せかいシリーズ (猫舌36@活動停止中)
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第一部 神様の頼み事
第一話


今日も朝が来た。来なくてもいい朝が来た。

正直言って面倒くさい。なので俺は二度寝することにした。

 

「賢悟!起きろー!今日テストでしょ!」

 

現実からは逃げられなかった。この学校もうやだ。この幼馴染も、もうやだ。

何でこの学校は寮に住む場合三人部屋でしかも男女共用だ。間取りとしては3LDK風呂トイレ付き。寮と言うより併設のマンションと言った感じだ。て言うかマンションだ。

そんなことより三人部屋は分かるが何故男女共用なんだよ!分けろよ!頭おかしいだろ!

さらに三人部屋だからと言って三人で住まないといけないと言う決まりも無い。何が言いたいかと言うと現在俺は幼馴染の女の子と二人で寮の一室に住んでいる…。

 

「賢悟?生きてる?生きてるならすぐに部屋から出て、死んでるなら返事して」

 

「どっちにしろ死んでたら出来ないな!」

 

とりあえず、ツッコんでみた。

 

「返事があった。死んでるのか…」

 

死んだことにされた…。俺は悲しいよ。

これ以上悲しい想いをしないために寝室から出る。

 

「うわっ、死んでる筈なのに出て来た。ということは…どう言うこと?」

 

「お前はアホか」

 

頭に軽くチョップしてやる。こいつの方が成績良い筈なのに。

 

「…朝飯は?」

 

「昨日の残りのカレー」

 

「それと同じことを昨日も聞いた気がする」

 

「いいじゃん二食連続カレーでも」

 

「お前はそうかも知れんが俺はこれで五食連続でカレーなんだよ」

 

誰だよ夜・朝・昼・夜とカレーを進んで食べた奴は。…俺か。

 

「いいじゃんそれ位。中学のときの理科の先生は一週間三食カレー食べたって言ってたよ」

 

「いや、あの先生は言ってること全部嘘だぞ」

 

授業の内容位しか正しいことを言ってない。

 

「まあまあ、そんなことより賢悟君」

 

無理矢理話題を変える。

うわぁ、こいつが俺を君付けで呼ぶときは大抵俺を弄ろうとしてくるときだ。

 

「今日のテストはどんな点数を取ってくるのかな?」

 

「そ、そそ、そんなことより朝飯食べようぜ」

 

「え、ああ、うん」

 

何か不満そうな顔をしているが、特に気にしない。むしろ気にしてはいけない。

むしろあっちが先に無理矢理話題を変えたんだ。文句を言われる筋合いは無い。

そうかテストか。嫌だなあ。科学と地理しか自信ねぇ。それ以外は捨てる。

 

「科学と地理以外捨てたら今晩も賢悟だけはカレーにするから」

 

「あ、あはは…マジで」

 

ここでの選択肢は

1今日は帰って来ない。

2カレーアレルギーを発症する。

3全ての教科をちゃんとやる。

まず1。これは現実的だがそのあとどうするかだ。野宿の心得はあるけど少し遠出しないと野宿できそうな所は無い。

そして2。これは非現実的だ、まずありえない。そもそもカレーアレルギーって何だよ。

最後の3。一番現実的でなおかつ後が楽だ。

 

「分かりました…。全教科ちゃんとやります」

 

「ちょっとー、そっちには誰も居ないぞー。後なんでそんな死にそうな声で喋ってるの」

 

はっ、いかんいかん。カレーの神様に導かれる所だった。

それにしても、こいつカレーだけは美味いな。これ以外は…駄目だ、思い出しただけで吐き気が…。

 

「?何でいきなり顔色悪く成ってるのよ」

 

「いや、何でも無い。ただ宿題をやってないことを思い出しただけだ。大丈夫だ、問題ない」

 

「それ死亡フラグ…」

 

そう言うことを言うから死亡フラグに成るんだろう。

 

「ご馳走様。さて学校行くかぁうわぁぁあああ!」

 

「いきなり叫ばないでよ、お隣さんに迷惑でしょ」

 

「学校に行きたくないばかりについ叫んでしまった」

 

てかお隣さん居ないだろ。隣どころか上下左右に住んでいる人は居ないだろ。

この学校で寮生活を送る奴なんてそうそう居無いぞ。俺は一々家と学校を往復したくないから寮生活を選んだけど。

そう言えば何でこいつも寮生活を選んだんだ?考えられなくも無いけど。

まあ、カレー作るときと掃除洗濯は楽が出来るし。

 

「ああ、お隣さんは居なかったか」

 

こいつホントに俺より成績上なの?記憶容量少なくないか?

 

「失礼な、私は記憶容量多いよ。ただ探すのに時間が掛かるだけだよ!」

 

「はいはい、ポルナレフポルナレフ」

 

「何で今その人が出てくるの!?関係ないよ!」

 

頭どうかしてないよとか何とか騒いでいる。てかこいつさっき普通に心読んできたよな。まあ良いけど。

 

「おい、騒いでないで学校行くぞ」

 

「むぅ。それが不登校の言うことか」

 

戸締りを確認してガスをちゃんと止めたか確認する。私物のパソコンが壊れるのだけはやめて欲しい。特にデータが。

 

寮から学校に行くまでは横断歩道を二つ渡らなければ成らない。

その二つ目の横断歩道を渡るとき。

 

「渚!危ない!!」

 

俺は幼馴染を信号無視してきたバイクから守るために渚を突き飛ばし、身代わりに成った。

そして薄れ行く意識の中、渚を見る。飛ばされたのが原因か気絶してるが無事だ。擦り傷は有るけどあれ位なら傷は残らない。

久しぶりにあいつのことを名前で呼んだのにこれって無いな。とか、朝の会話は伏線だったのか。とか、これだから信号無視だけはしないと誓ってたのに。とか場違いなことを思いながら俺は意識を失った。



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第二話

「うぐぅ」

 

っは!今タイヤキ好きの口癖が聞こえた気がしたぞ。って自分の寝言かい。そこまであのヒロインには思い入れは無いが…。どちらかと言うと「あうー」って言ってる方が好きなんだけどな。

そんなことはどうでも良い!ここはどこだ!?どこを見ても白一色。ハガレンの真理の扉がある空間並にしろ一色だ。

 

「で…あんた誰?」

 

この白い空間に俺以外にもう一人。

 

「おいおい君、あたしはこれでも神様だよ。英語でゴッドだよ。そんなあたしにあんた誰って笑い殺しさせたいのかい?」

 

こんなのが神の一柱なんて俺は絶対に認めないぞ!あーでも超カワイイ。見た目年齢12歳以下だぞ。黒髪ツインテールでロリ体系。ロリコンに見せたらお持ち帰りされそうだな。

 

「で、その神様が俺に何の用です?とっとと輪廻転生したいんだけど」

 

「知識が高校生じゃ無いね。一体何を勉強してたんだい?まあ問題はそこじゃない。後君まだ生きてるから」

 

マジで!?まだ生きてるの、俺。

 

「まあ、後二分で死ぬけど」

 

それはあまり知りたくなかったなー。

 

「だから後二分で説明するよ。ええと、君が生きていた世界とはまた別の世界が、ある男の手で滅亡しそうだからちょっと止めてきて」

 

「いやいや、ちょっと止めるべきなのはあんたの口だよ。何でそんなこと俺がしないといけないの?自分でやってよ」

 

「いやーこれでもあたし忙しいからね。あたしこれでも破壊神なんだよね。あと神が直接世界に影響与えちゃいけないんだよ」

 

言ってること矛盾してるよね。あんたが俺をその世界に送った時点で世界に影響与えてるよね。

てかあんた破壊神なのかよ。全然見えないぞ。過去の範例を見る限りもうちょっと破壊神っぽい見た目をしてるかと思ったのに、こんなロリっ娘だなんて。

 

「まあ君の意見は置いといて、さっさと転生させるよー。先に言っておくと君にはチート能力を持たせて転生させるから」

 

マジで!?それは嬉しい。って俺はまだ了承してない!

 

「後、ちょっとしたドッキリも仕掛けさせてもらったから☆」

 

「ちょ、まだ俺は了承してないぞ。後、その☆やめろイライラするってうわああぁぁぁぁぁああああ!!」

 

今度あったらあの神一発ぶん殴る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むきゅう…」

 

っは!今どこかの引きこもりの紫もやしの声が聞こえた気がしたぞ。って、自分の寝言かい。あれ?デジャヴ?

 

「ここはどこだ?…あれ?」

 

あれれ~?俺の声ってこんなに高かったか?

とりあえず確認が必要だ。恐る恐る自分の体を見てみる。

 

なんてことだ…。あれが無くなってあれが大きくなっていた!ドッキリってこれかよ!!悪意しか感じねぇな!

 

「あの破壊神………マジでぶん殴る」

 

そう思ったって罰は当たらないと俺は思う。



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魔科学世界編
第一話


神様め。どんな世界に転生させたんだ?説明くらいして欲しいぜ。後必要最低限の装備も欲しかったよ。

 

「何でスライムが居るんだよ」

 

あの人気RPGドラクエに出てくるあのスライムが俺の前に飛び出してきた。

本当ひのきのぼう程度の武器は欲しいぜ。

 

「あぶなっ!」

 

スライムが突然突っ込んできた。攻撃対象にされてるのかよ!

こうなったら最後の手段だ。

 

「逃げるんだよー!」

 

ジョセフは勝つために逃げるけど俺は違う。生きるために逃げる。逃げるが勝ちだ。

 

しかしまわりこまれてしまった

 

「これがお約束って奴なのか」

 

よく見たら囲まれてるし…。ホイミとかベスも混じってるし。奥に居るでかいのはまさかキング?転生した瞬間にまた転生する系主人公になった記憶は無いぞ!詰んだ。セーブポイントからやり直してー!

 

「何か、何か武器は」

 

あたり一面草っ原。寝たら気持ち良さそうだ。て、そんなこと言ってる場合じゃない!雑草で戦えと?

…行ける。戦ってやる。この雑草で!

雑草を掴む。

 

「行っけえぇぇぇ!」

 

そのまま一気に引っこ抜く。

そして雑草の根に付いていた土がスライムに当たる。当然ダメージは期待できない。だが、目に土が入るとすごく痛い。

 

「今のうちに逃げる」

 

遠くにアスファルトで舗装された道が見える。ん?アスファルト?ドラクエ世界だと石畳程度しかないはずだけど…。まあいいか。

 

「そこの君、早く!」

 

突然声が聞こえた。見ると銃で武装した人が三人位立っている。どうでも良いけど早くなんて言わないでください。これでも精一杯なんです足首と膝が痛いです許してください。

 

「よし、後少しだ!総員戦闘準備。目標、前方のスライムの群れ!あの者に当てるなよ」

 

「了解!」

 

「早く私達の後ろへ!……撃て!」

 

何とか三人の所に来れた俺はそのまま三人の後ろに飛び込む。

銃から出てくるのは弾丸では無くレーザーの様な光の弾だ。いやそんな訳無いか。きっと光の反射か何かだろう。

そうに決まってる。あんなアサルトライフルサイズでレーザーとか出せるわけが無い。

あれ、ドラクエの技術レベルでアサルトライフルとか出来るのか?せいぜい火縄銃だと思うけど…。

 

「目標の殲滅を確認」

 

「では予定通りこの者を連れて行け」

 

「了解。さあ来い」

 

三人のリーダーと思われる人が一人にそう言うと、その人は俺の腕を引っ張りながら歩いて行く。

え?ちょ、展開について行けない。何で。俺この世界でまだ誰とも会ってないよ?何で予定通りに俺は連行されてるの?予定って何だよ?俺がここに現れることは予定だったの?

 

「はあ、あの人の予言はよく当たるな。まあスライムに襲われてるとは思っても見なかったけどな」

 

「ええと、何故お、私は連行されてるんですか?」

 

「連行なんて人聞きの悪いこと言うなよ。これは護送だよ。護って送るって書いて護送だよ」

 

予言って何。俺がここに居ることを知ってる人が居るの?どうやって知ったんだよ。あの人の予言はよく当たるって事は予言者が居るってことか?予言者すげー!



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第二話

と言うわけで女王陛下に謁見である。

え?流れに着いて来れない?はっはっは。俺もだ。語り部が話しに着いて行けてないからな。作者少しは頑張れよ。

メタ発言はこれくらいにして置こう。

何でも予言者である女王様が神(黒髪のロリ。これ重要)のお告げで俺があの草原に現れることを知っていたらしい。本当にあの神余計なことしかしないな。

 

「これなら七食連続カレーの方が良かったぜ…」

 

「おい貴様この私の前で何を言っておる」

 

うわーうぜー。こいつ絶対プライド高い系お嬢様だろ?こう言う奴苦手なんだよな。早く帰りたい。あの神この状況をどう思ってるんだろうな。俺は唯の一般人だぞ。おかしいだろ。

おかしいと言えばこの状況もおかしい。だって唯の一般人に拳銃向けてさらに警察の機動隊が使うような盾を装備してるんだぜ。

 

「にげだしてぇ」

 

「さっきからこっちの質問に何一つ答えずぶつぶつと独り言を言ってるだけでは何時まで経ってもここからは逃げられないぞ」

 

「えっ、質問してたんですか女王様。それはどうもすいません」

 

これ本当に自分の声か?てかこの体自体自分のものか怪しいぜ。…あ、腕のほくろの位置が同じだ。じゃあ自分の体?

とか思いつつ再び女王様を見る。金髪ストレートに整った顔立ち、服はピンクを基調としたドレス。プライド高い金髪少女は縦カールだと思ってたけどそんなことは無い様だな。だとすると余計性格で損してるけどな。

 

「じゃあまず貴様は何者だ」

 

うわー一番答えにくい質問だな。

 

「ええと今から話すことは信じられないことが混じっていますよ」

 

「そんなことは知っている。とっとと話せ」

 

「ええと、幼馴染を交通事故から庇って死んで黒髪ロリの神に会って能力貰って転生させられて女にされてこの世界に放りこまれた別世界の学生です」

 

これで大体合ってるのがなぁ。

 

「じゃあ神のお告げの通りか。本当にこの者が世界を救えるのか?」

 

ああ、俺がこの世界で第二の人生を始めるって事は無いようだ。俺が何をしたって言うんだよ!

 

「では二つ目の質問。貴様の名は何だ」

 

「大倉賢悟です」

 

「東洋人か。それにしても女っぽく無いな」

 

余計なお世話だ。

 

「よし今日から貴様は大倉暦(おおくらこよみ)だ」

 

ええぇぇぇ何でそうなるの!?何であの変態ありゃりゃ木さんと同じ名前にならないといけないの!?

 

「何を嫌そうな顔をしている。この名は昔私を救ってくれた東洋人の名だぞ」

 

「もしかしてその人ってアホ毛が生えて背が低い男ですか?」

 

「何を言うか、アホ毛は生えて無かったし背も高かったぞ。何より女だ」

 

良かったあのドアラ木さんじゃ無い様だ。本当に良かった。

 

「質問は以上だ。暦を部屋まで案内しろ」

 

「かしこまりました」

 

女王様の隣に片側十五人くらい並んでいたメイドの内の一人が前に出る。

 

「では、暦様。こちらへどうぞ」

 

人生で初めて見たメイドさんに大歓喜しながらメイドさんについていった。



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第三話

やったー!!本物のメイドさんだーーー!!

と思う人も中には居るのかもしれない。居ないのかもしれない。

え?俺?前者です。圧倒的に前者です。何か問題でも?

 

「こちらが暦様のお部屋になります」

 

うわー、スイートルームって奴じゃないかこれ。すっげー!豪華すぎて死にそうだぜ。貧乏人が入る部屋じゃないなこれ。

 

「申し遅れました。今日から暦様専属の使用人兼ボディガードを務めさせていただきますレーア・アクランドです」

 

へえレーラって言うのか。青い髪に藍色の目。短めのツインテールが印象的だ。メイド服は日本人が想像する感じのあれだ。

って、そうじゃない!ボディガードって何だよ!一体何から俺を護るんだよ!

 

「では、私は夕食の準備に行きます。分からないことはそちらのパソコンで検索して下さい」

 

はっ、逃げられた。てかなんでパソコンがあるんだよ。ドラクエでは無かった気がするが…。あ、でも水上バイクとかエレベーターなら在ったな。うろ覚えだけど。

 

「まあ起動してみるか」

 

OSがウイ何とかだった気がするが気にせず、とりあえずこの世界について調べてみる。

 

「ああ、うん。わっかんねー」

 

まあ要約するとこの世界は科学技術が進んだドラクエ世界と言った感じだ。

正確には魔法科学、略して魔科学だけど。まあ似てるから良しとしよう。

 

「さて次は能力を調べるか」

 

調べた。

簡単に纏めると世界の理を無視してありえないことをやってのける力だ。しかしそれぞれの能力には問題点もある。

あと世界の理は物理学とかそんな物だ。

 

「で、俺の能力はなんだろなー」

 

同じ様な能力は在るけど同じ能力は無いらしい。問題点も能力の内らしいし。

出来れば問題点があまり無いものがいいな。

 

「ま、いいや。少し寝よう」

 

うわぁ、ベッド柔らけー!

少しの間マットレスの柔らかさを楽しんでから俺は寝た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バキッ…ドン…

 

「暦様!大丈夫ですか!」

 

何だ何だ何だ!突然バギッて感じの壁をぶち破った様な音が聞こえたと思ったら、何か大きな物がぶつかったような音が。そして聞こえたレーアさんの声。…まさかな。

 

「良かった。寝てただけですか」

 

「あのレーアさん?これは一体どう言う状況なんでしょうか?」

 

「ノックしても中からの返事が無かった為暦様の安否を確認するためにドアを蹴り破りました」

 

まさかが当たったよ!てかドアを蹴り破るメイドって何だよ。戦闘メイドかよ!…そういや戦闘メイドだったな!

 

「暦様夕食のお迎えに参りました」

 

何事も無かった様に話を進めた。

 

「ああ、そう。それよりドアはいいの?」

 

「あれは大丈夫です。ドアに限らずこの城は放置していても自己修復できますので」

 

未来技術ってすげー。

 

「それでは夕食の席へ案内します」

 

この城広い。迷子になりそうだ。後で見取り図貰おうかな。

 

「さあ、お入りになって下さい。言い忘れましたが女王様との食事ですので」

 

「おいおいおい、それを早く言って下さい。お願いしますから!」

 

どうやら俺は落ち着いて料理を味わうことは出来ないらしい。



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第四話

調子に乗って一日に、二話投稿です。さて、何回『に』といったでしょう。


くっ、思ってた以上にきついぜこの空間。何が悲しくて女王様と個室で夕飯食べないといけないんだよ!

 

「暦、少しは喋ったらどう」

 

「喋る話題が見つからないです」

 

なんていうか昼の謁見と態度が違うな。ステーキ美味い。

 

「喋る話題は無くても聴きたいことは有るんじゃないかしら」

 

「そりゃまあ、有りますけど…。じゃあ、さっきの謁見のときとかなり態度が違うようですが?」

 

「あれは演技よ。元々私は第二王位継承者であって本来は国家を導く役割じゃないのよ。普段は国軍を指揮してるわ。国の指導者としては普段は父と兄がやっているのだけれど二人とも魔物にさらわれたのよねぇ」

 

「いきなり重い話なんですけど」

 

「本来はもっとこう、ひゃっはー!としたいんだけど軍の指揮官としてならともかく国の指導者としてはねぇ。他に質問は?」

 

「ではもう一つだけ。なぜ俺にレーラさんを就けたんですか?使用人なら分かりますがボディガードは無いでしょう」

 

「それは暦がこの世界を救う人ですから」

 

「それ確か謁見のときも言ってましたよね。どう言うことですか?」

 

「世界と言っても沢山の世界があります。この世界だったり、暦が生きていた世界、他にも沢山の世界があります。そしてそれぞれの世界にはその世界を維持する物があります。私達はそれを世界の鍵と呼んでいますが…。ここまで言えば想像出来るかも知れませんが、世界の鍵を壊そうとしている者が居るのです」

 

「ああ、うん。つまりそれを止めろって言うことですか。本当にあの神ろくなことしねーな。え、ああ、分かった分かった。どうせ他にやることもやりたいことも無いですからね。やりますよ」

 

「そうですか。今日はこれにて……と行きたい所ですが、どうやらそうは行けないようです」

 

は?言葉の意味が分からない。訊ねようとしたところで突然揺れが起こる。

 

「これ、地震?」

 

多分震度四だな。静岡に住んでると大体予想できる。

 

「そうだといいわね」

 

また揺れる。今度は震度五弱だ。

外はどうなってるんだろうか。

 

「どうやらドラゴンの襲撃のようです」

 

驚くほどドラゴンだった。これがウマゴンだったら何とかなったのに…。

 

「それは大変ですね。逃げた方がいいのでは」

 

なぜに急に他人行儀になるんだ。ん、ああ。そう言うことか。

 

「逃げないほうが言いのでしょう。逃げた方が逆に危険ですしね。証拠に誰一人この部屋に駆けつけてこないじゃないですか」

 

「あら、もしかして知ってたの?」

 

全然知らなかったけど俺の脳は反射的にある人物を思い浮かべ、俺の口はある言葉を言う。

 

「なんでもは知らない。知っていることだけ」

 

「え、嘘!?」

 

「へ?何が?って、ええぇぇぇええええ!!」

 

また自分の声が変わっている!今度は耳にしたことがある声だ。そうさっき言った言葉を言った人。羽川翼の声だ。正確には堀江さんの声になっている。

 

「ああ、なるほど。それは暦の能力ね。変身系の能力で発動条件はなりたい人物を思い浮かべながら、その人の台詞を言う。効果としては変身した人の能力を使えること。問題点は欠点として同姓の人にしかなれない、三十分しか変身できない。さらに制約として一度変身したらその人物には一時間再変身できないことね」

 

なるほど分かったような分からないような…。

 

「って、何で女王様は俺の能力知ってるんですか」

 

「それが私の能力だからよ。問題点は欠点として一つ、対象の能力が使われるのを観ないと使えないこと。で暦が今変身した人はどんなことが出来るの?」

 

「特に能力は無いですね。ただ単に次元を超えた天才です」

 

「じゃあ、さっさとあのドラゴンを倒してきなさい」

 

「それは…無理です」

 

コンタクトを付けてるってことは夏休み後だからブラック羽川にもなれないだろう。

はあ、星が綺麗だなぁ。




今回変身した人
羽川翼(物語シリーズ)
猫に魅せられ、虎に睨まれた少女
時系列順で行くと阿良々木君が十三人中五番目に会ったヒロイン。でも登場回数はトップクラス。
天才。電話相手が今地面から何メートル上に居て、何を考えてるか分かるくらいには天才。みんなも頑張れば出来るよ。
「実は私着やせするタイプなんです!」って言って欲しい。


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第五話

ガリガリ君がおいしい季節になりましたね。え?一年中同じ味?


全く何で俺がドラゴンを倒さないといけないんだ。俺の運の数値低いんだろうな!

 

例外の方が多い規則(アンリミテッド・ルールブック)

 

羽川さんは戦闘スキルは低いだろうから斧乃木ちゃんです。はい。

それにしても例外の方が多い規則(アンリミテッド・ルールブック)って威力高いな。ドラゴンの頭が一撃で吹っ飛んだぜ。ああでも再生してる。

 

例外の方が多い規則(アンリミテッド・ルールブック)離脱版」

 

指を下に向けて例外の方が多い規則(アンリミテッド・ルールブック)を撃ち、反作用で空を跳ぶ。

 

例外の方が多い規則(アンリミテッド・ルールブック)

 

そして空中でもう一度例外の方が多い規則(アンリミテッド・ルールブック)を使い人差し指を爆発的に肥大化させ、そのままドラゴンに振り下ろす。

 

「まだ生きてるのかよ。早速化け物だな」

 

ドラゴンって化け物だけどな。何にせよドラゴンはまだ生きている。影縫さんの方が良かったか?

 

例外の方が多い規則(アンリミテッド・ルールブック)。僕はキメ顔でそういった」

 

表情筋動かねー。むしろ何で他の筋肉は動くのか不思議だぜ。

元の姿に戻り城に戻る。入り口まで行くとレーアさんが待っていた。ボディガードの仕事しろよ。

 

「お待ちしてました暦様。この後はどうされますか?」

 

待ってるんじゃねーよ。どこにいるか知ってただろうに。まあ良いけど。

 

「別に何もすることは無いからな。風呂入って寝る位かな」

 

要するに、暇だ。これだけは生きてたときと変わらない気がする。

 

「では暦様とあわせたい人が居るのですが、よろしいでしょうか」

 

「ああ、別に良いけど」

 

「ではこちらです」

 

そう言うとレーラさんは城の中庭に行く。そして隅にあるマンホールの蓋を開ける。

 

「この中になります」

 

「どこの秘密基地だよ」

 

「このことを知っている方は女王様と私と兵器開発部と一部の軍人しか居ませんので」

 

「物騒だな!」

 

一部の軍人ならともかく、兵器開発部って!

 

「さあ行きますよ」

 

レーラさんはそういい残し穴に飛び込んだ。

 

えぇ!?飛び降りて大丈夫なのかよ。……ちくしょう、何でこんな目に…。

 

「えい!」

 

へ?背中を押される感覚と、どこかで聞いたことがある声。確か女王様だったかな?あーっはっはっは!

 

「うわああああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

どうしてこうなった。

 

「うぐぅ…」

 

死ぬかと思った。

 

「うぶぅぇえ!」

 

さらに追い討ちをかけるかのように俺を突き落とした張本人が俺の背中に降り立つ。言い忘れてたが俺はうつ伏せに倒れてた。

 

「あら暦、情けない声を出すのね」

 

この国の女王様ってSを帯びてたっけ?

 

「いや、そもそもあの高さから落ちてきた人が背中に着地したら誰だってこんな声を出しますよ。と言うより突き落とさないでください」

 

「だっていつまで経っても降りないんだすもの。あと能力者ならあの位の高さから落ちても痛くも痒くもありませんわ」

 

どこのヒイロ・ユイだよ。有り得ねーよ。

 

「で、ここはどこなんです?」

 

「あら聞いてないの?」

 

「レーラさんが会わせたい人が居るって言うので来たんですよ」

 

「そのレーラが居ないじゃない。全くあの子は」

 

レーラさんの職務放棄は今に始まったことではないらしい。そんな人をボディガードにつけないでください。

 

「まあ、あの子には後でお仕置きしておきましょう。で、あーそうそう。ここは地下工場よ。ある物専用のね」

 

来れば分かるわ、と言うので大人しく付いて行く。

 

「これって、大和?いや、宇宙戦艦ヤマト!?」

 

「そうよ」

 

短く肯定されてしまう。

あの男の夢がすぐ目の前にあった。

 

「お待ちしておりました暦様、お嬢様」

 

「いやだからあそこで待ってくれればいいじゃないですか」

 

「それに関しては同意だわ」

 

「申し訳ございません」

 

この人絶っっっ対に反省してない。反省してる訳が無い!

 

「では暦様、こちらです」

 

ほらね、反省してない。いきなり別の話題だよ。

 

「この先に紹介したい方が居ます」

 

周りのドアは全て自動ドアだけどこのドアは手動式だ。多分入るときにはノックしろってことなんだろう。

ドアをノックしてみる。

 

「はい、どうぞ~」

 

中から返事が返ってきた。

 

「失礼します」

 

面接を思い出しながら入ると、そこには茶髪に赤い目の少女が立っていた。




今回変身した人
斧乃木余接(物語シリーズ)
死体の憑喪神。キャラがよくぶれる。実は憑物語の時点で結構なネタバレをしてたりする。
体の一部分を瞬間的に爆発的に肥大化させる例外の方が多い規則(アンリミテッド·ルールブック)と言う技を使う。一々ルビ振るのが面倒くさい。
アイスクリーム好き。どこかの雪の町の病弱(?)少女と仲よく出来そうだ。


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第六話

charlotte最終回お疲れ様でした。そしてrewriteアニメ化おめでとう!
このままplanetarianとか智代アフターとかクドわふたーのアニメ化もしていって欲しいですね。


茶髪で赤い目をした少女、緑川翔子(みどりかわしょうこ)さんは俺と同じ黒髪ロリの破壊神に頼まれてこの世界に転生したそうだ。(性転換はされてない)

何で破壊神が転生に携わってるんだよ!とツッコミを入れたい…。

 

「で、何で宇宙戦艦ヤマトになるんですか」

 

「この世界にはもう空中戦艦が有ったから、対抗したの」

 

ちなみに2199の次元波動エンジンらしい。

主機関は次元波動エンジン、副機関には相転移エンジンだと言う。わー燃料要らず。

次元波動エンジンは六連大炉心を目指した三連大炉心らしい。それでも波動砲は三連射出来る。何と戦ってるんだろうか。むしろ何と戦おうとしてるのだろうか。

武装は2199版ヤマトに加えグラビティブラストとディストーションフィールドを装備してるとか。何と戦おうとするとこんな重装備になるんだろうか。

 

「そうじゃなくてロマンの追求だよ」

 

この人頭おかしいんじゃないのか?

思えばこの世界に来てまともな思考能力を持つ人間に会ってない気がする。いや実際に会ってないけど…。

居るのかなぁ。まともな人。

 

「で、こんな物作って何するんですか?」

 

「ん?何するんだろうね!」

 

おい!この人大丈夫なのか!?

 

「造ることに意味があるから目的なんて考えて無かったよ」

 

「目的持って造ってください」

 

「まあまあ、後一週間で完成すると思うからそのときはまた来てね~」

 

「じゃあ、完成までに造った動機を考えてください」

 

そう言い残し部屋を出る。時計を見ると既に十時を回っている。生きているときはまだ起きていた時間だがなぜか眠いのでさっさと寝ることにする。

 

「ところでレーアさん。帰りはどう出るんですか?」

 

「それならこちらの転送魔方陣に乗れば城の中庭へ行けます」

 

そうだったこの世界は技術だけでなく魔法もあるんだった。どんな世界だよ。

 

そんなこんなで自室に戻り寝ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございます、暦様」

 

起こされる。目を開けて時間を確認する。五時半というふざけた時間だった。

 

「はようと思うならもう少しねかしぇ……寝かせてください」

 

朝から舌が超痛いです。お陰で目が……覚めてないか。

 

「かしこまりました」

 

あ…寝れる。

 

 

 

 

「出来たーー!!出来たよ暦君!!」

 

また起こされた。今度は翔子さんに殴り(ここ重要)起こされた。レーラさん仕事してるのか?

 

「えーと翔子さん?何が出来たんですか」

 

「ヤマト」

 

「一週間後じゃなかったのかよ!!」

 

「じゃあ、君が一週間寝てたってことで」

 

「俺は病気か!?」

 

「まあ君って病人みたいな生活送って来てたんでしょ」

 

「人を勝手に病人扱いするなー!」

 

「その反応からすると本当に病人みたいな生活を送ってたんだね…」

 

「認めましょう!引きこもりです!」

 

うわー、すっげー哀れみの目で見てくる。やめて、悲しくなるからやめて。

 

「ちなみに学校がテストをするから久しぶりに登校してるときに死んだ」

 

「これ以上私を悲しませないで!」

 

引きこもりが外に出たら車に引かれた。今思うと確かに悲しい出来事だな。どんだけ運が無いんだよ……。

 

「で、何しに来たんですか。完成したことを言いに来たんですか」

 

「あ、うん。それもあるけど、あとで後でヤマトの見学に呼んだんだよ」

 

「面白そうだな。時間はいつだ」

 

「十三時からだよ。じゃあ、待ってるから」

 

それにしても何で一週間が一晩になったのだろうか?




ヤマトをチート性能にしすぎた気がするけど問題ないよね!


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第七話

早く終物語を見たいです。


そして午後一時。俺は地下工場に来た。

なぜか置いてあったパンフレットを一組取り、読んでみた。

 

 

 

艦名 ヤマト

 

艦種 超弩級宇宙戦艦

 

全長 353m

 

艦体幅 47m

 

最大幅 66m(安定翼展開時93m)

 

艦体高 101m

 

最大高 105m

 

最大速力 亜光速

 

機関 主機関 三連次元波動超弦跳躍機関×1基

   副機関 相転移エンジン×2基

 

武装 次元波動爆縮放射機×1門

   グラビティブラスト×1門

   主砲:48サンチ三連装陽電子衝撃砲塔×3基

   副砲:20サンチ三連装陽電子衝撃砲塔×2基

   魚雷発射管×12門

   短魚雷発射管×16門

   八連装ミサイル発射塔×1基

   ミサイル発射管×8門

   94式爆雷投射機

   高角速射光線砲塔多数

   司令塔近接防御火器×2基

 

特殊装備 波動防壁

     ディストーションフィールド

 

 

なんと言うかもうチートだ。何に対して攻撃しようとしてるのだろうか。

 

「こよみんそこに居たのか。時間になっても来ないから迎えに来たよ」

 

「こよみん!?」

 

ありゃりゃ木さんも臥煙さんからそう呼ばれてた気がするぞ。

 

「ありがとうございます、濁り川さん」

 

「確かに緑色の川って聞いたら冬の屋外プール的な物を想像するかも知れないけど、自然の川が緑色に見えるのは光の波長が関係してるんだよ。それについての説明は尺がないからまた今度ね。そして私の名前は緑川よ。て言うか普段は翔子さんって呼んでるよね」

 

「失礼。噛みました」

 

「いいえ、わざとね……」

 

「噛みまみた」

 

「わざとじゃないっ!?」

 

「蟹増した」

 

「あーごめん。私蟹アレルギー」

 

何と言うことだ。どこで選択を間違えたんだ俺は。

 

「私の名前を噛んだ辺りからかな」

 

最初から選択を間違えてた様だ。

 

「蟹アレルギーの翔子さんには役に立たない雑学。かにの肉には味が無い」

 

「本当に役に立たないわね。そんなことは良いからさっさと行こうよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤマトの中はやっぱり2199版だった。動く歩道くらい欲しいな。一部導入されてるらしいけど動かせないらしい。

何でもエンジンが動いて無いからエネルギーは全て外部からの供給だそうだ。

 

「相転移エンジンは動かないんですか」

 

「相転移エンジンは大気中だと反応が低下するって設定でしょ。でも私が作ったのは模造品だから低下どころか作動しない。つまり波動エンジンへのエネルギー供給が終わらないと何も出来ないの。まあ、後で改良するけど」

 

何のための補助エンジンだよ!普通に核融合炉造ればよかったんじゃないの!

 

「ちなみに波動エンジンへのエネルギー供給は後どれ位なんですか」

 

「後三日」

 

「あ、はい」

 

ちなみにこの国中のエネルギーを集めれば即起動するらしい。でも急いでる訳じゃないからしないとのこと。

 

「そもそも何で造ったんですか。これ何に使ったってオーバーキルでしょう」

 

「赤いジムへの対抗?」

 

「最近の人はイデオンなんて知らないですよ」

 

何で翔子さんは知ってるんだろう。どう見ても十代前半だぞ。あ、確か年齢を下げられたんだっけ?

 

「まあ、そのうち分かると思うよ。じゃあ、見学会終わり!ありがとうございました!」




ヤマトの安定翼はナデシコにおける重力ブレードを兼ねています。


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第八話

作者の友達の七割が艦これやってるんだけど、作者はやってないので会話について行けない…。
そうだ機動戦艦ナデシコ×艦これでも書きましょうか。


なぜか地下工場から追い出された俺。

 

「レーラさーん!」

 

取りあえずメイドさんを呼んでみる。

 

「何か御用でしょうか」

 

「うわっ!本当に来た!」

 

まさか来るとは思わなかったぜ。この人色々おかしいんだよな。

 

「丁度良かったレーラさん。練習したいんですよ」

 

「練習ですか?何の練習でしょうか」

 

「決まってるじゃないですか」

 

そういえば何で俺メイドさんに敬語使ってるんだろう。いいんだけど。

 

「戦闘ですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、まずは城の武器庫にやって来た。女王様に戦闘訓練するから武器くださいって言ったら

 

「りゃあにきゃいの北にありゅ、武器きょかりゃにぇきとうにもっちぇいきなしゃい(じゃあ二階の北にある、武器庫から適当に持って行きなさい)」

 

と言う返事と寝息が聞こえたので件の武器庫にやって来たのだ。

そしてその武器庫の中に場違いな物を見つけた。

 

「これは、まさか日本刀?」

 

鞘に納められた日本刀だった。

いやいや待て待て。この国は俺が居た世界で言うところのヨーロッパ州だぞ。そんな物あるはず無い。だとすると片刃剣?

ん?ご都合主義的に(なかご)が露出して、さらに茎に何か書いてある。

 

玉鋼珠美(たまはがねたまみ)作、妖刀深爪』

 

つまりこれは珠美さんが作った妖刀深爪ってことか。

 

「銘かっこ悪すぎだろ!!」

 

深爪ってあれだろ。爪切りすぎるとなるあれだろ。地味に痛いあれだろ!

 

「てか玉鋼珠美って誰です?」

 

近くに居るレーラさんに聞く。

 

「二百年生きたと言われる女性の刀鍛冶です。実際には二十七歳でお亡くなりになったそうですが」

 

そーなのかー。いかん、余りにも馬鹿馬鹿しい内容だったから脳がそっち方向のベクトルへ向かうとこだった。

 

「で、何でそんな刀がこんな所に置いてあるんですか」

 

てか何で茎露出してるの?そこから全体が錆びるよ?鞘に入れても錆びるよ?なぜか錆びてないけど。

 

「なぜ、置いてあるんでしょうね」

 

いや、俺がそれを知りたいんだけど…。

 

「まあ、女王様に聞けば分かるかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言うわけですが、なぜ置いてあるんですか」

 

「何それそんな刀買った覚えも作った覚えも無いわね。叶音(かのん)、もしかしたら先祖さんのものかも知れないわ。調べてきなさい」

 

「はい分かりました!」

 

叶音?カノン?はっはっは。聞き覚えしかないな。やっぱり真琴が一番。

 

「叶音って名前なんですか?あのメイドさん」

 

「ええ、珍しい名前だったからつい採用しちゃったのよ。でも意外と優秀よ」

 

なるほどこの女王様の中ではメイドさん=コレクションなのか。俺が居た世界の一部の人と同じ考えをしているな。

 

「何か今失礼なことを言われた気がするわ」

 

「どうしたんですか女王様。ああ、そうださっきはよく眠れましたか?」

 

話題変更。

 

「寝てないわよ」

 

「いやでもさっき来たときには」

 

「寝てないわよ」

 

「お嬢様は昼寝してることを皆に知られたくないんですよ」

 

レーラさんが寝てたことの否定について小声で説明してくれた。

 

「ハイソウデスネ。ジョウオサマハネテマセンデシタネ」

 

「何で棒読みなのよ……」

 

「お嬢様調べてきました。先代の国王様が買ったようです」

 

「で、それ何なの?」

 

「玉鋼珠美が打った刀の中で能力による干渉を受け付けない四本の刀、爪刀(つめがたな)の内の一つです」

 

四本の刀、鉤爪・巻爪・平爪・深爪・爪切りという刀。まともな銘は鉤爪しかないと言うある意味恐怖を感じる物である。

爪刀の特徴はあらゆる能力の例外になる物だと言うこと。能力による影響を一切受け付けない。しかしこれは弱点でもあり、能力による強化、修理が出来なくなっている。らしい…。

 

「ところで、これは俺が使っちゃって良いんですか」

 

「……ん。え。ああ。うん」

 

「曖昧な返事だ!」

 

まあ、そんな曖昧な返事で俺は変な刀を手に入れた。

 

「ところでレーラさん。刀ってどう使うんです?」

 

俺、刃物なんて包丁、カッターナイフ、デザインナイフ以外使ったこと無いんだ!



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第九話

えー、皆さん。終物語第一話はもうご覧になりましたか?私はまだ見れません…。
そんなことよりついに、とうとう、やっと、傷物語公開じゃあ!!


刀の使い方。手に持って、振る。

刀の使い道。切る、斬る。

 

「分かりましたか」

 

「分かりました」

 

レーラさんは説明が下手だったってことがな!

 

「では今日はもう暗いので本格的なことは明日以降でよろしいでしょうか」

 

「ええ、それで良いです」

 

「ではお部屋の方までお連れします」

 

「あ、大丈夫です。少し地下に行きたいので」

 

「そうですか……。では夕食の準備をしておきます」

 

何だろう、『そうですか……』と言うときに何か悲しそうな顔をしてた気がするけど…。気のせいか?

 

「まあ、気のせいと思い込むか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんばんは、翔子さん。また来ましたよ」

 

「およ?こよみんだ。残念だけど波動エンジンの起動はそんなすぐに出来ないよ」

 

マジで一週間で出来たことが奇跡なんだよね~なんて言いながら機械を操っている。

 

「コスモファルコンは十二機、コスモゼロは4機出来たね。後はシガールか。やばっ、設計図渡してなかった。工場長に怒られるぅ」

 

100式偵察機は作らないのか?あれだって結構活躍してたりする。七色星団とか星巡る方舟とか……。まあ、言ったら言ったで『わあぁぁあ!!存在忘れてた!!!』と言うことが目に見えてるので言わない。

 

「わあぁぁあ!!100式偵察機の存在わすれてた!!!」

 

…この人はあれか?心を読めるのか?……だとするとやりにくい相手だなぁ。

 

「私だって好きで心を読んでる訳じゃないよ。心を読めるのは私の能力の1つ。でも午後五時から午後六時でしか使えないし、止めることも出来ないし。嘘だけど」

 

あっ、やっぱり読めてたんだ…。って嘘なんかい!

そう言えばあいつも俺の心を呼んだかのようなことをよく言ってたな。だから心を読まれることには驚かない。精々あいつは今何をしてるか程度だな。自殺してなきゃ良いけど…。

 

「もしかして君は幼馴染の渚ちゃんが好きなのかい?」

 

「ファイ!?そそそっそんなわっけあるわけ無いじょん」

 

「じょんって何よ……あとこよみんは三歩歩かずとも忘れたかも知れないけど、私は心が読めるんだよ?」

 

「そうだったああぁぁぁぁぁあああ!!!はいそうです!私は渚が好きでした!!」

 

具体的には桜並み木の坂道で後ろから『なぎさああああああああああああ』と叫びたいくらいに。

 

「そんなこと私に言われても…」

 

まあそうだろうな。

 

「ところで昼言ってた空中戦艦って言うのは何なんです」

 

「文字通り空飛ぶ戦艦だよ。エンジンには対消滅エンジンが使われてるらしいよ」

 

「らしいって…」

 

「しょうがないじゃん情報が無いんだし。で、空中戦艦一番の脅威はアブソーブプレートって言う熱吸収装甲が使われてるんだよ。熱を吸収してエネルギーにする装甲。理論上はショックカノンを防ぐことは出来ないはずだよ」

 

「それでどんな武装をしてるんです」

 

「えーと、主に光学兵器だよ。だからこのヤマトには通じないよ。まあ、実弾でも波動防壁が有るから通じないけど。だけど一番強力なのは相転移砲だね。あれは防げないし」

 

相転移砲。指定した空間を相転移させて空間内の物質を消滅させるYナデシコ‐Aに搭載された兵器。火星の遺跡がディストーションフィールドを何重にも重ねてやっと耐えれたチート兵器である。

 

「そういえばヤマトには搭載されて無いんですよね、相転移砲は」

 

「うん、あれチートだしね」

 

「ふーん。まあいいか。じゃあそろそろ行きますね」

 

「明日は起こしに行かないからねー」

 

「そもそも起こしに来なくていいんですよ」

 

誰も頼んでないし、そもそも自分で起きれるし。



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第十話

業物語って何なんだよ!!後どれくらい続くんだよ物語シリーズは!まあ、買うけどね!


この世界にやって来てもう5日目である。二、三日省いたがその間は何も起こらない平和な日であった。

あったイベントなんて波動エンジン始動くらいである。もちろん成功した。翔子さんってすごい。

あと、暇つぶしで始めたお絵かきロジックが楽しかった。あれは本当に面白い。ナンプレは俺にとって難しすぎたんだ…。

 

「そんな平穏も後一週間は続くと思ってたのになー。何でこうなるかなー」

 

どう言うことかと言うと、魔物が空中戦艦に乗って襲ってきた。そもそも空中戦艦自体魔物の物だった様だ。

この事実を知ったとき『わー、最近の魔物って賢さ高いんだなー。魔法の威力が高そうだ』としか言えなかった自分を殴りたい、蹴りたい。まだまだドラクエ気分が抜けてないようだ。

 

「暦様、どうかお元気で」

 

こんな状況でもサボろうとする使用人兼ボディガードがそこに居た。てかアンチマテリアルライフルを片手で持たないで下さい。しかもそれを両手でやるとか。反動無いのかよ。

 

「何勝手に死んで仕事をサボろうとしてるんですか。俺は一対一ならともかく、多数相手は無理なんですよ。何か無双系の人居なかったかな」

 

いくら無双系の人を知っていても俺の能力じゃ今は女性にしか変身できないし……。ここは無難に斧乃木ちゃんかな?

 

「うぎぎ」

 

なぜか俺の脳みそは博麗霊夢を採用した。てか何でよりによってこの台詞なの!?えぇい、こうなりゃやけだ!

 

「スペルカード発動!【夢想封印】!」

 

大きな弾幕が魔物を呑み込む。ボムの概念が無いようで、スペルカードは体力の続く限り撃ち続けられる。

 

「スペルカード発動!【夢想妙珠】!」

 

うん夢想封印より夢想妙珠の方が大軍相手には便利だ。

拡散アミュレットで引き撃ちをする。地球防衛軍基本戦闘術である引き撃ちは大軍相手ならどこでも有効だ。あのゲームすごい。レーラさんなら余裕でライサンダー片手で撃てそう。

 

「あー他にスペルカード何が有ったっけ?」

 

記憶力が無い俺にしてはよく頑張ったじゃないか。二つもスペルカードを覚えてたじゃないか。

 

「だったら別の人に変身するだけだ!弾幕はパワーだぜ」

 

だけどマスタースパークは使わないぜ。

 

「スペルカード発動!【ダブルスパーク】!」

 

マスパより広範囲を攻撃出来るこのスペルカードなら一撃で敵を沢山倒せる。

これでこの辺りの魔物は倒したはずだ。

そんなことより、魔理沙の服と妖刀・深爪が余りにも合わない。俺の能力は服装ごと変身するけど、爪刀に能力は効かないので変身後も腰に着いている。

 

「レーラさん、ヤマトに行きましょう。多分あそこが今一番安全です」

 

「そうですね、それにしてもその服装とその刀は合いませんね」

 

「それは言わないお約束です」

 

そんなこんなでヤマトへ向けて進み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤマトへの道の途中で翔子さんを見つけた。魔物に囲まれてる状況でだ。

 

「削除、適用」

 

そう翔子さんが呟いた。その瞬間翔子さんを取り囲んでいた魔物が消滅した。

 

「え!?」

 

「あ、こよみんだ」

 

本人は何事も無かったかのようにいつも通りに声を掛けてきた。

 

「あ、今の?今のは私の能力だけど。うーん何て言えば良いかな、あれだよ、『結界師』に出てくる真界だよ」

 

『結界師』?これまた懐かしい作品だ。確か真界は真界内なら術者の思い通りになる結界だったっけ?よく覚えてない。間流結界術なら理解できるんだけど。

 

「まあ、よく覚えてないんですけど、それかなりのチート能力ですよね」




今回変身した人
博麗霊夢(東方Project)
博麗の巫女。貧乏。
博麗の巫女の仕事ってなんだろうな。
取りあえず博麗神社にお賽銭を入れてあげよう。

霧雨魔理沙(東方Project)
普通の魔法使い。矛盾した二つ名。
霧雨魔法店という店を構えてる。客は居るのかは知らん。
後借りパク常習犯。本人曰く「死ぬまで借りてるだけだぜ」


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第十一話

今日子さんの原作改変は凄まじかったですね。個人的には紺藤さんが好きなんですが、なぜ出さなかった。


わー空間支配能力者ってどの世界でも最強(かませ)能力者じゃん。

 

「じゃあ、この前俺の心読んだのは別の能力ですか?」

 

「違うよ、私は多重能力者じゃないし。あれは空間支配能力でこよみんの心を実体化させて読んでみただけだよ」

 

そう言えばこの人俺が会いに行ったとき本読んでたな……。書き込めないけど相手に気付かれないヘブンズ・ドアー?

 

「そんな強い能力だと問題点も沢山有ったりするんですか?」

 

「問題点?私の能力には欠点も代償も制約も、もう無いよ」

 

もう無い?昔は有ったのか?

