決闘絶唱シンフォギア~魂継ぐ者~ (星屑英雄)
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第一話 螺旋の咆哮!!オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!!

どうも!星屑英雄というものです。
シンフォギアの監督が遊戯王と同じという話を聞きシンフォギアを視聴。
結果…シンフォギアにハマってしまい、それで急に書きたくなって書きました。
何番煎じかは分かりませんが、ゆっくりと見て行っていただければ幸いです。

それではどうぞ!!

8・28
修正・時間を変更―――~二週間前~ → ~二か月前~
すいません、二週間は早すぎました…

2016年11月24日
デュエルシーンでの効果説明がくどいというご指摘を受けたので修正



二人の少女が墓場に立っていた。

 

墓石には一人の青年が写った遺影が置いてあり、≪ 衛宮士遊(えみやしゆう)≫と彫ってあった。

 

ぽつぽつと、雨が降ってくる。

遺影に雨粒が当たり始める。

しかし、少女たちは傘もささずにその場に立ち尽くすのみだった。

ざあざあと、音を立てて雨粒が地面に当たり、道を墓石を、そして体を冷たく濡らしていく。

 

「……嘘つき」

 

二人のうちの一人の少女がぽっつりとそう言葉を漏らす。

 

「絶対帰ってくるって言ったのに!!なんで!?もう会えないの?嫌だよぉ…」

「…士遊お兄ちゃん」

 

二人に少女は涙をこらえらなかった。

一人の少女はその場にうずくまり、もう一人の少女は拳を握り締める。

そう、その青年は大切な人だった、なのに守れなかった。

後悔の中、悔しさの中で、涙が地面に落ちる。

 

嗚咽が 慟哭(どうこく)となり、雨が…涙が…混ざり合って流れていった…

 

 

~二か月前~

 

「ららら~♪今日はいい天気だなぁ~、っと」

 

鼻歌交じりに、街を歩いていく俺。

今日は天気が良かったので外に出て、首からかかったペンデュラムを揺らしながら散歩していると、元気よく子供たちの声がしている。

 

「「決闘(デュエル)!!」」

 

ん?

 

「おれは二体のモンスターをリリース、『バスターブレイダー』をアドバンス召喚!!」

「スゲー、かっこいい!!」

「レアカードじゃん!!いいなー」

「へへへ、パックで当てたんだ!!かっこいいだろ!!」

「ふん、ぼくのこのカードの方がかっこいいぞ!」

「えー、ならわたしのカードの方が可愛くて強いんだから」

 

どうやら子供たちは遊戯王カードで遊んでいるみたいだ。

デュエルディスクで 決闘(デュエル)していたり、レアカードを自慢しあったりしている。

その光景をほほえましく思っていると、後ろから衝撃が走る。

 

「士遊お兄ちゃーん!!」

「ぐはっつ!!」

 

鳩尾に衝撃が走る。

どうやら、人がぶつかってきたらしい。

そして、俺のことをお兄ちゃんと呼ぶのは、あの子しかいない。

 

「おい、響!危ないだろ!?こけそうになったぞ!!」

「大丈夫,大丈夫!!お兄ちゃんなら、こけないって!!」

「その自信はどっからくるんだ…」

 

乙女の勘ですっ!!と、いいながら元気いっぱいに笑うこの子は、 立花響(たちばなひびき)

俺の 親戚(しんせき)で、 従妹(いとこ)にあたる。

 

「で、何か用か九日十日?」

「あ、そうだった、コホンッ…おい、 決闘(デュエル)しろよ」

「おっと、合点承知之助!」

 

いきなりデュエルを挑まれてびっくりしたが、断る理由もない…と、いうか挑まれたデュエルから逃げるなんて 決闘者(デュエリスト)の本能が許さない。

なので…

 

「「 決闘(デュエル)!!」」

 

響  ライフ 8000

士遊 ライフ 8000

 

二人とも、ディスクを取り出し、決闘を開始する。

デュエルディスクが反応したのは響の方だった。

 

「私の先行です!私は魔法カード『調律』を発動!!この効果でデッキから『ジャンク・シンクロン』を手札に、そしてデッキをシャッフル、デッキからカードを墓地へ…よし、送られたのは『ボルト・ヘッジホッグ』!!」

「うーん、落ちがいいなぁ…」

 

墓地に送られたのは、ハリがネジになったハリネズミ、もといネジネズミ。チューナーさえいれば自己蘇生可能な有能なモンスタ―だ。

 

「私は、手札の『レベルスティーラー』を墓地に送り、魔法カード『ワン・フォー・ワン』発動。デッキから『アンノウン・シンクロン』を特殊召喚!!」

 

デッキから、一つ目の球体が響のフィールドに現れ、ぴょこぴょこ動き回る。

 

「まだまだ、ここから!!『ジャンク・シンクロン』を通常召喚、効果で『ボルト・ヘッジホッグ』を蘇生。レベル2の『ボルト・ヘッジホッグ』にレベル3の『ジャンク・シンクロン』をチューニング!!未来の英知集まる場所の番人よ、今こそその知識を開放せよ!シンクロ召喚!レベル5『 TG(テックジーナス)ハイパー・ライブラリアン』!!」

 

2+3=☆5

 

『ジャンク・シンクロン』が腰にある、リコイル・スタータの取っ手を引き、エンジンを始動させる。『ジャンク・シンクロン』が三つの輪っかになり『ボルト・ヘッジホッグ』を包む。『ボルト・ヘッジホッグ』が二つの星になり、次の瞬間、光の柱がさす。

光がやむとそこには一体のモンスターが立っていた。

 

近未来的な服装の図書館員『 TG(テックジーナス)ハイパー・ライブラリアン』が本を閉じ、戦闘態勢に入る。

……未来の図書館員は肉体派らしい。図書館で戦争でもするのだろうか。

 

「まだまだ行くよ!!『 TG(テックジーナス)ハイパー・ライブラリアン』のレベルを1下げ、『レベルスティーラー』を自身の効果で特殊召喚」

 

TG(テックジーナス)ハイパー・ライブラリアン』レベル5→4

 

背に星の柄を持ったテントウムシが墓地から飛び出てくる。

 

「レベル1の『レベルスティーラー』にレベル1の『アンノウン・シンクロン』をチューニング!!光を超え加速しろ、現れて!!シンクロ召喚!!光速の戦士『フォーミュラ・シンクロン』!!」

 

1+1=☆2

 

甦ったと思ったらすぐにシンクロ召喚のための素材となったって星に代わっていく『レベルスティーラー』。心なしか悲しそうに見えるのは気のせいか……

 

光の輪から光の柱が立ち昇り、ミニF1カーに手足がついたようなチューナー『フォーミュラ・シンクロン』がポーズをとりながら、召喚される。

 

「『フォーミュラ・シンクロン』と『 TG(テックジーナス)ハイパー・ライブラリアン』の効果発動!!カードをドロー!!」

 

響 手札5→2→4枚

 

「一気に増えたか……!!」

「さらに、フィールド上にチューナーがいることにより、墓地の『ボルト・ヘッジホッグ』を自身の効果で特殊召喚!!」

「一人でやってるよー」

「まだまだっ!!レベル2の『ボルト・ヘッジホッグ』にレベル2の『フォーミュラ・シンクロン』でチューニング、シンクロ召喚!!『 波動竜(はどうりゅう)フォノン・ドラゴン』!!」

 

2+2=☆4

 

波動竜(はどうりゅう)フォノン・ドラゴン』が召喚され、咆哮を上げる。

 

「フォノンドラゴンの効果は発動しない!!そして、『ボルト・ヘッジホッグ』は除外されます。『TG(テックジーナス)ハイパー・ライブラリアン』の効果でドロー、来たっ!!『ブースト・ウォーリアー』を自身の効果で特殊召喚!!」

 

特殊召喚された『ブースト・ウォーリアー』もポーズを取ろうとするが、『アクセル・シンクロン』の素材となってすぐに星と変わる。

 

「『 波動竜(はどうりゅう)フォノン・ドラゴン』と『ブースト・ウォーリアー』でシンクロ召喚、レベル5、『アクセル・シンクロン』!!」

 

4+1=☆5

 

現れたのは今度はレーシングバイクを模したシンクロン、『アクセル・シンクロン』。

 

「あ、あのぉ…」

「『ライブラリアン』効果でドロー!『アクセル・シンクロン』の効果でレベル1の『ジェット・シンクロン』を墓地へ、そしてレベルを1上げます」

 

『アクセル・シンクロン』レベル5→6

 

「…頭痛い」

 

そろそろ、ソリティアに飽きてきた……

 

「レベル6になった『アクセル・シンクロン』のレベルを1下げ、『レベルスティーラー』召喚!!この2体でシンクロ召喚!!レベル6『 天狼王(てんろうおう)ブルー・セイリオス』、『ライブラリアン』効果でドロー」

 

5+1=☆6

 

今度は、『 天狼王(てんろうおう)ブルー・セイリオス』という狼男のようなシンクロモンスタ―だ。召喚され、喜んでいるようで天に向かって吠え上げる。

 

響 手札5→4→5→6

 

「…(真顔)」

 

しかし、俺からしたらとんでもない。つい真顔になる。

そんな俺を放っておいて響はまだまだカードを出していく。

 

「手札から魔法カード『死者蘇生』発動!『アクセル・シンクロン』を蘇生、効果発動『ジャンク・シンクロン』を墓地へレベルを3上げます。そして、レベル8になった『アクセル・シンクロン』のレベルを1下げ、『レベルスティーラー』を特殊召喚」

 

『アクセル・シンクロン』レベル5→8→7

 

もう反応するのも疲れたよ……パトッシュ……

 

「レベル1の『レベルスティーラー』にレベル7になった『アクセル・シンクロン』をチューニング!不死にして絶対なる魔龍の王よ、今こそ現れ敵を討て!!『 魔王龍(まおうりゅう)ベエルゼ』!!」

 

1+7=☆8

 

挙句の果てには、効果破壊無効・戦闘破壊無効、ダメージに応じて攻撃力を増す意味☆不明なシンクロモンスター『 魔王龍(まおうりゅう)ベエルゼ』まで現れた。

 

「インチキモンスターもいい加減にしろぉぉぉぉぉぉ!!!!」

「ふう、『ライブラリアン』効果でドローして、私はカードを2枚伏せてターンエンド!」

 

響 手札 5→6→4

場 魔王龍べエルゼ 天狼王ブルー・セイリオス TGハイパー・ライブラリアン

バック 伏せ二枚

 

響はさわやかな笑顔でそう言った。

……悪魔だ、悪魔がここにいます。

 

「なげぇ!!一ターンがすげえ長い!!おいおいまじか、いったいどうした!?なぜ、そんなにデッキが回るようになった!?ソリティアといってもいいくらいだぞ!?」

 

俺が一週間前に決闘した時は、ここまで回ってなかったはずだ。

 

「いやー、デッキを少しいじってみたらうまく回るようになっちゃって…」

「回りすぎだ!!プロでもここまでデッキを回せるのは一部の人だけだぞ!?(いやでも、OCG次元なら普通だけど)」

「えへへ、褒めすぎですよぉ」

「褒めてねぇ!!」

 

れれれ、冷静になれ俺。

高々、破壊されないモンスターと破壊されたら攻撃力を下げるモンスターとシンクロ召喚すればドローできるモンスターだ。

セット二枚に手札が4枚だけじゃないか……

…無理だ、勝てない、俺に勝つ手段は…無い。

今の俺のデッキにべエルゼはマジヤバイ、除去れるのがあの二体しかいない。

ほら、あの自信に満ち溢れた顔、つーかドヤ顔(可愛い)、妨害札とか絶対持ってるよ…

決闘、響に一から教えるんじゃなかった…

どうして、俺、響がデュエル始めるときジャンドあげたんだ?

どうする…?

 

そんなの…

 

「あーもう、グダグダ考えてても仕方ねぇ!!俺のターン、ドロー!!」

 

決まってる!!乗り越えるだけだ!!

 

「俺はまず、『サイクロン』で伏せカード破壊!!」

「『ミラーフォース』が…」

「魔法カード『ブラックホール』を発動!!べエルゼ以外一掃だ!!」

「っ!!トラップ発動、『 大革命返(だいかくめいがえ)し』」

 

『ブラックホール』が、『 大革命返(だいかくめいがえ)し』に打ち消され除外される。

 

「っち、ま、防がれるよな…」

「伏せカードがなくなっちゃった、どうしよう…」

「あー、別に困ってないだろ?手札あるし」

「もしかして、ばれてる?」

「お前はわかりやすいからな、手札に『エフェクト・ヴェーラー』でも握ってるんだろ?」

「げっ!」

 

べエルゼが除去されても大丈夫って訳だ……ならべエルゼごと超える!!

 

「はあ…とりあえず『エフェクト・ヴェーラー』から消費させるか!魔法カード『オッドアイズ・フュージョン』発動!!」

 

このカードは自分にモンスターが存在せず、相手にモンスターが二体以上いる場合エクストラデッキからもモンスターを融合素材にできる超優れものだ!!

 

「手札の『 時読(ときよ)みの 魔術師(まじゅつし)』とエクストラデッキの『オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン』を融合素材とする!!

二色の眼を持つ龍よ、振り子の名を持つものよ、今こそ一つとなりて降り注ぐ雷光へと変れ!!『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』爆現!!」

 

二つのモンスターが混ざり合い、雷光を纏った『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』の姿へと変わる。

『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』は相手のべエルゼに向かって威嚇するように咆哮する。

 

「『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』の効果発動!!相手のモンスター一体ををバウンスする!!」

「……私は、手札の『エフェクト・ヴェーラー』を墓地に送り効果発動、そのモンスターの効果を無効にするよ。はあ、簡単に使わされちゃった…」

 

よし、使ってくれたか。

これで、邪魔はなくなった!!

 

「バトルフェイズ!!『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』で『TGハイパー・ライブラリアン』を攻撃!!雷撃のストームバースト!!」

 

『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』攻2500

VS

『TGハイパー・ライブラリアン』攻2400 《破壊》

 

雷撃をまとった風の咆哮が『TGハイパー・ライブラリアン』を粉砕する。

 

「う、『ライブラリアン』…」

 響 ライフ 8000 → 7900

 

ライフが削られながら、衝撃をやり過ごす響。

 

 

「ふぅん…モンスターをセット、カードを一枚伏せターンエンド」

 

士遊 手札 6→0

 

俺は満足して、響にターンを渡すのだった。

 

「ドロー役がやられちゃった…でも、まだまだだいじょーぶ!!ドロー!!」

 

響はドローしたカードを見て、少し考え込むそぶりをした後、少し考え込む。

 

「(うーん、これはこのターン動けないかな…)とりあえず、『おろかな埋葬』を発動、『ボルト・ヘッジホッグ』を墓地へ。バトルフェイズに行きます!!『べエルゼ』で攻撃!!」

「トラップ発動!『 威嚇(いかく)する 咆哮(ほうこう)』!!」

 

俺は伏せてあった罠カードを使う。これで、このターン響は攻撃宣言をする事ができない。

 

「これで、お前は攻撃できないぜ!」

「うう~、バトルフェイズ終了、カードを一枚伏せてターンエンド」

 

ふう、危なかった…

これはこのターンで決めなきゃヤバイな。

 

「ドロー…よし、これでいける、『テラ・フォーミング』発動、これで『 天空(てんくう) 虹彩(こうさい)』を手札に加え発動!!」

 

さて、ここから賭けだ。

 

「さて、響……お楽しみは、これからだ!!」

 

セットしていたモンスターをひっくり返す。

 

「俺がセットしていたのは『メタモル・ポット』!!こいつでお互いに手札をすべて捨てて5枚ドローだ!!」

 

「運試しと行こうか!!行くぞ響!!」

「うん!!」

「俺の」

「私の」

 

「「ドロー!!」」

 

互いにカードを五枚ずつ同時にドローする。

 

俺はドローしたカードを見て頬を釣り上げる。

 

来たッ!!

 

「よし、この手札なら…まず、『天空の虹彩』の効果で『メタモルポット』を破壊してオッドアイズと名の付いたカード『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』を手札に加える。そして、『ペンデュラム・コール』を発動!手札の『 貴竜(きりゅう) 魔術師(まじゅつし)』を捨て、『 竜脈(りゅうみゃく) 魔術師(まじゅつし)』と『 時読(ときよ)みの 魔術師(まじゅつし)』を手札に加える」

 

ペンデュラムモンスターを二体手札に加えた俺がやることはただ一つ!!

