ウルトラマンゼノン ウルトラの奇跡 (ウルトラゼロNEO)
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Prologue

 

 

──銀河系から300万光年離れた場所に存在するM78星雲。そしてその中にある地球の約60倍の大きさの惑星、それはまさに光が形となったかのような国だ。この星には我々の地球をはじめとしたこの宇宙全体を守護する宇宙警備隊、そしてウルトラマンと呼ばれる光の戦士達の故郷である。この星で今、一人のウルトラマンが旅立とうとしていた──。

 

 

 

 

 

 

 

「地球へ向かうことになったそうだな」

 

 

人工太陽プラズマスパーク・エネルギーコアがあるこの光の国の中核を成すプラズマスパークタワーが放つ光に耐えられない来訪者のためのバリアが展開されているこの発着港があるウルトラスペースボートで赤い体と甲冑を彷彿とさせる強靭な体が印象的なウルトラマンマックスが彼と深い友情で結ばれた友人であり今まさに光の国を出発しようとするウルトラマンゼノンを見送りに訪れていた。

 

 

「厳密に言えば君の知る地球とは異なる地球…平行世界だがな」

 

 

ゼノンは見送りに来たマックスと向き合いながら出発の間際までの短い時間を親友との会話に費やしていた。ゼノンの言葉通り、かつてマックスは地球で戦ったことのあるウルトラマンだ。

 

 

「聞いてはいる。なにやら奇妙な部分もあるとの話だが…」

 

「ああ、我々ウルトラマンが存在しない世界の地球で死した存在が人間の少女として生を受けるとのことだ。一度行ってみないことにはなんとも言えないが…」

 

 

顎に手を添え言伝で聞いた話を思い出そうとするマックスに己に与えられた指令なのですぐに答えるも、その声色はこの案件に対しての難解さが感じられた。

 

 

「…地球は素晴らしい星だ。私の知る地球人達は未来を掴むことが出来た」

 

「君と一体化した青年の孫が言っていたそうだな。地球人もあそこまで外宇宙へ進出してくるとは…。違う地球とは言え今回の任務で分かると良いな、君やそしてあのウルトラ兄弟が第二の故郷というあの星のことを」

 

 

かつての出来事を思い出しているのか感慨深そうにしみじみと呟く友の姿にゼノンは表情では分からないが柔らかい口調で答え、そして地球への期待を膨らませていた。

 

 

「なにかあったらすぐに私も向かおう」

 

「流石に君の時のようにはならんだろう。…だが、そうだな。もし困難があったとしても、かつての人類と君のように乗り越えられれば良いな」

 

 

地球には一体、なにが待っているか分からない。ゼノンの身を案じたマックスの言葉に目の前にいるかつての友の戦いを思い出しているのか、どこか人類への期待を見せていた。

 

 

「…では行ってくる」

 

 

親友との会話は心地の良いものだ。だがいつまでもそうしてはいられない。一息ついて気持ちを切り替えたゼノンはマックスにそう告げると、彼が頷いたのを見て背を向け、その周囲にエネルギーを張り、赤い球体状の光に包まれ光の国から旅立つのであった。

 

 

 

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 

 

──地球。

 

太陽系にある惑星の1つであり我々人類だけではなく多様な生物が生存することが可能な天体のことである。この恵まれた星は近年、環境破壊が進みかつての恵まれた環境は失われつつあった。

 

 

「──ゴモラザウルス…ね」

 

 

鎮守府と呼ばれる施設があるこの海辺の町、都会のような派手さはないが住み心地は良く快適な町だった。とはいえ目立った名所は鎮守府しかなく観光客などはあくまで観光に来るには良い町だと言うくらいだ。その町の古びた和風の一軒家のリビングで癖っ毛がある黒髪とテレビを見つめる赤い瞳の青年…アスノ・ユウマはニュースの話題の種の名を呟く。

 

 

「生き残りだが変種なんだか知らないけど自分の住処から見世物にされるために運ばれるんじゃ堪ったもんじゃないだろうな。っていうか怪獣じゃないだろうな」

 

 

ニュースの内容、それはかつて1億5000万年前に生息していたと言われる恐竜の生き残りの変種体が日本近海の孤島で日本人によって発見され麻酔によって海路でこの日本へ運ばれた後に政府主催のもと特殊な設備が設置された動物園へ移されるとのことなのだ。

 

 

「学校行かないとな…。それで後は鎮守府にも行かないと」

 

 

この事についてはゴモラに同情するが学生の身分である為、今は学校へ行くために行動を移すのだった…。

 

 

 




お読みいただきありがとうございます。

なんでゼノンなの?と思う方はいらっしゃいますでしょうが、単純な話でまずこの話のテーマとして未来があります。未来関連の話で真っ先に浮かんだのがマックスでしたが、マックス=カイトの印象があった為、同作のウルトラマンゼノンが主役となりました。地球に対してあまり詳しくはないというのも理由のひとつでしたので‥。


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誕生ウルトラマンゼノン! part1

古代怪獣

ゴモラ

登場


「提督ですが会議の方が長引いていまして遅れています」

 

「そうですか。態々ありがとうございます…」

 

 

日も沈み始め夕方となった頃、ユウマはこの街の鎮守府、その応接室に来ていた。そこで弓道着のような服と艶やかな黒髪と清潭な顔立ちの女性…赤城がユウマにこの鎮守府の提督の状況を伝えるとユウマはペコリと軽く頭を下げる。実はユウマはある理由でこの鎮守府に所属する者達と幼い頃から付き合いがあるのだ。

 

彼女は艦娘と呼ばれる存在だ。艦娘とは過去、突如海面に現れた少女達だ。人間達によって保護され調査されていくうちに非現実ながらかつての軍艦が人間の少女として生を受けたのではないかと言われている。今では艦娘の協力もあってか工廠と呼ばれる場所で艦娘を誕生させることが出来るとのことだ。

 

とはいえここまでのことはまだ世間一般には知られていない。彼女達を発表するにはまだ分からない事だらけなのだ。それでは説明責任が上手く果たせないから政府は時期尚早だと判断したのだろう。だがそれも時間の問題でいつかは大々的に発表される筈だ。

 

 

「なんだか表情が優れないですね、なにかありました?」

 

「えっ? あぁ…いや…その学校で進路の話題がありまして」

 

「進路、ですか。その顔を見ていると悩んでいるようですね」

 

 

とはいえ艦娘と言えど見た目は完全に人間の少女。人間の知識も身につけているため、話す分にはまったくもって違和感も何もない。赤城がユウマの表情を読み取って問いかけると急に話題を振られたユウマは言葉をつまらせ、そっぽを向きながら気まずそうに頬をかき答える。すると赤城はユウマの答えに合点がいったと言わんばかりに両手を合わせる。

 

 

「…自分が何をしたいか…分からないんですよ。目指したい事もない。未来に何も見いだせないんです」

 

「あら…。でも…羨ましいです」

 

「えっ‥?」

 

 

ユウマは俯きポツリと悩んでいたことを口にする。言葉通りだ。彼に目指すものなどない。ただ緩やかに流れるだけの日々を過ごしているのだ。いくら考えたところで浮かばない。自分が何をしたいのか未来になにも見い出せなかった。すると赤城は目を細め、羨ましそうに呟く。その呟きが聞こえたのかショウマは赤城へ顔を向ける。

 

 

「私達は艦娘とは呼ばれてはいますが結局のところはただの兵器。意志があってもその行動は大きく制限されていて、普段、この鎮守府から出ることが出来ないんです。今は提督のご好意もあって畑を耕したり雑誌などを取り寄せていただいて外界のことを知ることは出来てはいますが…」

 

 

そう言って赤城は応接室に置いてあるテレビや多種に渡る本が収納されている本棚を見る。やはりなまじ意志がある分、彼女達も窮屈に思う事があるのだろう。ユウマは赤城の話を黙って聞いている。

 

 

「でもたまに思う時があるんです。深海棲艦や怪獣達との戦いが全て終わったら私達はどうなるんだろう、と。外見こそ人間ですが力など人間に比べると段違いです。過ぎた力として解体処分されるのか、もしくは軍内部の機密の多くを知る為、外へ出れても監視付きか、それとも一生このままなのか…。未来に希望を持てない艦娘は多くいます」

 

「…。そう考えると僕の悩みはあまりにも贅沢過ぎますね、ごめんなさい」

 

「あっ、別に攻めているとかそういう事ではないんです。私こそ失礼しました」

 

 

目を伏せどこか悲壮な表情を浮かべる赤城。そして赤城の話に出てきた深海棲艦と怪獣…。それは艦娘が現れ始めた半年近く経った後に現れた謎の未知の生物。深海棲艦は文字通り深海から現れ人々の平和を脅かす存在…。艦娘と違い、こちらは世間に広く知られており現代兵器では倒すこともままならず制海権を握られるのは時間の問題とも言われている。飛行機も深海棲艦の艦載機によって撃墜されたという報告がある。唯一倒せるのは艤装と呼ばれる武装で戦う艦娘だけだ。

 

しかも創造の産物と想われていた怪獣も深海棲艦と同時期に各地で現れた存在だ。その被害は国際問題に発展する場合もある。艦娘の話を聞き己が今、どれだけ恵まれているのかを悟ったユウマは謝罪をすると誤解させてしまったのではないかと赤来も非礼を詫びる。

 

 

「────自分のこれからずっと先の未来なんてことは一日二日考えて分かるものじゃないさ。だからこそ時間をかけて未来を作っていくんだ」

 

「提督!!」

 

 

会話が途切れ気まずい空気が場を支配する中で一人のしっかりとした男性の声が入口か響く。見ればそこには海軍の白い制服を身に包んだスラリとした高身長と黒髪短髪の男性がいた。彼の名はマツミズ・シシオ。赤城の反応通り彼はこの鎮守府で提督を務める者だ。マツミズは柔らかい笑みを浮かべながら室内に入る。

 

 

「艦娘も例え全てが終わったとしても悪い扱いはしない。それは私が約束する。だから希望を捨てないで欲しい。兵器である以上に君達は生きているんだ。軍艦として兵器としての過去を忘れるなとは言わない。君たちを形成する上で大切なことだからね。だが今を生きる君達が未来に希望を持てないのはとても悲しいことだ。どんな時も前だけを見て欲しい」

 

 

マツミズは赤城に向き合いながら、まるで生徒に対する教師のように、子供に対する父親のように強く優しく諭すように話すと思うところがあったのか赤城は頷き短く頭を下げる。

 

 

「ユウマもすまない、会議が遅れてしまってね」

 

「いえ、“伯父さん”に言われた着替えとか頼まれた物、持ってきたよ」

 

 

それを見たマツミズはユウマの対面する形でソファーに座り、彼を待たせてしまった非礼を詫びるとユウマは首を横に振りながらパンパンになったボストンバックを自分とマツミズの間に置かれている机に置く。どうやらマツミズはユウマの伯父のようだ。

 

 

「ありがとう、しばらく泊まり込みだからね助かるよ。お礼とお詫びに食堂でご馳走しよう。久しぶりに間宮や鳳翔の手料理が食べたいだろう? 赤城もどうだい」

 

「提督がよろしいのであればご一緒させていただきます」

 

 

礼を口にするマツミズはユウマと赤城を夕食に誘うとユウマは笑顔で頷き、赤城も誘いに乗る。その表情は心なしか嬉しそうだ。三人は応接室からほど遠くない食堂に向かう。

 

・・・

 

 

「鳳翔、間宮、なにか頼めるかな」

 

「あら提督に赤城。それにユウマ君久しぶりですね。少しお待ちいただけますか?すぐにお出しします」

 

 

食堂にたどり着くと芳しい料理の香りを鼻が嗅ぎとり胃を刺激する。マツミズが厨房にいる割烹着を着た女性…間宮と和服を着た女性…鳳翔に声をかける。すると気付いた鳳翔がユウマに微笑みを浮かべながら間宮と共に料理に取り掛かると三人は適当に空いていた席へ座る。

 

 

「あれぇユウ君、久しぶりっ」

 

 

食事を今か今かと待っているとユウマに声をかける者が。ユウマが声が聞こえた場所に振り向けば、そこにはハッキリと分かる大きな胸と水色の髪、頭には髪飾りをつけた女性とその女性が抱きつく小柄で黒髪のゴスロリのような服を着た女性がいた。

 

 

「ガッツさんにペガッサさん、お久しぶりです」

 

「やーやー久しぶり。身長伸びたんじゃない?ペガちゃんの身長超えられちゃったね」

 

「…まぁ初めて会った時から身長は超えられてましたけど…。元気そうでなによりです」

 

 

水色の髪の女性はガッツ、小柄な女性はペガッサというらしい。既に注文を終えたのか二人は近くの席に座りながらユウマの挨拶にそれぞれ笑顔で話す。

 

 

「ソーフィや他の子達はどうしたんだい?」

 

「ソーフィちゃんは開発がひと段落ついたから部屋で寝ちゃってるわ。他の子達は…まぁ好きなようにやってるんじゃないかな」

 

 

今度はマツミズがとある人物の名を出しなら話に入るとガッツは顎に指を手を添え、天井を向きながら答える。どうやらマツミズの尋ねた人物はこの場にはいないらしい。ガッツの話を聞く限りではどうやら彼女達は主に開発などの技術スタッフとのこと。

 

 

(…赤城さん達と同じでやっぱりパッと見は人間だよなぁ)

 

 

談笑をするガッツ達を見ながらつくづくユウマはそう思う。とはいえ妙なことを考えるものだ。だが、その理由はちゃんと存在する。

 

彼女達は見た目こそ人間の少女だがその正体は外宇宙に住む宇宙人なのだ。艦娘と同じくそして同時期に突如として現れ彼女達がこの地球で暮らす代わりに技術協力をするということで人類側と協力関係にある。元々、本来の姿ならば特殊能力など使えたらしいのだが今の姿ではその能力も弱くなってしまったようだ。だが外宇宙の技術は人類に大きな進歩を促し一定の立場を持っている。それぞれの鎮守府にはそうした宇宙人達が何人か所属しているとのことだ。そうこうしている間に料理が出来る。

 

 

「んーっ!やっぱり美味しいっ!生まれ変わった甲斐があったってもんだよ」

 

「もぉガッツさんったら」

 

 

料理を口に運び蕩けた表情を見せるガッツに苦笑するペガッサ。ガッツの言葉は嘘ではない。彼女達は一度死んでいるのだ。人間となった少女達が口を揃えていう言葉は自分達は一度死んで生まれ変わったという事。そして何故、人間の姿をしているのかは彼女達にも分からないようだ。だが艦娘という存在がある以上、なにか関連性があるのではないかと日夜研究が進められている。

 

 

「そう言えばなんで泊まり込みなの?」

 

「ゴモラザウルスのことは聞いているかい?実はここに運ばれる手筈になっているんだ」

 

 

隣で味わいながらも次々におかわりをして食事をする赤城を他所に同じく料理を味わっていたユウマがふと箸を止め対面しているマツミズに尋ねると軽い食事で済ませたマツミズは湯呑に入った熱々のお茶を啜りながら答える。

 

 

「ここを経由して陸路で運ばれるらしい。一応、私も立ち会う話になっているから泊まり込みなんだ。ユウマにはいつも悪いが家の事は任せるよ」

 

「家事ならなんとか。俺と伯父さんだけだからそれほど苦じゃないし」

 

 

ユウマとマツミズは同居している。それはユウマの両親が過去に亡くなっているからだ。だから親戚をたらい回しにされていたユウマをマツミズが引き取り育てている。時たまこの鎮守府にユウマを連れてきていたこともありそれがユウマがこの鎮守府にある程度詳しい理由である。宿舎があるとはいえユウマを想い可能な限り、同じ屋根の下で過ごしていたが、やはりマツミズの立場上、何かと家を空けることが多くなってしまう。艦娘が現れた時などはそれはもう凄かった。

 

 

「悪いね。ゴモラザウルスは後五、六時間に到着だ。深海棲艦や怪獣の影響で国民全体の活気も失われつつある中で少しでも活気を取り戻そうとしてのことなのだろうけどきっとゴモラザウルスからしたら溜ったものではないだろうな」

 

「まあ…ね。俺、食べ終わったら帰るよ。明日も学校だし」

 

 

趣味の良さを感じる腕時計で時刻を確認し日本の現状とゴモラザウルスに対してユウマと同じく同情を示すとユウマも頷き、口に運ぶだけでも幸福感が広がるこの料理を噛み締めようと食事を進める。

 

 

──同時刻、地球の周辺では赤い大きな光球が現れ、まるで地球の様子を見つめるように静止していた…。

 

 

 




という早速、第一の怪獣はゴモラとなりました。このゴモラですがやはり艦娘や深海棲艦達と同じで結構、オリジナル設定があります。


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誕生ウルトラマンゼノン! part2

ヘッヘッヘ


────ウルサイ…。

 

 

 

 

 

────────シズカニシテ

 

 

 

 

 

────────────ナンデ?

 

 

 

 

 

────────────────タダ、シズカニシテタダケナノニ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《──避難指示が発令されました。近隣住民の皆さんは至急避難してください》

 

「…!?」

 

 

それは唐突だった。時刻は深夜4時頃、鎮守府から帰ってきたユウマは深い眠りの中にいたがアナウンスと共にけたましく鳴り響く警報に目を覚ます。起きたばかりでまだ頭が回転してはいないが半開きの目で状況を確認する。2階にある自室のカーテンを開き窓を開けて外の様子を伺うと時折振り返りながら逃げ惑う人々が目に飛び込んできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーンンッッッ!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

耳を劈くような怒りの咆哮。眠気も吹き飛び思わず耳を塞いでしまう。恐る恐るその咆哮を見つめるユウマ。そこにはまさに映画やテレビで見るような一匹の巨大な怪獣が咆哮を上げていた。

 

 

「ゴモラ…」

 

 

赤褐色の分厚い皮に前方に大きく彎曲した首、赤いノコギリの歯のようなギザギザな形の線が複数ついた三日月型の角、更に鼻先に伸びた小さな角。振り回せばとんでもない猛威を振るうであろう太く長大な尻尾。テレビで見たことがある。そうつい今朝のことだ。あれはゴモラザウルス。いや、古代怪獣ゴモラだ。

 

 

「あそこって‥鎮守府じゃないか!!」

 

 

ゴモラが陸を目指し近づく場所にはマツミズ達が居る鎮守府が。マツミズが言っていたゴモラの輸送は最悪な結果を迎えていた。このままでは鎮守府が危ない。何も出来ないとはいえいてもたってもいられなかった。あそこにはマツミズを初めとしたユウマにとってかけがえのない人達がいる。彼らを失えば自分は再び一人ぼっちになってしまう。ユウマは靴も履かずに家を飛び出し無我夢中で鎮守府に向かうのだった。

 

 

・・・

 

 

─────最悪だ。

 

 

ゴモラ輸送の為の護衛任務を受けていたメンバーの旗艦の艦娘であり黒いセーラー服のような制服とおさげと犬の耳を彷彿とさせるような黒髪、そして髪飾りが印象的な先日改二になった少女…時雨は同じく護衛の任を受けた島風、天津風、朝潮、曙、そして自分と同じく改二になった夕立に指示を出しながらつくづくそう思う。護衛任務自体は順調だった。しかし鎮守府を目前に迫った時、突如、深海棲艦の襲撃にあってしまったのだ。戦闘は避けられず、それだけではなくその影響で強い麻酔で眠らされていたゴモラを目覚めさせてしまったのだ。

 

 

「ちぃっ…!奴らめ、このタイミングを狙っていたのか!?」

 

「そう考えるべきでしょうね…!」

 

 

既に鎮守府から援軍は来ていた。艶やかな長い黒髪のロングヘア、露出度が高いビキニとスカートの制服、長門型の一番艦の艦娘長門と同じく二番艦の陸奥が表情を険しくさせながら戦闘を続ける。深海棲艦だけではなく怒り狂うゴモラを陸地に上がるのを食い止めなくてはいけないのだ。マツミズの指揮があるとはいえ中々思い通りにならない。

 

 

《全艦娘に告げる。あくまで防衛だ。深海棲艦への攻撃はそこそこにゴモラザウルスの地上上陸をなんとしても食い止めろ。又、ゴモラザウルスの周囲には不用意に近づくな、奴の尻尾は危険だ》

 

 

すると艦娘達の艤装を通じてマツミズの指示が入る。チラリと確認すると沖には列を組んでいる戦車隊が順次に砲撃が始まりゴモラ目掛けて飛んでいく。

 

 

「うーん…届くかなぁ…」

 

「おいおい射程距離は問題ないだろう?」

 

「そうだねぇ…。よーし今回も勝つよ!」

 

 

砲台とは違う場所で十字型の狙撃銃を構えるのはガッツだ。そしてその隣に立つのはスラリとした高身長とスーツのような服、吸盤のような形の触覚のようなモノが頭についた知的さを感じる女性…ゼットン星人の生まれ変わりのソーフィがガッツの発言に呆れている。余裕を感じられる表情を浮かべるガッツは引き金を引き、光る狙撃銃から放たれ青白いた光弾は一瞬でゴモラに直撃。そこから更に戦闘は激化していく。

 

・・・

 

 

(ある意味、罰なのかもしれないな)

 

 

艦娘達への指揮を執り行いながらマツミズは内心でそう呟く。元々ゴモラは日本近辺の孤島で目覚めたばかりとは言え人畜無害だった。なのに人間の都合で無理に麻酔を打たれて連れ運ばれたのだ。ゴモラにとってはいい迷惑であり見世物にしようと驕った人間への罰なのではないかと考えていた。しかしそんな事は後ででも考えられる。今は兎に角、ゴモラと深海棲艦に集中しなくてはならない。

 

 

《きゃぁあっ!!?》

 

「赤城、金剛大破!!」

 

「ビームだと…!!?」

 

 

モニターに映る映像からゴモラの角から発せられたビームが鎮守府を背に戦闘をしていた赤城と巫女服を思わせる服の艶やかな茶髪が印象的な金剛型一番艦の金剛の周囲に着弾。その威力の大きさからか直撃ではないものの艦娘である赤城や金剛に大きなダメージを与え沖まで吹き飛ぶ。まるでオペレーターのように状況を知らせるペガッサにゴモラの能力にマツミズも唖然としてしまう。

 

 

「この星のデータで推測するに恐らく地面の掘削に使用する角から放つ超振動波を応用したモノだと思われます!」

 

「まさかそこまでのことが出来るとは…。 赤城と金剛は退却だ」

 

 

なにか打開策を練ろうとゴモラザウルスについて調べていたのかペガッサの報告にゴモラに対して戦慄しつつも冷静に赤城と金剛に対して指示を出す。

 

 

《まだ戦えます…!》

 

「駄目だ!防衛第一だがその結果、君達を失うつもりはない。沖まで吹き飛ばされたのは不幸中の幸いだ、今すぐドッグへ向かえ」

 

 

赤城が肩を上下させながら息も絶え絶えに答える。いくらボロボロでも戦意までは消えていなかった。だがそれを強く拒否しまがら戻るよう指示を出す。

 

・・・

 

 

「伯父さん、みんな…!!」

 

 

一方、鎮守府にたどり着いたユウマ。無我夢中で裸足で走ったせいで足が傷だらけで痛むが、そんなことは意識の外だった。肩で息をしながら周囲を見る。遠目には砲撃を受けるゴモラが見えるが着実に近づいており、このままでは上陸も時間の問題だろう。

 

 

「赤城さん、金剛さん!!」

 

「ユウマさん…!?どうしてここに…!?」

 

 

すると視界内に肩を抱き合い支えあいながらドッグに向かおうとする赤城と金剛を見つける。駆け寄るユウマに金剛と赤城はそれぞれ目を見開いて驚いていた。

 

 

「なにも出来ないのは分かってますけど皆さんが心配で…。それより早く怪我をなんとかしないと!ドッグって確かありましたよね、俺が運びます!!」

 

「だったら先に金剛さんをお願いします…。私よりも重体ですから…」

 

「…分かりました!すぐに戻ってきますから!」

 

 

申し訳なさそうなユウマだが赤城と金剛の状態を見て慌てて駆け寄るともう喋る力もないのか金剛をユウマに託す赤城。だが彼女もまた重体だ。弱々しい彼女の姿を見て一刻も早くとユウマは金剛を抱えてドッグへ向かう。

 

・・・

 

 

「お待たせしました!!」

 

 

金剛をドッグに運び戻ってきたユウマ。その場にいた者には驚かれたがユウマが抱えていた金剛を見て元々マツミズからの指示もあってか深くは問われずに金剛の治療を開始した。赤城はと言うともう力が残っていないのか壁に寄りかかって座り込んでいた。

 

 

「────なぃ…」

 

「…えっ…?」

 

 

赤城を抱きかかえドッグへと運ぶ最中、ふと赤城の口から言葉が漏れる。聞き取れなかったユウマは抱える赤城を見る。よく見れば彼女は震えていた。

 

 

「私は…まだ…未来に…なにも…」

 

「…」

 

 

彼女の中にはマツミズの言葉がまだあったのだ。過去を越え未来へ希望を持とうとしているのだろう。ならば死にたくはないはずだ。ユウマは彼女を抱える力を強めドッグへ向かう足を更に速める。

 

・・・

 

 

「お願いします…」

 

《ユウマ!》

 

 

ドッグへと辿り着いたユウマは赤城を託すと、ドッグ内のモニターにマツミズの顔が映る。

 

 

《話は聞いた、赤城と金剛のことはありがとう。だが今すぐ避難しろ、君達一般人が無事でなければ我々がここで戦っている理由はない》

 

「伯父さん…」

 

《私達は大丈夫だ、ゴモラザウルスのこともなんとかする。だから今すぐに地下のシェルターへ避難しろ、本来ならこことは別の安全なシェルターに向かって欲しいが、この状況では難しい。君のスマホに見取り図を送った。人員が割けない状況だ。悪いが一人で向かってくれ。シェルターに到着したらこちら側でシェルターを操作しよう》

 

 

まずは部下を助けた礼を言うと早々に避難を促す。ユウマは言われたとおりにスマートフォンを取り出すとそこにはこの鎮守府のデータが送られてきていた。ユウマは心配そうな表情を浮かべるもマツミズ達に迷惑をかけているのは分かっているので頷いてシェルターへ向かう。

 

・・・

 

 

『──ギュオオオオオオオオォォォォォォーーーーーンッッッ!!!!!!』

 

「うああぁぁあっっ!!!?」

 

 

スマートフォンに表示されるデータを頼りにシェルターへ真っ直ぐ向かうユウマ。同時刻、ゴモラは周囲に無差別の超振動波を放ち近くにいた深海棲艦を沈める。半ば奇跡的に艦娘達も沈む者はいなかったがそれでも被害は甚大であり鎮守府にも長振動波による攻撃が。そのお陰で階段を下りていたユウマは滑り落ち、地面に叩きつけられた圧迫感と共に呼吸困難に陥る。

 

 

「うっ…ぐぁっ…」

 

 

階段から滑り落ち地面に倒れるユウマは咳き込む。当たり所が悪かったのか頭から生々しい鮮血が流れ身体に激痛が走って体を丸める。意識が薄れ始め、死んでしまうのではないだろうかとユウマに死の恐怖が降りかかる。

 

 

「や…だ…。し…にたく…な…い…。お…れ…も…みら…い…が…っ…ほしい…。みんなと…みら…い…を…」

 

 

自分の未来を決めたわけではない。だがそれでもここで命をかけるかけがえのない人達と未来を共に作っていきたいという気持ちがあった。薄れ行く意識のなか、最後まで自分のかけがえのない人々のことを彼は想っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【────ユウマ…】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分を呼ぶ声が聞こえた。その瞬間、世界は静止しまるで自分だけが切り取られたかのようにユウマの身体は暖かな光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───ここは…どこ…? そこにいるのは…誰?

 

 

 

 

 

【私はこことは別の世界のM78星雲からやって来た君達が宇宙人と呼ぶ存在だ。君達の文明を監視する為にやって来た】

 

 

 

 

 

───俺はどうなったの?死んじゃったの?

 

 

 

 

 

【君の命はまだ尽きてはいない。だがそれも風前の灯だ。だからこそ私は君と一心同体となりその命を救いたいと思っている】

 

 

 

 

 

───…何でそこまでしてくれるの?

 

 

 

 

【君は何の力がなくとも大切な者達の為に動いた。例えソレが同種の存在でなくとも。そして最後まで大切な者達のことを想った。君の行動は蛮勇ではあるが私は誰かを想う優しさと仲間達と共に未来を築こうとするその意志を失うのは惜しいと考えた。それにこれは君のためだけのことではない。一心同体となることで私はこの星で活動できるようになる。君の力を貸してほしいのだ。だからこれを受け取って欲しい】

 

 

 

 

 

───この腕輪は…?

 

 

 

 

 

【ゼノンブレス…君の力だけで他の生命の未来を救えきれなくなった時に使って欲しい】

 

 

 

 

 

───使うと…どうなる?

 

 

 

 

【心配することはない。言っただろう、一心同体になると。私は君に。君は私になるのだ】

 

 

 

 

───君の名は?

 

 

 

 

【私か?私の名は──────】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・

 

 

「みんな…大丈夫…?」

 

「深海棲艦はなんとかなったっぽいけど…でも…」

 

 

一方、時雨が仲間達に問いかける。夕立以外に返答はない。それほどまでに消耗しているのだ。夕立も同じように消耗しつつ周囲を見渡す。どうやらゴモラの超振動波の影響で被害が出たことにより撤退したのだろう。もしくは後はゴモラが暴れ続ければ自分達が動くまでもなく奴らは全滅するだろうと。だが問題はゴモラだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すると夜の闇を照らすように上空から眩い光の球体が出現した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ…あれ…」

 

 

 

この絶望が支配するような空間に明かりを灯すような光球の出現にゴモラは動きを止め警戒する。正体が分からぬ光球を緑がかった紙色とツインテール、赤いミニスカートと弓道着のような服と艤装が印象的な翔鶴型空母の艦娘…瑞鶴が指差す。他の艦娘もいや、その場にいる全ての者がその光を見つめていた。

 

 

「…」

 

 

光が消えたそこには赤い体色と身体を走る銀色のライン。胸に青く輝く美しい宝石のような結晶体。40m以上はあるであろうその巨体と光を背に立つ姿はまさに光が形となったかのような、まさに光の巨人がそこにいたのだ。

 

 

「…ねぇ、ソーフィちゃん」

 

「ああ…間違いない。この世界には存在はしない。だが過去にも平行世界から現れたという噂に名高い宇宙を守護する光の戦士達…その同族だろう」

 

 

狙撃銃を下げ、光の巨人を見つめるガッツは隣のソーフィに問いかけるとソーフィは静かに頷き、そして巨人をジッと見つめ、やがて口角を上げる。

 

 

「光の国から来たか、ウルトラマン」

 

 

その表情は期待に満ちていた。その期待を背に受け光の巨人…ウルトラマンゼノンはゴモラに対峙するのだった。




ゼノン登場です。

後、ゼットン星人ですが宇宙恐竜の方のゼットンも出てくる予定ですので、名前を変えさせてもらいました。


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誕生ウルトラマンゼノン! part3

 

 

「グゥウウ…ッッ!!」

 

「…」

 

 

突然現れたゼノンに警戒し低い唸り声を上げ威嚇するゴモラ。足で地面を軽く蹴りいつでも突撃しようとしていた。対してゼノンは臨戦態勢を取ってゴモラの出方を伺う。両者の間には艦娘でさえ息を飲む緊迫した空気が流れていた。

 

 

「ギュオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーンッッッ!!!!!!!!!」

 

「!」

 

 

ゴモラは強く地面を蹴ってゼノンに突撃をしてくる。素早く反応したゼノンも同時に走り出す。両者は地面に強い振動を与えながら距離を詰めていき、速度を利用したゴモラは鼻先の角を付き出すとゼノンは角の部位を両手で掴み足を踏ん張ってゴモラを受け止め、その際に強い力のぶつかり合いが生じて、大きな水しぶきが巻き上がる。

 

 

「きゃぁっ!?」

 

「…ッ!」

 

 

大きな水しぶきは艦娘達を襲う。悲鳴を上げたのは金剛型三番艦の榛名だ。ゼノンはゴモラを受け止めながら背後で起きる二次被害を見て焦る。このままここで闇雲にゴモラと戦っていては周囲にいる存在が危険なのは明白だ。

 

 

「ジェァアッ!!」

 

 

ゼノンは初めて声を発する。野太く力強い声だ。ゼノンはゴモラを振り払い肩甲骨の部分に一発、二発とチョップを当て顎先に鋭く力強いアッパーカットを浴びせる。脳震盪を起こしたのかゴモラは後方にふらつきながら後退する。

 

すかさず距離をつめて飛び回し蹴り。風切り音と共に放たれたその鋭い蹴りはゴモラの首元に直撃して、倒れさせることに成功した。

 

倒れたところにすかさず駆け寄りゴモラの強靭な尻尾を掴むと脇に抱えて回転。ブォンッと風を切りながら暫く回転するとそのままジャイアントスイングで更に陸地から離れた海へと投げ飛ばす。水深は先程よりも深いためゴモラの半身が沈むほどだ。

 

 

「ヘェアァッ!!?」

 

 

なんとか艦娘達からも距離を取ることに成功したゼノン。ゴモラを追いかけるために走り出した瞬間、勢いよく起き上がり下半身は海に浸かったまま角先から超振動波を発射。ゼノンは胸の蒼いクリスタルのような部位・パワータイマーに直撃し苦悶の声を上げ、思わず動きを止めてしまう。

 

 

「あのでっかいの…味方なの?」

 

「…分からないけど…でも、あの宝石みたいなのが弱点なのかしら…?」

 

 

ゼノンの配慮によってゼノンとゴモラとの距離が離れた場所で艦娘達が戦闘の様子を見つめている。瑞鶴はあくまで自分達を守るように背を見せ戦うゼノンに誰に問いかけるわけでもなく呟くとその隣にいた翔鶴型空母の艦娘の翔鶴がパワータイマーへの直撃で動きが鈍ったゼノンを見て分析をする。

 

動きが鈍ったのを感じ取ったのは翔鶴だけではない。ゴモラはその自分にとって自慢の強靭な尻尾を浴びせる。その威力は凄まじいもので巨体であるゼノンを容易に吹き飛ばすほどだ。

 

 

「ディァッ…ァアッ!!?」

 

 

倒れたゼノンに追い打ちをかける為にゴモラはゼノンを背を向け、代わりにその尻尾を何度も何度もゼノンに振り下ろし滅多打ちにする。腕で防ごうとするゼノンだったがそれでもダメージは大きい。

 

するとゼノンのパワータイマーが青から赤に代わり、一定のリズムで点滅すると共に音が鳴る。それはまるで自分の危機を表すかのように。

 

 

「あまり良い感じではないようだな…」

 

 

パワータイマーの変化に反応を示したのは長門だ。ゼノンが何者か分からない以上、ゼノンを行動など全てを見極めていたのだ。

 

 

「ウゥッ…!」

 

 

このままではこちらが危ない。ゼノンは両腕をクロスさせ一気にバッと手を前に突き出すと円形の光の膜のようなエネルギーが現れる。それはまるでバリアのような役割を果たし尻尾の攻撃を防ぐ。妙な感覚を感じゴモラは動きを止め、振り返ってなにが起きたのか確認しようとすると…。

 

 

「────シェイヤァッ!!」

 

 

ゴモラの動きを止まったのをチャンスにバリアを両手で胸の前で圧縮させるとそのまま光弾として打ち出し、予想外の攻撃にゴモラは苦悶の声をあげながら派手に吹き飛び再び海面に身体を浸ける。

 

 

「…ハァッ!!」

 

 

ダメージが残っているのかフラフラと立ち上がったゼノンはそのまま起き上がろうとするゴモラの頭上へ飛ぶと再び両腕をクロスさせ高速回転する。するとゼノンの全身からエネルギーが発生しそのエネルギーは三つの光の輪となり起き上がったゴモラの頭上から降りかかり一気に締め上げ拘束する。所謂キャッチリングだ。

 

キャッチリングの影響で動けないゴモラを両手で頭上に持ち上げ、そのままゆっくりと空へ飛んでいった。

 

 

「向こうは…あの恐竜がいた島の方角…」

 

「まさか彼は…ゴモラザウルスを元の住処に戻す気なのかしら…?」

 

 

拘束したゴモラを持ったまま飛び去ったゼノンの後ろ姿を見ながら、その方向に覚えがある時雨が呟く。時雨の呟きを聞いた陸奥は顎に手を添えゼノンの行動の意図を読み取ろうとするのであった。

 

・・・

 

ゴモラが発見された孤島にたどり着いたゼノンはゆっくりとゴモラを地面に下ろし、手をかざすとキャッチリングを解除する。

 

 

「グォオォォォオ…ッ?」

 

 

今度は額のクリスタルの部分に右手を固め、右手が発光するとまた再びゴモラにかざす。右手からは温かな光である己の中の光エネルギーが発せられゴモラの傷を癒していく。今まで戦っていた相手が何故?と不思議に感じるゴモラだがこの暖かで安らぎを感じるこの光に身を委ねる。ゼノンもゴモラの命を奪う気はなかった。ゴモラは被害者なのだ。だからこそ何とか暴れるゴモラを元の島に返して上げたかったのだ。

 

 

「…」

 

 

倒れるゴモラの頭に手のひらを乗せると、ゆっくりと撫でる。気持ち良さそうに目を細めるゴモラを見て安心したのか立ち上がったゼノンはゴモラに背を向け飛び立とうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──その瞬間、ゴモラに謎の巨大なカプセルが降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グオォッ!?」

 

 

 

 

「ッ!?」

 

 

 

 

 

飛び立とうとした瞬間、突如上空から謎のカプセルがゴモラに襲う。カプセル内に閉じ込められたゴモラの悲鳴を聞いてすぐさま振り返ったゼノンはカプセルを見て驚く。カプセル上部に何らかの装置があるようだが今は気にしている余裕はない、ゴモラを助けねば。そうしてゼノンはすぐにカプセルに近づく。

 

 

「ギュオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーンッッッ!!!!!!!?」

 

 

何とか取り外そうとするもカプセルはビクともしない。すると突然カプセル内部が発光しゴモラは悲鳴を上げる。ゴモラから発せられた光はまるで吸収するかのようにカプセル上部の装置に溜まっていくのだ。

 

 

「…ッ!」

 

 

カプセルは空高く飛び消え去るとゴモラはフラフラとふらついた後に力なく倒れる。ゼノンはゴモラに駆け寄り膝まづいてゴモラを抱き寄せるが虫の息だ。

 

すると上空から怪光線がゼノンを襲いゴモラから弾かれるように吹き飛んで倒れる。ゴモラとの戦闘で消耗し更にはゴモラの治癒の為に己のエネルギーを分け与えた影響で体力もなく起き上がることもままならない。胸のパワータイマーの点滅は早くなる。せめて攻撃してきた存在を知ろうと顔を上げるそこには大きな発光する円盤が滞空していた。

 

 

《キサマらウルトラ戦士はどこにでも現れるな。態々キサマらがいないこの平行世界を選んだというのに…。だがもう遅い。この星を実験場に選んだ甲斐があった訳だからな》

 

【お…お前は…ッ?! 目的はなんだ…!?】

 

《質問の多い奴だ。しかしそうだな…。目的か…。今はこの恵まれていた星を我らが手中に収めること…。それとも貴様のような奴にはこう言った方が良いかな? 我らが目的は──》

 

 

円盤から宇宙語でテレパシーがゼノンに届く。ゼノンは同じくテレパシーで円盤との交信をすると円盤から発せられるテレパシーの声は思案するように押し黙る…。

 

 

《地球侵略。我々の第一ステップだ》

 

【なんだと…!?】

 

《あくまで第一ステップだ。全ての実験が終わればこの星…いや、この世界は用済みだ》

 

 

地球侵略。円盤から放たれた衝撃の言葉にゼノンは拳を固める。しかし円盤からの声はあくまで冷淡にそう言うと、円盤はドンドン高度を上げていく。

 

 

《貴様は生かしておこう。だが勘違いするな。あくまで貴様も実験台の一人だ。どうせ貴様もこの星で何かあればすぐに出てくるのだろう? ならば精々我らの手のひらの上で踊ってもらおう!》

 

 

円盤は最後にそう言い放つと再び大量の光線を発射。無差別に放つのは目くらましの意味もあるのだろう。だがその内にいくつかのビームが直撃しゼノンは悶える。その隙に円盤も姿を消した。

 

 

「──ッ!」

 

 

去り際に無差別に放たれた最後の一発は瀕死のゴモラに迫る。体が動かない。それでも助けようと手を伸ばすゼノン。しかし現実は残酷な結末を突きつけてくる。光線はゴモラに直撃。ゴモラは爆発してしまったのだ。

 

 

「…っ…」

 

 

ゴモラを助けることが出来なかった。ゼノンが守ろうとした未来の中にはゴモラも含まれていたからだ。その現実に拳を握り締めるゼノンはそのまま地面に叩きつけ悔しさを発散させようとする。だが、それでも悔しさは発散されることはなく、ゼノンもまたその身体を維持できなくなり半透明になってやがてはその姿を消すのだった。

 

・・・

 

 

「…ユウマ」

 

 

あれからどれだけ経ったのだろうか。ゴモラと深海棲艦との激戦が嘘のような静けさが漂うこの鎮守府。荒れ果てた鎮守府の敷地内で佇むマツミズがポツリと甥の名を呟く。シェルターに逃げろと言ったがシェルターにたどり着いた痕跡もなくそもそもユウマそのものがいないのだ。我が子同然に育ててきた大切な存在がいないことに喪失感に襲われているのは分かりきっていた。

 

 

「…提督…その…探してみましたが…ユウマ君は…」

 

「…分かっている…。ありがとう…」

 

 

そんな力なく佇むマツミズの背後からペガッサが恐る恐る声をかける。ペガッサの更に後方には動ける艦娘や宇宙人達が沈痛な面持ちで立っていた。今のマツミズに更に現実をつきつける事は酷だからだ。ゴモラの無差別な超振動波。それは一発だけにとどまらず何発か放たれた。その何発かは鎮守府に直撃し一部を消し炭にし崩壊させた。それだけでいくらでも想像の余地がある。マツミズは今にも消え去りそうな声で返答する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────おーい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!」

 

 

 

 

 

 

そんな時、場の空気を壊すように大きな、そして聞き覚えのある声が聞こえる。その場にいた全員がはじかれるように顔を上げ辺りを見回すと海辺の方からユウマが手を振りながらこちらに向かってきたではないか。

 

 

「ユウマ君、無事だったんですか!?っていうかどこから!?」

 

「えっ…あぁいや…彼が助けてくれたんですよ…」

 

 

あれだけ探してもいなかったユウマがひょっこり現れたことに一同目を丸くする。代表するようにペガッサが思わず指さしながら問い詰めてくる。ユウマは頬を人差し指で掻き目を泳がしながら答えるとマツミズはその様子をジッ…と見つめる。

 

 

「彼って…さっきの巨人?」

 

「ええ、彼のお陰で助かったんです」

 

 

ペガッサに続いて続々と艦娘達がわらわらとユウマに駆け寄る。まず最初に艦娘の中から口を開いたのは金剛型二番艦の比叡だ。比叡の質問に対しユウマはにこやかに頷き答える。

 

 

「彼彼って…随分仲良さそうに言うけど結局なんなのアレ?味方…なの?」

 

「…彼は…未来を掴もうとする者達の味方であり未来を脅かす者の敵です。だから僕達が脅威に晒された時、最後まで諦めない限り力を貸してくる…って、えっと…僕を助けてくれた時に言ってました」

 

 

瑞鶴がまるで知り合いのように話すことに疑問を持ち本質に迫る。自分達にとって敵であれば脅威だろう。それに対する答えをゼノンとひとつになったユウマが答える。実際のユウマとゼノンの初遭遇時の会話とは違うが自分がゼノンであることを隠すために、そしてゼノンの意思として答える。それは必ずしも人類にとって絶対的な味方であるということではないということだ。今回の一件もあくまで未来を掴もうとしたユウマを尊重し、ゴモラも救おうとしたからだ。もっとも、そのゴモラを救うことは叶わなかったが…。

 

 

「まぁつまり…ギリギリまで頑張って踏ん張って、それでもどうにもならなかった時に助けてくれる、ってことだろ、ウルトラマンは」

 

「ウルトラマン…?」

 

「ん?彼の名前じゃないのか?てっきりそうだと思ったんだが…」

 

