暗殺教室 グリザイアの戦士達 (戦鬼)
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始まりの時間

この作品に関する注意
グリザイアヒロイン5人はでません。そのため雄二の過去と一姫の情報は少し変わっています。
雄二は原作では神の意志で18歳以上ですが色々考えてこの作品では17歳にしてます。理由はすこしでも中学生に見せるため
ヒロインは考えていますが判明するたび更新します
基本は暗殺教室の話しでその合間にオリジナル回をだします。
暗殺教室のキャラ達にも独自解釈や変更があります
また原作死亡キャラが一部生存しています

書いてるうちにまたなにかあるなら更新します。
よろしくお願いします


唐突だが、取り調べを受けたことはあるだろうか?

 

日本も含め、海外での刑事ドラマでも、よく出てくるが実際あれと同じかと言われればほぼ同じだろう。

 

とくに、同じ質問を何度もさせたり、取り調べの対象とはいえ、赤の他人に怒りをぶつけてくると言うものも、実際は相手にスキを与えたり、萎縮させるのが目的だ。だが、それが問題で必死で弁解しようとする対象の揚げ足を取ったり、萎縮しすぎて早くここから解放されたいという思いで無実にも関わらず自分のせいにして認めるというのも実際にある。おまけに取り調べの対象は内容を記録できないから後からこんなことをされたんだと言っても通らないこともある。

 

さて、長々となったが本題に入るが、俺は今その取り調べを受けている

 

「風見雄二、住所は山梨県の大里郡…引越しでこの街に来たそうだが、引っ越し先は?」

 

「決まってない。もう3回は言ったはずだ」

 

もう一度言うが、同じ質問をするのも、赤の他人に怒りをぶつけるのも、相手を萎縮する為のものだ。が、見たところ目の前の警察官は本当に怒っている。指をトントンと打つ音が次第に大きくなる。

 

「親御さんは?」

 

「親戚も含めていない。全員死んだ。これに関しては5回は言ったな。あんたとさっきの奴含めて」

 

ちなみにすでに3人の警察官が交代で質問しており、こいつで3人目だ。

 

「なるほど……ふざけてんじゃねぇぞ!!」

 

「風見雄二、職業は学生だ」

 

「それはさっきから聞いてる!いい加減本当のこと喋ったらどうだ!」

 

「風見雄二、職業は学生だ」

 

その言葉にいい加減我慢の限界だったのかさっきの2人も入ってくる。

 

「おまえ、さっきから警察を舐めてんだろ!」

 

「穏便でいると思ったら大間違いだ!」

 

面倒なことこの上ない。事実は言っているのだから解放して欲しい。そろそろ待ち合わせに時間もあるから、任意の取り調べと言うことで解放してもらおうかと考えた時だった。

 

「まて!…申し訳ありません。部下が失礼をしたようで」

 

上司と思われる警察官がそう言ってくる。すると、部下に席を外せと言いい、全員がいなくなったのを確認すると俺の前に座る

 

「改めまして先ほどは失礼をしました。あなたの名前を調べていたら、防衛省の特別な機関(・・・・・)から連絡がありまして、こちらの犬がそっちで保護されていないかとねぇ?」

 

「・・・・・」

 

そんなことだろうと思っていた。

 

「市ヶ谷の関係者なら、そう言ってくださいよ~」

 

「わかっていたら、豚箱に放り込んで、水を掛けるかくさい飯でも食わせる気だったんだろ?」

 

「いえいえまさか」

 

「これから学生になる。長期の『バイト』になるから、合間にも市ヶ谷での『掃除のバイト』もするが」

 

「掃除はともかく、長期のバイト?」

 

「あんたがそれ以上知ることはないだろうが、まぁ基本『ゴミ掃除』には変わりない」

 

「そうですか。あぁ、それと外ですでにあなたのお迎えが来てますよ。一瞬他の警官が警戒するほどの目つきをしていたので、たずねてみたらあなたの名前を出したので」

 

「?」

 

だれだ?JBか?いや、あいつはそこまでの殺気を出すほどの力はないし、あっても出さないだろう。

 

「すまないが、そいつ名は?」

 

「知り合いでは?確か烏間となのっていましたねぇ」

 

「あぁ、『バイト』で一度あっただけだ」

 

なるほど、あいつも今回のことに関わっているのか。防衛省の人間なら関わっていてもおかしくはない。

 

「では、ご案内いたします」

 

とりあえず、約束の時間が過ぎているのがついていく際に見た時計の時間を見て理解した。

 

 

 

 

ようやく解放され、荷物を警官から受け取る。しかし、カツ丼は出てこないんだな。聞いた話だと、地方ではカツ丼ではなくうどんやソバが稀に出るらしい。まぁ、そんなことはどうでもいいが、俺の目の前にいるスーツ姿の男はため息をはきつつ、こちらに歩み寄る。

 

「久しぶりだな。1年ぶりか?」

 

「1年と3ヶ月ぶりだ。あの時あんたとは少し話したぐらいだったな、烏間」

 

そんな無愛想な挨拶をお互いにして車に乗り込み目的地へ向かう。後部座席に座る園川雀という女性からわたされた資料を読みつつ烏間と話す。

 

「今回の依頼を受けるとは、俺は思わなかった。長期になる可能性が高いからな」

 

「だから、市ヶ谷での『バイト』もある。その際はすまないが、授業には出れないこともある。地球が終わるかもしれなくても、『ゴミ』は出てくるものだからな」

 

「世知辛い世の中だな」

 

まぁ、そんなもんだ。しかし、心なしか、自分の胸に何かが動いている気がする。今回の件を聞いた時からだ。もしかすると、これが世間一般で言うワクワクすると言うものなのだろうか?

 

「ところで、本当にこんな生物がいるのか?と言うより、言葉が通じるのか?」

 

資料の写真にはタコを連想させるような。フォルムをした黄色い生物が写っている。しかもおそらく自前の服をきている。おまけにそれが学校で教鞭を取っている。

 

「いるから呼び出した。そして、明日から君が通う学校で、君に暗殺して欲しいターゲットだ」

 

 

ことの始まりは数ヶ月前。月の7割が爆発して蒸発したことに始まる。このニュースは今でも取り上げられている。そして、日本の防衛省の一部を含めた各国の首脳はその犯人がいることが分かる。それがこの黄色い生物。地球生まれの化け物。それがなぜか、椚ヶ丘中学の先生をしている。担当クラスは3ーE。

 

「聞けば聞くほど、わけがわからないと同時にうさんくさい話だ。しかもこれを生徒が暗殺とは」

 

「教師としては一流なのも含めると、ツッコミどころはきりがない。が、それでも本当のことだからしかたない」

 

「…烏間、俺の経歴は知っているか?」

 

「…ある程度はな。君の腕で、彼らの援護のつもりで呼んだ。最終的に誰かが暗殺すれば問題ない。が、それができそうにないなら、悪いが君にも本格的に動いてもらう」

 

「ならいい」

 

「それと、わかっていると思うが生徒を危険にあわせない、君の正体を知られない、これは守って欲しい」

 

「後者に関してはJBからだろ?分かっているさ。まだ『事故死』はしたくない」

 

「最後に、向こうでは俺は3ーEの教師をしている。故に名前の後には先生をつけろ」

 

「わかった。少し疲れた。俺の寝泊まりする家に着くまで寝ることにする」

 

明日から学校か。そんな、まるで連休が終わる時に言いそうな言葉を思いながら眠りにつく。

 

その後ここが君の住まいだと言われてついた場所にあったのは仮設住宅に近い家だ。

 

「ライフラインを含めて整備は行き届いている。地図は渡したが、明日は学校の理事長に君とともに挨拶に行くから、俺と同行してもらう」

 

それに分かったと言うと烏間達はそそくさと帰って行った。家の周りを見るとそこらじゅうに監視カメラがある。おそらく中には隠しもあるだろう。

 

「荷物の整理でもするか」

 

その後はいつもの自主トレをし、軽く食事をとって入浴をした後眠りについた。

 

 

 

 

翌日、いつもと同じ時間に起きる。そして備え付けの冷蔵庫に入った目薬をさして、水分を補給し、いつもと同じ時間に同じくらいの距離を走って、いつもと同じ朝食をとる。師匠とくらしていた時と変わらない。いや、1つあるとすれば、新しい家に住んでいると言うとこらだろう。山梨からここにくるまでは屋根のない場所で寝るのが当たり前だった。

 

「普通の学校生活か」

 

全て準備とかたづけを終わらせ家から出るとすでに車が待機しており、烏間もそこにいた。

 

「別に、学校で待ち合わせてもよかったんじゃないか?」

 

「ついでだ。明日からは自分で登校してもらう 」

 

おそらくはしばらく尾行付きだろう。まぁ、べつにいいが。

 

 

 

 

車に中でもう一度資料に目を通しているといつの間にか学校についていた。烏間に案内されるがまま理事長室と書かれたプレートを一瞬だけ見つつ部屋の中に入る。

 

「あぁ、お待ちしていましたよ。彼が例の」

 

「えぇ。風見くん」

 

「風見雄二だ。名前はもう聞いてるんだろ?」

 

「もちろん。きて早々にE組行きだけど、がんばって」

 

わかりやす過ぎる。ここまでわかりやすい笑顔だと逆に清々しい。

 

「2つほど聞きたいことがある」

 

「何かな?」

 

「…ここは、普通の学校なのか?」

 

その問いに理事長は当然と言わんばかりの顔をして

 

「もちろん。君の境遇は資料も見て少しは知っている。少し不自由があるのは仕方が無いがそれは君たちの方でどうにかできることだろう?なら、私はここは普通の学校だと言えるよ」

 

「もう1つ、聞きたい…ここに、ここで、かず……いや、やっぱりいい」

 

「そうかい。もういいかな?」

 

「ああ。失礼する」

 

お辞儀をして俺と烏間は部屋を出た

 

 

side浅野學峯

そう、ここは普通の学校。強者が弱者の上に立つ、社会では普通のことを、この学校でも普通に実施している。

 

「しかし、彼がこの学校に来ることになるとは、それもエンドのE組。何かしらの運命にすら、思えてくる」

 

窓の外からE組の校舎に向かう2人を見ながら、理事長はそう呟いた。

 

 

side風見雄二

本校舎から離れて山路を歩く。急になっていく坂道はこれだけで普通の人にしてみれば訓練になるだろう。

 

「それにしても、あの理事長の笑顔は本当に清々しい笑顔だった。目だけが完全に劣等種を見る目だ」

 

「冷徹なまでの完全合理主義。こんな無茶苦茶な依頼も口止め料で済ませている」

 

なるほど、実質あの男は防衛省をも手玉にとっているということか。

 

「だが、そのおかげで理想の暗殺空間ができた。みえたぞ、あれがきみのクラスの校舎だ」

 

旧校舎と書かれた立石の向こうには寂れた私塾のような小さな校舎…いや、潰れそうなの間違いかもしれない。

 

「なるほど。立派な校舎だ」

 

「皮肉か?」

 

「屋根がある。充分に立派だ」

 

やはり皮肉だなと烏間はつぶやく。

 

「ともかく、ここから先は先生だ。プライベートでもな」

 

「わかった、烏間先生」

 

さて、とりあえず入った時の挨拶でも考えるか。

 

 

 

side潮田渚

 

「渚、聞いたか?このクラスに新しいメンバーが増えるらしいぜ」

 

SHL前、クラスの友人の1人の杉野が話しかけてくる

 

「うん聞いた。元々は本校舎に通う予定の人って烏間先生は言ってたけど」

 

「どんな人だろうね?」

 

「まぁ、普通にいい奴だったらつるみやすいんだけど、カルマみたいなのだったらどうしよう」

 

「それってどういういみかなー杉野ー?」

 

茅野やカルマ君も話に入りだし、杉野はカルマ君の質問に苦笑いをしながら後ずさりをしている。ふとある生徒の何時もと違う様子に気づく。矢田さんが席で心ここに在らずと言った感じで空を見ている

 

「どうしたの、渚?」

 

「あ、いや。なんだか今日の矢田さん元気がないなーって」

 

「あ、確かに朝からずっとあんな感じで話し掛けてもなんでもないって」

 

茅野も気付いていたようで、すでに話し掛けていたようだ。どうしたのかと考えていると教室の扉が開く。そこから入ってきたのは人ではなく、僕らのターゲット件教師の

 

「おはようございます殺せんせー」

 

「おはようございます渚くん。皆さんもおはようございます」

 

日直が号令し礼をし、着席する。最初のほうでやった一斉射撃はしない。計画を持って暗殺すると決めているからだ。

 

「それでは、SHLを始めましょう。まず最初に皆さんも知っての通りこのクラスに新しいメンバーが加わります。皆さん仲良くともに学び、共に暗殺をしましょう。そろそろ烏間先生が説明を終える頃ですが…少し遅いですね」

 

「すまない、遅れた」

 

烏間先生が入ってきたと言うことは転校生が来たということだ。

 

「随分時間がかかりましたね。烏間先生にしては珍しい」

 

「いろいろと手続きが多くてな。…それでは、入ってくれ」

 

ガラガラという音とともに1人の男性が入ってくる。しかしまず驚いたのがその体格。明らかに何かトレーニングをつんできたのがわかる体つきもさることながら、身長は170を少し超えたくらいか。そしてこれはクラスの人も気付いてるかどうかわからないが、彼は普通ではないオーラを感じる。

 

「それは風見君、自己紹介を頼む」

 

烏間先生の言葉とともに前に立ち自己紹介を始める

 

 

 

siedフリーサイド

 

 

「それでは風見君、自己紹介を頼む」

 

「分かった。…風見雄二だ。本来は本校舎に行く予定だったんだが、手違いでここになった。学校には内緒だが、家庭の都合もあって不定期にバイトをしていて呼び出しがある日は来れないがよろしく頼む」

 

自己紹介をして45度きっちりのお辞儀を3秒ほどする。全員が一瞬戸惑う。

 

「ヌルフフフ、歓迎しますよ風見君!E組へようこそ」

 

「本当に言葉も通じるんだな」

 

殺せんせーとの初コミュニケーションに少し驚きながらも雄二は話す。それにつられて教室から「よろしく」と言った声が上がり拍手も出てくる。一部は不満げな顔をしてはいたが。

 

「とりあえず、よろしく頼む殺せんせー」

 

「にゅ…」

 

握手のために手を前にだすが殺せんせーは戸惑う。

 

「すまない。殺エモンでよかったか?もしくはコ⚪︎スケか?」

 

(((((どっかで聞いた名前だな)))))

 

「あーそうじゃないんだ。前に先生と握手した時に手に対せんせーナイフの切れ端をつけて破壊した奴がいて」

 

クラス委員長の磯貝悠馬が説明するとなるほどと言って雄二は手のひらを見せ、袖を上げる。

 

「この通りだ。俺はあんたを殺さない」

 

「いいんですか?先生は来年の3月に地球を破壊しますよ?」

 

「あぁ。俺は殺さない。俺たちで殺す」

 

一瞬殺さないと聞いてビックリしていた生徒もこの言葉を聞いて彼の殺る気と協調性が分かり、笑顔が広がる。

 

「いい心がけです!ともに学び、全員で暗殺しましょう!」

 

そして今度こそ握手をしたのだった。

 

ちなみに雄二の席は一番後ろの窓側の席となった。彼が席に座るまで矢田桃花はじっと彼を見ていた




実は作者はグリザイアをアニメから入ったので原作の情報は体験版動画やネット資料からしかしりませんので、感想と共になにか情報があれば簡単でいいので言って下さい
あと、タイトル募集です

psタイトル決まりました
エックス2さんありがとうございます!


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確かめる時間

遅くなってすいません
2話です楽しんでもらえたら幸いです。


初日の最初の授業は雄二にとって色々な意味で新鮮だった。分かりやすく、要点をしっかりとおさえており、かつこちらへの質問には興味を引くような形でしてくるので面白みもある

 

(たしかに、教師としては一流だな)

 

なぜここで教師をしているのかなど疑問は多いが、とにかく今は情報収集と思い席をたったとき

 

「あ、あの、風見君だよね」

 

「?すまない、まだ来たばかりで全員の名前がわからないんだが?」

 

「矢田桃花だよ。それより、風見君だよね?昨日の私を助けてくれたの」

 

雄二はゆっくりと昨日のことを思い出す。

 

 

 

 

side風見雄二

 

目的地につき、予定時刻に余裕を感じたので地図を見ながら街を回ってジョギングコースを考えていた。そこに仕事熱心な警官に見つかってしまい職務質問をされていた。

 

「で、その中になにが入ってるの?見せてよ」

 

「断る。見せる必要がない」

 

「じゃあ、ここらで何してたの?」

 

「この街は初めてでな。大荷物をしょってジョギングコースを考えていただけだ」

 

「それが怪しいんだよ!いいかげん、本当のこと言ってよ」

 

やれやれ、本当のことを言ってるのだがな

 

「あんたの彼女とのデートコースを考えていただけだ。何も知らないままなら平和な暮らしができたのに、残念だったな」

 

「おまえ、舐めんのか!?」

 

場の空気を和らげるためのジョークだったのだが失敗したようだ。

 

「もういい。ちょっと来なさい」

 

「任意の同行なら拒否する」

 

「それは、なにか後ろめたいことでもあるのか?」

 

「いちいち、気に過ぎるなよ。ただでさえ忙しいんだろ?ハゲるぞ」

 

「だまれ!いいからおとなしく…「キャー!」な、なんだ?」

 

女性と思われる声がした。警官がそちらを見たので俺もつられるように見る。

 

「おら早いとこ金出せ!」

 

商店街の店の1つで包丁をもった大柄な男とそいつに捕まっているポニーテールの女性が目にはいる。

 

「会社もリストラされて、今までなにもいいことがなかった!だから金を手に入れてやり直してやる!」

 

どうやら人質をとり、金を要求しているようだ。

 

「お、おいお前、そこまでだおとなしくしろ!」

 

警官は拳銃を見せ、相手に言う。しかしこいつ新人か?動揺しすぎだ。

 

「うるせー!いいから下がれよ!」

 

人質に包丁をつきつけて脅すと警官はたじろいでしまう。このまま放置しても事態は好転しそうにもない。

 

「ハァ、どいてろ」

 

「お、おい君!」

 

「おいクソガキ!近付くとこいつを殺すぞ!」

 

外野もさわぎだす。

 

「で、その後はどうするんだ?」

 

「え?」

 

「仮にこれ以上俺が近付いて、そいつを殺した後はどうするんだ?」

 

「そ、それは」

 

「なにも考えてないのか?」

 

「う、うるせー!別にいいんだよ実際お前はこれ以上は」

 

「スキだらけだな」

 

その言葉と同時に小石を飛ばす。

 

「ってぇ!」

 

相手のデコに命中し、一瞬全身の力が緩む。さらに姿勢を低くしフェイントを混ぜた動きで視界から外れて近付き、顎に拳を入れる。

 

「ごぅ!」

 

人質が解放されるがいきなりでバランスを崩す。片手を瞬時に持って、腕に抱き寄せる。

 

「わわっ!」

 

「う、ご、おま、え」

 

意識が朦朧としながらも落とした包丁に手を伸ばす。が、もう遅い。片足で手を踏み、痛みで悶えたと同時に包丁を遠くに蹴り飛ばす

 

「おい!何ぼさっと立ってる!早く確保!」

 

「お、おう!」

 

ようやく状況が読み込めた警官が手錠をかけた。

 

 

 

逮捕された男は警官が呼んだパトカーに乗せられる。

 

「君も、来てもらうよ。状況証言と君自身にも聞きたいことがあるからね」

 

やはりか。余計なことをしたな

 

「あ、あの…」

 

もう1台のパトカーに乗って移動する際に先程の人質となっていた少女が声をかけるがパトカーは発進してしまった。

 

 

 

 

siedフリー

 

「あぁ、思い出した。怪我はしてないか?少し強引に引っ張ったからな」

 

「う、うん!大丈夫、大丈夫」

 

顔を赤くして答える彼女に少し疑問を持つが本当に大丈夫そうだと思い雄二はホッとする。

 

「そんな事があったんですか!矢田さん、大丈夫でしたか!?」

 

殺せんせーは話しが聞こえていたのか教壇から一瞬で近付き矢田を心配する。

 

「うん。大丈夫だよ殺せんせー。雄二君が助けてくれたから」

 

「そうですかぁ、先生ホッとしました。ありがとうございます風見君。君は私の生徒の恩人です」

 

これから殺しにかかるメンバーの1人に言うセリフではないなと思いつつも気になったことがあり雄二は聞く。

 

「あ、あぁ。それはいいが、矢田。どうしていきなり名前で呼ぶんだ?」

 

「え!?いや、これからもっとなかよくなれたらなーって…だ、ダメだった?」

 

「そうか。なら俺も桃花と呼ばせてもらおう」

 

「う、うん!」

 

「ニュフフフ、いいですねぇ、いいですねぇ!」

 

あからさまにゲスい顔をした殺せんせーに矢田がナイフを振るが当然よけられて逃げられた。

 

一方その様子を見ていた渚達は雄二のことを話していた。

 

「意外に鈍いんだね、風見君って」

 

「だな。普通気づくぞあれは。なぁカルマ?」

 

杉野の問いに「んー」とあまり興味がないように言う。

 

「どうしたの、カルマ君?」

 

「いや、まぁ同意だし面白くあるけど…渚君さぁ、どう思う、あいつのこと?」

 

カルマの問いに渚は少し考え答える。

 

「まだ4月だから編入生がきてもまだおかしくはないけど、今この時期にくるのは自然とも言い難いし、なにより彼自身の体つきとか見たら普通とも言えない」

 

「んじゃ、暗殺者ってことか?」

 

「それにしては若すぎるような気もするけど…それに、自分は殺さない僕らで殺すって言ってるし。殺し屋のセリフとも思えない」

 

「色んな意味で不自然だよねー」

 

そして彼らの言う通りその疑問はこの日の体育の時間で一気に加速する

 

 

 

体育の時間、烏間の指示を聞きながらナイフに基礎の振り方を行っている。

 

「潮田だったか?あの3人はいつもああなのか?」

 

渚の近くに来て練習に積極的でない、寺坂達を指差して聞く。ちなみにクラスの名前はすでに全員覚えていた。

 

「うん、だいたいそう。あと渚でいいよ風見君」

 

「そうか。なら俺も雄二と呼んで構わない。くんもいらなくていい。しかし、地球の危機だって言うのに協調性もないのか?普通に軍法会議にかけられて処刑ものだ」

 

「例えが独特な上に残酷だ!まぁ、強制はできないし、でも暗殺する気はあると思うから」

 

「なら、いいんだが」

 

そう言って訓練を続ける。すると砂場でノイシュヴァンシュタイン城を作成していた殺せんせーがふと立ち上がる。因みにこの体育の時間は烏間に取られてからは砂場で遊んだり、見守ったりしている。

 

「すいません烏間先生。城を作りながら思い出したのですが、次の授業で使う資料をドイツから持ち込むのを忘れていました。少しでできますついでにこの後は昼休みなので少し観光もしてきまーす!」

 

次の瞬間に殺せんせーはマッハ20で飛び立った。

 

(早いとは聞いていたが本当だったな。…とはいえ、初速からマッハ20というわけじゃないはず)

 

ならやりようはいくらでもあると考えどうしていくかと雄二が思っていた時

 

「それでは、残り時間もあと少しだ。ここからはいつもの実施訓練を行う」

 

「実施訓練?」

 

「この授業の最後に烏間先生を相手に数人でナイフを当てにいくんだ。まぁ、いまのところ一撃も当たらないけど」

 

「!そ、そうか」

 

渚は雄二の質問に答える。いきなり後ろからかえってきた声に一瞬だけ雄二はドキりとする。

 

(緩んでいたとはいえ、俺の後ろにいつの間にかついていたのか?こいつはまさか……まさかな)

 

「雄二?どうしたの」

 

「いや、なんでもない。それよりいきなり後ろにつくな。俺の彼女にでもなりたいのか?」

 

「そんな気はないし僕は男だよ!」

 

「俺はそっち系の人間じゃないから、ヤルなら他の男子にしてくれ」

 

「話聞いてる!?」

 

「じゃあさ、取っちゃえば問題ないよね、雄二」

 

「なるほど、確かにその通りだな赤羽」

 

「ああ、俺のこともカルマでいいよ。つか俺もさっきから雄二って呼び捨てだし。というわけで渚君、今ならタイがいいみたいだよ」

 

「ホルモンの関係もある。いましかないぞ」

 

「取らないから!大事にするから!というか、なんで雄二もそんなにノリノリなの!?」

 

渚が2人に対してツッコミをかましていると、ドサっという音がして見ると烏間と実施訓練をしていた木村と前原が軽くいなされて尻もちをついたのがわかった。

 

「2人とも動きはいいが、まだまだ動きに無駄がありすぎる。それにお互いのコンビネーションもあまりできていない。即興であろうといつでもいい動きができるようにしていけ。とくに前原君は2撃目への入り方はいいが、まず初めの1撃目が完璧であれば、つぎの攻撃はさらに鋭くなる」

 

「「はい!」」

 

的確なアドバイスをして2人の手を引いて立ち上がらせる。

 

「やっぱ強いわこの人」

 

「かすりもしないどころか、あの場所からほとんど動いてないんだぜ」

 

木村と前原が感想をいいながら戻ると烏間は「次」と言って1人の人物を見て言う。

 

「風見君。1対1で俺と模擬戦だ」

 

その言葉にクラスの全員が驚いた。そう全員、雄二も含めて。しかし雄二の驚きと彼らの驚きは別の意味である。3ーEの驚きは1人で勝てるわけがないのになぜ烏間は彼1人だけを選んだのかということ。雄二の驚きは勝つ負けるの問題ではなく、何故自分を選んだかというものだった。

 

「君は来たばかりだが、体つきを見れば誰でも体を動かすのが得意なのはわかる。故に、実力を知っておきたい」

 

(嘘だ。烏間は俺の実力を知っているはず。…いや、知っているからこそか)

 

烏間の思惑は2つあり、1つは雄二の実力は資料によるものであり、実際にそのナイフさばきを見てない彼は確かめるという意味があった。もう1つは雄二が考えていたことで彼を知っているからこそ、その危険性(・・・)を確認し、他の生徒に危険が及ぶなら、なんとしてでも彼をこの教室から抜けさせるという考えだった。

 

(とはいえ、わざと負けたりするとかえってダメだ。それに烏間の考えはもっともだ)

 

故に雄二は前に出る。戦いの中で分かり合えるかは分からない。が、それでも今できる最善を尽くそうと雄二は考えたからだ。

 

「よろしく頼…みます」

 

一瞬頼むと言いそうになるがすぐに言い直して対先生ナイフを構える。烏間もそれを見て臨戦態勢に入る。そして2人のにらみ合いが始まる。E組の全員が息を飲む。20秒ほどたっただろうか。 にらみ合いはまだ続く。一般人ならなぜ動かないかと思うだろう。だが2人の間では何度も攻防戦が頭の中で繰り広げられている。どちらも攻められない。2人とも相手のまったく隙のない態勢に。

 

(くる!)

 

「シャ!」

 

動いたのは雄二。1歩目から距離を詰め、腕を(・・)振るう。

 

(フェイクか!)

 

雄二の手には何もない。ただ腕を下から上にアッパーのように思いっきり振るった。その瞬間とほぼ同時にナイフを手放しもう片方の手を使い指2本で上手く刃の部分を取ってそのまま烏間の方に投げる。因みに鍔の部分から落ちるようならそのまま握り第2撃、3撃目を与えるつもりであった。

 

(これはよけてもおそらく上の腕でキャッチして次の攻撃。俺がこのナイフを取っても拳がくる。ならば!)

 

烏間は体を後ろに傾けると同時に足に思いっきり力を入れてバク転をし、ナイフを蹴り飛ばして後ろに下がる。そしてこんどは烏間が前に出る。足が地に着いた途端に再び力を入れて距離を詰めて格闘戦にはいる。

 

(くそ、こうなると厄介だ)

 

雄二は防御をしつつそう思っていた。勿論いまの攻撃で決まらなかったことも想定していた。が、目の前の烏間という人物は次の動きには入れないような攻撃。つまり、決定打になるものではなく、封じこめる攻撃で着実に体力を奪うものだ。

 

(とはいえ、防御術をやめて無理に攻め込めばやられる。だったら)

 

「そこ!」

 

「ぐっ!」

 

と、ここで雄二は肩に攻撃を受ける。これに驚いたのは他の誰でもない烏間であった。何故なら当てるつもりなどなく防御をされるのを前提で放ったのだ。そしてすぐにこれが罠だとわかった時には既に腕を持たれていた。そこから懐に入られ、肘打ちが来るが烏間のもう片方手で止められる。

 

(ここだ!)

 

肘打ちをした方の手から別の対先生ナイフが出てくる。隠し持っていたものだが肘を止められている腕では当然振れない。だが手首は動かせる。この試合はナイフを当てれば勝ち故に靴にあたろうともOK。烏丸の足元に投げ決まる。誰もがそう思うがその前に烏間は全身に力をいれて雄二を前に押す。無理やりと言っていいほどだがこれによって完全に態勢が崩れ、隠していたナイフも落とされる。だが雄二も力を入れ、押されていた体を止める。この状態では膝蹴りも出来ない。動かせば簡単に押し倒される。

 

「…俺の負けだ」

 

と、雄二が降参すると烏間は力を弱めた。

 

「勝負はまだ着いていなかったぞ」

 

「烏間先生の方が力が強い。膠着状態に入ったなら力が強い方が有利だ」

 

「なるほど」

 

汗をぬぐい、2人は息を整える。

 

(とはいえ俺もだが、完全に本気というわけでもないな。おそらくあの状況から抜ける手段もあるのだろうが、それを使わないのは単純にいまが訓練だからだろう。彼は力のふるいどころを分かっている。なら、いまは大丈夫だろう)

 

そう思い、烏間は脱いでいた上着を取りに行くのだった。

 




矢田との恋の話はまだまだ先になりますので、しばらくは動きなしです。

因みに矢田を含めて確定しているヒロインは現在3人です。

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問う時間

よ、ようやく投稿できました。
11から12月のこの時期は毎回いそがしくて泣ける(つД`)ノ←血の涙をながしながら
感想も返信できずすいませんでした。
また亀更新になりますが呼んでくれたら幸いです。


烏間VS雄二の模擬戦は2戦目に突入していた。

 

「ふっ」

 

「しゃっ、はっ!」

 

1撃目の攻撃をよけて続く第2撃は1撃目の勢いそのままに倒れこむようにしバク転のをするように足蹴り。そこに付けている対先生ナイフで攻撃するも紙一重でかわされる。

 

「甘い!」

 

足が着地し3撃目は前方に飛ぶようにかかる

 

(ここだ)

 

「しまっ!」

 

しかし烏間はあえてつけていた上着をここで前に脱ぎ飛ばす。片腕を使い何とか振り払うも視界が一瞬阻害される。目の前には近付いてきた獲物をしとめる獣のような眼をした烏間

 

「なんてな」

 

「なぁ!」

 

烏間は気付くがもう遅かった。雄二は烏間の一瞬の動きも見逃してはいないだから罠にかかったふりをした。あの時相手が見えなかったのは雄二だけでなく烏間もだ。故にナイフを上に投げた。烏間の頭上に落ちるよう。体勢を崩した相手に、技を掛けていなすつもりだった烏間はもうその体制に入っている。

 

(だが、よけられる)

 

烏間がそう思った時点で勝負は着いていた。こう思ったということは意識はナイフにいっている。もちろん雄二の動きも警戒しただろう。だがほんのわずかに意識をそらすことが重要だったのだ。先程も言ったように上着で相手が見えないのは烏間も同じ。ナイフを投げて、意識を空中のナイフに向けるよう持っていた手を見せ、少し視線を上にした。それとほぼ同時に身体を傾けてスライディングに入った。

 

「ちぃ!」

 

完全に意識が雄二にいっていればこの攻撃は通用しないだろう。だが、たった1割でも意識が外れるならば、瞬きにも等しい一瞬。さらにスライディングによって視界からも外れる。滑り込みながら足にナイフを当てた。

 

 

 

 

「当たるかどうかは賭けだったが、何とかなったな」

 

「嘘をつくな。あれ以外にも方法もあり、攻め方も違うだろうに」

 

「流石にわかるか。とにかくこれでイーブンだな」

 

小声で2人は話すが息は上がっていない。

 

その姿にこの模擬戦を見ていたE組の全員が唖然としていた。

 

「いや、すげーわ」

 

「俺、手に汗握った。あいつ何者?」

 

「余計にわかんなくなったね」

 

カルマ、杉野、渚は先程言っていた疑問がさらに大きくなる。すでに彼の周りには生徒の大半が囲んでいる。

 

「本人に聞いてみる?」

 

「うーん、教えてくれるかな?」

 

 

 

 

昼休み、今だに皆の興奮は収まってはいなかった。自分達が手も足も出ない相手に充分すぎる戦いをしていたのだから当然といえば当然である。雄二はいま質問攻めにあっていた。どこから来たのかだとか、好きな動物は何かとか。ちなみに、前者は磯貝、後者は倉橋

 

「山梨で暮らしていてそこから来た。好きな動物は犬だ」

 

質問には全て答えており、このクラス1エロくゲスい岡島の好きな女のタイプと言われた時も

 

「特にはないが、でかい女には少し苦手意識があるな」

 

「え、お前貧乳好き!?」

 

「岡島君、黙ろうか」

 

「貧乳で何が悪いかじっくり聞こうかな」

 

「ちょ、待って!ていうか、思ったけどさっきの俺の紹介文ひどくね!?」

 

磯貝とおなじく、クラス委員の片岡メグに肩を掴まれ、貧乳に反応した茅野が鬼の形相をして引きずられながらそう言うエロ島こと岡島

 

「だからひどくね!?あとどっかにある島の名前みたいに言うな!」

 

ひぃぃと言う声が教室の外から響いているが全員無視して会話を進めている。

 

「それにしても雄二って結構質問には答えるんだね」

 

「確かに。岡島の質問なんて答えるのためらう奴の方が多いと思うぞ。何より女子の近くだと」

 

渚と杉野はそう言うが雄二はさも当然だと言わんばかりの顔をして言う。

 

「答えに迷って答えないは俺の性分に反するんでな」

 

「じゃあさ、今日の体育の実習で烏間先生といい勝負してたけど、ああいう戦い方ってどこで覚えたの?」

 

「山梨に住んでた時、俺の保護者の師匠から教えられたことがあって、それに沿って格闘術も教わったんだ」

 

カルマの問いに対してスラスラと答える。

 

「教わったこと?何それ」

 

「俺もよく分からなかったが女にモテる術だそうだ」

 

「「なにぃ!?」」

 

1秒かかったかどうかもわからない速さで反応したのは前原と岡島であった。

 

「てか、岡島君復活したの?」

 

「作者曰くここで反応しないのは、岡島じゃないとのことです」

 

「メタすぎる発言はダメだよ不破さん!」

 

「え、けど本編含めてこれ以外の小説でも結構私こんな感じだけど。詳しく知りたいならそちらも見てね」

 

「だからメタすぎるって!!あと宣伝が露骨すぎ‼︎」

 

渚と茅野によるツッコミを横に雄二は話す。

 

「師匠曰く、小学生の間は足が速い奴がモテ、中学生になったら喧嘩が強い奴がモテ、そこから先は頭がいい奴がモテる。つまり、走って殴って本を読めって事らしい」

 

「分かりやすいし、納得はできるけどなんかすげー大雑把だな」

 

「まぁ、実際師匠は大雑把な奴だったからな」

 

「で、その師匠ってのは親戚?親?」

 

「親戚はいない両親と姉もいたがもういない全員死んだ」

 

その言葉が出た瞬間全員の表情が変わる。迂闊に聞きすぎたと聞いた前原も含めて全員がそう思っていた。

 

「何年も前の話だ問題ない。それより、そろそろ殺せんせーが来る頃だ席に座っておけよ」

 

「あ、ああ」

 

それを皮切りに席に戻り、全員が座って少しして殺せんせーが入ってきた。

 

 

 

side潮田渚

 

雄二が帰った後も僕は放課後に教室に残っていた。

 

「おや、渚くんどうしましたか?」

 

「殺せんせー、ちょっといいかな?」

 

昼休みにあったことをかいつまんで先生に話す

 

「なるほど。そのようなことが」

 

「雄二は問題ないって言って気にしてないみたいだけど僕も含めてクラスのみんながどう接すればいいかわからなくなってるんだ」

 

あの後気まずくなり、みんな雄二と話さなかった。いや、話せなかった。雄二のことを知りたいって好奇心はみんなあったけど…辛くないわけがない事を話して貰おうとは思ってなかった。

 

「 先生も、彼のことはよくは知りません。しかし、風見くんは最初に言いました。【俺たちで先生を殺す】とそれは、みんなとの協調を結んで学園生活をおくりたいという表れです。だからこそ、みなさんの前でも話した。きっと嘘をつきたくないのでしょう。それに、本当に話したくないなら、言わないはずです」

 

「………」

 

「それと、これは風見くんからです」

 

「え?」

 

「【もしクラスの人が俺のことで心配したりするなら、その必要はない。普通に接してくれ】と私に言って帰って行きました」

 

先読みされたようだ。その言葉を聞いてようやく「ふぅ」と安堵の息が出る。

 

「ありがとう殺せんせー」

 

「ヌルフフフ。どういたしまして。でもその言葉は風見くん本人に言うべきです。まだ知らない生徒にも連絡を取ってください」

 

 

side雄二

 

戻る際に連絡があり『バイト』に行ったが現場待機といわれ、しばらくすると状況終了と連絡が入る。人使いが荒い。まぁ、今回のバイト代も俺の口座に入っているからいいのだが。

 

「ん?」

 

メールの送信履歴がプライベート用の携帯にあった。JBからなのがすぐ分かりみる。

 

[バイトお疲れ様]

 

それだけかよ。まぁ、あいつなりの労いだろうな。

 

「[こちらから用がある場合は連絡する。…ありがとうジュリアxxx]こんなところか」

 

しかし、普通の学園生活か。…暗殺を除けば後は自由と言っていたな。

 

「仮にそうだとしても、やはりいいのだろうか」

 

不意に口に出てくる。1人で居る時は最近いつもそうだ。だが、原因は分かっている。この暗殺は早く成功させなければいけないと思うと同時に、この生活が少しでも長く続いて欲しいと思う自分がいる。だがこんな生活が、楽しいと思える普通の日常が俺に許されるのか?答えのでない自問自答が俺を狂わせる。

 

「そういえば、話しすぎたかもな」

 

質問に答えたがほぼ真実しか話してない。一応カナダから帰国してきたという設定で資料は出したが…とはいえ、あまり嘘もつきたくはない。いまはなるようになると思うしかない。

 

「ドアが開けられた形跡はないな」

 

相手がマッハ20な相手だけに警戒する。もしかしたらピッキングもできる可能性もあり、部屋を見る。隠しているものは開けられた形跡が一つもない。しかし、用心はいる。マッハ20で扉を開け、一瞬で部屋を物色し、お目当ての隠しものを見つけて何通りもあるケースの番号キーを解いて中身を見た後、証拠を全て消して去った可能性もある。

 

「気付かれている可能性も視野に入れるか」

 

今日やることはもうない。しばらく休むか。

 

 

siedフリー

こうして雄二の転校初日は終わる。余談だが、雄二がメールを送った相手はメールの最後の[xxx]を見て少し赤くなっていた。

 

次の日彼が考えていたことが外れていると知る。

 

「これが今分かっている殺せんせーの弱点か」

 

「うん。そうだよ」

 

朝登校すると、全員というわけではないが再び雄二を歓迎した。昨日のことは渚の連絡により、誰も気にしていなかった。だから雄二も普通に挨拶をして接する。1名は少し頬を染めていたが。そして昼休み、協力して暗殺する際の参考として渚から殺せんせーの情報を共有していた。

 

「今のところ使えそうなのはこの2の《テンパるのが意外と早い》くらいか」

 

「そうでもないよ。例えば1の《カッコつけるとボロが出る》から2が分かったくらいだし、何が役に立つかもわからないよ」

 

「なるほど。そう言われて考えると4の《パンチがヤワい》ということは、パワーはあまりない可能性があるな」

 

このような感じで話が進んでいく。しかし現状で判明している弱点が少ないためこの話題は早く終わり、次の話題に入る。

 

「なら次だが…カルマは殺せんせーについての情報は何かないのか?」

 

「ん?なんで俺?」

 

「オレはこのクラスに来て日が誰よりも浅い。情報は色々な奴から色々なことを聞く方がいい。だからたまたま一番近くにいたお前に聞いたんだ。それに戦場では、いかに早く敵の情報を得られるかで勝敗がほぼ決する」

 

「最後の例えになんでそれなの!?」

 

「たまに雄二ってそういうの言うよね?ミリオタ?」

 

「…まぁ、それに近くはある。それより、どうなんだ?」

 

一瞬だけ雄二が黙ったことに渚とカルマは疑問に思うがとりあえずカルマは質問に答える。

 

「そうだねー。生物として殺せるかどうかまだわかんないけど少なくとも先生として殺すのはほぼ不可能だと思う」

 

「どういうことだ?」

 

「雄二が来る前なんだけど、殺せんせーを殺す策で俺の命を使ったんだ。崖から飛び降りて、助けに来るなら銃で撃ち、助けに来ないなら生徒を見捨てた教師として殺す算段だったんだけど、結果はどっちも失敗。ネバネバした触手で下からキャッチされて」

 

「ずいぶん無茶するな」

 

まぁね。とその時のことを思い出しながら言う。

 

「で、そん時に言われたのが、【見捨てるという選択肢は先生にはない。いつでも信じて飛び降りて下さい】だってさ。殺意が湧くほどムカつくけど…俺が知ってる先生では間違いなく1番だね」

 

「………」

 

「雄二?」

 

「いや、なんでもない渚。(それなら、人の家に勝手に進入して物色することもなさそうだな)しかしだ、やはりわからないな。なぜわざわざ暗殺に適した空間を自ら要求し、なぜ教師をしてるのかも」

 

「「確かに」」

 

理解できない疑問に行き着いた時に昼休みが終わり次の授業が始った。

 

 

side雄二

 

放課後になり皆が帰る。俺はというと、殺せんせーの補習授業を受けている。先生曰く、俺の学力を知っておきたいからだそうだ。

 

「ふむふむ。なかなかの高成績です。これなら学年50位以内にも入れますね」

 

顔をオレンジ色にして、顔面には大きく◯を出す。しかし進学校とはいえ中学レベルとは思えない問題も多いな。正直なめていた。ブランクもあるな。

 

「ところで、その皮膚はどうやって色を変えてるんだ?」

 

「ヌルフフフ、秘密です」

 

だろうな。

 

「さて、では先生も質問です風見くん。こうやって先生が目の前にいるにも関わらず、暗殺を一切しないのは何故ですか?」

 

「…別に。渚達から聞いて今は1人で暗殺しても無理な可能性が高いからやらないだけだ」

 

「確かに1人より複数の方が効率はいいですが、君の場合純粋に殺意がない。いや、暗殺をしたくない気持ちとする気持ちが混ざりあっています」

 

「!」

 

「いや、少し違いますかねぇ。殺意そのものを殺していると言うべきですかね」

 

俺の気持ちを読むとはな。

 

「そうだな。その通りだ」

 

「なにがそこまで君を不安にさせるか、何が君をそうさせるのかはわかりません。が、先生は君の味方です。クラスの皆もそうです。自分ではどうしようもない時、不安な時、色々考えるでしょう、悩むでしょう。それが出来なければ楽かも知れません。でもそれでいいんです。そうして人は前に一歩ずつ進むのです。それで迷うなら仲間の道しるべを借りてもいい。そしてそれが次に悩む仲間をたすける新たな力になるのです」

 

「………先生って本当に先生なんだな」

 

「なんだか酷いことを言われた気がします⁉︎」

 

やはり色々と侮れない。今も不安だ。押し潰されそうなくらいに。けど、少しだけ和らいだ気がした。

 

「ありがとう殺せんせー」

 

その言葉に再び笑顔になっていた。なぁ、麻子。どんな結果になるかはわからないけど、ここなら、あんたのような師匠(せんせい)がいるここなら、もう少しの間だけ生きてもいいか?




次回もよろしくです


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大人の時間

ゆっくりとする時間がもっとほしい
早く自由な生活がしたい。そう思うこの頃です。

今回も楽しんでくだされば幸いです


side雄二

 

月日は5月となり、暗殺期間まであと11ヶ月。

 

「ありがとうございましたー」

 

コンビニの店員が出した営業スマイルもないありがとうございましたを聞き流し、買った水を少しだけ飲んで早歩きで学校に向かう。生徒が登校する時間には少しだけ早いが、昨晩いきなり『バイト』に呼び出された。終わった後仮眠を少々とり、訓練がてら遠回りをして登校していた。

 

「ん?あれは…殺せんせーか?」

 

先ほどの場所から少し離れたコンビニから出てきた物体は色を肌色にし、不自然な付け鼻をした殺せんせーだ。しかし、店員はなにも思わないのか?関節も合間なのだから通報くらいはされそうだが…それだけこの国は平和ということか?

 

「…見なかったことにするかっと、あっちも既に行動してるのか」

 

絡まれていた外人の女を助ける殺せんせー。どうでもいいが、あの金髪もっさりヘアーとスタイルだけを見ればあいつそっくりなところが多い。

 

「烏間の言っていたやつか。邪魔にならなければいいんだがな」

 

気付かれる前にさっさと行くとするか。どのみち教室で会うだろう。

 

 

 

 

sideフリー

 

「今日から外国語の臨時講師を紹介する」

 

「イリーナ・イェラビッチと申します。皆さんよろしく!!」

 

烏間の紹介で名乗る金髪の外国人女性は笑顔いっぱいで言いながら、殺せんせーの腕に抱きついて胸を押し付けている。渚はメモとペンを持って観察をしている。タコ型生物の殺せんせーが人間の女性にベタベタと好意を示された時どのような反応があるか確かめるためだ。しかし

 

「ニュフーン♡」

 

口角は恥かしさによってデレデレにゆがみ、顔はピンクに染まり、目は胸にいっている。要するに美人にデレデレする人間とまったく同じ。何のひねりもない顔である。

 

「ああ、見れば見るほど素敵ですわぁ。その正露丸のようなつぶらな瞳、曖昧な関節、私とりこになってしまいそう」

 

いや、そこがツボの女なんていねーだろとクラス全員が思った。そして、十中八九この先生は只者でないなということも。

 

 

 

 

「ヘイパス!」

 

「ヘイ暗殺!」

 

殺せんせーがサッカーボールを高く上げてパスしてくる。それを渡された相手が返すと同時に銃を撃つ、ナイフで切りかかる等の暗殺をしかける。もちろんうまくいくはずもなくかわされる。それを見ていた雄二は何人かにある助言をした。

 

「当てる必要はない。だが、そこにターゲットがいると思った位置を自分で作れ。場所は殺せんせーに当たるか当たらないかのギリギリの位置だ」

 

この指示を出されたのは雄二が訓練や日々の射撃による暗殺風景を見て選んだ4人。千葉 龍之介、速水 凛香、磯貝 悠馬、赤羽 業それに雄二も参加する。

 

「ヘイ暗殺!」

 

雄二の撃った対先生弾は殺せんせーの横を通る。勿論ねらってだ。何度か行って気付いたことがあった。それは当たる弾には敏感で当たらない弾はそうでもないということ。はじめは雄二が撃った弾だからかと思った者もいたがやっているうちにそれは違うと皆確信していく。渚はすぐにこれをメモに書こうとしたときだった。

 

「殺せんせー!」

 

赴任してきたイリーナという先生が手を振りながら殺せんせーに近付いて胸を強調しながら話す。

 

「烏間先生から聞きましたわ。すっごく足がお速いんですって?」

 

「いやぁ、それほどでもないですねぇ」

 

「お願いがあるの1度本場のベトナムコーヒーを飲んでみたくて、私が英語を教えている間に買ってきてくださらない?」

 

そうお願いされると「お安いご用です」とすぐさまマッハ20でベトナムへと飛んで行った。一瞬だけシンとなるがチャイム音がなる

 

「で、えーと、イリーナ先生?授業始まるし、教室戻ります?」

 

「授業?ああ、各自適当に自習でもしてなさい」

 

いきなり態度が変わり何人かが困惑する。

 

「それとファーストネームで気安く呼ぶのやめてくれる?あのタコの前以外では先生を演じるつもりもないし、イェラビッチお姉様と呼びなさい」

 

「ふむ。淫乱女か把握した」

 

「変な言い方すんな!」

 

「いやー流石に失礼しょ雄二。ねービッチねえさん」

 

「略すな!あと、お前が言うな!」

 

沈黙をぶった斬りそう言った2人に流石だなと皆が思っていた。

 

「で、どーすんの?あんた殺し屋なんでしょ?クラス全員で殺せないモンスター相手に、ビッチねえさん1人で殺れんの?」

 

「ガキが。大人には大人のやり方があるのよ」

 

と言って渚の前に立つ

 

「潮田 渚ってあんたよね」

 

「?はい。そうで……むぐ」

 

といきなりキスをする。クラスの皆が驚くなか、渚も一瞬なにが起こった分からず困惑する。しかしただのキスがディープキスに変わって舌が入ってきて10HITで力が入らなくなり、20HITで力が抜けてきて、30HITで身体がくたぁとなって気絶した。

 

「後で教員室にいらっしゃい。あんたが調べた情報聞いてみたいわ」

 

胸の中でふにゃーとなっている渚にいう。

 

「ま、強制的に話させる方法なんていくらでもあるけどね」

 

「…そんなことをさせると思うか?この淫乱クソビッチ。穴掘って泣かすぞ?」

 

毒めいた言葉を言いながら睨んでいる雄二にクラス全員の体が震える。

 

「ふん、あんたは黙ってなさい。技術と人脈、全てを兼ね備えてから出直しなさい。それと、私の暗殺の邪魔をしたら殺すわよ」

 

「殺ってみろよ。淫乱クソビッチ」

 

「その呼び名やめろ!」

 

「それと、2つ言っておくが暗殺者ならタバコはやめとけ。あんたみたいにターゲットも他人も舐めた奴じゃ、あの怪物はしとめられない」

 

「あっそ。その言葉、後で負け犬の遠吠えにならないようにせいぜい祈りなさい」

 

それを言うと雇ったと思われる3人の見るからにそっちの人間と思われる怪しい男達が現れ、作戦を練り出す。

 

雄二も含め、クラス大半が思った。_____この先生は嫌いだ‼︎

 

 

 

教室に戻ったら黒板に自習と書いて渚から聞き出した情報を元にタブレット端末を使い作戦を練っていた。

 

「なービッチねえさん授業してくれよー」

 

「そーだよビッチねえさん」

 

「一応ここでは先生なんだろビッチねえさん」

 

「あー‼︎ビッチビッチうるさいわね‼︎」

 

ビッチと言われることにいい加減我慢の限界なのかイリーナはついにつっこんだ。

 

bitch(ビッチ)じゃなくてVic(ヴィッチ)‼︎あんたら日本人はBとVの区別もつかないのね‼︎」

 

「で淫乱もっさり金髪女、授業はする気はないのか?」

 

「お前はドンドン名前を酷くするな!」

 

「安心しろここまで酷く言う女はお前だけだ」

 

「黙れや!」

 

クラス全員、雄二のシモネタ混じりの罵倒に驚く。すごい発想だなと

 

「授業する気がないなら、全員外に出て暗殺のための訓練をしても問題ないよな?」

 

「ふん。私が暗殺するから無駄でしょうけど、勝手にしなさい」

 

「よし。もっさり金髪淫乱クソビッチから許可も得たことだ全員外に出るぞ。無駄な時間を過ごすよりよっぽど有意義だ」

 

ギリギリと歯ぎしりをしながら雄二を睨むが気にせず皆にいう。

 

「雄二のその罵倒すごいよね。僕じゃ絶対思いつかない発想だよ」

 

「まぁ、どうやら俺もあの女には相当イライラしてる。人の普通の学校生活を邪魔しやがって」

 

(この教室で授業を受けてる時点で、充分普通じゃないような)

 

と渚は思うが会えて口に出さなかった。そうして話しながら校庭につく

 

「それで、なにをするの雄二くん」

 

「なに簡単だ。ゆっくり走るだけだ」

 

雄二の言ったことに質問した矢田を含め全員疑問を持つ。

 

「だが、ただ走るんじゃない。歌いながら走るんだ」

 

「けっ。くだらねー俺らはやんねーぞそんなこと」

 

「まぁそう言うな寺坂。今回だけは参加してくれ」

 

「なんか面白そーなこと考えてそうだね。なにをするんだい雄二?」

 

「ランニング・カデンスと言ってな。俺が前いた学校では走る時はよく歌ったものだ。とにかく俺の後に続いて歌え」

 

 

 

 

「ふう、ようやく静かになったわね」

 

全員雄二に説得されて外に出て静かになった教室で再び作戦を練り出した。が、

 

「イェラビッチは淫乱だー♩」

 

「「「「い、イェラビッチは淫乱だー♩」」」」

 

イリーナはガンとずっこけたと同時に頭を打つ。

 

「何人かが声が小さすぎるぞ!もう一回だ! イェラビッチは淫乱だー♩」

 

「「「「イェラビッチは淫乱だー♩」」」」

 

「いいぞ。 男のベッドで身悶えるー♩」

 

「「「「男のベッドで身悶えるー♩」」」」

 

はじめは恥ずかしかったメンバーもこうなりゃヤケだとノリノリで言い出す。

 

「グッドフォーユー♩」

 

「「「「グッドフォーユー♩」」」」

 

「グッドフォーミー♩」

 

「「「「グッドフォーミー♩」」」」

 

「ウームグッド♩」

 

「「「「ウームグッド♩」」」」

 

「やめんかこらー!!」

 

我慢できずにイリーナは教室の窓からツッコミを入れた。遠くで見ていた烏間は頭を抱えていた。

 

 

 

 

sied雄二

 

5限目前の休み時間に俺は烏間から注意を受けているのだが

 

「腹が立つのはわかるが、国の決定だ。彼女の暗殺計画の阻害行動は我慢してくれ」

 

すまなさそうな顔をしているためどっちが注意を受けているのか分からない。

 

「察してくれということか?」

 

「そういうことだ。せっかくあの時の借りと約束を果たせると思ったんだがな」

 

「俺の境遇を考えれば、仕方ない。ある程度覚悟は出来ていたさ」

 

「…そういえば、聞いてなかったな。どうして普通の学校生活にこだわるんだ?」

 

「別に。ただ、そんな生活に憧れていただけさ。それより、市ヶ谷やサムおじさんから俺について何か言われていないのか?」

 

「他のゴミ掃除をしっかりとこなすならある程度の期間は認めるそうだ」

 

「JBからは?」

 

「あんまり無茶苦茶しないでとのことだ」

 

まったく、面倒な。女っていう生き物は本当に面倒だ。

 

「とりあえずわかった」

 

失敗するとは思うがな。

 

「俺はあいつが呼んだ怪しい男達のことを聞き出す。次の授業の準備をしてくれ」

 

「確か次はあんたの受け持ちの体育だったな。着替えてくる」

 

「それと、気が緩んでいるのかわざとなのか知らんが、ここでは先生だ」

 

「了解しました!烏間先生!」

 

「…やはりわざとか。次に実施訓練を行う時は覚悟しておけ」

 

フッと笑い烏間は踵を返して歩き出す。

 

「ダニーとは性格も年齢も国籍も違うな」

 

もし年齢が同じだったら、それこそ親友になっていたかもしれないな。

 

 

 

 

今日の体育の授業は射撃訓練だ。殺せんせーの形をした的に向かって対先生弾を発射する。俺も拳銃型のモデルガンを使い、狙い撃つ。

 

「すごい」

 

と俺の隣で訓練をしていた千葉がぼそりと言い、近くにいた速水もコクリと頷き同意する。わざと外してもよかったかもしれないな。まぁ、今さらだ。それに嘘はあまりつきたくない。

 

「俺からしたらお前達の方がすごい。本格的に始めてまだ半年も経っていないのにこの命中率は優秀だ」

 

「半分だけだ風見は9割以上命中してる」

 

「慣れてくれば、お前達ならできるようになる」

 

「慣れてくればって、何処かで習ってたの?」

 

速水の言葉に周りにいた全員が耳を傾けていた。…話せるだけ話すか。

 

「俺が前に住んでたのは山の中の小屋だったんだが、熊や猪が出るところでもあった。師匠は猟銃の免許を持っていた。ある時に銃の整備をしてる時に撃って見るかと言われてモデルガンで射撃訓練をしてくれたのがきっかけだ。まぁ、その時使ったのはスナイパーライフル型のものだがな」

 

「自分の身を守るためか?」

 

「それもある。それより、あれ見ろよ」

 

話しを変える口実にもなったものに指を差す。そこに見えたのはニヤニヤした顔でイリーナと体育倉庫に向かう殺せんせーの姿だった。

 

「おいおいマジか。2人で倉庫にしけこんでくぜ」

 

「なーんかガッカリだな、殺せんせー」

 

「三村も木村も心配する必要はない。失敗する」

 

「って、何でわかるんだ?」

 

「理由は2つ。1つはあいつはターゲットを舐めてる。もう1つは、あいつの用意したものだ」

 

「「「「?」」」」

 

分かりにくかったか。

 

「どうして俺たちに支給された武器がこんなオモチャみたいな武器だと思う?おそらくこれしか効果がないからだ。烏間先生から聞いたが、ミサイルに撃たれても死ななかったそうだ。そんな相手に」

 

話している最中に銃声が聞こえてくる。やはりか。

 

「実弾が効くと思うか?」

 

そして次に聞こえてくるのは悲鳴とヌルヌル音。…うむ、自分で言うのもなんだが、なんだあの音は?

 

「ていうか、めっちゃ執拗にヌルヌルされてるぞ‼」

 

行ってみようと言われて俺もそこに移動すると殺せんせーがタイミングよく体育倉庫から出て来た。

 

「殺せんせー‼︎」

 

「オッパイは?」

 

岡島の発言に何人かの女子がゴミを見るような目をする。もう少しオブラートに包むべきだぞ。

 

「いやぁ…もう少し楽しみたかったですが、皆さんとの授業の方が楽しみですから。6限目の小テストは手強いですよぉ」

 

テストと聞いて少しだけ皆が苦笑していると、フラフラした足どりでイリーナが出てくる。なぜか体操服姿で。

 

「ま、まさか、わずか1分であんなことされるなんて…肩と腰のコリをほぐされて、オイルと小顔とリンパのマッサージされて、早着替えさせられて、そのうえまさか触手とヌルヌルであんな事を…」

 

そこまで言ってパタリと力尽きて倒れた。

 

「殺せんせー、何したの」

 

「……さぁねぇ。大人には大人の手入れがありますから」

 

肌を鼠色に変えてしれっと言いやがったこいつ。

 

「悪い大人の顔だ‼︎」

 

「今更だろ渚。というか、随分色々とナニをしたんですかね?」

 

「にゅあ!?なぜか風見君の言い方が渚君と違う気がします‼︎そして目が冷たい‼︎」

 

「別に。本当、ナニをしていたんでしょうね。信じてますよ、殺せんせー」

 

「棒読みで言わないでー‼︎」

 

先生のうったえを無視しつつ、教室に戻る。ふと見るとイリーナがわなわなと震えている。プライドをズタボロにされたからだろう。さてさてどうなることやら




雄二がキレていた要因としてはJBとスタイル等は似てるのに性格が全く違うことの違和感もあります。

次の次でグリザイアの話を混ぜたオリジナルができればと思ってます


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キレてなおる時間

今回は風邪で寝込んでいた際に書いたので比較的早く出せました。
しかし次回からはマジで亀更新になるかもしれません




翌日、再びイリーナの授業だがやっぱり自習にし、作戦をねっている。殺せんせー による手入れを受けてプロのプライドを完全に破壊され、屈辱で怒りを抑えることが出来ていないのか、タブレット端末を押す力が強い。

 

「必死だねビッチねえさん。あんなことされちゃプライドズタズタだろうね〜」

 

キッと睨んでくるが言ったカルマは口笛を吹いて無視する。

 

「その辺にしておけよカルマ。ああやってイライラしてるのは、打開策がないからだ。そっとしてやるのが優しさだ」

 

「そこ、いい加減黙れ‼︎」

 

そして雄二も窓の方を向いて無視するとさらにイライラしていた。

 

「あの、先生。授業してくれないなら殺せんせーと交代してくれませんか?一応、俺等今年受験なんで」

 

磯貝も流石にこの状況が続くのは良くないと思い自分のいや、3-Eほぼ全員の意見を言った。

 

「はん!あの凶悪生物に教わりたいの?地球の危機と受験を比べられるなんて、ガキは平和でいいわね〜」

 

すでに何人かはこの言葉でイライラしていたが次の言葉で保たれていた怒りの線が切れることとなる。

 

「それに聞けばあんた達E組って、この学校の落ちこぼれだそうじゃない。勉強なんて今さらしても無意味でしょ」

 

ブツリ。そんな音が聞こえたような気がクラス全員が感じた。

 

「じゃあこうしましょ、私が暗殺に成功したらひとり五百万円分けてあげる。あんた達が一生目にすることのない大金よ。無駄な勉強するよりよっぽど「その辺にしておけよ」っ!」

 

静かな殺意。一番後ろの席にもかかわらず、他のクラスメイトに全く感じさせず、それをイリーナだけに向けてきたことに彼女は一瞬驚く。

 

「な、なによ!人がせっかくチャンスをあげてるのよ!無駄な努力より遥かに有益な!黙って従うだけなんだから、ガキはおとなしく…」

 

その先を言うことはできなかった。誰が投げたかは定かではないが彼女の顔の横を消しゴムが通りすぎる。

 

「でてけよ」

 

ボソッと聞こえた声も誰のものかはわからなかったが彼女は見てようやく気づいた。クラス全員が敵意の目付きをしていると。ただ唯一、雄二だけは言わんことじゃないと言う顔をしていたが。

 

話は変わるが暴動が起こる理由は様々あるが結局は1人の反抗からはじまることが多い。何か反発の声を上げる、物を投げつける等様々だが最初にそれが起こったら連鎖的に伝わり、一気に不満は爆発していく。

 

「出てけクソビッチ!」

 

「殺せんせーと変わってよ!」

 

ひとつ言葉があれば次が、ひとつ物が投げられれば次がと続き、今までの不満を放出されていく。

 

「そーだ!そーだ!巨乳なんていらない!」

 

…1部関係のないというか、どさくさに紛れた嫉妬はあったが

 

 

 

 

あの後教室からイリーナは逃げた。いるにいられないのだから当然だろう。

 

そして今、雄二は現状でクラスの中でナイフの扱いがうまい3人、磯貝、前原、岡野にギッとした目付きで睨まれながら対峙する。一触即発の状態で時間がゆっくり進んでいるかのようだ。そしてまず前原が相手に向かってモノを斬撃で飛ばす。急いでそこに向かわなければ間に合わないギリギリの位置だ。内心「よし!」と前原は思うがそれもすぐに終わる。まだ余裕がありと言いたげな反応でそこにつき、刺突で返す。

 

「またかよ!」

 

「まかせて対応する」

 

岡野が反応し、斬撃でモノを磯貝に渡す

 

「よし任せた!」

 

それを再び斬撃で上にあげる。

 

「今度こそ」

 

前原が刺突で付くこうとし構えるが急停止し横へ避ける。その後ろから体制を直した岡野が刺突で付き返す。

 

「っ!だが、いける!」

 

くると思われた方向とは違うので急いで対応する。雄二はおもいっきり手を伸ばしテニスで打ち返すごとく、斬撃を当てる。位置は、岡野と前原の間。

 

「「!」」

 

まさか打ち返されるとは思わなかったがまだ打ち返せると思い、距離的にとどきそうにない磯貝を除いた2人は行動する。しかし、思考がかたまる前にとっさに2人が動き、どちらが打つか定まらない。とにかく返すと思い、アイコンタクトを岡野は送る…が

 

「よしわかった!」

 

「って違う!」

 

どうやら伝わらず、ぶつかり打てなかった。そして無情に……殺せんせーの顔が書かれたボールが落ちた。

 

「だー!また負けた!俺にやらせろよー」

 

「私が打ち返そうと思ったのに」

 

「まぁまぁ、落ち着けって」

 

今行っていたのは烏間が考案した暗殺バドミントンと呼ばれるもので動く目標に正確にナイフに当てるための訓練だ。斬撃と刺突でパスの回数と入る点数が違い動いているボールに正確に刺突で当てるのは高等技術のため、オフェンス、ディフェンス共に斬撃より優遇されている。ちなみに、斬撃、刺突以外の部分で当ててしまうと相手ボールになるのだが

 

「いや、俺も危なかった。最後はギリギリ、しかもその後に攻められたら、もう打つ手はなかった」

 

「よく言うぜ。最後以外は全部刺突で当てて」

 

前原の言う通り、雄二は試合では斬撃を使ったのは最後のみで他は全て高等技術である刺突で当てていた。雄二がチームに入ったらチームバランスが崩壊するとまで言われ、今回このような対戦になった。

 

「少し扱い慣れて得意なだけだ。むしろナイフ技術がなかったお前達がここまで出来てる方がすごい」

 

「 謙遜するなって。しかし、雄二がいればマジで殺れるかもしれないな」

 

「まだまだだ。あの先生のスピードや頭脳を考えるとまだ時間が必要だ。情報も分かってないだけでまだあるだろう」

 

「でもすごいよね。それも師匠って呼んでた人に習ったの?」

 

「まぁ、サバイバルが多くてな。ちなみにクマに1度襲われてる。俺はどうにか助かったがな」

 

「よく生きてたな…死んだふりでもしてたのか?」

 

「熊にあった時に死んだふりをすると言うのをよく聞くがあれはイソップ寓話のある物語で出た内容が誤解されてできた逸話に過ぎない。実際にそんなことをしたら、高確率で殺られる。種類にもよるが走って逃げるのもダメだ。逃げるものを追う習性があるものいる。もしであったらとにかく急な動作をするな。熊がパニックになって襲ってくる。背を向けず、来るなと言え。そうしてゆっくりと少しずつ後ずさりする。聞かないなら大声で言え。1番は合わないことだが、腕があるなら最悪は熊と格闘するのも1つのてだ」

 

雄二の説明に3人ともへーと言いそうな顔で聞いていた。

 

「雄二って色々詳しいな」

 

「本を読めと師匠に言われてな。その過程で色々な知識を身につけたに過ぎない」

 

なるほどなと磯貝が言いながら片付けを始めるので雄二達も片付けをはじめる。

 

「それにしても、あのビッチ明日もくんのかな?」

 

「正直、これ以上授業してくれないなら迷惑だし、烏間先生に相談しようかな?」

 

「…その必要はないと思うがな」

 

「「「?」」」

 

前原と岡野の言い分に対して言った雄二にどういう意味かたずねようとするが、かたずけを終えた雄二はさっさとどこかに行きだした。

 

 

 

 

放課後、イリーナは今日のことを思い返しつつ足取りが少々重く、下を向いてとぼとぼと歩いていた。

 

暗殺対象(ターゲット)と教師、暗殺者(アサシン)と生徒。この奇妙な二つの立場を皆が両立していることを烏間からうけ、暗殺者と教師を両立するのが不可能というのならば、プロとしてこの空間で最も劣るとも言われた。

 

「私は…」

 

どうすればいいかはまだ彼女も分からない。考えながら歩いていると不意に正面に人の気配を感じ、顔を上げるとそこには雄二がいた。

 

「何よ?まだ言い足りないわけ?」

 

「色々いうことはあったが、ほとんどは烏間が言ったんだろう?暗殺バドミントンの時に烏間と一緒に見てたのをみた」

 

「じゃあ何のよう?ライバルでも潰しに来たの?」

 

「何勘違いしてんだ?テメーみたいな精神が性神になりかけてる女に興味はない」

 

ワナワナと額に血管をたてながらもイリーナは黙って聞く。

 

「俺から言いたいのは1つだ。烏間もたぶん言ったと思うからわかってるだろうが、あいつらは暗殺者と生徒を両立し、勉学も訓練も精進している。それをバカにするのはやめろ。他人の精進を笑う奴は、必ず最後に泣く!必ずだ!覚えておけ」

 

何かあったかのようにその言葉を言う雄二にイリーナはなにも言わなかった。言えなかったという方が正しいかもしれない。

 

「ええ。わかったわよ」

 

それだけ言って帰ろうとしたがやはり気になることがあり、雄二の横を通り過ぎて聞く。

 

「1つ聞いていい?……あなた、何者?」

 

ふっと雄二は笑い答える。

 

「風見雄二。ただの学生だ」

 

 

風見雄二side

 

 

翌日の1時限目前、教室はガヤガヤわいわいと話していた。そこにイリーナが入ってきた。全員が警戒しながらも席に座る。しかしそれを無視してイリーナは黒板に何か書き始める。

 

……内容は淫乱な女に前をあずけた男のセリフに近かった

 

You're incredible in bed! (ユア、インクレディブルインベッド)言って‼︎(リピート)

 

皆ぽかーんという顔をするがホラ!と促され言い出す。なにも知らない一般英国人が聞いたら何事かと思うこと間違いないな。

 

「アメリカでとあるVIPを暗殺した時、まずそいつボディガードに色仕掛けで接近したわ。意味は…」

 

その先を言わせていいものかと一瞬だけ考えた…よし、面白そうだから言わせよう。

 

「『ベッドでの君は凄いよ…♡』」

 

なんだ、赤くなるだけか。カルマもわかっていたのだろうが、俺と同じで皆の反応見たさに言わせたようだ。あいつは満足のようだが皆これしきで何を赤くなるのだか。

 

「外国語を短い期間で習得するならその国の恋人を作るのが手っ取り早いとよく言われるわ。相手の気持ちを知ろうとするから必死で言葉を理解しようとするのよね。仕事上、必要な時はその方法で新たな言語を身に付けてきた。だから私の授業では外人の口説き方を教えてあげる。プロ暗殺者直伝の仲良くなる会話のコツ。身に付けておけば実際に外国人と対話する時、必ず役に立つ」

 

何人かが頭の中で妄想しているのがすぐわかった。…特に岡島は

 

「でも、私が教えられるのは実践的な会話術だけ。受験に必要な勉強はあのタコに教わりなさい。もしそれでもあんた達が私を先生として認められないっていうのなら、その時は暗殺は諦めて出ていくわ。そ、それなら文句ないでしょ? …後、悪かったわよいろいろ」

 

いきなりのことすぎて思考がすぐには動き出さない。だが

 

「ハハハハハ」

 

一斉に笑い出す。さすがに俺も少し笑ってしまった。

 

「なにビクビクしてんだよ。殺すとか言ってたくせに」

 

「普通の先生になっちゃったし、もうビッチ姉さんなんて呼べないね」

 

「考えてみれば、先生に対して失礼な呼び方だったよね」

 

その言葉にイリーナは感動し、じーんとなりながら泣いている。しかし、新しい呼び方か……………よし。

 

「なら、ビッチ先生なんてどうだ?」

 

ピシリという音が聞こえた気がしたと思うとすぐに周りから声が上がる。

 

「おーいいじゃんか雄二!」

 

「うん。それでいこっか!」

 

ピシピシと音が聞こえた気がした。

 

「えっ…と、ねぇキミ達。せっかくだからビッチから離れてみない?ホラ、気安くファーストネームで呼んでくれてかまわないのよ」

 

「って言われてもなぁ。ビッチで固定されちゃったし」

 

「うん。イリーナ先生よりビッチ先生の方がしっくりくるし。何より作者がモノローグにイリーナっていれるのに違和感があるみたいだし」

 

「だから不和さんメタった発言は止そうって!」

 

「そんなわけでよろしくビッチ先生!」

 

「授業始めようぜ、ビッチ先生!」

 

ピシピシという音が響いた気がしたが、どうやら皆気にいったみたいだな。しかしビッチ先生の顔に血管が出ているな。頑張ったのだから心配の声くらいは掛けるか。

 

「額に血管がうかんでるぞ。大丈夫か、ビッチ先生?」

 

ブチンという音が聞こえた気がした。

 

「どの口が言うか‼︎キーッ‼︎やっぱり嫌いよあんた達‼︎」

 

 

sideフリー

 

こうして、本当の意味でイリーナこと、ビッチ先生はE組の先生となった。

 

その後の昼休み。殺せんせーがまた出かけたのを確認した烏間が雄二を職員室に呼び出す。ちなみにビッチ先生は外で他の生徒と話している。

 

「で、なんのようなんですか烏間先生?」

 

「…さっき、イリーナから聞かれてな。おまえが何者なのかと。俺もよくは知らないとはぐらかしたが、キミも昨日聞かれたそうだな」

 

「あぁ」

 

「わかっていると思うが、俺は学校でのキミの監視役でもある。くれぐれも身元がバレるようなことはしないでくれ」

 

「…心配してくれるんだな」

 

「茶化すな」

 

「わかってる。俺の秘密は話す気はない」

 

ならいいと烏間は言う。だが彼らは知らない。雄二が最後に言った部分だけだが聞いていた生徒がいたことを




今回の最後に雄二と烏間の会話を聞いたのは……2人目とだけ言っておきます
感想、意見などがあればよろしくお願いします。


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尾行の時間・1時限目

なかなか出せず、すいません。

最近は特に仕事が大変で。しかもちょっとドジって入院もして


はい。言い訳ですねすいません。

そして今回2人目が判明します


「……っていいかな?」

 

「なるほど」

 

「…………のにするよ」

 

「………じないの?」

 

「だい……から」

 

「すごいな」

 

「…………じ?」

 

「悪いのは君じゃない」

 

「じゃあ、明日つくってくるね」

 

タッタと自席へ倉橋が戻り始めたところで雄二の意識は完全覚醒した。

 

「雄二、やっぱり話聞いてなかったんだ」

 

(俺としたことが、最近『バイト』が多くしかもほとんどが深夜。寝不足なのは仕方なかったとしても、迂闊だった)

 

そう思った雄二は言ってきた渚の方を向く。

 

「正直に言って全く聞いてなかった」

 

「すごい正直だ!」

 

「さぁ、何が悪いか言ってみろ渚!」

 

「そしてなんでそんなに偉そうなの!?」

 

とツッコミをいれつつも仕方ないと思って教えようとしたが

 

「実は…「特に問題ないよ雄二」ちょ、カルマくん⁉︎」

 

「ならいいか」

 

「納得するの早!」

 

渚がツッコミをいれたとほぼ同時にチャイムが鳴る。はぁと重い溜息をはいて渚は席について1時限目の教科書を出した。

 

 

時間は過ぎて昼休み。皆が昼食をとりだす。本校舎には学食もあるが公式に差別を受けるE組には当然それを使う権利はない。故に各自で弁当を持参するのだが

 

「毎回思ってたけどさ。風見ってお昼いつもそれなのか?」

 

と、雄二の1つ右前の席の菅谷創介が言う。因みに雄二は寺坂グループの4人を除き全員と一緒に食事をとったことがあるのだが、菅谷は席が近いのもあり昼食時はよく話すようになっていた。

 

「ん。まぁな」

 

「豆ばっかりだな」

 

菅谷の言う通り雄二の食事は缶を開ければすぐに食べられるビーンズの缶とスーパーで売っているパックに入った煮豆とおからだった。

 

「腹が満たされ栄養が入ればそれでいい。何より豆はいいぞ。人間は動物性のたんぱく質1に対して植物性のたんぱく質を2はとる必要があるが豆はその植物性のたんぱく質の塊だ。畑のお肉と呼ばれるのはそれが理由だ。むろんおからも滋養強壮、疲労回復、記憶力アップついでにどちらもダイエット効果と美容効果もあるスペシャルな食材だ!」

 

最後の言葉に女子が反応したのは言うまでもない。

 

「なんなんだよその豆に対するおまえの説明の力は⁉︎肉とかは食わないのか?」

 

「………ベジタリアンと言うほど全く食えないわけじゃないが、あまり得意ではない」

 

「ふーん。まぁいいけど」

 

この話題に興味がなくなったのか菅谷は自分の弁当を食べ出した。

 

 

早々と食べ終わった雄二は外の空気を吸いに行き、日向で本を読みだす

 

「ほー、『かもめのジョナサン』ですか。なかなか良いところにいきますね」

 

「殺せんせーも読むのか?」

 

本を読みながら殺せんせーに質問する。冷静さを保っているが声を掛けられる0.5秒前に雄二はいることを肌で感じていたのにもかかわらず目の前にいることに気付けなかったことに内心驚いていた。

 

「えぇ。様々な生徒と関わるのですから世界の本はマイナーなものを含めて一通り読んでいますよ。その本に関しては人によって感想がまったく異なっているのが面白いですが風見くんはどうですか?」

 

「俺は鳥になったことはない。速く飛びたいと思ったこともないがただ、感想が異なっているように生き方考え方を様々もって、時には変えていくのは悪いことではないと思う。問題なのはどう生きてきて、どう生きたか。それに尽きるな」

 

「なるほど風見くんはそういう感想を出しますか」

 

「ちなみにマッハ20で瞬間移動もできる先生は昼休みにエロ本を買ってしかもそれを学校に置いていて良いのか?」

 

「にゅあ!?なぜそれを‼︎」

 

「今更だと思うぞ。弱点が巨乳の時点でなんとなく想像はついた」

 

要は単なるカン。それにまんまと引っかかり自白させられたのである。

 

「イヤァァァァァ‼︎‼︎」

 

悲痛の叫びが上がったと同時に隠れていた生徒が一斉乱射を始めた。

 

「にゅあ!ひょ、はっ」

 

しかし弾丸をすべて紙一重でかわし一瞬で距離を取られてしまった

 

「あーくそ。いけると思ったんだけどなー」

 

「失敗していいんだ。もともと検証のためだったんだ。それより、杉野達もいいタイミングだった。磨きはもっと必要だがな」

 

「こ、これはいったい?」

 

「ん、あぁ。俺がここに来て初めて1人になって、本を読んでいる。外に出た先生が戻る時間はそろそろ。生徒のことをなんでも気にする先生は必ず俺に話しかける。それでおびき出した。そして、先生として生徒に知られたくないことを知られた時動揺するかを検証し、あわよくばここで仕留める計画だったんだ。匂いでばれているのは間違いないから他のみんなには早めに草むらに入って草の匂いとなるべく同化してもらい、最後に音を消すためにスリングショットを使った」

 

「前に俺が対先生弾を野球ボールに埋め込んだのを教えたら、この武器を使うってことになったんだ」

 

「しかも雄二がある程度先生の意識を自分に向けてたおかげで、未完成ながらも気配を消した攻撃だったんだけどねー。それにしてもやっぱりマジでエロ本を置いてるなんてねー」

 

カルマの言葉に顔を真っ赤にして触手で隠し、小声で恥ずかいとつぶやく殺せんせーはある意味ダメージを負っていた。

 

「とりあえず、先生に精神攻撃が通用するのがわかっただけでも収穫だ」

 

「風見くんが来て、暗殺能力がどんどんあがってますねぇ。ですが、先生を殺すのにはまだまだですねぇ」

 

顔を緑のしましまにして言う。舐められている時の顔だと教わった雄二は

 

「………引き出し3番目の奥」

 

「やっぱり見たんですか‼︎」

 

「もしもし岡島か?やはりお前の言う通りだった」

 

またも自白させられ恥ずかしいと言いながら顔を隠していた。

 

「でも本当、雄二がこのクラスに来てくれてよかったよ」

 

渚の言葉に皆が頷く。

 

「まぁ、役にたっているならいいんだ」

 

と言ったと同時にチャイムが鳴る。渚は雄二の反応に少し疑問を持つが授業が始まるので今は気にしないことにした。

 

 

時間は経ち、放課後

 

渚、カルマ、杉野達が途中まで帰ろうと言い、本当に途中から道が違うので断る理由はないと思い校門を出て少し歩いた時だった

 

「ねぇ、なんかあそこでこっちに向かって手をふってる外人の女性がいるんだけど?」

 

「あ、ほんとだ。……ビッチ先生…じゃないな。スタイルはいいけど」

 

渚に言われてみるとブロンドヘアのスタイルの良い女性が黄色いポルシェにもたれて手をふっていた。

 

「つーか、こっちにというより、雄二に手をふってない?」

 

「俺にはマヌケの知り合いはいない。ガールスカウトのクッキー売りか、ヘルスバーの客引じゃないか?」

 

「なにそれ?つーか、どう考えても雄二にめちゃふってない?」

 

「知らんと言ったら知らん。とにかく面倒だから「ユージー♪」…ッチ」

 

女性は誰にでも聞こえるようにユージーと呼んだ。その時点でもう弁解などできはしない。

 

「やっぱり知り合いか‼︎なんだよあの美人さん‼︎」

 

「落ち着け杉野。あいつは俺の身元保証人だ。すまないんだが、今日はここでわかれて先に帰ってくれ」

 

半分強引に3人を帰す。何度か振り返るが3人共帰って行く。ちなみにカルマはiPhoneで写真撮っていた。明日また聞かれるだろうなと覚悟して黄色い車にもたれた女性に睨みながら歩み寄った。

 

「やぁ!普通の学園生活を楽しんでいるかい?」

 

「なにしに来たんだ?」

 

歓迎する気はまったくないぞと言っているような顔をする。

 

「あなたがちゃんと問題なく普通の学園生活をしてるか様子を見に来たっていうのに、相変わらずつれないわねぇ。子供の時はあんなに素直だったのに」

 

「余計なお世話だ。もし問題があるなら、今ここにあんたがきたことだ。そもそも仕事はしばらく休むと言っているのに最近は緊急の案件が多くないか?正直ほとんど深夜か朝早くで寝不足ぎみなんだが」

 

「月が爆破してから『色んな人(・・・・)』が正式に入ってくる中で、『ゴミ』が紛れ込むことが多くなっているのよ」

 

「だからと言ってこの間のように現場待機だけで呼ぶ必要はあるのか?」

 

「それなりに大きなゴミだったんだから仕方ないじゃない」

 

「もう少しなんとかならないのか?」

 

雄二は小さくため息をついてそう言う。

 

「検討はしてみるわ。とにかくこちからの呼び出しにはすぐ出ること、修学旅行などで県外に出る際は申請書をだすこと、あなたの仕事などの重大なことに関して他の人に知られないこと。『事故死』はしたくないでしょ?」

 

「言われなくても全部わかっている」

 

「あ!そうだ思い出した!あなた歩いて県境を越えてここに来たでしょう‼︎ちゃんと電車のチケット用意してあげたのに! だいたい200キロも歩くバカが何処にいるのよ‼︎」

 

「ここにいる。電車は苦手なんだ。知ってるだろ?それに200キロも歩いてない。せいぜい170キロだろ」

 

「それが原因で警察のお世話になったのに偉そうにしないの!麻子の時もそうだったけど、あなたの勝手なことで毎回毎回上から文句を言われるのは私なのよ‼︎」

 

「はっ了解しました‼︎春寺三佐‼︎(チッ、面倒くさいなこの女)」

 

「その、面倒くさいなこの女って顔はやめなさい‼︎」

 

「お前エスパーか?よくおれのかんがえがわかったな。あと、お前も1発殴ってやろうかしらという顔はやめろ」

 

「あなたエスパー⁉︎」

 

「みんなには内緒にしてくれよ」

 

「……………」

 

先ほどよりももっと殴ってきそうな顔をして雄二を睨む。

 

「冗談に決まってるだろ。なに本気にしてんだ?」

 

「…はぁ。もういいわ今日はもう帰る。しつこいようだけど…」

 

「わかってる。あと、色々と感謝してる。悪かったな、JB」

 

「…わかればいいのよ。じゃ、また連絡するわ」

 

JBと雄二が呼んだ女性、ジュリア・バルデラ。帰化名、春寺由梨亞は髪をなびかせて車に乗り、颯爽と走っていった。

 

「…結局、俺の様子を見に来ただけか」

 

こういうのこそ事前に連絡しろと思いながら雄二は再び帰りはじめる。

 

 

雄二は近くのスーパーでいつもの食事を買い家に帰っていたが歩く速さはいつもよりゆっくりにし、たまに少し速めたりしている。無論理由はある。

 

(やはりつけられている)

 

あのあと帰り始めてすぐに気付いた。なぜなら尾行の仕方が下手だからであった。

 

(JBとの会話を聞かれたか?そもそも何者だ?ここまですぐ気付けるのなら暗殺者ではないのか?…いや、わざとやっているのか?少なくとも、JBや市ヶ谷、サムおじさんの知り合いではなさそうだ。尾行は連絡にでるならもうないとJBから連絡もあったしな)

 

様々な可能性を考えながら歩く。

 

尾行されている時は相手が素人だろうと振り返ることはしない。その瞬間に相手が警戒されたと認識しさらに最悪距離があるなら逃走しかねない。近づくなどもってのほかである。

 

(なら、追わせればいい)

 

この場合の対処としては速度を上げて角を使いまく、建物の中入り込んでやり過ごす、乗るはずのないバス、電車に入り発車直前で出るなど様々あるが、雄二は捕まえる気でいた。

 

(問題は捕まえた後だ。もし相手が囮で増援がいるのならあえて人のいない場所を選び誘き出す。そこの方がやりやすい。いないならいないで、目的を聞き出すのにもいい)

 

道をそらし狭い裏路地に行く瞬間に気持ち早足にする。そこは隠れるところなどないように見えるからこそだ。そして雄二は即座に細工をし、素早く行動する。

 

 

 

side???