 

「俺は、スケール1の『 星読(ほしよ)みの 魔術師(まじゅつし)』とスケール8の『 時読(ときよ)みの 魔術師(まじゅつし)』でペンデュラムスケールをセッティング!!」

「ペンデュラム!!士遊お兄ちゃんが6年前に生み出した召喚方法!!」

 

そう、このペンデュラムは昔あることがあって俺が手にした力だ。

俺がこのまま次の行動に移ろうとすると…

 

「おい!みんな見てみろよ!!ペンデュラム召喚だぜ!?」

「うお、スゲー!!初めて生で見た!!」

「スッゲーレアじゃん!!ペンデュラムは5年前に発売されたけど、収録枚数が少なくかなり高くて、使ってる人プロ以外全然いないんだよな~」

 

そんな声に周りを見て見ると、結構な人数が俺たちのデュエルを見ていることに、初めて気づいた。

 

「わ!こんなに人がいっぱい…」

「響…楽しいだろ?わくわくするだろ?これが 決闘(デュエル)だ!!」

「うん、うんうん!!」

「そうだな……ここは、こういっておこうかな?」

 

バッと両腕を広げ、芝居がかった口調で俺は話を始める。

 

「レディースアーンドジェントルメーン!!これより、本家本元のペンデュラム召喚を皆様にお見せしましょう!!成功したら皆様、盛大に拍手を!!」

 

『『『ペーンデューラムっ!!ペーンデューラムっ!!』』』

 

「これで俺は2~7のモンスターを同時に召喚可能!!揺れろ、魂のペンデュラム!!天空に描け、光のアーク!!」

 

俺の背後に巨大な振り子が現れ、ゆっくりと大きく揺れる。

 

「ペンデュラム召喚!!現れろ、我が下僕のモンスターたちよ!!」

 

空中に描かれた光の輪の中から3つの光が飛び出して、モンスターの形を作る。

 

「レベル4の『アステル・ドローン』と『 竜脈(りゅうみゃく) 魔術師(まじゅつし)』、そして!!レベル7、見よ!!雄々しくも美しい二色の眼の竜!!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!!」

 

オッドアイの竜を中心にして、三体のモンスターが並び、『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』が咆哮する。

 

「どうだ、これがペンデュラムだ!!」

『『『ペンデュラム!ペンデュラム!!』』』

「やっぱりすごいなぁ~、ペンデュラム召喚…」

「すごいですよねぇ~」

「だろ~」

 

「「ん?」」

 

今、何か声が…

 

「はーい、みんな大好き、 逆月(さかつき)シーアちゃんですよ~」

「「し、シーア(ちゃん)!?」」

 

そこにいたのは、俺の同級生であり幼馴染である逆月シーアだった。

響の実家の隣に住んでいて、いつも俺と響、シーア、それともう一人とで遊んでいた。

 

「シーア?いつからそこに居たんだ?」

「ずっといましたよ?」

「ゑ?気づかなかった…」

「えー、士遊さんひどーい」

 

目をウルウルさせて、俺を見てくる。

…ただし、セリフは棒読みで。

 

「あざとい、さすがシーアちゃんあざとい!!」

「あははは、ひーちゃん久しぶりですねー」

「久しぶり!!シーアちゃん!!」

「あははは、じゃねえだろ…」

「まあまあ、そんなことより観客の皆さんが続き、待ってますよ?」

 

は、そうだったそうだった!!身内に構って、観客ほっぽりだすなんてエンターテイナー失格だ。

 

「皆さん、長らくお待たせしました!!これより、一発逆転のショーをお見せします」

(と、言ってもこの手札じゃ逆転する だけ(・・)、なんだよな…、『アステル・ドローン』効果でドローにかけるしかないか…)

 

「さあ、俺はレベル4の『アステル・ドローン』とレベル4の『 竜脈(りゅうみゃく) 魔術師(まじゅつし)』でオーバーレイ!!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!!現れろ、 No(ナンバーズ).39!!俺の戦いはここから始まる!!白き翼に願いを託せ!!光の使者、『 No(ナンバーズ).39 希望(きぼう)(おう)ホープ』!!」

「っつ!!エクシーズモンスター!!」

「ホープですか、結構本気ですねぇ、士遊さん」

 

白き大剣が地中から現れ、その気高い姿を人々の目に焼き付ける。

白い大剣は変形し、翼が現れる。そのまま、全身が変形していく。

 

『ホオォォォォォォプ!!』

 

そして、そこには白き翼の戦士・希望皇ホープが雄たけびをあげ、顕現した。

 

「『ホープ』の素材になった『アステル・ドローン』の効果発動!このカードを素材にしたエクシーズモンスターに1枚ドローする効果を付与する!!」

「…通します」

「なら遠慮なく!!効果発動!!ドロー!!」

 

デッキトップから勢いよく引かれたカードは、光の道を描く。

 

「っ来た!!俺は装備魔法『 魔導師(まどうし)(ちから)』を『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』に装備!!これにより攻撃力は2000ポイントアップし4500!!」

 

 

『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』攻撃力2500→4500

 

 

「さて、バトルフェイズに入る!!」

「!!」

「俺は『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』で『べエルゼ』を攻撃!!」

 

『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』は口の中で火種を大きくしていき、咆哮を放つ。

 

「確かに攻撃力では勝ってるけど、でも『べエルゼ』は破壊されず、この攻撃が終わると受けたダメージ分の攻撃力がアップ「させねぇよ!!このターンで決める!!」嘘ぉ!?」

「俺は『ホープ』の効果を発動!!ムーンバリア!!」

 

ホープが何枚にも折り重なった翼で、オッドアイズの咆哮を受け止める。

 

「自分の攻撃を止めて何の意味が…」

「あっ!!まさか、士遊さん!!」

「そのまさかだ!!俺は手札から速攻魔法『ダブル・アップ・チャンス』を発動!!」

 

「これで『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』は再び攻撃可能になり、攻撃力は…倍になる!!」

 

『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』攻撃力4500→9000

 

「こ、攻撃力9000!?」

「『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』は相手に与えるダメージを2倍にする!!いくぞ!!螺旋の……ストライクバァァァァストォォォォォォ!!!!!!」

「と、トラップ発動!!『攻撃の「無駄だ!!!『 時読(ときよ)みの 魔術師(まじゅつし)』がある限り、お前はペンデュラムモンスターとの戦闘でトラップは発動できない!!」えー……」

 

『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』攻撃力9000

VS

魔王龍(まおうりゅう)ベエルゼ』攻撃力3000

 

空中に飛び出した『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』の火球がチャージされ、オッドアイズ自身の体長の2倍ほどに膨れ上がる。

そして、発射された螺旋を描くような咆哮は、『べエルゼ』を吹き飛ばした。

 

「『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』戦闘ダメージを二倍にする!!つまり……12000のダメージだぁぁぁぁ!!」

「う、あ、わあああああああああ!!!」

 

響 ライフ 7900→-4100 

 

士遊 WIN!!

 

ふう、なんとか勝ったか…

 

「ガッチャ!!楽しいデュエルだったぞ、響」

「うう、負けちゃったかぁ……まさか一ターンで決められるとは……行けると思ったんだけどなぁ……」

「まあ、そうそう負けてやんねーよ」

「お二人とも、いいデュエルでしたよ、それと士遊さん、観客の皆さんに締めをお願いします」

「お、そうだった。…コホンッ!!皆様ご観覧いただき誠にありがとうございました。これにて終了でございます」

 

そう言って、俺がぺこりと一礼すると、ワッと歓声が上がり拍手が、あちらこちらから送られる。

 

「すごかったぞ!!」「楽しかったよ!!」「久しぶりに熱くなれた、ありがとう」「さすが、ペンデュラムの始祖。こんなデュエルなかなか見れないよ」「チョーイイネ!!サイコー!!」「このデュエルで、俺のエンジンがトップギアだぜ!!」『OK!ナイスファイトだ!!二人とも!!』「嫌いじゃないわ!!嫌いじゃないわ!!」「ありがとうございました、いいバトルでした」

 

と、口々に言って、観客たちは去って行った。

どーでもいいけど、最後の赤い髪の不満足してそうな男の人、バトルじゃなくデュエルな。

 

人がいなくなったところで、俺は響たちに向き直る。

 

「んで?シーアはなぜここに?逃げたのか?自力で補修を?」

「士遊さん、ひっどーい。まるで私がいつも補修してるみたいじゃないですか」

「いつもしてるだろ…」

 

シーアは何故かテストになると、休むのだ。

だが、成績自体はいいから、補修で済んでいるのだが…

そう、確か今日も補修だったはずだ。

 

「いや~、今日は 風鳴翼(かざなりつばさ)さんのニューシングル発売日じゃないですか、これは補修出てる場合じゃないですよ」

「確かにそうだった。が、留年しても知らないぞ…」

「大学だから問題ないです、別にやめても」

「はぁ、それでいいのかよ」

「あ、あ~!!」

 

シーアと話していると、突然、響が叫び声をあげる。

 

「ど、どうした!?」

「そうだよ!今日は翼さんのニューシングル発売日!!それを買いに来たんだった!!」

「デュエルしてる場合じゃねえぞ、それは…」

「ああ、CD残ってるかなぁ…」

「私はちゃんと買いましたよ、ふふん」

「いいなぁ…」

「あなたはCDを買えず、一方、私は観賞用・保存用・使用用に三枚買いました。随分と差がついてしまいました…悔しいでしょうねぇ!!」

「テメェ!!」

「遊んでないで、CD探しに行くぞ。まだこの時間なら残ってる店があるはずだ」

「「はぁーい!!」」

 

そうして、俺たちは街の方に歩きだしていった。

 

 

 




いかがでしたでしょうか?
時々更新していくのでよろしくお願いします。
この世界のカードの話を少々…
世界観は、アークファイブのスタンダード次元と同じような感じだと思ってください。
エクシーズ、シンクロ、融合…そして、ペンデュラムは一般発売されています(ネオス、シグナーの竜やNO、それと神のカードやラスボスが使っているカードなどは一般販売されていません)。
禁止制限はその時の禁止制限にあわせます。
と、このような設定になっております。
それでは次回でお会いしましょう。


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第二話 装者の目覚め

次話投稿!!
今回は遊戯王要素が皆無です。
ゆっくり見て行ってください!!


 

「やっっったぁぁぁ!!!翼さんのCDゲットォォォ!!!」

「響、うるさい。他の客の迷惑だ」

「はぁ~い、うふふふふふ!!」

 

あのデュエルの後、10数件の店を探し回ってやっと見つけた、ん、だけど…

 

「いや~、それにしてもよかったですねぇ~」

「…あのさ、シーア、お前」

「なんですか?告白ですか?」

「いや、違う。そうじゃなくて、お前……」

 

俺はシーアが持っている袋を見て言う。

 

「なんでまた買ったの?三枚買ったって言ってなかったっけ?」

「これは布教用ですよ、ファンの常識ですよ?」

「じゃあ…い、いや何でもない」

 

俺は思った、そういえばこいつからCD買えば良かったんじゃね?布教用に買うくらいだし…、と思ったが、まあ、買えたことだし言わないことにした。

 

「さて、そろそろ店でるか」

「は~い、ああ~早く帰ってCD聞きたいなぁ~」

「ひーちゃんは、甘いですね…私なんか、ポータブルCDプレイヤーを持ってますよ」

 

そう言って、バックから実物を取り出すシーア。

 

「うおっ、それ何年前のだよ…」

「ネットで買いました」

「いいなぁ…、よっし、シーアちゃん…いやシーア様ちょっと聞かせてください!!」

 

バッと、俺たちの前に出たかと思うと、流れるような動作でスライディング土下座をする。

 

「こ、これは伝説のスライディングDO☆GE☆ZAっ!!」

「お願いします!!」

「お前にプライドはないのか…」

「無い!!」

「即答!?」

「いいでしょう!!一緒に…き・か・な・い・か?」

 

ゾクッ!!

今、一瞬、寒気が…

俺が突如襲った訳のわからない寒気に身を震わせていると、二人は肩を寄せ合って、ポータブルCDプレイヤーからのびるイヤホンを片耳ずつ付け合い曲を聴いていた。

…翼の新曲とか俺も聞きたいぞ、こんちくしょうっ!!

それと、そのゆるゆりな感じはどうにかならないものか…

とりあえず、その雰囲気を打ち消すために話しかけてみる。

 

「あの~、俺にも聞かせていただけないでしょうか…?」

「……」

「……」

 

ふう、オーケイオーケイ…

いいぜ、俺をほっといて曲を聴くっていうのなら…

まずはそのゆるゆりをぶち殺す!!

べ、別に翼の曲が聞きたいだけなんだからねっ!!

無視とか気にしてないから、本当に…(涙)

 

「ああ!!士遊お兄ちゃんが道の片隅で膝を抱えて地面にのの字を書いてる」

「はぁ…めんどくさい人ですね…」

 

別に構って欲しくなんかないやいっ!!

 

響たちは「しょうがないなぁ…」と言うと、俺の耳にイヤホンを入れてくる。

そのイヤホンから歌姫と呼ばれるにふさわしい歌声が耳に入ってくきた。

 

「うおぉぉおおおおおおお!!!テンション上がってきたー!!!!!!」

「「復活早っ!!」」

 

と、いうことがあり、日が落ち夕焼け空になった街を俺たちは歩いていた。

そして、とあるコンビニの角を曲がった瞬間のことだった。

俺たちの目の前には―――――

 

灰、灰、灰、灰、灰灰灰灰灰灰灰灰

 

「な、なんだよこれ!!まさか―――」

「≪ノイズ≫…」

 

シーアが呟いた一言で、俺は一瞬、目の前が真っ黒になった。

俺の頭をフラッシュバックする光景…

 

―――お前たちは、生きろ…

―――早くいきなさい!!

―――にーちゃん!!逃げろ!!

―――生きるのを諦めるな!!ここはあたしが引き受けるからさ…

―――か、奏!!嫌だ!そんな…いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!

 

頭が痛い、動悸が激しい、吐き気がする…

頭痛が耐え切れないほど酷くなった、その時!!

 

「た、助けてぇぇぇぇ!!!!!」

 

幼い少女の声が響き渡った。

その声に、ハッとなり頭痛が治まる。

 

「今の声…」

「行くぞ!!助けに!!」

「はい!!」

 

俺たちが悲鳴が聞こえた方に行くと、カタツムリのようなノイズと人型のノイズが、小学生の女の子を囲っているところだった。

 

「やばいぞ!!あれは!!」

「仕方ありません!!士遊さん、突っ込んでください!!」

「死ねと!?≪ノイズ≫は人を触れただけで灰にするって知ってるよな!?」

「上からなら大丈夫です!」

「そうか!!なら…」

 

俺は全速力で走り、横にあるビルを蹴り上げ、ノイズを飛び越えて、女の子を回収する。

 

「きゃ!!お、お兄ちゃんは誰?」

「通りすがりの決闘者(デュエリスト)だ!!大丈夫か?お兄ちゃんが助けてやるからな!!」

「…う、うん!」

 

女の子を抱き上げる。

(さて、どうしようか…)

周りを見るとノイズ、ノイズまたノイズ…

後ろは壁…絶体絶命だな…

 

「士遊お兄ちゃん!!私たちがノイズを何体か引き付けるから、その内に逃げて!!」

「わかった!!」

 

ノイズの何体かは大声を出した響たちの方に向かっていった。

しめた!!少し壁が薄くなった。

 

「行くぞ、しっかり捕まっておけよ!!」

 

抱き上げた女の子が俺の服をぎゅっと持ったことを確認すると、俺は後ろの壁に向かって全力で跳躍し、壁に体が真横に行くように蹴る。

そして、そのまま壁を二・三回、前に走るように蹴り、薄くなったノイズの壁のすぐ横に着地する。

着地の衝撃を殺した俺は、そのまま全速力で走りノイズから逃げるのだった。

 

 

~一方そのころ~

 

私たちは逃げていた。

 

「はぁはぁ…お兄ちゃんたち逃げれたかな?」

「大丈夫でしたよ、チラッと見た感じ壁走りで脱出してました」

「か、壁走り!?」

 

士遊お兄ちゃんは忍者だったのかぁ…

うん…、忍者じゃねえ!!決闘者(デュエリスト)だ!!って士遊お兄ちゃん言いそうだ。

それにしても、さっき士遊お兄ちゃんが無茶したこと未来が聞いたらまた怒るんだろうなぁ…

それを抑える私…

はぁ、朝からついてないなぁ。授業では怒られるし、翼さんには恥ずかしいとこ見られたし、手札事故したし、CDは買えないし、ノイズに追いかけられるし、未来を抑えなきゃいけないし…あ~、やっぱり私、呪われてるかも…

 

「ひーちゃん!!」

「えっ!!っわ!!」

 

シーアちゃんが私を押し倒すように飛びかかってくる。

その上、ちょうど私の頭があったところをノイズが弾丸となって通過していく。

 

「し、シーアちゃんありが「お礼はいいから、早く逃げましょう!!」う、うん」

 

当分、逃げ回ることになりそうだ。

そして、日はもう沈んで辺りは薄暗くなっていた…

 

 

 

「う、はぁはぁ…ここまでくれば大丈夫…」

 

女の子を助けて士遊お兄ちゃんと別れて一時間ほど…

私たちはどこかのビルの屋上へと逃げていた。

 

「さすがに、こんなとこまで追いかけてはこないよね…」

「あ、それ俗にいうフラグってやつ…」

「…」

「…」

「ま、まさかぁ~こんなことで…」

「おい、馬鹿やめろ」

 

「「「「「ギュピギュピ」」」」」

 

…嫌な音が聞こえた。

ギギギギと首を動かし背後を見ると…

 

あら不思議、そこにはたくさんのノイズさんが!!