 

「問題点は代償として私の生前のことを生まれたことから死んだことまで無かったことになることだよ。だから一回しか発生しないから、もう問題点は無い」

 

まあ、もと居た世界で私のことを覚えている人は誰も居ないってことだよ。と翔子さんは言った。

 

「それとも例外でこよみん、じゃ無くて賢悟君は覚えてる?私のこと」

 

「はっはっは。全然記憶にございません」

 

「そりゃまあ、生前会ってないし」

 

「殴って良いですか?」

 

もちろん殴ってない。てか殴れなかった。これだから空間支配能力は…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と言う訳でヤマト第一艦橋到着。既に何人かの乗組員が発進準備をしている。ああ、アナライザーは居ないよ。だってあれヘンタイじゃん。でも2199版は大人の都合でスカートめくりは無いから居ても良いと思うけど。その意見は『人工知能は作れません』と言う翔子さんの言葉(悲鳴とも言う)によって却下された。その代わり元から要らなかったので造られてない自動航法室のスペースを利用して『アナライザーの墓』と言う謎の部屋が出来た。

 

「女王様じゃなかった、艦長。どうするんです」

 

あの女王様が艦長です。大丈夫かな?まあ、きっと何とかなるさ。元気があれば何とか出来る。

 

「そうね。ヤマト発進まで後最低でも五時間。地殻貫通弾を使用してることは恐らくこの艦が狙いだから」

 

おっ、意外と行けるんじゃないか。後は艦体上部に波動防壁を展開すれば三連大炉心次元波動エンジンなら五時間程度耐えられる。…………多分。

 

「この艦が狙いだから、暦何すれば良いと思う?」

 

「……取りあえず波動エンジンを動かして、波動防壁を艦体上部に展開すれば良いと思います」

 

「ふうん、まあ良いわ。じゃあ、機関始動、波動防壁を艦体上部に展開」

 

本当にこの人が艦長で大丈夫か?ああ、駄目だ。死ぬ前に使ったネタがエルシャダイだったから、エルシャダイネタを使いたくない。

波動エンジンが動き出し独特の音が響く。

三つの炉心はそれぞれ波動砲、ショックカノンなどの攻撃用。飛行やワープに使う推進用。そして波動防壁のための防御用に分けられてる。分けられてると言っても必要に応じて切り替えることも出来る。こうすることで波動防壁使用時間はとてつもなく延びた。補助エンジンは波動エンジンにトラブルが起きたときのための機関であり普段は使わない。(やっぱり普通に核融合炉で良いんじゃ……)

 

「後五時間で乗組員は来るだろうけど、艦載機の積み込みは間に合うか」

 

多分波動エンジンが動き出したことでこのドッグの位置がばれて集中攻撃されるかもしれない。そのために波動防壁を展開して傘の役割として使っている訳だけどいつまで持つかは分からない。

 

「艦長、少し外に行きます」

 

「?良いけど今行くと危ないわよ」

 

「大丈夫です。そろそろ本気出しますから」

 

本気と言うのは追い詰められたときに出すのが効果的である。

父さんがそんなこと言ってた気がする。



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第十二話

久しぶりにあの人(?)の出番です。


本気を出すといっても、ただ神様を俺の体に憑依させるだけなんだけどね。十分すごいけど。

ん?急な展開に着いて行けない?じゃあ、一から説明する。

実は俺の家は神様とか妖怪とかそう言う物を扱う家なんだよね。あ、この話はオフレコで。この話をしたと親に知れると何されるか分からないから。

まあ、俺は技術はあるけど使い続けるための霊力が少な過ぎるから何一つ出来ない。そこで俺は独学で口寄せを学んで神様を降ろせるようにして神様の霊力を使って術を使えるようにしたのだ。

しかしバレた時はやばかった。父さんから大目玉食らった。俺が結界師読みながら作った間流結界術で左腕滅された。母さん居なかったら今頃俺は片腕生活だったぜ。

そんなことは置いといて、今回はあの黒髪ロリの破壊神を憑依させようと思う。大丈夫、俺の見た目はロリにならない。

 

「はいどーも破壊神さん。お久しぶりです。一発ぶん殴らせて下さい」

 

「いやいや、君そのためだけにあたしを呼び出したの?前言わなかったっけ?あたしは忙しいんだよ」

 

「じゃあ、この後のご予定は」

 

「アニメ見て、漫画読んで、ご飯食べて漫画読んで、寝る」

 

「この暇人が!!」

 

「で、用が無いなら帰って良い?あたしこの世界の魔物嫌いなんだよね。あいつらおいしく無いし」

 

「いや食うなよ。はぁ、破壊すん……破壊神様ーどうかこの非力な私に力をー」

 

「まあ、暇だから良いけど、今噛んだよね?後なんで棒読み」

 

「失礼。噛みました」

 

「いいや、わざとよね」

 

「噛みまみた」

 

「わざとじゃない!!?」

 

「噛み合えた」

 

「あたしは噛んでない!」

 

「てか暇だから力を貸してくれるって、どんだけ神様って暇なんだよ」

 

「年末年始以外は基本暇。まあ、あたしは破壊神だからね、私にお願い事をする人なんて中々居ないからね……一年中暇だよ」

 

「大丈夫です。俺の知り合いの神様は『俺さー、この十年間人の願いを聴いてないんだよね』って言ってるから」

 

「下には下がいるのね」

 

「さあ、とっとと終わらせましょう」

 

「はいはい、早く帰って漫画読みたいよ」

 

「おお、これが破壊神の力か。うん、他のどの神よりも強いな」

 

「当たり前でしょ、あたしは他の神とは違うのよ」

 

頭の中から声が聞こえる。これだけは何回やっても慣れない。

破壊神を憑依させたことで一定範囲内の物体を壊す力が使えるようになった様だ。

上を見ると件の空中戦艦が三隻見える。空中戦艦は巨大な双胴艦に主翼が二対、エンジンノズルが二基ついてる。

 

「だったら主翼を壊すか」

 

そう言った瞬間、空中戦艦の一隻の主翼が全て根元から落ちる。揚力を失った戦艦はどんどん高度を下げていく。

 

「今までで君が一番あたしの力を使えてるよ。他の神で似たような力を使ったことがあるの?」

 

「今まで力を貸してくれた神様にも同じことを言われた」

 

「ふーん、まあ興味ないや。それより戦艦二隻、その艦載機三十九機残ってるよ」

 

「え?場所とか分かるの?」

 

「当たり前じゃん。今だって君あの戦艦の主翼だけを根元から壊したじゃん」

 

「それがどうかしたか?」

 

「だからこの位置からだと向こう側の主翼の位置は分からないじゃん。君は無意識に私の千里眼を使えてるんだよ」

 

「へえ、そーなのかー」

 

「そーなんだよ。あたしがサポートするから、一気に全て落としなさい」

 

頭の中に周りの地形と敵の位置が浮かんでくる。……後でバファリン飲もう。

 

「あーもう、多すぎだろ!結!!滅!!」

 

艦載機三十九機全てが爆発する。俺一人だと三十立方センチの結界一つが限界だけど、神様の無限に等しい霊力を使えばこれくらい余裕だ。

 

「ぜぇぜぇ、後は……戦艦のみ。ん?そうじゃん。艦載機があるってことは空母も居るんじゃねーかよ!どこだ!?」

 

視界にも千里眼にも写らない。もっと遠くに居るのか?

 

「なあ、千里眼を一つの方角に絞って遠くまで見ることは出来るのか?」

 

「余裕余裕、あたしの千里眼は面積で範囲が決まってるからね」

 

「じゃあ、北から時計周りで一周するぞ」

 

「あたしは良いけど君の脳が耐えられるかな」

 

「余裕だね。俺の脳は毎日の徹夜で鍛えられているんだ。五徹しても頭痛くないぜ」

 

「それ感覚の麻痺じゃ…」

 

「あーもう、いいからやるぞ!」

 

多分北だと思う方を向いて千里眼を使う。そのままぐるりと一周回る。

 

「あっちか、少し遠いな」

 

大体五キロ。歩いて一時間くらい。

 

「はあ、それにしても見た目が女の子なんだから少しは女の子らしく出来ないの」

 

「うるさい、俺より見た目女の子じゃん」

 

「見た目のことは言うな!」

 

怒られた。話を振ったのはそっちなのに…。

 

「ああ駄目だ。頭が痛い。思考が出来ない」

 

「ほら言わんこっちゃ無い」

 

「神を二柱同時に憑依させたことは無いけどやるしかないか」

 

少しすると目の前に桃色の髪をしている人が現れた。

 

「あら久しぶりに呼ばれたと思ったら女の子に成ってるじゃない。そして既に破壊神を憑依させてるなんて…」

 

「賢悟じゃなかった、暦、何でこの神は鼻血を出してるんだ」

 

「この神様は癒しの神のジャネットさんだ。鼻血を出してる理由だが、この神様はただ単に百合とBLが好きなだけだ」

 

「なるほど、要するに腐ってるのか」

 

その言葉に頷くことしかできない。ちなみにジャネットさんは自分の恋は普通に異性としたいと言っていた。

 

「ジャネットさん、力を貸してください。具体的には頭痛を治してください」

 

「それが終わったら帰って良いかしら」

 

「良いですが、どうかしましたか」

 

「今彼氏を待たせてるのよ」

 

「そうですか、お幸せに」

 

と言いながら内心はリア充爆ぜろ!な俺。

そんなこと思ってると頭痛が消える。多分憑依せず直したんだろう。

 

「じゃあ、さようなら」

 

「さようならー。……ところでお前の名前何?」

 

「叶音」

 

「ここで天丼かよ!!」




変な流れになってしまいましたが本来だったらプロローグ第二話に伏線を張る予定でしたが忘れてました!
さて予定では次回異世界編最終回です。
次回は土曜日までには投稿します。


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第十三話

終物語二話の感想。声優と制作会社の関係上、猟奇オチにならないか心配になった。


まさか破壊神の名前がメイドさんと同じ叶音だとは思わなかった。本当に神様って言うのは質が悪い。

 

「で、こっからあの空母まで届くのか?」

 

「後一キロ近づかないと無理かな」

 

「んじゃ、放置で。多分増援を送ってくるだろうから、それを処理するぞ」

 

「合理的だね。でも合理的というより面倒臭がりの方がしっくり来るわね」

 

「人の性格勝手に判断して勝手にしっくり来てんじゃねえ」

 

省エネなだけだ。人聞きの悪いことを言うなよ。

 

「所で何であたしの破壊の力じゃなくてあの変な箱で戦闘機壊したの」

 

変な箱言うなよ家族からは意外と好評だったんだぞ。後あれは戦闘機じゃなくて爆撃機だからな。

 

「お前の破壊の力だとあれを壊した後地面に落ちるだろう。そうするとこの地下のドックにあるヤマトに被害が出るじゃないか」

 

「ふーん、そうなんだ。でもあの箱すごいね。あれだけの数出してるのにあたしの霊力減らないし」

 

「あんたら神様の霊力の量と回復量がおかしいだけだ」

 

人間には無理だ。あの大きさであの数は無理だ。

 

「ん、増援か。数は見えるだけでも五十機近くか」

 

あんなに多いと一つ一つ囲むより大きな結界で囲ったほうがよさそうだ。

 

「今度はさっきよりも霊力貰うけど、良いよな」

 

「別に良いけど、多分今来た奴倒したら多分勝ちだろうしね」

 

「まあ、そうだろうな。……よし、結!」

 

かなり大きな結界を五個作る。でも今回は作るだけだ。

 

「あれ、『滅!』って言わないの?」

 

「いや、飛行機ってかなり高速で動いてるから、壁で囲ってそこにぶつかれば勝手に落ちてくじゃん」

 

で、残骸を滅すれば地面も傷つかない。うん完璧。…こう言う考え方をするから面倒臭がりと思われるのか?

そんなこと考えてるうちに爆撃機が結界にぶつかりどんどん爆発して行く。ああ、やばいっこの衝撃は耐え切れないかも。

 

「あれで最後……ふう、危なかった。もう少しで穴が開くとこだったぜ。滅」

 

一々結滅言うのめんどいな。言わなくても良い様にするかな。

 

「さてこれで空の魔物は倒し終えた。帰っていいぞ」

 

「じゃあね~。また今度呼んでね~」

 

大体みんな最初は嫌がるけど、変える頃にはこんな感じになる。神様と言うのはどこまでも気まぐれなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地下でまだ発進準備しているヤマトに戻ってきた。道中居た魔物は深爪で斬って来た。でもオークは強かったな。俺の少ない霊力で作った結界で体の内側を滅してようやく倒せた。お陰でもう霊力はゼロだ。

 

「艦長ー、後どれ位で発進できるんですか」

 

「後十分よ。翔子が頑張ってくれてるからね」

 

もうあの人だけで良いんじゃないかな。

第一艦橋にレーラさんが入ってくる。この人どこで何をしてたんだ?

 

「姫様。全国民の避難終了しました」

 

「そう、受け入れてくれた国には感謝しないとね」

 

わー話について行けないぜ。

 

「どう言うことです?」

 

「あ、暦には言ってなかったわね。簡単に言うとこの国はもう滅ぶから国民を隣国に逃がしたのよ」

 

ごめん話が壮大すぎて全く理解出来ない。

 

「後は仕上げに世界の鍵を壊そうとしている奴を倒すだけね」

 

「え、場所分かってるんですか!?」

 

「そっちはまだ分からないけど、壊そうとしている奴は分かったわ」

 

「誰なんですか?」

 

「ヴィノグラフと言う私の知る限り最強の魔物よ」

 

最強の魔物と聴いても全く理解出来ない。てかオークレベルで苦戦してる俺に倒せる気がしない。

 

「ど、どのくらい強いんですか」

 

「そうね、翔子の空間支配能力を使っても消せない程強いわ」

 

あれで消えないとかおかしいだろ。てかぜってー勝てねえ。勝てるわけねえ。

 

「艦長。発進準備終わりました」

 

スピーカーから翔子さんの声が聞こえた。かなり疲れてることが声から分かる。お疲れ様です。

 

「分かったわ。機関再始動、ヤマト発進!」

 

波動エンジンが動き出した。それと同時に天井が爆発する。本来は海上ドックへヤマトを動かして発進する予定だったがそこまでの通路が壊されたためここの天井を壊して発進することになった。

 

「レーダーに感あり、敵空中戦艦直上」

 

「八連装ミサイル撃て!」

 

煙突のように見えるミサイル発射管から八発のミサイルが出てくる。全てのミサイルがエンジンノズルへ向かい進んで行き、エンジンを壊していく。推力を失った戦艦は落ちていくことしかできない。

 

「さらに感あり駆逐艦三、巡洋艦五、戦艦二、超弩級戦艦一、空母一。3時の方向から来ます」

 

「主砲副砲、舷側短魚雷、撃ち方始め!」

 

ショックカノン全十五門、短魚雷八発が敵艦隊を襲う。翔子さんの言葉通りアブソーブプレートではショックカノンを防ぐことは出来ないようだ。そしてオリジナルの設定通り二段構造になってる短魚雷は装甲内部で爆発して艦を中から壊していく。

何この戦艦チートだろ。後は超弩級戦艦だけだ。

 

「敵超弩級戦艦に高エネルギー反応あり」

 

「全砲門を敵艦に集中。副砲は三式弾装填。撃ち方始め」

 

三式ならアブソーブプレートにもある程度のダメージは入るからむしろ率先して三式使った方が良いと思うけど。

そう言えば女王様……今は艦長の名前も知らないな。後で聞こう。

 

「敵艦轟沈。周囲に敵影な…!レーダーに感あり、これは人、いえ魔物です!」

 

スクリーンに反応がある場所が映る。そこには一人の青年が空中に立っていた。

 

「やあ、バルバドス国の諸君。いつも君たちを恐怖に陥れてる魔物、ヴィノグラフだ。君たちの所為でこの世界を滅ぼすことに失敗してしまったよ。今回で私の持つ魔物も全て失ってしまった。もうこの世界を滅ぼすことは出来ない。では、さらばだ」

 

そう言うと光る粒子を残して消えた。

 

「反応消失」

 

レーダー担当の女性はそう短く報告した。

その直後頭の中から声が聞こえた。

 

「おい賢悟じゃなかった暦なんてこったいあの男が君と翔子ちゃんが居た世界に行ったぞ」

 

「おい破壊神、いい加減にしろ。せめて『、』を使え!」

 

「暦……一人で何を言ってるの?」

 

あ、しまった。傍からみれば痛い人だ。

 

「それはですね、かくかくしかじかと言うことです」

 

「へえ、そんな能力持ってたんだ」

 

「ええ、まあ。でもこれでヴィノグラフを追いかけることが出来る」

 

「暦何言ってるの。追いかける必要ないじゃない。もう終わったのよ」

 

「まだ終わってない。あいつは俺と翔子さんが居た世界に行って、また世界を終わらせようとしている」

 

「でもこよみん、いくらこのヤマトでも世界を越えることは出来ないよ」

 

はっはっは、問題ない。

 

「世界の壁を破壊しますから、そこに突っ込んでください」

 

破壊神の力を使えばそれくらいわけないらしい。

艦長が全員に艦内放送で説明してる。

 

「説明終わったわ。さあ、準備できたわ」

 

「分かった、じゃあ壊すぞ」

 

目の前の空間が歪み、穴が開いた。開いた穴にヤマトが入る。その先は俺が居た世界。まさか戻れるとは思わなかった。




これにて異世界編終了です。次回からは現実世界編です。お楽しみに。


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現実世界編
第一話


ちなみにこの現実世界編以降は考えてないんですよね。取り合えず現実世界編では能力者同士の戦いになります。…きっと。


光が無くなり徐々に周りが見えてくる。外を見ると青い地球が見える。つまりここ宇宙です。流石宇宙戦艦、なんとも無いぜ。何かあったら困るけど。

しかしここで一つ問題がある。

バレずに地球に降りる方法が無いのだ。

大気圏に突入すればその光によって発見されるかも知れない。てかここに居る段階で気付かれてるかもしれない。

地球に降りても攻撃される恐れがある。

大気圏内に入れば即弾道ミサイルと言う挨拶を受けるかもしれないしなー。行くならコスタリカがいいのかな。ピースウォーカーが居なければ安全だし。…言葉分からないね。なぜかあの世界に居た人は日本語喋れてたから日本に行くのがいいかも知れない。

 

「そうじゃん日本ならヤマトを知ってる人居るじゃん。言葉も通じるし。うん日本へ行こう」

 

ああ、残念ながら俺女のままだから。はあ、この世界では俺の存在は男だから元に戻ると思ったけど。まあ、それ以前に俺と言う存在は死んだ人だからこうなるのが当たり前かもしれない。

 

「ところで日本ってどこ?」

 

「うーん、ほらあそこ、ご都合主義的な感じで目の前にある四つの島で出来てるとこ」

 

初めて宇宙から地球を見たから日本の場所が分からなかったぜ。

そんな訳で十分掛けて日本の近海に着水。弾道ミサイル?パルスレーザー舐めるな。全部打ち落とした。

日本近海と入っても日本からはかなり離れてる。経済水域には無断で入らないお約束が在るからな。

 

「さて、後は政府がどう動くかだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれからいつまで経っても動きが無いからこっちから動いた。何簡単なことだ。波動防壁展開して自衛隊の攻撃を無力化、政庁へ艦長とレーラさんを降ろし、技術給与を条件に上陸許可が下りた。

翔子さんは『まあ、教える技術は相転移エンジンくらいだけどね。波動エンジンは作ることは勿論理解できる人も居ないだろうしね』とか言ってた。造ったあんたは人じゃないのか?

 

「相変わらずレーラさんはボディガードの仕事をサボってるのか。まあ、そっちの方が都合がいいけど」

 

俺は例の幼馴染の様子を見に行くことにした。取り合えず寮へ向かう。

インターホンを押す。返事が無いただの屍のようだ。もう一回押す。返事が無い、これは異常だ。こうなったら連打だ、刑事ドラマ並みに連打するぜ。

オラオラオラオラオラオラオラオラ!!!

 

「すいません静かにして下さい」

 

突然声を掛けられる。見ると寮母さんが居た。

 

「ああ、すみません。えっと、寮母さんですか?」

 

初対面の振りをする。この姿では初めて会うのだから。

 

「うん、そうよ。ところで君は?見たところ他校の生徒のようだけど。そこの部屋は渚ちゃんの部屋だね」

 

あいつ渚ちゃんって呼ばれてるのか。後、俺はここの生徒だった人だよ。

 

「渚ちゃんの用があるなら残念だけれど、あの子は賢悟君が亡くなってから帰ってきてないわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

くっそお、何やってるんだよあいつ。どこ行きやがった!

あの後寮母さんにお礼を言ってすぐに探し始めた。

帰ってきてないといっても寮に帰ってきてないというわけではなく(そんな勘違いをする人は居ないと思うが)実家にも帰ってきてないらしいし、学校にも来てないそうだ。

どうする、どこから探す。ああ、くそ。人探しの神なんて知らないぞ。

人が飲まず食わずで生きられるのは一週間程度。ある程度の金は持ってるだろうからそこは心配しなくてもいいだろう。ネカフェに居るのか?それとも漫喫か?そう言えばこの街の図書館は確か二十四時間やっていたな。いや待てこの街に居るのか?この市に居るのか?この県にいるのか?

 

「…きゃん」

 

あー出来れば言いたくなかった。超恥ずかしい。この能力の発動条件も欠点でいいと思う。

でもこれで小野塚小町になれた。これで『距離を操る能力」を使うことが出来る。

さて俺と渚の距離を一メートルにすれば。

 

「この馬鹿が!それでも学年上位の成績の持ち主か!」

 

俺は渚の腹を殴れるのでした。めでたしめでたし。

 

「だ…誰?」

 

あ、良かった生きてた。死神の力で殴ったから死んだかと思った。てかダメージ少なくね?そんなことを思いつつ変身を解く。

 

「ん?俺は大倉賢悟だ」

 

「う、嘘だ。賢悟は死んだんだ。私なんかの変わりに……賢悟は死んだんだ」

 

「おいおい、私なんかって言うなよ」

 

「そ、それに…」

 

「それに?」

 

「賢悟は男だ!お前女じゃないか!」

 

あ、忘れてた。

現在説明中。邪魔しないでね。

 

「それを信じろと?」

 

「そうだ、信じろ」

 

「信じなかった場合は?」

 

「箪笥の裏、ガスコンロの下、洗濯機の桶の外側」

 

「そんな、なぜ私のエロ本の位置を」

 

え、本当に隠してたの!?

 

「信じなかった場合これをお前のクラスメイトに教える。後、カレー以外の料理は下手とも言う」

 

「カレーのことを知っているってことは本当に賢悟なのね?」

 

「だからそう言ってるじゃん」

 

三秒の沈黙。

 

「賢悟ー!会いたかったよー!」

 

「おうおう、そうかい。ならせめて家か寮に引きこもっていてくれ。探すの疲れたぞ」

 

かくして俺は渚と再会した。

 

「所で帰り道は?」

 

帰れるかは分からないが。




今回変身した人
小野塚小町(東方Project)
死神でサボり魔。
持っている鎌は全く切れない優れもの。え?緋想天だと武器として使ってる?知らないなー桜観剣並みに切れることなんか知らないなー。
怒られると「きゃん!」と鳴く。


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第二話

更新遅れてすみませんでした。理由としては学校の課題やかくりよの門攻略とか、ABOW攻略とか色々あったんです。


「さて、どうやって帰るかな」

 

俺と渚は未だに山の中に居る。こいつどこでサバイバルやってんだよ。見つかるわけねーよ。

 

「何でこの山に居たんだ」

 

「他のところじゃすぐに見つかっちゃうから」

 

「だから失踪せずに引きこもってろ。皆心配してたぞ。取り合えず寮母さんには謝れよ」

 

「でも、あのクソ親は心配してないんでしょ。捜索届け出したの寮母さんでしょ」

 

「はあ、義理の娘なんて萌えるだけなのに。何で嫌うんだろうな」

 

もしかしたら学生寮で暮らしていた理由はこれかも知れない。気付けよ自分。お前は馬鹿か。

 

「あんな奴らの考えてることは分からないわよ。…あ!道が見えてきたよ!」

 

「本当だ。んー、ここからなら寮より俺の家のほうが近いな。今日は泊まってけ」

 

もう二十時を過ぎている。女子二人じゃ危険だ。

 

「分かった。賢悟はどうするの?」

 

「俺も今日はそこで寝る。後今は暦って名前にされてるんだ。そっちで呼んでくれ」

 

「ああ、うん。分かったわ、こ、暦」

 

「それで良し。じゃあ、行くか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言えば俺を轢き殺した奴はそのまま逃げたらしい。要するに轢き逃げだ。しかも犯人はまだ捕まっていない。

 

「捕まったら俺の手で制裁を加えてやる」

 

「具体的には?」

 

「アンモニアの臭いがするサウナに閉じ込める」

 

「相変わらずドSだね」

 

え?俺ってドSなの?そう思われてるの?マジで?

そんなことを話していると俺の家に着いた。

インターホン押そうとしたら『インターホン修理中』と紙が貼ってあった。なので、

 

「今晩はー。誰か居ませんかー」

 

近所迷惑なんて考えず叫んだ。すぐに玄関の戸が開く。

 

「はーい、どちら様って渚ちゃんじゃない!」

 

実年齢の半分くらいの見た目を持つ俺の母、大倉菜々子(おおくらななこ)が現れた。

 

「で、そっちはえーと」

 

俺は必死になって霊力を放出する。こうするのが個人を特定するのに一番手っ取り早い。早く気付いて十秒も持たないから。

 

「ああ、賢悟じゃない。うん、やっぱりそう言うことだったのね」

 

あっれー?予想とは大分違う反応だ。何なの転生してたって分かってたの?

 

「はい、早く上がって上がって。賢悟はとりあえず父さんの方に行ってね」

 

「分かった」

 

「渚ちゃんは取り合えず警察に行くわよ。行方不明者だからね」

 

「はーい!」

 

なぜに嬉しそうなんだよお前は。

突っ込もうとしたらもうそこには居なかった。驚くことではない、ただの瞬間移動だ。俺には(霊力量的に)出来ないけど。いいなぁ。

さて久しぶりの我が家だ。父さんに会いに行くか。

 

「おお、賢悟か。久しぶりだな」

 

こちらは実年齢通りの見た目の俺の父、大倉狂児(おおくらきょうじ)から話しかけてきた。

 

「あんたら夫婦は同じ反応しか出来ないのか?驚けよ、少しは」

 

こっちは死人だぞ。生き返ってるんだぞ?

 

「それにしてもしばらく見てない間に可愛くなったな」

 

「好きでなったんじゃあない」

 

そう言えば殴るの忘れてた。今度呼んだときには殴らないと。

 

「で、父さんの所に行くようにって言われたけどなんか用?」

 

「ん、あれだ。お前その体でも神を憑依させられるのか?」

 

「当たり前だろ。あれは個人の能力じゃなくてただの技術なんだから」

 

ただのって言うのかは分からないけど。

 

「そうか、じゃあ明日東山にある祠にこれを供えに行け。ああ、渚ちゃんは連れて行くなよ」

 

東山とはこの街の東にある山である。正式名称は稲浜山(いなはまやま)。この街と言うよりこの市は東西と北を山で囲われ南は海に面している。夏は暑く、冬は暖かい。

 

「何この黄色い玉は?」

 

供えるようにと渡された物である黄色い玉。半透明になっており向こう側が見えるのだが、内側に霧の様なものが入っている。

 

「その中にある霧はあの山に居る神様の霊力だ。後割れて中の霊力が外に出るとこの地球上で妖怪大戦争が起こるから」

 

「そんな危険なもの家に置くなよ!」




今回触れた渚の過去話をお気に入り登録数十人になったら番外編として書こうと思ってたんですが、既に十人超えてました。なのでこの後書き始めます。


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第三話

最近更新ペースが落ちてきていますね。ネタ切れでは無いんですけど書く時間が取れないんですよね。どうしましょ。


翌日。なぜか翔子さんからのモーニングコールで目を覚ました。翔子さんが作ってくれた携帯電話である(ヤマトの通信機を利用しており、ヤマトを中心に七光秒内ならどこでも繋がる。)。

 

「おはようございます翔子さん」

 

「おはようこよみん!いつも眠そうだね」

 

「俺は低血圧なんですよ。翔子さんはいつも元気ですね」

 

「私は能力で疲れを取り除いてるからね」

 

ああ、なるほど。俺も真似しようかな。

 

「で、用件は何です?」

 

「無いよ。強いて言えば渚ちゃんに告白したの?」

 

「してません、しません」

 

「そんな、勿体無」

 

切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、行ってきます」

 

既に無人になった家だけど、言ってみた。返事が返ってきたら怖いんだけど。

稲浜山でやることは神様へ霊力を返すこと。うまく行けば最強の神様を憑依させることが出来るらしい。

正直に言うと興味無いんだけどな。ほら最強ってかませじゃん?それにメタい発言をすると俺の能力は最強らしいからね。すでに俺はかませって訳だ。俺は翔子さんの空間支配能力の方が強いと思うけど。

電車に揺られること約十分。ようやく稲浜山駅に到着した。

駅を出てさらに十分歩くと登山道入り口だ。人っ子一人居ないぜ。

そう言えば肝心の祠の場所を聞いてなかった。

しょうがない歩いて探そう。そう思っていると後ろから声を掛けられた。

 

「お前が大倉暦か?」

 

感情の無い冷たい声。見ると二十代前半くらいスーツ姿の男が立っていた。え?何これ怖い。男の手に拳銃が握られている。流石に拳銃で撃たれたら死ぬから。当たり前だけど死ぬから。てかその拳銃デザートイーグルだよね近くで見せてじゃなくて早く逃げないと!

こっちは武器を持っていない。唯一の俺の武器である深爪はヤマトの俺の部屋に置きっぱなしだ。レーラさん?誰だっけその人。

だけど俺の体は逃げようとしない。それどころか質問に答えてる。

 

「ええ、そうですよ。何か用ですか?」

 

あ、ここで初めて女口調使った気がする。

 

「そうか、なら死ね」

 

やっぱりこう言う展開か!やめてよね、こんなベタな展開!

 

「危な!本当に撃ってきた!」

 

山に逃げ込んだ。走りにくいけどなんかこうするのがいいって俺の脳みそが言ってる。

能力使えば楽に撃退できるだろうけど、今回父さんから能力と神の憑依を禁止されている。お陰様で大ピンチなんですけど。

 

「結!」

 

デザートイーグルの銃身を結界で固定する。これであの化け物拳銃で撃たれることは無いはずだ。

しかしその望みはあっけなく崩れ去る。

俺の雀の涙程しかない霊力で作った結界は化け物拳銃によって穴を開けられ、そのまま破かれた。。

そしてその銃口は俺に向いていた。

 

「くっ、思ってたより痛い!」

 

銃弾が左肩に当たった。その衝撃で左腕が吹き飛んだ。銃口を見て避けるなんてガンダムシリーズの主人公くらいだ。実際はこのように撃たれるのだ。

何か痛みで考えがおかしくなってる気がする。

 

「早く…逃げないと…」

 

結界で傷口を無理矢理塞ぐ。これで出血を止められたはずだ。

俺は慢性的な貧血だから止血は大事だ。後で輸血しないと。

貧血の所為か視界が歪んでるけど気のせいだと思い込み祠が有るであろう山頂を目指す。

後ろからの銃撃が突然止んだ。見てみるとどこかのロリ破壊神ではなく普通の幼女が俺を追いかけてきた男をどう言う原理かは分からないが倒していた。

いや、一つ訂正する。普通の幼女ではなく狐耳の生えた幼女だった。

 

「おい貴様、何勝手に私の山を荒らしてるんだ」

 

わー幼女が裸足で男の顔面踏んづけてる。出来れば描写したくない。

 

「おいそこの、お前は大倉の者だな?」

 

わー男を裸足で踏んづけてる幼女に声掛けられた。普通なら逃げ出すよ。あ、男を放り投げてふもとの川まで飛ばした。

 

「はいそうです」

 

俺は何も見てなかった。男が飛んでいくことなんて見てないよ?

 

「そうか菜々子がもう霊力を返してくれるとは。てっきり借りパクされるかと思ってたけど以外だな」

 

話が見えない。まず誰この狐耳幼女は?

 

「あーやっとこの体とおさらば出来る。動きにくいんだよなーこの体」

 

「ええと、あんたがこの山の神様か?」

 

「うん?そうだが?そして神に対してその態度を取るとは流石は大倉家と言う訳か」

 

いや大倉家がすごいんじゃなくて俺が神様に慣れているだけなんだけど。

 

「まあいいからさっさと霊力を返せ。話はそれからだ」

 

言われて霊力の入った黄色い玉を取り出し、差し出す。

 

「よし、これで元の体と元の力を取り戻せる」

 

言うとあの玉を飲み込んだ。すると幼女の体が光り始めて辺り一面を照らす。

光が収まるとそこには狐耳の生えた大人の女性が立っていた。

 

「おいお前、こっちへ来い」

 

呼ばれたので行く。

傍まで来ると俺の左肩に触れた。流石は神様、左腕くらいすぐ再生させたぜ。

 

「お前名前は何だ」

 

「大倉暦です」

 

「はて、そんな者大倉家に居たか?」

 

「元の名前は賢悟です」

 

「そうか。あの破壊神に転生させられたのか」

 

あ、もう犯人特定ですか。

 

「本題に入ろう。お前は私の力が欲しいのか」

 

「力はそれほど欲しいとは思わない。ただ暇なときだけで良いから俺に憑依してくれればいい」

 

「ほう、面白い人間だ。合格だな。これからはお前様に仕えるとしよう」

 

また光って今度は俺と同年代くらいになる。え?何面白い人間って?え?何仕えるって?既に俺は使用人兼ボディガードのレーラさんが居るんだけど。

 

「やっぱり動くには十代の体が一番だな」

 

混乱の中に居る俺を無視して山を降りていく狐さん。

俺はどうしたらいい?



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第四話

食パンがおいしい季節になりましたね。え?一年中変わらない?


「で、狐さん。名前は何だ」

 

「何だその呼び方は?まあいいが。私は妖怪だったから名前は無い。そうだなお前様私に名前を着けろ」

 

無茶振りだなぁ。てか様付けなのに命令形なんだな。まあ良いけど。で、名前か。きつねだからえーと。

 

「沢渡真琴」

 

狐と言ったらこの子だろう?見た目は着物着てること以外は似てるし、これで良いだろう。藍しゃまでも良いんだけどねそれはちょっと露骨と言うか何と言うか…ね?

 

「沢渡真琴か。どこかで聞いたことのある名前だな」

 

見た目以外はあまり似てないな。主に性格とか。

 

「で、真琴はどんな力を持ってる神なんだ?」

 

「私の力は無限の力だ。体力だろうが霊力だろうが筋力だろうが再生力だろうが全てにおいて無限の力だ」

 

つまりRPG風に言うと全てのステータスがカンストしてるわけか。もうチートだろ。

 

「つまり俺の相棒ポジションに居る訳か。おいしい役回りだな」

 

「何言ってるの?」

 

「俺はこう見えても霊力の量は一般人よりも遥かに少ないと言うことだ」

 

「ああ、そう」

 

愛想無いなー。流石は二千年生きた狐と言うことか。

 

「二千年じゃない。二千五百年だ」

 

「だからなんで俺の回りに居る奴らは俺の心が読めるんだ!」

 

なぜだ。声に出てるのか?どこかの永遠行った主人公みたいに?

 

「いや、お前様の考えてることは分かりやすい」

 

「かなりショックだからな。それ」

 

現在俺たちは山を降りて川を目指している。目的はさっき山から投げ捨てられた例の男を回収することだ。

皆は山や川に人を捨てるなよ。お巡りさんにお世話になることになるからな。

 

「それにしても狐って感じがしないな。尻尾とか無いのか?」

 

「有るが邪魔だから出してない。必要なら出すがどうする?」

 

俺的には狐耳だけで十分だから良いけどね。

 

「無理して出さなくていい。俺は狐耳で満足だ」

 

「私としてはその発言に引くしかないんだが…」

 

しまった。まさかの失言だったか…。失敗したぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わってヤマト第三艦橋だ。稲浜山駅から電車で十五分で停泊してる港の最寄り駅に着く。この街は過疎化が進んでいるのかあまり人には会わない。でもたまにすれ違う人からは変な目で見られた。

そりゃそうだ。俺は今女子でありさらにスーツ姿の男を背負っている。もう一つ言えば服は左肩から先が破かれ、所々赤くなっており、スーツ姿の男は全身が濡れている。後俺の隣には狐耳が生えた女子が居る訳だ。

どこの変人だよ。今頃2chで話題になってる。ハロウィンはまだまだ先のイベントだ。

閑話休題。

なぜ第3艦橋に来たかというと翔子さんにこの男を診て貰うためだ。ついでに記憶も見てもらう。

どちらかと言うと後者の方が強いけどね。

 

「翔子さん。連れて来ました」

 

「ああ、こよみんか。遅かったね。ところでそこの狐耳のお嬢さんは?」

 

「ああ、神様です」

 

「ふーん。そうなのね。神様にも色々居るのねー」

 

「まあ、そんなところです。で、この男が件の男です」

 

まだ気絶している男を床に降ろす。能力者じゃなかったら重くて運べなかっただろう。

 

「はいはーい、どれどれ」

 

言いながら男の頭に触れる。

 

「お待たせ。結論から言うとこの人はヴィノグラフに会っているよ」

 

「やっぱりあいつか」

 

「分かってたの?こよみん」

 

「ええ、まあ。こいつは俺の今の名前を知っていたから。そんな情報を知っているのはあいつくらいでしょう」

 

「ふーん。でもこの人は会っただけじゃないよ。ヴィノグラフから能力を貰っている。それと同時に記憶・精神操作を受けているよ」

 

「どんな能力なんです?」

 

「あれだね。レーラちゃんの物質創造能力の劣化版」

 

レーラさん、翔子さんからちゃん付けで呼ばれてるんだ。

 

「まあ、こよみんここでの問題は記憶・精神操作、簡単に言えば洗脳されていることだよ。この人もヴィノグラフに会うまでは有名企業の営業マンだよ」

 

営業マンって。何か地味に古い気がする。

 

「それで洗脳は解けるんですか?」

 

「当たり前じゃん。洗脳解いたついでに能力も消した。これでこの人はただの行方不明者だよ」

 

「能力を消すことまで出来るんですか!?」

 

「私やこよみんちゃんとした過程を踏まえて手に入れた能力は消せないけど、他人に無理矢理与えられた紛い物の能力なら消せるよ」

 

ちゃんとした過程…。俺と翔子さんはあの破壊神から貰った様な物だけど、この狐さんも人に能力を与えることとか出来るのだろうか。

 

「あ、そうそう。艦長がこよみん探してたよ。行ってあげてね」



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第五話

更新遅れてしまいました。ごめんなさい。



「初めまして大倉暦です。これからよろしくお願いします」

 

俺は教室の教壇に乗って自己紹介をする。

そして思う。なぜこうなったのかと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

溯ること十三時間くらい前。

何とか狐さんを従える(そんなつもりは無かった)ことに成功し、あの艦長の所に行き取り合えずの報告をした後家に帰るとそこには俺が通っていた高校の女子用の制服を広げてる母さんが居た。

 

「その制服は何?」

 

「これ?暦用の制服よ。明日からまた学校に行ってもらうから」

 

「えぇー…」

 

学校とは俺にとって嫌な場所以外の何物でもない。流石にいじめられてたとかそんなことは無かったが(あったかも知れないが)、まあ、疎外はされてたかな。友達は渚含めて三人しか居なかった。そいつらも全員友達居ないけど。

小さなコミュニティだ。

残りの二人は追い追い説明するとして、取り合えず俺は学校が嫌いだ。

 

「何で行かないといけないの?」

 

「渚ちゃんねー、そのヴィノグラフに狙われてるみたいなのよ」

 

なんですと。それは大変だ。

 

聞くと渚を連れての買い物途中で変な男に襲われたらしい。

ん?その男はどうなったって?ちょっと両腕両足複雑骨折したらしいよ。

 

「で、渚を守る為護衛として学校に行くのか。どこにそんなコネがあったんだ?」

 

「ふふふ、秘密よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

回想終了

あ、ちなみに沢渡真琴と名付けた狐さんも学校に通うことになったよ。まあ、名前と外見が似てるから名字を相沢(あいさわ)にして狐耳を仕舞ってるけど。うーむ、非常に残念だ。何がってそりゃあねぇ、あれだよ。

取り合えず何とか昼休みを迎えることに成功したけど、最近の学生ってすごく難しいこと勉強してるんだね。二次関数ってナンデスカ?

そんなことはどうでもいい。取り合えず賢悟として学校に来ていた頃の友達の所へ、渚を連れて行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と言っても集合場所は図書館である。何とこの学校は校舎と離れて図書館が建設されているのだ。

その図書館の四類の棚の裏が集合場所だ。この図書館は立地上昼休みには生徒が殆ど来ない。四類の棚の裏にした理由は俺が化学と言うより科学が好きだからだ。

すばやく行動し棚の裏に行く。

そこにはここに自分たち以外の人が現れたことに驚いてる俺の数少ない友達のうちの二人が居た。

 

「よう、久しぶりだな木野村竜也(きのむらりゅうや)それと木野村咲耶(きのむらさくや)

 

「…はっはー渚。このかわい子ちゃん誰?」

 

この特徴のない男が兄の方の竜也。

 

「このかわい子ちゃんは賢悟が転生したかわい子ちゃんだよ」

 

「10110011101111111100000011011110」

 

このいきなり1と0を羅列してきたのが妹の咲耶。ちなみにこれは意味の無い機械語だ。

 

「なるほど、つまり人は今から四足歩行をしても猿になるわけじゃないと言うことだな」

 

「そのボケはまさか賢悟ちん」

 

どうやってボケで判断してるんだよ。

 

「「ぎゃぁぁあああ!!生き返ってるぅぅううう!!しかも女の子になってるぅぅぅうううう!!」

 

そうそうこんな反応が欲しかったんだよ。今までの奴らは何かいまいち物足りなかったんだよなぁ。

あと流石双子。息もぴったりだ。…性格には二卵性双生児だけど。

 

「おいおい、図書室だぞ。静かにしろよ」

 

「騒ぎの原因である君が言わないでくれるか?それより何があったんだ。あれか?死後別世界に転生して以下略みたいなことでもあったのかよ」

 

「大体合ってる」

 

「じゃあもしかしてあの宇宙戦艦ヤマトだっけ?それがあの港にあるのって賢悟ちんが関係してるの?」

 

「大体俺の所為」

 

正確には全て俺の所為。あとその賢悟ちんやめろ

 

「待て、君が本当にあの賢悟と同一人物なのか調べさせてくれよ」

 

「いいぞ竜也。でも、もうすぐ昼休みが終わる。放課後のいつもの場所でやろう」

 

「分かった。じゃあ、放課後」



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第六話

うぐぅ、のど風邪と鼻風邪を同時に引きました。皆さんも風邪には気をつけてください。


そして放課後。何とか乗り越えたぜ。それにしても最近の高校生って難しいこと勉強してるんだな。英語はそもそも理解できないけど。

 

「で、何をするんだ?個人を特定する方法なんて幾らでもあるけど」

 

放課後、部活動の説明を受けてから下校(他の高校はどうか知らないがこの高校は入部義務が無い)。

同じクラスの渚(演劇に興味を持ってない)、真琴(あうーとは鳴かない)を連れて図書館に行く。放課後はすこーしだけ人が来るが大体の人がすぐに帰る。

まあこの図書館自体品揃えが悪いのでしょうがないけど。何で物語シリーズは置いといて戯言シリーズは置かないんだよ。

 

「戯言だけど」

 

「なんか言ったかお前様」

 

「いや特には。あとその呼び方学校ではやめろ」

 

「大丈夫だよまこちゃん。暦があれを言うときはどうでもいいことを考えてる証拠だから」

 

「お主もその呼び方を変えてくれー!」

 

狐の咆哮ってこんな感じなのかな?それにしてもまこちゃんか…。まこぴーじゃ無いのか。

…少し思考がずれてきてる気がする。あれかな今日一日中女子として過ごしていたからか?だとするとこの生活を続けると見た目は女、中身は男。と言う謎のキャラ設定が死んでしまう。そうなると『くらやみ』が現れて…。やっぱり思考のベクトルが変な方向に向かってる気がする。

これ以上はいけないと早歩きで歩くことにのみ集中し図書館へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図書館に着くと既に竜也と咲耶はそこに居た。放課後の場合はテーブル一つ貸切にする。まこちゃんは廊下待機。

兄の竜也は性格こそ真面目だが勉学に関しては不真面目。成績は中の中。学年のど真ん中。全てのテストが平均点と言う逆にすごい成績の持ち主。特徴は眼鏡を掛けてるくらいだ。

妹の咲耶は性格、見た目共にそれほど特徴はない。学力は学年トップ。しかし十段階評価で五~七になってる。理由としては授業中よく寝てることが一番である。

この兄妹の共通点は銀髪であることだ。銀髪なんて珍しくも無いけど。

閑話休題

そしてわたs…失礼噛みました。俺が大倉賢悟か確かめる会が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全カットだけどね。大丈夫だ、普通の質問に普通に答えただけだから。茶番成分はほぼゼロだ。

取り合えず二人には信じてもらえたが、さて能力とか世界滅亡とかの説明もした方がいいのだろうか。まずは能力について説明して様子を見るか。

 

「所で二人とも、他人に変身したり、物質を創り出したり、周りの空間を支配したりする能力とか信じる?」

 

「何言ってるんだ?信じるよ。と言うより僕能力持ってる」

 

「私も持ってるよ」

 

ワー、コノ兄妹ハ何ヲ言ッテルノダロウ。

 

「マジで!?」

 

「「マジで」」

 

だからなんで双子キャラは毎度毎度息ピッタリなんだよ!まあ、いいけど…。

 

「で、どんな能力を持ってるんだ?」

 

「僕は水を操る能力だけど、解除してから五分は使えないんだ」

 

「それは多分能力の問題点だと思う。能力にはそれぞれ問題点があるんだよ。問題点にも色々あって欠点と代償と制約に分かれるんだけど、多分それは制約だな。俺も似たような制約あるし。はい次咲耶」

 

「私の能力は瞬間移動なんだけど、行き先の写真を見ながらじゃないと移動できないの」

 

これは多分欠点だろう。

 

「はあ、何だこの兄妹。結構チートだぞ」

 

「そう言えば暦の能力は聞いてないわ」

 

「あれ?渚には言わなかったっけ?」

 

言ったつもりなんだけど。

 

「俺の能力は他人への変身だよ。ただし女性のみ。人型なら人形でもいけるけど。あとその人にもう一回変身するには一時間時間を置かなければいけないんだよ」

 

「暦、分かりづらい」

 

「しょうがない実演しようか」

 

誰にしようかな。……よし、決めた

 

「ガードスキルハンドソニック」

 

「「「天使ちゃんマジ天使」」」

 

「お前らそれしか言うこと無いのかよ…」

 

「「「中身は悪魔だ」」」

 

「俺のどこが悪魔なんだよ」




今回変身した人
天使/立華 かなで(Angel Beats!)
天使ちゃんマジ天使でお馴染み天使ちゃんです。
しかし作者はみゆきち(声優ではない)が好き。
ちなみに戦線との戦いを楽しんでいたらしい。


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第七話

木野村兄妹が能力者という訳が分からないサプライズがあったがそんなことはどうでもいい。

二人に俺が死んでからの出来事を話した。信じるかどうかはこの二人次第だけど。

 

「とまあ、こんな感じの大冒険だな」

 

「はあ、じゃあ暦?うーん、違和感しかないな。そのヴィノグラフが渚を狙う理由は何なんだ?」

 

「それは俺にも分からない。一応調べて貰ってるけど」

 

「暦ちん、誰に調べてもらってるんだい?」

 

暦ちんもやめろ。俺は観鈴ちんかよ!

