やはり捻くれボッチの青春は大学生活でも続いていく。 (武田ひんげん)
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イギリス留学編
第一話


ピピピピッ、ピピピピッ、ピピッ

 

「ん…」

 

うるさい目覚ましを止めた俺、比企谷八幡は眠気眼をこすりながら起き上がった。

 

「ん…もうこんな時間か」

 

今日は11時からセミナーがあるんだった。今は…10時か。あと1時間で始まるな。

俺が住んでいるのは大学の近くにある学生寮。ここで一人で暮らしている。まあ隣の部屋には陽乃もいるんだけどな。

たしか今日は陽乃は朝から出てるんだったな。てことは居ないのか。

ちなみに俺は大学生活に入ってから一応ボッチではなくなったが、ほぼボッチだ。3人、留学生同士で仲良くなったやつが2人、イギリス人で1人。みんな同級生だ。だけど、それ以外の奴とは関わりがなかった。まあもともとコミュ能力ないしな。それに日本人だからすこし差別的なのもチラチラある。

一方の陽乃はやはり人気があった。ユーモアもジョークもあり、やはりどこでも人気が出るんだな。ただ、日本の時のように信奉者がでるほどではなかった。それでも凄いんだけどね。

陽乃とは毎日会っている。部屋も隣だし、よく行き来している。俺はそこでようやく日本語を喋れるようになるんだ。それ以外は英語だから、やっぱり母国語を喋れるというのは幸せだとここに来て気づいたことだ。

 

陽乃も俺も心の底から願って留学したわけではない。陽乃は陽乃のお母さんから強制的に。そして俺は陽乃に付いてきた、ということになる。

まあそれでも有名なL大学に入れたから、何かを得ようと、2人で思っている。滅多にない経験だしな。

まず陽乃はサークルに入った。そのサークルというのは各国の文化を研究する異文化研究サークルという名のサークル。そのままだな。そこにはイギリス人の生徒や、数多くの留学生が入っている。俺も一応籍はおいている。しかしよく顔を出しているわけではない。

俺はもう一つ、サッカーサークルにも入っている。なぜかというと、俺の一番最初に仲良くなったやつがサッカー好きて、俺も半ば強引に入れられてしまった。まあ、この国は国民の生活の一部にサッカーというような国だ。その異文化に慣れることで見えてくることもあるだろう。

どちらかといえばこっちの方が多く顔を出している。陽乃が入っている異文化研究サークルの方は人が多いんだ。大学内のサークルに入っている生徒の6割がいるらしい。だからたった10人のサッカーサークルの方が俺には合ってるってことだ。

 

おっと回想をしている間にもう30分だ。準備しねーと。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

時は流れ5時。

セミナーも終わり、俺はサッカーサークルに顔を見せることにした。

 

「お、きたなハチマン!」

 

出迎えてくれたのは今朝の回想で何度も出てきたサッカー好きの奴だ。彼は南米、ブラジルで名はジョアロ・パオロ・オリギという。俺を始め、皆はJPとよんでる。黒人で、背は俺と同じくらいで、痩せ型。でも筋肉はついていていわゆる細マッチョ。そしてなによりもイケメン。ブラジル代表のネイマールそっくりのイケメンである。しかし、彼は南米人特有のノリ、そしてお喋りだ。まあ日本人からすれば異世界の住人のような気がするのだ。だけど南米ではだいたいこんなもんだということらしい。文化って違うね。

あ、それから日本人以外との会話はすべて英語なのでよろしく。お、きたなハチマンも英語なのでよろしく。…これ誰に言ってんの?

 

「よう」

「なんだ素っ気ないなー。ま、いつものことか」

 

JPはバルセロナのユニフォームを来ていた。彼はバルサファンである。理由は母国のエース、ネイマールや、南米の有名な選手達がこのクラブにいたかららしい。

ちなみに俺はここイギリスのマンチェスターUのファンだ。日本でも認知度が高い上に、イギリス国内でも人気が高く、よくこのクラブのことについて教えてもらううちに俺はファンになった。

 

「お、やっぱお前ら来てたか」

「お、ジェームズ!」

 

ジェームズと呼ばれたこの男は、イギリス人のジェームズ・ショー。俺たちは名前で読んでいる。この男はいわゆるイギリス紳士だ。すごくマナーがしっかりしていて、このサークルの中でもリーダー格だ。まあ俺と同級生だけど。

でもコイツでも熱くなる時がある。そう、サッカーの話の時だ。こいつは幼少の頃からのマンチェスターUファンで、俺がファンになったきっかけの奴でもある。サッカーの話になると、いつもの冷静な佇まいは飛んでいき、目をキラキラ輝かして子供のようになる。逆に凄いと思う。

 

そして、もう一人も入ってきた。

 

「今日はこれだけか」

「だな」

 

そいつの名はペレイラ。彼はJPと同じく南米出身で、彼はアルゼンチン人だ。

彼もまたサッカーが好きだけど、ファンチームは特にないって言ってたな。サッカーを広い目でみたいとか言って。ただ、アルゼンチン代表は別みたいだな。

彼はこのサークルの中で唯一のサッカークラブ経験者だ。たしかアルゼンチンの強豪のリーベルのユースだったかな?リーベルはアルゼンチンでのベストチームである。

 

まあ紹介できるのはこのくらいかな。今日はこれだけしか集まらないし、残りの6人はまた次回ということで。これ誰に言ってんの?

 

この後俺達はサッカーの話で盛り上がった。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

サークルが終わり、部屋に戻った俺は部屋の明かりがついていることに気づいた。

 

「あ、八幡おかえりー」

「おう、ただいま」

 

そうだった。今日は陽乃が飯を作りに来てくれるって言ってたんだった。

陽乃の料理は絶品だ。俺の好みにの味付けで美味しく作ってくれる。最高だね。

 

「はい、出来たよー」

「お、旨そうだ」

 

今日は日本から持ってきた醤油と味噌がメインの和食だ。やっぱ日本人はこれでしょ。

味噌汁をすすると…うまい!うまいしか出てこない!言葉のボキャブラリーが少ないというわけではなくとにかくうまい!

 

「おいしい?」

「ああ、うまい!」

「ありがと」

 

陽乃も嬉しそうだ。もう最高です。

俺達は美味しい夕食を食べていった。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

夕食を食べ終わった俺達は、2人でのんびりしていた。

大学での出来事とかいろいろと。実際日本にいた頃にはなかったこうして夜のんびりくつろぎながら2人で過ごすというのはなかった。これも留学のおかげだろうか。

 

「あ、そういえば静ちゃんから手紙が届いたんだよー」

「ん?なんだ、結婚します、とかか?」

「そんなわけ無いでしょー?」

 

平塚先生、すみません。本人いたら鉄拳が飛んでくるんだろうな。なんか懐かしいな。

陽乃は手紙を見せてくれた。

 

 

「「お二人ともお元気ですか?向こうでの生活慣れましたか?私はとても心配です。特に比企谷な。まあ先生として言えることはもうあまりないですが、どうか体調だけは気をつけてください。それからいい男がいたら連絡を。平塚静」」

 

最後の一文までは良かったんだけどな。てか平塚先生、日本で出会いがないからってグローバルに手を出さないでくださいよ。もうほんと誰でもいいからもらってやってくれ…。

 

「静ちゃんもこんな心配してるんだから、私達頑張らないとね!」

「ああ、そうだな」

 

そうだな。俺達頑張らないとな。

この先何があるかわからないけど、それも試練としてやっていかないと。

 

 

続く




さて、前作のやはり捻くれボッチにはまともな青春ラブコメは存在しない。の続編ですね。今回からはイギリスでの大学生活ということになります。
これからも皆さん、応援よろしくおねがいします!


ちょっとここで改めて設定の確認をしますね。
比企谷八幡と雪ノ下陽乃は同級生で共に大学一年生。平塚先生はアラサー。
それから今回出てきた三人も大学一年生です。
今のところこのくらいかな?
では、これからもよろしくおねがいします。


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第二話

今日は俺も陽乃も一日中何もない日だったので、デートにいくことになった。

イギリスの大学というのは、授業が行われているあいだは忙しく、入学後ということでこういった一日中のんびりできる日は初めてだった。

その時間を利用して初めてのイギリスでのデートをしようと陽乃が言ってきたので、俺もその案に乗ることにした。

今は部屋で陽乃が来るのを待っている。いやー、隣同士というのはいいねー。

陽乃はというと、女の子には色々準備とかがあるとかで少し時間がかかるということだった。

今8時か。さて、気長に待ちますかネ。

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

 

時間は10時。俺と陽乃はロンドン市街地を歩いていた。

シティオブロンドンというところらしい。そこには近未来的な建物や、ビルが立ち並んでいる場所だった。

そこに腕を組んで歩く俺達。さすがにもうなれたけどね。

日本の時は陽乃の美しさに道行く人々が振り返る情景が定番だったが、ここロンドンではあまりなかった。

しかし、振りまく強烈なオーラに振り返る人はいたが。

しかし、やはりどこの国にも差別はあるようだ。俺たちが街を歩いていると全員というわけではないが、チラチラとこちらを怪訝な目で見ている人がいる。俺のサークル仲間のイギリス人ジェームズも言っていたが、やはりこの国でも有色人種に対する差別があると。しかしこれは予想ができたことだ。日本でもそういうのがやはりあるしな。悲しいことに。

さすがの陽乃もあまり気分は良さそうに歩いていない。俺は日本でいろんな悲しい経験をしているからこの視線にも耐えれるが、陽乃はあまり差別的な扱いは受けなれていないから、どう対処すればいいかよくわからないのだろう。