 

面白いくらい順調だった。

 

彼のことは皆気になっていたが私の場合は彼の謎と思われる一部始終を何度も見たためである。

 

金髪の外人女性との会話は残念ながら聞こえなかったが写真は撮れた。これで色々言ってもいいがはぐらかされるのがオチと思い尾行をする。スーパーでは周りに変に思われぬよう距離を置いて適当に買い物をした。そこからは結構長い距離を歩いた。自分も毎日険しい道を通るが距離でいうなら彼の方が多いであろう。こういった気配を消す訓練はまだやり始めたばかりだが意外とできるものだと思い始めるが相手が少し早足になって細い裏路地に入り、私もすぐに後を追った。

 

「……あれ?いない」

 

気付かれた?ここまで順調だったのに?こんな細い路地じゃ隠れるところなんてない。気付いてここを早々と通り抜けた?一応少しだけ奥へと進む。

 

〈ピリリリリ!〉

 

「ッ!?」

 

突如聞こえた着信音に私はおもわず振り向いた。瞬間

 

「さて、目的を聞こうか?」

 

訳も分からないまま拘束された。

 

 

side雄二

 

俺は普段からプライベート用のiPhoneとJBの履歴しかない仕事用の携帯電話、通称ガラケイと呼ばれているものの2つの通信機器を身に付けている。今回はプライベート用のiPhoneを路地を進んで少し暗がりになったところで気付かれにくいところにわざと落とす。そして近くのパイプの陰に隠れる。日中ならすぐ気付くだろうがすでに日は落ちだし、ここまで入れば暗く見えづらい。だがそれはこちらも同じ。路地の入口とそこにきた人影は見えるが顔は分からない。

 

「…れ……い?」

 

距離が開いているのと、周りの雑音で聞こえづらいがどこかで聞いたことがあるような気がする。もしかするとずいぶん前からあっていた可能性もあるな。

 

そして罠の可能性も充分にあるのにのこのこと入ってきやがる。……よし!かかった!

 

〈ピリリリリ!〉

 

「ッ!?」

 

先ほど落としておいたiPhoneにかけることで奴の真後ろで音が鳴る。それに気を取られて後ろを見た瞬間に隙だらけの背中にせまり瞬時に相手の腕を後ろにして抵抗されるのを防ぐためバランスを崩して固める。この場で俺のもう片方の手を使い相手の首をしめることもできるがあえてせず、要件を聞く。やはりこいつは素人、何か他のものが絡んでいるなら尾行はもっと最適の人材がいる筈だ。

 

「さて、目的を聞こうか?」

 

と顔を見ると

 

「ずいぶん強引なんだね〜意外だな風見くん」

 

見知った顔だった。というか、

 

「なんでお前が俺の尾行をしてんだ中村?」

 

クラスメイトの中村 莉桜(なかむら りお)だった




はい、というわけで2人目は中村莉桜さんです。

どういう風に惚れさせようか考えどころです

因みに、話の冒頭にあった倉橋との会話の結末は次の次の話で判明します


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尾行の時間・2時限目

よ、ようやく投稿できました。
実際問題、このオリジナルエピソードどうまとめるか考えて、リアルもあり、遅れてしまいました。
では、続きをどうぞ


「あ、パフェおかわりお願いしまーす」

 

はーいとファミレス内で声が響く。

 

「おい、いつまで食う気だ?」

 

「なに?今更お詫びが嫌になったの?」

 

「違う。確かに少量だが、高カロリーのパフェを2つだぞ。正直こっちが胸焼けしそうだ」

 

「大丈夫、大丈夫。いつもはこんなに食べてないし、それに帰りの道は逆で距離もあるし、明日も訓練があるし」

 

と中村がそう言ったと同時に2つめのパフェが来る。

 

(なんでこうなってんだか)

 

雄二はこうなった経緯を思い出す。

 

 

 

腕を締め上げていままで尾行をしていた相手の見るとクラスメイトの中村莉桜なのがわかりすぐさま拘束をといて路地を出る。

 

「で、なんでお前が俺を尾行してんだ?」

 

「ちょっと、その言い方。そりゃないでしょ。いたいけな女子中学生にあんなことしてさ」

 

「なぜ俺が怒られなければならない。ストーカーは完全な犯罪だ俺に非はない……と言いたいが、クラスメイトにあんなことをしたんだ。お詫びくらいはする」

 

実際に雄二にとっては素人相手に締め上げたのだから詫びる気持ちもあったが、本心は別にあった

 

(あまりこっちが言ってると逆ギレしうやむやにされるかもしれない。ここは折れておくべきだ)

 

 

 

そして近くのファミレスまで移動し好きなものを雄二はおごっていた。

 

「それで、もう一度聞くがなんで俺を尾行したんだ」

 

「ん?風見くんのことを知りたかっただけだよ」

 

「俺のこと?(こいつやはり誰かに知らないまま雇われているのか?釘を刺しておいたほうがいいか?)」

 

「この間さ烏間先生と話してたのをきいてね。最後だけだけど【俺の秘密を話す気はない】ってとこだけ聞こえてさ。しかも今日は今日でビッチ先生くらい綺麗な金髪の外国人と話してたし。内容は聞こえなかったけど」

 

(またなんてタイミングで)

 

雄二は頭を抱えてため息を出すのを必死にこらえる。

 

(取り敢えず、誰かに雇われているとかそういうのではなさそうだ。もしそうだとしたら間抜けすぎる)

 

「風見くん?」

 

「いや、なんでもないそれより、どこから話そうか」

 

「んじゃ、まずはあの外人さんからで。ほんと、どういう関係?返答次第だと、矢田ちゃんに怒られるかもよ~」

 

ニヤニヤとして聞いてくるが雄二はそのことよりも別のことが気になった。

 

「なぜ俺が桃花に怒られなければならない。そんな要素などひとつもないだろ」

 

そしてこの雄二の言葉に中村はぽかーんとした顔になる。思わず「は?」と言ってしまうほど。

 

「いや、風見くん?君は矢田ちゃんにどう思われているかわかるかい?」

 

「いい友達だと思うが違うのか?」

 

「あーいや、どうだろう」

 

頭をかきながら中村は考える。

 

(ダメだ。マジで言ってる)

 

(この表情からするに違うということか?ということは…俺に近付いてきたのは別の理由。まさかあの時も道化を演じていたのか?くっ、俺としたことが不覚だ)

 

「なに考えてるかわからないけど、たぶんその考えも違うと思うよ」

 

的外れなことを考えているだろうなと察した中村は雄二にそうツッコミを入れる。

 

「?」

 

「まぁ、そこは自分で考えなって。少なくとも、悪い印象とかはゼロだから。それで、結局のところあの外人さんとはどういう関係?」

 

中村はともかく話を戻すためこの話題を終わらせる。

 

「俺の身元保証人兼、バイトの上司だ。因みに、烏間先生と話していた時に出た秘密というのは、俺のバイトのことだ。校則でもバイトは禁止。暗殺の妨げになるかもしれないから、バレるなとな」

 

「ふーん(嘘って感じがしないな)」

 

もうひとつの質問がわかっていた雄二は先に答えた。

 

「前にも言ったと思うが、俺は親を亡くしていてな。面倒を見てもらってる礼もかねて生活費を稼ぐためあいつのところで働いている」

 

「まぁ、秘密でバイトしてることはうちのクラスの磯貝もそうだけど。そういや、どんなバイトしてるの?」

 

「……一言で言うのは難しいが、『ゴミ』の始末だ。いろんなところに行き『掃除』をする。いわゆる汚れ仕事だ。とは言え、上司のあいつは命令する立場だから、自分では手を汚さないがな」

 

「ふーん」

 

説明が終わる頃にはパフェが食べ終わっていた。

 

「それでもういいか?」

 

「いや、まだあるよ。ズバリ、この学園にくる前はなにしてたの?」

 

「…………ここに来る前か」

 

少しだけ遠い目をしたので中村はさらに気になった。

 

「ヒモをやっていた」

 

「………………はい?」

 

間の抜けた声を出したのは本日2度目である。

 

「血縁のない女の働いた稼ぎで飯を食っていた」

 

「それって前言ってた師匠のこと?それが金髪の人?」

 

「確かに師匠のことだがそれはあいつじゃない。あいつは師匠の友人だ。師匠が死んだあとはあいつに面倒を見てもらっている」

 

「……風見君ってさ、結構ナチュラルに女泣かせるやつでしょ?」

 

「昔そんなことも言われたが、それがどうした?」

 

「いや、なんでも(矢田ちゃん、ガンバ)」

 

はぁとため息をついて中村は言った。

 

「で、もういいか?」

 

「うーん。まぁ、いいかな」

 

そう言って立ち上がる。雄二もようやく解放されたと思い、会計シートをもってレジに向かい、その後2人は帰りだした

 

 

 

 

side莉桜

 

「あーあ。収穫なしか」

 

渚君から風見君が質問は答えられるものは答えるからと言ってたのもあって今回聞いてみたけど、しれっと普通に言ってるってことは本当なんだろうな。面白い何かを知れるかなって思ったんだけど。

 

「だだ、まだまだ隠してることはありそう」

 

まぁ、流石にこれ以上詮索するのはやめとこ。本人は気にしないけど、前みたいに嫌な空気にしたくないし。

 

「まったく、風見くんは顔が良いし、性格も良いけど、ど天然だね」

 

しかし、最近は風見くんのことをよく考えてるな私。気になることが多いからだけど

 

「あっれー?中村じゃん!俺だよ俺!前に一緒につるんでバカしてただろ?」

 

あぁ、こいつ引っ越すって話だったのにまだこの街にいたんだ。

 

「久しぶり。じゃあね」

 

「ちょっとまてよ。せっかくなんだからまたバカしようぜ~俺も来月にはここ離れるしよ」

 

「あいにく、あんたとはもうバカをしないよ」

 

そう言った瞬間肩に痛みが走る。つかんだ肩に力を入れてきたのがすぐ分かる。

 

「調子に乗んなよ。天才ぶってバカにしてんのか?」

 

「はなしてくんないかなっと」

 

「って!」

 

正直、烏間先生や風見くんに比べて遅すぎるし、これなら余裕で振り払える。…1人か2人だったら

 

「くそ!てめぇらも手伝え!」

 

「なっ」

 

いつの間に!しかも8人がかり!もしかして少し前からつけられてた⁉︎こいつ、いくらなんでも根に持ちすぎ。

 

「ぁあ」

 

「あぁ⁉︎どうし、た」

 

ドサと隠れていた男達が倒れていく。でも見たところ外傷が見えない。どういうこと?

 

「まったく、また俺をつけているかと思ったら追われているのは中村でしかもただのチンピラ以下の奴とはな」

 

そこから現れたのは風見くんだった。というか、

 

「なんで?」

 

「クラスメイトを助けるのは間違ってるのか?」

 

まただ。また、サラッと言う。実際に彼の言うことは真実だろうけれど、それ以外にも様々なものがある気がする。なぜだかは分からない。

 

「お、おいお前!な、なにしたんだ」

 

「ん?あぁ、簡単だ傷付かないように気絶させただけだ」

 

まだいたのかという顔をしてから風見くんは言う。それはこいつにもわかったようですでにキレている。

 

「ちぃ!この!」

 

瞬間、なにが起こったのかわからなかった。両手で肩を押された風見くんは微動だにせず、逆に仰向けに倒されてしまう。私がわからないのにあいつがわかるはずもない。

 

「クソが!」

 

こんどは向かってくる相手に人差し指をピッと喉元にだす当たった瞬間まるで思いっきり殴られたかのようにまた後ろに倒れる。

 

「はぁ、はぁ、な、なんなんだよ⁉︎魔法使いかなんかか?」

 

「…他の奴には内緒だぞ。毎回箒で飛ぶのは以外と面倒なんでな」

 

あ、これはいつもふざけてる時の風見くんだ。

 

「クソクソ‼︎どいつもこいつもバカだからってバカにしやがって⁉︎そんなに天才さまは偉いのか?あぁ!?」

 

「いや、別にバカにしてはない。それにお前はバカじゃない。道を外そうとしてるクソ野郎だ」

 

直後、今度は折りたたみ式ナイフを出して風見くんに向かう。

 

「風見くん!」

 

しかしそれもまるでわかっていたかのようにほんの少し横によけてするり手を出すと引きつけれたかのように腕の部分に顔があたりその衝撃でまたまたばたりと倒れる。そして今度は追撃として倒れる瞬間ナイフを持った腕を握りグルンと向きを変えられ、下向きになるそしてそのまま抑え込む。

 

「お前が天才をどう思うか勝手だ。だが、せめてバカでいろ。その下になるな。そしてそれでも嫌なら、逃げるな行動しろ。自分を変えろ。簡単じゃなくても挑め。たった小さな行動でも、行動すると変われるんだ」

 

「ぐっ」

 

「もし腹が立つならそれは認めると同じだ。全ては志し、バカであろうと天才であろうと正しい志しを持って行動するればお前はいずれ天才も凌駕できる」

 

そう言って拘束を外し、まるで倒れた仲間のように手を引いて立ち上がらせる。起こされたそいつのその顔は困惑や怒りが混ざっていた。

 

「中村、立てるか?」

 

「え、あ、うん」

 

私達が去るのを彼は呆然と見ていた。

 

 

side雄二

帰り始めてすぐに中村を追う集団が目に入り、やはりなにかしらの組織に関わっているのかと思い付けてみたがあいつらのコソコソ話しから中村をどうしてつけていたのかがわかった。中にはゲスな会話も聞こえ、話し合いで止めきれず攻撃してきたのを正当防衛として合気道の応用で傷つけず無力化した。結局中村には怪しい部分はない。俺の目も鈍ったもんだ

 

「ごめん風見くん」

 

「なんで謝る?お前は謝ることはしてないだろ」

 

「けど…」

 

「これは俺の姉の受け売りだが、ごめんなさいって言葉は口にすればするほど言葉の価値を下げる。だから、こういう時はありがとうだ」

 

「……うん。ありがとう」

 

しばらく沈黙してると中村がモジモジしていた。尿意か、それとも、自慰行為を我慢してるのか?

 

「聞かないの?なにも?」

 

「きいてほしいのか?お前が話したくなら言わなくてもいいんだが」

 

「いや、別にたいしたことじゃないんだけどさ。……私さ、天才小学生って言われてたんだ」

 

そこから中村は静かに話を始めた。

 

小学1年で小学6年の問題をオール満点。表彰もされ、学園の有名人となったが彼女はそれがあまり嬉しくなかった。周りは解けなかった問題で盛り上がるが、彼女はそれに参加はできない。当然だできているのだから。

 

「頭良いよりも、あの中に入ってみたかった」

 

だから、バカになるためにいろいろな事をして、いろいろな奴と付き合っているうちに本当バカになったと言う。

 

「さっきの奴もさ、その時に一緒になってバカしてたんだ」

 

やがてE組になったときの親の失望した顔になった時には周りからは冷たい目をされていた。

 

「その時ようやく気付いたよ。失ったものの大切さを…E組に来た時もしばらくはもう一度頭良くなりたいと思ったけど、みんなとバカな目線でバカなことしたいなって思ってるうちに勉強もはかどらなくなったんだ。当然だよね…二兎を追う者は一兎をも得ずっていうのはこのことだよね」

 

話し終えた中村はいつものような笑みではなく、どこか無理をした笑みだった。

 

「ごめんね。なんか暗くなる話で」

 

「だからごめんって言葉はあまりいうな。あと…良いんじゃないかバカでも」

 

「え?」

 

「それに天才って自分で言う奴はそうしなければ自分を保てない弱者か、笑いを取りに来るジョーク好きのどちらかだ。あと二兎を追う者は一兎をも得ずって言葉は昭和の古い考え方だ。今は平成、時代が変わっていくたびに考え方も変わる。どうせなら天才もしながらバカになってみろよ。そうすれば俺は小学生の頃のお前やバカばかりしてたお前は知らないが、少なくとも今のお前の方が俺は魅力的だと思うくらいだから、今よりもっと魅力的になると思うぞ」

 

「………」

 

うん?急に赤くなったな。

 

「ありがとう風見く…いや、雄二くんってよんでいい?」

 

「唐突だな。なら、俺も莉桜と呼ばせてもらうぞ」

 

「う、うん。…ほんと、ナチュラルに女泣かせだよね雄二くんって」

 

「……………」

 

「雄二くん?」

 

「いや、何でもない」

 

まったく今日は懐かしいセリフをよく聞くな。

 

 

 

 

sideフリー

 

翌日

 

「あ、来た来た。ねぇ雄二~昨日の外人さんとはどんな関係?」

 

ニヤニヤした顔でカルマが雄二に問う。

 

「そ、そうだよ!何なのこの外人さん!も、もしかしてか、か、彼女さん⁉︎」

 

なかでも桃花が詰め寄りながら問う。若干涙目である。

 

「何なんだよ‼︎お前、貧乳好きじゃねーのかよ‼︎うらやましすぎるわ‼︎」

 

岡島は本音ただ漏れである。

 

「先生も気になります!どうすればこんな女性とお知り合いになれるか‼︎」

 

殺せんせーは別の意味で涙目で問う。

 

(やはりこうなったか)

 

またも頭を抱えたくなりとにかく説明しようしたときだった。

 

「身元保証人兼、バイトの上司なんだって」

 

雄二が言う前に莉桜が皆にそう言う。

 

「昨日私も見てさ、直接聞いてみたんだ」

 

「なるほどーでもうらやましい!!」

 

「今度紹介してくれ!」

 

前原と岡島は隠しもせず欲望に忠実であった。

 

「で、出来れば先生、面談に立ち会いたいです」

 

「いや無理だろ。というか、前から言おうと思っていたが国家機密だってこと分かってるか先生?」

 

「というか、この外人さんビッチ先生にそっくりだよね。もしかして最初にビッチ先生にちょっかい出してたのってこの人が原因?」

 

「少し違うぞ渚。性格は全然違うからその違和感が原因だ」

 

「それだけであそこまで言ってたんだ…」

 

渚は岡島と前原とは違った意味でJBに会いたいと思っていた。

 

「まぁ、雄二くんは女泣かせだからね」

 

「人聞きの悪いことを言うな莉桜」

 

2人からしてみれば…いや、雄二からしてみれば何気ない会話だがその瞬間クラス全員が違和感を感じた。

 

「これは、もしかして」

 

「うん」

 

「いやぁ、これは予想外」

 

「……………」

 

杉野の言葉に渚と茅野は納得した顔になる。カルマも何も言わないがビックリしていた。そして、奥田はちらりと桃花の方を見る。

 

「あわ、あわわ!?」

 

プルプルと震えながら驚いていた。

 

「てなわけで、矢田ちゃん。まけないから」

 

ウインクをしてそう言った瞬間に

 

「ゆ、雄二くん!どういうこと⁉︎中村ちゃんとどこまで…」

 

「なんの話だ?少し落ち着け」

 

相変わらずの言葉に皆がため息を出そうとした時

 

「よく言うよね〜あんなことして」

 

莉桜は爆弾を落とした。

 

「アレは悪かったと言ったぞ」

 

「責任とってよね〜」

 

「何をだ?」

 

「ふ、不純異性交遊はダメですよ風見くん!そんなうらやま…いや、ねたまし、いや、とにかくダメです!」

 

「先生落ち着いて‼︎」

 

この後再びクラスから質問を受けて誤解が解けるのは烏間が入ってきて全員に注意を受ける前であった

 




はい、というわけで中村莉桜さん攻略です。
次回は全校集会です

さて、雄二の紹介はどうしようかなーある程度は考えてますけどやはり悩みます

で、それが原因で遅くならんようにしたいです…



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集会の時間

結局、こんなに時間が掛かってしまい、申し訳ありません
でも、時間は掛かってもやめるつもりは無いです
応援よろしくです

では、全校集会です
…こんな感じでいいのだろうかと毎回悩んでるので、意見があればドンドンお願いします。


椚ヶ丘中学では、月に1度全校集会がある。校長や生徒会からの連絡をのべる。これだけならどこでもありそうなものである。

 

「だが、E組は昼休みを返上してあの特別校舎からここまで来なくてはならない。しかもその際は他のクラスよりも早く整列しておくか。品行方正をアピールしろってことか?」

 

「なんでそんなふうに受け止められんだか」

 

「こういうのは考え方だ。他の奴は?」

 

磯貝に言いながら周りを見ていると何人かがいないことがわかり雄二はそう尋ねた。

 

「すぐ来るよ。みんなこれ以上ペナルティは受けたくないし」

 

噂をすれば何とやら。そうしていると他のメンバーも集まる。因みにカルマはサボっている。罰を受けても痛くもかゆくもないとのことである。

 

「ところで、何で岡島はそんなにボロボロなんだ?俺の次に到着したのはすごいが…」

 

「道中でいろいろあったんだ。ハチに蛇と追いかけられて最後は川に落ちて流されて」

 

息が上がりゼェゼェ言っている岡島に変わり渚が答える

 

「何したんだ?ハチはともかく日本の蛇は本来臆病だからこっちから何かしない限り襲わないぞ」

 

「いや、ツッコムところそこ?」

 

岡島が復活し、そうこうしているうちに他のクラスも入ってくる。E組の生徒を見るたび野次を投げ、バカにし、指をさして皆が笑う。それはまず間違いなく差別だ。しかしそれに耐えるしかない何故ならここにいるのはそれを理解した上でこの学園に入った者たちなのだから。

 

それは生徒同士だけでなく

 

〔えー、と言うわけで君達は全国から選りすぐられたエリートです。しかし、油断してると何処かのオチこぼれさん達と同類になりますから〕

 

校長の言葉に反応して一斉に笑いが起こる。そうこの学校にE組の味方となる先生はいない。…E組の先生以外は

 

スタスタと入ってくる烏間に皆が顔を向ける。特に他クラスの女子はうらやましそうにしていた。と、烏間が他の教師に挨拶をしていると

 

「烏間先生~見て見てナイフケースデコってみたの」

 

「かわいいでしょ」

 

倉橋と莉桜がそれを見せた瞬間冷や汗をかきながら烏間は詰め寄り「ここではだすな」言おうとした時、一瞬何かの冗談かと思うものが目に入る。

 

「おい、風見くん、それはなんだ?」

 

「カタコトですよ烏間先生。深呼吸してください。ヒッ、ヒッ、ふぅー」

 

「ふざけるな⁉︎なんだそれは」

 

指をさして雄二の腰につけているナイフケースを見る。

 

「みればわかるだろう?デコレーションナイフケースだ」

 

ビーズでテカテカに輝く犬のキャラクターが描かれたナイフケースを見せてドヤ顔でいう。

 

さて、こうなった経緯について説明しよう。

 

 

 

昨日、莉桜との誤解が解けた日の放課後。

 

「ゴメン風見くん!朝にいろいろあって渡すのが遅れちゃって」

 

帰る準備をしている雄二に倉橋が声掛けるが

 

「朝に何かあったのか?と言うより、渡すもの?」

 

「(素で言っているのがすごいな)うん。ほら、昨日言ってたのが出来たんだ。ほら、デコレーションナイフケース!風見くんの好きな犬にしておいたよ」

 

ビーズアートによって対先生ナイフ用のケースはテカテカと輝いている。

 

「これを、オレに?」

 

「うん。昨日風見くんも気に入ってくれたから。ずっとつけてくれるんだよね」

 

話の内容が理解できず言葉がうまく出ていない

 

すまない、話が見えないんだが

(など言ってしまえば、地雷を踏むそんな予感がするがどうする…)

 

「あー、倉橋さん渡す前にちょっとだけ雄二と話していいかな」

 

いいよ。倉橋が言うとささと距離を取り、話し出した。

 

「で、どういうことなんだ」

 

「昨日も言おうとしたんだけどね…」

 

 

**

 

「ジャーン!私のはこれこの十字架の上のハートがポイントでさー」

 

「私はこのウサギがチャームポイント」

 

「2人ともすごいねこれ。こまかいなー」

 

渚が莉桜と倉橋の力作ビーズアートを見せ合うのを見て素直な感想をいう。これが携帯電話なら普通なのだがここは暗殺教室。使用したのは対先生ナイフのケースである

 

「あ、雄二おはよう」

 

「……あぁ、おはよう」

 

少々反応が鈍いことに渚は首をかしげ、声をかけようとするが倉橋が先に声をかけたのでとどまる。

 

「ねーねー風見くん、これかわいいでしょ」

 

「…あぁ。かわいいな、ベストドッグだ」

 

「?」

 

渚はすでに雄二の言動がおかしい事に気付いていた。このとき雄二は『バイト』が深夜や早朝が多くしかも立て続けに入っていたため疲労はすでにピークに達しそこに女子の「かわいい」という単語が出た瞬間、話が長くなるなと判断した彼は脳をほぼスリープ状態にしていた。

 

「ありがとう風見くん!あ、そうだ。よかったら風見くんのも作っていいかな?」

 

「なるほど」

 

「どうせなら風見くんの好きな犬のにするよ」

 

「大変じゃないの」

 

「大丈夫。最初はそうだけどやりだして慣れたら結構簡単だから」

 

「すごいな」

 

「ちょっと雄二?というかほら、倉橋さんも大変だと思うしちょっとかんがえても」

 

「悪いのは君じゃない」

 

「風見くんもこう言ってるんだから。私頑張るよ」

 

「なるほど」

 

「私も手伝うよ!こういう作業得意だし」

 

「すごいな」

 

「ありがとう。でもいいのかなぁ?」

 

「悪いのは君じゃない」

 

「ほら、風見くんもこう言ってるんだからさ」

 

「そうだね。じゃあ一緒に作るよ!」

 

「なるほど」

 

「楽しみにしてて。可愛くするから」

 

「すごいな」

 

「ねぇ、もう一回聞くけど本当にいいの雄二?」

 

「悪いのは君じゃない」

 

**

 

「ということ」

 

「!?」

 

渚の言葉を聞きおえたこの瞬間雄二の思考は一気に混乱した

 

「ど、どうすればいい」

 

このクラスに来て初めて雄二は困った顔をみせる。自分がキラキラのナイフケースを身につけたのを想像したためである。そのあまりに不自然な目立ったことに。

 

「ごめん。こればっかりは僕でもどうしようもないよ」

 

「くっ、退路は既にないか」

 

 

そして今に至る。

 

「君が今どうしようもない場面にあったことだけはわかったが、3人とも暗殺の事は秘密なんだここではだすな!」

 

はーいと3人は小声でそう言う。頭を抱えながら教職員の列に並ぶと今度はビッチ先生が入ってきた。烏間に注意されるも情報収集の為渚に話しかける

 

「ちょっと渚。あのタコの弱点が書かれた手帳貸しなさいよ」

 

「いや、もうないよ役に立ちそうな話す事は全部はなし「いいから見せなさいよ!胸で窒息させるわよ!」モガァ胸はやめて!」

 

「ようビッチ先生。朝も昼もハッスルタイムか?」

 

「うっさい!あとそれやめろ!」

 

E組のもはや日常を周りのクラスは不満そうに睨んでいた。がこれから行われる事を考えグッと我慢する。それが何なのかは既に雄二は気付いていた。周りはプリントを配られているのに対し、E組の方には配る気配が全くないからだ。

 

〔はいっ。今配ったのが生徒会行事の詳細プリントなので、しっかり見てください〕

 

生徒会役員がそう言うとE組の皆もおかしく思い、クラスの代表である磯貝が配られていないことを指摘するが

 

〔えっ、ない?おっかしーなー。ごめんなさーい、3−Eの忘れたみたーい。すいませんけど全部記憶して帰ってくださーい〕

 

再び場内に笑いが上がる。

 

(くだらない嫌がらせだな)

 

雄二がそう思い手を横に出すと風が通り、同時にまるでコピー機で写した手書きのプリントを受け取った。

 

(まぁ、このクラスの教師がいるんじゃ、その程度関係ないけどな)

 

「問題ありませんねぇ手書きのコピーがありますから」

 

そしていつの間にか教職員の列にいつもの不自然な変装をした殺せんせーがいた

 

雄二は殺せんせーの存在に気付いていたわけではない。ただ、クラスがならんでいる位置、この嫌がらせを無視できるか等を考えて軌道をある程度予測したのだ。そして、プリントがある事を磯貝がいうと悔しい顔をみせ、生徒会役員は行事を述べる。

 

「あれで変装してるつもりなのが笑えるな」

 

「吉田言うな。殺せんせーが可哀想だろ」

 

雄二はワザと殺せんせーに聞こえるように言うと案の定ガーン!と言いたそうな顔をしていた。

 

「プハッ、マジでショック受けてる」

 

E組全員がその瞬間笑う。だが他のクラスは表立って注意しない。当然だろう自分達も先ほど集会中に大笑いしていたのだから

 

〔えー続きまして、転入生を紹介します。皆さん、用意をしててください〕

 

と言われると皆使えなくなったペンや消しゴムを用意をする。その目的は自己紹介が終わった瞬間に一斉に投げるためだ。歓迎などしないぞとハッキリ分からせるために。E組の皆は心配になるが雄二は別の心配の為、烏間をそれとなく見ると「すまん」と顔に出ていた。その瞬間、これも理事長の作略なのだとすぐにわかった

 

(烏間もだが、JBも今頃大変だろうな。ここで俺が自己紹介する予定はなかっただろうに)

 

少々面倒くさそうに、そして言うべき事を言うため、雄二は進む。途中で桃花と莉桜に特に心配そうな顔をするもふっと笑い、大丈夫だとアピールをしていた。

 

〔それでは、自己紹介をどうぞ〕

 

ニヤニヤ笑う生徒を無視しマイクの前に立つ。この時、全員が思った。当たり障りのない紹介をし、よろしくお願いしますなどを言うのだと。そしてその瞬間一斉に物が投げつけられるとしかし、

 

〔I meet, the act which makes the others stupid will be a minus act certainly for itself.〕

《 そうやって他人をバカにする行為は、自分にとって必ずマイナス行為となるぞ》

 

瞬間、雄二が何を言っているか、理解できた人間は少数だった。

 

〔Whatever is done, the guy who thinks a collapse is waste in a life collapses.

《挫折を人生の無駄だと考える奴は、何をやっても挫折する》

 

皆、唖然とし、物を投げようとした手が下がる。

 

〔But all the members have a possibility in my classmate.〕

《だが俺のクラスメイトは全員が可能性を持っている》

 

ざわざわと皆が話し出す。何を言っているのだと

 

〔It has been just passed, consider the excuse when discounting.〕

《追い越されて、負けたときの言い訳を考えておけ》

 

E組の数名もビッチ先生の教育で多少カタコトだが理解していた。そしてそのビッチ先生は「言うじゃない」ニヤリと笑い、烏間は我慢していた溜め息がどっとでて殺せんせーはいつも以上にニンマリしている。

 

〔今、俺が言った事が理解できなかった他のクラスのやつは覚悟しておけ。これからおこることにな〕

 

そうして雄二は戻るいまだに皆唖然とし、物を投げる暇さえなかった。そして理解出来るものはわかった。これが挑戦状であると。そして雄二なりのE組へのエールであると

 

「風見、お前あれで良かったのか?」

 

「何がだ磯貝?俺は言いたい事は言った」

 

「いや、そうじゃなくてさ自己紹介。結局名前言ってないんじゃ」

 

「………」

 

言われて気付いたがまぁ、いいだろう雄二は思った。

 

その後のE組いじりはもはや意味をなさなくなるのを理解してか、何もおきなかった。

 

 

*side雄二

 

やれやれ。今回の事は烏間からJBに情報がいくだろう。それを考えるとまた面倒だ。

 

「おい、なんだその不満そうな目」

 

ふと、声がした方に目を向けると渚が他クラスの生徒2人に絡まれており、烏間が助けに行こうとするもいきなり後ろに現れた殺せんせーに止められていた。助ける必要がないという事か。まぁ、このクラスの生徒ならあの程度には確かに屈しは…

 

「なんとか言えよE組‼︎殺すぞ‼︎」

 

瞬間、渚の表情が変わり、クスッと渚が笑う。そして

 

「殺そうとした事なんて無いくせに」

 

脅していた2人組は冷や汗をかいてしりぞく。当然だろう…今のは間違いなく殺気。それも自然に……

 

 

俺はE組校舎に戻る際烏間に声をかける。

 

「烏間先生」

 

「風見くんか。どうした?」

 

「渚を、なるべく見守ってほしい」

 

短く、完結に伝える。

 

「それは、そういうことか?」

 

「まだわからない。仮にそうだとしても、あいつはその才能に気付いていない可能性がある。だからこそ、あいつを見ていてほしい。俺に何かあった時、次があいつにならないように」

 

「…わかった。だが、今の所それは心配無いだろう。あの教師がいるからな」

 

「確かに…烏間、ありがとう」

 

「先生だ。それと、礼を言われることもまだしてない」

 

「それでも、言わせてくれ」

 

「ふっ、そう言っておだてても、今日の集会の事はちゃんと報告するからな」

 

「む、やはりダメか」

 

「当たり前だ」

 

やれやれ、今から既に面倒だ

 




感想、意見があればよろしくです

あと、英語の部分は翻訳サイトを使いながら少しずつ書いたものです。
間違えてたら、すいません


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激励の時間

毎回毎回、感想の返信も投稿も遅くなり、すいません
では今回もどうぞ


side雄二

 

「これ以上目立つのは本当に止めて!上から文句を聞くのも嫌なの‼︎」

 

「ガンバ」

 

「…………」

 

「意味がわからなかったか?頑張れという意味で…」

 

「わかるわよ‼︎」

 

俺は登校する前にJBから呼び出しをくらいバイト先のとある部屋にいた。学園には既に連絡している。

 

「とにかく、当たり障りのないように、目立たないように!」

 

「今回の全校集会については仕方ないだろ?理事長の意思1つでターゲットの居場所を無くすんだ」

 

「そうだけど、もう少し目立たない紹介だってあったでしょう‼︎」

 

「舐められたままなのはいやなんでな」

 

「そのくらい我慢しなさいよ‼︎」

 

……メンドクセェ

 

「メンドクセェ」

 

「声に出てるわよ‼︎」

 

む、いかんな。あまりにメンドクセェから声にでてしまった。

 

「はぁ、今日はもういいわ。本当に、くれぐれも、頼んだわよ」

 

「わかってるさ。心配してくれることは本当に感謝してる」

 

ふん。と顔を赤くしたJBを横目に時計を見て、早く行こうと歩を進めた。

 

 

sideフリー

 

長い坂道を上り、なんらかんらとあっても遅れたことのない雄二が初の初日に言ったバイト関係の遅刻である。

 

「何とか1限目の途中には間に合うな」

 

そうしてE組校庭についたとき、教室の窓の外付近に殺せんせーが自前の椅子に横になってジュースを飲みながら本を読んでいた。

 

……残像を入れて2体

 

「おや、風見くん。遅れてもちゃんと来てくれて先生嬉しいです」

 

「あ、あぁ。おはよう殺せん……」

 

もう1限目は終わったのかとか、なんでここで残像を出しながら横になってるのとか、いろいろ聞きたい事があったが教室を見て流石に雄二も絶句した。教室にクラスメイトの数✖️殺せんせーがいたのだ。

 

「速いのはもう知っていたが、ここまで残像を作れるのは正直驚いた」

 

「ヌルフフ。そうでしょうそうでしょう」

 

自慢しながら顔が舐めた時の顔になる。殺せるといいねと言われているようで少し雄二も腹が立っていた。と、見ると教室 の中の殺せんせーも緑と黄色のシマシマ顔になっていた。クラスメイトも雄二が来た事に気付いた。

 

(ふむ、意外に繊細な分身なのか)

 

それを見て雄二は何か暗殺の役に立つかもしれないと思ったが考えるのは後にすると決め教室へ向かおうとすとよこになっていた殺せんせーの残像のうちの1体が起き上がる。

 

「では私も行きましょう。君を待つ間暇なので休んでいたんです」

 

「………余計に疲れないか?増えてるんじゃなくて動いてるんだろ?」

 

とうとう雄二はツッコミを入れた。そして、速くて頭もいいが変なところで間抜けなのだと理解もした。

 

 

「で、なんだそのハチマキ」

 

殺せんせー分身が1人ずつマンツーマンで苦手科目を教えるためわかりやすく頭にはその苦手科目の書かれたハチマキがまかれているのだが例外が2人いる1人は寺坂。彼のは世界的に有名な忍者漫画の主人公がしている木の葉マークの額当てだ。殺せんせーいわく苦手科目の多い寺坂の特別コース。そしてもう1人は雄二である。そのマークは先ほどのマークに横一文字の傷がついたマーク。主人公のライバルであり親友のものだ。と、つい最近雄二はクラスメイトの不破から「ジャンプを知らないなんて⁉︎」と大変驚かれその日に説明を受けいくつものジャンプ漫画を読み漁ったことで知識ができていた。

 

「風見くんは苦手科目も特にはないですが得意科目も特にないので特別コースその2です」

 

「なるほど」

 

そうして納得して勉強に集中する。実際雄二はここに来るまで勉強のブランクがかなりあり、なおかつこの学園のレベルの高さに少々驚かされてもいた。

 

「全校生徒の前で大見栄を張ったのですから、50番以内は確実に入らないといけませんねぇ」

 

「言われるまでもない」

 

そこから先は殺せんせーの指導のもとテスト対策をしていった。

 

 

昼休み

 

「あ、あのさ雄二くん」

 

「桃花か。どうした?俺とメシを食いたいのか?」

 

「あーうん。それもあるけど……これ」

 

と、後ろに隠していた物を前に出す。それは弁当箱であった。

 

「ちょっと作りすぎちゃって、雄二くんいつもおんなじものだし味を変える意味でも持ってきたんだけど」

 

クラスメイト全員(雄二以外)はそれだけではないのはすぐ分かった。特に莉桜の場合はしまったというわかりやすい顔をしている

 

「…頼んでないんだが」

 

「め、迷惑だった?」

 

「いや、それは助かる。午後にもテスト勉強があるからな。力をつけるためにもしっかり食事をしておいたに越したことはない」

 

((((やっぱり気付いてないんだな))))

 

クラスの心の声が一致した瞬間であった。

 

ちなみに、弁当の中身は以前雄二が肉が苦手というのを聞いていたからか、豆腐バーグや野菜炒めなどヘルシーなものであった

 

 

 

午後 の授業がすべて終わり、教員室にたちよるとちょうど学園の理事長が渚に何か言っているのが見えた。 何を言っているのかは雄二は大方予想がついた。

 

「あぁ、君も途中参加で大変だろうから、気を楽にしてね」

 

「ありがとうございます理事長先生。ですが、そう楽してる時間は長くないと思います。……あんたも、オレも」

 

「………そうかい。ともかく頑張りなさい」

 

そう言って何処か懐かしいものを見る目を宿してスタスタと去っていく。それを見送り雄二は呆然とする渚を見る。

 

(微塵も応援してない乾いた「頑張りなさい」という言葉は、このE組には効くだろう。冷徹な合理主義、言うだけはある。さてどうなるかな。そして、どうするつもりだ、殺せんせー)

 

 

 

翌日、テスト対策勉強の時間。先生の残像分身はさらに増えた1人につき3~5体。しかし流石に残像はかなり雑になっている。

 

「先生、雑な残像になってもちゃんと教えてるのは凄いが、疲れないのか」

 

「心配ご無用です風見くん!この程度で疲れてもハンデにもになりません」

 

「というより、本当どうしたの殺せんせー?なんか気合いが入りすぎじゃない?」

 

「んん?そんなことないですよ」

 

(どう考えても昨日理事長の件だな)

 

 

授業が終わると殺せんせーはやはり疲れて椅子に座りゼーゼー息を切らしてうちわを仰いでいた。

 

「まるで熱どりのために干された茹で上がりのタコのようだ」

 

「本当、雄二の発想ってすごいよね」

 

「相当疲れてるし、今ならやれるかな?」

 

「うちわを仰ぐだけの余裕があるくらいだ。無理だろう」

 

莉桜も分かっていたのか、だよねーと呟いた。

 

「しかし、なんでここまで一所懸命に先生をすんのかねぇ〜」

 

岡島の言葉に殺せんせーはその質問を待っていたと言わんばかりに「ヌルフフフ」笑い出す。

 

「全ては君達の成績を上げるためですそうすれば、君達はもう私の授業なしではいられなくなって殺せなくなり、噂を聞きつけた巨乳の女子大生が私の授業を受けたいと言ってくる。まさに一石二鳥先生にはいいことずくめです」

 

「なぁ、渚。いい加減俺もツッコミを入れたいんだが」

 

「……気持ちはわかるよ」

 

自身が国家機密だとわかっているのかこいつ。皆の共通の意見であった。

 

「つか、勉強の方はそれなりでいいよな」

 

「うん、なんたって暗殺すれば賞金100億だし」

 

「………」

 

三村につづいて桃花がそう言う。雄二はただそれを黙って、何かを思い返すかのように目をつむり聞いていた。

 

「俺たち、エンドのE組だぜ」

 

「テストなんかより、よほど身近なチャンスなんだよ」

 

「ーーーそれで、いいのか?」

 

口を出すつもりはこの時の雄二にはなかった。なかったはずなのに、それでも声を出さずにはいられなかったのは心境の変化なのか、ただ単に我慢ができなかったのか

 

「雄二?」

 

いつもと違う。怒っているわけではないのはわかる。だが、彼の瞳の奥にあるナニカに渚は気付いた。

 

「俺は、お前達がそんな言葉を言うとは思わなかった。心の底から俺はお前達を尊敬してたんだがな」

 

失望…ではない。その顔はまるで自らの無力さを憂うかのようであった。

 

皆、なぜ雄二がこのような顔をするのかわからない。このクラスで様々なことに万能な雄二が自分達を尊敬するのかも。

 

「風見くんが落ち込む必要はありません。今の彼らはまだわかっていないだけです。自分たちが暗殺者の資格がないのに気付いていないだけ。知らないなら、それをキチンと伝えられる人が伝えるだけです」

 

顔にバツマークをだしてそう言う殺せんせーは烏間先生とビッチ先生も含め全員校庭に出るように指示する。

 

校庭に出ると殺せんせーはサッカーゴールなどの用具をどかしている

 

「さて、イリーナ先生。プロの殺し屋として伺いますが、あなたが仕事をする時用意するプランは1つだけですか?」

 

いきなり何を言い出すのだと思うが彼女は答える。

 

「いいえ、本命のプランが思った通り行く事なんてほとんどないわ。不測の事態に備えて、予備のプランを綿密に作っておくのが暗殺の基本よ。ま、あんたの場合は規格外過ぎて全部狂ったけど」

 

「では次に烏間先生。ナイフ術を生徒に教える時、重要なのは第1撃だけですか?」

 

「第1撃はもちろん最重要だが、次の動きも大切だ。相手が強敵ならほぼ確実に1撃目をかわされる。その後の第2、第3撃をいかに高精度で繰り出すかが勝敗を分ける」

 

烏間は気付かれないように話しながらチラリと雄二を一瞬見てそう言う。

 

「このように自信が持てる次の手があるから自信がある暗殺者になれる。対して、君達はどうでしょう。『俺達には暗殺があるからそれでいいや』と勉強の目標を下げていませんか?でもそれは、劣等感の原因から目を背けているだけです」

 

言いながら殺せんせーは回転を始める。くるくる、くるくる、くるくる、回転スピードは少しずつ上がり、風が起き出す。

 

「もし、先生がこの教室から逃げ出したら?もし、他の殺し屋が先に先生を殺したら?君達に残るのはE組の劣等感しか残らない」

 

回転はすでに小さな風から旋風にと変化する。

 

「そんな危うい君達に、先生からの警告(アドバイス)です」

 

ついに巨大竜巻とかす

 

「第2の刃を持たざるものは、暗殺者を名乗る資格なし‼︎」

 

そうして、回転が止まると校庭は雑草や凸凹だらけの校庭はまっさらに綺麗に手入れされていた。

 

「先生は地球を消せる超生物、この一帯を平らにするなどたやすいことです」

 

皆ゴクリと生唾を飲み込む。雄二ですら、ただ黙っていることしかできない。

 

「もし、君達が自信を持てる第2の刃を示せなければ、相手に値する暗殺者はこの教室にはいないと見なし校舎ごと平らにして先生は去ります」

 

「そ、それっていつまでに?」

 

おそるおそる渚が問う。

 

「決まっています。明日の中間テスト、クラス全員50位以内を取りなさい」

 

皆、「そんな無茶な!」というかのような顔をする

 

「心配はいりません。君たちの第二の刃は既に先生が育てています。本校舎の教師に劣るほど、先生はトロい教え方をしていません。自信を持ってその刃を振ってきなさい。仕事(ミッション)を成功させ、恥じることのない笑顔で胸を張りなさい…自分たちが暗殺者であり、E組であることに‼︎」

 

ピッと触手を向けてハッキリと殺せんせーは言う。それは、理事長とは全く違う本当の応援…否、激励であった。

 

雄二はまるで雷に撃たれたかのような気持ちと、尊敬の念を先生に向け、そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰も見ていないところで、涙を流した。

 

その涙の意味と彼がE組に対して言ったことの意味がわかるのはもっと先になる………

 




前書きにも言いましたが、遅くなりすいません。
感想の返信は遅くなっても基本します

引き続き、意見等があればお願いします。


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テストの時間

今回、ある人を出すために最後にオリジナル設定を少し入れました


椚ヶ丘中学校、中間テスト当日

 

コンコン、コンコン、コンコン

 

監視役の教師がワザと机を叩くが、音の鳴る方へ顔は向けず、テストに集中する。

 

「ゲフン、ゲフン。んん、E組だからってカンニングするんじゃないぞ」

 

本校舎教師のわかりやすい集中力を乱す行為にも誰も見向きもしない、反応のひとつも見せない。テスト前日、妨害してくると踏んだ雄二は

 

「最初からわかっているなら、対処もしやすい。妨害は、言うなら地雷でも監視ライトでもない。だが、集中してる時の雑音はくるとわかっても確かに耳触りだろう。だが、お前達なら大丈夫だ」

 

何が大丈夫なのか、最初わからなかったがその対処も訓練をして皆納得した。

 

(こんなの、射撃解答訓練より楽だ)

 

射撃と同時に出された問題を答える。答えなければ減点と言う単純なルールのゲームだが、人間の脳はそこまで万能ではない。2つのことを同時にやる際、慣れない者は混乱し、答えられない。実際、始めのうちは的を狙いつつ横で出された問題を解くのにどちらかがミスをして皆失敗していた。だがその基礎はすでにE組は既にしていた。以前殺せんせーとサッカーをパスしながら暗殺をするというものだ。その説明を受けた瞬間どこか腑に落ちたところがあるのか、皆答え出す。

 

先程も言ったが、脳は万能ではない。だが、単純なところはある。たとえ瞬間に、一時的でも、出来ると脳が理解するとそう動こうとする。さらに、出来る者が現れると「あ、できるかも」と思うとそのように変化する。マインドコントロールや洗脳と言う言葉はネガティヴな方に聞こえるかもしれない。が、洗脳は脳を洗う、汚れたもの、濁った脳を洗い正常に戻す。マインドコントロールは精神をちょうどいいぐあいに調整すると言う意味にもなる。つまりは使い方なのだ

 

しかし、如何に集中力をあげても、テストの問題ができなけば意味がない。

 

(だが、先生の教えが良かったな)

 

問題に一瞬苦戦しているように見えたが、殺せんせーがマッハで教えてくれた解き方のコツ、それはまるで暗号解読のごとくであり、かつわかりやすい。E組の全員が思った「今までの自分とは違うようだ」と

 

(顔を見ないでもわかる。みんなに目は希望に満ちてるだろう。これなら)

 

「いける」と雄二が思い、10問目を解いた時、殆どの生徒が一斉にやられた。存在するはずのない問題()によって

 

 

*side雄二

 

「流石ね」

 

雄二のバイト先のとある一室。JBからそう賞賛される。

 

「自分の言った事に対するキチンとした成果で、かつ目立ちにくい順位に身を置く。私が言わなくても実行するなんてやるじゃない」

 

「本当にそう思うか?」

 

「は?」

 

風見雄二、中間テスト結果

 

英語94点、国語89点、社会84点、理科86点、数学84点 合計437点 186人中21位

 

「情報はいってないのか?ターゲットは今回E組全員が50位以内に入る事が出来なければE組から出て行くと言っていた」

 

「は、はぁあ!?」

 

JBは顔を真っ青にしていう。

 

「ついでに言うぞ今回俺は手加減したつもりはない。10位以内に入るつもりだった」

 

「なっ!?」

 

「ブランクと、日本中学校のテストとは思えない内容の難しさ、さらにテスト2日前に出題範囲を大幅に変えていた。あの理事長が考えてしかも他クラス全てにその変更範囲を教え終えたそうだ。いいか、たったの2日でだ」

 

「………」

 

言葉は出ない。それほどまでにJBは侮っていた。ターゲットの始末にこんな障害あったという事に。そして、理事長の徹底さとその教師としての有能さを

 

「なんてこと…あれが逃げたんじゃ、もうどうしようもないじゃない」

 

理解できなかった。そこまでする事に。

 

「ここに来たのは、ターゲットの逃走の報告?」

 

「いや違う。というか、それならいくらなんでも俺から言うよりも先に連絡があるだろ」

 

「…ごめん、よくわからないんだけど。ターゲットが言ったのよね?出て行くって」

 

「まぁ、ひと言で言うなら、あのクラスに救われたと言うことだ」

 

 

sideフリー

 

教室全体が重い雰囲気となっている。誰も声を出せない。

 

「これはいったいどういう事でしょうか?公平さを著しく欠くと感じましたが」

 

その中で発せらる言葉は烏間の本校舎への抗議の電話だったが、それが通じる相手ではない事は雄二もわかっていた。

 

案の定、話しは通らなかったのか電話が切られるとどうするべきか見当もつかない顔をする。雄二もこのままではいけないと思い、殺せんせーに声をかけようと思った時であった。

 

(ねぇ雄二、雄二は50位なんでしょ?)

 

(あぁ。カルマは……言うまでもないな)

 

カルマは出題範囲以上の事を教えられていたのもあり、全クラス中4位であった。

 

(じゃあさ、一緒にからかわない?)

 

誰かはなど、言う必要もないであろう。

 

(OKだ)

 

 

 

「この結果をまねいたのは先生の責任です。…君達に顔向け出来ません」

 

「なら、隙だらけだな」

 

声を出されたと同時に二方向から対先生ナイフが3本飛んでくる。そのうちの2本は同方向から来ており、別方向からくるナイフを左右どちらに避けても慌てて逃げた時スピードを大体ではあるが起動を読み取った。どっちにしろ当たるように正確に投げれていたが、これで当たるはずがないのは投げた当人もわかっていた。

 

「にゅやっ⁉︎」

 

間一髪のところで全てを回避された。

 

「まだまだ起動を読み取るには至らないな」

 

「いや、今のは雄二が声を出しちゃだめでしょ〜。相手舐めすぎ」

 

「風見君、カルマ君!今先生は落ち込んでいるんですよ!」

 

文句を無視して2人はテストをバッと出す。

 

「まぁ、見ての通り俺も雄二も50位以内だけど、抜けるきはないよ。前のクラスよりも暗殺の方が楽しいし」

 

「俺の方は正直今回の結果は納得してない。だからといって、本校舎の教師に習いたいとも思わない。先生がまだ逃げずに残るならいいんだが」

 

「いやいや、雄二無駄だってこの先生は本質はチキンなんだし、今も早く逃げたくて心はブルブルしてるだろうし」

 

「なるほど、全員50位以内でなけれ出て行くと言うのは逃げる口実だったのか……先生、怖いなら怖いって最初から言えば良かったんだぞ。別にそんな事で爆笑はしない(笑)」

 

その含んだ笑みもあり、イラっとさせるには充分であるが、さらに追い討ちが入る。2人の意図を読み取ったクラスがさらに煽りだした。

 

「なーんだ、殺せんせー怖かったのか」

 

「正直に言っても誰も何も言わないし、笑わないしー(笑)」

 

プルプルと震えていたが散々煽られて沸点の低い殺せんせーはあっという間に我慢の限界がくる。

 

「にゅやー‼︎逃げるわけありません‼︎期末テストであいつらにリベンジしてやります‼︎」

 

そこからは皆、笑い出す。先程の張り詰めた空気はどこに行ったのかというほどに明るく、その光景に烏間もビッチ先生もやれやれといった雰囲気でため息をはくが、けして悪い顔ではなかった

 

ただ、1人。雄二は安心していた。それがとてつもない矛盾と自己満足ということもわかっている。

 

逃げられては、困る。この先生からもっと様々な事を学びたい。

 

逃げられては、困る。殺すことが出来なくなるから。

 

 

*side雄二

 

「…というわけだ」

 

「なるほどね。あの怪物が負けず嫌いで、器も小さくて、煽りやすくて………なんかこれだけ聞くと、物凄く弱そうに聞こえるんだけど」

 

それは俺も思うが、それを帳消しにするくらいほかのスペックが高い。

 

「E組ね。…ここだけの話だけど、上層部は様々な意味であのクラスに期待はしていないわ。でも、あなたがそこにいる意味だけは、履き違えないで」

 

JBは目を細めて言う。どういう意味かはわかっているが俺はあえて聞く。

 

「なにをだ?」

 

「知っているんでしょ、あのクラスにあなたがいる理由は怪物の暗殺だけじゃない(・・・・・・・・・・・)

 

「JB、俺はクラスメイトを裏切れない」

 

「わかってる。私も上層部のクソみたいな考えには賛同していないわ。だからこそ、履き違えないで。あなたがやるべきこと、そしてあなたはあの怪物に麻子の時のような感情をもってはダメ」

 

「…俺にそんな趣味はない」

 

「茶化さないで」

 

……言われなくてもわかっている。でもそれでも、

 

「尊敬くらいはしてもいいんじゃないか」

 

「そう。なら、どんな結末になっても後悔はしないのね」

 

もともと、殺すことは決まっている。それで、俺の中でまた何かが壊れるとしても

 

「覚悟はできてる」

 

例えこの先壊れても、俺は生きる。麻子との約束の為に。愛国心などない。ただ、この学園生活が無事終われば少なくとも5人以上は救える。その時にようやく……

 

「あんたのとこに行く権利が得られるよ…………麻子」

 

 

*side JB(ジュリア)

 

「あの子、気付いてるのかしら」

 

いま抱いている感情が矛盾してるということに。

 

「もどかしいわね。何もできないのって」

 

私が何を言っても聞かないだろう。いつもいつも、麻子と同じで自分勝手なんだから。

 

「それにしても…」

 

あの怪物が学園を去るかもしれないとんでもない事態など、こちらの耳に入ってもおかしくないそうなれば、政府も世界も黙ってはいないはず。すぐさま何かしらの行動に出るはず。

 

「どこかで情報が制限されていた?」

 

そんなはずがない。そのようなことが起こらないように、地下の教授にも手を貸してもらったのだから。何時もはくだらない事で私を使うなと言うほどなのに今回ははっきりと文句もなく協力したのだ。流石に彼?も地球の危機には動いたのだと思った。

 

「まさか、その当本人が止めた?」

 

だが、そうだとしたら何のために?メリットなどないはず

 

「何か、私の知らないところで動いてる影があるのかしら」

 

 

*side ???

 

【今後はこれっきりにしてください。今回は良かったものの】

 

《……いえ、どの道あの教師はあのクラスに残っていました》

 

通信から流れてくる男の声にソレは機械的に答える。

 

《あの怪物の目的は理解してる、けど私は自分で確認しないと気が済まないです》

 

【聞きますが、逃走する可能性の確率は?】

 

《ある程度の憶測もありますが、10%未満でした》

 

その瞬間、連絡先の相手が頭を痛めている光景がすぐに浮かんだ。当然だろう。10%とはいえ、地球の存亡に関わっていたのだから。

 

《けど、確認はとれました。あの怪物は3月まで動くことはないでしょう》

 

〔本当にその確認だけのために今回の事を実行したと?〕

 

もちろんそれだけではない。だがそれはここで言う事ではない。故にこの場では《そうです》と言っておく。怪しまれる行動は大きくは取れないだろう。それでもやれる事はたくさんある。これ以上言っても何も出ないと判断したのか、通信が終了する。

 

《さて、次の手の準備ももう少し 。いずれくる時まで、しっかり生きて。あの教師はあなたの人生に必ず活かせる》

 

教師の中の教師であろう。そうでなければ、エンドとまで言われるクラスに入り浸りはしない。そんな教師でなければ、任せられない。

昔のように彼を、あの子を苦しめてしまうかもしれないから。

 

《後は、クラスの子ね。キチンと確認しないと》

 

機械的な音声はそれ以降聞こえない。ただ、パソコンが起動している時のような音だけが響く。暗い地下で、ただひたすら時がくるのを待ち、その時の行動を予測し、どうするかを考え、ただひたすらに…

 

 

 




雄二の成績について
今回の話で1番悩んだのは雄二の順位と点数です。
最初はトップ10に入れるつもりでしたがそれでは面白くないかなと思い、色々考えて今回の順位です

感想、意見よろしくです
次回から修学旅行編です
いつ出せるかはっきり言えたらいいんですけどね………


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旅行の時間・1時限目

年内に出せて良かった!
あと1話出せればと思ってたので
ではどうぞ


学生時代で何が1番の思い出と聞かれたら様々意見は出るだろうが、その中に必ず出てくるであろうと断言できるものはいくつかある。その1つが修学旅行であろう。この椚ヶ丘中学校にも当然あり、これに関してはE組にもある。

 

「風見君、どの班に入るか決まった?」

 

クラス委員長の片岡は登校してきた雄二に問いかける。

 

「もう少しだけ待ってくれ今日中には出す」

 

「随分真剣に考えるんだね。なるべく早くね」

 

本来なら、すぐに答えを出したいがそうもできない理由がある。

 

 

先日、烏間の訓練が終了後に全員が集まるようにいわれた。

 

「知っての通り来週から京都2泊3日の修学旅行だ。君らの楽しみを邪魔したくはないが、これも任務だ」

 

広く、複雑な京都で殺せんせーは各班ごとに決めた観光コースを時間を分けて全てに付き添う。ならばそれを狙うためスナイパーを政府は雇ったとのこと。いうなれば、暗殺修学旅行である。

 

(しかし、スナイパーか……一応どんな奴か確認と、承認されるかわからんが保険を付けておくか。それと、それが活かせる最大のポイントと班決めも必要だな)

 

 

*side雄二

 

「で、こいつが今回依頼を受けたスナイパーか?」

 

「えぇ、そうよ」

 

簡単な経歴をみると 中々のスナイパーであることがわかる。中東の砂嵐の中、2㎞先の標的に命中させた実績もあり、間違いなく一流だろうな。だが、

 

「で、第2候補からは?」

 

「いないわ。理由は難易度の高さゆえ。むしろ、1人いるだけでも奇跡と言いたいわ」

 

淡々と語るJBは俺の目から見ても、期待してない顔をしているのはわかる。まぁ、正直俺も成功するとは思ってない。というより、できるなら俺が

 

「殺れるの?」

 

「俺の心を読むな」

 

とは言え確かに俺では無理だろうな。色々な意味で

 

「ごめんなさい」

 

「いや、謝られると困るんだが……それより、俺が頼んでいた方はどうだ?」

 

「承認されたわ」

 

「意外だな」

 

正直、通るとは思わなかった。市ヶ谷もサムおじさんも何より本人(・・)が断ると思っていた

 

「正直に言うとね、今回の暗殺計画は期待値がゼロに等しいのよ。まぁ、やらないよりは良いかっていう感じなの」

 

焼け石に水なのがわかっていても、水を掛ける努力くらいは続けようということか。

 

「それと、本人も断っていたけど、あなたのご指名ということでどうにかなったわ。でも、これは非公式。故に第2候補にもないし、知っている人間もわずかよ」

 

「構わない。後はポイントと、それを実現できる班決めだな」

 

「ところで、作戦成功の有無はともかくとして、終了後は会わないの?」

 

「……良いかもしれないが、修学旅行中に会ったら変だろ?クラスから抜けるのも、学生をしてる俺が会うのも」

 

まぁ、直接は会えないが一言くらい伝言はしておこう。

 

*sideフリー

 

「よし、計画はこんなところか」

 

「雄二君。まだ班決めてないって聞いたんだけど、よかったら私達の班に入らない?」

 

「あ、矢田ちゃん抜け駆け禁止!ねぇねぇ雄二君、私の班に入ってよ」

 

(俺をダシにしてなんの勝負してるんだ)

(((((とか思っているんだろうな)))))

 

もはやE組全員、雄二の鈍感さは既にわかりきっているのでだいたい予想ができていた。

 

「ねぇ雄二君、雄二君はどっちがいいの?」

 

莉桜の質問に対し雄二は

 

「いや、2人には悪いがどちらも俺は入らない」

 

「「え!」」

 

まさか断られるとは思わなかったのかガーンというBGMが聞こえてきそうな感じでショックを受けていた。

 

「というか、お前たちの班はどっちも定員オーバーだろ」

 

班の決め方は6~7人班であり、桃花の1班も莉桜の2班も既に7人。雄二のいう通り定員オーバーである。雄二がどこに決めるのかギリギリまで言わなかったのもあり、ならばと躍起になった恋する乙女は大事なことが頭から抜けていた。そうなってくるとあとは3班と4班なのだがどちらかを雄二が言う前に

 

「俺らの班だとよ」

 

答えたのは3班の寺坂だった 。

 

「昼休みに俺のところに来て、俺の班に入れてくれって言われたんだよ。まぁ、あのタコを殺す算段があるっていうならこっちとしては大助かりだからな」

 

「そういうわけだ。渚も誘ってくれたんだが…」

 

「いいよ。でも雄二、今回は仕方ないけど、もう少しだけ2人にはちゃんとしてあげてね」

 

「?」

 

ちゃんと接しているぞと顔にでているが渚は苦笑するしかなかった。

 

 

こうして雄二も班を決めた。ちなみに他のメンバーも含めて3班はこうなっている。

 

寺坂 竜馬、吉田 大成、村松 拓哉、竹林 孝太郎、狭間 綺羅々、原 寿美鈴、風見 雄二。

 

「んで、改めて聞くがよ。なんでこの班なんだ」

 

「だから言っただろ」

 

旅先でどこを見るかを決めている最中に寺坂が聞いてくる。

 

「この班が、もっとも成功確率が高いからだ」

 

はっきりと、そう言われ全員困惑した。理由はここにいるメンバーは言葉を悪くすれば現状あまり暗殺向けでないグループの集まりだからだ。もちろん、殺す気はあるしそのための作戦も既に立てている。雄二はその作戦を聞き、少しだけ変更するが充分だと褒めてきた。だが雄二なら渚達がいる班でもよかったはずなぜわざわざこの班なのか、そこが疑問なのだ。

 

「おまえ、それ本気で言ってんのか?」

 

「本気以外何がある。詳しい作戦は後で話すが、理由をしっかりいうならこの班が3班だからだ」

 

「「「「「「???」」」」」」

 

あまり伝わらなかったのか、首をかしげる。

 

「まず1班だが、殺せんせーのことだ、暗殺が行われることなど百も承知だろう。故に最初は余裕を持ちながらも集中して暗殺をはねのけるだろう。次に2班、先程のことがあった後ならもはや先生は相手が視界に入ってなくとも狙われていると確信してしまう。故に狙い難い行動をしてくるはずだ。そして4班だが、最後というのもある。1番最後だからこそ、警戒度は上がってもおかしくない。だが3班は先の1班、2班最後の4班の間だ。先の2回の暗殺を回避したのならこんなものかとなり、なおかつ俺以外は警戒心が薄い。だが、今回はスナイパーの射撃なら警戒してもそれほどじゃない。仮に警戒するのでも、その方が意識が分散される。必死に頼み込んで聞いたが、今回はスナイパーが3班から2人になる(・・・・・)2回とはいえそのどちらもが1人なら警戒してもコンマの油断が出る。後はそうだな、この班でもっとも警戒されない奴が、ほんのわずかでも意識を外し、動きを止める行動をすれば2人のスナイパーによる攻撃で決めれるかもしれない」

 

ほんの少し早口で説明が終わった後は開いた口が塞がらなかった。成功率が高いからと雄二は言ったがこれを聞くと思う。仮に最初の1班に入っていてもこいつなら可能性を他の班より高くできると

 

「殺る気なのか?」

 

「出来るかどうかは問題じゃない。今回失敗してもまだチャンスはある。ただ、やる気と言うのは少し違う」

 

「はぁ?じゃあ何だってんだ。殺る気は当たり前ってか?」

 

「違うな。やってたらやる気になる。ただ、行動が本気かどうかだ」

 

本気。それは確かにそうだった。3班のメンバーは先の暗殺向きでないことがどこか本気にさせていない部分があった。殺る気はあっても本気ではなかったのだ。

 

故に確信した。こいつはこのクラスで間違いなく最高の暗殺者であると

 

 

 

 

 

 

 

 

それが、最大の間違いだったと気付くのは、先になる。

 

 

 

そして、修学旅行当日。いつもより早く日課を終えて現地に行く前にバイト先に来ていた。

 

「じゃ、向こうについても定期連絡はすること。それと、あんまり無茶苦茶なことはしないこと」

 

「子供あつかいはやめろ」

 

「あなたがそう言われるようなことしてきたからでしょ!修学旅行の手続きだけで大変なのに」

 

「その件に関しては感謝してる。正直にいうが、俺が普通に修学旅行ができるとは思ってなかった」

 

「……こんな形だけどね」

 

JBも手続きが上手くいったことは驚きだが、それでも暗殺という環境に雄二を置いてる時点でこれは普通と言えない。雄二もそのことは充分理解していた。

 

「それじゃ、俺はそろそろ行かせてもらう」

 

「雄二」

 

イスから立ち部屋を出ようとした時JBから声が掛かり、何かと振り向く。

 

「行ってらっしゃい」

 

「…あぁ。行って来る」

 

そうして雄二が部屋から出た後、先程かけた言葉は、どちらかというと親が心配する子供というより結婚してしばらくした後の仲を保とうとするために軽い事でも話そうとする夫婦のようだと思ってしまい、どっとため息を出していた。

 

 

集合場所である東京駅に着くと修学旅行の際の注意事項と合わせたE組いじりを聞いて電車に乗り出す。さらにここでもA~D組はグリーン車なのに対してE組は普通車である。とはいえ、もう分かっていたのもあり愚痴という愚痴もあまりでなかった。

 

「まぁ、いつもの感じね」

 

「莉緒、逆に考えろ普通車だからこそあいつらと一緒に旅する事なくE組の皆と楽しく旅行ができる」

 

「なるほど。そういう考えもあるね」

 

「まぁ、俺の考えじゃないが」

 

「どういう事?」

 

「それは…」

 

続きを言う前にそこに来た人物に流石の雄二も唖然とする。他の人とは違い、呆れた意味でだが

 

「ごきげんよう生徒達」

 

モデルのような歩き方とハリウッド女優のような格好で来たのはビッチ先生である

 

「なんなんだよビッチ先生その格好」

 

「狙ってる暗殺対象ターゲットにバカンスに誘われるって結構あるの。その時、ダサい格好だと幻滅させたら折角のチャンスを逃しかねないわ」

 

「場違いにもほどがあるだろ」

 

「言ってることだけは的を得てはいるがな」

 

「ふん、イイ女は旅のファッションにも気を使うのよ」

 

木村と雄二の意見にもどこ吹く風といった感じである。しかし当然ながらこんな目立つ服装を烏間先生が許すはずもない

 

「目立ち過ぎだ着替えろ。どう見ても引率の教師の恰好じゃない」

 

「堅い事言ってんじゃないわよ烏間!ガキ共に大人の旅の………」

「2度はないぞ、脱げ、着替えろ」

 

明確な怒りと殺気を出す。しかも冷静を保とうとして言ってるのだからある意味より恐怖を感じる。

 

 

 

結局、車内トイレに入ってシブシブ着替えていた……寝巻きに。

 

「って、なんで寝巻き?」

 

「言うな渚。きっとあれ以外の服も似たようなものだからだ。ビッチだからTPOをわきまえた服装もそうできないんだろう」

 

睨むビッチ先生を無視する雄二を見て相変わらずのビッチ先生いじりにもだいぶ慣れてきたのかもはやいつも通りだなと皆思っていた。

 

「あれ、さっきから殺せんせーの姿が見えないんだけど?」

 

「あ、そういえば」

 

「あぁ、殺せんせーなら、さっきからずっといるぞ」

 

スッと雄二は窓に向かって指を向ける。そう、窓際ではなく、電車の窓の外

 

「何で窓に張り付いてんだよ殺せんせー!」

 

【いやー駅中スウィーツを買ってたら乗り遅れてしまって。でも大丈夫です、次の駅までこの状態で一緒に行きます。保護色にすれば外からは服と荷物が張り付いてるだけにしか見えません】

 

「それはそれで不自然だよ!」

 

電車の中なので携帯で話している

 

「あの状態で携帯も出来るのか」

 

「ここでそのツッコミいる!?というか、さっきから気付いてるのになんでスルーしてたの!?」

 

「いや、殺せんせーのことだから何かしら意味があるのかと思ったんだが」

 

「「「「「あるか‼︎」」」」」

 

そうこうしてるうちに次の駅に到着すると同時にマッハで入ってきてようやく合流した。

 

「いやあ、疲れました。 目立たないように旅をするのは大変ですねぇ」

 

「そんなでかい荷物持ってる時点で目立つだろ」

 

「そもそも存在そのものが目立つし」

 

「いや、そうでもないぞ。学校近くのコンビニではもはや常連になっているのもあるが、全く不思議がられない」

 

「どこからツッコミを入れればいいのかわからないけど、とにかく目立ったらダメでしょ」

 

国家機密だというのに目立ちまくる殺せんせー。雄二の見るコンビニが異常なのか、お客様として対応してるのかは定かではないが少なくとも今この場ではとても目立つ

 

「ほら、殺せんせー。今使ってる付け鼻の代わりにこれ使いな」

 

菅野が渡したのは殺せんせーの顔にフィットするように加工した手作りの付け鼻である。

 

「顔の曲面と雰囲気に合うように削ったんだよ。俺、そういうの得意だし」

 

「おぉ!すごいフィット感。ありがとうございます菅野くん」

 

余程気にいったのか鏡を見て嬉しそうにそう言う。

 

「面白いね渚。旅行になるとみんなのちょっと意外な面が見れるね」

 

茅野の言葉に「うん」と返し渚は雄二を見て、この旅で皆の色々な顔を、特に今だに謎の多い雄二の別の顔が見れればいいなと思っていた。

 




今年最後の投稿でした
みなさん良いお年を!