 

「「…」」

 

「(つ∀`*)ヤレヤレ」

「\(^o^)/」

「(´・ω・`)」

「(。´Д⊂) ウワァァァン!!」

 

…絶体絶命!?

 

 

 

~女の子、士遊組は?~

 

俺は女の子を背負って、路地裏を走っていた。

 

「大丈夫か?結構揺れたみたいだが…」

「だ、だいじゅぶ…」

 

大丈夫…ではなさそうだな。

少し休むか…

 

「それにしても、災難だったな…」

「う、うん…」

 

全くこんな小さい子でもノイズは襲いやがって…

ほっと一息つこうとすると、来た道の反対側の路地裏の出口からノイズの集団が現れた。

 

「「「「「ギュピギュピ」」」」」

「チィ!!少しも休ませてくれないか!!悪い!!」

 

舌打ちをすると、一言少女に断りを入れてから、少女を背負う。

そして、そのまま来た道を引き返そうと走り出す。

だが、来た道の方からもノイズが現れ路地裏をふさがれた。

 

(これはマジでヤバイな…)

 

じりじりと両方から徐々に距離を詰められる。

俺はとっさに辺りを見渡し何かないか探る。

 

「あった!!」

 

俺はもう少しでノイズの手が触れるというところで、路地裏の壁に設置されたハシゴを伝って上に上がる。

 

「はあ、はあ!!!」

 

何とか上に上がりきり、息切れした呼吸を整える。

 

「ヤバかった!!!死ぬかと思った!!!」

 

少女を抱えながらはかなりつらいものがある。

しかし、いつまでもこうしているわけにはいかない。

奴らはすぐに追ってくる。

急いでここを離れないと…

 

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ギュピギュピ」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

 

「なんか増えとるぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!」

 

先ほど追ってきていたノイズは4倍程度に増えて、俺たちを追ってきていた。

俺は少女をしっかりと抱え直し、屋上から屋上へと飛ぶ。

どこかの家の屋根を蹴り、違う家の屋根に着地する。

屋根からどこかのビルの屋上、屋上から民家の屋根へと飛んでいくうちに、着地できるビルが周りに無くなり、追い詰められてしまった。

 

「前門のノイズ後門の転落ってとこか…いや、うまくないな」

 

崖なら、断崖絶壁とか表現できたんだけど、ビルの場合はどう言ったらいいのだろうね?

とか、言っているうちにじりじりとノイズは距離を詰めてくる。

 

「う、うあ、お、お兄ちゃん…」

 

うん、ごめんね、お兄ちゃんちょっと現実逃避しちゃった。

 

「大丈夫、生きることを諦めなければきっと道は開ける…少なくとも俺はあいつからそう学んだ!!」

 

―――生きるのを諦めるな!!

 

ふと俺の脳裏にその言葉がよぎる。

…そうだ、あいつは…あの槍を持ったあの子はいつだって諦めなかった!!

 

だから…

 

「俺は絶対に!!諦めねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!」

 

―――その覚悟、伝わりました…ならば受け取りなさい、この力を!!

 

そう俺の耳に女の声が聞こえた。

次の瞬間、カッ、と俺のペンデュラムが赤い光を放ちだす。

 

「!?なん…ぐ、わぁぁぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

赤い光が俺の全身を包み込み、赤い空に柱となって上がっていく。

 

 

 

そして同時刻…他の場所でも、光の柱が昇っていたのだった。

 

 

 

~響、シーアside~

 

「すごくまずい状態ですね…」

「うん…」

 

私たちは多数のノイズに囲まれているところです。

じりじりとこちらに近寄ってきていて、ビルの片隅に追い詰められています。

 

「どうしたら…」

「…」

 

どうしたんだろう?シーアちゃんは黙り込んで…

 

「つか…いや、でも…こん…こで見せる…には…」

 

ぶつぶつとシーアちゃんは聞き取りにくい声の音量で話す。

 

「シーアちゃん!シーアちゃん!?」

「でも、使わな…二人とも…死ぬ…」

「死ぬ…?」

 

たまたま聞き取れた言葉に私は体を硬直させる。

死ぬ?私たちが…?そんな…

意識をした瞬間に、暗いものが押し寄せてくる。

そのまま絶望して、諦めかけたその時…

 

―――生きることを諦めるなっ!!!

 

…そうだ、私は諦めない!!

 

「たとえ、もう助かる可能性がないとしても、私は絶対に諦めたりしない!!」

 

「生きることを!!諦めて…たまるかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

カッ、と胸の傷跡から光が漏れ始める。

 

「え?何、何なの?」

 

そして、困惑する私の脳内に、ある歌詞が浮かんでくる。

私はその歌を感じるままに歌い上げた。

 

「Balwisyall Nescell gungnir tron…」

 

瞬間、オレンジ色の光の柱が立ち昇った。

 

 

 

 

赤色の光が収まる、そこには機械的な赤い鎧のようなものをまとい、腕に少し形の変わった決闘盤を付けた、士遊の姿があった。

 

オレンジ色の光が収まる、そこには拳に大きなガントレットをつけ、脚にはヒールの付いたグリーブを履いた、響の姿があった。

 

 

 

運命は回る…

日常が非日常に変わっていく…

 

 

 

 

 




はい、いかがでしたか?
楽しんでいただければ幸いです。
さて、次回の話でもしましょうか…
次回も遊戯王要素が少ししかありません…
と、いいますか遊戯王要素が出てくるのは、もう少しシンフォギアを使いこなせるようになってからです。

それではまた次回!!


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第三話 回り出す運命

やっとできました!!
それでは三話お待たせしました!!

ゆっくり見て行ってね!!

…キャラ書くのって難しいな…

2016年2月4日 ディアディアンクの聖詠を変更


~とある場所~

 

そこには何人ものオペレーターたちがコンソールをたたき、何かをしていた。

 

「反応、絞り込めました!!」

「ノイズとは異なる反応を検知!!」

「二か所で同時反応…しかもこれって…」

「ガングニール、そして…ディアディアンクだとぉ!?」

 

モニターには、変身を遂げた響の姿、そして同じく変身を遂げた士遊の姿が写っていた。

その姿を見てその場にいた少女が驚きの声を上げる。

 

「ガングニール…なんで…あれは奏の…」

 

そして続き士遊の姿が少女の目に映る。

 

「え?まさか…嘘…士遊がどうして…!?」

 

呆ける少女を放って、周りはあわただしく動いていく。

 

「ガングニールの子の近くには…シーアくん!?なぜあそこに!?まさか、自力で巻き込まれたのか!?」

「シーアちゃん…ちょうどいいわ!!あの子にガングニールの子の助けに入ってもらえば…」

「そうか、急ぎシーアくんにシンフォギアの使用許可を!!」

「了解!」

「士遊くんの方には…翼、お前は士遊くんを助けに行って来い!!」

「…」

 

翼と呼ばれた少女は、深く考え込んでしまい、この場の司令官であろう人物の言葉が聞こえていないようだった。

 

「翼!!」

「っつ!!」

 

少し大きめに言った言葉は、翼を思考の海から引っ張り上げるのは十分だったようだ。

一度、ビクッと体を揺らした後、「はい…」とだけ答えると部屋から出ていったのだった。

 

~士遊side~

 

「これは…確か、シンフォギア…?」

 

そう、確か翼と奏が纏っていた、 対ノイズ用の装備(アンチノイズプロテクター)のはずだ。

なぜ俺が?

シンフォギアを装着するには、適合者でなければならないはず…

昔、適合率を検査したことがあるが、適合自体は出来た。

だが、シンフォギアを装着できるまでのフォニックゲインを生成出来なかったのだ。

 

「でもこれは纏えている…?いや、考えるのはあとにしよう…」

 

今は…

 

「逃げるんだよォォォォ!!!」

 

俺は女の子を抱えて、ビルから飛び降りる。

確かにこれがあれば戦える、が、万が一女の子に何かあったら大変だ。

シンフォギアを纏っている今ならば安全に着地できるだろう。

今は逃げることが最善だ。

そして、ノイズたちは逃げた俺たちを追ってくる。

俺は近づいてきたノイズから優先的に片手で殴り飛ばし、炭化させる。

 

「とぉっ!!」

 

地面に着地し地面を蹴り、この場を離れる。

その数秒後、俺たちがいた場所にノイズの大群が落下してきた。

 

「あぶねぇ…」

 

俺は冷や汗を流しながら、建物を足場にし飛んで逃げる。

 

が、俺が何度目かのジャンプに入った瞬間それは起こった。

ビルの陰から、大型のノイズが姿を現したのだ。

 

「まずっ!!」

 

このままでは大型ノイズに突っ込んでしまう。

俺は助かるが、この子が助からない…っ!!

俺は少しでもこの子が生き残るようにしっかり抱きしめ、そして―――

 

 

「はあぁ!!!!」

 

その声と共に大型(・・・・・・・・)ノイズが真っ二つに(・・・・・・・・・)なった。

 

「へっ?」

 

思わず気の抜けた声をあげてしまった。

俺は無事に目的地に着地し、ノイズを切った人物を見る。

 

「つ、つ………るぎ?」

「翼だ!!」

「わかってるよ、翼…」

 

全く、ほんといいタイミングで来るんだからさぁ…

 

「全くもう!!どうして、いっつも士遊は剣(笑)とか、防人(笑)って言ってからかうの!?」

「悪い悪い、で、俺たちを助けに?」

「全くもう、そうやって話をそらして…士遊はやっぱり意地悪だっ!!」

「だから悪かったって…ほら、女の子が目を白黒させているだろう?ほんとにこれが歌姫―――風鳴翼なのか?ってな」

「はっ…コホン、そうだ、私があなたたちの救助に来た」

「…その口調でいいのか?と、それにしても、遅くねえか?救助」

「仕方ないだろう?本部では、大きな―――そうたとえば多数だったり、反応が大きいノイズしか追えないんだ」

「ま、それなら仕方ないか…危ないとこ助けてもらったし、別に攻めてるわけじゃねえしな。さてと、この話はなしにして、とりあえず…」

 

俺は目の前の多数のノイズを見て言う。

 

「こいつらを打っ倒してしまおうか!!」

「了解」

「さあ、ここからが俺たちのステージだ!!」

 

俺たちは女の子を背後に隠し、ノイズに飛びかかっていった。

 

数分後、そこには炭が散乱しているだけの場所になった。

 

「フィ~、これにて一件落着ってか?」

「ええ、これであとは事後処理を本部―――特異災害対策機動部二課に任せて終わり」

「お疲れさまっしたぁ~、じゃあ俺はこれで…「待て」何でございましょうか」

「二課に同行を願いします」

「え~、話し長くなるからいや」

「私だって、寂しかったんだぞ?なかなか会えなくて…だから、久しぶりに会えたから、話がしたいよ…」

 

う、上目づかいでこちらを見るな!!く、可愛いじゃないか!!

 

「仕方ないな…」

「っやった!!」

 

翼は満点の笑顔になる。

ま、この笑顔が見れただけでもめっけもんか。

奏が死んでから、あまりお互いに干渉せずにいたし、たまにあっても笑顔になってくれることはなかったからな。

 

ふと俺は思い出した。

そうだ、響とシーア…

 

「おい翼!!お前がこっちに来ているってことは、他の方は!?」

「他…?ああ、あっちならシーアが一緒にいる。大丈夫だ」

「は?シーアがいるからって…」

「シーアは、シンフォギア装者だぞ?」

「は…?え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」

 

俺の叫びが、夜の街にこだました。

 

 

~シーアside~

 

「な、なぁにこれぇ…」

 

ひーちゃんは戸惑ったように声を上げた。

それにしても、ひーちゃんがまさかシンフォギアを装着するとは…

 

ザザ―――ザ――ザザザ―――――

 

おっと、無線通信が入ったようです。

きっと、司令でしょう。

 

「こちら、シーア。司令、遅かったじゃないですか」

『すまんな、シーアくん…だが、もうシンフォギアの使用許可は出ている。そこを脱出しだい、彼女を連れて二課まで来てくれ』

「了解」

 

ピッと、無線の通話を切り、ひーちゃんを見る。

まだ、ひーちゃんは戸惑っているようですね…

まあ、私が一人でやれないこともない数ですし、さっさと倒しますかね!!

さあ、行きましょう… ディアディアンク(・・・・・・・)

私は首からかけていた紫色に輝くペンダントを外し、前に突き出しながら言い放つ。

 

「Target!!」

 

するとペンダントから声が聞こえてくる。

 

≪OK!Lock on!!≫

 

私はこのシンフォギアを起動させるために必要な最後の聖詠(キー)を紡いだ。

 

「Duel!!」

≪Duel start≫

 

光が私を包み込む。

そして、光が収まる。そこには…

 

紫の装甲を纏い、腕には紫色の決闘盤をつけた私の姿が現れるのでした。

 

「へ?シーアちゃん!?何そのかっこ?私と同じ?え?え?」

 

おっと、ひーちゃんは私の姿にさらに混乱を深めてしまったようです。

仕方ありません、さっさと片づけることにしましょう。

 

「そこで、待っていてください。すぐに終わらして来ますから」

 

そう告げると、私はノイズの群れに突っ込んでいきます。

 

「はあ!!」

 

一体を殴り飛ばし、歌いだす。

これは…私の私自身の歌!!

 

『sugar sweet nightmare』

 

私の歌が始まるとともに、地面の私の影から無数の漆黒の刃が飛び出す。

その刃にノイズは一気に数を減らしていく。

 

「てい!!」

 

私は踊りながら、影から出た刃でノイズを切り裂いていく。

そして、その三分後そこに居たノイズを殲滅しつくした。

 

「ふう、ミッションコンプリート」

 

私は目を白黒させているひーちゃんに近づき、終わったことを伝える。

 

「え?シーアちゃんが闘って…ノイズをバッサバッサと倒して…私と同じで…キュー…」

 

ひーちゃんはうわごとのように言葉をつぶやき、そして、最後には倒れてしまった。

どうやら、理解できる範疇を超えたらしいです。

私は仕方なく、司令に連絡を取ると人員をこちらに少し回してもらえるように伝えるのだった。

 

 

 

~響side~

 

「はっ!?知らない天井だ…」

 

私は知らない場所で目覚めた。

ここはどこだろう…?

 

「あら、目が覚めたのね?」

「ひょうっ!!?!?!!」

 

私しかいないと思っていた部屋で、急に声をかけられ、思わず変な声を上げてしまう。

 

「ふふ、そう驚かなくてもいいわよ」

「は、はあ…」

「私は、 櫻井(さくらい) 了子(りょうこ)と言います、よろしくね?」

「え、あ、あの…立花響、です…ここは?」

「ここは特異災害対策機動部二課の医療室よ」

「???」

「…って言っても分からないか」

「は、はい…」

「うーん、じゃあこう言いましょう。対ノイズのために日本政府が用意した機密組織って、覚えておいてもらえると助かるわ」

「はぁ…」

 

まだ少し、把握できないところがあるけど大体わかった。

 

「じゃ、理解してもらえたところで…服、脱ごっか?」

「は、へっ!?」

 

どういう…ことだ…!?

まるで意味が解りません!!

 

「あ、ごめんなさいね…ちょっと話を飛ばしすぎたわね」

「はい…」

「あなたの身に起こったこと知りたくない?」

「あの?何が起こったのか…私は一体どうしちゃったんでしょうか…?」

「そうね…まずは―――」

 

そう言って、了子さんはゆっくりと私に起こったことを話し始めたのであった。

 

 

この時、私は知らなかった。

シンフォギアのこと、世界の裏側で何が起こっているのか…

そして、私は…ううん、私たちは、もう運命の歯車に巻き込まれているということを…

 

 




いかがでしたでしょうか?
オリキャラにもテーマ曲をつけてみました。

シーア イメージ挿入歌
化物語 OP 「sugar sweet nightmare 」歌 羽川翼(CV 堀江由衣)

です。
なお、イメージなのでオリキャラの声=歌っている声優ではありません。

次回はやっと決闘回です!!
それではまた次回!!


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第四話 幼馴染と事情説明と話し合い又は果し合い

更新遅れてしまい、申し訳ありません!!

今回登場するデッキの動かし方を見るためデッキを組んで書くのが遅れた上、十月初めにおじいちゃんが倒れたりして大変で更新できませんでした。
本当にお待たせしてしまって申し訳ありません。

それでは、最新話をどうぞ!!