俺たちは大学構内と外は違うというのを改めて実感していた。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

最初の方は陽乃と俺の服を買うためにショッピングをすることになった。

 

「あ、これなんか八幡に似合うんじゃないかな?」

「やだよ。なんでこんな派手なの着ないといけないんだよ」

「冗談だよー。からかっただけー♪」

 

服選びだけでもいわゆるイチャイチャと言うやつを俺たちはずっとしていた。いやー、今までの俺なら呪う側だったから今の状況をいまいち飲み込めてない限りである。

あ、ちなみに陽乃の今の格好は黄緑のカーディガンと白い長めのスカートを着ている。これは一年ほど前に陽乃と日本でショッピングをした時に買ったやつだ。正直めっちゃにあってる。読者の方々覚えてるかな?…誰に言ってるんだよ。

 

「これは…結構いいんじゃない?」

「ん?」

 

陽乃が見せてきたのは、黒の薄手の服だった。今まで見せてきた黄色だとか、ライトグリーンだとかではなく、おれにほんとに似合うやつだった。

 

「…いいんじゃないか?」

「そうと決まったら着てきてー!」

「え?やだよ。めんどくさい」

「むー、連れないなー」

 

お、素直に引いてくれたか。これで少しは安心…

 

「じゃ八幡、こっちのジーンズ着てきてー」

「…は?」

 

結局この後試着室で着させられました。…全部。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

 

ショッピングも終わり、今はランチを取るためレストランに来ていた。

海外に来たらその国の料理を食べたりするものなのだが、前にテレビでイギリス料理は美味しくないと聞いていたし、ジェームズにも慣れるけど、そこまで好んで食べるものではない、と言われていたので、ふるさとを思い出すため日本料理専門店に来ていた。

ここはジェームズが教えてくれた店で、結構美味しいらしい。

 

さっそく店の中に入ると、テーブルが5つほどある小さめの店だった。店内は、あたり一面が和、という雰囲気だった。店の証明は少し暗めで、テーブルは焦げ茶色の木のテーブル。そして竹の装飾品が各テーブルに飾られている、和をイメージした店だった。

さっそく席に座ってメニューを見ると、筑前煮やら、煮魚やら和食でも、郷土料理的な親しみのある料理がメニューに書かれていた。

俺達はそれぞれのメニューを決めると、店員を呼んだ。

 

「すみません」

「はい、お待たせしました。ご注文をどうぞ」

「えーと、このカレイの煮魚を二つ」

「かしこまりました」

 

ちなみにもちろん店内の会話は英語である。

 

しばらくすると、醤油の美味しそうな匂いがしてきた。あーなんか懐かしいわー。

 

「いただきます」

「いただきまーす」

 

パクリと口に入れると、うまい!そして懐かしい!たった1ヶ月くらいしか離れてないけど、それでも懐かしいと感じた。

 

「日本を思い出すねー」

「ああ。懐かしいな」

 

陽乃も同じ心境のようだ。離れてみてわかったけど、やっぱり故郷っていうのは落ち着くんだなと。日本では辛いことだらけだったけど、それでも日本は特別なんだなと思っている。

 

「ねえ八幡」

「なんだ?」

「はい、あーん」

「…へ?」

 

陽乃は煮魚を箸で掴むと、俺の口の前に持ってきた。

…え?ここですんの?

 

「へ?じゃないよー。ほら、あーん」

「だってここ店の中だし…」

「ほかにお客さんいないからいいじゃーん!ほら、あーん」

「あ、あーん…」

 

恥ずかしさをこらえながら一口。…あれ?なんか自分で食べるより美味しいような…。そうだ、これは餌付けだ。だから美味しいと感じるんだ。…だがやっぱり恥ずかしい…。

 

「じゃ、私にも。ほら、あーん」

「へ?」

 

今度は陽乃が口をあけてきた。え?俺もやるの?

 

「ほらほら私にも、あーん」

「…」

 

このまま陽乃は引き下がりそうにないので、仕方ないから煮魚を箸で掴んで陽乃の口の中まで持っていった。

 

「んー、やっぱりあーんだと美味しいよ、八幡」

「お、おう」

 

陽乃は小悪魔めいた笑顔を見せてきた。…ちょっと、ここ店の中ですよ?そんなところでそんな笑顔見せないでよ。可愛くて顔赤くなっちゃうよ。

陽乃はそんな俺の様子をみて喜んでいるようだ。…この悪魔め…。

 

「はい、あーん」

「…あーん」

「わたしにもー、あーん」

「…あーん…」

「ん…おいしい。はい、あーん」

「…あーん」

「ほらほら私にもあーん」

「…あーん」

 

結局残りをすべて交互にあーんで食べた。恥ずかしいわ時間かかるわで結局煮魚を1時間以上かけて食べた。

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

日本料理を立ち去り、俺達は再びデートに戻った。

といってもここからは観光兼任でだが。

 

「ここら辺は歴史を感じるねー」

「ああ」

 

俺達が歩いているのは、18世紀や19世紀のヨーロッパの建物が立ち並ぶ場所を歩いている。

 

「…俺結構好きだなここ」

「私も。なんかヨーロッパの建物って綺麗よねー」

 

日本のお寺とかとはまた違ったヨーロッパの建物は、普段から見慣れていないだけあって、すごく美しくみえた。

「いつか時間があったらヨーロッパのほかの国も回ってみたいねー」

「そうだな」

 

俺たちはもちろん腕を組みながら歩いていった。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

あたりも暗くなってきた頃、俺達はウェストミンスター宮殿が見える場所に来ていた。

歴史を感じる美しい宮殿はライトアップされていて、幻想的な雰囲気もだしていた。

 

「綺麗だな」

「うん」

 

俺達は向かい合った。どうやらなんらかの魔法に掛かったのかもしれない。それだけ宮殿の破壊力は強かった。

 

「八幡…」

「陽乃…」

 

互いの唇が近づいていって――――――。

 

「んっ」

 

陽乃の柔らかい、瑞々しい唇が俺の唇と重なった。

薄く目をあけて陽乃をみると、陽乃は目を閉じていて、長いまつ毛が陽乃の全体をもり立てていた。

俺達は名残惜しさを残しながら唇をはなした。

 

「はあ、八幡…周り見て」

「ん?」

 

周りを見渡すと、俺達と同じように互いの愛を確かめ合っている人達が何人かいた。やっぱりこの場所にはなにか不思議な雰囲気があるんだな。これがカップルの聖地とでもいうのかな?

 

「ねえ八幡…私…」

「わかってる」

 

そして俺達はもう一度、唇を重ねた。そしてもう一度…今度は互いを貪るように。

そしてもう一度――――――。

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

 

宮殿を離れ、俺達は自分達の学生寮に戻ってきた。

 

「それじゃ八幡、また明日迎えに来るからね」

「はいよ」

 

隣同士だが、それぞれ自分の家に帰っていった。

自分の部屋に入るなり、俺はベッドにどさりと倒れ込んだ。

 

明日は陽乃と一緒に大学行けるんだ。明日のセミナーは気分よく受けられるな。

ちなみに、互いに同じ時間にセミナーが始まる日は二人で大学に行くことになっている。俺はその日が楽しみになってたりしている。

それにしても今日は疲れたけど楽しかったなー。陽乃とも一日中居れたし、こっちに来て初めてだもんな。

でも本当に俺は陽乃の存在が日に日に大きくなっていってるな。それは日本を離れて同胞が陽乃くらいだからなのか。いや、そんなことはないな。単純に陽乃のことをもっと好きになっていってるだけだとおもう。それだけ陽乃のことが…。

去年の今頃だったかな?陽乃と出会ったのは。そうだ、あの作文のことで平塚先生に呼ばれたから、あの時陽乃がたまたまあの場に来たから、そして俺の作文を読んだから、こうして陽乃と出会うことができたんだな。人生って何が起きるかわからないもんだ。もしあの時作文のことで呼ばれていなかったら、今頃日本でボッチ生活を満喫してるんだろうな。そういう面では平塚先生に感謝しよう。あとは平塚先生も幸せになれたらいいのにな…。

 

 

 

 

続く




お待たせしました第二話ですね。
今回はデート回ということにさせていただきました。
しかしあれですね、海外が舞台だとなかなか書くのが難しいですね。所々おかしな点があるかもしれません。
僕自身もヨーロッパにいつかは行ってみたいなー。アメリカよりはヨーロッパに行きたい。そしてオールドトラッフォードに行きたいですね。
あとはヨーロッパ各国を回ってみたいなー。とにかくヨーロッパに行きたいんです!まあ、叶うかはわかりませんけどね笑

それでは今後ともこの作品をよろしくおねがいします。


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第三話

「へいハチマン、授業終わったらサッカー見に行く約束覚えてるよな!」

 

廊下を歩いていると、騒がしいJPがニコニコしながら授業終わりで疲れている俺の元に小走りでよってきた。

 

「ああ、覚えてるぞ」

 

今日は以前サークルで決めていたサッカー観戦の日になっている。メンバーはいつものメンバーだ。略してイツメン。こういう意味だったんだなイツメンて。ずっとぼっちだったから知らなかったー。…悲しい。悲しいってsadだな。英語は基本中の基本だぜ。

実はこんなことを考えている間にサークルの部室まで歩いて来たんだぜ、これがオレが長年のボッチ生活で手に入れた技だ。ちなみに歩いている最中JPがなにか一人で言ってたが全く聞いてなかった。

 

部室に着くともうすでに皆準備万端だった。

 

「ようハチマンおそいぞー」

 

部室にはもうジェームズとペレイラも来ていた。さ、これから出発だな。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

さて赤い悪魔ことマンチェスターユナイテッドのユニフォームを身にまとい、電車を乗り継ぎマンチェスターへとやって来た俺たちはマンチェスターユナイテッドのホームスタジアムにやって来た。

 

「うわ…人多っ…」

「そりゃマンチェスターダービーだからな」

 

マンチェスターにはマンチェスターユナイテッドとマンチェスターシティという二つのビッグクラブがあって、その二つのチームが戦うことになると街中がサッカーだらけになる。それだけ白熱した試合になりそうだ。ちなみにイギリスには他にもマージーサイドダービーなどもあって、それぞれのダービーにもクラブとダービーの伝統を守った熱い戦いがある。

俺達はゴール裏のスタンドのチケットを購入していた。他にも色んなチケットがあるが、シャンパン付きだったり、ユニフォームではなくクラブ指定のスーツ着用が義務付けられている高級シートなどもあったが、そこらへんはお金の問題もあるし買えないよな。ましてやダービーなのでただでさえ通常よりもチケットが高いのに。

おれが一人で考えているあいだにもうゴール裏スタンドまで到着しているんだなこれが。見たかボッチ力!…これ誰に言ってんの?

