勇者の花と桔梗の花 (水甲)
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第1話 桔梗

最初に聞こえたのは何人もの人達の叫び声と救急車の音。一体何があったのか分からなかった。何が起きたのか知ろうと思ったけど、何故か身体が動かなかった。

 

僕は必死に身体を動かすけど駄目だった。しょうがない、段々疲れてきたし諦めよう。どうせ後で知ろうと思えば知ることができるから……

 

僕はそのまま眠りについた。

 

 

 

 

 

 

次に目覚めた時、最初の光景は白い天井だった。

 

「ここは……」

 

そう呟くと近くにいた女性が何故か焦っていた。

 

「大丈夫ですか?ここがどこか分かりますか?」

 

確か僕は家族と一緒に出かけていたんだった。でもおかしい。普通目が覚めるなら自分の部屋だけど、こんな白い天井も話しかけてきた女性も全く見覚えがない。

 

「僕は……」

 

「貴方は大橋で起きた災害に巻き込まれたんですよ」

 

災害?そういえば何か大きな地震が起きたような……

 

「今、先生を呼んできますね」

 

女性はそのまま部屋から出て行った。出て行く際女性が着ていた服を見て気がついた

 

「あれは白衣。それじゃここは病院?何で僕は病院に……」

 

起き上がろうとした瞬間、何故か上手く起き上がることが出来なかった。おまけに身体に違和感もあった。

 

左腕は動かすことが出来るのに、右腕が動かない。いや、動かないのではない。感覚がなかった。僕は右腕を見ると……

 

「あ、あぁ」

 

右腕が無かった。どうして僕の右腕がないんだ。それに災害に巻き込まれたって言っていたけど……僕以外の家族は……一体

 

「う、うあ、うあああああああああああああ」

 

全てを理解した僕は叫んだ。絶望、それを知ったのはこの時だったのかもしれない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから数日がたった。右腕を無くしたショックや家族を無くしたショックで僕はひどく暴れていた。ようやく落ち着いたのは今日だった。

 

その日は何故か仮面を着けた大人がお見舞いに来ていた。

 

「その格好暑くないんですか?」

 

仮面の人にそう言うと、仮面の人は優しい口調で答えてきた

 

「いえ、慣れていますから」

 

「変な慣れですね。それで僕に何か……さすがに親戚にそんな格好する人はいませんよ」

 

「私は大赦のものです。貴方にお伝えしなければいけないことがあるのです」

 

「伝えなければいけないこと?」

 

「はい実は……」

 

大赦の人間は僕の両親について話した。どうやら僕の両親は大赦に所属していたらしい。両親はそこまで偉い方ではなかったらしいが、僕の祖父は結構偉い役職だったとか……今回両親は滅多に取れない休みを取れた祖父と出かけると話していたらしい。

 

「そういえばあんまり仕事の話とかしてませんでしたね。お爺ちゃんもあんまり見たことなかったし、いつもお年玉は両親が代わりに渡してきたし……それで僕にそれを話してどうするんですか?」

 

「これから先についてです。貴方はどう暮らしていくんですか?」

 

「あぁ、そういうことですか。大赦が僕の生活を支えてくれるって?それだったらそれに甘えますが」

 

「理解が早く助かります。それと右腕の方ですが義手を着けてみてはどうでしょうか?」

 

「う~ん、無いと生活に支障がありそうですし着けてみよっかな。そういえば大赦の人、聞きたいことがあるんだけど」

 

「はい?」

 

僕は事故に遭う前に見たことを思い出した。アレを見た直後災害が起きたんだっけ

 

「事故に遭う前に僕だけが変な場所にいた気がするんです」

 

「それは……どういうものですか?」

 

大赦の人の口調は焦っている感じがした。

 

「変な色をした森?というより木々の海みたいだったかな?」

 

「………少し調べてみますね」

 

大赦の人はそう言って去っていった。

 

 

 

 

 

 

それから僕は変な検査を受けたり、義手をつけたり、リハビリやったり、中学に上る前までずっと病院で生活していた。勉強の方は大赦の人が見てくれたりした。

 

 

 

そして中学校の入学式、僕は彼女たちと出会うのであった。

 

一人は車椅子に座った少女。

 

もう一人はその少女と親しげに話す少女。

 

「あ、はじめまして、私結城友奈。それでこっちは」

 

「東郷美森です。出来れば東郷って呼んで欲しいかな」

 

「結城に東郷か」

 

「私は友奈でいいよ。貴方は」

 

「俺は桔梗。神宮桔梗。よろしく」

 

この出会いから全てが始まろうとしていたのは僕たちは知らなかった。

 

 

 




初めまして水甲です。ずっと書きたかったので書いていきたいと思います。


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第2話 勇者部

讃州中学に入学してから早一ヶ月が経った。入学当初は自分の右腕について色々と気を遣われた。とは言え僕自身あまり気にしない性格だったのと二人の友人のおかげで、今は普通に接してくれている。その友人とは……

 

「桔梗くん。部室行こう」

 

彼女は結城友奈。入学してからの友達である。彼女の性格上困った人は放っておけないタイプ。だからこそ、俺のことを結構気にかけてくれている。そしてもう一人は

 

「最近部活に来てないって風先輩が怒ってましたよ」

 

東郷美森。友奈と同じ入学直後の友達である。見た感じは大和撫子的だが、若干性格が変わっていたりする。彼女は両足が動かないため車椅子での生活をしている。僕と似た境遇とはいえ、互いに同情しあったりせず、逆に気を使われていた。

 

「一応先輩には連絡してあるんだけど……」

 

「それでも一週間も部活に来ないのは寂しいよ」

 

「今日は行くだろう」

 

「今日だけじゃなくて毎日来たほうが先輩に怒られないんじゃないの?」

 

東郷がそう言うが、僕としては毎日行きたいけど、あっちの方で忙しいのだ。やれ会議に参加しろだの、やれ勝負しろだの、やれ、退屈しているから遊び相手になってくれ。ただしくれぐれも失礼のないようにだの。面倒くさい仕事を任されていたりする。拒否をしてもいいけど、お世話になっている分断ることも出来ない。

 

(というかあっちもそう言った連絡くらいは入れておけよ)

 

心のなかでツッコミを入れるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は来たわね。桔梗」

 

仁王立ちで部室に待ち構えていたのは犬吠埼風先輩。僕と友奈と東郷が入った部活『勇者部』の部長だ。いい先輩なんだがやれ女子力がどうのこうのって結構面倒くさかったりする。

 

「部長、部活には来れなかったですが、一応部活動はしてましたよ」

 

「へぇ、どんな?」

 

「負けず嫌いな子と遊んだり、暇を持て余した子と遊んだりとか……」

 

「遊んでるだけだね」

 

「遊んであるだけね」

 

「遊んでだけじゃない」

 

友奈、東郷、部長の三人にツッコミを入れられた。いや、違う。遊んでるように見えてしっかり働いていたんだぞって言い訳したいがこれ以上は何を言われるか分からないし、やめとこう

 

「それで部長。今日は何をするんですか?」

 

「一応桔梗用に依頼があるわよ」

 

部長はそう言って一枚の紙を渡した。受け取り読んでみる

 

「絵ですか?」

 

「そう、桔梗って絵を書いてって言う依頼が入るのよね。まぁ私の次くらいには上手いだろうけど」

 

部長の言葉を聞いて苦笑いをする友奈と東郷の二人。部長の絵は何というか……個性的だからだと思う

 

「どんな絵を描くの?」

 

「迷子の猫の絵だよ。まだ飼い始めたばっかりで写真とか無いんだって、一応特徴は書いてあるから大丈夫かな」

 

「それじゃあ、友奈とあたしはゴミ拾い。東郷はホームページの更新。桔梗の絵が完成したら載せるように」

 

「了解しました」

 

「はい」

 

敬礼をする東郷と元気に頷く友奈だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部長と友奈の二人が外に出かけ、部室に残った僕と東郷は自分の仕事に集中していた。すると更新が終わったのか東郷は話しかけてきた。

 

「桔梗君はどうして絵が上手いの?」

 

「いきなりだね。最初はリハビリのために始めたんだけど……」

 

義手を着けてからはリハビリのためにしばらく風景画を描くようにしていた。慣れるまでは下手だったが、それでも描いているうちに段々楽しくなってきたのか、リハビリから趣味へと変わっていった。

 

「趣味になってからは必死に練習もしたな。多分そのお陰だと思う。でも何でそんなことを聞いたんだ」

 

「部活以外で登下校とか休み時間でも一緒にいること多いけど、桔梗君のことあまり知らないから……」

 

「まぁそうだな。僕も東郷と二人っきりになるのも初めてだから、何を話せばいいか考えていたけど……」

 

「そうだね。でもこれからは話す機会増やそう」

 

東郷は優しく微笑んだ。僕は何故か東郷の微笑みを見て何だか顔が熱くなった気がした。そんな時、スマホに二つ連絡が入った。一つは部長からだった。

 

『二人の仕事が終わり次第、帰りにかめ屋に集合』

 

ともう一つはお世話になっている場所からだ。

 

『例の件に関して、電話にて連絡を』

 

の二つだった。僕は絵を完成させ、電話をすると東郷に言って部室から屋上へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

屋上に着き直ぐに電話を入れた。

 

「もしもし、神宮桔梗です。お待たせしました」

 

『いえ、折角の学校生活を邪魔をして悪かったわね』

 

「大丈夫ですが、何か問題でも?」

 

『こっちは大丈夫よ。………様もあまり迷惑をかけたら悪いと思っているわ』

 

「それはいいですが、それで要件は?」

 

『現在犬吠埼風には素質ある者に送ったシステム。貴方用が出来ていなかったわね』

 

「偶然とはいえ僕も何ですね」

 

『えぇ、それも彼女たちとは違い必ずなると言われるほどにね』

 

「……もしも彼女たちが外れだとしても、いや他の子達も外れたとしたら、僕は一人でも戦います。そう決めたんですから」

 

『貴方には苦労をかけるわ。引き続き彼女たちを見守って上げなさい。それとくれぐれも東郷美森には真実を伝えないように』

 

「わかりました」

 

僕は電話を切り、部室へと戻りながら願った。

 

願わくば彼女たちが外れますように……そして一人でも戦うと……

 

 

 

 

 

 




第2話更新です。しばらくは日常編やっていこうと思います。

二話目を書いてて大赦の人がどんな会話をするのか分からず、こんな感じだろうと書いてみました。

因みに負けず嫌いの子と暇を持て余している子は三話目で出ます。


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第3話 大赦へ

今回は原作を知らない人にたいしてネタバレが入ってますので注意です


日曜日、本来なら勇者部の活動で保育園にボランティアへ行くはずだったのだが、僕は大赦へ来ていた。さすがにこの間みたいに部長に怒られるのは嫌なのでちゃんと欠席することを伝えておいた。

 

 

 

 

僕はある一室の扉にノックをした。本来ならこの部屋は重役の人間くらいしか入れない場所。だけど僕はこの部屋の主に自由に入ってもいいと言われているが……

 

(とはいえ、好き好んでこんな部屋に入ろうとは思わないな。正直お世話係の人はすごいとは思う)

 

部屋にはまるで神を崇めているように沢山の物が置かれていた。その部屋の奥にベッドに横たわる少女がいた。

 

「やっほ~きょうくん」

 

彼女は乃木園子。体中に包帯が巻かれ痛々しい姿をしている。彼女自身そんなの気にしない感じで僕を笑顔で出迎えてくれた。

 

「一週間ぶりだね」

 

「あぁ、そうだね。園子様」

 

「むぅ、様はいらないよ~」

 

彼女は怒った顔をしている。彼女は僕に対しては対等の関係であって欲しいと思っている。だけど僕からしてみれば彼女のほうがずっと立場は上だ

 

「敬語で話そうか?」

 

「怒るよ」

 

彼女は笑顔でそう言うが声がかなり怒っている。いい加減誂うのはよそう

 

「それで今日はまた暇つぶしに呼んだのか?」

 

「だって私が自由にここに呼べるのって、お世話してくれる人と貴方くらいだもん。それにわっしーのことも聞きたいから」

 

わっしーこと鷲尾須美。乃木園子の親友である……いやだった少女というべきか。園子は今鷲尾須美がどうしているか僕に聞きたがっている。僕はこの一週間あったことを彼女に話していった

 

「そっか~きょうくんと仲がいいんだね」

 

「……園子様」

 

「様はいらないって言ったよね」

 

「ワザと言ってるんだ。僕からも聞きたいことがある。彼女たちが勇者になる確率は本当に高いのか?」

 

「……高いよ。彼女たちの適正値は他の子達よりもずっと高いし、わっしーも配置してるからね」

 

「逆に選ばれない確率は?」

 

「どうだろうね?選ぶのは神樹様だから……きょうくん、聞いてるよ。どうしても貴方は

一人でも戦うって……」

 

「……それはあの日からずっと決めていたんだ」

 

僕は右腕を彼女に見せた。彼女はこの右腕を見るたびに悲しい顔をする。

 

「お前と初めて会った時から決めていた」

 

 

 

 

それは彼女と出会った日のこと、いつもの勉強の時間が何故か早めに終わり、大赦の人間が園子の元へ案内した。彼女の周りには沢山の大赦の人間がいた。

 

「はじめまして~神宮桔梗くんだね~わたしは乃木園子」

 

僕は彼女の姿を見て、自分と同じあの災害に巻き込まれたのだと思った。正直右腕一本で騒いでいた自分が恥ずかしいと思ったくらいだった。だけど彼女は……

 

「きょうくん。ごめんね」

 

「……何が?」

 

どうして彼女が謝るのか分からなかった。彼女が僕に対して何かをしたのか?でも、彼女と会うのは今日が初めてだ。

 

「私は人類の敵であるバーテックスと戦った勇者なんだ」

 

勇者、それにバーテックス。僕の親代わりの人から聞いてはいた。大赦はその勇者を支援する団体と僕は解釈はした。だけど彼女が勇者だからって謝る理由が見つからない

 

「あの大橋での災害。あれは私がバーテックスとの戦いで起きたことなの。私が頑張って戦っていればあんなことが起きなかった。貴方の両親は死ぬことなかった。だからごめんねって言ったの」

 

「………」

 

「別に怒鳴り散らしても、恨んでくれてもいいよ。それに好きなように殴ってくれてもいい。きょうくんにはその権利がある。大赦のことは気にしなくていい。そう頼んであるから……」

 

僕は黙りこんだまま、彼女に近寄り左手を振り上げた。彼女は目を瞑った。彼女はきっと痛いのだろうなと思っている。回りにいる大赦の人達も彼女が願ったことだから仕方ない。僕を攻めてもしょうがないと思っている。だけど僕は……

 

「ふぇ」

 

彼女の頭を撫でた。彼女自身も回りにいる人達も驚いていた。

 

「殴らないの?それに怒ったりとかは……」

 

「馬鹿だろ。お前」

 

「ば、馬鹿って……」

 

「園子、お前に怒鳴ったり、お前を恨んだり、お前を殴れば僕の家族は戻るのか?僕の右腕が生えてくるのか?ありえないだろ」

 

「そ、それはそうだけど……」

 

「それにそんなに身体がボロボロになるまで戦った女の子に怒ることなんて出来ない。普通なら褒めるところだしな」

 

「……きょうくん」

 

園子はわんわん泣き出した。きっと彼女自身救われたのだと思う。そして僕は決めたんだ。

 

 

 

 

 

 

「あの日から僕はもう二度と園子みたいな事にならないように考えたさ。その結果が……僕が頑張るということだ」

 

「……きょうくん」

 

「きっとこれも神樹が決めたことなんだろうね」

 

僕はそのまま部屋をあとにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大赦の開発部に立ち寄り、僕専用の端末を受け取った。これで来る日が来た時、戦うことが出来る。とはいえ、本来量産するのにかなり大変だと言われているシステムや端末を僕専用に作り上げてくれたのには申し訳ないと思った。

 

「今は普通の端末だけど、戦いが始まれば……」

 

「げっ、神宮」

 

フッと通路の前に三好夏凜と出会った。彼女は勇者候補の一人でもある

 

「夏凛。どうしたの?」

 

「あんたこそ、なんでいるのよ」

 

「お偉いさんと世間話と端末を受け取りに来た」

 

「今でも信じられないわね。あんたが勇者の適正があって、それも確実になると言われているなんて……本来なら女性しかなれないのに……」

 

「しょうがないだろ。選ばれたのだから……それで夏凛?今日は絡んでこないのか?」

 

「絡む?」

 

「いつもみたいに模擬戦とか……」

 

何故か夏凛は嫌そうな顔をしていた。何でだろう?

 

「悪いけどあんたとは戦いたくないわよ。試合なら反則なのに実践では通用することばっかりしてくるから、正直前のアレでトラウマよ」

 

「あぁ、アレは早く帰りたかったから」

 

あの時は面倒くさかったから、夏凛の頭を掴んで地面に叩きつけ、耳元で囁いて……

 

「うん、トラウマになるな」

 

「くっ」

 

「まぁバーテックスとの戦いは試合じゃないからね。いい経験だったでしょ」

 

「ふん、精々私が来るまで頑張るのね。直ぐに殲滅してあげるわ」

 

夏凛はそう言ってどこかへ去っていく。何だか夏凛とはこういう風に話して、別れるのが多いな……

 

「さて、時間があるし、部長に連絡して合流しますか」

 




ちょっとお知らせがあります。書いていて、タイトルを変えたほうがいいと思い、タイトルを変えます。『勇者の花と桔梗の花』に変えますのでよろしくお願いします。



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第4話 風の樹

大赦での用事を済ませ、部長に連絡を入れると部活動は終え、今はみんなでかめやに行っているらしい。

 

「とりあえず合流しますか」

 

僕は端末をしまうと何故か後ろから視線を感じた。

 

(大赦の人間か?僕のことを気に入らない位いるだろうと思ったけど……それにしても気配くらいは消せないのか?)

 

僕はため息を付き、後ろを振り向くと一人の少女が驚いて尻餅をついた。当然だ、きっと声をかけようとした瞬間に、いきなり後ろを振り向かれたら、誰だってビックリはするだろうな。

 

「えっと、大丈夫?」

 

「は、はい、す、すみません」

 

尻餅をついた少女に手を貸した。うん、大赦関係の人間ではないみたいだな。普通そうに見えるし……

 

「それで僕に何か用?何か声をかけようとしてたみたいだけど……」

 

「は、はい、その、これを落としたので……」

 

少女は一枚のハンカチを見せてきた。何か見覚えがあると思うと僕のだった。

 

「もしかして拾ってくれたの?」

 

「はい、拾ったのは良かったんですが、どう声をかけようか悩んじゃって……」

 

どうやら彼女は控えめな性格みたいだ。まぁ普通は知らない人に話しかけるのは怖いだろうな。というかよく僕は昔、大赦の人にあんなこと言えたな……

 

僕は彼女からハンカチを受け取り自己紹介をした。

 

「ありがとう。僕は神宮桔梗」

 

「あ、私犬吠埼樹っていいます」

 

ん?犬吠埼?はて聞き覚えのある名字だな……うん、もしかしなくても……

 

「もしかして風部長の妹さん?」

 

「は、はい、神宮さんも……」

 

「桔梗でいいよ」

 

「桔梗さんはお姉ちゃんの作った部活に」

 

「あぁ、入ってるけど色々と忙しくて幽霊部員だったりするけどね」

 

「あぁ、お姉ちゃん怒っていました。入部したのにあまり来ない部員がいるって」

 

悪いとは思っているよ。とはいえ連絡をしない僕も悪い。今日は連絡をしっかり入れてあるからいいけど……

 

「妹さんは……」

 

「あっ、樹でいいです」

 

「樹はこれから暇だったりは?」

 

「えっとまだ買い物が終わってなくって」

 

「そっか」

 

丁度今は夕方くらい、5月とはいえ彼女が買い物を終える頃には外は真っ暗になるだろうな。

 

「しょうがない」

 

僕は端末で部長に連絡を入れた。

 

『すみません。ちょっと困った人見つけたので合流できません』

 

と連絡入れた。すると直ぐに返信が来た

 

『何だって!?あの桔梗が!?人助けだと』風

 

『大丈夫?手伝おうか?』友奈

 

『明日は雨かしら?』東郷

 

うん、友奈以外は後でお説教だな。

 

「買い物、手伝うよ。ハンカチ拾ってくれたお礼」

 

「えっ、でも……」

 

「それに暗くなったら樹一人じゃ夜道は危ないしな。それに荷物持ちくらいは出来るしね」

 

「あ、で、でも」

 

「いいから男がそう言っているときは甘えとくんだよ」

 

「は、はい」

 

僕たちはそのまま買い物へと出かけるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

樹の買い物の荷物持ち兼ボディーガードとして犬吠埼姉妹の家に着いた。どうやら部長はまだ帰ってきてないみたいだな

 

「お姉ちゃん、部活で忙しいのかな?」

 

「部活で忙しいというよりかは寄り道で忙しいんじゃないのか?ちょっと前に連絡した時うどん食べてるって返信来たし」

 

「お姉ちゃん、夕飯もあるのに大丈夫かな?」

 

「あの人は胃袋が二つあると思うぞ。うどん用とその他の食べ物って分けられている感じで」

 

「それは……あり得そうですね」

 

二人で笑っているが、部長の帰りが遅いと樹が一人ぼっちになるし……さっき帰り道で話したが料理はあまり出来ないみたいだし……

 

「よし、折角だから夕食作るよ」

 

「えっ、でも、そこまでしてもらうのは迷惑じゃ……」

 

「僕が作りたいから作るんだよ」

 

僕は袖を捲り、料理を始めようとした。

 

「あっ」

 

すると樹は何故か驚いた声を出した。

 

「ん?あぁ、聞いてないんだ」

 

樹が驚くのは無理は無いだろうな。普通の人だったら義手を見たらビックリはするさ

 

「その右腕……」

 

「昔事故でね。まぁ色んな人に驚かれたよ。まぁ慣れたけどね」

 

「……すみません。驚いたりして」

 

「僕も急に見せてゴメンな。さて、樹にはいろいろと手伝ってもらうかな」

 

「は、はい」

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして部長が帰ってきた

 

「何かいい匂いがすると思ったら桔梗来てたの?」

 

「えぇ、樹と偶然会ったんですよ」

 

「桔梗さんのハンカチを拾ったんだよ。お姉ちゃん」

 

「なるほどね。あんたが困った人を見つけたって言うのは樹のことか、ありがとうね。樹に付き添ってくれて、更に夕食まで」

 

「これも勇者部の活動ですよ。僕と樹は先に食べてしまったんで、部長の分残してありますよ」

 

僕は食器を下げ、帰ろうとした。

 

「樹、ちょっとそこまで送って行くわね」

 

「うん、お姉ちゃん」

 

見送りは別にいいのに……とはいえなにか話したいことでもあるのか?

 

 

マンションの玄関まで来ると部長はあることを聞いた。

 

「桔梗、今日あんたが呼び出されたのは?」

 

「……僕の端末の受け取りとちょっと世間話ですよ」

 

「そう、」

 

俯きながら何を聞こうか迷う部長

 

「僕は別に戦うのはいいですけど、部長は樹のこと巻き込みたくないって思ってるんですか?」

 

「……普通そうでしょ」

 

「……普通ならね。でも部長は樹の他に友奈や東郷のことも心配してる。あんまり背負い込み過ぎないほうがいいですよ」

 

ましてや外れる可能性があるのだから……

 

「ねぇ、桔梗。本当にこういう事について話せるあんたがいてくれてありがたいわ」

 

「愚痴くらいは聞きますよ。部長」

 

「それと別に部長呼びじゃなくって、風でいいわよ。何だかあんたに部長って呼ばれるのはこそばゆい気がするの」

 

「そうですか、では風先輩」

 

「ううん、先輩もちょっと」

 

今日はいろいろと呼び方に関して怒られるな……

 

「我慢してくださいな」

 

「しょうがないわね」

 

僕は風先輩と別れ、自宅へと戻るのであった。

 

 




2話が東郷さん、3話が園子と夏凛ちょっと、そして今回が犬吠埼姉妹。夏凛については本編始まってから書きます。次回は友奈回となります


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第5話 友奈

ここしばらく大赦からの呼び出しがなく僕は結構勇者部に顔を出すことが多くなった。

 

「ようやく幽霊部員が来るようになって部長としては嬉しいわ~」

 

と風先輩が言うけど、本当に忙しかったんだけどな。まぁそこら辺は先輩もわかってるけど……

 

「でも桔梗くんはお家のことで顔を出せてなかったの?」

 

「一人暮らしだもんね、家事とか大変だよね」

 

東郷、友奈の二人には僕が大赦の人間というのは隠してある。これは先輩に言われてのことだ。自分たちが大赦の人間であることは、彼女たちが勇者になった時に明かそうと二人で話し合って決めた。

 

「一応保護者代わりの人がいるけど基本的に忙しい人だからね。普段から家に帰ってくることはないし、家事とかもある程度は教えてもらったから大丈夫だな」

 

「ねぇ、桔梗くん」

 

「何だ?友奈」

 

「寂しくない?」

 

心配そうに聞く友奈。確かにまだ中1の子供が一人で暮らしていれば普通なら寂しいとは思うけど……

 

「別に……慣れたよ」

 

「そっか、でも桔梗くんが本当に寂しいと思ったらいつでも……」

 

何故か変な空気になってしまった気がする。東郷もそれを感じ取っていた。というかちょっと怒ってない?