 

味方かどうかはハッキリはしない。微妙な空気が流れる中で口を開いたのはソーフィだった。ソーフィの言葉の中に出てきたウルトラマンという名前に首を僅かに傾げるユウマの反応に違ったのかと少し驚いた顔をしつつ考えるようにあご先に手を添えていた。

 

 

「…いえ、そうです。ゼノン…。彼の名前はウルトラマンゼノンです」

 

 

一瞬ではあるが表情が締まったユウマは頷き、すぐに表情が先程までの柔らかいものに戻るとゼノンの名を改めて口にした。

 

 

「例えなんであれ…お前がお前であればそれで良い。無事で良かった」

 

「伯父さん…」

 

 

その後も艦娘や宇宙人達から無事を喜ばれ話しかけられたりする中、マツミズがその波をかき分けてユウマのそばに歩み寄るとその肩に手を回し引き寄せ、その耳元で囁きユウマの無事を目尻に涙を浮かべて喜ぶとユウマもまたしんみりとした表情を浮かべる。

 

 

「…だが避難しないで戦場になっていた場所まで来たことまでは見過ごせない。どんな気持ちだろうと危険に変わりないんだ。現にお前はこんなにも色んな人を悲しませ心配させたんだ。後でお説教だな」

 

「うん…本当にごめん…。ごめんなさい」

 

 

手を戻すとその表情は厳しいものに変わる。ユウマが鎮守府にいる者達を大切な存在と言うのであれば鎮守府にいる者達にとってもユウマは大切な存在なのだ。マツミズの言葉にそのことを改めて実感したユウマは嬉しく思いつつも心配をかけてしまったことに心から詫びる。

 

 

「…さて、その前に鎮守府をどうにかしようか。大淀、業者を手配しておいてくれ。無事な者は業者が来る前に私と瓦礫など少しでも撤去をしよう。間宮達はその間に簡単なもので良いから軽食を頼む。ユウマ、勿論手伝ってくれるな」

 

「…うん!」

 

 

マツミズは一部が崩落した鎮守府を見ながら全員に声をかけ、また大淀、間宮などに手早く指示を出すと最後にユウマを見て声をかける。ユウマは喜んでと言わんばかりに鎮守府に向かって歩きだしたマツミズの後を追う。その腕にゼノンにパワータイマーを模したような鉱石が埋め込まれた腕輪を輝かせながら…。




<次回予告>

遠征を終えた時雨達。マツミズ達が所属する鎮守府へと帰投する最中に漂流する酷く衰弱した別の鎮守府に所属する艦娘を発見した。鎮守府へと連れ帰り話を聞くと、三人の宇宙人によって艦娘達が次々に姿を消しているという驚くべき話だった…。

次回 艦娘標本

※ちなみにカプセルの元ネタはFE0に登場したとあるカプセルです。


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艦娘標本 part1

三面怪人

ダダ

戦車怪獣

恐竜戦車

登場


 

時刻は深夜、夜も深まった頃、マツミズ達が所属する鎮守府とはまた違った場所にあるこの鎮守府にて息を荒げ肩を上下させながらしきりに背後を振り向き走っているのは艶やかな黒髪と金剛型よりも巫女服を彷彿とさせるのが印象的な扶桑型の艦娘である扶桑と山城だ。彼女達は出撃に使用しているドッグへ向かって走っていた。いや走るというよりは逃げていると言った方が正しい。

 

 

「早くこのことを知らせないと…!!」

 

 

では誰から逃げているのか?それはすぐに分かる。ドッグにたどり着いた扶桑達は息を整える時間も惜しいと言わんばかりに行動に移る。その場に置かれている緊急時の出撃の際に使う用途で設置された壁に埋め込まれた装置を起動させ手動で操作する。出撃という文字が浮かんだパネルへ移動、踏み込むと脚部の艤装が二人に装着される。

 

 

「っ!?」

 

「もう来たのね…!」

 

 

すると大きな足音が聞こえ山城と扶桑は険しい表情で振り返る。そこには彼女達よりも一回り大きい縞模様の肉体とオカッパのような頭部に厳つい顔と青い瞳を持つ謎のSF映画にでも登場しそうな長い砲身の銃をもつ怪人だった。

 

 

「山城っ!」

 

「ッ!はいっ!」

 

 

この怪人…いや、宇宙人ダダこそが彼女達が逃げていた存在なのだ。遭遇時のダダは今のような青い瞳ではなくピンク色の瞳で今のような厳つい顔つきではなかった。これは二体いるかということなのだろうか?だが今はそれを考える時ではない。扶桑は山城に声をかけ、彼女達は青い瞳のダダに背を向けて満たされた足元の水面を駆け出す。

 

 

「…」

 

「──そんな…!?」

 

 

艤装が全て装着されもうすぐドッグから出ようといったところだ。幸いあの怪人は追いかけては来ていないようだ。安堵しているのも束の間、先方には再び先程のダダが浮遊していた。

 

 

「貴方達は一体…!? なんで私達を…!?」

 

 

いや、やはり先程のではない。今度のダダの瞳は黄色で今まで出会った二体のダダとはその顔つきがやはり違った。思わず山城は声を出してしまう。ダダは今に現れたわけではない。この鎮守府ではここ最近、所属する艦娘が何人か行方不明なのだ。噂では心臓の鼓動音のような音を鳴らす怪人が現れ艦娘を連れ去るという話が実しやかに囁かれていた。そして現にその怪人が目の前にいる。砲身を向けながら扶桑は叫ぶ。だがダダは答えない。そればかりかその銃口を彼女達に向ける。

 

 

「っ…!!」

 

 

山城に恐怖心が襲いかかる。この姿で目覚めてから芽生えた感情のひとつだ。思わずそのまま叫ぼうとするが、無情にも引き金は引かれようとした瞬間、目の前のタダに爆発が起きる。見れば扶桑の艤装の砲口から硝煙が立ち上らせていた。直撃した部分は黒く焦げており真っ先に攻撃してきた扶桑に狙いを定めたのかダダは扶桑へ銃口を向ける。

 

 

「山城…」

 

「──姉さま!?」

 

 

ふと扶桑が優しげな表情を山城へ向ける。姉と認識して敬愛している目の前の女性の意図が読めたのか、山城は目を見開き、止めてと言わんばかりに悲しげな表情を浮かべるも扶桑は表情を凛としたものに変えその場に止まり再び砲撃を開始しダダから山城が見えなくなるように攻撃を浴びせる。ダダもこれだけ攻撃を受けては扶桑を相手にする必要があるため扶桑へ注意を向けると、その脇を移動していた山城が通り抜ける。

 

 

「あとは…お願い…」

 

「姉さまぁあっっ!!!」

 

 

ダダの脇を通りぬけ、後ろへ顔を振り向ける山城。扶桑は儚げでありながら優しげな表情を山城に見せるもダダの銃口から光の粒子が襲い掛かり、彼女を包むと消滅してしまう。自分を逃がすために囮となった扶桑。その名を叫びながら山城は海へ出る。ダダはどんどんと遠くなっていく山城を見て追うのを止めたのか動くことはせず、この鎮守府は再び不気味な静けさに支配されるのだった。

 

・・・

 

 

「君達が元の姿を取り戻せるかも知れない?」

 

「ああ。これを見て欲しい」

 

 

翌日、ゴモラの一件から半月が経ち、瓦礫などの撤去作業も終わり鎮守府の建て直しの進む週末の鎮守府。まだ時刻は10時で気持ちの良い日差しが照りつける。そこから一台の大型車が出ていき、その車内の後部座席でマツミズが隣に座るソーフィの話に興味を示すと彼女は懐から何やら頭に突起があり一つ目の怪人がスーツのような服を身につけた人形のようなものを取り出しマツミズに見せる。

 

 

「私達は便宜上、スパークドールズと呼んでいる。このスパークドールズはゼットン星人…つまりは私のかつての姿だ」

 

「…ほう」

 

 

人形はスパークドールズという名称のようだ。そして一つ目の怪人…ゼットン星人のスパークドールズはかつての自分だというソーフィに、なんとも言えない表情でゼットン星人のスパークドールズを見つめる。ソーフィ達がかつては見た目も違う宇宙人だというは知ってはいたが、実際にこれだと言われると妙な気分だ。

 

 

「これは私がこの人間の姿でこの地球に現れた時に傍に落ちていたものだ。最初は驚いたものだよ、母星で事故で死んだはずなのに目が覚めたら異星でしかもその星を支配している住人の姿をしていのだからな」

 

「支配…か。それで?」

 

「あぁすまない。話が脱線してしまったな。ガッツやペガッサ達も同じようなモノを持ってはいるのだが、この人形には私達本来の力が宿っているんだ」

 

 

ソーフィは当時のことを思い出し感慨深そうに苦笑していると言葉の中に出てきた単語に思う所があるのか、神妙な表情を見せるマツミズは続きを促すとソーフィはハッとし咳払いをすると再びスパークドールズの説明に戻る。

 

 

「例えばガッツの奴は分身やテレポートなんか出来るが今はスパークドールズが別にある以上、力が弱まっていて能力の行使は難しい。しかも問題があってな。例え己のスパークドールズを持っていても、かつての自分に戻ることが出来ないんだ」

 

「それはまた…。どうしてだい?」

 

「力を秘めていると言っても所詮は人形だ。身体に押し付けたところでなにもならない。これを見てくれ」

 

 

例としてガッツの能力を簡単に説明しながら、現時点の問題点を上げる。目を細め更に問いかけるマツミズ。例え持っていてもその力が使えないのでは無用の長物だ。飾りにでもしろと言うのだろうか?最初はそんなことを考えていたソーフィは人形の足の裏を見せる。そこには何やら紋章のようなモノが埋め込まれていた。

 

 

「私達はこれをライブサインと呼んでいる。これはコードのように読み取ることができる。そうすれば私達も力を取り戻せると思うのだが…」

 

「その方法がない、か」

 

「ああ。これから行く鎮守府に同じような研究をしている者がいる。意見を伺うさ」

 

 

紋章はライブサインと呼ぶようだ。しかしいかにスパークドールズを説明したところでその力を発揮できる術がない。ソーフィとマツミズは難しげな表情で考える。何とかならないものかと。だがこの場で考えて出てくるようなものではないため二人共思考をすぐに止め、元々、会話の種として話した為、ソーフィはスパークドールズを懐に戻し座席に身を預ける。そうこの大型車の車内には他にも艦娘達がいる。彼らは演習のために別の鎮守府へと向かっていたのだった…。

 

・・・

 

 

「…」

 

 

マツミズが鎮守府を経ち、一時間が経過しようとした頃、場所はマツミズ達が所属する鎮守府の食堂に移る。そこにはユウマがいた。業者によって復興作業を続けているこの場所でマツミズに手伝うよう言われたとは言え彼はむしろ自主的に来ていた。それだけ彼にとって大切な場所だからだ。そして今の彼は両手を組んで額に当てて目を閉じていた。

 

 

・・・

 

 

 

 

──艦娘を知るために来たんだ

 

 

 

【目的のひとつだ。かつての兵器、そして艦娘とは別にかつての異星人などが、それも人間のような姿として以前の記憶をもって生を受ける…。それは何故なのか。そして、やがて彼女達や君達が外宇宙に進出した時に果たして他の文明と友好関係を築けるかを調査するために来た】

 

 

 

──皆は悪い人達じゃないよ

 

 

 

【かもしれないが深海棲艦と呼ばれる生命体もいる。艦娘との関係性はある筈だと私は思っている。艦娘、そして深海棲艦…。私は知らねばならないことが多い。そしてそれ以上にこの地球に侵略者がいる】

 

 

 

──あの円盤のことか…。確かになんとかしないと。ゴモラのような事はもう二度とゴメンだ

 

 

 

【気負う必要はない。私達は一人ではないのだから】

 

 

 

・・・

 

 

「──ユウマ君、どうかしました?お疲れかしら?」

 

「…っと…いえそういうわけでは」

 

 

ゼノンとの対話が終わり、優しい女性の声がかけられたのでゆっくりと目を開けるユウマはその方向を見るとそこには鳳翔が湯呑と茶菓子を持ってきていた。どこか子を案じる母のような心配そうな表情を浮かべる彼女にユウマは首を横に振りながら笑顔で答える。その笑顔に安心したのか鳳翔はユウマの前に湯呑と茶菓子を置き向かい側に座る。

 

 

「ユウマ君が来てくれて助かっているんですよ。提督は今日は他の娘達やソーフィさん達を連れて演習に行かれてしまって人手が少ないから」

 

「僕に出来ることはなんでも。特に力仕事なんかは任せてください」

 

 

鳳翔が自分の分の湯呑を口につけて、お茶を飲む。この身体を授かり、マツミズに出されて口にしたこの飲み物。渋みもあって今では彼女のお気に入りだ。湯呑を置き、自主的に手伝いをしてくれているユウマに感謝の旨の言葉を言うと照れ臭そうな顔をしながらもユウマも表情を柔らかくして答えながら拳を胸の前に持っていきギュッと握る。

 

というのもゼノンと同化して以降、身体能力などが大幅に上がっていた。それこそよくあるアニメやヒーロー番組のような突如与えられた力によって周囲の物を思わず破壊してしまうなどまさにあのような状況だった。お陰で瓦礫撤去の時の自分の頭よりも大きな瓦礫を力んで持ち上げようとした瞬間、ヒョイと持ち上げた時などはビックリしたものだ。幸い誰かに見られてはいなかったのが救いだろう。そんなユウマを見て、鳳翔は微笑ましそうな表情を浮かべる。

 

 

「この後はどうしますか?」

 

「この建物もユウマ君が手伝ってくれたお陰で整理や掃除などもひと段落しましたが流石にユウマ君にドッグなどは手伝わせるわけにはいきませんし…。今日は雑貨店の方は?」

 

「今日は午後からなんです、午前中は明石さんが」

 

 

この後の予定を尋ねるユウマに鳳翔は上を向き考える。あれから半月、瓦礫の撤去作業もゴモラの影響で荒れていた鎮守府内部も漸く綺麗にできた。建て直しもマツミズの話ではもうすぐで終わるらしい。後は精々ドッグなどだがそこはユウマに手伝わせるわけには行かない。普段、鎮守府内の雑貨店でアルバイト紛いのことをしているユウマに聞くとどうやら時間はまだあるらしい。

 

 

「そうなると特にユウマ君にお任せすることはなくなってしまいますね。ここにいたいのであればこの建物の中であれば好きにして構いません。私はそろそろ昼食の準備を…」

 

「なら俺も」

 

「ふふっ間宮さん達がいるから大丈夫です」

 

 

お茶を一気に飲み終えた鳳翔は立ち上がり、昼食の準備に取り掛かろうとする。もうすぐ遠征に向かった艦娘達も帰ってくる。手持ち無沙汰のユウマも手伝おうとはするが間宮達もいる以上は特にやってもらうこともない。手伝おうとするユウマに微笑を浮かべた鳳翔は自分の湯呑を持って、そのまま厨房に向かい特にやることのないユウマは席に身を預ける。

 

 

『──山城、しっかりするんだ!!』

 

「…!」

 

 

あれから数分後、遠くから緊迫した声が聞こえる。声の主は聞き覚えがある。これは口調からしても時雨ではないだろうか?厨房で作業をしている鳳翔や間宮達には聞こえてはいないようだ。ゼノンと一体化を果たした影響は聴力にも影響をきたしていた。同じ場にいる彼女達にも聞こえない距離の声もユウマには聞こえていたのだ。意識を集中して声に耳を傾ける。

 

・・・

 

「深海棲艦にも襲われているわね…。衰弱の原因はその状態で漂流したからでしょうけど何故一人で…」

 

「分からない…」

-

 

艦娘が治療の際に使われるドッグがある。その場にはあの山城が治療を受けていた。山城を発見したのは遠征を行っていた時雨を含む駆逐艦で編成された隊だった。治療を受ける山城に金剛型の霧島が山城の状態を見て一人でいたことに疑問を口にすると、首を横に振る時雨の手をあまりにも弱々しい力で山城が掴む。

 

 

「宇宙人…が…わた…し…たち…の…鎮守…府…に…。あい…つ…が…みんな…を…姉…さ…まを…」

 

「彼女の鎮守府でなにかあったのね…。けど…宇宙人って」

 

「…山城の鎮守府…?」

 

 

息も絶え絶えに言葉をつなぐ山城。姉から頼まれたのだ。なんとしてでも伝えなくてはいけない。その話を聞いて霧島が考え込んでいると扶桑型とは縁がある時雨。交友もあった時雨がなにか引っかかるものを感じたのか口元に手を添え俯いて考えを巡らせているとハッと顔を上げる。

 

 

「待って!山城の鎮守府って今日、提督達が演習に向かった鎮守府だよ!!」

 

 

焦った表情の時雨。彼女の言う通り、マツミズ達が向かった場所は山城達が所属する鎮守府なのだ。慌てて霧島などが確認するとどうやら間違いは無いようだ。

 

・・・

 

 

『ダメだわ、提督達と連絡が取れない!』

 

「…!」

 

 

聞き取れなかった部分もあるがそれでも大部分は聞き取ったユウマは霧島の一言で席を立ち上がる。このままでは伯父達が危ない。湯呑や茶菓子が入った器を鳳翔達に礼を言って返すと食堂を飛び出す。

 

 

「伯父さん…!」

 

 

人目のつかない場所に移動したユウマは携帯のGPSからマツミズの場所を割り出す。連絡は霧島達の言っていたように取ることができなかった。携帯電話を落としているだけならば良いのだがなにかあっているのであれば大変だ。ユウマはゼノンブレスがはめられた腕を胸の前に構えるとゼノンブレスのクリスタルから光が溢れ、そのまま天に拳を向けるとユウマの身体はゼノンのモノへと変わり、光の球体となって町から離れるのだった。




少し間が空きましたが書いていきます。

ダダの回は私は幼少期にビデオで見たのですが、ダダの怖さよりもダダが乗り移った研究員の方の演技が凄すぎてそっちのほうが怖かったです。あの怖さを少しでも再現したいものですが難しいです。

そして次回はマツミズ達から始まります。


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艦娘標本 part2

 

 

「誰もいない…?」

 

「僕とソーフィ、ガッツ、長門で見てくる。皆はペガッサと車内で待機していてくれ」

 

 

ユウマが別の鎮守府で起きた事件の為にゼノンへ変身し飛び立つ30分前。演習を予定していた鎮守府にたどり着いたソーフィ達は大型車を降りて敷地内を見渡している。艦娘どころか人の気配すらないのだ。マツミズは現在の秘書官である長門以外の艦娘達に指示を出すとソーフィとガッツ、長門を連れ、そのまま鎮守府内へ歩みを進める。

 

・・・

 

 

「何がどうなっている…。艦娘どころか用務員もいないとは…」

 

「ガッツ、どう思う?」

 

 

鎮守府内を練り歩いても人っ子一人いない。はっきり言って異常だ。長門の呟きを聞きながらソーフィは視線を鋭く周囲を警戒しているガッツに問いかける。普段の緩やかな性格では想像出来ないがこの中ではガッツが、いや、マツミズの鎮守府ではトップクラスの実力者だからだ。

 

 

「んー…そうだね…。まぁさっきからなにか感じるわね。ねっとりと見られてるって感じで気持ち悪いかな」

 

 

言葉通りの気持ちを抱いているのかガッツは表情を顰めている。自分達の歩く足音が響くほどの静けさに満ちたこの鎮守府はとても不気味だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『きゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーっっっっっっ!!!!!!!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この声…ペガちゃん!?」

 

「…行ってみよう」

 

 

 

 

 

静けさを打ち破るように悲鳴がこだまする。聞き覚えのある声、これはペガッサの声だ。いち早く反応したガッツは素早く来た道を振り返り、マツミズは全員に声をかけると駆け出す。

 

・・・

 

 

「ダメ…。山城が所属していた鎮守府にも連絡がつかない…」

 

 

場所は変わり、マツミズ達が所属する鎮守府で何とか危険を伝えようと奔走していた霧島達だが、連絡をとることは出来なかった。

 

 

「こうなったら直接向かうしかないんじゃ…」

 

「そう、ね…。上に連絡してからじゃ遅いかも知れないし…」

 

 

どうするべきかと頭を悩ませる艦娘達。比叡の一言に陸奥も同意する。このままではマツミズ達が危ない。なにかあってからでは遅い。

 

 

「──…行くのであれば…私も…」

 

「山城…!?」

 

 

動き出そうとした瞬間、か細い声が彼女達の動きを止める。見れば、そこには壁に寄りかかる山城の姿が。安静にしてなくてはいけないのに何故と時雨は山城に駆け寄る。

 

 

「私にとって…あそこは大切な場所なのよ…。扶桑型だから姉様を慕ってきた訳じゃない…。提督…姉様…みんな…今まで私という存在を作ってきた上で大切な人達…。だから私だってなにかしたい…ここで待っていられないの…」

 

 

山城は時雨に支えられながら己の心中を語る。本調子ではない山城を連れて行くかどうか陸奥達は選択を迫られていた。

 

・・・

 

 

「どういうことだ…?」

 

 

場所は再び事件が起こっている鎮守府へ。外へ出てきたマツミズは困惑して思わず呟いてしまう。いやマツミズだけではない。ソーフィ、ガッツ、長門もそれぞれ同じような表情で辺りを見渡している。なぜならば自分達が乗ってきた大型車がないのだ。忽然と姿を消し、静けさだけが残る。タイヤ跡を見ても戻ったわけでもないし、それ以前に勝手に帰りはしないだろう。

 

 

「──ッ!!」

 

 

背後の方で微かな物音が聞こえる。いち早く感づいたガッツは素早く太もものホルスターから小型の光線銃を抜き取り振り抜きざまに構えるが、そこには誰もいない。

 

 

「…今はいない。けどなにかいたわ。でも一瞬で気配が消えた」

 

「…なにかあったのは明白だな。ここだけではない、我々の仲間達もいなくなった」

 

 

辺りに銃口を向け、視線を素早く動かし辺りを見回すガッツの反応を見て、同じく警戒しながら庇うように立ってくれている長門の後ろでマツミズがこの異常事態にただ静かに呟くのであった。

 

・・・

 

 

「…目標ノ一人、戦艦長門、発見。地球人ノ他ニモ同ジ地球人ノ雌デ微弱ナ反応ダガ、ガッツ星人ヤ、ゼットン星人ノ反応ヲ感ジル。又、捕エタ艦娘ノ他ニモペガッサ星人モ捕獲」

 

《ほぉ…。ペガッサ星人か…。それにガッツ星人やゼットン星人…。だが、我々の目的はあくまで艦娘だ。指示した艦娘は8体、そして艦種別に一体ずつ、そして他にも艦娘を2体だ、この2体は色々と実験に使う以上、適当なモノではいかん》

 

 

マツミズ達の様子をラボの窓から見つめるのは、山城達を襲ったダダだ。顔には火傷痕が残っている。ダダはこの鎮守府に所属する人間となった宇宙人達が使っているラボに自分で持ち込んだ通信機である者と地球の言語ではない言葉で通信をしていた。円型の液晶に映るのは白い身体に無数の赤い瘤のようなものがあった、どうやらダダの目的というのはこの宇宙人の指示によって艦娘の集めることらしい。

 

 

「艦種別ノ方ハドウニデモナッタ。ダガ、コノ場所ニ目当テノ艦娘ハ少ナカッタ」

 

《その割にはやけに艦娘を捕らえたな。そんなにいらんぞ》

 

「・・・」

 

 

ダダの報告に表情では分からないものの理解できないし、なにをやってるんだと言わんばかりに呆れながら通信越しに言葉を発すると、ダダは背後に縮小して捕えた艦娘が一人ずつ入ったカプセルを見る。

 

 

「美シイ…。地球人ノ見タ目ハトテモ…トテモ良イ…ッ!心ガ乱レル程ニソソルモノガアル…! 態々出向イタノデアレバ得ガアッテモイイハズダ」

 

《…自分のコレクション…というわけか。私に貴様の美的感覚は理解できんがウルトラ戦士が来る前に仕事はさっさと済ませろ。奴の反応は感知している》

 

「分カッテイル…。ダガ、奴ガ来テモ切リ札ハアル」

 

 

心が乱れる、それを表現するように胸の前で両腕をもぞもぞと動かし、興奮気味に語るダダに対し、その様子を通信越しとはいえ気持ち悪く感じたのか、通信相手の宇宙人は引き気味に伝えるとダダはどこからともなく戦車に乗った恐竜のようなスパークドールズを取り出す。

 

 

(──あれはスパークドールズ!?)

 

 

それを見ていたのは強化ガラスで作られた大型ボックスに閉じ込められたペガッサだった。他にも縮小はされたが標本に選ばれなかった艦娘達がいた。この大型カプセルはダダにとってのコレクション用のものなのだ。大型ボックスの強化ガラス越しからダダの様子を伺っていた。

 

 

(まさかダダ星人がいたなんて…)

 

 

彼女の記憶では車で待機していたのだが窓ガラスに突然、ダダの顔が映り、思わず悲鳴をあげた瞬間、気が付けばこのボックス内に閉じ込められていたのだ。身体の大きさを元に戻そうにも今の状態ではどうにも出来ない。せめてここや自分達の鎮守府にある宇宙人達が使っているラボに行ければなんとかなるかもしれないが…。なんとか出来ないものかと考える。

 

 

《どうやらその不出来な切り札を使う時が来たようだな、ウルトラ戦士が来たぞ》

 

「迎撃スル」

 

 

『Kyoryu Sensha!』

 

通信相手の宇宙人はダダの手に持つスパークドールズを見て失笑しながらも、ゼノンが近づいてきたことを教えると、ダダは机に置いてある小型の銃のようなもの…リーディバイスを手に取り、銃口と思わしき部分にスパークドールズのライブサインを読み取らせる。するとリーディバイスから電子音声が鳴り響き、銃口とライブサインは密着する。

 

『Realize!』

 

窓を開けたダダは接近するゼノンを見つけたのか、上空に向かってリーディバイスの引き金を引くと、再び電子音声と共にスパークドールズは打ち出され、空へ向かっていく。

 

 

 

「───グオオオオオォォォォォォーーーーーンッッッッ!!!!!!!!!」

 

 

 

(そんな…!?スパークドールズの怪獣が実体化するなんて…)

 

 

 

打ち出されたスパークドールズはまっすぐ空へ向かいながら上は恐竜、下は戦車とある意味、分かりやすい見た目の怪獣…恐竜戦車は実体化を果たす。自分達の研究ではまだ出来なかった実体化をこなしたことに驚く。目の前のダダは自分達よりもスパークドールズに関する技術を持っているのだ。

 

・・・

 

 

「!」

 

 

目的の鎮守府へ向かっていたゼノンも鎮守府からこちらに向かってくる恐竜戦車に気づく。それと同時に恐竜戦車はこちらに向かいながら車体部分に設置されている砲台から砲撃を始めると、クルリ、と旋回しながらゼノンは恐竜戦車へ向かっていく。

 

 

「デェイァアッ!!!」

 

 

目標を恐竜戦車へ変えたゼノンは恐竜戦車目掛けて接近、両腕をクロスさせ大きく広げるとゴモラ戦で使用したバリアの応用で大きな光のネットのようなものを作り出し、両手首を合わせると開いた両手から光のネットを発射、恐竜戦車を拘束する。

 

見るからに飛行能力はないであろう接近する恐竜戦車を避ければ、落下して周囲の町に、かといってこのまま真正面からぶつかるわけにもいかない。拘束した恐竜戦車は自分よりも重量があり、光のネットを維持し続けるのも一苦労ではあるが、そのまま回転をし遠心力を利用して、鎮守府や町から離れた平野へ投げ飛ばす。

 

 

「ジェアッ!!」

 

 

平野に落ちた恐竜戦車は地面を抉りながら着地するとゼノンも恐竜戦車と距離を開けた場所に着地、その際に土煙が起きる。鎮守府やその周辺の町から少しは距離を遠ざけられたのは良いがあくまで距離は少し離れただけ、恐竜戦車との戦いはそこを注意しなくてはいけない。ゼノンは構えると恐竜戦車へ向かっていくのだった…。

 

・・・

 

 

「ウルトラマンと怪獣…!?」

 

「…このままではマズイ…。近隣住民の避難をしなくては…」

 

 

鎮守府内にいた長門達は窓から戦闘を開始したゼノンと恐竜戦車を見つける。丁度、今ゼノンは恐竜戦車の首を掴み肘打ちを浴びせていた。窓を開け、戦闘を見ている長門の後ろでマツミズは携帯機器を取り出す。ここからでも目視できる距離では危険だからだ。

 

 

「──提督!!」

 

「──危ない!!」

 

 

連絡を取ろうとしたその時、背後でSF映画でビームが発射されたような奇妙な音が聞こえる。振り返れば無数の粒子がこちらに向かってきていた。いち早く反応した長門とガッツはマツミズとソーフィを突き飛ばすも逃げ遅れ、粒子を浴びてしまう。

 

 

「ガッツ…?」

 

「二人ともどこだ!?」

 

 

突き飛ばされたソーフィとマツミズは難を逃れたが、助けてくれた二人の姿が見えない。二人を探そうとした瞬間、何者かの気配を察する。

 

 

「Dぁ…ダA…」

 

 

振り返った場所には数m先にダダが山城達を襲った時と同じ銃を持ちながら立っていた。不気味な声を発するダダを見て嫌悪感すら感じるマツミズ達だが、今はそんなことを言ってはいられない。マツミズは懐に忍ばせておいた拳銃を取り出し銃口を突きつける。

 

 

「元凶はダダ星人だったわけか…」

 

「ダダ星人…?」

 

「不気味な連中さ。だが大方分かったぞ。いきなり消えたこの鎮守府の者達やペガッサ達…原因は奴の持つミクロ化機のせいだろう。他の惑星の住民を小さくして標本として自分達の星に持ち帰ることでも有名だからな」

 

 

隣のソーフィは表情を険しくさせながら呟くと、初めて聞く名前に思わずオウム返しのようにダダの名前を口にするマツミズ。すると説明を求められたのかと思ったのか、ソーフィは簡潔に言うと事件の真相を紐解く。だが、そんな風に話している間にもダダはマツミズ達に放った大型ビーム銃…ミクロ化機をこちらに向けてくる。

 

「だA…Dア…!?」

 

 

再び引き金が引かれそうになった時、足元から小さなビームが放たれ、ダダに直撃しダダはのけ反りよろめく。なんだと思い、足元を見ると成人男性の手くらいの小ささになったガッツと長門がビーム銃を向け立っていた。長門の持つビーム銃はガッツの持っていた物の一つだろう。

 

 

「二人とも!…小さくなるとは聞いたが、奇妙な気分だよ」

 

「言っている場合か。だが無事で何よりだ」

 

 

両手に小さくなった長門とガッツを乗せ、胸の高さまで持ち上げるマツミズ。マツミズの一言に呆れながらもガッツと共にマツミズの掌の上からダダにビームを浴びせつつ彼の無事を喜ぶ長門。身体を張った甲斐もあったといものだ。

 

 

「ダaあDAアァァaァAア!!!」

 

「ッ…今は退こう!」

 

 

浴びせられるビームを鬱陶しそうに跳ね除けるダダは咆哮を上げると、ミクロ化機を持ったままこちらに向かってくる。このままでは不味いと判断したマツミズはガッツ達を両手に乗せたままソーフィと共に走る。

 

 

「DアDA!!」

 

「二人目だと!?」

 

 

逃げている最中に前方には青目のダダが現れる。立ち止まり逃げ道を探そうとするマツミズだが今まで来た道はまだ先程のダダだっているはずだ。どうしたものかと考えているとソーフィが口を開く。

 

 

「最初に言っておこう。ダダは三つの顔を持ち変幻自在に変えられる様から三面怪人とも呼ばれてる。だが能力的にそれだけであんまり意味はない。顔は飾りだ」

 

「…随分とお洒落じゃないか。他にあるかい?」

 

「壁の通り抜け他者への乗り移りテレポート…まぁ色々な超能力を持っているが…」

 

 

人差し指を立てダダの能力の一つを説明するソーフィに思わずマツミズの口から軽口が出る。マツミズの問いかけにあごに手を添え憶えている範疇で答えるソーフィ。だが、そうしている間にもこちらに向かってくる青目のダダに再び逃亡を開始する。

 

 

「ダダはこの鎮守府を占拠していた。だからある程度、私達よりも地の利を得ているから先回りなども出来ているのだろう」

 

「ここを根城にしたのであれば、ダダによっていなくなったペガッサ達もどこかにいるはずだ。ここの施設は大方、見て回った。だからまだ見ていない場所は…」

 

 

逃亡を開始しても行く先々でやはりダダは待ち伏せをしている。両手に持つガッツ達の援護で逃げることには成功しているがエネルギーなどを考えても時間の問題だろう。何とか打開策を練ろうとするマツミズに隣で走っているソーフィと考えを巡らせ…。

 

 

「「工廠!」」

 

 

同時に声を上げる。現在、大体の鎮守府には工廠の方に宇宙人が使用しているラボなども隣接されている。マツミズ達の鎮守府でもそうだ。まだ最後に向かっていない場所を目的地に二人は急ぐのだった…。




今回ちょろっと出てきたリーディバイスは本作におけるギンガスパークやチプルスパークなどのスパーク系やエクスデバイザーやジオデバイザーなどのデバイザー系などといったタイプのアイテムです。

X本編はゼロやマックスだけではなく、ビクトリーやギンガも出てきて更に次回はギンガビクトリーにもなると毎週、お腹いっぱいな内容ですが、ここまで濃いと来年のXの映画は一体、なにをやるんだろうと気になってます。


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艦娘標本 prat3

 

 

「…まだ来ていないのはここだけなんだが…」

 

「──提督、こっちに来てくれ!」

 

 

工廠まで何とかたどり着いたマツミズ達は周囲を見渡し、何かダダに関連するものはないかと探す。兎に角、連れ去られた者達を救い出さねばならない。するとソーフィから呼び声が聞こえる。彼女の声の方向へ向かう。そこはこの鎮守府の宇宙人達が使っていたであろうラボだった。

 

 

「ペガッサ、それにみんな無事だったか…!」

 

「他にもいるぞ!」

 

 

ソーフィが持つボックス内では自分の部下である艦娘達やペガッサがこちらに向かって手を振ったりなどして、存在をアピールしていた。ひとまずペガッサ達が見つかったことに安堵しているマツミズにソーフィは個別に艦娘が入ったカプセルを見つけ、回収する。頷きあった二人はカプセルとボックスを持って窓から出る。ダダが近づいてきているのは分かっているからだ。

 

・・・

 

 

「「ッ…」」

 

「…」

 

 

窓から外へ出た二人だったが、既にテレポートをしていたダダが待ち伏せをしていた。目を見開いた驚く二人に対して、ダダは不気味な様子のまま無言でマクロ化機をこちらに向ける。

 

 

【なにが目的だ!?】

 

 

咄嗟にソーフィが宇宙語でダダにその目的を聞き出そうとするも、ダダは答える必要もないと言わんばかりに引き金に指をかける。

 

 

───もう駄目だ。

 

 

二人はそう思う。様々な特殊能力を持つダダに対し、自分達ができる手段はなにもない。時間稼ぎにしろ、話し合いは通じない。そもそも応じようともしない。なにか…なにかないか!?と思考を巡らせていたその瞬間…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───ダァッッ!?」

 

 

「ッ!!」

 

 

 

上空から無数の艦載機がダダを襲う。これには予想外だったダダもまともに艦載機の攻撃を浴びてよろめく。ダダがよろめいた瞬間にマツミズはボックスをソーフィに押し付けるように突き出し、ソーフィが受け取った瞬間、ダダに痛烈なタックルをダダに浴びせる。ドンッ!と強い音を立ててダダが後頭部を地面に強打した。

 

 

「──ッ!」

 

「…」

 

 

ダダが気づいた時には既にマツミズはミクロ化機を奪い、こちらに向けていた。止めろ!そう言わんばかりに手を突き出すが、マツミズは無言でミクロ化機の引き金を引き、ダダの体は縮小された。

 

 

「──提督さん!」

 

「瑞鶴に翔鶴…?何故、ここに…?」

 

 

遠くから微かに自分達を呼ぶ声が聞こえる。見れば海の方向へ離れた場所から瑞鶴と翔鶴がこちらに手を振っていた。先ほどの艦載機も彼女達の物だろう。助けてくれたのはありがたいが、今回の演習の為に編成したメンバーに五航戦は入れてなかった筈だ。マツミズは首をかしげる

 

しかし、今はそれどころではない。

 

ダダだ。折角、縮小出来たのであればこのまま放っておくわけにはいかない。そう思いダダに向き直った瞬間…。

 

 

「だaあDァァaァA!!!」

 

 

怒りの咆哮といった所か。マツミズが向き直った瞬間、縮小されていたダダは巨大化をしてしまう。このままでは踏み潰されてしまう。足元にいたマツミズとソーフィは慌てて走り距離を開けようとする。

 

・・・

 

 

「ジェァッ!?」

 

 

ダダが巨大化したことに気づいたゼノンだったが、恐竜戦車の突進を受け地面に叩きつけられていた。その突進力はゼノンの力を持っても抑えることは出来い程の力を持っていた。

 

 

「グゥオオオオオォォォォォォォォンッッッ!!!!!!」

 

「アァ…ッ!?」

 

 

倒れたゼノンにすかさず恐竜戦車がひき潰そうとする。動こうとしたゼノンだが間に合わず、右腕を轢かれてしまい苦悶の声を上げながら左腕で恐竜戦車が通り過ぎた後の右腕を掴む。だがその間にも攻撃は止まず、背を向けている状態から尻尾の攻撃がゼノンを襲い、ダメージを与えてくる。

 

 

「ゼェアッ!!!」

 

 

その場にゴロリと一回転し、尻尾の連撃から逃れると素早く立ち上がりジャンプ。恐竜戦車の背中に組み付くと、すかさず拳、肘打ちなどで攻撃するが、やはり有効打にはなっていない。

 

するとゼノンは両手をパワータイマーに水平に当て右手を振りかぶるとギザギザのリング状の光輪であるウルトラスラッシュを出現させると、手に這わせるとそのまま何度も恐竜戦車へ斬りかかる。その切れ味は絶大なのか恐竜戦車の表面は切り裂かれ、内部メカが露出する。

 

 

「ジェイアァッ!!」

 

 

そのまま大きくジャンプ。恐竜戦車の躍り出ると先程まで手に這わせていたウルトラスラッシュを手を突き出すことで放ち、勢いを与えられ、高速回転する光輪は恐竜戦車の頭部に深く斬り込む。

 

 

「DaダAアaアッ!!!」

 

「!」

 

 

雄たけびを上げ、マツミズ達を踏み潰そうとするダダにすかさず、エネルギー弾を発射。視界外からの攻撃をまともに浴びたことでダダは派手に吹き飛んだ。

 

 

「ッア…アァッ…!?」

 

 

痛みでのた打ち回るダダは何とか起き上がるも、今度は別方向から砲撃が襲い、再び地面に倒れてしまう。

 

 

「はぁっ…はぁっ…!」

 

 

撃ったのは山城だった。彼女はまだ回復していないのか肩で息をしている。その隣では時雨が彼女を支えて来たのか水面に立っていた。他にもマツミズの鎮守府に所属している陸奥をはじめとした艦娘数人が砲撃でダダを攻撃する。結局、山城の想いに打たれ、彼女を連れて行くことを選んだのだ。

 

 

「…!」

 

 

そんな山城を静かに見つめるゼノン。傍から見ても彼女が弱っているのは理解出来る。これ以上は彼女の身が危うい。ゼノンは両腕をパワータイマーの前でクロスさせ、エネルギーを溜める。すると大きく腕を広げて水平に構えると同時にビームを発射し、ダダと恐竜戦車両方に直撃、特に恐竜戦車はウルトラスラッシュで傷つけた場所に直撃し、貫いた。

 

 

「ハアアァァッ…!ゼェアァッ!!!」

 

 

更にゼノンは恐竜戦車にも使用した光のネットをダダにも発射。艦娘達やゼノンの攻撃でボロボロになっているダダを拘束し、マツミズ達から引き離すためにも自分の方へ引き寄せる。

 

 

「DアぁアあダAaaaaアアア!!!!」

 

「!?」

 

 

あと少しで地面に投げ飛ばされる筈だったダダだったが、テレポートすることで光のネットから脱出。ゼノンの目の前に現れると、そのままタックルを浴びせ不意をつかれたゼノンはまともに受けてしまった。

 

 

「グォォォォォーーーーンンッッ!!!!」

 

「ゼァァッッ…!?」

 

 

再びダダはテレポート。その瞬間、恐竜戦車が目から破壊光線を放ち、ゼノンも避けきれずに直撃。ダダが恐竜戦車の背後に現れると同時にゼノンは膝をつき、パワータイマーも点滅を始める。

 

破壊光線に砲撃の二つの攻撃がゼノンを苦しめ、身動きが取れなかった。パワータイマーが鳴り響く中、ダダは恐竜戦車に攻撃を止めさせ、ゼノンの背後へテレポートする。

 

 

「ッ!?」

 

 

振り向いたころには遅かった。ダダは両手をこちらに向けると徐々にダダの姿が消え、その場にはゼノンと恐竜戦車だけが残されていた。ダダはその能力でゼノンに乗り移ろうとしていたのだ。

 

 

「ウッ…ジュゥッ…!!」

 

 

頭を抑えて、もがき苦しむゼノン。ダダにその意識を奪われないように抵抗している表れなのだ。するとゼノンは右手に光弾を形成すると…。

 

 

「ゼァアッッ!!!」

 

【ダァッ!?】

 

 

一気に自分にぶつけたのだ。ダメージは負ってしまうが、それは現時点で意識を一体化させようとしているダダにもそのままダメージは向かい、内側からダダの悲鳴が聞こえる。

 

 

【出てけぇっ!!】

 

「ゼェアァアアアアッッッ!!!!!!!」

 

 

一瞬だがダダの意識に隙が出来た。その一瞬の隙を突いて、ユウマとゼノンの二つの意識がダダの意識を跳ね除けると、ダダはゼノンの身体から弾かれるように飛び出て恐竜戦車に直撃する。

 

 

「フッ…!」

 

 

一歩下がり、距離を取ったゼノンは両手を水平に広げ、視認出来るほどの煌くようなエネルギーを溜めると…。

 

 

「ゼェアァアアッッッ!!!!!!」

 

 

そのままL字に組んで、必殺光線であるゼノニウムカノンを繰り出す。まっすぐ伸びた光の奔流はダダを貫き、同時に恐竜戦車にも直撃、どちらも爆発四散する。

 

その場にはパワータイマーの点滅音が鳴り響く。何とかダダと恐竜戦車の撃破に成功したゼノンは肩で息しながらも空を見上げ、一気に飛び立つのだった。

 

 

「…──」

 

「山城!?」

 

 

またそれを見つめていた山城も糸が切れた人形のように崩れ落ち、そのまま水中に落ちてしまいそうになる。しかし危機一髪、それを隣にいた時雨が素早く反応し手を伸ばすのだった。

 

・・・

 

 

「───っ!!」

 

 

ハッと目を覚ました山城は目だけ動かし辺りを見回す。時計を確認すれば、あれから6時間以上は経っていた。するとそこには…。

 

 

「起きたのね、山城」

 

「姉さま…!?」

 

 

そこにはダダにより縮小されていた筈の扶桑が山城の手を優しく握っていた。ダダのマクロ化機を解析し、宇宙人達が作り上げた機器によって元の姿に戻っていたのだ。もう二度と会えないかもしれないと思っていた扶桑との再会に驚くも、次の瞬間には眼に涙を溜め、嗚咽を漏らす。

 

 

「良かったぁっ…。本当にっ…!」

 

「ええ…。私達はこれから先の未来も一緒よっ…」

 

 

山城と扶桑の瞳から涙が溢れ出す。ダダに襲われた時の恐怖心とは違い、心が満たされていく。これもこの姿で目覚めてから芽生えた感情のひとつだ。それは色んな人達と接していくうちに芽生えていった温かな感情だ。

 

 

「…」

 

 

それをあの後、そのままマツミズの鎮守府に戻り仕事を終えたユウマが離れた場所から聞き取っていた。倒れた山城のことは飛び去る最中に知っていたので、気になっていたのだ。流石にこれ以上はと思ったのか聞くのを止める。

 

 

「!」

 

 

するとユウマの表情が別人のように引き締まり、ゼノンブレスが嵌められた腕を夜空に突き出すと光弾が放たれ、一気に夜空を駆け見えなくなる。

 

 

(あれはなに?)

