IS〜Accelerator~ (ラヴィエンテ改)
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プロローグ
私(わたくし)、鈴科(すずしな)通行(みちゆき)は転生者である。
………………そんな可哀想なものを見る目はやめてくださいマジで。
大学の研究室で機械を組み立ててる最中にどこで配線を間違えたのやら、ショートして破裂。破片が頸動脈に突き刺さり即死した。
んで、神に出会って転生。ふざけてハッキングしたパソが某天災のものだと知った時、ここはISの世界なのだと気づいた。
その時は本気で社会的あぼんを覚悟したが
「あの、すいませン束さン。もう一回言ってもらっても?」
「君優秀だし白いし、ウサギつながりで束さんの助手になってもらうことにするよ!」
「明らかに後半の理由が本命ですよねェ!人のコンプレックスを抉って楽しいンですかァ!?」
「うん!」
「清々しい顔で言い切られたァ!この人ドSだろ絶対!」
みたいなノリで助手になって、お約束とばかりにISを起動。
晴れてIS学園に入学させられた。スピードバカの専用機とチートな体を持って。
* * *
気まずい。猛烈に気まずい。
織斑一夏よりむしろこっちに注意が向いてる。白いからか?白いからなのか?
ちっくしょうあのクソ神、こんな目立つ姿にしやがって。今度会ったらどうしてくれようーー
スパァン!
「ぶっ!?」
「考えごととはいい度胸だな。お前の番だ」
「すいませンでした」
そういえば今は自己紹介の真っ最中だった前を見れば山田先生が涙目だ。罪悪感ぱねえ。
しかしさすが元『ブリュンヒルデ』。頭をかち割られるかと思った。
「………………二人目の男性操縦者の鈴科通行でェす。好きなものは睡眠とコーヒー。嫌いなものは特にないンですがモヤシだのウサギだの言った人には条件反射で拳が飛ぶンで注意してくださァい」
これはギャグでなくマジな話である。束さん以外からこう呼ばれるとガチで無意識の内に右ストレートが飛ぶ。
『かっこいー!』
『無気力なところもいいわね!』
『華奢なアルビノ美少年ハァハァ』
『ああ!その赤い瞳で蔑むように見て!罵って!』
『一夏通行………………アリね!』
………………分かっていた。分かっていたけどこれはひどい。
(せめて腐った妄想は本人の前では自重して欲しいンだが)
早くも頭痛薬と胃薬が恋しくなってきた。市販の奴には耐性が出来て効かないんだよな………………ははは。
こうして、俺の前世から通算7回目の、前途多難な学園生活がスタートしたのであった。
* * *
休み時間。机に突っ伏してダレていると、肩を叩かれた。
顔を上げると、原作主人公織斑一夏くんがいた。
「えっと、鈴科?だっけ。これからよろしくな!」
おお、笑顔が光り輝いている………………
「………………よろしくゥ。名前でも名字でも呼びやすい方で呼んでくれ」
「じゃあ鈴科で。俺のことは一夏でいいぜ」
がっちりと握手をかわした。友達一人目ゲット。しばらくラボにこもってたからコミュ障になってないか心配だったが、大丈夫らしい。
そうこうしている内に一夏は箒さんに引きずられていってしまった。ああいうことをするから鈍感になるんだと思う。
密かに一夏にエールを送りつつ、再び突っ伏して心地よい眠りの海に沈むことにした。
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授業にて
「………………眠ィ」
授業の感想である。なにせずっと束さんのところで徹底的にしごかれたのだ。この程度は身体に染み込んでいる。
山田先生が授業を進めていく一人だけ青ざめている人間がいた。いうまでもなく一夏のことだ。
「織斑くん、分からないところはありますか?」
山田先生が一夏に問い掛ける。ある程度予習してればしっかり理解できるとてもいい授業だ。さすが山田先生。
「えっと、いいですか?」
「はい、分からないことを教えるために先生はいるのですから」
うん、素晴らしい。『分からない?まあとりあえず次いくよ次!』だった束さんとは大違いだ。
「全部分かりません」
「え………………」
「クッ………………!」
や、やばい。生で見ると笑える。
「織斑、入学前の参考書は読んだのか?」
織斑先生が硬直した山田先生の代わりに質問。
「古い電話帳と間違えて捨ててしまいました」
バシン!!