 

「桔梗くん?私もいつでも頼っていいからね」

 

「あ、はい」

 

何かほんとうに怖いんだけど……

 

「それじゃ、今日もゴミ拾いに行きましょう」

 

 

 

 

 

 

 

いつもみたいに野外でのゴミ拾いを始めた僕達。道行く人達に『えらいね~』とか色々声をかけられる。まぁこういう活動は別に嫌いではない。

 

「にしても三日前にゴミ拾いしたのに結構落ちてるものね」

 

「ポイ捨てをする人や動物が悪戯で散らかしたりしますからね。切りがありませんよ」

 

「でも、やらなければゴミは溜まっていく一方よ」

 

「まぁ街が綺麗になるのはいいことだからね」

 

僕、先輩、東郷の三人で話してるが、何故か一人だけ会話に入らなかった子が一人だけいた。

 

「そういえば友奈は?」

 

「ありゃ?あっちのほうまで行っちゃったかな」

 

「でも、それでしたら声をかけるはずですが……」

 

周りを見渡し友奈を探していると木の近くで跳ねているのを発見した。友奈の隣には小学生くらいの女の子がいた。よくよく見ると気に風船が引っかかったみたいだ

 

「あともう少し……えいっ!」

 

勢い良くジャンプをして風船をキャッチする友奈。だが、着地に失敗したのか尻餅をついた。

 

「あいたた、着地失敗しちゃった。でも、はい、風船はしっかり握ってたから」

 

「ありがとう」

 

友奈は少女の笑顔を見て、自分も笑顔でいた。少女は風船をギュッと握りしめて友奈に手を振って去っていった。

 

「大丈夫?友奈ちゃん」

 

「あ、東郷さん。それにみんなも、ごめんね、あの子の風船取ろうと思って……」

 

「まぁ、困った人を放っておけないのが友奈らしいわね」

 

「あはは~」

 

「それじゃあ、学校に戻りましょう」

 

「はい」

 

学校に戻ろうと提案する先輩だが、友奈はその場にジッとしたままだった。

 

「どうしたの友奈ちゃん?」

 

「あっ、えっと、ちょっと落し物して……探してくるから先に……」

 

「友奈、足捻ったのか?」

 

「えっ!?」

 

僕の一言に驚く友奈。やっぱりそうだったのか。基本的に運動神経いい友奈が着地に失敗したのが少し気になっていた。

 

「友奈ちゃん、本当?」

 

「う、うん、ちょっと痛くて……」

 

「全く何ですぐに言わないのよ」

 

「だって、皆に心配を……」

 

「友奈、言い訳は後から聞くから、ほら」

 

僕は友奈をおんぶしようとした。だけど友奈は

 

「だ、大丈夫だよ。ちょっと痛いだけで歩けるから……」

 

「やせ我慢はしなくていい。あまり頑固だとお姫様抱っこにするぞ」

 

「あら、それはいいわね」

 

「うぅ、そっちのほうがもっと恥ずかしい。分かったよ」

 

納得した友奈。僕は早速友奈をおんぶした。

 

「とりあえずここからなら僕の家が近いですから、そこで応急処置をしますよ」

 

「それじゃあ、今日はここで解散ね。東郷は私が送って行くわ。それでいい東郷?」

 

「はい、桔梗くん。くれぐれも友奈ちゃんのこと……」

 

「あぁ、任せろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕が住んでいるマンションに着くと早速友奈の足を処置した。

 

「捻っただけだから良かったな」

 

「ごめんね。重かったでしょ?」

 

「別にそんなことはなかった。とはいえ処置をしたとはいえここから帰るのも大変だろ。親に連絡は?」

 

「それが……今日二人とも帰りが遅いから……」

 

さて、そうなるとまたおんぶをして行くことになるが、ここに着いて降りた後、しばらくボーとしており、顔も真っ赤にしていた。まぁ普通同年代の男におんぶされることはないだろうし……

 

「明日は休みに入るからな……ここは」

 

僕はある人物に連絡をとった。その人物としばらく話すと……

 

「友奈、送っていく」

 

「えっとまたおんぶ?」

 

「流石に友奈も恥ずかしくって無理だろ。ちゃんとした方法で送って行くけど……正直僕の秘密を知ることになるかも……黙ってられるか?」

 

「う、うん」

 

 

 

 

マンションの玄関でしばらく待つと一台の黒い車が来た。友奈はその車に刻まれたあるものを見た。

 

「これって大赦の……」

 

「車に乗りながら話すよ」

 

 

車に乗り、僕は友奈に話した

 

「………僕の死んだ両親、祖父は大赦の人間だった。そして家族を無くした僕を保護してくれたのも大赦。そうなると分かるだろ」

 

「桔梗くんも大赦の人なの?」

 

「まぁそうなるな。大赦の仕事も有ったから部活にいけないことがあった」

 

先輩との約束を破ってしまったけど、仕方のないことだった。ただ、友奈がそれを聞いてどう思うかだ

 

「そうだったんだ。でも……私のためにどうしてこんなことを……」

 

「普通なら駄目だけど……」

 

すると運転手の人が代わりに説明した

 

「大赦の中に桔梗と仲がいい子がいるからね。あの子は結構大赦では偉いほうだからね。友達のためならって言っていたよ」

 

「あいつがな……」

 

「その、やっぱり桔梗くんが大赦の人間であることは……」

 

「機会を見て話すから、それまで黙っていてほしい」

 

「うん、分かった。じゃあ、はい」

 

友奈は小指を出してきた。一瞬戸惑った僕だったけど、すぐに理解した。

 

「指切りだよ。約束破ったりしないから」

 

「あぁ、」

 

僕は友奈と指切りを交わすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

友奈を家に送って行き、僕はそのまま車に乗って帰るのだった。その帰り道

 

「それにしても園子が許してくれたのも驚いたけど、運転手が貴方なんてね。三好春信さん」

 

運転手、三好春信。三好夏凛の兄であり、若くしてたいしゃのエリートになった人だ。

 

「たまたま園子様にお話があってね。それにしても君は……」

 

「何か?」

 

「二人の女の子に約束事を交わすなんてね」

 

「別にいいじゃないですか。それぐらいは」

 

「その内君は苦労しそうだね」

 

クスクス笑う春信さん。というか苦労って一体どんな苦労を……

 




友奈回でしたが、ちょっと本編の方にオリジナルの方も入りますね。桔梗が友奈に大赦の人間だというのをバラしたので……あと、原作には名前しか出てこなかった夏凛のお兄ちゃんも登場です。

次回から何話か日常関係の話を書いてから、本編にいきますので


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第6話 痛み

友奈に打ち明けた日から数日がたったある日のこと、僕は園子のところに来ていた。

 

「悪かったな、あんなことで頼んじゃって」

 

「別にあれぐらい大丈夫だよ~きょうくんは友達思いだね~」

 

「普通ならそうするさ。まぁ友奈には知らちゃったけどな」

 

「でも、きょうくんはあの子のことを信じてるから打ち明けたんだよね」

 

確かに友奈のことは信じられる気がしたからこそ、あんな方法を取ったんだ。というか知らない内に僕は友奈だけじゃなく、他の勇者部メンバーのことも信頼してるのかもしれない……

 

「そうだな……信じてるからか」

 

「………きょうくん」

 

何故か園子は俯いていた。声も何だか弱々しく感じる

 

「きょうくんは私の事を信じてる?」

 

「園子のことを?まぁ信じてるけど……」

 

「………きょうくん。実は」

 

「駄目だ。別に言わなくてもいいよ」

 

何かを言いかける園子を僕は止めた。園子自身も驚いている。

 

「お前はまだ僕に教えてない秘密があるんだろう。なんでわざわざ話す必要があるんだ?」

 

「それはそうかもしれないけど……」

 

「それにその秘密とやらを知ったとしても僕は園子のことを信じられなくなるわけはない。そうだろ?」

 

「……うん、きょうくんならそういうよね」

 

園子はさっきまでの暗かった表情からすぐに明るい表情へと変わった。あんまり女の子は暗い表情でいて欲しくはない

 

 

 

 

 

 

 

 

大赦から戻った僕は急な頭痛に襲われた。

 

「つぅ、なんだこれ……」

 

頭痛がだんだんひどくなっていき、そのまま倒れこんでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

それは昔の思い出、まだ両親が生きていた時のこと……

 

何故か僕は公園で泣いていた。一体何があったのかは覚えてないけど、何故か悲しかったんだ

 

「ねぇ、大丈夫?」

 

そんな僕に同い年の灰色の髪の少女が声をかけてくれた。

 

「――――ちゃんに好きって言ったんだけど……」

 

「あちゃー、振られちゃったんだ。それに相手が――――なんて」

 

「もう僕は一緒に遊べないのかな」

 

「いやいや、そんなことないよ。よしここはあたしが……」

 

少女が何かを言いかけた瞬間、映像が切り替わる。

 

 

映像が切り替わるとまた僕は悲しい思いをしていた。あの子がきっかけを作ってくれたあの子が死んだ……葬式には―――と―――がいた。僕は声をかけようとするがなんて声をかければいいのか分からないでいた。

 

 

 

更に映像が切り替わり、僕は樹海にいた。でも何故か僕は右腕が無かった。そして誰かが僕を呼びかけていた。

 

「――――くん、――――くん」

 

呼びかける誰かの他に……真っ赤に染まった何かが―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!?」

 

目を覚ました瞬間、体中が汗を掻いていたことに気がついた。どれほどの悪夢だったのだろうか。だが寝ていた所為か頭痛が治まっていた

 

「あの夢は……つぅ」

 

頭痛が治まったのはいいが右腕の付け根がひどく痛みだした。

 

「あんな夢を見たからだな……」

 

何とか痛みに耐えているが、僕はあることに気がついた。

 

「そういえば僕は何でベッドで寝ていたんだ?」

 

あの時倒れた場所は玄関だったんだけど……

 

フッとリビングで話し声が聞こえ、リビングに入るとそこには友奈、東郷、風先輩がいた。

 

「あっ、やっと起きた」

 

「体調は大丈夫?」

 

「全くいくら声をかけても反応がないから心配したわよ」

 

「何でみんながここに?」

 

というか突然倒れたとはいえ、僕は鍵を閉めなかったのか。泥棒にでも入られたら大変だったな

 

「今から勇者部の皆で花火やろうって思って、メールしたんだけど返事がなくって」

 

「友奈ちゃんが心配して桔梗くんの家に行こうって言い出して、来てみれば倒れていたの」

 

「全くベッドまで運ぶの大変だったわよ。それで具合は?」

 

「大丈夫。ちょっとひどい頭痛があって……今は落ち着いているから……」

 

心配してくれる三人。何だか心配かけて申し訳ないな。

 

「みんな、心配かけてゴメン」

 

「駄目よ。桔梗くん」

 

皆に謝ると何故か東郷に注意された。

 

「桔梗くんは謝らなくていいの。心配したのは本当だけどこういう時は謝罪じゃなくってお礼を言わないと」

 

「まぁ一番心配してたのは東郷だけどね」

 

「うん、あんなに取り乱す東郷さんは初めて見たよ」

 

「それは誰だってあんな所で倒れていたら心配するわ」

 

「……みんな」

 

僕は改めてみんなを見て告げた。

 

「ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

それからみんなが夕食を作ってもらい、僕の家で勇者部メンバーで夕食を食べるのであった。そして友奈たちが帰る頃、僕は友奈にあることを告げた。

 

「なぁ、友奈」

 

「何?」

 

「前に僕に『寂しくない?』って聞いたよな」

 

「うん」

 

「正直寂しいのに慣れちゃったのは事実だけど……こう答えられる。勇者部の皆がいるから寂しくないって」

 

僕がそう言うと友奈は笑顔を見せたのだった。そうだ、僕にはみんながいるからこそ寂しさはないんだ。

 

僕は皆を見送るとすぐに端末に連絡が入った。

 

『何かあったらすぐに連絡』風

 

『悩みがあったらすぐに相談』友奈

 

『悪化しないように気をつけて』東郷

 

「本当にいい奴らだな」

 

僕はみんながいることに対して嬉しい気持ちに一杯になっていた。そしてあの夢をただの夢だと思うようにした。

 

 

だが、僕はあの夢をただの夢だと思わなければ……園子が言いかけたことをしっかり聞いていれば……

 

あんなことにならなかったのに……




とりあえずシリアスな回でしたが、桔梗の過去の続きは本編にて、次回で日常編は終わり、原作本編に入ります


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第7話 動き出す運命

月日が経ち、3月。僕が讃州中学に入学をして1年が過ぎようとしている。夏祭りやクリスマス、大晦日、初詣など色んなイベントを勇者部のみんなと過ごしていった。

 

そんなある日のこと

 

「そういえば色んなイベントに参加したけど、まだやってないことがあったわね」

 

風先輩がそう言うが、やっていないことって一体何なんだろうか?

 

「風先輩、一体何をやってないんですか?」

 

東郷も僕と同じことを考えていたみたいだ。いや、ここにいる全員が同じことを思っている

 

「はい、ひな祭りとか?」

 

「違うわよ。今年は結構早く咲いているみたいだし、せっかくだからね」

 

咲く?そういえばまだやっていないことがあったな

 

「花見ですね」

 

「お花見!?」

 

「そういえばまだでしたね」

 

そう、今年は桜が咲くのが早く既に満開の場所があった。

 

「そう、花見よ。という訳で今度の日曜日に花見をやるわよ。まずは役割分担として……」

 

「料理は僕が作りますよ。東郷は」

 

「任せて、場所の方は既に見つけてあるわ。あとぼたもちも作っていくわ」

 

「それじゃ、私は……」

 

「友奈は僕と東郷のサポートで、先輩は場所取りの方をおねがいしますね」

 

「あんたら立派に成長したわね。って何で私が場所取りなのよ!!」

 

「いや、自然にそうなりません?」

 

「そりゃ、そうだけど……」

 

まぁ東郷のことだから誰も知らない場所とか見つけそうだから場所取りはいらないだろうけど……一応役目を与えておかないと

 

「まぁいいわ。場所取りも部長として重要な役目よね。あぁ、それとその時にみんなに紹介したい人がいるから」

 

先輩が紹介したい人か……彼氏というわけじゃなさそうだな。無難な所で樹かな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして日曜日、東郷が探しだした場所にたどり着くと桜は満開だった。

 

「すごいね~満開だよ東郷さん」

 

「えぇ、ここはどの場所でも一番最初に桜が満開になるのが早い場所よ。それに隠れた名所らしいわ」

 

「やっぱり先輩に場所取りに行かせた意味なかったな」

 

「で、でも、隠れた名所だけど皆が知っていたら……」

 

友奈は先輩のことを思って言ってるけど、周りを見てもまだ花見をしている人がいない自体……

 

すると前を歩き少女に僕は気がついた。

 

「樹!!」

 

「ふぇ、あ、桔梗さん。お久しぶりです」

 

僕が声をかけたのは風先輩の妹、樹だった。樹とはあの時会って以来だったな。

 

「えっと桔梗くん。この子は?」

 

「あぁ、風先輩の妹で樹っていうんだ」

 

「風先輩の……」

 

「あ、あのいつも姉がお世話になってます」

 

「風先輩が紹介したかった人って樹ちゃんのことだったのね」

 

「先輩が彼氏ができたと思ったけど……」

 

そう思うのは友奈だけだけど、友奈は本当にいい子だな

 

「4月からはやっぱり讃州中学に?」

 

「はい、勇者部にも、よろしくおねがいします。えっと……」

 

「あっ、私は結城友奈。友奈でいいよ」

 

「東郷美森です。東郷でいいわ」

 

「犬吠埼樹です。よろしくお願いします。友奈さん、東郷先輩」

 

何故か東郷だけ先輩なんだな樹は……まぁ呼び方は自由だからいいけど

 

 

 

 

 

 

樹と合流して先輩が場所取りをしている場所に着くと、仁王立ちの風先輩がいた

 

「あんた達遅いわよ。っていうか樹ともう知り合っちゃった感じ?」

 

「ここに来るときに」

 

「せっかく樹のことをサプライズで紹介しようと思ったのに……まぁいいわ。皆集まったことだしはじめましょう」

 

「「「おぉーーーー」」」

 

というかやっぱり場所取りは先輩だけだったことに少し申し訳なく思った

 

 

 

 

 

それからみんなでお弁当を食べたり、騒いだり(主に先輩が)している中、僕は少し散歩に出掛けていた。すると二本の木刀を器用に振る少女を発見した。

 

「夏凛」

 

「な、何でここにいるのよ。神宮」

 

「みんなで花見をしてるんだ。お前は……訓練?」

 

「そうよ。アンタと違ってこっちはいつでも動けるように訓練を重ねなきゃいけないの」

 

「ふ~ん、まぁ夏凛らしいな。まぁ頑張れよ」

 

このまま関わっていると厄介ないことになりかけないので離れようとすると……

 

「……あんたはどう思っているの?あんたの回りにいる子達の事」

 

「どうって?」

 

「勇者に選ばれたとして本当に戦えるのかって」

 

「……それはなってみなきゃ分からないだろ。それに僕がいる」

 

「一人でも戦ってみせるってこと?背負いすぎるのも……」

 

「悪いけど、もう誰にもあんな思いをさせたくないからね」

 

そう彼女みたいな目にはあわせたくない。そして誰にも辛い思いはさせない。ずっと僕が思い続けていることだ。

 

「……まぁその時になったら、よろしくね。神宮」

 

「桔梗」

 

「はっ?」

 

「桔梗でいいよ。そっちで呼ばれているのは慣れてるからな」

 

「……あんたがいいって言うなら……桔梗」

 

「あぁ」

 

夏凛と別れ、僕は皆のところに戻るのであった。この時間を楽しむために……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして動き出す。誰にも止めることが出来ないこの運命が始まりつつあった

 




次回からは原作本編に入ります。ちょっとオリジナルの話が入ったりしますが……


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第8話 始まり

今回から本編始まります。オリジナルなどを入れていく予定です


昔々、ある所に勇者がいました

 

勇者は、人々に嫌がらせを続ける魔王を説得するために、旅を続けています。そしてついに、勇者は魔王の城にたどりついたのです

 

「やっとここまでたどりついたぞ、魔王!もう悪いことは、やめるんだ!」

「私を怖がって悪者扱いを始めたのは村人たちの方ではないか~!」

「だからって嫌がらせはよくない。話し合えば分かるよ!」

「話し合えば、また悪者にされる!」

「君を悪者になんかしない!あ、あわわわわ~」

 

劇に熱が入りすぎた友奈、張り切りすぎて人形劇の張りぼてが倒れてしまった。

 

今日は勇者部の活動として園児たちに人形劇を見せることとなったのだが、張りぼてが倒れたことによって妙な空気が流れてしまった。

 

「あぁ、やっちゃった」

 

「あ、当たんなくてよかった~。でもどうしよ」

 

園児たちに怪我がなかったことに安堵する風だが、この後の劇をどうしようか考えると、テンパった友奈が思わず風操る魔王に……

 

「勇者キーック!」

 

「ええぇ~~~!?」

 

攻撃をしてしまった。

 

「おま、それキックじゃないし! ていうか、話し合おうっていってたところじゃないの~!」

 

「だって、言っても聞かないから」

 

「こうなったら食らえ~! 魔王ダブルヘッドバッド!」

 

自棄糞となった風も演劇を続けた。戸惑う樹に風は指示を出した。

 

「樹! ミュージック!」

 

「じゃあ……これで!」

 

「ええ!?ここで魔王テーマ!?」

 

「わっはっはっはっは~!ここが貴様の墓場だ~!」

 

「魔王がノリノリに~~おのれ~!」

 

東郷も何とかこの劇をやり遂げるために考え込んだ。

 

(いけない……! 勇者のために、ここは私が園児たちを扇動するしか!)

 

「みんな! 勇者を応援して! 一緒にグーで勇者にパワーを送ろう!」

 

東郷の指示に従うように園児たちが応援を始めた。

 

「ぬ、うおぉぉぉ~。みんなの声援が私を弱らせる~~」

 

「お姉ちゃん! いいアドリブ!」

 

何とかさっきまでの空気が変わっていった。

 

「今だ! 勇者パ~~ンチ!」

 

「いってぇぇ~~~!?」

 

「これで魔王も分かってくれたよね! もう友達だよ!」

 

「シメて、シメて……!」

 

「というわけで、みんなの力で魔王は改心し、祖国は守られました」

 

「みんなのお陰だよ! やったやった~~!」

 

 

 

 

 

 

「って感じだったよ。ねっ、東郷さん」

 

「うん、友奈ちゃんのアドリブでね」

 

「いや、駄目だろ」

 

部室へ向かう途中に友奈たちに昨日の人形劇のことを聞いていたのだが、失敗だと思う

 

「えぇ~そうだったかな?」

 

「それに急遽休んだ人の代わりに音響担当をした樹ちゃんの頑張りも凄かったわ」

 

いや、昨日休んだのは色々と打ち合わせだったり……というか樹が僕の代わりをやってくれたのか。後で何か奢ろう

 

すると端末に連絡が入った。それは僕の保護者代わりの人だった。

 

(また何かあったのか?)

 

何かしらの用事で大赦に顔を出すことが多い僕だったが、今回の連絡は……

 

『明日、お墓参りにいけません』

 

「………」

 

「桔梗くん」

 

「どうかしたの?」

 

友奈と東郷の二人が心配そうに顔を覗き込んでいた。僕はすぐに端末をしまい、笑顔で答えた。

 

「別にちょっとね」

 

 

 

 

 

 

 

 

部室たどり着き、早速今日のミーティングが始まった

 

「うへぇ~~、かっわいい~~♪」

 

今回の議題は迷い猫探しや里親探しのことだった。勇者部の黒板にはいくつもの写真が張り出されていた。

 

「こんなにも未解決の依頼が残っているのよ~」

 

「た、たくさん来たね」

 

「これはかなり大変かもな」

 

「なので、今日からは強化月間! 学校巻き込んだキャンペーンにして、この子達の飼い主を探すわ」

 

「おぉ~」

 

「学校を巻き込む政治的発想は、流石一年先輩です!」

 

「学校への対応はアタシがやるとして、まずはホームページの強化準備ね。――東郷任せた!」

 

「はい! 携帯からもアクセスできるように、モバイル版も作ります」

 

早速作業にはいる東郷。東郷はパソコンなどの作業がかなり得意だからものすごい作業スピードだ

 

「さすが~、詳しいね~」

 

「私たちは?」

 

「えっとぉ、まずは今まで通りだけど……今まで以上に頑張る!」

 

「アバウトだよ、お姉ちゃん……」

 

「そこが風先輩らしいというか……」

 

「それだったら、海岸の掃除行くでしょ?」

 

「はい」

 

「そこでも、人に当たってみようよ!」

 

「ああ! それいいです!」

 

確かにあそこなら人通りがあるし、勇者部として顔を知られている分知り合いも多い。そっちの方が効率的でいいかもしれない

 

「ホームページ強化任務、完了です」

 

「「「え、はやっ!!」」」

 

「流石だな。東郷は」

 

「桔梗くんも覚えてみたらどう?」

 

「僕はパソコンとかはあまりな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、お待ち」

 

「は~い」

 

「三杯目……」

 

 

部活の後、みんなでうどんを食べることとなった僕達、風先輩はうどん三杯目と入っていった。男の僕ですらかなりきついと思うのによく食べるなこの人は……

 

「所で文化祭の出し物の相談なんだけどさ」

 

「え、まだ四月なのに?」

 

そのためにここにきたのか。でも、そういう話は部室でも出来たと思うんだけど……

 

「夏休みに入っちゃう前にさ、色々決めておきたいんだよね~」

 

「確かに。常に先手で有事に備えることは大切ですね」

 

「去年は色々とバタバタしちゃったからね~今年は猫の手も入ったしね~」

 

去年は確かに色々と依頼が重なったりしたからな……出し物も質素なものになってしまった。

 

「とりあえずそれぞれ考えておくこと、これ宿題ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰り道、風は夕食の献立について話していた。それを聞いてツッコミを入れる樹

 

「樹は小食だからね~」

 

「もう、お姉ちゃんが食べすぎなの~」

 

そんな時、風の端末にメールが入った。差出人は大赦からだ

 

(このメール、桔梗にも来てるわよね)

 

『あんまり背負い込み過ぎないほうがいいですよ』

 

(背負い込みすぎるなか。あいつの方が背負い過ぎている気がするわね)

 

「お姉ちゃんどうしたの?」

 

「お姉ちゃんに隠し事があったら、どうする?」

 

「えっと、よく分からないけど」

 

「例えばね、甲州・勝沼で、援軍が来ないのに戦え~って言わなきゃいけなかったとして」

 

「え~っと」

「近藤勇」

「いきなりどうしたの?」

「あははっ、なんでもない」

 

誤魔化そうとする風だが、樹は考えこみ、答えた。

「んん~…ついていくよ、何があっても」

「えっ?」

「お姉ちゃんは、唯一の家族だもん」

「ありがと」

 

(そうだよね。そうそう当たるわけないよね)

 

きっと桔梗もこんな気持なんだろうと思う風だった

 

 

 

 

 



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第9話 勇者

次の日、僕は学校を休んである場所にきていた。

 

「来たよ。母さん、父さん、爺ちゃん」

 

僕の前にあるのは両親たちのお墓だった。僕がここに来た理由は一つ、墓参りだった。

 