 

「えーと、さっきの話にも出て来た緑川翔子って人に調べて貰ってる」

 

「本当にその人緑川で翔子なんだね!」

 

「ど、どうした急に?まあ、その筈だけど。名字が緑川で名前が翔子だけど」

 

まさか知り合い?でもそれはありえない筈だ。あの人の能力の代償であの人が生まれてから死ぬまでのことは全て無かったことになっているから覚えてる人がいる訳ない。

 

「もしかして知り合いか?俺の知ってる翔子さんは茶髪だけど」

 

「私が知ってる翔子さんは茶髪で赤い目だけど」

 

「じゃあ同一人物か。…ちょっと待ってろ。確認するから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八類(確か言語だったと思う)の本棚の奥に行き携帯電話を取り出し電話を掛ける。この学校はなぜか携帯の持込を禁止している。

個人的には携帯電話を携帯と略すより携電と略した方がいいと思うのだが…。ほら携帯と言う言葉は色々な物に付くから。

戯言だけどね。

 

「もしもしー」

 

「ifif翔子さん、突然で悪いんですが木野村咲耶って知ってますか?」

 

「知ってるよー。昔咲耶ちゃんに勉強教えたからねー」

 

この人何やってた人なんだろう。

 

「その咲耶なんですが…翔子さんのことを覚えてるんですけど」

 

「本当に?」

 

「本当です」

 

 

 

「やっぱり私のことを覚えてる人がいたか」

 

本人が驚いてない様だけどまさか想定してたのか?

 

「もしかして驚いてないんですか」

 

「そりゃそうだよこよみん。私達の能力には問題点がある、つまり不完全なんだよ。だからその問題点も不完全な場合があるかもしれないと思ってたからね」

 

「なるほど…」

 

よく分からん。

 

「それで咲耶も能力者なんですけど、取り合えずヴィノグラフについては教えてもいいですか」

 

もう教えちゃったけど。まあ、駄目な場合は記憶を消せばいいし。

 

「ん?いいけど。咲耶ちゃんも渚ちゃんの友達で能力者なんでしょ。だから狙われる可能性もあるんだよね」

 

「あれ咲耶が友達なんて言いましたっけ?」

 

「言ってないけどこよみんは友達以外の人の名前は余り覚えるタイプじゃないからね。あと連れてきてもいいけど今日以外でね。今日は忙しいんだ」

 

そこで電話を切られた。どうやら本当に忙しいようだ。

それにしてもこの人まだ語ってない心を読んできたぞ。やっぱりこの人が最強なんじゃ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆の所に戻るとそこにはなぜか真琴が居た。渚に弄られてるけど。

おかしいな、真琴は入り口待機だった筈だが。

 

「あ、暦ちんおかえり、どうだった?」

 

だからその暦ちんはやめろ。

 

「ああ、同一人物だったよ。でも今日は忙しいらしいから会いに行けないぞ」

 

「明日はいいの?」

 

「明日はいいそうだ。じゃあ話の続きだ。と言ってもこれで最後だが、ヴィノグラフがお前らを狙ってくる可能性もあるから気を付ける様に。じゃあ、俺は帰る。真琴、渚を頼んだぞ」

 

「分かった」

俺は図書館を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここで、なぜ渚を置いて先に帰ろうとしたのかを説明しようと思う。

理由は簡単である。ヴィノグラフからの刺客が現れたからだ。と言えば聞こえはいいかもしれない。実際は本屋に行こうとしたら途中で刺客が現れただけだ。

要するに偶然である。

今回は四十代おっさん。乱れたスーツと酒臭さから察するに飲み屋の帰りに拉致られたのだろう。

さてどんな能力なんだろう。

 

「爆ぜろ」

 

そうおっさんが言うと同時にちゅどーんと俺が居た場所が爆発した。爆炎と爆風を伴う爆発である。

怖いっつーの。とっさにバックステップで避けれたから良かったけど。

しかも肝心なときに誰に変身すればいいか思いつかない。高速で動ける人は…誰だよ!?来々谷さん?じゃあ誰か模造刀持って来い!

 

「あさかはなり」

 

椎名さんに変身した。多分この人なら素手でも強いんじゃないかな。苦無があれば良かったかも。苦無(銘は悪刀鐚)があれば楽勝なんだけどな。

取り合えず懐に飛び込む。これで爆発は使えないだろう。

と言う予想は大きくはずれ、爆炎と爆風に呑み込まれた。やっぱりあれか術者には効かない的なあれか。

 

「セウシル」

 

椎名さんからティオに変身してバリアを張って爆発を防ぐ。あ、視点低っ!

あと心の力は必要としないようだ。まあ、魔界だと自身の魔力使って術を出す設定だから問題ないのかも。ただしここが魔界と言うことになるけど。

 

「サイス!」

 

小さな光の刃が飛び出す。

 

「爆ぜろ」

 

しかし爆発により消えてしまった。

威力が低いもんね、仕方ないね。

 

「ギガノ・サイス!」

 

羽のついたハート型の弾が飛び出しおっさんに当たる。

取り合えず勝った様だ。それにしても視点が低い。




今回変身した人
椎名さん(Angel Beats!)
可愛い物が好きな可愛い人。あさはかなりとよく言う。
犬のぬいぐるみを作ってるイメージしかないのは気のせいです。
一巡後の世界ではクライストと化していた。

ティオ(金色のガッシュ!!)
ツンデレロリでお馴染みの魔物。あと高所恐怖症でもある。
ちなみに最終的に術なしでバリアを張ることが出来るようになった。
「また明日」はガッシュ屈指の名台詞である。


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第八話

俺がこの世界に帰ってきてから既に二週間経った。でもヴィノグラフの所在は掴めないままだ。

これまで倒した刺客は俺だけで十七人。三対一の戦いのときが一番辛かった。四対一はそうでもなかったけど。

渚も実は一人倒してたりもする。言葉だけで倒してた。口撃と言う奴だ。せめてコエカタマリンを飲めよ。

閑話休題。

そしてこの世界に帰ってきてから二週間と一日の今日。朝一で翔子さんから連絡が入った。

どうやらヴィノグラフが隠れている場所を特定したらしい。

俺は学校に俺と真琴が休む旨の連絡をし、渚に簡単に説明をしてからヤマトを目指して真琴を連れて家を飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤマト出港にギリギリ間に合い与えられた自室に向かう。真琴と相部屋だ。

 

「良かったの暦、渚ちゃんを置いて来ちゃって」

 

何とこの声の主は真琴である。何か知らないけど現代文化の影響を受け過ぎてしまって、性格が柔らかくなってしまった。

 

「良いんだよ、むしろこっちに来るほうが危ないんだから。それに…」

 

「それに?」

 

「いやまだ話すときじゃないな」

 

時刻は九時二十五分。本来だったら一時間目の授業を受けている。

現在ヤマトは洋上航行中である。慣性制御が働いてるので揺れを感じることは無い。

慣性制御は俺が転生した世界では一般的な技術である。あと相転移機関と陽電子衝撃砲も。流石に波動エンジンは翔子さんが造ったけど。それでもあの世界の技術水準が高かったから出来たのだ。

そして目指す場所は本州から少し離れた無人島。そこまで離れてないので飛行はしない。エネルギーの無駄だ。

生態系への影響を考慮してヤマトでの島への攻撃はしないことになってる。最悪島が消える。

到着まであと五分程。そろそろ準備したほうが良さそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勝てるだろうと思っていた時期が私にもありました」

 

残った左腕で片手腕立て伏せの要領で後ろへ飛びながらそう呟く。

はい。やられました。

いやいや天使ちゃんに変身していたからこそ、両足骨折、右腕切断、内臓破裂、右目がなくなってる程度で済んでるんだよ?他のキャラで挑んだら死んでるよ?

まあ天使に変身していたお陰で傷は回復した。

第二ラウンドだ。

あ、言っておくけどまだヴィノグラフにはダメージ与えてないから。どちらかと言うと斬っても斬っても何のダメージも無いと言うか。

 

「にゃおん」

 

さあ、第二ラウンドに選ばれたのはブラック羽川だ。

地面すれすれの立ち幅跳び(飛距離三百メートル)で一気に距離を詰める。

そして限りなく加速された俺のこぶしを叩きつける!

しかし触れた瞬間にヴィノグラフは消えてしまった。大量の体力とか精力とか精神力を吸収できたが肝心のヴィノグラフは消えてしまった。

恐らく実体を持つ幻影とかそんな物だろう。考えてみればここにヴィノグラフが居ること自体がおかしい。

今回の作戦はヴィノグラフが居るであろう島の中心部を目指し能力者を主とする上陸班が突入する物だ。勿論日本政府には許可を取っている。……どうやったのかは流石に分からないが。

まあそんな訳でヴィノグラフは島の中心部に居るはずなのだ。

取り合えず状況が落ち着いたので携帯で島の写真を撮る。中々良い景色だったので写メを渚に送った。『十四時には帰る』と添付して。

既に十時を過ぎている。後四時間経てば家に帰れるんだ。

それにしても下着姿は寒い、恥ずかしい。




今回変身した人
ブラック羽川(物語シリーズ)
優等生の裏の顔。それ以上はネタバレだにゃ。
「な」と言おうとすると「にゃ」となる。
例を挙げると
「斜め七十七度の並びで泣く泣くいななくナナハン七台難なく並べて長眺め」

「にゃにゃめにゃにゃじゅうにゃにゃどのにゃらびでにゃくにゃくいにゃにゃくにゃにゃはんにゃにゃだいにゃんにゃくにゃらべてにゃがにゃがめ」
となる。可愛い。


テスト週間なので次回の更新は遅くなります。
また現実世界編は十話での終了を予定しています。
次の世界は…ヤマト大活躍?


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第九話

そう言えば宇宙戦艦ヤマト2199の続編やるらしいですね。でも設定上波動エンジン造れませんよね?
頑張れヤマト地球が危ない。


島の中心部にたどり着いた。この場所まで残ってる人は俺とレーラさんと翔子さんと真琴だ。名有りキャラしか残れない決まりでもあるのだろうか?

話を戻そう。そこには昔からこの島にあったものですと主張するようにぼろぼろに風化して自然に囲まれてるどころか自然に喰われてるような遺跡があった。

いやちょっと待て自分。何だよ自然に喰われるって。まあ言いたいことは分かるよ。苔生してるし、草も生えてる。つーか木も十本くらい生えてるし、蔦も這い回ってるけども、自分の表現だと思うと病んでるとしか思えない

この戦いが終わったら京都へ観光に行こう。いなこんの聖地巡礼するんだ。あ、確かユーフォニアムも京都だったなぁ。

死亡フラグを一本増設した所で少し考えよう。あの遺跡についてだ。

見た目は完全に東南アジアにあるような遺跡を小さくしたようなものだ。所々崩れてもいる。

 

「翔子さん、あれ何です?」

 

早め早めのギブアップ。

 

「私に聞かれても…。取り合えず、突撃」

 

この四人の中で一番階級が高いのは翔子さんである。その命令を受けて俺達は遺跡の中へ入って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃遺跡内部。

そこにはヴィノグラフと一人の少女が居た。そして少女は言う。

 

「ヴィ、ヴィノグラフ様。あの者達がこの遺跡に侵入しました」

 

それに対しヴィノグラフは

 

「何だと。ふむ、それでは私は…人前に出ても恥ずかしくない様にシャワーでも浴びてくるか」

 

と言った。

それを聞いた少女は、

 

「ヴィノグラフ様。それは少し、えーとおかしいと思います」

 

と口に出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――はっ!今何か変なものを幻視したような気がする。俺の中のヴィノグラフに対するイメージが結構崩れたぞ。

どうやら相当病んでる様だ。京都には二泊三日から一週間に伸ばそうかな…。いや、京都より先にカウンセリングに行こう。

遺跡の中は傷や汚れは勿論、ごみや埃臭さも無い。はっきり言って怪しい。だけどこれでヴィノグラフがここに居ると断言できた。

はぁ、掃除しなければ俺は引き返したのに。…俺だけは引き返したのに。

少し進むと開けた場所に出た。そこにはさっき見た少女が居た。かなり小柄だ。十歳くらい?あいつロリコンかよ。服装はレーラさんとは意匠の違うメイド服だ。あいつロリメイド好きかよ…、引くなぁ。

 

「お、お待ちしておりみゃ…ました。た、ただ今ヴィノグラフ様はえーと、その…」

 

この少女、言葉が途切れたり噛んだりしてるけどまさか、人見知り?

 

「ヴィ、ヴィノグラフ様はシャワーを浴びておられますので、そのー、しばらくお待ちください」

 

「その必要は無い」

 

奥から別の声が聞こえた。この声は恐らくあいつだ。

 

「ははは、やあ皆さんこんにちは」

 

魔物のイメージとはかけ離れた爽やかな声で挨拶してきた。

 

「おや、挨拶を返すと言う常識を君たち五人は知らないようだ」

 

その言葉に一番早く反応したのは少女だった。

 

「私も入ってるんですか!?」

 

この少女、完全にギャグ要員じゃねーかよ。

 

「ふざけてるの?」

 

思わず口から今思ってることが漏れてしまった。

 

「君は確か大倉暦だったかな。君は少し厄介だ。君たちの中で一番強い訳では無いが一番の頭脳を持ってる訳では無いが、しかしその神を従えてることは障害になりやすい」

 

だからまずは君から殺そう。とさっきまでの爽やかな声から一変、冷たい声でそう言った。

 

「そう簡単に死ぬわけにはいかないけど」

 

これは少し不味いかな。あと誤解しないで下さい。真琴に至っては勝手に仕えるとか言ってきてるだけです。従えるつもりなんてこれっぽっちもありませんでした。

そうじゃなくてこの展開は不味い。数えることも嫌になるほどの数の触手がヴィノグラフから現れ襲い掛かってきた。

 

「ガードスキルハンドソニック」

 

あれ?変身できない。まさかまだ一時間経ってないのか。

 

「だったら、例外の方が多い規則(アンリミテッド・ルールブック)

 

人差し指を肥大化させ触手を吹き飛ばす。しかし生き残ってる触手が人差し指に刺さってきた。かなり痛い。

急いで人差し指を元に戻す。傷口の大きさも比例して小さくなり傷は殆ど確認できない。

斧乃木ちゃんは怪異なので人より遥かに頑丈だ。しかしあの触手は苦も無く人差し指に刺すことができた。恐らく本来の姿だと貫通されるだろう。さらに例外の方が多い規則(アンリミテッド・ルールブック)は軟体生物には効果が薄い。斧乃木ちゃんだと勝てない。だからと言って他にいいキャラが居ない。そうだあの人なら。

 

「それにしてもその触手、センスがねぇなぁ」

 

そして思う。燃えろ、と。

その瞬間。触手たちは跡形も残らず燃え尽きた。

危なかった。燃え尽きてくれなければ触手に殺されるとこだったぜ。何せこの人は発火能力を持つだけのただの人間だから。

しかし、そう考えてる間にも新たな触手が迫って来た。

中には一本だけ太い触手もある。あれを燃やすのは骨が折れそうだ。

考えいても仕方が無いので少しでも多く燃やそうとする。

全てに火を点けたときヴィノグラフが話しかけてきた。

 

「暦君、君は一つ大きな間違いをした」

 

聞くだけで霜焼けになりそうな冷たい声でそう言う。

 

「は?何のことだ?」

 

間違えた?何を?本当に身に覚えが無い。

 

「機動力の無いただの人間になったことさ」

 

その瞬間一本の触手が肉薄してきた。そしてその勢いのまま俺の腹に突き刺さり貫通した。

そして怯んだ隙に他の触手も体中に突き刺さる。

どこからあの最初の触手は出てきたんだ?

あ、あれか。あの太い触手か。一本の触手を他の触手が何本も覆っていたのか。そこまで思い至らなかったぜ。

あーもう駄目だ。目の前が暗くなってきた。また、死ぬのか?




今回変身した人
黒羽美砂(Charlotte)
発火能力者。
作者がcharlotteで一番好きな人。
だって何だかんだ言って一番優しい性格じゃん。
あとこの発火能力は欠点が無い最高クラスの能力だったり。
それとここでは死亡前から能力を持っていた設定。


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第十話

テストがようやく終わりました。運が悪いと赤点になりますが…。


暦様が触手に貫かれ倒れてしまいました。ボディガードとしては失格です。

その反省を踏まえてここからは本気を出しましょう。

物質具現化能力を使い自動式拳銃を創り出し、私自身は亜音速で移動します。本当は音速を超えたいんですけどね。

亜音速で動き回っているので銃口を向けただけでは慣性の影響で弾道がずれてしまうので計算して撃たないといけません。暦様がよく『慣性なんて消えればいいのに』と言いますがこの場面では私も同じ思いです。

弾道を計算した上で引き金を引きます。もし流れ弾が暦様や翔子様、真琴様に当たってはいけません。

今回創った自動式拳銃はこの世界にあるグロック18ですのでフルオート射撃を使い弾倉に入っている十七発全てを撃ち込みます。一秒足らずで弾倉が空になりますがそこは私の能力で弾倉内に直接弾を創ります。そして今度は腹部に撃ち込みます。

 

「うぐぅ」

 

弾丸が全て鳩尾に当たったヴィノグラフは呻き声を上げます。ですがそれ以上のダメージを与えられたようには見えません。

あの呻き声たまに暦様も言うのですがどう言う意味なんでしょうか?

私は拳銃を捨てて対物狙撃銃を創ります。捨てた拳銃は光の粒子になり、消えていきます。

動きを止めた所でヴィノグラフは声を掛けてきました。

「レーラか、君の運動能力にはいつも手が焼けるよ」

 

「そうですか、私としてはまだまだ遅いほうなんですが」

 

本当は音速を超えたいものです。

 

「そうか、では私達の側に戻るつもりは?」

 

「微塵もありません」

 

「そんなにあのお嬢様がそんなに大事か?」

 

「ええ、お嬢様は私を必要としてくれましたし」

 

「私も君の力が必要なんだがな」

 

「それにお嬢様は貴様と違って優しいですし、私を人として扱ってくれましたしね」

 

あ、貴様なんて乱暴な言葉を使ってしまいました。あとでお嬢様に怒られる。

うぐぅ…。

ヴィノグラフと私では九十九パーセント私が負けますけど、だからと言って戦いを放棄することはありえませんが。

そして九十九パーセントの確率は今の状態での確率です。私が元の状態に、全盛期の状態になれば七十五パーセントになります。

それでも勝率二十五パーセントですが。

元の状態に戻るまで少し時間が掛かります。少しずつ戻って行くからです。

ヴィノグラフも異変に気付いたようですが、脚に対物狙撃銃を撃ち込み行動を制限します。

対物狙撃銃を捨て、今度は機関銃を創り出しました。暦様を倒した触手が現れたからです。標的が多いと狙撃銃じゃ処理し切れません。

しかし機関銃でも処理し切れなかった触手が一本また一本と私の体に刺さります。ですがもう一本も二本も百本も関係ありません。

機関銃を捨て両手で触手を抜きます。血は出てきません。

私の吸血鬼としての回復力がすぐに傷口を塞ぎました。

以前暦様が読んでいた本に出て来たキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードが稀少種と言うならば私は異常種です。私は幾つかの吸血鬼の能力が無くなっていますが、残った能力ならあちらに勝っているつもりです。特に物質創造能力においては、負ける気がしません。

そう言えば先ほどから暦様を見かけないんですが?…翔子様や真琴様が何も仰っていないので大丈夫でしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?生きてる?うん生きてる。心臓が動いてる。

目を開けるとそこは薄暗い遺跡の中では無く、雲一つ無い青空の下だった。

 

「うぐぅ…」

 

「あ!暦ちん目が覚めた?」

 

声のする方向を見るとそこには咲耶と渚が居た。どうやら寝ている(?)俺を看病してたらしい。

意識がはっきりしてくると頭の中は疑問符で埋め尽くされた。

あれ?こいつらが来る時間は十四時じゃなかったっけ?

 

「だとすると暦、メール打ち間違えてるよ」

 

そう言って携帯の画面を見せ付けてくる渚。その画面には『十二時までには帰る』と書いてあった。

ありゃりゃ、タイプミスしてたか…。やっぱりパソコンが一番だな。

 

「あれ、竜也は?」

 

「お兄ちゃんなら中で戦ってるよ」

 

そうか、それは大変だ。早く行かないと。

だけど血を失いすぎたのか力が入らない。頭がくらくらする。体を見ると六箇所穴が開いてる。あー制服新しいの買わないと…じゃなくて良く生きてたな俺。

 

「ああ、暦ちん、まだ安静にしてないと…」

 

咲耶からそう言われるがそう悠長なことは言ってられない。

 

「…ぱないの」

 

だから小さくそう呟く。

うわ、視点高!そしてコンディション最高!さっきまでの貧血が嘘のようだ。

少し日光が眩しい気がするけどそれでも日光の下での活動には支障が無いぜ。流石は伝説種の稀少種の吸血鬼だ。誰かに馬鹿にされた気がするけど気のせいだよな?




次回現実世界編最終話!ちなみに次の世界の原作はあれです。和音を上もしくは下から順番に鳴らすと言う意味の音楽用語が入ってるあれです。

今回変身した人
キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード(物語シリーズ)
今回はあくまで完全体である。
作者が知ってるキャラの中で一番強い人。…人?
まあ、人間だった頃から最強だけど。詳しくはうつくし姫で。
驚異的な回復力とか弱点が機能しないとか色々おかしい。お陰でレーラさんもチートになっちゃった。


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第十一話

かなりやっつけだが完成しました。うん、リアルで忙しいんです。明日までに未提出課題全提出なんて無茶だよ…。


再び遺跡の中へ入る。

そこにはいつもは青い髪が赤くなっているレーラさん(衝撃波を伴わ音速超え)と大量の水を操り、攻撃と防御を同時に行う竜也とこの二人の攻撃を表情一つ変えずただ防いでるだけのヴィノグラフ。この三人から少し離れた所でメイド服の少女に容赦なく関節技を掛けている真琴とそれをレクチャーしている翔子さん。

この中に俺が居ることに気づいている人は誰もいないようだ。

人はこれを好都合と言う。

気付かれない内に妖刀心渡を取り出し、レーラさんみたいに衝撃波を出さず音速の壁を突き破る。そしてヴィノグラフとすれ違った瞬間、心渡で奴の右腕を斬る。

怪異を殺すために創られた妖刀はヴィノグラフの腕どころか脇腹まで斬り裂いた。

 

「くっ、もう復活したか…。予想より早すぎるな…」

 

その声には爽やかさも冷徹さも無く、代わりに焦りが感じられた。

 

「どうしたヴィノグラフ、そんなに焦って。何か良いことでもあったのかい?」

 

竜也、ここでそれを言うか。今度からはメメって呼んでやろうか?

 

「いつ間にか五人に囲まれている。私も人気者になったものだな」

 

あ、メイド服の少女が両肩と両脚の関節外されて動けなくなってる。可愛そうに…何もそこまで…。

まあ、あの子のことは後にして、ヴィノグラフを何とかしないといけない。

変身が解けるまで後二十五分程。行ける…かな?

 

「動くな。動くとこの世界を壊す」

 

あ、こいつ悪役として最低な行動を取りやがった。

しかしそれをさせる訳には行かないからヴィノグラフが認識するよりも早く動き上半身と下半身を斬り離した。そして床に転がった上半身にある首に心渡を突きつける。

 

「さて、動くなよ。動いたらこの首を斬るぞ」

 

一秒で脅す側と脅される側が入れ替わった。

 

「良し、それじゃあ一つだけ訊こうかな。なぜ世界を壊そうとするんだ」

 

話が思ったより長かったので要点だけ挙げると、

人として生まれる

人体実験される

実験が成功し魔物になる

しかし実験をした科学者によって殺されそうになる

何とか逃げ出す

魔物と言うだけで差別される

存在全否定される

全ての人に復讐しよう

世界を10個程壊したぜ

まだ足りない

今ここ

と言う訳だ。

 

「そんな勝手な理由で、世界を滅ぼされてたまるかぁあ!!!」

 

思わずガロードの名台詞が出てしまったぜ。俺は好きだよ、ガンダムX。

そうじゃなくて。

世界を壊す理由が人への復讐なんて、どこの架空の物語だよ。

世界も既に十個壊したって!?ふざけるなよ!

 

「お前のために何人の人が死んだと思ってるんだ」

 

「一垓は超えたかな」

 

えーと、十の二十乗?

だからゼタの一つ下か…。多いなぁ。って、感心してる場合じゃない。

殴る蹴る踏みつけるをそれぞれ二回繰り返す。

あら、気絶しちゃった。まあ、吸血鬼の力だし、首狙ったから仕方ないね。

 

「翔子さん、こいつどうします?」

 

「どうしようかな。ヤマトに連れて帰ると設備壊されそうだし…。あっ、そう言えばこいつは実験の結果魔物になったんだよね。だったら」

 

そう言いながらヴィノグラフの傍にしゃがむ。

そして空間支配能力を使って下半身を再生、そして書き直しをした。

 

「翔子さん、書き直しって」

 

初めて聞く命令文について訊いてみる。

 

「今作ってみた命令だよ。ほらヴィノグラフは元は人間だったんでしょ。だからそこを書き直したんだよ」

 

もうこれでこいつはただの人間だ。と翔子さんは言った。

最強の魔物と言われた者との戦いは呆気なくその幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日談ではあるけれど今回のオチではない。

オチはあの場面でご都合主義という名のオチが着いたではないか。

だから本当の後日談。

ヴィノグラフは魔物から人に戻ったことで感情も人の物になった。そのため自分の行いにかなり反省しているようだ。

反省では済まされないけど。

しかし一部の例外を除いて魔物には人権が無いので罪には問えない。これも仕方ないことなのかもしれない。

その一部の例外であるレーラさんは翌日青い髪に戻って貧血になっていた。どうやら吸血鬼としての燃費が悪いらしい。俺はレーラさんが吸血鬼にだったことに驚いてるけど。

ヴィノグラフと一緒に居た少女はヴィノグラフが人間に戻ったと同時に正気を取り戻した。今は病院で治療を受けている。

そして俺たち学生組は今日も今日とて学校である。しかしそれも今日限り。

これからはヤマトで別世界を滅亡から救うことになっていた。

俺はヤマトの乗組員(ただし主計科)だから分かるけど何で他の四人まで…。

渚は衛生科、竜也は航海科、咲耶は技術科、真琴は船務科と全員戦闘には関係ない部署だけど、なんだかなぁー。

まあ、今更どうにも出来ないし、まあ、楽しくやって行こうかな。

ちなみに今回からは翔子さんが造った世界線跳躍装置と言うもので別世界に行くようだ。どの世界へ行けるかは分からないらしいけど。

木野村兄妹の家庭事情は知らないがよく来れたものだ。もしかしたら学生組で家庭に問題が無いの俺だけかもしれない。

そしてヤマトは別世界へ旅立つ。その世界も滅亡の危機に陥っていた。




次回からは蒼き鋼のアルペジオとのクロスオーバーになります。ハルナ・キリシマ戦から原作のコンゴウ艦隊戦までを予定しています。
タイトルは原作の用語解説コーナーからとって“蒼海世界編”とします。
それでは皆さんお楽しみに。


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蒼海世界編 (蒼き鋼のアルペジオのクロスオーバー)
第一話


二次創作って難しい。(遅れた言い訳)
後キャラ崩壊注意です。


ヤマトは別世界へ移動できたらしい。

まあ、この艦に居る殆どの人が英語とか喋れないから今回も日本に行くんだけどね。

あ、そうそう。俺はなぜか主計科員から主計長になってた。あえて言うけど俺は虫嫌いではない。

そんなことはどうでもいい。給料無いし。

別世界へ移動した障害か波動エンジンはオーバーヒートしていてまともに使えないそうだ。今は宇宙空間に居るから相転移エンジン(出力が落ちるけど大気圏内での安定稼動改造済み)を動かしているから波動砲を除く全兵器を使用可能。防御装置も全て使えると翔子さんは言ってた。この機会に波動エンジンを改造するとも…。これ以上どこを弄るんだよ。ついに六連大炉心にでもするのだろうか。

外を見ると赤くなっている。もう大気圏に突入しているようだ。

日本は夜の面にあるので大気圏を突破したらすぐに暗くなる。

 

「総員第一種戦闘配備」

 

どうやら戦闘らしい。主計科は戦闘時ほぼ通常通りのシフトである。仕事は大体艦内への戦闘糧食の配布くらいだ。

大体皆が暇なときが忙しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大気圏を突破し、前回みたいにまずは日本へ行こうと考えていたらレーダ手が叫んだ。

 

「ミサイル接近、数三百、五百、まだ増えます!」

 

「大気圏内最大戦速、振り切るのよ」

 

すぐに加速して音速を軽く超える。それでもまだミサイルは接近してくる。既にヤマトと同じ高度にまで達し、後ろから追いかけてくる。

 

「下げ舵三度、目標日本。ミサイルは艦尾魚雷で迎撃、第三主砲と第二副砲は対空三式を装填して待機!」

 

私はミサイル迎撃命令を出した。艦尾魚雷発射管から対空魚雷が発射され、後部砲塔には対空三式弾が装填され、ミサイルに狙いをつける。

 

「魚雷命中、残りミサイル百七十三です」

 

レーダー手からの報告を聞き、主砲、副砲に発射命令を出す。

 

「残りミサイル一、まもなく最終迎撃ライン突破!」

 

「波動防壁展開、急いで!」

 

「波動防壁展開しました」

 

青く薄い幕がヤマトの周りを囲う。これで核兵器を超える威力を持っていてもヤマトを傷つけることは出来なくなった。

 

「艦尾に被弾!?炸裂した敵ミサイルより重力波を検出、防壁ごと艦尾ロケットノズルを消滅させられました」

 

予想外の報告に私は一瞬思考が止まったがすぐに被害状況を確認する。

艦尾三本ある安定翼の内左舷下部にある一本が基部のロッケトノズルの一部ごと消滅していたけど航行に支障は無く死者も出なかったようだ。

ミサイルを回避するために加速した結果既に日本上空に着いてしまったけど、そこでもまた戦闘が行われていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大戦艦ハルナとキリシマが俺たちが乗っているイ401に止めを刺そうと、二隻が合体した状態で超重力砲を撃とうとしている。しかし彼女らがそうしている時点で俺達の勝ちは決まっているようなものだ。あとはここで必死にもがいてる振りをして、白鯨からの侵食魚雷を待つだけだ。

静がありえない報告をしたのはそんなときだった。

 

「艦長!この海域の上空に未確認の飛行物体が!」

 

「何だ静!ここにUFOが現れたのかよ!」

 

杏平も思わず叫んでいる。

 

「これはUFOではありません!戦艦のようです!しかし既存のデータに一致するものではありません!」

 

モニターに件の戦艦が映る。中央に巨大な司令塔、砲塔の配置は大和型戦艦と同じ配置になっているが大きさは大和型を凌駕している。

 

「どう言うことでしょうか。霧の新種かもしれません」

 

いきなり空中の戦艦が左へ回転し、全ての主砲副砲を海面に向ける。あんな事したら中に乗っている人は立っていられないだろうからやはり僧の言う通り霧なのだろうか。

 

「違う。あれは霧じゃない」

 

「イオナ、それは本当か!」

 

「私はあの艦を知らない。それに戦術ネットワークには未確認飛行物体の迎撃に失敗したとアップロードされている」

 

つまりイオナだけでなく全ての霧が知らないことになる。だとするとあれは…。

モニターを睨みながら考えていると例の戦艦の全砲門から青白い閃光が発射され大戦艦二隻へ向かうがクラインフィールドに阻まれる。だが静が叫ぶように報告する。

 

「ハルナ・キリシマのクラインフィールドが正面と上部に集中!」

 

「一撃でそれだけの威力があるのか。…杏平、あの二隻に向かって撃てるものは全て撃て!今がチャンスだ!」

 

「くっそぉ、こうなりゃヤケだっ!」

 

全魚雷発射管から魚雷が射出され同時に海底の白鯨からも預けていた侵食魚雷が射出され、重力子を放出しながら霧の大戦艦二隻が崩壊していく。本来ならば超重力砲の発射タイミングまで粘らなければいけなかったが、あの戦艦のお陰で艦体下部のクラインフィールドが無くなり、白鯨の侵食魚雷を直接当てることが出来た。

 

「さて、次は上の戦艦だな」

 

むしろここからが本番かもしれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦艦二隻大破、いえ轟沈です」

 

「着水準備。各員は戦闘配備のまま待機、新手に備えて」

 

コスモレーダーが使えれば地球の反対側まで索敵出来るけど、ジャミングによりそれは出来なくなっている。

そんなことより私の戦闘介入の判断は正しかったのか今になって不安になってくる。

 

「通信長、あの潜水艦と通信を繋いで」

 

「了解。……通信繋がりました」

 

天井のモニターを見るとあの潜水艦の発令所だと思われる空間に居る五人の少年少女が映った。

 

「ぁーぁー…こちら恒星間航行用超弩級戦艦ヤマト。私は艦長のルーナ・ジャクロットです」

 

艦長として名乗る。この艦の肩書きに驚いていた五人だがその中の一人の黒いスーツを着た少年が挨拶を返してきた。

 

「こちらは潜水艦イ401。自分は艦長の千早群像です。貴艦の支援に感謝します」

 

どうやら介入したことについては感謝されてるようだ。

 

「しかし余り話している時間がありません。今轟沈した戦艦を指揮していた旗艦がその艦隊を連れて来るようです。なので我々の拠点である硫黄島までお越し頂きたい」

 

初対面の人にいきなり自分たちの拠点へ来るように言うなんて常識では考えられないけど、ここは従うしかない。この距離であの戦艦を沈めた魚雷を撃ち込まれたらヤマトでも耐えられない。

 

「我々はこの世界に来た直後のためこの星の地理が分からない。なので誘導してもらえませんか」

 

「…分かりました。硫黄島まで案内しましょう。出来ればあなた方のことも話していただきたい」

 

「ええ、それは分かっています。では後ほど」



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第二話

CLANNADの渚ちゃんの誕生日に投稿する予定でしたが、その結果はこれです。更新速度を上げたいです。


「いいのかよあんな戦艦を俺たちの拠点まで案内して」

 

杏平がそう言うが俺には問題に感じない。確かにあの艦の性能は人類は基より霧ですら超えている節がある。

 

「大丈夫だ。彼女らは俺たちの味方だ。少なくともあそこを爆破なんてしないさ」

 

形だけは水上艦なのに平然と飛行し、さらには潜水まで出来、その主砲はクラインフィールドを破れる力を持っている。下手をすればあれを巡って新たな戦争が起こりかねない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤマトは今の戦闘で相転移エンジンに異状が生じ、主機補機ともに停止している。今は貯蓄しておいたタキオン粒子を放出して何とか潜水航行している状態だ。本当は抵抗が小さい水上航行のほうが良いけど見つかる敵に見つかると現状だと戦闘はおろか逃げることも出来ない。だから潜水航行している。

艤装の中でもエンジンを設計したのは私だけど(正確にはエンジン周りの設計を書き換えた。元のヤマトの設計図はこよみんが言う所の黒髪ロリ破壊神から貰った)こんなにトラブルが発生するとは思わなかったよ。

波動エンジン、正確には次元波動超弦跳躍機関は観測できないほど大きくなり宇宙全体に重なり合っている余剰次元を元の大きさに戻して、そこにはたらいていた重力を開放してマイクロブラックホールを作りそのホーキング輻射で放出される熱エネルギーを取り出すもの。

相転移エンジンは真空の空間のエネルギー準位も高い状態から低い状態へ相転移させてそのエネルギーの差分を取り出すエンジンだけど大気圏内だと出力が落ちるから他のエンジンが必要。

波動エンジンは冷却機が壊れてオーバーヒート。相転移エンジンはあと三十分以内に修理が終わる。

でも、どちらも止まっている居るからショックカノンは撃てないし、三式融合弾はそもそも射程が短い。パルスレーザーは水中だとすぐ減衰してしまう。簡単に言うとミサイルと魚雷しか使えない状態なんだ。この二つの違いは分からないけど。

 

「と言う訳だけど、こよみん質問ある?」

 

「一つだけあります。なぜ俺のあだ名は『こよみん』なんですか!」

 

むぅ、暦だからこよみんなんだけどなぁ。こんな簡単なことも分かんないのかな?

 

「で、前置きはその辺で良いですよね。えーと、エンジン改修用資材は硫黄島に着いてからお渡しします。後STM鋼材も同じタイミングで良いですよね」

 

「いーよー。エンジンはともかく、装甲は海の中じゃ修理出来ないからね」

 

「STM鋼材って何です?」

 

「この艦の装甲材に使われてる特殊合金だよ。正式名称はスーパーチタンモリブデン。どこかで聞いたことある人は相当マニアックだよ」

 

知ってる人居るのかな、空想科学大戦。

 

「翔子さん、俺はまだ仕事があるんでもう行きますね」

 

「そう…頑張ってねー」

 

こよみん、働き過ぎじゃない?

機関長と技術長掛け持ちしてる私が言うことじゃないけど。技術長は咲耶ちゃんに譲ろうかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

艦内への食事の提供だけが主計科の仕事ではない。例えばさっきみたいに各科への物資補給をしたり、オムシスの点検などもある。

要するに忙しい。

特にオムシスがめんどい。誰だあんなの作った奴。

しかもここに来てイ401へ行くことが決まるなんて。俺以外にも暇な奴居るだろ。何で俺なんだよ。語り部だからか?いや、でも最近になって語り部交代制度が出来たしなぁ。あれ?だとするとこれは貴重な活躍タイムを貰えるのか…。いや、俺は騙されないぞ。これはジュラル星人の仕業に違いない!

 

「暦ちんはチャー研知ってるんだ」

 

「だからな、咲耶。暦ちんはやめてくれ。俺は翼人じゃないんだ」

 

「でも、翼人になることは」

 

「出来る」

 

一応ローゼンメイデンにはなれた。七女は実体が無いけど行けるかな?最終的には体を手に入れてたけど。

 

「そんなことより暦ちん、早く行くよ」

 

「分かってるって。もう少し待ってくれ。もうすぐこしあん団子が出来るから」

 

オムシスってすごいね。団子くらいすぐに作れるもん。

所でこしあんが乗ってる団子って正式名称は何だろう。こしあん団子だと中にこしあんが入ってる団子みたいだし、こしあん乗せ団子だと長いし。だから俺はこし()()せ団子、略してあの団子って言ってるけど。

戯言だけどね。

 

「よし出来た。じゃあ行くか」

 

行き先はイ401。方法は咲耶の瞬間移動。写真はあちらから既に送られているらしい。

咲耶の手を握りながら瞬きするとそこはもうイ401発令所の中だった。




クリスマスはぼっちでした。


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第三話

今年最後の投稿です。…多分。
次は書初め的な意味で一月二日に投稿すると思います。…多分。

いつの間にかお気に入り登録者数が二十人超えていますね。
あ、でもネタが無いので記念の番外編は次の次くらいに出します。


俺は潜水艦イ401に咲耶の瞬間移動能力で向かい、こしあん団子を贈ってからこの世界の状況を聞いた。

この世界での十七年前二千三十九年、人類は温暖化に伴う急激な海面上昇により、地上での版図を大きく失っい、 それに呼応するかのように、霧を纏う謎の軍艦群「霧の艦隊」が世界各地の海洋に出現、搭載した超兵器で人類の艦を攻撃し始めた。

人類は持ちうる戦力を投入し、最終決戦「大海戦」に臨むも、「霧」の圧倒的な武力の前に脆くも敗れ去った。

すべての海域、運搬経路を「霧の艦隊」によって封鎖され、政治経済は崩壊、人類は疲弊の一途をたどっているとのこと。

簡単に纏めるとこんなこと。

まあその後はお互いの情報交換。こちらは主に世界を救うと言う目的と後はヤマトに使われててる技術を教えたり。ほぼ全て再現不可って言われたけど。あちらからは霧の分かってるだけの情報と世界情勢を教えてもらった。

それによると先の戦闘で沈めたのは大戦艦ハルナと同型艦のキリシマ。ショックカノンを防いだのはクラインフィールドと言うどう考えてもディストーションフィールドの下位互換的なバリアだそうだ。

情報交換も済んだので俺と咲耶はヤマトに戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

硫黄島地下ドックに入渠したヤマトとイ401。奥の方には赤い多分重巡洋艦がある。軍艦の知識は余り無いから断定できない。もしかしたら巡洋戦艦かもしれない。

 

「まあ、いいか。俺達は上陸する訳じゃないし」

 

補給しなくても数ヶ月の長距離航海が出来る艦だよ。水は欲しいけど。

 

「そんなことよりお前様、仕事があったんじゃなかったかの」

 

「真琴なんで今度はそんな古い言葉遣いに…」

 

「現代社会では儂のような高齢キャラはこう言う言葉遣いをするんじゃろう?」

 

そうだけども。それなら耳と尻尾をだな。

 

「こうかの?」

 

そう言いつつ狐耳と九本の尻尾を出し服装も出会ったときのような和服になる。

くそ、可愛いじゃないか。

 

「ああ、俺は大満足だ。生きてきた甲斐があった」

 

そう言って仕事に向かう。エンジンの修理に必要なものを機関室に届けるだけだ。そうすれば主計科は食事の提供くらいしか仕事が無い。

赤い艦の方を見ると対空砲が桟橋に居る確か杏平と呼ばれてる人を撃っていた。杏平さんもよく避けれるなぁ。人の動き超えてるぞ。

何だろうあの艦は群像さんの仲間じゃないのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

波動エンジンは丸ごと艦尾から抜くことが出来る。そうでもしないとこの大きすぎるエンジンは整備が出来ないよ。

うわぁ、オレンジ色だったエンジンも所々黒くなったり穴が開いてたり。

オーバーヒートの熱であらゆる回路やら部品が焼けついたり融けたりしてる。でもこれくらいなら1週間で終わるかな?

修理だけなら一週間だけど、今回は修理だけでなく改造もしようと思ってる。こよみんが思ってる六連大炉心化じゃなくエネルギーの取り出し方を変えようと思ってる。具体的には従来のマイクロブラックホールのホーキング輻射の熱でタービンを回す方式からマイクロブラックホールの重力エネルギーを相転移エンジンで直接取り出すようにする。それだけで生み出されるエネルギーは従来の七十五パーセント多くなるよ。ちなみに炉心は五連にするよ。

スーパーチャージャー?何それおいしいの?

そんな物無くても炉心を切り替えることで連続ワープも可能になったし、同じ要領で波動砲は五連射以上出せるし…うん、要らない。

そもそも波動砲を何発も撃ったら2199のスタッフに怒られちゃうしね。

多分半月くらいで終わるっしょ!




ゾルダン艦長はヤマトを警戒して出てきませんでした。
これが後でどう響くか…。取り合えず新超重砲はU-2501を狙うことになりそうですね。
つまり今回の話が今後の展開を原作の展開から離れていくきっかけになったのです。
作者の心はガクガクブルブルしています。


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第四話

次は一月二日と言ったな。あれは嘘だ。

rewriteアニメ2016年夏放送ですよ、これはもうお赤飯炊くしかないすっよ!

これで作者が2016年に見るアニメが3つに増えました。(他はジョジョ第4部とヤマト2199の続編)


波動エンジンの修理と改造は終了。今は初期始動用のエネルギーを注入しているよ。相転移エンジンがフル稼働だよ。それも今日中には終わるけど。

少なくとも明日までには終わらせないとまずいって艦長に言われたしね。何でも『蒼き鋼』の反対勢力が明日乗り込んでくるとか。

千早さんはこの島を放棄するらしくて防衛設備を全てナノマテリアルに還元、イ401の補修に充てたらしいしね。そうでもなきゃ貴重なチタンをくれる訳無いけどね。

ナノマテリアルにユニオンコア…。作ろうかな。でも私は技術長の席をを咲耶ちゃんに譲ったしなぁ。でも咲耶ちゃんなら自分で作ろうと思ってるかもね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっしゅ!誰か噂してるのかな?私はナノマテリアルとユニオンコア作るのに忙しいのに」

 

全く、こんなの私以外だと翔子さんしか出来ないことだよ。翔子さんでもユニオンコアの製作は難しいかもしれない。ナノマテリアルは作れたし、ちゃんと動作することもヒュウガさんが試してた。結果は百点満点とのこと。

でもユニオンコアは流石の翔子さんも作れないだろうな。

 

「でさ、何で真琴ちゃんが居る訳?」

 

さっきから狐耳がぴょこぴょこ動くのがすごく気になる。

 

「なんじゃ?儂の尻尾に座りたいのか?」

 

「あ、確かにふわふわで暖かそう…。ってそうじゃないよ!」

 

「別に座った人を駄目にする椅子じゃないんじゃがの。我が主様は毎日座っておるぞ」

 

「暦ちんは好きな動物が狐だからね。そう言うの好きそうだけど」

 

でも毎日座ってるのか…引くなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午前三時。

ヤマトのレーダーに予想通りの反応が現れた。その進行ルートと速度を確認してから私は全艦放送のマイクを取った。

 

「総員に告ぐ。日本から接近してくる揚陸艇を探知した。この速度のまま行くと到着は三時間後、午前六時になる。それまでに発進準備を整えること」

 

唯一の不安は硫黄島を中心として揚陸艦隊の反対の位置に霧の艦隊がいること。

戦艦クラスだけでも二隻は居る。イ401の情報と照らし合わせるとコンゴウ、ヒエイ。

東洋方面第一巡航艦隊がこの海域にまで来てるようだ。恐らくイ401とこの島に向かっている人を纏めて葬り去るつもりだろう。

 

午前五時五十分。

 

「全補給物資積載完了」

 

「艦内気密異常なし」

 

「火器管制システムオールグリーン」

 

「波動エンジン、相転移エンジン、異常なし」

 

「索敵システムの正常動作を確認」

 

発進準備が全て終わった。

 

「ヤマトはこれより蒼き艦隊の出撃のための囮になる。地上港湾までドックを移動させて」

 

囮となる以上目立つように海中から出るより地上から出た方が良い。

 

「補助エンジン始動!出力百パーセント!安定翼展開、助走無しで飛行する!」

 

暗い地下から陽が上ったばかりの少し明るい地上に出る。

 

「ガントリーロック解除!ヤマト発進!」

 

重たいとか飛びにくいとか、そんなことを意に介さずヤマトは空を飛んだ。

 

「艦底部ミサイル発射管開け、目標敵揚陸艦前方。撃ち方始め!」

 

「撃てぇー!」

 

牽制射として一発撃つ。正確には八発だけど。これでも進むんだったら次は当てる。

 

「敵艦回頭、転進しました」

 

「第一関門クリアね。次が本番よ。艦首魚雷発射管はバリアミサイルをそれ以外の全砲門相転移弾頭装填して待機。防ぎ切れない侵食弾頭はディストーションフィールドで対処!第三戦速、霧の艦隊に突っ込むわよ!」

 

我ながら無謀な作戦だと思う。でもこれくらいはしないと勝てる見込みが無い。

 

「艦首に波動防壁最大出力展開!バリアミサイル撃て」

 

艦首魚雷発射管から六発のバリアミサイルが放たれる。しばらく直進すると炸裂、円盤状の波動防壁を生み出した。

バリアミサイルは内部に波動防壁発生装置が入っており起動すると円盤状の波動防壁が展開される。波動防壁発生装置はその中心にあり、破壊されると防壁自体が消失するが、装置自体が球状の波動防壁に覆われているので破壊も困難である。

 

「このまま潜水する。海面との衝突時に全相転移弾頭発射」

 

ここでどれだけの損害を与えられるかがこの戦いの鍵だ。




原作との変更点。
陸軍、上陸すら出来ず。
コンゴウさーん、出番を待ちきれず出て来てしまったようです、艦隊連れて。

要するにタカオは沈まない。要するに愛は沈まないわ!