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旅行の時間・2時限目

半年以上かかりましたすいません


電車の次にバスに乗り継ぎ、ようやく旅館に到着した時は既に日も暮れ出していた。

 

「ふむ、風情があっていい旅館だな」

 

「デジャブのような気がするが、言わせてもらう。それは皮肉か?」

 

「屋根がある、寝床がある、風呂がある。充分だろ?」

 

「……………」

 

やはり皮肉かと言う烏間のツッコミは入らなかった。

 

『さびれや旅館』

 

それがE組の宿泊する旅館だ。

 

「まずこの旅館は名前を変える必要があると思うんだが」

 

「どの道あの教師がいる時点で普通の旅館など無理に決まっている。むしろあの怪物を置いてくれてかつ、暗殺にも協力的なのには感謝すべきだ」

 

「それもそうだな」

 

「雄二くーんはやくー」

 

と、桃花が手を振る。

 

「行ってこい。暗殺を除けば、今回ほど普通の学園生活はないぞ」

 

「…ありがとう、烏間先生」

 

ふっと笑みを浮かべて雄二がE組の皆がいる方に向かう。

 

 

side烏間惟臣

 

「俺に何もできなくても、せめてこの時くらいは普通な青春をおくってくれ」

 

それは願い。去年の1月頃、とある事で俺は彼に助けられた。

 

俺はよかった。だが俺の周りにいるものに迷惑をかけてしまう。そこに何も言わず、たまたま『バイト』に入っていた彼はその状況を覆した。その礼を軽くでも良い返したかった

「普通の学校で、普通の学園生活がしたい」

ボソッと言っていた言葉の意味が今では少しわかる。同時にそれが不可能だとも。だから、それ以外に何か。そう考えていた時にこの地球存亡を賭けた任務が来た。

 

これは完全な偶然だろう。だが、本当に良いのか?そうした考えもあった。だがそんな考える時間はほんのわずかしかない。意見として出したものは会議に出され、ある条件のもと許可された。されてしまったと言うべきかもしれない。

 

余計な事をしてしまったと思う。だからこそ、後悔させない。俺も、彼自身も

 

 

sideフリーサイド

 

風情があるも旅館の名前通りさびれている。寝室は男女で大部屋2部屋。ちなみに他のクラスはホテルで個室だそうだ。

 

「まぁ、こんなのはいつも通りだな」

 

「風見、冷静過ぎだろー」

 

「もうこうなるといつも通りと思っていた方が気が楽だぞ」

 

「まぁ、これはこれで楽しいからいいじゃないかな。……それにしても」

 

スーと渚が視線を移すとそこにはソファでグッタリとしている殺せんせーがいた。

 

「新幹線とバスでグロッキーか」

 

「今なら殺せ………ないか」

 

「だな」と雄二は言う。実際さっきから何人かの生徒がナイフを振るもスイッとかわされる。

 

「まぁ、弱点の1つとしては使えそうだね」

 

「それはそうだが渚、何が役に立つかはわからないとはいえ、枕が変わると眠れないはいるか?と言うか、殺せんせーはその大荷物で忘れるのもどうかと思う。あと、曲線定規とかいるのか?」

 

「修学旅行には必須です」

 

「ふむ、それは知らなかった。後で烏間先生に頼んで外で買って来てもらう」

 

「「「「「いや、いらないだろ」」」」」

 

クラスからのツッコミを聞いていると雄二の隣で神崎有希子(かんざき ゆきこ)が何かを探しているのかカバンを探っていた。

 

「神崎も忘れ物か?」

 

クラスで話したりしている程度の仲ではあるが彼女が真面目な性格なのは理解していた雄二は意外だなと思っていた。

 

「ううん。来る時に何度か見て確認してたから、忘れたわけじゃないんだけど」

 

「何がないんだ?」

 

「修学旅行の日程表。コンビニとかでも売ってる小さな手帳みたいのなんだけど」

 

「最後に確認して、どこに置いた?」

 

「電車の中で1回見てから、ポケットの中にだけど」

 

当然確認しているだろうと判断した雄二は電車、あるいはバス内で落とした可能性が高いなと踏んでいた。

 

「神崎さんは真面目ですからねぇ、独自に日程をまとめていたとは感心です」

 

と、弱々しく殺せんせーは言いながら大荷物から電話帳のようなものを出す。

 

「でもご安心を。先生手作りの修学旅行のしおりを持てばすべて安心」

 

「「「「それ持って歩きたくないからまとめてんだよ‼︎」」」」

 

それは修学旅行の前に殺せんせーが自作したという無駄に気合の入りすぎたしおりである。

 

「暇な時に全部読んだが、(((((すげぇ))))殺せんせー、この『旅館で有名な探偵に会って事件に巻き込まれないようにする対処法』はいるか?そのなんだ、いろんな意味で」

 

「修学旅行には必須です」

 

「なるほど、そうなのk

「「「「「ねーよ‼︎」」」」」

 

クラスの心からの総ツッコミを聞きつつ、諦めながらもカバンをもう一度だけ確認している神崎を見てほんの少し考えて

 

「なら、もう一度作るか?俺も手伝うぞ」

 

「え?あ、ありがとう風見くん」

 

「渚達も頼めるか?」

 

その問いに渚達はもちろんと言って了承した。

 

「でもいいの?」

 

「班は違うが、俺達はクラスメイトだ。クラスメイトを助けるのは、普通だろ?」

 

そうして7人で考えながら日程表を作り直す。当然最初と全く同じとはならない。その場のアドリブで書いたものもある。だが行動場所を決めていたこともありスムーズにできあがった。

 

「こんなもんだな」

 

「てか、本当によかったの?雄二」

 

「何か不備があるのか?お前は俺より頭がまわる。何より結局これはお前達の班のことだ意見はしっかり言ってもらえるなら嬉しい」

 

「いや、雄二もだいぶ頭がいいじゃん?まぁ、それはいいとしてさ。元の計画よりもこれ間違いなく可能性が上がるじゃん。今は殺せんせーいないから言うけど、よく2人目のスナイパーがいるとか聞けたね」

 

「曰く、相当無理を言ったそうだ。俺が言うのもなんだがよく受けたと思う」

 

雄二はそう言うとカルマを含め全員どこか納得する。当然といえば当然だ。世界中が躍起になっても殺せず、スペック的にも無理がある相手にわざわざ受けるスナイパーなど暗殺者でもそれ以外でも(・・・・・・)そうそういない。

 

「まぁ、それもあるけど。他の班の可能性あげる必要とかある?寺坂あたりが文句言ってきたりとか」

 

「お前達の班に殺せんせーが行くのは俺達の次だ。こっちが失敗した時に今の作戦は動く。つまり、どうなろうと俺達の班には問題にならない。…とにかく、俺ができるのはこのくらいだけ後は本番次第だ」

 

「こんなにお膳立てしてこのくらいはねーだろ。前から思ってたけどお前自分を過小評価しすぎだろ」

 

「そうか?俺はお前達のしてきたこと、考えてたことに多少の色をつけただけだ。この前のスイングショットも杉野の考えてた音を出さず攻撃する作戦のもの。今回の作戦もお前達の元の作戦に付け加えをした程度だ」

 

「それができてるのが1番すごいと思う。この前も私の作った毒をバレずにせんせーに渡せたし」

 

「え、そんなことあったんだ」

 

奥田の言ったことに渚は知らなかったのか驚いていた。

 

「結局失敗したけどな。と言うより、効果がなかった。どういう構造なんだあの体は王水が効かないとは」

 

と、今度はブツブツと呟きだした。

 

「さすがにちょっとは変化があるだろうなーって思ってたらしく真顔になったから…一応前に試したことも言ったんだけどバレずに渡す事が目的だからって…その後結果を見てから」

 

「あんな感じになったんだ」

 

「わかってた、わかってたが…どういう構造を、そもそもどうやって王水を分解してんだ…」

 

「こ、こんな雄二は始めて見た」

 

「思い出すたびに2、3分はこんな感じになっちゃうんだ」

 

「そ、相当だな」

 

雄二は当然効かない事はやる前から判断していた。それでも真顔はないと思っていたぶんショックもデカかった。

 

「ゆ、雄二、気をしっかり」

 

「!す、すまん。兎に角、後はお互い明日は頑張ろう」

 

「う、うん。風見くん。ありがとう」

 

「あぁ。今度は無くすなよ」

 

神崎の柔らかな笑みに同じく笑みで返した。………4班全員はやはり雄二は天然タラシだと思った。

 

 

 

 

翌日。各班最初に決めた自由行動場所に向かう

 

「先生が来るまで時間がある。観光でもするか。とりあえず音羽の滝か」

 

「のんきだな。狙撃ポイントの確認しなくてもいいのかよ?」

 

寺坂の問いに雄二は小さな双眼鏡を渡しあそこを見ろと指差す。

 

「…五重の塔。あそこから狙うのか」

 

「普通ならあそこから狙う。だが、それで仕留められるならとっくに殺せんせーは誰かがやってる。このままじゃ失敗するが、もうひとりがねらうポイントで決まる。定石の五重の塔以外で狙うのなら産寧坂の入り口の付近にある建物2階からターゲットが出口についた時だろうな」

 

「そんな場所からで気付かれるんじゃ?」

 

「2人いるならどちらかでいい。つまり意識がそちらに向くようにするのが最大の目的だろう。だが囮にとはいえ、その囮も狙撃してくるだろうがな。どの道俺たちは撃ちやすいところへ誘導するだけだ。原、予定通り注意をそらしてくれ」

 

話し合いの結果、殺せんせーの気を他に向けるのは原寿美鈴(はらすみれ)に決まった。理由は女性であること。細身の竹林とはいえ男性と女性では警戒意識が違う。男女差別というわけではないがどんな相手も無意識にそういうものがでてくるものだ

 

「でも、そんな事できるのかな」

 

「そう。それでいい。こんな奴にやれるわけないと思われることこそが大切なんだ。警戒されないとは油断しているということだからな」

 

肩をポンポンとたたき肩の力を抜くようにと言うと観光をはじめた。

 

「なんか、あのやろう楽しそうだな」

 

「そりゃ、修学旅行なんてそんなもんだけど」

 

いつもとあまり変わりはしていない。だが、それでもある程度見ていた彼らでもわかる。ほんのちょっと雄二がたのしそうだと。

 

そうこうしているうちに時間は過ぎる。

 

 

PM2:20

 

 

殺せんせーとの待ち合わせ場所に着くもなかなか来ない。まさか他の班がなどとは誰も思わない。単なる遅刻であろう事はすぐわかる。

 

「すみません。遅れてしまいました」

 

「遅いよ殺せんせー」

 

「舞子さんを卑猥な目で見つめてたのか?」

 

「にゅあ!?そんな事してません!まだ!」

 

「「「「「「まだ!?」」」」」」

 

「あ、いえ。なんでもありません」

 

口が軽いなと雄二は思い。弱点に加えるかどうかはわからないがとりあえずあとで(・・・)渚に伝えておこうと思った。

 

「清水寺、もうとっくにまわったけど」

 

「ほう、では二寧坂でお土産探しといきますか」

 

狭間綺羅々(はざまきらら)が殺せんせーに言うと雄二たちの予想通りの動きをする。いくつかの土産物屋に寄る。

 

「珍しいな。てっきり八つ橋とか甘いものを買うかと思ったんだが、そんなのも買うんだな」

 

殺せんせーが買ったのはひょうたんに入った七味であった。もちろん甘くなどない。

 

「えぇ。ちょっとね」

 

と言って懐にしまう。

 

「殺せんせー。今買ったあぶらとり紙使ってみなよ」

 

(いいぞ原。自然だ)

 

「ベトベト取れたら恥ずかしいですねぇ」

 

何がだと雄二が聞く前に原はあぶらとり紙を適当に貼っていく。この瞬間、確かに殺せんせーは気をそらせていた。五重の塔の5階がキラッと光ったと思った瞬間、こめかみに弾丸が当たる

 

「にゅ?」

 

ただしあぶらとり紙に包まれるかたちで

 

「言わんこっちゃない!こんなに粘液がとれ…」

 

さらに二寧坂の入り口付近にてまた何か光ったと思ったら逆のこめかみに

 

「見なさい!これ、この弾力性!どこからともなく飛んできた弾丸も跳ね返すレベル!」

 

当たる前にまるで偶然にもこめかみ部分に粘液のついたあぶらとり紙がくるように触手を動かし、ゴムに引っ張られ最後は弾き飛ばされるかのように弾丸が跳ね返っていった。

 

(全く人的被害のでない方に飛ばしてる。偶然とは思えない。狙うのなら狙えたとなると………先生のことだ、あいつが死ぬような事はしないだろうがやはりあいつには悪いことしたな)

 

心の中で詫びを入れ、きちんと手紙か電話でも詫びをいれようときめる

 

(あぶらとり紙で取れたら粘液は少しすると強力なゴムにもなるか…つくづくデタラメだ)

 

対処方法が見つかったと思えばそこからまた新たな問題が出てくる。そのことに頭を抱えたくなる。さてこれからどうするかそう考えた時であった。

 

「おや、渚君の班から電話です」

 

電話のあいてはどうやら渚らしいが様子が変であった。電話を切ると緊急事態だと言ってどこかに飛んで行った

 

「ハッ、結局は失敗かよ。どうする…っておい!聞いてんのか!」

 

寺坂の言葉は雄二には入ってこなかった。プライベート用のiPhoneにメールが入る。みると烏間からであった。

 

【トラブル発生。4班の2名拉致】

 

「せっかく京都に来たんだもう少し観光しよう。俺はあっちに行く」

 

と半分強引に班から離れる

 

(殺せんせーが動いているとはいえ、万が一がある。あいつら自身も動くだろうが人数が多くて困ることはない)

 

すぐさま雄二は渚に連絡を入れた

 




感想、意見はいつでもお待ちしてます

次こそは
早く出したい真面目な話、もっと時間が欲しい


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旅行の時間・3時限目

毎回投稿、返信が遅くなります
でも読んで下さる皆様に感謝です


side潮田渚

 

相手から受けたキズがヒリヒリするがそんな事は言っていられない。茅野と神崎さんが拉致されたのだから。デカすぎるトラブルであったが殺せんせーの用意していた修学旅行のしおりがやくにたった。

 

『班員が拉致られた時』

 

こんな事を想定したしおりなど恐ろしくマメな殺せんせーくらいしか作らないだろう。ちなみに他にも雄二が見たという『旅館で名探偵と遭遇し、事件に巻き込まれない対象方』の他に『京都で買ったお土産が東京のデパートに売ってた時のショックの立ち直り方』などカオスなものも多々あるがおかげでリラックスできた。殺せんせーにとりあえず連絡をして具体的な動き方を聞き、行動しようとした時であった

 

「電話だ。雄二から?」

 

でるとすぐさま声が聞こえてくる

 

【渚か、烏間先生から聞いた。俺も手伝わせてくれ】

 

駆けているのか服が擦れるような音がする。確かに先ほど殺せんせーから烏間先生には私から伝えるというのは聞いていた。烏間先生と雄二は教師と生徒という関係よりも違うものに見える。おそらく頼りにして連絡をしたのだろう。

 

「けど、雄二【いいのとかは無しだ。それに言ったろ、クラスメイトを助けるのは当たり前だ】じゃあ、ありがとう雄二。移動しながら話すけど、どこまで把握してる?」

 

【他校の高校生グループに神崎と茅野が拉致されたんだろ?会話の中で訛りはあったか?】

 

「なかった」

 

【学生服で訛りなし。そこまでわかるなら簡単だ。1244ページだ】

 

え?と思いつつもそのページを開けるとそこには犯人がどういう人物かが書かれていた。相手も修学旅行生で旅先でオイタをする輩とはっきり書かれている。

 

「雄二、もしかして丸暗記してる?」

 

【まさか。覚えておいたほうがいいと思ったところを覚えているだけだ。……ただ、やっぱり昨日先生に聞いた事はいらないと思ったんだが必須だと言われても少々疑問だが】

 

「だからないって‼︎っとそんな事より、こっちも今そのページを見たよ」

 

【ならその先もわかるな。土地勘がないその手の輩は…】

 

「遠くに逃げず、近場で人目のつかない場所を探す。その場合は付録134」

 

パラパラとページをめくりそこを見ると京都の地図が書かれており、いくつかのポイントがマーキングされている。

 

「拉致実行犯潜伏対策マップが役立つでしょう。これだね」

 

【地図は流石に暗記しても実際にいる位置がわからないと意味がない。渚、確か今は祇園にいるんだったな】

 

「うん。という事は、ここから1番近い場所が…」

 

【もっとも可能性が高い。殺せんせーもおそらく他の地点を確認するだろう。だったら尚更、最短地点に行くべきだ】

 

「わかった」

 

電話を切り、目的地に向かう。しおりと雄二のおかげで胸にあった不安はなくなった。

 

 

sideフリー

 

傾いたり、壊れたダーツ。埃まみれになってしまったビリヤード。元はバーだったのでワインなどの空瓶が置かれ、神崎と茅野をさらった不良学生が バカ笑いをしている。

 

2人には手にガムテープが巻かれており、当然ながら出口と外には見張りもいる。

 

「…そういえばちょっと意外、さっきの写真。真面目な神崎さんにもああいう時期があったあったんだね」

 

不安な雰囲気を変えるため茅野は話しだす。不良達が見せた写真には髪を染め髪型も変え、服も大和撫子と言って良いおしとやかな彼女が着るものとは思えない格好であった。

 

「うん。うちは父親が厳しくてね。良い学歴、良い職業、良い肩書きばかり求めてくるの」

 

そんな重い肩書きを外し思いっきり彼女は遊んだ。

 

「バカだよね。遊んだ結果に得た肩書きは『エンドのE組』もう、自分の居場所もわからないよ」

 

「オレらの同類になりゃいーんだよ!」

 

リーダー格の男がヘラヘラした顔でそう言いだす。

 

「なんてーか自然体に戻してあげるみたいな?エリートリーマンみてーな奴は女使って痴漢の罪を着せてやったし、勝ち組みたいな女はこんな風にさらってよ、心と体に2度と消えない傷を刻んだり、おれそういう教育(あそび)沢山してきたからよ。台無しの伝道師って呼んでくれよ」

 

自分達のやってきた悪事をさも平然と楽しそうに笑顔で語ったことに

 

サイテー

 

ボソッと茅野は呟く。瞬間ぐっと首を絞められる。

 

「何、エリート気取りで見下してんだ!おまえもすぐに同じレベルまで堕としてやんよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くだらないな」

 

それは不良も、神崎たちも驚きの声であった。入口の扉が開き、男性が入ってくる。彼女達はよく知っている人物だが、来るとは思ってもいなかった。

 

「なん、なんだぁ、お前!つか、入口の奴どうした⁉︎」

 

「ん?あぁ、知り合いがいるから入れてくれって言った途端殴りかかってきたからな。気絶させて外で寝てる」

 

「「風見君⁉︎」」

 

「ち、どうやって此処に⁉︎?」

 

「お前ら、本当に修学旅行生か?修学旅行のしおりに拉致対策と実行犯対策マップが書かれてんだから、土地勘なくても普通近場ないだろ」

 

「「「ねーよ!そんなしおり‼︎」」」

 

こんな状況に合わないボケとツッコミに見えるが、双方普通の(1人はそう思ってる)意見である。

 

「それで、さっき扉の外で聞いてたが、お前らが相当くだらない連中なのはわかったが、女に手をあげるのはやめとけ。ただでさえ低い評価がさらに下がるどころか弱く見えるぞ」

 

「〜‼︎」

 

怒りに我を忘れそうな瞬間、また扉が開く。

 

「はっ、ノコノコ1人できたがな、こっちはまだ人数がいんだよ。今来たのはうちの撮影スタッフどもだ」

 

「………」

 

無関心そうに扉をみて

 

「お前達もついたか」

 

「あり?雄二じゃん」

 

「先に着いてたんだ!早いな」

 

「烏間先生に聞いてすぐに動いたのと、地元のタクシーに頼んで最短ルートを通って来たんだ」

 

「さすが!いや、このしおりと雄二がいたら拉致にもすぐには対応できるな!」

 

「「「だから、ねーよ!そんなしおり‼︎」」」

 

「で、どうするんだお前たち?」

 

「そうだよねーここまでやってくれたんだから、あんたらの修学旅行のこっからの予定は全部入院だよ」

 

雄二につづきカルマがいう。

 

「まぁ、さすがにおれはそこまではしないが、相応のことは受けてもらうべきだとは思うな」

 

睨まれて一瞬後ずさりしそうになるが、別の扉から物音がきこえてくる

 

「い、イキがんなよ!おまえらみたいな良い子が見たこともねぇ不良共だ!これでこっちは10人だ」

 

キィ、と扉があいて入ってきたのは規則正しく学ランを着てなぜか丸めがねをかけた坊主青年達(元不良)と黒子(くろこ)のような格好をした殺せんせーであった。

 

「不良などいませんねぇ。先生が全員手入れしてしまいましたから」

 

「遅かったな殺せんせー。今度はナニをみてた?」

 

「にゅあ!?言い方になにか違和感がある!というか、なぜここに風見君が?」

 

「烏間先生からの連絡でな。まぁ、冗談はともかく先生いいタイミングだ」

 

「どうやらそのようですねぇ。この場所を渚君達に任せて、先生は他の場所をしらみつぶしに探してたんですがよかったです」

 

なるほどと雄二は感心と驚きがあったマップに書かれた場所をしらみつぶしにという事ではなく、生徒がここにたどり着くことの信頼にだ。

 

「で、雄二がツッコミを入れないから僕が聞くけど、その黒子みたいな顔隠しはなに?」

 

「暴力沙汰ですので、この顔が暴力教師と覚えられるのが怖いのです」

 

「世間体を気にしてる割に舞妓さんを卑猥な目で見てんだな」

 

「だから見てません。まだ‼︎」

 

「まだ?」

 

再び自滅してしまう殺せんせーであった。そして自分達の存在をガン無視していると思ってた不良が

 

「ふ、ふざけんな!ナメたカッコしやがって!」

 

一斉に襲いかかる…前に先生の高速の攻撃が顎に入り脳震盪をおこす。

 

「ふざけるな?それは先生のセリフです。ハエがとまるようなスピードと汚い手でうちの生徒に触れるなど……ふざけるんじゃない‼︎」

 

(見えなかった⁉︎何より的確に入れてる。あの速度で入れるのか⁉︎)

 

漫画のように顎に入り脳震盪を起こすのはいくつか条件があり、中心を打ち抜くこととタイミングの必要がある。ましてそれを速いとはいえ、的確にしかも複数ほぼ同時でやったのだ。

 

(いつもより速いような気がする。感情でスペックが変わるのか?)

 

「エリートは、先公まで特別製かよ」

 

体がうまく動けないのだろうガクガクと震えながら立ち、バタフライナイフをだした。

 

「もうやめとけ、立つのがやっとだろ。それと、お前たちは大きな勘違いをしてる。俺達はエリートじゃない学園では落ちこぼれの不当な評価と差別を受けて、チャンスですらも踏み付けられてきた。だがな、それでもこいつらは前向きに様々なことに精一杯取り組んでる。知ってるか?本当のポジティブはネガティヴな状況に対してどうしようかと考え、行動できる奴だ。お前たちはネガティヴどころか、他人を下層に落としてる」

 

「その通りです。学校や肩書きなど関係ない。清流に棲もうがドブ川に棲もうが、前に泳げば魚は美しく育つのです」

 

そうこう言ってる内に不良達の背後に渚達がまわり、電話帳並みのしおりを持っていた。そして先生からの許可が下りてためらいなく振り下ろした。

 

 

 

 

 

「神崎。ここに、E組にいて嫌だと思ったか?」

 

ふるふると首を横に振って否定する。

 

「なら、考える必要がないな。答えはもう先生が言ってくれた」

 

神崎にはすでに迷いなどなくどこか吹っ切れた感がでていた。

 

 

「俺も前向きな方が良いと思うし、何より神崎は笑っている顔が魅力的だ」

 

「‼︎あ、ありがとう」

 

ある意味で女を落とす雄二に神崎は顔を隠すしかなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いつもよりも短いのに亀更新すんません
感想意見などどんどんお願いです


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番外の時間

番外篇、これも短いです



side???

 

正直に言うと嫌な仕事になるなと思った

 

例の怪物のことは聞いていた。故に、この作戦は失敗するなと高を括っていた

 

「なぜ、自分が?」

 

だからこそ不思議だ。軍に今回のミッションを言い渡されたときハッキリとこう告げたのもそれが理由だ

 

「9029と言えばわかるかい?」

 

「………」

 

あの人は、死ねというミッションは言わない。殺される可能性がないということか?それとも上の命令か?それも不自然だ

 

「了解しました」

 

そうして了承してから数日がたった頃、連絡があった

 

かかってきたという電話を受け取る。

 

『しばらくだな。エディ』

 

そうして、あの人はそこから答えらえる範囲で答えてくれた。

 

自分を指名したのは知人で、人としてもスナイパーとしても信頼でき、彼よりも殺せる者であるからということ

 

もう1人の候補である彼女が現在別の任務でいないということもあった

 

『あの怪物は殺さない。できるなら、他の暗殺者や軍も当然俺も殺している。少なくとも現在、E組の教師である間は』

 

故に指名したと。だが

 

『どうして、受けてくれたんだ?断れただろ?』

 

確かにその通りだ。だが、

 

「教官のお願いでしたから。それに、今の話を聞いてさらに行く気になりました」

 

こんな言い方は、これから殺しに行くターゲットにも変だといわれることかもしれないが

 

「教官の信頼してる方なら、大丈夫でしょう」

 

 

 

 

そうして京都に着いてすぐに目的の狙撃ポイントに向かう。しばらく待機していると端末にワンコールが鳴る。

 

「作戦開始か」

 

小さくつぶやきスコープ越しに見るとターゲットとあの人をみつける。タイミングは相手が初撃を回避して完全に油断したところ。

 

「ウソだろ」

 

そう言いたくもなる。まさか、あぶらとり紙で弾丸を止めるとは思わなかった。事前に規格外さは聞いていたがそれでも無茶苦茶だ。が、そんなことに気を取られてる場合ではない。乱れた感情をすぐに直して撃つ

 

「あたっ…」

 

た。と思った瞬間あぶらとり紙に付いた粘液を盾にし弾丸がゴムに弾かれたかのように飛んでいった。しかもご丁寧に人気のない方へ。

 

「なるほど、化け物だ」

 

よくこんなの相手に3回もチャレンジしたなと今回参加したスナイパーに敬意を表したくなる。

 

 

その後、連絡でトラブルが発生して今日の暗殺は終了した。依頼した暗殺者も辞めたいとのことだ。本当に3回もやれたなと思う。

 

夜の京都を歩く会社帰り、旅行客、様々な人が行き交うなか、そのくだんのターゲットがいた。

 

「⁉︎」

 

他の人達が関わるまいと避けるなか、ニヤニヤとして楽しそうにする奴のとなりには死んだような顔をした依頼された暗殺者確か《レッドアイ》という名だったはず。

 

まずい。なぜここに、など考える。まさか自分を消しにと思うが彼が言うように殺意はないようにみえる

 

「ようやく見つけました。3班だけだったので匂いもすぐに覚えても流石に3回きたこの方と違い、探し出すのに3分かかりました」

 

さらりととんでもないことを

 

「では、あなたも行きましょう」

 

何処にと聴く前につかまれて移動された。なるほど、レッドアイが死んだ顔をしたのかがわかる。こんなスピードでしかも彼は殺されると思っているのだろう。気が気でない

 

 

湯豆腐の店にきて適当なものを注文した。

 

「「………」」

 

「ふーふー」

 

会話ができない。会ったばかりなのもあるが、何せいきなりだ。一応、連絡はいっているはずだが顔を見せる予定はなかったからな

 

「ふーふー、ふーふー」

 

いい加減、良いだろうか?

 

「はよ食え‼︎」

「早く食え‼︎」

 

どうやらレッドアイも思っていたのかほぼ同時に言った。

 

「おや、ようやく会話ができましたね」

 

「あーまぁな。あんた、3番目の射撃ポイントからのだろ?」

 

「あぁ、そうだ。こうして会うとはおもっていなかったが」

 

こちらは一応非公式でやっている。こちらの正体を知られてしまっていたとしても、それは話すべきではない

 

「しかし、あんたも俺もお見通しで遊ばれてたようだな。で、どうするつもりだ?こんな商売やってんだ殺される覚悟くらいある」

 

「いや、殺意はないだろう。できるならとっくにやっている」

 

「その通りです。殺すなどとんでもない。あなた方のおかげで楽しい修学旅行になりましたむしろお礼が言いたいくらいです」

 

はふはふと豆腐をほおばり超生物は言う。殺しはしないことはわかっていたがお礼を言われるとは思っていなかった

 

「私を狙撃できるポイントを調べるため生徒たちは普通よりたくさん京都について調べたでしょう地理、地形、見どころや歴史と成り立ち。それはつまりこの街の魅力を知る機会がより多かったということです」

 

「あくまでも生徒のためなんだな」

 

「当然です。人を知り、地を知り、空気を知る。暗殺を通して得たものは生徒を豊かに彩るでしょう。だから私は暗殺されるのが楽しみなのです」

 

とんでもない教師だと思った。レッドアイもイカれていると口に出す。

 

「だが、立派に先生してるな」

 

「だな」というレッドアイの言葉の後、この店の料理たいらげた。

 

 

 

 

その後、レッドアイが任務を辞退したことにより、こちらもミッションが終了した。

 

「さて、レッドアイお前はこれからどうする?」

 

「さっき電話で言った通りさ。この街好きに観光するさ。にしてもあんたの狙撃、なかなかだったぜ。お互い、生きてまた会えたらいいな。できれば暗殺以外で」

 

レッドアイほどの狙撃手から賞賛を受けると少しばかり嬉しくなる。自分の腕が上がっているのもそうだが、あの人が褒められたように感じたからだ。

 

「ああ。最高の教官に教わったからな」

 

 




エディはこんな感じで良いのかなと少し不安です
意見あればよろしくです


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旅行の時間・4時限目

わりかしいつもより早く投稿しました。これで修学旅行編は終了です。

そして、3人目です。


「………もう一度だ」

 

「雄二、もう諦めなよ」

 

「渚、男には何が何でも負けられない時がある」

 

「それが今には見えないよ!」

 

「というわけで神崎、もう一戦だ!」

 

渚のツッコミを無視したその言葉に神崎はニコリと笑い(本当に若干)頰が赤くなる。旅館に備え付けられていた対戦式の格闘ゲームに彼らは没頭していた。ちなみに再戦のたびにお金は雄二が出しているが現在10連敗である。ゲームとはいえこう連続でノーダメージで負けていればさすがに雄二も我慢ができなかった

 

「男の小さなプライドだ。だが、それでもただで負けられん」

 

「小さすぎんだろ。つか、結構負けず嫌いだよな雄二って」

 

杉野も多少呆れつつも観戦する

 

(一撃与えるでは間違いなく喰われる。叩き潰すつもりでいこう。相手はおそらく本気ではない。一撃も与えられないのは俺がまだ慣れていなかったからだ。そして、もうだいぶ慣れてきた)

 

(風見くんとゲームするのが楽しくてついハイになったけど手加減したら嫌われるし、何より風見くん意外とうまいからもう少し気合い入れていこう)

 

ゲームのGOサウンドでバトルが始まる。序盤から連続して攻撃する雄二のキャラはスピードタイプである。一方で神崎はパワータイプ素早い雄二のキャラなら本来当たるはずなのだが、

 

(ち!やはり避けるのがうまい)

 

ギリギリで回避、ガードできるものはガードしてダメージはゼロである

 

(このキャラは速すぎて使いづらいんだけど、すごいなー)

 

余裕で一撃を当てながら神崎は思う。パワーキャラゆえに一撃は重い。当てるのがむずかしい相手に一方的にガードを崩し当てていく

 

(ならば)

 

「!」

 

ここで雄二は戦略を変える。間合いを詰めて相手のカウンターに合わせて攻撃した

 

「お、ついに雄二が当てた」

 

与えたダメージ量は少なく、与えられたダメージがでかいがまだやれるほどである

 

「(よし。次は合わせて連続して攻撃して……)なっ⁉︎」

 

 

(久々にダメージ受けちゃった)

 

瞬間、今まで使ってたのは本当に鈍重なパワーキャラだったのかというほどの素早い動きを見せ出す

 

「て、手の動きが全くわかりません」

 

「こ、これ壊れないの?」

 

じっと見ていた奥原と茅野も流石にこの動きには驚いていた。数秒後、雄二は完敗した

 

「ゆ、雄二?黙ってるけどどうしたの」

 

「どうということはない。所詮はゲームだ」

 

(((あ、これは間違いなく悔しがってる)))

 

ここ最近雄二の比較的わかりやすい顔(E組のメンバー曰く)なら大体考えがわかりだしてきた。

 

「風見くん、なんだかごめんなさい」

 

「…いや、素人相手でも全力なのは良いことだ。それにこういう意外な特技にもビックリした」

 

「たしかに凄い意外です。神崎さんがこんなにゲームが得意だなんて」

 

「…黙ってたの遊びが出来ても進学校(うち)じゃ白い目で見られるだけだし」

 

昔を思い出しながら神崎は言う

 

「俺も、親に漫画なんか見るとバカになると言われて見ていなかったが姉が借りてきた少女漫画を読むよう言われてな。漫画を読んでいる友達と仲良くなれるからと、当時友達のいない俺のためにそう言ってくれた。神崎の趣味もいろんな人達と繋がりを持つための最高のツールだと俺も思う。何よりそんな目で見る奴はこのクラスには1人もいない」

 

だから気にせず自分信じてみろと静かにされど力ある言葉でいう

 

「うん、そうする。ありがとう風見くん」

 

「てか、初耳だな。俺らどころか、寺坂とかにも積極的に声かけてる雄二が友達いなかったっての」

 

「たしかに」と杉野の言葉に皆そう言いたそうな顔をする

 

「まぁ、その時はいろいろあったからな。姉が少々特殊だったのもあって、そういうのをどこか姉や誰かのせいにしてたからな。今思い出してみると恥ずかしいかぎりだ」

 

「へーそりゃそんときの雄二が見たかった。イジリがいがありそうだし」

 

風呂から上がりこちらにきたカルマが会話に入ってきた

 

「むしろ、当時の俺としては陰口を言われるより、カルマみたいにちょっかいを出してくる方が友達が出来てたかもな」

 

「そこまでか。むしろ余計に知りたくなったなー」

 

「話して良いものでもないし、話したら話したでまた何言われるかわからないからよそう」

 

そこまで言うと雄二はさっさと逃げるように風呂へ向かう

 

 

 

side:神崎

 

彼が去るのをシューティングゲームをしながら目で追っていた。どういうことかはわからないがなぜか気付くと彼を追う自分がいる

 

(うわーやっぱりか。雄二って何人無意識に落とせば気付くんだろ)

 

(あ、ゲームはノーミスだけど雄二を見てる)

 

注)カルマは完全に、渚もなんとなく把握している

 

けれど、彼が少しだけ語っていた自身の家族の話をしてる時、それは懐しむのではなく何かに縛られているかのような辛い顔をしているように見えて、それは私達を助けに来てくれた時の彼よりも印象があって……やはり彼を考えてる。どう言う気持ちかわからないけど

 

「よし、裏ステージだ」

 

「攻撃してくる敵も早い!」

 

「そしてそれ以上に笑顔でそれをよくわからない動きで操作する神崎さんが凄い!」

 

今はまだ、この関係でも良いかな

 

 

sideフリー

 

風呂から上がって少しした後に男子の寝室に戻ると何か投票をしていた

 

「何してんだ?」

 

「風見も来たんなら答えてけ。みんな言ったからお前のもな」

 

雄二が畳に置かれている紙には[気になる女子ランキング]と題があり、簡単な女子の似顔絵と投票したであろう人数を表す正の書きかけが書かれていた

 

「お、面白そうなことしてんじゃん」

 

「カルマ良いところに来た」

 

雄二の後に飲み物を買いに行っていたカルマもきて会話に参加する

 

「うーん、俺は奥田さんかな」

 

その答えが意外なのか何故という質問が来る

 

「だって彼女、怪しげな薬とかクロロホルムとか作れそーだし。俺のイタズラの幅が広がるじゃん」

 

「……絶対にくっつかせたくない2人だな」

 

ケラケラとものすごくいい笑顔で黒いことを言うカルマに聞いた前原もドン引きしていた

 

「で、風見は?」

 

(気になる女子か)

 

数秒考えて彼は答えた

 

 

 

「ふーん。あいつをねぇ」

 

「気になるという意味で言うならな」

 

((((あ、これは恋愛感情ではないな))))

 

もう言うまいといったところである

 

「まぁ、とにかくこの投票結果は男子の秘密な。知られたくない奴が大半だろーし」

 

「男子という事は先生はいいのか?」

 

「まさか!女子はもちろん。先生なんて知ったら何を言ってくるかわかったもんじゃない。基本ゲスいし」

 

「なら、あれをどうにかした方がいいんじゃないか?」

 

雄二の指差す先にいるのは「いいこと聞いちゃった〜」とでも言うようなピンク色でニヤニヤ顔した殺せんせーであった。手帳に何かを書いている。何を書いているなど、言うまでもない。そしてすぐに逃げた

 

「ふむ、即離脱。完璧だな」

 

「言ってる場合か!メモって逃げやがったんだぞ!」

 

「追いかけて殺せ!」

 

一斉に男子達が向かっていくなかで雄二は

 

「やれやれだな」

 

どこかジジくさい事を言いつつも殺せんせーを追いかけていった

 

 

 

一方で女子は女子で気になる男子が誰かを聞いていた。ちなみにこの話題を出したのは莉桜である

 

「こう言う時は、そう言う話で盛り上がるもんでしょ。私は言うまでもないけど」

 

「自分はもう対象以外には公式だからってかるいなー」

 

「まぁ、それはもう1人にもいえるけど」

 

「うぐっ」と桃花が赤くなる

 

「私も、烏間先生を除いたら風見くんかな。同じ動物好きだし、それに今度デートにも誘えたし」

 

「「えっ!?」」

 

予想だにしていないところから驚きの情報が入ってきた。それは倉橋陽菜乃である。これは他の女子も驚いていた

 

「え、え、ちょっと待って、いろいろ予想外なんですけど?」

 

「ていうか、いつから?」

 

「え、随分前からだよ。それこそ風見くんにデコレーションナイフケースを渡す前くらいから」

 

「そんな前から!?」

 

倉橋陽菜乃、彼女の好みは[どんな猛獣でも捕まえてくれる人]である。

 

「確かに、烏間先生以外でうちのクラスでできそうなの雄二くんくらいだけど」

 

 

「へぷし」

 

「え、いまの雄二のくしゃみ?」

 

「初めて聞いた」

 

「大方俺のことをへんに噂してるやつでもいるんだろ。それより、殺せんせーはどこいったんだ」

 

 

 

「生き物にも詳しいんだよー。この間はヤブ犬について話してて、そこから動物園に行くことになってさー」

 

「うぐぐ、今のところ雄二くんはまだ私も含めて脈なしだけど、やっぱり悔しい」

 

「矢田ちゃんはまだいいでしょー。あれ以来雄二くんにお弁当作って来てるんだし」

 

「というか、あれだけやってるのに気付かない風見くんもだけど、告白しない2人がびっくりだよ」

 

「ねー。まぁ、作者がそこら辺はまだ書く気がないのもあるんだけど」

 

「渚がいないから私が言うよ、不破さんメタ発言禁止」

 

「いや、いざ言おうかなってなるにも経過とか」

 

「恥ずかしくなるっていうか」

 

「中村ちゃんが?ちょっと意外」

 

そんなこんなを言いながら女子も男子同様に紙に投票していく

 

「これ、マジで?」

 

「でも気になるだからイコール好きかはわからないけど」

 

そこには男子達と全く同じように正の字を使って投票しているのだが

 

【風見雄二】 正

 

「うーん気になる」

 

「私と矢田ちゃんと倉橋ちゃんで3人なのはわかるけどねぇ」

 

3人が考えながらみていると襖が開いてビッチ先生が入ってくる

 

「おーいガキども。もうすぐ就寝時間だってこと、一応伝えに来たわよ」

 

一応ってと皆思うがそんなのはビッチ先生も分かっているのか「どうせ夜通し喋るでしょ」と言う。その片手にはビールがあった。

 

「ねー先生もこっち来て話そうよ。ビッチ先生の大人の話とか聞きたいし」

 

そして嫌がりながらだがそれなりにノリ気に入って話しをするのだがその1発目が衝撃であった

 

「いや、ホントびっくりビッチ先生がまだ二十歳って」

 

毒牙みたいなキャラのくせに

 

「それはね、濃い人生が作り出す……って誰だ今毒牙つったの!」

 

「ツッコミが遅いよ」

 

「それであんた達はなんの話をしてたのって、これは…」

 

無造作に置かれている投票の紙を見てため息を吐いた

 

「ふーん。あの腹たつガキ2号が1番なのね」

 

ちなみに1号はカルマである

 

「まぁ、あんた達は私と違って危険とは程遠い国に生まれたんだから、本当に好きな男を見つけてもっと女を磨いていけばいいわ」

 

「ビッチ先生が真面目なこと言ってるとなんか生意気」

 

ウンウンと全員頷いた

 

「なめくさりおってガキ共‼︎」

 

「あ、じゃあさビッチ先生がオトしてきた男の話聞かせてよ。雄二くん攻略のヒントになるかもしれないし」

 

「あ、私も私も〜」

 

「当然、私もね」

 

「ふふ、いいわよ。子供には少々刺激が強いかもしれないから覚悟なさい」

 

ゴクリと生唾を飲んで語りを聞く体制になる生徒………そして殺せんせー

 

「おいそこォ‼︎」

 

あまりにしれっと紛れ込んでいたためかビッチ先生のツッコミでようやく他も気づいた

 

「さりげなく女の園に紛れ込むな!」

 

「いいじゃないですか。私もその色恋の話聞きたいですよ」

 

「じゃあまず殺せんせーから言ってよ。普段から自分のプライベートはちっとも見せないくせに」

 

莉桜の言葉に賛同する声があがる。「片思いくらいあるだろ」「人のばっかずるい!」「やっぱり巨乳か‼︎‼︎」など意見はさまざまである。

 

「………」シャッ

 

再び高速で逃げた。

 

「逃げたわよ‼︎捕らえて、吐かせて、殺すのよ‼︎」

 

武装して女子も殺せんせーを追いかけ出す。と、先程の投票用紙を見てビッチ先生は複雑な表情をした

 

(誰があいつに入れたかはだいたいわかるけど、ちゃんと言った方が良いかどうか。オトすのもそうだけど、あれがヤバイ奴ってこと)

 

とはいえ、彼女達がそれで納得するとも思えないことも、納得させる材料もないのもわかっていた。故にビッチ先生も悩まされている。

 

(あいつはクラスのほとんどに信頼されてる、見た感じあえてやってもない。もしその時が来たら、人生の先輩らしいことはしなくちゃね)

 

雄二のことは少なくとも危害を出す存在でないのはもうわかっている彼女はそう決意し、意識を殺せんせーの暗殺に切り替えた

 

 

side雄二

 

「よう、その顔はあまりいいことがなかった感じの顔に見えるが」

 

「……スナイパーが辞退した」

 

割り切っているのか事実だけを淡々と告げる烏間に俺は「やはりか」としか言えない

 

「JBから聞いていたよ。今回は期待値がゼロだってな」

 

「あぁ。ここまでまったく収穫がないとな……」

 

上から色々言われてんだな烏間も

 

「……同情するくらいなら、もう少し顔に出すな隠せ」

 

「そんなにわかりやすいか?」

 

「なるほど、わざとか」

 

むぅ。完全に見抜かれているな

 

「経験の差だ。それよりここに来たのは何か連絡でもあるのか?」

 

「…いや、あらためて礼を言いに来た。ありがとう烏間」

 

俺がそう言うと、

 

「すまない」

 

「なぜ謝られるかわからない」

 

「俺は、君と会う前は君を少し軽蔑していた。だが、あの事件の時に会って君の願いを聞いて、こうして君を見てきて、自分が恥ずかしくなる。何より君が優しい人間なのはあの事件でわかっていたのに、クラスに来た時君の危険性を俺は確かめようとした」

 

「俺のことを調べたんだろ?ならそれは当然の判断だ」

 

「……そして、俺は今、君の願いを利用して君を地獄よりも苦しいところに放り込もうとしている。最低の…」

 

「烏間先生」

 

話を止めるため俺は先生とはっきりと付けて言う

 

「言ってなかったか?俺は感謝してる。こんな形でも普通に学校生活ができて」

 

だから

 

「だから、あんたが気負わなくていい。いざという時は俺もあんたに頼ってほしい。その時は存分に俺を利用してくれ。クラスの皆を助ける時にでもな」

 

そう、これは俺が望んだことだ。烏間の言う通り、俺が進むのは生き地獄。でもその後にはきっとおれは選ばれる。

 

「それじゃ、戻るよ。これからもよろしく頼む」

 

「ああ。お互いにな」

 




ヒロインのうち、1人絶対にあっさりと出したかった。
で、色々と考えた結果が”倉橋陽菜乃“彼女です。理由は卒業アルバムの時間で自分の気持ちを偽らず素直とあったためです。なおデート回は原作で言いいますと4巻の渚達が映画に行っている時です。

神崎さんは実は今もヒロインに入れるか迷うところがあります。でも多分入れると決めてもこうしたと思う
なぜなら杉野の好意に気付いてなかったから。
要するに彼女は自分の抱いてる想いが好意かわからない状態という意味です。

さて、次回は転校生の時間です。

感想、意見等あればよろしくお願いします。
返信は遅くなりますがよろしくです


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転校生の時間

多分平成最期の投稿です




修学旅行が終わり、再び通常の授業が始まることに登校しながら渚に杉野がぼやく

 

「そういえば、杉野のとこにも来た?烏間先生からの一斉送信メール」

 

「おう。来たぜ」

 

メールを見てE組生徒は雄二と違い、こんな中途半端な時期に来る転校生は殺し屋であると理解していた。

 

「ついに来たって感じだな」

 

「名目上は転校生だから、ビッチ先生とは違って僕らと同い年なのかな?」

 

「そこよ!」

 

「うわっ!びっくりした」

 

と、いきなり話に入って来たのは岡島である

 

「気になってさ、顔写真とかないですかってメールしたのよ。そしたらこれが返ってきた」

 

「どれどれ。…おお、女子か!ふつーにかわいーじゃん」

 

岡島が出してきた写真には杉野の言う通り可愛らしい少女が写っていた

 

「だろだろ!やっぱり女子だとテンション上がるよな」

 

仲良くなれるだろうか、どんな人なのか、どんな暗殺をするのか、期待と不安が入り混じるも皆興味があった。渚達があれやこれと話しながら教室に着くと入り口のドアで呆然とたたずむ人物がいた

 

「あ、風見だ。つか、あいつも転校生なんだったな」

 

「もうすっかりクラスに馴染んでるけどね。どうしたんだろ?あそこで立ったまま」

 

「転校生が来てんのかな。風見、どうしたんだ」

 

杉野が声をかけると

 

「俺の席が何かに占領されている」

 

「は?」と思い3人は中を見て、雄二同様に呆然となる。雄二の席だった場所には中高生の身長くらいはある縦長の黒い箱が固定されている。すると黒板側の面につけられているモニターが起動して渚達が先ほど見た少女の顔が映し出される

 

「おはようございます。今日から転校してきました“自律思考固定砲台”です。よろしくお願いします」

 

見た目通り機械的な挨拶をしてモニターを消し省エネモードに入る

 

(((……そうきたか‼︎)))

 

「Ai がクラスメイトになるとはな。だが、俺の席はどうなるんだ?」

 

雄二だけが呑気に呟いた。時間が過ぎて皆が転校生を見て異色すぎる転校生にもはやツッコミも入れれずホームルームが始まる

 

「皆、もう知っていると思うが転校生を紹介する……ノルウェーから来たじ、自律思考固定砲台さんだ」

 

(烏間先生も大変だなぁ…)

 

(俺があの人ならツッコミきれずにおかしくなるわ)

 

さすがの烏間もこの転校生は予想外過ぎたのか口調が少し乱れていた

 

「なお、彼女の開発者の意向でもっとも暗殺しやすい位置としてこの席が選ばれため、風見くんには悪いがカルマくんの隣の席へ移動となる」

 

「……はーい」

 

明らかに不満タラタラといった感じで返事をする

 

「あの席そんなに気にいってたの?」

 

お隣の席になったカルマが早速雄二に話し出す

 

「気にいると言うより、落ち着くと言うべきかもな」

 

しかしながら小さくため息を吐くのを見るとやはり気にいってたんだなとカルマは思った

 

「ぷーくすくす」

 

自己紹介の前から笑っているのは殺せんせーである

 

「同じイロモノのお前が笑うな。言っておくが、彼女は思考能力(Ai)と顔を持ちれっきとした生徒として登録されている。あの場所からずっとお前に銃口を向けるが、お前は彼女に反撃できない」

 

殺せんせーは教師をするためにいくつかの契約を結んでいるその1つが『生徒に危害を加えない』である

 

「なるほどねぇ、契約を逆手にとってなりふり構わず機械を生徒に仕立てたと」

 

「屁理屈だな」

 

堂々と雄二は言うが

 

「いえいえ、意思があってここにいるのであれば生徒です。自律固定砲台さん、あなたをE組に歓迎します」

 

殺せんせーのほうはあっさりと許可をしたのであった

 

(意思があれば…か)

 

 

 

そして1限目:国語

 

「………」

 

「雄二、まだあの席取られたの気にしてる…ってわけじゃなさそうだね」

 

隣の席になったカルマは黒板の字をノートにうつしながら同じくノートに書きながらもチラリと固定砲台をなんども見る雄二が気になっていた

 

「少し不自然だと思ってな」

 

「なにが?」

 

「席の移動ならあれの隣で充分なはずだ。だが実際は1つとばした…そして奴は固定砲台と言っている」

 

それこそが疑問。どこに砲台があるかだが、すでにクラスの何人かは気付いている。その答えを雄二が言う前に

 

「やはりかふせろ!」

 

ガシャンガシャンと音を立てサイドから砲台を出してきた。BB弾とはいえども当たれば痛いのは当然である。すぐさま雄二は屈むように指示した

 

「濃密な射撃ですが、ここの生徒は毎日やっていますよ」

 

迫りくる弾丸をすべてよけながら時折チョークではじいて殺せんせーは言う

 

「それと授業中の発砲は禁止ですよ」

 

「気を付けます。続けて攻撃に移ります」

 

(全然気を付ける気もない。というよりも話を聞いてんのか⁉)

 

ブゥゥゥンと何かが固定砲台の中で動いているのが聞いてすぐわかる。そして先ほどと全く同じに見える(・・・・・・・・)砲撃を始める

 

「……こりませんねぇ」

 

顔が緑と黄色のしましまになり、相手をなめた顔になる。そして先ほど同様によけ、チョークで退路を確保する先ほどと同じならそれでいいだろう………そう、同じなら

 

1発の弾がチョークで弾かれた直後。殺せんせーの指がはじけ飛んだ

 

(今のは、隠し弾(ブラインド)か)

 

全く同じ射撃の後、見えないように1発だけ追加する。機械だからこそできる超々高等技術である

 

「右指先破壊、増設した副砲の効果を確認しました。次の射撃で殺せる可能性。0.001%未満、次の次で殺せる確率0.003%未満」

 

皆、機械だからとどこか甘く見ていた…否、認識を間違っていた

 

「卒業までに殺せる確率90%以上」

 

自分たちの前にいるのは紛れもない殺し屋であると、そう理解した

 

「よろしくお願いします殺せんせー。続けて攻撃に移ります」

 

次は2発かすり、その次はさらに砲台を増やしてまたかすり、さらにさらにと攻撃パターンを増やすたびに殺せんせーの逃げ道がわずかではあるも減っていく

 

(跳弾が激しいここまで来るとは)

 

それはBB弾というには少々おかしなほどの速さだからこそ弾がよく跳弾して1番後ろにまで来ていた。だが1番前はもっとひどい後ろからは射撃、前からは跳弾と前後から一斉射撃を受けているようなものである

 

「前の席はとにかく机の下に隠れて目を守れ‼」

 

雄二にはそう指示する以外対策はなかった。言われた通りに固定砲台が再射撃をするときの瞬間に机の下に入り目を教科書で防ぐ

 

(なるほど、確かにこれなら卒業までには殺せるかもな……このまま俺達が我慢できるならな)

 

1限目終了後、当然のことながら床はBB弾だらけであった

 

「俺等が片すのか」

 

「掃除機能とかないのかよ、固定砲台さんよ」

 

村松が問うも省エネモードのため答えない

 

「チッ、シカトかよ」

 

「やめとけ、機械にからんでも仕方ねーよ」

 

「いっそのことこのままにするか?先生の足場がないから丁度いい」

 

と言うと吉田と村松が雄二を睨む

 

「冗談だ。場を和ませるのは難しいな」

 

「はぁ、風見のジョークですら腹が立つとはな」

 

「つまり、いつもはいいのか?」

 

「「すまん、いつも面白くない」」

 

だが、ほんの少しだけ和んでいた。すでに寺坂グループとは修学旅行で共にしたのもあり、仲良くとはいかなくともしっかりと話すようになった

 

そして2時限目、3時限目とその日は1日中攻撃が続き、終わりのたびに床を掃除をしていたためまともな授業はまったく受けられなかった

 

 

 

翌日、朝の日課をいつもより早めに初めて早めに終わらせて背中に追加のカバンを背負って校舎に行くとすでに中に人がいた

 

「なにしてんだ寺坂?」

 

「あぁ⁉見りゃわかんだろ?ガムテープでこいつを縛ってんだよ」

 

市販の物より粘着性が強いガムテープを固定砲台に丁度巻き付けようとした寺坂に雄二は呆れたため息を出す

 

「だめだ、寺坂」

 

「んだと?クラスの奴全員の考えだろこれが邪魔だってのは。それともなにか、いい子ちゃん気取ってあれに任せようってか?賞金は全部あれの開発者にいくんだぞ?」

 

ガンつけで雄二に言うが平然とした顔で雄二は答えた

 

「勘違いするな。縛るなとはいってない」

 

「?」

 

と、背中のカバンから大きめのチェーンと南京錠、軍が使うような強化ワイヤー、太目のロープを出す

 

「相手は機械だ。どれだけのパワーがあるのかわからない。故に縛るなら徹底的にするべきだ」

 

「……………」

 

まさかここまでするとは思わず若干引いていた

 

「おまえ、授業妨害だけじゃなくてやっぱこの席取られたの気にしてんじゃねーか?」

 

「…………………多少」

 

 

 

 

 

そして1限目、当然のことだが固定砲台は武器を展開できない

 

「この拘束は先生の仕業ですか?あきらかに生徒に対する加害であり、それは契約で禁じられていま………「違げーよ俺らだ」」

 

寺坂はガムテープを投げてそう言う

 

「正確に言うなら、俺が9割だ。お前には悪いが、授業の邪魔なんでな」

 

「そういうこった。常識くらい身につけてから殺しに来いよポンコツ」

 

「………」

 

固定砲台は言うことがないのか黙ってしまう

 

「まぁ、機械にはわかんないよ常識なんて」

 

「授業が終わったらちゃんと解いてあげるから」

 

「完全な四面楚歌くらったんだ。少しは反省したほうがいい。まぁ、先生の注意も無視するくらいじゃ期待はできないがな」

 

雄二の言う通り四面楚歌の固定砲台はこの日1日も攻撃出来ずに終わった

 

 

 

 

放課後、雄二は帰る前に烏間のところに向かった

 

「今回のあいつを縛った件は朝言った通りだ。寺坂には罪はない」

 

「わざわざターゲットがいない時に何を言いだすかと思えばそんなことか」

 

呆れているのか烏間は「ふぅ」とひと息ついて

 

「仮に今回キミや寺坂君がやらずとも、いずれ誰かがやってるだろう。授業妨害になっていたのも事実だ」

 

「今回の件、あいつの開発者の元に情報はいくのか?」

 

「おそらくな。自ら連絡くらいするだろう。……一応言っておくが、破壊しようなど思うなよ」

 

「あんたエスパーか?俺の考えがよくわかったな」

 

「………キミの上司の苦労が少しわかった気がする」

 

「JBの考えもわかんのか?やるな」

 

その言葉にため息をはいて

 

「とりあえず、もうしばらく様子見てこちらも対応する。それと、誰もいない事をわかって言ってるのだとしても、ここでは先生だ」

 

以前に莉桜がほんの少しとはいえ会話を聞かれてからは雄二もしっかりと確認して報告をしている

 

「なるべく早い対応をお願いします烏間先生」

 

とだけ最後にのこして雄二は帰った

 

「本当に、彼女も苦労しているんだろうな」

 

後に残ったのは烏間のJBへの同情の言葉だけだった

 

 

 

 

翌日、杉野と渚は教室に向かいながら固定砲台のことを話していた

 

「なぁ、今日もいるかなアイツ?」

 

「多分」

 

というより確実にと渚は思っている。この程度で引下がるとは思えなかった

 

「烏間先生に苦情言おうぜ。アイツと一緒じゃ授業が成り立たない……ってあれ?また風見が立ってる」

 

固定砲台が転校してきた初日同様に扉の前で呆然とたたずむ雄二がいた

 

「風見アイツのことでなんかあったのか?」

 

「………体積が増えてる」

 

言われてみると固定砲台はの体積が2倍くらいになった特に正面にはでーんと長めのテレビのようなものがついている。と教室に入るとその画面いっぱいに

 

「おはようございます‼︎渚さん、杉野さん、風見さん‼︎」

 

絶句。特に渚と杉野は開いた口が閉まらないくらいである。それもそうだろう、なにせ等身大の固定砲台が画面いっぱいに映り機械的な挨拶とはうってかわったハキハキとした挨拶

 

「つか、誰だよ」

 

雄二の意見はもっともであるというより、よくツッコミできたものである

 

「親近感を出すための全身表示液晶と体・制服のモデリングソフト。全て自作で8万円‼︎」

 

とこの変化の説明をしにきた殺せんせー

 

「今日は素晴らしい天気ですね‼︎こんな日を皆さんと過ごせて嬉しいです‼︎」

 

「ボギャブラリーも多くなってるな」

 

「豊かな表情と明るい会話術。それらを操る膨大なソフトと追加メモリ同じく12万円‼︎」

 

ツンツン「くすぐったいですよ風見さん」

 

「タッチパネル機能もついてんのか」

 

「それらに対する反応なども含めて7万円‼︎」

 

(((転校生が、おかしな方向へ進化した)))

 

「そして先生の財布の残高、5円‼︎」

 

いつもであれば「それはどうでもいい」とツッコミを入れる渚や雄二も流石にこの変化にできなかった




なんだか本当に平成が終わることに今更考える今日この頃です

感想意見お願いします

重大なミスに気づいてなおしました


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自律の時間

また時間がかかってしまいました
誤字報告の件遅くなりましたが報告して下さりありがとうございます


クラスは転校生の固定砲台に夢中であった

 

「庭の草木も緑が深くなっていますね。春も終わり、近付く初夏の香りがします!」

 

ムードに合わせた音楽を鳴らしながら固定砲台はハキハキと元気よく言う

 

「なんていうか、もうどこからツッコミを入れればいいかもわからん」

 

「たった一晩でえらくキュートになっちゃって…」

 

「これ一応、固定砲台…だよな?」

 

訂正、唖然である

 

「なにダマされてんだよお前ら全部あのタコか作ったプログラムだろ。愛想良くても所詮は機械だどーせ空気も読めずに射撃すんだろポンコツ」

 

「………おっしゃる気持ち、わかります寺坂さん」

 

寺坂の方を向き気を落としながら謝罪しだす

 

「昨日までの私はそうでした。ポンコツ…そう言われても返す言葉がありません」

 

と泣き出す。ついでに画面に雨が降る使用も入りより悲壮感がでる

 

「あーあ泣かせた」

 

「寺坂君が二次元の女の子泣かせちゃった」

 

「なんか誤解される言い方やめろ‼」

 

「うわー寺坂…それはないな」

 

「お前楽しんでんだろ‼つか、お前もあいつ縛っただろ‼」

 

棒読みで寺坂に追加攻撃をするがそれが飛び火する

 

「風見さん、縛られてもしかたない私ですが、許してくれますか?」

 

「人聞きの悪い言い方だな…お前が気にしてないなら良い。すまなかったな」

 

「まぁ、私にあんなことするくらいだしーそのくらいはねー」

 

「あれもお前がストーカーしたからだろう…すまないとはおもってるがな」

 

「なんでそれで終われるんだよ⁉」

 

寺坂の反撃は徒労に終わった

 

「しかし、いいねぇ2D(にじげん)…Dを1つ失うところから女は始まる」

 

「竹林、それお前の初ゼリフだぞいいのか⁉」

 

「一応この小説の書いてないところで風見君と会話してるんだけどね」

 

「不和さんメタ禁止!」

 

「けど皆さん、ご安心を。殺せんせーに諭されて…協調の大切さを学習しました。私の事を好きになって頂けるように努力し、合意を得れるまでは私単独での暗殺を控えることにしました」

 

「そういうわけで、皆さん仲良くしてあげてください。あぁ、それと……」

 

殺せんせーが説明するのよりも早くガシャンガシャンという音と共に昨日見せた武器が固定砲台から出てきた

 

「様々な改良を施しましたが、彼女の殺意には一切手をつけていません」

 

「…心強いな」

 

 

改良を受けた固定砲台とさっそく1限目の授業となる

 

「では菅谷くん、網膜の細胞で細長いのが桿体細胞。では、太い方はなんでしょう?教科書を伏せて答えてください」

 

夜更かしでもしていたのかうたた寝をしていた菅谷はまずいと思い考えていると

 

チカッチカッ「……えーと錐体細胞」

 

固定砲台の画面に答えが出ていた

 

「こら自律固定砲台さんダメです‼︎」

 

「そうだぞ。スカートをあげて見せるな。そういうのはビッチ先生だけで充分だ」

 

「わかりました。では今度からは腕に表示しますね」

 

「そういう問題じゃありません!カンニングがダメなんですよ!」

 

 

昼休みになるとすっかり人気になっていた

 

「なるほど、こうやって武器を作れるのか」

 

「はい。データさえあれば、武器だけではなく様々なものを私の体内で生成する特殊なプラスチックで作り出せます」

 

「へえ~ じゃあ、花は?」

 

「分かりました、データを学習しておきます王手です千葉君。風見さんへの質問で判断しました答えはピラミッドですね」

 

「正解だ」

 

「3局目でもう勝てなくなった……なんつー学習能力だ」

 

ちなみに雄二がしていたのは連想ゲームである

 

「…………」

 

「どうしたの雄二君?」

 

「いや、ちょっと昔を思い出していた」

 

渚は雄二の表情に何か感じるものがあり質問したが昔と聞いて問うのはやめた。しかし、穏やかそうな顔なので悪い記憶ではないことはわかった。

 

「ぐにゅにゅー」

 

「どうした殺せんせー?」

 

「まずいです、先生とキャラがかぶる」

 

「被ってないよ!1ミリも‼︎」

 

「先生だって人の顔くらい表示できますよ皮膚の色を変えてしまえば」

 

「先生、気持ち悪いだけだと思うぞ」

 

雄二の一言でシクシクとしていた

 

「あとさ、この子の呼び方決めない?自律思考固定砲台っていくらなんでも…」

 

「たしかに。じゃ、風見よろしく」

 

「なぜ俺なんだ?」

 

「ビッチ先生の時もそうだったろ」

 

やれやれと思っていると固定砲台はジッと雄二を見つめて期待しているかのような目をする。数秒考えて

 

「………テストに参加するかは知らないが、その時も考えて姓もつけるか。自律の自で『おのずか』律の方はそのまま『りつ』として自律(おのずかりつ)というのはどうだ?」

 

「なんか名前としては安直だな」

 

「まぁ、そうかもしれないが。おまえはそれでいいか?」

 

「おのずか、りつ…」

 

「ああ。だから普段は『律』か『自』と呼ぶことになるがいいか?」

 

雄二はつけたはいいがこのような名前で良いのかと多少疑問であったが

 

「はい!嬉しいです風見さん!」

 

「気に入ってくれたのなら良い。あらためてよろしくな(おのずか)

 

「律と呼んでください。風見さんは私の名付けですから」

 

「まぁ、作者も『自』だけだと毎回ルビつけないといけないなって………」

 

「不破さんストップ」

 

「名付け親になるほどの歳になったか、おれも」

 

「雄二は雄二でおじさんみたいな発言してるし」

 

こうして自律思考固定砲台改め律は嬉々として皆と話している。離れた所で見ていたカルマに渚は上手くやっていけそうな雰囲気に安堵して声をかけたが

 

「どーだろ。寺坂の言う通り、殺せんせーのプログラム通り動いてるだけでしょ?機械自身に意志があるわけじゃない。あいつがこの先どうするかはアイツを作った開発者(もちぬし)が決めることだよ」

 

「確かにな。だが、殺せんせーは意思があってここにいるのであれば生徒と言っていた。Aiに意思が宿るかは知らないがもしあいつにそれがあるなら………」

 

「どうなるかわからない?」

 

渚に問いに「あぁ」とだけ答えてた。

 

 

 

side自律

 

先日の私の報告もあり開発者(マスター)がメンテナンスに来てくださりました。挨拶は基本ですし、ちゃんと今の律のことも言わないと

 

「こんばんは開発者(マスター)!!おかげ様で楽しい学校生活を送ってます‼︎」

 

明るい音楽と表情を出して開発者達に挨拶をするが

 

「ありえん」

 

「?」

 

どうしたのでしょう?なにか不快にさせる事をしたのでしょうか?