 

【ウルトラサインだ。私の母星へ送った】

 

 

見えなくなった光が駆けた夜空を見ながらユウマが内にいるゼノンに問いかけると、ゼノンの喋りに呼応するようにゼノンブレスの宝石も点滅しながら答える。どうやら先程のユウマはゼノンが表面に出てきていたようだ。もう見えなくなったがゼノンも調査員、なにかの報告だろうとそれ以上はなにも言わなかった。

 

・・・

 

 

「今回はとんでもない事になったな」

 

「いやぁーっまいった…。今日は演習どころじゃないしっ…、真っ先に俺が乗り移られるとはな…」

 

 

そんな山城達がいる鎮守府の執務室でマツミズとこの鎮守府の提督であるトダ・シゲユキは椅子にグッタリと身を預けながら天井を仰ぐ。今は落ち着き、ソーフィ達は自分達の鎮守府へ一足先に帰した後、今こうしてシゲユキと話をしていた。そう、シゲユキがこの鎮守府で真っ先にダダの被害に遭ったのだ。

 

 

「徐々に消えていく艦娘達。まさか提督の身体を使っての犯行とは思わないし、そして最後にその現場を目撃した扶桑型だったわけか」

 

「ああ。そうしたらもう俺の身体にいる必要はないし、さっさと身体を捨てたらと思ったら、扶桑を小さくした後は俺も小さくして、ラボのその辺にゴミのように捨てやがったよ。しかしビックリしたね。小便して執務室に戻ろうとドア開けたら、オカッパが待ち構えてんだもん」

 

「お前を探し出すのには苦労したよ」

 

「野郎はいらねぇからってその辺に放置しやがってよぉ」

 

 

今回の事件の発端を整理しているマツミズに当時のことを思い出し、怒りを感じているのかシゲユキがはき捨てるように言うとマツミズは苦笑しながら答える。彼らは旧知の仲で親友であり、シゲユキはユウマとも知り合っていた。

 

 

「そういやユウマはどう?生活は大変じゃないの?」

 

「まぁなんとかやっているけど…それでもユウマには苦労かけているよ」

 

「父親は宇宙開発の為の研究者、母親は宇宙飛行士…。母親はロケットで宇宙に行ったが行方不明。その後父親も事故死…。そんな中で引き取って性根も腐らせずに今まで一緒に生活して来たんだ。もう少し誇っても良いんじゃない?」

 

 

何気なくシゲユキがユウマについて問いかけると、マツミズはソファーに身を預けながら答える。自分に出来ることはしてきたが、やはり立場上知らないところでは苦労はさせているだろう。そんなマツミズにシゲユキは褒めながら今回の件を上層部にどう報告するか二人で纏めようとするのだった…。

 

・・・

 

 

「助けたのに怒られるし最悪!」

 

「独断で動いたから仕方ないわ。それに提督もそれとは別にお礼を言ってくださったじゃない」

 

 

翌日、マツミズ達の鎮守府の雑貨店にて瑞鶴がレジを勤めるユウマに商品とその金額を出しながら不満を漏らしていた。というのもダダの事件に対する独断での出撃などで鎮守府に戻った後、マツミズからお叱りがあったのだ。しかしマツミズ個人としての感謝もあったのか翔鶴がそれをフォローする。

 

 

「そう言えば、捕まった人達を戻したって言う機械の名前ってなんて言うんですか?」

 

「一応、ミクロ化機って名称らしいからマクロ化機って名づけたらしいわよ。安直よねー」

 

 

五航戦の会計を済ませたユウマが何気なく問いかけると名称は決まっていたのか、その場にいたペガッサと一緒に買い物をしていたガッツが答える。ミクロ化機以外にもリーディバイスと呼ばれるダダがスパークドールズを実体化させた小型銃も解析しているとのことだが、それは別にユウマに言う必要はない。

 

 

「マクロ化機…部分的に当てると大きくなったりするのでしょうか…?」

 

「ベガちゃんは今の方が一番良い抱き心地だから気にする必要ないでしょー?」

 

 

ボソッと誰に言うわけでもなくペガッサが自分の胸に手を当てながら呟くと、近くにいたガッツがそれを聞き取ったのか、意地悪そうな笑みを浮かべながらその豊満な胸をペガッサの頭へ乗せるように抱きつく。するとペガッサはワナワナと震え始め…。

 

 

「貴方がそうやって抱きつくから気にするんじゃないですかーっ!!」

 

 

そう言って怒りながらガッツを振り払い、げらげらと笑うガッツを追い掛け回し、その場に残ったユウマ達が笑いながら、二人の後姿を見ているのだった…。




<次回予告>

その存在が世間に知られ始めたウルトラマンゼノン。世界中が注目し様々な声が上がる中、ゼノンをヒーローと信じる少年がいた。少年が手に入れた青い宝石は少年の願望を具現化してしまう。一方、ユウマはロボットのような無感情な少女と奇妙な共同生活を送っていた。

次回 ヒーローの条件


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ヒーローの条件 part1

願望超人

アネーロ

登場


 

 

《フッ…!!ゼェアァアアッッッ!!!!!!》

 

 

時刻は夕方。街頭テレビに映るニュースを見て道行く人々はまたかと言わんばかりの表情。ニュースでは先日のダダの一件が報道され、一際目立っていたのはウルトラマンゼノンの存在だ。今も市民が撮影したと思われるゼノニウムカノンを繰り出すゼノンの姿が映っていた。

 

 

『政府はあの巨人の名称をウルトラマンゼノンだと発表したばかりですが、専門家の秋山さんどうでしょう。彼も宇宙人なのでしょうか?』

 

『今は決して多くはありませんが宇宙人もこの地球に暮らしている者達もいます。彼も宇宙人の一人でしょう』

 

 

ゼノンの写真が貼られたフリップを持ちながら、キャスターが原稿をチラッと確認しつつ専門家に話を伺うと、粛々とした専門家の男性は手を組みながら答えている。

 

 

「ふふっ」

 

 

それを一人の少女が見つめていた。しかし少女と言うにはあまりに知的で妖艶ささえも感じるほどに大人びた雰囲気を醸し出し思わず通行人もテレビではなく少女に視線を送っている。特徴的な青いサングラスを頭に乗せていた少女は口元に笑みを浮かべながら歩き始めるのであった

 

・・・

 

 

『ウルトラマンは味方なのでしょうか?』

 

『どうでしょうね、たまたま矛先がこちらに向かわなかっただけで、味方と言うにはまだ早計かと…。仮に味方だと言うのなら何か意思表示でもして欲しいですね、なにもしないんじゃただの無愛想な宇宙人ですよ』

 

「ウルトラマンかぁっ…!」

 

 

少女が歩き出したのと同時刻、ニュース番組を食い入るように見つめる小学生くらいの年の少年がいた。少年の名前はジュンヤ。この話の中心となる少年だ。ジュンヤはおもむろに立ち上がると勉強机に向かう。

 

 

「カッコいいな…。絶対にヒーローだよ!」

 

 

楽しそうにゼノンの似顔絵を書き始めるジュンヤ。その机には沢山の特撮ヒーローグッズが飾られていた。見ての通り、彼は大のヒーロー好きなのだ。そんな彼の中ではゼノンはヒーローの一人にカウントされていた。

 

そんなヒーローのゼノンことユウマというと…。

 

・・・

 

 

「…女の子が道端で倒れてたってそんな話…」

 

「いやホントなんです!学校から帰ってる最中、見つけて…。なんか艦娘みたいな感じだったから連絡したんですけど…」

 

 

翌日、場所はマツミズ宅。布団が敷かれ、そこには頭に艦娘達の艤装のアンテナのようなものをつけた長い茶髪の清楚な顔立ちの少女が眠っていた。

 

発見したユウマは艦娘か判別がつかず家の近くで見つけたので一人では鎮守府まで運べずこうして家で寝かせ、ソーフィ達を呼んだのだ。ユウマの話を聞いたソーフィはアニメかよ、と言わんばかりに顔を顰めるが、ユウマはもう一度手振りを交えて説明をしながら眠る少女を見る。まるで見惚れてしまうほど人形のような顔立ちだ。

 

 

「ホントにお人形ちゃんみたいねー。胸も大きいし…ユウ君、溜まってるならダッチワ──」

 

「それ以上言わないでください」

 

「冗談だってー。けどこの子、税別9000円くらいの抱き枕として売ってそうなくらい可愛い顔してるわね」

 

 

身体を乗り出して少女を見ているガッツ。布団を被ってる状態でもハッキリ分かる豊満な胸を見て神妙な顔でユウマに何かを言おうとするも、冷たい口調のペガッサに割り込まれ、楽しそうに笑いながら再び少女の顔を見ながらまた感想を言うと隣のペガッサはやたら具体的ですね、とため息を零す。

 

 

「…別にどこか悪いって訳でもないみたいですけど…この人の服装とか…ペダン星のキングジョーに似てませんか?」

 

「まぁあながち間違いではないだろうな」

 

 

少女に持ってきた機器などを取り付け、端末に表示されるデータを見ながら、ペガッサはずっと感じていたことを口にする。キングジョーとはベダン星人と言われる宇宙人達が作ったスーパーロボットだ。凄まじい戦闘力を持つことで恐れられ、その知名度は大きい。少女の頭部のアンテナのような装置を調べていたソーフィが答えると一同視線がソーフィに送られる。

 

 

「コイツの頭の装置…材質が地球には存在しない物だ。近いのはペダニウム合金だろう」

 

「ってことは…キングジョーが私達みたいに人間の女の子になったってこと?」

 

「どちらかと言えば艦娘みたいな存在だろうな」

 

 

ソーフィの話を聞いたガッツがソーフィの背中を見ながら問いかける。手に持つ端末を操作しながらソーフィが答える。兎に角今はここで調べるよりも鎮守府に運んだ方が良いだろう。手配をしようとした瞬間、少女が目を覚ます。

 

 

「…」

 

「あの…」

 

 

目を覚ました少女は目を動かし、周囲を見渡している。一言も喋らない少女にユウマがおずおずと声をかける。

 

 

「…ここは?」

 

「…俺の住んでる家…だけど…。君がウチの近くで倒れてたから運んだんだ」

 

 

ボソッとギリギリ聞こえるかどうかの声量で初めて声を発する少女の質問にゼノンとの一体化で聴力も変化した影響で聞きとったユウマが答える。

 

 

「なにか憶えていることはあるか?」

 

「…炎の中にいた記憶が…。私はこんな姿じゃなかった。喋れる…。思考が出来る…私の創造主達のように…」

 

「ペダン星人…か?」

 

 

そこにソーフィが割り込み、質問を始める。起きたばかりだが知らなくてはいけないことが多々ある。幸いどこか悪いという訳ではない為、答えられるだろう。質問に自分が記憶していることを話し、おぼろげに記憶している自分を作った存在と同じく喋ることなどが出来ていることに驚きを見せているとソーフィは更に質問を重ねたために、その問いにゆっくりと頷く。その事から彼女がキングジョーから転生した存在ではないかと考えられる。

 

 

「とりあえず今は鎮守府へ行こう。君も自分の状況が知りたいだろう?少なくとも私達は君よりも今の君の状況に詳しい。力になれる」

 

「…」

 

 

ソーフィがスマートフォンを取り出しながら少女に対し同行を求めると彼女も自分の状況を少しでも知りたいのか、すんなり頷き同行の意思を示す。それを確認したソーフィはスマートフォンを操作して送迎の手配をする。

 

・・・

 

 

「…」

 

「えっと…」

 

 

鎮守府から迎えの車がやって来た。先に出たガッツ、ペガッサ、そしてソーフィに車まで案内されている少女はふと立ち止まって振り返り、玄関先まで見送りに来ているユウマを見る。

 

 

「…貴方が私を見つけてくれた…。感謝をしている…けど…言葉が見つからない。どう言えばいいの?」

 

「えっーと…ありがとう…かな」

 

 

視線を動かし言葉を探している少女にパッと出た言葉をそのまま教えるユウマ。すると少女の視線はユウマを捉え…。

 

 

「ありが…とう」

 

「どういたしまして」

 

 

肉体を得て初めて発する感謝の言葉。少女は目を覚ましてからずっと無表情で元がそうだったからか機械のような印象さえ受けていた。別に笑ったりなどしない。変わりない無表情で言った少女に対してにっこりと笑いながらユウマは返事をする。

 

 

「そう言えば明日、提督は非番らしいぞ」

 

 

少女はそのままソーフィに導かれ車に乗り込む。最後にソーフィが乗ろうとするのだが、その時何気なく明日マツミズが非番であることを伝えるとそのまま乗り込み鎮守府へ向かうのだった…。

 

・・・

 

 

「はぁっ…」

 

 

同時刻、ジュンヤ少年も学校からの帰り道の公園のブランコに腰掛け、陰鬱な気分なのか重いため息をついていた。

 

 

『お前、まだ特撮なんて見てんのかよーっ!』

 

 

思い出すのは今日の学校での出来事。クラスメイトが自分の筆箱にお守り代わりに隠し入れていた特撮ヒーローのキーホールダーを見つけてそれを持って大きな声で言ってしまったのだ。お陰でクラス中に広まり、特撮ヒーローが好きなことを秘密にしていたことと、もう見なくなり特撮ヒーロー=子供が見るものという認識が出来上がりつつある背伸びがちなクラスメイト達から冷やかされて笑いものにされてしまい、恥をかいてしまった。

 

 

「アイツ、嫌い…。痛い目に遭わせてやりたいな…。はぁっ…ウルトラマンがやっつけてくんないかな」

 

 

元はと言えば、あのクラスメイトが隠していたキーホールダーを見つけたことが切っ掛けでこうなった。そう考えると少し恨んでしまい、自分がヒーローの一人と信じるゼノンにそう願ってしまう。

 

 

「…」

 

 

ふとジュンヤはランドセルに入っている自由帳を取り出し、ペラペラとめくり始める。そこには今まで描いた自分が考えたヒーローの絵があった。やがてまだ何も書かれていない白紙のページにすると筆箱から鉛筆を取り出して自分だけのヒーローの絵を描き始める。ヒーロー番組を見るのは好きだ。そして自分だけのヒーローを描いているこの時間も大好きだ。

 

 

「───ねぇ、それはなに」

 

 

描き始めたページにはゼノンを彷彿とさせる要素を取り入れ、今まで自分が見ていた特撮ヒーローの格好良いと思った部分も取り入れたジュンヤだけのオリジナルヒーローが描かれていた。

 

そんなジュンヤに声をかける女性がいた。描くのに夢中になっていたために近づいていたのに全く気づかなかった。

 

顔を上げ、声をかけた女性を見上げる。思わず声が零れる、それほどまでに見惚れる女性がいた。特徴的な青いサングラスを頭に乗せているその女性は夕日に照らされ、ジュンヤに向かって微笑むのだった…。




今回の敵はオリジナルです。そして擬人化計画の方から二人キャラが登場しました。果たして彼女達が与える影響とは…


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ヒーローの条件 part2

 

 

「聞いてる?」

 

「えっ!?あっ…そのっ…! ヒ、ヒーローを…自分で考えたヒーローを描いてました…」

 

 

声をかけてきた女性に見惚れて声が出なかった。話しかけたにも関わらず返事もしないジュンヤに怪訝そうな顔で再び話しかける女性にジュンヤは慌てて答えるが、すぐに、しまったと思った。

 

───きっとこの人も僕を笑うんだ。

 

ヒーローが好きなだけならまだしも、自分だけのヒーローを一人で夢中になって描いてたなんて言えば、クラスメイト達のように自分を笑うだろう。ジュンヤはそう考えたのだ。

 

 

「へー…強そうだね、格好良いよ」

 

 

しかしジュンヤが想像していたリアクションとは違った反応が返ってきた。女性は自由帳を覗き込んで、関心したような声を漏らす。

 

 

「あっ…あの…貴方は僕を笑わないんですか…?」

 

「笑われたいの?」

 

 

今までの人間達の反応とは違った反応を示す女性。クラスメイトも、親でさえいい加減、特撮ヒーローなんて卒業したら、なんて笑うのに目の前の女性はまったく違う。その事に思わず尋ねると変な質問に女性はどこか引き気味に答える。

 

 

「いやっ…あの…今までこんな風にヒーロー描いたり、ヒーローの大ファンだって知られたら、皆笑ったから…恥ずかしいことなんだと思ってて…」

 

「別に構わないと思うけど。笑おうとも思わないし何かを好きである事を恥ずかしいとも思う必要もないんじゃないかな」

 

 

変な風に取られてしまった。慌てて質問の意味を説明すると女性は不思議そうに首を少し傾げながらジュンヤの隣に座って己の考えを口にすると、そうだ、恥ずかしがる必要なんてないんだとジュンヤは笑顔を浮かべる。

 

 

「ねぇ、それはどんなヒーローなの?」

 

「あっ…その…アネーロって言うヒーローで…ヒーローだから悪い奴は絶対に倒すんです」

 

 

女性はジュンヤの隣に座り、優しげな笑顔を浮かべ自由帳に描かれたヒーローについて聞いてくる。ただでさえその顔立ちは見惚れるくらい美しいのにその笑顔、淑女のような女性に鼓動が早くなり顔を赤らめながらもジュンヤは説明をする。

 

 

「絶対に、ね…。面白いよ、君もそのヒーローも…。そんな君にプレゼントをあげるよ」

 

 

ジュンヤの説明に一瞬ではあるが鋭く目を細めた女性は再び笑顔を作り、どこからともなく現した青い宝石を取り出しジュンヤに手渡す。美しい。純粋にそう思った。こんな物は受け取れないと女性を見るが…。

 

 

「頭にアネーロを思い浮かべてこう念じてみて。"アネーロ、僕だけに姿を見せて”」

 

 

女性は意に介さずジュンヤに指示をする。意味が分からない、ジュンヤはそう思いながら女性に言われた通り、宝石をギュッと持ち、目を閉じて念じてみる。

 

 

【…】

 

「わっ!?」

 

 

ふと目を開けてみる。そして驚く。目の前には巨大な足が。見上げてみるとそこには自分が描いたヒーロー・アネーロが自分を見下ろしていたのだ。驚いて宝石を落とすとアネーロは姿を消す。

 

 

「見えた?…これは君に預けるよ。今は色々と物騒だからね。もし怪獣とかが現れた時は、その宝石に念じればアネーロが助けてくれるよ。そう、あのウルトラマンのようにね」

 

 

ジュンヤの反応にどこか含みのある笑みを浮かべた女性は落ちた宝石を拾い、再びジュンヤの手の平に置いて握らせると立ち上がって背を向けて歩き出す。

 

 

「お、お姉さん!また…会える…?名前とか…」

 

「名前…?布良(めら)フィス…って名乗ってるよ。また会えるよ。ばいばい」

 

 

立ち上がって女性の背中に向かって声をかける。これで最後にしたくない、出来ればまた会いたい、話したい。そう思ったのだ。女性は己の名前を名乗り、背を向けたまま表情を見せずにそのまま去っていく。

 

 

「…ヒーロー…か」

 

 

女性の言葉を思い出しながら、手の平の宝石を見る。紙の上の存在だった自分だけのヒーローがその姿を現したのだ。自分だけと念じたが、その気になれば大衆の前で姿を見せられるし、怪獣などとも戦えるかもしれない。自分だけのヒーローではなく、皆のヒーローになれるのだ。いや、寧ろ今のジュンヤは自分がヒーローになったような気分だった。

 

・・・

 

 

「ただいま」

 

「お帰りなさい…って、えぇっ!!?」

 

 

翌日の日曜日、11時頃にマツミズが帰ってきた。マツミズの声が聞こえた為、ユウマが玄関先で出迎えるがマツミズと一緒にいる存在に気づき驚く。そこには昨日の少女や赤城や金剛を始めとしたポニーテールと意志の強そうなツリ目が印象的な阿賀野型の艦娘である矢矧などの艦娘達がマツミズと共に外見年齢に相応しい服装で立っていた。

 

 

「なんで、皆さんが…?」

 

「本当はいけないことなんだけどね。赤城と金剛の復帰を祝って非番だったから誘ったんだ。この先の未来、彼女達の進む道に少しでも刺激になればいいと思ってね。矢矧も同じく非番だったんだけど興味があったみたいで一緒に来てくれたんだ」

 

 

艦娘達が鎮守府以外の大地に立っているのを見たのがこれが初めてだ。思わずマツミズに問いかけるとマツミズは艦娘達三人を見て、まるで父親のような目だ。

 

 

「でも、そんなことしたら他の人達だって…」

 

「勿論、今回、彼女達と予定が合ったから一緒に出かけたが、他の者達も私と予定が合って当人の意思があれば、これからも内密に外の世界に連れて行こうとは思っている。艦娘達も何れは世間に公表される。そうなれば少しぐらい自由行動の幅も広がる。それまでの辛抱さ。他の娘達にもちゃんと説明はしたよ」

 

 

他の艦娘達に贔屓されていると思われるのではと心配するユウマにマツミズは優しく答える。流石に完全に世間に公表されていない今の状況で彼女達を自由に外の世界に行かせるのはまずいと思ったのか監視という名目ではあるが行動は共にするという事だ。

 

だがそれも艦娘の存在が国民に説明されればそれもなくなる。好きに外の世界を散策出来ると言う訳ではないが住民達ともトラブルさえなければ許可があればこの町を自由に行動することくらいは出来るだろう。その後、立ち話もなんだという事で居間に場所を移す。

 

・・・

 

 

「矢矧さん久しぶりですね」

 

「ええ、ユウマも元気そうでなによりよ」

 

 

居間に場所を移し、それぞれ上着などを自分の傍に置きマツミズの勧めでコタツに座るなかユウマは矢矧に声をかける。彼女と会うのは何週間ぶりだろうか。一応、鎮守府でバイト紛いのことはやっているがそれでも時間が合わない艦娘達などはいる。久しぶりの再会に矢矧も微笑を浮かべる。

 

 

「ところで結局、この人は…?」

 

「…この国のことを調べたけど恩返しという言葉がある…。貴方には恩がある。それを返す為に来た…」

 

 

向かい合う形でコタツに座るユウマと昨日の少女。先程からジッとこちらを見てくる少女に少したじろぎながらマツミズに聞こうとすると、答えようとするマツミズよりも先に少女が答える。

 

 

「そういうことらしい。まぁ少なくとも害意はないしソーフィ達も許可したから連れて来たんだ。キングジョーと言う名前だったらしいけど、長いから…」

 

「ジョウ…。そう呼ばれることになった」

 

 

少し補足をするマツミズは少女の名前を言おうとするも、これもまた少女ことジョウが先に答える。

 

 

「ところでお昼なんだけど…今日はなににしようか」

 

「叔父さんが好きな鍋にしようかと思ったんだけど…流石に材料が足りないかな…」

 

 

腹部を撫でながらユウマに昼食の献立を問いかけるマツミズ。時間は11時を過ぎた。少し空腹感を感じる。前日にマツミズが帰ってくることをソーフィから聞いていたので予めマツミズの好きな鍋の材料は買ってはいたのだが予期せぬ来客達の分は買ってはいないため、困ったような表情を浮かべる。その後、全員で今から買いに行くことが決定した。

 

・・・

 

 

「はぁっ…はぁっ…」

 

 

商店街の人ごみを避けながらハンドバックを持ったジュンヤ少年が走っている。この先にあの公園がある。そこにいけばフィスに会えるかもしれない。昨日、フィスと別れた後、アネーロのパワーアップ案を考えたのだ。それを真っ先にフィスに見せたかった。

 

 

「うあっ!?」

 

「──おっ!?」

 

 

曲がり角を曲がろうと瞬間、出会い頭に誰かにぶつかってしまった。相手は自分よりも年上の人間だったのか尻餅をつき、ハンドバック内の自由帳などが地面に散乱してしまう。ぶつかった相手はユウマだった。その周りにはマツミズ達がいる。

 

 

「なにやってるんだ、ユウマ」

 

「ごめん…。君もごめんね、大丈夫?」

 

「はい、ごめんなさい…」

 

 

ユウマを注意しながらこちらに向かってくるマツミズは地面に散乱しているジュンヤの所有物を拾うためにしゃがんでいた。ユウマもジュンヤに謝りながら彼を起き上がらせ、尻の埃を手で払いながら問いかけると、ジュンヤは頷き、自分も謝罪をする。

 

 

 

 

「…ん?これは…今やってるヒーローかなにかかな?」

 

 

謝るジュンヤとユウマに頷きながら自分も落ちたジュンヤの私物を拾うのを参加し出した赤城達に倣って拾い始めると、マツミズがジュンヤの自由帳を拾い、開かれたページを描かれたアネーロを見て、近くのユウマに訪ねると、流石にヒーローなどに詳しくないのかユウマは首を傾げる。

 

 

「あっ!あの…ありがとうございました…!」

 

「あぁっすまない。君も気をつけるんだよ」

 

 

アネーロが描かれたページを見られたことに引っ手繰るように自由帳をマツミズから取ると、全ての所有物を確認しユウマ達に頭を下げるとそのまま走っていく。開かれていたとはいえ勝手に自由帳を見たことにマツミズは謝りながらもジュンヤに声をかけるとジュンヤはこちらに向かって小さく会釈をしながら走り去っていくのだった…。

 

・・・

 

 

「…っ!?」

 

 

あれから数分、昨日の公園にやって来たジュンヤ。公園に入った瞬間、苦々しい表情を浮かべる。それはフィスがその場にいなかったことに対することではない。会いたくない人物がいたからだ。

 

 

「あれお前、ヒーロー好きな奴じゃん。今日も朝やってたけど見てきたのかー?」

 

 

そこには他のクラスの者達に笑われた原因ともなったクラスメイトがいた。確か名前はカケルと言ったか。彼はクラスから人気がある存在だ。その証拠に友達が数名、一緒にいた。カケルもジュンヤに気づくと何気なく声をかける。しかし周りの友人達がそれがからかいに聞こえたのかゲラゲラと笑い、ジュンヤはピクリと反応する。

 

 

「ッ!!」

 

「あっ…」

 

 

別にカケルに悪意がある訳じゃない。カケルのジュンヤに対する印象はヒーロー好きなクラスメイトだ。だがカケルの言葉が周囲の彼の友人達はからかいに聞こえたのか自分もと言わんばかりにジュンヤのことをからかい笑い始める。それがジュンヤの怒りを買ったのか、悔しそうな顔を浮かべたジュンヤはカケル達に背を向け走り出し、カケルはその顔を見てなにか思うことがあったのか引き止めようとするが、思いのほかジュンヤの足は速くもう声が届かない。

 

・・・

 

 

「あいつ…あいつ等…また笑った…僕のこと…!」

 

 

カケル達から然程離れていないが人気のないところに入ったジュンヤは悔しそうに顔を歪ませる。笑われたのが許せないのだ。昨日、フィスから好きなことが恥ずかしいとは思わないと言われた。だからこそ悔しかった。好きで何が悪いと言いたかった。しかし気弱な自分は数名いるクラスメイト達にはなにも言うことは出来なかった。

 

 

「人の好きなことを笑うなんて…あいつ等は悪い奴だ!あんな奴ら…だいっ嫌いだ!!」

 

 

自分の中で怒りがあふれ出す。ポケットにはフィスから貰ったあの宝石がある。完全に怒りに支配されているジュンヤはポケットから宝石を取り出し、自分が思い描いたヒーローの存在を願う。

 

・・・

 

 

「──What!?」

 

 

商店街で買い物をしていたユウマ達は突然、現れた巨人…アネーロの存在に驚く。一番に金剛が声を上げて驚いていた。

 

 

「あれも…ウルトラマン…なのでしょうか…?」

 

 

まるで特撮ヒーロー番組に出ても不思議ではないようなトリコロールカラーのヒーロー然とした姿にウルトラマンの同族かと赤城は誰に問いかける訳でもなく呟く。

 

 

(そうなのか?)

 

【違う。しかし何か嫌な予感がする】

 

 

赤城の呟きを聞き取ったユウマが同化しているゼノンに問いかけると、ゼノンはそれをキッパリと否定する。しかしゼノンの予感は的中することになる。アネーロは公園を歩みを進めるとしゃがんで、カケル少年達を全員纏めてその手に掴んだのだ。

 

 

「ッ!」

 

「あれは…さっきの少年の絵に似てるな…ってユウマ!?」

 

 

それはゼノンと同化している視力が強化されているユウマの目に映っていた。嫌な予感がする。すぐさま持っていた荷物を矢矧達に押し付けると走り出す。アネーロの姿を見て先程のジュンヤの絵を思い出すマツミズだったが、アネーロに向かって走り出したユウマに自分もそして赤城達も追いかけるがユウマの脚力を異常ですぐに見失ってしまった。

 

・・・

 

 

「痛い…っ…痛いよ…っ!!」

 

 

アネーロに掴まれたカケル達はアネーロの両手に包まれながらジワジワと力を込められ苦悶の声を上げる。それはまるで簡単には殺さないと言わんばかりだ。

 

 

「──な…なんで…!?もう良いのに…!?」

 

 

しかしそれは流石にジュンヤの考えではない。少し痛い目をあえば良いと思っていただけで殺そうとまでは思っていなかったのだ。流石にもう良いと感じたのかアネーロに止める様に宝石に願う。しかし幾ら願ってもアネーロは止めない。寧ろまた少しずつ力を込めている。

 

 

「──やってるねぇ」

 

「フィスお姉ちゃん!?」

 

 

そんな自分に聞き覚えのある声が聞こえる。見れば、そこにはフィスの姿が。自分がいる場所がよく分かったなとは思ったが、今はそんな事よりも言わなくちゃいけないことがある。

 

 

「お姉ちゃん、おかしいんだよ!!幾ら願ってもアネーロが言うこと聞かないんだ!」

 

「…あぁっ、それは多分、彼が"ヒーロー”だからだよ」

 

 

このままではカケル達が死んでしまう。怒りに支配され、その場の感情でアネーロに願ったが今の状況を見て、事の重大さを知り我に返ったのだろう。ジュンヤの問いかけに少し考えるような仕草を見せたフィスはゆっくりと答える。その答えにジュンヤは唖然とする。なにを言っているんだろう、と…。

 

 

「"ヒーローは悪い奴は絶対に倒す”…だったよね。だから彼はそれを実行しているんだよ。君の中の”ヒーロー”を実行する為に。君がそう願ったからじゃないのかい?彼らが悪だと。だから彼は止めないよ、"ヒーロー"だからね。何より創造主である君が彼らを悪と決めたんだから」

 

「そんな…僕は…」

 

 

フィスの言葉にジュンヤは両膝をつく。ただ少し痛い目を見れば良いと思った。だがこのままじゃ確実にカケル達は死ぬだろう。その様子を見て、フィスはため息をつく。

 

 

「…止めたいんだったら、願えば良いんじゃない?そういう代物だし…」

 

「なにを…?」

 

「アレを止めたいなら、止められるような存在を願えば良い」

 

 

どこか呆れ気味にフィスは横目でジュンヤに言う。思わず聞き返すジュンヤ。止めろと願った所で止めないのは彼女も知っているはずだ。するとその返答を聞いたジュンヤはゼノンの存在が浮かぶ。

 

・・・

 

 

「ゼノオオオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーンッッッッ!!!!!!!」

 

 

同時刻、アネーロの近くまでやって来たユウマは人がいないことを確認し、拳を突き上げてゼノンの名を叫ぶ。すると突き上げた腕に嵌められたゼノンブレスの宝石が輝き、突き上げた拳からゼノンの姿に変わり、巨大化する。

 

 

「ッ!?」

 

 

アネーロの前を光が通り過ぎる。違和感を感じ、アネーロが握りつつある手を見ると先程まで掴んでいた"悪者達”がいない。もしやと思い、先程の通り過ぎた光の方向を見る。

 

 

「ウルトラマンゼノン…!」

 

 

そこにはゼノンがその場にしゃがんでアネーロの前を通り過ぎた際に奪ったカケル達をゆっくりと地面に降ろし、額のクリスタルの部分に右手を固めカケル達にかざしていた。ゴモラの時に使用した治癒光線だ。傷ついたカケル達の身体が治癒されたことである程度、元気になったのかカケルが自分達を助け、今見下ろしている存在の名前を口にする。

 

 

「ハァッ!」

 

「…」

 

 

アネーロは目の前の巨人を悪と認識する。創造主であるジュンヤが悪と決めた存在を自分から奪い、更には治療までしたのだから。すぐさまヒーローのような臨戦態勢を取るアネーロにゼノンは静かに立ち上がり振り返ると戦う気満々のアネーロを見て自分も構えを取るのだった…。




ということで新たに登場した擬人化キャラ二名に名前がつきました。私はネーミングセンス皆無なので名前も元の名前を並べ替えただけとかそんな感じです。


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ヒーローの条件 part3

 

 

「ハァッ!!」

 

「…」

 

 

声を上げ大きくジャンプして一回転。そのまま飛び蹴りを放つアネーロ。この一連の動作はジュンヤがヒーロー番組でよく見ていた動作だった。しかしゼノンは静かにそれを見るとバックステップで後方に下がる。標的がその場にいない為、宙にいるアネーロは先程までゼノンがいた場所にそのまま着地。ゼノンを見る為、前を見ようとした瞬間、ナイフのような鋭い回し蹴りを浴びせられる。

 

 

「グゥッ…!」

 

 

痛烈な一撃を浴びせられたことで地面に倒れるアネーロ。しかし自分は創造主であるジュンヤが生み出したヒーローだ。目の前の"悪"を倒さねばならない。決して諦めてはいけないのだ。そんな意思を表すようにグッと握り締めた拳を掲げて立ち上がる。

 

一気に踏み込んで殴りかかるアネーロ。しかしその拳もゼノンに受け止められ更には捻られる。捻られたことで痛みに悶え動きを制限されたアネーロ。間髪いれずにゼノンから顎先を蹴られ再び地面に頭をぶつける。

 

 

「ッ…!」

 

「ジュゥッ…」

 

 

地面に倒れたアネーロはそれでも諦めずに立ち上がり、それを見てゼノンはため息を付くように小さく肩を落す。アネーロの動きはゼノンにとってとても見極めやすい動きばかりだった。"悪"を倒すためアネーロは頭上で両腕をクロスさせると紅蓮の炎に包まれる。

 

・・・

 

 

「あれは…ッ!!」

 

 

戦闘を見ていたジュンヤはハッと険しい表情を浮かべる。見る見るうちにアネーロの身体は紅く染まり、より筋肉質な身体へ変化する。あれこそ自分が描いたアネーロのパワーアップ案の姿であった。

 

 

「──君、大丈夫か!?」

 

 

戦闘を見る限りゼノンの方が上手であるのを見て取れるがパワーアップしたアネーロの力はどうなっているのかは分からない。ジュンヤがゼノンの身を案じていると、そこにマツミズ達がジュンヤとフィスを見つける。ユウマを探している最中に見つけたのだ。

 

 

「君は…ヤツの事が描いてあったノートの持ち主だったな」

 

「…あれは…僕の願いが表れたものなんです…。僕がコレにアイツを願ったから…。アイツは僕が考えたヒーローなんです…」

 

 

マツミズはジュンヤの顔を見て、アネーロの事が描かれていたノートの所有者の少年という事を覚えており、そのことについて言うとジュンヤはおずおずと手に持つ青い宝石とバックからノートを見せながら答える。

 

 

「そんなおかしな話…」

 

「…だが、実際に起きている以上は信じないわけには行かない」

 

 

いくらノートを魅せられても、流石にあり得ないと言わんばかりの矢矧に俄かには信じがたいと言った表情を浮かべるも、現にノートに描かれたアネーロが現実に姿を現している状況にマツミズは静かに答える。

 

・・・

 

 

「ディアッ…!」

 

 

両手にそれぞれ撥のようなモノを持ったアネーロ強化態は振る事でその先端から炎を出す。ゼノンはすぐさま両手を突き出してバリアを張り防御するもそのあまりにも強い威力に驚いていた。このまま撃ち続けられるのは不味い。しかしアネーロ強化態は少しずつ前に進み、ジワジジワリと距離を詰めていた。

 

 

「ジェイアッ!!!」

 

 

このままで危ない。ゼノンはバリアを払い、前へ転がるように飛び出し、地面に両手をつき、そのまま力いっぱい地面をドンッと勢いつけて蹴りをアネーロ強化態の腹部を強く蹴る。ゼノンの行動に身構えて蹴りを耐えるとそのまま蹴りを放ったゼノンを撥状の打撃武器で地面に叩きつけた。

 

 

『止めて、アネーロ!!』

 

「…」

 

 

ジュンヤの声がアネーロの頭に届く。いや先程からずっと届いていた。何故、創造主であるジュンヤはそこまで自分を制止しようとしているのか。

 

──自分の都合で呼び出したくせに…。この創造主も"悪"なのか?

 

アネーロの中でそんな疑問が出てくる。いやしかし彼は自分の生みの親だ。"悪"を絶対に倒すと教えてくれたのは彼の筈だ。

 

 

「…」

 

 

そこで考える。近くにいるマツミズ達の存在を。奴らが自分の創造主であるジュンヤを唆したのではないかと。ならば奴らも“悪”だ。“悪”は絶対に倒す。アネーロ強化態は再び打撃武器から鋭い熱線のようなモノを放ちマツミズ達を焼き払おうとする。

 

・・・

 

 

「ッ!?」

 

 

こちらに向かってくる鋭い熱線。それはジュンヤを除いたマツミズ達だけに向けられていた。このままでは危険だ。しかし今からでは避けられない。マツミズ達が身構えたその時…。

 

 

「──デェアァッ!!?」

 

「ほぉ…」

 

 

自分達の前に滑り込んだゼノンが熱線を浴びる。その自己犠牲の行動にフィスは小さく声を漏らす。それは感心しているのか、呆れているのかは彼女にしか分からない。

 

・・・

 

 

「ウゥッ…!!ジェァアアッ!!!」

 

 

何とか耐え続けるゼノンは両手を水平に広げエネルギーを溜めるとL字に組んでゼノニウムカノンを放ち熱線を押し返してアネーロ強化態に浴びせる。流石にゼノニウムカノンの威力は絶大なのかアネーロ強化態は数歩下がり光線を終える頃には強化態が解け膝をついていた。

 

 

「…」

 

 

ゼノンが膝をついているアネーロに歩み寄る。後数歩のところでアネーロの元だ。その瞬間、アネーロは飛び掛るようにゼノンに殴りかかる。

 

 

「「──ッ!!」」

 

 

鈍い音が周囲に鳴り響く。アネーロの拳はゼノンに届く事はなく逆にゼノンの拳がアネーロの腕を交差しクロスカウンターとしてアネーロの顔面に抉るように浴びせられアネーロはそのまま崩れ去ると粒子となって消え去ったのだ。

 

消え去ったアネーロ。再び現れるような気配もない。そこである視線に気づく。フィスのモノだ。気にはなるもののゼノンは空を見上げそのまま飛び立ち空の彼方に消えるのだった…。

 

・・・

 

 

「僕がヒーローなんて望まなきゃ…」

 

 

戦闘が終わりジュンヤが一人、呟く。自分のせいで危うくカケル達が死ぬところだった。その責任を重く感じていたのだ。

 

 

「別にヒーローという存在が悪いわけじゃない。君にとってのヒーローとはなんだい?」

 

「…悪い奴は絶対に倒す人」

 

 

マツミズがジュンヤの目線に合わせてしゃがみ、ヒーローという存在その物を嫌いになりそうなジュンヤに優しく問いかけると、俯きながらボソッとジュンヤは問いに答える。

 

 

「これはあくまで私の考えだが…世界や誰かの為に自分の意思で自分が出来る精一杯の事を進んでやれる人が結果的にヒーローという存在なんだと思う。そこに力は関係ない。ウルトラマンもきっと同じだと思うし、もしこれが出来るのであれば君も私にとってのヒーローだ」

 

 

マツミズの中のヒーロー観をジュンヤの両肩に優しく手をかけながら説くと、その話を聞いた俯いていたジュンヤは静かに顔を上げ、マツミズを見る。

 

 

「これ…オジサンが持ってて欲しい」

 

 

ジュンヤは手に持っていた青い宝石をマツミズに差し出す。この人なら渡しても大丈夫だろうと心から思った。マツミズもこれが本当ならどんな事が起きるか分からない。受け取り、軍で保管するべきかと受け取ろうとした瞬間、青い宝石は突如として消えてしまう。

 

 

「あれ…!?」

 

「──おーい!!」

 

 

突然、消えてしまった青い宝石にジュンヤを始めとするその場にいた者達は驚く。マツミズも立ち上がり、周囲を見渡せばフィスもいないのだ。しかしそんな彼ら、いや、ジュンヤに声をかける者がいた。声の方向へ振り返るとそこにはカケル達がこちらに走り寄って来ていた。

 

 

「大丈夫か!?」

 

「えっ…僕は大丈夫だけど…君達は…」

 

 

カケルがジュンヤの両肩を掴んでブンブンと揺さぶる。心配されるのはありがたいが、寧ろ危なかったのは彼らだろう。

 

 

「俺達はゼノンに助けてもらったから大丈夫だよ!…それより俺、お前に悪い事しちまったよな」

 

「えっ…?」

 

 

カケルは両手を離し手を広げて特に問題はないことを教えると、手を合わせて申し訳なさそうにジュンヤに謝る。その行動にジュンヤは目を丸くする。一体、何故と。

 

 

「…ちょっとからかって笑い話にしようと思ってたんだけど…予想外にクラスの奴らに広まっちゃってさ…。お前のさっきの顔を見て本当に嫌がってるなんて思ってなかったんだよ…俺、よく無神経とか言われるしさ…。本っっ当にごめんっ!!」

 

「や、止めてよ…。それに僕だって君達に…」

 

 

頭を深々と下げるカケルに困惑するジュンヤ。信じてくれないかもしれないが自分も彼らに酷い事をしてしまったからだ。

 

 

「まぁ兎に角、まずは病院に行こうか。ウルトラマンに治して貰ったって言ったって一応、診てもらわないと」

 

 

カケルとジュンヤの肩をそれぞれ抱いてマツミズが語りかける。別にゼノンの能力を疑う訳ではないが、やはり病院にちゃんと連れて行かねば。

 

・・・

 

 

「♪~♪~♪」

 

「──待て!」

 

 

アネーロの出現で人気のないジュンヤ達がいた場所から然程離れていない公園の橋を渡りながらジュンヤの手から消え去った青い宝石を手で弄り、フィスは上機嫌に鼻歌を歌っていた。そんな彼女を後ろから声をかける者がいた。ユウマだ。それが分かっているのかフィスは振り返らないものの口元に微笑を浮かべていた。

 

 

「君は何者だ…?人間ではないな」

 

「それは君もでしょ?今の君は人間?それとも宇宙人?」

 

 

ゼノンとして戦闘を終えた時にフィスの視線からフィスのことが気になっていた。人間とは違う何かを感じる彼女にユウマが警戒しながら問いかける。するとフィスは背中の後ろで両手を組んで振り返り、少し前屈みになって悪戯っぽい笑みを浮かべながらユウマに問いかける。

 

 

「…両方だ。文明を監視し生命の未来を救う為に戦う存在だ」

 

 

ユウマは少し間をおいて静かにフィスの問いかけに答える。それはユウマとゼノン、両者の意思の言葉だ。それを聞き、風に靡く艶やかな黒髪を触りながらフィスは自嘲気味に笑う。

 

 

「…今の私はどっちなのかは分からない。死んだらこの姿。人間なのか宇宙人なのか分からない」

 

「…今回の騒動は君の仕業か?」

 

「私はあくまで切っ掛けに過ぎない。ヒーローに憧れるあの子の心に挑戦したんだよ。一体、どんな事になるんだろうってね。まぁ結局、彼も人間だね。感情に任せてこの力を使った」

 

 

寂しげな悲哀さを感じるその笑みは紛れもない彼女の本心だった。彼女がソーフィ達と同じ存在だと知ったところでユウマは先程のアネーロの一件について尋ねると一転、先程の笑みがなくなり再び青い宝石を弄くりながら嘲笑するように答える。

 

 

「危うく子供の命が奪われる所だったんだぞ!?それにそれはなんなんだ!?」

 

「さあね。私が知ってるのはこれがある文明を滅ぼしたモノと似たタイプのモノだってことだよ」

 

 

ユウマは声を荒げる。今回の件、彼女はなにも感じてはいないのだろうか。しかしフィスは涼風を浴びたような顔で手に平に乗せた青い宝石を見せる。青い宝石は姿を変え、赤い球体に変化する。

 

 

「…兎に角、俺と来てもらう。もし抵抗するなら…」

 

「おっと止めてよ。私は争いごとが嫌いなんだ。一応、君も私も宇宙人のようなものなんだし宇宙人同士が争っても、しようがない」

 

 

静かに身構えるユウマ。彼女は危険だ。ソーフィ達のもとへ連れて行かねば。しかしフィスは両手を広げ、肩を竦めて首を振る。大人しく連いて行く気はないようだ。その反応を見て、ユウマが動き出そうと一歩踏み出した瞬間、フィスの身体は足元から消え、その場から完全に消え去る。

 

 

『私も一応は元の能力もある程度は使えてね。今日はこれで失礼させてもらうよ。それに君も私ばかりに気をとられている場合ではないと思うよ。まぁ…精々頑張ることだね』

 

 

先程までフィスがいた場所で周囲を見渡すユウマ。幾ら探してもフィスはいないが、フィスの声だけがその場に残る。最後に気がかりな言葉を残し、彼女はいなくなった。

 

・・・

 

 

「それでは鎮守府の再建も終わり、それを記念しての鍋パーティーだ。皆じゃんじゃん食べて欲しい。乾杯っ!!」

 

 

アネーロの一件から後日、再建した鎮守府では小さいながらも所属する者を集めたパーティーが行われた。結局、アネーロの事後処理のせいでマツミズや赤城達は鎮守府へ戻り、鍋を食べる事は出来なかった為、改めてここで鍋が振舞われることとなったのだ。マツミズの乾杯の音頭でパーティーが行われる。

 

 

「こういうの良いわね」

 

「ええ」

 

 

艦娘達は並べられた様々な鍋を食べ熱いや美味いなど様々な反応をする中、矢矧とユウマ、ジョウは並んで鍋を小皿に取り分け食べていた。そんな中でふと矢矧が周囲を見ながら口にするとユウマは頷く。こんな賑やかな食堂は普段の戦いのことなど忘れさせられる。

 

 

「…私ね、この間の非番の時、外の世界に出て皆と買い物したりして思ったわ。もし、この先の未来があるなら今度は艦娘じゃなく、違う未来もいいかもって…」

 

「…きっと矢矧さんなら、そんな違う未来に手が届きますよ。いや他の皆さんだってそうです」

 

 

矢矧がふと小さく悩みを打ち明けるように答えるとユウマも周囲を見渡しながら答える。寧ろ、彼女達が艦娘以外の生き方を見出すのはいい事だと思うからだ。

 

 

「この野菜、ちゃんと切られていて美味しいね」

 

「…それは私が切った」

 

 

ユウマは取り分けた鍋の野菜を食べながら鍋の感想を口にする。熱くはあるもののそれ以上に味が染みていて非常に美味しかった。それを隣に座っていたジョウが静かに答える。

 

 

「えっ…でも君、包丁とか使えたの?」

 

「私の頭の装置は知りたいことをリアルタイムでネット上などで検索し教えてくれる。だって私はスーパーロボットだから」

 

 

彼女は目覚めて時間があまり経ってない筈だ。疑問に感じたユウマの問いかけにジョウは若干したり顔で頭の装置を指差しながら答える。どうやら頭の艤装のようなモノはネット上で知りえた情報などをそのまま自分自身にフィードバック出来る様だ。そこが彼女が生まれ変わり見た目こそ人間だが違った存在であると改めて実感させられる。

 

 

「Hey、ユウマ!この前は一体、どこ行ってたんデスカ!?心配したんデスヨ!?」

 

「あっ、それは私も気になってたわ。皆で探したのよ?」

 

 

そんなユウマに背後から金剛がタックルのように抱きつきながら問いかける。彼女、いやこの鎮守府に所属する艦娘達にとってユウマはもっと小さい頃から知っている手のかかる弟のような存在なのだ。矢矧も気になってはいたのか頬杖をつきながら答える。

 

 

「えっ!?あっいやそのっ…!子供…っ!あの時ぶつかった子供があの巨人がいた方に行ったのを思い出しまして…っ…探してたんですよ…っ!」

 

 

途端にしどろもどろになって答えだすユウマ。完全に目が泳ぎ視線を逸らしている。そんなユウマを怪しく思ったのかパーティーのノリも加わって金剛達が更なる追求をするのだった…。




<次回予告>

ユウマのもとに二人の少女が訪れ地球の危機を知らせる。現れた二体の改造怪獣と宇宙人。懸命に戦うゼノンだが遂に敗れ捕らえられてしまう。絶体絶命のゼノン。その時…宇宙を超え銀河の彼方から“最強・最速”あのウルトラマンがやって来る──!

