とある冥土の主はマッドサイエンティスト (namaZ)
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プロローグ

今回が処女作の新米です。初めてなので自信がありません。
駄作の可能性大です。
最後まで読んで下さると幸いです。
そして、できればアドバイスの程よろしくお願いします!!!


 

 

 彼女は憧れていた。

 

 

 

 立ち振る舞い

 

 

 

 しぐさ

 

 

 

 絆

 

 

 

 存在そのものに憧れていた。

 

 

 

 美しいと思った

 

 

 

 綺麗と思った

 

 

 

 可憐だと思った

 

 

 

 だからこそ・・・・・主人を支えるその姿に憧れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「いいだろう・・・・・そなたの願い聞届けてやる」」」」

 

 

 

 そうして彼女の魂は転生した

 

 




まだまだ続きます


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※キャラクター設定

すみません。
すこし設定変更します。
容姿をすこし変更ですので宜しければご確認お願いします。


   ―主人公―

 

 

 

名前 粕谷(かすや) (ひとみ)

 

 

性別 女

 

 

容姿 シークレットゲーム code:reviseのそのまんま粕谷瞳(左目に眼帯)

 

 

人種 原石

 

 

能力 紙使い

 

 

武器 チェーンソー

 

 

性格 「チェーンソー」を片手で振り回すくらいの腕力をもっており、戦闘において高い戦闘力をみに   つけている。自分が仕える(マスター)には絶対の忠誠心をもっており、『殺せ』と言われれ   ば実行する忠誠っぷりである。心を許したり(主以外にありえないが)、ある程度しった人なら   それなりに接してくれるが、基本的には冷静で沈着的な性格である。

    以前は(マスター)以外の人間は完璧無視だったが、立場上そういうわけにはいかず、頑

   張った結果が「↑以下同文」であります。

 

 

備考 前世の記憶はありません。何か知っているような知らないようなといった感じです。

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次から本編です


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1話日常

本編です


 粕谷 瞳は幸せだった

 どこにでもある普通の家庭

 唯一変わっているといえば、お母さんが日本人でお父さんがイギリス人であることだっけ

 お母さんは、私が生まれると同時に亡くなり

 お父さんの本国に住むようになった

 だけど私にはもう一つ誰にも言えない秘密がある

 

 

 それは、《紙を自在》に操ることができるというもの

 

 

 この"力"に初めて気がついたのは折り紙で紙飛行機を作ろうとした時だった。

 いつもならクレヨンで落書きをして終了なのだが、今日は唐突に何かを作ってみようと思ったのだ。

 普段は「描きたいもの」を頭に思い浮かべて折り紙に触るのだが、今は「何かを作る」ことをイメージして折り紙に触れた瞬間、いつもと違う違和感を覚えたのだ。覚えのあるフニャフニャした感触ではなく、それとは逆の何か硬い感触がしたのだ。だけど粕谷 瞳はその現象を知っている気がした。記憶がその現象を知っているわけではない、体がその現象を知っているわけではない‥‥‥‥‥‥だけど、粕谷 瞳の根本的な何かがその現象をしっている気がしたのだ。

 

 

 そして、粕谷 瞳は折り紙に触れながら「紙飛行機を作る」イメージをした。

 最初は簡単に折り紙の中央が半分に折れるイメージすることにした。

 すると、触れているだけなのにひとりでに紙が動き出した。

 いや、イメージした命令通りに紙が動き出したのだ。

 最初はひと折ひと折ぎこちなくだったが、慣れていくうちに折るスピードが上がっていた。

 そして、最終的には折り紙に触っているだけで紙飛行機ができてしまった。

 

 

 

 私自信、いまの現象に驚いていた。けど、頭の中では冷静に今おきた現象()を理解していた。

 

 

 それからは、ひたすら紙飛行機を折り続けていた。

 

 

 イメージを思い浮かべては作る。

 

 

 イメージを思い浮かべては作る。

 

 

 イメージを思い浮かべては作る。 

 

 

 ただそれを繰り返した。

 

 

 新しい折り紙を取ろうと手を伸ばしたらそこには折り紙がなかった。

 

 

 あれ?そう思い顔を上げて見るとそこには折り紙はもう無く、どうやら折り紙を全部使い切ったようだった。 

 

 

 

 

 

 それから、帰ってきた両親に"力"を見せて驚かせることに成功した。

 お父さんは驚いていたが私を褒めてくれた。

 とても嬉しかった。

 

 

 

 

 次の日、同じ日本出身の友達の柚ちゃんに、イギリスで友達になったアンちゃん、ナンシーちゃんにこの"力"を披露した。

 最初はびっくりさせてしまったけど、喜んでくれた。

 紙飛行機を作って皆で遊んだ。

 練習中の蝶々を飛ばすことに成功して友達みんなでさわぎまくった。

 

 

 

 それから数ヶ月が経ちだいぶ作れるバリエーションが増えてきた。

 

 

 

 しかし、時間が経つにつれて自分以外の子供が"力"を使えない事を知った

 

 だけど彼女はこの"力"を気に入っていた

 

 友達に見せたら喜んでくれた 

 

 お父さんはすごいと言い私を抱きしめてくれて

 

 微笑んで私の頭を撫でてくれる

 

 

 

 けれど、お父さんからはあまり人前で使うなと言われてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 でもそんな何気ない彼女の日常を眺めている存在がいた

 

 

 

   




感想のほどよろしくお願いしますm(__)m


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2話報告

短い文章しか書けない自分は、書き方が下手なのだろうか。


 ―??サイド―

 

 

 

 

 

 

 

 

 「こちら『Wolf(ウルフ)』、獲物(ターゲット)を発見」

 

 

 スーツの上のボタンに付いている隠しカメラをターゲットに向ける

 

 

 『――――――・・・・了解。こちらでも確認した』

 

 

 耳に隠すように取り付けられている無線(インカム)から同僚の声が返ってくる

 

 

 「それにしても何なんだこの任務は?あんな子供を尾行する自分が犯罪者に見えてくる」

 

 

 『諦めろ、これも任務だ」

 

 

 「分かっているって、にしても『あの方』の娘か。情報に目を通したが日本人とのハーフらしいな」

 

 今尾行をしている少女の書類ペラペラめくりながら答える

 

 

 『そうだが・・・・・・それがどうした?』

 

 

 「ハッ!さすがビックリ箱の国日本だ。あんな"力"を持った化け物が生まれてくるとはな」

 

 

 『おい、あまり余計な事をしゃべるな。この無線だって盗聴されている可能性があるんだぞ』

 

 

 「だから分かってるって。それに、これだけの会話だけじゃあ何のことを言っているのかわかんねーって」

 

 

 『それはそうだが‥‥‥』

 

 

 「それにしても驚いた。あの方・・・・・・……・ジョン・オルブr――――――――」

 

 

 『黙れ。Wolf(ウルフ)Wolf(ウルフ)らしく無駄口を叩かずに任務に集中しろ』

 

 

 「おいおいこわいなぁ~、冗談だよ。しかし、これがそこらの一般人や政治家の娘なら誘拐なり死んだことにすれば楽なんだが、そうするのは相手が悪すぎるな」

 

 

 『―――また減らず口を』

 

 

 「だがそう思わないか?」

 

 

 『それには同感だ』

 

 

 「だろぉ~?しっかしまた、なんであの方はこのことを今まで隠していたんだ?俺の知っているあの方なら()()()()()()()()()()()()()連れて行くんだがなぁー、あれには流石の俺も鳥肌が立っちまったよ」

 

 

 『お前がか?平気で同じことをしそうだが?』

 

 

 「いやそれが全然違うんだよ。そうだな‥‥‥‥俺の場合はただ上からの仕事を忠実に実行しただけ―」

 

 

 『お前本気で言ってんのか?』

 

 

 「うるさいなー。黙って聞いてろ」

 

 

 『・・・・・・・・』

 

 

 「よし、話は戻すが、分かりやすく言えばこころざし?かな?が、違うんだよ」

 

 

 『志?』

 

 

 「ああ、何って言うのかねーー、こぉ~っなんだ――――そお!!私念だよ!し・ね・ん!!!!」

 

 

 『私念だと?あの方に限ってそれはないだろ、私でさえ目を背けてしまうことを、あの方は表情を変えずにやるんだぞ』

 

 

 「だからだよ、恨みか嫉妬かは分からないが、そこまでしてやり遂げたい何かがあるんだろうよ」

 

 

 『・・・・・・・』

 

 

 「ま、結局の所このまま任務を継続して出方を見るしかないがな」

 

 

 『………ここまで話を引っ張っておきながら結局それか』

 

 

 「仕方ないだろ………おっと、獲物(ターゲット)が動き出した。Wolf(ウルフ)はこれより尾行を継続する」

 

 彼もプロ、さっきまでの会話の口調と違い、仕事モードに切り替わった

 

 

 「では、定時報告を終了する。以上」

 

 

 『了解した。くれぐれも気お付けて任務に当たれ。以上』

 

 

 

 

 そして、獲物(ターゲット)を尾行するを継続するWolf(ウルフ)は、会話の最中に頭に叩き込んだ資料をライターで燃やし、川に流した。灰になりながらもまだ燃えきっていなかった部分にはこう書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「   英国特務超能力機関(British special duty supernatural power engine)所属ジョン・オルブライド博士

 

 

 その娘、瞳・オルブライド・粕谷に関する資料

 

                                               」

 

 

            

 

  

   

 

 そして、水が染み込んだ資料はインクが落ちていき、最後はただの真っ白な紙になった。 

 

 

          

 

 

 




感想の程よろしくお願いします


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3話英国

ここからサクサク行きます。


 

 

 英国特務超能力機関(British special duty supernatural power engine)

 

 

 

 その存在、英国特務超能力機関は、日本に"学園都市"が出来る前から存在していたとされている。「されている」とは、、、、、そもそもどうしてそれだけ昔から存在しているのに"学園都市"に対して科学面、超能力

において遅れを取っているのか。理由は誰から見てもとても簡単、『全てにおいて負けている』からである。人員、金、施設、設備、環境、そして、技術に関してはまさに完敗。信念があってもそれを行うために必要な技術がない。いや、そもそも頭のつくり、頭脳が違いすぎた。考え方が違いすぎた。発想が違いすぎた。何かを発明する際の犠牲の数が違いすぎた。――――――――だが、もしも、英国特務超能力機関に"木原"のような頭のネジが吹っ飛んだ存在がいたとしたら、今の様に国に忘れられた亡霊のような影から存在する組織ではなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。だが、それに気づかず、いまだに抗い続ける彼らは自ら破滅への未来へ向かっている事に気づかない―――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イギリス・首都ロンドン近くの地下に『それ』はいた

 

 

 

 「我々『B.S.S.』は、"学園都市"が出来てから………いや、それ以前の前に追い詰められてきた。我々は日々、超能力開発のために己の全てを犠牲にしてきた。来る日も来る日も来る日も来る日も来る日も来る気も来る日も‥‥‥‥‥…・・我々は常に―――全力で超能力を開発してきた」

 

 

 見た目60歳から70歳くらいの外見をした男は、説教臭い口調で目の前の若い男に語りかける

 

 

 「よいか?我々……・・もちろん『君』も含めてだが、今日という日まで諦めずに、、、超能力開発を成し遂げるために日々という日を尽くしてきたわけなのだが……」

 

 

 老人は目の前の男に語りかける同時に自分自身に言い聞かせる様に次の言葉を紡いだ

 

 

 「それが・‥‥‥‥‥‥‥‥‥それがァ、それが!それが!!それが!!!それがどうだぁぁア!!!?"学園都市"が出来てからは我が組織は弱体化するばかりぃ!あれだけの規模を誇っていた組織は、今ではこんなロンドンの片田舎の地下にある、こんなまともな設備もないところをあいつらは用意しやがってぇええええ!!政府のクズ共は何もわかってはいない!タシかに!確かに!!我々は実験成果が出ていない、だが、科学においてあんなちっぽけな国に負けるのだけは我慢できない!!」

 

 

 散々喚き散らしながらあらためて目の前の男に体を向けた

 

 

 「そう思うだろ、ジョン・オルブライド博士!!」

 

 

 ジョン・オルブライドは老人の叫びをただ聞いていた

 

 

 「君だってそう思っているはずだ!!いや、思っている!」

 

 

 「・・・・・・・・」

 

 

 「・・・・・・・・・・・・」

 

 

 お互いに沈黙が続いた。さらに数分が経ち、先にこの沈黙を破ったのはジョン・オルブライドだった

 

 

 「わ、私は…・・これまで超能力開発を実現化するために今まで研究を繰り返してきた…・・そのために無関係の子供を実験体として扱ってきた―――」

 

 

 「それなら」

 

 

 「だけど、私にはもう無理だ!もう嫌なんだ!子供を実験体として脳を弄るのはたくさんだ!娘と同い年の子供が―――――苦しむ姿をもう見たくないんだ!!!」

 

 

 「何を今更、君が居なければプロジェクトは完成しないんだぞ!」

 

 

 「ぷっ、プロ・・ジェクト…・・だと?」

 

 

 初耳だった。超能力開発の()()を任せられている私が初耳だったのだ。おそらく私に聞かれてはマズイことがあるのだ。

 

 

 「プロジェクトとは何かね?主任である私に黙って何をしていた」

 

 

 さっきまでの自分の今までの行いを呪っていた弱者姿ではなく、超能力開発の主任としての強者の姿として聞いていた

 

 

 「事の次第によれば貴方のクビが飛ぶ可能性がありますよ?」

 

 

 「いやいやいや、そー睨まんでくれ。確かに今までこのプロジェクトの事を黙っていた。だが、このプロジェクトが成功すればあの学園都市に並ぶことができるのだよ、何より君のためにもなる」

 

 

 「……・?、何なんだそのプロジェクトとは?」

 

 

 「だが、このプロジェクトを成功させるには、君のよく知っている人物の協力が必要なんだ」

 

 

 「私の?誰なんだ、勿体つけないでさっさとプロジェクト名を言え!」

 

 

 だが、次の老人の台詞に私は凍り付いてしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「プロジェクト名『粕谷瞳』、確か…・・君の娘さん?だったかな?まったく、今までなぜ言わなかったのかね?あれほどの力をもった"原石"が君の身内にいるなと。だがっ心配しなくてもいい!これからは我々があの"原石"を有効活用して行くからな!!」

 

 

 「・‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥・・・・・・・・・・はっ?な、、、なに、を、、、何を言っているのだ?」

 

 

 理解が追いつかない。脳がついていかない。だが、あまりの衝撃に逆に 冷静になることができた。

 

 

 (いつバレた?いや、そんなことよりあいつ(愛する妻)に託された・・・・・託された――――――――)

 

 

 「きさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!瞳に何をしたぁぁぁぁぁああ!!!!!」

 

 

 今にも噛み殺さんばかりの迫力で目の前のそいつに掴みかかった

 

 

 「―――――っ!?痛いじゃないかジョン・オルブライド博士」

 

 

 「・・・・・・・・・」

 

 

 「そう睨まんでくれ、第一まだ何もしていない。君の、主任の娘を黙って拐いし、実験体にするはずがないだろう?冷静になりたまえ、普段の君らしくない」

 

 

 「・・・・・・娘は、瞳は無事なんだな?」

 

 

 「もちろんだとも、()()無事だ。」

 

 

 「何が望みだ?」

 

 

 「な~に、簡単なことだよ。今すぐに自分がやるべきことやりたまえ」

 

 

 「‥‥‥‥‥‥私は」

 

 

 「No(ノー)とは言わせない、なにより君だってまんざらではないだろ?"原石"の脳みそを弄り回すことができるのだから。ましてや、他の男が君の娘の脳みそを弄り回すのは君が良しとはしないだろ?それなら君自身の手でやってあげるのが君の娘のためではないのかね?」

 

 

 「・・・・・・私は」

 

 

 「さあ...」

 

 

 「・・・私は」

 

 

 「さあ...」

 

 

 「私は・・・」

 

 

 「さあ!!!」

 

 

 「お前達のプロジェクトに手を貸すことはできない」

 

 

 「・・・・・・は?」

 

 

 「聞こえなかったのなら何度でも言ってやろう・・・・・()()()()()()ジェ()()()()()()()()()()()()()()()って言ったんだよクソ野郎が!」

 

 

 そのまま飛び出すように扉を開けて駆け抜けていった

 

 

 「それが君の答えなんだな・・・・・・・・ジョン・オルブライド・・・」

 

 

 その呟きが、組織を裏切った者への憎しみの念か、それとも、友としての哀しみの念か・・・・

 

 

 ただ分かることは、昔の相棒ジョン・オルブライドはもういないということだけだった。 

 

 

 

 




次で終わりかな?


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4話狼

次でプロローグが終わると言いつつ終わりませんでした。
本当に済みません。
本当に次回でプロローグ終了です。


 

 

 「こちらWolf(ウルフ)、どうした?まだ定時連絡の時間ではないはずだが?」

 

 『時間がない、単刀直入に言う。『プロジェクトを開始せよWolf(ウルフ)獲物(ターゲット)を喰らうのは今だ』』

 

 「本当に行き成りだな。何があった?」

 

 『今そちらに、ジョン・オルブライド博士が向かったと情報が入った。ジョン・オルブライド博士が粕谷瞳と接触する前になんとか回収してくれ』

 

 「それは本当か!?―――――てことはジョン・オルブライド博士は我々を裏切ったんだな?」

 

 『そういうことだ。ジョン・オルブライド博士を捕まえようと組織の方でも追いかけてはいるんだが、流石は現主任だな。部隊が翻弄されているらしい』

 

 「・・・・・なるほど、わかった。では任務を開始する」

 

 『時間がない、急げよ』

 

 「わかってるって」

 

 急いで無線を切って獲物(ターゲット)を確認する。今は公園でいつものメンバーでと遊んでいる獲物(ターゲット)は、四人で紙飛行機を飛ばして遊んでいた。幸いにも周りには誰もいない。だが―――

 

 (クソ!中々一人にならないな、出来れば一人になってから回収したかったんだが、今は流石に時間がない。なにより獲物(ターゲット)を捕らえることが成功しても、そのまま目撃者を逃してしまう)

 

 ならどうするべきか?答えは簡単に出た。今まで獲物(ターゲット)の観察してきたWolf(ウルフ)だから分かること。獲物(粕谷瞳)は友達の事を実の家族のように接している。比喩ではなく本当に友達を自分の家族のように思っているのは確かだ。答えは簡単―――そこを利用してやればいい。獲物(粕谷瞳)を無抵抗に捕らえるとびっきりの方法――――――Wolf(ウルフ)は犬歯を覗かせ、茂みから獲物の首をどいつから噛み切るかのように選び――――――そして、、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 幸せだった。

 柚ちゃん、アンちゃん、ナンシーちゃんと今日も遊んだ。

 皆に喜んでもらえるように"力"を練習した。

 複数の紙を同時に扱えるようになった。

 お父さんは最近遅くに帰ってくるけど優しく接してくれる。

 いつもと変わらない日常。

 楽しかった。

 楽しかった。

 だけど、お父さんにはこの"力"はあまり人前では使うなと言われた。

 なぜ?と聞いても。

 お前のためだと言ってまたどこか行ってしまう。

 だけど、私は柚ちゃん、アンちゃん、ナンシーちゃんに喜んでもらえるように、今日も公園で"力"を使い紙飛行機を飛ばしていた。そのあと皆で紙飛行機がどこまで飛ぶか競争した。もちろん結果は私の圧勝である。やったー!

 するといきなり公園の茂みの方から影が迫ってきた。

 最初は犬だと思った。しかし、それは間違いだった。

 犬歯を覗かせ、獲物を見つめるその獰猛な瞳は見るものを恐怖で縛り付けた。

 『狼』、なぜそう見えたかは分からない、よく見ると人間であることがわかる。

 だけど、瞳は本能的に分かってしまった。あれは『狼』で私達はただ喰われるだけの『獲物』であることに。

 

 「きゃぁぁぁああ!!??!」

 「なにぃぃ!?」

 「たすけてぇぇ!!?」

 

 目の前で三人が捕まってしまった。

 距離にして5メートル、自分だけ逃げようと思えば逃げ出せる距離。だけど、、、

 

 「三人を・・・・柚ちゃんを・・・・・アン・・・・・・ちゃんを、ナンシーちゃん・・・・・・・を・・・かえ・・・・せ・・」

 

 怯えてはいない、むしろ怒っていた。目の前で友達を――――家族が捕まっている。しっかり目の前の『狼』を見据え、今度こそハッキリ言った。

 

 「わ、私のかぞくにぃ!!袖ちゃん!アンちゃん!ナンシーちゃん!をっっっっ返せ!!!!!」

 

 瞳は無意識のうちに、側に落ちていた紙の束を掴んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 紙飛行機を飛ばし遊んでいる。どうやら飛距離を競い合っているようだ。

 ここからはタイミングだ。この茂みから獲物(四人)までの距離は20メートル弱。

 

 (何か注意を引くものがあればいいのだが・・・・・・・・を、他の三人の注意が獲物に向いている。行くなら今しかない!!)

 

 姿勢を低く茂みから飛び出した。獲物(ターゲット)の方はこちらに気がついたようだがもう時は遅し、Wolf(ウルフ)は三人の子供を捕まえた。うるさいので取り敢えず動けなくとすと同時に声も出せなくしよう。日本人らしき子供をうつ伏せの体制で右手で首を掴み押さえ込む。イギリスの現地の子供は、左の脇で一人を捕らえ、もう一人は首を掴み、軽く締めて動けなくした。目に前の獲物()は逃げる素振りを見せない、自分の見立てに狂いはなかった。あとは、一緒にきてもらえるように説得(脅迫)するだけとなった。だが、獲物(ターゲット)が何かを呟いてきた。

 

 (なんだ?よく聞こえなかったな)

 

 ここまで彼は何一つミスをしていない、ターゲットを観察し、性格、人間性を見極める。そこまで把握してのこの作戦。だが、もう一度言う、彼は何一つミスをしていない。しかし、彼は瞳の行動力――――突発性を甘く見ていた。所詮子供だと。

 

 

 

 「わ、私のかぞくにぃ!!袖ちゃん!アンちゃん!ナンシーちゃん!をっっっっ返せ!!!!!」

 

 

 瞳は紙の束を掴むとこちらに向かって投げてきた。

 紙は一枚一枚彼の予想以上の速さで投擲された。

 だが、彼は避けようとは考えなかった。

 ここでまた彼はミスを犯した。瞳から投擲された"紙"、だが所詮"紙"、避けるまでもないっと。

 これが普通の考えだろう。誰しも子供が無我夢中に暴れて投げてくる紙を避けようとは思はない。なぜか?――――それが当然だからだ。誰しも投げられた紙に対して危機感を抱かない。痛くも痒くもない。それが常識。だが、ここで彼は最大のミスを犯した。彼は瞳の能力を()()()()()()()()()()能力と解釈していた。間違ってはいない。実際に瞳は、紙を触るだけで紙飛行機を作れるし、紙で生きた蝶々のような動きも再現できる。だから、紙を自由自在に操れる解釈は間違ってはいない。しかし、彼は――――この能力の根本的なところを見落としていた。

 

 『紙を自由自在に操れる能力なら、紙その物の強度も操れるのではないか?』っと。

 

 

 

 

 紙の束が彼の体に迫ってくる。もちろん彼のすぐそばにいた人質にも紙の束は迫っていく。

 だが、彼は動かない。Wolf(ウルフ)は紙よりも、その紙の束に紛れて(えもの)が接近してくる事に警戒していた。だが―――――その警戒は、紙が自分の体に突き刺さった瞬間に吹き飛んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私はただ助けたかった。

 友達を・・・・・家族を。

 無我夢中だった。

 だからこそ、紙を投げた。

 子供のころから大好きなこの"力"を。

 家族を助けるために使いたかったのだ。

 だが、紙は私の本当の気持ちを理解したかのように"刃"の形になった。

 家族を守りた。

 この気持ちが、瞳の家族を奪おうとする敵を倒すために、攻撃性となった飛んでいった。

 だが、ろくな訓練もしていない瞳が投げた"刃"は無差別に敵を――――――――家族を攻撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私―――――ジョン・オルブライドはひたすら走っていた。

 娘、粕屋瞳を助け出すためにひたすら走っていた。

 ここらの隠しルートなら誰よりも熟知していると言えるだろう。

 

 「「まて!!」」「おえおえー!」「先回りだ!!」「ダメだ!読まれている!」

 

 先ほどから追いかけてくるのは英国特務超能力機関のメンバーで私の「元」部下だった者達だ。

 それが、30人で追いかけてくる。今では弱体化し、組織の総人数が100人いるかどうか、実際には100人もいないだろう。そして、なにより私を追いかけてくる面子だが、そのほとんどが私同様、運動など二の次の超能力開発に全てをつぎ込んできた者達だ。そこまでして何故私を捕まえたいか。彼らは分かっているのだ。ここで私が消えても変えはいくらでもいるが、もし、大事な"原石"ごと逃げられたら全てが終わってしまうと。

 

 

 (だいぶ撒いたか・・・・そろそろ瞳のいる公園につくはずだ、間に合ってくれっっっ!!)

 

 

 そして、そのまま公園に飛び込み、最初に見たものは、友達と楽しそうに遊んでいる瞳の姿でもなく、組織の人間に連れて行かれる瞳の姿でもなく―――――血に染まった公園の中央で(たたず)む瞳の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




感想よろしくお願いします。


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5話父の思い

いつもより文章を長くすることができました。
この調子で頑張っていきます。


 

 

 赤い、ただひたすら赤い。目に映るもの全てがただ赤く染め上がった。

 体を覆うように。5メートルもの距離からも赤い液体は容赦なく降りかかる。

 全身を赤く汚す『それ』は生暖かかった。

 しつこいように「」の体を赤く染め上げている。

「」は、わずかに顔を下げ、自分の体を見下ろす。

 爪先から胴体にかけて「」の体に『それ』がついている。

 周りを見渡せば普段遊んでいる公園が同じように赤くなっていることに気がついたはずだ。

 だが「」には周りを見渡す余裕はないし、何より今の「」にはそんな簡単な動作さえすることができない状態だった。

 「」は、この場所をこんな惨状にした手を見下ろす。

 真っ赤に染め上がった手を見つめ、徐々に思考が回復していく。

 これは、『血』だ。

 だが「」のものではない。

 5メートル先で倒れている男はうつ伏せのまま人形のように動かない。

 これは男の『血』だ。

 だが、それにしては『血』の量が多過ぎる。

 (いや・・・・・)

 この『血』は男のものと――――

 (いやだ・・・)

 同じように壊れた人形のように動かない――――

 (いやっ・・・!)

 三人の少女の『血』だった――――

 

 「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」

 

 わざとではない。無意識に、夢中に、ただ助けたくて――瞳の心は混沌の渦に陥っていた。

 この"力"はお父さんを、友達を―――瞳自身を幸せにしてくれるモノだと信じてきた。

 この"力"はお父さんを、友達を―――皆を笑顔にしてくれるモノだと信じて疑わなかった。

 皆に喜んでもらえるように頑張って練習した。

 自分の"力"が日々成長していくのが楽しかった。

 紙に触れれば反射的に造型できるまでになった。

 だからこそ、こんな結果は()()()()()()かっ()()

 助けないと、そう思った瞳は一歩足を踏み出す。

 クシャ、どうやら紙を踏んでしまったらしい。

 当然、その紙には血がこびり付いている。

 こんなモノに気を取られている場合ではない。

 すぐに助けないと、助けないといけないのに――――私は、私を凝視する目に動けないでいた。

 柚ちゃんは、糸切れた人形にように動かない。ここからでは男が重なって傷の具合が見えない。

 アンちゃん、ナンシーちゃんはこちらをまっすぐに見つめている。倒れている男の様に紙が刺さって、血が滲んでいる。

 このままでは出血多量で死んでしまう。

 なら一刻も早く『血』を止めなくてはならない。

 紙を操り、傷口を覆えば簡単に出血を止めることができる。

 だけど、瞳は動けない、動けないでいた。

 アンちゃん、ナンシーちゃん――――二人が私を凝視する目は助けてなどと求めてはいなかった。

 今、彼女たちが瞳に向ける視線は、普段のような優しいモノではなく。

 そこにあるのは純粋な恐怖。

 わずかに唇が動いた。

 声を発声する器官にでもダメージがあったのか、はたまた声を発生するほどの体力がもう残っていないのかは定かではないが、しっかりと、確かに、確実に、私の耳に声は届いた―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  『化け物』っと――――――――――

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 公園の中央に佇む瞳に急いで駆け寄り、発狂仕掛けの瞳を落ち着かせるためにしっかりと力強く抱きしめた。

 瞳の体に傷がないかを確かめ、この血は全て返り血であることがわかった。

 (間に合わなかった・・・・)

 ギリ、奥歯を噛み締める。

 なぜこの時期に瞳を一人にしたのか。

 なぜ奴らの誘いに乗ってしまったのか。

 なぜさっさと瞳と共に逃げなかったのか。

 なぜ父である私ではなく瞳がこんなにも苦しいめに会うのか。

 (なぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだ)

 後悔してももう遅い、目の前の光景が全てを物語っている。

 瞳は自らの原石としての本当の"力"を使ってしまったのだ。

 人を幸せにする"力"とは程遠い、人を傷つけてしまう"力"を。

 実際に超能力者を生み出したことのないジョン・オルブライドだが、超能力の能力分析、知識に関してはそこらの研究者に負ける気はなかった。

 だからこそ、超能力開発を行っていない瞳が能力を扱える事を知った時、世界に50人しか存在しない『原石』であることがすぐにわかった。

 私はすぐに行動に移した。

 瞳にはもうその力を使わないように言い付けた。

 組織にはバレないようにいろいろ手を回し、情報操作もした。

 独自で瞳の能力の研究を行い、危険がないか調べた。

 

 

 《一つ、紙しか操作できない

  二つ、紙に触れる事により操作ができる

  三つ、自由自在な形を作ることができる

  四つ、ただし三つ目は相性なのか作れないものもある

  五つ、紙の強度、切れ味を上げることができる》

 五つ目の項目の、後者(切れ味)はあくまで可能性の話。

 だが、紙の強度を上げたりすることは可能であると推測する。

  

 

 ここまで調べることができた。だが、()()()()()()()

 私は自分自身に憤怒した。

 娘を―――瞳を信用できない自分自身に憤怒した。

 ただ恐ろしかった。

 いつかその"力"により傷ついてしまうのではないか。

 だが、結果はどうだ?

 傷ついたのは私ではなく、瞳自身だった。

 私はただこうやって慰めることしかできない。

 後悔してももう遅い、これが現実―――――――"カチャ"

 「―――ッ!!?」

 いつも間に追いついていたのか、先ほどの30人が私たちを囲むように銃を構えていた。

 この状況をどう打開するか考えを巡らす。

 (どうする!?このままでは蜂の巣だ。なんとしても隙を見つけ瞳だけでも逃がさないと)

 だが、30人の包囲網の壁は厚い。簡単に隙など生まれるはずがなかった。

 すると、一人の男が包囲網から出て私に近づいてくる。

 その男には見覚えがあった。

 老人だ。私が現主任を務めるまで、主任の座をかたくなに守ってきた元主任であり――――――私の相棒でもあった男。

 

 「"チェックメイト"だジョン・オルブライド博士」

 「・・・・・・・・・・・・・・今更皮肉のつもりか?なぜすぐに殺さない?」

 「君は少々勘違いをしている。私は君を殺そうなどと考えてはいない」

 「じゃぁー逃がしてくれるのか?」

 「それはありえないな」

 「では何故今更話すことがある?」

 「わからないかね?勧誘だよ」

 「勧誘?まさか、私がいまさら組織に願えるなどと考えているのか?」

 「正解だが、半分正解だ。君の娘・・・・瞳・オルブライド・粕谷を我が組織に勧誘したい」

 「なっ――!?、貴様は何を考えているぅ!?」

 「これは君のためでもある。娘を実験体としてではなく、同じ組織としての同胞としておもてなしすると言っているのだよ」

 「・・・・信じられるか、貴様の手口は私が誰よりも理解している」

 「―――――――――これはチャンスなのだよ?確かにこれまでの様に自由な生活は出来無くなるが、それなりの生活は保証しよう。なにより、学園都市を見返せるチャンスなのだぞ?」

 「あなたは自分で何を言っているか理解しているのか?確かに少し前までの私なら同じことを考えていただろう。だが、今の私は違う。瞳を見て私は分かってしまったのです」

 「?、何が分かったと言ううのかね?」

 「原石でさえこれほどの"力"を保有しているのだぞ?学園都市がそれ以上の"力"を保有していないはずがない」

 「……・・・・・」

 「これ以上実験を進めると・・・・・・潰されるぞ」

 「承知の上だ」

 「これは!!あんただけの問題じゃないっ!!いいか、100人の命が掛かっているんだぞ!?」

 「・・・・・承知の上だ」

 「では何故――――」

 「承知の上だと言っている!!!!!!!」

 「――――ッ!?」

 「いいか、よく聞け、我々はこの研究に誇りを持っている。この手足が引きちぎられようと我々は止まらない。それを貴様は学園都市に潰される?ふざけるな!!なんども言おう、承知の上だと!」

 「それは貴様の考えだ。他の者たちまで同じだと思うなよ」

 「・・・・・・・・・・それで、返事は?」

 「NO―――だ!!」

 「そうか・・・・・・・・・・残念だよ―――――――――『瞳・オルブライド・粕谷を確保』しろ、ジョン・オルブライド博士は『拘束しだいにどこかに閉じ込めておけ』」

 「さっさと私を殺しておくんだったと後悔しろ!!」

 懐のホルスターから拳銃を抜いた。

 「なぁにぃぃぃ!!!!!?」

 「お前が死ねば組織に首輪を繋がれた人達は解放される!!」

 照準を老人に向ける――――――そして

 

 

 "バン"

 

 銃声が鳴り響いた。 

 硝煙の匂いが鼻をくすぐる。

 放たれた弾丸はまっすぐにジョン・オルブライドの胸に吸い込まれていった。

 

 「がっは――――――――」

 

 口の中に鉄の味が広がった。

 「きさまぁ!?なぜ撃ったぁぁ!!?」

 「しかし、奴は銃口をあなたに・・・・・」

 「言い訳などいい、早く傷の手当をっ」

 

 "バン"

 

 ジョン・オルブライドを撃ったを男の眉間に弾丸が命中した。

 「!?」

 

 ジョン・オルブライドは鉛を胸にくらいながらしっかりとコチラに銃口を向けている。

 「勝手なこと・・・・・・・・ぬかすなぁ・・・・次は確実にあてる」

 「それが、君の答えなんだな・・・・」

 「何度も言わせるな。これが『答えだ』」

 「今ここで貴様が死んでも何も得られないぞ!」

 「分かっている。このまま組織に捕まれば、お互い命は助かるかもしれない・・・・・だがそれは死ぬのが先延ばしになるだけだ。私は・・・・・瞳には人間として生きて欲しかった。実験体などといったモルモットではなく、ただの人間として生きて欲しかったのだ。それが叶わないのなら―――――」

 

 銃口の照準が老人ではなく、後ろにへたり込むように座っている『瞳に向けられた』

 

 「ジョン!?何をする!!!?」

 「だから何度も言わせるなぁ!!これが私の『答えだ』」

 「ジョン、君は実の娘殺すというのかね!?」

 「そうだ、それこそ私が導き出した『答え』――――――人間として生きているうちに瞳を殺す」

 

 トリガーにかかった指に力が入り――――― 

 「――――!!、止めろ!!何でもいい!!止めるんだぁぁぁぁぁぁ!!!!きさまらぁ!発泡の許可する―――」

 

 放たれた弾丸はしっかりと瞳に命中した。 

 

 「撃てええええええええええええええええええええっ!!!」

 ”バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン”

 30人から放たれた弾丸は遅れてジョン・オルブライドの体を蜂の巣に作り変えた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 左目に衝撃が駆け抜けたと思った瞬間、体が宙を飛んでいた。

 何が起きたか思考がついていかなかった。

 ただ、わかったことは、左目を駆け抜ける激痛と―――――――――

 全身を穴だらけにされたお父さんの姿だった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 できなかった。

 できなかった。

 できなかった。

 私が撃った弾丸は瞳の命を奪わずに左目に命中した。

 当たらなかったのではない、()()()()()()()()

 (これが『答え』か・・・・・・・すまない瞳、お前はこれから辛い日が増えるだろう・・・・死にたいと思うこともあるかもしれない、だが・・・・私はお前に生きて欲しい―――)

 口もとがほのかに微笑みながら――――ジョン・オルブライド自らの意識を手放した。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 「死んだか・・・・・・早く娘の方を回収しろ、死んではないにしても直撃を受けたのだ。脳に何かしらのダメージがあるかもしれない。遺体の方は証拠が残らないように処理しろ」

 「りょ、了解しました」

 「作業を急がせろ、時間をかけすぎた」

 

 そう指示し振り返った瞬間――――粕谷瞳を回収しようと近づいた5人が()()()()になっていた。 

 

 「なっ―――――」

 声が出なかった。目の前の光景が信じられなかった。

 (まさか、能力の暴走!?)

