Fight for Survivor! (藤原守理)
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プロローグ

お疲れ様です!もし世界で感染病が蔓延したときの日本を本作で描いてみました。ぜひ読んでみていただきたいです。


『…拓哉…タスケテッ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『っ!うわぁぁぁあぁ?!』ガタッ

 

 

 

 俺、勝山拓哉は急に目が覚め、ベッドから起き上がった。

 

 

「またあの夢か・・・・・・」

 

 

 あの日、世界が変わってからずっと悪夢に俺は悩まされていた。

 

 

 

 数時間後、結局眠れず朝を迎えて、軽く朝食を取って支度をし、家を出た。

 

 

 

 

 

 

ー2030年4月10日ー

 俺の住む都市、秋雨市は旧日本政府が感染者から逃れるセーフゾーンを基に発展した要塞都市である。二重の防壁の中に約50万人の人々が暮らしている。本州中部の旧某県域に存在し約20mの防壁により、‘奴ら’の侵入を防いでいた。俺はその壁を守る防衛隊に所属している。

 

 

 

 

 

 

 

 季節は春で桜がとても綺麗だった。

 

 今日もいつも通り俺の勤務地の北東防壁第1連隊防衛屯所に入り、装備を整えて壁上の監視場に向かった。

 

 

 

 俺が装備している装備品は敵との最前線の場であるため、上から旧自衛隊の88式鉄帽・迷彩服2型・防弾チョッキ・半長靴が基本的に着用している、銃火器は個人の自由で選ぶことができ、ロシア製のAK74Mを携えている。世界崩壊後は日本列島にも他国製の武器が出回っているが特にAK系列の銃は大陸の人間が万単位で大量に持ち込んできたため手に入れやすく、なおかつこいつは特に使いまわしが良く愛用している。

 

 

 

 

 秋雨市を守っているのは「秋雨都市防衛隊」である。総員6500名(補給部隊を除く)で構成され、各統合連隊(1200名)に7個中隊、各中隊(150名)ごとに3個小隊、各小隊(30名)ごとに3個分隊、という形に細かく分かれている。

 

 

 

 

 監視場に上がった俺の目の前には俺の所属する第7監視分隊の面々が揃っていた。分隊長は曹長の階級にある俺であり、残り9名の部下で壁の向こう側を監視している。防衛隊に入隊して10年間日常で変わったことはなく、監視するといっても変わったことはないのでいつも通りそれぞれの隊員は最前線にも関わらずリラックスしてトランプなどして思い思いの時を過ごしていた・・・。

 

 

 

ー4.10.AM9:15ー

 

 

 

 

「勝山曹長、一杯どうっすか~?」

 

 

 一等兵の酒好きな福田が勤務中にも関わらず、酒を片手に誘ってきた。

 

 

「福田、また酒か・・・」ハァ

 

「呑みましょうぜ!曹長!」

 

 

 福田の顔をよく見ると顔が真っ赤だった。いつから呑んでんだこのバカは。いくらなんでも緩み過ぎている現状に俺は嘆いた。

 

 

「何言ってんだ。断る。勤務中だぞ!馬鹿やろう!」

 

 

 俺がそう注意すると、

 

 

「呑まないとやってけませんよ~!こんな退屈な毎日~。曹長は真面目すぎなんですよ!」

 

「でもお前壁の下を見ろよ!奴らは毎日毎日討伐隊が駆除してもすぐに湧いてきやがる。こいつらが万が一n」

 

「でもこの10年壁内で特に変わったことがなかったじゃないですか~?」

 

 

 

 秋雨市が成立して以降の数年間は壁内では自治政府に反感をもつ旧共産党系のテロリストや宗教カルト集団が活発に行動していて、壁外では年に数回変異種の大群が押し寄せていたため治安が安定しなかったが、この10年間は治安が安定し壁内外では大きな事件など起きる兆しが無くなっていた。

 

 

 

「福田。変わりなくても万が一に備えて奴らを監視しとけよ!俺たちは市民の盾なのだから。」

 

「またぁそんな堅いこと言ってたらまた上に嫌われますよぉ。」

 

 

 一瞬嫌な過去を思い出しかけた。だが、ああいってもこういう状態だったので会話を切り上げ、俺は壁下の監視を再開した。

 

 

 

 

 

しかし、壁の様子は今日も変わらず結局今日1日が終わるだろうとそのときまでみんなそう思っていた………。

 

 

 

 

 

 そう、そのときまで…。




評価・感想をお待ちしております。
作者は来春より山口県に赴任する準備で忙しく執筆が遅れ遅れであります…温かい目でよろしくお願いします。


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第1話「謎の少女と第7監視分隊」

お疲れ様です。続きをどうぞ。


-2030年4月10日

-第7監視分隊・分隊長・勝山拓哉曹長-

-北東防壁壁上-

 

 

 

 

 

  

それから俺たちの分隊は他の分隊との昼の休憩交代も終わり再び壁の警備を再開した。

 

 

 しかしながら、俺らが見る壁の外は特に変化はなく、変化といえば壁に近づいてきた感染者を駆除する一射一撃の狙撃の音と薬莢の微かな排出音、推定7.62mm口径弾をうけた感染者の身体がはじけ飛ぶ光景が見える程度である。

 

 

 

 

 

 世界が変わってから14年の間、ふと今かつてあったことを思い返るとやけに辛いシーンが復刻する。かつての感染した親を自ら殺害して働く場所もなかった難民だったの俺は食い扶持を稼ぐために軍に志願した。入隊後の数々の戦闘で何人もの仲間を失って悔やんだ日もあったが、苦労の末、分隊長格に昇進をした。

 

 

 

 壁の中を見る限り、軍を担う兵力も集まり外敵による侵攻もなく治安も安定してきている。経済は変異が起こる前とは比べようがないが最悪な時に比べたら徐々に回復してきている。この様子だと壁外への再進出が可能ではないかと思えてくる。

 

 

 

 …ただ、俺の中ではあいつを目の前で失った「あの日」から他人を信用できなくなっていた。人を獣と感じ会話も少なく他人との距離を隔てていた。しかしながら、変わった部下たちのおかげで任務を無傷、最小限の被害でこなして来れたのだが…。

 

 

 

 

「・・・まぁでも大丈夫か…」

 

「・・・どうしたんです?隊長?隊長最近疲れてません?寝てないんですかぁ~?」

 

 

 

 ふと横を見ると軍曹の奥田咲が立って首を傾げていた。俺より4つ下の年で、俺の部下だ。見た目は髪をポニーテールに束ねていて小顔で可愛いが・・・。

 

 

 

「何だ?奥田軍曹?」

 

「いえ、勝山隊長の目のクマが気になりまして…。」

 

「そうか。最近眠れなくてな…。」

 

「………もしかして……もしかするとォ?!?!彼女さんとやっぱり毎晩××××して〇〇やって寝させてもらえないんですかぁ」ウヒャゥ

 

 

 

 

 

 ………これだ。奥田軍曹はたまに何故か俺の前になるとトンデモ発言を毎秒数千発の改造バルカン砲の弾幕の如く吐き出す癖があり、周りの同僚からは「腐りかけ」「残念すぎてコメントできない美人」の評価を受けていた。

 

 

 

 

 

 

 

「なんでそうなるんだ!バカか?!彼女なんてもんいない!」

 

 

俺はいつもは軽く受け流していたが今日はなぜか奥田に言い返していた。そう言って反省した俺は溜め息をつく。

 

 

 

「そうじゃないんですか?!ガッカリです。だったら私にも夜○いをかければチャンスがぁぁぁ?!あっ…うふふふふふ・・・」

 

 

 

反省した理由はコレで、言い返すとこいつの変態弾幕が悪化するからだ。毎日吹っかけてくるこのやり取りにも流石にウザくなってきた…。

 

 

 

「…何だって軍曹?また懲罰房行きにするか?あぁ、そういえばあそこの女看守、たいそう軍曹のことを”可愛がって”いたそうじゃないか……?」

 

 

 俺は効き目のある脅しをかけた。

 

 

 

「っ!異常ありません!」

 

 

 

 奥田軍曹はよく変な妄想癖がおこる女性である。これを差し引いたらさぞもてるんだろうが…。奥田はかつて、内地の部隊に配属されていたときの演習中にこれが原因で部隊の位置がバレて全滅判定を喰らい、この最前線の壁勤務に異動されてきた経歴があった。

 

 

 当の本人はさほど気にしてはいない。

 

 

 

 

 …が、そのときに懲罰房の看守主だった女少佐と仲間たちにとあるプレイをされて以来、奥田の「思い出したくもやりたくもない経験(トラウマ)」になっていた

 

 

 

 

「ん?何か言いました?」ニタァ

 

「…何も言ってねぇよ」

 

 

 …なんだこの分隊はバカが多いのかと呟きながら壁外の監視を続行する。

 

 

 

 

 

 …そういえば今日は壁外の奴らの数がほぼいないな…。いつもだったらうじゃうじゃ居るというのに。

 

 

 

 我らがトリガハッピーアンドドラッグヒャッハーの討伐隊のあの狂人たちのことだ。定期討伐にありったけの戦車を持ち出して奴らを狩りまくったのだろうか。変だと思いつつも、監視を再開すると、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

俺の視界にあるものが移った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 1人の少女が壁外を歩いていたのだ。壁外は言われなくてもわかるように奴らに襲われる危険が大の危険地帯であるために一般人立ち入り厳禁のはずだった。

 

 

 

 

 

 

 発見した俺はすぐに分隊各員に召集を掛けた。

 

 

 

 担当警備区域に分散していた部下たちは集まり少女の存在を再確認し、あの壁外を歩く少女をどうすべきかまず考察とそれに基づいた作戦を立てることにした。

 

 

 壁上のテント内で行う。

 

 

 

 

-北東防壁壁上-

 

 

 

 

「俺たち分隊はあの少女をどうなのかの考察とそれに応じた作戦会議を始める。時間の猶予はあまりないがみんな意見を出してもらいたい」

 

「「「「はい!」」」」

 

 

 部下たちの返事が呼応した。基本、俺たち第7監視分隊では皆で協議の上、作戦を取る形をとっていた。

 

 

「勝山曹長!具申したいことがあります」

 

 

 すぐに手が挙がり眼鏡をかけ黒髪短髪の男性が声をあげた。

 

 

「田中伍長か。何かあるか?」

 

「はい。ここはやはり上に報告して指示を待つのが正しいかと自分は考えます。先ず、少女の様子がただ事では有り得りえないように見えます。護身用の武器を持たずに壁外を歩くなんて…。少女の服装も見るからに怪しいです。ですが、毎度具申していますが我々単独で動くのは命令規則的にマズいのではないのでしょうか?」

 

 

 

事なかれ主義者(#勝山たちから見ると)の発言にも聞こえるが田中伍長は決して臆病ではない。変人が多いとされるこの分隊で唯一常識を持ち冷静さと射撃の腕で中隊の中でも評判の高い兵士だ。

 

 防衛隊では一応軍隊の体をなしているが、感染者ばかり相手にしている傾向が続いているため、新規採用の隊員に対して行われる教育は対人戦闘作戦の隊員教育が後回しにされて対感染者作戦の教育を優先している。その結果、考えが浅く敵地正面突破を好む防衛隊隊員の中では田中伍長のように客観視出来る人材は数少ない。

 

 

「そうだな。田中伍長のそれが一番無難だろう。他には?」

 

「はい!」

 

「奥田軍曹。何か?」

 

「はい。私は田中伍長の意見に反対します。少女はよく見ると傷だらけです。早急に保護すべきです!上の指示を待つのは時間が掛かりますし、その間に事態が悪化するやもしれません」

 

 

 少女は見るからに傷を負い何かから逃げている様子にも見えた。奥田の言うことも一理ある。

 

 

 

「・・・分かったありがとう。作戦は…」

 

 

 

 

 

 

 

「隊長!報告します!