2016年11月24日
デュエルシーン効果説明無しに変更


~響が目覚める前~

 

俺と翼、そして事後処理をしていた黒服のお兄さん達は、響や今、俺の隣にいる翼が通っている、私立リディアン音楽院の前にいる。

 

「なあ、どうしてここなんだ?」

「ここに、本部があるんだ」

「へー、ってどこに?」

 

俺は前に響の保護者代表で入ったことあるから、大体の施設のことは知っているつもりだ。

前見たときはそんなもの無かったはずだ。

 

「地下にあるんだ」

「なるほど、そういうことか」

 

そういいながら、黒服の人について行く翼。

俺も慌てて、それを追いかける。

そして、歩いていると黒服の中に見知った人を見つけたので、思いっ切って喋りかけてみることにした。

 

「そうだ、えーと、あのそこの黒服のお兄さん――確か、緒川さんでしたっけ?お会いしたことありますよね?」

「ええ、二年前に、司令と共に会ってますよ」

 

そうだ、あの(・・)ライブの後に事情を聴くので会っていた。

 

「司令――弦十郎おじさんは元気ですか?」

 

司令――特異災害対策機動部二課司令官、風鳴弦十郎(かざなりげんじゅうろう)には、五年前のある事件(・・・・・・・)の時に会っている。

 

「ええ、元気ですよ」

「それならよかった」

「…おじ様は元気過ぎるところがあるからな、少し自嘲してもらいたいものだ」

 

おじさんは《風鳴》…つまり、翼の血縁者だ。

叔父にあたると聞いている。

 

「ははは、まあいいじゃん、翼」

「まあ、確かにそういうところに救われる時もあるが…っと、ここですね」

「ええ」

 

とあるエレベーターの前で立ち止まり、ボタンを押す。

そして、中に入り柱に端末をかざすとエレベーター内が閉まる。

 

「喋らず、しっかり捕まっててください」

「へ?」

 

なぜだろう?と、思った瞬間、エレベーターが動きだし―――――

 

「て、うおわああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁァああああああアアアアぁぁ!!!」

 

真っ逆さまに落ちていった。

降りるじゃなく、落ちる、これ重要…

 

 

落ちること数分、やっとのことで下に降りた俺は、地面に手を突き―――

OTL

の状態になる。

 

「ゼハァゼェハァ…し、死ぬかと思ったZE☆」

「大丈夫、士遊?」

 

ベンチに座って楽になる。

緒川さんは水を持ってくると言ってどこかに行ってしまった。

翼が心配してくれてる、なんとか返さないと…

 

「大丈夫だ、問題ない、うっぷっ」

「吐きそうになって言っても全く説得力無いよ!?」

 

う、駄目だ…もっと早く言ってほしかった…

なんの覚悟の無いまま落ちてきたから死ねる…

 

「…つーか、マジか!!学園にこんな秘密基地みたいな場所があるとはな!!ワクワクが止まらねえぜ!!」

「うーん、士遊は昔から好きだよねこういうの」

「いや、俺だけじゃなく、ほとんどの男子は好きだと思う」

「そう、ふふっ!!」

「なぜ笑うし…」

「だって、久しぶりで…」

「そうか、なら話せてよかった」

「うん、私も」

「…うん、そうだよそれだよ。翼は何か思いつめたような表情より、そうやって笑ってる方がずっといい」

「…」

「ん、どうした?」

 

俺がそういった後、また何か思い出したかのように暗い表情をする。

どうした?と聞こうとするが、翼の方から「ねえ―――」と喋りかけられた。

 

「ねえ、あのシーアが助けた女の子…あれは誰?なぜ、なぜ奏のガングニールを使えるの?」

「え?シーアと一緒にいたと言えば…響か?あいつがシンフォギアを?しかも、ガングニール…だと!?」

「そう、響…ね…」

「…なぜ、シンフォギアを使えるのかは分からない。ただ、ガングニールを使えるってことを、考えられるのは…」

「考えられるのは?」

「あの日―――あの二年前のライブの日…あの場所には俺たちはいた…」

「っ―――!!」

 

横で翼が苦痛にゆがむ。

ああ、そうだろう。だって、あの日翼はパートナーを失っている。

 

「そして、奏が響をかばってノイズの猛攻を槍で防いだとき、響は飛んできた何かの破片(・・・・・)に当たり大怪我をした…そして、その破片は手術でも取り出せず、そのままになった…」

「その話の何処に―――っまさか!!」

「そうだ、その破片が瓦礫でなく…砕けた奏のガングニールの破片であったら?」

「まさかそんな…」

「確か、シンフォギアは聖遺物の欠片から生み出されたんだよな?だったら、シンフォギアの欠片からギアを纏えたっておかしくない……。ま、俺の仮設でしかないがな。ただ、あの時奏の槍はボロボロだった。後は、了子さんに調べてもらった方が早い」

「…」

 

翼は考え込むように黙ってしまった。

しっかり話し合わなくちゃな…と思い、声をかけようとすると、ちょうど緒川さんが水を持って来てくれる。

 

「…どうしましたか?お二人とも?」

「「いえ、何もありません!!」」

「そ、そうですか…」

 

俺は、ありがとうございます、と言って水を貰い、少し飲む。

 

「気分はどうですか?」

「あ、はい。大丈夫です、すいませんでした」

 

俺は立ち上がり、もう大丈夫ということをアピールする。

 

「みなさん、待っているんですよね? 早くいきましょう!」

 

俺たちは、通路を歩いていると―――

 

「あ、士遊さん」

「し、シーア!?」

 

シーアがあるドアの前で待っていた。

俺はその姿を見た瞬間、シーアに駆け寄った。

 

「良かった!!シーア、無事だったんだな!!」

「ええ、私もひーちゃんも無事ですよ」

 

俺はホッと胸をなでおろし、響の姿を探す。

 

「あれ?響は?」

「ひーちゃんは気絶していたので医療室に運びました」

「何!?誰にやられたんだ!?怪我は!?」

 

思わず、ガシッとシーアの肩を掴んでしまう。

 

「っ痛いです、士遊さん」

「あっ、と、悪い…」

 

パッと掴んでいた肩を放し、謝る。

どうやら、結構な力で掴んでいたらしい、服がシワになっている。

やってしまったな…

 

「本当に悪い…」

 

再度、謝る。

俺は響のこととなると見境がなくなってしまうな…

 

「いえ、大丈夫ですよ。いつも通りです。ひーちゃんなら、今―――」

 

プシュッと、空気の音がしてドアが開き、響が出てくる。

 

「その部屋の、って言いたかったんですけど出てきちゃいましたね」

「あ、お兄ちゃん、シーアちゃん、よかった無事だったんだ!!」

 

響はそう言って俺たちに駆け寄る。

途中、翼の姿を見つけてピタッと立ち止まる。

 

「翼さん!?翼さんがどうしてここに!?来たんですか?まさか自力でシンフォギアを!?」

「ああ、なんかいつも通りの響だ」

 

今のこいつの口ぶりから察するに、シンフォギアのことを誰かから聞いたのかな?

 

「ええ、私が教えてあげたわ」

「了子さん!!」

「久しぶりね、士遊君」

「はい、お久しぶりです!!」

「シンフォギアについてはあらかた話したわ」

「そうですか……」

 

了子さんか、ならば安心だ。了子さんがシンフォギアについて教えてくれたのなら、俺が説明するよりも確実だろう。なんせ、シンフォギアの製作者であり、シンフォギアについて説明するにはこの人ほどふさわしい人はいない。

俺が了子さんと話をしている間、響は翼に向かって話しかける。

 

「あの、翼さん!!私も頑張って戦います。だから、一緒に戦いましょう!!」

「っ!!」

 

と、響が挨拶をすると、翼が響を睨み付けてそのまま走っていってしまった。

走り出した翼を追って、俺も走る。

 

「どうしたんだ?」

「なんで、あんな子が…」

「なあ、響があれを持つのは不満か?」

「……正直に言うと、うん。何も覚悟していないあの子が奏のガングニールを持っていてほしくない……それに、あんなに笑顔が眩しい子を戦場に出したくない」

「そうか…でも、あいつは覚悟をしていない訳じゃないぜ?そうだ、一度、響と決闘してみたらどうだ?決闘は全力でぶつかり合えば相手のすべてが分かるもんだ」

「……わかった、一度デュエルをやってみる。それでガングニールを持つのにふさわしいか―――戦う覚悟があるか、見極めさせてもらう」

 

それっきり翼は黙ってしまう。

その後、追いかけてきたシーアたちと合流し、本来の目的地であるところに向かって再度歩き出す。

俺たち一行は、ある部屋の前に立った。

 

「さ、どうぞ」

 

そう言って、ドアを開ける。

 

そして―――

 

「ようこそ!!人類守護の砦、特異災害対策機動部二課へ!!」

 

赤い服の大男が俺達を出迎えた。さっきの話に出てきた、風鳴弦十郎……翼のおじさんだ。おじさんの声に合わせて、クラッカーその場にいた人達が引っ張る。

 

パアーンパァンッ!!

 

という音と共に俺の頭に紙屑が、ふわりと乗っかって引っかかった。

 

「さあさあ、久しぶりだね!!ご飯もいっぱい用意しているから、楽しんでくれたまえ!!」

「弦十郎のおじさん!?なんすかこれ!?」

「新しい装者が出たので、歓迎パーティーをね!!」

「へ~」

「主役は君達だぞ!!さあ、盤上に上がりたまえ」

 

そう言って、おじさんは俺と響を舞台に引っ張り上げる。

 

「みんな、この二人が新しいシンフォギア装者だ!仲良くしてやってくれよ!!」

「え、え、え?」

 

響がどういうことかわからず、混乱している。

仕方ないから現状を教えてやる。

 

「響、シンフォギアのことは聞いたな?」

「う、うん。確か対ノイズ用のプロテクターなんでしょ?」

「ああ、その通りだ。んで、ここはさっきおじさんが言っていたが特異災害対策機動部二課…つまり、正義の組織だ。正義の組織がやることはわかるな?」

「なるほど!!」

「え?今の言葉で分かったの!?」

「はい、大体わかりました!」

 

了子さんがビックリしているが、響はかなり察しがいい。

と言うか、こう言った方が分かりやすいだろう。

一応、本当にわかっているのか確かめてみるか…

 

「響、説明してみろ」

「え~と、皆さんはノイズ災害をどうにかしようとしていて、そのためシンフォギアを使える装者を集めていて、私たちが装者だから歓迎している?」

「…正解よ。でもよくわかったわね…」

「いや~、災害やノイズ、シンフォギア、歓迎で思いついたのがこれだったので…」

 

少し照れながら、響は自分の手で頭をかく。

 

「わっかりました!!私、奏さんの代わりになれるように頑張ります!!」

「……軽々しく、奏の代わりなんて言わないで!!」

 

そう叫び、翼は席から立ち上がり、決闘盤をつけて舞台に上がってきた。

 

「ねぇ、私がしたいことは分かる?」

「え?え?」

 

いきなりのことで、響はまた混乱する。なぜ大声を出されたのか?など、様々なことを考えているのだろう。というか、響は翼のファンなので緊張して、慌てているだけかもしれないが……

ワタワタしている響に、翼はビシッと指を突き付けながら、宣言する。

 

「貴方の実力が知りたいの……私とデュエルしなさい」

「デュエル……ですか?分かりました。全力でお相手します!!」

 

響はどこからか自分の決闘盤を取り出して装着する。

って、本当にどこから出した!?おまえの荷物はまだ返してもらってないんじゃ…

つーか、翼もここでか!?いきなりすぎやしないか!?……やっぱり、奏でのことを持ち出したからか?

そうこうしているうちの、決闘が始まってしまう。

 

「「デュエル!!」」

 

ディスクは響の先行を示す。

 

「私のターン、自分フィールドにモンスターがいないので、手札から『ジャンク・フォアード』を特殊召喚!!さらに『レベル・スティーラー』を捨てて『クイック・シンクロン』を自身の効果で特殊召喚!」

 

響の場に、『ジャンク・フォアード』が特殊召喚され、さらに、ガンマン風のモンスター『クイック・シンクロン』が現れ、銃を構える。

 

「さあ、『レベル・スティーラー』の効果を発動、『クイックシンクロン』のレベルを1下げて、特殊召喚!そして、行きますよ!翼さん!!私はレベル3の『ジャンク・フォアード』とレベル1『レベル・スティーラー』にレベル4となった『クイック・シンクロン』をチューニング!!」

 

『クイック・シンクロン』の前には何枚かのカードが現れる。

その中の一枚を、『クイック・シンクロン』は撃ち抜いた。

 

打ちぬかれたカードは――――『ロード・シンクロン』

 

よって、召喚されるのは……

 

「現れろ!!『ロード・ウォリアー』!!」

 

王者の風格を纏った気高き戦士が現れる。

 

「いきなり攻撃力3000のモンスターが出てきたな……」

「翼、気を抜くなよ!!まだ展開してくるぞ!!」

 

翼が呟いたことに対し、士遊の警戒しろと言う声が聞こえてくる。

響の元気な声が響いてくる。

 

「その通りですよ!!翼さん!!私は『ロード・ウォリアー』の効果で『チューニング・サポーター』を特殊召喚!!さらに手札の『ジェット・シンクロン』を通常召喚して、この二体でチュ-ニング。『フォーミラー・シンクロン』!!効果で一枚ドロー、さらに『チューニング・サポーター』の効果でもドロー!!」

 

響はお得意の手札増強で、手札を三枚に増やした。

 

「カードをセットして、ターンエンドです。翼さんのターンですよ?」

 

手札2

フィールド

『ロード・ウォリアー』

『フォーミラー・シンクロン』

罠・魔法

伏せ1枚

 

「私のターン、ドロー!!」

 

翼はデッキトップから勢いよくカードを引く。

チラッとそのカードを見てから、手札に入れ別のカードを出す。

 

「私は永続魔法、『炎舞-「天璣」』を発動!!効果でデッキから『武神―ヤマト』を手札に加え、召喚!!天璣の効果で攻撃力を100アップ!!」

 

翼の場にクラゲ頭の武神が現れる。

 

『武神―ヤマト』攻1800→1900

 

「さらに、カードを二枚セット。エンドフェイズ、効果で『武神器―サグサ』を手札に加え、そのまま墓地に送る。ターンエンド」

 

手札3

フィールド

『武神―ヤマト』

罠・魔法

『炎舞-「天璣」』

伏せ2枚

 

「私のターン、ドロー!!っと、ここでこれ?でも、まだ動くべきじゃないし……まずは、ロードの効果で、『チューニング・サポーター』を特殊召喚。『フォーミラー・シンクロン』とでシンクロ召喚『アームズ・エイド』」

 

『フォーミラー・シンクロン』が光の輪となり『チューニング・サポーター』を包み込む。そして、光が弾け、機械の腕が現れる。

 

「私は『チューニング・サポーター』の効果で一枚ドロー。さらに、『アームズ・エイド』の効果で『アームズ・エイド』自身を『ロード・ウォリアー』に装備!!」

 

『ロード・ウォリアー』の腕に『アームズ・エイド』が装備され攻撃力が上昇する。

 

『ロード・ウォリアー』攻撃力3000→4000

 

「そして、バトルフェイズ!!『ロード・ウォリアー』で『武神―ヤマト』を攻撃!ライトニング・アームズクロー!!」

 

『ロード・ウォリアー』攻撃力4000

VS

『武神―ヤマト』攻撃力1900

 

『アームズ・エイド』を装備『ロード・ウォリアー』が『武神―ヤマト』に迫る。

 

「…そんな力任せの攻撃が通ると思うな!!私は手札から『オネスト』を墓地へ送って効果発動!!相手のモンスターの攻撃力分ヤマトの攻撃力をアップ!!」

「!!」

 

翼の背後から大きな翼を持った天使が現れ、『武神―ヤマト』に力を与える。

 

『武神―ヤマト』攻撃力1900→5900

 

『ロード・ウォリアー』攻撃力4000

VS

『武神―ヤマト』攻撃力5900

 

『武神―ヤマト』に白き翼が生え、光のオーラが包む。そして、突っ込んできた『ロード・ウォリアー』の腕を『武神―ヤマト』は掴み、そのまま地面に叩きつけ、持った剣で一閃した。『ロード・ウォリアー』はあっけなく両断され、破壊される。

 

「わっ!!」

 

響 ライフ 8000→6100

 

響は発生したダメージの衝撃でしりもちをついてしまう。

 

「いててて…」

「おい、大丈夫か?」

「大丈夫、大丈夫」

 

響はすぐに立ち上がり、デュエルディスクを構えなおし、先程の続きを始める。

 

「メインフェイズ2に移行。私は『ブースト・ウォリアー』を特殊召喚!『ジャンク・シンクロン』を召喚!効果で『チューニング・サポーター』を特殊召喚。そして―――速攻魔法発動!!『地獄の暴走召喚』!!」

 

『地獄の暴走召喚』!!相手にモンスターがいて、自分が攻撃力1500以下を召喚した時に発動出来て、自分はそのモンスターの同名モンスターをあるだけ特殊召喚できるが、相手にも相手フィールド上にいるモンスターの追加召喚を許してしまうカードだが、この場合は――――

 

「二体の『チューニング・サポーター』を特殊召喚!!」

「私の『武神―ヤマト』はフィールドに一体しか存在できない……」

 

これは上手い。上手くヤマトのデメリットを利用した!!