 放心状態になっていた思考、その間に一人、また一人とバラバラにされていく。

 (このままでは全滅だ・・・・・・・仕方ない)

 

 「発泡を許可する!だが、頭は狙うなよ。手足だけを撃ち抜け!」

 「「「「「了解」」」」」

 

 老人の判断は正しかった。だが、紙が散らばったこの場所にいる時点でもう手遅れだった。

 

 ほんの一瞬だった。紙が動いたと認識した瞬間には、私を含めた部下たちがバラバラになっていた。

 

 そして、老人が亡くなった事により、事実上『英国特務超能力機関』は壊滅した。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 「わたしが・・・・やったんだよね・・・・・・・・」

 さっきまでの嵐が嘘かのように、その中央で静かに佇んでいた。

 幼い瞳でも、この光景をもたらした原因を無意識のうちに理解した。

 

 (周りの人達も、友達も、お父さんも、()()()()()()()

 

 「――――――――――――――――――――――――!!」

 

 悲鳴だ。それに連動するかのように、瞳の日本人らしい『黒』の髪が、色が向け落ちたような『銀』に変色した。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 ―政府―

 

 

 『公園に転がっていた遺体の数、本人確認が一致した。今回の事件は他言無用だ』

 

 

 「子供はどうする?」

 

 

 『『あれ』は我々の手に余る――――上の決定によると森林地帯の廃墟の研究施設に隔離するらしい』

 

 

 「てっきり処分かと思ったんだがな」

 

 

 『"原石"に手を出せば学園都市が黙ってはいない、死体を処理するだけでもそれなりの情報が残る。それなら、手を出さずに、確実に自滅してくれる選択を取るほうが賢明ではないか?』

 

 

 「なるほどな、では、麻酔で眠らしている間に目的地に運んでおくよ、目的地の情報を頼む」

 

 ピッ

 

 「―――くれぐれもこれが隠密であることを忘れるなよ」

 

 

 「了解した」

 

 

 瞳を乗せたトラックはそのまま本人の意思とは関係なく、木々に消えていった。

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  




感想よろしくお願いします。


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6話『始まり』

 

 

 

 ここはただとても静かで暗かった。外からは隔離された正方形の空間。唯一聞こえてくるのは水が滴る音とたまにくるネズミの鳴き声くらいのものだ

 滴る水がわたしの体を濡らしていく、壁も床ももう冷たいと感じることができないほどわたしの体温は低下

していた

 意識がはっきりとしない、ここに閉じ込められてから何も食べていない、最初はうるさかったわたしの腹の

虫は今ではすっかり静かになった。  

 

 

 

「キュル~~」//////////

 

 

 けど、減るものは減るのである

 

 

 

 

 

 ぶるぶる{{ }}(外の凍えた風が私の肌を撫でる。)

 

 

 

 

 どうやら感じなくても体は正直らしい

 

    

 

 「はー」白い吐息がわたしの口からこぼれ出る

 

 ただでさえ小さな体がさらに縮こまる

 

 

 

 「また、よみたいな」

 

 

 

 

 お父さんがわたしに初めて買ってくれた漫画があった。

 

 

 

「とある正義のヒーローが悪の組織を打ち倒すアクション漫画」といううもの。

 

 二人は長い旅路を乗り越

え、2人は恋に落ちて強い絆を紡ぎ、最後に悪を打ち滅ぼす。

 

 

 

わたしはそんな二人に憧れた。美しかった。そうなりたかった。

 

 だけど今のわたしは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ”ジャラララララ”

 わずかの動作でさえ足に繋がれた鎖はこの狭い空間では無慈悲な音をたてる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はーっ」

 

 今日何度目になるかわからないため息をついた

 

 ここに来てもうどれくらいたっただろう。まだ数日しか経っていないのか、それとももう数ヶ月間経ってい

るのか、もう時間の感覚が薄れてきている。今は、ただ無抵抗のままでいる。

 

 

 

 

 ここにつれてこられてからはただ無干渉に、ずっとここにいる

 

 

 

 最初は見張りがいたけど、いまでは見張りもつけずただ放置するだけ

 

 

 

 おそらくもうこの建物には誰もいないだろう。

 

 

 理由はわかったいた・・・・見張りの人も・・・・警備の人も・・・・・ほかの檻の中の囚

人たちも・・・・・・・・・・・・・・この建物にいた全員

が・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・この・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

わ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・た

し・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・   

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・―――――――――――――――を―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ”怯えた眼でみていた”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ~??月??日~

 

 

 

 

 

 だいぶ時間が経過した 

 もううごかない

 ここに閉じ込められてからどのくらい経っただろうか

 体は痩せこけ

 唯一着ていた服も今では大事な所を隠すためだけに機能している

 鎖で繋がれた足はアザができておりサビがびりついている 

 

 

 

 

 

 

わたしは罪を犯した(そお)

 

決して犯してはならない罪を犯した(そうだ)

 

憎まれても仕方がない(そのとおり)

 

恨まれても仕方がない(仕方ない)

 

憎悪されようが復讐されても仕方がない(そうだ仕方ない)

 

 

 

苦しい(苦しめ)

 

鎖に繋がれた足が痛い(痛がれ)

 

お腹がすいた喉が渇いた(もっと苦しめ)

 

滴る水飛沫が 床の冷たさがわたしの体温をさらに奪っていく(もっとだもっとだ)

 

このまま生きてて意味があるのかな?(意味などない)

 

意味がないならどうすればいいのかな?(簡単なことだ)

 

簡単なこと?(ああ、簡単なことだ)

 

どうすればいいの?(死ねばいい)

 

死ぬ?(そうだ死ね)

 

死ねば楽になれるのかな?(ああ、楽になれる)

 

死ねばみんな許してくれるかな?(許してくれるさ)

 

死ねば全てが解決できるのかな?(全て解決だ)

 

死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)

死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)

死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)

死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)

死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)

死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)

死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)

死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)

死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)

死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)

死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)

死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)

死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)

死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)死のう(死ね)

 

 

 

 

 

 

 

すぐ近くに破れたガラスがあった

 

 

わたしはそれを手に取り――――そして・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 意識が遠のいていく・・・・

 

 血が流れ出て行く・・・・

 

 血が水に混ざりわたしの鼻をくすぐる・・・・

 

 冷たかった水がいまではあたたかく感じる・・・・

 

 体が軽くなっていく・・・・

 

 「声」は語りかけてこない・・・・

 

 ただわらうだけ・・・・ アハハ

 

 それだけでわたしは楽になった・・・・

 

 わたしが死ねばみんながよろこぶ・・・・      

 

 これでいいんだ・・・・

アッハッハハッハッハハハhッハ

 

いいんだ・・・・            あっははっはっはhっはっはははあああはっはっはははあっ

                     aaahあhっはaaaaaaaahhhhahahahahhhaああっは

 ・・・・

 

 ・・・

 

 ・・

 

 ・

 

 

 

 

でも――――(だめ) 

 もし――――(だめだ)

わたしg――(それだけは)

  誰か―――――(それだけはいけない)

 誰かが―――(げんそuだァ)

   しね――(aりえナいぃi)

かな?―――(kaンがェるぅn)

くれる―(ヤメロ!)

 悲しい(ヤm――――――――)

 

 

 

 

 

 わたしが死ねば誰か悲しんでくれるのかな?

 

 

 お母さんはわたしが生まれた時に死んだ

 

 

 お父さんはわたしが、、、、、、お父さんはわたしが――――――

 

 

 友達もいない

 

 ああ、そうか・・・考えるまでもなかったんだ・・・・・

 

 けっきょくわたしはひとりだったのか・・・・ 

 

 また「(いない)」がひびきわたる

 さっきとちがい、憎しみや恨みの「声」ではなく、ただじじつだけをタンタンと言いつづける「声」がわた

しをうめつくした―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない

 

 いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない

 

 いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない

 

 いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない

 

 いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない

 

 いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない

 

 いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない

 

 いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない

 

 いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない

 

 いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない

 

 いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない

 

 いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない

 

 いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない

 

 いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない

 

 いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない

 

 いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない

 

 いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない

 

 いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない

 

 いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない

 

 いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない

 

 いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない

 

 いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない

 

 いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない

 

 いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない

 

 いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない

 

 いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない

 

 いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない

 

 いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない

 

 いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない

 

 いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない

 

 いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない

 

 いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない いない

 

 

 

 

  

 誰も悲しんではくれない

 

 悲しんでくれる家族はもういない

 

 

 

 「もういないんだ・・・・」

 

 

 その小さなつぶやきは、うるさかったお腹の音や、鎖の擦れ合う音や、頭の中にささやく声たちより

も・・・・わたしの「なか()」のわずかなあたたかい「何」かが、自分の意思関係なく外から凍えて動かなくなる体とは逆に、胸の奥から急激に冷たくなっていった。

 

 

 

 

もうなにも考えられない なにも感じない  

 

 

ただこのまま死ぬのをまつだけ

 

 

自分がもうすぐ死ぬのもなんとなくわかる

 

 

からだから大切な「モノ()」がながれでていく

 

 

自分のからだの中の「モノ()」が冷たく感じる

 

 

体を濡らす”水”が冷たく感じる

 

 

このひと時ががとても長く感じる

 

 

でも、これでやっと死ねる

 

 

この時からやっと解放される

 

 

(おやすみ)

 

 

重いまぶたがゆっくりととじようとしていくと・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ザァッ」(何かの音が響いた)

 

 

 閉じかけていたまぶたがとまった。最初はネズミか鳥だと思った。ここにはもうわたし以外がいるはずがな

いのだからそれは仕方がないことだと思う。しかし、それはよく聞くとそれは足音だとわかった。音は誰もい

ないこの無駄に広い建物に響き渡る。

 

 

足音はペースを落とさずに確実にこちらに近づいて来ている

 

 

そして―――

 

 

ついに―――

 

足音が『私』のいる扉の前で―――――――――――――止まった。

 

 

 

 

 

「カチッ」

 

 

今までわたしを閉じ込めていた扉の鍵がいとも簡単に空いた。

 

わたしは無意識に『その』扉を見つめていた。

 

 

 "ギィィィィィイイイイィィイイィィィィィィイイ―――――――――――――"

 

 

光が、漏れた。

 

数日、数ヶ月、ヘタをすれば数年ぶりの光。

 

光がわたしの凍えた体をつつみこんでくる

 

わたしは反射的に目を細めた。

 

光は『影』を覆うように、扉をこえてわたしに迫ってくる。

 

その『影』はわたしの前までくると、同じ目線になるように膝を織り、わたしを見つめてくる。

 

『影』がスっと右手をわたしにむけてくる。

 

その『手』にたいしてわたしは動かないからだを総動員させた。

 

体が悲鳴を上げる。

 

体は骨に皮がくっつくくらい痩せこけている。

 

そして、なにより血を失いすぎた。

 

わたしはなんとかして右手を伸ばそうとする。

 

全神経を右手に集中し、今出せる力を限界まで出し尽くし、手を伸ばそうとした。

 

しかし、実際にはピクリと指先がすこし動いただけ。

               

(とどかない・・・・今まで求めていた『(ヒーロー)』がすぐそこにあるのに――――――ッ!!)

 

 

 

もとめていたもとめていた―――ずっともとめていた。

 

 

しかし、わたしは『(ヒーロー)』を掴むことができない。

 

 

これは(バツ)なんだ・・・・何もかも諦めようとしたわたしに対する(バツ)

 

 

なら、これもしかたがないこと・・・・うけいれるしかない。

 

 

しかし、その思いとは裏腹に『影』はわたしの手に『手』を伸ばした。

 

 

人のぬくもりがする。

 

 

触れられた指先からからだがあつくなっていく。

 

 

からだの痛みが不思議と引いていく。

 

 

眠気が急激に襲ってくる。

 

意識が遠のいていく。

 

 

『影』がわたしに語りかける。

 

 

 

「やっ・・・みつけ・・・た・・・世かい・・・・50にn・・天ネん・・げんせk」

 

 

 

今までの疲労と眠気のせいもあり、よく聞き取れい。

 

 

冷えた(ほほ)に”温かい雫”を感じながらわたしは意識を手放した。

 

 

それが、『彼』とわたしとの初めてのであいだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    




プロロだけで時間かけすぎました(沙*・ω・)


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外伝 漫画

読まなくても物語に支障が出ない内容です。
飛ばしても構いませんのでご自由にどうぞ。


 

 

 

 

 

 

その物語のヒーローはチェーンソーを武器に戦うメイド衣装の少女がいた。そんな彼女には主人がいた。”彼女”と主人の出会いはあるスラム街でのことだった。

 

 

 

 

”彼女”は普通の家系に生まれたどこにでもいる普通の娘だった。まだ年も幼い頃の”彼女”は誘拐犯に連れ去られ、その人生の大半を薄暗い部屋に軟禁されて過ごしていた。布一枚だけを体にはおり、他の人が食べた食べ残しを食べて飢えをしのいでた。そんなある日、”彼女”に運命の時がやってきた。誘拐犯は捕まり、彼女は解放された。

 

 そんな”彼女”を助けたのはチェーンソーを持ったメイドと、”彼女”の手を握った一人の《少年(ヒーロー)》だった。時は流れ、”彼女”は少年につかえるメイドとなった。あの日彼女を助けてくれたメイドはメイド長となり、そんな彼女?に憧れメイドの作法、主人を守るための戦い方、メイドの心得、全ての技術を叩き込まれた。

 

 

 

 

 そんなある日主人の両親、旦那様を狙う《悪の組織》が屋敷を襲ってきた。旦那様は《悪の組織》に捕まってしまい、メイド長は彼女と主人を逃がすために屋敷に一人残り戦った、彼女は主人を連れて隠れ家へと逃げていく。これからどうすべきか分からない今、”彼女”はただ迷っていた。

 

 

旦那様、メイド長、使用人たちは、彼女を、主人を、逃がすために犠牲になったのだった。この隠れ家はメイド長がもしもの時とよういしていた別荘だった。そこには、彼女には常に厳しく、普段から仏頂面で、笑顔以外はメイドとして完璧だったメイド長からは予想がつかない物がそこには置いてあった。それは、《アルバム》だった。彼女が主人に拾われてからの今までの写真が貼ってあった。彼女はそれで理解した。彼女はメイド長に嫌われていると思っていた。確かに彼女はメイド長に憧れを抱いていた。主人を護りながら”悪”と戦うその姿はまさに”ヒーロー”だった。しかし、当時は主人につかえていたメイド長にメイドの心得を教えていただき、あまつさえ主人のメイドとしてつかえることを無理にお願いした私が、メイド長に嫌われようと仕方がないと思っていた。しかし、現実はどうだろうか、この別荘に貼ってある写真の数々はどれもシミはなく、汚れもなく、キレイに保管されていた。手にとってみればどれも新品とかわりないほど保存状態はよかった。それをしばらく眺めていると、写真の間に何かが挟まっていることにきがついた。そこには一通の手紙が入っていた。よくみると宛先は彼女の名前が記入されていた。それに気がついた彼女はすぐに手紙は開いた。そこには、たった一言が書かれていた――――――

 

 

 

 

  「   信じるモノを守れ   」

 

 

 

 

 

 自然に顔がほころんだ。実にメイド長らしいと”彼女”は思った。これで答えが決まった。もう”彼女”に迷いはなかった。ただ自分が「信じるモノを守れ」と。

 旦那様、奥様、メイドの同期たち、そして・・・・・・メイド長のことを守ることができなかった。逆に”彼女”と主人は彼らに助けられていた。拾われたあの日から今日という日まで私達は皆に守られていたのだ。しかし、この場に助けてくれる人はいない、いや、助けなんていらない、今―――これからは・・・・私が「主人(マスター)」を守る!!!

 

 そして、”彼女”は主人《マスター》と共に《悪の組織》から皆を助け出すために立ち上がった。

 それからは大変だった。二人は各地を転々とし、刺客を倒しながら《悪の組織》の情報を集めていった。そして、二人は長い旅路を乗り越え、2人は恋に落ちて強い絆を紡ぎ、最後に悪を打ち滅ぼすのであった。

 

 

 

                                   

 

  ―END―

 

 

 




やっと本編です!!


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7話メイドの仕事

やっとここまで来ました。
他の方々の国語力強くて涙゚(゚´Д`゚)゚


―――に拾われて十二年がたった。

 

 

 

 独学でメイド学を学びつつ、メイドとして働いている、粕谷 瞳と申します。今年で十七歳にな

ったばかりの若輩者です。この十二年間は完璧なメイドを目指してひたすら己を磨き続けてきました。

 

 ただいまの時刻は午前5:00・・・完璧です。ご主人様が起きられるのは8:00ですのでまだま

だ余裕はあります。でうすが油断は禁物、ここから、いえ、起きた瞬間からメイドの仕事は始まってい

るのです。まず最初に顔を洗います。汚れた顔をご主人様に見せるわけのはいけません。シーツを綺麗にたたみ終えたら、着替えです。メイド服はどこにでもありそうな白と黒を象徴としたもの。鏡で最終確認をおこないます。髪型を整え、全身細かくチェック。続いて屋敷の掃除を行います。ご主人様が不快になられないように屋敷の隅から隅までを最善の注意を払いながら掃除を行います。

 

 

 

「マリー!!マリーはどこにいる!!!」

 

 

 どうやらご主人様が私のことを読んでいるようです。今の時刻は7:00いつもと違い早めの起床です。あ、マリーと言うのはこの屋敷で働くためにの偽名ですのであしからず。

 

 ここで余談ですが私のご主人様は「反学園都市」を唱える反デモ組織の一人で、イギリスの名誉ある貴族のの血族なのです。昔から鉄道、車などと言った機械分野で政経を立ててきたのですが(イギリス、フランスなどの国で政経していた)、ここ数十年日本に学園都市ができてからは低下の一歩をたどっています。科学を独占する学園都市に対して技術力の公表を訴えかけています。ですが、学園都市はそんなものは知らないと言わんばかりに無視を決め込んでいる状況です。学園都市が出来るまでは世界で100人に入るほどの富豪”バロネット・ジェントリ”として有名でしたのですが――――

 

 

 さて、そろそろご主人様の自室に到着します。

 

 

 "コンコン"(扉をノックする音)

 

 

 「おはようございますご主人様。メイドのマリーです」

 「おお、来たか。入っていいぞ」

 「失礼いたします」

 

 扉を開いてからもう一度挨拶をしてから扉を静かに閉めます。

 

 「今日は珍しく早めの起床でございますね。どこか体に支障でも?」

 「ハッハッハッハッハ!!朝っぱらから老人をからかうんじゃない、そこまでやわではない。なに、少し喉が渇いてな紅茶を一杯用意して貰おうと思ってな」

 「そういうことでしたら、今すぐにご用意いたします」

 

 

 まずティーポットを温める為の熱湯を用意します。 沸騰したらティーポットの湯を捨て、杯数分の茶葉を入れます。茶葉を入れたポットに完全に沸騰して泡がごぼごぼ立っている状態の湯を素早く注ぎます。 蓋をして細かい茶葉を2分前後抽出し、 軽くかき混ぜてから茶漉しを通してカップに注ぎ分けます。

 

 「どうぞ」

 

 ソっと今注いだ紅茶をご主人様に渡します。

 

 「 あぁ、ありがとうマリー。お前は本当によくできるやつだ」

 「ありがとうございます」

 「おぉーよしよし(ナデナデ)さすが私のマリーだ・・・」

 

 

 ご主人様はよく私のことを褒めて下さいます。例えるなら、、、そうですね。可愛い子犬が一生懸命走り回っている姿を見てついつい顔がほころんでしまい、頭を撫でてしまうみたいなものだと考えています。ですが最後に私の名前をつぶやいた時に対して身の危険を感じたのは気のせいでしょうか?たまにご主人様は私の体を舐め回すように観察しているのは、私を可愛がってのことだと信じております。

 

 

 「仕事の進み具合は大丈夫ですか?」

 「全然だめだ、とくに機会分野は下がる一方で上がる気配が見られないのが現状だ。このままでは代々継いて来た我がジェントリ家は私の代で終わってしまう」

 

 

 そして、何故かご主人様は私が質問するといつもきちんと答えてくれます。

 

 

 「ではどうするので?」

 

 

 さすがにそんな秘密を答えてくれるとは期待はしていないマリー()でしたが、いつのまにか身についていた自分の武器()を無意識のうちに利用していた。質問をする際に顔を少しかしげながらの上目遣い、角度も完璧です。

 

 

 「グハッ!!」

 

 

 (危ないところであった!今のジャブ(目線)はきいたぁ!)

 

 「あの・・・大丈夫ですか?」

 

 「グボァッ!!!」 

 

 (今のは危ない!何が危ないって私の理性が危ない!!だがしかし)

 

 

 「な、なんでもない・・・・お、もうこんな時間か、私は仕事に出かけることにするよ」

 「分かりました」

 

 惜しいですね。あともう少しで聞き出せたのですが、、、、、ですが本番はここからです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

  午後9:00

 

 

 

 

 「今日もダメだったよ~これもあれも全部学園都市なんてのができたせいだ!だいたい何なんだあいつら!!こっちが仕立てに出ればいい気に乗り上がって!」

 

 

 酔っぱらいです。それはもう盛大に酔っ払っています。こうなってしまったら止めるのが容易ではありません

 

 

 「ご主人様、体に障ります。もうおやめになったほうが・・・」

 

 

 かれこれ一時間飲みっぱなしです

 

 

 「これが飲まずにやっていけるか!」

 

 

 これはだめですね。ですがこれはチャンスです

 

 

 「ですが、学園都市に対する秘策があればこの状況をどうにかすることができのでは?」  

 

 

 さあどぉでる

 

 

 「当たり前だ!!秘策も秘策!これが成功すればまた私の時代だ!!!」

 

 

 ビンゴです

 

 

 「どのような秘策が?」

 

 

 「聞いて驚くなよ・・・・・・学園都市でデモを起こすのだよ!!」

 

 

 「デモ・・・ですか」

 

 

 「そうだとも!!詳しい詳細は言えないがこれが成功すれば奴らに一泡吹かせることができる!!!!!」

 

 

 「なるほどそのような手があるとは」

 

 

  

 詳しい事を聞くのは今の時点では無理ですね

 

 

 

 そして、そのままご主人様が酔いつぶれるまで付き合わされるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 深夜、ご主人様や他の使用人が眠りについた時間帯。マリーこと粕谷 瞳は連絡を取り合っていた。

 

 

 

 

 

 

 「こちら、コードネーム《ザ・ペーパー》暗証、、、、、、、」

 

 

 『照合確認、定時連絡ヲドウゾ』

 

 

 相手は機械音で応対してくる。いつものことなのできにしませんが

 

 

 「最近学園都市に対する反対運動の過激化にバロネット・ジェントリが関わっている可能性があることが分かりましたので確認をお願いします」

 

 

 『了解シマシタ』

 

 

 酔っ払い相手に聞き出した情報とは言え、この情報は無視できるものではない。

 実際、学園都市に対する反対運動は由々しき問題とされている。

 今回の事で何か進展があればいいんですが。

 

 

 『確認ガ取レマシタ。「バロネット・ジェントリ」ハ独自ニ所有スル金ガ銀行カラ秘密裏ニドコカニ流レテイルノガワカリマシタ』

 

 

 なるほど、”黒”の可能性が上がしましたね

 

 

 「では、今回の事におきましてはこちらで情報を探ってみようと思うのですがいかがですか?」

 

 

 

 『、、、、、、確認ガ取レマシタ。許可シマス』

 

 

 

 「それでは、もしもの事態を想定して能力の使用許可を申請します」

 

 

 

 『、、、、、、確認ガ取レマシタ。能力ノ使用ヲ許可シマス』

 

 

 

 「ありがとうぎざいます。以上、定期連絡を終わります」

 

 

 

 『ゴ苦労様デシタ。引キ続キ任務ヲ実行シテクダサイ』

 

 

 

 「了解しました」

 

 

 "ピッ"、連絡を切り、また誰かに連絡するためにPDAを操作する。

 

 

 『‥‥‥‥‥‥‥・ふぁい?』 

 

 

 可愛らしい間の抜けた声がPDAから聞こえる。どうやら今まで寝ていたらしい。

 

 

 「仕事です」

 

 

 『しごとぉ?・・・・・・・・・て、今深夜三時じゃん!なんで私なんだよ、何時もみたいに―――の野郎に任せればいいじゃっ』

 

 

 「我が儘を言わないで下さい、今は―――はいないのですから」

 

 

 『・・・・・・・・・・』

 

 

 「・・・・・・・・・・」

 

 

 『・・・・・・だめ?』

 

 

 「駄目です」

 

 

 『そんなきっぱり言わなくても・・・』

 

 

 「いいから仕事です。今夜中に終わらせたいので早く着替えて顔を洗って下さい」

 

 

 『・・・・・・・・・』

 

 

 「返事は?」

 

 

 『・・・・・はぃ』

 

 

 返事は小さいですがまあいいでしょう。今の時刻は三時五分―――

 

 

 「それでは、三時三十分までにあなたの仕事を遂行して下さい」

 

 

 『はぁ!?ふざけんな!!あんなメンドくせー服着るのに何分かかるかっ』

 

 

 「それではよろしくお願いします」

 

 

 『はなしをきけえええええええええええ!!!!』

 

 

 "ピッ"念の為電源もしっかり切っておきましょう。さて――――――仕事です。

 

 

 直後、屋敷に悲鳴が響いた。 

 

 

 

 

 

 

 

 



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8話メイドの仕事②

最近忙しくて遅れました。
すみません。


 「ここは・・・・・どこだ・・・」

 彼――バロネット・ジェントリは今自分に何が起きているのか全く理解できない状態だった。

 今自分が座っているのは自室にある椅子の一つだ。これだけでも高級車を一台買うことができる。

 疲れた時など座ればさぞかし肉体的、心理的にリラックスできるだろう。

 しかし、手足をロープで固定したこの状況ではリラックスなど出来るはずがなかった。

 手足に力を込めてもビクともしない。

 昨日までの記憶を思い出してみた。

 

 (今日はいつもより早く屋敷を出て・・・・・・仕事を・・学園都市に対する・・・・・・いや、そこじゃない、屋敷に帰ってきてから酒を飲みんで・・・・・・・そこから・・・・・・・・・・・・・・マリーに連れられて・・・・・・・・・・・・)

 

 そうだ、忘れていた!!

 

 「マリーは、マリーはどこにいる!!」

 

 おそらくこの状況にはマリーがかかわっているはずだと考えた私は、ただひたすらにマリーと叫んだ。

 

 「どうかなさいましたかバロネット様?」

 

 「っっ!!」

 

 いつからそこにいたのかわからなかった。だがそんなことより。

 

 「マリーこれはなんだ!!主人である私にこんなことをして許されると思っているのか!!」

 「誠に申し訳ございません。このようなことは誠に心苦しい限りなのですがっ」

 「では、早くロープを外せ!!」

 「ですからそれは無理なのでございます」

 「何が無理なのだ!!ええい、話にならん、誰か、警備の者はおらんのかー!!」

 

 大声で叫んだ。

 すぐにでもこの部屋に警備の者がやってくるだろう。しかし―――

 

 「無駄ですよ」

 「なんだと?」

 「今がいったい何時だと思われですか?」

 「何時だと?それが何だというのだ」

 「いいからお答えください」

 「・・・・・午前4時くらいか」

 「おしいですね。今の時刻は午前3時29分・・・・30分以内にちゃんと遂行したようですね」

 「遂行だと?」

 「ええ、バロネット様。不思議だと思いません?なぜ先程から誰も助けに来ないのか」

 「ま、まさか・・・・・・・あ、ありえん、この屋敷は使用人だけでも15人はいるはず。ましてや、警備の者も合わせれば35人はいるんだぞ!?」

 「ですから、その全員には少々静かにしてもらっております」

 「マリーお前が殺ったのか・・・・・・・いや、そうじゃない、お前がこの屋敷に潜入できるように銃を装備した部隊、小銃分隊などを手招きしたんだな?」

 「流石はかの大富豪バロネット・ジェントリ様。このような状況下でもそこまで考えゆる頭をおもちで」

 「甘く見られたものだ。だが、警備の者とはいえ、鍛えられた私の私兵をこうも簡単に制圧するほどの少人数の部隊とはな・・・・・・・そして、マリー、いや、その名前本物か?お前はどこのスパイだ?」

 「半分正解です。私はだれも手招きなどしておりません」

 「ではどうやって20人もの私兵を制圧した?」

 「ここ最近私以外のメイドを一人雇ったではありませんか、メイド見習いですが。使用人15名、兵士20名は、その子が殺りました」

 「なっ!!?それこそありえん!!子ども一人相手にそう簡単に殺られるはずが・・・・・・・・まっさか・・・・・」

 「お察しの通りです。先ほど私に『どこのスパイだ』と質問しましたね?」

 「・・・・・・・・・・・・」

 「メイド見習いの子も、私も、――――『学園都市』から送り込まれた。見てのとおり、ただの『通りすがりのメイド』でございます」(ペコリ)

 

 いみがわからなかった。

 

 「・・・・・・・その学園都市のモノが私に何のようだ?」

 「今更惚けなくても結構でございますよ、あなたが『学園都市』に対し、様々な事を行っていることは、バロネット様の自室の金庫に必要なだけの情報はありましたので」

 「くっ――――なら、何故お前はこのようなことをしている。欲しい情報が手に入ったならさっさと学園都市に帰ればいいだろう」

 「ええ、欲しい情報は手に入りました。しかし、バロネット様――――貴方が『学園都市』に対して行ったことは決して許されるものではありません。我々は――――――『学園都市』は舐められては行けないのです」

 「ならどうするのかね?私も他の者たち同様に殺すのかね」

 「殺すなど滅相もございません。ただ・・・・・・・少々痛い目にあってもらうだけですので」

 

 そう言い終わると同時に、近くに置いてあったキャリーケースに近づき、中のモノを勢いよく取り出した。

 その手に握られていたのは――――――――怪しげに月の光に照らされた一台の『チェーンソー』だった。

 

 「貴様・・・・・・・それで私を殺すのか」

 「先程も申したように、私はバロネット様を殺す気はありません。ですが―――死ぬ程の痛みを味わいますが」

 

 そして、(おもむろ)にチェーンソーのエンジンをかけた。

 

 "ヴィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイインンンンン"

 

 「このチェーンソーは『MS192T』。刃の長さは25~30cm、重量3.0kg、始動はとても良好ですね。通常は、木の上等などに使用するのですが―――あ、こちらは屋敷の倉庫から拝借したので」

 

 「―――と、ところで、どうして、チェンソーなんだ?」

 

 恐怖を押し殺し、この場を抜け出すために、何より時間を稼ぐために一番の疑問を口にした。

 おそらく、屋敷の異常を察知した者が助けをよこすと踏んでの判断だろう。しかし、それは今の瞳には無駄だった。

 

 「メイドといえばチェーンソーですから」

 

 回りだした刃がゆっくりとコチラに迫ってくる。

 マリーは、どこか楽しそうに・・・・・なのに狂気を帯びたその表情は―――――――笑っていた。

 

 「最後に一つだけ教えてあげましょう。私の本当の名前は『粕谷 瞳』と言いますので、ああ、覚えなくて結構ですので。ではまず、皮から削ぐといたしますか」

 

 料理をする際に野菜の皮を剥くかの様な軽いノリで、まるで作業の様にソレは実行された。

 

 「・・・・・・・や、やっめ――――――――――――――――――――――――――――――――っっ!!!!?」

 

 右足をやられた。だが、生き残れるなら右足の一本くらいくれてやると思った。だが―――

 

 「まだ、右足の皮を削いだだけですよ?ちゃんと()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ああ―――自分はこの地獄から抜け出す事は叶わないのだと悟った。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 (さて、仕事も終わりましたし帰るといたしましょうか)

 

 欲しい情報は手に入ったし、『学園都市』流(自己流)説得術は終わりました。もちろんバロネット様は生きてますよ。ですが、もうベットからは離れられない体になってしまいましたが。

 

 歩くこと数分。目的の部屋に到着した。

 

 扉を開けるとそこのは、一人のメイド見習いがいた。メイド服は私と同じく、藍色を基調としたエプロンドレスにヘッドドレスを身につけているが、スカートの丈が短すぎて白のガーターベルトが丸見えである。

 

 「あ、よう瞳!遅かったなーそっちはコッチと違って楽だったんだろ!」

 

 こちらに向かって愚痴をこぼす少女―――神無城(かんなぎ) 紗夜(さや)は右手で自分よりもでかい男の首を掴み上げていた。よく見ると、周りにはその男と同じ装備を着た者達が倒れている。

 

 「・・・・・・・・私は何分までに仕事を終わらすように言いました?」

 「ちょっ違う!あたしはちゃんと時間までに仕事は終わらせたぞ、こいつらはその後に来たんだ!」

 「まぁいいでしょう。早く学園都市に帰りますよ」

 「それをはやく言えよな!あー、瑠璃(るり)にはやく会いたいぜー」

 「そう思うなら、さっさとソレを片付けてください」

 「おうよ」 "グキッ"

 

 妹に会えるのがそんなに嬉しいのか、万遍の笑みを浮かべながら男の首の骨をヘシ折った。

 

 「では、帰りますよ」

 

 神無城 紗夜を連れて帰ろうと歩き出す。

 

 「ところでよー、瞳。自分で殺っといてあれなんだが・・・・・・死体の処理ってどうするの?」

 「それに関しては大丈夫です。明日にはニュースで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()しょ()()()

 「相変わらず仕事がはやいなー、まっ下っ端どもはそれしかやることがなっか」

 

 それからは、お互い無駄口を叩かずに学園都市が用意した超音速ステルス機『HsB-02』 に乗り込んだのであった。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 ―????―

 

 

 

 学園都市には暗部組織が多数存在している。

 分かりやすく例を挙げるのなら猟犬部隊(ハウンドドッグ)といった部隊だ。

 アレイスター直属の実行部隊で、リーダーは木原数多。元より素行や人格に問題のある者達ばかりで構成されている部隊で、有り体に言えば"人間のクズ"ばかりを集めて構成されている部隊だ。

 他に例を挙げるのなら、猟犬部隊といった大人数で構成されているのではなく、小人数で構成されている部隊もある。

 

 

 『グループ』 

 4人で構成された実行部隊。だが、最近3人が任務中に殺られてしまい、今は一人らしい。

 

 

 『アイテム』

 4人で構成された実行部隊。リーダーはレベル5第四位の麦野沈利。こいつにはハッキリ言って近づきたくない。

 

 

 『スクール』

 4人で構成された実行部隊。リーダーはレベル5第二位の垣根帝督。何があったのかは詳細は分からないが、粕谷瞳に対し、絶賛プロポーズ中らしい。

 

 

 『メンバー』

 4人で構成された実行部隊。リーダーは白髪のジジイで博士と呼ばれている。可愛い女の子以外はどうでもいい。

 

 

 『ブロック』

 4人で構成された実行部隊。リーダーは熊のような大男の佐久辰彦。こいつもまた横暴な性格なため、知り合いたくもない。他の奴に同情すら覚える。

 

 

 

 

 そして、俺が所属している部隊名は『シークレット』。他のとこと同じく4人で構成された実行部隊である。だが、うちの部隊は他のとこと違い部分がある。他の部隊は基本的には学園都市内の問題解決などを仕事にしている訳だが、あ、もちろんウチでもやってるよ。でもねーウチの部隊は根本的なあり方がちょっと違うっていうのかなー、こういうの何ていうのかね?――――そお!あれよあれ、あーー他のとこの部隊はお金とか、自分の目的のためとか、主に私利私欲なわけよ、わかる?学園都市のためにとか、統括理事会のためとか、ましてやアレイスターのためとか思っている奴の方が少ないわけ、てかいんの?ってレベル。 

 まぁ、こんなこと瞳の野郎の前で言ったらぶち殺されかねないね、本当に。

 話は戻すが、『シークレット』の活動理由を一言で言うなら―――()()()()()()()っだ。

 だけど、統括理事会の奴らに忠誠なんて誓ってないし、誓うつもりもないけどね。

 俺たちが絶対の忠誠を誓っているのは、学園都市に住み()く科学の申し子の一族―――――――そお、『木原』である。だけど誤解がないように言っておく、木原一族が危険な状態になったら助けるか、答えは「NO」だ。確かに木原一族には忠誠を誓っているが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。まあ、これも瞳の前で言ったらマジでぶち殺されかねないんで、本当に。

 これは俺の主観的見方なんだが、瞳の場合は、木原一族に忠誠を誓ってはいるが、一族そのものではなく、『木原修』って野郎に絶対服従している。過去に何があったか知らんが、てか、聞きたくもないがな。何より瞳はアレイスターにも忠誠を誓っているって感じだ。正に、学園都市のためだな。

 他の二人――――神無城紗夜と、神無城瑠璃の姉妹は粕谷瞳に付いて行くって感じだ。これまた詳しいことは知らないが、昔、なんでも二人を拾ったのは瞳らしい。

 え、俺が何で『シークレット』にいるかだって?そんなの答えるまでもない―――――神無城姉妹がいるからだ!!