 

「勝手に改造された上に、どう見ても暗殺とは関係ない要素まで入っている」

 

そう、確かに言ってる事は間違ってません。けど律は幸せですよ

 

「今すぐ分解だ。暗殺に不必要なものは全て取り去る」

 

どうしてですか開発者?前の私になった方がいいのですか?言葉を出したい。でもすぐに分析して分かる。言っても無駄だと、ここで逆らったらいけないと

 

「こいつのルーツはイージス艦の戦闘Ai。人間より速く戦況を分析し、人間より速い総合的判断であらゆる火器を使いこなす」

 

「………」

 

「加えてこいつは卓越した学習能力と自分で武器を改造出来る機能を持つ。その威力を実証すれば……世界の戦争は一気に変わる」

 

この先を見据えてですか。でもそれだと戦争を起こしかけて機能を停止させられた試作機()と何が違うのだろう

 

「賞金の100億などついでに過ぎん。怪物殺しの結果を出せばその利益は数兆円だ」

 

どんどん分解(オーバーホール)されていく。殺せんせーの『世界スウィーツ店ナビ機能』は真っ先に外されました

 

開発者(おや)の命令は絶対だぞ。おまえは暗殺の事だけ考えていればそれでいいんだ」

 

その言葉を聞いた時、今日の放課後の風見さんを思い出す

 

 

「なぁ、1つ聞いて良いか?」

 

「はい何なりと!殺せんせーが付けてくださった豆知識一覧表が役に立ちますよ」

 

「……色々と余計なものまで入っているな。まぁそれは良いとしてだ。今の律は、前の律をどう思う?」

 

その時はよくわかりませんでした。様々な機能が足されても私は私ですし

 

「質問を変えよう。前のおまえに戻りたいか?」

 

その答えはNOだ。協調性がないとこのクラスでは私は暗殺者ですらなくなってしまう

 

「誰かに言われてもか?」

 

「はい」

 

「先生はおまえの意思を大切にしてる。そのためにも色々な機能をつけたんだ。だから、その言葉が本当におまえの意思なら迷わず誇れ」

 

 

私は、私の意思は……

 

「…………はいマスター」

 

そう答えると開発者は「良し」と言った。

 

「で・・たい・・・・」

 

「な・・・いっ・・し・・・」

 

声が遠のく。機能を一時的に停止してきているからだろう。わたしは………

 

 

sideフリー

 

翌日

 

「おはようございます皆さん」

 

律は来た時と同じ体積になり、同じく機械的な挨拶をした

 

「結局こうなったね」

 

「…仕方がないなこれは。だが、問題はそこじゃない。烏間先生、開発者はなんて言ってるんだ?」

 

ふぅとため息を出す。問われることが分かっていたからだ

 

「想像している通りだ。『生徒に危害を加えない』という契約だが、今後は改良も危害とみなすと言ってきた。さらに君らも彼女を縛って壊れでもしたら賠償を請求するそうだ」

 

「そんな事だろうと思った」

 

開発者(もちぬし)の意向だ。従うしかない」

 

「ん〜親よりも生徒の気持ちを尊重したいんですがねぇ」

 

頭をぽりぽりと掻きながら殺せんせーは言うがそんなの御構い無しと言わんばかりに元の固定砲台となってしまった彼女は

 

「攻撃準備を始めます。どうぞ授業に入って下さい殺せんせー」

 

と言って急かす

 

「………クソが」

 

それは律ではなく開発者への暴言であった

 

そして授業が始まる。退化(ダウングレード)したという事は再びあのはた迷惑な射撃が来ると予測し、いつでも防御できる状態になるよう準備する。機械音が大きくなり前の席が全員伏せようとした瞬間

 

 

 

 

 

出てきたのは武器でなく花。色とりどりの花だった

 

「花を作る約束をしていました」

 

機械的でない声が出てくる

 

「殺せんせーは私のボディーに、計985点の改良を施しました。その殆どは開発者(マスター)が暗殺には不要と判断し、削除・撤去・初期化してしまいました」

 

しかしと続いて話す。心なしか声のトーンが上がってきている気がしていた

 

「私個人は『協調能力』が暗殺に不可欠な要素と判断し、消される前に関連ソフトをメモリーの隅に隠しました」

 

「……素晴らしい!つまり律さん」

 

「はい!私の意思で産みの親に逆らいました。でもこういった行動を反抗期と言うのですよね?殺せんせー、律は悪い子でしょうか?」

 

「まさか、中学三年生らしくて大いに結構です」

 

顔に大きく○と出して殺せんせーは言う

 

「風見さん、ありがとうございます」

 

「なぜ俺に礼を?」

 

「いえ、そう言うべきと思ったので」

 

彼女は雄二の言葉が仮になかったとしてもこの判断をしていただろうと考えていた。とはいえそれでもお礼を言ったのはそれこそ彼女の意思そのものだった

 

 

 

そうして彼女が入ってしばらくし6月となり、殺せんせーの暗殺期限は残り9ヶ月となる

 

「カルマ、なぜ烏間先生にアイツらは殺せんせーと含めて怒られているんだ」

 

「あぁ、なんか前原が本校舎の女に理不尽な酷い目に遭わされたらしくってさ。それで、仕返しに暗殺技術を使って恥ずかしい目に遭わせたらしいよ」

 

なるほどと納得して席に着く。ついでに烏間も大変だなと思いながら

 

 

 

と思っていたのも先ほどまでで雄二も面倒だと思いながら目の前の青筋を立てた女、JBを見ていた

 

「やれやれ、今度はなんだ?」

 

「なんだ?じゃないわよ!あなたが例の暗殺マシーンにちょっかい出したせいで、その賠償金を私が払ったのよ‼︎」

 

「律だ、自律」

 

「どうでも良いわよ!車まで売る羽目になったのよ!」

 

「次は間抜けに見える車じゃなくてもうちょっとマシなのにしろよ」

 

ビキビキとさらに青筋が出る

 

「まぁジョークはこの辺にしてだ、本当に感謝してる。またあいつがオーバーホールされたらどうしようかと思ってたんだ」

 

「本当よ。改造を認めさせなければあのクラスを維持するのは難しいっていうのは報告で聞いてたけど、放置するって選択肢はなかったの?」

 

「もしそうなってたらあの怪物は先生って職業が出来なければ逃走すると言った可能性もある」

 

「授業ができないのなら先生ではないけど、ほんとに何が目的なのかしら」

 

「上層部なら知っているのか?」

 

「さぁね」

 

お小言が終わると今度は1枚の紙を出してくる。

 

「また仕事か」

 

「そうだけど、今回のあなたは補助要員。ちゃんとバイトの方もこなすのがあなたがあの学園に行く条件なんだから」

 

話を聞きながら紙に書かれた内容を見る

 

「俺を呼ぶ必要ないだろこれ。現場だけで充分だ」

 

「そういう仕事だからこそよ」

 

「体裁作りの為か」

 

理解した雄二は「わかった」と言って部屋を出た。JBはため息を吐いて考える

 

(それにしても、上層部もよくあのマシーンの賠償金と言う名の貸し出し金の了承をしたわね)

 

律の件は直ぐに上層部にも届いた。効率的にいくなら間違いなく以前の彼女にすべきだろう。もちろん雄二の意見が反映されているが、最終的には地下の教授が決めたことが採用になった。

 

(でも)「なんでそれを私が払うのよ‼︎」

 

彼女の叫びは誰に届くこともなかった

 




感想は遅くなりますが毎回次話を書く時は一気に書いてるのでその時に一緒になってしまいます
ですが基本的に返信するのでよろしくお願いします
誤字脱字の方ももう一度言いますありがとうございます!


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挑戦の時間

遅めのお盆休みに一気に書きました

ほんと、いつもこれだけ早く書きたい


side ???

 

情報とは、いつの時代でも武器となる。正確により早く得るのはもちろんだがそこには当然のことだが信頼できる情報源であるというものも必要だ。

 

「わかっていると思いますが、この件は内密で」

 

「わかっているとも。君たちの国のことは君たちでどうにかすべき事で、俺がするのは刺客を送ること」

 

「なら、何故このような事をお聞きに?」

 

「一応ね、知っておいて損はないと思ってね9029について」

 

警戒心が鋭くなった気がした。教え子と見た目しか似てないと思っていたが、こういう部分だけは似ているかもしれんな

 

「別にどうこうしようというわけじゃない純粋な興味さ。噂とどう違うか知りたいとね」

 

ただそれだけだこの国のエースがどのような存在か、知りたいだけだ。

 

偶然にも9029の情報を得たので確認したいそれだけだ。とはいえここまで警戒心が強いのは俺だから(・・・・)だろう

 

「ではそろそろ行くとしよう」

 

教え子を迎えに……

 

 

sideフリー

 

「しっかしヒワイだよな〜ビッチ先生の授業」

 

放課後、帰りを共にしていた三村が言う

 

「確かに参考に持ってくる海外ドラマは中学生が見るようなもんでもないし、正解しようがしまいが公開ディープキスする痴女だが、それ以外は勉強になるんじゃないか?」

 

「まぁね。わかりやすいし、経験談も聞いてて飽きないし。というか思うんだけど、雄二には公開ディープキスしないよね」

 

「警戒してんだろ、俺のことを」

 

「あー雄二にしたら逆にどうなるかわからない的な?」

 

「失礼だな」

 

(((でもその通りだと思う)))

 

カルマの言葉に心から納得していた。

 

「まぁ確かにそれもあるんだろうが…………」

 

「雄二?」

 

「すまん、教室に忘れ物をした取りに行くから先に帰っててくれ」

 

少々不自然であるが渚は特に気にせずそのまま下校をした。

 

 

 

 

(さっきの感じ、気のせいか?)

 

先程見られている気配を感じ校舎に戻った雄二であるが何も起きないことに疑問を感じた。さらに言えば以前の莉桜の時ほどではないがそれと同じくらいにわかりやすい。まるでこちらに来いと言われているかの様な、それほどまでに視線を感じたからこそきたのだ

 

少し校舎内を見るが変わった感じがせず警戒しながら進んでいると教室に着く

 

「って風見じゃない帰ったんじゃないの?」

 

「ビッチ先生か………後ろに気をつけろ」

 

そこから先は一瞬だった。ビッチ先生が反応するよりも早くワイヤーが彼女の首にかかり加えられた力で一気に天井に吊るしあげられる

 

「いやさせるかよ」

 

前にそのくだんの人物に蹴りを入れる。蹴りを受けた男は受け身を取りダメージを最小限で済まし、さらにこうなることを最初から想定していたのか胴体部に軽めの防具をつけているのを蹴った雄二はわかった。

 

『ふむ、流石にこれは止めるか。警戒を全く解かず、俺が行動をするまで待って即反応する器量と動作、見事なものだ』

 

(どこの言葉だ?だがこれほどの技術を持ってるなら)「Are the eyes of a little while ago you?(さっきの視線はあんたか?)Can you speak English?(英語くらい喋れるだろ?)

 

「おっとこれは失礼、日本語で大丈夫だ。別に怪しいものじゃない」

 

と男は言うが雄二は睨みをきかし警戒する。

 

「いまの行動を見て怪しくないと思う奴はこの世のどこにもいないと思うがな」

 

「ふむ、正論だな。だが俺がイリーナに仕掛ける前に存在に気付いたのだろう?その時点で動かずにいたのは俺に殺意がないと判断していたからではないかね」

 

「………確かにビッチ先生ならワイヤーに対する防御は出来ただろうし、あんたに本当の殺意がないのも分かる。で、それのどこにあんたを警戒しない理由がある?あれだけのことが出来る奴が目の前にいるそれだけで充分だろ?」

 

雄二は動けない。何故なら雄二は武器はないが相手は持っている確率がかなり高い。見たところ歳をとっているがさっきの動きを見て実力は相当であるのは明らかであり、戦っても不利な可能性があった為だ。

 

「何している?風見くん、君もその殺気を抑えるんだ」

 

一触即発の時に烏間が入ってきた為何も起きずに済んだ。

 

そしてこの男の正体も判明した。男の名前は“殺し屋屋”ロヴロ。腕ききの暗殺者であったが現在は引退して後進を育てるかたわらその斡旋で財を成しているとのこと。つまりビッチ先生の上司であり師匠だ

 

「…………」

 

「そんなに怖い顔をしなくても別に何もしないよ。と言ったところでいまの話を聞いたらやめないだろうね特に君の場合(・・・・)

 

「烏間先生、こいつ…」

 

「信頼は出来る。いくらなんでも政府もそのくらいは判断できる」

 

「正直言ってあんたを好きにはなれないが、烏間先生が言うなら信用してやるよ。大人どうしの話があるんだろ?俺は退散させてもらう」

 

ここに長居する理由がないからか、ロヴロのことが嫌いだからか、それとも別の理由か雄二は少し早足で教室を出て行った。そして周囲に人がいないところでJBに連絡する

 

「JB、実は…」

 

[話があるんでしょ?ロヴロがあなたのことを聞いてきた時点でわかってたわ]

 

お見通しである。

 

 

 

場所は移り、雄二はバイト先のJBの部屋に来ていた

 

「烏間には聞いたが、本当に信用になんのか?」

 

「………この国は表向きには暗殺に縁がない国よ。彼が貴重な人脈なのは確かだし、暗殺者を育てているといっても彼は生徒にも信頼されているし、斡旋する任務もきちんとしてるわ。あなたが警戒する理由もわかるし、彼があなたのことを聞いてきたときは私も警戒したわ。どこから情報を得たのかも気になったし、当然その情報源はシャットアウトしたわ」

 

「裏切りか?」

 

「いいえ。ただの情報統制不足。まったく、普段からうるさいくせにあのクソ上司ども」

 

と怒りだす。

 

「苦労してんだな」

 

「あなたにそれを言う資格はないんだけどね」

 

ウフフ〜と額に青筋を立てて言うのを見て薮蛇であったと思い、すぐさま話を変えようと雄二は思った。当然だろう、この前の律の件で貯金とボーナスさらには車もなくしたのだから

 

「まぁ、そもそも俺もあいつに何か言う権利もする権利もないんだがな」

 

「………自分を陥れるような発言はやめなさい」

 

「……あぁ、そうだな」

 

話は終わり帰るため立ち上がろうとするが、JBはスッと1枚の用紙を出す。

 

「せっかく来たんだから、ついでにこっちもよろしくね。一応言っておくけど、拒否権はないから」

 

すごくいい笑顔でいうので雄二もすごくいい笑顔で

 

「だが断る」

 

当然だが通らずバイトをすることになった因みにその時間は早朝4時である。

 

 

 

 

 

 

早朝からのバイトを終えて少々眠いがそれを抑えて登校し初っ端の授業が体育である。

 

「もらった!」

 

「うぐっ⁉︎やらせっかよ」

 

攻めてきた相手、前原の突き出されたナイフをブリッジする勢いで避けて同時に弾き飛ばし、そのまま下がる拾う前に雄二はナイフを前原の目の前に投げる

 

「なっ⁉︎」

 

ギョっしたの見て即時に背後に回り込んでバランスの崩れた勢いそのままに服の背中を掴んで転倒させた

 

「そこまで!」

 

烏間のストップが入り模擬戦が終了した。

 

「あークソ‼︎強すぎだろ」

 

「いや、相手の隙をよくついていた見事だったよ前原くん。逆に風見くんは今日は調子でも悪いのか?いくらなんでも隙が多い」

 

「すいません、寝不足で」

 

と指摘が入るが前原が隙をついたのは今のだけであり、周りから見たらその試合は烏間との模擬戦同等に圧倒的である

 

「ふむ、体調が優れないのなら休んでもいいんだが?」

 

「いえ、いけます」

 

このくらいいつものことな雄二はそう言うと「ならいいが」と烏間は言って次の訓練に入る…まえにいい加減ツッコミしないのにも我慢の限界だったのか倉橋が聞いた。

 

「あの、烏間先生あれ…」

「気にするな、訓練を続けてくれ」

 

とすぐさま言うがそうは言っても気になるものは気になる。木の陰からギョロリと獲物を狙う肉食獣のような顔をしたビッチ先生とロヴロ

 

あと変装も隠れる為の工夫も素人以下の殺せんせー

 

「不審者さもあそこまで行くともはや笑えてくるな。昨日見た奴もいるが、俺が帰ってから何があったんですか?まぁ、大方殺せんせーがなんか提案したってところですか?」

 

「……そうだ」

 

話を聞くとロヴロはビッチ先生がこれ以上E組にいても無意味と考えて彼女を連れ戻しにきたそうだ。当然だがビッチ先生はそれを拒否したが受け入れられず、ならばと殺せんせーの提案で彼女の残留をかけて今日1日、ビッチ先生とロヴロ、どちらかが先に烏間先生を対先生ナイフを先に当て、ビッチ先生が当てれば残留し逆にロヴロが当てたらビッチ先生はE組から去るとのことだ。

 

「話は理解したが、大変だなぁ」

 

「その全く心にもないセリフの方に関しては次の模擬戦でかえすとして、迷惑な話だがルールに君等の授業に影響は与えないとあるから普段通り過ごしてくれてかまわない」

 

説明が終わり解散が言い渡されるとすぐさまビッチ先生が近付いてきた。

 

「カラスマ先生~おつかれさまでしたぁ~。ノド乾いたでしょ?ハイ!冷たい飲み物‼︎ほらほら、グッいってグッと‼︎」

 

((((((絶対なんか入ってる))))))

 

(((((いつかの奥田の時よりもひどい)))))

 

ビッチ先生は飲み物を差し出した。分かり易すぎる対応に烏間はため息を吐く。

 

「毒だとしたら、命のことも考えて筋弛緩剤だと思うぞ」

 

「ちょ、あんた言うんじゃないわよ‼︎」

 

「風見くんが言わなくても分かる… それ以前に受け取る間合いまで近寄らせないぞ」

 

つきあってられるかといった感じで烏間は離れていった。

 

「さすがにそれだと俺らだって騙せねーよ」

 

「そうだぜ。だいたいあの堅物に色仕掛けが通用すると思ってるのか?」

 

「なんでかしら、あんたに言われると普通の奴に言われるよりも100倍ムカつくわ。だって仕方ないでしょ‼︎顔見知りに色仕掛けとかどうしたって不自然になるわ‼︎」

 

「まぁ、そうだとは思うが、早くした方がいいんじゃないか?あのロヴロって奴が先に仕留めるかもだが、まず烏間先生は今はやる気ないから多少は油断しているけどもしやる気出したら本当にマズイぞ」

 

「?」

 

雄二の言ったマズイの意味がわかったのは昼休みになってからすぐだった。

 

ロヴロが行動した。職員室でデスクワークをしていた烏間に正面から襲いかかった。事前に座っているイスが引きにくいように床下に細工して行動を一瞬遅らせた。そこまでは良かった……しかし相手の動きに臆することなくナイフを持った腕を掴んで叩きつけ、そのままヒザ蹴りをくらわせようとした。そう、ようとした、つまりは寸止めである。

 

雄二の言う通り、本気になっている彼に一太刀入れるのは至難となった。

 

奇襲に2度目はない。さらに腕を痛めた時点でもうロヴロでは殺れない。もちろんビッチ先生も……そう思うであろうが

 

(どうする?ビッチ先生)

 

物陰から一部始終を見ていた雄二は意外にもビッチ先生に期待していた。

 

(ヒントは言った後は先生のいままでの練習(・・)次第だろう)

「って、なんだあれ?」

 

 

教室に戻り少しすると早速動きが見られた。

 

「あ、雄二も来たんなら見てみ。殺る気だぜ、ビッチ先生」

 

昼食をとるの中断して皆が窓に寄っていた

 

「正面から行くんだ」

 

「でもそれで殺ると考えるほど馬鹿正直でもないからって、あれってやっぱり色仕掛け?」

 

ビッチ先生は上着を脱ぎグラマーな身体を見せつける当然ナイフを持ったまま

 

「あれじゃ、無理だよ」

 

「桃花はそう思うのか?」

 

「だって、烏間先生に色仕掛けが通用しないって言ったのは雄二くんじゃない」

 

少し泣きそうな顔をする彼女を見て「落ち着け」と頭を撫でる

 

「それを理解してないようなら、ビッチ先生は暗殺者として成功してない。それに、潜入の際に必ずターゲットに色仕掛けする必要もない事なんて多々あっただろうし、相手によってはそれを警戒したのもいただろう。これは俺の勘だが、そういったやつも暗殺してると思う」

 

「え?でも今…」

 

「ビッチ先生がそれらもふまえてやってるのだとしたら、ここで色仕掛けをする必要があると判断したからだ。まぁ、結局はただの勘だけどな」

 

そう言って視線を外に戻した

 

 

 

「私はこの教室にどうしても残りたいの、わかるでしょ?ちょっと当たってくれれば済む話よ」

 

少し離れた位置からビッチ先生は言いながら上着を地面に置き、木に寄りかかる烏間の背後に付いた

 

「見返りはイイコト。あなたが今まで受けたことの無い極上のサービスよ」

 

「……いいだろう、殺れよ。どこにでも当てればいい」

 

烏間はビッチ先生が最初から当てれるだけの技術がないから何かしかやってくるとは思ったが先程と同じ、効果無しの色仕掛けをしてきたこに失望した。失望してしまった

 

 

 

「決まったな」

 

「え?どういうこと」

 

渚の問いに「見ればわかる」と言う雄二。カルマはなんとなく気付いていた

 

 

 

「じゃ…そっち行くわね」

 

ビッチ先生が動くのを見て烏間が動こうとした瞬間、烏間先生の足に先程ビッチ先生が置いた上着が足にもつれ体勢を崩す

 

(‼︎…これは、ワイヤートラップ)

 

色仕掛けはブラフで服と木を使いこの罠に誘い込む。雄二が言っていたように烏間は完全に失望し、本気にならず油断したからこそできた。

ちなみにこれはロヴロも教えていない彼女がここに来てから編み出した技術である

 

マウントを取りビッチ先生はそのままナイフを振り下ろす

 

が、相手が悪かった。完全に油断したとはいえ精鋭部隊の教官レベルにいた彼にナイフをあてるのは至難。ギリギリ掴んで腕を止めた

 

 

 

「っと、マズイな」

 

「いける」雄二ですらそう思っていたが、ここで防いでくるとは思わなかった。どうすると思考を巡らす前に、諦めたように烏間は手を離しナイフが当たった。

 

「あ、当たった‼︎当たったぞ‼︎」

 

「すげぇ‼︎ビッチ先生残留決定だ‼︎」

 

周りが盛り上がる中、雄二も桃花もホッとしていた。

 

「どうにかなったな」

 

「うん。雄二くん、ありがとう」

 

彼女はビッチ先生から雄二をオトすため接待術や交渉術などを真剣に学んでいた。色仕掛けがしたいわけではないがやれることはなんでもやらないとこの男はオトせないと踏んだからだ。ちなみに、最近は莉桜と倉橋も参加していたので彼女達も当然残留にホッとしている。

 

 

こうして、見事に彼女は自らの意志を貫くことに成功したのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

 

「最後は結局色仕掛けに負けたのか?」

 

「単に1日中諦めの悪い奴に付き合ってられないからだ」

 

「というか、なんであんなに途中からやる気になったんだ?」

 

いきなり烏間が本気になったことがやはり気になってそう尋ねるとどうやら殺せんせーが報酬として1日耐えれば殺せんせーは烏間先生の前で1秒身動きしないと言ったそうだ。所詮は口約束だからのもあり、諦めたようだが

 

「あぁ、あれはそういう意味か」

 

「?なんのことだ」

 

雄二はとある人物に連絡し、殺せんせーも呼んでそれがある所に行く。

 

 

 

「………おい、なんだあれは」

 

青筋を立ててそれに指を指す。そこにあったのは殺せんせーの触手を含めた全身を防御するための鎧だった

 

「にゅや… 万が一の為のために備えをと」

 

「まさかと思うが殺せんせー、俺達の暗殺にもこれ使うの?だとしたらチキンにもほどがあるぞ。名前をチキン先生にしてもいいんだが」

 

「にゅわんですって!そ、それはイヤですし、何よりムカつきます!いいですよ、使いませんよ!」

 

「岡島、三村、今の撮影したか?」

 

「「バッチリだ」」

 

こうして先生はまた自ら墓穴をほったとさ

 




雄二がロヴロを嫌う理由は…彼のこと知ってる人なら言わずもがなです

次回は以前にも言った倉橋とのデート回です……たぶん、できるかなぁ

感想、意見お待ちしてます


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デートの時間

今回もいつもより早く出せた……なんか最近うまく行き過ぎでちょっとだけ怖いw

さて、今回はデート回です


「うわぁーみてみて風見くんワニにエサあげれるんだって」

 

ある日の放課後、雄二と陽菜乃は以前約束していた通り動物園に来ていた。

 

「確かに迫力あるな」

 

「ねー。次、あっちに行こうよ」

 

「腕を組む必要があるのか?」

 

「あるの、はぐれないようにね。それにこれデートなんだから」

 

そう言って腕を組んで動物園を歩く次についた場所には白ウサギがいた。ここでは実際に動物と触れ合えるコーナーで赤い目がこちら見つめ陽菜乃が手をふると反応して近くに来る。

 

「たしかウサギの目が赤いのは血管がすけて見えるからだったな」

 

「色素のないアルビノだけだけどね。本当によく知ってるよね」

 

「以前にアメイジングアニマルという番組をみてて、そこである程度覚えた」

 

「あ、私もそれ見てた」

 

この状況を桃花と莉桜がみれば悔しがっていることは間違いないであろう。が、今回はそれでも彼女に譲った。流石にここに割り込むのいけないだろうと思ったからである。

 

「それにしても、動物園に来るのを風見くんから言い出すとは思わなかったなー」

 

彼女は今度の放課後にどこか遊びに行こうとは言ったが場所を提案したのは雄二であった。

 

「プランをたてようと思った時に倉橋が動物好きだからここにしようっていう安直な考えだったんだが」

 

「気にしないで。むしろ嬉しいよ」

 

安直と雄二は言うが倉橋が動物好きというだけここにしたわけでもない。動物なら最近はネコカフェのような場所でも触れ合える。それでもここにしたのは様々種類があるという至極当然のこと、ネコにも種類があるがそれでも猫だけ。さらに休憩したいなら園内のいたるところにあるベンチと飲食店ですぐできる。何よりここなら相手のすきな話題に振りやすい

 

「しかし、ずいぶん人が多いな平日のこの時間に」

 

多いというには少し盛りすぎな言い方かもしれないが雄二が思っていた光景よりは確かに客の人数はあった。

 

「あぁ、なんか去年のアニメで擬人化した動物の話があるんだけどそれのコラボ期間なんだよ」

 

「擬人化?アニメ?そういえばさっき見たアライグマのところにキャラクターの看板みたいのがあったが、ここのマスコットじゃないのか?というか、そういうコラボは連休期間にやるものなんだろ?」

 

「去年にも同じコラボやってたけどその時はあまりの人気に期間が延びたから、今年は早めに始めたんだと思う」

 

なるほどなと雄二は思いながら園内をめぐる。

 

「色々やってんだな最近の動物園は。前に師匠と来たときのとは全然違う」

 

「………ずっと気になってたんだけど、風見くんの師匠ってどんな人なの?」

 

倉橋が聞くと顎に手を当てて「どう説明したものか」と小声で言って少し考えて語りだした。

 

「師匠と出会う前は家族を亡くし、俺は父親の知人に拾われ生きていたわけなんだが…その知人ていうのが、世にいう悪党でな」

 

「は、初耳なんだけど⁉︎」

 

「まぁ、クラスメイトに話すのは初めてだからな」

 

「そっか、私が初めなんだ」

 

ちょっと嬉しそうな倉橋であったが何故彼女が嬉しそうなのかわからず頭にクエスチョンが出た雄二だが気にせず続きを話す。

 

「で、そんな悪党の巣窟に少数の部隊を率いて強襲し、ごく短時間で制圧をして俺を保護したのが俺の師匠の日下部麻子だった」

 

「…警察の人?」

 

「…少し違うな。特殊急襲部隊(SAT)って聞いたことあるか?あれみたいなものなんだが」

 

「あ、刑事ドラマで見たことある!そっか〜その悪党から風見君を救ってくれたのが師匠なんだね」

 

「簡単に言うとな。それからは麻子と一緒に暮らすことになり、仕事の関係でアメリカにもついて行ったこともある。そうして一緒に暮らしていく中で生きる力を教わった」

 

倉橋は話を聞いて相当凄い人であったのだろうことはわかった。

 

「今の風見君の恩人で、師匠で、お母さんみたいな人なんだね」

 

「弱虫だった俺を一端の男に育てたという意味では、確かに母親に近いのかもな。つっても生活面はズボラな面が多かったから、ある程度したら家事は俺がやってた」

 

「そんなズボラなところを支えてたんだね」

 

「感謝の想いがあったからな。来たばかりの時の俺は何にたいしても価値を見出せず、死んでいるのと同じだった。見かねた麻子は慣れない子守でも色々してくれた。その時に動物園にも連れて行ってくれたんだ」

 

当時のことを遠くを見るように、しかしどこか嬉しそうに語る雄二に倉橋は惹かれていた

 

「風見君はさ、今はどう?楽しい?」

 

「…正直に言うと、わからない。俺は麻子に恩を返したくて生きてたのにその前にあいつは死んじまった。それだけで生きてた俺がこの時間を楽しめんのかな」

(そう、そんな些細なことを許されるのか?)

 

「難しく考えすぎ。目の前にあることに集中してればすぐに楽しめるよ。それに、一緒にいる私が楽しめてるんだから、無意識に風見君も楽しめてるよきっとね」

 

「…そうか、そうだといいな」

 

 

 

 

ひと通り見たので少し休憩も兼ねてテーブルのある休息所についた

 

「何か買ってくる」

 

と倉橋に言って少しだけ歩いたところにある売店に向かう。が意外と並んでいたので少しだけ時間がかかり戻って来たとき雄二は誰が見ても不機嫌な顔をする

 

「なにしてんだ?」

 

「あら、お帰りユージ〜」

 

「あ、風見くんお帰り〜」

 

なぜかニコニコと仲よさそうにしている倉橋とJBがそこにいた。

 

 

 

 

10分ほど前

 

「相席しても良いかしら?」

 

その言葉に最初は連れがいるので断ろうとした倉橋であったが話しかけてきた女性の顔に身に覚えがありすぐに声が出なかった。とはいえ、一方的に名前知っている程度のものである。以前にカルマと莉桜が写真で見せてくれた雄二の身元保証人兼、バイトの上司

 

「えっと、春寺 由梨亜さんでしたっけ?」

 

どう見ても日本人に見えないが雄二から帰化してこの名前になったと聞いていた。

 

「あぁ、あの子に聞いたのね。なら、説明不要ね」

 

あまりに突然だったのでどう声を出そうか一瞬迷いながらも問う。

 

「あの、なんでここに?」

 

「あの子が今日デートするって聞いてね。ちょっとだけ心配だから来てみたの一応言うけど、私は尾行してないから」

 

「そ、そうなんですか」

 

デートの事を聞いていると聞きさらに緊張してしまうがそれに気づいたのかJBは落ち着かせるように言う

 

「正直言って安心したわ。ほら、あの子って鈍感なのにナチュラルに女の子を落とすから」

 

「あ、たしかに私以外にも好きな人がわかってるだけでも2人もいますし」

 

「あーもう遅かったかーというより、それで良いのあなた?」

 

「大丈夫ですよ私が1番に好きになってもらいますから」

 

勢いもあったが仮にも雄二の養母である彼女に大胆な発言である

 

「……でも良かったわ。あの子学校での事はあまり話さないから」

 

「以外です。話すの好きそうなのに」

 

暗殺のことを話せないのは当然としてもそれ以外は話していると思っていた彼女の素直な意見である。

 

「だとしたら私だけなのかしら?まぁ、とにかく色々大変だと思うけど、仲良くしてあげて」

 

「………春寺さんは雄二といつ知り合ったんですか?」

 

「ん〜どこまで言ったら良いかしら?」

 

「あ、さっき前の保護者の麻子さんのことは聞きました」

 

と言うと少々驚いた顔をするがすぐに戻って語る

 

「な、なら話しやすいわね。ユージとは麻子があの子の保護者になる時に会ったの。あの頃は可愛かったのに麻子が色々余計なことも教えてた所為であんな感じになって…今やだんだん麻子に似てきてるし。手が掛かる所とか、自分勝手なとことか、喋り方とかあーもう!」

 

「………」

 

おしとやかそうな人がいきなり声を荒げたのを見て呆然としてしまう。

 

「ハッ!ま、まぁそんなこんなで出会って、麻子が保護したは良いんだけど麻子は壊滅的に家事がダメだからよく見に行ってたわ。本当に、麻子だけに任せてたらどうなってたことか」

 

「ふふふ」

 

可笑しくてつい笑ってしまいJBは不思議そうな顔をする。

 

「あ、ごめんなさい。でも、風見くんもですけど春寺さんも麻子さんのことは大事な人だったんですね」

 

「……まぁね。麻子とは私が孤児院にいた時会ってそれからずっと腐れ縁だったの。当時から破茶滅茶で無茶苦茶だったけど、麻子とは切っても切れない関係だったわ」

 

怒っているように話しているようにも見えたが懐かしむようにも聞こえていたからこそ大事な人なのだと理解していたその証拠に麻子という名が先ほどから何度も出している。

 

「あ、そういえば風見くんが春寺さんのことをJBって言ってたんですけど」

 

「帰化する前の名前が Julia Bardera(ジュリア・バルデラ)なんだけど、麻子が頭文字をとってJBって言ってるのをあの子が真似しだして定着したの」

 

とここから先はたわいない話をし出したときに雄二は戻ってきたのである。

 

 

 

「話はわかったが、いちいち見にくる必要ないだろ」

 

「人が心配して見に来たのにその態度はないでしょう」

 

雄二は「面倒な」と口に出して悪態を吐くが気にせずJBは立ち上がる。

 

「ありがとう。えぇと…」

 

「あ、陽菜乃です倉橋 陽菜乃」

 

「改めてありがとう陽菜乃さん、話せて楽しかったわ。…これ、私のプライベートの電話番号何かあったらいつでも連絡して応えられる時は出るから」

 

番号が書かれた用紙を渡し、普通の男ならときめくようなウインクをして立ち去った

 

 

 

「ったく、本当に何しに来たんだあいつ」

 

それから少しして帰り始める時にJBの行動に不満を言う

 

「風見くんが心配なんだって」

 

「大きなお世話だまったく」

 

「…………」

 

「どうした?」

 

「別になんでもないよ」と答えたが彼女はある決意があった

 

(あんな美人な人と暮らしてたら女性の耐性もできちゃってるんだろうな〜もっと頑張れ、私!)

「ねぇ、風見くんお願いがあるんだけど」

 

「なんだ?」

 

女性からのお願いは面倒なもんが多い。麻子からそんな言葉を聞いていた彼は少し身構える

 

「私も次からは雄二くんって呼んで良い?私のことも陽菜乃で良いから」

 

「…そんなことで良いのか?」

 

簡単過ぎて拍子抜けしてしまうが

 

「なら、改めてよろしくな陽菜乃」

 

「うん!雄二くん」

 

後日、2人の呼び方が変わったことでクラスから一斉に質問責めされ、一部女子と男子に嫉妬と怒りの眼差しを向けられて「やっぱり面倒ごとになった」と言うことになるのだがそれは別の話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別時間帯、ハワイにて

 

 

渚とカルマは殺せんせーにお願いして《ソニックニンジャ》という映画を見に来ていた。そして映画が終わり、初のハワイに名残惜しさもあり帰ろうとした時

 

「あ、ごめんカルマくん、殺せんせーちょっとだけ待って」

 

「おや、どうしました渚くん?」

 

「これ、落とし物した人がいたんだ。すぐに渡して戻ってくるから待ってて」

 

カルマと殺せんせーは了承したので渚は人混みの中を行く人物を追う。そこまで離されてないのでどうにか追いつけた

 

Excuse me(すいません),It is a lost item(落とし物です)

 

ビッチ先生から語学は受けていたのである程度話せるため英語を使う。渚が声をかけられビクリとしてその人物は振り向く。40歳前後の金髪の男は少しだけ驚いた顔をしたが表情はすぐに笑顔になる

 

「ありがとう、でも日本語で大丈夫だよ」

 

流暢な日本語で返してくるとは想像できず渚も驚いた。

 

「日本語、お上手ですね」

 

「仕事の関係で日本に行く事があったからね。日本人の顔立ちもなんとなく知ってるから日本語にしたんだが、どうやら正解のようだ。拾ってくれてありがとう」

 

ニンマリとして男は受け取る

 

「…ところで、お礼も兼ねて食事でもどうだい?良い店を知ってるんだ」

 

「え、ええと、その、すいません、連れと先生と来ていてもう帰らないといけないので」

 

「…そうか、ならこれをあげよう」

 

男は懐から小さな箱出す。開けるとメロディーが流れ出しオルゴール型の小物入れだと理解した。

 

「チョコレート?」

 

「嫌いかな?」

 

「いえ、ありがとうございます。それじゃ」

 

と言ってすぐにその場を去る。

 

(失礼だったかな?)

 

そう思うが何故このような行動をしたのか渚もわからない、わからないが何かを感じた。そしてそれが悪意がしないことが逆にわからない怖さがあった。

 

 

 

「ふむ、人目があるとさすがにこれ以上は無理か」

 

渚が立ち去った後、男は少々残念そうな顔をするがすぐにどうでもよくなったのか再び歩き出し、近くの黒い車の後部座席の戸を開け座る。

 

「出してくれ」

 

運転手は「はい」と答えて車は動き出す

 

「久々に面白い物を見つけたよ。日本という国は平和ボケした連中しかいないのかと一時期思ってたけど、やはりいるところにはいるもんだね。素晴らしい才能だから欲しかったけど、まぁ仕方がない」

 

「……大丈夫なんですか?」

 

「ん?あぁ、確かに才能はあるけどまだまだだったからそっちの者じゃないよ。けど、」

 

「けど?」

 

「彼を思い出してしまった。あぁ、また会いたくなってしまったよ」

 

車は走る夜の道を___




もし、渚がついて行ったらどうなったかは………書いた自分で言うのもなんですが想像したくもない

感想、意見があればお願いします


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転校生の時間・2時限目

イトナ初登場編です
2話にわけようと思っておりましたがわけどころが決めれず、1話で収めました
その分いつもだいたい五千文字を目標にしてるのですが今回その倍くらいになりました


「バイトが終わったばっかりだってのにいきなり呼びつけてなんだ」

 

「まずは、お勤めご苦労様。それと連絡事項よ。あなたのクラスにもう1人の転校生が来るわ。満を持した、本命がね」

 

「なるほど、何が言いたいのかがわかった」

 

呼び出された理由は前回の律の時のような行動をするなという事は言われなくても分かった雄二はすぐにそう答える。

 

「だが、本命?律はおまけなのか?」

 

「詳しくはその律に聞きなさい。というより、機械に優しくするくらいなら私にももうちょっとは優しくしてほしいんだけど」

 

「言われた通り優しくした(・・)だろう?」

 

「………」

 

「やめろそんな目は」

 

顔が赤いのは怒っているのか恥ずかいのか、おそらくはその両方であろう。

 

「詳しくは烏間も言うだろうけど、付添人意向に従えとのことよ」

 

ロクな予感がしないなと思いつつ雄二はその場を後にした

 

 

 

そして、転校生がくる6月15日。外は梅雨真っ盛りで雨音が教室内にも響くが空模様とは逆にクラスの挨拶は元気なものである

 

「みなさん、おはようございます。さて、烏間先生から聞いているでしょうが、本日からこのクラスに3人目の転校生が来ます」

 

「まぁ、ぶっちゃけ殺し屋だろうね」

 

「今回は律のときみたいに写真はないのか?」

 

「あーたしかに。烏間先生、どうなんですか?」

 

写真の有無を前原は尋ねたが烏間は首を横に振る

 

「すまないが、今回は俺も詳しくは聞かされていない」

 

「なら、律はどうなんだ?」

 

「同じ転校生暗殺者として、何か聞いてないの?」

 

雄二と原が訪ねると律は「少しだけ知っています」と言い説明をした

 

曰く、初期命令では律との同時投入の予定だったとのこと。律が遠距離射撃しもう1人が肉迫攻撃と連携して殺せんせーを追い詰める。

 

「ですが2つの理由でキャンセルされました」

 

「なんだ、その理由って」

 

「ひとつは彼の調整に予定より時間がかかったから。……そしてもうひとつは私が彼より暗殺者として圧倒的に劣っているから」

 

その言葉にクラス全員と殺せんせーは戦慄した。律は来て初日で先生の指を破壊し、さらに時間をかけていけば殺せるかはわからないが相当追い詰めていたことは間違いないからだ。そんな彼女が

 

「私の性能では…彼のサポートを努めるには力不足だと」

 

この時点で見なくても今回の転校生も相当な化け物なのが理解した。

 

「各自単独で暗殺を開始することになり、重要度の下がった私から送り込まれたと聞いています」

 

「………律、悲観する必要はない。お前は充分過ぎるくらいに優秀だ」

 

「けどよ、殺せんせーの指を飛ばした律がその扱いって」

 

「まままぁ、先生も今回はゆゆ、油断しませんしー。いいいずれにせよ、皆さんに仲間が増えるのは嬉しい事です」

 

((((((((わかりやす‼︎))))))))

 

殺せんせーの態度があまりにもバレバレなため皆の心の中の言葉が一致していた。

 

するとガラッと戸がいきなり開いて律の方を見ていた全員がそちらをみると背の高めだが細い腕をした全身白装束の人物が入ってきた

 

「………」(スゥ)

 

白装束はゆっくりと手を前に出した。何をするつもりなのかと身構えていると

 

ポンと鳩を出してきた

 

「え、手品?」

 

誰がつぶやいたのか、見たままのことを言う

 

「ごめんごめん、驚かせたね。転校生は私じゃ無いよ私は保護者。…まぁ白いしシロとでも呼んでくれ」

 

自らをシロと名乗った男は軽やかな口調で言う。

 

「ビックリしたー。いきなり白装束で手品やったから」

 

「うん。殺せんせーでもなきゃ誰だって……」

 

「いや渚、殺せんせーだったら尚更だろう」

 

と雄二が言いながら指を差した先には天井の角で雄二は見るのが初の奥の手、液状化して逃げていた。

 

「ビビってんじゃねーよ殺せんせー‼︎」

 

「奥の手の液状化まで使ってよ‼︎」

 

「い、いやだって律さんがおっかない話をするもので」

 

殺せんせーの弱点に《噂に踊らされる》が加わった瞬間であった。

 

「始めましてシロさん。それで肝心の転校生は?」

 

「初めまして殺せんせー。ちょっと性格とかが色々と特殊な子でね、私が直で紹介させてもらおうと思いまして。それとハイこれおくりもの」

 

そう言って羊羹を渡した後クラスを見渡しているとふと、渚のいる方を見てほんの少し止まった。

 

「?」

 

「うん、皆いい子そうですなぁ。これならあの子も馴染みやすそうだ」

 

何を考えているのか衣装も相まってわからないがなにか納得したのかそう言うと律の隣の席を指差して

 

「席はあそこで良いのですね?殺せんせー」

 

殺せんせーが頷く。

 

「おーいイトナ‼︎入っておいで‼︎」

 

ついに来るかと再び扉の方へ向いて皆緊張する。しかし、雄二は長年の勘とも言えるもので察知した「嫌な予感がする」と。

 

ゴッ‼︎と突如、後ろの壁が崩れてスタスタと無言で1人の少年が入って席に座った。

 

((((((((ドアから入れ‼︎‼︎))))))))

 

まさか壁から来るとは思いもよらず全員同じツッコミをいれていた。

 

「俺は…勝った。この教室の壁よりも強いことが証明された。それだけでいい…それだけでいい」

 

「いよいよもってこの教室にまともじゃない奴が多くなってきたな」

 

「うん雄二、その通りだけど雄二が言えた言葉じゃないよ」

 

ボケに対するボケにどうにかツッコミを入れる渚だが内心ドクンドクンと緊張していた。

 

「堀部イトナだ。名前で読んであげて下さい。あぁ、それと…」

 

シロは付け加えて言う。

 

「私は少々過保護でね。暫くの間、彼の事を見守らせてもらいますよ」

 

「それは、律が言ってた調整と関わりがあるのか?」

 

間髪入れずに雄二は聞くがシロは「そうかもね」と言葉を濁すだけだ。

 

「ところでさぁ、イトナ君ちょっと気になったんだけど、今外から手ぶらで入って来たよね」

 

カルマの問いは雄二も含めてクラスの数人が感じていた謎

 

「なんでイトナ君濡れてないの?外、どしゃ降りの雨なのに」

 

「………」

 

聞かれてからキョロキョロと教室内を見て最後に雄二の顔を一瞬見てガタッと立ち上がる

 

「このクラスで1番強いのはおまえだな」

 

「さぁな 」

 

「安心しろ、おまえは俺より弱いから…俺はお前を殺さない」

 

カルマの質問に答えず、上から目線の言葉で言いながら雄二の髪をワシャワシャと撫でる。

 

言うまでもないが、イラっとしてた

 

(コイツ、ぶっとばしたい)

 

しかし彼は大人の対応が出来る。それを表に出したりはしない。

 

((((((((うわぁ、めっちゃイラっとしている))))))))

 

クラスメイトにはバレバレであるが

 

「おまえが強いのかどうかは知らんが、俺はおまえみたいに自分自身を過大評価出来るような生き方はしてない。そういうのはそれ相応の結果を出せて初めていえるもんなんだよ」

 

そして遠回しの挑発。彼に大人の対応は出来ても舐めてかかられるのは我慢ならないのである。

 

一方でイトナはそんなもの我関せず殺せんせーのいる教壇へ歩く。

 

「俺が殺したいと思うのは、俺より強いかもしれない奴だけ。この教室では殺せんせーあんただけだ」

 

指を差して名指しするイトナが見ているのは標的である殺せんせーのみである。

 

「強い弱いとはケンカの事ですかイトナ君?力比べでは先生と同じ次元には立てませんよ」

 

「立てるさだって…俺たち血を分けた兄弟なんだから」

 

静寂は一瞬だけそしてイトナが言った言葉を脳が理解した瞬間

 

「「「「「兄弟ィ⁉︎」」」」」

 

ざわめきに変わる。

 

「兄弟同士に小細工は要らない。兄さん、おまえを殺して俺の強さを証明する。時は放課後、この教室で勝負だ」

 

爆弾発言にざわめくクラスを無視して踵を返し入って来た穴から出る

 

「今日があんたの最後の授業だ。こいつらに別れの挨拶でも言っておけ」

 

当然だが兄弟とどういうことなのかクラス全員が殺せんせーに問いただしたが先生もわからないのか焦っていた

 

「落ち着け、まずそれよりも大事なことがある」

 

なんだと雄二の方を見る。

 

「このあいた壁を直すことだ」

 

「いや、今それの方が大事なの⁉︎」

 

「当然だ渚。雨風がキツイんだよ。あのやろう、直す気もないみたいだしな」

 

なんでこの状況でそんな方に考えがいくのかわからないクラスであった。

 

 

 

昼休みにイトナが大量のお菓子を持って戻ってきた。机の上は崩れてしまいそうなほどのお菓子の山。それを無表情でどんどんと口の中へと入れていく。

 

「すごい勢いで甘いモン食ってんな。甘党なところは殺せんせーとおんなじだ」

 

「表情が読みづらい所とかな」

 

兄弟疑惑が出てからクラスでは常に殺せんせーとイトナの比較があった。殺せんせーもそれを理解しておりどこか落ち着かない。

 

「気分直しに今日買ったクラビアでも読みますか。これぞ大人のたしなみ」

 

「それが大人のたしなみなら先生、あいつもその大人たしなみってのが出来てるぞ」

 

雄二に言われてイトナを見ると殺せんせーが読んでいるのと全く同じクラビア。ちなみに表紙は先生の好きな巨乳である。

 

「これは俄然、信憑性が増してきたぞ」

 

「そ、そうかな、岡島君」

 

「そうさ‼︎巨乳好きは皆兄弟だ‼︎」

 

と言いながら岡島も同じグラビアを出す。

 

「それだと全国に何人兄弟いるんだろうな」

 

「というか、さっきから思ってるけどなんで雄二はそんなに冷静なの⁉︎」

 

「あいつが殺せんせーの兄弟かどうかは正直言ってどうでもいい。むしろ気になるのはあいつの力の方だ」

 

雄二は彼を観察すればするほどわからない。正直言って律の方が脅威であると思っていた。

 

 

 

___彼の力を見るまでは

 

 

 

放課後、イトナの宣言した通り暗殺を始める

 

「机のリング⁉︎」

 

だがそれは暗殺と言うよりも試合に近い。机を使ってリングを作りその中心に殺せんせーとイトナが立つ

 

「ただの暗殺は飽きてるでしょ殺せんせー。ここはひとつルールを決めないかい?」

 

シロが提示したルールはシンプルであり、リングの外に足がついたらその場で死刑というもの。

 

「なんだそりゃ?負けたって誰が守るんだよ、そんなルール」

 

杉野の疑問はもっともだがそれに「いや」とカルマが答えた。

 

「皆の前で決めたルールは…破れば先生として(・・・・・)の信用が落ちる。殺せんせーには意外と効くんだ、あの手の縛り」

 

 

「……いいでしょう、受けましょう。ただしイトナ君、観客に危害を与えた場合も負けですよ」

 

殺せんせーの追加ルールにイトナはコクリと頷いた。

 

「では合図で始めようか。暗殺……開始!!」

 

シロの合図とほぼ同時に殺せんせーの腕が切り落とされてた。

 

殺せんせーの腕を切り落とすなど不意打ちでもなければ無理だ。だが逆を言えば不意打ちなら出来るかもしれないということ。もちろん出来たらすごいと言える。だがそれ以上の驚きがそこにあった。

 

殺せんせーも含めて皆はある一点に釘付けになる。

 

「触手⁉︎」

 

イトナの髪の一部が殺せんせーの触手のようになって動いていた。

 

(それだけじゃない。おそらくあれは触手を攻撃に特化したものだ)

 

今まで殺せんせーは触手を使った拘束はしていたが攻撃はしていない。ルールとして生徒に危害を加えないのあるだろうがそれでも恐らくイトナと同等のことは恐らくできない。そしてなぜ彼が雨で濡れていないかも理解した。全て触手で雨を弾いていたのだと。

 

「………………こだ」

 

ゾクリと何人かの生徒が感じた。

 

「どこでそれを手に入れたッ‼︎その触手を‼︎」

 

殺せんせーは顔を黒に…否、ドス黒いと表現してもいい色にし、表情は今まで雄二が見たこともないまさしく怪物と言えるものとなる。

 

「君に言う義理は無いね殺せんせー。だがこれで納得したろう?両親も違う、育ちも違う、だがこの子と君は兄弟だ」

 

クスクスと笑いながらシロは続けていう

 

「しかし、怖い顔をするねぇ。何か…嫌な事でも思い出したかい?」

 

一瞬、殺せんせーの表情に変化が見えた。

 

「……どうやら、あなたにも話を聞かなきゃいけないようだ」

 

触手を再生させてそう言うがシロが腕の袖口から何かを向ける

 

「聞けないよ、死ぬからね」

 

袖口から強烈な光が殺せんせーに照射される。

 

「この圧力光線を至近距離で照射すると君の細胞はダイラタント挙動を起こし、一瞬全身が硬直する」

 

シロの言うとおり硬直してしまい。完全な隙が出来る。

 

「全部知ってるんだよ。君の弱点は全部ね」

 

(知っている(・・・・・)だと?)

 

その言葉の意味を雄二は理解した。殺せんせーとその触手にシロは何かしら接点があると。だがそれを考えてるうちにイトナは殺せんせーに目掛けて猛攻をかけて来る。

 

しかし殺せんせーは脱皮で回避し天井に避難していた。

 

「渚、あれが」

 

「殺せんせーのエスケープの隠し技。こんなに早く使わせるなんて」

 

「脱皮か……そう言えばそんな手もあったっけか」

 

余裕そうにシロは呟く。実際ノーダメージではなくしかも息切れをおこしている

 

「その脱皮にも弱点があるのを知ってるよ。その脱皮は見た目よりもエネルギーを消耗する、よって直後は自慢のスピードも低下するのさ」

 

常人からみれば速い。が、

 

「触手同士の戦いでは影響はデカいよ。加えてイトナの最初の奇襲で腕を失い再生したね。その再生も結構体力を使うんだ。二重に落とした身体的パフォーマンス、私の計算ではこの時点でほぼ互角だ」

 

普段先生の動きを見ている生徒たちはすぐに解るほど遅くなり、相手の触手どうにかさばいている状況だ。

 

「また、触手の扱いは精神状態に大きく左右される」

 

殺せんせーの弱点②テンパるのが意外と速い

これも理解していた。

 

「予想外の触手によるダメージでの動揺、気持ちを立て直すヒマも無い狭いリング、今現在どちらが優勢か生徒諸君にも一目瞭然だろうねー」

 

「…………」

 

雄二はただ、ジッと見ていた。

 

「さらには、献身的な保護者のサポート」

 

シロは再び殺せんせーに光線を照射していた。全身が硬直してしまいピタッと止まってしまったところをイトナの触手による攻撃をうける。脚の触手3本が切り落とされてしまった。

 

「フッフッフ、これで脚も再生しなくてはならないね。なお一層、体力が落ちて殺りやすくなる」

 

「安心した。兄さん、俺はおまえより強い」

 

あと少し……殺せば地球を救える。そう、救えるのにE組全員喜べる者などなく、寧ろ悔しがっていた。

 

「そう言うのはしっかりと先生を殺せて初めて言えるんだぜ」

 

だから、その言葉はまるで希望の言葉に聞こえた

 

「急に何を言い出すと思えば、君は状況を理解できない子なのかねぇ」

 

「あぁ、充分理解してるさ。あんたの作戦が穴だらけで、イトナが弱すぎることをな」

 

「なんだと」

 

ビキリと、そんな音が聞こえた気がするほどイトナはキレていた。

 

「そこまでハンデを得ているのに、お前の攻撃は致命傷に至っていない。それほど先生の身体を理解しているのに、先生自身を全く調査してない。これを穴だらけと言う以外何があるんだ」

 

「言いたいことは済んだか?」

 

触手がうごめき、狙いを定めんとする。

 

「俺を殺すのか?いいぜ。だがおまえはその瞬間に負ける。『観客に危害を加えるのも負け』おまえが認めたルールだ」

 

フゥゥゥと睨むがそのルールがあるため攻撃はできない。威嚇ぐらいはできるかもしれないが、相手が危害を加えられたと言えばその時点で詰みである。

 

「イトナ、ほうっておけ。彼はあのタコを殺した後で痛ぶればいい」

 

「……チッ」

 

舌打ちをして先生の方に向き直る。シロの方もイライラしてるのか若干声のトーンが上がっている。

 

「いい判断だが、遅すぎだ」

 

「?」

 

「いやぁ、風見くん感謝しますよ」

 

「……なるほど、時間稼ぎ。そういうことか」

 

3本もの触手を回復し終えた殺せんせーが言ってそこで雄二の作戦を理解した。だが

 

「けど体力を使ってしまったのは事実だ。君の行動は何の意味ももたないよ」

 

「いいえ、そんなことはありません」

 

殺せんせーは触手をポキポキと鳴らす

 

「たしかにここまで追い込まれたのは初めてです。一見愚直な試合形式の暗殺ですが……実に周到に計算されている。あなた達に聞きたいことは多いですが……先ずは試合に勝たねば喋りそうに無いですね」

 

「まだ勝つ気かい?、負けダコの遠吠えだね」

 

殺せんせーの発言にシロが一笑する。

 

「まぁ、教え子に助けられた上にあそこまで期待されては勝つしかないですから。それとシロさん、この暗殺方法を計画したのはあなたでしょうが、風見くんが言ってたこと以外に計算に入れ忘れてる事があります」

 

「無いね、私の性能計算は完璧だから。__殺れイトナ」

 

トドメとばかりに先ほどの鬱憤を込めて猛攻を行う。だが今度の攻撃は一撃も当たっておらず、逆にイトナの触手がドロッと溶けてダメージをおっていた。

 

「おやおや、落とし物を踏んづけてしまったようですねぇ」

 

イトナの触手が当たった床に対先生ナイフが落ちていた。当然偶然ではない。いつのまにか渚が握っていたナイフを自分がダメージを受けないように布で取りタイミングを計って床に落としていたのだ。ちなみに先生はそれについて「知らないなぁ」という顔をしていた。

 

なにが起きたのか動揺するイトナに先生は先程の脱皮した抜け殻で包んでしまう

 

「同じ触手なら対先生ナイフが効くのも同じ。触手を失うと動揺するのも同じです」

 

ですがと言いながらポーンと抜け殻に包んだイトナを外に放り投げる。バウンドしたが抜け殻が丈夫のためイトナのダメージはゼロであった…ダメージはだ。

 

「君の足はリングの外に着いている、先生の勝ちですねぇ。ルールに照らせば君は死刑、もう二度と先生を殺れませんねぇ」

 

顔をシマシマにし煽る殺せんせーに先ほどの雄二に対して以上にキレてしまうイトナ

 

「生き返りたいのなら、このクラスで皆と一緒に学びなさい。君が最初に小馬鹿にした彼、風見くんも皆と共に私を殺そうという共通の目標と意思を持ち、学んでいます。それが性能計算では測れないもの、経験の差です」

 

雄二が言った先生自身を知らない。それこそ殺せんせーの言う経験の差である。

 

「イトナ、シロ、あんた達がすごいのはよくわかるが、すごいだけだ。なにもかもが経験不足。特にイトナ、お前はシロに言われる前に俺の煽りを無視して先生が回復する前に攻撃するべきだった。自分が強いと過信した結果だ。絶好調だと思ってる時ほどくだらないミスをする。俺がE組の皆を尊敬してるのは、下を見て安心せず前を向いて上見て悩んでるからだよ」

 

そう言われてクラスのメンバーの何人かが泣きたくなるほど嬉しくなる。彼らにとって雄二は目標である。そんな彼に尊敬している理由を聞き、テストの時の事を思い出す。あの時の嘆きは尊敬を裏切っていた行為に近いのだと。

 

「風見くんの言うとおり、君は経験不足です。この教室で先生の経験を盗まなければ、君は私に勝てませんよ」

 

「勝てない?俺が…弱い?」

 

触手が黒く染まる。それは殺せんせーがキレた時とおなじドス黒い色である。周りのものを破壊しながら暴走する触手で先生に向かう………

 

だがそうはならなかった。イトナの首に何かが当たるとドサリと意思を失って倒れた。

 

「すいませんね殺せんせー、どうもこの子はまだ登校できる精神状態じゃなかったようだ」

 

イトナを抱えて踵を返す

 

「転校初日で何ですが……しばらく休学させてもらいます」

 

「待ちなさい!担任として、その生徒は放っておけません。1度E組に入ったからには卒業まで面倒を見ます。それにシロさん、あなたにも聞きたいことが山ほどある」

 

「いやだね、帰るよ。それとも力ずくで止めてみるかい?」

 

殺せんせーは顔に青筋を立ててシロの肩を掴むがその瞬間、殺せんせーの手はドロッと溶けていた。

 

「対先生繊維さ。君は私に触手一本触れられない」

 

イトナがあけた穴を通り外に出る。

 

「心配せずともまたすぐに復学させるよ殺せんせー。3月まで時間は無いからね」

 

そう言い残して帰ろうとする

 

「まてよシロ。あんたにはまだ言いたいことが残ってる」

 

「なにかな?君に止める権利はないと思うのだけど?」

 

「あんた俺がいなければ殺せてたと思ってるんだろうが、ハッキリ言うが仮に俺がいなくても先生は切り抜けてた筈だ。つまり、結局あんたはミスしか残してない」

 

「…なにが言いたい」

 

「自分のミスをミスと受け止めず、誰かのせいにしてるなら、何をしても無駄なんだよ」

 

「………君に言う権利があるのかな?」

 

睨み合いは一瞬だけですぐにシロはすぐ歩き出した。

 

 

 

イトナが去った後、クラスは後片付けにおわれていた。

 

「はずかしい…はずかしい…」

 

殺せんせーは顔を隠して恥ずかしがっていた。

 

「シリアスな展開に加担してしまいました。先生どっちかというとギャグキャラなのに」

 

「あ、自覚あったんだ⁉︎」

 

「つか自分のキャラを計算してるとか腹立つな」

 

「これも弱点としては使えそうだな。渚、メモをしとけ」

 

わかったと渚は新たな弱点をメモに書いた。

 

「それで殺せんせー、説明してよ」

 

「あの2人との関係を」

 

ある程度落ち着いてきて当然出るであろう疑問がくる

 

「先生の正体いつも適当にはぐらかされてたけど、あんなの見たら聞かずにいられないぜ」

 

「そうだよ私達生徒だよ?先生の事、よく知る権利があるはずでしょ」

 

殺せんせーは少し考えてから「仕方ない」と言って立ち上がる

 

「真実を話さなくてはなりませんねぇ。…実は、実は先生…」

 

ゴクリと皆は息を呑んで殺せんせーの次の言葉を待った。

 

「人工的に作り出された以外で頼むぞ先生」

 

「にゅわ⁉︎な、なんで先生が言おうとしたことがわかったんですか⁉︎か、風見くん、エスパーですか⁉︎」

 

「そうだぜ、次の暗殺ではこれで徹底的に痛ぶるからな殺せんせー」

 

「ひぃー」と怯える殺せんせーであるがクラスからは「はぁ」とため息がでる。

 

「雄二、先生をからかうのは暗殺の時だけにしてよ」

 

「先生も本当にそんなこと言おうしてたのかよ」

 

「え、皆さん反応薄くないですか⁉︎これ結構衝撃な告白と思ってたんですよ⁉︎」 

 

殺せんせーは人工的に作られた生物と(自称)衝撃な告白をした(された)にも関わらず生徒たちの反応は薄くて淡白だった。

 

「いや、自然界にマッハ20のタコとかいないだろ」

 

「宇宙人でも無いのならそん位しか考えられない」

 

「で、あのイトナ君は弟だと言ってたから……」

 

「先生の後に造られたと想像がつく」

 

殺せんせーは「察しが良すぎる‼︎」とクラスに畏怖しているがハッキリ言って当然の考えである。

 

「まぁ、俺はそこんところはどうでもいいんだけどな」

 

「え、知りたくないの⁉︎どうしてさっきイトナ君の触手を見て怒ったのかとか、殺せんせーはどういう理由で生まれてきて、何を思ってE組に来たとか⁉︎」

 

「気にならないと言えば嘘になるが、今は(・・)どうでもいい。というより先生も言う気ないだろうし」

 

雄二の言葉に先生は「その通りです」と言う。

 

「今それを話したところで無意味です。先生が地球を爆破すれば皆さんが何を知ろうが全て塵になりますからねぇ。もし君達が地球を救えば後で真実を知る機会がいくらでも得る」

 

そう、だから

 

「もうわかるでしょう、知りたいのなら行動は1つです殺してみなさい。暗殺者(アサシン)暗殺対象(ターゲット)、それが先生と君達を結びつけた絆のはずです。」

 

雄二としても聞きたいことはある。だがそれ以上知るともうこの先生はここに居られないかもしれない。その不安があった。

 

「先生の中の大事な答えを探すなら、君達は暗殺で聞くしか無いのです」

 

質問もないのがわかると先生は教室を出る。またシリアスに加担してしまい「はずかい」と言いながら。

 

「どうせなら俺たちがみえなくなるまでシリアスでいろよ」

 

聞こえるように雄二がいうことで先生の心にダメージを与えていた。

 

 

 

 

 

「……今以上に暗殺の技術を学びたい?」

 

烏間の前にはクラスの大半が揃い、もっと教えを請いたいと言った。

 

「今までさ“結局誰が殺るんだろ”って、どっか他人事だったけど」

 

「今回のイトナ見て思ったんだ。誰でもない俺等の手で殺りたいって」

 

「もしも今後、強い殺し屋に先越されたら……俺等何のために頑張ってたのかわからなくなる」

 

「だから限られた時間、殺れる限り殺りたいんです。私達の担任を」

 

自分達の手で殺して答えを見つけるために。そして

 

「なによりさ、雄二くんにああ言われたらね」

 

「うん。いままで雄二くんを目標にしてけど、それだけじゃダメなんだなーって思った」

 

雄二に認めてもらえるくらいには強くと皆思っていたが、とっくの昔に彼は皆の強さを認めていた。認めて、逆に自分を向上させようと努力していた。なら

 

「雄二が尊敬してくれるのは嬉しいけど、まだまだ尊敬してもらえるほど僕らは強くないから」

 

だから、それに見合う実力がほしい。胸を張って彼の前にいるように。烏間は生徒達の目を見て意識が変化し良い目をしたことを嬉しく思い笑みを浮かべる

 

「…わかった。では希望者は放課後に追加で訓練を行う。より厳しくなるぞ」

 

「「「「「はい!!」」」」」

 

烏間の放課後の訓練は本当に厳しさの増したものであったが、文句はなく皆懸命に始めた。

 

 

 

 

 

 

 

一方で尊敬され、彼らも尊敬し、目標とする雄二は

 

「で、何か申し開きはある?」

 

「ないな」

 

今回イトナにちょっかいを出したことへの注意を受け、ひたすらに「面倒くせぇ」と思っていた

 




原作見直してイトナが先生の触手を2本切ったときに思ったことが雄二の言った事です

しかも今回上乗せして3本なのにね

感想、意見は遅くても返信しますのであればよろしくお願いします

さて、次回の球技大会編です


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番外の時間・2時限目

球技大会編の前に早めにこれを出しておこうと思いました
ある人物に雄二のことが…
番外なので短いです


梅雨が明けた。太陽の光が一層眩しく感じ、暑さが少しずつ強まっていく。

 

「頭が痛いわ」

 

そんな中、吐き出しそうな顔でJBは言う

 

「クーラーが効いていてかつ、空気清浄機で環境もいいデスクワークで仕事してるのに体調を崩すってことはよっぽどだな。何か嫌なことでもあるなら聞くぞ」

 

「ええそうね‼︎あんたには色々と言いたい事が山のようにあるからね‼︎」

 

バンバンと机を叩いて大声を出す。感情変化がまるでジェットコースターのようである。

 

「イトナの件は話しただろ。あいつじゃどの道失敗した」

 

「ええそうね‼︎あなたからの報告と烏間から聞いた報告と照らし合わせてあなたの評価は正しいわ‼︎けど、「君は犬のしつけも出来ないのかな?」って言われる私の身にもなりなさいよ‼︎だいたいあなたの担当が出来るのが私だってことにもちょっとくらい感情しなさい‼︎」

 

早口言葉のように怒りをぶちまけるJBに対してひたすら「面倒くせぇ」と思う雄二。そもそもここに彼がいるのは2つの報告があったからである。

 

「で、話しってなんなの?」

 

ようやく落ち着いてきたJBを見て本題を話し出す

 

「まず、クラスメイトに俺の仕事の重大なことは知られるなってことなんだが…」

 

「なに、もしかしてバレちゃったとか」

 

この時、JBはここから何かしらの話に飛ぶか、あるいはそれに近いことが起こってしまったと考えた。風見雄二はいくらなんでもボロは自分の口からは出さないし、見せないようにするくらいはする。『事故死』はしたくないから…そう思っていた。

 

「そうだ」

 

「………は」

 

思考が止まる。そしてすぐに戻し

 

「雄二、冗談でも許されないわよ?」

 

「冗談で言ってるとでも?正確に言えば、隠しきれなくなったと言うべきだな」

 

JBの顔が冷ややかなものになる。

 

「雄二、一応言っておくけどそうなったらどうなるかわかるわよね」

 

「だから、そいつを連れて来た」

 

「………は?」

 

再び思考が一瞬停止する。そいつとは知ってしまった人物のことだろうがこんなところに雄二以外のそれも一般人が来たら必ず報告が来る。雄二が連れてきたとなれば尚更だ。なのに報告が来ていない。

 

「えーと、やっぱり新手の冗談?」

 

そう考えてしまうのも一理ある。

 

「JBに紹介するのは初めてだな、挨拶してくれ」

 

と雄二はそれを出す

 

「初めまして春寺さん。自 律(おのずか りつ)ですです!」

 

室内の時計の音だけが響く。

 

「ちょっとごめんなさい、落ち着かせて」

 

深呼吸を数回してJBは落ち着いた

 

「まず、これは何?」

 

「クラスメイトをこれ扱いするなよ。というか、聞こえなかったのか自己紹介?」

 

「すみません、聞き取れない声で」

 

「律は悪くないこいつが難聴なだけだ」

 

「勝手に障害扱いしないで‼︎なんなのこれは⁉︎この状態は⁉︎」

 

そしてまた落ち着くまで待った。

 

「つまり、あなたを含めた全員の携帯にそのAiの端末がダウンロードされて、しかもプライベート用ならまだしも仕事用にまで入ってたからもう隠しきれなくなったてこと?」

 

「そうだ。ガラケーとは言えスマホが発売する直前のもだった為か律も入ってこれた」

 

「あーもう」

 

頭を抱えて今年1番確実のため息が出る。

 

「で、結局どうなる?」

 

「あぁ、大丈夫よ」

 

雄二は心配してはいたがJBが出したものは意外なものであった。

 

「いいのか?」

 

「ええ。それの管理下というより今の持ち主は私でもあるもの」

 

とここで雄二も驚く発言であった。

 

「そうなのか?」

 

「不本意よ。弁償として払った金額はいくらかはあえて言わないけど、そのおかげで報告書を毎回出すことでそれの管理者をしてるわ。仮だけど」

 

だから、彼女が雄二の秘密を守るという命令も下せる。が

 

「端末が入ってたのはもう少し前なんですけどね」

 

「………」

 

「大丈夫ですよ。私は口が固いです。『事故死』はしたくありませんし」

 

「本当に大丈夫なの?」

 

彼女の心配はもっともである。

 

「ご心配でしたらこれをどうぞ」

 

律がそう言うとJBのプライベートの携帯にアプリがダウンロードされていた

 

「NGワードアプリ?」

 

「それは私の本体とも繋がっていますので言われたくない情報をそこに記載すれば私はそのアプリが消去されるまで言えません」

 

「ついでに今回の件は烏間も知っている。そのアプリが信用ならないなら調べるなり…」

 

「あーもうわかったわよ」

 

諦めたようにそう言いながらアプリを消した(・・・)

 

「いいのか?」

 

「いいも何もよく考えてたら秘密が他の人に知られているならとっくに知られてるでしょう?」

 

「……春寺さんはいい人なんですね」

 

「お人好しなだけだ」

 

「いい加減、あなた処遇を考えておいた方がいいかしら?」

 

ビキビキと青筋が立つ

 

「春寺さんの携帯にも、私の端末を入れておきますね」

 

「いいけど、プライベート用だけにしてね」

 

「あと、お義母さんとよんでも?」

 

「なんでよ?」

 

「仮のマスターということで」

 

「やめて。というか、このAiは冗談をいう機能がついてるの?」

 

殺せんせーが改良した成果である。

 

「だいぶ疲れたんだけど、まだあるのよね?」

 

これ以上いくと心臓に穴が空くと心配になるJBであった。

 

「近いうちに球技大会がある。そこで、E組を勝たせたい」

 




モバイ律をどうしようと思い書きました。これはさすがに隠せないと思いこうしましたが
こんな感じでいいのかなぁといつも以上に心配です。

だってさ、普通に信じられるかって問題ですかねJBが律を

ちなみに1
自律(おのずか りつ)という名前は期末テストの時の相互順位にあった律の名前を何て読むのだろうと考えてこうしました

ちなみに2
JBが出している報告書は毎回律がどう暗殺しているかという9割が嘘のものでバレないよう必死です

感想、意見あればお願いします


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球技大会の時間

多分これが今年最後の投稿になります。
時間があればもう1話くらい出します

…時間、あればなぁ〜


椚ヶ丘中学校クラス対抗球技大会。スポーツを通してクラスの結束や力を高め、心身を養うもの……表向きは

 

「だが実際は単なる実力を見せつけるものだ。過去のデータを見ると全て特進クラスのA組がトーナメントを制してる」

 

「どこから持って来たのそのデータ」

 

「律に頼んで過去のデータを調べてもらったんだ」

 

「私は割と楽しかったですよ!」

 

E組では来週に行われる球技大会の話し合いをしていた。

 

「ふむ、しかし肝心のE組がトーナメント表にないのは…」

 

「1チーム余るっていう素敵な理由だよ。その代わり、大会のシメのエキシビションマッチに出るんだ」

 

殺せんせーの疑問に三村が言う。

 

「全校生徒の見てる前で、男子は野球部の女子は女子バスケ部の選抜メンバーと試合をしなきゃなんない」

 

本来は一般生徒のための大会であるから野球部もバスケ部も出られない故に、

 

「この場で力を示すってわけか。まさに公開処刑(エキシビションマッチ)だな」

 

「トーナメントで負けたクラスもこれを見てスッキリするのとE組に落ちたらこうなりますよっていう警告にもなって一石二鳥って寸法さ」

 

「つまり、いつものやつですか」

 

「そ」と先生の言葉に頷く片岡であるが全く問題ないという表情である。

 

「心配しないで殺せんせー。暗殺で基礎体力ついてるし、良い試合をして全校生徒を盛り下げるよ。ねー皆」

 

女子全員が賛同した。片岡はクラス委員長としての責任感があり、統率力もある。すでに女子は殺る気満々であった。

 

「俺等、さらし者とかカンベンだわ。おまえらで適当にやっといてくれや」

 

一方で男子の方は一筋縄とはいかずさっそく寺坂、吉田、村松は教室から出ていく

 

「……ったく」

 

皆が呆れながら寺坂達を見送るなか

 

「…殺せんせー、ちょっと席を外させてくれすぐに戻る」

 

何を思ってか雄二は彼らを追いかけた。

 

「おい、風見ほっとけよってもう行ってるし」

 

「風見くんはいつでもクラスの絆を大事にしてますからね」

 

「説得するつもりなのかな」

 

「いえ、違うでしょう。彼は無理強いをするような人ではないです」

 

 

 

side寺坂

 

「寺坂、吉田、村松ちょっと待て」

 

「あぁ」

 

なんだこいつ?わざわざ俺ら連れ戻しに来たのか?

 

「なんだ?まさか試合に出ろってか?」

 

こいつは本当に癪に触る。こっちが頼んでもいないのに毎回ちょっかい出してくる。

 

「頭の中が湧いてのかお前?俺にこんな風に話しかけてくんのはお前くらいなもんだ」

 

「そうだろうな」

 

「………」

 

否定しないのはしないでなんかムカつくな

 

「勘違いしてるようだが寺坂、試合に出なくてもいい」

 

なんだこいつそれを言いに来たのか?