「大赦から連絡が入った。期間内に奴らが来るらしい。母さんたちは僕が勇者になるって知っていたの?僕が勇者になったらどう思う?」

 

質問をするが返答がない。それは当然のことだ。

 

「……友奈たちは勇者になるのかな?もしそうなっても僕は……」

 

あの子との約束を守るために、彼女たちは僕が守るって決めた。

 

「そろそろ行くか」

 

僕は墓参りを終え、午後からでも授業に出ようと思った瞬間、空を飛ぶ鳥が止まった

 

「………はぁ」

 

ため息を付いた。どうやら始まったみたいだ

 

「さて神樹様は誰を選んだかな?」

 

 

 

 

 

 

 

「なにこれ?どこ此処?私、また居眠りしてる?」

 

友奈と東郷の二人がいる場所は色とりどりの木々に覆われた世界。さっきまで学校で授業を受けていたはずなのにと

 

「……私達教室にいたはずなのに……」

 

突然の出来事に不安を隠せない東郷。そんな東郷を励ます友奈。

 

「大丈夫!私がついてるから」

 

「友奈ちゃん……」

 

東郷を励ましていると、後ろの方から物音が聞こえた。二人が振り向き警戒をするとそこから風と樹の二人が出てきた。

 

「友奈、東郷!」

 

「風先輩、樹ちゃん」

 

「良かった。二人共スマホを手放していたら見つけられなかった」

 

「「えぇっ!」」

 

風は端末を操作し、アプリのある機能を出した。それは自分たちのいる場所が映しだされていた。

 

「これって」

 

「隠し機能……?」

 

「その隠し機能は、この事態に陥ったときに自動的に機能するようになっているの」

 

「このアプリ、部に入った時に風先輩にダウンロードしろって言われたものですよね?」

 

「……えぇ」

 

「風先輩、何か知っているんですか?」

 

「東郷」

 

「ここ、どこなんですか」

 

不安を隠し切れない東郷。困惑する友奈と樹。そしてこの世界に飛ばされても落ち着いていられる風。風は覚悟を決めた。

 

「みんな、落ち着いて聞いて。……アタシは、大赦から派遣された人間なの」

 

「大赦って神樹様を奉っているところですよね……」

 

「……何か、特別なお役目なんですか」

 

「……ずっと一緒だったのに、そんなの初めて聞いたよ」

 

「……当たらなければ、ずっと黙っているつもりだったからね」

 

「風先輩……」

 

「アタシの班が――讃州中学勇者部が、当たりだった」

 

「……当たり」

 

「あの、桔梗くんは?」

 

桔梗のある事情を知る友奈は桔梗のことを聞いてきた。

 

「桔梗くんも大赦の人間なんですよね」

 

「!?」

 

友奈の口から桔梗のことを聞いた東郷は驚きを隠せないでいた。それは樹も、そして風もだった。

 

「友奈、どうしてあんたがそのことを……」

 

「去年、私が足を怪我した時に……」

 

その日、彼は友奈を送るために自分の隠し事をバラした。友奈はそのことを告げると……

 

「そっか、あいつらしいわね。あいつは今日学校に来てないみたいだけど、多分ここにいるはずよ。あいつも神樹様に選ばれた私たちも、この中で敵と戦わなければならない」

 

「敵?」

 

「戦うって……」

 

「あの、そういえばこの点って何です?」

 

友奈が端末に映しだされた点、そこには乙女型と書かれていた。

 

「来たようね」

 

風がある場所を見ると全員も見た。遠く離れた場所に奇妙な大型の生物がいた。

 

「あれね。遅い奴で助かった」

 

「浮いてる……」

 

「アレはバーテックス。世界を殺す為に攻めてくる、人類の敵」

 

「あんなのと戦うんですか?どうして、私たちが……」

 

「大赦の調査で、もっとも適正があると判断されたの。方法はあるわ。戦う意思を示せば、このアプリの機能がアンロックされて、神樹様の――勇者となるの」

 

すると突然バーテックスからミサイルを放った。爆風が友奈たちを包み込んだ。

 

「けほっけほっ。何!?」

 

「私たちの事狙ってる……!?」

 

「……こっちに気がついてる!」

 

「そんな、……! 東郷さん!?」

 

東郷の方を見ると東郷は震えていた。

 

「ダメ……こんな……戦うなんて……出来る訳無い……」

 

「東郷さん……」

 

風はあることを決意する。

 

「友奈、東郷を連れて逃げて」

 

「で、でも先輩……」

 

「早く!」

 

「は、はい!」

 

「お姉ちゃん!」

 

「樹も一緒にいって」

 

この場に桔梗がいれば、二人で戦うことが出来るのだが、今はいない。そうなったら自分一人で戦うしかないと決意をした。

 

「ダメだよ! お姉ちゃんを残していけないよ!」

 

「……樹」

 

「ついていくよ、何があっても……!」

 

だが樹はそんな風を見捨てることが出来なかった。

 

「よし! 樹、続いて!」

 

「……うん!」

 

端末のボタンを押し、二人が変身をした。風は黄色と白を基調した衣を纒い、樹は黄緑のドレスを身にまとった。

 

二人が変身を終えると同時にバーテックスの攻撃が襲いかかった。だが、二人はそれを避けた。すると樹の元に黄緑の毛玉が現れ、風の元に青い犬が現れた。

 

「これが、神樹様に選ばれた勇者の力よ」

 

「何、可愛い……」

 

「この世界を守ってきた精霊よ。神樹様の導きで、アタシたちに力を貸してくれる。樹、よけて!」

 

襲い来る攻撃に対して避け続ける樹。

 

「手をかざして、戦う意思を示して!」

 

大剣を出現させ、バーテックスのミサイルを切り裂いていく風。樹も手をかざすと手元に糸が現れ、ミサイルを切り裂いていく。そんな中、風は友奈たちに連絡をした。

 

『風先輩! 大丈夫ですか!? ……今戦ってるんですか!?』

 

「こっちの心配より、そっちこそ大丈夫?」

 

『はい!』

 

「……友奈、東郷。黙ってて、ゴメンね」

 

『……風先輩は、みんなのためを思って黙ってたんですよね。ずっと一人で打ち明ける事もできずに』

 

「違うわ。正直外れて欲しいと思った。それは桔梗も思っていたことよ。だから私たちは……」

 

『それでも私は……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友奈が電話をしている中、東郷はバーテックスの変化に気がついた。バーテックスの中から白い生物が出現した。

 

「ゆ、友奈ちゃん……あれ」

 

「何アレ?」

 

白い生物たちは友奈たちを見つけ、こちらに向かっていった。

 

「させ……きゃあ」

 

「お姉ちゃ……きゃあ」

 

風と樹の二人が白い生物の進行を止めようとするが、ミサイルの攻撃を受けてしまう

 

「やめ、私の……後輩に……」

 

「お姉ちゃん後ろ!?」

 

立ち上がり、友奈たちの救援に入ろうとするが二人の方にも白い生物が襲いかかった。

 

(そんな、こんなことって……ごめん、みんな)

 

諦めかける風。その時黒い影が白い生物を切り裂いていく。

 

「えっ!?」

 

「あれって……」

 

その影は友奈たちの所にも来ていた。襲い来る白い生物を躊躇なく切り裂いていく。そして友奈と東郷の前に足を止めた。

 

「……悪かった。遅くなって……」

 

「き、桔梗くん?」

 

「今は落ち込んでいる暇はないな。友奈!?」

 

黒い衣装に身を包んだ桔梗の手には大鎌が握られていた。その横には鬼が一匹いた。そんな桔梗は何故か悲しそうにしていた。それを見て、友奈は前へと駆け出した。

 

(どうして悲しそうにしてるかわからない。だけど、友達が辛い思いや悲しい思いをしているのならば、私は見ているなんて出来ない。)

 

バーテックスのミサイルが襲いかかるが、友奈はミサイルをパンチとキックで破壊していく。

 

「そんな思いをするくらいだったら私が、頑張る!!」

 

見る見るうちに友奈の姿が変わっていき、髪の色も桜色へと変わった。そして白い衣へと変わる。そしてバーテックスに向け、渾身の一撃を放った。

 

「勇者パァァァァァンチ!!」

 

バーテックスの身体は大きく抉れ、着地した友奈は振り向き、叫んだ。

 

「私は讃州中学勇者部!結城友奈!私は勇者になる!!」



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第10話 初陣

友奈が宣言する中、僕は少し後悔した。何故なら彼女との約束を守れなかったからだ。少し離れた位置にいたとはいえ、止めることが出来なかった。

 

「……今更こんなこと思っても仕方ないよな」

 

直ぐに頭を切り替え、友奈と一緒に先輩達の所へと駆け寄った。

 

「友奈さん、凄いパンチです」

 

「何だかみなぎってきて」

 

「こんな時にのんきな……」

 

「まぁ暗くなるよりはいいでしょう」

 

「桔梗。ごめんね。あんたからしてみれば……いたっ」

 

謝ろうとする先輩にデコピンを食らわす僕。何で回りにいる子は謝ることしか考えてないのだろうか

 

「今更後悔したってしょうがないですよ。僕も後悔はしてます。だからこそ……」

 

バーテックスの身体が見る見るうちに再生をしていく中、みんなに指示を出した。

 

「みんな、こいつは御霊というコアを破壊しないと倒せない。そのために今から説明する」

 

「ってそういうのはわたしの役目でしょ」

 

「今はそういう状況じゃないよお姉ちゃん~」

 

自分の立場を奪われたと思い、怒る先輩。それにツッコミを入れる樹だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いを見つめる東郷は一人、恐怖に震えていた。

 

(一緒に戦いたいのに……どうしようもなく怖い)

 

それが普通の反応だ。突然訪れた世界に、告げられた真実、そしてあの化物。誰だって恐怖するしか無かった。

 

(友奈ちゃん、みんな……)

 

 

 

 

 

 

バーテックスを囲むと同時に友奈と樹は端末に書かれた祝詞を唱えた。

 

「かくりよのおおかみ あわれみたまい

 

「めぐみたまい さきみたま くしみたま」

 

「 おとなしくしろ~!!」

 

「「ええ~、それでいいの!? 」」

 

「要は魂込めれば、言葉は問わないのよ」

 

「まぁ誰だって書かれていればそうするよ」

 

「早く言ってよ~」

 

僕は大鎌を大きく振ると、刃がバーテックスに向けて飛んでいった。刃の後ろに鎖が繋がれていた。刃が地面に刺さると鎖がバーテックスを縛り上げた。するとバーテックスから四角錐の物体が現れた。

「なっ、なんかベロンと出た~!」

「封印すれば、御霊がむき出しになる。あれはいわば心臓。破壊すればこっちの勝ち! 」

 

「先輩、僕はこいつを抑えている間に……」

 

「それなら私が行きます!」

 

友奈は御霊に一撃を与えた。だが、

 

「かたぁぁい!! これ硬すぎるよぉ~!」

 

硬いため破壊することが出来ない。それと同時に周りの景色が腐っていった。

 

(これがずっと続けば世界が……)

 

先輩も同じように二人にそのことを告げながら、御霊に大剣を叩きつけた。すると御霊にヒビが入った。

 

「今なら!!友奈!」

 

「うおおおおぉぉぉぉ!!!!」

 

友奈の拳はヒビが入った場所に当たると御霊が崩れだし、見る見るうちに砂へと変わっていった。

 

「……終わりか」

 

バーテックスの討伐に安堵する僕、そしてそれとある疑問が出た。

 

(あの白い奴ら、前に大赦から聞いた星屑。出てきたのは偶然だけど、あのバーテックスが指示を出したのか?友奈たちを襲えって……)

 

それにしてはそんな知能があるとは思えなかった。

 

(報告くらいはしておくか)

 

見る見るうちに元の世界へと戻っていく中、その存在に誰も気が付かなかった。白い人型に……

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あれ、ここ学校の屋上?」

 

友奈はここに来る前にいた教室ではなく、屋上にいることに疑問を感じていた。

 

「神樹様が戻してくださったのよ」

 

神樹は言うなら樹海からの出口に近いかもしれない場所に送ることが出来る。とはいえ、僕としてはこのまま屋上にいたらサボりだと思われそうだ。

 

そんな中、友奈は東郷へと近寄った。

 

「東郷さん無事だった? 怪我はない?」

 

「友奈ちゃん……友奈ちゃんこそ大丈夫?」

 

「うん、大丈夫だよ」

 

東郷の心配をする友奈。その横では犬吠埼姉妹は……

 

「うん、お姉ちゃんは何ともない?」

 

「平気平気~」

 

すると緊張の糸が切れたのか突然泣き出す樹。

 

「怖かったよぉ~、お姉ちゃぁん。もう訳わかんないよぉ~」

 

「……よしよし、よくやったわね。冷蔵庫のプリン、半分食べていいから」

 

「あれ元々私のだよぉ~~」

 

「ほら、皆見てみなさい。あれが今日私達が守って街よ」

 

四人がいつも通りの景色を眺めている中、僕はそっと屋上から出て行った。

 

 

 

 

屋上から出て行くと僕は壁を殴った。

 

「……彼女たちが勇者になってしまった。ごめん、園子……約束が」

 

やはり約束を守れなかったことに、後悔をしてしまう僕。こんな姿はみんなに見せられないな

 

僕は屋上へと戻ろうとすると、さっきまで屋上にいた東郷と友奈が後ろにいた。

 

「二人共どうしたんだ?」

 

「桔梗くんがいなくなったから探そうと思って……」

 

「ずっと思ってた。勇者になった友奈ちゃん達を見て、悲しそうであって、怒っていた」

 

二人にはお見通しか。

 

「詳しくは話せないけど、今言えることは……僕は誰にも戦ってほしくない。僕が一人で戦いたかったんだ」




今回は短めでスミマセンでした。前回の後書きでは書かなかったですが、桔梗の武器はかなり迷いましたね。それとオリジナル要素も入りますのでよろしくお願いします。次回は原作2話の途中からです


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第11話 説明

あの樹海での戦いから次の日、教室で友奈はある話を聞いていた。

 

「隣町で昨日事故あったじゃない。私近くにいてびっくりしちゃった」

 

「えっあの2、3人怪我したってやつ?」

 

「そっちにメッセージ送ろうとしたら電池切れちゃって」

 

「あるある」

 

日直の仕事をしながら友奈は東郷の方を見つめた。東郷は昨日から何か思いつめた顔をしていた。そしてもう一人、神宮桔梗の事も気になっていた。今は昨日のことが無かったように本を読んでいた

 

(昨日のあの言葉は……)

 

昨日桔梗が言ったあの言葉……

 

『僕は誰にも戦ってほしくない。僕が一人で戦いたかったんだ』

 

「あれって一体どういうことなのかな?」

 

友奈は日直の仕事に戻り、黒板の隅に『欠席者なし……だといいね』と書くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

友奈の日直の仕事が終わるのを待って、僕、友奈、東郷の三人で部室へ行くのであった。多分樹海での事を改めて説明するのだと思う。

 

「その子懐いてるんですね~」

 

「えへへ、名前は牛鬼って言うんだよ」

 

「可愛いですね~」

 

「ビーフジャーキーが好きなんだよね」

 

「牛なのに!?」

 

先輩と僕が黒板に説明するのに必要な絵を描いている間、友奈と樹の二人はそんな話をしていた。あんな戦いがあったとはいえのんきなものだな

 

「さてとまずは皆元気みたいね。早速だけど昨日のことを説明しておくわね」

 

「よろしくお願いします」

 

説明の方は先輩に任せようと思う。僕の場合は事情を知りすぎている。気をつけて話せるが、すべてを話すべきではないと思い、ある程度の事情を知る先輩に任せることにした。

 

「戦い方はアプリに説明テキストがあるから、今は何故戦うのかって話をしていくね。こいつ、バーテックス」

 

昨日の乙女型に似せて描いたバーテックスの他に五人の絵と白い生物の絵が描いた。

 

「人類の敵が、あっち側から壁を越えて、十二体攻めてくる事が神樹様のお告げで分かったわけで、バーテックスの目的は神樹様の破壊。以前にも襲ってきたらしいんだけど、その時は頑張って追い返すのが精一杯だったみたい。そこで大赦が作ったのが、神樹様の力を借りて勇者と呼ばれる姿に変身するシステム。人知を超えた力に対抗するには、こちらも人知を超えた力って訳ね」

 

「あの、昨日バーテックスの他に襲ってきた白い生物って一体、黒板にも描いてありますけど」

 

「ありゃ、私もあの生物のことは知らないわ。桔梗知ってるの?」

 

友奈の質問に先輩も戸惑っていた。僕は補足説明をした。

 

「あの白い生物は星屑。バーテックスでもありバーテックスでもない存在。言うなればバーテックスの成り損ないみたいなものだって聞いている」

 

「バーテックスのなりそこない……」

 

「話を戻すわ。注意事項として、樹海が何かしらの形でダメージを受けると、その分日常に戻ったときに何かの災いとなって現れるといわれているわ」

 

「あっ」

 

きっと友奈は教室でクラスメートの子が話していたことを思い出しているのであろう。アレがそのダメージの影響だということと気がついた。

 

「派手に破壊されて大惨事、なんてならないようにアタシたち勇者部が頑張らないと」

 

「……その勇者部も、先輩が意図的に集めた面子だったという訳ですよね?」

 

「…………うん、そうだよ。適正値が高い人は分かってたから」

 

「………」

 

「私たちは、神樹様をお奉りしている大赦から使命を受けてるの。この地域の担当として」

 

「知らなかった」

 

「黙っててごめんね」

 

先輩は改めてみんなに謝った。僕自身、何を言うべきか迷っていた。

 

「次は敵いつ来るんですか?」

 

「明日かもしれないし、一週間後かもしれない。そう遠くはないはずよ」

 

「……なんでもっと早く、勇者部の本当の意味を教えてくれなかったんですか。友奈ちゃんも樹ちゃんも、死ぬかもしれなかったんですよ」

 

「……ごめん。でも、勇者の適正が高くても、どのチームが神樹様に選ばれるか敵が来るまで分からないんだよ。むしろ、変身しないで済む確率の方がよっぽど高くて」

 

「そっか。各地で同じような勇者候補生が……いるんですね」

 

「うん。人類存亡の一大事だからね」

 

「……こんな大事な事、ずっと黙っていたんですか」

 

「東郷……」

 

「……あ、私行きます!」

 

東郷はそのまま部室を出て行った。友奈はそんな東郷を心配して後を追っていった。残った僕たちは……

 

「………お前が落ち込むことはない」

 

「……でも正直ちゃんと言わなかった私が悪かったし、それに桔梗、あんたのことも」

 

「桔梗さんの事?」

 

「昨日友奈たちにも言ったけど、僕はみんなに戦ってほしくない。僕は一人で戦いたかった」

 

僕の言葉を聞いてか樹は何故か怯えた。正直今の僕はどんな顔をしているのか分からない

 

「……それは一体……」

 

僕はそのまま部室を出て行った。正直話すべきことではないと思った。今はどんなに後悔をしてもしょうがない。皆と戦うしかない

 

 

 

 

 

 

 

 

僕が部室から出て行くと、友奈と東郷の二人を見つけた。

 

「ねえ、友奈ちゃんは大事な事を隠されていて、怒ってないの?」

 

二人の話を僕は影に隠れながら聞いていた。

 

「そりゃあ、驚きはしたけど……でも嬉しいよ。だって適正のお陰で風先輩や樹ちゃんと会えたんだから」

 

「……この適正の、お陰?」

 

「うん!」

 

友奈は迷いのない答えを出していた。本当に友奈は友奈だな。

 

「私は、中学に入る前に、事故で足が全く動かなくなって、記憶も少し飛んじゃって。学校生活送るのが怖かったけど、友奈ちゃんと桔梗くんがいたから不安が消えて、勇者部に誘われてから、学校生活がもっと楽しくなって。……そう考えると、適正に感謝だね」

 

「これからも楽しいよ。ちょっと大変なミッションが増えただけだし、」

 

「そっか、そうだよね。友奈ちゃんって前向きだね」

 

さっきまで暗かった東郷の表情が段々と柔らかくなってきた。それを見て友奈も笑顔になっていた。

 

(あの二人は大丈夫そうだな)

 

二人の話を聞いて、安心した瞬間、再び戦いが始まろうとしていた。

 



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第12話 再び

2日続けてのバーテックスの侵攻。今度は三体現れた。それに何十匹もの星屑もいた。

 

「2日続けてか」

 

「本当にいつ来るかわからないんだね」

 

僕は友奈たちと合流していた。友奈は直ぐに勇者へと変身すると東郷に言った

 

「東郷さん、待っててね。倒してくる」

 

「っ! 待って、私も……」

 

自分も変身しようと思うが、昨日の戦いを思い出していた。未知の化物が自分に襲いかかる。それを思い出してしまい、恐怖に震えていた。友奈はそんな東郷の手を握った。

 

「大丈夫だよ、東郷さん。……行ってくるね」

 

「友奈ちゃん……!」

 

友奈は笑顔でバーテックスの元へと向かった。残った僕は……

 

「昨日僕が言ったことを覚えているか?」

 

「私達に戦わせたくない?」

 

「僕はこのまま東郷だけは戦ってほしくはないと思っているけど、だけど、お前は本当にそれでいいのか?」

 

「えっ?」

 

「ただここで怯えて、あいつの帰りを待つだけでいいのか?今は自分の気持ちに正直になれ」

 

そう言って、僕も友奈の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

三体のバーテックスの内、二体は別々に動き出し、星屑もそれに付いて行った。

 

「何であの奥のやつは動かないんだろう?」

 

「今は奥のやつを放っておいて、他の二体をやるわよ!桔梗、樹、」

 

「星屑を倒せですね。樹!行くぞ」

 

「は、はい」

 

僕と樹の二人は二体のバーテックスを守る星屑を倒すことになった。樹は糸で星屑を縛り上げ、僕はその星屑を大鎌で切り裂いていく。一体一体確実に倒す必要があるけど……

 

「樹!縛り上げるだけじゃ駄目だ!!まずは星屑を一体縛り上げろ」

 

「は、はい」

 

言われるままに星屑を縛り上げる樹。僕は次の指示を出した。

 

「そのまま他のやつにぶつける感じで大きく横に振れ!!」

 

「こうですか!」

 

縛り上げた星屑が他の星屑に向かってぶつかっていった。これだけでは倒せないが、ぶつかった星屑は他の星屑にもぶつかり、その連鎖が続いていく。

 

「一気に切り裂く!!」

 

その連鎖を利用し、体勢を崩した星屑が一列に並び、僕は一気に駆け抜けていき、星屑を切り裂いた。

 

「すごいです!桔梗さん」

 

「樹もな。あとは……」

 

バーテックスを倒すだけと言いかけた瞬間、無数の矢が振り注いだ。みんなが一斉に避けていく。僕は改めてバーテックスの名称を確認した。今回来たのは射手型、蠍型、蟹型の三体。さっきの攻撃は射手型ということは……

 

「遠距離で攻撃か」

 

「撃ってくる奴を何とかしないと!」

 

 

友奈が射手型を倒そうと大きくジャンプをした瞬間、蠍型の尻尾が友奈を打ち落とし、地面に落とされた友奈。そんな友奈に蠍型の尻尾の針が友奈を刺そうとしていた。

 

「うくっ」

 

「友奈!!」

 

僕が救援に入ろうとするが、射手型の攻撃がそれを妨害する。

 

「このままじゃ……」

 

友奈の持つ精霊牛鬼が彼女を必死に守るが、破られるのも時間の問題だ。このままじゃ……

 

 

 

 

 

「新しいお隣さんだ!」

 

それは私が友奈ちゃんの隣に引っ越してきた時のこと、私は記憶と足が不自由だった。私は不安と悲しみで心が張り裂けそうだった。だけど彼女はそんなの気にせず、無邪気な笑顔を向けた。

 

「同じ年の女の子が引っ越してくるって聞いてたから、楽しみにしてたんだ!年が同じなら、同じ中学になるよね。私は結城友奈、宜しくね」

 

きっと私は彼女の笑顔に救われたんだろうか。ううん、きっと救われたんだ。

 

 

 

 

 

 

だからこそ私は……

 

「……やめろ」

 

自分を救ってくれた人たちが酷い目にあっている。そんな時、彼が私に言った言葉を思い出した。

 

『自分の気持に正直になれ』

 

自分の気持ち。今の私の気持ちは……

 

「友奈ちゃんをいじめるなああぁぁぁぁ!!」

 

バーテックスの攻撃が私に襲いかかるが、私の前に卵の型の精霊が現れ、私を守る。

 

「私、いつも友奈ちゃんに守ってもらってた。……だから、次は私が勇者になって、大切な人たちを、友奈ちゃんを守る!!」

 

端末のボタンを押した瞬間、青い衣装に白い帯が垂らされた姿に変わった。そして両手には二丁の銃が握られていた。その横には狸型の精霊が現れていた。

 

「もう、友奈ちゃんには手出しさせない」

 

二丁の銃で蠍型のバーテックスを撃ち、体勢が崩れていく。それと同時に青い炎の精霊が現れると、二丁の銃が変化していき、散弾銃へと代わり更に攻撃を加えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大鎌を回転させながら射手型の攻撃を弾くが……

 

「結構キツいな」

 

回転させても全部を弾けるわけじゃない。徐々に奴らに押されていく。先輩達も必死に避けてるけど……

 

「あーもーしつこい男は嫌いなのよ」

 