 

 

 

 

 

 

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スタンドに座って観戦といきたいところだが、ダービーになるとスタンドのサポーターは初っ端から熱すぎて90分以上立って観戦していた。

周りには赤のユニフォームを着たファンと、スタンドの席全てが赤いのが相まってこれぞユナイテッドのホームという雰囲気で試合が進んでいった。

とくに前半18分、青いユニフォームを身にまとったシティーの7番の選手がユナイテッドの10番、キャプテンルーニーにボールを奪われると大歓声が巻き起こる。そのままカウンターが発動。ルーニーのパスを受けた9番のマルシャルがダイレクトでゴールに突き刺してユナイテッド先制。俺を含めたサポーターは総立ちになって喜び合う。

 

「やったな!点決めたぞハチマン!」

「そうだな。よっしゃ!」

「見たか今の!ルーニーがボールを奪ってゴールを演出!最高にハッピーだぜ!」

 

俺たちの中ではジェームズが一番はしゃいでした。こいつ普段は冷静なのになー。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

 

結果、マンチェスターユナイテッドが勝った。3-0の完勝だった。マルシャルとルーニーとマタがゴールを決めた。この名前出してもわかる人あんまりいないだろうなー。そしてジェームズは大喜びでまるで子供のようだった。

 

「ダービーにかったぜ!これで夜スッキリと寝れる!」

 

おいおいいつもの冷静さはどこに行ったんだよ。まあいいけどな。

と、ここでメールが来ていることに気づいた。それに着信も…10件ほど。すべて陽乃だった。…あ、やばいかも。ちなみに時間を見ると、電話をした後最後にメールを送ったようだ。…もう怖いよ開くの。

しかし一刻も早くメールを開かなければいけない俺は、勇気を振り絞ってメールを開くと、

 

「「八幡、何度も無視するって…わかってるよね♪」」

 

…あ、死ぬわこれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

寮に帰ってきた俺は真っ先に陽乃の部屋に向かった。そして着くなり真っ先に土下座をした。今はその場面だ。

 

「で、八幡なんで電話無視したのかな♪」

 

こ、怖いってこれは。その仮面のような笑顔が怖いって。なんでそんなにニコニコできるの?なんで笑顔の奥に悪魔がひそんでるの?いや魔王か?

 

「え、えーと…」

「ど・う・し・て?」

「あ…あにょでしゅね…」

 

恐怖でカミカミだよ。ふぇぇー、こわいよぉー…。

 

「どうしたの八幡、噛んでるよ?」

「あ、あの…そのだな…」

「ん?」

「…サッカーの試合見に行ってました」

「どうしてそれを言わなかったのかな?」

「いや…言う機会がなくてだな。ほら、お互いに忙しいじゃねーか」

「夜は会えてるじゃない」

「あ…その、あれだよあれだからさ」

「なーに?あれって」

 

だめだ、もうだめってだめなんだよほら悟ってよ。だから誰に行ってんだよこれ。て、もう考えがまとまらない。

 

「何か言うことは? 」

「ごめんなさい」

 

もうこれしかないよねうん。小学校の時教えられたもんうん。

 

「…ま、今回は一回目だから許してあげるわ。…次はないよ?」

「はい!」

 

力強く宣言した。いやだってもう空気がね、ほらあれじゃん、ね。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

陽乃の怖さを体験した後、陽乃は普段通りに戻って2人でくつろいでいる。といってももう10時なんだけどな。

テレビはつけずにじっと、ソファーに二人並んで座っていた。無言で。

でもこういう時間がなんか安心するんだよな。こうしてのんびりと、しかもマンチェスターダービーで周りはうるさくてはしゃいで来た後だから余計にほっと息が付けるんだよな。

もうずっとこのまま…もう、このままがいいな。平和だ。なにも問題なんて無いまま平和に過ごせたらいいな…。

 

 

 

 

続く




今回は試合がメインですね。つまらないと感じた方すみません。
さて、更新のペースが全く上がりません、すみません。最近忙しくてかけないんですよねー。しかし最大限努力したいと思います。

これからも応援よろしくお願いします。


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第四話

サマーホリデーと言う名の長期休暇が翌日に控えたある日、休暇中に実家に帰って来いだとか、地元の友達に会いにいくだとかそういう類の事が一切ない俺は予定に苦しんでいた。サークル仲間は地元のジェームズを除いて国に帰るようだしどうしたものか。とりあえず日本から持ってきた本を毎日読むか。それかプレステでも毎日するか。そういえば陽乃はどうするのだろうか。俺はまったく陽乃の休暇中のスケジュールはどうなってるんだろうか。もし実家に帰るなら俺もついていった方がいいのか。とりあえず今夜聞いてみようかな。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「え?うん、実家から呼ばれてるよー」

 

これからの予定を陽乃に聞くとあっさりと答えてくれた。

 

「あー、でも八幡は来なくていいよ。私だけ来なさいって言われてるから」

「そ、そうか…」

 

まじか、それじゃ俺もう予定ホントにないじゃん。

 

「どうしたのー?私と会えなくて寂しい??」

 

すごく意地悪に聞いてくる陽乃…可愛い。なんか俺そういうのに完全にめざめているようだ。これはあれだな、Mっ奴か?いや、気持ちいい!なんて感じないから大丈夫だよねうん。

 

「でもほんとに寂しいかもねー…。帰ってくるの大学再開の前日だからね」

「え?てことは丸々いないのか?」

「うん。まあ、色々顔出さないといけないところとかあるから…。でも大丈夫よ、毎日電話するから!」

 

そう入ってくれるけど電話と実際に会って話すのとではやっぱり違うんじゃないか?それが顔に出たのか陽乃は、

 

「大丈夫よ、毎日電話口で愛してるとか、ラインで写真とかいっぱいおくるから。毎日送ってあげるわ!欲しいのならエッチな写真とかも送ってあげるわよ♪」

「おう。だがエッチな写真は自重してくれ」

 

でも陽乃がそう言ってくれるのは嬉しかった。まあ、エッチな写真はできればやめて欲しいけどな。…決してフリとかじゃないからね?そういいながらホントは送って欲しいとかじゃないからね?勘違いしないでよね?…おええーきもーいわ!俺キモいわ。口に出さなくてよかったー。口に出してたら死んでたわ。

 

「今フリとかじゃないからね、とか思ってたでしょ?大丈夫よ、節度は守るから♪」

 

…あなたはエスパーですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

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久しぶりにやってきた空港。目的は陽乃を見送りに来たことだ。

 

「それじゃ八幡、またね!」

「おう」

 

といいながら内心すこし寂しさがあった。その寂しさを感じ取ったのか陽乃は、

 

「大丈夫、また会えるよ…」

 

俺たちはいつの間にか互いに顔を近づけて―――。

 

「ん、八幡、満足した?」

「…いんや、もうちょっと…」

「もー八幡がデレたー♪」

「うっせ…」

 

人目もはばからずキスする俺達はさぞ目立ったことだろう。でも俺達は全く気にならないほど二人の世界に入っていた。

 

 

 

 

 

 

 

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あー…なんしようかな…なんもしたくねーな…。

陽乃が日本に帰国した翌日、俺は倦怠感に襲われていた。原因はもちろん陽乃が帰って行ったことなんだが。今の俺の状況を見ているだけでここ一年近くで陽乃が俺の心の大部分を支配しているんだということが分かる。ほんと色々あったよなー。誰が大学イギリス留学するなんて思ったことか。

ちょうどその時、ぐぅーと、腹の音がなった。そういえばもう3時なのに昼飯はおろか、朝飯すら食ってねーな。やべー、なんか食わねーと。

ガチャっと冷蔵庫を開けるが…、ほとんど何も入ってなかった。ましてや今の気分は食材を買ってキッチンで作るなんて気分ではないので、なにか外食をすることにした。そうだ、この前行った日本食レストランにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

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レストランに着いて、この前来た時に食べたカレイの煮魚を頼んだ俺は、ここでの思い出を思い出していた。といってもつい最近の記憶でかつ、一回だけだけど。

ここでは2人で食べさせ合いとかしたなー。あーんとかいって。あー、思い出したらなんか会いたくなる。だめだ、思い出したらキリがない。

 

「お待たせしました」

 

店員さんに運ばれてきたカレイを一人で食べる俺。…あー、なんかあんまり味わかんねーな。

そんな時、俺以外客がいなかった店に一人客が入ってきた。

その女性の客は、金髪のロングの日本でいう渋谷系というのか?そういう女性だった。もちろんここはイギリスなので金髪は地毛だろうが。

その女性は俺の向かいの席に座った。なんか表情が俺と同じようにどんよりして見えたのは俺だけだろうか。

その女性は注文を頼むと、さらにどんより度がましたように腐った目をしながらこっちを見てきた。

女性はこっちを見た途端、表情が暗く陰鬱な表情から正気の顔になって来た。そして…なんかこっちの方に近づいてきたー??