そう思っていると、響の場には中華鍋を被った機械人形が現れる。

 

「『チューニング・サポーター』三体と『ブースト・ウォリアー』に『ジャンクシンクロン』をチューニング!!今、ここに長き眠りより破壊の魔神が目を覚ます!!粉砕せよ!!『ジャンク・デストロイヤー』」

 

響のフィールドに黒き破壊の魔神が降り立つ。

まるで、空にそびえる黒鉄の城のようなモンスターだ。

 

「効果で三枚ドローと『武神―ヤマト』とセットカード二枚と天璣を破壊!!ダイダルエナジー!!」

「ここで出せば、三枚ドローからの四枚破壊で武神を倒せますしね」

「ああ、でも墓地にあの(・・)カード(・・・)があるから『武神―ヤマト』は残る…多分響はもうちょっと後に使いたかったんだろうな」

 

『ジャンク・デストロイヤー』の四本腕からエネルギーがあふれ出し、翼のモンスターたちに襲い掛かる。

 

「私は墓地の『武神器―サグサ』を除外し効果発動!これによってヤマトに破壊耐性を付ける」

 

ヤマトの前に、鳥のような武神器が現れかわりにダイダルエナジーを受ける。エネルギーは他のカードにも当たり、破壊されたカードの爆風が俺たちの視界を奪う。

 

「やっぱり防がれますか・・・」

「中々・・・悪くない手だったわ」

「え!そうですか!?」

 

響は憧れの人から褒められ少し興奮気味だ。

しかし、翼が人を褒めるとは珍し「と言いたい所だけど、貴女はまだまだ甘いっ!!」

…ですよねー

爆風が晴れると、翼の場には二体(・・)の武神の姿があった。

 

響 ライフ 6100

手札4

『ジャンク・デストロイヤー』

魔法・罠

セット1

 

翼 ライフ 8000

手札1

『武神-ヤマト』『武神-アラスダ』

魔法・罠

なし

 

「な…!?」

「私は『武神器―サグサ』が除外されたことにより『武神-アラスダ』を召喚させてもらった」

 

なるほど、サグザをアラスダの効果のトリガーに使ったのか…

響は…

 

「く……私は『ジャンク・デストロイヤー』のレベルを一下げ、『レベル・スティーラー』を特殊召喚してターンエンド」

 

打つ手はない様だ。

翼のターンに移ってしまう。

 

「私のターン!!ドロー」手札1→2

 

翼はドローしたカードを手札に加え、次の一手を打つ。

 

「私は二体のレベル4モンスターでオーバーレイ!!」

 

二体のモンスターが光の球となり、天高く昇っていき、光の渦に吸い込まれ、渦が弾け光が放出される。その光が人の形を成していき、その上から鎧が形成される。そして、翼のフィールドには鎧姿のモンスターが現れた。

 

「日の本より顕現せよ、武の神帝!!その(つるぎ)大蛇(だいじゃ)の八ツ俣を叩き切れ!! エクシーズ召喚!!ランク四『武神帝―スサノヲ』!!」

 

『武神帝―スサノヲ』と呼ばれたモンスターが、両手を開くと、掌には一振りずつ剣が現れる。それを握りしめ、構える。

 

「っ!!武神帝!?」

「ああ、このモンスターは私のエースだ」

 

翼のデッキのエース『武神帝―スサノヲ』……このモンスターは強力だ。

あのモンスター相手にいくら低レベルモンスターを並べても一掃されてしまう。

 

「私は『武神帝―スサノヲ』の効果を発動し、手札に『武神器―ハバキリ』を手札に加える。そして、手札より『死者蘇生』を発動!!甦れ、『武神―ヤマト』!!」

 

ヤマトとスサノヲ、二体の武神モンスターが並ぶ、その姿は圧巻である。

 

「さて、バトル!!『武神帝―スサノヲ』で『ジャンク・デストロイヤー』を攻撃!!」

「攻撃力の低いモンスターで攻撃!?」

「この時、私は手札の『武神器―ハバキリ』を捨て効果を発動!!武神の攻撃力を二倍にする!!」

 

ハバキリが剣と変わり、スサノヲがその剣を掴む。

 

『武神帝―スサノヲ』 攻撃力2500→4800

 

「攻撃力4800!?」

 

『武神帝―スサノヲ』 攻撃力4800

VS

『ジャンク・デストロイヤー』 攻撃力2600→破壊

 

スサノヲが剣とかしたハバキリを振りかぶり、打ち下ろす。デストロイヤーは腕を交差させガードをしようとしたが、腕ごとその鋼鉄の体を両断され、破壊された。

 

「うっ……」響ライフ 6100→3900 

「まだだ!!『武神帝―スサノヲ』の効果で連続バトル出来る!!『武神帝―スサノヲ』で『レベル・スティーラー』を攻撃!!がら空きになったことで、『武神―ヤマト』で貴女にダイレクトアタック!!」

 

『武神帝―スサノヲ』 攻撃力2400

VS

『レベル・スティーラー』 守備力0→破壊

 

『武神―ヤマト』 攻撃力1800→ダイレクトアタック

 

「うわああああああ!!!!!」響ライフ 3900→2100

 

響はダイレクトアタックを受け、舞台から吹き飛ばされる。

俺とシーアはたまらず声を上げる。

 

「「響(ひーちゃん)!!」」

「……大丈夫、へいきへっちゃら!!まだまだ行けますよ、翼さん!!」

 

響は笑いながらそう言って、舞台にもう一度上がりヂュエルディスクを構えなおす。

 

響 ライフ 2100

手札4

モンスター無し

魔法・罠

セット1

 

翼 ライフ 8000

手札1

『武神-ヤマト』『武神帝―スサノヲ』

魔法・罠

なし

 

それを見て、翼は響に疑問をぶつける。

 

「なぜ、この状況で笑えるの? あなたのライフと私のライフの差は6100……フィールドには伏せカード一枚のみ。手札は四枚あるけど、その感じではコンボ用のカードばかり……違う?」

「はい、確かに今は動けません……」

「なぜ諦めないの?」

「ワクワクするからです!!」

「ワクワク?」

「そうです、だってワクワクしませんか?次のドローで、この状況を覆せるかもしれない!!それがたまらなく楽しんです!!」

「……そう。でも、あなたが飛び込もうとしている戦場は違う。そんな甘い考えでは危険よ。遊び半分なら、やめなさい」

 

……それが翼が言いたかったことだろう。

しかし、響に限っては遊び半分で言っているわけではない……

響はしっかりと翼の目を見て、答えを返す。

 

「かもしれません、でも私は遊び半分で言っているわけじゃありません!!だから……」

 

響が次の言葉を言おうとした、瞬間、警報と共に部屋が暗くなり赤いランプのような物が点滅する。

 

『ノイズ発生を確認!!』

「なにぃ!!場所は!?」

 

弦十郎のおっちゃん……いや、風鳴司令が警告が聞こえてきた方に向かって、指示を飛ばす。

 

『出現地特定!!リディアンより距離200!!』

「近い……!!」

「迎え撃ちます!!」

 

翼はデュエルディスクを迅速にしまうと、出口の方に向けて走り出す。

 

「翼さん!!私も行きます!!私はまだ貴女に伝えきれてない!!」

 

響は翼を追ってすぐに出て行ってしまう。俺は慌てて後に続く。

 

「ひ、響!?俺も行きます!!」

「私も行ってきま~す!!」

「お、おい!!お前ら!!」

 

風鳴司令の声を背に、俺はシーアを連れて、響と翼の後を追って走り出した。

 

 

 

俺とシーアが現場に着くと、もう響と翼は戦っていた。

響はノイズを倒しながら、翼に向かって訴えかける。

 

「私には……いえ、私にも!!守りたいもの……守りたい人がいるんです!!だから、私は戦います!!戦わせてください!!」

「戦いに集中しなさい!!」

「いいえ、認めてくれるまで何度だって言います!!戦わせてください!!」

 

言い合いながらも、ものすごい勢いでノイズの数が減っていく。

翼が剣を振るえば、響も拳を振りかぶり、両者は一歩も譲らない。

 

「らああ!!」

『ギュピッ!』

「セイッ!!」

『ギュピイイイイィ!!』

「「ええい!!邪魔ぁ!!」」

『ギュピイイィィィィィィィ!!!!!!?』

 

……ノイズがかわいそうになってくるほどの蹂躙っぷりだった。あれ?俺ら、いらなくね?

 

「さっさっと片づけて!!」

「さっきの決闘の決着を!!」

 

「「つける!!」」

 

そして、最後のノイズが粉砕される。

両者はギアを纏ったまま、無言でデュエルディスクを腕に取り出しつける。

 

「……行きますよ!!翼さん!!デュエルだって戦いだって、諦めなければ道は開けるんです!!それを今の私のデュエルすべてで証明します!!」

「なら、証明してみなさい!!今ここで!!」

 

響 ライフ 2100

手札4

モンスター無し

魔法・罠

セット1

 

翼 ライフ 8000

手札1

『武神-ヤマト』『武神帝―スサノヲ』

魔法・罠

なし

 

翼と響はともにデュエルディスクを起動させる。先程の続きのフィールドが展開される。

 

「私はターンエンド。貴方のターンからよ!!」

「私の……ターン!!」

 

響は勢いよくカードを引く。

そのカードを見た響はフッと笑った。

 

「来た!!私は手札から調律を発動!!もう一枚の『クイック・シンクロン』を手札に加えます。デッキから落ちたカードは『ダンディライオン』!!」

 

『ダンディライオン』!!相変わらず、いい落ちだ!!

 

「『ダンディライオン』が墓地に送られたことで、綿毛トークン二体召喚!!」

 

ポンッと音がし、二体の綿毛が響の場に現れる。

 

「このターンで決めます!!」

「何!?」

「手札から『ボルトヘッジホック』を捨て、『クイック・シンクロン』を特殊召喚!!さらに『クイック・シンクロン』のレベルを一下げ、『レベル・スティーラー』を、チューナーがいることで『ボルトヘッジホック』を墓地からそれぞれ特殊召喚!!」

 

『クイック・シンクロン』レベル5→4

 

ん?このターンで決める……『クイック・シンクロン』と『レベル・スティーラー』……あっ……

 

「この布陣は!!来るぞ、シーア!!」

「ええ、ひーちゃんのエースが来ますね」

 

「私はレベル1綿毛トークンに、レベル4となった『クイック・シンクロン』をチューニング!!紡いだ絆と想いを込めた拳が明日を掴む!光さす道となれ!!シンクロ召喚!!来て、『ジャンク・ウォリアー』!!」

 

マフラーを巻いた青き拳の戦士が降臨する。ギアを纏った響に驚くほど似ている。このモンスターは響のエース。何かをデュエルで伝えたいときはいつもコイツだ。俺が響と初めてデュエルした時も最後まで場にいたのはコイツだった。

 

「『ジャンク・ウォリアー』の効果を発動!!『パワー・オブ・フェローズ』!!」

 

『ジャンク・ウォリアー』に響の場のモンスターたちは力を送る。『ジャンク・ウォリアー』に大きなオーラが纏われ、その存在感は大きくなっていく。

 

『ジャンク・ウォリアー』攻撃力2300→3700

 

「行きます、バトルフェイズ!!『ジャンク・ウォリアー』で『武神帝-スサノヲ』を攻撃!!そして手札から『スクラップ・フィスト』を発動!!」

 

『スクラップ・フィスト』には5つの効果がある。

 

●相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠・モンスターの効果を発動できない。

●対象のモンスターが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ相手に戦闘ダメージを与える。

●相手が受ける戦闘ダメージは倍になる。

●対象のモンスターは戦闘では破壊されない。

●戦闘を行った相手モンスターはダメージステップ終了時に破壊される。

 

相手は何もできないにも等しい。

しかもこれは……

 

「だが、私のライフは残る!!」

「わかってます!!だから、私は手札から『ラッシュ・ウォリアー』を捨てて効果発動!!こいつはウォリアーの攻撃力を倍加させます!!」

「な、それじゃあ……!!」

「ええ、攻撃力は……」

 

『ジャンク・ウォリアー』に『ラッシュ・ウォリアー』の幻影が重なり攻撃力が変化していく。

 

『ジャンク・ウォリアー』攻撃力3700→7400

 

「7400……私の負け、か……」

「翼さんに届け!!私の思い!!スクラップ……フィストォォォォォォォ!!!!」

 

『ジャンク・ウォリアー』攻撃力7400

VS

『武神帝―スサノヲ』攻撃力2500

 

天井高く飛び上がった『ジャンク・ウォリアー』が拳を限界まで引き絞り、背中のブースターを吹かせて急降下し、『武神帝―スサノヲ』に拳を叩きつける。

 

「っ……うわあああああァァァァァ!!!」

 

『武神帝―スサノヲ』は破壊され、その余波で翼の体を軽々と吹き飛ばす。体が一回バウンドし止まったと共に、翼のデュエルディスクのライフポイントがゼロになった。

 

9800ダメージ

翼ライフ 8000→-1800

 

響WIN!!

 

ソリッドヴィジョンの『ジャンク・ウォリアー』が空気に溶けていく。

 

「……貴女の覚悟しっかり受け取ったわ」

 

翼は倒れたままだったが、その顔は憑き物が落ちたかのように晴れやかだった。

ゆっくりと倒れた体勢から起き上がり、響のところに歩いていく。

そして、手を差し出した。

 

「……これからよろしく」

「っはい!!」

 

その手に響は少し戸惑っていたが、意味を理解すると満点の笑みで握手に応じた。

握手を終えると、デッキケースから一枚のカードを取り出し、響に差し出した。

 

「このカードを貴女に託す」

「これは……『氷結界の龍 グングニール』?」

「奏のカードよ……あなたならうまく使いこなせると思う」

 

それだけ言うと、翼は後ろを向き、ゆっくりとこの場を去っていった。

俺はそれを追って駆け出した。

 

翼は非常階段に座り込んでいた。

 

「ここにいたのか……」

「士遊……」

「デュエル……負けちまったな」

「そう、ね。でも、思い出したの、あの日の事」

「あの日……?」

「私が最初にデュエルした日……奏と一緒に……」

 

そうだ、あの日!!奏は翼のパートナーであると共に、俺の友達でもあった。あの(・・)()は、俺が翼にデッキをプレゼントしたのだ。

事の始まりは奏とデュエルしていた時の事だった……

 

 

『なぁ、士遊』

『なんだよ、奏?』

『あたしのターン、ドロー。っと、翼のことなんだが……』

『あ、奈落で。ん?翼がどうかした?』

『げ、あたしのブリューナクが!!……あいつにさ、デュエル教えようと思うんだ』

『いいんじゃないか?ハンマーマンモが戻されたか』

『どんなデッキがいいと思う?っと、やりー!これであたしの勝ち!!』

『ちえ、事故ってたからなぁ……。いいデッキがあるぞ?』

『ほんとか?』

『ああ、なら……』

『今度の翼の誕生日、だな!!』

 

翼の誕生日にデッキを渡し、デュエルを教えたわけだが……

 

『ハバキリの効果を受けた、スサノヲで攻撃!!』

『ぐあぁぁぁぁぁぁ!!!!』

 

士遊 ライフ-1400

 

翼 WIN!!

 

と、こんな感じに見事の負けた。

そう、今回の『ラッシュ・ウォリアー』のように……

 

「覚えてるぞ……そうか、グングニールを渡すってことは何か響に感じたんだな?」

「うん、あのカードはあの子の手の中にあった方がいいって思ったから」

 

グングニールには、奏での形見というだけじゃない、俺たち三人の絆が宿っている。それを渡すってことは、響を認め、絆を結ぶという事だ。

 

「うん、だから守るよ、私は。あの子もあなたも全部……何があっても、私自身を犠牲にしても」

「……やめろよ。違うだろ……駄目なんだよ!!一人として、欠けちゃダメなんだ!!お前は分かってない!!」

 

こいつはきっと奏の死を自分のせいだと思っている。全部自分が悪いと思って、背負い込んでしまってる。

だから気づいてないんだ。誰か消えれば、誰かが悲しむってことを……その消える誰かに、翼自身も当てはまるってことも。

 

「……でも、私は!!士遊を巻き込んでしまった!!私の力が足りないせいで、奏が、大勢の人が死んだ!!だから……」

「違う!!確かに俺は二人からチケットを貰った。でも、俺を元気づけるためだったんだろ!?それにあれは事故だ。お前に責任何て無い!!」

 

そうだ、俺はあの時あまり元気は無かった。それを見かねた翼が俺にライブのチケットをくれたのだ。

 

「でも、私は……」

「デモもない!!お前に責任があるとすれば、全部抱え込んでしまっていることだ!!」

「でも、私には守り人としての使命が!!」

「防人として……剣として生きてきたってか?だから、責任があるって?」

「そうだ、私は!!救う事が出来なかった……助けられなかった!!」

「んなもん、一人の人間だから全部を救うことは出来ねぇよ!!お前は最善のことをやったんだ!!力が足りなかった、それでも救えた奴はここ(・・)にいる!!」

 

俺は自分を指さして言う。

 

「俺や響は、お前たち二人に助けてもらったんだ!!だから、ちょっとだけでいい。自分のことも考えてくれよ!!自分の体や、自分のやりたいこと、何でもいい!!頼むからさ……」

「……」

「自分の好きに生きるってのは無理か?それでもな、あいつならきっとこう言うぜ?