 

 

 そこに少女を監視中だった福田一等兵が急に報告しに入ってきた。

 

 

 

「どうした。」

 

「少女の後方500mより『奴ら』が接近しています!」

 

 

「数は?」

 

「通常型が数十体、変異型が複数確認しました」

 

 

 

 変異型は動きが鈍い通常型に比べて腕と脚を中心に肉体組織が変異を起こし、爪が巨大化し動きが素早く殺傷能力が高い。連射できる小銃を携帯して対峙した兵士でも1対1だといつの間にか後ろに回り込まれ身を守る暇もなく首を狩られる被害が多い脅威度の高い敵である。

 

 ましてや武器を持たない少女はより無防備で襲われたらひとたまりもない。

 

 時間は待ってくれないようだ。

 

 

「わかった!小隊長に代わり分隊長より発令する!作戦は少女の保護を最優先の目的とする!総員戦闘準備」

 

「「「了解!」」」

 

「責任は俺がとる。少女を救出するぞ!行くぞ!」

 

 

 

 

 そうして俺の命令により第7監視分隊は救出戦闘態勢に移ったのだった。

 

 

 




次話:戦闘シーン入ります!乞うご期待!


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第2話「救出戦」

お疲れ様です。続きをどうぞ。


-4月10日-

-北東防壁壁外-

 

 

 

 

 

 

 作戦は正面を俺、勝山曹長及び3名、左翼を奥田軍曹及び3名が、右翼を田中伍長及び3名でそれぞれ班を構成し行動する。門外へ出たあと素早く左右の班が指定地点に移動し十字砲火で敵目標群を惹きつけ殲滅。中央の俺たちがその間に少女を保護するという内容になった。

 

 

 

 

「各自!ターゲット(少女)は壁より500mの廃墟街に入った。死角より奴らの襲撃や同士撃ちに注意しろ!くれぐれもターゲットへの誤射はするな!行けっ行けっ行けっ!」

 

 

「「了解!」」

 

 

 壁門を速やかに出て、それぞれが持ち場に着き、ターゲット救出に向けて前進を開始した。

 

 

 

 

 

-4月10日同時刻-

-廃墟街-

-勝山曹長side-

 

 

 

 

 準備に時間が掛かってしまい発見から数十分経ってしまったが、少女は無事だろうか?

 

 

 

「奴ら」も既にここに到達してしまってるだろう。それにしてもこの廃墟街、狭い路地が多いわりに昼間なのに4階建て以上の高さの建物が乱立して死角が多く薄暗くなっている。

 

 

 左右翼の連中は無事にポイントにたどり着ければ良いのだが…

 

 

 

 

 

 

タッタッタッタッタン!

 

 

 

 射撃音のする方向に耳をすますと左翼担当の奥田組が先にポイントに到達し、奴らの掃討を開始していた。

 

 

 

 

 

 

 

-同時刻-

-左翼・奥田咲軍曹班-

 

 

 

 

タンタンタンッ

 

 

 接近してくる感染者に対して正しい見出し正しい引きつけ正しい頬付けで正確に彼らを単発射撃で撃ち倒す。

 

 

 

「福田さん、ここに『ミニミ』設置!」

 

「了解っす!」

 

 

 

 

 小走りでかけてきた福田が地面に固定設置しているのは「ミニミ」と呼ばれる5.56×45mm NATO弾仕様、最大装填数200発の歩兵が持ち運べる軽い機関銃である。元々は旧自衛隊の所管だった銃で防衛隊では1分隊ごとに1丁という割合で配備されている。上部にはスコープは装着されていない。

 

 

 

 

 

「……設置完了!」

 

「よし、では福田さん制圧射撃お願いします!目標群は11時の方向に多数」

 

 

「了解!射撃します!」

 

 

 

タッタッタッタッタン!

 

タッタン!タタタタタタン!

 

 

 

引き金を引くとミニミ軽機関銃の銃口から勢い良く連続で火を噴き上がり、複数の視認できる感染者の群れを軒並みなぎ倒していった。

 

 

 しかし、想定以上に感染者の数が多く、弾幕に対してあまり数が減らない。

 

 

 

タタタタタタン!

 

ポンッ

 

 

 

 機関銃や小銃に加えて旧式化した06式小銃てき弾も発射、着弾して飛び散った破片で面単位を制圧する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 時同じくして田中伍長率いる班もポイントにたどり着き、小銃や機関銃で射撃を開始していった。

 

 

 

 

 

「…ちくしょーが!数が多すぎる!弾がいくらあっても足りない!」

 

 

 奴らの多さに福田が音を上げる。

 

 

 

「福田さん!そんなこと言ってないでさぁ、撃って撃って撃ちまくるわよ!」

 

 

 

 奥田が声を張り上げ小銃の狙いを定め確実に射撃する。

 

 

 

 

 機関銃で弾幕を張ってなぎ倒しているはずなのにかかわらず奴らは圧倒的な数でヂリヂリと接近しつつあった。

 

 

 

カチッカチッ

 

 

「仁科!弾!弾切れだ!」

 

 

 福田の持つミニミの弾が切れたため補給係の仁科二等兵に声を掛ける。

 

 

「了、了解です!」

 

 仁科はすぐに反応しベルト状にくっついた弾(5.56mm金属製分離式弾帯M27)を渡し、福田はハッチを上に開け弾を装填する。

 

 

 

 

ガチャガチャガシャーン…

 

 

 

タタタタタタン!タタタタタタン!

 

 

 

 弾の装填を終え弾幕の雨を再び浴びせだした。

 機関銃でいくら倒しても倒してもどこからか奴らは湧いているようだ。あいにく装備も中途半端の状態で出てきたため、残り弾数に心許なかった。奥田班は敵が無限に出てくるような錯覚に陥っていった…。

 

 

 

 

 

 

-同時刻-

-右翼、田中伍長side-

 

 

 

「右前方、複数のターゲット狙撃」

「了解」

 

タンッ、タンッタンッ、タンタン!

 

 

 

 一方の田中伍長率いる右翼班では一応奥田班との共同で十字砲火という形を採りつつも敵に居場所を探らさせないように撃ってはやや移動、撃ってはやや移動を繰り返して敵を単発で確実に仕留めていた。

 

 

 

「田中伍長。流石にこれはアカンちゃいます?作戦の内容とはちゃいますが…」

 

「構わない。こちらはこちらで敵を的確に倒して数を減らしているのだから。問題ないだろう?」

 

「し、しかし、奥田班の方に奴らが集まりすぎでは…?」

 

「それは奥田軍曹の采配に問題ありだ。我々は隊長にここを任されたのだから」

 

 

 そう言って田中は向こうの敵の注目を浴び囲まれつつある奥田班を一瞥したあと、自分たちの班はすぐにポイントをやや移動して射撃を再開した。田中の中では危険冒すことよりより安全に自身が生還出来るようにこっそり算段を企てていた。

 

 

 

 

 

 

 

-中央・勝山拓哉曹長班side-

 

 

 

 見たところ左右の班は作戦通り上手く感染者を引き付けているようだった。俺は愛銃のAK74Mを手に、2人の部下を率いて少女が居るであろう廃墟街の一角の家屋に突入した。

 

 

 半木造3階建ての中は外観を見て思ったよりもでかかった。

 声を出して救出に来たことを知らせようと思いつつも下手に声を出すと奴らを誘き出しかねないため、1部屋毎に手分けしてクリアリングしていった。

 

 

 

 

 

 

 4カ所目の部屋を覗いたときだった。

 

 

 

 

 

 

 

ダンダン!

 

 

 

 

「なんだお前?『ドンッ』ひぃ?!ば、化け物!至急応援を!」

 

 

「待っていろ!すぐに行く!」

 

 向こうの部屋に入った部下の1人が発砲して助けを求めていた。俺は答え急いで部下を手助けに向かった。俺が部屋に到達する直前、

 

 

 

 

「い、嫌だ。た、助けでぇぐれっ」

ザッシュ!

 

 何か嫌な音がした。物凄くマズい状況にあると俺の中の警鐘が鳴った。

 

 

 

 

『この先、入るな』と。

 

 

 

 しかし、部下がやられたとするなら上官としての義務がある。意を決して部屋に入った。

 

 

 

 

 

「?!なんだ?!」

 

 

 

 部屋に入った俺を出迎えたのは頭部の切断された部下の遺体と大きな三角頭巾を被って大鉈を持った大男だった。手に持った2mはある大鉈で部下を殺したのだろうと推測した。

 

 

 

 俺は未知の存在に一瞬怖気付いたが、変わり果てた部下をみて一気に憤慨し、大男に5.45mmの鉛弾の雨を浴びせた。

 

 

 

 

ダダダダダダダダダッ!