俺は呆然とその様子を見ていると、気がつけば俺の席の横で立っていた。そして早口で、

 

「あなたってジャパニーズ??ホンモノ??」

「え、ええ…」

「ワーオ!ジャパニーズだわ。始めてみたわ!ねえねえ、サムライの国ってどんな感じ?ちょんまげいる?」

「い、いや…いないけど」

 

俺は勢いに蹴をとされかけたけど一つ言えることがある。こいつ、アホだなと。

 

「ねえねえ、日本ってすごいよね!だってサムライだよ、セップクってかっこいい!」

 

こいつ、ほんと誰かどうにかしてくれ。俺はとにかく早くどこかへ行って欲しいと願っている限りだった。

 

「なんでそんなにどっかいってほしそうな雰囲気だしてんのー?そんなに…いや?」

「…おれは静かに過ごしたいんで…」

「ふーん、クールボーイなんだー。ジャパニーズは噂通りだね。ま、いいや、そっちの方が都合いいしね」

 

何故かウインクをしながら行ってくる金髪女は俺の隣に座ってきた。…え、なに?

 

「あたしはジェシカよ。あなたは?」

「…なんで言わなきゃいけないんだよ」

「いいじゃーん、折角会った仲なんだからさー。それにジャパニーズに興味もあるし。で、君の名前は?」

「…比企谷だ」

「ファーストネームは?」

「…日本じゃ普通あって早々のやつにファーストネームで呼び合うなかなんてねーよ」

 

多分、と心の中で注訳を入れておいた。だって詳しくないからね!

 

「ふーん、でもここはイギリスだからファーストネームでも問題なーし。で、名前は?」

「…八幡だ」

「オッケーハチマン、よろしくね!」

 

と、金髪のジェシカはニカっと笑った。その笑顔はまるで少女の様な軽やかな笑顔だった。軽やかなってなんだよ。

 

「そういえば、なんでさっきあんな死んだ目してたんだ?」

「…え?」

 

言ったあとに気づいた、失敗したなと。そうだ、まだその時は赤の他人だったので見ていたとなるとすごい不自然じゃん、うわー、相手にペース狂わされてたからって墓穴掘ったわー。

当のジェシカは少し驚いた表情を見せた後、

 

「あのねー、突然暗い話になるけど、聞いてくれる?」

「…おう」

「あたし、さっきボーイフレンドに振られたのよ」

 

俺はどんな暗い話が来るかと心構えをしていたけど、やはりあまり深刻な話ではなかった。しかしジェシカの表情が曇り始めた。

 

「その、すごく優しくて、イケメンで皆の憧れみたいな男だった。私はそんな奴と付き合えててすごく嬉しかったし楽しかった。幸せだったしね」

 

ジェシカは、セリフの割には表情は真逆でどんよりしていた。

 

「ほんとに完璧で、人気者で誰にでも優しいあいつがあんなことするなんてね…」

 

なんかすごい嫌な予感がする。聞きたくないような。でも、ジェシカの表情を見たらそうは行かなかった。

すると、ジェシカはすこし涙目になりながら、

 

「あいつ…私に…暴力を振るうようになったの…」

「っ!」

 

それって…いわゆるDVだよな。ジェシカはついに泣き出してしまった。そりゃそうだよ、誰にでも優しい王子様が実はDVをするなんて。

 

「最初はね、ストレスが溜まってるんだとか思ったの…だから耐えてたんだけど…どんどんね、エスカレートして行くの…。でも、私はなんとか受け入れてたの。でもね…今日、あいつから別れようって言ってきたの。多分あいつなりの優しさだったんだと思う。暴力を振るったあとにもすごい優しくなってたんだけど、やっぱりあいつもきっとね…うん」

 

俺はここで一つ思った。ジェシカは実はすごい優しいやつじゃないかって。そしてそのジェシカの元カレは…優しくない、クズ男ではないかと。所詮は大学のエセイケメンというところなのだろう。一見、みんなから人気があって、誰にでも優しくて人望があるように見える王子様タイプだが、中身はそんな大きな器を持ってなかったというところだろう。辛かったんだろうなジェシカは。恐らくジェシカもそいつに他の奴と同じような理想を描いていたんだろう。でも、付き合い出して本性が見えてきたところで段々と気づいたんだろう。だけどジェシカはそこでそいつを見捨てずに優しく包み込もうとした。暴力にも耐え、恐らく誰にも本性のことを言っていないんだろう。だがジェシカに俺は同情というのはしたくない。決して理解できないということではなく、これは俺も同じような経験をしたからわかるが、そういう痛みというのを他人に勝手に同情されると逆に腹が立つんだ。何わかった気になってるんだって。お前俺のこと知らないだろって。だから俺はジェシカに対して何も言わないことにした。

するとジェシカはこっちを向いて、

 

「ごめんね、なんか辛気臭い話して」

 

ニカっと笑うジェシカ。

 

「お前笑ったほうがいいな…」

「え?」

 

あ、しまった。つい心の声が口に出てしまった。ジェシカは一瞬固まったあと、

 

「ふふっ、あっはっはー、なにそれ! 」

「う、うっせ…」

 

やばいわ、これ帰ったら布団の中であー!って叫ぶパターンのやつやわ。

何を言われるのかビクビクしながらジェシカの方を向くと、

 

「それはあんたなりの気遣いなのかね、私の話もずっと聞いてくれたし、その後もずっと考えてくれてたみたいだしね。日本人はほんとに義理人情に堅いのね。でも、ありがと、あんたのおかげでスッキリしたよ!」

 

再びニカっと笑うジェシカ。やべ、こいつやっぱ可愛いな。って、いかんいかん、陽乃がいるってのに何考えてんだ俺。ばかじゃないの?ばっかじゃないの?…おえ、気持ち悪い。

 

「ねえ、あんたの携帯番号教えてよ」

「え?」

 

な、何言ってんだコイツ。だけど、こいつなんか目ウルウルさせてるし。な、なんだ?

 

「ねえ、こういうこと話せるの今のとこあんただけだからさー、ねえー」

 

そ、そんな餌をほしがる子犬のような顔されちゃ…。

 

「…わかったよ、ほれ」

 

携帯渡すしかなかった。

 

「え、そんな無防備でいいの?」

「いいんだよ」

「日本って警戒心薄いのね…」

「いや、俺だけだと思うぞ 」

「ふーん」

 

ジェシカは素早いタッチさばきでアドレスを打っているようだ。と、ジェシカの手が止まった。

 

「…ねえ、この人あんたのガールフレンド?」

 

ジェシカは陽乃のアドレスを指さしながら聞いてきた。え、なに、お前エスパー?

まあ、隠しても意味ないしな、正直に答えよう。

 

「そうだけど、なんでわかったの?」

「まあ、カンってやつ?それにしても彼女いたのねー。…へえー」

 

なんか表情がすこし曇ったように見えたのは気のせいだろう。

 

「よし、じゃまたいつか呼ぶからね。それじゃ!」

「お、おい、そんなこと許可した覚えは…」

 

俺の話なんか聞かずにさっさと会計を済ませて出ていってしまった。はあー、なんかめんどくさいことになったなー。

 

 

 

 

続く




ここに来てのオリキャラ。陽乃ファンの方々、前半のみで終わってしまいすいません。
まあ、外国ですから一人くらいはそういう存在も必要ってことで許してください。

さて、続編はまあ近いうちに書きたいと思います。お楽しみに。

ではこれからも応援よろしくおねがいします。ではまた。


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第五話

久々に投稿です。それと、新年あけましておめでとうございます。


長期休暇の折り返し地点の日、俺は久しぶりに大学に来ていた。部屋にいてもなかなか暇なもんで、とりあえず身近にある大学の図書館でも行って本を読もうかと思っていた。陽乃もまだ日本だしな。毎晩のように長電話するけど。一体今までトータルで何時間話してるんだ?一日2時間くらいだから…。…数えるのやめよ。

俺は図書館に入ると早速読みたい本を探すことにした。まあ特別目的の本はないから、目に付いた面白そうな本を見つけることにした。

と、しばらく流し目で見ていくと、集団生活から離れる術、という本が目に止まった。なんだこのボッチになる為の入門書は。こんなもんとっくの昔に自分で編み出したよバカ野郎。てかこんな本誰か読むのか?こんな本までおいてるなんて流石でかい大学だな。

とか考えていると、その本をとる奴がいた。そいつは、綺麗な金髪ロングの女だった。…おいおい、見た目だと集団生活の中にいるような奴だろうがよ。

…てか、あれ?なんか見たことあるような…。

と、不意に金髪ロングが振り向いた。そいつは俺を三秒ほどじっと見た後。

 

「あれ、あんたハチマンじゃない? 」

 

そうだ、この女はいつか日本食レストランで会った女だ。名前は確か…ジェシカだったかな?