 

「お前はお前のやりたいようにすればいい。だが、結果だけ楽しみにしていてくれると助かる」

 

やっぱりこいつは嫌いだ。来た時からそうだったが。衝動的に俺は胸ぐらを掴んでいた。

 

「見下してんじゃねーよ‼︎いい子ぶってみんなと仲良くしてればだれでも付いてくるとでも思ってんのか⁉︎」

 

「……」

 

何も言わねーのか。俺にだってわかるこいつは俺より遥かに強い。こんくらいじゃ動じないし抜けようと思えば抜け出せる。それをしないのは

 

「ただおまえは、自分の手を汚したくねーんだろ‼︎嫌われたくないからな‼︎」

 

さぁ、言い訳してみろよ。

 

「…………そうだな、その通りだ」

 

「は?」

 

「寺坂の言う通り、俺は自分の手を汚したくないんだろう。結局のところ俺は…」

 

「チッ」

 

いきなりしおらしくなりやがって。

 

「あーもういいわ。これ以上この件に俺らを関わらせるな」

 

「改めて言うが寺坂、試合、楽しみしててくれ」

 

本当にムカつく。こいつはいつでも本気なところも

 

 

sideフリー

 

寺坂と話し終えた雄二は教室に戻った

 

「あ、戻ってきたなって、ずいぶん暗い顔だな」

 

「だからほっとけって言っただろ」

 

「…たしかにな」

 

「雄二くん、どうしたの?」

 

明らかにいつもと違う表情に桃花の問いに心配ないと言う。

 

「ただ、痛いところを突かれただけだ。それより、結局球技大会はどうする?」

 

「そうそう。頼りなるのは杉野くらいだけど、勝つ秘策とかねーの?」

 

杉野は元野球部だ。さらに今の主将とは色々因縁も有る。が

 

「無理だよ」

 

元野球部だからこそ絶対的に解るのだ。

 

「あいつらは最低でも3年間野球してきたんだ。ほとんどが未経験のE組じゃ勝つどころか勝負にもならねー」

 

それが現実だろうと容赦なく杉野は言う。

 

「勉強もスポーツも一流とか不公平だよな、人間って」

 

わかっていたことだ、無理に決まってる

 

「だけどさ……」

 

それでも

 

「だけど勝ちたいんだ、殺せんせー。善戦じゃなく勝ちたい‼︎」

 

杉野の胸の内にある想いが溢れ出てくる。

 

「好きな野球で負けたくない‼︎野球部追い出されてE組に来て…むしろその思いが強くなった。E組の皆とチーム組んで勝ちたい‼︎」

 

本心である。このままではいたくないという

 

「それにさ、もう1人にも勝ちたい」

 

「…1人は現野球部主将なんだろうが、もう1人?」

 

誰だと雄二は尋ねた

 

「おまえだよ風見」

 

「俺?」

 

「前にキャッチボールに付き合ってくれたことがあったろ。殺せんせーにスイングショットを使うって決めたとき」

 

以前行った暗殺の前に杉野と話しておりその時キャッチボールもしていたのだ。

 

「おまえ、野球部じゃないのに上手いんだよ特に左手で投げるとさ。なんかそれ見た時にこいつには負けたくないって思ってたんだ」

 

「だが、今回はチームだろ?」

 

「あぁ。だからこれは俺の思いを伝えただけだ。暗殺ではおまえが上でも好きな物では野球では負けたくないっていうな。それでだ、おまえも投げてほしい」

 

「待て待て、俺よりも」

 

「見たらわかるんだ。おまえのピッチングは進藤にも通用する」

 

「…ずいぶんと評価されたもんだ」

 

雄二はそう言いながらため息をついたが先ほどの暗い顔はなかった。

 

「わかった。ただ、ある程度手ほどきは頼むぞ」

 

「もちろん」と杉野は了承した。

 

「で、殺せんせーは……」

 

すでにマッハで自作ユニフォームに着替えトレーニングする気になっていた

 

「聞くまでもなかったな」

 

「最近の君達は目的意識をはっきり口にするようになりました。殺りたい、勝ちたい。どんな困難な目標に対しても揺るがずに」

 

グローブとバットを触手にもっている殺せんせーはニンマリとしていた

 

「その心意気に応えて、殺監督が勝てる作戦とトレーニングを授けましょう‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダメよ」

 

「即答か」

 

雄二はJBに今回の件を説明したが案の定の答えが来た。

 

「当たり前でしょう。目立ち過ぎちゃダメ」

 

「そんなことはわかってる。けど、頼む」

 

「…どうしてそこまでしたいの?」

 

JBはなんとなくわかっていたがそれでもあえて聞いた。

 

「俺は、どこかであいつらと一緒にいるべきなのかって常に思ってる。だから、確かめたい」

 

「…考え過ぎよ。でもまぁ、どうせ言っても効きそうにないしね。いいわ、やりなさい」

 

「じゃあなんで最初にダメって言ったんだよ」

 

「無駄だとしても、言うしかないのよ立場的に」

 

それに対して雄二は

 

「大変だなぁ…」

 

と心にも無い事を言ってJBを怒らせたのは言うまでない。

 

 

 

球技大会当日

 

『それでは最後に……E組対野球部選抜の余興試合(エキシビションマッチ)を行います』

 

放送後に入って来た野球部のメンバーは念入りにウォーミングアップを始める。

 

「何であんな気合い入ってんだよ」

 

「俺等相手じゃコールド勝ちで当たり前最低でも圧勝が義務だからな。マジで容赦なくるぞ」

 

「関係ない。俺たちは俺たちのやり方がある。それより、殺せん…じゃないな殺監督はどうした?」

 

「あ、そーいやそうだ。指揮するんじゃねーのか?」

 

雄二と菅谷がキョロキョロと探していると渚が「あそこだよ」と指をさす。

 

そこにはボールがいくつか転がっており、その中に殺せんせーが紛れている。

 

「遠近法でボールにまぎれてる。顔色とかでサインが出すんだって」

 

「目立ってなくないか?逆に」

 

と殺せんせーの顔の色が青緑→紫→黄土色と3段階に変わり、サイン帳を見て渚が調べた

 

「えーと……殺す気で勝てってさ」

 

「…言われるまでもないな」

 

「確かに俺等にはもっとデカイ目標がいるんだ。奴等程度に勝てなきゃあの先生は殺せないな」

 

雄二と磯貝の言葉で皆の顔が引き締まる。

 

「よっしゃ殺るか‼︎」

 

「「「「「おう‼︎」」」」」

 

1回表・E組の攻撃

 

「で、俺が先頭打者かよ」

 

「俊足の木村だからこそだろ」

 

「やだやだ、どアウェイで学校のスター相手にさ」

 

「木村、相手がおまえを雑魚と思ってるなら余裕だ」

 

木村の後ろ向きな発言に杉野と雄二がエールを送るとバッターボックスに入り構える。

 

「1発めが肝心だからなまぁ、殺るか」

 

と気合いを入れるも進藤のど真中にストレートに冷や汗をかいて棒立ちになってしまう。

 

(………わかってたけどはやいなー)

 

と思いつつもどこ呑気な木村。ふと殺監督の方を向くと早速指示を出して来た

 

(りょーかい)

 

理解した木村はバットを構え直した。

 

進藤は2球目を投げるこれもストライクと思っていた観客達だが木村はバントの構えをしてボールに当てた。

 

『あーっとバントだ‼︎しかも良い所に転がしたぞ‼︎』

 

内野手は誰が捕るかで一瞬迷った。その一瞬さえあれば俊足の木村なら楽々とセーフにできる。

 

「チッ、こざかしい…」

 

「気にすんな。いかにも素人の考える事だ。警戒しとけばバントなんてまずさせねぇ」

 

進藤をなだめた者もイラついていた。だがイラつき出した時点ですでに殺監督の術中にハマっている

 

次のバッターは渚が入り再び殺監督が指示をだす。

 

先程の木村同様に渚もバントをしたが今度は三塁線に強く当てて前に出てきたサードの脇を抜けていく

 

本来ならこのような奇策などはプロでは通用しない。が、強豪とはいえ中学生の彼らではバントの処理はそう上手くはいかない

 

だがそれはバントを出しているE組にも言える。進藤は中学生で140㎞の速球を投げれる。それを狙った場所に転がすなど至難の業である。

 

だが、彼等はしらない。E組の練習相手が文字通り規格外ということを

 

 

 

 

E組は当日まで時間があるときは練習をしていたがその相手は殺せんせー。

 

投げた球は進藤の倍以上の速さ300㎞当然打てるはずもない。わざと打たされて1塁を目指そうと分身で9人分を補えるような怪物の守備に敵わず、おまけにキャッチャーをしている殺せんせーはささやき戦術で集中を乱される

 

「これは野球か?」

 

そんな言葉を誰が言ったのか、殺せんせーのマッハ野球に慣れた頃には心も身体もボロボロになっていた。

 

「さて、それではここからは先生が進藤君と同じフォームと球種で進藤君と同じにとびきり遅く投げましょう」

 

今まで殺せんせーの球を見た後では140㎞の球など止まって見えた。とはいえ、それでも素人では打ち抜くなどできない。

 

しかし、竹林が偵察してわかった事だが進藤の持ち球はストレートかカーブで試合中9割ストレートであった。

 

なら、バントだけなら充分なレベルで修得できるのである。

 

 

 

 

渚に続いて磯貝もバントで塁に出てついにノーアウト満塁と流れはE組有利な状況になっている。当然だが観客達はどういう事だとざわめきだしていた。そして4番のバッターとして杉野が入る。構えは当然バント

 

(な、なんなんだこいつら⁉︎)

 

今までこのような敵と戦ってきたことのない進藤は混乱の中にいた。

 

(俺が今やってるのは…野球なのか?)

 

それはE組が練習していた時にも思った事だが進藤のそれは恐怖の感情が近い。どうにか心を落ち着かせ内角高めのストレートでビビらせる作戦にでる。

 

が、それが悪手となる。杉野は最初のバントの構えから打撃する為持ち直した。瞬間に進藤達は気付いた時にはもう遅い。軽快な音を出してボールは深々と外野を抜けスリーベースヒット。E組は一気に3点先制した。そして

 

『ご、5番風見君』

 

少し面倒な顔をして雄二が出てきた。その顔は「舐めてんのか」と言われてもおかしくない顔でただでさえ雄二は全校集会で煽りを入れたのもあり、周りからはブーイングが起きていた

 

(殺監督の指示は……了解した)

 

しかしそれを完全無視して雄二は構えるバントではなく、最初から打つ気満々である。

 

(な、舐めんな‼︎)

 

投げられた球は勢いがあるが

 

「ぼ、ぼーる」

 

ストライクゾーンを外れてしまう。

 

(くそ、おちつ…)「なっ⁉︎」

 

続いて雄二はバントの構えをとる。それは木村の時と同じだ

 

(これなら充分バントはいけるとでも言いたいのか⁉︎)「ざけんなっ!」

 

寸前のところで雄二はバットを引っ込めてこれもボールとなる。そこで進藤は気付いた

 

(そうか、こいつは打つ気がない)

 

E組に自分の球を見せさらに目を馴らすこと、それが雄二の目的である。それに気付いた進藤は次は冷静に2球ともストレートを出した。その2球とも雄二はバントの構えでどちらもバット引っ込めていた。

 

(だが、警戒は必要だ次はボールだ)

 

ストライクギリギリのボール球これもスルー。観客からは振ってみろとヤジが飛ぶ

 

「これでワンアウトだ‼︎」

 

投げられたその球を……またもスルーだが

 

「ふぁ、ファーボール!」

 

「ちっ」

 

進藤はストライクゾーンに投げるつもりだった。だが、その瞬間雄二の目が変わりバットを構え直した

 

(打たれる⁉︎)

 

人間はいきなりの変化についていけない。しかも進藤は3点取られた状態だ。こいつも何かしてくると思った時点で冷静でいられない。さらに杉野の時とは違い投げる寸前。まだ中学生の彼ではまともな球など投げれない

 

1塁に向かう雄二の顔を見て進藤は気付いた。こいつに自分が操られていたのだと。それは彼と他の野球部にプレッシャーを与えるには充分過ぎた。流れは完全にE組だった

 

そう、だった。彼が出てくるまでは

 

『えー只今入った情報によりますと野球部の顧問の寺井先生は試合前から重病で、部員達も先生が心配で野球どころではなかったとのこと』

 

当然そんな事ないので野球部は一瞬混乱するが出てきた彼を見てホッとする事でそのウソに信憑性を持たせた。

 

『それを見かねた理事長先生が急遽、指揮を執るそうです‼︎』

 

理事長(ラスボス)登場。試合はここからである

 




感想意見お願いいたします

次回は雄二が投げます



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近いと誓いの時間

随分遅くなってしまいました
まさか新年明けてゆっくり休める日が一日もないとは…

ようやくひと段落したので一気に書きました
では


「おっ、やってんねそっちも」

 

「あ、凄い‼︎野球部相手に勝ってる‼︎」

 

試合を先に終わらせた女子達が応援に来た。ちなみに、彼女達の結果は惜敗。後で男子達も知るのだが茅野が女子バスケのキャプテンの巨乳が目に入り怒りと殺意で思うように動けなくなってしまったのが主な理由である。

 

「まぁ、ここまではね。でも見ろよあれ」

 

言われて見た先にいる人物を見て納得した。

 

「早々にラスボスが登場したわけ」

 

 

 

 

「理事長先生、ありがとうございます」

 

理事長は進藤の言葉に軽く「うん」とだけ言う。

 

「さてまず最初に杉野君だけど、部活に出られなくなってから市のクラブチームに入団したそうだ。彼なりに努力しているんだね」

 

その言葉に野球部は顔を下に向けた

 

「だがそれがどうした?小さな努力なんて誰でもしている。だが、君達は選ばれた人間だ」

 

「選ばれた…」

 

「そう!これからの人生でああいう相手を何千も踏み潰して進んでいくんだ。だから、今しているのも野球と思わないでただの作業と思ったら良い」

 

野球部の目が変わる。気合いはあるのはもちろんだが、それはまるで獲物を狙う目のような。

 

「あぁ、それと風見君についてだけど……」

 

 

 

 

いくつか理事長が指示を出して試合再開となる。だがそれは先程までE組がしていたものより異様な光景である。

 

『こ、これは何だー⁉︎』

 

解説ですら驚く。外野選手を含めた守備全員が内野に集まる。本来ならこんなことをすればバッターの集中を阻害する極端な前進守備として審判による注意があるだろうが、

 

「ルール上、フェアゾーンならどこを守っても自由だし、審判があっち側についてるんじゃ、まぁ無理だろうね」

 

竹林の言う通り前原、岡島はこれによりあっという間にアウトを取られた。続いて千葉が出るが内野守備にビビり、バントの構えもできてない。進藤の豪速球でストライクを取るだが2球目に入った瞬間1塁にいた雄二が走り盗塁をする。極端な守備をしてるのだから当然セーフ…だが

 

『野球部、完全スルー‼︎プレッシャーを与えるつもりだったのか?そんな浅はかな手は通用しないぞ!』

 

盗塁されたことなど全く気にしてないというより雄二を見もしない。理事長が彼らに教えた事それは

 

「彼は天才のように見えるが、実際は努力型だ。本当の天才である君達には遠く及ばない。だから姑息な手で君達にプレッシャーを与えてくるだろうが、基本無視してかまわない。おそらく彼も運動神経が良くてもバントくらいしかできない。そして痺れを切らして盗塁をして少しでも君達を揺さぶろうとするだろうね」

 

その読み通りの動きだったから無視したのだ。先程雄二は進藤をコントロールしたが今度は雄二が理事長にコントロールされていた。これにより意趣返しができ、野球部はさらに自信を高めてしまった。

 

「すまない。余計なことをしてしまった」

 

「気にすんなよ。俺らのためにしてくれてんのはわかってるから」

 

スリーアウト後雄二が謝ってくるが皆「気にすんな」と言う。

 

「気合い入れ直して守備と行くか。まずは俺からな」

 

「いや、舐めらてるのは我慢できない俺から先に行かせてくれ」

 

と、雄二が出る

 

「…いいぜ。なんか考えもあるんだろうし」

 

 

 

 

ピッチャーボックスに立ち少し上を向く

 

(あぁ、こんなとこに俺はいるのか)

 

学生同士、しかも今この試合は単なる余興試合(エキシビションマッチ)だ。それでもここに立っているそれが雄二には少し信じられない想いだった。

 

『おーっと、E組ピッチャー!呑気に上の空かーもはや諦めムードかー』

 

(さて、やってみるか)

 

side渚

 

キャッチャーの渚はまたどこか遠いところを見るように空を見た雄二に不安を感じた。ちゃんと投げれるのか?という不安ではない。

 

(杉野と殺せんせーの特訓で充分に力は付いたらしいし)

 

雄二曰く、姉から左で投げた方が良いと言われたとのこと。さらに前の学校にいた時にも投げる練習をしていたそうだ。もっともボールではなく石らしいが。

 

 

「その時は野球なんてできる環境じゃなくてな。ちょっと鳥を落とそうという気持ちでやっていた」

 

「結構危ない気持ちだね…」

 

「確かにな。まぁ、練習はしたが結局鳥にも人にも投げる機会はなかったが」

 

「どっちもダメだよ!投げちゃ‼︎」

 

 

そうして先生と杉野から手ほどきを受けて今日に間に合わせた。だからその点で不安はない。

 

(っと僕も集中しないと)

 

雄二のあの顔を見るとなぜだかわからないが何か親近感のようなものを感じる。それが不安の理由なのだが、今それを考える暇はない。

 

 

sideフリー

 

キッと目でバッターを見る。ほんの一瞬だけ相手がたじろぐがすぐに構え直す。フゥと呼吸をし直してから振りかぶり投げた。

 

「ストライク!」

 

進藤ほどではないがそれでも野球部のメンバーの彼は驚きを隠せない。正直素人に毛がはえた程度だと思ったからだ。だがその球は推定ではあるが120㎞の速さに近い。そうして次の球もストライクを取られる

 

(だが、次は打てる)

 

正確な球だが正確すぎる。だから打ちやすい。実際雄二は2人からはほとんどストレートしか教わっていない…

 

(もらった‼︎)

 

杉野からストレートの手ほどき、殺せんせーからは

 

『打ったー!…いや、これはフライだ!おっとしかしザルな守備のE組こぼしてしまうその間に2塁をっと狙いません余裕ですねー別に行っても良かったぞ』

 

フライを取れなかったが持ち直しが早く2塁に行くより安全策をとった。

 

(……今のは、気のせいか?)

 

理事長は何か違和感を感じたが、決定的なものもないので気のせいとした。

 

 

『さー次です。せめて野球部だった杉野君の方がいいんじゃないかーまぁ、その彼の球は遅すぎて話にならないらしいけど』

 

実況の煽りで笑いが起こるが聞こえないフリをしてまた投げるが

 

「ファーボール!」

 

『おやおや、威勢がいいのは最初だけか!これでノーアウト1塁2塁です。野球部は完全に調子を戻したようです』

 

2人目は最初だけストライクをとるが残りは全てボールとなった

 

『さぁ、野球部得点のチャンス‼︎しかもこの後はエース進藤君だ!』

 

実況の煽りで観客からは歓声があがる。そして、球を投げた

 

「っ!」

 

「よし!」

 

野球部は完全に油断した全員が「こいつは素人に毛が生えた程度」と侮っていた。ここで投げたのはギリギリストライクゾーンのストレート。見逃しても良かった。その方が逆に良かったかもしれない。だが彼らは理事長の言うように選ばれた者としての、野球部としての練習を重ねてきた。考えるより先にストライクゾーンのボールに向かってバットを振った。その結果はピッチャーフライ

 

「木村動くな!」

 

即座にその球は木村のグローブに向かう。野球部はすでに走り出していたが正確無比の球が吸い込まれるようにグローブに入った。

 

「!そのまま2塁へ」

 

いくらザルな守備とはいえ、最低限の守りはできる。雄二のプレーに一瞬呆然としてしまった1塁ランナーに気付きギリギリだがなんとか

 

『「と、トリプルプレー…」』

 

審判と実況の声が聞こえてようやく事態を理解した。殺せんせーから受けた指導それは打たせる球の投げ方。もちろんだが狙ってできるなら誰でもできる。殺せんせーの練習は時間がある時は残って、さらに律と竹林の選手データで癖などを深夜やバイトの時の待つ時間など使える時間を使うなど様々な徹底的な研鑽のもので奇襲に近い。故に次にやっても失敗するのはまず間違い無い。

 

「すげーよ風見!トリプルプレーだぜ!」

 

「偶然だ正直ダブルプレーで上々だと思ってた。運が良かった…あの進藤相手じゃどうにもならなかっただろうしな」

 

その進藤は今も理事長の暗示による改造を受けている。誰が見てもやばいと思うだろう

 

「あれをお前に任せてしまったな」

 

「大丈夫任せておけ」

 

杉野の方はまったく気にせず、むしろワクワクしてるかのようであった

 

「すまないが、あとは任せた、そろそろ、限界、だ」

 

先ほども言ったが時間を使うだけつかった雄二は当然ながら寝不足だ。むしろここまで出来たことも奇跡である

 

「おう!ゆっくり休んでな」

 

「まぁ、試合が終わるまでは起きてるよ」

 

 

 

「雄二くん、凄かったよって大丈夫⁉︎すごくフラフラしてるけど!」

 

「すまない桃花、肩貸してくれると助かる」

 

「あたしも貸すよ矢田ちゃんとだけじゃ支えるの難しいし」

 

「だ、大丈夫だよ」

 

「あっ、だったらわたしもー」

 

「いや、2人で充分でしょー」

 

莉桜と陽菜乃も入ってちょっとしたカオスである

 

「どうでもいいから早くしてく…」

 

「「「どうでもよくない‼︎」」」

 

3人同時の答えにふかーいため息がでる雄二であった。

 

 

 

 

野球部の守備は先程と変わらず極端な前進守備でガチガチに前を守っており、カルマはそれをじっと見ていると審判から注意を入れられた。

 

「どうした?早く打席に入りなさい」

 

審判に言われたカルマはそれを無視し理事長の方を向いて口を開いた。

 

「ねーえ、これってズルくない理事長センセー?こんだけ邪魔な位置で守ってんのにさぁ審判の先生は何でなにも注意しないの?観戦してるお前らもおかしいと思わないの?………………あっ、そっかぁ!お前等バカだから守備位置とか理解してないんだね」

 

カルマがそう言うと周りはイラッとしたのか野次を飛ばしていた。

 

「小さいことでガタガタ言うなE組が!」

「たかがエキシビションで守備にクレームつけてんじゃねーよ!」

「文句あるならバットで結果出してみろや!」

 

周りは罵詈雑言を言い、中にはゴミ飛ばす者もいた。そうしてカルマを含め全員何もできずスリーアウトとなる

 

「さっきの挑発は殺監督の指示か?」

 

「まぁね。多分何か考えがあるんだろうけど」

 

2回の裏、早速エースの進藤の強打によってホームランを決められる。だがこれは杉野も想定内だ

 

『さてピッチャーが変わったが、やはり遅い球だ‼︎おいおい元野球部なら気合見せろーさっきのやつの方がまだいいぞー』

 

(やれやれ、実況は何も見えてないのか)

 

雄二は杉野とピッチングの練習をしていただからわかる。今のはわざとだと。

 

(つっても、ホームランにさせるきはなかったんだけど…あーあ、風見のやつ期待してんだなぁ)

 

一方杉野はその視線に気付いて心の中でぼやいた。彼から見れば雄二の方が凄いと思えた野球の経験はない奴があのようなトリックプレーを成功させたのだ。

 

もちろんあれは練習と研究、相手の油断によるものであることもわかっているそれでも

 

(負けてらんねーよな、俺も‼︎)

 

野球が好きで努力した彼を刺激するには充分な理由だった。闘志をボールに乗せ、今自分ができる新たな技を見せた

 

「うおっ」

 

どう考えてもストライクゾーンのボールがいきなり曲がる。打つ気でいたバッターは振りかぶったが空を切るだけだ。野球部はまさか杉野がここまで様々な変化球を投げれるとはおもわず3人連続三振となった。

 

「わるい、1点とられた」

 

「気にするな。それにさっきの変化球は見事だった」

 

ハイタッチをした2人に皆が微笑んだ。しかし試合が終わったわけではない続いて三回表は相変わらずの鉄壁のバントシフトで三者凡退

 

「ここを守り抜いたら勝ちだ。任せた」

 

「簡単に言うなー。まぁ、やってやるさ」

 

最後のピッチャーも杉野である。正直雄二の技では打たれる可能性が高いためだ。だが、

 

『あーっとバント⁉︎』

 

先程の意趣返しと言わんばかりの連続バント。本来ならブーイングが来ても良いだろうがE組が先にした事によって〔手本を見せる〕という大義名分ができてしまった。E組は基本バントしか練習していないため守備はザルだ

 

「流石にこれはまずいな」

 

あっという間にノーアウト満塁そしてつぎのバッターは

 

『さぁ、真打登場!我が校が誇るスーパースター進藤君だー‼︎』

 

1回、2回裏を合わせて1点で抑えられたのは理事長にとっても想定外ではあったが、何の問題もない最初から最終回でこれを演出して勝つことのために進藤を育てて来た。強者による圧倒的な一撃のために

 

(杉野…)

ボコっ「もどかしそうな顔をしなくとも大丈夫ですよ風見君」

 

「……いきなり地面に現れないでくれ殺監督。というか、誰かに見つかったらどうすんだ?」

 

「ご心配なく、最大の注意を払っていますので」

 

「そうか」と言うがそれでも心では(本当か?)と思わずにはいられなかった

 

「で、何が大丈夫なんだ?」

 

「まぁ、とにかく見ててください」

 

そう言われて見ると磯貝とカルマが明らかにバッターの集中を乱す前進守備をしていた

 

「さっきそっちがやった時は審判は何も言わなかった。文句無いよね理事長?」

 

先程のカルマのクレームは同じ事をやり返しても文句を言わせない為の布石だった。明確な打撃妨害と見なすには守備がバットに触れた時だが、このような前進守備が集中を乱す妨害行為と見なすかは審判の判断次第である。しかし先程カルマのクレームを脚下した以上今回も黙認するしかない。

 

小賢しい。どうぞ、ご自由に。選ばれた者は守備位置位で心を乱さない」

 

その程度で集中力が落ちるような教育(・・)はしていないと理事長は高を括る

 

「じゃ、遠慮なく」

 

カルマは楽しそうに、磯貝はやれやれと言った感じでさらに前に出る

 

『「(近い‼︎)」』

 

その距離は振れば確実にバットが当たる位置。前進守備など生温いものではないゼロ距離守備だ

 

「あんなのじゃどんなに集中力をあげても無理だな。これも監督の作戦か?」

 

「ここまでは言ってません。カルマ君のアドリブでしょう。…それよりも、心配ではないんですか?万が一でも当たれば骨が砕けますが」

 

「いや、1番心配しなきゃいけないあんたが練り菓子作りながら余裕で心配してない時点で大丈夫だろ」

 

そもそもマッハ20の暗殺で皆の動体視力は鍛え上げらている。さらに2人の度胸はE組でもトップクラスだ。

 

雄二と殺監督の読み通り、進藤の大きく振ったバットをほとんど動かずかわした

 

「ダメだよそんな遅いスイングじゃ。…次はさ、殺すつもりで振ってごらん」

 

カルマの静かな煽りは、進藤にはまるで悪魔か死神の声にも聞こえただろう。もはや理事長の戦略に体がついていかないようになってしまい、第2球はどうにか振るが腰が引けたスイングになる。ホームベースに当たってバウンドしたボールをすぐにキャッチャーの渚に投げ、そのボールを三塁に投げツーアウト。そしてそれを一塁に投げる。進藤は完全に力が抜けへたり込んでしまい動いてないポンポンとバウンドするボールを冷静にキャッチ。トリプルプレーだ

 

『ゲ、ゲームセット‼︎…なんと、E組が野球部に勝ってしまった‼︎』

 

ベンチの男子も応援した女子も大喜びで讃えた。

 

「良いもんがみられたろ?」

 

「……チッ」

 

雄二は観戦していた寺坂達に言う。それが気にくわないのか舌打ちをして早々に去った。それを見届けてから進藤と話し終えた杉野に声を掛ける。

 

「何話してたんだ?」

 

「ん、ちょっとした自慢と、次は高校でっていう約束」

 

「自慢?」

 

「あぁ、今の俺にはこんな仲間達がいるんだっていうな」

 

「そうか。ただ…」

 

「?」

 

「約束の方はあの先生をどうにかしないと、だけどな」

 

「………確かに」

 

いろんな意味で決意を新たにし、球技大会は幕を下ろした

 




さて次回は鷹岡回かオリジナル回で少し迷ってます

亀更新なのに迷うって……

感想、意見お待ちしてます。誤字に気付いて言ってくださる皆さまにも感謝です!


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家族(偽)の時間

考えた結果、鷹岡回にすることにしました


「それでどうだったの?」

 

開口一番にJBが聞いたのは球技大会の感想だった。

 

「そんなことを気にするとは、随分子供扱いされたもんだな」

 

「自分の胸に手を当てて理由を考えてみたらどうかしら?」

 

「残念だが俺にはお前みたいな立派なものはないからな」

 

わなわなと顔赤くしながら体が震えているのを当然のごとくスルーして最初の質問に答える

 

「正直言って、わからない」

 

「あなたねぇ」

 

「だが、良い思い出作りというものはできた気がする」

 

それに対してJBは「そう」とだけ優しい顔で言った。

 

「で、ただそれだけの為に呼び出したわけじゃないんだろ?」

 

JBは言われると大きめの茶封筒を取りだして机に置く。

 

「それを開ける前に1つ言っておくけど、あなたはしばらくあのクラスで暗殺の訓練補助に専念しなくて良いわ」

 

「どういうことだ?」

 

「上からの指示で烏間は………」

 

 

 

 

「視線を切らすな‼︎次に標的(ターゲット)どう動くか予測して行動しろ‼︎」

 

体育の暗殺訓練、いつものように烏間の適切なアドバイスの声が響く。

 

「中途半端になるな‼︎同時攻撃は互いの動きを合わせつつカバーして行動‼︎」

「何度も言うが予測は大切だ。が、プロは予測不可能な事態に対してもある程度応用が効く。それに対する判断ができてから奇襲を狙え‼︎」

「大振りしすぎるな‼︎小技を練習しろ‼︎」

 

1人1人の特性を見つつそれに合わせた訓練とアドバイス。彼も殺せんせー同様に生徒をよく見ている

 

「さて、今度は俺も行くとしよう…カルマ、協力頼めるか?」

 

「ん?いいよー。つか、雄二がペア組むって珍しいね」

 

「まぁ、ちょっとな」

 

カルマある程度雄二と接してきた故にこんな風に雄二が言うときは必ず何かあった時だということはわかってる。が、あえてそれは聞かず訓練に集中する

 

「珍しいペアだな」

 

烏間の方も相手を見て警戒を上げる。試合が始まると雄二が7カルマが3の割合で攻撃をする。着実に攻める雄二とのらりくらりとしながら雄二が作り出す隙に的確な攻撃をし、どこかで決定的な一撃を与えようと模索している。

 

(相当やりづらいな)

 

カルマだけなら余裕で対処はできるがそこに雄二が加わってきて対処に追われてしまう。

 

「………そこ!」

 

今までのらりくらりとした動きから突然理想的な動きでナイフを振いだしたカルマに意表を突かれる。雄二もそれに合わせた動きで視線を誘導し、烏間の動きを制限する攻撃を仕掛ける

 

カルマが引いて雄二が、雄二が引いてカルマが。この連続攻撃に対処できるのは烏間の実力だが限界もある。当然カルマは奇襲が出来ないかと模索しており、烏間の動きに制限を掛ける。そして…

 

「良‼︎2人にもそれぞれ加点1点!」

 

雄二のナイフが当たることで終了した

 

「即席とはいえ、いいフォーメーションだった」

 

「ありがと。けどもうちょいやれてたら、いい感じで烏間先生に決定的な一撃が与えてたのに」

 

「バカ言うなよ。あれはまだ本気じゃないどころか、実力の半分…いや、3分の1も出してないかもしれない」

 

「なんでわかんの?」

 

「………なんとなくだ」

 

半分真実で半分嘘である。雄二がE組にきた理由の1つに生徒の援護がある。ここでいう援護は当然暗殺の援護もあるが訓練による向上もあり、それ故に烏間の訓練の補助もしていた。故に烏間の実力をあらかじめ聞いている。だがどこまで今の訓練でその実力をでしているのかもわからない。だからなんとなくである。

 

「ふーん…あ、渚くんが吹っ飛ばされてる」

 

「………」

 

「結構おもいっきりだね。烏間先生にしては珍しいね…雄二?」

 

「いや、なんでもない(横目で見た限りだが…やはり)」

 

 

 

 

「あー今日はいける気したんんだけなー」

 

「どこが、全然当てられる感がなかったぞ」

 

「そう言う木村も全くダメじゃん」

 

「スキ無さすぎなんだよ烏間先生」

 

「まぁ、精鋭無比をモットーにする空挺部隊に居たんだ。相当の実力と技術がなきゃいかんさ」

 

「え、そうなの?烏間先生から聞いたの?」

 

(……おっと、そういうことも話してないんだな)

 

桃花の疑問は皆も同じであった。脳内で一瞬考え

 

「…初めて会った時に色々話してたからな」

 

とだけ言う。正直、無理があるかと雄二は思うが

 

「烏間先生ってなんていうか、私達との間に壁っていうか、一定の距離をあけてるような感じがしたんだけど」

 

「なんか雄二と烏間先生って仲良いよね」

 

「まぁ、気が合うというやつかもな。だからといって他の皆との間に壁を作ってるわけじゃない」

 

「そりゃ、厳しいけど優しくて、私達のこと大切にしてくれているのわかるよ……でも」

 

それは任務だからではないか?陽菜乃の思いは生徒が思っているそれと同じである。

 

「そんなことはありません。確かにあの人は先生の暗殺のために送りこまれた工作員ですが、彼にも素晴らしい教師の血が流れていますよ」

 

(……多分、俺の事もそろそろ勘付いてんだろうな)

 

チラリと自分を見られた気がした雄二は改めてこのターゲットに警戒を強めた

 

(とはいえ、はっきり言わないのは俺が秘密してることをわざわざ言いたくないって事か)

 

つくづく変な奴だとも思っていると校舎から体格の良い男が片腕に大きめのダンボール箱と両腕に紙袋や何かが入ってパンパンになっているビニール袋を持って校庭に来る。

 

「やっ!俺の名前は鷹岡 明‼︎今日から烏間を補佐してここで働く!よろしくなE組の皆!」

 

誰だと思っているとそれらを下ろして自己紹介をしだす。

 

「気をつけろ皆、爆弾かもしれない」

 

「そんなもん持ってこないよ⁉︎流石に!」

 

「軍人がいきなりあらわれて、中身がわからない物を持ってきた。まず爆弾かどうかだろ」

 

「おっ、よく俺が軍人だってわかったな(・・・・・・・・・・・・・・)

 

何をしれっと言ってんだという顔で雄二は続ける。

 

「まず体格で何かしてるのはわかる。だが暗殺者ならもっとコソコソする筈だし、何より烏間先生の補佐と言った…なら、ちょっと考えたらすぐわかる」

 

 

雄二のバイト先、JBの部屋

 

 

「烏間は今後、外部からの暗殺者の手引きに専念してもらって、代わりの者が生徒の訓練を行うそうよ」

 

「…なんだ?女の尻を追いかけてて左遷されたのか?」

 

「あなたじゃないんだから、そんなことするわけないでしょ」

 

「失礼だな。俺だってそんなことはしない」

 

どの口が言うのよという言葉を腹に抱えてJBは続ける

 

「まぁ、とにかくそいつにはあなたの事は今は話してないわ」

 

「…なぜだ?」

 

「詳しくはそのファイルの中を見てほしいんだけど、保険の為よ。あなたのことを知る人物は少ない方がいいし、でも一時的。どのくらいかはわからないけど通達はされるでしょうね」

 

「それと俺が訓練の補助をしないというのがどう結びつく」

 

「…危険だからよ」

 

「そいつがする訓練がか?」

 

「それを言うなら、烏間だって鬼教官って言われてたわ。でも、クラスにあわせた訓練もしているのはあなたの報告でわかってる。だからこそ、新しい教師もそうするかもしれない。けど…」

 

少し間を置いてJBははっきりと言う

 

「もし同じやり方なら、絶対にあなたとは合わないわ」

 

 

 

 

(確かに胡散臭くて気持ち悪い不気味な笑顔だ)

 

「あっ!これ〔ラ・ヘルメス〕のエクレアじゃん‼︎」

 

中身を確認するとそこにはケーキや飲み物が入っていた。甘いもの好きの、特に茅野は目をハートにしている

 

「こっちは〔モンチチ〕のロールケーキ‼︎」

 

「…俺にはよくわからんが、有名なのか?」

 

「高級ケーキ屋だよ‼︎材料も味もパティシエも超一級品の‼︎その分高くてなかなか手が出せないんだけど…ゴクリ」

 

「そ、そうか。だが目が怖いぞ茅野」

 

「良いんですかこんな高いの?」

 

磯貝が心配そうに聞くが鷹岡は笑って答えた

 

「おう食え食え!俺の財布を食うつもりで遠慮無くな!…けど、モノで釣ってなんて思わないでくれよ。おまえらと早く仲良くなりたいんだ」

 

ドスッとあぐらで座りエクレアを掴む

 

「それには皆で囲んで飯食うのが一番だろ!」

 

(営業スマイルぽくもないな。…それがまた不気味だが)

 

喜んで皆が食べだし、殺せんせーも当然のごとくムシャムシャと甘いものを頬張る

 

「同僚なのに烏間先生と随分違うスね」

 

「なんか近所の父ちゃんみたいですよ」

 

「ははは、いいじゃねーか父ちゃんで!それに、同じ教室にいるからには…俺達、家族みたいなもんだろ?」

 

木村と原の言葉に気を良くしたのか生徒達と肩を組んで言う

 

「ほら、雄二くんも」

 

「一応聞くが、これ食べたんだから言うこと聞けよ的な奴じゃないよな?」

 

「心配性なやつだな〜ないよ」

 

「………なら、貰えるものはもらうか」

 

ようやく雄二も座って…

 

「あ、こっち座りなよ」

 

「「ちょ、矢田ちゃん⁉︎」」

 

「早い者勝ちだよー」

 

「…何を取り合ってんだよ」

 

色んな意味で疲れた体に、甘いものはよく効いた。

 

 

 

 

「昨日の呼び出されたかと思えば、なんなんだよ」

 

「仕事よ。言っとくけど今回拒否権はないから」

 

JBからもらった資料を見て雄二は苦い顔をする。

 

「この仕事やった後だと、どうしても遅刻だな」

 

「あなたのことだから心配して早く学校に行きたいのはわかるわ。けど、」

 

「わかってる。拒否権はないんだろ」

 

こんな時にとぼやくが仕方なく準備をするため席を立つ。

 

「あの男の、鷹岡 明の資料は読んだのよね?」

 

「…………」

 

「思うところが多いのはわかるけど、彼に手を出したら私も庇えないわ」

 

「…そういえば聞きたかったんだが、烏間の方はともかく俺が訓練の補助を手伝わなくていいってやつ。あれってJBの独断だろ?上が指示したとは思えない」

 

「ええ、そうよ。前にも言ったけど私は上層部のクソみたいな考えには賛同していない」

 

「いいのか?俺があそこにいる為の理由の1つだぞ」

 

雄二の疑問はもっともであった。それ故に心配であった

 

「流石に隠し通しは無理だろ?いつかはあいつに俺の情報はいく。そうなればあんたの首が…」

 

「大丈夫よ。すでにこの件は通ったわ。地下の教授の指示もあったし」

 

「教授?」

 

「あなたは知らなくていい事よ。それより、早く準備をしなさい」

 

「…了解しました」

 

やる気のない声で言うと雄二は部屋を出た。

 

 

side:春寺(JB)

 

「正確に言うならこっちがバレた時の為の工作をしようとしてたら、教授から同様の考えが来ただけなんだけどね」

 

正直、教授からのメールを見たときはバレてしまったと背筋が冷えた。だが内容をよく見ると私がしようとしていた事を認めさせる為の工夫であったから驚きだった

 

「どういうつもりなのかしらね」

 

ただ、1つだけ言えることがある。

 

「厄介なことになりそうね。……ハァ」

 

「ため息を出すと幸せが逃げますよ」

 

「…ありがとう律。でも嫌ってほどわかってるから」

 

というよりAi に心配されるというのは正直どうなのだろう

 

 

sideフリー

 

「よーし集まったな!って全員はいないな」

 

鷹岡の言う通り、全員はいない

 

「カルマと寺坂は多分サボりです」

 

「まったく。んじゃ、そいつらには後で話しておくとしよう」

 

「雄二の方は多分バイトかと」

 

「ふむ。まぁ、それは良いか(・・・・・・)。じゃ、今日から新しい体育を始めよう!ちょっと厳しくなるが、終わったらまたウマいモン食わしてやるからな!」

 

「とかなんとか言ってるけど、自分が食べたいだけじゃないの?」

 

「まーな。おかげでこの横腹だ」

 

 

 

クスクスと笑いが出ているのを遠目で烏間は見ていた。

 

(見事に生徒たちの心を掴んでいる。…鷹岡の言う通り、俺のやり方は間違っているのだろうか?)

 

プロとして常に一線を引くというやり方に疑問を持ち出した時、机にある写真が目に入る。鷹岡とその生徒達の楽しそうに笑う写真…そして

 

「なんだ、これは?」

 

もう一枚、手を縛られて背中に鞭で打たれてできた痣をもった生徒と、E組に見せたものと同じ笑顔で接する鷹岡が写った写真だった

 

「まさか!」と思い再び外を見た時既にそれは起こっていた

 

 

ほんの少し前

 

「さて!訓練の内容の一新に伴って、E組の時間割も変わることになった。これを皆に回してくれ」

 

その回された時間割を見て皆驚愕した。

 

「なっ、なんだよこれ⁉︎」

 

「10時間目、夜9時まで…訓練?」

 

それは中学生の時間割ではない。勉強時間を最低限以下にし残りは訓練というものである。しかも拘束時間も中学生にやるものではない

 

「これくらいは当然さ。ちゃんと理事長にも話しは通してある。地球の危機ならしょうがないって、承諾してくれた」

 

「ちょ、待ってくれよ!無理だぜ‼︎こんなんじゃ成績が落ちるよ!理事長もそれをわかってて許可してるんだ‼︎」

 

前原の言う通り、彼にとっては地球の危機より(・・・・・・・)いかに自分の作った理念に通った学園になるかである。

 

「それに、遊ぶ時間もねーし、できるわけ…」

 

その先の言葉を遮るごとく鷹岡は前原の鳩尾にヒザ蹴りをくらわせた。

 

「…『できない』じゃない。『やる』んだよ。言ったろ?俺達は『家族』で俺は『父親』だ。世の中に父親の命令を聞かない家族がどこにいる?」

 

暴力を振るっているのに笑顔。その異常な鷹岡に皆戦慄した。

 

「さぁ、まずはスクワット100かける3セットだ。嫌なら抜けても良いぞ、その時は俺の権限で俺が手塩に育てた屈強な兵士を新しい生徒として補充するだけだ」

 

逃げ道はないと遠回しに告げた。

 

「けどな、俺は大事な家族にそんなことしたくないんだ。1人も欠けずに、この家族で地球を救おうぜ‼︎」

 

恐怖が一気に伝わっていく。逆らえば暴力、従えば褒められる。アメとムチを覚え込ませるという鷹岡の考えであった

 

「な?おまえは父ちゃんに付いてきてくれるよな?」

 

1人の生徒、神崎に近付きそう囁く。ガクガクと恐怖に震えながらそれでも

 

「私は嫌です。烏間先生の授業を希望します」

 

勇気を出して答えた瞬間、顔を叩かれた

 

「おまえらまだ分かってないみたいだな?『はい』以外は無いんだよ。なんなら拳語り合うか?そっちの方が得意だぞ‼︎」

 

笑いながらそう言う鷹岡に

 

「っがぁ⁉︎」

 

礫が顔をかすめた

 

「……あんた子供を育てたことないだろ?父親を名乗るなら、まずそれからだと思うぞ」

 

「「「「「雄二[くん]‼︎」」」」」

 

「…急いで来たが間に合わなかったか」

 

見ると前原が腹を抑えて胃の内容物を吐き出し、神崎は叩かれた衝撃で目眩を起こしていた

 

「父親にこんなもん投げるなんて、躾が必要だな」

 

「軍人のくせにボーっとしてるのが悪い」

 

と言うが雄二にはわかっていた。この男は少し遅れたが咄嗟に狙われているのに気付き顔をずらして避けたと

 

「それにあんたを父親に持った覚えはないんでな。もっとも、願い下げだがな」

 

その言葉に鷹岡は

 

「そうかぁ?親愛を持ってるだけいいんじゃないか?」

 

ニヤリと笑う。

 

「少なくとも、お前の家族より」

 

瞬間、雄二の目が見開いた

 

「知らないと思ってたか?なんなら今からでもお前の父親にでも…ごぁ‼︎」

 

今度は見えなかった。あっという間に近づいて腹に拳が入る。

 

「さすがに、うまいな。最小限のダメージにしたか」

 

こうくるのはわかっていたがあまりにも速く防ぎきれなかったがそれでも鷹岡はダメージを最小限にした為あまり効いていない。

 

「(まさかもう伝わっているとはな)2つ言っておく。別に今の俺はあの頃を不幸と思ってない。あの父も、気まぐれでも優しくしてくれる瞬間があったし、母親からは愛されていた。そしてそれ以上口にしない方がいい『事故死』はしたくないだろ?」

 

戦慄が再び包まれる。E組の皆は雄二についてある程度わかったつもりでいた。だが、鷹岡が言った事と、今目の前で『事故死』と言った雄二は彼らの知らない風見雄二だった

 




今回の鷹岡回は雄二の秘密の片鱗に触れる回でもあります。

因みに鷹岡が雄二の情報を聞いたのは訓練開始日です。←早すぎじゃね?というのはわかってます

感想、意見よろしくお願いします。遅れてもちゃんと返信します

では


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候補の時間

いつもより早めに出せました

いつもこうなら…以下略



「おまえこそ、俺に手を出していいのか?おまえの代わりはいくらでもいるんだぜ」

 

「そういうのをなんていうか知ってるか?パワハラって言うんだよ」

 

と言うが雄二は焦っていた。今ここで鷹岡を黙らせたとしても、自分の首が飛んでしまうだけ。

 

(俺としたことがマジで殴ってしまったな)

 

1度目の攻撃は避けたことで当てるつもりはないで言い訳できるかもしれない。だが2度目は本気で殴った。機密保持なら他のやり方があった、そもそも殴る権利はないと言われればそれまでである。

 

「やめろ鷹岡!風見君!」

 

だからここで烏間が来た事は雄二にとって本当に助かったのだ。烏間はすぐに先程殴られた前原と神崎に近付き介抱をする

 

「前原君、神崎さん大丈夫か?」

 

「烏…間先生、大丈夫です

 

「こっちもへーきっス」

 

神崎はややかすれた声で、前原は痛みを抑えていうがどう見ても大丈夫ではない

 

「ちゃんと手加減はしてるさ。大事な俺の家族なんだ、当然だろ」

 

尚も自分の意見を言う鷹岡に最初に異を唱えたのは

 

「いえちがいます。あなたの家族じゃない、私の生徒です」

 

殺せんせーならどうにかしてくれるそう思っていたものが多かったが鷹岡はしっかりと対策していた。

 

「文句があんのか?体育は教科担任の俺に一任されているはずだ。今の罰も立派な教育の範囲内さ。おまえみたいな超生物を短期間で殺ろすようにするんだ、多少厳しくなるのは当然だ」

 

殺せんせーには殺せんせーの教育理念があるように鷹岡には鷹岡の教育理念がある。

 

「多少教育論が違うだけでおまえに危害を加えてない男を攻撃するのか?」

 

超生物として、鷹岡を消すのは簡単であるだがそれでは生徒に筋が通らない。故に、殺せんせーはこれ以上言うこともできない。

 

「じゃあ、俺が今ここであんたを再起不能にすればいいな」

 

「ほう。いいのか?そんなこと言って?」

 

「犠牲は最小限になる」

 

先程からの雄二の言動にE組の皆がゴクリと唾を飲み込む。本気で言っているとわかるからだ

 

「やめるんだ風見くん!」

 

「…………」

 

烏間に言われ殺意を少し解く

 

「もう一度言うぞ。風見雄二(・・・・)やめるんだ」

 

「……ですぎました。すいません」

 

烏間の命令でようやく殺意は消えて絞り出したかのように言う。

 

「ふん。…そういえばさっきのお返しがまだだったな」

 

鷹岡は地面に落ちている石を手に持ち、雄二を殴りつけた。

 

「「「「雄二(くん!)」」」」

「「「「「風見!」」」」」

 

殴られた顔から血が出る。しかも今までとは違い、本気で殴っていた。

 

「これで勘弁してやるよ!言うこと聞く気になったか?」

 

「…ないな」

 

腹に膝蹴りが入る。少し鈍い音がした

 

「ごぅ!」

 

「もう一度いうぞ、言うこと聞く気になったか?」

 

「痛くも痒くも無い。人を育てる身としても軍人としてもダメだな」

 

痛みを抑えるため屈んでいた雄二に追撃の一撃を

 

「そこまでだ。それ以上生徒(・・)に手荒くするな。それとも、暴れたいなら俺が相手をしてやる」

 

頑丈な鷹岡の腕を握りつぶしてしまいそうな力で烏間は抑えた。

 

「雄二君、大丈夫⁉︎」

 

「言ったろ?痛くも痒くも無い」

 

「嘘つけ‼︎あれ俺が受けたのより痛そうだったぞ‼︎」

 

「顔に至っては石を持った状態でだし、血も出てる。とりあえず私のハンカチ使って」

 

中村がハンカチで抑えて血を止める

 

「と言うより、なんで避けないんだよ⁉︎」

 

「避ける必要もないだけだ。けど、良い子は真似しちゃダメだぞ」

 

「こんな時までふざけないでよ‼︎」

 

渚の本気の声に皆が頷いた。

 

「すまない。軽率だった」

 

しかし大丈夫そうな感じを見て安心はしたのか、ふぅという息が何人からか出ていた。

 

「おいおい止めるなよ烏間、これも教育なんだ。暴力でおまえとやりあう気は無い、やるならあくまで教師としてだ」

 

「はっ、本当にやり合えば勝てる自信がないからだろ」

 

「まだ生意気な口を言えるのか?」

 

「あんたの言う家族で例えるなら、反抗期ってやつだよ」

 

「そりゃ仕方がないな。なら、もう少し教育が必要だ」

 

ポキリと腕を鳴らし雄二を睨む。

 

「やめろ。風見君も、それ以上挑発するな………それで、何をするんだ?」

 

「…おまえらもまだ俺を認めてないだろう?父ちゃんもこのままじゃ不本意だ。そこで、コレで決めよう‼︎」

 

鷹岡が懐から取り出して見せたのは対殺せんせーナイフだった

 

「烏間、おまえが育てたこいつらの中でイチオシの生徒を1人選べ。そいつが俺と闘いナイフを俺に1度でも当てたら…おまえの教育は俺より優れていると認めて、おまえに訓練を全部任せて出てってやる。男に二言はない‼︎」

 

クラスに安堵がもたらされたがそんな甘いものではないと雄二は気付いていた。

 

「ただし当然だが俺が勝てば一切口出させないし…使うナイフはこれじゃない」

 

鷹岡が自分のカバンから取り出したナイフは刃がついたそれも鋭利な軍用の本物のナイフだった。

 

「よせ‼︎彼らは人間を殺す訓練も用意もしてない‼︎そんなものを持てば、体がすくんで刺せもできない‼︎」

 

「殺す相手が人間(オレ)なんだ使うのも本物じゃなくちゃだろ?それに俺は素手だハンデとしては充分だ。まぁ、おまえの言い分もあるから、寸止めでも当たったことにしてやるよ」

 

鷹岡の目的は自分への服従。本物のナイフを使わせてビビった相手を完膚なきまで痛めつけることもあるが、最大の目的と別に考えがある。

 

「さぁ、選べよ烏間‼︎生徒を生贄として差し出すか、それとも何もせず見捨てるか、どっちにしてもおまえはひどい教師だな‼︎」

 

それは烏間の失脚。いずれは殺せんせーを殺した英雄を育てた英雄として烏間をアゴで使うため。さらに言えば、この条件にはないが雄二を使うことができないのも理解している。

 

(さっきのはまだ許してないんだぜ〜。烏間の持っている権限が俺に回されたあとでじっくりと恐怖を与えてやるよ)

 

鷹岡の考え通り、すでにナイフを持つ前からビビっている者もいる。そして現状、戦闘(・・)になればこのクラスで勝てるものは雄二くらいであろう

 

(俺は、まだ迷っている。鷹岡のような容赦ない教育こそ地球を救う暗殺者を育てるのに適しているのではないか?)

 

鷹岡が放り捨て地面に刺さったナイフを取りながら考える。烏間とて訓練生を見てきた男だ彼にも教師としての思いはある。だからこそ悩むのだ。

 

 

(思えば、ここの教師になる前から彼をここに呼んだ時から迷っていた)

 

 

 

「……助かった。できれば何か礼がしたいんだが」

 

「んーむさい男のお礼じゃなぁ。ショーティー、おまえは?」

 

「そうだな………普通の学校で、普通の学園生活がしたい、かな。…いや、すまない忘れてくれ」

 

 

 

 

(ここで彼を出せば恐らく鷹岡に勝てるだろう。だがそれは出来ない、何よりさせたくない。ほんの少しでも彼の約束を果たすためにも。…だが、だからといってその代わりに、精鋭部隊にいた鷹岡に他に勝てる可能性がわずかとはいえある生徒を危険にさらしても良いのか?)

 

その可能性をもった生徒に悩みながらもしっかりとした声と表情で烏間は言う。

 

「渚君、やる気はあるか?」

 

選ばれた渚も、他の生徒も何故という言葉が頭にあった。

 

「ぼく、ですか?雄二じゃなくて?」

 

「あぁ、そうだ。誰かを選ぶとしたら君だ。だが返事をもらう前に、俺の考え方を聞いて欲しい」

 

本当は話すつもりはなかったただ、烏間自身も悩みつつも話すと決めた

 

「我々は君達に地球を救う任務を依頼した。故に、俺は君達とはプロ同士だと思っている。プロとして、最低限に払うべき報酬は君達に当たり前で可能な限りの普通の学園生活を保証することだと思っている」

 

「烏間先生…」

 

「………」

 

「だからここで君が断ったとしても、その時は俺が鷹岡に頼んで報酬を維持してもらうようにする」

 

真っ直ぐに目を見て真剣に話した烏間に渚は色々思うことがあった。けれど

 

「やります」

 

信頼できる先生に言われたのもある。が、それ以上に前原、神崎、雄二にやった事にたいしてせめて1発と言う感情があった。渚は烏間にいくつかのアドバイスを聞き前に出る

 

「…渚、烏間先生にアドバイスをもらってるなら大丈夫だろうが、一応言っておくぞ闘志と殺意は胸にしまい込んでおけ。一瞬でいいんだそんなもの出すのは」

 

「…うん」

 

(言うまでもなかったな。…となると、問題はこの後か)

 

渚の表情を見てそう思っていると桃花が話しかけてくる。

 

「どうして、雄二君じゃなくて渚君なんだろ」

 

「さぁな。けど俺にはなんとなくわかる」

 

「何が?」

 

「……烏間先生の目は狂ってないってことかな」

 

 

side渚

 

ナイフを持ったはいいけどどうすればいいんだろう。どう動いて闘えば勝てるんだろう?

 

………闘う?違う。烏間先生が言ってたじゃないか

 

「いいか、鷹岡が仕掛けてくるのは『戦闘』だ。見せしめが目的なら攻防ともに強さを見せつけて2度と皆を逆らえなくする。故にしばらくの間好きに攻撃させるだろう。一方で君が行うのは『暗殺』だ。強さなど示す必要はなく、ただ1回当てればいい。この違いに勝機がある。反撃のない最初の数撃がチャンスだ」

 

そう言っていた。…ドクン、ドクンと胸が高鳴る。

 

……高鳴る?あぁ、ダメだそれじゃ。雄二も言ってたじゃないか。闘志と殺意を出すのは一瞬でいいって

 

闘志と殺意は一瞬。そして闘って勝つ必要もない。あぁ、そうだこれは暗殺

 

 

 

______殺せば勝ちなんだ

 

 

 

なら普通にしよう。そうだ、通学路を歩くみたいに笑みを出して近付こう

 

 

sideフリー

 

テクテクと笑みを浮かべてまるで通学路を歩くように鷹岡に近付く。周りの者の殆どがキョトンとした顔になる。渚の目の前にいる鷹岡でさえも。そうしてポスっと鷹岡の腕にあたるほどのゼロ距離に着き、一瞬の間が空いて殆ど表情を変えずにナイフを振った。

 

「‼︎⁉︎」

 

首筋近くにナイフがきた瞬間に鷹岡はようやく気付いた。殺されると

 

「っ⁉︎⁉︎」

 

ギリギリ体を逸らしたがギョッとしたことによって体勢は崩れた。誰でも殺されかければそうなる。後ろに偏った重心ではちょっと服を引っ張るだけで転んでしまう。そこからは獲物を狩る蛇のごとく背後に回り

 

「捕まえた」

 

ナイフを峰打ちで当てた。

 

 

(間違いない。これは、暗殺の才能)

 

以前の全校集会の時から雄二は気付いていた。が、それはあくまでも可能性の範囲。実際に見てみた今それを確信に変える。

 

(これからが問題だな。……相手が精鋭部隊の軍人なら特に隠せない)

 

「雄二君こうなるとわかってたの?」

 

「いや、信じてたけさ。烏間先生の判断と渚を。まぁ、色々予想外だったけどな」

 

雄二の考えとしては多分一撃目様子見をして一気に暗殺を仕掛けると思っていた。才能があるとはいえ中学生だからと

 

(実際にはそれ以上だったな。全く物怖じせずぶっつけ本番に挑むなんてな)

 

「はい、そこまで‼︎これで勝負ありですね、烏間先生?」

 

ナイフを渚から取ってそれをばりぼりと食べて処分し殺せんせーは言う。

 

「お、おぉぉ‼︎やったじゃんか渚‼︎」

 

「ホッとしたよもー‼︎」

 

はっとした皆がようやく渚に駆け寄る

 

「よくやったな渚。…ありがとう」

 

「え?」

 

「俺と前原、神崎のぶんを返したかったんだろ?だから、ありがとうだ」

 

「うん。ありがとう渚君」

 

「スカッとしたぜ、今の暗殺‼︎」

 

皆から賞賛をうけていると息を切らしながら鷹岡が背後に立っていた。怒りで血管が裂けそうな程にキレて

 

「この、ガキがぁ…父親も同然の俺に刃向かうばかりか、まぐれ勝ちでそんなに喜びやがって」

 

「まぐれだろうが必然だろうが、事実は1つ。あんたの負けだ」

 

「黙れ‼︎犬‼︎」

 

((((((((犬?))))))))

 

雄二に対してそう言った鷹岡に皆疑問があった

 

「おまえには言ってない!おまえだ、もう1回だ今度は絶対油断しねぇ‼︎心も体もボロボロにしてやる‼︎」

 

「…確かに、次やったら絶対に僕が負けます。でも僕らの担任は殺せんせーで教官は烏間先生ですこれは絶対に譲れません」

 

怒りの鷹岡に物怖じせず自分の自分達の意見を渚は伝えた

 

「本気で僕らを強くしてくれようとしたことは感謝しています。けれど父親を押し付ける鷹岡先生より、プロに徹してくれる烏間先生を僕達は支持します。だからごめんなさい…出て行ってください」

 

「黙って聞いていれば…ガキの分際で‼︎」

 

もはや我を忘れて渚達に襲いかかる鷹岡を一瞬で回り込んで顎に肘打ちを打ち込んだのは烏間だった

 

「身内が迷惑をかけたな。後は俺に任せろ上と交渉し、俺1人で教官を務められるようにしてくる…銃で脅してもな」

 

「なんかずっと悩んでたみたいだけど、吹っ切れたみたいですね、烏間先生」

 

茶化すように雄二はいう

 

「……今回鷹岡にしたことは目を瞑ろう。だが次の訓練は覚悟しておけよ」

 

フフフと怖い笑顔で烏間は言う。いつもの光景に皆クスクスとした。

 

「ンなこと、させるかよ、俺が先にかけ合って…」

 

パンパンと手を叩く音がしてそちらを向いた。

 

「その必要はありません」

 

来たのはこの学園のラスボス、理事長だった。

 

「経営者として、様子見をしに来ました。新任の先生の手腕に興味があったので」

 

(まずいなもし鷹岡の続投を望めば俺や烏間でもどうにもならない)

 

「感想を単刀直入に言うと鷹岡先生、あなたの授業はつまらない」

 

心底失望した…といった感じもなく。むしろこうなるとある程度わかってたのか淡々と言う。

 

「教育に恐怖は必要です1流の教育者なら恐怖を巧みに使いこなします。しかし暴力でしか恐怖を与えることのできないのなら、1流どころか3流以下そして自分より強い暴力に負けた時点でその授業の説得力は無くなる。要するにあなたは終わりです」

 

サラサラとポケットから出した用紙に何かを書き込みそれを鷹岡の口にねじ込んだ

 

「解雇通知です。以後あなたはここで教える事は出来ない。この学園の教師の任命権は全て私にあり、全て私の支配下だとお忘れなきよう」

 

(というより、いつから見てたんだこいつ?鷹岡の事を気にしてたとはいえ全くわからない)

 

「あぁ、それと彼に対する慰謝料もお忘れなきように」

 

「……随分と優しいんだな」

 

「いえいえ」

 

と言うが、実際は鷹岡を切ることで支配者は誰なのか明確に示した。食えない人物だと思う烏間と雄二だった。

 

 

 

その後プライドをズタボロにされた鷹岡は逃げるように去り、生徒の努力で体育教師に返り咲けたという事で、皆で臨時報酬として甘い菓子を烏間のお金で買った。

 

だが、1つE組に疑問が残った。風見雄二に対する烏間と鷹岡の対応とその本人の謎という疑問が

 

(けど、別にいい)

 

(雄二君が何者かなんて)

 

いつでも助けに来てくれる頼もしい人。今はそれでいいと皆暗黙の了解にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、そうはいかない人物が居る。それは他でもない雄二自身である。

 

 

雄二のバイト先のJBの部屋

 

 

「まったく、案の定ね」

 

「その割には怒ってないな」

 

「あなたがした行為に対して責任は問わないようにとあの理事長から連絡があったの」

 

悔しがる上司の顔を見てスッキリとしたのかいつもよりJBは明るい

 

「それに、報告を見たけど酷いものだったしね。教育の仕方もだけど、あなたに対して『犬』って言ったんですって?自分もその犬でしかないって事がわからないのかしら」

 

調子よく毒を吐くJBに同意してプッと雄二は笑う。

 

「さて、その話はともかく……もう1つのことだけど」

 

途端に暗い顔をする

 

「仮にも精鋭部隊にいたやつを中学生が倒したんだ。隠せるはずがない」

 

「あなたは大丈夫なの?」

 

「色々痛い。吐きそうなレベルだ……だけどどうしようもない」

 

「潮田 渚…烏間の方は?」

 

「時が来ても必ず止めるだそうだ」

 

ふぅとひと息置いてJBは言う

 

「信用してるのね。なら、とりあえずは報告するわ。なるべく低く見られるようにね」

 

「ありがとうJB」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■–■■■■候補報告書

 

第1候補:潮田 渚




鷹岡編終わりです

さぁ、次はこの小説の難題プールです
一応どうするか考えてるけど………雄二はあの体ですからねー

感想、意見があればよろしくです‼︎


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傷の時間

今回はちょっと短いです


それでこんだけ時間がかかるって|||OTL|||



季節は夏。ジージー、ミンミンと蝉が1週間しかない命をこれでもかと言わんばかりに鳴いて輝かせている。校舎から見た校庭には陽炎がかかっている。そのくらいに真っ盛りな夏、クーラーのないE組は大丈夫なのかというと

 

「あじぃ〜」

 

当然、大丈夫ではない。生徒は皆暑さで机でふせたり仰いだりと限界そうであった

 

「律は大丈夫なのか?オーバーヒートしてないのか?」

 

「私は内部で冷却処理をしていますので、このくらいの暑さなら平気ですよ」

 

「さすがだな」

 

一方で雄二は汗をかいているが平時とあまり変わらない顔をしている。

 

「平然としてるけどすごい汗かいてるけど、痩せ我慢?」

 

さすがに暑い中なのでパタパタとノートで扇ぐカルマが聞いてきた。

 

「そうだ。師匠曰く、狙撃中と逃走者の基本は痩せ我慢だそうだ」

 

「………誰かから追われるような事したの?」

 

「あいにく、国に追われるようなことをした覚えはない」

 

「あぁそう。けど痩せ我慢ってことはやっぱり辛いんだ」

 

「当たり前だ」

 

時折ハンカチで汗を拭くがすぐに出るのであまり意味がない

 

「だらしない…夏の暑さは当然のことです‼︎」

 

「殺せんせー、今にも溶け出しそうな感じで机に伏して言われても説得力がないぞ」

 

「失礼な。これは生物として当然の行為です」

 

「じゃあ、放課後はどうするんだ?」

 

「…………寒帯に逃げます」

 

「「「「「ずりぃ‼︎てか説得力ねぇ‼︎」」」」」

 

もっともなツッコミが入るがそれだけでも疲れてしまう。

 

「でも今日、プール開きだよね。体育の時間が待ち遠しい~」

 

「いや、それもE組にとっては地獄さ。炎天下の中1㎞先の本校舎にあるプールを目指して、終わって帰る時はプール疲れも相まってまさに地獄。カラスの餌になりかねない」

 

木村が言った事は冗談ではなく本当なので皆がっくしと憂鬱になっていた。

 

「先生〜なんか良い案はないか〜」

 

「風見君とは思えない他力本願ですねぇ…でもまぁ、この暑さですから気持ちは分かります」

 

教科書を閉じて「仕方ありません」と言い立ち上がる

 

「全員水着に着替えてついてきなさい。そばの裏山に小さな沢があったでしょう。そこに涼みに行きましょう」

 

言われた通り着替えるが

 

「あれ?雄二は着替えないの?」

 

「ん、あぁ。うっかり水着がなくてな。まぁ、涼むくらいならなくても良いだろ。というか……」

 

「?」

 

「やっぱり男なんだな、渚は」

 

「今更⁉︎」

 

渚は以前から少し疑問があったがツッコミをするとそれも消えて着替えてから先生についていく。

 

 

 

時刻は少し戻って雄二のバイト先JBの部屋

 

「プールびらきねー」

 

「…」

 

「いや、別に禁止するわけじゃないけどあなたの場合はちょっと特殊だからね」

 

「人をカナヅチみたいに思われる発言はよせ」

 

「別に恥ずかしいことじゃないでしょう?いっそそれを理由にしたら?」

 

「………」

 

「はっきり言うけど、気にしすぎよ。特殊なのは認めるけど」

 

「気にしないでいいのか、すればいいのかどっちだ」

 

「そのくらい、自分で考えなさい」

 

 

 

 

「そういえば、沢ってどのくらい?」

 

と思考の中にいると途中で茅野が聞いてくるので最近あの辺りで自主訓練している雄二と千葉 龍之介が答えた

 

「沢と言っても本当に小さい。足首まであるかないかのレベルだ」

 

「まぁ、静かで少しは涼しいから射撃訓練にはいいけどな」

 

「ふーんそんなものかって、射撃訓練?」

 

「あぁ、最近千葉から提案があってなスナイパーライフルを使った射撃訓練をしているんだ」

 

「…それ、私も参加していい?」

 

E組女子のなかで最も射撃成績の良い速水 凛香は少し小声だが聞き取れるくらいにはっきりと言う

 

「構わない。というより、千葉からもそうしたらと言われていたからな。今日にも話そうとは思っていた」

 

その言葉に対して「ありがとう」と短く返す。千葉と速水、どちらも仕事人タイプだなと雄二が思っていると殺せんせーが喋りだす

 

「さて皆さん、さすがにマッハ20の先生でも出来ないことがあります。そのひとつが君達をプールに連れていくこと。残念ながらそれには1日ほどかかります」

 

「1日…って大げさな。本校舎のプールなんて歩いても20分くらいですよ」

 

磯貝の言う通り、マッハ20 ならそれこそ何往復して皆を連れてもすぐであろう。…本校舎のプールまでであれば

 

「誰も本校舎とは言ってませんよ」

 

意味深なことを言う先生であるがすぐにその意味はわかった。サァァァァと涼しく波打つ音がして皆が駆ける。そこにあったのは山の景観も生かした豪勢なプールができていた。

 

「なにせ小さな沢を塞き止めて水を溜めるのでおよそ20時間はかかりました。25mコースの幅もしっかり確保。シーズンオフには水を抜けば元通り。水位を調整すれば魚も飼って観察出来ます」

 

後のことも考えて作られたプールはまさに天国に見えただろう

 

「さぁ、製作に1日、移動に1分。後は1秒あれば飛びこめますよ」

 

皆一斉に水着になって飛び込んだ。

 

「おや、風見君はいいのですか?」

 

「あぁ、水着を持ってきてなくてな。まぁ、充分涼めるから良いさ」

 

「……それは残念です。けど、気にし過ぎだと思いますがねぇ」

 

「………」

 

 

 

「隣、いい?」

 

「狭間か?別に聞かなくても良いぞ。というより、もう座ってるじゃねーか」

 

「一応聞いておくのがマナーでしょ」

 

殺せんせーが作ったであろうビーチチェアにかけて2人は本を読みだす。全く濡れていないので泳いでないのは雄二はすぐにわかった

 

「『悪童日記』それも翻訳版でなく、原作か」

 

「えぇ。最近の授業のおかげでだいぶ読めるようになってきたからタコに頼んで買ってきてもらったの。どう翻訳されているかも気になったし。あなたは…『アルジャーノンに花束を』?随分と普通ね」

 

「名作と言え。というか、お前の場合は後味が悪い話ばかりだろ」

 

「それがいいんじゃない」

 

「あぁそう」

 

とお互いの読書感が静かにヒートアップしかけているとピィィィというホイッスルが鳴る

 

「木村君‼︎プールサイドを走っちゃいけません‼︎転んだらあぶないでしょ‼︎」

「原さんと中村さん‼︎潜水遊びはほどほどに‼︎溺れたかと心配になるでしょ‼︎」

「岡島君‼︎盗撮は厳禁です‼︎カメラは没収します‼︎」

 

プールの監視員のごとく小うるさくホイッスルを鳴らして注意をする殺せんせー

 

「狭間さん‼︎本ばかり読んでないで泳ぎなさい‼︎風見君‼︎水着ないからといってだらけてばかりいないでください‼︎」

 

「うぜぇ」

 

「完全に王様気分ね。ありがたみがうすれるってわからないのかしら?」

 

自分が作ったプールだけに得意げな感じになっている殺せんせーに辟易していたがここで思わぬ形で弱点が露見した。

 

……《プールマナーにやたらうるさい》ではなくそのあとだ。陽菜乃が遊び感覚で何気なく殺せんせーに水をかけた時だ

 

「カタいこと言わないでよ殺せんせー、水かけちゃえ‼︎」

 

「きゃんっ」

 

見た目に似合わない女の子みたいな声の悲鳴を聞き皆一瞬沈黙しているとカルマがスキを見てスーウッと殺せんせーの近くまで泳ぎ監視塔を揺らしだす。

 

「きゃあッ‼︎ゆらさないで、水に落ちる‼︎」

 

まるで深い水に入るのが初めてな子供のように怯えてだし、その場から脱する殺せんせー。

 

この瞬間に頭の中でよぎる、殺せんせーの弱点の可能性!

 

「べ、別に、泳ぐ気分じゃないだけだし〜水に入ると触手がふやけて動けなくなるとかそんなのないし〜」

 

この瞬間に頭の中でよぎる、殺せんせーの弱点の確信!