「この化け物がぁ!」

 

 

 

 しかし、大男にいくら撃っても弾を弾かれているようだった。

 

 

 

「…………………」ブンッ

 

「!」

 

 

 目の前にいた大男は瞬間移動したみたいに俺の後ろに立って俺の脳天めがけて一気に鉈を振り下ろしてきた。

 

 

 

 

 

 

「うっ?!」

 

 

 

 

 振りかざしてきた斬撃を感だよりで間一髪で避けた。

 

 

「この野郎…」

 

 戦闘の緊張で分泌されるアドレナリンが俺の思考を狂わす。

 

 

 

 

「…ならこれでどうだ!」

 

とばかりに腰にぶら下げてたありったけの手榴弾を投げつけ頭を抱え退避した。

 

 

 

 

ドッカン!ガラガラガラ

 

 

 

 手榴弾が爆発し部屋の壁と天井が崩壊し日光が部屋に差し込む。砂埃が収まり倒せたかどうか物陰から様子をうかがってみると…

 

 

 

 

 大男は見事に胴体を残して絶命していた。部下の遺体は爆発の直前、爆風の避けれる場所に投げたため、損傷は少なかった。俺は首にかけてあった2枚の死亡した部下の認識票をちぎり1枚は俺のホルダーに入れる。もう1枚は部下の口に差し込んだ。

 

 処理が終わり大男の胴体を見てみると、肩のところにシリアルナンバーのようなものがあった。

 

 

 

 

「…Made in outside? ID:G002?どっかで見たことあるような…」

 

 

 

 

 

 しかし、こんなもの読んでいる時間はないと切り上げ、少女の救出をもう1人の部下と合流し、再開した。

 

 

 

 少女を最後の奥の部屋の隅で発見した。

 年齢は15歳ぐらい、ロングの白髪、日本人ではなく今時珍しい白人の少女だった。

 

 

 

 

「…大丈夫かな?助けに来たからね。名前はなんていうのかな?」

 

 

俺は相手を怖がらせないように笑顔で俺はそう言うと、

 

 

「ありがとうございます…。その、名前は…分からないのです。覚えてません」

 

 

 少女はそう答えた。

 記憶喪失か…と俺はめんどくささを感じつつも次はどうすべきか小考した。

 




空自の試験を11日後に控えていますので更新が遅れます。


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第3話「撤退と酔狂」

お疲れ様です。続きをどうぞ。


-中央・勝山拓哉曹長side-

 

 

「こちら勝山、ターゲットを無事保護した!総員、持ち場を放棄して撤退せよ!繰り返す、持ち場を放棄して撤退せよ!」

 

『『了解!』』

 

 俺たち中央班は目的の少女を確保した。そこで俺は無線機に向けて分隊隊員に撤退の指示を出した。

 指示を出してすぐさま死亡した隊員の処理を済ませ、早々に俺たち2名の隊員と少女の3人で建物から脱出し奴らを排除しつつ壁まで走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

-左翼・奥田咲軍曹班side-

 

 

 

『…持ち場を放棄して撤退せよ!』

 

「了解!」

 

 

 レシーバを取った奥田は苦しい顔をしながら返答する。

 

 

 

「…奥田軍曹。それでどうしますか?奴らたくさん居ますよ…?救援を呼びましょう。」

 

 

 福田が機関銃を撃ち冷静さを装って奥田に言うが、実際、福田の言う通りで感染者100体は超える数がここに殺到してきている。仁科も福田の言う通りだと首を縦に振る。

 

 

 今は機関銃掃射で何とか接近を拒んでいるが、撤退となれば別だ。救援を呼ぶのがいいだろう。・・・だが

 

 

 

「いえ、助けなど必要ないでしょう。私たちにはとっておきがあります」

 

 

「とっておき?」

 

「そうアレです。」

 

 

 そう言う彼女は怪しげな笑みを浮かべる。

 

「アレ…とは…?」

 

「わかりませんか?演習でよくやったアレです。」

 

 

「え…?まさか…」

 

 

 2人は悟る。

 

「…堂々と敵中突破します!」

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

 

 2人は一瞬耳を疑った。堂々と…?

 

 

 

 

「はい?!正気ですか!?こんなにいるんですよ!あっという間に囲まれて・・・食われるのはイヤっす!」

 

「そうですよ!何でですか?!」

 

 2か月前、第3連隊第二次歩兵演習が行われた。第7監視分隊からは奥田軍曹を指揮官に、田中伍長、福田圭介一等兵、仁科駿二等兵、箕田ダニエル上等兵の5人が出場した。

 演習のプログラム、森林戦の一幕で奥田軍曹指揮の分隊は他の分隊と模擬戦をやったのだが、心理戦で勝利を掴むと考えた彼女は突撃を命令、数十分後には見事全滅判定をくらった。突撃で無鉄砲に突撃したため隊はいつの間にか散り散りになり1人ずつ敵役の分隊に囲まれ各個撃破されたのだ。

 演習後に勝山から叱咤を受けたが奥田はむしろ喜んでいたそうだった。

 

 

 

 奥田は他二人の反対を屁ともせずに言った。

 

 

 

「カッコイイじゃないの~!敵中突破って!一度やってみたかったの(≧∇≦)bあとで隊長に誉めてもーらおっと!」

 

「「ぇぇえええぇぇぇ?!?!?!」」

 

「さぁ行くわよ!2人とも!」カチっヒュイっ

 

 

 

 そう言うと奥田は開幕の合図にと破片手榴弾を奴らの中に投げ込み、爆発。爆心地に道が開いた。突破口ができたと同時に銃剣付き小銃を抱え、銃を腰だめに乱射、突っ込んで行った……。

 

 

 

 

 唖然とする二人。

 

 

 

「「……しゃあねー!どうにでもなれっ!」」

 

 

 遅れて2人も奥田に続いて銃剣を着剣し突っ込んで行った……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-右翼・田中雅史伍長班side-

 

 

 

『…持ち場を放棄して撤退せよ!』

「了解!」

 

 

 

 田中伍長が勝山曹長の命令に返答を返す。

 

 

「よし、村石(ムライシ)!箕田(ミノダ)!撤退準備!撤退ルートの脅威を徹底的に狙撃してから開始するぞ!」

 

「了解!」

 

「了解です。」

 

 

 

「箕田上等兵はその狙撃銃で撤退ルートの奴らを掃除。村石兵長は観測手をやれ。」

 

「「了解です。」」

 

 

 

 

箕田は7.62mm口径のボルトアクション式の狙撃銃・Ⅿ24で狙撃、観測手・村石は数m横で双眼鏡を覗いて風向き目標の位置を狙撃手・箕田に知らせる。箕田の給弾中は村石が89式小銃で素早く狙撃し撤退予定ルート上の奴らを排除していく。

 

 

 が、しかし…

 

 

 

 ズゥゥン

 

 

 

「?」

 

 村石は1体の敵が狙撃で倒れたのを確認し次の目標を狙い始めたとき、妙なものがスコープに映ったのに気づいた。

 

 

 

 

 

 

「…なんかデッカいの来ましたよ…?」

 

 

 直後に箕田も認識したようだ。

 

 

 

「なんやアレ?とにかくさっさと始末して逃げんと!」

 

「やつの頭を狙え!一発で仕留めろ!」

 

「了解っ!」

 

 

 3人の200m手前の建物から出てきたのは武者鎧兜のようなものを着た2mほどの大男だった。

 

 

 箕田は妙に思いながらもボルトを引いて装弾し照準を兜かぶとに定め、狙撃した・・・が。

 

 

 

 

 

キンっ

 

「?!弾いた?!」

 

 

 それを見た3人とも脅威と判断して大男に対して機関銃小銃狙撃銃ですぐさま連続して銃撃を加えた。

 

 

 

 

ダーン!キンッ!ダダダッ!キンキンキン!ダン!キンッ!

 

 しかし、大男に銃弾を浴びせたものの、全く効果のないようだった。

 

 

 

「「「嘘だろ?」」」

 

 

 銃弾を弾きながら迫ってくる男に戦慄を抱いた。

 

 

 

 

「……何やってる?!あんなデカ物さっさと始末して撤退するぞ!」

 

「伍長!銃弾はじきましたよ!アイツ!」

 

「重火器もってくりゃよかった・・・これから帰るってときに・・・!ついてない!」

 

 

 

 田中班ではそもそも狙撃中心の作戦を想定していたため、機関銃はあるものの対戦車ミサイルなどの重火器を持ってきてなかった。

 

 

 

「とにかく撃て!撃て撃て!アイツを近づかせるな!」

 

 

カチっカチャっダン

ダダダダダダダっダダダっ

キンっキンっ

 

 

 

 

 必死に3人は手持ちの火器で銃撃を浴びせるが大男は止まる気配がない。状況は変わらず、ジリジリと接近されていく。

 

 

 

「アカン、これアカンやつや・・・」

 

「ここは、後方に撤退すr」ザッシュ

 

 

 

「「え…?」」

 

 

二人の目の前で田中伍長の首が飛んだ。

 

 

 

「…………………」

 

「っく、来るな!」タタタタッ

 

「うわぁぁぁ?!」パンッ

 

 

 

 

 田中班は目の前の大男に注意を向けてしまって、周りから集まっていた奴らに気づくことができず、一気に囲まれ1人ずつ奴らの餌食になってしまった・・・。

 

 

 

 




次話:壁内へ


独り言:10日後、採用試験だ……。


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第4話「帰還」

お疲れ様です。続きをどうぞ。


-4月10日-

-秋雨市北東第3ゲート-

 

 

 

 

 日も大方暮れ美しい夕暮れが見える。そんな中、勝山が率いる中央班は大勢で押し寄せてくる感染者の襲撃を無事に切り抜けることができ、保護対象の少女を連れて門前にたどり着いた。すると、

 

 

 

 

「おぉい!勝山!あの大群は一体何だ?!」

 

 

 

 声のした方を見上げると同期の宮下誠(ミヤシタマコト)が見えた。

 

 

「説明はあとだ!奴らをなんでもいいから砲撃でもなんでもしてくれ!」

 

「っ!わかった!」

「おい聞こえたか!砲兵班はそこの壁上砲と監視所から81mmを引っ張り出して奴らに砲撃しろ!81mmは設置しだいすぐに方位計算して撃ちこめ!」

 

「了解!」

 

 

 宮下が部下の分隊員に的確に命令を下す。

 

 

「勝山、今すぐ門を開ける!」

 

「助かる!」

 

 

 

 すると20秒も経たないうちに門が開いた。

 

 