 世界一般的に俺みたいな奴はロリっゴホンゴホん!!

 世界一般的に俺みたいな奴は()()と呼ばれている。

 いいか、俺は女性を年齢で―――見た目で決める野郎が許せない!そもそも――――――――――・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 PDAが鳴りだした。

 (通信?誰からだ)

 PDAの画面に表示された名前は暗部の者だった。正直今から仕事の依頼の場合は直ぐに電源を切るつもりで通話ボタンを押した。

 『―――――――――』

 「今日帰ってくるのか紗夜は!?そうと分かれば迎えに行かなくては!!」

 

 そのまま電源を切ると、急いでマンションを飛び出した。

 

 

 

 

 彼―――――レベル5第六位『岩城(いわじょう) 紀陸(きりく)』は、自らの目的のために日々を生きていく。

 

 

 

 

 



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9話シークレット

仕事の合間を縫ってやってたせいか時間がかかりました。
誤字、脱字があるかもしれませんので、そこのとこよろしくお願いします。


 六月の中旬、学園都市もさすがに科学のチカラで気温は変えることはできず、いまだに肌寒い日が続いていた。粕谷瞳と、神無城紗夜は学園都市に到着すると『シークレット』ために用意された秘密マンションの一室に足を運んだ。

 

 

 「るーりぃーいまかえったぞー」

 「あ、おかえりなさいおねえちゃん」

 

 部屋に入るや早々紗夜は妹の瑠璃に勢いよく抱きついた。

 

 「瑠璃はあいかわらずいい匂いがするなー、クンクン」

 「もう、おねえちゃんく、くすぐったいよ~」

 「えへへ~この胸はあたいのだあ」

 「んっ.....だ、ダメだよ、おねいちゃん」

 「まったく何をしたらこんなにも・・・・・・その・・・・・・む・・・・む、胸が大きくなるんだ?」

 

 姉の紗夜の絶壁とは違い、妹の瑠璃の胸は瞳にはまだ適わないまでも、九歳とは思えないほど成長していた。姉の紗夜は今年で十歳になるのだが.......完敗である。

 

 「うっさい!」

 「いきなりどうしたのおねえちゃん?」

 「―――――な、なんでもっなぃ」

 

 紗夜は妹の胸を一瞥すると自身の胸に手を当ててうなだれた。

 

 

 「まったく、二人揃って何をやっているのですか。紗夜、メイド服がくずれていますよ」

 

 

 粕谷瞳は藍色を基調としたエプロンドレスにヘッドドレスを身につけている普通のメイド服だが、スカートのスリットからは黒いガーターベルトが覗けている。対して神無城瑠璃のメイド服は瞳と同じく藍色を基調としたエプロンドレスにヘッドドレスを身につけてはいるが、スカートにはスリットは無く、ごく普通のメイド服だが、姉の神無城紗夜は藍色を基調としたエプロンドレスにヘッドドレスまでは一緒だが、スカートの丈は短く、白のガーターベルトが覗けている。そして、他のメイド服とは違い、長袖ではなく半袖といった動きやすいく、ラフなカッコをしている。

 

 

 「う、うっさい!今はそれどころじゃないんだよ」

 「お、おねいちゃん。そんな言い方は、だ、ダメだと、思うよ」

 「まったくあなたは、離れていたのはたったの一週間ですよ」

 「あたしに言わせれば、一週間『も』っだ!」

 「だ、ダメだよ、おねえちゃん。えっと・・・・瞳さんは年上だし、私たちの隊長さんなんだから、そんな言い方しちゃだめだよ」

 「うっ・・・・わかったよ、瑠璃がそー言うなら気おつけるよ」

 「ほほーう。言いましたね?実は前々からその口調を何とかしようと思っていたところなんです。メイド見習いとは思えない喋り方ですしね。では早速やってみましょう」

 「な!?なんでそおいう事になってるん(ギロッ)なってるのですか?」

 

 「「・・・・・・・・・」」

 

 「・・・・・・違和感がありますね」

 「そ、そうですね。なんていうか・・・・・おねえちゃんがおねえちゃんじゃない・・・・・みたな感覚が」

 「なんだよそれ!あたしが敬語を使うのがそんなにも変なのかよ!!」

 「分からないなら言いますが、変です。すごく変です。ですのでまずは喋り方よりもその言動から直していきましょう」

 「そ、そうですね。おねえちゃんはそのガサツなところから、直したほうがいいかもしれませんっね」

 「――――!揃いも揃って人のこと馬鹿にしやがって!!」

 

 今にも暴れだしそうな紗夜を、瑠璃は後ろからしがみつくかのように止めに掛かる。

 

 「お、おねえちゃん――――あ、暴れたら・・・・・ダメっだよ」

 「うがーーーーー!!離せ瑠璃!!」

 

 今にも暴れたい紗夜だが、瑠璃がしがみついていてはそれができず、ブンブン振り回す腕は空回りするばかりであった。

 

 「紗夜、落ち着きなさい。瑠璃が困っていますよ」

 「誰のせいだと思ってるんだ!」

 「お、おねえちゃん、おち・・・落ち着いてっ」

 「紗夜、落ち着きなさい。何故ここに来たのか忘れたのですか?」

 「は?そんなの決まってんだろ」

 「だ、だよね。流石のおねえちゃんでも、それはわかるよね」

 

 

 「瑠璃に会うためだ!!」

 

 

 はぁ・・・・・・・、これには流石の瞳もため息しか出なかった。

 

 

 「――――瑠璃、そろそろ紗夜から離れなさい。―――――――それでは、紗夜、私たちがここに集まった理由は「おっかえりーーー紗夜ちゃん!!」・・・・・・・・・・」

 

 頭が痛いとはこのことだろう。つい右手を頭に当ててしまったのは仕方がないことだろう。

 

 「おーいおいおいおいひとみっち。何で俺を呼ばなかったわけ?帰ってきたならそう連絡をよこせよ。あ、瑠璃ちゃん紗夜ちゃん久しぶりだなー、ここんとこ俺だけ仕事が無くて会えなかったからなー、どこかの誰かさんのせいでな」

 

 この男―――岩城紀陸は、日本人特有の黒髪を赤髪に染め、ショートヘアは寝癖がついており、白のスーツを身に(まと)っていた。

 部屋に入るなり、私のことを変なあだ名で呼んでくるは、ふざけた態度で接してくるは、神無城姉妹には優しく接するは、ムカつく顔でコッチを見てくるわで・・・・・・・・・・正直に言ってウザイです。嫌いです。

 

 「おいおい露骨に嫌そうな顔するなよな」

 「それはそれは申し訳ございません。流石の私も貴方のような人?の顔を見てしまったら、少々体調がすぐれなくなってしまったようです」

 「何で人の部分が『人?』なのかはこの際気にしないが、俺を見ただけで体調がすぐれないとか()()()()()に限ってないだろう」

 

 どうやら死にたいようですね。

 懐から紙を取り出そうと手を伸ばすと――――

 

 「ひ、瞳さん・・・・だ、ダメですよ!岩城さんは、一応私たしの仲間なんですから」

 「あれ~?聞き間違いかな?味方であるはずの瑠璃ちゃんから毒のある言い方が聞こえたような」

 「き、気のせいですよ」

 「本当かなー?これは確かめる必要があ・り・そ・う・だ・な」

 

 両手をワキワキさせながら瑠璃に近づいて行く岩城紀陸は突如の蹴りに吹き飛ばされた。

 

 「あたしの妹に何しようとしとるんじゃーこの、ボケガァーーー!!」

 「ぐぼっ!」

 

 そのまま綺麗な弧を描きながら壁に衝突した。

 

 「へぼっ!」

 「どんなもんじゃい、このHENTAIが!」

 「ごほっ・・・・・・酷いじゃないか紗夜ちゃっ」

 「気軽にあたしの名前を呼ぶんじゃねー!」

 「おっと」

 

 さらに紗夜は蹴りを放つが、先程とは違い躱される。

 

 「~~~~っ!避けんな、このボケ!!」

 「HAHAHAHA、そんな大振りじゃあ当たんないぜ。マイナス20点だ」

 「このっ!」

 「お、おねえちゃん・・・・こんな、こんなところで、暴れたら、だめだよ――――――止まらないよ~瞳さん」

 「このままでは話が進みませんね・・・・・・仕方ありません」

 

 そう言うと、先ほど懐から取り出そうとしていた紙を再度二枚取り出した。

 

 「ふっ!」

 「「――――――――ッ!!」」

 

 紙を取り出した瞬間―――一瞬にして二人の首筋に刃を突き立てた。

 

 「そろそろ辞めなさい。ここはそのような事をする場所ではありませんよ?」

 「―――わーったよ」

 「へいへい、あぶねーなー。だが、今のは反応できんかった。プラス80点だ」

 

 紗夜は先ほどと違い、納得出来ないといった顔をしながら拳を下げ、紀陸は先ほどまでと同じ態度で後ろに下がるのであった。

 

 「にしても、ひとみっち。――――――――紗夜ちゃんのは寸止めだとして、俺のはそのまま動脈ごと切ろうとしただろ?」

 「貴方の場合は効かない事はわかっているのでそのまま当てにいったまでですが」

 「は、確かに俺の能力はひとみっちとは相性さいやくだからな。点数的にはプラス20点出せればいいほうかもね。あ、もしかして俺のことが嫌いな理由ってそれ?」

 「それも原因の一つとだけ言っておきましょう。貴方の能力の前では、私の能力を無力化・・・・・までとはいきませんが、全力を出せなくなってしまいますからね」

 「おいおいおい強気だな。なんなら今やってもいいんだぜ?」

 「・・・・・・・そんなに死にたいならいいでしょう。できるものならやってみなさい」

 「は、最近引きこもっていたかな、いい運動ができそうだ」

 

 そして、そのまま二人は衝突―――――――しなかった。二人の間に人が割り込んだ。

 

 「ひ、瞳さん、今、自分で言いましたよね?ここで、暴れないで下さい。紀陸さんも、瞳さんの事をあまり挑発しないで下さい!」

 「え、俺が悪いの瑠璃ちゃん?」

 「・・・すみません、瑠璃。落ち着きました」

 「あたしのことを言えないよな瞳」(にやにや)

 「もう、おねえちゃん。これ以上水を、ささないの」

 

 

 

 数分後やっと落ち着いた一同は、それぞれソファーに座りながら瞳を見つめ、話を促した。

 

 

 

 「ごっほん。それでは遅れてしまいましたが、本日の仕事についての説明を行いたいと思います」

 「は、本当にここまで来るのに時間かかったな。てか、今回の任務って案外重要って聞いたんだけど、何で俺呼ばれなかったの?」

 「・・・・・・貴方には後ほど、別の方が連絡で仕事の内容を伝える予定でした」

 「本当にひとみっちは、俺のことが嫌いなんだな」

 

 こんな屑は無視して話を進めたほうがいいですね。

 

 「うわー、今絶対クズとか考えただろ」

 「も、もう、これ以上話を、ズラさないで下さい」

 「瑠璃の言うとおりだぞ、このボケ!」

 

 このままでは一向に終わらないような気がしてきました。無視して早く進めましょう。

 

 「私たちシークレットに新たな仕事が入りました」

 「知ってる」

 「は、だから集まったんだろ」

 「ふ、二人共・・・言い方が・・・・」

 「――――――――――――――今回の仕事ですが、依頼主は『木原』です」

 「「「なっ!?」」」

 

 この三人はわかりやすいですね。聞く態度が明らかに変わりましたよ。まあ、それでこそ『シークレット』です。

 

 「―――二年前の奪還作戦を覚えていますか?」

 「二年前って言うと・・・・・・・あ、あの奪還作戦か」

 「に、二年前・・・・・ですか?」

 「瑠璃はその頃仕事に参加してなかったからなー、知らなくても当たり前だよ」

 「瑠璃、私たちシークレットがあなたを抜いてまだ三人だった頃の仕事です」

 「・・・・・・ど、どのような、仕事だったんですか?」

 「―――今から十年ほど前の話です。ある組織に木原が誘拐されるといった事件がおきました。それを、私たちシークレットは二年前に奪還作戦を決行したのです」

 「・・・・・・どうして八年間も奪還作戦が決行されなかったのですか?」

 「それに関しては上の考えがあるので私では分かりかねます」

 

 本当の理由を教える必要もありませんしね。

 

 「それでよ、今回の作戦とその二年前の作戦がどう関係あるんだ?」

 「分かりませんか?これだから屑は・・・・・」

 「へいへい、クズで済みませんね。私は理解力が乏しいのでお教え下さいませ」

 「そこまで言うなら屑の頼みでも聞いてあげましょう」

 「アリガトウゴザイマース」

 

 喋り方、態度はアレですがいいでしょう。

 

 「本作戦は、二年前に奪還した―――――『木原円周』様を再び奪還することにあります」

 「「「はぁ~~~~!!」」」

 

 何を驚いているのですかねこのお三方は?

 

 「え、ちょ、ちょっとまて・・・・・何であいつ(ギロッ)・・・・・木原円周様がまた誘拐されたんだ?」

 「それ、俺も気になるな。学園都市もそこまでアホじゃないだろ」

 「わ、私も、気になります」

 「何といいますか・・・・・・誘拐されたと言いますか……そうじゃないといいますか…・・」

 

 瞳にしては珍しく、歯切れの悪い回答だった。

 

 「・・・・?なんだよ、ひとみっちにしては歯切れが悪いな。マイナス5点」

 「貴方にマイナスの評価を受けるとは・・・・・・・・・殺しますよ?」

 「だがら何で俺に対してはそんな短気なんだよ!!?」

 「うるさいですね。―――――話を進めますが、木原円周様は自らの意思で誘拐されました」

 「「「……・・・・・・……・・・・」」」

 

 流石の三人も、これにはリアクションができなかったみたいだ。

 

 「詳しい詳細は説明できませんが、木原円周様は二年前に誘拐した同じ組織に誘拐されました。――――これが木原円周様の現在位置と、それぞれの仕事内容の資料です」

 

 瞳は三人に木原円周の居場所と作戦内容の詳細の資料を配った。

 神無城瑠璃は貰った資料を一語一句逃さんばかりに覚えようとし。

 神無城紗夜は貰った資料を1ページ開くと、そのまま何事もなかったかのように机の上に置いた。

 岩城紀陸は貰った資料をパラパラ見し、それだけで内容を覚えたらしく、紗夜と同じく机の上に置いた。

 

 「それでは、瑠璃は移動しながら自分の与えられた仕事内容を把握してください。紗夜は、増援部隊を蹴散らしてください。きり―――――屑は、作戦通りに実行してください」

 「りょ、りょうかい!」

 「りょーかい」

 「は、了解だよひとみっち」

 

 そのまま四人は暗部が用意した車に乗り込み、空港につくとそのまま超音速ステルス機『HsB-02』に乗り込み出発した。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ―ステルス機内―

 

 

 

 「ところでよー、ひとみっち。質問があるんだけどいい?」

 「嫌です。移動中ですよ、静かにできなんですか」

 「本っっっ当にバッサリ切るね、俺にだけわ。いいじゃんか、この移動時間暇なんだし」

 「はぁ・・・・・・・・・本当に仕方ありませんね。一つだけなら発言権を与えましょう」

 「いろいろ言いたいことはあるが、今は時間がないからツッコまないでやろう。それじゃあ一つ質問だ。――――今更なんだが、俺たちシークレットって、他の部隊と違って学園都市外の任務多くないか?」

  

 瞳は、岩城紀陸を屑を――――ゴミ屑見るような冷たい視線を向けた。

 

 「本当に今更ですね。貴方は何年間シークレットとして活動してきたか覚えていますか?二年、二年ですよ・・・・・・・・このゴミ屑が(ぼそ)」

 「聞こえてるからな!最後のつぶやき聞こえてるからな!いいじゃんか、今までそう言った質問したことなかったんだから」

 「・・・・・・仕方ありません。ついでに紗夜と瑠璃も聞いてください」

 

 G(重力)に当てられて苦しそうな二人に関係なく瞳は喋りだす。

 

 「私たちシークレットの仕事は基本的には、学園都市内の危険分子の排除ですが、それらは他の実行部隊がやってくれるので滅多にそういった仕事はありません。あっても人物護衛といったモノですね。なら何をするかといいますと、学園都市外の危険分子の排除。――――分かりやすく言いますと、学園都市に対して敵対的の人物、組織の排除。そして―――――――――学園都市とは違うカテゴリに属すもう一つの科学的超能力と戦うのが『シークレット』の役目です。補助として、『シークレット』の学園都市の立場ですが、『スクール』、『アイテム』を始めとした部隊より、立場が上とだけ認識してください」

 

 紀陸は納得と言った表情をし、紗夜と瑠璃は、Gに当てられながら最後の部分が理解出来ないといった表情をしていた。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 空港に着くと、学園都市製のステルス車に乗り込み移動し、車では入れないところまで来ると、そこから四人は徒歩で移動した。

 それからしばらく歩くと目的地に到着した。

 それは、湖に囲まれた要塞だった。見た目は昔ながらの石でできたお城で、360度湖に囲まれ、城壁は25メートルもあり、唯一の入口は正面しかなく、そこを守るように湖には10隻モノ船が配置されていた。資料通りならあの城は見た目と違い、内装は研究設備なのがあるはずだ。

 

 「資料を見るより、やっぱ実物はデカイな」

 「でっけーお城だな」

 「う・・・・・船が、人が、いっぱい」

 「―――――今より仕事を開始します。準備は・・・・・・できてますね。それでは、深夜零時に結構してください」

 

 そう言うと、それぞれのポジションに向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 PDAが作戦実行の深夜零時を知らせるアラーム音が鳴り響いた。

 今頃、岩城紀陸が正面から攻めて敵の注意を引いているはずです。今から侵入するのですが、私が今どこにいるのかですか?もう侵入していますがなにか。

 え、紀陸が必要だったのか?正直いりませんけどなにか?おそらく本人は、コレがただの嫌がらせだと気づいているでしょう。どうやって侵入したか気になる人もいるかもしれませんが、私がメイドだからでお願いします。

 しかし、警備が手薄ですね。陽動作戦が上手くいっているようですね。けど、それだけではないような気がしますね。

 そのまま木原円周のいる部屋の前まで到着した。

 部屋の前には、死体二体が倒れており、死体は二体とも首があらぬ方向をむいていた。

 どうやら感が的中したようだった。いくら岩城紀陸が陽動しているとはいえ、ここまで手薄なのはおかしいと考えた瞳はある考えにたどり着いた。

 

 ――――この死体の傷跡を見る限り円周様の仕業なのは間違いありません。

 

 だがここで疑問が生まれた。では何故、木原円周は捕まったのか?わざわざ木原円周自らの手で二年前に誘拐した組織の復讐をしに来たのか。だが、それが一番ありあない。何より私が知る限り()()()()()()()

 部屋をくまなく捜索したが、予想通り木原円周は見つからなかった。

 瞳は思考を巡らした。そして――――――木原円周の居場所を導き出した。

 おそらく木原円周様は二年前――――――私が救助した際に『何か』を牢屋の中に置いてきたのではないか。

 それが、なんなのかは分からないが、そうと考えれば行く場所は限られてくる。

 重要な書類、実験材料、重要人物の所有していた物といったのが保管されている場所。そこを探せば見つかるはず。

 そして、木原円周の捜索がまた始まった。

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 ぜってーただの嫌がらせだろコレ。

 一番面倒なの俺に当てやがってあのアマは・・・・。

 どうせ今頃、『コレがただの嫌がらせだと気づいているでしょう』とか、憎たらしく思ってんだろうなー。

 まあ、任務だし、仕事だし、しょうがなくやってやるよ。

 

 「はい、これで四隻目」

 

 船は、一隻に五人が乗っており、それぞれ一隻ずつに20mmバルカン砲、多連装魚雷が装備してあり、五人中一人は操縦、もう一人はバルカン砲の操作と魚雷の発射、残りの三人は重機関銃とロケットランチャーを装備している。これは女、子供だろうが近づいただけで殺されるな、うん。

 何よりも、俺のカッコがダメだった。こんな夜中に、赤髪の白いスーツの男が水の上を船も漕がずに歩いてくるんだぜ?夜には白目立つしな。

 速攻されましたよ。

 そりゃもうライトが俺を照らす前に撃たれたね。

 だが、そんなの俺には効かないんだがな。

 どうやって水の上を歩いているかだって?

 説明が面倒だから俺の能力とだけ言っておこう。

 

 

 

 「は、おせーおせーよ。対応が遅い。まだ六隻あるんだろ?チームプレイ見せてみろよ」

 

 

 破壊したばかりの船に足をかけ、他の船を睨みながら言い聞かせるようにこたえた。

 

 向こうさんは明らかに動揺している。

 それもそのはず、彼らにとっては、奇妙な侵入者を発見し攻撃。

 気づいた時には、二隻は撃破、そのまま思考が追い付かない内に、もう一隻撃破され、やっと思考が戻った時にはもう一隻撃破されていた。

 それだけの風景を見せられても、彼らの思考が理解できたのは――――――白いスーツの男が四回足を振ると、どの船もひとりでに陥没したことだけ。――――――いや、そんな生易しいモノではない。例えるなら、『人』を何らかの方法で船を破壊した『力』だとしよう。『空き缶』を『船』だと思って考えて欲しい。空き缶はただ地面に置いてあるだけ、人はソレを蹴り飛ばす。

 くの字に陥没する空き缶。だがこの例え、あらがち間違ってはいなかった。

 どの船も、『人』が蹴り飛ばしたかのような有様だったからだ。

 

 誰かが引きがねを引いた。それにつられるかの様に、六隻の船から20mmバルカン砲の圧倒的な破壊が撒き散らされた。

 

 当然、紀陸にもバルカン砲の脅威は迫り来る。しかし―――――――バルカン砲の弾丸は岩城紀陸に当たることはなかった。紀陸に当たると思われた全ての弾丸は、時間が止まったかのように空中に停止していた。

 

 「・・・・・・・・ば……・・・・・・ばか・・・・・・・な・・・・・・・・」

 

 誰がつぶやいたかは分からない。

 だけど、その言葉はこの現象を起こした岩城紀陸以外の全員が思ったことだった。

 

 「は、何お前ら鳩がRPG―7くらった顔してんの?―――――あ、そうか、お前らから見たら止まって見えたりする?違うんだよなー天下の学園都市レベル5の俺様でも流石に物質の時間を止めたり、第一位みたいな演算能力や、反射なんかできないからな」

 

 冗談にしては笑えない事を言い、最後にいたっては何のことだかわからなかった。

 

 「お前らに分かりやすく説明するとだな――――その前にこの弾よーく見てみ。まだ回転しているから」

 

 言われたとおり目を凝らして確認してみると、確かに弾丸は空中でまだ回転していた。

 

 「俺はこの弾丸一発一発止めるだけの演算能力を残念ながら無いからな。だから、止めるのではなく、受け止めたんだよ―――――まだわかんね?はぁ・・・・・要するにだ―――」

 

 

 こんなのは気まずれ、暇つぶしかのように白いスーツの男が語りだす。

 

 

 「―――拳銃の弾ってのは不思議でよ。鉄やら鋼に撃った場合、跳弾したり潰れたりするわけだよ。逆に強度の低い物だったらそのまま貫通したり、貫通はせず、弾丸は内部で止まったりする。――――なら強度がそこまで高くもなく低くもない物質はどうなる?答えは簡単だ、弾丸はある程度突き刺さり弾は止まるが、そのまま回転し続けるんだよ。もっと分かりやすく言うとだ、『強度がそこまで高くもなく低くもない物質』に弾丸が当たると、さっきもいったとおり、ある程度突き刺さり弾は止まるがそのまま回転し続ける。では何故か?その物質は弾丸が当たると衝撃を分散、吸収するんだよ。だから弾は止まるが、そのまま回転し続ける」

 

 休憩のためか、一息ついてからまた口を開いた。

 

 「この現象もソレに似たようなもんだ。空気を『強度がそこまで高くもなく低くもない物質』程度に固める。あとはソレを前方に展開すれば完成!はい、説明終わり」

 

 最後はもう面倒くさくなったのか、無理やり終わらせた感があった。

 

 するとさっきまでの軽い雰囲気とは違う、重々しい雰囲気に変わった。

 

 

 「ここまで説明してお前達が犯した過ちに気づかないなら・・・・・・・・・・・マイナス100点だ」

 

 

 比喩ではない、放たれた殺気は文字通り、この船を、人を、空間ごと震えていた。

 

 それは、死刑を言い渡す閻魔様のような宣告だった。

 

 

「学園都市に――――シークレットに喧嘩吹っ掛けたんだ・・・・・こんぐらい予想できていただろ?」

 

 

 閻魔――――違う。

 

 こいつは閻魔のようにただ宣告するだけじゃない。

 

 今この場で圧倒的破壊をもたらす存在――――悪魔。

 

 いや、アレは悪魔なんかじゃない。

 

 笑みを深めたその表情はさながら――――魔王のようだった。

 

 

 

 「これでお前らの持ち点は0になった・・・・・・・100点が0になったんだ、お前らの運命は・・・・・・今さら言うまでもないか?」

 

 

 

 いつの間にか、紀陸が履いていた革靴がローラースケートのような車輪が取り付けられていた。

 

 外見は普通のローラースケートとは違い、踵に後輪が収納されており、前輪は無く、何故か足の甲に取り付けられていた。

 

 右腕を頭の高さまでゆっくりと上げながら、紀陸は最後の宣告を告げた。

 

 

 

 「残念だけど一瞬で終わらせる――――――――こいつを使わせたお前らが悪いんだ」

 

 

 

 言い終わると同時に右手を振り下ろした。

 

 

 それで、全てが決着した。

 

 

 

 

 

 




投稿した次の日気づいたのですが、
神無城姉妹の容姿の描写書いてねーーーー!!!!Σ(゚д゚lll)
粕谷瞳さんの容姿は書かなくてもわかりますし。
岩城紀陸の容姿もある程度わかるようにしてきましたが・・・・・
神無城紗夜と神無城瑠璃の容姿の説明してねーーーー!!!ヽ(´Д`;)ノ
これを機会に今の話が終わったらシークレットのメンバー紹介します。


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10話能力

我ながら進展が遅いw
次回から原作に入れるようにします。


 燃え盛る炎。

 

 

 作戦開始深夜零時からまだ5分の出来事。

 

 

 紅の炎があたりを明るく照らしていた。

 

 

 六隻の船は圧倒的な重量に押し潰されたようなありさまだった。

 

 

 岩城紀陸が放った"力"は六隻の船に留まらず城の城壁も巻き込み。

 

 

 城本体の3分の1が倒壊していた。

 

 

 「は、想像以上の性能だなおい!―――にしても、俺の容姿と能力からもしかしたらとは思ったが本当にあるとはな!木原もたまにはいい仕事するぜ!」

 

 

 興奮のあまり声を張り上げる。

 

 

 高ぶる感情を静めようと大きく深呼吸をする。

 

 

 この死に満ちた灼熱の空気を吸いこんでいる。

 

 

 思考を一度落ち着かせながら生き残りがいないか確認する。

 

 

 「地殻レーダー」

 

 

 探査機の原理を利用して効果圏内のあらゆる『振動』を識別し、探知する事が可能。

 

 

 無機物と有機物では『振動』に微細な違いがある。

 

 

 無機物の船、空気、水などは生き物としての『振動(呼吸)』がないため、除外。

 

 

 有機物の人間、草、木などは生きている死んでいるは『振動(呼吸)』で判断。

 

 

 息を潜めていたり、マスクなどといったモノで『振動(呼吸)』を誤魔化すことはできても。

 

 

 生き物としての僅かな『振動(動き)』までは誤魔化すことは出来ない。

 

 

 そう――――――――――――

 

 

 「みつけた・・・・・・・・」

 

 

 あらゆるモノは彼の効果圏内にいる限り決して逃れることは出来ない。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 無理だ。

 

 勝てるはずがない。

 

 だから嫌だったんだ。

 

 二年前も同じだった。

 

 殺された。

 

 殺されたんだ。

 

 皆殺された。

 

 木原円周に関わった奴。

 

 学園都市に関わった奴。

 

 皆殺された。

 

 あの時は女性だった。

 

 何故かメイド服姿だったためよく覚えている。

 

 皆殺された。

 

 今でもあの時の光景が脳裏から離れない。

 

 真っ赤な紙吹雪。

 

 仲間は皆降りしきる紙吹雪の前に倒れていった。

 

 紙が一枚空を舞えば一人死に。

 

 紙が二枚空を舞えば二人死に。

 

 紙が三枚空を舞えば三人死に。

 

 空を舞う紙は数を増やしていき吹雪となったとき。

 

 皆死んだ。

 

 私は運良く生き残れた。

 

 あの場にいて生き残ったのは私だけだった。

 

 今になって考えると生き残れたのは運や、あのメイドの気まぐれでもなく・・・・

 

 学園都市が私たち対しての警告だったのではないか?

 

 私はあの光景を目の当たりにしておきながら誰にもソレを報告しなかった。

 

 気絶していて覚えていない。

 

 そんなのは嘘だ。

 

 今でもしっかりと覚えている。

 

 だけど・・・・言えなかった。

 

 何故かは分からない。

  

 救助された時に何があったと聞かれた。

 

 私は言おうとした。

 

 そこで何があったのか。

 

 侵入者を排除する無数のトラップ。

 

 一個大隊を投入し。

 

 最新鋭の戦車も投入した。

 

 勝てると思っていた。

 

 そう・・・・思っていた。

 

 全滅した。

 

 一人のメイドに。

 

 正確には三人だったが事実上の人為被害の原因は銀髪のメイドだった。

 

 おそらくアレが学園都市の秘密兵器・・・・・・などと考える奴は舐めきっている。

 

 アレは私たちで言う『歩兵』といったところだ。

 

 だがレベルが違いすぎた。

 

 こちらで言う『歩兵』が向こうにとっては『航空兵』クラス。

 

 はなから勝てるわけがなかったのだ。

 

 

 

 そして今回も結果は見えていた。

 

 此方の存在に気がついた白いスーツの男は水面を滑るように距離を縮める。

 

 ああ、私は殺される。

 

 今回は前のようにいかない。

 

 皆殺しだ。

 

 不思議と恐怖は無い。

 

 ただ、もしもまた生き残れるのなら・・・・・

 

 この仕事を辞め、家族と静かに暮らそう・・・・・・

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 「『一人だけ生かせ』ミッションコンプリート」

 

 正直全員殺っちまったと思ったぜ。危ない危ない。

 近づいたら気を失いやがって。

 にしても、なかなかの強運だなこいつ。

 俺様の必殺技『無限の地層(グラビトサフォカーテ)』で生き残るとはな。

 安堵半分、悔しさ半分、正直生き残りがいた事に対してめっっっっちゃ悔しかったりする。

 だってーほら・・・・・ね?

 必殺技だよ?

 決め技だよ?

 同じ超能力者同士ならわかるけどよーこれはないわー。

 まあ全力じゃあないし、七割・・・・・いや五・・・・・・・・三割だし!

 あとよー城ごとやっちまったよ。

 円周とひとみっち今ので死んでないよね?

 まあー今ので死ぬような連中じゃないか。

 

 「さて、紗夜ちゃんと瑠璃ちゃんの手伝いでもしに行きますか」

 

 踵の後輪が回転しだすと湖の上を走り出し、そのまま木々の枝に乗り移ると二人のいる場所に駆け抜けた。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 何やら反対方向からものすごい音が響きましたね。

 どうやら紀陸はちゃんと仕事をこなしているようです。

 

 「やっと見つけましたよ。円周様ご怪我はございませんか?」

 

 捜索しだしてから5分が経過していた。ついでに言うとこの場所は三箇所目に来たのだ。

 木原円周はこちらに気づくと無邪気な笑みを浮かべトコトコ駆けてくる。

 

 「どうして瞳お姉ちゃんがいるの?」

 

 このお方は自分の状況を理解しておいでなのでしょうか。

 

 「円周様を助けに参りました。今すぐに脱出いたしましょう」

 

 逃げ出すように促すが円周はふるふると顔を横に振った。

 

 「まだだめ、探し物をまだ見つけてないの」

 

 「探し物ですか?僭越(せんえつ)ながら私めもお手伝いいたします。どのような物をお探しなのでしょうか?」

 

 円周様は何故か視線を下に向け頬を赤らめるとぶつぶつと何かをつぶやいている。

 

 どうしたのだろうか?恥ずかしがっているのでしょうか?いや、まさか奴らに何かされたのでしょうか!そう考えると無性に怒りが湧いてきました。

 そうと決まれば円周様を安全なところにお連れした際にはこの建物を爆撃しましょう。

 

 

 紀陸にだした命令内容を完璧に忘れた瞳はこの場所から一人も生きて返す気はなかった。

 

 

 「えっとね・・・・・・数多おじさんに聞かれたれ絶対怒られると思うし・・・・・・・・・」

 

 「大丈夫です。他の木原の方々には絶対に言いません」

 

 「・・・・・・・本当に?」

 

 「はい。絶対に言いません。それが円周様のご命令ならば私は約束を絶対に破りません」

 

 そう――――この身は木原のためにあるのですから。

 

 「――――その探し物とはどのような物でしょうか?」

 

 するとまた私に視線をそらしたり向けたりを繰り返してやっと口を開いた。

 

 「・・・・・・か、髪留めを・・・・探しているの・・・・・」

 

 なるほど、そういう事ですか。

 おそらくその髪留めとは、私が円周様を助け出した時にあげた物。

 発見した際には八年間無造作に伸び続けた髪が円周様のお顔のかかっておいでだったので、私が当時使っていた紐状の髪留めをプレゼントしてあげたのですが、どうやら脱出の最中に落としてしまったようですね。

 

 そして、髪留めを探しに誘拐され今に至るわけですね。

 

 そして、何故円周様がここまで言い淀むのか分かりました。

 理解しているのだ。自分がどれだけ()()()()()()()行動をしているのか。

 

 ですがそれを少しでもお助けするのがメイドの勤めです。

 

「分かりました。髪留めですね・・・・・・・3秒お待ちください」

 

 まさか学園都市外で使うことになるとは思いもよりませんでした。

 

 

 

 すると瞳は左目の眼帯に手をかけ――――――外した。

 

 

 

 ゆっくりと開く(まぶた)の中にはしっかりと光を捉える眼があった。

 

 

 

 もちろんこの眼は偽物。

 

 学園都市の技術の粋を集めた高性能の義眼。

 

 木原製の『木原印』がしっかりと刻まれている。

 

 

 「 

  

   システム起動―――――信号の接続を確認。

   

   視覚の接続―――――問題無し。

   

   視界―――――クリア。

   

   城の見取り図―――――ダウンロード完了。

 

   保管場所15箇所―――――特定完了

   

   プログラム探し物―――――藍色の紐状の髪留め。

   

                          」

 

 

 すると彼女の足元にいつも間にか『眼』転がっていた。

 しかしそれは一つだけではなく、どこから現れたのか瞳を中心に無数の『眼』が(うごめ)いていた。

 

 「それでは後のことはよろしくお願いします」

 

 命令を下すと『眼』はひとりでに動き出し、無数の『眼』はものの数秒でいなくなった。

 

 「もうしばらくお待ちください。すぐに発見致しますので」

 「うん。わかったよ瞳お姉ちゃん」

 

 後は発見するのみ。するとすぐに22機の『眼』で髪留めを発見した。

 

 「発見いたしました。()たところ探し物の髪留めで間違いありません。場所は―――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

  

 目的の居場所にたどりと早速行動に移した。 

 

 「此処の保管所の21番目の棚にありますのでお取りします」

 

 金庫を紙で一閃。中の髪留めを回収すると円周様の元に持っていく。

 片膝をつき。円周様と目線を合わせるような姿勢になる。

 

 「コチラでよろしいでしょうか?」

 

 そっと、円周様の手に添えるように髪留め渡す。

 探し物が見つかった子供のように円周様ははしゃいでいる。

 見ていて微笑ましいですね。円周様が髪留めを私にむけきます。

 どしたのでしょうか?

 

 「うんっとね・・・・・・・この髪留めを結んで欲しいの!」

 

 またお顔が赤面しておりますが、やはり体調が優れないのでしょうか?