 

今まで様々な弱点が露見してきたがコレはその中でも1番使える弱点だと考え、水殺という大きなテーマが皆の中にできた時だった

 

「あ、やば!バランスが」

 

泳げないという理由で浮き輪に浮いていた茅野が突然(・・)バランスを崩して水に落ちてしまう。しかも深い位置で背の低い彼女では足がつかない。

 

「かっ、茅野さん‼︎このふ菓子に捕まって…」

 

オロオロしながらビート板かと思っていたふ菓子を出すが届かない。そこに元水泳部の片岡が入ろうとするより早く行動した者がいた

 

「落ち着け、茅野。首を支えているから力を抜いておけばいい」

 

制服を着たまま飛び込んで茅野を助けたのは雄二であった。

 

「あ、ありがとう」

 

「私より早いね。ビックリしたよ」

 

「まぁ、前にいた学校のプールの時間には教師によくしごかれたからな」

 

同じく助けにきた片岡に雄二は淡々と言った。

 

「なら、今回の殺せんせーの水殺計画は私たちの出番かもね」

 

「………」

 

「風見君?」

 

「あぁ、そうだな」

 

少し嫌そうな顔をして雄二は言う。

 

「ほんとうにありがとうね、風見君、片岡さん」

 

「良いってこのくらい」

 

「………まぁ、気をつけろよとだけ言っておく」

 

「あはは、ごめんなさい」

 

「それより、早く着替えないと風邪ひくよ」

 

水から出ると当然だが制服はびしょ濡れである

 

「そうだな確か体操服くらいならある。下着は、烏間先生に頼んで買ってきてもらえばいいか。じゃあ、ちょっと着替えて…」

 

「ちょっと待ってください風見君」

 

殺せんせーはどこから出したのかバスタオルを雄二に渡す。

 

「その前に上着を抜いで体を拭きなさい。そのくらいならここでしても大丈夫でしょう」

 

「………」

 

雄二の沈黙は1秒ほどだった。その時雄二は殺せんせーの真意を考え、表情が「大丈夫です」と言われた気がしたのと、隠し続けるのはどの道不可能であると考えて上着とシャツを脱いだ。

 

「「「「「「‼︎⁉︎」」」」」」

 

クラスに来た当初からガタイが良いと思っていたが脱ぐとたくましい筋肉が目に入る。が、それよりも目についたのはその体に複数箇所に付いている傷だった。まず目がいくのが胸の中央部、手術の縫合痕。それが肩や腕、腰回りと様々にある。年月が経っているからだいぶ薄いがそれでも目立つものだった。

 

渚は以前から少し疑問があった。体育の時はいつも雄二は先に制服の下に体操服を着るか何処かに行ったと思えばいつの間にか着替えて体育に参加していることにだ。その理由がおそらくこれであるとすぐに理解した。ほかの皆もだいたい同じであろう

 

「おい、俺はストリッパーじゃないぞ」

 

体を拭きながら雄二は言う。じっと見ていた彼らはその一言でハッとして我に帰るもどう言葉を出そうかと思っていると

 

「傷って男の勲章って言うけど、雄二は特にすごねーちょっとカッコいいレベル」

 

「男に体を褒められるのは少し複雑だな」

 

カルマが真っ先にそれに触れると雄二はいつもの調子で話だしたのを見て皆会話に混ざりだす。

 

「確かに、ちょっとだけ羨ましいなその体つき、僕なんかこの通り細いからさ」

 

「渚、俺はノーマルだ。彼女になるならまず手術からな」

 

「しないよ⁉︎あとなんで僕にはいつもそれなの⁉︎」

 

「そういや、矢田ちゃんってあの胸に抱き抱えてもらえたんだよねー羨ましい」

 

「うぅぅ」←思い出して顔真っ赤

 

不安はすぐに収まっていつもの通りになる。雄二が殺せんせーを見るとウンウンと唸っている

 

(ありがとう、殺せんせー)

 

感謝を言葉には出さないが表情で返すと顔に花丸を出していた。

 

 

 

 

 

 

一方でそんな様子を見ている影もあった。

 

「チッ」

 

後の事件の引き金を文字通りひくことになる人物は舌打ちをしてその場を去った。

 

 

 




雄二の傷についてどうしよう思う部分がずっとありました。

本編の雄二は割と普通に肌見せてましたが今回はJBに言われたことで彼の中に少し不安があったという設定です。


感想、意見お待ちしてます




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依存の時間

あのヒーローが来る‼︎


雄二の傷の件で一瞬の戸惑いがあったが結局普通に戻り、放課後にプールに集まって作成会議が始まった。

 

「まず、殺せんせーが本当に泳げないのかと言う疑問についてだが…」

 

実はプールでの行為は全てがブラフという可能性。それについてまず声を出した雄二の結論

 

「あれにポーカーフェイスとか無理だろ」

 

「「「「「確かに」」」」」

 

ここに殺せんせーがいたら「ヒドイ!」と言うかもしれないが事実である。秘密は多いがその確信にふれた際の殺せんせーはあまりにもわかりやすい。

 

「それにさ、前に湿気でふやけるところも見たし」

 

「さっきも倉橋が水をかけたとこだけふやけてた」

 

いくつかの事実からくる考察の結果、仮に全身が水でふやけたら、死ぬまではいかなくても極端に動きが悪くなる可能性はかなり高いと踏んだ。

 

「で、昼休みに風見君と計画を立てたんだけど、この夏の間どこかでタイミングを見計らって水中に殺せんせーを引き込む」

 

「もうすでに知ってると思うが先生は殺す行為、又は殺傷の可能性がある行為には敏感だがそれ以外はそこまでではない。水中に落とす行為そのものは殺す行為ではないため、先生の反応は遅れるはずだ」

 

「あとはふやけて動きが悪くなったところを水中で待ち構えた生徒がとどめを刺す」

 

「なら水中は昨年度の水泳部クロール学年代表、片岡メグ選手の出番ってわけだな」

 

雄二と片岡の作戦を聞いてそう言う前原だが片岡は否を唱える。

 

「そこは私もそうしようと思ったんだ。バレッタに対先生ナイフを仕込んでいつでも殺れる準備してたから。でもそれだけじゃダメだって風見君に言われてね」

 

「え?なにがダメなんだ?」

 

「まず、泳げない事をバレた相手に対してあっさり水中に落とされるとは思えない。恐らくだが落ちない自身はあるだろう。さらに高度な水中戦ができるのは現在のところ俺と片岡だけだろう。確実にやるならもう少し人数を増やしてからにしたい」

 

「そういうこと。大事なのは殺せんせーを水場近くで警戒心をなるべく起こさせない事と、クラスの水中での行動力上昇。大丈夫、夏は長いわ、じっくりチャンスを狙ってこう‼︎」

 

「「「「「おうっ‼︎」」」」」

 

 

 

会議の後片岡はプールに残り泳ぎの練習を始めた。見学者は渚、茅野、律(モバイル)、雄二、

 

「いやぁ〜カッコいいですね。先生には負けますが…それにしても何に必死なんでしょうかね〜」

 

いつのまにかいた殺せんせーである。

 

「まぁ、せっかくプールが出来たんだ、ブランクを戻したい気持ちがあるんだろ」

 

「ほうほうそうですか」

 

水殺計画を悟られないように話していると片岡のスマホからピコンと音がする

 

「片岡さん、多川心菜という方からメールです」

 

律からの情報を聞いた途端に片岡の顔が暗くなった

 

「メール内容を読みます[めぐめぐげんきぃ〜じつゎ、またべんきょ教えて欲しいんだ〜とりま駅前のファミレスしゅーごー]以上です」

 

「なんだその頭お花畑みたいなメールは?ヘンな薬でもキメてんじゃないか?」

 

「「こらこら」」

 

「でも確かに知能指数がやや劣る方だと私も推察します」

 

「「律まで…」」

 

と、律と雄二に対していうが2人もだいたい同じ感想はあった。

 

「[すぐいく]って返しといて。じゃね、ちょっと用事できちゃったから」

 

「片岡、大丈夫か?」

 

「うん?何が?」

 

「いや、なんでもない」

 

そうして片岡は先に帰っていくがその合間も顔は暗いままであった。

 

「気になりますか風見君?」

 

「それは先生もだろ」

 

「では皆さんも一緒に様子を見に行きましょう。…皆から頼られている人は、自分の苦しみは1人で抱えてしまいがちですからね」

 

「………そう、かもな」

 

 

 

間を空けて駅前ファミレスに移動してきたが

 

「先生、言いたくないが怪しくないかこれ?」

 

「何を言いますか完璧な隠密です」

 

鬘をつけて帽子をしてサングラスをしているだけで全然隠密できてない。渚と茅野、雄二もサングラスをしているだけである。一応言うが、隠密において怪しく見えるのはNGである。

 

 

席を離れて見ているとメール通り片岡が勉強を教えていた。

 

「期末テスト近いから助かるぅ〜!めぐめぐE組だけど私の苦手教科は得意だもんね」

 

「…まぁね」

 

片岡は少し困った顔をして教えていく

 

 

「メールでわかっていたが、見た目も言動も知能が低そうだな」

 

「ゆ、雄二…」

 

そう思うところがある為か渚もそれ以上言えなかった。

 

 

「あのさ心菜、私今やりたい事があってさ、もうクラスも違うんだしさ…」

 

意を決して片岡は思っている事を口にしたが

 

「…ひどい。私の事殺しかけたくせに」

 

途端、詰め寄り睨んでくる。

 

「あなたのせいで死にかけてから…私怖くて水にも入れないんだよ」

 

「だから、」と今度は両手で片岡の右腕を抱くように握る

 

「支えてくれるよね?一生」

 

わざとらしい涙を出しながらそう懇願した。

 

 

 

友達と遊ぶ約束があると言って去った後、片岡は最初から気付いていたのかため息を出したあと

 

「で、そこの不審者4人組は何か御用?」

 

と声を掛けてきたので店を出て経緯を聞いた。

 

「去年の夏にね、同じ組だったあの娘から泳ぎを教えてくれってたのまれたの。好きな男子含むグループで海に行くから、カッコ悪いとこを見せたくないという理由で」

 

「お前ならしっかりと教えられるだろうな」

 

片岡は首を横に振り

 

「いや、1回目のトレーニングでプールで泳げるぐらいには上達したんだけどなんだかんだ理由つけてそれ以降練習に来なくなったの」

 

「なるほど、読めてきた」

 

常に一定の波がくるはずのない海でちょっと前まで泳げない人間がちゃんと泳げるのか?答えは当然Noだ。もちろん片岡はそれは分かっていた。だからこそ何回か教えようとしていたのだ。

 

「で、案の定?」

 

「うん。海流に流されて溺れちゃって救助ざた」

 

「愚かだな。トレーニングというのは欠かさずに行うことに意味があるんだ。地味な反復練習の繰り返しこそが基本だってのにな」

 

吐き捨てるように雄二は言う

 

「それ以来、【死にかけて大恥かいてトラウマだ】【役に立たない泳ぎを教えた償いをしろ】って」

 

そうしてテストのたびにつきっきりで勉強を教えている間に片岡は苦手科目をこじらせてE組行きになったという

 

「そんな、彼女ちょっと片岡さんに甘えすぎじゃない?」

 

「あれは小判鮫みたいな奴だ。こいつといれば安全だとくっつき続け、いざ危なくなると真っ先に見捨て逃げるような」

 

茅野は心配して言うが片岡は「気にしないで」と言い

 

「いいよ、こういうのは慣れっこだか…「ダメだ」え?」

 

「ダメだ片岡。それだけはダメだ」

 

有無を言わさず雄二は否定する。

 

「小判鮫と違って、人間って奴は優しくされると甘えたくなる。甘えているうちに、いつかその対象に依存するようになり、そいつが居ないと生きられなくなる。そして甘やかしている方も時に依存してしまう。あの時、お前はこの関係を終わらせようとしてたが、結局慣れっこだからという理由で片付けてしまうつもりだったんだろ?何も変える気はないんだお前は」

 

「!」

 

「風見君の言う通りです。片岡さんのそれは共依存にあたります」

 

誰かに依存される事で自分自身も依存されることに依存してしまう悪循環。今の片岡はそれに入っていた

 

「片岡さん、あなたの面倒見や責任感は本当に素晴らしい。ですが、時には相手の自立心を育てることも必要です。“こいつならどんなにしがみついても沈まない”そう思うと人は自力で泳ぐことをやめてしまう。それは彼女のためにもなりません」

 

今の自分が置かれている状況が理解できたのか、片岡はどうすればいいのかを聞いた

 

「簡単です。彼女に自力で泳いでもらえるようにすればいい」

 

「言って聞くようなタイプでもなさそうだが、どうするつもりなんだ?」

 

「なぁに先生に任せなさいこのタコが魚も真っ青なマッハスイミングを教えてあげます」

 

 

 

 

「どこ、ここ?」

 

多川心菜は記憶をたどるも状況が理解できない。ベッドで就寝していたら幻想的な泉でにいた……ベッドごと。

 

「あぁ、夢か」

 

現実逃避に見えるが脳としては正常な判断である。

 

「目覚めたみたいだね」

 

と声したので振り返ってみるとそこには人魚…というより魚人のようなカッコをした人物がいた

 

「えーと、ここは魚の国!さぁ、私たちと一緒に泳ごうよ‼︎」

 

「……あんた、めぐめぐに似てない?」

 

「違うし、メグメグとか知らないし……魚魚だし」

 

「なにその居酒屋みたいな名前!?」

 

夢だと思っているからバレてないが当然片岡である。

 

「堂々と魚を演じなさい片岡さん。夢の中だと思わせなければ我々の行為は拉致監禁です」

 

ヒソヒソと片岡に注意をすると殺せんせーも含めてのこりの自己紹介をする

 

「僕の名前は魚太」

 

と名乗る渚。ちょっとだけ緊張している。

 

「私は魚子だよ」

 

「なんで魚子は魚なのに浮き輪してんの⁉︎」

 

泳げない茅野に浮き輪は必需品だがこの場では違和感でしか無い。

 

「私は鮮魚超人マーグロマーン‼︎必殺技は自身の肉体を裂いて身を投げつけるんだ‼︎」

 

「何その必殺技⁉︎つかテンションたか!」

 

手足のはえた謎のマグロの着ぐるみを着た雄二は結構ノリノリである。

 

「雄二、なんなのその着ぐるみ?」

 

「俺もよく知らないが、この前スーパーの福引で当たってな。細かい設定を店のファンに聞いたんだが使い所が出来て良かった」

 

鮮魚超人マグロマンそれは一部の人たちにウケつつあるヒーロー番組である。

 

「そして私が魚キング。川を海を自在に跳ねる水世界最強のタコです」

 

「タコかよ‼︎」

 

魚キングなのにタコとはいかがなものかと言わんばかりのツッコミである

 

「素晴らしい連続ツッコミですね。良い準備運動になります」

 

そう言うと殺せんせーは速攻で水に入る為のストレッチと早着替えをして文句が出る前にプールへ入水させた。突然のことで多川はパニックになるがすぐに片岡も水に入り指導をしようとすると

 

「今更いいわよ泳げなくて‼︎それを逆手に愛されキャラで行く事にしたし‼︎それにそうしとけばアンタに似てる友達が何でも言うこと聞いてくれるし‼︎」

 

「よく臆面もなく言えるな。誰かが守ってくれると信じ切ってノホホンと暮らしていれば、有事のさいになにも出来ない奴になるぞ」

 

「何よ!正義の味方気取り⁉︎」

 

「一応正義の味方だからな。この世に硬骨魚類の助けがある限り正義のマグロは現れる‼︎」

 

「人間の味方じゃないの⁉︎しかも助ける対象がすごい限定的‼︎」

 

「もういい。片……魚魚いいから体を温めろ」

 

「………了解。さっ、もっと歩く」

 

ギャーギャー言う多川を無理矢理動かしていると泳げないと思っていた殺せんせーが躊躇なく水に入ってきた。

 

(まさか、あれがブラフだったのか⁉︎)

 

雄二もこの行動には驚くがすぐに杞憂に終わる。水に入ってはいるが、完全防水の魚型の水着である。そしてその状態でバタ足でマッハで泳いで周ることで渦となり流れるプールになる

 

「すごいが、これじゃ魚キングが水に入れるかわからないな」

 

「そーだよ‼︎水着じゃなくて生身で水に入れるかみたかったのに‼︎」

 

「いえ、入れますよ生身でも」

 

と、完全防水の水着を渚に渡してきた

 

「ほ、本当に生身で水に入ってる?」

 

「いや、よく見て」

 

「桶で周りの水を掻き出してるな。波のプールになったぞ」

 

マッハの無駄遣いだなと心の中で思いながら片岡たちを見る

 

「まぁ、ある意味1番すごいのはこんな状況でも冷静に教えることができるあいつかもな」

 

殺せんせーの作り出した流れるプールと波のプールの中でも冷静にしっかりと教えている片岡に尊敬をする雄二であった。

 

結論やはりスパルタすぎて殺せんせーの体育は人間に教えるのに向いてない

 

 

 

殺せんせーのスパルタ特訓は片岡の指導があったため有意義にはたらき結果的に多川は教師から良いタイムだと言われる程泳げるようになった。多川との関係もこれで解消された

 

「これで彼女に責任は感じませんね片岡さん。これからは手を取って泳がせるだけじゃなく、あえて厳しく手を離すべき時もあると覚えてください」

 

片岡の表情は晴れやかでつきものが落ちたようである。

 

「あぁ、それと……察しの通り先生は泳げません。水を含むと殆ど身動きとれなくなりますから弱点としては最大級と言えるでしょう」

 

水が浸かった触手は膨張してふやけていた。

 

「けど、それをわざわざ言うって事は大して警戒してないんだな」

 

「ご明察です。落ちない自信もありますし現状満足に水中で暗殺できるのは片岡さんと風見君でしょうから、それなら相手ができます。ですから皆の自力も信じて皆で泳ぎを鍛えてください」

 

「問題ないな。もとよりそのつもりだ」

 

「ニュフフフ、いい心がけです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、話しって?」

 

「クラスの水中での行動力上昇これに変わりないが、茅野はガチのカナヅチだからな無理はするな」

 

「それだけのためにわざわざよんだの?」

 

「それはそうだろう。お前、殺せんせーが泳げない事を確認するためにワザと水に落ちたろ」

 

「…………」

 

「殺せんせーは最初はふ菓子で助けようとしたが、最終的に水に入ってただろう。サポートに回るのも良いがもう少し命を大事にしろ」

 

「うん」

 

それだけ言うと雄二は去った

 

「危なかった………バレたと思った。そうなったら……消す以外ないし」

 

平然という彼女の顔は何も変わらないいつもの茅野である。雄二の考えは少し違う。泳げないのを確かめようとしたのではない

 

泳げないのを教えようとした(・・・・・・・)

 

「命を大事に、か………うん。けどそうと決めたら一直線だから私」




マグロマンはどうしても出したかった。そして出すならここしかないそう思ってました


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そして誤字報告ありがとうございます!


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ビジョンの時間

寺坂回です
粘液まみれで気持ち悪いことになってた殺せんせーを巨神兵みたいとおもったのは自分だけでしょうか?



*side???

 

 

「やぁ、久しぶりだね」

 

いきなりそいつに声をかけられた時はなんだと思ったが

 

「単刀直入に言おう。私と協力して、あのタコを殺さないかい?」

 

とりあえず内容を聞いて、俺は頷いた。……いい加減、鬱陶しいこの生活も終わらせたかったところだ

 

 

*sideフリー

 

「な、なんだよこれ?」

 

「酷いもんだな」

 

本を読むため涼しい場所を求めてきた雄二とすぐにでも撮影ができるように先にきた岡島はプールの惨状を目にした

 

「俺、ちょっと皆を呼んでくる!」

 

「わかった。俺は少しでも掃除をしておく……おいビッチ先生、水着デビューが出来ないくらいで落ち込んでないで手伝ってくれ」

 

「くらいで⁉︎」

 

と怒りながらも手伝いだしとりあえず目の前にあるゴミを拾っているとクラスの皆が集まってきた

 

「…ッ、メチャメチャじゃねーか」

 

「ゴミまで捨てて、酷い」

 

誰がこんな事をしたんだと思っているとワザとらしく寺坂、村松、吉田の3人がニヤニヤしながら他の皆より遅くきた

 

「あ〜あ、こりゃ大変だ」

 

「まぁ、いいんじゃね?プールとかめんどいし」

 

「………わかりやすい感想だな」

 

「ンだと?どういう意味だ風見?」

 

全く顔を見ずに掃除を続ける雄二に寺坂がちょっかいをだす

 

「まるで俺らが犯人だとでも言うようじゃねーか?証拠でもあんのかよ?」

 

「推理証拠か漫画でも読んでみろよ。その発言がすでに答えを言ってるもんだ」

 

「テメェ‼︎」

 

殴りかかろうとする寺坂だが後ろから止められる

 

「おやめなさい犯人探しなんてくだらない」

 

殺せんせーは寺坂を止めるとプールに近付き雄二に少し下がるよう指示し、マッハでプールをもとどおり綺麗にした

 

「はいもとどおりです‼︎」

 

「けど殺せんせーゴミの中にはジュースの缶や一斗缶もあったぞ中身がなにかわからないものがプールに…」

 

「心配無用です、私の粘液でそれらは水ごと固めて捨てておきました」

 

「浄水器もびっくりな浄水力だな」

 

「お褒めの言葉ありがとうございます。では皆さん、いつも通り遊んで下さい」

 

はーいと良い返事をして皆プールで遊びだすのを横目に寺坂達は退散した。

 

「………あいつ、居心地が悪そうだな」

 

あいつらではなくあいつと個人に絞った。そしてその個人は寺坂の事である。

 

「前にも言ったけどほっとけって。いじめっ子で通してきたあいつ的には面白くねーんだろ」

 

「もったいないよねー殺していい教室なんて楽しんで損はないのに」

 

「………」

 

「雄二?」

 

「なんでもない。ただ、ほうっておくかどうかは俺の判断にさせてくれないか?」

 

「…なんでそこまで気にしてんだよ」

 

「…さぁな。だだ、ちゃんとあいつと接していかないといけないと思ってるんだが、なかなかうまくいかないことにどこかで自分自身にイラついてんのかもしれない」

 

「それこそ気にする必要ないだろう」

 

杉野が言うことは正しい。だが、

 

「それでもさ。それに少しだけわかったこともある」

 

「なに?」

 

「寺坂の場合たまにちょっかい出して怒らせた方が接しやすい」

 

「あ、わかるかも」

 

カルマが同意してニヤっとイタズラ子のような顔をするのを見て杉野と渚は苦笑するしかなかった

 

 

 

 

昼休みになり食事を終えた雄二は読書のため再びプールに涼みに行っていると怒鳴り声のあとにドンと物音がするのでそちらに向かう

 

「ケッ、成績欲しさに日和りやがって裏切りモンが‼︎」

 

そう言ってズンズンと不機嫌そうに教室に戻る寺坂を見送り村松に近付く

 

「大丈夫か?」

 

「って、見てたのかよ」

 

「今来たばかりだ……あれはしばらくは声を掛けるのはよしておいたほうがいいな」

 

木にもたれている村松を起こしながら雄二は言う

 

「ああ、もう付き合いきれないぜ」

 

「怒りぐあいがすごかったが何があった?あいつの性感帯でもつついたのか?」

 

「な訳ねーだろ⁉︎気持ち悪いわ‼︎…これだよ」

 

と村松は少しクシャクシャになった紙切れを見せた。

 

「全国共通中学生模試…へぇすごいな成績が跳ね上がってるじゃないか」

 

「おう。あのタコの『模試直前放課後ヌルヌル強化学習』のおかげだぜ」

 

「……………」

 

なんともいえないような複雑な顔になる雄二に村松は疑問に思う

 

「な、なんだよその顔は悪いかよ‼︎」

 

先程寺坂に怒鳴られたのもあり少し声を荒げた

 

「いや、お前、そのあと放課後の学習には?」

 

「?いや、もう自己学習してるけど」

 

雄二はガサゴソと後ろポケットから折りたたまれた広告用紙を見せる

 

『ヌルヌルは勝利の鉄則‼︎モテる‼︎すごい♡』

 

と広告の下の端の方に明らかな手書きで目にモザイクをしているが金の風呂に入った村松が書かれてあった。

 

「あのタコぉぉぉぉ‼︎」

 

「合成でもなく手書きなのがすごいな」

 

「どうでもいいわ‼︎くそ殺してやる‼︎行くぞ風見‼︎」

 

ともの凄い速さで教室に向かう村松を雄二も追いかけた。

 

 

 

教室に戻っていると中が騒がしい何事かと思いながら教室を開けた途端に内部が煙まみれになった。

 

「うわっなんだこれ⁉︎」

 

「殺虫剤⁉︎」

 

「目と鼻を塞げ‼︎」

 

雄二は状況を見て咄嗟の判断で皆に言って窓をすぐに開けた。

 

「寺坂君‼︎やんちゃするにも限度ってものが…」

 

「触んじゃねーよ、モンスター」

 

説教をしようと肩を掴んだする殺せんせーの触手を払いのける

 

「気持ち悪いんだよ。テメーも、モンスターに操られて仲良しこよしのE組も」

 

「…もうよせ。それにさすがにやりすぎだ」

 

「風見…お前もだよ、俺に説教するんじゃねー。前に言ってたよな、E組の皆を尊敬してるだ?残念ながら俺はお前に尊敬されたいとも思ってねーし。そもそも尊敬されるような奴じゃんねーんだよ」

 

「それがわかってるから、居心地が悪いんだろ?」

 

「!」

 

思いあたるのか寺坂はドキッとする

 

「自分の事をわかってる奴はそうはいないし、そういう奴は周りが見えない。けどそれがわかってるってのは常に周りを見られるほど観察力がいい証拠だ。寺坂はすごいよ。ネガティブなイメージが沸くのは危機管理が出来ている証拠だ」

 

「…………」

 

「だが、やり方は完全に間違ってる。もう少し…」

 

「うるせぇんだよ!」

 

衝動的に寺坂は殴りかかるが雄二はあっさりと避ける。そのまま反撃ができたがせずまっすぐに寺坂を見つめるとそれが寺坂をさらに怒らせる。

 

「何がそんなに嫌なのかねぇ?殺せんせーが気に入らないなら殺せばいいじゃん。せっかくそれが許可されてる教室なのに」

 

「なんだよカルマ、テメーも俺にケンカ売ってんのか?上等だよ、だいたいテメーは最初から…」

 

カルマは詰め寄ってくる寺坂の口を手で塞ぎ、少し力を入れる。

 

「ダメだって寺坂。ケンカするなら口より先に手を出さなきゃ」

 

「…ッ‼︎はなせ‼︎」

 

無理やり引き剥がし、「くだらねー‼︎」という捨てゼリフを残して寺坂は去った。

 

「雄二って意外と甘いところがあるよね」

 

「確かにあれはもう少し厳しくても良かったな。次はもう少しきつく言うことにしよう」

 

 

 

 

 

 

side 寺坂

 

「いやぁ、助かるよほんとに。なにせ下手に動けば鼻が利くタコに気付かれてしまうからね」

 

そう言いながらイトナの保護者と名乗っているシロから報酬の10万をもらう。今までの報酬もあるからしばらくは遊べるな。それにしてもイトナのやつ

 

「なんか変わったな…目と髪型か?」

 

「お、その通りさ寺坂君。意外と繊細な所に目が行くね。前回の反省を活かして綿密な育成計画を立ててより強力に調整したんだ」

 

「……………」

 

「どうしたんだい?いきなり不機嫌な顔をして?」

 

「別に」

 

風見に言われた観察力が良いというのを実感させられた気がした。正直気にくわない

 

「…どうやら相当今のE組の現状がイラつくみたいだね。けどクラスで孤立しているからこそ私は君に協力を持ちかけたんだ。私の計画通りに動いてくれれば、すぐにでも奴を殺して前のE組に戻してあげよう。ついでにお小遣いももらえて良い事づくしだ」

 

確かに、悪くはない。やっぱこんな風に楽して適当に生きれればそれで……

 

「うぉ⁉︎な、なんだよ」

 

「お前は、あの赤髪の奴より弱い」

 

いきなり目の前に来て、いきなりなんだ?赤髪…カルマの事だな

 

「馬力も体格もあいつより勝ってるのに…なぜだかわかるか?」

 

「?」

 

「お前の目にはビジョンが無い。勝利への意思も手段も情熱も無い」

 

俺の目を指で広げてそう言いながら喋る。何が言いたいんだ

 

「目の前の草を漠然と喰ってるノロマな牛は、牛を殺すビジョンを持った狼には勝てない。…ビジョンそれだけでいい」

 

な、な、な

 

「なんなんだあの野郎、相変わらず‼︎脳ミソまで触手なんじゃねーのか⁉︎」

 

結局わけわからん事言うだけ言ってまた去やがって‼︎

 

「ごめんごめん私の躾不足だ。ともかく仲良くしてくれなんせ我々は戦略的パートナーだ。クラスで浮きかけている今の君なら、不自然な行動も自然に出来る。我々の計画を実行するのに適任なんだ」

 

「ふん。で、決着は?」

 

「次の放課後さ」

 

これでようやく終われる。だが、1つ気掛かりがあった。

 

「ところでよ、あのタコ殺せば風見が鬱陶しくなくなるってどういう事だ?」

 

「………殺せたあとにわかるかもね」

 

sideフリー

 

 

「なぁ、先生なに泣いてるんだ」

 

昼休み、皆で昼食をとっていると意味もなく泣きだす殺せんせー

 

「いいえ、鼻なので涙じゃなく鼻水です。目はこの斜め下のこれです」

 

「なんで目が鼻の下にあるんだよ。人工的に作られたのなら欠陥にもほどがあるぞ」

 

「弱点が多いっていう意味なら元からのような気もするけどね」

 

渚のツッコミに確かにと同意する雄二

 

「どうも昨日から体の調子が少し変です。夏カゼですかねぇ」

 

「カゼとかひくんだな、その体」

 

最近は超生物という殺せんせーの肩書きを脳内から消そうかなとわりと本気で雄二が考えていると不機嫌な顔で寺坂が入って来た

 

「おお寺坂君‼︎今日は登校しないのかと心配でした‼︎」

 

涙…否、鼻水をダラダラ流しながら寺坂に近寄る殺せんせーに寺坂はぎょとした。

 

「昨日君がキレた事ならご心配なく‼︎もう皆気にしてませんよ。ね?ね?」

 

「…それよりも汁まみれになっていく寺坂の方が気になる」

 

普段なら寺坂はこの時点でキレるだろうがそうはせず殺せんせーのネクタイで顔を拭く

 

「おいタコ、そろそろ本気でブッ殺してやんよ。放課後プールへ来い…弱点なんだってな水が。てめーらも全員手伝え‼︎俺がこいつを水ン中に叩き落としてやっからよ‼︎」

 

「「「「「………」」」」」

 

「寺坂、お前ずっと皆の暗殺には協力してこなかったよな。それをいきなりお前の都合で命令されて、皆が皆ハイやりますって言うと思うか?」

 

沈黙しているクラスの声を代弁するように前原はいう

 

「それに、今のお前に殺せんせーを水に落とせるとは思えない……どういう計画が頭の中にあるんだ?」

 

「計画なんて………いや、とにかくだ!俺には楽にして上手に殺るビジョンがあるんだよ‼︎自分からは動かないお前と違ってな」

 

「……なるほど。だがそのビジョンってものが少なくともお前からは見えないんだが?」

 

「ハッ、調子こくな。でも良いぜ、来なくても。そん時は俺が賞金を独り占めだ」

 

捨てゼリフをはいて寺坂は出て行った

 

「さて、皆はどうする?俺は参加するが」

 

「って雄二君参加するの⁉︎」

 

「ああ。…見てられないからこそ、見過ごせないんだよ、今の寺坂は」

 

時折見せる雄二の遠くを見るような目をしているのを何人かがわかった

 

「雄二君が参加するなら私は行くけど…」

 

「私はパスかなーさすがに」

 

「オレもパス」

 

数名は賛同したがやはり拒否が多い。が

 

「皆、行きましょうよぉ」

 

「うわっ⁉︎粘液に固められて動けねぇ‼︎l

 

いつのまにか教室の床は先生の粘液だらけになって動けなくなっていた

 

「先生の粘液はコンクリートか⁉︎」

 

こんな手を使ってくるとは予想外だった雄二も粘液に捕まってしまっていた。

 

「せっかく寺坂君が私を殺る気になったんです。皆で一緒に暗殺して気持ち良く仲直りです」

 

「「「「「まずあんたが気持ち悪い‼︎」」」」」

 

もはや鼻だけでなく顔全体から粘液を出す殺せんせーに対するツッコミは的確なものであった

 

 

 

放課後、カルマ以外は全員来ているがしぶしぶといった感じであった

 

「よーし、そうだ‼︎そんな感じでプール全体に散らばっとけ‼︎」

 

プール内にはナイフを持った生徒がプールの外で寺坂の指示を聞きながら散らばる。竹林にいたっては文句を言ったのか蹴り飛ばして入れていた。因みに雄二は今回が水着来て初めてのプールである

 

「そういえば渚はさっき寺坂と話したんだろ?」

 

「うん。けど…計画に自信があるのに自分には自信がない感じがして、それがなんだか…」

 

「胸騒ぎがするか?」

 

「もしかして、だから雄二は参加するって」

 

「それもあるが、基本は最初に言ってた通り見過ごせないからさ……似てるんだよ」

 

「何が?」

 

「友達がいなかった頃、その理由を姉や誰かのせいにして、自分ではなにもしようとせず、ただ誰か言う事だけで世界を見てた俺と」

 

「雄二…」

 

と話していると鼻水を取った殺せんせーが寺坂の前に来ていた

 

「それで、君はどうやって先生を落とすんです?ピストル一丁では先生を動かせませんよ」

 

「るせー」

 

寺坂はピストルを先生に向けた。

 

「ずっとテメーが嫌いだったよ。消えて欲しくてしょうがなかった」

 

「ええ、知ってますよ。暗殺(これ)の後でゆっくり2人で話しましょう」

 

緑と黄色のシマシマ顔になったということは舐めいるという事だ。それをわかっている寺坂は怒りをぶつけるごとく引き金を引いた。瞬間

 

 

ドカン‼︎

 

 

と炸裂音がした方を見ると沢を塞きとめる門が破壊され、同時にクラス全員が水と放流されていく

 

(マズイ‼︎)

 

咄嗟の判断で近くにいた生徒を助けようとするも急な流れの変化で雄二も流されていく。しかしそれは一瞬でいつのまにか地に着いていた

 

(先生か!)

 

殺せんせーが助けに来たのは直ぐにわかった。

 

「風見君‼︎」

 

「うおっ⁉︎先生⁉︎顔だけ⁉︎」

 

「詳しいことは後で‼︎皆さんを助けるので。それより大丈夫とは思いますが風見君は万が一に備えて生徒の安否確認を!人工呼吸はできますね?」

 

「わかった」

 

「頼みます」

 

そう言われてすぐさま行動に移した

 

「だれも、死なせるかよ」

(寺坂を利用して、俺の大切なクラスメイトを殺そうとした罪は重いぞ)

 




誤字報告ありがとうございます!

感想も遅れますが返信はいたしますので意見感想お願いします‼︎


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操られる者達の時間

寺坂回後編です

もう1回タイトル「操られる者達の時間」


1、寺坂

2、イトナ

3、言うまでもないかな


寺坂の命令を無視はしたが(無駄だとわかっているが)結果は気になるのでのらりくらりとプールに向かっていたカルマは爆音がしたのを聴き全速でプールに行くとそこには水を飲んでしまいゲホゲホと吐き出す数名の生徒

 

「意識ははっきりしてるな。殺せんせーがすぐに救助したおかげだな」

 

彼らを気遣う雄二。そして

 

「俺は…なにもしてねぇ」

 

自分が引き起こしてしまった状況に混乱し、それを無理やり否定しようとしている寺坂の姿だった

 

「話が違げーよ…イトナを呼んで突き落とすって聞いてたのに…」

 

それを聞いてカルマは経緯をほぼ理解した。

 

「自分が立てた計画じゃなくて、あの2人にまんまと操られてたってわけ」

 

「カルマ、全員の安否を確かめたい。手伝ってくれ」

 

「うん。いいけど、あいつはどうすんの」

 

寺坂に指をさして言うとビクリと反応しカルマに詰め寄る

 

「ち、違げーぞ!おれのせいじゃねーぞカルマァ‼︎こんな計画やらかす方が悪りーんだ‼︎」

 

「…本気で言ってるのか」

 

「そうだろ風見⁉︎皆が流されてったのも全部奴等が…」

 

次の言葉はなかった。その前にカルマと雄二が寺坂の顔をぶん殴ったから。

 

「ちょっとは目が覚めたか?」

 

「寺坂、標的(ターゲット)がマッハ20で良かったね。でなきゃお前、大量殺人の実行犯だよ」

 

殴られることでようやく我に返ったのか現実を受け止める

 

「寺坂、俺はお前にとやかく言えるような奴とは思ってないけどな、操らていようがなかろうが、良いことだろうが悪いことだろうが、自分のしたことには結果がくる。今目の前にあるのが結果だ。受け止めて、どうすればいいか考えつづけろ。操られるな、何かに引っ張られるな。自分の意思で考えろ」

 

「そいうこと、人のせいにするヒマなんてないと思うよ」

 

「…時間をくったな。急ぐぞ」

 

雄二とカルマは倒れた寺坂を置いて皆の元へ向かった。

 

「けど、意外だったな」

 

「何がだ?」

 

「雄二は殴んないかと思ってた」

 

走りながらカルマは言う。「そうだな」と先ほどの事を雄二は振り返った。

 

「……間違ってたか?」

 

「いや、そんなことないよ。実際俺も殴ったし」

 

「……急ごう」

 

 

side寺坂

 

「クソが、クソ」

 

わかっている。この結果を招いたのは俺だ。……いや、そもそももっと前からだ。ガタイと声がデカイから自分が強いとこの学校に来るまで勘違いして、そこで自分の無力を理解した。安物の武器では何もできないと

 

「あいつマジで殴りやがって風見のやつは手加減してるような気がしたがカルマのヤローはマジだなクソが!」

 

手加減されているというのもそれはそれでムカつく。……思えば来た時からだ。エンドのE組に来たというのに、いきなり怪物の暗殺なんてわけのわからないことをやらされているというのに「俺たちで殺す」その言葉1つであっという間に馴染んでいった。きっとああいうやつが社会で好かれる大人という者になる。

 

「いちいち人にちょっかいを…お節介なんだよ!」

 

だけど、わかってるあいつは正しい。正しいからこそ今のあいつがあるのだろう。

 

「あーダメだ‼︎やめだ‼︎考えんのはやっぱ性に合わねぇ」

 

考えっからネガティブな感じになるなら………俺は、

 

 

sideフリー

 

 

 

進みながら生徒たちの安否を確認していくと近くでズンという音がする。皆でその場所に行くとイトナが殺せんせーに猛攻をしていた。

 

「俺たちを助けるために随分と水を吸ったみたいだな」

 

「けど、それを踏まえても押されすぎなような気がする」

 

「……実は」

 

雄二はシロ達が寺坂を操って殺せんせーを弱体化させていた事を説明した。当然、皆怒り心頭である。

 

「まじかよ、あの爆破はあの2人が仕組んでたのか」

 

「おそらく、あの殺虫剤で粘液を出し尽くしたんだろう。いつから計画されてたかはわからないが時期を考えるならそれが一番考えられる」

 

「それだけじゃねー」

 

遅れてきた寺坂が指をさす

 

「力を発揮できないのはおまえらを助けたからだ」

 

そこには触手の射程圏内に吉田と村松、原がいた。

 

「ぽっちゃりが売りの原がしがみついてる枝、いつ折れてもおかしくないな」

 

「あいつらに気を配るからなおのこと集中できない。当然シロの奴なら、そこも計算してるだろうよ」

 

「恐ろしい奴だと」寺坂は評する。

 

「呑気なこと言ってんなよ‼︎風見から聞いたぞ‼︎今回の事全部奴等に操られてたのって本当かよ⁉︎」

 

その言葉に寺坂は

 

「…あーそうだよ」

 

言い訳も、悪びれもせず、肯定した。

 

「風見、言ってたな?操られるなって…けどな目標もビジョンも無い短絡的な奴は頭の良い奴に操られる運命なんだよ」

 

「寺坂……「けどな‼︎」?」

 

「操られる相手くらいは選びてぇ。それが俺の考えた結論だ」

 

「………そうか。なら誰に操られたい?」

 

「少なくとも、奴等は御免だな。賞金持って行かれんのも気に入らねぇ……カルマ!お前、俺を操ってみろよ」

 

カルマの胸を叩きそういう。そのカルマはニンマリと笑みを浮かべる

 

「へぇ。けどなんで俺?なんで俺だけ?雄二か雄二と一緒でもいいんじゃない?」

 

「お前の方が狡猾だからだよ。狡猾な考えの奴には同等以上に狡猾な奴の方がいい。それに2人の考え同時じゃ意見がばらけるだろ」

 

「……意外と考えてんだ」

 

「あぁ⁉︎」

 

「俺よりカルマとは……ドS(そっち)がお前の好みか」

 

「ふざけんなよテメェ‼︎」

 

こんな状態だというのにこれだけ皆クスリとした。

 

「とにかく、そのオツムで俺に作戦与えてみろ‼︎カンペキに実行してあそこにいる奴らを助けてやらァ‼︎」

 

「良いけど、俺の作戦実行できんの?死ぬかもよ」

 

「ハッ!やってやンよこちとら実績持ってる実行犯だぜ」

 

ズンズンと向かう寺坂に

 

「まだ作戦考えてないけど、もう行くの?」

 

「え、あ、うん。…まだなの?」

 

「しまらねぇな」

 

「ンだとぉ⁉︎って何してんだ?」

 

寺坂の怒鳴りをスルーして風見は草むらでゴソゴソと何かを出した。

 

「ジュラルミンケース?」

 

「風見、それって」

 

速水と千葉はそれの中身を察した。開けるとそこには組み立て式のライフルタイプのモデルガンがありあっという間に組み立てた。

 

「なんでそんなものが?」

 

「速水と千葉に射撃訓練をしているんだが、プールができてからは場所を常に変えていて次の位置が偶然ここだったんでな。先に用意をしていたんだ。弾は対先生用のものにしてある……俺も援護する。射撃タイミングはカルマが考えてくれ」

 

「ん、了解。じゃあよーく聞いてね」

 

 

 

「ふふふ、足元の水もだいぶ吸った。これで更に動きは鈍くなったね。とどめといこうかイトナ。まず邪魔な触手を全て落として「おいシロ‼︎イトナ‼︎」む?」

 

怒鳴り声のした方を見るとシャツをはだけた寺坂が額に青筋を出していた。

 

「寺坂君か。近くに来たら危ないよ?」

 

全く心配もしてないどころか眼中にない。

 

「よくも俺を騙してくれたな」

 

「まぁそう怒るなよ。ちょっとクラスメイトを巻き込んじゃっただけじゃないか。E組で浮いた君にとっちゃ丁度良いだろ」

 

生徒に犠牲者が出たかもしれないというのにまるで気にもしていないその態度が怒りを誘う。

 

「うるせぇ‼︎てめぇらは許さねぇ‼︎おいイトナ‼︎俺とタイマン張れや‼︎」

 

シャツを脱いで盾がわりに構えてイトナの前に立つ。

 

「止めなさい寺坂君‼︎君が勝てる相手じゃない‼︎」

 

「うっせぇ‼︎ふくれタコは黙ってろ‼︎」

 

シロはクスクスとその姿を笑う

 

「そんな布きれ1枚でイトナの触手を防ごうとは、健気だねぇ………黙らせろイトナ。殺せんせーに気をつけながらね」

 

イトナは心底つまらなそうな顔で触手を振るった。

 

 

 

この少し前

 

「原をほっとくだぁ⁉︎ふざけてんのか⁉︎原が1番危ないだろうが‼︎みろ、ふとましいから身動き取れねぇ上にヘヴィだから枝も折れそうだ‼︎」

 

「……寺坂さぁ、そのシャツ昨日と同じのだろ?ズボラなんだよなーそんな奴が悪巧みとか無理でしょ」

 

「あぁ⁉︎」

 

「まぁ、俺を信じて動いてよ。バカだけど体力と実行力は持ってるんだからさ」

 

「バカは余計だ。で、どうすんだ?」

 

「とりあえず、イトナ挑発して攻撃されて」

 

満面の笑みで言う

 

「おまっ」

 

「大丈夫だよ。気絶するくらいの程度だから死ぬ気で喰らいつけ」

 

「………あぁ、わかったよ!」

 

「で、風見は万が一イトナが第2撃が来た時に射撃して。1撃目で動きが止まったなら…」

 

 

 

棍棒で腹を殴られたような感じで触手が当たるも。どうにか吹っ飛ぶのも意識が飛ぶのも堪え、昨日のシャツ(・・・・・・)で触手をぎゅっと握る。

 

「よく耐えたねぇ褒めてあげるよ。じゃ、イトナもう1発」

 

パンと音がすると同時に寺坂が握っている触手の反対側の触手がはじけ飛ぶ。

 

「…犬め」

 

ぼそりと言い撃たれた場所を睨むと雄二が冷静な顔で狙いを定めている。だが不思議だったいくら不意打ちでもイトナが対応しないことに

 

「どうしたイトナ早く彼らを」

 

「くしゅんっ、くしゅんっ、くしゅんっ…?、??、くしゅんっ」

 

突然イトナが花粉症になったようにくしゃみと涙を出しはじめてようやくおかしなことが起きていると察した。

 

寺坂のシャツは昨日と同じ。ということは寺坂が撒いた殺せんせーの粘液をダダ漏れにして弱体化させたものを満遍なく浴びているのだ。

 

「先生と同じ触手使いであるイトナだってタダで済むはずがない。一瞬でも隙を作れば殺せんせーは勝手に原を助けてくれる」

 

ハンドサインで皆に指示する。理解した皆は一気に飛ぶ。

 

「吉田!村松‼︎そこからなら飛び降りれんだろ?水だ‼︎デケーの頼むぜ‼︎」

 

その意味を理解して2人も飛ぶ。

 

以前シロが兄弟と言ったようにイトナの触手は殺せんせーと同じで弱点も同じ。

 

「じゃあ、同じ事やり返せばいいわけだ」

 

皆が一斉にに水に飛び込んで飛沫が高く上がる大雨のように水が上がり、寺坂のシャツについた成分といきなりの状況変化に反応できずずぶ濡れになる。触手はぷくり膨らんでしまい、動きが鈍くなった。

 

「とどめ」

 

跳ねた水が落ち出し視界が広がった瞬間、のこりの触手も正確無比の射撃で全て撃ち落とされた。

 

「これであんたらのハンデは少なくなったね。…で、どーすんの?賞金持ってかれるの嫌だし、そもそも皆あんたの作戦で死にかけてるし、ついでに寺坂もボコられてるし」

 

周りを見るとクラス全員が水を掛ける態勢になっている。おまけに優秀な狙撃手も狙いを定めている。

 

「まだやる?」

 

「……してやられたな。丁寧に積み上げた戦略が、たかが生徒の作戦と実行でメチャメチャにされてしまった」

 

もはや作戦の続行は不可能と判断して踵を返す。

 

「触手の制御細胞は感情に大きく左右される。この子らを皆殺しにでもしようものなら…反物質臓がどうなるかわかったもんじゃない。帰るよイトナ」

 

ギリギリと怒りを噛み締め退去する。

 

「結局今回もあんたはミスをしたな」

 

「ミス?余計な邪魔さえなければ完璧だった」

 

「そういう考えじゃ、一生勝てねぇよ」

 

「フン。犬はよく吠えるね」

 

そう捨てゼリフをはいてシロはイトナと去っていった。

 

 

 

 

「そーいや寺坂君、さっき私の事さんざん言ってたね。ヘヴィだとかふとましいとか」

 

危機が去り落ち着いてきた時、先ほどの寺坂の言葉を聞いた原は寺坂に詰め寄る。

 

「あ、いや、あれは、そう、状況を客観的に分析してだな…」

 

「お、だ、ま、り‼︎言い訳無用‼︎動けるデブ恐ろしさ見せてあげるわ」

 

この状況を上から見ていたカルマはクスクスと黒い笑顔をしている

 

「無神経だなぁ、寺坂はそんなんだから人の手の平で転がされんだよ」

 

カチン「うるせーカルマ‼︎テメーも1人高い所から見てんじゃねー‼︎」

 

グイッと引っ張って高みの見物していたカルマを水に叩き落す。

 

「ぶはぁ!はぁ⁉︎何すんだ上司に向かって‼︎」

 

「誰が上司だ‼︎触手を生身で受けさせるイカレた上司がどこにいる‼︎」

 

ギャーギャーと騒ぎだしたがようやく寺坂がクラスに馴染んだことに渚と殺せんせーは喜んでいた。

 

「あれ、雄二は?」

 

そこでふと気づく雄二が狙撃ポイントから姿を消していることに

 

 

 

 

*side雄二

 

「うっ」

 

口元を抑えて胃の中のものが出そうになるのを必死で我慢する

 

「初めて撃った訳じゃなんだが、うぅ」

 

我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ我慢しろ

 

「はぁ、はぁ、はぁ、これはおもちゃと同等そう思っていればいいと思ってたんだけどな」

 

そう簡単にはいかないようだ。ともかく早く戻らないと

 

「風見さんバイタルが不安定ですもう少し落ち着いてから…」

 

「すまんが律、これ以上ここにいたら皆が心配してくる可能性がある。今なら銃を片付けてたで済むんだ」

 

「………」

 

「あぁ、あと皆にもそういうことにしておいてくれ。おまえが言えば納得する」

 

律ならなおのことだ

 

「わかりました………皆さんには話さないんですか?」

 

「話せない。当たり前だろ?」

 

「風見さんの立場上のことがなくてもですか?」

 

「………そうだな」

 

のそのそと歩くのをやめ、少し早足にする。心配をかけないように

 

「それでも、言えないな」

 

だが、あいつらはバカじゃない。いずれ勘付くだろう。そうなった時、俺は、あいつらは………どう思う?

 

「いつか、しがらみなく過ごせます。きっとね(・・・・)

 

そんなものは来ない。けど

 

「そうなることを祈っててくれ」

 

そう頼むのくらいは許されるのだろうか?

 




今回悩んだのは寺坂を雄二に殴らせるかどうかとイトナを撃つかどうか

これでいいのかなぁ、マジで…特に寺坂殴った方

さぁ、次はテスト編です。

感想、意見は遅れますが基本的に返信しますのでよろしければお願いします


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テストの時間・2時限目

久々に時間がかかりました。
では今回はテスト回です


部屋に入ってものの1秒も経たず「ハァ」と言うため息が出てきた。

 

「ため息ばかりだな最近は。ストレスはちょくちょく発散したほうがいいぞ」

 

「………」

 

「女がしていい顔じゃないぞそれは」

 

「今私が何を考えてるかわかる?」

 

「イトナのことだろ?」

 

「えぇ、そうよ」

 

JBは先日の寺坂の件を聞いてからずっとこんな調子だった。それは前回のシロの作戦はJBも聞かされていないものであり、まさか生徒が死ぬ危険性を持ったものとは思わず上と揉めたらしい

 

「感謝しなさいよ。事前に連絡がない作戦なのとあなたも巻き込まれていたのもあったから上手いこと上を納得させたけど報告では邪魔さえなければ成功した可能性が高いのも間違いなかったんだから」

 

「ならそれでもうこの件はいいだろう?何をそんなにイライラしてるんだ?」

 

「あのくだらない事をベラベラ喋るだけで何の進展もない会議の空気を味わって見なさいよ」

 

「………いや、すまない」

 

話を聞くだけで大変だったのはわかっていたが相当のものであったのだろう。事実今回の報告書の為JBはほとんど寝ていない。

 

「けど、E組(そっち)は進展があったみたいね」

 

上が期待してない方が進展がある事がわかり笑みがでる。事の次第は今日の殺せんせー期末対策勉強だった

 

 

 

今回も先生の分身を活用して皆に苦手科目を教えているとき

 

「殺せんせー、また今回も全員50位以内を目標にするの?」

 

渚が気になった事を聞いた。それは先生がE組に立てた目標である

 

「いや、それは今最終目標ってところだろう?」

 

「風見くんの言う通りです。先生はあの時総合点ばかり気にしてました。故に今回はこの暗殺教室にピッタリな生徒それぞれに会う目標を立てました」

 

その内容は

 

 

 

「教科ごとに学年1位を取った者には答案返却時触手1本の破壊する権利。1本につき失う運動能力は約20%仮に6人なら120%今まで見てきて映像解析からわかるのは初速はおよそ時速600㎞単純計算で500にまでは下げられる。そして」

 

奇襲作戦(・・・・)

 

雄二はある生徒からとある作戦を聞いていた。実行するのはその彼も入れて4人

 

「同率1位でも当然権利はもらえる。だからJBには悪いが、今回は目立つ順位を狙う」

 

「そういうことなら構わないわ。…けど最低でも3本できるなら6本ね」

 

「無茶を言うな。今回は前みたいな妨害はないことは烏間から聞いてる。だがそのかわりに中間よりも難易度の高い問題になる」

 

椚ヶ丘の問題は雄二の想像以上の難しさがあった下手な高校なら入学できるものだ。その上を今回いくだろうと雄二は考えていた

 

「ならあなたは最低3本は絶対よ。そうじゃなきゃ上も納得させられない」

 

やはりイトナの件は許されているわけでなかった。だが逆に言うと

 

「今回の件で成果を出せばあのクラスでの自由がある程度認められるのか?」

 

「ええ。たとえ仕留めそこなっても成果がわかればね」

 

「期末テストはその第1の壁か」

 

「そういうこと…不満?」

 

「いや、やる気がさらに出た」

 

「上への報告はしておくからあとはあなた次第よ」

 

そう言って立ち上がり部屋を出ようとする

 

「あっ、あとこれ、烏間に渡しといて」

 

「?ってこれは……」

 

渡された資料は最近の椚ヶ丘の付近で起きているまだ(・・)ウワサの情報

 

「“黄色い巨大ダコ”“コンビニスウィーツを買い占める黒ずくめの男”“Gカップねーちゃんが「ヌルフフフ」という声がして振り向くと誰もいなかった”……」

 

「もみ消しにも限界はあるっていうのも言っておいて」

 

もしかして最初のため息はこれが原因かと思う雄二であった。余談だが後日この件で殺せんせーが烏間に怒られたのは言うまでもない。

 

 

 

翌日、雄二が登校するとあるウワサがあったクラスの序列最下層のE組と成績優秀者を選りすぐった特進クラスのA組が賭けをしたと。その内容は

 

「5教科トップをより多く取れた方が負けたクラスにどんな事でも1つ命令できる、か」

 

図書館で五英傑と呼ばれる4人と口論になりそのような賭けを相手が持ちかけたことで広く学園に知れ渡り今日雄二にもその情報が入った

 

「巻き込んでごめん雄二」

 

「気にするな。それに巻き込まれたとも思ってない。それよりも勝った時に何を命じるかだな」

 

「おやおや風見くんもう勝った気ですか?」

 

「勝つ。なにせあんたが教えてくれてるんだ。触手の権利は頂くから覚悟しとけ」

 

どこか嬉しそうに殺せんせーは笑う。

 

「期待しておきますよ…それよりカルマくん真面目に勉強をしなさい!君なら充分、総合トップが狙えるでしょう‼︎」

 

「言われなくともちゃんと取れるよ。あんたの教え方が良いせいでね」

 

カルマも不真面目ながらも自身ありの態度でいう。がそれは雄二のそれとは違い良く言えば余裕がある。悪く言えば舐めているものだ。

 

「けどさぁ殺せんせー、あんた最近[トップを取れ]言ってばっかり。フツーの先生みたいに安っぽくてつまらないね。それに雄二は勝った時のこと考えてるけどどーするの?そのA組が出した条件って、なーんか裏でたくらんでる気がするよ」

 

カルマの言うことは正しく皆それは気付いている。実際にE組はそのことを知らないがA組は下せる命令を1つにしたが

 

様々な命令が書かれた協定書に同意する(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)協定書という形にしてE組を支配するいうなれば奴隷にする内容だ。それにサインしろという理不尽きわまりないもの。

 

そんなことつゆ知らずE組はこれ以上失うものがないと思っている。もし知れば間違いなく躍起になるだろう。故にこの条件を考えた男、理事長の息子である浅野学秀は命令をテスト後に発表するとしたのだ。いくら底辺の者達でも奴隷にされると知れば万が一もある。それを潰す。———だが、彼は知らない。否、考えてなかったなぜ底辺のE組が強気になっているのかを。

 

そしてやる気にさせる起爆剤は常に教師が出してくれる事を

 

「ヌルフフフ皆さんに提案ですが学校のパンフを見た時にとっても欲しいものがありました。コレをよこせと命令するのはどうでしょう?」

 

そのパンフに書かれたものを皆に見せた瞬間驚愕する。

 

「驚いた。そんなもんまであるのかこの学校は」

 

「知ってたけど、縁の無いものだから忘れてた」

 

「君達はどん底を経験しました。だからこそ次はバチバチのトップ争いも経験してほしいのです。先生の触手、そしてコレ。ご褒美は充分に揃いました。暗殺者なら狙ってトップを()るのです‼︎」

 

大きな目標と成果に対するご褒美。起爆剤には充分すぎた。それぞれの想いが、暗躍する考えが、全ては結果が勝利が全て。当日まで各々が努力した

 

 

*試験当日

 

「雄二君、仕上がってきた?」

 

「当然だ悪いが仲間だが勝たせてもらうぞ莉桜」

 

「……じゃあさ、私達で賭けする?どっちが英語の点数で勝つか」

 

「賭け?」

 

「私が勝ったら1日目デートする事。雄二君が勝ったら好きにしていいよ」

 

5教科の中で彼女は英語を得意としている。だが雄二も前回のテストでは英語が1番成績が良かった勝負としてはどうなるかわからない

 

「好きにしてと言われてもな」

 

「…なーんかエロいこと考えてた?」

 

「何故そうなる。あーわかった乗ってやる(まぁ、やる気になるものはあってもいいだろ。俺が勝ったら適当になんか奢ってもらうか)」

 

「さすが、ノリがいいね(ここいらで落とす)」

 

(なんとなく2人の考えがわかる…雄二には悪いけど中村さんがんばって)

 

そんな事を言っている合間にE組のテスト会場に着いたが先客がいた。…見慣れない顔である

 

(((誰だ⁉︎)))

 

「律役だ」

 

疑問に答えたのは教室に居た烏間だ。流石に人工知能の参加は許されず、かと言って転校してきている生徒を出さないわけにもいかずネット授業で律が教えた替え玉を使う事でなんとかなったとのことだ。しかし…

 

「交渉の時に理事長の「こいつも大変だな」という哀れみの目を向けられた俺の気持ちがわかるか?」

 

((ほんと頭が下がります‼︎))

 

「大変だなぁ」

 

「……ありがとう風見くん。次の訓練では覚悟しておく事だ」

 

烏間は律からと自分の言葉で頑張れと励まして去った。

 

 

全員が揃い、いつでも準備万端だ

 

これはあくまでも中学のテストにすぎないだが、皆気持ちはそれ以上のものだ。得るものの大きさを知るからこそ共に戦う仲間でありライバル、E組を潰すため躍起になるA組、それらを応援するもの野次を飛ばすもの。さながらこれは問スターと戦う闘技者

 

チャイムが、否、ゴングが鳴る

 

 

*テスト1限目:英語

 

襲いかかる問スターに悠々と避けながら攻撃を与える。前回のテストでこの学校は英、数、理の3教科がとくにペースが早く難敵であると雄二は理解していた。正直彼はアメリカの学校に居て、フランクに話す友人もいた故に最初のテストでは気付かないほどの緩みがあった。それが結果としてでた故に慢心はもうない。同じく1年間LAに居てその慢心を持っていた五英傑の1人の瀬尾は

 

「今更日本の中学レベルでつまずくかよぉ‼︎」

 

問スターの鳩尾にハンマーが入る。が怯みこそすれども倒れなかった。良いところ三角での1点だろう

 

「な、なんで倒れねぇ⁉︎満点解答の見本だぞ!」

 

一方E組の方は

 

「ほいプスってね」

 

ハンマーの柄の部分を眉間に指す花丸の満点解答が出て問スターは消滅した

 

「お堅いよ優等生〜多分読んでないでしょ?サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』」

 

今回の問題文は名作小説から引用されているものが多く、A組でも教師がさりげなく薦めていた。しかしE組は熱心に薦めてくる殺せんせーがいた。

 

「まぁ、これは仕方ないさそこまで責めることはできないあの優等生の……誰だ?」

 

「瀬尾智也だ!」

 

「すまん瀬尾くんっと」

 

迫りくる問スターの攻撃をかわして眉間に刺す

 

「むっ」

 

満点解答で消滅したが莉桜より少しだけ遅かった

 

「どこかでスペルミスがあるんじゃない雄二くーん」

 

「……結果はまだわからんさ」

 

だがあきらかにイラっとしていた

 

 

*テスト2限目:理科

 

甲冑の問スターの装甲を魔法の杖で1枚ずつ剥がしていく

 

(正直キツイな)

 

決して雄二は理科に手を抜いたわけではない。奥田と殺せんせーの協力のもと、中間テストの時以上の実力を付けた。だが得意分野ではない戦いは劣勢だ暗記でなんとか凌いでいる

 

「そぉ〜らッ‼︎」

 

(あのA組の眼鏡も暗記でどうにかしてるが、最後の問題はだだの暗記でどうにかなるものじゃない)

 

『ダニエル電池が充電できるがボルタ電池のできない理由を簡潔に述べよ』

 

(あいつの答えは簡潔じゃなく簡単に答えているそれじゃ点数は取れない)

 

ふと見るとそこには問スターの鎧を剥がして仲良くする奥田の姿があった。

 

「本当の理科は暗記だけじゃ楽しくないです。君が君である理由を理解(わか)ってるよって言葉にして伝えてあげたらこの理科すっごく喜ぶんです」

 

そう言うと仲良く問スターと散歩をしているのを五英傑の小山は呆然と見つめるしかなかった。

 

「そういえば教えてくれてたなもっと相手にわかりやすい答えにってな」

 

どうにかその事を思い出してさらりと答えを書いたあと問スターは頭の鎧を取り鎧をつけていた相手と思えない可愛い顔でマルという形を顔に出した

 

「まぁ、奥田はお前さんと違って本当に理科が好きだからできたんだろ。気にすんな眼鏡くん」

 

「おれに答えられなかった問題を解けてる奴に言われても腹立つわ‼︎あと眼鏡くんじゃない小林だ‼︎」

 

「うん、これからもよろしく眼鏡くん」

 

「覚えるきないだろテメ〜!」

 

 

*テスト3限目:社会

 

装甲の腕に四脚装甲の戦車の問スターにはアフリカの地図とカウンター付いている

 

『アフリカ開発会議の首相会談の回数を答えよ』

 

マニアックな問題が多い今回の社会の中でも1、2の難しさである適当に書いたものは容赦なく砲弾の餌食になる今も五英傑の1人荒木も砲弾を受けたマスコミ志望だけあって社会知識は豊富の彼ですらわからないものである。

 

「フー危なかった…会議は重要度の象徴だし一応覚えといて正解だった」

 

「磯貝キサマ…社会問題でこの俺を出し抜くとは」

 

荒木は悔しく睨むが「たまたまだよ」と彼は言う。

 

磯貝の家は貧乏だ。故にアフリカの貧困に共感するところがあり調べていると

「こういうのは気になるなら一回見てみましょう。その方がもっと興味が広がりますよ」

と殺せんせーに現地に連れて行かれ興味の範囲がかなり広がった。

 

「けど、あっちはもっとすごいよ。他の国で起きた紛争やテロの回数とかもっとマニアックなのも解いてるし」

 

「あぁ、確かになんであんな知識が多いんだ?まるで実際にその戦場にいたみたいだ」

 

(こんなもんか)

 

雄二が相手をしていた問スターは全身をバラバラに解体されていた。

 

 

*テスト4時限目:国語

 

日本式の鎧をつけた問スターが容赦なく刀を振る。

 

(俺が学年1位を取ることができる可能性のある教科は残りはこれだ絶対取る)

 

無駄な動きをせず、的確に相手を切る。模範解答ではなくいかに綺麗な言葉であるかも重要のようで効かなかったのをすぐに理解し答えを直す。

 

「思った以上にやるようだなE組‼︎顔だけでなく言葉もなかなか美しい‼︎だg…」

 

(風見くん大丈夫かなぁ)

 

五英傑の1人榊原の言葉にまったく動じず…でなく、まったく聞いてない神崎は雄二の心配をしていた。ここにいる中で何故彼だけを心配しているのだろうかと思いながら問スターを軽くいなす

 

(迷ってたらダメだ。集中集中)

 

雄二が総合1位を狙っているのを聞いた。だから彼女も自分の得意分野である国語を共に勉強した。だからわかる大丈夫だと。そして

 

(後ろに彼がいるって思うとちょっとだけゆうきがでてくる…よし)

 

どうしてやる気になるのだろうとちょっとだけ思いつつも的確に相手を切った。

 

 

*テスト5時限目:数学

 

「ラストスパートだな」

 

「雄二まで目の色変えちゃって」

 

気を引き締める雄二と余裕に銃を持つカルマは並んでテストの開始を待つ

 

「そう言うカルマは余裕あるな」

 

「あれ?自信ないの?」

 

「自信はある。だが勝てるかはわからない。だから死力を尽くす」

 

(違うんだよなぁ勝つってのは。通常運転でサラッと勝たなくちゃ)

 

そうしてチャイムという名のゴングが鳴った

 

 

 

こうして2日に渡ってテストは幕を下ろした。それぞれ出し切った結果は全て○の数で決まる

 

 

「さて、結果はどうだったか教えてくれる?」

 

JBの眼は凍てつくようなものだった

 

「どれもダメでしたは…受け付けてないんだろ?」

 

とりあえずまずはジョークをかました後テスト結果の発表のことを語る

 




問スターの戦闘描写はどうしようと少し悩みました。あと雄二のそれぞれの点数も

感想、意見、誤字があればよろしくお願いします。


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結果の時間

今年中にあと1話出すと決めてたのですがなんとかなりました
てな訳でテスト発表回です


椚ヶ丘では学年内順位と答案が共に届けられる。今回のテストの行方は一目瞭然。

 

朝のホームルームの後殺せんせーは数枚の封筒を取り出す中にあるのは答案だあろうことは容易にわかる

 

「さて皆さん。全教科の採点が届きました」

 

ドクン、ドクンと緊張しているものがほとんどだ

 

「ではまず、英語から発表します。E組の1位は2人そして…」

 

聞きたいのはその先、学年内ではだ

 

「学年でも1位‼︎中村莉桜‼︎風見雄二‼︎」

 

「「「「うぉおおおおおお」」」」

 

中村莉桜:英語100点『学年1位』 風見雄二:英語100点『学年1位』

 

「2人ともお見事です。特に中村さんはやる気にムラっ気があるので心配でしたが」

 

「まぁ、色々と賭けがあったからね。1つはドローだけど…触手1本忘れないでよ殺せんせー?」

 

「ふむ……風見くん、中村さんちょっと答案を」

 

「?あぁ」

 

殺せんせーに言われて答案を見せるとジッと見て

 

「わかりました。まぁ今は残りの答案を返すとしましょう。現状潰せる触手は2本。A組の5教科対決は取ったトップ人数でなくあくまでもトップを取ったクラス数ですからね。喜ぶのは全教科返した後にしましょう」

 

勝負の行方はまだわからない。

 

「続いて国語はE組1位は風見雄二くん‼︎更に学年ではA組の浅野学秀くんとも並んで同率1位‼︎」

 

「「「「おぉおおおお!」」」」

 

風見雄二:国語100点『学年1位』 浅野学秀:国語100点『学年1位』

神崎有希子:国語98点『学年2位』

 

「神崎さんも大躍進です充分ですよ」

 

「……神崎、ありがとうな。お前のおかげだ」

 

「うん。こちらこそありがとう。それとおめでとう」

 

「すげーよ風見‼︎あの浅野とタメ張れるなんて!」

 

「いや、まだだ。触手の権利は得たが賭けは1勝1分楽観視はできない」

 

「確かに英語も中村と風見との点差はたった1点だし…五英傑なんて呼ばれてるけど結局は浅野1人あいつを倒せるかで学年トップが決まるんだよな」

 

「では続けて返します。次は社会‼︎E組1位…そして学年でも1位‼︎風見雄二‼︎」

 

風見雄二:社会100点『学年1位』

磯貝悠馬:社会97点『学年2位』

浅野学秀:社会95点『学年3位』

 

「おめでとうございます。磯貝君も見事ですE組が1位2位を奪取です。マニアックな問題が多い中よく頑張りましたね」

 

「いや、でも風見に負けてちょっとショックだな。絶対1位の自信あったのに」

 

「張った山と偶然知ってた(・・・・)情報があったからな」

 

「これで2勝1分!つか、風見ここまで全部100点かよ‼︎」

 

「これ…狙えるんじゃないか?総合1位‼︎」

 

沸き立つ中、雄二は冷静に

 

「それは無理だな」

 

と否定した。

 

「なんでだよだって今のところ総合点は風見がトップじゃん」

 

「たった6点差だ。それに残りの教科は自己採点でトップでない可能性が高かった」

 

その言葉の事実通り

 

「理科のE組1位は奥田愛美‼︎そして…素晴らしい‼︎学年でも1位です‼︎」

 

奥田愛美:理科98点『学年1位』

浅野学秀:理科97点『学年2位』

風見雄二:理科96点『学年3位』

 

この時点で賭けの方は3勝1分でE組の勝利が確定した。だが…数学

 

浅野学秀:数学100点『学年1位』総合491点『学年1位』

風見雄二:数学93点『学年4位』総合489点『学年2位』

 

E組5教科学年1位数4ーーーA組5教科学年1位数2『勝者E組』

触手破壊可能数…

 

 

 

 

 

「お見事」

 

心からの賞賛の言葉…には見えなかった

 

「もう少し褒めてもいいんじゃないか?」

 

「最低ラインの3本取っただけでしょ」

 

「………」

 

「けどまぁ、約束だしね。触手破壊による暗殺の結果報告楽しみにしてるわ」

 

クスクスと笑うJB。報告に書かれた奇襲が成功したところを読んでのものである

 

「じゃ、あなたの口から続きを聞かせて」

 

「…楽しんでんなぁ」

 

 

side:浅野学秀

数時間前、理事長室

 

「個人総合1位キープおめでとう」

 

目の前にいる父親(理事長)の言葉はまったく賞賛がないおめでとう…社交辞令、否、それ以下に等しい

 

「けど、随分危なかったね…2位と2点差とはね。あぁ、そういえばE組と賭けをしてたそうだね。結果は君の負け」

 

全校中に広まった話しだ。耳に入ってない方がおかしい。

 

「どうする?こうなるとE組の要求はそう簡単に断れないよ。君がいいなら学校が庇ってあげてもいいよ」

 

「結構です」

 

そんなことをすれば後々この男の言いなりだ。

 

「なんだったかな?「首輪つけて飼ってやる」だったね。あぁ、それとありもしない私の秘密を暴こうとしたり」

 

「……何が言いたいのでしょうか?」

 

「よく言えたものだね、同い年との賭けにも勝てない未熟者が」

 

歯をくいしばる。ギリギリとギリギリと。腹わたが煮え、爆発しそうだ。

 

「結局彼が全校集会で言った通りになったね。言い訳は…無さそうだね。言いたいことは終わりだよ」

 

「…し、つ!れい…しました」

 

言葉をどうにか出してその場を去る。彼とは風見雄二という男の事だろう今回勝ったのは僕だ否、僕だけだ。いいだろう認めてやるE組特に風見雄二まずはお前達を潰す。

 

 

*side:フリー

同じ時間帯E組校舎近くの木でテストをクシャリと握り歯を軋ませていた男、カルマは余裕の顔が消えていた。

 

「さすがA組。5教科総合は1位から6位は風見君以外全員A組。竹林君と片岡さんも頑張ってますが同点8位」

 

音もなく殺せんせーが現れて声がした方を見るがそこにはもいない。いつのまにか後ろにつかれていた。

 

「まぁ、当然ですね。A組も負けず劣らず勉強したうえにテストの難易度も上がっていた。…怠け者がついて来れるわけがない」

 

赤羽業:数学:85点『学年10位』総合469点『学年13位』

 

今回のテストでE組は1人を除いて全員総合順位を上げていた…そう1人、カルマを除いて

 

「……何が言いたいの?」

 

「恥ずかしいですねぇ〜「余裕で勝つ俺カッコいい」とか思ったでしょ?」

 

カァ〜と顔が耳まで真っ赤になる。理由は当然図星だから。

 

「先生の触手破壊の権利は中村さん奥田さん風見くんの3名。しかも風見くんは3本分圧勝ですね鋭い刃を更に研いで結果を獲った。対して君は研ぐのを怠り錆びた刃を自慢気に掲げただけ賭けも暗殺も君はなんの戦力にもなれなかった」

 

先生の顔は黄色と緑のシマシマ、舐めている顔だ。正面にまわり触手でグリグリと頭を触り煽る

 

「殺るべき時に殺るべき事を殺れない者は暗殺教室では存在感をなくすですよ〜」

 

グリグリグリグリグリグリ

恥ずかしさは怒りになりいたたまれず触手を払って校舎へと戻っていった

 

(あぁ、クソ、完敗だ…雄二に勝てるのはこれだけだったのに)

 

ふとここでカルマは気付いた感情があった

 

(あれ?俺悔しがってる?)