 目の前の門が開き俺たち4人は素早く壁内に入った。

 

 内に入ってまず保護対象の少女を屯所の空室に一時身柄を置き女性の隊員に監視を任せた。俺たちはひとまず壁上の監視所に戻り今回使用した装備の点検を行うことにした。

 

 

 

 

 

-北東防壁壁上-

 

 

 

 

 

 

「…準備よぉし!」

 

「よぉい撃てぇ!」

 

パシュンッ

 

 

 

 

 壁上では第6分隊と第7分隊の兵士たちが105mm壁上砲の105mm多目的弾や81mm迫撃砲L16の砲弾を壁外に向けて砲撃していた。壁外に集まってきていた感染者の大群は砲撃の斉射をもろに受けて、まるでポップコーンがはじけるようにして弾け飛んでいた。

 その横では壁に備え付きの12.7mmM2重機関銃の連続した金切り音が鳴り響き、手持ちの小銃で銃撃を行う隊員の姿が見受けられた。

 

 

 

「勝山…今度は何しでかした?」

 

 

 監視所の入口に宮下が煙草を咥え立っていた。宮下誠、こいつとは入隊当初から絡んでいる同期でみんなからは「先生」と呼ばれていた。あだ名の由来は外見が眼鏡をかけていて精悍とした顔立ち、秋雨市防衛大学次席卒業だったからだ。そんな優秀なやつだったが何故か幹部養成学校に入らずに下士官の曹教育課程から入隊していた。だが、元々有能だったのか曹長どまりの俺に比べて…

 

 

 

「宮下少佐!先程は失礼しました!」

 

 

 

 26歳という若さで少佐の地位にまで昇進していた。俺は30でやっと曹長だってのに。

 

 

「ん?さっきの言葉遣いか?気にすんな。俺たちの仲じゃないか。」

 

「ならいいですが…」

 

「前から敬語なんていらないって言っているじゃないか。普通に話せよ。」

 

 

 宮下は眼鏡の位置を正して微笑む。

 

 

「…なら、今回も助けてくれてありがとな。」

 

「おう!まぁまた今度飯おごってな!……それより今回はどうした?」

 

 

 報酬を要求する宮下だったが、急に声を潜めた。

 

 

「白人の女の子を1人救出した。記憶消失になっていて身元は分からないが…。」

 

「白人?」

 

「そう白人だ。」

 

「なぜ白人がここに?もう国内の白人はほとんど死んだか国に戻っていなくなっていたはず。」

 

「俺にはわからん。」

 

 

 日本にはかつて、米国陸軍第1軍団・海軍第七艦隊・第5空軍・第3海兵遠征軍が駐留し東アジアの脅威に目を光らせていた。

 

 殺人病のウイルスが日本国内に侵入してきた当初、全ての部隊が日本各域・大陸方面・太平洋上・米国本土防衛に展開したが、大半の部隊が感染者の数に耐え切れず基地ごと飲み込まれたり、混乱に乗じて大陸より飛来したミサイルの雨を浴びて壊滅している。

 生き残った在日米軍は本国からの救援要請で日本からできる限り自国民を艦船に乗せて感染で混乱する日本から去っていった。

 

 

「大変なことに巻き込まれそうだな。勝山。」

 

 宮下が煙草を旨そうに吸い煙を出しながら呟く。

 

 

「大丈夫さ。いつもみたいに何とかするさ。」

 

 

 俺は自信を見せつけようと右手で胸を叩く。

 

 

「そっか、とりあえず手が必要になったらまた呼んでくれ。仕事がある。」

 

 

 宮下は吸い終わった煙草を踏みつけ火を消した。

 

 

「了解。またな。」

 

「忘れんなよ今度飯頼むぞ!」

 

 

 

 宮下はそう言って下への階段を下りていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…隊長…!!!」

 

 

 

 

 そうこうしているうちに苛烈な地面を耕す銃砲撃の中、入れ違いに半丸焦げ状態になって奥田軍曹の左翼班が戻ってきたようだ。

 

 

 

 

「お前ら無事だったか!救援は必要なかったか?負傷はないか?」

 

 

 

 見る限り戦闘服や装備はなぜか焦げているが傷は少なそうだった。

 

 

「はい!全く問題ありませんでした!」

 

 

 そう答える奥田は何やらニヤついて輝いていたが、後ろの2人は目が死んでへとへとになっていた……。

 

 

 

「…?後ろの2人はどうした?見るからにやつれてるが…?」

 

 

 

「大丈夫です!それにしても何も問題が起こらなくて良かったです。」

 

 

 奥田は微笑み代わりに答えていた。奥田軍曹たち3名は黒こげになりつつも奇跡的に装備が焦げているだけのようだ。

 

 

 

「まぁ、そうだな。無事に帰って来れて。見たところ本当に問題は「…問題?問題はありましたよ…。」」

 

 

 

 

 疲労困憊の福田と仁科が唐突に口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…奥田軍曹がいきなり奴らに凸ったんすよ!」

 

 

 福田が奥田を指差し睨みつけた。

 

 

「そうっす!何回奴らに噛まれるかと思いましたよ…!ただのライフルだけだったら今ここに立ってなかったっすよ!おまけにそこらで榴弾の飛び交う中に奥田軍曹が闇雲に突っ込んだんですよ?!」

 

 

 

 

 仁科も同様であり、2人は奥田に引きずられるかのように壁からの砲弾の雨と感染者の群れの中央を無理やり突破していったと迫真に迫って証言してきた。

 

 

 

~3人の回想~

 

『ひぃぃぃぃぃ』

 

『福田!右!怯えんじゃない!それでもチ○ポ付いてんのか?!』

 

 周りからは感染者の大群、頭上を掠め近くに着弾する無差別砲撃の中、3人は銃弾をバラマキ進撃している。

 

 

 

『ホゲェェェェェ!』

 

 突如3人の傍に砲撃が当たって近くにいた仁科が上空に吹っ飛ばされる。

 

『にしなぁぁぁぁ!!!!!』

 

 

 福田は叫び仁科はそのまま地上に激突するかに見えたが奇跡的にハリウッドスター並みの受身で着地。

 

『…アレ?俺生きてる…』

 

『仁科ぁ!行くぞゴラァ!福田も突っ立てんな!』

 

『『YES!MAM!』』

 

 奥田の怒鳴り声で再び突き進むがそのあとも2人は何度も死にかけながらも砲撃の中を駆け抜け…

 

 

 …今に至る。

 

 

~回想終了~

 

 

 

 勝山は2人の回想場面をテレパシーで感じ取り2人の境遇を悟る。それを知らずか奥田が嬉しそうに報告するのとは反対に部下2人が激怒している。……敵中突破っておい。それでか全身まっくろくろすけなのは…。

 

 

 

 

「あっ?そんなこと?気にしない気にしない!」

 

「はいぃぃ?!あの砲撃食らってたら3人まとめてオシャかになってましたよ!」

 

 

 2人の抗議を聞いた奥田は軽く受け流したため何度か走馬灯を経験した2人はブチギレていた。

 

 これはまずいと思った俺は、

 

 

「奥田……お前はあとで懲罰房行きだ」

 

「そ、そんな!?隊長、イジメですかっ?!無事に帰ってきたカワイイカワイイ部下に対して!むぅん嬉しっ!あっでもまさかあの房ですか…?」

 

 

 

 奥田が逆にブーブー言ってくる。おまけに急に可愛子ぶっている。気味が悪いくらいに。

 

 

 いや…でも…こうしておかないと…後ろの2人(福田&仁科)の視線がなんかヤバいし…。

 

 

 

「とにかく、1日だ、1日だけ我慢しろ!仲間の危険を冒して敵中突破やったり、極め付きは砲撃の中を無理やり突破し部下を危険にさらした罰だ!」

 

 

 

(と、言いつつも、俺もあの女の子救助のために装備不充分で出動命令出しちゃったしな………)

 

 

 

「鬼~!勝山鬼曹長!…って仕方ないですね!懲罰房から出たらたくさん●●●やXXXXしに行きますからね!」

 

 

(おい。やめろ。みんな一瞬凍りついたぞ。人前で肉体関係があったかのように誤解される…大声で喚くな!)

 

 

 

 奥田軍曹はその後、なんかプンすかプンすか怒りながら1人で行けますと言い、懲罰房のある方へ歩いて行った。残された俺に対する周りの視線が痛かった・・・。

 

 

 

 

 

 

 それから3時間待ったが、いっこうに田中伍長の右翼班が戻ってくる気配すらなかった。俺は上に田中班の捜索隊派遣を要請し、今回の作戦の損害は大きかったと反省した。

 

 

 それにしても、昔よくやった某ゾンビゲームに出てくるような生物兵器のようなアレは何だったのだろうか?

 もしかしてあの大男の残骸にあったコード名の『made in outside』って・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…おい!勝山!下でお前んとこの小隊長がお呼びだ!女の子の件だそうだ!」

 

 

 

 去ったはずの宮下が伝令にきた。

 呼び出しがかかったため、それはそれとして深く考えるのはあとにして上官の小隊長の元に赴いたのだった。



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第5話「ハイテク地竜の騎行」

お疲れ様です。続きをどうぞ。


-4月20日-

-少女救出から4日後-

-秋雨市外・北部旧某市街地-

 

 

 

 

 

 

『キュルルルルルっ!』

 

 時刻が昼過ぎを回った頃、土煙をあげて9つの黒い塊が廃墟街を疾走していた。

 草が無秩序に生い茂ってひび割れかけるアスファルトの上を走行し、苔の生えた小ビル群の間を駆けていた。それらが通るたび地面からは竜の唸るような地響きがするのだった。

 

 

 

 

 

「…隊長、作戦開始地点まで2kmです」

 

「解った。いよいよだなぁ!奴らが束になって来ようがコイツにはかなわねぇから安心しな!なぁ新入り!」

 

「は、はい!了解であります!」

 

 

 

 

 隊長と呼ばれた男はそう言って画面に映る映像を見る若々しい青年の肩を叩いた。

 

「は、はい!」

 

「初戦だからって間違っても味方のケツにぶっぱなすなよー」

 

 次に操縦桿を握る男が目の前から視線を逸らさず青年を茶化した。

 

 

「はい…いよいよです…」

 

 青年は画面を凝視しつつも初の実戦に武者震いする中の自分があった。

 

 

 

 

 

 

 彼らが乗っているその黒い塊の正体は「10(ひとまる)式戦車」である。

 