つまり霧の総旗艦ヤマトやイ402の出番無し。ヤマトとイ402は退屈の概念を手に入れた。


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第五話

なんやかんや合って今日二本目です。でも後悔してません。
右手首がすごく痛いですが…。

原作から結構かけ離れたコンゴウ艦隊戦の前編です。後編も早めに出します。
その後後日談的なもの(後編で書かれるかも知れません)を書いて蒼海世界編終了とします。(短いって言われても原作ストック的にね)


「着水まで十、九、八、七…」

 

カウントダウンが始まる。

そして三とカウントされたとき、私は命令を出した。

 

「全砲門、撃ち方始め!」

 

「撃てぇー!」

 

命令を受け取った砲雷長が各砲門に指示を出す。

主砲副砲が全て横を向き、舷側短魚雷と艦尾魚雷発射管やミサイル発射管のカバーが開く。

それぞれ砲弾、魚雷、ミサイルを撃ち出した。

今回使用した弾頭は相転移弾頭。起動条件を満たすとその場で相転移エンジンの中で起こっている相転移現象が起こり、周囲の物質やエネルギーを消滅させることが出来る。

この弾頭の前には波動防壁もクラインフィールドもディストーションフィールドも効果が無い。

炸裂した五十三発の相転移弾頭はその場で七色の光を伴う相転移現象をおこし範囲内の物質を消滅させた。

しかし、ヤマトも少なからず損害を受けた。一度に二百を超える侵食弾頭を受けディストーションフィールド発生装置の損傷、第一主砲消滅、第二副砲と煙突状構造物消滅、右舷対空砲および短魚雷発射管の消滅、左舷安定翼損傷、左舷展望室消滅、後部カタパルト一部消滅、第三艦橋前方の高圧対応格納庫消滅、レーダー損傷による索敵範囲の低下。魔の艦長室も消滅。艦体の五分の一消えている状態なのにまだ中破よりの小破となっている。

 

「一気に海底まで潜るわよ!煙突ミサイル撃ち方始め!海中を掻き乱して」

 

「了解、通常弾頭を選択。撃てぇ!」

 

霧の技術でも水中ではソナーに頼るしかない。その点、私達のほうが有利。コスモレーダーをソリトンレーダーに換装したから水中だろうとジャミングだろうとお構いなしに使うことが出来る。ただ索敵範囲は五十光秒から一光秒にまで縮んでしまったけど。(しかも今はさらに狭くなってる)

話を戻すと海中を荒らしてしまえば霧がヤマトを見つけることは困難になるのだ。

 

「敵艦隊健在、消せたのは軽巡および駆逐艦です」

 

どうやら一瞬で相転移弾頭の弱点を見切られたらしい。

相転移弾頭の弱点は効果範囲が狭いこと。それが分かったクラインフィールドを張れる艦は出来る限り遠くにクラインフィールドを張って無効化したのだ。

 

「そして相転移弾頭じゃクラインフィールドにエネルギーを蓄積することもも出来ない…か」

 

エネルギーを与えるのではなくエネルギーを消すのでクラインフィールドにとってはそこにはまだ()()()()()ことになる。

だからクラインフィールド持ちにとっては損害ゼロとなる。

 

「イ401とタカオは」

 

「作戦通り硫黄島から離脱、現在は合流地点に向かっています」

 

そもそも今回の作戦は戦力的に劣っている蒼き鋼を支援、霧の艦隊を撃退し、青き鋼と合流することである。

 

「イ401と通信できる?」

 

「量子通信、超空間通信共に反応ありません」

 

千早艦長からその場合の対応も聞いている。それは単艦でも独自行動。

となると今一番の脅威は索敵能力の強いヒエイとナチ。この二隻に気付かれず移動することは困難だ。

 

「だったら大きく動いた方が良いわね。海面へ浮上する。波動エンジン始動!上昇角八十五度よ!」

 

「りょ、了解!上昇角八十五、浮上します」

 

「波動エンジン全炉心始動、出力最大値だよ」

 

「ヤマト海面に出ます!」

 

ほぼ垂直に海面に飛び出した。少しだけ前に傾いてるから前に倒れる。あ、第三艦橋大丈夫かしら?

 

「衝撃に備えよ!」

 

そして艦底部を海に叩きつける。その衝撃でも一切の損傷が無い。

 

「脚を止めないで!第二戦速、主砲副砲撃ち方始め!」

 

第二戦速でも五十ノットを出す戦艦。恐ろしいわね。

残った第二第三主砲と第一副砲が青白い光を放つ。

 

「余剰出力を波動砲に回して、牽制射三連!」

 

「了解!波動エンジン出力八十パーセント、波動砲発射シーケンスに移行」

 

「波動砲エネルギー充填率六十、七十九、八十四、九十七,百八、エネルギー充填率百二十パーセント」

 

「ターゲットスコープオープン、電影クロスゲージ明度十五、総員対ショック対閃光防御」

 

「照準固定。波動砲発射まで十、九、八、七、六、五、四、三、二、一、波動砲ぅてぇぇえ!!」

 

艦首にマイクロブラックホールを作りそのホーキング輻射に指向性を持たせ撃ち出すヤマト最強兵器。その莫大な熱量が海水を一気に蒸発する。しかしその一撃はどの艦にも当たらず直進し、やがて雲を突き抜け、大気圏を離脱した。

 

「第二射、てぇえ!」

 

戦術長は第一射の号令でお疲れのようです。絶対艦長の次に疲れる役職だよあれ。

その一撃も当たらない。というより当てない。

 

「第三射、撃てぇ!」

 

結局通常兵装と同じ号令になってる。お疲れ様です。

どの艦にも当てないのに三発も撃った理由は霧にデータを取らせる為だ。そしてその威力の数値を見て撤退してくれればとても嬉しい。

 

「量子通信全周波数放送出来る」

 

「大丈夫です。いつでも行けます」

 

力強い返事を返す。それに答えて私はマイクを取る。

 

「こちら恒星間航行用超弩級宇宙戦艦ヤマト。今のは牽制射です。これ以上この海域に留まるなら、次は当てます」

 

さて、大戦艦コンゴウはどう出るのかしら。




次の世界は作者の一作目の世界です。リメイクも兼ねてます。リメイクと言うよりリライトですけどね。


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第六話

霧はメンタルモデルを持つことにより人に近い思考が出来るようになった。

それは霧相手に脅しが出来ると言うこと。

実際に千早艦長は超重力砲一発とハッタリでタカオを撃退したそうだ。

私はそれを波動砲三発と脅しに変えただけ。理論的には行ける筈。

行ける筈なんだけど退却行動をしないし、そもそも返信が無い。

 

「支配海域を奪還するつもりは無い。ただ今から二十四時間この海域から離れるだけで良い。この条件さえ呑んでくれれば私達もこの海域から離脱する。もし反対するつもりならもう二、三発今の攻撃をあなた方へ向けて撃つ」

 

ようやくコンゴウ艦隊が動き始めた。全ての艦が東、つまり太平洋に向かい動き始めた。

良かったー。心臓止まるかと思ったー。実は波動砲撃てません、エンジン出力極低下、航行不能です!

 

「戦闘配備解除。これより蒼き艦隊との合流地点に向かう。艦体修理はエンジンを優先。以上」

 

蒼き艦隊と合流したのはそれから三時間後だった。

向こうから来たんだけど合流は合流でしょ。

簡単にここであったことを千早艦長に報告する。

 

「千早艦長、結論から言うと硫黄島周辺の海域には後二十一時間霧の艦隊は来ません。ですがそれは一時的なものなのでそれ以降は再び霧の支配下に置かれると思います」

 

「そうでしたか。助かりました、これで我々はアメリカに向けての行動が出来る」

 

「そうですか。蒼き艦隊の航海の無事を祈ります」

 

「あなた方はまた別の世界に行かれるのですか?」

 

「ええ、ここまで傷つくと本格的な修理が必要ですのでヤマトを造った世界に一度帰ります。…またいつかお会いしましょう」

 

「ええ、また会いましょう」

 

第一艦橋に居たメンバー全員で敬礼をする。イ401のクルーも答礼する。少し名残惜しいが通信を切り、何とか復旧した波動エンジンを始動させ、ヤマトはこの世界から飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日談と言うか、今回のオチ。

しばらくぶりの語り部の仕事だ。まさかここまで干されるとは…。

まずヤマトが訪れた世界は俺たちが生まれ育った世界。一ヶ月ぶりである。

というよりまだ俺が死んでから一ヶ月と二週間しか経っていないのだ。長いようで短かった。

この世界に来た理由は帰省である。なんたってもう十二月だ。

言っていなかったけど俺が死んだのは十月十三日、二学期中間テストの初日だ。それから一ヵ月半。

何と一ヵ月半ととてつもなく長い休みを頂いた。

ひゃっはー!水だー!

なぜかテンションが世紀末の悪役になっちまったよ。

それにしても長すぎる休みだ。何をしよう。

 

「そうだ別世界に行こう」

 

そして後日談から前日談になる。

 

「なんじゃお前様。とうとうおかしくなったのか?」

 

布団の上に座りながら自分の考えを言ったら真琴に文句(というより馬鹿にされたのかな?)を言われた。

あ、場所は俺の家だよ。俺と渚と真琴は勿論、木野村兄妹も俺の家に泊まってる。それでもまだ部屋に余裕がある。うん、広い家だ。

 

「何言っておるんじゃ。髪の毛一本抜かれたいのか」

 

「お前こそ何言ってるんだ?お前も行くんだよ」

 

後その地味な嫌がらせはマジでやめろ。

 

「何で私まで…」

 

「あれ一人称が戻ってる」

 

「あーこれか。『儂』と言う字は『わし』と打ち込んでも変換されないから作者がめんどくなって戻したんじゃ」

 

諦めんな作者。

どうでもいいけど。

まさしく戯言だぜ。

 

「と言う訳で行くぞ別世界。取り合えず今回は二人だけでな」

 

「どうやって行くんじゃ?」

 

「真琴さん、無限の力で何とかして下さいよぉ」

 

「なぜに仗助みたいになっておるんじゃ?」

 

そしてわざとらしく咳払いをする真琴。

 

「そう言えばジョジョ四部が画面の前の世界ではやるらしいのぉ。この世界は既に六部まで放送されているが…」

 

「いつにもましてメタ発言多くないか?」

 

「別に良いじゃろう。出発は明後日で良いかの?」

 

「何かやけにやる気があるな」

 

まあ良いさ。どうせこいつも退屈なんだろう。

そして二日後。俺と真琴は皆に見送られつつ、別世界へ出発した。




蒼海世界編最終話!群像さんのキャラが分かりにくく書くのに苦労しました。(その結果彼の出番が減った)
実はヤマトは後千文字くらい暴れる予定でしたが、やりすぎるとコンゴウさんが死んでしまうのでカットしました。でも安心してください、その活躍は次の次の世界でお見せします。
と、珍しく後書きらしいことを書きました。
次回からは私の第一作を元に書いていきます。
次回の更新は四日以降です。


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殺神世界編
第一話


どうやら予告より早く仕上がってしまうことが多いようです。
予告より遅いとか予告を最後に失踪よりはいいですけどね。


気が付くと家の庭とは違う所に居た。しかし今まで訪れた世界ほど現実からかけ離れた景色は無い。失敗して別世界への移動じゃなくて、ただ単に違う場所へ瞬間移動したと思うくらいによく見る普通の住宅街だ。

てか住宅街はやめろよ、誰かに見られたらどうするんだよ。って真琴どこ行った!?

 

「五月蝿いぞ、私は今お前様に憑依してる状態じゃ。ちと疲れたわい」

 

「あっそ。で、この世界はどんな世界なんだ?」

 

「そうじゃの、上の方から一体悪魔みたいなものが近づいてくる以外は普通の世界だと思うぞ」

 

そう言われて視線を上げる。

そこにはオカルト雑誌で見たことがあるモスマンみたいな生物がもの凄い勢いでこちらに突っ込んでくる姿が見えた。

 

「はぁ?何だよこの世界は!いきなりUMAのお出ましかよ!?」

 

モスマン。確か千九百九十年代にアメリカで目撃された、体長二メートル前後の蛾人間である。確か時速百キロで飛ぶ。

そしてあいつは今高度を下げている。つまり加速している。このままだと俺はまた死ぬよ?ルパン並みの生命力を持っていない大倉暦は死んじゃうよ?

しかし予想に反してモスマンは地上十メートルくらいの位置で急停止。ホバリングを始める。

しかし止まってくれたお陰でやり易くなった。

 

「結、滅」

 

久しぶりの結界術。うん、思い出した思い出した。

しかしモスマンの死体は残せなかったか。あれを世界に発表すれば億万長者になれたのに。

 

「まあ、大体は真琴の所為だな」

 

「おい、何でそこに私の名前が出てくるんじゃ」

 

「おいそこの人、お前何物だ!」

 

思わぬ声に一瞬思考が停止する。

もしかして、見られちゃった?

声のする方を見るとさらに驚く。そこには茶髪に赤目の少女が居た。

それだけならそこまで驚かない。そんな特徴を持つ人なんて腐るほど見てきた。

しかしその少女の顔は緑川翔子さんにそっくりだった。

こちらの方が小柄で幼い印象があるが、顔のパーツ全ての特徴が俺の知ってる翔子さんと瓜二つだ。

 

「翔子…さん?」

 

思わずそう呟いてしまうほどにそっくりだった。

 

「なっ!お前なんで私の名前を!?」

 

どうやら聞き取られてしまったらしい。やれやれ、説明するのはめんどくさいぞ。

 

「くそ、こんなことならあのモスマン倒さなきゃ良かった」

 

「モスマン?お前はあれをUMAだと思っているのか?」

 

ああ、あれか。別世界の同一人物と言う奴か。それなら納得だ。てか翔子さんは『お前』なんて言葉は使わないし。

 

「質問に答えろ!」

 

「へ?」

 

俺に出来たのは考えることを一旦やめ、少女の方を見ることだけだった。

直後腹部を襲った激しい痛みに俺は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何なんだこの女の人。

怪しげな攻撃で下級とはいえ妖魔を一撃で消して、さらには私の名前まで言った。

今は私のパンチで気絶して伸びてるけど。あれいつの間にか二人に増えてる。しかもいつの間にか現れた方は頭から動物の耳と、お尻の辺りからは九本の尻尾が生えてるし。まさか…。

一度私の家まで運んだほうが良さそうね。

 

「菜坂、聞こえる?」

 

「翔子ちゃんか、どうしたんだ?」

 

「不審者二名を拘束したわ。迎えに来て。場所は」

 

「場所は分かる、そこを動くなよ」

 

しばらくすると全身黒い格好をした男が現れる。

 

「遅かったわね」

 

「しょうがないだろ、幾ら魔法でも二つ分の担架を作るには時間が掛かるんだ」

 

「移動しながら作ればいいじゃない」

 

「その手があったか!」

 

この人は馬鹿なのか天才なのか分からない。しかし現状数少ない仲間の一人だ。

 

「しかしこの少女は良いが、こっちは神様なんじゃないのか?」

 

「そうね、確かに妖魔とも妖精とも思えないわね」

 

むしろ妖怪。しかし妖怪なんてものは昔話の中だけの話だし、恐らく神だろう。

 

「だとすると気を失ってる間に片付けたほうが良いな」

 

そう言いつつ魔法でナイフを作る菜坂。そのナイフが神の喉を切り裂こうと振り下ろされる。

だけど途中で何かに阻まれる。

いつの間にか復活していたもう一人の少女がナイフを刀で受け止めたのだ。

どこから出したのかは知らないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前たち、これ以上真琴に手を出すと、次は斬るぞ」

 

深爪はあのナイフを受け止めたらそこから折れた。一晩もすれば生えてくるけど。

 

「真琴、起きろ。取り合えず逃げるぞ」

 

「あうー、すごく腹が痛いわい。これはどう言う状況じゃ?」

 

「よく分からないが取り合えずあの二人がお前を殺そうとしていた。恐らく敵だ、憑依するんだ」

 

「分かっておる。…しかし、いや、今は良いか」

 

意味深な言葉を言いながら真琴が俺に憑依する。

後でこの意味を聞かないとな。




この章は私の過去作を元に作っています。理由はその過去作が黒歴史だからです。
どうにかしたかったんです…。


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第二話

真琴ちゃん誕生日記念。CANONNに限らずkey作品で一番好きなヒロインです。


「逃げるんだよー!」

 

逃げれば生き残れる。生き残ればチャンスが来る。しかし逃げれるかがここでは重要だった。

一応波動カートリッジ弾頭を使った拳銃を持ってきてはいるけど、あれを人に使いたくない。

 

「でも、そんなことを言っていられる状況じゃ無いよな!」

 

拳銃を取り出し二人より少し手前側の地面に撃ち込む。

小さな弾丸だけどその中には波動エネルギーが込められており着弾地点を中心に広範囲を破壊することが出来る。

これは波動カートリッジ弾頭の試作品であり、それを咲耶に無理言って持ってきた。

 

「真琴、瞬間移動は行けるか?」

 

「私の霊力は無限じゃから行けるが、今の術者はお主じゃ。お主が瞬間移動できるかどうかじゃな」

 

「じゃあ無理。俺一回もやったことが無い」

 

「なんじゃ!あやつ変身したぞ!」

 

「へ、変身?」

 

マジか能力者かよ。

体に変化は見られないが服装や髪が変化していた。

そう、まるで魔法少女みたいに。しかも飛行してるし。

ふざけるな昔のプリキュアは飛ばなかったぞ。飛んでも最終話限定の強化された状態だけだぞ。

それなのに最近のプリキュアは簡単に飛びやがって。だから見るのをやめたんだ。

 

「お主、あれを見てたのか…」

 

「何だよ、お前も男が女児向けアニメ見るの反対派かよ」

 

「そう言う訳じゃないが…。って、現実逃避を始めるなよ!」

 

あぁくそ。現実に戻ってきてしまったか。

ぐしゃり。と変な音が聞こえる。

ん?何の音?しかも何かいやなところから聞こえてきたんだけど。具体的には俺の左胸から聞こえた。左胸って確か心臓があるとこだよね?

 

「また…かよ」

 

これで致命傷受けたのは四回目か。呪われてるな、俺。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めた。

なんか背中が痛いな。そう言えば何かに刺されたんだよな。

今まで引かれたり撃たれたり斬られたり溶かされたり刺されたりしたけど、心臓を刺されることは思ったより痛かったな。

普通なら死んでいたけど真琴が憑依していたお陰で何とか生きてるし傷もある程度良くなった。

真琴はまだ寝てるようだ。居ることには居るけどこいつは寝たら起きない奴だからな。二千年悠々自適に暮らしてたからだろうか?

ここはどうやら牢屋のようだ。そこまでは納得できる。あちらからしたら俺は正体不明の少女だからな。

しかしなぜ俺は駿河問いをされているんだろう。しかも下着姿で。かなり苦しいんですけど。絶望先生のOPかよ。

 

「すみませーん、誰か居ませんかー?」

 

誰か居ないとこよみんは脱出しますよー?

 

「そんなに叫ばなくても良いですよ」

 

ありゃ誰か居たのか。横を向くと金髪碧眼の女性が居た。てか胸でけぇ。これが格差社会か。取り合えずこの人を無力化して、ここから逃げないとな。

 

「天光満つる処に我は在り、黄泉の門開く処に汝在り、出でよ神の雷よ、これで終わりよ、インディグネイション!」

 

天井から大きな雷(かみなりじゃないわ!そこのとこもよろしく頼むわねっ!)が落ちてきた。変な電波を受信下気がするが。

リタに変身したんだったら洗濯機の方が効率が良いかも知れないけど、この術の方が好きなんだよなー。

変身して体が小さくなったことも計算に入れてリタを選んだ。小さくなれば縄から抜け出すことなんて簡単だ。決して縄から落ちたりしてない。

 

「さて、逃げるか」

 

走ろうとした所で足首を掴まれる。見るとさっきの女性が俺の足首を掴んでいた。しかも無傷で。

 

「あらあら、逃げちゃ駄目でしょ」

 

かなり強く握られている。血が止まって足が痺れてきた。

 

「さて、しょうがない。何でも訊いていいぞ。拷問されるのは嫌だからね」

 

抵抗を諦めました。

 

「ふふふ、じゃあお名前は?」

 

「大倉暦、今は訳あって捕まっている」

 

「そのようねぇ。じゃあ次の質問。君は何物?」

 

「簡単に言えばいろんな世界を旅する性転換者?」

 

中々的を射てると思う。そこまで旅してないけど。この世界で三つ目か。

 

「へえ、この世界にはどう言う目的で?」

 

「まあ、観光かな。久しぶりの休みだからね」

 

「普段はどう言うことをしているの?」

 

「そうだな。普段は千人近くの人と別の世界に行って、その世界を滅亡から救う仕事だな」

 

「そう。…今日はこの辺にしておくわ。しばらくこの部屋で過ごしてね」

 

そう言って牢屋から立ち去る。

さて、見張りが居なくなったから脱出しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「翔子ちゃん。あの子、もしかしたら味方になるかもよ」

 

「ソフィアさん、どう言うことです?」

 

私が屋上で星を見ていると、例の少女の尋問を担当していたソフィアさんがそんなことを言ってきた。

 

「あの子、異世界から来たそうよ。しかも仕事は世界を滅亡から救うことだそうよ」

 

何だろう、そんなのおとぎ話にしか思えない。でもソフィアさんが嘘を吐くとは思えない。

 

「よく分からないのだけれど…。しかもその本人がそこで盗み聞きしてるし」

 

後半は大きな声で言う。屋上の入り口のドアの影から橙色の髪をした少女が現れる。

 

「あれ、見えてました?」

 

少しおどけた様子でそう言う少女。一つだけ言わせて貰いたい。服を着ろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、寒い。この世界は今夏のようだけれど、それでも下着姿は恥ずかしいし寒い。

そんなことはどうでもいい。気になるのは彼女らの会話だ。

 

「まさか、この世界も滅亡の危機にあるとでも言うのかよ」

 

二人の内翔子さんに似た方がそれを肯定するように頷いた。

どうやら俺が行く世界は滅ぶことになるらしい。




今回変身した人
リタ・モルディオ(テイルズ オブ ヴェスペリア)
見た目は子供頭脳は大人的な少女。この見た目で実は十五歳だったりする。
さらにツンデレだったりおばけが怖かったり猫好きだったり、萌え要素は作中随一。
しかし料理は余り出来ないためそこだけは注意。


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第三話

傷物語見に行きたーい。
その前に誕生日記念二本目だ!正直疲れました。
しばらくキーボードに触りたくありません。マウスだけで出来るPCゲームでもやってきます。


どうしようか。別に刺されたことは恨んでない。慣れって怖いね、死ななきゃ良いと思えるようになってるよ。

迷っていると俺を尋問した人が口を開く。

 

「もしかして救ってくれるの?」

 

本当に迷うな。見返りが無いんだよな。…あれ?いつものことか。

 

「本来なら休暇中だけど、仕方ない。休日返上で働きますか」

 

多分ボーナスは出ないけど。でも普通、こんな怪しい人に頼ろうとするかな?

まあ、この世界がそこまで追い詰められていると言うことだろう。

 

「さてと、そうと決まったらまず一つお願いがあるんだけど」

 

これは俺にとってすごく大事なことなんだけど。

 

「何かしら。部屋?食事?お金?それくらいなら幾らでも」

 

翔子さん似の少女がそう言う。でもそんな物に興味は無い。今必要なのは一つだけだ。

 

「服を返して」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後なんやかんやあって服と持ち物を返してもらった。同時に牢屋から出され、ちゃんとした部屋に連れられた。勿論二人部屋だ。

そして食事に誘われた。俺としては拒む理由も無いのでその誘いを受ける。どうやらそこで説明もしてくれるらしい。

 

「食堂まであるのか…。ここはどういった施設なんだ?」

 

牢屋と食堂がある施設なんてかなり絞られるけど、それらにここは該当しない。

 

「その説明もするわ、まずは中に入りましょう」

 

中は少し狭いが食券式の普通の食堂だ。

生姜焼き定食を注文し、空いてる席へ座る。

うん、美味い。

 

「じゃあ、まず君の名前は?」

 

「緑川翔子よ」

 

「名前どころか名字も同じかよ…」

 

「私と同じ名前の人が居るの?」

 

「名前どころか姿まで同じ人が仲間に居る」

 

性格は違うな。翔子さんは何と言うかのんびりしてる感じがするけどこちらの翔子ちゃんは少し凶暴そうだ。

 

「それでこの世界はどう言った状況なんだ?」

 

かなりやばいなら援軍呼ぶことになるからな。先に確認したい。

 

「そうね、少し前から神を名乗る変な奴らが現れて皆を攫って行ったのよ。その結果この辺りは勿論この国のほとんどの人が居なくなってしまったわ」

 

「じゃあ何で君たちは無事なんだ?」

 

「信じられないでしょうけど、ここに居る人たちは皆魔法使いなのよ。私達の魔法ならあいつらに攻撃することが出来る」

 

「分かった。次に俺を襲ってきたモスマンみたいな奴は?」

 

「あれは神が造った妖魔よ。簡単に言えば下僕かしら」

 

「なるほど。じゃあ次はそっちの番」

 

「もういいの?ここがどう言った所かも知りたくないの?」

 

「ここは君たちの基地みたいなものなんだろう?大体分かった」

 

「せ、正解よ。えーとじゃあ、あなたの名前は?」

 

「大倉暦、本当は男だったが色々あって女になってしまった」

 

コナン君みたいなカッコ良い自己紹介のフレーズが思いつかん。

 

「そ、そうなの。じゃあ、暦があの妖魔を退治した方法は?」

 

「あれか。…もしかして見えた?」

 

「ええ、あの透明な箱よね」

 

見えてた。普通の人には見えない設定なのに…。

 

「あれは結界だよ。こんな感じに」

 

そこまで言って机の上に結界を作る。結とか滅とか言わなくてもいいように改良したぜ。

 

「空間を周囲から区切ることが出来る。さらにこうやって」

 

ポケットに入っていたレシートを結界で囲う。何でこんなの入ってるんだ?まあ、ごみだしちょうど良かった。

 

「こんな感じで滅することも出来る」

 

滅してみた。この程度ならカスも出ないか。

 

「すごい、便利なのね」

 

「俺一人じゃあそこまで大きく結界を張ることは出来ないけどな」

 

「じゃあどうやって、あんな大きさの結界を?」

 

「それは真琴の力を借りてるからだ。あいつは無限の力を持った神様だからあれくらいは出来る」

 

そう言えば神様は今まで訪れたどの世界でも呼び出せたんだけど、この世界では呼び出せない。考えられる可能性としては普段俺が居る世界とこの世界では、存在する神が違うことだ。この世界の破壊神はいつもの黒髪ロリ破壊神ではないと言うことだ。

 

「ご馳走様。後痛み止めの薬は無いかい?流石に背中が痛い」

 

深いとこは治したけど、激しく動いたら開きそうだ。




冬休み終了のためこれ以降は更新ペースが落ちて行きます。
執筆状況は活動報告にて随時報告させて頂きますので、そちらを確認してください。


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第四話

うーん、中々新キャラの名前が思いつかない。大体使い捨てのキャラですし。リサイクルも考えないと…。


各世界には平等に時間が流れている。例えばある世界Aで一秒経ったら別の世界Bでも一秒経っている。

しかしそれぞれの世界が始まったタイミングが違うため俺が死んだ世界では冬だったものが今居る世界では夏になっている。

何が言いたいかと言うと時差ボケ起こしました。余り眠れなかった。その分気絶してたからそこまで眠くないけど。

そんな訳で朝になった。この世界にはここに居る人以外居なくなっているから本当の静かな朝である。車一台見かけない。

真琴は先に起きたらしく、先にどこかへ行ったようだ。状況分かってるのか?

何をしようかと考えているとドアをノックする音が聞こえてくる。

 

「はいどうぞー」

 

「暦さん、おはようございます」

 

「ああ、翔子ちゃんか。おはようごさいます」

 

「なんで皆私のことをちゃん付けで…」

 

他の人は知らないが俺は区別するため。だって同姓同名の人が居るし。

 

「で、何の用?」

 

「朝ご飯一緒にどうです?」

 

「ああ、いいよ。所で真琴知らない?」

 

「真琴さんは見てませんね」

 

あいつどこに行ったんだよ。ま、あいつが死ぬとは思えないし大丈夫か。

 

食堂は混んでた。この時間だから当たり前だけど。

 

「所でこれだけの食材をどこから入手してるんだ?」

 

「知らないほうが幸せだと思います」

 

真田さんも似たようなことを似たような場面で言ってた気がする。つまりはオムシスかな?確かにあれは…知らないほうが幸せだな。

 

「つまり○○を××して【禁則事項です】が【閲覧禁止】にしてるのか」

 

「何で分かるんですか!?」

 

「それと同じようなものを扱ったことがあるんだ。そんなことよりご飯にしよう」

 

「そうですね。席は確保してるのでそこは大丈夫ですよ」

 

確かにこの狭い食堂だと席の確保は難しそうだ。やはり根は同じ翔子さんなんだと思う。細かい所に気が回る。

そして焼き魚定食を頼み、確保されてる席へ案内される。

 

「あっお姉ちゃんこっち!」

 

ここにもう一人翔子さんのそっくりさんが居た。妹のようだ。

 

「この人誰?」

 

「このお姉ちゃんはね、大倉暦って言うんだよ」

 

「暦お姉ちゃん?」

 

「カハッ!」

 

「大丈夫ですか!?今喀血しましたよ!」

 

「………イイ……すごくイイ」

 

妹、萌え。いや、それを超えて妹、蕩れ。状態だ。何だここは天国か?

 

「いや人の妹でヘヴン状態にならないで下さい」

 

駄目か。でも『お姉ちゃん』と言う響きはすごいな。世の姉は皆これに耐えているというのか…。

 

「この子は私の妹の(りん)よ」

 

鈴。…リトルバスターズか…。懐かしいな。

そんなこんなで朝から楽しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒトヨンサンマル。何となくこう言う言い方をしてみたかった。

だって今戦闘中だし。ああうん、妖魔って弱いね。

結界は使ってないよ。絶界は使っているけど、それだって深爪に纏わせるように使っている。だって深爪は刀としては切れ味悪いんだよ。

深爪は能力を受け付けない効果があるけど結界は能力じゃなくて技だから問題ない。

残りは後十五体。十五体のモスマン。ちょっとシュール。

 

「何で一人なんだろうな?」

 

あの組織、戦闘は基本一人だという。もっとも神と戦うときは全員出撃だけど。

 

「馬鹿を言う出ない。一人と一柱じゃろ」

 

実際に戦っているのは俺だけだぞ。

 

「あとは全部結界で囲うか。新しい結界も試したいし」

 

まずは一体だけ囲う。するとモスマンは押し潰されるのではなく結界ごと爆発した。

 

「成功か、でも改良が必要だな」

 

残りも同じように爆破結界で囲い爆発四散。完全勝利だぜ。



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第五話

最近一話当たりの文字数が少ない木がする…。


妖魔の退治が終わり、帰ろうとしたときだった。

 

「茶番は終わりだ。死ね、異世界の者よ」

 

頭上からそんな声が聞こえた。

咄嗟に前へ跳び前転。マットの上以外でやるものじゃ無いな、頭が痛い。

そんなことがどうでも言いと感じられるくらいの衝撃が俺がさっきまで立っていた地面を砕く。

土煙が納まると、そこには筋骨隆々の男が立っていた。恐らく人では無いし、妖魔でもない。間違いなく神様だ。

お互いがお互いを確認すると、神がこちらへ向かって右腕で殴ろうとしてくる。防御は無理だ。文字通り骨が折れる。かと言って回避も難しい。距離が短すぎる、間に合わない。

 

 

「ぐわああぁぁっ!!」

 

仕方なく腕を十字に組みパンチが当たると同時に後ろに跳ぶ。それでも前に出していた左腕の骨が折れた。もしかしたら右腕の骨にはひびが入ったかもしれないと、吹き飛ばされながら確認する。

仰向けで十メートルも吹き飛ばされるなんてドラゴンボールでしか見たことが無い。

背中を地面と擦り付けながら停止。全身の痛みに耐えながら立ち上がる。

あれ?奴が居ない。

 

「うぶぇ」

 

そう思った瞬間に背中に鈍い衝撃を感じる。さっきのよりは威力が低く、その場にうつ伏せに倒れた。それでも防御無しの状態では女性らしからぬ悲鳴を上げ、口から血が吐き出る威力はある。内臓が一つくらい潰れたかもしれない。

余りの痛さに動けないで居ると奴は俺の首を掴み持ち上げた。う、苦しい。

 

「最後に何か言いたいことがあるか?」

 

そう訊き、少し首を掴む力を弱くした。本当にこんなことを言う奴が居ることに驚く。

だけどそれがこの神の敗因だ。

俺は少し右腕を動かし人差し指を奴に向ける。

 

例外の方が多い規則(アンリミテッド・ルールブック)

 

言うと同時に全身の痛みが引き、首を絞められている苦しさも無くなる。

当然だ死体は痛みや苦しみを感じない。

そして肥大化した人差し指が神の腹を貫いた。流石は不死身の怪異の専門家。威力が違う。

その痛みに耐えかねたのか、首を掴んでる手を離した。

 

「お前様をドーナツにしてやるわい!」

 

台詞は忍だが変身するのはキスショット。同一人物だからこの辺は都合よく解釈されるらしい。

全身の傷が全て癒えていく。日光による炎上からも再生させるため普段より再生力が落ちているがそれでもあっという間に再生した。

心渡を取り出し神を切り刻む。流石は怪異殺し、神と言う怪異も問題なく切れた。

しかし相手も神と言うだけあって、キスショット程ではないが、すぐに再生している。

 

「くっ、なぜ異世界の住人が我らに敵対する!?」

 

「気まぐれだ!」

 

神からの問いに適当に答えつつもう一太刀浴びせるため距離を詰める。

そして心渡を振り、右腕を切り落とす。

怯んだ所で背後に回りこみ、肩の付け根にかぶりつく。

エナジードレイン。

相手の体力精神力回復力全て奪うことが出来るこのスキルはこの神には効果的だった。

たっぷり五分。

全てを吸い尽くされた神は何一つ残すことなくこの世界から消え去った。




この世界後三話くらいしかないんですよね。
次の世界は最近ネタに使ったあの世界です。つまりは二次創作です。


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第六話

「くそ、どうしてこうなった…!」

 

崩れていく拠点ビルを見ながら俺は叫んだ。

さっきまで皆と一緒に居たのに、その大半はもう生きてはいない。

神の一撃で皆が死に、その次にビルが崩れ、生き残った人も例外なく傷を負っただろう。

かく言う俺も左腕を骨折、右足の膝に鉄骨が刺さり体を動かすことも出来なくなった。腰に帯びてた妖刀深爪も根元から折れてしまい何も斬れなくなった。

右手で拳銃を抜き、さっきまでは壁だった天井を撃つ。炸裂した波動エネルギーが壁だか天井だかを破片1つ残さず破壊した。

そして見えてくるのは、十を超える数の神。

波動カートリッジ弾頭は残弾五。例え全て当たっても半分以上残る。

そしてこちらから見えると言うことはあちらからも見えると言うこと。俺に向かって沢山の光線とか電撃とか火炎とかが向かってくる。

右膝を折れた深爪の刃で切り落とし、その場から逃げる。

しかし、速さが足りない。左足首に電撃が当たりくるぶしから先が無くなる。歩行能力ゼロです。

唯一無事なのは右腕だけ。

 

「かかっ」

 

キスショットに変身して体の傷を癒す。しかし、治りが遅い。恐らく回復の妨害が出来る神が居るのだろう。三十分経ち強制的に変身が解除されるがそれでも傷は治りきってない。それでも両脚は再生した。

 

「ガードスキル、ハンドソニックバージョン2」

 

再び変身する。今度は天使だ。

天使による神への反攻。中二病患者が好きそうな感じだな。

ジャンプ力のみで神がいる地上二十メートルへ跳ぶ。

近くにいた神にハンドソニックを突き刺し、バージョン4にする。刺された場所を中心に肉が盛り上がり体が裂ける。これでまずは一柱倒した。そのまま下にいた神にハンドソニックバージョン4の質量をぶつける。そしてこの神を踏み台にしてさらに跳躍。

 

「ガードスキル、エンジェルスウィング」

 

背中に天使のような巨大な翼を生やし、その翼を振りAMBAC(アンバック)の要領で空中で回転する。その遠心力が乗った翼を神に叩きつけ、よろめかせる。

また光線が飛んで来る。避けられないと判断して骨折して動かない左腕で受ける。二の腕から先がなくなる。

反撃しようとしたところで体が重力を感じ始める。

幾ら天使でも重力には逆らえない。重力に引かれどんどん高度を落とす。着地の瞬間に翼で羽ばたき衝撃を和らげる。

あと十一柱の神々。同じ作戦は通用しないだろうから新しい一手を考えなければならない。

変身を解き、拳銃を取り出す。少なくともあと三柱はこれで倒したい。

しかしこの距離で撃っても当たるとは思えない。

だから走った。崩れたビルに向かって全力で走った。

そしてそのままの勢いで壁を蹴る。壁に足を突っ込み、固定し、抜いてまた壁に足を突っ込むと言う、壁ダッシュで上へ向かった。ふくらはぎまで壁に突っ込んでるから、足が血だらけになる。感染症が怖いぜ。

神との距離が近くなった所で拳銃の狙いをつける。三発、違う目標に撃つ。

しかし片腕で、走りながらの射撃は狙った場所には行かず、運の良かった一発が狙ったのとは違う神の体を崩壊させただけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はこの状況で夢を見ているのかもかも知れない。

だって、暦さんが銀髪の少女になって神を一柱を二十秒で倒して、元の姿に戻って崩れたビルの壁を駆け上って銃でまた神を一柱倒したりしてるんだもの。

もしかしたら血を流し過ぎたのかも知れない。

私は両腕を失った。

右は肩から、左は肘から、それぞれ先が無い。

痛みを感じないくらいには痛いようだ。

暦さんは一人で頑張って戦っているようだ。両足は遠目から見ても分かるくらい真っ赤になって左腕だって無くなっている。それでも諦めずに戦っている。

あ、今度は金髪の少女になった。しかもどこから出したのか、とても長い刀を持っている。さらに左腕が生えてきて足の血もいつの間にか無くなり白い肌を見せていた。

そんな暦さんを見ていると、暦さんと目が合った。その瞬間刀を神に向かって槍投げの様に投げて私の方に跳んで来た。

 

「良かった、翔子ちゃんは生きていたか。両腕が無くなっている程度だな、それくらいなら何とかなる」

 

そう言って暦さんは自分の左腕を右手で千切り、腕から流れる血を私の傷にかけた。

すると私の腕が何事も無かったかのように生えてきた。

 

「暦さんこれって!?」

 

「説明はあとだ。一か八かの賭けだったから何が起こるか分からん。急に理性がなくなるかも知れない。翔子ちゃんは急いで他の人の救助をしておいてくれ。俺は時間を稼ぐ」

 

矢継ぎ早に指示を出す暦さん。それだけ言うとまた神達のほうへ駆け出す。

私は暦さんの言う通りに他の人の救助を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翔子ちゃんを救助して再び神と戦う。

今はキスショットではなく忍野忍十七歳に変身した。こればかりは本当に賭けだった。

しかし俺の能力は大体都合が良いようになっている。今回はキスショットと忍野忍は別人と判断したようだ。

同じ台詞で変身したのに不思議なものである。

前に試したことがあったけど、そのときは同一人物と判断されて変身できなかったのに。

恐らくこれが翔子さんが言っていた『不完全な能力が生み出した不完全な問題点』なのだろう。

 

「これで三柱だ!」

 

神の胸に心渡を貫通するまで突き刺し、そのまま下へ振り下ろす。

流石に疲れてきた。肉体的には吸血鬼の回復力で何とかなっているが、精神的にはもう疲れた。

それが隙になり、神の拳が頭に当たり、ブチブチと何かが切れる嫌な音が聞こえてくると同時に視界が暗くなる。

急に音が聞こえるようになり、目が見えるようになる。何秒経ったのかは分からないが、それは時間を感じる頭が無かったから当然である。

頭が再生したからか、頭が冷え冷静に思考することが出来るようになった。

その結果俺は違和感を感じる。

この世界の神は、それぞれが何か一つに特化している。

俺がこの世界で始めて倒した神や、今俺の頭を殴り飛ばしたのは近接特化型。光線や電撃など様々な物を飛ばしてくる遠距離特化型。他にも防御特化型や回復特化型が居る。

しかし今上げてない型がある。それは創造特化型だ。

ここにこれだけの神が来ているなら、これは総力戦という奴だろう。

だったら創造特化型を連れてくるはずだ。何せ創造特化型は妖魔を作り出すことが出来るからだ。そうすれば頭数が増え、数の暴力で俺を殺すくらいはできただろう。

しかし、連れてきていない。

仮説は二つ。

仮説一つ目、創造特化型の神はもう居ない。

しかし、これは間違っていた。俺は空を見て、二つ目が正しかったことを知る。

仮説二つ目、創造特化型の神が妖魔を作り出すには時間が掛かるOR無防備になる、だ。

空を埋め尽くすほど沢山の妖魔を見て、俺は二つ目の仮説が正しかったことを確かめた。



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第七話

しまった。もうこの章の最終話だ。


空を埋め尽くす程の大量の妖魔を見ても俺は全く動じなかった。

数の暴力は確かに恐ろしい。数の暴力が有効だからこそ戦艦は廃れ、航空機が主力になったのだろう?

うーん、いまいちよく分からない例えだな。前言撤回。俺は動揺しているようだ。

 

「暦お姉ちゃん!受け取って!」

 

後ろから鈴ちゃんの可愛い声が聞こえる。あぁ、鈴ちゃんも無事だったのか、良かった。

安心して振り返ると真琴が鈴ちゃんに投げ飛ばされると言う、ありえない光景があった。

 

「よう、真琴。初めて会ったときを思い出すな」

 

しっかり受け止めて声を掛ける。

 

「かかっ、もっともそのとき私は投げる側だったのじゃがな」

 

真琴の言葉に思わず吹きそうになる。あれはショッキングな映像だった。

 

「さて、取り合えず真琴は妖魔を片付けてくれ。俺はもう一柱神を倒す」

 

「分かった。ある程度片付いたら神にも仕掛けるぞ。あとお前様はさっきからずっと戦って居るじゃろ。余り無理はするなよ」

 

会話終了。同時に走り出す。

俺は心渡を二本持ち再び跳躍する。影を置き去る勢いなんだろうが、生憎今の俺には影が無い。

両手の心渡で挟むように神を斬ろうとする。しかし、その斬撃は神が両手で刃を摘むようにして受け止めたことで無効化される。

すかさず右足の土踏まずから三本目の心渡を出しながら神の腹を蹴る。たった10センチメートルの刃でも腹に刺さると痛いものだ。

その痛みで心渡から手を離したことを感じて、今度は両肩を狙い刀を振り下ろす。こればかりは受け止めることが出来ず両肩から先が落ちる。

それと同時に変身が解ける。だけど――

 

「弾幕はパワーだぜ」

 

――すぐに別のキャラに変身する。今度は霧雨魔理沙だ。

 

「スペルカード発動!【マスタースパーク】」

 

目の前の神へ向けたミニ八卦炉から極太レーザーが飛び出す。レーザーは両肩を失った神とその後ろに居た沢山の妖魔を呑み込み蒸発させる。

俺はミニ八卦炉を横へ薙ぎ払う様に動かし広範囲の妖魔を消し去った。

無理はするなと言われたけど、無茶はするなとは言われてない。

 

「スペルカード発動!【ミルキィウェイ】」

 

星の形をした弾幕を沢山飛ばす。流石にマスタースパークと違って一撃で妖魔を倒すことは出来ないが、その分数がある。

ある程度倒したらようやく星空が見えてきた。

あれがデネブ、アルタイル、ベガ。指差す暇は無いから目でそれぞれを見て最後に全体を見る。

残念ながらミルキィウェイ(天の川)は見えなかった。

って、今は星を観てる場合じゃ無い。

箒に跨り、創造特化型の神の所へ向かう。

 

「貴様さえ、貴様さえ居なければ…!」

 

どうやら相手は相当お怒りらしい。

ミニ八卦炉を奴の顔面に向かって構える。

 

「スペルカード発動!【ファイナルマス――っぐへぇ!」

 

くそ、あとちょっとで倒せたのに。あの他のとは違うラスボスオーラ全開のあいつを倒せたのに…。

あと少しのところで妖魔の一体が俺を拘束し、そのまま急降下し、自殺覚悟で俺を地面に叩きつけようとしていた。

振り解こうにも魔理沙の筋力では脱出することも出来ない。

頼みの綱の真琴は神と妖魔に数で押されながらも必死に動き回りながら確実に妖魔を消し、神にダメージを与えていた。

真琴は自分のことで精一杯。だったら、自分でやるしか無いじゃないか。

 

「スペルカード発動!【ファイナルスパーク】、【ブレイジングスター】」

 

ブレイジングスターはマスタースパークの反動で高速移動するスペルカードだ。しかし、今回はマスタースパークの変わりにファイナルスパークを使う。

そしてファイナルスパークを地面に向けて撃ち、その反動で逆に妖魔ごと空を飛び、再び創造特化型の神の前に躍り出る。

すると全ての神がほぼ一直線上になっている。そう、このために真琴はわざわざ神と妖魔を引き付け、わざと不利な状況で戦っていたのだ。

自分のことで精一杯と言ったがあそこでの自分と言う言葉は真琴ではなく俺を指す言葉だったのさ。

 

「余り人類舐めるなよ!スペルカード発動!【ダークスパーク】」

 

ミニ八卦炉から全てを無に帰す黒いレーザーが出る。それが創造特化型の神も、その後ろに居たほかの神や妖魔も全て全てを無に帰った。

その瞬間、夜だと言うのに周囲が眩しい程明るくなり、網膜が焼け何も見えなくなる。

しかし。

 

「ありがとう、ございました」

 

俺の耳は確かに感謝の言葉を聞いた。その声の主が誰なのかは俺には分からなかったが、不思議とどこかで聞いたことのある声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日談と言うか、今回のオチ。

あの光が消えた…、と言うより、気が付いたら光が消えていた。

これは真琴も同じようで二人して目が点になった。

しかし、周りの風景には見覚えがある。一見ただの住宅街のように見えるが、ここは俺達がこの世界に着いたときに居た住宅街だった。

まさかの二週目かよ!?と思ったけど、振り向けばバットとボールを持って走る子供達を見て安心した。

そして、その子供たちに今日の日付を聞いたら、俺達がこの世界に来た日に戻ってると言うことは無く、時間が巻き戻った訳ではないと言うことも分かった。

つまり神の介入がそもそも無かったことになっていたのである。

しかし、不思議なことに服は破れ、深爪は折れていた。神の介入が無いことになったのに関わらず神との戦いの結果が残っていたのである。

気にはなるが、世界と言うのはこう言う不思議なことに満ちているのかも知れない。そしてそれを解明することは不可能なのかもしれない。

不思議と言えばあのときの感謝の言葉。

どこかで聞いたことのある声なのは確かなのだが、それが誰かは分からない。しかしこの世界で会った人の声では無い気がする。

もしかしたら神にやられた人たちの声だったのかもしれない。

幾つかの謎を残したこの世界だったが、俺達はこの世界から帰ることにした。思えば休暇のつもりで来たのに、逆に疲れてしまった。

最後に翔子ちゃん達に会いに行こうとしたけど、神の介入が無かったことになっている以上、翔子ちゃん達が俺たちのことを覚えてる可能性が限りなく低いので、会わずに帰ることにした。

もしも、これから先。何かの機会があり、この世界に来ることがあればそのときはまた会おうと。

そう心に誓いながら、俺と真琴は元の世界に帰った。




この章は私の過去作のリメイクと言いましたが、どちらかと言うと設定を幾つか使い回してるだけの新作みたいなものになっています。まあ、お楽しみ頂けたのなら幸いです。
つぎの世界は艦これを予定していますが、その前に番外編をやろうかなと思います。思うだけかもしれませんが。
あと、ここで少しだけ今回の物語の解説をします。
実はこの世界は翔子ちゃんの夢の中なんです。彼女は幽霊が出ると言われる場所へ行きそこで呪われ、寝たきりの状態になってしまっています。
この世界での神はその幽霊なのです。そして彼女が魔法少女として戦っていたのは幽霊を追い払うためのものだったんです。
そこへこよみんと真琴が迷い込んでしまったのが今回の物語の始まりです。
あの「ありがとう、ございました」は翔子ちゃんが言った言葉なんですね。
神の介入が無かったことになっても服はボロボロ、深爪は折れてる理由も、そもそも神の介入自体が最初から無く、あったのは幽霊の介入だったからと言うわけです。
以上で解説を終わります。


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番外編
番外編其一 渚過去編


すみません。いつもよりミス多いかもしれません。


あれは確か三十六万いや俺が幼稚園年長になったときだったから十年前だったかなまあいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当時の俺は五歳だったと思う。そのころは今では考えられないくらい社交的だったと思う。クラスの全員が友達で先生とも仲が良かった。

そのまま月日は流れ確か九月に入ってすぐだったと思う。朝の会で先生が暗い茶色の髪の毛のショートカットの女の子を連れて部屋に入ってきた。そしてその女の子を紹介した。

 

「はいみんなー!今日はね、新しくこのクラスで生活する子を紹介するよ!はい、お名前をどうぞ!」

 

親洋渚(しんようなぎさ)です。そつえんまでよろしくおねがいします」

 

この女の子が渚だ。当時の渚は俺の逆で今では考えられないくらい非社交的だった。どこで入れ替わったんだろうか?俺が友達付き合いが悪くなったのは確か小四だったけど。

閑話休題。

まあ、初めて見たときの感想はかわいいとか、ロリっ子最高!とかじゃなく(てか幼稚園児の時点ではロリなんて単語は知らない)暗いと思った。目が死んでた。

遊び時間はみんな外へ出るのに対し、渚はいつも絵本を読んでいた。道徳的な絵本からギャグ系の絵本まで読んでいた。ただ、何を読んでも笑ってなかったが。遊ぼうと誘っても無視していた。それで一回喧嘩になったこともあった。

それから一ヶ月経った10月のある日のこと。流石に1ヶ月経ったので渚はクラスに馴染んでいた。誘えば皆と遊ぶくらいにはなっていた。なぜかそのころから渚は俺に懐いていた。俺はさして気にしなかったが。

話を元に戻すと、その日渚は急な熱で体調を崩してしまった。幼稚園の対応は早いものですぐに早退することになった。だが、いつまで経っても渚の保護者に繋がらないらしい。家にも携帯にも繋がらない。結局渚の保護者が来たのは夕方のお迎えの時間だった。

そしてさらに二ヶ月経った12月。俺は衝撃の事実を知る。それはただの幼稚園児であれば友達に一回は訊くものを訊いたことが原因だった。

 

「なぎのおやってなにしてるひとなの?」

 

渚の当時のあだ名はなぎになった。理由はテレビでかんなぎが放送されたからだろう。

 

「……わたしのパパとママ、しんじゃったの」

 

「…ごめんなさい」

 

なぜ転入時暗かったのか、目が死んでいたのかこのとき理解した。

 

「いいよ、あやまらなくて」

 

「じゃあ、いまのかぞくはなにしてるの?」

 

俺はこれを訊くべきじゃなかった。

訊けたことを要約すると、渚の両親は交通事故で亡くなってしまった。渚は親戚の家に預けられることになった。しかしその親戚は渚を家族として見ず、食事や洗濯などの最低限のことしかしてないこと。

これだけでも訊くべきじゃない理由になるが、俺の場合はもう一つ理由があった。

俺の両親は霊力を扱える人達だ。そしてあの二人は相手の霊力を読み取って心を読むくらいは簡単なのだ。

渚の保護者について知ったこの二人はすぐにこのことを幼稚園と警察に伝えた。それからは早かった。渚の保護者は虐待の罪で五年間牢屋暮らし。その間、渚は俺の家で預かることになった。それからはどんどん明るい性格になって行った。どちらかと言うと戻って行ったの方が正しいけど。

しかし渚の保護者が釈放されてもその二人は迎えに来なかった。なので渚は高校に入学し寮生活をするまで俺の家で暮らして今に至るという訳だ。



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第一回キャラクターコメンタリー

キャラコメの皮を被った雑談、始まります!