「モテる人っぽく避けてないでなんとかしようよ。お姉ちゃん」

 

結構余裕がありそうで困るんだが……

 

「なかなか隙が……」

 

突然空から蠍型のバーテックスが蟹型のバーテックスの上に落ちてきた。すると遠くの方で友奈が手を降っていた。

 

「そのエビ運んできたよ」

 

大きく手を振る友奈。でも、あれは蠍だからな。すると友奈の隣に東郷がやってきた。

 

「東郷先輩」

 

「遠くの敵は私が狙撃します」

 

どうやら彼女も戦う決意をしたのか。本当に良い事なのだけど……

 

「一緒に戦ってくれるのね。みんな行くわよ」

 

先輩の指示通りに動くと同時に僕は東郷の隣に来た。

 

「桔梗くんは行かないの?」

 

「狙撃メインだと敵に狙われやすくなる。護衛くらいはさせろ」

 

「……ありがとう」

 

東郷がそう言うと射手型の動きを止めるように狙撃をしていく。フッと射手型の身体から星屑が出現した。それもまるで星屑は僕らに襲いかかるわけではなくバーテックスを守るようにしていた。

 

「まずいな……面倒な盾が……」

 

突然大鎌が黒い狙撃銃へと変化していった。どういうことなのか分からない。こんなシステム聞いたことがない。戸惑う僕だけど……これなら

 

「東郷、星屑は任せろ」

 

「えぇ」

 

僕は何体もの星屑に向かって狙撃をした。奴らは盾になってバーテックスを守るが……

 

「その銃弾は散弾じゃない。当たった瞬間爆発する!!」

 

一体の星屑に当たった瞬間、爆発し星屑の盾を崩した。そんなことをしているうちに、みんなが他のバーテックスの封印を完了したみたいだ。

 

「東郷、後は」

 

「えぇ、任せて……」

 

一発の銃弾がバーテックスの頭を撃ち貫いた。弱ったその瞬間を狙い、封印の儀を行う友奈たち。すると射手型の御霊は高速に回りだした。普通なら捉えるのは難しいが……

東郷には簡単すぎたようだ。たった一発で御霊を破壊したんだから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三体のバーテックスを倒した僕らは元の世界に戻った。みんなが東郷の参戦に喜ぶ中、僕は端末にあるメッセージが入っていた事に気がついた。

 

「誰からだ?大赦からだったら僕の武器が変わったことを……」

 

だが僕の端末に入っていたメッセージは大赦からではなかった。それを見た瞬間僕は端末を落とした。

 

『モウスグキミハオレトヒトツニ』

 

何なんだこれは……

 

 

 

 

 

 




徐々にオリジナル要素が入っていますが、ちゃんと説明できるかな?一応桔梗の鎌が銃になった理由も考えていますので、次回は日常回です。


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第13話 二人

今回は桔梗の武器についてと東郷との関係が進んだりします


2回目の戦いから数日後、僕は園子に会いに来ていた。

 

「話は聞いてるよ~あの子たちが勇者になったんだよね~」

 

「あぁ、正直お前との約束を守れなかったな」

 

「でも仕方ないよ~もしかしてずっと気にしてた?」

 

「一応な」

 

心の何処かで後悔している。けど園子はあまり気にしていなかった。

 

「でもきょうくんが皆と一緒に戦ってくれているだけで十分だよ。もしも誰とも協力したりしなかったら私怒っていたもん」

 

一緒に戦うか。正直そうした方が皆のことを守れたりする。

 

「もしかして今日きたのは謝るためだけ?」

 

「いいや、違う。何故か僕の武器が二つに変わるんだ」

 

僕はそう言いながら、勇者に変わると同時に大赦の大人が大勢来た。もしかしたら園子に手を出そうとしているのかと思われているが……

 

「大丈夫。ちょっと調べるだけだから」

 

園子がそう言うと大赦の人はそのまま僕の様子をうかがいながら待った。僕は大鎌から狙撃銃に変えると、園子はあることに気がついた。

 

「なるほどね~きょうくんの精霊は一体で二体分なんだね」

 

どういうことか分からない。東郷は三体いるのはわかっているけど、僕の場合はどういうことなんだ?

 

「大鎌の時は鬼の色は赤、狙撃銃に変わると青に変わってたよ。その精霊はただの鬼じゃなく前鬼・後鬼って呼ばれてるらしいよ」

 

「前鬼・後鬼……」

 

「前鬼は前線に出て前を切り開く力、後鬼は後ろからの援護型。きっと開発の人がきょうくん専用ってことで武器が二つになったんだと思うよ」

 

う~ん、有り得そうかな?僕専用って言われて渡されたくらいだから……

 

「納得はできた」

 

とりあえず謎が解けたのは良かったけど、あと一つはあのメッセージだ。僕は園子や他の大赦の人にそのメッセージを見せると……

 

「………これが送られてきたの?」

 

「あぁ、こんなもの送られたら誰だってビビるよ。でも差出人が分からないから調べてほし………」

 

「………消したほうがいいかも」

 

「はっ?」

 

何故か園子の顔が険しくなった。けどすぐに笑顔になった。

 

「きっと大赦の人が悪戯で送ったんだよ。きっと戦いで疲れてるだろうから」

 

「………」

 

園子は何かを知っている。けど今どんなに聞いても教えてはくれなさそうだ。僕は彼女の言う通りメールを消した。

 

「それじゃ、また来るよ」

 

「うん、待ってる」

 

僕が彼女の部屋を出て行った。残った彼女と大赦の人は……

 

「もしかしたらアレが出てきているの?」

 

「そう言った報告は受けていません。ただアレが出てきたら彼は……」

 

「きっと思い出しちゃうよね。あのことを……そしてきょうくんには倒せない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大赦から家に帰るが、まだお昼を過ぎた頃だ。おまけに日曜日。これは久しぶりに……

 

「絵でも書くか」

 

海岸へと来た僕はスケッチブックを取り出すと早速絵を書き始めた。海と空と砂浜の絵を描く。絵を描いているときは何も考えずにいられる。

 

「あれ?桔梗くん」

 

すると聞き覚えのある声が聞こえ振り向くと東郷いた。

 

「東郷が一人なんて珍しいな」

 

「一人じゃないよ。友奈ちゃんと一緒だったんだけど」

 

「何だ?二人でお出かけだったのが友奈が財布でも忘れて家に戻ってるのか?」

 

「正解」

 

東郷はくすくす笑うと、彼女は僕のスケッチブックに目をやった。

 

「絵を書いていたの?」

 

「あぁ、趣味だからな」

 

「見せてもらってもいい?」

 

「う、うん、いいけど」

 

僕はスケッチブックを彼女に見せた。あんまり人に見せたことがないから結構恥ずかしい

 

「桔梗くんって風景描くのが好きなの?」

 

「っていうと?」

 

「全部風景の絵で私は好きだけど、人の絵は描かないの?」

 

「う~ん、まずモデルがいない。勝手に書いてると怒られるからな」

 

「そっか、それだったら私がなってもいいよ」

 

東郷か……確かに勇者部の中で一番描きやすそうだけど、

 

「それじゃ、今度描いて……」

 

「今でもいいよ」

 

あれ?東郷、友奈と約束があるんじゃ……

 

「もうちょっと遅れるって友奈ちゃんから連絡あったから……」

 

しょうがないか。僕らは少し離れた木陰へと移動することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

移動し、東郷を早速モデルにした。彼女はじっと何も話さず僕が描き終わるのを待ってくれた。そして……

 

「とりあえず完成かな」

 

「見せて……」

 

僕は描き終えた絵を彼女に見せた。彼女はじっと眺めると……

 

「私って桔梗くんから見たらこんな風に見えてたんだね」

 

「どういう意味?」

 

彼女は何故か恥ずかしそうにしていた。何でだろう?普通に書いたつもりなのに……

 

「でも、素敵な絵を書いてくれてありがとう」

 

「良かったらその絵あげるよ。というかそのつもりだったし」

 

「いいの?」

 

「遠慮しなくていいよ」

 

僕は彼女にその絵をあげると、友奈が息を切らしながらやってきた。

 

「ごめんね。東郷さん、あれ?桔梗くん」

 

「よう、友奈。それじゃ、僕はここで」

 

僕は二人に挨拶を交わし、家に帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桔梗くんが帰って行くと、友奈ちゃんが私が持っていた絵に気がついた。

 

「あれ?それって桔梗くんが描いてくれたの」

 

「う、うん、でもね」

 

私は友奈ちゃんに絵を見せると友奈ちゃんは素直な感想を述べた

 

「うん、東郷さん可愛いよ」

 

「でも、可愛すぎるよ。桔梗くんから見たらこんな風に見えてるのかな?」

 

何故か私は彼の絵がすごく気になってしまった。

 

 

 

 




い、一応関係は進んだのかな?次回は夏凛登場です


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第14話 新たな勇者

友奈達が勇者に選ばれてから一ヶ月がたった。一ヶ月の間全くもってバーテックスの侵攻がなく、平穏な日々を送っていたのだが……

 

「来た」

 

一ヶ月ぶりにバーテックスが現れ、僕たちは樹海にて勇者に変身してバーテックスの動きを待っていた。

 

「あれが五体目」

 

友奈達から離れた場所で敵の動きを見張る東郷。その隣には僕もいた。

 

「状況に応じて武器を変える……今回は援護になるけど、東郷だけで十分だな」

 

「そんなことないよ。桔梗くんのこと頼りにしてる」

 

「おだてるなよ」

 

一ヶ月ぶりなのかみんな緊張しているだろうと思っていたけど、友奈と樹の二人は何か話しているためか、ほんわかした空気が流れていた。

 

「緊張感がないのか、まぁ変に意識するよりかはましか」

 

「ふふ、桔梗くん、風先輩より部長っぽいね」

 

「聞こえてるわよ!!東郷」

 

地獄耳だな、先輩は……とりあえずみんなで攻撃を仕掛けようとした瞬間、上空から何本もの刀がバーテックスの頭に突き刺さり爆発した。まだ全員攻撃はしてないはずだけど……

 

「東郷さん?それとも桔梗くん?」

 

「私じゃない」

 

「僕でもない」

 

「それじゃあ一体誰が……」

 

フッとある場所を見るとそこに一つの影があった。その影に僕は見覚えがあった。

 

「ふん、ちょろい」

 

影は大きく跳ぶと幾つもの刀を投げ、バーテックスを囲み封印の準備に入った。

 

「封印開始!!思い知れ!私の力を!」

 

「まさかあの子一人でやる気!?」

 

「まぁあいつらしいな」

 

「桔梗くん知ってるの?」

 

「ちょっと知り合いなだけだ」

 

すると出てきた御霊からガスが吹き出した。御霊から攻撃のためか精霊達が友奈たちを守る中、あいつは刀を取り出し、ガスの中に入っていった。

 

「そんな目眩まし!気配で見えてんのよ!!」

 

あいつは御霊を一刀両断した。

 

「殲滅!!」

 

『諸行無常』

 

バーテックスの封印が完了し、僕と東郷の二人は友奈たちの所へと行くと、あいつも来ていた。

 

「揃いも揃ってぼーっとした顔してんのね。こんな連中が神樹様に選ばれた勇者ですって」

 

鼻で笑うけど、それって僕も入ってるのか?とりあえずチョップを食らわしておこう

 

「つぅ、痛いじゃない!何をするのよ!?」

 

「いや、何となく」

 

「何となくってあんたね!」

 

「あ、あの、」

 

「何よチンチクリン」

 

「チン…」

 

「私は三好夏凜。大赦から派遣された正真正銘、正式な勇者。あんたたち用済み。はい、お疲れ様でした」

 

友奈たちが夏凛の言葉を聞いて驚く中、もう一発チョップを食らわした。

 

「いたっ、だから何を……」

 

「いや、そういうのはちゃんと説明しないと駄目だろ」

 

「あんたね……」

 

「何だか……」

 

「二人共仲がいいね……」

 

僕と夏凛のやり取りを見ていた樹と友奈。

 

「ちょっと桔梗、ちゃんと説明を……」

 

「……そうですよ。ちゃんと説明してくれないと分からないよ。桔梗くん」

 

何故だが東郷の言葉に何らかの感情が詰め込んであるんだが、正直怖い

 

そんなやり取りをしていると樹海から元の世界へと戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

学校の屋上に戻ると夏凛の姿が無かった。別の場所にいるだろうけど……

 

「それで桔梗。あの子と知り合いみたいだったけど……」

 

先輩が夏凛と僕の関係を知りたがっている。まぁあれだけ親しくしていれば気にはなるだろうけど……とはいえ、何故か東郷が睨んでいるのは気のせいかな?

 

「ただの顔見知り程度ですよ。まぁ一回模擬戦やったらそれから勝負を挑んできたりして……」

 

「それってずっと前に言ってた負けず嫌いな子が三好……夏凛ちゃん?」

 

「そうそう。まぁ近いうちにまた会うだろうけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近いうちとはいったけど……

 

 

「三好夏凜です。よろしくお願いします」

 

まさか次の日に讃州中学校に、それも僕達のクラスに転入してくるとはね

 

 

放課後になり、勇者部に夏凛が来ていた。

 

「そう来たか~」

 

「転入生のフリをするのも面倒くさい。でもま、私が来たからもう安心ね。完全勝利よ」

 

「何故今このタイミングで? どうして最初からきてくれなかったんですか?」

 

東郷の言うとおりだな。あんな自信満々に言うのだから最初から来ていてもおかしくはないと誰だって思う。

 

「私だってすぐに出撃したかったわよ。でも大赦は二重三重に万全を喫しているの。最強の勇者を完成させるためにね!」

 

「最強の勇者……」

 

「そう。あなたたち先遣隊の戦闘データを得て、完璧に調整された完成型勇者。それが私。私の勇者システムはバーテックス用に最新の改良を施されてあるわ。その上、あなたたちトーシロとは違って、戦闘のための訓練を長年受けてきている!」

 

「30戦中30敗してるのにか?」

 

「うるさいわよ!?桔梗なんてすぐに……」

 

何かを言いかけるが、すぐに体を震わせ言うのをやめる夏凛。う~ん、あのことが結構効いてるのかな?

 

「よろしくね。夏凛ちゃん」

 

「いきなり下の名前!?」

 

「嫌だった?」

 

「フン、どうでもいい。名前なんて好きに呼べばいいわ」

 

夏凛の返事を聞いて、笑顔になる友奈。こういう所は友奈らしいな

 

「それじゃ夏凜ちゃん、ようこそ勇者部へ!」

 

「部員になるなんて話、一言もしてないわよ!」

 

「え? 違うの?」

 

僕も友奈の言っている通り、ここに来たということは入部するということかなって思ったけど、

 

「違うわ、私は貴女たちを監視するためにここにきただけよ」

 

「え、もう来ないの?」

 

「……また来るわよ。お役目だからね」

 

あんな風に友奈に言われたらそう言うしかないよな。僕も友奈に対しては押し負けたりする。

 

「じゃあ部員になっちゃった方が話が早いよね」

 

「確かに」

 

東郷も友奈の案に賛成みたいだしね。

 

「まぁいいわ、そのほうが貴女たちを監視しやすいでしょうしね」

 

「さっきから監視監視ってあんたねぇ、見張ってないとアタシたちがサボるみたいな言い方止めてくれない?」

 

「それ以外になんて言い方すればいいのよ。貴女たちどうせまともな訓練してないんでしょ? トーシロの癖して大きな顔するんじゃないわよ」

 

「偉そうにしてるところ悪いけど、夏凛。お前の精霊食われてるぞ」

 

「はっ?」

 

夏凛の精霊義輝の方を見ると、牛鬼にかじられていた。夏凛は急いで義輝を救出した。

 

「何してんのよ、このクサレ畜生!!」

 

『外道め』

 

「外道じゃないよ牛鬼だよ~。ちょっと食いしん坊くんなんだよね」

 

「自分の精霊のしつけも出来ないなんてやっぱりトーシロね!」

 

「牛鬼にかじられてしまうから、みんな精霊を出しておけないの」

 

「それだったらそいつを引っ込めなさいよ!」

 

「この子勝手に出てきちゃうんだ~」

 

「はぁ!? アンタのシステム壊れてんじゃないの!?」

 

『ゲドウメ』

 

「そういえば、この子喋れるんだね~」

 

「えぇ、私の能力にふさわしい強力な精霊よ」

 

夏凛は誇らしげに言うけど、東郷の場合は……

 

「あ、でも東郷さんには三匹いるよ?」

 

東郷も精霊を三匹出すと夏凛はなんとも言えない気持ちになっていた。そりゃ、あれだけ自慢気に言ってたんだからな

 

「僕の場合は一体で二体分だからな」

 

僕も前鬼を出し、前鬼から後鬼へと姿を変えてみせた。

 

「うぅ、わ、私の精霊は一体で最強なのよ。言ってやんなさい」

 

『諸行無常』

 

まぁ聞いてる感じではその精霊は『諸行無常』と『外道め』としか言えないみたいだな

。すると樹が声を上げていた。

 

「どうしよう、夏凜さん」

 

「今度は何よ!?」

 

「夏凜さん死神のカード」

 

「勝手に占って不吉なレッテル貼らないでくれる!?」

 

何だかんだで馴染んでる夏凛。その後友奈は夏凛の歓迎会のためうどんを食べに行こうと言い出すが、夏凛はそれを断るのであった。

 

 

 

 

 



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第15話 三好夏凛

みんなでうどんを食べた後、散歩しながら家に帰っていると砂浜で見覚えのある姿を見つけた。それは夏凛だった。夏凛は優雅に二本の木刀を降っていた。

 

「精が出るな」

 

「!?」

 

声をかけると驚いて咄嗟に僕の方に木刀を向けた。

 

「桔梗!?何しに来たのよ」

 

「ただの散歩だよ。お前はみんなの誘いを断って訓練か」

 

「悪い?どうせバーテックスを全て倒したら私は元の場所に戻る。あんな奴らと仲良くするつもりは……」

 

「仲良くしといたほうがいいぞ」

 

夏凛の言葉を遮る僕。僕はそのまま夏凛の持つ木刀を一本受け取った。

 

「何をするのよ!?」

 

「一人でやってるより、久しぶりにどうだ?」

 

「……前みたいに脅したりしないわよね」

 

やっぱりというか当然か。あれは本当に自分でもやり過ぎたと思っている。

 

「しないよ。ほら、」

 

「……しょうがないわね」

 

それからしばらく夏凛と模擬戦を繰り返した。10回やって夏凛は僕に一回勝った。

 

「流石に合流する前まで訓練をしているだけあるな」

 

「ふん、あんたこそ訓練さぼってたんでしょ」

 

こう見えて結構特訓はしているんだけどな……

 

「とはいえ、まさか夏凛が僕の家の隣だとはね」

 

「まぁこのマンションは大赦が管理してるものだからね。それに近いほうが色々と情報が交換できるしね」

 

「……そうだな」

 

僕たちはそのまま互いの家へと帰宅するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「仕方ないから情報交換と共有よ」

 

次の日夏凛が勇者部へやってきた。何だかんだ言って来てはくれるんだな。

 

「分かってる?あんたたちがあんまりにも暢気だから今日も来てあげたのよ」

 

「ニボシ?」

 

先輩は夏凛が持っているニボシの袋が気になっていた。確かに女の子があんな風にバリバリとニボシを食べていたら気にもするだろうな

 

「何よ。ビタミン、ミネラル、カルシウム、タウリン、EPA、DHA。ニボシは完全食よ!」

 

「……まぁいいけど」

 

「あげないわよ」

 

「いらないわよ」

 

「じゃあ私のぼた餅と交換しましょう?」

 

と言いながら東郷は重箱に入ったぼた餅を取り出した。東郷はぼた餅が好きだな……まぁ理由は知ってるけどな

 

「……何それ」

 

「さっき家庭科の授業で」

 

「東郷さんはお菓子作りの天才なんだよ~」

 

「い、いらないわよ!とりあえず話を戻すわよ」

 

とりあえず夏凛はみんなに改めて話を切り出した。

 

「いい? バーテックスの出現は、周期的なものだと考えられていたけど、相当に乱れてる。これは異常事態よ」

 

「おまけに星屑も何故か統率が取れている動きをしてたしな」

 

星屑の出現についても夏凛は知っている。そして星屑の動きについてもだ。

 

「星屑については大赦でも現在調査中よ。というかあんたも聞いてるでしょ」

 

「僕が聞く前に聞いてるかもしれないと思ってな」

 

「それに帳尻を合わせるため、今後は相当な混戦が予想されるわ」

 

「確かに、一か月前も複数体出現したりしましたしね」

 

それにあのメッセージのこともある。とはいえみんなにはそのことは伝えてなかった。いや伝える必要が無いと判断した。あの子も悪戯だと言ってたしな。

 

「私ならどんな事態にも対処できるけど、あなたたちは気を付けなさい。命を落とすわよ! 他に戦闘経験値を溜めることで勇者はレベルが上がり、より強くなる。それを『満開』と呼んでいるわ」

 

「そうだったんだー」

 

「アプリの説明にも書いてあるよ」

 

「そうなんだ!」

 

「『満開』を繰り返すことでより強力になる。これが大赦の勇者システム」

 

「へー。すごーい」

 

感心する友奈。とはいえ『満開』か……

 

「三好さんは『満開』経験済み何ですか?」

 

「……私は、まだ」

 

「『満開』は使わないほうがいいぞ」

 

「桔梗くん?」

 

僕は一瞬東郷の事を見つめ、話を続けた。

 

「強い力にはそれ相応の報いを受けることになる」

 

もうあの子みたいな辛い目にあってほしくない。ましてや彼女たちにはなおさら……

 

「『なせば大抵なんとかなる!』」

 

突然友奈が大声で勇者部五箇条を述べた。

 

「大丈夫だよ。みんなで力を合わせて頑張れば、大抵何とかなるよ!」

 

忘れていたな。そんなのがあったの。それに友奈の明るさには本当に負けるよ。夏凛は黒板の上に書かれた張り紙を見てため息を付いた。

 

「『なるべく』とか『なんとか』とか、あんたたちらしい見通しの甘いふわっとしたスローガンね。全くもう、私の中で諦めがついたわ」

 

「私らは、その……あれだ。現場主義なのよ!」

 

とりあえず次の議題に移ることになった。次の議題は日曜日子供会のレクリエーションに参加することとなったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に帰る際、夏凛は僕を呼び止めた。

 

「桔梗。あんた満開についてなにか知ってるの?」

 

「……夏凛が話したことくらいしか知らない」

 

「嘘ね。あんたの表情少し怖かったわよ。一体あんたはどこまで知っているのよ」

 

「………今は何も話せない。それだけだよ」

 

「……いいわ。あんたが言いたくないなら無理には聞かないわ」

 

「………悪いな」

 

夏凛、本当にごめんな。本当ならみんなに伝えたいと思っているが、それを言えないっていうのが僕として辛いことだ

 

 

 

 

 

 

 

そして日曜日、みんなが子供会のレクリエーションに参加しながら夏凛の誕生会をやるというらしいが、僕は残念ながら来れなかった。

 

「いや、悪いね。用事あったろう」

 

「………」

 

僕は春信さんに呼び出され、喫茶店でお茶を飲んでいた。

 

「いえ、上の方に呼び出されたら断ることは出来ませんよ。それで呼び出したのお茶を飲んで世間話をしに来ただけですか?それだったら帰りますよ」

 

「……夏凛はどうだい?」

 

「夏凛?まぁ頑張ってると思いますよ。とはいえみんなに対して一歩引いてる感じがするけど……」

 

「あの子は僕のせいで独りでいることがいいと思っているからね。今いち踏み込めないんだと思う」

 

「あんたのせいね……まぁ仕方ないさ。出来る兄がいれば誰だって比べちゃう。でも、春信さんはアイツとは仲良くなりたいんだろ」

 

「まぁね、でもなかなかあの子と会う機会がなくってね」

 

春信さんくらいの立場になれば中々家族と会うのは難しいらしいからな。

 

「でも、あいつには勇者部の皆がいるからな。特に友奈と東郷がな」

 

「君の経験からかな?」

 

「そんなところですよ」

 

そうあの二人には僕自身助けてもらったりした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰り道、前を歩く四人の姿を発見した。

 

「あっ!?桔梗。今帰りかしら?」

 

「すみませんね。お偉いさんの愚痴を聞いてたんで」

 

「桔梗さんはよく大赦の人とお話してるんですね」

 

「まぁ本当に愚痴ばかりだけどね。みんなは?それに夏凛の姿がないけど……」

 

勇者部の中に夏凛の姿がなかった。あいつが先に帰るわけ無いと思うけど……

 

「それが来なかったの」

 

「来なかった?」

 

「うん、電話もしたんだけど切られちゃって……」

 

う~ん、考えられることは……現地集合のはずが学校に来たとか……ありそうだな。

 

「それでみんな夏凛ちゃんの家に行こうって話になったんだよ」

 

なるほどな。みんならしい。

 

 

 

 

それから僕らは夏凛の家を訪ね、誕生日会を開催した。こういうことが初めてだったのか戸惑う夏凛。だけどな夏凛、お前に必要なのはみんなだと思う。

 

 




原作三話終了です。最後手抜きすぎたかな?次回はオリジナルで桔梗の過去に纏わる話です


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第16話 キキョウ

オリジナル回となります。


ある日の放課後、勇者部の活動を行っている時の事だった。

 

「メッセージ?」

 

作業中に携帯にメッセージが入り、僕はそれを確認すると……

 