 

 10式戦車は旧自衛隊が2010年に制式採用された当時最新式の戦車である。異変当時のセーフゾーン防衛のためにF駐屯地にあった各種の戦車が出動し感染者を制圧していた。

 

 感染者は知能の低下のため、武器火器を使わない。そのため、硬い装甲を持つ戦車は滅多に破壊されることはない。よって、感染者排除には戦車が用いられることが多い。

 

 

 

 

「…!開始地点まで1km!」

 

 

 

 目標地点を前に副官が距離を報告する。

 

 

 

「総員戦闘用意!それぞれの車長は歩兵からの状況報告を受け次第、上のM2撃てるようにしとけ!主砲はまだだ」

 

 

 

 5両の戦車は寄ってくる感染者を挽き飛ばしながら最大速度で突き進む。

 

 

 

 

「目標地点に到達!」

 

 

「よし!各車、作戦通り五芒星配置!」

 

「「「了解!」」」

 

 

 

 

 

 ロータリー状の交差点に進入した戦車隊はすぐさま5つの突起状に主砲を外側に向け、上から見ると星のような隊形になった。

 

 

 

 

「隊長、各車準備が整いました!」

 

 

「…よし!全車、よぉいぅてぇぇぇぇ!」

 

 

 

 

 

 戦車隊長の一声と同時に戦車の120㎜砲が火を噴いた。見事な業火を放つ主砲を前に群がっていた奴らがHEAT(成形炸薬弾)をモロに浴び、瞬く間にただの肉塊、いや塵に変わった。

 

 

 

「各車に戦闘指揮を委任!奴らを殲滅しろっ!」

 

 

 

 戦車を前に知能を失った感染者に危険予知できる個体がいるようで、そうした感染者は一目散に逃げようとしていたが…

 

 

 

 

 主砲のお次は74式7.62mm同軸機銃と車上から車長の放つ12.7mmⅯ2機関銃からの苛烈な7.62mm×54mm弾と12.7mm×99mm弾の弾幕がボーリングのピンのように逃げようとする感染者諸共なぎ倒していき、次々と地面に顔を埋めていった。

 

 

 

 

 感染者の集団に榴弾が命中、瞬間弾け飛ぶ。3m以上上空に吹き飛ばされる感染者の姿も見える。

 

 

 

 

「ビンゴ!大当たり!次も行くぞ!」

 

 それを見た車長はガッツポーズを作り、砲手の青年に言う。

 

 

 

「やっぱ機甲戦隊に入って正解でしたよ。こんなリアルなシューティングゲーム、めったに味わえないです!車内だから噛まれる心配ない。それに比べて歩兵戦隊の奴ら、大変ですよ~」

 

 実戦処女を破ったかつて初々しかった青年は人が変わったかのように狂った笑みを浮かべていた。

 

 

 

 戦車隊の後方からは、6輪式の装甲車に連れられた大型兵員輸送トラック数台がまっすぐ戦車隊の後続に向かってくるのが確認できた・・・。

 

 

 

 

 

「あとは歩兵戦隊の腕の見せどころだなぁ!」

 

 

 

 

 そう言って砲手はトリガーを引いた。

 

 

 

 

 

 

-4月20日-

-某市街地・輸送トラック内部-

 

 

 

 

 それぞれの車内で士官が兵士たちに呼びかける。

 

 

「これより我々歩兵戦隊による掃討作戦に移る!戦車隊に随伴して市街地を制圧せよ!装備の点検怠るなよ!」

 

「「「「了解!」」」」

 

「大いに結構!また、ゲストとして、秋雨都市防衛隊即応隊の大尉殿と第7監視分隊の方々が我々の活動を視察する。組織が『攻める』と『守り』というように異なっているが、同じ秋雨市を想う者として我々の精鋭なる歩兵戦隊の練度を防衛隊の方々に見せ付けようじゃないか!各員健闘を祈る!」

 

「「「「おおおおおおおおおおおおっう!!!」」」」

 

 

 

 歩兵戦隊の隊長の訓示に応えるように隊員たちが揃って大声で返事をした。これにより、歩兵戦隊員の士気は盛り上げられたのだった・・・。

 

 

 

 

-防衛隊・第7監視分隊組-

 

 

 

 ちょうど同じ頃、討伐隊の歩兵戦隊の乗ったトラックの最後尾に2両の改造ハイエース(元トヨタ製10人乗り乗用車)が走っていた。

 

 

 

「隊長~、なんで私たち討伐隊の戦闘地域に行くことになっちゃったんですか~?」

 

「知らねぇよ?!俺だってこんなとこ来たくなかったわ!」

 

「やっぱり~あれじゃないっすか~?前の作戦で助けた女の子に関係してんじゃないんでしょうか~?ヒック」

 

「知るか!っておいコラ!お前こんなとこでも酒呑んでくるなよ…」

 

 

 勝山と奥田と福田の3人は談笑していた。なぜか福田は酒をこんなところまで持ち込んで1人酔っていた。

 

 

 

 なぜ下っ端の隊員連中が最前線の部隊に来ているわけは…割愛。

 

 

 

 

 今回の作戦は表向きは討伐隊の視察となっているが、実際は中央司令部の将校1名と調査員1名の護衛というのが本来の作戦目的だそうだ。

 

 俺たちは車内で軽くふざけていると、

 

 

 

 

 

「…勝山曹長、君の部下への教育がなっていないな。ここはもう戦場なんだぞ。場をわきまえろ!」

 

 

 

 

 今回の護衛対象の1人である坂巻淳也(サカマキジュンヤ)少佐が叱咤してきた。

 40代の精悍な男で旧自衛隊時代から所属している中央司令部の将校で外見は角刈り、戦闘服の上からでもわかる筋肉の盛り上がりが目に見える。

 

 

 

 

「いえ、大丈夫じゃないでしょうか?坂巻少佐。私、楽しい方が気持ちいいですし」

 

 

 不機嫌そうな坂巻を言い収めている彼女は………あの日に保護した白髪の白人の少女だった。なんでここにいるのだろうか…。

 

 

 

 

「そういえば、あなたの名前をうかがっていませんでした。お名前は?」

 

「エマです。エマ・ニクソンです。あのときは本当にありがとうございます!」

 

 

 白人少女の名前はエマ・ニクソンというらしい。そう言って彼女は座りながら軽くお辞儀した。相変わらず銀色の長髪が美しく魅力的な雰囲気をもつ少女だ。

 

 

 

「記憶を取り戻されましたか」

 

「ええ、あのときは本当に助かりました!」

 

 

『…可愛い』

 

 エマはそう言いながら微笑み返す。勝山は一瞬エマの可愛さにほほが緩むが隣からの(奥田軍曹の)強烈な視線を感じ姿勢を正す。

 

 

「いえいえ、当然のことをしたまでです。今回は何をされにN市旧市街地に向かっているんですか?」

 

 先ほどとうって変わって真面目に今回の目的を探るため軽く聞いてみたが・・・

 

 

 

「それは…」

 

「無駄な詮索は必要ない。君たちは私たちの護衛をしていればいいだけだ」

 

 

 エマは坂巻少佐に言葉を遮られる。

 

 

「し、しかし・・・!」

 

 勝山は坂巻の威容に圧倒されるがそれでも聞いてみる。

 

 

「しかしではない。君たちは「歩兵戦隊降車!」おっと、着いたようだ」

 

 

 話を切り上げられ結局、聞けず、俺たち分隊も降車し護衛対象を囲むようにして隊形を組んだ。

 

 

「…それでは向こうの方に行くぞ」

 

「…了解しました」

 

 

 さきに降りて安全確保した隊員らが建てたテントに坂巻少佐を先頭に入っていく。

 

 坂巻は近くのテーブルにスマートPCを置いて起動させた。しばらくして坂巻はある方向を指差す。その方に向かうと告げた。

 

 

 

 その先に、とんでもないことに差し掛かるとはこのときの俺たちも討伐隊の誰もが想像していなかった・・・。

 

 

 15分後、坂巻大尉たちは討伐隊士官に「視察をしたいのだが、あの一際デカいビルを目標に進撃してほしい」と注文し、すぐに2両の戦車と歩兵10名のグループに随伴して坂巻大尉の示す目的地の近くまで視察という名目で護衛を頼み、向かうことになった。

 

 

 

 

 

「討伐隊第1戦車隊2号車長の村上曹長だ。よろしく頼む!」

 

「同じく討伐隊第6歩兵隊隊長の鎌田曹長です。我々の精練された行動よくみていてもらいたい!」

 

「防衛隊中央司令部付き坂巻少佐だ。」

 

 

「同じく防衛隊第3連隊第7分隊隊長の勝山曹長だ。こちらこそよろしくお願いします!」

 

 

 

 

 速やかに自己紹介と準備を整えた討伐隊歩兵戦隊と勝山たちは進撃を開始した。

 

 

 

 

 戦車と戦車に随伴する歩兵の相互関係は、

・強力な火力を投射でき銃弾を受け付けない装甲をもつ戦車。だが死角がありそこからの攻撃に弱い。

・対して歩兵はあたりを自由に動け偵察や監視任務、街の占拠に打って付けな歩兵。だが装備は戦車に比べ攻守ともに脆弱。

 

 その両者が一体となることで戦車は歩兵では出せない火力で攻撃して見えない箇所を歩兵がカバーするため、とても相性が良く敵からの防御力が格段に上がるのだ。

 

 

 

 

 そうした編成の討伐隊各隊は、前方のガレキや建物の陰から出てくる感染者を討伐隊の隊員たちが素早く排除し、複数のまとまった感染者には戦車砲の榴弾・散弾や機関銃で吹き飛ばして、グングン進撃していった。

 

 市街戦ではどこから敵が飛び出してくるかわからない。だがそんな不安をなくしてくれるかのように意気揚々と討伐隊は進んでいく。

 

 

「さすが討伐隊!手馴れたようにどんどん制圧していますね」

 

「そうっすね~!これだと自分たちの出番なく、目的地に着きますね~!ヒック」

 

「そうだな。福田はさっさと正気に戻れ」

 

 

 俺たち第7監視分隊の面々はこう楽観視して気を緩ませていた。坂巻大尉もやや安堵した感じだったが……

 

 

 

「……何か嫌な予感がします……」

 

 エマは小さな肩をぶるぶると震わせてそうつぶやいた。

 

 