次回 ウルトラマンマックス参上!


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ウルトラマンマックス参上! part1

暗殺宇宙人

ナックル星人

宇宙大怪獣

改造ベムスター

古代怪獣

改造ゴモラ

登場


 

 

 

広がり続けるこの宇宙。地球からも離れた宙域で突然、小さな太陽のような赤い光の球体が現れ地球へ目指し、まっすぐ進んでいくのだった。

 

 

 

・・・

 

 

「では例の二体の改造怪獣、出来たのか?」

 

「ああ、もう実戦段階に入れるだろう」

 

 

足元が光るだけで薄暗い空間内で人間ではない異形の者達…いや、宇宙人が集まって何やら会議を行っていた。リーダー格と思われる短い手足と頭に三つの突起がある宇宙人・ヒッポリト星人が集まったうちの一人である白い身体に赤い瘤のようなものが無数についたような見た目のナックル星人に声をかけると、ナックル星人は腕を組んで頷く。

 

 

「早速テストするのか?ここにはいないがペダン星人も新兵器があるらしいが、それとするのか?」

 

「いやワシがその力を試してやろう」

 

 

そこにスマートな体系と昆虫類を思わせるような外見のスラン星人が次に問いかけると、ヒッポリト星人のような長い口吻とハサミのような手を持つテンペラー星人が己の自信を感じさせるような自信ありげに声を上げる。

 

 

「まぁ待ってくださいよ。まずはウルトラ戦士に通用するかでしょ。何の為にあのウルトラ戦士を生かしたと思っているんですか」

 

 

鬼のような金の二本の角と金髪、この宇宙人の中では人間に近いような外見のババルウ星人が好戦的なテンペラー星人を静止する。どうやら彼らはゼノンとゴモラを襲った宇宙船にいた者達だったようだ。

 

 

「ならば早速出すか。しかし艦娘は集まらなかったようだな」

 

「ああ。ダダの奴が失敗してな。スパークシップのテストが出来なかったよ」

 

 

スラン星人が何気なくナックル星人に話を振ると、ダダがトダの鎮守府を占拠した時に通信相手だったナックル星人はダダに落胆しているのか首を振りながら手に持つ小さな軍艦のプラモデルのような外観のスパークシップを見る。

 

 

「資料を見させてもらいましたが、元となった怪獣の“残りカス”もいたと言う話ですが最近見ませんね」

 

「ああ、どうやら隙を見て逃げ出したようだ。だがどうでも良いさ、怪獣でもなく人間でもないなりそこないなど。ダダは地球人の見た目を大層気に入っていたが、私には最後まで地球人の見た目の良さは分からぬよ」

 

 

手に持つ端末から立体映像を表示するババルウ星人の問いかけにナックル星人は答える。例え逃げたところで大した脅威にもならないし、残りカスという逃げた存在を嫌悪感のようなモノを持っているのか毒のような言葉を吐く。

 

 

「お喋りはしまいだ。私はテストを見届ける為、現地に赴く。お前達もここで見ているが良い」

 

 

だがここにいる宇宙人達と仲良くお話がしたいわけではない。ナックル星人は話を切り上げてその場から去るのだった…。

 

・・・

 

 

「…近い…後少しだよ」

 

 

宇宙船内で宇宙人達が話し合いをしていたのと同時刻、現在は夕方、町行く人達はある二人組を奇異な目で見ていた。というのもそこには怪獣の手足と尻尾のパーツをスクール水着の上につけ栗色のショートヘアーの髪に角のような突起物がある少女とその少女とは違い、高身長と鳥を模したファーコートを纏いショートブーツを履いている褐色肌の少女がいた。

 

 

「…本当に信用できるの?」

 

「…大丈夫だよ。きっとあの人だったら…」

 

 

二人は道行く人の奇異の視線も気にせず、逆に褐色肌の少女はなにやら信用出来るか否かを気にしている。褐色肌の少女に問いかけに栗色の髪の少女はある種の確信を持った瞳で答えるのだった…。

 

・・・

 

 

(今晩、なにか食べたいのある?)

 

 

同時刻、学校帰りなのか制服姿のユウマはゴロゴロと寝転がり何やらその心中で食事のことについて問いかけていた。普通ならばおかしな行動だが彼の中にはウルトラマンがいる。勿論、ゼノンに問いかけていた。

 

 

【以前食べた鍋と言うのはとても美味だった…が、地球の食文化はまだ分からない。私に質問されても困る】

 

(だよね…)

 

 

ユウマと同化しているゼノンは味覚も共有しているような状態だった。そんな中でゼノンはどうやら以前、鎮守府で行われた鍋パーティーで食べた鍋が気に入っていたようだ。しかし彼はまだ地球に来て日が浅い。文明を監視すると言ってもまだ分からないことはあるのだ。

 

 

(…ねぇゼノン。宇宙ってどんなの?色んな星があるけど人間のような知的生物はやっぱりいっぱいいるの?)

 

【当然だ。私を始め以前戦ったダダ、そして例の宇宙船や前の巨人の時の少女…そしてソーフィ達…この広大な宇宙には様々な生物が生きそして文明を築いている】

 

 

ユウマは宇宙に住む生き物達について質問すると文明監視員として地球以外の様々な文明を見てきたゼノンは人間にとって気の遠くなるようだが、彼にとってはつい先月のような過去のことを思い出す。

 

 

(…その中でさ、地球人はいなかった?)

 

【…この宇宙ではいないな。私はこの宇宙に来たのはつい最近の事だ】

 

 

ふと転がるのを止めたユウマはうつ伏せのまま問いかける。しかしゼノンはこの宇宙に来た時はまっすぐ地球に向かった為、その際に地球人と思われる種族と遭遇する事はなかった。元の自分がいた宇宙では友であるマックスと一体化していた青年の孫やZAPと呼ばれる地球の組織が光の国に訪れた事などは小耳に挟んだ事はある。

 

 

(…俺の母親はさ、宇宙飛行士で宇宙にいるであろう知的生命体の探索や観測、人類と友好的な関係を結べるかを調べる為に行ったらしんだ。…でも今はいない。連絡も取れない。生きているかも分からない。ボンヤリと記憶はあるんだけどよく覚えてなくてさ…。ゼノンの仕事が仕事だからもしかしたらと思ったんだけど…)

 

 

物心ついた時にはマツミズがすでに引き取って親代わりとなっていた為、両親の思い出と言うのはあまりない。マツミズ曰く優しくて立派な人達だったとの事だが今一分からない。もしかしたらという望みを持ってゼノンに聞いてみたが叶わなかった。

 

ユウマも黙り込み、ゼノンもなにも言わない。少しなんとも言えない雰囲気がマツミズ宅を包む。しかしその雰囲気を打ち破るように玄関の方から破壊音が響く。

 

 

「えっ!?」

 

 

轟音に慌てて起きあがったユウマは発生源となる玄関に向かった。

 

・・・

 

 

「いやー…壊しちゃった…」

 

「…まぁでも中には入れるよ」

 

 

玄関に到着したユウマが見たのはコスプレにしか思えない先程、町民達から奇異の目で見られていた二人組の少女だった。倒れた玄関のドアを見て気まずそうな顔を浮かべる栗色の髪の少女とそれをフォローする褐色肌の少女。

 

 

「あっ!やっと会えた!」

 

「き、君達は…?」

 

 

奇抜な服装といい怪しさ満点である二人に戸惑っているユウマに気づいた栗色の髪の少女はユウマを指差して明るくそして嬉しそうな声を上げる。言葉からして彼女の目的は自分なのだろうか?兎も角困惑しながらユウマが問いかける。

 

 

「僕はゴモラだよっ!」

 

 

栗色の髪の少女の口から放たれた衝撃の言葉。間の抜けた表情で固まるユウマは次の瞬間、近所に聞こえるくらい大きな驚きの声を上げるのだった。

 

・・・

 

 

「…えっと…本当にゴモラなんだよね」

 

「そうだよ。特徴あるでしょ?」

 

 

あの後、落ち着いたユウマは玄関の片付けも程々に居間に案内して話を聞くことにした。確認してくるユウマに栗色の髪の少女はそのきぐるみのパーツのような手を見せる。

 

 

(特徴って言ったって…)

 

 

栗色の髪の少女ことゴモラの姿を懐疑的な目で見るユウマ。確かにゴモラを思わせる見た目はあるが、あくまでそれは中途半端にゴモラのきぐるみを着たような見た目であるしそれに何故、スクール水着なのだと首を傾げたくなる。とはいえ身近な存在に艦娘やソーフィ達がいる。信じられないわけではない。

 

 

「まぁでも…こうして生きてて良かったよ」

 

「生まれ変わりだけどねー」

 

 

少し疲れたような笑顔でゴモラに話しかけるユウマ。これは本心だ。あの時救えなかったゴモラが見た目こそ人間だがこうして目の前にいるのだ。ゴモラも笑顔でユウマに出された飲み物を飲みながら答える。やはりというか彼女もソーフィ達と同じ存在のようだ。

 

 

「隣の人は?もしかして君も…」

 

「…ベムスター…と呼ばれてました。その…ゴモラと同じで…生まれ変わり、です」

 

 

ゴモラは分かったがその隣の褐色肌の少女は分からないし外見上の特徴を見ても全然だ。ユウマの問いかけに名乗る褐色肌の少女…ベムスター。こちらは知らない怪獣の生まれ変わりだった。

 

 

「私達が来たのは…貴方の力を借りたいからです」

 

「俺の…?」

 

「はい、ウルトラマンゼノンにお願いがあります」

 

 

少しだらけているゴモラとは対照的に姿勢を正しているベムスターがユウマの顔を見ながら自分達が訪れた目的を話し始めユウマは首を傾げる。するとベムスターの口から出たゼノンの名前に驚き、ユウマは視線を泳がせてしまう。どうやら彼女達は自分がゼノンだと知っているようだ。

 

 

「なんでそれを…?」

 

「うーん…やっぱり人間とは違う匂いって言うのかな…。兎に角違う感じがするんだよね、凄く温かい感じがする。人間の力は借りたくないけど君だったら…」

 

 

確信を持った目で自分を見る二人。どうやら引っかけと言うわけでもないらしい。ユウマは動揺しながらも問いかけるとテーブルに頭を乗せていたゴモラがふと顔を上げかつてゼノンと戦い治療を受けた事があったあの記憶があり、普通の人間とゼノンと同化したユウマの見極め方を何となく分かるのか首をかしげながら答える。だがやはり人間に対しては良い感情はないらしい。

 

 

「そんな事よりも地球が危ないんです!」

 

「地球が…?」

 

 

やや話が逸れ始めているのを戻すベムスター。地球の危機という彼女の言葉にユウマは怪訝そうな顔を浮かべると次の瞬間、隕石が落ちてきたような大きな落下音と共に大震動が響いた。

 

・・・

 

 

「グオオオオオオオォォォォォンンンッッッ!!!!!!」

 

「キュアアアァァァァォォォォオッッ!!!!!!」

 

 

外に出たユウマ達が遠目に見たのは海に立つ二体の怪獣とその前に立つ1体の白い宇宙人だった。2体の怪獣はまるで産声を上げるかのように天を仰いで咆哮する。

 

 

「あれは…ゴモラ…?」

 

「うん…あれは僕…いや、僕だったモノだよ」

 

 

2体の怪獣のうちの1体は見覚えがある。ゴモラだ。しかし以前、戦った時と比べ白目で皮膚は黒ずみ棘や牙が増えしかもより鋭く尖っており尻尾もまた鋭くムチのように長かった。ユウマの呟きに隣にいたゴモラが悲しそうに見ている。

 

 

「じゃあ…隣のは…」

 

「…私です。私達はただ生まれ変わった訳じゃないんです…。私達はある宇宙船で地球人に似た姿で目覚めた時、傍には生前の私達がいたんです…。言ってしまえば力と心が分離したような状態でした」

 

 

見知らぬ怪獣はどうやらかつてのベムスターだったモノだ。細長い体と巨大な爪と角。その赤い瞳からは意思が感じられない。ユウマはその見知らぬ怪獣を見ているとベムスターは説明を始める。

 

 

「あの後ろの宇宙人…ナックル星人が生まれ変わる前の私達だったモノを生体改造したんです。今のアレは改造怪獣…きっと破壊しか生まない…。私達は何とか宇宙船を脱出してこの脅威を打ち消せる可能性を持つ貴方を探してたんです」

 

「…正直、人間がどうなろうと僕には関係ないけど僕だったモノが何かを破壊しようとするのは嫌だったんだ…」

 

 

ベムスターの説明の後、人間を良く思ってないゴモラの言葉を聞いて再び2体の改造怪獣…改造ゴモラと改造ベムスター、そして前に立つ白い宇宙人・ナックル星人を見る。

 

 

「…取り合えず今は行くしかないか…。君達はどこか安全な場所へ!」

 

 

彼女達の話を聞き、今までの生まれ変わったソーフィ達との関係があのナックル星人にあるのか考えるユウマだったがナックル星人は手を前に突き出すと2体の改造怪獣は海辺の町めがけて歩き出す。このままで何が起こるか分からないユウマはゴモラ達にそう言い残し返答を待たずに走り出す。

 

 

「ゼノオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーーーーンンンッッ!!!!!!!!!」

 

 

こちらに進行してくる改造怪獣達に気づいた町の人間達は大パニックとなって逃げ出している。その人ごみを掻き分け、周囲に人がいない海の前に立つ。ユウマはゼノンブレスが嵌められた腕を空に突き出すと突き出した腕からゼノンの身体に変わり巨大化する。

 

・・・

 

 

「…」

 

「やっと現れたか、ウルトラマン」

 

 

改造怪獣達の前に空から一筋の光が降り、そこからゼノンが現れる。ゼノンの姿を見たナックル星人は待ちくたびれたと言わんばかりに改造怪獣達の背後でゼノンに声をかける。

 

 

【…私が目的か?】

 

「ああ。言っただろう。お前は実験台の一人だ。早速、こいつらをテストしたくなってな」

 

 

ゼノンが宇宙語で話し始めると、ナックル星人は2体の改造怪獣をまるで自分の作品を自慢するかのように手を大きく広げて話す。

 

 

【戦うならばここじゃなくても良い筈だ】

 

「いいや、ここでこそ意味がある。お前は良くも悪くも巨大な力を持つ存在だと人間共に知られている。お前を人間共の前で倒すことで我々の力も分かりやすいだろう?」

 

 

ここでは力を持たない人間が数多くいる。自分が目的であればそんな中で戦う必要はないはずだ。しかしゼノンの提案にナックル星人はせせら笑う。

 

 

「グォォンッ!!」

 

「ッ!?」

 

 

場所を変える気はないと言わんばかりに改造ゴモラから尻尾を放つ。顔面を狙ったその攻撃を驚きながらもゼノンは何とか避ける。なんと改造ゴモラの尻尾は伸縮自在になっているのだ。

 

 

「キュアアァアッ!!!」

 

「グゥッ!!」

 

 

すぐさま改造ベムスターが両目から直線で放たれたレーザーがゼノンを襲う。直撃する直前に両手でバリアを張ったゼノンは防ぐ事に成功する。どちらの攻撃も強力な力を感じ、まともに受ければ一溜まりもないだろう。

 

 

「…ジェアッ」

 

 

どうやらこの場での戦闘は避けられないようだ。2体の改造怪獣だけで十分だと思っているのかナックル星人は改造怪獣達の背後で腕を組んでゼノンの様子を面白そうに見ている。ゼノンは静かに構えを取り、戦闘を開始するのだった…。




改造怪獣なんですが製作者は違いますが改造ベムスターはタロウの改造ゴモラはゲームのFERの改造ゴモラをイメージしていただけると助かります。


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ウルトラマンマックス参上! part2

こちらの更新が遅れてしまって大変申し訳ございませんでした。


 

 

「ウルトラマンを援護しろッ!!」

 

 

出撃した艦娘達は三対一の状況で奮戦しているゼノンを援護する為に長門が声をかけ、2体の改造怪獣に向けて砲撃を始めるが2体の改造怪獣は初撃こそ反応するがすぐに意に介さずゼノンに襲い掛かる。

 

 

「ッ!!」

 

 

改造ゴモラから放たれた伸びた尻尾を間一髪で避けるとすぐさま尻尾を掴み、攻撃に繋げようとするゼノンだったが…。

 

 

「ジェアッ!?」

 

 

だが逆に尻尾を縮小させる事で引き寄せられ、そのまま凶悪なまでに様変わりした腕部を腹部に叩きつけられ更には爪で引き裂くように攻撃を浴びせられるゼノン。

 

しかし攻撃をただ受けるだけではない。攻撃を見極め、カウンターのように拳を改造ゴモラに叩きつけるゼノンだが改造ゴモラは平然としている。続けざまに飛び回し蹴りを改造ゴモラの顔面に浴びせるが改造ゴモラにはダメージが通っていないように見える。

 

 

「──キェアァアッ!!!」

 

「っ!?」

 

 

しかし改造怪獣はゴモラだけではない。いつの間にか上空に飛んでいた改造べムスターが上空から急降下を繰り返しながらゼノンに突進を浴びせ、ゼノンは海に倒れる。

 

 

「ウオオオォォォォォォォォォオオ…ッッッ!!!!!!」

 

 

改造ゴモラの何かをため込むような低いうなり声が聞こえる。ゼノンが顔を上げれば改造ゴモラの全身が光り輝いていた。エネルギーをチャージしているのだろう。

 

 

「ッ…!?」

 

 

すぐさま立ち上がり避けようとするゼノンではあるがふと背後を気にすれば、そこには海辺の街があった。避けるのは簡単ではあるがこのまま避けては街に被害が出る。

 

 

「グオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーッッッ!!!!!!!!!」

 

「ゼェアァアッッ!!!!」

 

 

その間にも改造ゴモラはエネルギーが溜まったのか全身から超振動波を放つ。ゼノンはすぐさまバリアを張ることでこれを受け止める。激しく水しぶきを飛ばし、以前よりも強化されたその超振動波に後方に押し出されていくゼノン。やがてバリアにも皹が入っていく。

 

諦めるわけにはいかなかった。自分が避ければ町に被害が及んでしまう。それだけは避けたかったのだ。しかしそんなゼノンを嘲笑うかのように上空にいる改造べムスターはバリアの範囲外からレーザーを放ちゼノンはそれを浴び続けてしまう。

 

 

「ジュァアアッッ!!?」

 

 

やがてバリアも破壊され、超振動波とレーザーをまともに浴びたゼノンは大きく町の方に吹き飛び。海に倒れたゼノンの影響で海水が波となって町を襲う。

 

 

「ウッ…グゥッ…」

 

 

まともに攻撃を浴びながらも何とか立ち上がるゼノン。だが無事である訳がなくその身体はボロボロでそれを表すようにパワータイマーも赤く点滅をする。

 

しかしそれで攻撃の手を緩める筈もなく改造べムスターはレーザーを放ち、火花を上げながら受けたゼノンは遂に膝をつきその間にも改造ゴモラが近づき嬲るように攻撃を浴びせ、海上に降りた改造ベムスターもそれに参加する。

 

・・・

 

 

「…っ」

 

 

鎮守府で戦闘の様子をモニター越しで見ていたベガッサやマツミズはその一方的な光景を見て、言葉を失う。ゼノンにはもう反撃出来るほどの余力など残ってはいない事など誰が見ても明らかだった。

 

 

(もう良い…逃げてくれ…!)

 

 

二体の改造怪獣に無理やり起き上がらせサンドバックの如く攻撃を受けるゼノンを見て、出来ないと分かっていてもマツミズはそう願ってしまう。

 

 

「お願い、負けないで…っ!」

 

「ウルトラマン…なぜそこまで…っ!!」

 

 

誰が見てもゼノンの敗北は明らかであった。目に涙を貯めながら祈るように呟くペガッサと表情を険しくさせながらも町を守ろうとするゼノンに悲痛そうに問いかけるが、答えるものなどいない。

 

 

「っ…」

 

 

ジョウも戦闘を見て、両手を胸の前に持っていき、ぎゅっと握る。ゼノンの姿がユウマと重なって見え、何故か無性に辛く感じるのだ。

 

・・・

 

 

「クソッ…!!」

 

 

ゼノンを助ける為に砲撃を続けていた長門達ではあったが、有効打にはならず思わず悪態をついてしまう。ゼノンがこのまま嬲られていく光景は短い付き合いではあるが辛いものがあるのだ。

 

 

「もう良い」

 

 

するとここでナックル星人が声を上げる。その言葉と共にまさに機械のようにピタッと動きを止める2体の改造怪獣。攻撃が収まったことによってゼノンはその場に崩れ落ちるかのように倒れてしまう。

 

 

「ここで殺す気などない。連れていけ」

 

 

ナックル星人は指を鳴らすと、光学迷彩によって姿を隠していたナックル星人の宇宙船が姿を現す。そこから宙づりの状態で設置されていたX字型の台に2体の改造怪獣に指示を出し、ゼノンをX字型の台に磔にする。それを確認するとナックル星人は2体の改造怪獣をその場に残し、宇宙船に転移しそのまま宇宙へ移動を開始し艦娘達の砲撃も射程外になってしまう。

 

・・・

 

 

「そんな…ッ!」

 

「負けた…」

 

 

海辺の町で一部始終を見ていたゴモラとベムスターはゼノンが磔にされ連れていかれるという絶望的な光景を目にして崩れ落ちる。これでもう改造怪獣を…いや、暗躍する宇宙人達を止められる存在はいなくなった。

 

 

≪地球人に告げる!!≫

 

「「っ…!」」

 

 

すると空からナックル星人の声が響き渡る。それは全世界にそれぞれの言語に合わせて流れ、同時に上空に立体映像が流れる。そこに映し出されるのは宇宙空間に移動したナックル星人の宇宙船と磔にされたゼノンの姿だった。

 

・・・

 

 

≪ウルトラマンは我々の手で葬った!!もはや貴様らを守り、我々を止められる存在はいなくなったのだ!≫

 

「っ…」

 

 

海上にいる艦娘達もナックル星人の言葉を聞き、悔しそうに歯を食い縛り拳を固める。悔しいがナックル星人のいうように自分達の攻撃も改造怪獣を止められなかった。彼らを打ち倒せる存在はいないのだ。

 

 

≪これから始まる全ての恐怖に絶望し、滅び去るが良いッ!その手始めとしてこれを見ろ≫

 

「なにをする気なの…?」

 

 

ナックル星人の言葉と共に映像に映し出されるピタリとも動かないゼノンの姿は人々を不安にさせる。それは艦娘達も同じなのか翔鶴が不安げに呟く。

 

 

「まさか…ッ!!」

 

 

すると直後に燦々と輝く太陽の姿が。そこに向かって移動を続けるナックル星人の宇宙船を見て、ある事が浮かんだのか赤城が言葉を漏らす。

 

・・・

 

 

「貴様らウルトラ一族は太陽エネルギーが力の源だろう?ならばそこを貴様の墓場にしてやる」

 

 

眼下に広がる太陽を見ながらナックル星人は愉快そうに呟く。するとナックル星人はあるボタンを押し、宇宙船から磔にされたゼノンを切り離す。

 

 

太陽に向かって磔にされたゼノンが放たれた。意識が朦朧としているゼノンは脱出する事も出来ず、そのまま太陽の引力に引っ張られてしまう。そんなゼノンの姿を地球から映像を通じて見ていた人類や艦娘達の中からもやがて訪れるであろうゼノンの死から目を背ける者もいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪───なんだとっ!?≫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしその時は訪れなかった。ナックル星人の驚愕の声と共に人々が再び映像を見ると、磔にされ太陽に放り投げなれたゼノンを赤く光り輝く球体が包み、太陽の引力圏から救い出したのだ。

 

・・・

 

 

「…ウルトラマン…マックス…!!?」

 

 

赤く輝く球体内で意識を取り戻したゼノンは目の前で佇む一人のウルトラマンを見て驚く。それはかつて自分が光の国を出る時に見送りに来たウルトラマンマックスその人だったのだ

 

 

「君になにかあったらすぐ向かう…。そう言っただろう」

 

 

マックスが穏やかに話しかける。すると腕を天に伸ばすと金色の鳥を思わせるような外見の黄金色の物体がゼノンの腕に装着されると姿を変え、小型のブレスレットに姿を変える。

 

 

「これは…ギャラクシーか…!?」

 

「宇宙警備隊隊長を始めとした者達によってブレスレット技術を応用して生み出された新たなギャラクシー…ギャラクシーブレスレットだ。それさえ身に着けていればいかなる脅威にも互角に戦えるだろう」

 

 

右腕に装着されたブレスレットがエネルギー補給となったのかゼノンのパワータイマーは青く輝く。エネルギーを得たことによって立ち上がり、マックスと向き直るゼノンはこのブレスレット…ギャラクシーブレスレットの説明を受ける。

 

 

「君から送られたウルトラサインを見て脅威を感じた光の国はこれを君に託すことを選んだのだ。さぁ地球に向かおう」

 

 

マックスはその為にこの次元にやって来たのだ。だがここで悠長に話している余裕はない。ナックル星人や地球にはまだ2体の改造怪獣がいる。マックスの促しにゼノンは頷く。

 

・・・

 

 

「新たなウルトラマンだと…ッ!!?そんな馬鹿なぁあっ!!?」

 

 

赤く輝く光球は消え、そこからゼノンとマックスが現れる。二人は宇宙船を見るとゼノンは両腕を水平に広げ、マックスは左腕に装着されているマックススパークを掲げてそれぞれエネルギーを集中させる。二人のウルトラマンはL字に腕を組んで放たれた必殺光線はナックル星人を宇宙船ごと撃破すると、互いに顔を見合わせて頷き、地球へと向かう。

 

・・・

 

 

「なにがどうなってるの!?」

 

 

立体映像はゼノンが太陽に放り投げられたところで途切れ、なにが起きたのか分からず思わず瑞鶴が叫ぶ。

 

 

「グオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーッッッ!!!!!!!」

 

「キュアアァアッ!!!!」

 

 

すると今まで沈黙していた2体の改造怪獣がまるで解き放たれるように雄たけびを上げ、拘束が解かれ、自由になったかのように身体を左右に激しく揺らしていた。

 

 

「クッ…町には何としても近づかせるな!!」

 

 

2体の改造怪獣は目についた海辺の町に侵攻を始める。ゼノンや自分達も歯が立たなかったとはいえ町に向かわせるわけにはいかない。長門の声かけと同時に艦娘達が動き出そうとする。しかし2体の改造怪獣の侵攻速度は予想以上でこのままでは止める事が出来ない。誰もがそう感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰が呟いたかは分からない。

 

 

 

 

 

だが空から2体の改造怪獣から町を守るかのように二筋の光が舞い降り、改造怪獣達は動きを止める。

 

 

 

 

 

 

光が消えると、それを見ていた者達は驚く。

 

 

 

 

 

何故なら。

 

 

 

 

 

そこには2体のウルトラマン。

 

 

 

 

そう、ウルトラマンゼノンとウルトラマンマックスだ。

 

 

 

 

二人は怪獣に向き合いながら互いに拳を軽く打ち合わせるとそれぞれ臨戦態勢を取って、2体の改造怪獣に向かって行くのだった…。




というわけでウルトラマンマックス参上!です。

ゼノンのギャラクシーは最初から登場は決まっていたわけですが、マックスのギャラクシーと差別化したいと思い、勝手ながらあのような武器として登場しました。そしてその武器をゼノンに渡す話としてタイトルから分かるようにある話を参考とさせていただきました。

ギャラクシーブレスレットの見た目はブレスレットに展開状態のギャラクシーを縮小したような装飾がある物をイメージしていただけると幸いです。


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ウルトラマンマックス参上! part3

 

 

「ウルトラマンが…もう1体も…!?」

 

 

町を守らんと言わんばかりに町に背を向け2体の改造怪獣に取っ組み合う2体のウルトラマンを見て、出撃していた熊野が信じられないと言わんばかりに改造ゴモラと戦闘を繰り広げるマックスの姿を見つめる。

 

 

「ショワァッ!!」

 

 

改造ゴモラはマックスの存在に驚きながらも、その脅威の尻尾をマックスの頭部目掛けて放つも、マックスは目にも止まらぬ速さで改造ゴモラの背後に回り込み、尻尾を掴むと改造ゴモラの尻尾を掴み、脇に抱え。改造ゴモラの抵抗を制し、そのままグルグルとジャイアントスゥイングの要領で回転し投げ飛ばす。

 

海面に打ち付けられ、周囲に大きな波ができる。怒りを表すような咆哮を上げながら改造ゴモラは何とか起き上がるが前方にはもうマックスはいなかった。

 

 

「ジェイァアッ!」

 

 

上空に影が映る。何なのかそれは次の瞬間、自分の頭部に響く鈍い痛みで改造ゴモラは理解できた。マックスが飛び上がって攻撃してきたのだろう。マックスは静かに着地し再び改造ゴモラへ向かっていく。

 

 

 

──Max Power!

 

 

 

その力強い一撃一撃は確実に改造ゴモラをに響いていく。

 

 

 

──Max Speed!!

 

 

 

その素早い動きの一つ一つは改造ゴモラを翻弄していく。

 

 

 

──Max!Max!Max!

 

 

 

その姿は見る者に勇気を与える。まるでマックスの姿は自分達の明日を導くような光にさえ見えるほどに。ウルトラマンマックスは改造ゴモラに果敢に向かっていくのだった…。

 

・・・

 

 

「キキョァッ!!」

 

 

そしてその光は一つじゃない。ゼノンと戦闘を繰り広げるベムスターはゼノンを上空から襲うが、ゼノンは悉く避けるためレーザーを発射する。背後には町がある。避ければ町に直撃する。そんなことはゼノンはしないと考えての攻撃だった。バリアを張ったところをすかさず別方向から攻撃する。それが改造ベムスターの算段だった。

 

 

「…」

 

 

まっすぐと伸びるレーザーをジッと見据えたゼノンは右腕を立て構え、ギャラクシーブレスレットに左手を添える。するとギャラクシーブレスレットは光と共にその姿を変えギャラクシーを模した巨大な盾…ギャラクシーディフェンサーとなり、これを構えることによって受け止める。

 

 

「ゼェアァッ!!」

 

 

そのままギャラクシーディフェンサーを前に突き出すとギャラクシーディフェンサーはその姿を変え、どことなく戦闘機を思わせるような短い十字型の武器…ギャラクシースパークへ変形し、ゼノンが腕を突き出したことにより一気に改造ベムスター目がけて進んでいく。

 

 

「キュァアッ!?」

 

 

飛んでいくギャラクシースパークはその先端が二つに分かれ鋭利な刃がキラリと輝く。そのまま飛行する改造ベムスターの背後を取り、両翼を切断する。切断されたことにより飛行能力を失った改造ベムスターはそのまま失速しそのまま海面に叩き付けられた。

 

 

「フッ…!」

 

 

ギャラクシースパークはゼノンの元へ戻り、ゼノンが右腕に押し付けるとギャラクシースパークは光と共にかつてマックスに授け、今はマックスの武器として使用されているマックスギャラクシーの発展型のゼノンギャラクシーに姿を変え右腕に装着される。

 

ゼノンギャラクシーをゆっくりと左手を摩るように動かすと、ゼノンギャラクシーのクリスタルが輝き、ゼノンギャラクシーの先端が変形、光の刃が現れ光り輝く。

 

 

「キキュアァアッ!!」

 

「ゼェアァッ!」

 

 

起き上がったベムスターはゼノンギャラクシーを見て本能的に危険だと判断したのか両目から再びビームを放つが、ゼノンはそのままゼノンギャラクシーでビームを切り払い、そのまま大きく振り被ると光の刃…ギャラクシーソードによって改造ベムスターを一刀両断にし撃破する。

 

・・・

 

同時にマックスも動いた。空に右手を上げ虹色の光線を放つと光線を放った方向から光り輝く鳥形の武器が接近しマックスの腕に装着されるとそのまま変形する。ゼノンがかつて授けた武器…マックスギャラクシーだ。

 

 

「ゼェアァアッッ!!」

 

 

ゼノンと同じような動作をすることでマックスギャラクシーにも光の刃が現れる。狙うは目の前で弱っている改造ゴモラだ。そのままマックスギャラクシーが装着された右腕を突き出すと、マックスギャラクシーからマクシウムカノンをも上回る必殺光線…ギャラクシーカノンを放ち改造ゴモラを木端微塵に撃破する。

 

 

「やったぞッ!!」

 

 

戦闘を見ていた長門や艦娘達は改造怪獣の撃破に大喜びをする。その間にゼノンとマックスは互いに近づき、頷き合う。

 

 

「私は一度、光の国に戻り今回のことを報告をする。それが終わったらこの宇宙のことを調べようと思う。それまではこの地球を頼んだぞ」

 

 

マックスはゼノンに向き合い、今後の行動を話すとゼノンは静かに頷く。それを見たマックスも頷き、そのまま空に飛び立っていく。マックスの姿はどんどん小さくなっていく。それを見送ったゼノンも空に飛び立っていくのだった…。

 

・・・

 

 

「ありがとう、私達を倒してくれて」

 

「…お陰でこの町の人類は、何より私達は救われました」

 

 

数分後、海辺の町でゴモラとベムスターに合流したユウマは彼女達からそれぞれ感謝の言葉を受けていた。改造怪獣とはいえ元は彼女達の本来の肉体であった為、ユウマは笑いはしないものの重々しく頷く。

 

 

「これからどうするの?」

 

「…どうしようかな。まぁどこか自然の中ででも生きようかな」

 

 

ユウマは彼女達二人がこれからどうするのか問いかけると、ゴモラとベムスターは互いに困ったような笑みを浮かべながら顔を見合わせ、ゴモラがユウマに答える。

 

 

「…良かったら家に来ないか?」

 

「…え?」

 

 

予想外だったユウマの提案に目を見開いて驚くゴモラとベムスター。彼は何を言っているんだと言わんばかりに顔を見合わせる。

 

 

「流石にそれは…ただでさえ今回の件であなたに迷惑をかけたのに」

 

「俺は大丈夫だよ。家主の伯父さんも説得して見せる。それに君達のその外見はあまりにも人間の目を引く。自然の中で生きようにも下手したら結局は人間の手で捕まるかもしれない。それに今までの姿とは勝手が違うだろうしね」

 

 

2体の改造怪獣、そしてナックル星人を倒した時点で幾ら感謝の言葉を並べても足りないのにこれ以上、世話になるなど出来なかった。そんなベムスターの言葉に首を横に振りながらユウマは柔らかい笑みを浮かべながら答える。

 

 

「本当に良いの…?」

 

「勿論」

 

 

ゴモラが控えめに改めて確認するように問いかけると、ユウマはゆっくりと頷き彼女達は顔を見合わせると…。

 

 

「「お世話に…なります!」」

 

 

口を揃えて彼女達はユウマに感謝する。この体にまだ慣れていなかったのは事実だからだ。それに純粋にユウマの気遣いが嬉しかった。

 

 

「えへへ…僕はゴモラ、改めてよろしく、ウルトラマン!」

 

「ベムスターです。ゼノン、これからよろしくね」

 

 

彼女達はそれぞれ改めて自己紹介をすると、彼女達の口から出たウルトラマンゼノンの名を聞き、大きく身体を震わせながら慌てて周囲を見渡す。

 

 

「この姿の俺のことはユウマって呼んで!一心同体とはいえ俺はアスノ・ユウマだから!」

 

 

幸い周囲は避難していて、人はいなかった。もし下手にゼノンが化けてるなどと噂されたら厄介だ。ゼノンの名しか知らない二人に人間である自分の名を口にすると彼女達はコクリと頷く。

 

 

(…宇宙、凄かったな)

 

 

ゴモラとベムスターと歩きながら、ふと空を見上げるユウマ。ナックル星人によって宇宙に運ばれた際、薄れている意識の中で自分は確かに宇宙を見たのだ。間近で見る太陽など宇宙には引き込まれる要因が沢山あった。宇宙の魅力に惹かれながらも家に帰るのだった。

 




<次回予告>

ナックル星人の宇宙船から地球に落下した怪獣の幼体を軍が回収した。軍はスパークドールズの研究を進めていたソーフィが開発した新たなリーディバイスをこの怪獣で実験することを決める。またナックル星人の件で前々から言われていた艦娘の説明をしなくてはいけなくなった軍は艦娘と共に新たにリーディバイスとスパークドールズの事を大々的に発表しようとするが…。

次回…善悪の力


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善悪の力 part1

高速宇宙人

スラン星人

宇宙恐竜

ゼットン

登場


 

 

「ナックルはやられたか…」

 

「情けない…と言いたいところですが、まさかウルトラ戦士が新装備を用意して増援として駆けつけるとは」

 

 

宇宙人達は再び一つの宇宙船に集まり、会議をしていた。内容はナックル星人の戦死。そして今後についてだ。溜息交じりに口を開いたヒッポリト星人にババルウ星人も立体映像に映し出されたマックスとギャラクシーブレスレットを駆使して戦うゼノンの姿が映し出されていた。

 

 

「最強最速とも謳われるそうじゃないか。儂の相手に不足ないわ」

 

「…」

 

 

圧倒的な強さを誇るマックスの映像を見て、愉快そうに笑うテンペラー星人。しかし一方でスラン星人のマックスを見る目は憎悪に支配されていた。

 

 

「どこに行く?」

 

「…ナックルの宇宙船には例のブツもあった筈だ。地球人が回収したという話も聞く。私が取り返そう」

 

 

そのまま黙って彼らに背を向け歩き出したスラン星人をヒッポリト星人が引き止める。するとスラン星人は横顔を向けながら静かに答えるとそのまま照明の届かない薄暗い闇へ消えていくのだった…。

 

・・・

 

 

「「いただきます」」

 

「…まーす…」

 

 

翌朝、マツミズ宅ではユウマとそしてゴモラとベムスターが食卓を囲んでいた。キチッと手を合わせるユウマとベムスターに対して、寝起きの悪いゴモラは机に顎を乗せ、ぐったりとしながら語尾だけ口にする。

 

怪獣であった彼女達はユウマの言葉通り、マツミズの許可を得て今、この場に居候している。話を聞いたマツミズもゴモラ達の件はソーフィ達のこともあって大して驚かず、かつての人間のエゴによるゴモラの一件もあってか同棲をすんなりと受け入れ検査だけを行った。

 

 

『今日一日が皆様にとってよりよい一日でありますように。せーの…ZAP!』

 

「あーあ…ZAP終わっちゃった」

 

 

丁度今、ユウマが作った朝食を食べながら朝の情報番組が終わった。それを口惜しそうに呟くゴモラ。人間嫌いはまだあるが、ベムスターもそうだが彼女の今の人間の生活スタイルへの順応は凄かった。この朝食もベムスターが隣で勉強していて、次は自分が作るというくらいだ。ゴモラはあまりそういう面が見られないが、ベムスターは予想以上に家事に貢献してくれてユウマは本当に助かっていた。

 

 

「じゃあ俺、学校行ってくるから」

 

「いってらっしゃい」

 

 

ゴモラの好きな情報番組が終われば、また次の情報番組が始まる。この番組もゴモラは知っているのか、ハッキリ!などと口にしている。それを横目に朝食を食べ終えたユウマは素早く片付け、学校へと向かうのだった。

 

・・・

 

 

『今回、説明させていただくのは皆様が噂なさっていた人型兵器…通称・艦娘の存在です』

 

 

鎮守府の執務室にあるテレビではこの国の総理が艦娘の説明をしていた。艦娘の存在は秘匿され噂されていたが、ナックル星人の件で遂に市民は説明を求めたのだ。

 

 

『非現実的ではありますがかつての軍艦が人間の少女として生を受けたのではないかと言うのが現在の研究で出されている結論です。国民の皆様に今まで説明が出来なかったのは現在の研究結果だけでは十分な説明が出来ないと判断してのことでした。ですが今回の侵略者の一件で明るみになってしまい──』