 

「えーと、ども」

 

ジェシカほどコミュ力高くない俺の挨拶はこれだ。てかここでコミュ力高いやつはどう言うんだ?よっジェシカ、久しぶりっ!か?…うわ、一生言えないセリフですねごめんなさい。

 

「ふっ、相変わらずね。てかあんたここの学生だったのね」

「あ、おう」

「ふーん、あんた大学生だったんだ」

「おう」

 

あの時会ったときも大学生くらいかなって思ってたけどまさか同じ大学とはね。しかも沢山学生がいる中まさか遭遇するとはね。しかも図書館に金髪とか合わねーだろ。いや、外国だから普通か。日本とは違うなー。しかしそれにしてもなんでその本手にとったんだ?疑問だな。

 

「こんなとこで何してんだ?」

「うおっ?」

 

背後から突然声をかけられた俺は大きめの声を上げてしまった。恥ずかしい…。てか誰だよ俺に話しかけるやつとかどんだけレアなんだよと思いながら振り返ると、

「久しぶりだなハチマン」

「あ、ジェームズか」

 

俺に声を掛けたレアな奴はジェームズだった。まあ俺に話しかけるやつとかサークル仲間か陽乃位なもんだな。言ってて物悲しくなっちゃったよ?

 

「あら?ジェームズじゃない!久しぶりね!」

「お、ジェシカがじゃないか」

 

なんだ?この二人知り合いか?

 

「まさかこんなところで会うとはなー。なにしてたんだ?」

「見てのとおり本を探していたのよ」

「それよりもハチマンとは知り合いなのか?」

「まあねー」

「意外な組み合わせだなー」

 

二人はどこか親しそうに話していた。

 

「ハチマン、彼女は俺の幼馴染なんだ」

「…は?まじ?」

 

二人がこんなに親しげに話していたのは幼なじみだからなのかー。うん、納得納得。外国人だからそのあたりのコミュ力が高いのかと思ってたー。…いや、高いか。

 

「このまま少し話したいところだが、ちょっと時間がないな…。あ、そうだ、サークルについてなんだが、学校が始まる前に一度集まろうと思ってるんだ。もうあいつらもこっちに帰ってきてなー。予定空いてるか? 」

「うーん、多分空いてるだろうな」

「了解。それじゃハチマン、ジェシカ、またな! 」

 

ジェームズはすこし早歩きで去っていった。

 

「あんたジェームズと知り合いなの?」

「まあな、サークルが同じなんだよ」

「ふーん…」

 

なんだそのふーんは。これはあれか、俺ほどの奴がジェームズなんかと友達やってんじゃねーぞこの野郎ってことか?…俺どんだけマイナス思考なんだよ。はっぱ隊もびっくりだぞ。

 

「わたしも帰るわ。またねハチマン」

「おう 」

 

続けざまでジェシカも帰っていった。…さて、本選んだら俺も帰るか…。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「……」

 

…暇だ。何も無いし何も無い。日本語おかしいけど気にしない。

うーん、何もすることがなくなったなー。結局借りたかった本は誰かに借りられてて無かったし、今日は陽乃からの電話が今のところ無いし。これはもう寝るしかないか。て、まだ21時過ぎかよ。良い子はねる時間だけど、じゃ12時くらいまで起きてる子は悪い子と言いつけていいのか?もしかしたらいい子もいるかもしれないぞ?

なんて下らないことを考えて時間を潰そうとしたけど無理そうだな。これは部屋を暗くして瞳を閉じるか。

 

…。

 

コンコンコン

 

…?誰だこんな時間に?

 

「はいはい、今出ますよ」

 

ガチャっとドアを開けたら、

 

「たっだいまぁー!はっちまーん!」

「うおっ」

 

開けると同時に陽乃が抱きついてきた。いや、柔らかいし柔らかいし柔らかい。柔らかい三連発やでー。

 

「ちょ、おま、どうしたんだ?」

「どうしたんだって、帰ってきたんでしょー?」

「いや、帰ってくるんなら事前に言ってくれれば良かったのに」

「サプライズにしたら面白いじゃーん」

 

まあ陽乃らしいといえばそうか。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

その後しばらく2人で部屋でお話。陽乃の日本での話とか、すこし深入りした話もしてきた。

 

「もー、八幡と話さないと落ち着かないー」

「いつも電話で話してたじゃねーか」

「そうだけどさー、やっぱ目を見て話すのとはちがうのよー」

「…まあそうだな」

 

しかしこんな事前の通達なしで帰ってくるところはさすが陽乃というところだな。サプライズだよほんとに。

 

「あ、そうだ八幡」

「どした?」

「えーとね、次の長期休暇にも私日本に帰らないといけないことになったんだけど…」

「ん?どうしたんだ?」

「…八幡も来なきゃいけないかも」

「え、まじ?」

「うん。お母さんが言ってたから絶対だよ」

 

つまりはあのお母さんから呼び出されたってことか。おいおい、なんかヤンキーに放課後呼び出されるような気分になってきたぞ。経験ないけど。

 

「…まあ、陽乃とは付き合ってるんだし、と、当然だな」

「大丈夫よ、お母さんにあの時あんな事言った八幡なら!」

「あの時は結構その…テンションというか、陽乃を救わなきゃって思ってたから言えただけ…というか」

 

だから今はきっとなにも喋れなくなると思うようん。

 

「そ、そう。ふーん、私を救う…ね。それでこそ私の彼氏よねうんうん」

 

陽乃は口では上から目線な言葉を言ってるけど態度はキョドり気味だった。顔も赤いし。ほんと、陽乃と付き合いだしてから色んな一面を見れてるよなおれ。最初のイメージから随分変わったぞ。

 

 

続く

 

 




大変長らくお待たせしました。改めてあけましておめでとうございます。かなり遅いですが…。

さて、次回の更新はなるべく早くしたいと思います。応援コメントも何通か頂いているので頑張りたいと思います!


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第六話

過去最長の中断期間。お待たせしました、続きです。


大学の講義も始まり、再び学生生活に入った俺達は長期休暇中になかなか会えなかったこともあって、二人でよく行動していた。学生の本分は勉強である、という言葉は俺たちには関係ない。

そんなことで、今もこうして二人でランチタイム。

 

「やっぱりここ美味しいねー」

「だな。安定だな」

 

俺たちは行きつけとなった日本料理店で仲良く食事。日本では当たり前でも、イギリスといった外国に来たら和食が懐かしくなるというのはどうやら本当の話のようだ。

 

そういえば、最近は先程も言った通り二人でいる時間が多いせいか、お互いあまりサークルに顔を出してない。たまにジェームズとかにあったりすると決まってそろそろ来いよ、と言われる。今日辺り顔を出してもいいかな…。

 

「ねえ、今日午後講義とか終わったらなにする?」

「…そうだな、ぶらっとするか」

「じゃ、服を見に行きたい!」

「じゃ、そうするか」

 

訂正。今日も行かないでおこう、うん。陽乃と今日も一緒にいることにしよう。

結局この流れがここ1ヶ月ほど続いている。まあ、気にしなくてもいいだろう。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

英語力も本場さながらの早さで会話が成り立つほど上達した俺たちは、どの店に行ってもまったく支障はなくなっていた。たとえば服を買いに来たとしても、当初は本場の英語に慣れていないせいか、何度も聞き直したり、あるいは全くわからなかったりして店員に迷惑をかけたが、今となっては日本で買い物をしている時と変わらないほどとなっている。

 

「いらっしゃいませー」

 

服屋に入った俺たちを迎える笑顔の女性。英語で会話している筈なのに地の文が日本語になっていることなんて気にしない。

 

「おや、カップルかな?デートでここに来たの?」

「ええ、そうよ」

「なら、デートにも着ていける可愛い服を選んであげなきゃね!」

 

英語力が上達し、すべての会話が通じるようになった俺は気づいたことがある。それは、日本と比べて店員はすごく馴れ馴れしいと言う言い方が正しいか。すこし語弊がある気がする。なんというか、日本の店員に比べてややお節介というか、ジョークとかも言ってきてすごくフレンドリーというか。

 

「うーん、それなら…、彼を悩殺出来ちゃうくらい可愛いのをよろしくね!」

 

さすが陽乃。もうこの店員のツボを掴んでらっしゃる。俺には永遠に真似できない芸当だな。

 

「えーと、あ!これならきっと彼は悩殺どころかほんとに倒れちゃうかも!」

「あ、これなら倒れちゃうわ!」

 

女子二人のトークにはついていけない。にしても倒れちゃうって大げさな…。いや倒れるかも。陽乃に似合いすぎるから。

店員が選んだのは黒のワンピースに白の長袖のカーディガン。…うわ、超似合いそう、うん。

 

「八幡が似合いそうって顔してるからこれ買いまーす!」

「あらら、彼氏の顔色だけで彼のことがわかるなんてうらやましい!わたしサービスで割引しちゃうわ!」

「あら、ありがとう!」

 

この辺のハングリーさは海外ならではだね。日本にはないからこれはこれで凄くいいと思う。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「いやー、買っちゃったねー」

「おう」

 

今日の目的を終えた俺たちは薄暗くなってきた公園のベンチでしばし休憩。今まで説明してなかったけど、季節は秋から冬に変わる時期なので、日が落ちるのが日に日に早くなり、少しずつ肌寒くなってきた。

 

「ねえ、八幡」

「なんだ?」

「私、今幸せよ」

「…急にどうしたんだよ」

 