『キミニアエルヨ』

 

僕はそれを見た瞬間、頭に痛みが走った。頭を抑えていると心配そうに東郷が声をかけてくれた。

 

「大丈夫?調子が悪いの?」

 

「いや、別に大丈夫だけど」

 

「風邪?それだったら早く帰らないと」

 

友奈も心配そうにしていた。いや、先輩も、樹も、夏凛もだ。

 

「調子悪いのに無理したら駄目でしょ。絵の作業だったら夏凛が替わりにやってくれるし」

 

「ふん、まぁあんたの作業くらいは簡単にこなすわ」

 

それはそれでかなり心配だ。先輩と夏凛の絵は本当に独創的だしな……

 

「あの、保健室でお薬もらってきましょうか?」

 

「いや、多分そこまで酷いものじゃないから大丈夫かと……」

 

皆がここまで心配してくれるのは本当にありがたい。さっきのメッセージなんて忘れてしまおう。僕がそう思った瞬間、アラームが鳴り響くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

樹海へと訪れた僕らは、変身を終える。だが、ある異変に気がついた。

 

「どこにも敵がいないわね」

 

先輩の言うとおり敵の姿が確認できなかった。もしかしたら小型のバーテックスがいる可能性だってあるはずだ。僕は端末で敵の位置を確認した。

 

「えっ?」

 

マップの中に確かに敵の位置が表示されている。だけど敵の名称がおかしい。みんなもそれに気がついている。

 

「ねぇ、これって」

 

「壊れちゃった?」

 

「そんな訳ないじゃない」

 

「それじゃあ、壊れてないって言うことは……」

 

「みんな!?敵が動いたわ!このスピード……桔梗!?」

 

先輩の叫びが聞こえた瞬間、僕の右腕が切り裂かれた。咄嗟のことで判断が出来なかった。ましてや前鬼の守りが間に合わなかった。

 

「くそっ!!」

 

大鎌を取り出し、敵の方を見た。敵は白い装束、白い身体、顔には星屑と似た口が開いていた。襲ってきたのは人型のバーテックス。だが、僕が気になったのは奴の右腕だ。何故か右腕だけ人の物だった。

 

「………アエタ」

 

奴は僕の首をつかもうとするが、前鬼がそれを防いだ

 

「ジャマ」

 

右腕で攻撃を仕掛けてきた。すると何故か前鬼は障壁を張ろうとしなかった。僕は首を捕まれそのまま投げ飛ばされていく。

 

「ぐううううううう」

 

「桔梗くん!?」

 

 

 

 

 

 

敵に投げ飛ばされていくと神樹の近くまで来ていた。僕はすぐに体勢を整え、奴を睨んだ。

 

「アエタ、ヨウヤクアエタ。オレトヒトツ」

 

「気持ち悪いことを言うな!?お前が何なのか知らないけど、敵である以上お前を……」

 

「テキ?オレハチガウ。オレハ……」

 

奴が何かを言いかけた瞬間、僕は大鎌で奴を切り裂こうとした。だが奴は左腕を鎌に変化させて防いでいた。

 

「くっ!?」

 

今度は背中から無数の触手を生やすと僕を縛り上げていく。何とかして脱出しようとするが、右腕がないため今いち動きづらい。奴は僕を縛りあげた状態で近づいた。

 

「オレハオマエ、キキョウダ」

 

「何を……言っているんだ」

 

「ワスレタノカ?オマエハイチドオレニアッテイル」

 

奴が何を言っているのかわからない。唯でさえマップに表示された奴の情報ですら戸惑っているのに……何で奴の名前が『キキョウ』なんだよ。お前は……

 

「お前は……」

 

「「バーテックスじゃないの(ジャナイノカ)」」

 

奴と言葉が被った。奴の口が笑みを浮かべているように見えた。

 

「オマエトヒトツニナレバ、オレハ………」

 

突然僕を縛る触手が破壊されていった。触手を破壊したのは東郷が撃った銃弾だった。

 

「桔梗を離せぇェェェ!!」

 

すると空から先輩と夏凛の二人が奴に攻撃を仕掛ける。奴は二人の攻撃を避けるが樹の糸が奴を縛り上げた。

 

「コレハ………」

 

「はあああああああ!!勇者パンチ!!」

 

拘束された奴は友奈の拳を喰らった。その隙をつき四人で封印の儀を始めた。

 

「バーテックスだったら御霊を破壊すれば……」

 

奴はバーテックスと同じように身体の中から御霊が出現するが、通常の御霊とは違い、御霊を掴んでいる右腕が現れた。

 

「あ………」

 

僕はその右腕を見て何故か無いはずの右腕が痛みだした。

 

「何アレ?」

 

「気持ち悪すぎでしょ」

 

「さっさと破壊するわよ」

 

夏凛が刀を抜き、御霊を破壊しようとした。

 

「や、やめろ!!」

 

何故か僕はそう叫んでいた。僕の叫びを聞き、夏凛は攻撃をやめた瞬間、御霊が奴の身体に戻った。

 

「ツギハカクジツニ……」

 

奴が何処かへと消えていくと同時に樹海から元の世界に戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校の屋上に戻った僕ら。

 

「一体あれは何なのよ」

 

「人型って初めてですよね」

 

「それに桔梗くんの事を狙っていました」

 

「桔梗さん?」

 

「ちょっと桔梗!?どうしたのよ」

 

僕はまた頭痛に襲われた。今度はかなりの痛みだ。

 

「くっ、何なんだよ。これは一体……」

 

あまりの痛みに地面に倒れ、僕は意識を失いそうになった。意識を失いながら僕はある記憶を見ていた。星屑の口元が血に染まり、僕の右腕も血に染まり、その横で泣きじゃくる………乃木園子……

 

「桔梗くん!?」

 

「夏凛!大赦に連絡して」

 

「解ってる!」

 

そして彼女たちの声を聞きながら僕は完全に意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東郷SIDE

 

 

 

桔梗くんが意識を失って数日が経った。彼の容体は悪いのか病院ではずっと面会謝絶だった。

 

「桔梗くん……」

 

部室は彼のことが気になりすぎて重い空気が張り詰めていた。

 

「一体あの敵は何なの?キキョウなんてふざけた名前だし……」

 

「大赦の方に報告はしたけど、返事はないわ」

 

「桔梗さん、大丈夫でしょうか?前にも倒れたって聞きました」

 

「あの時は何ともなさそうだったんだけど……」

 

一年前にも彼は頭痛で倒れた。その時は私達が彼を介抱したけど……

 

「……私達はまだ彼のことをよく知らないのかもしれない」

 

「東郷さん?」

 

「どういうこと?」

 

風先輩がそう聞くと、私は気になっていたことを告げた。

 

「桔梗くんは満開のことを話した時も、まだなにか知っているみたいでした。それに一人で戦いたがる理由も……」

 

「あいつが一人戦いたがる理由聞こうとしたけど、ごまかされたわ。でも、あいつ言っていた。『もう誰にもあんな思いをさせたくないから』って」

 

あんな思いって一体……桔梗くんは一体何を隠しているの?

 



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第17話 過去の真実

今回は鷲尾須美のキャラが登場します。


目が覚め直ぐに自分がいる場所を理解した。僕は病院にいるのか……

 

「あれから一体……」

 

起き上がると直ぐに自分の身体の異変に気がついた。義手が外されている。それも当然だ。奴との戦いで義手を破壊されたんだ。

 

「………一体あいつは何なんだよ……」

 

謎のバーテックス、それに覚えがないはずの記憶……

 

「そういえばこの病院。もしかしたら」

 

僕は点滴を引き抜き、直ぐにある場所へ目指した。

 

 

 

 

 

 

 

僕はその部屋に入った。そこは大赦に作られたある部屋と同じ作りであり、部屋の奥に彼女がいた。

 

「……来たんだね」

 

「あぁ、多分検査入院来てるだろうと思ってたからな。その様子じゃ僕が入院してるって聞いてるみたいだな」

 

「……うん、新種のバーテックス。きょうくんはそれに負けたんだよね」

 

「それだけじゃないだろ。奴の名称はキキョウ。僕と同じ名前。それに奴の御霊に僕の右腕が一緒に出てきた」

 

「…………」

 

「そして樹海から戻ってきた時、僕はある光景を思い出した。樹海、星屑の口が血で赤く染まり、僕の右腕はなく、そして……その側に園子、お前がいた」

 

園子は俯きながら黙ったままだった。

 

「お前は前に僕に隠し事をしていると言ってたよな。もしかして……」

 

「そうだよ。今回のことと私が……ううん、私達があなたに隠していることはつながっているよ」

 

顔を上げた園子はいつもみたいな表情ではなく、険しかった。

 

「私ときょうくんはずっと前から友達だったんだよ」

 

園子は語った。過去の真実を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれはいつもと変わらない日々だった。でもその日だけわっしーの様子がおかしかった。

 

「どうしたの~わっしー」

 

何故か顔が真っ赤だった。風邪でも引いたのかと思ったけどそんな様子が感じられない

 

「う、その、告白されたの」

 

「告白?告白ってあの?」

 

「うん、隣のクラスの子なんだけど、好きだって告白されたんだけど……なんて答えればいいかわからないまま断っちゃって……」

 

わっしはお固いからそう言うのにあんまり慣れてないからね~その子落ち込んでたりしてなければいいのに……

 

 

 

そして放課後、ミノさんからわっしーが告白された事を話した。

 

「聞いたよ。あたしもその告白した男の子と会ってさ、すっごく落ち込んでたよ」

 

「そうなんだ~」

 

「振られたことに落ち込んでもいたけど、これからどう接すればいいのかわからないって泣いてたんだ。だからあたしが間を取り持ってやろうかと思って」

 

「わっしーとその子が友達としてお付き合いできればいいね~」

 

私達二人がそんな話をしてから数日後、ミノさんがバーテックスとの戦いで死んだ。その葬式に私達も出ていた。そしてわっしーに告白したというその子もいた。だけどその子はミノさんの死を知らなかったみたいだった。ただ呆然としていた。

 

(あの子……)

 

 

 

それから私達はこれまで以上に頑張った。そしてあの大橋での決戦。大橋が崩れていく中、私は満開を使ってバーテックスを追い払っていく。

 

「バーテックスの他に星屑も、わっしーが動けない以上、ここは」

 

バーテックスに攻撃を与えていくと何故か一匹の星屑がある場所へと向かっていった。私はその星屑を追っていくとそこには……

 

「えっ!?」

 

星屑の姿はなかったけど、見覚えのある男の子がいた。あの子だ。

 

「どうして君がここにいるの?」

 

「えっ?君は……僕は確か車の中に……」

 

本来勇者でなければ樹海に来ることが出来ないのに、どうしてこの子がここに……それに本来は女の子しか適正がないのに……まさかこの子も勇者の適性が……

 

「名前は?」

 

「神宮桔梗」

 

「じゃあ、きょうくん。ここは危ないから安全なところに逃げて!必ず守るから」

 

そういえば神宮って名字に聞き覚えが有る。大赦の偉いお爺ちゃんと同じ名字だ。もしかしてこの子はそのお爺ちゃんのお孫さんなのかな?

 

「で、でも、君が……」

 

「私なら大丈夫だよ~だって勇者だから」

 

笑顔でそう答えた私。だけどきょうくんは咄嗟に私を突き飛ばした。一瞬何が起きたのか理解できなかった。その瞬間、彼の前に星屑が襲いかかってきていた。

 

(もしかして……私を庇ったの?)

 

体勢を整えて私が見た光景は……

 

「えっ!?」

 

彼の右腕が星屑に食い千切られた。星屑の口は血に染まり彼は失った右腕から大量の血が流れていた。ここで私は彼を放っておいてあの星屑を倒せばよかった。だけど彼のことを心配した私は彼に駆け寄った。

 

「きょうくん、きょうくん!起きてよ」

 

星屑はそのままどこかへ飛んでいった。私は気にもとめず必死に彼に声をかけ続けていた。

 

「早く、助けないと……それだったら」

 

私は今も侵攻し続けているバーテックスに向かっていった。

 

「待っていて、直ぐに助けるから……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いが終わり、私は体の機能を多く失った。元の世界に戻っても彼の姿がなかった。もしかしたらと思い、私は大赦に大橋の事故できょうくんの事を探すように頼み込んだ。

 

 

数日して私は彼の無事を聞いたけど、彼にはあの恐怖を思い出してほしくないと思い、精霊の力を使い、きょうくんの記憶を封じた。だけど完璧ではなかった。彼は樹海に入ったことをこと覚えていた。そして私は………

 

「はじめまして~神宮桔梗くんだね~わたしは乃木園子」

 

きょうくんと再会した。きょうくんは私のことを覚えてないけど、私は覚えているきょうくんが助けてくれたことを……

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが過去の真実。ごめんね、私のせいで貴方は右腕を無くした。ごめんね、私があの星屑を倒さなかったから辛い目にあった。ごめん、ごめんなさい、きょうくんに辛い思いをさせたくないからって……記憶を奪った。ごめんなさい。ごめんなさい」

 

園子はずっと謝り続けていた。ずっと隠していたんだ。大赦の人たちもそれを知っていたんだ。だけど彼女は一人抱え込んでいた。

 

「………園子」

 

僕はどう声をかければいいかわからなかった。色んな事が明かされ混乱していた。どうすれば……

 

『仲の良い子が泣いてる時にどうすればいいかだって?まぁ励ましてあげたり、男の子なんだからそこは……』

 

昔三ノ輪銀に言われたことを思い出した。あの時彼女はなんて言おうとしたのだろうか?だけど……今は励ましたりするんじゃない。

 

「園子」

 

僕はそっと彼女を抱きしめた。彼女は突然のことで動揺するけど……

 

「ずっと辛い思いをしていんだな。だけど謝るな。僕が謝るべきなんだ。僕のせいでお前に辛い思いをさせてしまった。ごめん。そしてありがとう」

 

「きょう……くん」

 

そのあと彼女は大泣きしていた。途中大赦の人が来て何事か説明を求められた。別にいじめたつもりはないんだけど……

 

 

 

しばらくして落ち着いた園子に、僕は改めてヤツの事を聞いた。

 

「だけど奴は何であんな姿に?それに僕と一つになるって」

 

「わからない。でももしかしたらバーテックス、星屑は人間を知ろうとしているんじゃないの?」

 

何故かソッポを向く園子。あれ?何でだろう?

 

「人を知るからって、僕と一つになればいいって……化物が考えることは分からないな」

 

さてそれ以前僕は奴に勝てるだろうか?みんなと協力すれば何とか出来そうだけど、また御霊が出た時にあの右腕を見ることになると思うと……

 

「……どうすれば」

 

 

 

 



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第18話 思い

今回から4話の話になります


「はぁ~」

 

退院してみんなに心配をかけられてから数日、勇者部のみんなで集まっていると樹がため息をついていた。

 

「どうしたの? 溜め息なんてついて」

 

先輩は樹の様子が気になり、何があったのか聞くと樹は落ち込みながら答えた。

 

「うん。あのね、もうすぐ音楽の歌のテストで上手く歌えるか占ってたんだけど……死神の正位置。意味は破滅、終局」

 

これは確かに不吉だな。というか前にも夏凛を占った時も死神のカードが出た気がするんだが……

 

「気にすること無いでしょ」

 

「そうだよ。こういうのってもう一度占ったら全く別の結果が出るもんだよ」

 

「…………」

 

樹はそれから三回占ったが全て死神。これはもうやばいとしか言いようが無いな

 

「だ、だいじょーぶ。フォーカードだからこれはいい役だよ」

 

「死神のフォーカード」

 

「あぁ、いや悪い意味じゃなくて~」

 

これは結構やばい気がするな……先輩もそう思ったのかある議題が上がった。それは樹の歌の特訓だ。

 

「アタシたち勇者部は、困ってる人を助ける。もちろん、それは部員だって同じよ」

 

「歌が上手くなる方法か~」

 

「まず、歌声でα波を出せるようになれば勝ったも同然ね」

 

「α波……」

 

「いい音楽や歌というものは、大抵α波で説明がつくの」

 

「そうなんですか!?」

 

「んな訳無いでしょ」

 

というか藁にもすがる思いである樹にあんまり嘘をつかないほうがいいな。

 

「樹一人で歌うと上手いんだけどね。人前で歌うのは緊張するってだけじゃないかな?」

 

「そっか。それなら、―習うより慣れろだね」

 

 

 

 

 

友奈の提案でみんなでカラオケに行くこととなったけど……

 

「イェ――イ! 聴いてくれてアリガト!!」

 

先輩、友奈と夏凛のデュエット。なんかみんな楽しんでないか?すると今度は樹の番になった。樹が歌い出すがやはり緊張のためか上手く歌えてない感じだ

 

「やっぱり堅いかな」

 

「誰かに見られてると思ったらそれだけで……」

 

「まぁ今はただのカラオケなんだし、上手かろうと下手だろうと好きな歌を好きに歌えばいいのよ」

 

それからみんなでカラオケを楽しむこととなったが、携帯にまたメッセージが入り、僕は確認するために外へと出た。

 

 

 

 

 

 

メッセージは大赦からだった。奴への対策はまだだということと最悪の事態を想定しろと送られていた。

 

「……奴も出てくる可能性があるな。さてどうしたものか」

 

全くもって奴に対する対策が思いつかない。このままだと前みたいになる。そんな時フッとあることを思いついたけど……

 

「でもそれはやらないほうがいいよな。だけど……」

 

それが確実に実行できるかはわからない。可能とするとしたらやはり……

 

「神頼みか」

 

僕はそのままみんなのところに戻ろうとするとトイレから出てきた夏凛と出くわした。

 

「……あんたの所にも大赦から?」

 

「あぁ、夏凛は?」

 

「きてないわ。でも風の所には来たみたい。でもあいつ怖がっていたわね」

 

夏凛は先輩との会話を話した。

 

 

 

 

 

「あなたは統率役には向いてない。私ならもっとうまくやれるわ」

 

「これは私の役目で私の理由なのよ。後輩は黙って先輩の背中を見てなさい」

 

 

 

 

「先輩も頑張り過ぎだな」

 

「それはあんたにも言えることよ。あのバーテックスのことなにか知ってるんでしょ。教えなさい!もしかしたら……」

 

「いや、あれは僕が戦うべき相手だ。まぁもしものときは夏凛に頼むから……」

 

「ふん、まぁ期待してるわよ」

 

夏凛はそのまま皆のところに戻るのであった。さて本当に最悪の結果にならないように頑張らないとな

 

 

 

 

 

 

 

 

帰り道、先輩はずっと上の空だった。樹もそれを感じて声をかけていた。

 

「お姉ちゃん?

 

「え? 何?」

 

「樹の歌の話よ」

 

「風先輩、何かあったんですか?」

 

「ううん。何にも……」

 

「樹はもう少し練習と対策が必要かな?」

 

「アルファ波を出せるように……」

 

「アルファ波から離れなさいよ」

 

 

 

 

 

 

次の日部室へ行くと何故か夏凛が苦しそうにしていた。僕は机の上に置かれたサプリの瓶を見ると……

 

「いや、サプリに頼るのはどうかと思うぞ。おまけにお前が飲んでも樹に効果がないぞ」

 

「そ、そんなの分かってるわよ~」

 

分かっていて何故そんな事を……

 

「喉よりもリラックスの問題じゃない?」

 

「う、うん」

 

「今度は緊張を和らげるサプリをもってくるわ」

 

「またサプリですか」

 

さて本当にどうしたものか。まぁ樹に必要なのは楽しむ心だな。僕が口出すよりかは先輩に任せようか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、樹がお風呂で一人で歌を歌っていた。気が付くと風が覗き込んでいた

 

「やっぱり樹、一人で歌うと上手いじゃん」

 

「お、お姉ちゃん!?」

 

「樹はもっと自信持っていいのに、ちゃんとできる子なんだから」



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第19話 歌

今回は樹SIDEから始まります


小学生の頃、知らない大人たちが家にやってきたことがあった。私はお姉ちゃんの背中に隠れているだけで、後でお姉ちゃんがお父さんとお母さんが死んだことを教えてくれた。

 

それからはお姉ちゃんは私のお姉ちゃんで、お母さんでもあって……ずっとお姉ちゃんの背中が安心できる場所だった。

 

でも、私一人ではお姉ちゃんを支えることは出来なかった。

 

あの日勇者のことを話した時も、お姉ちゃんと桔梗さんは二人で秘密を抱え込んでいた。私が後ろに隠れている自分ではなく、隣を歩いていける自分だったら……

 

 

目を覚まし、お姉ちゃんが用意してくれた朝食を食べようとした時だった。

 

「ちょっと動かないで」

 

私の寝癖を直してくれた。寝癖を直し終わるとお姉ちゃんは笑顔で……

 

「よし、今日も可愛いぞ~ありゃ?元気ないね、どうした?」

 

「あのね……」

 

私はずっと言いたかったことを伝えようと思った。

 

「あのね、お姉ちゃん。ありがとう……」

 

「何、急に?」

 

「何となく言いたくなったの。この家の事とか、勇者部のこととか、お姉ちゃんにばっかり大変なことさせて……」

 

「そんな、私なりに理由があるからね」

 

「理由って?」

 

「まあ簡単に言えば、世界の平和を守るためかな?」

 

お姉ちゃんはそう言って笑顔をみせてくれた。

 

「だって、勇者だしね」

 

「でも……」

 

「何だっていいよ。どんな理由でも、それを頑張れるならさ」

 

「どんな……理由でも?」

 

でもただ後ろを付いていく私には理由なんてないよ……

 

 

 

 

 

「それで用事って?」

 

お昼休みに私は桔梗さんを呼び出し相談をした。頑張れる理由が無いことを……

 

「……樹はその理由に気がつけてないだけじゃないのか?」

 

「気がつけてない?」

 

「そうだ。まぁそれは自分で見つけることだな」

 

自分で見つける……そんなことできるかな?

 

 

 

 

 

 

放課後、勇者部の依頼で子猫を預けてくれている家に私とお姉ちゃんが来ていた。

 

「すいませーん。讃州中勇者部でーす。仔猫を引き取りに来ました」

 

 

インターホンを鳴らすと家の中から女の子の声が聞こえた。

 

「やだ、ぜったいやだ。この子をあげるなんてわたしが飼うからぁ」

 

「……でもね、家では飼えないのよ」

 

「もしかして子猫連れて行くのいやだったのかな?」

 

「あちゃーもっとちゃんと確認しとけばよかった」

 

「どうしよう」

 

「大丈夫。お姉ちゃんが何とかするわ」

 

お姉ちゃんは家に上がり込み、あの子の母親に説得をした。やっぱり私はお姉ちゃんのことを後ろからしか見つめることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

帰り道、何とか説得に成功したことに対して喜んだ私。だけどお姉ちゃんの表情は暗かった。

 

「ごめんね、樹」

 

「何で謝るの?」

 

「樹を勇者なんて大変な事に巻き込んじゃったから」

 

お姉ちゃん、ずっとそんな事を思っていたの?

 

「さっきの家の子。お母さんに泣いて反対してたでしょ? それで思ったんだ。樹を勇者部に入れろって大赦に命令された時、私やめてっていえばよかった。さっきの子みたいに、泣いてでも、もしかしたら、樹は勇者にだってならずに普通に」

 

「何言ってるのお姉ちゃん! ……お姉ちゃんは、間違ってないよ」

 

そう、お姉ちゃんは間違ってはいない。私は言い続けた。

 

「それに私ね嬉しいんだ。守られるだけじゃなくて、お姉ちゃんとみんなと一緒に戦えることが」

 

「ありがと」

 

「どういたしまして!」

 

私達は互いに笑顔になった。

 

 

 

 

 

 

 

そしてテスト本番、あんなに練習したのに、やっぱり緊張してしまう。もう無理かと思った瞬間、教科書から一枚の紙が落ちた。私は慌てて拾い上げると……

 

『テストが終わったら打ち上げでケーキ食べに行こう・友奈』

 

『周りの人はみんなカボチャ・東郷』

 

『気合いよ』

 

『歌声に思いを込めろ・桔梗』

 

『周りの目なんて気にしない! お姉ちゃんは樹の歌が上手だって知ってるから・風』

 

みんなからのメッセージを見て、私の緊張は和らいだ。そうだ、そうだよね。私は一人じゃない。みんながいるんだから、勇者だって、この歌だって

 

 

 

 

 

 

部室に行き私はみんなに合格したことを伝えた。そうしたらみんな自分のことのように喜んでくれた。

 

 

その日の帰り道に私はお姉ちゃんに夢ができたことを話した。お姉ちゃんは聞きたがっているけど、まだ秘密にしていたいんだ。まだ夢なんていえないけど、やってみたいことができた。ただそれだけ、でももしこれが夢の一歩だったら、頑張る理由にだってなる。そしてお姉ちゃんの隣を歩けるようになる。

 

わたしはカラオケである歌を録音して、オーディションを受けることにしたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は自宅で大赦の……園子のお世話係の人に連絡を入れた。

 

『はい』

 

「すみません、園子に伝えてもらいますか?奴に勝てる方法があると」

 

僕は勝つ方法を話すと電話越しで慌てている反応が聞こえていた。

 

『そ、それは確かに……で、ですがそんな可能性が低いことなんて……』

 

「とりあえず神頼みしてみますよ」

 

一方的に電話を切るとアラームが鳴り響いた。

 

「始まるか。最悪の事態とやらが……」

 

僕は神樹に祈った。どうかみんなが無事であるようにと……そして代償を……

 

 

 

 

 

 



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第20話 決戦 前編

樹海へと訪れた僕達、端末をチェックするとバーテックスが7体来ていた。

 

「残り七体。全部来てるんじゃないの? これ」

 

夏凛もマップをチェックしていた。全部来ているということはこいつらを倒せば勇者としての役目も終わるということだ。

 

僕たちは一斉に変身した。

 

「敵ながら圧巻ですね」

 

「逆に言うとさ、こいつら殲滅すればもう戦いは終ったようなもんでしょ」

 

「殲滅ね!」

 

「皆、ここは、あれいっときましょ」

 

「あれ?どれ?」

 

 

僕と夏凛以外が円陣を組んでいた。まぁ決戦だからな

 

「え、円陣?それ必要?」

 

「決戦には気合いが必要なんでしょ?」

 

「夏凜ちゃん!」

 

「たく、しょうがないわね」

 

「やれやれ」

 

僕ら二人も円陣に参加した。

 

「あんた達、勝ったら好きなもの奢って上げるから、絶対死ぬんじゃないわよ!」

 

「よーし、美味しいものいっぱい食べようと!肉ぶっかけうどんとか!」

 

「言われなくても殲滅してやるわ!」

 

「わ、私も叶えたい夢があるから」

 

「精一杯頑張るぞ」

 

「頑張って皆を、国を守りましょ」

 

「よーし!勇者部ファイト!!」

 

円陣を終え、僕はもう一度マップを確認した。奴は来ていないみたいだ。

 

「今は目の前に集中しなさい」

 

僕の考えを読んだのか、声をかけた夏凛。たしかにそのとおりだ

 

「わかってる」

 

一番大きな奴以外が動き出し、僕達も戦闘を開始した。まずはこっちに一番接近してくる牡羊型。夏凛が一太刀浴びせ、東郷が追撃として一発当てるがまだ動きが止まらない。それなら……

 

「後鬼!!」

 

僕は至近距離で奴の頭上に何十発もの銃弾を撃ちこむと爆発した。バーテックスの動きが止まり封印を開始した。出てきた御霊は激しい回転をし始めたが、友奈の拳が回転を止め、東郷が一発銃弾を当てて破壊した。

 

「こいつの動き、おかしい」

 

今のバーテックス、何だかわざわざ攻撃してくれと言わんばかりの動きだった。まさか囮?

