、一方のフェニキシオンの攻撃力はクリスタルPを加味してもまだ3100、もしブルーム・プリマが守備表示のままだったらその守備力は2000で突破されるところだったけど、攻撃表示なら、

 

 

 

 

 

「ダメージステップ良いかしら?」

「え?」

「速攻魔法『リミッター解除』発動!ブルーム・プリマを攻撃表示にすればフェニキシオンを倒せると思ったら大間違い「それにチェーンして手札の『幻奏の音女スコア』を捨てて効果発動!フェニキシオンの攻守を0に変えるわ!0を倍にした所で0のままよ!」…え?」

 

リミッター解除(制限カード)

速攻魔法

このカードの発動時に自分フィールド上に表側表示で存在する全ての機械族モンスターは、ターン終了時まで攻撃力が倍になる。このターンのエンドフェイズ時、この効果を受けたモンスターを全て破壊する。

 

幻奏の華歌聖ブルーム・プリマ 攻撃力 3300 VS 水晶機巧―フェニキシオン 攻撃力 3100→0

 

Masumi LP 4000→700

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

何が起こったか分からない人に、今の状況説明を。

まず真澄のフィールドにいるフェニキシオンが炎を纏って私の方に突進して来た所に、ヒット&アウェイの効果で攻撃表示となった、私のフィールドにいるブルーム・プリマが迎え撃とうとしたけど、その時、真澄が発動したリミッター解除の効果によってフェニキシオンが纏っていた炎が勢いを増し、かけた。

けどその瞬間、私が発動したスコアの効果によってフェニキシオンの真上から光が降り注ぎ、纏っていた炎が消失、ブルーム・プリマが返り討ちにした、という事。

 

「くっ!だけどタダではやられないわ!破壊されたフェニキシオンの効果発動!

シンクロ召喚でフィールドに出たこのカードが戦闘・効果で破壊された事で、墓地のクオンダムを守備表示で蘇生するわ!

メインフェイズ2に入って、クオンを召喚し、ターンエンドよ!」

 

Masumi

LP 700

手札 2

モンスター 水晶機巧―クオンダム(守備表示)

      水晶機巧―クオン(攻撃表示)

魔法・罠カード クリスタルP(永続魔法扱い)

 

「私のターン、ドロー!」

「スタンバイフェイズにクオンの効果発動!

手札にあるレベル4の『水晶機巧―ローズニクス』を攻撃表示で特殊召喚し、レベル1のクオンをチューニング!シンクロ召喚、レベル5!再び現れなさい、アメトリクス!」

 

またアメトリクス、だけど…!

 

「シンクロ召喚したアメトリクスの効果発動!

ブルーム・プリマにはもう1度守備表示になって貰うわ!」

「今度はさせないわ!アクションマジック『ソニック・ウィング』発動!」

 

ソニック・ウィング

アクションマジック

1:フィールド上の、2つ以上の効果が適用されている効果モンスターを対象に発動出来る。このターン、対象のモンスターは効果が無効になり、このカード以外の効果を受けず、相手プレイヤーに直接攻撃出来る。このターンのエンドフェイズ時、この効果を受けたモンスターを破壊か除外、もしくはデッキに戻す。

 

よし、これで決めるわ!

 

「ソニック・ウィングの効果でブルーム・プリマはこのターン、効果を無効にし、ソニック・ウィング以外の効果を受けず、直接攻撃出来る様になるわ!」

「なっ!?」

 

幻奏の華歌聖ブルーム・プリマ 攻撃力 2500→1900

 

「バトルフェイズに入るわ!ブルーム・プリマでダイレクトアタック!」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

Masumi LP 700→-1200 LOSE

 

WINNNER Yuzu

 

「あいたたた…

また、1ダメージも与えられなかったわね…

でも今度は負けないわ!今以上に磨きを掛けて来るから、覚悟なさい!」

「ええ、望む所よ!」




次回、シンクロ次元編最終回!


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100話_自由の翼

今話で、7章及びシンクロ次元編は終了となります。


「これは、どういう、事だ…!」

 

所変わって融合次元のアカデミア、その一室にて零王は、部下から寄せられる様々な報告に、愕然とした様子で耳を傾けていた。

ランサーズがシンクロ次元に潜入したという報告、その中に自らの計画『アークエリア・プロジェクト』の重要なピースと言える柚子とセレナが加わっているであろうと見定めていた零王は、彼女達を確保すべく数千にも及ぶ部隊を結成、総指揮官にアカデミアでも指折りの実力を持ったユーリを据えてシンクロ次元へと派遣、それとは別に遊矢の抹殺の為として自らの懐刀と言って良い近衛部隊『ホルアクティ・フォース』のリーダーであるキサラを同じく派遣する等、万全の体制を敷いた。

ペンデュラム召喚という概念の登場や、それによって今までそれ程明るみに出ていなかった遊矢の実力の発覚、更には零児と遊矢をトップとしたランサーズの結成等、これまで歯牙にもかけていなかったスタンダード次元の脅威が急激に増し、そのランサーズとシンクロ次元の治安を司るセキュリティが手を組んだという情報もあれど、それでもアカデミアが誇るデュエル戦士、それが数千にも及ぶ部隊の敵では無い、仮に誰かが敗北しそうになっても援軍がリアルファイトをしたり、モンスターを実体化させての破壊工作や奇襲をしたりすれば良い、と当初アカデミア関係者の誰もが成功を疑っていなかった。

デュエル戦士達が用いるカテゴリを『古代の機械』カテゴリデッキにある程度統一し、味方同士で融合素材を融通し合う事で融合モンスターを無駄なく並べ、その融合モンスター達が持つ攻撃時に特定のカードの発動・効果を封じる効果で敵の抵抗を叩き潰す、そんな集団戦を第1に考えられた数の暴力によって、エクシーズ次元での侵攻を難なく進めて来たのだ、今回もまたその様に進めれば相手が誰であろうと問題にならないと考えても無理は無かった。

 

だがその結果はまるで違っていた。

侵攻が始まるや否や、ちょっとした武力衝突(デュエル)を他所に、各地でデュエル戦士達の謀反が多発、突如としてデュエル戦士が仲間だった筈の存在に立ちはだかり、モンスターを実体化させて襲撃したり、或いはデュエルを挑んだりして裏切り、それが1人、また1人と増え、1部隊全てが翻意を見せるケースも発生、驚きや戸惑いが広がる中で容赦なく襲われた末に無抵抗のままカード化されてしまう。

生き残った戦士が気持ちを切り替え、その裏切り者を粛清していきはしたが、ちょっと前までそんな素振りを微塵も見せていなかった存在すらも裏切るという前代未聞の事態に、ひょっとしたら身の回りにいる大事な仲間も裏切るのではないかという疑心暗鬼が広がってしまい、部隊の戦力も士気もがた落ちとなって行った、それら全てが遊矢の発案で実行されたアンドバリの指輪作戦の成果と言えるのだから、正に遊矢の思惑通りと言えよう。

一方の遊矢抹殺を命ぜられたキサラはターゲットである遊矢にデュエルを挑み、互角と言って良い勝負を繰り広げこそしたが、指揮官の任を放り出したユーリの横やりで中断、そのユーリも遊矢とのデュエルの末に奇妙な言葉を残し、遊矢(ZEXALEX)の攻撃によって消息を絶ってしまう。

結局今回の作戦は何の成果も残す事無く失敗、この為に継ぎ込んだ戦力が全滅した事でアカデミアが保有していた戦力の数割が消え去ってしまい、頼みの綱の1人であるユーリも失ってしまった。

ホルアクティ・フォースこそ健在だが、リーダーであるキサラですら遊矢を抹殺できるかどうかは賭け、それも五分五分の正に博打物と、いざという時まで温存せざるを得なくなってしまう。

そして、そんな都合の悪い事はえてして連鎖する(と感じる)物だ。

 

「申し上げます!ランサーズが我々アカデミアに総攻撃を仕掛けると言う情報が入って来ました!今回の作戦失敗による動揺を突いて一気に畳みかける目論見と見られます!」

「申し上げます!アカデミア敷地内の数か所で爆発らしき現象が確認されました!現場の状況から何者かによる故意の爆破と思われ、各地で混乱が広がっています!」

「何?まさか、ランサーズがこのアカデミア内にスパイでも送り込んでいたと言うのか…!?

もしや、開発していた6つのデッキのうち5つが姿を消したのも、そいつらの仕業か…!?」

 

続々と寄せられる、アカデミアの地盤を揺るがしている情報の数々、それを聞いていくうちに零王の表情は一層、焦りの色が浮かんでいく。

 

「キサラ!いるか、キサラ!?」

『はっ!どの様な命でしょう、プロフェッサー?』

「今すぐにホルアクティ・フォースの面々を、手の空いているデュエル戦士と共に、エクシーズ次元から帰還させろ!今すぐにだ!」

『宜しいのでありますか?まだエクシーズ次元には抵抗するデュエリストも少なからず存在するであります、特に『奴』もまだ健在の中「そんな物は後回しだ!今更反攻する力の無いエクシーズ次元に拘って、折角手に入れた『ピース』達を奪還されては意味が無い!そちらの首脳陣やあの姉妹を置きさえすれば、そうそう悪い事態は起きまい!」はっ!直ぐに帰還命令を発令するであります!少々お待ちを!』

 

そうなればこれ以上状況が悪化するのを防ぐために体勢を立て直そうと考えるのが人間として普通の判断、零王もまたキサラを通じて侵攻しているエクシーズ次元のデュエル戦士達を帰還させる命令を下したが、その口調が荒れているのも、彼の焦りを物語っているのかも知れない。

 

「零児、ランサーズ、そして榊遊矢…!

親子そろって我が計画の前に立ちはだかるとは…!」

 

------------

 

フレンドシップカップの開催中、アカデミアがこのシティに侵略を仕掛け、俺達ランサーズがデュエルチェイサー達と共に撃退したあの戦いから数日が経った。

その間に、気絶していた素良は意識を取り戻し、アカデミアの一員であった事、俺達の次元にはスパイとして潜入していた事を改めて打ち明け、今回の件も含めて謝罪して来た。

 

「僕はアカデミアの一員としてエクシーズ次元の侵略に参加し、数えきれない程の人達の命を、笑顔を奪ってきました。師匠と知り合った時にもスタンダードへのスパイとして情報を流していましたし、今回の件も覚えていないとはいえ、師匠に敵意を向けました。今更謝った所で許して貰えるとは思っていません。今更師匠達の様なエンタメデュエリストになれるとも思えません…

 

それでも、それでも僕は、罪を償いたい!皆を、今此処で笑顔に満ち溢れている人達を守りたい!僕も、師匠が掲げる理想の為にこの身を捧げたいんです!」

「良くぞ言った、素良。今お前が言った様に、お前が、アカデミアが犯した罪は並大抵の努力で償える程軽くは無い。お前達を一生恨む存在も少なからずいるだろう。だがお前なら、それをも乗り越えられると信じている。お前は、俺の自慢の弟子なのだからな!」

「はい、師匠!」

 

その謝罪の場で、俺達ランサーズが掲げる理念を何処かから聞いたのか、それに協力する姿勢を、ランサーズに加入する意思を見せたので、零児達と相談して素良をランサーズに加える事にした。

元々素良は舞網チャンピオンシップの際にメンバー候補として挙げていた程の実力者だ、加入に前向きとあらば、俺達の理念に賛同してくれるなら反対する理由は無い、俺達が敵対するアカデミアに所属していた、という存在は既にセレナと一美、そしてマージョリーがいるしな。

と、後はその素良やマージョリーを含めた6人が正式にランサーズ加入を果たした。

各メンバーの所属だが、素良とマージョリー、そしてフレンドシップカップの参加者だった葛西月行は、V-CRANに。

徳松さんは、行方不明となったユートの代理として第3部隊の副隊長に。

月行の弟で、同じくフレンドシップカップの参加者だった葛西夜行は、行方不明となったユーゴの代わりに第1部隊に。

そして、フォースハウンドに所属する事にしたセルゲイだが、彼の加入にはシンクロ次元出身である徳松さんや葛西兄弟等から異論が出た。

が「彼もまた我らが掲げる理想に賛同してくれた同士の1人だ。過去に彼が犯した罪は知っているし、それを踏まえて、彼が信用ならないという気持ちも分かる。もし彼が謀反を企てたのであれば、その時は私が責を負う!」という俺の説得に、一先ずは納得してくれた。

そのセルゲイは今、既にアカデミアに潜入している他のメンバーに合流していて、今此処にはいない。

…まあ、他にも色んな出来事があったんだが、それはまたの機会に話そう。

今日は、ランサーズの最高指揮官となって2回目の記者会見だ。

 

「皆さん、本日はお忙しい中この会見の場にお集まりいただき、或いは画面の先で拝聴していただき、誠にありがとうございます。さて、我々ランサーズがこの世界へと降り立って1ヶ月近くが経過し、アカデミアによる侵略と、それに対抗するべく結成されたランサーズについての発表、そしてフレンドシップカップの開催、様々な出来事がありました。既に情報を手にしている方も少なからずおられるでしょうが、その間にこのシティにて、アカデミアが送り込んだであろう大軍が侵略して来た事もありましたが、それはランサーズと、デュエルチェイサー達の活躍によって鎮圧に成功しました。我らが睨みを利かせている限り、このシティをアカデミアの好きにはさせない、その意思を、アカデミアに示す結果となったのです。皆さん、心配には及びません。アカデミアという存在は確かに脅威ではありますが、ランサーズとデュエルチェイサーが共に立ち向かい、トップスとコモンズの皆さんが共に我らを支えて頂ければ、決して勝てない相手では無いのです。

 

今日、この時より、我らの意思を、我らの強さを、そして、我らのミームを改めてアカデミアに見せ付ける時です!今日より、我らはアカデミアを討つ!」

『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』

『遊星!遊星!遊星!遊星!』

『ランサーズ!ランサーズ!』

 

そう、今日の記者会見は、アカデミアによる侵略に対して裁きを下す、その意思を表明する会見だ。

といっても、いきなりランサーズ総出で融合次元に殴り込むわけでは無い、向こうにはリンや瑠璃が未だに囚われている、アカデミアにおいて彼女達は重要な存在であるとはいえ、下手に動けば危険な目に遭うかも知れない以上、派手な動きは避けるべきだ。

と言っても向こうの足並みが乱れた今こそがアカデミアに入り込む好機でもある、其処でまずは、既に潜入しているフォースハウンドを通じて1部隊を送り込み、2人を救出させる。

その部隊には瑠璃の兄である隼が所属している第4部隊を選んだ、当初よりアカデミアへの殴り込みを望んでいた隼に「お前が待ちに待った、アカデミアへの殴り込みだ。全力で行って来い!」と檄を飛ばすと、隼は何時もの様なそっけない返事ながらも「任せろ!」と言わんばかりの表情を見せてくれた。

一方俺とARC-V、他3つの部隊は、未だ残党狩りと称した侵略を続けているエクシーズ次元に潜入し、アカデミア軍を討伐、生き残った人達を救い出す。

今アカデミアは予想外な大打撃のショックを和らげようと、本拠の体勢を万全にしようとしてエクシーズ次元側が手薄になっている筈、其処にこの2正面作戦を繰り広げれば向こうが大混乱に陥るのは確実だ。

尤も、その間隙をぬって他の次元へ攻め込む事も考えられなくはない、防衛体制を整えた俺達の次元はともかく、まだちょっと足並みに不安があるこのシンクロ次元に攻め込まれるとなると、ランサーズがいなくなるという事態は避けたい。

そこで零児達V-CRANには此処で待機、アカデミアの侵略に備えて貰う事にした。

 

向こうがもたついている今こそ動き、リンと瑠璃を救出する、それが成し遂げられた後、その時こそ、決戦の時だ!

 

「我らの誇りを、我らのデュエルを、我らのミームを胸に、ランサーズは必ずやアカデミアの薄汚い野望を打ち砕く!

 

それでは、行ってまいります!」

『行ってらっしゃいませ!』




次回より、予告していた7.5章『幕間のコラボ祭』を開催します!

詳細は活動報告にて!


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7.5章『幕間のコラボ祭』
Ex14話_いざ行かん、並行世界の舞網市へ!


さて、前々より予告していたコラボ祭、遂にスタートです!
記念すべきトップバッターは、この『遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~』の原案を出して頂いたGMSさんの『遊戯王ARC-V 二人の榊遊矢』です!

尚、このコラボ祭での時間軸は99話から100話の間です。


「これが此処で開発された次元転送装置か。随分と大掛かりだな」

「確かに、アカデミアのデュエルディスクに内蔵されている物や、ランサーズの『ディメンジョン・ムーバー』と比べると大掛かりですが、そもそもの方向性が違います。予め転送先の座標に航路を繋いでから対象の転送を行う従来型とは違い、これは転送先の座標を狙って対象を発射する形で転送を行うのです。一方通行の上、確実性を確保するとなると此処までの大掛かりな物にせざるを得ませんが、前以て航路を繋ぐという作業が無い分、ステルス性はかなり高いです」

 

此処シティにアカデミアの大軍が侵略して来たのを俺達ランサーズとデュエルチェイサーが鎮圧し、近いうちにやって来るであろうアカデミアとの総力戦に向けて対策を練っていたある日、俺達ランサーズ首脳陣(俺と零児、それとARC-Vメンバー)は、洗脳によって俺の配下となったロジェの案内で、治安維持局内に設けられた開発課を訪れていた。

其処で開発されていた、ランサーズメンバーが持つディメンジョン・ムーバーと同じ次元転送機能を持つ装置を見せられたのだが、成る程『繋いで送る』のではなく『飛ばす』のか。

確かに航路が確立していない関係から確実性は劣りがちになるし、帰りのルートを別に構築しなければならないが、その航路を確立させる作業が無いから次元転送を察知されにくいのは利点だな。

今まではフォースハウンドの面々を1人1人、融合次元の市街地を経由してアカデミアに潜入させていたので向こうにバレる事無くスパイ活動出来てはいたが、今度の作戦ではそんな悠長な手段を取っていられない、向こうに気付かれず、尚且つ直接転送できる手段が欲しい。

それを踏まえるとこの転送装置は使えるな。

 

「ところで、テストは行っているのか?確実性が劣りがちな以上、その辺りの検証と、それに基づく配慮が必要になる。それを知りたい」

「分かりました。テストの実績の方ですが(ビーッ!ビーッ!)む、どうした?」

「申し上げます!装置が原因不明の暴走を起こしております!局員が只今対処に当たっております、皆さんは急いで避難を!」

「何!?分かった、遊星様、皆さん、どうぞこちらへ!」

 

っておい、言ったそばから異常事態かよ、大丈夫か、これ、っ!?

 

「柚子、危ない!」

「え、遊矢!?」

 

暴走の報告を受け、ロジェの案内で避難しようとしたその時、何やら嫌な予感を察知、柚子のいる場所で何かが起こると言わんばかりの指向性を持った脳内の警鐘に従って回避しようと柚子を抱きかかえた。

 

「く、間に合わ、うぉぉぉぉぉ!?」

「え、な、きゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「ゆ、遊矢!柚子!」

「遊矢兄ちゃん!柚子姉ちゃん!」

「お、おい、2人共!」

「おいお前ら、放しやがれェ!遊矢と柚子が明らかにヤバい状況なンだぞ!」

「今行っては貴方も巻き込まれてしまいます!此処は避難を優先して下さい!」

「彼らの言う通りだ!2人を救い出したいのは私も同じだが、今行っては危険だ!」

「「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」

 

が、其処から飛び立つまでの時間が無く、俺達2人は何か引力のある空間に吸い込まれてしまった。

 

------------

 

「うぉっ!いたた…

大丈夫か、柚子?」

「う、うん。ありがとう、遊矢」

『そういう遊矢は大丈夫かい?何だか擦りむいているみたいだよ』

『あの勢いだったからな、骨まで響いていなければ良いが…』

 

謎の空間に吸い込まれてしまった俺と柚子、暫しの間その真っ暗な空間を飛んでいたら何やら光が差した場所が見えたので、その場所から放り出されるタイミングを見計らって受け身の体勢に入った。

で、放り出されると其処には地面が見えたので柚子を庇いつつ受け身を取りはしたのだが、流石に勢いを殺しきれなかったのか、受け身の為に放り出した右腕が結構痛い、どうやら擦りむいた様だ。

でもアストラルが懸念する程酷くは無いし、何より柚子が無事で安心したよ。

さて、俺達の無事は確認出来た所で、今の状況確認だ。

俺達の身に起こった事、それらの要因はもしかしなくても転送装置の暴走だろう。

その暴走によって発生したワームホールの様な物に俺達は吸い込まれ、何処か別の空間に飛ばされてしまった、という所だろう。

まあ帰り道に関しては心配ない、デュエルディスクは左腕に装着され、『ディメンジョン・ムーバー』はそのデュエルディスクの所定のスロットに装填されている、シティの座標を基にサーチすればそれ程長い時間は掛からずに帰れるだろう。

そうなると次の問題は、その転送された『此処』は一体何処なの…か…?

 

「あれ、此処って…」

「舞網市の、メインストリートよね、あそこに見えるの」

『確かにそうだね。十数年も此処に住んでいるんだ、見間違える筈も無い』

『という事は、私達だけ帰って来てしまった、という事か?』

 

皆の言う通り、俺達が飛ばされた路地みたいな場所から見回してみると、出口の先には舞網市のメインストリートらしき光景が広がっていた。

此処は紛れも無く、舞網市内だ、けど…

 

「どうしたの、遊矢?何か気になる事があるの?」

「ああ。何か知らないけどさ、違和感があるんだよな…

ずばり言うと『舞網市は舞網市でも、俺達の舞網市では無い』って感じか?」

「私達の舞網市じゃない!?そんな事が…!」

『いや、もしかすると遊矢の考えは正しいかも知れない。私も何処かこの空間に違和感を覚えている』

『言われてみれば、何だか変だね。海音達の一件がある以上、その可能性は高い』

 

海音達か、あいつらは確か並行世界の舞網市から来たんだよな。

火野海音、三和櫂、そして月影レナの3人は、俺が遊士だった頃に遊戯王OCGに迫る人気を博したカードゲーム『カードファイト!ヴァンガード』のカード達がデュエルモンスターズのカードとして流通している舞網市から、俺達が使っているそれとそっくりな次元転送装置のテストで、俺達のいる舞網市へとやって来たんだっけ。

当時は融合次元のデュエリストを狙うテロリスト(遊香)が暗躍していた関係から、それに関する存在じゃないかと捕縛しようとして一行と変態(当麻)、エレンの3人がデュエル、当麻(変態)のみが勝って他の2人は敗北したり、ラッキースケベと言う名のセクハラが起こったり、その罪に対する処罰が下されたり、俺もまた海音と本気のデュエルを楽しんだりしたっけ。

確か向こうでもこちらと同じく、向こうのアカデミアによる侵略という脅威にさらされているんだよな、あの3人ならそうそう苦戦する事態にはならないとは思うが、元気でやっているだろうか?

と、過去の思い出に浸る暇は無いな、もし此処が俺の懸念通り並行世界の舞網市であれば、その時の海音達同様に帰る術が確立されている以上、無闇に此処を荒らしまわる様な真似をするべきじゃないが、かと言って、この世界の俺や零児達LDSもひょっとしたら俺達の次元転送を察知しているかも知れない、となると…

 

「ねぇ、遊矢…」

『遊矢、ちょっと良いかい?』

『遊矢、考え事をしている時に済まないが…』

「ん?どうしたんだ、柚子、ユベル、それにアストラル?」

「何か、遊矢の一部のデッキから薄らと光が…」

『それに、その光っているデッキから何かしらの力を感じるんだよね』

『それにこの感覚、何処か懐かしい感じだ。そう、それは遊矢が遊馬だった頃にNo.を探し当てた時の様な…』

「何?どういう事だ…?」

 

と、考え事をしていると、柚子達から俺のジャケット内に保管しているデッキ達の一部から光が発せられていると言われ、それを出してみる。

光っているのは『ユベル』と『オノマトホープ』、『三幻魔』に『バリアン』、という事は…!

 

「な、書き換わっている、だと…!?」

「ど、どうしたの遊矢?書き換わっているって、一体何が…!?」

 

光っていた4つのデッキは何れもエクシーズモンスター、それもNo.を搭載したデッキ。

アストラルの言葉からしてNo.に関連する異変があったのではないか、と調べてみると、案の定だった。

 

「No.の戦闘破壊耐性が、蘇っている…!」

「えっと、確かNo.エクシーズモンスターって、遊矢が遊馬だった頃はNo.モンスター以外と戦闘を行う際の戦闘破壊耐性が付いていたのよね、異世界の力がって感じで。それが蘇ったって事は…!」

『No.が、力を取り戻したという事か…?』

『でも何でまたアストラル世界でもバリアン世界でも、ハートランドでも無いこの場所で…?』

 

その効果テキストに「『No.』モンスター以外との戦闘では破壊されない」という文言が追記されていた。

一体、何故だ…?

考えられるとしたら、この舞網市にもまた、遊馬だった頃のNo.その物か同等の力を持ったNo.モンスターが存在するという事。

で、その力にあてられ、遊矢として転生する際にその力を失いOCGのそれと変わらない物となっていたNo.が戦闘破壊耐性だけとはいえその力を取り戻したって事になるな。

まあユベルの困惑も分からなくはないが、海音達のいた舞網市では別のカードゲームに登場するカードが存在するんだ、No.の存在する舞網市があってもおかしくはない。

とは言え、No.の危険性は身を以て知っている、なるべくならそれを所有している奴とは会いたくない物だが『遊矢、考え事は其処までにした方が良さそうだ』ん、どうしたアストラル?

 

『遊矢、不味い事になったみたいだよ。此処から直ぐ近くで足音が聞こえる。何だかこっちに、一直線に向かっているみたいだよ』

「と言う事は、何らかの手段で俺達の存在を察知したって事か。恐らくはこの舞網市のレオ・コーポレーションが送り込んだ輩か、或いはNo.所有者か…

しまったな、考え事に熱中し過ぎたか…」

「遊矢が気にする事は無いわよ、私だって色んな事が有り過ぎて何が何だかって状況だもん」

『そろそろ来るぞ。遊矢、柚子、ユベル』

 

段々と近づいて来る足音、それに身構えていると、

 

「いたz、瑠璃!?何故瑠璃が此処に「そのネタはもう良いから」ぐはっ!?」

「俺、だと?そうか、やはり此処は並行世界の舞網市だったか…」

「遊矢が、2人…

此処が本当に並行世界の舞網市だったなんて…」

 

其処に現れたのは、恐らくはこの舞網市の『榊遊矢』と思われる俺そっくりな奴と、シティに残っていた筈の隼、そして紫色の髪の毛の少年の3人だった。

 

「ああ、やっぱり並行世界の俺なのね…

だけど、1つ訂正しておくよ。2人じゃなくて3人だよ」

 

ゑ?

 

「さ、3人!?」

「3人か、この世界での俺は双子なのか?成る程、俺達は2人で1人の榊遊矢!って訳か」

『遊矢、どっかの平成2期最初の仮面ライダーじゃないんだから』

『仮面ライダー?どんなモンスターだ?種類は?ステータスは?どんな効果を持っている?』

『アストラルもこんな時にボケるな!良いかい、仮面ライダーというのは遊矢が持っている『M・HERO』カテゴリの元ネタになった特撮ヒーローの事だよ』

 

アストラル、お前は相変わらずのデュエル脳だな、そして問い詰め方がその仮面ライダーの片割れそっくりだ(汗

 

「違う違う。詳しく説明すると長くなるから簡単に説明すると俺も並行世界からこの世界に来ているのさ」

「そして、ファントムさんは元の世界に帰る手段を見つけるためにレオ・コーポレーションに協力しているんです」

 

あ、そうだったのか。

 

「この舞網市って並行世界の遊矢を引き寄せる磁石か何かなの…?」

「かも知れないな。ともあれ、そういう事なら話は早い。そっちが良ければ、少しの間そっちのレオ・コーポレーションにお邪魔したいんだけど?まあ元の世界に帰る術があるにはあるんだが、ちょっと込み入った事情があるし、何より此処に転送される時に右腕を怪我しちゃってさ」

 

そう言いつつ、先程怪我した右腕を見せる。

まあ擦りむいた程度なんだが。

 

「まあ怪我と言っても大した事は無いんだが「ダメよ遊矢!悪化して右腕が動かなくなったりしたらどうするの!?」…とまあ俺の彼女がこんな感じで心配しているし、念の為に、さ。それにそっちも、その積りで此処に来たんだろ?」

 

俺達も海音達が転送された時、確保の為に行動したんだ。

未知なる存在が突然自らの縄張り(といっても舞網市は俺達の領地じゃ無いが)に入って来たとなれば、それがどういう奴かを知り、保護したり排除したりしたくなるのは自然な事だ。

 

「…そうだね。エクシーズ次元のデュエリストなら勧誘、融合次元なら捕縛、どちらにせよエネルギー反応地点にいたデュエリストを保護するのが俺達の目的だよ」

「…まさか、並行世界のデュエリストとは思ってもいなかったがな」

 

今の、ファントムと呼ばれた『俺』の口振りからして、この世界でも融合次元、恐らくはアカデミアによる侵略の脅威が迫っているのだろう、その状況であれば尚の事だ。

それにしても、エネルギー反応か、それは俺達が転送して来た事か、或いはNo.か…

 

「そしたら、案内を頼む。柚子を早く安心させたい」

「任せてよ。それじゃあ、俺達に付いて来てくれ」

 

こうして俺達は、ファントム達の先導でこの舞網市にあるレオ・コーポレーションへと向かう事にした。

 

『成る程、M・HEROを変身召喚させる際、遊矢がモンスター名を宣言した後、何やら訳の分からない口上を言う事が多いが、そういう事だったのか』

『そういう事。アストラル、君も遊矢の相棒として長いんだし、そろそろそういった雑学的な知識を蓄えた方が良いよ。そういった事にも、デュエルを面白くする要素はあるんだ』

 

お前らは何時まで仮面ライダー談義をしているんだ?

 

------------

 

「まさか、並行世界の榊遊矢だったとはな。流石に私も驚いた」

 

所変わって、レオ・コーポレーション会議室。

ファントム達の案内でレオ・コーポレーションへと来た俺達、LDSの医療チームによって右腕の手当てを受けた後、此処に案内され、話し合いに応じた。

やっぱこの世界でもレオ・コーポレーションの社長は零児だったんだな、となると父親である赤馬零王はアカデミアのトップか?

 

「さて、知っているとは思うが一応自己紹介しておこう。私の名前は赤馬零児だ」

「僕はレオン・ウィルソンです!」

「私の名前はレベッカ・ホプキンスよ」

「俺の名前はユーゴだ!融合じゃねぇからな!間違えんなよ!」

「君はいい加減にそれをやめられないのか…

俺はユートだ、宜しく頼む」

「黒咲隼だ」

「俺はこの世界の榊遊矢だ。ホント驚いたよ、2人目の俺と会うことになるなんて」

「ホントにね。あ、俺の事はファントムって呼んでよ。元の世界でもそう呼ばれてたし、榊遊矢が2人だとややこしいから皆からはこう呼んでもらってるんだ。今は3人だけどね」

 

其処には零児とユーゴ、ユートと隼、それにファントムを含めた2人の『俺』と、レオンと名乗った先程の少年、レベッカと名乗った金髪の少女が集まっていた。

それにしてもこっちのユーゴもそのネタかよ、ユートの言葉からして最早持ちネタと化していそうだ。

 

「そうなると俺も別の名で呼んでもらった方が良いな…

並行世界から来ました、榊遊矢です。俺の事は遊士(ゆうし)とでも呼んでください。あ、『暗炎星―ユウシ』の事じゃ無いですし、金貸しでも無いですからね」

「並行世界から来ました、柊柚子です。ほ、本当に遊矢が3人もいる…

それに零児さんもユートも、隼もヒューゴーも…」

「ユーゴーじゃねぇ!ユーゴだ!」

『最早被害妄想の域だね。こっちのユーゴが食いついた熱血の大巨人レスラーネタを聞き間違えるとか…』

 

あ、遊士という呼び名は言うまでも無く、最初にいた世界での俺の名だ。

十代とか遊星とか、遊馬とかだともしこの並行世界の、他次元にいたら面倒くさいからな(実際、既に故人とはいえこっちのシンクロ次元には不動遊星がいたんだし)。

 

「改めて、ありがとうございます。元いた世界で次元転送装置の暴走に巻き込まれてしまって、この世界に流れ着いた所だったんです。まあ、元の世界に帰る術はあるんですが、その間に新たな厄介事に巻き込まれそうな火種を抱えていた状態でして…」

 

言うまでも無く、この世界に来て力を取り戻したNo.の事だ。

 

「その厄介事とはNo.のことかね?」

「やっぱり知っていましたか。はい、その通りです。元いた世界では普通のエクシーズモンスターと変わりなかったんですが、この世界に来た事で力を得たみたいなんですよ」

「その、No.が力を得た影響なのか、遊矢、じゃなかった、遊士の一部のデッキが光を放っていたんです、薄らとですけど。それにNo.達の効果テキストにも追記された文章があって…」

「成る程な。この世界におけるNo.は正体不明のカードと言っても過言では無い」

「俺達の次元、エクシーズ次元で突如として出現したのがNo.というカードだ。心の闇や欲望を増幅し、持ち主を暴走させる。恐らくは貴様の持つNo.もその力を得たのだろう」

 

零児からの問い、それに対する俺と柚子の返答に、ユートと隼がこの世界におけるNo.という存在を、自らのデッキに入っていたらしいそれを取り出しながら説明してくれた。

話を聞くと、遊馬だった頃のNo.と変わらない力を持ち、しかもエクシーズ次元においてはNo.に関する伝承が全く無いとなると、危険度は更に上だろう。

てか隼、お前の持っているそれ『No.16色の支配者ショック・ルーラー』じゃねぇか…

こっちの世界じゃ禁止カードだぞ、それを普通にデッキに入れるとか、この世界の禁止制限はどうなっているんだ…

と、この世界の禁止制限を勘繰るのは後にしよう、今は俺のデッキに眠るNo.に関してだ。

この世界に来て力を取り戻したと言っても、ZEXALの力を有する俺であれば制御は容易だが、それを言った所で聞き入れてくれる筈も無い。

それを使うのは危険だとして、没収されてしまうか、暫し預ける事になるかも知れない。

だが、幾ら此処に邪魔している身とは言え、俺にだって譲れない物はある。

No.はつい最近まで普通のエクシーズモンスターではあったが、それでも俺やアストラルにとっては、過去(遊馬だった頃)の死闘の形見、思い入れのあるカードなんだ。

となれば…

 

「事情は把握しました。その力を持ったNo.を17種類も持っているとなると、危険極まりないと思われても致し方ないのは理解出来ます。

 

 

 

ですがこのNo.達は俺にとって思い入れのあるカードなんです。いきなりはい分かりました、と渡す訳には行きません。

という訳で…

 

 

 

おい、デュエルしろよ」

 

其処、テンプレ言うな。

 

「ふむ、確かにデュエルはするべきだろうな。No.の侵食は鉄の意志と鋼の強さがあれば抑えられるのは黒咲達が証明している。だが、17枚も持っているならば危うい可能性は高い…」

「ならばそれを制御しきれているかデュエルで試せ、という訳か」

「分かりやすくて良いね。やっぱ、デュエリストならデュエルで言葉を交わさないとね」

 

どうやら此処にいる皆もまた同じ考えか、話が早くて良かった。

と、思っていた時期が俺にもありました。

 

「私がやろう!」

「僕がやるよ!」

「私がやるわ!」

「俺がやるぜ!」

「俺がやろう!」

「俺がやる!」

「此処は俺の出番だな!」

「此処は譲れないよ!俺が遊士の相手になる!」

「「「「「「「「………」」」」」」」」

 

だが、俺とのデュエルを巡って俺が俺がの大論争となり、一触即発の雰囲気と化し、その状況下で俺に『俺達の誰とデュエルをするんだ』と言いたげな視線を向けられる…

これは、どうした物か…

よし、やっぱり此処はライバル対決と行くか!

 

「そしたら、零児。1戦目の相手お願いします。

 

1戦目は、このNo.をふんだんに搭載したデッキで戦います」

「…良いだろう。

異次元をも、異世界をも制する王の力。君に見せてあげよう」

 

俺の指名に笑みを浮かべながら応じる零児、一方でがっかりと言いたげな表情の他の面々。

まあデュエルはこれだけじゃないから安心しな。

そう心中で言いながら、零児と共にアクションフィールドへと移動した。

 

「中島、アクションフィールドを発動しろ!」

「はい!アクションフィールド、オン!フィールド魔法『招き蕩う黄金劇場(アエストゥス・ドムス・アウレア)』発動!」

 

零児の指示で、中島さんが発動したアクションフィールド、それは名前の通り黄金に輝く劇場と言わんばかりの物だ。

さあ行きますよ、零児!

 

「行くぞ、遊士!」

「はい、零児!」

「戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!」

「モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!」

「「「「「フィールド内を駆け巡る!」」」」」

「「見よ、これぞデュエルの最強進化系!アクショーン…」」

「「デュエル!」」



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Ex15話_並行世界での1回戦!異次元の王VSNo.の皇帝その1

注:投稿当時『No.93希望皇ホープ・カイザー』の特殊召喚効果によって課される誓約を見落としていました。

今回はこの効果のみ漫画版と同じ文にエラッタされた形で進めます。(10/13)


先攻 Reiji LP 4000 VS 後攻 Yuushi LP 4000

 

「先攻は私が貰おう、私のターン!」

 

よし、俺が後攻か。

この世界での零児の実力がどれ程の物か、見させて貰いますよ。

 

「私はマジックカード『手札抹殺』を発動!

互いのプレイヤーは手札を全て捨て、その枚数分デッキからカードをドローする!」

 

手札抹殺(制限カード)

通常魔法

1:手札があるプレイヤーは、その手札を全て捨てる。その後、それぞれ自身が捨てた枚数分デッキからドローする。

 

お、此処で手札抹殺を発動したか、丁度良かった。

今の俺の手札、というかデッキ内のモンスター達は、墓地が肥えていないとその力を発揮出来ない奴が多い、此処で墓地肥やしをさせてくれるのは有難い。

…約1枚、今捨てられると厳しい奴があるが、まあ良いだろう。

 

「良いでしょう、通します!」

「ならば、手札を4枚捨ててドロー!」

「では俺も5枚の手札を全て捨てて5枚ドロー!」

 

さて、引いた5枚のカードは…

よし、悪くないな。

と、零児の方から何やら凄まじい気迫を感じるな、余程良い引きだったのか。

 

「では、始めようか。私のソリティアを。私は手札からマジックカード『天輪鐘楼』を発動!」

「天輪鐘楼?」

「このカードがある限り、シンクロ召喚に成功したプレイヤーはデッキからカードを1枚ドローする!」

 

天輪鐘楼(漫画版オリジナルカード)

永続魔法

シンクロ召喚に成功したプレイヤーはデッキからカードを1枚ドローする。

 

ってつまり、永続魔法版『TGハイパー・ライブラリアン』って事か!

ハイパー・ライブラリアンがどれだけぶっ壊れかは、使っている俺も知っている、それの永続魔法版が弱い訳が無い。

それの発動と共に現れた鐘の音色が、正にソリティアの幕開けを告げる、といった所か。

 

「私は墓地の『DDネクロ・スライム』の効果発動!

このカードを含む融合素材を墓地より除外する事で『DDD』モンスターを融合召喚する!私が融合するのはDDネクロ・スライムと『DDリリス』!冥府の渦よ。闇夜に誘う妖婦を包み込み、今一つとなりて新たな王を生み出さん!融合召喚!生誕せよ、『DDD烈火王テムジン』!」

 

DDD烈火王テムジン

融合・効果モンスター

炎属性

悪魔族

レベル 6

攻撃力 2000

 

うはぁ、テムジンキター!

となると次はやっぱり『DDナイト・ハウリング』を召喚してレベル4非チューナーを蘇生してからのアレクサンダーかな?

と、アクションカードをゲット!

 

「続けて私はチューナーモンスター、DDナイト・ハウリングを通常召喚!」

 

DDナイト・ハウリング

効果モンスター/チューナー

闇属性

悪魔族

レベル 3

攻撃力 300

 

やっぱりかぁ!

 

「DDナイト・ハウリングの召喚に成功したことにより効果発動!

墓地から『DD』モンスター1体を特殊召喚する!蘇れ、『DDバフォメット』!」

 

DDバフォメット

効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 4

守備力 1800→0

 

此処も予想通り、となるとアレクサンダーを出してからの、大量蘇生か。

 

「私はレベル4のDDバフォメットにレベル3のDDナイト・ハウリングをチューニング!闇を切り裂く咆哮よ、疾風の速さを得て新たな王の産声となれ!シンクロ召喚!生誕せよ、レベル7!『DDD疾風王アレクサンダー』!」

 

DDD疾風王アレクサンダー

シンクロ・効果モンスター

風属性

悪魔族

レベル 7

攻撃力 2500

 

これでDDでの定番と言って良い、テムジンアレクサンダーの布陣が完成したか。

しかもその折に天輪鐘楼の効果で1ドローもある。

流石はDD、なんかOCGで環境入りしたとか何とかといった風の噂を聞いたけど、それも頷けるな。

 

「天輪鐘楼の効果でドローし、DDD烈火王テムジンの効果発動!

1ターンに1度、このカード以外のDDモンスターが特殊召喚された場合、墓地からDDモンスター1体を特殊召喚する!現れろ、DDバフォメット!」

 

またバフォメット、天輪鐘楼の効果に回数制限が無い以上、またシンクロ召喚して来る筈、となれば次は『DDD呪血王サイフリート』かな?

アレクサンダーを2体並べた所で打点増やす以外の意味が無いし。

 

「更にDDDアレクサンダーのモンスター効果!

自分フィールドにDDモンスターが特殊召喚された場合、墓地からレベル4以下のDDモンスター1体を特殊召喚する!続け、DDナイト・ハウリング!」

 

蘇生したチューナーはナイト・ハウリングか、オルトロスが墓地に無かった様だな。

となれば次はバフォメットの効果でナイト・ハウリングのレベルを4にしてサイフリートをs、

 

「私はレベル4のDDバフォメットにレベル3のDDナイト・ハウリングをチューニング!」

 

ゑ、レベル調整なしでシンクロ召喚?

 

「闇を切り裂く咆哮よ、疾風の速さを得て新たな王の産声となれ!シンクロ召喚!二度生誕せよ、レベル7!『DDD疾風王アレクサンダー』!」

 

ゑ、ゑ?

 

「サイフリートじゃない…?」

「サイフリートの出番はもう少々後だ。天輪鐘楼の効果でドロー!

そして疾風王アレクサンダーの特殊召喚成功により1体目の疾風王アレクサンダーの効果発動!」

 

何、アレクサンダーの効果は名称指定の『1ターンに1回』制限では無いのか!?

どうやら俺達がいた世界と、この世界では効果が違っているカードが色々ありそうだ、現に俺が持っているNo.達も戦闘破壊耐性が追記されたんだし。

だが同時に納得した、これならアレクサンダーを大量に並べた方が、天輪鐘楼がある事からも良いわな。

 

「墓地よりDDバフォメットを特殊召喚!

続けて2体目の疾風王アレクサンダーの効果によりDDナイト・ハウリングを特殊召喚!」

 

また来たか。

 

「3体目だ!シンクロ召喚!三度生誕せよ、DDD疾風王アレクサンダー!」

 

これで零児の手札はスタート時と変わらない5枚、正にソリティアだな。

 

「そしてDDD疾風王アレクサンダーの効果で墓地からDDラミアを特殊召喚!

レベル7のDDD疾風王アレクサンダーに、レベル1のDDラミアをチューニング!その紅に染められし剣を掲げ、英雄たちの屍を越えていけ!シンクロ召喚!生誕せよ!レベル8、『DDD呪血王サイフリート』!」

 

DDD呪血王サイフリート

シンクロ・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 8

攻撃力 2800

 

そしてついに来たか、サイフリートが。

これからサイフリートが、零児がどう動いて来るか、それによってこのデュエルの行方を左右すると言っても過言じゃ無い。

 

「天輪鐘楼の効果でドロー!

疾風王アレクサンダーの効果により墓地からDDラミアを特殊召喚!

レベル7のDDD疾風王アレクサンダーに、レベル1のDDラミアをチューニング!その紅に染められし剣を掲げ、英雄たちの屍を越えていけ!シンクロ召喚!二度生誕せよ!レベル8、『DDD呪血王サイフリート』!

天輪鐘楼の効果でドロー!

疾風王アレクサンダーの効果により墓地からDDラミアを特殊召喚!

レベル7のDDD疾風王アレクサンダーに、レベル1のDDラミアをチューニング!シンクロ召喚!二度生誕せよ!レベル8、『DDD呪血王サイフリート』!

ドロー!」

 

うわぁ、回る回る。

これで零児の手札は8枚、サイフリートは3体も並んでいる。

これで俺はかなり動きづらくなった。

 

「さて、このままターンを渡しても本来であれば十分だ。だが私とて君にNo.の使用を要求する立場。多少のファンサービスはするべきだろう。

 

故に見せよう、私のNo.を!」

 

ん?此処でNo.を?

今の零児のフィールドにはレベル8のサイフリートが3体(後レベル6のテムジンが1体のみ)、となると出て来るのはランク8だろうが、今の零児は(恐らくは)DDナイト・ハウリングの誓約効果によって悪魔族モンスターしか出せない筈。

でもランク8のNo.に悪魔族はいなかった筈、ランク6に至っては、悪魔族エクシーズモンスターは存在しない筈だが…

というか零児、ファンサービスって、中の人ネタですか。

 

「私はレベル8のDDD呪血王サイフリート3体でオーバーレイ!3体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!闇の羽音を木霊させ、異界から飛び立つ蝿の王!エクシーズ召喚!『No.1』!生誕せよ、ランク8!『インフェクション・バアル・ゼブル』!」

 

No.1インフェクション・バアル・ゼブル(アニメオリジナルカード)

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

悪魔族

ランク 8

攻撃力 3000

ORU 3

 

ゑ?

 

「は…!アイエエエエ!?バアル・ゼブル!?バアルナンデ!?いや、え、ちょ、そっちですか!?まさか『偽物』のNo.1で来ましたか…」

 

零児がエクシーズ召喚したNo.、それは俺が予想だにしなかったものだ。

遊馬だった頃、ドン・サウザントが作り上げてベクター経由でMr.ハートランドに渡った『偽りのNo.』、その1枚であるこのバアル・ゼブル。

まあ経緯はこの際どうでも良い、コイツは偽物とはいえ、効果は凶悪その物だ。

と、思わずバアル・ゼブルを偽物呼ばわりした事が気に掛かったのか、零児が聞いて来た。

 

「偽物?ふむ、間違ってはいないな。このカードはNo.のエネルギーを抽出し、それを元にレオ・コーポレーションが開発したカード。性能はそのままに侵食力を下げた試作品(プロトタイプ)だからな。だが、このカードを偽物と呼んだということは、君は『本物』のNo.1を知っているのか?」

「ええ。『ゲート・オブ・ヌメロン―エーカム』。俺が嘗て敵対していたデュエリストが使用していた『ヌメロン』カードの1つです。これ自体はバアル・ゼブルと比べると効果やステータスの面で見劣りはしますが、コイツの真価は、様々なヌメロンエクシーズモンスターの素材となれる事。その中には、ランク13、元々の攻守が100000というモンスターもいます」

 

無論、そのデュエリストと言うのはドン・サウザンドの事で、最後に言ったエクシーズモンスターは『CiNo.1000夢幻虚光神ヌメロニアス・ヌメロニア』の事だ。

他にも、コストでこちらの行動を無効にする『ヌメロン・リライティング』カウンター罠、『ヌメロン』魔法・罠カードをデッキから発動する『ヌメロン・ネットワーク』、『ゲート・オブ・ヌメロン』を大量展開する『ヌメロン・ダイレクト』に、それらをレベル12のエクシーズ素材としたエクシーズ召喚を行う『ヌメロン・カオス・リチューアル』等々、癖は強いが嵌れば強力なカードの数々で今までに無い位の死闘を繰り広げたな。

奴がやって来た事は無論許してはならない事だ、だがデュエリストとしての力は本物だった。

 

「「「「何!?エクシーズモンスターのランクの上限はランク12ではないのか!?」」」」

 

そんな俺の説明に、零児とファントム、ユートと隼が驚きの声を上げた。

まあ確かに、デュエルモンスターズのレベルは基本的に12が最大、普通はそのレベルが合った複数体のモンスターでエクシーズ召喚するエクシーズモンスターのランクは素材となったモンスターのレベルと同数、と考えるのが当然だ。

そうなるとエクシーズモンスターのランクの上限はランク12、という考えに至るのもおかしくはない。

だが理論上はレベル13以上が存在する(グリード・クェーサーがそうだ)んだし、ランク13以上のエクシーズモンスターが将来的に登場してもおかしくは無いと思うが…

 

「実に興味深い話だ。詳しく話を聞きたいところだが、今はデュエル中。まずはデュエルを進めるとしよう。バアル・ゼブルの効果発動!

このカードがエクシーズ召喚に成功した時、相手のエクストラデッキからモンスター1体を選択して墓地へと送る!インフェクション・ブラック・デス!」

 

一先ずヌメロン関連の話は此処まで、今はデュエルだ。

さて、さっきバアル・ゼブルの効果を凶悪だと言ったが、その1つがエクストラデッキのピーピング破壊。

ザボルグの例を挙げるまでも無く、相手のエクストラデッキの構成をピーピングした上で1枚を除去出来るのは強い。

何しろそのカードは蘇生制限を満たさないからエクシーズ・リボーンで呼び出す事が出来ない。

さて、何を選んでくるか…

ちなみに今回のエクストラデッキ構成はこうなっている。

『No.93希望皇ホープ・カイザー』

『No.99希望皇龍ホープドラグーン』

『No.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープ』×2

『SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング』×2

『CNo.39希望皇ホープレイ・ヴィクトリー』

『CNo.39希望皇ホープレイV』

『No.39希望皇ホープ』×3

『SNo.39希望皇ホープONE』

『CNo.39希望皇ホープレイ』

『No.98絶望皇ホープレス』

『No.39希望皇ホープ・ルーツ』

 

「『希望皇ホープ』を中心としたエクストラデッキという訳か。ならば、選択するのは一択だ。私は『No.39希望皇ホープ』を選択し、墓地へと送る!」

 

その内容を確認した零児が選択したのは、このデッキの根幹と言っても良い『No.39希望皇ホープ』。

確かに、その読みは間違いじゃ無い。

ホープレイとホープONEは其々No.39希望皇ホープの上に重ねるという自らが持つ召喚条件でなければ事実上出せない(メインデッキには光属性モンスターカードが無いし、エクストラデッキもエクシーズモンスターしかいない)し、ホープレイVにホープレイ・ヴィクトリー、ホープ・ザ・ライトニングもその能力の関係で『No.39希望皇ホープ』の上に重ねる必要がある。

ビヨンド・ザ・ホープはレベル的にやや出しにくいし、絶望皇ホープレスは『希望皇ホープ』サポートであって『希望皇ホープ』その物じゃない。

ホープ・カイザーを出すにも『No.39希望皇ホープ』を使った方が一番出しやすいし、ホープドラグーンは自らの特殊召喚効果、ホープ・ルーツはホープ・カイザーの効果で出す枠。

となれば根幹である『No.39希望皇ホープ』を叩くのが最善に見えるだろう。

 

「更にバアル・ゼブルの二つ目の効果を発動!1ターンに1度、相手の墓地のNo.をORUとして吸収する!ナンバーズ・ドレイン!

私はカードを3枚伏せ、ターンエンドだ」

 

Reiji

LP 4000

手札 5

モンスター DDD烈火王テムジン(攻撃表示)

      No.1インフェクション・バアル・ゼブル(攻撃表示)

魔法・罠カード 天輪鐘楼

        セット×3

 

さて、まさかのバアル・ゼブルの登場にびっくりはしたが、そのエクシーズ召喚の為にサイフリート3体がオーバーレイ・ユニットとなったのは助かった。

これで心置きなく展開出来る、といきなり動くのは早計だ。

サイフリートという障害が無くなったと言っても、零児の魔法・罠ゾーンには天輪鐘楼の他、3枚ものセットカードがある。

それをどかさない限りは安心して動けない。

が、幸い俺の手札にはどかす手段がある。

 

「俺のターン!ドロー!

まずは魔法『ハーピィの羽根帚』発動!」

 

ハーピィの羽根帚(制限カード)

通常魔法

1:相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。

 

さあ、どうする?

 

「ならば私はトラップカード『レインボー・ライフ』を発動!手札を1枚捨て、このターン私が受けるダメージを回復へと逆転させる!」

 

レインボー・ライフ

通常罠

手札を1枚捨てて発動出来る。このターンのエンドフェイズ時まで、自分は戦闘及びカードの効果によってダメージを受ける代わりに、その数値分だけライフポイントを回復する。

 

「私は『代償の宝札』を捨て、レインボー・ライフの効果を発動する!更に代償の宝札が手札から墓地へ送られた事により、デッキからカードを2枚ドローする!」

「その後、ハーピィの羽根帚の効果で零児のフィールドにある4枚の魔法・罠カードは破壊されます」

 

あらら、セットカードの中にレインボー・ライフがあったか、確かにLPの管理がシビアになりがちなDDとの相性は良いな。

しかもそのコストとして捨てられた代償の宝札によって手札アドを1枚増やされた。

結果としてこのターンでの決着はもう無理、次のターン7枚もの手札を持った零児の展開が待っている。

が、こっちとしても好都合だ!

 

「このターンでの決着は不可能となりましたか。ですがこれで舞台の準備は整いました!

Ladies and Gentleman!Boys and Girls!これより我がデッキに宿りし、希望を司る皇帝たちによる剣劇を開演いたします!

まずはフィールド魔法『希望郷―オノマトピア―』を永続魔法として発ど、おや、反応しませんね…

故障か何かでしょうか…?」

 

舞台の整備が済み、何時もの口上と共に希望郷―オノマトピア―を発動しようと魔法・罠ゾーンに置くも、何故か反応しない。

どうしたんだ、一体?

 

「ふむ、君の世界ではアクションデュエル中はフィールド魔法を永続魔法扱いとして発動するのか。ならば言っておこう。この世界ではアクションデュエル中もフィールド魔法はフィールド魔法ゾーンに発動するようになっている」

「何と?アクションフィールドはフィールド魔法ゾーンで発動されるのでは無かったのですか、これは失礼しました。では改めてフィールド魔法『希望郷―オノマトピア―』を発動!」

 

希望郷―オノマトピア―

フィールド魔法

1:このカードがフィールドゾーンに存在する限り、自分フィールドに『希望皇ホープ』モンスターが特殊召喚される度に、このカードにかっとビングカウンターを1つ置く。

2:自分フィールドのモンスターの攻撃力・守備力は、このカードのかっとビングカウンターの数×200アップする。

3:1ターンに1度、このカードのかっとビングカウンターを2つ取り除いて発動出来る。デッキから『ズババ』『ガガガ』『ゴゴゴ』『ドドド』モンスターの内いずれか1体を特殊召喚する。

 

俺が希望郷―オノマトピア―を発動すると同時に、アクションフィールドの天井近くから光が放たれる。

 

「次に『ゴゴゴジャイアント』を召喚!」

 

ゴゴゴジャイアント

効果モンスター

地属性

岩石族

レベル 4

攻撃力 2000

 

先程の『手札抹殺』で墓地が肥えた今こそ、コイツら『ゴゴゴ』モンスターの本領発揮だ!

 

「召喚したゴゴゴジャイアントの効果発動!

墓地からこのモンスターを守備表示で蘇生します!Let’s Go!覚悟!『ゴゴゴゴースト』!Go!Go!Go!Go!」

 

ゴゴゴゴースト

効果モンスター

闇属性

アンデット族

レベル 4

守備力 0

 

召喚されたゴゴゴジャイアントは、何時もの調子で俺のデュエルディスク、その墓地にあたる部分に手を突っ込んで、今回蘇生させるゴゴゴゴーストをガサゴソと探していたが、突如その隙間から鎧を纏った幽霊みたいな姿のモンスター、ゴゴゴゴーストが飛び出し、それに驚いたのかゴゴゴジャイアントが飛び退き、何故か身体が崩れた。

 

「おや、ゴゴゴジャイアントが余りの驚きで某十数年前の野球ゲームのキャラクターがデッドボールを喰らった時の様に身体が崩れてしまった様です。ですが、実際の所は効果処理の一環で守備表示となっただけですのでご安心を。

蘇生したゴゴゴゴーストの効果発動!

こちらも墓地から『ゴゴゴゴーレム』を守備表示で蘇生します!

本来ならこの後、ゴゴゴゴーストを守備表示にしなければならないのですが、元から守備表示ですので此処カットで」

 

ゴゴゴゴーレム

効果モンスター

地属性

岩石族

レベル 4

守備力 1500

 

よし、これでレベル4モンスターが3体!

 

「レベル4のモンスターが3体…

来るか、No.!」

「俺はゴゴゴジャイアントとゴゴゴゴーストでオーバーレイ!2体のレベル4モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!我が戦いは此処から始まる!白き翼に望みを託し、現れろ!『No.39希望皇』」

「『『『ホープ』』』!」

 

No.39希望皇ホープ

エクシーズ・効果モンスター

光属性

戦士族

ランク 4

攻撃力 2500

ORU 2

 

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター 0→1

ゴゴゴゴーレム 守備力 1500→1700

No.39希望皇ホープ 攻撃力 2500→2700

 

「希望皇ホープ…

これが君のNo.の姿か!」

 

エクシーズ召喚、それによって登場した『39』の数字が刻まれた塔の様な物体が変形する演出と共に現れた希望皇ホープの姿に、零児が唾を飲み込みつつ、警戒の声を上げる。

だが、希望皇ホープの力は、まだまだ終わらないぜ!

 

「ええ、ですが俺のNo.の力はまだまだこの程度ではありません!貴方も先程見たでしょう、俺のエクストラデッキに宿るホープの様々な姿を!その一端をお見せしましょう!

俺はホープのオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオスエクシーズ・チェンジ!現れよ、混沌を光に変える使者!『CNo.39希望皇ホープレイ』!」

 

CNo.39希望皇ホープレイ

エクシーズ・効果モンスター

光属性

戦士族

ランク 4

攻撃力 2500→2700

ORU 3

 

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター 1→2

ゴゴゴゴーレム 守備力 1700→1900

CNo.39希望皇ホープレイ 攻撃力 2700→2900

 

「希望皇ホープレイ…

暴走したユートがバリアンズ・フォースで生み出したカオス・キマイラ・ドラゴンと同じCNo.のカードか」

 

この世界にはバリアンズ・フォースやCNo.もあるのか。

この世界にとってのNo.がZEXALでのそれ並である以上、CNo.もまた同等の力を持っているのかも知れない、RUMが必要なホープレイVやホープレイ・ヴィクトリーを出すのは自重した方が良いな。

…ホープレイの場合は邪悪な力(バリアンズ・フォース)によって生み出されたのではないのだが、まあそれは置いておこう。

本来なら此処からホープ・ザ・ライトニングを出す所だが、生憎このターンはレインボー・ライフの効果適用中だ。

だから此処はこうする。

 

「続いて希望郷―オノマトピア―に乗っている、かっとビングカウンターを2つ取り除いて効果発動!

デッキから『ドドドウィッチ』を守備表示で特殊召喚!」

 

ドドドウィッチ

効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 4

守備力 1600

 

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター 2→0

ゴゴゴゴーレム 守備力 1900→1500

CNo.39希望皇ホープレイ 攻撃力 2900→2500

 

「特殊召喚したドドドウィッチの効果発動!

手札から『ドドドバスター』を表側攻撃表示で特殊召喚!」

 

ドドドバスター

効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 6

攻撃力 1900

 

これで再びレベル4モンスターが2体。

 

「これで再びレベル4のモンスターが2体…

最後の希望皇ホープが来るか!」

 

と、思うでしょう。

ですが、

 

「いいえ違います。俺はゴゴゴゴーストとドドドウィッチでオーバーレイ!2体のレベル4モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!貴方の戦いは此処で終わる!黒き翼に絶望を映し、現れろ!『No.98絶望皇ホープレス』!」

 

No.98絶望皇ホープレス

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

戦士族

ランク 4

守備力 2500

ORU 2

 

俺がエクシーズ召喚したのは希望皇ホープでは無く、ホープの色合いとか、数字が刻まれた位置とかが反転したNo.、絶望皇ホープレス。

名前とかその姿からしてホープの敵みたいな感じになって入るけど、実際の所はホープと一緒に使った方が強かったりするんだよな(苦笑

 

「成る程、今の内にアフターケアのことを考えてそのカードを出したか」

「ええ。希望の裏で絶望がある、それはまるで光と影の如く。前線でホープ達が戦う裏で、ホープレスはサポートの為に構えるのです。

俺はそのホープレスとホープレイでオーバーレイ!2体のランク4・No.モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!万界に散りし祈りよ!今こそこの手に集い、その姿を現せ!現れろ!ナンバーズのキング・オブ・キング!『No.93希望皇ホープ・カイザー』!」

 

No.93希望皇ホープ・カイザー

エクシーズ・効果モンスター

光属性

戦士族

ランク 12

攻撃力 2500

 

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター 0→1

No.93希望皇ホープ・カイザー 攻撃力 2500→2700

ドドドバスター 攻撃力 1900→2100

 

今出したホープレスとホープレイを用いてエクシーズ召喚したのは、巨大な翼、強固さを感じる鎧を身に纏った希望皇ホープ、いや、希望皇ホープ・カイザー。

その姿は、カイザーの名を冠してはいるが帝王というより神に近い感じだ。

以前は出すメリットの薄さ、そもそもの出しにくさから外していたが、ホープレスを手にした事で、ピンではあるが入れてみる事にしたんだ。

 

「エクシーズモンスター同士でのエクシーズ召喚…

成る程、やはりNo.は得体の知れない力を持っている。これほどのエネルギーを感じるカードがあったとは…」

 

その姿に息を呑みながら呟く零児。

まあエクシーズモンスター同士でエクシーズ召喚するモンスターはこれまでもあったが(あ、それも『FNo.0未来皇ホープ』と『SNo.0ホープ・ゼアル』、それにバリアンと、No.関連だった)、ランク12モンスターはOCGでは最初だったしな。

このまま効果発動、と行きたい所だが、丁度墓地が肥えたし手札補充して置こう。

 

「更に魔法『貪欲な壺』を発動!対象はたった今墓地へ送られたゴゴゴジャイアントと1枚目のドドドウィッチ、それに先程の手札抹殺で墓地へ送られたままの『ゴゴゴゴラム』と2枚目のドドドウィッチ、そしてカオス・ソーサラー!」

 

貪欲な壺(制限カード)

通常魔法

1:自分の墓地のモンスター5体を対象として発動出来る。そのモンスター5体をデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから2枚ドローする。

 

「貪欲な壺の効果で対象の5枚をデッキに戻す!

最強のデュエリストによるデュエルは、全てが必然!ドローカードさえも、デュエリストが引き当てる!シャイニング・ダブルドロー!」

 

よし、来た!

 

「俺が引いたカードの1枚は、今デッキに戻した『カオス・ソーサラー』!

俺は墓地の希望皇ホープとゴゴゴゴーストを除外!光と闇、2つの魂を生け贄に、今こそ降臨せよ!混沌を操りし魔術師よ!『カオス・ソーサラー』!」

 

カオス・ソーサラー

効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 6

攻撃力 2300→2500

 

俺が引き当てたモンスター、それはカオスモンスターの一角であるカオス・ソーサラー。

 

「っ、そう来たか!」

 

その姿を見た零児の顔が驚愕に歪む。

恐らく、カオス・ソーサラーの能力、そしてそれを出した俺の意図を瞬時に察知したのだろう。

なら、それを現実の物としましょう!

 

「カオス・ソーサラーの効果発動!

バアル・ゼブルを除外します!

偽りのNo.よ!とっとと異世界に帰りなさい!」

「…厄介なことをしてくれたな」

 

カオス・ソーサラーの効果によって消え去ったバアル・ゼブル。

その光景を見ていた零児の表情は、何処か苦みばしった様な感じだ。

まあバアル・ゼブルの攻撃力は3000、高くはあるがそれでも希望郷―オノマトピア―を活用したり、ライトニングを出したりすれば何とかなる値ではある。

けどこれはアクションデュエル、攻撃をアクションマジックで妨害される可能性が無い訳じゃ無いし、今はレインボー・ライフの効果適用中だ。

それにバアル・ゼブルにはオーバーレイ・ユニットを補充する効果を有している、仮に破壊しても蘇生カードを使われては、結局は元の木阿弥という奴。

まあ『闇次元の解放』や『D・D・R』を使われたら結局は一緒なんだがな。

 

「俺はカオス・ソーサラーとドドドバスターでオーバーレイ!2体のレベル6モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!人が希望を越え、夢を抱く時、遥かなる彼方に、新たな未来が現れる!限界を超え、その手に掴め!『No.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープ』!」

 

No.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープ

エクシーズ・効果モンスター

光属性

戦士族

ランク 6

攻撃力 3000→3200

ORU 2

 

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター 1→2

No.93希望皇ホープ・カイザー 攻撃力 2700→2900

No.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープ 攻撃力 3200→3400

 

「エクシーズ召喚したビヨンド・ザ・ホープの効果発動!テムジンの攻撃力を0に変えます!絶望(ビヨンド・ホープ)!」

 

DDD烈火王テムジン 攻撃力 2000→0

 

あの驚異的と言っても過言じゃ無かった零児の布陣、それはこの瞬間に真っ新となった(一応テムジンが残っているし、破壊しちゃうと契約書を回収されちゃうけど)。

だが零児の手札は6枚、それが火を噴く事を考えると、もっと展開して置きたい。

 

「まだまだ行きますよ!俺はホープ・カイザーの効果発動!

エクストラデッキから、ホープ・カイザーのオーバーレイ・ユニットの種類の数まで、エクストラデッキからランク9以下、攻撃力3000以下のNo.モンスターを、効果を無効にして特殊召喚する!

現れろ、ランク4!『SNo.39希望皇ホープONE』!ランク1!『No.39希望皇ホープ・ルーツ』!

その後、オーバーレイ・ユニットとなっていたホープレスを取り除きます!」

 

SNo.39希望皇ホープONE

エクシーズ・効果モンスター

光属性

戦士族

ランク 4

攻撃力 2510→2910

ORU 0

 

No.39希望皇ホープ・ルーツ

エクシーズ・効果モンスター

光属性

戦士族

ランク 1

攻撃力 500→900

ORU 0

 

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター 2→3

No.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープ 攻撃力 3400→3600

SNo.39希望皇ホープONE 攻撃力 2910→3110

No.39希望皇ホープ・ルーツ 攻撃力 900→1100

No.93希望皇ホープ・カイザー 攻撃力 2900→3100

               ORU 2→1

 

さっき呼び出したホープ・カイザーの効果によって天井の光から舞い降りたのは、眩い程の光を発する、ライトニングと同じS(シャイニング)の名を冠した希望皇ホープONEと、希望皇ホープの原初の姿、ホープ・ルーツ。

本来ならこの効果を発動した後、俺は新たなる展開が出来なくなる誓約を課されるけど、どうやらこの世界に転移した事で、その誓約が削られたみたいだ。

なら、それを活かさない手は無い!

 

「そして、エクストラデッキにある『No.99希望皇龍ホープドラグーン』は、手札の『RUM』魔法カード1枚を捨てる事で『希望皇ホープ』モンスターの上に重ねる形でエクシーズ召喚出来ます!

俺は手札の速攻魔法『RUM―クイック・カオス』を捨てる事でこれを適用します!

俺はホープ・ルーツのオーバーレイ・ネットワークを再構築!エクシーズ召喚!現れよNo.99!砕け散った記憶よ今、1つの星となりて、天命を貫く霹靂となれ!これがナンバーズの終焉!『希望皇龍ホープドラグーン』!」

 

No.99希望皇龍ホープドラグーン

エクシーズ・効果モンスター

光属性

ドラゴン族

ランク 10

攻撃力 4000→4600

ORU 1

 

そして、ホープ・ルーツのオーバーレイ・ネットワークを再構築して登場したのは、希望皇ホープが龍へと姿を変えた姿、ホープドラグーン。

 

「俺はこれでターンエンドです!」

 

Yuushi

LP 4000

手札 1

モンスター No.93希望皇ホープ・カイザー(攻撃表示)

      No.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープ(攻撃表示)

      SNo.39希望皇ホープONE(攻撃表示)

      No.99希望皇龍ホープドラグーン(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

フィールド魔法 希望郷―オノマトピア―(かっとビングカウンター:3)



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Ex16話_並行世界での1回戦!異次元の王VSNo.の皇帝その2

さて、互いの1ターン目が終わり、今の状況だが、まずは俺、LPは無傷の4000、手札は1枚、フィールドにはホープ・カイザー、ビヨンド・ザ・ホープ、カイザーの効果で出したホープONEに、自分自身の特殊召喚効果で登場したホープドラグーンの計4体、全てが希望郷―オノマトピア―の効果によって攻撃力3000を突破していて、墓地には蘇生制限を満たしたホープレスもスタンバイしている。

一方の零児、LPは俺と同じく4000、手札は次のドロー含めて7枚、フィールドにはビヨンド・ザ・ホープの効果で攻撃力が0となったテムジンのみ。

余程の事が起こらない限りはこの布陣は崩れないだろうとは思う、だが元いた世界の零児は俺にとって最高のライバル、この世界の零児もまたトップクラスの実力を持っていると見て良いだろう、何だか突破しそうな気がするな。

だがそれは寧ろ望む所、受けて立ちますよ、零児!

その決意と共に、ビヨンド・ザ・ホープに肩車して貰い、俺達はフィールド内を飛び回る。

手札には既にアクションカードがある以上、今はこれ以上アクションカードを手にする事が出来ない、が、逆に考えるんだ、『発動直後に掴んじゃえば良いさ』と。

 

「私のターン、ドロー!」

 

先攻2ターン目、零児のドローフェイズ、これで零児の手札は7枚だ。

信じられるか?さっきのターンに6体ものDDDシンクロモンスターをシンクロ召喚したんだぜ、これで尚も手札が7枚だ。

OCGとは色々と効果が違うが故だろうが、それでも零児のデュエルタクティクスは凄まじい。

引いたカードを含めた自らの手札を見る零児から、凄味のある笑みを浮かべている辺り、それがこのターンでも見られそうだ。

 

「流石だ。君の実力はこの世界においても間違い無くトップクラスだろう。そんな君に敬意を評し、私も全力でいかせてもらう!マジックカード『ソウル・チャージ』発動!このカードは自分の墓地からモンスターを任意の数特殊召喚し、特殊召喚したモンスターの数×500のライフを失う!蘇れ、私のモンスター達よ!」

 

ソウル・チャージ(効果調整)

通常魔法

自分の墓地のモンスターを任意の数だけ選択して発動出来る。そのモンスターを特殊召喚し、自分は特殊召喚したモンスターの数×500ライフポイントを失う。この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃する事は出来ない。

 

まさかの原作効果かい。

零児が発動したソウル・チャージ、それによって3体のサイフリートと、1体のアレクサンダーが再びフィールドへと姿を現した。

 

DDD呪血王サイフリート

シンクロ・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 8

攻撃力 2800

 

DDD疾風王アレクサンダー

シンクロ・効果モンスター

風属性

悪魔族

レベル 7

攻撃力 2500

 

Reiji LP 4000→2000

 

それによって零児のLPは半減した、だがぶっちゃけこれは大したコストにならないだろう。

DDはLPの管理がシビアだとさっき言ったが、そのリカバリーも充実しているからな。

 

「この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃することが出来ない。だが、展開の要にすることは可能だ…

得と味わうが良い、異次元の王の真の力を!」

「良いでしょう!その進撃、全力で迎え撃ちます!」

「ならば、私は『地獄門の契約書』を2枚発動する!地獄門の契約書は1ターンに1度、デッキからレベル4以下のDDモンスター2体を手札に加える!」

 

地獄門の契約書(効果調整)

永続魔法

1:自分メインフェイズに発動出来る。デッキからレベル4以下の『DD』モンスター1体を手札に加える。

2:自分スタンバイフェイズに発動する。自分は1000ダメージを受ける。

 

もう驚かんぞ、効果が変わっている事には。

下級DDモンスターしかサーチ出来ない、つまり契約書のデメリットを防止する為のレオニダスをサーチ出来ないとはいえ、それでもこれは強力だな。

 

「私が手札に加えるのは『DDナイト・ハウリング』と『DDスワラル・スライム』!

私はDDD呪血王サイフリート2体でオーバーレイ!2つの太陽が昇るとき、新たな世界の地平が開かれる!エクシーズ召喚!現れいでよ!ランク8!『DDD双暁王カリ・ユガ』!」

「来ましたか、カリ・ユガ!」

 

DDD双暁王カリ・ユガ

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

悪魔族

ランク 8

攻撃力 3500

ORU 2

 

No.93希望皇ホープ・カイザー 攻撃力 3100→2500

No.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープ 攻撃力 3600→3000

SNo.39希望皇ホープONE 攻撃力 3110→2510

No.99希望皇龍ホープドラグーン 攻撃力 4600→4000

 

やっぱ、この状況下で出すのはカリ・ユガか。

これでフィールドにあるカードの効果はこのターン、全てが使えず、アクションマジックも無用の長物と化す。

No.が持っていた戦闘破壊耐性も、ホープ・カイザーが持っていた効果にも対応している破壊耐性も、この時だけは意味を成さなくなる。

ホープドラグーンやビヨンド・ザ・ホープのフリーチェーン効果も無理(そもそも俺の墓地にあるホープ(バアル・ゼブルの効果で直接墓地送り&オーバーレイ・ユニットになっていた奴)は蘇生制限を満たしていないので使い様が無い)。

あくまでフィールドにしか及ばないので墓地にあるホープレスの効果は使えるが、それも壁程度にしかならない。

一方の零児も、これでこのターンに魔法カードの発動を禁じられた様な物、故にさっきフィールドを介さずに効果を適用出来るスワラル・スライムをサーチしたのだろう。

 

「カリ・ユガには4つの効果がある。1つ目、このカードの効果は無効化されない。つまり、君が『エフェクト・ヴェーラー』のようなカードを手札に持っていたとしても無意味だということだ」

 

カリ・ユガも効果が変わっているのか、元の世界ではその効果は無かったからな。

つまり予めスキドレを発動していても、コイツの勢いは止められないって事になる。

 

「2つ目の効果、サティラ・ユガ!このカードが特殊召喚に成功した時、このカード以外のフィールドのカードの効果はターン終了時まで無効になる!」

 

此処も少し変わっているな。

発動すら封じられた訳ではないが、まあ発動した所で何が出来るって所だろう。

 

「つまりこのターン、お互いに手札か墓地で発動する効果しか使えない、そういう事ですね。故に先程、地獄門の契約書のサーチ効果で、フィールドを一切介さずに融合召喚を行えるスワラル・スライムを加えた、そうでしょう?」

「いや、無効になるのは発動時にフィールドに存在したカードだけだ」

 

あら?

だがそれは僥倖だ、つまり既に手にしてあるこのアクションマジックは使える、という事だ。

 

「安心している様で悪いがカリ・ユガの効果はこれだけではない!3つ目の効果、トレーター・ユガ!オーバーレイ・ユニットを1つ使い、フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する!」

 

其処は変化なしか、これで無効化されていた希望郷―オノマトピア―は破壊され、ホープ達の元に戻った攻撃力が上昇する事は無くなった。

一方の零児もまた発動していた2枚の地獄門の契約書が破壊されるが、まあ残りの効果で再契約でもs、

 

「そして最後の効果、ドヴァーパラ・ユガ!残るオーバーレイ・ユニットを使い、このカードの効果で破壊された自分のカードを破壊された前の状態に戻す!」

 

ゑ、全部!?

こっちのは自分の効果で破壊した分全て再契約できるのか…!

出る前に既に墓地へ送られた契約書を再契約する事は出来ない様だが、これはこれで厄介だな…

 

「そしてカリ・ユガ…

君に滅びを齎す罪の時代が訪れる」

 

来る…!

 

「再び地獄門の契約書2枚の効果発動!『DDネクロ・スライム』と『DD魔導賢者ケプラー』を手札に加える!

続けて『アドバンスドロー』を発動!」

 

アドバンスドロー

通常魔法

自分フィールド上に表側表示で存在するレベル8以上のモンスター1体をリリースして発動出来る。デッキからカードを2枚ドローする。

 

「レベル8のDDD呪血王サイフリートをリリースし2枚ドロー!

そして、これが展開の為の最後の準備だ。『貪欲な壺』を発動!」

 

貪欲な壺(制限カード)

通常魔法

1:自分の墓地のモンスター5体を対象として発動出来る。そのモンスター5体をデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから2枚ドローする。

 

「この5枚をエクストラデッキに戻し、デッキからカードを2枚ドローする!」

 

墓地にあったサイフリート3枚と、アレクサンダー2枚がエクストラデッキに戻り、零児の手札は10枚となった。

その内判明しているのはDDスワラル・スライムにDDネクロ・スライム、DDナイト・ハウリングにDD魔導賢者ケプラー、ケプラーしかサーチしなかった辺り、ガリレオかコペルニクス、レオニダス辺りも既にあるのだろう。

問題は、残りの5枚…!

 

「墓地の『DDラミア』の効果発動!このカードは手札・墓地に存在する場合、手札及び自分フィールドの表側表示のカードの中からDDラミア以外のDDカードまたは契約書カード1枚を墓地へ送り、特殊召喚出来る!私は『DDD壊薙王アビス・ラグナロク』を墓地へ送り、DDラミアを特殊召喚!」

 

DDラミア

効果モンスター/チューナー

闇属性

悪魔族

レベル 1

守備力 1900

 

その1枚目はアビス・ラグナロクか。

態々捨てたという事は、ネクロ・スライムと一緒に融合素材にするか、或いは『魔神王の契約書』を握っているのか…?

 

「レベル6の『DDD烈火王テムジン』にレベル1のDDラミアをチューニング!シンクロ召喚!四度生誕せよ、DDD疾風王アレクサンダー!」

 

先程ビヨンド・ザ・ホープの効果で攻撃力が0と化したテムジンはシンクロ素材としてフィールドを離れ、ラミアは自らの効果で蘇生した影響で除外された。

 

「更に『DDナイト・ハウリング』を通常召喚!」

 

DDナイト・ハウリング

効果モンスター/チューナー

闇属性

悪魔族

レベル 3

攻撃力 300

 

「その効果により、墓地から『DDバフォメット』を特殊召喚!」

 

DDバフォメット

効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 4

守備力 1800→0

 

これで3体目のアレクサンダーを呼び出す準備が出来たか。

 

「レベル4のDDバフォメットにレベル3のDDナイト・ハウリングをチューニング!シンクロ召喚!五度生誕せよ、DDD疾風王アレクサンダー!此処で疾風王アレクサンダーの効果が発動出来るのだが、今回は発動しない」

 

確かに、1体目のアレクサンダーはカリ・ユガの効果で無効になっているが、2体目はその後にシンクロ召喚されたモンスター、よって効果は問題なく使える。

だがそれを使わなかったって事は、次は融合召喚でもするって事か?

 

「装備魔法『D・D・R』!このカードは手札1枚をコストに除外されている自分のモンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する!」

 

D・D・R

装備魔法

手札を1枚捨て、ゲームから除外されている自分のモンスター1体を選択して発動出来る。選択したモンスターを表側攻撃表示で特殊召喚し、このカードを装備する。このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。

 

「ネクロ・スライムを墓地に送り、DDラミアを特殊召喚!

(過程は中略)

三連続シンクロ召喚!現れろ、3体のDDD呪血王サイフリート!」

 

と思ったら帰還カードだったでござる。

其処から、アレクサンダーとラミアでサイフリートをシンクロ召喚→アレクサンダーの効果でラミア蘇生→最初に戻る、というさっきも見たループでアレクサンダーは皆サイフリートになった。

後、判明していない5枚のうちの1枚はD・D・R、残りは、低スケールのペンデュラムモンスターを含めた4枚。

 

「そして、永続魔法『魔神王の契約書』を発動!このカードは悪魔族専用の融合魔法だが、DDモンスターを融合召喚する時、墓地のモンスターで融合召喚を行える!」

 

魔神王の契約書

永続魔法

『魔神王の契約書』の1の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。

1:自分メインフェイズに発動出来る。自分の手札・フィールドから、悪魔族の融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。『DD』融合モンスターを融合召喚する場合、自分の墓地のモンスターを除外して融合素材とする事も出来る。

2:自分スタンバイフェイズに発動する。自分は1000ダメージを受ける。

 

予想通りと言うべきか、魔神王の契約書を握っていたか。

これで判明していない手札は3枚。

 

「私が融合するのはDDD烈火王テムジンとDDD壊薙王アビス・ラグナロク!神々の黄昏を打ち破り、燃え上がる炎の勢いで、新たな世界を切り開け!融合召喚!出現せよ、究極の独裁神!『DDD怒濤壊薙王カエサル・ラグナロク』!」

「シィィィィィィィィザァァァァァァァァ!?」

 

DDD怒濤壊薙王カエサル・ラグナロク

融合・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 10

攻撃力 3200

 

と、ついネタに走ってしまったが、これはちょっとやばいな。

零児のフィールドのどのDDDモンスターも、戦闘で俺のホープ達を全滅させる程のステータスは無い。だが何もモンスターを除去するのに戦闘しかしてはいけないなんてルールは存在しない。

カエサル・ラグナロクの効果で恐らくホープドラグーンを吸収、それによる一撃を以てすれば俺の敗北が確定する…!

 

「この攻撃、防ぎ切れるか?バトルだ!怒濤壊薙王カエサル・ラグナロクでNo.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープに攻撃!この瞬間、カエサル・ラグナロクのモンスター効果発動!1ターンに1度、このカードが戦闘を行う攻撃宣言時にこのカード以外の自分フィールドのDDもしくは契約書カード1枚を手札に戻すことで、このカードと戦闘を行うモンスター以外の相手フィールドの表側表示モンスター1体を吸収する!」

「防いで見せます!サティラ・ユガの適用範囲が仇となりましたね!チェーンしてアクションマジック『奇跡』発動!と同時にアクションカードをゲット!」

 

奇跡

アクションマジック

1:フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターは戦闘では破壊されず、戦闘ダメージは半分になる。

 

「…成る程、それでダメージを軽減するというわけか。だが我が裁きの前に奇跡など起きはしない!サイフリートの効果発動!

君が発動した奇跡は無効にさせて貰う!」

「奇跡は起きる物じゃ無い、起こす物です!俺が掴んだのは2枚目の奇跡!

サイフリートの効果はカード名を指定したターン1制限!よって奇跡は起こされる!」

「ならば、カエサル・ラグナロクの効果!地獄門の契約書を手札に戻し、ホープドラグーンを吸収する!

更にカエサル・ラグナロクの攻撃力は吸収したホープドラグーンの攻撃力分アップする!裁きを下せ、ジ・エンド・オブ・ジャッジメント!」

 

DDD怒濤壊薙王カエサル・ラグナロク 攻撃力 3200→7200 VS No.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープ 攻撃力 3000

 

『ガァァァァァァァァァァ!』

「うわっ!耐えてくれ、ビヨンド・ザ・ホープ!」

 

Yuushi LP 4000→1900

 

何とか奇跡の効果によって一撃必殺は免れ、ビヨンド・ザ・ホープも戦闘破壊から身を守る事が出来た。

だがカエサル・ラグナロクによる終末の裁きは余りにも強烈で、ビヨンド・ザ・ホープの苦痛の声が響き渡り、その余波で俺はビヨンド・ザ・ホープから叩き落とされてしまった。

着地こそ問題なく出来たが、カエサル・ラグナロクの攻撃で満身創痍となったビヨンド・ザ・ホープには空を飛ぶ気力が無いのは明らかだ。

そして、これだけで終わる筈がない。

 

「奇跡は2度続かない。追撃だ!双暁王カリ・ユガでビヨンド・ザ・ホープを攻撃!ツインブレイクショット!」

「ビヨンド・ザ・ホープは破壊させない!その攻撃宣言時、墓地にいるホープレスの効果発動!コイツを守備表示で特殊召喚し、ホープONEをオーバーレイ・ユニットに変えます!俺のフィールドにいるモンスターの数が変化したのでカリ・ユガの攻撃は巻き戻されます!」

 

No.98絶望皇ホープレス

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

戦士族

ランク 4

守備力 2500

ORU 1

 

「…成る程、ならばそのままビヨンド・ザ・ホープに攻撃だ!」

「その攻撃宣言時、ホープレスのオーバーレイ・ユニットを取り除いて更なる効果発動!カリ・ユガを守備表示に変えます!黒き輝きは絶望を希望に変える!ダークバリア!」

 

No.98絶望皇ホープレス ORU 1→0

 

何とか、ビヨンド・ザ・ホープは守れた…

カリ・ユガがビヨンド・ザ・ホープへと放った雷、だがその前に立ち塞がったホープレスの黒い障壁がそれを打ち返し、カリ・ユガを撤退させた。

まだサイフリート3体の攻撃が残っているが、ビヨンド・ザ・ホープの攻撃力には及ばない!

 

「呪血王サイフリートでホープ・カイザーに攻撃!運命られし破滅の剣(グラム)!」

「済まん、ホープ・カイザー…!」

 

DDD呪血王サイフリート 攻撃力 2800 VS No.93希望皇ホープ・カイザー 攻撃力 2500

 

Yuushi LP 1900→1600

 

流石にホープ・カイザーまでは守れなかったか…

お前が呼び寄せたホープONEが、ビヨンド・ザ・ホープを守る為の力になってくれた。

今まで出しにくいからと邪険にしていて悪かった、お前の為にもこのデュエル勝って来る!

 

「此処で手札に『覇道融合』があれば追撃出来たのだが…

仕方あるまい。バトルフェイズを終了し、私は手札から地獄門の契約書を発動する。その効果で『DDケルベロス』を手札に加える。カードを1枚伏せ、ターンエンドだ」

 

Reiji

LP 2000

手札 5(その内『DDスワラル・スライム』、『DD魔導賢者ケプラー』、『DDケルベロス』が1枚ずつ)

モンスター DDD双暁王カリ・ユガ(守備表示)

      DDD呪血王サイフリート(攻撃表示)×3

      DDD怒濤壊薙王カエサル・ラグナロク(攻撃表示 『No.99希望皇龍ホープドラグーン』装備)

魔法・罠カード 地獄門の契約書×2

        魔神王の契約書

        No.99希望皇龍ホープドラグーン(装備対象:DDD怒濤壊薙王カエサル・ラグナロク)

        セット

 

「俺のターン!ドロー!

まずは今まで耐えに耐えてくれたビヨンド・ザ・ホープのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!

俺のフィールドにいるホープレスを除外し、墓地の『CNo.39希望皇ホープレイ』を攻撃表示で蘇生し、その後、俺のLPを1250ポイント回復します!」

 

CNo.39希望皇ホープレイ

エクシーズ・効果モンスター

光属性

戦士族

ランク 4

攻撃力 2500

ORU 0

 

Yuushi 1600→2850

 

今しがた蘇生したホープレイ、コイツこそがこのデュエルを決着させる為の、1つ目の布石!

 

「今蘇生したホープレイのオーバーレイ・ネットワークを再構築!シャイニングエクシーズ・チェンジ!一粒の希望よ!今、電光石火の雷となって闇から飛び立て!現れよ!『SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング』!」

 

SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング

エクシーズ・効果モンスター

光属性

戦士族

ランク 5

攻撃力 2500

ORU 1

 

本来ならこのままバトルフェイズに入ってライトニングを突っ込ませたかったが、ライトニングの十八番であるパワーアップはオーバーレイ・ユニットの数的に出来ない。

だからまだ動く!

 

「次にビヨンド・ザ・ホープをリリースして『ドドドバスター』をアドバンス召喚!」

 

ドドドバスター

効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 6

攻撃力 1900

 

「アドバンス召喚に成功したドドドバスターの効果発動!

墓地にある2体目のドドドバスターを守備表示で蘇生します!

俺はこの2体でオーバーレイ!2体のレベル6モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!今こそ自らの全力を取り戻し、蘇れ!『No.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープ』!」

「ビヨンド・ザ・ホープ…!」

 

No.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープ

エクシーズ・効果モンスター

光属性

戦士族

ランク 6

攻撃力 3000

 

先程テムジンを唯のかかしに変えたビヨンド・ザ・ホープの姿を見るや否や、零児はフィールド内を駆けだし始めた。

このまま攻撃を通せば敗北は必至、ならばアクションカードを手にして活路を開くしかない。

 

「エクシーズ召喚したビヨンド・ザ・ホープの効果発動!零児、貴方のフィールドにいるモンスター全ての攻撃力を0にします!絶望(ビヨンド・ホープ)!」

 

DDD双暁王カリ・ユガ 攻撃力 3500→0

DDD呪血王サイフリート×3 攻撃力 2800→0

DDD怒濤壊薙王カエサル・ラグナロク 攻撃力 7200→0

 

「そしてバトルフェイズに入ります!」

「その瞬間、トラップカード『契約洗浄(リース・ロンダリング)』を発動!」

 

契約洗浄

通常罠

1:自分の魔法・罠ゾーンの『契約書』カードを全て破壊する。破壊した数だけ自分はデッキからドローする。その後、自分はドローした数×1000LP回復する。

 

「私のフィールドの契約書全てを破棄し、破棄した枚数分のカードをデッキからドローする!更にドローした枚数×1000のライフを回復する!」

 

Reiji LP 2000→5000

 

そして、ライトニングの攻撃中はアクションマジックに限らずあらゆるカードの効果が使えない以上、その活路を開くために、ライトニングの攻撃に耐えられるLPが必要となる。

俺がバトルフェイズに入る宣言をした瞬間、零児はDDにおけるライフゲイン手段の1つ、契約洗浄でLPを回復させた。

 

「なら改めて。行くぞ皆!ホープ・ザ・ライトニングでカエサル・ラグナロクを攻撃!囚われたホープドラグーンは返して貰います!ホープソード・ライトニングスラッシュ!」

 

SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング 攻撃力 2500 VS DDD怒濤壊薙王カエサル・ラグナロク 攻撃力 0

 

Reiji LP 5000→2500

 

「くっ!だが…!」

「そして、ビヨンド・ザ・ホープでサイフリートを攻撃!これでトドメです!ホープソード・ビヨンド・スラッシュ!」

「まだだ!まだ終わらん!アクションマジック『回避』!攻撃を無効にする!」

 

回避

アクションマジック

1:フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターの攻撃を無効にする。

 

「通しましょう!ですが」

 

ホープ・カイザーにこのデュエルの勝利を誓った以上、その活路から突き飛ばさせて貰う!

 

「なっ!?ライトニングだと!?」

「それに、今攻撃したビヨンド・ザ・ホープは自らの効果を使えます!ビヨンド・ザ・ホープのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!ビヨンド・ザ・ホープ、リブート!」

 

Yuushi LP 2850→4100

 

まあ再起動(リブート)と言っても、ビヨンド・ザ・ホープの効果で自分自身を除外させつつ、さっきドドドバスターをアドバンス召喚する為にリリースしたビヨンド・ザ・ホープを蘇生しただけなんだが。

 

「来い、遊士!」

「ええ!今はバトルフェイズ中、よってビヨンド・ザ・ホープは再び攻撃出来る!これで、本当の終わりです!ホープソード・ビヨンド・スラッシュ、第2打ァ!」

 

No.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープ 攻撃力 3000 VS DDD呪血王サイフリート 攻撃力 0

 

Reiji LP 2500→-500 LOSE

 

WINNER Yuushi

 

ライトニングとビヨンド、2体のホープの剣撃が零児のモンスター達を捉え、そして零児のライフを尽きさせた。

ホープ・カイザー、言った通り勝って来たぜ!

それにしても、

 

「零児。

 

ガッチャ!最っ高に楽しいデュエルでした!」

 

やっぱ零児とのデュエルは最高だぜ!



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Ex17話_並行世界での2回戦!闇堕ちした柚子VS並行世界の遊矢その1

「ところで零児、少し聞きたい事があるのですが、良いですか?」

「何だね?」

「この世界の禁止制限って、一体どうなっています?というのはですね、先程、No.は俺達の世界では普通のエクシーズモンスターだと言いましたが、その中で先程隼が見せてくれたNo.、あれは禁止カードに指定されているんです。それで少しこの世界の禁止制限がどうなっているのかが気になりまして」

 

零児とのデュエルが終わり、互いの健闘を称えあった後、ふと気になった事を零児に聞いてみた。

この世界の禁止制限の事だ。

 

「この世界の禁止制限?…ああ、かなり緩いと言っていい。

融合・シンクロ・エクシーズ・ペンデュラムなどが広がっていない分、それらに関係するカードが殆ど規制されていないならな」

 

と言いながら、零児は2枚のカードを提示したんだが、

 

「これらのカードで漸く制限カードといった所だ」

「は…?アイエエエエ!?未来融合!?未来融合ナンデ!?しかももう片方もコストが変わって速攻魔法になった『次元融合』じゃないですか、一体どんだけ緩いんですか…」

 

その2枚は、あの悪名高い禁止カード『未来融合―フューチャー・フュージョン―』(アニメ効果)と、何故か効果が『次元融合』と化した『次元誘爆』(アニメ効果がそれだったらしいが)だった。

これでも制限止まりとか、本当にどんだけですか(汗

 

「そ、それじゃあショック・ルーラーとかは?」

「当然、規制されていない。この世界で黒咲しか持っていないカードを規制出来る訳が無いだろう。このような凶悪な効果だったとしてもだ」

 

う、うそやん…

となるとつい最近禁止されたモンキーボードも、遊戯王TCGではとっくの昔に釈放(無制限カード化)されたゴヨウ・ガーディアンも恐らくは…

 

「あ、あのペンデュラムモンスターのモンキーボードとシンクロモンスターのゴヨウ・ガーディアンは?」

「ゴヨウ・ガーディアンというカードは知らないがモンキーボードは無制限だ」

「ゑ?」

 

マジですか、なんか頭痛くなって来た。

 

「ならサンダー・ボルトや大嵐は?」

「流石に禁止カードだ。禁止制限が緩いのは召喚法に関わるカードのみ。汎用カードはそれなりに厳しくなっている」

「あ、やっぱそうですよね」

 

流石に其処まで緩かったらもうアカン、デュエルモンスターズの歴史が終焉してしまう。

 

「ともかく、分かりました。それじゃあ、戻りましょうか」

「そうだな。禁止制限の話は実際に見せてする方が早いだろう」

 

俺のいた世界じゃ特定の存在しか持っていないカードでも容赦なく制限が掛かるけどな、こっちの零児も「禁止制限は或る日突然、数時間前の予告の後にデータが書き換えられる。私もどういう仕掛けになっているか分からない」って言っていたけど、まさか天の声的な何かが…?

そう禁止制限に関して色々と考えつつ、零児と共にフィールドを後にした俺を出迎えたのは、

 

「遊士!お疲れ様、今のデュエル、最高に面白かったわ!流石は遊士ね!」

「うおっと、元気と愛に溢れた出迎えありがと。喜んで貰えて嬉しいよ、柚子」

 

扉が開くと同時に駆け寄って抱き付いて来た柚子だった。

本当に可愛いな、俺の彼女は。

 

「…誰だ、あれ?

柚子って、もう、こう、ストロングな感じだよな?」

「俺の世界の柚子もストロングだね。柊マネーイズパワーシステムとか言いそうな感じの」

 

聞こえているぞ、お前ら。

この世界の柚子やファントムの所の柚子って一体どんな存在なんだ?

と、本題が、零児とデュエルした切っ掛けと言える問題が解決していなかったな。

 

「さて、俺のデュエルはどうでしたか?俺のプレイングやメンタル等々から、No.を持つに相応しいかどうかの判断は固まりましたでしょうか?」

「ふむ、問題無いだろう。榊遊矢やファントムがCNo.とデュエルした時は数日目を覚まさない重傷を負うことになったが、私にそのようなことは起きていないしな」

 

ほっ良かった、これで少なくとも没シュートなんて事態にはなら無さそうだ。

 

「ありがとうございます!その謝礼と言ってはあれですが、もう2デュエルしませんか?どうやら俺とデュエル出来なかった事で皆さん落胆の表情を浮かべていましたし。俺としても今度はNo.の所有権を賭けた物じゃ無い、純粋なエンタメデュエルをしたいですし…

 

柚子、お前もそうだろう?」

「わ、私も良いの?」

「ああ!何かさっき人の彼女の並行世界における存在をストロングだのマネーイズパワーシステムだのと好き勝手言った連中に一泡ふかせたいし」

「そんな事言っていたの?失礼しちゃうわ!」

「いやだって直ぐにハリセンで叩いてくるしさ」

「それならまだマシだよ。俺なんてサインを要求する振りをして契約書に名前を書かせられ、時給450円で講師としての契約を結ばされたんだよ?」

 

いや、ハリセンなら柚子だってツッコミに使うぞ。

ストロング呼ばわりするから作画崩壊パンチとかリアリスト行為とか、コテンパンでフライパンにしてやるとか無言の手刀とかするんじゃないかと思ったけど、普通じゃねぇか。

流石にサインを要求する振りして契約書云々は擁護出来ないが、しかも時給450円で講師の契約て…

 

「ともかく、どうでしょうか?」

「良いのではないか?彼らもやる気満々の様子のようだしな」

「ああ!あんなデュエル見せられたら、デュエリストとして居ても立っても居られなくなったよ!俺もデュエルしたいって強く思わされた!」

「俺もだよ。あの零児を彼処まで追い詰め、そして倒したデュエリスト。それ程のデュエリストと戦う機会なんて滅多に無いからね」

「僕も同意です。僕の『御伽話』デッキで是非とも貴方と戦ってみたい」

「ふふ…

いいえ、デュエルするのは私よ!あの程度の展開じゃ削り切れない力、しかとその眼に焼き付けさせてあげるわ」

「いいや、俺が行こう。No.はNo.でしか破壊されない。ならば、No.を有する俺がデュエルを挑むべきだ」

「待て、ユート。その理屈ならば俺でも良い筈だ。何よりも特殊召喚を多用する相手ならば俺の方が優位に立てる筈」

「いやいや、此処は俺の出番だろ?俺のシンクロ召喚でぶっ倒してやるぜ!」

「「「「「「「……」」」」」」」

 

あれ、何だこのデジャヴ。

たった今デュエルした零児を除いた7人が、俺が俺がと言い合い、そしてにらみ合ったかと思ったら俺と柚子に視線を向けると言う光景。

といっても、此処で戦う相手はもう決まっているんだけどな。

 

「先程ああ言った手前、他の皆さんには悪いですが、俺はファントムを指名します。並行世界の俺によるエンタメデュエル、しかとこの眼に焼き付けたい。俺もまた、貴方がたに俺なりのエンタメデュエルをお見せしましょう、この、貴方にとっても馴染み深いと言って良いであろうデッキで」

「私は遊矢を。この世界の私がどんな存在かは詳しくは知らないけど、その私とは一味も二味も違う事を見せて上げるわ」

「よし!これは随分と楽しいデュエルが出来そうだよ」

「こっちも並行世界の柚子のデュエル、俺もしっかり楽しませてもらうよ!」

「ちっ」

 

俺と柚子から指名され嬉しそうなファントムと遊矢、そして指名されずに残念がる他の5人、特に舌打ちする隼。

これまた何だこのデジャヴと突っ込みたくなる光景を他所に、俺達はアクションフィールドへと移動する。

 

「柚子。流石に2連チャンというのもアレだし、先にやっていてよ」

「分かったわ」

「遊矢が先みたいだね。存分に楽しんできなよ」

「勿論さ!」

 

俺の言葉を受けて柚子が、ファントムの言葉を受けて遊矢が前に出た。

さて、俺達は観客席でスタンバイしますか。

 

「待て、榊遊矢」

「赤馬零児?」

「君にこれを渡しておこう」

「これは…!?」

 

ん?

何か、零児が遊矢に何かカードを手渡しているな。

 

「君のエクストラデッキはまだまだ貧弱だ。そのカード達が君のデュエルスタイルに合わない事は分かっているが、一応受け取っておけ。あちらの世界のデュエリストは、それくらい使わなければ太刀打ち出来ん」

「…分かった。

ありがたく使わせてもらうよ」

「そうしておけ」

 

話を聞いてみるとどうやらエクストラデッキに入れるモンスターと、それ関連のサポートカードの様だな。

俺の実力を目の当たりにし、これでも入れないとまともにデュエル出来ないぞというメッセージなのだろうか、それ程こっちの世界のデュエリストの実力を買っているという事だろうが…

だとしたら柚子、本気で掛かって行けよ。

 

------------

 

Side 柚子

 

遊矢、じゃなかった、遊士と並行世界の舞網市に来て初めてのデュエル、相手はこの舞網市の遊矢。

この前、私達と同じく並行世界の舞網市から転送されて来た海音が、遊士とのデュエルの際にオッドアイズデッキを使っていた事をまるで想定通りだと言わんばかりの様子だった事から、海音達がいた舞網市にいる遊矢もまたオッドアイズデッキを使う筈、目前の遊矢もまた同じだと思う。

なんかさっき、零児さんが遊矢に何枚かカードを手渡していたみたいだけど、話の感じからエクストラデッキに入れる類の物、本質的には変化なしだと思う。

そうだとしたら遊矢、私のデッキが、この世界の私と同じだと考えていたら痛い目を見るわよ。

さっきストロングとかマネーイズパワーシステムとか、並行世界の私の事を好き勝手言ってくれたみたいじゃない(マネーイズパワーシステムの方は仕方ないけど)、遊士もそれでムッとした様子だったし、口は災いの元だと思い知らせてあげるわ…!

 

「始めようぜ、柚子!俺達のエンタメデュエルを!」

「ふふ、そうね、遊矢。さあ、始めましょう!」

「アクションフィールド、オン!フィールド魔法『名無しの森(ネームレス・フォレスト)』発動!」

 

私達の闘志に答える様に発動されたアクションフィールド、それは何と言うか、鬱蒼とした深い森の中。

 

「戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!」

「モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!」

「「フィールド内を駆け巡る!」」

「「見よ、これぞデュエルの最強進化系!アクショーン…」」

「「デュエル!」」

 

先攻 Yuzu LP 4000 VS 後攻 Yuya LP 4000

 

よし、先攻は私!

 

「私の先攻ね。

まずは手札の『堕天使イシュタム』と『堕天使スペルビア』を捨ててイシュタムの効果発動!

2枚ドロー!」

「堕天使だって!?幻奏じゃない!?」

 

私が発動したイシュタムの効果、というかカテゴリ名に驚きの声を上げる遊矢。

どうやらこの世界での私も、幻奏デッキを使うみたいね。

そんな驚きの声を上げる遊矢に向かって、アクションカードを手にしつつ私は振り返る。

 

「幻奏デッキも持っているわ。こっちはつい最近手に入れた、いわばセカンドデッキ。そして、今の私の想いを体現したデッキでもあるの。

 

遊矢、女の子は恋をすると綺麗になるって聞いた事あるでしょ?それは結構メジャーな例だけど、人は恋を覚え、愛を知る事で変わるの、良くも悪くもね。私は遊士に恋をして、今こうして恋仲になれた事で、今まで遊士に頼りっぱなしだった私を変えたいって、遊士の帰る場所でありたいって決めたの。遊士が迷った時は支えになり、遊士が落ち込んだ時は側に寄り添いたい!遊士が筋道を通して考えた末に決めた決断であるなら私はそれを尊重したいし、遊士の進む道に私はどこまでもついて行きたい、例えそれが茨の道であろうとも!堕天使って、よく傲慢や嫉妬といった『大罪』を犯して堕ちた天使だと言われているけど、中には自らの意志で神に反逆したり、人間に味方したりした事で天国を追放された存在もいるのよ。今の私と似ているでしょ?そんな私の想いを、この堕天使デッキで見せて上げるわ!

次に魔法『手札抹殺』発動!」

「…手札抹殺、赤馬零児も使った手札交換カード」

 

手札抹殺(制限カード)

通常魔法

1:手札があるプレイヤーは、その手札を全て捨てる。その後、それぞれ自身が捨てた枚数分デッキからドローする。

 

そう、さっきのデュエルでも零児さんが初手で使用し、その後の壮絶な展開力の応酬を演出した手札交換カードの代名詞。

さっきのデュエルの例を挙げるまでもなく、今のデュエルモンスターズでは『墓地は第2の手札』と言われているし、この堕天使デッキでもそれは例外じゃ無い、むしろ手札以上に重要な場所。

 

「私はアクションカードを含む5枚の手札を捨て、5枚ドロー!」

「なら俺も5枚捨てて、5枚ドローだ!」

「続いて魔法『堕天使の戒壇』発動!」

「堕天使の戒壇?」

 

堕天使の戒壇

通常魔法

『堕天使の戒壇』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:自分の墓地の『堕天使』モンスター1体を選んで守備表示で特殊召喚する。

 

「これは、一言で言うと堕天使専用の蘇生カードね。その効果は名称指定のターン1回発動制限が付いた、対象を取らない守備表示固定の死者蘇生。でもこれ通常魔法だけど、状況によっては『リビングデッドの呼び声』にもなれるのよ。

私はさっき墓地へ送った『堕天使スペルビア』を守備表示で蘇生するわ!」

 

堕天使スペルビア

効果モンスター

闇属性

天使族

レベル 8

守備力 2400

 

堕天使の戒壇の効果で、私が最初に登場させたのは、シンジさんとのデュエルでも展開の要になってくれたスペルビア。

 

「蘇生したスペルビアの効果発動!

同じく墓地へ送った『堕天使イシュタム』を守備表示で蘇生するわ!」

 

堕天使イシュタム

効果モンスター

闇属性

天使族

レベル 10

守備力 2900

 

「最上級モンスターが一気に2体も…!」

 

私のフィールドに登場したスペルビアとイシュタム、最上級モンスターが2体も並ぶその状況に、遊矢は息を呑む。

 

「ふむ、あちらの世界では闇属性天使族全般では無いのか。私の疾風王アレクサンダーと同じく一気に展開出来るループコンボの素材なのだが…」

「でもこっちでは属性指定が無いので『アテナ』を用いた無限バーンを狙えますし、『大天使クリスティア』を蘇生して特殊召喚封じも出来ますよ」

 

なんか外野で零児さんと遊士がそんな話をしていたらしいけど今は関係ないわね。

 

「更に魔法『死者蘇生』発動!」

 

死者蘇生(制限カード)

通常魔法

1:自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

「私はさっきの手札抹殺で墓地へ送られた2枚目のスペルビアを守備表示で蘇生するわ!

蘇生したスペルビアの効果発動!

同じく手札抹殺で墓地へ送られた『堕天使テスカトリポカ』を攻撃表示で蘇生するわ!」

 

堕天使テスカトリポカ

効果モンスター

闇属性

天使族

レベル 9

攻撃力 2800

 

2体目のスペルビアと共に登場したのは、アステカ神話に登場する神、が後の時代に悪魔として認定されちゃったらしい存在の名を冠した堕天使、テスカトリポカ。

 

「…また増えた!?」

 

驚くのはまだ早いわよ?

 

「まだまだ行くわよ!イシュタムの効果発動!

今フィールドにいるイシュタムとテスカトリポカには共通効果として、1000LPをコストに1ターンに1度だけ使えるフリーチェーン効果があるの。

その効果で、墓地の堕天使の戒壇の効果を適用し、『堕天使ナース―レフィキュル』を守備表示で蘇生するわ!

その後、効果を適用した堕天使の戒壇はデッキに戻るわ」

 

堕天使ナース―レフィキュル

効果モンスター

闇属性

天使族

レベル 4

守備力 600

 

LP 4000→3000

 

「は…

ハハハ、凄いや!5体も堕天使を並べて来た!」

 

たった今蘇生したレフィキュルを含め、先攻1ターンで5体も並んだ私のフィールドの堕天使達、その姿に遊矢は笑っていた。

普通なら笑うどころか恐怖を覚える様な光景、だけど其処はやっぱり並行世界の遊矢というべきかしらね。

でも、

 

「遊矢、今更褒めても遅いわ。笑っていられるのも今の内よ?

…ちょっと、頭冷やそうか?」

「怖っ!?やっぱり、並行世界の柚子も十分ストロ…」

「魔法『成金ゴブリン』発動!」

 

成金ゴブリン

通常魔法

自分のデッキからカードを1枚ドローする。その後、相手は1000ライフポイント回復する。

 

「まずはドロー、その後、本来なら遊矢は1000LP回復するけど、レフィキュルの効果によりバーンダメージに変えるわ!さあ、好き勝手言った遊矢を徹底的にシバいちゃいなさい!」

 

成金ゴブリンのイラストに登場する、正に金持ちだと言わんばかりの風貌のゴブリンが、私の指示と共に、純金製のハリセンを片手に遊矢へと一直線に突っ込んで行った。

 

「うわっ!?…痛っ!?」

 

Yuya LP 4000→3000

 

が、遊矢が咄嗟に木の後ろに隠れた事でゴブリンはその木に直撃、それによって落ちて来た枝が遊矢に直撃したが肝心のハリセンはヒットしなかった。

これは、ちょっとOHANASHIした方が良いわね…

 

「2枚目の成金ゴブリン発動!あ、イシュタム、そっちに遊矢が向かったから羽交い絞めにしておいて」

「2枚目!?この流れだと3枚目も来そうだし温存なんて言ってられないな!墓地の『プリベントマト』の効果発動!このターン、俺の受ける効果ダメージを0にする!」

 

2枚目の発動と共に再び起き上がり、遊矢へと向かったゴブリンと、私の指示を受けて遊矢の確保に向かったイシュタムだったけど、其処にアメフトで使う様なヘルメットを被ったトマトみたいな(それと、何処となく遊矢に似ている様な…)モンスター達が登場、イシュタムが捕まえたのはそっちで、ゴブリンもまた進路を妨害された。

どうやらこれ以上のダメージは与えられないみたいね、尤も3枚目は引かなかったけど。

 

「なら次は、2体のスペルビアをリリースしてアドバンス召喚!傲慢を体現した最凶の堕天使よ、眼前の愚者に鉄槌を下せ!出でよ、レベル11!『堕天使ルシフェル』!」

 

堕天使ルシフェル

効果モンスター

闇属性

天使族

レベル 11

攻撃力 3000

 

効果ダメージこそ与えられなかったけど、私のOHANASHIはまだ始まったばかりよ、遊矢…!

 

「ルシフェルの効果発動!

ルシフェルはフィールドにいる時、私のメインフェイズにフィールドの『堕天使』モンスターの数だけ、私のデッキの上からカードを墓地へ送るわ!これにはルシファー自身も含まれる!

今フィールドにはイシュタム、テスカトリポカ、レフィキュル、そしてルシフェルの4体、よって上から4枚を墓地へ送り…

よし!墓地へ送られたのは堕天使の戒壇と『背徳の堕天使』3枚、4枚全て堕天使カード!よって私のLPを墓地へ送られた堕天使カードの数×500、つまり2000回復するわ!」

 

Yuzu LP 3000→5000

 

「…へ?」

 

さて、墓地も十分に肥えたし、あと少し動いて終わりにしようかしら。

 

「続いて手札の『堕天使アムドゥシアス』と堕天使の戒壇を捨ててアムドゥシアスの効果発動!