 

 「はい。かしこまりました」

 

 円周様の頭へと手を伸ばし、そっと今付けている髪留めを外す。

 髪がほつれているので結ぶ前によくほぐしておいた方が良さそうです。

 手櫛で円周様の髪が傷まないように丁寧に毛先に近い部分から指を通していく。

 毛先に近い部分の手櫛が終わったら、次はやや上から指を通していく。

 

 「んっ……」

 

 くすぐったいのだろう。声を出すのを我慢している。

 

 「すぐにすみます。もうしばしの辛抱です」

 

 ほつれはもうとれ、藍色の紐状の髪留めを円周様の髪に結びつつお団子頭を左右に揃える。

 

 「・・・・・円周様できましたよ」

 「ありがとう!瞳お姉ちゃん」

 

 嬉しそうに頭の髪留めに触れながらもう一度こちらを向いた。

 

 「本当にありがとう!!絶対大切にするね瞳お姉ちゃん!!」

 

 

 

 眩しい、私と違い純粋無垢な笑顔―――――――――

 

 

 不思議と胸が軽くなる。だけど―――――――――

 

 

 この笑顔がアノお方のモノならどれだけ幸せなことか―――――――――

 

 

 その思いをを胸の奥にしまい込みながら、木原円周と共にこの城から脱出するのであった。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 深夜零時。

 相手側はすこし優秀だったらしく、学園都市が攻めてくると読んでいたみたいだ。

 その証拠に岩城紀陸の攻撃が始まっ1~2分で増援部隊がやってきた。

 歩兵小隊が六小隊。

 一小隊五人。

 突撃砲が一両。

 これだけの部隊があれば、街ぐらいは制圧できてしまう行きよいだ。

 実際相手は此方の事を舐めきっていた。

 衛生の映像で確認したところ、増援部隊を待ち構えているのがメイド二人なのだから当然である。

 学園都市のメイド。だが、所詮メイド、ただの小娘。

 しかし、そんな常識は学園都市に通用しなかった。

 作戦開始から五分後。

 神無城紗夜は破壊を振りまいていた。

 

 

 「ハハハハハハ!どうした!?そんなものか!!」

 

 

 神無城紗夜は敵を視界に捉えたその瞬間、体を爆発させるように動き出していた。

 一番近くにいた男は突然の事に反応できなかった。

 紗夜は渾身の力を込めて男の顔面を殴り飛ばす。

 骨の砕ける音が聞こえた。

 紗夜の拳を振り抜く威力に移動スピードが加わり、男の肩から上は完全に消滅していた。

 絶句――――誰が想像しただろうか?9、10歳くらいのメイドの子供が50メートルもの距離を一瞬で詰め、完全武装の男の頭を破壊するなど。

 小柄な少女の肉体は、身の丈に合わない理性を超えた狂気に突き動かされていた。

 そのまま倒れ込む顔のない男の体蹴り飛ばしながら次の獲物に飛び掛かった。

 同じように一瞬で近くにいた男のアバラ骨を砕き、そのまま心臓を破壊した。

 そしてまた、一瞬で近くにいた男の首を掴み、そのままえぐりとった。

 そしてまた、一瞬で移動し男の後頭部を蹴り飛ばし陥没させる。

 それを何度も何度も繰り返す。

 人の命を一撃で、的確に急所のみを攻撃し破壊する。

 血が飛び散った。

 頬に飛び散った血を舐め取りながら少女は狂ったような叫び声を上げながら、破壊を撒き散らすのを止めない。

 少女の上げる獣のような叫び声と、肉を叩き、骨が砕ける音。血が体に付着する音。ただそれだけが延々と続く。

 

 神無城瑠璃は、一歩退いた場所から、その光景を見つめていた。

 普通ならば狂気を感じ、おぞましさに震えるような光景に、瑠璃はただ姉の身を心配する視線を向けるだけだった。

 

 

 「我々はコチラの小娘を殺るぞ!!六小隊が全滅するのも時間の問題だ!!」

 

 突如、瑠璃の背後から五人組の完全武装の男が現れた。

 相手の小隊は六小隊ではなくもともと七小隊だったのだ。

 

 武装した男達はは一切の躊躇なく瑠璃に発泡した。

 瑠璃は姉の紗夜のようなスピードはなく、むしろ肉体スピードは同年代の子供より遅いくらいの瑠璃に、その弾丸の雨を避けるすべはなかった。

 

 瑠璃の小柄の体はそのまま10メートル吹っ飛ぶと木に当たり止まった。

 

 男の一人が近づき死体を確認しようとする。

 しかし、死体を確認しようと近づいた男の顔が驚愕に染まった。

 無傷。あれほどの銃弾を浴びたその小柄な体は無傷だった。

 

 「・・・・・い、いたいですよ~」

 

 木にぶつかった方が痛かったのか、後頭部を両手で押さえながら涙声でそうつぶやいた。

 

 「お、おこりました・・・・怒りましたよ!さすがの私でもカチンときましたからね!」

 

 武装した男達は本当にこの少女が先の銃弾を無傷で受け止めたのか疑問に思った。

 だが、そんな現実逃避は長くは続かなかった。

 

 頭をぶつけた木を掴むと、そのまま引っこ抜いたのだ。

 

 自身の肉体より重量のある木を持ち上げる瑠璃。

 

 木に潰されないのか。

 あの体のどこにそんな力があるのか。

 今はそんなことどうでもいい。

 数々の修羅場をくぐり抜けてきた男達は直感した。

 

 『逃げなければ死ぬ』

 

 だが、こいつらは敵、敵を排除するのが自分たちに与えられた任務。

 逃げ出したい、ここにいれば死ぬ。

 

 理性と本能。

 

 この僅か数秒の一瞬の彼らの運命は決まった。

 

 

 「え、えい!」

 

 

 声に似合わず、木が横薙ぎに振られた。五人は20メートル飛ばされた。自身の体が有り得ない方向に曲がっているの声も上がらない。

 

 「こ、これもお仕事なので・・・・・恨まないでください!」

 

 瑠璃は一切の躊躇なく木を投げつけた。肉の潰れる鈍い音が響いた。

 瑠璃はもう先のことがなかったかのように姉―――紗夜に視線を戻す。

 

 「・・・・・・・・・・おねえちゃん」

 

 

 そう、神無城瑠璃もまた神無城紗夜同様に狂っているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 寝癖がひどく、ヒゲももじゃもじゃな男は突撃砲の中で焦っていた。

 

 「これが、ただの小娘だって……?」

 

 猛々しく、吼えるその姿は――――――

 

 「ただの化け物じゃねーか!!!」

 

 突撃砲の主砲を化け物に固定する。

 

 「死ねよ!!」

 

 放たれた砲弾は直撃コース。

 

 紗夜は腰に手を伸ばすと一閃―――――砲弾を真っ二つに切り捨てた。

 両手には、小柄が握られていた。

 

 「おいおい冗談だろ!?音速を切り裂いたってのか!!?」

 

 砲弾は確かに銃弾よりも的が大きい。だが、50メートル弱の距離から放たれた砲弾は破壊力、スピード共に銃弾を上回っている。

 

 「―――ハハハハハハハッ!!・・・・・・そんなもんが効くわけないだろ!」

 

 その瞬間、また体を爆発させるように動き出していた。

 

 アクセルを限界まで押し込み、逃げるよう後退した。

 だが、紗夜は徐々に距離を詰めていく。

 

 「おせえ!!」

 

 突撃砲の装甲させ切り裂くであろう小柄が目の前に迫ってくる。

 

 

 だが―――――『作戦通り』

 

 

 紗夜の左肩に一発の弾丸が命中した。弾は貫通し、血が流れ出ていた。

 そう、最初っから相手は狙撃者を配置していたのだ。

 だが狙撃者は違和感を覚えた。

 ターゲットは眉間に迫る弾丸を手で弾き、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 「・・・・・・・怪我をするのは久しぶりだ・・・・・・・・・・・・・おい狙撃野郎!!テメーみたいに潜んでいる野郎をいちいち探してぶち殺すのが面倒だからな、攻撃をくらってやったぜ!!」

 

 突撃砲の中にいた男も、狙撃者も、狙撃者の後方に隠れている五人組も、自身の目を疑った。

 

 紗夜の左肩から流れ落ちる血が、無数の刃のような形に変わる。

 いや、それは刃そのものだった。

 紗夜の周りの木々が吹き出す血に触れてことごとく切断されていく。

 

 「我が血よ、行け・・・・・・・この痛みを与えた者、その仲間もろとも『犠血(ぎけつ)』!!!」

 

 紗夜の血は、無数の矢と化して、敵へと降り注いでいく。

 血が見えなくなった後、その延長線上の木々が一直線に倒れていく。

 当然その延長線上いた突撃砲、狙撃者、五人組は下半身と胴体が綺麗に切断された。

 

 

 「・・・・・・・・一掃完了。チッ、たったの七人かよ。割に合わねー」

 

 左肩の傷口からはいまだに血が流れ出ている。

 瑠璃は戦闘が終わると急いで姉である紗夜の元に行き。傷口を見て悲鳴を上げた。

 

 「―――ッ!!おねえちゃん!なんて無茶な戦い方してるの!それにこの肩の傷も当たり所が悪かったら死んでたかもしれないんだよ!?」

 

 いつもよりハッキリと口を動かす。流石の紗夜も妹には勝てず、素直に謝罪するのであった。

 

 「傷口を見しておねえちゃん。今直すから」

 

 瑠璃はそう言うと、指先を刃で切り滴る血を紗夜の傷口に垂らしていく。

 すると瑠璃の血が紗夜の傷口に垂れていくと、見る見るうちに治っていった。

 紗夜の傷口が完璧にふさがるのを確認すると瑠璃は血を注ぐのをやめる。

 

 「・・・・・・ふぅ」

 

 紗夜の傷口はそこまで深くはなく、瑠璃の血を少量垂らすだけで済んだ。

 

 「ありがとな、瑠璃」

 「い、いいんだよおねえちゃん。私にはコレくらいしか出来ないから」

 「それでもだよ」

 「・・・・・お、おねえちゃん」

 

 後は合流地点に向かうだけ、その時。

 

 「あれ?もしかして終わっちゃった?なんてことだ!紗夜ちゃんと瑠璃ちゃんがピンチな時に俺、参上!って登場して好感度アップ作戦が!?」

 

 紗夜と瑠璃は何事もなかったかのようにそのまま合流地点に向かうのであった。

 

 「え、無視?無視なの?何か突っ込んでくれないと俺の立場が無いよ!」

 

 紀陸は二人共に合流地点に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 合流地点で待つこと数分。

 やっと木原円周を連れた瞳が到着した。

 紀陸は、円周に懐いている瞳をからかわれながら学園都市が用意した超音速ステルス機で帰るのであった。

 そして、しっかりと学園都市に爆撃要請を出したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

  




次回。シークレット構成員の設定説明します。


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キャラクター設定②

ここまで長かった気がします。
次から原作に入る予定なので頑張っていきたいと思います!
設定などいろいろ変更しましたのでご確認お願いします。
何かおかしな点などがありましたら感想の方にお願いします。


シークレット構成員

 

 

《リーダー》オリ主

 

 

名前 粕谷(かすや) (ひとみ)

 

 

コードネーム ザ・ペーパー

 

 

性別 女

 

 

年齢 17歳

 

 

容姿 シークレットゲーム code:reviseのそのまんま粕谷瞳(左目に眼帯)

 

 

人種 原石

 

 

左目 木原によって作られた『木原印』義体(サイボーグ)。『欠落した部分を補う』だけでは

   なく、『必要な部分を取り入れる』事により無数の目玉を遠隔操作し、自身の左目にそれら

   の視界を受信し一個一個が自身の左目の様に見ることが出来る。

    眼を使う時は眼帯を外す。使わない時は眼帯を付ける。

    眼帯の役割は受信の遮断装置をかねている。

 

 

能力 紙使い

 

 

武器 チェーンソー

 

 

メイド服 筋力補助機能でできており、体中の運動能力が通常よりもUPしている。

     黒いガーターベルトも脚力補助機能があり虎をも殴り蹴り殺す事が出来る。

     見た目はただのメイド服だが駆動鎧(パワードスーツ)と同じ効果がある。

 

 

性格 「チェーンソー」を片手で振り回すくらいの腕力をもっており、戦闘において高い戦闘力を

   みにつけている。自分が仕える(マスター)には絶対の忠誠心をもっており、『殺せ』と

   言われれば実行する忠誠っぷりである。心を許したり(主以外にありえないが)、ある程度し

   った人ならそれなりに接してくれるが、基本的には冷静で沈着的な性格である。

    以前は(マスター)以外の人間は完璧無視だったが、立場上そういうわけにはいかず、

   頑張った結果が「↑以下同文」であります。

 

 

備考 ・前世の記憶はありません。何か知っているような知らないようなといった感じです。

   ・木原に隔てなく仕えているため、木原一族のほとんどの研究内容を知っている。

    基本木原は自身の研究内容を独占しようとするため、他の人に知られるのを好まない。

    しかし、粕谷瞳は今までの行いのおかげで木原一族から信頼を得ているため普通に知るこ

    とができる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

名前 神無城(かんなぎ) 紗夜(さや)

 

 

コードネーム 特に無し

 

 

性別 女性

 

 

人種 原石

 

 

年齢 10歳

 

 

身長 140cm

 

 

容姿 髪、眼は血のような紅色をしている。髪は腰のラインまで伸びており、髪型はロングヘアー。

   整った可愛らしいな顔立ちをしているが笑う時は犬歯を覗かせている。胸の方は妹とは違い絶   壁。

   今後の成長に期待。

 

 

能力 ・『犠血(ぎけつ)』という能力を所持しており、自身を傷つけた(血を流させた)相手を、

    流れた血が切り刻む。正に非情なる復讐の血刀。自動的に追尾攻撃をしてくれるカウンター

    系能力。

   ・超能力者(レベル5)第七位削板軍覇(そぎいたぐんは)のよくわからない力の劣化版の

    ようなもの。だが、削板軍覇とは違い体中に展開することはできず、両手両足にしか展開で

    きない。防御力は乏しいが攻撃力・貫通力共に戦車の装甲を破壊出来るだけの力を持ってい

    る。一瞬だけだが音速での移動が可能。

   ・よくわからない力を使い、手・足に触れている又は持っているモノを強化する事が出来る。

 

 

武器 二本の小柄

 

 

メイド服 白いガーターベルトは脚力補助機能があり虎をも蹴り殺す事が出来る。

     能力と掛け合わせる事により瞬発力・高速移動を更に強化している。

     一時的に音速は出せるが、長時間音速を出し続けると脚力補助の機能が壊れてしまう。

     

 

性格 一言で言うなら「天真爛漫」。無邪気で瞳さんも手を妬いているとか。戦闘に関しては高い戦

   闘能力を持っている。重度の戦闘狂。仲間、身内、知り合い以外はどうでもいい。

 

 

 

 

 

 

 

名前 神無城(かんなぎ) 瑠璃(るり)

 

 

コードネーム 特に無し

 

 

性別 女性

 

 

人種 原石

 

 

年齢 9歳

 

 

身長 143cm

 

 

容姿 髪、眼は血のような紅色をしている。見目麗しく、化粧がいらない程度に整った綺麗な顔立ち

   で、肩ま   で届く短めの紅髪。年齢に似合わずバストサイズは80cmもある。

 

 

能力 ・『癒血(いけつ)』という能力を所持しており、他者を傷つける『儀血』とは反対に、他    者のどんな傷も癒す血の力。しかし、この血の力は自身の傷には効かない。

   ・超能力者(レベル5)第七位削板軍覇(そぎいたぐんは)のよくわからない力の劣化版の

    ようなもの。紗夜と違い体中に展開することができる。しかし、攻撃力・貫通力などが乏し    いが防御力は銃弾に撃たれようが砲弾に撃たれようが「痛い」程度で大したダメージを

    受けない。紗夜のようなスピードは出せないがパワーは100万馬力←済みません冗談です。

    分かりやすく言えば、絹旗最愛(きぬはた さいあい)窒素装甲(オフェンスアーマー)がよくわからない力になったモノだと考えてく

    ださい。

 

 

武器 特に無し

 

 

メイド服 ただのメイド服(体中をよくわからない力で覆っているために筋力補助機能が必要ない)

 

 

性格 おっとりとした性格の持ち主で、破天荒な紗夜を止める役でもある。恥ずかしがり屋でよく言

   葉が詰まる。紗夜同様仲間、身内、知り合い以外はどうでもいいらしく、性格に似合わず敵に   は容赦がない。

 

 

 

 

 

 

 

 

オリ主

 

 

名前 岩城(いわじょう) 紀陸(きりく)

 

 

コードネーム 特に無し(自称:石の王)

 

 

性別 男性

 

 

人種 超能力者

 

 

年齢 16歳

 

 

身長 175cm

 

 

容姿 見た目は好青年で街で女性が振り返るだけの容姿はしている。髪、眼の色は日本人らしい黒。

   だが、神無城姉妹のような紅色に染めている。 

 

 

能力 《振動》

   ・『無限の地層(グラビトサフォカーテ)』は、振動波によって硬化させた空気の塊を上空    から相手に叩きつけることで攻撃する技。

   ・『地殻レーダー』と呼ばれる探査機の原理を利用して効果圏内のあらゆるモノの地面に刻む

    『振動』を識別し、探知する事が可能。ただし、能力の性質上空中までは探知出来ない。し

    かし、振動波によって空気を硬化させるこにより三次元的にモノの『振動』を知ることがで

    きる。(AIの演算処理がなければ出来ない)

 

 

武器 インラインスケート・エアトレック(AT)=石の玉璽

   形状=ニケのAT

   人工知能(AI)が搭載されている。問答型思考補助式人工知能(リーディングトート78)ま   ではいかないが、紀陸の演算処理を手助けしている。(補っている)

 

 

性格 仕事がない日は家でアニメ・漫画鑑賞。滅多に家から出ない。いい加減な性格だが、基本的に   誰にも話しかけ、困っている人(女の子限定)がいると助けてしまう。  

 

 

備考 前世の記憶は残っておらず、原作の知識は曖昧だが少し覚えている。

 

 

   

 

 

 

 

重要人物紹介

 

 

名前 木原(きはら) (しゅう)

 

 

性別 男性

 

 

人種 ただの人間

 

 

年齢 18歳

 

 

身長 174cm

 

 

容姿 中性的な顔立ち

 

 

性格 幼い頃瞳を助け出しており、その目的は原石の研究だったが、現在は瞳の気持ちに気づいてい

   るかは不明。基本的に無口だが瞳に対しては時々優しい態度をとる。

 

 

研究 原石を専門的に研究している。第七位も研究・実験したらしい。本人曰く、「科学的に説明出

   来ない原石を科学的に説明出来れば能力の新たな一歩になる」。瞳の紙、紗夜の小柄は彼が用

   意した。(造った)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

名前 (みなみ) 林太(りんた) (他の人からは南のおじさん、南博士と呼ばれている)

 

 

性別 男性

 

 

人種 ただの人間

 

 

年齢 45歳

 

 

身長 170cm

 

 

容姿 エア・ギアそのまんま南林太

 

 

性格 木原のように研究に犠牲を厭わない。

 

 

研究 インラインスケート・エアトレック(AT)の開発。

   紀陸の専属ATメンテナンス者と言っても過言ではない。

 

 

 




他にFLATから出したいキャラがいましたらバンバン言ってください!
出すかもしれないので!


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原作開始
11話訪問者


こんなにも時間が掛かるとは思いませんでした。
二日前くらいに投稿しようと頑張ったのですが、色々ありましてこんなにもかかってしまいました。すみませんm(__)m
正直一巻はさっさと終わりたいところです。
けどあんまり?全然?展開が進んでない気がするw



 「お初にお目にかかります。本日からお二方の身の回りのお世話をすることになります粕谷瞳と申します」

 

 瞳は目の前の二人に対し優雅な動作でお辞儀してみせた。

 

 「学園都市には初めての訪問だと仰せ付かっております。それに伴いお二方には『学園都市のルールを教えろ』と、メイド長のお達しがありましたので分かりやすく要点だけをお伝えします。しかし、私の見立てではお二方には説明不要だと思いますが、これも命令ですので言わせていただきます」

 

 「「……・・・・・・」」

 

 学園都市にいらっしゃったお二方――――――お客様は私を黙って見据えている。

 

 「ルールは主に一つ、()()()()()()()()()()()()()。――――以上です」

 

 お客様は私を黙って見据えている。

 正直に言うと何故私がこのようなことをしなければならないのか不思議です。

 まさか木原の方々以外に仕える日が来ようとは・・・・・・・・・……・・・・・・・(涙)。

 

 「それでは――――――――――神裂様、マグヌス様こちらです」

 

 本当にどうしてこうなった。

 

 瞳は、つい先日の事を思い返していた――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―木原修研究室―

 

 

 先日の木原円周様奪還作戦を私は、依頼者である()()()様に報告していた。

 

 「――――――――――以上が、本作戦の詳細であります」

 

 目は合わせず耳だけを傾けながら聞いていた木原修はそのままパソコンと睨めっこしながら今日始めて口を開いた。

 

 「・・・・・・・・生き残りが一人いる理由は?」

 「一人だけ生かすことにより、殲滅よりもより一層生き残た者からの恐怖を周りに伝えることができるからです。もちろん『シークレット』の存在がバレない様脳ミソを少々イジリましたが」

 

 言えない・・・・・・紀陸に『一人だけ生かせ』と命令しときながら怒りにソレを忘れ、あまつさえ爆撃しときながら奇跡的に生き残りが出てしまい、ソレを紀陸にネタにされ部隊内での私の精神(プライド)はズタズタです。

 

 「・・・・・・・・・そうか」

 

 普段ならこのまま研究室から静かに出て行くのだが今回はどうしても瞳は聞きたいことがあった。

 

 「・・・・・・・修様。失礼を承知で聞きたいことがあります。どうして今回も外の組織に円周様を誘拐させるように手配したのですか?」

 

 修様から返事が返ってこない。いつの間にか口の中が乾燥していた。

 ヤバイです。ただのメイドである私が主人に質問するなど言語道断。

 (きびす)を返して退室しようとすると主人―――――修様が静かに笑っていた。

 

 「クックックックックックックック――――――――――」

 

 パソコンから目を離し今日始めて瞳を視界に捉えた。

 

 「クックックック・・・・・・はっはははははっはははhっははははhhっはッハッハは!!そうか!やはり気になるか瞳ぃ!?二年前にも言ったように、今回も一緒だ。()()()()()だよ。十年前何故、学園都市は円周を誘拐されるよう仕向けたのか。前に説明したから覚えているとは思うが()()()()()だ。

 

  外部環境や本人の意思さえ無関係に、木原は木原であるというだけで、科学に愛され、科学を悪用してしまう・・・・・・・・・・・・本当に?木原はあらゆる環境に置いても本当に科学に愛されているのか?更にその結果その木原は他の木原とどう違うのか?

 

 その実験の結果が今日導き出された・・・・・・木原は確かに、木原は木原であるというだけで、科学に愛されていた。だが、問題は外部環境の変化だ、木原円周は間違いなく科学に愛されていた。しかし、()()が全く無かった。これは非常に興味深い!そして今回の行動。まっっっっっったく木原らしくなかった!いやー面白い。これだから研究はやめられない!」

 

 

 イキナリで訳が分からない方がいると思いますが、これが私の命の恩人でもあり、現私の主人である木原修様です。

 普段は物静かな無口な方などですが・・・・・・・・えっと・・・・・・・・・ヒジョーーに申し訳にくいのですが……・・・・・・・・・・自分の研究・実験に関することになるとテンションがとても『ハイ』になってしまう思考があるのです。

 

 まぁ木原らしいと言えば木原らしいのですが。

 

 ですが流石は修様。血族であるはずの円周様さえ自身の研究の実験材料にするとは、まさに木原の中の木原です。

 

 興奮状態から落ち着いた木原修は先の状態が嘘だったかのように静かにまたパソコンと睨めっこする。

 

 瞳は素早く木原修の手の届く位置に紅茶を用意し、そのまま足音を立てずに退室した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 PDAが鳴りだした。

 

 (誰でしょうか?)

 

 PDAの画面に表示された名前は非通知。

 私のPDAの番号を知っている時点で暗部の者の可能性が高い。

 

 (修様のために美味しいものを作ろうと買い物の最中だったのですが、いったい誰でしょうか?)

 

 シークレットの関係上、仕事次第では学園都市外に行く可能性が高い。また修様と離れてしまうと内心憂鬱になりつつPDAの着信ボタンを押した。

 

 『"ザ・ペーパー"仕事です』

 

 その声を聞いた瞬間、無意識の内に姿勢を整え、先程までの憂鬱な気分は吹き飛び、まとう気迫は正に完璧メイドを醸し出していた。

 

 「どのような仕事でしょうか『メイド長』」

 

 まさかメイド長直々に仕事の連絡とは、これは一筋縄ではいかない予感がします。

 

 『単刀直入に言います。外からお客様がいらっしゃるのでその方々の身の回りの世話を願います」

 

 「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥……・・・・・・・‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 ハッ!私とした事がこんな事ではメイドとして失格です。

 

 「……・・・・・・メイド長。失礼を承知でお聞きしますが何故私なのですか?」

 

 シークレットは存在そのものが秘密。たかだか外部の者の護衛、もとい身の回りの世話など何故私がやるのでしょうか。外部の者なら普通は警備員(アンチスキル)の管轄のはずなのですが。

 

 『愚問ですね。私たちメイドはただ与えられた仕事をするのみ。質問などする権利はありません』

 

 「・・・・・・・・・・失礼しました。仕事の詳細の説明をお願いします」

 

 『詳細の説明はいつもの場所で説明するので』

 

 言い終わると電話は切られた。

 

 

 

 ・・・・・・。今日は修様に料理を作ることはできませんね。

 ビニールに入っている材料を見比べ、躊躇はしたがゴミ箱の中に埋葬した。

 

 (さて、向かいますか)

 

 

 

 『いつもの場所』――――――――――窓のないビルへ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『案内人』により窓のないビルに入った瞳はアレイスター=クロウリーに挨拶を交わすとそのビーカーの横に控えるように立っていたメイド長が今回の仕事の詳細を説明した。

 

 「必要悪の教会(ネセサリウス)から学園都市の入国許可の申請がありました。入国理由は『必要悪の教会に所属する禁書目録(インデックス)が無断で学園都市に侵入したため、回収のために魔術師二名の学園都市入国許可をお願いする』と言ったものです」

 

 

 これは想像以上の大物ですね。

 話の内容的にただ身の回りの世話をしろといったものではありませんね。

 

 

 「――――――――建前はここまで、本音は此方を利用する気満々。おそらくわざと追い込み逃げ出さないようこの閉鎖された学園都市に閉じ込めたのでしょう。

 

 (此方から手を出せないことをいいことに・・・・・・・・これだから魔術師は)

 

 ――――――――今からいらっしゃる二方は学園都市には初めての訪問です。その為、何か不審な行動をしないか監視してください」

 

 「了解しました。その仕事全力で当たらせて頂きます」

 

 メイド長は言いたいことを言い終わると闇の中に消えていった。

 

 「ふむ・・・・・・・・ザ・ペーパー。以上が今回の任務だ。さっそく頑張ってくれたまえ」

 「お任せ下さい。アレイスター様」

 

 瞳は優雅な動作でお辞儀すると『案内人』により窓のないビルを後にした。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 回想もとい現実逃避終了です。

 神裂火織様、ステイル=マグヌス様のメイドとして仕えて一日たちました。

 それにしてもこの二方、宿を紹介したのですが野宿でいいと断られました。

 飲み物をお出ししたところいらないと断られました。

 食べ物をお食べするか聞いたところ食べないと断られました。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 私がここにいる意味はあるのでしょうか?

 暇にも程があります。

 監視の指令がなければ今すぐ修様の元に向かいたところです。

 

 荷物持ちも断られ。

 学園都市の学区ごとの説明も断られ。

 

 ・・・・・・・・もうやることが掃除しかなく二方の通り道などを差し障りのない程度に綺麗にした。

 

(ふふふ・・・・。私の『眼』に掛かれば一日で行動パターンを把握するのも不可能ではありません。昨日の三人の行動パターンはしっかりと見て記録してますから。それにしても神裂様とマグヌス様は本当に捕まえる気があるのでしょうか?見ればわかる。いや、あらゆる人間を()てきた私だからこそ分かる。神裂様、マグヌス様の二方は明らかに手を抜いている。その気になれば一瞬で終わらせる事などたわいもないことでしょうに)

 

 三人の関係性を知らない瞳にはここまでの推理しかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―魔術師side―

 

 

 彼―――――ステイル=マグヌスは困惑していた。

 当初の計画通り彼女を学園都市に追い込むことにより逃げ道を奪った。

 だが、イレギュラーな事に彼女を回収するまでの間メイドが付くことになった。

 最初はそんな知らない奴がいるだけで嫌悪がさしたが、あのメイドは僕らが不快に感じるパーソナルスペースが分かっているかのように一定の距離を保ちながら、コチラが意識しないと気づかない程度に、絶妙に気配を遮断している。更に細かい気遣いや、都市の案内は彼女を追跡するにあたってとても役立った。何より僕らのカッコはこの都市では目立ちすぎる。ソレを考慮したのか、あまり人目につかない裏道を教えてくれた。一言で言うならこのメイドは完璧だ。

 

 (この気遣いが少しでも必要悪の教会(ネセサリウス)の修道院にあればどれだけいいか・・・・・)

 

 

 自分の所属する組織のトップを思いだしその考えを諦めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 今日も神裂様とマグヌス様はインデックスと言う少女を追跡していた。

 お二方に仕えて今日で三日。七月二十日。

 早い学校なら今日から夏休みである。

 

 (本当に捕まえる気があるのでしょうか?何故二人がかりでいかないのでしょう)

 

 そう、毎回神裂様、マグヌス様は二人で捕らえるのではなく、何故お互い協力せずに一人で捕まえようとする。まるでわざと捕まえないかの様にしているかのよう―――――――いや、違う。

 

 ()ていれば分かる。二方は真剣にインデックスという少女を捕まえる気でいる。

 

 だけど本当はこんなことはしたくない様に()える。

 

 おそらく二方にはその自覚はない。

 

 ですがそうと分かれば少し面倒ですね。

 

 あの少女、動きからすると相当逃げ慣れている。

 

 この調子だとおそらく一週間は掛かってしまう。

 

 この状況から早く脱出するには少女の行動範囲を更に狭める必要がある。

 

 ならとる行動は一つ――――――――――

 

 「多少怪我をしても仕方ありませんよね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今私たちは第七学区:学生寮の屋上にいます。

 今はマグヌス様だけで追跡している。

 神裂様が今この場にいない今がチャンスです。

 私の作戦内容はこうです。

 

 

  一つ、マグヌス様が一人で追跡するその時を狙う。

  一つ、観察の結果、神裂様は通常の人間より目が良いので見られる可能性アリ。

  一つ、観察の結果、ある程度の攻撃は少女に効かない。

  一つ、効かなくても衝撃は効くものだと思われ。

  一つ、事故に見せかける。

  一つ、マグヌス様が認識出来ない程の攻撃速度。

 

 以上の結果から、私の能力では不可能。不本意ですがコレ()を使います。

 

 『磁力狙撃砲』音が極限に少ないことが魅力的です。

 

 さて、狙撃ポイントにつきました。

 後はターゲットが次の寮に飛び移る瞬間を狙うだけ・・・・・・・・・。あ、ちゃんとマグヌス様の死角になるように計算した狙撃ポイントですので見られる心配はありません。

 

 

 少女の方が速度を上げましたね。

 これは飛び移る為の助走ですね。

 ()ればわかります。

 

 

 狙いは飛び移るその瞬間――――――――――――――――――今!!

 

 

 音はしない。だが、弾丸は確実にターゲットの背中に命中した。

 マグヌス様から見たらバランスを崩して落ちたようにしか見えない。

 コレで足の骨でも一本折れてくれればラッキーなのですが。

 では、帰りますか。

 

 

 証拠が残らないように遠隔操作で紙を操り被弾した弾丸を回収し、その場を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 予想外のことが起こりました。

 落下地点には少女の姿がなくマグヌス様は付近を捜索しましたが見つからず、そのまま他の場所を捜索することに・・・・・・・・・・。

 神裂様もマグヌス様も相当焦っているご様子。

 

 (まずいですね)

 

 実はもうすでに()つけているのですが、ソレを言えば私がココにいた事がバレてしまう。

 何よりこの眼の存在は知られたくない。

 私の行動がこのような形で裏目に出てしまうとわ・・・・・・・一生の不覚。

 

 取り敢えず神裂様とマグヌス様には、少女―――インデックスがまだこの近くにいる可能性が高いと説明しときました。

 説明に納得したのか二方はこの第七学区を中心に捜索を開始する。

 

 (今日も修様に会えないのですか……・・・・・グスン)

 

 二方にバレないようハンカチで目元を押さえながら今後のことをを考えるのだった。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 ―魔術師side―

 

 

 彼女―――――神裂火織は感心していた。

 三日間このメイドと過ごし、身のこなしから只者ではないことはわかってはいたが、この推理力あなどれません。

 正直、ステイルから彼女を見失ったと報告を受けた時は我ながら焦ってしまいました。

 ですが、メイドの助言によりまだこの第七学区付近にいる可能性が高いと分かり、探している最中です。

 時間がないのにこの失態。

 次また彼女を垣間見た時は―――――――心痛みますがこの『七天七刀』を抜刀するとしましょう。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 予想外のことが起こりました。

 本日何度同じ事を言ったのやら・・・・・・・・・。

 

 そんなことより、大変なことになりました。

 神裂様がインデックスの背中に斬りかかったところ、今日の朝まで核シェルター並の強度を誇っていたシスター服がただの一般的なシスター服の強度なっていたのです。

 

 

 その・・・・・・・・・・なんですか・・・・・・・・・神裂様は今とても落ち込まれてしまい・・・・・・・・・刀に付着した血を拭い、一人ぶつぶつ呟きながら精神的に塞ぎ込んでしまいました。

 

 

 ですが、出血量からそこまで傷口は深くないと考えられるのでもって午後八時~九時。あの傷では遠くまで行けません。マグヌス様がその時刻までに回収出来ればどのような傷も直すのは可能なのですが。

 

 

 後はマグヌス様を待つのみ、今は目の前の問題をどうにかしないと……・・・・・。

 

 

 

 精神的に塞ぎ込んだ神裂火織(お客様)様を立ち直させる為にメイドは今日も頑張ります!

 

 

 

 

 

 




「粕谷瞳ってこんなキャラだっけ?」
いいんです。見た目は粕谷瞳ですが中身は別人なので。


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12話メイドの心情

孫      「・・・・・・・」(カタカタ)

おばあちょん 「もうすぐ飯やよ」

孫      「ほーい」

~一分後~

おばあちゃん 「もうすぐ飯やよ」

孫      「ほーい」

~三十秒後~

おばあちゃん 「もうすぐ飯やよ」

孫      「・・・・・ほーい」

~十秒後~

おばあちゃん 「もうすぐ―――」

孫      「わかってるよ!!」




 

 

 予想外のことが起こりました。

 今日だけで計算外の事が起こりすぎた。

 ひとまず、神裂様を立ち直させることには成功しました。

 後はマグヌス様が負傷した禁書目録(インデックス)を回収すれば終わるはずだった。

 そう、はずだった。

 

 誰が考えるだろうか?

 歴戦の魔術師がたかが一学生に負けるなど。

 

 気絶したマグヌス様を看病したあと、すぐに目を覚ました。

 今現在のインデックスの居場所を教えると、二方は急いでその場所に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 七月二十一日

 

 

 

 600メートルほど離れた、雑居ビルの屋上で、ステイルはメイドか受け取った双眼鏡から目を離した。

 

 「インデックスに同伴していた少年の身元の詳細はメイドから頂きました。・・・・・・彼女は?」

 

 ステイルはすぐ後ろまで歩いてきた神裂の方も振り返らずに答える。

 

 「生きてるよ。・・・・・・・だが生きいると向こうにも魔術の使い手がいるはずだ」

 

 神裂は無言だったが、新たな敵よりむしろ誰も死ななかった事に安堵しているように見える。

 

 「それで、神裂。アレは一体何なんだ?」

 「それなのですが、少年の情報に特に目立った点がありません。少なくとも魔術師や異能者といった類ではない、という事になるのでしょうか」

 「何だ、もしかしてアレがただの高校生とでも言うつもりかい?」

 

 ステイルは口に咥えて引き抜いた煙草の先を睨んだだけで火をつける。

 

 「・・・・・・やめてくれよ。僕はこれでも現在するルーン二四字を完全に解析し、新たに力ある六文字を開発した魔術師だ。何の力も持たない素人が、裁きの炎(イノケンティウス)を退けられるほど世界は優しく作られちゃいない」

 

 いくらインデックスの助言があったとして、それを即座に応用し戦術を練り上げる思考速度。さらには正体不明の右手。アレがただの一般人ならまさしく日本は神秘の国だろう。

 

 「そうですね・・・・・・むしろ問題なのはアレだけの戦闘力が『ただのケンカっ早いダメ学生』という分類(カテゴリ)となっている事です」

 

 (あのメイドもただのメイドの分類となっている事自体が異常ですが)

 

 学園都市には事前に連絡を入れて許可を取っていた。名実ともに世界最高峰の魔術グループでさえ、敵の領域(フィールド)では正体を隠し続ける事は不可能と踏んだからだ。そして、あのメイド――――

 

 「情報の・・・・・意図的な封鎖、かな。しかもインデックスの傷は魔術で癒したときた。神裂、この極東には他に魔術組織が実在するのかい?」

 「・・・・・・この街で動くとなれば、何人も統括理事会のアンテナにかかるはずですが―――――――

 

 敵戦力は未知数、対してこちらの増援はナシ。難しい展開ですね」

 

 少しでも情報が欲しい今。メイドからより詳しい事を聞きたかった二人だが、神裂火織に資料を渡し、そのまま行方をくらましまったため聞くことができない。

 

 その資料にはただ"上条当麻"とだけ書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 私、粕谷瞳はメイド長の新たな命令を受け、実行していた。

 

 (まあ、ただの命令内容の変更なのですが)

 

 メイド長からの命令変更はいたって簡単。

 

 "隠れて監視しなさい"

 

 (この程度のスニーキングミッション。こなせなくて何がメイドですか)

 

 二人の魔術師を中心に『眼』を展開。

 これで全ての準備が整った。時刻は昼、魔術師が行動に移るのはおそらく夜。

 夜になるまでは『眼』を五機だけ展開。

 今はこれだけで事足りる。

 

 (それにしてもあの少年――――上条当麻は何者なのでしょうか?)