いい音したな、ざまあ見
ドバシン!
「がふっ!」
気のせいか出席簿に入った力が強い。割れる、これ以上強くなったらガチで割れる。心の中でm9(^Д^)プギャーしてただけなのになにこのブラコン。
「全く必読と書いてあっただろうが。あと織斑を笑った以上は理解は完璧だな鈴科?」
「すみません」
「ハイ。山田先生のわかりやすい説明のおかげで」
「そ、そうですか、ありがとう!」
山田先生の表情がぱあっと明るくなった。一夏の発言のせいで不安になっていたらしい。罪悪感が………………
「全く………………後で再発行してやるから一週間で覚えろ。わかったな」
「いや、一週間であの分厚さはさすがに」
「やれと言っている」
ぱねえ、プレッシャーぱねえ。
「はい…分かりました」
二時間目が終了して一夏はこっちにつかつかと歩み寄ってきた。
「爆笑はひどいだろ!」
「悪ィ。電話帳まではまだ我慢できたンだが、それからはもォ無理だった………………プッ、思い出させンな笑えてくるだろォが」
「悪いと思ってないだろ絶対!」
はたから見れば漫才にしか見えないやりとりをしていると、
「ちょっとよろしくて?」
………………来たよ来やがったよ来ちゃいましたよの三段活用。
金髪ドリルのお嬢様、イギリス代表候補生、セシリア=オルコットさん。
「え?」
「あン?」
………………俺がチラ見しただけでなんでビクッとしてるんだ!?そんなに目つき悪いか!?
「ち、ちょっと聞いてますの?お返事は?」
「あぁ聞いてるけど何の用だ?」
「右に同じィ」
「まぁ何ですの、そのお返事は?わたくしに声をかけてもらえるだけでも光栄なことなのですよ、それなのに何なんですのその態度は?」
「悪いな、俺たち君が誰か知らないんだ」
「わたくしを知らない?このセシリア・オルコットを?イギリスの代表候補生にして入試主席のこのわたくしを!?」
(いや、俺は知ってますけどねェ)
でも自信家すぎるだろう。
「あのさ、質問いいか?」
「あら、何なんですの?高級かつ優しいこのわたくしが特別に聞いてあげましょう」
高級ってなんだ高級って。メロンじゃあるまいし。
「代表候補生って、何?」
クラス全員がこけた。俺は醒めた目で見てやった。
「あっ…あっ…あっ!」
「あ?」
「あなた本気で言ってますの!?」
「おぅ知らん」
「………………哀れだな。一夏。本気で言ってんだとすりゃ抱きしめたくなっちまうぐらい哀れだわァ」
「いや哀れってなんだよ哀れって!」
「つゥか字面から想像しろよ。国家代表IS操縦者の候補として選出される一握りの連中………………で合ってるよな?オルコットさン」
「そう、エリートなのですわ!本来ならわたくしのような選ばれた人間と、クラスを同じになる事すら奇跡………………幸運なのですわ。その事を理解しなさい!」
いやねえよ。
「そっか、それはラッキーだな」
「………………馬鹿にしてますの?あなた」
「………………多分こいつのコレは天然でェす。諦めてくださいオルコットさン」
「お前俺のこと嫌いだろ!」
「ホントいじりがいがあるよなァお前」
「ほらみろ遊んでんじゃねえか!」
「私を無視しないでいただけませんこと!?」
「「あ」」
漫才してたら素でセシリアの存在が頭から飛んでた。
「大体、あなたISのこと全然知らないくせに、よくこの学園に入れましたわね。男でISを操縦できると聞いてましたから、少々期待していたのにがっかりでしたわ。態度も全然なってないし」
「「俺たちに何かを期待されても困るんだが」
狙ってハモった。
あれ、おかしいな。ほとんど発言してない俺の印象までダウンしてるぞ。
「まぁでも?私は優秀ですから?貴方達の様な人間にも優しく教えてあげてもよくってよーーISで分からない時がありましたら、まぁ………………泣いて頼むのでしたら優しく教えてあげてもいいですわよ。何しろわたくし、入試の実技試験で只一人、教官を倒したエリートの中のエリートですから」