たった今墓地へ送られた『背徳の堕天使』を手札に加え、そのままセットするわ!

そして、1000LPを払ってテスカトリポカの効果発動!

堕天使の戒壇の効果を適用し、たった今墓地へ送られたアムドゥシアスを守備表示で蘇生、ターンエンドよ!」

 

堕天使アムドゥシアス

効果モンスター

闇属性

天使族

レベル 6

守備力 2800

 

Yuzu

LP 5000→4000

手札 0

モンスター 堕天使イシュタム(守備表示)

      堕天使テスカトリポカ(攻撃表示)

      堕天使ナース―レフィキュル(守備表示)

      堕天使ルシフェル(攻撃表示)

      堕天使アムドゥシアス(守備表示)

魔法・罠カード セット(背徳の堕天使)

 

今の私のフィールドにはイシュタムにテスカトリポカ、レフィキュルとルシフェル、そしてユニコーンと言うべきかペガサスと言うべきかといった姿の堕天使、アムドゥシアスの5体。

さあ遊矢、この布陣をどう突破するのかしら?



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Ex18話_並行世界での2回戦!闇堕ちした柚子VS並行世界の遊矢その2

「俺のターン、ドロー!」

 

後攻1ターン目、遊矢のドローフェイズ、これで遊矢の手札は6枚。

その6枚で、この堕天使達をどう突破するのかしら?

 

「Ladies and Gentleman!並び立つ強大な5体の堕天使!伏せカードも事実上3枚で私は大ピンチとなっております!しかしこのターン、獣の牙でもって喰い尽くしてみせましょう!」

「そう、なら全力で掛かって来なさい!」

「俺は『龍の鏡(ドラゴンズ・ミラー)』発動!このカードはフィールド・墓地のモンスターを使って融合召喚出来るドラゴン族専用融合魔法!」

 

龍の鏡

通常魔法

1:自分のフィールド・墓地から、ドラゴン族の融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを除外し、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

龍の鏡、という事は遊矢のデッキは『オッドアイズ』みたいね。

 

「俺が融合するのは墓地の『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』と『EM(エンタメイト)シルバー・クロウ』!誇り高き銀狼よ。二色の眼の龍と1つと成りて新たな力を生み出さん!融合召喚!出でよ、野獣の爪輝きし鋼の狼龍!『EMオッドアイズ・メタル・クロウ』!」

 

EMオッドアイズ・メタル・クロウ

融合・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 3000

 

龍の鏡の効果によって遊矢が融合召喚したのは、ドラゴン族と言うより獣戦士族と言った方がしっくり来そうなモンスター、オッドアイズ・メタル・クロウ。

いや確かにオッドアイズの要素もあるけど、何処にドラゴン族の要素があるのかしら…

まあ見た目の是非は一先ず置いて、その能力だけど、まず1つ目は『他のカードの効果を受けない』耐性だけど、これは『融合』か『置換融合』で融合召喚しないと発揮されないから無いと思って良いわね。

次に2つ目は、攻撃宣言時に自分のモンスターの攻撃力をバトルフェイズ中300アップさせる効果。

他にも融合素材に出来ない効果外テキストがある、これはボルテックス・ドラゴンや2体目以降のメタル・クロウを出せないデメリットにも、相手の超融合や破壊剣士融合を受け付けないメリットにもなる。

恐らく2つ目の効果でルシフェルの攻撃力を超えるという算段だろうけど、甘いわ!

 

「その融合召喚成功時、フィールドのレフィキュルを墓地へ送って罠『背徳の堕天使』発動!このカードは名称指定のターン1回発動制限が付き、コストが手札か自分フィールドの堕天使モンスターとなった、対象を取らない『サンダー・ブレイク』!」

 

背徳の堕天使

通常罠

『背徳の堕天使』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:手札及び自分フィールドの表側表示モンスターの中から『堕天使』モンスター1体を墓地へ送って発動出来る。フィールドのカード1枚を選んで破壊する。

 

「成る程、そんな効果があったのか」

「背徳の堕天使の効果により、メタル・クロウには退場願うわ!」

 

今しがた融合召喚されたメタル・クロウへと、レフィキュルが光の槍を構えて突進、その捨て身の特攻によりメタル・クロウは消えて行った。

エースモンスターを破壊された遊矢、けどその顔にはまだ笑みを浮かべていた。

ま、まさか今のは…!

 

「メタル・クロウは破壊されたけど、本命はこっちだ!平行世界(パラレルワールド)からのお客様に素敵なプレゼントを!『平行世界融合(パラレル・ワールド・フュージョン)』発動!このカードは除外されたモンスターをデッキに戻し、融合召喚を行う事が出来る!」

 

え、ちょ、待ちなさい、平行世界融合って遊士も持っていたけどあれはE・HERO融合モンスターの融合召喚にしか使えなかった筈、まさかそれも効果が変わっているの!?

 

平行世界融合(効果調整)

通常魔法

ゲームから除外されている、融合モンスターカードによって決められた自分の融合素材モンスターをデッキに戻し、融合モンスター1体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

 

「俺が融合するのはオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンとEMシルバー・クロウ!誇り高き銀狼よ。二色の眼の龍と1つと成りて新たな力を生み出さん!融合召喚!出でよ、野獣の眼光りし獰猛なる龍!レベル8!『ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!」

 

私の驚きを他所に遊矢が融合召喚したのは、遊士もエースカードの一角としているビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン。

まあ遊士の場合はコンタクト融合と遊士が呼んでいる、融合召喚効果を持つカードを用いない方法で呼び出す事が殆どだけどね。

まあそれは良いとして、素の攻撃力はルシフェルと同等、だけどビーストアイズの効果からして相討ちに持ち込むつもりじゃないのは分かっているわ。

 

「その特殊召喚成功時、LPを1000払ってイシュタムの効果発動!

墓地にある背徳の堕天使の効果を適用し、ビーストアイズには消えて貰うわ!」

 

Yuzu LP 4000→3000

 

「それは通さない!俺は速攻魔法『旗鼓堂々』を発動!墓地の装備魔法1枚をその正しい対象となるフィールドのモンスター1体に装備する!」

 

旗鼓堂々

速攻魔法

自分の墓地の装備魔法カード1枚と、その正しい対象となるフィールド上のモンスター1体を選択して発動出来る。選択した装備魔法カードを選択したモンスターに装備する。この効果で装備した装備魔法カードはエンドフェイズ時に破壊される。このカードを発動したターン、自分はモンスターを特殊召喚出来ない。『旗鼓堂々』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

 

旗鼓堂々、恐らくこれでビーストアイズに破壊耐性を付けるカードでも装備させるつもりね。

これにチェーンして、テスカトリポカの効果を発動し、2枚目の背徳の堕天使の効果を適用しても良いけど、空打ちにするのはちょっとね。

良いわ、通してあげる!

 

「俺はビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴンに墓地の『ドラゴン・シールド』を装備する!」

 

ドラゴン・シールド(効果調整)

装備魔法

ドラゴン族モンスターにのみ装備可能。

装備モンスターは戦闘及びカードの効果では破壊されない。装備モンスターとの戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になる。

 

旗鼓堂々の効果によって、ビーストアイズにドラゴンを模した盾が装備される。

 

「ドラゴン・シールドはドラゴン族モンスター専用の装備魔法!装備モンスターはあらゆる破壊をされず、装備モンスターの戦闘によって発生する俺への戦闘ダメージは0になる!」

「ならその盾を打ち壊すまでよ!その後、イシュタムの効果で適用した背徳の堕天使の効果によってドラゴン・シールドを破壊するわ!効果を適用した背徳の堕天使はデッキに戻るわ」

「ドラゴン・シールドが!?」

 

でもそれも一瞬の内の防衛手段、イシュタムが放った光の槍が盾の方に狙いを変え、それを貫いた事でビーストアイズを守っていた盾は消え去った。

 

「なら、俺は『拡散する波動』を発動!このカードは1000ライフポイントを払い、自分フィールドのレベル7以上の魔法使い族モンスター1体を対象として発動出来る!」

 

拡散する波動

通常魔法

1000ライフポイントを払い、自分フィールド上のレベル7以上の魔法使い族モンスター1体を選択して発動出来る。このターン、選択したモンスター以外のモンスターは攻撃出来ず、選択したモンスターは全ての相手モンスターに1回ずつ攻撃しなければならない。この攻撃で破壊された効果モンスターは効果を発動出来ず、無効化される。

 

Yuya LP 3000→2000

 

ん?拡散する波動?あれ、これって確かレベル7以上の魔法使い族モンスターを対象に発動する効果だった筈、遊矢のフィールドに唯一いるビーストアイズはレベルこそ8だけどドラゴン族、発動出来ない筈じゃ、

 

「柚子、お前はこう思ってるんじゃないか?『ビーストアイズはレベルこそ8だけどドラゴン族だから発動出来ない』って」

「え、えぇ、というかデュエルディスクがエラーを出して受け付けない筈よ」

「確かにその通りだ。そんなことテキストを読めば誰でも分かることだ。

…けどさ、そんな簡単に予測出来るデュエルなんてつまらないだろ?皆を驚かせてこそのエンタメだ。たった1枚のカードでひっくり返る予測不能のデュエルを楽しんでくれ!」

 

戸惑う私の様子を目敏く見抜いたか(まあ誰だってこうなるけど)、遊矢がそう告げると、手札から1枚のカードを手に取った。

それは、

 

「速攻魔法『コード・チェンジ』!」

 

コード・チェンジ(アニメオリジナルカード)

速攻魔法

このカードを発動後、ターン終了時までの間に1度だけ、カードの効果テキストに記された種族を自分の選択した種族に変更する事が出来る。

 

な、成る程そういう事だったのね…

恐らくはこの2枚のコンボでビーストアイズに全体攻撃効果を付け、そのバーンダメージで勝つ、という戦略でしょう、けど!

 

「そうはさせないわ!それにチェーンして1000LPを払い、テスカトリポカの効果発動!墓地にある背徳の堕天使の効果を適用し、今度こそビーストアイズには消えて貰うわ!」

 

LP 3000→2000

 

「いいや、そう行かせてもらう!俺は墓地から『ブレイクスルー・スキル』を発動!このカードを除外することでテスカトリポカの効果を無効にする!」

 

それを阻止する為に発動したテスカトリポカの効果、でも遊矢もそれを見越していたのか、恐らく手札抹殺の際に落ちたであろうブレイクスルー・スキルの効果を発動し、テスカトリポカの効果を無効にしようとする。

 

「これでもう背徳の堕天使は使えない!」

 

ん?何を言って、ああ、そういえばさっき言っていなかったわね。

ターン開始時にセットカードを『事実上3枚』と言っていた、つまりこのターンに使えるのはセットしていた背徳の堕天使1枚と、イシュタムとテスカトリポカの効果による墓地の2枚だけ、そう捉えたのかも知れない。

 

「ふ、ふふふ、フフフフフ…

何時このターン、私は背徳の堕天使を3枚まで使えると言ったかしら?とんだロマンチストねぇ!」

「なんだって!?」

「更にチェーンして、1000LPを払ってアムドゥシアスの効果発動!アムドゥシアスもフィールドにいる時、イシュタム達と同じ効果を持っているわ!」

 

Yuzu LP 2000→1000

 

「なっ!?」

「適用するのは勿論、墓地にある背徳の堕天使!行くわよ、アムドゥシアス!さあビーストアイズ、今度こそ無様に散りなさい!騎英の手綱(ベルレフォーン)!」

 

私を背に乗せ、上空へと羽ばたいたアムドゥシアスの角から放たれた強大なビーム、それはビーストアイズの全身を呑み込み、消失させた。

 

「ビーストアイズ!?

…流石だよ、柚子。今のは決めたと思ったんだけどな」

「物心ついた時から遊士の指導を受けて来た私を甘く見ないで。遊士は小学生の頃から、こっちの世界では『完全決闘者(パーフェクト・デュエリスト)』の異名で知られているんだから」

 

今ではランサーズの最高指揮官として、一個小隊並の人員を抱えたランサーズを束ねる遊士、ランサーズメンバーの中では年若い部類に入る遊士(人生経験は断トツでトップだけど)がそんな立場となれるのは、その指揮官としての人柄と、幼い頃から活躍して来た実績があってこそだと思う。

そんな遊士の指導を受けた身として、例え相手が平行世界における同一人物だとしても、そう簡単に負ける訳には行かないわ!

 

「ハハハ、そりゃ俺やこっちの柚子と大違いな訳だ。

…けど、俺だってそう簡単にやられはしない!マジックカード『マジシャンズ・カード』発動!このカードは手札がこのカード1枚だけで、自分フィールドにカードが存在しない場合、相手フィールドのカードの数だけデッキからカードをドローする!」

 

マジシャンズ・カード(アニメオリジナルカード)

通常魔法

1:手札がこのカード1枚で、自分フィールドにカードが存在しない場合に発動出来る。相手フィールドのカードの数だけ、自分はデッキからドローする。その後、手札を相手に見せる。このターン終了時、自分フィールドの全てのカードを除外する。

 

勝利の為の一手だったビーストアイズが除去されて尚、勝ちへの執念を失わない遊矢が発動したのは、何だか色んな意味で無茶苦茶な手札補充カード。

えーと、確か同じ様な条件で『E・HEROバブルマン』が手札を2枚ドロー出来たわよね、それを考えると、単純に引ける手札が増えがちになる代わりに私に見せなきゃならず、フィールドに出しちゃうとターン終了時に除外、と、何だかややこしいわね。

まあでも、以前私達の世界に来た大輔が使っていた『エクシーズ・トレジャー』と比べたらマシかも、あれは流石に許されない。

 

「ドローッ!!!そして、ドローしたカードを相手に公開する。俺が引いたカードはこの4枚だ!」

 

遊矢が引いたカード

『EMリザードロー』

『EMギタートル』

『EMモンキーボード』

『EMドクロバット・ジョーカー』

 

モンキーボード!?何故モンキーボードが此処に!?まさか自力で、ってそれは隼のネタじゃない。

さっき遊士から聞いたけど、この世界では各次元独自の召喚方法に関するカードは禁止制限に殆ど掛かっていないらしいじゃない、本当に頭おかしいわね。

もし遊士がこの世界に転生していたとしたら『EMEm』を使ってアカデミアを1人で壊滅させちゃうんじゃないかしら…

 

「俺はスケール6のEMギタートルと、スケール6のリザードローでペンデュラムスケールをセッティング!」

 

Yuya

ペンデュラムスケール(青):6(EMギタートル)

ペンデュラムスケール(赤):6(EMリザードロー)

 

あ、このパターンはアレね、遊士もEMデッキでやる大量展開パターン。

今はペンデュラム召喚出来ないし、手札も少ないから後に向けての整備って所かしら。

 

「この瞬間、ギタートルのペンデュラム効果!もう片方のペンデュラムゾーンにカードが置かれた場合、デッキからカードを1枚ドローする!更にリザードローのペンデュラム効果!デッキからカードをドローし、このカードをデッキに戻してシャッフルする!」

 

あら、リザードローは破壊じゃ無くてデッキバウンスなのね、エクストラデッキが肥えないけど大丈夫なの?

 

「更にEMドクロバット・ジョーカーを召喚!」

 

EMドクロバット・ジョーカー(制限カード(こちらの世界))

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 4

攻撃力 1800

 

あ、そういえばまだ遊矢は通常召喚していなかったわ。

 

「その効果によってデッキからEMリザードローを手札に加え、そのままペンデュラムスケールにセッティング!」

 

Yuya

ペンデュラムスケール(赤):6(EMリザードロー)

 

ん?リザードローをセットした?もしかして、ターン1回制限が無いのかしら?

だとしたらデッキバウンスされるのも納得ね。

 

「再び、

 

ギタートルとリザードローの効果により2枚ドロー!」

 

え、えぇぇぇぇぇ!?ギタートルの効果に制限は無いの!?一体全体どれだけぶっ壊れているのよ、この世界は…!

 

「そして俺はスケール1のEMモンキーボードをセッティング!」

 

Yuya

ペンデュラムスケール(赤):1(EMモンキーボード)

 

「ギタートルの効果によりカードをドローし、モンキーボードのペンデュラム効果発動!1ターンに1度、デッキからレベル4以下のEMモンスター1体を手札に加える!俺が手札に加えるのはEMリザードロー!」

 

これで手札は6枚、次のターンで色々出来そうね…

 

「更にマジックカード『マジカル・ペンデュラム・ボックス』を発動!まずデッキからカードを2枚ドローする!その後、ドローしたカードをお互いに確認し、確認したカードがペンデュラムモンスターだった場合そのカードを手札に加え、それ以外の場合は墓地に送る!」

 

マジカル・ペンデュラム・ボックス(アニメオリジナルカード)

通常魔法

1:自分はデッキからカードを2枚ドローし、お互いに確認する。確認したカードがペンデュラムモンスターだった場合、そのカードを手札に加える。違った場合、そのカードを墓地へ送る。

 

此処に来てまた手札増強カード、もう笑うしか無いわね。

さて、遊矢が引いたカードは…

 

「俺がドローしたのは『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』と『埋没神の救済』!ペンデュラムモンスターであるオッドアイズを手札に加え、埋没神の救済を墓地へと送る。俺はこれでターンエンド!この瞬間、マジシャンズ・カードのデメリットにより俺のフィールドのカードは全て除外される」

 

Yuya

LP 2000

手札 6(その内、『EMリザードロー』、『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』が1枚ずつ)

モンスター なし

魔法・罠カード なし

 

結構長かった遊矢のターンもこれで終わり、一応フィールドはすっからかんになったけど、手札は6枚、まだ油断は出来ないわね。

寧ろこの状況であれば『冥府の使者ゴーズ』や『バトルフェーダー』等が飛んでくる可能性がある、殊にゴーズはオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンとランク7エクシーズ召喚を行えるし。

さあ、デュエルは此処からよ!



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Ex19話_並行世界での2回戦!闇堕ちした柚子VS並行世界の遊矢その3

「私のターン!ドロー!」

 

さて此処は、ルシフェルの効果を最大限発揮させる為にも盤面を整えた方が良いわね。

 

「まずは今引いた魔法『堕天使の戒壇』発動!」

 

堕天使の戒壇

通常魔法

『堕天使の戒壇』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:自分の墓地の『堕天使』モンスター1体を選んで守備表示で特殊召喚する。

 

「なっ!?また堕天使の戒壇!?」

 

私がまるで望み通りのカードを引き当てたという展開に、遊矢は驚きの声を上げる。

でも遊矢、遊士のドロー運は私なんかの比じゃ無いわよ。

 

「私は墓地から『堕天使マスティマ』を守備表示で蘇生するわ!一応言って置くけど、マスティマもフィールドにいる時、イシュタム達と同じ効果を持っているわ!」

 

堕天使マスティマ

効果モンスター

闇属性

天使族

レベル 7

守備力 2600

 

私が蘇生したのは、手札抹殺で墓地へ送られた最後の1枚で、その名はヘブライ語で『敵意』や『憎悪』を意味し、人間を害したり誘惑したりする事で神への忠誠心を試したと言われる堕天使、マスティマ。

これで私のフィールドには、5体の堕天使が勢ぞろいした。

 

「次にルシフェルの効果発動!今フィールドにはルシフェルを含めて5体の堕天使が存在する、よってデッキの上から5枚を墓地へ送って…」

 

あ、

 

「…墓地へ送られたのは『堕天使の追放』2枚と『背徳の堕天使』2枚、そして『魅惑の堕天使』、全てが堕天使カード!よってLPを2500回復する!」

「全部堕天使?」

 

Yuzu LP 1000→3500

 

墓地へ送られたカード全部が堕天使カードなのは良かったとしても、その内の1枚が堕天使版『洗脳―ブレインコントロール』である『魅惑の堕天使』だったのはちょっと不味かったわね。

今の私のモンスターゾーンには空きが無い、これじゃあコストを払わない、いや払えない以上、墓地からの発動は出来ない。

まあ良いわ、これは結果論、そうなったらそうなったで仕方ないわ。

さて、さっき背徳の堕天使をバンバン使った影響でLPが心許無くなって来たわ、ライフゲイン系のアクションマジックがあれば良いけど…

と、制限時間の事もあるし、そろそろ動かないと。

 

「続いてイシュタムを攻撃表示に変更し、バトルフェイズに入るわ!

イシュタムでダイレクトアタック!」

 

これで例えゴーズが出てこようと、後に控えるテスカトリポカとルシフェルによって後続を断てる!

 

「その瞬間、墓地の『埋没神の救済』を発動!自分の墓地からこのカードを含む5枚のカードを除外し、バトルフェイズを終了させる!」

「なっ!?」

 

ま、まさかのパターン!?

バトルフェーダーの存在もあって、バトルフェイズを終了させるという選択肢も考えていない訳じゃ無かったけど、まさかのそっちだったとはね…

良いわ、此処は通す。

 

「なら私はこのままターンエンドよ!」

 

Yuzu

LP 3500

手札 0

モンスター 堕天使イシュタム(攻撃表示)

      堕天使テスカトリポカ(攻撃表示)

      堕天使ルシフェル(攻撃表示)

      堕天使アムドゥシアス(守備表示)

      堕天使マスティマ(守備表示)

魔法・罠カード なし

 

今フィールドにいる5体の堕天使モンスター、その全てが遊矢のエースの一角であろうオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの攻撃力2500を(現在の表示形式で)突破している、仮にそれを突破して来るモンスターが出て来るなら、背徳の堕天使で狙い撃てば良い。

さあ、此処からが勝負よ、遊矢!

 

「俺のターン、ドロー!

俺は『トラップ・ブースター』を発動!手札を1枚捨て、このターン俺は1枚だけトラップカードを手札から発動出来る!」

 

トラップ・ブースター(アニメオリジナルカード)

速攻魔法

手札を1枚捨てて発動する。このターン、自分は手札から罠カード1枚を発動する事が出来る。

 

手札3枚を使って罠カード1枚を即座に使う、普通なら同じ様な効果を持ち、手札消費を1枚少なく出来る『王家の神殿』か、同じ手札消費でもレベル4モンスター1体をフィールドに用意出来る(というかする必要がある)『バブルイリュージョン』だけど、墓地に背徳の堕天使がある以上はこれがベストかもね。

それは良いとして、果たしてどんな罠カードを使って来るのか…

 

「俺は代償の宝札を墓地に送って効果発動!更に代償の宝札の効果で2枚ドロー!」

 

と思っていたら、デメリットを最小限に抑えて来た!?

代償の宝札って零児さんもさっきのデュエルでレインボー・ライフを発動する際にコストとしたカード、それでデメリットをメリットに変えて来たって訳ね…

さっき私が堕天使の戒壇を引いた事に驚いていたけど、貴方達の引きも大概じゃない。

 

「よっと、アクションカードゲット!このアクションカードをコストに『ペンデュラム・コール』を発動!」

 

ペンデュラム・コール(制限カード(こちらの世界))

通常魔法

『ペンデュラム・コール』は1ターンに1枚しか発動出来ず、『魔術師』ペンデュラムモンスターのペンデュラム効果を発動したターンには発動出来ない。

1:手札を1枚捨てて発動出来る。カード名が異なる『魔術師』ペンデュラムモンスター2体をデッキから手札に加える。このカードの発動後、次の相手ターン終了時まで自分のペンデュラムゾーンの『魔術師』カードは効果では破壊されない。

 

「デッキからカード名が異なる魔術師ペンデュラムモンスター2体を手札に加える!俺が手札に加えるのは『星読みの魔術師』と『時読みの魔術師』!」

 

ペンデュラム・コール、遊士も愛用している大量サーチカードで、おまけにペンデュラムゾーンにある魔術師カードに効果破壊耐性も付ける制限カードだったわね。

つまりもし遊矢がこのターンにペンデュラム召喚を仕掛けようと、私にそれを阻止する術は無い。

 

「俺はスケール1の『星読みの魔術師』と、スケール8の『時読みの魔術師』でペンデュラムスケールをセッティング!」

 

Yuya

ペンデュラムスケール(青):1(星読みの魔術師)

ペンデュラムスケール(赤):8(時読みの魔術師)

 

「揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!現れろ、俺のモンスター達!レベル3、『EM(エンタメイト)リザードロー』!『EMファイア・マフライオ』!『EMウィム・ウィッチ』!そしてレベル7!美しくも雄々しく輝く二色の眼、『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!」

 

EMリザードロー

ペンデュラム・効果モンスター

地属性

爬虫類族

レベル 3

攻撃力 1200

 

EMファイア・マフライオ

ペンデュラム・効果モンスター

炎属性

獣族

レベル 3

攻撃力 800

 

EMウィム・ウィッチ

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 3

攻撃力 800

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2500

 

だけど、ペンデュラム召喚したモンスターなら話は別よ!

今はトラップ・ブースターの効果適用中、もしかしたら手札にあるのは『神の通告』等のカウンター罠かも知れないけど、それならそれでモンスターの空きが出来る!

 

「そのペンデュラム召喚成功時、ライフポイントを1000払って、アムドゥシアスの効果発動!適用するのは勿論、背徳の堕天使よ!」

 

Yuzu LP 3500→2500

 

「その瞬間、手札からカウンタートラップ『神の通告』発動!ライフを1500払い、アムドゥシアスの効果を無効にする!」

 

神の通告

カウンター罠

1:1500LPを払って以下の効果を発動出来る。

●モンスターの効果が発動した時に発動出来る。その発動を無効にし破壊する。

●自分または相手がモンスターを特殊召喚する際に発動出来る。その特殊召喚を無効にし、そのモンスターを破壊する。

 

Yuya LP 2000→500

 

よし、予想通り神の通告だったわ!

これで私のモンスターゾーンに空きが出来て、墓地にある魅惑の堕天使の効果を適用する事が出来る!

…ん?何か遊矢が今しがたペンデュラム召喚で並べたモンスター達を見て何か複雑そうな表情をしているわね。

一体何を躊躇しているのかしら?

 

「本当に使うとは思ってなかったけど…赤馬零児、ありがたく使わせて貰う!」

 

まさか、さっき零児さんが渡したカード、今の状況からしてランク3エクシーズモンスターを?

 

「俺はレベル3のリザードロー、ファイア・マフライオ、ウィム・ウィッチの3体でオーバーレイ!3体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!冬の眠りから目覚め、凱旋の歌を高らかに歌え!エクシーズ召喚!『No.3』!現れよ、『地獄蝉王ローカスト・キング』!」

 

No.3地獄蝉王ローカスト・キング

エクシーズ・効果モンスター

風属性

昆虫族

ランク 3

守備力 2500

ORU 3

 

「は…?アイエエエエ!?ローカスト・キング!?ローカスト・キングナンデ!?いや、バアル・ゼブルがいるから『偽物』のNo.2~No.4もいるかなとは思っていたけど、本当に出した!というか零児さん、何でまた遊矢に?風属性でランク3ですからユーゴやユートの方が、相性が良いと思いますが…」

「ユーゴはエクシーズを使わず、ユートも元々別の強力なNo.を所持している。ならば、様々なレベルのモンスターを操る榊遊矢にも数枚渡しておくべきだと思ってな」

 

な、何か外野で遊士がNRS(ニンジャリアリティショック)を引き起こしているわね(汗

遊矢が言っていた『偽物』のNo.、バアル・ゼブルの例があるからもう驚かないと思っていたけど、あの、名前の通り蝉みたいなNo.モンスターに因縁でもあるのかしら?

まあ良いわ、そのモンスター、貰い受けるわ!

 

「そのエクシーズ召喚成功時、LPを1000払い、イシュタムの効果発動!適用するのは墓地にある『魅惑の堕天使』!これはターン1回発動制限が付き、発動コストが手札か自分フィールド上の『堕天使』モンスターと化し、罠カードとなった対象を取らない『洗脳―ブレインコントロール』!」

 

Yuzu LP 2500→1500

 

「俺が何の対処手段も無しにこのカードを出したと思ったら大間違いだ!ローカスト・キングの効果発動!相手フィールド上に存在する効果モンスターの効果が発動した時、このカードのオーバーレイ・ユニットを1つ使うことで、そのモンスターの効果を永続的に無効にし、このカードの守備力を500ポイントアップさせる!」

 

No.3地獄蝉王ローカスト・キング ORU 3→2

 

モンスター効果を永続的に無効にするフリーチェーン効果、これは厄介ね…!

でも遊矢は言っていなかったけど、此処まで厄介ならターン1制限が付いている筈、なら…!

 

「後続がいる事、忘れないで欲しいわね!それにチェーンして、LPを1000払い、マスティマの効果発動!こっちも魅惑の堕天使を適用するわ!」

 

Yuzu LP 1500→500

 

「柚子、お前の言葉を借りさせて貰うぜ。何時このターン、俺が『ローカスト・キングの効果は1ターンに1度だけ使える』って言ったんだ?」

 

ゑ?

 

「ローカスト・キングのオーバーレイ・ユニットをもう1つ使い、効果発動!マスティマの効果を無効にする!メモリーサッカー!」

 

No.3地獄蝉王ローカスト・キング ORU 2→1

                 防御力 2500→3000→3500

 

う、嘘でしょ!?あんな強力な効果に、ターン1回制限が付いていないなんて…!

と嘆いていてもこの不味い状況に変わりは無い、LP的にテスカトリポカの効果を使う事は出来ない、というか使った所でまたローカスト・キングに吸い取られるだけ、一応ステータス的にはまだどの堕天使も、オッドアイズの攻撃力と同じか上回っているけど、これはアクションデュエル、アクションマジックを使われる可能性もあるし、仮にそうだとしても今のオッドアイズはホープレイ・ヴィクトリー並のロック効果を持っているからノーアクションで返す事は出来ない、となるとバトルフェイズが始まるまでにライフゲイン系のアクションマジックを…!

 

「バトルだ!オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンで堕天使ルシフェルに攻撃!この瞬間、アクションマジック『エクストリーム・ソード』を発動!」

 

エクストリーム・ソード

アクションマジック

1:フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターの攻撃力はバトルフェイズ中のみ1000アップする。

 

ま、間に合わな、

 

「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの攻撃力を1000ポイントアップする!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力 2500→3500 VS 堕天使ルシフェル 攻撃力 3000

 

「行け、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!その双色の眼で捉えた全てを焼き払え!螺旋のストライクバースト!」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

Yuzu LP 500→-500 LOSE

 

WINNER Yuya

 

------------

 

Side 遊士

 

「ねぇ遊士、私ってそんなにストロングでガサツな女かな…?」

「な訳あるか。俺は柚子の可愛い所も、物事をしっかりと捉え、受け止められる事も知っているし、そんな柚子を、ありのままの柚子を俺は好きになったんだ。だから自信を持て」

 

デュエルは遊矢の勝利で決着、となったのだが、其処で遊矢から色々言われた事にショックを受けたのか、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの攻撃を受けて吹っ飛ばされた先へと急いで向かった俺に抱き付いたまま離れない柚子。

これはこれで可愛いなと思うが、遊矢の奴、柚子の事をボロクソに言いやがって、覚えていろよ?

と、その遊矢は何かローカスト・キングのカードを、複雑そうな表情で見ているな。

まあ確かに相手モンスターの効果を永続的に、しかもオーバーレイ・ユニットさえあれば幾らでも無効に出来るのは強すぎるし、演出面でも、そもそもの出自からしてもエンタメデュエルには向いていないと思うのは仕方ないのかも知れないな。

だがエンタメデュエルの形は1つじゃない、俺の『完全決闘』の様な一見してエンタメとは到底言えないパーミッションデッキも、使い様によっては人を魅了し、笑顔にさせる事が出来るんだ(実際これで、一行や当麻、美琴に刃、何よりエレンが遊勝塾の門を叩いてくれたし)。

さて、今度は俺の番だな!

 

「柚子、そろそろ行って来るよ」

「うん…

ごめんね、いきなり抱き付いちゃって」

「良いって事よ。元はと言えば柚子の魅力に気付いちゃいない遊矢が悪いんだし、柚子の可愛い一面を見られたって事で」

「え、か、可愛いって、ば、バカ…」

 

ははは、照れる柚子も可愛いな。

そんな柚子の姿にほっこりしつつ、デュエルフィールドへと向かう。

なんか傍らでユーゴが殺気飛ばしているけど、こっちのユーゴも、幼馴染のリンがアカデミアにさらわれているんだったっけ?

そしたら悪い事したな、ちょっと自重するか。

 

「さて、俺達の出番だね」

 

…ん?俺、達?

まさかファントムにも、俺にとってのユベルやアストラルの様な存在が…?

まあ良いか、それはデュエルして明らかになるかも知れないし。

 

「さあ始めようか、ファントム!」

「うん。俺達のエンタメを、アクションデュエルを始めよう!」

「アクションフィールド、オン!フィールド魔法『水晶渓谷(ザ・マアキュリー)』発動!」

 

俺達のデュエルの舞台となるアクションフィールド、それは水晶で出来た渓谷だった。

その水晶の透明度の高さから、向こう側のアクションカードも見える、けど実際にゲットするとなると困難を極めるだろうな。

 

「戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!」

「モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!」

「「フィールド内を駆け巡る!」」

「「見よ!これぞデュエルの最強進化系!アクショーン…」」

「「デュエル!」」



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Ex20話_並行世界での3回戦!4の人格を持ちし者VS5の人生を歩みし者その1

先攻 Phantom LP 4000 VS 後攻 Yushi LP 4000

 

「先攻は俺がもらうよ!

まずはアシスタントに出て来て貰おうかな?俺は手札から『EM(エンタメイト)ユニ』を召喚!」

 

EMユニ

効果モンスター

光属性

獣戦士族

レベル 4

攻撃力 800

 

先攻となったファントムが最初に呼び出したのは、ユニコーンを擬人化させた様な姿の金髪の女の子、EMユニ。

 

「ユニの効果!手札からEMを特殊召喚する!俺が特殊召喚するカードは『EMペンデュラム・マジシャン』!」

 

EMペンデュラム・マジシャン(制限カード(こちらの世界))

ペンデュラム・効果モンスター

地属性

魔法使い族

レベル 4

攻撃力 1500

 

そのユニの効果で登場したのは、俺のいた世界ではその爆アド振りから制限カードとなったペンデュラム・マジシャン。

どうやらユニの効果も変わっているみたいだな、俺の持っているそれは、召喚出来るEMのレベルが3以下に制限されているから。

その縛り(直ぐにエクシーズ召喚出来ない等)から俺は使おうと思わなかったが…

それにしてもこれは良いコンボだ。

 

「ペンデュラム・マジシャンの効果を発動するよ!このカードが特殊召喚に成功した場合、自分フィールド上のカードを2枚まで破壊し、破壊した数だけ同名モンスター以外のEMモンスターを手札に加える事が出来る!俺は2体のEMを破壊し効果発動!デッキから『EMモンキーボード』と『EMリザードロー』を手札に加えるよ!」

 

これで通常召喚権のみで手札の2枚を好きなEMに変えただけでは無く、ペンデュラムモンスターであるペンデュラム・マジシャンはエクストラデッキへ、ユニは自らのもう1つの効果を発揮出来る墓地へと送られた。

俺の世界でのユニもレベル制限さえ無かったら、或いはレベル1つ分でも制限が緩かったらデッキに入れるんだがな…

 

「Here we go!!It’s a show time!!ペンデュラムスケールをセッティング!俺はレフトペンデュラムゾーンに『EMモンキーボード』をセット!そしてライトペンデュラムゾーンに『EMリザードロー』をセッティング!」

 

Phantom

ペンデュラムスケール(青):1(EMモンキーボード)

ペンデュラムスケール(赤):6(EMリザードロー)

 

そんな俺を他所に、ファントムは着々とフィールドを整えて行く。

ファントムの背後に、ペンデュラムゾーンにカードがセットされた事を示す青い光の柱が出来、其処にモンキーボードとリザードローが浮かんでいくが、その内のリザードローが即座に消え失せた。

 

「リザードローのペンデュラム効果を発動するよ!デッキからカードをドローし、このカードをデッキに戻す。

更にモンキーボードのペンデュラム効果だ!レベル4以下のEM、リザードローを再び手札に加え、ペンデュラムゾーンにセッティング!再びリザードローの効果でドローだ!」

 

しかしこっちでのリザードローはデッキバウンスによる手札交換か、まあこっちはエクストラデッキを肥やせる代わりに名称指定のターン1回制限が付いているから、どっこいどっこいと言った感じか?

 

「行くよ!俺はスケール8の『オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン』をペンデュラムスケールにセッティング!」

 

Phantom

ペンデュラムスケール(赤):8(オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン)

 

これで、レベル2から7のペンデュラムモンスターをペンデュラム召喚出来る様になった、来るか…!

 

「揺れろ、運命の振り子!迫り来る時を刻み、未来と過去を行き交え!ペンデュラム召喚!現れよ、俺のモンスター達!レベル4、EMペンデュラム・マジシャン!『EMハンサムライガー』!レベル7、『オッドアイズ・ドラゴン』!そして主役のご登場、『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』!」

 

EMハンサムライガー

効果モンスター

地属性

獣戦士族

レベル 4

攻撃力 1800

 

オッドアイズ・ドラゴン

効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2500

 

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2500

 

俺の予想通りペンデュラム召喚して来たファントム、それによって、先程自分の効果でエクストラデッキへ送られていたペンデュラム・マジシャンと、ハンサムで侍でライオンを擬人化させた様な姿のハンサムライガーに、俺のエースカードの一角であるオッドアイズ2体が登場した。

 

「俺はレベル4のペンデュラム・マジシャンとハンサムライガー、レベル7のオッドアイズ2体でそれぞれオーバーレイ!ダブル・エクシーズ召喚!現れろ、交響魔人マエストローク!続け、『オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン』!」

 

交響魔人マエストローク

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

悪魔族

ランク 4

守備力 2300

ORU 2

 

オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン

エクシーズ・効果モンスター

水属性

ドラゴン族

ランク 7

守備力 2500

ORU 2

 

だが流石にそのまま終わりではない様で、其処から2連続のエクシーズ召喚、それによって俺のデッキでも重要な存在であるマエストロークとアブソリュート・ドラゴンが登場した。

 

「更にマジックカード『エクシーズ・ギフト』を発動!フィールドにエクシーズモンスターが2体存在する時、デッキからカードを2枚ドローする!」

 

エクシーズ・ギフト(効果調整)

通常魔法

フィールド上にモンスターエクシーズが2体以上存在する場合に発動出来る。デッキからカードを2枚ドローする。

 

って、アニメ版のエクシーズ・ギフトかい。

まあZEXALの世界ではこれ以上にチートな『エクシーズ・トレジャー』があるからまだそんなに驚かないが…

 

「カードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

Phantom

LP 4000

手札 0

モンスター 交響魔人マエストローク(守備表示)

      オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン(守備表示)

魔法・罠カード セット×2

 

さて、今度は俺の番だ!

「俺のターン!ドロー!

ファントム、初手という状況を鑑みれば、実に素晴らしい展開です。相手の突破を全力で食い止めると言わんばかりのモンスター達に、それをサポートするであろうセットカード、正に理想的です」

「でもそれは普通のデュエリストならの話、だよね?」

「ええ。それに貴方はデュエル前の、俺の話を聞き流していましたね?それを後悔させてあげましょう!

まずは手札を1枚捨て魔法『ペンデュラム・コール』発動!」

 

ペンデュラム・コール(制限カード(こちらの世界))

通常魔法

『ペンデュラム・コール』は1ターンに1枚しか発動出来ず、『魔術師』ペンデュラムモンスターのペンデュラム効果を発動したターンには発動出来ない。

1:手札を1枚捨てて発動出来る。カード名が異なる『魔術師』ペンデュラムモンスター2体をデッキから手札に加える。このカードの発動後、次の相手ターン終了時まで自分のペンデュラムゾーンの『魔術師』カードは効果では破壊されない。

 

言った筈だ、このデュエルに『貴方にとっても馴染み深いと言って良いであろうデッキ』で臨む、と。

それに柚子が説明した時点で、こっちの世界ではマルチデッカーが珍しくない可能性に辿り着ける筈だ。

それを失念して2体以上のモンスターを展開したとはな、今更険しい顔したって遅いぜ!

 

「俺はデッキから『相克の魔術師』と『貴竜の魔術師』を手札に加えます!

次に儀式魔法『オッドアイズ・アドベント』発動!」

 

オッドアイズ・アドベント

儀式魔法

ドラゴン族の儀式モンスターの降臨に必要。『オッドアイズ・アドベント』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:レベルの合計が儀式召喚するモンスターのレベル以上になるように、自分の手札・フィールドのペンデュラムモンスターをリリースし、自分の手札・墓地からドラゴン族の儀式モンスター1体を儀式召喚する。相手フィールドにモンスターが2体以上存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、自分のエクストラデッキの『オッドアイズ』モンスターもリリースの代わりに墓地へ送る事が出来る。

 

「オッドアイズの儀式…

そんなカードもあるんだ」

 

え?知らないのかよ。

だったら教えてやる、このカードの真の恐ろしさを!

 

「この儀式魔法は、自分の手札かフィールドにいるペンデュラムモンスターを、レベル合計が降臨させたいドラゴン族儀式モンスターのレベル以上になる様にリリースする事で、

 

自分の手札、若しくは墓地のドラゴン族儀式モンスターを降臨させます!更にその際、

 

相手フィールドに2体以上モンスターが存在し、自分フィールドにモンスターがいなければ、エクストラデッキのオッドアイズモンスターを墓地へ送る事で、リリースの代わりに使えます!」

「成る程ね。遊矢が『融合』を書き換えて生み出した『オッドアイズ・フュージョン』の儀式版か」

「俺はエクストラデッキの『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』を墓地へ送る事で、先程墓地へ送った『オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン』を降臨させます!2色の眼の龍よ!その鈍色の輝きを解き放ち、フィールドを圧殺せよ!儀式召喚!『オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン』!」

 

オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン

儀式・効果モンスター

地属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2800

 

「…やっぱり、デュエルは楽しい。

何処までも未知が残されてるんだからね」

 

俺のフィールドに登場したグラビティ・ドラゴンの姿に、楽し気な表情を浮かべるファントム。

まあその言葉には共感するが、コイツの力はちょっと笑えないぞ?

 

「儀式召喚したグラビティ・ドラゴンの効果発動!

ファントム、貴方のフィールドにある魔法・罠カードを全て手札に回収して貰います!尚、この効果に対して貴方はあらゆるカードの効果を発動出来ません!

あ、あと足元を安定させる様な態勢を取って貰っても良いですか?怪我をしたくなければ、ね」

「足元?

…そんなの気にする必要は無いよ!」

 

そう言いつつファントムは何処からともなく取り出した巨大な紙飛行機に飛び乗り、それをアブソリュート・ドラゴンによって空中へと打ち上げさせ、アクションカードを手にした。

…後で後悔するなよ?訴えた所で「予め警告はしました」の一点張りと柚子の証言で握りつぶすぞ。

 

「そうですか。では、やれ!グラビティ・ドラゴン!重力の渦を巻き起こし、俺の話を聞かない不良に重力のゲンコツを叩きこめ!」

「おーっと、これは中々刺激的だね。俺も結構キツイよ」

 

俺の合図と共にその力を解放したグラビティ・ドラゴン、それによって発生した4Gもの重力はフィールド内にある水晶、その中でも樹木となった物など比較的耐久力の低い物に皹という悲鳴を上げさせて透明度を奪い、空へと打ちあげられていたファントムを、乗っていた紙飛行機ごと急降下させる。

俺自身もその重力によって態勢を崩しそうになるが、予め足を広げて構えていたので事無きを得た。

まあファントムも、地面に近づいて来た所でアブソリュート・ドラゴンが生み出した氷の柱に乗った事でこちらも事無きを得た、その様子からして大丈夫そうだな。

 

「続いて『EMドクロバット・ジョーカー』を召喚!」

 

EMドクロバット・ジョーカー(制限カード(こちらの世界))

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 4

攻撃力 1800

 

「召喚したドクロバット・ジョーカーの効果発動!

デッキから『オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン』を手札に加えます!」

「ペルソナ・ドラゴン…!」

 

さて、下準備はこれで最後かな。

 

「更にフィールド魔法『天空の虹彩』発動!」

 

天空の虹彩

フィールド魔法

『天空の虹彩』の2の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。

1:このカードがフィールドゾーンに存在する限り、自分のペンデュラムゾーンの、『魔術師』カード、『EM』カード、『オッドアイズ』カードは相手の効果の対象にならない。

2:このカード以外の自分フィールドの表側表示のカード1枚を対象として発動出来る。そのカードを破壊し、デッキから『オッドアイズ』カード1枚を手札に加える。

 

俺が発動した天空の虹彩、それによってこのフィールドの上空に虹が掛かった。

水晶のフィールドに掛かる虹、何とも神秘的な光景だが、効果は正直えげつないぞ。

 

「天空の虹彩の効果発動!

ドクロバット・ジョーカーを破壊し、デッキから『オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン』を手札に加えます!」

「スケール1と8…

レベル2から7が同時に召喚可能になるわけだね」

「ええ!俺はスケール1の『オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン』と、スケール8の『オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン』を、ペンデュラムスケールにセッティング!尚、天空の虹彩の1つ目の効果により、この2枚はファントム、貴方の効果対象に取られません!」

 

Yushi

ペンデュラムスケール(青):1(オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン)

ペンデュラムスケール(赤):8(オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン)

 

これでツインツイスターが飛んでこようが、サイクロンが飛んでこようが怖くない!

 

「これでレベル2から7のモンスターが同時に特殊召喚可能!

揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!出でよ、我が僕のモンスター達よ!レベル3、激しく熱かりし魂を秘めたる魔術師『貴竜の魔術師』!レベル4、華麗なる軽業師、ドクロバット・ジョーカー!そしてレベル7、矛盾を捻じ曲げる魔術師『相克の魔術師』!」

 

貴竜の魔術師

ペンデュラム・効果モンスター/チューナー

火属性

魔法使い族

レベル 3

守備力 1400

 

相克の魔術師

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 7

攻撃力 2500

 

ペンデュラム召喚によって一気に展開された、俺のフィールド。

よし、此処からが本番だ!

 

「俺は、レベル4のドクロバット・ジョーカーに、レベル3の貴竜の魔術師をチューニング!2色の眼の龍よ!その赤き輝きを解き放ち、味方に活力を、敵に絶望を与えよ!ペンデュラムシンクロ、レベル7!『オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン』!」

 

オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン

シンクロ・効果モンスター

炎属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2500

 

「シンクロのオッドアイズ…!」

 

シンクロ召喚の演出と共に登場したメテオバースト・ドラゴンの姿に、そう呟いたファントム。

さっきのオッドアイズ・アドベントといいコイツといい、どうやら俺達の世界にあってこっちの世界には無いオッドアイズもいる様だな。

 

「シンクロ召喚したメテオバースト・ドラゴンの効果発動!

ペンデュラムゾーンにセットしたペルソナ・ドラゴンを守備表示で特殊召喚!

…さて、グラビティ、アクションカードをお願い」

 

オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 5

守備力 2400

 

なんかコイツ、何処となくエ○ァンゲリオンに登場する使徒にいそうな顔付きをしているな。

と、メテオバースト・ドラゴンの効果で出したペルソナ・ドラゴンに対してそんな感想を抱きつつ、グラビティ・ドラゴンに頼んで、その重力を操る力を用いて指向性の引力を作り出させ、上空にあったアクションカードを此方に飛ばして貰った。

それを難なくキャッチしつつ、俺は手札の最後の1枚である、このカードを発動する…!

 

「俺は今手にしたアクションマジック『回避』を捨てて、この速攻魔法を発動します!」

 

そう言いつつ、たった今手にした『回避』を、デュエルディスクの墓地にあたる部分に投げ捨て、

 

「絶対無敵!」

 

そう言いながら、左手に持っていた手札最後の1枚を掴み、

 

「究極の力を解き放て!」

 

そう言うと共に、掴んだ手札を見せ付ける様に掲げ、

 

「解放しろ!」

 

そう言い、そのカードをデュエルディスクに叩きつける様に発動した…!

 

「『超融合』!」

 

超融合(制限カード(こちらの世界))

速攻魔法

このカードの発動に対して魔法・罠・モンスターの効果は発動出来ない。

1:手札を1枚捨てて発動出来る。自分・相手フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから特殊召喚する。

 

「超融合?

…聞いたことのない融合カードだね」

 

これも無さそうだな。

なら聞くが良い、この超融合の、制限カードに指定される程の恐ろしさを…!

 

「説明しましょう!この超融合は、お互いのフィールドにいるモンスターを融合素材に融合召喚を行います!更にそれに対して、誰も!あらゆる!カードの効果を発動出来ません!例えそれが、神の名を冠したカウンター罠であろうとも!正に融合を超えた融合、超融合!」

「凄いカードだね。デッキや相手の墓地で融合するってのは聞いたことあるけど、相手フィールド上のカードで融合か。成る程ね、便利なカードだ」

「もうお分かりでしょう?俺は、ファントムのフィールドにいるアブソリュート・ドラゴンと、俺のフィールドにいる相克の魔術師を融合!2色の眼の龍よ!その碧の輝きを解き放ち、荒ぶる風で敵を惑わせ!ペンデュラム融合!『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』!」

 

オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン

融合・効果モンスター

風属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2500

 

そう、その便利さ故に、HEROやシャドールでは何故か除去手段として3積みされた挙げ句、今は禁止カードとなった『旧神ノーデン』が現役だった頃はコレとの『エクシーズとシンクロ絶対殺すセット』として色んなデッキに出張していたっけな。

それはその汎用性ゆえに制限カードに指定された後も、某TUEEEEな動画で相手フィールドにいるエクシーズモンスター2体を素材に呼び出すという胸熱なシーンを生み出す程のインパクトを誇った。

そんなノーデンを、なんで簡易融合によっても出せる様にしたんだかなKONMAIは…!

 

「それじゃあ俺もオッドアイズ・アブソリュート・ドラゴンの効果を発動させて貰うよ!エクシーズ召喚されたオッドアイズ・アブソリュート・ドラゴンが墓地へ送られたことにより、エクストラデッキからオッドアイズ・ボルテックス・ドラゴンを守備表示で特殊召喚!」

「おっと、それは通せませんね!それにチェーンして、エクストラデッキのドクロバット・ジョーカーをデッキに戻し、ボルテックス・ドラゴンの効果発動!それを無効にします!」

 

Phantom LP 4000→3500

 

さて、厄介な後続モンスターを出される事は阻止したが、このターンはもうボルテックス・ドラゴンの効果は使えない。

そして、さっき自分の効果でペルソナ・ドラゴンを出したメテオバースト・ドラゴンは攻撃出来ない。

となれば、エクシーズ召喚に使うか。

 

「俺は、メテオバースト・ドラゴンとボルテックス・ドラゴンでオーバーレイ!2体のレベル7モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!2色の眼の龍よ!その青き輝きを解き放ち、絶対零度で敵を制圧せよ!『オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン』!」

 

さて、此処はどうするか…

グラビティ・ドラゴンに再び引力でアクションカードを此方に飛ばして貰い、それを受け取りつつ、これからの動きを考える。

ペルソナ・ドラゴンのモンスター効果でマエストロークの効果を無効にするのは決定事項だ、破壊置換効果でフィールドにしぶとく留まられるのは厄介だからな。

アブソリュート・ドラゴンで蘇生するのは、ボルテックスの方が良いだろう、蘇生した所で、現時点でその効果を発揮する事は出来ないが、それは蘇生した所で意味が無いメテオバースト・ドラゴンも同じ。

次のファントムのターンでの対応を考えるとボルテックスの方が良い。

後は、ファントムがさっき手にしたアクションマジックが何か…

一先ず、突っついてみるか!

 

「そして、先程特殊召喚したペルソナ・ドラゴンの効果発動!マエストロークの効果をこのターン終了時まで無効にします!」

「おやおや、破壊耐性まで奪われちゃったみたいだね」

 

発動されたペルソナ・ドラゴンの効果に対して、アクションマジックを発動する事無く、言っている事に反して大してピンチだと思っていない口調で返して来た、という事はファントムの持っているアクションマジックは『透明』の様な効果耐性を与える物では無く、然しながら『回避』や『大脱出』等の、現状を切り抜けられる物の筈…!

 

「バトルフェイズに入ります!」

「バトルフェイズ開始時、アクションマジック『大脱出』を発動!バトルフェイズは強制終了させてもらうよ」

 

大脱出

アクションマジック

1:バトルフェイズを終了する。

 

Phantom LP 3500→3000

 

やっぱりか。

今の状況で使われてはアブソリュート・ドラゴンの効果は使用できない、そして俺の持っているアクションマジックは『ノーアクション』じゃないからこれを防ぐ術は無いな。

 

「なら、俺はこのままターンエンドです!」

 

Yushi

LP 4000

手札 0(+アクションカード)

モンスター オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン(攻撃表示)

      オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン(守備表示)

      オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン(攻撃表示)

魔法・罠カード なし



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Ex21話_並行世界での3回戦!4の人格を持ちし者VS5の人生を歩みし者その2

「さて、随分と追いつめられちゃったねえ…」

 

自らのターンが回って来たファントムは、今のフィールドを見渡してそう呟いた。

確かに、グラビティ・ドラゴンが鎮座しているので効果発動には500のLPが必要(ライフゲイン効果を使わない限りは残り5回まで)、モンスター効果もペルソナ・ドラゴンで1回だけ封じ込める事が出来、攻撃も1回だけだがアブソリュート・ドラゴンが防げる。

だがそう言うファントムの表情には楽しさが浮かんでいた。

実際、手札は次のドロー含めて5枚、その内1枚があの悪名高いモンキーボード、エクストラデッキにペンデュラムモンスターが居ない(先程ペンデュラム召喚したモンスターは皆エクシーズ召喚に使っちゃったし)以上はペンデュラム召喚しても出せるモンスターに限りはあるが、それを含めても色々出来る。

それに、何かファントムならやってくれそうな気がするな、面白い、受けて立とう!

 

「それなら任せたよ、ユート!」

 

…ん?ユート?

ファントムがそういうと共にその身を風に包み、その姿が消えてしまう。

と思ったら、一瞬の内にその姿が変貌して行った、って、

 

「此処からは、私が相手だ!」

「は…?アイエエエエ!?ユート!?ユートナンデ!?一体全体何がどうなってんの、まるで意味が分からんぞ!?」

 

あ、ありのまま今起こった事を話すぜ!

「俺はファントムとデュエルをしていたと思ったら、対戦相手がユートになっていた」

な、何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何が起こったのかわからなかった…

頭がどうにかなりそうだ…

俺とユベルで超融合だとか、俺とアストラルでオーバーレイだとか、その程度のもんじゃあ、断じてねぇ、もっと信じられないものの片鱗を味わった気がするぜ…

 

「簡単だ。私達は四重人格、四つの人格と四つのデッキを操るデュエリストだ」

エゴエゴエゴ(いやいやいや)ガムデュエングウデュエンムショシュ(四重人格)フォンショボボジ(だからって)ミェジョミショボ(見た目から)フォフェショボショコブブジ(何から変わるって)デムデンボビブショ(信じられるか)!」

 

余りの超展開にオーバーロード語になってしまった俺は悪くない。

が、そんな事はお構いなしといった感じで、ユート(あ、でも表記もPhantom名義になっているな、一応同一人物という事で良いか)はターンを進める。

 

「私の、ターンッ!まずは『交響魔人マエストローク』の効果発動!オーバーレイ・ユニットを1つ使い、オッドアイズ・グラビティ・ドラゴンを裏側守備表示にする!」

 

Phantom LP 3000→2500

 

デャビフェジェイームdy(それにチェーンs)、ゲフンゲフン、あー、あー、よし、元に戻った。

それにチェーンして、オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴンの効果発動!それを無効にします!」

「…無効にされたか。まあいい、これで確実に殲滅することが出来る」

 

思わずオーバーロード語のまま効果宣言してしまいそうになるも思い留まり、改めてペルソナ・ドラゴンの効果でマエストロークの効果を阻止する。

 

「ならば速攻魔法『RUM(ランクアップマジック)―レヴォリューション・フォース』を発動!」

「そ、それは隼が使っていたRUM!?」

「このカードは相手フィールドのエクシーズモンスターのコントロールを奪い、ランクが1つ上の『RR(レイド・ラプターズ)』にランクアップさせる!」

 

RUM―レヴォリューション・フォース(効果調整)

速攻魔法

1:相手フィールドのエクシーズモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターのコントロールを得る。その後、そのモンスターよりランクが1つ高い『RR』エクシーズモンスター1体を、対象の上に重ねてエクストラデッキからエクシーズ召喚する。

 

Phantom LP 2500→2000

 

その後に使って来たレヴォリューション・フォース、これも効果が変わっているのか。

俺の世界にいる隼が使っていたそれは、自分のターン時と相手のターン時で効果が違い、どちらもエクシーズモンスターをRRエクシーズモンスターにランクアップさせる効果だった。

自分のターン時は自分のRRエクシーズモンスターを、相手のターン時はオーバーレイ・ユニットが無くなった相手のエクシーズモンスターを使っていたが、此処では相手のターン時での効果を強化させた感じだな。

となるとファントムがランクアップさせようと狙っているのは言うまでも無くアブソリュート・ドラゴン、そしてそれから出て来るRRエクシーズモンスターとなると…!

よし、此処は躊躇なく使う!

 

「それにチェーンしてアクションマジック『透明』発動!これでアブソリュート・ドラゴンは効果耐性を得ます!」

 

透明

アクションマジック

1:自分フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。このターンそのモンスターは相手の効果の対象にならず、効果も受けない。

 

が、その様子を見たファントムも動いた。

 

「マエストローク!」

 

その掛け声を受けたマエストロークが、手近な所にあった、クリスタルの間に挟まっているアクションカードを手に取り、それをユートに投げつけた。

ユートはキャッチしたそれを直ぐに発動する。

 

「アクションマジック『ノーアクション』!『透明』を無効にする!」

 

ノーアクション

アクションマジック

1:アクションマジックの効果が発動する時に発動出来る。その発動を無効にし、破壊する。

 

Phantom LP 2000→1500

 

が、俺がそれを見越していないと思うなよ。

俺もまたグラビティ・ドラゴンの力でアクションカードを此方に飛ばして貰った、が、

 

「…通しましょう!」

 

欲しかったカードじゃ無かった。

いや、アクショントラップを引いちゃったとか、大して役に立たないカードを引いちゃったとか、そういう意味じゃないんだ、だがこの状況では防げないな、と。

 

「私はランク7のオッドアイズ・アブソリュート・ドラゴンでオーバーレイ!勇猛果敢なる隼よ。怒りの炎を巻き上げ、大地をも焼き尽くす閃光となれ!ランクアップ!エクシーズ・チェンジ!飛翔しろ、ランク8!『RR―サテライト・キャノン・ファルコン』!」

 

RR―サテライト・キャノン・ファルコン

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

鳥獣族

ランク 8

攻撃力 3000

ORU 3

 

ファントムのフィールドに登場したのは、ガン○ムを鳥っぽくするとこんな感じかなと思えるモンスター、サテライト・キャノン・ファルコン。

その効果は、今の状況ではどれも使えないが、重要なのはそこじゃ無い。

重要なのは、グラビティ・ドラゴンを突破出来るその攻撃力…!

 

「バトルだ!サテライト・キャノン・ファルコンでオッドアイズ・グラビティ・ドラゴンに攻撃!デュエル出来なかった者達の全ての想い、その身に受けて砕け散ると良い!エターナル・アベンジ!」

「そうは行きません!先程グラビティ・ドラゴンの協力で手にしたアクションマジック『回避』発動!捻じ曲げろ、グラビティ・ドラゴン!」

 

回避

アクションマジック

1:フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターの攻撃を無効にする。

 

「ふっ墓穴を掘ったな!速攻魔法『ダブル・アップ・チャンス』を発動!」

「なっ!?」

 

ダブル・アップ・チャンス

速攻魔法

モンスターの攻撃が無効になった時、そのモンスター1体を選択して発動出来る。このバトルフェイズ中、選択したモンスターはもう1度だけ攻撃出来る。その場合、選択したモンスターはダメージステップの間、攻撃力が倍になる。

 

Phantom LP 1500→1000

 

「希望皇ホープなどというカードを使うくらいだ、君も効果は知っているだろう?攻撃力を2倍にして2度目の攻撃だ!」

 

サテライト・キャノン・ファルコンが放ったエネルギー砲、最初の攻撃はグラビティ・ドラゴンの力によって捻じ曲げたが、それが水晶の壁によって反射、と同時にサテライト・キャノン・ファルコンが第2打を放つ。

このままじゃ、不味い…!

 

「グラビティ・ドラゴン!」

 

俺の指示と共にグラビティ・ドラゴンが自らの力でアクションカードを此方に飛ばす…!

くっ間に合え、

 

「ち、違、ぐぁぁぁぁぁ!」

 

RR―サテライト・キャノン・ファルコン 攻撃力 3000→6000 VS オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン 攻撃力 2800

 

Yushi 4000→800

 

何とかゲットしたアクションカード、しかしそれはまたも、この状況を打開する物では無かった。

結局グラビティ・ドラゴンはエネルギー砲を受けて消失、俺もその余波で吹っ飛んでしまい、受け身の際に今度は左腕を強打してしまう。

 

「っつー…!

流石です、ファントム。まさかこの状況を突破して来るとは」

 

これでフィールドを支配していた4Gもの重力は無くなり、ファントムは心置きなく効果を発動出来る様になった。

 

「君がオッドアイズを使うことは想定していた。本当は君のターンで奪うつもりだったのだが、結果としては十分だろう。バトルフェイズを終了し、メインフェイズ2に入る。私はマジックカード『セブンストア』発動!エクシーズモンスター1体をリリースし、そのオーバーレイ・ユニットの数+1枚ドローする!」

 

セブンストア(アニメオリジナルカード)

通常魔法

自分フィールド上に表側表示に存在するモンスターエクシーズ1体をリリースして、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

うわ出た、ZEXAL時代のチートドローソースの1枚が。

オーバーレイ・ユニットの数+1枚、つまりホープなら色々とのっけて発動するだけで最大5枚もドロー出来てしまう、これをチートと言わずして何と言えば良いのか。

 

「私はサテライト・キャノン・ファルコンをリリースし、4枚のカードをドロー!」

 

これによって手札は一気に6枚となった、その内2枚はモンキーボードとオッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン。

 

「私はスケール1のEMモンキーボードとスケール8のオッドアイズ・ミラージュ・ドラゴンでペンデュラムスケールをセッティング!」

 

Phantom

ペンデュラムスケール(青):1(EMモンキーボード)

ペンデュラムスケール(赤):8(オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン)

 

まあこのままペンデュラム召喚、な訳は無いだろう。

モンキーボードが強いのはそのサーチ効果、それを使わない理由は無い。

 

「モンキーボードのペンデュラム効果を発動!デッキからドクロバット・ジョーカーを手札に加え、そのまま通常召喚!」

 

EMドクロバット・ジョーカー(制限カード(こちらの世界))

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 4

攻撃力 1800

 

「ドクロバット・ジョーカーの効果!デッキから『EMシルバー・クロウ』を手札に!これで準備は整った!揺れろ、運命の振り子!迫り来る時を刻み、未来と過去を行き交え!ペンデュラム召喚!現れよ、私のモンスター達!レベル3、『幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ダスティローブ』!『幻影騎士団サイレントブーツ』!レベル4、『EMシルバー・クロウ』!」

 

幻影騎士団ダスティローブ

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 3

守備力 1000

 

幻影騎士団サイレントブーツ

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 3

守備力 1200

 

EMシルバー・クロウ

ペンデュラム・効果モンスター

地属性

獣族

レベル 4

攻撃力 1800

 

そのサーチ効果の連発で潤沢となった手札、其処からのペンデュラム召喚で、ファントムのフィールドはモンスターで一杯になった。

 

「私はレベル3のダスティローブとサイレントブーツでオーバーレイ!戦場に倒れし騎士たちの魂よ。今こそ蘇り、闇を切り裂く光となれ!エクシーズ召喚!現れろ、ランク3!『幻影騎士団ブレイクソード』!」

 

幻影騎士団ブレイクソード

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

戦士族

ランク 3

攻撃力 2000

ORU 2

 

だがこれで終わる筈も無く、2体いたレベル3の幻影騎士団モンスターを使い、ブレイクソードが登場した。

となると、狙いは天空の虹彩と、自分自身か。

 

「ブレイクソードの効果発動!オーバーレイ・ユニットを1つ使い、自分及び相手フィールド上のカード1枚ずつを選択して破壊する!私が破壊するのはブレイクソードと天空の虹彩!砕け、ダブルブレイカー!」

 

天空の虹彩を破壊する所までは許すが、もう片方は許さないぞ。

 

「ならばそれにチェーンしてアクションマジック『ミラー・バリア』発動!ブレイクソードに効果破壊耐性を与えます!ブレイクソードの破壊時効果で、フィールドをレベル4モンスターで一杯にしようという魂胆でしょうが、それは通しません!」

 

ミラー・バリア

アクションマジック

1:フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターはカードの効果では破壊されない。

 

ブレイクソードが投擲した剣が、フィールド上空に浮かぶ虹へと一直線に向かい、そして砕くと共に地上へと落下して行く、そのままそれがブレイクソードへと突き刺さろうとしたが、俺が発動したミラー・バリアによってそれは阻まれた。

危ない危ない、危うくランク4エクシーズモンスターの大量展開を許す所だった、流石に1体は出されるだろうが、それ以上展開されたら流石に耐えきれんぞ。

 

「そう上手くは行かないか…

ならば、レベル4のドクロバット・ジョーカーとシルバー・クロウでオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!漆黒の闇より現れし反逆の牙!エクシーズ召喚!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

ランク 4

攻撃力 2500

 

ん?此処でダーク・リベリオン?

確かに此処でペルソナ・ドラゴンの攻撃力を吸収しておけば攻撃力3100の壁が出来るが…

 

「更にマジックカード『エクシーズ・トレジャー』を発動!フィールドに存在するエクシーズモンスターの数だけデッキからカードをドローする!」

 

エクシーズ・トレジャー(アニメオリジナルカード)

通常魔法

フィールド上に表側表示で存在するモンスターエクシーズの数だけ、自分のデッキからカードをドロー出来る。

 

で、出たよまた、ZEXAL時代のチートドローソース。

そういえば大輔もこれ複数積んでいて、2枚目を発動する時には1人『天からの宝札(アニメ版)』だったなぁ。

 

「少々勿体無いのだが…

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンの効果発動!オーバーレイ・ユニットを2つ使い、オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴンの攻撃力の半分を吸収する!トリーズン・ディスチャージ!」

 

オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン 攻撃力 1200→600

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 攻撃力 2500→3100

 

本当に吸収したよ。

これで戦闘では、ダーク・リベリオンを突破するのは困難を極める様になったか。

 

「更に墓地の幻影騎士団ダスティローブの効果発動!墓地のこのカードを除外することでデッキから幻影騎士団カード1枚を手札に加える!私が手札に加えるのは『RUM―幻影騎士団ラウンチ』!」

 

確かあのカードはこっちの世界のユートも使っていたカード…!

 

「『RUM-幻影騎士団ラウンチ』発動!」

 

RUM―幻影騎士団ラウンチ

速攻魔法

1:自分・相手のメインフェイズに、自分フィールドのエクシーズ素材の無い闇属性エクシーズモンスター1体を対象として発動出来る。その自分のモンスターよりランクが1つ高い闇属性エクシーズモンスター1体を、対象のモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚し、このカードを下に重ねてエクシーズ素材とする。

2:自分メインフェイズに墓地のこのカードを除外し、自分フィールドの闇属性エクシーズモンスター1体を対象として発動出来る。手札の『幻影騎士団』モンスター1体を、そのモンスターの下に重ねてエクシーズ素材とする。

 

「このカードとダーク・リベリオンを一体化させ、ランクの1つ上の闇属性エクシーズモンスターにランクアップさせる!煉獄の底より、いまだ鎮まらぬ魂へ捧げる反逆の歌!永久に響かせ現れよ!ランクアップ!エクシーズ・チェンジ!出でよ、ランク5!『ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン』!」

 

ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

ランク 5

ORU 2

 

そのRUMによって登場したのは、翼がステンドグラスの様になったダーク・リベリオン。

 

「私はカードを3枚伏せ、ターンエンド!さて、アクションカードを探しに行くか」

 

Phantom

LP 1000

手札 1

モンスター 交響魔人マエストローク(守備表示)

      幻影騎士団ブレイクソード(攻撃表示)

      ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン(攻撃表示)

魔法・罠カード セット×3

 

しかしまああの状況から良くぞ此処まで展開した物だ。

ファントムのフィールドには3体ものエクシーズモンスターが並び、そのどれもが破壊やらモンスター効果やらに対応出来る。

一見したらもう絶望的な状況、俺でもたった1ターンで打開しろなんて言われたら正直無茶振りも良い所だ。

だがそれでこそ乗り越え様がある、この状況を打開して見せる!

 

「俺のターン!ドロー!」

 

…このモンスターか。

もしかしたら、結構いいところまで行けるかも知れないな。

 

「俺は今引いた、スケール4の『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』を、ペンデュラムスケールにセッティング!」

 

Yushi

ペンデュラムスケール(青):4(オッドアイズ・ファントム・ドラゴン)

 

「ッ!?ファントム・ドラゴン…!?」

 

俺がペンデュラムスケールにセットしたファントム・ドラゴンの姿に、驚愕の声を上げるファントム。

え、もしかして遊矢は持っていないとか?

まあそれは後で聞くとして、此処からは相手の出方次第だ。

 

「此処でペルソナ・ドラゴンの効果発動!

厄介なダーク・レクイエムの効果は封じさせて貰います!」

「封じられるのはペルソナ・ドラゴンの効果だ!ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴンの効果発動!相手がモンスター効果を発動した時、オーバーレイ・ユニットを1つ使い、オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴンの効果を無効にして破壊する!」

 

ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン ORU 2→1

 

よし、俺の望み通り食いついてくれた!

 

「掛かりましたね!ペルソナ・ドラゴンが破壊された事で、ペンデュラムゾーンのミラージュ・ドラゴンの効果発動!ペンデュラムゾーンのファントム・ドラゴンを破壊し、たった今エクストラデッキへと送られたスケール1のペルソナ・ドラゴンをペンデュラムスケールにセッティング!」

 

Yushi

ペンデュラムスケール(青):1(オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン)

 

「…それが君の世界のミラージュ・ドラゴンの効果か。まあいい、ならば此方もダーク・レクイエムの更なる効果によってサテライト・キャノン・ファルコンを攻撃表示で特殊召喚する!」

 

まあダーク・レクイエムの効果によってサテライト・キャノン・ファルコンが蘇生されはしたが、まあ良いだろう。

これで第1関門はクリアしたのだから!

 

「これで再び、レベル2から7のモンスターが同時に特殊召喚可能!

揺れろ!魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!出でよ、我が僕のモンスター達よ!レベル7、矛盾を捻じ曲げる魔術師『相克の魔術師』!そして同じくレベル7、異世界より舞い降りた2色の眼を持ちし竜『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』!」

 

相克の魔術師

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 7

攻撃力 2500

 

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2500

 

「…分かっている!」

 

ん?何かファントムが何処かへと返事した様に何か喋っているな。

やっぱりアストラルみたいな存在が…?

さて、これが第2関門だ。

 

「俺は相克の魔術師とファントム・ドラゴンでオーバーレイ!2体のレベル7モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!ペンデュラムエクシーズ!舞い戻れ、『オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン』!」

 

オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン

エクシーズ・効果モンスター

水属性

ドラゴン族

ランク 7

攻撃力 2800

ORU 2

 

「2体目のアブソリュートか!」

「ええ!このままバトルフェイズに入ります!」

「受けて立つ!」

 

よし、行くぜ!

 

「オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴンでサテライト・キャノン・ファルコンを攻撃、する時にオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!さあ、これをどうします!?」

 

オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン ORU 2→1

 

「その効果は通そう。ダーク・レクイエムで無効化した所でエクストラデッキから新たなオッドアイズを呼ばれるだけだからな」

 

よし、第2関門突破!

 

「ではアブソリュート・ドラゴンの効果で攻撃を中止します!その後、墓地のオッドアイズを蘇生します!」

「…何を呼び出してくる?」

「カムバック、アーンド、リボーン!メテオォォォォォ!」

 

オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン

シンクロ・効果モンスター

炎属性

ドラゴン族

レベル 7

守備力 2000

 

「此処でオッドアイズ・メテオバースト・ドラゴンだと!?」

 

俺が呼び出したメテオバースト・ドラゴンの姿に驚くファントム。

恐らくはボルテックス・ドラゴンとかグラビティ・ドラゴンが出て来るものだと思ったのだろうが、ボルテックス・ドラゴンでバウンスを狙っても、結局はダーク・レクイエムの効果で無効化されるだけ、グラビティ・ドラゴンを出した所でもう向こうが特に発動したい効果も無いだろう、ならば壁を増やす!

 

「特殊召喚したメテオバースト・ドラゴンの効果発動!ペンデュラムゾーンのペルソナ・ドラゴンを再び特殊召喚します!」

 

オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 5

守備力 2400

 

「成る程、壁を増やすつもりか。ダーク・レクイエムの効果はメテオバーストによって封じられている。まんまとやられたという訳か」

「俺はこれでターンエンドです!」

 

Yushi

LP 800

手札 0

モンスター オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン(攻撃表示)

      オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン(守備表示)

      オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン(守備表示)

魔法・罠カード なし



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Ex22話_並行世界での3回戦!4の人格を持ちし者VS5の人生を歩みし者その3、そして…

さて今の状況だが、俺のフィールドには攻撃を1回無効にするアブソリュート・ドラゴンと、バトルフェイズ中に発動されるモンスター効果を封じるメテオバースト・ドラゴン、そしてフリーチェーンでヴェーラーを打てるペルソナ・ドラゴンの3体、一方のファントムのフィールドには、起動効果で月の書を打てるマエストロークに、サンダー・ブレイクを放てるブレイクソード、そしてダーク・レクイエムに、打点要員であるサテライト・キャノン・ファルコンの4体。

ちょっと厳しくはなっているが、それでも守り切れない事は無い布陣ではある、けど…

 

「ユーリ?

…成る程、君のドラゴンならば行けるか」

 

また何かユベル達みたいな存在と話をしているみたいだな。

というかユーリ?まさか…

 

「分かった。ならば、変わるぞ!」

 

そう言うや否や、先程と同じくファントムの身が風に包まれ、その姿が一瞬にして変わる。

流石に2度目とあってそれ程驚きは無い、と思っていたが、

 

デデ(って)ゴラゲバジョ(お前かよ)!?」

 

その現れた姿に思わずグロンギ語になってしまった。

ユートから変身したその姿、それはアカデミアの幹部にして『融合次元の俺』ことユーリだったからだ。

 

「…何を言っているのか分かりませんね。デュエリストならしっかり喋ってくれませんか?」

 

…何か、コイツの顔で突っ込まれるとすげー腹立つな。

まあでも確かにそうだ、デュエルモンスターズ、というかカードゲームは互いにちゃんとコミュニケーションをとってこそ成り立つゲームだ、会話が成り立たなくては成立しない。

 

「あー、あー、よし、元に戻った。失礼しました、此方の世界の『貴方』と言うべきでしょうか、その彼が余りにもデュエリストとして屑な存在だったので、つい」

 

思わず暴言が出ちゃっている俺の脳裏に浮かぶ、こっちの世界のユーリが仕出かして来た蛮行の数々。

アカデミアを裏切ったデニスを問答無用で射殺し、キサラとのデュエル中に無理矢理な乱入を行い、洗脳した素良を使い捨ての駒の如く扱ったアイツの姿を思い浮かべるだけで、心の内から怒りが湧き上がって来る。

目前にいる存在はそれとは違うだろう(さっきもユートの姿をしたファントムが普通に接していたみたいだし)が、それでも、な。

 

「そんな奴僕とは関係ねぇよ!そっちの僕と一緒に地獄に逝け!」

 

そんな俺の言葉には流石に我慢がならなかったのか、如何にもキレてますといった様子で怒声を浴びせて来るファントム(で、良いんだよな?)。

だが残念、俺は死んだ所でまた新たなる人生を歩むのだ!ってそれこそ今は関係ないか。

 

「これが落ち着いていられますか!殺る気で行かせてもらいますよ!」

 

どうも見た感じとさっきの話からして、表に出ている人格以外はアストラル的な存在としてサポートするらしいな。

 

「僕のターン、ドロー!僕はトラップカード『エクシーズ・リボーン+』を発動!」

 

エクシーズ・リボーン+(漫画版オリジナルカード)

通常罠

自分の墓地のモンスターエクシーズ1体を選択して発動する。選択したモンスターを特殊召喚し、このカードを下に重ねてエクシーズ素材とする。エクシーズ素材となったこのカードを墓地へ送る事で、デッキからカードを2枚ドローできる。

 

またか、制限の掛かっていないモンキーボードといい、こっちの世界のカードパワーは凄まじいな。

 

「このカードをオーバーレイ・ユニットとし、墓地から『オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン』を特殊召喚!」

 

オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン

エクシーズ・効果モンスター

水属性

ドラゴン族

ランク 7

攻撃力 2800

ORU 1

 

「僕はエクシーズ・リボーン+の更なる効果により、オーバーレイ・ユニットとなっているこのカードを墓地に送ることで2枚ドロー!」

 

オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン ORU 1→0

 

回る回る。

これでファントムの手札は4枚、さあ此処からどう動く?

 

「そして、マジックカード『融合』を発動!」

 

融合

通常魔法

1:自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「『交響魔人マエストローク』と『ブレイクソード』を融合します!悪魔の指揮者よ。砕けし剣よ。今一つとなりてその花弁の奥の地獄から新たな脅威を生み出せ!融合召喚!現れろ、飢えた牙持つ毒龍!レベル8、『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』!」

 

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン

融合・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 2800

 

やはりと言うべきか、この世界、というよりファントムの一人格としてのユーリもエースはコイツか。

となると次の行動は、

 

「スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンの効果!このカードの融合召喚に成功した時、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター1体の攻撃力分、このカードの攻撃力をアップさせる!この効果により、アブソリュート・ドラゴンの攻撃力を喰らいます!」

 

だよなぁ、どうせダーク・レクイエムの効果で無効化されるだろうが、此処は使うしかない!

 

「それにチェーンしてペルソナ・ドラゴンの効果発動!スターヴ・ヴェノムの効果を無効にします!ダーク・レクイエムの効果は使いますか?」

「くくっ、使いませんよ」

 

ん?何か如何にも『計画通り』だと言わんばかりの表情を浮かべながらスルーしたぞ?

どういう事だ、ダーク・レクイエムの効果を使えばまずスターヴ・ヴェノムの効果でアブソリュート・ドラゴンの攻撃力を吸収、その後スターヴ・ヴェノムの更なる効果でメテオバースト・ドラゴンの効果をコピーしてしまえばアブソリュート・ドラゴンの攻撃無効効果は使えない、そのまま俺の敗北濃厚となる訳だが…

まさかプレミ?いや、ファントム程のデュエリストがそんな事をうっかりする筈が無い、あの悪どい顔にも何か理由がある筈…

 

「一見正しいように見える今の効果、けどそれは大いなる間違いですよ。マジックカード『ペンデュラム・フュージョン』!このカードはペンデュラムゾーンのカードで融合召喚を行います!」

 

ペンデュラム・フュージョン(漫画オリジナルカード)

通常魔法

1:自分のペンデュラムゾーンから、融合モンスターカードによって決められた融合素材カードを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「…ウェ?」

 

ペンデュラムゾーンのカードで、融合?

 

「僕が融合するのは『オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン』と『モンキーボード』!猛威を振るいし猿よ、幻影の二色の眼と1つと成りて新たな力を生み出さん!融合召喚!現れろ、疾風纏いし迅雷の龍!レベル7!『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』!」

 

オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン

融合・効果モンスター

風属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2500

 

うはぁ、マジか。

これでアブソリュート・ドラゴンをバウンスすれば、打点で言えば勝てる領域。

俺がアクションマジックを使おうとボルテックス・ドラゴンの効果で無効にしてしまえば良いって事か。

というか、デッキからとか、墓地からとか、除外ゾーンからとか、魔法・罠ゾーンからとかなら見た事もあるけど、まさかのペンデュラムゾーンからか。

これもまたペンデュラムのその先『ペンデュラム融合』の1つという訳か、いやはや勉強になったよ。

 

「オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴンの効果!アブソリュート・ドラゴンをバウンスします!サイクロン・フォース!」

「通しましょう!」

 

どの道、俺は詰んでいたって訳か。

 

「君は確かに強いデュエリストです。ですが、この世界で戦い抜くにはカードパワーが余りにも足りない。ダークシンクロ、カオスエクシーズ…それだけではありません。この世界のカードパワーは果てが見えない程に高い。もし君のデッキの基準がこの世界の基準であるならば、勝負は分からなかったかもしれませんね」

 

カードパワーが足りない、か。

確かにこの世界のカードパワーは無茶苦茶にも程がある。

大輔も使っていた『エクシーズ・トレジャー』、ホープとの相性が抜群過ぎる『セブンストア』、永続魔法版ハイパー・ライブラリアンこと『天輪鐘楼』、そして戦闘破壊耐性が健在のNo.を始めとした効果の変わったカード達…

俺の世界では考えられない位のパワーカードが、この世界には溢れている、ぶっちゃけ今の俺の、この世界での立場は、シンクロ次元においてトップスに真っ向勝負を挑もうとしているコモンズ辺りだろうか。

まあそう言うとコモンズの面々をディスっている様に聞こえるが、それでも現状を表現するにはこれしかないだろう。

が、

 

「いえ、カードパワーの差、引いては戦略(デッキ)の力はデュエルの一要素に過ぎません。例えカードが、デッキが強くとも、それを手足の様に使いこなす戦術(プレイング)と、それを思い通りに実現させる時の運(ドロー)、それらを兼ね備えなくては勝利の女神は微笑まない。逆に言えば、ある程度の戦略の差も、戦術や時の運でひっくり返せるという事です。貴方のデュエルタクティクスは、そのカードパワーの差を抜きにしても素晴らしい!改めて俺は、人を見かけで判断してはいけないと思い知らされました。先程は失礼な真似をして、申し訳ありませんでした」

 

カードパワーの大小だけで勝負が決まるなら、トップスの面々は永遠にトップスであり続け、コモンズの面々は一生コモンズで燻ったままだろう、だがそうはなっていない。

『遊戯王5D’sの世界』から転生して来たジャックとクロウ、鬼柳は例外として、シュドナイさんにシンジ、ソラトにティリエル、月行に夜行、ユーゴに徳松さん…

コモンズから這い上がり、今やシティにおいて一定の地位を築いた人達を俺は知っている。

第一、そんなデュエルモンスターズはつまらないだろう?カードパワー的に大きく劣る方が勝る方を破る、いわば『ジャイアントキリング』もありえるからこそこのカードゲームは面白く、此処まで発展して来たんだ。

 

「ふっ、分かってくれたなら結構です。僕は外道畜生と同じ扱いをされるのが最も嫌いなんですよ。

…さて、バトルフェイズに入りますよ!」

「どうぞ。此処で発動するカードはありません」

「オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴンでオッドアイズ・メテオバースト・ドラゴンに攻撃!凍結のエターナル・コフィン!」

 

オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン 攻撃力 2800 VS オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン 守備力 2000

 

この、メテオバースト・ドラゴンが健在の中でアクションマジックを使いたいのは山々なんだが(今ならボルテックス・ドラゴンによって無効化されないという意味で)、俺が持っているアクションマジックは、さっきブレイクソードの効果による自壊を妨害したのと同じ『ミラー・バリア』。

戦闘破壊やバウンスまでは防ぐ事が出来ず、新たにアクションカードをゲットする事も出来ないので、眼の前でメテオバースト・ドラゴンが氷漬けになるのを見ているしか無かった。

 

「続け、オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン!オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴンを攻撃!迅雷のボルテックス・スパイラル!」

 

オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン 攻撃力 2500 VS オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン 守備力 2400

 

これで俺のフィールドは丸裸になった。

 

「3体のモンスターでダイレクトアタック!世界を越えた戦いへと終止符を打て、次元のジェネシス・クライシス!」

「ウボァー!」

 

Yushi LP 800→-2000→-5000→-8000 LOSE

 

WINNER Phantom

 

いやぁ、負けた負けた。

LPの差は1000とは言え、正直その結果は『完敗』この一言に尽きる、この完敗は元の世界での零児とのデュエル以来じゃないか?

だけど同時に、最っ高に楽しかった!今回はさっきの零児とのデュエルとは違い、No.の所有権を賭けて等の枷が無かった故に、その楽しさもひとしおといった感じだ。

此処までのデュエルを繰り広げられる相手がまだまだいるとはな、世界は広いぜ。

 

「ファントム!今回、負けはしましたが、ガッチャ!実に楽しいデュエルでした!」

「ええ、僕も「俺達もだよ」」

 

そんなデュエルの相手をしてくれたファントムに、十代の頃から使っていた『ガッチャ』のポーズで礼を言うと、その返礼を言おうとして、その今の時点で表に出ているユーリの姿から、遊矢の姿へと変わった。

あれ、ところでファントムは色々と可笑しな部分はあるけど、一応は四重人格で、今の様に表に出ている人格の姿とデッキになるんだよな。

今回のデュエルで出て来たのは遊矢とユート、そしてユーリ。

俺の世界における4つの次元、そこに其々1人存在する『俺』と同じ法則ならば、残りの1人はユーゴかな?

となるとユーゴの力を『シンクロ次元の力』を使わせる事無く負けたって事か、やっぱファントムは強いな、ほんと「遊士!?だ、大丈夫!?左腕ケガしていない!?」うぉっと。

 

「柚子、心配になるのは分かるけどさ、大したことないよ。骨に響いた訳じゃ無いし」

「ダメよ遊士、そんな甘い考えをしちゃ!さっきだって吹っ飛ばされた時に強打したんだし、骨まで行かなくても打撲になったりしたら大変なのよ!」

 

そんなデュエルの余韻に浸っていた俺に、如何にも慌てているといった感じで寄って来たのは、半泣き状態の柚子だった。

 

「柚子。少し落ち着いてくれ」

「ひゃっ!?ゆ、遊士…?」

「心配な気持ちはしっかり伝わった。けどさ、本当に大丈夫だから泣かないでくれ。俺の方が心配になる」

「遊士…うん、分かった…でも、念の為に医務室にはちゃんと行ってね?」

「ああ。という事で零児、もう一回、医務室の方に連絡お願いします」

「ああ、直ぐに連絡しよう」

 

そんな慌てふためく柚子を宥めるべく、俺は柚子を抱き寄せる。

本当に心配性だな、まあ其処も可愛いし好きなんだけど。

たく、こんな可愛い女の子をストロングだとか言いやがって、遊矢マジで許さん。

 

「さて、直ぐに医療チームも来るだろう。それまで、この映像を見て欲しい」

 

とりあえず柚子を宥める為に、零児に医務室への連絡をお願いした。

その後、零児のデュエルディスクから1つの映像を見せられたんだが、

 

「No.に詳しい君にこのデュエルを見ての意見が聞きたい」

「こ、これは…!」

 

其処に映されていたのは、とある広場にて行われていた、遊矢とファントムのタッグと、ユートとユーゴのタッグによるタッグデュエルだったが、それは壮絶以外の何物でも無かった。

ダークシンクロモンスターとなった『氷結のフィッツジェラルド』が君臨したかと思えば、ダーク・レクイエムがバリアンズ・フォースによってカオスエクシーズ・チェンジしたカオス・キマイラ・ドラゴンが君臨する、そして互いが繰り出すカードの攻撃によるダメージが、リアルソリッドビジョンによるそれの比じゃ無い位に強大で、1回1回の攻撃が遊矢達を傷つけて行く。

そう、それはまるで…

 

「闇の、デュエル…!

予想はしていましたけど、本当にこの世界にもあったなんて…!」

「やはり知っていたか。

…これはつい先日の映像だ。

何かに取り憑かれたかのように暴走したユートとユーゴ、彼等はこのデュエルのことを互いの命を賭けた闇のデュエルだと言っていた」

 

闇のデュエル。

何らかのダメージが現実の物としてデュエリストに襲い掛かり、敗北者の命を奪う、或いは精神的に廃人になる等の厳しい罰が下る、デュエルモンスターズのあるべき姿とはかけ離れたデュエル。

厳密なそれという意味では十代だった頃以来だが、遊星の頃に遊戯さんと前世の自分と共にイリアステルの幹部であるパラドックスと戦ったデュエルや、No.所有者とのデュエルも一応はそれに当たるだろう。

だが厳密な意味でのそれを実行するには千年アイテム、或いはそれに準じた力を持つアイテムが必要な筈、No.やダークシンクロモンスター化したフィッツジェラルドがその力を持ち、ユートとユーゴにその力をもたらしたとなると…!

 

「アレは遊矢のことを『我らの一人』とか『欠片』、俺のことを影と呼んでたよ。それが何かのヒントにならないかな?」

 

ユートとユーゴに取り憑いた存在が遊矢を『我らの一人』と呼んでいた、か…

ん?待てよ?

 

「そう言えば俺も、元いた世界のユートやユーゴとデュエルした時、何かしら共鳴の様な現象を体験したんです。俺が持っていたオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン、ユートが持っていたダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン、そしてユーゴが持っていたクリアウィング・シンクロ・ドラゴン…

それらが互いのドラゴンに反応するかの様な力を感じたんです。まあデュエルではエクストラデッキから直接墓地に投げ捨てて出させない様にしたり、召喚を無効破壊したりして捻じ伏せはしましたが、もしかしたらこの世界のそれらも、ひょっとしたらこの世界のスターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンも、得体の知れぬ力を秘めているのやも知れません、召喚方法の名を冠しているんですし。闇のデュエルを行う力を所有者に与えたり、所有者の意識を乗っ取って自分の意思で闇のデュエルを執り行えたり…

『欠片』と称している遊矢達が、そして彼らが持っているそれらドラゴンのカードが集まった事でそれらが力を取り戻した様子も考慮すると、元は強烈な力を持ちし1体のドラゴン、及びその使役者だったとか…?

ファントムを影と称したのは、その構成になりそうでなりえない『ダミー』という意味かも知れません」

「…成る程、参考になった。召喚法の竜が元は強烈な力を持った1体のドラゴンか」

 

もしかしたら、俺の『覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン』も、その『欠片』が集まった事で出来たのやも知れないな。

その俺の推測に何処か納得した様子の零児、一方のファントムはぽつりと、

 

「…G(ジェネシス)O(オメガ)D(ドラゴン)、あのカードなら、もしかしたら…」

 

と、呟いていた。

G・O・D?遊矢達の件と何か関係があるのだろうか?

 

「社長!」

「…どうやら来た様だな」

 

と、ファントムの様子が気になっていると、どうやら医療チームが来た様だ。

まあこの件を深堀した所で、平行世界の存在である俺が出来る事は殆ど無いな。

 

------------

 

「ほら、大丈夫だっただろ?検査の結果、何かしらの異常は無いってさ。アイシングもして貰ったし、直ぐに治るさ」

「で、でも、本当に心配だったんだからね?何時も言っているけど、無理はしないで、ね?」

「善処はするよ。さて、座標のサーチも出来たし、そろそろ潮時かな。皆さん、今日は色々とお世話になりました」

 

LDSの医療チームによる検査を受けつつ、デュエルディスクによるサーチが完了した俺、そろそろこの世界ともお別れの時間となり、見送りに来てくれた面々にお礼の言葉を送った。

 

「ああ。君とのデュエルは有意義だった」

「また来てね。

…そう簡単に来れるとは思ってないけどさ」

「まあ、俺も向こうの世界で結構忙しくてさ。そうそう遊矢、最後に1つ、平行世界の俺に向けてアドバイスを送る。ちょっと来てくれ」

「…ん?なんだ?」

 

その折、さっきのデュエルでローカスト・キングのカードとしての強さに複雑な想いを抱いていた遊矢に、お節介ながらアドバイスを送る事にした。

 

「さっきのデュエルで柚子が俺を「完全決闘者として知られていた」と言っていただろ?このデッキは、その異名の由来となった『完全決闘(パーフェクト・デュエル)』デッキなんだが…

これを見てくれ、コイツをどう思う?」

 

そう言いながら、ジャケットに忍ばせていた完全決闘デッキを広げる。

自らは特殊召喚効果を持ちながら自分がいる間は一切の特殊召喚を禁じる『大天使クリスティア』、手札の天使族モンスター1体をコストに『神罰』をぶち込む儀式モンスター『神光の宣告者(パーフェクト・デクレアラー)』、そして除外を許さない『王宮の鉄壁』、この3種の神器で相手の行動を一切封じ込める完全決闘デッキ。

他のカードも、各種『宣告者』モンスターをフルに積み込んだ他、儀式サポートの決定版である『センジュ・ゴッド』『マンジュ・ゴッド』も完備、戦闘破壊して来る奴用の『オネスト』も継ぎ込み、念の為のカウンター罠も何枚か入れている。

エクストラデッキにも、墓地送りを条件に『サンダー・ブレイク』を放つ『旧神ヌトス』、同じ条件でマンジュ・ゴッド同等の効果が使える『虹光の宣告者(アーク・デクレアラー)』の他、各種天使族モンスターをフルに積み、それらを墓地へ送る為の『轟雷帝ザボルグ』と、そのリリースを確保する『フォトン・サンクチュアリ』もピンで挿している。

このデッキを構築して以来、これを使った俺に勝利したのは柚子とエレンしかいない、そのどちらも幾度の敗北を経て『天空の聖域』を張った状態での『神罰』連打、という突破法を編み出した結果だ。

他にもメインフェイズ限定ながら神光の宣告者を封じ込められる『コアキメイル・デビル』を召喚しつつ除去手段を打ち込む等の突破法も無くは無いが、かなり限られてくるし、そのどれも専用の構築で無ければならない。

まあこの世界のカードプールなら他にも突破する術がありそうだが…

 

「うわっ、エグいなぁ。俺じゃ『セメタリー・チェンジ』くらいしか突破手段が思い付かない」

 

セメタリー・チェンジ(アニメオリジナルカード)

通常魔法

1000ポイントのライフを払い、フィールド上のモンスターを全て破壊して発動する。自分と相手の墓地のカードを全て入れ替える。

 

本当にあったんかい、と、本題は其処じゃ無いな。

 

「ああ、余りにもエグくて、余りにも強すぎる。エンタメデュエルという概念に向かって思いっきり塩をぶん投げる様なデッキだ。

 

 

 

だがな、このデッキも、これを使ったデュエルも、突き詰めればエンタメデュエルになりえるんだ」

「ファッ!?

…それってまさか処刑ショー的な意味じゃないよな?」

 

ま、まあそう捉えられてもおかしくはないな。

相手を完膚なきまでに叩き潰す、そんなデュエルに心踊らせる人だっていなくは無いのは確かだ。

が、

 

「んな訳あるか。今お前が言った様に、この『完全決闘』と名付けちゃう程の完璧に見える布陣を作れるこのデッキにも、突破する手段はある。

 

そして、想像してみろ。この完璧に見える布陣が構築され、手も足も出なくなってしまう自分。そんな一方的なデュエルに恐れおののき、或いはそのつまらなさに白け、或いは怒りのままにブーイングを浴びせる観客。

 

だがそんな停滞した状況をひっくり返せる逆転の一手を引き当て、相手の妨害を潜り抜けてそれを実行し、完璧に見えた布陣は崩壊…

 

その時、それを成し遂げた奴は、その瞬間を見届けた観客は、その余りにも鮮やかな逆転劇に魅了され、心は楽しさに満ち溢れ、笑顔満開になるに違いない!そうだろ!?」

 

実際、これを成し遂げた柚子とのデュエルの盛り上がりといったら凄かった、もう途中から映画『アルマゲドン』の主題歌である『ミス・ア・シング』が幻聴で聞こえて来る位に。

その逆転劇が余りにも鮮やかだった為、遊勝塾で一時期『天空の聖域』と『神罰』のセットが流行しかけたのは以前話したな。

と、余りにも熱中して口調が強くなったが、どうも遊矢の表情は複雑そうだな。

 

「それは、逆転出来る相手がいてこそ成り立つエンタメだ。確かに逆転する手段は有るかもしれない。

…けど、その手段が無いデッキの方が圧倒的に多い。俺は相手の墓地を使って展開を決める、そんな『未知』の戦術で盛り上げる為にこの『セメタリー・チェンジ』を入れている。このカードはコストとしてフィールドのモンスターを全滅させるからその布陣を破ることが出来る。

…けど、そんな戦術をデッキに組み込んでいるデュエリストはそうそういない」

 

まあな、無茶苦茶強すぎるコストと引き換えに、自分のデッキとはかけ離れた墓地ソースを提供されるかもしれない効果。

今日のデュエルモンスターズでは『墓地は第2の手札』と言われている中、それを相手に明け渡すこの効果は、はっきり言って自分のデッキに対する裏切り行為。

効果とコストが逆転してんじゃね?と突っ込みたくなる程お得なコストの為にこのカードを積むとなれば、自分のデッキを信用していないと言っているのと同じだ。

だが遊矢はそれでも、むしろ相手の墓地ソースという『未知』をエンタメデュエルの要素とする為にこれを積んでいる、コストの為では無く(まあペンデュラムモンスターが中心というデッキ構成もあるだろうが)。

 

「まあ、今言ったのは極端な例だし、大抵つまらないまま終わるのはお前の言った通りだ。分かっている様だから釈迦に説法って奴だが、俺が言いたいのは『エンタメデュエルに型など無い』。どう相手を、観客を魅了させ、楽しませ、笑顔にさせるか、それを突き詰めれば自然とどんなデッキで臨むべきか、どう動くべきかが見えて来る。それが言いたかっただけだ」

 

ローカスト・キングも、例えば『完全決闘』程では無いにしても自らをヒールに見立てたアプローチとして有りだ。

モンスター効果をフィールドにいる間無効にする、つまり除去をモンスター効果に頼った構築ならばほぼ完全に詰みはするが、逆に言えば魔法・罠カードが除去の中心であれば容易に突破出来るという事だ。

無論使い手はそれを読んで魔法・罠カードを無効にするカードを積むだろう、その差し合いもまた観客を魅了する要素になると思う。

 

「…言いたいことは、よく分かったよ」

「そうか。ああ、それから、」

「それから?」

 

そう言いつつ、瞬時に遊矢のこめかみに俺の両拳を当ててホールドする。

そして、

 

「お前さっき柚子の事なんつった!?俺の彼女がストロングだとォ!?」

「ぎゃ、ぎゃぁぁぁ!?」

 

怒りに満ちた声を上げつつ、両拳を押し回すッ!

所謂『ぐりぐり』である。

 

「す、ストロ…ぎぃぃ…ングカップ…ぐぅぅぅっ!?」

「何ちゃっかりセクハラ発言してんだお前は!後ストロングじゃなくてスーパーキュートだろォが!」

 

まだ言うかこいつァ!

 

「ル…ぐふっ…」

「落ちてる、遊矢落ちてるから…」

「ゑ?」

 

そんな最中に掛かって来たファントムの声に我に返り、目前の遊矢を見ていると其処には、目を回して気絶している遊矢の姿があった。

 

「え、えーと…

はっはっは、やっちゃったZE☆(スパァン!)あふん」

「ごまかさないの!幾ら私の事だと言っても、やり過ぎ!」

 

その惨状にどっかの惚気の余り誤植を連発しちゃった編集者っぽくごまかそうとしたが、勿論柚子からハリセンツッコミを貰っちゃったZE。

 

「ま、まあともかく、この辺で帰りますね。後で遊矢には「やり過ぎちゃってごめん」と伝えておいて下さい」

「いや、伝えないよ」

「ウェ?」

「またこの世界に来た時、君自身の口から伝えなよ」

 

それもそうか、こういう謝罪は面と向かって言うべきだし、何よりまたこの世界に来る理由にもなる。

 

「分かりました。では、また会いましょう!」

「また来ます!その時までさようなら!」

「また、会おう」

「またね。楽しい時間だったよ」

 

そう言い残し、俺達は転送装置を起動させた…

 

------------

 

Side 柚子

 

何とか無事、元の世界のシンクロ次元へと帰って来た私と遊士、じゃなかった、遊矢。

私達が平行世界へと飛ばされる様を見ていた一行達にはかなり心配を掛けちゃったみたいで、帰還した私達の姿を見て安堵という意味での喜びや泣き等の多様な表情を見せた皆に、一先ずは謝って置いた。

まあ事故とは言え、一時的に行方を晦ませちゃったからね。

そんな一騒動も落ち着いた中、私は遊矢に1つ、気になった事を聞いてみた。

 

「遊矢、ちょっと良い?」

「ん?どうしたんだ、柚子?」

「帰る間際、向こうの世界の遊矢にアドバイスを送っていたでしょ?何でまた急に?」

 

向こうの世界の遊矢は、遊矢と比べてデュエリストとしての腕前はまだまだ未熟ではあったけど、それでもエンタメデュエルの極意はちゃんと理解していた。

途中で遊矢が気付いた様に、あのアドバイスは釈迦に説法だったと思う。

 

「どうも、色々と模索しながらも前を進もうとしている遊矢の姿を見ていると、昔の自分を思い出すようでさ、放って置けなかった、とでも言えば良いかな…?」

 

そんな私の問い掛けに答える遊矢は、何か遠い目をしているというか、何処か寂しそうだった…




これにて、GMSさんの『遊戯王ARC-V 二人の榊遊矢』とのコラボは終了となります!
GMSさん、コラボして頂きありがとうございました!


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Ex23話_海音との再会

幕間のコラボ祭、2番バッターは、以前にもコラボして頂きましたAMsさんの『遊戯王ARC-V 次元漂流者』です!


「申し上げます!シティの路地にて、次元転送の反応をキャッチしました!」

 

来たるアカデミアとの戦いに向け準備を進めていた俺達、そんな或る日、その報告が入って来た。

 

「その詳しい場所と、転送の規模はどの様な感じだ?」

「詳細な場所は北地区、規模はごく小規模です。精々2・3人が転送された程度です」

 

2・3人か、となるとアカデミアが送り込んだ可能性は低そうだ。

この間の戦いで、アカデミアは送り込んだ一個旅団規模の軍勢がほぼ全滅に陥ると言う惨敗を喫したばかり、その折に実行された『アンドバリの指輪』作戦の効果もあってデュエル戦士達の間に不信感が渦巻いていて士気は急降下、その状況下故に本拠の足場固めに重点が置かれている中、幾ら小規模とは言えみだりに兵士を他次元に送り込む程の余裕は無い筈だし、ランサーズとデュエルチェイサーが睨みを利かせている中にその程度の人数では戦力と士気を無駄にするだけだからだ。

とは言え、アカデミアでも精鋭中の精鋭と思われる『ホルアクティ・フォース』の者が送り込まれた可能性もある。

リーダーであるキサラの実力は、この前のデュエルが互角の勝負だった様に、俺でも苦戦する程。

そのキサラが選び抜いたデュエル戦士とあれば、幾らランサーズメンバーであっても1対1では厳しいかも知れない。

となれば、

 

「了解、私がその現場に行こう。案内を頼む」

「遊星様!?危険です、此処は我らにお任せを!」

「危険だからこそ、私が出向かなければ。君達の命を、笑顔を奪われる訳には行かない」

「ははっ!では、ご案内致します!」

「エレン、お前も来い」

「あいよ!遊矢兄ちゃん!」

 

俺自らその現場に向かう事を伝え、何人かのデュエルチェイサーの案内で其処へと向かった。

 

------------

 

「反応をキャッチしたのは、こちらです」

「分かった。此処からは予期せぬ危険が待ち受けているかも知れない。各自、警戒を怠るな」

「「「はっ!」」」

「おっしゃ!」

 

デュエルチェイサー達の案内で俺達が行きついた場所、それはシティ北側のとある路地だった。

此処に恐らくは次元転送された存在が…

その未知に対応する覚悟を周囲に促しつつ、俺を先頭に突入する、と、

 

「となると今すぐこの世界を出るのは危険だな。お前ら、しばらくこの世界に滞在するぞ」

 

ん?この声、何処かで聞いた事が有る様な…!

 

「か、海音!?海音じゃないか!久しぶり!」

「何だって!それは本当か、遊矢兄ちゃん!?本当に、海音兄ちゃんが…!」

「お前らは…久しぶりだな。って事は、ここはあのパラレルワールドか」

 

路地へと入った俺達の目前には、以前事故で俺達の世界に転送されて来た1人である海音がいた。

その周りには某ポケモンマスターを目指す永遠の十歳と、高二病絶賛発症中な目の腐ったボッチらしき2人がいるが、さっきの会話からして海音の仲間かな?

しかし今度はこのシンクロ次元で会う事になるなんてな、運命ってのは分からない物だな。

と、此処でいろいろ話すのはあれだ、場所を変えよう。

 

「遊星様、この者達は遊星様の知り合いでしょうか?」

「ああ。彼は私にとって旧知の間柄だ。彼に同行している者と共に、客人として迎える様に!」

「「「はっ!」」」

「海音。色々と聞きたい事はお互いあると思うが、一先ずついて来て貰っても良いか?其処にいる君達も、恐らく海音の仲間だろう?良ければついて来て欲しい。大丈夫だ、悪い様にはしない」

「解った。だがその前に2人とも少し話させてくれ」

 

移動の準備を前以てデュエルチェイサー達に指示しつつ、海音達に提案すると快く応じてくれたが、その前に仲間らしき2人の元に向かって行った。

その2人はどうもこちらに警戒する様子を見せていて、特にあの、確か『俺ガイル』だったかな?そのラノベの主人公そっくりな奴のそれは顕著だった。

まあ海音というクッションがいるから良かったが、そうで無かったら向こうは何処からともなく次元転送されて来た不審者、こっちはそれを捕える為に参上した警察、向こうにしたら恐怖感もひとしおだろう。

その警戒感も海音の説明によって氷解したらしく、海音を含めた3人は此方に来てくれた。

 

「待たせたな」

「ああ。各員、客人たちを其々1人ずつ、各自のD―ホイール後部座席に案内せよ!」

「「「はっ!」」」

 

そう言いつつ、此処に来るまでの移動手段としていたD―ホイールを止めてある地点へと移動する。

 

「つかなんでこれだけいて車が1台もないんだ?」

 

さっさとD―ホイールの後部座席に乗った永遠の十歳な少年の一方、高二病絶賛発症中な少年はその光景に違和感を覚えたのかそんな疑問を口にしていた。

今回は最初から送迎する為に此処に来た訳じゃ無い、次元転送の反応を調査する為だ、それには加速力や運動性能に優れたバイク、それも直ぐデュエルに移行できるD―ホイールが最適だったって訳。

え、お前まだ14歳、D―ホイールの免許取れる歳じゃないだろって?其処は遊星時代に培った運転技術と、権力に物言わせて特例で取得したのさ。

そんな少年と海音が話し合っていると、

 

「海音さん!早く行きましょ!」

 

と、既にD―ホイールに乗っていた少年の言葉に、

 

「これ以上待たせるのはあれだしとりあえずいくぞ」

 

と言って互いに残ったD―ホイールの後部座席に乗り込んだ。

よし、これで準備は完了だな。

 

「では戻るぞ」

「「「はっ!」」」

 

その出発の合図と共にD―ホイールを発進、元の道を辿って行った。

 

------------

 

「よし、到着っと。此処までの送迎、ありがとう。持ち場に戻り、引き続き任務に当たる様に」

「「「はっ!ありがとうございます!」」」

 

俺達ランサーズメンバーが今現在滞在している迎賓館的な施設に到着、海音達を降ろしたデュエルチェイサー達にねぎらいの言葉を投げ掛け、彼らが帰って行くのを見送った。

 

「なああいつ何者なんだ?」

「さあな、少なくとも俺がいた世界の遊矢は普通の中学生なんだがな」

 

そんな俺の姿に違和感を覚えたのか、海音達がそんな会話をしていた。

まあ確かに海音の言う通り、原作での俺は、エンタメデュエリストとして知られている父さんがいる以外は普通(?)の中学生、そんな俺が警察組織の者から敬意を示され、指図している姿に違和感を覚えるのも無理は無いか。

 

「色々と気になる事はあるだろうけど、詳しい事は中に入ってからにしようぜ。移動中、皆に海音の事を連絡したら、出迎えの為にロビーまですっ飛んできたらしいし」

「ああ、皆待っているぜ!『また会えるなんてこれ程嬉しい事は無い!』ってさ!」

「それもそうだな。行くぞお前ら」

 

そんな海音達に施設内に入る様促し、入って行くと其処には、

 

「海音、久しぶり!元気だった?」

「この男権現坂、異世界の友人との再会に、猛烈に感動している!」

「おォ、久しぶりじゃねェか、海音!」

「れ、レナさんはい、います…?」

「お前は何びくついてんだ、当麻」

 

以前海音達と出会ったARC-Vメンバーが勢ぞろいして、海音達を出迎えていた。

 

「ああ。久しぶりだな」

「ン?おい、櫂とレナがいねェが、別行動かなンかか?」

 

と、櫂とレナがいない事に気付いた一行が海音に尋ねて来た。

まあ俺も以前みたいな事故で、今度は櫂とレナとは別に、今いる2人と転送されたのかと思って余り気にしていなかった、が、

 

「あ…」

 

と、何故か海音は言葉を逃がしていた。

何か、地雷踏んだ感じか、これは…?

 

「む?何か、2人の身に何か、あったと言うのか…?」

「レナと櫂…あいつらはアカデミアに…」

 

あぁ、やっぱりそういう事か。

レナと櫂、2人は一行や当麻にも互角以上に立ち回ったデュエリスト、余程の事が無い限りはと思っていたがその『余程の事』、向こうの世界のアカデミアにもこっちの世界でのキサラみたいなデュエリストがいて、ソイツと遭遇してやられた、という事か…

 

「え、えーと…

そうだ、まだ其処の2人の事紹介して貰っていないし、海音、紹介して貰っても良い?湿っぽい話は此処までにして、ね?」

 

その事実が伝えられた事による重苦しい雰囲気を変えるべく(後、さっきから気になっていたのか)、柚子が2人の紹介を促して来た。

 

「そう言えばまだ紹介がまだだったな。サトシと比企谷八幡だ。2人ともデュエリストとしてはほぼ初心者だが実力は俺が保証するぜ」

「初めまして」

「うっす」

「こちらも自己紹介だ。ランサーズ最高指揮官、榊遊矢だ。ランサーズというのは、この世界におけるデュエルアカデミアによる侵略に対抗する為に結成された私兵組織の事だ。今後とも宜しく!」

「ランサーズ精鋭部隊『ARC-V』所属、柊柚子よ。宜しくね!」

「ARC-V所属、権現坂昇だ。宜しく頼む」

「ARC-V所属、上村一行だ。宜しくなァ!」

「ARC-V所属、冴木t「変態」だ、って誰だ被せたの!?」

「ARC-V所属、エレン・アヴェニールだ!宜しく頼むぜ!」

 

何か当麻の紹介の際に誰かが被せて来たがまあ合っているし良いか。

 

「あ、そうだ!海音兄ちゃん、この前の約束、覚えているか?」

 

と、自己紹介を終えるや否や、エレンが早速切り出して来た。

約束、というと別れ際の、アレか?