 

すると牡牛型のバーテックスが頭上の鐘を鳴らした。鐘から音波を鳴らし僕達の動きを止めた。東郷は助けにはいろうとするが別のバーテックスによって妨害されている

 

「音はみんなを幸せにするもの。こんな音……こんな音!」

 

樹が糸で鐘を止めると音がやんだ。それと同時に他のバーテックスを大剣で切り裂き、三体同時に封印をしようとした瞬間、バーテックスたちの動きが変わった。奴らは後退していく、すると奥にいた獅子型と他のバーテックスが見る見るうちに合体していく

 

「こんな聞いたこと無い」

 

「でも一気に倒せるよ」

 

「いや、そうだけど……」

 

友奈の前向きな考えには賛成だけど、合体したということは攻撃も強力になっていることだぞ

 

合体バーテックスから無数の炎が放たれ、僕達を吹き飛ばしていく。

 

(受けきれなかった!?まずいなこのままだと全滅)

 

先輩は何とか立ち上がるが、バーテックスが放った水球に閉じ込められた。勇者とはいえ水の中に閉じ込められれば息をすることさえ出来ない。

 

(ダメ。ダメだ。樹を置いて、みんなを巻き込んでおいて、さっさとくたばるなんて、できるわけがないでしょ)

 

突然先輩の刻印が眩い光を放つと神秘的な衣装を纏った姿へと変わった。あれは……

 

「満開」

 

まさか先輩が満開するなんて……仕方ないことだ。今回は満開しなければ勝てない相手だということ……

 

「力がみなぎる。これなら……」

 

先輩は大剣でバーテックスを攻撃するとバーテックスはそのまま倒れていく。それと同時に今度は東郷が満開した。神秘的な服に戦艦みたいなものに乗り込んでいた。

 

「我、敵軍に総攻撃を実施す」

 

地面に潜り込んだバーテックスに向かって砲撃を与えると同時に魚型のバーテックスが散っていった。どうやら満開だったら封印しなくても倒せるみたいだな。

 

(これで二人目。本当にこのままだとみんなが……)

 

焦る気持ちの中、神樹に接近していくバーテックスの存在に気がつくがそれを満開した樹が止め、双子型を倒した。

 

「あとは友奈と夏凛だけ……これ以上は」

 

突然合体バーテックスが炎を貯め始めた。炎はみるみる家に巨大な球体へと変わっていった。それを放つバーテックス。僕はそれを止めようとするが先輩も来ていた。

 

「桔梗!?あんたはみんなと一緒に封印を……」

 

「一人で頑張ろうとするなよ!僕にも手伝わせろ」

 

「いいから部長の言うことを聞きなさい!」

 

何故か強情な先輩。僕はため息を付き友奈たちと一緒に封印を開始するのであった。




短めですが、次回に続きます


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第21話 決戦 後編

合体バーテックスの封印を開始した瞬間、勇者部全員、勿論僕もただ呆然と見上げるだけだった。何故なら出てきた御霊は巨大だった。それに出ている場所が宇宙と来たものだ。誰だってそうなるのは当然だ。

 

「大丈夫」

 

だが友奈は諦めていなかった。

 

「御霊なんだから今までと同じようにすればいいんだよ。どんなに敵が大きくたって諦めるもんか!勇者ってそういうもんだよね」

 

「友奈ちゃん!行こう。今の私なら友奈ちゃんを運べると思う」

 

僕自身、これ以上は満開をしてほしくなかった。もしあの御霊を破壊するのであったらきっと友奈は満開する。だけど……この場であの御霊を破壊することが出来るのは友奈しかいない

 

「……二人共気をつけろ」

 

「うん、任せて」

 

「きっと戻ってくるから」

 

友奈は東郷が操る戦艦に乗り込み、宇宙へと上がった。残った僕たちは封印に集中するべきなのだが……どうやら僕はこの場から離れなければいけないみたいだ

 

「樹、夏凛、ここを頼んだ」

 

「何を……」

 

「夏凛さん、あれ……」

 

樹が指を刺した方を夏凛も見るとそこにはキキョウがいた。

 

「あいつは僕の相手だ。夏凛、後のことを頼んだぞ」

 

「……分かったわ」

 

僕は大鎌を構えて、キキョウへと向かっていた。

 

 

 

 

 

僕はキキョウの前に立つとキキョウは笑みを浮かべていた。

 

「ヨウヤクオレトヒトツニナルケッシンガツイタノカ」

 

「お前と一つ?違うな、お前を倒す決心が出来ただけだ」

 

「オレヲタオス?ムリダナ」

 

キキョウは左腕を大鎌に変化させ、襲いかかる。僕は大鎌で攻撃を受ける。

 

「オマエハニゲタンダ。オレカラ……」

 

「確かに逃げたさ。その右腕を見て恐怖した」

 

キキョウは僕の大鎌を弾き、上段蹴りを放ち、僕の顎を掠める。顎に攻撃を喰らえば一発で気絶してしまう。だけどキキョウは鋭い蹴りのラッシュを放ち続ける。

 

「前鬼!!」

 

前鬼のバリアで攻撃を防ぐが、奴はバリアを張ることを待っていたかのように右腕で僕の首を掴んだ

 

「コノ右腕ハオマエノモノ。精霊ハ勇者ヲマモル存在。ダガ、コノ右腕ハオマエニフレヨウトシテイルダケ、コウゲキデハナイ」

 

どうやら奴は精霊の力も知っているみたいだな。奴の右腕は僕の腕、僕の身体に触れようとしているのであれば精霊は守ってくれるはずがない。おまけに奴の言葉が段々とはっきりしていく。僕に触れることで情報を得ているのか

 

(このままじゃ……)

 

このまま前と同じになってしまう。その時、上空に眩い光が見えた。あれは友奈が満開した光

 

(満開……そうだよな。そうするしかないか。それに忘れていた。こいつを倒す最後の賭けを……)

 

僕は掴んでいる右腕を思いっきり殴った。その結果右腕が離れた。その瞬間を狙い僕は……

 

「満開!」

 

眩い光が僕を包み込んだ。体中に力が漲ってくる。そのせいなのか恐怖が無くなっていく。これが満開か……

 

光が消えると僕の両手に巨大な大鎌が二本現れ、背中には尻尾のようなものが生え、その先端には銃が付けられた。そして黒い鬼の面がつけられた。

 

「………」

 

僕はただ大鎌を振ると同時に奴の左腕を切り落とした。

 

「コレが……勇者の力……ダケドオマエの情報をヨミトッタオレにだって!!」

 

左腕が生え変わるとキキョウは似たような姿に変貌した。面白い……

 

「行くぞォォォォォォ!!キキョウ!!」

 

「来い!!勇者!!」

 

何発もの斬撃、何十発もの砲撃が飛び交った。その度に周りのものが壊れていく。

 

「マダマダマダダァァァァァ!!」

 

奴の斬撃が僕の大鎌を弾き飛ばす。銃口も標準をつけるがその瞬間破壊される。奴はここまで強くなっているのか……だけど……

 

「うおおおおおおおお!!」

 

僕は突撃を仕掛ける。ある程度の攻撃は精霊が防ぐとはいえ防ぎきれないことだってある。僕の身体は切り刻まれていく。だけど……

 

「掴んだ!!」

 

僕は奴の両手を掴んだ。それと同時に満開も解けてしまう。奴は笑みを浮かべるが、まだ笑うのは早いぞ。僕は奴の両腕を掴んだ。

 

「封印開始!!」

 

封印が始まると奴の身体から御霊と御霊をつかむ右腕が現れた。御霊は他のものと違い、何かを言っていた。

 

『両腕が防がれた状態で、俺の御霊を破壊することは出来ない。とはいえ一度出された以上はしばらくは元の場所に戻らないが………お前に何が出来る!!右腕を見てまた震えているぞ』

 

頭のなかで奴の声が響く。確かにそうかもしれない。満開が解けた以上、僕にまた恐怖が戻ってきた。このままじゃまた……

 

「たしかにな……だけど」

 

だけど僕は神頼みをしていたのだ。満開の後遺症については前もって知っている。だからこそ僕は願った。

 

『ぬぅ、何だ……この感覚は力が抜けていく?どういうことだ?』

 

「よく見ろよ。僕の右腕の今の状態を……」

 

御霊を掴んでいた右腕が見る見るうちに消えていく。いや、捧げられていく。

 

『戻る、モドル、オレガ……アノ……す……が……た……ニ』

 

右腕が完全に消えると奴の御霊が消え、白い人型から一体の星屑に戻った。

 

「……進化した星屑……手ごわかったな……僕にはもうあいつを倒す力はない……あとは……頼んだぞ」

 

倒れこむ僕、星屑は大きく口を開いた。このままでは食われてしまうが……

 

「はああああああああ!!」

 

突然星屑が真っ二つになった。星屑の後ろにいたのは夏凛だった。

 

「よぉ、夏凛。待ってたぞ」

 

「あんたね、無茶しすぎよ!ほかの奴らも心配かけるし」

 

どうやら巨大な御霊を破壊することが出来たみたいだな……

 

「悪い、頑張りすぎたよ。樹海から戻ったら大赦に連絡を……」

 

僕の意識はこのまま途絶えるのであった。その後、夏凛は僕の言うとおりというか自らもそうするべきと判断したのか、霊的医療班の手配してくれた。

 

 

 

 

僕達勇者部は十二体のバーテックス+キキョウを倒すことに成功した。だけど……四人の勇者の後遺症は……

 

 

 

 

 




後編は完全にオリジナルになりました。次回は原作六話となります


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第22話 後遺症

バーテックスとキキョウの殲滅を成し遂げた讃州中学勇者部部員は現在みんな大赦の病院に入院していた。とはいえ検査入院みたいなものだった。僕はというと……

 

「身体にはどこも異常は見当たりませんね。身体的、精神的、記憶の方にも異常は見られません。三好夏凛からの報告では満開を行ってようですが……」

 

「それはそうさ、僕はなくしたものを捧げたんだからな」

 

「とはいえ、まさかそのような偶然が……」

 

「神頼みしてみるものだな」

 

とはいえまさか叶えてくれるとは……思いもしなかったな。

 

「……園子様は怒っていましたよ。貴方がやったことに関して……」

 

「後で謝っておくか」

 

医師との診断を終えた僕はそのままみんなが集まっている休憩室へと訪れた。そこでは何故かみんなお菓子を広げていた。多分打ち上げみたいなものか。それはそうと先輩のある異変が気になってしょうがない

 

「先輩、その眼帯は?」

 

「これ?これはいうなれば」

 

「中二病はいいんで」

 

先輩のことだ。左目に封印された何かがどうのこうのとか言うのだろうな。まぁ眼帯つけたらみんなそういう事をしたくなる気持ちはあるけど……

 

「桔梗ってつまらないわね。医者が言うには戦いの疲労みたいなものだって、まぁ療養していれば治るって」

 

「疲労か……」

 

仕方ないことなのかもしれない。先輩の他にも樹にも異変が有るみたいだった。どうやら声が出なくなったらしい。仕方ない……仕方ないのことなのか……

 

「それじゃ、みんな揃ったことだしお祝いしよう」

 

「なんだ?まだ打ち上げやってなかったのか?」

 

先に始めているものだと思っていたのだが、友奈は笑顔で答えた。

 

「やっぱり皆が集まってからのほうがいいかなって、みんな飲み物持って」

 

言うとおりに机の上に置かれたジュースを持った僕達。

 

「では勇者部部長から一言!」

 

「私!?え、えっと。本日もお日柄も良く」

 

「真面目か」

 

「堅苦しいのは抜きで」

 

「それじゃ。みんな、よくやったー。勇者部大勝利を祝って、カンパーイ」

 

「カンパーイ」

 

皆で乾杯をしてジュースを飲む中、友奈はある異変に気がついた。だけどみんなが心配するだろうと思い、黙ってジュースを飲むのであった。だけどその異変に僕とそれに東郷が気がついているみたいだ。

 

 

 

 

 

 

それから程なくして僕と東郷以外は退院していった。東郷の場合はまだ検査が続いているみたいだし、僕の場合は右腕の調整のために……調整くらいなら通院でいいのだがいちいち行くのが面倒だから入院したままにしてもらった。そして退院前日の夜、僕の部屋に誰かが扉をノックした。

 

「どうぞ」

 

僕は病室に入ることを許可すると来客は東郷だった。

 

「夜に男の部屋に来るなんてどうかしていると思うぞ」

 

「桔梗くんのことは信頼しているから」

 

東郷は笑顔でそう答えた。僕のことを信頼って……まぁ元々その気はないし、ちょっとした冗談だけど……

 

「それで何の用だ?」

 

「……桔梗くんは風先輩や夏凛ちゃんと違って大赦の方では上の方だって聞いているわ」

 

お爺ちゃんがね。まぁそれでもあの二人よりは上の方だな。

 

「それが?」

 

「もしも貴方が知っているなら教えてほしい。満開の後遺症について……」

 

どうやらそのことには東郷がいち早く気がついたみたいだな

 

「先輩に聞いても知らないみたいだった。そしたら桔梗くんなら何か知っていると聞いたの。夏凛ちゃんが満開について話していた時、少し変だったから……」

 

そこまで気がついていたなんて、まぁ夏凛にも気が付かれていたし、みんなも気がついているだろうな。

 

さて、どこまで説明すればいいものか……

 

「まずはみんなの異変について教えてくれないか?」

 

僕がそう言うと東郷はパソコンの画面を見せてきた。そこには満開した友奈たち四人の異変が書かれていた。友奈は味覚、先輩は左目、樹は声、東郷は左耳、夏凛は満開していないから異変なし。そして僕の名前も書かれているが?がついていた。

 

「ここまで調べたのか。質問に答えるよ。みんなの異変は確かに満開の後遺症だ」

 

「……やっぱり、でもどうして桔梗くんに異変がないの?」

 

「僕は……昔なくしたものが影響しているからね」

 

「なくしたもの……」

 

「さて、質問には答えた。後は?」

 

「治るものなの?」

 

「………それは東郷、お前がもう少し真実を知ってからだ。もしくは話すべき時が来るのを待ってもらう」

 

僕はずるいな。本当なら彼女に、彼女たちに真実を伝えたい。だけど真実を伝えた瞬間、彼女たちはどんな反応を示すのだろうか?どんな結果をもたらすのか……

 

「……分かったわ。ありがとう」

 

彼女はそのまま病室を出て行った。僕はというと壁に枕を投げ捨てるのであった。

 

「……僕はまだいい。だけどみんなには辛い思いをしてほしくなかったのに……」

 

後悔するしか無かった。僕がするべきことはそれしか無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日

 

僕は園子のところに来ていた。

 

「可能性に低いのに本当に実現するなんてね」

 

園子は少し怒っている。みんなを満開させてしまったことに関してか?いいや僕が無茶をしたことだ

 

「下手をすればあのバーテックスにきょうくんは吸収されていたんだよ」

 

「僕が考えられる可能性を試しただけだよ。それはそうと園子……」

 

僕が何かを言いかけた瞬間、彼女は全てを察したみたいだった。彼女は笑顔で答えた。

 

「わっしーに言えなかったんだよね。ううん、みんなにかな?しょうがないよ。大赦から固く禁じられていることだし……」

 

「だけどやっぱり僕は……」

 

「一人で戦ったほうがいい?それはおかしいよ。だって貴方がこうして生きていられるのはみんなのお陰なんだから……」

 

確かに皆がいたからこそ僕はこうして今を生きていられる。けれど…

 

「本当にすべてが終わったのか?」

 

何故かまだ終わっていない気がする。これから戦いがなく普通の学園生活が待っているはずなのに……何故かずっと違和感を感じてしょうがない

 

「…………それは時が来るのを待ったほうがいいかな?」

 

園子は知っているみたいだ。これから先のことを……僕はその先に待つ未来でどうするのだろうか……

 

 

 




原作6話の話とはいえ、殆どオリジナルでした。次回は7話の話です


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第23話 訪れた平穏

水着回+オリキャラ一人の登場です。オリキャラはこの話一回しか出ませんが……後々のお楽しみで


夏休みになり、現在僕たちは全バーテックスを倒した褒美として大赦が用意した海へと来ていた。言うなれば夏合宿だ。友奈は東郷と一緒に浜辺を散歩しており、先輩と樹の二人はかき氷を食べており、夏凛は何故かウォーミングアップしていた。僕はというと……

 

「さて、絵でも描くか」

 

犬吠埼姉妹の隣でスケッチブックを開き絵を書き始めようとしていた。

 

「あんた、こんな所まで来てスケッチって……」

 

『泳がないんですか?』

 

樹がスケッチブックに文字を書いて見せた。声を出すことが出来なくなった樹のために、先輩が考えてくれた会話方法だ。

 

「泳がないんじゃなくって泳げないんだよ」

 

『もしかして義手のせいで……』

 

右腕が義手のせいで確かに泳ぐことが出来ない。水の中に入ることが出来るとしても義手が錆びてしまう可能性だってあるし、そもそも浮くことが出来ない。だけど僕の場合は義手のせいだけではない

 

「元々泳げないんだよ」

 

「あんた、運動神経良さそうに見えて……」

 

「悪いですか?」

 

三人でそんなことを話しているウォーミングアップを終えた夏凛がこっちに走り寄ってきた。

 

「風!こっちは十分に身体を温めてきたわ!さぁ、勝負よ」

 

夏凛が先輩に勝負を提案し、先輩もそれに乗った。二人が砂浜に出ると樹と僕も砂浜に出た。だけど樹は砂浜の熱さに耐え切れず、海に足をつけた。

 

「夏凛ちゃん、風先輩と勝負するんだね」

 

「優れた選手は水の中もいけるってことをまたまた見せてあげるわ!」

 

「ねぇ、こんな格好で女子力振りまいたらナンパとかされないかしら?」

 

「何を心配してるのよ」

 

先輩がナンパされないか心配しているのを見て、呆れる夏凛。その隙をつき先輩は先にスタートをする。

 

「二人とも行っちゃったし、私たちも入ろっか」

 

「桔梗くんはいいの?」

 

「僕は荷物番でもしてるからいいよ。楽しんできな」

 

『そうですか……』

 

友奈が東郷の車いすを押してくれる人を呼び、三人は海へと行くのであった。残った僕は荷物番をしつつ、スケッチをしていた。

 

「あ、あの」

 

スケッチ中に声をかけられ、顔を上げると腰まで有る長い赤髪の水着少女がいた。僕は彼女のことを知っている。

 

「鈴藤灯華……久しぶりだね」

 

「はい、お久しぶりです。神宮くん」

 

「こんな所で何してるんだ?」

 

「みんなと一緒に海水浴です。神宮くんもですか?」

 

「あぁ、勇者部の皆と……」

 

「そうですか」

 

灯華は僕の隣に座ると俯きながら有ることを聞いた。

 

「聞きました。バーテックスを全部倒したって……」

 

「耳に入っていたか。頑張ったからな」

 

「頑張ったからですか……そうですよね。ここはわたしは喜ぶべきところなんですが……なんでか苦しんです。ずっと頑張ってきたのに……」

 

「灯華……でも」

 

「すみません、変なことを言って、皆を待たせてるので私はここで……」

 

灯華はそのまま立ち上がり去っていった。この時ばかりはちゃんと彼女の話を聞いておけばよかったと思った。

 

「ねぇ、桔梗」

 

そこに夏凛が戻ってきたどうやら先輩との勝負は夏凛の勝利みたいだけど、フライングしたのに負けたって……

 

「おかえり」

 

「ただいま、さっきあんたが話してたのって……」

 

「あぁ、鈴藤灯華。琴禅中学校の勇者候補だ」

 

「知ってるわよ。これでも大赦の資料は呼んでいるから」

 

鈴藤灯華、彼女は僕達と同じ大赦の人間であり、勇者になるはずだった少女だ。彼女自身かなりの鍛錬を積んで勇者になることを望んでいたのだが、勇者には選ばれることはなかった。

 

「灯華は今でも勇者になって御役目のためにって思っているんだろうな。でも、それが変な事にならなければいいんだろうけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆が海から上がると今度は友奈と夏凛が棒倒しをしていた。

 

「ぬあぁ~!そんなにいっぱい!?」

「ぬふふふっ」

「友奈ちゃんの棒倒しは、子供たちとの砂遊びで鍛えられてるから」

「そういうあんたは、どこでこのスキルを鍛えられたの?」

 

二人の勝負を見守りながら東郷は砂で城を作っていた。

 

「まあ、いろいろと」

「砂がね、どれくらいまで取って大丈夫か、語りかけてくるんだよ」

「うそこけ!ちょっと黙ってなさい、集中するから」

 

結果的に夏凛が負けたのだが、すぐに再戦をするのであった。

 

 

そして次は海に来ての定番であるスイカ割り、樹はみんなの指示に従いながらゆっくりとスイカへと向かっていく。

 

「海と言ったらこれやっとかないとね」

 

「これがうわさに聞くスイカ割り。やってみると何とも単調ねって樹! そこよ!振り下ろしなさい!」

 

「ノリノリじゃん」

 

樹はみんなの指示で、スイカの前に来て姉である先輩の構え方を真似した。

 

「あはははは! 樹何よその大げさな構えはー!」

 

「いやあんたのマネでしょうが」

 

「え?私あんなん?」

 

「あんなん」

 

そして樹は見事スイカを割ってみせた。

 

「一発で決めるなんてやるー!」

 

「樹ちゃんかっこいい~」

 

「樹ちゃんは磨けば磨くだけ、立派な大和撫子になれるね。磨かなくっちゃ!」

 

みんなに褒められ、照れる樹。それから皆で砂浜でたくさん遊び、海を満喫するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旅館へと戻った僕達、さすがに男である僕がみんなと一緒の部屋じゃまずいということで別にしてもらったが、それでは寂しいという友奈の意見で、夕食の時や朝食の時はみんなの部屋で過ごすことになった。

 

夕食はそれは豪華なものだった。

 

「好待遇みたい」

 

「ここは大赦がらみの旅館だし、お役目を果たしたご褒美ってことじゃない?」

 

「つ、つまり食べちゃっていいと?」

 

「まぁいいて事だろうな」

 

それから皆で夕食を食べるのであった。友奈の事を心配していたが友奈は別の楽しみ方で食事を楽しむのであった。

 

 

 

 

そして温泉では……一人で浸かっている僕、だけど隣の女湯では……

 

『へへへへっ』

 

『あっ、どうしました?』

『ふだん何を食べてれば、そこまでメガロポリスな感じになるのか』

『ちょっとだけでもコツとか教えていただけると~』

『ふ…普通に生活しているだけです』

 

『いやいやそんな、ご謙遜』

 

といった声が聞こえていた。一体温泉で何をやっているんだ?というよりかは声がでかいぞ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桔梗が自分の部屋に戻り、残った女子五人はというと

 

「さて男子がいなくなったことだし、こうやって女五人集まっての旅の夜。どんな話をするかわかるわね?夏凜?」

 

「え、えっと、辛かった修行の体験談……とか?」

 

「違う」

 

「正解は日本という国について存分に語るです」

 

「それも違う!」

『コイバナ?』

 

「そう、それよー! 恋の話よ!」

 

「ま…まあ、勇者とかでみんな忙しかったし」

「そういうあんたは何かあるの?風」

「そうね、あれは、2年のときだったわね。私がチア部の助っ人したとき、そのチア姿にほれたヤツがいてさ。まあ『デートしないか?』とか、言われたりしたもんよ~!