「あれなら俺も倒したぜ」
「えっ…?」
「俺は負けだったが、すげェな二人とも。元ブリュンヒルデの織斑先生に勝つなんてよォ」
『ええっ!?』
教室が湧いた。うるさい。
「鈴科、お前千冬姉が相手だったのか!?」
「お前らもそォじゃねェのかよ」
「いや俺は山田先生だったぞ!?」
知ってるけどな。
「ふゥん」
ちょうどそこでチャイムが鳴った。
「ぐぐぐ、また後で来ます!逃げないことね!よくってよ!!フン!」
そういってセシリアは自分の席に戻った。
(一夏ァ。これはあれだ。多分変なプライドとか他人とのコミュニケーションの経験とかの欠如とかのせいで間違った方向に高校デビューしちまったンだ。生暖かい目で見守ってやろォぜ)
(だったら素直に言えばいいのにな)
そして次の授業が始まった。
* * *
「あぁ、織斑くんに鈴科くん。まだ教室にいたんですね。よかったです」
俺と一夏が教室にいると山田先生が来た。どうやら俺達に用らしい。
「山田先生、どうしたんですか?」
「えっとですね、二人の寮の部屋が決まりました。申し訳ないんですが、織斑君は相部屋になってしまうんです」
そういって山田先生が俺達に渡したのは部屋番号が書かれたルームキーだった。
「先生、俺の部屋って決まってなかったんじゃないでしたっけ?前聞いたら自宅から通勤するってことでしたけど」
「俺はホテルから通う手筈になってましたよねェ?」
「それなんですけど事情が事情なので一時敵に部屋割りを無理矢理変更したらいんです。二人ともそのあたりの話は政府から聞いてますか?」
俺は政府からも狙われてるけどな。スキあらば束さんの居場所を聞き出そうとしてくる。俺も連絡手段もってるだけで、最後にラボから離れてからの行方は分からないっての。
「そう言うわけで政府特権で、とにかく寮に入れるのを最優先したみたいです。1ヶ月もすれば二人の方も用意できますから、しばらくは我慢してくださいね」
「そうですか、部屋の件はわかりました。なら一旦家に帰って荷物を用意しないと………………今日はもう帰っていいですか?」
「俺も荷物を取りに戻りたいンですけど」
「あぁ、いえ、二人の荷物ならもう」
「私が手配して持ってこさせた………………鈴科、あの荷物の量は何なんだ?」
俺達が後ろを向くとそこには織斑先生がいた。
「織斑先生が俺達の荷物を?」
「そうだ。ありがたく思え」
「「ありがとうございます」」
中身は工具とか機材とかだ。あんまり触られたくなかったが、それを言ったら失礼だろう。
「じゃあ、時間を見て部屋に向かってくださいね。各部屋にはシャワーがありますけど、大浴場もあります。学年ごとに使える時間は違いますけど…いっ、今のところ織斑くんと鈴科くんは使えません」
「えっ?なんでですか?」
「………………ホント常識が通用しねェのなオマエ。そンな露骨に欲望押し出してンじゃねェよ」
「え?え?」
「アホかお前は。まさか同年代の女と一緒に風呂に入りたいのか?」
「お、織斑くん、女子と一緒にお風呂に入りたいんですか!?」
「気まずいと思うがなァ」
「いっ、いえ、入りたくないです!」
墓穴掘りやがった。
「ええ?織斑くん女の子に興味がないんですか!?それはそれで問題が………………」
「うン、ちょっとオマエとの付き合いは考え直す必要がありそォだな」
その会話を聞いていた女子が
「織斑君って、男にしか興味ないのかな?」
「それはそれで……うん、アリね」
「どっちが攻めでどっちが受けかしら」
「過去の交友関係を洗うべきね!」
「腐った会話はせめて本人のいないところでやってくれませンかねェェェェェェェェェェ!?」
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