 

「そう言えば今度会ったらまたデュエルするって約束してたな」

「おう!早速だけどさ、デュエルしようぜ!」

 

本当に早速だな、まあこの世界ならではだが。

 

「ああいいぜ。だがもう一つの約束も忘れてないだろうな?」

「勿論さ!今回使うデッキは、このシンクロ次元ならではのデッキだ!」

「なら俺はこれでいこう。こいつは前回遊矢とのデュエルで使ったデッキだ。最もその時はこのデッキの真の力を発揮できなかったがな」

 

互いの口振りからして、エレンは『幻獣機』、海音は『バミューダ△』かな。

 

「おっしゃ、今からワクワクして来たぜ!遊矢兄ちゃん、デュエルフィールドの予約は大丈夫?」

「勿論だ!エレン、1度デュエルしたから分かっていると思うが、海音は相当なデュエリストだぞ。最初からクライマックスな気持ちで行けよ」

「OK!じゃ、行こうぜ海音兄ちゃん!」

「ああ」

 

そう言い、エレンと海音はデュエルフィールドへと行った。

俺達も観客席に移動するか。

 

------------

 

「行くぞ!」

「全力で行くぜ!」

「「デュエル!」」

 

こうして、エレンと海音のリターンマッチが、始まった…!



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Ex24話_エレンと海音のリターンマッチ

先攻 Kanon LP 4000 VS 後攻 Elen LP 4000

 

「俺のターン!

フィールド魔法『トライアングル学園』を発動!」

 

トライアングル学園(オリジナルカード)

フィールド魔法

『トライアングル学園』の4の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。

1:このカードがフィールドゾーンに存在する限り、フィールドのモンスターが効果で手札、エクストラデッキに戻される度に、1枚につきこのカードに♪♪(ハーモニー)カウンターを1つ置く。

2:♪♪カウンターが乗っているカードが戦闘及び効果でフィールドを離れる場合、そのカードに乗っていた♪♪カウンターと同じ数の♪♪カウンターをこのカードに置く。

3:このカードが破壊される場合、代わりにこのカードに乗っている♪♪カウンターを1つ取り除く事が出来る。

4:1ターンに1度このカードの♪♪カウンターを任意の個数取り除いて発動出来る。取り除いた数によって以下の効果を適用する。

●3つ:デッキから『トゥインクル・パウダー』または『プリズム・パール』1枚を手札に加える。

●10つ:デッキ・手札から『オリヴィア』儀式モンスター1体を儀式召喚する。

 

先攻となった海音が最初に発動したフィールド魔法、それによってフィールドは海の中となり、大きな学園が登場した、あれって確かバミューダ△のアイドル養成学校だっけ?

まあそれは置いて、効果を見ると、魔力カウンターが♪♪カウンターとなった『魔法都市エンディミオン』といった感じのフィールドだな。

 

「自分フィールドにモンスターが存在しない場合『BT(バミューダ・トライアングル)はじめての楽譜(ファーストレッスン)アカリ』は特殊召喚出来る!」

 

BT―はじめての楽譜アカリ(オリジナルカード)

ペンデュラム・効果モンスター/♪♪

水属性

魚族

レベル 2

守備力 300

 

そんなフィールドとなった中、海音が最初に呼び出したのは、快活な雰囲気全開な人魚の少女、アカリ。

 

「更に自分フィールドにバミューダ△が存在する場合『BT―ガールズロック・リオ』を守備表示で特殊召喚!ただしこの効果で特殊召喚したこのカードはエクストラデッキのモンスターの素材には出来ない」

 

BT―ガールズロック・リオ(オリジナルカード)

効果モンスター

水属性

魚族

レベル 4

守備力 1500

 

次に登場したのは、元気に満ち溢れたギタリスト少女、リオ。

どうでも良いがリオの足が明らかに人間のそれなのは、トゥインクル・パウダーの様な物をデフォルトで使っているからか?でなかったら明らかに魚族違うと訴える所だ。

 

「そしてこの瞬間アカリの効果を発動!奏でろハーモニー!

アカリが場にいる時に自分のモンスターを召喚、特殊召喚に成功した時に召喚したモンスターと自身に♪♪カウンターを1つずつ乗せる」

 

BT―はじめての楽譜アカリ ♪♪カウンター 0→1

BT―ガールズロック・リオ ♪♪カウンター 0→1

 

「アカリの効果発動!♪♪カウンターが乗っているこのカードをリリースすることで俺の場のリオを手札に戻しデッキから1枚ドローする!この瞬間ガールズロック・リオの効果発動!このカードがフィールドから手札に戻った場合、デッキから1枚ドローする!更にトライアングル学園の効果発動!フィールドのモンスターが手札に戻るたびにこのカードに♪♪カウンターを乗せる。更にフィールドの♪♪カウンターが乗ったモンスターがフィールドを離れた時、そのモンスターに乗っていた♪♪カウンターをこのカードに移す!」

 

トライアングル学園 ♪♪カウンター 0→2→3

 

うわぁ、回る回る。

ペンデュラムモンスターであるアカリをリリースした事でエクストラデッキが肥えたばかりでは無く、展開の要であろうトライアングル学園を発動している状態で手札を5枚にまで戻した(うち1枚はガールズロック・リオ)。

♪♪カウンターもいきなり3個、これでトライアングル学園の4の効果を適用出来る。

いやぁこの前のデュエル、余り動かれなかったのもあるが、グラビティ出しておいて良かった。

 

「マジックカード『ファースト・ライブ』!自分フィールドにモンスターが存在しない場合デッキからレベル4以下のバミューダ△を特殊召喚する!」

 

ファースト・ライブ(オリジナルカード)

通常魔法

『ファースト・ライブ』は1ターンに1度しか発動出来ず、このカードを発動するターン、自分は『BT』モンスターしか特殊召喚する事が出来ない。

1:自分フィールド上にモンスターがない時発動出来る。デッキ・手札からレベル4以下の『BT』モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したカードはエンドフェイズに手札に戻る。

 

「いでよ『BT―お散歩日和エミリア』!

ただし、このカードを使用したターン、俺はバミューダ△しか特殊召喚出来ない」

 

BT―お散歩日和エミリア(オリジナルカード)

効果モンスター

水属性

魚族

レベル 4

攻撃力 1700

 

一旦真っ新になった海音のフィールド、其処にバミューダ△版『独奏の第1楽章』と言って良い通常魔法の効果で登場したのは、ちょこんと被ったベレー帽が可愛い銀髪の、人魚の少女エミリア。

 

「更に再びリオを特殊召喚する!

自分フィールドにバミューダ△が2体以上存在する時『BT―プリンセス・レナ』を特殊召喚出来る!」

 

BT―プリンセス・レナ(オリジナルカード)

効果モンスター

水属性

魚族

レベル 7

攻撃力 2100

 

その後、リオが登場した直後に現れたのは、ピンク髪が特徴的な人魚の少女、レナ。

 

「このカードの特殊召喚に成功した時、このカード以外のバミューダ△を全て手札に戻し、攻撃力を戻したカードの数×300ポイントアップする」

 

BT―プリンセス・レナ 攻撃力 2100→2700

トライアングル学園 ♪♪カウンター 3→5

 

「再び手札に戻った事でリオの効果で1枚ドロー!さらにエミリアもリオと同じ様にフィールドから手札に戻った時に1枚ドローする!最もこっちは1ターンに1度だけだがな」

 

これで手札は6枚(その内、エミリアとガールズロック・リオが1枚ずつ)、通常召喚権もまだ使っていない、これ本当に先攻1ターン目の動きなのか?

 

「俺はスケール3の『BT―パールシスターズ・ペルラ』とスケール9の『BT―パールシスターズ・ペルル』でペンデュラムスケールをセッティング!」

 

Kanon

ペンデュラムスケール(青):3(BT―パールシスターズ・ペルラ)

ペンデュラムスケール(赤):9(BT―パールシスターズ・ペルル)

 

「だがまだペンデュラム召喚はしない。再びリオを特殊召喚。

ペルラのペンデュラム効果!1ターンに1度、自分フィールドのバミューダ△を手札に戻す!戻すカードはもちろんリオだ!」

 

トライアングル学園 ♪♪カウンター 5→6

 

「そしてペルルのペンデュラム効果!1ターンに1度バミューダ△がフィールドから手札に戻った時デッキから1枚ドローする!リオと合わせて2枚ドローする!」

 

また手札が6枚に戻ったか。

 

「マジックカード『デルタ・フュージョン』!」

 

デルタ・フュージョン(オリジナルカード)

通常魔法

『デルタ・フュージョン』の1、2の効果は1ターンに1度、どちらかしか使用出来ない。

1:自分の手札・フィールドから『BT』融合モンスターによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

2:このカードが墓地に存在する時、自分フィールドの『BT』モンスターが手札に戻った時、墓地のこのカードを手札に加える事が出来る。

 

「手札のエミリアと『BT―元気の魔法(マジカルチャージ)ウィータ』で融合!アクシデントのアイドルよ、生命を司るアイドルよ、2つのハーモニーに導かれ新たなアイドルを呼び起こせ!融合召喚!現れろ!美しく澄んだ声持つアイドル!『BT―未来の呼び声(ミラクル・ボイス)ローリス』!」

 

BT―未来の呼び声ローリス(オリジナルカード)

融合・効果モンスター/♪♪

水属性

魚族

レベル 8

攻撃力 2700

 

だがこれでは終わらないと言わんばかりに融合召喚、それによって登場したのは、オレンジ色の髪に音符を模したアクセサリを付けた人魚の少女、ローリス。

 

「リオを特殊召喚。この瞬間ローリスの効果発動!ローリスもアカリと同様に、フィールドにモンスターが召喚・特殊召喚される度に2体のモンスターに♪♪カウンターを乗せる!」

 

BT―未来の呼び声ローリス ♪♪カウンター 0→1

BT―ガールズロック・リオ ♪♪カウンター 0→1

 

うはぁ、これは凄まじいアド源になりそうだな。

 

「ローリスの効果発動!1ターンに1度、このカードに乗った♪♪カウンターを1つ取り除き、墓地のエミリアを除外する事で自分のモンスターを1体手札に戻し1枚ドローする。もちろん戻すのは当然リオだ。よって計2枚ドローする!更にモンスターが手札に戻った事でトライアングル学園にカウンターが乗る」

 

BT―未来の呼び声ローリス ♪♪カウンター 1→0

トライアングル学園 ♪♪カウンター 6→7→8

 

何気にリオが過労状態に陥っているな(汗

 

「『BT―着ぐるみ七変化・アルク』を通常召喚!」

 

BT―着ぐるみ七変化・アルク(オリジナルカード)

効果モンスター/チューナー

水属性

魚族

レベル 3

攻撃力 400

 

BT―未来の呼び声ローリス ♪♪カウンター 0→1

BT―着ぐるみ七変化・アルク ♪♪カウンター 0→1

 

で、通常召喚権を使って出したのは、アルクか。

 

「このカードの召喚に成功した時、墓地から『元気の魔法ウィータ』を守備表示で特殊召喚する!」

 

BT―元気の魔法ウィータ(オリジナルカード)

ペンデュラム・効果モンスター/♪♪

水属性

魚族

レベル 4

守備力 1400

 

BT―未来の呼び声ローリス ♪♪カウンター 1→2

BT―元気の魔法ウィータ ♪♪カウンター 0→1

 

アルクの効果で蘇生したのは、先程ローリスの融合素材となった、ふわふわなピンク髪が特徴的な人魚の少女、ウィータ。

 

「レベル4のウィータにレベル3のアルクをチューニング!無垢なる光よ。その輝ける魂と共に、友を照らす明星となれ!シンクロ召喚!レベル7!『BT―PRISM―I(イメージ)・ヴェール』!」

 

BT―PRISM―I・ヴェール(オリジナルカード)

シンクロ・効果モンスター

水属性

魚族

レベル 7

攻撃力 2300

 

BT―未来の呼び声ローリス ♪♪カウンター 2→3

BT―PRISM―I・ヴェール ♪♪カウンター 0→1

 

そのウィータとアルクによるシンクロ召喚の演出と共に登場したのは、ミニチュアサイズのシルクハットをちょこんと被り、ヒレの様な耳をした人魚の少女、ヴェール。

 

「リオを特殊召喚」

 

BT―未来の呼び声ローリス ♪♪カウンター 3→4

BT―ガールズロック・リオ ♪♪カウンター 0→1

 

なんか心なしかリオの息が上がっている気がするんだが…

 

「レベル7のヴェールとレナでオーバーレイ!その圧倒的な妹力は全ての兄の理想!エクシーズ召喚!ランク7!『BT―Duo理想の妹(トゥルー・シスター)・メーア』!」

 

BT―Duo理想の妹・メーア(オリジナルカード)

エクシーズ・効果モンスター

水属性

魚族

ランク 7

攻撃力 2800

ORU 2

 

BT―未来の呼び声ローリス ♪♪カウンター 4→5

BT―Duo理想の妹・メーア ♪♪カウンター 0→1

 

そんな俺の懸念を他所にエクシーズ召喚されたのは、理想の妹とはどんな存在か、を体現した様な人魚の少女、メーア。

しかしまあ本当に融合、シンクロ、エクシーズ、ペンデュラムを自在に操るとはな、しかもトライアングル学園の効果から儀式も出来る、凄まじい戦略(デッキ)戦術(プレイング)だな。

 

「エクシーズ素材になったヴェールの効果発動!

リオを手札に戻し1枚ドローする。もちろんリオの効果で更にドローする」

 

トライアングル学園 ♪♪カウンター 8→9→10

 

また手札が6枚になった上に、これでトライアングル学園に♪♪カウンターが10個乗った、つまりトライアングル学園の効果を全て使えるということか。

 

「俺はこのターンまだペンデュラム召喚を行ってない!魔の海域より聞こえし歌姫たちよ!今こそステージに浮上せよ!ペンデュラム召喚!現れろ、俺のモンスター達!エクストラデッキから元気の魔法ウィータ!手札から『BT―プリティセレブ・シャルロット』!そして、あらゆる生命が聞き惚れる深遠の唱姫!『BT―ベルベットボイス・レインディア』!」

 

BT―プリティセレブ・シャルロット(オリジナルカード)

効果モンスター

水属性

魚族

レベル 4

攻撃力 1700

 

BT―ベルベットボイス・レインディア(オリジナルカード)

ペンデュラム・効果モンスター

水属性

魚族

レベル 7

攻撃力 2500

 

BT―未来の呼び声ローリス ♪♪カウンター 5→6

BT―元気の魔法ウィータ ♪♪カウンター 0→1

BT―プリティセレブ・シャルロット ♪♪カウンター 0→1

BT―ベルベットボイス・レインディア ♪♪カウンター 0→1

 

まだまだ終わらんぞと言わんばかりにペンデュラム召喚で展開したのは、ウィータとシャルロット、そして物静かな雰囲気を纏わせる人魚の少女、レインディア。

 

「レベル4のウィータとシャルロットでオーバーレイ!碧海のおてんば小妖精!最高のハッピーをあなたに!エクシーズ召喚!ランク4!『BT―トップアイドル・パシフィカ』!」

 

BT―トップアイドル・パシフィカ(オリジナルカード)

エクシーズ・効果モンスター

水属性

魚族

ランク 4

攻撃力 2300→2500

ORU 2

 

BT―未来の呼び声ローリス ♪♪カウンター 6→7

BT―トップアイドル・パシフィカ ♪♪カウンター 0→1

 

其処からのペンデュラムエクシーズで呼び出したのは、金髪で某魔法少女を思わせる出で立ちをした人魚の少女、パシフィカ。

ん?何か、パシフィカの攻撃力が上がっているな。

 

「パシフィカの攻撃力はオーバーレイ・ユニットの数×100ポイントアップする。

トップアイドル・パシフィカの効果発動!1ターンに1度、墓地のアルクをこのカードのオーバーレイ・ユニットにする事でデッキから1枚ドローして手札1枚をデッキの一番下に置く」

 

BT―トップアイドル・パシフィカ ORU 2→3

                攻撃力 2500→2600

 

「トライアングル学園の効果!1ターンに1度、このカードに乗ってる♪♪カウンターを3つ取り除き、デッキから『トゥインクル・パウダー』か『プリズム・パール』の内どちらかを手札に加える。俺はプリズム・パールを選択し、そのまま発動!このカードが存在する限り俺のバミューダ△はカード効果では破壊されない。さらにフィールドにトライアングル学園が存在するなら、相手のカード効果の対象にもならない!」

 

プリズム・パール(オリジナルカード)

永続魔法

1:このカードがフィールド上に存在する限り、自分フィールド上の『BT』モンスターはカード効果では破壊されない。

2:自分フィールド上に『トライアングル学園』または『トゥインクル・パウダー』が存在する時、自分フィールド上の『BT』モンスターは相手のカード効果の対象に取られない。

3:このカードがフィールドから墓地に送られた場合、墓地から『BT』カード1枚を手札に加える。

 

トライアングル学園 ♪♪カウンター 10→7

 

うひゃぁ、最早ガチガチの布陣だなぁ。

 

「カードを2枚セット。リオを守備表示で特殊召喚してターンエンドだ」

 

BT―未来の呼び声ローリス ♪♪カウンター 7→8

BT―ガールズロック・リオ ♪♪カウンター 0→1

 

Kanon

LP 4000

手札 1

ペンデュラムスケール(青):3(BT―パールシスターズ・ペルラ)

ペンデュラムスケール(赤):9(BT―パールシスターズ・ペルル)

モンスター BT―未来の呼び声ローリス(攻撃表示)

      BT―Duo理想の妹・メーア(攻撃表示)

      BT―トップアイドル・パシフィカ(攻撃表示)

      BT―ベルベットボイス・レインディア(攻撃表示)

      BT―ガールズロック・リオ(守備表示)

魔法・罠カード セット×2

        プリズム・パール

フィールド魔法 トライアングル学園

 

さあ、エレンはこの布陣にどう対処するのか…

 

「うわぁ、流石は海音兄ちゃんと言った方が良いかな、すげぇ大軍…」

「まあ前回遊矢と戦った時は満足にプレイできなかった事もあるが、お前たちにこのデッキの本当の力を見せたかったからな。さあ次はお前のターンだ!今のお前の力を見せてみろ!」

「じゃあ行くぜ!俺のターン、ドロー!

まずは手札の『幻獣機オライオン』を墓地へ送って魔法『ワン・フォー・ワン』発動!」

「幻獣機か、これは少し予想外だな」

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

「ワン・フォー・ワンの効果でデッキから『幻獣機ウォーブラン』を守備表示で特殊召喚!」

「チューナーか」

 

幻獣機ウォーブラン

効果モンスター/チューナー

風属性

機械族

レベル 1

守備力 300

 

墓地へ送る事で本領を発揮するオライオンをコストにウォーブランをリクルートか、まあ定石だな。

 

「墓地へ送られたオライオンの効果発動!

『幻獣機トークン』を守備表示で特殊召喚!」

 

幻獣機トークン

風属性

機械族

レベル 3

守備力 0

 

で、墓地送りで誘発されるオライオンの効果でトークンを生成、破壊耐性で耐え抜く、と。

幻獣機においては基本のプレイングだ。

 

「墓地のオライオンを除外して効果発動!

『幻獣機テザーウルフ』を召喚!」

 

幻獣機テザーウルフ

効果モンスター

風属性

機械族

レベル 4→7

攻撃力 1700

 

何気に効果での召喚って中々有用だよな。

表示の自由は効かないし、上級モンスターを出すとなれば相応のリリースは必要だが、特殊召喚メタに強いし、今は召喚時に効果を発揮するカードも多い。

その有用性を活かしたのが沢渡の『妖仙獣』だな。

当然、今の効果で召喚したテザーウルフにもその条件で誘発される効果がある。

 

「召喚したテザーウルフの効果発動!

幻獣機トークンを守備表示で特殊召喚!」

 

幻獣機テザーウルフ レベル 7→10

 

まあ、幻獣機トークンを新たに生成するのだが。

 

「俺はレベル3の幻獣機トークン2体に、レベル1のウォーブランをチューニング!いざ飛び立て、超音速の翼!その速さ、神鳥の如し!シンクロ召喚、レベル7!『幻獣機コンコルーダ』!」

「来たか、シンクロモンスター!」

 

幻獣機コンコルーダ

シンクロ・効果モンスター

風属性

機械族

レベル 7

攻撃力 2400

 

そのトークンを用いてシンクロ召喚されたコンコルーダ、流石にあのデュエルの様な超音速飛行はしないよな。

 

「シンクロ召喚の素材に使ったウォーブランの効果発動!

幻獣機トークンを守備表示で特殊召喚!」

 

幻獣機テザーウルフ レベル 10→4→7

 

とはいえこれでテザーウルフとコンコルーダのレベルは揃った。

となれば…

 

「レベル7のモンスターが2体って事はあいつが来るか!」

「おう!俺はコンコルーダとテザーウルフでオーバーレイ!2体のレベル7モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!いざ飛び立て、強大なる翼!その威風堂々とした姿、竜の如し!『幻獣機ドラゴサック』!」

「やはり来たか」

 

幻獣機ドラゴサック

エクシーズ・効果モンスター

風属性

機械族

ランク 7

攻撃力 2800

ORU 2

 

やっぱエクシーズ召喚、それもドラゴサックだよな。

 

「ドラゴサックのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!

幻獣機トークンを2体、守備表示で特殊召喚!」

 

幻獣機ドラゴサック ORU 2→1

 

「更に幻獣機を1体リリースする事でフィールドを破壊する効果を持っている。だが俺の場にプリズム・パールが存在する限り俺のモンスターを破壊する事は出来ない!」

「慌てんなって。『幻獣機ブルーインパラス』を召喚!」

 

幻獣機ブルーインパラス

効果モンスター/チューナー

風属性

機械族

レベル 3

攻撃力 1400

 

まだ使っていなかった通常召喚権、それを使ってエレンが召喚したのは、航空自衛隊の曲技飛行隊『ブルーインパルス』をモチーフにした幻獣機。

 

「なるほど、トークンは新たなシンクロモンスターの素材か」

「ああ!それと、ブルーインパラスの召喚成功時に速攻魔法『リミッター解除』発動!」

「このタイミングでだと!?」

 

リミッター解除(制限カード)

速攻魔法

1:このカードの発動時に自分フィールド上に表側表示で全ての機械族モンスターは、ターン終了時まで攻撃力が倍になる。このターンのエンドフェイズ時、この効果を受けたモンスターを全て破壊する。

 

此処でリミッター解除か、となるとリカバー手段もあるのか?

 

「リミッター解除の効果で、ドラゴンサックたちの攻撃力を倍にする!」

 

幻獣機ドラゴサック 攻撃力 2600→5200

幻獣機ブルーインパラス 攻撃力 1400→2800

 

「俺はレベル3の幻獣機トークン2体に、レベル3のブルーインパラスをチューニング!いざ飛び立て、偉大なる翼よ!その力強さは、怪蛇の如し!シンクロ召喚、レベル9!『幻獣機ヤクルスラーン』!」

「レベル9の幻獣機か」

 

幻獣機ヤクルスラーン

シンクロ・効果モンスター

風属性

機械族

レベル 9

攻撃力 2700

 

成る程、ヤクルスラーンで破壊耐性を得るという事か。

シンクロ召喚の演出と共に登場したのは、蛇を思わせる姿の幻獣機、ヤクルスラーン。

 

「シンクロ召喚したヤクルスラーンの効果発動!

残った幻獣機トークンを1つリリースし、その握っている手札を捨てて貰うぜ!」

「良いのか、トークンを残しておかなくて?」

 

まあ確かに、幻獣機における重要なキーパーツである『幻獣機トークン』、今の効果でそれを0にしてしまうというプレイングは不可解に見えるだろう。

が、何の考えも無しにエレンがそうする筈も無い。

 

「どの道リミッター解除の効果でエンドフェイズに破壊されちまうからな。それにヤクルスラーンには、他の幻獣機モンスターを破壊から守る効果がある!更にリミッター解除の効果はヤクルスラーンには及んでいない、よって次の海音兄ちゃんのターン開始時、この布陣は維持される!まあ、何事も無ければの話だけど。セットカードまではどうしようも無いが、手札誘発の危険性は無くそうと思って、さ。

さて、おしゃべりは此処までにしてバトルフェイズに入るぜ!

ドラゴサックでパシフィカを攻撃!」

 

今のドラゴサックは、リミッター解除によって攻撃力が5200にもなっている、自らの効果で攻撃力が2600となったパシフィカであろうと、この攻撃が通れば大ダメージは確実だが…

 

「破壊耐性を付けてリミッター解除のデメリットを最小限に収める。中々のタクティクスだ。だが甘い!ペルラのペンデュラム効果!1ターンに1度、バミューダ△1体を手札に戻す!俺はパシフィカを選択!」

 

何事か起こった。

フリーチェーン効果だったペルラの効果によって、攻撃対象となっていたパシフィカは姿を消した。

 

トライアングル学園 ♪♪カウンター 7→8→9

 

「ま、まさかパシフィカにも手札に戻った時の効果が、去り際の投げキッス的な効果が…!」

「いったいどこをどうすればそういう思考になるんだ…

パシフィカはただ衣装チェンジしに行っただけだ。速攻魔法『RUM(ランクアップマジック)―ドレスアップ』!このターンにエクストラデッキに戻ったエクシーズモンスターを特殊召喚し、ランクの1つ高いバミューダ△にランクアップさせる!」

 

RUM―ドレスアップ(オリジナルカード)

速攻魔法

1:自分フィールドの『BT』エクシーズモンスターがフィールドからエクストラデッキに戻ったターンに発動出来る。このターン、エクストラデッキに戻ったエクシーズモンスター1体を選択して特殊召喚し、そのモンスターよりランクが1つ上の『BT』エクシーズモンスターを、その特殊召喚したモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。その後、このカードをこの効果で特殊召喚したエクシーズモンスターの下に重ねてエクシーズ素材とする。

 

まあ、其処はアイドルだからそういうファンサービスもあるかなって事で。

エレンの台詞にあれこれ言うのは此処までにして、結構変わった、だがバミューダ△らしいと言えばらしい条件が付いた代わりに発動回数制限が無くなった速攻魔法版『RUM―七皇の剣』と言った所か。

 

「俺はエクストラデッキに戻ったトップアイドル・パシフィカでオーバーレイ!時代が変わりしとも、その姿、歌声は全て余す所なく後世に語り継がれる!人々に夢と憧れを与え続ける永遠のアイドル!ランクアップエクシーズチェンジ!現れろ!ランク5!『BT―エターナルアイドル・パシフィカ』!その後このカードをパシフィカのオーバーレイ・ユニットにする!」

 

BT―エターナルアイドル・パシフィカ(オリジナルカード)

エクシーズ・効果モンスター

水属性

魚族

ランク 5

攻撃力 2900

ORU 2

 

BT―未来の呼び声ローリス ♪♪カウンター 7→8→9

BT―エターナルアイドル・パシフィカ ♪♪カウンター 0→1

 

忽然と姿を消したパシフィカ、だけど直ぐに、大人びた雰囲気を纏わせてフィールドに帰って来た。

 

「攻撃力5200となったドラゴサックを前にしてああまで言い切ったんだ、まさかパシフィカに、この盤面を何とかする効果が…!」

「その通りだ!エターナルアイドル・パシフィカの効果発動!バトルフェイズに1度、オーバーレイ・ユニットを1つ使い、フィールドのカードを2枚まで選択して手札に戻す!俺は2体の幻獣機を選択!」

「な、何だってぇ!?やっぱ何事か起こったぁ!」

「行けパシフィカ!シャイニング・プリズム・メイクアップ!」

 

トライアングル学園 ♪♪カウンター 9→11

 

そのパシフィカが放った光にドラゴサックとヤクルスラーンが包まれ、2体ともに消え、エレンのフィールドは丸裸となった。

メジャーな除去手段の1つである破壊への耐性は強い幻獣機だが、それ以外となると、やっぱりな。

 

「くぅー、やっぱ海音兄ちゃんは強いなぁ。カードを1枚セットしてターンエンドだ!」

 

Elen

LP 4000

手札 0

モンスター なし

魔法・罠カード セット

 

「俺のターン!ドロー!

このままバトル!ローリスでダイレクトアタック!」

「無駄だろうけど最後まであがく!永続罠『空中補給(エアリアル・チャージ)』発動!」

 

空中補給

永続罠

1ターンに1度、自分フィールド上に『幻獣機トークン』(機械族・風属性・レベル3・攻撃力0/守備力0)1体を特殊召喚出来る。このカードのコントローラーはお互いのエンドフェイズ毎に、自分フィールド上のトークンまたは『幻獣機』と名の付いたモンスター1体をリリースする。または、どちらもリリースせずにこのカードを墓地へ送る。

 

まあ確かに無駄かも知れんな、これは。

コイツを出した所でパシフィカの効果でバウンスされるのが関の山って奴だ。

だが最後まであきらめない姿勢は、今後の戦いにおいても武器になるぜ、エレン。

 

「空中補給の効果で幻獣機トークンを守備表示で特殊召喚!」

「そのまま続行だ!」

 

BT―未来の呼び声ローリス 攻撃力 2700 VS 幻獣機トークン 守備力 0

 

「続いてレインディアでダイレクトアタック!ディープ・テンプテーション!」

「うぉ!?」

 

Elen LP 4000→1500

 

「エターナルアイドル・パシフィカでダイレクトアタック!シャイニング・プリズム・スプラッシュ!」

「ひでぶ!」

 

Elen LP 1500→-1400 LOSE

 

WINNER Kanon



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Ex25話_ソラトとサトシのデュエル

『お邪魔しています、遊矢さん。今のデュエル、見させて貰いました。アイドル達の絆は凄いですね』

BT(バミューダ・トライアングル)、素晴らしい展開でしたわ。数多のアイドルがフィールドと言う名の会場を沸かせる、そんな盤面。異世界のデッキは、カードカテゴリは面白いですわね」

 

海音の圧倒的な勝利で幕を閉じた、エレンと海音のリターンマッチ、それが終わったのを見計らった様に、何時の間にか観客席に入っていたソラトとティリエルが声を掛けて来た。

てか異世界のデッキって、

 

「まあ何時から来たかは敢えて突っ込まないが、そんな情報何処から仕入れたんだ?まだコイツらがこの世界に来て幾ばくも経っていないが」

「あら、私達はこれでもこのシティのトリプルスター、鬼柳京介のマネージャーですわ。情報収集の手腕無くしては務まりませんわよ」

 

まあ何となく想像は付くが。

 

「それで遊矢さん、彼らが件の、異世界から来たお客様ですか?」

「ああ。紹介しよう、サトシと比企谷八幡だ。詳しくはまあ、今デュエルしていたあの女の子みたいな奴に聞いて欲しいが、2人共その子、海音の仲間だ。2人共、コイツらはソラトとティリエル、このシティでトップクラスのプロデュエリスト、鬼柳京介のマネージャーをしている。あ、ソラトは色々な事情で喋れなくてさ、デュエルディスクを通じてコミュニケーションを取っている。その辺りは一応頭に入れておいてくれ」

『ソラト・アイゼンです。宜しくお願いします』

「ティリエル・アイゼンですわ。本日こうして異世界の壁を越え、この場で出会えた事、光栄に思いますわ」

「初めまして、俺はサトシです」

「どうも」

 

その2人と、サトシと八幡を紹介、互いに自己紹介した直後に八幡から如何にも関わってくんな的なオーラが吹き出して来た。

どんだけ人と関わりたくないんだお前は。

 

『それで、遊矢さん。出来れば僕達も、彼らとデュエルをしたいのですが、フィールドを借りても良いでしょうか?』

「良いぜ、まあ向こうの返答次第だがな。そっちはどうだ?」

「いいぜ。俺もさっきのデュエルを見ていたらやりたくてうずうずしていたところなんで!」

「すみませんが俺は遠慮しt「あ」」

 

そんな八幡の様子を知ってか知らずか、ソラトが彼らにデュエルを申し込もうとする。

サトシは快諾した一方、八幡が恐らく拒否の返答をしようとしたその時だった。

 

「あら、御免あそばせ。うっかり手を滑らせて、デュエルディスクに搭載していたデュエルアンカーを射出してしまいましたわ」

 

ティリエルが(本人曰くうっかり)デュエルアンカーを射出、それが八幡の腕に絡みついてしまったのだ。

ティリエル、お前それ絶対ワザとだろ?

 

「申し訳御座いませんわ八幡様、そのデュエルアンカー、デュエルをしないと外れない構造になっているのですわ」

 

如何にも申し訳なさそうな文言で謝罪するティリエル、だがその口調は明らかに棒読みだった。

 

「あの~壊すのはだめですか?」

「私に死ねとおっしゃられるのですか!?」

 

何でそうなる?

 

「はぁ…

わかりました。やればいいんでしょ」

 

だがこのままでは埒があかないと判断したのか、結局は八幡もデュエルする事を承諾してくれた。

 

「それでは遊矢さん、デュエルフィールドをお借りしますわ」

『それでは行きましょうか、サトシさん。全力で行かせて貰いますよ!』

「こっちこそ全力で行くぜ!」

「はぁ…」

「おう。全力で楽しんで来いよ」

 

そして4人はデュエルフィールドへと向かった。

ん?そういえば一行の姿が何処にも見えないな、一体何処行ったんだが…

 

------------

 

Side ????

 

『先攻はどうぞ。貴方の全力デュエル、僕に見せて下さい!』

「なら遠慮なくいくぜ!」

「『デュエル!』」

 

先攻 Satoshi LP 4000 VS 後攻 Sorath LP 4000

 

「俺のターン!

DI(ダークイレギュラーズ)―イエロー・ボルト』を召喚!」

 

DI―イエロー・ボルト(オリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 3

攻撃力 1000

 

ソラトとサトシのデュエル、最初にサトシが呼び出したのは、電気を纏った黒ずくめの青年、イエロー・ボルト。

 

「効果発動!

このカードを守備表示にしてデッキの上から1枚を除外する!

このターン俺は通常召喚に加えてダークイレギュラーズモンスターを召喚出来る。『DI―ディメンジョン・クリーパー』を召喚!」

 

DI―ディメンジョン・クリーパー(オリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 3

攻撃力 1200

 

イエロー・ボルトの効果で得た通常召喚権を用いて、サトシが次に呼び出したのは、何処からどう見てもスライムな悪魔、ディメンジョン・クリーパー。

 

「俺はイエロー・ボルトとディメンジョン・クリーパーでオーバーレイ!現れろ!ランク3!『DI―愛の嵐 キスキル・リラ』!」

 

DI―愛の嵐 キスキル・リラ(オリジナルカード)

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

悪魔族

ランク 3

攻撃力 2200

ORU 2

 

今しがた出した2体を用いてエクシーズ召喚したのは、暗色系のボディスーツに身を包んだ淫魔(サキュバス)、キスキル・リラ。

 

「オーバーレイ・ユニットのディメンジョン・クリーパーの効果発動!このカードを取り除き、デッキの上から2枚をキスキル・リラのオーバーレイ・ユニットにする!」

 

DI―愛の嵐 キスキル・リラ ORU 2→1→3

 

「カードを1枚伏せてターンエンドだ!」

 

Satoshi

LP 4000

手札 2

モンスター DI―愛の嵐 キスキル・リラ(攻撃表示)

魔法・罠カード セット

 

『ダークイレギュラーズ、闇夜の無法者、といった所ですか。その名に恥じない、異様な雰囲気のモンスター達ですね。ならば僕は、太陽の如く光輝くモンスター達をお見せしましょう!

僕のターン!ドロー!

ですがその前に、そのセットカードを始末させて貰います!魔法『ギャラクシー・サイクロン』発動!』

 

ギャラクシー・サイクロン

通常魔法

『ギャラクシー・サイクロン』の2の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。

1:フィールドにセットされた魔法・罠カード1枚を対象として発動出来る。そのカードを破壊する。

2:自分メインフェイズに墓地のこのカードを除外し、フィールドの表側表示の魔法・罠カード1枚を対象として発動出来る。そのカードを破壊する。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動出来ない。

 

「破壊効果か!だったらリバースカードオープン!トラップカード『スキル・プリズナー』!キスキル・リラを対象に発動!」

 

スキル・プリズナー

通常罠

自分フィールド上のカード1枚を選択して発動出来る。このターン、選択したカードを対象として発動したモンスター効果を無効にする。

また、墓地のこのカードをゲームから除外し、自分フィールド上のカード1枚を選択して発動出来る。このターン、選択したカードを対象として発動したモンスター効果を無効にする。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動出来ない。

 

「このターン、キスキル・リラを対象に発動したモンスターの効果を無効にする!」

 

先攻1ターン目にエクシーズモンスターをエクシーズ召喚し、セットカード1枚でターンを明け渡したサトシ、対するソラトはそのセットカードを除去しようとギャラクシー・サイクロンを使うも、サトシのセットカードは、フリーチェーンでカード1枚にモンスター効果耐性を付けるスキル・プリズナーであった。

だがソラトの表情は平静その物だった。

 

『良いでしょう、通します。どの道、これでセットカードは無くなりましたから。

次にデッキの上から3枚墓地へ送って魔法『光の援軍』発動!』

 

光の援軍(準制限カード)

通常魔法

1:自分のデッキの上からカードを3枚墓地へ送って発動出来る。デッキからレベル4以下の『ライトロード』モンスター1体を手札に加える。

 

『光の援軍の効果で『ライトロード・サモナー ルミナス』を手札に加えます!

此処で、光の援軍のコストで墓地へ送られた『ライトロード・ビースト ウォルフ』の効果発動!

このカードを攻撃表示で蘇生します!』

「だったら手札から『増殖するG』の効果発動!このターン、相手が特殊召喚する度に1枚ドローする!」

 

ライトロード・ビースト ウォルフ

効果モンスター

光属性

獣戦士族

レベル 4

攻撃力 2100

 

次に発動したライトロードのサーチエンジン兼墓地肥やし要員こと『光の援軍』、その効果は勿論コストすらもライトロードにとっては大いに役立った事から、未だ準制限に指定されているカード、その効果で展開の要と言って良いルミナスをサーチしたばかりか、コストで墓地送りとなったウォルフも自己再生した。

だがサトシもそれを黙って見てはいない、ウォルフの自己再生効果にチェーンする形で発動した『増殖するG』の効果で牽制する。

 

『此処で増Gですか…

ですが僕は動きます!たった今サーチした『ライトロード・サモナー ルミナス』を召喚!』

 

ライトロード・サモナー ルミナス

効果モンスター

光属性

魔法使い族

レベル 3

攻撃力 1000

 

無論、たった今サーチしたルミナスも出さない理由は無い。

 

『今召喚したルミナスの効果を、手札を1枚捨てて発動!

さっきの光の援軍のコストで墓地へ送られていた『ライトロード・アサシン ライデン』を攻撃表示で蘇生します!』

 

ライトロード・アサシン ライデン

効果モンスター/チューナー

光属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1700

 

「増殖するGの効果で1枚ドロー!」

 

その効果で蘇生したのは、これまたライトロードの墓地肥やし要員であるライデン。

 

『今蘇生したライデンの効果発動!

デッキの上から2枚墓地へ送り…

ライトロードカードがその中に無かったので追加効果は無しですね。

僕はレベル4のウォルフと、レベル3のルミナスに、レベル4のライデンをチューニング!或る人は言っていました、太陽が素晴らしいのは塵さえも輝かせることだ、と。太陽をも取り込んだこのドラゴンが、貴方のフィールドに輝きを授けましょう!シンクロ召喚、レベル11!『星態龍』!』

 

星龍態

シンクロ・効果モンスター

光属性

ドラゴン族

レベル 11

攻撃力 3200

 

「レベル11のシンクロモンスターだって!?Gの効果で1枚ドロー!」

 

3体並んだライトロードモンスターを用いてソラトがシンクロ召喚したのは、まるで太陽を取り込んだかの様な姿のドラゴン。

 

『それではバトルフェイズに入ります!

星龍態でキスキル・リラを攻撃!サンバースト・ブレス!』

「キスキル・リラのオーバーレイ・ユニットになっていたダーク・ソウル・シールドの効果!このカードをエクシーズ素材にしているダークイレギュラーズエクシーズモンスターが戦闘・効果で破壊される場合、代わりにオーバーレイ・ユニットを2つ取り除く事で破壊を無効にする!」

『変わった付き方をした破壊耐性ですね。ですが、ダメージは受けて貰います!』

 

星龍態 攻撃力 3200 VS DI―愛の嵐 キスキル・リラ 攻撃力 2200

 

Satoshi 4000→3000

DI―愛の嵐 キスキル・リラ ORU 3→1

 

星龍態が口から放った、眩い光のブレスがキスキル・リラを取り込もうとするも、彼女の前に出現した漆黒のエネルギーシールドがそれを防ぐ。

だがその衝撃までは防ぎきれなかったのか、その余波がサトシに降りかかった。

 

『カードを2枚セットしてターンエンドです!』

 

Sorath

LP 4000

手札 1

モンスター 星龍態(攻撃表示)

魔法・罠カード セット×2

 

「俺のターン!ドローカード!

マジックカード『ダーク・ソウル・リターン』!その効果でゲームから除外されている『DI―退廃のサキュバス』を特殊召喚する!」

『させません!ライフを半分払ってカウンター罠『神の宣告』発動!その魔法は無効にさせて貰います!』

 

ダーク・ソウル・リターン(オリジナルカード)

通常魔法

『ダーク・ソウル・リターン』の2の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。

1:このカードが『DI』モンスターの効果でデッキから除外された場合、このカードを手札に加える。

2:ゲームから除外されている『DI』モンスター1体を対象に発動出来る。そのカードを特殊召喚する。

3:このカードをエクシーズ素材にしている『DI』エクシーズモンスターは以下の効果を得る。

●このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した場合、ゲームから除外されている『DI』モンスターまたは『ダーク・ソウル』カード1枚を選択して手札に加える。

 

神の宣告(制限カード)

カウンター罠

1:LPを半分払って以下の効果を発動出来る。

●魔法・罠カードが発動した時に発動出来る。その発動を無効にし破壊する。

●自分または相手がモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚する際に発動出来る。それを無効にし、そのモンスターを破壊する。

 

Sorath LP 4000→2000

 

2ターン目を迎えたサトシ、最初に除外されているモンスターを帰還させる魔法カードを発動しようとするも、ソラトはそれを許さない。

 

「だったら『DI―グウィン・ザ・リッパー』を召喚!」

 

DI―グウィン・ザ・リッパー(オリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 4

攻撃力 1400

 

「モンスター効果発動!このカードの召喚・特殊召喚に成功した場合、相手のマジック・トラップカードを1枚破壊出来る。残りの伏せカードも破壊だ!」

『墓地のスキル・プリズナーを除外して効果発動!同じカードを使っているんです、説明は必要ないですよね?この効果でこのターン、セットカードを対象にしたモンスター効果を無効にします!』

 

ならばと、緑色の肌をし、黒ずくめのライダースーツの様な服装で、身体から刃を生やした青年を召喚、その効果でセットカードを破壊しようとするも、これまた突如出現したバリアに阻まれる。

 

「これも防がれたか。なら次はこいつだ!自分フィールドにダークイレギュラーズが存在する時『DI―アモンの眷属ヘルズ・ドロー』を特殊召喚出来る!」

 

DI―アモンの眷族ヘルズ・ドロー(オリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 4

守備力 1700

 

「このカードが場に出た時、デッキの上から2枚を除外、またはダークイレギュラーズモンスターのオーバーレイ・ユニットにする事が出来る!」

『さっきのダーク・ソウル・シールドみたいなカードがオーバーレイ・ユニットになると厄介ですね…

まずはその効果を、手札の『エフェクト・ヴェーラー』を捨てて無効にします!

それにチェーンして罠『貪欲な瓶』発動!』

 

貪欲な瓶

通常罠

『貪欲な瓶』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:『貪欲な瓶』以外の自分の墓地のカード5枚を対象として発動出来る。そのカード5枚をデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから1枚ドロー!

 

『貪欲な瓶の効果で、僕の墓地にある神の宣告、エフェクト・ヴェーラー、『ソーラー・エクスチェンジ』、光の援軍、そしてウォルフをデッキに戻し、ドロー!

その後改めて、ヴェーラーの効果でヘルズ・ドローの効果は無効となります!』

 

だったら今度は、と言わんばかりに、世間一般でサキュバスという存在をイメージするとこんな感じ、という風貌の淫魔、ヘルズ・ドローを特殊召喚、その効果を使うも、先程キスキル・リラを守ったあの盾の存在を警戒したソラトの手札から放たれた霧みたいな物が纏わりついてその効果発動を妨害、更にソラトの墓地にあった5枚のカードがデッキに戻って行き、ソラトの手札が再び1枚になった。

 

「だがこれでもう邪魔をするカードは無くなった!マジックカード『ダーク・ソウル・サルベージ』!」

 

ダーク・ソウル・サルベージ(オリジナルカード)

1:このカードが『DI』モンスターの効果でデッキから除外された場合、このカードを手札に加える。

2:自分フィールドの『DI』エクシーズモンスターのエクシーズ素材になっている『DI』モンスター、または『ダーク・ソウル』カードを1枚選択して発動する。そのカードを手札に加える。

3:このカードをエクシーズ素材にしている『DI』エクシーズモンスターは以下の効果を得る。

●1ターンに1度、墓地から『DI』モンスター、または『ダーク・ソウル』カードを1枚選択して発動する。そのカードを手札に加える。

 

「キスキル・リラのオーバーレイ・ユニットから『ダーク・ソウル・ボウショクスル』を手札に加える!そしてそのまま発動!このカードは互いの墓地からカードを4枚まで選びキスキル・リラのオーバーレイ・ユニットにする!」

 

DI―愛の嵐 キスキル・リラ ORU 1→0

 

ダーク・ソウル・ボウショクスル(オリジナルカード)

通常魔法

『ダーク・ソウル・ボウショクスル』の2、3の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用する事が出来ない。

1:このカードが『DI』モンスターの効果でデッキから除外された場合、このカードを手札に加える。

2:自分フィールドに『DI』エクシーズモンスターが存在する時に発動出来る。お互いの墓地から4枚を選択して『DI』エクシーズモンスターのエクシーズ素材にする。

3:このカードをエクシーズ素材にしている『DI』エクシーズモンスターは以下の効果を得る。

●相手モンスターを破壊した場合、そのモンスターをこのカードのエクシーズ素材にする。

 

「俺の墓地からダーク・ソウル・サルベージを、お前の墓地から『超電磁タートル』、『ブレイクスルー・スキル』、ギャラクシー・サイクロンの3枚をオーバーレイ・ユニットに!」

『なっ!?くっ…!』

 

DI―愛の嵐 キスキル・リラ ORU 0→4

 

だがサトシも妨害され放題では無い、ソラトのセットカードが無いという隙を突き、2枚の魔法カードによってソラトの墓地ソースを荒らした。

ダーク・ソウル・ボウショクスルの効果でキスキル・リラのオーバーレイ・ユニットになったソラトのカードは、いずれも墓地でその本領を発揮するカード、故に今の時点でその力は使えない。

 

「オーバーレイ・ユニットになった『ダーク・ソウル・サルベージ』の効果!1ターンに1度、墓地から『ダーク・ソウル・リターン』を手札に加える!

魔法カード『セブンストア』!」

 

セブンストア(アニメオリジナルカード)

通常魔法

1:自分フィールド上に表側表示で存在するモンスターエクシーズ1体をリリースして、自分のデッキからカードを1枚ドローする。更に、この効果でリリースしたモンスターエクシーズのエクシーズ素材の数だけ、自分のデッキからカードをドローする。

 

「キスキル・リラをリリースしてデッキから1枚ドローする!更にリリースしたモンスターのオーバーレイ・ユニットの数だけ更にドローする!オーバーレイ・ユニットの数は4枚!よって更に4枚ドローする!」

『オーバーレイ・ユニットの数だけドローって、凄まじいドローソースですね…

ですがこれでさっき吸収した僕のカードは墓地へm』

「おっとそうは行かないぜ。ダークイレギュラーズエクシーズモンスターには共通する効果を持っている。自身がフィールドを離れる時、自身のオーバーレイ・ユニットは墓地に行かずゲームから除外される」

『なっ!?』

 

そしてそのキスキル・リラがフィールドを離れた時の効果で、ソラトの墓地にあった3枚は除外、使う事が一層困難となった。

 

「このカードで決める!俺はレベル4のグウィン・ザ・リッパーとヘルズ・ドローでオーバーレイ!地獄の門より這い出でて、悪しき力を振るえ!エクシーズ召喚!現れろ!ランク4『DI―魔界侯爵アモン』!このカードの攻撃力はオーバーレイ・ユニットの数×100アップする!」

 

DI―魔界侯爵アモン(オリジナルカード)

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

悪魔族

ランク 4

攻撃力 2000→2200

ORU 2

 

そうなればサトシにとって展開する際の障害は無いも同じ、フィールドにいたモンスター2体を用いたエクシーズ召喚で、想像を絶する程の威圧感を放つ悪魔、アモンが登場した。

 

「アモンの効果発動!手札のダークイレギュラーズをこのカードのオーバーレイ・ユニットにする事で相手はモンスター1体を破壊しないといけない!お前の場には星態龍しかいない。そのモンスターを破壊してm」

『あ、それヴェーラーで』

 

DI―魔界侯爵アモン 攻撃力 2200→2000

 

その秘めたる力が解放されようとした、が、またもソラトの手札から放たれた霧によって妨害された。

 

「なっ2枚目だと!?いやさっき貪欲な瓶でデッキに戻したのを引き戻したのか!?

俺はゲームから除外されている『退廃のサキュバス』の効果発動!このカードをアモンのオーバーレイ・ユニットにする!」

 

DI―魔界侯爵アモン ORU 2→3

 

「更に装備魔法『ストイック・チャレンジ』をアモンに装備!装備モンスターの攻撃力をオーバーレイ・ユニットの数×600アップさせる!」

 

ストイック・チャレンジ

装備魔法

エクシーズ素材を持っているエクシーズモンスターにのみ装備可能。

装備モンスターの攻撃力は自分フィールド上のエクシーズ素材の数×600ポイントアップし、相手モンスターとの戦闘によって相手ライフに与える戦闘ダメージは倍になる。また、装備モンスターは効果を発動出来ない。

このカードは相手のエンドフェイズ時に墓地へ送られる。

このカードがフィールド上から離れた時、装備モンスターを破壊する。

『ストイック・チャレンジ』は自分フィールド上に1枚しか表側表示で存在出来ない。

 

DI―魔界侯爵アモン 攻撃力 2000→3800

 

それでも何とかソラトのフィールドにいる星態龍を何とかしようと、サトシは装備魔法によってアモンを強化する。

 

「バトル!アモンで星態龍に攻撃!ストイック・チャレンジの効果で戦闘ダメージは2倍にする!」

『くっ!』

 

DI―魔界侯爵アモン 攻撃力 3800 VS 星態龍 攻撃力 3200

 

Sorath 2000→800

 

「カードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

Satoshi

LP 3000

手札 4

モンスター DI―魔界侯爵アモン(攻撃表示)

魔法・罠カード ストイック・チャレンジ(装備対象:DI―魔界侯爵アモン)

        セット

 

『僕のターン!ドロー!っ…

どうやら、僕の負けの様ですね。ですが、デュエルは最後までやり通させて貰います!

2枚目のギャラクシー・サイクロン発動!そのセットカードを破壊します!

僕はこのままターンエンドです!』

「エンドフェイズ、ストイック・チャレンジの効果でアモンは破壊される」

 

Sorath

LP 800

手札 0

モンスター なし

魔法・罠カード なし

 

「俺のターン!

『DI―ドリーン・ザ・スラスター』を召喚!」

 

DI―ドリーン・ザ・スラスター(オリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 3

攻撃力 1300

 

そして、手札もフィールドも真っ新となったソラトにトドメを刺すべく召喚されたのは、黒ずくめの服装に身を包んだエルフの少女。

 

「バトル!ドリーンでダイレクトアタック!」

『良いデュエルでした!またいつか、機会があれば戦いましょう!』

 

Sorath 800→-500 LOSE

 

WINNER Satoshi



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Ex26話_ティリエルと八幡のデュエル

Side ????

 

「先攻はお譲りしますわ。貴方のデュエルタクティクス、私に見せて下さいませ」

「へぇい」

「あ、そうそう、適当にやって敗北、という選択肢を選ぶのなら覚悟なさいませ。先程貴方に絡みついたデュエルアンカーですがダメージ発生時、与えたダメージの大きさと電圧が比例した電流が流れる機能がオプションで設定出来るのですわ。もし一撃必殺級のダメージが通れば、その電圧は死刑執行具である電気椅子に匹敵しますわ。今言った様な敗退行為をなさられている様子なら…後は、分かりますわね?」

「わっ分かりまちた!」

「「デュエル!」」

 

先攻 Hachiman LP 4000 VS 後攻 Tiriel LP 4000

 

ソラトとサトシのデュエルが始まろうとしていた同時刻、デュエルアンカーの誤射(という名のワザと)が切っ掛けでこちらもデュエルする事となったティリエルと八幡、やる気充分なティリエルの一方、先攻を譲られた八幡の口調からはやる気の「や」の字も感じられなかったが、それを見逃す程ティリエルは甘くなく、デュエルアンカーのオプション機能を持ち出して本気を出す事を強要する。

とはいえデュエルアンカーから放出される電流の電圧は電気椅子並といっても、それで処刑する為には被執行者で閉回路(電流の流れが確立されている回路)を作り上げなければならず(実際に電気椅子はヘルメット上の電極を頭部に、足首にもう1つの電極をそれぞれ取り付ける事で作り上げている)、腕にしか電極が無く閉回路となっていない以上死に至る可能性はほぼ無いのだが、その字面のインパクトは大きく、八幡はカミカミになりながらも応じた。

 

「俺のターン。

魔法カード『プリマチュアー・フュージョン』」

 

プリマチュアー・フュージョン(オリジナルカード)

『プリマチュアー・フュージョン』の1の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。

1:エクストラデッキから『GB(グランブルー)』融合モンスター1体を墓地に送る。その後デッキから、墓地に送ったモンスターよりもレベルが半分以下の『GB』モンスター1体を選択して墓地に送る。

2:墓地のこのカードを除外して効果発動出来る。『GB』融合モンスターによって決められた融合素材モンスターを自分の墓地から除外し、その融合モンスター1体をエクストラデッキまた墓地から融合召喚する。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動出来ない。

 

「エクストラデッキから『GB―流氷の剣士ナイトスノウ』を墓地に送り、そのカードのレベルの半分以下のGBモンスター『GB―冥界の操舵手』を墓地に送る」

「フュージョンと名の付いた魔法に、複数枚もの墓地肥やし…

どうやら貴方のデッキ『GB』は、墓地肥やしを主戦術とした融合主体のデッキですわね?」

「そうですね」

 

その八幡が最初に発動した魔法の効果処理を見届け、ティリエルは八幡の戦略(デッキ)を推理した。

実際ティリエルの身近にも墓地のモンスターを用いた融合召喚を用いるデュエリストが、それによって登場する融合モンスターをエースとした存在がいる、それ故に即座に推理出来たのであろう。

 

「魔法カード『二重融合(ダブルフュージョン)』。ライフを500支払ってこのターン融合召喚を2回行う」

 

二重融合(アニメオリジナルカード)

通常魔法

500ライフポイントを払って発動する。このターン、下記の効果を2回行う事が出来る。

●手札・自分フィールド上から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「手札の『GB―お化けのとみー兄弟(ブラザーズ)』と『GB―デッドリーナイトメア』で『GB―お化け大王おばだいあ』を融合召喚」

 

GB―お化け大王おばだいあ(オリジナルカード)

融合・効果モンスター

水属性

アンデット族

レベル 5

守備力 2600

 

その後発動した融合魔法の1回目の効果によって呼び出したのは、雪だるまの様な身体で王冠を被った亡霊、おばだいあ。

 

「GB―お化けのとみー兄弟とGB―お化け大王おばだいあの効果発動。おばだいあの効果でデッキからGBを3枚墓地に送る。この効果で『亡霊(ホロウ)』モンスターを2枚以上送った場合、墓地からレベル2以上のお化けを特殊召喚する。GB―お化けのとみー兄弟を特殊召喚」

「『おろかな埋葬』3枚分と『死者蘇生』って、可愛い割にえげつない効果ですわね…」

「そうですね」

 

GB―お化けのとみー兄弟(オリジナルカード)

効果モンスター

水属性

アンデット族

レベル 3

守備力 1300

 

融合召喚されたおばだいあの、とんでもない爆アド振りに呆れる様に呟いたティリエルを他所に、緑色の体躯で海賊の様な恰好をした亡霊、とみー兄弟が墓地から蘇った。

尚、おばだいあの効果で墓地へ送られたモンスターは『GB―倦怠の呪術師ネグロレイジー』、『GB―スケルトンの砲撃手』、『GB―悪霊竜ガストドラゴン』、全て『亡霊』モンスターである。

 

「GB―お化けのとみー兄弟の効果。このカードが融合召喚の素材になって墓地に送られた場合、墓地からグランブルーを1枚手札に加える。デッドリーナイトメアを手札に。二重融合の効果で2回目の融合を行う。場のGB―お化けのとみー兄弟と手札のGB―デッドリーナイトメアで『GB―七海覇王ナイトミスト』を融合召喚」

 

GB―七海覇王ナイトミスト(オリジナルカード)

融合・効果モンスター

水属性

アンデット族

レベル 7

攻撃力 2400

 

その後、既に発動していた融合魔法の2回目の効果によって呼び出したのは、如何にも海賊団のキャプテンだと言わんばかりの男、ナイトミスト。

 

「とみー兄弟の効果でネグロレイジーを手札に。

墓地のGB―冥界の操舵手の効果。1ターンに1度融合召喚に成功した時、墓地からこのカードを特殊召喚する」

 

GB―冥界の操舵手(オリジナルカード)

効果モンスター

水属性

アンデット族

レベル 1

守備力 0

 

更にナイトミストの登場に呼応するかのように、墓地から操舵手の様な服装をした亡霊が墓地から這い上がって来た。

 

「ナイトミストの効果。1ターンに1度、墓地からモンスターが特殊召喚した時にデッキから1枚ドローする。墓地のデッドリーナイトメアの効果。冥界の操舵手をリリースして墓地から特殊召喚する」

 

GB―デッドリーナイトメア(オリジナルカード)

効果モンスター

水属性

アンデット族

レベル 3

守備力 1000

 

その冥界の操舵手と入れ替わる形で蘇生したのは、軍馬の亡霊、デッドリーナイトメア。

 

「デッドリーナイトメアのもう1つの効果。このカードをナイトミストの装備カードにして攻撃力を1000アップする」

 

GB―七海覇王ナイトミスト 攻撃力 2400→3400

 

「カードを1枚伏せてターンエンド」

 

Hachiman

LP 3500

手札 2(うち1枚は『GB―倦怠の呪術師ネグロレイジー』)

モンスター GB―お化け大王おばだいあ(守備表示)

      GB―七海覇王ナイトミスト(攻撃表示)

魔法・罠カード GB―デッドリーナイトメア(装備対象:GB―七海覇王ナイトミスト)

        セット

 

「結構な展開力ですこと。では次は私の番ですわね。

私のターン!ドロー!

まずは『森羅の水先リーフ』を召喚!」

 

森羅の水先リーフ

効果モンスター

水属性

植物族

レベル 3

攻撃力 1500

 

後攻となったティリエルが最初に呼び出したのは、彼女のデッキにおいて重要な墓地肥やし要員、リーフ。

 

「召喚したリーフの効果を発動しますわ。

デッキの上から2枚めくって…

どちらも植物族モンスターでしたから、2枚とも墓地へ送りますわ。

墓地へ送られた『ダンディライオン』の効果発動!

私のフィールドに『綿毛トークン』2体を守備表示で特殊召喚!」

 

綿毛トークン

風属性

植物族

レベル 1

守備力 0

 

その墓地肥やし効果で墓地へと送られたダンディライオンの効果により、2体の綿毛トークンが出現した。

 

「同じく墓地へ送られていた『グローアップ・バルブ』の効果発動!

デッキの一番上を墓地へ送り、このカードを守備表示で蘇生しますわ!」

「とりあえずナイトミストの効果で1枚ドローする」

 

グローアップ・バルブ

効果モンスター/チューナー

地属性

植物族

レベル 1

守備力 100

 

次に登場したのは、長らく禁止カードに指定されていた自己再生能力持ちのチューナー、グローアップ・バルブ。

だが八幡も此処で、ナイトミストの効果でデッキからカードを1枚ドローした。

 

「私はレベル3のリーフと、レベル1の綿毛トークン2体に、レベル1のグローアップ・バルブをチューニング!地獄に咲き誇る野薔薇の女王よ、己が縄張りを荒す不届き者を排除しなさい!シンクロ召喚、レベル6!『ヘル・ブランブル』!」

 

ヘル・ブランブル

シンクロ・効果モンスター

光属性

植物族

レベル 6

攻撃力 2200

 

今しがた登場した4体のモンスターを用いてシンクロ召喚したのは、侮れないロック効果を持つヘル・ブランブル。

 

「1つ言って置きますわ。このヘル・ブランブルがフィールドにいる限り、お互いに手札から植物族ではないモンスターを召喚・特殊召喚するには、1体につき1000ライフポイントを払わないといけませんわ。ですが私のデッキには植物族モンスターしかありませんので、事実上コストを払うのは貴方のみ、となりますわね。

さて、まだまだ終わりませんわ。さっきのグローアップ・バルブの効果で墓地へ送られた『にん人』の効果を、手札の『薔薇恋人(ラヴァ―)』を墓地へ送って発動!

このカードを守備表示で蘇生しますわ!」

 

にん人

効果モンスター

闇属性

植物族

レベル 4

守備力 0

 

まだ終わらない、そう言いながらティリエルは自己再生能力を持ったにん人を蘇生させる。

 

「更にたった今墓地へ送られた薔薇恋人を除外して効果発動!

手札から『森羅の仙樹レギア』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

森羅の仙樹レギア

効果モンスター

炎属性

植物族

レベル 8

攻撃力 2700

 

ティリエルの展開はまだまだ続く、薔薇恋人の効果で登場させたのは、森羅の最上級モンスターであり、森羅におけるドローソースであるレギア。

 

「レギアの効果発動!

デッキの一番上をめくって…

植物族モンスターでしたから、墓地へ送り、ドロー!

墓地へ送られた『森羅の姫芽君スプラウト』の効果発動!レベルは4ですわ。

それにチェーンして手札の『森羅の賢樹シャーマン』の効果発動!

まずはシャーマンの効果で、このカードを攻撃表示で特殊召喚!」

 

森羅の賢樹シャーマン

効果モンスター

風属性

植物族

レベル 7

攻撃力 2600

 

「次にスプラウトの効果で、このカードをレベル4モンスターとして守備表示で蘇生しますわ!」

 

森羅の姫芽君スプラウト

効果モンスター

光属性

植物族

レベル 1→4

守備力 100

 

レギアの効果で送られたスプラウトと、森羅モンスターが墓地へ送られた事で誘発されたシャーマンの効果がチェーンして発動され両者共に特殊召喚、ティリエルのフィールドはごった返して来た。

無論、そんな状況を活かさない手は無い。

 

「私はにん人とスプラウトでオーバーレイ!2体のレベル4モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れなさい、No.50!強大なる大砲を有した帆船よ、今こそ戦場に出航し、敵に壊滅的な打撃を与えなさい!『ブラック・コーン号』!」

 

No.50ブラック・コーン号

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

植物族

ランク 4

攻撃力 2100

ORU 2

 

「ブラック・コーン号のオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!

おばだいあを墓地へ送り、貴方に1000ダメージを与えますわ!」

 

Hachiman LP 3500→2500

 

その内、レベル4となっているにん人とスプラウトをエクシーズ素材としてブラック・コーン号をエクシーズ召喚、その効果でおばだいあを墓地へ送りつつ1000ポイントのバーンダメージを八幡に与える。

 

「そしてシャーマンの効果発動!

デッキの一番上をめくり…

植物族モンスターですから墓地へ送りますわ。

墓地へ送られた『森羅の影胞子ストール』の効果発動!

装備カードとなっているデッドリーナイトメアを破壊しますわ」

 

GB―七海覇王ナイトミスト 攻撃力 3400→2400

 

そしてシャーマンの効果で墓地へ送られたストールによって、ナイトミストに装備されていたデッドリーナイトメアは破壊され、その攻撃力は2400となった。

 

「それではバトルフェイズに入りますわ!

シャーマンでナイトミストを攻撃!」

「手札の『GB―お化けのちゃっぴー』の効果。このカードを墓地に送り攻撃を無効にする。その後デッキからグランブルー1体を墓地に送る」

 

そのままシャーマンの攻撃でナイトミストが破壊される、そう思われたが、八幡の手札から飛び出した海賊姿の幽霊が身代わりとなった。

 

「ならば次はレギアでナイトミストを攻撃!」

「『リビングデッドの呼び声』を発動」

 

リビングデッドの呼び声

永続罠

1:自分の墓地のモンスター1体を対象としてこのカードを発動出来る。そのモンスターを攻撃表示で特殊召喚する。このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは破壊される。そのモンスターが破壊された時にこのカードは破壊される。

 

「墓地から『GB―スケルトンの砲撃手』を特殊召喚。このカードが場に出た時にこのカードに亡霊カウンターを1つ置く」

 

GB―スケルトンの砲撃手(オリジナルカード)

効果モンスター/亡霊

水属性

アンデット族

レベル 4

攻撃力 1200

 

GB―スケルトンの砲撃手 亡霊カウンター 0→1

 

「また、このカードが墓地から特殊召喚に成功した場合、相手フィールドのカードを1枚破壊する。レギアを破壊。更にこのカードに亡霊カウンターが乗っている場合1枚ドローする」

「なっ!?まさかナイトミストを残されるとは…!」

 

だがティリエルのフィールドにはモンスターが残っている、その1体であるレギアが追撃しようとしたが、墓地から這い上がって来た骸骨の砲撃手が自らの大砲でレギアを砲撃、これによってナイトミストを突破出来るモンスターはいなくなった。

 

「仕方ありません、此処は少しでもダメージを与えますわ!ヘル・ブランブルでスケルトンの砲撃手を攻撃!」

 

ヘル・ブランブル 攻撃力 2200 VS GB―スケルトンの砲撃手 攻撃力 1200

 

Hachiman LP 2500→1500

 

「私はこのままターンエンドですわ」

 

Tiriel

LP 4000

手札 3

モンスター ヘル・ブランブル(攻撃表示)

      No.50ブラック・コーン号(守備表示)

      森羅の賢樹シャーマン(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

「ドロー。

『融合』を発動」

 

融合

通常魔法

1:自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「手札のネグロレイジーとピスケガレオンで『GB―夜霧の吸血姫ナイトローゼ』を融合召喚」

 

GB―夜霧の吸血姫ナイトローゼ(オリジナルカード)

融合・効果モンスター

水属性

アンデット族

レベル 7

攻撃力 2500

 

八幡のターンとなり、彼は早速、海賊の女キャプテンと言わんばかりの姿をした吸血鬼、ナイトローゼを融合召喚した。

 

「墓地の冥界の操舵手の効果でこのカードを墓地から特殊召喚して、ナイトミストの効果で1枚ドロー。

墓地の『GB―流氷の剣士ナイトスノウ』の効果、フィールドのGB融合モンスターを含むカードを墓地へ送り、このカードを融合召喚する。俺はナイトミストと冥界の操舵手を墓地に送り『GB―流氷の剣士ナイトスノウ』を融合召喚」

「墓地から融合召喚ですって!?墓地のモンスターを素材に使う融合召喚は聞いた事がありますが…」

 

GB―流氷の剣士ナイトスノウ(オリジナルカード)

融合・効果モンスター

水属性

アンデット族

レベル 6

攻撃力 2300

 

ティリエルが驚くのも無理は無い、融合召喚は普通、エクストラデッキの融合モンスターを呼び出す為の手段であって、墓地の融合モンスターを蘇生する手段では無いからだ(『再融合』も実態は普通の蘇生である)。

だが今しがた出て来た、寒々とした雰囲気を纏わせる剣士ナイトスノウはそれを行う能力を有する、彼は先程の魔法カードでエクストラデッキから直接墓地へ送られはした、つまり蘇生制限を満たしていなかったのだが、今の特殊召喚は融合召喚である為、そんな物は関係ない。

 

「ナイトミストの効果、このカードが融合召喚の素材になった時に墓地からGB2体を特殊召喚する。『GB―悪霊竜ガストドラゴン』と『GB―倦怠の呪術師ネグロレイジー』を特殊召喚。この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力は1000アップし、エンドフェイズに破壊する」

 

GB―悪霊竜ガストドラゴン(オリジナルカード)

効果モンスター/亡霊

水属性

アンデット族

レベル 8

攻撃力 2600→3600

 

GB―倦怠の呪術師ネグロレイジー(オリジナルカード)

効果モンスター/亡霊

水属性

アンデット族

レベル 4

攻撃力 1400→2400

 

「更にこの2体の特殊召喚に成功した事でこの2体に亡霊カウンターを乗せる」

 

GB―悪霊竜ガストドラゴン 亡霊カウンター 0→1

GB―倦怠の呪術師ネグロレイジー 亡霊カウンター 0→1

 

八幡の展開は止まらない、融合素材となったナイトミストの効果で、竜が悪霊と化した姿、ガストドラゴンと、一見人の様に見えるがその実、所々異形である事を知らしめる器官を有する呪術師ネグロレイジーが姿を現した。

 

「ネグロレイジーの効果、このカードが場に出た時、フィールドにナイトローゼが存在するなら墓地からモンスター1体を特殊召喚出来る。墓地からGB―スケルトンの砲撃手を特殊召喚。更にこの効果を使用したターン攻撃力を200アップする。そしてスケルトンの砲撃手の特殊召喚に成功した事で2つの効果が発動。このカードに亡霊カウンターを1つ置き、森羅の賢樹シャーマンを破壊、亡霊カウンターが乗っているため1枚ドロー」

 

GB―倦怠の呪術師ネグロレイジー 攻撃力 2400→2600

GB―スケルトンの砲撃手 亡霊カウンター 0→1

 

更にそのネグロレイジーの効果によって、先程戦闘破壊されたスケルトンの砲撃手も蘇生、その砲撃で今度はシャーマンが木っ端微塵となった。

 

「スケルトンの砲撃手を墓地に送りGB―デッドリーナイトメアを特殊召喚し、ナイトローゼに装備」

 

GB―夜霧の吸血姫ナイトローゼ 攻撃力 2500→3500

 

「ナイトローゼの効果、1ターンに1度、墓地からGB―七海覇王ナイトミストを特殊召喚。この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力をエンドフェイズまで200アップする」

「な、何とも凄まじい展開力ですわね。やはり異世界のデュエリストとの、未知のデッキとのデュエルは面白いですわね」

 

GB―七海覇王ナイトミスト 攻撃力 2400→2600

 

そしてナイトローゼの効果により、先程融合素材となったナイトミストが蘇生し、これで八幡のフィールドには上限である5体のモンスター、その全てがヘル・ブランブルの攻撃力を上回っている。

その圧倒的な展開力に、ティリエルはむしろ感心していた。

 

「バトル、ネグロレイジーでブラック・コーン号に攻撃」

 

GB―倦怠の呪術師ネグロレイジー 攻撃力 2600 VS No.50ブラック・コーン号 守備力 1500

 

「ガストドラゴンでヘル・ブランブルに攻撃、ガストドラゴンの効果、攻撃時デッキの上から2枚墓地に送り攻撃力を300アップ、亡霊カウンターが乗っているなら更に500アップする」

 

GB―悪霊竜ガストドラゴン 攻撃力 3600→4400 VS ヘル・ブランブル 攻撃力 2200

 

Tiriel LP 4000→1800

 

「ナイトローゼでダイレクトアタック」

「参りました、素晴らしいデュエルタクティクスでしたわ」

 

Tiriel LP 1800→-1700 LOSE

 

WINNER Hachiman

 

「はい、これで取れましたわ。今回は私達とデュエルして頂き、ありがとうございました。GB、何とも面白いデッキですわね」

 

デュエルが終わり、八幡の腕に絡みついていたデュエルアンカーが外れた事を確認したティリエルは、八幡にデュエルの礼を言う。

 

『お疲れ、ティリエル。サトシさんのDI(ダークイレギュラーズ)も面白かったよ。僕の妨害を潜り抜けて突破するあの爆発力、凄かったなぁ』

「へぇ、それは有意義でしたわね、お兄様」

 

其処に、ほぼ同時刻にデュエルを終わらせていたソラトがやってきて、ティリエルとたった今行われたデュエルの感想を交わしていた。

 

『さて皆さん、遊矢さん達の所へ戻りましょうか、ん…?』

「あれ、遊矢さん達の姿が見えませんわね、何処か出掛けられたのかしら…?」

 

その後、遊矢達の所に戻ろうと提案しようとしたソラトだったが、観客席の異変に気付き、ティリエルも同様に気付いた。

先程まで観客席にいた筈の遊矢達がいないのだ。

彼らは何処へ行ったのか…



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Ex27話_遊矢の想い、海音の想い

注:今話では遊矢が吐き気を催す位邪悪です(今に始まった事では(ry)。


Side 一行

 

「よォ、海音。ちょっと話があるンだが、いィか?」

「お前は一行だったか。話ってなんだ?」

「…此処じゃァちょっとな、付いて来てくれ」

 

エレンと海音のデュエルが終わり、デュエルフィールドから出て来た海音を、俺は呼び止めた、コイツには1つ、話してェ事があったから。

今から話す事は俺達ARC-Vや社長さンといった極一部しか知らねェ重要機密、それを平行世界の存在な海音に話すのがどういう事か、まだ14年しか生きていねェ俺でも分かる。

この前アカデミアがこのシティに大規模侵略を仕掛けて来た際に遊矢が考案・実行した『アンドバリの指輪』作戦、シティの治安維持局長官であるロジェが、自らの懐刀としてサイボーグ化して抱えていたセルゲイを、遊矢設計の素体に組み換え、その能力で大規模な仲間割れをアカデミアに引き起こすという外道極まりねェ作戦、それが外部にリークされたとなれば重大な罪、例え漏らした相手が海音であろォとそれは変わらン、だがそれでも俺は話さなきゃならねェ、遊矢に道を踏み外させねェ為にも。

 

実行前、俺達ARC-Vと社長さンに遊矢からこの作戦の概要が聞かされた時、俺と当麻、そして権現坂はこぞって反対した。

相手が幾らアカデミアだからって、外道極まりない『侵略者(テロリスト)』だからって、そンな事をしていィのか、ンな事したらアカデミアと一緒じゃねェか、とさ。

まァそン時は、遊矢の反論に何も返せなかったンだが。

確かに、遊矢がいィてェ事は分かる、アカデミアの方はこれを戦争、いや野蛮極まりねェ『ハンティングゲーム』のつもりで来る、こっちが生半可な対応で臨んじゃァこのシティの連中の命を、笑顔を守る事は出来ねェって事くらいは分かる。

そンな決断をしなきゃァならねェ程嘗ての遊矢が、色ンな連中の命が、笑顔が失われる様を見て来たってェのも知っている。

 

だが、俺にはそンな作戦を簡単に思いつき、躊躇なく実行しよォとした遊矢が、すげェ怖かった。

なンつーか、ドンドン俺達の知っている遊矢からかけ離れて行くよォな、そンな感じがして、さ…

その遊矢を引き戻せるタイミングは、ひょっとしたら海音達が来ている今しかねェかも知れねぇ。

俺や当麻、権現坂はその経緯を知っている、知っちまっているから上手く説得出来ねェし、柚子や社長さンは何故か最初から賛成しちまっている、今遊矢を引き戻せるのは、海音しかいねェかも知れねェ…!

 

「此処は俺が滞在している部屋だ、まァ入ってくれ」

 

とりあえず俺が滞在している部屋でいィか、と思い、海音を中に招き入れる。

 

「それで話ってなんだ?」

「…」

 

…しかし、いざ話そうってェタイミングになると、イマイチ言ィ出しにくいな。

だが此処で躊躇しちゃァ、遊矢を引き戻す事なンざ叶わねェ、腹を括るしかねェ!

そう決意した俺は、アンドバリの指輪作戦の概要を海音に打ち明けた。

 

「…確認しておくが、お前達はこの作戦を最初から知っていたのか…」

 

話を聞いた海音は、その可愛らしィ見た目の何処から出て来るンだって位の威圧感を放ちながら、怒りを抑えた様子で俺に聞いて来た。

その威圧感に驚き、冷や汗を垂らしながらも、俺は答える。

 

「遊矢からそれを知らされたのは、迎撃準備に入る前のブリーフィングの時、つまり最初から知っていた。無論、俺も当麻も、権現坂もそンな作戦には反対だった」

「…だがお前達はそれを止める事が出来なかった…違うか…」

 

それに対する海音の更なる問い、それに俺は答えられなかった。

幾ら反対していたからって、結局実行されてしまったのには変わりねェから、な…

 

「ふざけるな!」

 

俺の返答に怒りが収まらかったンだろう、海音は怒声を上げながら壁をぶン殴っていた。

 

「お前達がどれだけの罪深い事をやったのか分かっているか!確かにアカデミアの連中がやってる事は許される事じゃない。だがな、だからと言ってお前達が何をしてもいいわけにはならないんだよ!アカデミアの連中だってお前達と同じ人間で、心があるのだぞ!それをお前らは…

やり方は違うがお前達も目的の為なら手段を選ばないアカデミアと同じだ!」

 

ンなこたァ分かっている、俺だって、俺達だってそォ言って遊矢を説得したンだ…!

だが結局止められなかった、なら…!

 

「ハァ…ハァ…それで、何故俺にこんな話をしたんだ?」

「お前に頼みがある、遊矢を説得して欲しィ、遊矢をちゃンとした道に引き戻して欲しィンだ!お前の言う通り俺も当麻も同罪だ、説教たれる資格なンざねェ、権現坂はなンか納得しちまったみてェだし、柚子や社長さンに至っては最初から賛成しちまっている、今お前達が来てくれたこのタイミングしかねェ、お前にしか頼めねェンだ!」

 

アイツの経緯を知っちまった俺には、ぶっちゃけ無理だ、だがそのしがらみがねェ海音なら…

 

「自分が説得出来ないから俺に説得してくれだぁ…

同罪だから説得する資格が無いだと?ざけんじゃねぇ!本当に説得させたいなら例え何を言われようが何度でも言って止めるべきだろ!たとえそれでお前が孤独になろうがな!お前はただ遊矢や仲間との関係が壊れるのが怖かっただけだろ!だがお前は説得を諦めた!それは心のどこかで納得してしまったんだろ!そもそも俺はこの件に関しては全くの無関係なんだぞ!俺が来てくれたこのタイミングしかないだぁ…

都合が良すぎなんだよ!ちっ時間の無駄だったな、邪魔するぞ!」

 

…分かってらァ、俺が遊矢との仲が壊れるのが怖い事、心のどっかで納得している事、こんな頼み事が都合よすぎる事、全て…!

やっぱ、遊矢を全うな道に引き戻すのは…!

 

「…だが、俺自身、あいつのやり方は間違っているのも事実。とりあえず一発ぶん殴らないと気が済みそうにないな」

「っ!?す、すまねェ、海音…!」

「勘違いするな。これはお前に頼まれたから説得するんじゃない。ただ個人的にムカついただけだ。それで今後どうなろうがお前次第だ。覚悟だけはしておくんだな」

 

そォ言い残して、海音は出て行った。

どォするか、か…

 

------------

 

Side ????

 

一行から『アンドバリの指輪』作戦に関する話を聞いた海音はその足で遊矢がいるであろう観客席に向かうと案の定、其処には遊矢が1人で、今しがた始まったばかりのソラトとサトシ、ティリエルと八幡のデュエルを観戦していた。

 

「ん?海音か」

「遊矢、お前に聞きたい事があるのだが」

「聞きたい事、か…何だ?」

「『アンドバリの指輪』についてだ」

「…それを何処で知った?」

「そんなことはどうでもいい。何故こん『少し黙って貰おうか、火野海音』ング!?ンー!ンー!」

『アストラル、良い判断だよ。全く困るなぁ、海音。そんな話を大っぴらにしちゃあさ』

 

その遊矢に近づいた海音は早速、アンドバリの指輪作戦に関して遊矢を問いただそうとしたが、突如その口が閉じたまま動かなくなってしまう。

突如として口が動かない、いや頭全体と、口と顎が何か見えない物によって抑え込まれたような力を感じた海音、そう、遊矢の相棒であるアストラルが咄嗟に左手で海音の頭、右手で口と顎を包み込み、抑え込んだのだ。

遊矢にしか見えないと言っても良いアストラルだからこそ出来た、達人顔負けのCQCである。

 

「此処じゃあれだから、場所を変えよう。付いて来い、其処で話そう」

 

そう言いながら遊矢は席を立ち、海音を連れてとある部屋へと向かって行った。

 

「よし、此処が良い。此処なら誰かが入って来る事は無いだろうし、防音もばっちりだ」

 

歩いて数分、遊矢達は施設の片隅にある非常用物品の保管庫へと来た。

そこの鍵を開けて遊矢達は入室、戸締りを確認してから海音を口封じしていたアストラルにアイコンタクトを送り、その拘束を解かせた。

 

「っ!はぁ…はぁ…いったい何のつもりだ…」

「誰から聞いたかは検討が付いているから敢えて聞かないが、アンドバリの指輪作戦関連の情報が重要機密だと言うのは分かっているだろ?それを公の場でペラペラと喋られる訳には行かないんでね、少し手荒な真似をさせて貰った。さてさっきの、アンドバリの指輪作戦を実行した理由だったな。このシティ、シンクロ次元、其処に住まう人達、そしてランサーズメンバー、皆の命を、皆の『笑顔』を守る為だ」

「笑顔…だと…」

 

身の回りの状況を確認した遊矢は、先程の海音からの質問に答えるが、その言葉は、

 

「ふざけるな!何が笑顔だ!お前がやった事なんてただの洗脳を使った一方的な戦争じゃないか!」

「そうだ、これは戦争だ。少なくとも向こうは、アカデミアはその積りでこのシティに大軍を送り込んで来んだ、俺はそれによる被害を未然に防ぐためにこの作戦を実行した」

 

海音の怒りに火を付けた。

その怒りを遊矢にぶつける海音、だが遊矢はそれに対し涼し気な様子でさっきと同じ様な事を話すだけだった。

 

「だからと言って、こんなやり方は間違っている!お前は自分が何をやっているのか分かっているのか!」

「ああ、こんなの正しいわけが無い。この作戦を正しいと真顔で言える奴は正真正銘のクズだな。あ、俺も似た様な物か」

 

尚も怒りをぶつける海音、それでも遊矢は飄々とした様子で応じるだけ。

 

「狂ってやがる…」

「今更か?こんな作戦を発案し、実行に移す奴がまともな訳ない事位、猿でもわかるだろ?」

 

その様子にそう吐き捨てるしか無かった海音、其処に遊矢はその神経を逆なでするかの様な発言を真顔で言い放った。

 

「…少なくても人間として最低限の自覚はあると思っていたが…

どうやら手遅れのようだな」

「手遅れ、か…

確かに、とっくの昔に人間辞めた様な物だしな」

 

だが、それに対する海音の言葉に、遊矢は何処か遠い目をしていた。

それは遊矢として生まれる以前の事を、思い出していたのだろうか…

 

「お前はいったい…」

「それに答えるのは後で良いか?どうせ知った所で、お前のこれからと関わりない事だろうからな。

さて、色々と好き放題言ってくれた様だが、逆に聞こう。

 

正しいやり方ってなんだ?あの状況でどの様な手段を取るのが最善及び最良だったんだ?お前のそのまともな頭で考え、そしてキチガイな俺に分かる様に説明してくれ」

 

それに疑問を持った海音の問い掛けを一旦遮り、遊矢は海音に質問する。

 

「悪いが俺はそんなに頭は良い方じゃないから正しいやり方なんて分からん。だがこれだけは言える。お前のやり方は間違ってる。少なくとも俺ならお前のやり方をするくらいなら普通にデュエルで倒していく方がまだましだ!そもそもお前はアカデミアをどうしたいと思っているんだ」

 

それに対する海音の答え、それに対して何か引っ掛かる物があったのか、遊矢の目が若干細くなったが、そのまま海音の問いに答える。

 

「これはあくまで理想だが、デュエル戦士とのデュエルを通じて、デュエルの、デュエルモンスターズの真理を思い出し、己の行いの愚かさに気付き、そしてその刃を収めてくれたらとは思っている。そして融合次元、アカデミアの皆が過ちに気付き、そしてデュエルの真理を思い出し、デュエルを通じて純粋な笑顔に満ち溢れたら、そう願っている」

「笑顔だぁ?お前はそのアカデミアから笑顔を奪っていて何を言う!」

「あくまで理想だ、そう言っただろ。だが現実問題として、アカデミアはこれを戦争として、各次元に大規模な戦力を送り込んできている。俺はランサーズの最高指揮官として、このシティに、シンクロ次元に住まう大多数の人達の命を、その笑顔を守る義務があるし、俺自身も守りたいと思っている。確かに理想は理想で目指すべきだ。だがその理想は、現実から目を背ける為の免罪符じゃないんだ。お前はさっき、俺のやり方をするくらいなら普通にデュエルで倒していく方がまだましだ、そう言ったな?

 

 

 

バカヤロー!甘ったれてんじゃねぇよクソガキ!テメェがチマチマと1人1人デュエルで倒している間、他の連中が好き放題に暴れるという危険が、ソイツが罪も抵抗する力も無い数多の一般市民を面白半分に殺戮し、カード化する危険がまるで入っていねぇじゃねぇか!それとも何か、これは戦争だと臨んで襲って来た1人のデュエル戦士の命は、そんな覚悟が出来る訳無い数多の一般人より重いっていうのか!?デュエル戦士1人を笑顔にする為に、数多の一般人が、沢山の笑顔が犠牲になっても良いっていうのか!?テメェの方がよっぽどクズだ!オエッ何か吐き気して来やがった、同族嫌悪って奴かな…?」

 

そして、その答えを独りよがりだと受け止めていた遊矢もまた怒りを爆発させ、海音にそれをぶつける。

だが、海音も言われ放題では無い。

 

「…確かにお前の言う通りだ。1人1人倒していたら被害が広まる一方だろうな。

だがな…それでもお前のやり方は間違っている。例えこの世界の人間が納得しても俺はお前を否定する!そもそもこうやって隠れないとまともに話もできない時点でお前はこの作戦を公表していないことになる。つまりお前の仲間の中には何も知らない奴もいるって事だよな。もしこの事を知ったらいったいどう思うだろうな」

「どう思う、か。まあ予想は付くが、聞こうか」

「信じていた人がまさかこんな手を使っていたなんてと思い、お前の元を離れるかもな。そのせいでランサーズの結束力にも大きなひびも入るだろうな。最も今のお前には仲間なんて必要じゃ無いだろうがな」

「仲間が必要ない?何を言って…」

「だってお前のやり方を使えば相手が勝手に同士討ちしてくれるからな。むしろ作戦が知られる恐れがある仲間なんていらないんじゃないのか?」

 

作戦の概要が重要機密である事の真意を読み取り、その点を問いただしていく。

だがそれに対して遊矢は、トンデモ無い事を言い放つ!

 

「確かに、ランサーズメンバーの大半は実力面で選んだ連中、俺も信頼し切れない部分はある、シティの一般市民は尚の事だ、故にアンドバリの指輪作戦に関して知っているのはごく一部だ、それが明るみに出た時、お前の言う通りの事が起こるだろう。

 

だが仲間は必要だ!どんなに強烈な能力を持っていたって、どんなに狡猾な頭を持っていたって、1人で出来る事は極限られている!第1デュエルは相手がいなきゃ成立しない!

 

それに何か今、俺がこの作戦の情報が明るみになるのを、それでたった1人になるのを恐れている的な事を言っていたみたいだが、別に俺は1人じゃ無い。柚子も零児も、権現坂もフォースハウンドの皆も、俺のクズ過ぎる面を知って尚、慕ってくれている。いざとなればこの重要機密を公表し、踏み絵にするのもアリだな。雨降って地固まるということわざの様に、俺のクズな一面に触れて尚慕ってくれる、そうしてランサーズの結束を揺るぎない物とする手段として、な。

お前にそんな、力的な意味でも情的な意味でも、心の底から寄り添える存在はいるのか?あぁ、いたらあんな独りよがりな、クズの自覚が無い偽善者ぶった回答が出る訳無いな、櫂もレナも、情的な意味では兎も角、アカデミアにあっさり負ける辺り、力的には信用ならなくなっちゃったしなぁ」

 

仲間の大切さを声高に叫んだ、かと思えば海音の問いを軽くあしらい、挙げ句に櫂やレナをも嘲笑する。

そんな遊矢の姿に、海音は一瞬、言葉に詰まったが、

 

「…お前の言う通りかもな…

俺は特別な力もずば抜けた能力も無いただの人間だ。更に言ってしまえば俺のいた世界では俺は1人だったし、お前の様にどれだけ残酷なことをしてもついて行ってくれる様な関係でも無い…

どうでもいいことだがデッキが2つあれば1人でデュエルはできるし…

だがな…

 

 

 

そんな事は関係ない!お前に言う事はただ1つ…

お前のやり方は間違ってる!例えお前に何を言われようがその事だけは変わらない!」

 

そう、言い放った。

その言葉に対して遊矢は笑みを浮かべ、

 

「へぇ、あれだけ言いたい放題言われようと、その独りよがりを、甘さを、偽善を貫く積りか。面白い!なら構えろ、デュエルだ!お前のその覚悟の程、デュエルで俺に見せろ!」

 

デュエルを挑むべく、デュエルディスクを構えた、が、

 

「だが断る!」

 

海音はそれを断った。

 

「ほぉ?何故だ?」

「何故なら例え俺が勝ったとしてもお前は自分の考えを曲げる気は無いのだろ。つまりやる意味が無い。それにこの問題はデュエル以前に人としての問題だ。何でもかんでもデュエルで解決できると思ったら大m「お前に拒否権など無い」なっ!?こいつは…どういうつもりだ!」

 

その理由を海音が答えたその時、遊矢のデュエルディスクからデュエルアンカーが射出され、避ける暇も無く(避けようとしたところで、背後のユベルが拘束する構えだが)右腕に絡みついてしまった。

 

「お前が勝ったとしても俺は自分の考えを曲げる気は無い?当然だ、そしてそれはお前も同じ、そうだろう?だが、やる意味が無い?勘違いするな、意味は大いにある。このデュエルはどっちが正しいかを決める闘争(バトル)じゃない、今言った様に、お前の覚悟の程を俺が見る為の試験(テスト)だ。試験に拒否権が存在すると思っているのかマヌケがぁ!そうやって元の世界でも逃げるなら逃げるが良いさ、つまりそれはお前がその甘さを、偽善を貫く覚悟も無い嘘つき、卑怯者って事の証明だからな!」

「はぁ…結局こうなる定めか…」

 

その状況にデュエルせざるを得ないと判断した海音もまたデュエルディスクを構え、

 

「「デュエル!」」

 

デュエルはスタートした。



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Ex28話_遊矢と海音の(虚しき)リターンマッチ、そして…

Side ????

 

先攻 Kanon LP 4000 VS 後攻 Yuya LP 4000

 

「俺のターン。

マジックカード『強欲で貪欲な壺』。デッキの上から10枚を裏側で除外して2枚ドローする」

 

強欲で貪欲な壺

通常魔法

『強欲で貪欲な壺』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:自分のデッキの上からカード10枚を裏側表示で除外して発動出来る。自分はデッキから2枚ドローする。

 

先攻となった海音が最初に発動したのは、嘗てのデュエルモンスターズにおいて必須カードとまで言われた『強欲な壺』と、未だに多くのデッキで困った時のドローソースとして重宝されている『貪欲な壺』が合わさった物、そして今新たなるドローソースとして注目されているカード。

それによって海音は手札を6枚に補充する。

 

「『N(ぬばたま)―忍竜コクジョウ』を召喚。このカードの攻撃力は互いの裏側で除外されたカードの数×200アップする」

 

N―忍竜コクジョウ(オリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 4

攻撃力 1700→3700

 

その補充から始まる海音の展開、最初に登場させたのはコクジョウ、普段は下級モンスターでも微妙な攻撃力しか無い彼だが、その効果によって攻撃力を倍以上にアップさせる。

 

「自分フィールドにぬばたまが存在する時『N―忍竜ドレットマスター』は特殊召喚出来る。更に自分の手札が相手より少ないとき『N―嵐の忍鬼フウキ』を特殊召喚出来る」

 

N―忍竜ドレットマスター(オリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 4

守備力 1500

 

N―嵐の忍鬼フウキ(オリジナルカード)

効果モンスター

闇属性

アンデット族

レベル 4

守備力 1300

 

そのコクジョウを起点に、様々なNモンスターが手札からフィールドへと出て来る。

 

「レベル4のドレットマスターとフウキでオーバーレイ。ランク4『N―修羅忍竜ヨザクラコンゴウ』」

 

N―修羅忍竜ヨザクラコンゴウ(オリジナルカード)

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

ランク 4

攻撃力 2100

ORU 2

 

その2体を使ったエクシーズ召喚で登場したのは、歌舞伎に出て来そうな出で立ちをしたドラゴン、ヨザクラコンゴウ。

 

「ヨザクラコンゴウの効果発動。オーバーレイ・ユニットを1つ使い、手札を2枚裏側で除外する事で相手の手札を2枚、次の相手ターン終了時まで裏側で除外する」

 

N―修羅忍竜ヨザクラコンゴウ ORU 2→1

N―忍竜コクジョウ 3700→4500

 

その効果は手札を裏側表示で除外するという変わった形でのハンデス。

 

「更にオーバーレイ・ユニットから取り除かれたフウキの効果。このカードがNエクシーズの効果によって取り除かれた時、相手の手札を更に1枚裏側で除外する」

 

N―忍竜コクジョウ 4500→4700

 

尚も繰り出されたハンデス効果、これによって遊矢の手札は残り2枚となった。

 

「カードを1枚伏せてターンエンド」

 

Kanon

LP 4000

手札 0

モンスター N―修羅忍竜ヨザクラコンゴウ(攻撃表示)

      N―忍竜コクジョウ

魔法・罠カード セット

 

「俺のターン、ドロー!

…さて、お前の覚悟の程を試験してやると大口を叩いた身だ、俺も示さねばな」

 

そしてセットカード1枚でターンを明け渡した海音、遊矢はそれに応じてドローフェイズにカードをドローした後、唐突にその目を瞑りながらそんな事を呟いていた、その直後、

 

「俺の、覚悟の程をな!」

 

目を開いたその瞬間、想像を絶する程の威圧感が遊矢を中心に広がり、部屋中を包み込んだ。

その発生源となっている遊矢、

 

「その眼は!?」

 

その瞳は覇王の力を解放した時と同じく金色になっていたが、それよりも問題なのは黒く染まった眼球だった。

普通ではありえない色合い、今まで覇王の力を解放してもそうならなかった筈の異常な色合い、それはまるで、ワンパンマンに登場するジェノスや、インフィニット・ストラトスに登場するクロエ・クロニクルの様だった。

 

「さて、前置きは長くなったがメインフェイズに入る!

俺はスケール6の『EMギタートル』と、同じくスケール6の『EMリザードロー』をペンデュラムスケールにセッティング!」

 

Yuya

ペンデュラムスケール(青):6(EMギタートル)

ペンデュラムスケール(赤):6(EMリザードロー)

 

メインフェイズに入ると同時に、遊矢は2枚のペンデュラムモンスターをペンデュラムスケールにセット、すると同時に遊矢の首に、ギタートルを模したギター、というかその物が出現、そのネックストラップが遊矢の首に掛かった。

 

「この時、ペンデュラムスケールにセットしたギタートルの効果発動!もう片方のペンデュラムスケールにリザードローがセットされた事で、ドロー!

ペンデュラムスケールにセットされたリザードローの効果発動!このカードを破壊し、ドロー!

次に『EMドクロバット・ジョーカー』を召喚!」

 

EMドクロバット・ジョーカー(制限カード)

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 4

攻撃力 1800

 

海音のハンデスから難を逃れた物を含む3枚、そのどれもがこの状況を打開する力を持ったカード、殊に今召喚したドクロバット・ジョーカーは制限カードに指定される程の力を有する。

 

「召喚したドクロバット・ジョーカーの効果発動!

デッキから『EMブランコブラ』を手札に加え、そのままペンデュラムスケールにセッティング!」

 

Yuya

ペンデュラムスケール(赤):2(EMブランコブラ)

 

それによってサーチした、サーカスで使う曲芸用ブランコに乗ったコブラを即座にペンデュラムスケールにセットする。

 

「これでレベル3から5のモンスターが同時に特殊召喚可能!

揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!

ペンデュラム召喚!出でよ、我が僕のモンスター達よ!

レベル3、無限の可能性を引き出すエンターテイナー!『EMリザードロー』!そしてレベル4、魅惑の奇術師『EMペンデュラム・マジシャン』!」

 

EMリザードロー

ペンデュラム・効果モンスター

地属性

爬虫類族

レベル 3

攻撃力 1200

 

EMペンデュラム・マジシャン(制限カード)

ペンデュラム・効果モンスター

地属性

魔法使い族

レベル 4

攻撃力 1500

 

その2枚で構築されたペンデュラムスケール、それによるペンデュラム召喚で登場したのはリザードローとペンデュラム・マジシャン。

その内ペンデュラム・マジシャンはその大量サーチ効果が制限カードとなる程の強さを誇るが、今回遊矢はその効果を使わない。

代わりに、手札として握っていた最後の1枚を取り出す…!

 

「魔法『エンタメ・バンド・ハリケーン』発動!」

 

エンタメ・バンド・ハリケーン

通常魔法

『エンタメ・バンド・ハリケーン』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:自分フィールドの『EM』モンスターの数まで相手フィールドのカードを対象として発動出来る。そのカードを持ち主の手札に戻す。

 

「エンタメ・バンド・ハリケーンの効果で、お前のフィールドにある3枚のカードを全てバウンスする!

…この程度か、お前の覚悟は?」

 

遊矢が発動した最後のカード、その効果によって遊矢が首からぶら下げていたギタートルの胴体から竜巻が発生すると、それはたちまち海音のフィールドにいた2体のモンスター、及びセットカードを手札(ヨザクラコンゴウはエクストラデッキ)へと吹き飛ばした。

このまま攻撃が通れば後攻ワンキルによる勝利、そんな状況下に遊矢は若干不機嫌な口調でそう呟いた。

 

「コクジョウの攻撃力を4000台にまで上げたり、俺の手札を3枚も除外させたりしたのは良いとして、動く気配すらない俺のターンでのその様子は何だ?セットカードで対応するタイミングは幾らでもあった筈だというのに、何もする事無くその真っ新なフィールドを晒している。お前の覚悟は、こんな風にちょいと突けば崩れる様なそんな脆い物なのか?それとも、まだこのデュエルに意味が無いとでも言うのか?」

「…」

 

遊矢のその覚悟を問う言葉に対し、海音もそれ(恐らくは後者)を黙認するかの様だ。

その答えに遊矢は、何処か得心のいった様な顔をしながら、

 

「リアリストとまでは行かなくとも、そのデュエルに対する現実的な姿勢…

成る程、確信した。海音、

 

お前、デュエルモンスターズが遊戯王OCGとして流通している世界からの、この世界が『遊戯王ARC-V』というアニメで放送されている世界からの転生者だろ?」

「はっ?」

 

そう投げ掛けた。

それに対する海音の答えは、

 

「そうか…お前は…

 

そこまで中二病だったんだな」

 

嘗て遊矢が言っていた言葉、それの指摘だった。

それには遊矢は盛大にずっこけ、

 

「をい、海音」

「あぁみなまで言うな。お前が思春期特有の病気だって事は前言ってたから分かっているよ。そうかそうか、お前がここまで非道な作戦を思いついた理由も「何マジボケ発言しているんだ君はぁぁぁぁぁぁ!」ぐああああああ頭がぁぁぁぁ!?」

 

尚も海音が指摘しようとしたその時だった、その盛大なボケにキレたのか、ユベルがアイアンクローを今か今かと決めようとしている態勢で実体化、瞬時にアイアンクローを海音の顔面に決めた。

悪魔サイドである左腕でのアイアンクロー、鋭い爪が顔面にしっかりと喰い込んでいる為、海音の痛がり方も半端では無い。

 

「あ…」

 

そして、海音は気絶してしまった。

 

「…ユベル、やり過ぎだ。

増してや、覇王の力を解放している時だぞ」

『どうするんだユベル、これではデュエルが続けられないぞ』

「…

 

やっちゃったZE☆、てへぺろ」

「『をい』」

 

その状況に可愛くごまかそうとしたユベルに、遊矢とアストラルの息の合ったツッコミが入った。

 

------------

 

「…ここは…」

「お、起きたか、海音」

「全く、こんな状態の彼にあんな事をするとは、君の相棒も荒っぽい事をする」

「遊矢、お前もお前だ、手負いの状態な海音殿に対して覇王の力を解放する等けしからん!」

「そうだぜ、気を付けてくれよ、遊矢兄ちゃん」

「海音も海音よ、遊矢を痛い人みたいに…!」

 

ユベルのアイアンクローで気絶した海音、それを遊矢は施設の中に併設された医務室へと運び、其処で歴戦のダメージが発覚、集中治療を受ける事となり、そして今、半日の眠りから目覚めた。

その周りには、その原因と言える遊矢の他、零児、権現坂、エレン、そして柚子が囲んでいた。

サトシと八幡は別室で待機(深手を負っている事が発覚したので治療を受けていると説明されている)、一行と当麻は諸事情で今はいない。

 

「さて、皆。後は俺に」

「ああ、お互い、言いそびれた事があるだろう。存分にぶつけ合うと良い。3人も、此処は」

「ええ。それじゃあ遊矢、また後でね」

「うむ」

「おう、待っているぜ、遊矢兄ちゃん」

 

海音が目覚めたのを確認した遊矢は、零児達に退室を促し、その様子を察した零児達もそれに応じ、医務室を離れて行った。

 

「…お前その痣は?」

「はは、さっきエレンに『アンドバリの指輪』作戦を打ち明けて、一発貰った。『何でもっと早く言ってくれなかったんだ!俺もARC-Vの一員だろ、遊矢兄ちゃんの弟だろ!』ってさ」

 

その異常に気付いた海音の言葉に、苦笑いを浮かべながら返す遊矢、その右頬にはエレンから喰らったパンチの跡があった。

 

「それくらいで済んだだけまだましだな。俺だったら、お前の股間に飛び蹴りをブチ込んでいたところだぞ…

知ってるか?人間の体の中でもそこは特に痛みを抑えるのが大変だって」

「だな。つーか信じられるか?アイツが怒ったのは黙っていた事に関してだけで、作戦に関して言う事は無いのかと聞いたら『やり方はすげーアレだけど、そうまでして此処の人達を守りたかったんだろ?だったら俺は遊矢兄ちゃんに賛成だ!』ってさ。俺が言えた事じゃないが、11年近くしか生きていない小学生が言う台詞じゃねーぞ、幾ら俺の過去を知っているからって…」

 

アンドバリの指輪作戦を知ったエレンの対応に関する話をしていた遊矢と海音、だが遊矢はその笑いをふと止め、真剣な表情で静かに話し始めた。

 

「さて、さっきの話の続きだ。ああ、さっきみたいなマジボケはやめておけよ、俺の相棒が本気出して顔面に喰い込ませるアイアンクローはもう御免だろ?」

「ボケるって…

俺はまじめに答えたんだが。大体転生者なんて言葉を使う時点で中二病って思わない方がおかしいだろ?」

 

海音がそう返答すると、遊矢は何故か海音を残念な人として見ている様な、「それをマジボケと言うんだ」と言いたい様な表情になる。

だが常識的には海音の反応の方が明らかに普通であり、遊矢の反応は勘違いにも程があるという物だ。

 

「…なんだその眼は?じゃあ聞くがお前に全く関係ない奴から『実は俺は転生者なんだ』っていきなり言われて信じるか?」

「あ、そっか。それもそうだな。まあそれは置いて」

 

それに対する海音の突っ込み、それに遊矢は苦笑いを浮かべながら自らの勘違いに気付くが、さらっと流して話し始めた。

 

「『カードファイト!ヴァンガード』に出て来るクランの名を冠したカードカテゴリの数々、もしかしたらそうじゃないかとは思っていたんだ。けどさっきのデュエルでの姿勢を見て、確信したんだ。お前は俺と同じく転生者だ、とさ」

「はぁ…転生者ってあれだろ?

一度死んで別の世界で生き返るやつ。だとしたら俺は転生者じゃない。俺は死にかけた事は何度もあるが、本当に死んだことは無い」

「あれ、転生者じゃ無いのか、となると転移?トリップ?まぁ、そんな事はどうでも良いな、ただ遊戯王OCGが存在する世界から来たと言う事実を確認したかっただけだ。

 

なら知っているだろ?さっきのデュエルで見せたあの金色の眼を持ったHEROデッキ使いの、この右手に刻まれた竜の頭を模した痣を持ったシンクロンデッキ使いの、この『鍵』を首にぶら下げた「かっとビング」が口癖のホープデッキ使いの、其々が歩んだ道を。

 

俺は遊城十代、不動遊星、九十九遊馬、そして榊遊矢、4度もの転生をした転生者なんだ。実年齢でいったらもう300歳だな、俺」

 

そして、遊矢は自らの素性を明かした。

 

「ふーん。で?」

 

それに対する海音の返答は何処か冷めた物だったが、余りに衝撃的な事実をいっぺんに言われて理解し切れない様に見えた。

それを知ってか知らずか、遊矢は真剣な表情のまま話しを続ける。

 

「今から昔話をする。ああ、それで俺の考えを理解しろだとか言うつもりは無い、むしろ俺みたいには、こんなクズにはなるなよ、という意味で話す。まあジジィの戯言と流しながらで良いから聞いてくれ」

「出来るだけ手短に頼むぞ。今の俺は頭が痛いんだから」

「上手く纏められるか自信は無いが、善処はしよう。俺は最初、何処にでもいる遊戯王OCGが、デュエルが大好きな大学生で、所謂ファンデッキを使って、日々デュエルに明け暮れていた。その人生は或る日、信号無視したトラックに轢かれて終わりを告げるんだが、それが神にとっても想定外だったのか、俺は遊城十代として転生する事になった。まあテンプレにも程がある転生だよな」

「ものすごいテンプレだな」

「転生先の世界『遊戯王デュエルモンスターズGX』というアニメで放送されていたのと同じ様な世界は正に俺にとって理想郷だった。デュエルモンスターズの実力が社会におけるステータスにまでなっているその世界での生活を俺は満喫した。時にはまあアニメで放送していた様に、三幻魔を巡る争いだとか、アカデミアで開催されたジェネックスだとか、ダークネスとの戦いとかはあったけど、原作知識も役立って、それらを見事に解決して見せた。それで俺は思い上がっていたんだ、原作知識と『覇王の力』があればどんな困難も解決できるってさ。踏み台転生者が陥りそうな発想だが、実際十代だった頃は本当にそうだったから、尚更そう思い込んでいた。それで、罰が当たったんだろうな…」

 

己のこれまでの人生を語る遊矢、だがその表情はだんだんと暗くなっていた。

 

「十代としての人生を全うして、今度は不動遊星として転生したんだ。俺は色々とびっくりしたが、同時にまたデュエルが出来る、今度はシンクロ召喚という召喚法や、ライディングデュエルという形式も取り入れたデュエルが、と内心うきうきしていた。

 

けど、それを認識していた時、俺は地獄へと叩き落とされた。その時、何が起こったと思う?」

「…」

 

そして、不動遊星としての人生を語り始め、海音に問いかけた時、遊矢は涙を堪えていた。

 

「『ゼロ・リバース』…

ネオ童美野シティ中枢部にあるモーメントの暴走によって起こった未曽有の災害…

俺はその事を、その真相をも、アニメで見知っていた、それを未然に防ぐ術もあるにはあった…

だけど、だけど俺は、目の前でそれが起きるのを見ていただけ、指咥えて見ていただけだった…!」

 

その涙腺も直ぐに決壊し、頬から大粒の涙が次々と伝うのを感じながら、遊矢はそう打ち明けた。

 

「目の前で見せ付けられた、ネオ童美野シティが地獄へと変わる光景、そしてその後飛ばされた先であるサテライトでの日々…

その日その日を生きる為に、賭けデュエル、脅迫、傷害沙汰、強盗、レ○プ、放火、そして殺人、考えうる凶悪犯罪をして来た日々…

其処から紆余曲折経て遊星としての人生を全うして、九十九遊馬として転生してからも、そうだった…!

デュエルの大会で知り合ったシャーク達バリアン七皇達を救う為、持てる手は全て尽くした、頼れそうなつては全て頼った、もう後悔はしたくなかったから、だけど、数万年にも及んで巡らせていたドン・サウザントの謀略の前には、全てが遅すぎたんだ…!