 

 粕谷瞳は自身を暗部の中でもより深い闇の中の存在だと自負している。だからこそ木原に仕え、他の部隊の任務内容、構成員の名前、能力を全て把握している。

 なのに、そんな自分が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 だけど―――――――――――――

             ()()()()()()()()()()()()

 

 

 上条当麻の情報が閲覧できなかった事が悔しいわけではない。

 

 『閲覧できない』―――――――この事実が瞳を苦しめていた。

 

 (閲覧できない程の情報。おそらく閲覧可能な者は、アレイスター=クロウリー様、メイド長、そして木原のごく一部の方のみ……・・・・・)

 

 まだ完全には信頼されてはいない―――――この事実に粕谷瞳は苦しみられていた。

 

 なら、自分がとる行動は一つ。

 

 『命令通り忠実に、主人が望む結果以上の結果を完璧にやり遂げる……・・・・・それが『メイド』』

 

 メイド長の最初の教え―――――私が初めてメイド長にお会いした時の最初の言葉―――――

 

 

 「魔術師(お客様)を監視、さらに能力、力、弱点、全てを徹底的に分析する。『命令通り忠実に、主人が望む結果以上の結果を完璧にやり遂げる』・・・・・・・それがメイドなのですから」

 

 路地裏で音さえ感じさせず闇に溶け込み、まるで最初っからそこに居なかったかの様にメイドは消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方的な暴力。

 あまりの力は本人の意思に関係なく相手を傷つけてしまう。

 だけど、それさえ踏まえればやり方は幾らでもある。

 七本の、鋼糸(ワイヤー)

 手加減に加減を加えて行われる攻撃は本来の力とは程遠く、そのおかげで少年の体は原型を保っていられる。

 運良く七本の鋼糸をくぐり抜け、本体に近づくことが出来ても『唯閃』という技がある。

 

 (技名からしておそらく『抜刀術』。威力は鋼糸以上と考えるなら一撃必殺と考えるのが妥当)

 

 身体能力も人間以上。

 何の補助もなく私と同等な運動性能の可能性あり。

 600メートル先が鮮明に見えることから視力両目とも八.〇の可能性あり。

 彼女に本気を出させるには超能力(レベル5)クラスが必要と思われ。

 

 

 

 ――――――――以上の結果が、100機の『眼』から導き出した答え。

 

 

 "難敵"

 

 

 だが、戦いのやり方では私でも勝機がある相手。

 

 (神裂様・・・・・・・・相手が格下の相手だからとそうペラペラ自分の事を話すのはどうかと思いますよ)

 

 そのおかげで色々な情報を入手できたのだから文句はない。―――――――――少年、ナイスファイト。

 

 

 いきなりですが、ここで私の眼の特殊機能を一つ紹介しましょう。

 普段は()るだけの私の左目。しかし、ある特殊コードを入力する事により眼るだけではなく、聞くことができる様になる。正確には、相手の唇の動きから発話の内容を読み取り、自動で音声化する機能。

 分かりやすく言ってしまえば読唇術(とくしんじゅつ)です。

 

 ですが滅多に使いませんがね。

 だって、コレ使うと起動させている全ての『眼』から音声が流れ込んでくるんですよ?

 関係ない声も自動で音声化するので苦痛でしかありません。

 しかも音声のせいで両耳が聞こえなくなるので戦闘では役に立たない。

 正確には聞こえなくなるのではなく、どの『眼』から聞こえる『声』なのか、自分の耳で聞こえる『声』なのか区別できないのが難点です。

 

 

 そうやっているうちに満身創痍の少年が神裂火織にどういう因果か説教をしだした。

 

 (戦闘中にあの男は何をやっているのでしょう。神裂様は戦闘のプロ。仕事の前にはどれだけ詭弁を並べても無意味だと分からないのでしょうか)

 

 少年は言いたいことを言い終わるとそのまま双方とも沈黙した。

 するとどうでしょう?逆に神裂様が語りだすではありませんか。

 

 (何ですかこの状況)

 

 正直もうこれは戦闘とは言えない。では何か?

 さっきまで殺伐としていた戦闘が今ではただのお遊戯会とかしている。

 眼を通し声が聞こえる。

 

 

 『―――――私だって好きで、こんな事をしている訳ではありません』

 

 

 ……・・・・・。

 瞳はこれでも人を見る眼はあると思っている。実際瞳は()ただけでアマチュアなのかプロなのかを見分けることだってできる。

 肉体のバランス。

 醸し出す雰囲気。

 身のこなし。

 目つき。

 全てに置いて神裂様はあの男より格上。

  

 なのに―――――――――

 

 

 『彼女は、私の同僚にして―――――――――大切な親友、なんですよ』

 

 

 今は自分の見解が間違っていたので?と考えるのであった。

 

 (流石の私も人間関係。精神力は眼ただけではわかりませんし・・・・・・・・はぁ・・・・・・)

 

 瞳はため息と共に考えを放棄し、話から情報を聞き出すことに集中することにした――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女―――――インデックスについて。

 今の会話ではわかったのはそれだけ。

 

 (しかし、人間の記憶を綺麗に一年だけ消すとは、心理掌握(メンタルアウト)の様なものでしょうか)

 仕事上。魔術があるという認識はあるが、詳しい概要までは知らない瞳は自信が知りゆる知識のみで仮説を立ててみる。

 

 (なるほど、彼女は眼に映る全ての物を完全に記憶してしまう『完全記憶能力』という特異体質で、10万3000冊の魔道書をその頭に記憶している。インデックス――――禁書目録。名前からして皮肉ですね)

 

 話を聞いていた瞳は疑問を覚えた。

 

 (脳の85%は10万3000冊の記憶のため使われている。残りの15%は一年しかもたない・・・・・・・)

 

 おかしい。人の脳にはそこまで詳しくない瞳でさえその理論は科学的におかしいと気づいた。

 だけど―――――――――

 

 (―――――私には関係ありませんしね)

 

 そう、瞳には関係ない。

 ただ監視するのみ。

 

 少年はそのまま気絶。

 魔術師に動き無し。

 インデックスは少年の看病。

 

 その状態が三日続いた。

 

 暇。暇です。暇すぎます。

 少年が起きるまでの三日間。

 平和すぎるほど何も起こらなかった。

 

 (会話から今日がタイムリミット。どうなるか見ものですね)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜。

 

 インデックスは倒れ。

 

 それを何とかしようと頑張る少年。 

 

 時刻は午前零時。

 

 時間切れ。

 

 終わり。

 

 少年は間に合わなかった。

 

 一人の少女の悲劇な物語はここで一時終焉。

 

 それが現実。

 

 人間にできることは限られている。

 

 無駄だっただけ。

 

 あとは記憶を消されえて終わり。

 

 そしてまた一年周期で記憶を消す。

 

 少女の悲劇な物語は終わらない。

 

 そう、ヒーローはいない。

 

 この世界にはヒーローは存在しない。

 

 悲劇を終わらせる都合のいいヒーローなんていない。

 

 泣いている子供に飴をあげる人もいるだろう。

 

 挫けそうな時背中を押してくれる人もいるだろう。

 

 落ち込んだ時励ましてくれる人もいるだろう。 

 

 絶望の中手を差し伸べてくれる人もいるだろう。

 

 私はそれで満足だった。

 

 手を差し伸べてくれる・・・・・・・・たったそれだけで救われた。

 

 これ以上何が必要だろうか?

 

 ご都合主義なんてない。

 

 確かにこの世界に真のヒーローはいない。

 

 お父さんを助けてくれるヒーローはいなかった。

 

 だけど、絶望の闇の中・・・・・手を差し伸べてくれたあの人は、私の(なか)でたった一人のヒーローだった。

 

 別に助けなくていい。

 

 汚されて。

 

 穢されて。

 

 犯されて。

 

 それはただ自分に力がないから。

 

 そう、自分が悪い。

 

 だけど、全てが終わった後に手を差し伸べてくれる。

 

 私はそれだけで救われるのだから・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 そう、ご都合主義なんてない。

 なら今眼ているモノは何だ?

 結局少女は助かった。

 魔術師と協力しあい。

 一人の少女の悲劇な物語を終わらせてしまった。

 しかし、やはりご都合主義なんてなかった。

 少年の脳細胞は破壊された。

 記憶が破壊されたのだ。

 だけど少年はいつも通りな態度で少女と触れ合う。

 瞳は納得した。

 これがこの少年の本質なのだと。

 この少年は生まれながらにしてヒーローなのだ。

 だけど、そんなヒーローはクソくらえだ。

 私には主人がいる。

 それが私の全てなのだから――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 「――――――ザ・ペーパー。聞いてるのですか?」

 「ッッッ!!・・・・・申し訳ございませんメイド長。本日のこの失敗、私の失態です」

 「いえ、仕事の方は予想以上の結果が得られました。貴方はやり遂げたのです」

 「ですが私は!!」

 「確かにザ・ペーパー・・・・・・・貴方があの現場の一番近くにいました。しかし、それとこれとは話は別です。私は貴方に『隠れて監視しなさい』と命令しました。貴方は命令通りに実行しただけなのです」

 「ですが私がいながら『樹形図の設計者』は破壊されてしまいました!どのような処罰も受けます!」

 

 そう、私は見ている事しか出来なかった。

 自分の考えに集中してしまった。

 目の前の光景が現実からかけ離れている。

 そんなモノ関係ない。

 『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』が破壊された。

 それはどういう事か?

 学園都市の、木原にとってそれは圧倒的な予測演算が失われる事を意味している。

 それは瞳にとって木原に迷惑を掛けた事に等しい。

 

 

 「私のせいで樹形図の設計者が……・・・・・・」

 「……・・・・・・いいですか瞳、私たちはメイドです。主人のパーソナルスペースには決して踏み込んではいけない存在。この意味がわかりますか?」

 「・・・・・・・・・・はい。私たちはメイドは主人にとって害ある者であってはならない」

 「それなら今の貴方はなんですか?鏡で今の顔を見てみなさい。それではシークレットを任せる事も、木原に仕える事も出来ませんよ」

 

 瞳は懐から反射性が強い紙を鏡にし、自分の顔を確認した。

 そこには本当に自分の顔なのか疑いたくなるほどの酷いありさまだった。

 

 「そんな顔では周りを不快にするばかり。仕事も任せる事も出来ませんね」

 

 メイド長はいつ通りの無表情で厳しく言い切った。

 だが、ふと頬を緩めると。

 

 「瞳。顔を上げなさい・・・・・・・・・・」

 

 それはまるでお母さんを連想させるようで――――――

 

 「瞳――――貴方がいないと私が困るのです。貴方は今まで仕事を忠実にこなしてきました。確かに『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』が破壊されたのは此方にとって大打撃です。ですが、回収準備をしている今は気にしなくていいでしょう。……・・・・・・・」

 

 またいつもの無表情の顔つきに戻るが、その顔に優しさを感じ取った。

 

 「いつまでめそめそしてるのです。ザ・ペーパー。それでは人に笑われてしまいますよ。貴方にはまだまだ仕事がたくさんあるのですから」

 

 瞳は両手で自分の頬思いっきり叩いた。そこにはもう迷いはなかった。

 

 「・・・・・・・・お任せ下さいメイド長。必ずやご期待に応えてみせます」

 

 いつも通り、メイドは優雅な動作でお辞儀してみせた。

 

 そして、PDAでシークレットに招集を掛けるとそのままどこかに走って消えていった。

 

 

 

 『君がここまで彼女を気に入っているとは、正直驚きだよ』

 

 突如メイド長の耳元で囁き声が響いた。

 振り返ってもそこには誰もおらず、声だけがこだまする。

 暗黙の了解如くの無表情のまま驚きもせず、返答した。

 

 「盗み聞きとは趣味が悪いですよ。アレイスター様」

 『今更な回答だね。僕が常に滞空回線(アンダーライン)で監視しているのは知っているだろ?』

 「愚問でした。確かに今更ですね」

 『・・・・・・・・にしても、アイツは使えるのか?』

 「ご心配なく、私の教え子は必ずやアレイスター様のお役に立つでしょう」

 

 

 確かな確信をもってメイド長は言い切った。

 その返答にアレイスターは何も言わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




一巻終了。
予定通り早く終わりました。


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13話休日

 本日のメニューは研究で手が離せない修様のために食べやすいものを作ってまいりました。

 その名も「サンドイッチ」。英発音するなら「sandwich(サンドウィッチ)」。

 発明とは偉大です。

 この様な便利で食べやすく、栄養価が高い食べ物は中々ありません。

 他にも食べやすく栄養価が高い食べ物はたくさんありすが、私はサンドイッチを作ります。

 何故か?答えはわかりきっている。

 修様の好物がサンドイッチだからだ。

 これは推測なのですが、修様の尊敬する人ランキング。堂々の一位がサンドウィッチ伯爵なのでは?と、私は考えています。

 修様はサンドイッチを試食する際。

 見た目より味を重視する方なので、せっかく可愛らしく作ってもそこに対するリアクションはありません。

 しかし、そこで手を抜くようならメイドとは呼べません。

 味、見た目、栄養、盛り付け、さらには修様が食べる際の角度、手に取る際の順番を計算し、より食べやすいサンドイッチを実現しました。

 しかし、サンドイッチを食べる時は必ずサンドウィッチ伯爵の話をします。

 初めてサンドイッチを食べてくださった時の記憶は今でも鮮明に覚えています。

 あれは――――衝撃的でした。

 無表情。無口。が売りの修様がサンドイッチを口に含んだあの瞬間。

 表情はいつも通りなのに口が動く動く。

 

 

 

 『知ってるか瞳?世間一般にはサンドウィッチ伯爵と知られているがフルネームを知っている奴はごく僅かだ。正確にはサンドウィッチ伯ジョン・モンタギューだ。それに更に付け足すなら第4代サンドウィッチ伯爵ジョン・モンタギューと言う。元々サンドウィッチの名前の由来は、パンに挟んだ干し肉を片手にカード賭博に興じるサンドウィッチ伯の逸話は、当時のフランス人による随筆に紹介されたとされているが、所詮噂話に過ぎない。伯爵の伝記作家によると、海軍、政治、芸術と大忙しだったために、サンドイッチは、賭博台よりは執務の最中に仕事机で食されただろうとされている。それに、パンにいろいろな食品をはさんだ食べ物は、古来より存在している。ヨーロッパでもサンドイッチと呼ばれる以前から存在していたのが何よりの証拠だ。ちなみに伯爵にサンドイッチを教えたのは、グラウビュンデン共和国生まれの伯爵の義兄、ジェローム・ド・サリスだという説も有力で――――――――――』

 

 

 

 このままだと回想だけで終わってしまいそうなので中断させていただきます。

 備考ですが修様はサンドイッチだけではなく、興味のあるモノに対しては口が動く動く。

 それを持ち出したら日が暮れてしまうので今は遠慮しときましょう。

 それと、修様の前で『サンドイッチ』と発音してしまい、『サンドウィッチ』と発音しろと注意されたのもいい思い出です。

 

 (ああぁ、もっと叱られたい・・・・・・)

 

 しかし、仕事に失敗は許されない。

 今思えば、修様に仕えるようになって初めての失敗が『サンドイッチ』と『サンドウィッチ』の発音とは、嬉しいような悲しいような・・・・・・・・・・ちょっと複雑な気持ちです。

 

 

 「こちらです修様」

 「・・・・・ああ」

 

 ディスプレイに睨めっこしながら手だけをサンド()()ッチに伸ばし口に含む。

 今日はいつもと違い何も語らない。

 ただ黙々と食べ進める。

 十個もあったサンドウィッチはものの数分でなくなった。

 

 (こう見えて修様は意外と暴食です。動かない分、頭を使いになるのでお腹が空くのでしょう)

 

 しかし、今日は様子がおかしい。

 無表情。無口を売りにする修様でも、サンドウィッチの時は真逆になる修様が。

 今日は何も言わずただ食べただけ。

 

 (・・・・・失敗した?)

 

 持てる力を全てを使い、腕によりをかけて作ったのですが―――――失敗した?

 そんなはずわない――――――――計算に計算を重ね――――――――持てる技術を全て使い――――――――修様に――――――――この想いを――――――――・・・・・・・・・・・・・

 

 修様が手を止めてこちらを振り向く。

 当然の如く私は気が気ではない。

 数分。いや、数秒。たったそれだけ目を合わせただけなのに私には数時間に感じた。

 修様がまた視線をディスプレイに戻すと小さく。

 耳をすませないと聞こえないくらいに小さな声で呟いた。

 

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おいしかった」

 

 ―――――――私はこの声が聞きたかったのだ。

 

 「―――――はいっ!次はこれ以上のモノをご用意いたします!」

 

 

 メイドは今日も主人一筋なのであった。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 その頃、シークレットの面々は――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 「はっ!この俺相手にここまで粘れるとは思ってなかったぜ!」

 

 彼――――岩城紀陸は徐々にターゲットを追い込んでいた。

 

 「さあ!今こそを渡してやろう!!」

 

 相手は学園都市レベル5である紀陸と十五分間も交戦していた。

 

 「クククククク、ここに来てしくじったな!!逃げ回るのに集中しすぎて地形判断を誤ったな!!?」

 

 この先は行き止まり。

 しかも直線上の一本道になっている。

 

 「あとは銃口を野郎に向けてトリガー引くだけ・・・・・・・俺の勝ちだ」

 

 道に出た。

 相手は慌ててこちらに銃口を向けようとするが時すでに遅し。

 

 「ぶぁ~~かぁ~。気づくのが遅いんだよこの○ンカス野郎が!!」

 

 相手が振り向く前にトリガーを―――――

 "バン"

 撃たれたのは紀陸の方だった。

 

 「なにぃぃぃいいいいぃぃぃぃぃいい!!!!???##&$&&%%(&’)””!’%(」

 

 撃ったのは先程から追い駆け回していた奴ではなく――――――紀陸の遥か後方の屋上。

 そう、スナイパーだ。

 

 

 

 

 10000(スペッツ)  ―  9400(ブラック)

 

  勝利       敗退 

 

 

 

 

 「待ち伏せだとぉぉぉぉおおおおぉぉぉおおぉ!!!!??」

 

 紀陸はテレビ画面を睨みつける。

 

 「追い込んでいたのは俺ではなく、あいつらだったのか!!!」

 

 髪をクシャクシャにしながら悔しさのあまり叫び続ける。

 

 「クソッ!!地形判断を誤っていたのは俺の方だったか!?あそこの一本道はスナイパーが最も狙撃しやすいってことを忘れていたぜ!!マイナス100点!!」

 

 まだ一口もつけていないコカ・コーラを一気飲みする。

 コーラの甘味と刺激で思考を一度落ちつかせる。

 

 「――――――――ぷは~っ・・・・・・・・・・ごふっ・・・・・・・・・(涙)」

 

 ※想像にお任せします。

 

 コントローラーを握り直すとまた同じチームに対戦を申し込んでいた。

 

 「はっ!一度勝ったからって調子に乗るなよこの雑種が!同じスナイパーにやられる程の俺ではない!しかもビギナーだと?『Doctor』なんて名前にしやがって、博士なら博士らしく実験でもしてろ!!」

 

 特攻を仕掛けるがまたもやスナイパーにヘッドショット。

 

 「~~~~~~~~っ!!」

 

 

 

 

 

 第六位は今日も休日を満喫していた。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 「暇だな」

 「ひまだね」

 

 彼女たち――――神無城姉妹は文字通り暇を持て余していた。

 今日は仕事もなく、メイドの稽古もない。

 滅多にない休日。

 メイドの作法が面倒、サボりたいと普段から愚痴っている神無城紗夜であったが、実際に休日をもらうと何をすればいいのかわからなかった。

 

 「暇だな」

 「ひまだね」

 

 もう一度同じ言葉を繰り返す。

 灼熱の太陽は二人から体力と精神を奪い去っていく。

 紗夜と瑠璃は汗を拭いながら空を見上げる。

 そう、二人は街を歩き回っていた。

 仕事上。学園都市外や、学園都市内で暗躍することが多い二人だが、なにげにこうやって表立って街を歩くのは初めてだったりする。 

 だが―――――――――太陽の容赦のない輝きが二人からやる気、好奇心を蒸発させる。

 

 「暇だな」

 「ひまだね」

 

 本日三度目。

 時刻は午前十一時。

 しかも日曜日。

 人通りの多いこの時間帯、周りの学生達から注目されていた。

 それもそのはず、この日本において黒髪が当たり前。

 学園都市でもその基準は当てはまる。

 そんな中、二人は紅色。しかも、九歳ながら整った顔立ちは無意識のうちに男どもが振り向くほど。

 太陽の光により髪の色はより際立ち、妖艶な美しさを引き出していた。

 何より二人の服装―――――――そう、メイド服である。

 太陽と視線の四面楚歌。

 紗夜は鬱陶しそうにしながらはんば諦めていた。

 

 「おい瑠璃ぃ、何であたしらメイド服着てんだ?」

 「ひ、瞳さんが、『メイドにとってメイド服とは命である』って言って、私たちにメイド服しか渡してないからだよ~」

 「渡してないからだよ~っじゃねーよ!何でメイド服しか渡さないんだよ瞳の奴!」

 「き、紀陸さんよりに比べたら・・・・・・・・マシだと思うよ?」

 

 瞳はメイド服しか渡さないが、紀陸の場合は趣味に走り過ぎてヤバイものしか渡さない。

 例を挙げるなら、スク水(旧)。体操服(ブルマ)。メイド服(猫耳しっぽ有り)。魔法少女(なのフェイコスチューム)。賢者(ドラゴンクエスト)。などなど色々有り。最終的には紐なんてあったりする。

 どちらを着る?と、聞かれれば当然瞳のメイド服を選択するしかない。

 よって、二人の衣類ケースにはメイド服しかないわけだ。

 

 「しらねー相手にヘコヘコして何が楽しいんだ?メイドなんて嫌だー」

 「け、けど私たちにはソレしかないんだよ」

 「・・・・・・・まあな」

 「そ、それに、メイド服ばっかり着ているおかげで、今じゃあこれで当たり前って気がしない?」

 「まあなぁ~。こんな生活できるのも瞳のおかげだしな」

 「そ、そうだよ!私たちに服を渡してくれる瞳さんに感謝しなくちゃ」

 

 過去に――――――二人が瞳に出会うまで何があったかは分からないが、幸せとは程遠い環境で生活をしていたのは確かだろう。

 

 「・・・・・・・・・暑いなぁ~、瑠璃!どこでもいいからどっか入るぞ!」

 「ま、待ってよ~おねえちゃん」

 

 飲食店に疾風のごとく駆け出す紗夜はどこか楽しげで、瑠璃もそんな姉に笑っていた。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 同時刻、この人は――――――――

 

 

 「おっ!またまたワンショットワンキル。この手のゲームはやった事なかったけど案外簡単だったな」

 

 画面には

 

 

 10000(スペッツ)  ―  9400(ブラック)

 

  勝利       敗退 

 

 

 当然このプレイヤーは『スペッツ』の方である。

 

 「相手方で強プレイヤーはこの『Stone_King』だけだね。『ストーンキング』・・・・・・『石の王』とは中々のネーミングセンスだ」

 

 また同じ相手にヘッドショット。

 

 「悪くない作戦だが私には通じないんだよな」

 

 またまた同じ相手にヘッドショット。

 

 「ん~、悪くはないんだけどな・・・・・そんなんじゃ何時まで経っても私のことは殺せないぞ?」

 

 またまたまた同じ相手にヘッドショット。

 

 「ハハハハハハハハハハハハハハ、この手のゲーム中々楽しいじゃないか」

 

 ヘッドショット。ヘッドショット。ヘッドショット。ヘッドショット。ヘッドショット。ヘッドショット。ヘッドショット。ヘッドショット。ヘッドショット。ヘッドショット。ヘッドショット。ヘッドショット。ヘッドショット。ヘッドショット。―――――――

 

 彼の独占上。

 

 275キル  0デス

 

 と、他のプレイヤーからしたら「こいつチートじゃね?」と思われても仕方がない好成績っぷりである。

 

 「おっと、もうこんな時間か。休憩が一瞬で終わってしまたよ」

 

 言っているうちに扉が蹴り壊される。

 

 「超探しましたよ南博士。・・・・正直人探しの依頼なんて超初めてですよ」

 「これはこれはお嬢さん、丁度良かった。今から向かおうとしていた所だったんだよ」

 「・・・・・・・・・はぁ、超無駄骨ですね」

 「まあまあいいじゃないか。これで君は依頼は達成されたんだから喜ばしいことだろ?」

 「こんなのばかりだから嫌いなんですよね。・・・・・・・・・・これだから研究やら実験やらしている博士馬鹿は」

 「ん~~~~?何か言ったかな?」

 「いいから!超早くしてください!」

 「痛っ!人の背中を蹴るのはどうかと思うよ?」

 「南博士。貴方の体のことなんか超どうでもいいんでさっさと車に乗るです」

 「いたたたたっ!!乗るから!乗るから放してぇ~!」

 

 車に投げ込みと自動で扉は閉まり、そのまま研究所に向かうのであった。




 『超』の口調の時点で知っている方はいるとは思いますが、今はあえて名前を伏せておきました。
「シークレットカンケーなくね?」と思う方もいると思いますが、私個人がこのキャラが好きだから出しました!!!
 今回みたいに、「え、ここでお前くんの?」みたいなのがちょくちょくあると思いますので、よろしくお願いします。


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14話吸血殺し

 今日はなんていい天気なのでしょうか。

 この爽快感溢れる日差しが肌を照らし、そよ風が髪を揺らす。

 この科学が発展した学園都市に於いてもメイドを萌え属性の一つとして認識しているのが世の中の考えだろう。しかし大通りを歩く彼女はそんな部類の存在ではなかった。メイド喫茶などといったコスプレなどではなく、素人の目から見てもその堂々たる存在感は其処いらのメイドとは違う何かを感じ取っていた。

 

 しかし、歩くごとにチラつくスカートのスリットから覗ける黒いガーターベルトに目を奪われてしまうのは仕方がないことだと男共一同思うのであった。

 

 日差しを堪能しながら街を歩く瞳はこの時間を楽しんでいた。

 世間体ではとても暑い部類の日差しなのだろうが私には丁度良かった。

 私が何故この様な日向ぼっこみたいな事をしているかと言うと実は理由があるのです。

 

 修様に研究所を追い出されました。

 

 いえ、言い方が悪かったかもしれません。

 実際に修様に「出てけ」など言われたらこの首をくくっているところです。

 

 今は修様にとって大事な時なのです。

 そう、研究の成果の目処が立ったのです。

 そんな時こそお側に居たいのですが―――――――修様は意外と子供っぽいところがありまして、私を驚かかせ様と出来上がるまで見せようとしないのです。

 私は気にしないのですが、修様の気持ちを踏みにじってまでその場にとどまろうなどと思いません。

 

 よって今現在―――――――とても暇です。

 早くて三日。遅くても一週間は掛かります。

 その間に仕事でもあれば良かったのですが、そう都合よく行かないわけで・・・・・・・・。

 

 「このままただ歩くのもいいのですが……・・・・・やはり何もしないのには違和感がありますね」

 「独り言だだ漏れだぞ」

 「―――ッ!」

 

 囁やかれた声に対し振り返るように距離を取る。

 

 「・・・・・よく私の背後に忍び寄ることができましたね」

 「普通に近づいただけだよ。・・・・・・どこか調子でも悪いのか瞳?」

 「気安く名前で呼ばないで下さい」

 「人がせっかく心配してやってんのにそんな態度かよ・・・・・」

 「貴方こそどうしたのですか?このような場所で油を売っていい様な人でもないでしょうに」

 「そっくりそのまま返すぜ」

 

 私はこの男、垣根帝督(かきねていとく) が苦手です。

 何故かは分かりませんが、この男からは何かを感じ取ってしまう。

 

 「・・・・・・・・・失礼ですね。私はこの空間を楽しんでいたのです」

 「この空間って――――――――ただの大通りだろ」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ・・・・・・・・・・」

 「おい。そういうのは聴こえない様にやれよ。唯一こんな暑い所のどこがいいんだ?涼みに何処かのチェーン店に入ろうぜ」

 「貴方は何も分かっていませんね。私は学園都市の事を言ってるんです」

 「空間って、この学園都市の事を言ってたのか?瞳にとって学園都市は何処もかしこも憩の場ってか」

 「そうです。ですが一番落ち着く場所と聞かれれば勿論修様のお側に決まっております」

 「ハイハイソウデスカー」

 「・・・・・・・・・貴方から聞いといてその返事は何ですか」

 「アイツの事になるとテメーはアイツの事しか話さないだろ」

 「そんなの当たり前です。メイドたる者主人の事を語らないでどうします。それと、修様を『アイツ』呼ばわりなど例え貴方でも許しませんよ?」

 「皮肉のつもりで言ったんだがな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・たまには俺を見ろよ(ボソ)」

 「?。何か言いましたか?」

 「何でもねーよ・・・・・・・・それより暇なら何処かでお茶でもしないか?丁度近くにファーストフード店があることだし」

 「おごりですよ」

 「その返答。デートの誘いに乗ったでいいんだな?」

 「なっ!?何故貴方とデートなど!!」

 「言葉の綾だ。鵜呑みにするな」

 「・・・・・シェイク」

 「あん?」

 「シェイクで妥協しましょう」

 「そうこなくちゃ」

 

 瞳はデート(おごり)の誘いを受けることに。

 ファーストフード店でシェイクを受け取った瞳と帝督はそのまま席につこうとしたが店内にはスーツを着た十人近い人間が立っていた。

 瞳と男性は所属は違えど同じ暗部の存在。

 二人はすぐに異常に気がついた。

 

 (殺気が無い?いや、気配そのものが無い。まるで誰かに操られてるかの様な―――――――)

 

 二人はその『人間』が囲んでいる席から離れた席に座った。

 勿論。警戒を解かずに。

 

 「(チッ―――――せっかくのデートが台無しだ。ぶ殺してやろうか)」

 「(この様な所で『未元物質(ダークマター)』を使わないでください。後、これはデートではありません)」

 「(俺はそのつもりだ。そしてムカついた。このやっと手に入れた祝福を邪魔する奴は敵だ)」

 「(仕事以外でそう簡単に人前で能力を使用しないでください。貴方の能力は見た目自体派手なのですから)」

 「(わかったよ)」

 「(素直ですね。貴方らしくもない)」

 「(好きな女の言葉を無下にはできないだろ)」

 

 此れが苦手の理由。

 言わなくても分かると思うが、この男は私に好意を抱いている。

 異性からの好意など肉親からしか知らない瞳は毎度戸惑っていた。

 

 「(・・・・・・・・あ・・・・・あなたは、平気にそんな事言って恥ずかしくないんですか?)」

 「(恥かしいに決まってんだろ。正直今回のデートも断られると思ってたぞ)」

 「(デートではなく、貴方が奢ると言ったから来たまでです)」

 「(世間一般にはそれをデートって言うんだよ)」

 

 無視しましょう。うん。それがいい。

 会話に気を取られている間にスーツを着た人間は居なくなりましたし。

 先程の席には巫女服を着た少女が居なくなっており、その席にはインデックスと上条当麻が座っていた。

 もう一人居るようだが青髪とピアス以外目立った印象が無いので一般人だろう。

 それにしてもあの巫女服の少女。何処かで―――――――

 

 

 「ワイとしたことがこんな可愛いメイドの存在に気がつかへんとわ!!どこの喫茶店のメイドさんや!!?それと写真一枚いいですかいな!?」

 「ああ!?此奴は俺の女だ!どっか行きやがれ!」

 

 ―――――――まずこの状況をどうにかしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 同時刻。窓のないビルにて――――――――――――――

 その部屋には窓がない。

 ドアもなく。

 階段もなく。

 エレベーターも通路もない。

 建物として全く機能するはずのないビルは、大能力者(レベル4)である。空間移動(テレポート)がなければ出入する事もできない最硬(さいこう)の要塞だった。

 そんな、核シェルターを優に追い越す強度を誇るビルの中に、一人の魔術師が立っていた。

 名前はステイル=マグヌス。

 ルーン魔術を極め、特に炎の術式に長けた魔術師。

 弱冠十四歳の少年は 魔術師を殺すために魔術を極めた、例外中の例外なのだ。

 そんな彼は、『イギリス清教代表』という立場で、主義主張の違う『学園都市(にんげん)』と対話に来ているのだ。もっとも彼は何かの組織の代表として立つ者としては、人格に著しい欠陥がある人間なのだ。

 そんな彼の目の前には巨大なビーカーがあった。

 直径四メートル、全長十メートルを超える強化ガラスでできた円筒の器には、緑色の手術衣を着た人間が逆さに浮いていた。

 それは『人間』と表現するより他なかった。銀色の髪を持つ『人間』は男にも女にも見えて、大人にも子供にも見えて、聖人にも囚人にも見えた。

 『人間』としてあらゆる可能性を手に入れたか、『人間』としてあらゆる可能性を捨てたか。

 どちらにしても、それは『人間』以外に表現する言葉は存在しなかった。

 

 「ここに呼び出した理由はすでに分かっていると思うが―――――――」

 

 学園都市総括理事長。

 男にも女にも聞こえ、大人にも子供にも聞こえ、聖人にも囚人にも聞こえる声で。

 

 「―――――――まずい事になった」

 「吸血殺し(ディープラッド)、ですね」

 

 普段は敬語を使わないステイルだが、ここでは違った。

 それは『教会の代表』として立場から、ではない。

 一瞬でもアレイスターに敵意を感じられれば、その瞬間に八つ裂きにされる事が分かっているからだ。実際にステイルが敵意を抱いているかどうかは関係ない。誤解だろうが勘違いだろうが、アレイスターにそう思われただけでステイルの命運は尽きてしまうのだ。

 ここは敵の本拠地。

 ここは二三0万もの『超能力者』を操る場所なのだから。

 

 「ふむ―――――――能力者だけなら問題はない。あれは元々私が保有する超能力者の一つだ。この街で起きたこの住人の事件ならば、それを解決・隠蔽する手法など七万と六三二程度の手段は揃えてある―――――――」

 「……・・・・・」

 「―――――――問題なのは、この事件に本来立ち入ってはならない魔術師(きみたち)が関わった事だ」

 

 吸血殺し。出典は学園都市の書庫(バンク)ではなく英国図書館の記録より。その名の通り、いるかわからない『とある生き物』を殺すための能力と呼ばれる、それ。能力の実体は不明、真偽も不明。とにかく吸血殺しと呼ばれる少女がいるという、ただそれだけの話。

 その吸血殺しを保有する少女が、魔術師に監禁されている。

 

 「なるほど。それで例外たる私を呼んだというわけですか」

 ステイルは特に表情を変えず、事実を確認するぐらいの気持ちで言ってみた。

 つまりは、その例外こそがステイル=マグヌスだ。魔術師側の人間を科学側の能力者が叩くと問題がある。

 身内の恥を濯ぐ、という意味を含めれば、魔術師は教会の人間が倒さねばステイルの上司達は納得しない。

 

 『三沢塾(みさわじゅく)

 

 それが今回の戦場。

 ステイルは三沢塾の話を聞き、気になった点を質問した。

 

 「けど、何で『三沢塾』は吸血殺しを監禁したんでしょう?十六世紀のカルト教と同じく、カインの末裔に自ら身を差し出し不老不死となる事を目的とする教義とか?」

 「否。『三沢塾』は特に吸血殺しに執着は持たない。単に『この世に一つしかない、再現不能の能力者』であれば誰でも良かったようだ」

 「?」

 「学園都市における『序列(チカラ)』とは、『学力』と『異能力』の二種類によって分類される。そういう意味で吸血殺しを保管し、研究するのは意味ある事だろう。『限りなく珍しい能力を量産する事ができる』という触れ込みは、自身の平凡な能力に劣等感を持つ異能力者(レベル2)良能力者(レベル3)を釣るには良い出来かもしれない。……・・・・・まったく、一度発現した能力を別のモノに変更する事など脳を移植しても不可能だというのにな。とにかく希少価値がある、と認められれば話の種ぐらいにはなるだろう。幻想殺し(イマジンブレイカー)を始めとする『正体不明の能力者』はいくらでもいるし、『強力な力の持ち主ゆえに、誰も本気を出している姿を見た事のない能力者』などという種類も存在する」