 

『そうやって、あんまり根詰めすぎると壊れてパンクしちまう。だからさ、もっとゆっくりしていいんだよ。今を楽しむっていうことも翼には大切なんだからさ』

 

ってな」

「……」

「あのな、俺が言いたいことも同じだよ……無茶はしないでくれ……もう、俺は仲間を失いたく、ない……」

 

同じ(・・)なんだ。もう、奏が死んだ時と同じような思いはしたくない……俺と同じにそう思ってる。だからこそ、無茶をするのだ。

 

だから、俺は頼み込むように頭を下げる。自分も同じだという事を。同じようにお前に無茶をしてほしくないって思っている奴がいる事を、知ってもらうために。

少し考えるそぶりをした後、翼は言った。

 

「……わかった、無茶はしない」

「そう、か……」

 

伝わったのだろうか?分からない、が、確かにそっと、翼は俺の手を握った。

それきり、会話がなくなってしまう。俺が言えることはすべて言った。後は翼がどうするかだろう。

 

「ありがとう」

「へ?」

「このままじゃ、駄目だって心配してくれたんでしょう?自分も同じ(・・)だって……だから、ありがとう」

「……どういたしまして」

 

俺達はしばらくそのままその場にいたのだった。

手をしっかりと握ったまま……

 

 

 

 




はい、小説って難しい……文章力が欲しいです。
なんだかんだで解決しましたが、それだけ決闘は偉大ってことでお願いします。
あと、SAKIMORIの口調が難しい……

それでは、今回はこの辺で!!

おまけ
士遊使用デッキ 一話編

《モンスター》
E・HEROネオス
ブラック・マジシャン
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン
時読みの魔術師
星読みの魔術師
調律の魔術師
慧眼の魔術師
竜穴の魔術師
龍脈の魔術師
貴竜の魔術師
賤竜の魔術師
相克の魔術師
E・HEROプリズマー
E・HEROブレイズマン
E・HEROエアーマン
魔装戦士ドラゴディウス
魔装戦士ドラゴノックス
EMドクロバット・ジョーカー
EMトランプ・ウィッチ
EMペンデュラム・マジシャン
EMオッドアイズ・ユニコーン
メタモルポット
アステル・ドローン
エフェクト・ヴェーラー
幽鬼うさぎ

《魔法》
死者蘇生
サイクロン
E-エマージェンシーコール
オッドアイズ・フュージョン
ダブル・アップ・チャンス
チキンレース
テラ・フォーミング
ブラック・ホール
ペンデュラム・コール
天空の虹彩
置換融合

《罠》
強制脱出装置
強制終了
威嚇する咆哮
裁きの天秤

《エクストラ》
スターダスト・ドラゴン
クリアウィング・シンクロ・ドラゴン
オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン
スターダスト・チャージ・ウォリアー
レッド・デーモンズ・ドラゴン
オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン
CNo.39 希望皇ホープレイ
No.39 希望皇ホープ
ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン
ダイガスタ・エメラル 2
E・HERO ネオス・ナイト
呪符竜
ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン
オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン

何、発売してないはずのカードが入っている?知らん、そんなの管轄外だ。(空きがあった場所に入れました)
なお、常に変化しているので次回はもっと変わってます。(特化型になってると思います)
あと、現実では100%回りません。ブッチャケ言って、紙束です。
何とか使えるのは運命力があるからです。



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第五話 古代の駆動 上

遅れてしまって申し訳ありません!!

大学の課題舐めてた……
気づけば単位が落としそうになっていまして、全然他の小説と共に更新できませんでした。
……他の小説の中でも一番遅くなってしまいましたが、第五話どうぞ!!

あっ、それと今回からデュエル描写が変わります。
効果説明はセリフを使い、効果は表示しません。さらに、セリフや地の文では『』を使わずフィールド確認の時のみ使います。

「このカードは、シンクロ召喚に成功した時に相手モンスター一体を手札に戻す!」
「シンクロ召喚!! ジャンク・ウォリアー!!」

響 ライフ2300
手札 2

『ジャンク・ウォリアー』『マッハ・シンクロン』
(上にモンスター)
≪停戦協定≫ セット二枚 
(下に魔法・罠)

 出た!! 響のエース、ジャンク・ウォリアーだ!!

と、こういう風にします。

見えにくいと思ったなら感想で言ってください。何か考えます。

それでは引き続きお楽しみください。








 

「行くぞ、立花!!」

「はいっ!! 翼さん!!」

 

 そう言って、翼と響がノイズの群れに突っ込んでいく。

 うーむ、息っぴったり……

 そう思いながら二人を見ていると、背後から大量のノイズがやってくる。

 

「消え失せろノイズ、慈悲は無い」

 

 振り返り、腕を振ると、大量のノイズが炭となって崩れ落ちる。

 うん、シンフォギアにも慣れてきたな……

 

「……私の士遊さんが強すぎる件について」

「お兄ちゃん、強すぎぃ!?」

 

 シーアと響が何か言ってるが、知らん俺の管轄外だ。

 

「アームドギア無しでここまでするとは……中々出来る事じゃない」

「翼、それはネタで言ってるのか……?」

「そうだ」

「そうか……って、ウェ!?」

「フフフ……」

 

 翼が冗談を言った!?

 最近、と言うか、響とデュエルした時から翼は少し変わった。余裕が出てきたというか、よく笑うようになった。いい変化だと思う。

 

『よし、周囲にノイズ反応なし。四人共、戻ってきていいぞ』

「了解」

 

 弦十郎おじさんから、周囲のノイズが全滅したことを知らされる。短く返すと俺はワー、キャー、言っている女子たちの方に向かった。

 

「はいはーい、お喋りはそこまでにして、帰るぞー」

「「はーい」」

「翼、響はどうだった?」

「大体、65点と言った所だな。まだ踏み込みが甘い」

「うはぁ……翼さん、キビシー!!」

 

 響はそう言ってギアを解除する。続いて、俺達もギアを解除していく。

 

「あ、そうだ!! 翼さん、フラワー寄ってきません?お腹すいちゃって……」

「しょうがないなぁ、立花くんは……(ダミ声)、ちょっとだけだぞ?」

「つばえもん!?」

「やったー!! お兄ちゃん、シーアちゃん、フラワーで何食べる?」

 

 響はお好み焼き屋に翼を誘い、俺達にも一緒に行かないかと誘ってくる。……ほんと変わったなぁ、翼。

 

「私は大丈夫ですよ~」

「わかった。じゃあ、お兄ちゃんは?」

「悪い、ちょっと用事がある」

 

 実はこの後、人と会う約束をしているのだ。

 

「そっかー」

「許せ、響。また今度だ。……っと、ここらで俺は抜けさせてもらうわ。シーアと翼、響をよろしくな。じゃなー」

 

 俺はそう言いながら、響の頭に手を軽く置いてから三人と別れた。

 

 

 俺は待ち合わせ場所の商店街の方に来たのだが、その場所にはすでに相手が待っていた。

 

「悪い? 待ったか?」

「うん、待ったよ……女の子を待たせるなんてサイテーだよ? 兄さん?」

「マジでごめん……未来」

 

 そう、待ち合わせ相手は 小日向未来(こひなたみく)……響の親友で幼馴染、俺の妹分パート2だ。今日は何でもカードショップに用があるそうだ。

 

「じゃ、行こう?おすすめのとこに連れて行ってくれるんでしょ?」

 

 未来はそう言うと手を差し出した。俺はその手を取ると、逆に未来を引っ張ってカードショップに歩き出した。

 

「わかった、行こうすぐ行こう! 全速前進だ!!」

「ちょっ、もぅ!! 勝手なんだから……」

 

 

 

 数分ほど歩くと、行きつけのカードショップ、鶴のゲームショップにたどり着いた。このカードショップは商店街の脇に入った所にひっそりと建っている。少しレトロな雰囲気が魅力のお店だ。だが、俺からすればまだ地味すぎるぜ、もっと店前にシルバー置くとかさ!!

 

「ここはな、他のゲームも売ってて、デュエルモンスターズ……まぁ、最近は遊戯王の方が分かりやすいか、その遊戯王の専門店って訳じゃないがかなり品揃えはよくってな。それにいいカードが格安で手に入りやすいんだ」

「どうして?」

「……入ってみればわかるさ」

 

 俺は未来の背中を押しながら店内に入る。そこでは―――――――

 

「「決闘(デュエル)!!」」「「決闘(デュエル)!!」」「「「「\(`д´)ゝデュエッ!!」」」」

 

「俺のターン!!ドロー!!」

「わしのターンじゃ……」

「オラの先行!!」

「イヤッッホォォォオオォオウ!」

「さぁ、俺を満足させてくれよ?」

「俺達の満足はこれからだ!!」

「それはどうかな?」

「なん…だと……」

「まるで意味が解らんぞ!!」

「知らん、そんな事は俺の管轄外だ」

「そんな…あんまりだよ、こんなのってないよ。こんなの絶対おかしいよ!」

「絶対に許さねぇ!!ドン・サウザンドォォ!!」

「俺と決闘しろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

「よろしい、ならば決闘だ」

 

  混沌(カオス)な光景が 店内(フィールド)を駆け巡り、店が最強進化していた。

 最強進化っていうより暗黒進化ですね、分かります分かります。……何言ってるのか自分でもよくわからん。

 

「なぁにこれぇ?」

「気にするな、店の妖精達だ」

「えっ?」

「わかったか?」

「……うん」

 

 濁り切った瞳で未来を見ると分かってくれたようだ。

 俺は店の隅っこの方でいそいそとカードをスリーブに入れる作業をする青年のところに行き、声をかける。

 

「よう、遊太。繁盛しているようで何よりだ」

「ああ、士遊か、いらっしゃい」

 

 疲れた様子で答えるのは、俺の親友の高町遊太。ここの店は遊太の実家なのだ。だから学校の帰りによくこの店に来ている。

 

「んじゃ、最新弾むいてくわ~」

「最新弾なら――」

「カウンターの一番奥……だろ?」

「おう」

 

 短いやり取りだけして、俺は堂々とカウンターの中に入っていく。そして、カウンターの奥を漁り始める。

 

「え、大丈夫なの!?」

「問題ない、勝手知ったる他人の家というやつだ」

「え、でも……」

「金は後から払うから問題ない……と言うか、俺は欲しいもんが出るまでパックを開け続けるからな。手間取るしカード買う人の邪魔だから勝手にパック開けて、後で請求するからって言われてんだ」

「うーん……」

 

 まだ何か言いたそうだったが、そこで「すいません、パック買いたいのですが……」と客が現れた。俺はその人に対応する。

 

「あ、はい。何弾でしょうか?」

「デッキカスタムパック01を5パックください」

「かしこまりました。少々お待ちを」

 

 えーと、あのパックは確か……。俺はカウンターの奥の二番と書かれている箱を開ける。うしっ、ビンゴ。俺はそこから5パックを出し、客に差し出す。

 

「五パックで750円です」

「じゃあ、これで」

「まいどあり~」

 

 俺は受け取った金をレジを開けて中に入れる。

 この一連の流れを見た未来は納得したような顔をしている。

 

「そういうこった。俺がたまに店を手伝うときもあるからな」

「なるほど」

「ま、店を任せてくれるだけ信頼してくれていると思いたいよ」

 

 そう言いながら新パックを未来に渡し開け始める。とりあえず、未来が欲しいのはアレとこれとそれだから……100パックくらい開ければ出るだろ。

 二人して無言で開け続け、たまに客が来て対応したりして、未来の欲しいカードを探した。

 

 ~結果~

 

「120パック目で達成!!」

「シングル買いの方がよかったかも……」

「シングル買いは少し割高だし、ここは特別割引があってな……」

「そう、うちは僕たち店員とデュエルして勝つとパック数に応じて値引きするんだ。あ、もちろん何もペナルティはないよ。急いでいたり、少量だったらやる意味はあんまりないしね」

 

 後ろから急に現れた遊太に驚きつつ、未来は質問する。

 

「どれくらい安くなるんですか?」

「そうだね……120パックなら2000円ってとこかな?」

 

 そうこの店は 勝てば(・・・)安い。しかし、ここの店員の実力は生半可なものではないし、この特別割引は一回精算するごとに勝たなければならない。

 ちなみに俺は欲しいカードが当たるまで何回も挑戦する。なので、それも勝手にパックを漁ってOKという事の一因かもしれない。

 と、いう訳で……

 

「さて、決闘だ」

「君はそう来ると思ってたよ。準備はいいよ、やろう」

 

 俺達はデュエルスペースに移動し、互いに決闘盤を構える。

 

「「決闘(デュエル)!!」」

 

 決闘盤が先行に示すのは……

 

「僕だな」

 

 遊太だった。遊太はドローした五枚のカードを見ると、一番右端のカードを掴む。

 

「僕はゴールド・ガジェットを召喚、効果で手札のレッド・ガジェットを特殊召喚! 効果でイエロー・ガジェットを手札に。そして、ゴールド・ガジェットとレッド・ガジェットでオーバーレイ!! ランク四、ギアギガントX!!」

 

 遊太の場に、機械の戦士・ギアギガントXが召喚される。

 

ギアギガントX 攻撃力2300

 

「いきなりかよ……」

「ギアギガントX効果発動、コイツは自分のデッキ・墓地からレベル4以下の機械族モンスター1体を選んで手札に加える効果がある。俺はシルバー・ガジェットを手札に加え、カードを二枚伏せターンエンド」

 

遊太 ライフ8000 手札3

『ギアギガントX』

セット2枚

 

 ターンが回って来たので、カードを引く。

 

「ドロー、よし!! 魔法カード、ペンデュラム・コールを使用し、手札を一枚捨て効果発動。魔術師Pモンスターを二体手札へ」

 

 墓地に貴竜の魔術師が送られる。

 

「俺は竜穴と龍脈、この二体の魔術師を手札に加え、この二体でペンデュラムスケールをセッティング!! 」

 

 竜穴の魔術師、龍脈の魔術師がペンデュラムゾーンに置かれ、光の柱となり竜穴の魔術師には8、龍脈の魔術師には1とペンデュラムスケールが映し出される。

 

「さあ、これで準備は整った。いくぜ!! ペンデュラム召喚!! 来い、俺のモンスターたち!!」

 

 ペンデュラムから2つの光が降り注ぎ、形を成す。

 

「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!! EMペンデュラム・マジシャン!! 」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力2500

EMペンデュラム・マジシャン 攻撃力1500

 

「EMペンデュラム・マジシャンの効果発動!! 自分フィールド場のカード二枚までを破壊しデッキからEMモンスターを手札に加える。自身を破壊し、EMモンスター、オッドアイズ・ユニコーンを手札に!!」

 

「俺は、オッドアイズのレベルを下げ、貴竜を自身の効果で特殊召喚!! レベル4となったオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンにレベル3の貴竜の魔術師をチューニング!! 流星、爆炎となりて大地に生誕せよ!! 双眼異色の竜!! オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン!!」 

 

オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン 攻撃力2500

 

「遊太さんのデッキはガジェットかな?確かに強いけど、血の代償なしじゃ展開する手段が限られていると思うけど……」

「違う、あいつのデッキは……いや、見とけ。その方が早い」

 

 俺は未来のデッキ予想の答え合わせをするため、攻撃宣言をする。

 

「オッドアイズ・メテオバーストでギアギガントXを攻撃!! 爆炎のストライクメテオ!!」

 

 その攻撃に対し、遊太はデュエルディスクを素早く操作しセットカードを発動する。

 

「罠カードオープン! マジカルシルクハット!!」

 

 マジカルシルクハット……あれは相手のバトルファイズにのみ発動できるカードでデッキから罠・魔法カードを二枚選んで場にモンスター扱いで召喚、自分のモンスター一体と共にシャッフルして裏側守備表示でセットできるのだ。

 未来は「あれ?」と疑問を口にする。

 

「でも、エクシーズモンスターはエクシーズ素材を持ってる場合は重ねたまま裏側守備表示になるんじゃ?」

「このカードの厄介なところは大きく言って三つ。モンスターを増やせることと、上手くいけば大事なモンスターを守れること、そして――罠・魔法を墓地に遅れることだ」

 

 遊太はデッキから二枚のカードを選ぶ。

 

「僕が選ぶのは、歯車街2枚だ」

 

 見事に破壊されることによって効果を発動するカードたちを出しやがって……

 

「っち、まずはオーバレイユニットでバレバレの真ん中のカードに攻撃」

「ギアギガントXは破壊される……」

「バトルフェイズ終了だ」

「なら、二枚の歯車街は破壊される。が、二枚の歯車街の効果発動!! このカードが破壊されたことにより二体のトゥーン・アンティーク・ギア・ゴーレムを特殊召喚!!」

 

 デフォルメされた古代の機械巨人・トゥーン・アンティーク・ギア・ゴーレムが二体並び立つ。その姿は、デフォルメされたとはいえ攻撃力3000の風格がある。

 

「圧巻だな……」

 

 そして、トゥーン・アンティーク・ギア・ゴーレムは召喚や特殊召喚されたターンに攻撃することは出来ないが、古代の機械巨人のように特殊召喚出来ないという効果が無い。

 しかも、今は俺のターン……よって、デメリットである攻撃できないという効果は無いも同然。次の遊太のターンで、攻撃力3000の貫通効果と罠・魔法を封じるモンスター2体が俺に襲い掛かるという訳だ。

 

 ……ヤバイな、この手札じゃ凌ぎきれないかもしれない。そう思うが、俺に出来ることはない。今はこのカードたちに祈るしかないな。

 

「カードを二枚伏せターンエンド」

「この瞬間、僕はもう一枚の伏せカードをオープン!! エクシーズリボーン!! ギアギガントXを蘇生し、このカードをオーバーレイユニットにする」

 

 ギアギガントⅩまでッ……!!