陽乃はずっと繋いでいた手をより一層ギュッと握ると、

 

「なんだか唐突に言いたくなったの。ドキッとした?」

「…まあ、多少は」

「ふふっ、本当はすっごくドキドキしたでしょ」

「…さあな」

 

陽乃はからかうような声色と、これまたからかうような表情を見せながら言った。でも、次の瞬間、コロッと表情が変わる。からかいの表情から一瞬にしてトロッとしたような表情に変えてみせたのだ。そして、今まで片手でしかつないでなかった手を両手で包み込むようにしてより一層ギュッと握ってきた。

 

「ねえ、今ドキドキしてる?」

「…」

 

もう俺は答えることができなかった。それだけ急激な表情の変化に驚いているのと同時に、その魅惑の瞳に意識を吸い寄せられてしまった。

 

「八幡…」

 

お互いの瞳がどんどん近づいていく。もう1センチほどの距離まで迫っている。

陽乃からはいつもよりも甘い匂いがして頭がおかしくなってしまいそうになる。このまま抱きしめてしまいたいとも思ったが、まだ自重する。

 

「んっ」

 

お互いに唇を重ねた。陽乃の唇は柔らかく、そしてより一層いい匂いがしてきた。俺はたまらず陽乃を抱きしめると、陽乃の唇の中に侵入した。

 

「んんっ、んっ」

 

深い、深いキス。実はここまで深いキスは初めてだ。俺は堪らず陽乃を抱きしめる。陽乃の体はすごく華奢で、抱きしめすぎたら壊れてしまいそうな感じがした。

俺が抱きしめると、陽乃も抱きしめる返してくれた。そのおかげでより一層深くお互いを愛せるようになった。

お互いに唾液を交換し合う。それは恋人の中でも、かなり関係が進んだ恋人にしか許されないものだった。

 

「んっ、んんっ、ぷはぁ」

 

ようやく口を話すと、お互いに乱れた息を整える。

 

「はぁ、はぁ、八幡、今日なんか積極的だね…」

「…元はといえばお前が誘ってきたんだろ?」

「えへへ、そうだったっけ?」

 

チロリと舌を出すその動作に俺は再びドキッとして、次の瞬間には再び唇を奪っていた――――――。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「なんだか今日の八幡、すごく積極的だったね」

「なんかそういう気分になってな…」

 

その後も何回もお互いの唇を求めあった俺たちはあたりもいつの間にか真っ暗になっていたので家路についていた。

 

「ねえ、私達、これからどうなるのかな?」

「ん?どういうことだ?」

「あー、というか、その…、ここまできたらね…その…」

「なんだよ?どうかしたのか?」

 

こころなしか陽乃がすこしモジモジしている。どうしたんだ?トイレでも我慢してるのか?

 

「その…この先のこともするのかなっ…とか…」

「ん?どういうこと…あっ」

 

トイレを我慢しているなどと言った失礼なことを考えていた俺をぶん殴りたい。この展開で恥じらいながら言う事といったら一つしかないだろうに。

たしかに俺たちはまだ最後までいっていない。なにせディープキスも今回が初めてだったから。たしかにこの流れでいったらそういう流れになるだろう。だが、

 

「これが普通ならそういったことになるかもしれない。だけど…」

「…だけど?」

 

陽乃が少し不安げな表情をしたことを見逃さなかった。だが俺は続ける。

 

 

「…俺はお前とそういったことをするのはまだ早いと思う。俺達はまだ学生だし、もっと具体的に将来のことが決まってからするべきだと思う。いや、そうするべきだと思う。だって俺達の関係は他よりも特別だと思うから。だから、そういった大事なことを今することはできない」

 

 

そうだ。俺達は陽乃の母から留学をしろと言われてここにいる。逆に言えばそれしか知らない。つまり将来何をしなければいけないかはっきりしていないのだ。そんな時に中途半端にしてしまうよりも、然るべき時にするべきだと思う。

と、かなり熱弁したが陽乃はどう思っているのだろう、と陽乃の方を見ると、

 

「…」

 

陽乃は目を見開いて硬直していた。すこし不安がよぎる。そのまましばらく佇んだままだったが、やがて口を開いた。

 

 

「…八幡が、私のことを大事に思ってくれてるってのがわかったよ。嬉しい」

「ああ」

 

すると陽乃は目から涙を流し始めた。俺は思わず動揺してしまった。何が起こったのか見当つかなかったからだ。

すると陽乃は涙を流しつつもニコッと笑い、

 

「私ね、私のことをこんなに大事に思ってくれる人がいるってことが嬉しくてね…つい…涙がね…うん…。ほんとにね、八幡が居てくれて…よかった…」

「お、おう」

 

その泣き顔は凄く可愛くて、俺はまたしても抱きしめてしまった。

 

「八幡、だーいすきっ!」

「っ!」

 

その言葉を言った陽乃は今まで見たどの笑顔よりも最高の笑顔だった。

また、俺たちの絆が深まった瞬間だった。

 

 

 

 

続く

 




かなり長くなりましたが、続きをご覧になっていかがだったでしょうか?
更新が遅すぎてこの作品を忘れていた方、一方、待ち焦がれてしまっていた方、大変長らくお待たせしました、甘いお話です!
今回は今までよりもより一層甘くしたつもりでしたが、更新が遅れた分満足していただけたらと思っています。

さて次回の更新はまたしても未定です。その理由としては、私が今年は特に忙しくなり、更新する時間がなかなか取れません。しかし、なんとか頑張って更新したいと思います!

ちなみにこの先の展望とすれば、ざっくりいいますと、まだまだ続きます。だってまだ一年も終わってないんですよね。遅すぎる…。
と言う事で、次回のお話をお楽しみに!ではまた。


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第七話

亀更新すみません。半年以上ぶりに続きです。


イギリスでの大学生活にもだいぶ慣れてきて英語もかなり上達して来た頃、サークル仲間であるジェームズがテンション高めに、

 

「ハチマン、もうすぐ長期休暇だな!」

「ああ...もうそんな時期か」

 

大学生活が充実していたから気づかなかったが、もうそんな時期か。まあ確かに話を更新してなかった7ヵ月ちょいくらい経てばそうなるか……おっと、メタだな。

そういえば、陽乃が次の長期休暇も日本に帰るとかなんとか言ってたな。それから俺も……

 

「どうした?顔色が悪そうだが?」

「ん?いや何でもねーよ」

 

いかんいかん、あの母親に会わないといけないって考えた途端にこうなっては話にならない。

俺はジェームズと別れると真っ直ぐ寮に帰った。

 

 

 

 

 

―――――――――――――

 

 

 

 

 

「ただいまー」

「おかえり八幡♡」

 

部屋に帰るといつものように陽乃のお出迎え。ピンクのシンプルなデザインのエプロンもまた似合うなぁ。あぁ、この為に頑張れるわぁー。あー幸せ噛みしめてます……

 

今日も陽乃のメチャ美味しいご飯を食べていると、ふと陽乃がやや暗い表情で、

 

「また休みに日本に戻るのか……」

「まあ、今回は俺も行くし心配すんな」

「うーん、でもなあ……」

「今更そんなことで遠慮すんなよ。悩むことでもないぞ?俺達は今までも2人で困難を乗り越えてきたじゃねーか」

「……うん。そうだね、私達は私達だもんね!」

 

お、ようやく陽乃の表情が冴えだした。やっぱり日本に帰ってあの母親と対面するのはさすがの陽乃でもきついんだな。てか、外見だけしか知らなかったら絶対気づかなったよなこれ。中身まで知った俺だからわかるわけで、そういう関係になれたことも俺は嬉しいわけで……。

 

「ねえ八幡……」

「ん、わかってるよ」

 

何となくいい雰囲気になってきて、陽乃のおねだりがはじまった。今日もいつものようにキスをおねだりのようだ。最近いつも夕食を食べたあといい雰囲気になったらこんな感じになる。ほんと、陽乃は世界一可愛いな。

そうしてお互いの顔が近づいて――――。

 

ピロロロロロ

 

「……ん?」

 

リビングで鳴り響いた電話の着信音。それは俺達のいい雰囲気をぶち壊すには十分な音だった。

若干イライラしながら俺は電話に出た。

 

「もしもし」

「もしもし、比企谷くんかしら?」

「……ん?」

 

あれ、この声ってたしか……

 

「あの時ぶりね。お元気かしら」

 

そう、電話から聞こえてくるのは、陽乃のお母さんの声だった。

 

「あ、はい」

 

やばい、なんかやっぱり緊張するな。

 

「陽乃はそちらにいるかしら?さっき陽乃の電話にかけたのだけど、出なくて…」

「ああ、ええ、い、いますよ……」

 

俺はチラリと陽乃の方に目配せをした。陽乃はどうやら俺のその表情などから電話の向こうにいるのが誰なのか分かったようだ。

 

「そう……、ならいいわ」

「は、はぁ」

 

俺は一体なんで陽乃のお母さんが電話をわざわざ俺の元にかけてきたのか非常に疑問に感じた。今までそんなことなかったし、陽乃からも電話がかかってきたなんてそんな話聞いたことない。一体何が目的なんだ?