注意
今回の話は全く面白くありません。この二人を一緒にするとどうなるか程度の気持ちで書いてます。
面白みの欠片も無いし、大事な話もほとんど無いので飛ばして構いません。
三十分クオリティです。


「読者の皆さんコンバトラー!好きなお菓子はフルーツの森、大倉暦です!」

 

「好きなお菓子は10円ガム、緑川翔子でーす!」

 

「今回はキャラクターコメンタリーの皮を被った雑談をしていきたいと思います」

 

「やっと台本が終わったね。私の好きなお菓子はミルクキャラメルだからね」

 

「作者の奴もうちょっとまともな台本用意しとけよ。まあ、フルーツの森は大好きだけど」

 

「て言うか、作者自身台本に『キャラクターコメンタリーの皮を被った雑談』って書いてるんだね」

 

「文字相手にキャラクターコメンタリーは難しいんでしょう。これも作者がcharlotteのキャラコメに影響されるから…」

 

「原作の時点でキャラコメしてないじゃん。所でこよみん、この話って小説と判断されるのかな?」

 

「世の中には台詞のみのssが大量にあるので大丈夫だと思います」

 

「危ない話だね。あと何で二人だけでキャラコメすんの?」

 

「二人なら交互に話すことになるので一々名指ししなくて済むと言う作者の勝手です」

 

「そんなとこだと思っていたよ」

 

「翔子さんにも質問があるんですが、今度二次方程式教えてくれませんか?」

 

「こよみん、そう言うことは収録後にしてくれるかな?一応録音してるんだから」

 

「声無いんですけどね。作者曰く俺の声は沢城み○きと言う設定らしいんですが」

 

「アニメ化はクオリティ以前に権版がややこしいから無理だけどね」

 

「そう言う翔子さんはゆ○なさんと言う設定です」

 

「何でこよみんがそんなこと知ってるの?私も知らないのに」

 

「主人公ですから!」

 

「そう言えばそうだったね。語り部が主人公とは限らないと言う良くある設定だと思ってたよ」

 

「いやこれシャーロックホームズとかじゃ無いんですし…」

 

「作者の好きな〈物語〉シリーズだってセカンドシーズンは阿良々木君が主人公じゃ無かったじゃん。てっきりリスペクトしたんだと」

 

「どちらかと言うと戯言シリーズをリスペクトしたらしいんですけどね」

 

「戯言シリーズか、図書館には中々置いてないよね。〈物語〉シリーズと刀語は置いてるのに。戯言シリーズも名作なのに」

 

「その二つはアニメ化したじゃ無いですか。その結果知名度が他とは違うんじゃないですか」

 

「戯言シリーズはアニメ化しそうに無いからねー」

 

「いや、rewriteみたいに遅れてアニメ化とか」

 

「そんなことよりこよみん、planetarianはまだアニメ化しないのかな?」

 

「天国を二つに分けないで下さい」

 

「こよみんが安易に他のキャラの台詞を言うとそのキャラに変身しちゃうからやめて」

 

「大丈夫です、設定変えましたから」

 

「どう言うこと?」

 

「ずっと思っていたんですよ。一々そのキャラの台詞を言わないといけないって言うのは欠点じゃ無いのかって」

 

「まあ、そうだね。でもこよみんのその能力の欠点にそんな物は無かったよね?」

 

「そうです、代償でもないし、制約でもありません」

 

「ああ、つまり能力の発動方法は変えられるようになっていたんだね」

 

「ええ、なので変えました。一々声に出さなくても変身する意思を持ってそのキャラを思い浮かべれば変身出来るように」

 

「へえ、少し便利になったんだ。で、それはそれで良いとしてplanetarianはアニメ化しないのかな?」

 

「またその話題ですか。智代アフターとクドわふたーもまだアニメ化してませんね」

 

「こよみんもノリノリじゃんあとKanonももう一回アニメ化してくれないかなー」

 

「流石に三回目は無いでしょう」

 

「じゃあAIR」

 

「高望みしすぎじゃ無いですか?」

 

「いいじゃん、大人なんだから。高望みくらいさせてよ」

 

「え、翔子さんって大人なんですか!?」

 

「こう見えても大人だよ。ちゃんと大学通ってたんだよ?」

 

「へぇ、生前何してたんですか?」

 

「昼は大学で勉強、夕方からは家庭教師のバイトだね」

 

「漫画でよく見る女子大生の日常ですね」

 

「女子大生ですが何か?と言うより、そう言う女子大生の日常が描かれてる漫画って大体少女漫画だよね。こよみんは普段何を読んでるんだい」

 

「マギとかガッシュとか結界師とかコナンとかですかね」

 

「すごい全部サンデー」

 

「そう言う翔子さんは?」

 

「えーと、いなこん、ケロロ、氷菓かな」

 

「すごい全部角川」

 

「でしょー」

 

「威張らないで下さい」

 

「ああ、うんそうだね」

 

「いい大人が威張らないで下さい」

 

「こよみんが私を慕っているのか、貶してるのか分からない…」

 

「落ち込まないで下さいよ」

 

「こよみん、そろそろ文字数が二千字になるし作者が満足しちゃったからお開きにしよう」

 

「えぇー、あと百文字くらいあるじゃ無いですか。もう少し頑張りましょうよ」

 

「そうだね、次いつ書くか作者自身分かってないからね」

 

「次は多分艦これとクロスするそうですよ。でもあの世界にヤマトが居ても邪魔なだけですよね?」

 

「大丈夫だよ。艤装を身に纏って戦うんじゃなくて本物の艦体を使って戦うらしいから。不安なのは作者がそれとは別に本家の設定に沿って艤装を身に纏う方を書きかねないと言うことだね」

 

「ヤマト艦娘ですか。最近は余り見ませんね」

 

「2199の続編やるらしいからまた見れるかもね」

 

「でも多分書かないんじゃないですか。ヤマト艦娘のデザイン考えるだけで大変でしょうし」

 

「そうかもね。あ、そんなこと言ってる間に二千字超えてるよ。そろそろ終わろうか」

 

「そうですね。では今回はここまでです。次の更新でお会いしましょう」

 

「次回は艦これ世界編ですよー」




気が向いたらまたキャラコメ書こうかな。


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第二回キャラクターコメンタリー

キャラクターコメンタリーの皮を被った雑談です。読まなくても何の問題もありません。

三十分クオリティーです。


「これは、あれだね、作者逃げたね」

 

「そうだ、現実逃避だ」

 

「いやいや、作者自身がキャラコメに出てきちゃ駄目だろ。その時点でオーディオコメンタリーになるじゃん。あ、読者の皆さん代打バース。大倉暦です」

 

「作者の猫舌です。しょうがないじゃん。『劇場版 selector destructed WIXOSS』の上映館が遠いんだもん」

 

「絶望したー!余りにも酷い理由に絶望したー!」

 

「電車で行くとして片道七百円くらいだったかな?それでも学生には辛いんだよ。しかも現時点で財布に野口さんが一人も居ない」

 

「余計な買い物ばかりするからだね」

 

「よし決めた。第二部でのお前の年齢は二十一歳だ」

 

「やめろ、(21)はやめろ。てか第二部なんてあるの?」

 

「当たり前だ。この前情報技術検定の試験受けたときに暇だったから考えておいた」

 

「検定試験は真面目に受けよう。その前に情報技術検定ってかなり前だったよな」

 

「確か睦月の中旬だったっけ?」

 

「何で旧暦…」

 

「最近艦これにはまってね~」

 

「そのせいで更新遅れてるんじゃないのか?」

 

「気のせいだよ。艦これといえば、この前雪風と島風が出ました。しかも同時に」

 

「かなりレアだな。検定落ちたんじゃないのか?」

 

「残念だったな。受かったよ…今舌打ちしなかった?」

 

「気のせいだ。所で第二部はいつからやるんだ?」

 

「今やっている艦これ世界編が終わったら暦には高天原まで行って貰って、男の姿に戻って第一部終了だ」

 

「その艦これ世界編だと男の姿なんだけど」

 

「あれは駄目、翔子さんに結構負荷が掛かっているから。最近出番が無いのはそう言うことだよ」

 

「そーなのかー。てか高天原ってあの高天原?」

 

「そう。神様が住んでる高天原。『いなり、こんこん、恋いろは。』知識だけど」

 

「作者は男なのにラブコメを読むのか?」

 

「key作品をやるとそう言う羞恥心が麻痺するんだよな」

 

「多分作者だけだよ」

 

「…ネタが無くなった」

 

「作者、頑張って」

 

「ああ、そうだ。『蒼き鋼のアルペジオ オフィシャルブック 戦闘詳報2059』に収録されてるメンタルモデルとのYES/NO相性診断によると私と相性がいいのはナガトだそうです」

 

「へぇ、俺は?」

 

「喜べ、ツンデレ重巡だ。ちなみに私が好きなメンタルモデルはヒュウガだ」

 

「聞いてねえよ、俺はイオナ」

 

「アニメ版?原作版?」

 

「やっぱり原作版だな。あの頼りになる感じがな。所で一つ言って良いか」

 

「何だ?どんどん言っていいぞー」

 

「あざとーい」

 

「マヤかよ。まあ、確かにあざといな。二つも宣伝したし」

 

「あれ?変身しない?」

 

「メンタルモデルには変身できないぞ。彼女らの本体はユニオンコアだし、ヴァンパイアみたいに他のコアの演算補助を受けていたりと複雑だからな」

 

「所でヤマトのコアって何?」

 

「ゼータコア、ただしギリシア文字じゃなくラテン文字的なっ!」

 

「巫女子ちゃんのネタをパクるな。で、どれくらいすごい演算処理能力を持っているの?」

 

「デルタコアの二十倍という設定。ただし普段はリミッターを掛けているからデルタコアと同程度だ」

 

「うん。全く分からん」

 

「だろうね。そもそもユニオンコアの時点で人類のコンピューターとは比較できないレベルだしね」

 

「艦これ世界編でヤマトに何ダメージ入るんだろう」

 

「大破させるつもりですが何か」

 

「どうやってだよ」

 

「そこは今後のお楽しみだよ。と言う訳でそろそろ終わりまーす」

 

「次回更新は二月十三日土曜日です。多分本編の続きだと思います」



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艦これ世界編
第一話


艦これ世界じゃー!
でも艤装=本物の艦体。
そうでもしないとヤマトのチート性能が発揮出来ない。


どうやら俺たちは艦これの世界に着いたようだ。

しかし、この世界は俺を含めた皆が知っているような艦娘が艤装を身に纏って謎の敵深海棲艦と戦うのではなく、リアルサイズの本物の艦体を持って戦うようだ。艦載機のパイロットを除けば一人で艦を操れるそうだ。

所でこの世界に来た影響かヤマトにも艦娘が出来た。

大和を少し幼くしたような娘だ。妹と言うよりは文字通りの娘かもしれない。貧乳だけどね。

そんなことを思っていると後ろからの謎の力により吹き飛ばされた。

 

「はは、戯言なんだけどな」

 

慌てて言い訳をする。

 

「あなたはそう思っているかも知れませんが、私にはクリティカルヒットです」

 

謎の力の正体はクラインフィールド。本来は霧が持つ物を艦娘であるヤマトが使えるのはこのヤマトが霧のメンタルモデル化されているからだ。翔子さんマジぱないの!

しかもこうなることを予想していた艦長は俺に艦長職を押し付け、渚に索敵、竜也と真琴に攻撃、咲也に技術関係、翔子さんに機関と、全てを押し付けてきた。それ以外の乗組員は全て降りやがった。

さらにヤマトも改造され、艦首および艦尾魚雷発射管は一列三門から二列五門になったり舷側短魚雷発射管も前後に一門ずつ増え片側十門になり、煙突ミサイルと艦底部ミサイル発射管も二門ずつ追加された。他には主砲口径が四十五口径から五十口径、副砲口径が六十口径から六十五口径と、五ずつ長くなったり。喫水線下にも開閉式の無砲身パルスレーザーが取り付けられたり(これは最初から載せる予定だったが緊急出撃の為間に合わなかった)。艦首波動砲は艦首複合特装攻城砲と言うトランジッション波動砲、超重力砲、グラビティブラスト、フォトンブラスターのどれかを選択してそれを撃つ馬鹿馬鹿しい兵器になった。勿論それら全てを一度に撃つことも出来る。その威力は一つの恒星系を星間物質すら残さず消滅させることが出来る。

一番の変更点は相転移フィールドと言う与えられたエネルギーを全て相転移させ無効化してしまうぶっ壊れ性能の防御装備が追加されたことだ。その気になれば艦首複合特装攻城砲一斉発射すら無効化できる。

だから何と戦ってるんだよ。教えてくれよ、頼むから。

他にもロケットアンカーに重力アンカー機能が付いた。これでロケットアンカーを打ち込んだものをその場に固定出来るようになった。

霧の艦隊化させようかとも思ったけどそれは止めといた。これ以上凶悪性能になってどうするんだ。

装甲は強制波動装甲になってるんだけどね。やったねこれでクラインフィールドが張れるよ。ディストーションフィールド展開装置はでかいし整備性も悪かったけどこれなら整備とか必要ないもんね。定期的にナノマテリアルを換えれば良いだけだしね。

あれ?超重力砲と強制波動装甲を載せてる時点でこのヤマトは霧の艦隊の仲間入りじゃね?

閑話休題。

とにかくこのヤマトは貧乳を気にしているのだ。

分かるよ、その気持ち。俺も女になったとき渚の胸を見てどれ程悔しい思いをしたものか。

あ、言い忘れてたけど、今の俺は男だよ。『ヤマトの艦長が女なのはどうなのか』と翔子さんに言ってみたら性別を男に戻してくれた。

それでもあだ名はこよみん。

変わりに変身能力が使えなくなったけど。

 

「てかメンタルモデルなんだから体型変えれば良いんじゃないのか?」

 

「そうしようとしたらエラーが発生するんです」

 

「そうか、針路そのまま。第一戦速」

 

「話を聞いてくださいよー」

 

そう言いつつも速度を上げるヤマト可愛い。

このヤマトにとって第一戦速は四十ノットで、そこから十ノットずつ上がっていく。細かい指示は数字を直接言う。

目的地は呉鎮守府。この世界において唯一機能している鎮守府だ。ヤマトがこの世界のネットワークに侵入した所呉以外の鎮守府、警備府、基地、一部の泊地は壊滅的被害を受けているようだ。

 

「泊地じゃ駄目なんですか?」

 

「今ヤマトが居るのは太平洋のミッドウェイ諸島沖北だ。そして機能している泊地はトラック泊地とショートランド泊地、タウイタウイ泊地に柱島泊地だ。その内進路上にあるのは柱島泊地だけだ。しかしそこに行くなら呉鎮守府に行った方が良いだろう。まあ、途中の硫黄島で休憩を入れるかどうか迷ってるんだがな」

 

「止めた方が良いんじゃないですか?もしかしたら霧の艦隊が居るかも知れませんし」

 

「迎撃!霧の艦隊か。硫黄島周辺の情報は?」

 

「ほとんど無いですね」

 

「だとすると霧の艦隊は居ないと考えた方が自然かな。その前にここら辺はE-3海域じゃないか。コンゴウさんに襲われるぞ」

 

そう言った瞬間、ヤマトが叫んだ。

 

「二時の方向より魚雷接近!タナトニウム反応あり!」

 

「音響魚雷装填、二秒後に撃て。作動と同時に海底まで一気に潜行。あと全員第一艦橋に集合」

 

マジかよ、この世界には霧の艦隊が居るのかよ!?



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第二話

侵蝕魚雷は音響魚雷に反応し海水を消滅させるだけに留まった。

以下作戦会議中。会話オンリー。

 

「なあ、もしかして霧がこの世界に居るの?」

 

「ええ、一隻だけ居ます。しかし、その艦名が問題です」

 

「何だ?超戦艦ヤマトとでも言うのか?」

 

「いえ、そう言う意味ではなく、存在しないはずの艦名なんです」

 

「ん?戦艦加賀とでも言うのかのう?確かにあれは戦艦としては存在しないものじゃな」

 

「惜しいですね。正解は改鈴谷型重巡洋艦伊吹をモデルにした超重巡洋艦イブキです」

 

「えらく語呂が悪いな!超重巡洋艦とか噛む為の言葉だろ!」

 

「いや暦、問題はそこじゃ無いぞ。重巡伊吹は建造途中で空母に設計変更するも完成率八十パーセントで工事中止、そのまま解体されたんだ」

 

「おい竜也、お前リミオタだったのか!?」

 

「ああそうだぞ。特に軍艦が好きだ」

 

「お前絶対艦これ課金勢だろ。司令部レベル百超えてるだろ」

 

「ばれたか」

 

「って、そんなことはどうでも良い。翔子さんはどうすれば良いと思います?」

 

「こよみん、そこで私に振るのかい。戦術ネットワークで通信出来ないの?」

 

「呼び掛けに応じませんね。ネットワークに接続してないようです」

 

ここまで会話オンリー。いやー雑談って楽しいよな。

ここで作戦会議を止めたのには理由がある。

一つ、アクティブソナーのピンガーの音を感知したこと。

二つ、強力な重力波を感知したこと。

三つ、海が割れたことだ。

 

「いきなり切り札かよ!敵艦の位置は?」

 

ロックビームに捕まったようでさっきまで海底に居たのにどんどん深度が浅くなっていく。ロックビームって三千メートル先でも機能するんだ。

 

「三時の方向十三キロ、艦首はこっちに向いているよ!」

 

海上まで持ち上げられると同時に渚が叫んだ。モニターを見ると上下左右に割り、周りに円形の超重力砲ユニットを多数円状に並べている重巡と言って良いのか分からない重巡居た。

コンゴウ型と同じ様な艦体内部の超重力砲ユニットとタカオ型の浮遊式の超重力砲ユニットを使っているのか。見た目はヤマト型よりも派手だな。

 

「横っ腹をぶち抜こうってか。咲耶、相転移フィールドスタンバイ。ここでテストをするぞ!」

 

「げぇ、り…了解。相転移フィールド展開用意。翔子さん」

 

「分かってるよ。補助エンジン出力を八十パーセントから百二十パーセントへ。相転移フィールドへ接続」

 

「相転移フィールド、右舷に展開。衝撃に備えよ」

 

右舷に光の膜が出現するのと超重力砲が発射されるのは、ほぼ同時だった。

相転移フィールドが相転移させたエネルギーが光と熱として放射され膜が強く光り、海水は蒸発する。

しばらく異常気象だな。エルニーニョ現象って言うんだっけ?

これ以上十秒を長く感じたことは無いな。

無意味と思ったのかエネルギーの限界なのかは分からないが超重力砲は消えた。

 

「ヤマト、イブキと通信を繋いでくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どこかで見たことがあるような気がする巨大な戦艦を超重力砲で撃とうとしたら不思議な光の膜で掻き消された。僕の知識では超重力砲を防げるのは次元空間曲率変位(ミラーリング)システムだけの筈だけど、あの戦艦はそんな僕の常識と言うか原作知識に風穴を開けた。

 

「しかもあの戦艦から通信?しかも戦術ネットワークを通しての通信。あの戦艦も霧なのか?」

 

しかし、装甲表面にイデア・クレストは確認できず、霧の艦隊とは思えない。

てか霧ってことは僕は仲間に攻撃したってこと!?はわわわわ、今すぐに謝らないと!

 

映像通信で交信するためにカメラをナノマテって、その前で土下座をしながら通信を繋ぐ。

 

「貴艦を深海棲艦と誤認してしまい、侵蝕魚雷と超重力砲を向けてしまいました。深くお詫び申し上げます。煮るなり焼くなり侵蝕魚雷を撃ちこむなりどうぞお好きに」

 

「あー。分かったから顔を上げようか。女の子が土下座をするもんじゃ無いよ」

 

あれ?男の人の声が聞こえる。メンタルモデルは女性の筈だから男の人の声が聞こえるのは誰かを乗せていると言うことか?もしかして千早群像さん?

しかし、コアに入ってくる映像を見ると群像さんじゃなく、橙色の髪と緑色の目が特徴的な高校生くらいの男子が言ったようだ。

 

「えーと、あなた方は?」

 

その人以外にも五人の人が映っていた。

その中の一人、髪を腰まで届く栗色のポニーテールにしている女性が答えた。

 

「私は霧の宇宙戦艦ヤマトよ」

 

霧の戦艦のクラスには大戦艦級か超戦艦級しかなかった筈だ。てかなんだよ宇宙戦艦って。ん?宇宙戦艦ヤマト?そもそも作品が違う。まあ、今更だけど。

 

「ええと、私は霧の超重巡洋艦のイブキです」

 

「無理をしなくて良いよ。君は日本に住んでいた普通の男子高校生だろう。どっかの誰かさんが同じ様なものだったから何となく分かる」

 

銀髪の男子がそう言うと橙色の髪の男子は顔を赤くする。

てか一瞬でばれた!何この人!

 

「いえ、日本に住んでいた男子中学生です」

 

隠す意味も無いから訂正する。

そう言っている内に橙色の髪の男子は落ち着きを取り戻したようだ。

 

「さて、重巡イブキ、俺に一つ提案がある」

 

この人は艦長の様だ。今頃気が付いた。

 

「はい、何でしょう?」

 

「俺たちと一緒に日本に行かないか?」




重巡イブキについては作者が以前考えていた蒼き鋼のアルペジオと艦これのクロスオーバー作品の主人公でした。
なぜモデル艦を伊吹にしたかと言うと『未完成艦なら原作に出て来ないだろうからどんなキャラ設定にしても大丈夫だろう!』と言う馬鹿みたいな考えがあったからです。


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第三話

そうか…これが…スランプか。
ネタを突っ込まずに言わせて貰うと忙しい+筆が進まない=更新ペース低下と言うわけです。


あれから三日掛けて日本瀬戸内海に到着。

今は全通信機器の全周波数で『我ヤマト、戦闘ノ意思無シ』と呼びかけ続けながら瀬戸内海を航行中だ。

 

「入港許可出ました」

 

ヤマトが言いながらどこか泊まれる場所を探している。イブキは改鈴谷型なのでサイズが重巡規模なのに対しヤマトは三百五十mを超える大きさなので、戦艦用ドックにも入れないのだ。

ドック入りするには豪華客船やタンカー規模のドックが必要だ。

でも、どこの誰かかも分からない戦艦と重巡にこんな簡単に入港許可を出すのはどうかと思う。

 

「接岸しました。錨下ろします。あと私と艦長は提督に呼ばれているようです」

 

いつの間にか接岸していたらしい。疲れが溜まっているのかも知れない。

 

「機関停止、タラップも降ろしといてくれ。皆は艦のメンテを頼む」

 

「お土産よろしくー」

 

「渚、広島だとお好み焼きと紅葉饅頭しか俺知らない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この忙しいときにまた厄介事が増えるなんて、私もう提督辞めようかな。あーでも駆逐艦の皆といちゃいちゃ出来ないし…。もうちょっと提督続けよう。

今日は誰と遊ぼうかな~と考えているとドアをノックする音が司令室に響いた。

 

「はいどうぞー」

 

ドアが開き三人が中に入ってくる。

一人目は艦娘の大和のようだが少し幼く見える。特に胸が。二人目は赤と言うか紅色の髪にそれに合った黄色を基調とした着物を着た少女。三人目は橙色の髪の男子。私より若いだろう。

 

「えーと、私は桜木(さくらき)(はるか)。見ての通りこの鎮守府の提督をやっているわ。あなたたちは?」

 

「私は恒星間航行用超弩級宇宙戦艦ヤマトです」

 

「私は霧の超重巡洋艦イブキです」

 

「ヤマト艦長の大倉暦です」

 

上二人は何者なの!?特に上!それってアニメの世界だよね!

下も下でおかしいけどさ!あれ?霧の艦隊って元の世界に帰ったんじゃなかったっけ!?」

 

「えーと、声に出てましたが大丈夫ですか?」

 

暦さんが心配してくれた。でも声に出てたらしい。お姉さんショック。

 

「はい、大丈夫です。少し取り乱しました。それでは本題へ入らせて頂きます。今現在日本は物資の面で危機に陥っているわ。日本海側の防衛をしていた舞鶴鎮守府と東シナ海を防衛していた佐世保鎮守府が機能停止したから大陸からの輸入が不可能になったのよ。そこで、あなたたちには中国の河北省の秦皇島市(しんこうとうし)海港区の港に行って物資を積載したタンカーを日本まで護衛して欲しいのよ」

 

「一つ質問だけ質問がある。それは今日本にいる艦娘でも出来ることじゃ無いのか?なのになぜやらない?」

 

「…東シナ海に潜水棲姫と戦艦棲姫を確認したわ。それでも何人かは護衛任務に志願したけど帰ってくることは無かったわ」

 

「つまり上にも下にも強力な奴が居ると言うことか。提督、イブキを護衛艦隊旗艦、ヤマトを支援艦隊の旗艦にしてくれ。護衛艦隊は作戦通り海港区へ行かせ、支援艦隊は潜水棲姫と戦艦棲姫と交戦する」

 

「二面作戦と言うこと?確かにそれなら可能性があるわね。分かったわ、その通りにしましょう」

 

あれ?いつの間にか私と暦さんの立場が入れ替わってるっぽい?




次はまた一週間後くらいです。


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第四話

少し早く書きあがりました。
時間の作り方?簡単ですよ。早退すればいいんですよ。


作戦会議に集まったのは長門型の二人と空母の飛龍と蒼龍と飛鷹姉妹、重巡は利根姉妹と妙高型四姉妹に高雄型下の二人と古鷹型の二人。軽巡は球磨型と川内型全員に夕張と大淀、駆逐艦は睦月、如月、皐月、長月を除いた睦月型に暁型と白露型の全員。

一応確認されている艦娘は全て居たんだけど、今ここに居ないのは他所への応援かもしくは轟沈または行方不明。

ほとんどは応援なんだけど。

轟沈したのは長良、五十鈴、吹雪、叢雲、敷波、朧。五十鈴以外は再建出来たけど、艦娘の使い捨て反対を掲げてる私にとって轟沈は辛い。

そして最後の行方不明。何で行方不明なんだろう?普通は轟沈なんだろうけどなぜか行方不明。誰も沈むところを見てないという…。青葉の新聞でも一度調べられていたけど結局七不思議が八不思議になっただけだった。

いっそのこと轟沈なら割り切れるんだけどなぁ。

ちなみに行方不明になっているのは日向と高雄と伊401。伊401以外は再建造できたけど、やっぱり艦娘は使い捨てみたいな考えは嫌いだ。

ちなみにこの行方不明の話をヤマトとイブキの皆に言ったら口を揃えて『嫌な予感しかしない』と言っていたけど、そうだね、蒼き艦隊のメンバーだね。

閑話休題。

 

「皆揃っているわねー。じゃあ、今回の作戦を説明するわね」

 

急いでパワーポイントで作ったスライドを使いながら説明する。これのお陰で作戦会議が楽になった。

 

「このように攻撃艦隊を先に出撃させて針路上に居る戦艦棲姫と潜水棲姫もしくはその両方を沈めてから護衛艦隊を出撃させるわ」

 

「提督一つだけ良いか?」

 

「どうしたのながもん?」

 

「戦艦棲姫と潜水棲姫は確定戦力であって敵全体の戦力じゃ無い。もし他にも鬼級、姫級が居たらどうするんだ?その場合は」

 

「君のような勘の良いオクサンカッコカリは大好きだよ」

 

「オクサンカッコカリはやめてくれ!とにかくその場合は逃げると言うことで良いんだな?」

 

「当たり前よ。戦った所為で誰かが沈むなんて嫌だもの」

 

その場合はプランEとするわ。と言い他の質問が無いか確認する。

 

「次に、今回の作戦に参加する頼もしい助っ人を紹介しまーす!」

 

ドアが開き二人の艦娘(?)が入ってきた。

 

「こちらの髪の紅い方が霧の超重巡洋艦イブキで、こちらの大和に似ている方が霧の宇宙戦艦ヤマトよ。ヤマトさんの方にはクルーが居るけど今は作戦へ向けて準備中よ。攻撃艦隊の人たちはあとで会いに行ってね」

 

そこまで言うとながもんが右手を上げていた。

 

「ん?どうしたマイハニー」

 

「そう言うことは二人のときだけにしろ!その前に私と提督は女同士じゃないか!」

 

「そう堅いこと言わないで。で、何ながもん?」

 

「まだ攻撃艦隊と護衛艦隊の配属を聞いてない」

 

「あ、そうだ言ってなかった」

 

お姉さん恥ずかしい!

 

「えーと、まず護衛艦隊はイブキを旗艦にして飛龍、摩耶、筑摩、大淀、暁。護衛と言うより索敵を頑張ってね。で、攻撃艦隊はヤマトを旗艦にして長門、隼鷹、利根、川内、夕立。長門と川内以外は対潜装備で。残った者は鎮守府の防衛よ。作戦決行は明日のヒトサンマルマル。じゃあ解散」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作戦開始まであと二十四時間。現在時刻ヒトサンマルマル。魔の艦長室で顔合わせをしている。

 

「私が、戦艦長門だ。よろしく頼むぞ」

 

「商船改装空母、隼鷹でーすっ!」

 

「吾輩が利根である!」

 

「川内、参上!」

 

「こんにちは、白露型駆逐艦夕立よ」

 

「お、おう。えー俺は大倉暦。今はこの艦の艦長をしている」

 

「それで旗艦艦長。どう言った作戦を行うんだ?」

 

俺は艦長であって、艦隊指揮官じゃ無いんだけど。同じものという扱いで言いのかい?長門さん。

 

「そうだな。…確実に沈めるのは潜水棲姫だな。戦艦棲姫はおまけだな。まずヤマトと長門で戦艦棲姫を足止め、出来るなら止め。その間に残りの四隻で潜水棲姫を沈める」

 

「ふむ、しかし他の敵艦への対処はどうするんだ?隼鷹と利根の爆撃機を安全に飛ばすためにも制空権が欲しいしな」

 

「大丈夫だ。こんなこともあろうかとヤマトの艦載機は最新型になっている」

 

「それ明石さんと提督さんがよく言ってるっぽい!それで艦長さん、テストは?」

 

「そんな暇あるか!」

 

多分翔子さんのことだからやってあるとは思うんだけどね。

 

「テンプレっぽいー!」

 

うん、夕立(あと明石と提督)とは仲良くなれそうだ。

 

「と言う訳で、まずヤマト航空隊による制空権確保。その後艦隊を先ほど言った二つに分けてそれぞれの対象を撃破するって流れだ。詳しいことは開始前のミーティングで言うから。じゃあ、またあとで」

 

「分かった、夕食は鎮守府で食べるのだろう?提督が歓迎会を開くといっていたぞ」

 

「そうか、ありがとう」

 

そんな感じで顔合わせは終わり艦長室から退室する。

それにしても対潜戦闘か。イ401呼べないかな?次元空間デバイスだっけ?あれを使えば行ける気がする。




次は来週中には出したいです。


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第五話

作者はインターネットのホームページに@niftyを使っているんですが、今朝の話題の検索ワード第二位が『あ艦これ』ってなってるんですけど…。一体何があった…。


ヒトフタサンマル。この表現の仕方が分かりにくいのは俺の問題なんだろうか?

普通に十二時三十分と言った方が伝わりやすいと思う。

ともかく作戦開始三十分前。

全ての艦に三式融合弾を配備。中身の融合炸薬を渡したとは言え、たった一晩でそれぞれのサイズに合わせて作った妖精さんすげー。利根の主砲はヤマトの副砲と同サイズなのでそのまま渡した。

他にも振動魚雷も渡した。渡しただけで量産配備した妖精さんすげー。

そして翔子さんは次元波動エンジンとかショックカノンとかの設計図を妖精さんに渡してたし…。明日辺りには完成してるんだろうな。

あ、提督から通信だ。

 

「あー暦さん。もう皆準備が終わったから出撃していいよ」

 

「了解しました。所で俺は艦長と艦隊指揮官兼任ですか?」

 

「あれ?言ってなかったっけ?」

 

なるほど。つまり言い忘れたと。

 

「はあ、では攻撃艦隊出撃します」

 

通信を切って周波数を変え攻撃艦隊用の周波数に合わせる。

 

「こちらヤマト。これより攻撃艦隊は出撃し、作戦行動に移る。全艦ヤマトのレーダーとリンクしておくように」

 

この世界の艦娘は実物の艦体であるがゆえに近代化改修といわず二十一世紀の技術を使った現代化改修が出来る。そのためイージス艦に搭載されてるようなレーダーや遠距離でも使える無線通信機、他にも自動装填装置や自発装填装置を搭載し、弾薬も強化されている。

それでも宇宙空間での使用を想定したヤマトのコスモレーダーには索敵距離、精度共に敵わないため、こちらで索敵を済ませ、その情報を各艦へ送ることにした。

 

「ヤマト、第二格納庫注水。百式を飛ばしておいて」

 

「了解しました。第二格納庫注水、百式偵察機発艦します」

 

百式偵察機はVTOL機だから水中でも発艦出来るのは何となく納得できるが、第一格納庫(の場合は注水機構を持っておらず水中での発艦は出来ない。しかし翔子さんはこんなこともあろうかと艦体を改造してあった。

第二副砲下部にある原作では内火艇発艦口と第三主砲左右のコスモゼロ専用発艦口のL字の溝を改造したのだ。

復活編の重爆機が発艦するシーンと同じように同時に四機発艦出来るようになった(そのためコスモゼロ用の第一格納庫と回転式リニアカタパルトは無くなっている。格納庫の数が減っているのはこれが理由)。

あと艦載機の操縦は全てヤマトの分身体(かわいい)が行っている。有人操作も出来るが今の乗組員の中には操縦できる人は居ない。

艦載機はコスモゼロが四機、コスモパルサーが二十機、百式偵察機とコスモシーガルが二機ずつ。

その内コスモパルサーは重爆ユニットを装備可能。余りにも重いから大気圏内飛行は出来ないけど。

毎度のことながら、この艦は何と戦うことを想定しているんだろう?

ゲッターエンペラーかな?むしろあれくらいじゃなきゃ負ける気がしない。

 

「神は言っている、結局数の暴力こそが最強と」

 

ファッ!慌てて周りを見渡すが第一艦橋に居るのは俺と渚と竜也と咲耶とヤマトしか居ない。となると機関室で寝ている翔子さんか…?

 

「艦長、どうされました?」

 

「ああ、謎の電波を受信してな」

 

「謎の電波ですか?私のセンサーにはそんな反応は無かったはずですが」

 

ヤマトに搭載されてるセンサーでも捉えられない謎電波。

世界七不思議がまた増えたぜ。




次回日曜日更新予定。


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第六話

風邪と胃炎と花粉症(これはいつものこと)を併発している作者です。
頭は痛い腹も痛い吐き気がする…つまりベストコンディションだ!と言える力もありません。
ちなみに作者は未だにE-1を突破することが出来ません。潜水棲姫が沈んでくれないんですよね。こっちでは容赦なく沈めてやる…。


約一日を掛けて東シナ海北部の作戦海域に到達。

しかしそこで待っていたのは予想だに出来ない攻撃だった。

 

「重力子反応感知!これは…超重力砲レベルの規模だよ!」

 

渚の言うことが一瞬理解出来なかった。超重力砲並みの重力子?他にも霧が居て、その霧は深海棲艦の味方をしているのか?

そうじゃ無い、考察はあとにしよう。

今はこの状況の対処をしないと。

 

「全艦に通達、針路そのままヤマトを先頭に単縦陣!少しでもずれると最悪沈むぞ!」

 

超重力砲を防ぐには幾つかの方法がある。

一つはイブキからの超重力砲を防いだときのように相転移フィールドを張ること。

二つ目はミラーリングシステムを使うこと。

三つ目はクラインフィールドで出来る限り逸らすこと。

四つ目はこちらも超重力砲を使って相殺することだ。

この中から今回の状況に適しているのは三つ目か四つ目だろう。

一つ目の相転移フィールドは何でもかんでも相転移してしまうためレーダーの電波が消されてその方向の索敵が不可能になる。現在索敵の要はヤマトのレーダーなので索敵不能になる訳には行かない。

ミラーリングシステム?搭載すらしてないわ!あっても衝撃波で長門達に被害が出る。

だから三つ目と四つ目だ。その中で選ぶとしたらやはり三つ目だろう。同じ海域で二発も超重力砲を撃ったら地球が持たない。

 

「ヤマト、クラインフィールド艦首に集中展開、長門達に当てるなよ!」

 

「分かっています!」

 

フィールドを張り終えると同時にドス黒い重力子ビームがフィールドを視認する。

クラインフィールドは後ろに居る長門達に超重力砲が当たらないように大きくエネルギーを逸らす。

そのためかエネルギー蓄積率が著しく上昇していく。

 

「クラインフィールドエネルギー蓄積率七十五パーセント。あと二十五パーセントの余力があります」

 

「いや、過半数を下回っているからね。余力とは言いにくいよ」

 

このちょっと抜けているのは艦娘としての性格なのかメンタルモデルとしての性格なのか――――

 

「タナトニウム反応あり、侵蝕魚雷数は三!三時の方向より艦隊への直撃コース!」

 

渚の言葉で確信した。絶対に霧が関わっている。遅い!とツッコミを入れたくなるけど。

 

「侵蝕魚雷はバリアミサイルで対処!第二主砲は魚雷発射予想位置にショックカノン!」

 

「あいよー」

 

ヤマトの火器管理を一手に引き受けることになった竜也が適当な返事を返す。

ちなみに真琴は操艦をしてる。

旧作の時点で結構自動化されていたから少人数運用が可能になっている。

ショックカノンは海面に沿ってカーブを描きながら進んでいく。しかし既にそこから離れたのか爆発は観測できなかった。

 

「百式から入電。敵艦隊捕捉、十二時の方向距離50キロ」

 

その代わり敵艦隊は見つかったらしい。その代わりとは言ってもこの二つに因果関係は無いんだけど。

 

「全艦第三戦速、三式弾装填。航空隊発進」

 

マイクを通して全ての艦娘に命令する。

 

「艦種判別。戦艦棲姫一、空母ヲ級二、重巡リ級三。本艦に向かって進行中」

 

「取り舵四十、主砲で敵艦隊に先制攻撃を仕掛ける!」

 

そこまで言うと夕立から通信が入る。

 

「指揮官さん、夕立の主砲じゃ五十キロなんて届かないっぽい~」

 

「それが届くんだな。この三式融合弾ならね!」

 

12.7センチ連装砲でも六十キロは飛ぶ。何せ48センチなら成層圏まで届くのだ。

 

「未来の技術ってすごいっぽい!」

 

確かにすごいよこの艦に使われてる技術は。本当の未来の技術なら砲弾は使わないと思うけど…。

 

「散布界計算、着弾時の敵の位置再計算。…誤差修正完了。全艦主砲測敵完了しました」

 

「撃てぇ!」

 

音速を遥かに超える速度で三式弾が撃ち出される。具体的にはマッハ四。

それでも五十キロ先に届くまで四十秒程度かかる。

百式から送られる射弾観測映像を見ながらそのときを待った。



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第七話

かなり更新が遅れてしまい大変申し訳御座いません。言い訳になりますが、リアルが忙しいんです。


四十三発の三式弾は一斉射で戦艦棲姫を旗艦とする艦隊を全滅させた。

空母ヲ級が放った航空機もその内片付くだろうし、本来の作戦ならここで一区切り着いた所だろう。

しかし、敵はどうやら潜水棲姫だけじゃなく霧の艦隊も居るようだ。

少し考えて長門に通信を繋ぐ。画面の向こうには敵艦隊を撃破しても油断せず、周囲を警戒している長門が居た。

 

「長門、これよりヤマトは単艦行動を行う。その間艦隊旗艦を君に移譲するが、良いか?」

 

「霧の艦隊か…。確かに今の私達では戦うことが出来ないな。分かった、これより艦隊の指揮を執り敵潜水艦を叩く」

 

「後で甘いお菓子でも食べさせてあげるよ。長門がが甘味好きと言うことは提督から聞いている」

 

そう言うと画面の向こうの長門が顔を赤くして通信を切った。

なるほど提督の言う通りだ。長門マジかわええ。

戯言だけどね。

敵は超重力砲の色から推測すると大戦艦コンゴウだ。猫耳と尻尾を着けさせて『にゃん』とか言わせてやりたいな。『お帰りなさいませ、ご主人様!』でも良いんだけどね。

気になるのは超重力砲が撃ち込まれた方向と侵蝕魚雷が来た方向が全く違うことだ。

 

「もう一隻居るのかねぇ?ヤマト、分かる?」

 

「私とイブキさん以外にも、もう何隻か霧が居ることは確かなんですが」

 

「それが誰かは分からないか…。面舵四十五、全機関始動。最大戦速、砲雷撃戦用意」

 

最大戦速?27ノットだと良いね。実際は90ノットだよ。リッミター付きでね。

 

「敵艦捕捉、1時の方向に数三 。艦種判別戦艦一、重巡一、潜水艦一。艦名は…ヒュウガ、タカオ、イ401!」

 

行方不明になっていた艦娘(?)を見つけたよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後戦艦棲姫と潜水棲姫を沈めた攻撃艦隊は青き鋼を連れ立って呉鎮守府へ帰還を開始。途中でイブキ率いる護衛艦隊とすれ違いながら呉に戻ってきた。主な損害は三式弾を撃った際、余りの威力で半壊した各艦の主砲塔のみだ。

そして今はイオナと共に提督室に報告に来ていた。

 

「すまない。あの変な軍艦の出すジャミングで霧の索敵装置が使えなくなっていた。久しぶりにレーダーに反応があると思ったら霧だったからな。他の霧との関係が険悪な私達は超重力砲と侵蝕魚雷で迎撃したんだ」

 

深海棲艦はレーダーとかを使用不能にすることが出来るらしい。そんな空間でも普通に動くコスモレーダーって一体。艦娘たちが装備しているレーダーは近距離じゃ無いと使えないと言っていたけど、言い換えれば近距離なら使えると言うことで、ジャミングの影響をそこまで受けてない。技術も環境に合わせて進化するのだろう。

 

「で、youは何しに日本へ?」

 

「提督、ふざけないで下さいよ」

 

提督はこの状況でもふざけている。この人は真面目と言う言葉を知らないのだろうか?

 

「日本観光…と言うのは嘘だ。ヤマトに呼ばれたからな。まさか、本当にまた会うことになるとわな」

 

「そうだな。多分ルーナ艦長も冗談のつもりで言ったと思うよ」

 

このイオナは蒼き鋼のアルペジオの世界に行ったときに出会ったイオナだ。勿論群像さんたちも居る。

 

「それにしても主計長から艦長とは出世したな」

 

「実質左遷だけどな」

 

運用人数が極端に少ない戦艦の艦長。左遷以外の何物でもない。

 

「ちょっと暦さん?あの子本当にイオナなの?私の知っているイオナはあんな性格じゃなかったと思うんだけど」

 

「霧にも色々あるんですよ」

 

ややこしいから説明しにくい。このイオナは原作イオナで提督があったのはアニメイオナなんて言ってみろ。とてつもなくややこしいことになる。

 

「ふーん。まあ、めんどい話はここら辺にして。イオナは人類の味方と言う認識で良いのかな?」

 

「ああ、それで良い。もっとも、私は群像と共にあるだけだがな」

 

「じゃあ、あなた達には先に次の作戦を説明するわね」

 

提督は次の作戦、それもかなり大規模な作戦の説明を始めた。

この作戦が成功すれば人類の勝利に近づくだろう。

成功率は八パーセントだけど。




あと三話くらいで終わる…かな?


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第八話

これで五十話目です。
特に記念企画はありませんよ。
所でヤマトのスペックを纏めたものを書いたほうが良いですかね?