 

「これから面倒なことになるぞ、人権だなんだってな」

 

 

執務室にいるソファーに腰掛けるマツミズに向かい合って座っているのはシゲユキだ。今も深海凄艦などの説明が行われている。説明を見ながらシゲユキはこれから起こるかもしれない出来事を想像している。

 

 

「だが今の問題はそれだけじゃないさ。宇宙人、怪獣…頭が痛くなる」

 

「そう言えばその怪獣だけど…」

 

 

マツミズは以前のナックル星人やタダなどを思い出しながら、今、この地球を襲う危機について考える。するとシゲユキは立ち上がる。元々、彼がここに来たのはある理由があるからだ。それを知っているマツミズも立ち上がり、テレビの電源を落とす。

 

・・・

 

 

「どうだ、回収した怪獣の卵は」

 

「うむ…」

 

 

ラボに到着した二人の提督。ベガッサなどが軽く会釈する中、シゲユキは小さな青色の球体の前に立っているソーフィに話しかけると、ソーフィは難しそうな表情を向ける。この卵は地球に隕石のように落ちてきたものだ。ナックル星人の宇宙船が乗せていた物だと思われ政府に回収され、今、この鎮守府に研究を任された。

 

 

「これは…ゼットンだな」

 

「ゼットン…?」

 

 

ソーフィの口から出た卵に眠る怪獣の名前にマツミズは思わず首をかしげる。当然だ。いくらマツミズと言えど怪獣の名前全てを把握しているわけではない。

 

 

「説明しよう!ゼットンとはウルトラマンを倒したこともある怪獣なのだ!」

 

「ウルトラマンを…?」

 

 

すると今までイスに座っていたガッツが立ち上がり、腕を組んでどや顔でゼットンについて簡単に説明をする。簡単ではあるが、あのウルトラマンを倒したことのある怪獣だというのは大きな衝撃を与える。

 

 

「ああ、ゼノンとは違うがな。宇宙恐竜ゼットン…この宇宙におけるもっとも恐るべき怪獣の1体だと言われている。その実力はガッツの言うように幾度となく様々な個体がウルトラ戦士達を苦しめている」

 

「宇宙に生きる様々な生命体を戦わせ、勝ち残った生物者同士を交配させる行為を何度も何度もそれこそ気が遠くなるほど繰り返すことによって生み出された合体怪獣説…なんてものもあります。私もゼットンは見たことありますが、あの感情を感じさせない、まさに戦うだけのゼットンは不気味で苦手です…」

 

 

どや顔のガッツに呆れながらソーフィとペガッサが詳しいゼットンの説明をする。この話だけでいかに恐るべき怪獣なのかはマツミズもシゲユキも嫌でも理解出来た。

 

 

「…そんな怪獣どうすんだ、孵化していきなり襲われたら堪ったもんじゃないぞ」

 

「…孵化…か。まぁ見た目こそこんな物だが、これは移動用に適したサイズに中のゼットンごと圧縮しているだけだ。だからコイツの中身はある程度は成長しているハズだ。だがゼットンは感情のない怪獣だと言われる…。まさに生物兵器だ。これを利用することは難しくないと思う」

 

 

シゲユキは卵を見つめる。正直、危険なのは分かった。ここに置いておくわけにはいかないだろう。するとソーフィは頷きながらも、これは厳密には卵ではないことと戦力の一つとして使おうと言うのだ。確かにウルトラマンを苦しめるほどの怪獣を味方にすればこれほど心強い存在はないだろう。

 

 

「万が一に備え、スパークドールズに変化させる装置も間もなく完成する。待っていてくれ」

 

「そんなものがあったのか?」

 

 

ソーフィの口から出た装置の話に驚くマツミズ。初耳だったからだ。

 

 

「ああ、報告が遅れてしまったがな。リーディバイスを解析して作ったんだ。このリーディバイスも我々の手で発展させた新型だ。もうすぐ完成でこれで私達も本来の姿になることが出来る」

 

「まぁ今は一時的なものだけどねー」

 

 

装置と思われる機械を横目にソーフィは懐から話に出てきた新型リーディバイスを取り出す。その説明をガッツが補足しながらマツミズ達は話を進めるのだった。

 

・・・

 

 

「テレビの取材…ですか?」

 

「はい、大和さんや長門さん達の演習の様子を録った後、今、遠征の方達に提督と一緒に同行しているようです」

 

 

数日後、雑貨店ではユウマが榛名から鎮守府を取材したいというテレビ局の話を聞いていた。だからか、先程から艦娘達がやたらと浮足立っているようにユウマに見えていた。

 

 

「それだけじゃなくて帰ってきた後はソーフィさんの開発した新兵器の発表もするみたいですよ」

 

「ソーフィさんの…?」

 

 

榛名の話を聞いたユウマは怪訝そうな表情を浮かべる。ソーフィの研究といえば、恐らくは怪獣や宇宙人関連だろう。しかし何故だろう。ユウマは胸騒ぎがしたのだ。

 

・・・

 

 

「ソーフィちゃん、ゼットンの卵、指定位置に配備完了だって」

 

「変換装置の準備も後少しで完了します!」

 

 

ラボでは宇宙人組が慌ただしく機械に向かって指を動かしていた。その中でガッツとペガッサは開発リーダーであるソーフィに報告をする。

 

 

「…大丈夫だ、大丈夫な筈だ…」

 

 

報告を受けたソーフィは目を瞑り、組んだ両手を眉間に当て成功を祈る。普段、だらしなくも気丈な彼女がこのような様子を見せたのは初めてだ。それほどまでに今回の実験が彼女にとって大きなプレッシャーとなっているのだろう。

 

なにより派遣された政府の人間はこのソーフィの発明に大きく期待を寄せていた。何故ならその人物は艦娘という存在を快く思っていなかったからだ。

 

別に政府の人間の期待などはどうだって良いが、相手はゼットンだ。もし失敗し制御下に置けなかったとしたら、果たしてどんな結果が待っているのか分からない。大きなプレッシャーの中、ソーフィはテレビ班と政府の人間に同行したマツミズの帰りを待つのだった…。




今のゼットンの状態はウルトラマン最終回の登場間際の青い球体を想像していただけると幸いです。


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善悪の力 part2

気付けばこんなに間が空いてるとは…すいません。


(…あまりいい気分がしないわ)

 

 

そう思ったのは戦艦大和であった。その長いポニーテールを揺らしながら、後方で取材陣に応える政府の人間であるシノミヤを見やる。自分達は命令通り、出撃し海域の攻略もしてみせた。しかしテレビに映されての戦闘と言うのはどうにも見世物にされている気分だ

 

 

「艦娘は深海棲艦に特化した兵器です。しかし以前の発表した通り、研究がまだ不十分であり、艦娘の解明には至っていません。また現在、国際問題にも発展している怪獣問題、更には宇宙人からの侵略。これに対しては艦娘は有効とは言えず、今ではウルトラマンゼノンという味方なのかもはっきりしない宇宙人に守られているのが現状です」

 

 

マスコミに囲まれながらシノミヤは艦娘やウルトラマンゼノンについて言及する。彼の様子を見る限りではどちらも信用してはいない、そんな様子であった。

 

 

「それではこれからもこの地球は艦娘やウルトラマンのような未知の存在に守られていくという事でしょうか?」

 

「そう言う訳ではありません。少なくともそれらより研究が進んでいる物を今からご紹介いたしましょう」

 

 

レコーダーやマイクを向けてくる記者の質問に対して、シノミヤは否定しながら、マスコミ達を連れて歩き出す。

 

・・・

 

 

「今回、艦娘と共に発表するのはスパークドールズと言われる兵器です。そしてこちらはスパークドールズ研究における第一人者であるソーフィ博士です。それでは博士、よろしくお願いします」

 

 

少し時間が経ち、鎮守府からも近い平野に移動したシノミヤ達。そこではおびただしい数の機械や装置、そしてそれを操る技術者達がいた。その中には明石などの艦娘の姿やガッツやペガッサの姿もある。

 

 

「ご紹介に預かりましたソーフィと申します。まずスパークドールズについてご紹介する前に私自身についてお話しさせていただきます。皆さんもご存知のようにこの星には姿を変え、宇宙人が住んでおります。私もその一人、元はゼットン星人と言われる存在でした」

 

 

スパークドールズの紹介を行う前にまずは自身の説明をし始めるソーフィ。この地球には宇宙人が数は多くこそないが、住んでいるのは周知の事実。そしてそれが目の前にいる事にマスコミはどよめく。

 

 

「私はこの地球で再び生を受けた時、私の傍らにはこのスパークドールズが落ちていました。これは私の本来の姿であり、そしてこの一見、人形に見えるコレにはテレキネシスなどの力が秘められております。今までこのスパークドールズの力を引き出す事は難しかったのですが、以前、地球に現れた宇宙人、ダダが持っていた兵器を解析したことによってそれが可能となりました。今からご覧に入れます」

 

 

ソーフィは自身のスパークドールズを取り出しながら簡単に説明すると、懐から以前、タダが所持していたリーディバイスを元に開発されたタブレット型のリーディバイザーを取り出すと、スパークドールズを下方にある窪みに押し当てる。

 

『Zetton seijin!realize!』

 

リーディバイザーから発せられる電子音声と共に、まばゆい光が溢れ出しソーフィの身体を包み込む。その眩しさから目を背ける者もいる中、光が消えたそこには一つ目の怪人がそこにいたのだ。

 

 

「今はこうして私は本来の姿に戻れました。しかし皆さんにご紹介するのはこんな物ではありません。あちらを見てください。あの中には宇宙恐竜ゼットンが目覚めの時を待っています。以前、ウルトラマンゼノンを倒したナックル星人が所持したもので、ゼットンは宇宙ではその名が広く知られており、もっとも有名なのはウルトラマンゼノンの同族を幾度となく窮地に追いやり、中には倒した個体も存在します。これからそのゼットンを目覚めさせ、そして瞬時にスパークドールズへと変換します」

 

 

怪人の名はゼットン星人。その姿を見て周囲がどよめく。それは同じ鎮守府で過ごしていた夕張達もそうであった。そんな周囲の空気や視線に耐えながらソーフィはある方向を指差す。そこには小さな青い球体とそれを囲む大きな装置があった。

 

 

「…」

 

 

青い球体はどんどんと膨れ始め、やがて風船のように割れる。そこにいたのはあまりにも不気味で無機質な印象さえ受ける黒い怪獣ゼットンがいたのだ。ゼットンが現れたと同時に周囲にはバリアが張られ、瞬時に周辺装置からビームが発せられるとゼットンを包むように直撃すると、どんどん小さくなり、その姿をスパークドールズへと変換する。

 

 

「これがゼットンのスパークドールズです。このリーディバイザーがあれば自身の姿を戻すだけではなく、読み取ったスパークドールズを実体化し、制御下に置く事も可能です。つまり今後、怪獣が現れたとしても同じことが可能なのです」

 

 

テレキネシスでゼットンのスパークドールズを引き寄せたソーフィはゼットンのスパークドールズとリーディバイザーを見せる。

 

 

「──成程、随分と小賢しい真似をしてくれるじゃないか」

 

 

突如、どこからともなく声が響き渡る。しかしこれはソーフィ達が発した者ではない。周囲を見渡すと、ゼットンをスパークドールズに変換した装置の近くにスラン星人が現れた。

 

 

「スラン星人…!?」

 

「そのゼットンは本来、我々のでね。返してもらおうとわざわざ出向いた訳だ」

 

 

スラン星人の突然の登場に驚き、ざわめく人々。ソーフィがスラン星人の名を呼ぶとスラン星人はソーフィの手にあるゼットンのスパークドールズを指しながらその目的を明かす。

 

 

「なっ…なにを!?」

 

「丁度良いではないか。ゼットンを奴に向ければ良い。どの道、奴は侵略者の仲間だろう?奴の手にゼットンが渡ったとしたらこちらに牙を向ける可能性がある!!」

 

 

『Zetton!』

 

ソーフィの手からリーディバイザーとゼットンのスパークドールズを無理やり奪い取ったシノミヤは、いきなり奪い取ったシノミヤの行動に戸惑うソーフィを横目にリーディバイザーを操作して、先程、ソーフィが行ったようにリーディバイザーの窪みにゼットンのスパークドールズを押し当てる。

 

『Realize!』

 

そしてスラン星人に向かってリーディバイザーを突き出すと、ゼットンは小さな光となってスラン星人の前に飛んでいき、眩い光と共にその巨大な姿を現す。

 

 

「ペガッサはマスコミの方々の避難誘導と鎮守府への連絡!明石はゼットンの周辺にバリアを張るんだ!」

 

「「了解!」」

 

 

突如現れたスラン星人の迎撃の為にとはいえ、その能力が未知数なゼットンを出現させたシノミヤを一瞥しながらマツミズは近くにいた夕張やペガッサに素早く指示を出す。

 

・・・

 

 

「…!」

 

 

鎮守府へ連絡が来たのと同時にユウマはバリア内のゼットンとスラン星人に気づくと、人目を盗んで素早く人気のない場所へ移動しギャラクシーブレスレットを構える。眩い光に包まれそのまま一筋の流星となり、スラン星人達の元へ向かう。

 

・・・

 

 

「行け、ゼットン!!」

 

 

リーディバイザーを持つシノミヤは空に声を響かせ、ゼットンに命じる。ゼットンは自身とスラン星人を中心に張られたバリアの中で目にあたる部分から白い光弾を二つ放つが、スラン星人は素早く避けるとバリアを貫通し、耐えきれず崩壊してしまう。

 

 

「きゃあぁあっっ!!?」

 

 

バリアが崩壊しても、呼び出したシノミヤが命じた以上はスラン星人撃破の為に動くゼットン。しかしこの場には多くの者が避難したとは言え、まだマツミズなど少数の人々が残っている。攻撃することなくその自慢のスピードを活かせる広い場所に移動しながらゼットンを翻弄するスラン星人。スラン星人に対して、放った光弾も避けられ、そのまま何とか被害を抑えようと再びバリアを張ろうとした明石達のいるテントに向かっていく。

 

 

「───デェアァアッ!」

 

 

目を瞑る明石。すると空から聞き覚えのある声が耳に届いたと思った瞬間、大きな振動が地を響き、目を開ける。そこには赤と銀色の光の巨人ウルトラマンゼノンがギャラクシーブレスレットを変化させたギャラクシーディフェンダーを構えて、ゼットンの光弾を防ぐと肩越しに明石達の無事を確認しギャラクシーディフェンダーをブレスレットに戻す。

 

 

「やはり出たか、ウルトラマンゼノン」

 

【お前達スラン星人がマックスを狙っているのは知っている。まさか彼が現れた途端に姿を見せるとは】

 

 

ゼットンと対峙しながらゼノンの出現に宇宙語で声をかけるスラン星人。友人であるマックスとの因縁を持つスラン星人がマックスが来た後に現れたというのは、やはり何かを勘ぐってしまう。

 

 

「勘違いするな、今回はウルトラマンマックスは関係ない。目的はあくまでゼットンなのでな」

 

 

そう言ってゼットンを一瞥すると共にゼノンの登場で様子見をしているシノミヤへ向かって光線を発射するスラン星人。間一髪直撃だけは避けられたものの爆風によって身体が宙を舞い周辺の木に身体を打ち付けてそのまま気絶してしまう。

 

 

「リィーディバイザーが…ッ!!?」

 

 

しかし問題はシノミヤの手元から離れたリィーディバイザーであった。目を見開き息を呑んだ途端、悲痛そうな表情を浮かべるソーフィ。リィーディバイザーは火花が散り壊れてしまった。

 

 

「壊れたのか!?もうリィーディバイザーは…!」

 

「…予備はまだある。しかしだ…ゼットンを制御する意味では、あのリィーディバイザーが壊れてしまっては…!」

 

 

明石達も逃がし、ここにはマツミズとソーフィと、気絶したシノミヤを担ぐガッツとペガッサなどの宇宙人達が残った。リィーディバイザーが壊れた事に気づいたマツミズに、ソーフィは絶望した表情でゼットンを見る。

 

それと同時にスラン星人が取り出したタダが所持していたものと同型のリィーディバイスをゼットンに向けて引き金を引くと、放たれたビームはゼットンの触覚に当たる部分に直撃し、そのまま全身にビームが張り巡らされるように淡く光る。

 

 

「さて、ウルトラマンゼノン…今回はゼットンにどう対抗するのだろうな」

 

 

リィーディバイスで制御下に置いているのか、ゼットンの隣に並び立つスラン星人。かつてゼノンが別の地球でゼットンに苦汁を飲まされた経験があるのを知っているのか、下卑な笑みと共にゼノンを見るとゼノンは何も答える事なく構えを取るのだった。




フュージョンファイトは皆さん、プレイなさってますか?私はちょくちょくやったりはしてますが、ゼノンなど出ないかなと思ったりする今日この頃。出番がないのであればせめてゲームでと思ってアンケートの要望欄で送ったりもしましたが、果たしてどうなるか…。

まぁ正直な話、アンケートは参戦希望したのはゼノンだけではなく海外ウルトラマンなどもあるのですがね。


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善悪の力 part3

ウルトラマンゼノン、スラン星人、ゼットンがそれぞれその場にいるのに、不気味な静寂が場を包んでいた。というのも誰も動かないからだ。

 

ゼノンが動かないのは様子を伺っている事に他ならない。何故ならば相手はゼットン。自分だけではなくマックス、それだけではない。幾多のウルトラ戦士が苦戦を強いられた相手だ。しかしそんな静寂を打ち消すようにスラン星人がゼノンへ銃口を向けると、ゼットンはその姿を途端に消す。

 

 

「ディアッ!?」

 

 

どこだ!?そう言わんばかりに辺りを見渡すゼノン。するとゼットンはゼノンの真後ろに現れ、そのまま横振りに掌をぶつけ、ゼノンはよろめく。

 

すぐさま背後を振り返り、ゼットンに対応しようとするが既にゼットンはいなかった。そして再び背中に衝撃が走る。すぐに分かった。ゼットンはテレポートを駆使して翻弄しているのだ。

 

このままゼットンのペースに飲まれるのは大変危険だ。それだけは避けねばならない。ゼノンは身体を高速回転させるとそのまま竜巻を起こし、周囲に寄せ付けなくする。

 

これにはゼットンもテレポートを止め、竜巻と化したゼノンを見つめていたが、すると火球を吐き出し竜巻に放つ。しかし間一髪でその火球はブレスレットをギャラクシーディフェンダーに変えたゼノンが防ぎ、そのままディフェンダーからギャラクシースパークを槍に変化させたようなギャラクシーランスへ変化させると、そのままゼットン目掛けて戦いを挑む。

 

 

(流石に光線技は使わんか)

 

 

風切り音と共にギャラクシーランスを駆使してゼットンと近接戦を繰り広げるゼノン。今までの戦いでも光線技などを早い段階から使用していたゼノンが今回は使っていない姿を見て、ゼットンに警戒しているように見えたのかスラン星人はくつくつと笑う。

 

というのもゼットンは光線を発射してもそれを吸収して撃ち返したり、並の攻撃では決して破壊できないゼットンシャッターを備えた強敵だ。下手に撃ってもエネルギーの無駄になってしまう。

 

 

「ディアァッ!?」

 

 

ここでようやくゼノンのギャラクシーランスの一撃がゼットンを傷つける事に成功した。このまま立て続けに追撃を仕掛けようとしたその瞬間、横からスラン星人の光線が直撃して横っ飛びに地面に倒れる。

 

 

「正々堂々と戦ってる訳じゃないんだ。横やりも何も入らないと思ってたのか?」

 

 

倒れたゼノンに見つめていたソーフィ達が心配する中、光線を再び発射しながらスラン星人がゼノンを嘲笑う。その横ではスラン星人の指示を受けたのか、ゼットンが火球を放ち追撃してしまう。

 

 

「グゥッ…デェァッ!?」

 

 

光線や火球が周囲を破壊して、たちまち全てを燃やそうとする中、その身に火球を受け苦悶の声を上げるゼノンは見る見るうちにそのパワータイマーは赤へと変わり、点滅を始める。

 

 

「このままでは…ゼノンが…ッ!!」

 

 

倒れたゼノンは光線の追撃を受け続けている、このままでは何れはゼノンが殺されてしまうのかもしれない。それを予感したソーフィはマツミズ達と避難し、少し離れた場所から悲痛そうな面持ちでゼノンを見つめる。

 

 

「わ、私が…ゼットンを使おうとしなければ…! ゼットンは…やはり私には…」

 

 

猛威を振るうゼットン。もしもゼットンをこの実験に使用するなどしなければこんな事にはならなかったのかもしれない。ゼットンはあまりにも自分には手に余るものであった。そうやって苦しむゼノンを見て後悔をする。

 

 

「…関係ないよ、ゼットンだろうが何だろうが」

 

 

そんなソーフィを咎めるかのように口を開いたのはガッツであった。普段のおちゃらけている彼女からは想像出来ないほど真剣な様子であった。これには思わずソーフィだけではなくマツミズやペガッサもガッツを見てしまう。ガッツはそのままシノミヤをペガッサに任せてソーフィの衣服から予備のリィーディバイザーを取り出す。

 

 

「お前…それは…!?」

 

「力は力なんだから、それを扱う人の心持次第でしょ。ソーフィちゃん、まだ間に合うよ。ゼットンを…破壊行動以外に活かす方法なんて」

 

 

予備のリィーディバイザーを取り出したガッツにどうするんだと言わんばかりに目で訴えるソーフィすると、ガッツは振り返ってゼットンを見ると、そのまま懐からかつての自分であるガッツ星人のスパークドールズを取り出すと、そのままリィーディバイザーに押し当てる。

 

『Guts seijin!Realize!』

 

電子音声が鳴り響くと同時にリィーディバイザーから溢れんばかりの光がガッツの身体を包み込む。その眩しさから思わずソーフィ達は目を背けるが、やがて視界が慣れ、光が収まった目の前には巨大な足が真っ先に視界に映りこんだ。

 

 

「ガッツ…お前…」

 

 

ソーフィー達はそのまま足を見上げれば、そこにはオウムが人の形を成したかのような巨人がいたのだ。これこそガッツの真の姿であるガッツ星人だ

 

・・・

 

 

「さて、さてさて!」

 

 

突然のガッツ星人の登場に誰もが驚くなか、ガッツ星人は、いやガッツは高らかに声を上げる。

 

 

「来ました、私が!ガッツ星人が!」

 

 

この場にいる者達の視線が全てガッツ星人に注がれるなかで行われる名乗り上げ、それはまさに今この瞬間は彼女の独り舞台と言っても過言ではないだろう。

 

 

「貴方を倒しに、ね?」

 

 

スッとスラン星人を指差しながら、小首を傾げる。もしもこれがいつもの人間のような姿であれば、ウインクでも決めているところだろう。だがその仕草だけでソーフィ達やゼノン、いやユウマには自分達が知るガッツのままであることが理解できた。

 

 

「さあて、一気にやっつけちゃおうか。立てる?」

 

 

ガッツ星人はそのまま伏しているゼノンの隣に立ち位置を移すと、彼へ手を伸ばす。その手を見つめたゼノンはやがて強く頷くと、その手を取って立ち上がる。

 

 

「うんうん、良いね!じゃあ行こうかっ!!」

 

 

まだ戦えるという意志を示すようにガッツ星人に頷いたゼノンはギャラクシーランスをブレスに戻して、右腕に装着するとガッツ星人の声かけと共に地面を駆け出して、ゼットンへ挑んでいく。

 

もう一方はガッツ星人とスラン星人だ。既にスラン星人はガッツ星人を敵だと判断しているのだろう。ガッツ星人の周囲を囲むように目にも留まらぬ速さで残像を生み出し、ガッツ星人を翻弄しようとする。

 

しかしガッツ星人は特に動揺したような素振りは一切見せなかった。僅かに顔を動かして、自身の状況を確認するだけで行動を留めているのだ。

 

だが程なくしてガッツ星人が動いた。何とガッツは文字通り、分身したのだ。しかもそれは一体や二体ではない。立て続けに六体まで数を増やすと、互いに背を向けた状態で四方で自身を翻弄しようとしてくるスラン星人の残像ごと光線を放ち、見事、本体へ直撃させる。

 

 

「ふふんっ、高速宇宙人の残像も分身宇宙人の前では通じないんだなぁ」

 

 

吹き飛んだスラン星人に得意げに話すガッツ星人。まともな直撃を受けたスラン星人は僅かによろめきながらも何とか立ち上がる。

 

 

「貴様も…ウルトラマンによって同胞を失っている筈だ!何故、平然と与することが出来る…ッ?!」

 

「んー…まあ確かにそうはそうなんだけど」

 

 

ガッツ星人から受けた傷に苦悶しながら、スラン星人は目の前の宇宙人に沸きあがる疑問を叩きつける。スラン星人の同族がかつてウルトラマンマックスに葬られたように、目の前のガッツ星人もまたウルトラ戦士達によって同族を失っている筈だ。にも関わらず、打算抜きにゼノンと肩を並べている。それがどうしても解せなかったのだ。

 

 

「でも私にはその同胞と同じくらい大切な仲間達がいるからね。目の前で危険に晒されてるなら、その脅威を何とかしなくちゃ」

 

 

飄々とした様子で答えながら、ガッツ星人は近くのソーフィやペガッサ達を一瞥する。今では最早、家族と言っても差し支えないだろう。だからこそ目の前で弱っている仲間を黙って見過ごすわけにはいかないのだ。そのまま分身達と共に放ったガッツ星人の光線を受けて、スラン星人は爆発四散する。

 

 

「…そう、大切な…ね」

 

 

スラン星人を撃破したことをしかと確認しながら、ガッツ星人はゼットンと激闘を繰り広げるゼノンを見やる。だがその瞳はウルトラマンゼノンを見ていると言うよりは、まるでゼノンに誰かを重ねているかのようで、どことなく優しさを感じられた。

 

・・・

 

 

「シュワァアッ!!!」

 

 

猛々しいゼノンの叫びと共に飛び回し蹴りがゼットンの首元に炸裂する。そのあまりに痛烈な一撃にさしものゼットンも僅かによろける。すかさず鮮やかなバク転で距離をとったゼノンは再びギャラクシーランスを出現させ、ゼットンへ投擲するも、全身をすっぽり包み込むゼットンシャッターが張られる。これはあまりにも強固でギャラクシーランスを投擲するだけでは、破れはしなかった。

 

ゼットンシャッターを解いたゼットンは火球を放たれ、思わずゼノンも身構えるが、その火球はゼノンに届く前に横から放たれたビームによって相殺されたのだ。

 

 

「やらせないよ」

 

 

ガッツ星人による援護だ。そのままガッツ星人はゼットンの周囲を分身で取り囲み、光線を放つが瞬時に張ったゼットンシャッターの前では効果は薄かった。

 

 

「そろそろ限界?でももう少し頑張って」

 

 

とはいえ四方からの波状攻撃を前にさしものゼットンと言えど、シャッターを解くわけにはいかず、攻撃を防ぎ続けている。だがこれはガッツ星人にも多大な負担をかけているのだ。しかしそんなことを微塵も感じさせずに寧ろパワータイマーの点滅速度を見て、彼を案じて励ましてさえいるのだ。

 

 

「!」

 

 

そんな中、ガッツ星人はソーフィに目配せをする。今、ゼットンの近くにはあのゼットンをスパークドールズに変化させた装置があったのだ。ガッツ星人の意図が分かったのだろう。ソーフィは素早く明石達のいるテントへ向かって、行動を開始する。

 

 

「…よし、もう一踏ん張りだよ。ゼットンにありったけをぶつけて」

 

 

ソーフィの行動にガッツ星人はゼノンに声をかける。それは勝算を導き出したかのような期待感を感じさせる物言いだ。その言葉に従ったゼノンはギャラクシーランスをゼノンギャラクシーに変化させ、そのまま右腕に装着させると、クリスタルに手を翳すと、ゼットンシャッターを張るゼットンへ向けて、ゼノンギャラクシーを突き出して、そこからゼノニウムカノン以上の威力を誇る光線…ギャラクシーカノンを放つ。

 

光の矢の如きギャラクシーカノンをゼットンシャッターで防ごうとするも、やがて防ぎきれずにどんどんと亀裂が生じてゼットンシャッターを打ち消すことに成功する。そのままギャラクシーカノンの直撃を受けたゼットンはじりじりと後退していく。

 

 

「──今だっ!」

 

 

すかさずソーフィが声をあげると、それを皮切りに周辺装置からゼットンへ向けて、ビームが放たれる。これはスパークドールズ変換装置によるものだ。例えゼットンであろうと弱った状態であれば、再度、スパークドールズに変換することも可能だと考えたのだろう。やがてギャラクシーカノンと変換装置のビームを受けたゼットンを起点に大爆発が起こる。

 

 

「…どうなった?」

 

 

あまりに強い爆発とそこから発生する爆風を前にソーフィ達は身構えて耐えるしかなく、とてもではないが目の前でなにが起きているか確認することすら出来なかった。漸く風も収まり、ソーフィ達が恐る恐る瞼を開いて、周囲を見やると…。

 

 

「やっほー」

 

 

あまりにも呑気な声が聞こえてきたのだ。聞き覚えのあるこの声はガッツのものであり、先程まで本来の姿で巨大化していたが、今は解除したのか、ゼノンしか巨人はいない。そしてこちらに向かってくる人影が露になれば、それは透明感のある水色の髪を揺らすガッツがそこにおり、たちまちソーフィ達は安堵した表情を見せる。

 

 

「って、お前…。その子は…」

 

 

ふとガッツが誰かを抱えていることに気付く。まさか逃げ遅れか?しかし先程の爆発では生身の人間には決して耐え切れるものではないだろう。

 

目を凝らして、よく見てみれば、ガッツが抱きかかえているのは一人のか細い少女であった。しかし凝視すればするほど、その少女は普通の少女とは言い難かった。

 

揺れる艶やかな黒髪と人形のようなハッキリとした美しい顔立ちはまだ良い。しかし頭部に生えた二つの角や黒を基調とし、オレンジ色に包まれた双丘などその特徴は先程まで戦っていたゼットンの特徴そのままだったのだ。

 

 

「まさか…」

 

「うん、そのまさかだろうね。半分成功半分失敗ってとこかな。この娘はゼットンだよ。私達と同じ存在になった、ね。ちゃんとスパークドールズもあるよ」

 

 

ここまで来れば、誰でも分かることだろう。現にソーフィをはじめ、マツミズ達は眉間に皺を寄せているのだ。そして彼女たちの予想通り、ガッツの抱える少女・ゼットンについて明かされる。ゼノンのギャラクシーカノンと変換装置のビームを受けていたゼットンは完全にスパークドールズに変換される前に限界が訪れたのだろう。ガッツの言うようにゼットンはスパークドールズとは別に地球人に酷似した姿を得たようだ。

 

 

「さっきも言ったけど、ゼットンを破壊活動以外に生かすかは、それこそ私達次第だよ」

 

「私達次第…?」

 

「うん、この娘に破壊以外のことを教えられるか…。その力を…何か別のことに活かせるか…。ソーフィちゃんの研究だってそう。不相応なんてことはない。ただ心持次第で善にも悪にもなれる、それだけだよ」

 

 

ソーフィに向かって、いつものひょうきんな態度とは打って変わって、真剣な面持ちで話すガッツに思わず引き込まれながら、彼女の言葉に何か思案するように目を伏せる。

 

 

「…そうだな。これも何かの縁だろう。この娘に真っ暗な破壊の世界ではなく、光ある輝かしい世界へ導きたい。その為にも、もっと私も精進せねばな」

 

「そういうゼットンなら、私も…」

 

 

決意を固めたように頷いたソーフィは柔らかな笑みを浮かべると、少女となったゼットンの頬を優しく撫でる。その傍らでゼットンに対して苦手意識を抱いていたペガッサも何か期待に胸を膨らませていた。

 

 

「…」

 

 

そんなソーフィ達の様子を見届けていたゼノンだが、ふとガッツがこちらに向かって振り返ると、にっこりと微笑む。その見惚れるような可憐な笑みに微笑むようにゼノンの雰囲気も柔らかくなり、やがてゼノンは飛び立っていくのであった。

 

・・・

 

 

「あの後の事後処理、相当大変だったそうですよ」

 

「あぁやっぱり…」

 

 

それから数日後、鎮守府の雑貨店にて大和から顛末を大まかに聞いたユウマは苦笑する。マスコミを招いて行われた艦娘とスパークドールズの発表。しかし実際のところスラン星人の妨害があったとはいえ散々な結果になってしまった。独断でゼットンを使用したシノミヤの処分など、まだまだ課題は山積みで執務室を通りかかればマツミズのため息が聞こえてくるほどだ。

 

 

「まあでも、悪いことばかりじゃないってー」

 

「そうそう、悪いことばかりじゃないってー」

 

 

すると入り口から声が聞こえてくる。二人の声のようだが、奇妙だ。なぜならばどちらもガッツのものだったから。ユウマと大和が視線を向ければ、そこには二人のガッツと、そんな二人に挟まれるペガッサがいた。

 

 

「もぉぅ!!一時的に元に戻って自分の力の感覚が掴めたからって、闇雲に分身するのは止めてください!!」

 

「「だって分身すれば、その分、ペガちゃんを愛でることが出来るじゃーん」」

 

 

途端にペガッサは我慢しきれずに吼えるように叫ぶ。リーデバイザーで元に戻ったとはいえ、それは一時的な話だ。完全にかつての自分に戻れるわけではなく、現にガッツは今までどおり、少女の姿で過ごしている。しかしその一時的の間に力と勘を取り戻したのか、ガッツは隙あらばこのように分身や特殊能力で惜しげもなく披露しているのだ。とはいえその相手は主にペガッサに向けられるため、堪ったものではないだろうがガッツに反省はない。

 

 

「やれやれ、相変わらず騒がしいな」

 

 

それがペガッサの神経を逆撫でしたようで途端にぷんぷんと怒り散らすが、どうやらそれもガッツにとっては愛でる対象でしかないらしい。そんな騒がしさをみせている購買部に再び横から声をかけられれば、そこにはソーフィとゼットンがいた。

 

 

「ゼッちゃんはもう良いの?」

 

「ああ。特に身体に問題は無い。今は提督の許可で鎮守府を案内しているところだ」

 

 

暴れるペガッサを適当に流しながら、ガッツはソーフィに問いかけると、彼女は傍らに立つゼットンに微笑みかける。しかし当のゼットンは完全に無表情で反応はなく、その揺れ動かぬ瞳で購買部を見渡していた。

 

 

「あれ…?」

 

 

だが、やがてその中でユウマを見つけると途端にスッと目を細め、ユウマに近づいていく。ゼットンの突然の行動に誰もが唖然とするなか、ついにユウマの目の前に立つと…。

 

 

「次は負けません」

 

「えっ」

 

 

顔を近づけ、その耳元でボソリと口にする。負けるも何もユウマとゼットンは初対面だが…しかし例外がある。そう、ゼノンだ。ゼットンは既にゴモラのようにユウマがゼノンであることに見抜いているようだ。だからこそ最終的にゼノンに負けたと思って、こんな行動をしてきたのだろう。

 

 

「や-大変だね、ユウ君。でもまたバトっても女の子にその便利ブレスレットを使っちゃダメだぞ?」

 

「えっ」

 

 

言うだけ言って再びソーフィの元に戻っていくゼットンに唖然としていると、いつの間にユウマの隣に分身していたガッツはその耳元で囁く。ガッツ、お前もか。何のことかと引き攣った笑みを浮かべるユウマだが、ガッツはだいじょーぶ、秘密にしとくからと耳打ちして愉快そうに笑うのであった。




<次回予告>

ある日、町に罅割れたような身体を持つ巨大な謎の怪人が現れ、破壊活動を始める。それと時を同じくして、ユウマの前に現れたのは彼の…母親だった。この出来事がユウマの心を折る事件に発展してしまう。

次回…母の温もり


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母の温もり part1

棲星怪獣

ジャミラ

登場


押しては引く穏やかな小波の耳障りのよい水音が聞こえてくるこの静かな夜、突如、異変は起きた。

 

 

「オォォォオオ…」

 

 

50メートルはあるか否かの巨大な粘土状の皮膚を持ち、どことなく女性を思わせるような流線形の怪人が鎮守府があるこの静かな街に突然と現れたのだ。突如現れた巨人に真夜中の街は大混乱に陥るなか、まるで唸るような声をあげるその巨人は周囲を静かに見渡している。

 

 

「ッッ!!!」

 

 

すると巨人は突然、その頭と肩が繋がったような独特な頭部を抑えて苦しむような素振りを見せると、やがてその瞳から光がなくなり、大きく腕を振りかぶって、今まさに破壊活動を行おうとする。

 

しかしその前に下方から現れた光が巨人の注意を引くと、そのまま人の形を形成する。光が収まったそこにいたのはウルトラマンゼノンであった。

 

巨人に対して、静かに身構えるゼノン。何が目的が分からないにせよ、今腕を振り上げて破壊活動を行おうとしたのは誰が見ても明白。故に警戒を崩さず、臨戦態勢をとったまま対峙していた。

 

 

「ッ…」

 

 

だがゼノンと対峙する巨人は一瞬、突然現れたゼノンに警戒する一方でふとゼノンの中に何かを感じ取ったかのように動きを止め、まじまじと見つめている。先程まで光を失っていた瞳にも光が再び宿っていた。

 

やがてまるでその存在を確かめるかのように両腕を伸ばして近づいてくる巨人にゼノンは困惑してしまう。このような相手は初めてであり、先程、破壊活動を行おうとした時のような敵意は感じず、寧ろどこか不思議と優しさすら感じてしまうのだ。

 

 

「──ッ!?」

 

 

巨人の手がゼノンの頬に触れかけたその時であった。轟音が鳴り響き、ゼノンの目の前にいた巨人に直撃する。どうやら砲撃であり、その方向である海上を見てみれば、そこには鎮守府から出撃した艦娘達の姿があった。

 

砲撃に一瞬、巨人が怯むとどこからか円盤型の宇宙船が現れ、強烈な閃光を発する。あまりの眩さにゼノンや艦娘達が目を逸らし、光が収まり漸く視界が回復して巨人を見やるが、もう既に巨人と宇宙船は姿を消していた。

 

 

「あの巨人…。ウルトラマンに反応をしていたようだけれど…」

 

 

鎮守府から出撃した艦娘の一人である鳳翔は巨人の行動に何か感じ取ったのか考えを巡らせるように眉間に皺を寄せる。だが自分と共に出撃した艦娘達の呼び声を聞き、思考を中断して柔らかな笑みを浮かべながら返事をすると帰還するのであった。

 

・・・

 

 

「んっ…んぅっ……ん?」

 

 

数時間後、眩い日差しと小鳥の囀りが心地の良い朝を演出するなか、布団に眠って、寝返りを打っていたユウマはふと違和感を感じて、寝ぼけながらでも目を覚ます。

 

 

「すぅ…すぅ…」

 

 

目を覚まして、真っ先に視界に映ったのはガッツであった。突然のことにユウマが固まっていると、ガッツは呑気に寝息を立てている。だが次の瞬間、ユウマの悲鳴が朝のマツミズ宅に響き渡るのであった。

 

 

「──ユウマ、大丈夫か!?」

 

「どーしたのー…?」

 

 

ユウマの悲鳴を聞きつけてドタドタと慌しくエプロン姿のベムスターがユウマの部屋に乗りこみ、同じくやって来たが寝ぼけているゴモラが目を擦りながら室内を見やると、そこにはユウマと同じ布団に寝転がっているガッツの姿があった。

 

・・・

 

 

「いやーごめんねー。驚かせるつもりはなかったんだけど、あんまりにもユウ君が気持ち良さそうに寝てるもんだから釣られて寝ちゃってさあ」

 

「だからって人の布団にいきなり入るなんて…」

 

「なぁに?もしかしてお姉さんに悶々としちゃった?」

 

 

ニュース番組ZAP!を見つつ、食卓を囲むユウマ達。折角なのでと朝食をご馳走になっているガッツはおどけた様子で頭を撫でながら全く悪びれた様子もなく謝っていると、ユウマは心底驚いたのだろう、ため息交じりで答える。だがその発言に口角を上げたガッツはニヤニヤと笑みを浮かべながらユウマをからかい始める。

 

 

「…」

 

 

しかしその発言にユウマは押し黙って目を逸らす。よく見れば頬どころか耳まで真っ赤に染めているではないか。いくらウルトラマンと同化しているとはいえ、高校受験を控える15歳の年頃の少年。目の前の柔らかな女性の身体など生唾物だろう。

 

 

「あ、あぁそう。いやーそれじゃあ気をつけないとなー。アハハ…」

 

 

そんな年相応のユウマの反応に伝染したようにガッツもどことなく頬を染めながら照れた様子を見せ、どことなく食卓にほわほわした空気が流れる。

 

 

「そ れ で ?一体何しにここに?」

 

 

そんなユウマとガッツの間の空気を打ち壊すように自身の目玉焼きにかけていた醤油の瓶をドンッと強く置いたベムスターは鋭い視線をガッツに向けながら問いかける。どうやら完全に朝の一件で機嫌を損ねているらしい。

 

 

「そ、そうですよ。それに鎮守府のほうは…」

 

「あぁ、あっちは分身に任せて抜け出してきた。ここまではテレポートでちょちょいってね」

 

 

普段、ガッツが生活の拠点にしているのは鎮守府だ。外出するのにだって提督であるマツミズの承諾が必要なはずだ。ガッツの様子を見るにこの家に訪れたのは皆が寝静まった深夜帯であろう。その時間に外出するなどいくらなんでもマツミズが許可するとは思えない為、考えられるのは彼女の言うように無断で鎮守府から出てきたことだろう。

 

 

「そんなゼットンさんみたいな…」

 

「あれ、あの娘も来てたの?」

 

 

辟易したように重いため息をつくユウマ。どうやら前にも先日、人となったゼットンと似たようなことがあったらしい。

 

 

『アナタに勝つためにも身近で研究する必要があります』

 

「深夜に気配を感じて目を覚ましたら、枕元に立っていて…」

 

 

ユウマは当時のことを振り返る。目を覚ましてみれば、夢枕に立っていたのだ。元々物静かな性格の為、その存在に気付いた時には流石のユウマもゾクッとしたようで今もなお、どこかやつれた様子だ。

 

 

「…聞いてないんだが」

 

「いや、流石に言う必要まではないかなって…」

 

 

この家に暮らすに辺り、ユウマとの距離も縮まっているのだろう。当初の敬語も砕けた口調となり、不満そうにジトッとした目でこちらを見やるベムスターの鋭い眼光にユウマは頬を引き攣らせる。

 

 

「いやぁそれにしてもすっかりエアちゃんに目を付けられちゃったね」

 

「エアちゃん…?」

 

「あぁあのゼットンちゃんのこと。前々から思ってたけど、そのまんまゼットンとかガッツとか呼ぶのって可愛くないじゃない?もしかしたら今後、ずっと地球に暮らしていくかもしれないし、ユウ君達を地球人って呼んでるようなもんだしね。それに今後、同じガッツ星から私みたいになった同種の存在が現れないとも限らないし、だったらソーフィちゃんみたいな個人名をつけようかなって」

 

 

するとペガッサから聞いた覚えのない人名が出てきた為、ユウマが怪訝そうに尋ねると、どうやらゼットンのことをガッツがそう名付けたようで、その裏では彼女なりに今後の地球での生活を考えてと言うことだった。

 

 

「因みに私はミコって名前にしようと思うんだけど」

 

「理由は?」

 

「天啓?」

 

 

ガッツは自身が考えた名を口にして意見を伺うと、ユウマの問いかけに可愛らしく小首を傾げながら答えていた。

 

 

「じゃあ僕は?」

 

「そうねぇ…」

 

 

個人名と言うものに興味が湧いたのだろう。今までむしゃむしゃ朝食をとっていたゴモラはガッツことミコに対して面白うに尋ねてみると、ミコはジッとゴモラを見て…。

 

 

「ミカヅキなんてどう?」

 

「ミカヅキ?それはなんで?」

 

「天啓?」

 

 

すると頭部の上に電球の明かりが灯ったかのようにパッと閃いた様子のミコはゴモラの個人名を口にすると、やはり自分の名だけあってその名の理由を身を乗り出して聞いてみると、これも先程と同じ態度で答えられてしまう。

 

 

「オ、オホン…」

 

 