「?どうしましたか?我々の先鋒として戦車が進路を確保してもらってます。戦車さえあれば怖いものなんて1つもないですよ」

 

 

 「怖いものなんてない」と、言いつつも俺も何かおかしいと感じていた。

 まるで誘導されているかのように道幅がどんどん狭くなり建物が入り込む地域に入ったことで戦車と歩兵の間隔が建物などで阻まれ始めている…。

 

 それに報告されているこの地区の感染者の発生状況だととてつもなく多いとされているはずがなぜかとても少ないようだった。

 

 

 俺も違和感を持ちつつもエマを安心させるように優しく声をかけたが、

 

 

 

「違います!嫌な予感どころかさっき私見たんです!」

 

「?何が違うのですか?何を見たんですかっ?」

 

 

 戦場のストレスからか俺はどこかハッキリしないエマに軽くイラつき、眉間にシワを寄せてやや怒気を含み、ぶっきらぼうに聞いてしまった。

 

 

 

 エマはそんな俺にビクッと怯えつつも言葉を発した。

 

 

「向こうのビルの窓から人がこちらをジッと見ていました!奴らじゃなかったです!」

 

 

 それを聞いた俺はまさかと思い、すぐに戦車の方を振り向いた。

 

 

 

 

 

 

 俺が振り向いた瞬間、戦車に向かって飛翔するロケット弾が見えた…。

 

 

 




 最近は朝は筋トレとランニングをして朝食後にコロンビアコーヒーを飲み、英語や数学の勉強と適性検査対策の休憩にパソコンで小説を書き込む毎日です笑
 試験が待ち遠しい(必勝)


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第6話「逃避行と憂鬱な野営」

「「「伏せろっ!!!」」」

 

 

 

 戦車がいきなり攻撃を受け爆発した。その直後、左右の建物の窓から一斉に銃弾が飛んできた。討伐隊の兵士たちは戦車や仲間が吹き飛ばされ動揺して初動が遅れたため、次々と銃撃を受け倒れていった。

 

 

 

「10時…いや、13時の方向に敵っ!どこだ?!」

 

「ちくしょう!どこから撃ってる?!」

 

「足がぁ!足がぁぁぁ!」ドンッ

 

 

 周囲の建物の影から銃撃を受けていたため敵の位置が判らず1人1人と徐々に倒れていった。それどころかロケット弾まで撃ってきている。

 

 討伐隊が目の前で襲われているのを見た俺たちは救援に向かおうとしたが、、、

 

 

「止まれ」

 

 

 

 坂巻少佐が冷たく言い放った。

 

 

 

 

「作戦変更!我々はここより脱出し、別ルートより目標地点に向かう!討伐隊に構うな」

 

 

 坂巻少佐は続けてすぐさま、大通りを避けて行くよう分隊に指示を出してきた。味方をどうとも思っていない素振りだった。

 

 

「坂巻大尉!討伐隊が、仲間が襲われているのですよ!見捨てると言うのですかっ?!」

 

 

 勝山は味方を見殺しにする命令に大声で抗議する。

 

 

 

「我々の作戦目標は重要度の高い案件だ。多少の犠牲は構わない」

 

「し、しかし…!」

 

 

「うるさい!上官の命令に背く気か貴様!君たちは黙って我々の護衛をすれば良い!」

 

 

 坂巻少佐は拳銃を掲げて俺たちに従うように言ってきた。

 

 

「…分かりました。…分隊!そこの路地に入り、敵勢力の攻撃から逃れろ!」

 

「「了解!」」

 

「2人とも、遭遇したときのためにいつでも撃てるよう、安全装置を外しておけ!」

 

 

 銃撃を受ける討伐隊から目を背けて俺たちは敵に見つからないように徒歩で左右の建物が崩れかけた身の隠しやすい裏路地に入っていった。

 

 彼方からは助けを求める声と銃撃の音が鳴り響いていた…。

 

 

 

 大通りから路地に逃れた分隊は周囲を警戒しつつ前進していた。俺は命令とはいえ、仲間を見捨ててしまった。とても堪え難いことだ。部下にも申し訳ない気持ちだ。坂巻大尉、エマ…何のため仲間を見捨ててまで急ごうとするのか俺には解らなかった。

 

 

 あの敵勢力は一体何だったのだろうか…。奴らのうじゃうじゃいるこの街で何の目的で討伐隊に攻撃を仕掛けてたのか?よく見てみると、携帯式ロケット砲(RPG)まで持ってやがる。あの重武装だとただの一般人が武装したようには見えない。動きがやけに整然としていた。

 

 

 

 

 

 …とにかく俺たちはこの2人を無事に護衛しなければならない。

 

 

 

 

 

 勝山はそう考え任務に集中し、分隊はより目標地点とやらに進んで行った。

 

 

 

 

 

-同日-

-某市街地・北地区住宅街-

-勝山拓哉・曹長-

 

 

 

 昼間の襲撃から逃れた俺たちと坂巻少佐とエマの5人は裏路地を通って、目標地点に向かっていた。しかしながら、日も完全に暮れてしまい、夜間での作戦行動を危惧した坂巻少佐が、

 

 

「夜になってライトをつけて動くと、武装集団の良い的だ。ここらあたりで宿営しよう!」

 

 

 

 俺たちは辺りを上から見下ろせられる廃ビルの屋上で宿営する事になった。あらかじめ所持していた簡易テントを兵士3人で組み立てて、食糧を準備した。

 

 秋雨市防衛隊では旧自衛隊が採用していたレーションを元に改良を加えて防衛隊のレーションとしている。

 例えば、第一種戦闘糧食改。旧自衛隊では1960年代からある缶詰め式の糧食で様々なバリエーションが存在していたが、異変によって生産会社が潰れたり食糧難で何種類か減り、代わりに比較的手に入りやすいキムチや昆虫類の佃煮などが加わっている。

 

 3人で周囲を監視しつつ交代して飯をかき込むようにして夕食をとっていった・・・。

 

 

 

 

 

-4月20日-

-某市街地・北地区住宅街の廃ビル屋上-

-勝山拓哉・曹長-

 

 

 今夜は満月だった。遠方では深夜になっても銃声や叫び声が微かに響いていた。

 この前の昼間に見殺しにしてしまった味方兵士たちの顔が忘れられなかった。坂巻大尉に冷静に付き従ったあのときの自分に嫌気がさした。

 

 

 

『きゅ、救援を・・・!』

 

『なぜ助けない??仲間じゃないのか?!』

 

『痛い痛い痛いぃ!母さぁん!』

 

 

今になって兵士たちの助けを求めていた声が耳にこびりつき落ち着くことが出来なかった・・・。

 

 気分を変えようと満月を見ていたとき、奥田軍曹が横に寄ってしゃがみこんで言った。

 

 

「隊長~なんかムシャクシャしてませんかぁ?」

 

「ムシャクシャ?この俺が?」

 

 

 奥田が上目遣いで気になることを聞いてきたのだった。

 

 

「どうして?そう見える?」

 

「隊長は一見真顔ですが気にくわないことあったときはひたすら空を見ています!」

 

 

 全くその通りで俺は嫌なことがあったときは無意識に空ばかりを見ているそうだ。

 

 

「よく知っているな」

 

「これでも隊長の面倒見役ですよ!」

 

 

 全く、誰が「面倒見役」なのだろうか?

 

 

「何か気になることでも?」

 

「・・・奥田、今日の日中に討伐隊の連中を見殺しにして俺たちはここ居る。連中の助けを呼ぶ声が全く耳からとれないんだ・・・。今になって後悔している」

 

「しかし・・・命令でしょう。・・・その命令で私たちは危険を避けてここに生きています。ポジティブな思考でいきましょう!」

 

 

 俺たちは見張りの交代が来るまで今日の出来事を話した。奥田と話していると自然と気が和らいだような気がした。

 

 

 

 

 

 このまま何も起こらず夜が明けてくれるといいのだが・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-4月21日-

-某市街地・北地区住宅街の廃ビル屋上-

 

 

 見張りの交代を終えた勝山は朝まで睡眠を取ろうとしていた。疲れを残しては任務に支障が出て最悪死ぬかもしれない。そう思いながら眠りに落ちようとしていたが・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いきなりの爆発音で眠ることはできなくなった。

 



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第7話「侵入者と頑固ちゃん」

-4月20日-

-某市街地・北地区住宅街の廃ビル屋上-

-勝山拓哉曹長- 

 

 

 

 

 

 

「隊長!敵襲です!」

 

奥田がテントに駆け込んできた。

 

「さっきのはどこが爆発したんだっ?」

 

「このビルの正面玄関のバリケードが破壊されてしまいました・・・」

 

「敵は?」

 

「素早く影が複数、ビルに侵入したの見ました。おそらく人か、奴らです!もしかしたら討伐隊の生き残りかもしれません」

 

 

 

 最悪の事態になってしまった。福田が「人」言ったがこの壁外で自由に行動できるとしたら必ず何らかの武器を持っている。「奴ら」の場合、福田が見たのは走って侵入する影だった。そうすると変異種の可能性が高い。変異種は通常種に比べて身体能力が何倍も高く走って襲ってくる。おまけに知能があり、集団で連携して襲ってきたりするからタチが悪い。このビルは4階建てであるからすぐにでも敵が迫ってくるだろう。

 

 俺たちは敵襲に備え迎撃、脱出準備を進めた。

 宿営道具をしまい、奥田軍曹に坂巻大尉とエマの護衛を頼み福田一等兵と俺の2人で先行偵察でビルを脱出することになった。

 

 

 

 

 夜が明け太陽が昇り始め周囲が見えるようになった頃、俺たち2人は3階の廊下をクリアリングしていた。窓辺は明かりが差し込んでいて見透しがいいが廊下は階の中央を通っており暗く左右に部屋が何個かある。いつ奴らが飛び出してくるか判らない。

 

 

「こちらは秋雨市防衛隊です!人間であれば出てきてください!」

 

 

 福田が声をフロア内に響かせる。索敵中に大声をあげるのは自殺行為かもしれないが万が一味方である場合は同士討ちを避けたい。故に1ブロック進む度に時折声を上げていた。奴らであれば向かってくるはずだから寧ろ手間が省けるが。

 

 

「(小声で)いませんね・・・」

 

福田がクリアリングを終えこちらに近づき話す。

 

「気を抜くな。入ってきたことはわかっているから絶対にどこかに潜んでいる。こんだけ声かけして出てこないってことは敵で間違えない。」

 