 

 ともかく、吸血殺しが監禁されただけなら話は簡単だった。『街の中の内輪もめ』なら、アレイスターの言う通り七万と六三二程度の手段を使って学園都市が処理しただろう。

 問題はそこではない。

 処分される直前。その『三沢塾』に『外』から吸血殺し狙いの魔術師がやってきて、しかも『三沢塾』を破壊せずにそのまま乗っ取ってしまったというから話がややこしいのだ。

 処分にはシークレットが一枚噛んでいるのは極秘事項であるが。

 

 更にアレイスターは幻想殺しの少年を魔術師(ステイル)と共に行動しろと言ってきた。

 『歩く教会』でさえ右手で触れただけで粉々に砕いてしまう存在。魔術師との戦闘としてはこれ程絶大な力はだろう。

 しかしその、極めて稀有であるはずの幻想殺しを、アレイスターはぞんざいに扱う。

 まるで道を行く聖人に数々の試練を与えて鍛え上げるように。

 熱した鋼に重たい槌を打ち付け真の一刀を鍛え上げるように。

 

 「・・・・・・吸血殺し」

 

 ポツリと。ステイルは呟く。

 

 「吸血殺し。そんなものが、ここには本当に存在するんですか?もし仮に、存在するのであれば、それは―――――――」

 

 吸血殺し。そう呼ばれるからには、殺すべき『ある生き物』が居なくてはならない。つまり、吸血殺しを認めるという事は、『ある生き物』が存在する事を証明してしまう。

 魔術師としてステイルは噛み締めていた。

 魔力とは生命力のようなモノ。どれだけ道を極めた魔術師でも魔力の量は決まって限りがある。

 しかし、『ある生き物』はその限りかない。 

 『不老不死』などという馬鹿げた属性を持つ『その生き物』は、つまり無限の魔力を誇るのだ。

 

 カインの末裔――――――――――――――吸血鬼。

 

 それは絵本に出てくるような『十字架』や『陽の光』があれば大丈夫などという易しい生き物ではなく、それ単体が核爆弾に匹敵する『世界の危機』なのだ。

 

 ステイルはアレイスターとの会談を終えると『案内人』により外に帰還した。

 

 魔術師が消えた頃合いを見計らうかのように闇の中から一人のメイドが現れる。

 

 「魔術師相手に長話とは、どのような風の吹き回しですか?」

 「なに、久しぶりに長話がしたくなっただけだよ。それより君は吸血鬼の存在を信じるかい?」

 

 メイド長は一度考え込み様に瞑想し、アレイスターを見据えると口を開いた。

 

 「はい。存在します」

 

 ふむ。と、アレイスターは目の前のメイド長を興味深いとばかりに観察する。

 

 「それはどうしてだい?」

 「神が天使が存在し、神の力の一端をその身に宿す聖人が存在するなら、彼等が存在するのも道理かと」

 「『吸血鬼』ではなく『彼等』っか・・・・・・」

 

 此方の返答に対しメイド長は伏し目がちに口を閉ざす。

 

 「……・・・・・・・・分かってるよ。私から君の過去を詮索しないし、君も私の過去を詮索しない。これは私達の最初の約束であり、契約でもあるからね」

 

 

 アレイスターは過去の栄光、名誉を全て棄てた。

 

 『世界最高最強の魔術師』

 

 『伝説級の魔術師』

 

 現在の魔術師の五割近くがアレイスターに何らかの影響を受けていると言われながら、彼は魔術を捨てて科学に走った。

 その背景に何があったのか知る人は居ない。彼が学園都市の設立。いや、生命維持槽のビーカーに入る遥か昔から彼の隣にはメイドが居た。そんなメイドであっても彼が何故、魔術を捨ててまで科学に走ったのかは知らなかった。もしかしたらそこにも約束が絡んでいるのかもしれない。

 

 だからお互い詮索はしない。

 

 何も聞かない。

 

 今はただの主人とメイド。

 

 主従関係。

 

 そう、メイドだろうがメイド長だろうがやる事はただ一つ、――――――――――主人を守り。主人に仕える。

 

 これからもそれは変わらない。

 

 約束を誓ったあの時から―――――――――――――

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 思い出しました。あの巫女服の少女――――――『姫神秋沙(ひめがみあいさ)』は先日まで『三沢塾』に監禁されていた。

 学園都市にしても世界に50人しかいない貴重な『原石』を失うわけにも行かない。

 瞳――――――シークレットは他の暗部に情報が行き届く前に作戦を実行した。 

 しかし、シークレットの存在は秘匿中の秘匿。

 回収対象である姫神秋沙にもその存在を認識されてはならない。

 故に、姫神秋沙とは接触せずに帰還した。

 何故か?理由は簡単。自分達がやらなくても後から来る他の部隊が回収するからだ。

 『三沢塾』では強能力者(レベル3)大能力者(れべる4)など、少し邪魔な奴等を排除。

 もとい暗殺。

 あんな簡単な仕事は滅多にないくらいでした。

 

 

  ~粕谷瞳~

 姫神秋沙の近くの部屋で警報器を鳴らす。

 戦力温存のため強能力者、大能力者を後方に下がらせていたので、最初に駆け付けるのは主戦力。

 後は床にばらまいておいた紙を一斉に針地獄にする。

 終了です。

 

 

  ~岩城紀陸~

 前線のシェルター。(椅子、机、その他もろもろ)

 ドラム缶状の警備ロボット。(ただの警備ロボを前線に置くなよ)

 重機関銃(何故学園都市の銃ではなく外を持ち込んだ)

 姿を見せず、振動で「ドーン」。

 終わり。

 

 

  ~神無城紗夜~

 外で待機。

 逃がしたらよろしく。

 結局誰も来ず。

 暇。

 帰る。

 

 

  ~神無城瑠璃~

 暗殺むきではない為お留守番。  

 

 

 作戦は成功したはずでした。

 それがどうです。姫神秋沙を回収するはずが、魔術師の手により回収され、『三沢塾』乗っ取りなど余計ややこしいことになっているではありませんか。

 これだから下っ端は使えない。

 最後までシークレットがやっていればこの様な事態には。

 先程メイド長に再戦闘の許可を頂こうと思ったのですが・・・・・見事に許可できないと。

 理由は以下の通り、ローマ正教と必要悪の教会(ネセサリウス)がもう敵地(三沢塾)に攻撃を開始しているとか、これはもう科学側(こちら)の領分ではなく魔術側(オカルト)の領分なのだ。

 対魔術師と訓練されたシークレットだが、表立って動く事はできない。

 魔術師と魔術師の殺し合いにはそう簡単に科学側が割り込めるものではない。

 バレれば科学側と魔術側で戦争が起きてしまう。

 いや、逆なのかもしれない。

 

 

 

 メイド長――――――――――アレイスター様は戦争を起こそうとしているのかもしれない――――――――――

 

 

 

 ――――――――――いえ、考えすぎでしょう。

 

 

 その後、吸血殺しこと姫神秋沙は助け出され、今回の騒動は終幕した。




原作で言う二巻だったのですが、これで終了です。
ぶっちゃけますと、シークレットの面々が介入するところがない!!
このままでは上条さんの活躍を描写するしかない!(カキカキ)
ま、やってませんがw

 今回は瞳と垣根帝督を遭遇させて見ました。
何か・・・・・・・木原修より絡みやすいので書きやすかったです。
木原修一筋の瞳の心を垣根帝督は掴み取ることができるのか!!見所です。
 
 アレイスターとメイド長。今回はメイド長の過去に少し触れてみました。てか、そろそろメイド長の名前公開しろよと思っているかもしれませんが(そうでない方も)、お楽しみということでお待ちください。

 誤字、脱字、ありました申し訳ございません。
 ご感想。アドバイス等は感想にてお願いします。
 



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15話 幻想御手

 皆様お久しぶりです。namazです。私としてもこんなにも投稿が遅れるとは思いませんでした。すみません。本当は四月一日に投稿する予定だったのですが、大学で注文したパソコンがゴールデンウイーク明けに届くという事がありまして、そのおかげでこの一か月間はパソコン自体に触っていない状態でした(涙。もうあそこには注文しない)

 もうこの様な事がないようにして行きたいと思っておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。


 あと、今回の作品は14話前の話になりますので、そのことを考慮しつつ読んで下されば幸いです。


 『幻想御手(レベルアッパー)』事件

 

 

 ここ最近世間(学園都市)を騒がせているこの事件は主に学生の間、更に的を絞るなら無能力者(レベル0)低能力者(レベル1)異能力者(レベル2)の間で頻繁に起きている。

 

 何時、何処からかは特定はできないが『何』かをする事により、レベルが上がるという幻想御手。そんな夢物語のような幻想でも、好奇心あふれ十代の若者は危険を承知でその『何』かを求める。

 

 最初は学園都市のネット上で囁かれるただの都市伝説。それがどうだ?蓋を開ければ今では、一万人近い学生がその幻想御手の虜となっている。

 

 更には、レベルの急上昇に気を大きくして犯罪に走る者もおり、書庫(バンク)で能力やパーソナルデータなどを調べたりするにあたって、当て嵌らない。該当しないなどと、犯人特定が出来ないなどといった問題が上がり、更には幻想御手を使用した能力者が全員例外なく謎の意識不明を起こした。

 

 レベルが上がる夢の様な物。

 

 その『何』か。

 

 幻想御手の被害者の数を考えれば特定するのも時間の問題。

 

 後は待つだけ――――――――――

 

―――――――――――――そう、待つだけだった。

 

 残り三十秒で幻想御手の出処。

 

 十分で幻想御手を広めた製作者(犯人)を見つけ出すことが出来るはずだった。

 

 これで瞳様に褒めて貰えるはずだった。

 

 瞳様に一歩近づけると思った。

 

 そう、後は待つだけだったのに―――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 『御坂美琴』

 

 

 学園都市二三〇万人の能力者の頂点。

 

 学園都市に七人しかいない最高レベルの能力者。

 

 超能力者序列第三位。 

 

 電撃使い(エレクトロマスター)

 

 

 

 

 

 

 先を越されてしまった。

 

 こんな天才(やつ)なんかに。

 

 だけど、仕方無いのかもしれない。

 

 

 

 『凡人は天才には勝てない』 

 

 

 私はこの短い生の中でそれを理解した。

 

 だからこそ頑張った。

 

 だからこそ努力した。

 

 だからこそ―――――――――勝ちたいと思った。

 

 

 

 「はぁ・・・・・・・・・・もっと頑張らないと・・・・・・・・・・でぇす………」 

 

 

 

  

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 多重能力(デュアルスキル)いや、木山春生の言葉を借りるなら多才能力(マルチスキル)だったか。

 

 

 『水』 『火』 『雷』 『念動力』 『空間移動』 『重力』―――――――――――――

 

 これだけ複数に能力を同時に扱う事が出来るのは、単に木山春生が一万の脳を統べる事が出来るからだ。

 

 『水』を投擲し、『火』で破壊し、『雷』で電撃を反らし、『念動力』で物理攻撃を防ぎ、『空間移動』で足場を崩し、『重力』で爆発。

 

 御坂美琴は放たれたアルミ缶が爆発範囲に侵入する前に電撃で迎撃していた。

 どれだけ不条理な相手だろうと、学園都市の頂点。

 

七人の中で第三位の超能力者である美琴には、不条理に勝る力があった。電撃使いは常に体から電磁波を放出している。学園都市に七人しかいない超能力者第三位である御坂美琴は二三〇万人の頂点の一人。

 

電撃使い(エレクトロマスター)は強力な電磁波を常に体から放出している。

 

磁力線が目視できるなど電磁気関連においては高い知覚能力も有し、AIM拡散力場として常に周囲に放出している微弱な電磁波からの反射波を感知する事で周囲の空間を把握するなど、レーダーのような機能も有している。

 

 故に死角、背後からのアルミ缶(爆弾)に即座に反応。

 

 瓦礫で爆風を防ぎ、油断した木山春生に対し零距離の電撃攻撃。

 

 木山春生は反撃に転じることなく地に伏した。

 

 しかし、零距離からの電撃により、偶然にも電気信号の回線が生じて木山の記憶を垣間見る―――――――――――

 

 

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 とある研究施設。

 

 

 晴天下。寒くもなく暑くもない、どちらかといえば暑い方だろう。だが、施設内は当然冷房が効いているのでどちらかといえば肌寒い。まあ、科学者である彼女には丁度いい環境であった。

 

 外―――――と言っても研究施設内の中庭のグランドなのだが、子供たちの楽しい笑い声が窓越しからでも聞こえた。

 

 

 「失礼します」

 

 

 ある人物に呼ばれた木山は部屋にはいるなり最低限の挨拶を済ませる。本当なら今すぐにでも研究に没頭したい木山だが、呼んだ人物が問題だった。

 

 木山春生は今回の実験・研究の指示をしている人物、もとい上司に呼ばれたのだ。

 

 何か私はミスをおかしてしまったのか?

 それとも、現場移動?

 

 研究者として優秀な木山だったが、この様に上司直々に、しかも自分だけ呼ばれるのは初めてだったりする。

 

 内心気落ちしつつも、普段から愛想もなく落ち込んでいるのか悲しんでいるのかビミョーな表情をしているおかげ(?)で、今もそんな胸の内を悟られずにいた。

 

  

 「おお、来てくれたか。早速だが実験を成功させるために君にある事をやってもらいたい」 

 

 

 話の仮定をすっ飛ばし結果だけを伝えるこの物言い、実に研究者らしいと思った。実際、分かりきった事をグダグダ言われるのは疲れるのでこの方が楽なのは確かだ。

 

 

 「やってもらいたい事ですか?」

 

 「君には――――――――教師をやって貰いたい」

 

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

 

 

 流石の木山もこれには言葉が詰まった。

 

 

 「私が教師に?何かの冗談ですか?」

 

 

 どんな結果だけを伝えられてもそれを理解できる脳を持っているつもりだった木山だったが、この結果を導きだした仮定を聞かずにはいられなかった。

 

 

 「ん――――――――いやいや。君は確か教員免許を持っていたよね?なら教鞭を取っても何もおかしくはないじゃないか木山君」

 

 

 いやいや。その考えはおかしいのでは?

 

 

 「あれは・・・・・・・・・取得単位で取れたからついでに……・・・・・・・・何より今は研究に専念したいのですが」

 「何事も経験だよ木山君――――――」

 

 

 子供の様に椅子でくるくる回りながら聞く耳ありませんとアピールする博士にたいし、若干イライラしつつ研究に専念したいと訴える。

 

 

 「まあ聞きたまえ、研究から離れろと言っているわけではないよ。それどころか統括理事会肝入りの実験を任せたいと思っているんだ」

 「!?。本当ですか!」

 

 

 確かに喜ばしい。しかし、それと教師がどう関係するのか未だに分からないでいた。

 

 博士は窓越しから外で遊んでいる子供たちを眺めながら。

 

 

 「表の子供達・・・・・・彼らは『置き去り(チャイルドエラー)』と言ってね。何らかの事情で学園都市に捨てられた身寄りのない子供達だ。 そして彼らが今回の実験の被験者であり、君が担当する生徒になる」

 

 「ッ!」

 

 「実験を成功させるには被験者の詳細な成長データを取り、細心の注意を払って調整を行う必要がある。だったら担任として直接受け持った方が手間が省けるでしょ?」

 

 「それは・・・・・・・・・そうかもしれませんが・・・・・・・・・・」

 

 「何より君しか教員免許を持ってないから決定事項なんだけどね」

 

 「……・・・・・・わかりました」

 

 

 正に決定事項とはこの事なのだろう。目の前の博士、もとい上司には何を言っても意味がないらしい。不本意だが教師をやるしかないようだ。

 

 

 顔に出さない溜め息をついていると、コンコンとノック音が響き渡る。

 

 

 視線をやると一人の子供がいた。 

 この研究施設では置き去りをたくさん見かけるので別に子供に出会っても不思議ではない。しかし、出会った場所が問題だった。 

 

 この研究施設内において、最も厳重な警備がされているのは実験所・研究資料がある区画だが、その次に厳重なのは、今私がいるこの部屋である。

 

 限られたIDでしか出入り出来ないこの部屋に一体何の用なのか?そもそもどうやって入ってきたのか?

 

 眼科に行けばよく目にする絹状の眼帯を左目に着けており、子供ながら整った顔立ちがより一層ミステリアスに感じた 

 

 何よりその子供の服装がメイド服であることに疑問を覚えた。

 

 

 「失礼します――――――――――お話し中申し訳ございません。終わり次第n「退室しようとしないでちゃっちゃと要件を済ませなさい。木山君との話は丁度終わったところだよ」(ペコッ)申し訳ございません幻生様。午後一時から開始する会議に現れないものなのでお迎えに参りました」 

 

 「もうそんな時間か。いやいやすまない。木山君との会話が面白くてね」

 

 

 博士とメイド(?)の関係がいまいち掴めずにいる木山はメイド―――――――彼女の瞳を凝視していた。

 

 学園都市では珍しい深紅色の瞳。その瞳は私がまるで存在していないかのように捉えていた。

 

 いや、そもそも存在していないのだから捉えるという表現はおかしいのだが。

 

 私はこの子供とは思えない瞳に純粋な恐怖を覚えた。  

 

 身長からおそらく置き去りとそこまで年が離れていないであろう彼女は、佇まい、口調、眼つき、全てに置いて子供らしくなかった。

 

 

 「君は一体・・・・・・・・・・・・・・・・?」

 

 「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 彼女は何も聞こえていないかのように博士を見つめる。

 

 

 「君は何者なんだ?」

 

 「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 彼女は何も聞こえていないかのように博士を見つめる。

 

 

 「・・・・・・・・君は・・・・・・・・はぁ、聞く耳なしか」

 

 「はははははははははは。木山君は面白いね。 瞳、木山君は優秀な科学者だが、今回の教師の仕事は初めてらしく非常に困っている。なので、関係者として木山君をサポートしてくれ」

 

 「わかりました幻生様。—————————木山博士。いえ、木山先生。関係者の一人として貴方を全力でサポートいたします」

 

 

 彼女の瞳は私の存在をしっかり認識し、此方に笑顔を向けながら礼儀正しく頭を下げる。

 博士の一言でここまで態度が変化する彼女に突っ込みをいれたがったが何とか我慢する。

 

 (私は大人だ。一々子供の態度の変化に突っ掛かっていたらきりがないぞ)

 

 頭の中で自分に言い聞かせ、落ち着いた木山は瞳と軽い挨拶をすますと部屋を退室し、そのまま準備に取り掛かるのであった。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 『子供は嫌いだ』

 

 『騒がしいし』

 

 『デリカシーがないし』

 

 『失礼だし』

 

 『悪戯するし』

 

 『論理的じゃないし』

 

 『なれなれしいし』

 

 『すぐに懐いてくるし』

 

 

 

 最初は実験を成功させるまでの辛抱だと思った。

 

 実際コケにされた回数は一度や二度ではない。

 

 

 子供たちの健康を管理し。

 

 子供たちに勉強を教え。

 

 子供たちと遊んだりした。

 

 困っていれば相談相手になったり。

 

 一人一人とたくさん触れ合った。

 

 

 

 月に一度、瞳は珍しいお菓子を持って此処を訪れる。そのせいか、瞳はすっかり子供たちからお姉ちゃんと懐かれ、一緒に遊んだり。

 

 

 この前なんて、博士の親戚の子供が此処を訪ねて来た時は正直焦りはしたが、最終的には此処の子供と友達同士になり、今では暇があればちょくちょく遊びに来る程よく此処を訪れる。

 

 

 

 

 こんな生活が日常化してしまったせいか、研究の時間がなくなってしまった――――――――――本当にいい迷惑だ。

 

 

 だけど何時からだろうか………・・・・・・()()()()()()()()()()()()()()()()()()・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『AIM拡散力場制御実験』

 

 長い期間をかけて何度も計画を繰り返し準備してきた。

 

 何も問題はない。

 

 今日の実験には瞳も見学に来ている。

 

 まあ博士の付き人(メイド)なのだから当然か。

 

 ここ(実験室)に入る前に瞳が、「実験が終わったら皆さんに私の手作りお菓子をごちそうします」と言ったら、瞳の手作りお菓子が大好きな絆理が一番テンションが高かったな。

 

 それに、実験といっても一時間も掛からない。

 

 最終調整を合わせてもたった二時間で終わる。

 

 その後は、皆で今日の成功を祝おう。

 

 成功祝いの瞳の手作りお菓子を食べながら皆で楽しく過ごそう。

 

 

 

 

 「センセーの事信じてるもん!怖くないよ」

 

 

 

 

 この感覚を忘れないために———————

 

 そお……………実験が終了したら私が先生をする意味も無くなるのだから—————————————————―————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『   

 

             ビーッ

 

 

   …………のドーパミン値低下中……………………――――――――――――

 

 

 

  ビーッ            

 

 ――――――――――――――――――――――――抗コリン剤投写しても効果ありません

 

 

 

             ビーッ

 

     広範囲熱傷による低容量性ショックが・……………………………………………

 

 

                         ビーッ

 

 ―――――乳酸リンゲル液輸液急げ――――――――       

 

 

         ビーッ

 

 

 

 

               ………………無理です!これ以上は………………

ビーッ 

 

             ビーッ

 

                                                                   ビーッ              ビーッ       

 

                                       』

 

 

 

 

 

 

 

 

 「早く病院に連絡を………!」

 

 

 

 そうだ・…………早く病院へ・…………

 

 

 

 「あーー、いいからいいから。浮足立ってないでデータをちゃんと集めなさい」

 

 

 

 病院へ・………治療を………

 

 

 

 「ほほう!これはこれは・………この実験は所内に緘口令を布く、実験はつつがなく終了した。君達は何も見なかったいいね?」

 

 「は……はい」

 

 

 

 そんなことより・………治療・………

 

 

 

 「木山君よくやってくれた。彼らには気の毒だが科学の発展に犠牲はつきものだ。今回の事故は気にしなくていい。()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 ・……………………・…………

 

 

 

 「じゃ、あとはよろしくー」

 

 

 

 立ち去る博士など眼中になかった。

 

 

 

 子供たちは救命装置と酸素マスクを着けられ次々とタンカで運ばれて行く。 

 

 

 

 急いで運ばれて行く子供たちを確認しに行ったが、状況は絶命的だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こんな・…………こんな……………こんな…………こんな……………

 

 

 「木山先生、いえ、木山博士が気に病む必要はありません。おきてしまったことは仕方がないのですから」

 

 

 「ひと・・・・・・・・み?しかし、これは・・・・・・・・・」

 

 

 「・・・・・・・・確かに用意したお菓子は無駄になりました・・・・・・・しかし、それ以上の成果は得られました」

 

 

 「せい………か………だと?」

 

 

 こんな結果の何に成果があったのか分からなかった。結果だけを見れば実験は失敗。実験に協力してくれた子供たちは今生死の境にいる。

 

 

 大失敗だ。成果などない。

 

 

 「成果ですよ木山博士。『AIM拡散力場制御実験』が、失敗により『暴走能力の実験』に変わっただけなんですから。これを成功と言わず何と言うのですか?」

 

 

 「きみは………こどもたちを…………絆理の姿をみたのだろ?」

 

 

 何故そんな事が言える?あの子たちは君を実の姉のように慕っていたではないか。

 

 

 「絆理の事は確かに残念です。私の手作りお菓子の味の感想を聞く相手が居なくなってしまいましたし」

 

 

 「………かんそう?きみはなにをいって・・・・・・・・」

 

 

 「しかし、それ以上に学園都市のお荷物である『置き去り』が幻生様の実験に貢献できた事が嬉しく思っております。絆理は科学の発展のために、幻生様の実験に貢献できたのですから本望でしょう」

 

 

 この瞳だ。もうこの瞳にはあの子たちは存在しない。

 

 

 「なら・・…………君にとって私とは何なのだ?」

 

 

 瞳は顔を傾げながら分からないといった表情をする。

 

 

 「?。木山博士は木山博士ですよ。幻生様からは優秀な科学者だと伺っております。だからこそ実験体(子供たち)を自身で管理していたのでは?」

 

 

 その言葉により木山の思考は真っ白になった。

 

 

 だが、思考の代わりに胸の内から"ある感情が"込み上げる。

 

 

 その感情は胸の内には止まらず、喉まで込み上げてきた時—————————————

 

 

 Piiiiiiiiiiiiiiiii

 

 

 瞳はポケットからPDAを取り出すとそのまま通話する。

 

 

 「はい…………病理さまでしたか、要件の程は?・…………・今からですか?・…………いえ、ただ突然だだったので……………・……週一回に行っていた注射を週三回にですか?・…………いえ、問題ありません。では、今すぐ向かいますので」

 

 

 話を終えた瞳はPDAを切るとそのまま出口まで歩き出す。その途中で此方に振り向き—————

 

 

 「では、次の仕事が入りましたので今日はもう帰らせていただきます。木山先生には今後とも期待しております。また会う事がありましたらよろしくお願いします」

 

 

 後ろ姿が消えても私は何も言えなかった。

 

 

 声も上げず、涙も流さず、ただきつく閉じられた口から一滴の雫が流れ出た—————————————— 

 

 

 

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  木原修研究室(ラボ)

 

 

 

 

 

 「テレスティーナ様が"『能力体結晶』を完成させるため邪魔になりそうな那由他様を何とかして足止めしろ"ですか」

 

 「ああ、それが今回の仕事だ」

 

 

 木原修は今回の仕事を告げた。そもそも何故科学者である彼が今回の仕事を告げるのか、それは今回の仕事の依頼者が彼だからだ。

 

 

 「何故修様がテレスティーナ様の実験の手助けを?」

 

 

 目の前の主人が誰かを手助けをするなどありえないと知っている瞳はその真意を聞いた。

 

 

 「・………・なに、科学者として前から『能力体結晶』には少し興味があってね。テレスティーナには是非とも成功させて欲しいんだ」

 

 「分かりました。今から取り掛からせていただきます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「那由他様お久しぶりです。あの実験報告以来ですね(ニコッ)」

 

 「…………久しぶり、瞳お姉さん」

 

 

 ・・・・・・・・あの実験以降。那由他様は私の事を毛嫌いしている様子。何を言っても軽い返事しか返ってきません(涙)

 

 「那由他様、今から風紀委員(ジャッジメント)のお仕事でしたね。私もご同行・・・・・・・」

 

 「ついてこなくていいよ」

 

 「あ…………」

 

 

 那由他様は私を置いてさっさと行ってしまう。しかし、そこで諦めればメイドの名折れ。修様からいただいたこの仕事を完遂してみせる!

 

 しかしながら那由他様は私に「ついてこなくていいよ」と言った。この言葉を無視してまた声をかければ私は命令無視をした事になる。私はどうすれば———————————

 

いや、那由他様は私に「ついてこなくていいよ」と言った。そう、私に『ついてくるな』と言ったのだ。なら話は簡単だ。

 

 ついていかなければいい。そう、逆に誘導すればいいのだ。

 

 考えが纏まったら即実行するのがメイドという者。

 

 まず、風紀委員とはなにか?一言で言ってしまえば「治安を守る機関」。

 

 那由他様が何故風紀委員にいるのか?一言で言ってしまえば「超能力者と戦うため」。

 

 更に言えば、超能力者に勝つ事により自信を超能力者と認めさせようとしている。

 

 おそらくその原因はあの『置き去り』達にあるものと推測します。

  

 何故そんな事が分かるのか?メイドの観察力と女の勘は伊達ではないという事です。

 

 では早速付近に超能力者がないか『視』るとします。

 

 

 とは言え、超能力者を見つけてもその超能力者が治安を破るような行いをしなければ風紀委員は手出しできない。今すぐその様な好条件の、しかも七人しかいない超能力者となるとそう簡単には—————————……・・早速一人だけその条件に該当する超能力者を発見。()つけたその超能力者の名前は『御坂美琴』。

 

 

 まさかこんなに早く見つかるとは正直予想外です。 

 

 

 例の公園に向かっている御坂美琴を絶好のターゲットと捉えた瞳はPDAを数秒間操作するとまた電源を落としポケットにしまった。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――― 

 

 

 

 

 

 

 公園から二〇メートル離れた所に私はいます。現在公園では那由他様が()()にも超能力者の御坂美琴を発見し、そしてまたもや()()にその御坂美琴が自動販売機にキックを入れる場面に遭遇。そうやって正当な理由を持って那由他様を戦わせる事に成功しましたが………流石は超能力者第三位。那由他様相手に手加減してあそこまで戦えるとは。

 

 

 

 私がPDAを使い行った事は実に簡単な事だ。風紀委員の支部に公園で事件発生のメールを送る。そして、シークレットの権限などを使いその公園の近くにいた那由他様にすぐ現場に向かうよう連絡させるように操作する。

 

 後はタイミングだが、これは失敗すればメイドとは名乗れません。

 

 那由他様から公園の距離。

 

 那由他様が公園に向かうルート。

 

 那由他様の歩行速度。

 

 そして、御坂美琴が自動販売機を蹴る時間帯を表情・疲れ・自動販売機との距離感から計算。

 

 

 これらを計算し実行した結果見事に成功。

 

 

 

 まあ、メイドである瞳は木原一族全員の身体データを記憶しているのでそう難しいことではないが。

 

 

 

 

 しかし、ここで新たに問題が発生。私の本来の任務は"能力体結晶』を完成させるため邪魔になりそうな那由他様を何とかして足止めしろ"なのですが、あの御坂美琴が風紀委員を一週間以上の怪我をさせるとは考えられない。いや、可能性が低すぎる。

 

 しかし、ふふふ———————この場合天は我に味方したと言うのでしょうか。あたりを視ていた目玉の一つが超能力者第七位を発見。

 

 何の因果か、那由他様を無視してそのまま第三位と第七位の喧嘩に発展。

 

 そこに無理して入ろうとした那由他様は全身を損傷。

 

 

 

 そして、今—————————————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「那由他様をあの場で助けていただきありがとうございます」

 

 「!!ッ何者だ」

 

 「これは失礼しました。私としたことが・……私はただの通りすがりのメイド・・・・・・・・と、普段なら名乗るところなのですが、那由他様を助けていただいた方にその様な失礼な物言いはメイドの恥です。 私は木原那由他様にお仕えるメイド—————粕谷瞳と申します」

 

 

 目の前の女性は黒を特徴としたシンプルなスーツ(勿論ズボンではなくスカート)を着ており、そしてこれまたシンプルに真面目な秘書が付けていそうな黒メガネ。髪も櫛でそのまま下したふうと『規則厳守』の言葉がよく似合いそうな女性だった。

 

 その女性の背中には那由他様が居心地良さそうに寝ている。

 

 

 「この子の保護者の様な者と考えていいのか?」

 

 「はい。ここまで運んでいただきあり———「礼はいいからこの子を病院まで行って連れてってくれないか?このまま私が連れていってもいいのだが」申し訳ございません。では————————」

 

 

 那由他様を起こさないように自身の背中に乗せるともう一度その寝顔を確認し、女性に目を向ける。

 

 

 「何か?」

 

 「いえ………この様に安心し、年相応な幸せそうな寝顔を見たのは初めてだったもので……私もメイドとしてまだまだ未熟ですね………」

 

 「その子はまだ子供だ。辛い事を、悲しい事を抑え込んで、まったく………子供なら子供らしく大人にたよればいいものを・・・・・・・・だが、粕谷さんのような存在がいるなら大丈夫。その子をメイドとしてではなく、家族として大事にしてください」

 

 「・……・はい。ご教授ありがとうございます」

 

 

 もう一度挨拶をかわすとそのまま静かに那由他を連れて木原の治療所(研究所)に足を向けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 テレスティーナ様の『能力体結晶』の材料は例の『置き去り』。那由他様には申し訳ありませんが、これも木原のためです。

 

 






 原作でも数少ない木原関係の実験だったのでやらせていただきました。

 木山の心情と共に、瞳の心情のギャップの表現はどうでした?

 緊迫感をもっと出したかったのですが、私にはそんな技術がなく、こんな完成度の低い作品になってしまいました。

 もっと練習しなくては!