とはいえ名前その物は嬉しいのか、ゴモラはミカヅキという名前を大層、気に入っている様子だ。あまりのゴモラことミカヅキのはしゃぎように自分も気になり始めたのか、ベムスターはさりげなく咳払いをしながら主張する。

 

 

「ベムちゃんはねぇ…。ホシヒメなんてどう?」

 

「そ、それも天啓ですか?」

 

「いや、何となく?」

 

 

ベムスターはどう命名したものか。僅かに考えた後、ミコが口にした名前に妙にそわそわした様子で尋ねるも、これだけ理由は全く違うものであり、思わずずっこけそうになる。

 

 

「良いんじゃない。星から来たお姫様みたいで」

 

「お、お姫様…。そ、そうか…。それなら良いかな…」

 

 

とはいえユウマにとっての受けは良かったのか、彼の言葉に頬を染めながらベムスターことホシヒメはかみ締めるように頷く。

 

 

「で、話が逸れちゃったけどね。この家に来たのは、ゴモラ…じゃなくてミカちゃん達をより人間に近づけた外観にしようかなって」

 

 

名前の話は程々に軌道修正をしたミコはこの家に訪れた理由を話し始める。それはどうやら自分達の外観に関する話だ。確かにミカヅキやホシヒメなどその姿は地球人に似てはいるが、それでも元の怪獣の姿を思わせるパーツのようなものがある。

 

 

「私達は便宜上、怪獣娘って呼んでてね。今のミカちゃん達みたいな怪獣と人間の合いの子みたいな状態をハーフって呼んでいるの。今後、人間の生活圏で生活する以上、悪目立ちしちゃうから外観だけでも人間にしようってね」

 

「…別に僕は人間に溶け込まなくたって」

 

 

艦娘の次は怪獣娘だ。とはいえ、確かにミコの言うようにミカヅキ達の姿は目立つ。ミコやミカヅキといった名前のように今後の生活を考えての提案だが、人間に対して決して良い感情を抱いていないミカヅキはどこか不機嫌そうに話している。

 

 

「…でも俺は一緒にいたいよ。もっと自由に気兼ねなく色んな場所に行ってみたい」

 

「…ユウマ」

 

 

ミカヅキの人間嫌いは理解しているし、それをどうにか、それこそ無理にでも人間を好きになれとは思ってはいない。だがミカヅキ達と共にいられるのであれば、今のような生活が出来るのであればずっとこうしていたいとも思っている自分もいる。そんなユウマの想いにミカヅキは少しは心が動いているのか、ユウマを見つめている。

 

 

「…因みにどうすれば良いのでしょうか?見たところ…そのミコさんも人間と変わりないように見えますが」

 

「あぁ私ももう使ってるからね。これでさ」

 

 

そんなユウマとミカヅキのやり取りを見て、ホシヒメはミコに話を聞いてみる。実際、この外観のせいで外を自由に歩けないのは事実だ。それに今のミコの姿はかつてスラン星人との戦いで見せたガッツ星人を髣髴とさせるような姿ではなく、流行りの服を纏って、一人の人間として違和感がない姿ない。どうやら確かなようでそんなミコが取り出したのはスマートフォン型の機械だ。

 

 

「ソウルライザーって言ってね。リィーディバイザーの技術を応用して作ってみたんだ。これを使って地球人を意識すれば、外観だけは人間のそれに出来るんだよ」

 

 

機械の名はソウルライザーというらしい。どうやらまだ一つしかないらしく、説明をしながらミコはソウルライザーをミカヅキに渡す。

 

 

「人間…」

 

 

ミカヅキはソウルライザーをまじまじと見つめると、そのままユウマを見やる。ユウマが微笑むなか、ミカヅキが静かに目を閉じて、念じる。思い描くのはユウマと一緒にいる自分の姿だ。するとソウルライザーを媒体に光がミカヅキを包んでいく。

 

 

「な、なれ…た…?」

 

 

光が収まり、自身の姿を見たミカヅキは驚く。確かにミカヅキの姿は怪獣を思わせるパーツはなくなり、まさに人間と言っても過言ではないだろう。

 

 

「なれた!なれたよ、ユウマ!!」

 

 

これならばユウマと不自由なく外を出歩ける。そう思ったミカヅキはユウマにはちきれんばかりの笑顔を見せながら、ユウマに詰め寄るが、対してユウマは頬を染めながら目を逸らしていた。

 

 

「どうしたの…?」

 

 

いくら呼びかけてもユウマは慌てた様子でミカヅキを頑なに直視しようとしない。悲しさと寂しさを感じたミカヅキは不安げに尋ねると…。

 

 

「ふ、服…」

 

 

片手で自身の視界をふさいだユウマはわなわなとミカヅキを指差す。そう、確かに外観は人間になれた。しかしそのお陰で今のミカヅキはまさに全裸なのだ。

 

 

「あわわ…っ!!」

 

「そりゃ服までオプションで付いてるわけないよ」

 

 

ホシヒメが慌ててユウマの指示を受けて、彼の衣服を取りに行くなか、当たり前だろうと言わんばかりにミコは今のミカヅキを写真に収める。どうせ彼女のコレクションの一つになるのだろう。

 

 

「ユウマ?なれたんだよ?これで色んなところにいけるよ」

 

「分かった!分かったから!」

 

 

ホシヒメが衣服を取りに言っている間、特に気にした様子のないミカヅキはユウマに身を寄せて自身を見るように促す。どうやら人間になれたというよりは彼と自由に出歩けると言うほうが嬉しいようだ。しかしいくらミコやホシヒメに比べて未成長の身体とはいえ、女体は女体だ。ユウマは湯気が出そうなほど、顔を真っ赤にしてみようとはしない。

 

しかしそれでもミカヅキは逸らした視界の先に割り込もうとするのだが…。

 

 

【教育上良くない】

 

「おぉっとユウ君の便利ブレスレットからアニメで上手い具合に隠してくれる光のラインがミカちゃんにぃっ!」

 

 

見かねたゼノンがギャラクシーブレスレットを光らせて、ミカヅキの身体を閃光で隠すところを隠す。その光を目の前に現実でこんなことがあるのかと嬉しいような悔しいような複雑そうな様子でミコが叫ぶ。その後、ホシヒメが持ってきたユウマの衣服をミカヅキに名何とか着せ、漸く事態は収まる。

 

 

「じゃあ、ヒメちゃんの番ね」

 

「この流れで!?」

 

「お、俺、出てくよ!」

 

 

流れるようにミコはミカヅキから受け取ったソウルライザーをホシヒメに渡すが、全裸のような状態になる為、羞恥心があるのか、ユウマを見つめている。耐えかねたユウマは慌てて廊下に出て行き、呼び声がかかるまで待機するのであった。

 

・・・

 

 

「二人とも…これで一緒にどこで行けるんだね」

 

 

暫らくして呼び声がかかったユウマが部屋に戻ると、そこにはユウマの衣服を着たミカヅキとホシヒメがおり、改めて外観だけとはいえ、人間のそれになった彼女達に嬉しそうに話しかけると、彼女達も照れ臭そうに笑う。

 

 

「ハーフに戻りたくなったから、怪獣の本能を感じながらソウルライザーを使えばいいよ。日を改めてちゃんと人数分作ってくるから、今はそれ一つで共有してね」

 

 

今日、ミコが持ち込んだソウルライザーはそのままミカヅキ達が譲り受けて良いようだ。その後、彼女の詳しい説明を聞きながら、改めて二人は礼を口にする。

 

 

「さて、朝御飯も食べ終えたし、早速服を買いに行くかーっ!!ちゃんと選んであげるからね!!」

 

(…これが一番の目的だ)

 

 

するといよいよミコは待っていましたとばかりに声を上げ、立ち上がる。あまりのうきうきとした様子にユウマは人知れずため息をついていると…。

 

 

「ん…?」

 

 

ふとインターフォンの音が鳴り響き、ユウマは応対する為にいそいそと玄関に向かっていき、横開きの扉を開く。そこにいたのは妙齢の美しい婦人だった。

 

 

「あぁっこんなに大きくなってっ!!」

 

 

誰か尋ねる前にユウマの顔を見た瞬間、その女性は感極まった様子でユウに抱きつき、何度もその頬に頬ずりをする。

 

 

「あっ、あの!?貴女は!?」

 

「あぁっごめんなさい…。私ったら…」

 

 

あまりの行動にユウマが慌てて女性について尋ねる。感極まっていた女性だが、あまりのユウマの慌てぶりに冷静になったのか、気恥ずかしそうに照れた様子で一歩距離をとる。

 

 

「私はアスノ・ウミカ。宇宙飛行士であり、何より…アナタの母親よ」

 

 

騒ぎを聞きつけたミカヅキ達がこちらの様子を伺っているなか、女性は己の素性を明かす。だがその内容にユウマは驚くしかない。なぜなら自身の母親は確かに宇宙飛行士ではあるが、宇宙に飛び立ち行方不明になったのだから。しかし目の前の母と名乗るウミカはただユウマに対して慈しんで微笑むのであった。




本作のジャミラはパワード版などこれまでのシリーズの設定とオリジナルを混ぜ込んだ存在となっております。


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母の温もり part2

「何だか変な感じー?」

 

 

ここはマツミズ宅から程近い衣類店だ。更衣室のカーテンを開きながら、そこからミカヅキが現れる。しかし今の彼女の服装はユウマから借りた男性物の衣服ではなく、愛らしくフリルのついたガーリーな服装であった。ただでさえ元は怪獣なのだから服を着る習慣もないのでミカヅキは物珍しそうに身体を左右に動かして、フリフリと揺れるスカートに興味を持っている様子だ。

 

 

「可愛いわぁっ!そうだ、次はこれ着てみない?」

 

「キュートとプリティのフュージョンアップだね!可愛い奴頼みます!」

 

 

そんなミカヅキに自身が選んだ彼女に似合うであろう衣服を持って詰め寄るウミカとミコ。とはいえ、こうして服選びを始めて、それなりに時間が経過しているのだろう。飽きることもなく次から次に服を持ってくるウミカとミコにミカヅキも少しうんざりしたような表情を浮かべる。

 

 

「ユウマのお母さん、何だかノリが良い人だね」

 

「うん…。俺も正直、記憶がおぼろげだからさ。伯父さんから聞いた話でしか知らないんだけどね…」

 

 

その光景を傍から見つめながら、こちらもこちらでホシヒメの服選びを行っていたホシヒメとユウマは嵐のような存在であるミコに負けず劣らずのテンションで付いていき、既に馴染んでいるウミカになんとも言えない様子で苦笑しつつも、彼女がユウマ達の前に現れたあの瞬間の出来事を振り返る。

 

・・・

 

 

「本当にあの人がユウ君のお母さんなの?」

 

 

ウミカがマツミズ宅を訪れた時間まで戻る。いつまでも玄関先で話しているわけにもいかず一先ず居間に案内をする。座布団の上に座ったウミカが周囲を何気なく眺めている間、廊下からその様子を眺めながらミコはユウマに尋ねる。

 

 

「伯父さんに昔、見せてもらったアルバムを引っ張り出したんですけど、確かに写真の通りの人でした。でも宇宙飛行士の仕事に従事して、その後行方不明っていう話でしたし…」

 

「ここ最近のニュースには何も言ってなかったね。流石に行方不明になった宇宙飛行士が帰ってきたとなれば大騒ぎになると思うけど」

 

 

物心つく前からマツミズに引き取られたユウマからしてみれば、宇宙飛行士として宇宙に旅立ち、その後、行方不明となっていたウミカに会ったところで彼女を母親と断定できるほどの記憶がない。そんなウミカが写っている写真を見せながら答えると、ミコは写真を受け取って、注視すれば確かに年数は経っているとはいえ、ウミカと思わしき人物は写っていた。しかしウミカは人類の希望を背負って宇宙へ旅立ったのだ。行方不明となった彼女が地球に帰ってきたのであれば世界中で騒ぎになる筈なのに、彼女は突然、ユウマの前に姿を見せたのだ。

 

 

「一応、伯父さんには連絡しました。すぐには無理でも、こっちに来てくれるそうです」

 

「まあ確かに提督も無視できないだろうしねぇ…」

 

 

どちらにせよ、ここにいる者達では判断がつかないのは事実だろう。幸い、ユウマが連絡をとったマツミズは時間の合間を縫って、こちらに来てくれるそうだ。ミコもそれが一番であろうと頷く。

 

 

「──わぁっ、すっごーいっ!!」

 

 

すると居間から続く台所の方から感嘆した様子のミカヅキの声が廊下まで聞こえてくる。果たして、どうしたのだろうかと顔を見合わせたユウマとミコは声のする台所まで向かう。

 

・・・

 

台所に到着したユウマ達が見たのは、今まさに包丁で長ネギを細かく微塵切りにしているウミカの姿であった。非常に馴れた手つきで手早く長ネギを切るその姿にミカヅキとホシヒメは驚いて、釘付けになっていたようだ。

 

 

「…なにやってるんですか?」

 

「え?あぁもうそろそろお昼も近いかなぁって思ったから、みんなの分のご飯でも作ろうかなって。材料の都合で簡単なものしか作れないけどね」

 

 

とはいえ何故、料理なんてしているのだろうか。怪訝そうに顔を顰めながら問いかけるユウマにウミカは居間のほうの壁時計を顎で指す。確かに時刻はもう11時を過ぎたところだ。ミコがやってきてから、それからソウルライザーでの変身、そしてウミカの登場で気付けばこのような時間までになってしまったようだ。

 

思うところはあるが、見たところただ普通にあり合わせの材料で料理を作っているようだし、ミカヅキに至っては早く食べたいと涎まで見せているのだ。時間にして10分程度で完成したのは炒飯であった。

 

 

「いっただきまーすっ!!」

 

 

きっちり人数分用意された炒飯を前に食卓を囲む。ユウマがどこか複雑そうな表情を浮かべるなか、今か今かと待っていたモチヅキはスプーン片手に食べ始める。

 

 

「おいっしぃいっ!!美味しいよ、これ!!」

 

「そぉ?ありがとー」

 

 

するととたんにミカヅキの瞳は感激で輝ぎ、思ったままの無邪気な感想を口にすると、その感想を聞いたウミカは満足そうににっこりと笑う。

 

 

「ほら、ユウマも早くっ!!」

 

「う、うん…」

 

 

これは食べなくては勿体無いとミカヅキはまだ食べていない0ユウマの腕を揺らしながら促すと、ユウマもおずおずとスプーンを持って、一口、口に運ぶ。

 

 

「美味しい…」

 

 

口に含めば、ごま油とネギの風味が広がっていく。また一口、もう一口とどんどん食べたくなるほどだ。それを表すようにユウマはパクパクとどんどん炒飯を食べていく。

 

 

「アナタには一度も手料理を作ってあげられなかったからね」

 

 

無邪気な子供のように食事をとるユウマの姿を慈しむように優しげに見つめていたウミカはふと零す。確かにユウマが物心つく前にウミカは宇宙飛行士として旅立った。ユウマは所謂、母の味というものを知らなかったのだ。

 

 

(…本当に母さんなのか…?悪い人には見えないし…)

 

 

そんなウミカに気付いて、ユウマは何ともいえない表情を浮かべる。突然、現れたウミカは普通ならば警戒すべきなのだろうが、この家に訪れてからの彼女に全くの敵意や悪意の類は感じられない。それどころか温かで柔らかい陽だまりのような印象を受ける。

 

 

「そう言えば、ミカヅキちゃんとホシヒメちゃんって言ったっけ?言っちゃ悪いけど随分と不恰好な服装ね」

 

「実は今からちゃんとした服を買いに行こうという話になっていたんです」

 

 

食事もそろそろ済む頃、ふとウミカはずっと気になっていたのか、ミカヅキとホシヒメをそれぞれ見やる。k二人ともユウマの私服を身に着けているため、サイズが合っているとは言いがたいのだ。

 

 

「あらそうだったのね!だったら、こんなところにいないで買いに行きましょうよ!おばさんが見てあげるからっ」

 

 

するとウミカはこうしてはいられないとばかりに両手を合わせて、善は急げとばかりに買い物に行こうとする。その姿を見て、まるで嵐のような勢いのウミカに驚くものの、いち早く反応したミコとモチヅキも加わって、あれやあれよと言う間に衣類店に向かったのだ。

 

・・・

 

 

「いやぁ似合ってるわよ、ミカちゃん」

 

「ホントに?でも、これ動きやすくて良いよっ」

 

 

そして時間は服を買い終えた時間まで進む。ウミカは満足そうにミカヅキを見れば、薄手のオレンジ色のパーカーに動き易いスポーティーな服装で纏めたミカヅキも気に入っているのか、満面の笑みで答えていた。

 

 

「ヒメも似合ってるよ」

 

「ヒ、ヒメって…。で、でも…ありがとう…」

 

 

ホシヒメも彼女から感じるどこかクールな印象を元にシックな服装で纏めていた。そんなホシヒメに荷物持ちをしているユウマが声をかけると、照れ臭そうに頬を紅潮させながらボソボソと話している。

 

 

「でも、驚いたわぁ。まさかユウマが女の子に囲まれて暮らしているなんて」

 

「いや、それは成り行きでこうなったと言うか、何と言うか…」

 

 

五人で歩くなか、ウミカはミカヅキとホシヒメと共に暮らしているユウマに、やはり驚いていたようだ。言われてみれば一つ屋根の下のあの状況にユウマも苦笑してしまう。

 

 

「でも、ちゃんと家族がいたようで安心したわ」

 

「…っ」

 

 

とはいえ、何気ない会話からユウマとミカヅキ達が良好な関係でいることは分かったようだ。そんな彼女の言葉にユウマは息を呑む。

 

 

「まあでも、私とはまだ距離があるみたいだけど」

 

「それは…」

 

「ううん、私が悪いの。物心つく前にいなくなったのに、いきなり現れてお母さんだなんて言う人がいたら、そりゃ怪しいわよね。ホントお母さん失格よ」

 

 

そんなウミカもやはり彼女にどこか距離をとるユウマには気付いているのだろう。寂しげに笑う彼女にユウマは何か言おうとするが、下手なことは言わなくていいとウミカは自嘲しながら、宇宙飛行士として従事するも母親の役割を担えなかった自身を責める。

 

 

「あの、さ…。なんで宇宙飛行士になろうと思ったの?」

 

 

やはり彼女を見て、悪い印象は感じない。そんな彼女との距離を少し縮めるかのようにユウマはウミカが宇宙飛行士になろうと思った理由を尋ねる。

 

 

「そうねぇ…。きっかけは星を見上げるよりももっと近づいてみたいと思ったからかな。そこに向かえば、誰が待ってるんだろうって…。ほら人ってさ、出会いで変わるの。それが今の私達を形成してる。良いようにも悪いようにもね」

 

 

まさかそんなことを問われるとは思っていなかったのか、一瞬、間の抜けた表情を浮かべたウミカは首を傾げて、彼女が宇宙飛行士を志した理由を話し始める。

 

 

「俺は…分からない。未来に何がしたいかが見えてこないんだ」

 

「それはそれで仕方ないんじゃない?」

 

 

かつて赤城にも言ったことがある。何がしたいのかも目指したいものが何かも分からない。故にそれが自分の未来に繋がらない。ずっと靄がかかっているようなものなのだ。だがそんなユウマにウミカはあっけらかんと答える。

 

 

「だって見えてこないんでしょ?なら焦ったって仕方ないじゃない。でもね、さっきも言ったけど、要は出会いよ。出会いが未来を作るの。いつかユウマに共振する出会いがあるかもしれない。まあもうしてるかもしれないけど」

 

 

驚いた様子でウミカを見やるユウマに、彼女は己の考えを口にしながら、ユウマが出会い、今に至るミカヅキ達を見やりながら話す。

 

 

「だから未来へ繋がる一つ一つの出会いを無駄にしないように前だけは向いていなさい。例え傍にいなくても、出会った多くの人達がアナタの心に確かに息づいてくれるように」

 

 

ミカヅキ達との出会いはお互いに影響を与えているはずだ。出会いを無駄にするな、そんなウミカの言葉にまだ具体的な未来の方向性が分からないユウマも考えるように俯く。

 

 

「さて、ちょっと湿っぽくなっちゃったから今日は私が晩御飯を作るわっ!どうせシンちゃんも来るんでしょ?だったら特製ウミカレーを作ってあげましょうっ!!」

 

「わぁーいっ!!」

 

「よければ、レシピを…」

 

 

少なくとも今のウミカの言葉はユウマの中で何か影響を与えているようだ。とはいえ、柄でもないと思ったのか、どこか湿った空気を払拭しながらミツミズの名を挙げ、夕食の提案をするウミカに、炒飯で完全に彼女の手料理の虜になったのだろう。ミカヅキは手放しで喜び、ホシヒメもおずおずとレシピを尋ねていた。

 

・・・

 

 

「ただいまー」

 

 

帰りにスーパーで買い物を済ませたユウマ達はマツミズ宅へ戻ってきた。玄関を開きながら、ぞろぞろと家の中に入って、そのまま居間まで向かって行くと…。

 

 

「帰ってきたようだね」

 

 

そこに待っていたのはマツミズであった。その隣には鳳翔とソーフィの姿もある。

 

 

「伯父さん!それに鳳翔さんにソーフィさんも…」

 

「彼女達は私が頼んで、同行してもらったんだ」

 

 

マツミズとその近くにいる鳳翔とソーフィに反応するユウマに簡単ながら、彼女達が同行している理由を話す。しかし大方、鳳翔はマツミズの護衛だろうが、ソーフィは何なのだろうか。

 

 

「ガッツ、お前ぇ…」

 

「い、いやー奇遇だねー。アハ、アハハハ…」

 

 

するとソーフィは呑気な顔で居間に顔を見せたミコに白い目を向ける。非難するようなその視線に耐えかねたミコは目を逸らしながら乾いた笑みを浮かべている。

 

 

「さて…宇宙からの帰還、か」

 

「やっほーシンちゃん。お久しぶりー。なんか痩せてない?ちゃんと食べてるー?」

 

 

軽く咳払いをして、マツミズは場の空気を正してウミカを見やる。それに合わせてソーフィ達も姿勢を正し、ユウマ達も空気が変わるのを感じて、息を飲むなか、能天気と言うべきなのか、特に気に止めた様子のないウミカはマツミズに声をかけ、誰しもがずっこけそうになる。

 

 

「…我が妹ながら相変わらず我が道を行くなぁ」

 

「んー?そのニュアンスって褒めてる?」

 

 

どこか残念なものを相手にするかのようにため息をつくマツミズにその言葉のニュアンスから首を傾げるウミカだが、まぁ良っかと自己完結する。

 

 

「悪いけど、私達と一緒に来てもらうよ。どうやって地球に戻ってきたかは分からないけど、お前の身体を調べないと。聞かなきゃいけないことは山のようにある」

 

「あー…それ明日じゃダメかなー?故郷は地球!やっと帰って来れたんだし、ゆっくりしたいよぉ。今日は流石に疲れたし、ウミカレーを作る約束もしちゃったしね。なんだったらシンちゃんも食べなよ。材料はいっぱい買ってきたし」

 

 

マツミズとしてもウミカに対して不可解なことは山のようにある、政府に所属する提督という立場の者として、鎮守府への同行を求めるが、のらりくらりと一蹴したウミカは材料が入った買い物袋と共に台所まで持っていく。

 

 

「どうお考えですか、提督」

 

「どうもこうもね…。話した限り、まさに私の妹だよ。あぁいう風に言った後はてこでも動きやしない」

 

 

台所で作業をしているウミカを横目に鳳翔はマツミズにそっと耳打ちする。マツミズもどこか複雑そうにウミカを見ていた。

 

 

「ともあれ、私もウミカさんのお手伝いをさせていただきますね」

 

「ああ。よろしく頼むよ」

 

 

すると鳳翔は自身もこの場で出来ることは台所仕事だろうと手を貸すために立ち上がると、マツミズはそれを見送りながら、ソーフィに目配せをするそれに気付いたソーフィは頷くと、タブレット型の機械を取り出して、なにやら操作を始めるのであった。

 

・・・

 

 

「私もお手伝いしますね」

 

「あぁ、ありがとう。助かるわ」

 

 

台所にやって来た鳳翔はウミカに声をかけると、折角の申し出にウミカも笑顔で快く迎える。

 

 

「ごめんね。無理言っちゃって」

 

「いえ、提督も無理に連れて行くつもりはないようなので」

 

 

マイペースな人物かと思いきや、無理を言っている自覚はあったのか、非礼を詫びるウミカにマツミズも今も様子を見ているようなので、その意向に鳳翔も従うようだ。

 

 

「私はさ、ユウマに母親らしいこと出来なかった…。出来ることをしたってこの十数年の空白は埋められない…。恨まれたって仕方ない」

 

「でも、ユウマ君はウミカさんを恨んだりしていませんでしたよ。寧ろ誇りに思っていたように私は感じています。あの子は…とても良い子ですよ」

 

 

ふとウミカは自嘲しながらユウマへの懺悔のように話し始めると、これまでの艦娘として生を受け、今日までユウマの口から母親への恨み言を聞いたことがない鳳翔はフォローするように口にする。

 

 

「そっか…。でもユウマは私や父親がいなくても、ちゃんとあの子の周りに家族がいたのは純粋に嬉しかったなぁ…」

 

「最近は賑やかになりましたからね。ユウマ君も毎日が楽しそうですよ」

 

「それはアナタのような存在が近くにいるのもあるだろうね」

 

 

居間の方に目を向ければ、ミカヅキ達と賑やかに戯れているユウマの姿が見える。まさに兄妹か何かのようだ。そんな彼女の言葉に頷きながらその様子を見守る鳳翔にウミカは微笑みかけながら安心したように話す。とはいえ、鳳翔はいえいえ、そんなことはと謙遜していた。

 

 

「…本当に…良かっ……た…」

 

「え?なにか仰いました?」

 

 

ふと消え去りそうなほどのか細い声で呟いた声を聞き逃し、鳳翔は何気なくウミカに目を向ける。彼女は今、カレーやサラダに使う野菜を水で洗っていた。

 

 

「ウミカさん…!?」

 

 

しかしその様子は尋常ではなかった。野菜を水で洗っているだけだと言うのに、水に濡れた彼女の腕は激しく震え、脂汗すら流れているではないか。あまりの様子に鳳翔はウミカに駆け寄ろうとする。

 

 

「大丈夫よ、気にしないで…」

 

 

だがウミカは鳳翔を手で制しながら、水に濡れるたびに痙攣して震える腕を必死に抑えながら、ふと居間を見てその瞳にユウマを焼き付けるように見つめる。

 

 

「あの子には…母親として…ちゃんとした私の手料理を食べさせてあげたいの…。今の…うちに…っ!!」

 

 

何とか水に耐えるように下唇をギュっと噛んで、料理に専念する。そのあまりの姿に鳳翔は推されながらも、おぼつかない足取りで料理をするウミカを気遣いながら、その手伝いを行うのであった。



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母の温もり part3

──あの時、私は確かに死を覚悟した。

 

宇宙飛行士の仕事に従事し、私も漸く宇宙へ旅立つ時が来たのだと期待に胸を膨らませていたのも、今でもただただ黒く濁ったような絶望しかない。メーターを見れば、探査船内の酸素も刻一刻となくなっていくのが分かる。しかしそれはただ残酷なだけだ。なんせこれはただのじわじわと首を絞める死の時計でしかないのだから。

 

外宇宙にまで飛び立ったまでは良かった。しかしまさかそこで探査船が不備を起こすとは思いもしなかった。地球への通信も出来ぬまま、探査船は事実上、宇宙を彷徨う棺桶になったのだ。

 

しかも私に降りかかる不幸はそれだけでは済まなかった。探査船が近くの惑星の引力に引かれて、落ちてしまったのだ。何とか無事だったが、不時着したこの惑星の環境を見て、それは決して幸ではないことを突きつけられた。

 

その惑星はまさに水が全くなく、ただ炎が荒らしのように吹き荒れる地獄を表したかのような灼熱の惑星だったのだ。探査船内の備蓄もどんどん無くなっていき、比例してクルー達も次々に命を落としていった。

 

惑星に降り立つのは危険な為、助けも来ない悠久のような時間を探査船内で過ごす日々で死が訪れるのを待つのは精神をすり減らし、もはや心など折れていた。

 

だがそれでも…。それでも…。

 

 

(ユウ…マ……)

 

 

地球で待っているであろうユウマに会いたかった。私はユウマにまだまともに母親らしいことをしていない。せめてもの母親としての務めを果たしたい。宇宙へ旅立つ日に持っていった夫と私と、そして生まれたばかりのユウマが写る写真は今ではボロボロだが、これが私が死を覚悟しても自殺を選択しない理由となった。

 

もしかして何か奇跡が起きて、助かるかもしれない。そんな夢のようなことを少しでもの気晴らしに考えながら、ずっと家族のことを考える。

 

しかし、それはあまりにも突発的だった。

 

 

「ぅ…ち…ゅ…ぅ……せ…ん……?」

 

 

水をいくら渇望しようとも、一滴も飲むことも出来ず、どんどん身体が枯れて、全てが無くなっていくような虚無感に襲われる。まともに喋ることも満足に身体も動かすことも出来ぬまま、私は偶然、探査船内から見えた円盤型の宇宙船を見つける。その宇宙船は不規則な動きをしながら、私達の探査船に近づいてくるのだ。もしかしたら助かるかもしれない。私は淡い希望を抱いた。

 

でも、これは更なる地獄の始まりだった。

 

・・・

 

 

「──っ!?」

 

 

深夜、日付も変わり、夜が更けるなか、飛び跳ねるように起きたのはウミカであった。結局、あの後、ウミカと鳳翔によってウミカ自慢のウミカレーが振舞われた後、鳳翔達を含め、この家に集まった全ての者が今日一日、ここで泊まることとなった。穏やかな夜を過ごしていたのだが、ウミカは悪夢を見ていたのだろう。動悸も激しく、何とか呼吸を整えようと意識を集中させる。

 

 

「…」

 

 

暫らくして何とか気分を落ち着けることが出来た。どこか気疲れしたような表情を浮かべたウミカは自分が眠っている居間のソファーから静かに立ち上がる。元々、泊まる予定のなかった者達は多くおり、マツミズは鳳翔やソーフィ達に布団を譲り、自身は床で雑魚寝をしている。近くで寝ている者を起こさないようにと足音を極力立てないように移動する。

 

彼女が移動したのはユウマの部屋だった。静かに戸を開けば、暗がりのなか布団に包まっているユウマの姿を確認できた。

 

先程、同様にユウマを起こさないように忍び足で彼の枕元に向かっていくと、ゆっくりと屈んで、彼の寝顔を覗き見る。そのままゆっくりと彼の額にかかる前髪を優しく掻き分けて、より露になったその顔に柔らかく微笑む。その表情はまさに慈愛に満ちた母親のようにたおやかなものであった。

 

 

『美味しいよ、この…ウミカレー…だっけ』

 

 

まだ距離を感じるものの、夕食の際に振舞った特製カレーを食べて、笑みを見せてくれたユウマ。それから二杯はおかわりをしていたのを見る限り、その感想は嘘ではなかったのだろう。夕食は仕事を分身に押し付けて、サボっていたミコをくどくどと説教するソーフィ(どちらかと言えば、怒るよりも羨ましがっていたようだが)の様子が何だか可笑しくてついつい笑ってしまったりと和やかな団欒の時間を過ごしていた。

 

何よりはユウマが絶えず誰かしらに話しかけられていたことだろう。彼らの視線からユウマを大切に思っていることは手に取るように感じ取れた。まさに彼は一人ではないのだと、彼には家族の代わりが、いや、家族がいるのだと感じることが出来た。それが何より嬉しかったのだ。

 

 

「…っ!」

 

 

暫らくユウマの寝顔を見ていたウミカだが、ふと軋むような鋭い頭痛を感じた両手で頭を抑えて蹲る。しかしそれでも悲鳴を上げないように耐えているのはユウマを起こさないようにする為なのか。ウミカはすぐに起き上がると、ユウマの頬に軽くキスをして、誰にも悟られないようにマツミズ宅を出て行く。

 

・・・

 

ウミカが移動した場所はこの町の静かな海が見れる港の近くだった。海を一望できる通りにあるベンチに腰掛けたウミカの瞳に海が写るも、そこに宿る感情は物悲しさを感じさせる。

 

 

「──こんな夜に出歩くなんて感心しないな」

 

 

今、水面を見つめるウミカは一体、なにを考えているのだろうか。夜風が寂しく吹くなか、ウミカに声をかけられる。彼女が静かに顔を向ければ、そこにはマツミズがおり、その後ろには鳳翔やソーフィ、ミコが控えていた。

 

 

「夜風にあたりたくて、なんて言っても仕方ないか。気付いてるんだよね?」

 

 

わざわざ鎮守府関係の者達がこぞって自分の前に現れた。最初こそおどけた様子で話すウミカだが、この状況に冗談を言うのを止め、どこか悲哀を感じさせるようにマツミズに問いかける。

 

 

「…同行してもらったソーフィ(彼女)にずっと調べてもらっていた」

 

 

ウミカの問いかけにマツミズは一度、視線を伏せると、それでも毅然と顔を上げ、傍らにいるソーフィに視線を送りながら答える。すると指されたソーフィはタブレット型の機械を持ったまま、一歩前に踏み出す。

 

 

「…アナタは確かに地球人だ。だが、それだけではない反応がある。…いや、それが大半を占めている」

 

 

ソーフィはタブレット型の機械に表示されるウミカの過去のデータと今のウミカのデータを照らし合わせながら、話を始める。彼女は確かに地球人の遺伝子構造はあるらしい。

 

 

「地球には決してない反応がある。それはまるでアナタの外見はそのままに中身を弄って常にアナタの身体を…いや精神構造さえもを変えているかのようだ」

 

「…うん。そうだね、その通りだよ」

 

 

ソーフィは言い辛そうに、だがしかしそれが自分の役目だと気丈にウミカの身体について話す。それはつまり、今の彼女は純粋な地球人とは言えないということだ。その言葉にウミカは悲しげな笑みを浮かべて、認める。

 

 

「──…」

 

 

だが、その話を物陰からユウマやミカヅキ達も聞いているとまでは思ってはいまい。ゼノンを一体となって強化された聴力から、少し離れた物陰から話を聞いていたユウマは息を呑む。実を言えば、ユウマはウミカが彼の寝室に訪れた時から起きていた。あの場でウミカが自分に何かしようものならすぐにでも対応しようと思っていたが、その実、優しく自分を撫でてくれた。

 

確かにそこに愛を感じたのだ。それはやはり彼女が 自分の実の母親であるアスノ・ウミカだったからだろう。それは嬉しかったが、ソーフィの話自体には動揺してしまう。

 

 

「私はね、宇宙飛行士として外宇宙に旅立った後、探査船のトラブルでとある惑星に不時着した。そこはね、決して矮小な人間では生きていけないような灼熱の地獄の星…。助けも呼べずにクルーが一人、また一人と息を引き取るなか、食料も水もなくなった私はただ奇跡か死かのどちらかを待つだけだった」

 

 

そんな中、ウミカは自身に起きたことを話し始める。それはまさに壮絶な話だろう。ただ地獄のような星で生きながらえることは出来ず、ただ死を待つだけ。宇宙開発には決して犠牲がなかったと言えない。だがそこに起きた犠牲は凄惨なものが多いことは想像に難くない。

 

 

「でもね、私に訪れたのはそのどちらかでもなく、更なる悪夢だった」

 

 

そして語られる今の彼女について。果たして、彼女に一体、何があったのか、この場にいる者たちは特にマツミズやユウマが覚悟してその言葉を待つ。

 

 

「あの灼熱の星で私達の探査船には、ある円盤型の宇宙船が近づいてきたの。最初は一体、何なのか分からなかった。でも、もしかしたら助かるかもしれない…。そう思った。でも、円盤から放たれた青白い発光体が私の運命は変えてしまった」

 

 

ウミカはあの時、自分達の探査船の前に現れた円盤船のことを振り返り始める。

 

 

・・・

 

 

円盤船から放たれた青白い発光体はたちまち私達の探査船を包み込んだ。その光は生命体であり、すぐに私を含む生き残ったクルー達の身体の中に強引に入り込んできた。

 

それはまさに得体の知れないものに飲み込まれ、内側から自分とは違う何者かが自分を蝕んで成り代わろうとするかのような感覚で、意識を失うその時まで私の耳には耳を劈くような仲間達の声が聞こえた。

 

 

『適合したのは、この女だけか?』

 

 

目を覚ました時、私がいたのは自分達の探査船とは違う薄暗い場所だった。首にふと違和感を感じて見て見れば、重い首輪のような装置をはめ込まれていた。

 

あの青い光に蝕まれた自分は一体、どうなったのか不安と恐怖に駆られるなか、私の頭上で声が響いた。決して地球の言語ではないのに、理解できたのは、もしかしたら私の内部に入り込んだ青い光の影響なのかもしれない。

 

 

「ひっ…」

 

 

見上げてみれば、そこには巨人達が自分を見下ろしていたのだ。短い手足と頭に三つの突起がある巨人、スマートンな人型の昆虫類を思わせるような巨人や白い身体に無数の赤い瘤のようなものが生えた巨人など、そこには多くのそれぞれ異なる宇宙人達がいた。

 

 

『今、こいつの身体の中に入り込んで、少しずつ変異をさせているところだ。だが、それではまだ足りない。ここから私がコイツを改造して強化しよう』

 

『やっと適合した固体だ。無駄にするなよ』

 

 

赤い瘤の巨人とリーダー格を思わせる突起の巨人はなにやら会話をしており、他の巨人達の中には私のことを興味深そうに見てくる奴もいた。でも、そんなことよりも私は自分の置かれている状況でパニックになりそうだった。

 

 

『さて、では始めるか』

 

「い、いや…っ!来ないでっ!!」

 

 

赤い瘤の巨人は等身大に身長を変えて、私に近づいてくる。私は逃げようとするも、勝手の分からぬ場所では成す術もなく、先程と話していたように生体改造を施されることとなった。

 

それはまさに地獄だった。様々な機器を取り付けられ、メスで切られ、薬物を投与され…私には到底、理解できないような、それ以上の半ば拷問に近い形で私は身体を弄られた。

 

何でこんな目に遭うのか、何でこんなことになるのかと自分と巨人…いや宇宙人達を呪い、ただ生きたいと言うただの純粋な願いは無慈悲に踏みつけられた。

 

 

・・・

 

 

『改造は終了した。これで戦闘能力の強化だけではなく、ウルトラ戦士達のようにいつでもその姿を変えることが出来る。しかしこの固体の自我が思ったよりも強く内部で一体化した生命体と拮抗はしないものの、乗っ取られるのを食い止めている状態だ』

 

『人間にはどうしようもないだろう。その内、乗っ取られるさ。だがそれよりも水に弱いとのことだが…』

 

『これはあの星での長年の生存環境が原因だ。これはどうしようもなかった。こいつが使っていた探査船も改造した。後はリーダーたる貴様の一存でいつでも使えるぞ』

 

 

私の身体精神は既に破綻しているのか、それとも辛うじて繋ぎ止めているのか、それすらも分からなかった。だが地獄のような時間が終わり、私は私とは違う何かになった後、また再びあの宇宙人達の見世物にされた。

 

・・・

 

 

『あのブレスレットのデータが欲しい。貴様を使う時が来たな』

 

 

そしてそれから暫らくが経って、私を改造した赤い瘤の宇宙人や昆虫類のような宇宙人がいなくなった後、私は…そう、宇宙人連盟のリーダーであるヒッポリト星人から地球を赴くように指示を出された。

 

 

『アスノ・ウミカ。いまだにアナタの自我を保っているその精神は美しい。それを讃えて、地球のアラビアという地の言語にあるこの言葉を生まれ変わったアナタの名前として送りましょう』

 

 

すっかり変わってしまった私達の探査船を前にして、宇宙人達の仲間であるババルウ星人はキザったらしい様子で私にコードネームを与えてきた。

 

 

『──ジャミラ、と』

 

 

 

──ユウマ。

 

 

私は地球に置いていったあの子のお母さん(ママ)になれぬまま化け物(ジャミラ)になってしまった。

 

 

 

・・・

 

 

「…ゼノンのブレスレットが目的か」

 

 

話を聞き終えたマツミズは実の妹が生体改造されたという事実にやはり同様はしているのだろう。言葉を失っているなか、静かにソーフィが口を開き、ウミカはコクリと頷く。

 

 

「でも、アナタはゼノンに会っても、戦う真似はしなかった!それよりも、アナタはユウマ君に…!!」

 

「…うん。私にとっては、そっちの方が重要だった。だって、私はいつ自分でなくなるか分からないから」

 

 

しかし実際、彼女はゼノンを対しても戦わず、それどころかユウマの前に現れた。ただゼノンが目的であれば、その後も破壊活動っをすれば、ゼノンをおびき出せるのみ。

 

鳳翔は涙ながらに叫ぶ。彼女は知っているのだ。ウミカが苦手である水に懸命に耐えながらでも、それでもユウマのために手料理を作ったことを。

 

 

「ごめんね…っ。必死に今まで抑えてきたけど、もう…っ…抑えられなくなっちゃったんだ…っ!」

 

 

どんどんとウミカの呼吸が荒くなっていく。今でも彼女はジャミラが成り代わろうとするのを耐えているのだろう。だがヒッポリト星人が過去に言っていたように、時間の問題でもう耐えられないのだろう。彼女の声にまるでノイズにように、違う声色が混じっていく。

 

 

「あっ…あぁっ…あああああああAAAAAAaaaaaaaaaaaaa─────────!!!!!!!」

 

 

頭を掻き毟り、もがき苦しむウミカは人間とは思えない狂ったような声を上げる。すると見る見るうちに彼女の皮膚は粘土状に変化して、その姿を変えて巨大化していく。それはまさしく昨夜、この町に現れたあの巨人ではないか。

 

 

「そんな…っ」

 

 

ウミカがその姿を変えた巨人・ジャミラにユウマは悲痛な表情を浮かべる。本来であれば、今すぐにでもゼノンになるべきなのだろうが、それがすぐには出来ないのは幼い彼が大きく動揺しているのに他ならなかった。

 

 

「──ッ」

 

 

しかしジャミラはウミカが言うように、彼女の自我は呑まれているのだろう。足元にいるマツミズ達に対して、今まさに火炎を吐き出そうとしている。それを見たユウマは反射的にギャラクシーブレスを構えて、強い光に包まれるのであった。

 

・・・

 

──自分達に降りかかろうとする炎を巨大な盾が防いでくれた。

 

 

「ゼノン…」

 

 

瞳から光を失ったジャミラからの炎にマツミズが死を意識した瞬間、彼らの前に光の盾が割り込んで、迫る炎を防いでくれた。反射的に目を瞑っていたマツミズ達が目を開き、正面を見れば、自分達を守護するギャラクシーディフェンダーの姿があり、役目を果たすと姿を現した主の下へ戻っていく。

 

 

「…A…Aa…」

 

「…」

 

 

ゼノンの姿を視認したジャミラに異変が起こる。それは明らかにゼノンを見て、動きを鈍らせているのだ。

 

 

(分かるんだね…。無意識でも…ユウ君のことが…)

 

 

それはやはり呑まれたと思われていたウミカの意志が働いてのことだろう。どこか苦しむ様子を見せるジャミラに危険のない場所まで全員をテレポートで運んだミコは切なそうに見つめる。

 

 

・・・

 

ジャミラと対峙するゼノンだが、そこに探査船を改造してAIによる援護の役割を担った支援機がゼノンにビームを放って、襲い掛かってくる。すかさずギャラクシーディフェンダーで防ぐゼノンだったが…。

 

 

「──ッ!」

 

 

自分の横を灼熱の炎が通り過ぎて、支援機を破壊する。振り返れば、そこには苦しんで両膝をつくジャミラの姿が。よく見れば、その瞳は光が灯っているではないか。

 

 

【やっパり…ゆウマ…なンダね…?】

 

【…分かるの?】

 

【ウン…。なんとナ…ク…。…自分の…子供だし…ネ】

 

 

テレパシーで歪に聞こえてくるウミカの声。ゼノンであるにも関わらず、ユウマであると見抜いた彼女に驚く。やはり異形の存在になっても、親として感じるものがあるのだろう。

 

 

【ユウマ…おねがイ…わた…シが…マダ…人間である…ウチに…殺しテ…】

 

 

その言葉はどれほど悲しい言葉だと言うのだろうか。だがそれは何れジャミラという怪獣として葬られるよりも、アスノ・ウミカとして死にたいという彼女の気持ちの表れだろう。