 

 もしかしたら昨日銃撃してきた連中かもしれない、と福田に言ったあと、

俺たちは3階の安全を確認し坂巻大尉たちを誘導し下の階へ移動していった。 

 

 

 

 

 

-4月20日-

-廃ビル2階廊下-

 

 

 

 

 

 

 

思ったよりもフロアが広いため時間がかかったがさっきと同じ様に索敵を進めていく。

 

 

「うぅぅぅ」

「?」

 

 

 妙に唸り声らしき音が聞こえたため立ち止まり音がした部屋を確認するために接近した。

 

 

 部屋のドアのプレートには「大会議室」と書かれていた。

 

 

 俺と福田の2人は妙な唸り声がしたその部屋のドア前に張り付いた。ドアは両面開き式の重厚な造りになっていて所々傷ついていたが破られた形跡はない。鍵は壊されていた。

 

 ドアをそっと少し開け中の様子を見た。中は大学の大教室のような黒板のある講義台を囲むように固定された机が連なって設置されている。所々2mぐらいの棚が積み上げられていたため過去にここに立てこもった人間がバリケード替わりに置いたのだろう。そのせいで視界に死角が出来てしまっている。

 

 

「(小声で)・・・隊長、中はどうですか・・・?」

 

 

 両面開きのドアのもう一方にいる福田が聞いてきた。福田は普段は明るいやつではあるが壁外での実戦は今回で2度目と場数が少ないからか、緊張しているせいか、顔がやつれ気味である。

 

 

 

「物音はない。人影も見当たらない」

 

「・・・踏み込みますか?」

 

「ああ。踏み込む。俺が前衛をやるから福田は後ろを頼む」

 

 

 了解、と福田は短く答え、俺たちは部屋の中へゆっくり物音を立たせないように入った。

 

 

 

 

 さっき聞こえた唸り声の主を探るため棚が乱立する大会議室に踏み込んで索敵しているが、周囲はたまに小鳥のさえずる音以外物音なく静かだった。大部分の安全確認が済み、あと少しでこの部屋の索敵が終わりそうだ。

 

 

 

「ここには居なそうだ。次行くぞ」

 

「はい。後ろも異常なs」ダンッ

 

 

 部屋の出口に向かおうとした矢先、銃声が鳴り福田の足元に着弾した。

 

 

「隠れろ!!!」

ダダダダダッダッ

 

 

 直後に立て続けに銃声が鳴り響き、俺はすぐさまそばの棚に身を寄せた。福田も近くの棚に身を寄せ反撃を開始した。

 

 

ダダダダダダダン

ダダダダッ

 

 

 

 福田の持つ64式小銃はダットサイト着用の改造されたもので命中精度は高いく7.62mmの口径の威力は大きく魅力的だ。しかし、狭い室内での取り回しは悪く連射の反動で照準がブレてしまう。かつて1970年代のベトナム戦争のとき米軍は7.62mm口径のⅯ14バトルライフルを装備していたが、フルオート時の反動で照準がブレまくった上に狭いジャングルでの取り回しが悪かったことが主な理由でよりコンパクトな5.56mm口径のⅯ16に切り替えることになった。

 

 福田は突然銃撃されたことで焦りパニックに陥ったためか闇雲に撃ちまくっている。

 

 

 ・・・それにしても先程から撃ってきている連中の数が把握できない。通常ならば銃の発泡炎で位置を特定し数が解るはずなのだが、連中は撃つたび足音もなく素早く移動して位置をわからなくする上に複数箇所から同時に撃ってくる。反撃しようにもむやみに撃って弾を無駄に消費するのは好ましくない。

 

 

「福田!むやみに撃つな!的になるぞ!」

 

 

 平常心を欠いて闇雲に撃つ福田に忠告した。今のところ俺のところに飛んでくる弾数が少ない代わりに福田は連中から集中砲火を浴びている。

 あれではいつやられてもおかしくない。

 

 

「福田!徐々に下がれ!俺が援護する!」

 

 

 見たところ連中は部屋の2つある出口を中心に陣取っているようでやや下にいる俺たちは位置的に不利だ。

 

 

「福田!下がれと言っているだろう!」

 

 

「・・・」ダダダダダダダッ

 

 

 福田は返事すらせず無心に撃ち続けている。しかも全く当たる気配がない。福田はパニック状態のだろうか。あのままではマズイ。

 

 

ダンッダンッダンッカチっカチ

 

 

 とうとう弾が切れてしまったようだ。

 

 

「ああああああ弾が!弾は?」

 

 

 やっと現状に気づいたらしく慌てている。敵は弾が無くなったことに気づいたのか、接近しようと姿を見せた。

 

 

「「?!」」

 

 

 俺たちの目には多銃身の銃と人の形をしたナニかが写っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 =====================================

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・そのころ、勝山たちが戦闘を始めた時同じくして・・・

 

 

-4月20日-

-廃ビル3階階段前廊下-

-奥田軍曹&坂巻少佐&エマside-

 

下へ降りる階段の廊下そばの障害物に身を隠していた奥田軍曹たちにも勝山拓哉曹長と福田圭介一等兵が先行している2階から銃声が聞こえていた。

 

 

『…異なる銃声がいくつか聞こえるから、おそらく相手は人間ね』

 

 

 奥田は手に89式小銃を持って警戒していた。奥田は勝山たちが交戦している相手は人間であろうと想像した。この壁外で正規軍の保護も受けずに生き残って独自に行動しているということはさほど敵は強いだろう。奥田自身加勢しに行きたいところだが、愛しの勝山曹長から命令された目の前の護衛目標(エラソーなおっさんと謎の美少女)を守らなければならない。無事を祈るばかりだ。

 

 

『昨日の襲撃で逃げるときに無線が壊れちゃったし連絡すらとれないなんて・・・』

 

 

 昨日の最初の襲撃で爆発炎上した戦車からの破片が飛んできて身体に被弾した。運良く怪我はなかったが運悪く無線機に直撃し壊れてしまったのだ。そのため連絡がとれず状況が判らない。

 

 

『さっきに増して銃撃戦が激しくなっているわね。隊長たち大丈夫かしら・・・。それよりも・・・』

 

 

 奥田としてはこの作戦が最初から疑問でしかならない。ただの壁の監視役であった第7監視分隊が白人の少女を救出したと思えば、数日経って中央からいきなり将校さんの護衛をしろって命令がきた。下っ端の私たちの任務にしてはおかしいわね。おまけに戦車を吹き飛ばせる装備持った連中がいるなんて聞いてないし。

 

 奥田が考えている通り、護衛任務は通常、即応隊の任務範囲であり、勝山や奥田の属する第7監視分隊が任せられるはずがない任務である。ましてや対戦車ロケット弾を持った集団など事前ブリーフィングでは全くいないと知らされていた。

 奥田はとてつもなく嫌な予感と気になって知りたくなる衝動に駆られた。

 

 

 

「(聞いてみるしかないわね……)……坂巻大尉!」

 

 

 気になって仕方がない奥田は坂巻に問いかける。

 

 

「なんだ、奥田軍曹」

「作戦当初から気になっていることですが、なぜ私たち第7監視分隊が大尉たちの護衛をすることになったのですか?」

 

 

 坂巻は一息つき、

 

 

「まだそんな戯言を吐くのか。お前たちは忠実に疑問を浮かべず私たちを守っていればいい!」

「しっしかし!今のこの襲撃は偶然にしちゃ計画的っぽさそうですし。それに今回は『視察』だったはずなのになぜ『目的地』を目指すことになっているのですか?!この目的がはっきりしませんと私は任務内容不服として秋雨市防衛隊法に則って任務を終了させます!」

 

 

 

 

 かつて秋雨市防衛隊発足が間もない頃、発足当初は隊員の大半が軍隊経験の無い元サラリーマンであった。そのため集団行動がろくにとれないばかりか規律は正しくなく、左巻きの連中を中心によく賃金や待遇の悪さを理由にサボタージュなどが起きていた、これを改めるため旧自衛隊法と労働基本法や労働者の権利を所々ミックスさせた秋雨市防衛隊法が作られた。この中の項目に「防衛隊隊員は基本的に労働者であり、受領した任務内容が不服とするならば抗議とともに拒否も場合によるが原則可能である」という一文がある。よって、この奥田のように普通の軍隊にあるような上官命令絶対服従のようなことをしなくても良いのだ。

 

 奥田はこういうところは頭が良いが勝山が絡むとアホの子化してしまう・・・。

 

 

「バカか貴様は!この状況で何を言い出す!」

「私は本気です!話さないのならあなたたちをほっといて勝山隊長達を助けてささっと壁の中で〇〇〇〇しに行きます!」

「何を馬鹿なことを言い出すこの馬鹿女!この場で撃ち殺してもいいんだぞ!」

 

 

 坂巻は奥田に対して拳銃を向ける。

 

 

「あなたこそ何をするんですか?!殺し合っても意味ないというのに!」

「貴様!」

 

 

 

「………話しましょう」

 

 

 この2人の終わらない論争のなかでエマは口を開いた。

 

 

「エっエマさん!ダメだ!」

「この際話すしかないでしょう。どうせ・・・」

 

 

 言葉を濁したエマは坂巻少佐の反対を押し切り今回の目的について話し始めたのだった・・・。

 



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第8話「新たな勢力」

勝山・福田サイド。勝山視点です。


-4月20日-

-廃ビル2階大会議室内-

 

 

 

 

 

 

 

「なっなんだありゃ…」

「まさかな……」

 

 

 

 俺たちの目には銃を持った人ではないモノが立っていた。

 下半身は蜘蛛?、足は6本あって黄色と黒色のストラプ模様。上半身は皮膚が無く筋肉がむき出しで人の形をしている。腕には…機関銃?が装着されている。

 まるで昔よくやっていたあのバ〇オハザードの世界から出てきたような化け物だった…。

 

 

 俺たちの脳内で瞬時に『これはマズイ』と警報が鳴り響いた。

 

 

 

「マズイマズイマズイっ!」

「福田!これを使え!」

 

 

 弾を切らした福田に腰に下げてた9mm拳銃とその弾倉を投げつけた。あとバックパックにあった7.62mm弾の詰まった弾倉も投げる。

 

 

 

「最後の弾倉だ!大事に使え!」

 

 

 