そんな出来事の数々を経て俺は学んだ、余りにも多すぎる代償を払って。理想だけじゃ誰も救えない、優しいだけじゃ誰も助けられない、甘いだけじゃ誰も守れない、1人よがりじゃ殆ど何も出来ないんだって…!」

「…で、あんな外道な作戦を行った訳か?」

「…まあな」

「…所詮お前は偽物に過ぎない訳だ」

「…そうだな」

「お前が絶望したのも理解できない訳では無い。だが俺の知る限りでは歴代の主人公達はどんな絶望的な状況でも悩み苦しみながらも突破して行った。だがお前はどうだ?覇王の力でどんな困難も乗り越えたと言ったが本当の遊城十代はその覇王の力に苦しみながら大人へと成長して行った。ゼロ・リバースを見て何も出来ずに絶望したと言うが、その事は本当の不動遊星だって何度も悩み苦しんだ事だ。確かに本当の彼はその時は赤ん坊だから何も出来ないのは当たり前だが、それでもその事を受け止めて仲間と共に未来へと進んで行った。持てる手は全て尽くしても七皇達を救う事が出来なかったと言うが、それは本当の九十九遊馬もたどった道だ。しかも本当の彼はお前と違ってわずか数十年しか生きていない中学生だ。それなのに彼は仲間が次々にいなくなりながらも最後まで折れないハートを持って戦った。榊遊矢に関してもそうだ。お前は今までの経験と力から今のランサーズ結成と今回の作戦を行った。だが本当の榊遊矢はお前と違って何も持ってなかった。だからこそ彼はがむしゃらに、例え相手に言葉が通らなくても全力で語り続けているんだ。だがお前はどうだ?力を使いアカデミアを倒して行ったが、お前はアカデミアと話そうともしなかった。結局お前は主人公の体と名前と力を持っただけのただの偽物なんだよ。そんなお前が本当の力を持つ彼らの真似をしようとしている時点で無駄なんだよ」

『なっお前!言わせておけば「止めろユベル!海音の言う通りだ!」ゆ、遊矢…!』

 

己の過去をかいつまんで打ち明けた遊矢、それに対して海音はバサリと一刀両断、それに激昂したユベルが海音に掴みかかろうとしたが、遊矢はそれを止める。

 

「ああ、そうだ。俺は結局の所、本物の様には出来ないまがい物のクズだ。だからさっき言っただろ、俺みたいなクズにはなるなよってさ」

「安心しろ。俺は其処まで外道な事を考える頭も実際にやる度胸も無い」

「その言葉、決して忘れない様にな。ああまで言い切ったんだ、何が何でもその甘さを貫け。そして時には、誰かを頼れ。甘さを貫くのも、1人だけでは成しえないんだからな」

「当たり前だ。俺はお前と違って弱い。だからこそ一緒に戦う仲間を集めているんだからな」

「そうか。なら最後に、しっかり頑張るのじゃぞ、青少年よ。岐路に立たされた時、未来の自分が誇れる様な選択をするのじゃ」

「まっ俺は俺ができることをするだけだ」

「そうじゃ、それで良い」

 

そして、目から涙を流したままの状態で笑みを浮かべながら、海音と言葉を交わした。

 

------------

 

Side 遊矢

 

『遊矢。今帰ったよ』

「帰ったよ、じゃねぇよユベル。全く、あの場に残って海音の様子を探るとか、お前まだアイツが言った事に怒っているのか?」

『そりゃあ怒るよ、ボクにとって何よりも大事な遊矢がコケにされたんだ、怒らない方がおかしいさ。遊矢が言った通り海音の言葉は正論だけど、正論だけ言えば良いなんて道理は無いんだ』

 

海音と言葉を交わした後、もう少し休みたいからと退室を要求した海音に従って医務室を出た俺達、だがユベルだけは海音の発言に怒りを覚えていたのか、アイツの身辺調査と称して、ついさっきまであの場に残っていた。

 

「で、何か分かったのか?」

『なんか何も無い空間に向けて話していたみたいだよ。エア友達か何かかな、と最初は思っていたけど、多分ボクに感知できない、カードの精霊とはまた別の存在が海音に付いているのかも知れないね』

「ユベルに感知できないカードの精霊みたいな物か、まあ無くは無いな」

『遊矢の何代も前の前世でデュエルモンスターズと同じく流行していたカードゲームのカードが流通しているんだ、その可能性も無きにしもあらず、といった所か』

『それはさておき、どうやら海音と敵対している、キメラとかいう存在が、あの『アンドバリの指輪』作戦と同じ様な事をやらかしているらしいよ、しかも一般人をも巻き込んだ挙げ句、操った奴が負けた時はカード化させるというおまけ付き』

「洗脳か。もしかしたら櫂やレナも…

海音があそこまでキレたのはそれもあるのかもな。まあ元々ゲス極まりない作戦だが、な」

 

普通に考えても洗脳による仲間割れの誘発は、色んな意味で物凄くゲスい、増してや仲間である櫂とレナがその被害にあっているとなれば、アイツの怒りは計り知れないだろうな。

 

『遊矢。今更だが、本当にあれしか方法は無かったのか?確かにあの作戦の成果は途轍もなく大きい。そして今後の戦いに向けても十分に布石を打てた。だが…』

「アストラル。俺だって、アンドバリの指輪作戦が俺の理想に真っ向から反する事位、アカデミアの皆の笑顔を奪っている事位分かっているさ。俺も出来れば、海音達みたいにデュエル戦士を、デュエルを通じて過ちに気付かせ、そして純粋な笑顔にさせたい。そんな余裕があればそっちを最優先するさ。

 

けどさ、他次元に攻め込む気満々なアカデミア相手に悠長な事していたら何にもならないんだ!時にはああまでやらなきゃ、皆死んじゃうんだ!俺もうそんなの嫌なんだよ!」

 

アストラルの問いに、俺は胸の内に秘めていた想いを爆発させる。

遊星だった頃ゼロ・リバースで崩壊したネオ童美野シティもそうだが、エクシーズ次元もまた、抜本的な手が無かった結果、次元全体が廃墟と化し、人々は殺されたりカード化されたりした。

そして、フォースハウンドのメンバーである遊香は、あの年頃の少女には余りに重すぎる『復讐者(アヴェンジャー)』という十字架を背負わなければならなくなった。

このシンクロ次元も、手段を間違えればエクシーズ次元と同じ道を辿っていた、アカデミアが攻め込むというのはそういう意味なんだ。

 

けどどんな理由を付けたってアンドバリの指輪作戦は外道の極みだ、俺は、いや俺達はその重たい十字架を背負い、これからを生きて行く事になる。

俺は兎も角、皆にとっては未経験な程ずっしりとした十字架だ、時には俺が、その罪を被らなければならないだろう、だが俺は、それを受け入れよう!

それがこの作戦を考案・実行した、最高指揮官としての義務だ。

 

------------

 

「それじゃあな。サトシと八幡の事、頼んだぞ」

「…じゃァな」

「ん?一行、何だその重たい感じは、お前らしくないな?まあともかく、海音達、またな!」

 

翌日、体調が回復した海音達は、次なる世界へと飛び立つ事となり、別れの挨拶に俺と一行、当麻の3人が出向いた(権現坂はアカデミアの残党がいないかの捜索に当たって貰っていて、柚子は部屋に待機して貰っている)。

 

「はい、色々お世話になりました」

 

俺達の挨拶に対し、サトシはそう返し、八幡も無言だったが礼をした。

 

「お前にはまだ言いたい事は色々あるがこれだけは言って置く…

もし次会った時にこれ以上間違った道を進んでいたら全力でお前を潰す。その事を忘れるな」

「望む所だ、元よりその覚悟だからな。お前の方こそ、その心意気を忘れるな」

 

そして、海音はそう言い残し、彼らは旅立っていった。

…さて。

 

「じゃあな、皆。

 

…一行、当麻。『ならぬものはならぬものです』って言葉を知っているか?」

「っ!あ、あァ…」

「『ならぬものはならぬものです』?なんだそりゃ?ダメなモンはダメって事か?」

 

一行は思い当たる節があったのか動揺しつつも答えた一方、当麻は相変わらずのバカっぷりを披露していた。

そんな2人に、俺は告げる。

 

「例え不合理に思える物でも、決められた掟は守る様にという、昔のとある学校で定められた掟の、その締めの言葉だ。

 

もし、俺達が本当の意味で道を踏み外しそうになった時は、お前達は何が何でも止めてくれ、引き戻してくれ。誰かに頼りっぱなしじゃなく、自分達の力でな。其処に俺達の歩んだ道とか、そんな物は考えるな。『ならぬものはならぬものです』の精神で、ランサーズの理念と言う名の掟を固く守る存在となれ。良いな!」

「お、おォ!」

「な、なんか良く分からねぇけど、分かったぜ!」




今話でAMsさんとのコラボは終了となります!AMsさん、ありがとうございました!

それで、今後のコラボ祭についてですが活動報告にて今後どうするかを乗せています。
意見があればそちらにお願いします。


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8章・A『其々の道。シンクロ次元に残った零児達』
101話_復活!ライディングデュエル


当初の予定を変更し、今日より連載を再開します!
尚、この8章Aパート時点での禁止制限は2016年7月の物となります。


Side 零児

 

「それでは、『スピード・ワールド―ReACT』のテストを開始する。クロウ、フィールド魔法の発動を頼む」

『分かったぜ、零児!フィールド魔法『スピード・ワールド―ReACT』発動!』

 

スピード・ワールド―ReACT(オリジナルカード)

フィールド魔法

このカードはフィールドを離れない。

1:このカードがフィールドゾーンに存在する限り、アクションカードを使用出来る。アクションカードは1枚しか手札に加える事が出来ない。

2:お互いのスタンバイフェイズ時に発動する。フィールドゾーンのこのカードの上にスピードカウンターを1つ置く(最大12個まで)。

3:自分フィールドゾーンのこのカードの上に乗っているスピードカウンターを任意の数取り除いて発動出来る。取り除いたスピードカウンターの数によって、以下の効果を適用する。

●4個:自分の手札の『Sp(スピードスペル)』を任意の数、相手に見せ、その枚数×800ポイントのダメージを相手ライフに与える。

●7個:自分のデッキの上からカードを1枚ドローする。

●10個:フィールド上に存在するカードを1枚破壊する。

 

遊矢達が今後の作戦の為、このシンクロ次元から旅立ってから幾日か、残った私とV-CRANのメンバーは、シティに紛れているかも知れないアカデミア軍敗残兵の捜索、近いうちに開設されるLDSの系列校の準備等に当たっていて、今はその一環として新型アクションフィールドのテストを行っている。

『遊戯王5D’sの世界』での遊矢の前世である不動遊星や、ジャック・アトラス達の記憶に根付いている『ライディングデュエルのあるべき姿』にアクションデュエルの要素を加えて作られたこのスピード・ワールド―ReACT、『単にバイクに乗ってデュエルするだけ』と彼らが語っていたシンクロ次元のそれとは違い、スピードカウンター及び専用魔法カテゴリ『Sp』の存在によってバイクに乗るからこその戦略が存在するこのライディングデュエル、それを蘇らせたいという彼らの想いと技術が生み出した、何も事情を知らない人からはこれぞ『才能と熱意の無駄遣い』と突っ込まれそうな代物だが、そのルールを聞けば普通のデュエルやアクションデュエルのそれとはまた違う、戦略の奥深さを感じられる。

尚『遊戯王5D’sの世界』でのそれは更に、Spでは無い魔法カードをプレイする(発動では無くプレイ、よってセットするだけでも適用される)と2000ものセルフバーンを喰らうという無茶苦茶な(それでいて幾らでも悪用できそうな)物だったり、肝心のSpが既存の魔法カードの劣化版ばかりだったり通常魔法しか無かったりといった物だったそうだが、流石にそれはデュエルモンスターズに対する冒とくではないかという事で、この様な形に落ち着いた。

まあその様な裏話は此処までにして、今日は遊矢達が慣れ親しんで来たライディングデュエルと、今の我らが親しんでいるアクションデュエル、2つが合わさったそれを一足先に味あわせて貰うとしよう。

 

「それではテストデュエルを始める。月行、宜しく頼む」

「はい。宜しくお願いします、零児隊長!」

「「『ライディングデュエル・アクセラレーション!』」」

 

先攻 Reiji LP 4000 VS 後攻 Gekkou LP 4000

 

先攻は私か。

 

「私のターン」

 

Reiji

スピード・ワールド―ReACT スピードカウンター 0→1

Gekkou

スピード・ワールド―ReACT スピードカウンター 0→1

 

よし、此処はこうするか。

 

「まずは永続魔法『地獄門の契約書』発動」

 

地獄門の契約書

永続魔法

『地獄門の契約書』の1の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。

1:自分メインフェイズに発動出来る。デッキから『DD』モンスター1体を手札に加える。

2:自分スタンバイフェイズに発動する。自分は1000ダメージを受ける。

 

「今発動した地獄門の契約書の効果発動。

デッキから『DDスワラル・スライム』を手札に加え、そのまま発動。

このカードと手札の『DDD反骨王レオニダス』を融合。絶望的な状況にも全力で立ち向かう反骨の王よ。自在に形を変える神秘の渦に融け込み、真の王と生まれ変わらん!融合召喚!出でよ、神の威光伝えし王!『DDD神託王ダルク』!」

 

DDD神託王ダルク

融合・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 7

攻撃力 2800

 

最初に発動したこのデッキに置けるサーチエンジンである地獄門の契約書、それによってサーチしたスワラル・スライムの効果でレオニダスをも用いて融合召喚したのは、嘗てフランスとイギリスとの間で起こった百年戦争で活躍した聖女ジャンヌ・ダルクをベースとしたモンスター、ダルク。

先程さらっと言った、スピード・ワールドが持つデメリットの悪用手段、その1つとして思い浮かんだのがこのダルクだ。

予めスワラル・スライムの効果でダルクを出してから何時も通りの動きを行う事で、大量のライフアドバンテージを得る、そんな手段が容易に想像ついてしまった事もあって、その再現はされなかった。

幾らライフアドバンテージが其処まで重視すべきものでは無いとはいえ、たった1枚のカードから6000ものライフゲインがされたらやり過ぎだと思う。

 

「次に融合素材として墓地へ送られたスワラル・スライムを除外して効果発動。

手札からDDDモンスターを特殊召喚する!現れ出でよ、神々の黄昏に審判を下す最高神!『DDD壊薙王アビス・ラグナロク』!」

 

DDD壊薙王アビス・ラグナロク

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 8

守備力 3000

 

その融合を行ったスワラル・スライムを除外して呼び出したのは、神々の黄昏(ラグナロク)の名を冠したモンスター、アビス・ラグナロク。

 

「特殊召喚したアビス・ラグナロクの効果発動。

墓地のDDDモンスターを蘇生する!現れ出でよ、絶望的な状況にも全力で立ち向かう反骨の王!『DDD反骨王レオニダス』!」

 

DDD反骨王レオニダス

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 7

攻撃力 2600

 

その効果によって蘇生したレオニダス、そういえば遊矢がサムと名乗るドアボーイから『調律の魔術師』というチューナーモンスターを貰ったそうだが、その効果を使えば面倒な動きなしでこのレオニダスを展開出来、尚且つ其処から『DDD呪血王サイフリート』をシンクロ召喚出来るな、今度遊矢に頼んでそのカードを解析してみるか。

 

「続いて手札の『DDネクロ・スライム』を墓地へ送って魔法『ワン・フォー・ワン』発動」

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

「ワン・フォー・ワンの効果で、デッキから『DDラミア』を守備表示で特殊召喚」

 

DDラミア

効果モンスター/チューナー

闇属性

悪魔族

レベル 1

守備力 1900

 

それは兎も角、私の展開はまだ終わらない。

 

「私はレベル7のダルクに、レベル1のラミアをチューニング。その紅に染められし剣を掲げ、英雄たちの屍を越えて行け!シンクロ召喚!生誕せよ、レベル8!『DDD呪血王サイフリート』!」

 

DDD呪血王サイフリート

シンクロ・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 8

攻撃力 2800

 

そのサイフリートを、今言った物とは別のパターンで呼び出す。

サイフリート、読者には『ジークフリート』と言った方がなじみ深いだろうか?

 

「まだまだ行くぞ。墓地の『DDネクロ・スライム』の効果発動。

このカードとたった今シンクロ素材としたダルクを除外して融合。神の威光伝えし王よ、亡者の魂をも取り込む神秘の渦に融け込み、竜をも倒す勇者となれ!融合召喚!生誕せよ、レベル8!『DDD剋竜王ベオウルフ』!」

 

DDD剋竜王ベオウルフ

融合・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 8

攻撃力 3000

 

更に登場したのは、サイフリートと同じく英雄叙事詩に登場する英雄の名を冠したモンスター、ベオウルフ。

ウルフという名の通り人狼みたいな姿だが、実の所は狼との関係は無いらしい。

 

「此処では終わらない。フィールドに存在する地獄門の契約書を墓地へ送ってラミアの効果発動。

このカードを守備表示で蘇生する。

私はレベル7のレオニダスにレベル1のラミアをチューニング。シンクロ召喚!並び立て、サイフリート!

そして私は、サイフリートとベオウルフでオーバーレイ。2体のレベル8・DDモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。2つの太陽が昇る時、新たな世界の地平が開かれる!エクシーズ召喚!現れ出でよ、ランク8!『DDD双暁王カリ・ユガ』!」

 

DDD双暁王カリ・ユガ

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

悪魔族

ランク 8

攻撃力 3500

ORU 2

 

そしてそのベオウルフと、2体になったサイフリートの片方をエクシーズ素材に、遊矢との第2戦でも世話になったカリ・ユガを出す。

と言っても今の状況下ではカリ・ユガの1の効果は殆ど役に立たないが、コイツの効果はそれだけじゃない、それより今は他の効果の方が重要で、特に2の効果はフリーチェーンと化した『大嵐』、これで月行が魔法・罠カードを大量にセットしようとエンドサイクの要領で除去出来る。

『魔宮の賄賂』に近い効果を持ったサイフリートが居る事も踏まえれば正に万全に近い布陣、そんな私のフィールドを見ながら、ふとエクシーズ次元へと潜入した遊矢の事を思い出した。

遊矢の事を知ったのは、彼の父、いや『榊遊矢』としての彼の父である榊遊勝からその存在を聞いた時だろうか、「まだまだ子供なのにデュエルがジジ臭いというかえげつないというか…一体何処でそんなデュエルを覚えたのか」と苦笑いしながら語っていたのを今でも思い出す。

今となればそれは前世での悲惨な境遇から身に付けざるを得なかったが故と分かるが、確かに舞網チャンピオンシップに出ていた彼のデュエルは、彼が『完全決闘』と名付けたそのデュエルは、少なくとも小学生がやったとは思えない程えげつなかった。

手札1枚を『神罰』に変える『神光の宣告者』と生きた『虚無空間』の代表格である『大天使クリスティア』、そして除外を防ぐ事で『ブレイクスルー・スキル』や『スキル・プリズナー』を無力化させる『王宮の鉄壁』という3点セットで相手にほぼ何もさせないそのデュエルで、連勝に次ぐ連勝、それは昨年、ジュニアユースクラスに昇格して初めて参戦してからも変わらず、榊遊勝が失踪して直後に張られていた『臆病者の息子』というレッテルは何時の間にか『完全決闘者』という異名に変わり、畏怖される存在となった(まあ観客の、民度の低いバッシングに対して悪役感丸出しな態度でこき下ろしたのもあっただろうが)。

その圧倒的な強さゆえに私も、当時はまだ構想段階だったランサーズのメンバー候補としてチェックしてはいたが、如何せんその時の彼、いや彼ら『遊勝塾』の塾生達が異世界の召喚方法を使っていたとは思わず(後になって聞いたら『覇王の力』で召喚エネルギーを掻き消していたらしい)、あくまで『メンバー候補』として頭の片隅に置いていただけだった。

その認識が変わったのは間違い無く、ストロング石島とのデュエルで披露したペンデュラム召喚を始めとした未知の召喚方法の数々、そして遊勝塾及び交流があった権現坂道場から相次いで感知された異世界の召喚方法に関する反応だろう、それによって頭の片隅に置くだけだった私の、遊矢への興味は一気に跳ね上がり、近々彼と接触する機会を設けようと決意した。

その矢先に私の側近である中島が、沢渡を使って遊矢からペンデュラムモンスターを強奪しようとしたという報告と、その時のデュエルで大恥をかかされたらしい沢渡が闇討ちを企てているという噂を聞き、更にその折にエクシーズ次元から来たユートによって沢渡が襲撃されたと聞いた時には驚きを禁じ得なかったが、逆にこれを好機と見て、母さん達と共に沢渡への襲撃の件に関する抗議の名目で遊勝塾に出向いた。

まあそれに対する遊矢の入念な根回しに基づく交渉術と、遊勝塾生の並外れたデュエルタクティクスの前に少なくない罰金を払わせられはしたが、今この状況になった事を踏まえればそれもまた必要経費だ、そう、彼が私の想像を遥かに超える程の存在であることを知り、彼との仲が深まり、そして彼こそ榊遊勝に代わるランサーズの最高指揮官に相応しいと判断し、結果として今その席に就き、その剛腕を振るうに至った事を踏まえれば。

その振るった剛腕が、確実に物議をかもすであろう事は明白ではあるが。

このシティにおけるスターであるジャックとのデュエルを利用したプロパガンダや治安維持局長官であるロジェを洗脳するのはまだ可愛い方、フォースハウンドをアカデミア本拠地に潜入させてのゲリラ活動、挙げ句には先日のアカデミアからの侵略に対して『アンドバリの指輪』作戦を考案・実行し、アカデミアの部隊に大打撃を与えるという暴挙にまで及んだ。

だが私がもし遊矢の立場であり、遊矢と同じ様な力があれば、私もそれを考え、実行したであろう、現に私はアンドバリの指輪作戦に賛成だった。

このシンクロ次元に潜入する前、遊矢に3年前の榊遊勝が失踪した件の真相、4つの次元の事やアカデミアによる侵略の事を聞いた榊遊勝が赤馬零王に直談判する為にLDSの次元転送装置を無断で利用して他次元へと飛んだという話を私がした時に返した「父さんは蛮勇、むしろ少しばかり臆病になるべきだった。戦力も士気も理念への想いも十分な相手に直談判しようとしてそれが出来る筈も無いし、仮に出来た所で考えを改める訳が無い」という言葉も分かる、私も似た様な考えだから。

それに遊矢とて出来るならば榊遊勝が行った様に直談判での決着を付けたいと考えているそうで、「『対話と圧力』、交渉における常識です。俺が仕掛けた策は全てその『圧力』に過ぎません。そう、赤馬零王達アカデミアの連中を交渉の場に引きずり出す為の『圧力』です」と言っていた。

その圧力が強過ぎる感は否めないが、それでも状況は見事に、遊矢の思惑に沿った形で動いている、ランサーズメンバーの皆は勿論の事、このシンクロ次元の民衆から(一部はそのどす黒い闇を知って尚)慕われている事も含め、やはり彼を最高指揮官に任じて正解だった。

 

私は、私自身を含め皆が皆遊矢を慕うのは、300年もの間何度もその人生を繰り返し続けた事で身に付いた遊矢の人となりにあると考えている。

優しさに満ち溢れながらも冷酷非道、熱血漢ながら滅多な事では動じない、犯罪者であろうと受け入れる度量を持ちながらも戦いの際敵には一切の容赦がない、無駄のないデュエルタクティクスながらデッキはどれも本人曰く『ファンデッキ』寄り…

ざっと上げただけでも、遊矢が如何に沢山の『矛盾』を抱えているかが分かるだろうが、そのどれもが遊矢の偽らざる本性、彼の心中ほど『混沌(カオス)』という言葉が似合う存在はいないだろう。

その深い深い混沌故、中にはそれを胡散臭いと感じ取って距離を取ろうとする存在も出て来るだろう(実際、この前再び並行世界から我らの元に現れた火野海音の仲間はそう感じ取っていたそうだ)が、大抵はその深みに惹かれ、その中心部で強烈な光を発するデュエルモンスターズへの熱意の眩しさに心奪われていく。

それ故に遊矢の周りには人が集まり、彼と同じ道を歩みたいと慕う者が増えて行くのだろう、これまでも、そしてこれからも。

彼の5%余りしか生きていない私に身に付いている筈も無いその混沌、その中で尚光を失わないデュエルモンスターズへの情熱、それが榊遊矢という男を形作っていると、そのカリスマ性の土台となっていると私は思っている。

彼の背中は、近いようで余りにも遠いな…

 

「私はこれでターンエンドだ」

 

Reiji

LP 4000

手札 0

モンスター DDD壊薙王アビス・ラグナロク(守備表示)

DDD呪血王サイフリート(攻撃表示)

      DDD双暁王カリ・ユガ(攻撃表示)

魔法・罠カード なし



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102話_零児の決意

Side 零児

 

「流石は隊長と言うべきでしょうか、凄まじい展開力です。ですが私とてランサーズに入った身、全力で行かせて貰います!私のターン、ドロー!」

 

Reiji

スピード・ワールド―ReACT スピードカウンター 1→2

Gekkou

スピード・ワールド―ReACT スピードカウンター 1→2

 

カリ・ユガにサイフリート、そしてアビス・ラグナロクと万全に近いと言って良い盤面を作り上げてターンを明け渡し、月行のターン、彼のドローの直後に互いのスピード・ワールド―ReACTにスピードカウンターが乗る。

今試作されている『Sp(スピードスペル)』は全て要求するスピードカウンターが2以上、よってこのターンからSpが使える。

Spでは無い魔法カードの使用に制限が無くなったこのフィールドとの兼ね合いもあり殆どが過剰気味なカードパワーとなっているSpは最短で後攻1ターン目から使えるという事、この辺りの戦略も重要な要素となりそうだ。

 

「まずは魔法『Sp―エンジェルバトン』発動!」

 

Sp―エンジェルバトン(アニメオリジナルカード)

通常魔法

1:自分フィールドゾーンに存在する『スピード・ワールド』フィールド魔法カードの上に乗っているスピードカウンターが2つ以上の場合に発動出来る。自分のデッキの上からカードを2枚ドローする。その後、手札を1枚捨てる。

 

月行も早速導入していたのか、いきなり発動して来た。

そのSp、エンジェルバトンは遊矢達が前世で使用していたSpでは異例の「そのまま導入された」カードである。

ついさっきSpを既存カードの劣化版と言ったが、このエンジェルバトンもその1つで『天使の施し』の下位互換と言って良い物となっている。

だがそもそも天使の施しは手札アドバンテージを減らす事無く2枚も墓地肥やしを行える強力手札交換カード、その強烈なカードパワー故に現在は禁止カードに指定されている。

現在はその調整版と言うべきカードが多数登場しているが、例えば闇属性デッキの定番ドローソースである『闇の誘惑』が一時は制限カード、手札交換カードの代名詞とも言われた『強欲で謙虚な壺』も一時は準制限カード、『トレード・イン』や『調和の宝札』はそもそも手札を1枚失う行為がコストである上にその指定も厳しい。

こういった事を踏まえると、それらの上位互換と断言できるエンジェルバトンのカードパワーも信じられない位に高い事が分かるだろう、遊矢達も困った時には愛用していたそうだからな。

故にSpのカードパワーは過剰気味にすべき、という風潮がある中でもこのエンジェルバトンはそのまま導入され、たった今月行がそれを発動して来た。

だがそんなパワーカードの発動を、私が無条件で許す訳が無い。

 

「それにチェーンしてサイフリートの効果発動。

エンジェルバトンの効果を、次のスタンバイフェイズまで無効にする。エンジェルバトンは通常魔法、よってそのまま墓地へ送って貰う」

「流石に通してはくれませんか。ならば手札の『ドラグニティ―ファランクス』を捨てて魔法『調和の宝札』発動!」

 

調和の宝札

通常魔法

手札から攻撃力1000以下のドラゴン族チューナー1体を捨てて発動出来る。デッキからカードを2枚ドローする。

 

「調和の宝札の効果で、2枚ドロー!」

 

エンジェルバトンをサイフリートの効果で無効にしたが、それを予期していたらしい月行は今挙げていたドローソースの1つ、調和の宝札で手札交換を行った。

それにしてもファランクスが落ちたか、これは中々厄介だな。

フレンドシップカップで見せた彼の大量展開、その根幹を成していると言って良いファランクス。

風属性・ドラゴン族のチューナーでレベルは2、攻撃力はたったの500で守備力も1100とステータス的には低く、その効果は装備カードとなっている自身を特殊召喚する、それだけという一見するとユニオンモンスターが共通して持つ効果の劣化に思える。

だがこれこそが彼のデッキにおいて重要な役目を担い、大会中のとあるデュエルではこのカードを徹底的に使い回してレベル6モンスターを一挙に4体も並べるという離れ業で1ターンキルを決めて見せ、更にとあるデュエルではシンクロモンスター『トライデント・ドラギオン』の力をフルに活用してこれまた1ターンキルを決めて見せた。

恐らく今回もまたその積りだろうが…

 

「続いて『ドラグニティ―ドゥクス』を召喚!」

 

ドラグニティ―ドゥクス

効果モンスター

風属性

鳥獣族

レベル 4

攻撃力 1500→1700

 

そんな私の予想の通り、端末世界の勢力『ドラグニティ』の指揮官を務める鳥人で、ファランクスと同様に彼のデッキにおいて重要な役目を担うドゥクスを出して来た。

 

「召喚したドゥクスの効果発動!

先程捨てたファランクスをドゥクスに装備させます!」

 

ドラグニティ―ドゥクス 攻撃力 1700→1900

 

その効果は墓地にあるレベル3以下のドラグニティ・ドラゴン族モンスターを装備するという物、これでファランクスを釣り上げる事で使い回しを行うのが彼のパターンだ。

だが、

 

「装備したファランクスの効果発動!

このカードを守備表示で」

「おっと、それにチェーンしてカリ・ユガのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動。

フィールドに存在する魔法・罠カードを全て破壊する。装備カードとなっているファランクスは魔法カード扱い、よって破壊され、その特殊召喚効果も適用されない」

「なっ!?此処を防がれるとは…!」

 

DDD双暁王カリ・ユガ ORU 2→1

ドラグニティ―ドゥクス 攻撃力 1900→1700

 

そんな大規模な攻撃を私が無条件で許す訳が無い。

本当ならエンドサイクの要領でこの効果を発動したかったがやむを得ない、先にファランクスを潰させて貰う。

 

「ですが、まだ終わりません!

装備魔法『ドラグニティの神槍』発動!これをドゥクスに装備させます!」

 

ドラグニティの神槍

装備魔法

『ドラグニティ』モンスターにのみ装備可能。

『ドラグニティの神槍』の2の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。

1:装備モンスターは、攻撃力が装備モンスターのレベル×100アップし、罠カードの効果を受けない。

2:自分メインフェイズにこの効果を発動出来る。デッキからドラゴン族の『ドラグニティ』チューナー1体を選び、このカードの装備モンスターに装備カード扱いとして装備する。

 

それでも月行は展開を止めない、今度は何処からともなくドラグニティチューナー達が結集した様な形状の槍が登場し、それをドゥクスが装備した。

カリ・ユガの効果は大半のエクシーズモンスター同様1ターンに1度、よってこのターンはもう発動出来ない、防ぐのは無理か。

 

ドラグニティ―ドゥクス 攻撃力 1700→2300

 

「装備カードとなったドラグニティの神槍の効果発動!

デッキから2枚目のファランクスを、ドゥクスに装備させます!」

 

ドラグニティ―ドゥクス 攻撃力 2300→2500

 

「装備カードとなったファランクスの効果発動!

このカードを守備表示で特殊召喚!」

 

ドラグニティ―ファランクス

効果モンスター/チューナー

風属性

ドラゴン族

レベル 2

守備力 1100

 

「今特殊召喚したファランクスを墓地へ送り、手札の『ドラグニティアームズ―ミスティル』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

ドラグニティアームズ―ミスティル

効果モンスター

風属性

ドラゴン族

レベル 6

攻撃力 2100

 

ドゥクスの効果で装備したファランクスを呼び出す、その動きの後に、ファランクスと入れ替わる形で登場したのは、金色の鎧を身に纏った騎士の様な出で立ちのドラゴン、ミスティル。

そう、このカードがさっき言った、大量に並んだレベル6モンスターの一角だ。

 

「特殊召喚したミスティルの効果発動!

たった今墓地へ送ったファランクスを装備させます!

装備カードとなったファランクスの効果発動!

このカードを守備表示で特殊召喚!

今特殊召喚したファランクスを墓地へ送り、手札のミスティルを攻撃表示で特殊召喚!

特殊召喚したミスティルの効果発動!

たった今墓地へ送ったファランクスを装備させます!

装備カードとなったファランクスの効果発動!

このカードを守備表示で特殊召喚!」

 

ドラグニティ―ドゥクス 攻撃力 2500→2700→2900

 

月行のテリトリーを色々と動き回るファランクス、その中で着々と並んでいく月行のモンスター達、そして上がり続けるドゥクスの攻撃力。

このままでもサイフリートを戦闘破壊出来るが、月行の動きはこれだけに留まらない。

 

「早速使わせて貰います、異次元の召喚方法を!

私は2体のミスティルでオーバーレイ!2体のレベル6・ドラゴン族モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『聖刻龍王―アトゥムス』!」

 

聖刻龍王―アトゥムス

エクシーズ・効果モンスター

光属性

ドラゴン族

ランク 6

攻撃力 2400

ORU 2

 

ドラグニティ―ドゥクス 攻撃力 2900→2500

 

月行が呼び出したのは、彼がレベル6・ドラゴン族モンスターを主軸に使っている事を知った遊矢が彼に譲ったエクシーズモンスター、遊矢がこの世界における伝説と化している『赤き竜』を呼び出す為のギミックに用いている聖刻龍の一角、アトゥムス。

無論、その効果も月行のデッキにとって有用な物だ。

 

「今呼び出したアトゥムスのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!

デッキから『ドラグニティ―アキュリス』を攻守0にして、守備表示で特殊召喚します!

便利な物ですね、エクシーズ召喚は。今までは殆ど並べるだけだったミスティルの可能性が、より広がりました。4つの次元世界は物凄く広い、無限の可能性が広がっているのですね」

 

ドラグニティ―アキュリス

効果モンスター/チューナー

風属性

ドラゴン族

レベル 2

守備力 800→0

 

聖刻龍王―アトゥムス ORU 2→1

ドラグニティ―ドゥクス 攻撃力 2500→2700

 

その効果は、ドラゴン族モンスターのリクルート。

呼び出したモンスターの攻守が0になる上、効果を使うターンは自分自身が攻撃出来なくなるデメリットこそあるが、呼び出せるモンスターには『ドラゴン族』以外の指定が無い。

今の様にチューナーを呼ぶ事も出来るし、どんなレベルのモンスターを呼んでも良い。

そして其処からの制限も、戦闘には事実上使えない以外はフリー、つまり…

 

「私はレベル4のドゥクスに、レベル2のアキュリスをチューニング!龍と鳥人の絆が、『雷の牙』の名を冠した龍騎士と化します!今こそ故郷となる城壁と成りなさい!シンクロ召喚、レベル6!『ドラグニティナイト―ヴァジュランダ』!」

 

ドラグニティナイト―ヴァジュランダ

シンクロ・効果モンスター

風属性

ドラゴン族

レベル 6

攻撃力 1900

 

こうしてシンクロ召喚等の素材に使える。

これによって月行が呼び出したのは、今しがたシンクロ召喚に使われたアキュリスが成長した様な姿のドラゴンにまたがった鳥人の竜騎士、ヴァジュランダ。

 

「シンクロ召喚したヴァジュランダの効果発動!

たった今墓地へ送ったアキュリスを装備させます!

そのアキュリスを墓地へ送ってヴァジュランダの効果発動!

このカードの攻撃力をターン終了まで倍にします!」

 

ドラグニティナイト―ヴァジュランダ 攻撃力 1900→3800

 

む、サイフリート程度ではとどまらず、カリ・ユガの攻撃力すらも越えて来たか。

 

「それだけではありません!この効果で墓地へ送ったアキュリスの効果発動!

カリ・ユガを破壊します!ドゥリンダナ・ピルム!」

「くっ!」

 

しかもその効果コストにしたアキュリスの効果でカリ・ユガが討たれるとは…

流石だ、コモンズという環境下で此処までしっかりしたデッキを作り上げ、それを使いこなすとは。

 

「バトルフェイズに入ります!ヴァジュランダでサイフリートを攻撃!」

「その攻撃宣言時、スピード・ワールド―ReACTに乗っているスピードカウンターを全て取り除き、アクションマジック『Sp―リアエンド・コリジョン』発動。

このターンをスキップする」

「なっ!?」

 

Sp―リアエンド・コリジョン(オリジナルカード)

アクションマジック

1:相手モンスターの攻撃宣言時、自分フィールドの『スピード・ワールド―ReACT』に2つ以上乗っているスピードカウンターを全て取り除いて発動出来る。このターンをスキップする。

 

Reiji

スピード・ワールド―ReACT スピードカウンター 2→0

 

Gekkou

LP 4000

手札 1

モンスター ドラグニティナイト―ヴァジュランダ(攻撃表示)

      聖刻龍王―アトゥムス(攻撃表示)

      ドラグニティ―ファランクス(守備表示)

魔法・罠カード なし

 

が、それ以上は通さない。

追突(リアエンド・コリジョン)によって突っ込んで来たヴァジュランダ諸共月行をクラッシュ(あくまでターンをスキップした事に関する比喩だ)させ、強制的にこちらのターンに移らせて貰う。

 

「私のターン。ドロー」

 

Reiji

スピード・ワールド―ReACT スピードカウンター 0→1

Gekkou

スピード・ワールド―ReACT スピードカウンター 2→3

 

「まずは『DDD壊薙王アビス・ラグナロク』の効果発動。

墓地の『DDD剋竜王ベオウルフ』を攻撃表示で蘇生する」

 

DDD剋竜王ベオウルフ

融合・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 8

攻撃力 3000

 

「次に魔法『死者蘇生』を発動」

 

死者蘇生(制限カード)

通常魔法

1:自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

「死者蘇生の効果で、2体目の『DDD呪血王サイフリート』を攻撃表示で蘇生する」

 

DDD呪血王サイフリート

シンクロ・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 8

攻撃力 2800

 

これで準備は整った。

 

「そしてアビス・ラグナロクを攻撃表示に変更してバトルフェイズに入る。

ベオウルフでファランクスを攻撃!ベオウルフは貫通効果を持っている!バスター・クロー!」

「させません!アクションマジック『大脱出』発動!」

「おっと、それにチェーンしてサイフリートの効果発動。それを無効にする」

「な、ぐぁぁぁぁ!」

 

DDD剋竜王ベオウルフ 攻撃力 3000 VS ドラグニティ―ファランクス 守備力 1100

 

Gekkou LP 4000→2100

 

「1体目のサイフリートでミスティルを攻撃!ドラゴン・スレイヤー!」

「ぐっ!」

 

DDD呪血王サイフリート 攻撃力 2800 VS ドラグニティアームズ―ミスティル 攻撃力 2100

 

Gekkou LP 2100→1400

 

「2体目のサイフリートでヴァジュランダを攻撃!ドラゴン・スレイヤー、第2打!」

「がぁ!」

 

DDD呪血王サイフリート 攻撃力 2800 VS ドラグニティナイト―ヴァジュランダ 攻撃力 1900

 

Gekkou LP 1400→500

 

「アビス・ラグナロクでトドメだ!」

「凄まじい強さです。流石は隊長」

 

Gekkou LP 500→-1700 LOSE

 

WINNER Reiji

 

------------

 

「お疲れさん、零児。どうよ、俺達が前世でしのぎを削って来たライディングデュエルを再現した、このフィールドは!」

「素晴らしいな、此処は。スピードカウンター及びSpの存在による独自の戦略、一味違った奥深さが此処にはある」

 

遊矢達の前世で使用されていたSpの殆どは一新する必要があるし、さっきのリアエンド・コリジョンの様なSpアクションカードの開発もしなければならないが、それを抜きにしてもこのデュエルは面白い。

遊矢が言っていた「互いが適度に交流し、切磋琢磨し合う事によるミームの発展」、その好例と言って良い物だ、このフィールドは。

この素晴らしきミームを、アカデミアに壊される訳には行かない、何としても守り抜く必要がある。

そのアカデミアは先の侵攻で惨敗を喫した事で攻め込む気力を大いに削がれ尚も、前以て潜入したフォースハウンドと、黒咲瑠璃とリンを確保する為に送られた第4部隊が楔を打ち込んでいるだろう、そんな状況下で特攻する様なバカでは無い、赤馬零王という男は。

だがもしもの事もある、守りは万全にしなければ。

 

「16時に定期捜索に入る。各自、警戒を怠るな」

「任せろ、零児」

「勿論さ。師匠達がいない今、僕達が代わりにならないと!」

「エレンの居ない今、僕がエレンの代わりになる…!」

「了解よ、隊長さん」

「はい、お任せください!」



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8章・B『其々の道。エクシーズ次元に潜入した遊矢達』
103話_再会、嘗てのライバル


Side ????

 

「―――様、次元転送の反応をキャッチしたであります!」

「そうか。――――――、その転送の形態はどうなっている?最近頻発している、此処から出て行く形の物か?」

「いえ、どうやらこっちの次元に侵入して来る形の物であります」

「分かった。まだ戦いは終わらない、か…」

 

何度そんな報告を聞いただろうか、この世界に融合次元の組織『デュエルアカデミア』の兵士が侵入を初めて早3年、奴等はそれ以来この地で好き放題に暴れて来た。

そんな横暴を我らが許す筈も無く抗戦こそしたが、デュエルで倒しても逃げられて再びやって来るゾンビの如きしつこさと、多数の兵士が居る事を踏まえたしたたかな戦略の前に、多くのデュエリスト達がその命を失い、或いはカード化され、この地は廃墟と化した。

嘗てこの地を、この世界を救った英雄として称えられた俺も老骨に鞭打ち、その知名度を生かして皆を鼓舞し、前線に立って奴等を倒して来たが、その勢いを止めるには至らなかった。

そして俺の家族も戦いの中で次々といなくなり、この世界で再び生を受けてから80年近く積み上げて来た物は、この3年で殆ど消し飛ばされてしまった。

そして今も尚(最近アカデミアの本拠地にて何かあったのか、この世界から引き上げる戦士が相次いでいる様だが)、その脅威は続いている。

もうこれ以上、奴等の好き勝手にされる訳には行かない、俺の様な想いをする仲間を作る訳には行かない。

今日もまた、アカデミアの兵士を倒すべく、戦場へと出向く。

…何時まで続くんだろうか、この不毛としか言えない戦いの日々は。

遊馬、もしお前が今の俺の立場だったとしても『かっとビング』の精神で今も尚、アカデミアの兵士に真っ向から立ち向かっていたかも知れないな…

 

------------

 

Side 遊矢

 

シンクロ次元へと来た時同様『ディメンジョン・ムーバー』の能力でエクシーズ次元へと来た俺達。

だが其処に広がる光景は、まあ想像は付いていたがそれでも、シンクロ次元のそれとは正反対だった。

 

「此処が、エクシーズ次元…」

「見渡す限りのがれきの山、か…」

「此処に壮絶な戦いがあった事、アカデミアが暴れに暴れ回った事を如実に現しているわね…!」

「3年前には、戦いが始まる前には此処にも煌びやかな街が広がっていたんだろうな…」

「アカデミアの奴等、ひでェ事しやがる…!」

「許せねぇ、アカデミアめ!この世界の人達が何をしたっていうんだよ!」

 

正に、皆が言う様な惨状が広がっていた。

建物らしき物は1、2個あるか無いかで他は全てがれきと化し、人っ子1人いるのかどうか分からない、それはまるで、あの時の、『ゼロ・リバース』が起こった時のネオ童美野シティの様な…!

 

「っ…!」

「遊矢!?だ、大丈夫?顔色が青いわよ…?」

「問題無い…

ちょっと、昔の事を思い起こされただけだ」

「昔の事、もしや『ゼロ・リバース』の事か、遊矢兄ちゃん?」

「あぁ…

だがこれまでにも何度かあった事だ、少し深呼吸すれば元の調子に戻る。それよりも今は、早く生存者を探さないと…!」

 

その光景に思わず、ゼロ・リバースの光景がフラッシュバックして立ちくらみが起こってしまう、その様子に少なからず動揺している皆に心配ないと告げ、其々の地点へと転送された各部隊と連絡を取る。

 

「こちらARC-V、異常なし。各部隊、応答せよ」

『第1部隊、異常なしだ』

『第2部隊も、異常なしだぜ』

『第3部隊、此方も異常なしよ』

「了解。それでは各自、生存者の捜索及び、アカデミアに属するデュエル戦士の討伐に当たれ。連絡は以上だ。それでは、任務開始!」

『了解!』

 

各隊との連絡を終え、改めて辺りを見回す。

まあデュエル戦士の討伐はともかく(向こうから寄って来るかもしれないからな)、生存者の捜索となるとこれは骨だな、辺りは一面がれきの山、その物陰に隠れて難を逃れている存在もいるやも知れない、それらを虱潰しに当たらなければ取りこぼしが出てしまうからな。

まあ俺達、というか俺はユベル達に捜索させたり、気配察知を使ったりすれば何とかならなくもないが、他の部隊となるとその苦労は尚の事だろう、その分俺達が広範囲を探さないと。

と今後の行動を考えていると、

 

「いたぞ!エクシーズ次元の残党共だ!」

「まさかこんな所をうろついているとは思わなかったな」

「これぞ飛んで火にいる夏の虫ってか?」

「折角だ、コイツらもやっちまうか?」

「そうだな、スコアを稼がせて貰うぜ!」

「OK、早速やろうぜ!」

 

そんな俺達を偶然見つけたのか、デュエル戦士らしき6人がモンスターを展開しつつ此方へと寄って来るのが見えた。

 

「アカデミア!」

「6VS6か、何とか行けるか…!」

 

その姿を見るや戦闘態勢に入る柚子達、だが丁度良いな、折角だからコイツらには俺の実験台になって貰うとしよう…!

 

「待ってくれ、皆。此処は俺に任せてくれ。ちょっと試したい事がある」

「遊矢?」

「待てよ遊矢、幾らお前でも1人で6人もの相手は…!」

「そォだぜ、何もンな事しなくても…」

「大丈夫だ、このデッキなら何人来ようが十分だ」

 

そう言いつつ皆を制し、1人前に出る。

 

「おいおい、コイツは笑えるぜ、ヒーロー気取りかよ」

「馬鹿じゃねぇの?俺達相手に勝てるとでも思ってんの?」

「まあいいや、態々やられに来てくれたんだ、たっぷりと」

「勝てる?いや違うな、

 

 

 

デカい花火を飛ばすんだよ、お前らという花火をな!」

 

そう言い放ちつつ、覇王の力を少しばかり解放する。

すると、さっきまで好き放題言っていた連中は途端に驚き身を竦め、黙り出す。

覇王の力にあてられて俺の実力を察知したのだろう、その警戒感が跳ね上がる様子は火を見るよりも明らかだ。

 

「「「「「「「デュエル!」」」」」」」

 

1番手 Yuya LP 4000 VS

2番手 ????(赤) LP 4000 & 3番手 ????(青) LP 4000 & 4番手 ????(黄) LP 4000 & 5番手 ????(緑) LP 4000 & 6番手 ????(紫) LP 4000 & 7番手 ????(橙) LP 4000

 

先攻は俺か、お、この初手は…!

 

「俺のターン!そして、

 

ファイナルターン!」

「な、ファイナルターンだと!?」

「ふざけやがって、俺達6人をこのターンで倒すってか!?」

「馬鹿にしやがって、エクシーズ如きが!」

「Ladies and Gentleman!Boys and Girls!これより俺、榊遊矢による鮮烈な花火ショーをお見せしましょう!

まずは『E・HEROバブルマン』を召喚!」

「ひ、ヒーローだと!?」

「それはフェニックス総司令官が使っていたカードカテゴリの筈!」

「何でエクシーズ次元のお前が持っている!?」

 

E・HEROバブルマン

効果モンスター

水属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 800

 

俺のファイナルターン宣言を聞いて憤りを隠そうともせず声を上げるデュエル戦士達、だがそれは俺が召喚したバブルマンの姿で一変、驚愕の声となった。

それにしてもフェニックス?聞いたことある名前だな、まさか…?

 

「次にバブルマンがいる事で速攻魔法『バブルイリュージョン』発動!」

 

バブルイリュージョン

速攻魔法

『E・HEROバブルマン』が自分フィールド上に表側表示で存在する時のみ発動する事が出来る。このターン。自分は手札から罠カード1枚を発動する事が出来る。

 

「バブルイリュージョンの効果により、このターン俺は手札から罠カードを1枚発動する事が出来ます!この効果で手札から罠『チェーン・マテリアル』発動!」

「チェーン・マテリアル!?」

「それは我が融合次元のカードの筈!」

「ヒーローといい今の罠といい、お前は一体…!」

 

チェーン・マテリアル

通常罠

このカードの発動ターンに自分が融合召喚をする場合、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを自分の手札・デッキ・フィールド上・墓地から選んでゲームから除外し、これらを融合素材に出来る。このカードを発動するターン、自分は攻撃する事が出来ず、この効果で融合召喚したモンスターはエンドフェイズ時に破壊される。

 

「そしてこれが舞台設営の為の最後の下準備!フィールド魔法『フュージョン・ゲート』発動!」

「フュージョン・ゲートまで…!」

 

フュージョン・ゲート

フィールド魔法

このカードがフィールド上に存在する限り、ターンプレイヤーは手札・自分フィールド上から融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターをゲームから除外し、その融合モンスター1体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する事が出来る。

 

そのバブルマンを起点に着々と整えられる下準備…

さあ始めるか、鮮烈な花火ショー(無限バーン)を!

 

「それでは花火ショーの開幕です!とくとご覧あれ!

フュージョン・ゲートの効果発動!

デッキの『E・HEROフェザーマン』と『E・HEROバーストレディ』、『E・HEROクレイマン』、そしてフィールドのバブルマンを除外して融合!

四元素を司る究極のヒーロー、それは黄金をも作り上げる真の賢者!融合召喚、今こそ勝利の方程式を組み上げろ!『E・HEROエリクシーラー』!」

 

E・HEROエリクシーラー

融合・効果モンスター

光(風・水・炎・地)属性

戦士族

レベル 10

攻撃力 2900

 

チェーン・マテリアルとフュージョン・ゲートのコンボの結果として登場したのは、RPGとかではお馴染みの霊薬『エリクサー』の名を冠したヒーロー、エリクシーラー。

その重すぎる融合素材ゆえに普通のデッキでは扱いにくいが、このデッキではその効果も含めて重大なキーカードとなる。

 

「融合召喚したエリクシーラーの効果発動!

除外されているカードを全てデッキに戻します!」

「ば、馬鹿な!?たった今素材となったカードが戻っていくだと!?」

「事実上融合素材無しじゃないか!こんなのインチキだ!」

 

お前らが言うな。

 

「フュージョン・ゲートの効果発動!

デッキのフェザーマンとバーストレディ、クレイマンとバブルマンを除外して融合召喚!並び立て、エリクシーラー!

融合召喚したエリクシーラーの効果発動!

除外されているカードを全てデッキに戻します!」

 

これでレベル10モンスターが2体、発射台の準備はこれで万端!

 

「俺は2体のエリクシーラーでオーバーレイ!2体のレベル10モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!鉄路の彼方より、地響き共に、只今到着!『超弩級砲塔列車グスタフ・マックス』!」

 

超弩級砲塔列車グスタフ・マックス

エクシーズ・効果モンスター

地属性

機械族

ランク 10

攻撃力 3000

ORU 2

 

「ソイツが花火を打ち上げる為の発射台という事か…!」

 

エリクシーラー2体を用いたエクシーズ召喚の演出と共に登場したのは、遊馬だった頃に何かとひっ付いて来た女の子、神月アンナのエースカードであるグスタフ・マックス。

今更だが、今回俺が使っているのはアカデミアとの戦いの為に新たに構築した『マテリアル1キル』、1ターンに何度も融合召喚出来るフュージョン・ゲートと、融合素材を除外ゾーン以外なら何処からでも持ち込めるチェーン・マテリアル、そして融合素材をデッキに戻せるエリクシーラー、この3体の無限ループコンボで何度も融合召喚を行い、其処から今出したグスタフ・マックス等で勝負を決めるというのがこのデッキの戦略だ。

 

「ええ!只今から、花火の打ち上げを開始します!

今出したグスタフ・マックスのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!

2000バーンダメージという名の花火を打ち上げます!まずは其処の赤い仮面の貴方!発射オーライ!ビッグ・キャノン!」

「な、ぐぁぁぁぁ!」

 

超弩級砲塔列車グスタフ・マックス ORU 2→1

????(赤) LP 4000→2000

 

グスタフ・マックスの周囲を飛んでいたオーバーレイ・ユニットを示す光球が砲身に入り、赤い仮面を被ったデュエル戦士に照準を定めて発射され、デュエル戦士を空高くへと吹っ飛ばした。

それは正に、花火の打ち上げだ(ヲイby作者)

 

「くっ!だがエクシーズモンスターの効果は大抵1ターンに1度!それにさっきの融合モンスターも名前指定!これでどう俺達を倒すというのだ?」

 

その効果、というかたった今繰り広げられた光景に恐れを抱いた他のデュエル戦士だが、その効果ゆえに乱発は出来ないだろうと高をくくり、調子を取り戻していた。

確かにグスタフ・マックスの効果は、カード毎のターン1制限、この状況ではもう1回発動する事は出来ない。

が、

 

「それはどうでしょう?」

「何?」

「フュージョン・ゲートの効果発動!

墓地のエリクシーラーと、フィールドのグスタフ・マックスを除外して融合!

大地を司るヒーローよ!その大いなる力で、悪を打ち砕け!融合召喚!『E・HEROガイア』!」

「ば、馬鹿な!エクシーズモンスターを素材に融合召喚だと!?」

 

E・HEROガイア

融合・効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 6

攻撃力 2200

 

使えないんなら融合素材にしちゃえばいい。

オーバーレイ・ユニットに使ったエリクシーラーと効果を使ったグスタフ・マックスを用いて融合したのは、何やら重装甲なヒーロー、ガイア。

 

「フュージョン・ゲートの効果発動!

墓地のエリクシーラーと、たった今融合召喚したフィールドのガイアを除外して融合!

光を司るヒーローよ!その太陽の如き光で、全てを浄化せよ!融合召喚!『E・HERO Theシャイニング!』」

 

E・HERO Theシャイニング

融合・効果モンスター

光属性

戦士族

レベル 8

攻撃力 2600→3500

 

更にガイアをも素材に使い、Theシャイニングを融合する。

これでフィールド上にいるTheシャイニング以外のヒーローは、デッキにある奴以外は全て除外された。

 

「一応説明しますが、Theシャイニングの攻撃力は、除外されたE・HEROの数×300ポイントアップします!フュージョン・ゲートの効果発動!

デッキのフェザーマンとバーストレディ、クレイマンとバブルマンを除外して融合召喚!並び立て、エリクシーラー!

融合召喚したエリクシーラーの効果発動!

除外されているカードを全てデッキに戻します!」

 

E・HERO Theシャイニング 攻撃力 3500→4700→2600

 

「す、全て戻った、だと…!?」

 

そしてそれは全てエリクシーラーの効果で戻っていった。

そう、これこそがマテリアル1キルの全貌、それに気付いたデュエル戦士達が恐れおののき、その場を離れようとするが、

 

「何処へ行こうと言うのですか?俺の花火ショーは、まだまだ始まったばかりですよ」

『っ!?』

 

金縛りにあった様に動けなくなった、無論これは覇王の力を応用した、文字通りの金縛りだ。

 

「フュージョン・ゲートの効果発動!

デッキのフェザーマンとバーストレディ、クレイマンとバブルマンを除外して融合召喚!並び立て、エリクシーラー!

融合召喚したエリクシーラーの効果発動!

除外されているカードを全てデッキに戻します!

俺は2体のエリクシーラーでオーバーレイ!2体のレベル10モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!グスタフ・マックス、只今再到着!

今出したグスタフ・マックスのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!2000ダメージ!

たぁぁまやぁぁ!」

「ぎゃぁぁぁぁ!」

 

超弩級砲塔列車グスタフ・マックス ORU 2→1

????(赤) LP 2000→0 LOSE

 

そして、先程の砲撃でまだ宙を待っていたデュエル戦士に、再度砲撃が繰り出され、そのデュエル戦士は文字通りの花火となってこの場から消え去った。

 

「フュージョン・ゲートの効果発動!

フィールドのTheシャイニングとグスタフ・マックスを除外して融合召喚!現れろ、ガイア!

フュージョン・ゲートの効果発動!

墓地にある2体のエリクシーラーを除外して融合召喚!現れろ、Theシャイニング!

フュージョン・ゲートの効果発動!

フィールドのTheシャイニングを吸収して再びその力を振るえ、ガイア!

フュージョン・ゲートの効果発動!

デッキのフェザーマンとバーストレディ、クレイマンとバブルマンを除外して融合召喚!並び立て、エリクシーラー!

融合召喚したエリクシーラーの効果発動!

除外されているカードを全てデッキに戻します!」

「あ、あぁ…」

 

だからといって、この無限ループが終わる事は無い。

 

(暫くお待ちください)

 

「今出したグスタフ・マックスのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!2000ダメージ!

かぁぁぎやぁぁ!」

「がぁぁぁぁぁ!」

 

超弩級砲塔列車グスタフ・マックス ORU 2→1

????(橙) LP 2000→0 LOSE

 

WINNER Yuya

 

そして花火ショーの最後を締めくくる最後の花火が打ち上げられ、デュエルは宣言通り先攻1キルで終結した。

 

「はい、一丁上がり!」

 

その光景を見届けながら、後ろで待っていた柚子達のもとへ向かおうと振り向くと、

 

「うわぁ…」

「あンな無茶苦茶な先攻1キル、どォしろと?」

「俺だったらチェンマの所でぶち込むか、或いはゲートをうさぎでやればなんとかなる、か?」

 

其処には何だか唖然とした様子の皆が居た。

いや、今更かよ?と思いつつも皆のもとへ向かった、

 

「今のえげつないまでに洗練されたデュエルタクティクス、まさか…

 

お前まさか、鬼畜トンマでありますな!?まさかカイト様やオイラと同じく転生してきたとは…!」

 

そんな、俺を呼んでいるらしき声がした。

自分の事をオイラと言い、俺を鬼畜トンマだとか言う奴は1人(?)しかいない、

 

「オービタル7…」

「オイラの事を知っている…!

やっぱり鬼畜トンマでありますか!こんな所で会うとは驚きであります!」

 

その方向へ振り向くとやはり其処には、遊馬だった頃の最大のライバルである天城カイトに付き従うロボット、オービタル7がいた。

今の口振りからしてカイトも、この世界に転生して来たんだな…

というかオービタル7、お前はロボットだろ、ロボットが転生って色々とおかしくないか?

 

「遊矢、あの、ロボット?あれは一体?」

「ああ、アイツはオービタル7。俺が遊馬だった頃の最大のライバルだった天城カイトが作り上げたロボットだ。まあ今の通り口は無茶苦茶悪いが、性能は凄まじく高いぞ」

「カイト様!こっちであります!姿は変わっているでありますが間違い無く、其処にいるトマト頭こそあの鬼畜トンマであります!」

「引っ張るなオービタル、流石の俺も年なんだぞ」

「あ。か、カシコマリぃ…」

 

そんなオービタル7について疑問を覚えた柚子達にアイツの事を説明していると、近くにいたのかオービタル7がカイトを連れて来た様だ。

ん?年?

 

「お前、カイト、なのか…?」

「あぁ。久しぶりだな、遊馬。俺の視点で言わせれば、78年ぶりか」

 

この世界で再会したカイト、その姿は前世での晩年の姿、そのままだった…




注:『遊戯王ARC-V~灼眼のガンスリンガー~』との整合性から、今作でのカイトはアニメよりも60歳年取っている設定となっています。


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104話_動き出す運命

「此処が今、俺達の本拠としている場所だ。狭いだろうが、入ってくれ」

「ささ、入るであります」

 

晩年の姿であるカイトとオービタル7と再会した俺達は、そのカイトの案内で、正に瓦礫の下に建てられている隠れ家的な場所へとやって来た。

そんなカイトの姿、前世(遊馬だった頃)で最後に会った時は、初めて会った頃から頭髪が白髪だらけになり、顔にも至る所にしわが出来ているがそれでも体格とかが維持されていたのもあって、一目見ればカイトだと分かる様な風貌ではあり、たった今再会した彼の姿も、少しやつれた様に見える以外はそのままであった。

カイトも俺達と同じく転生して来たのも驚きだが、まさか俺より60年以上も早く転生して来たとはな。

 

「では、俺の事を遊馬からしか聞いていない奴も多いだろうから自己紹介だ。俺は天城カイト、前世でコイツとは色々な場面でしのぎを削り合った間柄だ」

「オイラはそのカイト様の最高傑作こと、オービタル7であります!オイラも前世で鬼畜トンマとは色々やりあった仲であります!」

「オービタル、余り調子に乗るな」

「か、カシコマリぃ!」

 

そしてオービタル7も転生(?)して来たとはな、何でロボットが転生出来るんだ…?

尚、鬼畜トンマというのは、俺のえげつない位のデュエルタクティクスを恐れたオービタル7が、畏怖と悪口を込めて付けた俺のニックネームだ。

あ、一応だがカイトには柚子達に俺の素性を明かしている事は知らせている、故に此処に同席して貰い、自己紹介しているという訳だ。

 

「鬼畜トンマって…

ランサーズ精鋭部隊ARC-Vメンバーの、柊柚子です」

「ARC-Vメンバー、権現坂昇です。まさかシンクロ次元に続き、エクシーズ次元にも遊矢の嘗ての仲間がいたとは、この男権現坂、感動の極みです!」

「お前はまたそれかよ、あ、同じくARC-Vメンバー、冴木当麻です!」

「ARC-Vメンバー、上村一行だァ。しかし本当驚きだぜェ」

「ARC-Vメンバー、エレン・アヴェニールだ!宜しく、カイトじっちゃん!」

「一応俺も。この世界では榊遊矢という名前だ。私兵部隊ランサーズの最高指揮官及びARC-V隊長をしている」

「む?榊?」

 

カイト側の自己紹介に続いて自己紹介を始めた俺達、そんな中この世界での名前を名乗った俺に、というかその名字にカイトが反応を示した。

まさか、ひょっとして…?

 

「遊馬、いや遊矢と呼ぶべきか。もしかしてこの世界でのお前の父親は榊遊勝か?」

「そうだけど、まさかカイト、父さんと会った事があるのか?」

「会ったも何も、アカデミアによる侵略を知らせに来たのはその榊遊勝だ。それにしても、まさかお前が榊遊勝の息子として転生して来て、今こうして次元を超えて再会するとは、運命とは分からないな…」

 

その次にカイトの口から出た言葉に、今度は俺の方が驚いた。

結構前に零児から聞いた話では、3年前のあの日に、零児から4つの次元の事やアカデミアによる侵略の事を聞き、それを止めるべく赤馬零王に直談判しようとLDSにある装置を無断で使い、次元転送したとの事だったが、融合次元じゃなくてエクシーズ次元に来ていたのか。

 

「この世界に来た榊遊勝は、アカデミアによる侵略の脅威と、それにデュエルの真理と笑顔を忘れる事無く立ち向かう事の大切さを伝え歩いた。俺も前世ではお前達と共にバリアン世界の連中と戦った過去があるし、融合召喚も少しは覚えがある、一緒に伝え歩き、融合召喚対策として『融合解除』をデッキに入れて置く様にとアドバイスもした。だがそれを十分に伝えるには時間が無く、アカデミアの侵略は始まった。そして時を同じくして、榊遊勝の姿も忽然と消えていた、という訳だ…」

 

もしかしたら再会出来るかも知れない、という俺の淡い期待は、その後のカイトの言葉で霧散した。

またも行方知れずという訳か、どうした物か…

 

「しかし、これは面倒な事態になったでありますな、カイト様。鬼畜トンマが指揮しているというランサーズが援護に来たとなれば心強いでありますが、それを指揮している鬼畜トンマの父親が榊遊勝、となると…」

「そうだな、オービタル。この非常事態だ、何かしら大事が起こったとしてもおかしくも何ともない、俺は榊遊勝にその大事が起こったが故に失踪したと思っているが、生き残った連中の殆どは、榊遊勝の失踪を『尻尾まいて逃げた』として『耳あたりの良い言葉を言いながら、いざ戦いが始まるという時に逃げ出した臆病者』と彼を見ている。その息子であるお前が率いるランサーズの援護を素直に受け入れるかどうかが問題だ。俺の一声があれば従ってはくれるだろうが、それでも不満は燻るだろう…」

「全くであります、これだからオイラ、脳みそツルツルなガキが嫌いであります!物事の裏が読めない、そんなんでこの非常事態を乗り切れると思っているんでありますかねぇ…」

 

っ、この次元でも父さんは『臆病者』扱いか…!

まああの時の父さんの対応はむしろ『蛮勇』、少しばかり『臆病』になるべきではあったが、それでも『臆病者』と一方的なレッテルを貼られるのは我慢ならないな…!

 

「兎も角、助かる。俺達も腕の立つデュエリストを集め、アカデミアに徹底して抗戦して来たが、今やそれも数える位になってしまった…

そして今も尚、アカデミアによる侵略の魔の手が引く事は無い、此処までかと考えた事も一度や二度では無かったからな…」

「カイト様…」

 

ともかく、その対応は後にしよう。

俺達が来た事に感謝の言葉を言うカイト、だがその口調も表情も、今まで見た中で最高クラスに暗い、余程アカデミアとの戦いの中で疲弊し、大事な存在を亡くして来たという事だろうか…

ん?電話だ。

 

「悪い、カイト。どうやらメンバーから報告が来たみたいだ。少し席を空ける」

 

カイトにそう断りを入れ、外に出つつ電話に出る、発信元は月影か。

 

「もしもし、俺だ。月影、アカデミアの方で何かあったのか?」

『隊長殿、先日フォースハウンドに加入したセルゲイ殿から、驚きの報告が入って来たでござる。

 

先の『アンドバリの指輪』作戦でセルゲイ殿の支配下に置き、結果としてカード化されたアカデミア兵の生存反応を、アカデミアのとある施設内でキャッチしたとの事でござる』

「な、」

 

何!?カード化=魂やら身体やらがカードに封印されるのではないのか!?

 

「何だって、それは本当なのか?」

『どうも本当の様でござる。それとそのアカデミア兵の視覚情報をジャックした所、他にカード化された人達の姿も見つけたとの事でござる。その中には嘗てLDS関係者が行方不明になった件の被害者らしき姿も確認されたそうでござる』

「そうか」

 

然しながら、これは思わぬ僥倖だな。

アカデミア軍による侵略の被害を最小限に食い止めるだけでなく、アカデミア全体に疑心暗鬼を植え付けて攻勢を挫き、他次元への侵略の魔の手を引っ込めさせる事で今後の『計画』の足掛かりにしようと実行したアンドバリの指輪作戦、だがそれによって支配下に置いたアカデミア兵を含め、カード化された人達が同じ施設内に収容されているとなれば…!

 

『それと隊長殿、此処からはセルゲイ殿の提案でござる。

 

そちらからの一声さえあれば、今一度支配下に置いたアカデミア兵を操り、収容された人達を救助させる事、それを阻止するであろう敵の妨害を防ぐ事も出来る、その準備は既に整えてあるが、どうだろうか、との事でござる』

 

おぉ流石はセルゲイ、仕事が早いな。

当初彼をランサーズに加入させる事、無理矢理制御する様な措置無しで従えようとした事に反対や慎重な声が強かったが、やはり彼を加えて良かったな、ならば、

 

「そしたら月影、セルゲイに伝言を頼む。

 

その様にするが良い、アカデミアに囚われた人達を救い出すが良い、と」

『御意!』

 

それに応えるのが最高指揮官としての役目だ。

そう月影に伝えて電話を切り、カイト達がいる隠れ家に戻ろうとした時、俺の視界が人影を捉えた。

生存者か、或いはアカデミアの兵士か、どちらにせよ、此方から出向く必要があるな。

 

「おーい、其処の人。こんな所でどうしたんだ?」

「ん?僕の事を言っているのか?」

『遊矢、そんな不用意に近づいて大丈夫か?周りに誰かが伏兵として忍んでいるかも分からない』

『遊矢なら大丈夫だよ、問題無い。何があっても対処出来るよう覇王の力をスタンバイさせているみたいだし』

 

後ろでどっかのネタの様なやり取りをしている2人は放って置こう。

それにしてもこの声、どっかで聞いたことある様な…?

 

「いや、アンタを置いて誰がいるんだよ。まあそれは良いや。俺は榊遊矢、ランサーズという私兵部隊の最高指揮官だ」

「榊…!?

まさか君はあの榊遊勝の息子か!?」

『あらら、これは地雷を踏んじゃったみたいだね…』

 

何処かで聞いた事のある声音に引っ掛かる物を覚えながらも構わず尋ねたが、俺が名乗ったその時、俺の名字にソイツは食いついて来た。

カイトの時もそうだったが、此処でも父さんは広く知られているのが分かる、良くも悪くもな。

そしてソイツから発せられる憎悪の感情からして、ユベルの言う通り今は悪い方向に転がった、か…!

 

「良い機会だ!君が本当に榊遊勝の息子なら彼をおびき出す餌になって貰う!」

『そのデュエルディスクは、アカデミアの物か…!』

「ちっ!やるしかないか!」

 

ソイツがデュエルディスク、それもアカデミア製らしき物を構えたのに応じ、俺もまたデュエルディスクを構え、

 

「「デュエル!」」

 

先攻 ???? LP 4000 VS 後攻 Yuya LP 4000

 

デュエルは始まった。

 

「僕のターン!

まずは『D(デステニー)HERO(ヒーロー)ドリルガイ』を召喚!」

「何!?ディーヒーローだと!?」

『馬鹿な、それは確か遊矢が十代だった頃にアイツが使っていた…!』

「デステニーヒーローだ!」

 

D―HEROドリルガイ

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1600

 

だが先攻となったソイツが召喚したモンスター、というかそのカテゴリ名に俺とユベルは驚愕した。

ユベルの言う通り、俺が生きていた中でこのカテゴリを使っていたのは1人だけ、

 

「エド・フェニックス…!」

「何、僕の名前を知っているのか?まあ良い、君を倒し、それも含めて吐かせる!」

 

ポツリとこぼしたら案の定と言うべきか、喰いついて来た。

まさかソイツ、いやエドも俺やジャック達の様に転生して来たのか…?

いや安直にそう考えるのは早計だ、ジャック達がそうだからって、エドもそうだとは限らない。

この前、海音に転生者である事を告げた時の反応がそうだったように、それまでがそうだとしても、今そうなるとは限らない、それが既定路線だと決めつけるのは良くないんだ。

 

「召喚したドリルガイのモンスターエフェクト!このカードの攻撃力以下の攻撃力を持つデステニーヒーローを手札から特殊召喚する!カモン!アナザーワン!」

 

しかし今しがた2体並んだ、関節があるであろう部分からドリルを生やしたディーヒーローは、同名モンスターの特殊召喚も出来る様になっているんだな。

 

「次に魔法『融合』発動!」

 

融合

通常魔法

1:自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「僕はフィールドのドリルガイと、手札の『D―HEROディシジョンガイ』を融合!運命の岩盤を穿つ英雄よ!勝利の宿命を決意し英雄よ!今一つとなりて暗黒の未来に君臨せよ!融合召喚!カモン!『D―HEROディストピアガイ』!」

「ディーヒーローの融合モンスター…!」

「何度も言わせるな!デステニーヒーローだ!」

 

D―HEROディストピアガイ

融合・効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 8

攻撃力 2800

 

そのドリルガイと、手札にあったらしいディーヒーローを用いて融合召喚されたのは、理想郷(ユートピア)の対義語である暗黒郷(ディストピア)の名を冠したディーヒーロー、ディストピアガイ。

 

「融合召喚したディストピアガイのモンスターエフェクト!墓地へ送られたドリルガイの攻撃力分のダメージを君に与える!スクイーズ・パーム!」

「っちい!」

 

Yuya LP 4000→2400

 

「僕はカードをセットしてターンエンド」

 

Edo

LP 4000

手札 0

モンスター D―HEROドリルガイ(守備表示)

      D―HEROディストピアガイ(攻撃表示)

魔法・罠カード セット

 

「俺のターン!ドロー!」

「スタンバイフェイズに罠『D―フュージョン』発動!」

 

D―フュージョン

通常罠

このカードの効果で融合召喚する場合『D―HERO』モンスターしか融合素材に出来ない。

1:自分フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン、戦闘・効果では破壊されない。

 

「暗黒に満ちた運命を突き進む英雄よ、運命の岩盤を穿つ英雄を取り込み、再びその力を振るえ!ディストピアガイ!

ディストピアガイのモンスターエフェクト!もう1度ドリルガイの攻撃力分のダメージだ!スクイーズ・パーム!」

「あちっ」

 

Yuya LP 2400→800

 

「これがデステニーヒーローの力だ!この力で、榊遊勝の息子である君を打ち倒すのみ!」

 

ディストピアガイが2連続で放った光弾が共に、俺に直撃して所謂ガンマンラインに到達した事でもう勝つ気でいるのか、そう言い放ったエド。

だが逆だ、このデッキと、今の俺の手札で言えば、今の効果で後攻1ターンキルを決める算段が付いた。

それにしても…

 

「…なんて、なんてディーヒーローを馬鹿にしたデュエルタクティクスだ!それでもディーヒーロー使いかよ!」

「なっ!?」

 

今のデュエルタクティクスで分かった、コイツは俺の知っているエドじゃない!

 

「ディーヒーローの、其々が持つ個性が何も活かされてねぇじゃねぇか!ただ手札にあった同名モンスターを並べて、カテゴリ融合しただけ、そんな事は他のデッキでも出来る!」

 

所謂切り込みロックで知られる『切り込み隊長』や、隼が使っている『RR―バニシング・レイニアス』が前者だし、それは今やペンデュラム召喚で出来る芸当だ。

後者もエレンのシャドールや俺のHERO、真澄のジェムナイトと結構存在する。

 

「だがディーヒーローは違う!俺が嘗てデュエルしたディーヒーロー使いは、その時俺が使っていたデッキと比較してこう言っていた!『君のデッキがモンスター達の絆で様々な融合モンスターを出して戦うのなら、僕のデッキは其々のモンスターが持つ強烈な個性で戦うデッキだ』と!」

 

顕著なのが、運やタイムラグこそ絡むが強力な通常魔法のコストを踏み倒せる『D―HEROダイヤモンドガイ』、相手だけスキルドレインにサクリファイスの様な吸収効果を併せ持った『D―HERO Bloo―D』で、この2体は其々、自らを主軸とし、自らの名を冠したデッキも作られる程だ。

それ以外にも、蘇生カードを『強欲な壺』に変えちゃうという馬鹿げた強さから禁止カードとなった『D―HEROディスクガイ』、生き残っていると相手に追加ドローさせちゃう代わりに下級モンスターはおろか青眼の白龍すらも超える守備力を誇る『D―HEROディフェンドガイ』、墓地の自分を除外する事で同名カードをリクルート出来る効果から様々な召喚方法に応用された事で一時は準制限カードとなった『D―HEROディアボリックガイ』、相手フィールドでサンドバックになる『D―HEROディパーテッドガイ』、キラトマダブルガイというネタ的な意味で有名な『D―HEROダブルガイ』…

そんな、そんな強烈な個性を持った連中の集まりこそが、ディーヒーローで、それを存分に発揮するデュエルタクティクスこそが、俺の知っているエドのそれだったんだ。

それをコイツは…!

 

「今のお前のデュエルタクティクスからはそんな物は微塵も感じられない!所詮お前の使っているディーヒーローは、D(ダミー)―HERO、偽物だ!」

「何だと…!

さっきから黙って聞いていれば言いたい放題、このディストピアガイを下せるとでも言わんばかりの言い草だな!言って置くがD―フュージョンの効果で融合召喚されたディストピアガイはこのターン、破壊出来ない!何をするつもりかは知らないが、次のターンでの僕の勝ちは揺るがない!」

「破壊?そんな事する必要は無い。それにお前に、手札もセットカードも無いお前に次のターンは無い!見せてやる、このデッキに宿りしモンスター達の絆を!」

 

そう言い放ち、俺は動き出す…!



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105話_個性を忘れたDVS絆を忘れぬN

オススメBGM:『TAKE ME HIGHER』(ウルトラマンティガOP)


急遽始まったこの世界のエドとのデュエル、先攻となったエドが呼び出したディストピアの効果によるバーンダメージによって俺のLPは800、OCGで言う『ガンマンライン』に達した。

だがこのデュエルで使う俺のデッキ、もっと言えば今の手札なら此処から後攻1ターンキルを決めるのも容易だ、というかディストピアによるバーンの結果として容易になった。

見せてやる、十代だった頃に出会ったエドが称した、このデッキに宿るモンスター達の絆を!

 

「メインフェイズに入り、まずは魔法『コンバート・コンタクト』発動!」

 

コンバート・コンタクト

通常魔法

このカードは自分フィールド上にモンスターが存在しない場合のみ発動する事が出来る。自分の手札及びデッキから1枚ずつ『N(ネオスペーシアン)』と名の付いたカードを墓地に送り、デッキをシャッフルする。その後、自分のデッキからカードを2枚ドローする。

 

「コンバート・コンタクトの効果で、手札の『N・グラン・モール』とデッキの『N・エア・ハミングバード』を墓地へ送り、デッキをシャッフルした後、2枚ドロー!」

 

お、中々良いカードが来たな。

このままケリを付けてやろうかと考えたが折角だ、もう少し準備を積んで派手に動くか!

 

「次に今引いた2枚目のコンバート・コンタクト発動!

これも今引いた手札の『N・フレア・スカラベ』とデッキの『N・アクア・ドルフィン』を墓地へ送り、デッキをシャッフルした後、2枚ドロー!

続いて『E・HEROプリズマー』を召喚!」

「何!?僕の知らないヒーローだと!?」

 

E・HEROプリズマー

効果モンスター

光属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1700

 

そういえばさっきのデュエルでバブルマンを召喚した時、ボコしたデュエル戦士が今のエドみたく驚いていたな。

向こうではD―HERO以外のヒーローモンスターは存在しないのか?

と、そんな事を考えていた俺と、見た事無いと言わんばかりに驚くエドを他所に登場したのは、身体がプリズムで出来たヒーロー、プリズマー。

 

「今召喚したプリズマーの効果を、エクストラデッキの『E・HEROネオス・ナイト』をお前に見せ、デッキからこのカードの融合素材に名称指定された『E・HEROネオス』を墓地へ送って発動!

エンドフェイズまでプリズマーの名前を、E・HEROネオスとして扱う!リフレクト・チェンジ!」

「また僕の知らないヒーロー…!」

 

今しがた召喚したプリズマー、その身体を通る光が乱反射した事で、その身が俺の嘗ての相棒である、どっかの光の巨人みたいな姿に見える様になった。

 

まあ此処まで言ったなら分かる奴も多いと思うが、今回俺が使っているデッキは【ネオス】。

ネオスと、彼をサポートする戦士達のカテゴリ『ネオスペーシアン』を主軸として、様々な融合モンスターを独特の方法で呼び出して戦うのがメインとなるデッキだ。

そう言えばネオスもネオスペーシアン達も、俺が十代だった頃にはユベル達と同じくカードの精霊が宿っていて、様々な苦難を共に乗り越えて行ったよな。

今やその精霊も居なくなって単なるモンスターカードと化したコイツらだが、それでも思い入れのあるカード達である事は間違いない。

コイツらの絆を、お前とは似て非なる存在からその強固さを評されたその絆を見せてやるぜ!

 

「続いて魔法『死者蘇生』発動!対象はエア・ハミングバードだ!」

 

死者蘇生(制限カード)

通常魔法

1:自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

「死者蘇生の効果で、エア・ハミングバードを攻撃表示で蘇生するぜ!」

 

N・エア・ハミングバード

効果モンスター

風属性

鳥獣族

レベル 3

攻撃力 800

 

先程墓地へ送られた真紅な体躯の鳥人っぽいネオスペーシアンがフィールドに現れた事で、準備は万端!

 

「俺はネオス扱いとなっているプリズマーと、エア・ハミングバードをデッキに戻してコンタクト融合!」

「何!?カードの効果を使わずに融合召喚だと!?」

 

いや何故其処で驚くんだ?カードの効果を使わない融合召喚なんて今時色々あるだろ、亮太郎が使う『キメラテック・フォートレス・ドラゴン』や雷牙が使うVWXYZシリーズ、アカデミアにも(元いたと付くが)一美が霊獣シリーズを使っているんだし。

そんな感じで驚いているエドを他所に、プリズマーとハミングバードは助走を付けて高跳びすると、その身を重ね合わせ、

 

「遠い宇宙にある光の国から、正しき闇を宿してやって来た混沌の戦士よ!今こそ真の力を解き放ち、風の刃で逆境を切り裂け!コンタクト融合!『E・HEROエアー・ネオス』!」

『ゼアッ!』

 

E・HEROエアー・ネオス

融合・効果モンスター

風属性

戦士族

レベル 7

攻撃力 2500→5700

 

「な、攻撃力がディストピアガイの倍になっただと!?」

 

どっかの光の巨人の様な登場演出と共に、エア・ハミングバードの面影を受け継いだ戦士となってフィールドへと姿を現した。

その攻撃力が元々の2500から一気に5700まで上がったが、無論これには理由がある。

 

「俺のLPがお前のLPを下回っている場合、エアー・ネオスの攻撃力はその差の分だけ上昇する!今の俺とお前のLPの差は3200!お前がさんざんバーンダメージを喰らわせてくれたおかげで、エアー・ネオスはその力を極限まで解放出来たのさ!」

「な、何だと!?だがそれでもディストピアとの攻撃力の差は2900、ソイツの攻撃を喰らった所で僕のLPは残る!」

 

確かにな、それにエアー・ネオスに限らずネオスのコンタクト融合体の大半は、エンドフェイズにエクストラデッキに戻っちゃうデメリットがある。

元ネタとなったどっかの光の巨人同様、ネオスペースで生まれ育ったネオスにはこのフィールドの環境は厳しく、何かしらの対策を立てない限り1ターンしか戦えないという訳だ。

が、

 

「それはどうかな?」

「何?」

「俺のデッキのエースはコイツだけじゃない!魔法『ミラクル・コンタクト』発動!」

 

ミラクル・コンタクト

通常魔法

自分の手札・フィールド上・墓地から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを持ち主のデッキに戻し、『E・HEROネオス』を融合素材とする『E・HERO』と名の付いた融合モンスター1体を召喚条件を無視してエクストラデッキから特殊召喚する。

 

ならば他に攻撃出来る奴を出せば良いだけの話だ!

 

「ミラクル・コンタクトの効果で、俺は墓地にあるネオスとネオスペーシアンでコンタクト融合!」

 

そう宣言すると共に、俺の意志を汲み取ったデュエルディスク、その墓地スロットから俺の望むカード達が出されていく。

改めて括目して見ろ、このデッキに宿りしモンスター達の絆、その極地を!

 

「フレア・スカラベ!」

『N・フレア・スカラベ!』

『応ッ!』

 

その1枚目、スカラベ(フンコロガシ)を擬人化させた様な姿のネオスペーシアンを手に取り、その名前を宣言しながら掲げた後、それをデッキに差し込むと、効果音と共にそのカード名が読み上げられ、左隣へと吹きあがった赤いオーラと共にフレア・スカラベの霊体が登場し、

 

「グラン・モール!」

『N・グラン・モール!』

『行くぜ!』

 

次に2枚目、ドリル付きの武装を身に付けたモグラみたいなネオスペーシアンを手に取り、先程と同じ動作でデッキに差し込むと、これまた先程と同じ演出と共に、今度は右隣へと吹きあがった山吹色のオーラと共にグラン・モールの霊体が登場した。

 

「熱いヤツ、頼んだぜ!『フュージョン・アップ』!」

 

両脇に登場した2体のネオスペーシアン、それが腕を×字にクロスさせた直後に両脇に広げ、ガゼルパンチの要領で溜めるという俺の動きにシンクロして同じ挙動を見せ、3人同時に引いていた左腕を上空に放つと、俺の宣言とシンクロしたかの様に重なった電子音声と、ロック調のBGM、そして赤と山吹色の眩い光と共にネオスの霊体が俺の目前に登場、

 

「トリプルコンタクト融合!『E・HEROマグマ・ネオス』!」

『シュワッチ!』

 

E・HEROマグマ・ネオス

融合・効果モンスター

炎属性

戦士族

レベル 9

攻撃力 3000→4200

 

3体のモンスターの霊体が重なって1体の溶岩流を思わせるプロテクターを纏った戦士となり、またもやどっかの光の巨人の様な登場演出と共にフィールドへと舞い降りた。

これがネオスとネオスペーシアンの絆の極致、トリプルコンタクト融合!

 

「ま、また攻撃力が増加しただと!?」

「マグマ・ネオスの攻撃力は、フィールド上のカードの数×400ポイントアップする!

バトルフェイズに入る!エアー・ネオスでディストピアガイを攻撃!スカイリップ・ウィング!」

「うわぁぁぁぁぁぁ!?」

 

E・HEROエアー・ネオス 攻撃力 5700 VS D―HEROディストピアガイ 攻撃力 2800

 

Edo LP 4000→1100

 

E・HEROエアー・ネオス 攻撃力 5700→2800

 

「これでトドメだ!マグマ・ネオスでディストピアガイを攻撃!スーパーヒートメテオ!」

「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

E・HEROマグマ・ネオス 攻撃力 4200 VS D―HEROディストピアガイ 攻撃力 2800

 

Edo LP 1100→-300 LOSE

 

WINNER Yuya

 

「これがネオスとネオスペーシアンの絆、嘗て俺が出会ったデュエリストが、ディーヒーローの強烈な個性と同等以上の物と評した、強固な絆だ!」

 

エドがエアー・ネオスとマグマ・ネオスの攻撃によって吹っ飛び、LPが0以下になったのを確認して、俺はそう言い放つ。

ネオスやネオスペーシアン達と出会ったのは原作と比べて早く、エドと出会って直ぐ、原作において敗北のショックでデュエルが不可能になるあのデュエルより前だったか、そんな彼らとの出会いに少しの驚きと抑えきれない歓喜から早速デッキを組んでD―HEROを用いるエドとのデュエルに臨んだっけな。

最初はイマイチ動かし慣れていなかった事とエドが使うD―HERO達の強烈な効果の前に苦戦を強いられたけど、其処から今回みたいにエアー・ネオスで大逆転を決めて勝ったんだよな。

あの時のデュエルは当時、カイザーとのそれに匹敵する位に楽しかったし、其処でエドにああ言われたのも、エドのD―HEROに対する愛着を、それにも勝るとされた俺のネオス達との絆への評価を感じ取れて嬉しかった、だからこそ目前にいるエドが、エドのデュエルタクティクスが許せなかったんだ。

そんな過去の事を思い出しながら、吹っ飛ばされたエドが倒れているであろう場所へと出向き、

 

「馬鹿な…この僕が…このエクシーズ次元を…任されたこの僕が…君に…負ける筈が…!」

「ディーヒーローが持つ強烈な個性を踏みにじっている今のお前では、俺には永遠に勝てやしない。

 

お前のデッキがどう戦いたいのか、そのデッキに宿るディーヒーロー達がどうありたいのか、それを感じ取った時、そして己が過ちに気付いた時にまた会おう」

「ま…待て…!」

 

尚も負けを認めようとしないエドに、そう吐き捨ててその場を後にした。

 

『遊矢、良かったのかい?この世界での遊矢の父さん、榊遊勝の事を聞かなくても?』

「アイツも父さんの事を探しているみたいだったし、それ程良い手掛かりは持って無いと思う。仮にあったとしても、今はアカデミアをどうにかするのが先決だし」

『遊矢、そのアカデミアをどうにかする事に関してだが、

 

 

 

先のデュエル戦士の言葉とたった今エド・フェニックスがこぼしていた言葉からして、彼はアカデミアの幹部だと思われる。放置して良かったのか?』

「『あ』」



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106話_追い詰められしアカデミア

Side ????

 

「野呂副司令官、申し上げます!今入って来た報告によると、フェニックス総司令官が重傷を負った状態で発見されたとの事です!フェニックス司令官は現在、医務室に運ばれて手当を受けております!」

「な、何!?司令官ともあろう存在が、一体何処をほっつき歩いていたのだ!?ただでさえエクシーズ次元におけるアークエリア・プロジェクトが予定より3日と18時間44分遅れている上に、アカデミア本校にてランサーズとか言う私兵部隊が総攻撃を仕掛ける等という連絡で人員が削減され、予定の更なる遅れが予測できるというこの状況で!」

 

エクシーズ次元にあるアカデミア軍の本拠基地、其処で1人の非戦闘員から報告を受けた、野呂と呼ばれた幹部が声を荒げながらさらに詰め寄った。

 

「は、ハハッ!どうやら廃墟の中で倒れていたとの事で、救援に駆け付けたデュエル戦士によると、呼びかけに答えず「おのれ…榊遊矢…この屈辱…忘れないぞ…!」とうわ言の様に話していたそうであります!」

「さ、榊遊矢だと!?確か報告によればランサーズを率いていたのは榊遊矢では無かったか!?馬鹿な、総攻撃の為に融合次元に渡ったのではないのか!?何故このエクシーズ次元に!?まさか先程報告にあった、デュエル戦士達が先攻1ターンで大量にやられたという馬鹿げた事案も、榊遊矢によって…!?」

 

だが詰め寄られた非戦闘員からの更なる報告を聞いた野呂は如何にも狼狽していると言わんばかりの様子を見せた。

無理もない、アカデミア側は先のシンクロ次元における侵略の失敗、及びその際に遊矢が主導して実行した『アンドバリの指輪』作戦による戦力の大幅な喪失、その副産物として生まれたデュエル戦士同士の疑心暗鬼によって士気が一気に削がれた状態、そんな最中にフォース・ハウンドによって流された「ランサーズは近々アカデミアに総攻撃を仕掛ける」という噂、そしてそれを証拠づけるかのように頻発する爆破テロ、それによってアカデミアの方針が本拠防衛にシフトした影響で人員が大幅に減らされたエクシーズ次元へ派遣されている部隊、それがランサーズに勝てるかどうかの答えは言うまでもない。

部隊を指揮する総司令官が重傷を負って手当を受けているというだけでも緊急事態だが、想像もしていなかった強大な敵が間近に迫っているらしいという報告に、本拠基地は絶望感に包まれていた。

 

「こんな時にタイラー姉妹は何をしているのだ、もう29分もの遅刻だぞ…!

ランサーズ、増して榊遊矢相手となると焼け石に水だが…」

 

------------

 

その頃、

 

『デュエル!』

 

先攻 ????×6 VS 後攻 ランサーズ第1部隊

 

「1番手は俺だ!

まずは『古代の機械(アンティーク・ギア)猟犬(ハウンドドッグ)』を召喚!」

 

古代の機械猟犬

効果モンスター

地属性

機械族

レベル 3

攻撃力 1000

 

本拠基地にてそんな事態が起こっているとは露知らぬデュエル戦士達がランサーズ第1部隊と遭遇した事で始まった6VS6というチームマッチ、1番手となったデュエル戦士が召喚したのは最早お馴染みとなった機械仕掛けの猟犬。

だがとある事情からその効果は今までと比べて細部が異なっている。

 

「召喚した古代の機械猟犬の効果発動!

まずは其処の女に600のバーンダメージだ!ハウンドフレイム!」

「熱っ!」

 

Mikoto LP 4000→3400

 

まずはそのバーン効果、今までは相手フィールドにモンスターが存在しなければ発動出来ない起動効果だったが、その制限が無くなった代わりに召喚成功時に誘発される様になった。

次に融合召喚を行う効果、これも『アンティーク・ギア』融合モンスターしか特殊召喚出来なくはなったが、代わりに自分自身を融合素材にしなくても良くなった。

 

「古代の機械猟犬の3つ目の効果発動!

このカードと手札、計3枚の古代の機械猟犬と、手札の『古代の機械巨竜(ガジェルドラゴン)』を融合!古の魂受け継ぎし機械仕掛けのモンスター共よ!その首混じり合わせて混沌にして絶大なる力とならん!融合召喚!現れろ、レベル10!この世の全てを形無き混沌に返す究極破壊神!『古代の機械混沌(カオス・)巨人(ジャイアント)』!」

 

古代の機械混沌巨人

融合・効果モンスター

闇属性

機械族

レベル 10

攻撃力 4500

 

「ふはははは!どうだ、これぞ我らが誇る究極のモンスターだ!これで貴様らを叩き潰してくれよう!」

 

その効果によってフィールドに君臨した禍々しいオーラを放つ機械仕掛けの巨人、その姿を見届けたデュエル戦士は既に勝った気でいるのか高笑いを上げる。

だが4500という凄まじい攻撃力に加え、魔法・罠カードの効果を受けない耐性、バトルフェイズ中のモンスター効果発動を封じるロック効果、そして全体貫通攻撃と、高笑いを上げる気持ちも分かる程のポテンシャルを、この古代の機械混沌巨人は持っている。

しかもこのモンスターもとある事情から、融合素材が良い意味で様変わりしている。

嘗てこのモンスターを融合召喚する場合、古代の機械猟犬の他、『古代の機械双頭猟犬』に『古代の機械参頭猟犬』、そして『古代の機械究極猟犬』と3種類もの融合モンスターを融合素材に指定していた。

尚、その3種類共に古代の機械猟犬を融合素材に指定している(古代の機械究極猟犬に至ってはもう片方の融合素材が古代の機械参頭猟犬である)、つまりまともに融合召喚しようとなると古代の機械猟犬を用いた融合召喚を何度と繰り返さなければならない(古代の機械双頭猟犬は辛うじて『簡易融合』で出せるが)。

それが何と『アンティーク・ギア』カテゴリに属するモンスター4体に変更された事で、専用サポートと言って良いカードの一部や『融合識別(フュージョン・タグ)』の恩恵こそ受けられなくなるも、代わりに先攻1ターン目から融合召喚するのも容易となった、その手軽さ(?)もまた高笑いを助長していた。

 

「カードをセットしてターンエンドだ!」

(くくくっセットしたのは『神の通告』。例えモンスター効果でコイツを除去しようとしても、コイツで返り討ちだ!)

 

????×6

LP 4000×6

手札 5×5

モンスター 古代の機械混沌巨人(攻撃表示)

魔法・罠カード セット(神の通告)

 

「俺のターン!ドロー!ならば見せてやる、その究極のモンスターとやらを破壊する、チームワークを!

まずは魔法『ハーピィの羽根帚』を発動!」

「何っ!?」

 

ハーピィの羽根帚(制限カード)

通常魔法

1:相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。

 

何やらフラグを立ててターンを明け渡したデュエル戦士に続き始まった文録のターン、其処で文録は魔法・罠除去カードの定番と言って良いハーピィの羽根帚でセットカードの除去に掛かる。

 

「ハーピィの羽根帚の効果でそのセットカードを破壊する!」

「ちっ」

「次に『ブンボーグ003』を召喚!」

 

ブンボーグ003

効果モンスター

地属性

機械族

レベル 3

攻撃力 500

 

それに対し何のアクションもする事無くセットしていた神の通告を破壊されたデュエル戦士達、それを見届けた文録は、右手にコンパス型の武器を持ち、左手に定規型の盾を装備した機械戦士を呼び出す。

 

「召喚した003の効果発動!

デッキから『ブンボーグ002』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

ブンボーグ002

効果モンスター

地属性

機械族

レベル 2

攻撃力 500

 

ブンボーグ003 攻撃力 500→1000

 

その効果で登場したのは、右手に消しゴム型の武器、左手に修正液型の銃を持った機械戦士。

その2つ目の効果によって003の攻撃力が500アップしたが、今の時点でそれは重要ではない。

重要なのは1つ目の効果だ。

 

「特殊召喚した002の効果発動!

それにチェーンして速攻魔法『地獄の暴走召喚』発動!」

 

地獄の暴走召喚

速攻魔法

相手フィールド上に表側表示でモンスターが存在し、自分フィールド上に攻撃力1500以下のモンスター1体が特殊召喚に成功した時に発動する事が出来る。その特殊召喚したモンスターと同名モンスターを自分の手札・デッキ・墓地から全て攻撃表示で特殊召喚する。相手は相手自身のフィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、そのモンスターと同名モンスターを相手自身の手札・デッキ・墓地から全て特殊召喚する。

 

「何も無ければチェーン処理だ。

まずは地獄の暴走召喚の効果によって、002を2体、デッキから攻撃表示で特殊召喚!」

「ちぃ、俺は古代の機械混沌巨人を選択するが、コイツは融合召喚でしか特殊召喚出来ない」

「次に002の効果でデッキから『ブンボーグ009』を手札に加える」

 

ブンボーグ003 攻撃力 1000→2000

ブンボーグ002(×3) 攻撃力 500→1500

 

その効果にチェーンして発動された地獄の暴走召喚によって、002が大量展開される。

本来なら相手の特殊召喚も許してしまうデメリットがある地獄の暴走召喚、だが今回は相手フィールドに融合モンスターである古代の機械混沌巨人しかいなかった事(エクストラデッキから特殊召喚は出来ない)、そして古代の機械混沌巨人の召喚条件に引っ掛かった事からそれは無い物となった。

 

「その後改めて、特殊召喚した2体の002の効果発動!

デッキから『ブンボーグ008』と『ブンボーグ007』を手札に加える。

さあ行くぞ!俺はスケール1のブンボーグ008と、スケール10のブンボーグ007を、ペンデュラムスケールにセッティング!」

「何、ペンデュラムモンスターだと!?ま、まさか…!」

「お前達、ランサーズか!?」

「馬鹿な!?ランサーズは確か、融合次元に攻め込む様子だと言われていた筈…!」

 

ランサーズ第1部隊

ペンデュラムスケール(青):1(ブンボーグ008)

ペンデュラムスケール(赤):10(ブンボーグ007)

 

そして002の効果でサーチした2枚のペンデュラムモンスターをペンデュラムゾーンにセットしたその時、殆ど静観を決め込んでいたデュエル戦士達に驚きが広がった。

 

「これでレベル2から9のブンボーグ達を同時に特殊召喚出来る!さあ行くぞ、自由と平和を求め戦う機械戦士達よ!そのチームワークで、あらゆる強敵を打ち破れ!ペンデュラム召喚!『ブンボーグ009』!」

 

ブンボーグ009

効果モンスター

地属性

機械族

レベル 9

攻撃力 500→2000

 

そんな驚きを他所にペンデュラム召喚で登場したのは、様々な文房具型の武器を纏った機械戦士。

 

「更にフィールド魔法『ブンボーグ・ベース』発動!」

 

ブンボーグ・ベース

フィールド魔法

1:フィールドの『ブンボーグ』モンスターの攻撃力・守備力は500アップする。

2:1ターンに1度、自分メインフェイズに発動出来る。手札の『ブンボーグ』カードを任意の数だけ相手に見せ、デッキに戻してシャッフルする。その後、自分はデッキに戻した数だけデッキからドローする。

3:『ブンボーグ・ベース』以外の自分のフィールド・墓地の『ブンボーグ』カード9種類を1枚ずつ除外して発動出来る。相手の手札・フィールド・墓地のカードを全て持ち主のデッキに戻す。

 

ブンボーグ003、ブンボーグ009 攻撃力 2000→2500

ブンボーグ002(×3) 攻撃力 1500→2000

 

だがエースと言って良い009を出して尚、文録は展開を止めない。

今度はランドセル型の基地みたいなフィールド魔法を発動し、ブンボーグ達のステータスを底上げする。

だがそれでもその攻撃力は2500止まり、4500ある古代の機械混沌巨人には及ばない、が、

 

「そして、003の2つ目の効果発動!

ターン終了時まで009の攻撃力を、我らのフィールドにある『ブンボーグ』カードの数×500ポイントアップする!

今フィールドにあるブンボーグカードの数は8枚、よって」

 

ブンボーグ009 攻撃力 2500→6500

 

「ろ、6500!?」

「そうだ!009の攻撃力は4000上がり、6500となる!これこそが、例え1体1体は貧弱であろうと、仲間達と共に大いに強くなる、ブンボーグ達のチームワークだ!」

 

それを考慮していない文録では無い。

003の効果によって大幅にパワーアップした009、これによって古代の機械混沌巨人を余裕で倒せるラインに達した。

 

「バトルフェイズに入る!009で古代の機械混沌巨人を攻撃!オーバークロック・フルバースト!」

「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

ブンボーグ009 攻撃力 6500 VS 古代の機械混沌巨人 攻撃力 4500

 

????(赤) LP 4000→2000

 

「3体の002でダイレクトアタック!さあ、元いた世界に帰るが良い!」

「「うわぁぁぁぁぁ!?」」

 

????(赤) LP 2000→0 LOSE

????(青) LP 4000→2000→0 LOSE

 

「そして003でダイレクトアタック!オーバーダイブ・バースト!」

「がぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

????(緑) LP 4000→1500

 

そのブンボーグ達による総攻撃によって古代の機械混沌巨人はあっさりと破壊され、その余波で2人のデュエル戦士は敗北により強制転送、残った4人の内1人も決して少なくないダメージを負う。

 

「カードを2枚セットしてターンエンド!エンドフェイズに、009の攻撃力は強化前に戻る」

 

ブンボーグ009 攻撃力 6500→2500

 

ランサーズ第1部隊

LP 4000×5、3400(Mikoto)

手札 5×5

ペンデュラムスケール(青):1(ブンボーグ008)

ペンデュラムスケール(赤):10(ブンボーグ007)

モンスター ブンボーグ003(攻撃表示)

      ブンボーグ002(攻撃表示)×3

      ブンボーグ009(攻撃表示)

魔法・罠カード セット×2

フィールド魔法 ブンボーグ・ベース



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107話_されど火種はくすぶり続ける

「くっまさかランサーズが此処エクシーズ次元に来ていたとは…!

だがランサーズメンバーを倒してさえしてしまえば幹部への道が開けるという物、むしろ好都合だ!

俺のターン、ドロー!

まずは魔法『オーバーロード・フュージョン』発動!」

 

オーバーロード・フュージョン

通常魔法

自分フィールド上・墓地から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターをゲームから除外し、機械族・闇属性のその融合モンスター1体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

 

「俺は墓地の『古代の機械猟犬』3枚と『古代の機械混沌巨人』を除外して融合!古の魂受け継ぎし機械仕掛けのモンスター共よ!今再びその首交じり合わせて混沌にして絶大なる力とならん!融合召喚!蘇れ!『古代の機械混沌巨人』!」

 

古代の機械混沌巨人

融合・効果モンスター

闇属性

機械族

レベル 10

攻撃力 4500

 

先程まで繰り広げられた文録のターンでの展開、それによって6人中2人が敗北・強制転送され、残る4人の中の1人も少なくないダメージを負ったばかりか、自らが対峙している相手が最も警戒すべき部隊ランサーズのメンバーであった事で動揺が広がるアカデミア側、だが自らのターンが回って来たデュエル戦士が、やけくそか或いは本気で勝機があると思い込んでいるのか、とにかく発破を掛けつつ行動に移す。

その初手として発動されたオーバーロード・フュージョンによって再びフィールドへと舞い降りた古代の機械混沌巨人、融合素材が緩くなった事で、万が一やられた時のリカバリも容易となった。

 

「バトルフェイズに入る!」

「ならメインフェイズ終了時、003の効果発動!

3体いる002のうち1体の攻撃力を4000アップする!」

 

ブンボーグ002 攻撃力 2000→6000

 

003のパンプアップ効果は相手ターンでも使えるフリーチェーン効果、古代の機械混沌巨人の効果によって使えなくなるバトルフェイズ前に発動し、ダメージを軽減させようと考えたのだろうが、

 

「それがどうした!古代の機械混沌巨人はお前のモンスター全員に攻撃出来る!

まずはその雑魚からだ!002を攻撃!」

 

古代の機械混沌巨人は全体攻撃持ち、このままでは2人が倒されてしまう計算となってしまう。

が、

 

「ダメージステップ良いか?」

「何?」

「そのダメージステップ時、速攻魔法『リミッター解除』発動!」

 

リミッター解除(制限カード)

速攻魔法

このカードの発動時に自分フィールド上に表側表示で存在する全ての機械族モンスターは、ターン終了時まで攻撃力が倍になる。このターンのエンドフェイズ時、この効果を受けたモンスターを全て破壊する。

 

それを頭に入れていない文録では無い。

 

「リミッター解除の効果によって、俺のブンボーグ達は攻撃力が倍になる!」

「ちっこのターンで仕留めるのは不可能か。だがそれでも攻撃力は古代の機械混沌巨人の方が上だ!クラッシュ・オブ・ダークネス!」

「くっ!」

 

古代の機械混沌巨人 攻撃力 4500 VS ブンボーグ002 攻撃力 2000→4000

 

Bunroku LP 4000→3500

 

ブンボーグ002(B) 攻撃力 2000→4000

ブンボーグ003、ブンボーグ009 攻撃力 2500→5000

ブンボーグ002(C) 攻撃力 6500→13000

 

「もう1体の002も攻撃だ!クラッシュ・オブ・ダークネス、第2打ァ!」

「っ!」

 

古代の機械混沌巨人 攻撃力 4500 VS ブンボーグ002 攻撃力 4000

 

Bunroku LP 3500→3000

 

機械族デッキの切り札と言って良いリミッター解除の効果により攻撃力は倍増、それでも古代の機械混沌巨人を倒すには至らなかったが、ダメージを最小限に抑えることが出来た。

 

「バトルフェイズは此処で終了する!

メインフェイズ2に入り、速攻魔法『異次元からの埋葬』発動!」

 

異次元からの埋葬(制限カード)

速攻魔法

1:除外されている自分及び相手のモンスターの中から合計3体まで対象として発動出来る。そのモンスターを墓地に戻す。

 

「異次元からの埋葬の効果で、除外されている古代の機械猟犬3体を墓地に戻す!

カードをセットしてターンエンドだ!」

「エンドフェイズ、リミッター解除の効果を受けた002、003、009は破壊される」

 

????×4

LP 4000×3、1500(????(緑))

手札 5×3、3(????(黄))

モンスター 古代の機械究極巨人(攻撃表示)

魔法・罠カード セット

 

「私のターン、ドロー!副隊長、使って良いですか?」

「ああ、是非とも使ってくれ!」

「なら、罠『貪欲な瓶』発動!この効果でデッキに戻すのは『地獄の暴走召喚』と『ハーピィの羽根帚』、『リミッター解除』と002を2体!」

 

貪欲な瓶

通常罠

『貪欲な瓶』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:『貪欲な瓶』以外の自分の墓地のカード5枚を対象として発動出来る。そのカード5枚をデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから1枚ドローする。

 

「貪欲な瓶の効果で対象の5枚をデッキに戻してシャッフルし、ドロー!」

 

尚も後続に繋がる様、失った墓地アドバンテージを回復させてターンを終了させたデュエル戦士、ターンが回って来た美琴は、先程文録がセットしていた貪欲な瓶の効果もあって手札7枚でのスタートとなった。

その手札を、

 

「メインフェイズに入って魔法『手札抹殺』発動!」

 

手札抹殺(制限カード)

通常魔法

1:手札があるプレイヤーは、その手札を全て捨てる。その後、それぞれ自身が捨てた枚数分デッキからドローする。

 

「手札抹殺の効果により、残り6枚ある手札を全て捨て、6枚ドロー!」

「俺達も5枚の手札を全て捨て、5枚ドローする!」

「我らも5枚の手札を全て捨て、5枚ドローだ!」

「俺は残り3枚を全て捨て、3枚ドローする。ありがとうなぁ、此処まで大幅に墓地を肥やさせてくれて。お蔭で次のターン、仲間が一気にカタを付けられる!」

 

一気に墓地アドバンテージに変える。

その他のプレイヤーも(手札を持っていない文録以外)持っていた手札を全て交換し、墓地アドバンテージを確保する。

その有用性は先程ターンを終えたデュエル戦士も理解しているのか、皮肉めいた感謝の言葉を述べるが、

 

「次のターン?アンタ達にそんな物無いわ!」

「何?」

「このターンで決着を付ける!

まずは墓地へ送られた『磁石の戦士(マグネット・ウォリアー)δ』の効果を、同じく墓地へ送られた『(エレクトロ)磁石の戦士γ』、『磁石の戦士α』、『磁石の戦士γ』を除外して発動!

デッキから『磁石の戦士マグネット・バルキリオン』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

磁石の戦士マグネット・バルキリオン

効果モンスター

地属性

岩石族

レベル 8

攻撃力 3500

 

そんな物は無いと断じ、展開をスタートさせる。

まずは、墓地へ送られた新たなる磁石の戦士によって登場した、美琴のエースカード。

 

「隊長、使って良いですか?」

「勿論だ。それより美琴、あそこまで豪語したんだ、絶対に仕留めろ!」

「はい!次に墓地の『インフェルノイド・アシュメダイ』と『インフェルノイド・ベルフェゴル』、『インフェルノイド・ルキフグス』を除外し、墓地の『インフェルノイド・ネヘモス』を攻撃表示で蘇生するわ!」

 

インフェルノイド・ネヘモス

効果モンスター

炎属性

悪魔族

レベル 10

攻撃力 3000

 

次に、大量の墓地肥やしを活かして登場した、バージルのエースカード。

 

「続いてフィールドゾーンの『ブンボーグ・ベース』を墓地へ送ってフィールド魔法『マグネット・フィールド』発動!」

 

マグネット・フィールド

フィールド魔法

『マグネット・フィールド』の1の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。

1:自分フィールドにレベル4以下の岩石族・地属性モンスターが存在する場合、自分の墓地のレベル4以下の『マグネット・ウォリアー』モンスター1体を対象としてこの効果を発動出来る。そのモンスターを特殊召喚する。

2:1ターンに1度、自分の岩石族・地属性モンスターとの戦闘で相手モンスターが破壊されなかったダメージステップ終了時に発動出来る。その相手モンスターを持ち主の手札に戻す。

 

各メンバーのエースカードが相次いで登場する展開の中、デュエルが繰り広げられている場所の周囲に、謎の電流が発せられる様になった。

 

「更に電磁石の戦士γを召喚!」

 

電磁石の戦士γ

効果モンスター

地属性

岩石族

レベル 3

攻撃力 800

 

3体目として登場したのは、電流を帯びた頑丈そうな鎧を身に纏う新たなる磁石の戦士。

 

「召喚した電磁石の戦士γの効果発動!

手札の『磁石の戦士β』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

磁石の戦士β

通常モンスター

地属性

岩石族

レベル 4

攻撃力 1700

 

その効果発動宣言と共にその両腕から磁力の様な物を発すると、通常召喚出来る磁石の戦士では最も高い攻撃力を誇る磁石の戦士βが、手札から引き寄せられる様に飛び出した。

 

「私のフィールドにレベル4以下の地属性・岩石族モンスターが存在する事で、墓地の『電磁石の戦士α』を対象に、マグネット・フィールドの効果発動!

電磁石の戦士αを攻撃表示で蘇生するわ!」

 

電磁石の戦士α

効果モンスター

地属性

岩石族

レベル 3

攻撃力 1700

 

更に、周囲に発せられていた電流の様な物が、βの挙動に応じて動くとその地面から、物々しい武装を身にまとった磁石の戦士が引き寄せられる様に登場した。

尚、その攻撃力は磁石の戦士βと同じ1700、こちらも通常召喚出来る磁石の戦士では攻撃力が最も高い。

 

「蘇生した電磁石の戦士αの効果発動!

デッキから『電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン』を手札に加えるわ!

行くわよ、私の新たなるエース!私はフィールドの、電磁石の戦士αとγ、そして墓地の『電磁石の戦士β』を除外して、合体召喚!『電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン』!」

 

電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン

効果モンスター

地属性

岩石族

レベル 8

攻撃力 3000

 

その電磁石の戦士αとγ、そして墓地へ送られていたβが組み合わさる事で、美琴の新たなるエースカード、マグネット・ベルセリオンが現れた。

 

「墓地のδを除外し、古代の機械混沌巨人を対象にマグネット・ベルセリオンの効果発動!