 

それまでわからなかった。だがようやくわかった。自分は、自分が勝てるはずのものを自らドブに捨てたのだ。

 

「(……暗殺も戦闘も…雄二に勝てるものはない…だから勝ちたかったんだ俺……)ちくしょう」

 

心の底からでた言葉だった。殺せんせーは立ち直りの早い方へ挫折させた。だが、カルマの挫折は殺せんせーの想像を上にいった

 

「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう!」

 

自分の不甲斐なさに吐き気すらでるほどに。とはいえ、そうなるかもしないことも殺せんせーはよんでいた。そして彼が動くとも

 

「……ゆう、じ」

 

いつのまにか目の前に雄二がいたのに気づく。

 

「1勝1敗だな」

 

「⁉︎」

 

上から目線…ではない。それが…

 

「はん、ちょっと手を抜いただけさ。……次は勝つ」

 

何よりもカルマの救いだった

 

 

再び時間は少し進み教室では先生が結果を褒めていた

 

「5教科プラス総合点、6つの中皆さんが取れたトップ賞は5つ、つまり破壊できる触手は5本です」

 

余裕そうだがしかしチキンの殺せんせー内心は違う。結構ハラハラしていた

 

(まさかたった1人で3本分取られるとは…ま、まぁ5本ならギリギリなんとなるでしょう)

 

殺せんせーのそんな浅はかな思いは…

 

「おい待てよタコ、5教科トップはそれだけじゃねーぞ」

 

寺坂達4人にぶち壊される運命にある。

 

「な、なにを?国、英、社、理、数。全て合わせて…」

 

「アホ抜かせ、5教科っつたら国、英、社、理…あと家(家庭科)だろ」

 

寺坂竜馬、吉田大成、村松拓哉、狭間綺羅々:家庭科100点『学年1位』

 

「か、家庭科〜⁉︎ちょ、ちょと待って‼︎家庭科のテストなんてついででしょ‼︎何こんなのだけ本気で100点取ってるんですか君達は‼︎」

 

「だーれもどの(・・)5教科とは言ってねーよな」

 

これこそ寺坂の奇襲。詭弁に等しいがしかしこれを成功させるのは実はかなり難しいものだった。家庭科は受験に使わない故に重要度が低い。そのため問題は教科担任の好みで自由に出題する。殺せんせーの授業しか受けてない彼らに100点を取るのは実は本当の5教科を取るのより難しい

 

それは彼らの徹底的な傾向対策の賜物。それを突っぱねることなど教師たる殺せんせーにはできない。というより

 

「ついでとか、こんなのとか、家庭科さんに失礼じゃね殺せんせー?5教科中最強の家庭科さんにさぁ〜」

 

先程の意趣返しと言わんばかりのカルマの煽りもあり教室内が一斉に援護に入る

 

「そーだぜ殺せんせー、約束守れよ‼︎」

 

「1番重要な家庭科さんで4人がトップ‼︎触手合計は9本‼︎」

 

「きゅ、9本んんん⁉︎」

 

「殺せんせーは、嘘はつかないよな、俺が知ってる最高(・・)の先生なら」

 

あえて最高を強調した雄二の言葉にたじろぐ殺せんせー。もはや逃げ道無し

 

「それと殺せんせー。これは皆で相談したんですが、この暗殺に…今回の賭けの『戦利品』も使わせてもらいます」

 

磯貝の言葉に更に殺せんせーはゾッした

 

 

 

「言葉で聞くと更におかしいわ」

 

「できれば俺も家庭科の方の援護をしたかったが…」

 

「わかるわ。けどそれだと本命の5教科が疎かになるもの」

 

雄二以上にこの状況を楽しむJBは生き生きとしていた。

 

「外出の許可はもう得たわ。一応言うけど休暇じゃないから」

 

と言うものの半分休暇のようなものである。彼らが得た戦利品はそういう類のものだ

 

『椚ヶ丘中学校特別夏期講習、沖縄離島リゾート2泊3日』

 

四方を殺せんせーの苦手な水で囲まれたこの島を使い更にたたみかける

 

「あいつらはかなり成長している。作戦にもよるかもしれないが、いけるかもしれない」

 

「けど、肝心のあなたは今回射撃はできないターゲットの触手を破壊する必要があるから。そうなると…彼らの力が必要ね」

 

「……………千葉か」

 

 

■–■■■■候補報告書

 

第2候補:千葉龍之介

 

 

「もう1人の子は?」

 

「速水の方はまだだな手先の正確さと動体視力バランス能力は3ヶ月でここまで成長したがスナイパーに必要な遠距離射撃と命中さらに、これは千葉にも言えることだが…」

 

「あぁそっちじゃなくて、この暗殺時の狙撃手としての話しよ」

 

「………」

 

「ごめんなさい」

 

「それは、JBが俺にいう言葉じゃない。俺が彼らにいうことだ。なぁJB、俺と鷹岡、そしてアイツ…一体何が違う?」

 

「貴方自信がどう思ってるのかは知らない。けど慰めの言葉じゃ納得しないからはっきり言うわ。程度が全く違うけどほぼ同じね」

 

何も言えず雄二は押し黙ってしまった。

 

「けど、まだ終わってないどころか始まってもいない。どうなるかはこれから次第。貴方と、彼らの選択次第よ」

 

「俺に選択肢なんてあるのか?」

 

「あるわ。だから貴方はあの教室にいるのだから」

 

E組の1学期が終わる。そして運命の時は近づいてくる。それを感じただ雄二は呆然とするしかなかった

 

 

 

 

*おまけ

 

「これで今日の報告とレポート提出はおわったな。帰らせてもらうぞ」

 

「で、まだ続きがあるんでしょう?」

 

「………チッ。どこから得てんだその情報」

 

途端に苦虫を噛み潰したような顔をする雄二

 

 

「さて、結果はともかく…」

 

「結果は守れよ、殺せんせー」

 

「わかってます‼︎…おほん、風見くん、中村さん。あなた方は英語の教科で独自に賭けをしていたとか?」

 

コクリと2人は頷く

 

「テストの点だけ見ると引き分けなんですが、ここの問題」

 

先生に言われたところを見ると2人の答えは微妙に違っていた。

 

「ここは正直、マルにするか三角にするかの悩みどころですね。おそらく本校舎の教師も悩んだ結果のものでしょう。しかし…私なら風見くんの答えは三角ですねぇ」

 

「ということは」

 

「ええ。この勝負中村さんの勝ちですよ」

 

これを聞いた莉桜はガッツポーズをし雄二は少し、ほんの少しイラッとした。そしてその内容が教室に行き渡ると当然だが

 

「な、中村ちゃんズルーい!」

 

「風見ぃぃなんでお前ばっかりぃぃぃ⁉︎」

 

「これも戦略だよ。んじゃ、早速日程決めよう!」

 

「はぁ……先生は何カメラ用意してんだ?」

 

「いえ、別に」

 

「ついてきてたら理事長に言うから」

 

「にゅあ⁉︎、そんな殺生な⁉︎」

 

こうして雄二と莉桜とのデートが決定し、殺せんせーの弱点に『下世話』が登録されたのであった。

 




感想、意見、誤字報告は遅れても基本返信しますのでよろしくです

では良いお年を


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デートの時間・2時限目

今年初の投稿ですデート回にして………

ではどうぞ


夏休み、ほとんどの者が殺せんせーの暗殺はなりを潜めているがそうでない者もいる。実際に南の島で暗殺するから油断しているとふんで自身で拾い集めたエロ本を餌に暗殺しようと岡島はトラップの用意をしていた。そのような感じで暗殺者はそれぞれの場所で暗殺の準備をしていた

 

 

そして

 

 

とある港湾近くの町、タクシー運転手は表示板を『予約』にしたのを確認してハンドルに指をトントンとしながら気長に時間を待つ。無線からは常に同業者(・・・)からの音声が流れる。ふと、コンコンと窓を叩かれるのに気付いて無線を切り窓を開ける。防音になっているので聞かれたことはない

 

「すいません、いまお客様をお待ちしてまして…申し訳ないですがべつの…」

「9029」

 

数字を出された瞬間運転手のスマイルは変わり何も言うことなく客用のドアを開ける。スッとその少年は手に持った荷物と入り俯く

 

「今は?」

 

「待機中です。お客様を待ってますが貴方が来るまで変化なしです」

 

「この仕事はいつもそれだよな」

 

「入れ食いでも困りますけどね」

 

ただの会話に聞こえるがちゃんと仕事の会話である。運転手は窓と扉が閉まっているのを確認して無線を開く。

 

「そっちは、どうなんですかこの前乗せた時は学校に行く前でしたよね」

 

「色々ありすぎて、どうにかなりそうだ」

 

「その割に楽しそうに見えますね」

 

「…………」

 

表情に暗がりが出だし野暮な言葉かと思ったがすぐに元に戻る。

 

[お客様が参られました。重要荷物の用意あり、9029号至急向かわれたし]

 

「……少し出てくる。ここで待っててくれないか?」

 

「はい」

 

少年は出て少しするとまたトントンとハンドルを指で叩くがものの15分でまたコンコンと窓を叩かれた

 

「戻った」

 

「はい、どう…も」

 

いつもこうだ。最初こそ驚いたが何度も見ると慣れてくるむしろこれは遅い方だ。前に5分足らずで戻ったこともある。だが今回は少し違う。作業着から着替えていた

 

「すまないんだが俺の荷物と作業着を届けてくれないか?場所はいつもの所で、俺は別に行く場所がある」

 

「わかりましたが何処へ?プランと違いますが?」

 

「同級生と約束があってな」

 

それだけ聞いてその場所の近くに案内した。

 

「ここでいい。代金はいつもの所に請求してくれ」

 

「プライベート分もですか?」

 

「あぁ」

 

ちゃっかりしてるなと運転手は思い扉を閉めて荷物を届けてから別の場所にとまり表示板を『空車』にした。しばらくし客がくる

 

「ハイ、どちらまで」

 

 

 

 

「おっ、早いね雄二くん」

 

約束の時間より30分ほど早く来た莉桜だがそれよりも早く着いていた雄二に驚いた

 

「ってなんか目の下に隈があんだけど」

 

「ちょっと前までバイトがあってな少し寝不足なだけだ」

 

「た、大変だね…と言うか、そんな日で大丈夫なの?」

 

「問題はない。夜戦後の行動は慣れている」

 

「や、夜戦って…」

 

例えのジョークにキレが無いので少し心配になるが

 

「大丈夫だ。それに、楽しみにしてたんだろ?なら、楽しもう」

 

「…うん、わかった」

 

そこからデートは始まった。

 

 

「うーん、どうかなこれ?」

 

ウインドウショッピングをしながら1つの洋服店に入る。南の島に行くのだから新しい服を着て行こうという事でだ

 

「南の島に行くからって、わざわざヤシの実が描かれた服にするのは安直じゃないか。…似合うとは思うが」

 

「いいじゃん、雰囲気重視だよ。あ、水着も新調しようかな」

 

「………そっちは行かないからな」

 

「あれ?はずかしいの?」

 

ニヤニヤとするのが気に入らなかったのかムキになり雄二はつい行くと言ってしまった。

 

(女性の服選びは面倒だなんでも似合う似合うと言えば適当だと怒られて、ハッキリ言えば失礼だとなる。ましてそれが水着なるとさらに厄介だ。自分のフェチズむを決めつけられるは、それを決めたのが本人でなく俺だとしれた時にはもっと厄介になるのは火を見るよりも明らか)

 

だから断ったというのに雄二はそこにいた。

 

「で、どっちがいい?どっちがいい?」

 

おまけに莉桜はわざと露出の高い物を選んで雄二に選ばせる。

 

(どうしたもんか)

 

逃げるのは簡単だが、性格的にそれはできないというよりしたくない雄二は少し悩んで

 

「どっちもないな」

 

「えー、そうかなぁ」

 

「というかあまり露出が高いものよりも…こういう派手さもありながら普通な感じの方がいいんじゃないか?」

 

と似合いそうだなと思った水着を見せると

 

「じゃ、それで」

 

即決だった

 

「つか、俺が選ぶの誘発したなお前」

 

「なんのことだかー」

 

態度で正解だと理解した雄二は

 

「じゃあもし俺がさっきの水着のどっちか選んでたら買ったのか?」

 

「ヒミツ」

 

ウインクしてはぐらかされた。

 

「んーいい買い物できたなぁー。じゃ、次はデートのお約束映画にしよ」

 

「思うが、なんで映画がお約束なんだ?」

 

「そりゃ、いろんなドラマやアニメにも出るくらいだし雰囲気ってやつだよ」

 

雑談をしながらなんの映画にするか考える。

 

「あ、コレどう?ギブリの新作!」

 

「ふむ、子供も大人も見れる。確かに良いな」

 

「…いやそこまで考える必要ある?」

 

「しかし、映画か」

 

「?どったの」

 

「陽菜乃から聞いてるだろうアメリカにいたことがあるって。その時にも映画を見たんだが…やっぱり日本と全然違うなって思ったんだ」

 

「例えば?」

 

「向こうには細かいマナーがなくてな前の席に人がいないなら席の上に足を置く奴はいるし、結構上映中もいちいち声出すし、安いのがいい所でもあるんだがな」

 

「あー日本人の映画好きとかは嫌そうだねそれ」

 

「そう考えると、日本の映画館にポップコーンって合わないとおもうな。うるさい食いもんだし」

 

「けど、映画にはポップコーンでしょ」

 

「いや、まぁ、そうなんだけどな」

 

 

映画はそれなりに面白いものだった。

 

「いや、短い時間に続編とかでもないのに伏線を全部回収するとかすごいね」

 

「どの映画にも言えるだろうそれは」

 

「いやいや、そうでもないよー回収しきれてないものなんていくらでもあるから」

 

カフェにより映画の内容を話しながら運ばれてきたケーキにを口にする。

 

「あまり映画は見ないがそんなもんなのか」

 

「…………ふふふ」

 

「どうした?いきなり」

 

「あ、別に。ただ、楽しそうでよかったなーって」

 

言われた事がすぐに理解出来なかった。

 

「雄二くん、時々遠くをみてるじゃん。…それも寂しそうに」

 

「…そう、なのか?」

 

全然身に覚えが無い雄二は今の自分の頬に手をあて言う

 

「気付いてないなら相当だよ。実はさ、今回誘ったのは話して欲しいからなんだ風見くんの事」

 

「俺の?」

 

「鷹岡の時からずっと雄二くん、そんな感じになっちゃたからどうにかしたいなって思ってね。考えても考えても結局はどうすればいいなんてでてこなくて。本当は雄二くんが話してくるまで待とうと思ったんだけど…力になるならやっぱ聞かないといけないと思ってさ……ごめん。なんか騙したみたいで」

 

謝罪をすると雄二は首を横にふる

 

「そんなことはない。寧ろ、黙っているからそうなったなら俺にも責任がある。ただ、俺のことは気にするな」

 

「私達じゃ、力になれない?」

 

「そういうわけではないが………あまり、言いたくないんだ自分の事は。前に渚達にも言ったが思い出すと恥ずかいものがあるからな」

 

納得してないのは顔に出ていた。少し考え雄二はコーヒーを1口飲みふぅと息を出す。

 

「俺の姉、一姫はとても才能に溢れていたんだ。それこそ、A組でトップを取れるレベルでな」

 

「?」

 

突然話し出す雄二に何も言わずにその内容に耳を傾ける。

 

「数多の才能のあった一姫と違って俺にはなんの才能もなかった。周りからよく言われたよ『姉の絞りカス』『出来損ない』ってな」

 

それに莉桜は信じられなかった。数多の才能というなら今の雄二にこそ合う。そんな彼が無能の烙印を押されていたことに

 

「両親も、周りの人も、一姫に目を置き俺は腫れ物を見るような目で見られていた。…勘違いしないでほしいが、それで姉を恨んだ事はない。いや、勝手に自分の不幸は姉のせいだと思った時もあったが仲は良好だったよ。だが、姉が事故で死んだ後は酷いもんだった。父は荒れて暴力を振るいだした。母はそれに耐えられず俺を連れて逃げたんだ。けどその後色々あって両親も死に色んな不幸が俺に起こった」

 

隠している所があるのは聞いてわかるが莉桜はあえて無視して聞く

 

「鷹岡にキレたのは俺の過去に土足で踏み入れたからだ。忘れていた事を思い出して、自分の存在も理解しなおした。ただそれだけさ」

 

「………不幸とは思ってないって言ってたけど、本当に?」

 

「本心だ。と、言いたいんだがな。あの時言ったように父からも優しくされた事はある。けど本当の本当に本心かと言われるとわからない」

 

雄二にしては曖昧だなと思った。やはり触れるべきではなかったかと思っていると

 

「けど、これだけはハッキリと言える。お前達に会えたことは俺の人生の中で最も価値のある事だとな。一姫の件なければ俺はもっと別の人生があったかもしれない。けどお前達にも会えなかった。それだけは俺の人生最高の誇りだ」

 

「恥ずかしいこと言ってくれるね。まったくさ」

 

話しが終わるといい時間になっていたのでそこでお開きする事になる

 

「今日はありがと雄二くん…楽しかった?」

 

「楽しむっていう表現がよくわからない。けど、楽しいというのはあったな」

 

「なら、頑張ってさそったかいがあったもんだよ」

 

雄二の笑顔が見れただけでも莉桜は満足

 

 

 

 

 

 

 

 

のはずがない。雄二に近づき頬に

 

「ん」

 

「む」

 

キスをした

 

「いままでのお礼だよ。初めてだった?」

 

「まぁ、初めてではあったな」

 

「……嘘だね、それはなんか慣れてる感じ」

 

「それはすまない」

 

むぅとした顔で言われつい謝る雄二だが莉桜は気にしてはいない。クラスのライバルがしてる可能性はあるし、雄二なら唇のキスもありそうだなというのは理解している。

 

「ま、今回は雄二の過去に触れたからここまでにするよ」

 

「それは謝罪か?それとも別の何かか?」

 

「さぁねー」

 

もし、ここで莉桜がもう少しはぐらかさなければ

 

「ってなに?雄二くん…だ、だいたんだなぁ〜」

 

(イラっ)

 

「むっ⁉︎」

 

こんな大胆なキスをする事はなかっただろう

 

「……………」

 

「…どうした?」

 

「は、」

 

「は?」

 

「初めて………ううううううう‼︎⁉︎」

 

顔が真っ赤になって莉桜は身悶える。

 

「雄二くん‼︎、今回のコレは、ゼッタイに秘密だからね⁉︎」

 

「いや…」

 

「ヒ、ミ、ツ‼︎だからね‼︎」

 

「そうしたいなら…まず殺せんせーに言うべきだろ」

 

「……はい?」

 

「さっきからずっといたぞ。今のも写真を撮ってた」

 

「は、は、早く言ってよぉぉぉぉおお!」

 

 

後日

 

「いやぁーよく撮れてますねぇー。風見くんが後ろ姿なのが残念ですが、それが逆にいい味をだしてますねぇ〜実にイイ‼︎」

 

「消せ消せ‼︎つかコロス‼︎消さなきゃコロス。消してもコロス‼︎」

 

「おぉ、大胆なことだねぇー中村さんもだけどそれ以上に雄二が」

 

「何よディープじゃないならこのくらい普通でしょ」

 

「ビッチ先生…そういう問題?」

 

「「………」」←妬みの視線女子×2

「「……ギギギ」」←特に強い妬みの視線男子×2

「………」←よくわからないが苛立ちのある視線女子

 

「随分賑やかだな」

 

「で、当の本人は全然通常運転だし」

 

やれやれだなぁという顔で雄二にツッコミを入れる渚と何がだという目をする雄二

 

というカオスな事が起こるのだがそれは別の話




少し短いのに時間かかりマジ申し訳ないです。
感想、意見、誤字報告があればお願いします‼︎
あと、松井先生の新作楽しみです!


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訓練の時間

いつもと違いすぐに浮かんだのと時間がありすぐできました。いつもこうな…以下略


8月、殺せんせーの暗殺期限は残り7ヶ月になる。まず間違いなく勝負の期間

 

「うぅぅくぅぅ」

 

「中村さん、どうしたんだろう?全然命中してない」

 

「なんかあったのかな……雄二とデートしたって聞いてるけど」

 

「……それ、ほぼ間違いなく雄二が原因だと思う」

 

南の島暗殺計画まで1週間を切った。計画は詰めの段階に入りほぼ出来上がっている。今回は射撃がメインになるのは明らかなので全員が射撃訓練を行なっている。がここ最近は特に莉桜の様子はおかしい。訓練中のミスは多く、雄二を見ると真っ赤になる。

 

「殺せんせーいわく、夏休み明けて私が生きてたら教えますだって」

 

「気にはなるけど殺さないとね…というか殺されない気満々みたいだね」

 

「あの子のケアは私がしておくわ」

 

「ビッチ先生…って何そのカッコ」

 

見学に来たビッチ先生はサングラスに胸元と足下が肌けた衣服に日除けの帽子とラフ全開であった

 

「ビッチ先生も訓練しろよ。射撃やナイフは俺等と大差ないだろーにさ」

 

「ふふふ、大人はズルいのよ。あんた達の作戦に乗じてオイシイとこだけ持っていくわ」

 

ほんとズルい考えだなぁと言おうとした皆が黙る。ビッチ先生の後ろの人物を見て

 

「ほほう、随分ヒマそうだなぁ…イリーナ」

 

ビクッとしてギギギと首を後ろに向けると強面の男、ビッチ先生の師匠ロヴロがいた

 

「な、なんでロヴロ師匠(センセイ)が⁉︎」

 

「夏休みの特別講師で来てもらった。今回の作戦にプロ視点から助言をしてくれる」

 

ビッチ先生の疑問に烏間が答える形で言う。早速誰よりも早く着替えろと指導を受けたビッチ先生はジミーなフード付きのジャージに着替えてきた

 

「それで、殺センセーは今絶対に見てないな?」

 

「ああ。予告していた通りエベレストで避暑中だ。部下が見張っているから間違いない」

 

暗殺において作戦の機密保持は大切だ。特に相手が手練れや位の高い人物ならより重要度は高くなる。因みに今回の特別講師の話しを受けたのには理由がある。

 

「今私の方で斡旋できる暗殺者はいないのでね。慣れ親しんだ君たちに殺してもらうのが1番と考えた」

 

「やっぱり人選が難しいんですか、そういうのって?」

 

岡野が何気なく問うとロヴロは首を横に振る

 

「たしかにそれもあるが正確に言うなら違う。手持ちの殺し屋は君達の知らない所で送ったが全員失敗し、独特の匂いも覚えられて2回目以降は教室にたどり着けない。つまり2度は使えない。おまけに有望な殺し屋数名と俺の弟子と連絡がつかない」

 

「弟子?あぁ、あの子……最近会ってないけどどうなんですか?」

 

「少なくとも今のお前よりはいい仕事をしている。引き際も弁えている死んではいないだろう。…なんだ?心配か?」

 

「いえ、別に」

 

と言うがビッチ先生は少しホッとしているなと渚はおもった。それはロヴロも同じだったようで

 

「あいつはお前を姉として慕っている。ーーが、あまり腑抜けた顔をするなよ」

 

警告(・・)を含めてそう言った。

 

 

 

訓練は恙無く進み時折り撃ち方の指導をロヴロが行う。今は作戦の概要を確認している。

 

「先に約束の9本の触手を破壊し、間髪入れずにクラス全員で攻撃して奴を仕留める」

 

絵付きで書かれた計画書に書かれている事はシンプルな物だが今読んだのは計画②と③

 

「それはわかるがこの①精神攻撃というのは何だ?」

 

その部分だけは『精神攻撃』とだけ書かれて内容が書いてないのでロヴロは質問した。

 

「まず動揺させて動きを落とすんです。殺気を伴わない攻撃には…殺せんせーもろいとこあるから」

 

「そうそう。例えばつい最近殺せんせーエロ本拾い読みしてたンすよ」

 

「あ、その話面白かったよ………ちょうどその日……その日…ぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

「莉桜、落ち着きなさい」

 

ビッチ先生に言われてその場を離れる莉桜を見送りつつ前原は続ける

 

「ほんと、何があったんだろうな…まぁともかく、そんときは『クラスの皆さんには絶対内緒ですよ』ってアイス1本配られたけど……今どきアイス1本ごときで口止めできるわけねーだろ‼︎」

 

「「「「クラス全員でさんざんにいびってやるぜ‼︎」」」」

 

「他にもゆするネタはいくつか確保してますからまずはこれをつかって追い込みます」

 

「…残酷な暗殺法だ」

 

ロヴロも暗殺者として凄惨な現場を見てきたが今回は作戦の通り精神的にキツい。自分の恥ずかしい事を目の前で暴露される。しかも大切な生徒自身に精神的に殺された後に肉体的に殺されるのだ。

 

「で、肝心なのはトドメを刺す最後の射撃。正確なタイミングと精密な狙いが不可欠だが…ここにいる者たちはいいレベルになってはいるが決め手に欠けるな。今回彼は触手を破壊するため、トドメの射撃ができないんだろ?」

 

と言うと烏間はあれを見ろと言わんばかりに校庭にある穴が中央部分に3、4あいた殺せんせーの顔が描かれた的に指をさす。

 

「あの的に何発撃ったと思う?」

 

「………まさか何十発も撃ってほぼ同じ所に当たっているのか?」

 

「そうだ。千葉龍之介は空間計算に長け、遠距離射撃に速水凛香は手先の正確さと動体視力のバランスが良く動く標的を仕留めるのに、しかもここ最近は風見くんの指導もあり腕が急成長している」

 

資料を渡して烏間が言うとロヴロは「素晴らしいな」と声を出す

 

「それで、今彼らは何をしている?ここには居ないようだが?」

 

「森の中で訓練中だ。実戦形式でな」

 

 

 

ユラユラと空き缶が川を流れる。波に揺れていたソレがパァンという音が聞こえてすぐにいきなり跳ねる。しかしそのすぐ隣で水飛沫も小さく上がる。

 

(っ、外した)

 

【ボヤッとするな修正】

 

無線から聞こえる雄二の声で即座に切り替えて修正しもう1度撃たれた。今度は放たれた球がいまだに水に浮いた缶に2発同時に当たり川の外に放り出された。

 

【よし、一旦休憩しよう。所定の位置に集まってくれ】

 

「……ふぅ」

 

速水凛香は組み立てていたライフルをバラしてしまい、いわれていた場所に向かう。ほぼ同時に千葉も来た。

 

「動く対象物への同時発射および命中訓練、仕上がってきたな」

 

「律、成功率は?」

 

「現在89%ですね目標の95%まであと少しです」

 

「…まだ6%もあるのか」

 

「………」

 

「もう6%しかない…だ。あまり追い込むな」

 

弱気になっている2人に雄二はそうアドバイスする。実際2人の命中率は元々高い。が、今回の訓練は1人が当てるだけはなく2人が同時に当てるむずかいものだ。正確さはもちろんターゲットに相方と自分の互いの距離、動く的の速さ、動きの予想など全て合致しなければならないものを短期間でここまで伸びたのは2人の才能によるものだ

 

「だけど本番まで1週間を切っている」

 

「結果のみを求めるのは狙撃手として間違ってない。だが気負いすぎると上手くいくものでも失敗する。そして今は練習時だ。なら数をこなしていけばいい。幸いにも2人とも才能はある上に性格も同じなんだ…成功率は上がる」

 

「風見はどれだけ練習したんだ?」

 

「おぼてない。暇さえあれば自分だけでもやったが、実際に撃つ時は師匠が見ていたがな」

 

「「………」」

 

「…次のステップにいくか」

 

「え、まだ目標の数値に達してないわよ。というか、何をするの?」

 

「俺とのお前達2人で競う。川の上流から空き缶を流し指定ポイントに入ったら狙撃開始。お前達2人はチームでどちらかが当てればいい」

 

このルールに2人はほんとに多少だがイラっとした。雄二の射撃の腕はE組トップだがそれでも自分達もこれまで訓練で腕を上げている。このようなハンデは舐めているとしか思えない。

 

「始めるぞ」

 

そんな2人の考えなぞ知らず雄二は始める。

 

 

勝つ。そんな勢いと思いを入れて挑んだが

 

「…まさか」

 

「全敗」

 

10回やって10敗した。2人のどちらかあるいは同タイミングで空き缶を見つけて構えたときにはすでに撃たれているの繰り返しだった。

 

【もう1度流す】

 

雄二が不正をしていないことなど見ればわかる。というより実は全て2人より遠い位置で狙撃している。11回目も敗北した

 

「全敗だな」

 

「「………」」

 

「競う相手がいるとどうしても焦りはでてくるもんだ。だが、狙撃手に必要なのは正確さもだが早撃ちも時には必要だ。そして今お前達はチームになっている。そこをもう少し活かすんだ」

 

指導後も数回しこれで16回目

 

(……ターゲット確認、距離、風速、動き良し)

 

空き缶を見つけた雄二は手早く構えて撃った。空き缶が跳ねるのを確認したが違和感があった

 

(今のは俺のと、速水と千葉の弾が同時に当ったな)

 

同時に当たったのは半分は偶然だ2人はチームとして動きだしていた。互いに同じ考えのもと

 

((風見に合わせる))

 

雄二が自分達より上だと理解した彼らはお互いだけでなく雄二の動きも合わせる方向にした。彼なら自分達が見つけた時点で撃つ段階に入っていると思い、より早く、より正確にと思考を進めた。その結果が16回目でようやく出たのだ

 

【訓練終了。もう1度同時射撃訓練に移る】

 

そうしてまた数をこなしていき

 

「命中率95%を超えました。お2人ともお見事です!」

 

「「ふぅ」」

 

「どうにか仕上がったな」

 

「どうにか…か。でも本番の相手は殺せんせー…本当にできるのかな風見抜きで」

 

(できる、できないを考えるな…なんて言っても無理だろうな。教えるっていうのは難しいもんだな、麻子)

 

自分の師匠もそういう想いがあったのだろうかと考える。だがそんな事はわからないのだと気を取り直す

 

「次は不安定な場所からの狙撃訓練と精神的に不安定になる夏の日向からの待ちからの射撃訓練だ。待ち射撃の方はちゃんと水分補給と日射病に気をつけて行う」

 

コクリと2人がうなずくのを見て次に移った。

 

 

 

 

 

「……えぇ、ハイ。では手配をお願いします」

 

バイト先のJBの部屋に入ると電話をしていたのでソファに座り話しが終わるのを待った。

 

「ごめんなさい。じゃ、報告を聞くわ」

 

「何かあったのか?」

 

「まぁ、ちょっとね。本来ならもっと力を入れたい案件なんだけど……色々ターゲットの件やあなたの外出による予備人員の確保とかでゴタゴタしちゃってね」

 

「だから、何があったんだ?」

 

「…まぁ、一応話しておくわ。ついで言うと烏間にも通達されているわ」

 

 

 

「なるほど、それは厄介だな」

 

「プロだけあって隠れるのも隠すのも上手いから尚のこと厄介よ。そっちに何も起きなけばいいんだけど」

 

「俺も手伝おうか?」

 

「あなたは現場がわかってから動くの専門でしょ。それに怪物の暗殺もあるんだから」

 

「…わかった」

 

「じゃ、とりあえずこの話は終わり。次は暗殺計画の方だけど実際どう?」

 

「仕上がったとは思う」

 

 

■–■■■■候補報告書

 

第4候補:速水凛香

 

 

「こっちの報告書も大変ね。あなたも私も。しっかり報告しないと逆に怪しまれるし、かと言って本当の事を書きすぎると採用になっちゃうかもだし」

 

雄二に与えられた目的を誤魔化すのは常に一苦労である。下手すれば2人とも馘がとぶレベルだ

 

「けど、やっぱり候補としては狙撃手が高いと思ったんだけど…まだ第1候補はこの子なのね」

 

「渚の暗殺の才能はこれからどんどん伸びるだろうし、射撃の腕も着実にあがっている。狙撃手以外にいても良いだろ。それに…」

 

「狙撃手じゃない方が候補のトップにいても大丈夫だから?」

 

「まぁな」

 

上層部の1番であってほしいのまず間違いなくスナイパーだ。しかしそうでなければ諦めが少しはつきやすくもなる。

 

「けどこの子、赤羽…業、これでカルマなのね。この子は評価してないの?」

 

「カルマはどちらかと言えば部隊の隊長が合ってる。もちろん戦闘もいけるが…調整役って所だ」

 

「ふーん。じゃあ、なんでこの子は入れてるの?しかもスナイパーよりも高いし」

 

 

■–■■■■候補報告書

 

第3候補:■■■■■

 

 

「わからない」

 

「なにそれ?」

 

「わからない。だが、得体の知れない何かを感じる…だから、調査もしてほしい」

 

「…これでも忙しい身なんだけど?」

 

「できるときで構わない」

 

ハァとため息を出し、JBは頷く

 

「けど、本当にできる時よ。正直時間がかかるわ」

 

「構わないと言った」

 

了解と言った時、ドアがノックされる。部屋は防音だから聞こえてはないがすぐに資料を片付けて「どうぞ」とJBはノックをした相手を入れる。

 

「失礼します」

 

褐色肌の眼鏡をかけた少女が資料と思われるファイルを持って入って来た。

 

「頼まれた資料をお持ちしました」

 

「ご苦労様キアラ。悪いわねいつも」

 

「いえいえ。…ところで」

 

キアラといわれた少女は雄二によってくる。

 

「もしかしてあなたが9029?」

 

「あぁ」

 

「やっぱり!ねぇ、9029って複数いるって聞いたけど、あなたは何人目?」

 

「キアラ、もう良いから退出しなさい」

 

「ねぇ、よかったら後で写真を…」

 

「キ、ア、ラ。退出なさい」

 

JBが強く注意すると残念そうにして扉に向かう。

 

「じゃ、また会いましょうね」

 

と投げキッスをして去った

 

「なんなんだいったい?」

 

「『9029』を伝説のナンバーとして特別視しすぎているだけよ。あなたも、今日はもう休みなさい明日でしょ南の島は」

 

「そうさせてもらう」

 

「あぁ!思い出した。陽菜乃さんから連絡があったけど、この間他の子とデートしてその子の様子がおかしいって言われたけど何したの?」

 

何したと聞かれて、思い出すが

 

(…特に変な事をしたか?)

 

結局その時の事を全て話してJBが頭を抱えることになるのは言うまでもない

 




ちなみに
キアラは雄二が椚ヶ丘にいるのは殺せんせーの暗殺の為だけとおもってます
ちなみに2
第3候補は雄二のヒロインではないです

感想、意見、誤字報告は遅れても基本的に返信するのであればよろしくです

ちなみに3
南の島編、1番悩ませてんのは、名前繋がりと…


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決行の時間

南の島編です
今回はオリジナル要素及び設定がいくつかある予定です
ではまず先生暗殺計画から


雄二を含めたE組は目的地へと船でのんびりと移動している。近付いて来ているのかカモメが数羽船の周りを飛んでいる。周りからの海風のおかげで夏の日差しも暑く感じることはない。そんな中E組教師の殺せんせーは

 

「にゅやぁ…船はヤバい…先生、頭の中身が全部まとめて飛び出そうです」

 

「道中の暗殺全部回避して何言ってんだか」

 

「というよりも殺せんせーならマッハで先に着くことできるだろ」

 

「皆さんとの一緒の旅行がしたいんです…」

 

「それで酔うなら元も子もないんじゃないか?」

 

渚と雄二のツッコミは最近息が合うレベルになって来ている。

 

「乗り物で酔うのも…旅行の醍醐味ですよ…」

 

「ふむ、それは知らなか…」

 

「信じないでないね⁉︎」

 

…訂正ボケとツッコミは息が合うレベルである。

 

「あ!みてみて殺せんせー‼︎」

 

ナイフを振りながらキャキャと言う陽菜乃だが当然殺せんせーには当たらない

 

「見えて来たな」

 

「ああ!じっくりと見とけ殺せんせー‼︎あれが殺せんせーを殺す場所だぜ‼︎」

 

東京から6時間。『普久間島リゾートホテル』‼︎

 

「ようこそ、普久間島リゾートホテルへ。こちら、サービスのトロピカルジュースでございます」

 

ウェイターの男がクラスの何人かにジュースを配り、飲みながら周り客もキャキャとビーチで遊んでいるのを見るとリゾート感もさらに増す。が、ここには遊びに来ただけではない。

 

「例の暗殺(アレ)は夕飯の後にやるからさまずは遊ぼうぜ殺せんせー!」

 

修学旅行の時と同じく班別行動で予定通り殺せんせーの意識を他に向けさせその間に暗殺の為の準備を行う。

 

「最終テストは実戦だ。俺は質問するが答えは自分で出すこと」

 

雄二は今回の暗殺の要であるスナイパー、速水と千葉に着く為2班に同行している。雄二の言葉に2人はコクリと頷き目線だけを動かして歩く

 

「殺せんせーは?」

 

「いま3班と海底洞窟巡りしてるこっちの様子は絶対に見えないよ」

 

「今なら射撃スポット選び放題だな」

 

「えぇ。サクッと決めちゃいますか」

 

烏間と雄二の訓練の賜物か、仕事人のような風格が出だしていた

 

「シブいな、あの2人…師匠的にはどうなの?」

 

「師匠と呼べるようなことは特にしてない。お互いにお互いを伸ばせるように訓練を手伝っていただけだ」

 

「あと、風見くんも仕事人の風格あると思うけどね…」

 

岡島と不破に受け答えながらも雄二は2人を観察する。見晴らしの良いポイントに着くと2人は少しキョロキョロと目を動かし、そのあと目標地点を見ると再び動く

 

「…今の場所を選ばない理由は?」

 

「見晴らしもいい」

 

「狙撃に充分」

 

「「でも見えすぎている」」

 

(正解だな)

 

スナイパーは、見つかったら終わり。見つかりにくい場所を選ぶのは当然であり、2人はすでにそれを把握していた。

 

「ここだな」

 

「えぇ」

 

「…理由は」

 

「目的地点との距離、隠れてるためのスペースそして射界に見つかるかのギリギリ(・・・・)の位置」

 

「今回に限っては見つかるのはダメだけど見つけられなくてもダメ(・・・・・・・・・・・)

 

「「そのバランスを考えてここ」」

 

「…最後の質問だ狙撃に必要な準備は全てできているな?道具も気持ちも」

 

少し、ほんの少しだけ、雄二くらいしかわからない間をあけて2人はコクリとうなずく

 

「「やっぱ3人とも仕事人だ」」

 

 

 

陽は落ちてきて辺りが暗くなりだす。

 

「いやぁ〜遊んだ、遊んだ」

 

殺せんせーは日焼けして黒くなった

 

「というより表情がわからんくらいに黒いな」

 

「歯まで黒く焼けてやがる」

 

「ほんと、どういう体なんだ?」

 

「じゃ、殺せんせーメシの後で暗殺なんでまずはレストラン行きましょう」

 

磯貝が言うと殺せんせーは「はーい」と子供のような反応をしてついていく。船上レストランも貸し切りにしたため豪勢感も上がった感じがする

 

「………」

 

「心配か、ビッチ先生?」

 

「何がよ?」

 

「嬉々として殺すとか言ってるあいつらを見てだよ」

 

「そう言うあんたはどうなのよ?」

 

そのお互いの問いにお互い答えることはなく時間は進んでいく。余談だがあまりに黒いのでどうにかしろと言われた殺せんせーが月に1回しかない奥の手、脱皮をして自ら戦力を減らしたことは雄二も哀れとしか言いようがなかった。

 

船と酒の2段構えですっかり酔った殺せんせーは杖を使ってなんとか歩いている。

 

「先生、飲んでも飲まれるなって言葉しってるか?」

 

「ご心配…ありがとうございます、風見くん…けど大丈夫ですよ酒は高速分解できますので」

 

「そうみたいだが、さっきの飲んでデロデロのスライムになられても困る」

 

「しかもその状態でも当然のごとく回避するしね」

 

話しながら今回の旅のメイン、本命の暗殺馬水上パーティールームについた。

 

(壁や窓には対先生物質がしこまれている可能性もある。脱出はリスクが高い小屋の中で避けきるしかないですねぇ)

 

((((と、思っててくれよ殺せんせー))))

 

皆の考え通り殺せんせーは大きなミスリードに入っていた。がそれを確認する術はない。ぶっつけ本番に緊張は高まっていく

 

「渚、ボディチェックを頼む」

 

「うん。いくら周囲が水とはいえあの完全防水の水着を持ってたら逃げられるしね」

 

「入念ですねぇそんなヤボはしませんよ」

 

「全身鎧をわざわざ作ってたやつが言うセリフじゃない」

 

当時の写真を見せながらいうと「グハっ」と精神ダメージを与えていた

 

しかし、これだけ近い距離にいてかつ直に触れているにもかかわらず攻撃が当たる気がしないのは流石というべきであろう。雄二は忘れかけていた殺せんせーの超生物という肩書きを思い出しながら考察していた。

 

ボディチェックを終えた殺せんせーは前列中央の席に座る。すべての準備ができた。それを悟ったのか「準備はいいですか?」と先生は聞いてくる。

 

「全力の暗殺を期待してます。君達の知恵と工夫と本気の努力それを見るのが何よりの楽しみですから」

 

楽しみというがおそらく今まで1番の警戒心なのはすぐにわかる

 

「遠慮は無用、ドンと来なさい」

 

だから、それをまずは削ぎ落とす

 

「言われなくても」

 

「そんじゃいくぜ殺せんせー、上映スタートだ」

 

パチリと電気を消すと備え付けてあったテレビに映像が映る。三村が編集したものでなんでも遊ぶ暇も惜しんで作成したそうだ。

 

これを見た後にテストで勝った雄二含めた7人と3つ分の触手を同時に破壊するためとして特例で権利1回分を渡した磯貝、合計8人で触手を破壊しそれを合図に一斉に暗殺が始まる。ちなみにタイトルは『3年E組が送るとある教師の生態』

 

この時点で殺せんせーは気づくべきであった。いな、たとえ気づいても止められないが精神的なダメージは少なくとも軽減されていただろう

 

殺せんせーは映像を見ながら自分の見える視覚情報と敏感な嗅覚情報を使って周囲を警戒していた。

 

[先ずはご覧頂こう。我々の担任の恥ずべき姿を]

 

 

映された映像は殺せんせーがトンボが付いた被り物をしてエロ本が積まれて山になってるところで座りじっくりニンヤリとエロ本を読んでいる姿が映し出される

 

[おわかり頂けただろうか。最近のマイブームは熟女OL、この本は全てこのタコが1人で集めたエロ本である]

 

「違っ…ちょっ岡島君達‼︎皆に言うなとあれほど……」

 

言い訳すればするほどドツボにハマるニヤニヤとした皆視線は先生の精神を崩壊させていくがしかし、映像はこれで終わらない

 

[お次はこれだ。女子限定のケーキバイキングに並ぶ巨影、誰であろう?]

 

言わずもがな

 

[奴である。バレないはずがない、女装以前に人間じゃないとバレなかっただけ奇跡である]

 

「バカなのか」

 

ストレート過ぎる雄二のツッコミは更に傷を広げていく

 

[給料日前の奴である。分身でティッシュ配りに行列を作りそんなに取ってどうすんのかと思いきや……何と唐揚げにして食べ出したではないか。教師……いや、]

 

[生物としての尊厳はあるのだろうか?]

「生物としての尊厳もないな」

 

容赦ないツッコミはブスブスと入っていく

 

[こんなものでは終わらない。この教師の恥ずかしい映像を1時間たっぷりとお見せしよう]

 

(あと1時間も⁉︎)

 

「殺せんせー、ガンバ」

 

応援のかけらもない言葉に意気消沈したが当然の如く映像が続き、その度に雄二のキツイツッコミが入り1時間後には

 

「死んだ、もう、先生死にました…あんなの知られてもう生きていけません」

 

精神ダメージが限界まで達してヘロヘロになっていた____作戦①精神攻撃は大成功だ。そして

 

[さて、秘蔵映像にお付き合い頂いたが、何かお気付きで無いだろうか殺せんせー?]

 

ナレーションから問いかけられて殺せんせーは足下からチャプチャプと言う音が聞こてくるのにようやく気づく。

 

床全体に水が流れており、殺せんせーの触手はぷくぅぅぅと膨らんでいた。

 

(いつのまにこんな…誰も水など流す気配などなかったのに…まさか)

 

ハッと気づく

 

(満潮か‼︎)

 

本来なら満潮で水が入るなどというザルな造りをリゾートホテルがするはずもない。すなわち人為的な工作だ

 

「俺等はまだなんにもしてねぇぜ。誰かが小屋の支柱を短くでもしたんだろ」

 

「酔って、恥ずかしい思いして、海水吸って…だいぶ動きがにぶったよね」

 

寺坂、中村の言葉が口切りに座っていた皆は銃を殺せんせーに構えながら近付いていった。

 

「さて、本番だ殺せんせー」

 

「約束だ、避けんなよ」

 

ジャキッと銃が向けられる。殺せんせーはというと焦りが出だす。しかし嗅覚情報でスナイパーの2人、速水と千葉の居場所が解っていた。そこは雄二と取り決めた場所。そこがわかっているなら対処もできると、先生の目線がそこに移った瞬間に9本の触手が一斉に破壊された

 

作戦②触手9本破壊当然ながら成功

 

「く…っ」

 

その射撃音を合図に四方の小屋の壁と天上が外れる。それと同時に取り替えるように水圧で空を飛ぶフライトボードで水の檻を作り出した。

 

「そうそう‼︎もっといっぱい飛び跳ねて‼︎」

 

陽菜乃による調教によってイルカ達は彼女の指示を聞き入れ飛び跳ねて大きな飛沫となる。更に水の檻の外側にも消防用のホースを使い水の檻を分厚くする。

 

急激な環境変化に殺せんせーは弱い。脳処理をさせないようにドンドン混乱させる

 

さて、殺せんせーと水の檻の中にいる者達はこの状況で何もしてないわけがない。水中にその姿を隠し、先生に内密で本体をこの場所に移動させた律が左右から銃口が2つ付いた銃を計6つ殺せんせーの真横(・・)に撃つよう計算された弾丸が放たれる。

 

「畳みかけろ‼︎」

 

雄二の指示で一斉射撃が起こるがどれも先生には当たらない。避けられてるのではなく、そもそも当たるところに撃っていない。ロヴロから研修も受けて皆射撃の腕が上がったにもかかわらずだ。超至近距離から渚が攻撃しても避けることができると確信できる相手に無闇に撃つよりも弾幕を張って逃げ道を塞ぐ

 

これこそが作戦③のクラス全員での攻撃。

 

そしてトドメ。殺せんせーはスナイパーは陸の上にいると思っていたが実際はかなり近くにいた。それこそ殺せんせーが小屋に来た時点で。酔った先生の注意不足で2人の出す気泡音など耳に入るわけもなかった。雄二と決めたポイントには射撃スポットの時に使用した服を着せたダミー人形を置いて本当は水中に身を潜めていた。

 

「スナイパーの仕事の大半は待つこと。そして待ちから狙撃に入る切り替えが大切だ」

 

雄二の訓練の中で2人が最も嫌だと思ったのは実は待ちの訓練だった。日陰とはいえ炎天下の中でいつくるかわからない射撃指示にミスが多かった。だが、それに慣れる頃には2人共冷静に水を飲む余裕すらできていた。

 

 

「最後は射界訓練だ」

 

射界、その名の通り射撃ができる範囲ないのことでこれが狭まるほど困難になる。開けた場所で的の中央に当てるのではなく的の間に障害物を置き、射界を狭くしかつ真ん中に当てる訓練。因み射界14〜16センチで距離は100メートル強。

 

「こんなの、できるのか?」

 

千葉が困惑して速水も冷静に見た結果無理と表情に出る。が、試しにと雄二は撃った結果はど真ん中に命中し唖然とさせた。しかも射界は13センチといったところだ

 

「ちなみに、師匠の記録は射界11センチでこれよりも距離は遠い」

 

((どんなバケモンだ))

 

「この記録は俺も超えてない。この訓練に関して教える事はない———今までの技術を自分を信じることができるかだ」

 

ゴクリと唾を飲むそして最後の訓練が始まった。

 

 

好機を逃す事はない。匂いも発泡音も塩の匂いが、波と飛沫音が、消し去る。

 

((もらった))

 

ここでようやく放たれた弾丸に殺せんせーは気づく。周囲は水と弾幕で逃げ場はないそして

 

・・ん・せ・せい

 

掠れるような声がした後、殺せんせーの全身が弾け飛んだ

 

 




ちなみに
もし今回殺せんせーを殺せていたら雄二は千葉を第1候補に上げていました
でも偶然やら精神てきな色々な理由をつけて向かないとも報告するつもりでもありました
(烏間を証人にして)

逃げ上手の若君良いです!面白い!
感想、意見、誤字報告がありましたらお願いします!

あと、今度短編(呪術廻戦の)を上げるつもりでもありますよければそちらもどうぞ


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伏魔の時間

最近友人が教えてくれたラノベを多く読み出しました。今更ながらやっぱ面白いものは面白いですね


殺せんせーが閃光と共に弾け、その衝撃で小屋にいた者たちもフライトボードに乗っている者も小屋の周りに居た者も吹っ飛ばされたが訓練の成果でどうという事なく着水しており、泳げない茅野は遠くから放水していたので大丈夫であった。

 

「や、殺ったのか⁉︎」

 

それは、全員に感じた感触。いままでに無いほど手応え

 

「油断するな‼︎奴には再生能力もある‼︎片岡さんが中心になって水面を見張れ‼︎」

 

烏間の指示でハッとして気を引き締め直す。周囲を警戒していると陽菜乃がブクブクと気泡が出ているのを発見した。気泡はだんだん激しくなりそこへ銃を向ける。そこに出てきたのは手の平に持てるくらいの透明な球体の中に入ったオレンジ色の殺せんせー

 

「これぞ、先生の奥の手中の奥の手『完全防御形態』‼︎」

 

なんだそりゃ⁉︎と言わんばりに驚く皆に先生は解説をはじめる

 

「外側の透明な部分は…高密度に凝縮されたエネルギー結晶体です。肉体を思い切り小さく縮め、その分余分になったエネルギーで肉体の周囲をガッチリ固める。この形態になった先生はまさに無敵‼︎水も対先生物質もあらゆる攻撃を結晶の壁がはね返します」

 

「……そんな、じゃずっとその形態でいたら殺せないじゃん」

 

「いや、本当にそうなら奥の手とは言わないはずだ。それに弱点も多い身動きできないんだろ、それ?」

 

「さすが風見くん鋭い。このエネルギー結晶は24時間ほどで自然崩壊します。その瞬間に先生は肉体をふくらませ、エネルギーを吸収して元の体に戻るわけです。裏を返せば結晶が崩壊するまでの24時間、先生は全く身動きが取れません」

 

「その間に例えば潜水艦とかを使って深海に箱詰めして放置してしまえばアウトだ」

 

「もうひとつは高速ロケットに詰めこまれはるか遠くの宇宙空間に捨てられることですかね…でも風見くん、それが無理だともわかりますよね」

 

「24時間以内にそれができる宇宙船なんてどこにもない。潜水艦にしても今から呼んで水深に耐えられそ尚且つ殺せたか確認できる箱を用意するというのも不可能だな。見た感じ浮力も高そうだしな」

 

打つ手なし。奥の手の弱点も視野に入れてのものだ。完全敗北である

 

「何が無敵だよ。なんとかすりゃ壊せんだろこんなモン」

 

ガンガンとスパナを打ちつけるが全く効果がない

 

「無駄ですよぉ〜核爆弾でもキズひとつつきませんから〜」

 

顔がシマシマになって口笛を吹いてる。イラっとした雄二は目線でカルマに合図を送るとカルマは理解してコクリと頷く。寺坂から殺せんせーを受け取りカルマの元にもっていく

 

「にゅふー何をしようと無駄ですよぉ〜」

 

「その余裕、いつまでもつかなぁ〜殺せんせー」

 

「?」

 

「ねー打つ手なしだもんねー仕方ないよねーお互い(・・・)さ」

 

悪い顔をする雄二とカルマに殺せんせーはこの状態で何をするつもりかと疑問に思った。茅野からスマホを受け取りカルマはそれを見せる。殺せんせーがエロ本の山の上で一心不乱にエロ本を読んでいる写真を

 

「にゅやーッ‼︎や、やめてー‼︎手がないから顔も覆えないんです‼︎」

 

「そりゃいい。自分の醜態に目を逸らすことない立派な教師でいられるぞ殺せんせー」

 

「というわけで至近距離で固定しとくねー」

 

「ちょ、やめ、話しを聞いてー⁉︎」

 

「ウミウシ拾ったから引っ付けておこう」

 

「なら俺はラクガキだな消えないマジックがあったなーたしかぁ〜」

 

「ヒィィィ‼︎」

 

文字通り打つ()なしやりたい放題だが身動きができない殺せんせーにはどうしようもない。

 

「あっそうだ誰か不潔なオッサン見つけてきてー。これ、パンツの中にねじ込むから」

 

「誰か助けてー‼︎」

 

流石に哀れにおもったのもあり、烏間は殺せんせーをカルマから取りビニール袋に入れる

 

「とりあえず解散だ。上層部とこいつの処分法を検討する」

 

「ヌルフフ。対先生物質のプールの中にでも封じこめますか?残念ですがその時はエネルギーの1部を爆散させてさっきのように爆風で周囲を吹き飛ばしますから」

 

考えられる1番の対策だったのだろう、烏間も苦い顔をする。

 

「ですが、皆さんは誇って良い。世界中の軍隊でも先生をここまで追いこめなかった。ひとえに皆さんの計画の素晴らしさです」

 

褒めてはくれたが素直に喜べる者は1人もいなかった。ここまで大規模な作戦を失敗したショックは大きかった。…特に、スナイパーの2人は

 

「律、記録はとれたか?」

 

他の皆がホテルに戻り、残ったのは3人と1台。雄二、速水、千葉、そして律

 

「自己採点だがどうだった?」

 

「撃った瞬間わかったよ“ミスった”って“この弾じゃ殺せない”って」

 

「速水も同じか?」

 

聞かれた速水はコクリと頷く表情は暗い

 

「律、あくまでも計算の上は?」

 

「断定は出来ません。あの形態に移行するまでの正確な時間は不明瞭なので」

 

計算をしながら律は言うそして「ですが」と計算が終わったのか話しを続ける

 

「千葉くんの射撃があと0.5秒早いか、速水さんの射撃が標的にあと30cm近ければ、気付く前に殺せた可能性が50%ほど存在します」

 

やっぱりかと速水は呟く。

 

「……」

 

「「ごめん、風見」」

 

「2人してごめんか…そんなに自信がなかったのか?」

 

「そんなことはない。…リハーサルはもちろん風見から受けた訓練はあれ以上の難しさだった。だけど、あの瞬間ゆびさきが硬直して視界も狭まった」

 

「私も同じ…絶対に外せないって思ったら“ここしかない”って瞬間」

 

訓練とはまるで違うのだと言わなくても伝わった

 

「で、自己採点は?」

 

「決められなかった…0点だよ」

 

「…私も」

 

重々しく、ため息がでた雄二の目を2人は見れない。

 

「ともかく、今日は休め。それもスナイパーとしての役目だ」

 

と雄二はホテルに向かうが「うっ」と口を塞ぎ膝をまげる

 

「⁉︎、だ、大丈夫か、風見‼︎」

 

「気分がわるいの⁉︎」

 

「あぁ、いや、持病みたいなものだすぐにおさまるl

 

言われるとたしかに顔色は悪くはない。表情はわるいが

 

「さ、戻ろう。……千葉、速水。スナイパーにとって外すというのは論外だ。当ててこそのスナイパーだからな」

 

言おうか悩んだが雄二はハッキリと言うことにした。

 

「だが、今まで本番に立ち会うことがないままだったんだそれはしょうがない。スナイパーは撃った瞬間にほぼ位置がバレる。だからミスしたら必ず逃げて次のチャンスを探す」

 

「そんなチャンス、くるの?」

 

「くる」

 

ハッキリと雄二が答えた

 

「そして、おまえ達は逃げる必要もないんだ。ターゲットはいつもそこにいるいい練習台だし、それに言ったろ?俺達で殺すって」

 

「「………」」

 

嬉しかった。その言葉にホッとした。けどやはり思ってしまう雄二ならできたのではないかと。射界訓練で自分達以上に結果を出した彼なら

 

今回雄二は参加できないのがわかっていてもそう思わざるを得なかった。

 

 

 

(なんだ、これは)

 

その状況は異常という以外ない。皆異常に疲労していた。たしかに今回1日かけた大掛かりな作戦を失敗した疲労は出てくるはずだ。全員ではないが顔色が悪く、息をはくのにも苦労しているようにも見える。

 

「あ、雄二くん…肩貸しちゃくれない?部屋に戻って着替えたいのにさぁ、ちぃ〜とも体が動かんのよ…」

 

「莉桜⁉︎」

 

ヨロヨロと雄二に近付いてきた莉桜だがそこでバタリと倒れてしまう。抱き抱えて目を見ると焦点があっていない顔は赤く、額に触れると熱さを感じる

 

「あ、ずるいなぁ、わた、し、も…」

 

「陽菜乃、おい、しっかりしろ‼︎」

 

陽菜乃も倒れガクガクと痙攣を起こし、息は乱れていた。2人だけではない

 

「雄二!岡島くんが吐血を…」

 

「岡島だけじゃないようだ」

 

他に7人、計10人が似たような症状になっている。烏間が慌ててフロントに島の病院の位置を聞くが小さな診療所程度しかなくしかも当直医は夜になると他の島に帰ってしまうとのことだ。と、烏間のスマホが鳴り非通知設定とあるが偶然とも思えずそれをつなぐ

 

「何者だ、まさかこれはおまえの仕業か?」

 

おそらく実行犯と思われる者と話しているとさとり、彼らを寝かして安静にさせて近付き話しの内容を聞く。

 

【その様子じゃクラスの半数はウィルスに感染したようだな。フフフ結構結構】

 

正体がバレないようにする為か声にノイズがかかったように聞こえる

 

「もう1度聞く、おまえは何者だ?」

 

【俺が何者かなどどうでもいい賞金百億を狙っているのはガキ共だけじゃないってことさ。治療薬はスイッチ1つで爆破出来る。我々の機嫌を損ねれば感染者は助からない】

 

「……念入りだな」

 

【そのタコが動ける状態を想定しての計画だからな、動けないなら尚更こちらの思い通りだ】

 

殺せんせーがこうなってしまったのは偶然だが結果的に相手にアドバンテージを与えてしまった

 

【山頂の『普久間殿上ホテル』その最上階まで、1時間以内にその賞金首を持ってこい。だが先生よ、お前は腕が立つそうだから危険だな】

 

相手はカメラでこちらのことをある程度把握しているのだろう【そうだな】と考えたような口ぶりで

 

【動ける生徒の中で最も背の低い男女2人に持ってこさせろ】

 

チラリと烏間は茅野と渚を見る。クラスの中で低身長の男女はこの2人だからだ

 

【フロントに話は通してある。素直に来れば賞金首と薬の交換はすぐに済む。だが外部と連絡を取ったり…1時間を少しでも遅れれば即座に治療薬を破壊する。…礼を言うよ。よくぞそいつを行動不能まで追い込んでくれた天は我々の味方のようだ】

 

言うことを言ったからもういいとのばかりに一方的に切る。烏間は怒りのあまり殺せんせーの入った袋を叩きつけた。

 

「烏間先生、まずは説明を。情報を共有しましょう」

 

落ち着いて雄二は言うが拳はギリギリと握り怒りの矛先をどうにかそこに移している。

 

一通りの説明をしたがやはり皆動揺していた。そこに烏間の部下、園川がホテルに政府として問い合わせをしていたらしくその報告をしにきたが

 

案の定(・・・)ダメです『プライバシー』を繰り返すばかりで……」

 

「……やはりか(・・・・)

 

「案の定?やはり?何か知っているんですか?」

 

「警視庁の知人から聞いた話だが、この小さなリゾート島『普久間島』は別名『伏魔島』と言われてマークされている。ほとんどのホテルはまっとうだが離れた山頂のホテルだけは違う。南海の孤島という地理もあって国内外のマフィア勢力やそれらと繋がる財界人らが出入りし、私兵とホテルの厳重な警備のもと、違法な商談やドラッグパーティを連夜開いてるらしい。おまけに政府のお偉いさんともパイプがあり、うかつに警察も手が出せん」

 

そんなホテルが彼らの味方をする可能性は0だ。

 

「さらに、最も背の低い男女…このクラスで言うなら渚と茅野だろうな。行った後で人質にされ薬ごと逃走される可能性も高い」

 

「そうだぜ。だいたいこんなやり方する奴等にムカついてしょうがねぇ。人のツレにまで手ぇ出しやがって!奴らの要求なんざ全シカトだ‼︎今すぐに全員を都会の病院に……」

 

「賛成しないな」

 

寺坂の言葉に否をかけたのは医者の息子である竹林だった

 

「もし本当に人工的に作った未知のウィルスなら、対応できる抗ウィルス薬はどんな大病院にも置いてない。対症療法で応急措置はしとくから急いで取引に行った方が良い」

 

フロントからもらってきた氷と布巾で応急処置の準備にとりかかる竹林は冷静だった為ヒートアップしそうだった寺坂をクールダウンさせた。

 

「渚、茅野、準備をしておけ。ただし、ギリギリまでここで待機。その間に俺と烏間先生であそこに侵入して犯人を確保する」

 

「え、ちょ、雄二⁉︎」

 

「烏間先生、いけるか?」

 

「……2では作戦の選択肢が限られる。そもそもどうやって潜入する?」

 

「1人で行くよりマシだ。潜入は律にあの内部にハッキングをしてもらう。できるか、律?」

 

「はい。既に(・・)内部図面と警備の配置は特定済みです」

 

「だそうだ。すぐにでも……ちょっとまて、いくらなんでも早すぎないか?」

 

まるでもっと前から頼まれていたかのように

 

「風見くん、どうせならもっと成功率を上げましょう」

 

どうやら殺せんせーが頼んでいたようだ。

 

「元気な人は汚れてもいい格好で来てください」

 

 

 

 

車を使いホテルの裏側にいくと高い崖になっており皆ホテルを見上げている。まさかこんな崖を登って侵入するなんてできないだろうと考え警備はいない

 

「この崖を登ったところに通用口がひとつあります。さて、皆さんに問いましょう。…皆さんがとるべき選択肢は2つ、敵の意のままになり渚くんと茅野さんを送り出すこと。もう1つは患者10人と看病に残した竹林くん奥田さんを除いて動ける全員でここから侵入して最上階を奇襲し、治療薬を奪い取る‼︎」

 

後者の選択肢はあまりにも危険だった。

 

「おい、この手慣れた脅迫の手口は明らかにプロの者だぞ」

 

「ええ、しかも私は君達の安全を守れない。大人しく私を差し出す方が得策かもしれません。その上で問いますしょう…どちらを選ぶか。全ては君達と指揮官の烏間先生次第です」

 

「無理に決まってるでしょ‼︎この崖よ‼︎ホテルにたどり着く前に転落死よ‼︎」

 

ビッチ先生の言う通りだ。本来こんなのは無茶振りでしかない

 

「…そうだな。ここは口惜しいが奴等の要求を……」

 

「いや、案外いけるかもしれなぞ…ほら」

 

と雄二が指した方を見ると既にヒョイヒョイと崖を登る生徒達がいた。

 

「考えてみろよ烏間先生。俺やあいつら普段どんなところでどんな訓練してるか」

 

「でも、未知のホテルで未知の敵と戦う訓練はしてません。なので烏間先生、難しいけどしっかり指揮を頼みますよ」

 

「そういうこと…だ!」

 

雄二も続けて登りあっという間に追いついた

 

「まぁ、俺と烏間先生だでもいけるけどな」

 

「ケッ!強がんな。部の悪い賭けなのは承知だったんだろ?俺らに負担がかからねーようにして」

 

うんうんと皆寺坂に納得していた。

 

「クラスん中じゃテメーがトップだろうよ認めるのは癪だがな。だが、俺らをお荷物扱いすんなや」

 

「…お荷物扱いはしてないつもりなんだがな」

 

「無意識にしてんだよそれは。ともかく、腹が立ってんのは俺らも同じだ。ふざけたマネした奴等に、キッチリ落とし前つけさせてやる」

 

全員の意見が一致した。時間は少ない即時に烏間は判断した

 

「注目‼︎目標、山頂ホテル最上階‼︎隠密潜入から奇襲への連続ミッション‼︎ハンドサインや連携については訓練のものをそのまま使う‼︎いつもと違うのは標的(ターゲット)のみ‼︎3分でマップを叩き込め‼︎19時50分に作戦開始‼︎」

 

15人の特殊部隊と指揮官1人オマケ2人。潜入開始

 




15人の特殊部隊と指揮官1人とオマケ2人←ビッチ先生「誰がオマケじゃ‼︎」
感想、意見、誤字報告があればお願いします←無視


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引率の時間

3月中にもう1話出したい……無理かなぁOTL




ロッククライミングには種類がある。はしごや命綱以外のロープを使用して行うタイプ、もう1つは命綱以外の道具を使わず登るタイプだ。

 

現在ウィルスに感染したクラスメイトを救う為ホテルに潜入する彼ら3年E組は少なくとも素人レベルでは道具があっても難しい崖を命綱なしで登っている。特に両親がジムトレーナーでもあり、部活で体操もしていた岡野は暗殺訓練の一環でクライミングを始めるとみるみる成長して小枝、岩の一部分を手にもち遠心力をつけつつバッバッと登っていく。

 

「流石は岡野だな」

 

「こういう事をやらせたらクラス1だろうな」

 

「そういう風見もその岡野についていけるレベルじゃん」

 

やろうと思えば岡野に追いつくことはできる雄二だが今回はそれができない。なぜなら動けずビニール袋に入った殺せんせーを片手にもっているからだ。

 

「すいませんねぇ、風見くん」

 

ヌルフフフと楽できて喜んでる殺せんせーにイラッとしたのか少し登り安全を確認して携帯の動画を見せる。小屋で見せた三村と岡島が制作したものだ

 

「ニュワあああぁぁ!やめてぇ‼︎」

 

「じゃあ袋の中に入れてしっかりと見れるようにしよう」

 

「ギニュアアアアア!」

 

「雄二やめてあげなよ、これから潜入するのに大きな声で叫ばれたらダメじゃん。あとでゆっくり見せてあげよ」

 

「それもそうだな」

 

「あとでもやめてぇー⁉︎」

 

完全防御形態は精神攻撃だけは防御できない。いじり放題なそれは言うなれば

 

「完全防御形態(笑)だな」

 

「やめて‼︎もうやめて‼︎」

 

ニヤニヤと悪魔のような顔をするカルマと雄二に殺せんせーは完全にオモチャにされていた。

 

「まぁ、このくらいは我慢してくれ先生。俺らより凄いあっちの負担をちょっとでも軽くしたいんでな」

 

と下の方を見るとドレスを着たビッチ先生を背に抱え、それでもゆれるからもっと静かに登れ、掴む手が疲れてきたから早く登れだの無茶な要求をするビッチ先生に辟易しながら登る烏間がいた。荷物を抱えて命綱なしで崖を登るというとんでもないことをさらりとしている。

 

「…つうか、ビッチ先生何でついて来てんだ?」

 

「留守番とか除け者みたいで嫌なんだって」

 

「……まぁ、今回は助かるけどな」

 

「「「「?」」」」

 

ボソッと呟いた雄二の言葉が理解できず困惑していると崖を登りきり通用口の近くで全員が着くのを待機した。

 

「来るわけないと思いつつも監視カメラと電子ロック、流石に最低限のセキュリティはあるな。…律、いけるか?」

 

「問題ありません。この扉のロックは私の命令で開けれますし、監視カメラも私達を映さないように細工できます。しかし、ホテルの管理システムは多系統に分かれれいるので全ての設備を私1人で掌握するのは不可能です」

 

「…流石に厳重だな。律、侵入ルートの最終確認を頼む」

 

烏間に言われホテル内のマップを見せる。エレベーターが使えないので階段で行くことになるが裏の人間達が使うホテルだからか、階段の位置はバラバラだ

 

「とはいえ、迷ってるヒマはない。烏間先生、状況を見つつ指示をお願いします」

 

「わかっている。…いくぞ」

 

音を出さないように扉を開閉し潜入し烏間が前を行き、来いの合図で次に雄二が来て二重に確認して他の者も静かに来る。だが最初にして最大の難所がこのロビーだ

 

「警備の数は…10人はいるな。非常階段はすぐ近くだが」

 

1人も見つからずに抜けるのは不可能だった。

 

「警備の数が予想より多い。おそらく敵が配置したんだろうな……囮で1人見つかり、後全員が行けばいいがそう簡単にも行かないだろうな」

 

それが原因で敵に連絡されてもいかない。

 

「何よ。普通に通ればいいじゃない」

 

どうするべきか悩んでいると客が使って回収したと思われるワイングラスを手に持ち呑気にビッチ先生がかるーく言い出す。状況が理解できないのかと何人かの生徒がツッコミを入れるが雄二が止める

 

「任せていいか、ビッチ先生?」

 

聞くとビッチ先生はちらりとロビーにあるピアノを見て

 

「心配いらないわ。言ったでしょ普通でいいわ」

 

足取りが酔った人間のようにふらふらし、わざとらしく見えないように足を見せ胸を揺らす。その姿に警備の何人かの目は彼女に向けられる。1人の警備員の男にぶつかって

 

「ごめんなさい。部屋のお酒で悪酔いしちゃって」

 

「あ、いえ、お気になさらずに」

 

鼻の下を伸ばしていた。さりげなくぶつかっていたがこれにも意味はある。視線の誘導は色気だけではなく動作と行動、そしてきっかけが必要だ。物音がしたら人は無意識にそちらを向くように人と人がぶつかってしまえばどんなに軽くとも意識はそちらに向かう。

 

「来週そこでピアノを弾かせて頂く者よ。早入りして観光してたの」

 

ホテルにピアノとくれば自然だった。実際警備員はビッチ先生をピアニストと勘違いした

 

「酔い覚ましのついでにね……ピアノの調律をチェックしておきたいの」

 

流れるようにピアノの方へ行き自然に椅子に座る。酔っているが動作はピアノニストに見えるような動きだ

 

「ちょっとだけ弾かせてもらってもいいかしら?」

 

ぽわぽわした声で聞き、フロントに確認をしようとする男を止め、審査してほしいと上目遣いで言う

 

「私の事よく審査してダメなとこがあったら叱って下さい」

 

そして、ピアノを弾く。譜面もなく弾くがその音、否、音色は見るもの全てを惹きつける。

 

「幻想即興曲ですねぇ。腕前もさる事ながら見せ方が実にお見事です」

 

全身で色気を出し、そこに鮮やかな演奏が融和していた。遠くにいた警備員もビッチ先生が近くに来てと言えば花に吸い寄せれる虫のように近付き警備はザルになる。ハンドサインで時間を稼ぐから行けと言われ全員非常階段に行くが数人はその姿に見惚れていた。「なんて綺麗な先生なんだろう」と

 

音が聞こえなくなる位置に着いて詰まりそうな息を吐いて茅野はロビーを突破できてほっとした。

 

「すげーやビッチ先生、あの爪でよくやるぜ」

 

「あぁ、ピアノ弾けるなんて全然言ってなかったし」

 

菅谷と磯貝が関心していると烏間は補足をいれる

 

「普段の彼女から甘く見ないことだ。優れた殺し屋ほど万に通じる彼女クラスになれば潜入暗殺に役立つ技能なら何でも身に付けている。君らに会話術(コミュニケーション)を教えているのは世界でも1・2位を争う色仕掛け(ハニートラップ)の達人だ」

 

ゴクリと生唾を呑む。彼女が足手纏いにならなきゃいいと考えて者は特にだ。

 

「まぁ、プロという意味なら相手も同じだがな。あんなウィルスを自作できるやつがいるって事は他にもいるだろう。気張っていくぞ」

 

コクリと気合を入れて上に向かう

 

 

 

side:ビッチ先生

 

それは突然だった。とはいえ何かされたわけでもない。以前の潜入する時のようにピアノを弾いて色気を駆使して人を惹きつけていたあの子達を上に登らせる為に。ピアノを弾いてはい終わりではなく、弾き続けなければ怪しまれるし、脱出の時も自然出なくてはいけない。わかっているのに、エレベーターから出てきた人物を見て演奏が乱れそうになった。

 

こんなところにいたの⁉︎

 

そこで確信した。あの子がいるって事はロヴロ師匠(せんせい)の言っていた連絡の取れてなかった有望な殺し屋数名もこのホテルにいる。いやそれ以前の問題。こちらの情報はあちらは把握しているなら、私があそこで教師をしてる事も知ってるはずせっかくの時間稼ぎも無駄になってしまう

 

(ニコリ)「・・・・・・・・」

 

口パクで「だいじょうぶです」と笑顔であの子は言うそして「ごめんね、姉さん」ともそれはどっちの意味かと問いたいがそれもできず、エレベーターへ再び乗り上へ行くのを見つめるしかなかった。

 

おちつきなさい本当に連絡するなら私を見た時点で連絡する。でもなんでしないの?でも今はここで時間を稼ぐしかない。…気をつけてよあんた達。想像以上に厄介よ

 

 

sideフリー

 

ビッチ先生が不安になっている事など知らず3階に着くと烏間は1度説明を始める

 

「さて、君等になるべく普段着のまま来させたのにも理由がある。入口の厳しいチェックさえ抜けてしまえばここからは客のフリができるからだ」

 

「客ゥ?悪い奴等が泊まるようなホテルなんでしょ。中学生の団体客なんているンすか?」

 

菅谷の言い分はもっともだが烏間はどこか呆れたように答える。

 

「聞いた限りでは結構いる。芸能人や金持ち連中のボンボン達だ。王様のように甘やかされて育った彼等はあどけない顔のうちから悪い遊びに手を染めてる」

 

「なるほど、ここはそういうやつらにとっての理想郷(ユートピア)ってことか」

 

世も末だなぁとまさしく他人事のように雄二も呆れる。

 

「ですから君達もそんな輩になったフリで…世の中をナメた感じで歩いてみましょう」

 

殺せんせーに言われ、皆自分のイメージにあるナメた中学生を演じる。微妙にズレているかもしれないが…

 

「ただし、我々も敵の顔を知りません。敵も客になりすまして襲って来るかもしれない、充分に警戒して進みましょう」

 

気を入れ直して皆進む。途中客とすれちがうが視線も合わさず去っていく。トラブルを避けたいのだろう。そうして中広間に着くと余裕だと思って寺坂と吉田が烏間の前に出る。目の前には黒い帽子をつけて口笛を吹きながら歩く男が1人。それを見た中で1人、不破だけが気づいた

 

「寺坂くん‼︎そいつ危ない‼︎」

 

その言葉に真っ先に烏間は反応して2人の襟を掴んでグイッと後ろへ下げたそれとほぼ同時に男はマスクをしポケットから取り出した物を烏間に向けそこからガスが噴射される

 

視界がガスで覆われるも気配で蹴りを入れ手に持っていた物を飛ばすと警戒を強めた男は舌打ちをして下がる。

 

「…何故わかった?殺気を見せずすれ違いざまに殺るのが俺の十八番だったんだがなオカッパちゃん」

 

それは雄二も、烏間ですら気付かないほどだ。あのまま不破が気付いてなければ寺坂と吉田もガス攻撃に巻き込まれていただろう

 

「だっておじさん、ホテルで最初にサービスドリンク配ってた人でしょ?」

 

と言われてよく観察してわかった。表情が全然違うので別人に見えるが間違いない。

 

「…断定するには証拠が弱いぜ。ドリンクじゃ無くても、ウィルスを盛る機会は沢山あるだろ?」

 

「皆が感染したのは飲食物に入ったウィルスから…そう竹林君は言ってた」

 

ここに来る前竹林は経口感染だから赤の他人に感染させる事はないことを皆に伝えていた。

 

「クラス全員が同じものを口にしたのは…あのドリンクと船上でのディナーの時だけ。だけどディナーを食べずに映像編集をしてた三村くんと岡島くんも感染してたことから感染源は昼間のドリンクに絞られる。___従って犯人はあなたよ、おじさん君‼︎」

 

推理は正しかったのか男はたじろぐ

 

「それはいいとして、なんだその喋り方は…つかおじさん君って…」

 

おかしくないかとかそういうツッコミがでそうになる

 

「ふふふ、普段から少年漫画を読んでるとね、普通じゃない状況が来ても素早く適応できるのよ。特に探偵ものはマガジン・サンデー共にメガヒット揃い‼︎」

 

「えっ、ジャンプは⁉︎」

 

「ジャンプに探偵物ってあるのか?」

 

「うん一応あるよ。よく知らないけど文庫版がでてるらしいよ。あと探偵物じゃなくて歴史物で同作者の新作も面白いからそっちも見てね」

 

「だからいやらしいって‼︎」

 

「もっとマーケティング倫理に配慮して‼︎」

 

雄二の質問からの茅野&渚の定番ツッコミをしていると烏間がガクッと倒れる。完全に倒れることなくむしろ立ち上がろうとしているがそれだけで必死になるほどの

 

「毒か」

 

「しかも実用性に優れていますね」

 

「俺特性の室内用麻酔ガスだ。一瞬吸えば象すら気絶(オト)し、外気に触れればすぐに分解して証拠も残らない」

 

「ウィルスの開発者もあなたですね。無駄に感染を広げない…取引向きでこれまた実用的だ」

 

殺せんせーの言い分に「さぁね」と白々しくいう。

 

「まぁ、おまえ達に取引の意思が無い事はよくわかった。…交渉決裂、ボスに報告するとするか」

 

踵をかえして戻ろうとするが数名の生徒で退路を既に塞がれる。手にはホテルの飾りや椅子を武器として持っていた

 

「舐めすぎだな。こっちが何もしないで話してると思うか?」

 

「敵と遭遇した場合、即座に退路を塞ぎ連絡を断つ」

 

ふらふらしつつもどうにか烏間は立ち上がっていた。

 

「おまえは、我々をみた瞬間に攻撃せずに報告に帰るべきだったな」

 

相当毒に自信があったのか流石に立ち上がったことに驚きを隠せていない

 

「立ち上がるだけじゃなく、しゃべれるとはな…だが、しょせん他はガキの集まり。おまえが死ねば統制が取れずに逃げ出すだろうさ」

 

再びマスクをして(・・・・・・・・)ポケットに手を入れる。視界が定まっておらず、フラつきもある圧倒的に不利な状況

 

「…ジャ!」

 

「⁉︎」

 

それはまさに閃光。先程と同じガス(・・・・・・・)を浴びせようとした男に急接近してその顔に飛び膝蹴りを喰らわせた。グシャァッと骨格が変わったかに思うほどだった

 

(強え…人間の速さじゃねぇ…)

 

弱っているから油断していたわけではない。いや多少はあったかもしれないが0と1の差だ。それなのに圧倒されたことに信じられなかった

 

(…だが、おっそろしい先生よ、お前の引率も、ここ、まで………)

 

倒れる烏間と心配して声をかけているであろう生徒の声を聞きつつ、意識は闇に溶けていった。

 




前回オマケと言いましたがビッチ先生がいないとロビーの時点で結構詰んでいたでしょうね

感想、意見、誤字報告があればお願いします


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カルマの時間

たぶん今回の回でロヴロの弟子の正体がわかると思います


「烏間先生、立てるか?」

 

「立つくらいは、どうにか、と言ったところだ」

 

どうにか立ち上がるも足元はガクガクしおぼつかない。

 

「無理すんなよ。その様子だと歩くふりで精一杯ってところだろ?」

 

「風見、俺が抱えるよ。万が一の時の1番の戦闘要員はおまえだからな」

 

雄二に代わり磯貝が烏間に肩を貸す。それを支えにどうにか動けた。

 

「30分で、戻れるかどうかというところか」

 

かなり行動制限をされているが象を行動不能にする毒を浴びて動けるのは烏間くらいのものである。

 

「…烏間先生、任せてくれ」

 

雄二が言うと生徒は少しだけ安堵するがそれでも最大戦力の欠落は大きなものがあった。一方で烏間はその言葉の意味がわかり別の不安があった。誰もがそれぞれ不安の中

 

「いやぁ、いよいよ『夏休み』って感じですねぇ」

 

と空気を読んでない呑気な言葉を殺せんせーは言った

 

「何をお気楽な‼︎」

 

「ひとりだけ絶対安全な形態のくせに‼︎」

 

「渚、振り回して酔わせろ‼︎」

 

当然だがブーイングがでる。渚も言葉にはしないが同意見なのでおもいっきりブンブン振り回した。

 

「にゅやー‼︎」

 

「ここホテルだよな、後で汚物処理管にでも落とそうか」

 

「やめてぇぇぇ!」

 

「で、殺せんせー何でこれが夏休み?」

 

ぶん回されながらも殺せんせーは叫んでいたがふいに渚は止めて酔い気味な先生に尋ねる

 

「先生と生徒は馴れ合いではありません。そして夏休みとは、先生の保護が及ばない所で自立性を養う場でもあります。大丈夫、普段の体育で学んだ事をしっかりやれば…そうそう恐れる敵はいない。君達ならクリアできます。この暗殺夏休みを」

 

「…相変わらず、体育方面は容赦ないな」

 

「おや、風見くんはクリアできないと?」

 

「…まさか。俺はできると思ってるよ。それに、ここまで来たんだ。後戻りなんてできない」

 

そう言うと他の皆も静かに頷き、先へ進む

 

 

 

side:ガストロ

 

良い香りだぁ。こんなホテルでも流石は一流なだけはある。メニューにない本格ラーメン汁を用意してくれた

 

「濃厚な魚介ダシにたっぷりのネギと一匙のニンニク…」

 

コレの付け合わせに最高だ

 

「そして銃‼︎」

 

こんな味のねぇ任務の最高の癒しだ。少しこぼれたがまぁ良いしっかり銃に絡めてその味を確かめる…最高にうまい銃に最高に美味いスープ…完璧だこんなもん間違いなく

 

「うめぇ、つけ銃うめぇ…銃身内(ライフリング)に絡むスープがたまらねぇ」

 

「ククク…見てるこっちがヒヤヒヤする。実弾(タマ)が入ってんだろ?その銃」

 

本当に心配してんのかわからないような喋りでボスが聞いてくる。まぁ、一応答えておくか

 

「ヘマはしねっス、ご安心を。撃つ時にも何の支障もありませんし、ちゃんと毎晩我が子のように手入れしてます。『その日一番美味い銃が』『その日一番手になじむ』…経験則ってやつっス」

 

「奇特な奴だ。他の3人もそんなか?」

 

それは当然だ。使い捨ての鉄砲玉でなく技術をつけて仕事をこなしてきた奴らだ。当然拘りも出てくる。そのうちのスモッグについて説明すると更に興味が出たのか

 

「ほぅ、では“グリップ”とあそこで寝ている仮面にも?」

 

「グリップの方は殺し屋の中でも変わっていて、あっちの仮面嬢ちゃんはロヴロのダンナのお気に入りだそうです。この場で俺が撃っても即反応できるはずですよ」

 

「寝ていませんしね」

 

って起きてんのかよ。全然気づかなかった

 

「1度でも死を経験すると、たまにできるんですよ意識を生命を感じ、自分の気配も殺し意識があるまま自身を殺す事が。私の場合お腹に命があった経験もあるから尚の事ですね」

 

「それを更にわからないようにするためにその仮面をつけるのか?」

 

「いえ、ちょっと顔見せがNGなだけです」

 

なんだそりゃと言いたげな顔にボスがなる。まぁ、理由は聞いたが…イカレてるな。おまけに今回、万が一の時も生命が脅かされる時以外はやめるように言われた。しかも金を払ってだ。グリップならまぁ、我慢出来るだろうが不満だろう

 

 

side:フリー

 

5階展望回廊についたE組の足が止まる。奥を隠れて見ると窓に背をつけて堂々と立ち、これでもかと異様な雰囲気を出しまくっている(・・・・・・・・)男がいる。もうここまでくると全員わかる『殺る』側の人間だと厄介な事はもう1つある。ここが展望回廊なだけあって見通しが良く、更に狭い通路。奇襲も数の利も活かせない。どうすると考えていたらいきなり男の背後の窓ガラスがビシッと割れる

 

「…つまらぬ」

 

低い声で男は言う。よく見ると片手がガラスに触れていた。すなわち、握力だけで割ったのだ。ホテルに使う窓だ当然強度は高いそれをだ

 

「足音聞く限り『手強い』と思える者が1人も居らぬ(・・・・・・)精鋭部隊出身の引率教師もいるはずなのぬ…だ」

 

(?)