というか、相手は陽乃のお母さんなのに相手の意図を読むだとかそういうレベルの思考を陽乃母相手に抱いてしまうあたり、俺達はよほど陽乃母に警戒心を抱いているのだと自覚した。そして俺はその警戒心を悟られないように電話の応対をしている。

 

「ちょうどいいわ、陽乃に…いや、あなた達に大事な話があるの。その為にそろそろ来る長期休暇に日本に2人で帰ってきて欲しいという話は陽乃から聞いてる?」

「ええ、聞いてます」

「なら話が早いわね。じゃ日本に帰ってくる時は全ての

荷物をまとめて帰ってきなさい」

「……はい?」

 

ん?今なんていった?すべての荷物をまとめて帰ってこい?え?どういうことだ?

俺の頭の上にハテナマークが沢山ついていることもお構い無しに陽乃母は続ける。

 

「もう貴方達もイギリスという異国の地でしっかりと学べたことでしょう。言語も文化も違うその国でギャップに苦しみながらもいろんなことを学べているということは前回に陽乃が帰ってきた時に聞いているわ。もうそろそろ潮時でしょう」

「え、えーと、それは一体……?」

 

俺は陽乃母が言っていることがよく理解出来ない。 な、何を言っているんだ?そろそろ潮時?え?それってなにをいっているんだ?

 

すると陽乃母はとんでもないことを口にした。

 

「貴方達はもう充分学べれるものは学べたと判断しました。なので、次の学年からは日本の大学に戻りなさい」

「……」

 

……え?なんやて?それってつまり……

 

「えーと、それは留学は終了ということで?」

「ええ、その通りです」

 

……なんてことだ。俺はてっきり卒業までイギリスにいるものだと思っていた。その為の覚悟も決めていた。なのに、ここで…終了?日本に帰る?それを勝手に陽乃母に決められた?

なにか心の底からフツフツと湧き上がってくるものがあった。なぜだと。なぜたった一年ちょっとで日本にもどれと。しかも学べるものは学んだでしょうと一方的に言われて。そんなこと俺達にしかわからんだろうが。なんであの人はこう、自分の思うとおりに動かそうとするのか。

 

と、誰かが俺の手を握った。……あ、この部屋には陽乃しかいないのだから陽乃の手か。

陽乃は俺からそっと電話をとると、

 

「電話代わりました。陽乃です。お久しぶりです、お母さん。話は横で聞いていました。……ええ、その件の話もも―――――」

 

陽乃が俺に代わって電話応対を始めた。恐らくこのまま俺が応対していたら、俺が怒りを電話でぶつけてしまうと陽乃は思ったからだろう。実際俺ももうコンマ数秒遅かったら怒鳴っていただろう。それくらい危なかった。

ただ、陽乃はそれを恐れた。俺が怒鳴ることを。それはたとえ怒鳴っても何も変わらないことが見えているからだ。

陽乃母は身勝手で、自分の思うとおりに物事を動かしたい。そういう人にはたとえどう言おうともその人の考えは曲がらないことをわかっているからだ。俺もそれはわかってる。だけど、あんまりだろ、これは……。

 

 

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

 

 

 

「うん、うん。とりあえず、支度するね。じゃ」

 

ガチャンと電話を切るやいなや、陽乃はふうーと大きなため息をついた。

 

「そういうことになったから、明日から支度しようか」

「……ああ」

 

俺にとっては想定外だ。俺は本気で卒業までここに残るつもりだった。なのに道半ばで日本帰国だなんて……。

 

「八幡」

「なんだ?」

「やっぱり、八幡は卒業までここにいるつもりだったんだね」

「……ああ。俺は本気でここで卒業するつもりだった」

「……そう。理由を聞いてもいい?」

 

陽乃は若干遠慮がちに聞いてきた。別に遠慮なんかしなくてもいいのにな。

俺は努めて静かに話し始めた。

 

「……俺は、最初からここで卒業するつもりだったんだ。それはここの大学に合格が決まってからずっと決めていたことなんだ。たしかに形としては雪ノ下家に行かせてもらってる立場だ、表立ってそういうことは言えなかった。だけど心の中では決めてたことなんだ。イギリスという文化も言語も人種も何もかも違うこの国で、世界中の人が集うこの場所で、俺は正直にいえば苦しみたかったんだ。苦しんで苦しんで、そして何かを掴みたかった。その為にサークルにも入った。街にも積極的にも出かけた。今までの俺ならこんなことするなんて微塵も思わなかった。日本での俺は所詮インドアなボッチだ。俺はそんな俺から変わりたかったんだ。右も左もわからない異国の地でもし変われたとしたら、それは大きな自信になるんじゃないかと思った。そして、その異国で大学という過程を最後まで全うすることが出来たら、それもまた大きな自信に、そして大きな達成感を得られると思った。そして、そんな大きな自信と達成感を得た時、俺は……」

 

と、俺はそこで言葉を切った。陽乃も話の続きを待っている。ただ、俺はそこで言葉を失った。

……あれ?俺は自信を得てどうしたいんだ?脱ボッチ?脱インドア?いや違う、もっと違うことなんだ……。でも、言葉が出てこない。

 

「八幡?どうしたの?」

「いや、なんでもない……」

「そう……。でも八幡の気持ちは分かったわ。そういうことを考えてたのね」

「ああ……」

 

俺は若干の消化不良を感じながらも、思いを打ち明けた。

 

「ねえ、八幡 」

「なんだ?」

 

陽乃は俺の方を向くと、

 

「んっ」

 

軽くキスをしてきた。そして、天使が微笑むようにニコッと笑いながら

 

「私は八幡の味方だからね……。いつまでも、ずっと……」

 

そういいながらもう一度キスをしてきた―――――。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

 

 

 

陽乃が自室に帰っていき、俺は部屋にひとりになった。そんな俺は電話を手に取ってあるところにかけていた。

 

プルルルルル、プルルルルル、プルッ

 

「……もしもし、久しぶりだな。どうした?」

「お久しぶりです、平塚先生。元気ですか?」

「ああ、今ちょうどこってりラーメンを食べ終わったところでなー。で、どうしたんだ?」

 

俺は高校時代の恩師、平塚先生に電話をかけていた。そして先生に留学切り上げのことを話した。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

 

 

 

「……なるほどな。すべて分かったよ比企谷」

「はい。その、すいません」

「なぜ君が謝るんだよ。君は何も悪いことはしていない」

 

平塚先生はしっかりとすべてを聞いてくれた。そして卒業した生徒の相談も真摯に聞いてくれる。ああ、やっぱりこの人はいい人なんだなと再実感した。

 

「いえ、俺はあの卒業式の日、平塚先生にあんなにしっかり送り出されたのにこんなに早く帰っていいものかと思いまして……」

 

俺が平塚先生に電話をかけた一番の理由はこれだ。あんなにしっかり送り出されたのにこんなに早く日本に帰っていいものかと。平塚先生の期待を裏切ることになるんじゃないかと。

しかし、平塚先生は笑いながら、

 

「いやいや、そんなことはないぞ。大体君のけっていじゃないんだろ?なら責める資格はまったくないよ」

「いや、でも……」

「こら、それは君の悪いところだぞ。そういうのを見せられたら私は心配になるぞ 」

「すいません……」

「まあ、君らしいがね……」

 

平塚先生は優しい口調で俺に話してくれている。それだけで俺の心は少しずつ軽くなっていく。

そして平塚先生はさらに優しい口調でこういった。

 

「帰ってこい、比企谷。日本に」

「……はい!」

 

 

 

続く

 

 




長らくお待たせしてすみません。ようやく続きを書くことが出来ました。
過去最長をまたしても更新……。俺は死んでないで!

さて、今回の話は結構進展がありました。イギリス留学編は次でラストになります。
そして次の投稿がいつになるかわかりません。申し訳ない。リアルの方が色々忙しくて……。
ただ、精一杯努力していきます。応援よろしくお願いします!

それと、最近寒くなってきているので風邪やインフルエンザには気をつけましょう!
ではまた次回!


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第八話

昨日に続く連投です。


「これでよしっと」

寮の中にある荷物をようやくまとめ終わり、後は日本に送るだけとなった。部屋の中は元々備え付けられていたもの以外がなくなりすこし寂しく感じる。曲がりなりにも一年近く住んでたんだ、そこを離れるのはやはりさみしい。

 

もう既にこっちで関わりのあった人達への挨拶も済ませてあとは出国を待つだけだった。

 

……ここまでイギリスという異国に留学をして、俺は色々なことを学んだ。本場の英語を学べただけでなく、人間関係において重要なことも学べた。いろんな国からいろんな人が集まってる大学において、やはり偏見や差別的な意識を無意識にでも向けていたこともあった。だけどそれは間違っていて、どの国の人でも優しいヤツや、仲間思いのヤツもいるし、その誰とも仲良くすることが出来るんだ。サークル仲間にも地元のヤツもいれば南米から来たやつもいるし、俺みたいな極東から来たやつもいる。

俺はこの留学を通して、いろんな偏見を捨てることが出来た。日本という単一民族の島国ではきっと経験できないであろうことを経験できた。

 

「八幡ー、行くよー!」

「ほいほい」

 

おっと、もう出発か。

俺はすっかり慣れ親しんだ部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 

 

 

 

 

空港に向かう前に俺と陽乃はすこしロンドン市内をぶらつくことにした。

これまでも何回もデートしてきたロンドン市内であるが、たった1年とはいえやはり離れるとなると寂しい気持ちがあった。

 

「なんだかもうここにこうしていつでも来ることがなくなるって寂しいね」

「俺もちょうど今それを思ってたことだ」

 

陽乃も同じことを考えていたようで少し嬉しい気持ちになった。やっぱり好きな人と同じ気持ちを共有できるって嬉しいことだよね!