そいつを破壊するわ!」

「な、何!?」

「行け、マグネット・ベルセリオン!その神速の突きで邪悪なる巨人を貫きなさい!超電磁砲(レールガン)!」

 

その右手に持ったレイピア型の武器から青白いエネルギー弾が放たれると、古代の機械混沌巨人へと一直線に向かい、その巨体を呑み込んだ。

これで美琴はダイレクトアタックが出来るようになったが、それでも今フィールドにいるモンスターだけでは2人倒すのが限度。

無論、何の考えなしにファイナルターンを宣言する美琴ではない。

 

「まだまだ行くわよ!魔法『融合』発動!」

 

融合

通常魔法

1:自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「私はフィールドにいるマグネット・バルキリオンとマグネット・ベルセリオンを融合!数多の磁石が1つとなりて、強大なる磁力を持った戦士とならん!融合召喚!『超電導戦機インペリオン・マグナム』!」

 

超電導戦機インペリオン・マグナム

融合・効果モンスター

地属性

岩石族

レベル 10

攻撃力 4000

 

2体いたレベル8の磁石の戦士、それが融合召喚の演出と共に其々が重なり合い、やがて強大なる磁力を持った戦士となった。

 

「まだ終わりじゃないわ!速攻魔法『マグネット・リバース』発動!」

 

マグネット・リバース

速攻魔法

1:自分の墓地のモンスター及び除外されている自分のモンスターの中から、機械族または岩石族の通常召喚出来ないモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを特殊召喚する。

 

「マグネット・リバースの効果で、たった今融合素材となったマグネット・ベルセリオンを攻撃表示で蘇生するわ!

そして魔法『死者蘇生』発動!」

 

死者蘇生(制限カード)

通常魔法

1:自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

「征矢さん、使って良いですか?」

「ああ。存分に暴れてくれ」

「では、死者蘇生の効果で、墓地の『ワイトキング』を攻撃表示で蘇生するわ!」

 

ワイトキング

効果モンスター

闇属性

アンデット族

レベル 1

攻撃力 4000

 

そしてマグネット・ベルセリオンと共に展開の締めくくりとして登場したのは、征矢のエースカード。

尚、墓地には『ワイト』『ワイト夫人』『ワイトメア』『ワイトプリンセス』がワイトキングと共に、先程の手札抹殺で墓地へ送られていたので、その攻撃力は4000となっている。

 

「バトルフェイズに入るわ!」

「させるかぁ!そのバトルフェイズ開始時、永続罠『融合塹壕―フュージョン・トレンチ―』発動!その融合モンスターの攻撃までは防げんが、他は通さん!」

「こっちがさせないわよ!それにチェーンしてインペリオン・マグナムの効果発動!

それを無効にして破壊するわ!マグネット・ジャミング!」

「なん…だと…!?」

 

融合塹壕―フュージョン・トレンチ―(アニメオリジナルカード)

永続罠

1:このカードが魔法・罠ゾーンに存在する限り、お互いのフィールドの融合モンスター以外のモンスターは攻撃出来ない。

2:1ターンに1度、そのターンに融合モンスター以外のモンスターを召喚・特殊召喚していないプレイヤーの融合モンスター1体は直接攻撃出来る。

 

このまま仕留めると言わんばかりにバトルフェイズに入った美琴を遮るべく、先程ターンを終えたデュエル戦士が障壁を張ろうとしたが、インペリオン・マグナムが放った電流の様な物がその発生源たるカードに纏わりつき、それは効力を失った。

 

「まずはインペリオン・マグナムでダイレクトアタック!ダブルマグネットスラッシュ!」

「がぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

????(黄) LP 4000→0 LOSE

 

「次にβでダイレクトアタック!マグネットタックル!」

「ぐふぅ!?」

 

????(緑) LP 1500→-200 LOSE

 

「続いてワイトキングでダイレクトアタック!」

「ぐはぁぁぁぁぁぁ!?」

 

????(橙) LP 4000→0 LOSE

 

「更にネヘモスでダイレクトアタック!」

「ごはっ!?」

 

????(紫) LP 4000→1000

 

「そしてマグネット・ベルセリオンでダイレクトアタック!マグネットスピア!」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!?」

 

そして美琴の宣言通り、総攻撃によってデュエル戦士達は全滅、これにて6VS6のデュエルは終結した。

 

「この世界に来ていきなりアカデミアのデュエル戦士と遭遇することになるとはな。退けは出来たが、まだ大量のデュエル戦士がいるかも知れない。早急に、他部隊に連絡を取る」

 

難なく退けたという結果に慢心する事無く、むしろいきなり遭遇したという事実を重く見たバージルは、早速無線機を取り出し、各隊に連絡を取り始めた。

 

------------

 

Side 遊矢

 

『こちら第1部隊。先程、この次元に居座るアカデミアのデュエル戦士と遭遇、デュエルを行っていた。難なく退けはしたが、まだ相当数のデュエル戦士がいる事が予想される。警戒を怠らない様、頼む』

「了解した。俺の方も先程遭遇したばかりだから、警戒を緩めない様、用心して置く」

 

第1部隊の隊長であるバージルからそんな連絡を受け取り、無線機の電源を切る。

先程、アカデミア所属のエド・フェニックス(そのプレイングと、ネオスを見ても特別な反応が無かった事から、俺の知るエドとは別人だろう)とデュエルした俺、後攻1ターンキルで勝利こそしたが、そのプレイングに腹を立てていたのも相まって見逃すという大ポカをしてしまい、戻って見ても後の祭り、既にその姿は無かったという中での連絡だ、肝に命じて置こう。

 

「遊矢、其処にいたの?皆が心配しているわ、早く戻りましょ」

「柚子。ああ、すまんな。今行くよ」

 

そんな色々な出来事があり、戻るのが遅い俺を心配してくれたのか、柚子が迎えに来てくれた。

確かに今は戦時中、たった今バージルから警戒を怠るなと連絡が来たばかりだ、そんな状況下、1人でほっつき歩いているのは警戒が足りていない証拠「ほう、まさかエクシーズ次元の残党ともあろう者が今時、のこのこと外を歩いているとはな。到着早々幸先が良いな、グレース」っと、考えている側からおいでなすったか!

 

「そうね、総司令部に行く前にエドやノロマちゃんへの手土産にしましょう、グロリア姉さん」

 

突如として聞こえて来た女の声、その方向に振り向くと、やはりと言うべきか、アカデミア製のデュエルディスクを装備した、姉妹と思われる2人の女がいた。

明らかに向こうはやる気の様子か、なら行くしかないか!

 

「行くぞ、柚子!」

「ええ、行くわよ遊矢!」

「向こう見ずな奴等め、私達の事を知らないのか?」

「フフッ知らないなら教えてあげる」

「私達タイラー姉妹の」

「「タッグデュエルの恐ろしさを!」」



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108話_アマゾネス・トラップVS…

「「「「デュエル!」」」」

 

1番手 Gloria LP 4000 & 3番手 Grace LP 4000

VS

2番手 Yuya LP 4000 & 4番手 Yuzu LP 4000

 

「私のターン!

まず、私の手札の『アマゾネス女王(クィーン)』をお前達に見せ、『アマゾネスの斥候』の効果発動!

このカードを攻撃表示で特殊召喚!」

 

アマゾネスの斥候(アニメオリジナルカード)

効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 3

攻撃力 800

 

カイト達が待っている拠点に戻ろうとした俺と柚子の前に現れた、グロリアというらしい金髪の姉、グレースというらしい銀髪の妹、恐らくアカデミアに属しているであろう姉妹とタッグデュエルをする事となった俺達、1番手となったグロリアが最初に呼び出したのは、斥候という仕事が如何にも似合いそうな出で立ちの女性戦士。

その効果で見せられたアマゾネス女王も踏まえると、グロリアのデッキは、十代だった頃にセブンスターズの1人(?)として敵対した事もある女性デュエリスト、タニヤも使っていた【アマゾネス】か。

ステータスこそ中途半端で、その効果も戦闘に関するモノや、攻撃を踏まえないと発揮できない物ばかりだが、その分戦闘で優位に立たせるサポートカードが多いんだよな。

中には『アマゾネスの射手』の様に、アマゾネス全然関係ねぇじゃんと突っ込みたくなるデッキに入るカードもあるが、少なくともアマゾネス女王はその類じゃない。

となれば効果での除去が重要になって来るな。

 

「次にアマゾネスの斥候をリリースし、アマゾネス女王をアドバンス召喚!」

 

アマゾネス女王

効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 6

攻撃力 2400

 

「カードを2枚セットしてターンエンドだ」

 

Gloria

LP 4000

手札 1

モンスター アマゾネス女王(攻撃表示)

魔法・罠カード セット×2

 

さっき見せて来たアマゾネス女王をアドバンス召喚して、2枚のセットカードで終わらせたか。

 

「俺のターン、ドロー!」

「ドローフェイズに永続罠『リビングデッドの呼び声』発動!対象はアマゾネスの斥候だ!」

 

リビングデッドの呼び声

永続罠

1:自分の墓地のモンスター1体を対象としてこのカードを発動出来る。そのモンスターを攻撃表示で特殊召喚する。このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは破壊される。そのモンスターが破壊された時にこのカードは破壊される。

 

ん?此処でリビングデッドの呼び声だと?

今グロリアの墓地には、対象にしたアマゾネスの斥候しかおらず、その攻撃力は800。

確かにアマゾネス女王の効果で戦闘破壊耐性を得られはするが、むしろそれは俺達にサンドバッグを与える様な物、一体どんな意図でこれを…?

 

「リビングデッドの呼び声の効果で、アマゾネスの斥候を攻撃表示で蘇生する!

次にお前のスタンバイフェイズで速攻魔法『瞬間融合』発動!」

 

瞬間融合

速攻魔法

1:自分フィールドから融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。この効果で融合召喚したモンスターはエンドフェイズに破壊される。

 

成る程、融合素材にする為に蘇生した訳か。

瞬間融合は手札コストが無くなり、禁止制限にも掛かっていない代わりに、エンドフェイズに自壊するデメリット効果を持ち、チェーン発動を許してしまう『超融合』といった感じのカード。

無論、普通の融合とは違って手札から融合素材を送れない、故にフィールドに揃えた、という事か。

 

「私はアマゾネス女王とアマゾネスの斥候を融合!密林の女王よ、獲物を狙う戦士の力を取り込み、全てを統べる帝国を築け!融合召喚!現れろ、レベル8!『アマゾネス女帝(エンプレス)』!」

 

アマゾネス女帝(アニメオリジナルカード)

融合・効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 8

攻撃力 2800

 

その瞬間融合の効果による融合召喚の演出を経て登場したのは、アマゾネス女王が更なる風格を身に着けた様な姿。

多分その姿からしてアマゾネス女王の効果を発展させた様なそれを持っている筈、そしてそれを態々瞬間融合というデメリットのキツいカードで出したという事は…!

なら、こう動くか!

 

「メインフェイズに入って、まずは『EMドクロバット・ジョーカー』を召喚!」

 

EMドクロバット・ジョーカー(制限カード)

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 4

攻撃力 1800

 

「そ、その奇怪なフレームのカード、まさかペンデュラムモンスター!?」

「まさかお前、ランサーズか!?」

 

俺のターンに入って尚積極的に動いたグロリアの展開も終わり、メインフェイズに入った俺が登場させたドクロバット・ジョーカーを、というかそのカードフレームを見て、2人揃って驚きの声が上がった。

ああ、そういえばフォース・ハウンドに「ランサーズは近々、アカデミアに総攻撃を仕掛ける」と噂を流させ、それをもっともらしくするために爆破テロを行わせているんだったな、ならば俺達がこうしてエクシーズ次元にいる事を驚くのも無理はないか。

 

「フッお前達がエクシーズ次元の生き残りかと思ったらまさかのランサーズだとは驚きだ。だが同時にこれは僥倖だ。そうだろう、グレース?」

「ええ、グロリア姉さん。まさか久々の戦場で、ランサーズとデュエル出来るなんて、ふふ、楽しみ」

 

だがその驚きも一瞬の内、直ぐにその表情は獰猛な笑みに変わった。

こりゃあ一回のポカが命取りになるな、久々のタッグデュエルとあってか、右手にデュエルディスクを装備してのデュエルはちょっと違和感があるが、なるべく違和感を気にする事無く集中しないと。

 

「召喚したドクロバット・ジョーカーの効果発動!

デッキから『オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン』を手札に加える!

次にフィールド魔法『天空の虹彩』発動!」

 

天空の虹彩

フィールド魔法

『天空の虹彩』の2の効果は1ターンに1度しか使用できない。

1:このカードがフィールドゾーンに存在する限り、自分のペンデュラムゾーンの、『魔術師』カード、『EM』カード、『オッドアイズ』カードは相手の効果の対象にならない。

2:このカード以外の自分フィールドの表側表示のカード1枚を対象として発動出来る。そのカードを破壊し、デッキから『オッドアイズ』カード1枚を手札に加える。

 

「天空の虹彩の効果発動!対象はドクロバット・ジョーカー!

コイツを破壊し、デッキから『オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン』を手札に加える!」

 

よし、これでスケール1とスケール8が手札に揃い、ペンデュラム召喚の準備は万端!

 

「俺は今手札に加えた、スケール1の『オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン』と、スケール8の『オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン』を、ペンデュラムスケールにセッティング!」

 

Yuya

ペンデュラムスケール(青):1(オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン)

ペンデュラムスケール(赤):8(オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン)

 

「来るか、ペンデュラム召喚!」

「ああ!これでレベル2から7のモンスターが同時に特殊召喚可能!

揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!出でよ、我が僕のモンスター達よ!レベル4、華麗なる軽業師、ドクロバット・ジョーカー!そしてレベル7、世にも珍しい2色の眼を持ちし竜『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2500

 

「それがペンデュラム召喚か!」

「フィールドから墓地へ送られる時、代わりにエクストラデッキへ送られ、ペンデュラム召喚で再び舞い降りるペンデュラムモンスター…

スタンダードの連中も厄介な物を編み出した物ね…」

 

ペンデュラム召喚の演出と共に登場したドクロバット・ジョーカーとオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの姿に警戒感を露わにする2人。

とはいえこのままではアマゾネス女帝の攻撃力を超えられない。

だから、俺は更なる手を打つ!

 

「続いて魔法『置換融合』発動!」

 

置換融合

通常魔法

このカードのカード名はルール上『融合』として扱う。

1:自分フィールドから融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

2:墓地のこのカードを除外し、自分の墓地の融合モンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターをエクストラデッキに戻す。その後、自分はデッキから1枚ドローする。

 

「俺はオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンとドクロバット・ジョーカーを融合!華麗なる軽業師よ、眩き光となりて龍の眼に今宿らん!ペンデュラム融合!出でよ、秘術振るいし魔天の龍!『ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!」

 

ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン

融合・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 3000

 

こちらも負けじと融合召喚を繰り出す。

その演出と共に登場したのは、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンが秘術の力を纏った姿。

あ、眩き光と口上で言ったけどコイツ闇属性なんだよな。

 

「バトルフェイズに入る!ルーンアイズでアマゾネス女帝を攻撃!」

「アマゾネス女帝がいる限り、私のアマゾネスモンスターは破壊されない!戦闘でも効果でもだ!」

「だがダメージは受けて貰う!更にオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン以外の、レベル4以下のモンスターを融合素材としたルーンアイズは2回攻撃出来る!連撃のシャイニーバースト!」

「くっ!」

 

ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力 3000 VS アマゾネス女帝 攻撃力 2800

 

Gloria LP 4000→3800→3600

 

成る程、戦闘だけでなく効果にも対応した破壊耐性か、それなら瞬間融合によるデメリットも無い物として扱えるな、中々の組み合わせだ。

 

「カードをセットしてターンエンド!」

 

Yuya

LP 4000

手札 1

モンスター ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン(攻撃表示)

魔法・罠カード セット

 

「やるじゃない。私のターン、ドロー!

まずは『アマゾネスの聖戦士』を召喚!」

 

アマゾネスの聖戦士

効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1700→1900

 

ほんのちょっぴりながらグロリアにダメージを与え、1枚のセットカードでターンを明け渡した俺、3番手となったグレースが呼び出したのは、何やら神々しい雰囲気を纏わせる女性戦士。

確か自分自身も含むアマゾネスモンスターの数×100ポイント攻撃力をアップさせる効果しかなかった筈、だがその効果故に下級アタッカーとして有用だったっけな。

 

「次に魔法『融合』発動!」

 

融合

通常魔法

1:自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「私は手札の『アマゾネスペット(タイガー)』とアマゾネスの斥候を融合!牙剥く密林の野獣よ、獲物を狙う戦士の目を得て新たな猛獣となりて現れよ!融合召喚!出現せよ、レベル7!『アマゾネスペット虎獅子(ライガー)』!」

 

アマゾネスペット虎獅子(アニメオリジナルカード)

融合・効果モンスター

地属性

獣族

レベル 7

攻撃力 2500

 

アマゾネスの聖戦士 攻撃力 1900→2000

 

その後、融合召喚の演出と共に登場したのは、アマゾネスペット虎が強靭さを増した様な姿。

 

「バトルフェイズに入るわ!」

 

ん?此処でバトルフェイズに入るだと?

今の相手フィールドにいるモンスターは3体、どれもルーンアイズの攻撃力未満だ。

このままバトルフェイズを行って攻撃しようと、自分がダメージを受けるだけ。

アマゾネス女帝の効果によって戦闘破壊こそされないと言っても、態々自爆特攻する理由にはならない。

という事は2体入るアマゾネス融合モンスター、そのどちらか、或いはどちらにもルーンアイズを倒す為の、若しくはそれ以外にこの局面を打開する為の効果がある、という事か。

だったら、此処が使い時だ!

 

「ならばメインフェイズ終了時、手札を1枚捨ててこの速攻魔法を発動する!絶対無敵!究極の力を解き放て!解放しろ!『超融合』!」

「な!?そ、そのカードは!?」

 

超融合(制限カード)

速攻魔法

このカードの発動に対して魔法・罠・モンスターの効果は発動出来ない。

1:手札を1枚捨てて発動出来る。自分・相手フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「俺はルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴンと、お前達のフィールドにいるアマゾネス女帝を融合!魔天の龍よ!密林の女帝を取り込み、新たな命として此処に目覚めよ!超・融合召喚!現れ出でよ、気高き眼燃ゆる勇猛なる龍!『ブレイブアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!」

 

ブレイブアイズ・ペンデュラム・ドラゴン

融合・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 3000

 

「な、何で超融合が貴方のデッキに…!?」

「まさかアマゾネス女帝が融合素材として取られるとは…!」

 

向こうにとってはまさかのカードが発動された事に驚く暇もなく、融合素材としてエースの一角を吸い込まれる様を見ているしか無い状況に悔しそうな表情を浮かべる2人。

そんな2人を他所に、融合召喚の演出と共に登場したのは、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンが装甲を纏った様な姿。

 

「融合召喚したブレイブアイズの効果発動!

お前達のフィールドにいるモンスターの攻撃力は、全て0になる!」

「な!?」

 

アマゾネスの聖戦士 攻撃力 2000→0

アマゾネスペット虎獅子 攻撃力 2500→0

 

「くっ…!

カードを1枚セットしてターンエンドよ!」

 

Grace

LP 4000

手札 1

モンスター アマゾネスの聖戦士(攻撃表示)

      アマゾネスペット虎獅子(攻撃表示)

魔法・罠カード セット

 

その効果によってフィールドにいたアマゾネスモンスターが全て攻撃力0となった事で歯がゆそうな表情でターンを明け渡したグレース、どうやらブレイブアイズの登場で打開の手が断たれた様だな。

よし、後は頼んだぜ、柚子!

 

「私のターン!ドロー!」

 

ドローフェイズの通常ドローをした柚子、ふと俺の方を向いて、何かアイコンタクトみたいな動作をして来た。

その目線はデュエルディスクの墓地へと向けられている、という事は…ああ成る程。

何かを尋ねているっぽい柚子に了承の意を込めた笑顔を向けると、柚子もそれを汲み取ってくれたのか首を縦に振り、相手の方に向き直った。

 

「まずは墓地にある置換融合を除外し、墓地のルーンアイズを対象に効果発動!

ルーンアイズをエクストラデッキに戻し、ドロー!

…よし!遊矢、『アレ』使わせて貰うわよ!」

 

置換融合の効果によって更にドローし、手札が7枚となった柚子、その顔は自信に満ちていると言わんばかりの笑顔で、再び俺に向き直って、そう告げて来た。

『アレ』を出すのか柚子、良いぜ、全力で行って来い!

 

「私はペンデュラムゾーンにセットされたスケール1のペルソナ・ドラゴンとスケール8のミラージュ・ドラゴンでペンデュラムスケールをセッティング!

揺れなさい、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!出て来て、私のモンスター達!レベル4、魂の響き『幻奏の音女タムタム』!レベル4、天使のさえずり『幻奏の歌姫ソプラノ』!レベル4、天使の羽ばたき『幻奏の歌姫ソロ』!そしてレベル4、響き渡る歌声『幻奏の音女アリア』!」

 

幻奏の音女タムタム

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 4

守備力 2000

 

幻奏の歌姫ソプラノ

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 4

守備力 1400

 

幻奏の歌姫ソロ

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 4

攻撃力 1600

 

幻奏の音女アリア

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 4

攻撃力 1600

 

俺が予めセットしていたペルソナ・ドラゴンとミラージュ・ドラゴンを活かして大量の幻奏モンスターをペンデュラム召喚した柚子、だがこれは『アレ』が舞台へと上がるまでの、ほんの序章だ。

 

「他に幻奏モンスターがいる状態で特殊召喚に成功したタムタムの効果発動!

デッキから融合を手札に加えるわ!

次にソプラノの効果発動!

私はフィールドにいるソプラノ自身と、タムタムを融合!

天使のさえずりよ!魂の響きよ!タクトの導きにより力を重ねよ!ペンデュラム融合、今こそ舞台へ!『幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト』!」

 

幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト

融合・効果モンスター

光属性

天使族

レベル 6

攻撃力 2400

 

今しがたペンデュラム召喚されたソプラノの効果による融合召喚の演出と共に登場したマイスタリン・シューベルト、彼女の登場で『アレ』が舞台へ上がる為の準備が整った…!

 

「融合素材となったタムタムの効果発動!

それにチェーンしてマイスタリン・シューベルトの効果発動!

まずはマイスタリン・シューベルトの効果で、貴方達の墓地にあるアマゾネス女帝、アマゾネス女王、アマゾネスペット虎を除外し、このカードの攻撃力を600上げるわ!

次にタムタムの効果でマイスタリン・シューベルトの攻撃力を500下げて、貴方に500のバーンダメージよ!」

「っ!」

 

幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト 攻撃力 2400→3000→2500

Gloria LP 3600→3100

 

「続いて融合発動!

フィールドにいるマイスタリン・シューベルトと」

 

その柚子の宣言、その直前に三度俺に向き直った柚子からのアイコンタクトに、

 

「ブレイブアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを融合!」

 

俺も乗っかる!

 

「歌曲の女王よ!」

「勇猛なる龍よ!」

「タクトの導きにより!」

 

尚も続く融合召喚の口上、その最中に真上へと上がった柚子の右手。

 

「力重ねよ!」

 

俺はそれに重ねる様に左手を真上へと上げ、恋人つなぎの要領で手を繋ぎ、

 

「「ペンデュラム融合!」」

 

そしてペンデュラム融合を宣言すると共に2人の息を合わせて、繋いだ手を前へと振り下ろし、

 

「今こそ舞台へ!」

「革命の旋律をかき鳴らせ!」

 

その名を、『アレ』の名を呼ぶッ!

 

「「『幻奏の革命龍姫オッドアイズ・ショパン』!」」

 

幻奏の革命龍姫オッドアイズ・ショパン(オリジナルカード)

融合・効果モンスター

光属性

天使族

レベル 7

攻撃力 2500




幻奏の革命龍姫オッドアイズ・ショパン
融合・効果モンスター
光属性
天使族
レベル 7
攻撃力 2500/守備力 2000
『幻奏』融合モンスター+『ペンデュラム・ドラゴン』融合モンスターまたはエクストラデッキから特殊召喚された『オッドアイズ』ペンデュラムモンスター
このカードは融合召喚及び××××でのみ特殊召喚出来る。
1:このカードは××××。
2:このカードがフィールドを離れた場合に発動出来る。××××。


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109話_革命デュアリズム

繰り広げられる融合召喚の演出、響き渡るエレキギターの旋律、それらと共にフィールドへゆっくりと舞い降りた融合モンスター、幻奏の革命龍姫オッドアイズ・ショパン、その姿は柚子が持っているどの幻奏モンスターともかけ離れた、異様なものだった。

まずその服装、某バイクをモチーフにした仮面ライダーの変身者が着ていた様な赤い革の上下を身に着け、所々にシルバーアクセサリーをあしらい、藍色の宝玉をバックルにはめ込んだ白い革のベルトで留めている。

次に髪型、所々にホワイトメッシュを仕込んだ赤いロングヘアで、楽譜にて半音上げることを意味する♯の型をした髪留めでポニーテールにまとめている。

他の幻奏モンスターは殆ど見せる事のない(大半は髪で隠れているか飾りで隠している)両耳にはピアスの穴が空けられ、金色のピアスを装着している。

その顔付きも他の幻奏モンスターから感じられる柔和さなど微塵も感じられず、左目が碧、右目が赤のオッドアイで目前を鋭く睨みつけている。

そして首からは、白地に赤と緑と青の装飾が入ったエレキギターをぶら下げ、それを右手に持ったピックと左手で今まさに演奏している。

 

オペラやクラシック音楽をモチーフとした今までの幻奏モンスターに則って『ピアノの詩人』と呼ばれる作曲家フレデリック・フランソワ・ショパンの名を冠したモンスター名になってはいるが、そのロックシンガーの様な出で立ちからは幻奏モンスターらしさなどまるで感ずることが出来ない。

髪留めから辛うじてそうだと分かるとは言え、幻奏モンスターと言うよりオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを擬人化させた姿と言った方がしっくり来そうだ。

彼女こそが、俺と柚子の絆が生み出した『幻奏の革命児』、柚子の新たなるエース!

 

「更に今出したオッドアイズ・ショパンとソロを、

 

リリースしてアドバンス召喚!天上に響く妙なる調べよ、眠れる天才を呼び覚ませ!出でよ、レベル8!『幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト』!」

「え?今出した融合モンスターをリリースしてアドバンス召喚…?」

「一体何のつもりだ?まさか勝利したつもりで、私達を舐めているのか!?」

 

幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 8

攻撃力 2600

 

そのオッドアイズ・ショパンと、ペンデュラム召喚で呼び出されたソロをリリースしてのプロディジー・モーツァルトのアドバンス召喚、その一見不可解なプレイングに疑問の声を上げる2人、グロリアに至っては舐めプと捉えて激昂している。

だが、これにはちゃんとした理由がある。

 

「舐めている?そんな訳無いでしょ、デュエルは何時だって全力よ!

リリースされたオッドアイズ・ショパンの効果発動!

このカードを攻撃表示で蘇生するわ!この効果で特殊召喚されたオッドアイズ・ショパンの攻撃力はこのターン、倍になる!」

 

幻奏の革命龍姫オッドアイズ・ショパン 攻撃力 2500→5000

 

「こ、攻撃力5000!?」

「この為にあんな不可解なプレイングを…!」

「まだまだこれからよ!プロディジー・モーツァルトの効果発動!

手札から『幻奏の音女エレジー』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

幻奏の音女エレジー

効果モンスター

光属性

天使族

レベル 5

攻撃力 2000→2300

 

幻奏の音女アリア 攻撃力 1600→1900

幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト 攻撃力 2600→2900

 

その攻撃力が5000まで上がって再びフィールドに登場したオッドアイズ・ショパンの姿と、プロディジー・モーツァルトの効果によって完成した『アリアエレジーロック』の光景に驚愕する2人、だがその表情からはまだ勝利を諦めていないと言わんばかりの様子が伺える。

もしやあのセットカードか?

 

(まだ勝機はある。相手の攻撃宣言時に私がセットした『アマゾネスの身代わり』を使って手札の『アマゾネスの剣士』を特殊召喚してしまえば、攻撃を返せるわ…!)

 

アマゾネスの身代わり(アニメオリジナルカード)

通常罠

1:自分フィールドの『アマゾネス』モンスターが攻撃対象に選択された場合に発動出来る。手札からレベル4以下の『アマゾネス』モンスター1体を特殊召喚する。その後、攻撃対象をそのモンスターに移し替える。

 

「バトルフェイズに入るわ!」

 

そんな2人を尻目にバトルフェイズに入る事を宣言する柚子。

2人の様子から拙速過ぎやしないか、危険じゃないかと普通ならツッコミが入る場面、だが、

 

「オッドアイズ・ショパンでアマゾネスペット虎獅子を攻撃!」

「掛かったわね!その攻撃宣言時、罠『アマゾネスの身代わり』を(ビーッ!ビーッ!)け、警告音!?」

「無駄よ!自身の効果で特殊召喚したオッドアイズ・ショパンのもう1つの効果!このターンにオッドアイズ・ショパンが攻撃する場合、そのダメージステップ終了時まで誰もカードの効果を発動出来ないわ!それと一応言って置くけど、このオッドアイズ・ショパンは元々、戦闘破壊されず、他のカードの効果も受けないわ!」

「『古代の機械』モンスターと同じロック効果!?」

「それに戦闘破壊耐性と、効果耐性まで持っているのか!?」

 

そう、それ故にセットカードに対して無警戒でバトルフェイズに入るという暴挙も出来たのだ。

それにしてもセットカードは『アマゾネスの身代わり』か、聞いた事が無いが名前からして攻撃対象を変える感じの奴、それも手札か墓地、ひょっとしたらデッキから特殊召喚しつつ的な物か?

となればアマゾネスには、戦闘ダメージを相手にだけ与えるアマゾネスの剣士がいる、此処でオッドアイズ・ショパンの攻撃を返されたらこのターンでの決着は無理だったな。

だがオッドアイズ・ショパンはそれを通さない!

 

「これが、このオッドアイズ・ショパンの力が、私と遊矢との絆の証!例え離れ離れになっても想いを通じ合わせ、心から信じ合える強い絆!誰であろうとそれを断ち切る事は、手出しする事は出来ない!」

「このオッドアイズ・ショパンの力は俺達の絆、愛の証!愛の前に、華々しく散れ!」

「行きなさい、オッドアイズ・ショパン!」

「その激しく熱かりし旋律を響かせろ!」

「「革命の迅雷!グレイトフル・アークブラスト!」」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

幻奏の革命龍姫オッドアイズ・ショパン 攻撃力 5000 VS アマゾネスペット虎獅子 攻撃力 0

 

Grace LP 4000→-1000 LOSE

 

「ぐ、グレース!?」

「よそ見している暇はあるのかしら?次は貴方よ!行きなさい、我が幻奏の姫君達よ!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

幻奏の音女アリア 攻撃力 1900 VS アマゾネスの聖戦士 攻撃力 0

 

Gloria LP 3100→1200→-1100→-4000 LOSE

 

WINNER Yuya&Yuzu

 

「これが俺と柚子の、愛の絆!」

「単純なデッキ相性では生み出せない!」

「「俺(私)達2人のタッグデュエル!」」

 

幻奏モンスター達による総攻撃によってデュエルの決着が付き、俺と柚子が息を合わせてそう言い放つと共に、戦闘ダメージによる衝撃で倒れた2人に近づき、

 

「今度は逃がさない。俺達の下に来てもらおう」

「くっ…!」

「うぅ…!」

 

デュエルアンカーを射出・拘束し、連れ帰る形でカイト達の待っている拠点へと向かった。




幻奏の革命龍姫オッドアイズ・ショパン
融合・効果モンスター
光属性
天使族
レベル 7
攻撃力 2500/守備力 2000
『幻奏』融合モンスター+『ペンデュラム・ドラゴン』融合モンスターもしくはエクストラデッキから特殊召喚された『オッドアイズ』ペンデュラムモンスター
このカードは融合召喚及びこのカードの効果でのみ特殊召喚出来る。
1:このカードは戦闘破壊されず、他のカードの効果を受けない。
2:このカードがフィールドを離れた場合に発動出来る。このカードを自分フィールドに攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたこのカードはエンドフェイズまで以下の効果を得る。
●このカードの攻撃力は倍になる。
●このカードが攻撃する場合、ダメージステップ終了時までカードの効果を発動出来ない。


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110話_遥かなる時を越えての激突!

Side ????

 

「野呂副司令官、申し上げます!救援として此方に来る予定でしたタイラー姉妹が、ランサーズメンバーに敗北、拘束されたとの連絡が入って来ました!」

「野呂副司令官、申し上げます!各地で活動中のデュエル戦士達が相次いで、ランサーズメンバーに敗北、強制転送されているとの連絡が次々と入ってきております!」

「ば、馬鹿な、タイラー姉妹達がこんなにも早くやられ、敵方に捕まるとは…!

展開が余りにも早すぎる、どうしてこうなったのだ…!」

 

所変わってエクシーズ次元にあるアカデミアの派遣軍本拠基地、其処に次々と寄せられる、アカデミア側にとって悪い報告の数々、その惨状に野呂は頭を抱えずにはいられなかった。

アカデミアのトップであるプロフェッサーこと赤馬零王が掲げた計画『アークエリアプロジェクト』を基としたエクシーズ次元への侵略、ほんの数日前まで、やや計画と比べて遅延が見うけられたり、総司令官である筈のエド・フェニックスが時折姿を消したりする以外順調だった筈の派遣軍だったが、此処に来て急な融合次元でのゴタゴタに伴う人員の削減、その原因である融合次元への総攻撃の準備をしていると思われていたランサーズの潜入、それによるデュエル戦士の相次ぐ撃破、エドの負傷離脱、そして頼みの綱であったタイラー姉妹の敗北…

特にタイラー姉妹は、嘗て侵略に参加ししてた際にたった2人で、此処のデュエリストスクールに属する精鋭達を相手に大立ち回りを繰り広げた末に勝利した指折りの実力者、その2人があっさりと敗れるという報告は、野呂を始めとした非戦闘員達に絶望感を与えるには充分だった。

そしてそんな悪い流れは続く物だ。

 

「野呂副司令官、申し上げます!治療中のフェニックス総司令官が行方を晦ませました!」

「なっまたか!?あんな怪我を負ってまだどっかをほっつき歩くというのか!?急いで探せ!」

『はっ!』

 

重傷を負っていたエドがいなくなったという報告に対して声を荒げながら捜索を指示する野呂の怒号が響き渡る指令室、そんな最中エドは、

 

「待っていろ、榊遊矢、君は必ず、僕が倒す…!

この屈辱、親子2人からの敗北という屈辱を、必ず晴らし、僕のデュエルが、アカデミアの理想こそが正しいという事、証明して見せる…!」

 

怪我が治っていない身でありながらも既に本拠基地を抜け出し、遊矢を探しに瓦礫の中を彷徨っていた。

 

------------

 

Side 遊矢

 

「それにしても良いのかカイト、俺とアクションデュエルをしようだなんて?」

「ああ。お前達の次元で流行っているというアクションデュエル、俺も堪能してみたくなった」

 

先程のデュエルで勝利、拘束したタイラー姉妹を連れてカイト達の待つ拠点へと戻った俺達、どうやらタイラー姉妹の名はエクシーズ次元で相当知られていたみたいで、カイトからは「流石と言うべきだな。タイラー姉妹はこのエクシーズ次元で大いに暴れ回ったデュエリストタッグ。その2人を捕まえられたのは大きい…」と感心された。

で、そんな実力を見てデュエリストの血が騒いだのか、俺にデュエルを申し込んで来たのだが、何とそれはアクションデュエルでやろうという物だった。

もう80近くも年いった身だというのに、大丈夫か…?

 

「じゃあ行くぜカイト!アクションフィールド、オン!『クロス・オーバー』!」

「辺り一面にカードが散らばった…

これらのカードがアクションカード、これを探し、目当ての物か見極めて入手し、手札として使って行くのがアクションデュエルという、お前達の次元で流行っているデュエルだったな。中々面白そうだ」

「そうだろ、カイト。今やこうして手軽に楽しむ段階に移った、俺達の次元の文化(ミーム)なんだ」

 

とはいえやる気充分なカイトを前にそれを指摘する気にもなれないと気持ちを切り替え、発動させたクロス・オーバー、それによって辺り一面に散らばったアクションカードを見て、カイトは感慨深げにそう話していた。

さてカイトとのデュエルも久々だ、幾らカイトが爺さんのままだろうと、手加減無しで行かせて貰うぜ!

 

「戦いの殿堂に集いしデュエリストが!モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!フィールド内を駆け巡る!見よ、これぞデュエルの最強進化系!アクショーン!」

「「デュエル!」」

 

先攻 Kaito LP 4000 VS 後攻 Yuya LP 4000

 

「俺の先攻!

まずは魔法『フォトン・サンクチュアリ』発動!」

 

フォトン・サンクチュアリ

通常魔法

このカードを発動するターン、自分は光属性モンスターしか召喚・反転召喚・特殊召喚出来ない。

1:自分フィールドに『フォトントークン』(雷族・光属性・レベル4・攻撃力2000/守備力0)2体を守備表示で特殊召喚する。このトークンは攻撃出来ず、シンクロ素材にも出来ない。

 

先攻となったカイトが最初に発動したのは、俺も『完全決闘』デッキで世話になっているフォトン・サンクチュアリ。

そういえば以前のデュエルで俺がこれを発動した時、エクシーズ次元出身の黒咲とユートが驚いていたっけ、確かにこのエクシーズ次元で有名なカイトが使っていたのと同じカードを使ったとあれば普通は驚くわな。

 

「フォトン・サンクチュアリの効果で、2体のフォトントークンを守備表示で特殊召喚!」

 

フォトントークン

光属性

雷族

レベル 4

守備力 0

 

「俺はこの2体のフォトントークンをリリースし『フォトン・カイザー』をアドバンス召喚!」

 

フォトン・カイザー

効果モンスター

光属性

戦士族

レベル 8

攻撃力 2000

 

そのフォトン・サンクチュアリによってフォトントークンが2体登場した、と思った次の瞬間、それを吸い込み、全身から光を放つ帝王然とした姿の戦士が登場した。

此処でフォトン・カイザーをアドバンス召喚したという事は、

 

「アドバンス召喚したフォトン・カイザーの効果発動!

デッキから2体目のフォトン・カイザーを守備表示で特殊召喚!」

『レベル8モンスターが2体、来るぞ遊矢!』

 

そうだなアストラル、レベル8のフォトン・カイザーを2体並べたと来れば、間違いなくランク8エクシーズモンスターをエクシーズ召喚して来る筈。

さて、そうなると何が来るか…

カイトはこのターンにフォトン・サンクチュアリを発動した事で発生した誓約により、光属性以外のモンスターを特殊召喚出来ない、よって1ターンに1度『神罰』を発動出来る『No.23冥界の霊騎士ランスロット』等は出せない。

となるとフリーチェーンで効果耐性を与えられるフェルグラント辺りだろうか…?

 

「俺は2体のフォトン・カイザーでオーバーレイ!2体のレベル8モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!我が記憶に眠る2つの希望!その希望を隔てし闇の大河を貫き今その力が1つとなる!エクシーズ召喚、現れろ!『No.38希望魁竜タイタニック・ギャラクシー』!」

 

No.38希望魁竜タイタニック・ギャラクシー

エクシーズ・効果モンスター

光属性

ドラゴン族

ランク 8

攻撃力 3000

ORU 2

 

と考えていたら、何か知らないNo.が出て来たぞ!?

 

『こ、このNo.は一体…!?』

『ボク達が知らない奴という事は、恐らくカイトがこのエクシーズ次元で手にしたNo.かな?』

「カイト、そのNo.は一体…?」

「コイツは、俺がこの世界で英雄として称えられる切っ掛けとなった戦いの、思い出と言うべき物だ」

 

フィールドに舞い降りた、光や電気で出来ているかのような身体に鎧を身に纏ったモンスターを見て疑問をぶつける俺に、カイトはその姿を何処か懐かしむ様な様子で語り始めた。

今から60年も前、カイトが18歳だった頃にこのエクシーズ次元にも、遊馬だった頃と同じ様な力を持ったNo.がばら撒かれ、その力にあてられて暴走した人達による様々な事件が多発していた。

そんな状況をカイトは見過ごせず、前世と同じくNo.ハンターとして暗躍する(といっても前世の様な荒事は無かったそうだが)事となったが、そんな最中、この次元でのNo.に関わる出来事の裏に、全世界に存在する『希望の光』の影ともいうべき『絶望の闇』より生まれた破壊の女神『e・ラー』の存在がある事を突き止めた。

それを知ったカイトはe・ラーの野望を止めるために奔走、彼女の策略によって敵対する事となってしまった幼馴染との死別をも乗り越え、最終的に彼女との世界の存亡を賭けたデュエルに勝利、その野望を打ち砕く事が出来た。

今しがたエクシーズ召喚したタイタニック・ギャラクシーは、元はその幼馴染が使っていた全く別のNo.モンスターらしく、その名残が身体の一部にあるとかないとか。

 

「その戦いを経て、俺はこの世界をe・ラーによる脅威から守り抜いた功績から、英雄として称えられる事となった。今やNo.モンスターは色んな意味で弱体化した、普通のカードとしてこの世界で流通してはいるが、そんな中でもこのタイタニック・ギャラクシーは今尚俺が持つこの1枚だけのカードとなっている。嘗ての戦いの、1つの記憶として…

尤もアカデミアとの長い戦いで、そんな功績も記憶も、跡形もなくなってしまったが…」

 

そう語り続けるカイト、だがその表情はアカデミアとの戦いに言及を始めると共に何処か暗くなったというか、泣きそうな表情へと変わって行った。

クールな様で人情に篤いカイトだ、その顔から浮かぶ絶望感とアカデミアへの憎悪の念、如何ばかりか…

 

「おっと、湿っぽい話になってしまったな。デュエルを続けよう。

カードをセットしてターンエンド!」

「ならエンドフェイズにアクションマジック『ソニックカッター』発動!」

 

ソニックカッター(オリジナルカード)

アクションマジック

1:フィールドの魔法・罠カード1枚を選んで破壊する。

 

「エンドサイクの要領でセットカードを破壊して来るか…

だが甘い!それにチェーンしてタイタニック・ギャラクシーの効果発動!」

 

何、このタイミングで発動する効果持ちだったのか!

 

「コイツは魔法カードの効果がフィールドで発動した時、それを無効にしてこのカードのオーバーレイ・ユニットに変える事が出来る!

その効果でソニックカッターを無効にし、このカードのオーバーレイ・ユニットにする!

改めてターンエンドだ!行くぞ、タイタニック・ギャラクシー!」

 

No.38希望魁竜タイタニック・ギャラクシー ORU 2→3

 

って事はつまり毎ターン1回だけ『マジック・ジャマー』を使える、いやフィールド上だけなら効果の発動にも対応しているから、それよりも範囲の広いカウンター効果か!

まさかアクションマジックメタと言っても良い効果だったとはな、これは慎重に動かないと…

 

Kaito

LP 4000

手札 2

モンスター No.38希望魁竜タイタニック・ギャラクシー(攻撃表示)

魔法・罠カード セット

 

「俺のターン、ドロー!

まずは魔法『ハーピィの羽根帚』発動!」

 

ハーピィの羽根帚(制限カード)

通常魔法

1:相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。

 

後攻となった俺のターン、やっぱりセットカードが鬱陶しいと感じたのでハーピィの羽根帚で除去しに掛かるが、此処はどう動く?

 

「それは通そう」

 

お、これは通してくr…

って、セットカードは神宣だったか、こりゃあ確かにタイタニック・ギャラクシーで無効にしない方が賢い選択だわな。

 

「次に手札を1枚墓地へ送って魔法『オノマト連携』発動!」

「それは通さない!タイタニック・ギャラクシーの効果発動!

それを無効にしてこのカードのオーバーレイ・ユニットにする!」

 

オノマト連携

通常魔法

手札を1枚墓地へ送って発動出来る。デッキから以下のモンスターの内1体ずつ、合計2体までを手札に加える。『オノマト連携』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

●『ズババ』と名の付いたモンスター

●『ガガガ』と名の付いたモンスター

●『ゴゴゴ』と名の付いたモンスター

●『ドドド』と名の付いたモンスター

 

流石に此処は通してくれないよな、けど!

 

「ならば魔法『手札抹殺』発動!」

 

手札抹殺(制限カード)

通常魔法

1:手札があるプレイヤーは、その手札を全て捨てる。その後、それぞれ自身が捨てた枚数分デッキからドローする。

 

「手札抹殺の効果により、俺は残りの手札2枚を全て捨て、2枚ドロー!」

「俺も手札2枚を全て捨て、2枚ドロー!」

 

よし、良い引きだ!

 

「更に今引いた『ゴゴゴジャイアント』召喚!」

 

ゴゴゴジャイアント

効果モンスター

地属性

岩石族

レベル 4

攻撃力 2000

 

「召喚したゴゴゴジャイアントの効果発動!

墓地のこのカードを守備表示で蘇生する!Let’s Go!覚悟!『ゴゴゴゴースト』!Go!Go!Go!Go!」

 

ゴゴゴゴースト

効果モンスター

闇属性

アンデット族

レベル 4

守備力 0

 

「特殊召喚したゴゴゴゴーストの効果発動!

墓地の『ゴゴゴゴーレム』を守備表示で蘇生する!」

 

ゴゴゴゴーレム

効果モンスター

地属性

岩石族

レベル 4

守備力 1500

 

今引いたゴゴゴジャイアントからのゴゴゴモンスターの大量展開、これは並行世界での零児とのデュエルでも見せた展開だ。

普通なら此処でエクシーズ召喚、と行くところだが…

 

「カイト。この手札に残った最後の1枚、これをデュエルで使うのは今回が初めてだ。コイツはこのデッキに1枚でも入れて置けば爆発的な力を齎すカード。それによって得られる展開力と持久力は、正にこのデッキにおけるドーピング剤だ」

「ほう?」

「だが一般的なドーピング剤には代償がある。法的な事とか精神的な事とかは勿論、身体的な事にも副作用という刃で使用者に襲い掛かる。このカードもまた、使う俺に少なくない代償を背負わせてくる」

 

手札に残された最後の1枚、それをカイトにアピールしつつ、そう語る。

遊馬だった頃はこのカードを態々使わなくても良い程パワーカードに恵まれていたのもあって入れる必要は無かった、遊矢として転生してからも「究極奥義使っちまえばよくね?」という考えから入れる事無く勝って来た、ランサーズの最高指揮官としてアカデミアとの戦いに臨んでいる今も、その代償がアカデミアのデュエルスタイルとの関係上まずい事から入れるのを避けていた。

だが今回の相手はカイト、今までと同じ考えでは、代償の重さに躊躇していては勝てない相手、そんな隙を見せたら首根っこを掴まれる。

天城カイトというデュエリストは、俺にとって最高のライバルの1人は、そんなデュエリストなんだ。

 

「今からその恐ろしき力をお見せしよう!永続魔法『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』発動!」

 

エクシーズ・チェンジ・タクティクス

永続魔法

自分フィールド上に『希望皇ホープ』と名の付いたモンスターがエクシーズ召喚された時、500ライフポイントを払い、このカードの効果を発動出来る。デッキからカードを1枚ドローする。『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』は自分フィールド上に1枚しか表側表示で存在出来ない。

 

さあ、本気で行くぜカイト!



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111話_命、燃やすぜ!

エクシーズ・チェンジ・タクティクス。

その効果は『希望皇ホープ』モンスターのエクシーズ召喚を条件とし、500LPをコストとした形の、並行世界の零児が使っていた『天輪鐘楼』。

ライフコストによるリスクから乱発は危険な代物で、俺のフィールドに1枚しか表側表示で置けないが、一方で効果発動に『1ターンに1度』の制限がなく、希望皇ホープモンスターには自らの効果によってエクシーズ召喚扱いで登場するモンスターも結構あり、普通のエクシーズ召喚1回から3枚ドローに繋がるなんて事も珍しくない、このカードの力で、勝ちに行くぜカイト!

かっとビングだ、俺!

 

「俺はゴゴゴジャイアントとゴゴゴゴーストでオーバーレイ!2体のレベル4モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!我が戦いは此処から始まる!白き翼に望みを託し、現れろ!『No.39希望皇』」

「『『『ホープ』』』!」

「来たか、希望皇ホープ!」

 

No.39希望皇ホープ

エクシーズ・効果モンスター

光属性

戦士族

ランク 4

攻撃力 2500

ORU 2

 

ゴゴゴジャイアントの召喚を起点として一気に並んだ3体のレベル4モンスター達、その内の2体であるゴゴゴジャイアントとゴゴゴゴーストを素材としてエクシーズ召喚した希望皇ホープの姿、約80年振りに見た俺のエースの姿に戦意を高めるカイト。

 

「ホープのエクシーズ召喚時、500LPを払ってエクシーズ・チェンジ・タクティクスの効果発動!

命、燃やすぜ!ドロー!」

 

Yuya LP 4000→3500

 

そんなカイトの気迫に応えるかの如く、俺もどっかの仮面ライダーの様な決め台詞を言いながらエクシーズ・チェンジ・タクティクスの効果を適用し、ドローする。

よし、良い引きだ、どうやらこのデッキも、久々のカイトとのデュエルに気持ちが高ぶっている様だ!

 

「今引いたフィールド魔法『希望郷―オノマトピア―』を、永続魔法として発動!」

「フィールド魔法を魔法・罠ゾーンで発動だと?」

「アクションデュエル中、フィールドゾーンはアクションフィールドが既に適用されているから使用出来ないけど、その代わりとしてフィールド魔法は永続魔法として、魔法・罠ゾーンで発動出来る!」

 

希望郷―オノマトピア―

フィールド魔法(永続魔法扱い)

1:このカードがフィールドゾーンに存在する限り、自分フィールドに『希望皇ホープ』モンスターが特殊召喚される度に、このカードにかっとビングカウンターを1つ置く。

2:自分フィールドのモンスターの攻撃力・守備力は、このカードのかっとビングカウンターの数×200アップする。

3:1ターンに1度、このカードのかっとビングカウンターを2つ取り除いて発動出来る。デッキから『ズババ』、『ガガガ』、『ゴゴゴ』、『ドドド』モンスターの内いずれか1体を特殊召喚する。

 

次はコイツだ!

 

「次に俺はホープのオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオスエクシーズ・チェンジ!現れよ、混沌を光に変える使者!『CNo.39希望皇ホープレイ』!」

 

CNo.39希望皇ホープレイ

エクシーズ・効果モンスター

光属性

戦士族

ランク 4

攻撃力 2500

ORU 3

 

「ホープレイのエクシーズ召喚時、500LPを払ってエクシーズ・チェンジ・タクティクスの効果発動!ドロー!」

 

Yuya LP 3500→3000

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター 0→1

CNo.39希望皇ホープレイ 攻撃力 2500→2700

ゴゴゴゴーレム 守備力 1500→1700

 

続いてコイツ!

 

「続いてホープレイのオーバーレイ・ネットワークを再構築!シャイニングエクシーズ・チェンジ!一粒の希望よ!今、電光石火の雷となって闇から飛び立て!現れよ!『SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング』!」

「一気に2回もエクシーズチェンジ、しかもどれも希望皇ホープモンスターだと…!」

 

SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング

エクシーズ・効果モンスター

光属性

戦士族

ランク 5

攻撃力 2500→2700

ORU 4

 

「ホープ・ザ・ライトニングのエクシーズ召喚時、500LPを払ってエクシーズ・チェンジ・タクティクスの効果発動!ドロー!」

 

Yuya LP 3000→2500

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター 1→2

SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング 攻撃力 2700→2900

ゴゴゴゴーレム 守備力 1700→1900

 

よし、今のドローで『究極奥義』を発動する準備が出来た!

 

「更に魔法『死者蘇生』発動!対象はさっきの手札抹殺で墓地へ送られた『ドドドウィッチ』!」

 

死者蘇生(制限カード)

通常魔法

1:自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

「死者蘇生の効果で、ドドドウィッチを守備表示で蘇生する!」

 

ドドドウィッチ

効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 4

守備力 1600→2000

 

「蘇生したドドドウィッチの効果発動!

手札の『ドドドバスター』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

ドドドバスター

効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 6

攻撃力 1900→2300

 

「レベル4モンスターが再び2体並んだ…

来るか!」

 

いや、まだ来ないぜ。

 

「そして希望郷―オノマトピア―のかっとビングカウンターを2つ取り除いて効果発動!

デッキから2体目のドドドバスターを攻撃表示で特殊召喚!」

 

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター 2→0

SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング 攻撃力 2900→2500

ゴゴゴゴーレム 守備力 1900→1500

ドドドウィッチ 守備力 2000→1600

ドドドバスター(A) 攻撃力 2300→1900

 

「レベル6モンスターも2体…

まさか!?」

「そう、そのまさかだ!俺は2体のドドドバスターでオーバーレイ!2体のレベル6モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!人が希望を越え、夢を抱く時、遥かなる彼方に、新たな未来が現れる!限界を越え、その手に掴め!『No.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープ』!」

 

No.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープ

エクシーズ・効果モンスター

光属性

戦士族

ランク 6

攻撃力 3000

ORU 2

 

よし、新バージョンとなった『究極奥義』の完成だ!

 

「エクシーズ召喚したビヨンド・ザ・ホープの効果発動!

それにチェーンして、500LPを払ってエクシーズ・チェンジ・タクティクスの効果発動!

まずはエクシーズ・チェンジ・タクティクスの効果で、ドロー!

次にビヨンド・ザ・ホープの効果で、タイタニック・ギャラクシーの攻撃力を0にする!絶望(ビヨンド・ホープ)!」

「くっ…!」

 

Yuya LP 2500→2000

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター 0→1

SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング 攻撃力 2500→2700

No.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープ 攻撃力 3000→3200

ゴゴゴゴーレム 守備力 1500→1700

ドドドウィッチ 守備力 1600→1800

No.38希望魁竜タイタニック・ギャラクシー 攻撃力 3000→0

 

「う、うわぁ…

流石は鬼畜トンマ、転生して鬼畜っぷりに拍車が掛かっちゃっているでアリマスな…」

「エクシーズ・チェンジ・タクティクス…

何つーか、もォドーピングって言うレベルじゃねェぞオイ。無茶苦茶なカードだな…」

「そ、そんな事無いわよ。私が転移された並行世界での零児さんなんて、どんなシンクロモンスターでもシンクロ召喚する度に何のコストも無くドロー出来る永続魔法を使って来たんだから」

「それは、何て言うかぶっ壊れ過ぎな様な気が…

遊矢が持っているハイパー・ライブラリアンだって制限カードだってのに…」

 

何か外側で色々コメントが出ているが気にしたら負けだな、うん。

 

「よし、バトルフェイズに入る!」

「ならバトルフェイズ開始時にアクションマジック『大脱出』発動!バトルフェイズを終了させる!」

 

大脱出

アクションマジック

1:バトルフェイズを終了する。

 

流石はカイト、このターンでの決着は通してくれないか。

だがタイタニック・ギャラクシーの効果は厄介だ、このターンで潰させて貰う!

 

「メインフェイズ2に入って、俺はゴゴゴゴーレムとドドドウィッチでオーバーレイ!2体のレベル4モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!並び立て、希望皇ホープ!

ホープのエクシーズ召喚時、500LPを払ってエクシーズ・チェンジ・タクティクスの効果発動!ドロー!」

 

Yuya LP 2000→1500

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター 1→2

SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング 攻撃力 2700→2900

No.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープ 攻撃力 3200→3400

No.39希望皇ホープ 攻撃力 2500→2900

 

「次に俺はホープのオーバーレイ・ユニットを再構築!シャイニングエクシーズ・チェンジ!宇宙の秩序乱されし時、混沌を照らす一筋の希望が降臨する!見参!『SNo.39希望皇ホープONE』!」

 

SNo.39希望皇ホープONE

エクシーズ・効果モンスター

光属性

戦士族

ランク 4

攻撃力 2510→2910

ORU 3

 

「ホープONEのエクシーズ召喚時、500LPを払ってエクシーズ・チェンジ・タクティクスの効果発動!ドロー!」

 

Yuya LP 1500→1000

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター 2→3

SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング 攻撃力 2900→3100

No.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープ 攻撃力 3400→3600

SNo.39希望皇ホープONE 攻撃力 2910→3110

 

「続いて今エクシーズ召喚したホープONEを対象に速攻魔法『RUM―クイック・カオス』発動!」

 

RUM―クイック・カオス

速攻魔法

1:『CNo.』モンスター以外の自分フィールドの『No.』エクシーズモンスター1体を対象として発動出来る。その自分のモンスターよりランクが1つ高く、同じ『No.』の数字を持つ『CNo.』モンスター1体を、対象のモンスターの上に重ねてエクストラデッキからエクシーズ召喚する。

 

「俺はホープONEのオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオスエクシーズ・チェンジ!混沌の力纏いて勝利を目指せ!進化した勇姿が今此処に現れる!現れろ!『CNo.39希望皇ホープレイV』!」

「やはりソイツか…!」

 

CNo.39希望皇ホープレイV

エクシーズ・効果モンスター

光属性

戦士族

ランク 5

攻撃力 2600→3200

CORU 4

 

「ホープレイVのエクシーズ召喚時、500LPを払ってエクシーズ・チェンジ・タクティクスの効果発動!ドロー!」

 

Yuya LP 1000→500

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター 3→4

SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング 攻撃力 3100→3300

No.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープ 攻撃力 3600→3800

CNo.39希望皇ホープレイV 攻撃力 3200→3400

 

素の状態のホープ、全身から光を発するホープONEを経て、バリアンの力を纏って凶悪な姿へと進化したホープレイVの姿を見て、俺が何をするかを推測したカイトは顔に警戒の色を浮かべる。

じゃあその直感が正しい事、見せてやる!

 

「更にホープレイVのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!タイタニック・ギャラクシーを破壊する!Vブレードシュート!」

「タイタニック・ギャラクシー!ぐぁっ!」

 

CNo.39希望皇ホープレイV CORU 4→3

 

どうやら手にしたアクションマジックが『透明』等の効果破壊を防ぐ類の物では無かったらしく、そのままホープレイVが放った刃の餌食となったタイタニック・ギャラクシー。

だが、これで終わりじゃないぜ!

 

「まだまだ行くぜ!俺はビヨンド・ザ・ホープのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!

フィールドのホープ・ザ・ライトニングを除外し、墓地のホープを攻撃表示で蘇生させる!

その後俺のLPは1250ポイント回復する!」

 

Yuya LP 500→1750

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター 4→5

No.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープ 攻撃力 3800→4000

                 ORU 2→1

CNo.39希望皇ホープレイV 攻撃力 3400→3600

No.39希望皇ホープ 攻撃力 2500→3500

 

此処で俺は、攻撃の要と言っても過言じゃないホープ・ザ・ライトニングを切り捨ててまでビヨンド・ザ・ホープの効果を適用、さっきのVブレードシュートを発動する際に墓地へ送られたホープを蘇生させ、思いっきり減ったLPを補充する。

何でかって?それは今に分かる!

 

「まだ終わりじゃない!俺は墓地のホープレイとゴゴゴゴーストを除外!光と闇、2つの魂を生け贄に、今こそ降臨せよ!混沌を操りし魔術師よ!『カオス・ソーサラー』!」

 

カオス・ソーサラー

効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 6

攻撃力 2300→3300

 

その特殊召喚条件によって呼び出されたカオス・ソーサラー、これで次のターンに再びビヨンド・ザ・ホープを呼び出す算段が付いた、だけじゃない!

 

「今除外された2枚と、さっき除外されたホープ・ザ・ライトニングを対象に速攻魔法『大欲な壺』発動!」

 

大欲な壺

速攻魔法

『大欲な壺』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:除外されている自分及び相手のモンスターの中から合計3体を対象として発動出来る。そのモンスター3体を持ち主のデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから1枚ドローする。

 

「大欲な壺の効果で、対象の3体をデッキに戻してシャッフルし、ドロー!」

 

よし、良いカードを引いたぜ!

 

「今引いた2枚目のクイック・カオス発動!対象はホープだ!

俺はホープのオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオスエクシーズ・チェンジ!希望に輝く魂よ!森羅万象を網羅し、未来を導く力となれ!『CNo.39希望皇ホープレイ・ヴィクトリー』!」

 

CNo.39希望皇ホープレイ・ヴィクトリー

エクシーズ・効果モンスター

光属性

戦士族

ランク 5

攻撃力 2800→3800

CORU 1

 

「ホープレイ・ヴィクトリーのエクシーズ召喚時、500LPを払ってエクシーズ・チェンジ・タクティクスの効果発動!ドロー!」

 

Yuya LP 1750→1250

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター 5→6

No.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープ 攻撃力 4000→4200

CNo.39希望皇ホープレイV 攻撃力 3600→3800

CNo.39希望皇ホープレイ・ヴィクトリー 攻撃力 3800→4000

カオス・ソーサラー 攻撃力 3300→3500

 

よく考えたらこれでもうエクシーズ・チェンジ・タクティクスのコストとして4000ものLPを消費したんだよな、ビヨンド・ザ・ホープの効果によるライフゲインが無かったらもう打ち止めになっていた所だ。

そして最後に、コイツを出して次のターンでの勝利を確実なものとする!

 

「そして、エクストラデッキにある『SNo.0ホープ・ゼアル』は、手札の『RUM』通常魔法カード1枚を捨てる事で『希望皇ホープ』モンスターの上に重ねる形でエクシーズ召喚出来る!俺は手札の『リミテッド・バリアンズ・フォース』を捨てる事でこれを適用する!

俺はホープレイVのオーバーレイ・ネットワークを再構築!シャイニングエクシーズ・チェンジ!今こそ現れろ、希望を司る原初のNo.!これが新たな時代の天地開闢!かっとビングだ、俺!『SNo.0ホープ・ゼアル』!」

「コイツは、ZEXAL…!」

 

SNo.0ホープ・ゼアル

エクシーズ・効果モンスター

光属性

戦士族

ランク 0(ルール上は1)

攻撃力 ?→5200

ORU 4

 

このターンの締めくくりとして、ホープレイVをシャイニングエクシーズ・チェンジさせて登場させたのは、カイトが呟いた通りゼアルチェンジした俺達そっくりなモンスター、ホープ・ゼアル。

コイツの効果は、このデュエルの勝利を決定づけると言っても過言じゃないぜ!

 

「カードをセットして、ターンエンドだ!」

 

Yuya

LP 1250

手札 0

モンスター No.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープ(攻撃表示)

      CNo.39希望皇ホープレイ・ヴィクトリー(攻撃表示)

      SNo.0ホープ・ゼアル(攻撃表示)

      カオス・ソーサラー(攻撃表示)

魔法・罠カード エクシーズ・チェンジ・タクティクス

希望郷―オノマトピア―(永続魔法扱い かっとビングカウンター:6)

        セット

 

エクシーズ・チェンジ・タクティクスの効果でドローした回数、8回。

希望皇ホープモンスターを特殊召喚した回数、9回(うち8回によって、希望郷―オノマトピア―にかっとビングカウンターが乗った)。

デッキの残り枚数、メイン・エクストラ共にあと半分ちょっと。

何を言いたいかは分かっている、『やり過ぎだ』と言いたいんだろう?

だが相手はカイト、今までデュエルしてきたデュエリストの中で最強クラスの力を有する、俺の最大のライバル、その実力はこのエクシーズ次元に転生し、タイタニック・ギャラクシーという新たなエースを手にしてますます磨きがかかっている筈。

そんな相手とのデュエル中は『やり過ぎ』なんて言葉は死語と化すんだ。

 

「随分と凄まじい展開力だ、暫く会わない内に、また数多くの修羅場をくぐって来た様だな。ならば俺も全力で向かわねばならない!

俺のターン、ドロー!」

 

悪いが、此処で止めさせて貰うぜ!

 

「スタンバイフェイズに、ホープ・ゼアルのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!

カイト、お前はこのターン、

 

 

 

効果を発動出来ない!」

「な、何!?」

 

ホープ・ゼアル、その最大の特徴は、相手ターン時にのみ発動出来る、この究極と言っても過言じゃないロック効果。

効果を無効にするのではなく、発動自体を無効にするという凶悪極まりない効果だ。

無論、抜け道と言えなくもない物はあるが。

 

「今はまだ効果を発動したに過ぎない。これにチェーンする形であれば、まだ効果を発動する事は出来る。それに適用された後であっても通常召喚やチェーンを組まない特殊召喚は出来るし、カードのセットも可能だ。効果自体が無効になる訳でもない。対抗手段があるなら今の内だぜ、カイト」

「いや、無い。まさか其処までの効果を持っていたとはな…

俺はモンスターをセットしてターンエンドだ」

 

SNo.0ホープ・ゼアル ORU 4→3

           攻撃力 5200→4200

 

Kaito

LP 4000

手札 2

モンスター セット

魔法・罠カード なし

 

流石に此処までのロック効果に対抗する術は無かったのか、カイトはカードをセットしただけでターンを明け渡した。

この状況で長々と展開したらアクションマジックを拾われる等で勝利が遠のくだけ、一気に行くぜ!

 

「俺のターン!ドロー!

このままバトルフェイズに入る!

カオス・ソーサラーでセットカードを攻撃!」

「セットカードは『ギャラクシー・ドラグーン』だ」

 

カオス・ソーサラー 攻撃力 3500 VS ギャラクシー・ドラグーン 守備力 1200

 

「ホープレイ・ヴィクトリーでダイレクトアタック!ホープソード・ヴィクトリースラッシュ!」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

Kaito LP 4000→0 LOSE

 

WINNER Yuya

 

「大丈夫か、カイト」

「ああ、問題ない。まさか此処まで圧倒されるとは」

 

いや、圧倒したとは言うが、デッキの回りが物凄く良かっただけ、それもエクシーズ・チェンジ・タクティクスの効果でバンバンドローした事で齎された物だ。

まあそれは兎も角それを語るカイトからは悔しさではなく、心から楽しめたという笑みの表情が浮かんでいた。

 

「此処まで白熱するデュエルは久々だ。ありがとう、遊矢。久しぶりに、心踊るデュエルだった」

「こっちもありがとうな、カイト。そういってくれると、エンタメデュエリスト冥利に尽きるって奴だぜ」

 

そう礼を言い合い、健闘を称えあう握手をした俺とカイト。

そのまま拠点に戻ろうと、足を進めたカイトに従おうとしたその時だった。

 

「む?」

「どうした、遊矢?」

「カイト達は先に戻っていてくれ。ちょっと野暮用が出来た」

「野暮用だと?

…分かった、余り遅くなるなよ?」

「ああ、なるべく早く帰る」

 

カイト達に遅くなることを告げ、そのカイトの忠告を背に、俺はとある場所へと向かう…



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112話_運命のリターンマッチ!

今回はかなり短いです。


何か予感めいた物を感じ、それを確かめるためにカイト達と離れ、ある一定の方向へと足を進めた俺。

エクシーズ次元の、嘗ては舞網市にも引けを取らない程の煌びやかな街並みがあったと思われる、しかし今は本当に瓦礫しか存在しない、そんな光景が繰り返される中、道なき道を歩み続けて、数分が経った頃、

 

「成る程、お前の並々ならぬ戦意が俺を引き寄せたという訳か。しかし懲りない奴だ、ほんの数時間前にフルボッコにされ、そんなぼろぼろの状態になって尚俺に立ち向かうか。その精神力は尊敬するよ」

「フン、さっきは偶々巡り合わせが悪かっただけだ!今度こそ君に勝ち、僕のデュエルが、アカデミアの理想こそが正しいという事を証明して見せる!」

 

其処に、俺を引き寄せた存在が、このエクシーズ次元に派遣されたアカデミア軍の総司令官、エド・フェニックスがいた。

先程のデュエルで吹っ飛ばされた事による怪我が癒えていないのか、立っているだけでもやっとと言わんばかりの様子ではあれど、その戦意は凄まじく、少し距離を空けて対峙している俺でも感じ取れる。

まあそれは良いとして、

 

「さて、さっき俺が言った言葉は覚えているだろうな?お前のデッキに宿りしモンスター達がどう動きたいか、声は聞こえたか?」

「モンスター達が動きたい事?モンスター達の声?そんな物は必要ない!完璧なデッキ構築と完璧なプレイ、そして望みのカードを引き当てるドロー運、それらを兼ね備える事こそ僕の理想のデュエルだ!」

 

どうやら俺の言っていることが分かっていない、というか聞く気無い様だな。

 

「そんな様子では俺には一生勝てないぜ。今デュエルした所で勝敗は確定的に明らかだ」

「黙れ!僕のデュエルが、アカデミアの理想が正しいかどうかは、このデュエルで明らかになる!」

「やれやれ、仕方ないか」

 

某謙虚なナイトが発した名言を使って諭しても意味がない様だ、ならばこの、新しいデッキでもう1回ワンキルして、思い知らせてやるしかないか。

 

「先攻は譲ってやるよ。どうもそっちの方が良さそうみたいだし」

「なっ…!

さっき偶々1キルしたからといい気になって、良いだろう、その余裕を直ぐに打ち砕いてやる!」

「「デュエル!」」

 

先攻 Edo LP 4000 VS 後攻 Yuya LP 4000

 

「僕のターン!

まずは『D―HEROドリルガイ』を召喚!」

 

D―HEROドリルガイ

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1600

 

しかし初手でまたソイツか、あの融合召喚を行う罠カードの存在からして悪くはないが、ワンパターンも良い所だな。

 

「召喚したドリルガイのモンスターエフェクト!このカードの攻撃力以下の攻撃力を持つデステニーヒーローを手札から特殊召喚する!カモン!『D―HEROディシジョンガイ』!」

 

D―HEROディシジョンガイ

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1600

 

と思ったら、次に出して来たのは、さっきのデュエルでは融合素材として墓地へ送られた、決心の名を冠したディーヒーロー、ディシジョンガイだった。

 

「次に魔法『融合』発動!」

 

融合

通常魔法

1:自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「僕はフィールドのドリルガイと、手札の『D―HEROディアボリックガイ』を融合!運命の岩盤を穿つ英雄よ!悪意秘めたる残忍な英雄よ!今一つとなりて暗黒の未来に君臨せよ!融合召喚!カモン!『D―HEROディストピアガイ』!」

 

D―HEROディストピアガイ

融合・効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 8

攻撃力 2800

 

そしてその特殊召喚の後に行われる融合召喚、だが素材として使われているのはドリルガイと、その効果から様々なデッキにおいてシンクロ素材として出張する事の多いディーヒーロー、ディアボリックガイだった。

 

「融合召喚したディストピアガイのモンスターエフェクト!墓地へ送られたドリルガイの攻撃力分のダメージを君に与える!スクイーズ・パーム!」

「あつっ」

 

Yuya LP 4000→2400

 

ドリルガイを召喚した時に発動される効果で手札のディーヒーローを特殊召喚し、ディストピアガイを融合召喚する、やっている事自体はさっきのデュエルと変わらないが、其処で使われているモンスターが違っていた。

これってまさか…?

 

「墓地が仕事場のディアボリックガイを融合素材として墓地へ送る、か…

お前、口では何だかんだと否定しながら結局、お前のデッキに眠るモンスター達の声を聞き入れているじゃないか。全く、素直じゃ無いな」

「だ、黙れ!今回は偶々そんな手札になっていたに過ぎない!」

「望んでいるカードを引き当てるドロー運、それをも備える事こそお前のデュエルだとさっき言っていたじゃないか。だったらその初手はお前が、或いはお前のデッキに眠るモンスター達がそれを望んだという事。そして後者だったとしてもその通りにプレイしているって事は、そういう事だろ?こーのツンデレめ!」

「黙れと言っている!誰がツンデレだ、誰が!」

 

まあ男のツンデレは気色悪いだけだ、それでも何だかんだ言いつつ俺の意見が聞き入れられている様を見せられると、あの時の言葉は決して無駄じゃ無かったと思える。

 

「くっ直ぐに黙らせてやる!僕は墓地のディアボリックガイを除外して効果発動!

デッキから2枚目のディアボリックガイを守備表示で特殊召喚!」

 

D―HEROディアボリックガイ

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 6

守備力 800

 

「カードをセットしてターンエンドだ!」

 

Edo

LP 4000

手札 0

モンスター D―HEROディストピアガイ(攻撃表示)

      D―HEROディシジョンガイ(攻撃表示)

      D―HEROディアボリックガイ(守備表示)

魔法・罠カード セット

 

「俺のターン、ドロー!」

「スタンバイフェイズに罠『D―フュージョン』発動!」

 

D―フュージョン

通常罠

このカードの効果で融合召喚する場合『D―HERO』モンスターしか融合素材に出来ない。

1:自分フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン、戦闘・効果では破壊されない。

 

ならば俺も、俺の覚悟を、俺のデュエルを示さねばならないな!

 

「僕はフィールドのディストピアガイとディアボリックガイを「勝手に効果処理を進めないでくれるかな?まだこっちのチェーン受付は終わっていないぜ!」何?」

「それにチェーンして俺は、手札を1枚捨ててこの速攻魔法を発動する!絶対無敵!究極の力を解き放て!解放しろ!『超融合』!」

「超融合だと!?何故君がそのカードを!?」

 

超融合(制限カード)

速攻魔法

このカードの発動に対して魔法・罠・モンスターの効果は発動出来ない。

1:手札を1枚捨てて発動出来る。自分・相手フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「俺はお前のフィールドにいるディストピアガイと、ディアボリックガイを融g、

 

 

 

 

 

ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」



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113話_四龍、再結集!

『ギャォォォォォォォォォォォォ!』

『ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』

 

何だ…!?

 

『ブラボー!』

『フッ…』

 

何なんだ…!?

 

『ズァーク!ズァーク!ズァーク!』

 

一体何なんだ、この光景は…!?

 

『これで終わりか!?もう俺と戦う奴はいないのか!?俺はまだ満足していない!もっと強く、もっと激しく戦いたい!』

 

この声、ガラスに映るこの姿、これって、俺…!?

 

『俺達だって満足してねぇ!もっとすごいデュエルを見せてくれ、ズァーク!』

『もっと!もっと!もっと!もっと!』

 

これは、デュエルの光景…!?

けど、今まで見て来た光景は…!

 

『良いぞ!その声が俺とモンスターの力となる。お前らが望めば望むだけ俺達は強くなれる!』

 

俺の手にあるのは、ペンデュラムモンスターとなる前のオッドアイズ、ダーク・リベリオン、クリアウィング、そしてスターヴ・ヴェノム…!

 

『この世の全てを破壊出来る程に!』

 

この世の全てを破壊?一体何を…!

 

『そうだ、俺達は戦い続ける!お前達が望む様に!』

 

な、何をしているんだ!?

 

『『『『グォォォォォォォォォォォォォ!』』』』

『そうか、まだ満足しないか。俺も同じだ』

 

あれ程暴れ回って、まだ満足していない、だと…!?

 

『俺もお前達と一心同体となり、最強の力を手に入れよう!今こそ一つに!』

 

な、何が起きようとしている…!?

 

『時空を司る『アストログラフ・マジシャン』よ、その深遠なる力で、我らの望みを重ね合わせよ!今こそ、一つに!』

 

オッドアイズが、ダーク・リベリオンが、クリアウィングが、スターヴ・ヴェノムが、そして俺が重なり、1つに…!

 

『ははは、はははっ!遂に手に入れた。俺は4体の頂点の竜と1つとなり、神にも等しい力を得た!』

 

成る程、俺が、いや、この光景を見ている『俺』が…!

 

『俺はお前達に感謝する。争いを求め、戦いを好むお前達人間の欲求が、この俺に最強の力を与えた。俺はお前達の望み通り更に強く、更に巨大な力の権化となる!』

 

俺の、いや俺達の心を覆い尽くしていた存在、そうミエルが言っていた『何か』か…!

 

『魔法『エン・フラワーズ』『エン・バーズ』『エン・ウィンズ』『エン・ムーン』発動!』

『駄目だ!駄目だ、レイ!』

 

目前にいるのは、赤馬零王に、柚子?いや、セレナ?それとも、リン?若しくは、瑠璃?

違う、その4人とも、違う…!

 

『止めるんだ、レイ!そんな事したら、お前は!あ、あぁ…!』

『貴様…!

貴様!許さん、許さんぞ!1つになった我らを!』

 

そうか、そういう、事だったのか…!

 

『そうだ、これは全て『俺』が見たままの光景だ』

『『俺』は人間共の欲求に応えるままに、暴れ回った』

『『俺』は人間共が求めるままに、力を追い求めた』

『そして『俺』は1つとなり、神に等しい力を得た』

 

っ!?何時の間に…!

それよりこの声は『俺』達か…!

 

『お前にも分かる筈だ、人間共が求めるままに、変幻自在なデュエルを繰り広げたお前には』

『ある時は敵に抵抗を許さず、抵抗する素振りをも捻じ伏せ、抵抗する暇すら与えなかった』

『ある時は己の思い通りに盤面を動かし、思い通りの布陣を築き、思い通りの進撃を行った』

『ある時は敵の動きを捻じ曲げ、敵の攻撃を突き返し、敵の大事な物をも奪い去って行った』

 

何が言いたい…!?

 

『お前も『俺』だ』

『お前も『俺』と同じく、人間共の求めに応え続けた』

『時に人間共の欲求を守るために、他の人間共の欲求を奪った』

『お前も『俺』なのだ』

 

 

『今こそ、再び一つとなるのだ!』

『一つとなり、神に等しき力を取り戻すのだ!』

『あらゆる物を破壊しつくす、その力を再びこの手に!』

『さあ、我ら再び一つに!』

 

ああ、我ら再び、一つとなろう!

 

『そうだ、我らは今一度、一つとなる!』

『そして最強の力を再びこの手に!』

『その力で今こそ、欲求のままに世界を破壊し尽くす!』

『さあ、我らを受け入れるのだ!』

 

 

 

俺はその上で、俺のデュエルを、俺の生き様を貫く!

 

『何を言って、ぐぁぁぁぁぁ!?』

『な、何をしている!?』

『貴様、何を企んでいるのだ!?』

『や、止めろ!我らは今一度、一つとなり神に…!』

 

二色の眼の龍よ、反逆の意志秘めたる龍よ、美しき翼輝かす龍よ、満たされぬ飢えを抱く龍よ、そして『俺』よ、際涯を超越せし我が禁を見届けよ!

お前達に見せてやる、俺が300年、5度の人生を経て掴んだ、俺の、デュエルモンスターズの、世界のあるべき姿を!

 

 

 

イ  タ  ダ  キ  マ  ス

 

 

 

『止め……我ら……消え…!』

 

 

 

ゴ  チ  ソ  ウ  サ  マ

 

 

 

その日、世界を滅亡へと追い詰め、4つに引き裂く元凶となった『覇王龍』は『完全なる死』を遂げた。

 

------------

 

Side ????

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

「くっ!?一体、何が起こっているんだ!?」

 

エドが発動したD―フュージョンにチェーンして超融合を発動した遊矢、その効果処理で融合召喚を行おうとしたその時に起こった遊矢の異変。

その只ならぬ様子に流石のエドも懸念を覚え近づこうとしたが、突如として遊矢が発した雄叫びと共に巻き起こる突風の所為で近寄れなかった。

その突風に耐えるだけでも精一杯な状況が数秒続き、雄叫びも聞こえなくなり、風も止んだその時だった。

 

「ふぅ、一時はどうなるかと思った。だが俺の生き様を貫く、その意志があればどうという事は無いな」

 

先程まで様々な異変が起こっていた筈の遊矢が、何事も無かったかの様に呟きながら正気を取り戻していた。

いや、正気と言うには見た目的に語弊があるだろう、何故なら、

 

「ど、どうしたんだ、その眼の色は…!?」

「え、眼…?

な、何じゃこりゃ!?白目が真っ黒に!?左眼もエメラルドグリーンって言うか、そんな色合いに!?」

 

今しがた遊矢が驚いた通り、眼球の白目の部分が真っ黒に染まった他、赤み掛かった色合いの黒目も、左眼の方がエメラルドグリーンの色合いに変化していたのだ。

 

『あっボクとお揃いだね、遊矢』

『ユベル、そんな呑気な事を言っている状況ではないと思うが』

「うわこれ、覇王の力を解放したとしたら、目の色がダークシグナー時代の鬼柳みたいだな…」

『遊矢も一体何を口走っているのだ…』

 

そんな遊矢を、先程の異変も相まって気に掛けるアストラルとは対照的に、ユベルや、当の遊矢本人はそんな呑気な事を呟いていた。

余りの超展開に、完全に普段のボケとツッコミが逆転してしまっている。

だが、超展開はこれだけでは終わらなかった。

 

「…あれ、何だ此処?俺いつの間にこんな瓦礫の山に?」

「…此処は、エクシーズ次元?何時頃帰って来たんだ?」

「…あれれ?何で僕、此処にいるのかな?」

「「あ、お前は!?」」

「へ、え、わぁぁぁぁぁぁ!?御免なさぁぁぁぁぁい!」

「謝って済むと思ってんのかゴルァ!」

「ユーゴの言う通りだ!待て!」

 

遊矢の後方の瓦礫から、ユーゴ、ユート、そしてユーリ、行方不明になっていた3人が顔を出し、其々の存在を認めるや否やユーゴとユートがユーリを追いかけ回し、ユーリが謝りながら逃走を始めたのだ。

突如現れた3人に、今までの言動からは信じられないユーリの姿、余りの状況にエドは開いた口が塞がらなかった。

 

「…後でとっ捕まえておくか。

さて、待たせたな。色々とあったがもう大丈夫だ、問題ない。続けようか、デュエルを!」

「あ、あぁ」

「さて、今は超融合の効果処理中だったな。俺はお前のフィールドにいるディストピアガイとディアボリックガイを融合!運命に導かれし2人の英雄よ!今ひとつとなりて、その闇の奥の地獄から、新たな脅威を生み出せ!融合召喚!現れよ、飢えた牙持つ毒龍!『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』!」

「スターヴ・ヴェノム!?それは、向こうでたった今追いかけ回されているユーリのエースカードの筈!」

 

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン

融合・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 2800

 

エドが驚くのも無理はない、今しがた遊矢が融合召喚したモンスター、スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンは、ユーリのエースカードなのだから。

 

「その後、D―フュージョンの効果処理が行われるが、そっちのフィールドに1体しかモンスターがいない以上、融合召喚は出来ないな」

 

だがそんな事はお構いなしに、遊矢はデュエルを進める一方、その異常に真っ先に気付くはずであろうユーリはそんな事は気にも留めず、ユーゴ達から逃げ回っているだけだった。

 

「融合召喚したスターヴ・ヴェノムの効果発動!

そっちのフィールドにいるディシジョンガイの攻撃力分、コイツの攻撃力をアップさせる!」

 

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン 攻撃力 2800→4400

 

「くっ!だがスターヴ・ヴェノムのレベルは8!レベル6以上のモンスターはディシジョンガイを攻撃対象に出来ない!」

「成る程、それでソイツを残そうとしていた訳か。ならばこうするか。

次にスターヴ・ヴェノムをリリースし、魔法『アドバンスドロー』発動!」

 

アドバンスドロー

通常魔法

自分フィールド上に表側表示で存在するレベル8以上のモンスター1体をリリースして発動出来る。デッキからカードを2枚ドローする。

 

「アドバンスドローの効果で2枚ドロー!

…よし、行くか!」

 

スターヴ・ヴェノムの効果でパワーアップさせるも、現状は攻撃出来ないと分かるや否や、遊矢はあっさりとスターヴ・ヴェノムを切り捨て、ドローに変換した。

それによって引いたカードを見て勝ち筋が見えたのか、決心を新たにした。

 

「続いて、俺のフィールドにモンスターが存在しない事で、手札の『SRベイゴマックス』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

SRベイゴマックス

効果モンスター

風属性

機械族

レベル 3

攻撃力 1200

 

「特殊召喚したベイゴマックスの効果発動!

デッキから『SRタケトンボーグ』を手札に加え、風属性モンスターが存在するから守備表示で特殊召喚!」

 

SRタケトンボーグ

効果モンスター

風属性

機械族

レベル 3

守備力 1200

 

その決心と共に展開したのは、ユーゴの十八番と言って良い2体のSRによるコンボ。

本来なら此処でタケトンボーグの効果を発動し、クリアウィング・シンクロ・ドラゴンのシンクロ召喚に繋ぐのだが、遊矢はそれを直ぐには実行しない。

何故か、それはタケトンボーグの効果を使用すると『風属性モンスターしか特殊召喚出来ない』誓約が適用されてしまうからだ。

 

「更に『終末の騎士』を召喚!」

 

終末の騎士(制限カード)

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1400

 

「召喚した終末の騎士の効果発動!

それにチェーンして、手札の『カゲトカゲ』の効果発動!

まずはカゲトカゲの効果で、コイツを守備表示で特殊召喚!コイツはレベル4モンスターの召喚に成功した時、自らの効果で特殊召喚出来る!」

 

カゲトカゲ

効果モンスター

闇属性

爬虫類族

レベル 4

守備力 1500

 

「次に終末の騎士の効果で、デッキから『幻影騎士団ダスティローブ』を墓地へ送る!」

 

続いて遊矢は、墓地肥やしの定番である終末の騎士と、同レベルモンスターの召喚に反応して登場する真っ黒な蜥蜴、2体のレベル4モンスターを並べる。

 

「墓地へ送られたダスティローブを除外して効果発動!

デッキから『幻影騎士団サイレントブーツ』を手札に加える!

更にこのサイレントブーツを墓地へ送って魔法『ワン・フォー・ワン』発動!」

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

「ワン・フォー・ワンの効果で、デッキから『SR赤目のダイス』を守備表示で特殊召喚!」

 

SR赤目のダイス

効果モンスター/チューナー

風属性

機械族

レベル 1

守備力 100

 

ダスティローブによるサーチから、そのカードを墓地へ送ってのワン・フォー・ワン、という回りくどい流れから登場させたのは、これまたユーゴが登場させるモンスターの定番である赤目のダイス。

 

「ベイゴマックスを対象に、特殊召喚した赤目のダイスの効果発動!

ベイゴマックスのレベルを6にする!」

 

SRベイゴマックス レベル 3→6

 

これでベイゴマックスと赤目のダイスのレベル合計は7、クリアウィングをシンクロ召喚出来るレベルになった。

 

「俺はレベル6となったベイゴマックスに、レベル1の赤目のダイスをチューニング!その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚、レベル7!『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン

シンクロ・効果モンスター

風属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2500

 

そして案の定というべきか、ユーゴのエースカードであるクリアウィングを呼び出した。

だが自らのエースである筈のクリアウィングを遊矢が呼び出した、という状況にユーゴは気にも留めず、相変わらずユーリを追いかけ回していた。

 

「まだまだ行くぜ!俺は終末の騎士とカゲトカゲでオーバーレイ!2体のレベル4モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!漆黒の闇より、愚鈍なる力に抗う反逆の牙!今、降臨せよ!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!」

「レベルを持たないエクシーズモンスターでディシジョンガイを討つつもりか…!」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

ランク 4

攻撃力 2500

ORU 2

 

更に呼び出したのは、ユートのエースカードであるダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン。

尚、ユートもまた自らのエースである筈のダーク・リベリオンを遊矢が呼び出したという状況を気にも留めず、ユーゴと同じくユーリを追いかけ回していた。

それは兎も角、このままダーク・リベリオンの効果を適用してそのまま総攻撃すれば、エドの警戒の通り、遊矢の勝ちは決まる。

だがそれでも、遊矢は展開を止めない。

 

「ダーク・リベリオンのオーバーレイ・ユニットを2つ取り除いて効果発動!対象はディシジョンガイ!

ディシジョンガイの攻撃力を半分にし、減った分をコイツの攻撃力に変える!トリーズン・ディスチャージ!」

 

D―HEROディシジョンガイ 攻撃力 1600→800

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 攻撃力 2500→3300

                     ORU 2→0

 

「まだ終わりじゃないぜ!さっき墓地へ送ったサイレントブーツを除外して効果発動!

デッキから速攻魔法『RUM―幻影騎士団ラウンチ』を手札に加え、そのまま発動!対象はダーク・リベリオン!」

 

RUM―幻影騎士団ラウンチ

速攻魔法

1:自分・相手のメインフェイズに、自分フィールドのエクシーズ素材の無い闇属性エクシーズモンスター1体を対象として発動出来る。その自分のモンスターよりランクが1つ高い闇属性エクシーズモンスター1体を、対象のモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚し、このカードを下に重ねてエクシーズ素材とする。

2:自分メインフェイズに墓地のこのカードを除外し、自分フィールドの闇属性エクシーズモンスター1体を対象として発動出来る。手札の『幻影騎士団』モンスター1体を、そのモンスターの下に重ねてエクシーズ素材とする。

 

「俺はこのカードとダーク・リベリオンでオーバーレイ・ネットワークを再構築!ランクアップ・エクシーズチェンジ!煉獄の底より、未だ鎮まらぬ魂に捧げる反逆の歌!永久に響かせ、現れよ!『ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン』!」

 

ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

ランク 5

攻撃力 3000

ORU 2

 

自らの効果によってオーバーレイ・ユニットを使いきったダーク・リベリオン、だがワン・フォー・ワンのコストとして墓地へ送られたサイレントブーツの効果でサーチされたRUMによってランクアップし、より煌びやかな姿、ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴンへと変貌した。

 

「まだ終わりじゃない!魔法『龍の鏡』発動!」

 

龍の鏡

通常魔法

1:自分のフィールド・墓地から、ドラゴン族の融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを除外し、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「俺は墓地のスターヴ・ヴェノムと『捕食植物モーレイ・ネペンテス』を除外して融合!」

「何時の間にそのモンスターが…!

超融合のコストか!」

「ああ!魅惑の香りという罠で虫を誘う美しき花よ!満たされぬ飢えを抱く龍よ!今ひとつとなりて、その闇の奥深くの無間地獄から、大いなる絶望を生み出せ!融合召喚!出でよ、貪欲なる牙持つ邪龍!『グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』!」

 

グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン

融合・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 10

攻撃力 3300

 

まだまだ終わらないという言葉の通り、今度は先程登場したスターヴ・ヴェノムがより強靭に、凶悪な姿と化したドラゴン、グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンが降臨した。

 

「そしてタケトンボーグをリリースして効果発動!

デッキから2枚目の赤目のダイスを守備表示で特殊召喚!

俺はレベル7のクリアウィングに、レベル1の赤目のダイスをチューニング!神聖なる光蓄えし翼煌かせ、その輝きで敵を撃て!シンクロ召喚!出でよ、レベル8!『クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン』!」

 

クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン

シンクロ・効果モンスター

風属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 3000

 

「今こそ再び集え!異次元に散りし、我がドラゴン達よ!」

 

そしてクリアウィングと、最後の最後で発動されたタケトンボーグの効果で登場した赤目のダイスによるシンクロ召喚で登場したのは、クリアウィングがより精悍に、輝かしく化した姿、クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン。

 

「バトルフェイズに入る!ダーク・レクイエムでディシジョンガイを攻撃!鎮魂のディザスター・ディスオベイ!」

「くっ!」

 

ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン 攻撃力 3000 VS D―HEROディジョンガイ 攻撃力 800

 

Edo LP 4000→1800

 

「クリスタルウィングでトドメだ!烈風のクリスタロス・エッジ!」

「うわぁぁぁぁぁぁ!?」

 

Edo LP 1800→-1200 LOSE

 

WINNER Yuya



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114話_そして、ラストデュエルへ…!

今回はかなり短いです。
今回を以て8章・Bパートは終了、次回から8章・Cパートに入ります。


Side ????

 

「また、負けた…

エンタメデュエルに、榊遊矢に、負けた…」

 

遊矢が呼び出した、其々の召喚方法の名を冠した3体の竜、その進化した姿達による総攻撃、それによってまたも後攻1ターンキルで敗北し、再び瓦礫へと吹っ飛ばされたエド、仰向けに倒れた状態のまま、それを悔しがる様な事を呟いてはいたが、それに反してその顔からは笑みが浮かんでいた。

 

「デッキに宿るモンスター達がどうありたいのか、どう動きたいのかを聞き取る、か…

それが出来るからこそ、榊遊矢のデュエルは緻密で、鮮やかで、あれ程の迫力ある布陣を、活き活きとした笑顔で動かせる…

自分も、相手も、見ている観客も、カード達すらも自然と笑顔にさせる、エンタメデュエル…

今までの僕では一生届かないと言われるのも分かる、今までの僕のデュエルは、アカデミアの理想は、『アークエリア・プロジェクト』と称した侵略戦争は、間違っていた…」

「大丈夫か、エド?」

 

様々な事を反芻し、呟き続けるエド、そんな彼、倒れたまま起き上がらない彼を心配してか、遊矢が駆け寄って来た。

 

「ああ、これ位は問題ない。それより君の眼の事だが、おや?黒くなっていた白目が元に戻っていないか?左眼の変色までは治っていないみたいだが…」

「ん?ああ、やっと消化が終わったか。流石にオッドアイズ達4龍と合体していた事はあるな、呑み込んだと思ったら消化するのに大分時間が掛かるとは…」

「え?」

「あ、いや、こっちの話だ」

 

そんな遊矢の眼、デュエル中に起こった謎の現象を経て黒く染まっていた白目が何時の間にか元に戻っていたのだ。

エメラルドグリーンに染まっていた左の黒目までは戻っていなかったが、遊矢はその現象に何処か合点がいったのか、妙な事を口にしている。

 

「今の君とのデュエルで僕ははっきりと分かった。やはり君の父親は、いや、君は正しかった。デュエルとは皆に笑顔を齎す為の物であり、戦争の道具なんかじゃない!我々はアークエリア・プロジェクトと称して実際には侵略戦争を行って来た。これは我々の理想と反する物、よって今を以てこの計画を破棄し、エクシーズ次元復興に努める事とする!それが数多くの命を、笑顔を奪い去った僕達に出来る事だ」

「エド…!

これからも、宜しくな!」

「ああ!」

 

だがそれはさらりと流され、遊矢が掲げるデュエルの真理に気付いた事、アカデミアが掲げる計画を放棄する事をエドは宣言し、遊矢との握手が交わされた。

 

「とはいえ、これからが大変だ。アークエリア・プロジェクト、理想こそ崇高な物だからこそそれに賛同するアカデミア兵も少なくないだろう、恐らくお前の説得に耳を貸さない奴も出て来るかも知れない。それに破壊の爪痕は、エクシーズ次元の人達に刻まれた心の傷は相当根深い、お前達からの施しは受けないだとか、信用出来ないだとか言う人々もいるだろう。此処から先は茨の道だぞ」

「分かっているさ、それでも僕達はやらねばならない。僕達が今までしてきた事を償うには、それぐらいの覚悟が無ければ出来ない事だ」

 

だが一口に復興すると言っても、その大変さを身に染みて理解している遊矢はエドに忠告をする。

それでも揺るがないエドの意志を見て、遊矢は手ごたえを感じているかの様な笑顔を浮かべていた。

 

------------

 

「遅ーい!私の計算によれば29分58秒で全員のスープが完成する筈なのに、既に時計の針は30分を越えている!市民の皆さんを何時までお待たせするつもりだ!」

「お待たせ、ノロマちゃん」

「ノロマではない!野呂だ!」

 

その後、総司令官であるエドの宣言を聞いたアカデミア派遣軍の構成員は全員、エドに従う事を決定、既に捕虜となっていたタイラー姉妹含め、エクシーズ次元復興に力を注いでいた。

遊矢達が抱いていた懸案の1つである離反者こそいなかったが、もう1つの懸案である救援を拒否する人達は少なからずいて、破壊の爪痕も想像以上に深く、再建のメドが全く立たない現状ではある。

それでもエド達元アカデミア軍は、遊矢達ランサーズは復興の為、前を進んでいた。

 

「お、電話だ。月影か、アカデミアの方で動きがあったみたいだな」

 

そんな中、遊矢が持っていたスマートフォンに、着信音が鳴った。

発信先は、アカデミアで活動中の月影の様だ。

 

「もしもし、俺だ…

そうか、そっちも順調の様だな。こっちもエクシーズに派遣されていたアカデミア軍の無力化に成功した所だ…

何だって、それは本当なのか?分かった、皆にも伝えて置く…

了解だ、後は俺達が向かうだけか。さっきの件からして、少し寄り道するべきだな…

連絡は以上か?分かった、じゃあ、また後で会おう」

 

何件か報告を交わす遊矢と月影、その中で遊矢が驚いた様な素振りを見せたり、何か考えを巡らせたりする場面もあった中で、電話は終了した。

そして、こう呟いた。

 

「機は、熟した」

 

遊矢の呟きに呼応するかの様に、アカデミアとの戦いは、最終局面に突入していく事になる…!



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8章・C『其々の道。融合次元に突入した月影達』
115話_任務開始!


今話より8章・Cパート開始です。


Side 月影

 

「ランサーズ第4部隊、今到着したわ。此処が融合次元…」

「長旅お疲れ申し上げるでござる、雪乃殿。早速で申し訳ないが、今回の任務は急を要するでござる。アカデミア行きの船まで案内するでござる」

「かたじけない、月影殿」

「頼むぞ。向こう岸にあるアカデミア、其処に瑠璃達が…!」

「いよいよ、奴さんの本拠に乗り込む時が来たか。覚悟を決めねぇとな」

「待っていろ、アカデミアのモンキー共!俺の新しい切り札で、お前達の抵抗が無駄だと教えてやる!」

「待っていてください、リンさん、瑠璃さん!必ず助け出します!」

 

アカデミアから大分離れた、融合次元のとある市街地。

此処で拙者は、今回の作戦に加わる事となったランサーズ第4部隊の面々を案内すべく、兄者達フォースハウンドから一旦離れ、この地へと参った。

今回の任務、アカデミアに囚われしリン殿と瑠璃殿の両名を救出するという任務、アカデミアが進めている『アークエリア・プロジェクト』なる計画のキーパーソンらしき両名を救い出すというこの任務は、成功すればアカデミアが被るダメージが甚大となろう事は想像に難くないでござる。

無論、アカデミアも両名を失った場合を想定し、この前のシンクロ次元への侵略が失敗に終わった事も相まって、両名が囚われているであろう塔の警備は厳重極まりない、物々しい状態ではござるが。

然しながら、我らフォースハウンドと第4部隊の力を合わせれば、救出は不可能ではないでござる。

この作戦が成功するか否かが、今後の流れを決めると言っても過言ではない天王山、全力で臨ませて貰うでござる!

 

「船はこちらに。方々、準備は宜しいでござるか?」

『OK!』

「では、いざ参る!」

 

拙者の号令を受け、我らを乗せた船はアカデミアに向けて出港した。

然しながら向こうも易々と通してくれる筈も無く、

 

「おっと、此処から先は通さねぇぜ!ランサーズさんよ!」

「むっ敵襲!」

 

出港してから数分経った頃、突如として我らの航路を阻むかの様に、別の船が立ちはだかった。

口振りからしてアカデミアに属する者か、どうやら第4部隊が集団で転送されて来た反応を察知した様でござろうな…

 

「私達の事を知っていると言うなら話は早いわね。怪我したくないなら、直ちに其処を退いて貰うわ」

「はっ怪我するのはそっちの方だ!この俺様の手によって、な!」

 

その船の主らしき者に雪乃殿が警告を発するも、船の主である如何にも海賊だと言わんばかりの姿の男は聞く耳を持たない様子、やはり口で言っても分からない様でござるな。

ならば折角でござる、アカデミアから鹵獲したこのダイナミストデッキの力、此処でテストさせて、

 

「随分なバカ発言だな、海賊かぶれの痛いオッサンが。だったら来い、俺のデュエルでフルボッコにしてやる!」

「い、痛いオッサンだと!?良いだろう、その言葉を永遠に後悔させてやる!行くぞ!」

「「デュエル!」」

 

先攻 Solo LP 4000 VS 後攻 Raiga LP 4000

 

と思っていたら、突如出て来た雷牙殿の挑発に乗った事であの男とのデュエルが成立していたでござる。

仕方ない、此処は雷牙殿のお手並み拝見と行くでござる。

 

「先に行かせて貰う!

俺は魔法『融合』発動!」

 

融合

通常魔法

1:自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「俺は手札の『海賊船スカルブラッド号』と『スカル・ナイト』を融合!赤きドクロの魔界の船よ!闇に潜みしドクロの騎士よ!今1つとなりて伝説の海賊王を呼び覚ませ!融合召喚!出でよ、レベル6!『キャプテン・ロック』!」

 

キャプテン・ロック(アニメオリジナルカード)

融合・効果モンスター

水属性

悪魔族

レベル 6

攻撃力 0

 

先攻となった、ソロと言うらしい男が融合召喚したのは、左手がフック、右手がナイフとなった如何にも海賊だと言わんばかりの姿をした骸骨の悪魔。

しかしレベルこそ6でござるが、攻撃力0のモンスターを攻撃表示?

もしや何か、そのステータスを覆すに相応しい、想像を絶する効果が…!

 

「キャプテン・ロックがフィールドに存在する限り、お互いのプレイヤーは手札からモンスターを通常召喚も特殊召喚もする事が出来ず、モンスターのセットも出来ない!」

 

やはり持っていたでござるか…!

呼び出されたモンスターの効果、それはセット以外のモンスターを呼び出す行為の一切を禁じた『異星の最終戦士』の下位互換に近い様でござるが、手札からであればセットすら禁止する、これは敵の攻撃を防ぐ壁となるモンスターすら出せないという事、中々厳しい物でござる。

まあ拙者のデッキならば対処できない事は無いでござるが、それでも立っていられると厳しいのは間違いないでござる、果たして雷牙殿はどう対処するのでござろうか…

 

「カードをセットしてターンエンド!」

 

Solo

LP 4000

手札 1

モンスター キャプテン・ロック(攻撃表示)

魔法・罠カード セット

 

「俺のターン!ドロー!

…残念だったな痛いオッサン、チェックメイトだ!」

「なっ!?」

 

ソロからターンを明け渡された雷牙殿、そのドローフェイズで引いたカードと、開始時に引いた5枚を合わせて6枚の手札を見やるや否や、既に勝利を確信したと宣言したでござる。

もしやあの6枚の中に、この状況を打開するカードがあるのでござろうか…?

 

「まずは魔法『手札抹殺』発動!」

「ちっ手札交換か…!」

 

手札抹殺

通常魔法

1:手札があるプレイヤーは、その手札を全て捨てる。その後、それぞれ自身が捨てた枚数分デッキからドローする。

 

その初手で発動したのは、手札交換カードとして、墓地肥やしカードとして破格の性能を誇る手札抹殺。

成る程、墓地にモンスターを送り、其処から死者蘇生等の蘇生効果を使うという事でござるな、これならキャプテン・ロックの効果には引っ掛からないでござる。

ソロもそれが分かっているのか舌打ちしながらも、対処する術がないのか手札交換に応じようとしている様子でござった。

 

「俺は残り5枚の手札を捨て、5枚ドロー!」

「俺も最後の1枚を捨て、ドロー!」

 

然しながら、

 

「俺は手札抹殺の効果によって墓地へ送られた『A―アサルト・コア』と『B―バスター・ドレイク』、そして『C―クラッシュ・ワイバーン』を融合合体!」

「な、何だと!?墓地からカードの効果なしで融合!?」

 

雷牙殿の次の手は、拙者や第4部隊の面々は勿論の事、敵であり、融合召喚に関しては専門であるアカデミア所属な筈のソロの予想すらも大きく外れていたでござる。

 

「今こそ開闢の号砲を放て!3身合体、世界を震撼させる砲火!『ABC―ドラゴン・バスター』!」

 

ABC―ドラゴン・バスター

融合・効果モンスター

光属性

機械族

レベル 8

攻撃力 3000

 

雷牙殿のデュエルディスク、その墓地からカタパルトの如く発進した3体の機械族モンスター、それが変形合体して、重戦車を思わせる姿のロボット、ドラゴン・バスターとなったのでござるからな。

む?今しがた登場したドラゴン・バスターが、キャプテン・ロックを踏み潰した?

 

「ちっキャプテン・ロックはフィールドに攻撃力1000以上のモンスターが存在する場合、破壊される…!

だがそれで勝った気になるなよ!永続罠『デッドマン・パイレーツ』発動!コイツでキャプテン・ロックを「チェーンして手札を1枚捨て、ドラゴン・バスターの効果発動!ソイツを除外する!」な…!?」

「貧弱貧弱ゥ!やれ、ドラゴン・バスター!ABCポジトロン・ディサピアー!」

「ぐわぁっ!?」

 

キャプテン・ロックが、自らの自壊効果によってフィールドからいなくなろうと戦意を失わなかったソロが発動した永続罠、恐らくそれでキャプテン・ロックの自壊効果を何とかした状態で蘇生しようとしたのでござろうが、それもまたドラゴン・バスターの前に消え去ったでござる。

成る程、ドラゴン・バスターの効果は、破壊では無く除外となった『サンダー・ブレイク』でござるか、それに墓地から素材を除外する事で出せるという手軽さ、雷牙殿が新しいエースと誇るのも頷ける強烈さでござる。

 

「このままバトルフェイズに入る!

ドラゴン・バスターでダイレクトアタック!

そしてダメージステップ時、速攻魔法『リミッター解除』発動!」

 

リミッター解除(制限カード)

速攻魔法

1:自分フィールドの全ての機械族モンスターの攻撃力は、ターン終了時まで倍になる。この効果が適用されているモンスターはこのターンのエンドフェイズに破壊される。

 

そしてこのデュエルと締めとして発動したのが、機械族を主軸としたデッキでは必須と言って良いパワーカード『リミッター解除』。

 

「ドラゴン・バスターのリミッターが解除される事で、そのパワーは通常時の倍となるぜ!その攻撃力は…!」

 

ABC―ドラゴン・バスター 攻撃力 3000→6000

 

「こ、攻撃力6000!?」

「やれ、ドラゴン・バスター!ABC―アルティメット・キャノン・フルバースト!」

「ぐわぁぁぁぁぁ!?」

 

Solo LP 4000→-2000 LOSE

 

WINNER Raiga

 

「アバヨ、痛いオッサン!」

「お、おい何とかしろ~!」

「だ、駄目です船長!」

 

ドラゴン・バスターの攻撃によってソロは敗北、その余波で船の何処かしこが破損したのか制御不能に陥った様で、ソロ達が乗る船は波に揺られるまま何処かへと彷徨って行ったでござる。

これで阻む存在も無し、改めてアカデミアへと向かうでござる!

 

------------

 

「兄者、お待たせしたでござる。道中、アカデミアらしき者からの妨害を食われ…」

「問題ない、無事たどり着けたのが一番でござる。方々、長旅お疲れ申し上げるでござる。さて、着いて早々で申し訳ないでござるが、この場でブリーフィングを行うでござる。大丈夫でござるか?」

「問題ないわ」

「なれば遊香殿、セルゲイ殿、2人も此方に」

「了解」

「分かった…」

 

アカデミアがある孤島、その海岸から少し離れた所に到着した我らは、小型ボートで此方へと来た兄者達を引き入れたでござる。

そしてその場で、我らフォースハウンドと、ランサーズ第4部隊共同で行う、救出作戦のブリーフィングが幕を開けたでござる…!

 

「さて遊香殿、アカデミア全体図を此方に」

「分かったわ、隊長」

「かたじけない。これが、我らが入手したアカデミアの全体図でござる。桟橋以外は全て城壁らしきもので囲われた、アカデミアとは名ばかりの、正に要塞。その要塞の比較的奥まった所にそびえたつ1対の塔。調査の結果、此処にリン殿、瑠璃殿が囚われている事が判明したでござる」

「此処に、瑠璃が…!」

「左様。今回の我らフォースハウンドと、雪乃殿率いる第4部隊で、囚われしリン殿と瑠璃殿を救出する、それが今作戦における我らの任務でござる。方々、大丈夫でござるな?」

「確認するまでも無い、瑠璃は絶対に救い出す!」

「勿論よ、日影隊長」

「某も承知でござる」

「当然だ」

「あぁ」

「頑張ります!」

 

まずは遊香殿が広げたアカデミア全体図を使いながらの今作戦における任務の確認、隼殿が言う通り確認するまでも無い事ではござるが、引き締めの為にも重要という事でござるよ。

 

「さてこの塔、此処最近警備が厳重化している様子でござる。それが救出対象である両名が囚われていると判断した根拠でござるが、其処に遊矢隊長が遭遇したという精鋭部隊、ホルアクティ・フォースのメンバーも加わっている様でござる。遊矢隊長が遭遇したホルアクティ・フォースのリーダー、キサラ・カルメルは隊長と互角のデュエルを繰り広げた腕前の持ち主、配下の者も相応の腕前に違いないでござる。それに加えて溢れかえる程集結しているデュエル戦士、少なくとも此方をどうにかせねば、救出は容易では無いでござる。何か、提案は無いでござるか?」

「隊長、その件で別件も含めて提案があるが…」

「セルゲイ殿、何か策があるでござるか?」

 

それはともかく始まったブリーフィング、其処で真っ先に手を挙げたのは、セルゲイ殿でござった。

 

「この孤島の中心部にあたる地点だが、独自に調査を行っていた所、此れまでアカデミアによってカード化された連中が囚われている事が判明した…」

「な、何と?」

「何ですって?」

「それは真でござるか、セルゲイ殿?」

「本当なのか、そりゃ?」

 

そのセルゲイ殿の話に、驚きが広がったのは言うまでもないでござる、まさかアカデミアによってカード化された人々が、アカデミアの施設内に送られていたとは…!

 

「その中に俺らが送り込んだスパイが紛れ込んでいる、ソイツからの情報だから間違いはないと言って良い…」

 

第4部隊の方々もいるが故にぼかした形での説明でござろうが、そのスパイは言うまでも無く『アンドバリの指輪』作戦でセルゲイ殿のナノマシンを感染させたデュエル戦士の事で、そのデュエル戦士の五感情報をナノマシンで傍受したから分かったのでござろうな、であればセルゲイ殿の発言も根拠のある物でござる。

 

「此処からが本題だ…

まず俺がそのスパイと共謀して囚われた連中の救助を行う…

するとその騒ぎを捉えてアカデミアのデュエル戦士が阻止に向かって来るだろう…

万が一腰が重い様なら、平井遊香、お前の力で奴等の尻に火を付ける…

その後、救助の阻止が難航する様であれば、塔の防衛に当たる人員も割いて来る筈だ…

あんな場所に寿司詰めにするんだ、大量に逃がしてしまえば大損害になる事は間違いないからな…

其処をお前らは突き、救助対象の確保に当たる…

以上が、俺が考えた策だが、どうだ…?」

 

それをベースに提案されたセルゲイ殿の策、それは「カード化されて囚われた人達の確保」という行動を陽動とした、至ってシンプルな陽動作戦、だがそのバックボーンを考えれば、シンプルどころか凶悪極まりない物だと分かるでござる。

セルゲイ殿は恐らく、その阻止に来たデュエル戦士にもナノマシンを感染させて洗脳し、救助に当たらせる腹積もりでござろうし、仮に塔の守護に当たっているデュエル戦士が動かなかったとしても、其処にナノマシン感染させたデュエル戦士と言うボヤを放り込んで、大火事を狙うに違いないでござろう。

策に嵌ろうと嵌らなかろうと大して問題ではない、何とも効率的な策でござる。

 

「ふむ、セルゲイ殿の策、検討する価値は十分でござるな。然しながらカード化された人達の救助は本来の任務からは外れた行為、その人達の次元転送手段、避難所、確保すべき物は多いでござる。それをも踏まえ、遊矢隊長の判断を仰がねば行かぬでござる。月影、隊長と連絡を頼むでござる」

「御意」

 

兄者もそれを分かっていたのかセルゲイ殿の策を前向きに捉えていたでござるが、確かに任務外の用件もある事、一先ず拙者は兄者の指示通り隊長に連絡を入れる事にしたでござる。

 

「もしもし、こちら月影。隊長殿、応答願うでござる」

『もしもし、俺だ。月影、アカデミアの方で何かあったのか?』

「隊長殿、先日フォースハウンドに加入したセルゲイ殿から、驚きの報告が入って来たでござる。先のアンドバリの指輪作戦でセルゲイ殿の支配下に置き、結果としてカード化されたアカデミア兵の生存反応を、アカデミアのとある施設内でキャッチしたとの事でござる」

 

念の為、隊長との連絡は船室の外で連絡を取っているでござる。

 

『な、何だって、それは本当なのか?』

「どうも本当の様でござる。それとそのアカデミア兵の視覚情報をジャックした所、他にカード化された人達の姿も見つけたとの事でござる。その中には嘗てLDS関係者が行方不明になった件の被害者らしき姿も確認されたそうでござる」

『そうか』

 

セルゲイ殿の報告を聞いた隊長は案の定と言うべきか、何処かの馬をモチーフにしたゾンビ怪人の様な驚きの声を上げていたでござる。

 

「それと隊長殿、此処からはセルゲイ殿の提案でござる。そちらからの一声さえあれば、今一度支配下に置いたアカデミア兵を操り、収容された人達を救助させる事、それを阻止するであろう敵の妨害を防ぐ事も出来る、その準備は既に整えてあるが、どうだろうか、との事でござる」

『そしたら月影、セルゲイに伝言を頼む。その様にするが良い、アカデミアに囚われた人達を救い出すが良い、と』

「御意!」

 

その後帰って来た返事はGO、でござった。

 

「兄者。隊長からのGOサインは貰ったでござる!セルゲイ殿、隊長が、その様にするが良い、と言っていたでござる」

「そうか、ならば期待に応えなくてはな…!」

「御意。なれば今作戦での布陣を発表するでござる!」

 

その伝言を受けてブリーフィングは終了、今作戦での布陣が兄者から発表されるでござる…!