 今回の作戦にあたって俺にはサブ装備として9㎜拳銃が支給されていた。

 福田はパシッと受け取りすぐさま発砲。俺も愛銃のAK74で化け物に銃撃する。

 

 

パンパンパン

ダダダッダダダダッダッ

 

シャシャシャシャシャシャッ

 

「!!!」

 

 

 化け物は図体がでかく的を絞った俺たちは当てれると思っていた。しかし、やつは飛んできた銃弾をすべて躱した。動きが蜘蛛の動きそのもので気色悪い。撃っても撃ってもすぐに避けられ弾が当たらない…。

 

 

「なんなんだこいつ!うわっ」ダダダダダダンッ

 

 

 俺らの撃った弾を避けつつ正確に銃撃を加えてくる。

 

 

「くそ野郎っー!」

 

 

ダダッダダダン!キンキンキンっ

 

 

 腰だめで適当に弾をばら撒くとまぐれで当たった。AK74に使われている5.45×39mm弾は人体に当たると射入口は小さいが射出口が口径と比して大きく、筋肉血管を含む周辺組織に広い体積で損傷を与えるため、人間には有効的だ。しかし、やつの身体はその銃弾を弾いたのだ。弾は躱すわ弾くは有り得んだろ…。

 

 

 徐々にじりじりと迫られてきている。今の俺たちじゃ接近戦に持ち込まれたら一貫の終わりだ。

 

 

「福田!目をつぶれっ!」

 

 

パンッ!キャシャァァァァアァ

 

 

 俺は腰にぶら下がってた閃光手榴弾を投げ、さく裂し化け物が咆哮した。

 

 

 

「いったん後退!距離を置くぞ!」

「りょっ了解っ!」

 

 

 

 

 俺たちは化け物が怯んでいる隙に走って講壇横の小さな部屋に逃げ込んだ。ドアを閉め近くの棚や机をドア前に押し立ててバリゲードを作った。

 

 

「ハァハァハァ。さっきのはいったい何だったんだ…」

「感染者?じゃないですよね…?」

「あんな化け物初めてだ…。ゲームの世界から出てきた化け物みたいだ」

「…生物兵器ってやつですか?巷で噂になってる」

 

 

 

 市民や兵士の間で飛び交っている噂の中に『生物兵器が研究されている』というものがあった。討伐隊の兵士の間でも複数の目撃談があるが内容は定かではない。第一、市政府が『わが市が生物兵器を保有している事実はない』と公表している。しかし、ここ最近壁を監視する別の分隊でも見たという話がある。もしかして…あのときの大男も?"made in outside"ってもしや…。

 

 

「…噂通りだったみたいだな」

「どうします…?あの脚の速さだと確実に追いつかれてやられます」

「……………………装備の確認をしよう」

 

 

 2人は手持ちの装備を確認した。今、2人が持っている装備は、

 

 

勝山

AK74 5.45mm弾×80発

閃光手榴弾×1

破片手榴弾×2

小型無線機

 

福田

64式小銃 7.62mm弾×20発

9mm拳銃 9mm弾×18発

火炎手榴弾×2

小型無線機

 

 

…少ない。撃ちながら走って逃げるには物足りない。ましてやあの脚の速さだ。逃げられない。火力も不足していて正面で撃ちあいになると分が悪すぎる。やつは機関銃装備だ。あいにく外の奥田の無線は壊れているため連絡も取れない。最悪だ。

 何か脱出できる方法はあるだろうか。幸いドア1つだけで他から侵入はされないが不幸にもこちらが出られない。

 

 

「参りましたね…」

 

 

 そう言って福田は項垂れる。外ではやつが気味の悪い唸り声をあげて俺たちを探しているようだ。俺もこの状況にはお手上げかもしれない。撃とうにも避けられ弾かれやられ、走って逃げようならば追いつかれやられるだろう。

 

 

「どうすっかな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思った時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バンっ!

ダダダダダダダダダダっ

タタタタタタっ

ウガァァッァァァァ

 

 

 

 突然、バリケードの外から爆発音と銃声が鳴り響いた。複数の銃声が聞こえたが1つはさっきの化け物が持っていた機関銃の銃声で他のはおそらく小銃か短機関銃によるものだろう。奥田達か?いや、それにしては銃声の数が多い。討伐隊の連中が救助に来てくれたのか?

 

 勝山と福田の2人に希望が芽生えた。しかし、相手は銃弾を躱したりあたっても銃弾を弾く上に機関銃を装備した化け物である。日々感染者を狩っている討伐隊といえども決して敵う相手ではないはずだ。

 

 

「・・・イチかバチか打って出るか」

「行けますでしょうか・・・?その前に味方じゃないかもしれません」

 

 

 

 福田に言われて思い出す。数日前、俺たちの先頭を進んでいた戦車が対戦車ロケットで一瞬にして潰された上に、周りの歩兵が機関銃の弾を浴びせられていた。あれから徒歩でここに移動していたためさほど襲撃を受けた場所から離れていない。ここは最悪、敵勢力の支配範囲内だったかもしれない。いきなり戦車を潰してくる連中のことだ、仲良くはしてくれないだろう。

 

 

 

「・・・ですが、どうしましょうか・・・?」

「この戦闘の中で誰何をするどころか間違われて弾を受けるかもな・・・」

 

 

 俺たちは判断に迷って行動に移せずにいたが、、、

 

 

 

 

 

ヒュンっバッシュっ

ウボォォォォォオォォォォ!

ズゥゥゥゥン!

 

 

 俺たちが判断を決める間もなく銃声がパタリと鳴り止んだ。戦闘が始まってたったの数分しか経っていない・・・。化け物の雄叫びと思われる音と何かが倒れる音がしたということは化け物を倒したということだろうか。どうやって銃弾の効かない化け物を倒せたか解らない。

 

 ひとまず俺たちは助かると思って少し喜んでいたが、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・we completed the killing of A target. then we do to ensure the B target.(目標Aの殺害完了。次に目標Bの確保に移る。)」

「yes,sir!(了解!)」

「we will withdraw as soon as finishing the processing of this body. let's do this!(死体の処理が終わり次第、撤収する。やれ!)」

 

 

『?!英語だと?』

 

 

 連中は英語で会話をしていた。世界同時パンデミックを引き金として開戦した第三次世界大戦によって衛星・光ファイバー・海底ケーブル・航空機・艦船などのあらゆる連絡手段が破壊された日本の各セーフゾーンでは海外との連絡手段を失ったため最も使われている言語として日本語のみ使われるようになり英語をほぼ使用しなくなった。無論、俺たちの住む秋雨市や防衛隊もである。一応、異変前まで教育を受けていた人々や港町の住民はまだ英語を話せるようだが。

つまり、連中は“味方ではない”可能性が高い・・・。

 

 

「anyway,,,a major we to come to command a tedious jobs.(それにしても・・・少佐は我々に面倒なことを押し付けてくれる。)」

「yeah,,,we want him to understand ours struggle!(ええ、我々の苦労を理解して欲しいもんです。)」

「that's right! even so,the new AP bullets are high power!(全くだ!それはそうとして、新型の徹甲弾は凄い威力だ!)」

 

 

 勝山は連中が英語を使っていることと組織的な行動をしている様子から連中の素性を推測していた。

 

 

『やつら、もしかして米軍か?』

 

 

 米軍。異変前まで世界に君臨していた超大国・アメリカ合衆国の軍隊。世界1位の軍事費支出からなる豊富な資金に支えられ質・数ともに世界最強の軍隊であった。第二次大戦後の日本にはかつて、米国陸軍第1軍団・海軍第七艦隊・第5空軍・第3海兵遠征軍が駐留し東アジアの脅威に目を光らせていた。第三次世界大戦時には全ての部隊が日本各域・大陸方面・太平洋上・米国本土防衛に展開したが、大半の部隊が感染者の数に耐え切れず基地ごと飲み込まれたり飛来したミサイルの雨を浴びて壊滅していった。運良く生き残った在日米軍部隊は本国に逃げたり自衛隊に合流したりした。中には軍の指揮下を離脱して日本国内で略奪をする部隊が出ていたらしい。おそらく、連中はその残党だろうか。なぜなら、正規の部隊はほとんど本国に逃げ帰っているからだ。元米軍の残存部隊・・・。

 

 ・・・それはかなりマズい。

 

 

「"Ray" lieutenant! what would you do this room?but not open.(“レイ”中尉!この部屋はいかがします?開かないようですが。)」

 

 

 1人の兵士が俺たちの潜む部屋のドア前に駆け寄って来たようだ。とりあえず何とか聞き取れたが連中の指揮官の名前はレイで階級は中尉のようだ。一体どうするつもりだろうか。

 

 

「Uhh...you can use the "C4"!(あー・・・“C4”を使え!)」

「yes,sir!(了解しました!)」

 

 

『“C4”だと?!』

 

 中学の頃に英語を必死に勉強していたので英語が解る勝山に関わらず英語教育をほとんど受けていない福田も“1つの単語”を聞いて反応した。

 “C4”とは、いわゆるプラスティック爆弾のことである。小さいなりをしてとんでもない爆発を引き起こす。連中はここに入ってくるつもりだ。俺たちは慌てていた。

 

 

 

「何とかしてここから出るぞ!」

「でもどうやって出ます??」

 

 

 密封された部屋。出入り口は前方に1つだけ。しかもドア前に敵であろう元米軍?が待ち構えており絶体絶命。降伏はまず選択肢にない。何されるかわかったもんじゃない。強行突破を試みようにも連中は足音や先ほどの銃声の数からして最低でも5人の上、おそらく元米軍兵でこちらの装備・練度じゃ心もたない。こんな世界の壁外でサバイバルしてる連中だ、俺たちは確実にやられるだろう。

 

 

 

『何か脱出できるところは・・・・・・?・・・・・・・・・そうだ!』

 

 

 俺が昔、中学生の頃にはまっていた某人気ステレスゲームを思いだしひらめいた。

 

 

「福田!通気口だ!」

「通気口ですか・・・?・・・あっそれだ!行きましょう!」

 

 

 俺たちは早速壊れかかった通気口のつっかえを外して装備一式を持ち脱出しにかかったのだった・・・。

 

 

 




小説について所々おかしい表現があると思います。ですので、ぜひこんな武器装備を出してほしいなどのご要望、ここはおかしいんじゃないかなどのご意見をお待ちしております!

AK74.wiki.
http://ja.wikipedia.org/wiki/AK-74


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