 

 

「…ッ」

 

 

だがそれが同時にゼノンの…いや、ユウマの肩に重くのしかかる。何か助かる術はないのか、それを模索したところで、目の前でまた再び意識を乗っ取られないようにと抗って苦しんでいるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

【──あァ…ダメだ…。こんナこと…押しツケるなンて…やっパりオヤしっかクだね…】

 

 

 

 

 

 

ユウマの中で葛藤が生まれる。それはゼノンも同様だろう。彼女を人間として殺すことが、唯一、彼女を楽にしてあげられることなのかと。そんな悲しい重りのような苦しみを味合わせていることに気付いたのだろう。

 

 

【ユウマ…悲しイ想いをサセチャッてゴめんネ…?こんナコと言える資格はないけど…】

 

 

ジャミラは…いや、ウミカはゆっくりとゼノンに近づいて、その人ではなくいなった腕で彼を抱きしめ、言葉を紡ぐ。その言葉は人間の心を取り戻したようにどんどん流暢になっていく。

 

 

【心が挫けそうになって…躓いても…。それでも過去を越えて前だけを向いて…明るい未来に…進んでね…。それが…私の願い…】

 

 

人ではなくとも、抱きしめられることで温かさが伝わってくる。それは人であらずともまさに子を慈しむ母親の姿そのものだろう。

 

 

【ゴメんね…。こンナ母親…デ…ッ】

 

 

だが、また再び意識がジャミラにも戻ろうとしているのだろう。ゆっくりとゼノンから身体を離す。

 

 

【サヨウ、ナ…ラ…。愛しテ…るヨ、ユウ、マ】

 

【待っ───!!】

 

 

最後までゼノンを通して、ユウマを見つめていたウミカは最後に母親として愛の言葉を残すと、一目散に振り向いて海がある方向に走り出す。嫌な予感を感じたユウマは静止しようとするが、その言葉は届かない。

 

 

そして彼女は海に身を落とした。

 

 

 

「あっ…あぁ…っ!!」

 

 

苦手である海に身を沈ませ、ジャミラとしての意識からか抜け出そうともがき苦しむが、やがて反応も鈍くなり、。最後にはその生命の火は消え去った。

 

その母親が死ぬその一部始終を見ていたユウマであるゼノンは崩れるように両膝をつくと、彼の心を表すかのように、その身体は光の粒子となって、消え去った。

 

・・・

 

 

「…」

 

 

その数分後、ユウマは一人、マツミズの自宅におぼつかない足取りで帰って来ていた。

 

 

「ユウマ…」

 

 

そんな彼を一足先に家に帰って来ていたミカヅキ達は出迎える。今の彼はまさに魂が抜け落ちたかのように生気を感じられず、その目も焦点があっていなかった。そんな彼に彼女達もかける言葉が出てこなかった。

 

 

「俺…一度も…母さんって…言ってあげることが出来なかった…」

 

 

するとユウマはポツリと消え去るような声で呟く。それはウミカへの呼称のことだ。突然、現れたウミカに戸惑い、距離があった為、結局、ユウマはウミカに一度として、母親として呼ぶことが出来なかったのだ。

 

 

『サヨウ、ナ…ラ…。愛しテ…るヨ、ユウ、マ』

 

 

彼の脳裏にウミカの最後が過ぎる。それほどまでにユウマの心に深く刻み込まれたのは言うまでもないだろう。

 

 

「あ、あぁっ…アアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!?」

 

 

ポタポタとユウマの瞳から涙が止め処なく流れ落ちる。幼い彼の心に刻み込まれた母親の悲しき最後にもう耐え切れず、両腕で頭を抱えるとその場に崩れ落ちて、狂ったように慟哭をあげるのであった。




<次回予告>

ウミカの一件以降、ユウマは廃人のようになってしまった。誰もがそんな彼に胸を痛めるなか、暴君怪獣タイラントが襲来し、更には宇宙人連盟の一員であるテンペラー星人までもが出現する。何とか立ち向かおうとするユウマだが、既に彼の心は打ちひしがれており、瞬く間に追い詰められてしまう。どうにもならない、そうと思われた時、運命の出会いが訪れる──。

次回…ケモノの影を纏って


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ケモノの影を纏って part1

暴君怪獣

タイラント

極悪宇宙人

テンペラー星人

登場


「やれやれ、この宇宙船も随分、寂しくなったものですね」

 

 

不気味なほど薄暗い宇宙人連盟が使用するこの宇宙船でババルウ星人はまるで皮肉混じりにくつくつと笑いながら、自分とヒッポリト星人しかいない船内について口にする。

 

 

「フンッ、ここで生き残れないのであれば、この先も容易く淘汰されるであろうよ」

 

 

ババルウ星人の物言いに鼻を鳴らしながら一蹴する。確かにこの宇宙船内で宇宙人連盟として連ねていたナックル星人やスラン星人はウルトラマンの活躍によって敗れ去った。今、宇宙人連盟に残っているのはここにいるヒッポリト星人とババルウ星人、そしてこの場にはいないテンペラー星人と協力関係にあるぺダン星人だ

 

 

「それにもう少しだ。計画そのモノは順調に進んでいる」

 

 

するとヒッポリト星人は立体映像を表示する。それはこの船内のとある場所を映す映像のようだ。そこにはかつてゴモラに降り注いだあのカプセルがあり、その中には様々な怪獣の部位を組み合わせたような外見を持つ暴君怪獣タイラントが眠っていた。

 

今は大人しく眠っているようだが、これが解き放たれれば、まさにその名に恥じぬほどの災いを齎すだろう。そんなタイラントを見て、ヒッポリト星人はまるで狂気に呑まれたかのように話し、その後ろで壁に寄りかかって腕を組んでいたババルウ星人は「だと良いんですがね」と肩を竦めていた。

 

 

「そう言えば、テンペラーはどうした?」

 

「あぁ…確か暴れられないからと業を煮やして、どこかの宇宙に向かったはずですよ」

 

「なにをやっているんだ、奴は…。今すぐ連絡して、呼び戻せ」

 

 

ふとヒッポリト星人はこの場にいないテンペラー星人の名を挙げる。普段であれば、この場でなくても船内にはいるはずだ。するとテンペラー星人の行き先について知っていたのか、ババルウ星人は思い出したかのように軽く話すと、下手なことをさせないようにとすぐさまヒッポリト星人の指示が与えられるのであった。

 

・・・

 

宇宙を越えたその先には水泡のような宇宙が多元宇宙マルチバースとして無数に広がっていると言う。その中の宇宙の一つ、その先にあるユウマ達とは異なる地球の市街地でテンペラー星人の姿があった。

 

この街の名は星山市。普段は怪獣こそ時折、現れるが、それでも和やかに人々の営みが育まれる場所だ。だが、そんな安息をの場所を打ち壊すかのようにテンペラー星人が現れて、猛威を振るっているのだ。今も、電気エネルギーを鞭状にした光線を放っていた。

 

そんなテンペラー星人を食い止める為に、この世界のウルトラマンが戦っていた。しかし一見してみれば、赤と銀の体表にカラータイマー等の一般的なウルトラマンとしての特徴を持っているのだが、やはり一番、目を引くのは、ツリ上がったその青い目だろうか。

 

それだけでもどことなく異様さを感じるのだが、このウルトラマンの野性味を感じさせるような戦い方はまるで荒らしい獣のような印象を抱かせる。

 

 

「貴様のことは知っているぞッ!さあ、ここまで来たのだ。その力を示してみよォッ!!」

 

「僕が目的だって言うのか…!?」

 

 

テンペラー星人が現れた当初はこの街で破壊活動を行っていたのだが、このウルトラマンが現れた瞬間、待ち望んでいたとばかりに襲い掛かってきたのだ。自分を目的に出現したであろうテンペラー星人にどことなく困惑したような声をあげる。

 

 

「戦うのなら、ここじゃなくったって戦えるのにッ!!」

 

 

だが例え自分が目的であろうと、その為だけに関係のないこの星山市の人々を危険に晒したことを許すわけには行かない。青い目のウルトラマンは獣のようにアスファルトの地面を蹴って、テンペラー星人に飛び掛っていく。

 

 

「良いぞ、良いぞォッ!!噂に違わぬ力を感じるッ!!」

 

 

それはまさに地を大きく震わすような激闘と言っても過言ではないだろう。戦闘の状況に応じて、姿を変えるこのウルトラマンを目的にこの世界に訪れたテンペラー星人は戦いの中で滾るような喜びを感じていた。

 

 

《──そこまでです》

 

 

激化していく戦闘の最中、ふとテンペラー星人にテレパシーが届く。それはババルウ星人のものであった。突然、動きを止めたテンペラー星人に青い目のウルトラマンもその様子を伺う。

 

 

《戦いは結構ですが、我らが連盟に名を連ねた以上は自重していただきたい》

 

「…貴様、戦いが盛り上がったタイミングを狙ったな?変わらず悪趣味な奴よ」

 

《偶然じゃないですかねぇ。兎に角、一度お戻りを。計画を進めるそうです》

 

 

咎めるようなババルウ星人の物言いだが、轟くような戦いに心を躍らせていたテンペラー星人は冷や水を浴びせられた気分となり、苛立ちを一切、隠さずに話すが、そんな文句もどこ吹く風か、気にした様子のないババルウ星人はテンペラー星人を呼び戻そうとする。

 

 

「チッ、興が削がれたわ。勝負は預ける」

 

「──ッ!待てッ!!」

 

 

ババルウ星人の横やりに白けた様子のテンペラー星人はこれ以上、戦う気にはなれないのか、ワームホールを開いて、そこに潜っていく。だが青い目のウルトラマンもすぐにその後を追い、彼の仲間達の声を背後に聞こえるなかワームホールに突入するのであった。

 

・・・

 

 

「ユウマ、目は覚ましたか…?」

 

 

テンペラー星人と青い目のウルトラマンとの戦いから十数時間が経過した頃、ユウマ達の宇宙であるグローリースペースでは、丁度朝を迎えていた。晴天に恵まれた…とは言えず、どんよりと今にも雨が降り出してきそうなほど、濁った暗雲が立ち込めるなか、マツミズ宅ではホシヒメがユウマの部屋の前で声をかけていた。

 

 

「…入るよ」

 

 

しかし一向にユウマからの反応はない。別にユウマが不在なわけではない。確かにこの戸の奥には人の気配があるのだから。声をかけても了承が得られないまま、ホシヒメは戸を開く。

 

そこには壁に寄りかかったまま、座り込んでいるユウマの姿が。髪もボサボサで生気を感じられない瞳で虚空を見つめていた。

 

 

「その…朝ご飯、出来たんだ…。ちゃんとご飯は食べないと…。ここ最近、ずっとまともに食べてないんだし…」

 

 

ホシヒメが室内に入ってきても、ユウマは何の反応もない。指一本も動かす気配のないユウマに何とか笑みを作りながらでも彼に声をかけるのだが、彼は返答どころか何か素振りを見せる気配もなかった。

 

それもこれも、やはりウミカの一件があったからだろう。あれから数日が経ったが、ユウマは学校に行くこともなく、廃人のようになってしまったのだ。

 

しかしこれは幼い15歳の少年の心に目の前で母親が自身の生命の火を消し去る姿が深く刻み込まれているに他ならなかった。お陰で食事もまともに取っておらず、ウミカが家に来た時よりも、見る見るうちに痩せ細り、頬もこけ始めているのが分かる。日を重ねるうちに痛ましい姿になっていくユウマにホシヒメ達も心を痛めてしまう。

 

 

「うぅっ…あぁあっ…!!!」

 

 

そして何より、彼の頭の中でウミカの死がフラッシュバックすることがあるのだろう。その時だけ何か反応を起こして乾いた唇を動かし、頭を抱えてもがき苦しんでいるのだ。

 

 

「ユウマ、しっかりしてっ!!」

 

 

錯乱しているユウマを何とか抱きしめて落ち着かせようとするホシヒメ。しかしユウマは落ち着く気配もなく、嗚咽を零して涙を流しながら、悶えていた。

 

 

「お願いだからっ…戻ってきて…っ!」

 

 

騒ぎを聞きつけたミカヅキが様子を見に来て、ユウマのその姿に沈痛な面持ちを浮かべて目を逸らすなか、ホシヒメは必死に呼びかける。大丈夫だから、などとは言えず、何と声をかけて良いかも分からなかった。

 

しかし、例えユウマがどんな状態であろうと、世界は絶えず回る。良いようにも、そして悪いようにも…。宇宙人連盟の円盤で眠る暴君の目覚めは近かった。



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ケモノの影を纏って part2

「参ったな。これ…違う世界…だよな…」

 

 

ユウマがいまだ塞ぎ込むなか、町を散策している青年がいた。まだ幼げな顔立ちで、オレンジ色のシャツにデニムジャケットを羽織った彼はこの町の住人、いや、この世界の人間ではないのだろう。どこか困ったように引き攣った笑みを浮かべながら、周囲の町並みを見て回っていた。

 

 

「あの宇宙人ともこの世界に来た瞬間に見失っちゃったし…。やっぱり、みんな心配してるよなぁ…」

 

 

自身の世界へ想いを馳せる。この青年には、多くの仲間がいる。それこそその仲間達の笑顔が彼の力になるほどに。だからこそ今の自分の状況に頭を抱えたくなる。

 

彷徨うように町を歩く青年はそのまま商店街に入っていく。ここは都市部のように喧騒としているわけではないが、それでもこの町なりの活気が満ちた温かさがあったのだ。

 

 

「ラムネ…」

 

 

そんな中、青年は駄菓子屋の小さな業務用冷蔵庫の中で冷やされているラムネを見つける。

 

 

「そう言えば、この町…。海があったっけ」

 

 

ふとラムネを見て、何かを思い出しているのか、懐かしんだような表情を見せる青年はラムネから海を連想する。しかしラムネと海でどこか感慨深そうにしている彼の過去には一体、何があったのだろうか。青年は時間を確認して、「20時間は長いなぁ…」とぼやきながらそのまま闊歩していくのであった。

 

・・・

 

 

「…ユウマは、どうしている?」

 

 

執務室では、休憩を取っていたマツミズだが、ふと秘書官である長門にユウマについて聞かれ、ピタリと動きを止める。

 

 

「…すまない。私事は聞くべきではないのだろうが、その、ユウマが売店のバイトに顔を出していないと聞いてな」

 

「…」

 

「…鎮守府内ではアスノ・ウミカ飛行士の一件が既に広まっている。母親が怪獣となったショックで塞込んでいるのではないか、と」

 

 

動きを止めたマツミズに非礼を詫びながら、言い辛そうに質問したその理由を話し始める。マツミズが視線だけ向けて黙って話を聞くなか、小耳に挟んだ噂を口にする。

 

 

「…参ったな。ソーフィ達かな?それとも事後処理での話を誰かに聞かれてたのかな。何回か政府の要人も来てたし、誰かの耳に入る可能性を考慮するべきだった」

 

「…鎮守府内に留めておくように緘口令は敷いておくつもりだ。だが提督、誤解しないで欲しい。皆、好奇心からではなく、純粋にユウマを心配しているのだ」

 

「大丈夫、分かっているつもりだよ。けどユウマに知られるとは思わなかったな。ガッツ…じゃなくて、ミコの話じゃ、僕達の後をこっそりついて来ていたんじゃないかって話だけど」

 

 

一体、噂の出所はどこなのか。重いため息をつくマツミズに長門は弁明をする。そんな彼女を安心させるように微笑を浮かべながら、マツミズは席を立つと静かに移動を始める。そもそも何故、ユウマがあのようになったのか、マツミズが知っているのかは当人の状態もそうだが、ユウマがゼノンだと知るミコのフォローもあった。とはいえ、正体を明かせぬこともあって、目の前で母親が命を落としたのも大きな理由だとは言えなかったが。

 

 

「長門も知っていると思うけど、ここ最近、休暇届と外出届が色んな娘から提出されていてね。受理する為にスケジュールを組みながら、少し疑問に思っていたけど…成る程、そういうことか」

 

 

しかし別に噂が広まったところで、それでユウマが嘲笑の対象になるなど思ってはいない。と言うのも、ジャミラの一件以降、妙に気を使われている実感がマツミズ自身にもあった。他にも彼が言うように、ここ最近、艦娘達からの休暇届等は多く、皆、ユウマの元へ向かおうとしているのだろう。

 

そんな彼女達の行動に嬉しく思いながらマツミズは扉の前に立つと、そのまま一気に開く。するとどうだろう。そのまま雪崩れるようにして、艦娘達が執務室内に入り込んできたのだ。

 

 

「お前達っ…!?」

 

「みんな、優しいからね。ごめんね、気を使わせちゃって」

 

 

聞き耳を立てていた艦娘達に長門が驚くなか、気まずそうな顔を浮かべている彼女達に合わせて、マツミズが屈むと申し訳なさそうに笑みを浮かべ、咄嗟に「提督が悪いわけじゃ…」と口々にしている。

 

 

「みんなは大切な存在を失う痛みを知っているから、ユウマのことも気になるんだろうね…。ありがとう、本当に…。ユウマに会わせられるように、働きかけてみるよ。このままじゃいけないってことは分かってるからね」

 

 

ソーフィやミカヅキ達がかつては宇宙人や怪獣だったように、艦娘達はかつては軍艦だった。当時の記憶も残っており、だからこそユウマが負った痛みを理解できるのだろうと話す。彼女達がここまでユウマを気に欠けてくれているのだ。その思いを無碍にしないように何とかしようと考えている時であった。

 

 

「──ッ!!?」

 

 

ふと地面が大きく揺れたのだ。思わずふらついたマツミズを長門が支えていると…。

 

 

「キュオオオオオオオオオオオオオォォォォォォーーーーーーーーーーーーーンンッッッッ!!!!!!!」

 

 

発生源はここではなく、町の方向であろうと言うのに、耳を劈くような咆哮が聞こえてきたのだ。

 

・・・

 

 

「キュアアアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーッッ!!!!!!」

 

 

突如として、市街地に空から降り立ってきた怪獣に市民は大パニックとなる。その怪獣は腹部にベムスターのような五角形の口、背部には鋭角的な棘もあり、その他にも左手は鋭い鎌、右手は鉄球などまさに暴れ回る為に生まれたのではないかと思うほどの攻撃的な外見をしていたのだ。

 

その怪獣はタイラントの名を持ち、またの名を暴君怪獣と呼ばれている。かつては怪獣の怨念が集まって、生まれた怪獣だが、ゾフィーからウルトラマンエースまでのウルトラ五兄弟を破った恐ろしい怪獣である。

 

 

「ユウマ、怪獣が!」

 

「早く逃げなきゃっ!」

 

 

タイラントの出現と共に避難が行われるなか、マツミズ宅でもミカヅキやホシヒメがユウマを連れて、避難しようとする。今のユウマが到底、戦えるとは思えなかったからだ。

 

 

「…ユウマ…?」

 

 

しかしユウマの部屋はもぬけの殻だった。一体、彼はどこに行ったのか、僅かに考える二人だが、揃って同じことを考え付いたのだろう。慌てたように顔を見合わせる。

 

・・・

 

 

「…あの怪獣はッ!」

 

 

またこの世界に迷い込んだ青年も避難誘導を行いながらも、タイラントの存在を知っているのだろう。険しい表情で見つめるなか、妙に忙しない様子でしきりにまだかまだかと時間を確認していた。

 

 

「あれは…」

 

 

この辺りも避難が済んだ。何とかタイラントへの対応をしなくてはならないと表情を険しくさせる青年だが、ふと人影に気付く。

 

ユウマだ。

 

まるで夢遊病のようにおぼつかない足取りでタイラントに向かっている彼がそこにいたのだ。青年はすかさずユウマを避難させようと彼の元へ向かおうとする。

 

・・・

 

 

【…戦えるのか、ユウマ】

 

「…」

 

 

ユウマと一体化しているゼノンから問われる。今のユウマの精神状態で戦えるとは到底、思えなかったのだ。しかしユウマはゼノンの問いかけに答えず、無言でギャラクシーブレスを立て構えると、光に包まれてゼノンとなる。

 

・・・

 

 

「ウルトラマン…ッ!?」

 

 

ユウマに駆け寄ろうとしていた青年だが、ユウマが立て構えたギャラクシーブレスの強烈な光に思わず足を止めて、目が眩んでしまう。視界が回復して、ユウマを探せば、彼がいた場所には光の巨人が佇んでいたのだ。

 

 

「キュアアアアアアアァァァァァァッッッ!!!!!!」

 

 

ゼノンを視認したタイラントは身を震わせながら、咆哮をあげる。まるでこれから己が力を震える相手を見つけて喜んでいるかのようだ。対してゼノンは静かに佇むだけだ。

 

だが、そんなゼノンをお構いなしにタイラントは鉄球の先の鎖を放ち、ゼノンの腕に絡めると、そのまま強引に引き寄せて、その鋭い鎌の刀身に当たる部分で打突し、吹き飛ばす。

 

 

(ユウマ、やはり君は…戦える状態ではッ!?)

 

 

ゼノンの身である為、ある程度、ゼノンとしての意志で戦うことも出来るが、一体化している弊害からか、ユウマの不安定な精神状態が働いて、満足な行動が出来なかった。ゼノンがユウマに呼びかけるが、その途中でタイラントがいまだゼノンの腕を拘束している鎖を力一杯引いて、そのままグルングルンと宙で遠心力を利用して回転させると、そのまま海の近くへ投げ飛ばす。

 

 

「…ッ」

 

 

地面に強く叩きつけられ、ゼノンがもがき苦しんでいると、海の近くに投げ飛ばされた影響からか、ふと海の小波の音が聞こえ、ゼノンはドクンと強く鼓動が響いたのを感じる。

 

 

『サヨウ、ナ…ラ…。愛しテ…るヨ、ユウ、マ』

 

【あっ…あぁっ…あああああぁぁぁぁっっっ!!!!!!?】

 

 

一体化しているユウマの中で目の前で、そしてこの海で命を絶ったウミカの姿がフラッシュバックしているのだろう。内側から彼の痛ましいほど半狂乱となった叫びが聞こえてくる。

 

 

(しっかりしろ、ユウマ!!戦いに集中するんだッ!!!)

 

 

そしてそれはゼノンにも影響を及ぼしていた。単に内側からユウマの悲鳴が聞こえてくるだけではない。一体化している影響で、彼の精神状態が、そのままゼノンに伝わってくるのだ。

 

それでもこのままでいて良い訳ではない。ユウマに檄を飛ばしながら、ゼノンは何とかタイラントからの鎖を振りほどくと、両腕を水平に広げて、エネルギーを溜めこみ、そのままL字に組んで、ゼノニウムカノンを放つ。

 

 

「ッ!?」

 

 

黄金の光の奔流がタイラントに直撃した…が、恐るべきことにタイラントは軽傷で済んだだけで物ともしていないのだ。これにはゼノンも唖然とするが、戦いはまだ続いている。

 

タイラントはその耳に当たる部分から。青白い光線を放って、ゼノンの動きを怯ませると、すかさず口から灼熱の火炎を放射して直撃させると、流石のゼノンも膝をつき、パワータイマーを点滅させる。

 

 

「──フンッ、随分と腑抜けになったものよ」

 

 

パワータイマーの点滅音が痛ましく響くなか、空から声が聞こえる。そこには青い小人のような存在が見えたが、次の瞬間、それはフラッシュのような光を発し、光が収まって確認してみれば、そこにいたのはテンペラー星人だったのだ。

 

・・・

 

 

「奴め、なにを考えている!?」

 

 

誰もが驚くなか、それは宇宙人連盟のリーダーであるヒッポリト星人も驚いていたのだ。タイラントを放つまでは、彼の計画の内だった。だが、テンペラー星人も出撃するなどという指示はしていない。最もババルウ星人に至っては、こうなったかとばかりに肩をすくめていたが。

 

・・・

 

 

「満足にタイラントの実験役も務まらん。であれば、今後の有用性もない。ここで消し去るのみよ」

 

 

ヒッポリト星人からのテレパシーが届き、戻ってくるように促されるが、テンペラー星人は聞き入れることなく、膝をついたまま、こちらを警戒しているゼノンへ冷淡に言い放つ。元々、宇宙人連盟がゼノンを野放しにしているのは、実験台という理由があったからだ。しかし今のゼノンを見て、その価値がないと判断したのだろう。テンペラー星人が直々に消し去ろうとこうして姿を現したというわけだ。

 

 

「アイツは…ッ!!」

 

 

威圧するかのように鞭状のエネルギーを地面に何度か叩きつけてゼノンに対し、放とうとするテンペラー星人。その姿を見て、今まで歯痒そうに見ていた青年は時計を見る。

 

 

「時間はッ!?」

 

 

時計の針を見て、今か今かと待っていた青年は漸く彼が待ち望んでいた時間…彼がもう一つの姿であった頃から20時間に達したことを確認すると、改めてタイラントやテンペラー星人を見やる。

 

 

 

 

 

「ジーッとしてても、ドーにもならねぇッ!」

 

 

 

 

 

青年は表情を引き締める。それはまさに覚悟を宿した戦士のように。その腕には赤と黒を貴重としたスキャナーのような機械が握られ、胸の前で構える。

 

 

「You go!」

 

 

青年が次に取り出したのは、栄光の初代ウルトラマンの姿が映し出されたカプセルであった。そのままカプセルを起動させ、左腰に装着されていたナックルに装填する。

 

 

「I go!」

 

 

そして次に取り出したのは、光の国が生み出した最強最悪の戦士ウルトラマンベリアルのカプセルだ。起動させたベリアルのカプセルをもう一つ空きのあるナックルに装填する。

 

 

「Here we go!」

 

 

スキャナーのトリガーを引き、中央のクリスタルが発光すると青年はスキャナーでナックルに装填された二つのウルトラカプセルを読み込ませる。

 

 

 

「決めるぜ、覚悟ッ!!」

 

 

 

それはまさに青年の決意を表すような言葉だった。カプセルを読み込ませたスキャナーを胸に翳した青年はトリガーを引く。するとスキャナーから真紅の光があふれ出す。

 

 

 

 

 

 

 

──きっと生まれた時から決められていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ジイイイイィィィィィィィィィィィーーーーーーードオオオォッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

──光と、そして悪魔の如き力をその身に宿すことを。

 

 

 

 

 

 

 

《Ultraman》

 

 

 

 

 

 

 

──だが彼は自身の過酷な運命をその覚悟と絆を持って乗り越えたのだ。

 

 

 

 

 

《Ultraman Belial》

 

 

 

 

 

──その気高き戦士の名は

 

 

 

 

 

 

 

《Ultraman Geed! Primitive!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──大きな光の影が地面を揺らして、降り立った。

 

 

 

 

「ウルトラマン…?」

 

 

 

誰かがそう呟いた。確かにその存在はゼノンに身体的な特徴が一致していたが、そのつり上がった青い目とゆっくりと身体を起こすその姿は異様さを感じさせた。

 

 

 

「ハァッ!」

 

 

 

誰もが言葉を失うなか、運命に抗いし戦士・ウルトラマンジードは暴君達に対して、両腕を大きく広げると、そのまま深く腰を落として右腕を突き出すと臨戦態勢を取るのであった。

 



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ケモノの影を纏って part3

「ふむ、ワシを追って来たと見た」

 

 

ジードの登場に誰もが騒然となるなか、唯一、テンペラー星人だけはこの状況を愉快そうに笑っていた。そう、テンペラー星人が異なる宇宙で戦っていたのは、このウルトラマンジードだったのだ。

 

 

「ワシ自らがと言いたいが、タイラントを計らねばならん」

 

 

今すぐにジードと再戦したい気持ちはあるが、自分は宇宙人連盟に名を連ねる身。であればとここは引いて、後ろから戦いを見ていようと、タイラントをジードへ差し向ける。

 

 

「ハァアッ!!」

 

 

対してジードもまずは迫るタイラントに意識を集中させ、地面を蹴ると、そのまま飛び上がった勢いを利用して、タイラントに飛び膝蹴りを浴びせる。僅かにタイラントがよろけたと同時に着地したジードはそのまま肩を突き出して、体当たりをぶつけていた。

 

 

(あのウルトラマンは…まさか…)

 

 

ユウマの精神状態とタイラントからのダメージで消耗しているゼノンはジードを見やる。彼にはあの特徴的な目に覚えがあったのだ。しかし今は何かしようにも満足に身体を動かすことは出来ず、成り行きを見守るしかなかった。

 

そんなジードはタイラントが振るった鋭利な鎌を前転することで避けると、そのまま背中に取り付き、何度も何度も打撃を浴びせると、身体を大きく振るったタイラントによって横っ飛びに吹き飛ばされてしまう。

 

地面を転がりながらも、すぐさま身体を起こすジード。だが既にタイラントは火炎を解き放つことで追撃の手を緩めるようなことはしなかった。

 

 

「レッキングリッパーッ!!」

 

 

すかさず前腕の鰭状のような部位から刃のような波状光線を放ち、火炎放射を真正面から裂いてタイラントに直撃させると地を蹴って、強烈な前蹴りを放ち、タイラントの巨体をくの字に曲げる。

 

そこからは怒涛のラッシュをかけた。荒々しく薙ぐようにして腕を振るい、タイラントに攻撃を与えると、そのまま遠心力を利用した回し蹴りを放ち、流れるように横蹴りを顔面に鋭く浴びせる。

 

ジードの優勢か。誰しもがそう思っていた。そのままジードは腹部目掛けて抉るような鋭い掌底を叩きつけようとする。

 

 

「──ウグァ…ッ!?」

 

 

しかしここで異変が起きた。何と掌底を放ったジードの右腕がタイラントの腹部に飲まれたではないか。次の瞬間、ジードから苦悶の声が上がる。一体、なにが起きたのか、目を凝らして見て見れば、ベムスターと同じ腹部の"口”がジードの右拳をすっぽり咥え込んでいたのだ。

 

 

「ウッ…グッ…アァッ…!?」

 

 

腹部の口はジードの拳ごと飲み込んでいこうとしているのだろう。抵抗を試みようとするジードだが、そうはさせまいとタイラントは鉄球やアロー光線を浴びせて、ジードの動きを封じようとする。

 

このままではあのウルトラマンが危うい。誰もがそう思い、満足に動けないゼノンも救援に駆けつけようとした時であった。

 

 

「──ジイイイィィィドックロオオォォォオーーーーーーーォオオッッッッ!!!!!!!!!」

 

 

痛みに耐えながら、奮い立つかのように叫ぶジード。次の瞬間、ジードの拳を咥え込んでいたタイラントは火花を散らしながら吹き飛んだ。

 

一体、何が起きたのか?ジードに視線を集中させれば、飲み込まれていたジードの右腕には鉤爪型のジャマタハルを思わせるような武器・ジードクローが握られていたのだ。

 

流れる動作でジードクローのトリガーを二回引き、刃が高速回転するとエネルギーが満ちたかのように光り輝く中央のボタンを押す。

 

 

「コオォォクスクリュウウゥゥゥゥゥッッッ…ジャミングゥッ!!!」

 

 

そのまま後方に一回転してタイラントとの距離を置くと、地面を蹴ることで飛び立つ。ジードクローを突き出しながら全身に身に纏ったエネルギーと共に高速回転しながらタイラントに突っ込むと深手を負わせることに成功する。

 

 

「ッ!?」

 

 

追撃しようとするジードだが、倒れたタイラントから放たれた鉄球の鎖によって、その身を拘束されてしまった。

 

身を起こしたタイラントはそのまま火炎を拘束したジードに放つ。しかもそれは短時間のものではない。まさに己が全てを、命を代償にして放つかのような火炎だったのだ。

 

あまりに広大かつ灼熱の火炎によって。ジードの身体は周囲の建造物を巻き込み、火炎に包まれて見えなくなってしまう。果たしてどうなったのか。誰もが息を呑んだその時であった。

 

 

 

ジードを包む炎の中から逆流するかのように赤黒い稲妻のようなエネルギーがジードを拘束していた鎖に流れ、あまりの熱量に耐え切れず、焼き切れたのだ。

 

 

 

 

「───オオオオオォォォォォォォォ…ッッッッ!!!!」

 

 

 

焼き切れた鎖にタイラントが驚き、前方を見れば、地獄の業火のような炎の中で荒ぶる獣のように迸る赤黒い稲妻状のエネルギーを身に纏い、光が漏れ出るほどに強く目を発光させているジードがそこにいたのだ。

 

獄炎の中で解き放たれた獣のように唸り声をあげるその姿はなんと禍々しいことか。それはまさに悪魔と呼ぶに相応しいほどだ。

 

 

「レッッッキングゥッバアアァァァァァァァッッストォオオオッッッ!!!!!」

 

 

本来は怨念の集合体である筈のタイラントでさえ戦慄するなか、腰を深く落としたジードは両腕を十字に組み、青黒い光波熱線を解き放つ。唸るように放たれた光線はタイラントに直撃し、やがて爆発四散するのであった。

 

 

「ほぉ…これはまだまだ楽しめそうだな」

 

 

成り行きを見ていたテンペラー星人はタイラントを破ったジードの力に関心する一方で、同じく戦いを見ていたゼノンを一瞥すると、人知れず消え去り、後にはジードとゼノンしか残らなかった。

 

・・・

 

 

「うっ…くっ…!」

 

 

戦いが終わり、ゼノンから姿を変えたユウマは壁伝いに歩いていた。やはりタイラントからの攻撃は凄まじく、今も身体に強く残っていたのだ。

 

 

「──大丈夫?」

 

 

そんなユウマに声をかける者がいた。ユウマが振り向くよりも早く声をかけた人物が彼の腕を自身の肩に回すことでユウマの身体を支える。

 

 

「アナタ、は…?」

 

 

何者なのかと見て見れば、そこには自分よりも年上で二十歳間近か否かくらいの年齢の青年がいたのだ。少なくともこの町でこの青年を見たことなどない。

 

 

「もしかして…!?」

 

 

考えられるとすれば、一つだけだろう。先ほど、現れたウルトラマンはこの青年なのか、そう結論に至ったユウマは驚くように目を見開いて問いかければ…。

 

 

「うん。僕はリク、朝倉リク。さっきのウルトラマンジードだよ」

 

「ジード…?」

 

 

ユウマを安心させるように青年は、いや朝倉リクは柔和な笑みを浮かべながら己の名と共に先ほど、タイラントを破ったジードであることを明かす。

 

 

「君がこの世界のウルトラマンなんだね?」

 

「はい…。アスノ・ユウマ。それが俺の名前…。そして…ウルトラマンゼノンでもあります」

 

 

戦闘が始まる前にユウマがゼノンへと姿を変えることをリクはその目で見ていた。改めて彼がこの世界の ウルトラマンであることを尋ねると、ウルトラマンである彼に下手に隠しても仕方ないとユウマはコクリと頷きながら、自身の名とゼノンの名を明かす。

 

 

「ユウマとゼノンか…。ありがとう、よろしくっ!」

 

 

確かに覚えるように反復しながら、底抜けに明るい笑顔を浮かべて声をかけるリクに普段のユウマならば、同じように応えるだろうが、今はそうも出来るような精神状態ではなく、おずおずと頷く。

 

 

「とりあえず場所を変えようか。なにか良い場所、知らない?」

 

 

負傷しているユウマをひとまずは休ませねばならない。リクは場所を変えようとするも、この町に詳しくはなく、ユウマに尋ねると、ユウマは一先ずは安静に出来る場所であればとマツミズの家の場所を彼に案内しながら移動を開始する。

 

ユウマとリク。それがユウマにとって新たな運命の出会いであった。




<次回予告>

依然としてユウマの精神状態は回復しない。そんな彼はリクのみならず、ミカヅキ達や艦娘達などユウマを想う者達と接する。彼の心に少しずつ絆という温もりが灯るなか、再びテンペラー星人が現れる。さあ今こそ立ち上がる時だ、ユウマ。君の未来を、そして共に歩く人々との未来を掴む為に。

次回…絆∞Infinity


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絆∞Infinity part1

暴君怪獣

改造タイラント

極悪宇宙人

テンペラー星人

登場


タイラントとそれを巡るテンペラー星人との戦いから数時間が経った。ジードとタイラントとの激闘によって齎された町の被害でてんやわんやと対応に追われるなか、ウルトラマンジード・朝倉リクは負傷したユウマを彼の案内でマツミズの家まで運んでいた。

 

今のユウマはタイラントによって負った傷が響いていた。半ば無理やりに布団で安静にするように促されたユウマだが、軋むような痛みに表情を歪ませ、悶えている。

 

いや、実際のところ、身体の痛みは然程、問題ではなかった。ジードの救援も早かったお陰もあり、深い傷は負ってはいない。しかし問題はその精神状態だろう。戦闘の中で、海を感じただけで半狂乱になって錯乱していたのだ。

 

 

「っ…」

 

「ユウマ…」

 

 

布団に包まった状態でも分かるほど震えているユウマ。それはまさに今の不安定な彼を表しているかのようだ。そんな彼の傍らで看ていたミカヅキはどう彼に接していいか分からぬまま、悲痛な面持ちを浮かべていた。

 

 

「……そっか。お母さんを」

 

 

そんなユウマの様子を僅かに開かれた扉の間から見つていたのはリクとホシヒメだった。ユウマを家に運んだリクだが、戦闘中にも感じられたあまりのユウマの様子が気になった為、丁度、ユウマの代わりに礼を言ってきたホシヒメから話を聞いていたのだ。

 

 

「…はい。今のユウマに、なんて声をかけて良いかも分からなくて」

 

 

身体を丸めて震えているユウマの姿を切なげに見つめながら話すホシホメ。ここ最近、付きっ切りでずっとユウマを看ていたのだろう。どことなく彼女もやつれた様子だった。更に拍車をかけるかのように、このような状態で家の中も肌にじっとりと絡みつくような陰鬱な雰囲気で満ちていたのだ。

 

まさに負のスパイラルと言えるだろう。そんな家にインターフォンの音が響き渡る。当然、ユウマは満足に応対も出来ない為、ホシヒメが向かっていく。

 

・・・

 

 

「ユウマ…。その、さ。僕はユウマに会えて感謝してるんだ。それはきっとヒメも」

 

 

ホシヒメが来客に応対するなか、静けさが支配するユウマの私室でミカヅキがポツリと木霊するようにユウマに話しかけていた。

 

 

「いきなりごめん…。でも、この際だから伝えたいなって思ったんだ」

 

「…」

 

「僕は知っての通り、人間の都合でこの場所まで連れてこられた。うるさくて、でも不安で…何より許せなくて…。だから暴れようとしてた。そんな時だよ、ゼノンに…。ユウマに出会えたのは」

 

 

突然、話された出会えたことに関する感謝の言葉。彼女に背を向け、返事はしないものの黙って聞いている彼に向かってミカヅキは自身が生活していた島から人間の生活圏まで麻酔で連れてこられたあの日のことを思い出す。

 

 

「最初はただコイツも僕の邪魔をするんだって思ってた。でも、違った。戦いはしたけど、ゼノンは、ユウマは僕を故郷に連れ帰ってくれた。それだけじゃない。傷も治して、僕を撫でてくれたんだ。凄く温かかったよ。優しくて、心も身体も…。受けた傷が癒えていくようだった」

 

 

初めて明かされるミカヅキの…いや、ゴモラの胸の内。それは人間による理不尽に晒されながらでも出会えた…いや、感じることが出来た温もりに関してだ。

 

 

「辛いことがいっぱいあったけど、でもユウマに会えたから僕は沢山の温もりと出会うことが出来た。きっとそれは…あの島に一人っきりでいたら出会えなかった…。全部…ユウマのお陰だよ」

 

「…っ」

 

「だからね…。何があろうと僕はずっとユウマの傍にいる。ユウマがしてくれたように、僕がユウマの温もりになって…ユウマが立ち止まっているなら、その手を引いてあげたいから」

 

 

ミカヅキは背を向けるユウマに回り込むと、優しげに笑いかけながら彼の手を取る。ユウマに出会えたから、ベムスター(ホシヒメ)ガッツ星人(ミコ)など多くの人々と知り合うことが、温もりを感じることが出来たのだ。この温もりを、幸せな日々を教えてくれたユウマには感謝しても仕切れない。だからこそユウマが前に進めないのなら、接戦して自分が寄り添いたいのだ。

 

 

「──HEY!ユウマ、いますカー!?」

 

 

ミカヅキによって齎された温かな空間は握った手を通じて、心を閉ざしたユウマの心に温もりを与えてくれるかのようだ。そんな彼の私室に更なる拍車をかけるかのように飛び込んできた者達がいた。

 

 

「み、皆さん…」

 

「あぁ、こんなに痩せこけてしまってたなんて…」

 

 

そこには金剛をはじめとした艦娘達の姿があったのだ。ユウマが身体を起こして驚いているのも束の間、痩せこけた彼のあまりに見すぼらしい姿を見た艦娘達は途端に駆け寄り、榛名などが痛々しそうにユウマのこけた頬に触れる。

 

 

「なにか食事を…」

 

「でも何が食べられるんでしょうか…。なにかリクエストはありますか?」

 

 

見かねて、赤城がユウマに何か食事をとらせようとするが、一体、今の彼に何が食べられるのだろうか、と翔鶴がユウマに問いかける。

 

 

「食物が喉を通らないのであれば、点滴はどう…?」

 

「ジョウまで…」

 

 

艦娘達の中にはジョウの姿もあった。ユウマの健康状態を省みて、今、彼に何が最も適しているのかを模索する彼女に、わざわざ彼女もここまで来てくれたことに驚いていると…。

 

 

「私もいます」

 

「っ!?」

 

 

涼やかな声と共に背後に突然、人の気配を感じる。ドキリと振り返ってみれば、そこにはミコが口にしていたゼットンであった少女・エアがいたのだ。

 

 

「どうして…ここに…?」

 

「──分かりきっていることだろう?」

 

 

今、このユウマの私室には溢れんばかりの人で満たされている。こんなことは始めてであり、あまりの状況にユウマが戸惑っていると、ふと声をかけられる。声に導かれるように視線を向ければ、部屋の入り口にはマツミズの姿があった。

 

 

「伯父さん…」

 

「皆、お前を想ったからこそ、ここにいるんだ」

 

 

ユウマが驚いているなか、ゆっくりとした足取りで彼のもとに歩み寄ったマツミズはそのままユウマの目線に合わせて、腰を落とすと厳粛な表情でジッと彼の瞳を見据える。

 

 

「勿論、私もな」

 

 

ふわりとマツミズの口角が上がる。それはどこまでも優しく、日向にいるかのような温かな笑顔だったのだ。

 

 

「私達は復興作業を少しでも手伝おうと町に来ていてね。戦闘があった場所は瓦礫の山だったよ。とても昨日まで穏やかな営みがあったとは思えないほどにね」

 

 

ウルトラマンと怪獣の戦いはまさに地を揺らすほどの激闘であった。だがそれは同時にそれだけの被害もあったということだ。ここに来たのは、瓦礫の除去など復興作業に努めていたその合間なのだろう。

 

 

「だが、町はいつか元に戻る。停滞しない限りはね。だが人の心は元通り、というのはその限りではない。心の傷は見えないから、それがどれ程のものなのか正確には分からないからね。下手をしたらずっと痛みを抱え続けることになるかもしれない」

 

 

今でも業者が懸命に作業をしていることだろう。それが続けば、かつてと同じ生活には戻れることだろう。だが、心に傷を受けたユウマのような人間はどうなのだろう。

 

 

「だからこそ寄り添って支えなくちゃいけないんだ。元通りにはなれない。だが、その心の傷を乗り越えた時、誰だって強くなれる」

 

 

包み込むようにマツミズはユウマの頭を撫でる。撫でられた手から伝わるその温かさにユウマは感極まったように身体を震わせる。

 

 

「なぜなら、その心にこそ人の一番、大切な強さが宿っているのだから」

 

 

ユウマを撫でながら、マツミズは片腕を彼の肩に回して、ふわりと抱き寄せる。それはまさに、ユウマは一人ではないと、自分達も寄り添うんだと示すように。

 

ウミカを目の前で失ったのはマツミズも同じだ。それどころか、かつて宇宙飛行士として行方不明になってしまった彼女をまた失ったという喪失感をもう一度、味わっているのだ。にも関わらず、マツミズはこうやって寄り添ってくれる。マツミズだけではない。この場には多くの艦娘達や怪獣娘達が自分のためにいてくれるのだ。

 