 

「まずはセルゲイ殿。貴殿は自身の提案通り、中心部に囚われし人々の救助に」

「了解だ…!」

「雪乃殿と雷牙殿、亮太郎殿と月影は此方、東側の塔へ」

「分かったわ」

「しゃぁ!」

「了解だ…」

「御意!」

「拙者と剣殿、隼殿と舞衣殿は此方、西側の塔へ」

「ははっ!」

「ああ!」

「頑張ります!」

「遊香殿は遊撃を頼むでござる」

「分かったわ」

「両方の塔へ潜入する8名は、セルゲイ殿達のGOサインが出るまで待機。両者、準備は宜しいでござるな?」

「問題ない…!」

「何時でも大丈夫よ」

 

そして、

 

「では、作戦開始!」

「「了解!」」

 

兄者の号令で、セルゲイ殿と遊香殿はアカデミアへと突入したでござる…!



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116話_無双乱舞という名のフルボッコ

Side ????

 

「プロフェッサー、緊急事態です!他次元でカード化した人間の収容施設が何者かによって破壊され、収容者が次々と脱走しております!これにランサーズ、及び裏切り者が噛んでいる模様!救援を送り、脱走の阻止を図っておりますが効果なく、むしろ救援に送ったデュエル戦士からも裏切る者が現れております!」

「な、何だと!?」

 

セルゲイと遊香がアカデミアに突入を開始して数分が経過した頃、その内部は文字通り蜂を突いた様な騒ぎとなり、とある一室で待機していた零王はその報告に愕然とした様子を見せた。

他次元でカード化し、アカデミアへと転送・収容させた人々は、零王が掲げる『アークエリア・プロジェクト』において要である柚子達程では無いにしても重要な存在、故に収容施設は中央部の地下深い所に頑丈な設計で建てられ、警備にも万全を期していた筈だったにも関わらず、突如としてその頑丈な施設が壊され、万全だった筈の警備があっさりと破られ、阻止も全く以て功を奏さない。

今まで順調すぎる位に順調に進んでいた、アークエリア・プロジェクトをベースとした各次元への侵略、だがシンクロ次元での惨敗という1つの失敗を機に、アカデミア軍の勢いは急転直下と言える程に後退、今は逆に、ランサーズに追い詰められる事態にまで陥っていた。

こうなればもう手段を選んでいる状況ではない。

 

「各地に配備されているデュエル戦士に、収容施設からの脱走者の確保に向かわせろ!いち早く被害を食い止めるのだ!ドクトル率いる研究班が有するパラサイトモンスターも解放して構わん!直ぐにその様に連絡せよ!今はなりふり構っている状況ではない!」

「はっ!」

 

報告に来たデュエル戦士にそう声を荒げて指示を出した零王、その口調も、指示の内容も、普段の彼であれば下さない様な物ばかり、どれだけ追い込まれているかを物語っていた。

 

「お、おのれ…!

おのれ榊遊矢ぁぁぁぁぁぁ!何処まで世界を破壊する積りか、貴様は!?」

 

------------

 

「こっちだ、急げ!アカデミアの追手が迫っているぞ!」

「ここまで来ればもう大丈夫よ。後は向こうの次元でランサーズメンバーが待っているから」

 

その収容者の脱走を主導しているのがセルゲイと遊香、まずセルゲイの指示を受けた、収容者に紛れ込んでいる洗脳兵士に指示を飛ばして内部から収容施設を破壊し、同時に遊香が外部から脱出経路を強引に作り出す事でルートを確保、其処からセルゲイと洗脳兵士達が脱走を先導、或いは阻止に動くデュエル戦士達を妨害したりナノマシンを感染させて洗脳を施して同じく脱走の先導等に当たらせたりし、一方の遊香は周辺の物体を破壊して阻止に動くデュエル戦士達の進路を妨害していた。

2人及びセルゲイの操り人形と化したデュエル戦士達の奔走も相まって、収容者の脱走は順調に進んでいた中、

 

「微小な生体反応…

紫雲院素良の脳に仕込まれていた虫と酷似した反応だ、やはりアカデミアで作られていた物だったか…

あんな美しさの欠片も無いゴミクズを未だに使って来るとは、見苦しいにも、醜いにも程がある…!

ハァッ!」

 

そんな最中、何かしらの反応を感じ取ったセルゲイは何処か憤慨した様子を露わにしながら、左腕から何本もの触手を放ち、それらを飛来する中で枝分かれさせ、何かを貫くかの様な音が次々と発せられた。

そして、

 

「貴様らアカデミアの、美しさの欠片も無い連中に教えてやろう…!

洗脳とは虫に丸投げして相手を仕込む事ではない、己が意志で相手を仕込む事だ!」

「ぐぅ!?あが、がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

何か生物を放つかのような挙動を見せていた研究者みたいな風貌の男に触手を突き立てたかと思えば、それを通じてその男にナノマシンを感染させ、洗脳を施し始めた。

そして、

 

「セルゲイ様、なんなりとお申し付け下さいませ」

「よし、ならば収容されていた連中の脱走を先導しろ。貴様の働きに期待しているぞ…!」

「はっ!では行ってまいります!」

 

例によってその男の洗脳は何の障害も無く終結し、セルゲイの指示通り収容者の脱走を先導する任に付いて行った。

 

「我は今、技術の極致に至った!見ろ!この貴様らより何光年も先を行く崇高なテクノロジーを結集した、美しきフォルムを!シンクロ次元の、榊遊矢の技術力はァァァァァァ、世界一ィィィィィィ!」

 

一方で洗脳を終え、放っていた触手を全て引き戻したセルゲイは突如、羽織っていた上着を投げ捨て、自らの身体を『合成生体仕様素体』に組み替えた遊矢を称えるかの様に雄叫びを上げると、その身体へと青白く光る電気の奔流が殺到、セルゲイへと流れ込んだ。

 

「オォォォォ!来る、流れて来るぞ、俺を目覚めさせる息吹が!第2ラウンドの始まりだァァァァ!」

 

それを一身に浴びるセルゲイ、生身の人間であれば感電によって死して尚黒く焦げて行く所ではあるが、身体がナノマシンで出来たサイボーグであるセルゲイにとって電気はエネルギー源、大量のそれが流れ込んで来るとなればむしろ身体能力を100%近くまで引き上げられる燃料を得たのと同義、セルゲイもそれを認識しているのか、歓喜の雄叫びを上げていた。

一方、電気の奔流の発生元をたどると、全てアカデミアの施設や、脱走の阻止に当たっているデュエル戦士達が身に着けているデュエルディスク等からであり、

 

「な、なんだ!?デュエルディスクが急に動かなくなったぞ!?」

「あ、あれ!?リアルソリッドビジョンが、急に消えただと!?」

 

電気をセルゲイによって根こそぎ吸収された事で、まずデュエルディスクはその機能を停止させ、脱走阻止の為に呼び出したリアルソリッドビジョン製のモンスター達がその姿を消失してしまい、阻止の手段がリアルファイトのみになってしまった。

 

------------

 

「ば、馬鹿な、こんな筈では!この崇高なる脳を持った私が開発したパラサイトモンスターが、こうも簡単に破られるとは(ブツン!)な、何が起こった!?」

「も、申し上げます!各施設にて次々と停電が発生!どうやらランサーズのメンバーが電気を吸収している模様で、収容者の脱走阻止に当たっているデュエル戦士達のデュエルディスクにも被害が発生、任務続行が不可能な状態に陥っている模様です!」

「な、何と!?電源供給体制に不備は無かった筈!?」

 

そして零王達が待機していた一室でもそれによる混乱の余波を受ける形となり、監視カメラもその映像を確認する為のモニターも、そして室内を照らす為の照明すらも沈黙した中で外での混乱が報告されていた。

その様子に、研究班を率いる科学者で、零王からの緊急の呼び出しでこの部屋へと来ていたドクトルは信じられないと言わんばかりに狼狽していた。

一方の零王は、余りにも想定外な展開が発生し過ぎてしまった事から却って落ち着いた様な、というか何に対しても投げやりといった様な、そんな様子で、

 

「君が危険思想を持った役立たずという事が分かったのが収穫か…

ドクトル、後で君の処罰を検討させて貰おう。連れて行け」

「お、お待ちくださいプロフェッサー「早く連れて行け!」「は、ははっ!」お、お待ちを!」

 

ドクトルへの処罰を独断で決定、その場にいたデュエル戦士に連行を通達した。

 

「まだだ、まだ私の元には『ピース』が残っている。あの2人がいる限り、私の計画は滞りなく進められる。警備にはホルアクティ・フォース達を就かせている以上、あの2人を連れ出すのは不可能だ…!」

 

------------

 

「よし、この辺りで充分か。隊長、今は大丈夫か?」

『問題ないでござる。セルゲイ殿、そちらの状況はどうでござるか?』

「順調に過ぎる位に順調だ。そろそろ塔の警備も手薄になっている筈、突入するなら今だ」

『承知!では方々、参ろうぞ!』

『了解!』

 

各地の混乱の原因となっているセルゲイの電気吸収、当のセルゲイ本人は、収容者の脱走に一定のメドが付いた事から日影と連絡を取り、彼らに突入のGOサインを出した。

 

「平井遊香。今から隊長達がリン、黒咲瑠璃両名の救出の為に、あの2つの塔へと向かう。貴様は西側の塔に向かい、隊長達に同行しろ。俺は収容者の脱走がひと段落したら東側へ向かう事にする」

「分かったわ」

「それとだ。先程、紫雲院素良にも仕込まれていた寄生虫と同じ生体反応をキャッチした。ソイツ等は俺が潰しておいたが、恐らくは両名にも仕込まれているだろう。その事、隊長達に伝えて来い」

「分かっているわ、2人の身柄に関わる一件だもの」

 

そしてセルゲイ達も、2人の救出任務に向けての打ち合わせを行い、まずは遊香が西側の塔へと向かって行き、

 

「さて、そろそろ良いだろう…!

待っていろ、ホルアクティ・フォース!」

 

少し経ってからセルゲイも、東側の塔へと向かって行った…!



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117話_激闘開始!ランサーズVSホルアクティ・フォース

Side ????

 

「おや、どうやらかなり早く僕達の出番が来た様だよ、ベルぺオル」

「その様だねぇ、フリアグネ。アタシ達がこうも早く登板しなきゃならなくなるとは、下っ端共は何をやっているんだか。ま、退屈はしなくて済みそうだがね」

「フリアグネ、ベルペオル、相手はあの榊遊矢率いるランサーズ、油断は禁物でありますよ」

「御三方、宜しくお願い申し上げる。ホルアクティ・フォースが付くとあらば心強い」

 

月影達が向かった東側の塔、其処にはホルアクティ・フォースのリーダーであるキサラの他、フリアグネと呼ばれた白いスーツを身に纏う青年と、ベルペオルと呼ばれた黒いドレスに身を包み、左眼に眼帯を付け、額に3つ目の眼があるかの様なタトゥーを施した女性の、ホルアクティ・フォースに属する3人と、東側の塔の守護者を務める赤い法衣に身を包んだ男がランサーズメンバーを迎え撃つべくスタンバイしていた。

他にスタンバイしていたデュエル戦士達の姿は無い、セルゲイの思惑通り収容者の脱走阻止の為に皆揃って出払ってしまっているからだ。

 

「あら、如何にも「待っていたぜ!」と言いたげな様子ね」

「それはそうでござろう。セルゲイ殿や遊香殿があれだけ暴れ回ったのでござるからな」

「だったら話は早いな。悪いがお前ら全員ブッ倒して其処を通させて貰う!」

「生憎だが俺らも暇じゃあ無いんでね、最初から全力でぶちかますぜ!」

 

其処に雪乃をトップとした東側への突撃班が到着、既に準備万端と言いたげなキサラ達の様子を見て瞬時にデュエルディスクを展開、デュエルに入ろうと挑みかかった。

 

------------

 

「敵性反応、察知。ランサーズの者と思われる。カムシン、最大級の警戒が必要」

「ああ、とうとう来ましたか。僕達ホルアクティ・フォースの実力を今こそ見せる時。頼みますよ、ヘカテー」

「宜しく頼みます、お二方」

「自分を忘れられては困るな。自分もまた全力でランサーズを、榊遊矢が率いる組織を叩き潰す…!」

 

一方、日影達が向かった西側の塔、其処にはヘカテーと呼ばれた白い法衣を身に纏う少女と、カムシンと呼ばれた普段着姿の少年の、ホルアクティ・フォースに属する2人と、西側の塔の守護者を務める白い羽衣に身を包んだ女性、そして何故か遊矢達と同じ次元にいた筈の、アカデミアとは何の関係も無い筈の少年、デュエルスクール『梁山泊』に属していた勝鬨勇雄が、此方もまたランサーズメンバーを迎え撃つべくスタンバイしていた。

これまた収容者の脱走阻止の為に出払った影響で、他にスタンバイしていたデュエル戦士の姿は無い。

 

「む?お主は確か、舞網チャンピオンシップに出場していた…」

「何処かで見た覚えがあると思えば、そういう事だったか。最初からスパイだったか、或いはスタンダードから引き込んだか。まあ良い、どちらにせよ倒すのみ!」

「左様、某らのデュエルを以て、その道を通させて頂こう!」

「リンさん、瑠璃さんは私達が助け出させて貰います!邪魔立てするならば、斬ります!」

 

そしてまたこちらにも日影をトップとした西側への突撃班が到着、勇雄の姿に少なからず疑問を覚えたりはしたがそれも数瞬の内で、直ぐ様切り替えてデュエルディスクを展開、デュエルに入ろうと挑みかかる。

 

「さあ皆、存分にお仕置きしてあげなさい!」

「では方々、参ろうぞ!」

『了解!』

 

そして、

 

『デュエル!』

『デュエr』

 

デュエルが始まった、

 

「むっ!?」

「な、何だ!?」

 

とその時、東側ではそのままデュエルに突入した一方、西側の塔では異変が起こった。

 

「塔が、爆破された!?」

「熱源反応からして、今の攻撃はロケットランチャーの類」

「ろ、ロケットランチャーだと!?ランサーズは現実兵器をも持っていると言うのか!?」

「ん?現実兵器…

ああ成る程、もしかしたらエクシーズへ派遣されていたデュエル戦士の間で噂になっていた『炎髪灼眼の討ち手』の仕業ですかね?狙われたら最後、その命は無いと言われている…」

 

突如として後方から殺気が放たれた事で誰もがその場を飛び退いた次の瞬間、その間から飛来した物が後方にある扉へと直撃して爆発、直撃した扉はおろか周囲の壁すらも巻き込んだ爆発が発生していた。

突然の攻撃に驚きを隠せないアカデミア側のメンバー、そんな中でカムシンがとある噂を思い出し、下手人の推測を立てていると、

 

「ええ、そうよ。私がその『炎髪灼眼の討ち手』で間違いないわ。皆、待たせたわね」

 

案の定と言うべきか後方から、髪と眼を真っ赤に染めた状態の遊香が、既に弾を発射した事を示す様に発射口らしき部分から白煙を吐いている、モンスターカード『ヴォルカニック・ロケット』を模したロケットランチャーを構えた状態で現れた。

 

「ああ、貴方が炎髪灼眼の討ち手でしたか。成る程、その殺気は噂に恥じない凄まじさです…!」

「最大級の危険分子と認識。炎髪灼眼の討ち手、貴方は私が倒す!」

「良いわ、掛かって来なさい、返り討ちにしてあげるわ」

 

その姿を見たカムシンとヘカテーが凄まじい戦意を漲らせて遊香にデュエルを挑もうとし、遊香もまた応じるべく前へと進んでいく中、

 

「隼、あの塔の中に貴方の妹さんが待っているかも知れないわ。此処は私達が食い止めるから、先に行きなさい。でも気を付けて、彼女達の頭の中に洗脳装置的な物が仕込まれているかも知れないわ」

「い、良いのか?」

 

隼に対し、先に行く様告げる。

 

「黙って通すと思って「せい!はぁ!」な、きゃぁ!?」

「く、飛び道具を使うとは卑k「戦場では、卑怯もラッキョウも好き嫌いなく、よ!」ぐぉ!?」

 

無論それを黙って見ている残りの2人では無く、隼が戸惑っている隙に破壊された扉の前に立ち塞がろうとしたが、遊香はそれを許さない。

2人の前へと一気に飛びかかりながら何処からともなく2丁の拳銃を手にし、まずは守護者の女に威嚇発砲で足止めしながら回し蹴りで転倒させ、次に殴りかかって来た勇雄をこれまた威嚇発砲で怯ませつつ、空砲による反動で勢いを付けた遊底の部分で思いっきり殴り飛ばした。

 

「行きなさい、早く!」

「我らの本来の任務はリン殿、瑠璃殿の救出でござる!この塔に監禁されし存在が瑠璃殿であるならば、実の兄である貴殿こそが適任!」

「左様!此処は某らに任せ、隼殿はあの塔で待っているやも知れぬ瑠璃殿をお救いなされよ!」

「私達も此処を切り抜け、直ぐに向かいます!ですから早く!」

「お前ら…!

ああ、分かった!瑠璃は、必ず救い出す!」

「はっ!?炎髪灼眼の討ち手に構っている場合じゃない、私達の任は『ピース』の確保「何処へ行こうと言うのかしら?」なっ…!」

「ああ、動いたらハチの巣にする、という事ですか、これは何とも…!」

 

そんな彼女の奮闘と、仲間達の檄に背中を押され、隼は塔へと向かって行った。

それに本来の任務を思い出したのか、ヘカテーとカムシンが追いすがろうとしたが、遊香が何処からともなく取り出した重機関銃にロックオンされ、下手な動きが出来なくなった。

 

「話が早くて助かるわね。それじゃあ、始めようかしら…!」

『デュエル!』

 

そして西側の塔でも、東側に少しばかり遅れながらも、デュエルは始まった…!



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118話_疾風の奇術忍者

先攻 Hikage LP 4000 VS 後攻 Isao LP 4000

 

「拙者の先攻!

では、早速行かせて貰うでござる!」

 

先攻を取った日影、手札を確認するや否やその内の2枚を取りながら、早速動くぞと言わんばかりに宣言し、

 

「臨・兵・闘・者・皆・陣・裂・在・前!拙者はスケール2の『マジェスペクター・キャット』と、スケール5の『マジェスペクター・フロッグ』で、ペンデュラムスケールをセッティング!」

 

Hikage

ペンデュラムスケール(青):2(マジェスペクター・キャット)

ペンデュラムスケール(赤):5(マジェスペクター・フロッグ)

 

その状態から、武士や忍者が用いていたとされている早九字護身法の動作を繰り広げた後、取っていた2枚のペンデュラムモンスターを、デュエルディスクの両端に位置するペンデュラムゾーンにセットした。

 

「これによりレベル3と4のモンスターを同時に特殊召喚可能!遥か彼方の地平へと飛び立て、天空の奇術師達よ!ペンデュラム召喚!レベル3『マジェスペクター・ラクーン』!レベル4『マジェスペクター・フォックス』!そしてレベル4『マジェスペクター・クロウ』!」

 

マジェスペクター・ラクーン

ペンデュラム・効果モンスター

風属性

魔法使い族

レベル 3

攻撃力 1200

 

マジェスペクター・フォックス

ペンデュラム・効果モンスター

風属性

魔法使い族

レベル 4

攻撃力 1500

 

マジェスペクター・クロウ

ペンデュラム・効果モンスター

風属性

魔法使い族

レベル 4

守備力 1500

 

その2枚を用いてペンデュラム召喚したのは、オレンジ色の竜巻を纏った狸みたいなモンスターと、黄金色の竜巻を纏った狐みたいなモンスター、そして紫色の竜巻を纏った鴉みたいなモンスター(尚、全員の種族は魔法使い族である)。

 

「ペンデュラム召喚したラクーンの効果をチェーン1、フォックスの効果をチェーン2、クロウの効果をチェーン3で発動!

まずはクロウの効果でデッキから『マジェスペクター・サイクロン』を手札に、次にフォックスの効果でデッキから『マジェスペクター・テンペスト』を手札に、最後にラクーンの効果でデッキから『マジェスペクター・ユニコーン』を手札に加えるでござる。

拙者は今引いたユニコーンを、ラクーンをリリースしてアドバンス召喚!いざ行かん、天空を舞いし奇術の天馬よ!ペンデュラムアドバンス、レベル6!マジェスペクター・ユニコーン!」

 

マジェスペクター・ユニコーン(制限カード)

ペンデュラム・効果モンスター

風属性

魔法使い族

レベル 6

攻撃力 2000

 

その内の1体であるラクーンの、纏っていたオレンジ色の竜巻が更なる猛威を振るってラクーン自身を呑み込んだのち、それが白色に変化して勢いが弱まると、其処から3体のモンスター効果によってサーチされた3枚のカードの1つ、ユニコーンみたいなモンスターが登場した(再度確認だが、ユニコーンの種族は魔法使い族である)。

攻撃力こそ上級モンスターにしては低いが、その効果は、つい最近制限カードに指定される程の強力さを秘めている。

 

「そのレベル6モンスター以外には、レベル4モンスターが2体…

来るか、エクシーズ召喚!」

「まあそれも良いでござるが、今はその時では無いでござる。カードを2枚セットしてターンエンド」

 

Hikage

LP 4000

手札 0

モンスター マジェスペクター・ユニコーン(攻撃表示)

      マジェスペクター・フォックス(攻撃表示)

      マジェスペクター・クロウ(守備表示)

魔法・罠カード セット(マジェスペクター・サイクロン、マジェスペクター・テンペスト)

 

「自分のターン!ドロー!

まずは魔法『融合』発動!」

 

融合

通常魔法

1:自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「自分は手札の『天融星カイキ』と『地翔星ハヤテ』を融合!天に融けし者よ!地を飛びし者よ!今1つとなって悠久の覇者たる星と輝け!融合召喚!来い、レベル10!『覇勝星イダテン』!」

 

覇勝星イダテン(アニメオリジナルカード)

融合・効果モンスター

光属性

戦士族

レベル 10

攻撃力 3000

 

日影が先程サーチしたカードを2枚共にセットして明け渡した事で回って来た勇雄のターン、その初手で発動した融合で登場したのは、素早さの代名詞として知られる仏『韋駄天』の名を冠した戦士。

 

「ふむ、いきなりレベル10のモンスターを融合召喚とは恐れ入るでござる。なればフォックスをリリースして先程セットした速攻魔法マジェスペクター・サイクロンを発動!対象はその融合モンスター!」

「させん!それにチェーンして速攻魔法『禁じられた聖槍』発動!こちらも対象はイダテンだ!」

 

マジェスペクター・サイクロン

速攻魔法

1:自分フィールドの魔法使い族・風属性モンスター1体をリリースし、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを破壊する。

 

禁じられた聖槍

速攻魔法

1:フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターはターン終了時まで、攻撃力が800ダウンし、このカード以外の魔法・罠カードの効果を受けない。

 

「禁じられた聖槍の効果で、イダテンの攻撃力は800下がるがその魔法カードを受けない!」

「む、避けられたでござるか」

 

覇勝星イダテン 攻撃力 3000→2200

 

その姿を見るや否やすかさず先程サーチした速攻魔法を発動させ、フォックスの纏っている黄金色の竜巻が更なる猛威を振るい、フォックス自身を呑み込みながらイダテンを引き裂こうとする日影だったが、それを遮るかの様に現れた槍の発するバリアに阻まれてしまう。

 

「更にイダテンの攻撃力がダウンした事で、融合素材として墓地へ送っていたカイキを守備表示で特殊召喚!」

「それは通せぬでござる。クロウをリリースして先程セットしたカウンター罠マジェスペクター・テンペストを発動!その特殊召喚を無効にさせて貰うでござる」

 

マジェスペクター・テンペスト

カウンター罠

1:自分フィールドの魔法使い族・風属性モンスター1体をリリースして以下の効果を発動出来る。

●モンスターの効果が発動した時に発動出来る。その発動を無効にし破壊する。

●自分または相手がモンスターを特殊召喚する際に発動出来る。その特殊召喚を無効にし、そのモンスターを破壊する。

 

挙げ句にその攻撃力ダウンを逆手に取られて蘇生を許しかけるが、其処はこれまた先程サーチしたカウンター罠を発動した事で、クロウの纏っている紫色の竜巻が更なる猛威を振るった事で、クロウ自身を呑み込みながらも消し飛ばした。

が、

 

「問題ない、これで貴様のセットカードはもう無い!魔法『死者蘇生』発動!」

 

死者蘇生(制限カード)

通常魔法

1:自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

「死者蘇生の効果で、先程破壊されたカイキを守備表示で蘇生する!」

 

天融星カイキ(アニメオリジナルカード)

効果モンスター

光属性

戦士族

レベル 5

守備力 2100

 

それを見越していたのか手札に握っていた死者蘇生による蘇生で、カイキを登場させる事に成功した。

 

「では行くぞ!自分は500LPを払い、特殊召喚したカイキの効果発動!ぐ、ぐぉぉぉ…!」

 

Isao LP 4000→3500

 

「む!?勝鬨殿、その紋様は一体…!?」

 

そのカイキの効果を発動させたその時、勇雄の身に異変が起こった。

顔には謎の紋様が発生し、苦悶の声を上げながら如何にも苦しそうな表情になる。

日影もその異常を看過できなかったか、心配そうな声を上げるが、

 

「これが、榊遊矢を、ランサーズを討つために手にしたカード!ひたすら暗い闇の道を歩んで来た末に手にした闇のカード!エンタメデュエル等とふざけた理想を掲げ、温々と日の当たる場所で楽しそうにデュエルをしてきた榊遊矢の理念を否定する為の力だ!

自分はフィールドにいるカイキとイダテンで融合!天に融けし者よ!悠久の覇者よ!重ねし力で天下を取らん!融合召喚!来い、レベル12!『覇道星シュラ』!」

 

覇道星シュラ(アニメオリジナルカード)

融合・効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 12

攻撃力 0

 

マジェスペクター・ユニコーン 攻撃力 2000→0

 

「ユニコーンの攻撃力が0に!?」

 

勇雄はその要因を理解していながら、同時にすすんで受け入れた事を声高に宣言し、効果処理を進めた。

それによって某怒りを原動力にしたゲームの主人公のモデルとなった仏『阿修羅』の名を冠した戦士が登場するや否や、日影のフィールドに唯一残っていたユニコーンの攻撃力が0と化してしまった。

勿論、普通のデュエルで何の要因も無くこの様な事態に至る事はまずない。

 

「シュラがフィールドに存在する限り、フィールド上の全てのモンスターの攻撃力は0となる!0となった攻撃力は、自分のモンスターが貴様のモンスターを攻撃する際に発動される効果によって、其々ダメージステップ中のみレベル×200となる!だがエクシーズモンスターはレベルを持たない、よって攻撃力は0のままとなる!レベルが無いという事はレベルが0でもあるという事だ!命拾いしたな、貴様」

 

勇雄の言っている事は100%正しいという訳ではないが(例えば遊矢のエースカードである覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴンの登場時効果でエクシーズモンスターは破壊出来ない)、シュラの効果に限定すればその解釈でも問題無い。

その効果によって、シュラはモンスターへの攻撃宣言時に2400となり、一方でユニコーンは1200の上昇に留まる事となる、このままでは戦闘破壊は確実ではある。

 

「バトルフェイズに入る!シュラでユニコーンを攻撃!」

 

 

 

 

 

「その攻撃宣言時、拙者のユニコーンと貴殿のシュラを対象にユニコーンの効果発動!対象のモンスターを手札に戻すでござる!ただしシュラは融合モンスター、よって戻るはエクストラデッキでござる!」

「なっ!?」

 

が、それを考えていない日影では無かった。

ユニコーンの纏っている白い竜巻が更なる猛威を振るい、それが突っ込んで来たシュラの身体を吹き飛ばして勇雄のエクストラデッキに押し戻した一方、その反動によってユニコーン自身もまた吹き飛ばされ、日影の手札に戻って行った。

このモンスター効果版『強制脱出装置』と言って良い効果と、それを安全に通せる『相手の効果の対象にならない』『相手の効果では破壊されない』耐性、そしてそれ程高くないペンデュラムスケールでもペンデュラム召喚出来る(但し当のマジェスペクター単体では出来ない)レベルこそが、ユニコーンが制限カードに指定された要因と言って良いだろう。

 

「くっ…!

ターンエンドだ!」

 

Isao

LP 3500

手札 1

モンスター なし

魔法・罠カード なし

 

「拙者のターン、ドロー!

…これで分かったでござろう、憎悪、嫉妬、復讐心、そんな物のみを以て手にした力など、こうも脆いのでござる、拙者の様な者に簡単に打ち砕かれる程に」

「だ、黙れ!」

 

とっておきと言って良いエースカードであるシュラがあっさりと除去された事でがら空きとなったままターンを明け渡した勇雄、2ターン目が回って来た日影は、カードをドローしながら、勇雄に対して現実を突きつけていた。

 

「それと貴殿は大いに勘違いしているでござる。貴殿の言葉を借りるならば、遊矢隊長もまた、それはそれは漆黒に染まった、足元すら判別出来ぬ程の暗き道を歩まれた」

「何だと、榊遊矢が?そんな馬鹿な事が」

「その道を歩み続けた結果、何時しか表向きには貴殿の言う様な理想を掲げながら、時には禁忌と言える事柄にも手を出したでござる。洗脳、人体改造、そしてテロ活動…

丁度、今の貴殿に通ずる所もあるでござるな」

「な、何!?」

 

勇雄の恫喝にも動ずる事なく話を続けている日影、その中で明かされる遊矢の知られざる一面を聞き、勇雄の動揺は大きくなった。

自分とは完全に住む場所が違い、其処でちやほやされ続けていたと思っていた遊矢が、まさか自分と似たような道を歩んでいた、その事実はそれだけ衝撃的だったのであろう。

 

「その中で遊矢隊長もまた、貴殿の様に力を追い求め、己の糧とし、振るわれた。だが遊矢隊長が得た力は、貴殿の様な脆弱な物では無かったでござる。貴殿も括目したでござろう、遊矢隊長の圧倒的なデュエルタクティクスを、其処から大いに感ずる揺るがぬ力を。それが何故か、分かるでござるか?

 

 

 

 

 

皆を、皆の笑顔を、デュエルの真理を守りたい、そんな揺るがぬ信念が、遊矢隊長にはあったからでござる。先に言った禁忌とも言える事柄に手を出したのも、その信念に従い、最良の結果を導ける手段を模索したからでござる。漆黒の道を知ってしまったが故、結局守れずに目前でそれが失われる様を何度となくご覧になられたが故、まずは最良の道という考えが念頭に置かれてしまわれ、禁忌に手を出す事に躊躇が失われてしまわれたでござるが。不器用な御方なのでござるよ、遊矢隊長は」

「そ、そう、だったのか…」

 

そしてそれでも前を歩み続ける遊矢の信念を思い知り、勇雄の両腕が呆然としたかの様にだらりと脱力し、顔に浮かんでいた紋様も消え失せていた。

 

「まあ拙者自身も遊矢隊長の全てを知っている訳では無いでござるが、遊矢隊長の覚悟が、エンタメデュエルという理念に対する熱意が揺るがぬ物であるという事までは分かるでござる。貴殿にもお分かり頂けたでござろうか?

さて、再び行かせて貰うでござる!拙者はペンデュラムゾーンにセットされた、スケール2のマジェスペクター・キャットと、スケール5のマジェスペクター・フロッグで再びペンデュラムスケールをセッティング!

再び現れよ、天空の奇術師達よ!ペンデュラム召喚!レベル3、マジェスペクター・ラクーン!レベル4、マジェスペクター・フォックス!レベル4、マジェスペクター・クロウ!

ペンデュラム召喚したラクーンの効果をチェーン1、フォックスの効果をチェーン2、クロウの効果をチェーン3で発動!

まずはクロウの効果でデッキから『マジェスペクター・ソニック』を手札に、次にフォックスの効果でデッキから『マジェスペクター・スーパーセル』を手札に、最後にラクーンの効果でデッキからマジェスペクター・キャットを手札に加えるでござる」

 

再び繰り広げられたペンデュラム召喚、そしてまたも行われた3枚のサーチ、この何時までも息切れしないと言って良い強力なサーチ能力と、其々のモンスターが持つ『対象にならない』耐性と効果破壊耐性、そしてサポートカードが持つカードパワーの高さ、これによる粘り強さこそがマジェスペクターデッキの特徴である。

 

「次にフィールド魔法『マジェスティックP(ペガサス)』発動!」

 

マジェスティックP

フィールド魔法

『マジェスティックP』の2の効果は1ターンに1度しか使用できない。

1:フィールドの『マジェスペクター』モンスターの攻撃力・守備力は300アップする。

2:自分フィールドの魔法使い族・風属性モンスター1体をリリースして発動出来る。デッキからレベル4以下の『マジェスペクター』モンスター1体を特殊召喚する。

 

マジェスペクター・ラクーン 攻撃力 1200→1500

マジェスペクター・フォックス 攻撃力 1500→1800

マジェスペクター・クロウ 守備力 1500→1800

 

「続いてクロウをリリースし、マジェスティックPの2つ目の効果発動!

デッキからマジェスペクター・フロッグを攻撃表示で特殊召喚!」

 

マジェスペクター・フロッグ

ペンデュラム・効果モンスター

風属性

魔法使い族

レベル 4

攻撃力 1300→1600

 

その内の1体であるクロウの紫色の竜巻が更なる猛威を振るってクロウ自身を呑み込んだのち、それが緑色に変化して勢いが弱まると、其処から蛙みたいなモンスターが登場した(しつこい様だが、フロッグの種族は魔法使い族である)。

 

「特殊召喚したフロッグの効果発動!

デッキから罠『マジェスペクター・ガスト』をセットするでござる。この効果でセットしたカードはこのターン発動出来ないでござるが、まあ元より罠であるが故、関係ないでござるな。

更にラクーンをリリースし、再び手札のユニコーンをアドバンス召喚するでござる」

 

マジェスペクター・ユニコーン 攻撃力 2000→2300

 

「バトルフェイズに入るでござる!

全軍、一斉攻撃!勇雄殿の歪んだ信念を吹き飛ばすでござる!」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

Isao LP 3500→1900→100→-2200 LOSE

 

WINNER Hikage



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119話_怒りの業火

先攻 Yuka LP 4000 VS 後攻 Diana LP 4000

 

「私の先攻。

まずは『王立魔法図書館』を召喚」

 

王立魔法図書館

効果モンスター

光属性

魔法使い族

レベル 4

攻撃力 0

 

先攻となった遊香が召喚したのは、魔力カウンターを扱うデッキにおいて重要なドローソースとなっている、そして様々な先攻1キルパターンの根幹をなしていると言って良いカード、王立魔法図書館。

今回遊香が使用しているデッキもまた、そんな先攻1キルパターンを仕組んだ物となっている。

 

「次にフィールド魔法『チキンレース』発動」

 

チキンレース

フィールド魔法

1:このカードがフィールドゾーンに存在する限り、相手よりLPが少ないプレイヤーが受ける全てのダメージは0になる。

2:お互いのプレイヤーは1ターンに1度、自分メインフェイズに1000LPを払って以下の効果から1つを選択して発動出来る。この効果の発動に対して、お互いは魔法・罠・モンスターの効果を発動出来ない。

●デッキから1枚ドローする。

●このカードを破壊する。

●相手は1000LP回復する。

 

王立魔法図書館 魔力カウンター 0→1

 

「続いて1000LPを払って、チキンレースの2つ目の効果発動。

此処で私はドローを選択するわ」

 

Yuka LP 4000→3000

 

王立魔法図書館を出した後に発動したチキンレースによって手札補充(事実上の手札交換)した遊香、その中身を見て、決意を固めたかの様にその目つきが鋭くなった。

 

「さあ覚悟しなさい、アカデミアの狗よ!私はスケール2の『イグナイト・キャリバー』と、スケール7の『イグナイト・ウージー』で、ペンデュラムスケールをセッティング!」

「そ、そのペンデュラムモンスターは確か、アカデミアで開発されていた…!」

 

Yuka

ペンデュラムスケール(青):2(イグナイト・キャリバー)

ペンデュラムスケール(赤):7(イグナイト・ウージー)

 

王立魔法図書館 魔力カウンター 1→2→3(MAX)

 

その鋭くなった目で、対戦相手である塔の守護者ディアナを睨みつけながら、遊香は手札にある2枚のペンデュラムモンスターをペンデュラムゾーンにセットし、フィールドにいる王立魔法図書館の魔力カウンターをためた。

そう、今回遊香が使用しているデッキは、つい最近アカデミアから鹵獲したペンデュラムテーマデッキ『イグナイト』ではあるが、今現在フィールドにいるモンスターは、ペンデュラムモンスターでなければ属性も種族も全然違う王立魔法図書館。

この一見不純物にしか見えない王立魔法図書館の存在こそが、このデッキのカギとなる…!

 

「これでレベル3から6のモンスターを同時に特殊召喚可能!さあ括目して見なさい、我が憎悪と悲しみと決意によって燃え盛る、怒りの業火を!ペンデュラム召喚!並び立て、3体の王立魔法図書館!」

 

その2枚を用いたペンデュラム召喚で出て来たのは、手札に握っていた残り2枚の王立魔法図書館、イグナイトは何処にもいなかった、が…

 

「此処で最初に出した王立魔法図書館の魔力カウンターを3つ取り除いて効果発動!ドロー!」

 

王立魔法図書館(A) 魔力カウンター 3→0

 

「更に今引いた魔法『一時休戦』発動!」

 

一時休戦(制限カード)

通常魔法

お互いに自分のデッキからカードを1枚ドローする。次の相手ターン終了時まで、お互いが受ける全てのダメージは0になる。

 

王立魔法図書館×3 魔力カウンター 0→1

 

「一時休戦の効果で、ドロー!」

「ならば私もドロー。一時休戦の更なる効果で長引かせようと言う訳ね」

 

遊香が引き当てた一時休戦の効果で手札を補充しながら、そんな推察を言ったディアナ。

確かに一時休戦はビートダウンやバーンを用いる相手には有効となりやすく、長期戦に持ち込みたいデッキで愛用されていた事から制限カードに指定された実績がある。

が、

 

「長引かせる?何言っているの、このターンで終わらせる為のカードを引く為よ!」

「何?」

 

遊香にとって一時休戦は文字通りの意味では無く、むしろ全く逆の用途に使う物だ。

 

「ペンデュラムゾーンにセットされたキャリバーの効果発動!

このカードと、もう片方のペンデュラムゾーンにセットされたウージーを破壊し、デッキから『イグナイト・デリンジャー』を手札に加えるわ!

私は今手札に加えたスケール2のイグナイト・デリンジャーと、スケール7の『イグナイト・ライオット』で、ペンデュラムスケールをセッティング!」

 

Yuka

ペンデュラムスケール(青):2(イグナイト・デリンジャー)

ペンデュラムスケール(赤):7(イグナイト・ライオット)

 

王立魔法図書館×3 魔力カウンター 1→2→3(MAX)

 

今のドローによって加わったライオット、そして『イグナイト』ペンデュラムモンスターが共通して持つペンデュラム効果によってサーチされたデリンジャーによって再びセッティングされた遊香のペンデュラムスケール。

この共通効果によってエクストラデッキを肥やしつつ仲間達をサーチする、これがイグナイトデッキ本来の戦略である。

だが遊香の場合は、その際に『魔法カードを2枚発動している』点に着目、王立魔法図書館を導入した。

 

「此処で3体の王立魔法図書館の魔力カウンターを取り除いて効果発動!3枚ドロー!」

 

王立魔法図書館×3 魔力カウンター 3→0

 

「ペンデュラムゾーンにセットされたデリンジャーの効果発動!

このカードと、もう片方のペンデュラムゾーンにセットされたライオットを破壊し、デッキから『イグナイト・マスケット』を手札に加えるわ!

私は今手札に加えたスケール2のイグナイト・マスケットと、スケール7の『イグナイト・ドラグノフ』で、ペンデュラムスケールをセッティング!」

 

Yuka

ペンデュラムスケール(青):2(イグナイト・マスケット)

ペンデュラムスケール(赤):7(イグナイト・ドラグノフ)

 

王立魔法図書館×3 魔力カウンター 0→1→2

 

「ペンデュラムゾーンにセットされたマスケットの効果発動!

このカードと、もう片方のペンデュラムゾーンにセットされたドラグノフを破壊し、デッキから『イグナイト・イーグル』を手札に加え、このカードをペンデュラムゾーンにセットするわ!」

 

Yuka

ペンデュラムスケール(青):2(イグナイト・イーグル)

 

王立魔法図書館×3 魔力カウンター 2→3(MAX)

 

「此処で3体の王立魔法図書館の魔力カウンターを取り除いて効果発動!3枚ドロー!」

 

そして、それによるドローコンボの末に導き出すのが、

 

「これで揃ったわ、このデュエルを終結させる、5枚のカードが!」

「そ、揃ったって、まさか!?」

 

 

 

 

 

「私の手札は『封印されし者の右腕』『封印されし者の左腕』『封印されし者の右足』『封印されし者の左足』、そして『封印されしエクゾディア』の5枚!

よってエクゾディアの効果により、このデュエルは私の勝ちよ!」

「え、エクゾディア!?」

 

封印されしエクゾディア(制限カード)

効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 3

攻撃力 1000/守備力 1000

このカードと『封印されし者の右腕』『封印されし者の左腕』『封印されし者の右足』『封印されし者の左足』が手札に全て揃った時、自分はデュエルに勝利する。

 

封印されしエクゾディアによる特殊勝利だ。

そう、遊香のデッキは『イグナイトエクゾ』と呼ばれる物、イグナイト達の共通効果を用いて王立魔法図書館に魔力カウンターを一気に溜めて、それをドローに変換していく事で大量ドローを実現し、エクゾディアパーツを揃えるデッキだ。

 

「よ、よせ、止めろ…!」

「さあ、覚悟は良いかしら?地べたを転げ回って這いずる準備は出来ている?

 

 

 

なら喰らいなさい!怒りの業火、エクゾード・フレイム!」

「きゃぁぁぁぁ!?」

 

WINNER Yuka

 

「隼、絶対に妹さんを、貴方の大事な人を救い出して。貴方には、絶対に私みたいな想いをして欲しくないから、私と同じ様な道を歩んで欲しくないから、だから…!」

 

先攻1ターンでのエクゾディアによるワンキルを決めた遊香は、塔へと向かった隼に向けて、大粒の涙を流しながら激励の言葉を送った。

 

------------

 

一方、

 

「さあ、デュエルよ!」

「くっ!よくも瑠璃をこんな目に!絶対に許さんぞ、アカデミア!」

「「デュエル!」」

 

塔の上段では隼と、アカデミアに囚われていた隼の妹、アカデミアが仕込んだ『何か』によって操られた状態の瑠璃とのデュエルが、始まろうとしていた…!



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120話_絆

オススメBGM:『革命デュアリズム』(革命機ヴァルヴレイヴ第2期OP)


先攻 Syun LP 4000 VS 後攻 Ruri LP 4000

 

「俺の先攻!

まずは『RR―バニシング・レイニアス』を召喚!」

 

RR―バニシング・レイニアス

効果モンスター

闇属性

鳥獣族

レベル 4

攻撃力 1300

 

瑠璃が囚われていた西側の塔、その上段にて始まった隼と瑠璃のデュエル、先攻となった隼が召喚したのは、もはやRRデッキにおける初手での定番と化したバニシング・レイニアス。

 

「バニシング・レイニアスの効果発動!

手札から『RR―トリビュート・レイニアス』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

RR―トリビュート・レイニアス

効果モンスター

闇属性

鳥獣族

レベル 4

攻撃力 1800

 

そのバニシング・レイニアスの効果で特殊召喚したのは、これまたRRデッキでの定番であるトリビュート・レイニアス。

 

「トリビュート・レイニアスの効果発動!

デッキから『RR―ミミクリー・レイニアス』を墓地へ送る。

墓地へ送ったミミクリー・レイニアスを除外して効果発動!

デッキから永続魔法『RR―ネスト』を手札に加えてそのまま発動!」

 

RR―ネスト

永続魔法

『RR―ネスト』の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。

1:自分フィールドに『RR』モンスターが2体以上存在する場合にこの効果を発動出来る。自分のデッキ・墓地の『RR』モンスター1体を選んで手札に加える。

 

「RR―ネストの効果発動!

デッキから『RR―ファジー・レイニアス』を手札に加え、そのまま効果発動!

このカードを守備表示で特殊召喚!」

 

RR―ファジー・レイニアス

効果モンスター

闇属性

鳥獣族

レベル 4

守備力 1500

 

そのトリビュート・レイニアスの効果からの一連の動きの末に、これもまたRRデッキの定番であるファジー・レイニアスが登場し、隼のフィールドには3体のレベル4モンスターが揃った。

この様に様々なモンスターの効果を駆使してアドを稼いでいき、エクシーズ召喚を次々と決めていくのが隼の、ひいてはRRデッキの基本的な動きである。

 

「そして俺はバニシング・レイニアスとトリビュート・レイニアス、そしてファジー・レイニアスでオーバーレイ!3体のレベル4・鳥獣族モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!雌伏のハヤブサよ、逆境の中で研ぎ澄まされし爪を挙げ、反逆の翼翻せ!エクシーズ召喚!現れろ、ランク4!『RR―ライズ・ファルコン』!」

 

RR―ライズ・ファルコン

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

鳥獣族

ランク 4

攻撃力 100

ORU 3

 

その動きの後に、3体のモンスターを駆使したエクシーズ召喚の演出と共に現れたのは、ハヤブサの様な姿の機械仕掛けの猛禽類、ライズ・ファルコン。

 

「俺が側にいなければ何も出来なかった瑠璃、そんなお前がこの俺に牙を剥くとは…!

カードをセットしてターンエンド!」

 

Syun

LP 4000

手札 2

モンスター RR―ライズ・ファルコン(攻撃表示)

魔法・罠カード RR―ネスト

        セット

 

「俺が側にいなければ何も出来なかった、ですって?それは兄さんが勝手にそう思っているだけよ!攻撃力100のモンスターとセットカードだなんて見え見えのトラップに引っ掛かると思っているの!?舐めるのもいい加減にして!私のターン、ドロー!」

 

アカデミアによって引き起こされた今の状況に対しやり場のない怒りをぶちまけながらターンを明け渡した隼、そんな隼の言動に引っ掛かる物があったのか(或いは瑠璃を操る『何か』がそうさせているのか)、激昂しながら瑠璃は自らのターンを始める。

 

「私は手札の『パラサイト・フュージョナー』を墓地へ送って魔法『ワン・フォー・ワン』発動!」

(パラサイト・フュージョナー?あのイラスト、紫雲院素良の脳に仕込まれていた虫に似ている…!

まさかあの虫が、瑠璃をも操っていると言うのか!)

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスターを特殊召喚する。

 

その瑠璃が最初に発動したワン・フォー・ワン、というよりそのコストとして送られたモンスターのイラストを見て、隼は1つの真実に至り、その怒りを増大させていた。

 

「ワン・フォー・ワンの効果で、デッキから『LL(リリカル・ルスキニア)―コバルト・スパロー』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

LL―コバルト・スパロー(アニメオリジナルカード)

効果モンスター

風属性

鳥獣族

レベル 1

攻撃力 0

 

そんな隼の怒りを他所に、瑠璃のフィールドに現れたのは、雀の着ぐるみを着た少女。

 

「特殊召喚したコバルト・スパローの効果発動!

デッキから2枚目のコバルト・スパローを手札に加えるわ。

次に手札の『LL―サファイア・スワロー』の効果発動!

自分フィールドにサファイア・スワロー以外のLLが存在する事で、今手札に加えたコバルト・スパローと共に攻撃表示で特殊召喚!」

 

LL―サファイア・スワロー(アニメオリジナルカード)

効果モンスター

風属性

鳥獣族

レベル 1

攻撃力 100

 

その効果によってサーチされた同名カードと一緒に登場したのは、燕の着ぐるみを着た少女。

 

「特殊召喚した2枚目のコバルト・スパローの効果発動!

デッキから3枚目のコバルト・スパローを手札に加え、2枚目のサファイア・スワローの効果で2体を攻撃表示で特殊召喚!」

 

更にサーチされたコバルト・スパローと、もう1枚手札にあったサファイア・スワローがまたも、この2体同時に登場した事で瑠璃のフィールドにはレベル1モンスターが5体揃った。

 

「そして私はレベル1のコバルト・スパロー3体とサファイア・スワロー2体でオーバーレイ!5体のレベル1・LLモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!麗しき翼を持つ鳥達よ、戦場に集いて気高く輝け!エクシーズ召喚!舞い降りよ、ランク!『LL―アセンブリー・ナイチンゲール』!」

 

LL―アセンブリー・ナイチンゲール(アニメオリジナルカード)

エクシーズ・効果モンスター

風属性

鳥獣族

ランク 1

攻撃力 0→500

ORU 5

 

その5体のモンスターを駆使したエクシーズ召喚の演出と共に現れたのは、ウグイスに似た鳥人と言わんばかりの姿をした少女。

 

「アセンブリー・ナイチンゲールはオーバーレイ・ユニット1つにつき100ポイント、攻撃力がアップし、更にオーバーレイ・ユニットの数だけ相手プレイヤーにダイレクトアタック出来る!

バトルフェイズに入るわ!アセンブリー・ナイチンゲールの効果でダイレクトアタック!」

「っ!」

 

Syun LP 4000→3500→3000→2500→2000→1500

 

「俺が側にいなければ何も出来ない、ですって?二度とそんな事言わないで!カードを2枚セットしてターンエンド!」

 

Ruri

LP 4000

手札 0

モンスター LL―アセンブリー・ナイチンゲール(攻撃表示)

魔法・罠カード セット×2

 

「良く聞け瑠璃、このデュエルに勝ち負けなどどうでも良い。ただ、俺はこのデュエルで、お前を操っている物からお前を取り戻したいだけだ!いや、絶対に取り戻して見せる!俺のターン、ドロー!」

「私は誰の物でも無いわ!ましてや貴方の所有物なんかじゃない!」

「いい加減にしろ、瑠璃!意味の無い意地を張るんじゃない!」

 

アセンブリー・ナイチンゲールによる5連続ダイレクトアタックを受けても怯まず、瑠璃への説得を続ける隼、尚も拒絶する瑠璃に業を煮やしたのか、叱りつける様に怒鳴り上げた。

 

「良いか瑠璃、どれだけお前が、いや、お前を操っている物が抵抗しようと、その操っている物が消されるのは決定された運命なんだ!無駄な抵抗を重ねた所で、傷つくのはお前なんだぞ!俺はお前が傷つく様を見たくはない!」

 

そして説得は再び行われる、事実、隼の言っている事は本当である。

実際に素良に仕込まれていた寄生虫は、セルゲイがナノマシン製の触手を素良の脳内に侵入させ、寄生虫を絡め取った事で摘出に成功したのだから。

よって瑠璃が、いや、瑠璃を操っている寄生虫が抵抗した所で、洗脳解除は確定された未来ではある。

それでも尚、隼が自ら説得をしているのは、セルゲイが寄生虫を摘出する際に瑠璃が抵抗した場合、その鎮圧を口実として、セルゲイがナノマシン製の触手で瑠璃の抵抗を封じ込めるという手に出る事…

簡単に言えば、瑠璃の抵抗を封じ込める為にセルゲイが薄い本的な手に出るのではないかという懸念が、それによって瑠璃の心身に癒える事のない傷が刻まれてしまうのではないかという不安が隼にはあったからだ。

 

「だから私は兄さんの所有物じゃ「いや、俺だけじゃない!」っ!?」

「さっきお前の耳にも届いただろう!この塔を破壊する爆破音が、弾痕を刻む銃声が!あれは全て俺の仲間の、その悲しみと絶望に支配された心が今尚上げ続けている号哭なんだ!」

 

その仲間とは、もちろん遊香の事である。

隼は思い出していた、シンクロ次元に滞在していた折に本人の口から聞いた、遊香の壮絶過ぎる過去を。

アカデミアの襲撃によって故郷は勿論の事、両親、そして最愛の弟である平井遊児を失い、絶望の底へと叩き落とされた過去を…!

 

「故郷も、愛する家族すらも一度に失ったソイツに残っていたのは、家族が其々使っていたデッキと、リアルソリッドビジョンよりも更に兵器として発展したと言って良い超能力だけだった。ソイツはその力を振るって、アカデミアのデュエル戦士を次々と血祭りにあげて来た。最初その話を聞いた俺は、ソイツが復讐心のままに力を振るっていたのではないかと思っていた、それも無理はない話だったからな。

 

 

 

だが違った!ソイツは自分の様な存在が新たに生まれない為に、生み出す原因となるアカデミアの侵略を止めるという鉄の意志で、その力を振るっていたんだ!」

 

やっている事は完全にテロリストな、ランサーズに入る前の遊香の活動、だが其処には彼女なりの優しさを基とした決意があったのだと、話を聞いていた隼は胸を打たれた。

瑠璃とそう変わらない年頃で、大事な存在の全てを失うなんて事は余りにも重く心に圧し掛かった筈(事実、それが原因で遊香の髪は全て白髪になってしまった)、それでも憎悪に囚われる事無く、確固たる意志を以て力を振るっていた事に、隼は並々ならぬ衝撃を覚えたのだ。

 

「そんなソイツが俺をこの場所へと行ける様、道を切り開いてくれた!俺にはソイツと同じ想いをして欲しくない、そんな想いで!お前が傷つけば、ソイツもまた悲しむんだ!」

「そんな事は私には関係ない、勝手な事を言わないで!」

「…仕方ない、元の瑠璃を取り戻すにはやるしかないようだな」

「元の瑠璃?そんなもの兄さんの「俺は真正面から、お前を操っている物を引きはがす!」っ!」

 

そんな遊香の想いを打ち明けた隼、それでも尚拒絶する瑠璃の姿に覚悟を決めたのか、そう宣言した。

 

「俺はライズ・ファルコンを対象に魔法『RUM―スキップ・フォース』発動!」

 

RUM―スキップ・フォース

通常魔法

1:自分フィールドの『RR』エクシーズモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターよりランクが2つ高い『RR』モンスター1体を、対象の自分のモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

2:自分の墓地からこのカードと『RR』モンスター1体を除外し、自分の墓地の『RR』エクシーズモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを特殊召喚する。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動出来ない。

 

「俺はライズ・ファルコンのオーバーレイ・ネットワークを再構築!誇り高きハヤブサよ、英雄の血潮に染まる翼翻し、革命の道を突き進め!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!現れろ、ランク6!『RR―レヴォリューション・ファルコン』!」

 

RR―レヴォリューション・ファルコン

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

鳥獣族

ランク 6

攻撃力 2000

ORU 4

 

その宣言と共に始まった隼のターン、その初手で発動したRUMによってライズ・ファルコンの身が炎に包まれ、レヴォリューション・ファルコンへと変貌した。

 

「レヴォリューション・ファルコンの効果発動!お前のアセンブリー・ナイチンゲールを破壊し、その攻撃力の半分、250のダメージを与える!」

「アセンブリー・ナイチンゲールの効果で、オーバーレイ・ユニットを1つ使いアセンブリー・ナイチンゲールの戦闘及び効果による破壊を無効にするわ!」

 

LL―アセンブリー・ナイチンゲール ORU 5→4

                 攻撃力 500→400

 

そのレヴォリューション・ファルコンの効果でアセンブリー・ナイチンゲールを破壊しようとするも、アセンブリー・ナイチンゲールの効果によって阻まれてしまった。

だが隼は止まらない。

 

「まだだ!レヴォリューション・ファルコンのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!

このターン、レヴォリューション・ファルコンはお前のフィールドにいる全てのモンスターに攻撃出来る!」

 

RR―レヴォリューション・ファルコン ORU 4→3

 

「尤も効果はオマケでしかない、コストこそが重要だ!LPを半分払って魔法『RUM―ソウル・シェイブ・フォース』発動!対象はたった今墓地へ送ったライズ・ファルコン!」

 

RUM―ソウル・シェイブ・フォース

通常魔法

1:LPを半分払い、自分の墓地の『RR』エクシーズモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを特殊召喚し、そのモンスターよりランクが2つ高いエクシーズモンスター1体を、対象のモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

 

Syun LP 1500→750

 

「俺はライズ・ファルコンのオーバーレイ・ユニットを再構築!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!並び立て、レヴォリューション・ファルコン!

今出した方のレヴォリューション・ファルコンの効果発動!もう1度アセンブリー・ナイチンゲールを破壊する!」

「無駄だという事が分からないのかしら!?アセンブリー・ナイチンゲールの効果で、オーバーレイ・ユニットを1つ使いアセンブリー・ナイチンゲールの破壊を無効にするわ!」

 

LL―アセンブリー・ナイチンゲール ORU 4→3

                 攻撃力 400→300

 

2枚目のRUMによって、1体目のレヴォリューション・ファルコンのオーバーレイ・ユニットを消費した形で墓地へ送られていたライズ・ファルコンを素材として2体目のレヴォリューション・ファルコンを呼び出し、効果を発動するも、やはりアセンブリー・ナイチンゲールの効果に阻まれた。

だが隼はこれで良いと言いたげな顔でデュエルを進めていた。

 

「決して無駄なんかじゃない!このメインフェイズだけでアセンブリー・ナイチンゲールのオーバーレイ・ユニットは2つ減り、攻撃力は200ポイントダウンしたのだからな!

バトルフェイズに入る!

1体目のレヴォリューション・ファルコンでアセンブリー・ナイチンゲールを攻撃!

この時レヴォリューション・ファルコンの効果発動!アセンブリー・ナイチンゲールの攻撃力を0に変える!敗れた者達の意志を継ぎ、瑠璃に取りついた害虫達を殲滅しろ!レヴォリューショナル・エアレイド!」

「だから無駄よ!アセンブリー・ナイチンゲールの効果で、オーバーレイ・ユニットを1つ使いアセンブリー・ナイチンゲールの破壊を無効にするわ!更に戦闘ダメージも0になる!」

 

RR―レヴォリューション・ファルコン 攻撃力 2000 VS LL―アセンブリー・ナイチンゲール 攻撃力 300→0

 

LL―アセンブリー・ナイチンゲール ORU 3→2

 

「2体目のレヴォリューション・ファルコンでアセンブリー・ナイチンゲールを攻撃!レヴォリューショナル・エアレイド、第2波!」

「アセンブリー・ナイチンゲールの効果で、オーバーレイ・ユニットを1つ使いアセンブリー・ナイチンゲールの破壊を無効にするわ!」

 

RR―レヴォリューション・ファルコン 攻撃力 2000 VS LL―アセンブリー・ナイチンゲール 攻撃力 0

 

LL―アセンブリー・ナイチンゲール ORU 2→1

 

隼のフィールドにいる2体のレヴォリューション・ファルコンの猛攻によって、アセンブリー・ナイチンゲールのオーバーレイ・ユニットは残り1つとなったが、それでも尚止まる隼では無かった。

真っ向から引きはがすという宣言の下、このターンで決めると言わんばかりに最後の手札を掴み取り、

 

「これがお前を操っている物を引きはがす一手だ!速攻魔法『RUM―レヴォリューション・フォース』発動!対象は1体目のレヴォリューション・ファルコンだ!」

「ランク6のレヴォリューション・ファルコンにそのRUMですって?」

 

RUM―レヴォリューション・フォース

速攻魔法

1:発動ターンによって以下の効果を発動出来る。

●自分ターン:自分フィールドの『RR』エクシーズモンスター1体を対象として発動出来る。ランクが1つ高い『RR』モンスター1体を、対象の自分のモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

●相手ターン:相手フィールドのエクシーズ素材の無いエクシーズモンスター1体を対象として発動出来る。そのエクシーズモンスターのコントロールを得る。その後、ランクが1つ高い『RR』モンスター1体を、対象のモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

 

発動させた。

その発動させたRUM、というよりその対象をレヴォリューション・ファルコンにした隼のプレイングに、瑠璃は疑問を覚えた。

瑠璃の記憶には、この条件に合致するRRモンスター、ランク7・RRモンスターが存在しないからだ。

 

「俺はレヴォリューション・ファルコンのオーバーレイ・ユニットを、いや、

 

 

 

 

 

俺はバニシング・レイニアスとトリビュート・レイニアス、ファジー・レイニアスとレヴォリューション・ファルコンでオーバーレイ!4体のRRモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!」

 

そんな疑問を浮かべる瑠璃を他所に、隼は何故かRUMを発動した際の口上では無く、通常のエクシーズ召喚をするかの様な口上を述べていた。

その口上で挙げた4体のRRモンスターが天へと昇り、遥か上空でエクシーズ召喚の演出が繰り広げられ、

 

「その超弩級の体躯はハヤブサ達の揺るがぬ絆!その冷徹な眼光はハヤブサ達の揺るがぬ意志!その堅牢なる翼はハヤブサ達の揺るがぬ強さ!今こそ舞い降りろ、結束の巨鳥!エクシーズ召喚、ランク7!『RR―アーセナル・ファルコン』!」

「な、何なのそのRRモンスターは!?」

 

RR―アーセナル・ファルコン

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

鳥獣族

ランク 7

攻撃力 2500

ORU 4

 

隼のフィールドを、いや、塔全体を自らの影で覆うかの様に、空母かと言わんばかりの巨躯を持つハヤブサが舞い降りた。

 

「コイツは俺がランサーズでの日々で手にした、アイツらとの絆を司るモンスターだ!その絆は鋼をも砕き、鉄すらも捻じ曲げる!

アーセナル・ファルコンは、お前のアセンブリー・ナイチンゲールとよく似た効果を持っている!そう、コイツはオーバーレイ・ユニットにRRモンスターがいる場合、その数だけ攻撃出来る!」

「な、何ですって!?」

 

その自らの記憶にないRRモンスターの姿に、その効果に驚愕する瑠璃。

現在アーセナル・ファルコンが持っているオーバーレイ・ユニットは4、つまり4回攻撃が出来る。

幾ら攻撃を防げるアセンブリー・ナイチンゲールであっても既にそのオーバーレイ・ユニットが1つしかない以上、防ぎきれる回数では無い。

 

「行け、アーセナル・ファルコン!俺達の絆の結晶よ!オーヴァーレイ・ヴァルヴレイヴ、1体目発進!」

「アセンブリー・ナイチンゲールの効果で、オーバーレイ・ユニットを1つ使いアセンブリー・ナイチンゲールの破壊を無効にするわ!」

 

RR―アーセナル・ファルコン 攻撃力 2500 VS LL―アセンブリー・ナイチンゲール 攻撃力 0

 

LL―アセンブリー・ナイチンゲール ORU 1→0

 

そんなアーセナル・ファルコンの翼から、1体のRRモンスターが勢いよく空へと飛び立ち、アセンブリー・ナイチンゲールへと突進、その最後のバリアを打ち破ってアーセナル・ファルコンの下に帰って行った。

 

「これでアセンブリー・ナイチンゲールを守るオーバーレイ・ユニットはもう無い!オーヴァーレイ・ヴァルヴレイヴ、2体目発進!」

「させないわ!永続罠『リビングデッドの呼び声』を発d…っ手が!?」

(そうはさせないわ!)

 

RR―アーセナル・ファルコン 攻撃力 2500 VS LL―アセンブリー・ナイチンゲール 攻撃力 0

 

Ruri LP 4000→1500

 

遂に身を護る術を失ったアセンブリー・ナイチンゲール、尚も続くアーセナル・ファルコンから飛び立つRRモンスターの攻撃、それに対して瑠璃が何か手を打とうとしたが、突如として何者かの干渉を受けたかの様に動けなくなり、アセンブリー・ナイチンゲールは戦闘破壊され、その余波が瑠璃に及んだ。

 

「兄さん!」

「瑠璃、正気に戻ったのか!?」

「兄さん、私ごと撃って!」

 

その攻撃を受けた瑠璃、その言動は今までの様な隼に敵意を向けていた物とはまるで違っていた、まるで正気に戻ったかの様に。

その様子に一瞬戸惑った隼ではあったが、改めてアーセナル・ファルコンに攻撃を指示した。

 

「分かった!オーヴァーレイ・ヴァルヴレイヴ、3体目、4体目発進!」

「きゃぁ!」

 

Ruri LP 1500→-1000 LOSE

 

WINNER Syun

 

その指示と共に発進した2体のRRモンスター、その1体目が瑠璃に突進した事でデュエルの勝敗が決したと共に2体目が瑠璃から逸れアーセナル・ファルコンの下に戻って来た。

その体躯は何故か、色んな色合いの液体や、生き物の体組織だったんじゃないか?と言わんばかりのグロテスクな破片に塗れていた。

 

「瑠璃!もう大丈夫だ、この俺が付いている!」

「ええ。ありがとう、兄さん。やっと、やっと会えた…」

 

そんなRRモンスターの様子を知ってか知らずか、RRモンスターの突進を受けて倒れた瑠璃を抱きかかえた隼。

抱えた瑠璃の顔には、心からの笑みが浮かんでいた…



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121話_星守の騎士VS名も無き伝説の騎士

先攻 Hekate LP 4000 VS 後攻 Mai LP 4000

 

「私の先攻。

まずは『クリバンデット』を召喚」

 

クリバンデット

効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 3

攻撃力 1000

 

先攻となったヘカテーが召喚したのは、盗賊みたいな出で立ちのクリボーモンスター、クリバンデット。

そのステータスこそ低いが、その効果の強さは嘗て制限カードに指定された程である。

 

「次に魔法『クリティウスの牙』発動」

 

クリティウスの牙

通常魔法

このカードのカード名はルール上『伝説の竜クリティウス』としても扱う。

『クリティウスの牙』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:『クリティウスの牙』の効果でのみ特殊召喚出来る融合モンスターカードに記された罠カード1枚を自分の手札・フィールドから墓地へ送る(そのカードがフィールドにセットされている場合、めくって確認する)。その後、その融合モンスター1体をエクストラデッキから特殊召喚する。

 

「私はこの牙と、罠『死のデッキ破壊ウイルス』を用いて融合召喚を行う」

「と、罠と魔法カードを融合素材に融合召喚ですか!?」

 

次に発動された魔法、それに伴うヘカテーの宣言に驚きを見せる舞衣。

無理もない、融合召喚は普通、融合召喚を行う効果を持つカードを発動し、2体以上のモンスターを融合素材として行う召喚方法である。

遊矢が用いるコンタクト融合等の融合召喚を行う効果を持つカードを用いない方法や、変身召喚等の1体だけのモンスターを素材とする方法、中には『簡易融合』の様に素材を用いない方法もあるにはある。

だがヘカテーによる、罠カードを融合素材としたやり方は、それらを抜きにしても異例であった。

 

「古にて戦い抜いた名も無き伝説の竜、その牙が強者を死に至らしめる小さき邪悪をも取り込み、新たなる竜として再誕する!融合召喚『デス・ウイルス・ドラゴン』!」

 

デス・ウイルス・ドラゴン

融合・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 4

攻撃力 1900

 

そんなやり方で登場したのは、何やら不気味は雰囲気を漂わせた紫色の竜。

 

「融合召喚したデス・ウイルス・ドラゴンの効果発動。

このカードが出た時、このカードの融合素材となった死のデッキ破壊ウイルスの、そのエラッタされる前と同じ効果処理を行う」

「な、何ですって!?」

「さあ見せなさい、貴方の手札」

「くっ、どうぞ…!」

 

そのステータスこそやや頼りなさそうではあったが、その効果はかなり理不尽だった。

融合素材とした死のデッキ破壊ウイルス、エラッタ前はこんな効果であった。

 

死のデッキ破壊ウイルス(エラッタ前)

通常罠

1:自分フィールドの攻撃力1000以下の闇属性モンスター1体をリリースして発動出来る。相手フィールド上のモンスター、相手の手札、相手のターンで数えて3ターンの間に相手がドローしたカードを全て確認し、攻撃力1500以上のモンスターを破壊する。

 

ある程度の攻撃力を持つモンスターを一掃できるばかりか、相手の手札やドローカードすらもピーピング出来るという、ビートダウン系のデッキがこれを撃たれればその損害は壊滅的な物となると言って良いカードパワー振りから流行し、闇属性モンスターでは当時『攻撃力が1000以下か否か』という採用基準まで出来たほどだった。

その強さから長年禁止カードとして指定され、

 

死のデッキ破壊ウイルス(エラッタ後)

通常罠

1:自分フィールドの攻撃力1000以下の闇属性モンスター1体をリリースして発動出来る。相手フィールドのモンスター及び相手の手札を全て確認し、その内の攻撃力1500以上のモンスターを全て破壊する。その後、相手はデッキから攻撃力1500以上のモンスターを3体まで選んで破壊出来る。このカードの発動後、次のターンの終了時まで相手が受ける全てのダメージは0になる。

 

とエラッタされた形で何とか復帰する事が出来た。

ドローカードを何ターンにも渡ってピーピングする事が出来なくなった上、2ターンに渡ってダメージを与えられなくなったという大きな弱体化を果たした事で漸く復帰出来た(そして今や制限すらも解除)事からもこのカードの嘗ての猛威が分かるだろう、その猛威を振るった効果が今この場で、舞衣に襲い掛かる…!

 

「手札は『星因士ウヌク』『星因士アルタイル』『星因士プロキオン』『星因士ベガ』『星因士デネブ』の5枚…

なら攻撃力1500以上のウヌクとアルタイル、デネブは破壊」

「きゃぁ!」

 

デス・ウイルス・ドラゴンが振るった腕によって無惨にも引き裂かれる舞衣の3枚の手札(のソリッドビジョン)。

だがそれで終わるヘカテーでは無い。

 

「次に魔法『ヘルモスの爪』発動」

 

ヘルモスの爪

通常魔法

このカードのカード名はルール上『伝説の竜ヘルモス』としても扱う。

『ヘルモスの爪』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:『ヘルモスの爪』の効果でのみ特殊召喚出来る融合モンスターカードに記された種族のモンスター1体を自分の手札・フィールドから墓地へ送る(そのカードがフィールドにセットされている場合、めくって確認する)。その後、その融合モンスター1体をエクストラデッキから特殊召喚する。

 

「私はこの爪と、手札の『伝説の騎士ティマイオス』を用いて融合召喚を行う。古にて戦い抜いた名も無き伝説の竜、その爪が伝説の化身たる騎士をも取り込み、新たなる武具として再誕する!融合召喚『女神の聖弓―アルテミス』!」

 

女神の聖弓―アルテミス

融合・効果モンスター

光属性

戦士族

レベル 4

守備力 1600

 

ターンの締めくくりとして発動された魔法、その宣言は通常の融合召喚に則った物と言って良い物だったが、それと共に登場したのは、聖なるオーラを纏った弓、今度は登場したモンスターの姿形が異例だった。

 

「融合召喚したアルテミスの効果発動。

このカードを、デス・ウイルス・ドラゴンの装備カードにする。

エンドフェイズにクリバンデットをリリースして効果発動。

デッキからカードを5枚墓地へ送り、その中から魔法『レジェンド・オブ・ハート』を手札に加える」

 

Hekate

LP 4000

手札 1(レジェンド・オブ・ハート)

モンスター デス・ウイルス・ドラゴン(攻撃表示)

魔法・罠カード 女神の聖弓―アルテミス(装備対象:デス・ウイルス・ドラゴン)

 

「私のターン、ドロー!」

「ドローしたカードを見せて貰う」

「ドローしたのは『竜星因士(イーサテラナイト)―セフィラツバーン』です」

 

ターンを明け渡された舞衣、引いたカードもデス・ウイルス・ドラゴンの効果に引っ掛からない物、よって手札3枚の状態で始める事が出来た。

 

(ベガからセフィラツバーンを出してデス・ウイルス・ドラゴンを破壊するのは簡単だけど、さっき手札に加えられた魔法カード、あれがどんな力を発揮するか分かりません…

此処は、こう動きます!)

「メインフェイズに入って、まずはベガを召喚!」

 

星因士ベガ

効果モンスター

光属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1200

 

「召喚したベガの効果発動!

手札のプロキオンを攻撃表示で特殊召喚!」

 

星因士プロキオン

効果モンスター

光属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1300

 

その3枚からどう動くかを決めた舞衣、その初手で登場させたベガの効果で登場したのは、冬の大三角の一角である『こいぬ座α星』を司る戦士、プロキオン。

 

「特殊召喚したプロキオンの効果発動!

手札のセフィラツバーンを墓地へ送り、ドロー!」

「見せて貰う」

「ドローしたのは装備魔法『星輝士の因子』です。これは、後に繋げと言うメッセージなのでしょうか…

なら、私はベガとプロキオンでオーバーレイ!2体のレベル4・テラナイトモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!煉獄に囚われし星守の騎士よ、今こそ障壁を打ち破って抜け出で、新たに得た闇の力を振るえ!エクシーズ召喚、ランク4!『煉獄の騎士(テラナイト)ヴァトライムス』!」

 

煉獄の騎士ヴァトライムス

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

戦士族

ランク 4

攻撃力 2600

ORU 2

 

プロキオンの効果で交換した手札を見た舞衣、それを確認した後に行ったエクシーズ召喚で登場したのは、舞衣が持っているどのテラナイトモンスターともかけ離れた、異様な姿のモンスターだった。

全体的な姿こそ現在は禁止カードである『星守の騎士(テラナイト)プトレマイオス』の様なケンタウロス型ではあるが、まず上半身である人型の部分が、これまた現在は禁止カードである『エルシャドール・ネフィリム』そっくりであり、下半身である馬型の部分が黒を基調とした機械的なそれとなっている。

テラナイトモンスターというより、端末世界に住まう彼らと敵対する種族『インフェルノイド』や『クリフォート』モンスターと言った方がしっくり来そうな姿である。

属性も闇と、今まで光属性のみだったテラナイトモンスターでは異例だ。

 

「バトルフェイズに入ります!

ヴァトライムスでデス・ウイルス・ドラゴンを攻撃!」

「くっ!」

 

煉獄の騎士ヴァトライムス 攻撃力 2600 VS デス・ウイルス・ドラゴン 攻撃力 1900

 

Hekate LP 4000→3300

 

「メインフェイズ2に入って、私はヴァトライムスのオーバーレイ・ネットワークを再構築!冬のダイヤモンドが集いし時、闇は晴れ、魂は浄化される!エクシーズ召喚、ランク5!『星輝士セイクリッド・ダイヤ』!」

 

星輝士セイクリッド・ダイヤ

エクシーズ・効果モンスター

光属性

幻竜族

ランク 5

攻撃力 2700

ORU 3

 

そのヴァトライムスでヘカテーのデス・ウイルス・ドラゴンを撃破した後にエクシーズ召喚したのは、冬のダイヤモンドの力を結集したドラゴン、セイクリッド・ダイヤ。

 

「最初に言っておきます。オーバーレイ・ユニットを持ったセイクリッド・ダイヤがフィールドにいる限り、誰もデッキから直接墓地肥やし出来ず、墓地から手札として回収出来ません!

更にさっき引いた星輝士の因子を発動、セイクリッド・ダイヤに装備させてターンエンドです!」

 

星輝士の因子

装備魔法

自分フィールドの『テラナイト』モンスターにのみ装備可能。

1:装備モンスターの攻撃力・守備力は500アップする。装備モンスターは相手のカードの効果を受けない。

2:自分フィールドに『テラナイト』モンスター以外のモンスターが表側表示で存在する場合にこのカードは破壊される。

 

星輝士セイクリッド・ダイヤ 攻撃力 2700→3200

 

Mai

LP 4000

手札 0

モンスター 星輝士セイクリッド・ダイヤ(攻撃表示)

魔法・罠カード 星輝士の因子(装備対象:星輝士セイクリッド・ダイヤ)

 

「問題ない、既に勝利の方程式は揃っている。私のターン、ドロー。

まずは『E・HEROプリズマー』を召喚」

 

E・HEROプリズマー

効果モンスター

光属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1700

 

セイクリッド・ダイヤの、その刺さるデッキにはとことん刺さる効果を説明されても動じず勝利予告をしたヘカテー、ターンを明け渡されて最初に登場させたのは、身体がプリズムで出来たHERO、プリズマー。

本来ならプリズマーには、エクストラデッキにある融合モンスターカードを相手に見せ、そのモンスターにカード名が記された融合素材モンスターをデッキから墓地へ送る事でその名を得られる効果があるのだが、セイクリッド・ダイヤの効果によってそれは使えない。

だがそんなロックはこれから繰り広げられる展開には何の関係も無い。

 

「次に2000LPを払い、プリズマーをリリースして魔法『レジェンド・オブ・ハート』発動」

「来ましたか、そのカード…!」

 

レジェンド・オブ・ハート

通常魔法

『レジェンド・オブ・ハート』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:2000LPを払い、自分フィールド上の戦士族モンスター1体をリリースして発動出来る。自分の手札・墓地の『伝説の竜』魔法カードを3種類まで除外し、除外した種類の数だけ『伝説の騎士』モンスターを自分の手札・デッキ・墓地から選んで特殊召喚する(同名カードは1枚まで)。

 

「私の墓地にあるクリティウスの牙、ヘルモスの爪、そして『ティマイオスの眼』は其々の名を冠した『伝説の竜』カードとしても扱う!私はこの3枚を除外!今こそ並び立て、伝説の竜の化身たる3人の騎士達よ!『伝説の騎士ティマイオス』、『伝説の騎士クリティウス』、そして『伝説の騎士ヘルモス』!」

 

伝説の騎士ティマイオス

効果モンスター

光属性

戦士族

レベル 8

攻撃力 2800

 

伝説の騎士クリティウス

効果モンスター

光属性

戦士族

レベル 8

攻撃力 2800

 

伝説の騎士ヘルモス

効果モンスター

光属性

戦士族

レベル 8

攻撃力 2800

 

ヘカテーが先程サルベージしたレジェンド・オブ・ハートの効果で登場したのは、名も無き伝説の3竜の化身である騎士達。

そして、このターンで決着を付けるべく現れた、ヘカテーのエースカード。

 

「呼び出したティマイオスの効果発動!対象は星輝士の因子!

そのカードを除外する!」

「な!?」

 

星輝士セイクリッド・ダイヤ 攻撃力 3200→2700

 

その効果によってセイクリッド・ダイヤに装備されていた星輝士の因子が除外された事でセイクリッド・ダイヤの攻撃力は元に戻り、伝説の騎士達の攻撃力を僅かながら下回ってしまった。

 

「バトルフェイズに入る!

ティマイオスでセイクリッド・ダイヤを攻撃!ジャスティス・ソード!」

「セイクリッド・ダイヤ!」

 

伝説の騎士ティマイオス 攻撃力 2800 VS 星輝士セイクリッド・ダイヤ 攻撃力 2700

 

Mai LP 4000→3900

 

「クリティウスでダイレクトアタック!クリスタル・ソード!」

「っ!?」

 

Mai LP 3900→1100

 

「ヘルモスでトドメ!フリーダム・ソード!」

「きゃぁぁぁぁ!?」

 

Mai LP 1100→-1700 LOSE

 

WINNER Hekate



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122話_ソイル、我が力!

先攻 Khamsin LP 4000 VS 後攻 Tsurugi LP 4000

 

「僕のターン。ああ成る程、こう動け、という事ですか。

まずはフィールド魔法『暴走魔法陣』発動」

 

暴走魔法陣

フィールド魔法

『暴走魔法陣』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:このカードの発動時の効果処理として、デッキから『召喚師アレイスター』1体を手札に加える事が出来る。

2:このカードがフィールドゾーンに存在する限り、融合モンスターを融合召喚する効果を含む効果を自分が発動した場合、その発動は無効化されず、その融合召喚成功時に相手は魔法・罠・モンスターの効果を発動出来ない。

 

「暴走魔法陣の発動時効果で、デッキから召喚師アレイスターを手札に加え、そのまま召喚」

 

召喚師アレイスター

効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 4

攻撃力 1000

 

先攻となったカムシン、その初手を見てどう動くかを決めたかの様な台詞をこぼした後に、足元に真紅の魔法陣を展開すると共に呼び出したのは、如何にも魔法使いだと言わんばかりの姿をした男。

 

「召喚したアレイスターの効果発動。

デッキから『召喚魔術』を手札に加えます。

…現れよ、我が力!手札に加えた召喚魔術を、そのまま発動!」

 

召喚魔術

通常魔法

『召喚魔術』の2の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。

1:融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを手札から墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。『召喚獣』融合モンスターを融合召喚する場合、自分フィールドおよび自分・相手の墓地のモンスターを除外して融合素材とする事も出来る。

2:このカードが墓地に存在する場合、除外されている自分の『召喚師アレイスター』1体を対象として発動出来る。墓地のこのカードをデッキに戻し、対象のモンスターを手札に加える。

 

その召喚時効果によって手札に加わった魔法カード、それを発動した瞬間、カムシンの足元に展開された魔法陣がより赤く輝き出し、

 

「フィールドのアレイスターと、手札の『超電磁タートル』を生け贄に捧げる!磁力を帯びて輝く機械仕掛けの亀、その魂を糧とし、出でよ、レベル9!」

「む、この荒れ狂う風、強大なモンスターを呼び出さんという事でござるか…!」

 

それを中心として暴風が吹き荒れる…!

 

「輝け!『召喚獣メルカバー』!」

 

召喚獣メルカバー

融合・効果モンスター

光属性

機械族

レベル 9

攻撃力 2500

 

「レベル9ながら攻撃力は2500…

何とも微妙な数値ではござるが、その分強烈な効果を秘めている事でござろうか…」

 

そんな最中、魔法陣から登場したのは、戦車(チャリオット)に乗り込んだ白銀の騎士。

そのステータスは、剣の言う様にレベル9にしては低めの数値。

だがその低いステータス故に強力な効果を秘めているのではと、剣は警戒感を露わにした。

 

「墓地へ送られた召喚魔術の効果発動。対象はたった今除外されたアレイスターです。

召喚魔術をデッキに戻し、対象のアレイスターを手札に戻します。

カードを2枚セットして、ターンエンド!」

 

Khamsin

LP 4000

手札 2(うち1枚は召喚師アレイスター)

モンスター 召喚獣メルカバー(攻撃表示)

魔法・罠カード セット×2

フィールド魔法 暴走魔法陣

 

「某のターン、ドロー!

まずは『不知火の宮司』を召喚!」

 

不知火の宮司

効果モンスター

炎属性

アンデット族

レベル 4

攻撃力 1500

 

ターンを明け渡された剣が最初に召喚したのは、不知火デッキにおいて貴重な除去効果を持つ宮司。

たがそれが発揮されるのはこの時ではない、にも関わらず召喚したのには理由がある。

 

「召喚した宮司の効果発動!

手札k」

 

そう、召喚時にも効果があり、それによって更なる展開が出来るからだ、が、

 

「それは通せません!それにチェーンして手札のアレイスターを墓地へ送り、メルカバーの効果発動!」

「このタイミングで発動、という事は…!」

「ああ、流石はランサーズメンバーと言う所でしょうか、察しが良いですね。そう、メルカバーは1ターンに1度、カウンター罠『神の摂理』とほぼ同じ効果を発動出来ます!尤もスペルスピードは1低いですが、代わりに無効にしたカードを破壊では無く除外します!」

 

カムシンはそれを通さないと言わんばかりにメルカバーの効果を発動する。

メルカバーの効果は今しがた言った通りモンスター効果版『神の摂理』、しかも無効にしたカードを破壊では無く除外するという除去能力付きだ。

然し、

 

「左様な効果持ちであったとは恐れ入る。然し某の不知火デッキは、除外されてからが本領発揮の場!

除外された宮司の効果発動!対象はメルカバーでござる!」

 

そう、剣が用いる不知火デッキは、除外ゾーンをも十全に活用するデッキ、殊に宮司が除外された時には先程言った除去効果を発揮出来る、カムシンにとっては強力な除外効果が仇になる形となる、も、

 

「それも通しません!それにチェーンし、メルカバーをリリースして速攻魔法『法の聖典』発動!」

 

法の聖典

速攻魔法

『法の聖典』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:自分フィールドの『召喚獣』モンスター1体をリリースして発動出来る。リリースしたモンスターと元々の属性が異なる『召喚獣』モンスター1体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

 

それすらも読んでいたかの様に、サクリファイス・エスケープの要領でメルカバーが消え、

 

「白銀に光輝く機械仕掛けの騎士、その魂を糧とし、出でよ、レベル4!」

「レベル4…?」

 

再びカムシンの足元に展開されている魔法陣が赤く輝き、暴風が吹き荒れた。

そんな中、ふと聞こえた呼び出されるモンスターのレベル、その(メルカバーと比べて)明らかな低さに剣は首を傾げた。

そんな剣の疑問には目もくれずに、

 

「唸れ!『召喚獣カリギュラ』!」

 

召喚獣カリギュラ

融合・効果モンスター

闇属性

獣族

レベル 4

守備力 1800

 

呼び出したのは、様々な生き物の特徴を併せ持った獣。

そのレベルは宣言通り4、守備力も下級モンスターで突破出来そうな数値だ。

が、何も考え無しにそれを出した、メルカバーを避難させる為だけに出したカムシンでは無かった。

 

「最初に言っておきます。カリギュラがフィールドに存在する間は、互いに1ターンに1度しかモンスター効果を発動出来ず、バトルフェイズでの攻撃は1体のモンスターしか出来ません!」

「な、何と!?」

 

分かりやすく言うと、エレンが用いる『エルシャドール・ミドラーシュ』、その特殊召喚制限効果をモンスター効果に置き換えた上で永続魔法『暗黒の扉』の効果が付いた物である。

モンスター効果発動を制限される事がどれだけ厳しいか、モンスター効果の重要度が高い昨今のデュエルモンスターズの環境においては想像するだけでも恐ろしいであろう。

 

「せめて、その融合モンスターだけは排除せねばならぬでござるな…!

フィールド魔法『不知火流転生の陣』発動!」

 

不知火流転生の陣

フィールド魔法

『不知火流転生の陣』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:1ターンに1度、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、手札を1枚墓地へ送り、以下の効果から1つを選択して発動出来る。

●自分の墓地の守備力0のアンデット族モンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを特殊召喚する。

●除外されている自分の守備力0のアンデット族モンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを墓地に戻す。

 

「次に魔法『封印の黄金櫃』発動!」

 

封印の黄金櫃

通常魔法

1:デッキからカード1枚を選んで除外する。このカードの発動後2回目の自分スタンバイフェイズに、この効果で除外したカードを手札に加える。

 

「封印の黄金櫃の効果で、デッキから『妖刀―不知火』を除外するでござる。

続いて2枚目の封印の黄金櫃を発動!

デッキから『不知火の隠者』を除外し、そのまま効果発動!

除外されている宮司と妖刀―不知火を其々攻撃表示で特殊召喚!」

 

妖刀―不知火

効果モンスター/チューナー

炎属性

アンデット族

レベル 2

攻撃力 800

 

その限られた1回で突破口を開く、それは『薩摩示現流』の教えを受けた剣にとって最も得意とする分野、そのお膳立てと言って良い様々な魔法カードを使った後に、貴重な1回を隠者の効果に使用した。

その効果は除外されている不知火モンスターの帰還、しかもフィールドに不知火流転生の陣があれば2体を呼び戻せる。

これによってレベル6シンクロモンスターを呼び出す準備が整った…!

 

「某はレベル4の宮司に、レベル2の妖刀―不知火をチューニング!刀に宿る付喪の神が、あらゆる敵を地に伏せん!シンクロ召喚、レベル6!『刀神―不知火』!」

 

刀神―不知火

シンクロ・効果モンスター

炎属性

アンデット族

レベル 6

攻撃力 2500

 

その2体を用いたシンクロ召喚の演出と共に登場した刀神―不知火、その攻撃力は2500、守備力1800のカリギュラを易々と突破できるステータスだ。

が、刀神―不知火の姿を見たカムシンは突如として笑みを浮かべ、

 

「ああ、やはりカリギュラを突破出来るモンスターを出して来ましたか。ですがそれこそ僕の望み通りです!その特殊召喚成功時、手札を1枚捨てて速攻魔法『超融合』発動!」

「な!?」

 

超融合(制限カード)

速攻魔法

このカードの発動に対して魔法・罠・モンスターの効果は発動出来ない。

1:手札を1枚捨てて発動出来る。自分・相手フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「僕はフィールドにいる、僕のカリギュラと、貴方の刀神―不知火を生け贄に捧げる!暴虐なる闇の獣、刀に宿りし付喪の神、2つの魂を糧とし、出でよ、レベル10!」

 

そのカリギュラと、それを突破する為の刀神―不知火を融合素材とした超融合を発動、

 

「君臨せよ!『召喚獣エリュシオン』!」

 

召喚獣エリュシオン

融合・効果モンスター

光(闇・地・水・炎・風)属性

天使族

レベル 10

攻撃力 3200

 

それによって地球を模したと思われる球体に翼を生やした様な姿のモンスターが君臨した…!

 

「まさか返されるとは思わなかったでござる…

そのままターンエンドでござる!」

 

Tsurugi

LP 4000

手札 2

モンスター なし

魔法・罠カード なし

フィールド魔法 不知火流転生の陣

 

「僕のターン、ドロー!

僕は今引いた召喚魔術を発動!

このカードで融合召喚する時、貴方の墓地のモンスターも融合素材に出来ます!僕は、僕の墓地にいるアレイスターと、貴方の墓地にいる妖刀―不知火を生け贄に捧げる!妖しき力纏う刀、その魂を糧とし、現れよ、レベル7!燃えろ!『召喚獣プルガトリオ』!」

 

召喚獣プルガトリオ

融合・効果モンスター

炎属性

悪魔族

レベル 7

攻撃力 2300→2500

 

結局、フィールドががら空きのままターンを明け渡した剣、だが尚もカムシンは手を緩めない。

ドローした召喚魔術で呼び出したのは、炎を纏った三つ子の悪魔、プルガトリオ。

 

「バトルフェイズに入ります!全軍、総攻撃!」

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

Tsurugi LP 4000→1500→-1700 LOSE

 

WINNER Khamsin

 

「がぁ!?ぐは…!」

「あぐ!?うぅ…」

「ああ、どうやら他の2人は負けた様子ですね、ヘカテー」

「問題ない、元々ランサーズ相手には力不足。それよりもカムシン、次が来る」

「そうですね」

「剣殿と舞衣殿が敗れたでござるか、ホルアクティ・フォース、恐るべし実力者なり…!」

「問題ないわ隊長、私達2人の実力で押し通せばいいだけの話よ」

 

4組のデュエルが全て終了し、その勝者であるランサーズ側の日影と遊香、アカデミア側のヘカテーとカムシンが再び対峙する。

再びデュエルが、開始される、

 

「瑠璃は救出した!急いで脱出するぞ!」

「そのモンスター達に掴まって下さい!」

「しゅ、隼!分かったわ!」

「隼殿!随分と早急なご帰還、天晴にござる!」

「な、『ピース』が!?異様な程の迅速な対応…!」

「確かドクトルが開発したパラサイト・フュージョナーが『ピース』の脳内に仕込まれていた筈…!」

「フン、あんな物、俺の、いや、俺達の想いの前には無駄だ!」

 

正にそんな時、瑠璃を救出した隼が、その際のデュエルで呼び出したままのアーセナル・ファルコンに複数のRRモンスターを射出させ、遊香達4人を確保、そのままアーセナル・ファルコンへと乗せた。

 

「くっ!ですが逃がすと思っているのですか!ヘカテー、行きますよ!」

「勿論!」

「貴様らに捕まる程マヌケでは無い!オーヴァーレイ・ヴァルヴレイヴ、全軍突撃!」

「ちぃ!」

 

そんな隼達を捕まえるべく、カムシンとヘカテーはモンスターを展開しようとするも、それを見越していたかの様に隼がアーセナル・ファルコンに格納していたRRモンスターを全部射出させ、妨害させつつ離脱した。

カムシン達もモンスターを呼び出してそのRRモンスターを撃退するも、既に隼達は遠く離れた後だった。

 

「カムシン!キサラ達及びプロフェッサーに緊急の連絡を!」

「勿論です!」

 

取り逃がしたヘカテーとカムシンは、この非常事態の連絡を急ぐ…!



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123話_機光竜乱舞

時間は少し遡り、東側の塔にて、

 

先攻 Apollo LP 4000 VS 後攻 Ryotaro LP 4000

 

「私から行かせて貰おう!

まずは魔法『融合』発動!」

 

融合

通常魔法

1:自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「私は手札の『太陽の戦士』と『ガーディアン・トライス』を融合!閃光の双剣に日輪の光輝く時、2人の戦士は1つとなれり!融合召喚、レベル7!『太陽の守護者』降臨!」

 

太陽の守護者(アニメオリジナルカード)

融合・効果モンスター

光属性

戦士族

レベル 7

攻撃力 2400

 

行われていた4組のデュエル、その1組で先攻をとった塔の守護者アポロが融合召喚の演出を経て登場させたのは、太陽を思わせる意匠を所々に施した赤き戦士。

 

「太陽の守護者の効果発動!

『守護者の盾』トークン1体を守備表示で特殊召喚する!このトークンがいる限り、太陽の守護者を攻撃対象に出来ない!

私はカードをセットしてターンエンド!」

 

守護者の盾トークン

光属性

戦士族

レベル 1

守備力 0

 

Apollo

LP 4000

手札 1

モンスター 太陽の守護者(攻撃表示)

      守護者の盾トークン(守備表示)

魔法・罠カード セット

 

そしてその赤き戦士を守る様に盾を出現させ、亮太郎にターンを明け渡した。

 

「俺のターン、ドロー!

まずはおめぇのフィールドにのみモンスターが存在するので『サイバー・ドラゴン』を攻撃表示で特殊召喚」

 

サイバー・ドラゴン

効果モンスター

光属性

機械族

レベル 5

攻撃力 2100

 

「次に手札の『サイバー・ドラゴン・ドライ』を墓地へ送って『銀河戦士』の効果発動。

このカードを守備表示で特殊召喚」

 

銀河戦士

効果モンスター

光属性

機械族

レベル 5

守備力 0

 

後攻となった亮太郎は早速、其々が持つ特殊召喚効果によってサイバー・ドラゴンと銀河戦士、2体のレベル5モンスターを展開した。

 

「特殊召喚した銀河戦士の効果発動。

デッキから2枚目の銀河戦士を手札に加える。

俺はサイバー・ドラゴンと銀河戦士でオーバーレイ!2体のレベル5・機械族モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!超量の力を得た機光竜が、新星の如き光を解き放つ!エクシーズ召喚、ランク5!『サイバー・ドラゴン・ノヴァ』!」

 

サイバー・ドラゴン・ノヴァ

エクシーズ・効果モンスター

光属性

機械族

ランク 5

攻撃力 2100

ORU 2

 

その1体である銀河戦士のサーチ効果を適用した後、エクシーズ召喚の演出と共に呼び出したのは、彼のエースの一角、サイバー・ドラゴン・ノヴァ。

 

「早速エースカードのお出ましか、だがもう少し楽しもうではないか。永続罠『守護者礼賛』発動!」

 

守護者礼賛(アニメオリジナルカード)

永続罠

エクストラデッキから特殊召喚された相手フィールドのモンスター1体を対象としてこのカードを発動出来る。

1:このカードの発動時、自分フィールドに『守護者の盾トークン』(戦士族・光・レベル1・攻撃力0・守備力0)2体を特殊召喚出来る。

2:このカードが魔法・罠ゾーンに存在する限り、対象の相手モンスターの効果は無効化され、その相手モンスターは全ての『守護者の盾トークン』に1回ずつ攻撃出来る。1度のバトルフェイズ中に全ての『守護者の盾トークン』に攻撃しなかった場合、バトルフェイズ終了時に対象の相手モンスターは破壊される。

3:対象の相手モンスターがフィールドから離れた場合にこのカードは破壊される。

 

その姿を見たアポロは早速動き出した。

 

「守護者礼賛の効果でサイバー・ドラゴン・ノヴァの効果を無効にし、自分フィールドに守護者の盾トークン2体を特殊召喚する!

さあどうする、守護者礼賛の更なる効果によって守護者の盾トークン全てを攻撃するか、それとも攻撃せずにお前のエースモンスターを失うか…」

 

その発動した永続罠によってサイバー・ドラゴン・ノヴァに赤いオーラが纏わり付くと同時に、アポロのフィールドに新たな盾が2つ生み出された。

その状況に、己の思い通りにデュエルが進行していると自信を持っているのか、アポロが煽るかのようにそんな宣告を突きつけて来る。

が、

 

「わりぃが、俺はおめぇの掌の上で踊っていられる程暇じゃねぇ。全力でぶちかますぜ!

俺はサイバー・ドラゴン・ノヴァのオーバーレイ・ネットワークを再構築!超量の力を得た機光竜が更なる進化を遂げ、無限の如き光を放つ!エクシーズ召喚、ランク6!『サイバー・ドラゴン・インフィニティ』!」

「何、別のエクシーズモンスターに変化しただと?」

 

サイバー・ドラゴン・インフィニティ

エクシーズ・効果モンスター

光属性

機械族

ランク 6

攻撃力 2100→2700

ORU 3

 

お前の思い通りにはならないと言わんばかりにサイバー・ドラゴン・ノヴァは更なる進化を遂げ、サイバー・ドラゴン・インフィニティとなった。

これで守護者礼賛の効果対象から外れ、効果を振るう事が出来る様になった。

 

「サイバー・ドラゴン・インフィニティの効果発動!おめぇのフィールドにいる太陽の守護者を、コイツのオーバーレイ・ユニットに変える!」

「な、何だと!?」

 

サイバー・ドラゴン・インフィニティ ORU 3→4

                  攻撃力 2700→2900

 

その効果、相手モンスターを自らのオーバーレイ・ユニットとして吸い込むという除去効果に驚きを見せるアポロ、そんなアポロなどお構いなしにサイバー・ドラゴン・インフィニティは赤き戦士をオーバーレイ・ユニットとして取り込んだ。

亮太郎は知る由もないが、太陽の守護者には守護者の盾トークンが破壊された時、破壊したモンスターの攻撃力を800下げつつ、800のバーンダメージを与える効果がある。

もしそのまま攻撃していれば大量のバーンダメージが避けられず、アポロの思うつぼとなっていた訳だが、亮太郎はそうならない。

 

「続いて『サイバー・ドラゴン・コア』を召喚」

 

サイバー・ドラゴン・コア

効果モンスター

光属性

機械族

レベル 2

攻撃力 400

 

亮太郎が更に呼び出したのは、サイバー・ドラゴンの骨組み部分。

 

「召喚したサイバー・ドラゴン・コアの効果発動。

デッキから速攻魔法『サイバネティック・フュージョン・サポート』を手札に加える。

…さぁて、まずはコイツで行くか!俺も融合発動!

俺はフィールドのサイバー・ドラゴン・コアとサイバー・ドラゴン・インフィニティを融合!2体の機光竜よ、今こそ1つとなり、全てをぶち壊す暴竜となれ!融合召喚、レベル5!『キメラテック・ランページ・ドラゴン』!」

 

キメラテック・ランページ・ドラゴン

融合・効果モンスター

闇属性

機械族

レベル 5

攻撃力 2100

 

「やはりランサーズの一員、エクシーズ召喚だけでなく融合召喚も使いこなすか。だが2体のモンスターを使った結果が先程とステータスの変わらないモンスターでは無いか。出した所で何の意味がある?」

 

サイバー・ドラゴン・コアの召喚時効果処理を終えた後に行われた融合召喚、その後に現れた三つ首の機光竜のステータスにアポロは疑問を投げかける。

確かに、このままバトルフェイズに入っていれば2体の盾トークンを戦闘破壊出来たにも関わらず、それを1つに減らした結果が、サイバー・ドラゴンと何ら変わらないステータスの融合モンスター。

 

「慌てるな、直ぐにその意味が分かる、が、その前に融合召喚したランページ・ドラゴンの効果発動。対象は一応、使いモンにならなくなったその永続罠だ。ソイツを破壊する。

次にランページ・ドラゴンの2つ目の効果発動!

デッキから『サイバー・ドラゴン・ツヴァイ』と『フルール・シンクロン』を墓地へ送り、

 

 

 

このターン、コイツは1度のバトルフェイズ中に3回攻撃出来る!」

「な!?その為に態々融合したと言うのか…!」

 

だがその効果は、フィールドにいた2体を素材する価値がある物だった。

 

「そして、LPを半分払って速攻魔法『サイバネティック・フュージョン・サポート』を発動してバトルフェイズに入る!」

 

サイバネティック・フュージョン・サポート

速攻魔法

ライフポイントを半分払って発動出来る。このターン、自分が機械族の融合モンスターを融合召喚する場合に1度だけ、その融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを自分の手札・フィールド上・墓地から選んでゲームから除外し、これらを融合素材に出来る。『サイバネティック・フュージョン・サポート』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

 

Ryotaro LP 4000→2000

 

「ランページ・ドラゴンでおめぇの盾3つを全部攻撃!エヴォリューション・レザルト・ブラスター、3連打ァ!」

「くっ!」

 

キメラテック・ランページ・ドラゴン 攻撃力 2100 VS 守護者の盾トークン 守備力 0

 

「だがまだ私のライフポイントは無傷だ!このデュエル、暫く付き合って貰うぞ!」

 

その効果によって3回攻撃出来る様になったランページ・ドラゴンの猛攻の前にフィールドががら空きとなったアポロ、だがLPは本人の言う通り無傷のままだ。

然し、

 

「何言ってやがる、バトルフェイズは終わっちゃいねぇぜ。もう忘れたのか、バトルフェイズに入る前に、半分のLPを払って発動したあの速攻魔法を!」

「何?」

「手札を1枚捨て、速攻魔法『超融合』発動!」

 

超融合(制限カード)

このカードの発動に対して魔法・罠・モンスターの効果は発動出来ない。

1:手札を1枚捨てて発動出来る。自分・相手フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「コイツは本来、俺とおめぇのフィールドにいるモンスターしか融合素材に出来ない、だが此処で俺はさっき発動したサイバネティック・フュージョン・サポートの効果を適用する!

 

 

 

これにより、俺は俺の手札・フィールド・墓地から除外する事でソイツを融合素材に出来る!」

「な!?」

「俺はフィールドのランページ・ドラゴンと、墓地のサイバー・ドラゴン、サイバー・ドラゴン・ツヴァイ、サイバー・ドラゴン・ドライ、サイバー・ドラゴン・コア、サイバー・ドラゴン・ノヴァ、サイバー・ドラゴン・インフィニティ、フルール・シンクロン、2体の銀河戦士を除外して融合!機光竜の力が今こそ結集し、膨大なる力を得た破壊竜と化す!さあ、全力でぶちかますぜ!融合召喚、レベル9!『キメラテック・オーバー・ドラゴン』!」

 

キメラテック・オーバー・ドラゴン

融合・効果モンスター

闇属性

機械族

レベル 9

攻撃力 8000

 

「こ、攻撃力8000!?」

 

それをも考慮していた亮太郎は、此処でとっておきの一手を打った。

攻撃を終えたランページ・ドラゴンを含めた、実に10体ものモンスターを融合素材として融合召喚したのは、10もの首を生やした機光竜。

その攻撃力は、驚異の8000…!

 

「オーバー・ドラゴンの元々の攻守は、コイツの融合素材としたモンスター×800ポイントだ!」

「あ、あぁ…!」

「オーバー・ドラゴンでダイレクトアタック!

オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァァァァァァァァ!」

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

Apollo LP 4000→-4000 LOSE

 

WINNER Ryotaro



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124話_終わりの始まり

先攻 Friagne LP 4000 VS 後攻 Raiga LP 4000

 

「僕の先攻か。

なら、まずは速攻魔法『竜呼相打つ』を発動」

 

竜呼相打つ(制限カード)

『竜呼相打つ』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:デッキから『竜剣士』ペンデュラムモンスター1体と『竜魔王』ペンデュラムモンスター1体を選んで相手に見せ、相手はその中からランダムに1体選ぶ。相手が選んだペンデュラムモンスターを自分のペンデュラムゾーンに置くか特殊召喚する。残りのペンデュラムモンスターは自分のエクストラデッキに表側表示で加える。

 

先攻となったフリアグネの発動した竜呼相打つ、デッキからペンデュラムモンスター2体を選んで、ランダムではあるがどちらかをリクルートかペンデュラムゾーンにセット出来、もう片方もペンデュラム召喚の為にエクストラデッキへと送れるという、制限カードに指定される程のカードパワーを持つ。

 

「竜呼相打つの効果でデッキから『竜剣士マスターP(ペンデュラム)』と『竜魔王レクターP』を選ぶよ。さあ、どっちか選んで」

「なら、俺は右側のカードを選ぶ!」

「選ばれたのはレクターP、よってこのカードを攻撃表示で特殊召喚。

選ばれなかったマスターPはエクストラデッキに送られるよ」

 

竜魔王レクターP

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 4

攻撃力 1950

 

その竜呼相打つの効果で登場したのは、異次元より来たと言われる竜魔族の王の、戦士としての姿。

 

「次に『竜魔王ベクターP』を召喚」

 

竜魔王ベクターP

ペンデュラム・通常モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 4

攻撃力 1850

 

次に登場したのは、その竜魔族の王の、本来の姿。

 

「僕は今召喚したベクターPとレクターPでオーバーレイ。2体のレベル4・ペンデュラムモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。奇術師の力を得た竜魔族の剣士が今、仲間達と共に大空を舞い、魔王を討つべく進撃する!エクシーズ召喚、ランク4!『昇竜剣士マジェスターP(パラディン)』!」

「エクシーズ召喚…

まさかアカデミアのモンキーにも、他の次元の召喚方法を使う奴がいたとはな」

 

昇竜剣士マジェスターP

エクシーズ・効果モンスター

風属性

ドラゴン族

ランク 4

守備力 2000

ORU 2

 

並び立った2体の竜魔王、それらを素材としたエクシーズ召喚の演出と共に登場したのは、日影が用いるマジェスペクターモンスターの力を得た竜剣士が騎士へと変貌した姿。

その姿、というよりフリアグネがエクシーズ召喚した事に驚きを見せる雷牙、以前キサラが遊矢とのデュエルでシンクロ召喚を見せる等、ホルアクティ・フォースには他次元の召喚方法を蔑視する様子は無さそうだ。

 

「エクシーズ召喚したマジェスターPの効果発動。

僕はこのターンのエンドフェイズに、デッキからペンデュラムモンスターをサーチするよ。

次にマジェスターPのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動。

エクストラデッキに表側表示で存在するマスターPを、攻撃表示で特殊召喚」

 

竜剣士マスターP

ペンデュラム・通常モンスター

光属性

ドラゴン族

レベル 4

攻撃力 1950

 

昇竜剣士マジェスターP ORU 2→1

 

マジェスターPの効果によって登場したのは、呪いによって竜魔族の様な力を得た剣士。

 

「更に儀式魔法『高等儀式術』発動」

 

高等儀式術

儀式魔法

手札の儀式モンスター1体を選び、そのカードとレベルの合計が同じになる様にデッキから通常モンスターを墓地へ送る。その後、選んだ儀式モンスター1体を特殊召喚する。

 

「僕は手札の『虚竜魔王アモルファクターP(サイコ)』を選び、デッキからベクターPを2体墓地へ送って降臨させるよ。寄生竜をその身に植え付けた竜魔族の王が今、その虚ろなる力を解き放ち、世界を意のままに蹂躙する!儀式召喚!虚竜魔王アモルファクターP!」

 

虚竜魔王アモルファクターP

儀式・効果モンスター

地属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 2950

 

そして、儀式召喚の演出と共に舞い降りたのは、セルゲイが用いるアモルファージモンスターを自らの身に植え付けた竜魔王が変貌し、更なる力を得た姿。

見た目は無論の事だが、その効果もまた、禍々しい事この上無い物と化している…!

 

「そして永続魔法『端末世界(ターミナルワールド)』を発動してターンエンド。

エンドフェイズに、デッキから2枚目のマスターPを手札に加えるよ」

 

端末世界

永続魔法

このカードはメインフェイズ1でのみ発動する事が出来る。

このカードがフィールド上に存在する限り、お互いのメインフェイズ2をスキップする。

 

Friagne

LP 4000

手札 1(竜剣士マスターP)

モンスター 昇竜剣士マジェスターP(守備表示)

      虚竜魔王アモルファクターP(攻撃表示)

      竜剣士マスターP(攻撃表示)

魔法・罠カード 端末世界

 

「端末世界か、面倒くさい物を立てやがって。

だったら俺のターンだ、ドロー!」

「おっと、アモルファクターPの効果でメインフェイズ1はスキップさせて貰うよ」

「な、何!?」

 

ターンを明け渡された雷牙、だが此処で、アモルファクターPの、その禍々しい力が解放された…!

その効果は、儀式召喚した次の相手ターンのメインフェイズ1を飛ばす、という物。

これはつまり、バトルフェイズに向けての準備が出来ない、だけじゃない。

 

「あと、端末世界の効果でメインフェイズ2もスキップするよ。

さ、スペルスピード2で使えるカードが無かったら、ターンエンドしてよ」

「た、ターン、エンドだ…!」

 

Raiga

LP 4000

手札 6

モンスター なし

魔法・罠カード なし

 

アモルファクターPと端末世界、メインフェイズを行わせず、速攻魔法以外のカードを使わせない凶悪なコンボの前に成す術なくターンを明け渡してしまった雷牙。

 

「僕のターン、ドロー。

さて、このまま決めようか。マジェスターPを攻撃表示に変えて、バトルフェイズに入るよ。

全員で総攻撃だよ!」

 

そんな雷牙の状況にも容赦しないと言わんばかりに(実際にそう仕組んだ張本人だから当然だが)、フリアグネが呼び出したモンスターの総攻撃が、雷牙に迫る…!