「今回の大規模作戦は深海棲艦の太平洋拠点と北極圏にある深海棲艦建造基地を襲撃するわ」

 

会議室に所属艦娘とか異世界からの協力者とかを集めて大規模作戦の説明を行う。

 

「皆も知っている通り深海棲艦は北極圏で造られ太平洋や大西洋に南下してくるわ。そして太平洋に来た深海棲艦は拠点であるハワイもしくはソロモン諸島に行く。そこで我々は艦体を三つに分け、二つをハワイとソロモンにそれぞれ向かわせ拠点を攻撃。そうすると深海棲艦は増援を送るために北極圏の建造基地からかなりの数を出すはずよ。そうして手薄になった建造基地を破壊。最後は先に言った二つの艦隊と北極圏に行った艦隊で敵増援部隊を挟撃する。うまく行けばこの戦争に勝利することが出来るわ。作戦決行は一週間後よ」

 

深海棲艦を建造している所を壊してこれ以上増えることを不可能にした状況を作ろうとしたらそれが戦争勝利の条件だった、と言うこと。流石に無から生まれることは無いでしょ…。そう言えば無から生まれてきたわね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この提督と呼ばれている女性の作戦は確かに合理的だ。

本命は深海棲艦建造基地。そこを守っている深海棲艦を太平洋に誘い出し、その間に建造基地を破壊する。それ以外はおまけみたいなものだろう。

 

「群像、やるのか?」

 

そんなことを考えていたらイオナが俺のそんなことを聞いてきた。

 

「ああ、どっちにしろ深海棲艦を根絶しなきゃ元の世界には帰れないんだろ」

 

「アドミラリティ・コードが言っていることが本当ならな」

 

「“失われた勅令”か…。だとするとこのタイミングでこの世界に来たのも納得できるな」

 

未来を切り拓く力(艦娘、ヤマト、蒼き鋼)が揃っているこのタイミングなのだから。霧の艦隊を作ったと思われるアドミラリティ・コードなら自分たちをこの世界に送り込むくらいは出来るだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作戦決行までの一週間ヤマトクルーは全員暇だ。俺とヤマト以外は。

俺達は何をやっているかって?鎮守府の戦艦たちに料理を振舞っているんだよ。

なぜか空母の赤城と加賀も居る(本人は『巡洋戦艦、赤城です』とか『戦艦、加賀です』とか言ってる。否定できないのが辛い)。

自称戦艦娘は十七人だが一人当たり五人前は食べると言う提督の言葉通り皆どんどん食べる。

どこに入れてるんだよ。

ちなみにヤマトは包丁で自分の手首を切って倒れた。

指を切るように手首を切った。

本日のドジである。

多分死んでない。左手首にゼータコアを入れているなら話は別だが、生憎あれはそこまで小さくない。人の心臓くらいの大きさだから手首には入らない…筈だ。

 

「今の間は何ですか!と言うより手首を切ったのに何も心配しないんですね!」

 

「最悪コアがあれば何とかなるし。バックアップも取ってあるし」

 

「それはそうなんですけど!少しは心配しても良いんじゃないですか!?」

 

「てかこのタイミングで起きた時点でお前気絶してなかっただろ?」

 

「うぐぅ、でもそれとこれは話が別です」

 

まあ、ヤマトの分身体がせっせと作業してた時点で気絶してないと言うことは分かってたけど。

 

「さて、あとはデザートだな。あと少しだ、頑張ろう」

 

「はぃー」

 

そのあとあの言葉の意味を理解することになる。『甘いものは別腹』と言う言葉の恐ろしさを。



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第九話

更新ペースを上げなければ。
その上で学校の課題を終わらせなければ…。


どの霧がどこへ行くかはヤマトがハワイ、イブキがソロモン諸島、蒼き艦隊が北極海という感じに決まった。

そこにどの艦娘が加わるかは提督の判断だ。

 

「あとはアクティブデコイにあらかじめ弾薬とタキオン粒子を入れておけば良いか」

 

隣を歩くヤマトに言う。ちょうど昼飯時だから鎮守府の食堂に向かっている。

 

「そうですね。デコイの稼働時間は百時間程度ですが私達の技術を吸収した妖精さんが全ての艦娘を改修した結果皆さん元の二倍は早くなりましたからね。経由地点のトラック泊地からでも三日も掛からないでしょう。余裕で持ちますね」

 

「そこまで急に速度が変わると戸惑いそうだけどな。ああでも戦闘中は普段と同じ速度を出せば良いのか…なら大丈夫だな」

 

なぜいきなり速度が二倍に跳ね上がったかと言うと、妖精さんが相転移エンジンを造ってしまったからである。しかもヤマトに搭載されているものより高性能と言う…。一部の艦は二倍以上だけど。

他にも重要区画の装甲や竜骨等のフレームをSTM合金にしたり(これで錨を使った戦艦ドリフトが大型艦でも出来るようになった)砲弾を三式融合弾にしたりそれに合わせて砲塔の強度を上げたりと妖精さんは色々やらかした。

でもそれだけの改修を五日程度で全て完了したのは凄いことだと思う。

ちなみにこの鎮守府の資材は枯渇した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なぜか夕立が語り部っぽい!ソロモンの悪夢は語り部だって出来ることを見せてあげる!

 

「駆逐艦夕立、出撃よ!」

 

今日は例の大規模作戦開始の日。あたしはハワイ攻撃艦隊よ。

他にも武蔵さんや長門さんを始めとした五十隻がハワイ攻撃艦隊に配属っぽい。

でも途中で敵艦隊と遭遇したら提督さんの指示で適宜敵の足止めのために艦隊を外れることになるから最終的にはいつも通りの六隻規模のの艦隊になるっぽい。

鎮守府を出発したらまずはトラック泊地に行って呉にはもう無い弾薬の補給を受けて、そこから新開発の機関による高速巡航を開始、ハワイを目指すっぽい。

ヤマトさんはトラックへ寄らず単艦でハワイに行くらしいわ。

瀬戸内海から出た所で相転移エンジン出力最大、南南東に向かって第十二戦速。ノットに変換すると五十一ノットっぽい。

でもこの速度だと夕立の攻撃も当たらないから、戦闘中は今まで通りの速度で戦うっぽい!

鎮守府を出発して二日程度でトラック泊地に到着っぽい。

昔は夕立でも八日は掛かったのが今では四分の一で済むなんて技術の進歩はすごいっぽい!

トラック泊地で弾薬の補給を済ませたらハワイを目指してさっきと同じ第十二戦速で進っぽい。

途中敵艦隊に遭遇するたびに四隻から五隻が艦隊から離れ敵艦隊と交戦を開始する。

 

「こちら鎮守府。金剛、隼鷹、愛宕、夕張、村雨は敵艦隊と交戦を開始して、残ったメンバーは作戦通りヤマトと合流後ハワイを目指して」

 

提督曰く最後の敵艦隊と遭遇してまた五隻と別れる。

残ったのは武蔵、長門、扶桑、飛龍、利根、高雄、北上、阿武隈、阿賀野、初春、清霜、そして夕立と十二隻っぽい。

そしてヤマトさんとの合流地点に到着したっぽい!

 

「こちら武蔵。提督、合流地点に到着した。指示を請う」

 

現状の艦隊旗艦である武蔵さんが提督さんと通信をはじめたっぽい。

 

「こちら鎮守府。ハワイ攻撃艦隊はその場で待機、もうすぐヤマトが現れるから。あとハワイ攻撃は夜戦で行くわよ」

 

「了解した」

 

しばらくするとパッシヴソナーに反応が現れる。どんどん浮上してきたその物体は宇宙戦艦ヤマトだったっぽい。

戦艦なのに潜水出来るなんてずるいっぽい!

 

「こちら宇宙戦艦ヤマト。これよりハワイ攻撃艦隊は第二戦速でハワイを目指す。ここからなら到着時刻はフタサンヨンマルだ。進路上に敵は確認できない。かかるぞ!」

 

そして決戦のハワイ沖、探照灯を照射して囮になったヤマトさんは艦首を起き上がらせて沈んで行ったっぽい…。



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第十話

そしてなによりもォォォォ!!速さが足りない!!
更新速度を上げたいです…。


死んだと思ったら生き返っていた。

それは僕だけではなく、ヤマトの艦長を務めてる大倉暦さんもそう言った人達の仲間らしい。

暦さんは性別とか色々変わったらしいけど、僕も性別(?)とか見た目とか生物学上の分類とかそもそも生物じゃなくなってるとか大きく変わっている。

実を言うとこの世界に来る直前のことは良く覚えていない。

どこにでも居る普通の男子中学生だったはずだけど何が原因で霧の超重巡洋艦としてこの世界に来たのかは分からない。

死んだかどうかも怪しい所だ。

よくある転生ストーリーだと死んでないにしても呼ばれた気がしたとか、何らかの使命感とかあっても良いと思うけど、そんな物は一切無い。

これはあれだろうか?第二の人生好きに生きろと言うことなのだろうか。

と、物思いにふけっている状況じゃなくなってきた。

現在僕はあの有名なガダルカナル島北のアイアンボトムサウンドに来ている。そこにある深海棲艦の拠点と言えばあの飛行場姫である。

その苛烈な航空攻撃により味方の艦娘は勿論、僕自身にもダメージが出て来た。

 

「クラインフィールド稼働率九十三パーセント、あと七パーセントか」

 

航空攻撃は僕に対しては効かないと判断した飛行場姫は艦載機を僕に向けて特攻させてきた。

他にも周りに居る戦艦からの砲撃も痛い。

クラインフィールドは与えたれたエネルギーを別の方向へ逸らすことで無効化するけど逸らしきれなかったエネルギーはどんどん蓄積して行き、やがて飽和・消失する。

貫通力が高いため逸らすことが難しい艦砲射撃はクラインフィールドの天敵とも言えるし、艦載機の特攻も避けることは不可能な上に威力も高い。

一度クラインフィールドに溜まったエネルギーを放出したいけど、放出してる間はクラインフィールドを消さなければならない上に、ある程度の演算処理をしなければならない。

 

「侵蝕魚雷はあと六本か。一か八か全て飛行場姫に発射するか」

 

一人で居ると独り言が多くなる気がする。確か百本載せておいた筈だけど。ほぼ全てを対空ミサイルの代わりとして使ってしまった。

そんなことを思いながらVLSから六本の侵蝕魚雷を発射して遠くに見える飛行場姫が居るであろう管制塔と思しきタワーへ向かわせる。同時にクラインフィールド飽和。あとは強制波動装甲が命綱だ。

一本、また一本と対空砲火で撃ち落とされ無意味に重力波を放出する。

あと三本。あと二本。あと一本。

残った一本が管制塔に命中。侵蝕現象を起こし管制塔を消滅させた。

その瞬間、敵航空機が制御を失い墜落していく。

 

「はーい、こちら鎮守府。ソロモンの拠点の飛行場姫の撃破を確認したわ。ソロモン諸島攻撃艦隊は所定の海域まで行ってね。あ、あと中破以上の損害を受けてるものは鎮守府に帰投して待機している艦と交代してね」

 

突然通信を掛けてきてそしてそれを突然切る。確かに質問することは何も無いけど…。それで良いのか提督業は…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

北極海の流氷に擬装された深海棲艦とやらの建造基地を発見した。

どうでも良いがなぜ私が語り部なんだ?こう言うのは群像に任せて良いんじゃないのか?まあ、やるからには手を抜くつもりは無いが…。

建造基地攻撃艦隊には普通の艦娘は配属されてない。艦隊戦をする訳でもないし、隠密任務だから数は要らないからな。

だからと言って蒼き艦隊の三隻で艦隊を組んでる訳でもない。

私とツンデレ従順…間違えたツンデレ重巡の二隻だ。

実質私一人だが。

と言うのもヤマト艦長の暦から『こんな感じでイ401とタカオの艦体をくっ付けてみると単純な戦力は二倍以上だ』と言われて潜水巡洋艦イ401・アルスノヴァモードになっているからだ。

そのときにこのアルスノヴァモードを模したプラモを見せてくれたがいつ用意したのだろうか。

 

「洋上を艦隊が通過、南下していきます」

 

ソナー手の静の報告を聞いた群像が指示を出す。

 

「よし、一時間後に作戦行動を開始するぞ」

 

その言葉にそれぞれが返事を返す。

戦術ネットワークにはイブキがソロモン諸島の敵拠点を撃破したことについて書かれていた。

ふむ、上げられている情報から分かることはクラインフィールドは貫通力の強い攻撃に弱いと言うことか。

そして一時間が経ち、群像が口を開く。

 

「アップトリム一杯、両舷強速。海面に浮上するぞ!」

 

指示通りに霧にしてはゆっくりと浮上を開始する。

 

「深度十、もうすぐ海面だ」

 

「よし、VLSに波動カートリッジミサイルを装填」

 

「了解!」

 

いきなりあれを使うのか。

ヒュウガでさえ性能を完全に理解出来なかった波動カートリッジ弾頭を用いたミサイル。一発で霧の大戦艦級に損害を与えられる程の威力を持つミサイルだ。

大海戦のときに人類がこれを持っていたら、あの時負けていたのは霧かも知れない。

 

「深度五、四、三、二、一、洋上航海へ移行」

 

「VLS撃てぇ!」

 

「あいよー!」

 

ヤマトから提供された分は五本しかないが、それでも敵建造基地を消滅させるには十分だ。

しばらくすると鎮守府から通信が入り、提督と群像が話し始める。

聞いた会話を要約すると先ほど出発した敵艦隊を北太平洋で叩くとのことだ。

さて、あとはヤマト率いるハワイ攻撃艦隊だけだが…大丈夫だろうか?



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第十一話

今月この小説はたった四話しか投稿できなかった。なぜだ…。


ぽい。ヤマトさんが沈んでしまったけれど中に居た人達は無事っぽい。今も指示をくれてるっぽい。早く助けるためにハワイの敵を全部沈めなきゃ!

 

「これでどーお!」

 

12.7cm連装砲B型改二と61cm四連装(スーパーキャビテーション)魚雷を敵の戦艦に向けて放つ。スーパーキャビテーション魚雷は今までの酸素魚雷と比べても遥かに早いっぽい。雷速も速いし自動追尾プログラムもあるから低錬度の艦娘でもかなりの命中率が有ったっぽい。

逆にあたしみたいに今までの魚雷を長く使ってた高錬度の艦娘はよく外してたっぽい。

話が逸れたわ。

砲撃と雷撃を同時に受けた戦艦は中心で二つに別れ沈んで行く。

どっかの夜戦バカじゃ無いけど、駆逐艦でも戦艦級に大ダメージを与えられる夜戦は素敵っぽい!

戦艦を沈めた所でヤマトさんから通信。

 

「全艦、衝撃に備えよ!」

 

たったそれだけっぽい?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全艦、衝撃に備えよ!」

 

あ~長いこと語り部を干されてた気がする。干された話数は少ないけど一話一話の間隔が長かったからなー。

メタ発言は程々に。

沈んだヤマトはご存知の通りアクティブデコイだ。イ401と違ってヤマトの艦体一つを形作るのに二本のデコイが必要だった。ヤマトでかすぎ。

 

「ヤマト、ワープ準備に入れ!」

 

惑星重力圏内でワープすると次元断層に落ちたり静謐の星に迷い込んだりするが、たった三千五百キロメートルだ。そこまで大きな誤差は生まれないはずだ。

そう言えばこのヤマトがワープをするのはこれが初めてだ。

こんなに短い距離だとワープ前の助走も必要ない。十八ノットでワームホールに突入しいつの間にかハワイ沖上空だ。

 

「艦底部ミサイル発射管にS.G.M装填!二斉射だ!」

 

敵のハワイ基地はハワイ島の西部に建てられていた。それを守るように敵艦隊が展開している。しかしそれは後回しだ。

対地攻撃を想定して造られた訳じゃ無い艦底部ミサイル発射管からS.G.M(確かシップトゥグラウンドミサイル。艦対地ミサイル)が五秒の間に二セット二十本が発射される。回転式弾倉だからこそのこの連射速度だ。煙突ミサイルや各魚雷発射管とは比べ物にならない程の矢継ぎ早に発射できる。

ミサイル攻撃ではハワイ基地を攻撃しない。目的は別にある。

 

「右傾斜九十度!主砲三式、作戦で言った位置に撃ち込め!」

 

艦体が右に倒れる。ジェットコースターより怖いんですけど。慣性制御のお陰で床に立ってられるけど、第三艦橋が大破した瞬間右側の壁へダイブすることになるだろう。何であんな所に慣性制御装置をつけたんだよ…。

主砲塔は全て艦体上部にあるから喫水線下への砲撃は出来ない。だから今みたいに艦体を横倒しにしている。

本当は侵蝕魚雷とか波動カートリッジ弾頭とかを使いたいけど、侵蝕魚雷は残弾ゼロ、波動カートリッジ弾頭は蒼き鋼に渡した分が最後のものだったから使えない。そこで三式融合弾だ。鎮守府での量産に成功した三式融合弾なら大量にある。

これを敵基地…ではなく、ハワイの火山の一つマウナ・ロア。その麓に撃ち込み、内部で爆発させたらどうなるか。

答えは簡単。コードギアスを見たことがある人にとっては簡単。

火山は内部からの爆発の圧力で噴火するのだ。

ショックカノンだと爆発が起きないからこうはならない。あれは貫通力が強いからクラインフィールド破り(対霧の艦隊)イデオンソード(敵艦隊一掃)の方が向いている。

閑話休題。

火山が噴火したら当然溶岩が噴き出す。

それはあらかじめミサイルにより掘られた溝によりハワイ基地に流れ込む。

それを確認して鎮守府に通信を繋ぐ。

 

「こちらヤマト。提督、聞こえていますか?」

 

「ほーい、こちら呉鎮守府。提督だよー」

 

「ハワイ基地を破壊しました。次の指示を」

 

「こっちでも確認したよ。ここまでは作戦通りだね。だから次も作戦通りに北太平洋で敵残存艦隊を叩くよ」

 

「了解」

 

通信を切り、艦隊用の周波数に変え、針路を北太平洋に取るように指示。

このハワイ攻撃艦隊にソロモン攻撃艦隊、蒼き鋼を加えた現状最高戦力の前では敵残存艦隊は無力であったことは言うまでも無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日談と言うか、今回のオチ。

その後、鎮守府や蒼き艦隊の皆に別れを言いひとまずヤマトを建造した異世界に世界線跳躍した。

今回は損傷を受けなかったが、一部の弾薬は底を尽きているからである。

異世界に着くと同時に翔子さんが機関長席のコンソールに聞くだけで痛いと分かる音を立てて倒れた。それと同時に俺も女になる(もしかしたら戻るが正しいかもしれない)。

そう言えば、俺を男にし続けることはかなり疲れると言っていた。

だとすると俺はこれから一生女として生きていくことになるのか…。

 

「いや、一つだけ方法があるわ」

 

「おや、ルーナ女王様、お久振りです」

 

「仕方ないことだけど出番が無いのは辛いわね。違う、そうじゃない」

 

「でしょうね」

 

「ある程度神様と関わりがある暦なら知ってるかも知れないけど、神様が住んでる高天原ではある条件を満たすと何でも願いを叶えてくれるそうよ」

 

それを聴いた瞬間俺は急いで真琴の所へ向かう。

男に戻れるかもしれない。そんなことを思いながら。




キャラコメでヤマトを大破させると言ったな。あれは嘘だ。
でもデコイは沈んだじゃん?
セーフだよね?


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高天原編
第一話


ようやく第一部最終章です。どっかのバカなアニメみたいに最終章を半年続けるなんてことはきっと無いと思われます。


「高天原で願いが叶う?あーそう言えば天照の野郎がそんなこと始めたとかいっておったのう」

 

こいつ今日本の太陽神を野郎呼ばわりした!天照大神は女神なのに野郎呼ばわりだよ!

 

「そんなこと言われてものう、天照に限らず木花咲耶姫神(このはなさくやひめ)宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)とかは人間で言う所の役職名みたいなものじゃ。皆それとは別に本名を持っておる。私だって三百年前は宇迦之御魂神だったぞ」

 

そんな意外な気になる過去は置いといて。

 

「で、条件ってのは何なんだ?」

 

「どこぞの占いババみたいな感じであっちが用意した敵と戦うんじゃ」

 

「え?それだけ?」

 

「そうじゃな。ただし一人で全て倒さねばならぬ。勿論私を憑依させることも出来ない。その代わりと言っては何じゃが能力・霊術・武器はOKじゃぞい」

 

と言われても。

 

「深爪はぽっきり折れたままだし、霊術だって俺の霊力量だと高が知れるしなあ」

 

「そんなこよみんに良い知らせがあるわ!」

 

天井を突き破ってルーナ女王様が現れた!

てかその呼び方はやめてくれ!

 

「何で天井から…」

 

「はいこれ」

 

俺の質問に全く答えず棒のようなものを渡してきた。

 

「これは…刀…の柄?」

 

鞘から抜いてみたら刀身が無かった。どうやって鞘固定してたんだろう?

もしかして誠刀・銓か?そんな物渡されても投げて蹴り返されて『きゃいん』と言う未来しか見えません本当にありがとう御座います。

 

「ただの刀の柄と思わないことね。それは玉鋼珠美が作った『ぼくのかんがえたさいきょうのかたな』よ。銘は月読(つくよみ)

 

「中二病ですか?」

 

「人間皆中二病。この刀は周辺空間の霊力を使って刃を作るのよ。他にも持ち主が霊力を注ぐことで様々なことが出来るのよ」

 

「YAIBAの龍神剣かな?」

 

「ごめん、それは流石に分からない」

 

何と…青山剛昌さんの名作を知らないなんて…。もう一回アニメ化すれば…きっといけるはず!

 

「とにかくこれを持って行きなさい。刃を作るくらいなら霊力は消費しないわ」

 

まあ、刀は欲しかったし、ありがたく貰っておくか。

 

「あ、そうそう。真琴は少し時間あるかしら?」

 

「あり余っておるぞ」

 

「じゃあ、少しいいかしら?」

 

そう言いながら手を口の前に持って行き軽く口の方へ傾ける。こいつら酒を飲むつもりか…。

 

「おお、いいぞ。酒はここ二百年飲んでなかったんじゃ」

 

お前は一々真似できないスパンだな。

 

「じゃあ、俺はこれで。真琴、飲みすぎるなよ」

 

未成年は酒の席に居たって邪魔になるだけだ。俺は真琴に一応注意して未だに残っていた自室に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、この私をわざわざ呼び出して何の用じゃ?」

 

むぅ、私が語り部か…。皆いつもこんな緊張を感じて居ったのか。すごいのう。

 

「いや、あなたは暦が勝てると思っているのかなって」

 

この場合の勝てると言うのは天照への挑戦のことじゃろう。

 

「勝っては欲しいが、現状じゃ難しいじゃろう」

 

そこまで言ってワインを飲む。うむ、日本酒とは違った味があるの。

 

「それは能力を使っても?」

 

「主様の変身能力をフルに使っても流石に厳しいじゃろう。もう一つ能力があれば別じゃが、あの変身能力が強すぎるからの例え別の能力があっても弱い能力じゃな」

 

もしくは強いけど問題点が大きかったり多かったりするじゃろう。

それにしてもこのウイスキーとチョコの相性抜群じゃの。

 

「そうね、確かにもう一つの能力は欠点が大きいわね」

 

「じゃろう。例え能力をもう一つ持っていたとしても…え?持ってるの?」

 

余りのショックに素が出てしまったわ。

 

「持っているわよ。本人も気付いてないけど。と言うより現状で気付いているのは他人の能力が分かる私と何でもありの翔子くらいね」

 

あいつ皆から何でもありと言われておるな。

実際その通りじゃが…。

 

「で、どんな能力なんじゃ?」

 

「ふふふ、秘密よ!私は読者に挑戦するわ!」

 

「もしかして酔っておるのか?」




でも第二部開始が半年後とかもあり得る。


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第二話

ヤマト2202の続報が楽しみです。夜はぐっすり眠ってますけど


ベッドの上でごろごろしながら作業をしてると真琴が帰ってきた。

飲んできた割には酔っているようには見えない。

 

「おう、早かったな」

 

「ああ、あいつが酔い潰れたのじゃ」

 

「どんくらい飲んだ?」

 

「ワイン十二杯とウイスキーをストレートで六杯じゃ」

 

お分かり頂けただろうか。ワインの度数は主に十五パーセント、それを十二杯飲んだのである。これだけでも驚きであるがそのあとウイスキーを六杯薄めずに飲んだのである。ウイスキーの度数は四十パーセントを越えるものがほとんどだ。そのためストレートで飲む場合は一杯三十分くらい掛けるものだ。しかし飲みに行って帰ってくるまでの時間は二時間。たった四杯分の時間しかない。ワインを飲んでいた時間も考えるなら3杯分の時間だろうか。単純に計算するとこいつはストレートのウイスキーを通常の半分の時間で飲んだことになるのだ。しかし前述の通り酔っているようには見えないのである。神様恐ろしい。

何でこんなに詳しいかって?秘密さ。

そんなことを考えている間に真琴は自分のベッドの上に正座で座りこちらを向く。

 

「さて、こう言っては何じゃが…。実はの、お主にはもう一つ能力があったのじゃ」

 

なるほど。確かに画面の前の世界ではエイプリルフールだった。もう数日も前の話だけども。

もしこれがエイプリルフールの嘘だと言うのなら真琴には失望する。

もっと分かりやすく尚且つインパクトのある嘘をだな…。

例えば、|魔法の第三惑星魔法の第三惑精クリーミィ☆かがりんのアニメ化とか!《keyのエイプリルフールネタは大体現実になる》

 

「書いてあることへの希望がルビに表れた気がするのじゃが」

 

「大丈夫だ、planetarianがアニメ化するだけで作者は大喜びだ」

 

「作者に対して言及するのはキャラコメだけのきまりじゃぞ」

 

「へいへい」

 

メタ発言はこれくらいにして置こう。

 

「で、そのもう一つの能力って何なの?」

 

「それを聞こうと思ったのじゃが、中々喋らなかったからな。酒を飲ませて口を割らせようとしたら潰れおって結局聞けんかった」

 

「それ九割はお前が悪いぞ」

 

九割九分ではないけど。残った一割はもったいぶったあの女王様の所為だ。

 

「それもそうじゃの。ところでお前様は何しておるのじゃ?」

 

「ゴッドフィンガープロテクター作ってる」

 

正確には設計してる。かなり大雑把だけど。

 

「何じゃそれ?」

 

「ゴッドガンダムが腕につけてる青いやつ。これはそれをモチーフに作った霊力集積放出装置だ。霊力については真琴の方がよく知ってるだろうけど空気中にも結構な量の霊力があるだろ?」

 

「その通りじゃ。空気中と言うより空間じゃが。それを吸収して体内に貯め必要なときに放出するのが霊術じゃな」

 

人体には霊力を作る機能など無い。しかし周りの空間から吸収しておく機能はある。霊力量が多いか少ないかはどれだけ多く貯められるかどうかだ。

神様は霊力を作り貯める器官が存在するから無限に等しい(真琴は最早無限。使ってもどれだけ使ってもカンストしてる)霊力量を持つ。

さて、話を戻そう。体の中に多く貯めることが出来ないどっかの誰かさんは考えた。『貯めることが出来ないなら貯める専用の道具を作れば良いじゃない『と。さらにそれに放出機能も付ければ良いじゃんと考えた結果がこれだよ。

一応、着けてる人から霊力を受け取ることも出来るけど、その場合は霊術の増幅と言う機能になるのかな?

 

「完成は来週以降だから、それまでは暇だな」

 

とりあえず書き上がった設計図を机の上に置く。

 

「でもそれを作るとなると霊力に詳しい人が居ないと無理じゃろ。となると一度私達が居た世界に戻らないと行けなくなるんじゃないのか?」

 

それもそうだ。この世界だと霊術師なんて居ないだろうから(この世界は技術力が優れているからオカルト的な文化が一部を除いて無い)この世界では作ることが出来ないと考えるべきである。玉鋼さんはこの世界の住人だけど今はもうお亡くなりになっているから無理。

 

「となるとヤマトを借りるか真琴の力で…」

 

「ああ、こよみん。その必要は無いよ」

 

いつの間にか真琴の背後に居た翔子さんがそう言う。

あんたもう大丈夫なんか…。

 

「君ら二人が旅行に行ったり、あとこの前の艦これの世界に行ってる間にこの世界と私達の世界は繋がれたんだよ」

 

「どう言うことです?」

 

「ヤマトに搭載している世界線跳躍装置、それを小規模にしてこの世界とあの世界の二箇所に設置したんだよ。これで誰でも自由に世界を行き来することが出来るようになったんだよ」

 

科学の力ってすげー。

 

「じゃあ、明日朝一で一度帰省しますね」

 

「あ、うん。ルーちゃんには私から言っとくね」

 

ルーちゃん?ああ、女王様の名前は確かにルーナだけど。流石に王族をそんなあだ名で呼ぶのはどうかと…。

そう指摘しようとしたらもう既に居なくなっていた。本当にあの人は何でも有りだ。



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第三話

別にもう一つ小説を書き始めたから更新が遅いなんてことは無いんです…いえ、あるんです。


渚を連れて現実世界へ行き、そこでで親の知り合いにゴッドフィンガープロテクターを三日掛けて製作してもらい異世界に帰ってきた。誰も見たいと思わないだろうしその間のことは全面カット。

ただ一つ言えることは渚ちゃんマジ天使。俺この戦いが終わって成人したら渚と結婚するんだ…。

文武両道で成績だって学年三位、料理以外の家事は出来るし顔面偏差値だっていい。さらには幼馴染属性を持っている。大体のラノベだったら主人公と恋人関係です。むしろここみたいに親友止まりなのがおかしいくらいです。

その話は置いておこう。

三日間の間に翔子さんは完全回復して咲耶と“歩兵用携帯型陽電子衝撃銃”通称ショックライフルを開発していた。その名の通りショックカノンの小型版だ。ただし三日で開発したかと言うとそうではなく以前から暖めていた設計案をこのタイミングで出したらしい。どちらかと言うとSTM合金で作ったM82A1にショックカノンのカートリッジを装填しただけの物。暖めている間にここまで簡略化出来たのか、それとも本当は三日間で仕上げたのか。

M82をベースにしたが、金属としてはとてつもなく高い強度を持つSTM合金を使用したため薄く作ることが出来たので重量は九キロまで削減できた。それでも片手で扱えるのは伝説の傭兵か能力者くらいだ(能力の恩恵として身体能力の向上がある)。

現在の俺の装備を纏めると月読とゴッドフィンガープロテクターとショックライフル。

これだけあればきっと何とかなるさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうも天照久しぶりじゃの」

 

高天原の下町情緒溢れる町並みの少し高価そうな茶屋に入って行き四人掛けの席を独り占めしていた神のところまで行き有無言わさず正面の席に座りどこからどう見ても不機嫌なご様子の神に話しかけたのは我らが真琴神だ。それに気付き俺と渚が近づく。

 

「誰かと思ったら元宇迦之御魂神の今は…どっかの土地神様じゃない。いい加減私を呼び捨てにするのやめてくれる?」

 

いきなり重い空気なんですけど…。

どうもこの人が天照らしい。髪の色を除けば真琴と似てる。しかし真琴とは不仲なようだ。

 

「ふん、土地神なんて止めたわ。あんな退屈なこと三百年もやってられるか」

 

「あんた神様の自覚あるの?勝手に仕事を投げ出すなんて。…ふーん、人間風情に仕えているんだ。落ちたものね」

 

「自由はいいぞ、自由は。むしろ神が人に仕えてはいけないなんて誰が決めたんじゃ?」

 

「誰もそんなことは決めてないわ。なぜか分かる?誰も格下相手に仕えるなんて考え付かないからよ!」

 

「それはうぬが人を見ていないからだろう。人は神には無い強さを持っておる。私からしたら人も神も対等じゃ。対等な存在に仕えて何がおかしい?」

 

「あんな奴らのどこが強いのよ!百年も生きられないような、胸を刺されたら死ぬような、青酸カリを0.3グラム摂取したら死ぬような、二十五分笑い続けたら死ぬような奴らのどこが強いのよ!」

 

「うぬって実は人間大好きなんじゃないのか?って、そうじゃない。人の強さは生命力じゃないわ。口で言っても分からぬじゃろうから、うぬがやっているあのゲームにそこの人を出そう。勿論勝ったらあいつの願いを叶えてやるんじゃぞ」

 

「どうしてそうなるのよ。しかも人間があれをやるなんて正気じゃないわ。でもいいわ、受けて立ってやろうじゃない。ただしその人間が負けたらあんたは今後高天原への立ち入りを禁じるわ!」

 

「うー、じゃあ、こちらはもう一つ要求しよう」

 

「何よ?」

 

「簡単なことじゃ。私のささやかな願いを叶えて欲しいのじゃよ。何、とてつもなく簡単な願いじゃ。霊力の消費も一切無い」

 

「ふーん。ならいいわその要求も飲んであげるわ。明日の十時に私の闘技場に来なさい。場所は覚えているわよね?」

 

「ああ、覚えておるよ。行くぞ、お前様」

 

うん、真琴とアマテラスは不仲どころか険悪な仲だ。記憶しておこう。

 

「計画通りじゃな。あいつはああ言わないとお主を試さないだろうからな」

 

「ん、ああそうだろうな」

 

実際かなり人嫌いな様だから、あのくらい言わないとその気にならないだろう。

 

「それよりもさ、何で二人の仲が悪いの?」

 

渚が俺も気になっていたことを聞いた。

 

「別に、大昔に喧嘩してそのままここまで来てしまっただけじゃ。人生の先輩からのアドバイスとして、喧嘩したら早めに仲直りした方が良いと言っておこう」

 

それは、重く受け止めないといけないアドバイスだな。



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第四話

結局今月も第一部完結できませんでした。え?あと一週間ある?せめてその三倍下さい。


暦が今まで頑張ってきたことは、もしかしたら本人より知っているかもしれない。

賢悟だった頃もなぜか怪異からよく襲われる私を守ってくれたし、高校受験のときだって私と同じ高校に行く為に毎日遅くまで勉強していた(不登校になったのは頂けない)。

死んでしまった直後もすぐに生き返ったらしいしそれから一週間で戻ってきた。なぜか女の子になってたけど。

それからもなぜかヴィノ何たらによって送られてきた刺客からも私を守ってくれた。

それ以外にも行く先々の世界で頑張っていた。

でもそれはいつも私から見えない所でだ。だから今挙げたことは全て本人の口から聞いたり、他の人から聞いたものだ。

ヤマトに乗って戦うときはすぐ近くに居るけどコスモレーダー席と艦長席の位置関係上直接見るのは難しかったから結局ヤマト本人から頑張りを聞いたりした。

でも、今回は近くで見れて応援することも出来る。暦が頑張って戦うなら、私は頑張ってそれを支えよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真琴の家からゲームの会場へ向かう際に、真琴に渡された服はなぜか俺や渚が通っていた高校の制服だった。ご丁寧に女子用だ。

真琴が言うには例の二人が制服を改造したらしい。ブレザーへの防弾加工とかスカートに帯刀ベルトとか。校則では制服の改造は禁じられていたはずだけど、学校を辞めた俺にとってはただのコスプレだ。

とりあえずこんな改造を施した例の二人とこれを運んでいた真琴に感謝する。

着てみたが着心地は変わっていない。一体どんな技術で防弾加工したんだろう?

 

「ふーん。多少は戦えるようね」

 

更衣室から出ると正面に天照さんが居た。

 

「このゲームについて教えていなかったから説明してあげるわ。あのくそ土地神からも説明を受けただろうけど、あいつはここ二百五十年高天原に居なかったから」

 

「つまりその間に何か変わったことでも?」

 

「さぁ、覚えてないわ。だから全てのルール五つを教えるわ。まず一つ、全ての勝負はあなたと私の式神の一対一。二つ目、どちらかが戦闘不能になった時点で試合終了。三つ目、一日一試合の全五試合全勝であなたの願いを叶えるわ。四つ目、あなたが式神に殺された場合はそこで試合中止してあなたを蘇生させ試合再開。五つ目、あなたが式神を倒す際周りに被害が出ない範囲なら何をしてもいい」

 

「二つ目と四つ目って矛盾してません?」

 

「それはハンデよ。あなたは式神を完膚なきまで傷つけて殺してもいいけど、あなたは基本的に死ぬことは無いわ」

 

死んでも無理やり叩き起こすし。とアマテラスさんは言った。

怖い怖い。最悪殺されては生きかえされられての繰り返しになるじゃないか…。

 

「一回戦開始まで後十分よ。精々頑張ることね」

 

そう言って彼女はこの場から去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして迎えた一回戦。観客三人。いや人として数えるものじゃないのが混じっているから一人と二柱か。

そう言えば真琴が占いババみたいなものと言っていたが、観客の少なさも再現しているようだ。

俺は天下一武道会みたいなものを予想していたけどこれが現実のようだ。こっちのほうがやりやすいけど、何か物足りなさを感じる。

そんなことを考えている間に今回の敵が現れた。現れたんだけど…。

 

「でっけぇ」

 

目測六メートルの大男が現れた。

普通こう言う敵って中盤に出てくる奴だよな?




次回からしばらく戦闘回。


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第五話

戯言シリーズアニメ化ひゃっほい!!この瞬間も、まっていたんだー!
ヤマト2202製作決定やplanetarian&Rewriteアニメ化に加え、戯言シリーズまでアニメ化するなんて…。
さらにはPSVita版AIRの発売決定するし…。
もう嬉しいことが多すぎます。


でかい敵と言うのはこう言うバトル物ではお約束と言うべき存在だ。

むしろ定番とか典型的とかもっと言えば日本神話にも出てきているから古典的とも言うかもしれない。

しかしこの手の物は大体ラスボス、早くても中ボスとして出てくる物だ。そう決まっているから巨大敵に対する作戦なんて後で考えればいいやーと思って後回しにしてきた。

そのツケが一回戦で来るとは思わなかった。

 

「それでは、第一回戦、始め!」

 

天照さんが大声で宣言する。

今回の装備は月読のみ。

ショックライフルは取り回しが悪い。そんなこと開発者のあの二人に言うと『出来たよ!アサルトショックライフル!』とか言うに決まっている。もしかしたらもう完成させてるかも…。

ライフルは要らないがせめてゴッドフィンガープロテクターは持ってきたかった。ノンリソースハイパワーと言う優れものだし、巨大敵にも一定の攻撃力はある。欠点といえばチャージの長さだけどここなら問題無い。そう、空間霊力量が無駄に多い高天原ならね。

大倉流霊術?私めには使えません。確かにあれは大群もしくは大物を想定した霊術だけどそれだけに消費が重い。

せめて神風流ならよかったんだけど。生まれてくる家を選べる訳でもないし、選べるというなら普通の家を選んでいただろう。いや、面白がって普通じゃない家を選ぶかもしれない。

そんな暢気なことを考えている場合じゃない。今だって敵の攻撃を避けながらあんなことを考えていたのだ。

とりあえず今回は月読だけで戦おう。

鞘から抜くと実体化させた霊力が刀身を形成して行く。

これはほぼ全ての例術使い(例外、自分自身)が出来ることであってそこまですごくない。月読がすごいのは空間霊力を吸収できることだ。

一説には室町時代以前から続く、大倉家を含めた五つの例術使いの家系が昔から研究していたことだけど今まで誰一人実現出来なかったことだ。

玉鋼珠美ってどんだけすごいんだよ。

ちなみに月読のお陰で空間霊力吸収機能はゴッドフィンガープロテクターにも実装することが出来た。

雑談はここまで。そろそろ戦闘パートに行かないと。

一度大きく後ろへ跳びある程度距離を取る。

相手は大きいが人型な上に属性がある訳でもない、さらには大きいが故に動きが緩慢。冷静に考えれば初戦の相手としては妥当な所だ。

どしんどしんと大きな音を立てて近づいてくる巨人に向けて月読を振る。

普通なら刃渡り+腕の長さ以上の距離にいる対象は斬れないが、月読はその特製上どんなに離れた所でも刀身自体を伸ばすことで斬ることが出来る。勿論伸ばしすぎるとてこの原理で重くなってしまうので伸ばすのは切る瞬間のみだ。

伸びた刃が相手の左ひざに当たる。当たるが…。

 

「ぐっ!硬い…」

 

硬かった。金属バットで岩を叩いたみたいだ。

あまりの硬さで月読にひびが入った。これは切れ味はすごいけど強度はさほどでもないんだよなぁ。

普通の刀と違ってすぐに刀身の再形成が出来るからなんだろうけど。

でも月読で歯が立たないとなると変身能力を使うしかないんだけど…誰に変身するかが問題だ。



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第六話

お久しぶりです。軽く失踪していましたごめんなさい。


変身する場合は周りの環境と、それから自分が置かれている状況をよく理解しなければならない。

変身した人物が自然を操るなら森の中、水を操るなら水辺がそれぞれ一番効果を発揮するし、能力や戦闘スタイルが一対一に向いているかそれとも一対多に向いているのかも考慮しなくてはならない。

そうなると俺って色々な作品を見たり聞いたり読んだりしているつもりだったんだなって思う。一対一の巨大な相手に有効なキャラを誰一人知らない。少年漫画って趣味じゃないんだよ(一部除く)。あと超有名作品とかも読もうとは思えない。某海賊物語とか龍玉蒐集物語とか。だって少し調べたら一杯情報が手に入るんだもん。感動?key作品で十分だ。

あくまで個人の意見です。参考程度に。

閑話休題。この手の話こそキャラコメでやればいい。

さて、誰に変身したものか…。いっそのことあれやっちゃうか。何が起こるか分からない実戦では使うことを躊躇してしまうが、一日一戦が原則のこの場合ならあれが使えるはずだ。

 

「歪二天礼法、一刀延鉄!」

 

法と言ったあたりから体の大きさとか髪型とか服装とかが変わる。体は通常状態より一回り小さくなり、髪型は黒髪のサイドポニー、服装はかなり着崩した黒い着物。

中々知っている人がいない灰都さんだ。

腰には月読とは違った意匠の刀が二本。月読がきれいと評されるならこの二本はかっこいいと言った所だ。

そのうち一本を両手で構え、十メートル先の巨人に向けて振り下ろす。

その動きに合わせて非実体の斬撃が巨人を襲う。

まあ、予想通り大したダメージは与えられなかった。小さな傷を作るのが精一杯だった。けどそれで十分だ。

 

「スペルカード発動!【龍魚ドリル】!」

 

今度はみんな大好き衣玖さんだ。少なくとも東方キャラでは一番好き。

絵師殺しの羽衣の先端から丸まって行き、ドリルを形成して行く。巨人との距離を一気に詰めて、皆さんご一緒に。

 

「ギガドリルブレ衣玖!」

 

力任せに突く。そう言えば本格的なドリルは使ったこと無いな。普通のドリルだとこんな乱暴に使ったら壊れそうだ。

この硬い巨人、ギガドリルブレ衣玖によってようやく傷らしい傷がついた。貫通してるけど。

元ネタ通りなら爆発するんだけど、流石に生物と言うか式神は爆発しないようだ。

 

「チーカマブレード!」

 

次は優子さんだ。黒の長袖って真冬じゃない限り熱いよね。

右手に持ったチーカマブレードがおいしそう。

ギガドリルブレ衣玖してすぐに変身したけど、その間に重力によって先ほど開けた穴から少し低い位置にいるので、どう言う原理かは分からないが空中でジャンプして位置調整をする。俗に言う二段ジャンプだ。

 

「だ~いぎ~んじょう~!」

 

お酒っておいしいのだろうか?俺がそれを知ることが出来るのはもう三年くらい先なんだ。

それは置いといて。

チーカマブレードを掛け声と共に振ると青い斬撃エフェクトが飛び出す。それはギガドリルブレ衣玖で開けた穴にあたり、巨人は穴を中心に砕けていった。

 

「勝者、大倉暦!」

 

天照さんが俺の勝利を宣言した。

一度変身を解くと、その人物には一時間変身することが出来ないから、実戦では使いどころが難しい連続変身による攻撃。どうでもいいけど、連続で変身するとかなり疲れると言うことが分かった。




今回変身した人
灰都=ルオ=ブフェット(リィンカーネーションの花弁)
灰髪灰眼の高校生。ただし制服は着ない。
輪廻返りをすると髪が黒くなり服もかなり着崩した黒い着物になる。女子高生がそれでいいのか。
結構バカ。

永江衣玖(東方Project)
空気を読む程度の能力。
二つ名は『竜宮の使い』とか『空飛ぶレアアイテム』とか。
それにしても二つ名だったりスペルカードだったり幻想郷には意外と英語を話せる人が多いのかもしれない。
作者が一番好きな東方のキャラ。

雨宮優子(ef - a fairy tale of the two.)
今回はファンディスクの天使の日曜日に収録されているリア獣ハンター優子の方。
必殺技を繰り出すとなぜか酒の名前が出てきたり、SとM両方兼ね揃えてたり、そもそも武器がチーカマだったりと公式が病気の疑いもある。
一文で表すと『黒尽くめの腹黒っぽい魔女』

流石に三人分書くのは疲れました。本編書くより疲れました。
しかもその本編だって久しぶりの執筆だったのでいつも以上におかしな点が多かったり…。
失踪することはおすすめしませんよ。


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第七話

ようやく更新できますね。
この長い物語も、もうすぐ終わります。

それは置いといて、宇宙戦艦ヤマトがとうとうスパロボにでますね。
今更ですが。


ここ最近毎日全力戦闘続きのためか、起きたら最終決戦開始一時間前とか言う謎の現象(朝寝坊)が発生したため急いで支度しています。

こう言う急いでるときにウイダ○インゼリーはありがたい。十秒で食べきれたことは一回もないけど。

逆に聞くけどたった十秒で食べきれる?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後と言うこともあって装備は月読とゴッドフィンガープロテクター。ショックライフルは弾切れなので持っていかない。

今日の相手が誰かは昨日の段階で天照さんから聞いている。

最後の敵は自分自身。結局どこまで行ってもこれは変わらないようだ。

もっともあれはこれまでの俺の戦闘データを元に天照さんが作った式神だけど。ゴッドフィンガープロテクターや月読まで再現してるようだ。もっとも空間霊力吸収機能までは備えてないだろうけど。

 

「第五回戦、始め!」

 

俺も、目の前の自分も同時に刀を抜き距離を詰める。

目の前に自分が居るとか、正直言って気持ち悪い。

そんな思いを込めた振り下ろしを斜めに構えた月読もどきで受け流す。

勿論想定通りの行動だ。

自分自身が相手な分、どんな動きをするかは自分で分かる。

 

「爆熱、ゴッドフィンガー!」

 

月読に対してゴッドフィンガーの霊力エネルギーを直接注ぎ、刀身を約千度まで加熱させる。

すぐにそれを察知した俺もどきが後ろに飛び退く。

思った通りに動いてくれてありがとう。

着地の瞬間を狙って千度近くに加熱した上で刀身を伸ばした月読を時計回りに切り払い。

だが、俺もどきはゴッドフィンガーを発動して、その手で月読を掴みそのまま折った。

何あれ、人間やめてるぜ。

ん?でもあれは俺を元に作られたんだよな…。流石に俺でもあんな変態的な動きは出来ないぞ。

折れた月読の切先を俺に向かって投げてくる。

普段なら避けることも防ぐことも簡単だけど、当たってしまった。言い訳をすると、不測の事態に対応しきれなかったんだ。

左手首に刺さった月読の切先は霊力供給が絶たれたことによりその場から消える。傷口は焼けて塞がったから止血の手間も無い。

だけど、自分でも予測できない動きや自分より遥か上を行くこいつに勝てることは出来るのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな、そんな筈は…」

 

隣に居る天照が驚愕の声を上げる。

 

「どうかしたんです?」

 

「暦を模した式神が私の命令に従わないし、何より私が設定した以上の動きをしている。あれは私の式神じゃないわ」

 

断言するほどのことなの?

だけど、天照さんが断言した途端暦もどきの式神に変化が起きた。

全身が溶けてスライム状になったのだ。

 

「ふふふ、ここからが本番じゃな」

 

唯一冷静でいたまこぴーが『らすぼすおーら(笑)』全開の低い声で喋る。そこまで迫力が無い。

 

「恨むでないぞ。これも我が主様とお前様を考えてのことじゃからな」

 

そう言い終えた瞬間、さっきまでは暦と同じ姿をしていたスライムがリングを囲っていた障壁を破り、私の目の前まで飛び跳ねてきた。

あれ?さっきまでより大きくなってね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大変だー!渚がスライム的な何かに飲み込まれたぞー!

大変だー!渚を取り込んだスライムがさらに巨大化と形状変化を起こしなぜか蛇みたいな形になったぞー!

じゃねぇよ!どうしてこうなった?てか蛇というより龍だな、中国に伝わるような蛇みたいな手足の無い奴。

まさか、これを倒して最終試合は終了と言う形になるのか!?

無茶を言うな、俺には無理だ。

って、冷静に分析してる場合かっ!渚は大丈夫なのか?

龍と言うこともあってか空を飛び始めた。その前に何で龍なの?あ、待って、どこへ行こうと言うのかね。

プロテクターに貯めてあった霊力を月読に充填、飛行機能を使い空を飛ぶ。こんなことも出来るのが月読のすごいところだ。

これさえあれば何も要らない。

まあ、刀身の形成以外は所有者の霊力が必要だから、大前提として霊力が要るんだけど。

最高速度は亜光速。風圧から守る球状バリアを張ることが出来るから衝撃波関連も俺は大丈夫。

ただし俺は風圧から守られるけどバリアは風を受けて煽られるし、その動きが月読にフィードバックされて俺まで風に煽られた様な動きをしてしまうことがよくあるが。

とにもかくにも空へ飛び立った龍を追いかける。

流石に音速が限界だよ。最高速度はあくまでもスペック上だ。

スペック上なら生身で宇宙まで行けるけど?逝けると書く場合が多いけれど。

それは置いといて。

渚を取り込んだ龍を追いかけて亜音速まで加速。

蛇みたいな形のどこに航空力学的な利点があるのかは知らないけど、速度が同じためか距離が縮まらない。

その速さより恐ろしいのは未だに巨大化していることだ。どう言う原理で大きくなるのかは知らないけど、今は目測で全長五十メートルを超えている。

でもまだ成長期。

どこのゲッターエンペラーだよ。

戯言だけど。何か久しぶりに言った気がする。

大きくなっているから実は擬似的に距離が縮んでいる。

だからこのまま相対速度をゼロに保てばいずれ龍に取り付くことが出来る。

出来るのだが。

不意に速度が急激に落ちる。

龍の方ではなく、俺の方。

気が付くとプロテクターに貯めてあった霊力が無くなっていた。

つまりあとは落ちるのみ。時速二百~三百メートルで地面へGO!