 しかし、することは何もないのでエンド宣言を完了させる。

 

 これは勝てるか……?

 

 俺は二体のコミカルな、それでいて妙に圧倒感のあるトゥーン・アンティーク・ギア・ゴーレムに冷や汗をかきながら、カードを引いた遊太を見つめるのだった。

 

遊太 ライフ8000 手札3

『トゥーン・アンティーク・ギア・ゴーレム』×2『ギアギガントX』

セットなし

 

士遊 ライフ8000 手札1

『オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン』

セット2枚

Pゾーン 『竜穴の魔術師』『龍脈の魔術師』

 

 

 





今回はここまでです。
短いのは、デュエル描写が書きにくくまだ完全にできていないからです。しかし、近日中にはUPしたいと思っているのでご容赦ください。

ところで、デュエル描写って難しすぎません? 何かいい書き方ってないのですかね……

では、また近日中に!


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第六話 古代の駆動 下

何とか投稿できました。

それでは、続きどうぞ!!


前回までのあらすじ

親友の遊太とデュエルすることになった士遊だが、遊太の古代の機械デッキの前に絶体絶命のピンチに陥ったのだった。


 

「俺のターン、ドロー!!」

 

 遊太は己の引いたカードを見て、少し口の端を釣り上げそのカードを手札にしまう。

 何を引いたんだ……?

 

「メインフェイズ、ギアギガントXの効果でオーバーレイユニットを使い、古代の機械箱を手札に。さらに古代の機械箱の効果でデッキから攻撃力または守備力が500の機械族・地属性モンスターを手札に加える。俺は守備力500の古代の機械騎士を手札に」

 

 モンスターを増やした? ……まさか、来るのか? この場面で!? 遊太のエースが!!

 遊太は俺の驚愕をよそに、ゆっくりとさっきドローしたカードを手に取り、俺に見せつけるように発動させる。

 

「さて、これで準備は整った。手札より魔法カード『融合』発動!! 手札の古代の機械箱と古代の機械騎士と古代の巨人を融合!! 古代(こだい)機械(きかい)(つど)いて、今究極の力が鼓動する!! 融合召喚!! レベル10 古代の機械究極巨人!!」

 

古代の機械究極巨人 攻撃力4400

 

 機械の駆動音と共にゆっくりとその巨体を起き上げ、顔を上げる。そして、その瞳にブォンッと赤い光が宿り、辺りに咆哮を響かせた。

 

「こ、攻撃力4400!!」

「出やがった!!」

 

 未来がその攻撃力に驚きの声を上げるが、俺は本当に余裕がない。古代の機械究極巨人の圧倒的なプレッシャーを直に感じているのだから。

 遊太はすぐさま攻撃体勢に入った。

 

「行くぞ!! バトル!! 古代の機械究極巨人でオッドアイズ・メテオバースト・ドラゴンを攻撃!! アルティメットパウンド!!」

「ぐ、があああああ!!!!」

 

8000-(4400-2500)=6100

 

 メテオバーストが破壊され、ダメージが衝撃となって俺を襲う。あまりの衝撃に、俺の体は大きく後ろに吹き飛ばされた。

「兄さん、大丈夫!?」

 

 駆け寄って来てくれた未来に「大丈夫だ。デュエルで吹っ飛ぶなど日常茶飯事だから」と伝え、俺はデュエルに戻る。

 

「二体のトゥーン・アンティーク・ギア・ゴーレムで攻撃!! トゥーンパウンド!!」

 

6100-(3000+3000)=100

 

「これで終わりだ!! ギアギガントXで攻撃!!」

「兄さん!!」

「それを……待っていた!!」

 

 俺は未来の声にこたえるように伏せられていたカードを発動する。

 

「トラップカード発動!! ドレインシールド!!」

 

 ドレインシールドの効果により、ギアギガントXの攻撃は無効化され、その攻撃力分ライフポイントを回復させる。

 

100+2300=2400

 

 今まで、罠・魔法をアンティーク・ギア固有の能力で発動を封じられていたので発動できなかったのだ。だが、これで希望はつながった。

 遊太は悔しそうにターンエンドの宣言をする。

 

「っち!! 凌ぎ切ったか……ターンエンド!!」

「まだだ!! 罠カードオープン!! 活路への希望!! 活路への希望の効果によって、ライフを1000払い、相手とのライフポイント差2000ごとに一枚ドローする。お前とのライフポイント差は6600ポイント!! よって、三枚ドロー!!」

 

2400-1000=1400

 

 ライフが引かれると共に、俺はカードを三枚ドローする。

 

「まだ、これじゃない……」

 

 最後の望みをかけて、カードをドローする。

 

「ドロー!!」

 

 光を描きながら、カードはドローされる。

 

「来た!! メインフェイズに移行し、ペンデュラム召喚!! 揺れろペンデュラム!!現れろ、俺のモンスターたち!! オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン! EMペンデュラム・マジシャン!!」

 

 二体のモンスターが並び立った。

 

「ペンデュラム・マジシャンの効果は使わない」

 

 これで、準備は整った!!

 俺は、ドローしたある魔法カードを発動する。

 

「さらに、ミニマム・ガッツを発動。こいつはモンスター一体をリリースすることで、相手モンスター一体の攻撃力を〇にし、そのモンスターを破壊した場合、その元々の攻撃力分のダメージを与える!! 俺は、ペンデュラム・マジシャンをリリース!!」

 

 ペンデュラム・マジシャンがリリースされ、エクストラデッキへと帰って行く。魂として残ったペンデュラム・マジシャンが古代の機械究極巨人に必死にしがみつき、その機動力を奪い、攻撃力がドンドン下がり0となった。

 

「さあ、幕引きと行こうか!」

 

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンが大きく口を開け、火球を生み出す。火球は大きく、大きく、さらに大きくなりオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンと同等の大きさとなった。

 

「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの攻撃、螺旋のストライク・バーストォ!!」

 

 放たれた咆哮は螺旋を描き、動けない究極巨人に直撃し、貫き、爆散させる。

 

「そして、リアクション・フォース&ミニマム・ガッツで、フィナーレだ!!」

 

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンのリアクション・フォースの効果でオッドアイズの攻撃力の2倍つまり、5000がダイレクトでライフから引かれ、トドメにミニマムガッツの効果で古代の機械究極巨人の攻撃力のダメージが一気に遊太を襲う。

 

「ぐああああっ!!」

 

 たまらず、後ろに吹き飛ばされ地面を転がった。

 

8000-5000=3000-4400=-1400

 

 

士遊 WIN!!

 

 

 

 

「と、いう訳で割り引いてもらうぜ!!」

「はいはい……こう何度も割り引かれてちゃぁ、商売にならないよ……」

「ま、でもいいデモンストレーションにはなっただろ?」

 

 回りを見てみると、何人かの子供がキラキラした目で決闘を見ていた。

 

「すげー!! ミニマムガッツつえー!!」

「俺、マジカルシルクハットが気になったぜ、まさかそういう使い方が出来るなんてな!! 墓地発動のダメージダイエットやブレイクスルースキルでもいいし。俺、買って帰る!!」

「やっぱ、ペンデュラムいいなぁ……でも、シングルは高いし、パックでも出るけど封入率は低めだし……あっ、でもパック買っちゃお!!」

 

「な?」

「はぁ……しょうがない、か……」

 

 肩を落としながら、レジに行き、会計を始める。

 

「18000円から2000円引いて、合計16000円ね」

「じゃ、20000円で」

「あ、兄さん……」

 

 俺は自分も払おうとした未来を手で制し、20000円を渡す。

 

「あ、釣りはいらねーから」

「は? ちょ、じゃあさっきのデュエルの意味は!?」

「ああ、あれは未来にこの店のルールを教えるためのもん……って、いうのは建前で久しぶりにお前と本気で戦いたかったからな」

 

 ニッと笑ってそう言うと、遊太は一瞬あっけにとられたように口を開けたが、仕方ないな……と、いう表情で2万円をレジに入れた。

 

「また、来なよ? チャンピオン」

「よせよ。元、だ」

 

 短く言葉を交わすと、遊太は「ありがとうございました!!」と言って次の客の会計を始めるのだった。

 

 

 

 しばらく街中を未来と二人、無言で歩いていた。

 

 ち、沈黙が痛い……なんで、未来は無言なんだ? 未来は俺に何も言ってくれない!! ……だから、無言で歩いてるんだっつーの……

 と、俺が下らない事を考えているのが分かったのか、俺の脇腹に向かって手刀で突きを入れてくる未来。……今度は物理的に痛い。

 

「……ねえ、兄さん」

「なんだ、未来」

 

 いきなり声が真剣なトーンになったので、下らない事を考えるのはやめにしてしっかりと未来の言葉に耳を傾ける。

 

「……」

 

 なぜ聞いてこないか? それほど聞きにくい事なのだろうか? いや、多分未来の事だ。自分の中で言おうと思ってはいる。そうでなければ、声をかけてこない。それでも聞いてこないというのは、迷っているからだろう。これだけ悩むというのは、十中八九、響の事だ。

 大方、自分がそれを聞いてしまうことによって響に何かデメリットが生じることを恐れているのだろう。しかし、聞きたい。そんなところではないだろうか?

 

 ここは俺から切り出した方が早そうだな……

 

「響の事か?」

「!! う、うん……」

 

 ビンゴ。俺がピタリとあてたことで、このままでいてもしょうがないと思ったのか、ポツリポツリと話し始めた。

 

「最近、響の帰りが遅かったり、帰って来てもすぐに何処かに行っちゃって……二人で話していても上の空の時もあるし、何してるのって聞いても誤魔化すだけだし……また、危ないことをしてるんじゃないかって、私心配で……」

 

 そっか、シンフォギア関連の事は一般人には秘密だしな……下手に知ったりしたら未来も危険に巻き込みかねない。きっと二人とも辛いのだろう。

 

「ねえ? 兄さんは知ってるの? 響がやってること……」

 

 これは、言うべきなのだろうか? いや、響が黙っているのだ。俺が言ってしまう訳にはいかない。

 なら言うべきは……

 

「ああ、俺は知ってる。けど、言えない」

「そっか……」

 

 未来は少し残念そうに、しかし、さっきとはうって変わって雰囲気が明るくなって言葉を続ける。

 

「なら、響は大丈夫だね」

「なんで……そう、言いきれる?」

「だって、兄さんがついてるから」

「――――ぁ」

 

 真剣な表情でそう断言する未来を見て、言葉を聞いて、俺は何も言えなくなる。

 

――全く、兄さんは……しょうがないなぁ――

――やったー!! ありがとう兄さん!!――

――優勝おめでとう、兄さん!!――

――おれ、兄さんの事信じてるんだ!!――

――に、い……さん……生き……て……――

 

 その未来の姿に、俺の頭にアイツ(・・・)との記憶がフラッシュバックする。

 アイツと未来の姿が重なって、俺は何かを言おうとするが、言葉が出てこない。

 

「兄さんなら、響をちゃんと助けてくれる。私はそう信じてるから……」

「……俺は、そんなに信用されるような男じゃない」

 

 そうだ、俺はそんな大した奴じゃない。俺は――■■を失って――アイツを……■■■■を失って――守れないものだらけで……

 

「俺じゃ……何も守れな「そんなことないよ?」え?」

「だって――――」

 

 未来は笑顔で続きを言った。

 

「いつも、私達を守ってくれてるから」

「……」

「大きな犬に噛みつかれそうな時庇ってくれたりとか」

「そんな、昔の話……」

 

 十年も前の話だ。

 未来は首を振って「それだけじゃない」と、言葉を続ける。

 

「二年前のライブの事件の後も前も、ずっと守ってくれてるって知ってるもん」

「けど……結局、守れずに響に怪我を……いや、そもそも俺が誘わなければ!!」

「でも、ノイズが襲ってきたのは兄さんのせいじゃない」

「俺のせいじゃなくても!! 響に怪我をさせてしまったのは事実だ!! 響がいじめられたのも!!」

「それは、兄さんの方が大怪我を負ってたじゃない!! いじめの問題も――――」

 

 そこまで言い合った所で気づく。複数の人が俺たちの事を白い目で見ていることを。

 

 そうだ、ここはまだ商店街だった。

 俺と未来は、急に恥ずかしくなって、「「ど、どうもすいませんでした……」」と言って、そそくさと逃げだした。

 

 

 そして気がついたら、リディアンの寮の近くだった。

 未来は、少しこちらを見た後、こう言った。

 

「とにかく!! 兄さんは、響を守ること!! それと、自分を責めすぎない事!!」

「でも……」

「でももヘチマもないの!! それじゃあ、また今度!!」

「お、おう……」

 

 ビュッと、走って寮に入って行ってしまった。

 流石、元陸上部……と、感心しながら俺は自分の家に帰っていった。

 

 

 

 俺は、家に帰って来ていた。

 

「ただいま~」

 

 しかし、俺の声にこたえるものは誰もいない。

 この家には俺しか帰る者はいない。

 

「もう、慣れた、と思ってたんだけどな……」

 

 少し寂しさが込み上げてきた。

 その時、ピロリンッ!! と、スマートフォンがなりメールを受信する。俺はメールボックスを開け内容を確認する。

 その、メールの内容は――――

 

『兄さん!! 響と流星を見に行くから兄さんも来ること!!』

 

 と、未来からこんな感じの内容のメールが来た。

 少し、胸の中に暖かいものを感じた気がした。

 俺は、『了解』と短く打つと、キッチンに行き、自分の夕食を作り始めたのだった。

 

 

 

 

 と、まあそんなことがあり、流星を見ることになったのだが……

 

 当日、俺と響はとある地下鉄の入り口前にいた。

 俺はあくびを噛み殺しながら、スマホをいじり。響は未来に電話で平謝りしている。

 

「うん、ごめん、未来……急用が入っちゃって、流星一緒に見れないかもしれない……」

『……また? もしかして、兄さんもいる?』

「うん、お兄ちゃんも一緒にいる」

『そっか……なら大丈夫だね。わかった、流星は取っておいてあげるから後で、三人で見よ?』

「未来……? いいの?」

『うん、私は響を信じることにする。どんなことがあっても、私のところに戻って来てくれるって。だから……いってらっしゃい』

「うん!! 絶対に未来の、私の陽だまりのところに帰るから!!」

『待ってる。あっ、そうそう、兄さんにも一応無茶しちゃダメって言っておいて。きっと聞いてくれないと思うけど……』

「わかった、伝える。じゃ、早く片付けば行くから!!」

 

 響は電話を切ると俺に向かって頷き、地下鉄のホームの中を睨む。

そこには、うじゃうじゃとノイズの集団がいた。

 俺と響は、ギアを纏うため歌を紡ぐ。

 

「Target!!」≪OK!Lock on!!≫「Duel」≪Duel start≫

「Balwisyall Nescell gungnir tron」

 

 ギアを纏うと響がポツリっと言葉をもらす。

 

「……ああもう!! 未来と流星群見たかったぁ!!」

「そう言えば、俺も未来に流星群を見ようって誘われてたな……なあ、行ってもいいんだぞ? 俺が片づけておくからさ」

「ううん……これは私がやらないといけないことだから」

「そうか……なら、早く終わらせて行かないと、なっ!!」

 

 俺と響は、俺の言葉が終わると同時にノイズに飛びかかる。響はノイズを殴り、蹴り、掴みかかり、時にはこけたり、攻撃を受けたり、危なげに倒していく。俺は手刀でノイズを切り裂き、回し蹴りを右左と連続で繰り出し、そのままの勢いで地面を蹴り、周りのノイズを巻き込みながら地面に叩きつけ、一掃していく。

 

『一回り大きなノイズの反応がある、気を付けろ!!』

「わかってます、よっと!」

 

 ノイズを爪で引き裂きながら俺は風鳴おじさんに答える。

 そうしていると、ブドウのようなノイズが見えた。

 

「お兄ちゃん!!」

「ああ、あれだな」

 

 俺と響は頷き合うと同時に飛びかかる。

 ブドウノイズは背負った実(?)のようなものを俺たち向かって放って来た。その実が俺の目の前で爆発する。

 

「お兄ちゃん!?」

 

 響がそう叫ぶが俺は爆風の中を突っ切ってブドウノイズに一撃をくらわそうとする、が、他のノイズを残しブドウノイズだけ一目散に逃げだした。

 さらに運悪く他のノイズたちが俺の行く手を阻み襲い掛かってくる。

 

「っち、響、先に行ってくれ!!」

「うん、わかった!!」

 

 響がブドウノイズを追うのを見届けると、俺はノイズに視線を戻す……

 

「って、なんか増えてないか!?」

 

 さっきは10体ほどだったが倍近く増えている。隠れていたのか、追加で出現したのか、何故かはわからないが倒すしかない。

 ため息をつきながら、俺はノイズに飛びかかっていった。

 

 数分後、ノイズを倒し響に追いついた。しかし、そこでは駅の天井に穴が開いて夜空が見えていた。

 

「響!ノイズは?」

「逃げられちゃった、でも大丈夫!!」

 

 そう言って、響は天井の穴……空を指す。

 

 そこには……

 

流星(シューティングスター)……?いや、あれは!」

 

 歌が聞こえてくる。

 そう、あの青い流星は!!