 

------------

 

先攻 Belpeol LP 4000 VS 後攻 Yukino LP 4000

 

「アタシのターン。

まずは魔法『名推理』発動」

 

名推理(制限カード)

通常魔法

相手プレイヤーはモンスターのレベルを宣言する。通常召喚可能なモンスターが出るまで自分のデッキからカードをめくる。出たモンスターが宣言されたレベルと同じ場合、めくったカードを全て墓地へ送る。違う場合、出たモンスターを特殊召喚し、それ以外のめくったカードは全て墓地へ送る。

 

一方、こちらのデュエルで先攻となったベルペオルは早速、墓地アドバンテージが重要視されるデッキでの代名詞と言って良い魔法、名推理を発動した。

通常召喚可能なモンスターが登場するまでデッキの上をめくり、それが宣言したレベルと同一なら全て墓地送り、違えばそれを特殊召喚してそれ以外にめくれたカードを墓地へ送るこのカード、その真価はむしろそれによって捲れたカードなら何枚でも墓地へ送れる点。

故に墓地アドバンテージが重要視されるデッキでの墓地肥やし手段として使われ、それが理由で制限行きとなった。

 

「さあ、レベルを宣言して貰おうかい。分かっているとは思うけど、レベルを外した場合は特殊召喚されるからねぇ、慎重に宣言するんだね」

「なら、4を選ぶわ」

「じゃあ始めるよ…

永続魔法『方界(カルマ)』、罠『スキル・プリズナー』、魔法『方界波動』、罠『方界合神』、2枚目の方界業、効果モンスター『流星方界器デューザ』…

おや、当たりだねぇ。そしたらデューザを含めて、めくれたカードは全て墓地へ送られるよ」

 

宣言したレベルが当たり、引き当てられたモンスターが出る事無く墓地へ送られはした。

だが名推理が入るデッキにおいてそれは大した事では無く、むしろ少なくない枚数を墓地へ送れた事の方が大きい、発動したベルペオルも、対峙する雪乃もそれが分かっているが故、ベルペオルは何処か余裕の笑みを浮かべる一方、雪乃は若干厳しい表情を見せる。

 

「さあて、とっとと決めちゃって他の連中の援護に出向こうかねぇ。たった今墓地へ送られた方界業を除外して効果発動!

デッキから『暗黒方界神クリムゾン・ノヴァ』を手札に加えるよ。

次に今手札に加えたクリムゾン・ノヴァを、手札の『方界帝ゲイラ・ガイル』と『方界獣ダーク・ガネックス』、『方界胤ヴィジャム』を見せる事で、攻撃表示で特殊召喚!

闇、闇、闇!光を喰らい、世を眩ませ、現れろ!暗黒方界神クリムゾン・ノヴァ!」

 

暗黒方界神クリムゾン・ノヴァ

効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 10

攻撃力 3000

 

その墓地へ送られたカードの効果によるサーチを経て登場したのは、ヒンドゥー教における『破壊』と『再生』を司る神シヴァをモチーフにしたと思われる、禍々しき姿のモンスター、クリムゾン・ノヴァ。

 

「そして魔法『デス・メテオ』を発動!」

 

デス・メテオ

通常魔法

相手ライフに1000ポイントダメージを与える。相手ライフが3000ポイント以下の場合このカードは発動出来ない。

 

「デス・メテオの効果で1000ダメージを受けて貰うよ!」

「きゃぁ!」

 

Yukino LP 4000→3000

 

「おや、発動するカード無しかい?なら、これでターンエンドだよ。

エンドフェイズにクリムゾン・ノヴァの効果発動!

互いに3000ダメージを受けて貰うよ!」

「な!?つまりさっきのデス・メテオは…!」

 

そう、終了間際に発動したデス・メテオ、それはベルペオルが先攻1キルを決める為に放った布石であったのだ…!

驚愕する雪乃の眼前に、

 

「さあ、派手に吹っ飛ぶが良いよ、神の炎によって!」

 

クリムゾン・ノヴァの頭に刻まれた眼の紋様から放たれた真紅の業火が迫る…!

 

------------

 

Side 月影

 

先攻 Tsukikage LP 4000 VS 後攻 Kisara LP 4000

 

「拙者のターン!

まずは永続魔法『ダイナミスト・チャージ』発動!」

「ダイナミスト…!

やはり、開発中だった6つのデッキの内5つは、貴方達が盗んだのでありますな…!」

 

ダイナミスト・チャージ

永続魔法

『ダイナミスト・チャージ』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:このカードの発動時の効果処理として、デッキから『ダイナミスト』モンスター1体を手札に加える。

2:1ターンに1度、『ダイナミスト』カードがフィールドから自分のエクストラデッキに表側表示で加わった場合に発動する。そのカード1枚を手札に加える。

 

む、どうやら拙者が発動したカードを見て、このデッキの出所を見抜かれた様でござるな。

まあ隠す程の事では無い以上、別段問題では無いでござるな。

 

「ダイナミスト・チャージの発動時の効果で、デッキから『ダイナミスト・プレシオス』を手札に加えるでござる」

 

さて、拙者が対峙しているキサラ殿は嘗て我らランサーズがシンクロ次元にいた頃、遊矢隊長がデュエルしたそうで、その実力は隊長と互角に渡り歩くほどの物だそうでござる。

その用いるデッキは【ブルーアイズ】、様々なサポートカードによって展開されたブルーアイズモンスターの膨大なステータスで蹂躙するのを得意とするデッキとの事でござる。

押し合いとなればかの悪名高い速攻魔法『リミッター解除』を使え、デメリットもペンデュラムモンスター故に余り気にならない我がダイナミストで返り討ちも狙えるでござるが、生憎今の拙者の手札にそれは無いでござる。

となれば、此処は耐え忍ぶのみでござるな…!

 

「臨・兵・闘・者・皆・陣・裂・在・前!拙者はスケール3の『ダイナミスト・ケラプトス』と、スケール6の『ダイナミスト・ブラキオン』で、ペンデュラムスケールをセッティング!」

 

Tsukikage

ペンデュラムスケール(青):3(ダイナミスト・ケラプトス)

ペンデュラムスケール(赤):6(ダイナミスト・ブラキオン)

 

拙者は早九字を切りつつペンデュラムゾーンに2枚のペンデュラムモンスターをセットし、

 

「これによりレベル4と5のモンスターを同時に特殊召喚可能!いざ進軍せよ、機械仕掛けの恐竜達よ!ペンデュラム召喚!レベル4、ダイナミスト・プレシオス!レベル5『ダイナミスト・レックス』!そしてレベル5『ダイナミスト・スピノス』!」

 

ダイナミスト・プレシオス

ペンデュラム・効果モンスター

水属性

機械族

レベル 4

守備力 1400

 

ダイナミスト・レックス

ペンデュラム・効果モンスター

水属性

機械族

レベル 5

守備力 2200

 

ダイナミスト・スピノス

ペンデュラム・効果モンスター

水属性

機械族

レベル 5

守備力 1800

 

3体のペンデュラムモンスターを守備表示で特殊召喚したでござる。

1体目は、とある国の湖に出没するとされたUMA(未確認生命体)に進化して今も生きながらえているのではないかと噂になった首長竜プレシオサウルスを模したロボット、プレシオス。

2体目は、恐竜で一番メジャーと言って良いティラノサウルスを模したロボット、レックス。

3体目は、背中のトサカ状の棘が特徴的で、一部ではティラノサウルス以上の強さを誇ったとまで言われる(実際、攻撃力ではこっちが上)恐竜スピノサウルスを模したロボット、スピノス。

 

「拙者はこのままターンエンドでござる」

 

Tsukikage

LP 4000

手札 0

モンスター ダイナミスト・プレシオス(守備表示)

      ダイナミスト・レックス(守備表示)

      ダイナミスト・スピノス(守備表示)

魔法・罠カード ダイナミスト・チャージ

 

一先ずはこれで急場をしのぐでござる。

ペンデュラムゾーンにセットした2枚のカード、その1つであるケラプトスは拙者のフィールドにいるダイナミストカードの戦闘及び効果による破壊を肩代わり出来、もう1つであるブラキオンは拙者のフィールドにいるダイナミストカードを対象とした効果を無効化出来るでござる。

もし仮にどちらかが破壊されても、ダイナミスト・チャージの強制効果で回収可能、よって再びペンデュラムスケールをセッティングする事も容易でござる、それら3枚に加えダイナミストモンスターが3体、これによってプレシオスによる相手モンスターの攻撃力低下効果は600となるでござる。

これで何とかこのターンは凌げそうでござるが…

 

「堅実な立ち上がりでありますな。ですが、我がブルーアイズの前にその様な布陣が無意味な事を教えて差し上げるであります!私のターン、ドロー!

まずは手札を1枚捨てて魔法『ドラゴン・目覚めの旋律』発動!」

 

ドラゴン・目覚めの旋律

通常魔法

1:手札を1枚捨てて発動出来る。攻撃力3000以上で守備力2500以下のドラゴン族モンスターを2体までデッキから手札に加える。

 

「ドラゴン・目覚めの旋律の効果で、デッキから『青眼の亜白龍』と『ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン』を手札に加えるであります」

 

む?今キサラ殿のカードの効果によって加わりし2枚のドラゴン族モンスターの中に、儀式モンスターを示す青いカードフレームが見えた様な…

 

「次に儀式魔法、高等儀式術を発動!」

 

やはり見間違えではなかったでござるな。

それにしてもブルーアイズの儀式モンスターでござるか、確かに結構前まで下火であった儀式召喚も今や融合やシンクロ、エクシーズ召喚と肩を並べるまでに地位を高め、我がランサーズにも雪乃殿やミエル殿、メアリ殿や白哉殿といった使い手がおられるが…

 

「私はたった今手札に加えたカオス・MAX・ドラゴンを選び、デッキから『青眼の白龍』を墓地へ送り降臨させるであります!今こそ君臨せよ、混沌を一身に受け止めた青き眼の龍よ!その力は天をも切り裂く!儀式召喚!出でよ、ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン!」

『ガァァァァァァァ!』

 

ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン

儀式・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 4000→3400

 

こ、攻撃力4000!?

今しがた儀式召喚の演出と共に登場した、その機械の様な鎧を纏った青白い姿のドラゴン、そのステータスの高さに、拙者は思わず驚愕したでござる。

然しながら、此処で驚くのはまだ早いと、直ぐに思い知らされたでござる。

 

「バトルフェイズに入るであります!

カオス・MAX・ドラゴンでプレシオスを攻撃!カオス・MAX・ドラゴンが守備表示モンスターを攻撃する時、その守備力を攻撃力が超えた分の、

 

 

 

倍の数値分、戦闘ダメージを与えるであります!」

 

ば、倍の貫通ダメージでござるか!?

倍の貫通ダメージと言えばマージョリー殿のエースカード『メタルフォーゼ・オリハルク』が持っているでござるが、まさかレベル8で左様なステータスを持ちながら…!

 

「これで決めるであります!混沌のマキシマム・バースト!」

 

左様な驚きで固まる拙者の眼前に、カオス・MAX・ドラゴンの顎から放出されたブレスが迫る…!

 

 

 

 

 

「確保対象を保護した!もう此処に用は無い、ずらかるぞ!」

「セルゲイ殿、かたじけない!」

「分かったわ、随分と早かったわね!」

「仕方ねぇ、引くか!」

「じゃあな、アカデミアさんよ!」

「なっ!?」

 

が、それが届く事は無かったでござる。

拙者及びホルアクティ・フォースのメンバーとデュエルしていた(と思われる)雪乃殿と雷牙殿へと向けて迫っていた攻撃、それが届く寸での所でセルゲイ殿と思われる声と共に我らを掴んだ触手らしき物、それによって我らが引っ張り上げられ、事なきを得たでござる。

 

「お、追うでありますよ!」

「勿論さ!」

「分かっているよ!」

「フン、ホイホイ捕まる等と美しくないヘマはしない!全速前進だ!」

 

何やら後方でキサラ殿達が追いすがろうとしていた様でござるが、セルゲイ殿がロケットエンジンらしき機構を形成、噴射した事による高速飛行によって瞬時に離脱したでござる。

それから数秒経つと、横合いから何やら巨大な飛行物体を見つけたでござる、あれは一体、

 

「月影!そちらも任務遂行した様でござるな!」

「兄者!左様にござる!」

「ほぉ、俺の手を借りる事無く、黒咲瑠璃に巣食っていた虫を排除したか。黒咲隼、実に美しい兄弟愛だ!」

「当然だ、と言いたいが、俺1人ではどうだったか、な…」

 

其処に乗っていたらしい兄者の声からしてどうやら味方のそれでござるな、しかもよく見ると何やら鳥の様な姿形、これは隼殿のRRモンスターでござろうか?

まあ何はともあれ瑠璃殿とリン殿の身柄も確保して任務完了、後は身を潜める場を探し、遊矢隊長へと連絡を取るのみでござるな。

 

------------

 

Side ????

 

「申し上げます、一大事です!東西の塔にて拘束していた2人の『ピース』が脱走しました!どうやらランサーズの者が1枚噛んでいるとの事です!」

「な…!?

警備に当たっていたホルアクティ・フォースはどうしたのだ!?」

「ど、どうやら侵入者を全て食い止めるには至らなかった様で…」

「馬鹿な、何の為の配備だと考えているのだ…!」

 

瑠璃とリンの脱走、その知らせは直ぐ様、零王の下にも入り、余りの事態に呆然自失といった状態となっていた。

 

「『ピース』は全て失い、一方で榊遊矢は別次元の自分をも手中に収めたに違いない…

別次元から連れて来た市民も粗方脱走され、デュエル戦士達の士気もがた落ち…

頼みの綱であるホルアクティ・フォースも状況を変えるには至らない…

 

もう駄目だ、お仕舞いだ、世界はまた、悪魔の手によって滅びの道を辿る事になる…!」

 

状況は最早絶望的、それを思い知ったかの様な言葉を吐くしかなかった零王。

然しながら彼は知らない、その『悪魔』は、ズァークは、既に遊矢によって『完全に』殺された事に。

その一筋の希望を掴むのは、もう少し先の話…




今回で8章は終了、次回から9章、この『遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~』の最終章に入ります!


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9章『Climax!融合次元での最後の戦い』
125話_思わぬ待ち人


「此処が、融合次元か。何て言うか、ヨーロッパの街並みってイメージそのまんまな風景だな」

「確かにそうだな。融合次元へと来たのは3年ぶりだが、余り大きな変化は見られない。と言ってもその時に私が飛ばされたのはアカデミアで、周りの風景を見る余裕はそれ程無かったが…」

 

月影からの報告を受けた翌日、俺は融合次元へと転送、市街地に足を踏み入れていた。

4つの次元全体が関わるデュエルアカデミアの侵略、それを阻止する為に各次元を飛び回った俺達ランサーズの活動の締めくくりとなる、アカデミアのトップで零児の父である赤馬零王との直談判の為に。

その為に今回連れてきたメンバーは零児と、

 

「此処が、融合次元…

何処か、殺伐とした雰囲気がするわね…」

「ふむ、何処か古風な佇まいだ。これで殺伐とした雰囲気を醸し出していなければ完璧だが…」

「何の考えを巡らしているんだよお前は」

「何つーか、物々しいって言うのかな、そんな感じだぜ…」

「正に軍事都市か、風情って価値観がねェのかァ…?」

 

柚子達ARC-Vメンバー、

 

「しかし遊矢、私や柚子が此処に来ても大丈夫なのか?増してやアイツらまで…」

「兄様が了解しているなら、大丈夫だと思う」

 

V-CRANからセレナと零羅、

 

「痛い痛い痛い痛いギブギブギブギブ!腕ひしぎは痛いからやめて!」

「だったら次は吊り天井じゃぁぁぁ!」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「…何時までプロレス技をソイツに掛けているんだ、ユーゴ。此処から先はふざけていられないぞ」

 

そしてつい最近発見された『異次元の俺』ことユートとユーゴ、ユーリ。

まあユーゴがユーリにプロレス技を掛けているのは何時もの事だ、流そう(此処に転送されるまではユートも一緒になって掛けていたが、流石に此処では真面目にしていた)。

と、其処へ、

 

「方々、遠路はるばるお疲れ申し上げるでござる」

「月影こそ、今日までのアカデミアでの潜入任務、ご苦労だった。お前達の活躍が、事態を此処まで導いたと言っても過言じゃない。ありがとう」

「勿体無きお言葉にござる。一度引き受けた任務は命を賭けて完遂する、我ら風魔の掟に則った迄」

 

報告を入れてくれた月影本人が、迎えとしてやって来た。

昨日はその月影の報告の詳細が気になって、イマイチ眠れた気がしないんだよな…

 

『もしもし、俺だ』

『月影にござる、遊矢隊長。今しがた、リン殿、黒咲瑠璃殿を保護しまして候』

『そうか、そっちも順調の様だな。こっちもエクシーズに派遣されていたアカデミア軍の無力化に成功した所だ』

『左様でござったか、迅速な任務遂行、お疲れ申し上げる。今両名の身柄は、現地における味方となりうる方に移しまして候。

 

 

 

隊長殿達にとって縁のある方々でござる』

『なんだって、それは本当なのか?分かった、皆にも伝えて置く…』

『それとセルゲイ殿が提案していた人質解放の件、滞りなく遂行し、今第4部隊の一部メンバーが他次元への帰還を指揮しておられる所にござる。半日あれば完遂できるでござ候』

『了解だ、後は俺達が向かうだけか。さっきの件からして、少し寄り道するべきだな…』

『承知。では拙者が出迎えに』

『連絡は以上か?分かった、じゃあまた後で会おう』

 

という、リンと瑠璃を救出した事の報告においてやり取りがあったんだが、俺達に縁のある『方々』?

方々って事は複数人だよな、1人だけは予想が付くんだけど、後は見当も付かないな、一体誰だ…?

 

「さて、色々と気になっておられる様子、今リン殿と瑠璃殿が居られる場へと案内するでござる。ささ、此方へ」

 

と、そんな様子を察知した月影の先導で俺達は案内され、

 

「此方がリン殿、瑠璃殿、そしてこの次元での協力者が居られる場所でござる」

 

何やら小高い丘の上に聳え立つ岩山、にカモフラージュしたレンガ造りの建物へと連れていかれた。

俺の予想通りなら、此処は…!

 

「此処はマージョリー殿の様にデュエルアカデミアの方針に反感を抱き、アカデミアから脱出した方々が本拠とする場所…

 

 

 

方々のデュエルスクール、人呼んで『遊勝塾』にござる」

「ゆ、遊勝塾!?」

「な、何と!?この融合次元の地に、遊勝塾が!?」

「ウソダドンドコドーン!」

「何だって!?それは本当なのか一行!?」

「何で俺に振るンだ当麻ァ!」

 

ああ、やっぱしか。

月影から打ち明けられたその真実に、うすうす感づいていた俺と零児、父さんとは、遊勝塾とは余り関係の無いセレナ達は大して驚かなかった一方、遊勝塾関係者であ5人、というかARC-Vメンバー全員は驚愕に満ち溢れていた、というか当麻、びっくりする気持ちはわからんでも無いが一行に振るなや。

…まあそんな関係ない所でのツッコミは後にして、だ。

報告の時に仄めかす様な月影の発言でもしかしたらと思ってはいたが、まさか父さんがこの融合次元に来ていたとはな、もしかしたらエクシーズ次元に来て少し経った時、行方不明になったタイミングで融合次元へと転送されたのかな。

と予想が当たっていた事で思わず油断した為か、月影が報告の際に言っていた事を一部忘れていた。

 

「此方にリン殿、瑠璃殿、そして此処の代表の方が居られるでござる」

 

月影に案内されたとある部屋で、

 

 

 

「久しぶり、十代!」

「遊星!会いたかった、ずっと、会いたかった…!」

「お帰り、遊馬!」

 

俺は、嘗て一生を共にした3人の声を、姿を、感じ取ったんだ。

そして抱き付いて来たっぽい3人らしき存在による衝撃が身体に、って、

 

「あ、明日香に、アキに、小鳥!?」

「ええ、私よ、明日香よ、十代!あ、今は遊矢、だったわね」

「そうよ、アキよ、遊星!」

「うん!小鳥よ、遊馬!」

「え、え、明日香さん達が、この遊勝塾に…?

これって、いつぞやの夢の続き…?」

『わ、わーお…

まさか3人も、転生して来たクチ?』

 

夢でも、幻でも無かった。

俺の眼の前には、俺の前世での恋人達、天上院明日香、十六夜アキ、観月小鳥、3人の、見間違える筈も無い姿が、俺との再会に感激していると言わんばかりの泣き笑い顔があった。



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126話_リバイバル・ゼロ

「さて今日、この遊勝塾に皆を連れて来たのは他でもない、全ての真相を皆の前で話す為だ。各次元の『俺』と『柚子』、その親族である父さんとエレンと隼、ランサーズにおいてのトップシークレットを知るARC-Vとフォースハウンド、そして零児、貴方に全てを話す為に。明日香とアキ、小鳥が此処にいたのは予想だにしなかった事態だが、問題は無い」

 

融合次元のとある都市にある遊勝塾、その一室で俺は、眼前で着席している皆に向けて、そう切り出した。

いやぁ、此処に柚子達を連れて来た理由がこれだと言うのに、想定外の人物との再会に思わず我を忘れて喜んじゃったからか、遅くなっちゃったな。

 

「びっくりした、遊矢?」

「そりゃあびっくりだよ、明日香…

まあジャックやクロウ、鬼柳にカイトが転生して来た例があるからもしかして、と思わなくもなかったけど…」

「あら、ジャック達もこの世界に転生して来たの?」

「ああ、アキ。アイツらシンクロ次元でのスターになって、毎日仲間達との満足出来るデュエルに明け暮れているよ」

「カイトは、どんな様子だった?」

「カイトが転生して来たのは俺達より60年位前だったから、かなり年食った爺さんになっていたよ、小鳥。色々あって何処かやつれた様子だったな…」

「あ、其処にいるのが今の遊矢の彼女、柊柚子さんね。初めましてと言うべきかしら、柚子。あの時の夢で会って以来ね」

「は、はい!初めまして、明日香さん、アキさん、小鳥さん!」

「もう少し砕けた感じで良いわよ、同じ男性を愛している人同士なんだから。私だって明日香達の事は呼び捨てだしね」

「いや、急にそう言われても柚子が困ってますよ、アキさん。私だって未だにちょっと他人行儀な感じなのに…」

「というかユベル、柚子や遊矢に伝えていなかったの?私達が転生して来た事」

『いやボクも、ボク達の記憶に眠っている明日香達の残留思念を呼び出した的な感じでやったと思っていたから気付かなかったよ…』

 

その人物、明日香とアキ、小鳥と再会を喜び合い、其処に柚子やユベルも輪に加わっていた一方、

 

「父さん、3年も一体何処ほっつき歩いていたんだよ!母さんや遊矢兄ちゃん、俺や遊勝塾の皆ずっと、心配していたんだぜ!」

「本当だぜェ、遊勝さン!その間ずっと、遊矢が講師として必死こいて皆を引っ張って行ったンだ!」

「あの時は遊矢、遊勝さんの事で色々言われていて、本人は毅然と撥ねつけていたけど内心傷ついていたと思いますよ…」

「これよさぬか、遊勝さんにも色々あったのだぞ」

「済まなかった、エレン。それに一行君も当麻君も権現坂君も。皆、随分と大きくなったな」

 

同じく部屋で待っていた父さんがエレン達と再会して、エレン達が喜びつつも行方不明になっていた件で色々言っていたり、

 

「リーン(ごすぅ!)ぐぼっ!?」

「遅い!何よ今頃!ずっと待っていたんだから…ずっと不安で…心細くて…怖くって…!

ユーゴのバカ!」

「リン…」

 

また同じく部屋で待っていたリンが、駆け寄って来たユーゴの腹に膝蹴りをぶちかますというストロング感丸出しな展開があったかと思ったら、数年間に及ぶ監禁生活の心細さを涙ながらに打ち明けてユーゴに抱き付いていたり、

 

「瑠璃!やっと、やっと会えた…!」

「ユート…!」

「良かったな瑠璃、ユート。これからはずっと、皆一緒だ」

「妹さん、良かったわね」

 

これまた同じく部屋で待っていた瑠璃がユートとの再会で仲睦まじい様子を見せ、それを隼と遊香が微笑ましい様子で見ていたりといった感じだったからな。

そんな本題そっちのけな状況を変えたのは、

 

「んん!皆、再会の喜びに浸るのは分かるが、今日ここに集まったのは遊矢から何か発表があるから、では無かったか?」

「零児の言う通りだ。遊矢、私達を此処に連れて来た当の本人であるお前が目的を忘れてどうする」

 

この状況から蚊帳の外になっていた零児とセレナだった(ユーリは何処か居心地が悪そうな感じで言い出したくても言い出せない様子、セルゲイや零羅は我関せずといった様子だった)。

 

「あ、そうだった。皆、再会を堪能したい気持ちは有るだろうけど、一先ずは俺の話を聞いて欲しい。其々、好きな席に着いてはくれないか?」

 

零児達の指摘で本来の目的を思い出した俺は、皆に所定の席に着くよう促し、皆も応じてくれた(父さんはどうやらこの3年間の間に足を悪くした様で、杖をつきながらだった)。

そして冒頭に戻り、俺は全てを話し始めた。

 

「さて皆は、この世界には此処融合次元を含む4つの次元が存在する事は知っていると思う。けど、その4つの次元全てにデュエルモンスターズというカードゲームが殆ど同じルールで大昔から存在し、それが例外なく社会に浸透しているのは何故か、そう考えた事は無いか?」

「む、確かにそう言われてみると不思議だ。余りに浸透し過ぎて、疑問にも思わなかったが…」

「その謎、そして今の状況に至った理由…

全ては今から遥か昔、4つの次元がまだ1つだった頃に遡る」

「何!?この世界は元から次元が4つあったのでは無かったのか!?」

「1つだったんだ、大昔はな。その世界では今の4つの次元の様にデュエルモンスターズが、今のルールのまま存在し、その影響力は今の何処の次元にも遜色ない程、しかも融合、シンクロ、エクシーズ…

今では其々の次元に分散された、エクストラデッキからモンスターを呼び出す方法、嘗てはそれが全てあったんだ。一方その世界にはソリッドビジョンを発展させたリアルソリッドビジョンも存在していたが、この頃はまだまだ黎明期、家庭用インテリアや企業のモニュメント的な物程度にしか使われなかった。それが或る日とある科学者によって、デュエルのシステムとして導入、モンスターのリアルソリッドビジョン化が成し遂げられ、デュエルモンスターズもリアルソリッドビジョンも革新の道を突き進み、今俺達の次元を発信地として浸透してきているアクションデュエル程の臨場感と白熱感をもたらし、その科学者は時代の寵児として称えられた。それを成し遂げた科学者、その名は…

 

赤馬零王」

 

その話の中で、4つの次元が元は1つだったという事実には若干名驚いたのがいただけだった一方、その中で今やアカデミアのトップに君臨する赤馬零王が、そんな大昔に科学者として名を馳せていたという事実に部屋内はざわつき始めた。

まあそりゃそうだろうし、信じていない存在もいるだろうが、続けるか。

 

「だがそんな激しく熱いエンターテイメントとしてのデュエルは、とあるデュエリストの台頭と共に終焉へと向かう事になる…

そのデュエリストは『自分にはモンスターの声が聞こえる』と公言し、実際にモンスターと心を通じ合わせたかの様に共に走り、飛び、フィールドを駆け回り、勝ち上がって来た。そんな彼に触発されるかのようにライバルは彼に追いつけ追い越せという姿勢でデュエルは過激化、観客はそんな過激化するデュエルを楽しみ、デュエリスト達に更なる過激化を要求して行く、正に過激化のスパイラル、そんな中でもそのデュエリストは4体の、其々の召喚方法における『頂点の竜』をエースカードとして勝ちを重ね、頂点に上り詰めた。そして過激化のスパイラルに呑み込まれながらも勝ち続けた彼は暴走、リアルソリッドビジョン化したモンスターを駆使して、いや、観客の求められるままに動く事を強いられたモンスター達の怒りを解き放ち、世界に対する破壊活動を繰り広げた。そのデュエリストの名はズァーク…

 

各次元に存在する『俺』達、ユート、ユーゴ、ユーリ、そして俺、そのオリジナルとなった人物だ」

「な、何だって!?」

「俺達が、世界を破壊したデュエリスト…!?」

「そ、そんな馬鹿な…!?」

「う、嘘でしょ…!?

ユーゴが、そんな…!?」

「ユートが、世界を破壊していた『悪魔』…!?

そんな、そんな筈は…!」

「遊矢…

何というか、訳ありな存在によく転生するわよね…」

 

更に明かされた各次元に存在する『俺』の真実、それに他次元の『俺』ことユート達3人と、リンと瑠璃が信じられるかと言わんばかりの様子を見せた一方、ランサーズの活動においてずっと行動を共にし、その最中で起こったあの出来事を、それによって起こった俺の変化を感じ取っていた柚子達や、前世で俺の過去を聞いていた明日香達は感づいていたのか複雑そうな表情を見せた(セレナ?ユーリとは面識が殆ど無いしそれほど反応は無かった)。

 

「ズァークの、彼のモンスター達の破壊衝動は留まる事を知らず、更なる破壊の為に力を追い求め、4体の頂点の竜とズァークは融合、神にも等しき力を持つ『覇王龍ズァーク』と化して更なる破壊を始め、抵抗するデュエリスト達をなぎ倒していった。最早彼を、覇王龍ズァークを止める事は不可能と思われ、世界は終末へのカウントダウンを刻んでいった」

「あ、あぁ…!世界が、滅んでいく…!お願い、止めて!」

「零羅!?この尋常じゃない様子…!

遊矢、それは、その話は、作り話では、無いのだな…?」

 

そして話を進めている中で何かを感じ取ったのか怯えた様子を見せた零羅を見て、零児はこれが本当の話であると確信を持ってくれた。

その加害者の片割れたる俺だからか、その様子に複雑な心境を覚えるが、続けよう。

 

「はい。だが終末の時は回避された。赤馬零王が、大自然が持つ膨大なるエネルギーを用いて作り出された4枚の魔法カード『エン・フラワーズ』『エン・バーズ』『エン・ウィンズ』『エン・ムーン』…

それによって覇王龍ズァークは元の4体の『頂点の竜』に分離、ズァーク自身も4人、つまり今の『俺』達に分離された事で封印が成され、世界の終末は寸での所で回避された。然しその代償は大きく、封印の為の4枚のカードを使ったデュエリストも、1つだった世界も、覇王龍ズァークの分離に巻き込まれる形で其々4つに分離した。それによって分離し、長い年月を経て其々独自に発展した4つの世界こそ、今ある4つの次元なんだ。其々に殆ど同じルールでデュエルモンスターズが存在するのは、其々の次元に固有のエクストラデッキからモンスターを呼び出す術があるのは、それが理由なんだ」

「だとしたら遊矢、その、ズァークを封印したデュエリストと言うのは…」

「ああ、その封印したデュエリストの名は赤馬レイ、赤馬零王の娘で、各次元に存在する『柚子』達、セレナ、リン、瑠璃、そして柚子、そのオリジナルとなった人物だ」

「わ、私達が元は、プロフェッサーの娘だと!?」

「私達は元々、赤馬零王の娘!?」

「嘘でしょ!?私達を拉致した人が、父親だったなんて…!」

「そんな、そんな事が…!?」

 

世界を破滅へと導いた覇王龍ズァーク、それを阻止した赤馬零王の娘レイ、その2人が、その欠片たる俺達が長い年月を経てこうして一堂に会して驚愕の真実を明かされる、それにざわめきが更に増していく室内。

 

「す、少し待ってくれ遊矢!今までお前が話してくれた事が真実だとしてもだ、その『頂点の竜』か?話の流れから言ってエクシーズ召喚の頂点の竜があり、それは俺が持っている筈だが、俺はそれを持った事も無ければ見た事も無い!」

「俺もシンクロ召喚の頂点の竜を持っている筈だ、けれど俺、んなもん知らねぇぞ!」

「僕もだよ!僕は融合召喚の頂点の竜を持っている筈だけど、そんな物は持っていないし知らない!」

 

それに待ったをかけたのは、他次元の『俺』3人。

その頂点の竜の存在に見当がついた面子は「何言っているんだコイツ」と言いたげな、怪訝な視線を3人に向けているが、3人共に嘘はついていない(・・・・・・・・)

何故なら、

 

「知らなくて当然だ。お前達を覆う様に巣食っていた『ズァークとしての意志』、それを目覚めさせるきっかけとなるであろう頂点の竜の記憶、それを頂点の竜のカードごと、俺が呑み込んで消化したからな。知らなくて、持っていなくて当然だ」

「ゑ?」

 

ズァークに関する事は全て俺が請負、既に解決しちゃったからな。

 

「まあそれは一先ず置いて、赤馬零王は長い年月を経て今、俺達の次元へとやって来て、『俺』達と『柚子』達も、今この時に転生を果たした。其処には何かしらの干渉らしきものがあった様だが、まあ今話す事では無いな。此処から先は今までの話を踏まえた、俺の推測だ。零児、赤馬零王が残したファイルに『アークエリア・プロジェクト』と『リバイバル・ゼロ』なる計画の概要的な物があったでしょう?」

「ああ。確かあれには4つの次元に其々存在する『君』達と『柚子』達がそのキーパーソンに挙げられていたが…まさか?」

「ええ、そのまさかです。赤馬零王がアカデミアに属する大量のデュエル戦士を各次元へ送り、侵略を行わせつつ、各次元の『柚子』達をアカデミアに集めていたのは、4つに分断された各次元を再び1つに戻すアークエリア・プロジェクト、そして4人に分かれたレイを再び1人の人間として蘇らせるリバイバル・ゼロ、その実現の為なんだ」

 

そして俺の口から出て来た、アカデミアによる侵略の真相を聞き、言葉を失う皆。

その心中で渦巻いているのは果たして、実は世界を元に戻したいという大義の為に動いていた赤馬零王に対する複雑な想いか、どんな理由であれ各次元への侵略を行った事に関する怒りの再燃か、その原因となったズァークに対する憎悪か、或いは…

と、その時、

 

「な、何これ!?」

「ブレスレットが!?」

「光を放って…!?」

「一体何が起こって…!?」

 

柚子、セレナ、リン、瑠璃…

4人の『柚子』達が身に着けていたブレスレットが突如光を放ち出した。

そういえば其々が着けているブレスレットは、あの回想でズァークを封印したレイが発動した4枚の魔法カードが変化して出来たブレスレットだった、となると…!

 

「遊矢、これは一体どういう事だ!?」

「一体全体、リン達に何が起こってるんだよ!?」

 

間違いない…!

 

「始まったんだ、リバイバル・ゼロが!」

『な!?』

「さっき話した通り、レイがズァークを封印した際に今の『柚子』達4人に分かれたが、その直前、4枚の魔法カードの力が其々をモチーフとしたブレスレットとなり、レイの腕に身に着けられたんだ。そしてそれが今の『柚子』達にも受け継がれている…

つまりあのブレスレットには4枚の魔法カードの力が、ズァークの復活を阻止するための力が宿っているんだ。だがさっき言った様に俺がズァークを呑み込んだ事で、ズァークは『完全なる死』を遂げた。ならもう魔法カードの役目は、その力を受け継いだ『柚子』達の役目はもう終わったという事だ…

ズァークの復活阻止という役目が終わった以上、魔法カードは、ブレスレットは、『柚子』達は…!」

 

必要ない、という事になる…!

 

「何を呑気に説明してんだよ!?レイだかズァークだか、リバイバル・ゼロだか何だか、難しい事はしらねぇけど、俺にとっちゃリンこそが俺にとっての大事な存在なんだよ!何とかしろや!」

「瑠璃が昔どんな存在だったか等どうだって良い!俺にとっては今の瑠璃こそが大事な妹なんだ!また再び一緒になれたのに、それを誰かの勝手で引き裂かれてたまるか!何とかならないのか!?」

 

余りの事態に激昂し、俺に詰め寄るユーゴと隼。

ああ、その気持ちはよく分かる…!

 

「俺だって同じ想いだ!俺が嘗てどんな存在だったか、柚子がどんな存在だったか、それを加味したとしても、俺にとって柚子は大事な恋人なんだ!ずっと一緒にいたい、失いたくない気持ちはお前達と一緒だし、失わせはしない!下がって見ていろ、俺が何とかして見せる!」

 

そう言い放ち、ブレスレットから更なる光を発した状態の4人に近づき、

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

覇王の、いや、ズァークをも取り込んだ今の俺の『力』を解放した…!



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127話_決闘皇、覚醒

Side ????

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

「っ!?ま、眩しい!?」

「い、一体何なの、この無茶苦茶なまでに吹き上がっている力は!?」

「遊矢の身に、一体何が起こっているんだ…!?」

「リン!リンは大丈夫なのか!?」

「瑠璃ィィィィィィィィィィィ!」

 

各次元の『柚子』達を統合する、実質的な『リバイバル・ゼロ』が始まろうとしていた最中、己に宿りし『力』を解放した遊矢、次の瞬間、遊矢達のいた部屋中が真っ白に染まる程の眩き光に満たされた。

それと共に遊矢から吹き上がる『力』の奔流、自らの『力』によってそれを感じ取った遊香は、その余りに膨大な『力』の強さに驚愕し、一方で遊勝やユーゴ、隼は自らの身内の安否を案じる。

一方、

 

「此処まで凄まじい力の奔流…

遊矢、また1つ強くなったのね。これなら、柚子達も絶対に助かる…!」

「そうですよね、アキさん!遊矢なら絶対に出来る、必ず柚子達を助けられる!」

「ええ、アキ、小鳥!私達は信じているわ、遊矢、貴方の無事を、柚子達を助け出す事を!」

「おぉ…!

榊遊矢の美しさは、初めて会った時点でこれ以上の物は無いと言って良い程だと思っていたが、まさか更なる美しさを得たとは、実に素晴らしい…!」

 

前世で遊矢と一生を共にして来た明日香、アキ、小鳥はその力に希望を強く抱き、セルゲイは更なる力を得た遊矢を崇めていた。

そして、

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

遊矢が上げていた雄叫びが一際大きくなったと思ったら上げ終わったかの様に聞こえなくなり、同時に部屋中を満たしていた光が晴れ上がる。

それによって全貌を見渡せるようになった部屋には、

 

「柚子!しっかりするんだ!」

「セレナ!無事か!?」

「リン!大丈夫か、リン!?」

「瑠璃!良かった、無事だ…!」

 

実質的なリバイバル・ゼロによってその身が消滅する危機に直面していた各次元の『柚子』達が、机に突っ伏した状態で気を失ってこそいたが健在だった。

だが何も無かったという訳では無く、其々の腕に身に着けていたブレスレットが消えていた。

然しそれに気づく存在は殆どおらず、

 

「柚子達と同じ顔した女の子が、もう1人いる…?」

「もしかしてあの子が、遊矢が言っていた、レイ…?」

「という事は、柚子達が健在なまま、リバイバル・ゼロは成された、という事ですか…?」

 

寧ろ部屋の中に『新たに現れた』1人の『柚子』達とそっくりな少女の存在と、

 

「ゆ、遊矢!?その姿は一体…!?」

「ま、まるで天使みてェだ…!」

「髪も何ていうか、昆布?」

「当麻兄ちゃん、この期に及んで何ボケてんだよ…」

 

トマトを思わせる髪型から、昆布を彷彿とさせる深緑の太腿まで伸びたサラサラなロングヘアーとなり、背中から天使をイメージさせる4対の、純白の羽を生やした遊矢の変貌が注目を集めていた。

 

「ふう、どうやら成功した様だな。赤馬零王が掲げていた『リバイバル・ゼロ』は『柚子』達を犠牲にする事無く成された。ズァークも俺が呑み込み、復活する事は無くなった。これで赤馬零王が交渉に応じてくれれば良いが…

ん?何だお前ら、おジャマ・ブルーが滅びの爆裂疾風弾食らった様な顔して」

「遊矢兄ちゃん、其処は『鳩が豆鉄砲食らった様な顔』じゃないの?」

「いやいやいや遊矢、その姿とか色々とおかしいだろ今の状況!」

「一体何がどうなっておるのだ、お前はどうやってこの状況に…?」

「エレンも突っ込む所其処かァ?」

 

そんな混乱にも我関せずといった様子で、何やら納得した様な挙動を見せる遊矢、自らの変貌に驚いていた周囲に何故か、キョトンとした様子を見せていた。

それに対する周囲の突っ込みで漸く状況を理解した遊矢は、口を開いた。

 

「俺は、俺に宿りし力…

『覇王』の力、シグナーとしての力、ゼアルの力、そしてズァークを取り込んで手にした力…

それら全てを混ぜ合わせて調和させた力を解放し、人ならざる存在として生まれ変わった。その力を用いて『柚子』達の魂を覆っていたレイの意志を分離し、統合、そして生まれ変わらせたんだ。俺がユート達の、他次元の『俺』の魂を覆っていたズァークの意志を分離した上で取り込んだ様に」

「人ならざる、存在…?」

「そうだ。まあそれは後でまた話すよ、話はまだ終わっていなかったし。といっても続きは柚子達が起きてからかな」

「ん…」

「ふぁ、何だったんだ、今のは…」

「あれ、此処は…」

「ふぅ…」

「お、噂をすれば。レイが起きていない様だが…

まあずっと柚子達の中で眠っていたんだ、無理もないか。誰か、ベッドのある部屋に彼女を」

 

今起こった事態の顛末をさらりと話した遊矢は、柚子達が起きたのを確認し、皆を再び席に着かせて、再び話始めた。

アカデミアによる侵略の終結、そしてこれからの4つの次元を導くという決意を込めて。

 

「赤馬零王は『世界を1つに』という聞こえの良い、然しながら嘘では無い大義を掲げて各次元への侵略を始めた。だがズァーク封印の余波によって分断されたとは言え、其々の次元には其々の住人達が、デュエルが、文化がある。分断された後の世界が、人々が血のにじむ努力でつみあげて来たミームがある。どんな理由があれ、それをぶち壊して良い訳がないんだ。俺達はそのアカデミアの侵略を止め、4つの次元の手を取り合わせる為にランサーズを結成し、各次元を奔走した。時には信念に反する行為を、アカデミアに属するデュエル戦士達の笑顔を奪う事も行った。だがその日々も今日を以て1つの終わりを迎える。アカデミアによる各次元への侵略は潰え、赤馬零王が掲げた1つであるリバイバル・ゼロも成された。滅亡へと導く火種となるズァークも俺が呑み込み『完全なる死』を遂げた!赤馬零王が掲げた大義は既に消えたも同然!そして今日この日、俺達と赤馬零王との直談判でケリをつける!

 

然しながらケリをつけても侵略による傷が治る訳じゃない。どれ程手を尽くしても完全に元通りになる訳じゃない、侵略によって付いた傷はそれ程根深い物だ。俺も今この時、人ならざる存在となった。まあ何度も転生している奴が今更ナニイテンダって話だけどな。

 

ならば俺は新世界の皇となりて、皆を笑顔溢れる理想の世界へと導こう!これから俺の事は『決闘皇(デュエルマスター)』ユシウスと呼ぶが良い!」

 

そして、そう宣言した。

 

------------

 

「立派になったな、遊矢。いや、ユシウスと呼んだ方が良いか?私が元いた次元を離れて3年で、此処までになるとは驚いた。子供の成長は凄まじいと言うが…」

「そうかな、父さん。もう前世含めれば300年も生きていたから、正直分からないや。あ、急に言っても何言っているんだって話だよな」

「いや、大丈夫だ。お前が嘗ての世界で歩んで来た人生は、明日香君達から全て聞いている」

「そっか。でも俺は父さんの息子だって、息子で良かったって、今でも思っている。父さんが教えてくれたエンタメデュエルの神髄、それがあったからこそ今までやって来れたんだから」

 

遊矢、いやユシウスが終結を宣言してから少し経ち、室内に未だ残っていたユシウスと遊勝は2人、親子水入らずのひと時を過ごしていた。

他のメンバーは其々思い思いの場所に散らばり、レイが目覚めるまで其処で過ごす事になっている。

 

「エンタメデュエルの神髄があったからこそ、か。それにしては、随分とやりたい放題やっていた様だが?一行君達から聞いたぞ、シンクロ次元での所業を」

「あ、はは…

確かに俺は、デュエルを政治的な道具として使ったり、アカデミアに属するデュエル戦士達の笑顔を沢山奪ったりした。殊に後者は、彼らに恐らくは未来永劫消える事が無いであろう根深い傷を刻んだ。どんな理由であれ、そんな事をする免罪符にはならない。そういう意味で俺は赤馬零王と何ら変わりない、榊遊矢としての『俺』の前世たるズァークとも。

 

だから俺は今後ずっと、その罪を背負って、生きていく。生きて、奪い取った以上の笑顔を、世界中の皆に齎す!」

 

そんなひと時の中、遊勝はユシウスのシンクロ次元での所業、恐らくは『アンドバリの指輪』作戦に関して何か言いたげな様子を見せた。

そんな遊勝に対してユシウスは、己の罪を受けとめ、前に進む決意を示した。

 

「…そうか、ならば私からあれこれ言うのは止そう。

代わりと言っては何だが、久しぶりに私とデュエルだ!デュエルを通じて、お前のその意志が揺るぎない物か、見せて貰う!」

「はは、そう来たか。分かった、父さん!さ、早速始めようか!」

「「デュエル!」」

 

先攻 Lucius LP 4000 VS 後攻 Yusho LP 4000

 

「俺の先攻!

まず俺のフィールドにモンスターが存在しない事から、手札の『ジャンク・フォアード』を守備表示で特殊召喚!」

 

ジャンク・フォアード

効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 3

守備力 1500

 

その決意を見た遊勝とユシウスの間でふと始まったデュエル、先攻となったユシウスが最初に呼び出したのは、クリーム色の装甲で覆われた機械戦士。

 

「次に俺のフィールドにジャンクモンスターが存在する事から、手札の『ジャンク・サーバント』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

ジャンク・サーバント

効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1500

 

次にユシウスが呼び出したのは、茶色を基調とした装甲を身に着けた機械戦士。

 

「続いて手札の『チューニング・サポーター』を墓地へ送って魔法『ワン・フォー・ワン』発動!」

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

「ワン・フォー・ワンの効果で、デッキから『ジェット・シンクロン』を守備表示で特殊召喚!」

 

ジェット・シンクロン

効果モンスター/チューナー

炎属性

機械族

レベル 1

守備力 0

 

「チューナーモンスター…

確かシンクロ召喚する際に必要なモンスターだった筈、まさか…」

 

続いて呼び出されたジェット・シンクロンの姿を見た遊勝、それがチューナーである事から、ユシウスの狙いに気付いた様だ。

 

「ああ、そのまさかだぜ父さん!俺はレベル3のジャンク・フォアードと、レベル4のジャンク・サーバントに、レベル1のジェット・シンクロンをチューニング!集いし願いが、新たに輝く星となる。光差す道となれ!シンクロ召喚、レベル8!飛翔せよ、『スターダスト・ドラゴン』!」

 

スターダスト・ドラゴン

シンクロ・効果モンスター

風属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 2500

 

「これが、アキ君が言っていた、お前の前世でのエースモンスターか。綺麗なドラゴンだ…」

 

その予感に応えるかの様にユシウスがシンクロ召喚の演出と共に呼び出したのは、ユシウスの前世でのエースであり、シグナードラゴンの1体、スターダスト・ドラゴン。

 

「ありがとうな父さん、だが俺のデュエルはまだまだこれからだ!

シンクロ召喚の素材にしたジェット・シンクロンの効果発動!

デッキから『ジャンク・シンクロン』を手札に加えて、そのまま召喚!」

 

ジャンク・シンクロン

効果モンスター/チューナー

地属性

戦士族

レベル 3

攻撃力 1300

 

「召喚したジャンク・シンクロンの効果発動!

墓地にいるチューニング・サポーターを守備表示で蘇生するぜ!」

 

チューニング・サポーター

効果モンスター

光属性

機械族

レベル 1

守備力 300

 

「更に魔法『機械複製術』発動!対象は今蘇生したチューニング・サポーターだ!」

 

機械複製術

通常魔法

1:自分フィールドの攻撃力500以下の機械族モンスター1体を対象として発動出来る。デッキからその表側表示モンスターの同名モンスターを2体まで特殊召喚する。

 

「機械複製術の効果で、デッキにいる2体のチューニング・サポーターを守備表示で特殊召喚!」

 

その姿に思わず呟いた遊勝の言葉に礼を言いつつも更なる展開を開始したユシウス、これによってフィールドにはスターダスト・ドラゴンの他、チューナーであるジャンク・シンクロンと、チューニング・サポーターが3体並んだ。

 

「チューニング・サポーターはシンクロ素材とする場合、自らをレベル2モンスターとして扱う事が出来る!この効果でレベル2としたチューニング・サポーターに、レベル3のジャンク・シンクロンをチューニング!集いし願いが、新たな大空へ誘う。光差す道となれ!シンクロ召喚、レベル5!希望の風、『アクセル・シンクロン』!」

 

アクセル・シンクロン

シンクロ・効果モンスター/チューナー

闇属性

機械族

レベル 5

守備力 2100

 

その内の2体を用いてシンクロチューナーであるアクセル・シンクロンをシンクロ召喚したユシウス、これによってシンクロモンスターであるスターダスト・ドラゴンを用いればアクセルシンクロを行う事も可能となった。

だが、これだけで終わるユシウスでは無い。

 

「シンクロ召喚の素材にしたチューニング・サポーターの効果発動!ドロー!

まだまだ行くぜ!デッキから2枚目のジェット・シンクロンを墓地へ送り、アクセル・シンクロンの効果発動!

このカードのレベルをジェット・シンクロンのレベル分、つまり1つ下げる!」

 

アクセル・シンクロン レベル 5→4

 

「俺はレベル1のチューニング・サポーター2体に、レベル4となったアクセル・シンクロンをチューニング!集いし星が雨となりて、聖なる翼へと束ねられる。光差す道となれ!シンクロ召喚、レベル6!魂を風に乗せ世界を巡れ!『スターダスト・チャージ・ウォリアー』!」

 

スターダスト・チャージ・ウォリアー

シンクロ・効果モンスター

風属性

戦士族

レベル 6

攻撃力 2000

 

ユシウスが更に呼び出したのは、背中にジェットエンジンを組み込んだ翼を持つ機械戦士。

 

「シンクロ召喚の素材にした2体のチューニング・サポーターの効果発動!

それにチェーンしてシンクロ召喚したチャージ・ウォリアーの効果発動!

計3枚ドロー!

まだまだぁ!魔法『貪欲な壺』発動!対象は3体のチューニング・サポーター、ジェット・シンクロン、そしてジャンク・シンクロン!」

 

貪欲な壺(制限カード)

通常魔法

1:自分の墓地のモンスター5体を対象として発動出来る。そのモンスター5体をデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから2枚ドローする。

 

「貪欲な壺の効果で対象の5枚をデッキに戻してシャッフルし、2枚ドロー!」

「手札が5枚に戻った…!

凄まじいデュエルタクティクスだ…!」

 

遊勝の言う通り、チューニング・サポーターやチャージ・ウォリアー、そして貪欲な壺の効果で手札がデュエル開始時の5枚に元通りとなったユシウス。

手札=出来る事と言って良い程手札アドバンテージが重要なデュエルモンスターズにおいて、この状態は此処からの超展開を予期していると言っても過言じゃない。

 

「そして魔法『死者蘇生』発動!対象はアクセル・シンクロン!」

 

死者蘇生(制限カード)

通常魔法

1:自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

「死者蘇生の効果で、アクセル・シンクロンを守備表示で蘇生する!

今蘇生したアクセル・シンクロンの効果を、さっきデッキに戻したジェット・シンクロンを墓地へ送って発動!

アクセル・シンクロンのレベルを1つ下げる!」

 

アクセル・シンクロン レベル 5→4

 

「俺はレベル6のチャージ・ウォリアーに、レベル4のアクセル・シンクロンをチューニング!レベル10!集いし星が流れる痕に紡がれる全ての想いが、絆と共にこの世界を満たさん!光差す道となれ!アクセルシンクロォォォォ!光来せよ、『真閃珖竜スターダスト・クロニクル』!」

「ま、眩しい!?」

 

真閃珖竜スターダスト・クロニクル

シンクロ・効果モンスター

光属性

ドラゴン族

レベル 10

攻撃力 3000

 

「カードを3枚セットしてターンエンドだ!」

 

Lucius

LP 4000

手札 1

モンスター スターダスト・ドラゴン(攻撃表示)

真閃珖竜スターダスト・クロニクル(攻撃表示)

魔法・罠カード セット×3

 

そして、チャージ・ウォリアーと、自らの効果でレベルを下げたアクセル・シンクロンによるアクセルシンクロによって、黄金に光輝くドラゴンを呼び出し、3枚のカードをセットしてターンを明け渡したユシウス。

だが、

 

「随分とまた動き回ったな、ならば次は私の番だ!私のターン、ドロー!」

「おっと、そのドロー時に罠発動!スターダスト・ドラゴン、モード・チェンジ!『バスター・モード』!」

「何?」

 

バスター・モード

通常罠

自分フィールド上のシンクロモンスター1体をリリースして発動出来る。リリースしたシンクロモンスターのカード名が含まれる『/バスター』と名の付いたモンスター1体をデッキから表側攻撃表示で特殊召喚する。

 

ユシウスの展開は終わってはいない…!

 

「新たなる力を纏いて、再臨せよ!『スターダスト・ドラゴン/バスター』!」

 

スターダスト・ドラゴン/バスター

効果モンスター

風属性

ドラゴン族

レベル 10

攻撃力 3000



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128話_星屑の竜達

今話では一部、効果処理において「此処どうだったかな」という部分があります。
良ければ指摘お願いします。


Side ????

 

後攻である遊勝のターンとなった、ユシウスと遊勝のデュエル、然しながらユシウスは、自らのターンを終えて尚、更なる展開を行う。

その初手となったバスター・モードによって、ユシウスのフィールドにいたスターダスト・ドラゴンは、強靭な姿へと変貌した。

それでいて尚、ユシウスの行動は終わらない。

 

「スタンバイフェイズに罠『貪欲な瓶』発動!対象は死者蘇生、ワン・フォー・ワン、機械複製術、貪欲な壺、そして今発動したバスター・モード!」

 

貪欲な瓶

通常罠

『貪欲な瓶』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:『貪欲な瓶』以外の自分の墓地のカード5枚を対象として発動出来る。そのカード5枚をデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから1枚ドローする。

 

「貪欲な瓶の効果で、対象の5枚をデッキに戻してシャッフルし、ドロー!」

「私のターンに入って尚、展開が止まる事が無いか、正に貪欲だ。ならば次は私の番だ!

まずはお前のフィールドにのみモンスターが存在する事で、手札の『EMレビュー・ダンサー』を守備表示で特殊召喚!」

 

EMレビュー・ダンサー

効果モンスター

光属性

魔法使い族

レベル 3

守備力 1000

 

自分のターンになって尚展開を続けるユシウスのデュエルにも怯む事無く己のターンを始める遊勝、最初に呼び出したのは、正に大道芸人と言わんばかりの出で立ちをした少女。

 

「EMモンスターをアドバンス召喚する際、レビュー・ダンサーは2体分のリリースとして扱える!この効果でレビュー・ダンサー1体のみをリリースし、『EMスカイ・マジシャン』をアドバンス召喚!」

「来たか、父さんのエースモンスター!」

 

EMスカイ・マジシャン

効果モンスター

風属性

魔法使い族

レベル 7

攻撃力 2500

 

そのレビュー・ダンサーをリリースして呼び出したのは遊勝のエースモンスターである、翼の様なマントを羽ばたかせ、天空を舞うマジシャン。

 

「続いて永続魔法『魔術師の再演』発動!」

 

魔術師の再演

永続魔法

1:このカードがフィールドに表側表示で存在する限り1度だけ、自分の墓地のレベル3以下の魔法使い族モンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを特殊召喚する。

2:このカードが墓地へ送られた場合に発動出来る。デッキから『魔術師の再演』以外の『魔術師』永続魔法カード1枚を手札に加える。

 

「私が魔法カードを発動した事で、スカイ・マジシャンの効果発動!

このカードの攻撃力を300アップさせる!」

 

EMスカイ・マジシャン 攻撃力 2500→2800

 

「今発動した魔術師の再演の効果発動!対象は墓地のレビュー・ダンサー!」

「おっと、そうはさせないぜ!それにチェーンして罠『くず鉄の像』発動!」

 

くず鉄の像

通常罠

『くず鉄の像』の1、2の効果は其々1ターンに1度しか使用出来ない。

1:相手フィールドの既に表側表示で存在している魔法・罠カードがその効果を発動した時に発動出来る。そのカードを破壊する。発動後このカードは墓地へ送らず、そのままセットする。

2:このカードが墓地へ送られた場合、自分の墓地の『ジャンク』モンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。

 

と、遊勝が更なる展開を見せようとした時、ユシウスは動いた。

くず鉄の像、その1つ目の効果は単純に言って、相手フィールドの表側表示になっている魔法・罠にしか対応せず、罠になった幽鬼うさぎではあるが、その真価は発動後セットされるという事。

これによって毎ターン、相手は永続魔法・罠やフィールド魔法の効果発動には神経を尖らせなくてはならなくなる。

永続魔法が己の展開で重要なカギを握る遊勝には、正に大きく刺さるカードだ、が、

 

「それはどうかな?それにチェーンしてスカイ・マジシャンの効果発動!対象は魔術師の再演!」

 

遊勝がそれを考慮していない筈も無い。

スカイ・マジシャンの2つ目の効果、それは自分フィールドの永続魔法を手札に避難させるフリーチェーン効果。

無論、発動していた永続魔法を戻すとその特性故、効果を適用できなくはなってしまうが、効果処理の間に手札から『魔術師』永続魔法を発動出来る為、今の状況ならば効果は再び使える。

然し、

 

「それはこっちの台詞だ!それにチェーンしてスターダスト・ドラゴン/バスターをリリースして効果発動!スカイ・マジシャンの効果を無効にして破壊する!」

「何?」

 

ユシウスはそれも頭に入れていた。

このターンに登場したスターダスト・ドラゴン/バスターの効果、それは自らのリリースをコストとした『発動する』効果の無効、殆どのカードの効果処理を遮断する凄まじい物だ。

と言ってもスペルスピードは2、よってカウンター罠は無効にできないし、

 

「やむを得ないか。ならば更にチェーンしてスカイ・マジシャンを手札に戻し、手札の『EMスカイ・ピューピル』の効果発動!」

 

こうして他のスペルスピード2の効果を発動させる余地を与える事になる。

 

「無いならチェーン処理だ。

まずはスカイ・ピューピルの効果でこのカードを攻撃表示で特殊召喚!」

 

EMスカイ・ピューピル

効果モンスター

光属性

魔法使い族

レベル 3

攻撃力 800

 

その効果で登場したのは、スカイ・マジシャンの弟子である少年。

 

「次にスターダスト・ドラゴン/バスターの効果でスカイ・マジシャンの効果は無効になり、破壊されるぜ!」

「くっ!」

「そしてくず鉄の像の効果で、父さんのフィールドにある魔術師の再演は破壊される!」

「ぐぁ!」

 

今登場したスカイ・ピューピルを残して真っ新となった遊勝のフィールド。

だがエンタメデュエリストである遊勝は、タダでは転ばない。

 

「だが此処で破壊された魔術師の再演の効果発動!

それにチェーンしてフィールドを離れたスカイ・マジシャンの効果発動!対象はスターダスト・クロニクル!」

「それも通さない!それにチェーンして墓地のスターダスト・ドラゴンを除外し、スターダスト・クロニクルの効果発動!

まずはスターダスト・クロニクルの効果で、このカードはこのターン終了時まで他のカードの効果を受けない!スカイ・マジシャンの効果で破壊しようって流れだろうけど、そうは行かないぜ!波動護魂(ソニック・ガード)!」

「これも通らないか。だが魔術師の再演の効果で、デッキから永続魔法『魔術師の右手』を手札に加えさせて貰う」

 

流石に全ては通らなかったものの、遊勝は更なる永続魔法をサーチ、次の展開に備える。

 

「ならばこれはどうかな?私も死者蘇生を発動!対象はスカイ・マジシャンだ!」

 

死者蘇生(制限カード)

通常魔法

1:自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

「死者蘇生の効果で、スカイ・マジシャンを攻撃表示で蘇生する!

そして魔法『スマイル・ワールド』発動!」

「あちゃー、そう来たか!」

 

スマイル・ワールド

通常魔法

1:フィールドの表側表示モンスターの攻撃力はターン終了時まで、フィールドのモンスターの数×100アップする。

 

と、遊勝が師匠と弟子をフィールドに並び立たせた上で発動した魔法に、ユシウスは如何にも「してやられた」と言わんばかりの反応を見せた。

というのは、

 

「そう、スマイル・ワールドはお互いのフィールドにいるモンスターの攻撃力をアップさせるカード。けれどユシウス、お前のフィールドにいるスターダスト・クロニクルはこのターン、他のカードの効果を受け付けない。そう、笑顔も、楽しさすらも拒絶する!笑顔を、楽しさを忘れていては、何時しかその身を滅ぼすことになる!」

 

そう、今のスターダスト・クロニクルはスマイル・ワールドによる攻撃力上昇すらも受け付けない状態となってしまっているからだ。

よってスマイル・ワールドの効果は遊勝のフィールドにいるモンスターにのみ適用され、

 

「スマイル・ワールドの効果でスカイ・マジシャンとスカイ・ピューピルの攻撃力を300アップさせる!

更に私が魔法カードを発動した事で、スカイ・マジシャンの効果発動!

このカードの攻撃力を300アップさせる!」

 

EMスカイ・マジシャン 攻撃力 2500→2800→3100

EMスカイ・ピューピル 攻撃力 800→1100

 

スカイ・マジシャン自身の効果も相まって、スターダスト・クロニクルの攻撃力を越えた…!

 

「ではバトルフェイズに入る!

スカイ・マジシャンでスターダスト・クロニクルを攻撃!」

「ちぃ!」

 

EMスカイ・マジシャン 攻撃力 3100 VS 真閃珖竜スターダスト・クロニクル 攻撃力 3000

 

Lucius LP 4000→3900

 

「けどタダでは転ばないぜ!戦闘破壊されたスターダスト・クロニクルの効果発動!対象は、除外されたスターダスト・ドラゴンだ!」

「っ!まさか…!」

 

だが、ユシウスは更なる手を残していた。

 

「スターダスト・クロニクルの効果で、舞い戻れ、スターダスト・ドラゴン!」

「スターダスト・ドラゴンはスターダスト・クロニクルの効果で除外されたカード…!

後続を帰還させる効果も持っていたか。

だがスカイ・ピューピルでそのスターダスト・ドラゴンを攻撃!

スカイ・ピューピルが攻撃する時、スターダスト・ドラゴンの効果はターン終了時まで無効になる!

更に他のEMがいる事でスカイ・ピューピルの効果発動!

スターダスト・ドラゴンを破壊する!」

「させないぜ!それにチェーンしてスターダスト・ドラゴンをリリースして効果発動!

その効果を無効にして破壊する!スカイ・ピューピルによって効果は無効になっても、発動自体は出来る!更に効果適用時にスターダスト・ドラゴンはフィールドにいない!よって効果は適用される!ヴィクテム・サンクチュアリ!」

「これも躱されるか…」

 

スターダスト・クロニクルが倒され、フィールドが真っ新となったユシウスを守る様に舞い戻ったスターダスト・ドラゴン、そのスターダスト・ドラゴンがスカイ・ピューピルの効果で破壊されそうになるも、自らの効果でスカイ・ピューピルを巻き添えにする形で消え去った。

 

「ならばさっきサーチした魔術師の右手を発動し、ターンエンドだ。

エンドフェイズにスカイ・マジシャンの、スマイル・ワールドで上がった攻撃力は元に戻る」

「ならエンドフェイズに、自らの効果でリリースしたスターダスト・ドラゴン/バスターとスターダスト・ドラゴンの効果発動!

2体共に、俺のフィールドに舞い戻る!」

 

魔術師の右手

永続魔法

1:1ターンに1度、自分フィールドに魔法使い族モンスターが存在する場合、相手が発動した魔法カードの効果を無効にし破壊する。

 

EMスカイ・マジシャン 攻撃力 3100→2800

 

Yusho

LP 4000

手札 0

モンスター EMスカイ・マジシャン(攻撃表示)

魔法・罠カード 魔術師の右手

 

「俺のターン、ドロー!

…よし、こう動くか!

まずは『チューニング・サポーター』を召喚!」

 

チューニング・サポーター

効果モンスター

光属性

機械族

レベル 1

攻撃力 100

 

「次に手札を1枚墓地へ送って、墓地にいるジェット・シンクロンの効果発動!

このカードを守備表示で蘇生する!」

 

ジェット・シンクロン

効果モンスター/チューナー

炎属性

機械族

レベル 1

守備力 0

 

先程サーチした永続魔法を発動してターンを明け渡した遊勝、明け渡されたユシウスは、今引いたのを含む3枚の手札、互いのフィールドを見やってどう動くかを決断した様で、一挙に2体のレベル1モンスターを並べた。

 

「俺はレベル1のチューニング・サポーターに、同じくレベル1のジェット・シンクロンをチューニング!集いし願いが、新たな速度の地平へ誘う。光差す道となれ!シンクロ召喚、レベル2!希望の力、『フォーミュラ・シンクロン』!」

 

フォーミュラ・シンクロン

シンクロ・効果モンスター/チューナー

光族シエ

機械族

レベル 2

守備力 1500

 

「自分の効果で蘇生したジェット・シンクロンがフィールドを離れる時、除外される。

シンクロ召喚の素材にしたチューニング・サポーターの効果発動!

それにチェーンしてシンクロ召喚したフォーミュラ・シンクロンの効果発動!

計2枚ドロー!」

 

その2体によって呼び出されたフォーミュラ・シンクロンと、その素材となったチューニング・サポーターの効果で再び3枚となったユシウスの手札。

だがそれはほんの序でしか無い。

 

「俺はレベル8のスターダスト・ドラゴンに、レベル2のフォーミュラ・シンクロンをチューニング!レベル10!集いし星の結晶が、新たな進化の扉を開く。光差す道となれ!アクセルシンクロォォォォ!生来せよ、『シューティング・スター・ドラゴン』!」

 

シューティング・スター・ドラゴン

シンクロ・効果モンスター

風属性

ドラゴン族

レベル 10

攻撃力 3300

 

スターダスト・ドラゴンとフォーミュラ・シンクロンによるアクセルシンクロによって登場したのは、スターダスト・ドラゴン/バスターとは別の方向、そう、アクセルシンクロと言う方向で進化を遂げたスターダスト・ドラゴン、遊星だった頃のユシウスのエース、シューティング・スター・ドラゴン。

 

「今シンクロ召喚したシューティング・スター・ドラゴンの効果発動!

俺のデッキの上から5枚をめくり、その中にあるチューナーの数だけこのモンスターは攻撃出来る!

頼むぜ、俺のデッキ!1枚目、チューナーのエフェクト・ヴェーラー!

2枚目、ジャンク・フォアード!

3枚目、チューニング・サポーター!

4枚目、くず鉄の像!

5枚目、

 

チューナーのジャンク・シンクロン!よって2回攻撃出来る!」

「このターンで私を倒せる分の回数を引き当てたか、さっきからの展開と言い、凄い引きだ。強くなったな、ユシウス」

 

そのシューティング・スター・ドラゴンの効果で2回攻撃を得たユシウスのドロー運に、何処か感心した様な素振りを見せる遊勝。

 

「行くぜ父さん、バトルフェイズだ!」

「ああ、来い、ユシウス!お前の全力を、私にぶつけるがいい!」

「まずはスターダスト・ドラゴン/バスターでスカイ・マジシャンを攻撃!アサルト・ソニック・バーン!」

「くっ!」

 

スターダスト・ドラゴン/バスター 攻撃力 3000 VS EMスカイ・マジシャン 攻撃力 2800

 

Yusho LP 4000→3800

 

「せめて最後まで足掻かせて貰う!破壊されたスカイ・マジシャンの効果発動!

シューティング・スター・ドラゴンを破壊する!」

「させないぜ!それにチェーンしてシューティング・スター・ドラゴンの効果発動!

それを無効にして破壊する!

そしてシューティング・スター・ドラゴンでダイレクトアタック!スターダスト・ミラージュ、2連打ァ!」

「うぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

Yusho LP 3800→500→-2800 LOSE

 

WINNER Lucius

 

------------

 

それから少し経った、デュエルアカデミアにて、

 

「問おう。赤馬零王は何処にいる?」

「ひ、ひぃ…!?」

 

アカデミアによる侵略、その終焉の使者が舞い降りた…!



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129話_ロストワンの号哭

注:今話はとあるキャラに対するアンチ的な見解があります。


Side ????

 

「申し上げます!ランサーズからの使者を名乗る面々が、プロフェッサーに面会を求めています!『面会に応じない場合、此処一帯を灰燼に帰す』という脅しまで…!」

「とうとう、来たか…!

相手は?監視カメラは動かせそうか?」

「はっ!システムは先程復旧し、映像を閲覧可能です!」

「そうか、ならば映像を直ぐに見せてくれ…」

「ははっ!」

 

デュエルアカデミアのとある一室、其処でアカデミアのトップである零王は、デュエル戦士から侵入者が来た事の報告を受け、監視カメラの映像を映すよう指示を下したが、その口調からは力強さなど全く感じられない。

無理もない、つい最近まで順調だった他次元への侵略の一手は此処に来て急激に勢いを削がれ、その中で仲間割れが多発、故に本部の防衛を優先する事を決めたら決めたで其処でも仲間割れが起こり、それによって人質及び零王の計画で必要となる、他次元の住人達を解放され、そして計画において重要な存在である『ピース』、リンと瑠璃に脱走された、全てランサーズの手によって…

まだランサーズメンバー相手にすら圧倒できる程の実力を有したホルアクティ・フォースという戦力を持ってはいるが、それでも大勢はひっくり返されたと言っても、再逆転は無理だと言っても過言じゃない。

そんな状況下でのランサーズからの面会要求、考えられるとしたら降伏勧告か、講和要求か…

零王はそう考えながら、映し出された監視カメラの映像を確認していた。

 

「左にいるのは零児か。その隣にいるのは遊勝、更にその隣には、む!?

 

 

 

れ、レイ、だと!?何故レイが此処に!?」

 

その映像を確認して、驚愕の表情を露わにする零王。

其処にはユシウスと遊勝の親子と、自らの息子である零児、そしてまだこの世界にはいない筈だと、蘇っていない筈だと零王が思っていた、自らの娘であるレイがいた。

 

「…分かった、面会に応じるとしよう」

 

------------

 

「久しぶりだな、零王。およそ3年ぶりか」

「父さん…」

「赤馬零王、貴方に言いたい事は沢山あるが、一先ずは、久しぶりだ、と言って置く」

「初めましてと言うべきかな、赤馬零王よ。今日は我々との面会の承諾、感謝する」

「その顔に、その声…

もしや貴様、榊遊矢か?」

「ああ。貴様が殺したいと願っていた存在『ズァーク』の片割れ『榊遊矢』だった者だ。尤も今はユシウスという名だが」

 

零王から面会に応じる連絡を受け、とある場所へと案内されたユシウス達4人、其処は王宮における謁見の間の如く、後方には玉座と言って良い程の存在感を放つ椅子が据え付けられており、其処に零王は座っていた。

 

「さて、我らが何故貴様との面会を要求したか、大方想像は付いているだろう?」

「ああ、貴様達が大体の事実を知っている事も、『リバイバル・ゼロ』が何故か成された事も。だが肝心の『アークエリア・プロジェクト』を成さない以上は、私に引くという選択肢は無い。それが貴様達という『悪魔』を生み出し、結果として世界を引き裂いてしまった、私の責任だ」

 

その零王に対して早速話を切り出すユシウス、それに対して零王はユシウス達がどれだけの事を把握しているかや、レイが蘇った事等に対して信じられないと言った様子なりに受け止めつつも、それでも己の起こした事を踏まえ、その清算の為には手を引けないと、ユシウスが要求するであろう事を突っぱねる。

状況的にはもうアカデミアにてそれを成すのが不可能だという事は零王も承知の上、それでも引けないという想いが、その言葉からにじみ出ていた。

が、

 

「俺達『悪魔』を生み出した?世界を引き裂いた?その責任?何を馬鹿な事を言っている?」

「何?」

「Guns don’t kill people,people kill people。銃が人を殺すのではない、人が人を殺すのだ。何処かの団体が声高に叫ぶのをよく聞く、有名な詭弁だ。だが一方で、ある意味物事の本質を突いた言葉でもある。これをベースに言わせて貰おう。

 

貴様が高めた技術が世界を滅ぼしたんじゃない、ズァークという『悪魔』が世界を滅ぼしたんだ。貴様がリアルソリッドビジョンに手を出さずとも、遅かれ早かれズァークが世界を滅ぼそうとしたであろう」

「何だと!?」

 

ユシウスはそんな零王の想いを一蹴した。

 

「違う!私がリアルソリッドビジョンをデュエルに取り入れた事が、ズァークを『悪魔』に変えてしまったのだ!過激化するデュエルを望む観客、それに応えるデュエリスト、その思惑のままに動かされるモンスターの怒りで、モンスターの声を聞き届けるズァークと言うデュエリストを『悪魔』に…!」

「その時点で貴様は大いに勘違いしている」

「なっ!?」

「ズァークというデュエリストは「モンスターの声が聞こえる」と公言していた。その真偽はともかく、それならばモンスター達の怒りを前々から聞いていた筈だ。それを聞いて、何か行動を起こす事も出来た筈だ。

 

だがズァークはそれをしようともせず、嬉々として観客たちの声に応え続けた。そしてデュエリストの頂点に立った途端に、それまで聞き流していたモンスター達の怒りを解放した。

 

分かるであろう?ズァークは貴様がデュエルに取り入れたリアルソリッドビジョンによって『悪魔』に変えられたのではない、元から『悪魔』だったのだ。貴様がデュエルシステムに手を加えずとも、ズァークは世界にとって何かしらの災厄と化したであろうな」

「な、何、だと…?」

 

そして反論した零王の言葉を、勘違いだと指摘した。

其処から続けて何故そう言い切れるかを論じるユシウス、聞き終えた零王は何処か呆然とした様子だった。

 

「だがその『悪魔』も既にこの世から消え去った」

「…え?」

「俺が殺し、その『力』だけを俺が受け継いだ。この4対の羽がその証拠だ。ズァークが死んだ事により役目を終えた、貴様が開発した4枚のカード、それで引き裂かれたレイもこうして蘇った。『アークエリア・プロジェクト』もいずれ自然と成されるだろう、『リバイバル・ゼロ』が自然と成された様に。

 

貴様はもう偽りの『罪』に囚われる事も、それを清算する為に本当の『罪』を重ねる事も無いのだ。分かったのなら、もう終わりにするのだ」

 

そして改めて突きつけられる、通告。

 

「馬鹿な、ならば私が今まで世界の為にとやって来た事は、何だったのだ…!?

家族を捨て、舞網を捨て、他次元の人々や文化をも切り捨ててまで成そうとしてきた事は、何もかも無駄だったのか…!?

嘘だ…!

 

 

 

嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

突きつけられた零王は、座っていた椅子から力なく立ち上がり、ふらふらと歩みながら呟き、そして糸が切れた人形の様に崩れ落ちながら号哭を上げた。

己の無力感か、或いは罪悪感か、己の感情に逆らう事無く号哭を上げる零王に、何処か複雑な様子で歩み寄る遊勝、零児、そしてレイ。

一方でユシウスは、もう用は無いと言わんばかりにその場を立ち去り、

 

「フォースハウンド、総員集え」

「「はっ!」」

「此処よ」

「おう」

 

フォースハウンドの面々を呼び出し、即座に集まった4人に対し、懐から取り出した4枚の封筒を其々に手渡し、

 

「月影はフリアグネ、日影はカムシン、遊香はヘカテー、セルゲイはベルペオル。各員、対象の人物にその手紙を渡せ。我はキサラにこれを手渡して来る。その後は…分かっているな?」

『了解!』

 

そう指示を飛ばした。



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130話_最終決戦、スタート!

前回の投稿から1ヶ月近くと遅くなってしまって、すいませんでした。
此処まで書くのに色々な部分で行き詰まりが起こる等、スランプに陥っていた影響で遅くなりました。


Side ????

 

ユシウス達による赤馬零王への直談判、それによるデュエルアカデミアが行って来た侵略行為一切の停止が取り決められた翌日の、融合次元のとある場所にあるデュエルフィールド。

其処には、

 

「父さん…!

LDSを、レオ・コーポレーションを、ランサーズを引っ張る立場になった今、僕は父さんがどれだけの想いを、苦しみを、辛さを抱いてアカデミアを引っ張って来たのか、痛い程よくわかる…!

だが!それでも!どんな理由であれ!僕はアンタを、家族を捨て、会社を捨て、他次元の人達を切り捨てたアンタを許す事は出来ない!」

「零児…」

 

ランサーズの最高顧問である零児と、その父でアカデミアを率いていた零王、

 

「はは、まさか俺の相手が野獣ってかァ…

だが、コイツらがこの場に駆り出した程だ、その実力、見せて貰うぜェ!」

「グルルルルル…!」

 

ランサーズの精鋭部隊であるARC-Vのメンバーである一行と、獣の如き唸り声を上げる男、

 

「あぁ成る程、僕の相手は貴方という事ですか。やれやれ、随分と面倒な相手だ」

「おい、あんまりな言い草だな、お前。いいぜ、だったら予感通り、最後までお前にとって面倒な展開にしてやるよ。お前の思い通りに展開出来るって考えてんなら、まずはそのふざけた幻想を叩き潰す!」

 

アカデミアの精鋭部隊であるホルアクティ・フォースのメンバーであるカムシンと、ARC-Vメンバーである当麻、

 

「貴方はランサーズの精鋭部隊、ARC-Vの権現坂昇…

ならば手加減はしない、全力全開で叩き潰す…!」

「ぬぅ、見た目とは裏腹な、凄まじい殺気だ、流石はアカデミアでも精鋭中の精鋭と称されたホルアクティ・フォース…!

だがこの男権現坂、戦う前から退きはせん!」

 

同じくホルアクティ・フォースのメンバーであるヘカテーと、これまた同じくARC-Vメンバーである権現坂、

 

「貴方が、私の相手…

例えどれ程の強さを持った相手であろうと、私は全力のデュエルをして見せる!」

「へぇ、随分と強気な小猫ちゃんだ。僕とこの舞台でのデュエルの相手として、最高だ」

 

ARC-Vの紅一点である柚子と、ホルアクティ・フォースの(性別が良く分からないカムシン以外で)黒一点のフリアグネ、

 

「ひゃぁ、随分とおっかねぇ姉ちゃんだな。しかも雪乃先生を先攻ワンキルしたって聞いたし、やっぱ強いんだろうな。なら、最初から全力で行かせて貰うぜ!」

「随分と威勢の良いガキんちょだねぇ。そういうアンタは榊遊矢の一番弟子だそうじゃないか、ならこっちも手加減無しだよ!」

 

ARC-Vで最年少のエレンと、ホルアクティ・フォースにおいて姉の様な存在であるベルペオル、

 

「待っていたぞ、キサラ。我らの要求通りに仲間を連れて来るとは流石、ホルアクティ・フォースのリーダー、というべきか」

「ええ、貴方からの果たし状、受け取らない理由は無いでありますから。榊遊矢、いえ、今はユシウスでありましたか、世界最強のデュエリストである貴方からの果たし状を!」

 

そして、ランサーズの最高指揮官であるユシウスと、ホルアクティ・フォースのリーダーであるキサラ、其々が己と正対する相手と言葉を交わしていた。

この場でこの状況とあらばこの後に繰り広げられるのはただ1つ、デュエルだ。

そしてこの様子は、

 

「4つの次元の存亡を賭けた戦い。その終止符が今、この場所で打たれようとしています。各次元への侵略を繰り広げたデュエルアカデミアと、それを阻止すべく奔走したランサーズ、それを引っ張る立場である計14のデュエリストが今、一堂に会しました!アカデミアとランサーズの対抗デュエル、遂に始まります!本日はこの対抗デュエルの様子を、4つの次元全ての放送網をジャックしてお送りします!実況はこの私、ランサーズ最高指揮官である榊遊矢様、いえ、ユシウス様のマネージャー、ニコ・スマイリー!そして解説は、3年の失踪を経て今遂に帰って来た!ユシウス様の父にして、エンタメデュエルの第一人者!榊遊勝!遊勝さん、本日はよろしくお願いします!」

「はい、宜しくお願いします」

 

4つの次元、全てに向けて生中継されていた。

 

------------

 

「「デュエル!」」

 

先攻 Toma LP 4000 VS 後攻 Khamsin LP 4000

 

「俺の先攻!

まずは手札の『PSYフレーム・マルチスレッダー』を墓地へ送り、魔法『ワン・フォー・ワン』発動!」

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

「ワン・フォー・ワンの効果で、デッキから『PSYフレームギア・α』を守備表示で特殊召喚!」

 

PSYフレームギア・α

効果モンスター/チューナー

光属性

サイキック族

レベル 1

守備力 0

 

「俺のフィールドにPSYフレームチューナーが特殊召喚された事で、たった今墓地へ送ったPSYフレーム・マルチスレッダーの効果発動!

コイツを守備表示で蘇生するぜ!」

「ああ、ワン・フォー・ワンのコストで墓地へ送ったカードですか、全く無駄が無いですね」

 

PSYフレーム・マルチスレッダー

効果モンスター

光属性

サイキック族

レベル 6

守備力 2500

 

第1試合である当麻とカムシンのデュエル、先攻となった当麻は、本来は相手がモンスターを呼び出した時にその力を発揮するPSYフレームギア・αをワン・フォー・ワンによってリクルートし、そのコストとして墓地へ送られた、女性的な出で立ちのサイキック戦士の効果を誘発させ、並び立たせた。

 

「俺はレベル6のPSYフレーム・マルチスレッダーに、レベル1のPSYフレームギア・αをチューニング!お前のモンスターの力が、フィールドを思い通りに出来るってんなら、まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!シンクロ召喚、レベル7!『PSYフレームロード・Z』!」

 

PSYフレームロード・Z

シンクロ・効果モンスター

光属性

サイキック族

レベル 7

攻撃力 2500

 

「自分の効果で蘇生したマルチスレッダーは、フィールドを離れると除外されるぜ。

カードを2枚セットして、ターンエンド」

 

Toma

LP 4000

手札 1

モンスター PSYフレームロード・Z(攻撃表示)

魔法・罠カード セット×2

 

「では、僕のターン、ドロー。

まずはフィールド魔法『暴走魔法陣』発動」

「確かそのフィールド魔法、報告にあった奴だな…

なら止めさせて貰うぜ!LPを半分払ってカウンター罠『神の宣告』発動!」

「ああ、其処で止めに来ますか。やってくれますね」

 

暴走魔法陣

フィールド魔法

『暴走魔法陣』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:このカードの発動時の効果処理として、デッキから『召喚師アレイスター』1体を手札に加える事が出来る。

2:このカードがフィールドゾーンに存在する限り、融合モンスターを融合召喚する効果を含む効果を自分が発動した場合、その発動は無効化されず、その融合召喚成功時に相手は魔法・罠・モンスターの効果を発動出来ない。

 

神の宣告(制限カード)

カウンター罠

1:LPを半分払って以下の効果を発動出来る。

●魔法・罠カードが発動した時に発動出来る。その発動を無効にし破壊する。

●自分または相手がモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚する際に発動出来る。それを無効にし、そのモンスターを破壊する。

 

Toma LP 4000→2000

 

PSYフレームロード・Zと2枚のセットカードでターンを明け渡した当麻、明け渡されたカムシンが早速、真紅の魔法陣を展開しようとするが、当麻はセットカードの1枚、カウンター罠の定番として知られる神の宣告でそれを阻んだ。

 

「ならばLPを1000払って魔法『簡易融合』発動!」

 

簡易融合

通常魔法

『簡易融合』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:1000LPを払って発動出来る。レベル5以下の融合モンスター1体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターは攻撃出来ず、エンドフェイズに破壊される。

 

「我が生命の力を糧とし、出でよ、レベル5!響け!『召喚獣ライディーン』!」

 

召喚獣ライディーン

融合・効果モンスター

風属性

戦士族

レベル 5

守備力 2400

 

Khamsin LP 4000→3000

 

ならばとカムシンが己のLPを引き換えに呼び出したのは、雷鳴を纏った騎士。

と此処で、

 

「おっと、ソイツの特殊召喚成功時に速攻魔法『終焉の地』発動!」

 

終焉の地

速攻魔法

相手がモンスターの特殊召喚に成功した時に発動する事が出来る。自分のデッキからフィールド魔法カード1枚を選択して発動する。

 

当麻は残り1枚となったセットカードを発動した。

 

「此処でまだ動きますか。ならばそれにチェーン、手札を1枚捨てて速攻魔法『超融合』発動!」

「来るか…!」

 

超融合(制限カード)

速攻魔法

このカードの発動に対して魔法・罠・モンスターの効果は発動出来ない。

1:手札を1枚捨てて発動出来る。自分・相手フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「僕はフィールドにいる、僕のライディーンと、貴方のPSYフレームロード・Zを生け贄に捧げる!迅雷纏いし風の騎士、電脳世界を駆ける戦士、2つの魂を糧とし、出でよ、レベル10!君臨せよ!『召喚獣エリュシオン』!」

 

召喚獣エリュシオン

融合・効果モンスター

光(闇・地・水・炎・風)属性

天使族

レベル 10

攻撃力 3200

 

それに対してカムシンも行動を起こし、今しがた登場させたライディーンと、当麻のフィールドにいたPSYフレームロード・Zを融合素材として、エリュシオンを登場させた。

 

「ちぃっ!だがチェーン1、終焉の地の効果で、デッキから『PSYフレーム・サーキット』を発動するぜ!」

 

PSYフレーム・サーキット

フィールド魔法

1:自分フィールドに『PSYフレーム』モンスターが特殊召喚された場合に発動出来る。自分フィールドの『PSYフレーム』モンスターのみをシンクロ素材としてシンクロ召喚する。

2:自分の『PSYフレーム』モンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時に、手札の『PSYフレーム』モンスター1体を捨てて発動出来る。その戦闘を行う自分のモンスターの攻撃力はターン終了時まで、この効果を発動する為に捨てたモンスターの攻撃力分アップする。

 

だが当麻とてやられてばかりではなく、チェーン1で発動させていた終焉の地の効果によって、自らのデッキにおいてキーカードと言っても良いPSYフレーム・サーキットを発動させる。

 

「ですがセットカードはもう無い、このまま決めます!

バトルフェイズに入って、エリュシオンで攻撃!」

 

だがそんな事はお構いなしと言わんばかりに、カムシンはバトルフェイズに入る事を宣言、エリュシオンに攻撃を指示する。

それが、当麻の狙い通りだと知らずに…

 

「掛かったな!その攻撃宣言時、手札の『PSYフレームギア・β』の効果発動!手札のコイツと、デッキの『PSYフレーム・ドライバー』を特殊召喚し、エリュシオンを破壊するぜ!その後、バトルフェイズは終了される!」

「なっ!?まさかエリュシオンを破壊された挙げ句にバトルフェイズを終わらせるとは…!」

 

PSYフレームギア・β

効果モンスター/チューナー

光属性

サイキック族

レベル 1

攻撃力 700

 

PSYフレーム・ドライバー

通常モンスター

光属性

サイキック族

レベル 6

攻撃力 2500

 

「ですがタダでは終わりません!貴方がモンスターを特殊召喚した事で、手札を1枚捨てて墓地の『ドラゴン・アイス』の効果発動!」

「ソイツは超融合のコストで墓地へ送られたカードか、アフターケアも十分って訳か。だが俺もPSYフレーム・サーキットの効果発動!

まずはPSYフレーム・サーキットの効果だ!俺はレベル6のPSYフレーム・ドライバーに、レベル1のPSYフレームギア・βをチューニング!シンクロ召喚!再臨せよ、PSYフレームロード・Z!」

「その後ドラゴン・アイスの効果でこのカードを守備表示で蘇生します!」

 

ドラゴン・アイス

効果モンスター

水属性

ドラゴン族

レベル 5

守備力 2200

 

攻撃宣言を利用しての特殊召喚と除去、其処からのシンクロ召喚と己の思い通りに動いて来た当麻、一方でカムシンも氷で出来たドラゴンらしき姿のモンスターを呼び出した。

 

「カードをセットしてターンエンドです!」

 

Khamsin

LP 3000

手札 0

モンスター ドラゴン・アイス(守備表示)

魔法・罠カード セット

 

「俺のターン!ドロー!

っ!よし、これで決める!

魔法『ミラクルシンクロフュージョン』発動!」

 

ミラクルシンクロフュージョン

通常魔法

1:自分のフィールド・墓地から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを除外し、シンクロモンスターを融合素材とするその融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

2:セットされたこのカードが相手の効果で破壊され墓地へ送られた場合に発動する。自分はデッキから1枚ドローする。

 

然しながら、そのアフターケアすら、当麻の前には無力と化す。

 

「俺は墓地にあるPSYフレームロード・ZとPSYフレームギア・αを除外してシンクロ融合だ!此処から先は、俺による支配と言うシナリオでやらせて貰う!シンクロ融合!『アルティメットサイキッカー』!」

 

アルティメットサイキッカー

融合・効果モンスター

光属性

サイキック族

レベル 10

攻撃力 2900

 

「バトルフェイズに入るぜ!

アルティメットサイキッカーでドラゴン・アイスを攻撃!コイツは貫通効果持ちだ!イマジン・バースト!」

「なっぐぁぁぁぁぁぁ!?」

 

アルティメットサイキッカー 攻撃力 2900 VS ドラゴン・アイス 守備力 2200

 

Khamsin LP 3000→2300

 

貫通効果を持ったアルティメットサイキッカーの攻撃によって、カムシンのフィールドにいたドラゴン・アイスは粉々に砕け散り、その余波がカムシンをも襲った。

これによってカムシンのLPはPSYフレームロード・Zの攻撃力を下回った…!

 

「PSYフレームロード・Zでトドメだ!イマジン・ブラスター!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

Khamsin LP 2300→-200 LOSE

 

WINNER Toma



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131話_最終決戦、進行中!

「「デュエル!」」

 

先攻 Elen LP 4000 VS 後攻 Belpeol LP 4000

 

「俺の先攻!

まずは魔法『真紅眼(レッドアイズ・)融合(フュージョン)』発動!」

 

真紅眼融合

通常魔法

『真紅眼融合』は1ターンに1枚しか発動出来ず、このカードを発動するターン、自分はこのカードの効果以外ではモンスターを召喚・特殊召喚出来ない。

1:自分の手札・デッキ・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、『レッドアイズ』モンスターを融合素材とするその融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターのカード名は『真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)』として扱う。

 

第2試合であるエレンとベルペオルのデュエル、先攻となったエレンが最初に発動したのは、2体の赤い眼をしたモンスターが融合される様を描いた融合魔法。

 

「俺はデッキの『真紅眼の黒炎竜(ブラックフレアドラゴン)』と『真紅眼の凶星竜―メテオ・ドラゴン』を融合!古より伝わりし可能性の竜と隕石の力持つ竜が交わりし真紅の流星竜よ、新たなる力を得て再び降臨せよ!融合召喚!『流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン』!」

「デッキからの融合で、此処まで強大な奴が直ぐに出て来るとはねぇ…!」

 

流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン(真紅眼の黒竜)

融合・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 3500

 

それによる融合召喚の演出と共に、エレンのフィールドに舞い降りたのは、全てを焼き尽くすかの如き灼熱を纏った黒きドラゴン。

 

「融合召喚したメテオ・ブラック・ドラゴンの効果発動!

デッキから『レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン』を墓地へ送り、その攻撃力の半分をバーンダメージとしてアンタに食らわせるぜ!メテオ・ブラスター!」

「くっ!やってくれるじゃないか…!」

 

Belpeol LP 4000→2600

 

その効果発動宣言と共に放たれた隕石の様な弾丸がベルペオルに直撃、決して少なくないダメージが入った。

それを何のこれしきと言わんばかりに耐えるベルペオル、然しながら此処で何かしらの対応をしなかった、いや、出来なかった事で、エレンの勝利が一気に近づいた…!

 

「そして真紅眼の黒竜扱いのメテオ・ブラック・ドラゴンを対象に魔法『黒炎弾』発動!」

「なっ!?まさか…!」

 

黒炎弾

通常魔法

このカードを発動するターン『真紅眼の黒竜』は攻撃出来ない。

1:自分のモンスターゾーンの『真紅眼の黒竜』1体を対象として発動出来る。その『真紅眼の黒竜』の元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。

 

エレンが発動した魔法に驚きを見せるベルペオル、そう、エレンのフィールドにいるメテオ・ブラック・ドラゴンは、真紅眼融合によって登場した事によって真紅眼の黒竜扱い、その元々の攻撃力は3500、よって…!

 

「3500のバーンダメージを喰らえ!黒炎弾!」

「うわぁぁぁぁぁぁ!?」

 

Belpeol LP 2600→-900 LOSE

 

WINNER Elen

 

たった手札2枚の消費による先攻1ターンキルが決まった。

 

------------

 

「「デュエル!」」

 

先攻 ???? LP 4000 VS 後攻 Ikko LP 4000

 

「俺のターン。

モンスターをセット、カードを3枚セットしてターンエンド」

 

????

LP 4000

手札 1

モンスター セット

魔法・罠カード セット×3

 

一方、第3試合に登場した一行と、その相手である獰猛な雰囲気を漂わす男、先攻となったその男だが、雰囲気とは裏腹にカードをセットするだけという堅実な展開でターンを明け渡した。

 

「ガン伏せか、面倒くせェ手使いやがって。

俺のターン、ドロー!

まず俺のフィールドにモンスターが存在しない事で手札の『インヴェルズの魔細胞』を守備表示で特殊召喚!」

 

インヴェルズの魔細胞

効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 1

守備力 0

 

それに対する一行、如何にも面倒臭そうな表情を見せつつも、手札のモンスターの効果によって展開して行く。

そのモンスターは、一行が普段使っているヴェルズモンスターと特徴が似通った外見をしていたが、そのレベル等、所々食い違いがあった。

 

「手札の『インヴェルズ・ギラファ』はインヴェルズモンスター1体でアドバンス召喚出来るぜェ!この効果でインヴェルズの魔細胞をリリースしてアドバンス召喚、レベル7!インヴェルズ・ギラファ!」

「2000LPを払ってカウンター罠『神の警告』発動!ソイツのアドバンス召喚を無効にする!」

 

神の警告(制限カード)

カウンター罠

1:2000LPを払って以下の効果を発動出来る。

●モンスターを特殊召喚する効果を含む、モンスターの効果・魔法・罠カードが発動した時に発動出来る。その発動を無効にし破壊する。

●自分または相手がモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚する際に発動出来る。それを無効にし、そのモンスターを破壊する。

 

???? LP 4000→2000

 

そのモンスターが何やら細胞が分裂するかの様に数を増やし、やがて昆虫の様な姿へと変貌していこうとするも、男が発動したカウンター罠、それによって降り注いだ光によって消し去られてしまった。

 

「ちィ、だがそのセットモンスターは潰させてもらおォか!魔法『死者蘇生』!」

 

死者蘇生(制限カード)

通常魔法

1:自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

「死者蘇生の効果で、アドバンス召喚に失敗したギラファを蘇生するぜェ!」

 

インヴェルズ・ギラファ

効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 7

攻撃力 2600

 

だがそのモンスターが消し飛ばされた場から再び光が降り注ぎ、クワガタムシを彷彿とさせる姿のモンスターが現れた。

そう、一行が今回使用しているデッキは『インヴェルズ』、端末世界において当時存在していたガスタ等の各勢力への侵略を行い、後に『ヴェルズ』を誕生させる元凶となった勢力であり、アドバンス召喚によって効果を発揮する上級モンスター達と、アドバンス召喚に関連する効果を持つ下級モンスター達、そして『ヴェルズ』にも対応するカテゴライズを活かした豊富なサポートカードで、端末世界における行動さながらにじわじわと、しかし確実にアドバンテージを稼いで制圧して行くデッキである。

今しがた登場したギラファもまた、アドバンス召喚によって効果が発動される筈だったのだが、神の警告によって防がれた格好となった訳である。

 

「バトルフェイズに入るぜェ!

ギラファでセットモンスターを攻撃だァ!」

「グルルル…

ダメージステップ良いか?」

「何ィ?」

「ダメージ計算前に速攻魔法『禁じられた聖槍』発動!対象はソイツだぁ!」

「ちィ、そォ来るか(手札には『侵略の汎発感染』があるが、ダメージステップに入っちゃァ発動出来ねェ、見逃すしかねェな…)…!」

 

禁じられた聖槍

速攻魔法

1:フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターはターン終了時まで、攻撃力が800ダウンし、このカード以外の魔法・罠カードの効果を受けない。

 

だがそれでもギラファの攻撃力は中々の物、リリース無しでセットしたモンスターなど敵ではない、そう判断した一行はギラファを突撃させるも、男が発動したコンバットトリックの定番と言って良い速攻魔法で登場した槍の光と、

 

インヴェルズ・ギラファ 攻撃力 2600→1800 VS 剣闘獣(グラディアル・ビースト)ホプロムス 守備力 2100

 

Ikko LP 4000→3700

 

下級モンスターながら強固な守備力を誇る、鎧を纏ったサイの様なモンスター、ホプロムスに阻まれてしまった。

それだけではない。

 

「チィッバトルフェイズを終了だ」

「ならばバトルフェイズ終了時、戦闘を行ったホプロムスをデッキに戻して効果発動!

デッキから『剣闘獣アウグストル』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

剣闘獣アウグストル

効果モンスター

闇属性

鳥獣族

レベル 8

攻撃力 2600

 

ホプロムスに代わって、鎧を纏った鳥人の様なモンスターが姿を見せた。

そう、この男が使用するデッキは『剣闘獣』、嘗てOCGにおいてライトロードと双璧を成すガチデッキとして活躍していた事もあったデッキで、戦闘を介してのリクルート効果と、その効果によって誘発される効果、そして遊矢の持つネオスが行うコンタクト融合そっくりな方法による融合召喚によって登場する融合モンスターのカードパワーによって柔軟に立ち回るデッキである。

正に剣闘獣デッキにおける理想と言っても過言じゃない今の状況、一行はそれを許してしまったという事である。

 

「やってくれンじゃねェか。

なら、カードを2枚セットしてターンエンドだ!」

 

Ikko

LP 3700

手札 1

モンスター インヴェルズ・ギラファ(攻撃表示)

魔法・罠カード セット×2

 

「俺のターン、ドロー!

まずは『レスキューキャット』を召喚!」

 

レスキューキャット(制限カード)

効果モンスター

地属性

獣族

レベル 4

攻撃力 300

 

相手の思う通りの展開にした事を察した一行だが、焦る事無くセットカードを並べて、ターンを明け渡した。

その後、明け渡された男が呼び出したのは、最近エラッタという形で制限カードに復帰したモンスター。

頭に黄色のドカヘルを被り、首にホイッスルをぶら下げた猫、という可愛らしい姿ではあるが、その効果は凶悪その物だ。

 

「今召喚したレスキューキャットをリリースして効果発動!

デッキから『剣闘獣サムニテ』2体を攻撃表示で特殊召喚!」

 

剣闘獣サムニテ

効果モンスター

地属性

獣族

レベル 3

攻撃力 1600

 

その効果は『レベル3以下』の『獣族』モンスター2体のリクルート。

エラッタによってリクルートされたモンスターの効果が無効に(発動は出来る)なり、名称指定で1ターンに1度しか発動出来なくはなったものの、それでも1度に2体のモンスターをリクルート出来るという効果は強力であり、しかも召喚権を使わなくても使えるので、エラッタ前には『サモサモキャットベルンベルンDDBDDB』という悪夢の呪文を生み出し、当時のOCG環境を魔境に叩き込んだ元凶の1つと言われた程だ。

今の環境でもランク3以下のエクシーズモンスターやレベル6以下のシンクロモンスターをたった1枚で呼び出せる等、そのカードパワーは健在。

そんなレスキューキャットの効果で呼び出されたのは、鎧を纏ったサーベルタイガーの様なモンスター。

 

「俺はアウグストルと、今呼び出したサムニテ2体をデッキに戻して融合!彷徨える古の剣闘獣の亡霊どもよ、皇帝の名の元に集いその力を捧げよ!融合召喚!来い!『剣闘獣アンダバダエ』!」

 

剣闘獣アンダバダエ(アニメオリジナルカード)

融合・効果モンスター

闇属性

獣戦士族

レベル 8

攻撃力 1000

 

これによって並んだ3体の剣闘獣モンスター、それらが融合召喚の演出と共に集結して登場したのは、鎧を纏ったドラゴンの様なモンスター、アンダバダエ。

 

「3体も融合素材を使って攻撃力1000のモンスターを攻撃表示?何かあるなァ…?」

「特殊召喚したアンダバダエの効果発動!

エクストラデッキから『剣闘獣ガイザレス』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

剣闘獣ガイザレス

融合・効果モンスター

闇属性

鳥獣族

レベル 6

攻撃力 2400

 

その重い融合素材の割に低いステータスのアンダバダエを態々攻撃表示で呼び出す、一見すると自殺行為にも程があるこの行動に、何かあると踏んだ一行、その予想に応えるかの様にアンダバダエがその力を振るい、重厚な鎧を身に纏った緑の鳥人の様なモンスター、剣闘獣デッキにおける主力モンスターの1体であるガイザレスが登場した。

 

「ガイザレスの効果発動!対象はソイツと、左側のセットカードだ!」

「ぐぉ!?」

 

そのガイザレスの効果によって切り裂かれるギラファと、セットカード。

 

「バトルフェイズに入る!

ガイザレスでダイレクトアタック!」

「あだっ!?」

 

Ikko LP 3700→1300

 

「アンダバダエの効果で特殊召喚されたガイザレスは、戦闘を行ったダメージステップ終了時に、エクストラデッキへと戻る。

そして此処で、アンダバダエの2つ目の効果発動!

エクストラデッキに戻ったガイザレスの攻撃力分、その攻撃力をアップする!」

「何ィ?」

 

剣闘獣アンダバダエ 攻撃力 1000→3400

 

「これで終わりだぁ!

アンダバダエでダイレクトアタック!」

「ちィ、止むを得ねェか!

500LPを払い、罠『侵略の波紋』発動!対象は墓地の魔細胞!」

 

侵略の波紋

通常罠

500ライフポイントを払い、自分の墓地のレベル4以下の『インヴェルズ』と名の付いたモンスター1体を選択して発動出来る。選択したモンスターを特殊召喚する。

 

Ikko LP 1300→800

 

「侵略の波紋の効果で、魔細胞を守備表示で蘇生するぜェ!」

「なら、アンダバダエでソイツを攻撃!」

 

剣闘獣アンダバダエ 攻撃力 3700 VS インヴェルズの魔細胞 守備力 0

 

それでも2体の総攻撃力は3400、LPはギリギリ残ると思っていた一行だが、アンダバダエの更なる効果にそうも言っていられなくなり、やむを得ず残っていたセットカードを発動、急場をしのいだ。

 

「そして装備魔法『剣闘獣の闘器デーモンズシールド』をアンダバダエに装備してターンエンド!」

 

剣闘獣の闘器デーモンズシールド

装備魔法

『剣闘獣』と名の付いたモンスターにのみ装備可能。

装備モンスターが破壊される場合、代わりにこのカードを破壊する。

装備モンスターが自分フィールド上からデッキに戻る事によってこのカードが墓地へ送られた時、このカードを手札に戻す。

 

????

LP 2000

手札 0

モンスター 剣闘獣アンダバダエ(攻撃表示)

魔法・罠カード 剣闘獣の闘器デーモンズシールド(装備対象:剣闘獣アンダバダエ)

        セット

 

その攻撃力が上がったアンダバダエに、1回限りの破壊耐性を与える盾を装備させ、男はターンを明け渡した。

 

「俺のターン!ドロー!

此処が勝負だァ!まずは手札の魔細胞を守備表示で特殊召喚!

次に魔細胞をリリースしてギラファをアドバンス召喚!

アドバンス召喚したギラファの効果発動!対象はアンダバダエ!

コイツのアドバンス召喚成功時、対象のカードを墓地へ送り、俺のLPを1000回復するぜェ!」

「無駄だ、アンダバダエの代わりにデーモンズシールドを「そりゃァこっちの台詞だ!ギラファの効果は墓地送りであって破壊じゃねェ!」な、何!?」

 

が、一行のドローは、その上を行った。

先程はアドバンス召喚自体を無効化された事によって発動される事が無かったギラファの効果、それは『破壊しない』除去とライフゲインを兼ねた物、これによってアンダバダエは耐性を活かすことなくギラファによって葬り去られ、

 

Ikko LP 800→1800

 

「バトルフェイズに入る!

ギラファでダイレクトアタック!」

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

???? LP 2000→-600 LOSE

 

WINNER Ikko

 

デュエルに決着が付いた。

勝敗を確認してフィールドを後にしようとする一行、ふと後方から「戦争を終わらせてくれて、ありがとう、ランサーズ…」という言葉が投げかけられたのを耳にした。

恐らくは先程の男かも知れない、融合次元の遊勝塾に逃れた存在や先程の男の様に侵略を良しとしなかったデュエリストは少なくなかったのかも知れない。

その事実に、一行は胸が何処か軽くなった様な感覚を覚えた。



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132話_最終決戦、決着(ではない

今回は結構短いです。


「「デュエル!」」

 

先攻 Friagne LP 4000 VS 後攻 Yuzu LP 4000

 

「僕の先攻か。

なら、まずは魔法『予想GUY』発動」

 

予想GUY

通常魔法

1:自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動出来る。デッキからレベル4以下の通常モンスター1体を特殊召喚する。

 

「予想GUYの効果で、デッキから『クィーンズ・ナイト』を守備表示で特殊召喚」

 

クィーンズ・ナイト

通常モンスター

光属性

戦士族

レベル 4

守備力 1600

 

第4試合である柚子とフリアグネのデュエル、先攻となったフリアグネが最初に発動した予想GUYによって登場したのは、トランプのQ(クィーン)を模した女剣士。

 

「次に『キングス・ナイト』を召喚」

 

キングス・ナイト

効果モンスター

光属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1600

 

次に呼び出したのは、トランプのK(キング)を模した老剣士。

 

「クィーンズ・ナイトが存在する事で、召喚したキングス・ナイトの効果発動。

デッキから『ジャックス・ナイト』を攻撃表示で特殊召喚」

 

ジャックス・ナイト

通常モンスター

光属性

戦士族

レベル 5

攻撃力 1900

 

その老剣士の効果によって更に登場したのは、トランプのJ(ジャック)を模した若き剣士。

そう、今回フリアグネが使用しているデッキは『絵札の三剣士』、今しがたフリアグネが呼び出した3体のシナジー、及び3体を融合素材とした融合モンスターの力でフィールドを制圧するデッキだ。

 

「そして魔法『融合』発動」

 

融合

通常魔法

1:自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「僕はフィールドのジャックス・ナイト、クィーンズ・ナイト、そしてキングス・ナイトで融合!絵札の3剣士の力が今集結し、切り札の剣士が降臨する!融合召喚!さあおいで、『アルカナナイトジョーカー』!」

 

アルカナナイトジョーカー

融合・効果モンスター

光属性

戦士族

レベル 9

攻撃力 3800

 

その3体を融合素材とした融合召喚の演出と共に登場したのは、トランプのジョーカーを模した戦士。

 

「僕はこれでターンエンドだよ」

 

Friagne

LP 4000

手札 2

モンスター アルカナナイトジョーカー(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

「セットカード無し…?

何かありそうだけど、私は私のデュエルをするまで!私のターン、ドロー!

まずは手札の『堕天使イシュタム』と『堕天使スペルビア』を墓地へ送ってイシュタムの効果発動!

2枚ドロー!」

 

モンスターはアルカナナイトジョーカーのみ、魔法・罠カードのセット無しという、一見すると無防備に近い状態で終わらせたフリアグネの盤面に疑問を覚える柚子だったが、一先ずそれを考えるのは後回しとし、まずは今回使う堕天使デッキでのキーカードであるイシュタムの効果で手札交換を行った。

 

「次に魔法『手札抹殺』発動!」

「手札抹殺か、中々厄介だね…」

 

手札抹殺(制限カード)

通常魔法

1:手札があるプレイヤーは、その手札を全て捨てる。その後、それぞれ自身が捨てた枚数分デッキからドローする。

 

「手札抹殺の効果で、私は5枚の手札を全て捨て、5枚ドロー!」

「僕も2枚の手札を全て捨て、2枚ドローするよ」

「続いて魔法『死者蘇生』発動!対象はさっき墓地へ送ったスペルビア!」

 

死者蘇生(制限カード)

通常魔法

1:自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

「死者蘇生の効果でスペルビアを攻撃表示で蘇生するわ!」

 

堕天使スペルビア

効果モンスター

闇属性

天使族

レベル 8

攻撃力 2900

 

「蘇生したスペルビアの効果発動!対象は手札抹殺で墓地へ送られた『堕天使テスカトリポカ』よ!

効果でテスカトリポカを攻撃表示で蘇生するわ!」

 

堕天使テスカトリポカ

効果モンスター

闇属性

天使族

レベル 9

攻撃力 2800

 

其処から手札抹殺で更なる手札交換を行った柚子、それによって引いた5枚のうち1枚である死者蘇生から、墓地から大量展開を行う上で欠かせないスペルビアを、そのスペルビアの効果でエースの一角であるテスカトリポカを蘇生した。

 

「更に魔法『堕天使の戒壇』発動!」

 

堕天使の戒壇

通常魔法

『堕天使の戒壇』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:自分の墓地の『堕天使』モンスター1体を選んで守備表示で特殊召喚する。

 

「堕天使の戒壇の効果で、2枚目のスペルビアを守備表示で蘇生するわ!

蘇生したスペルビアの効果発動!対象は墓地の『堕天使マスティマ』!

効果でマスティマを攻撃表示で蘇生するわ!」

 

堕天使マスティマ

効果モンスター

闇属性

天使族

レベル 7

攻撃力 2600

 

尚も展開される堕天使達。

これでフィールドにはスペルビア2体、テスカトリポカ、マスティマという、計4体の最上級モンスターが並んだ。

 

「まだまだ行くわよ!1000LPを払い、墓地にある堕天使の戒壇を対象にマスティマの効果発動!

堕天使の戒壇の効果を適用し、墓地の『堕天使ユコバック』を守備表示で蘇生するわ!」

 

堕天使ユコバック

効果モンスター

闇属性

天使族

レベル 3

守備力 1000

 

Yuzu LP 4000→3000

 

それでも柚子の展開は止まらない。

5体目のモンスターは、七つの大罪『暴食』を司る悪魔ベルゼブブの手下の名を冠した堕天使。

 

「特殊召喚したユコバックの効果発動!