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16話見習いメイドの仕事

長らくお待ちしました。どうもnamaZsです。
最近身の回りが忙しく、更に五月病(風邪)に感染してしまい遅れてしまいました。
正直この様な作品を見て下さっている皆様には感謝しきれない程感謝しております。









 神無城紗夜は一人、第四学区に来ていた。

 紗夜が外に出れるのは仕事の時か瞳が忙しい時にしかできない。

 後者だとすれば瑠璃と一緒ではない時点で違う。

 なら前者の仕事という事になるのだが、紗夜は表情がすぐれないでいた。

 

 いつも通りのメイド服、瞳や瑠璃との違いといえば半袖とミニスカートというだけ普通のメイド服。

 

 午前10時平日。学生ばかりの学園都市でもこの時間帯、人が多く集まるところには暇を持て余した奴がいてもおかしくはない。紗夜を珍しがって見ている人がチラホラいる。

 

 普段の紗夜ならその類稀な獣の様な感覚からその視線を鬱陶しく感じただろう。しかし、今の紗夜はそんな視線さえも気付かない程焦っていた。

 

 

 紗夜の右手には何か書き写した紙のメモ。左手には紗夜が持つには少し大きいくらいの買い物袋。

 

 そしてこの第四学区は食品関連の施設が多く並ぶ学区として知られている。

 

 

 

 紗矢はメモと睨めっこしながら自分の現在地と照らし合わせていた。周りをキョロキョロ見渡しまたメモを見る。

 

 紗夜は瞳から一人で買い物をする様にと言われこの第四学区に一人で来た。そして—————————迷子だった。

 

 

 (ど、どうしよう・……………どこだろここ)

 

 

 いつもどこかに行くときは妹の瑠璃が一緒だった。その瑠璃は今はいない。瞳に言い渡された仕事は至極単純—————『一人でお遣いである』

 

 今回の仕事は第四学区まで行きお昼に食べる食材を買う事。

 

 タイムリミットは午前零時。食材はメモに書いてあるものを買えばいいだけの簡単な仕事。

 

 そう、簡単な仕事だった。

 

 

 (落ち着けあたし…………まだ時間はあるんだからメモと照らし合わせて行けばそのうち見つかるはずさ)

 

 

 

 

 

 ~一時間後~

 

 

 「全然見つかんねー!!何だよこのメモに書いてある地図は!!分かりにくいんだよー!!!」

 

 

 叫んだ所でこの状況が打開できるわけでもなく、息を整えながらこれからどうすべきか考えた。

 

 

 (今こそ冷静に考える時だあたし………残り時間は一時間を切ってる。このままでは食材を買うどころか、目的の食材が販売している店自体に付けるか怪しい)

 

 慣れない思考回路までフル稼働し、一生懸命考えるがいい案が出てこない。

 

 そもそも何であたしが買い物をしてるんだと、仕事というのを忘れ真剣に考えだす。 

 

 目元が熱くなるのを感じつつ帰ったら絶対に瞳に文句を言ってやると心に誓う。

 

 そうこう悩んでいると肩をトントン叩かれた。

 

 

 「ふぁああああああ!!!??」

 

 

 声にならない声を上げ、肩を叩いた相手に距離をとった。

 

 この距離まで近づかれた自分を失態した。これが実戦なら今ので確実に死んでいた。

 

 

 「おっと……これは失礼した。見るからに困っている様に見えたので同じメイドの(よしみ)として助け舟をだそうとしたんだが・……迷惑だったか?」

 

 

 肩を叩いた相手は何とメイドだった(人の事は言えないが)しかも自分の着ているエプロンドレスをモチーフにしたシンプルなメイド服ではなく、これまた派手な黄色をあしらったメイド服を着ており、更にはウサギの形をした名札(?)をスカートに貼り付けた。

 

 こんなメイド服もあるんだなと関心しつつ、こんなメイド服を着た自分の姿を想像したら確実に瞳にしごかれる(よくて半殺し)未来しか見えてこないので頭の中から振り払った。

 

 

 「ん?さっきから私が身に着けているメイド服を凝視しているが・……着てみたいのか?」

 

 「着たくねーよ!」

 

 

 相手の一言により、またこんなメイド服を着た自分を想像してしまい、今度は笑顔で(目は笑ってはいない)チェーンソーのエンジン音を鳴り響かせながら迫ってくる瞳を想像してしまい背中にやな汗が流れるのであった。

 

 

 「初対面の相手に此処までハッキリ断られるとは正直ショックだ」 

 

 

 なんて言いつつ笑うのを我慢するかのように口元を手で押さえるその表情は、自身の服装(メイド服)を否定されて落ち込んでいるのではなく、自身の服装を否定されて喜んでいる様に見えた。

 

 瞳の様に相手を視ただけである程度の感情を読み解く観察力など無い紗夜だが、この年齢で様々な死闘を経験し身に着けた"勘"により、目の前の相手は自分とは相容れない感性を持っていると感じ取った。

 

 

 「な、何者だテメェー」

 

 

 紗夜の性格上こんな不審者はさっさと無視して仕事に取り掛かる所だが、目的地の場所が分からず、タイムリミットが迫っている現状ではこのヘンテコメイドを当てにするしかない、何より紗夜の中では メイド=同乗者 の構図が出来ているため、どこの部隊だ?の意味も込めの質問をしたのだが、学園都市の闇を知らない一般人であるメイドがそんな意図を知るはずもなく。

 

 

 「この場合名乗るならまず自分からと言うべきなのかな?だが、見ていた限り一時間くらいここらをさ迷い、今にも泣きそうな顔をしている子供相手にいささかそれは大人げないかな、本当に泣き出したらプライドが折れかねない………私は雲川鞠亜という」  

 

 

 他者との関係を築いたことのない紗夜は最初は自己紹介と分からなかった。相手—————雲川鞠亜は自分の名前を提示した。なら自分も名前を言うべきか?けど自己紹介って何を言えばいいのか分からなかった。てか、暗部なんだし自己紹介なんてしていいのか?と考えていると雲川鞠亜が「挨拶も出来ないのか?全くこれだから()()は」と、子供の部分をワザとらしく大きく協調する言い方にムカついた紗夜は。

 

 

 「あたしは子供じゃない!!神無城紗夜って名前があるんだ!!てか、泣かねーし!!」

 

 「神無城紗夜だね。んじゃ紗夜と呼ばせてもらおう」

 

 「何でお前に下の名前で呼ばれなきゃいけねーんだよ!」

 

 「お前じゃなくて雲川鞠亜だ。私は君の事を紗夜と呼ぶから君は私の事を鞠亜と呼んでくれ」

 

 

 鞠亜はドヤ顔で言った。

 イラッときた紗夜は回し蹴りを放ったが躱されまたドヤ顔された。

 

 

 「ふかぁーーーーーー!!!」

 

 「少しは落ち着いたらどうだ。見たところ買い物に行く最中だと思うのだが………時間は大丈夫か?」

 

 

 その一言に我に返った紗夜は。

 

 

 「そ、そうだよ……早くしないと「おーーーいこんな所に居たか鞠亜ー」瞳に———(ぶつぶつ)」

 

 「ん?舞夏、どうして此処に?」

 

 「どうしたもこうしたもないぞー鞠亜。いきなり居なくなって探したんだぞー」

 

 「それはすまない事をした」

 

 「それはいいとして……先ほどからぶつぶつ呟いているこの小っちゃいメイドはなんなんだ?」

 

 「あーーーーっなに、神無城紗夜と言ってな、紗矢と呼んでやってくれ。どうやら迷子の様なので声をかけていた所だ」

 

 「ふーん、そうなのかー」

 

 「………12時まで残り40分…帰る「おーい」距離を考えるなら残り「聞いてるのかー」時間は32分……どこの部隊かはわからねーがこいつ等に聞くし「おおおおおおーーーーーいいい」うっさいな!今打開策考えてるんだからじゃますんな!!」

 

 「やっと反応してくれたねー。私は土御門舞夏。気軽に舞夏と呼んでくれたまえー」

 

 「うっとーしいなお前!清掃ロボの上でくるくる回んな!!」 

 

 「そうイライラしてもいいアイディアなんて思いつかないよー。これ読んで少しは冷静になりなよ」

 

 

 とてもいい笑みで渡された表紙が分からない雑誌くらいの大きさの本を渡された紗夜は乱暴にそれを舞夏の手から取る。その瞬間の鞠亜の「あ」っとした表情に気付かずにそのまま適当なページを開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 "ボン"

 

 

 

 実際そんな音は聞こえないが聞こえたと錯覚するほど紗夜の顔は紅色の髪と見分けがつかない程赤くしていた。耳まで真っ赤に染めた紗夜はフリーズしたかのように固まり、瞳も見開いたまま固まっていた。よく見ると本を持っている両手が僅かに震えているがそれ以外のアクションが無かった。

 

 

 「………おい舞夏、どうしてくれる」

 

 「それだけこの作品が良かったわけだねー」

 

 「そうじゃないだろ!?なに子供にR‐18の漫画読ませてるんだよ!!??」

 

 「えー、それを言うなら私たちだって子供だぞー」

 

 「……っく……確かにそうだが見せる相手を考えてからにしろ。見るからに耐久性皆無だぞ」

 

 「あー、これは逆効果だったかも……」

 

 

 一向に固まったままの紗夜をどうしようか悩んでいると、仕方がないので漫画を取り上げる事にしたがしっかりと漫画を掴んでいるため引き離すことが出来ないでいた。

 

 これでも一般人以上に体を鍛えている鞠亜は10歳くらいの紗夜には力では負けないと思っていたのだが、漫画をどの角度から引っ張ってもビクともしない事に驚きながらそれ程この少女にとって衝撃的だったのだろうと結論付けた。

 

 

 「どうするのだー?」

 

 「………待つか」

 

 「そうだなー」

 

 

 

 

 

 ~20分後~

 

 

 「ふにゃぁああ@;/:]aぁ@a!??aあ*!!!!???」

 

 

 人間その気になれば頭から湯気が出るんだな~と関心し、そのアタフタした姿が何とも可愛いらしかったが、このままでは話が進まないため漫画を掴んでいた力が弱まった瞬間を見逃さず回収する。

 

 

 「全く……やっと意識を取り戻したか」

 

 

 歎息しつつ手に持った表紙が分からない漫画を舞夏に渡し、眼で「もう見せるなよ」と語りかける。舞夏の方も少しは反省しているのか苦笑いを浮かべていた。

 

 

 「お……おま……お…おお………~~//////////////」 (ぷしゅ~)

 

 

 漫画の内容を思い出したのかまた赤面しだした紗夜は腰が抜けたのかその場にぺたんとしゃがみ込む。

 

 

 「………どうしたものか」

 

 「兄と妹でのドロドロ系がいけなかったかなー」

 

 「そういう問題ではないと思うんだが」

 

 「―――――そんな事より紗夜をどうするのだー?手持ちのバックからして買い物の最中だと思うんだがー」

 

 「分かりやすいまでに話を変えたな……おい紗夜。時間は大丈夫なのか?」

 

 

 肩を揺すっても反応しない……まずいな

 

 

 「おい舞夏」

 

 「なんだー?」

 

 「何かいい方法ない?」

 

 「ないなー」

 

 「ですよねー」

 

 

 マジでどうしようかと頭を抱えていると、鞠亜は閃いた。

 

 

 「ショック療法なんてどうだ?」

 

 「……それしか思いつかないなー。んじゃ任せた」

 

 「……ちょっとまて」

 

 

 清掃ロボに乗ってこの場から去ろう(逃げ出す)とする舞夏の頭をアイアンクローで止める。

 

 

 「力を込めすぎではないかなー。痛いぞーコノ☆」

 

 「可愛らしく『コノ☆』とか言ってもダメだ。乗り掛かった舟なんだから最後まで付き合え」

 

 「……ほーい」

 

 

 肝心なショック療法の内容だが、お互いで話し合った結論が、『同じメイドならメイドの共通する怖い"モノ"で攻めればいいんじゃね?』で、決定した。

 

 

 

 メイドが怖いモノ—————特に耐久性のない新人メイドが最も恐怖する存在。

 

 

 

それは—————メイド長である。

 

 

 

 服装、身だしなみ、姿勢、マナー、

 

 

 

 全てに置いて一流のメイド長という存在は時に新人メイドにとって——————口うるさい上司、先生でもあるのだ。

 

 繚乱家政女学校おいて優秀な成績を収めている二人だが、元からそうだったわけではない。

 過去に先生にぐだぐだ言われたのだって一度や二度ではない。 

 料理を作ってもちょっと形がずれているだけで作り直しくらった事もあった。

 

 滅多に怒らないから怒った時は怖いんだよなー。あの眼光の鋭さは絶対一人や二人ヤッテルヨ。

 

 

 神無城紗夜の年齢はおそらく10歳。この時期が一番目上のメイドの怖さを身でしっているだろう。それなばら其処をつけばいい。   

 

 

 「おーい紗夜。買い物はいいのか?こわーーいメイドが待ってるんだろ?」

 

 「………こわいメイド?」

 

 「そうだぞー。こわーーーーいメイドだー」

 

 「こわい……メイド……」

 

 

 赤面していた顔が徐々に元に戻り、慌てた様に立ち上がる。

 

 やばいと言いながらダッシュで何処かに行く紗夜はまた舞夏と鞠亜の元に戻り、「ここ、どこ!?」と、メモを見せながら息を整える。 

 

 

 メモを見た二人は、「ああーここね」と紗夜にその場所を教えると。

 

 

 「ありがとな!!」

 

 

 その一言と同時に教えた場所に走り、すぐに姿は見えなくなった。

 

 

 

 (全く、最後まで可愛らしい反応だったな。うちの学校の生徒ではない様だが……何処かの専属メイド見習いなのかな?それにあの瞬発力只者では—————)

 

 「どうしたのだ鞠亜ー?」

 

 「何でもないさ―――――学校に戻ろうか」

 

 「そうだなー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ただいまああ!!」

 

 

 時間ぎりぎりに帰って来た紗夜を瑠璃と瞳は迎える。

 

 

 「二時間もあったというのに……間に合ったのでいいとしましょう」

 

 「そ、そうだよ瞳さん。おねえちゃんも、頑張ったんだから」 

 

 「それもそうですね」

 

 

 仁王立ちでドヤ顔で胸を張っている紗夜を無視しつつ買い物袋の中身を確認しようと瞳は中身を確認した瞬間固まった。

 

 

 「……………紗夜。これはどういう事ですか?」

 

 「何って、頼まれた物買ってきたはずだけど?」

 

 「ええ……確かに注文通りの食材はあります。が、どうすればシェイク状になるのですか」 

 

 

 溜息をつき。

 

 

 (どうせ迷子か何かに巻き込まれ時間も忘れ、いざ店に着いても買うのに手こずり、時間に間に合わないと悟り能力で帰ってきましたね)

 

 

 本気の紗夜は音速での移動が可能。しかし、食材の入った買い物袋を持った状態からやる行動ではない。当然その様な事をすれば食材がシェイク状になるのも納得だ。

 

 

 (さて、これは説教ですね)

 

 

 笑みを浮かべる瞳に対し、紗夜は恐怖に顔を歪ませるのであった。




正直感想が欲しいです。
「あ」でも「い」でもいいので感想お待ちしております。

実際問題本当に「あ」って返事きたら何て返事をすればw


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17話 絶対能力進化

お待たせしました。遅くなり申し訳ありません。

新たな可能性を探すために他の二次創作を書いていました。

おそらく秋くらいに投稿すると思いますので、宜しければそちらもお願いします。


 絶対能力進化(レベル6シフト)計画。

 

  元は量産型能力者計画(レディオノイズけいかく)。超能力者を生み出す遺伝子配列のパターンを解明し、偶発的に生まれる超能力者を確実に発生させることが目的。しかし、理論を確立し、量産体制を構築しようとした計画最終段階で、樹形図の設計者の予測演算により、『妹達(シスターズ)』の能力は超電磁砲のスペックの1%にも満たない欠陥電気であることが判明。遺伝子操作・後天的教育問わず、クローン体から超能力者を発生させることは不可能と判断されすべての研究は即時停止、研究所は閉鎖し計画は凍結された。

 

 後に、『妹達』は絶対能力進化計画に流用され、樹形図の設計者の算出したプランに従い、最強の超能力者一方通行を絶対能力者(レベル6)へ進化させる実験へ移行された。

 実験内容は、『20000通りの戦闘環境で量産能力者(レディオノイズ)を20000回殺害する』

  順調に進行されていた実験は第九九八二次実験以降は御坂美琴による破壊工作が行われたが、計画を外部機関に引き継がせることで難を逃れている。そして今夜——————

 

 

 

 あるビルの屋上。柵の上に立ちながら強風で体勢が微動だにしないそのバランス力は驚異的。強風の中、頬に着いた血をハンカチで拭いながら遠くの路地で行われている実験を観察していた。第一〇〇三二次実験。何時も通り進行されていた今回の実験は乱入者によって邪魔された。

 何時ぞやは観察対象だった人物——————無能力者上条当麻が今回の実験の妨害に入り、一〇〇三二号を助けようと幻想殺しで喧嘩慣れしていない一方通行を一時は追い込んだが、大気に触れる事で風全体を操作した一方通行に追い込まれる——————

 

 

 

 

 

「おいおい、第一位様は無能力者相手に何ガチになってんだよ」

 

「……油断していたとはいえ、ああも一方的に一方通行にダメージを与えるとは、子供の喧嘩も馬鹿には出来ませんね」

 

「は、それで勝てるのは幻想殺しのあのガキだけだろ」

 

「おめーがガキって言うのか?あんま歳変わんないだろ」

 

「なら、俺がガキならお前はしょんべん臭いただの子供だな」

 

「な、なんだとっ!!」

 

「お、おねえちゃん。仕事の最中に喧嘩はダメだよ」

 

「ああ!?こいつが「静かにしなさい」……はい」

 

「相変わらずひとみっちには弱いな紗夜は」

 

「貴方も口を慎みなさい。瑠璃の言った通り今は仕事の最中なのですから」

 

「へいへい」

 

 

 

 何故、彼等シークレットが第一〇〇三二次実験を監視しているのか、その理由は第一〇〇三二次実験が開始される一時間前にさかのぼる。

 

 

 

 

 

 

———————————————————————————————————————————

 

 

 

 

 

 

「今回の実験で一方通行は無能力者上条当麻に()()します」

 

「「「……」」」

 

 

 瞳の発言に誰も驚かない。それもそうだ。こうなることは絶対能力進化計画をやる以前の段階から知らされていた。

 

 

「問題はその後です。一方通行が敗れることが決定している今、あの方が来る可能性がとても高い。今回来ないのなら次からは問題ありませんが、現れるのなら……一方通行を倒した上条当麻が狙われる事になりますす。……詳しい説明は省きますが、一方通行が第一〇〇三二次実験を開始してから24時間以内に一方通行、上条当麻に接近する者。妹達、オリジナル、今計画の科学者、医者、学生、教師、神父、シスター、以外の怪しい者は拘束、もしくは排除をお願いします」

 

「除外枠多すぎじゃね?てか、最後の神父とシスターって学園都市に滅多に居ないぞ。そもそも『今計画の科学者、医者、学生、教師』以外に誰が上条当麻を狙うんだ?……は、まさか暗部か?」

 

 

 学園都市の学生の数は総人口の8割に及ぶ。総人口が230万人。学生を外せば約28万人。教師などを含めれば更に減るだろう。だが、その約28万の人間から上条当麻を24時間護る事になる。普通に考えれば馬鹿じゃねーの?と言いたくなるが、この仕事は普段の仕事(暗殺)より楽だ。何故なら、『一方通行が第一〇〇三二次実験を開始してから24時間。一方通行と上条当麻を護る』。あらゆるゲームを最高一週間徹夜でプレイ可能な俺様にとって。24時間、一日などまったく問題ない。だが護衛対象が動き回るなら面倒だが、原作知識から(曖昧だが)病院では一日くらい起きないだろう。そんな一方通行、上条当麻を狙う奴、しかも病院でとなると自ずと答えが暗部しかない。

 

 

「いいえ、暗部の者ではありません。ですが、暗部の者を雇う可能性があるのでそこは各自の判断に任せます」

 

「何かめんどーだな……その言い方からもう襲撃者が誰なのか分かってんだろ?隠さず教えろ」

 

「それは無理です。向こうから襲撃して来ない限り私達から手を出す事はできません」

 

「…………なるほど」

 

「?。何がなるほどなんだ?」

 

「わ、わたしも、聞きたいです」

 

「ん?ああ、別にいいけど。……いいか神無城姉妹、今回の仕事は分かりやすく言えば『一方通行が第一〇〇三二次実験を開始してから24時間。一方通行、上条当麻を護る』だ。その中で『妹達、オリジナル、今計画の科学者、医者、学生、教師、神父、シスター』は除外。それ以外であの二人を狙う奴等は暗部しか居ないんだが、ひとみっちは違うと言った。ならもう答えは出てるだろ?」

 

「ん~~~———……警備員とか?」

 

「おねえちゃん。そ、それ、教師と被るよ?」

 

「あ、ほんとだ。なら……風紀委員だ!!」

 

「それだと、学生と、被るよ?」

 

「~~~~~!!わっかんねー!!こういうのは瑠璃の仕事だろ、何であたしが考えてんだよ!」

 

「え~、し、仕事は、関係ないと思うけど……」

 

「いいから瑠璃はなんだと思うんだよ?」

 

「わ、わたしは、えっと……ね、か、科学者とか?」

 

「おお~、流石瑠璃ちゃん。姉と違って頭がいいね」

 

「あたしが馬鹿って言いたいのか!?」

 

「そだけど(ニヤニヤ)」

 

「こ、こいつ!!」

 

「だ、だからおねえちゃん、話が進まないよ~。紀陸さんもあまりおねえちゃんをからかわないでください」

 

「おっけ~おっけ~。んじゃ何で科学者なのか、ひとみっちは『向こうから襲撃して来ない限り私達から手を出す事はできません』と言ったね。あのひとみっちだよ?敵対者、反逆者、仕事に置いて一切の慈悲なく相手の命を刈り取るひとみっちだよ?そのひとみっちが自分から手出し出来ないって言ったんだ。その時点で相手が誰で何者なのか簡単に見当がつく」

 

「……色々言いたい事がありますが、今から仕事ですしいいでしょう」

 

「あ?何か言ったひとみっち?「いえ何も」あそ、それでだ。答えは一択しかない。そう——————『木原』だ」

 

 

 

 

 

 

———————————————————————————————————————————

 

 

 

 

 

 

「あ、第一位本当に負けやがった」

 

「あ、あの怖い人、負けちゃったね」

 

「……にしても実験の最中だってのにもう二十人目とは……これからが本番か」

 

「いえ、おそらくこれからは来ても三、四人程度ですかね」

 

「はっ?何でだよ。弱った、しかも手負いのターゲットだぞ?こっからが本番だろ」

 

「ええ、ここからが本番です。ですから先ほどまでのような金で雇った雑魚ではなく、少数精鋭の大能力者(レベル4)クラス、もしくはサイボーグがやってきます。……おそらくこの二十人は私達の存在の確認、実力を測るための捨て駒です」

 

「存在の確認だぁ?今回の木原は俺等の存在を知らないのか?」

 

 

 その質問を瞳は肯定する。その様子から今回の木原は木原一族の中でも相当下っ端のようだ。もしかしたら木原円周よりも下かもしれないな。

 今回の仕事の敵は『木原』……だが何だ?この引っ掛かる感じは……ま、どうでもいいか。んなことより仕事だ仕事。

 

 

「では、オリジナル・妹達が上条当麻を連れて冥土帰し(ヘヴンキャンセラー)の元に行くはずです。貴方方は上条当麻の方をお願いします。私はその後一方通行を別の病院へ連れて行きます」

 

「けどそっち一人で大丈夫か?護衛対象が二人ならツーマンセルが妥当じゃね?」

 

「現状の戦力と何方が狙われるかを分析すると最も狙われるのは一方通行を撃破した上条当麻です。紗夜、瑠璃は実力は申し分ないのですが、経験がまだまだ浅い。紀陸は二人をフォローしつつ仕事に当たって下さい」

 

「なるほど。りょーかい」

 

 

 瞳は能力的に一人の方が実力を発揮出来るので黙認した。紗夜は紀陸にフォローされるのが嫌らしく、駄々をこねるが瞳の睨みで渋々了承した。瞳にどんな教育を受ければあの紗夜がここまで従順になるのか気になったが、そこは野暮だろうと思い聞かないことにした。

 

 

「オリジナル、妹達が上条当麻を連れて移動を開始しました。それではご武運を」

 

 

 三人はそれぞれ返事を返すとそのまま姿を消した。瞳もオリジナル、妹達が()()に消えるのを見計らって一方通行を回収しステルス性の紙で姿を消した。

 

 

 

 

 

———————————————————————————————————————————

 

 

 

 

 

 第七学区。冥土帰しが 務める病院から200メートル離れた病院に瞳は居た。

 違う学区に移したほうが狙われにくいと考えるが、もしもを考慮して直ぐに加勢でき、一部の暗部しか知らないシェルター式の病室に一方通行を寝かした。怪我自体は大した事もなく軽傷。只の脳震盪なので薬で眠らせている。薬の量から二日は起きないだろう。

 此処は限られたIDカードでしか開ける事はできない。一度そのIDで登録すると解除するまで他のIDでは出入り出来なくなる。外からでは絶対に開けることは出来ないが、内から開けることも出来ない。一方通行が目を覚ましたらシェルターなんて何の意味もないですが。

 私が居るのはシェルター内。敵が襲撃に来てもシェルター内にいる限り余程の事がない限りまず安全です。もし敵が侵入に成功してもこのシェルター内は音を倍増し反響するようにできているので息を吐くだけでその音が反響しすぐに居場所が分かる仕組みになっている。

 

 

「……くっ!?」

 

 

 その僅かな変化に気付けたのは瞳の暗部としての『勘』と日頃の『観察力』の賜物だ。

 目の前には一定のリズムで呼吸を繰り返すアクセラレーターが眠っている。更に詳しく言えば毎秒二秒後とに呼吸を繰り返している。胸の動きから確かに息を吐いた筈だ、なのに『音』が無かったのだ。

 最初は気のせいだと思った。だが、次も『音』が無かったため、疑心は確信へと変わった。

 

 そこから瞳は迅速だった。すぐさま病室の扉を出て侵入者に向かい紙を投擲したのだ。このシェルターは病室が三つある。私は一番端の病室に居る。おそらく相手は音は消すことが出来る能力者か、機会を所持しているので見つかるのは最後だろう。

 呼吸、ハッチの音がしなかった事から侵入を許してから十秒弱しか経っていない。

 なら相手は侵入して一つ目の病室に入るとこだろう。

 

 音速並の速度で放たれた紙の刃はそのまま侵入者の肉体を切り裂くだろう。だが、『刃』は侵入者の体をただの肉塊にすることなく、体に命中した時にはただの『紙』になっていた。

 

 

「な……貴方は……」

 

 

 能力が無力化された事より、白衣を着た無精ひげが生えた男とその隣にちょこんといる女の子に注意がいった。

 

 刃へと変えた紙がただの紙に戻された?あの子供、紀陸と同じ『振動』系の能力者とみて間違いないでしょう。だが何故あの男が此処にいる?こんな死ぬかもしれない戦場に。

 

 

()()、殺れ」

 

 

 音ネ(おとね)と呼ばれた女の子が口を開いた瞬間。私は壁へと叩きつけられていた。

 

 

 とっさに背後に紙を展開して衝撃は最小限で済みましたけど……正直相性が最悪すぎです。振動系なら対処のしようがあるのですが——ァあ——ア————

 

 

 余りの耳鳴りに脳が揺さぶられる。これは不味い……聴覚と前庭感覚を持ってかれましたか。

 

 この狭い空間は相手の能力を反響させ更に倍増させている。相手が能力を使えば使うほど私の体は壁に埋め込まれていく。

 反撃できない私に銃をむけた男は、そのまま何の躊躇もなく引き金を引く。衝撃を緩和させるために展開していた紙は防御が間に合わず、そのまま弾丸は私の眉間に命中した。

 

 

 

 

 

 

 

 






感想、批判。大募集しています。



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18話 覚醒

上空から襲いかかる紫外線。
水面を反射する偉大なる太陽の光。

うん。

暑いね。


「音ネ、心音を確認しろ」

 

 

男——————木原周波の命令に従い、音ネは耳を澄ます。

 

 

「……心音確認。……停止」

「そうか、ならさっさと第一位を処理するぞ」

 

 

 心臓の停止が確認された瞳はもう眼中に無いとばかりにそのまま一方通行の病室の扉を蹴破る。

 そこにはチューブに繋がれた状態で眠る一方通行が規則正しい寝息をたてていた。

 

 こんな貧弱そうなもやし野郎が第一位とはな……糞!!数多の糞野郎がっ!!自分のカリキュラムで第一位を開発したからって偉そうにしやがってっ!!俺が開発した能力者で数多の糞野郎がお気に入り第一位を一万回ぶっ殺すと決めたあの日からチャンスを窺ってきたが……この日をどれだけ待ち望んだか、とっとと第一位を音ネに処理させてあの無能力者をホルマリン漬けにして反射を無力化した秘密をさっさと探るか。

 

 

「殺れ、音ネ」

「了解です。マスター」

 

 

 特殊の薬品で意識を失っている一方通行は只の的だ。反射も使えない第一位など恐るべきに非ず。人間を殺すには十分な衝撃波を放つ。だが、一方通行に触れた瞬間、それは『反射』された。

 

 

「!?」

 

 

 流石の音ネも予想外な事に驚いたがすぐさま同等の威力の衝撃波を放ち相殺した。

 

 

「反射がされているだと?どういうことだ……くそ、クソがぁ~~~っ!!そういう事か、何処のどいつか知らないが舐めたマネしやがって!!いや、あの糞メイドの仕業か、方法は解らないが外部から計算を補っているのは確かだ」

 

 

 死んだ糞メイドにとやかく言っても時間の無駄だ。ガスでも吸わすか?いや、それでは意味がない。音ネに処理させないと数多の野郎に証明できない。超能力者……レベル5を開発できるのはテメーだけじゃない事をなァー。

 

 

「仕方ねぇ、反射が有効である以上音ネの音波は効かない。ここは一旦退いてあの無能力者を研究して出直すぞ」

 

 

 木原周波は憎らしげに一方通行を一瞥すると音ネを連れてシェルターを後にした。

 

 

 

 

 

———————————————————————————————

 

 

 

 

 

 

 劫火——————この世を焼き尽くすとまではいかないが、人間を一瞬で消し炭にするその炎は一人のメイドに放たれた。只のメイドならこのまま何の抵抗もなく灰になるだろう。そう——————ただのメイドなら。

 

 

発火能力(パイロキネシス)だなこの能力は、そんなチンケな炎じゃああたしは倒せないぞ!」

 

 

 紗夜は能力を手足に纏わせるとそのまま焔の中に突っ込む、小さな手に握られた小柄は焔を切り裂き勢いを殺さずそのまま切りかかる。だが相手も甘くわない、最小限の動作で小柄を躱す。

 

 

「……!!只のメイドのコスプレをした女の子かと思えば、殺気の籠った瞳に包丁を振り回す腕前、何よりこの状況で顔面崩壊笑顔……貴様ッ!!新手のヤンデレだなァーーーーッ!?」

 

「違うわこのボケッ!!」

 

 

 手加減なしの小柄の斬撃。最初のうちはギリギリで躱されていたが速度を増すごとに襲撃者の傷は増していく。

 

 

(この年で此処まで武器捌きが鋭いとわ……厄介だな)

 

 

 男は一度距離を置こうとするが、それを許すほど紗夜は素人ではない。攻撃も離脱もさせない為に蹴り技も駆使しつつその機会を与えない。普段の蹴り技はそこそこ鍛えていれば躱せるものだが、能力により強化された今の蹴り技と小柄のコンボは瞳さえ苦戦する!思い返せば瞳には捌かれてばかりでこのコンボ自信がなかったんだが意外といける。何時か絶対見返してやる!

 

 

「うお!更に速くなるだと!」

 

 

 襲撃者は捌き始めたがあまりの速度に捌ききれずにいる。このまま押し切れば勝てる!だが、あと一歩の所で強風に吹き飛ばされる。

 

 

「……チッ、おい瑠璃!そっちの相手はお前だろ!」

「ご、ごめんおねえちゃん。でもすばしっこくて全然捉えられない」

「能力からして風力使い(エアロシューター)だな。あたしなら対処出来るけど瑠璃との相性はどっちも悪いなー」

「ううう……ご、ごめん」

 

 

 瑠璃は全身に能力を纏うことが出来る。物理攻撃は効かないし自分より遥かに重い物を持ち上げる怪力もある。接近戦において圧倒的なアドバンテージを秘めている能力だが弱点だってある。瑠璃には物理攻撃が効かない。そう、物理攻撃なら。例えばあたしが相手をしていた発火能力の炎の攻撃は効かないだろう。しかし、炎から生じた熱量までは防ぐ事は出来ない。移動速度が遅い瑠璃は熱に焼かれて終わりだろう。今相手をしていた風力使いにも長期戦になれば負けるだろう。移動速度が遅い瑠璃は風の攻撃を躱す事が出来ない。攻撃を当てる事が出来ないが効く事もない。そうなれば体力面で力尽き能力の制御が不安定になり殺される。

 一対一が不利なら残るは——————

 

 

「おい!テメェ―らに提案がある!」

「……敵に提案を持ち掛けるとは中々思い切った事をしますね。僕は構いませんよ」

「ヤンデレちゃんの提案かー……お前がイイって言うなら別に構わないよ」

「よし!そうこなくちゃな」

 

 

 襲撃者の二人組もあたし同様このままではきりがないと思っているのか提案に乗ってきた。

 

 

「一対一なんてまどろっこしいのじゃなくて二対二で勝負を決めようじゃないか」

「いいね~、その案乗った」

「ヤンデレちゃんも中々イイ案するじゃん」

 

 

 くくく……まんまとあたしの罠に嵌りやがった。あの風力使いの鎌鼬(かまいたち)の斬撃をワザとくらって犠血の餌食にしてやる。その後発火能力を瑠璃と二人がかりでそっこー片付ければ仕事は終わりだ。紀陸のやろーなんかの手なんか借りなくてもこんな奴等らくしょーだっての。

 風力使いに特攻を仕掛けるがまたしても炎に邪魔される。だが、この程度の炎先ほど同様切り裂いてくれる!

 

 

「……所詮子供ですか。こうも簡単に炎の中に飛び込んでくれるとは、焼け死ね」

 

 

 突如、炎の火力が飛躍的に上昇した。しかも一直線だった炎の塊は軌道を変え四方から襲いかかってきた。

 

 瞳との訓練で能力強化を施した小柄で"斬れる""斬れない"を見分ける訓練をした事がある。一枚、数十枚の紙なら斬る事が出来たが、数百枚を超える紙の束は斬れなかった。このことから硬すぎる物、物量で迫られたら"斬れない"と理解した。だからこそこの炎は斬れない。このまま突っ込んだら丸焼けにされる。軌道修正は間に合わない。回避は不可能、なら受けなければいい!

 四方から迫ってくる炎を()()()()()()()()()()

 

 

「アチチチ……。あっぶねーなー、おい!お前らのせーでエプロンが灰になっただろが!!瞳にばれたら怒られ……いや拷問……さいやく殺される……」

 

「なんか俺等のコンビ必殺技躱したくせにすんげーダメージおってるぞ精神的に」

 

「中々興味深いですね。エプロン一つでここまで人を追い詰める瞳という人物に興味を抱きました」

 

「んなことどうでもいいからさっさと終わらせるぞ。おっさんに怒られる」

 

「そうですね。与えられた任務を終わらせますか。……モノは相談なのですが上条当麻を僕等に譲ってくれませんか?いえ、譲るとは正しくありませんね……うちの博士が欲しがって要るのでさっさとよこせ学園都市の狗共が」

 

「……ぶっ殺す」

 

 

 勢いに任せて斬りかかろうとする紗夜を瑠璃は手を握って止める。 

 

 

「おねえちゃん。だ、だめだよ。焼かれちゃう」

 

「……ありがとな瑠璃。助かった……」

 

 

 紗夜は瑠璃の手を握り返すと思考と感情を落ち着かせる。瑠璃が止めてくれなければあたしは今頃全身を焼かれ殺されていただろう。襲撃者二人はあたしより()()。確信をもって断言できる。でも、あたしだけじゃあいつ等を倒せない。あの二人は自分の能力の欠点を知り尽くしている。

 発火能力はパワーはあるが炎を放つ前の溜めと放った後に隙が生まれ、一直線にしか放てない。

 風力使いはスピードと応用性に優れてはいるが決定打とパワーが足りない。

 だが、あの二人はお互いの欠点をカバーし合っている。発火能力が放つ前の隙を風力使いがカバーし、一直線な軌道の炎を風力使いが自在に操作・火力強化を行う事により威力が格段に上がっている。接近戦特化の瑠璃とあたしは近づく事も儘ならず熱により焼かれ死ぬだろう——————

 突然、メイド専用カチューシャ型通信機から声が響いた。

 

 

『——————……・・・お!繋がった繋がったー。やいやい紗夜君ピンチそうだな。なんだなんだ~?俺に対してあんな大口叩いておきながらだいぶ苦戦してるようだなぁ。助けてほしいか?お前がどうしてもって言うなら助けない事もなんだがな~(ニヤニヤ)』

 

「…………いる……け……」

 

『え?何だって?よく聞こえないよ?もっとはっきり言わないとおにーさん分からないなぁー』

 

「お前の助けなんかいるか!このボケ!!」

 

『ありゃりゃりゃ、反抗期かよ。まあお前が要らないって言うなら俺は手出しはしない。だけどな、死にそうになったら話は別だ。は、精々俺の手を煩わせるなよ』

 

「お前はそこで高みの見物でもしてあたし等の戦いでも見てな」

 

『そうさせてもらうよ。瑠璃もおねえちゃんのフォローよろしくなー』

 

「あ、はっ、はい!」

 

『じゃあな』

 

 

 メイド専用カチューシャ型通信機からはもう応答はない。おそらく直ぐに駆けつけられる程の距離から此方を観ている筈だ。

 

 

「……さて、とっととおっぱじめるか。てかお前ら別にこっちの話が終わるまで待たなくてもよかったんだぞ?」

 

「いえいえ、女性がお話の最中に攻撃とは無粋でしょ……なにより貴方方二人はまだ幼い。正直なところ先程の連絡相手の正気をうたがいますね僕は」

 

「俺もね……ヤンデレちゃんと妹ちゃんとは戦いたくないんだよ……君たちはまだ子供だ。将来が、未来がある。俺等とは違うんだ。頼む……どいてくれ」

 

「……敵に同情されるとかマジで紀陸に笑われるなこれ」

 

「……おねえちゃん」

 

「分かったのならこの学園都市から出て行くんですね。それとそのキリクと名乗る人物の居場所を教えていただきますか?」

 

「い、いばしょを聞いて、ど、どうするのですか?」

 

「なに、子供を戦わせて高みの見物を決め込むクズを殺しにいくだけですよ僕は」

 

「…………けるな……」

 

「え?何と———」

 

「ふざけんなこのボケって言ったんだよ!!いいか!あたしと瑠璃は好きで此処(学園都市)にいる。瞳や紀陸はあたしに未来をくれた。死ぬを待つだけの世界からあたしを助けてくれた。確かに瞳は口煩いし敬語敬語ってうっさいけど生きる希望を教えてくれた。紀陸の奴なんてうぜぇーしキモイくてキザったいけどいつも優しくしてくれる……此処(学園都市)があたしの世界だ。此処(シークレット)があたしの居場所だ!!お前らなんかに好き勝手にどうこう言われたくねーんだよっ!!」

 

「わ、わたしも……うまく言えないけど、瞳さんが紀陸さんがおねえちゃんがいる此処が好き。それを脅かすあなた方はわたしの敵です」

 

 

 瑠璃はいつものくぐもった自信のないふるえた声ではなく、ハッキリと自分の意思を伝える。襲撃者二人は一瞬悲しそうな顔つきをしたような気がするが直ぐに元の顔つきに戻る。あたしの気のせいだろうか。

 此処までくればお互いに交わす言葉はもうない。互を殺すべき敵と認識仕合い何時ハジケ飛ぶか分からない火花がぶつかり合っている。

 先に動いたのは意外にも――――――瑠璃だった。

 

 瑠璃は近くの瓦礫掴み上げるとそのままぶん投げた。だが、その程度の瓦礫は発火能力で簡単に破壊されてしまう。そうなる結果は瑠璃にも分かりきっていた。真の狙いは衝突時に訪れる爆風と爆煙。紗夜は瑠璃が瓦礫を投げると同時に行動していた。発火能力は瓦礫にクギ付けにしている今が攻撃のチャンス!

 風力使いはあたしに気づき風の刃を放ってくるがあたしの小柄の敵じゃない。発火能力は瓦礫に炎を放つと風力使いに加勢しようとする。だがもう遅い!瓦礫と炎の衝突で生じた爆風で更に加速、爆煙で姿は見えない!

 

 これで決まらなければ殺られるのはあたし!一回しか使えない捨て身の作戦!一人だけ戦闘不能にするだけでいい!当たれ!