もんよ~! 」

 

「な…なるほど。ん?あんたたち、落ち着いてるわね」

 

『その話10回目』

「ええ~」

「何よ!」

「それしか浮いた話ないのね」

 

「あるだけいいでしょ」

「で、断ったの?」

 

「だってさ、同年代の男子って、なんか子供に見えるもん。そいつも端末にいやらしい画像入れて、休み時間に男子たちで見てるようなヤツだって知ってたからさ。ええい、次の話題、折角勇者部に男子がいることだし、皆的には桔梗のことはどう思ってるの?」

 

「「えっ!?」」

 

この場にいない人の議題へと移っていった。そんな中ある三人だけが少し様子がおかしかった。

 

「あいつも男なんだしさ、みんなはどんなふうに思ってるのかしらね?因みに私は相談役みたいなもんね」

 

風の場合はいろいろと愚痴を言ったりしていることを告げた。

 

「さぁ次は誰が言う番かしら?」

 

すると樹が挙手して、スケッチブックに文字を書いた。

 

『頼りになるお兄さん的存在です』

 

「樹からしてみればそうなるのね。というか頼りになる姉は?」

 

『桔梗さんとは別の意味で頼りにしてるよ~』

 

「それならいいけど、さて他の三人は?」

 

「はい、結城友奈言います!!仲の良い親友です」

 

「友奈らしい答えね。そういえば去年辺りおんぶされたりしてなかったっけ?あれで恋に目覚めたりとかは?」

 

「えっと、そっちのことよりその後桔梗くんが大赦の人って聞かされたことのほうが衝撃的で……」

 

「なるほどね~それでさっきから黙ってる二人はどんなふうに思ってるのかしらね。ねぇ、夏凛」

 

「わ、私!?私は……そうライバルよ!あいつには勉強も戦闘も負けてるから、そういいライバルよ」

 

「ふ~ん、まぁ面白い答えね。それで東郷は?」

 

「私は……その桔梗くんのこと……」

 

東郷が言いかけようとした時、夏凛の寝言が遮るのであった。夏凛が寝てしまったのでみんなはこのまま寝ることになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして朝、東郷は一人起きだし、有ることを思いつめていた。

 

「私は桔梗君の………好きなのかな?」

 

 

こうして夏合宿は終わりを告げたのであった。だけどこれが最後の平穏だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

家に戻る途中、僕は大赦のメールで勇者部に来ていた。部室に入ると先に来ていたらしき先輩とイタチの精霊と犬神がいた。

 

「どうやらまだ敵が残っていたんだな」

 

「えぇ、部室にみんなの分のスマホも有るわ。本当に冗談で言ってたけどこの目が疼きだしてきたわ」

 

僕らの戦いはまだ終わりじゃない

 

 

 

 

 




オリキャラ鈴藤灯華は別の形で出すつもりです。


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第24話 平和のひび

勇者部部室にて皆に集まってもらい、まだバーテックスの生き残りがいることを告げた。そして友奈、東郷、樹、先輩、僕の精霊は一体ずつ増えた。夏凛だけは一体のみだった。それは仕方ないことなのかもしれないけど……

僕たちはいつ来るかわからない敵に対して警戒をしていくこと一ヶ月、夏休みが終わり二学期に入ったが、敵は一向に攻めてこなかった。

 

部室に入ると何故か皆が精霊を出していた。どこの百鬼夜行だ

 

「何事?」

 

「妖精の話しをしてたら、皆出ちゃったのよ」

 

「ふ~ん、じゃあ僕も」

 

僕も精霊を出した。前鬼と新たな精霊であるサルの顔、タヌキの胴体、トラの手足を持ち、尾はヘビの精霊鵺だった。

 

「何だか色々と混ざった感じだね」

 

「そういう妖怪だって話だからな。さて今日は何をするん……」

 

言いかけた瞬間、突然アラームが鳴り響いた。どうやら敵が来たみたいだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕たちは樹海へ訪れ、変身を終えた。敵の位置を確認し、僕たちはもう一度円陣を組んだ。そして敵のバーテックスを視認するが何か見覚えがある。

 

 

「あの変質者ってさ、樹が倒さなかったっけ?」

「もともと2体いるのが特徴のバーテックスかもしれません」

 

「2体で1セット…双子ってこと?」

「いずれにせよ、やることは同じ!止めるわよ!」

 

僕は鎌と銃に変わる新たな武器、槍を構えた。だけど何かがおかしかった。みんなが動こうとしなかった。一体何がと思ったがそれもそうだ。何せまた戦えば満開をして、体の機能をまたなくしてしまう。そんな事が頭に過ぎってしまえば動けないのも当然だ。だけど夏凛はそれでも戦おうとした。

 

「行くぞ夏凛」

 

「分かってるわよ」

 

僕達が大きくジャンプをすると後を追うように友奈も来た。友奈は怖くないのか……いいや、きっと友奈なら後遺症を知っていても戦うはずだ。

 

僕はバーテックスの目の前に槍を突き刺すと、友奈と夏凛の二人が同時に蹴りを食らわせた。

 

僕達の戦いを見て、みんなも戦う気持ちになった。東郷はバーテックスを狙撃し、全員で封印の儀を行うと出てきた御霊が無数に出てきた。

 

「何この数!?」

 

「くそ」

 

僕は武器を銃に変え、爆発弾を撃つが効果がない。どうやら出てきた御霊を全て破壊しないといけないみたいだ。夏凛はこのままみんなに負担をかけまいと御霊を構えるが、上空にジャンプした友奈は炎を纏った蹴りを放った

 

「勇者キック!!」

 

御霊に直撃すると御霊が炎に包まれたこれなら一気に倒せる。思った通り御霊は燃え散っていった。

 

「友奈ちゃん!大丈夫!」

 

友奈を心配したのか、東郷やみんなも駆け寄った。

 

「大丈夫だよ」

 

笑顔の友奈。だけどみんなは友奈のゲージが溜まっていることに気がついた。

 

「友奈…」

 

先輩も心配する中、僕たちは元の世界へと戻っていくことになった。そんな中、僕はいい加減みんなに全てを話さなければいけないと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だけど僕、友奈、東郷の三人はいつもの屋上ではなく、大橋近くに来ていた。

 

「ここは……」

 

「学校の屋上じゃない」

 

「みんなは?」

 

どうして僕達だけ……でも、こんな風に別の場所に連れていくことが出来るのは彼女しかいなかった。僕は先へと進んだそこにはベットに横たわる園子がいた。

 

「……やっと会えた~わっしー」

 

「!?」

 

園子は東郷の方を見て呼んだ。彼女は全てを話すのか……

 

「わ、わっし~?」

 

「本当だったらもっと早く会いたかったんだけどね。中々会わせてくれなかったから、呼んじゃった」

 

「え、あ、わ、私は東郷美森です」

 

「………美森ちゃんか。そっちの子は?」

 

「結城友奈です。それでこっちは……」

 

「どういうつもりだ。園子」

 

「……桔梗くん?」

 

どうしてこのタイミングで全てを話そうとするんだ。

 

「……きょうくん、もう話さないといけないよね。まだ話してたりしてないんだよね。全てを……」

 

「桔梗くん、知り合い?」

 

友奈が心配そうに声をかける。僕はため息を付き、二人に彼女を紹介した。

 

「彼女は乃木園子。昔大橋の方で勇者をやっていた。言うなれば先代の勇者だ」

 

「先代って先輩ってこと?」

 

「どうして私達をここに……」

 

僕は壁にもたりかかり、園子の話を聞いた。それが僕達の平和にヒビが入ろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 



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第25話 真実

園子によって呼び出された僕、友奈、東郷の三人。園子は彼女たちに全てを話す気だった。

 

「二人は満開……あのパッーとなってガッーって強くなったんだよね」

 

「は、はい」

 

「私も、友奈ちゃんもそれに桔梗くんも……」

 

「でも体の機能をどこか失った。満開は花が咲き誇ること、咲き誇った花は、そのあとどうなると思う?満開のあとに、散華という、隠された機能があるんだよ」

「散…華?『華が散る』の散華?もしかして私達の体の機能が失ったのは」

 

「それって……」

 

園子は静かに語り出す。僕はただ彼女の話を聞くしか無かった。

「それが散華。神の力を振るった満開の代償。花1つ咲けば、1つ散る。花2つ咲けば、2つ散る。そのかわり、決して勇者は死ぬことはないんだよ」

 

「死なない?」

 

「でっ、でも…しっ、死なないなら、いいことなんじゃないのかな?ねっ?」

 

「そして、戦い続けて今みたいになっちゃったんだ。元からぼ~っとするのが特技でよかったかなって。全然動けないのはきついからね」

 

「い…痛むんですか?」

「痛みはないよ。敵にやられたものじゃないから。満開して、戦い続けて、こうなっちゃっただけ。敵はちゃんと撃退したよ。

 

「満開して、戦い続けた」

「じゃあ、その体は代償で…」

「うん。その時だっけかな?きょうくんと会ったのは……そしてきょうくんには全て話した。勇者のことも満開のことも散華のことも……」

 

そう僕は最初から全てを知っていた。だけど知っていただけだ。彼女たちに伝えるべきかずっと悩んだままだった。

 

「桔梗くん……」

 

「もしかしてずっと一人で戦おうとしていたのも、満開について話していた時の様子も……」

 

「あぁ、僕は全て知っていたさ。だけど話すことも、一人で戦うことも……そして君たちが勇者として戦うことを……止めることが出来なかった」

 

それが僕がずっと胸にしまいこんでいた思い……二人はただ俯いていた。

 

「で、でも、どうして私達が……」

 

「いつの時代だって、神様に見初められて供物となったのは、無垢な少女だから。汚れなき身だからこそ、大いなる力を宿せる。その力の代償として、体の一部を神樹様に供物として捧げていく。それが勇者システム」

「私たちが、供物?」

「大人たちは神樹様の力を宿すことができないから、私たちがやるしかないとはいえ、ひどい話だよね」

 

「それじゃあ、私たちはこれから、体の機能を失い続けて…」

 

「でも、桔梗くんは……勇者だけど私達と違って……」

 

東郷はみんなに話してなかったみたいだな。僕も散華の影響を受けていることを……

 

「友奈ちゃん、桔梗くんは昔失くしたものが関係あるって言っていたわ。そして桔梗くん、貴方が散華で供物として持って行かれたのは……」

 

「あぁ、お前の予想通りだ。あの時の人型のバーテックス、キキョウの御霊と一つになっていた右腕、あれは僕の右腕だ」

 

僕は彼女たちに話した。右腕を無くしたこと、人型バーテックスを倒すために一種の賭けに出たこと、そして……

 

「友奈、東郷、ごめん。僕のせいで……勇者部の皆に辛い思いをさせてしまって……」

 

「 でも、12体のバーテックスは倒したんだから、もう戦わなくっていんだよね。大丈夫だよね、桔梗くん、東郷さん」

 

「友奈ちゃん」

「倒したのはすごいよね。私たちのときは追い返すのが精一杯だったから。

 

「そうなんですよ!もう戦わなくていいはずなんです」

「…そうだといいね」

 

どういうことだ?何で園子はそんな言い方をするんだ?

「そ…それで、失った部分は、ずっとこのままなんですか?みんなは、治らないんですか? 」

 

「治りたいよね…。私も治りたいよ。歩いて、友達を抱き締めに行きたいよ」

 

園子の頬を伝う涙。園子もずっと苦しんでいたんだよな……それに二人も……

 

「悲しませてごめんね。大赦の人たちも、このシステムを隠すのは、一つの思いやりではあると思うんだよ。でも…私はそういうの、ちゃんと、言ってほしかったから、うぅ…分かってたら、友達と…もっともっと、たくさん遊んで…。だから…伝えておきたくて」

 

東郷はそっと園子の涙を拭う。園子は彼女が持つリボンに気が付き、微笑んだ。そうだった、あれは……

 

「そのリボン、似合ってるね」

「このリボンは…とても大事なものなの。それだけは覚えてる。けど…ごめんなさい、私、思い出せなくて」

「しかたがないよ」

 

悲しそうの微笑む園子。すると気がついた時には仮面をつけた大赦の人間が周りを囲んでいた。

 

「彼女たちを帰してあげて、これは私が勝手にやったこと……もし彼女たちを傷つけたら………許さないから」

 

園子は口調を強めた瞬間、大赦の人間は一歩後ろへと下がった。

 

「二人共、本当にゴメン」

 

「桔梗くんが謝ることじゃ……」

 

「ずっと苦しい思いをしていたのは貴方だったんだから……」

 

二人がそう言うけど、僕はずっと後悔しかしていない。こんな悲しい結末しか持っていないのであれば……僕は

 

「僕はもう少しここに残っているから……今回のことは僕も一緒に先輩に話すから……」

 

「分かった」

 

「はい」

 

大赦の車で二人は家に帰っていく、きっと車の中では悲しみに耐え切れず泣いてしまっているのだろうか……

 

残った僕は園子に向き合った

 

「園子、さっきの話でまだ終わっていない感じなことを言っていた。どういうことだ?」

 

「……本当に真実を知りたいのなら壁の外に出てみて……」

 

園子がそう告げた瞬間、周りの人々がざわついた。ここにいる人も全部知っているのか……

 

「分かった。行ってみる。それと園子に大赦の人。僕は散華はそんなシステムなんて思わない。僕は……きっと戻るって信じてる。いや、戻してみせる」

 

僕は変身し、四国の壁へと向かった。僕が去った後、園子は小さく呟いた。

 

「やっぱりすごいな、きょうくんは……でも、本当の真実をしっても貴方は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は彼女の言うとおりに壁の上まで来た。壁の外は一見、綺麗な景色が広がっているが、勇者の姿のまま僕は壁の外へと一歩踏み出した。

 

「なっ……これは」

 

それは絶望。そう言うしかないほどの絶望の真実。僕はすぐに壁の中へと戻っていった

 

「あれが……真実だって言うなら……みんなはこれから戦い続けることに……どうすれば……」

 

必死に考えた。誰も傷つかない、悲しい結末を迎えない方法を……そんなとき、義手を見てあることを思いついた

 

「そうだ、やってみる価値がある。だけど、いや僕の願いも聞いたんだ。それにまだ調べることがある」

 

僕はすべてを知り、ある決意を固めた。

 

 

 

 

 

 




次回は9話の話となります。残された謎は何故桔梗が勇者になれたのかです


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第26話 心の痛み

友奈たちが園子から真実を知った次の日、僕は両親の墓の前に来ていた。

 

「………ねぇ、母さん、父さん、お爺ちゃん。僕がやろうとしていることは本当に正しいのかな?」

 

墓の前でそう呟くが答えはかえってこない。当然なんだけど……

 

「きっと生きていたら僕のこと止めたよね。だけど僕は止められてもやるしか無いと思う。それが彼女たちを救う方法だから……」

 

僕はそのまま墓の前から去っていた。今やるべきことのために振り返らない

 

 

 

 

 

墓参りを終え、僕は自分の家に帰ろうとしていると端末にメッセージが入った。それは東郷からだ。きっと今日僕が学校に行かなかったことについてかと思った。僕は東郷の家に行くことにした。

 

「………桔梗くん。来てくれたんだね」

 

「あぁ、呼ばれたからね」

 

東郷の家に着くと僕は東郷の部屋に案内された。東郷は真剣な眼差しで僕を見つめていた。

 

「……今日先輩に話しました。散華についてはまだ夏凛ちゃんと樹ちゃんの二人には話さないほうがいいって決めたの」

 

「そうか……」

 

「ねぇ桔梗くん。あの乃木園子が言っていたわっしーって私のことなの?」

 

どうやらそこまでたどり着いたのか。それなら隠したままではいかないな

 

「あぁ、そうだ。お前は鷲尾須美。園子と一緒に勇者と戦った仲間の一人だ」

 

「……それじゃ、私の記憶とこの足は事故ではなく散華で……」

 

「そうだ。それを証明するのは精霊の数だ。あれは満開をした回数増えていく。勇者に力を貸すのと……」

 

「……教えて、鷲尾須美の事を、貴方はそれを知っているはずよ」

 

そうだな、大赦関係者なら鷲尾須美の事を知っているはずだ。東郷はそう思っているはずだ。

 

「あぁ、教えてやる」

 

僕は鷲尾須美の事を話した。乃木園子、三ノ輪銀の事、バーテックスとの戦いで三ノ輪銀が死んだこと、そして鷲尾須美が勇者だった頃の最後の戦いを……

 

「………そうだったんだ」

 

「これが僕が知るかぎりの大赦の資料の内容だ」

 

僕は迷っていた僕と東郷……鷲尾須美と会っていたことを……だけどあの事を話す必要があるのか?いや関係ないし話さなくていいか

 

「それと僕は東郷、鷲尾須美とは入学式で初めて会ったんじゃない。勇者として戦っていた頃に出会っていたんだ」

 

「えっ!?」

 

僕は園子から聞かされたことを話した。出会っていたこと、樹海で僕の右腕を食われたこと、そして園子の気遣いで記憶を封印したことを……

 

「そんなことが……」

 

「あぁ、僕も最近知ったばかりなんだよ」

 

「……ねぇ、今の私たちは……勇者はどんな存在なの?」

 

「きっと園子と同じ祀られていくと思う」

 

「祀られる……そんなの生き地獄じゃない」

 

「いや、地獄なんかじゃない。考え方によっては……」

 

「地獄でしかないわ」

 

何でそんな風にしか思えないのだろうか?確かに全てを知ったら地獄としか思えないのだろうけど……だけど、僕はそうは思わない。

 

僕は東郷を抱きしめ告げた。

 

「安心しろ。僕が地獄なんかにさせない。させるものか」

 

「き、桔梗くん、苦しい」

 

「っと、ごめん」

 

東郷は顔を真赤にさせていた。それもそうかいきなり抱きしめたりしたら……

 

「桔梗くん。落ち込んでる女の子に優しくしたいのはわかるけど、不用意に抱きしめたりするのはいけないと思うよ」

 

「ご、ごめん」

 

「でも、ありがとう」

 

東郷は笑顔でそう言う。僕はそのまま東郷家を出て行った。そんな時、大赦から連絡が入った。それは先輩の精神が不安定で、何を起こすか分からないというものだった。

 

「……僕に見張れっていうのかな?悪いけどそれは出来ないことだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日も学校を休み、四国にある神樹を祀っている場所をめぐっていった。流石に車とかじゃないと回りきれないので、勇者になってだった。そして夕方になり僕は園子と話した場所にたどり着いた。

 

「一番話す場所はここのほうがいいか?」

 

僕はあることを始めようとした時、空から夏凛が落ちてきた。それと同時に先輩もやってきた。

 

「桔梗!!あんたも邪魔をする気なの」

 

どうやら何かしらあったみたいだな。僕はため息を付き大鎌を構えた

 

「どこへ行こうと言うのですか?先輩」

 

「大赦は全て知っていたうえで……隠していた!!満開のことも!散華のことも!あの子から……樹から夢を奪った大赦なんて……私が潰す!」

 

どうしてこうそっちの方ばっかり考えるんだよ。みんな……

 

「そうか、それだったら僕を止めてみろ!」

 

大鎌を大きく振り下ろすが、先輩は大剣で防ぐ。だけど僕は大鎌を離し、蹴りをくらわした。勇者になっているから精霊が攻撃を防いでくれるから怪我とかは大丈夫だろう

 

「邪魔を……するなぁぁぁぁぁ!!」

 

更に向かってくる先輩。僕自身いい加減にしてほしかった。みんなそんな考えしか出来ないのか……ふざけるな!!

 

「いい加減にしろ!!」

 

僕は銃を取り出し、大剣を弾くと思いっきり先輩の顔を右手で殴った。

 

「うぐぅ」

 

「いい加減にしろ。誰が散華で失ったものが戻ってこないと言ったんだ?園子か?夏凛か?僕か?大赦か?誰が言ったんだ!!誰も言っていないだろう!!」

 

僕は倒れた先輩の胸ぐらを掴みながら更に言い続けた。

 

「誰も言っていないことを……どうして信じられる」

 

「でも、先代の勇者の身体だって……治ってないじゃないの……大赦もずっと調査中って」

 

「治ってないからって治らない見込があるっていうのか?大赦が調査中っていうのは悪意で言っているんじゃない!善意で言っているんだ!そのことを誰も……誰も!」

 

僕は更に殴ろうとする。だけど右手がワイヤーに縛られた。見てみるとそこには樹とそして友奈の姿があった

 

「やり過ぎだよ。桔梗くん」

 

「友奈……お前はどう思うんだ?」

 

「私は全部知っていてもきっと勇者をやっていた。勇者になれたからこそみんなと出会えた」

 

「だけど……体の機能が失うことは……」

 

「それでも、みんなのためだって思えたら戦っていられる。それが勇者だから」

 

どんなに傷ついても誰かのためにか……

 

「ねぇ、桔梗くんもそうなんだよね。私達のために……一人で戦おうとしてくれた。散華を知っていても、精霊が勇者を生かし続けることも……全部知っていたからこそ一人で戦おうとしてた。そうだよね」

 

「……そうだったな」

 

僕は先輩の胸ぐらを離した。そして樹が側に来て、僕の頬を叩いた

 

『お姉ちゃんをいじめたバツです』

 

「あぁ、悪かった。先輩も……夏凛もお前にもすぐに話せばよかったな」

 

「いいわよ別に……でもこれからどうするつもり?風のやり方はかなり間違ってるけど……」

 

夏凛の言うとおりかもしれない。けど僕はある考えがあった。

 

「僕に考えがある。もしかしたら皆怒るだろうけど……」

 

『どんなことですか?』

 

「それを話すには東郷にも聞いてもらいたいけど……あいつは」

 

その時、全員の端末からアラームが鳴り響いた。それは今まで聞いたこともないものだった

 

 



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第27話 崩壊

突然のアラーム。だがそれは今まで聞いたことのないものだった。考える時間もなく僕たちは樹海へと行くのであった。

 

 

樹海にたどり着いた僕達。夏凛がすぐに敵の情報を確認すると……

 

「何よこれ」

 

「確認するまでもなかったな。こっちでも分かる感じでやばいみたいだ」

 

端末では壁の方が真っ赤に染まり、肉眼で確認できる限りでは星屑で白く染まっていた。星屑は何百匹所か何万、何億くらいいた。

 

(壁の方に穴が空いてる!?誰がこんなことを……)

 

「東郷さん?」

 

友奈のつぶやきを聞き、端末で東郷の居場所を確認した。彼女は丁度壁の近くにいた。まさか……

 

「友奈、夏凛、お前たちは東郷のところに行け!!」

 

「桔梗くん!?」

 

「あんたは?」

 

「僕は星屑を倒す。それに友奈なら東郷を止めることが出来るはずだ」

 

「……分かった」

 

友奈と夏凛の二人は東郷のところへ向かった。僕は槍を取り出すとこちらに向かってくる星屑を切り裂いていく

 

「今更だけど、槍の使い方しっかり覚えておけばよかったな……」

 

槍で星屑を何体か突き刺していく。だけど数がまったく減らない

 

「くそ、数が多すぎるって……」

 

槍から銃へと変えて何匹もの星屑を狙撃していく。前の敵と戦っていると後ろから接近してくる星屑に気がつくのが遅かった

 

「やばっ!?」

 

星屑が大きく口を拡げ僕を食べようとしているのか……

 

その瞬間、星屑が切り裂かれていった。何が起きたのか分からなかったが……更に接近してくる星屑が更に倒されていった。

 

「お待たせ」

 

「先輩、それに樹も」

 

「ごめん、取り乱しちゃったりして……」

 

「こっちこそ色々とあってイライラしてたんで」

 

「っていうか女の子を殴るなんて……それも義手の方でって酷いわね」

 

「今度なにか奢るんで」

 

「まぁ期待しておくわ」

 

更に接近してくる星屑を僕たちは倒していく。そんな中、バーテックスもやってきた

 

「何で!?倒した奴が出てくるのよ!?」

 

「先輩、伝え忘れたことが」

 

僕は壁の外のことを話した。壁の外、神樹の結界の外に広がる世界。それは死のウィルスが蔓延した世界ではなく、宇宙規模で崩壊した世界そのものだった。バーテックスは倒すことができるけど、壁の外で何度も再生していく。

 

「そんなことが……」

 

すると樹が僕の服の裾を引っ張りながら端末でメッセージを見せた

 

『東郷先輩は?』

 

「もしかしたらこの状況を作り上げたのは東郷なのかもな。アイツの事だ、もう誰にも苦しい思いをさせたくないって思って、神樹を破壊するつもりだろ」

 

「それって私達が死ぬってことじゃない!あの馬鹿」

 

「今は星屑とバーテックスの侵攻を止めつつ、東郷を止めるのが先決だ!!」

 

突然、爆発音が聞こえてきた。空を見上げると無数にいた星屑と何体ものバーテックスが倒されていく。あれは……

 

「夏凛?あいつ満開を……くそ、ごめん」

 

謝罪は多分届いていないだろうが、僕たちは東郷のところへ向かうのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

崩壊した世界、そこで東郷は壁の破壊を続けていた。

 