 

「当然、お前も何かをしてくる訳か」

 

龍がUターンして来た。

口を大きく開けると中から赤いビームが出て来た。

最終試合、どうやら俺の負けである。




次回第一部最終回!


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第八話&エピローグ

これで第一部は終了です。皆さんありがとう御座いました!


「ねぇ…あんたどう言うつもりよ!」

 

大空へと飛び立った二人を見送り椅子に座ってから答える。私が大掛かりな小細工をして自由に形を変えられるスライム状の式神は計画通りに渚を取り込み空へと飛んでいった。龍の形をとったのは想定外じゃったが、それ以外は渚や周囲の空間霊力を吸収してどんどん巨大化したり空を飛んだりと予定通りの動きをしているのじゃ。

 

「何、簡単なことじゃ。あの二人は幼馴染なんじゃよ。それが理由かはどうかは知らんがお互い消極的でのぉ、ちょっとお互いに素直になって貰おうと思っただけじゃが?恋のキューピットと言うよりは必要悪といったかんじじゃがな」

 

「別の所でやりなさいよ!」

 

それはまあ、ごもっともで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤いビーム、もとい熱線を受けても自分がまだ思考できて風や熱線の余熱を感じることが出来て、尚且つ五体満足でいることに驚いていた。

過去形。

今はプロテクターと月読の貯蓄霊力が最大値まで回復してることと高濃度の霊力が自分の周りで停滞していると言う謎現象、それに驚いてます。

しかし、龍はそんなことお構い無しにまた口を開け熱線を吐き出した。

さっきよりは規模が小さいけどそれでも俺なんかは一瞬で蒸発するだろう。

慌てて射線上から離れる。だけどさ、ビームの直径がさ、思ってたより大きかったんだよ。

今度こそ死んだと思ったけど、またノーダメージで済んだ。

俺の周りに漂っていた高濃度の霊力が盾になったようだ。

この霊力がどこから来たのかは知らないが、それはこれが終わった後真琴に聞けばいいことである。

動きを止めている龍の腹部に向かって再び飛ぶ。右手に月読を持った状態でゴッドフィンガーの発動準備。ある程度まで加速したら月読を鞘に納め、両手を前に付き出す。

 

「ばぁぁく熱!ゴッド…フィンガァー!!」

 

フルパワーである。

ゴッドフィンガープロテクターも手の甲を覆うようにスライドしてエネルギーロスを最小限に抑えた状態だ。

その両手を龍の腹に突っ込む。さっきまでスライムだったからふにゃふにゃしてるとばかり思っていたけどそんなことは無く、塊肉に手を突っ込んだ感じだ。

勿論手を突っ込んだだけじゃ終わらない。

 

「石破、天驚拳!」

 

一体いつからゴッドフィンガーしか使えないと錯覚していた?

ゴッドフィンガープロテクターはあくまでも霊力の貯蓄及び放出機能を備えたものなんだぞ。別にゴッドフィンガープロテクターを再現したわけではないのだ。形は再現したけど。

そんなことは今はどうでもいい。

石破天驚拳を体の内側に撃たれた龍は体中が歪に膨張してバァン!と爆発した。

 

「渚ぁぁあ!」

 

ボロボロと落ちて行く龍の肉片の中から渚を探す。

早く見つけて助けないと地上に落ちて死んでしまう。

 

「見つけた!」

 

気絶して頭から落ちて行く渚を視認する。

ふはは。天照さん、俺の勝ちだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日談と言うか、今回のオチ。

まこぴーによるドッキリにも似た事件によって連れ去られた私を助けて天照さんのところに戻り、勝利宣言をしたところで暦は気を失った。

私が語り部をしているのはそのためである。無茶しやがって。

結局なぜまこぴーがあんなことをしたのかは私には教えて貰えなかった。ただ、まこぴーは『これも失敗か、またしばらくは作戦を練り続けることになりそうじゃ』と意味深なことを言ってた。

ちなみに謝罪の言葉は無かった。

 

「それで、暦の願いはなんなのよ。肝心なときに本人は寝てるし」

 

「じゃあ、代わりに私が答えます」

 

暦の願いは男の子に戻ること。だけどそれだとちょっとつまらない。あと女の子状態の暦は本人が思っている以上に可愛くこれで見納めだと思うと残念だ。

だから、暦には申し訳ないが私が勝手に暦の願いを少し変えてしまおう。

 

「暦の願いは―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付くと見覚えのある天井が目に入った。

ここは確か魔科学世界のある国の城の俺に与えられた部屋のはずだ。だが、なぜここに?

さっきまで高天原に居た筈だけど…。

ベッドから出ようとして違和感を感じる。体が元の男の状態に戻っていたのである。

つまり天照さんはちゃんと俺の願いを叶えてくれたと言うことだ。

あれ?俺天照さんに願いを言った記憶が無いんだけど。

 

「あら、暦。もう目が覚めたのね」

 

「いつからそこに居たんですか」

 

「暦がここに運ばれたときから」

 

「本当に最初っからじゃないですかルーナさん」

 

あれ?こんなフリーダムな人だったっけ?

 

「それにしてもこの前までは二つの能力を持っていたけどいつの間にか三つになっているなんて」

 

へ?

 

「そう言えば言ってなかったわね。ひとつは変身能力、これは説明はもう要らないだろうけど制約として女性時にしか仕えないことが追加されたわ。二つ目は吸収能力かしら?与えられたエネルギーを全て霊力に変換してそれを自分のものにする能力ね。欠点として三秒しか発動できないことと効果終了から五秒クールタイムが必要なこと、代償として保有霊力量とてつもなく少なくなること、制約として男性時にしか使えないわねね。最後のは性転換能力ね。効果は読んで字のごとく。代償として多重人格化があるわね。大丈夫よ変わるのは言葉遣いだけだし記憶も思考も変わらないわ。むしろ言葉遣いで本来の性別がバレることが無くなるから利点でしかないわね」

 

俺は同じ説明をもう三回聞いてようやく話を理解できた。とりあえず渚は許さない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、何であんたはまだ居る訳?一緒に帰ればいいじゃない」

 

一足先に人間界に主様と渚を帰して私は天照と話を始めたのじゃが、開口一番これである。

 

「そうは言ってもまだ私の願いをきいてもらってないからのぉ」

 

「そ、そう言えばそんなことも言っていたわね。どう言った願いかしら?」

 

「その前に一つ言っておく。今から私が言う願いを叶える必要は無い。ただ聞くだけでいいのじゃ」

 

どうせこいつの性格的に叶えたくなるのじゃろうが、強制ではないと言うことを予め示しておかないとめんどいことになりかねん。

私は目を瞑りながら願いを言う。目を瞑ってしまうのは緊張したときの癖じゃ。

 

「私と、仲直りして欲しいだけじゃ。もう一度、姉妹としてやり直したいだけじゃ」

 

目を開けると天照は俯いていた。何も言わず、俯いたまま。一分も経ってないじゃろうが、十分くらいこうしている気がしてきた。

 

「そんなの、断れる訳ないじゃない。姉様の卑怯者」

 

顔を上げる。目を腫らしながら、泣くのを我慢しながらそう言う天照。姉様と言う呼ばれ方も何百年振りか思い出せない。

そう、何百年も前のことじゃから何が原因で姉妹仲が悪くなってしまったのかは思い出せない。些細なことじゃったのかもしれないし、何か重大なことじゃったのかもしれない。

でも、私はそれが原因で二人で住んでいた家を飛び出したし、それと同時に名前を捨てたことは事実じゃ。

繋がりを断ちたかったからじゃ。

それからと言うものたまに会うとお互いにぶつかり合って仲直りもしようとしないでいつの間にか何世紀もの時間が経っていた。

 

「今さらこういうことを言うのもおかしいかもしれんがの、すまなかったのじゃ」

 

「悪いのは全て私の方よ…多分」

 

「お互いどちらが悪かったのかを忘れてしまった訳じゃな。歳を取ったものじゃのう」

 

「姉様は私より二百歳老けてるけどね」

 

「それを言ったら…えーと、うぬの名前は何じゃったかの?」

 

殴られた、グーで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渚を探して三千秒、つまり五十分。中学の授業一つ分である。もっとも最初の四十五分は食事で費やしたんだけど。正確には食堂でご飯を食べながら待っていた。

五分かけて見つけた渚は、城の西側のテラスで夕日を見ていた。

 

「こんな所に居たのか」

 

声を掛けるすぐにこちらに振り返る。

 

「こんな所だなんていっちゃ駄目よ。レーラさんに教えてもらったこの城で一番景色のきれいな場所なんだから」

 

確かにきれいな夕日だった。西には海が広がっているため水平線に沈むまで見ることが出来る。

 

「ねえ、暦。私暦のことが好きだったんだよ。でもね、私は人間じゃないって天照さんに言われたの。あの式神は私を取り込んだ瞬間龍の形を取ったでしょ?あれは私が人間じゃなくて龍神だからだって」

 

初めて渚の涙を見た気がする。気がするだけであって何回も見たことがあるんだけど。

でも、何回見ても初めて見る気がするのは、それだけ渚が泣くことが無かったからだろう。

そしてドラマやアニメならともかく、現実で、目の前で、好きな人が泣いているのはとても辛い。

 

「だったら何だよ、それくらいどうしたんだよ。それでも俺は渚が好きだ。好きなんだよ!」

 

「ほんと、暦は優しいよ…。これからもよろしくね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが本当の後日談。

あの後二人でいるところをレーラさんとルーナさんに見つかってしまい色々弄られ。遅れて帰ってきた真琴には

 

「ようやくくっ付いたか。これで私が二人のことで悩むことは無さそうじゃな」

 

と言っていた。なぜか左頬が異様に赤くなっていたけど。

その後に天照さんが来て、渚から龍神の力を抜き取ってくれた。人間界に龍神なんて高位な神の力が一般人が持っていることを危惧してこととだ(おそらくは建前だろう。個人的には真琴のほうが危ないと思う)。これで渚は少し体が頑丈になったり体内で霊力を作れるといった後遺症が残るもののそれ以外は人間と同じになった。

このとき天照さんが真琴を『姉様』と呼んでいたことには驚いたが…。

そんなこんなで俺の青春の物語はこれで終わるわけだ。でもこれからも物語りは続くだろう。

だって俺はまだ二十歳どころか十八歳にすら成っていないからだ。




第二部は八月開始予定です。タイトル決めないとなぁ。


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第二部 転生吸血鬼異世界珍道中
プロローグ


やっとこさサブタイトル決まりました。
それでは「転生吸血鬼異世界珍道中」始まります。


病院のベッドに横になりながら、自分が後どれくらい生きていられるかを考える。

心臓の鼓動は1回ごとに弱まっていると感じるし、呼吸すらつらいと思う。

もって後1晩くらいだと自分でも分かる。今晩は完徹しよう、きれいな星空を見よう。病室の窓から見える空を見ながらそう思う。東の空が見える窓からは半月が見えていた。

僕は生まれつき体が弱かった。兄と姉が1人ずつ居るけど二人はとても元気だ。

霊術と言う魔法みたいなものを扱い、怪異を退治することを生業にしている我が家にとって僕みたいな病弱な子は邪魔な存在だった。

そんな訳で僕は同じ怪異退治をしている大倉家に引き取られることになった。向こうは現当主とその奥様が同盟国防衛軍に所属し、かなり活躍しているそうで資金面ではまったく不自由してないらしいし、それを裏付けるように承諾してくれた。

当主の暦さんと妻の渚さんはよそ者の僕にとても優しく接してくれた。僕が来てからはずっと家に居てくれたし、霊術を用いて病弱体質を改善させようとしたり、僕にオリジナルの霊術を教えてくれたりした。

はっきり言って本物の両親より優しかった。

優しいと言えばあの人もだ。人と言っていいかは分からないが自称獣人の真琴さんもいい人過ぎる。彼女は僕に知らなくてもいいことを教えてくれた。常識的なことではなくマニアックな物ばかりを。学校では習わない身の回りの科学知識から新型戦闘機の操縦法まで。

しかし、2週間前から体調が急に悪くなったらこの状態である。原因不明の不治の病。暦さんたちも頑張って治そうとしたけどどんな手段を用いても直ることはなかった。癒しを司る神様の力を使ってもだ。

もう一度朝を迎えられるとは思えない。

今眠ったらもう二度と目を開けることは出来ないと思う。だから精一杯目を開け続ける。窓の外に広がる星空を目に焼き付ける。

偶然流れ星を見ることが出来た。限界が来たのか視界が暗くなる。それでも意識があるうちに流れ星に願う。もっと生きていたいと。

そこで意識が途切れてしまった。

そして。

目が覚めた。もう二度と目を開けることはできないと思っていた。

しかし目の前の景色は見たことのないものだった。

もっとも、今まで窓からしか外を見ていないから見たことのある景色は限られるけど。

どこまでも続く草原に満天の星空、頭上には大きな満月。タイムスリップしてしまったか異世界に転生してしまったか。タイムスリップは時空連続体が繋がっている全ての世界の時間を巻き戻さないといけないから神様でも不可能。転生の場合は転生の間とも言うべき空間で一度目が覚めるはずだからそれも違う。

まぁ、いっか。とりあえずは寝よう。面倒なことは後で考えよう。

星空の下で僕は眠りに落ちた。




来月から本格的に更新していきます。


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第1話

今年の夏休み、何もしないまま終わっちゃったなぁ。


よかった、また目が覚めた。体調も悪くは無い。

状況は悪いかもしれないけど。

昨日は草原で寝ていたけど、目が覚めたらふかふかのベッドの中だった。こんなところに金を掛けるなと言いたくなる程豪華な装飾が施されたベッドで寝ていた。部屋もホテルのスイートルーム並みに豪華だ。なぜかカーテンが閉められてる。

 

「むにゃむにゃ、徒歩○分は1分当たり80メートル…」

 

ベッドの横には予想通りと言うか何と言うか、豪華なドレスを来た僕より少し年上の少女が居た。椅子に座って眠っている。青い髪にきれいな顔立ちに凛々しい雰囲気をまとっている。ただし寝顔で残念な美少女になっている。

あとなんで僕が居た世界の雑学を知っているの?これが噂の電波系って奴なの?

彼女のお陰でここが中世的な異世界と言うことが分かった。ここがこの世界にある貴族の屋敷と言うことも。

取り合えずこの少女を起こさないと。肩を叩いて呼びかければいいかな。

 

「もしもし、起きてください?」

 

自分の声に違和感を感じたけど、ここ最近自分の声を聞いていなかったからどこが違うか分からない。

 

「ん…はぁ。あら、起きたんだ。気分はどう?」

 

無駄に洗練された素早い動きで口元の涎を拭い、微笑みながら話しかけてきた。

つくづく残念な美少女だ。

 

「はい大丈夫です」

 

「そう、よかったわ。あんなところで裸で寝てたら何に襲われるか。考えるだけで恐ろしいわ」

 

裸で寝てたんだ…気付かなかった。体を見ると薄手のネグリジェを着ている。どうやら着せてくれたらしい。

ネグリジェ?これって確か女性用のパジャマだったはず…。僕男の子だよ。それに体が縮んでたり色白になってる気がする。

 

「これは?」

 

「その服は私がもう少し小さかったときに着ていた物よ。サイズもいい感じね」

 

そういうことを聞きたいんじゃないんだけど。

まぁ、下手なこと言って疑われるのも面倒だしここは女の子で通そう。

 

「そうですか、助けていただきありがとうございます。では僕はこの辺で」

 

しまった、一人称が僕になっている…これじゃあ僕っ娘じゃないか。

追求されないよう、逃げるように部屋を出る。

 

「あ、駄目よ!この部屋から出ると…」

 

後ろで呼び止める声が聞こえたけどもう遅い。扉を開けて廊下に出てしまった。やはり廊下も豪華な造りになっている。外の光を積極的に取り入れるようになっておりかなり明るくなっている。

 

「うぷっ、おえぇ」

 

しかし僕はその廊下に感心する暇なく強烈な吐き気に襲われた。と言うより実際に吐いた。胃の中が空っぽだったから胃液だけだったことは不幸中の幸いかな。

 

「だから駄目って言ったでしょ」

 

少女が僕を抱いてベッドに連れ戻しながら言う。少女に抱いて貰えるのはご褒美ではなく拷問だ。すごく恥ずかしい。

それと力強くない?いくら今の僕が小さいからといって少なくとも40キロは超えているはず。それを難なく抱くことが出来るって…これが女子力(物理)?

僕を再びベッドに寝かせ少女は廊下に出ると2回叩いた。するとメイドさんが1人やって来て僕の吐瀉物の掃除を始めた。さすが貴族、一々指示を出さなくても簡単な合図だけでいいのか。

 

「もしかして、あなたは記憶が無いの?普通なら今の時間に外に出るなんてことしないはずだけど。そもそもこの時間に活動しないはずなんだけど」

 

いつの間にかベッドの横に戻っていた少女がそんなことを言う。

どういう意味だろう。昼間に外へ出ないなら人間はいつ外に出るんだろう?

混乱していることを察したのか、彼女は僕に真実を告げた。

 

「思い出せない?あなたは吸血鬼なのよ」



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第2話

夜、正確な時刻は分からないけど多分20時過ぎだと思う。

吸血鬼になった僕の食事は僕を拾ってくれた命の恩人であるシャーロット・モンフォールさんの血だ。

普段は紅茶などを入れるものである白いティーカップには赤い血が入っている。

シャーロットさんが手首を切って血を注いだのだ。勿論治療済み、こっちの世界でも霊術は問題なく使えるようだ。

ごくごく。うげぇ、まずい。

鉄の味がする…吸血鬼だからって血をおいしく感じるわけではないのかな?それとも直接吸わないと駄目なのか?

カップにこびり付いた血を水の霊術を使って洗い落とす。

どこに戻せばいいのか知らないのでシャーロットさんに聞こうと思ったけど、彼女はさっきからずっと僕を見ながら考え事をしているから聞くに聞けない。

何でも僕の名前を考えているらしい。

確かに前世の名前だとこの地域では場違いな響きだろう。一応男女共用的な名前だから今でも使えないことはないけど。

上島(かみじま)(そら)。これが今までの僕の名前だ。

昔は神島と書いていたらしい。神蔵家が大倉と名乗るようになると、他の霊術使いの家も苗字から神の文字を消したそうだ。今でも神と付いているのは神風家くらいかな。

 

「ラミア。ラミア・モンフォール。響きがいいわね。これに決めましょう」

 

どうやら僕の名前が決まったらしい。それも響きがいいと言う理由で。

ラミア・モンフォールと言うのがこれからの僕の名前のようだ。いつの間にかモンフォール家の一員になっていることには触れないでおこう。

 

「あなたは私の妹と言う設定、正確には義妹ね。お姉ちゃんと呼んでもいいのよ」

 

それはちょっと恥ずかしいな。実の姉にさえ『お姉ちゃん』と呼んだことがないのに。

 

「じゃあシャロさんで」

 

「それは私のあだ名でしょ。お姉さんでもいいのよ」

 

「じゃあ姉さんで」

 

少し不満そうな顔をしたが納得はしてくれたらしい。

 

「まぁ、いいわ。本当は貴族らしくお姉様と呼ばせるのが正しいんだけどね」

 

それでいいのか貴族社会。少なくとも僕とシャロさんはいいようだけど。

 

「あと、これだけは聞かせて。あなたは魔法が使えるの?」

 

「魔法?何それ、ハリー・ポッターのこと?」

 

「ハリー・ポッター?とぼけないでよ、さっきだって手首の切り傷直してたじゃない」

 

霊術のこと?そうか、この世界では魔法と言うのか。

もっとも、使えない人は居ないはずなんだけどね。皆存在を知らないだけで、使えない訳じゃないはずだ。

 

「え、これ?使えないの?」

 

右手の人差し指を伸ばしそこから光球を出す。ただ光るだけの名前もない初歩的な霊術だ。

 

「やっぱり魔法を使えるじゃない。お願い、私に教えて!」

 

教えて欲しい?なるほど、存在は知っているけど使い方は知らないと言うことか。その発想はなかった。

 

「分かった教えてあげるよ。その代わり、この世界のことについて教えて欲しいな」

 

魔法の件でもあったように、常識が違う部分があるようだ。この世界で生きていく以上そういった食い違いをなくして置きたかった。



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第3話

どうしてこうなったと叫びたい。

手元のティーカップには血ではなく紅茶が入っていて、液面には不安そうな僕の顔が映っている。

霊術で紫外線を弾くようにしたら鏡にも映るようになったし影もできるようになった。紫外線って不思議。

僕の新しい体は12歳ほどの少女の体、金髪のロングに碧く少し細めの目。全体のバランスは整っている方だろう。

髪は適当に頭の後ろで一つ結びにしている。セットが一番楽だからだ。

服はシャロさんが貸してくれた赤いドレスを着ている。

金髪、碧眼、赤いドレス、紅茶…僕は某薔薇乙女第5ドールか何かかな?僕っ娘は確か蒼い子なんだけど。

でも一番すきなのは雪華綺晶なんだけどね。薔薇眼帯っていいよね。

この世界には乳酸菌飲料とイチゴ大福はあるのだろうか?

 

「こちらがお父様のグラハム、こちらがお母様のリア、そして兄のエドワーズ、弟のアルフレッドよ」

 

そう、モンフォール家の皆様と顔合わせをしているのだ。

グラハムさんは黒髪の老練した雰囲気のある大人の男と言う感じの人で、リアさんは群青色の髪をした少し童顔の女性だ。

エドワーズさんは二十歳を過ぎた大柄な人で考古学者をやっているそうだ。

アルフレッド君は9歳くらいの今の僕より小さな男の子だ。二人とも髪は黒い。

 

「えーと、昨日シャーロットさんに拾われましたラミアです。吸血鬼で転生者です」

 

「転生者?」

 

僕の言葉にエドワーズさんが反応した。

 

「死んだ者が極稀に別世界に転生すると聞いたが本当にいたとは」

 

どうやらエドワーズさんは転生者について何か知っているらしい。

 

「そうですね必ずしも別の世界に転生する訳ではないですけど、その認識であってますよ」

 

どの世界に転生するかは自分で選べるから異世界に行かないという選択も出来る。

その場合は死ぬ前後の自分に転生することが多いらしい。死ぬ前なら死を回避、後なら奇跡の復活になる。

とりあえず吸血鬼とか転生者に理解がある世界でよかった。他の世界だったら吸血鬼だからって理由だけで殺されている。死なないけど。

 

「あ、お兄様、ラミアにこの世界について教えてあげてください」

 

あ、シャロさんが逃げた。説明と言う面倒くさいことから逃げた。

それにしてもシャロさんは丁寧な言葉遣いになると声が上擦っている気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

顔合わせが終わり、これからどうしようかと考えているとエドワーズさんに呼ばれた。説明の準備が出来たらしい。

招かれた部屋はエドワーズさんの研究室らしく、沢山の本や出土品と思われるものが置かれていた。

出土品は動物の化石が多いが、見覚えのある物も同じくらい多かった。

そしてエドワーズさんにこの世界についてある程度教えてもらった。

まずこの辺りの地理について今僕がいる国は西以外の3方を山に囲まれて、西は海に面しているフェランス王国と言う国で、北の山を越えたところにある国はインフィア国、東はカナリウム共和国、南がレンバッハ帝国。フェランス王国はレンバッハ帝国と対立関係になっている。

宗教は意外なことに信じられていない。だけどみんな神を想像している。けど結局は『お前がそう思うんならそうなんだろう お前ん中ではな』程度のものでしかない。日本人にとっては過ごしやすいです。

気候は多分温帯だと思う。

エドワーズさんの話で一番興味を引かれたのはこの世界は既に文明が何度も滅んでいると言うものだ。出土品に見覚えのあるものがあるのはその為らしい。

 

「もしかしたら過去の技術には別世界に行く物もあるかもしれない。それが見つかれば君も帰れるかもしれないね」

 

エドワーズさんはそう言ってくれたけど、僕はまだ元の世界に帰りたいとは思ってない。

自分がどうしたいのかしばらく考える必要がありそうだ。



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第4話

失踪なんかしませんよ、多分!
1ヵ月以上更新しないことになるとは思いませんでしたが…。

P.S.コードギアス 復活のルルーシュきたああああ!!カードキャプターさくら クリアカード編もきたああああ!?


「それじゃあ、そろそろ魔法の基礎理論について教えようと思うよ」

 

シャロさんが説明してくれたわけじゃないけど、約束は約束だ。魔法(こちらの世界では霊術のことを魔法と言うらしいからそれに則る)を教えようと思う。暇だし。

 

「まず、魔法を使うには魔力が必要なんだ。だけど一般的な生物は体内に魔力を生成する機関がないんだ。代わりに空気中の魔力を体に取り込み蓄えることが出来る。蓄えられる量には個人差があるけどね。で、蓄えた魔力の量を魔力量といって、限界まで蓄えた量を最大魔力量と言うんだ」

 

「ふーん、じゃあラミアちゃんは自力で魔力を作れるの?」

 

「え、無理だけど?一般的じゃない生物って言うのは、ようするに怪異と言う奴なんだけど、大体の怪異は一般的な生物をベースとしているから自力で魔力を作ることは出来ないんだ。自力で作れるのは神様クラスしかいないと思うよ」

 

だから吸血鬼になった今の僕でも自力で魔力を生み出すなんてことは出来ない。

その答えに納得したのか別の質問が来た。

 

「そもそも神様とかいるの?」

 

そう言えばこの世界には宗教が無いから神様的存在には懐疑的なのかも知れない。

 

「いるよ。僕は会ったこと無いけど、僕の保護者だった人は神様と友達らしいよ」

 

もしかしたら知らないうちに顔を合わせたことがあるかもしれない。暦さんの家には知らない人がよく訪ねてきてたし。

 

「他に質問はないね。じゃあ次に行くよ。えーと、魔法を使うにはどんな現象を起こすかをイメージしながら魔力を放出すればいいんだ。変な呪文を呟かなくてもいいし、魔法陣を使う必要もないんだよ。ちゃんとイメージできていれば魔力量の許す限りどんなことだって出来るよ」

 

あらかじめ用意して置いた茶色い枯葉を鉛直投げ上げ、十分高い位置に行った所で指パッチン。

すると指先から火花が出てそのまま枯葉まで走る。火花が枯葉まで行くと小爆発を起こして灰になる。

灰は床に落ちる前に風で窓の外に吹き飛んでいった。

 

「まぁ、これくらいは出来るよ。今のは指の摩擦に合わせて火花を出してそれを空気中の塵を導火線にして枯葉まで誘導、それと同時に枯葉の周りに酸素を集めておいて燃焼を起こしたんだよ。灰を吹き飛ばしたのはただ普通に風を起こしただけだよ。一応イメージしなくても魔法を使う方法もあるんだけどね」

 

枯葉を燃やしたのは某大佐のあれをイメージしてみた。こっちの世界の人が魔法を使えないのは分かりやすい教材がないからかもしれない。あっちの世界には漫画とかアニメとか小説とかが一杯あったから大体のことは想像できるのに対して、こちらにはそういった文化はまだ無いようだし。

ちなみにシャロさんの魔法の腕前は、言葉に詰まるほどにひどいものだった。

これからどれくらい伸びるか楽しみでもあるけど。

 

「魔法を使い続けると魔力量が0になって魔法を発動することが出来なくなるからね。回復するには体が周りの魔力を取り込むのを待つか、他のものから受け取るなり奪うなりする必要があるよ。もっとも、受け取るならまだしも奪うというのはかなり難しい技だけどね」

 

僕が知っている人で相手の魔力を奪える人はいない。

 

「基本はこれくらいかな。要は周りから集めて蓄えてイメージして放出すればいいんだよ」

 

「ふぅん、イメージして放出ね。何か私が聞いた魔法とは少し違う気がするけど。聞いた話だと一点特化だとか」

 

「多分まだ魔法の多様性に気付いて無いんじゃないかな。僕が居た世界でのちゃんとした理論が確立されたのは約500年前…」

 

そこまで言って気がついた。シャロさんが魔力放出に夢中になって話しを聞いてないことに。

やっぱりイメージは難しいかな。漫画の偉大さを感じる。

だとするとここは僕が頑張るしかないかな。どうせしばらく暇だし。

 

「じゃあ、しばらくは僕が魔法使うのを見てまねて。技術は教わるより盗むだよ」

 

「…え?」

 

こうしてシャロさんにとっては地獄の3週間が始まった。



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第5話

この世界に転生して3週間。文化の違いとか地理とかを教えてもらったり、シャロさんに魔法を教えたりして過ごしていた。

それが終わったので僕は目的の無い旅に出ようとしていた。お目付け役(笑)としてシャロさんも一緒に。

義理とは言え姉妹で旅するなんて、どこの不思議な旅の錬金術士かな?

流石に錬金術は出来ないんだけど。

この世界には転生物のお約束なのか魔物とか盗賊とかがいるけど、僕の場合武器とか鎧は必要ないし、それは僕に鍛えられたシャロさんも同じだ。

 

「目的が無いとは言ったけど、姉さんをここに帰さないといけないからいつかは戻ってくることになるんだよね」

 

見方によってはシャロさんを連れまわすことが目的に見えなくも無い。まったく、どっちが姉だよ。本来の年齢は同じ17歳だから性格とか育ちの差なのかな?

 

「さてと、大体の準備は出来たかな?非常食も持ったし、フェランス王国の地図も持ったね。水は作れるからいらないし、武器はこの安っぽいのを無理矢理強化したこの剣があるし…あとギルドの会員証も」

 

普通に鍛冶屋で買ったロングソードだ。必要は無いけどあって困ることも無いだろう。個人的には短い奴がいいが、今の体系を考えるとリーチ的に厳しい。

吸血鬼の身体能力で相手を圧倒すればいい?魔法で強化して無いシャロさんに腕相撲で負ける程度だよ、今の身体能力…。

真相を言うとシャロさんが吸血鬼をも凌駕する馬鹿力の持ち主ってだけなんだけど。しかも脳筋では無い。むしろ頭の回転は速い方だ。要するにリアルチートである。

 

「明日の朝出発だったよね?」

 

「そうだよ。まずは南のレンバッハ帝国、そこからカナリウム共和国、ラヴィーナ、インフィアと反時計回りに行って、フェランス王国に戻る感じで行くよ。そこから海を越えるか一度ここに戻るかはまた考えるけど」

 

移動方法は一部瞬間移動を使うが基本は徒歩だ。馬車とか渡し舟も使うときは使うけど。

瞬間移動は超長距離を移動するときくらいしか使わない。と言うより、高が数キロ程度の距離をわざわざ瞬間移動するなんて非効率的だよ。

 

「あ、後これ持っといて。いざと言うときの最終兵器」

 

エドワーズさんから古代文明の遺物を貰い、それを出来るだけ直して使えるようにしたものを渡す。

 

「ふーん、一応貰っておくわ。じゃあ私はもう寝るねー」

 

「うん、おやすみー」

 

シャロさんが部屋から出て行き僕1人が残った。僕ももうすぐ寝るつもりだけど。

吸血鬼だからといって人間の社会で暮らしていくには昼間おきて夜は寝る生活にしたほうが都合がいい。

眠いと思いつつも今日行う最後の作業を始める。バッグに魔力吸収と空間拡張、それと重量軽減の(いん)を書き込んでおく。

印と言うのは分かりやすく言えば魔方陣で、この少なくとも明治以前から使われている昔ながらの技術だ。利点は発動する魔法をイメージしなくても魔法を使える。しかし、イメージをしないと言うことは汎用性を失うと言うことで、それが欠点になっている。

普通は印に魔力を送って使うのだが、これの場合は5年前ようやく実用化された魔力吸収の印で周囲の魔力を吸収し、そこからから空間拡張と重力軽減の印に魔力を送る形にしている。

効果としてはバッグの中が見た目以上に大きくなることと、軽量化。そのまんまだ。

 

「まずは南か…」

 

さっき自分で言った旅の計画を思い出しながら呟く。

 

「南にいくと日差しが強そうだなぁ」

 

いくら紫外線を弾いてるから日光で燃えないとは言っても(そもそも日光耐性があるから燃えはしないけど)、何で紫外線を弾くと吸血鬼の弱点が消えるかは分かっていないので僕はそこだけが不安だった。多分大丈夫だろうとは思うけど。




次回ようやく出発です。多分土日に投稿します。


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第6話

旅立ちの日。天気は少し雲が多めの晴れ。時間は朝の7時くらい。暦関係は地球と同じだったから、太陽からこの星の距離は1天文単位、自転と公転の速度も地球と同じだと思う。

 

「3週間お世話になりました」

 

見送りに来たリアさんに深々と頭を下げてお礼を言う。本当、何から何までお世話になったからね。

 

「そんなこと言わないで、家族なんだから。いってらっしゃい」

 

それに対し僕達は声を合わせて答える。

 

「行ってきます」

 

そして2人で歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モンフォール家の領地はフェランス王国の南側にありレンバッハ帝国との国境に比較的近い位置にある。当面の目標はそのレンバッハ帝国との貿易拠点、ケルトンを目指すことだ。

対立関係とは言っても、入国拒否されるというような関係ではない。まだその段階ではないとグラハムさんは言っていた。

半年前から国境周辺で旅人や商人が消息不明になることが多発し、しかもその被害にあった人はフェランス国民がほとんどだったことから、『これはレンバッハ帝国の仕業に違いない!』と多くの人が考えている。だからこの件が解決すれば国交も回復するかもしれないらしい。逆もありえるけど。

だから入国できなくなる前にレンバッハ帝国に行きたかった。聞くところによるとあの国には数多くの古代遺跡などが発掘されているらしい。それがなかったら、おそらく東を目指していただろう。

 

「ケルトンまでは5日歩けば着く距離か…。ここで1回ワープの体験してみる?」

 

しばらく歩いて周りに誰も居ない状況になったから、ここで提案してみる。

 

「ワープ…どんな感じなの?」

 

シャロさんが不安そうに聞いてきたから、

 

「全身の細胞がゴリゴリ押しつぶされる感覚に似てるね」

 

と嘘をついてみた。実際は自動車の急ブレーキ程度のGを感じるくらいだ。どこからその加速度が来るかは知らないけど。

 

「何それ怖い」

 

どうやら真に受けてしまったようだ。まぁ、別に責任は取らないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局普通に100キロほどワープした。だからこの加速度はどこから来てるの?そのせいで軽くめまいがする。

シャロさんはぴんぴんしていた。吸血鬼が苦しんでいるのに人間はノーダメージ、なぜだ?

 

「あそこがケルトンかな?」

 

遠くの方にもやで見にくいが街が見える。

 

「そうね。確かあの街がケルトンよ。結構賑やかな街だけど今は…ん?」

 

バキッ、と何かを割った音がシャロさんの足元から聞こえた。

見ると下半分が地面に埋まった灰色のラグビーボールくらいの大きさの卵が割れていた。

同時に空から大きな龍、あのリオレイアに似た緑色の龍が空から降りてきた。

さすが母親、我が子が死んだことを一瞬で察知するとは。それとも偶然巣に戻ったら空き巣が居たという感じかな?

流石に飛龍種と追いかけっこして勝てる自信は無いし、無闇にワープを行えば最悪土の中にワープアウトすることになる。戦うしかないか。黒くないから勝てるだろうし。

 

「まったくしょうがない。今日の夕飯はドラゴンの丸焼きだよ」

 

「いや、普通に不味そうなんだけど」




雌火竜のバラとか雌火竜のロースとか言う物がモンハンの世界には在ったりするので、意外とおいしいかも…。

追記
サブタイ抜けてました。むしろサブタイなくても投稿できるんですね。


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第7話

今年最後の投稿です。


「ワイバーンね。普遍的なモンスターで口から火を吐いたり空を飛んだり出来る」

 

別に聞いても無いけど姉さんが簡単な説明をしてくれた。

突然現れたワイバーンはお約束のように口から火を吐き、それをシャロさんが風を起こして左に逸らす。

その間に僕は右から回り込み、右手を銃の形にして指先から電撃を出す。

電撃はワイバーンの左脚に当たったが、鱗に受け流されただけだった。

しかしワイバーンにとっては予想外の攻撃だったようで、後ろに飛んで僕達から距離を取った。

 

「かなりの高電圧をかけて大電流を流したつもりなんだけど…ノーダメージか。この世界の生物タフすぎない?」

 

「いやぁ、それほどでも」

 

「褒めては無いよ。て言うか、姉さんも含まれているから」

 

「えっ!?」

 

シャロさんがなぜか驚いた声を上げているがそれは置いといて、どうやってこのワイバーンを倒そうか…。

―――霊術が効かないなら物理で殴ればいいじゃない、だって人間だもの―――

前世の姉さんが言っていた言葉を思い出した。今は吸血鬼だけど、問題ないだろう。

 

「一か八かで接近戦を仕掛けるから、後よろしく」

 

シャロさんにフォローを頼み僕は吸血鬼の脚力をフルに活かし地面を蹴り、魔法で地面ギリギリの高さを滑空する。

飛龍まであと5メートルになったところでもう一度地面を蹴ると同時に、地面に対して水平に働いている慣性を垂直に曲げる。

それだけで、と言うのもアレだけど、驚くことに50メートル以上も上昇してしまった。

ちょっと怖い。高い怖い。

自分が高所恐怖症と言うこと初めて自覚して、恐怖から涙目になりつつも腰からロングソードを抜き、ワイバーンの背中目指して自由落下。

50メートルから自由落下すると速度は秒速31メートル。桜の花びらの600倍のスピードでロングソードとその鞘をワイバーンの背中に突き立てた。

魔法で切れ味・強度共に強化されたロングソードと鞘は背中の硬い甲殻を貫通した。

ロングソードの柄と鞘を掴み、手に魔力を集中させる。そしてそれを電気に変える。

 

「バスタァァァコレダァァァッ!!」

 

ロングソードを電極にしてワイバーンの体内に電流を流す。

体内に直接電流を流されたら基本的に生物は死ぬ。動かなくなったのを確認してロングソードを引き抜いた。傷口からは血が溢れている。ワイバーンの血って紫色なんだ。

 

「さて、勝ったことだしケルトン目指して出発だよ」

 

背中から飛び降りて、未だに目を白黒させているシャロさんに声を掛ける。ちょっと喉が痛い。早く再生させるために喉に魔力を集中させる。

 

「え?あ、うん…」

 

「どうかした?」

 

「私、何も活躍して無いなぁって、危ないっ!」

 

急に走り出し驚くような速さで僕からロングソードを引ったくりそのまま僕の後ろへ向かう。

振り向くと倒したと思ったワイバーンが立ち上がり、火を吐こうとしていた。

それを見たシャロさんが、先程の行動をしたようだ。

シャロさんはロングソードの切っ先に魔力を集中させ、火炎を文字通り斬った。最初にやった風魔法の応用だろう。

 

「せいやぁぁああ!!」

 

炎を突破したら女の子らしからぬ声をあげロングソードを大きく振るい首を切り落とした。

 

「大丈夫!?怪我は無い!?」

 

「それはこっちの台詞だよ。僕は吸血鬼だから怪我なんてすぐに治るしね」

 

「私は大丈夫よ。剣返すね」

 

大体3分くらいか。やっぱり黒くなければ余裕だね。黒かったら危なかったけど。




それでは皆さん良いお年を。来年もよろしくお願いします。


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第8話

あけましておめでとうございました。
新年早々マウスの調子が悪いですが、キーボードは使えますので執筆には問題ありません。
今年も一年よろしくお願いします。


ケルトンに着く頃には日はかなり傾いていた。

当然といえば当然だけど、レンバッハ帝国との貿易がほぼ止まっているため、街には活気が無い。

 

「すみません、宿を探してるんですけど」

 

取り合えず今日寝るところを確保するために通りがかったおじいさんに声を掛けた。シャロさんが。

 

「こんなところに旅人かい、かなり久しいのう。宿は今はあそこしかやっとらんよ」

 

そう言っておじいさんは歩き始め、お礼を言ったシャロさんも戻ってきた。

 

「あっちに1軒だけやっているってさ」

 

「聞こえてたよ。他の宿屋は閉店してるんだね」

 

吸血鬼は夜間視力は勿論、視力・動体視力・嗅覚・聴覚も優れている。

余談だけど、吸血鬼のモチーフであるコウモリの特性も引き継いでいて、それが結構便利だったりする。

 

「私が前来たときには5、6軒やってたんだけどね」

 

この街はレンバッハ帝国との貿易拠点であると同時に玄関でもある。この情勢ではフェランスからレンバッハ、もしくはその逆を行き来する旅人も居ない。旅人が来なければ宿屋を使う人はほとんど居ない。だから閉店しているのだろう。

 

「ま、取り合えず行ってみようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんくださーい」

 

「いらっしゃいませー!」

 

まだ10歳くらいの金髪の少女が元気な声で迎え入れてくれた。

キャラが…金髪キャラが被っている。

それ以外はRPGにでも出てきそうな普通の木造の宿だ。

 

「2人部屋、開いてる?」

 

「2人部屋ですね。201号室へどうぞ。こちらが鍵です」

 

この子明るいなぁと思いつつ、差し出された鍵を受け取る。

 

「食事は朝と夜はこちらで出すことも出来ますが?」

 

「お願いします」

 

「分かりました!それと何泊の予定ですか?」

 

「それは未定だけど…そうだね出発の前日には知らせるよ」

 

「そうですか。それではごゆっくり~!」

 

後ろで待機していたシャロさんを連れて、二階に上がる。

201号室はモンフォール家の個室と同じくらいの広さだが、そのときは1人部屋だったがこっちは2人部屋だ。

2、3日はこの街の観光で時間を潰そうと思っていたが、街の様子を見る限りそれは難しそうだ。

行方不明事件の解明?それは警察の仕事だ。この世界にも警察がいることはエドワーズさんから聞いている。

しかし、もうすぐ3桁に届きそうな数の犠牲者を出しても、大掛かりな捜索は行われていないらしい。

日本だったら、警察と自衛隊、さらには民間で合同の捜索隊を組織しているだろう。それも被害が1桁の内に。

 

「やっぱり、自分達でやるしかないかな」

 

「何か言った?」

 

「行方不明の原因究明でもしようかなって」

 

別に隠すようなことでも無いので正直に話した。

 

「そもそも予定では5日後に到着する筈だし、さらに2、3日はここで過ごすんだから、時間はたっぷりある。上手く言えば原因を突き止めて、報酬をもらえるかも知れないしね」

 

「確かにこの事件が解決すればレンバッハとの国交も回復するかもしれないし、そうすればこの街に活気を戻せるわね。問題は、解決したらレンバッハと戦争が始まる可能性があることと、私達まで被害者リストに載る可能性があることね」

 

その辺は不安材料だけど。やってみなくちゃ分からない。

 

「じゃあ、2日後に事件が起こるって言うケルトン山脈に行くってことでいいかな」

 

「ラミアちゃんに任せるわ。この旅の主役はラミアちゃんなんだから」



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第9話

今後の動きを考えていたら、いつの間にか夕食の時間になったらしく、受付の女の子を少し大きくした子が知らせに来てくれた。

姉なのかな。妹とは対照的な性格のようで声も小さかった。

夕食はパンとビーフシチューとプリンだった。

モンフォール家で出された料理と比べればかなり質素だが、僕にとってはこれくらいがちょうどよかった。テーブルマナーにさほど気を使わずに済むのもうれしい。

 

「こんなときでも開店していて助かりました。ありがとうございます」

 

「いえいえ、あなた達みたいな旅人の為にやっているんですから。せっかくこの街に着たのに止まるところがなくて野宿、て言うのはひどい話ですから」

 

既に食事を終えたシャロさんは女将さんと話している。

なにやら談笑を始めたようだが、その声が聞き取れないくらいに集中していた。

行方不明の原因、自然災害か人為的なものか、自然災害の場合どんな災害でどう対処すべきか、人為的な場合その正体と狙いは何で平和的解決は可能か。

災害の場合山脈地帯で起こりえるのは土砂崩れだろう。いや、さっきみたいにモンスターに襲われたという可能性もある。しかし、その場合だとなんとか逃げ切った人がいてもいい筈だが…大規模な集団が丸ごと消えた事例もあるから、モンスターは除外。土砂崩れだって、流石にこれだけの回数は起こらないだろう。

だとするとやはり、災害ではなく人為的なものの可能性が高い。まず正体だが、それすらも予想することは難しい。可能性がいくらでも考えられる。だからその中から絞って特定するしかない。

レンバッハ帝国の攻撃かもしれないし、山賊による犯行かもしれないし。あ、もしかしたら――

 

「ラミアちゃん、そろそろ戻るわよ」

 

と、シャロさんに声を掛けられて現実に戻ってきた。いつの間にか食器も片付けられていた。

それに気付かない程考え込んでいたようだ。

はて?さっき何か思いついたような気がしたけど何だったかな。思いついた瞬間に話しかけられてから忘れてしまった。

思い出せないまま部屋まで戻ってしまった。思い出せないってことは大したことじゃないんだろう。

まぁ、どんな敵が現れても吸血鬼の身体能力なら大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フラグを立ててそのまま2日が経ち、今僕達はケルトン山脈に居る。

標高1000~1500メートルくらいの東西に伸びるこの山脈を越えればレンバッハ帝国に行ける。

山の中は木が鬱蒼としていて、昼間なのに夕方のように暗くて視界も悪い。

これだけ視界が悪い環境で奇襲を受けたら何が起こったか分からないだろう。

 

「姉さん、左にジャンプ」

 

上から何かが来ることを察知して、それがシャロさんを狙っていると判断した僕は、すんでのところで姉さんに危険を伝えた。

それを聞いた姉さんが左に跳んで着地するのと、上から落ちてきた物が着地したのは同時だった。

人が土煙の中から現れた。銀髪赤眼の男だ。ニヤリと笑いながら近づいてくる。

その歯は僕と同じ八重歯…つまりは吸血鬼。

 

「フフ、貴様らの血も吸ってやろう」

 

この言葉から察するにこいつが一連の失踪事件の犯人だろう。

僕は何も言わず、腰からロングソードを抜いた。



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第10話

これね、いつから書き始めたと思う?これね、1月23日から書き始めたの。
ちょっと(?)時間掛けすぎですねごめんなさい。


剣に魔力を集中して、それを振動させる。この状態なら鉄板だってサクサク切れるだろう。

やわらかいパンだって綺麗に切れるし、水魔法と併用すれば頑固な汚れだって落とせる。振動魔法は日常でも役に立つ便利なものだ。

銀髪吸血鬼のパンチを避けて、剣を振り上げて伸びきったその腕を斬る。

直後に銀髪吸血鬼はバックステップ。再生してもう一度仕掛けてくるつまりだろう。そんなことはお見通しだ。そこには既にシャロさんが居た。

シャロさんは野球のバッターみたいに剣をフルスイングして、上半身と下半身を分離させた。

躊躇が何にも無い…。逆に怖いな。

銀髪吸血鬼の回復力は思ったよりは高いようだ。少なくとも僕よりは。

その僕の回復力がかなり低い(腕を切り落としたあと再生するまで30秒)のだけれど、回復力では相手の方が有利だ。

再生しきる前に踏んだり蹴ったりする。

そろそろ再生が終わるな、そろそろ逃げよう。

 

「姉さん、そろそろ逃げるよ」

 

「分かっているわよ!」

 

3メートル程離れる。本当は10メートルほど距離を取りたいが、周りの木が邪魔で動ける範囲が狭まっている。

それに霧も出てきた。僕は問題ないけど、姉さんはまだ人間だから目で見える範囲しか把握できない。人間の視力で見える範囲は5メートルくらいだろう。

再生を終えた銀髪吸血鬼はゆっくりと立ち上がり、物質創造スキルでナイフを作るとそれを僕に向かって投げてきた。弱そうな方から殺ってしまおうという魂胆だろう。

イナーシャルキャンセラー、慣性を殺す魔法を発動する。ナイフは僕に当たる寸前で推力をなくし、地面に落ちた。

それを見た銀髪吸血鬼は一瞬驚くが、すぐに気を取り直し今度はシャロさんを狙った。

ナイフを投げずに直接切り裂きにいくようだ。

両手にナイフを持ち、右手は頚動脈、左手は肝臓を狙っている。

しかしシャロさんは頚動脈に迫るナイフを頬と左肩で挟み無効化、同時に左手に剣を持ち帰る。右脇腹に迫るナイフを肘と手首で左手に持った剣を振り上げて弾いた。

シャロさんに接近戦を挑んだが悪い。結局左頬に浅い切り傷が出来た程度だ。本人にとっては、顔を傷は死活問題だろうが。あとで治してあげないと。

さて、反撃と行こう。

マスタング大佐の様に指パッチンで炎を起こす。霧で消えないように普段より強い火力だ。

その火炎が銀髪吸血鬼に向かっていく。しかし銀髪吸血鬼は怯まずに真っ直ぐ僕に肉薄してきた。

当然火炎とぶつかることになるのだが、大したダメージを受けた様子が無い。

再び右手にナイフを創造し、振り下ろしてくる。

僕は剣でそれを受け止める。『がきん!』と金属音が響いた。遅れて『めしゃ』と嫌な音を立てて僕の剣の柄が潰れてしまった。刀身は強化しておいたけど、柄は盲点だった。吸血鬼の握力には耐え切れなかったようだ。

このままでは不味いと思い、剣を傾けナイフを受け流してからそれを捨てる。

距離を取ろうとしたのだが、そうする前にお腹に蹴りを入れられた。

 

「おぶぅ…」

 

久しぶりの吐き気だ。

蹴りで浮いた体に、今度はアッパーが入った。綺麗に顎に当たった。そこまでは認識できたけど、それ以降は何も感じなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラミアちゃんに何してくれてんのよー!!」

 

今まで意識したことはなかったけど、私の身体能力は人外の域に達しているらしい。これと言って特別なことをしていないが、それでもラミアちゃんより力が強い。

その身体能力を活かしてさっきの攻撃で燃えている森を走り奴に接近する。

ラミアちゃん曰く、吸血鬼は傷を負わせても再生してしまうから、傷を与えず痛みを与えたほうが効果的らしい。具体的にはさっき奴がラミアちゃんにやったように内臓にダメージを与えたりとか、脳震盪を起こすとか、息を止めるとか。

それにあわせて迎え撃つように奴は拳を振り被るが、私はそれを左にスライドすることで避ける。

その勢いのまま剣の腹で殴る。

苦しそうにするが、まだ行動不能と言う訳では無い。

次の攻撃を察知して左前に転がる。背中を向けてしまうことになり、奴の攻撃を直接見て動けないことがきついが、直撃を受けるよりはましだ。

右足での回し蹴り。それによって起こった風に煽られる。

当たったら内臓破裂じゃ済まないだろう。きっとばらばらになる。

振り向きながらナイフを投げてくる。

ふと、そんなことが脳裏に浮かんできた。それを信じて右に転がる。今までも何回か体験したことで的中率は百パーセントだ。

予言どおりナイフが飛んできたが、難なくそれを避け振り返る。

次の瞬間体がバラバラになりそうな衝撃を受けた。

何が起きたの?ラリアットかな?