 

 一番近くに居た風力使いは爆煙に視界を奪われあたしに気づいていない、このまま斬る!小柄は風力使いの胸を穿いた。爆煙が徐々に晴れお互いの姿を認識した時、紗夜は目を見開く。穿いた相手は風力使いではなく発火能力の方だった。

 

 

「何故庇ったぁ!僕があのまま穿かれ命を引換にすれば首を刈り取るぐらいはできたのに!!」

 

「……・・・・・・しらねーよ・・・・・・体が勝手に動いちまったんだよ・・・・・・」

 

 

 視界が遮られたあの一瞬の合間に風力使いを反射的に庇ったのか?狙った風力使いは仕留め損なったが、厄介だった発火能力を始末できたのは良好だ。小柄を抜こうとしたが腕を掴まれ中々抜けれない。

 

 

「・・・・・・・・・・・・俺の命を引き換えだ・・・・・・付き合ってもらうぞ・・・・・・」

 

「お・・・・・・お前、まさか・・・・・・っ!」

 

 

 紗夜は相手の意図に気づき急いで相手の手を掴まれていない方で殴るがビクともしない。能力で強化した紗夜の拳は人の肉体など紙屑同然に破壊可能だ。いくら殴っても破壊されないこの手、腕は――――――

 

 

「俺の腕は両手とも炎の威力を上げるために機械の腕になっている。そう簡単には壊されん」

 

 

 やっぱり。てかヤバイ!此奴、両手に能力を集中させて自爆するつもりだ!

 

 

「――――――!!離れろこのボケ!!」

 

「・・・・・・もう手遅れだ・・・・」

 

 

 発火能力の両腕があまりの高温で融解しだす。いくら紗夜が人並み以上に頑丈だからといってもあくまで手足だけ。防御に適さないことからこの距離での爆発に対し被害の大差は変わらないだろう。紗夜はあまりの高熱により掴まれた腕から肉が焼ける匂いがする。激痛により思考が安定しない。この時、紗夜が少しでも冷静なら空いた方の手で首を撥ねるなり穿いたままの小柄で止めを刺すなりできただろう。

 

 

「やめろおおおおおおおおおおーーーーーーーーっ!!!」

 

「おねえちゃん!!」

 

 

 自爆するギリギリのタイミングで瑠璃は紗夜の体に手を回すとそのまま持ち前の怪力で無理矢理に引き離す。瑠璃は紗夜の盾になるように抱え込むと同時に爆発した。

 機会により強化された大能力者による自爆。数十メートル離れた建物の中に突っ込むとそこで停止する。

 

 紗夜は自身の焼けた腕を無視し瑠璃の容体を確認する。流石に防御に特化した瑠璃でも零距離爆発の衝撃は全て緩和出来ず気を失ったようだ。体の所々の肌が焼け爛れているが命に別状はないようだ。優しく頭を撫でると幸せそうに口元が綻ぶ。手を頭から離すと自爆地点から少し離れた所に立っている一人の男を警戒する。

 

 瞳は言っていた。「仲間意識が高い敵は同時、もしくは一気に殲滅するに限ります。そういった手合いは一人でも仲間を失うと自分の全ての犠牲にしてでも殺しにやって来る。これが非常に手強いのです。だからもしそういった手合いと戦う事があれば・・・・・・速やかに殺しなさい」

 

 瞳の教えを生かすなら今がその時。利き腕は動かせないが左手で斬りかかるのは可能。動け――――――動け――――――!!体げ動かせない?いや、あたしがあの満身創痍の風力使いを恐れている?恐る要素などどこにある。近づいて斬るだけ、たったそれだけ・・・・・・たったそれだけなんだ!!

 

 ダメージにより動きが鈍くなっているが人間が反応するのは速すぎる一閃。だが、次の瞬間胸の服が弾け飛ぶと風が嵐のように轟きビルの壁まで飛ばされていた。

 

 

「・・・・・・ガハッ・・・・胸に・・・プロペラ?」

 

 

 風力使いは涙を流しながら周囲の風を轟かせていた。

 

 

「・・・・・・この力は未完成だ・・・・一度使用されると僕の体がどうなるかわからない・・・・・・そんなのはどうでもいい!!この身がバラバラになろうがアイツのかわりに任務を全うしぃ、アイツを殺したお前を殺す!!!」

 

 

 かつてない憎悪と殺気に当てられ気を失いかける。だが、紗夜にも負けられない理由がある。此処を通せば瑠璃がいる。護衛対象の上条当麻もいる。あたしは自分の大切な存在を守る為に戦う!あたしの居場所を守る為に戦う!

 右手はもう使い物にならない。さっきビルに叩きつけられたせいか体のあちこちが悲鳴を上げている。完璧に骨折れてるなこれ。だけど足が使える。左手が使える。それだけで十二分!!

 

 紗夜の思いに反応するかのように靴の踵からホイールが出てくる。あたしはコレが何なのか解らないけど何となく解るような気がする。このホイールは紀陸と似た感じがする。目の前の紛い物とは違う。それだけはハッキリと解る!!

 

 

「・・・・・・ころすだと・・・?やってみろよこのボケがあああああああ!あたしにも守るべきモノがあるんだああああああああああああ!!!」

 

 

 叫びに反応するかのようにホイールが紅く燃えた。

 

 

 

 

 

 

 

 




脱字、誤字、ありました申し訳ございません。
ご感想。アドバイス等は感想にてお願いします。


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19話 諦め

あれ?
紗夜と紀陸が瞳以上に主人公らしいぞw


 岩城紀陸は紗夜と風力使いの戦いを観戦しながらPDAで連絡を取り合っていた。

 

 

「え、こっちに来るの?」

 

『——————』

 

「了解。こっちで処理する。んじゃ計画通りに」

 

 

 PDAの電源を切り胸ポケットにしまう。さて、お前の潜在能力を見せて貰うぞ——————紗夜。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

—————————————————————————————————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホイールから噴出する炎。膝まで包み込み炎は他者から見れば能力の制御が出来ず足を焼かれていると思うだろう。

 だが、ホイールから噴出する炎は肌を焼かず白のガーターベルトも焦げ目一つも無い。

 

 ——————あの炎は本物ではない。相棒の発火能力で飽きるほど見てきたボクだから解る。あれは幻覚——————

炎が発生したかのような幻を見せている。大口叩いて幻とは、ボクを馬鹿にするにもいい加減にしろ!!

 

 風力使いで胸に埋め込まれた轟の玉璽を起動させる。瞬間的に風速50メートルもの突風を生み出す。この轟の玉璽は『ラム・ジェット理論』という原理を応用させたもので、前方からの風を圧縮、後方に噴射させることで推進力を生む。押しよせる風が強ければ強いほど、更に加速していく!

 推進力で威力が増大した右ストレート。ガキの意識を飛ばすには十分過ぎる。拳が顔に命中する瞬間——————紅髪のガキが消えた。

 

 空間移動(テレポート)!?いや違う、あのガキの能力は肉体強化の筈——————肉体強化?不味いッ!

 

 回避行動を取るが時すでに遅し、右腕に絡み付く感触と共に左頬に熱が走り蹴り飛ばされた。肺から一気に空気を持っていかれた。絡まれた腕が引っ張られると浮遊感が襲った。身動きの取れない僅かな間。防御姿勢が取れない空中。紅髪のガキは夜空を背に流れるように右足を振り上げていた。裂帛の気合いと共に炎を纏った右足を振り下ろす。

 渾身の力を込めた踵落とし。瞬発的な筋力と能力強化、足の踵のホイールに集中させた摩擦熱による高温が合わさり、標的へ正確無比に振り下ろされる。必殺の一撃として胸に埋め込まれた轟の玉璽ごと体を貫通した。 

 

 

「——————かああっ!」

 

 

 コンクリートの地面に叩きつけられ朦朧とした意識の中自身の敗北を悟った。最後の一撃で肉体の限界を超えたのか、紅髪の子供は人形のように崩れ堕ちる。

 

 元から臓器は無く胴体の殆どが轟の玉璽で作られていたためか、胸に穴が空いても痛みはなかった。血は一滴も流れてはいないが僕はもう長くはないと理解できる。

 

 ホイール音が聞こえる。ふと其処に視線をやると先ほどまで僕が戦っていた子供と同じ紅髪の青年が立っていた。青年は子供を抱きかかえると妹(?)の隣に優しく寝かせる。すると僕に近づいてくる。

 

 

「まだ生きているのは確認済みだ。だが後もって一分ってところか」

 

 分かってるんなら話し掛けないでほしい……ねむたいんだ……すごく……。

 

「そう露骨に嫌そうな顔するなって、俺はお前に感謝してんだぜ」

 

 …感謝……?

 

「お前らのおかげで紗夜は炎の玉璽を発動出来た。たぶん無意識に起動させたんだなぁー、ホイール自体内蔵してある事知らせてなかったし。そしていい感じに二人をぼこってくれた事も感謝してんだ。あの二人あんま仕事で怪我しないんだよ、まあたぶん能力的に血を流す刃物類の怪我には慣れてんだよな~。けどそれ以外の痛みは耐久性が低い低い……今回はいい経験になったと思うぜあの二人にとってはな。なんせ絶対と過信していた強固な鎧と俊足であそこまで追い込まれたんだ、いい刺激になっただろう。あの二人にとって自分に勝てる絶対者は俺と瞳だけと思ってるからな——————

 はぁー。そう考えるとひとみっちって意外と甘いよなぁ……。本当に危険な仕事は俺とひとみっちだけで二人は留守番だぜ?今後の展開を考えるともっと経験値上げておきたいからな——————」

 

 …雰囲気が変わった……なんだ……?

 

「お前の敗因は自分の特性を活かさなかったことだ。言葉の意味は説明しなくてももう解ってるな?だが——————死が決まっているこの状況そんな事説いても意味はない。……今はもう眠れ。ご苦労だった。最後に言い残す事はあるか?」

 

 ……さいご…………か……

 

「——————ぼっ、ぼくには……家族がいる…………ふたりともほんとうの家族じゃない……けどほんもののキズナでつながった家族だ……」

 

「……そうか」

 

「…………ひとりは・…死したが……もうひとり……おとねを………………………——————」 

 

「おとねを?」

 

「——————・・・・・けて・………たすけてけってくれ……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

————————————————————————————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ——————死んだか。にしても最後の一撃は本当に軽率だったな。お前は中距離支援型。近接は専門外だろ。どーせ感情に任せて一発殴る!とかなんとか考えたんだろ。——————にしてもこいつは酷い。

 

 玉璽(オリジナル)の劣化コピー版擬似玉璽(サブレガリア)の更に劣化コピー版の<偽疑似玉璽>

 

 こいつ(偽疑似玉璽)を作った奴——————南博士に怒られっぞ。轟の玉璽のラム・ジェット理論は間違ってはないんだが出力が低すぎるし強度もあべこべ、真面目に作る気あんの?

 そのおかげで紗夜は死なずにすんだな。擬似玉璽並の出力なら最初ので死んでたぞ。

 

 

 ——————紗夜の炎の玉璽発動時のあの動き……今の紗夜には絶対無理な修練を積んだ迷いの無い正確な動きだった。紗夜は炎の玉璽を発動させた事から炎の道(フレイム・ロード)の走りだろ。だがあれは——————荊棘の道(ソニア・ロード)の走りだった。

 

 相手の拳が当たるタイミングに合わせ腕と視線が重なる個所に避ける。相手には消えた様に見える筈だ。そのまま絡み付いた腕を軸に体を回転させ蹴りを放ち片足着地と同時に相手を空中に投げ飛ばす。投げ飛ばした時の張力を利用し回転をより速く鋭くし遠心力で増幅した踵落しを振り下ろす。

 

 紗夜はそれを無意識むしゃらにやり遂げた。——————いや違うな、炎の道に身を委ねたのか。ハハハハハハッ!此奴はスゲェー!早くもチート使いやがった!だが肉体が幼すぎてトリックについて行けてねーのが問題だが今後の成長に期待だな(胸もな)。

 

 

「——————さて、来るのが遅かったじゃねーか。は、怯えて逃げたかと思ったわ」

 

 

 物陰に隠れている二人に向かって問い掛ける。すると白衣を着た男と女の子が姿を現す。こいつが木原か?何て言うか——————普通だな。他の人間からしたら十分変態染みたマッドサイエンティストに見えるんだが…………この場合俺の感覚がおかしいんだと思うんだが、何か……何て言うか…………普通だ。

 俺の周りが普通じゃない変態ばっかだからなぁ~~。ひとみっちとかひとみっちとかひとみっちとか。おい誰か早くあのメイドなんとかしろ……w

 

 

「おいクソ野郎、今なんか変な事考えてなかったか?」

 

「———————————————何も」

 

「心音・………嘘。マスター」

 

「何その子!チョー便利じゃん!!」

 

「よくやった音ネ・………殺す」

 

「お前もそうホイホイ人を殺そうとするな!てかノリいいなおい!!」

 

 本当に木原か此奴ッ!?絶対ノリで殺すって言っただろ!かっこよく挑発した意味がない。ここは気を取り直して。

 

「お前の要件は分かってるが念の為聞いてやるよ。お前は此奴(風力使い)の開発者木原周波で目的は同じく上条お当麻の誘拐でO-K-?」

 

「大体合ってる、が。誘拐じゃなく研究だ」

 

「それこそ大体一緒の意味だろ。でだ、その音ネって子も体サイボーグなの?」

 

「おっ!!聞いちゃう?聞く?仕方ないクソ野郎だ」

 

 さっさと言えよ。

 

「音ネのレベル4『音波センサー』はあらゆる音を聞き分け調節する。クソほど戦闘向けじゃないが、木原に不可能はない!声が最も高い子供時代に年齢を()()し喉と肺を特殊薬品とパーツを使い戦闘運用を可能にした!能力の応用性はレベル5に匹敵する!!」

 

 PDAで聞いた情報通りか。だが固定は初耳だな。年齢の固定——————肉体の成長が止まるの解釈でほぼ間違いないな。

 

「だがまだだ!!まだ足りない!!これじゃあ第一位のクソ野郎にも数多の糞野郎にも勝てねー・・・・・・あの無能力は何者なんだ?オレが何年も何年も何年も何年も何年も何年何年も何年も何年も何年も何年も何年何年も何年も何年も何年も何年も何年も耐えてきたんだぞっ!!この屈辱!!それを何の努力も!絶望も!知らねーよーな只の学生がぁ!生まれ持った能力?才能?そんな糞みたいなモノに負けてたまるか糞野郎ぉ!!」

 

 こいつぁー・……・なんていうか・………被害妄想が酷過ぎだろ。まいっか、計画通りに事を進めるか。風力使いとの約束もあるしな。

 

「でよ!その時数多がよ「一つ気になったんだが聞いていいか?」なんだよこれからがイイ話なのに、いいぞ、オレは今機嫌がいいから何だって答えてやるよ」

 

「俺の仲間が倒した発火能力と風力使いと其処にいる音ネといい何でお前から逃げないんだ?」

 

 明らかに嫌々従ってるふうだったからな。

 

「そんなことか。実験体(三人)には欠陥があってな、まずそのせいで一般社会の生活はまず無理だな」

 

「欠陥?」

 

「そう欠陥。そこで壊れている風力使いも発火能力も音ネも能力強化を犠牲に欠陥が生まれちまった。風をより強くする為にハッキングで偶然手に入れた轟の玉璽の情報の一部をオレ風にアレンジ、改良して体に組み込んだ!けど情報が不十分過ぎて完成には至らず起動させたら間違いなくバーン!起動させなくても臓器としての機能も補っているから定期的に調整する必要がある。

 発火能力も火力を上げる為に無理やり調整したせいか週一でパーツを変えなきゃいけない。まったく……これだからレベル3困る。これだけ手を尽くしてもレベル4止まり——————救いようがないクソ野郎だ。

 あ、音ネは勿論別。()()の開発を受けて音ネは能力に覚醒しレベル5級のレベル4の力を所有していた。オレは確信したね!此奴こそ、此奴こそレベル5になりえる存在だと!!」

 

 お前の命令に命を懸けた人間をクソ野郎と呼ぶか。

 

「・………音ネにはどんな欠陥あるんだ?」

 

「いやなに、計算に狂いはない筈なんだが……勝手に人体に害をなす音波を常に出しててな、音が聞こえない分余計たちが悪い。オレの体調が優れない原因探ったら音ネの音波が原因だったんだぞ?あと少し対処が遅ければ脳にダメージを負っていたぞ。ああそれと、薬品で無理やり成長を止めたせいか体調不良が酷くてな~。寿命自体二十歳まで生きれればいい方だな」

 

「・………それだけ聞けば十分だ」

 

「なんだ?あ、何でオレに効かないか聞きたいんだろ?音ネ開発したのオレだぜ~?オレにだけ効かないよう中和音波装置を身に着けてるからな。あ、オレの為に死んでくれる?」

 

「黙れ」

 

 此奴はダメだな——————だめだ、駄目過ぎる。木原らしいといえば木原らしい。『実験に際し一切のブレーキを掛けず、実験体の限界を無視して壊す』ことを信条とする。木原らし過ぎて涙が出るぜ。だけどな木原周波。お前は甘いな……他の木原と比べればの話しだがな。

 

「所で俺のレベル言ってなかったな……俺はお前の長年の夢、頂き、学園都市に七人しかいない——————超能力者だ」

 

「…………………………へぇっ・………お前が?」

 

 殺気がスゲーな。今まで手に掛けて来た奴より此奴の数十年分の嫉妬と憎悪の方が強いんじゃないか。

 

「……殺れ、音ネ」

 

 

 音ネは命令を何の躊躇も迷いもなく衝撃波を放つ。仕損じた瞳は例外として只の学生ならこれで終わりだろう。だが、相手は学園都市に七人しかいない最高レベルの能力者。

 

 紀陸は破壊を撒き散らす衝撃波を無造作に振り上げた足で踏み砕いた。

 

 

「はぁ!!?あ………ありえねー……ありえねええええええええええええええええ!!!!!音ネの喉は音を超振動させ衝撃波を放つんだぞ……衝撃波の振動を壁に受け流したメイドもいたが、それを砕くだとぉ!?」

 

「は、<レベル5>を何だと思ってやがる?学園都市に七人しかいない最高レベルの能力者?皆が目指す夢の頂き?それとも学園都市のヒーロー様ってか?——————違うだろ。お前はレベル5を履き違えている。勝ちたい?見返したい?立派な思想だな。人間の本質だと思うぞ、あー前々からこの引っ掛かる感じが何なのか分からなかったんだが分かっちまった。木原周波、お前は女々しいんだよ。『木原』じゃまずありえない感情、想い………は、一時でも木原らしいと思った俺が恥ずかしいぜ。『実験に際し一切のブレーキを掛けず、実験体の限界を無視して壊す』を信条とするお前等(木原)が、その三人を全然壊せていない。数多に勝ちたい?実験体を壊せない時点でお前はもう負けてんだよ」

 

 

「……う……うっ、るさい・………」

 

 

 木原周波は呼吸を荒くし胸を強く押さえつけ体が小刻みに震えている。呼吸が上手くできない為か言葉があまり聞き取れなかったが無視して続ける。

 

 

「お前は『木原』である木原数多が羨ましいんだ…………木原でありながら木原になり切れない——————それがお前だ、木原周波」

 

「……うるっ、……さい……!!」

 

 

 肺の空気を絞り出したかのような掠れた声で力強く叫ぶ。その叫びからは木原周波の内に秘められていた何かを感じた。

 

 

「……ま、関係ないけどな(ボソ)」

 

「音ネええええええええええええええ!!殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せええええええええええええええええええっ!!後で新しいパーツに変えてやる!!最大出力でころせえええええええええええええ!!!!」

 

 

 音ネの喉が音を反響し威力を高めていく。まだ放出していないのに疳高い音が空気を振動する。振動すればするほど威力が高まるのを感じるが同時に肉体がそれに耐えきれず傷ついていくのが分かる。

 

 

「……音ネちゃん。君は疑問だと思わないのか?何故自分はこんなにも体を弄られ痛い思いをしてるのか。その上君の家族を死に追いやった人間の言う事を聞く事に疑問はないの?」

 

「——————ッ!」

 

 

 この子はもう自分じゃどうしたらいいのか分からないのか。どう生きればいいのか、ただ分からないだけなんだ。

 

 

「もう何もいわねーよ、全力でこい。出し惜しみはするな。木原周波、お前には『諦め』て貰う。そして音ネ・………これがレベル5第五位、振動系最強の力だ!」

 

 

 自分の体の損傷を一切無視した最大出力の衝撃波。音の振動はあらゆる鉱物を破壊する。水を含んだ物質ならなおのこと。——————相手がレベル5ではなければ勝機があっただろう。

 

 紀陸は一歩も動くことなく衝撃波を相殺した。自分の命を掛けた攻撃をこうも容易く相殺してみせた目の前の敵。

 

これがレベル5。

 

これが学園都市の頂き。

 

これが第五位。

 

 

 勝てない。自分がどれだけ足掻こうが泥さえ着けられなかった圧倒的存在。これで第五位。第一位を倒すために創られた存在、それがモノ(わたし)。その為に痛みに耐えた。その為に家族(ふたり)は死んだ。その為に——————。

 

 

 紀陸はそっと気を失った音ネを胸で受け止める。腰に手を回ししっかりと支える。

 

 

 よく頑張った……今はもう休め。そのまま抱きかかえ落とさない様に気をつけながら木原周波が居た所を凝視する。如何やら逃げたようだ。ひとみっちの言う通り逃げ足だけは一流らしい。

 紀陸はため息をつきつつPDAで状況の終了を伝える。もうすぐ医療班も来るしこれにて仕事は無事終了だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

————————————————————————————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソぉ!!!!」

 

 

 木原周波、彼の心は最早死んでいた。自分の今までの嫉妬が絶望が弟が兄を羨ましいと思うものと一緒と教えられてしまった彼は心の支えを失っていた。足取りは何処に向かっているのかは分からない。彼自身何処に向かうのか、向かえばいいのか分からなかった。

 

 

「如何やら既に心は『壊されて』いるようですね。あの人もたまにはいい仕事をしますね」

 

 

 幾重にも入り組んだ裏路地の奥から声が響く。目を凝らせば見えただろうが今の彼にはそんな心の余裕はなかった。

 

 

「……だ、誰だ!!!」

 

 

 ゆっくり近づく靴音と共に姿を現す。そこにはメイドが居た。これには流石の木原周波も驚きの声を上げる。

 

 

「……な……なんで、おまえは……お前はオレが殺したはずだ!!音ネにも心音の確認はさせた!!なんで生きている!!!」

 

 

 瞳はまるで可笑しなモノを見た様に微笑む。

 

 

「メイドの秘密です」

 

「ーーーーーーー~~~~~!!アイツといいお前といいなんなんだよ!?何の権限でオレの邪魔をする!?」

 

「何の権限で邪魔をする?可笑しな事をおっしゃりますね。決まってるじゃありませんか。学園都市そのもののですよ」

 

「が、学園都市が・・・・・・・木原がオレを見捨てた・・・・?」

 

「その通りです。それと今回の仕事に病理様が注文を付けましてね。”『諦め』を教えてやれ”と。私なりに考えた結果第一位を倒す事を目的とする周波様には同じレベル5、しかも第五位に圧倒的敗北をして貰い『諦め』を知って貰うという計画だったのですが、あの馬鹿が計画を台無しにしてしまうような発言をしたため慌てましたが結果オーライでした」

 

「きはら・・・・・・・きはらが・・・・・・・・・・・・・・」

 

「これはもう駄目ですね。周波様、僭越ながら最後に修様が新しく改良に改良を加えた私専用にカスタマイズされたチェーンソーの試し斬りに付き合って下さい」

 

 

 チェーンソーを掲げた瞳は今日一番の楽しそうな笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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20話 侵入者

大変長らくお待たせしました。夏って怖いですね。やる気と気力が蒸発します。
冗談はさておき、本当にお待たせしました。このような作品を読んで下さりありがとうございます。

つい最近また新しく投稿した作品があるのですが、興味がありましたら暇つぶしにどうぞ。
十月から新アニメ『機巧少女は傷つかない』が始まりますので書いてみました。原作を知らない方はあまり見る事をオススメしません。原作九巻まで《朗読済み》の方のみ見る事をオススメします。

<機巧少女は傷つかない―蒼の世界―http://novel.syosetu.org/15143/>


 

 瞳は目の前に転がっている肉片と刃にこびりついた血を片付けながらPDAで暗部の下っ端に今回の事後処理を任せる有無を伝える。

 

 連絡の僅か一二分の間で片付けを終えるとそのままチェーンソーの性能確認を済ます。人間に使用する分には問題はありませんが機械類には不安が残りますね。それが普通のチェーンソーなら——————これは木原修様がつい先日作り上げた私専用の武装『カスタマイズ超音波振動チェーンソーMKⅡ』。長いので『チェーンソー』と私は呼んでいます。これと修様お手製の紙が揃えば私に敵はいません!最近エア・トレックをあまり使用してませんね……使うような場面がそのうちあるでしょう。

 

 さて、後は紀陸に全部任せて私は修様の所に帰りますか。面倒事を押し付けられたクズの顔が容易に想像できます。

 

 今日の夕食のメニューはどうしましょうか?肉片、血……ナポリタンで決まりですね。材料を買いに行く前に今回使用したチェーンソーと特殊な紙の使い勝手と性能の報告をまとめてからですね。

 

 

 

 

 

————————————————————————

 

 

 

 

 

「あの駄メイド事後処理全部俺に丸投げしやがったなあ!!」

 

 

 ふざっけんなよあの駄メイドがあ!!だけど、確かに、暗部に事後処理の連絡してくれたおかげで眠り姫三人の面倒を見るだけですんだけどな。今頃ひとみっちだけのんびり休暇かよ。まあ木原のお世話で休暇と呼べるか微妙だな。だけどひとみっちはソコに幸せを感じてるんだから手におえねー。

 

 とりあえず病院の手配をさせるか。振動の応用で血は止めているが傷までは治せねえ。とりあえず車両が来る十分間で怪我の具合を振動で確かめますか。応急処置とか大事だし。

 

 瑠璃ちゃんは軽い打撲程度。念の為精密機器による診査もするがそれで問題なければ大丈夫だろ。だが問題はこの二人……紗夜ちゃんは骨折五ヶ所に右手を重度の火傷。最後に見せた本人の限界を超えたアノ動きで全身筋肉断裂に関節を痛めていやがる。けど一番酷い状態は音ネちゃんだな、酷い。何が酷いって、兎に角酷い。チッ……心音が弱くなってやがる。正直此処まで面倒御見る必要はないが……

 

『おとねを……たすけてけってくれ……!!」』

 

 あんな事言われたら後味が最悪だぜ。あの野郎の名前聞くの忘れてたな、名前があるか微妙だけどな。は、しゃーなしだな。

 

 

「音ネ、今からお前は俺のモノだ。死にたいか?だが死なせない、アイツの約束があるからな。死にたくても俺が許可しない。お前の命は俺のモノだ。死にたいなら俺の為に使え……って、意識のない人間に対してこんなこと言っても無駄なんだろうな……けど、これが俺なりのけじめだ」

 

 

 言いたいことを言ってスッキリしたのか紀陸はそのまま音ネの胸に手を当て心臓を刺激する。これで心肺停止の心配はいらない。そのまま五分ほど待つと郵便輸送車に偽装した暗部の車両が到着した。

 

 

 

 

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 造られた存在。

 目的遂行の為に生き。

 第一位抹殺ただその為に生きて来た。

 ある日家族が出来た。

 彼らは私と違い失敗作らしい。

 だけど辛い実験の日々も家族のおかげで耐える事が出来た。

 ……死んだ……たった二人の家族が死んだ……

 存在理由を否定された……私はどうしたらいい?

 死のう……死ねば家族にまた会える……

 

 

 

 

 

 薄らと覚醒した意識の中、その声は彼女の耳にしっかりと届いていた。

 困惑、悲嘆、恐怖、あらゆる感情がごちゃ混ぜになった意識の中で彼女の耳の第五位の声がこだました。

 

『お前は俺のモノだ』

 

 マスターと同じで彼も私を所有物扱いする——————けど何でだろう?不思議と嫌じゃない束縛。

 

(ああ……これがそうなのか……)

 

 幼いながらも音ネはこの感情を理解していた。嫉妬にも憧れにも似た感情——————これが、『恋』

 

 

 

 

 

————————————————————————

 

 

 

 

 

 あれから十日。原作で五巻ってところか、え?飛び過ぎ?気にしたら終わりだ。てか原作の厄介ごと夏に集中しすぎだろ。

 

 今日は八月三一日——————闇咲逢魔(やみさかおうま)が学園都市に侵入する。てかもうしてる。本当なら課題に忙しい上条当麻の目の前でインデックスが誘拐されるが……今俺とひとみっちの目の前にいる。

 

 神無城姉妹はもうとっくに後遺症もなく完治。音ネも薬品の毒を抜いて正常の状態になってるが体中の機械システムを拒絶反応を無くす為に組み替えている最中だ。暗部のことだ。おそらく前よりバージョンアップしてるだろうよ。流石は学園都市、もしかしたら首を持って行っても「一命は取りとめました」って言われそうだな。

 

 あ、何で闇咲逢魔が俺等の目の前に居るかだって?本当ならこんな雑魚……仕事じゃない事は俺もしたくはないんだが、偶然。そう、偶然に偶然を重ねた結果こうなった。簡単に説明しちまったら、ひとみっちが仕事以外で眼帯を外す時がある。それは、木原修が外出する時か(滅多にないので除外していい)木原一族の誰かに付き人……メイドでいいや。メイドとしてついて行く時。あと決まった時間帯に自分の周囲半径二kmを視ている。

 

 シークレットの隠しアジトの一つで学園都市の壁にそう離れていない地下施設があるんだが、そこにシークレットが今後の活動についてブリーフィングしていた時に丁度その時間帯が来たわけよ。あとは……言わなくてもわかるだろ?学園都市に侵入する害虫を我らが瞳様が見逃すわけがなくいつも通り神無城姉妹はお留守番で俺等が出向いたわけよ。は、勘弁してほしいぜ。

 

 そんで今向かい合っている状況なのだが——————

 

 

「貴方は見ているだけでいいです。最近の戦闘では、死んだふりや手加減などで少々体が鈍っている節があります。……今日はいい運動が出来そうです」

 

 

 暗殺任務ばっかでシークレットでも激しい戦闘は俺と紗夜ちゃんに任せて来たひとみっちが自分から戦いたいとは、こんなの滅多に見れないかもな。

 

 

「は、いいぜ。ひとみっちがマジで戦うなんて中々見れないからな。喜んで見学させてもらうぜ……おい魔術師!!」

 

「……なんだ?」

 

「女だからって手加減するなよ!何の目的で来たかは知らねーが果たしたいなら死ぬ気で行かねーと初撃で死ぬぞ!!」

 

「学園都市の者よ、私は禁書目録に用があるのだ。魔術サイドのいざこざに科学サイドが介入しても得など無いぞ」

 

「……得?得ならありますよ。学園都市に蔓延る害虫(魔術師)を一匹殺すことができるのですから」

 

「……私には使命がある」

 

「はい」

 

「私の命などいらぬ」

 

「そうですか」

 

「——————!怪我では済まぬぞ!」

 

「先手は譲ります」

 

「——————風魔の弦」

 

 

 直径数m大の空気の塊を打ちだす。これに足を乗せることで眼帯をした左眼の死角へ高く跳躍する。それと同時に弦を引き。

 

 

「——————衝打の弦!」

 

 

 空気の塊を打ち出す。原作ではファミレスにいた上条当麻にコレを使い窓ガラスを軽く粉砕にする描写があった。だが今回は手加減なしの殺す気で打ち出された。理論も理屈もへったくれな現象に瞳はただ冷静に対処する。

 

 

「五枚……二枚ですね」

 

 

 空気の塊は瞳が身動き一つせず自動に紙が展開され防御される。

 

 

「防いだか、だが二枚と宣言しつつそれだけの数で防いでる所を見るに先程までの余裕は無いとみえるが?」

 

 

 闇咲逢魔の問いに対し瞳は可笑しそうに笑う。だが、品のない馬鹿笑いではなく、口元を人差し指で押さえるクスクス程度の笑い。《魔術師》闇咲逢魔はその様子に苛立つ。

 

 

「……何が可笑しい」

 

「いえ、失敬。二枚とは紙の枚数ではなく二枚の層という意味です」

 

「二枚の層だと?」

 

「はい。紙を重ねる事で強度を上げるのですが……二枚でこれでは私に傷一つつける事も叶いませんよ。出し惜しみせずに死ぬ気で頑張ってください。もしこれが本気なら拍子抜けもいいところです。貴方は私に柔軟体操で終わらせる気ですか?」

 

「後悔するなよ!——————断魔の弦!」

 

 

 圧縮空気の刃を打ち出す。之なら二枚の装甲をも安々とスライスしてしまう切れ味を誇っているだろう。なら……動きますか。

 

 体を滑らすように視えない空気の刃を避け四枚投擲が"衝打の弦"により防がれてしまう。

 

 

「(自分の魔術の使い分けを心得ていますね。切るのではなく吹き飛ばすとは、戦闘経験は今まで屠ってきた魔術師の中でも中々のクラス。しかし——————)これは防げますか?」

 

 

 一枚の紙に回転を加えドリル状にし投擲。先程同様闇咲逢魔は"衝打の弦"で防ごうとするが空気を切り裂く嫌な予感がし"断魔の弦"に切り替える。

 

 瞳が投擲した"紙ドリル"が空気の刃と衝突した瞬間、切り替えたのは正解だと確信した。

 

 拮抗したのは一瞬、僅かに起動がずれた紙ドリルは闇咲逢魔の左胸を貫通した。血が流れる。心臓に命中するのは阻止したが、命中した場所が肩ではなく胸。左腕は指がピクリとも反応せず二つある肺の内一つは完璧に機能を停止していた。脂汗が滲み出る。肺が酸素を求めて息を吸うが血が喉までせり上がりせき込みながら血反吐を吐く。そのままにしておけば高確率で出血多量で死ぬ。戦闘など死を早める無駄な行為でしかない。

 なのに。

 

 

「ゔおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 

 血を周囲に撒き散らしながら梓弓を瞳に構える。

 そして。

 

 

「——————断魔の弦!」

 

 

 死に瀕している人間ほど恐ろしいものはない。それは瞳自身一番理解している。だからこそ。

 

 

「本気で行きます」

 

 

 千枚を超える紙の束が一つの形を成し襲いかかる。模った形は"蛇"。魔術師闇咲逢魔の最後の一撃は五十枚破壊したところで消失した。蛇が彼を飲み込む瞬間、誰かの名前を呟いたように見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おつかれ、でもないか。は、ひとみっちが傀儡なんて珍しいな、そんなにあの魔術師強かったか?」

 

「本気で言ってるのですか?なら救いようがありませんね貴方の脳味噌は」

 

「うわひど、まずいこと言ったか俺?」

 

「貴方は先の戦闘を観ていたのでしょう?"あの魔術師は強かったか?"アレならまだレベル4の方が苦戦しますよ」

 

「なら何で本気出したんだ?千枚展開なんて滅多にないのに」

 

「……これだから屑は、思考回路腐ってるんじゃ(ボソ)」

 

「聞こえてるぞコラ。これでも俺レベル5な?学園都市でトップクラスの頭脳だぞ」

 

「本気を出した理由でしたね」

 

「無視かよおい」

 

「煩いですね。人が話に付き合ってるんですから静かに聞いてなさい」

 

「はいよ」

 

 

 蛇傀儡を解除し紙で死体を隙間なく包み込ませる。残りの紙はメイド服内にまた戻っていく。

 

 

「……相変わらずその服の何処にそんなに紙を収納してんだか」

 

「学園都市の技術力とでも言っておきましょう」 

 

「学園都市製なら何でもありってネタを思い出したよ」

 

「……ネタ?何のことか分かりませんが、私は魔術師だから本気を出したのです」

 

「魔術師だから?弱かったんだろ?」

 

「ええ、弱かったです。しかし、私たちは科学サイドです。魔術というものを深く理解していない。追い詰められた鼠は何をしでかすか分かったものではありません。何よりアレは、あの眼は不味い」

 

「……め?」

 

「そうです、眼です。アレは大切な人の為に命を投げ捨てる者の眼です。そんな相手の最後の一撃を装甲の薄い自動防御で受けようものなら切られていたのは私です。だからこそ本気を出したのです。アノ眼後と潰す為に」

 

「……」

 

「聞きたいことはもうありませんね?私は死体をこのまま焼却場まで運びますので今日はもう解散だと二人に」

 

「りょーかい」

 

 

 上条当麻を巻き込むトラブルはこれにて回避された。だが紀陸にとって原作キャラだといって可哀想だの悲しいなど微塵も感じない。ただ運がなかっただけの話しだ。

 

 

「……さてと、帰りますか」

 

 

 次の日、二人の帰りをアジトで待っていた紗夜に蹴られた事に理不尽を覚えた。……確かに言い忘れた俺も悪いけどよ。

 

 

 

 

 

 

 

 




禁書系ではまず間違いなく描写されないこのキャラ。魔術師《闇咲逢魔》。
他のssを見て「このキャラ出てきてないなー・・・・・・だすか」で決めました。
正直このキャラは原作でも出番一回キリのモブキャラ。
なら私が華々しく散らせてやろうと思い実行しました。

「原作キャラが死んじゃったねー……こんなキャラいたっけ?」

皆様の認識はこのぐらいだと思っています。
何故なら私も五巻を開いた瞬間、「あー、いたなこんなキャラぐらいのにんしきでしたから」(汗


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