デッキから『背徳の堕天使』を墓地へ送るわ。

私は共に守備表示になっている、スペルビアとユコバックをリリースしてアドバンス召喚!傲慢を体現した最凶の堕天使よ、眼前の愚者に鉄槌を下せ!出でよ、レベル11!『堕天使ルシフェル』!」

 

堕天使ルシフェル

効果モンスター

闇属性

天使族

レベル 11

攻撃力 3000

 

「まさか最上級モンスターを計4体、一気に揃えるとはね。

流石にランサーズの精鋭部隊、実力は伊達じゃないって事かな」

 

そのユコバックとスペルビア、2体の守備表示モンスターをリリースして登場したルシフェルの姿に、4体も攻撃表示で並んだ最上級モンスターの居並ぶ姿に、感心を覚えるフリアグネ。

だが、

 

「まだ私のメインフェイズは終わっていないわ!

アドバンス召喚したルシフェルの効果発動!

このカードのアドバンス召喚に成功した時、貴方のフィールドにいる効果モンスターの数だけ手札かデッキから堕天使を特殊召喚出来るわ!

この効果でデッキから『堕天使ゼラート』を攻撃表示で特殊召喚!」

「一気に5体の最上級モンスターが君のフィールドに…」

 

堕天使ゼラート

効果モンスター

闇属性

天使族

レベル 8

攻撃力 2800

 

柚子の展開はまだ終わりじゃ無かった。

アドバンス召喚したルシフェルによってゼラートが呼び出され、これで再び5体の堕天使モンスターが柚子のフィールドに並び立った。

 

「此処でルシフェルの更なる効果発動!

フィールドにいる堕天使の数分、デッキの上からカードを墓地へ送れるわ!

今フィールドにいる堕天使はルシフェルを含めて5体、よってデッキの上から5枚を墓地へ送り…

よし!墓地へ送られたのは堕天使の戒壇、『堕天使の追放』、背徳の堕天使、『魅惑の堕天使』、『堕天使降臨』の5枚、全て堕天使カード!よって私のLPを2500回復するわ!」

 

Yuzu LP 3000→5500

 

「そして1000LPを払い、さっき墓地へ送った背徳の堕天使を対象にテスカトリポカの効果発動!

背徳の堕天使の効果を適用し、アルカナナイトジョーカーを破壊するわ!」

「そうは行かないね、それにチェーンして手札の『霊魂の護送船』を捨て…

あれ、発動出来ないな?今のは僕のカードを対象としたモンスター効果の筈…」

「言って置くけど、背徳の堕天使は対象に取る効果じゃないわ!」

「あら、そうだったのか。これはしまったね…」

 

Yuzu LP 5500→4500

 

そしてフリアグネのフィールドを丸裸にすべく、テスカトリポカは光の槍をアルカナナイトジョーカーへと放つ。

フリアグネもそうはさせまいとアルカナナイトジョーカーの効果を発動させようとするも、発動条件を満たす事が出来なかったためデュエルディスクが反応せず、目の前でアルカナナイトジョーカーが串刺しになるのを見ているしかなかった。

アルカナナイトジョーカーの効果、それは自らを『対象とした』カードの効果を、それと同じ種類の手札1枚を捨てる事で無効にする効果。

要は自らを対象とする効果に対する『神の摂理』であるのだが、堕天使と名の付く魔法・罠カードは一部堕天使モンスターが持つ効果との兼ね合いから、対象を取らない事になっているのだ。

よってアルカナナイトジョーカーはその真価を発揮する事無く破壊され、フリアグネは万事休すとなったのだ。

 

「バトルフェイズに入るわ!

全員、総攻撃よ!」

「あらら、負けちゃったか…」

 

Friagne LP 4000→1400→-1400→-4200→-7100→-10100 LOSE

 

WINNER Yuzu

 

こうしてユシウス達ランサーズは4連勝を飾った。

普通の団体戦なら此処で決着、ランサーズの勝利になるが、今回はどちらかのメンバー全員が敗北するまで行われる形となっている、よってデュエルは、まだまだ続く…!



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133話_最終決戦、大詰めへ…!

「「デュエル!」」

 

先攻 Hekate LP 4000 VS 後攻 Noboru LP 4000

 

「私の先攻。

まずは永続魔法『黒の魔導陣』発動」

 

黒の魔導陣

永続魔法

『黒の魔導陣』の1・2の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

1:このカードの発動時の効果処理として、自分のデッキの上からカードを3枚確認する。その中に『ブラック・マジシャン』のカード名が記された魔法・罠カードまたは『ブラック・マジシャン』があった場合、その1枚を相手に見せて手札に加える事が出来る。残りのカードは好きな順番でデッキの上に戻す。

2:自分フィールドに『ブラック・マジシャン』召喚・特殊召喚された場合、相手フィールドのカード1枚を対象として発動出来る。そのカードを除外する。

 

「黒の魔導陣の発動時の効果で、デッキの上から3枚を見て…

罠『マジシャンズ・ナビゲート』を手札に加える。

カードを4枚セットしてターンエンド」

 

Hekate

LP 4000

手札 1

モンスター なし

魔法・罠カード 黒の魔導陣

        セット×4

 

第5試合であるヘカテーと権現坂のデュエル、先攻となったヘカテーは永続魔法の発動とそれの発動時に誘発される効果でのサーチ、そして魔法・罠ゾーンを全て使ったカードのセット(所謂ガン伏せ)でターンを明け渡した。

一見すると手札事故を起こしたか、あるいは慎重な立ち回りに終始する腹積もりか、と考える所であろうが…

 

「俺のターン、ドロー!

ふむ、ならばこうするか!まずは手札の『超重武者ヒキャ―Q』を守備表示で特殊召喚!」

「確かそのモンスターは…

通さない。2000LPを払ってカウンター罠『神の警告』発動。その特殊召喚を無効にする」

 

神の警告(制限カード)

カウンター罠

1:2000LPを払って以下の効果を発動出来る。

●モンスターを特殊召喚する効果を含む、モンスターの効果・魔法・罠カードが発動した時に発動出来る。その発動を無効にし破壊する。

●自分または相手がモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚する際に発動出来る。それを無効にし、そのモンスターを破壊する。

 

Hekate LP 4000→2000

 

その展開を見てどう動くか判断した権現坂は早速、自らのデッキにおけるコンボ要員であるヒキャ―Qを特殊召喚しようとしたが、神警の通称で知られるカウンター罠によって阻まれてしまう。

 

「む、防がれたか。

ならば手札の『超重武者ビッグワラ―G』を守備表示で特殊召喚!」

「…」

 

超重武者ビッグワラ―G

効果モンスター

地属性

機械族

レベル 5

守備力 1800

 

次に機械族用のダブルコストモンスターであるビッグワラ―Gが呼び出されたが、それに対してヘカテーは権現坂の盤面をじっと見つめるだけで動きは無かった。

 

「続いて手札の『超重武者ホラガ―E』を守備表示で特殊召喚!」

「合計レベルは7…

あのモンスターを出せる組み合わせじゃない…」

 

超重武者ホラガ―E

効果モンスター/チューナー

地属性

機械族

レベル 2

守備力 600

 

続いてチューナーであるホラガ―Eが呼び出されるも、ヘカテーは何やら呟いただけで再び動きは無かった。

 

「俺はレベル5のビッグワラ―Gに、レベル2のホラガ―Eをチューニング!速きこと風の如く!静かなること林の如し!音無く忍びトドメを刺せ!シンクロ召喚!出でよ、レベル7!『超重忍者シノビ―A・C』!」

「新しいシンクロモンスター…!

させない、LPを半分払ってカウンター罠『神の宣告』発動!そのシンクロ召喚を無効にする!」

 

神の宣告

1:LPを半分払って以下の効果を発動出来る。

●魔法・罠カードが発動した時に発動出来る。その発動を無効にし破壊する。

●自分または相手がモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚する際に発動出来る。それを無効にし、そのモンスターを破壊する。

 

Hekate LP 2000→1000

 

その2体を用いたシンクロ召喚の演出が繰り広げられようとしていた中、此処で再びヘカテーが動いた。

これまた神宣の通称で知られるカウンター罠でシンクロ召喚を阻む。

 

「これも防ぐか。

なればこうするか。2枚目のビッグワラ―Gを守備表示で特殊召喚!」

「2枚目…

ならマジシャンズ・ナビゲート発動!」

 

マジシャンズ・ナビゲート

通常罠

1:手札から『ブラック・マジシャン』1体を特殊召喚する。その後、デッキからレベル7以下の魔法使い族・闇属性モンスター1体を特殊召喚する。

2:自分フィールドに『ブラック・マジシャン』が存在する場合、墓地のこのカードを除外し、相手フィールドの表側表示の魔法・罠カード1枚を対象として発動出来る。そのカードの効果をターン終了時まで無効にする。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動出来ない。

 

「マジシャンズ・ナビゲートの効果で、手札から『ブラック・マジシャン』を、デッキから『幻想の見習い魔導師』を、其々守備表示で特殊召喚!」

 

ブラック・マジシャン

通常モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 7

守備力 2100

 

幻想の見習い魔導師

効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 6

守備力 1700

 

だがそれでも権現坂は、ヘカテーは動きを止めない、2枚目のビッグワラ―Gを展開したのを見たヘカテーは3枚目のセットカードを発動し、青眼の白龍と並んでデュエルモンスターズにおける伝説と化している魔法使いと、その弟子である色黒な魔法使いの少女がヘカテーのフィールドに並んだ。

 

「ブラック・マジシャンを特殊召喚した事で、黒の魔導陣の効果発動!対象はビッグワラ―G!

それにチェーンして、特殊召喚した幻想の見習い魔導師の効果発動!

まずは幻想の見習い魔導師の効果で、デッキから2枚目のブラック・マジシャンを手札に加える。

次に黒の魔導陣の効果で、ビッグワラ―Gを除外する!」

「むっ!?」

 

それによって誘発された魔導陣から発する光によってビッグワラ―Gが消え去った事に、流石の権現坂も驚きを隠せなかった。

さて、今更だが今回ヘカテーが使用しているデッキは『ブラック・マジシャン』、読んで字の如くブラック・マジシャン及びそのサポートカードを中心としたデッキである。

そのサポートカードが速攻魔法や罠、相手ターンでの行動によって誘発される効果を持っている物が多い事から、相手の行動を先読みして潰しつつこちらが展開して行くのがこのデッキの戦略だ。

ヘカテーがガン伏せしたのも権現坂がどう動くかを予測しての物、という訳である。

が、

 

「これも阻まれるか。

なれば行くしかあるまい!『超重武者タマ―C』を召喚!」

「此処でそのチューナー…?

まさか…!?」

 

超重武者タマ―C

効果モンスター/チューナー

闇属性

機械族

レベル 2

攻撃力 100

 

「そう、恐らくはそのまさかであろう!

タマ―Cの効果発動!対象は幻想の見習い魔導師だ!

俺はレベル6の幻想の見習い魔導師に、レベル2のタマ―Cをチューニング!闇に潜む忍びの者よ。山に木霊する叫びと共に、荒れ果てた戦場に現れよ!シンクロ召喚!いざ出陣、レベル8!『超重忍者サルト―B』!」

 

超重忍者サルト―B

シンクロ・効果モンスター

地属性

機械族

レベル 8

守備力 2800

 

権現坂の展開力はその上を行った。

権現坂がタマ―Cの効果でシンクロ召喚したのは、真田十勇士の一角である忍者、猿飛佐助をモチーフとした機械忍者。

 

「サルト―Bの効果発動!対象は最後に残ったそのセットカード!

そのカードを破壊し、貴殿に500ダメージを与える!」

「なっ!?くっ!」

 

Hekate LP 1000→500

 

「俺はこれでターンエンドだ」

 

Noboru

LP 4000

手札 1

モンスター 超重忍者サルト―B(守備表示)

魔法・罠カード なし

 

「私のターン、ドロー!」

「これで終わりだ!サルト―Bの効果発動!対象は黒の魔導陣だ!」

「ふ、フリーチェーン!?きゃぁ!?」

 

その効果はフリーチェーンで魔法・罠カードを破壊し、追加でバーンダメージを与えるという、モンスター効果版『サイクロン』と言って良い効果であり、このデュエルの勝敗を決める一手であった。

 

Hekate LP 500→0 LOSE

 

WINNER Noboru

 

------------

 

「「デュエル!」」

 

先攻 Reizi LP 4000 VS 後攻 Leo LP 4000

 

「僕のターン!

まずは手札の『DDスワラル・スライム』の効果発動!

僕は手札のスワラル・スライムと『DDバフォメット』を融合!異形の神よ、自在に形を変える神秘の渦に融け込み、真の王と生まれ変わらん!融合召喚、生誕せよ!『DDD烈火王テムジン』!」

 

DDD烈火王テムジン

融合・効果モンスター

炎属性

悪魔族

レベル 6

攻撃力 2000

 

一方、第6試合である零児と零王、親子対決となったこのデュエル、先攻となった零児は、手札にあったスワラル・スライムの効果で大量展開コンビの一角であるテムジンを早速融合召喚した。

その厳しさを前面に出した、何時もとは違う表情から見える物は果たして、零王への怒りか、或いは…

 

「次に『DDナイト・ハウリング』を召喚!」

 

DDナイト・ハウリング

効果モンスター/チューナー

闇属性

悪魔族

レベル 3

攻撃力 300

 

「召喚したナイト・ハウリングの効果発動!対象は今しがた墓地へ送ったバフォメットだ!

効果でバフォメットを守備表示で蘇生する!この効果で蘇生したバフォメットの攻守は0になる」

 

DDバフォメット

効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 4

守備力 1800→0

 

それは兎も角として、零児は召喚したナイト・ハウリングの効果で、融合素材となったバフォメットを蘇生、これでレベル7シンクロモンスターをシンクロ召喚する手筈が整った(一応バフォメットの効果で調整も可能)。

 

「僕はレベル4のバフォメットに、レベル3のナイト・ハウリングをチューニング!闇を切り裂く咆哮よ、疾風の速さを得て新たな王の産声となれ!シンクロ召喚、生誕せよ!レベル7『DDD疾風王アレクサンダー』!」

 

DDD疾風王アレクサンダー

シンクロ・効果モンスター

風属性

悪魔族

レベル 7

攻撃力 2500

 

その2体を用いてシンクロ召喚したのは案の定と言うべきか、大量展開コンビのもう一方であるアレクサンダー。

 

「アレクサンダーを特殊召喚した事で、テムジンの効果発動!対象は今しがた墓地へ送ったナイト・ハウリング!

効果でナイト・ハウリングを守備表示で蘇生する!

ナイト・ハウリングを蘇生した事で、アレクサンダーの効果発動!対象はこれも今しがた墓地へ送ったバフォメット!

効果でバフォメットを守備表示で蘇生する!

続いてナイト・ハウリングを対象にバフォメットの効果発動!

ナイト・ハウリングのレベルを4にする!」

 

DDナイト・ハウリング レベル 3→4

 

「僕はナイト・ハウリングとバフォメットでオーバーレイ!2体のレベル4・悪魔族モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!この世の全てを統べるため今、世界の頂に降臨せよ!エクシーズ召喚、生誕せよ!ランク4!『DDD怒濤王シーザー』!」

 

DDD怒濤王シーザー

エクシーズ・効果モンスター

水属性

悪魔族

ランク 4

攻撃力 2400

ORU 2

 

「凄まじい展開力だ、零児。先攻1ターンで融合、シンクロ、エクシーズ、各次元の召喚方法を繰り出すとは…」

 

並び立った大量蘇生コンビ、その効果によって再びフィールドへと舞い降りたナイト・ハウリングとバフォメット、その一方であるバフォメットの効果によるレベル調整を経てのエクシーズ召喚の演出と共に、防御の要と言って良いシーザーも呼び出された。

その展開力に舌を巻く零王だったが、

 

「感心するのは早い!永続魔法『独占封印の契約書』を発動!」

 

独占封印の契約書(アニメオリジナルカード)

永続魔法

1:このカードが魔法・罠ゾーンに存在する限り、自分はエクストラデッキからモンスターを特殊召喚出来ない。

2:自分フィールドに融合・シンクロ・エクシーズ・ペンデュラムモンスターの内、いずれかが表側表示で存在する限り、相手はそのモンスターと同じ種類のモンスターをエクストラデッキから特殊召喚出来ない。

 

零児の展開は終わっていなかった。

 

「今の僕のフィールドには融合、シンクロ、エクシーズモンスターが存在する、よってこのカードが存在する限り、アンタはペンデュラム召喚以外、エクストラデッキからモンスターを呼び出す事は出来ない!

更にカードをセットしてターンエンド!さあ来るが良い父さん、この鉄壁の布陣を崩せるものなら崩して見せろ!」

 

Reizi

LP 4000

手札 0

モンスター DDD烈火王テムジン(攻撃表示)

      DDD疾風王アレクサンダー(攻撃表示)

      DDD怒濤王シーザー(攻撃表示)

魔法・罠カード 独占封印の契約書

        セット

 

「大した自信だな、零児。だが…

私のターン、ドロー!」

「そのドローフェイズ終了時、罠発動!これでアンタを完膚なきまでに打ち砕く!

 

 

 

『次元障壁』!対象とするのはペンデュラムモンスターだ!」

「な、何!?」

 

次元障壁

通常罠

『次元障壁』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:モンスターの種類(儀式・融合・シンクロ・エクシーズ・ペンデュラム)を1つ宣言して発動出来る。このターン、お互いに宣言した種類のモンスターを特殊召喚出来ず、フィールドの宣言した種類のモンスターの効果は無効化される。

 

そしてセットされていた最後の1枚を発動、それはまるで父の想いを完全に否定すると言って良い壁の様であった。

 

「これでこのターンに限りペンデュラム召喚も出来ず、ペンデュラムモンスターの効果も無効となる!」

「な、な…!

私は、モンスターをセットして、ターンエンド…」

 

Leo

LP 4000

手札 5

モンスター セット

魔法・罠カード なし

 

それに対処する術が無かったからか、或いは零児との軋轢の深さを思い知ったからか、まるで打ちひしがれたかの様に、零王はモンスターをセットするだけでターンを終えた。

 

「僕のターン、ドロー!

僕は墓地のスワラル・スライムを除外して効果発動!

今ドローした『DDD死偉王ヘル・アーマゲドン』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

DDD死偉王ヘル・アーマゲドン

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 8

攻撃力 3000

 

そんな零王に、今攻撃を仕掛ければ勝利はほぼ確定的と言っても良い状況ではあったが、それでも零児はやれるだけの事をやる。

前のターンに融合素材として墓地へ送られていたスワラル・スライムの効果を用いて、ヘル・アーマゲドンを呼び出した。

 

「バトルフェイズに入る!

アレクサンダーでセットモンスターを攻撃!」

「セットモンスターは『精霊(スピリット・)結晶(クリスタル)―サラマンダー・コア』だ…」

 

DDD疾風王アレクサンダー 攻撃力 2500 VS 精霊結晶―サラマンダー・コア 守備力 0

 

「そのまま総攻撃だ!

歯を食いしばれ、赤馬零王!」

「がっ…!?」

 

Leo LP 4000→2000→-400→-3400 LOSE

 

WINNER Reizi

 

そのまま残ったモンスター達でダイレクトアタックを宣言する、と共に自らも零王の元へと歩み寄り、その顔面に渾身のストレートパンチをぶち込んだ零児。

己と零王との因縁にケリをつけた零児、その顔は何処か、全てをやり遂げたと言わんばかりの様子だった。

これでこの戦いはランサーズの6連勝となった、残るはユシウスとキサラのデュエル…!



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134話_二天龍、激突!前編

「それにしても良いのか?アクションデュエルで?」

「勿論であります。この前は決着を果たす事が出来なかった貴方とのアクションデュエル、この無念を晴らすならばやはり、貴方とのアクションデュエルでなければ」

 

ランサーズ側が6連勝を遂げているアカデミアとランサーズの対抗戦、第7試合であるユシウスとキサラのデュエルは今までと違い、キサラのリクエストによってアクションデュエルで行われる事となった。

そのリクエストに若干の戸惑いを見せたユシウスであったが、キサラからその理由を聞かれ何処か納得した様子を見せ、デュエルディスクを構え、

 

「ならば始めるぞ、キサラ!フィールド魔法『クロス・オーバー』発動!」

 

予めセットされていたクロス・オーバーを発動、周囲にアクションカードをばら撒いた。

それに応じるかの様にキサラもデュエルディスクを構え、ユシウスと相対する。

 

「さあ行くであります!戦いの殿堂に集いしデュエリストが!」

「モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!」

「フィールド内を駆け巡る!」

「見よ、これぞデュエルの最強進化系!」

「「アクショーン、デュエル!」」

 

先攻 Kisara LP 4000 VS 後攻 Lucius LP 4000

 

「私の先攻であります!

まずは手札を1枚捨てて魔法『ドラゴン・目覚めの旋律』発動!」

 

ドラゴン・目覚めの旋律

通常魔法

1:手札を1枚捨てて発動出来る。攻撃力3000以上で守備力2500以下のドラゴン族モンスターを2体までデッキから手札に加える。

 

「ドラゴン・目覚めの旋律の効果で、デッキから『青眼の白龍』と『ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン』を手札に加えるであります!」

「カオス・MAX…

確か月影を一撃で吹き飛ばしたモンスターであったな…」

 

キサラが発動した魔法によってサーチされた2枚のカード、その内の1枚を見たユシウスは以前、それによって部下である月影があっさりと敗北を喫した事を思い出して警戒を強める。

 

「次に儀式魔法『高等儀式術』を発動!」

 

高等儀式術

儀式魔法

手札の儀式モンスター1体を選び、そのカードとレベルの合計が同じになる様にデッキから通常モンスターを墓地へ送る。その後、選んだ儀式モンスター1体を特殊召喚する。

 

「私はたった今手札に加えたカオス・MAX・ドラゴンを選び、デッキから2枚目の青眼の白龍を墓地へ送り、降臨させるであります!今こそ君臨せよ、混沌を一身に受け止めた青き眼の龍よ!その力は天をも切り裂く!儀式召喚!出でよ、ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン!」

『ガァァァァァァァ!』

 

ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン

儀式・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 4000

 

其処から案の定というべきか、月影を一撃で倒したドラゴンが早速降臨するも、

 

「続いて『青き眼の乙女』を召喚!」

 

青き眼の乙女

効果モンスター/チューナー

光属性

魔法使い族

レベル 1

攻撃力 0

 

今回はアカデミアを敗北にまで追い詰め、自らと嘗て互角のデュエルを繰り広げたユシウスが相手、此処で展開を終わらせるつもりでは無かった。

 

「更に墓地の『青き眼の祭司』をデッキに戻して効果発動!対象は今召喚した乙女であります!」

「さっきの目覚めの旋律のコストか、それに乙女を対象にとったという事は…」

「その通りであります!チェーンして乙女の効果発動!

まずは乙女の効果で、デッキから3枚目の青眼の白龍を攻撃表示で特殊召喚!

次に祭司の効果で乙女を墓地へ送り、墓地の青眼の白龍を攻撃表示で蘇生するであります!」

『『ギャォォォォォォォォ!』』

 

青眼の白龍

通常モンスター

光属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 3000

 

魔法を発動する際のコストで墓地へ送られたカードも、その効果によって対象に取る事も無駄にしない。

2体のカードの効果で、青眼の白龍が2体並んだ。

 

「私はこの、青眼の白龍2体を墓地へ送って融合!2体の青き眼を持ちし白き竜達よ、今こそ1つとなり、強靭なる力で敵を蹂躙せよ!融合召喚!『青眼の双爆裂龍』!」

『『ギャォォォォォォォォ!』』

 

青眼の双爆裂龍

融合・効果モンスター

光属性

ドラゴン族

レベル 10

攻撃力 3000

 

「私はこれでターンエンドであります。さあ、行くでありますよ、カオス・MAX!」

 

Kisara

LP 4000

手札 2(うち1枚は青眼の白龍)

モンスター ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン(攻撃表示)

      青眼の双爆裂龍(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

「我のターン、ドロー!

貴殿の、容赦という言葉を知らぬと言わんばかりのプレイング、実に素晴らしい物だ。ならば我もまた貴殿に、このデュエルを見ているであろう全ての者にお見せしよう!我が全力を、我がエンタメデュエルの極致を!

まずは『EMドクロバット・ジョーカー』を召喚!」

 

EMドクロバット・ジョーカー(制限カード)

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 4

攻撃力 1800

 

先攻で青眼の白龍、その様々な可能性に分かれた進化体2体を呼び出してターンを明け渡したキサラのプレイングを見たユシウスは、何時もとは(といっても遊矢だった頃だが)少し違った口上でエンタメデュエルの開演を宣言、まずは下準備だという様にサーチエンジンであるドクロバット・ジョーカーを呼び出した。

 

「召喚したドクロバット・ジョーカーの効果発動!

デッキから『オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン』を手札に加える!

次にフィールド魔法『天空の虹彩』を永続魔法として発動!」

 

天空の虹彩

フィールド魔法(永続魔法扱い)

『天空の虹彩』の2の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。

1:このカードがフィールドゾーンに存在する限り、自分のペンデュラムゾーンの、『魔術師』カード、『EM』カード、『オッドアイズ』カードは相手の効果の対象にならない。

2:このカード以外の自分フィールドの表側表示のカード1枚を対象として発動出来る。そのカードを破壊し、デッキから『オッドアイズ』カード1枚を手札に加える。

 

「天空の虹彩の2つ目の効果発動!対象はドクロバット・ジョーカー!

効果でドクロバット・ジョーカーを破壊し、デッキから『オッドアイズ・アドベント』を手札に加える!

続いて手札を1枚捨てて魔法『ペンデュラム・コール』発動!」

 

ペンデュラム・コール(制限カード)

通常魔法

『ペンデュラム・コール』は1ターンに1枚しか発動出来ず『魔術師』ペンデュラムモンスターのペンデュラム効果を発動したターンには発動出来ない。

1:手札を1枚捨てて発動出来る。カード名が異なる『魔術師』ペンデュラムモンスター2体をデッキから手札に加える。このカードの発動後、次の相手ターン終了時まで自分のペンデュラムゾーンの『魔術師』カードは効果では破壊されない。

 

「ペンデュラム・コールの効果で、デッキから『相克の魔術師』と『貴竜の魔術師』を手札に加える!」

 

着々と整えられるユシウスの手札、此処からユシウスの全力が、始まる…!

 

「行くぞ、キサラ!

儀式魔法『オッドアイズ・アドベント』発動!」

 

オッドアイズ・アドベント

儀式魔法

ドラゴン族の儀式モンスターの降臨に必要。『オッドアイズ・アドベント』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:レベルの合計が儀式召喚するモンスターのレベル以上になる様に、自分の手札・フィールドのペンデュラムモンスターをリリースし、自分の手札・墓地からドラゴン族の儀式モンスター1体を儀式召喚する。相手フィールドにモンスターが2体以上存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、自分のエクストラデッキの『オッドアイズ』モンスターもリリースの代わりに墓地へ送る事が出来る。

 

「オッドアイズ・アドベントは手札か墓地にいるドラゴン族儀式モンスターを儀式召喚出来るが、本来は手札かフィールドにいるペンデュラムモンスターしかリリースとして支払えない。だがこちらのフィールドにモンスターが存在せず、貴殿のフィールドにモンスターが2体以上いれば、エクストラデッキのオッドアイズモンスターを墓地送りにする事でリリース代わりに出来る!」

「つまり、今の状況ではそれが可能、という訳でありますか。少し欲を張り過ぎた様でありますな…」

「そうだ。我はエクストラデッキの『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』を墓地へ送り、墓地のグラビティ・ドラゴンを降臨させる!2色の眼の龍よ!その鈍色の輝きを解き放ち、フィールドを圧殺せよ!儀式召喚!オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン!」

 

オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン

儀式・効果モンスター

地属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2800

 

その1番手として登場したグラビティ・ドラゴン、だがその登場によってフィールド全体に発揮される4Gもの重力は、今回は発揮されなかった。

クロス・オーバーを用いてデュエルを行っているという関係からシステムに大きく負荷の掛かるグラビティ・ドラゴンの力がオミットされた影響であろうか、或いはそんな無粋な物はこのデュエルでは不要と考えて敢えて使わなかったか、その真実はユシウスのみぞ知る。

 

「更に我はスケール3の『相克の魔術師』と、スケール8の『オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン』を、ペンデュラムスケールにセッティング!」

 

Lucius

ペンデュラムスケール(青):3(相克の魔術師)

ペンデュラムスケール(赤):8(オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン)

 

「来るでありますか、ペンデュラム召喚!」

「無論だ、これによってレベル4から7のモンスターが同時に特殊召喚可能!

揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!出でよ、我のモンスター達!レベル4、華麗なる軽業師、ドクロバット・ジョーカー!そしてレベル7、世にも珍しき2色の眼を持ちし二天龍!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2500

 

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2500

 

閑話休題、其処からのペンデュラム召喚で、3体ものオッドアイズモンスターが並び立つ様相となったが、まだまだ終わりではない。

 

「我は今しがたペンデュラム召喚した2体のオッドアイズでオーバーレイ!2体のレベル7モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!ペンデュラムエクシーズ!2色の眼の龍よ!その青き輝きを解き放ち、絶対零度で敵を制圧せよ!『オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン』!」

 

オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン

エクシーズ・効果モンスター

水属性

ドラゴン族

ランク 7

攻撃力 2800

ORU 2

 

その2体を用いたエクシーズ召喚で、防御の要と言って良いオッドアイズモンスターが呼び出される。

然し、今回はそれが目的ではない。

 

「まだ終わらぬ!我は今エクシーズ召喚したアブソリュート・ドラゴンを対象に、相克の魔術師の効果発動!

このターン、アブソリュート・ドラゴンはレベル7モンスターとして、エクシーズ召喚の素材に使用出来る!」

「エクシーズモンスターをエクシーズ素材に、でありますか…?

一体何を…?」

 

その下準備と言わんばかりにエクシーズ素材に使えるようにした相克の魔術師の効果に疑問符を浮かべるキサラ。

キサラは知らない、ユシウスは嘗てその効果によって、キサラも目にした事のあるエクシーズモンスターの全力を引き出していた事に…

 

「直ぐに分かる。だがその前に手札の貴竜の魔術師の効果発動。対象はグラビティ・ドラゴンだ。

効果でグラビティ・ドラゴンのレベルを3つ下げ、このカードを守備表示で特殊召喚!」

 

貴竜の魔術師

ペンデュラム・効果モンスター/チューナー

炎属性

魔法使い族

レベル 3

守備力 1400

 

「我はレベル4のドクロバット・ジョーカーに、レベル3の貴竜の魔術師をチューニング!2色の眼の龍よ!その赤き輝きを解き放ち、味方に活力を、敵に絶望を与えよ!ペンデュラムシンクロ、レベル7!『オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン』!」

 

オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン

シンクロ・効果モンスター

炎属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2500

 

「シンクロ召喚したメテオバースト・ドラゴンの効果発動!対象はペンデュラムゾーンの相克の魔術師!

効果でこのカードを攻撃表示で特殊召喚!」

 

相克の魔術師

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

魔法使い族

レベル 7

攻撃力 2500

 

続きだという様に、手札に残っていた貴竜の魔術師が自分の効果で登場し、レベル4であるドクロバット・ジョーカーとのシンクロ召喚でまた新たなるオッドアイズが呼び出される。

これで最後の準備は完了した…!

 

「我はメテオバースト・ドラゴンとアブソリュート・ドラゴンでオーバーレイ!2体のレベル7・ドラゴン族モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!ペンデュラムエクシーズ!2色の眼の龍よ、深い闇をも振り払う嵐を、地上の全てを焼き払う炎を巻き起こせ!これぞ第2の覇王!『覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン』!」

「な、何と凄まじい力でありますか…!」

 

覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン

ペンデュラム・エクシーズ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

ランク 7

攻撃力 3000

ORU 2

 

そのメテオバースト・ドラゴンと、先程エクシーズ素材に使えるようにしたアブソリュート・ドラゴンによってエクシーズ召喚されたのは、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンをより禍々しく、そして強靭化させた(ついでに巨大な翼が生えた)姿、キサラが嘗て見たのと同じ覇王の名を冠した竜。

 

「エクシーズモンスターを素材にエクシーズ召喚されたレイジング・ドラゴンは2つの効果を得る!

まずはその1つ目の効果を、オーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!

貴殿のフィールドにあるカードを全て破壊し、破壊した数×200ポイント、ターン終了時まで攻撃力をアップさせる!」

「そ、そんな効果が!?ですがカオス・MAXは効果では破壊されないであります!」

「構わん。やれ、レイジング・ドラゴン!」

 

その効果は、使えるまでの条件こそ厳しいが、事実上の『サンダー・ボルト』+『ハーピィの羽根帚』といった代物。

それに対するキサラからの説明にも怯む事無くレイジング・ドラゴンに効果発動を指示すると、それを受けたレイジング・ドラゴンはオーバーレイ・ユニットの1つを掴みながら両手を交差させ、

 

「レイジングストーム!」

『『ギャァァァァァ!』』

「くっ、双爆裂龍…!」

 

それを地面へと叩きつけた事で、其処から灼熱を纏った嵐が巻き起こった。

それは時が経つ毎に勢力を拡大させ、溶けるかのような高温の空気を容赦なくキサラ達に叩きつける。

自らの纏う鎧の力で耐えられるカオス・MAXとその陰に隠れる形となったキサラは難を逃れたが、効果破壊耐性を持たない双爆裂龍は耐える事が出来ず、その白銀の身体は見るも無残な燃えカスと化してしまった。

 

覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン ORU 2→1

                      攻撃力 3000→3200

 

「バトルフェイズに入る!

レイジング・ドラゴンでカオス・MAXを攻撃!」

「効果で上がったと言っても尚、カオス・MAXに攻撃力で劣るレイジング・ドラゴンで攻撃?何かありますな、ならアクションマジック『回避』発動!その攻撃を無効にするであります!」

 

回避

アクションマジック

1:フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターの攻撃を無効にする。

 

Kisara LP 4000→3500

 

そのままバトルフェイズに突入したユシウス、攻撃力が上がったレイジング・ドラゴンに攻撃を指示した事に何かあると察知したキサラは、グラビティ・ドラゴンの効果によるライフコストも気にする事無く、回避の効果でそれを躱した、が、

 

「躱されたか、だがレイジング・ドラゴンが得たもう1つの効果により、レイジング・ドラゴンは2回攻撃出来る!」

「な!?」

「もう一度だ、やれ、レイジング・ドラゴン!

更にダメージ計算前にアクションマジック『エクストリーム・ソード』発動!対象は無論、レイジング・ドラゴンだ!」

 

エクストリーム・ソード

アクションマジック

1:フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターの攻撃力はバトルフェイズ中のみ1000アップする。

 

「コンバットトリックを手にしていた訳でありますか、なら…!

カオス・MAX、其処であります!」

『ガァッ!』

 

レイジング・ドラゴンの攻撃は続いていた、しかも攻撃力を上げるアクションマジック付きで。

それを目にした瞬間、キサラはカオス・MAXにとある場所めがけて自分自身を投げ飛ばさせてアクションマジックのゲットを狙うが、

 

「デッドリーレイヴ!」

『ガァァァァァァァ!』

「くっ!」

 

覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン 攻撃力 3200→4200 VS ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン 攻撃力 4000

 

Kisara LP 3500→3300

 

間に合わず(たとえ間に合ったとしてもダメージ計算前というタイミングから『ノーアクション』しか使えないが)カオス・MAXはレイジング・ドラゴンの連撃によってボコボコにされた。

 

「ですがこれ以上は通さないであります!アクションマジック『大脱出』発動!バトルフェイズを終了するであります!」

 

大脱出

アクションマジック

1:バトルフェイズを終了する。

 

Kisara LP 3300→2800

 

覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン 攻撃力 4200→3200

 

だがその行動は決して無駄な物では無かった。

投げ飛ばした先にあったアクションマジックによってユシウスの総攻撃によるワンターンキルを防いだのだから。

 

「ならば我はこれでターンエンド。行くぞ、レイジング・ドラゴン!」

 

Lucius

LP 4000

手札 0

ペンデュラムゾーン(赤):8(オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン)

モンスター 覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン(攻撃表示)

      オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン(攻撃表示)

      相克の魔術師(攻撃表示)

魔法・罠カード 天空の虹彩(永続魔法扱い)



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135話_二天龍、激突!中編

ランサーズとアカデミアとの最終決戦の場を借りて行われているユシウスとキサラのリターンマッチ、現在は先攻となっているキサラのターンに入る所である。

互いに1ターンを終え、現在キサラのフィールドには何もおらず、手札は2枚、その内の1枚は先程サーチした青眼の白龍だと判明している、LPは2800に削られた状態だ。

一方のユシウスのフィールドには、第2の『覇王』であるオッドアイズ・レイジング・ドラゴンと、オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン、2体のオッドアイズの他に相克の魔術師がいる、手札は無く、LPは初期状態の4000だ。

先攻であるキサラはOCGにおいて世界を制した程の展開力とモンスター其々のカードパワーを有したブルーアイズデッキの力を十全に発揮、2体のブルーアイズモンスターを呼び出しはしたが、ユシウスの呼び出したレイジング・ドラゴンによって2体共に倒される格好となった。

今はユシウスの優勢といった状態ではあるが、それでもキサラに勝負を諦めるという様子も、ユシウスに慢心する様子もない、互いにその表情は真剣そのものだ。

 

「私のターン、ドロー!

私は今引いた『青眼の亜白龍』を、手札の『青眼の白龍』を貴方に見せる事で、攻撃表示で特殊召喚!」

『グォォォォォォォ!』

 

青眼の亜白龍

効果モンスター

光属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 3000

 

新たなるカードをドローしたキサラ、先程のサーチで青眼の白龍を握っていた事もあって引いたばかりの亜白龍を早速フィールドに出す事が出来た。

そして亜白龍の力は、今この時こそ本領発揮される。

 

「亜白龍の効果発動!対象はグラビティ・ドラゴンであります!

効果でそのモンスターを破壊するであります!滅びのバーンストリーム!」

「させん、それにチェーンしてアクションマジック『透明』発動!これでこのターン、グラビティ・ドラゴンは効果を受けない!」

「流石に躱されるでありますか、ですが問題ないであります」

 

透明

アクションマジック

1:自分フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。このターン、そのモンスターは相手の効果の対象にならず、効果も受けない。

 

Kisara LP 2800→2300

 

それは自らの攻撃権を犠牲に放つ破壊効果を持った光線、それがグラビティ・ドラゴンに襲い掛かるも、ユシウスが発動したアクションマジックで透明化した事で空をきってしまった。

500LPと攻撃権を失ってまで放った効果が空振りに終わった形となったキサラだったが、むしろそれは予想通りといった感じで更に動く。

 

「ならば魔法『龍の鏡』発動!」

 

龍の鏡

通常魔法

1:自分のフィールド・墓地から、ドラゴン族の融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを除外し、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「フィールドの亜白龍は青眼の白龍として扱うであります!

私はフィールドに1体、墓地に2体いる青眼の白龍を除外して融合!勝利を約束する青き眼の龍達よ、今こそ結集し、真に究極なる力を解き放て!融合召喚!出でよ、我が最強の僕!『(ネオ・)青眼の(ブルーアイズ・)究極竜(アルティメットドラゴン)』!」

『『『グォォォォォォォォ!』』』

 

真青眼の究極竜

融合・効果モンスター

光属性

ドラゴン族

レベル 12

攻撃力 4500

 

Kisara LP 2300→1800

 

「ネオ・ブルーアイズ…?

『青眼の究極竜』とは違うのか…?」

 

キサラが発動した龍の鏡による融合召喚の演出と共に舞い降りたのは、ユシウスが呟いたモンスター『青眼の究極竜』とよく似た姿をした、三つ首となった青眼の白龍。

だが、白を基調としていたままの青眼の究極竜とは違って空色を基調としたカラーリングもそうだが、何より三つ首となってからも健在だった両腕が無くなっている。

 

「これぞ、私の真のエース、青眼の白龍の真に本気の姿であります!今よりその本気の力をお見せするでありますよ、ユシウス!

バトルフェイズ!

行くであります、真なる究極竜よ!重力を司る龍を今こそ消し飛ばすであります!トゥルー・アルティメット・バースト!」

「させるか!アクションマジック『回避』発動!その攻撃を無効にする!」

「させないのはこっちであります!アクションマジック『ノーアクション』発動!回避を無効にするであります!」

「何っ!?ぐぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

回避

アクションマジック

1:フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターの攻撃を無効にする。

 

ノーアクション

アクションマジック

1:アクションマジックの効果が発動する時に発動出来る。その発動を無効にし、破壊する。

 

Kisara LP 1800→1300

 

真青眼の究極竜 攻撃力 4500 VS オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン 攻撃力 2800

 

Lucius LP 4000→2300

 

姿こそ微妙に違えど、その究極と言う名に恥じぬステータスは健在、その攻撃を受ける訳にはいかないとユシウスは回避で攻撃を躱そうとするも、キサラが発動したノーアクションに阻まれ、その圧倒的な攻撃を受けてしまう。

だが、

 

「真なる究極竜よ、今こそネオの名の由来となったその力を見せる時であります!

ダメージステップ終了時、エクストラデッキにある2枚目の真なる究極竜を墓地へ送って効果発動!

真なる究極竜はもう1度攻撃出来るであります!」

「何!?」

「この効果は私のフィールドにいるのが融合召喚した真なる究極竜1体だけの時、1ターンに2回発動出来るであります!

さて、次は赤き覇王であります!トゥルー・アルティメット・バースト、第2打ァ!」

「がはぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

真青眼の究極竜 攻撃力 4500 VS 覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン 攻撃力 3000

 

Lucius 2300→800

 

その猛威は終わっていなかった。

 

「ダメージステップ終了時、エクストラデッキにある最後の真なる究極竜を墓地へ送って効果発動!」

「だがこっちも、破壊されたレイジング・ドラゴンの効果発動!

このカードをペンデュラムスケールにセッティング!」

 

Lucius

ペンデュラムスケール(青):1(覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン)

 

「今更フィールドを整えた所で遅いであります!真なる究極竜の最後の攻撃を、食らうでありあす!

相克を司る魔術師を消し飛ばすであります、真なる究極竜よ!トゥルー・アルティメット・バースト、第3打ァ!」

「まだだ、まだ終わらん!アクションマジック『ダメージ・バニッシュ』発動!戦闘ダメージを0にする!」

「ちぃ、このターンで決めたかったでありますが…」

 

ダメージ・バニッシュ

アクションマジック

1:自分が戦闘ダメージを受ける場合に発動出来る。その戦闘ダメージを0にする。

 

真青眼の究極竜 攻撃力 4500 VS 相克の魔術師 攻撃力 2500

 

ユシウスが発動したダメージ・バニッシュによってこのターンでの決着こそ成らなかったがその攻撃は凄まじく、ユシウスのフィールドにいたモンスターは全滅、ユシウス自身もまたLPがガンマンラインギリギリの800となった。

 

「私はこれでターンエンドであります!」

 

Kisara

LP 1300

手札 1(青眼の白龍)

モンスター 真青眼の究極竜(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

「我のターン、ドロー!

…此処は、こうするか!

まずは先程ペンデュラムスケールにセットされたレイジング・ドラゴンを対象に『天空の虹彩』の効果発動!

レイジング・ドラゴンを破壊し、デッキから『オッドアイズ・セイバー・ドラゴン』を手札に加える!

次に魔法『手札抹殺』発動!」

「此処で手札抹殺…

どうやら、このドローでの勝負に出るという事でありますな…!」

 

手札抹殺(制限カード)

通常魔法

1:手札があるプレイヤーは、その手札を全て捨てる。その後、それぞれ自身が捨てた枚数分デッキからドローする。

 

キサラが呼び出した真なる究極竜によってギリギリの状況まで追い込まれたユシウス、此処で引いた手札交換カードの代名詞と言って良い手札抹殺、それを見たユシウスは勝負に出た。

残っていた天空の虹彩で、揃っていたペンデュラムゾーンの片方であるレイジング・ドラゴンを破壊して手札を増やし、先程手にしていたアクションカードを含め全て交換するという賭けに出たのだ。

 

「我は手札のアクションカードとセイバー・ドラゴンを捨て、2枚ドロー!」

「私も手札の青眼の白龍を捨て、ドロー!

…どうであります?良いカードは引けたでありますか?」

「ああ、一先ずは。

我はスケール1の『オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン』をペンデュラムスケールにセッティング!」

 

Lucius

ペンデュラムスケール(青):1(オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン)

 

もし外せば敗北は確定的、当たったとしてもどう真なる究極竜を越えるのかという分の悪い賭け、だが彼はその賭けを一先ず乗り切り、再びペンデュラムスケールを揃えた。

 

「これでレベル2から7のモンスターを同時に特殊召喚可能!

更にエクストラデッキに表側表示で存在するレイジング・ドラゴンもまたペンデュラム召喚出来る!

今一度揺れろ、魂のペンデュラム!再び天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!再臨せよ、第2の覇王よ!」

 

覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン

ペンデュラム・エクシーズ・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

ランク 7

守備力 2500

ORU 0

 

そして再び舞い降りるレイジング・ドラゴン、だが守備表示での降臨だった。

更に言えばこの状況下は先程破壊された相克の魔術師をもペンデュラム召喚出来る、だがユシウスが呼び出したのはレイジング・ドラゴンのみだった。

ユシウスに何かしらの意図があるのか、或いは…

 

「我はこれでターンエンド」

 

Lucius

LP 800

手札 1

ペンデュラムスケール(青):1(オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン)

ペンデュラムスケール(赤):8(オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン)

モンスター 覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン(守備表示)

魔法・罠カード 天空の虹彩(永続魔法扱い)

 

「どうやら万策尽きた様でありますな、ならば一思いに決めてさしあげるであります、ユシウス!

私のターン、ドロー!

このままバトルフェイズに入るであります!

真なる究極竜よ、今一度赤き覇王を消し飛ばすであります!トゥルー・アルティメット・バースト!」

 

真青眼の究極竜 攻撃力 4500 VS 覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン 守備力 2500

 

その布陣を見て打つ手が無くなったと見たキサラは何か準備する事無くバトルフェイズに突入、真なる究極竜の首の1つが放つ光線がレイジング・ドラゴンを呑み込んだ。

 

「ダメージステップ終了時、エクストラデッキにある2枚目の双爆裂龍を墓地へ送って効果発動!

これで終わりであります、ユシウスよ!トゥルー・アルティメット・バースト、第2打ァ!」

 

そして、このデュエルに終止符を打つと言わんばかりに、真なる究極竜の2つ目の首が、ユシウスを呑み込まんと光線を放った…!



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最終話_二天龍、激突!後編、そして…

今話を以て『遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~』は完結となります。
今作を読んで頂き、感想や意見を寄せて頂いた読者の皆様、本当にありがとうございました。
より突っ込んだ話は後書きにて。


『まさか、まさかの展開です…!

このニコ・スマイリー、遊矢選手の、ユシウス様のデュエルを見始めて随分と時が経ちましたが、此処まで追い込まれる様を見たのは、初めてです…!

そして今、キサラ選手のモンスターから、トドメを刺すと言わんばかりの光線が放たれました…!

ユシウス様が、敗れるのか…!?』

 

ユシウスとキサラのリターンマッチ、序盤こそユシウスが呼び出したレイジング・ドラゴンがキサラのブルーアイズ達を一掃する等からユシウスが押していた様に見えたが、キサラが真なる究極竜を呼び出してからは一転、その圧倒的な攻撃力を前に今度はレイジング・ドラゴン達が一掃されてしまい、先程のターンで立て直す事も叶わなかった。

状況は明らかにキサラの優勢、それを支えている真なる究極竜の猛威はこのターンでも振るわれ、今トドメの一撃がユシウスへと放たれた。

その一撃の光線によって真っ白と化したフィールド、其処から聞こえる着弾音から一瞬遅れて巻き上がる土煙、それを見て呆然とした様子の、放送席にいるニコ・スマイリーの声…

 

それを見て不安を、絶望を覚えた者がいる。

モンスターが全ていなくなり、セットカードも無い、アクションカードも取った様子は見られない、そんな状況下を脱却するカード等存在する筈も無く、土煙の向こうには倒れ伏すユシウスの姿があるに違いないと彼らは確信している。

そしてランサーズで、いやこの世界で最強と言われていたユシウスが倒れた事により、再びアカデミアによる侵略が始まるのではないかと、それを防ぐ術はもうなくなってしまったのではないかと絶望的なビジョンが彼らの頭からは離れない。

 

一方で、未だ希望を抱く者がいる。

先程の手札抹殺で引いたカード、あれを使う事無く手札に温存した事、その行動が望みのカードを引けなかった事による物でない事はあの勝利を諦めぬ様子からも明らかだと、この状況を脱却するか、その足掛かりになる物に違いないと彼らは確信している。

そしてこのターンを切り抜け、そしてこのデュエルに、アカデミアとランサーズの戦いを本当の意味で終わらせるというビジョンが彼らの頭には根付いている。

 

「な、馬鹿な!?」

 

そんな彼らに答えを示すべく煙が晴れると其処には、倒れ伏すユシウスの姿など何処にもなく、何故かいない筈のリベリオン・ドラゴンが君臨していた。

余りの状況に驚きを隠せないキサラ、そんなキサラにユシウスは1枚のカードを見せ付けた。

 

「我はレイジング・ドラゴンが破壊された時、罠『反旗の逆鱗ストライク・ディスオベイ』を発動していた!此処にいる覇王は、その効果によって呼び出された者だ!」

「そ、そんな馬鹿な!先程のターンで貴方はカードをセットしていなかった筈であります!」

「このカードは我のフィールドにいるオッドアイズモンスターがフィールドを離れた場合、手札からも発動出来る!」

 

反旗の逆鱗ストライク・ディスオベイ(オリジナルカード)

通常罠

『反旗の逆鱗ストライク・ディスオベイ』の1の効果はデュエル中に1度しか使用出来ず、この効果を発動するターン、自分はこの効果以外で特殊召喚出来ない。また、自分フィールド上の『オッドアイズ』ドラゴン族モンスターがフィールドを離れた時、手札からも発動出来る。

1:自分フィールド上にモンスターが存在せず、自分の墓地に光・闇・炎・水・地・風属性の『オッドアイズ』ドラゴン族モンスターが其々1体以上存在する場合に発動出来る(この内、融合・儀式・シンクロ・エクシーズ・ペンデュラムモンスター及びこれらの種類では無い効果モンスターが其々1体以上、存在しなければならない)。自分のエクストラデッキから『覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン』を、自分の墓地の『オッドアイズ』ドラゴン族モンスター全てをエクシーズ素材としたエクシーズ召喚扱いで特殊召喚する。この効果でエクシーズ召喚した『覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン』は、ルール上神属性として扱い、攻撃力はエクシーズ素材の数×1000ポイントアップする。

2:自分フィールド上に『オッドアイズ』ドラゴン族モンスターが存在し、カードの効果が発動された時、墓地のこのカードを除外して発動出来る。そのカードの効果を無効にして除外する。この効果は『反旗の逆鱗ストライク・ディスオベイ』が除外されたターンには発動出来ず、スペルスピードを3として扱う。

 

「我はこの効果により、墓地にあった闇属性ペンデュラムモンスターの『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』と『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』、光属性効果モンスターの『オッドアイズ・セイバー・ドラゴン』、炎属性シンクロモンスターの『オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン』、水属性エクシーズモンスターの『オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン』、風属性融合モンスターの『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』、そして地属性儀式モンスターの『オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン』でオーバーレイ!7体のオッドアイズ・ドラゴン族モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!我、目覚めるは!覇の理を手中に収めし龍なり!無限を見据え、夢幻を求める!我、漆黒の竜の覇王と成りて!汝を力の牢獄へと誘おう!ジャガーノート・エクシーズ・ドライブ!今こそ真の力を解き放ち、神となれ!『覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン』!」

『グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!』

「何という力…!

流石に覇王の名を持つだけの事はありますな…!」

 

覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン

ペンデュラム・エクシーズ・効果モンスター

神属性

ドラゴン族

ランク 7

攻撃力 3000→10000

ORU 7

 

絶体絶命の状況であるが故にその力を発揮する事となった、ユシウスが手札に握っていた最後のカード、その力によって君臨したリベリオン・ドラゴンは、今まで姿を見せた時とは明らかに違った雰囲気を纏わせていた。

見た目こそ厳密には変わっていないが、その黒い体躯から感じられていた禍々しき雰囲気は、今は何処か威厳に満ちた物へと変化していた。

ユシウスが自らの心に纏わりついていたズァークという邪悪をも取り込んでわが物とした様に、リベリオン・ドラゴンもまた禍々しき瘴気を消し去り、属性が神となったのやも知れない。

その周囲を飛び交う7つのオーバーレイ・ユニットの輝きも、何処か満ち溢れた様に感じる。

 

「ですが、まだであります!魔法『死者蘇生』発動!対象は墓地の『青眼の白龍』!」

「させん!それにチェーンして先程発動した反旗の逆鱗ストライク・ディスオベイを除外して効果発動!それを無効にして除外する!この効果のスペルスピードは3として扱う、よってカウンター罠しかチェーン出来ない!」

「なっ!?

た、ターンエンドであります!ならば行くでありますよ、真なる究極竜よ!」

 

Kisara

LP 1300

手札 1

モンスター 真青眼の究極竜(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

そのリベリオン・ドラゴンが得た力の前には真なる究極竜も突破するには力不足だと、キサラはバトルフェイズを終了させ、ならば墓地へ送られていた青眼の白龍を蘇生し、このターンにドローしていた『滅びの爆裂疾風弾(バーストストリーム)』で消し飛ばそうという算段を立てていたが、それも阻まれてしまい、今度はアクションカードに活路を見出そうと、真なる究極竜に乗り、フィールドを飛び回る。

が、既にデュエルの勝敗は、決したも同然だった…!

 

「我のターン、ドロー!

この瞬間、オッドアイズ・リベリオン・ドラゴンのORUを全て取り除き、エクストラデッキの『双虹竜神(ゴッド・オブ・オッドアイズ・ドラゴン)―ソフィア』の効果発動!この効果により、我は真なる神を降臨させる!」

「か、神!?

今此処にいる覇王をも上回る神で、ありますか…!?」

 

覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン ORU 7→0

                      攻撃力 10000→3000

 

「我に宿りし精霊よ、未来永劫我と共に!我に宿りし正しき闇よ、覇から醒めよ!我に宿りし赤き星龍よ、神と成り啼け!我に宿りし純潔よ、混沌を受け入れよ!我に宿りし悪意よ、甲羅を脱ぎ捨てよ!絶対なる唯一神よ、我が禁を見届けよ!汝、際涯を超越せし我らが絆にて舞え!D(ドラゴン・)(インフィニット・)D(ドライブ)!君臨せよ、我が真なる概念!ゴッド・オブ・オッドアイズ・ドラゴン!その名は、ソフィア!」

 

双虹竜神―ソフィア

エクシーズ・効果モンスター

神属性

ドラゴン族

ランク 12

攻撃力 0

ORU 1

 

自らの周囲を漂っていたオーバーレイ・ユニットを全て取り込んだリベリオン・ドラゴン、次の瞬間にはその身から眩き光が放たれ、それが晴れた後には、赤、橙、黄色、緑、青、そして紫、虹の如く並んだ6対の鮮やかな翼を生やした純白のドラゴンが君臨、その神々しい雰囲気を醸し出していた。

いや、その姿はドラゴンと言うより巨人と言った方が正しいかも知れない、今までのオッドアイズ達と似た頭部、腰から伸びた尻尾、そしてこれぞドラゴンと言うべき翼の形状等から辛うじてドラゴンだと言えるが…

 

「何と、神々しき姿でありますか…!

然しランク12でありながら攻撃力0?という事は神を名乗るに相応しき効果が…?」

「ああ、今からそれを貴殿や、このデュエルを見守りし方々にとくとご覧に入れよう!

特殊召喚したソフィアの効果発動!我が手札、デッキ、エクストラデッキ、フィールド、墓地、そして除外されているオッドアイズと名の付くドラゴン族モンスターを全て、ソフィアのオーバーレイ・ユニットに変える!この効果で我のデッキ、エクストラデッキ、フィールド、墓地から計31枚のオッドアイズモンスターをソフィアのオーバーレイ・ユニットに変える!数多の次元からの、神を、希望を、笑顔を信じる人々の心が奇跡を生む!デュナミナイズ・ソフィア!」

「さ、31枚!?」

 

然しながらその攻撃力は0、これ程の雰囲気を纏わせたソフィアのステータスが0とあらば何かしら強力な効果を持っているに違いないというキサラの予想通り、ユシウスはソフィアに己の力を解放させる。

それと同時にユシウスのデッキから、エクストラデッキから、フィールドから、そして墓地からソフィアへと吸い込まれる様に飛ばされていくカード達、それらはやがてオーバーレイ・ユニットとなってソフィアの周囲を飛び交っていった。

ユシウスから力を、いや人々の信ずる心を託されたソフィアは、

 

双虹竜神―ソフィア ORU 1→32

          攻撃力 0→32000

 

「こ、攻撃力が、32000に…!?」

「この効果によって一定以上のオーバーレイ・ユニットを得たソフィアは様々な力を発揮出来る!

まずはオーバーレイ・ユニットを10個以上得た事で、このカードの元々の攻守はオーバーレイ・ユニットの数×1000となる!人々の想いが、生み出された奇跡が、ソフィアの無限の力を呼び覚ます!シャイニング・ソフィア!」

 

その大いなる力、その一端をその全身に漲らせる。

0だった攻撃力が一気に32000まで跳ね上がるその様はまるで、無限の可能性を示す人の絆の如く。

 

「次にオーバーレイ・ユニットを20個以上得た事で、貴殿の手札とフィールドにあるモンスターカードを全て墓地へ送る!無限の力、それは邪悪なる敵を消し飛ばす業火!ソフィア・ザ・ファイナル!」

「きゃぁ!?」

 

尚も湧き上がる大いなる力、それは両腕に集中し、キサラのフィールドにいた真なる究極竜を消し飛ばす破壊光線として放たれた。

 

「そして、オーバーレイ・ユニットを30個以上得た事で、

 

 

 

我はこのデュエルに勝利する!」

「と、特殊勝利効果まで持っているでありますか!?」

 

だがそれでも尚湧き止まぬ力、それを漲らせ続けたソフィアの身からは神々しき光が溢れ、

 

「真なる神の力、それは勝利を約束する絶対的な力!ウルティメイト・ソフィア!」

 

デュエルの決着を付ける、審判の鉄槌と化した。

 

WINNER Lucius

 

「まことに素晴らしきデュエルでありました、ユシウス。あと一歩のところで勝てなかったのは少し悔しいでありますが、それをも含めて、実に楽しいデュエルでありました!良ければまた、デュエルをお願いするであります!」

「ああ、キサラ!貴殿からのデュエル、何時でも受けて立とう!」

 

デュエルが終わり、互いに歩み寄ったキサラとユシウス。

言葉を交わし、握手をした両者から感じられるのは今までの、アカデミアとランサーズとの戦いという事情はどこへやら、純粋なデュエリスト同士の健闘を称えあう雰囲気だった。

 

 

 

そして…

 

------------

 

「随分、荒れ果てちゃったわね…」

「ああ…

今は司令官だったエド・フェニックスを中心に、アカデミアにいた連中が復興活動に精を出しているそうだが、嘗てのハートランドに戻るのは莫大な時間が掛かるだろうな…

俺達も、ハートランドの、皆の為に頑張って行かないとな、瑠璃」

「ええ、ユート」

 

アカデミアとの戦いは全て終わり、エクシーズ次元へと帰還したユートと瑠璃、大いに荒れ果ててしまった故郷ハートランドの光景を見て、2人は復興への決意を決めた。

 

「おーい、其処のリア充!ぼけっとしていないで手伝うであります!」

「オービタル、2人はアカデミアとの戦いで疲れている筈だ、そっとしておいてやれ」

「て、天城博士!い、いえ大丈夫です!今行きます!」

 

そんな2人を呼び止めるオービタル7の声で急に姿勢を正したユート、善は急げと言わんばかりに復興作業に移って行った…

 

------------

 

「父さん、母さん、遊児。私、隼と一緒にこの世界で頑張って行くから。だから、天国から私達の事、見守っていてね」

「遊児。俺はお前の事を想い続けるお前の姉の事を、お前が死して尚、お前への揺るがぬ想いを、鉄の意志を抱いて戦い続けた遊香の事を好きになった。俺がそんな遊香を幸せにして見せるから、どうか見ていて欲しい」

 

同じくエクシーズ次元へと帰還した隼と遊香はユート達から離れ、遊香の家族が眠っている墓へお参りをしていた。

2人きりでお参りをする隼と遊香、2人は何時の頃からか互いを想い始めていて、今や恋人同士となっていた。

何が切っ掛けかは当人のみぞ知ると言えようが、互いに下のきょうだいを持ち、アカデミアの侵略によって奪われた(瑠璃は帰って来たが)者同士、共感出来る所は多かったのかも知れない。

 

「さあ、ユートと瑠璃が待っている。そろそろ行こうか、遊香」

「そうね、隼」

 

墓参りを終え、ハートランドで待っているであろうユート達の下へと向かう隼達、2人の目には、これからの日々に対する希望に満ちていた…

 

------------

 

「融合よ、良くぞ帰って来た!」

「融合じゃねぇよジャック、ユーゴだ!」

「ジャック…!?

ま、まさかあのジャック・アトラス!?ユーゴ、何時の間にあのジャック・アトラスとそんな親し気になったの…!?」

「まあつい最近だけどな」

 

シンクロ次元へと帰還したユーゴ達を出迎えたのは、テンプレという物を心得ていたジャック達であった。

 

「この前のフレンドシップカップの前夜祭で、ランサーズ代表としてジャックとデュエルさせて貰える事になってさ、其処でジャックと全力でデュエルしたんだぜ!いやージャックは本当に強かった!あれ、でもそういやあどう勝負したんだっけな…?」

「覚えてないんですか貴方は、クリアウィングを使って互角に近い勝負を繰り広げたではありませんか」

「ああそうだったのか、それじゃあ抜け落ちちまったみてーだな」

「抜け落ちたって…」

「お前、その年でボケたんじゃねぇか?若いんだからしっかりしろよ」

 

そんなジャックに突っ込みを入れつつ、フレンドシップカップ前夜祭での彼とのデュエルでの興奮を楽し気に語るユーゴ、だがいざデュエルの内容となると全然覚えていない様子で、それを葛西兄弟や徳松に突っ込まれていた。

然しながらそれも仕方の無い事、ユーゴからはクリアウィング・シンクロ・ドラゴンに関する記憶が丸ごとユシウスに抜かれたからだ。

 

「俺とのデュエルを忘れたか、ならばよかろう、一生忘れられぬ程のデュエルをしようではないか!」

「おっしゃぁ!やろうぜ、ジャック!」

「「デュエル!」」

「おいジャック、俺ら忘れんじゃねぇ!」

 

そんなユーゴの様子に気を悪くするどころか、ならば忘れないようにすればいいだけとデュエルを挑んで来たジャック、その後ろで控えていたクロウらもそっちのけで、2人はデュエルを始めるのだった…

 

------------

 

「私は、嘗て1つだった世界を取り戻そうと、私が生み出してしまったズァークと言う悪魔を私の責任で滅ぼそうと必死だった。それが故に見えていなかったのだろうな、4つに分かれたこの世界の『今其処にある幸せ』に、悪魔をも打ち破る輝きを放つ『原石』に…」

 

戦いが終わった融合次元、其処の孤島を本拠とするアカデミアに、零王は1人佇んでいた。

各次元への侵略が結果として惨敗に終わった挙げ句、リバイバル・ゼロも、ズァークもユシウスが対処して見せた事で、己のして来た事を何処か悔いている様であった。

だが悔やんでばかりもいられない。

 

「ユシウスの言う通りアークエリア・プロジェクトはいずれ成される日が来るだろう。それに向けて、手を尽くしておかねば」

 

------------

 

「帰って来たんだな、俺達。この次元に、舞網市に」

「何だか、長かった様な、短かった様な、そんな日々だったわね」

「だな、柚子姉ちゃん。皆、元気してっかなぁ?」

「暫く見ないうちに、舞網市も様変わりしたな」

「へぇ、此処が、ユシウス達が住んでいる舞網市…」

「何だか、近未来的な都市ね」

「ハートランドや、ネオ童美野シティと似た雰囲気ですね」

 

そして、スタンダード次元の舞網市へと帰還し、他のランサーズメンバーと別れたユシウスと柚子、エレンと遊勝、そしてユシウスに付いて来る形で訪れた明日香とアキ、そして小鳥…

7人はユシウス達の自宅へと、真っ直ぐに足を進めていた。

いや、7人、というのは語弊があるだろう。

 

『アカデミアとの戦争、ユシウスの身に潜んでいた謎…

全て、全て終わったんだよね』

「いや、ユベル。まだ終わっちゃいないさ。4つの次元は元々1つ、いずれ統合を迎える日が、アークエリア・プロジェクトが自然と成される日が来る。それに向けて各次元の人々が交流し、其々の文化(ミーム)を受け入れて、未来へと足を進めていかなきゃならない。俺達はその為の活動を今後も続けて行く事になるだろう。むしろ、これで漸くスタートだ」

『そうだな、ユシウス。殊にエクシーズ次元の復興や、融合次元、というよりアカデミアにいたデュエリスト達へのメンタルケアだ。彼らが『アンドバリの指輪』作戦で負った心の傷は、ユシウスのそれにも劣らぬ、と言った物かも知れん。彼らの再起無くして、それを成す事は出来ない』

「そうだな、アストラル。これからが肝要だ」

 

ユベルとアストラル、ユシウスとの日々を長年共にして来た2人もまた一緒だ。

そんな2人とユシウスは、早速これからの事で意見を交わしていた。

が、

 

「けどまあ一区切り付いた所だ。今は早く、家に帰ろうぜ」

「そうだな、ユシウス兄ちゃん!あぁ、早く帰って母さんのパンケーキを久々に食いたいな!」

「ふふ、エレンたら食いしん坊ね」

 

今は帰って来た喜びを、家族と、愛する人達と分かち合う時間…

 

「ふぅ、やっと着いた。それじゃあ行くぜ、せぇの…

 

 

 

 

 

「「「ただいま!」」」」

「「「お邪魔します」」」

 

 

 

 

 

遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~ 完




皆さん、今まで『遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~』を読んでいただき、本当にありがとうございました、不知火新夜です!
元々はGMSさんの原案を見て「面白そうだな」と思って書き始めた今作、途中で以前書いていた『遊戯王ARC-V~灼眼のガンスリンガー~』とクロスしたり等の紆余曲折もありましたが、今日こうして書き切る事が出来ました!

まあ、此処までの長編を書いて行く中で不満点が無かった訳ではないのですが(汗

○キャラが多すぎるという批判
ちょっと、いや、余りに多すぎましたね(汗
本編でのランサーズメンバーが余りに少なすぎて「これでアカデミアと戦うとか、シンクロ次元と同盟を結ぶとか馬鹿なの?死ぬの?」と思って初期メンバー36人、最終的に40人余りのメンバー構成にした訳ですが、例えば文録のデュエル描写がエクシーズ次元まで無かったり、夜行に至っては入ってないやんって事態になったり(滝汗
結果として昨今炎上騒ぎになっているアニメ本編と同じ轍を踏んでしまいました。

○アンドバリの指輪作戦
恐らく最も賛否両論渦巻いたのがこれだと思います。
その手腕を買われてランサーズの最高指揮官となった遊矢、来たるアカデミアの大軍と戦うに向けて、最高指揮官としてどんな手を下すだろうかと考えた時、様々な要素を勘案した上で思いついたのがこの作戦でした。
エンタメデュエリストとして味方は勿論の事、敵をも笑顔に、楽しい気持ちにしたいという理想もあれど、アカデミアのデュエル戦士1人1人に対してやっている間に他のアカデミア戦士が暴れ回らないとは限らない、1人を笑顔にする為に何十人もの笑顔を奪わせては意味がない。それが出来る程の人員には、ランサーズ(とシンクロ次元の戦闘要員)の頭数は揃っていない。
となればデュエル戦士1人1人を恐怖のどん底に叩き落とし、或いは洗脳し、それで何十人もの笑顔を守る方が良いんじゃないか、それが最高指揮官としての選択じゃないか?
「遊矢なら、今作の遊矢ならこう考えるだろう」と書いて行った結果がこれでした。
無論これが正解な訳がありません、コラボでも非難を浴びた様に、デュエル戦士達が負った心の傷は凄まじい物でしょう。
ユシウス達はこれから、その心の傷と、己が犯した罪と向き合わねばなりません。
300年も生きたユシウスならともかく、他は20にも満たない少年少女達ばかり。
何処かできっと「もっといい選択肢があったんじゃないか?」と思う時が来るでしょう。
ですがもしやらなければ、他の選択肢を選んだとしたら…
この是非は恐らく、書いた僕自身でも出ないかも知れませんね。

○コラボでのゴタゴタ
えーと、この件で色々な方にご迷惑をおかけして、改めて申し訳ありませんでした。
改めてお詫び申し上げます。
こんな僕ですが、もし機会があればまたよろしくお願いします。

さて、アニメ本編も最終盤に入り(何か本当に終わるのかという不安も過りますが)次回作『遊戯王VRAINS』の情報も少しずつ発信され、マスタールール4(仮)についても少しずつ分かって来ました。
遊戯王OCGは今後も世界有数のカードゲームコンテンツとして続いて行く…と思います(その3点リーダは何だ
今作の遊矢、いやユシウスの人生もまだまだ続いて行く事でしょうが、一先ずは此処でお開きとさせていただきます。
読者の皆様、今まで本当にありがとうございました!
そして今後も遊戯王OCGを宜しくお願いします!

不知火新夜



P.S
今回のデュエルを決めた『双虹竜神―ソフィア』の詳細なステータスを下に載せます。

双虹竜神(ゴッド・オブ・オッドアイズ・ドラゴン)―ソフィア
エクシーズ・効果モンスター
神属性
ドラゴン族
ランク 12
攻撃力 ?/守備力 ?
このカードはエクシーズ召喚出来ず、このカードの1の効果によってのみ特殊召喚出来る。この召喚条件は無視出来ない。
このカードの効果は無効化されず、このカードの効果の発動に対して、相手はカードの効果を発動出来ない。
1:自分フィールドに存在する、元々のカード名が『覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン』の6種類以上存在するエクシーズ素材を全て取り除いて発動出来る。エクストラデッキのこのカードを、この効果を発動する為にエクシーズ素材を全て取り除いたモンスターの上に重ねて特殊召喚する。この効果は相手ターンでも発動出来る。
2:このカードの特殊召喚に成功した場合に発動する。自分の手札・デッキ・エクストラデッキ・フィールド・墓地に存在する、もしくは除外されている『オッドアイズ』ドラゴン族モンスターカードを全てこのカードの下に重ねてエクシーズ素材とする。その後、その素材の数によって以下の効果を適用する。
●10個以上:このカードの元々の攻撃力・守備力は、このカードのエクシーズ素材の数×1000となる。
●20個以上:相手の手札・フィールドのモンスターカードを全て墓地へ送る。
●30個以上:自分はこのデュエルに勝利する。


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特別編『新たなる世界、リンク次元!』
特別編1_いとも容易く行われるえげつない『下準備』


皆さん、お久しぶりです!
2018年になってからもう何日も経過している中で新春特別編というのも変ですが投稿します!
尚、禁止制限は2018年1月現在の物です。


とある市街地の路地、其処で1つのデュエルが始まった。

 

「「デュエル!」」

 

先攻 Reizi LP 4000 VS 後攻 ???? LP 4000

 

「僕のターン!

早速使わせて貰うとしよう!まず僕のフィールドにトーチトークンを2体攻撃表示で特殊召喚する事で、手札の『トーチ・ゴーレム』を君のフィールドに攻撃表示で特殊召喚する!」

 

トーチトークン

闇属性

悪魔族

レベル 1

攻撃力 0

 

トーチ・ゴーレム(準制限カード)

効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 8

攻撃力 3000

 

「攻撃力3000ものモンスターを此方に…?」

 

先攻となった零児は早速、丸鋸らしき頭部にスパイク状の両手、所々棘を生やした身体の巨人――トーチ・ゴーレムを『相手の』フィールドに、それを小さくした様な姿のモンスター2体――トーチトークンを自らのフィールドへと呼び出した。

高いステータスを有するトーチ・ゴーレムを態々相手のフィールドに送りつけるという一見不可解な行為に、対戦相手である熱帯魚の様な色合いの頭髪をした少年は首を傾げた。

が、少年は知らない、これこそが零児による壮大な『下準備』のキーカードだという事に…!

 

「今に分かる。現れろ、異次元をも繋ぐサーキット!アローヘッド確認!召喚条件はレベル1モンスター1体!僕はこのトーチトークン1体をリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!リンク召喚!現れろ『リンクリボー』!」

『クリクリー!』

 

リンクリボー

リンク・効果モンスター

闇属性

サイバース族

攻撃力 300

LINK―1(下)

 

そんな少年の疑念を払しょくすると言わんばかりに、零児は今出したトーチトークンを活用する。

零児の口上と共に出現した、正方形に8つの矢印が付いた様なゲート型の物体、その内1つの矢印にトーチトークンが飛び込むとその矢印は紅く発光、すると共に物体の内側が白く発光し、其処から零児達の世界においてデュエルモンスターズのマスコットとして広く知られるモンスター『クリボー』が宇宙服らしきものを纏った様な姿のモンスター――リンクリボーが出現した。

今の零児の口上と共に繰り広げられた光景、それは零児達の世界には無かった新たなる召喚方法――リンク召喚とこの世界で呼ばれる物の一連のギミックであり、そしてこのリンク召喚の存在こそが零児がこの場所にいる理由である。

 

「次にもう1体のトーチトークン1体をリンクマーカーにセット、2体目のリンクリボーをリンク召喚し、現れろ、異次元をも繋ぐサーキット!アローヘッド確認!召喚条件はトークンでは無い同種族のモンスター2体!僕はリンクリボー2体をリンクマーカーにセット!」

『『クリクリー!』』

「サーキットコンバイン!リンク召喚!現れろ『アカシック・マジシャン』!」

 

アカシック・マジシャン

リンク・効果モンスター

闇属性

魔法使い族

攻撃力 1700

LINK―2(上/下)

 

その光景がもう1度繰り広げられ、零児のフィールドにリンクリボーが2体並んだところでみたびゲートが出現、今度は2体のリンクリボーが向かい合う形で矢印に飛び込むと、ゲートの内側から今度は赤毛の錬金術師の様な女性――アカシック・マジシャンが出現した。

 

「これが僕の狙いだ!リンク召喚したアカシック・マジシャンの効果発動!

アカシック・マジシャンのリンク先にいるモンスターを全て手札に戻す!」

「リンク先のモンスターを!?そういえばトーチ・ゴーレムがいるモンスターゾーンは今リンク召喚されたリンクモンスターのリンク先!まさか…!」

「そう、先程君のフィールドに特殊召喚したトーチ・ゴーレムは返して貰おう!」

 

その効果に驚く少年を他所に、アカシック・マジシャンが手に持っていた杖らしき物を振るうと、少年のフィールドにいたトーチ・ゴーレムは即座にカードと化し、零児の手に戻って行った。

 

「続いて僕のフィールドにトーチトークンを2体攻撃表示で特殊召喚する事で、今手札に戻ったトーチ・ゴーレムを君のフィールドに攻撃表示で特殊召喚する!

現れろ、異次元をも繋ぐサーキット!アローヘッド確認!召喚条件はモンスター2体!僕はたった今特殊召喚したトーチトークン2体をリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!リンク召喚!現れろ『セキュリティ・ドラゴン』!」

 

セキュリティ・ドラゴン

リンク・効果モンスター

光属性

サイバース族

攻撃力 1100

LINK―2(上/下)

 

そのトーチ・ゴーレムを再び少年のフィールドに送り付け、自らのフィールドに2体のトーチトークンを呼び出す、先程と同じ様な光景が繰り広げられるが、此処から少し違った。

今度は2体が向かい合う形で矢印に飛び込み、リンク召喚の演出と共に、頭部にU字型の機構を持ったドラゴンらしき外見のモンスター――セキュリティ・ドラゴンが現れた。

 

「セキュリティ・ドラゴンの効果発動!対象はトーチ・ゴーレムだ!

このセキュリティ・ドラゴンは相互リンクしている場合、相手フィールドのモンスター1体を対象に取って、それを手札に戻す起動効果を持っている!この効果でもう1度返して貰おうか!」

 

そのセキュリティ・ドラゴンが、頭部にあるU字型の機構をトーチ・ゴーレムに向けると、其処から光が照射、トーチ・ゴーレムは再びカード化、零児の手に戻った。

 

「更に僕のフィールドにトーチトークンを2体攻撃表示で特殊召喚する事で、今手札に戻ったトーチ・ゴーレムを君のフィールドに攻撃表示で特殊召喚する!

現れろ、異次元をも繋ぐサーキット!アローヘッド確認!召喚条件はモンスター2体以上!僕はたった今特殊召喚したトーチトークン2体とセキュリティ・ドラゴンをリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!リンク召喚!現れろ、

 

 

 

『ファイアウォール・ドラゴン』!」

「なっファイアウォールだと!?何故お前がファイアウォールを持っている!?」

 

ファイアウォール・ドラゴン(制限カード)

リンク・効果モンスター

光属性

サイバース族

攻撃力 2500

LINK―4(上/左/右/下)

 

手札に戻って来たトーチ・ゴーレムをまたも送り付け、自らのフィールドにトーチトークンを生み出す、もう何度も繰り広げられた展開、その後にまた零児はリンク召喚を行ったが、それによって登場した、身体の所々に青いリング型の機構を持ったドラゴンらしき外見のモンスター――ファイアウォール・ドラゴンの姿に、少年は信じられないと言いたげな反応を見せた。

何故か、それは本来ならその少年だけが持っている筈の、彼のエースモンスターだからだ。

 

「何故、か。その問いに対して、残念ながら君が満足いくであろう答えを、僕は持っていないのが現状だ。まさか『神』等という非現実的な存在を出されて鵜呑みにする君ではあるまいだろうから。故にその問いへの回答は保留とさせて貰う」

 

そんな少年の問い掛けに、零児は何処か答えにくそうな素振りを見せた。

言うまでも無い、零児はデュエルモンスターズ業界において多大な影響力を有した大企業『レオ・コーポレーション』の社長である以外にも、300年余りもの人生を歩んだ末に超常的な力を手にした正に『神』に等しい存在であるユシウスとは盟友、今しがた出して来たリンクモンスターの数々は、その影響力を存分に奮って手にした物だ。

だが目前の少年は零児の事を知っている様子はない、そんな彼に自分の役職やユシウスの存在を明かした所で信じるだろうか、いや信じない、零児はそう考え、答えを伏せたのだ。

 

「さてデュエルを続けよう。ファイアウォール・ドラゴンの効果発動!対象はトーチ・ゴーレムだ!

どうやらこのモンスターの存在は知っている様だから説明しない、その効果でもう1度返して貰おう!

まだまだ行くぞ!僕のフィールドにトーチトークンを2体攻撃表示で特殊召喚する事で、今手札に戻ったトーチ・ゴーレムを君のフィールドに攻撃表示で特殊召喚する!」

 

トーチ・ゴーレム。

嘗てアニメGXにおいてユベルが使用していたカードで、其処ではユベル自身をアドバンス召喚(アニメ中では生贄召喚)する為のリリース要員を確保するために使用された。

OCGになって、特殊召喚したターンは通常召喚が出来なくなるデメリットが付いた事で上記の使い方が出来なくなった事が災いして暫くはコンボデッキで時折顔を出す程度に留まっていたが、リンクモンスターの存在がその価値を一変させた。

今零児が見せた一連の展開の様に、送りつけてはバウンスし、また送りつけてはバウンスする、その繰り返しの中で大量生産したトーチトークンをリンク召喚の素材に用いる事で、たった1枚で大量のリンクモンスターを、それも召喚出来る事がこの場においてステータスにもなるLINK―4モンスターすらも展開する事が出来る様になってしまったのだ。

この余りのアドバンテージ量産能力を危険視され、最近準制限カードに指定されたのは当然と言えよう。

 

「此処で、その内の1体をリリースし、墓地のリンクリボーの効果発動!

このカードを攻撃表示で蘇生する!

それと、アカシック・マジシャンのもう1つの効果発動!宣言するカードは『死者蘇生』!

このカードは、自らと相互リンクしているモンスターのリンクマーカーの合計分、自分のデッキの上からカードをめくり、宣言したカードを手札に、それ以外のカードを墓地へ送る起動効果を持っている!

現在アカシック・マジシャンと相互リンクしているのはファイアウォール・ドラゴン、そのリンクマーカーは4つ!よってデッキの上から4枚をめくり…」

 

○めくられたカード

DDラミア

DDネクロ・スライム

DD魔導賢者トーマス

死者蘇生

 

「まさか当たるとは思わなかったな…

まあ良い、死者蘇生を手札に加え、それ以外の3枚を墓地へ送る!」

 

そして、その大量展開の過程で登場するリンクモンスター達も、ただトーチ・ゴーレムをバウンスするだけでは無い有用なモンスターもいる。

制限カードに指定される程のカードパワーを有したファイアウォール・ドラゴンや、自己蘇生能力等を持ったリンクリボー、そして今の様な状況では大幅な墓地肥やしを行えるアカシック・マジシャン。

トーチ・ゴーレムが大暴れする背景には、こういったモンスター達の存在も陰にあるのだ。

 

「現れろ、異次元をも繋ぐサーキット!アローヘッド確認!召喚条件はカード名が異なるモンスター2体以上!僕は今蘇生したリンクリボー、トーチトークン、アカシック・マジシャン、

 

 

 

そしてファイアウォール・ドラゴンをリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!リンク召喚!現れろ『鎖龍蛇―スカルデット』!」

「何?ファイアウォールもリンク素材に…?」

 

鎖龍蛇―スカルデット

リンク・効果モンスター

地属性

ドラゴン族

攻撃力 2800

LINK―4(上/左下/下/右下)

 

そんな展開を締めくくると言わんばかりに零児は、リンク召喚の演出と共に、身体の所々に鎖を巻きつけた鈍色のドラゴン――スカルデットを呼び出した。

その際、ファイアウォール・ドラゴンもリンク素材とした事に少年は疑問符を浮かべる。

無理もない、スカルデットの召喚条件は今零児が言った様にカード名が異なるモンスター2体以上、後はリンクマーカーが4つになる状態になればいいのだが、LINK―2のアカシック・マジシャンがいる時点でファイアウォール・ドラゴンを使う事無くリンク召喚出来たからだ。

 

「4体のリンク素材を用いてリンク召喚したスカルデットの効果発動!

4枚ドロー!その後、3枚をデッキの下に戻す。

そして魔法『貪欲な壺』発動!対象は2体のリンクリボーとアカシック・マジシャン、セキュリティ・ドラゴンとファイアウォール・ドラゴンだ!」

 

貪欲な壺(準制限カード)

通常魔法

1:自分の墓地のモンスター5体を対象として発動出来る。そのモンスター5体をデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから2枚ドローする。

 

「僕はこの5体をエクストラデッキに戻す!

その後メインデッキをシャッフルし、2枚ドロー!

おっと、序でに今引いた魔法『所有者の刻印』も発動して置こう」

 

が、これこそが零児なりの『理想の動き』なのだ。

4体ものリンク素材を用いたスカルデットの効果で手札を6枚に増やし、更に墓地へ送られた5体のリンクモンスターをエクストラデッキに戻して、手札補充カードの定番である(最近はそうでも無く、故に準制限に緩和されたが)貪欲な壺で7枚に増やす。

 

所有者の刻印

通常魔法

フィールド上の全てのモンスターのコントロールは、元々の持ち主に戻る。

 

「所有者の刻印の効果によって、トーチ・ゴーレムは返して貰おう。

 

 

 

これで下準備は完了だ。それではお見せしよう、数多の次元を繋ぐ英雄達の底力を!」

「下準備だと!?」

 

そうして整った手札と、自らのフィールドに君臨したトーチ・ゴーレムの存在。

これによって零児の、DDデッキの本気が発揮される…!



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特別編2_DifferentDimensionDemon

「まずは3体以上のリンク素材を用いてリンク召喚したスカルデットの効果発動!

手札の『DD魔導賢者ケプラー』を守備表示で特殊召喚!」

「フレームの下半分が緑色?それにテキスト枠も変わった形だが…?」

 

DD魔導賢者ケプラー

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 1

守備力 0

 

手始めに零児は、スカルデットの更なる効果によって、天文学者ヨハネス・ケプラーの名を冠した賢者らしき姿のモンスター――ケプラーを手札から呼び出し、

 

「特殊召喚したケプラーの効果発動!

デッキから永続魔法『地獄門の契約書』を手札に加え、そのまま発動!」

 

地獄門の契約書

永続魔法

『地獄門の契約書』の1の効果は1ターンに1度しか使用できない。

1:自分メインフェイズに発動出来る。デッキから『DD』モンスター1体を手札に加える。

2:自分スタンバイフェイズに発動する。自分は1000ダメージを受ける。

 

その効果で、DDデッキにおけるサーチエンジンである地獄門の契約書を持ち出した。

 

「今発動した地獄門の契約書の1つ目の効果発動!

デッキから『DDスワラル・スライム』を手札に加え、そのまま効果発動!

このカードは自らを含む融合素材を手札から墓地へ送る事で、DDDモンスターを融合召喚出来る!

この効果で僕はスワラル・スライムと2枚目のDDラミアを融合!未来に流される血よ、自在に形を変える神秘の渦に融け込み、真の王と生まれ変わらん!融合召喚、生誕せよ!『DDD烈火王テムジン』!」

「融合召喚だと!?一体何なんだそれは!?」

 

DDD烈火王テムジン

融合・効果モンスター

炎属性

悪魔族

レベル 6

攻撃力 2000

 

地獄門の契約書の効果によってサーチされたスワラル・スライム、その効果による融合召喚によって登場したテムジンの姿、というより融合召喚と言う概念自体聞いた事が無かったのか、融合召喚その物に驚きを見せた少年、先程ケプラーのカードフレームに疑問を抱いていた様子も踏まえると、この地域ではリンク召喚以外の、エクストラデッキからモンスターを呼び出す術が知られていない様だ。

 

「テムジンがスカルデットのリンク先に特殊召喚された事で、2体以上のリンク素材を用いてリンク召喚したスカルデットの効果発動!

テムジンの攻守をそれぞれ300アップさせる!」

 

DDD烈火王テムジン 攻撃力 2000→2300

          守備力 1500→1800

 

「次に地獄門の契約書を墓地へ送り、墓地のDDラミアの効果発動!

このカードを守備表示で蘇生する!」

「チューナーモンスター?ユニオンモンスターとかリバースモンスターみたいな物か?」

 

DDラミア

効果モンスター/チューナー

闇属性

悪魔族

レベル 1

守備力 1900

 

とはいえそんな反応は零児達にとってもう慣れた物、気にする事無く展開を進める。

2体以上のリンク素材を用いてリンク召喚されたスカルデットの強制効果によってテムジンのステータスが上昇した後、今度は既にサーチ効果を使った地獄門の契約書を破棄し、墓地に存在する2枚のラミア、その内の1枚を自己蘇生させた。

 

「僕はレベル8のトーチ・ゴーレムと、レベル1のケプラーに、今蘇生したレベル1のラミアをチューニング!未来に流される血よ、星を見定めし賢者と共に、偉大なる疾風の大王を永遠の責め苦から解放せよ!シンクロ召喚、生誕せよ!レベル10『DDD疾風大王エグゼクティブ・アレクサンダー』!」

「シンクロ召喚!?また訳の分からない召喚方法が…!」

 

DDD疾風大王エグゼクティブ・アレクサンダー

シンクロ・効果モンスター

風属性

悪魔族

レベル 10

攻撃力 3000

 

そのラミアをチューナーに、トーチ・ゴーレムとケプラーをそれ以外のシンクロ素材としたシンクロ召喚で登場したのは、DDデッキにおける大量展開コンビの一角であるアレクサンダーが、エグゼクティブ(上級管理職)の名と大王の称号を得て、より強大な力を得た姿。

 

「自らの効果で蘇生したラミアはフィールドを離れた時、除外される。

エグゼクティブ・アレクサンダーがスカルデットのリンク先に特殊召喚された事で、スカルデットの効果発動!

それにチェーン、自分以外のDDモンスターが特殊召喚された事で、テムジンの効果発動!対象は2体目のラミア!

まずはテムジンの効果で、対象となったラミアを守備表示で蘇生する!

次にスカルデットの効果で、エグゼクティブ・アレクサンダーの攻守をそれぞれ300アップさせる!」

 

DDD疾風大王エグゼクティブ・アレクサンダー 攻撃力 3000→3300

                      守備力 2500→2800

 

対峙する少年がシンクロ召喚に対して驚いた事は既に考慮していた為、気にせず自分の行動を進める零児、またも発動されたスカルデットの強制効果にチェーンさせてテムジンの蘇生効果を発動させ、自己蘇生した方では無いラミアを蘇生させた。

 

「僕はレベル6のテムジンに、今蘇生したレベル1のラミアをチューニング!未来に流される血よ、疾風の速さを得て新たな王の産声となれ!シンクロ召喚、生誕せよ!レベル7『DDD疾風王アレクサンダー』!」

 

DDD疾風王アレクサンダー

シンクロ・効果モンスター

風属性

悪魔族

レベル 7

攻撃力 2500

 

そのラミアと、蘇生効果を使ったテムジンによるシンクロ召喚で登場したのは、既にフィールドにいるエグゼクティブ・アレクサンダーの強化前の姿であるアレクサンダー。

強化前と強化後の2体が並び立つと言う、言葉にすると何ともシュールな光景が広がってはいるが、どちらかしか出してはいけないと言うルール効果や効果外テキスト等存在しない為、気にしてはいけない。

 

「アレクサンダーがスカルデットのリンク先に特殊召喚された事で、スカルデットの効果発動!

それにチェーン、自分以外のDDモンスターが特殊召喚された事で、エグゼクティブ・アレクサンダーの効果発動!対象は今シンクロ素材となったテムジン!

まずはエグゼクティブ・アレクサンダーの効果で、対象となったテムジンを守備表示で蘇生する!

次にスカルデットの効果でアレクサンダーの攻守をそれぞれ300アップさせる!」

 

DDD疾風王アレクサンダー 攻撃力 2500→2800

             守備力 2000→2300

DDD疾風大王エグゼクティブ・アレクサンダー 攻撃力 3300→6300

 

「攻撃力が6300に上がった!?」

「自らを含むDDDモンスターが3体以上フィールドに存在する時、エグゼクティブ・アレクサンダーの攻撃力は3000アップする!

自分以外のDDモンスターが特殊召喚された事で、アレクサンダーの効果発動!対象はラミア!

この効果で、ラミアを守備表示で蘇生させる!」

 

そんな2体のアレクサンダーの効果によって直ぐフィールドに戻って来た、アレクサンダーの素材であった2体。

見た感じはシュールでも、その蘇生効果の連鎖反応が強烈極まりないのは、テムジンアレクサンダーコンビで既に周知の通りであろう、その副次的な作用としてエグゼクティブ・アレクサンダーの攻撃力が凄まじい事になっているのを抜きにしても。

 

「続いて墓地のDDネクロ・スライムの効果発動!

このカードは自らを含む融合素材を墓地から除外する事で、DDDモンスターを融合召喚出来る!

この効果で僕はネクロ・スライムとDD魔導賢者トーマスを除外して融合!発明に長ける賢者よ、自在に形を変える神秘の渦に融け込み、偉大なる大王へと生まれ変わらん!融合召喚、生誕せよ!レベル8『DDD烈火大王エグゼクティブ・テムジン』!」

 

DDD烈火大王エグゼクティブ・テムジン

融合・効果モンスター

炎属性

悪魔族

レベル 8

攻撃力 2800

 

だがそれでも零児の展開は終わらない。

ネクロ・スライムの効果による融合召喚によって登場したのは、DDデッキにおける大量展開コンビの一角であるテムジンが、エグゼクティブ(上級管理職)の名と大王の称号を得て、より強大な力を得た姿。

これでテムジンとアレクサンダー共に、強化前と強化後の姿が其々並び立つという、シュールさが際立つ光景が広がる事になったが、やはり気にしたら負けであろう。

 

「エグゼクティブ・テムジンがスカルデットのリンク先に特殊召喚された事で、スカルデットの効果発動!

エグゼクティブ・テムジンの攻守をそれぞれ300アップさせる!」

 

DDD烈火大王エグゼクティブ・テムジン 攻撃力 2800→3100

                   守備力 2400→2700

 

「僕はレベル7のアレクサンダーに、レベル1のラミアをチューニング!その紅に染められし剣を掲げ、英雄達の屍を越えて行け!シンクロ召喚、生誕せよ!レベル8『DDD呪血王サイフリート』!」

 

DDD呪血王サイフリート

シンクロ・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 8

攻撃力 2800

 

「サイフリートがスカルデットのリンク先に特殊召喚された事で、スカルデットの効果発動!

それにチェーン、自分以外のDDモンスターが特殊召喚された事で、エグゼクティブ・テムジンの効果発動!対象は今シンクロ素材となったアレクサンダー!

まずはエグゼクティブ・テムジンの効果でアレクサンダーを攻撃表示で蘇生する!

次にスカルデットの効果でサイフリートの攻守をそれぞれ300アップさせる!」

 

DDD呪血王サイフリート 攻撃力 2800→3100

            守備力 2200→2500

 

そのエグゼクティブ・テムジンの効果によって蘇る、今シンクロ召喚されたサイフリートのシンクロ素材として墓地へ送られたアレクサンダー。

これで零児のフィールドには実に5体ものDDDモンスター、そしてその大量展開の枠を作り上げたスカルデットが居並ぶという、ジョークにしか思えない布陣が整った。

 

「このままターンエンド、と行きたい所だが…

もう少し動いておくか。僕は今出したサイフリートとエグゼクティブ・テムジンでオーバーレイ!2体のレベル8・DDモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!今此処に君臨せよ、全ての王をも統べる黒き超越神よ!エクシーズ召喚、現れよ!ランク8『DDD超死偉王ダークネス・ヘル・アーマゲドン』!」

「今度はエクシーズ召喚だと!?どれだけ意味不明な召喚方法を使う気だ…!」

 

DDD超死偉王ダークネス・ヘル・アーマゲドン

エクシーズ・ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

悪魔族

ランク 8

攻撃力 3500

ORU 2

 

「ダークネス・ヘル・アーマゲドンがスカルデットのリンク先に特殊召喚された事で、スカルデットの効果発動!

それにチェーンして、エクシーズ召喚したダークネス・ヘル・アーマゲドンの効果発動!

まずはダークネス・ヘル・アーマゲドンの効果でエクストラデッキに表側表示で存在するケプラーを自身のオーバーレイ・ユニットにする!

次にスカルデットの効果でダークネス・ヘル・アーマゲドンの攻守をそれぞれ300アップさせる!」

 

DDD超死偉王ダークネス・ヘル・アーマゲドン 攻撃力 3500→3800

                      守備力 3000→3300

                      ORU 2→3

 

しかし、零児はこれで満足しなかった。

その効果から相手ターンにも睨みを効かせられるサイフリートを態々使ってまでエクシーズ召喚したのは、DDモンスターの頂点に君臨するヘル・アーマゲドンが、エクシーズの力を得た姿。

 

「まだ僕の展開は終わらない!墓地のスワラル・スライムを除外して効果発動!

手札のDDモンスターを特殊召喚する!現れ出でよ!神々の黄昏に審判を下す最高神!『DDD壊薙王アビス・ラグナロク』!」

 

DDD壊薙王アビス・ラグナロク

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 8

守備力 3000

 

「アビス・ラグナロクがスカルデットのリンク先に特殊召喚された事で、スカルデットの効果発動!

アビス・ラグナロクの攻守をそれぞれ300アップさせる!」

 

DDD壊薙王アビス・ラグナロク 守備力 3000→3300

               攻撃力 2200→2500

 

「そして速攻魔法『大欲の壺』発動!対象はネクロ・スライムとラミア、そしてスワラル・スライム!」

 

大欲な壺

速攻魔法

『大欲な壺』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:除外されている自分及び相手のモンスターの中から合計3体を対象として発動出来る。そのモンスター3体を持ち主のデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから1枚ドローする。

 

「僕はこの3体をメインデッキに戻し、シャッフルの後にドローする!

カードを3枚セットしてターンエンド!」

 

Reizi

LP 4000

手札 1

モンスター

1:DDD烈火王テムジン(守備表示)

2:DDD疾風王アレクサンダー(攻撃表示)

(3):DDD壊薙王アビス・ラグナロク(守備表示)

(4):DDD超死偉王ダークネス・ヘル・アーマゲドン(攻撃表示)

(5):DDD疾風大王エグゼクティブ・アレクサンダー(攻撃表示)

Ex2:鎖龍蛇―スカルデット

魔法・罠カード セット×3(2/3/4)

 

そして、墓地にあったスワラル・スライムの効果によって手札のアビス・ラグナロクを展開、しつこいと突っ込まれそうなほど発動されたスカルデットの強制効果の後に、除外されていた3枚のDDモンスターをデッキに戻しつつ手札交換を行った零児。

再び5体のDDDモンスターが居並んだ状態で、ペンデュラムゾーンを兼ねている両端以外の魔法・罠ゾーンを全て埋めてターンを明け渡した。

これが、零児が用いるDDデッキの、異世界を統べる英雄たちの底力…!



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特別編3_デーモンズVSサイバース

「何て無茶苦茶な展開力だ…!

俺のターン、ドロー!

まずはデッキの上から10枚を裏側表示で除外し、魔法『強欲で貪欲な壺』発動!」

「強貪か、サイフリートをエクシーズ召喚に使ったのが仇になったか…」

 

強欲で貪欲な壺

通常魔法

『強欲で貪欲な壺』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:自分のデッキの上からカード10枚を裏側表示で除外して発動出来る。自分はデッキから2枚ドローする。

 

ターンを明け渡された少年、零児が見せたDDモンスターの圧倒的展開力に怯みながらも、自分は自分のデュエルをするまでと言わんばかりに動き出す。

その初手で発動したのは、現状最も汎用性の高いドローソースで、強貪のあだ名で知られる強欲で貪欲な壺、それを見た零児はサイフリートを用いてダークネス・ヘル・アーマゲドンをエクシーズ召喚した事で結果、止められなくなった事に渋い顔をしていた。

 

「強欲で貪欲な壺の効果で、2枚ドロー!

次に俺のフィールドにモンスターが存在しない事で手札の『リンクスレイヤー』を攻撃表示で特殊召喚する!」

 

リンクスレイヤー

効果モンスター

地属性

サイバース族

レベル 5

攻撃力 2000

 

強欲で貪欲な壺の効果によって手札を7枚に補充した少年が最初に登場させたのは、ヤマネコの様な絵柄の鎧を身に纏った電脳戦士。

 

「続いて手札を2枚捨ててリンクスレイヤーの効果発動!対象はその両端のセットカード!

そのカードを破壊」

「流石にそれは通せない、LPを1500払ってカウンター罠『神の通告』発動!そのモンスター効果を無効にして破壊する!」

「何!?」

 

神の通告(準制限カード)

カウンター罠

1:1500LPを払って以下の効果を発動出来る。

●モンスターの効果が発動した時に発動出来る。その発動を無効にし破壊する。

●自分または相手がモンスターを特殊召喚する際に発動出来る。その特殊召喚を無効にし、そのモンスターを破壊する。

 

そのリンクスレイヤーの効果で、3枚もある零児のセットカードを少しでも多く破壊しようとした少年だったが、それを考慮していない零児では無く、逆にリンクスレイヤーを除去される事となった。

 

「くっ!だがコストとして墓地へ送られた『ドットスケーパー』の効果発動!

このカードを守備表示で蘇生する!」

 

ドットスケーパー

効果モンスター

地属性

サイバース族

レベル 1

守備力 2100

 

然し少年はコストとして墓地へ送った手札を無駄にはしない、送られた内の1枚が自らの効果によって自己蘇生、多数の小さい立方体が集結して出来た存在――ドットスケーパーとしてフィールドに現れた。

 

「更に『バランサーロード』を召喚!」

 

バランサーロード

効果モンスター

光属性

サイバース族

レベル 4

攻撃力 1700

 

次に電脳騎士という言葉がぴったりな戦士――バランサーロードを通常召喚し、

 

「バランサーロードの召喚に成功した事で手札の『ブート・スタッガード』の効果発動!

このカードを攻撃表示で特殊召喚する!」

 

ブート・スタッガード

効果モンスター

光属性

サイバース族

レベル 5

攻撃力 2300

 

頭から鹿の角らしき物を生やした戦士――ブート・スタッガードを自らの効果で呼び出した。

 

「まだまだ行くぞ!LPを1000払ってバランサーロードの効果発動!

それにチェーンして、速攻魔法『サイバネット・バックドア』発動!対象はバランサーロード!」

 

サイバネット・バックドア

速攻魔法

このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:自分フィールドのサイバース族モンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを除外し、そのモンスターの元々の攻撃力より低い攻撃力を持つサイバース族モンスター1体をデッキから手札に加える。この効果で除外したモンスターは次の自分スタンバイフェイズにフィールドに戻り、そのターン直接攻撃出来る。

 

???? LP 4000→3000

 

「まずはサイバネット・バックドアの効果でバランサーロードを除外し、デッキから『フレイム・バッファロー』を手札に加える!

次にバランサーロードの効果でこのターン、俺はもう1度サイバース族モンスターを召喚可能!」

 

とはいえこれだけでは零児の圧倒的な布陣を崩す事は不可能、更なる展開の為にLPをコストとした召喚権の追加、及びサーチを行った、だけでは無い。

 

「此処で除外されたバランサーロードの効果発動!

今手札に加えた『フレイム・バッファロー』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

フレイム・バッファロー

効果モンスター

炎属性

サイバース族

レベル 3

攻撃力 1400

 

今しがたサーチしたばかりの、炎を纏った機械仕掛けのバッファローらしきモンスターを呼び出した。

 

「現れろ、未来を導くサーキット!アローヘッド確認!召喚条件はサイバース族2体以上!俺はドットスケーパーとフレイム・バッファローをリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!リンク召喚!現れろ『ハニーボット』!」

 

ハニーボット

リンク・効果モンスター

光属性

サイバース族

攻撃力 1900

LINK―2(左/右)

 

こうして並んだ3体のモンスターの内、ブート・スタッガード以外の2体がリンクマーカーに飛び込み、リンク召喚の演出が繰り広げられると、ゲートから女王蜂を擬人化させた様なモンスター――ハニーボットが出現した。

 

「フィールドから離れたフレイム・バッファローの効果発動!

手札の『デジトロン』を捨てて、2枚ドロー!

俺は今引いた『サイバース・ガジェット』を召喚!」

 

サイバース・ガジェット

効果モンスター

光属性

サイバース族

レベル 4

攻撃力 1400

 

そのリンク素材となったフレイム・バッファローの効果による手札増強、それによってモンスターを引き当て、今度はガジェットの名を冠した戦士――サイバース・ガジェットを召喚した。

 

「召喚したサイバース・ガジェットの効果発動!

墓地の『スタック・リバイバー』を守備表示で蘇生する!」

「成る程、リンクスレイヤーの効果で捨てたもう1枚か」

 

スタック・リバイバー

効果モンスター

闇属性

サイバース族

レベル 2

守備力 600

 

その効果によって蘇生したのは、メモリーのスロットを多数備えたスーパーコンピュータらしき存在――スタック・リバイバー。

 

「現れろ、未来を導くサーキット!アローヘッド確認!召喚条件はモンスター2体!俺はサイバース・ガジェットとスタック・リバイバーをリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!リンク召喚!現れろ『プロキシー・ドラゴン』!」

 

プロキシー・ドラゴン

リンク・効果モンスター

光属性

サイバース族

攻撃力 1400

LINK―2(左/右)

 

こうして並んだ2体を用いてリンク召喚したのは、何処かファイアウォール・ドラゴンを彷彿とさせるドラゴンの様なモンスター――プロキシー・ドラゴン。

 

「フィールドから墓地へ送られたサイバース・ガジェットの効果発動!

それにチェーンして、リンク素材となったスタック・リバイバーの効果発動!対象は同じくリンク素材となったサイバース・ガジェット!

まずはスタック・リバイバーの効果でサイバース・ガジェットを守備表示で蘇生する!

次にサイバース・ガジェットの効果で、ガジェット・トークンを守備表示で特殊召喚!」

 

ガジェット・トークン

光属性

サイバース族

レベル 2

守備力 0

 

そのプロキシー・ドラゴンの素材として墓地へ送られた2体だったが、其々の効果によって1体は蘇生、もう1体こそいないが代わりにトークンモンスターが生成された。

 

「現れろ、未来を導くサーキット!アローヘッド確認!召喚条件はモンスター2体以上!俺はハニーボットとブート・スタッガード、そしてサイバース・ガジェットをリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!リンク召喚!現れろ『ファイアウォール・ドラゴン』!」

 

ファイアウォール・ドラゴン(制限カード)

リンク・効果モンスター

光属性

サイバース族

攻撃力 2500

LINK―4(上/左/右/下)

 

その2体と、既にフィールドに存在していたハニーボットを用いてリンク召喚したのは、零児も先程のターンで呼び出したファイアウォール・ドラゴン。

その存在に流石の零児も警戒心を隠せない様子だが、まだ動く気配は、セットカードを発動しようとする様子はない。

 

「ファイアウォール・ドラゴンの効果発動!対象はダークネス・ヘル・アーマゲドンとスカルデットだ!」

「やはりそう来たか、だが構わない、通そう」

「ならばフィールドから消え去るが良い!エマージェンシーエスケープ!」

 

だからか、ファイアウォール・ドラゴンのバウンス効果に対しても、何の抵抗もする素振りは無く、元々の攻撃力が最も高いダークネス・ヘル・アーマゲドンと、展開の土台であったスカルデットはフィールドからいなくなった。

 

「バトルフェイズに入る!ブート・スタッガードでテムジンを攻撃!」

 

それを見た少年は此処でより多く零児のモンスターを減らそうと戦闘を仕掛ける。

だが、

 

ブート・スタッガード 攻撃力 2300 VS DDD烈火王テムジン 守備力 1500

 

「戦闘破壊されたテムジンの効果発動!対象は墓地にある地獄門の契約書だ!」

「何!?」

 

それは、致命的と言って良い悪手だった。

 

「テムジンの効果で地獄門の契約書を回収する!」

「くっ次のターンでのサーチ手段を確保されたか…

だが戦闘続行だ!ファイアウォール・ドラゴンでアレクサンダーを攻撃!テンペストアタック!」

「ダメージステップ開始時、永続罠『戦乙女(ヴァルキリー)の契約書』発動!」

「な!?」

 

戦乙女の契約書

永続罠

『戦乙女の契約書』の1の効果は1ターンに1度しか使用できない。

1:手札から『DD』カードまたは『契約書』カードを1枚墓地へ送り、フィールドのカード1枚を対象として発動出来る。そのカードを破壊する。

2:このカードが魔法・罠ゾーンに存在する限り、自分フィールドの悪魔族モンスターの攻撃力は、相手ターンの間1000アップする。

3:自分スタンバイフェイズに発動する。自分は1000ダメージを受ける。

 

「戦乙女の契約書の2つ目の効果により、僕のフィールドにいる悪魔族モンスターの攻撃力は、君のターン中1000アップする!よって」

 

DDD疾風大王エグゼクティブ・アレクサンダー 攻撃力 6300→7300

DDD壊薙王アビス・ラグナロク 攻撃力 2500→3500

 

ファイアウォール・ドラゴン 攻撃力 2500 VS DDD疾風王アレクサンダー 攻撃力 2500→3500

 

「返り討ちだ!やれ、アレクサンダー!」

「くっ!プロキシー・ドラゴンの永続効果で、ファイアウォール・ドラゴンの代わりにガジェット・トークンを破壊する!」

 

???? LP 3000→2000

 

「俺はこれでバトルフェイズを終了する!」

「ならバトルフェイズ終了時、先程回収した地獄門の契約書を墓地へ送り、戦乙女の契約書の1つ目の効果発動!対象はファイアウォール・ドラゴン!効果で破壊だ!」

「な!?」

 

テムジンを戦闘破壊した事で地獄門の契約書を回収させただけならまだ引き返せた、だが相討ち狙いでアレクサンダーと戦闘した事に、プロキシー・ドラゴンによる身代わり効果を使ってしまったのは致命的なプレミと言っても良い。

1000ダメージを受けた事も含め、普段の彼では信じられない様なプレミ、それが何故起こってしまったのか、それは本人にも分からないかも知れない…

 

「これでターンエンドだ…」

 

????

LP 2000

手札 1

モンスター

1:ブート・スタッガード(攻撃表示)

3:プロキシー・ドラゴン

魔法・罠カード なし

 

「僕のターン!一応言っておくが、此処で戦乙女の契約書による攻撃力増加は無くなる」

 

DDD疾風王アレクサンダー 攻撃力 3500→2500

DDD疾風大王エグゼクティブ・アレクサンダー 攻撃力 7300→6300

DDD壊薙王アビス・ラグナロク 攻撃力 3500→2500

 

「ドロー!スタンバイフェイズに戦乙女の契約書の強制効果が発生する。

が、それにチェーンして罠『契約洗浄(リース・ロンダリング)』発動!」

 

契約洗浄

通常罠

1:自分の魔法・罠ゾーンの『契約書』カードを全て破壊する。破壊した数だけ自分はデッキからドローする。その後、自分はドローした数×1000LP回復する。

 

少年の致命的なプレミによって勝利は確定的となった零児、だがそれでも零児は手を緩めない。

強制的に発動された契約書カード共通のデメリット効果、それを踏み倒す効果を持つ契約洗浄を発動し、

 

「契約洗浄の効果で戦乙女の契約書を破壊し、ドロー!その後、1000LP回復する!」

 

Reizi LP 2500→3500

 

契約を無かった事にした。

 

「このままバトルフェイズに入る!エグゼクティブ・アレクサンダーでブート・スタッガードを攻撃!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

DDD疾風大王エグゼクティブ・アレクサンダー 攻撃力 6300 VS ブート・スタッガード 攻撃力 2300

 

???? LP 2000→-2000 LOSE

 

WINNER Reizi

 

------------

 

「まだ僕達のいた4つの次元の影響は、このリンク次元では見られないな。だが何処か見落としている所もあるやも知れん。僕達の世界におけるデュエルモンスターズのルールが、この次元のそれに改変されようとしている程の干渉力だ、影響無い訳がない。全く、ズァークによる次元分裂の余波が、全く関係ない筈のこの次元にまで影響を及ぼすとはな…」

 

少年とのデュエルを終えた零児はその場を離れ、そう呟きながら街中へと消えて行った。

彼が一体何故この街、いやこの次元にいるのか、それはまた別の話…



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