そう思った瞬間、今度は銀髪吸血鬼が吹き飛んだ。



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第11話

地獄少女の新作が夏から始まるらしいですね。
何を今更とか思っているとは思いますが、今まで更新できなかったので。
能登こわいよ能登。


「何?吸血鬼について知りたい?」

 

狐耳の生えた見た目の少女は僕の問いをオウム返しで聞き返した。

 

「吸血鬼か。血を吸う人型怪異の総称じゃが…聞きたいのはそんなことじゃないのじゃろう?それ以外の特徴と言えば霊力の扱いに長けた怪異と言うことじゃな。それに加え全身が霊力で構築されている、言うなれば霊力の塊じゃな。じゃから体を構築している霊力の形を作り変えることで再生や変身をすることが出来るのじゃ」

 

真琴さんは不思議な人で、どこかに定住している風でも無いし、何かを食べてる様子も無い。謎の多い獣人だ。分かっていることと言えばお酒が好きなこと、超強力な霊術使いと言うこと、それから知識の幅がものすごく広いと言うことくらいだ。

 

「ふむ、確かに吸血鬼になれば空の問題は大体解決するのぉ。しかし…」

 

最後の方は聞き取れなかったが、やっぱり僕のこの体をどうにかするには吸血鬼やそれを含めた怪異になるのが一番手っ取り早いのか。

それだけ分かれば十分だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

懐かしい記憶だな。去年の春だったかな。あの頃が一番元気だったかもしれない。

しかし、今はそんなことどうでもいい。今の記憶にこの場を切り抜けるヒントがあった。

銀髪吸血鬼はシャロさんに何かしらの攻撃をしたようで、シャロさんはぐったりと倒れている。

位置関係は奴を挟む形で僕とシャロさんが居る。ちょっとでも狙いが狂えば、シャロさんにも被害が及ぶ。正確に狙わなければならない。

 

「|例外のほうが≪アンリミテッド≫――」

 

人差し指を銀髪吸血鬼に向ける。既に意識ははっきりとしている。

吸血鬼の体は霊力、この世界にあわせれば魔力で出来ている。ならば魔力を一箇所に過剰供給すれば。

 

「――|多い規則≪ルールブック≫」

 

僕の知る限り一番汎用性が高い必殺技を再現する。体の一部を習慣的に肥大化させる大技だ。

模倣霊術と言う技術が向こうにはあったから、こっちの言葉に言い換えて模倣魔法…語呂が悪いから再現魔法と言うことにしよう。

今の内に気絶しているシャロさんを回収する。

ここから南に10キロ、高度プラス500メートルの座標にワープする。

地中にワープアウトしたら助からないけど、空中ならどうにでもなる。とにかくここから離れることを優先した結果だ。

ワープアウト、普段は吐き気を感じるがアドレナリンのお陰かそれはなかった。

Gによるダメージより気圧差のダメージの方がでかい。

ひどい耳鳴りを我慢して変身能力を使って背中に翼を生やす。吸血鬼らしくコウモリのような翼だ。

翼を作ったはいいものの、動かし方が分からない。羽ばたくって何さ!?

試行錯誤の末ぎこちなくはあるが動かせるようになってきた。しかしその頃には地面まで目測で100メートルを切っていた。

 

「羽ばたく…必要…は、無いよ。地面すれすれをげふっ…滑空すれば、ごほっ!」

 

今にも死にそうなシャロさんがヒントをくれた。

翼を地面に対して垂直に近づける。落下速度が徐々に遅くなる。

足を振って体を起こす。翼の角度を変え、受けた風を後ろに向けるようにすると前進し始めた。

まだ自由に飛ぶとこは出来ないけど、空を飛ぶというのは予想以上に気持ちいい。

しかし今は楽しむわけにはいかない。シャロさんを治療するために安全な場所を目指す必要がある。

もうすぐ、国境の関所が見えてくるはずだ。その手前で降りて、レンバッハに入国しよう。




第1部のキャラは出さないといったな。あれは嘘だ。

それにしてもアンリミテッド・ルールブックって強すぎません?


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第12話

あの交響詩篇エウレカセブンが映画化ぞおおおおおぉぉ!宴じゃああああああぁぁぁぁ!!


「ん…ここ…は」」

 

目が覚めると少し硬いベッドの中だった。

起き上がろうと体を動かすが、間接を曲げるたびに痛みが伴い、まともに動けなかった。

上半身を起こすことで限界を迎える。

 

「よかった。ようやく起きたか」

 

「あ、らみあちゃん。ここはどこ?」

 

少しかすれ気味の声だったが、ラミアちゃんには聞こえたようだ。

 

「ここはレンバッハの一番北にある村、バルグ村だよ。ちょっと待ってて水貰ってくるから」

 

ベッド横の椅子から立ち上がり、部屋を出て行く。

そっか、なんとか国境を越えられたんだ。

だけど、悔しいなぁ。あの銀髪の吸血鬼には勝てなかった。

窓の外は暗くてよく見えない。夜にしては星の光が見えないし。今日は曇りなのかな?

 

「戻ったよ。はい水だよ。ここの水は美味しいしミネラルたっぷりで体にもいいよ」

 

差し出された水を受け取る。確かに美味しい気がしなくもない。違いが分からないとは言えない。

そうじゃなくて。

 

「ラミアちゃん、今何時?」

 

「昼の2時くらいだと思うよ。正確な時間はまだ分からないけど」

 

「この明るさで昼なの!?」

 

びっくりしてお水吹きかけちゃった。

 

「ここバルグ村は地下にあるんだよ。ここ自体が古代遺跡、そこに村を建設したんだよ」

 

僕としてはちゃんと保存してもらいたかったけど、と付け加えた。

そこは何と言うかラミアちゃんらしい。

少し不満げな顔をしているラミアちゃんにもう1つ質問をする。

 

「あと、私何日寝てた?」

 

「今日で4日だね」

 

あら、そんなに寝てたんだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう大丈夫だと言うシャロさんをもう1度寝かし付け、病院を出る。

入院費はこの4日で稼いだけど、自分用の武器を買うお金が足りない。

お金を稼ぐ方法は普通の人なら農業とか加工業とかが主だけど、僕達みたいに旅をして暮らしている人の主な収入源は魔物退治だ。

因みに魔物と怪異の違いは勝手に現れるか、人に認識されて初めて現れるかどうかだ。勝手に現れるほうが魔物になる。

強さで言えば魔物<怪異だけど、その分怪異は人に認識されなくなると実体をなくし、最終的に存在が消えてしまう。

僕みたいな元人間の怪異は自分で自分を認識できるから、そう簡単には消えない。もっとも人としての意識は次第に消えていくから、時間が経つにつれその恩恵も消えていく。

閑話休題。

ただ魔物退治をすればいいのではなく、依頼を受けてそれを履行することで初めてお金がもらえる。

依頼の受付やお金の取引をするのがギルドであり、そこに所属する人を冒険者と言う。

冒険者になるからにはギルドに入会したほうが言いとグラハムさんとリアさんに言われたから入会しておいたが確かに旅をするうえでは有用だった。

個人的に一番大きい特典は、古代遺跡に自由に入れてそこでの採取も自由に行えることだ。これが許されているのは、冒険者のほかにはエドワーズさんみたいな考古学者くらいだ。

そんなことを考えている間にギルドの依頼掲示板の前に付いた。依頼の受け方は簡単。掲示板に張られているはがき程度の大きさの紙の依頼票をはがして、受付へ持っていくだけ。

しかし今日は稼ぎのいい依頼はなかった。

しょうがない。明日にしようとギルドから出ようとする。

 

「よぉ、お嬢ちゃん。最近よく来てるけどさぁ、ここは子供の遊び場じゃねぇんだぜぇ?」

 

さて、夕飯は何にしようか。病院の食堂のメニューは一通り食べたし…たまには自炊しようかな?でも場所が無いか。

 

「無視してんじゃねぇよっ!」

 

何だよもう、うるさいな。食材にするぞ。

吸血鬼ジョーク、流行るだろうか?

 

「少し黙ってください」

 

振り向いて注意した。予想通り、醜い酔っ払いの大男だった。これで少しは黙るだろう。

さてと、帰るか。やっぱり今日の夕飯は普通に病院の食堂でいいや。作る気分じゃなくなった。

周りの人たちは大男に対して冷たい視線を送っている。その目は『吸血鬼相手に何やってんだ?』と言っている。

この外見年齢で冒険者と言うと面倒なことも多いので基本的に吸血鬼と言うことは隠して無い。吸血鬼だからと言って差別されるようなことも無いし。

だからここの常連は大体僕が吸血鬼であることを知っていた。

言いたいことは言ったから、踵を返して出口へ向かう。

 

「何だとこのクソアマがあああああああぁぁぁ!」

 

大男が後ろから殴ってきた。僕の後頭部に当たる。

だけど、ちっとも痛くない。このパンチよりも蚊の吸血のほうが怖い。

まったくダメージを受けてないことを見て大男が驚愕した。

 

「う…嘘だっ!」

 

「そこの竜宮レナ黙るんだよ」

 

あ、このネタ異世界じゃ通じないか。なぜかシャロさんには通じたけど。

 

「……なるほど。そういうことか」

 

何で今まで気付かなかったんだろう。

異常な身体能力となぜかこの世界では僕しか知らないネタを理解できたかなんて、少し考えれば分かることじゃないか。

 

「ま、待て、決闘だ!正々堂々勝負しろ!」

 

再び帰ろうとしたところで、また呼び止められる。いい加減しつこいな。

 

「後ろから殴ってきて正々堂々…ちょっと何言ってるかわかんないです」

 

そう言って、ギルドを後にした。

今度会ったときは、もっと絡まれるだろうけど、そのときは実力行使だ。慈悲はもう無い。



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第13話

春アニメが不作なので夏まで死んでもいいですか?


帰ると既にシャロさんは起きていた。もっと強く叩くべきだったか…。

 

「おかえりー、目が覚めたら頭が痛いんだけど…何でかな?」

 

しまった、強く叩きすぎたかな?取り合えず取り繕っておこう。

 

「寝過ぎただけでしょ」

 

「そうなのかなー」

 

納得したのか上半身を起こし、棚に置いてあるりんごを指差した。

僕も小腹がすいていたからそのりんごとナイフを手に取り皮をむく。

りんごの皮をむくのはこれが初めてだな。いつもはむいて貰う側だった。

お母さんもお父さんも姉さんも、暦さんも渚さんも真琴さんも向くのがうまかった。唯一兄さんは下手だったなぁ。

 

「そう言えば入院するのは初めてだね。普段は病院送りにする側だったんだけど」

 

「一体何をしてたんだよ」

 

一応貴族の令嬢だよね?なに破天荒なことしてんのさ。

 

「権力ってすごい、それくらい揉み消せる」

 

「だからどんなことをしてたのさ!?」

 

「ラミアちゃんってツッコミをスルーされると声荒げるよね」

 

「うぅ…そうかな?」

 

そういう無意識でやっていることを言われると恥ずかしい。穴があったら飛び込みたい。

かばんから使い捨ての紙皿と爪楊枝を取り出し、切ったりんごを盛り付ける。

それをシャロさんの手が届くところに置いた。

 

「それで、何か収穫はあったの?」

 

りんごを食べながら徐にそんなことを聞いてきた。

 

「収穫って?」

 

「ほら、ここって一応古代文明の遺跡なんでしょ?だから何かなかったのかなーって」

 

そういうことか。なら答えは1つしかない。

 

「特になかったよ。変な壁画がある程度だった」

 

「どんな壁画なの?」

 

「何か、白と言うか銀色と言うか…白銀って言えばいいのかな?まぁそんな色をしたカブトガニみたいな奴がかかれてた」

 

「カブトガニ…あー、あれね。それで?」

 

「あとは…赤い星が書かれてたね。どういう意味かは分からないけど」

 

赤い星と言えば火星かな?いや、恒星と言う可能性もあるか…赤色巨星か矮星か。どちらにしても直接浴びたら灰になることには変わりない。

 

「ところで、私はいつ退院できるの?」

 

「意識がなかったから入院させただけだから、早くても明後日には」

 

それを聞いて、シャロさんは大きくため息をつき、横になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3日後、ようやく退院できたシャロさんと一緒に村の出口前に来た。

少し時間が掛かったが、ようやく旅を再開することが出来る。当面の目標は、ここから南西に位置するケーリッヒ遺跡だ。

昨日買ったレンバッハ帝国の地図を見ると、それほど離れておらずワープする必要も無いくらいだ。

 

「で、これしかないの?上に上がる方法」

 

「ここからじゃないと無理だね。何が起こるか分からない以上魔力は温存しておきたい」

 

この村は地下にあるから、地上に行くには上下運動をするしかない。しかし何度も文明が滅んだこの世界にはまだエレベーターなんてものは無い。なので、低レベルな文明でも作ることの出来る梯子で行き来するのだ。

 

「ここに来たときは私気絶してたでしょ。どうやって入ったのよ」

 

「飛び降りた」

 

「大胆ね。…そうだ、ラミアちゃんは背中に翼生やせたよね!空を飛べば」

 

「僕1人ならともかく、2人は厳しいと思うけど…。あ、もしかしたら行けるかもしれない」

 

思い浮かんだ秘策を実行するために僕はシャロさんをお姫様抱っこした。



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第14話

いつの間にか5月。一体何がどうなってんの?


「もう、先に言ってよね!びっくりしたじゃない!」

 

梯子を使っていたら10分は掛かるだろうが、なんと3分で地上に出れた。

やったことは簡単だ。上昇気流を生み出し、羽ばたきながら、壁キック。

 

「ごめんごめん、説明するのが面倒だったんだ」

 

「そこはちゃんと説明して欲しかったんだけど…もういいや…」

 

過ぎたことを言ってもしょうがないと思ったのか、それ以上の説教はなかった。

 

「さぁ、ケーリッヒ遺跡へ出発だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケーリッヒ遺跡は樹海の中にある。樹海と言えば自殺の名所のひとつの青木ヶ原樹海が思い浮かぶ。

向こうは遊歩道から出なければ迷うことは無いらしいが、こちらは遊歩道や看板と言った人工物の気配すら感じない。

樹海に入って早々方向感覚が狂ったので俯瞰視点の魔法を使って何とか遺跡に向かっている状態だ。

 

「後どれくらいで着くの?」

 

「このペースだとあと1時間くらいは掛かるかな」

 

「そっかぁ」

 

自分の血で形作ったマチェットで邪魔な木を切り倒しながら進む。

結局、これだって感じの武器には出会えず、仕方なく血を操って代用することにしたのだが、これが結構使える。

必要に応じて形を変えられるし、何て言うか…吸血鬼っぽい。欠点としては魔力を貯める血液を外に出すことくらいか。

勿論木を切るときには刃を振動させている。血に大量の魔力が含まれているからわざわざ魔力を込める必要が無いことも便利な点だ。

しばらく木を切ったり避けたりを続けているとようやく視界が開けた。

目の前には四角錐の構造物、俗に言うピラミッドがあった。

 

「…おかしい」

 

そのピラミッドを見て僕は呟いた。

 

「ええ、おかしいわね。主に頭が」

 

シャロさんもそれに同意する。

そう、おかしいのだ。

こんな深い樹海の中心部のピラミッドを住処とする人間が居るなんて。

その人はこちらに気付き、ゆっくりと近づいてくる。

次第に輪郭がハッキリした。耳が長いからエルフか?だったらこんなところに好き好んで居るのも分からなくは無いが…

お互いの姿をはっきりと確認できるところまで近づいた。

髪は金のロング、瞳は赤。スレンダーな体つきで、緑色の露出の多い服を着ていて背中には弓矢を背負っている。まんまラノベのエルフじゃないか…。それとまた金髪キャラで被ってるし。

エルフの女性って本当に胸が無いのか。僕が読んだラノベに出てくるエルフがスレンダーな体型と書かれていたが、どうやら正しかったようだ。

エルフも値踏みするように僕達を見た。

そして背中の弓矢を取り出しつつこう言った

 

「片方は人間、しかしもう片方は吸血鬼か…。ふむ、吸血鬼は殺そう」

 

いきなりのお前を殺す宣言。パーティの招待状を渡したわけでも無いのに。

 

「姉さんは少し下がってて。喧嘩売られたから買ってくるよ」

 

そう言って戦闘態勢を整える。手の平を突き破って血が飛び出す。それを纏めて2振りの短刀を作りそれを手に取る。

シャロさんも何も言わずに近くの木の根元に腰掛けた。

何で僕に敵意剥き出しかは知らないけど、黙って殺されるわけには行かない。まぁ、どうやって僕を殺そうとするかは気になるけど。



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第15話

「To Heart」が20周年で話題になっている中、私はマリーのアトリエを探して近所のゲオとブックオフへ行ってました。
まぁ、どこにも置いてませんでしたが…。ゲームアーカイブスで買った方がいいんでしょうかねぇ。


10メートル程度の距離。お互い1発喰らわせることが出来る距離だ。

先に動いたのはエルフだ。こちらを真っ直ぐ見据えて正面から矢を放つ。それを左手の短剣で弾くと同時に右手の短刀を投げる。

 

「シルフィード」

 

エルフが避けようともせずそう呟いた。

途端、左側から強力な風が吹き、それに吹き飛ばされる。

背中に翼を生やし、数回羽ばたいて勢いを殺し静かに着地。

シルフィード…風の精霊か。

世の中には妖精や精霊などの目には見えないけど力を持つ存在が居る。それを呼び出し使役するものを召喚霊術と向こうの世界では言っていた。

こっちでは召喚魔法と言えばいいかな?

とにもかくにも、これでは近づくことも難しい。魔法主体で行こうにも、歴史的建造物と樹海の近くでは派手な魔法は使えない。使えるのは水系くらいか?

だけど水は風に煽られやすい。あれ、もしかして詰んでる?

僕は召喚系の魔法はてんで駄目だから、これはもしかしたらきついかもしれな痛いっ!

脳天に矢が刺さった。ちょっと動きを止めたら急所に攻撃か。

同じところにいたら撃たれてしまう。

と考えていたところで今度は右肩に刺さる。

右手で頭、左手で肩のを抜き、翼を生やしてバックステップ。風を利用して後ろへ大きく下がる。

面倒になってきた。周りへの被害を度外視しよう。

周りの木を2本魔法で触れずに持ち上げ、それを投げつける。

吹き飛ばすのは難しいと感じたのか、僕から見て左に転がって避ける。その直後に2本の木が地面に落ち砂埃が舞う。

だけどそれらは囮。単なる目くらましに過ぎない。

僕自身も左から半円を描く様に回り込みながら追い込む。砂埃で周りが見ないが、コウモリをイメージ元に持っている吸血鬼はエコーロケーションと赤外線可視化が可能だ。

その2つを駆使して普通なら目を開けることができない砂埃の中エルフを探す。

 

「見つけた」

 

それと同時に強い風が吹き砂埃が流され、視界が広がる。

予想より少し早い、仕方ない。作戦変更、プランBで行こう。

正面から突撃。当然前から僕を吹き飛ばそうと強い風が吹く。

だが、

 

「それが、どうした!」

 

そんなことは関係ない。10の力で押し返されるなら、100の力で進めばいい。

左手の短刀を両手で握り血液を供給してサーベルにする。

これ以上詰め寄られないようにエルフが慌てて弓を引く。風で加速した矢は左肩を貫通するが、左肩を構築している魔力を操作して瞬時に傷を塞ぐ。なるほど、意識すればすばやく治癒させられるのか。

もう切っ先が届くくらいに距離を詰めた。躊躇わずにサーベルを上に構え振り下ろす。

しかし、それがエルフに届くことはなかった。

なぜなら、横合いから正面のより強い風が吹いたからだ。

予想だにしない方向からの風だったので情けないことに再び吹き飛ばされた。

 

「そこまでです」

 

風上のほうを向くとそこには、僕と同じか少し上くらいの年齢のエルフが立っていた。

もしかして2対1?まぁ、大丈夫か。

サーベルを構え直し、2人のエルフと向かい合った。



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第16話

今度のエルフは赤毛の癖の無いセミロングの髪に、暗い緑色の目を持ち、金髪エルフと違い露出の少ない服を着た、僕よりちょっとだけ背の高い小柄な少女のようだ。

しかし口を開けるとその愛らしい見た目からは想像できない物騒なことを言った。

 

「これ以上戦うなら今の10倍の風で地平線の向こうまで吹き飛ばします」

 

普通の人間なら立っていることも出来ない程度の風が吹く。本気なんだろうと思う。少なくともそれが出来る力をこのエルフは持っている。

 

「やってみるかい?僕が攻撃するのは、僕か姉さんを攻撃した者だよ」

 

脅されて、それが冗談ではないと分かったらこちらも脅し返す。あ、さっき思ったことブーメランじゃん。え、僕だって愛らしい見た目じゃない?

周囲の湿気を集めそれを冷やし直径1センチほどの氷塊を幾つも作る。速度出せば風で煽られる暇なくぶつけることが出来るだろう。音速ちょい超えくらいで十分かな?

しかし、この状況だと2対1で僕が不利だ。シャロさんは参加するつもりは無いらしく後は任せたと言いたげな笑顔でこちらを見ていた。

ちょっとむかつく。

 

「いえ、私のスタンスもあなたとそう変わりません。そちらに攻撃の意思がないならこちらも手を出しません」

 

小柄なエルフはそう言って風を止めた。

僕も氷塊を魔力に還して霧散させる。

 

「先生!こいつは吸血鬼なんですよ!」

 

金髪エルフはそれに納得していないようだ。口ぶりからしてエルフと吸血鬼には何かしらの確執があるようだ。

 

「誇り高きエルフが差別をしますか。やはりあなたを連れてくるのは失敗だったようです」

 

「そんなことはっ!それに先生1人だけでは危険です!」

 

「私1人でも十分です。現にその吸血鬼を退けたではありませんか。大体あなたはすぐ頭に血が上って、大事なことを見落としてしまいがちです。基本的に吸血鬼というのは自衛以外の戦闘はしないと何度も言ったでしょう」

 

2人は話し出して小柄な方のエルフが大柄のエルフに説教する様子は滑稽だが、話が見えてこない。しかし『基本的に自衛以外の戦闘はしない』と言うのを聞いてその通りだとは思った。

口を挟むべきかしばらく待つべきか悩んでいると隣にシャロさんが来た。

 

「ね、大丈夫だったでしょ?」

 

「そんなこと、言ってたっけ?」

 

「口では言って無いけど表情で言ったよ」

 

どうやらあのむかつく笑顔は大丈夫という意味だったらしい。思い出しただけでイライラしてきた。

それを自分達に向けられた怒りと勘違いしたのか小柄なエルフが説教を止め、こちらに向いた。

 

「失礼、私たちの里は以前吸血鬼に襲われたことがありまして目の敵にしてるものが多いのです」

 

「それは大変でしたね。あっラミアちゃんは大丈夫ですよ!人畜無害ですから」

 

さすが姉さん、コミュ力高い。て、人畜無害ってなに?こちとら、人の生血を吸う吸血鬼だよ!まだ人から直接吸ったことはないけどさ…。まぁ、遭遇した魔物については美味しく頂いたけど。

 

「ついでに私はシャーロットです。お二人は?」

 

基本的に僕達が貴族ということは伏せている。その方が何かと楽だからだ。貴族と知られると恭しく接せられるか、要らぬ恨みを買うことは分かっている。それは面倒だった。

 

「私はリステルマです。気軽にリースとお呼びください。こちらはエーレーネ、適当にレーネとでも呼んでください」

 

自分とその子の扱いがまったく違う。まだ怒っているようだ。

リステルマとエーレーネ、リースとレーネ。よし覚えた。

 

「さて、これからどうするかな」

 

空間魔力を取り込み消費した魔力を補いながらそう呟いた。誰の耳にも届かなかったようだが。



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第17話

バトルシップ放送中止だそうで…。
(日○レに)痛いのをぶっ喰らわせてやれ!


衝撃的な出会い(ポケモンの世界では普通の出会い)だったが、話してみれば2人とも常識人だった。

あちらの旅の目的は僕達と同じく古代文明の調査らしい。

リースさんはエルフ界きっての賢者らしく、今は古代文明に興味があるため、それを巡る旅をしているらしい。

レーネさんはその護衛を買って出たそうだが、リースさんの実力を見るに不要だろう。

それを言ったら、シャロさんを連れて来る必要は無いか。でも2人居ると便利なんだよね、野宿のときの火の番とか、街でも買い物を分担できたりとか。

閑話休題。

僕もこのピラミッドを調査してみたが、既に調査済みの遺跡。目ぼしい発見はなかった。

 

「ここも収穫なしか。新しい遺跡を探した方が早いかな?」

 

その場合、候補としてはレンバッハの南部が上がる。あそこは砂漠地帯になっているようで、調査はほとんど進んでいないらしい。

それともう1つ、海の向こうという選択肢もあるが、これは現時点では難しいので除外する。

 

「だとすると南へ行く方がいいでしょう。ウンディーネの力を使えば水不足も問題ありません」

 

そういうのはリースさん。目的が同じなら人数はある程度居たほうがいいと言うので、ここから先はエルフの2人が仲間に加わる。

ウンディーネは水の精霊だ。エルフは精霊魔法が得意なのだろうか?らしいと言えばそうの通りだが。

シルフィードは風の精霊。風を起こしていたから分かるだろうけど一応補足しておく。

砂漠か…紫外線多そうだな。起きているときは紫外線反射魔法を使っているけど、眠っているときは思考できない、つまりは魔法が使えない。眠らなくても思考が止まればたちまち焼き吸血鬼になってしまう。一応備えておかないと。

 

「水以外にも必要なものはあるから、そうね…まずはこの街に行きましょう」

 

シャロさんは地図を広げてしばらく見た後、レンバッハ南部の砂漠(地図にはレンバッハ砂漠と書いてある)の近くにある大都市を指差した。

確かに砂漠の近くなら砂漠へ行くのに必要な装備は揃っているだろう。揃ってなければおかしい。

 

「じゃあ、この街まで一気に飛ぼうか。リースさんとレーネさんも荷物を纏めてください」

 

何が起こるかまだ分かっていない2人に指示を出す。

行動するなら早い方がいい。ここで一泊してからという選択肢は無い。意味もなくここで寝て蚊に吸血されるなんてことは避けなければ。

僕は地図をよく見て位置関係を確認する。南南東、距離は1895キロメートル。高度はプラス4メートル。

流石に遠い、魔力はギリギリ持つかな?

ワープの消費魔力は距離によってほとんど決定される。重量の影響はそれに比べれば微々たる物だ。

シャロさんは慣れた手つきで僕の右手を握る。…なんで慣れてるの?

荷物を纏め終わりこちらに戻ってきたリースさんとレーネさんにあいてる左手を出し、掴まるように言う。

 

「じゃあ、いくよ」

 

目的地は砂漠近くの都市ドンデリィの北4キロメートル。

そこを目指し、僕達は飛び立った。



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第18話

ちくしょう、またマウス殿が死にかけておる…いい加減買い換えるしかないのか。


足が地面に付く感触と強い減速Gを感じて、ワープが成功したことを知る。

ちょっと違うか。ワープが終わっただけで成功したとは限らない。

 

「すごい!さっきまで森の中に居たのに!」

 

レーネさんはシャロさんと同じく、ワープの衝撃に耐性を持っているようで、元気のある反応をしている。

吐き気を堪え周囲を確認する。乾いた大地に埃っぽい風。気候としては乾燥帯に分類されるだろう。

 

「向こうに街らしきものが見えますね。うぷっ」

 

同じように吐かないように気をつけながら辺りを見回していたリースさんが目的地ドンデリィを見つけた。

じゃあ、行きますか。と姉さんが言うと、少し早足でドンデリィに向けて歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここドンデリィは古代文明の時代から残る街らしい。何回目に起きた文明かは分からないが。しかし肝心の古代の歴史についての言い伝えなどは既知のものしかないそうだ。

とりあえずここに居る間に寝泊りする宿を探すことにした。衣食住の確保は大事だ。

 

「ほぉ…なるほど……ふむふむ」

 

効率よく宿屋を探すために別行動を取っているところで、僕は偶然本屋を見つけた。

引き寄せられるようにそこへ入って行き、1冊の本を手に取り立ち読みを始めた。

そしたらなんとその本は印刷されていたのだ。しかも文字の種類が多い日本語で。

ある程度(少なくとも現代の現実世界)より更に進んだ文明では日本語のような言語が多く使われているらしいから、一度はその高みへたどり着いたであろうこの世界の文明が日本語を使っていることはなんら不思議ではない。個人的にはどの星へ言っても通貨の単位が円になっている銀河鉄道999の方が凄いと思う。地球より影響力が強いであろう機械帝国があるにも関わらず。

閑話休題。

つまりはこの世界にはオフセット印刷機や少なくとも活版印刷技術があるということだ。

本自体は屋敷の書斎やエドワーズさんの部屋にあったからあることは知っていたけど、豪華な装丁から読むのを憚っていたからこれほどまでの印刷技術があるとは知らなかった。

だからといって何か言うわけでも無いけど。意外と進んでいるなぁ程度だ。

あ、やばい。こんなことしている場合じゃなかった。さっさと宿屋を探さないと。

読んでいた本を棚に戻し、店を出た。

 

「何してたのかな、ラミアちゃん?」

 

後ろから声を掛けられた。声だけで分かる。シャロさんだ。あちゃ、見られていたか。逃げようかとも思ったけど、時間の問題だろう。どの道、後で合流するのだから。

 

「みんなが今日寝る場所探しているのに、なーに1人で本屋で立ち読みしてるのよ」

 

それに関してはこちらに非があるので、反論の余地はなかった。何で本屋に入ったんだろうね?

体が小さくなったから精神年齢もそっちに引っ張られて幼くなっているんだと思いたい。

シャロさんが後ろから歩いて来て僕の隣に移動する。そこで止まらずそのまま歩いていくので、僕も歩き始めた。

 

「まったくもぅ、私も誘ってよ」

 

そのまましばらく歩いていると、口を尖らせながらそう言った。珍しく姉らしいことをしていると思ったらこれだ。だから今殴ろうと思ったのは決して悪いことではない。むしろ正しいことだろう。

 

「それで、宿はどうなったの?」

 

「エルフ組が見つけたわよ」

 

うん、何もして無いね僕。取り合えずシャロさんの機嫌をどうにかしないと。

 

「そう。じゃあ、今日は休んで明日一緒に行こう」

 

そう言って、シャロさんの機嫌を治す。

どうせしばらくはここで過ごすのだ。1日くらいそう言った日があってもいいだろう。



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第19話

未だに「だい○わ」と打ち込んで変換すると「第○羽」となるクソIMEは罪深いと思う。


エルフ組が見つけたという宿は繁華街から離れた所にあった。それでも人は多く、道の真ん中で立ち止まったら即はっ倒されるだろう。

 

「ようやく来ましたか。遅かったですね」

 

宿のロビーにはリースさんが居た。

 

「ごめんごめん。待った?」

 

シャロさんが軽い感じで謝る。何しろ寄り道をしながらここまで来たので既に日は暮れているのだ。

 

「いえ。我々は寿命が長く、時間を気にすることはあまりないので。とりあえずご飯にしましょう」

 

そう言って僕達を外に連れ出した。今日の夕飯は宿の食堂ではなく街の食事処で済ますそうだ。

レーネさんは先に行っているらしい。

 

「こっちですね。この先で待ってます」

 

リースさんは迷わずに人混みの中を進んでいく。人混みに揉まれること3分間、周りの人間を食べてしまおうか、と言う危険な思考が出てきたところでようやく目的地に着いた。

石造りの建物が多い町並みの中では珍しいことに木造の建物だ。ここで今日の夕飯を食べるらしい。

中に入り、店員の案内でレーネさんが確保してくれた席へ行く。それなりに賑わっており、先にレーネさんが居なかったら座れなかっただろう。

しかし当の本人はと言うと――

 

「遅かったな。先に食べていたぞ」

 

――既に食事を始めていた。レーネさんに拳骨制裁を下そうとしたリースさんを止めるべきか止めないべきか悩み、結局止めないことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うーん、お金が…やっぱり4人旅だとちょっと無理があるかなぁ。特にエルフの2人が意外なことに大食いだった。食費がぁ…。

とりあえず、明日の分は何とかなるかな。…明後日は、魔物狩りだね。

 

「そうそう、ラミアちゃん。あの噂聞いた?」

 

資金のやりくりを頭の中で纏めたところでシャロさんがそんなことを言った。

それにしても何でこんなタイミングよく声を掛けられるのだろう。やっぱり読心系の能力なのだろうか…?

いい加減このことについても聞かないとなぁ。まぁ、それはそれとして。

 

「噂って?」

 

「なんでも南の砂漠に隕石が落ちたらしいよ」

 

「それだけ?何かもっとこう、なぞの武装集団が居るとか」

 

「夢見過ぎだよラミアちゃん。それに話はまだ終わっていないわ。その隕石、何と途中で速度を落としたと言われているのよ!」

 

「減速…UFOの類じゃないの?」

 

「ゆーふぉーが何かは知らないけど、その可能性もあるわね!」

 

何なのか分かっていないのにそう言えるって逆にすごいと思う。

 

「あと、途中で光らなくなったとか、着地の衝撃がなかったとか」

 

「分かった、それ完全にUFOだ。宇宙人の船だ」

 

そうと分ければ、今後の砂漠での探索に古代遺跡だけでなく宇宙船も探さないと。



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第20話

それから数日間は依頼をこなして金を稼ぎ、それで砂漠での活動に必要なものを買い揃える毎日だった。

それも今日で終わりでそれらを全て買うことができた。

僕自身も紫外線対策の道具をいろいろ作ったり壊されたりした。

明日からは本格的に砂漠へ行くことになる。

 

「目的は古代文明の遺跡に行き、そこの探索。そして先日砂漠に落ちたとされる隕石の調査です」

 

今は4人で集まり最後の打ち合わせを行っているところだ。進行はリースさん。

リースさんがレーネさんに目配せするとレーネさんが地図を取り出しテーブルの上に広げる。

 

「現在イスブルク砂漠には4つの遺跡が見つかっています」

 

言いながら地図の4箇所に印を付ける。

 

「さらに、この4つの遺跡より南の方は何の調査もされておらず、完全に未開の地です。新たな発見が期待できますが、その分リスクが高いです。なので、まずは一番南の遺跡、イスブルグ第三遺跡を目指します」

 

4つの遺跡は番号で名前が付けられていて、北から一、二、四、三となっている。見つけた順だからややこしいことになっているけど。あとこの四つをまとめてイスブルグ遺跡群と言うこともある。

 

「また、例の隕石ですが目撃者の証言によるとこの範囲に落ちたと考えられます」

 

第三遺跡と第四遺跡の中間あたりに円を描いた。それよりどうやってコンパスなしで円をきれいに描けるのかを聞きたい。

ちなみに特定した方法は測量の応用だ。目撃者のうち10人程度の人にどの場所からどっちの方角に見えたのかを聞き、それを地図上で線を引き交差した場所が落下位置と考えられる。

勿論全部の線が1箇所で交差することはないし、左右の移動は分かっても前後の移動は比較対象の無い空中だと分からないのでそれなりに広い範囲だが。

 

「落着予想範囲は半径約15キロ程度です。しかし途中で軌道が変わったり、衝撃が観測されなかったなどと言った証言もあるため、これはあくまでも目安と言うことになります」

 

半径15キロ、これでも頑張った狭めたほうだ。何たってちょっとコミュ症入ってる僕が目撃者の証言をを聞きに(記憶を覗きに)行って調べたのだ。

もっとも、あっちが自力で動けるからあまり意味はないかもしれないけど。

 

「全体の流れとしては、第一第二遺跡は無視し、第三第四の順で調査。2つの遺跡の間を2回通ることになるのでその際に隕石の調査を行います。何か質問は?」

 

説明を終えて質疑応答に入る。

 

「移動手段はどうするの?ラミアちゃんのワープ?」

 

姉さんが早速聞いてきた。

そこは僕も気になっていたことだ。

 

「移動には車を使います。勿論新車です」

 

…はいぃ?



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第21話

いつの間にか2月の最終日だよ。おっかしいなぁ、こんなはずじゃなかったんだけどなぁ。


車とは、輪の形をしており回転する物のこと。特に荷物や人を運べるようにした道具を指す。

平安時代の日本でも車と言えば牛車のとこだった。

まぁ、流石にその程度の技術力は現段階のこの世界にもあるんだろうと思う。馬車とかは一般的だったし。

だから、リースさんが言った車って言うのも、ラクダ車的なものだと思っていたんだ。

しかし、リースさんが言った車というのは、現代の日本で言う車だった。

要するに自動車だった。しかも右ハンドル。英国面の残滓を感じる。まぁ、この世界と僕が居た世界が相似な世界だとは限らないんだけど。

 

「これが車かぁ、初めて見る形ね。フェランスは未だに馬車だから」

 

初めて見る車を興味深そうに見つめるシャロさん。そこはかとなくジープっぽい見た目に、僕は若干この世界の技術レベルが分からなくなってきた。

 

「レンバッハは古代文明のサルベージ技術が他国より優れていますからね。この程度のものならある程度は量産されていますよ」

 

ごく少数ですが。と言ってリースさんは運転席に乗り込みエンジンをかけた。

中も極めて質素なもので、椅子も硬めだ。一応エアコンの吹き出し口はあるけど、実際に動くかどうか怪しいし。

とは言っても、これが現時点では一番良い移動手段であることは確かだ。流石に何百キロもの距離を何回もワープしたら、体の維持すら難しいしね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空間魔力を燃料に動くらしいこの車は、砂漠においてその実力を発揮している。給油や充電の必要がないからこんな砂しかないところでもずっと走り続けることはできる。

一応魔科学世界には昔同じような動力があったそうだけど、今では完全に廃れてしまっている。

それがなぜなのかずっと疑問だったが、今こうして実際に乗ることで分かった。

 

「時速60キロが精一杯…そりゃ廃れるか」

 

「何か言いました?」

 

ぼそっと呟いたつもりだけど、どうやらリースさんには聞こえていたらしい。取り合えずエルフの2人には前世があるなんてことは一応隠しているから、適当に誤魔化す。

でも、そもそもこんな低性能の動力をなぜ古代文明は使っていたのだろうか。他の出土品にはもっと高度な技術の品もあるらしいのに。

もしかしたら、これが使われていたときの古代文明だと今の2倍は出ていたかもしれない。

うん、サルベージ技術が比較的優れているとは言え、当時の性能を完全に再現できてないんだろう。きっとそうに違いない。

そう思い込もう。

…2倍出せたとしても、大したことないなぁ。



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第22話

いつの間にか29日…。遅れてすいませんでした。


目的地であるイスブルグ第三遺跡に付いたのは次の日の昼ごろだった。

縦145メートル横30メートルで、高さ7メートルの2階建ての石造りの神殿。サイズはイスブルグ遺跡群の資料から。正確な長方形と言うわけではないから多少誤差はあるらしいけど。

150メートルって歩く分にはすぐの距離だけど建物のサイズになると急に大きく感じるよね。

2階建てだからか、自然と二手に分かれて探索するとになった。僕とシャロさんは2階部分の担当だ。

2階は1階よりも2周り狭く、さらに壁や天井が崩れてできた瓦礫により一層狭く感じる。

その瓦礫の山に腰掛けて、溜め息を付く。

手に入ったのは陶器の欠片と金属の小さな筒だけだった。

陶器の欠片は食器なんだと思うけど、筒はなんだろう。金属で筒だと、空き缶とか継ぎ手くらいしか思いつかない。

 

「ラミアちゃん、こっち来て!」

 

まだ何か落ちてないか探そうと立ったところで、シャロさんに呼ばれた。

シャロさんは壁の近くに居たのでそっちに向かう。

 

「なにかあったの?」

 

「違う違う。この穴から壁の向こうに行けそうなんだけど、私じゃ通れなさそうだから」

 

見ると壁には穴が開いており、その向こうにも空間が広がっているようだ。

しかしその穴は小さく、僕でも通るのが精一杯と言った感じだ。

 

「わかったよ、ちょっと行ってみる」

 

しゃがみ歩きで穴をくぐり、壁の向こう側に来た。

そこには、本棚とそこに保管されている本、そして一人の人間が居た。

 

「いやああ――!!」

 

そしてその人にものすごい悲鳴を上げられた…。何か、傷つくなぁ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当然あんな大きな悲鳴を耳が良いエルフが聞き取れない筈がなく、すぐに2人ともこっちに来た。

なお、耳が良いと言うのは偏見である。

取り合えず向こう側から引っ張り出して、リースさんによる職質が始まった。

僕は取り合えず本を回収している。中身は確認してないけど、それなりの保存状態だった。もしかしたらあの空間は最近まで真空に保たれていたのかも知れない。

つまり、あの穴は彼女が開けたのだろう…。いや、無理だよね。能力者とか人外ならともかく。

で、肝心のそこに居たシャロさんより少し小さい程度の少女は、ずっと涙目のまま黙っている状態だ。

かなりビビリらしく、僕達の動きに一々反応している。こう言うビビリな子って見てて楽しい。

 

「私の名前はリステルマです。リースと呼んでください。それであなたの名前は?」

 

「…アガ…アガサ、です」

 

ようやく聞き出せた名前は懐かしい響きだった。でもあれか、アガサって名前は日本独自の名前って訳でもないか。かのアガサ・クリスティだって英国の人だし。

 

「なぜあんな場所に居たんですか?」

 

「変な…人におわ、れて…隠れてた」

 

変な人に追われてそれから隠れる為にあそこに隠れてたってことか。

ん?待てよ、それってつまり彼女を追ってきた人たちが近くに居るってことじゃないのか?



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第23話

しばらく執筆していなかったからか、1行書くことすら辛く感じる。
昔はすらすら書けたんですけどねぇ…。


そう言えばこの車を買うのにいくら掛かったんだろう。

 

「大体50万程です。そこまで高いものでもないです」

 

シャロさんを見ると『何だ、その程度なんだ』と言うような顔をしているが、レーネさんは少し顔が青くなっている。

酔ったのか、値段に驚いているのか。

 

「現実逃避はもういいでしょう。今は逃げることを最優先にすべきです」

 

そう、今はアガサを狙っている人たちに追われている。

なぜこの子が追われているのかは知らないが、それは後で本人に聞けばいいだろう。

現実を見たところで、状況を整理する。今は戦車3両に追われている。

同じエンジンを積んでいるのに、重いはずの戦車が軽いジープを追いかけることが出来るのは不思議だが。前行った仮説の通り古代文明製のはすごいのだろう。

とりあえず、僕が殿になれば何とかなるだろう。

 

「じゃあ、僕が足止めするよ。皆は先に行ってて」

 

そう言って後部座席から飛び降りる。砂の上を何回か転がって衝撃を殺し目の前の敵を見据える。

戦車が3両、横に並んで迫ってくる。距離は…1キロもないか。

蛇でも絶望的な状況だけど、こっちは吸血鬼…誰がバイだ!普通に可愛い女の子が…しまった、百合だ!

落ち着いて。

右手を握った状態から人差し指だけを伸ばす。まずは挨拶代わりの電撃だ。

これで向こうは僕に気が付いたはず。気付かれず素通りされたら飛び降りた意味がない。

金属の箱に電気を通したって表面を流れていくだけだから、効かないのは百も承知だし。

僕の存在に気付いた戦車隊は機銃を撃ってきた。全くもって容赦が無い。

銃座に人が居なくても撃てるってことはリモートウェポンシステムか。21世紀並みの技術じゃん。

感心しながら避ける。予想以上に回転速度が速くて5・6発食らったけど、問題ない。

血が止まって肉がぐじゅぐじゅと出てきて傷を塞ぐって、改めて考えるとかなりグロい絵面だ。

あ、貫通しないで体内に残っているはずの弾丸はどうなったんだろう?そのまま体内に残りっぱなし?それとも某執事みたいに口から出せるのかな?

とまぁ、余計なことを考えながらでも近未来の主力戦車の相手はできる。

基本的には避けて、当たりそうなのは魔力の壁、要するにバリアで弾く。たったそれだけだ。

主砲の砲弾も裏拳で弾き飛ばす。

さて、いつまでも防戦一方というわけには行かない。できれば生け捕り、そうでなくても無力化しないといけない。

スカートのポケットから昔懐かしのフィルムケースを一回り小さくした円柱状の物を取り出す。

それを天高く放り投げると内側から破裂し、中からレーザーが10本ぐらい飛び出す。レーザーはそのまま放物線を描きながら、それぞれの戦車の天板装甲に降り注ぐ。

レーザーの数や軌道を思い通りに変えられる優れもの。あらかじめ魔力を詰めてあるから消費する魔力は操作に使う分だけ。

 

「まだ動けるのか…」

 

真ん中の一台は煙を吹き始め動かなくなったが、両サイドの2台は煙こそ吹いているもののまだ動けるようだ。

10式戦車の正面装甲を破れるだけの威力はあるはずなんだけどな…。

残った戦車の動きを見て慌てて飛び立つ。その直後、さっきまで居た地面が大きく抉れた。

人に向けてはいけない物の一つである戦車の主砲。死なないだけで、普通に痛みは感じる。あんなの食らったらどれくらいの痛みになるのやら…。

様子見のためにしばらく滞空する。

上からだとレーザーによって開いた穴がよくわかる。当たった箇所が悪かったようだ。砲塔に穴が居ているけど肝心のエンジン部分にはあまり当たっていない。

精度が悪いのか、狙いが甘かったのか…。どちらにしろ今後の課題かな。

血で槍を2本創り、今度こそエンジンがあるはずの部分に当てる。

まぁ、それは後でいいか。今はこの謎の集団だ。真ん中の戦車の上に降りてハッチを開けてみる。

 

「…あぁ、そう言うあれね」

 

いざ蓋を開けてみると、中には誰もいなかった。

無人制御、それか遠隔制御で動くのだろう。

確かアガサは追いかけられていると言っていたから、これは自分達のフィールドに追い立てるためのものと見るべきかな。

だとすると、この先に親玉が居るのかも知れない。早く追いかけないと。

 

「…あ、皆どっちに行ったんだっけ?」



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