今日の陽乃は白のカーディガンに黒のロングスカート、カーディガンの下にはライトグリーンの薄いシャツを着ていた。相変わらず似合っている。春の初めのこの季節にはぴったりだ。

 

さて、テンションも上がってきたところでまず俺達が向かったのは行きつけとなった服屋だった。

 

「いらっしゃいませー!……あらっ、ハルノとハチマン!今日も相変わらず仲がいいわね!」

 

勘のいい人は気づいているだろう。行きつけの服屋とは陽乃が黒のワンピースと白の長袖のカーディガンを買ったあの店である。あれから何回かこの服屋に行ったが、店員のあの女の人にすっかり顔を覚えられたらしくいつも幾度に俺達に付いてくれる。

その店員、グリーンさんはそそくさと服を持ってきた。グリーンさんいわく、新作を持ってきているとのこと。

 

「今回はこの白のロングスカートが入ってきたの!ねえ、ハルノに似合うと思わない?ハチマン!」

「あ、ああ、似合うと思うぞ」

 

陽乃はグリーンさんに合わせているが、俺はどうもこのハイテンションにはいつまでも付いていけない。グリーンさんも俺のそんな様子にはいつも気づかない。まあそこがグリーンさんのいい所だよね、うん。

 

そこから女子2人で商品をあーだこーだいいながら選びまくっていた。その光景はなんだか笑えてくるほど楽しそうなものだった。

これからはこんな愉快な店にも来れなくなると思うと少し寂しいな……。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「え?日本に帰っちゃうの?寂しいー!」

「ごめんねグリーン。でも決まっちゃったから」

「ハルノとハチマンをこれから見れないって寂しいよぉ!」

 

グリーンさんは涙目になりながら残念がってくれた。

 

「まあ、いつか会えるわよ。私達がまたロンドンに遊びに来ればいいしね」

「うん……確かにそうね……。あ、そうだ!ねえハルノ、あなたの電話番号教えてよ!」

「え?どうして?」

「今度私時間が空いたら日本に行くからさ!その時案内してよー!」

「……ほほぉ、日本に来るのね……日本が騒がしくなっちゃうわね」

「いいじゃない、私ちょっと憧れだったのよ!サムライ、ちょんまげ、帯刀!」

 

グリーンさん、間違ってるって!もうそんな日本人いないから!明治維新で欧米化したからっ!

 

「よし!そんなに日本が好きならぜひ案内してあげるわっ!電話番号はね……」

 

陽乃も突っ込んでやれよ!教えてやれよ!そんなニヤけてないで!絶対これからかう気だな、悪魔めっ!

そんな俺の視線を察してか、こちらを見てウインクした。……くそう、可愛いじゃねーか。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

 

 

 

服屋を出た後、俺達はランチを済ませることにした。もちろんこちらも行きつけの日本料理店へ。今から日本に帰るってのに日本料理店ってのもおかしいが、やっぱりここの店長さんとも顔なじみになったし、挨拶がてらということもある。

 

「まあた熱いカップルだこと!」

 

店長のおっちゃんが注文表を持ってきながら冷やかす。これもいつもの通りだ。

俺達は二人共和風定食を頼んだ。

和風定食は味噌汁、漬物、白米、そしてトンカツというコテコテの日本料理が並んでいた。なんでも店長はかなりの日本通で、わざわざ日本から味噌や米を取り寄せてるらしい。

そんな店長自慢の定食をいただく。

……うん、旨い。これは日本人として充分な味だ。店長のこだわりの赤味噌はまったく日本の家庭の味に引けを取らないし、塩漬けも旨い。ご飯もメチャ旨い。もう全部旨い!

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

 

店長のおっちゃんに別れの挨拶をして、俺達はいよいよ空港に向かった。

ついにこの国を旅立つ時が来たか……。

ここに来て一年、いろいろ苦しんで、いろいろな出会いがあったが、ついにそれも終わり。母国に帰る時がやってきた。

 

「さ、帰ろうか、日本に」

「おう」

 

俺達は出発口へと、向かった。

 

「待って!ハチマン!」

 

ん?俺を呼ぶ声が聞こえてきた。誰だ?もう挨拶は終わったが……。

と、遠くから金髪の女が……。

あっ!ジェシカだ!そういえばジェシカだけタイミングが合わなくて挨拶してなかったんだ!すっかり忘れてた。

 

「ジェシカ……」

「はあ、はあ、ちょっと、挨拶もなしに、帰るなんて許さないよ?」

 

必死に走って来たのだろう。ゼエゼエと息を切らしていた。

 

「あー、そのタイミングがな……」

「タイミングもクソもあるか!タイミング少しでも見つけて挨拶こいや!」

 

うおっ、こりゃ相当怒ってんな……やべー。

これはもう素直に謝るしかないな。

 

「すまん」

「……まあ、私も忙しいし?仕方ないから許したゲル」

「お、おう」

 

とりあえず、許してもらえたみたいだ。というかジェシカには早くご退場願いたい。さっきから横から冷たい殺気が漂ってきてるから。……怖いって。

 

と、とりあえず、出発口に向かうか。

 

「よし、とりあえず、もう出発するから。んじゃな、ジェシカ」

 

俺は陽乃の手をとりそそくさと逃げるように出発口に向かおうとした。が、

 

「ちょ、ちょ待ちなさいよハチマン!こら!話は終わってないわよ!」

 

ジェシカから肩をガシッと持たれた。……やべ、こいつ、振りほどこうとしてもほどけねー。力強いな以外と。

もうこれは堪忍して振り返るか。と、渋々ジェシカの方を振り返った。

 

……ん?

振り返った時、視界の端に何かがこちらに向かってくるのが見えた。俺が振り返った先に見えるのは一面ガラス張り。つまり、外の状況が丸見え。空港ではよく見かける構造だ。そして、それを真正面から見ている俺の視界の左端から、なにかの物体が近づいているのが見えた。

異変を感じそちらの方を向く。

 

「なに?どうしたの?ハチマン?」

 

ジェシカも振り向く。そして陽乃も。

そして陽乃が、

 

「あれ、車じゃない?しかもなんかスピードが出てる?え?」

 

どんどん近づいてくる黒い車。それはメチャクチャ早いスピードで――――

 

 

ガッシャーン!バリバリバリバリ

 

一瞬の出来事だった。その黒い車はガラスを突き破り空港内に侵入してきた。そして、

 

 

ドガーーーーン!

 

ものすごい音と共に爆発した。

 

―――逃げ惑う人々。俺達は突然の出来事に固まってしまった。そして、1台の黒いセダンが空港前に止まり、その中から出てきた武装した男達が空港内に侵入し、そして、その手に持っているマシンガンを天井に向かって乱射した。

 

ババババババババン

 

俺はこの一連の出来事から瞬時に悟った。

 

これはテロだと……。

 

「逃げるぞっ!」

 

俺は未だ固まったままの陽乃とジェシカの手をとり、走り出した。

陽乃とジェシカはしばらく放心状態のまま俺の手を引かれていたが、やがて

 

「あ、え?え?」

「あ、あ、うそ、これって……」

 

陽乃がまず反応を示し、そしてジェシカも現実を受け入れ始めたようだ。

 

俺はとりあえず、外に出ようとした。しかしほかの人々も同じように外に出ようとしたため、出入口がものすごく混雑した。

 

ババババババババン

 

奴らが銃を乱射している。これは無差別だ。そう悟った。

 

「は、八幡……」

 

陽乃が俺の手をとり、必死に深呼吸して落ち着かせようとしていた。そう、悲鳴を上げて目立たないようにするために。

だんだん混雑していて動かなかった人の流れもようやく動き出し、俺達は出口へ、外へと向かい始めた。

あと少しで外へ……。と、

 

「い……」

 

隣てジェシカがガタガタと震えだし、

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

一際甲高い声で叫び始めた。しまった、と俺は思い、必死にジェシカの口を抑えた。

がしかし、奴らにバレてしまうのにそう時間はかからなかった。奴らはこちらに向けて銃口を向けた。

……やばい

 

ババババババババ

 

奴らはこちらに発砲してきた。と同時に俺達も外へと脱出出来た。これで一安心……。

 

 

 

 

 

グチゃっ

 

 

 

 

 

 

「……ん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?なんか脇腹が熱い。疑問に思い脇腹に手を当てると、

 

 

 

 

 

「あれ?赤い……」

 

 

 

 

 

それを確認すると同時に目の前が暗くなってきた。

 

 

……あれ?目の前がグラグラして………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はちまーーーーーーーん!」

 

 

 

 

 

あ、陽乃、なんで叫んで……というか景色が逆さに……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の意識は―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドサッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イギリス留学編、完。

 

 

 

 




さて、昨日に続く連投となりました。お楽しみ頂けたでしょうか?
今回で第一章イギリス留学編は終わりとなります。次回からは第二章に入っていくわけですが、さあ果たしてどうなるでしょうか?主人公の運命は??

さて次回の投稿は未定です。年内にかけるかどうかも微妙です。努力はしていきますが……。

というかやはりブランクというのは大きいですね。昨日投稿した話なんか中身の描写やら、セリフやらがかなり下手くそ丸出しでしたね。結構忘れてしまうんですよ、時間が経つと描写の仕方とか。まあ、元々そんなにうまい方ではないですが苦笑

それから今回から残酷な描写というタグを追加してます。今回はかなりブラックなところまで足を突っ込みましたからね……。

さて、次回のお話、是非是非お楽しみください!応援コメントも受け付けてます。応援していただけると非常にありがたいです!
ではまた皆さん次回お会いいたしましょう、さようなら!


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