それが嬉しくて、何より温かくて、知らないうちにあふれ出た温かな涙がユウマの頬を撫でる。そんな温かな陽だまりのような空間を遠巻きに見ていたリクは自分の仲間達とその居場所をふと重ねるのであった。

 

 

・・・

 

 

「──まさか噂に名高いベリアルの子が現れるとは」

 

 

一方、不気味なほどの静けさを見せる宇宙人連盟の宇宙船ではジードとタイラントの戦闘を立体映像として、この先頭で測定したジードのデータを照らし合わせながら、ババルウ星人は厄介ごとが舞い込んできたとばかりに肩を竦める。

 

 

「テンペラー、貴様の責任だぞ。ゼノンだけなら放置しても問題ないが、ベリアルの子となれば話は別だ。下手をすれば、我々の計画は破綻する」

 

「フンッ、奴一人に全てが破綻するのであればそれまでであろうよ。ゼノンと戦うのであれば、光の国を敵に回すのと同じこと。またウルトラマンマックスが…いや下手をすれば、ウルトラ兄弟だって現れかねん。我々はそういう戦いをしているのだ。今更、なにを臆する」

 

 

非難するように鋭い視線を突きつけるヒッポリト星人だが、そんな視線もまるでそよ風を浴びるかのように軽く流したテンペラー星人は小馬鹿にするように鼻で笑う。

 

 

「寧ろ好都合だろう。奴がいれば思う存分、力を震えるというものよ」

 

 

テンペラー星人は映像を切り替える。そこにはドックのような空間が広がっており、その中心にはジードと交戦したタイラントが…いや、違う。

 

それをあのタイラントと言うには、あまりにもその外見は狂暴過ぎた。まずはゼノンの身長を遥かに上回るであろう巨大なケンタウロスのような体つきになっていたのだ。よく見れば、その後ろ足はゴモラの足にも見え、更なる怪獣の要素を取り込んだ結果、全体的に暴君の名が生易しく聞こえるほどのタイラントがそこにいたのだ。

 

そんなタイラントの姿を見て、まるで一級の芸術作品を見ているかのように恍惚に呟いたテンペラー星人は、このタイラントを早く目覚めさせたいと戦いの時を待つのであった。



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絆∞Infinity part2

作業着に身を包み、町の復興作業に勤しむ作業員達。その中には艦娘達の姿もあり、正規空母であり、クールな雰囲気を持つ加賀が作業員達を纏める現場監督と打ち合わせを行っていた。

 

 

「うあぁー、疲れたーっ!!」

 

 

ふと遠巻きに声が聞こえて、加賀達が視線を向ければ、そこには顔中に汗を流したミコが地面に寝そべっていた。彼女もまた復興作業の手伝いに駆りだされたようだが限界が来ているらしい。

 

 

「…なにをしているのかしら。見っともない」

 

「もう働きたくないーっ!分身して働いてもお給料は一人分って、これもうブラック案件だよねっ!?」

 

 

周囲の目もある為、見かねた加賀が窘めようとするが、ミコの不満は頂点に来ているようで、まるで駄々っ子のようにバタバタと暴れている。

 

 

「私もユウ君のところに行ーきーたーいー!」

 

「──そう思っているのは、アナタだけではないわ」

 

 

以前、分身を使って、仕事をサボってユウマ達の下で遊んでいたことが発覚して以降、ミコへの監視の目は厳しい。自業自得と言えばソレまでだが、言動とは裏腹にミコもユウマを心から案じているのだ。しかしそれは別にミコに限った話ではない。声をかけられ、身を起こせば、そこには同じくこの場に訪れていた矢矧であった。

 

 

「ユウマは私達にとって希望のような存在よ」

 

 

きっとユウマに想いを馳せているのだろう。優しく目を細めている矢矧の姿をミコはジッと見つめる。確かにゼノンであるユウマは人類の希望と言えなくはないだろう。しかし矢矧の様子からユウマがゼノンであることを気付いているようには見えない。

 

 

「私達は知っての通り、艦船が人の身を手に入れた存在よ。所謂、艦娘となった当初は人間性のようなものは希薄だった。精々かつて自分に乗っていた人々など艦船だった時の記憶で人間の振る舞いを真似する程度だったわ」

 

「そりゃまあ私達は兎も角、兵器が人に近い存在になったからって、はいそうですかって人間らしくは出来ないよね」

 

「ええ。でもやっぱり変われるものね。艦娘として生きていくうちに様々な人に出会って…私達なりの価値観を手に入れることが出来た。提督達は勿論、特にここにいる私達にはユウマの存在は大きかったわ」

 

 

自身の掌を見つめながら、己の存在を確かめるかのようにギュっと手を握る矢矧。きっとその心中には艦娘としての生を受けた時の記憶が巡っているのだろう。ミコの言葉に頷きながら、ユウマとの出会いを思い出す。

 

 

「私達はね。ユウマを幼い頃から知っているの。それこそ提督がユウマを引き取った時からね。小さくて触れれば壊れてしまいそうなほど繊細で…。でも、そんなあの子の笑顔を見た時、改めて感じたのよ。私達はこんな笑顔を、輝かしい未来を守る為に生まれてきたんだって」

 

 

両親を失い、マツミズに引き取られたばかりのユウマはまだ小さく、艦娘達もその接し方はまさに手探りだった。だが、幼い子供であったユウマと接していくうちに芽生えていく想いがあったのだ。それは兵器として生まれたからこそ感じたことなのかもしれない。

 

 

「それを教えてくれたユウマは希望なの。だからこそあの子のことはどうしても気になってしまうのよね」

 

「希望…」

 

「ええ。希望だからこそ…あの子には暗がりに囚われて欲しくないのよ」

 

 

ユウマが今、精神が限界を来たしていることは知っている。幼い頃から知り、未来を感じさせてくれた彼には前を向いて欲しい。そう思っているのは矢矧だけではないのだろう。ミコも加賀もユウマに想いを馳せるのであった。

 

・・・

 

一方でその数時間後、夕暮れの公園にユウマがいた。ギリギリまでその場にいたが、一度、鎮守府に戻る都合もあったマツミズ達と別れた後、ユウマは一人で考えたいと今、この場に訪れたのだ。

 

 

「母さん…」

 

 

ユウマはベンチに深く腰掛けながら、頭を垂れたように視線を落としている。その頭の中にはウミカのことが。だがそれだけではない。自分のために寄り添おうとしてくれたマツミズ達の姿が思い出される。

 

皆、自分のために来てくれたのだと言うのは痛いほど分かった。お陰でウミカを失ったことで齎された深い傷が温かく癒されていくかのようだった。

 

同時にいつまでもマツミズ達やミカヅキ達に迷惑をかけられないと言うのも分かる。だからこそウミカの一件に踏ん切りをつけなくてはいけないのだ。

 

 

「──随分と辛気臭い顔だ」

 

 

ふと背後からユウマの耳に涼しげな声が届き、振り返ってみれば、そこにはアネーロの一件で出会ったフィスの姿があった。

 

 

「君は…」

 

「ちょっと君に耳寄りな情報を持ってきたんだよ」

 

 

かつて一触即発の空気があったにも関わらず、まるでそんなことがなかったかのように「やぁ」と二本指を軽く振りながらウインクしてきたフィスに驚いているが、そんなことお構いなしにフィスは自分のペースで話を進める。

 

 

「実は宇宙人連盟が動き出してね。今日の深夜辺りにまたこの町に現れるよ」

 

「どこでそれを…」

 

「一度死んでるせいかな?地獄耳なんだよ」、

 

 

僅かに身構えているユウマを他所に何とフィスは宇宙人連盟の情報を口にする。情報その物は驚きではあるが、何故、そんな情報を手に入れたのか?そのことを問いかけられても、飄々とはぐらかされてしまう。

 

 

「でも…今の俺より…リクさんに言った方が…」

 

「ウルトラマンジード…。流石の私もこの世界に彼が現れたときは驚いたよ。だがね、私は彼よりも君に守ってもらいたいんだ」

 

 

しかし不安定な精神状態を加味したとしても、タイラントに手も足も出なかった自分がまともに戦えるとは思えない。リクことジードのことはフィスも知っているのだろう。言葉とは裏腹にくつくつと愉快そうに笑うと、ユウマの隣に座る。

 

 

「君は私に自分を文明を監視し生命の未来を救う為に戦う存在だって言ってたよね?それは嘘だったのかな」

 

「それは…」

 

「ウルトラマンジードは所詮、別宇宙の存在だが君は違う。私はね、ウルトラマンでありながら、この世界に生きる君にこの世界の未来を救って欲しいんだ」

 

 

かつてフィスに堂々と口にしたあの言葉。その時の言葉に嘘偽りはない。視線を彷徨わせるユウマにフィスはジッと彼の瞳を見据えながら話す。

 

 

「だが、もしも戦えないというのなら私に地球をくれないかな?私にたった一言、【地球をあげます】と言ってくれれば、私も自分の大切な所有物を守る為に重い腰を上げるけど」

 

「誰がそんなことッ!」

 

 

フィスの口角はゆっくりと上がる。それはまるで人を惑わす悪魔の笑みだ。しかしすぐさまその言葉をユウマは跳ね除ける。

 

 

「それでこそだ。そうでなければ未来なんて救えはしない。君も完全に腐ったわけじゃないようだね」

 

「っ…」

 

「期待しているよ。君が未来を掴むその姿をね」

 

 

反射的にフィスの提案を蹴ったユウマにその反応を待っていたとばかりにフィスは笑う。完全に彼女にペースを掴まれて乗せられてしまった。僅かに顔を顰めるユウマの耳元でそっと囁くと、またかつてのように突然、消え去ってしまう。

 

 

「…」

 

 

もしかしてあれは彼女なりの激励なのだろうか。だが、そう考えるのは、都合が良すぎるのかもしれない。だがどちらにせよ、宇宙人連盟の話が本当なら見過ごすわけには行かない。

 

 

「──ユウマっ!」

 

 

果たして、今の自分に戦えるのか。今は兎に角、海を見ることも怖いと言うのに。考えれば考えるほど震える身体を抱いていると、ふと呼び声が聞こえる。見てみれば、こちらに手を振りながら向かってくるリクの姿が。

 

 

「リクさん…なにかあったんですか?」

 

「あぁっ、いやそういうわけじゃないんだけど…。ユウマが気になって」

 

 

その様子から自分を探していたようだ。どうしたのだろうかと思ったが、どうやら自分を心配して探しに来てくれたようだ。一先ずリクはユウマの隣に座るが、会話らしい会話がない為、痛々しい沈黙な空気で満ちる。

 

 

「そ、そう言えばさ。あのジョウって女の子、どこか覚えがあるって言うか…」

 

「ジョウを知ってるんですか?」

 

「あっ、いや…僕の仲間に似てるって言うかね」

 

 

沈黙に耐えかねたリクは話題を振り絞って話し始める。ユウマはまさかジョウの何かを知っているのかと問いつめるのだが、別にそういうわけではないらしくリクの仲間に似た雰囲気の存在がいるらしい。

 

 

「…リクさんの仲間ってどんな人達ですか?」

 

「うん?あー…個性派揃い…かな。自他共に厳しい…と思いきや、ちょっと自分に甘いお姉さんみたいな子とかたまに仕事をサボりにくるサラリーマンとか。喧嘩しちゃうこともしょっちゅうあるよ」

 

 

リクの仲間とは一体、どのような人物達なのだろうか。何気なく尋ねてみれば、リクは自分の仲間達の人物像を思い浮かべながら話す。その他にも長い付き合いになる宇宙人の友達や自分達の住処のAI、幼い頃に引き取ってもらった家のお姉さんとその上司などの聞いてるだけで会って見たくなるような話が聞けた。

 

 

「…昔さ、ある人に言われたことがあるんだ」

 

 

仲間達の話をするリクは本当に楽しそうで、輝いて見えた。ひとしきり仲間達の話を終えたリクはふと懐かしむように表情を変える。一体、なにを言われたのかとユウマが続きを待っていると…。

 

 

「支え合う仲間達の笑顔が僕の力なんだって」

 

「仲間達の…笑顔…」

 

 

かつて常夏の楽園を舞台に知的生命体排除を掲げた人工知能との戦いで出会った母親のような女性。彼女が死に際に残した言葉がリクの胸の中に深く刻み込まれているのだとすぐに分かった。

 

 

「…お母さんのことは残念だったね」

 

「…っ」

 

「でも、例えお母さんはいなくても、その想いをユウマはきっと分かっているはずでしょ」

 

 

ウミカに関することを口にした瞬間、それだけでユウマの身体が震えるなか、リクは目を逸らしてはいけないとばかりにユウマの肩を掴み、向き直らせると、その目を見て話す。

 

 

「親の想いを分かってあげられるのは…きっと…その子供だけだから」

 

 

どこか悲しげに話すリク。彼自身、親に関することで何かあり、そしてその想いを理解したのだろう。リクの様子から見ても、壮絶な出来事があったに違いない。

 

 

『心が挫けそうになって…躓いても…。それでも過去を越えて前だけを向いて…明るい未来に…進んでね…。それが…私の願い…』

 

 

そして思い出す母の言葉。あの時、抱きしめられた時に感じた温かさは何より本物だった。母が自ら命を落としたのは、自分に親をその手にかけたという今より重い十字架を背負わせないため。ウミカは自分という過去に囚われず、未来に進むことを望んでいたのだ。

 

 

「僕が僕らしくいるためにも…誰の笑顔も曇らせたくない」

 

「リクさん…」

 

「だからこそ…僕はユウマの笑顔も取り戻したいんだ」

 

 

ユウマの目尻から涙が止め処なく溢れ、ポタポタと落ちるなか、リクは肩をしっかりと掴みながら、ユウマの気持ちを奮わせるように話すと…。 

 

 

「Here we go」

 

 

優しく、それでいて温かな笑顔を見せながら、ちょんとユウマに拳を突き出したのだ。

 

 

(仲間達の笑顔…)

 

 

先ほどのリクの言葉を思い出す。マツミズ達やミカヅキ達…自分にはかけがえのない存在が、仲間がいる。リクが口にした仲間達の笑顔が力になると言うのも理解できる。そしてだからこそ、守りたいという想いも。

 

 

「俺は皆と明るい未来へ進みたい…。それがきっと母さんの願いだから…っ!!」

 

 

ユウマの表情に生気が宿る。それはまさに失った光を取り戻したかのように。それはユウマが打ち合わせた拳からも伝わったのだろう。リクも満足そうに微笑む。

 

 

「リクさん、お話があります!」

 

 

どん底から再び立ち上がったユウマ。もう俯くわけにはいかない。何よりフィスの話が本当ならば時間がないのだから。

 

・・・

 

 

どこまでも吸い込まれていきそうなほど、漆黒のような青い空の下、それは突然、現れた。

 

 

「グゥアアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーァアアアアッッッ!!!!!!」

 

 

平穏を打ち壊し、空を裂くような方向が響き渡る。町に程近い海上に現れたその怪獣はタイラントではありながらも今まで現れた怪獣の比にならないほどの巨大なケンタウロスのような体格を持っていたのだ。

 

 

「あれが…ユウマが話していた」

 

「はい…。まさか本当に現れるなんて」

 

 

それをリクとユウマが見ていた。あの後、フィスから齎された情報で警戒はしていたが、リクですらあれ程の巨躯を持つ相手は数える程度しか知らない。しかし現れた巨大タイラントこそテンペラー星人が今か今かと待ち望んだ改造されたタイラントであり、それはゆっくりと町に迫っていたのだ。

 

 

「ユウマ…」

 

 

町に警報が鳴り響くなか、ユウマを案じたミカヅキとホシヒメが後ろから声をかけてきた。二人ともユウマを案じているのはすぐに分かった。

 

 

「二人とも…今まで迷惑をかけて本当にごめん…。だけど今は安全なところに避難して欲しい」

 

「でも戦えるの…?」

 

 

二人には大きな迷惑をかけた。そのことについて謝っても謝りきれないが、今はソレよりも安全な場所へ逃げて欲しい。しかしミカヅキ達の心配はユウマにあるのだ。彼が戦えるのか。それだけが心配だった。

 

 

「…戦うよ。みんなの未来のためにも」

 

 

スッと目を閉じたユウマはその脳裏に仲間達の笑顔を思い浮かべる。それは勿論、目の前の二人の笑顔もだ。だからこそユウマは負けるわけにはいかない。目を開き、しかと目を見て話すユウマの姿に頷いたミカヅキ達は信じてるから、とこの場を後にする。

 

 

「ゼノン…。未来を掴む為にもアナタの力を貸して欲しい」

 

 

いよいよ戦いの時が訪れた。ユウマはギャラクシーブレスにそっと話しかける。今まさに未来が脅かされようとしている。だからこそ彼の力が必要なのだ。そんなユウマの言葉に言葉はなくとも、呼応するようにギャラクシーブレスレットのクリスタルは輝きを放つ。

 

 

「ジーッとしてても、ドーにもならねぇッ!」

 

 

リクは変身アイテムであるジードライザーを構えると、ウルトラマンとベリアルのカプセルを起動させ、スキャンすると、ユウマと頷きあい…。

 

 

 

「ゼノオオオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーンッッッッ!!!!!!!」

 

 

 

「ジイイイイィィィィィィィィィィィーーーーーーーーードオオオォッッ!!!!!」

 

 

 

 

二人は同時に大地を蹴って、未来を掴もうとするかのように手を突き出す。すると二人の身体は輝きと共に光の戦士となって、飛び立っていく。

 

 

 

改造タイラントが海上から町にゆっくりと迫るなか、ふと足を止める。すると同時に改造タイラントに立ちふさがるかのように二人のウルトラマンが水飛沫を上げながら降り立ったのだ。

 

 

「母さん…俺は未来に進む…。だから見ててくれッ!!」

 

 

改造タイラントはまさに未来を阻もうとする敵。だからこそ負けるわけにはいかない。ユウマはこの海で散ったウミカを想いながら、ゼノンとしてジードと共に立ち向かうのであった…。




改造タイラントはゴモラ同様、FERをイメージしていただけると幸いです。


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絆∞Infinity part3

海上から町へ迫る改造タイラントの前に降り立ったゼノンとジード。改めて間近で相対してみれば、身が竦んでしまうほどの威圧感を感じてしまう。それはやはりタイラントが元は様々な怪獣達の怨念が組み合わさって生まれた怪獣であり、そんな存在がこれほどまでの巨躯となって再び猛威を振ろうとしているからなのだろうか。

 

 

「ジェアァッ!」

 

「ハッ!」

 

 

恐れはないと言えば嘘になる。しかしだからと言って、逃げるわけには行かない。ゼノンとジードは臨戦態勢を取ると、水飛沫を上げながら一気に飛び上がり、空からの改造タイラントへの攻撃を試みる。

 

ゼノンもジードもこのタイラントが改造され、強化された個体であることは知らない。しかしその元のタイラントと共通する外見や元の比ではない巨躯から改造タイラントから放たれるであろう攻撃の一つ一つは危険だと判断しての戦法だった。

 

改造タイラントも飛び回るハエを払い落とそうと、改造前は鉄球から鎖を打ち出していたが、今度は逆に大型化した鎖に繋がれた鉄球や獄炎の如き火炎を放って迎撃している。幸いにして、二人のウルトラマンは空戦での小回りは利くほうで何とか渡り合うことには成功しているが、それでも改造タイラントの外殻によって中々こちらの攻撃も通じないような状態だった。

 

 

(このままだと…ッ!!)

 

 

あまりにも強靭な改造タイラントに戦慄するユウマ。このままでは改造タイラントを打ち倒す前にこちらのエネルギーが尽きてしまう。そうなる前に何とか決着をつけなければならない。

 

改造タイラントの攻撃を巧みに避けながらギャラクシーブレスレットに手を添える。ギャラクシーブレスレットをゼノンギャラクシーに変え、一撃必殺の攻撃を叩き込もうと考えたのだ。

 

ジードも同じことを考えたのだろう。両腕をクロスさせ、赤黒く迸るエネルギーを溜めようとする。タイラントを葬った光波熱線・レッキングバーストを放とうと言うのだろう。二人のウルトラマンが目配せをし、タイミングを合わせようとした時だ。

 

 

──空から光線がゼノンに降り注ぎ、撃ち落としたのだ。

 

 

「ゼノン──ッ!?」

 

 

ジードが驚いて、レッキングバーストの発射体勢を解くなか、続けざまにジードにも光線が放たれて、まともな直撃を受けたジードは海面に叩きつけられる。

 

 

「──祭りのようなことをしておる」

 

 

海面に落ちた二人のウルトラマンは立ち上がろうとするも改造タイラントが自身を中心にグルグルと振り回すことで放った鉄球をその身に受けて、身体をくの字に曲げながら吹き飛ばされてしまう。それでも何とか身を起こして、先ほどの攻撃を仕掛けてきた相手を見やれば、空中から悠然と飛来してくるテンペラー星人の姿があったではないか。

 

 

「であれば興じねば損であろうッ!!」

 

 

しかし現れたのも束の間、ゼノンとジードに対して、追撃を仕掛ける。ただでさえ改造タイラントだけでも厄介だと言うのにテンペラー星人の出現は形勢を一気に変えた。

 

 

「ッ!?」

 

 

しかも介入してきたのはテンペラー星人だけではなかった。別方向から放たれた砲撃にゼノンが身を怯ませれば、そこには幽鬼のようにこちらに迫る深海棲艦達の姿があるではないか。

 

 

「なんで…?どうして、こんな時に…ッ!?」

 

 

思いも寄らぬ深海棲艦達の介入にユウマは唖然とする。確かに深海棲艦は人類の脅威ではあるが、こうして直接、ゼノンに攻撃を仕掛けてきたのはこれが初めてだからだ。

 

 

【まるで…あの怪獣に吸い寄せられているかのようだ】

 

 

ゼノン達を牽制しつつ、深海棲艦達は改造タイラントへ向かっていっている。そこに敵対などの意志はない。その行動にゼノン自身も引っかかりを感じる。

 

しかし今はそんなことを疑問に思っている時ではない。改造タイラント達は決して攻撃の手を緩めるような真似をしないからだ。瞬く間にその身体に傷を受けていく二人のウルトラマン。形勢は誰が見ても明らかだった。

 

空戦を仕掛ける隙すら与えられず、ゼノンとジードはそれぞれ身を寄せるとお互いを支えあおうと光波バリアを張ることで攻撃を防いでいる。しかしそれも限度があった。

 

改造タイラントから放たれた鉄球がバリアを打ち砕き、ゼノンとジードは大きく吹き飛ばされてしまったのだ。

 

 

「この…ッ…ままだと…ッ!!」

 

 

何とか起き上がろうとするゼノンとジードだが、危険を知らせるように二人のタイマーは点滅を始める。危機的状況に何とか打開策を模索するジードだが、現実がそのような時間を与えず、改造タイラント達は死神の如くゆっくりと近づいてくる。

 

 

「俺はッ…まだ未来に進んでない…、こんな…ところでッ!」

 

 

痛む身体を何とか奮い立たせて立ち上がろうとするゼノン。それは何よりユウマの意思が強く働いてのことだった。それは何より母との約束があるからだ。

 

──同時にゼノン達が背中に守る町の方角から小さないくつかの光が見えた。

 

次の瞬間、深海棲艦達の周囲に砲撃が降り注ぎ、間髪いれずに艦載機達が襲い掛かったのだ。

 

 

「まさ、か…」

 

 

その光景にゼノンが振り返ってみれば、何とこちらに向かってくる金剛や赤城、矢矧をはじめとした艦娘達の姿があったではないか。

 

 

「HEY!ゼノン、大丈夫デスカー!?」

 

「深海棲艦はこちらで引き受けます」

 

 

ゼノンに対して、金剛が軽く手を振って声をかけるなか、赤城は鋭く深海棲艦達を見据えると、自分達艦娘は深海棲艦達を引きつけようと動き出す。

 

 

「──ホント、ユウ君はボロボロだねー」

 

 

艦娘達の参戦に驚いていると、ふと近くで話しかけられる。突然、現れた気配と共に見て絵見れば、そこにはミコであろうガッツ星人がいた。

 

 

「だから帰ったら、この無敵のお姉さんがギューってしてあげるね」

 

 

いつもの調子で話しかけてくるその姿に不思議と安心感を覚える。そんな風に心強さを感じていると…。

 

 

「えぇいッ!塵芥が揃いに揃って!!」

 

 

次から次へと現れた艦娘やガッツ星人に業を煮やしたテンペラー星人は両腕から必殺の光線を放つ。そのあまりにも強大な光の本流が一直線にゼノンの元へ向かって、突き進んでいき、ゼノンが何とかガッツ星人を庇おうと身構えると…。

 

 

「させるかッ!!」

 

 

動いたのはジードだった。何とジードはゼノンと光線の間に立ったのだ。次の瞬間、光線はジードの元で大爆発を起こす。

 

轟々と燃え上がる炎を前にテンペラー星人はせせら笑い、艦娘達はまさかと苦しげに表情を歪ませる。もしや最悪な事態になってしまったというのか。

 

 

「な、なに…ッ!?」

 

「海面が…!?」

 

 

だが次の瞬間、海面が大きく震える。まるで巨大な存在が現れたかのように。あまりの状況に矢矧や榛名が困惑していると…。

 

 

 

 

 

 

《Ultraman Geed! Magnificent!》

 

 

 

 

 

 

大きく海を揺らし、炎の名から姿を現したのは堅牢な騎士の甲冑を纏ったかのようなジードだったのだ。ただそこにいるだけで息を呑むような気高く偉大なる崇高なその姿に誰もが視線を奪われる。

 

 

守護(まも)るぜ、希望ッ!!」

 

 

これこそジードが持つ形態の一つ、ウルトラマンジード マグニフィセント!

 

ゼノン達が見たジード プリミティブがウルトラマンとベリアルのウルトラカプセルの力を一つにした姿であれば、こちらはゼノンの故郷・M78星雲光の国において偉大な存在として語られるウルトラの父とウルトラセブンの息子であり、光を受け継ぐ勇者・ウルトラマンゼロのウルトラカプセルをフュージョンライズさせた崇高なる戦士なのだ。

 

 

「オオォォォオッッッ!!!!!」

 

 

ジードMの登場に本能的に危機感を感じたのか、改造タイラントは鉄球を打ち出す。ゼノン達が身構える中、彼らを背中に守るジードMはゆっくりと前に踏み出すと、雄々しい咆哮と共に両腕を突き出して、鉄球を真正面から殴り返す。

 

すぐさまテンペラー星人が攻撃を仕掛けようとするが、その前にジードMは下から突き上げるかのように右腕から緑色の手裏剣状の光輪を放つ。迫る光輪にテンペラー星人は咄嗟に両腕をクロスさせて防ぐが、それでも威力は絶大なようで思わず仰け反ってしまっている。

 

続けざまにジードMの頭部にある鋭角的な雄々しい角から鞭状の電撃を放ち、テンペラー星人のみならず、改造タイラントをも牽制する。

 

 

「す、凄い…」

 

 

圧倒的な力を見せ付けるジードMのその姿にゼノンは唖然とする。絶対に守りぬくとその背中で語るその姿は何と崇高なことか。まさにヒーローのようなその姿にユウマは目を奪われていた。

 

 

「…」

 

「!」

 

 

そんなジードMはゆっくりと肩越しにゼノンへ振り返る。その青い瞳で見つめられた瞬間、大いなる意志を前にしたようにドキリと心臓が跳ね上がりそうになるが、その瞳から何かしらを感じ取ったのだろう。力強く頷いたゼノンはジードMの隣に並び立つ。

 

 

「僕達には仲間も、帰るべき場所もあるッ!」

 

「誰にも傷つけさせやしないッ!!」

 

 

ジードMは両拳を打ち合わして、膨大なエネルギーを発生させ、ゼノンも両腕を水平に広げる。そこに溜まる】エネルギーは彼らが抱く希望を表すかのようだ。

 

 

「ビッグバスタウェイィッッッ!!!」

 

「ジェァアアアッッ!!!!!」

 

 

同時にジードMとゼノンは両腕をL字に組み、肉体から放つ最大火力の光波熱線を解き放つ。希望と打ち砕こうとする絶望に放たれた光の奔流はまっすぐ改造タイラント達へ向かって英気、撃破までは行かずとも大きな損傷を与え、大爆発を起こす。

 

 

「──ハッハッハッ!!!実に滾るッ!!これぞ待ち望んだ戦いよッ!!!」

 

 

しかし爆炎から高笑いが響いたと思えば、爆炎からテンペラー星人が背中のマント状の触手の間に被膜を張り、翼としての機能を使い、空に舞い上がったのだ。身体に大きな傷を受けていると言うのにも関わらず、激しい戦いに気分を高揚させているようだ。

 

 

「ユウマ、ここは僕に任せて君はアイツをッ!」

 

「はい、リクさんッ!」

 

 

テンペラー星人も改造タイラントもいまだ撃破には至らず。するとジードMは改造タイラントを自分が引き受け、テンペラー星人をユウマに任せる。心強いリクがテンペラー星人をユウマに任せたことで、その信頼に応えようとゼノンはすぐさまテンペラー星人を追撃する為、飛び立つ。

 

 

「アナタも行きたいところに行ったほうが良い」

 

「…うん、じゃあそうするね」

 

 

ジードMは次にガッツ星人を見やる。彼女が空でぶつかり合うゼノンとテンペラー星人を気にしているのが、分かっているからだ。ジードMの言葉に静かに頷いたガッツ星人はテレポートでゼノンの下へ向かう。

 

 

「僕達が戦えるのは沢山の絆があるからだッ!絶対に…守って見せるッ!!」

 

 

改造タイラントと真正面で対峙しながら、ジードMはその巨躯に恐れることなく、勇壮に立ち向かっていくのであった。

 

・・・

 

 

「やはりジードを野放しにして正解であったッ!良い目つきになったものよッ!!」

 

 

縦横無尽に空でぶつかり合うゼノンとテンペラー星人。ゼノンはウルトラスラッシュを放ちながら、テンペラー星人に食いつくが、それすらも愉快そうにテンペラー星人は哄笑を上げる。

 

 

「戦うことが目的なのかッ!?」

 

「当然よッ!我が目的は全宇宙の制覇ッ!!宇宙人連盟に名を連ねるのもその一環に過ぎんッ!!」

 

 

これまでのテンペラー星人の行動から彼が純粋な戦闘狂であるのは理解できる。空中で取っ組み合いながら、間近でゼノンとテンペラー星人は言葉を交わす。

 

 

「腑抜けを倒すよりも強い意志を持つ者を倒す方がこの名も轟くというものよッ!!」

 

「グゥッ!?」

 

 

ゼノンを振りほどいたてんぺらー星人はそのまま腕から鞭状の電撃を叩きつけ、ゼノンを吹き飛ばす。大きく吹き飛んでいくゼノンだが、海面に落ちる前にガッツ星人によって受け止められた。

 

 

「大丈夫。ユウ君は一人じゃないよ」

 

 

追撃しようとするテンペラー星人に光線を放って、牽制するガッツ星人は決して一人ではないのだとしかとその肩を抱く。それはまさに自分達は君の為にいるんだと教えるように。

 

 

「…そうだ。僕が戦うのは未来の為ッ!大切な人達と明日を掴みたいからッ!!」

 

 

ガッツ星人の言葉にゼノンは海上で戦闘を繰り広げるジードや艦娘達の姿を見やる。リクは言った。支えあう仲間達の笑顔が自分の力になると、それは自分とて同じなのだ。

 

 

「ならばワシを倒して掴んで見せろォッ!!」

 

 

強い意志を示すゼノンに感化されたように声を張り上げながら、テンペラー星の科学を集結させて編み出した自身の最大火力を誇る光線を放つ。

 

 

「ウオオオオォォォォオオッッッ!!!!!」

 

 

ソレに対して、ゼノンはガッツ星人を守る為に前に出ると、光波バリアを張って何とか食い止める。しかしそれでも相手はテンペラー星人が持つ最大の攻撃。徐々に圧されていき、バリアにも皹が入り始める。

 

 

「まだ、だッ!」

 

 

しかしそれでも決して諦めるわけには行かない。それを現すように何とか食い止めながら奮い立つように叫ぶ。

 

 

「俺達はまだ未来へ進んでないッ!どんなに辛いことがあったって、それでも過去を越え、前を向いて未来へ進まないとといけないんだッ!!」

 

 

ゼノンに降り注ぐこの膨大な光の先に進むべき未来があるというのなら、絶対に打ち破って、その先に進んでみせる。自分は前へ進まなくてはいけない。なぜなら──。

 

 

「それがッ…母さんの願いだからァッッッ!!!!」

 

 

何とゼノンはテンペラー最大の一撃を打ち破った。それはまさに彼が持つ大いなる強き意思が最大にまで働いて生まれた結果だったのだ。

 

・・・

 

 

「そうだ…。願いこそが未来を変えていくのならッ!!」

 

 

それを地上で見ていたジードは真正面に改造タイラントを見据える。今ここでその願いを消させるわけにはいかない。その為にも自分は戦わねばならないのだから。

 

 

「ウルティメイトファイナルッッ!!」

 

 

《Ultimate Evolution!》

 

ジードの精神世界でリクが起動させたのは、ジード本来の姿が映し出されたエヴォリューションカプセルだ。これを赤い金棒のような武器・ファイナライザーにセットし、ジードライザーでリードさせてスイッチを押す。

 

 

「つなぐぜ、願いッ!!」

 

 

それは命を、意志を、願いを、全てを未来へ繋げる為に──。

 

 

「ジードッ!!」

 

 

ファイナライザーのスライドスイッチを引くと、圧倒的なエネルギーが精神世界を通して、ジードの身体をラインの如く走り、周囲に眩い光を放つ。

 

《Ultraman Geed!Ultimate Final!》

 

その場にまるで心臓の鼓動のような音が響き渡る。ジードを包んだ光がそエネルギーを電流のように走らせながら消えれば、目醒めし最強の遺伝子・ウルトラマンジードが持つ究極形態…ウルトラマンジード ウルティメイトファイナルが光臨していたのだ。

 

 

「僕らは不完全でッ!でもだからこそ支えあうんだッ!!」

 

 

ジードUが発するその神々しさに改造タイラントが動きを止めるなか、ジードライザーを手に持ったファイナライザーにスキャンさせスライドスイッチ3回引く。

 

 

──目覚めよ!宇宙最強の遺伝子ッ!!

 

「支えあうことは決して弱さなんかじゃないッ!!僕らはみんなでウルトラマンなんだッ!!!」

 

 

ジードUを走るラインが光り輝く。この力を手に入れたのは、リクが紡いだ絆があったからだ。リクの闘志をそのまま力に還元し、更に増幅したかのようにファイナライザーの先端に赤黒いエネルギーが集中する。

 

 

「クレセントファイナルゥッ……ジイイイイィィィィィーーーードォオオッッッ!!!!! 」

 

 

飛び上がったジードUはファイナライザーを大きく振るい、三日月型の巨大な切断光線を放つ。改造タイラントが鉄球を放つが、未来を切り開くその一撃を前に容易く切断され、その背後にいた改造タイラントをも真っ二つにして撃破する。

 

・・・

 

 

「俺だけじゃお前を倒すことは出来ない…ッ!!」

 

 

改造タイラントを打ち破ったのと同時にゼノンはテンペラー星人にいまだ果敢に挑んでいた。しかし力量で言えば、テンペラー星人が上手なのだろう。しかしそれでもゼノンはガッツ星人の円語彙を受けながら、渡り合っていた。

 

 

「でもここにはゼノンがいる、皆がいるッ!俺だけじゃないんだッ!!」

 

 

ゼノンが右腕を突き出し、渾身の一撃を放つ。迫る拳にテンペラー星人が腕の鋏で防ごうとするのだが、直撃した瞬間、鋏に皹が入ったのだ。

 

 

「例え個人の力が弱くたって、一人一人が加われば未来だって動かせるッ!!」

 

 

テンペラー星人が驚くのも束の間、ゼノンはそれを皮切りに怒涛のラッシュをかけ、パワフルな飛び膝蹴りを浴びせて、吹き飛ばす。

 

続けざまにゼノンはギャラクシーブレスレットに手を添え、ゼノンギャラクシーに変換させると、クリスタルにエネルギーを集中させる。

 

対して、テンペラー星人もこれで最後だとばかりに自身の全ての力を集結させる。対峙する二人の戦死に膨大なエネルギーが集中するなか、決着の時が訪れた──。

 

 

「俺達は今を生きてるッ!だからこそ未来へ進むんだァアッ!!!」

 

「ならば、どちらが未来へ進むかッ…!!勝負だァアアッッ!!!」

 

 

ギャラクシーカノンとテンペラー星人の光線が同時に放たれ、拮抗する。その場に足を踏みとどまり、前だけを見ると言わんばかりに。

 

だが、勝因となるきっかけはすぐに起きた。ゼノンの両肩にそれぞれガッツ星人とジードUの手が添えられる。二人の想いを感じ取ったゼノンは強く頷き、更にエネルギーを強めるとやがて押し切り、テンペラー星人にありったけの光線を叩き込む。

 

 

「グッ…ガハッ…!?」

 

 

ギャラクシーカノンを全て受けたテンペラー星人は足を震わせる。最早、身体が限界に達しているのは誰が見ても明らかだった。しかし光線を押し切られてもなお、自身は一歩たりとも後退しなかったのは彼の意地か。

 

 

「フフフッ…ハハッ…!!」

 

 

ゼノン達が立ち尽くすテンペラー星人の姿を警戒しながら見つめるなか、テンペラー星人は突如として、笑い声をあげる。

 

 

「…不思議と高揚感がある…。負けたことは口惜しいが…これはこれで…悪くない一生だ」

 

 

最早、テンペラー星人は長くない。なぜならテンペラー星人の腹部はギャラクシーカノンによって風穴が開いているのだから。しかしそんな状態にも関わらず、テンペラー星人はどことなく満足そうに話す。

 

 

「未来へ掴むと言ったな…。ならばワシの屍を越えて突き進んで行け、光の戦士よ!!」

 

 

そう言い残してテンペラー星人は爆発四散する。最後まで倒れなかったのは彼の戦士としての維持か。しかしそれでもテンペラー星人を打ち倒したのだ。

 

 

「終わった…」

 

 

同時に深海棲艦も何とか対処した赤城達も戦いが終わり、そっと胸を撫で下ろす。するとそんな彼女達に光が差す。

 

なんと朝日が姿を現したのだ。戦いの終わりに誰もが感嘆の声を上げるなか、ゼノンとジードUは向かい合うと、握手を交わすのであった。

 

・・・

 

 

「ごちそうさまっ!」

 

 

数時間後、戦いの終わりにマツミズ宅へ帰ってきたユウマ達。戦いの後の空腹を満たす為、カップラーメンで腹ごしらえを済ませたリクは両手を合わせる。

 

 

「じゃあ、僕はもう行くよ」

 

「…もう行っちゃうんですか、リクさん」

 

「僕にも帰る場所と待ってる仲間がいるからね」

 

 

すくっとリクが立ち上がると、まだ戦いが終わったばかりで余韻もないユウマは寂しそうに話す。しかしリクはこの世界の人間ではない。いつまでもこの場にいることは出来ないのだ。

 

 

「大丈夫。またなにかあれば会えるよ。僕達は仲間だから」

 

「リクさん…。はい!俺、リクさんに教わったこと絶対に忘れませんッ!!」

 

 

一人の先輩として、ユウマの肩を触れながら優しく笑うリク。その温かな笑みに心に明りが灯ったユウマはソレを表すように微笑むと、その笑みに頷いたリクは家の外に出る。

 

ユウマ達がその後を追いかけてみれば、途端に眩い光に目を遮られ、視界が回復した頃にはそこにはマントを風に靡かせた黄金の鎧を持つ紫のジードがいた。

 

 

「ユウマ、君にはこれからもっと大変なことが待っているかもしれない。でもだからこそ君が君の運命を変えるんだ」

 

 

黄金のジードの神々しさに圧倒され、ユウマ達が言葉を失っているなか、ジードことリクは最後に運命を変えた者としての言葉を送る。その言葉にユウマが確かに頷いたのを確認すると、黄金のジードはその力で自身の宇宙へ帰っていくのであった。

 

 

「行っちゃったね…」

 

「うん…」

 

 

ジードがいた場所を見上げながら、ミカヅキとホシヒメはどこか寂しそうに言葉を交わす。リクがいたのは本当に束の間だった。だが彼のお陰でユウマが立ち直ることが出来たのだ。

 

 

「…俺さ、やりたいこと見つかったよ」

 

 

切なげに空を見上げていたユウマはポツリと零す。呟きを聞き取ったミカヅキとホシヒメが一体何なのかと彼に視線を向けると…。

 

 

「母さんのようになりたいんだ。母さんが求めた出会いを…。母さんが進めなかった未来を…。何れゼノンの力を借りなくても自分達の力で宇宙へ飛び立って行けるようになりたいんだ」

 

 

これまで将来、何がしたいのか分からずに悩んでいたユウマ。だが漸く彼の中で亡き母の志を受け継ごうという想いが芽生えたのだろう。その瞳に希望を宿しながら話すユウマの姿にミカヅキとホシヒメは顔を見合わせる。

 

 

「じゃあ僕達も一緒に連れて行ってね、ユウマっ!」

 

「これでも昔は宇宙を飛び回ってたし、力になれると思うよ」

 

 

両端からユウマを囲むと、彼の腕をそれぞれ取りながらモチヅキとホシヒメは笑いかける。もう自分達はユウマと離れる気はない。かつて彼が居場所を提供してくれた。だが今は最早、ユウマその物が彼女達の居場所なのだ。二人の想いにユウマはありがとう、と微笑を浮かべながら頷くのであった。

 

・・・

 

 

「皆さん…本当にご迷惑をおかけしましたっ!!」

 

 

それから更に数時間後、鎮守府の食堂ではマツミズや艦娘達等が多く集まるなか、視線が集中しているユウマが深々と頭を下げていた。

 

頭を下げて暫らく周囲は沈黙したままだ。課頭を下げているユウマには周囲がどんな顔をしているのかが分からず、ドキドキと心臓の鼓動だけが煩く聞こえてくる。

 

 

「ユーウ君っ!」

 

 

しかしそんなユウマを背後から誰かが腕を回し、次の瞬間、柔らかな感触が後頭部全体に広がって行く。

 

 

「ミ、ミコさん!?」

 

「約束したでしょー?無敵のお姉さんがギューってしてあげるってー」

 

 

突然のことに顔を真っ赤にしてうろたえているユウマにミコはしてやったりとばかりに悪戯っ子のような笑みを浮かべていた。

 

 

「まっ…迷惑ってよりは心配よね」

 

「でも、立ち直っていただけたようで何よりです」

 

 

次の瞬間、艦娘達もゾロゾロ迫ってきて、瑞鶴のように頬を引っ張ったりと身体に触れる者もいれば、大和のように安堵して胸を撫で下ろす者と反応は様々ではあるが、誰一人として怒る者はいなかった。

 

 

(俺には…沢山の仲間がいて…その笑顔が力になる…。俺…確かな強さで進み続けます、リクさん)

 

 

周囲の温かな空気についついユウマの頬に涙が流れる。この温かさがユウマの力になる限り、負けるわけには行かない。ユウマはリクに想いを馳せながら、この幸せを享受するのであった。

 

・・・

 

 

「テンペラーがやられたか…。全く最後まで好き勝手やりおって」

 

 

一方、宇宙人連盟の宇宙船では、敗れたテンペラー星人に対して、ヒッポリト星人が悪態をついていた。

 

 

「しかしそれでも計画は順調に進んでいますよ」

 

 

元々、反りが合わなかったのだろう。次々と毒を吐くヒッポリト星人に肩を竦めながら、ババルウ星人は立体映像を表示させる。

 

何とそこには、ケーブルに繋がれた頭部に羽飾りと顎髭を持つ怪獣の姿があり、その怪獣の周囲におどろおどろしい怨念のようなものが集まり、目の前で形作ると何とタイラントの骨格のようなものが現れたのだ。

 

ただの骨格か?いや違う。その目に当たる部分が不気味に赤く発光したのだ。そのおぞましい姿にババルウ星人はただほくそ笑むのであった。




<次回予告>

ある日、ユウマは監視されているような奇妙な感覚を味わう。そんな矢先、ユウマの前に二人の美しい女性が現れた。しかもどうやら片方はフィスの血縁者のようだ。驚きも束の間、あの手この手でユウマを篭絡しようとする。苦笑するユウマ!呆れるゼノン!頭を抱えるフィス!果たしてどうなる!?

次回…夢への歩み


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