 

「ロックマn「って、違う!? 翼さんだよ、翼さん!!」冗談だ」

 

 青い流星――――翼により、ブドウノイズは一分もたたないうちに両断された。

 

「はー、未来との約束に間に合いそうでよかったぁ~」

 

 ノイズが両断されたと共に響が大きく伸びをしながらそう言った。

 

 

「それはどうかな?」

 

 

 バッと、俺と響きは後ろを振り向き、声が聞こえてきた方向に向かって構えをとる。

 ゆっくりと闇を引き裂きながら現れたのは、白――――

 

 バイザーで顔が見えないが、くっきりと体のラインが見える白い鎧に身を包んだ少女がそこに現れたのだった。

 

 

 




ふう、やっと書けた……

スランプになったり、大学の課題に四苦八苦したり、ゼミの受講願書の期限過ぎてて灰になりかけたり、FGOしたり……

色んなことがありましたけど、やっと他の作品もこの作品も書けそうです。

しかし、まあ、自分にはデュエルを書く能力が無いってことがよくわかりましたよ……
何とか早くに投稿したいと思いますので、次回も見てください。
よろしくお願いします。


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第7話 襲撃!! ネフシュタンの少女


祝、シンフォギア4期放送前!!

更新遅くなってしまって申し訳ございませんでした!!
色々なことがありましたが、最新話投稿です。

それではどうぞ。


 ―――― 一人の少女が泣いている。

 

 手にカードの束を持ち、母と父を探しながら、名前を呼んで涙を流す。そんな少女を周りの人はみんな知らんぷり。

 

 少女は涙で前が見えない状態で目をこすりながらも父と母を探す。ドンッと、案の定誰かにぶつかってしまい、後ろに尻餅をついてしまった。その拍子に持っていた、カードが散らばり、地面に広がる。

 そのぶつかった人は、年上の少年だった。日の光が邪魔をして顔は見えない。

 少女は、カードも心配だったが、怒られると思い硬く瞼を閉じてしまった。

 

 しかし、少女の予想に反して、自分を叱る声は聞こえて来ない。

 少女は瞼を開けると、カードの束が差し出された。少女は戸惑いながらも、そのカードたちを受け取る。

 そのカードを拾った少年は、少女にカードを渡しながら、優し気な声色で、こう言った。「デュエルモンスターズは好き?」と。

 

 少女は一瞬あっけにとられた表情をしてから、一転、声を出して泣き始めた。

 

「えええ!? ちょ、待って。俺、何かしちゃった? もしかして、さっきぶつかった時にどこか怪我でもしたのか?」

 

 少年の戸惑う声が聞こえてくる。

 

 違う、これは安心したためだ。

 ずっと、一人で親を探していて、心細かった。誰も助けてくれない。寂しくて、怖くて、不安で……。

 そう思っていた時に、優しく声をかけてもらえたことで張りつめていた緊張が完全に途切れたのだ。

 

「えっと、何があったかは知らないけど、大丈夫だから……泣き止んで、ね?」

 

 少年は、そう言いながら、その後も少女が泣き止むまで傍にいて、大丈夫大丈夫と言い続けた。

 

 しばらくして、少女は泣き止み、少年に事情を説明する。

 

「なるほど……じゃ、俺と一緒に親を探そっか?」

 

 少女はうつむいていた顔を上げ、少年を見上げる。少年は、少女を見つめ、おもむろに腰にあるデッキケースから一枚のカードを少女に渡す。

 そのカードには、綺麗な赤い竜が描かれていた。

 

「大丈夫、このカードに誓って君を両親の元に送り届けるよ。君の両親と会うまで持っていて? さっ、とりあえず、行こう!!」

 

 そう言って、少年は手を差し伸べてくる。

 あたし(・・・)は笑顔になって、その手を、カードを持ってない手で握る。

 

 

 ――――その手はとても、とても温かかった。

 

 

 

 

 

 

「それはどうかな」

 

 

 そう言ったのは白い鎧に身を包んだ女の子だった。

 俺と響は臨戦態勢に入るが、しかし、目の前の少女が放つプレッシャーに、ジリジリと後ろに後退していく。

 

 その時、指令室の風鳴おじさんから通信が入る。

 

『二人共、何があった!? そこに、こちらの三つとは違う、聖遺物の反応が……いや、待て、この反応は……』

「すいません、少しそっちに意識向けてる余裕ないっス……」

 

 通信を問答無用で切り、白い鎧を纏った少女に再び意識を向ける。

 ……隙が無い。コイツ、相当できるな。俺は隙を何度か伺い、動きを誘ってみたが、しかし、隙を見つけることも隙を作ることも出来なかった。

 俺の頬に汗が伝う。

 俺自身の表情は、俺自身の纏っているシンフォギアがフルフェイスタイプのものなので、相手から分からないだろうが、相手もバイザーで隠しており、表情が分からない。

 

「立花!! 士遊!! 大丈夫か!?」

「翼さん!!」

 

 翼がこちらに向かってくるのが見え、響がそちらを向く。と、同時に相手が動くのが見えた。

 

「戦闘中によそ見かよ!」

 

 相手の鎧につながれている鞭がうねる。

 

「響っ!!」

「え?」

 

 俺はとっさに響を押し倒す。鞭は倒れた俺のすぐそばを通って、岩に突き刺さり、その岩を砕く。

 

「マジかよ……」

「お、お兄ちゃん、そろそろ……」

 

 ふと声がしたので下を見てみると……顔を赤くした響と俺の手……(何がと言わないが)Oh、ジャストフィット……

 

「悪い!!」

 

 すぐさま起き上がり、体勢を立て直す。

 

「……」

「な、ナゼミテルンディス!?」

 

 翼のジト目が痛かった。

 

「こんなところで、ラブコメってんじゃねえよ!!」

 

 その言葉と共に、俺に鞭が振るわれるが翼が剣で切り払い、なんとか助かった。

 そして、一瞬の攻防の後、二人はそれぞれ獲物を構えなおし、双方ジリジリと相手の出方を待つ。

 しかし、そこに響の声が割り込む。

 

「待ってください!! 翼さん、お兄ちゃん!! 相手は人です、同じ人間ですよ!?」

 

「「戦場で何を馬鹿なことを!!」」

「……」

 

 翼と相手の少女は同時に叫んだが、俺も同じ気持ちだった。あまり乗り気にはなれない。が、しかし、相手を迎え撃たなくてはならないのも事実。

 

「響、相手も何か譲れないものがあって戦っているんだろう。それにこっちにも譲れないものがあるはずだ。だったら、ここは戦うしかないだろ。……つーか、違っても戦いそのものが目的になってる奴なら、話し合いに応じるわけもないしなぁ……これが世界の闇か……」

「そっちのラッキースケベ野郎はわかってんじゃねーか。いいねぇ、ゴチャゴチャ建前無しなのはさぁ!!」

 

 三度、振るわれる鞭。俺と翼はそれをサッと躱し、距離をとる。

 しかし、響は避けようとしたが肩に当たり、軌道の読みにくい鞭を完全に避けることは不可能だったらしく、衝撃で後ろに転がった。

 俺は、それを見てすぐさま倒れ伏した響に駆け寄る。

 

「っち、響!!」

「待て、士遊!!」

「おっと、よそ見か?」

「くっ!!」

 

 翼と少女はつばぜり合いになりながら、ジリジリと互いに力を込めていく。

 

「その鎧は、ネフシュタンの鎧!! 貴様、どこでそれを!!」

「へぇ、てぇことはあんた、この鎧の出自を知ってんだ?」

「忘れるものか! 私の力が足りなかった!! そのせいで失われたモノを、命を!! 忘れるものか!!」

 

 翼の剣が鞭を押し返す。

 

「私は決めたのだ!! 今度こそ、この手で、この剣で!! 守って見せると!!」

「何の話をしてやがる!!」

「まずは、その鎧を返してもらうぞ!!」

 

 翼の剣が閃き、少女に的確に切り込まれていく。少女は鎧で剣を滑らせ、ダメージを防ごうとする。しかし、急に動きが早く、そして、キレが良くなった翼の速度に追いつけず徐々にダメージを負っていく。

 

「っち!! ちょせぇ!!」

「っく!!」

 

 一瞬の隙をつき翼の腹を蹴り、距離をとる少女。翼も一旦距離をとる。

 

「なんだ、マシな奴もいるんじゃねえかよ……」

 

 少女はそう言い捨てると、先程までの余裕を捨て、目に真剣さを宿らせる。

 翼はさらに警戒を強めるように、しっかりと剣の柄を握り直し、中段に構える。

 二人は互いに距離を保ったまま、睨み合う。

 

「やはり、さすが完全聖遺物という訳か……」

「はっ!! ネフシュタンの力だなんて思うなよ? あたしのてっぺんはまだまだこんなもんじゃねぇぞ?」

「なるほど……だが、こちらも負けらないのでな!!」

 

 その言葉と共に、翼は少女に向かって踏み込み、瞬間、もう一度激しくぶつかり合うのだった。

 

「お、お兄ちゃんすごい……何がなんだか訳が分からない!!」

「緊張感なさすぎだ……まぁ、同じ感想だがな」

 

 少女が鞭をうねらせ攻撃を仕掛けると、翼がそれを切り払いすぐさま切り返す。

 

「でも、そろそろ援護しないと」

 

 俺が援護に向かおうと動き出そうとした瞬間、隙を縫って少女は杖を取り出し何かを俺達に向かって射出する。

 それはノイズだった。一瞬で大量のノイズが目の前に現れたのだ。

 

「おおっと、テメーらはそいつらの相手をしてな!!」

「あの杖、ノイズを召喚出来るのか!?」

 

 恐らく聖遺物……ノイズを使役できる聖遺物が存在していたなんて……

 

「いや、考えるのはよそう。とにかく、片づけるぞ!!」

「うん」

 

 響が歌い始め、俺はノイズに向かって拳を振り上げながら飛びかかる。

 俺と響きのコンビは危なげなくノイズを倒していく。

 しかし……

 

「くあ!!」

「翼!!」

 

 それは起こった。翼が少女に蹴り飛ばされたのだ。

 俺は吹き飛ばされた翼をキャッチする。

 キャッチしたはいいが翼の状態は、酷い。ボロボロな状態だ。

 このまま戦わせておけないと思った俺は、翼と戦ってる相手を交代する。

 

「……少し無茶しすぎだ。少し休め」

「しかし……私の不始末は……」

「いいから、休んでろ。……俺にも背負わせろよ。あの時、力があればって思ってるのはお前だけじゃないんだからさ。……響、翼を頼めるか?」

「うん、気を付けて」

「ああ」

 

 無理やり響に翼を押し付け、少女の方に向き直る。

 

「悪いが選手交代、こっからは俺が相手だ!!」

「っは!! 誰が相手だろうが関係ねぇ!! 待ってやったんだから精々踊れよ?」

「そうか、んじゃ、まぁ……行くぞ!!」

 

 ダンッと、地面を踏みこみ一気に少女へと接近する。

 

「な、はやっ!!」

 

 予想外の速さだったのか、反応に一瞬戸惑ったようだ。

 チャンスだ!!

 

「アームドギアを使え!!」

「アームドギア……? こうか!? 来い、俺のアームドギア!!」

 

 翼の声が聞こえてきたので、俺は出来るかどうかわからなかったがアームドギアを呼び出す。腕を前に掲げると俺の腕に、羽のような形状の機械が現れる。これが俺のアームドギアか……しっかし、なんだか決闘盤に似てるなぁ……

 とりあえず、使ってみるか!!

 俺は少女に向かって腕の羽のような機械を、腕ごと水平に振るう。

 

「だああああああ!!!」

 

 俺が睨んだ通りならば、これはよく特撮とかで見る、通称『アームカッター』だ。

 

 睨んだ通りならば……

 

 パキンッ!

 

「パキンッ? え、ちょ、めげたぁ!? あっだ!?」

「ふざけてんじゃねぇ!! これは戦いなんだぞ!?」

「……ふざけてねぇよ!!」

 

 しかし、上手くいかず、鎧部分に当たった瞬間めげる……つまり壊れてしまい、少女に怒られ、蹴られた。

 これはこういう使い方じゃないみたいですね……しかし、いったいどうやって使うんだ。

 

「目の前にいるのに、考え事かよ!!」

 

『NIRVANA GEDON』

 

 鞭からエネルギー球を生成し、俺に向かって投げつけてくる。名前が付きそうな大技だ。きっと、アニメならばカットインが入ってるであろうと予測できる。俺はとっさに顔の前で腕をクロスさせ、その技をガードする。

 

「ぐあ!!」

 

 そうこう考えている内に、一発顔に食らってしまった。ガードしたのと、バイザーでおおわれているためダメージはあまりなかったが、衝撃で後ろに吹っ飛ぶ。

 

 体勢を立て直そうとするが、すでに吹っ飛んだ先に少女がいた。そして、追撃。もう一度、違う方向に吹き飛び、今度は何とか受け身を取り、地面を削りながら止まる。

 

「クソッ、早すぎるだろ……」

「ちげぇよ、お前が遅すぎるんだ、よっ!」

「ぐっ」

 

 鞭と殴打による連続攻撃で、俺の体には小さくない傷がついて行き、出血も決して無視できないくらいになっていた。しかし、致命傷となる傷は負っていない。

 俺は攻撃を何とか受け流すくらいしか出来なかった。

 それでも、俺の頭は殴られながら冷静に相手を分析していた。 

 

「そらそら、どうしたぁ~?」

 

 攻撃は一層激しくなる。しかし、思ったよりダメージを受けていない。

 間違いない。隙が無く強者の風格はある。が、しかし、俺が見た限り、コイツは攻めが単調だ。そこらの不良の攻撃と大差ないと思えるほどに。あまり接近戦が得意でないと見える。

 実際、戦闘のプロでもない俺が攻撃を受け流し続けていられるのも、偏に――

 

「至極、読みやすいっ!!」

 

 そう攻撃が手に取るようにわかる、これに尽きる。いくら早くても、軌道が読めればなんてことはない。後は、それに合わせるだけだ。

 次の瞬間、俺は一気に攻勢に出た。

 

「つかまぁえたぁ」

「な、あたしのネフシュタンの鞭を!?」

「掴んで!! 引っ張る……だ、らあああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 攻撃時に、叩きつけられる鞭を掴み、引き寄せ、空中に浮いたネフシュタンの少女のがら空きの体に、渾身の右ストレートを叩き込む。

 

「がはっ!!」

 

 えぐりこむように腹に吸い込まれた拳が鈍い衝撃を生み、ネフシュタンの鎧を砕きながら少女は後ろに吹き飛んでいき、15mほど地面を転がった末、止まる。

 

「く、ケホッ!! ゴホッ!! くそっ!! ッツ!? あ、あっ、ぐ、あぁぁぁァァァァァ!!!」

「へ、どうだよ……風鳴おじさん直伝、稲妻クラッシュの威力はぁよぉ……」

 

 少女はせき込みながら立ち上がろうとするが、急に激痛に顔を歪ませ苦しみだす。

 顔を歪ませながら立ち上がってこちらを一睨みした後、鎧の鞭を地面に叩きつけ、砂煙を上げると急いでその場を離脱した。

 

 それを追おうとするが、腹に鋭い痛みが走る。腹に違和感があると思ったら、最初の蹴られた場所が赤黒く変色していた。どうやら、ここからも出血しているらしい。

 このまま続けていたら、危なかった……

 

(あ、やべぇ、駄目だ。これは、血ィ、流し、すぎ、た……)

 

 薄れゆく視界の中で逃げていくネフシュタンを纏った少女を見ながら、俺は意識を失うのだった。

俺のデッキの中のあるカードが、何かに反応するように光っていることにも気づかずにに――――

 




はい、いかがでしたでしょうか?
おい、デュエルしろよ!! と、言われるかもしれませんが戦闘と決闘の複合スタイルで行きたいと思っていますので、お付き合いいただければ幸いです。
これからも、ちまちまと更新していきたいと思っているのでよろしくお願います。

それではまた次回!!

次回予告

意識不明となり病院に搬送された士遊。目覚めたら、すでに10日間経っていた。
響からあったことをいろいろ教えられるが、ふとしたことでネフシュタンの少女の名を知り、士遊に衝撃が走る。

そして、始まる翼とのデュエル……

次回、第8話 迷いを打ち砕け!! 武神帝-カグツチ!!

デュエルスタンバイ!!



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