「これで……」

 

更に壁の破壊を続けようとした瞬間、一本の槍が東郷の足元に突き刺さった。

 

「これ以上はやめておけ。東郷」

 

僕は東郷の目の前に降り立ち、槍を引き抜いた。どうやら先にたどり着いたのは僕だったみたいだ

 

「桔梗くん、貴方はこの光景を知っていたの?」

 

「あぁ、一応な」

 

「それなら分かるでしょ。私達はずっと戦い続けていく。戦いは終わることがない……満開を続けて、体の一部が動かなくなる……そんなの」

 

「言ったはずだ。僕が地獄にさせるものかって」

 

「無理よ。桔梗くんには……」

 

銃を僕に向けるが、二丁の銃が樹の糸で縛られた。

 

「樹ちゃん!?」

 

「東郷!歯食いしばれ」

 

横から先輩の大剣で吹き飛ばした。東郷はそのまま下へと落とされていく。

 

「ごめん、今は頭を冷やして」

 

「先輩、結構やばいのが来ました」

 

僕と樹がある存在に気がついた。先輩もそれに気がつくとそれは以前倒したレオ・バーテックス。あれともう一度戦うことになるなんて……

 

それと同時に下から眩い光が現れ、満開した東郷が現れた。東郷は砲撃を行い、僕達を吹き飛ばした。

 

「くそ、このままじゃ」

 

戦艦の砲撃で神樹の破壊を試みるが、届く前にかき消されていく

 

「やっぱり勇者では神樹を破壊することが出来ない。だけど」

 

東郷の後ろにいるレオ・バーテックスが巨大な炎の玉を創りだした。まさかアレを放つつもりか……アレを止めないと……

 

「くそったれ!!」

 

僕は立ち上がり、レオ・バーテックスを倒そうとした瞬間、炎の玉が放たれた。このままじゃ世界が……

 

だが、炎の玉が突然破壊された。そして木の上に一人の勇者が立っていた。それは……

 

「ゆ、友奈!?」

 

「ごめんなさい。遅れました」

 

本当にお前は僕達の中で一番の勇者だよ

 

 



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第28話 願い

最大のピンチにさっそうと現れた友奈。友奈は東郷の元へと向かっていく。東郷は友奈に対して砲撃をした。友奈はそれを避けていくと同時に、レオ・バーテックスを一発殴ると御霊が出てきた。

 

「御霊!?」

 

「だめ!!」

 

御霊を破壊しようとする友奈の妨害をする東郷。友奈一人では多分対応しきれない。それだったら、

 

「満開!!」

 

僕が満開するのと同時に友奈も満開した。

 

「東郷さん…何も知らずに暮らしている人達もいるんだよ。私達が諦めたらダメだよ。だってそれが…」

 

「勇者だって言うの!!他の人なんて関係ない!」

 

東郷はきっと友奈のためにって思ってやっているのだおるけど……そんなの間違っている。

 

「一番大切な友達を守れないのだったら勇者なんかなる意味なんて無い…がんばれないよ…」

 

東郷は涙を流している。それもそうだ、なにせ東郷は既に二人の友だちを失っている。

 

「友奈ちゃん…あのまま、じっとしていれば良かったのに…眠っていればそれで何もかも済んだのに…もう手遅れだよ」

 

手遅れなんかじゃない。僕は友奈の巨大な腕を乗りながら叫んだ

 

「お前は大切な友人のためにすべてを犠牲にしようとしてるんだな。だけど、友奈はそんなの望んでいない」

 

「桔梗くん……」

 

「信じろ!!まだみんなを助ける方法は……」

 

「もう信じられないよ……」

 

駄目だ。今の東郷には僕の言葉が届かない。

 

「戦いは終らない…私達の生き地獄は終らないの…たとえ、他の人が勇者になったとしても……私達の地獄は終わらない」

 

「地獄じゃないよ。だって東郷さんと一緒だもん!」

 

砲撃を弾いていく僕達。そうだ、どんなに辛いことが合ってもみんなが一緒にいれば……

 

「どんなにか辛くても東郷さんは私が守る」

 

「大切な気持ちや思いを忘れてしまうんだよ!大丈夫な訳ないよ!皆の事だって忘れてしまう…それを仕方がないなんて割り切れない!!一番大切なものを無くしてしまうくらいなら…」

 

「忘れないよ」

 

「どうしてそう言えるの!」

 

「私がそう思っているから!メッチャクチャ強く思っているから」

 

強い思いは決して何事にも負けない。当たり前のことだ

 

「私達も…きっと…そう思ってた……今は…ただ…悲しかったという事しか覚えてない…自分の涙の意味がわからないの!!」

 

砲撃の嵐が強くなってきた。言葉じゃ東郷を止めることが出来ない。それなら……

 

「友奈!!道は僕が切り開く!東郷を!」

 

「分かった」

 

僕は砲塔を大鎌で切り裂いていく。

 

「嫌だよ!!怖いよ!!きっと友奈ちゃんも私の事忘れてしまう!!だから!!」

 

だけど破壊しきれてない砲台が僕にロックオンした。だがそれを友奈の巨大な腕が掴んでいく

 

「東郷さん!!」

 

東郷が出してきた自動砲台を避けながら、思いっきり殴る友奈。言葉じゃ通じなければ殴る。青春だな。だけどそれって……男同士がやるものだぞ

 

僕は二人のもとにそっと降り立つと友奈は東郷を抱きしめた。

 

「忘れない」

 

「嘘…」

 

「嘘じゃない!」

 

「うそ…」

 

「嘘じゃない!!」

 

「ほんと?」

 

「うん。私はずっと一緒にいる。そうすれば忘れない。」

 

「僕もだ。そばに居てやる」

 

「友奈ちゃん、桔梗くん!忘れたくないよ!思い出したいよ!!私を一人にしないで!」

 

一人になんかしないさ。なんたって僕は東郷……

 

「お前のことが好きなんだから……」

 

「「えっ?」」

 

あれ?僕なんか言っちゃった?友奈も東郷も顔真っ赤だし……

 

「こんな状況で告白するものなの?」

 

「す、すごい、告白なんて初めて見た」

 

「あ、あれ?もしかして声に出てた?いや、これはその……なんというか……」

 

焦っている僕ら。だが突然太陽が現れた。いや、あれは自身を炎に変えたバーテックス

 

「まずいぞ。今はあれを止めるぞ」

 

「「はい、」」

 

僕たちは急いで太陽の元へと向かう。だがその途中友奈が力尽きてしまった。

 

「友奈!」

 

「友奈ちゃん!?」

 

助けに行きたいが、今はここを離れたら世界が終わる。僕たちは太陽の前に出て、必死に止めようとするが、二人の力じゃ……

 

だがその両隣二つの花が現れた。それは先輩と樹だった。

 

「ごめん!大事な時に!!」

 

「風先輩…私…」

 

「お帰り…東郷。行くよ!!押し返す!!」

 

四人の力で太陽を止めるが、まだ止められない

 

「そこかーー!」

 

「夏凜!!」

 

夏凛の姿は何度も満開を繰り返し、目や耳が機能していない。だけど……

 

「勇者としてはまだ諦めてないのか……」

 

五人の力で太陽を止めていく、太陽の勢いは徐々に遅くなっていく。これなら……

 

「うおおおおおおおお」

 

下の方から友奈の声が聞こえた。まさか……この端末を使わないで……変身?

 

「私は、讃州中学勇者部ーーー!」

 

「友奈!!」

 

「友奈!」

 

「友奈ー!」

 

「友奈ちゃん!!」

 

「勇者!!結城友奈!!」

 

友奈の拳が御霊に触れた瞬間、今まで見たことのない光が樹海を包み込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付くと五人の少女たちが倒れていた。その近くには花びらが散っていた。あれは精霊なのか?でも、僕はまだ勇者としていられている。まさか神樹が僕がやろうとしていることを知っているのか?それなら好都合だ

 

「……神樹聞け!!」

 

僕は神樹に向かって叫んだ。その時、友奈以外のみんなが意識を取り戻しているのに気がついていなかった。

 

「僕以外の……みんなが捧げた供物を返してくれ!!そして今回の戦いでみんなが支払う代償を無くしてくれなんて都合がいいかもしれない。だから、彼女たちから……」

 

ずっと考えていたことを告げた。こうすればきっと彼女たちはもう大丈夫なはずだ。それにこれは僕がずっと決めていたことだ

 

「僕のことを記憶から消してくれ」

 

あとは僕が一人で戦うから……

 

「き、桔梗くん?ダメ…」

 

気がついた東郷が涙を流している。

 

「ごめん、こうするしかなかった。みんなを地獄から救うためには……これしか」

 

「忘れたくないよ……」

 

「悪いな、告白しといて忘れさせることなんて……でも、いいんだ。僕が心のなかで言いたかったことを言えたから……」

 

「いや、いや」

 

「ごめんな」

 

そう告げた瞬間、彼女たちの姿は消えていった。残った僕は壁の外へと向かった。最後の戦いのために

 

 

 



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第29話 天の神

あの戦いから数日がたった。勇者部四人の身体の代償は全て元に戻りつつあり、平穏な日々が流れていく。だけど友奈だけが今だ目が覚めずにいた。そんなことを浜辺で話す風と夏凛の二人。風はあることを話した。

 

「ねぇ、私達は本当に五人だったんだっけ?」

 

「何言ってるのよ?私、友奈、東郷、樹、風の五人じゃない」

 

「でもさ、私、もう一人いた気がするの。そのもう一人におもいっきり殴られたり、お詫びに奢るとか言ってた気がするのよね」

 

「夢でも見てたんじゃないの?でも、私にもそんな覚えがあるの。そいつとはライバル的な感じだった気が……」

 

「一体誰なのかしらね?」

 

二人はもう一人の存在のことを思い出そうとするが、まったく思い出せない。一体これはどういうことなのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

崩壊した世界。そこでは無数の星屑が見る見るうちに切り裂かれていく。そこには黒い影が世界を駆け抜けていく

 

「うおおおおおおおお」

 

大鎌を振るい、星屑を倒していく少年。それは僕、神宮桔梗だった。僕はあれから一人である場所を目指しながら戦い続けていた。

 

「これでも喰らえ!!」

 

銃から爆発弾を放ち、何体もの星屑を爆散させていった。更に接近していく星屑を槍で薙ぎ払っていった。

 

「まだたどり着かないか………」

 

崩壊した世界の中でも、宙に舞う瓦礫の後ろに隠れながら僕は休憩した。

 

「今頃皆どうしてるだろうな?学校の方には大赦の方でなんとかしてくれてるだろうな」

 

僕の願いは勇者たちの記憶から僕の記憶を消すこと。だけど学校の人や大赦の人、園子だって僕のことを覚えているはずだ。一応そこら辺のことは大赦に言っておいたから良かったけど……でも、何でだろうな。ずっと願っていたことなのに……

 

「一人で戦うのがこんなに寂しいのか……」

 

休憩しているところを星屑に見つかり、襲い掛かってくる。僕はすぐにジャンプをして避けて行った。

 

「今頃気がつくなんてな……」

 

星屑をなぎ倒していく中、星屑の他に十二体のバーテックスが僕の前に現れた。

 

「復活早いな……だが、負けられないんだよ!!」

 

僕が満開しようとした瞬間、突然十二体のバーテックスの中心から新たなバーテックスが現れた。巨大な建造物に纏わりつく蛇のバーテックス。あれは……蛇使い座なのか?

 

「十三体目……いいぜ、来いよ。相手に不足は……」

 

『待って』

 

突然蛇使い座のバーテックスから声が聞こえた。バーテックスは見る見るうちに姿を変え、フードを被った少女へと変わっていった。

 

「ふぅ、もう落ち着いて、あなたのしたいことは知ってるわ」

 

少女がそう言いながら、少女の後ろに太陽が現れた。戦っている内にたどり着いていたのか?

 

「こっちに来て、天の神に会わせてあげるから」

 

少女の言うとおりにした方がいいな。なにせ目的達成が出来るのだから……

 

 

 

 

 

 

 

 

少女の案内で太陽の中に入り込んだ僕、そこは月と太陽が同時に見える世界だった。そして僕は気がついた時にはどこかのお城に来ていた。

 

「ここは神世期前に存在したと呼ばれる外国のお城をモチーフにした場所なの」

 

「太陽の中にこんな場所が……」

 

周りを見渡していると少女が何故かこっちを見ていた。フードを深く被っているから顔がよく見えない

 

「何か?」

 

「ううん、なんでもない。ほら、着いたよ。ここに貴方が会いたがってる人がいる」

 

少女が指差した場所にはフードを被った十二人に囲まれながら玉座に座る少女がいた。

 

「初めまして、神樹に導かれし勇者よ。私は天の神」

 

「僕は神宮桔梗。ここに来たのはあんたと話をするためだ」

 

「知っていますよ。ずっと見ていたのですから……貴方が戦う理由、ずっと後悔していたこと、そして貴方が勇者になれたことも……」

 

「僕が勇者になれたこと?僕にそういう素質があるって言われてるぞ」

 

ずっとそう言われ続けていた。だけど、天の神は首を横に振った

 

「貴方はある少女の願いによって勇者になれたのよ。それを叶えたのは私です」

 

「ある少女?」

 

「少女は死んでここに導かれました。ずっと少女は死んだことを悔やんでました。仲間である二人を残して死んじゃうなんて、それにあの子のために何もできてないって」

 

もしかしてその少女は……三ノ輪銀なのか?彼女もこの世界にいるのか?

 

「私は彼女の願いを叶えました。人というものに惹かれたのでしょう。彼女の願いは自分を生き返らせてほしいとかではなく、貴方に力を与え、彼女たちを守ってほしいと……」

 

それで僕が勇者になったのか……でも、僕が気がついた時には守ることすら出来ていなかった。おまけに右腕を無くした

 

「間に合わなかった上に一体の星屑が貴方の腕を食べてしまい、人を理解しようとした。その結果がキキョウです。私は見ていることしか出来ませんでした」

 

「それはいいんだ。今更色々知った所で過ぎたことだ。それよりも僕の願いを聞き届けてほしい。もう神樹を、四国を襲うのはやめてほしい。お前たちのせいでみんながつらい目にあってしまう。もうやめてほしんだ」

 

こんなことを頼んでも聞いてもらえないかもしれない。だけど、これだけは譲れない

 

「………」

 

しばらく沈黙したあと、神は口を開いた。

 

「良いでしょう。ずっと私はそれを待っていたのですから」

 

神は願いを叶えた?だけど待っていたって……

 

「どういうことだ?」

 

「私はずっと思っていました。私達が神樹を狙っているせいで人間が辛い目に遭う。もうやめようと思っていましたが、神は簡単に一度決めたことをやめたらダメなんです。それならどうすればいいか……それが今です。貴方のような人が来るのを待っていました。そしてやめてほしいという言葉が出た瞬間に、叶えるようにしました」

 

「天の神……ありがとう」

 

「今回の件は神樹にしっかり伝えておきます。私達はもう争ったりしないと……そして全てをやり直そうと……どんなに時間がかかっても」

 

天の神は微笑んでいた。そういえばまだ聞きたいことがあった

 

「そういえばバーテックスって一体何なんだ?こっちで聞いてるのは人類の敵とかしか」

 

「バーテックス、星屑はこの世界の人々の魂の形。一度倒されても治療をすれば復活できる。そんな存在よ。というより私を守ってるこの方々がバーテックスよ」

 

やっぱり数がぴったりだからそうだと思っていたけど、結構倒したりしちゃって悪い気が……

 

「ごめん。知らなかったとはいえみんなを傷つけて」

 

僕は十二人に謝ると巨漢の男が僕に握手を求めた。

 

「もう良いのだ。我々もお前たちに辛い思いをさせてしまったのだから……」

 

「ありがとう」

 

互いに握手をかわすと、僕をここまで案内してくれた少女があることを告げた。

 

「さぁ、戻りましょう。元の居場所へ、そして伝えて私達はわかりあえたって……そしてごめんって謝っておいて……二人に」

 

少女のフードが取れた時、僕は少女が誰なのか理解した。

 

「あぁ、任せろ。銀」

 

「うん、それと時間があったらまた此処に来て、こんどは皆と……」

 

眩い光が僕を包み込んでいった。この世界から去ろうとしている。消えかかる意識の中、天の神は告げた。

 

「貴方は我々をつなぐ架け橋となる勇者です。そして気をつけてまだ戦いは終わらない。その時が来たら……」

 

僕はそのまま消えていくのであった。涙を流す銀

 

「銀、その時まで力を付けていなさい。貴方は天の神の勇者のだから、それも神樹の真の勇者と一緒に戦えるくらいに」

 

「真の勇者って、桔梗のこと?」

 

「いいえ、最後まで諦めなかった。最高の勇者、彼女の名前は………」

 

 

 

 




次回で最終回です。最後に出てきた世界は天の世界という感じですね。かなり自己解釈でした。


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最終話 美森の花、桔梗の花

最終話です


讃州中学文化祭。

 

僕は讃州中学勇者部の演劇を見ていた。魔王は先輩、勇者は友奈。物語はすでに佳境に近い

 

「結局世界は嫌なことばかりだろ!?」

 

「そんなことない!大切だと思えば友達になれる。お互いを思えば何倍でも強くなれる!無限に力が湧いてくる!!」

 

そうだったな、僕たちはずっとそうして戦ってきた。彼女の言うとおりだよ

 

「世界には嫌なことも悲しいことも自分だけではどうにもならないこともたくさんある。だけど、大好きな人や友達がいればくじけるわけがない。諦めるわけがない。だから…勇者は負けない!!」

 

勇者は魔王に斬りかかり、魔王は倒れていった。だけどその直後、勇者も倒れてしまった。僕はとっさに駆け出そうとするが正直出来なかった。彼女たちから僕という存在はいないのだから

 

「いい演劇だったよ。みんな」

 

僕は盛大な拍手を聞きながら体育館を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

誰もいない勇者部に行き、机の上に僕は五枚の絵をおき、一言添えた

 

『勇者よ、永遠に』

 

「これでよしと……」

 

僕はそのまま部室から出て行く、そして校門に着くと一台の車が止まっていた。

 

「乗って行くかい?」

 

「あぁ」

 

運転手は春信さんだった。そして後ろの席には見覚えのある顔があった。

 

「よぉ、園子」

 

「ずっと待っていたんだよ~一人で勝手に問題解決しに行っちゃうし……帰ってから会ってくれなかった。もしかして嫌われたかと思ったんだけど……」

 

「悪かったって……今日のためにずっと絵を書いてたんだから」

 

僕はクルマに乗ると、園子はあることを聞いてきた。

 

「でも良かったの?天の神に頼んでみんなの記憶からきょうくんの事思い出すことだってできたんだよ」

 

「いいんだ。正直願いを簡単に変えちゃいけないって思ってるから」

 

「でも約束破ってるよね?天の神との」

 

みんなで一緒に来て下さいって言われてるが……仕方ないさ。

 

「その時はお前とみんなで行ってもらうさ」

 

「はぁ~」

 

「何で溜息つくんだ?」

 

「ううん、なんでもないよ~これからは敵もいなくなって、勇者は天との交流役となるんだね~そのためにシステムも新しく作り変える」

 

「もう辛い思いをしなくても大丈夫なのか?」

 

「満開も散華もなくなる。精霊の力も制限がついてるからね。ヘタすれば死ぬかもしれないけどきっとだいじょうぶかな?」

 

いいのか?そんな感じで……

 

「それとわたしも勇者部に、讃州中学に入ることになったから」

 

「そっか、みんなによろしくって覚えてないから……仲良くしてやれよ。園子」

 

僕は車を降り、自宅へと帰っていくのであった。車の中で園子は僕のことを見送ると……

 

「大丈夫。きっとみんな思い出すから……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日がたった。僕は浜辺で絵を描き終え、家に帰る途中の事だった。前から見覚えがある五人の少女の姿があった。結城友奈、東郷美森、犬吠埼風、犬吠埼樹、三好夏凛。多分勇者部活動の帰りだろうか?彼女たちは笑顔で平穏な日々を送っていた。

 

(よかった……)

 

僕はそのまま彼女たちの横を通り過ぎた。もう彼女たちに声をかけることは出来ない。ただ見守るだけしか出来ない。それでいいんだ。僕がそう思いながら前を歩き続けようとした。

 

「待って!!」

 

突然誰かが僕を呼び止めた。振り返るとそこにいたのは東郷だった

 

「……あの何か?」

 

「ずっと思い出せなかった。私達勇者部にもう一人いた気がずっとしていた。友奈ちゃんが目覚めた後に言われたの……大好きだった人のことを」

 

まさか、いや、ありえないはずだ。友奈はどうやら覚えていたけど、他の皆は覚えてるはずがないはずなのに………何で……

 

「友奈ちゃんに聞かされてもずっと思い出せなかった。それは他の皆もそうだった。だけど、さっき通り過ぎた時……思い出せた。貴方のことを」

 

本当なのか?それは本当なのか分からない。

 

「それだったら僕の名前を言ってみてよ……君が僕のことを知っているなら……言えるはずだ」

 

「神宮桔梗くん。私が大好きな人だよ」

 

東郷は涙を流しながら微笑んだ。僕はそのまま彼女を抱きしめた。

 

「思い出したんだな」

 

「うん」

 

「ごめん、辛い思いをさせて……」

 

「いいの、貴方がそうするべきだって思っていたのだから」

 

「そういえば足治ったんだな」

 

「うん」

 

「みんなは僕のこと思い出してるのか?」

 

「私と同じ時くらいに、友奈ちゃんはずっと覚えていたみたい」

 

「そうか……」

 

僕も何故か涙が出てきた。僕が泣いているのに気がついたのか東郷は僕の顔を見て微笑んだ

 

「泣かないで……もう忘れないから」

 

「あぁ、僕も皆のことを、君のことを忘れさせたりしない」

 

僕たちは互いに微笑み合い、手を繋ぎながら皆の所へと行くのであった。

 

「みんなに会ったら最初になんていうの?」

 

「それはもちろん」

 

僕は皆のところへ行き、笑顔で伝えるべき言葉を伝えた

 

「ただいま」

 

 

 

 

勇者の花と桔梗の花 完

 




これで最終回ですが、既に続編も考えてます。

タイトルは

鈴藤灯華は勇者になれなかった

となっております。以前灯華は登場してます

それと最終回と同時に桔梗のキャラ紹介もあげてあります。では続編で


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キャラ紹介

神宮桔梗

 

年齢14歳

 

誕生日6月6日

 

血液型O

 

身長 160センチ

 

趣味 絵を描くこと

 

見た目

 

黒髪で少し長いだけ、右腕が義手のため私服とかは制服は夏でも長袖を着ている

 

性格

 

割りと真面目であり、人見知りしない性格である。だがイライラがたまっていると切れたりする。右腕を無くした時は絶望したが園子と会ってからそんな風に考えなくなった。

 

精霊

 

前鬼・後鬼

 

二体で一体の精霊であり、桔梗専用の精霊でもある。

 

 

いろんな生物が混ざり合った精霊、

 

 

勇者時の設定

 

黒一色の衣装。戦い方によって武器を変える。武器は全部で3つ。大鎌、銃、槍。勇者としての能力として高速移動ができる。

 

銃弾は撃ち込んだ相手に対して爆発させる銃弾のみ。

 

満開時

 

二本の大鎌と背中に尻尾みたいなものが生え、先端には銃口が付けられ、黒い鬼の面が付けられる。鬼の面は背中の銃の制御を行うことが出来る

 

 

過去

 

鷲尾須美と知り合いで、一度告白したことがあるが振られている。それがきっかけで三ノ輪銀と出会った。そして銀の願いで勇者の力を得るが、樹海で園子を助けた際、右腕を失う。

 

園子はあの時の恐怖を忘れてもらうために記憶を封印したが、結局樹海の記憶が残った。

 

そしてそのことがきっかけで仲良くなるのであった。

 

 

 

 

 

 

キキョウ

 

人型のバーテックスであり、桔梗の右腕を食べて人間を理解しようとした存在。桔梗に触れることで情報を得て、最終的には勇者としての力を得るが、決死の賭けで通常の星屑に戻され、夏凛に倒される

 

天の神はキキョウを裏切り者だと考えている

 

 

 

 

 

 

 

 

蛇使い座

 

天の神に使えし十三体のバーテックスの一人。その正体は三ノ輪銀が姿を変えた存在。能力的には他のバーテックスとやや劣るが、天の神の勇者になる存在でもある。

 

 

 

 

自己解釈設定

 

バーテックスは天の神が住む世界、天の世界の住人達の魂の形。倒されても死ぬことはないが、暫くの間は眠ったままになる。星屑も同じ設定

 

 

 

 

天の神

 

天の世界の主。少女の姿をしている。ずっと戦いを見続けていたが、人のことを理解し神樹への攻撃をやめようと考えたが、神である自分が勝手にそんなことが出来ないと思い、天の世界に来る勇者を待ち、その勇者がやめてほしいと願うまで待ち続けた。

 

 

 

 

 

鈴藤灯華

 

琴禅中学校の勇者候補であり、桔梗の知り合いである。

 

ずっと勇者になりたいと願い続けながら、大赦での訓練を続けているが、叶うことがなく、自分の努力が報われなかった悔やんでいた。そして少なからず讃州中学勇者部に恨みを抱いたりしている

 

そして彼女の願いは叶う

 

 

 

 

 




キャラ紹介+自己解釈の部分でした。では続編で


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