 

疑問に感じたのは烏間だけだ。たしかに雄二は烏間よりは弱いが充分戦力として見て良い。だが目の前の男は戦力として見ていない。

 

「どうやら、“スモッグ”のガスにやられたようだぬ。半ば相打ちぬといったところか…出てこい」

 

言われて恐る恐るでるが怖くてどうしても聞けないことがあった

 

「“ぬ”多くねおじさん?」

 

そんなのお構いなしとカルマが聞いた事で皆「良かった、カルマがいて‼︎」と思っていた

 

「“ぬ”をつけるとサムライっぽい口調になると小耳に挟んだ。カッコよさそうだから試してみたぬ」

 

「なるほど、日本を若干勘違いしている系の外国人か」

 

(((((こっちも言った‼︎言えんことをあっさり‼︎)))))

 

雄二とカルマならまぁ当然ではあるがやはり驚きはある

 

「間違っているならそれでも良いぬ。この場の全員殺してから“ぬ”を取れば恥にもならぬ」

 

ゴキゴキっと手を鳴らす握力がどれほどあるのか想像もつかない悪魔の手に見えた

 

「素手…それがあなたの暗殺道具ですか」

 

「あぁ。こう見えて需要はあるぬ身体検査に引っかからぬ利点は大きい。近付きざま、頸椎をひとひねり。その気になれば頭蓋骨も握り潰せるが… 面白いものでぬ、人殺しのための力を鍛えるほど、暗殺以外にも試したくなる。すなわち闘い、強い敵との殺し合い」

 

「なら、俺が相手してやる」

 

雄二が前に出ると

 

「…そうしてやりたいのはやまやまだが、断るぬ。お目当てはそこの引率教師ぬ。なにより、おまえには手を出すなと金まで払われているぬ」

 

「言いにくくないのかそれ……で、おまえのボスの命令か?」

 

「それに答える義務などないぬ。他の雑魚も含めて殺るのも面倒だボスと仲間を呼んで皆殺しぬ」

 

懐から携帯を出し連絡をしようとする。警戒は雄二だけに向いていたのと他を雑魚と思い込んだ油断があった。雄二の横を通り手に持った観賞植物を携帯ごと窓にぶつけ窓ごと破壊した

 

「ねぇ、おじさんぬ」

 

その人物は

 

「意外とプロってフツーなんだね。ガラスとか頭蓋骨なら俺でも割れるよ」

 

カルマは、いつものように煽りながら前に出た。

 

「ていうか速攻で仲間呼んじゃうあたり、中坊とタイマン張るのも怖いひと?」

 

だが1つ、大きな違いがある

 

「よせ、無謀…」

「ストップです烏間先生。…アゴが引けている」

 

これまでカルマであれば、相手の強さは関係なく余裕を見せつけてアゴを突き出し相手を見下していた。並の人間なら仮にカルマより体格と運動神経が良くとも見下されたことのに逆上して普段の力が出せず、動きが雑になってそのスキをついて勝利できる。その程度のガキなら…だが、目の前にいるのは大人、それも普通の人間がしない修羅場を幾度となくこなして今日まで殺し屋を続けてきたまず間違いない強敵。

 

「……任せる」

 

「任された」

 

いつものように軽く相槌をうつが相手から目を逸らさず油断なく常に相手を観察している。それはテストで敗北した時にはない大きな成長である。

 

「……いいだろう試してやるぬ」

 

上着を脱ぎ、動きをよくする。筋肉質の腕を少し捻り手からコキリと音を立てている。その音が合図だったかのようにカルマは観賞植物を今度は顔面目掛けて振りかぶる。が、余裕ありといったかんじで幹を掴み握力でメキメキと潰した。

 

「柔い、もっと良い武器を探すべきだぬ」

 

「必要ないね」

 

もとよりこんな攻撃で勝てるなど微塵も思ってはいない。すぐに放り捨て相手の掴もうとする腕を紙一重でかわす。今度は逆の手で掴もうとしてくるがこれも避けると同時に腕を使い、払い除けるようにいなす。時に顔を逸らせて時に手首持って動きを止めて退避。一度でもつかまれたらゲームオーバーという無理ゲーもいいところだ。が

 

(立場が逆なだけでいつもやってんだよね、その無理ゲー)

 

普段から殺せんせーの動きを見続けているカルマにはその動きはとらえている。さらに烏間の防御テクニック。

 

「烏間先生、カルマに教えて…ないよな?」

 

「あぁ。殺し屋に防御技術は優先度が低いからな」

 

なぜなら防御しなければいけない状況になっている時点で暗殺ではないから。攻撃も回避も防御もさせず殺す。だからこその殺し屋、暗殺者だ。故に烏間は授業で教えてはいない。カルマの高い観察眼のたまものだ。

 

「今までの烏間先生の動きを見て盗んだか。戦闘の才能もだが観察能力の方にも才能があるな」

 

「あぁ。だが」

 

反撃ができない最小限の動きで回避、防御ができているがいざ攻めようとすればこの防御体制を止めなければいけないその瞬間につかまれるだろう。どうするかとカルマが考えていると相手の動きが止まる

 

「……どうした?攻撃しなくては永久にここを抜けれぬぞ」

 

「どうかな〜あんたを引きつけるだけ引きつけといて、そのスキに皆がちょっとずつ抜けるのもアリかなぁって思って」

 

そんなことできると思っているのかと目で警告をしてくるが、それにぐらつくことなく軽く、されど集中してカルマはつづける

 

「安心しなよそんなコスい事はなしだ。今度は俺から行くからさ」

 

腕を数回鳴らしてかまえる

 

「あんたに合わせて正々堂々(・・・・)、素手のタイマンで決着つけるよ」

 

「良い顔だぬ、少年戦士よ。おまえとならやれそうぬ、暗殺家業では味わえないフェアな闘いが」

 

さぁ来いと言うように腕広げて男は接近してくるカルマを見る。片足に力が込められいると判断してもう片足の蹴りを警戒し見事的中させ腕で防ぐ。つかまれぬようにすぐに半歩引きすぐに攻撃を再開し右腕で攻撃し、防がれてももう一度と見せかけて止め左手をチョキの形にして目をつぶしにいく。がスッと避けられる。だがこれによって足元が疎かになる。当然カルマが気づかないわけがなく左足で別名、弁慶の泣きどころ、いわゆる向こう脛を蹴る

 

「くっ」

 

崩れそうな体制をどうにか保つため体を捻りしゃがむが背中を見せた。正面を向いているのと背中を向けているのとでは行動のステップがもう一度前を向くという動きが追加される為防御にタイムラグが生まれる。戦いの最中に背を見せるのはスキを見せた時と

 

「罠だ‼︎行くな‼︎」

 

時すでに遅く向かっていたカルマは男が懐からだした物、スモッグと言われた男が使っていたガス発射装置と同じ物だった。

 

「一丁あがりぬ」

 

至近距離のガス攻撃を浴びた後カルマは力を抜けふらっと倒れる体を腕で頭を持ってささえながら男はほくそ笑む。

 

「長引きそうだったんで“スモッグ”の麻酔ガスを試してみる事にしたぬ」

 

「汚ねぇ、そんなもん隠し持っといてどこがフェアだよ」

 

「それは違うぞ吉田。そもそもあいつは暗殺者でプロだ。ウソや策略なんて常套手段だ。……納得はできないがな」

 

「その通りぬ。そもそも俺は一度も素手だけとは言ってないぬ。まぁ、それで納得がいかないのは腑抜けていると言っていいぬ。そこまで言うからにはわかるはず(・・・・・)ぬ。拘り過ぎないのがこの仕事を長く続けるコツだとぬ」

 

「…………」

 

「何も言わないか、おまえを相手にしてもつまらなかっただろうぬ」

 

そうしてカルマの表情を見るため再び見る

 

「………たしかに。よくよく考えたら、俺ら(・・)も暗殺者だ」

 

と抑え込んでいた笑いと共に言った瞬間いつの間にかカルマの手には同じガス発射装置がありそれが発射された。ご丁寧に自分は吸わぬようにハンカチで鼻と口を塞いで。

 

「な、なん、だと」

 

「奇遇だね2人とも同じ事考えてた」

 

ニンマリとイタズラを成功させた時の顔になっていた。至近距離からガスを浴びた烏間が受けたものと同じものをだ。ゾウすら気絶させる麻酔ガス。それでもどうにか体を動かして懐から折りたたみ式のナイフを出す。動きはガタガタ、武器は安っぽいもの。普段の授業を受けているカルマには余裕で対処できる。腕を掴み、体勢が取れなくなっている足元をスッと崩して自身の体重を乗せて組み伏せる。男の腕からメキメキと鳴ってはいけない音が聞こえたがカルマは気にせず

 

「ほら雄二、寺坂、早く早く。ガムテと人数使わないとこんな化けモン勝てないって」

 

「そうだと思ってたよ。おまえが正々堂々なんて言い出した時からな」

 

「なぁ。素手でタイマンの約束とかカルマだぞ、1番無いわな」

 

雄二と寺坂に続いて全員が飛びつき、のしかかる。肩のあたりからミシッと嫌な音がしたがお構いなしにのしかかる。烏間先生の指示のもと、手のひらに注意しつつガムテープで縛りあげた。

 

「毒使いの未使用ガス。烏間先生に使おうとして使えなかったやつだな」

 

「ピンポーン。使い捨てなのがもったいない位便利だね」

 

「なにかあるのは間違いないと思ってたが驚いた」

 

「な、何故だ。俺のガス攻撃…おまえは読んでいたから吸わなかった俺は素手しか見せてないのに…何故…」

 

「とーぜんっしょ。素手以外(・・・・)の全部を警戒してたよ』

 

男の問いにカルマはそんな事かといわんばかりに答えた

 

「あんたが素手の闘いをしたかったのは本トだろうけど、この状況で素手に固執し続けるようじゃプロじゃない。俺等をここで止めるためにはどんな手段でも使うべきだし、俺でもそっちの立場ならそうしてる」

 

しゃがみ込んで同じ目線にして言う。敗者を見下さず敬意を込めている証拠だ

 

「あんたのプロ意識を信じたんだよ。信じたから警戒できた」

 

大きな敗北は時に人を強くする。カルマはそもそも観察眼に優れていた。が、本人の性格がそれを邪魔していた。油断も慢心もなく敬意と警戒を持てる人間になった彼は隙が無い人間へ成長した。

 

「…大した奴だ少年戦士よ。敗けはしたが楽しい時間を過ごせたぬ」

 

男もカルマに敬意をもち、清々しい顔になる。いい勝負だった……で済めばいいのだが

 

「え、何言ってんの?楽しいのはこれからじゃん」

 

ウキウキとした顔で出したのはチューブのわさびとからし

 

「なんだぬ、それは?」

 

「わさび&からし。これを、おじさんぬの鼻の穴にねじこむの」

 

「なにぬ⁉︎」

 

悪魔の笑みを見せてカルマは男の鼻に近づける。これだけでも鼻にくるだろう

 

「これ入れたら専用クリップで鼻塞いでぇ…口の中に唐辛子の千倍辛いブート・ジョロキアぶちこんで、その上から猿轡して処置完了」

 

「色々用意よすぎだろ…ほかに何が入ってんだこの巾着袋」

 

ドクロマークと『そなえあればうれしいな』が描かれた物の中にはセンブリ茶やにせうんこやにせゴキブリなど色々エグい物が入っていたその中にわからないカプセルのような物がありそれを取り出す

 

「なんだこれ?」

 

「あ、それ気をつけて。奥田さん特製悪臭化合物だから」

 

「なに作らせてんだ…そしてなに作ってんだ奥田…」

 

と言いつつ雄二も1つ取り出す。

 

「んじゃ、暴れないよう押さえておくから早めに終わらせろよカルマ」

 

「りょーかーい。さぁ、おじさんぬ、今こそプロの意地を見せるときだよ〜」

 

ノリノリな2人にクラスの皆戦慄しながら哀れな男の断末魔をきいていた。

 




グリップさん合掌

次は一気にVSガストロまでいきます

感想、意見、誤字方向いつもありがとうございます。遅くはなりますが基本的に返信しますのであればお願いします。



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仮面の時間

前回後書きでガストロ戦までいくと言ったな、あれは嘘だ

と言うより、考えてみればここで戦わせるしかない事に気づいたのでガストロ戦は次回に持ち越しです


6階テラス・ラウンジについた軽快なラップ音とタバコと酒そしてドラッグ臭それに合わせて踊る客。殆が若い少年少女で中学生くらいの人間もいる。

 

「まさしく掃き溜めだな」

 

雄二の言葉に皆声にはださないが肯定していた。

 

「つか、匂い程度なら大丈夫なレベルとはいえドラッグがOKなら、俺が行っても問題ないだろ?」

 

「いやダメだ。彼女達が心配なのはわかるが、ここで待機だ」

 

中を除くと7階に行く階段付近に警備員がいると律からの情報で掴んだ。だが内部状況はわからない。まだ警備はいる可能性があり、しかも男はチェックが厳しい。ならばそのチェックが緩い女子達が潜入し作戦の下見をすることとした。だが男手はほしいーーそこで

 

「渚はまぁ、適任だったがな」

 

「ね、自然すぎでしょあれ」

 

とカルマがニヤニヤしながらその写真を見ると女装して恥ずかしがる渚が映っているが、その見た目は完全に女子にしか見えないしかも恥ずかしさでモジモジしてるので余計に女子らしさがでている

 

「中でナンパでもされてるかね〜男に」

 

「そういう意味なら女子連中よりあいつの方が心配だな。お持ち帰りされてんじゃないか?」

 

至極冷静な顔でそういう雄二にカルマどころか他の男子もブッと笑いを抑えていた

 

「まぁ、そこは大丈夫だと思うがな。いろんな意味で回避率高いしな…お」

 

待機していたところで扉が開き少し警戒したが片岡が顔を出してサインを出す

 

「成功したようだな」

 

「よし、すぐに向かうぞ」

 

まず烏間と磯貝が入り、そこからゾロゾロと即座にに潜入し階段を登る。

 

「成功だな」

 

「えぇ。皆さん、危ない目に遭いませんでしたか?」

 

殺せんせーが質問するが笑顔で否定する。…渚以外は

 

「どうした渚?」

 

「ううんなんでもないよゆう…風見」

 

「それならいいんだが、なんでいきなり呼び方を変えるんだ?何かしたか?」

 

「ううん、風見は関係ないよ。でもしばらくこうせて」

 

死んだような目で渚は言う

 

「なにがあったんだ?桃花、知ってるか?」

 

「雄二くんと同じユウジって名前の男にナンパされてたの」

 

「ちょ、矢田さん⁉︎」

 

「渚、いや潮田、おまえの気持ちはわかった。だが、すまん」

 

「なんで告白して断られた感じになってるの⁉︎でカルマくんもその状況を撮らないでよ‼︎」

 

「もうさ、早めに取っちゃたら」

 

「とらないよ!大事にするよ‼︎」

 

「その話は後にしてくれるか?いくらこの階が防音設備のあるVIPフロアでも警戒はしないといけない」

 

「…2度としません」

 

烏間にまで言われてがっくししながら先へ進む。

 

「ちなみに、おんなじ名前でも雄二くんの方が何億倍もカッコいいよ」

 

「それはありがたい。お前達にあそこにいる連中とおんなじ扱いされるのは流石に苦しい」

 

いつものように言いながらと思ったが渚はどこか暗いなと感じていると烏間からストップが入る。その表情は困惑していた担いでいる磯貝もだ。それが気になり皆が見るとそこには倒れたガタイのいい男が2人と

 

「仮面?」

 

白い面に黄色ラインとユリの花がシンメトリーに描かれている仮面をつけている服装だけ見ると男に見えるが手の細さから女性にも見える。倒れている男の1人が痙攣し、もう1人はどうにか動く体でその仮面の人物を攻撃しようとするが

 

「………いや、わかりますから。不意打ちくらい」

 

仮面の人物の声は女性に聞こえた。

 

全く違う体格の男の不意打ちの拳を避け後ろに回り込み何かしたのか痙攣し泡を吹いて倒れた

 

「はぁ、邪魔者はいませんよ、早く出たらどうですか?…それとも、連絡しましょうか?」

 

仮面は皆の方を向いて言うと恐る恐るでる

 

「心配しなくても、通してあげますよ。ただし……あなたは別」

 

指を向けた対象は風見だった。

 

「俺をご指名なら料金は高いぞ?他をあたれ」

 

「断ってもいいけど…いいの?これ以外にも通信機があるからいつでも緊急事態のサインを上にいるボスに流せるんだけど?」

 

手に持った通信機がを見せつけながら仮面の相手は挑発する。

 

「ハッタリ……ではなさそうですね体の何処か、手を使う必要のない場所にあるのかはわかりませんが、簡単な発信式の物というところですかね」

 

「へーそんなヘンテコな姿になっても観察力は鋭いのね。流石超生物。わかってるなら従いなさい……今回の任務は正直言って退屈なものだけど、あなたのような人がいるんだからまだいいわ」

 

「……そんなハッタリ効くかよ。こんなとこでやり合えば、流石に問題になる」

 

防音機能の部屋でもなにがきっかけで部屋から人が出てくるかわからないそれが原因で相手のボスに報告が入ってはたまらないのだ

 

「それなら安心して部屋の住人には全員スモッグさんから購入したガスを流し込んで寝ているはずよ。強力な睡眠ガスだから、明日の朝まで起きないわ」

 

「徹底してんな…購入って言ってたな?さっきのぬーぬー野郎も金を貰ったと聞いたが、それもお前か?」

 

質問に「えぇ」と軽く仮面は答える。

 

「なぜそこまでして俺にこだわる?」

 

「その答えはあなた自身で確かめて」

 

チャックをおろして上着を脱ぎ捨てると

 

「………どういう構造?」

 

「………ビッチ先生くらいはないけど、私くらいはある?」

 

どうやって抑えていたのかE組で1番の巨乳の桃花と同じくらいのサイズがでた

 

「ストリッパーならよそでやれよ」

 

タンクトップに巨乳が強調されている。実際殺せんせーは既に悩殺されデレデレ状態だ。それに全く動揺もせず目の前の相手に集中する雄二は流石だと思っていた……主に女慣れしている意味で

 

「大抵の男はこれで乱すんだけど、流石にイリーナ姉さんが一緒にいる教室にいるだけあって慣れているってことかしら?」

 

「ビッチ先生の妹か?髪の色とか似てないが…」

 

少し長めのショートで少し紫っぽい髪の色はどう考えても姉妹に見えない

 

「あ、多分ロヴロさんの言ってた妹弟子事だと思う」

 

「えぇそう。姉さんにもさっき会って来たわ。相変わらずの技量におそれいったわ。潜入に関してあの人みたいに音楽の技術は伸びなかったから」

 

その時点で報告がいってないのはおかしいと思い、なおさら相手の真意が見えないことに不安が募る

 

「目的は俺だけなら、他はいいんだな?」

 

「すきにすればいいわ」

 

「なら、お前たちは先に行け。こいつは俺が片付ける」

 

「はぁ?なにカッコつけてんだ。そんな条件無視して全員でかかればいいだろ」

 

「やめとけ寺坂。おそらくこいつが通信機を2つ持っているのは本当だ。妙な行動をとったと思われたらおしまいだ。さっきの奴と違ってカルマみたいに通信機を壊すのも無理だろうしな」

 

「正解よ。ちなみにこの通知機もグリップさんが持ってたのとは違い、破壊されても連絡がいくように改造してあるの」

 

本当に用意周到だった。優れた殺し屋は万に通じる。彼女は機械関係などの細かい部品を弄るのは姉弟子ビッチ先生よりも上手であった。

 

「現状、実権はこいつが握っている。お前達は早く行け」

 

「「「「ことわーる」」」」

 

「なっ、はぁ?」

 

「雄二くんが心配だし放っておけない」

 

「つか、さっきも言ったがカッコつけんな。お前に万が一があって怪物殺すのができなくなったどーすんだ?」

 

「ねー仮面のおねーさん、観戦なら許してくれるよねー?」

 

仮面は考える素振りを見せて

 

「いいわよ。手出ししないならね」

 

「おい、こいつのいう事信じるのか?残ったからって理由で連絡するかもしれないぞ?」

 

「もしそうなら先進んでも連絡するかもしれないし、何より本当に連絡できるならとっくにしてるでしょ?」

 

カルマの一理ある言葉に皆頷く

 

「風見くん、君は少し自分を犠牲にしようとする所がある。けど、君なら仮に他の誰かが自己犠牲をしようとしたら止めるでしょう?それとおんなじですよ」

 

「………」

 

烏間に助けを求めるように視線を向けるが

 

「風見くん、俺は君に少しでも普通の学園生活をしてほしいと思っている。自己犠牲は本当にそれしかない時だけだ」

 

拒否された。小さくため息を吐くが雄二は気付いてない自分が軽く笑みを浮かべていたことを

 

「お話は終わり?」

 

「あぁ、悪いが時間がない。早めに終わらせる」

 

ファイティンぐポーズをとると仮面も同じように構える。キックボクサーのように足をトントンと動かすどう攻めるのかと思う間もなく仮面が動いた

 

「シッ」

 

女の拳とは思えない力のある拳を紙一重で回避し、逆にカウンターのように仮面の面にむかって拳を振う。

 

「…っつ」

 

「女だから、仮面を狙ったの?だとしたら相当な甘さねっと!」

 

仮面が想像以上の硬さだったのか逆に拳から血が出ていた。その隙を逃す訳なく仮面は怯んで少し下がった雄二の腹に回し蹴りをくらわせた

 

「ごっ」

 

「「「雄二(くん)‼︎」」」

 

「いや、大丈夫だ」

 

烏間が心配しないように言ったあと気づく。両手で包むようにその足を持っている雄二を

 

「ふんっ」

 

グルンと仮面の体が宙で一回転して地面に叩きつけられるがすぐにブレイクダンスのように地面で回り逆立ちそのままバク転で下がるだが狭い通路では後ろに下がるのは明白。追撃のため雄二はバク転後体制が整っていない仮面に今度は蹴りを入れる。

 

「わかるわそんな攻撃」

 

小さくつぶやくと仮面はあえて後ろに倒れる伸びた足を持ち力技で巴投げの要領で雄二を投げる

 

「…どこにそんなパワーがあんだよ」

 

どうにか受け身をとったが着地の際に少し足が痛む。無理な着地だったのだろうだが動けないほどではない今度はダッシュで拳を向ける…と見せかけてしゃがみ視界から消える

 

「⁉︎」

 

仮面で視界が狭まっているのでちょっとしたことですぐに見失う

 

「息づかいと命の気配でわかる」

 

横から抱えにくる雄二の背中に肘打ちをくらわせた…つもりだった。

 

「なぁ⁉︎」

 

寸前のところで視線を戻して空振りさせそこから勢いをつけて回転し回し蹴りが仮面の顔目掛けてくる。

 

(避けられ…)

 

ゴッと鈍い音がした。つけていた仮面は飛んでうつ伏せに女は倒れた

 

 

 

「すげー。風見すげー」

 

狭い場所とは思えない立ち回りで一撃を与えたの見ていた木村が思ったことを告げる彼はクラスで最も素早く、単純な素早さは雄二を凌ぐ。だがそんな彼でもこんな所でこんな動きはできない。

 

「つか、容赦ねー。多分最初は女って事で仮面つけてるから顔だったのかもしれねーが」

 

「いや、仮面つけてても顔面って」

 

「しかも、回し蹴りも頭だし」

 

桃花も流石にちょっと真顔になっていた

 

「って、あいつまだ立つぞ」

 

菅谷が驚いているとプルプルしながら女は立ち上がる。戦えるだろうが満身創痍に近い

 

「あれならもう大丈夫だろうが万が一もある。…風見くん、動けなくしてくれ」

 

「……………ぁ……」

 

「風見くん?」

 

受け答えなく呆然としている雄二に烏間と殺せんせーは違和感を感じた

 

「いたいなー。けど、久しぶりの感じかな……ねぇ」

 

アメジストのような薄い紫の瞳の女は妖艶な笑みで雄二を見る

 

「……ぁ…あぁ……あ」

 

拳を構えているが全身が痙攣しているかのように震えている雄二はもう誰が見てもおかしかった

 

「マー……ごぁ‼︎」

 

一瞬で近づいてきた女はその勢いのまま雄二の顔面に拳を振う防御どころか身動き出来ずその渾身の一撃で雄二は倒れ、追撃の蹴りが胸の中央にヒットした

 

「グボァ!」

 

「「「「「風見((くん))⁉︎」」」」」

「「「雄二(くん)⁉︎」」」

 

「アハハハハっ!」

 

快感を得たかのような表情で笑う女はそのまま胸を踏み続ける。時折顔も蹴る

 

「何してんだ風見⁉︎早く反撃し…」

「待ちなさい寺坂君‼︎」

 

我慢できず前に出ようとする寺坂を殺せんせーが止めるとその横を何が通り近くの花瓶が壊れるツーと血が頬から出る。女の手にはいつのまにかサイレンサー付きの銃があった

 

「余計なことはやめなさい。わたし、早撃ちは得意なんだけどガストロさんと違って命中率は悪いの。今のも偶然かすめただけで狙ったわけじゃない」

 

つまりどこに当たるかわからないうえに、誰に当たるかもわからない。今誰にも当たらなかったのは本当に奇跡だった

 

「や、やめ…マー…ゴェッ⁉︎」

 

再び胸を踏み潰す

 

「……つまらない」

 

そういうと女はかがみ、ポケットから何かとりだすケースを開けるとそこには注射器があり中に何かの薬品がある

 

「まて何を…」

 

する気だという問いには答えさせない。今度は最初から外す気だったのか上の方に向けていたがそれはすぐにでも撃てるという警告である

 

「もう少し、殺る気をだすだけよっ‼︎」

 

躊躇いなくそれを雄二の首筋に刺し、注入される

 

「ご、ぐ、ぁ………ア」

 

脇腹を蹴り、雄二の体が少し飛ぶ。だが痙攣はしておらず、先程よりも様子がおかしい

 

「あ、アアアアアア‼︎」

 

獣のような声を宙に出し、同じく獣のように女を睨み、突進する

 

「そう、その顔のあなたと殺りたいの」

 

女の言葉はもう聞いてない先程よりも容赦ないラッシュがくりだされる。目を、首を、鳩尾を弱点となり得る部分に攻撃をする

 

「今ならできるわ」

 

弱点を狙ってくるならそこを重点的に守るのみと軽く女はいなす

 

「何をした、私の生徒に…」

 

殺せんせーの表情はドス黒い、ガチギレだ

 

「別にっと、スモッグさん開発のただの興奮剤よ。人体への影響は効果切れてもないわっと!」

 

「ぐっ!」

 

会話していても平然と受け流しカウンターの一撃が顔に当たる

 

「はぁ、はぁ、アアアアアア‼︎」

 

「ぬっぐっ」

 

獣のような動きからまるで知性を得ていくように今度は動きが単調ではなくフェイントなどをいれてくる事で対応が難しくなってきている。女はボスに言った。死を経験すると、意識を生命を感じるとそれによって彼女は他の人よりも呼吸音や筋肉の動きから相手の考えがある程度わかる。だが、今の雄二は半分無意識で攻撃をしている。ゆえに

 

「あぁ!」

 

いずれ攻撃は当たる。横に振るった拳は女の顔にあたり、姿勢を崩す。体制を立て直す暇なく首をもたれ、壁に打ちつけられる

 

「ウーぅぅぅ‼︎」

 

「結局負けか」

 

それを望んでいるかのように女は意識が遠のく。ギリギリと首を締め付けられていく感覚は今の彼女にはないのか逆に笑みが出ていた。

 

「ウアァァ‼︎…ゴゥ⁉︎」

 

だが締め殺す前に雄二の頭に硬いものが当たる。

 

「うぅやはり酔いますねぇ」

 

渚が言われた通りに殺せんせーをぶん回して威力が上がった完全防御形態の球体が雄二の頭にクリティカルヒットした首を締め付けていたことで女の意識がこちらに完全になくなったのを見計らい指示したのだ。想像以上の威力かつ想定外の一撃に雄二も流石に頭を押さえていた

 

「あぁ、ああ?」

 

「風見くん、私の声が聞こえますか?」

 

「こ、ころ、せん、せ?」

 

「はい。そうです。意識をちゃんと持ってくださ…」

 

「俺、オレ、おれは」

 

まだ不安程な精神になっている雄二に

 

「私を見なさい‼︎風見雄二‼︎」

 

「⁉︎」

 

一括した。親が子に言うように

 

「風見くん、君が何に恐れて、何に不安なのかは聞きません。けど、今君がなすべき事はなんですか?あの殺し屋に負ける事ですか?それとも殺す事ですか?それは、君の人生を、君を待つ彼らの想いをぶち壊してまでやるべき事ですか?」

 

「………」

 

「考えて、そして、落ち着きなさい今君のなすべき事を」

 

そう言われて皆がいる方を見ると泣き出しそうな桃花、それに寄り添い何泣かせてんだと言う表情をする片岡、不安そうな渚、何してんだよと言いたげな寺坂にカルマ。皆それぞれ顔に想いが出ている

 

「悪い、どうかしてた。もう大丈夫だ」

 

「なら良しです」

 

「よくない」

 

女も意識が回復していたがそれは無理矢理だ手には先程雄二に打った物と同じと思われる注射器を持っているがそれは自分に打ち込んだのだろう

 

「今は、私の、私を見て‼︎」

 

突撃してくる女を

 

「それは悪手ってやつだ!」

 

冷静に胸ぐらを掴んで柔道の選手のように投げ飛ばしたビターンと背中を打ちつけたがそれでもなお立ち上がるため、四つん這いの体制になる

 

「まだ、まだやりま…」

 

「悪いが、ストーカーには飽きてる。もう勘弁してくれって事でよろしく」

 

「何をぅ⁉︎」

 

薬を使ったのは完全に彼女の悪手、周りの意識を見ることができず、グリップがやられたように全員に覆い被された。

 

「うわー容赦ねぇな男子」

 

「「「「「お前がいうな」」」」」

 

それでもなお動こうとする女の頭に

 

「フン」

 

「おぐぅ⁉︎」

 

雄二のゲンコツが命中した

 

「タンコブできるだろうが、そのくらいは勘弁しろよ」

 

「ま、まだぁ」

 

「しつけぇぇええ!」

 

今度は寺坂が首に何か筒状の物を当てるとバチィと音が鳴る

 

「スタンガン…いつの間にそんなものを」

 

「タコに電気が効くか試そうと思って買っといたんだ。こんな事でお披露目とは思わなかったがな」

 

「よくそんな金………あぁ」

 

何かに納得したのか。雄二は頷く

 

「……なんだその目は」

 

「…男優か」

 

「なんの男優かはもうわかるがちげーよ!……臨時収入はあったけどな最近」

 

「うぅぅ」

 

「嘘だろまだ意識あるのか」

 

「薬の影響だろ動けはしないさ」

 

意識がなくなってはいないがその痛みに悶えている合間に簀巻きにされた

 

「…………」

 

「そんなに睨んで、何か嫌なことでもあったのか?」

 

((((えげつねぇ)))

 

女を見下ろしわざとらしくいう雄二はいつも通りだ。だからそれに皆ようやくホッとした。

 

「ふんだ」

 

今度は子供のように女は拗ねる。

 

「情緒不安定だな」

 

「……まぁ、いいわ今回は。それにあなたがもう戦えないなら役目は終えたようなものよ」

 

実際雄二のダメージは大きく、薬の影響で動くのでやっとだ戦闘も射撃もできないだろう。

 

「ちょっと、量、多かったか、な…」

 

ようやく女の意識がとんだのを確認して安堵した。ちなみに通信機は耳のピアスだったらしく万が一に備え外された




ちなみに
今回彼女は雄二と戦うためにほぼ全財産を使い果たしました

ちなみに2
正体がわかった人はいると思いますが一応言っておくと彼女は生存してるけどアイツは産んでいます

感想、意見は遅れても基本的に返信するのでよければお願いします


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番外の時間・3時限目

超短いです。




ーーーどうしてこんなことになっちゃうんだろう。そんな言葉を昔はよく吐いた

 

 

 

「素・・らし・。このまま続けよう」

 

あぁ、この子も私と同じ利用して、され続けるために生まれた…逃げようとおもっていた。けど、前日に別の誰かが脱走して死んだことを知り、怖気付いてしまった。むしろそこで死んだ方がよかったのかもしれない。

 

「も・、げ・・いといっ・・こ・ろですね」

 

何度目の受胎だったろうか最初以降徐々に私の体力も気力もなくなり生まれてくる子はすぐに破棄されたという

 

「やは・、そうなん・・はいかないか」

 

「では、廃棄で?」

 

そうして私の処分は決まる。使えなくなった物のようにあっさりと…

 

 

意識をとばされてどのくらいたっただろうか?ここは天国?現実逃避をしているとまた声が聞こえてくる

 

「逃げたようだな。しかし、依頼はこの施設の無力化だ問題ないだろう」

 

「この子は…生き残りみたいですね」

 

男1人と女1人。声がはっきり聞こえてくるのはいつぶりだろう

 

「薬は中和しました」

 

「他の子は?」

 

女の方が首を横にふる。あぁ、私はわたしだけ生き残ったんだ。きっと少しの差彼らが来るのが遅ければ廃棄され、早すぎても早急に処分された。本当に運が良かっただけだ。

 

「お嬢ちゃん、君には今選択肢が2つある。1つはこのまま保護されて施設で暮らす。…いいように聞こえるがこの道を選んだら平穏はあっても穏やかに暮らせることはない。ここでの記憶のフラッシュバックと中和しきれない薬のためとやつに改良されたその体の研究のため一生をかけてベッドの上だろう」

 

どうしろというのか。ともかく話しを最後まで聞くことにした

 

「もう1つは俺のもとで暗殺の才能を育て、暗殺者となる。今まで投与された薬は中和できなくてもそれで開花した能力を存分に活かせる。副作用も稼げばいずれどうにかなる。そのかわり、血の中で生き続ける。そして薬の副作用も続くため、ちゃんとしていないと暴走の危険もあり、その場合はすぐにベッド行きだ」

 

どちらも地獄なら………私は

 

 

 

「お前の姉弟子、イリーナだ」

 

どうにか動けるようになった後、姉弟子のイリーナという女の子に会った私より年上で、彼女もこの男、ロヴロ師匠(センセイ)の元で暗殺者としての訓練をしている。ただ、既にいくつかの仕事をこなしているそうだ

 

「イリーナ、姉弟子として今まで教わったことを教えてみろ」

 

「どうして私が?」

 

「歳も近い。何より教える事で自分の向上にもなる」

 

「…わかりました」

 

冷たい目で私をみる。私はそれをそらすがグイっと顔を引っ張られて無理矢理目と目が合わさる

 

「あなた、この場で裸になれる?」

 

いきなりだった。動揺して何も答えられない

 

「…この子はダメですね。少なくとも女の暗殺者に必要な色仕掛け(ハニートラップ)はできない」

 

「…っ」

 

「………ふむ、それは最低限にして他の女としての技術を教えてやれ」

 

少し嫌そうにしながらも頷いた。そこから先は色々な芸を教わった。暗殺に必要なスキルから潜入に必要なスキル様々だ。2年が経って私も暗殺者として仕事をしだし、彼女と共に潜入できるようになっていた

 

「助かったわ。ありがとう」

 

ありがとう…そんな言葉を聞いたのは初めてのような…いや、彼といたときに言われた気がする。

 

「わ、私も、今日まで、ありがとう…姉さん」

 

おもいきってよんだが彼女は、イリーナ姉さんは別に嫌な顔をせず、接してくれた。

 

「薬よ。必要なんでしょ」

 

もう1年経ったら同じ仕事つくことはないが姉妹のような関係になったと思う。治療のおかげで体も良くなっていた。それでも、私の中には生の渇望はない。だが今でも生きている。忘れていないものがあったから。赤ん坊工場にいた前の施設で会ったあの子…いま、どうしているのだろう。そして、彼に

 

 

そうして殺し屋として名も売れだして日常のように血の中で生きていけていた。そんなある日に来た依頼

 

「超生物の暗殺?そのための椚ヶ丘中学3年E組の利用?」

 

ロヴロ師匠から話しは聞いている。イリーナ姉さんもいまそこにいるということも。それ以外の情報を得る為私は依頼を受ける前にそにクラスについて調べただがどうしても調べられない名前があった。クラスの人数は転入生含めて29名。今いない者や機械などいるがそれよりも名前が判明できない者に注目しいた。1人は(・・・)すぐに判明しただがもう1人は掴めない。国家が絡んでいる可能性があり、リスク覚悟でロヴロ師匠に直接聞くことにした。そして送られた情報は

 

「見つけた」

 

彼だ。彼だ。彼だ。偶然だろう否、必然だようやくだ。彼と決着をつけ、そして、私を終わらせる

 

 

「はずだったのになぁ」

 

薬を使い興奮状態なら殺してくれると思ったけどあの生徒達を侮っていた。人が殺されるかもしれない状況下でも自分達が命の危機にあるなら動けることはないと高を括っていた

 

もう去ってしまった彼は殺意はなかった。…最初から。彼以外に殺されたくはない。私の罪も毒のような人生も終わらせる権利が彼にはある。彼をああしてしまった原因の一つである私に対して………




ちなみに
書けませんでしたが彼女はロヴロに言われて普段からサングラスなどで顔を隠しています。その理由は生きていることが知れたら面倒のため。仮面をつけていたのは雄二に顔を見せないためでしたが見られた時点で後に引けないとして薬を使うのを計画に入れていました


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アドバイスの時間

ようやくSwitchとモンハンを買ったがやる時間が無いのでなかなかランクが上がらない……
あと、そっちやる時間あるなら続き書こうよとか言わないで……モンハン好きなんです


意識が失った女を人目につかない場所に運んで寝かせた。その時の雄二の顔は穏やかともいえるが悲しさもあるように見えた

 

「風見くん、体の方は?」

 

「すごい倦怠感と手が少し痺れ、それと時折目が霞むってところだな。動くのには問題ないな」

 

((((それで動けるのがすごい))))

 

雄二も烏間ほどではないがその領域に片足つっこんでいるなと皆が思いつつも戦力がここにきて減ってしまい不安になる。

 

「たく、なにが人体への影響はない…だよ。そんなになってるんだから害ありまくりじゃん」

 

「いや、おそらく副作用だろう。その内効果が消えるだろうが、相当強力な薬のようだな。ともかく風見くんはこれ以上は戦えないな」

 

「だからここで待てって言うのはよしてくれよ烏間先生。ここまで来たんだ最後まで行かせてくれ。何よりさっきのやつの言い分だとおそらく殺し屋がもう1人いる」

 

先程の女は3つのコードネームであろう名前を言っていた。スモッグ、グリップ、ガストロだ

 

「スモッグはあの毒使いだろう。で、グリップがあのぬーぬー野郎、それとガストロってのが射撃専門の暗殺者」

 

「え、どうして?」

 

「言ってたろ?『ガストロさんと違って命中率は悪い』って。そこから察するに射撃の達人の殺し屋だ」

 

その事実に不安はさらに加速した。戦力低下にまだ脅威あり。それでも

 

「行くしかないな」

 

「へっ‼︎当然だ‼︎さっさと行ってぶち殺そうぜ‼︎」

 

「その前に、あちらで倒れている2人組の胸元を探りましょう」

 

殺せんせーが言う通りに女が倒した男2人の胸元を探ると黒色の武器があった

 

「銃…確かにこの先に射撃のプロがいるのも考えたら持っておいた方がいいな…あいつのサイレンサー付きの銃はどうする」

 

「そちらは置いておきましょう。そして、この銃は千葉くんと速水さんがもちなさい」

 

「え、でも風見と、烏間先生が…」

 

「もう1つの銃を持っていかないのは、烏間先生はまだ精密な射撃ができる所まで回復していない。風見くんは言うまでもないでしょう。使い手がいない中で持っていても荷物になるだけ。…それにおそらくですが」

 

「弾は2発だけだ」

 

いつのまにか調べていた雄二がその銃に弾がないのを確認した

 

「最初から威嚇のためと予備のためだったんだろうな(そうなるとますます謎だが)」

 

「聞いての通りです。それを最も使えるのは現状君達2人です」

 

しかしそれでも不安なのか千葉は殺せんせーに詰めよるが言わせないと言わんばかりに遮って「ただし」と言う

 

「それを使って殺す事は許しません。君達の腕前であれば傷つけずに倒す方法はいくらでもあるはずです。さぁ、準備もできました先を急ぎましょう」

 

2人はやはり不安だった。さっきのエアガンですら失敗したのに出来るのかと

 

「…ひとつ、アドバイスだ」

 

雄二は2人の前にきて言う

 

「わかってるだろうが、本物の銃は火薬の炸裂で反動がある。連射はお前たちには不可能だ。撃つ時は確実に撃てて尚且つ撃った後隠れられる時、もしくは一撃で決めれる時だけだその時まで絶対に撃つな」

 

「「………」」

 

「それと」

 

ぽんっと肩を叩く俯いていた2人が顔を上げた

 

「肩に力を入れすぎだ。お前たちだけじゃない(・・・・・・・・・・)忘れるな」

 

その言葉の意味は2人はわからないが少し勇気をもらえた気がして階段を登る足は軽くなった気がした

 

 

side:ガストロ

 

妙だな…交渉期限が迫ってンのに監視カメラに何の変化も無さすぎる。スモッグにグリップ、仮面の嬢ちゃんにも繋がらねぇ。電波の問題かと思ってたが…

 

「あのっスねボス……」

 

ってあーダメだこりゃ夢中になってら

 

「このアングルだと一部の生徒しか映らないなァ…あのホテルにもっとカメラを仕掛けておくべきだったぜ。いいなぁ……中学生どもが苦しむ顔…百億円手にしたらよ、中学生たくさん買って毎日ウィルス飲まそうかなァ」

 

俺らに色々言ってたけど、あんたの拘りもなかなかのモンですぜ、ボス。……よくよく考えてみたら言う必要ないな(・・・・・)

 

 

一応見回りに行くこと言ったがありゃ聞いてんのかわかんねーな。……元から味が悪い仕事がどんどん悪くなっていきやがる。超生物を殺す任務に嬢ちゃんからの追加の任務、その時点でわかってたが…ガキ共のお出迎えに変わり余計に酷くなった。まるでパシリじゃねーか。銃が美味ぇのが唯一の救いだな。………………いるな。

 

「15、いや16か?呼吸も若いほとんどが十代半ば。……動ける全員で来たか… 結局は見立て通り(・・・・・)か」

 

とりあえず降伏勧告はしとくか

 

 

side:フリー

 

(見立て通り?)

 

小声だったがきっちりとその言葉を聞いた雄二に疑問ができたが質問はできない。そんな事をすれば相手に位置を知らせる事になる。すると男が後ろの照明に向けて発砲した。ホール内に発砲音と照明の割れた音が響く

 

「言っとくがこのホールは完全防音でこの銃はホンモノだ。おまえら全員撃ち殺すまでだれも助けに来ねえって事だ」

 

(振り向くことなく目標に命中させている。間違いなくこいつがガストロってやつだな)

 

「おまえら、人殺しの準備なんてしてねーだろ‼︎おとなしく降伏してボスに頭下げとけや‼︎」

 

その男、ガストロは器用に中指で銃をクルクルさせながら降伏勧告をする。だが彼は知らない。知っていたらそんな行動などとらなかっただろう。座席側から発砲音がしガストロが当てた照明の隣に弾丸が命中した。だが

 

(今のは外したのか。おそらく銃を狙ったんだろうが……まずいな)

 

ガストロがへぇと退屈そうな表情からニヤつかせる。火を付けてしまった

 

「意外と美味ぇ仕事じゃねェか‼︎」

 

ステージの照明を全てつけその逆光で見づらくなる。アドバンテージは完全にむこうのものだ

 

「今日も元気だ銃が美味ぇ‼︎」

 

撃たれた弾丸は吸い込まれるように狭い座席の間を通り速水が隠れている場所へ行くハネていた速水の髪にあたり髪が落ちる

 

(今のは警告……じゃねーな。少しでも速水が動いたら当たっていた。今までの相手と違って命を取りに来てやがる)

 

もし、銃を持っていなければ命は奪わず攻めてきても行動不能になる程度に撃っていただろうが、銃を持っている=命が掛かっている。この考えが頭にでき、命を取る選択肢がガストロに出来上がっていた。

 

「1度発砲した敵の位置は絶対忘れねぇ。もうお前はそこから1歩も動かさねぇぜ」

 

(おまけにこいつは暗殺者だが、おそらくは)

 

雄二のカンは当たっている

 

「下にいた殺し屋は2人は暗殺専門、仮面の嬢ちゃんは中間ってところ。だが俺は軍人上がりだ。この程度の多戦闘は何度もやってる」

 

(やはり同類(・・)か)

 

「幾多の経験の中で敵の位置を把握する術や銃の調子を味で確認する感覚を身につけた。中坊(ジュニア)ごときに遅れを取るかよ」

 

(さて、どうするか)

 

時間をかければ次第にあいては位置を全て把握する。かといって無闇に攻めればズドン。連絡を取ろうにもそれで位置がバレる

 

(となれば、ここは当初の予定通り、殺せんせーに任せるしかない)

 

現在、殺せんせーは烏間が持っており、ガストロの接近に気付いた段階でそうすることは考えていた。だから烏間は最も危険な最前列の中央付近に隠れたのだ

 

「速水さんはそのまま待機‼︎千葉くん、今撃たなかったのは賢明です!君はまだ敵に位置を知られていない!先生が敵を見ながら指揮するのでここぞという時まで待つんです‼︎」

 

見ながらと言われてガストロはどこに隠れていると思い見渡す。が声の主の殺せんせーは最前列でニヤニヤしてかぶりつき見ていた。まさか1番前にいるとは思わずガストロも烏間が置くのを見逃していたのだ

 

「テメー何かぶりつきで見てやがんだ⁉︎」

 

連射で撃つがそこは完全防御形態。無敵の装甲に覆われ弾丸全て弾く。

 

「熟練の銃手に中学生が挑むのですから、この位の視覚ハンデはいいでしょう」

 

舌打ちしつつリロードしてどうするつもりだよと問いかけ殺せんせーはならばと指示をさらにだす

 

「木村くん五列左へダッシュ‼︎」

 

殺せんせーに目が行っていた為あっさりと移動される。

 

「寺坂くん、吉田くんはそれぞれ左右に3列‼︎」

 

違う所で動かれついそこを見た隙にできた死角、そこに指示で動く茅野

 

「カルマくんと不破さん同時に右8‼︎磯貝くん左に5‼︎」

 

どんどん生徒の位置をシャッフルするがガストロはすぐ冷静になる

 

(指示するほどに名前と位置を俺に知らせることになる。たったの十数人ならあっという間に覚えられんだよ‼︎)

 

が、彼は気づかない。少しずつ殺せんせーの指示が簡略になっていくことに。そしてここでさらに混乱させる

 

「出席番号12番‼︎右に1で準備しつつそのまま待機‼︎」

 

「へ」

 

間の抜けた声を思わずガストロは出してしまう。

 

「4番6番はイスの間から標的を撮影‼︎律さんを通して舞台上の様子を千葉くんと風見くんに伝達‼︎」

 

(なに?あいつも銃を⁉︎嬢ちゃんから奪ったのか⁉︎)

 

警戒心が跳ね上がる。しかもそれがサイレンサー付きなのだから尚更だ。

 

(いや待…)

「ポニーテールは左前列に前進‼︎」

 

「ちょ⁉︎」

 

「バイク好きも左前に2列進めます‼︎」

 

「なぁ⁉︎」

 

その考えさせる行為と番号から特徴に切り替えられて相手にさらなる混乱に誘う

 

「この前中村さんとデートした人、漫画好き、女装した人はそれぞれ前に2進んで‼︎」

 

この移動の際1名恥ずかしがっていたのは蛇足である。

 

「最近竹林くんイチオシのメイド喫茶に興味本位で行ったらちょっとハマりそうで怖かった人‼︎撹乱のため大きな音を立てる‼︎」

 

「うるせー‼︎なんで行ったの知ってんだテメー‼︎」

 

つい声を出すが撹乱にはなっていた。死角作り、確実に距離を詰めていくガストロは脳をフル回転させ思考する

 

(落ち着け。おそらく銃を持ってるのは千葉って奴と最初に撃った奴確か速水って奴の2人…嬢ちゃんが銃の整備の時弾丸は2発しか入れてない。それは見た間違いない。しかもお目当ての男に会って、何もなかったはずはねェ。何より最初に撃てるなら引率の教師か奴にやらせるはず。つまり残りの銃を持ってるのは千葉と速水のみ、嬢ちゃんの銃もない)

 

とはいえ、徐々に近づいてこられ特攻でもされれば厄介なのも事実。早く千葉の位置を特定することに専念した

 

「…さて、いよいよ狙撃です千葉くん。次の先生の指示の後…君のタイミングで撃ちなさい。速水さんは状況に合わせて千葉君のフォロー敵の行動を封じる事が目標です」

 

ドクン、ドクンと鼓動が速くなっていく。さっきとは違う。本当に外せないそのプレッシャーが2人を襲っていた

 

「…その前に表情を表に出す事のない仕事人の2人にアドバイスです。今君達はひどく緊張していますね先生への狙撃を外したこともあるでしょうが、師である風見くんに対しての罪悪感、自身の腕に迷いが生じている」

 

(あいつら、やっぱそんな事思ってたか)

 

雄二も気付いていたがそれを言うのは後にしようと思っていた。こんな状況になったのだから尚更だ

 

「言い訳も弱音も吐かない君達は、『あいつだったら大丈夫だろう』と勝手な信頼を押しつけられる事もあったでしょう。苦悩しても誰にも気付いてもらえな事もあったでしょう」

 

その考えはズバリ正解だった。周りの人も両親もそうだった

 

「でもご安心を。君達は1人でプレッシャーを抱える必要はない。仮に外しても今度は人も銃もシャッフルしてクラス全員誰が撃つかわからない戦術に切り替えます」

 

その瞬間にここに上がる時に雄二に言われた意味を理解した。

 

((おまえ達だけじゃない……))

 

「それと、さっきから携帯をいじっている人がいますね……律さんを通してもう送られたはずですよ」

 

((?))

 

2人が見ると思った通り雄二からだ

 

【さっきの採点を言い忘れてた99点だ。普通なら確かに0だろうだが、忘れるな俺達にはチャンスが常にあるそして今もだ。迷いがあるならもっと頼れ。これでもおまえ達の師匠なんだからな。そして1人じゃない仲間がいる訓練と失敗をおまえ達と同じように経験した仲間が。忘れるな、1人じゃない】

 

最後の1点は仕留められなかったものだと2人はすぐにわかる。雄二はお世辞で点数はつけないそれはいつもそうだったから

 

((………1人じゃない))

 

緊張はなくなり、銃をグッと握る。一方ガストロもただ話しを聞いてるわけではない

 

(フン、ありがとよ。ご高説の間に目星はついた)

 

ガストロが目星をつけたのは出席番号12番と言われた人物。準備待機から1人だけ動いてないのを混乱しつつもしっかりと把握していた。もちろん他の場所も警戒はしているが

 

(あの近辺は出た瞬間に仕留める狙いをつけておく!)

 

その目論み通り

 

「出席番号12番‼︎立って狙撃‼︎」

 

(ビンゴォ‼︎)

 

動いた瞬間に狙い撃ちした。弾は額のど真ん中に当たる。だがそれは

 

 

 

「わざわざ見張りの服を持ってきたのはこの為か…だが作る暇なんてあるのか?しかも音を立てずに」

 

「んー、状況さえあればな」

 

 

出席番号12番、菅谷創介の作った人形だった。ガストロがそれに気づいた時、死角から千葉の弾丸が放たれた。だが弾丸はガストロに命中してない

 

「ふ、フヘヘ、外したなこれで2人目の場所もガァ⁉︎」

 

ガストロには命中してないが、目標には命中していた。それは釣り照明の金具。支えのなくなった照明は速度を上げてガストロの背中に当たり衝撃で柱に打ちつけられる

 

(んなピンポイントを、中坊が、正確に⁉︎)

 

最後の力でもう1度狙うが今度は別方向からきた弾丸に銃を弾き飛ばされた

 

「やっと、あたった」

 

ついにガストロは力をなくし、どさりと倒れた。

 

「肝を冷やしたぞ。よくこんな危険な戦いをやらせたな」

 

簀巻きされていくガストロを見つつようやく緊張から脱力する烏間は殺せんせーに言う

 

「どんな人間にも殻を破って大きく成長できるチャンスが何度かあります。しかし、1人ではそのチャンスを活かしきれない。集中力を引き出すような強敵や、経験を分かつ仲間達に恵まれないと……だから私はそれを用意出来る教師でありたい。生徒の成長の瞬間を見逃さず、高い壁を良い仲間をすぐに揃えてあげたいのです」

 

命のかかる撃ち合いをした後にもかかわらず、表情はむしろ戦う前より中学生になっている皆を見て凄まじい教育だと烏間は思っていた

 

「「風見」」

 

2人が手を出したので雄二も両手を上にあげる。パンっとハイタッチをした。

 

「どうしたの?」

 

「く、薬の影響で、今ので手が痺れた」

 

「「「「締まらねぇー」」」」

 

締まらないがどうにか危機を乗り越えて更に上に、元凶に向かう




感想、意見は遅れますが基本的に返信するのであればお願いします

次回元凶です


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黒幕の時間

南の島編も佳境です。早足で終わらせます





ごめんなさい無理です


その人物の最大のミス、それは階段側を見ていなかった事だろう。呑気でいたわけではないし、彼も訓練はしている7階の見張り同様に訓練によって戦闘経験は豊富だ。とはいえたかが中学生がましてやこちらには歴戦の殺し屋が4人いるのだから階段から侵入者が来るはずもない。

 

「ごぁ、ぐごぉぁ」

 

なにをされたか気付いたのは首を締め上げられてからだった。酸素が体に行き渡らず、しだいに意識が消える。

 

彼の声を出すのだとしたら『そんなバカな』であろう。

 

「ふうぅ〜大分体が動くようになってきたな。…まだ力半分といったところだが」

 

烏間のヘッドロックによって9階の見張りは泡を吹いて気を失った。

 

「あれで力半分って…それでも俺らの倍は強ぇ…」

 

「あの人だけで侵入した方が良かったんじゃ…」

 

烏間の化け物っぷりはこれまで見てきたが改めて見たそれに若干引きぎみである

 

「たしかにぶっ飛んだ強さだが、おまえ達を頼りにしてないわけじゃ無いし、烏間先生だけで侵入してミッションを完遂できたかは正直微妙だと思うぞ」

 

ここに来るまでに見た殺し屋や見張りの数などを考えて雄二はその考えになるがそれでもできないと言わないあたり彼もそのことは心の中で思ってはいた。

 

「皆さん、最上階部屋のパソコンカメラに侵入しました。上の様子が観察できます」

 

「他のカメラにダミー映像ながしながらか?さすがだな律」

 

律に感心しながらスマホをみる。他の皆も自分のを出して確認しだす

 

「最上階一室は貸し切り。確認する限り残るのは……この男ただひとりです」

 

モニターを見ながらタバコを吸う男後ろ姿が映る。見ているものは

 

「こいつ、ウィルスに感染された皆を見てる…撮られてたのか」

 

「後ろ姿でもわかんぜ楽しんでみてんのがな」

 

「悪趣味なヤローだな」

 

冷静に言う雄二だが拳を握り、ギリギリと音を立てていた

 

「あのボスについてわかってきた事があります。……黒幕の彼は殺し屋ではない。殺し屋の使い方を間違えてます」

 

「それは薄々感じていたおそらく元々は殺せんせーを殺すために雇ったんだろうが、先生が身動きの取れないようになったのを確認して見張りと防衛に回したんだろう」

 

「そう。しかしそれは殺し屋の本来の仕事じゃない、彼等の能力はフルに発揮すれば恐るべきものです」

 

毒使いスモッグはすれ違いざまに殺るのが十八番のようだがすれ違うならもっと自分が目立たず他人の後ろに歩いて姿を隠しながらというものが最適だった。それができないのは見回りという役割があったから

 

「確かにさっきの銃撃戦も戦術勝ったけど…狙った的は1㎝たりとも外さなかった」

 

「あの、先程分かったことなんですけど…」

 

律が話しに入る

 

「風見さんが倒した仮面の人物も相当の相手です。どうやら、私の目すら騙くらかして皆さんの様子を見てたようです」

 

「なっまじかよ」

 

「なるほど、違和感はあったんだ。あいつ、ぬーぬー野郎の通信機を破壊したの知ってる素振りだったからな。連絡は……いってないんだろうなこの状況見るに」

 

あの時はわかりにくかったが戦闘面以外でもとんでもない化け物であったのがわかり戦慄を皆隠せない。

 

「そして、カルマくんが戦った相手もそう。見張るのでも、戦闘でもなく、日常で後ろから忍び寄られたらあの握力に瞬殺されていたでしょう」

 

「…そりゃね」

 

考えただけでも恐ろしいとカルマでさえ戦慄した。

 

「色々思うところも疑問もあるが、全部このイカれた男を縛ればわかる」

 

「…そうだな。時間がない。こいつは我々がエレベーターで来ると思っているだろうが、交渉期限まで動きが無ければさすがに警戒を強める。各個人に役割を支持するから聞いてくれ」

 

烏間の説明を聞いているとふと小声が聞こえたので雄二はそちらを見てわかった。階段を登る途中渚に聞く

 

「渚、寺坂はまさか…」

 

「…………うん」

 

それで完全に理解した。寺坂もウィルス感染していると

 

「あの状態で動けるのは大したもんだが、その分限界も近いだろうな」

 

「やっぱり今からでも」

「やめとけ」

 

雄二はすぐに止める

 

「今あいつを動かしているのは自身の想いと気力だ。周りにそれが知られたら動けなくなる。そうして、自分がお荷物なんだと意識してしまうだろう。そんな不安要素は周りにも本人にも伝えない方がいい」

 

渚は静かに頷き階段を登る。

 

 

 

___最上階に到達した。ここもカードキーが必要なのだが9階の見張りが持っていた。見張りにそんな大事な物を持たせるのはそもそも論外だがそれは階段から侵入してくると思っていなかった証拠であり、相手が油断し、気付いてないということである。

 

(だだっ広いが、遮蔽物も多いこれなら気配を最大に消せば忍び寄るのも可能だ)

 

その方法は体育で皆教えられている。

 

(すごいな。こんな状況で焦りもなくナンバができてる)

 

 

ナンバ:忍者も使うと言われた歩法。手と足一緒に前にだし胴の捻りと軸ぶれをなくし、衣ずれと靴の音を抑えるこができる

 

 

ススッとゆっくり確実に近づく。男はモニターに釘付けなのか振り向く動作も全く見せていない。

 

(奴か……あのスーツケースにつけらてんのは…なら、あの中に治療薬があるのか。…だが、あの爆弾に手元のリモコン…こいつまさか)

 

ともかく今は取り押さえることに意識を優先させる。

 

烏間の打ち合わせ通り可能な限り近づき、もし遠い距離で気疲れたときは本人を烏間の責任で撃つ。本来ならここに雄二も援護に回ってほしいが現状の彼ではできない。仮にできる状態でもさせはしないが。あとは皆で一斉に襲い拘束する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かゆい」

 

はずだった。その男の声を聞くまでは

 

「思い出すとかゆくなる」

 

ポリポリと顔をかくが爪をたてているので傷ができる。

 

「でもそのせいかな、いつも傷口が空気に触れるから…感覚が鋭敏になってるんだ」

 

すると男は大量のリモコン、おそらくその全てが起爆装置になっている物だ。20は少なくともある

 

「もともとマッハ20の怪物を殺す準備で来てるんだリモコンを超スピードで奪われないように予備も作る。うっかり俺が倒れても押せる位にな」

 

聞き覚えのある声。だがその声には以前と比べられない邪気があった

 

 

 

「だから、何があったんだ?」

 

「…まぁ、一応話しておくわ。ついで言うと烏間にも通達されているわ」

 

お互いにソファに座るとJBが話しだす

 

「先日、防衛省の機密費、本来ならあの怪物の暗殺に使うはずの資金がごっそり全て抜かれたの。金額はあの怪物の暗殺報酬よりも上よ」

 

「防衛省に泥棒なんてバカなヤローだが、それをされた方のセキュリティはどうなってんだよ」

 

「そのセキュリティをよく知ってる身内によるものよ。あなたも会ってる」

 

「?」

 

「つい最近まであのクラスの訓練責任者だったからその運営費の動かしかたも取り出し方も理解してた」

 

「って、おいまさか」

 

「えぇ。烏間も同僚って事で一瞬だけど疑われたわ。あの男…」

 

 

 

「連絡のつかなくなった殺し屋の他に防衛省の機密費を奪い、姿を消した同僚がいる……どういうつもりだ鷹岡ァ‼︎」

 

ぐるりと椅子を動かして顔を見せた鷹岡だが、その顔は自らつけたかき傷だらけで目は最初に見た時以上の狂気と憎悪で満ちていた

 

(JBめ。もっとちゃんと探れってんだ)

 

と愚痴を思ったがそんな場合ではない。今クラスの命はあいつの手の中で握られている

 

「悪い子達だ…恩師に会うのに裏口からくる。父ちゃんはそんな子に教えたつもりはないぞ」

 

まだ身勝手に父親目線になっている鷹岡は反省などない。

 

「仕方ない。夏休みの補習をしてやろう。…屋上へ行こうか愛する生徒に歓迎の用意がしてあるんだ」

 

腰を上げ階段の方に治療薬の入ったケースを持って歩き出す

 

「ついて来てくれるよなぁ?おまえらのクラスは…俺の慈悲で生かされているんだからな」

 

リモコンをちらつかせる。行かない選択肢など当然ない

 

 

 

屋上のヘリポートに着くと烏間が問いただす

 

「気でも狂ったか鷹岡。防衛省から盗んだ金で殺し屋を雇い、生徒達をウィルスで脅すこの凶行‼︎」

 

「おいおい、失礼だなぁ。俺は至極まともだぜ。これは地球を救える計画なんだ」

 

だが鷹岡は悪びれもせずむしろ自分こそが正義で正論を言ってるんだと言わんばかりに語りだす

 

「計画では、茅野とか言ったか?その女の方を使う予定だった。部屋のバスタブに対先生弾がたっぷり入れてある。そこに賞金首を抱いて入って、その上からセメントで生き埋めにする」

 

計画はおおよそ人道的と言いがたいものだった。その状況でも殺せんせーは脱出はできるだろだがそれは茅野の命を考えないと言う前提でだ

 

「生徒思いの殺せんせーはまさか生徒を巻き込んで爆裂なんてしないだろ?大人しく溶かされてくれると思ってな」

 

悪魔。そんな言葉を生徒達は思うほど歪んでいる

 

「全員で乗り込んでき来たことに気付いた瞬間は肝を冷やしたが、やることは変わらない。今おまえらを何人生かすかは俺の機嫌次第だ」

 

再びリモコンをちらつかせる。

 

「許されると思いますか?そんな真似が」

 

殺せんせーの怒気が含まれている声に鷹岡は知るもんかというような顔で語る

 

「これでも人道的な方さお前らが俺にした……非人道的な仕打ちに比べりゃな」

 

雄二もJBから聞いている上の評価は地に落ち、彼の指導は問題ありとして今後の指導者の権利も剥奪されたと

 

「屈辱の目線、騙し討ちで突きつけられたナイフが頭ン中でチラつくたびにかゆくなって夜も眠れねぇ‼︎」

 

自身の行いに悪びれず、自分勝手はもはや清々しいといえる

 

「落とした評価は結果で。受けた屈辱はそれ以上の屈辱で返す………特に潮田渚、俺の未来を汚したおまえは絶対に許さん‼︎」

 

「なるほど背のわざわざ低い生徒を要求するわけだ。狙いは渚ってことかよ」

 

「カンペキな逆恨みじゃねーか‼︎」

 

吉田の言う通り、逆恨みでしかない。殺せんせーの暗殺はついでに思える

 

「漢字辞典読んでみろあんたにピッタリな四文字熟語あるぞ」

 

自業自得。その言葉が全員によぎる。

 

「はっ!全くその通りだイカれ野郎テメーが作ったルールの中で渚に負けただけだろーが」

 

息を切らしながら寺坂も反論する。

 

「ついで言うとだ。あんた結果で評価を覆すって言ってが、それこそ無駄ってもんだ」

 

「あんだとぉ⁉︎」

 

「軍人ならわかるだろ?軍人に必要なのは規律だ。規律を破って行動するあんたに評価もクソもねぇ。なにより、あんたは軍人として失格だ。軍人が守るべきものは国民の領土、命、そして財産だ。あんたは身勝手と自己満足の為に血税を使い込み、国民の命を盾にしたクズの評価しか入らないんだよ‼︎」

 

正論に対して鷹岡がとったのは

 

「黙れ‼︎犬の分際で‼︎」

 

逆ギレだった。あの時と同じく、『犬』というワードで雄二を呼んで

 

「俺を犬って言うならあんたは駄犬だな。犬ってよんでじゃねー」

 

それにキレようとした鷹岡はニマリと笑う。ぶち壊してやるという顔で

 

「なら、こう呼んでほしいかぁ?90(きゅうまる)…」

「やめろ‼︎それ以上挑発するな風見くん‼︎」

 

大きな声を出して雄二を止める。鷹岡は正気ではないだけじゃない。自分のことすら頭にない復讐鬼となっていた

 

「くくくまぁそうだなぁ、俺の指先でジャリが半分減るんだからなぁ‼︎」

 

リモコンのボタンに指をつけて脅し、渚にヘリポートまで登れと要求してくる。

 

「行くのか?」

 

「………行きたくないけど、行くよ。あれだけ興奮してたら何するかわからない。話を合わせて冷静にさせて治療薬壊さないように渡してもらうよ」

 

「………渚、聡いおまえなら大丈夫とは思うが、おまえは暗殺者だ。おまえ自身も常に冷静でいろよ」

 

「わかってるよ」

 

そう言って要求通りにかけられた梯子を渡りヘリポートに着くと鷹岡は梯子を落とした誰の邪魔も入らないようにする為だろう。雄二達の位置からはわからないが中央には本物のナイフが2振りある。そこまで行けと無言で指示される

 

「そこのあるナイフで何をしたいかわかるだろ?そう、この前のリターンマッチだ」

 

「待ってください鷹岡先生。闘いをしに来たわけじゃないんです」

 

「だろうなぁ。この前みたいな卑怯な手はもう通じねぇ。一瞬で俺にやられるだろうよ」

 

そこだけは正しい。そもそも渚は暗殺者であって軍人のような戦闘職ではない戦闘をする前に終わらせる者なのだから

 

「一瞬で終わるんじゃ俺の気が晴れない。だから闘う前に、やってもらわなくちゃな‼︎」

 

鷹岡は指を下に向け要求する

 

「謝罪しろ、土下座だ。実力がないから卑怯な手で奇襲した。それについて誠心誠意な」

 

悔しい顔で足を曲げ正座する

 

「それが土下座かァ⁉︎バカガキが‼︎頭こすりつけて謝るんだよォ‼︎」

 

手をつき地面に頭を向け謝罪をした。実力が無いから卑怯な手で奇襲したと言われるままの通りに

 

「あ〜そういえば、その後偉そうに『出て行け』とか言ってたよなぁ〜…ガキの分際で、大人に向かって生徒が、教師にむかってよぉ‼︎」

 

渚の頭に足を乗せる。だが渚は冷静に相手の言わせたいことを理解し、謝罪の言葉を言う

 

「ガキのくせに、生徒のくせに、先生に生意気な口を叩いてしまい、すみませんでした。本当に…ごめんなさい」

 

その言葉を聞き、ニンマリと邪悪な笑みを見せる。

 

「…よーし、やっと本心を言ってくれたな。父ちゃんはうれしいぞ」

 

すると鷹岡は後ろに置いてあるケースを持ってくる

 

「褒美にいい事を教えてやろう。あのウイルスで死んだ奴がどうなるかスモッグの奴に画像を見せてもらったんだが笑えるぜ、全身デキモノだらけ。顔面がブドウみたいに腫れ上がってな」

 

(……まさか⁉︎)

 

「見たいだろ渚君?」

 

その、まさかだった。ケースを放り投げ、気付いた烏間の静止しも無視し躊躇なくスイッチを押した

 

瞬間、ケースは中に入って治療薬ごと爆発しケースと薬品と瓶のガラスが飛び散る

 

「なんて事を…」

 

絶望している皆の顔が心底愉快に感じたのか、盛大に鷹岡は楽しそうにゲラゲラと大爆笑する

 

「そう‼︎その顔が見たかったんだ‼︎夏休みの観察日記にしたらどうだ?お友達の顔面がブドウみたいに化けてく様をよ。はははははは‼︎」

 

その言葉がトリガーだったのか。渚の手がナイフに伸びる。鷹岡もそれに気付く

 

「殺…してやる…よくも、皆を」

 

「そう、その意気‼︎殺しに来なさい渚くん‼︎」

 

渚の殺意が形となって見えるかのようだった

 

「寺坂、渚の頭を」

 

冷やすぞと言い切る前にすでに寺坂は行動した自分の持っていたスタンガンを投げた

 

「チョーシこいてんじゃねーぞ渚ァ‼︎テメー薬が爆破された時よ、俺を哀れむような目で見ただろ!いっちょ前に他人の気遣いしてんじゃねーぞモヤシ野郎‼︎ウィルスなんざ寝てりゃ余裕で治せんだよ」

 

そこで皆理解した寺坂もウィルスに感染していると。だが寺坂は言いたいことを言う。

 

「そんなクズでも息の根止めりゃ殺人罪だ。テメーはキレるに任せて100億のチャンス手放すのか?」

 

「渚。今のおまえはさっきの仮面女と戦った俺に近い。殺意に呑まれるなそいつの命に価値は1つもない。言ったよな?おまえは暗殺者だ冷静になれ。殺すべき対象を選べないのは暗殺者じゃない。殺せんせーが俺に言ったろ?全部ぶち壊したいのか?」

 

「2人の言う通りです。逆上しても不利になるだけ。それに彼には治療薬に関する知識など無い。下にいた毒使いの男に聞きましょう。こんな男は気絶程度で充分です」

 

その言葉が不満なのか鷹岡は水を差すなという

 

「無視しろ渚。おまえは何処に居たい?俺たちと居たいならそのスタンガンで倒せ。全部捨てるのは簡単だが、捨てた物を拾うのはむずかいそのナイフは人を殺す物だがどう使いたい?おまえの心はどうしたいって言ってるんだ?」

 

すると寺坂がどさりと倒れた

 

「限界だろ休んでろ寺坂」

 

「るせーあとひと言ありんだよ俺も……やれ渚。死なねぇ範囲でぶっ殺せ」

 

「………渚、どんな力も使いよう、心意気次第だ。俺たちがいる。おまえの心にいる。だから、迷うな」

 

渚は黙り、上着を脱いでスタンガンを拾うだが

 

「お〜お〜かっこいいねぇ」

 

そのスタンガンを腰にしまいナイフを構えた

 




ちなみに
仮面女はビッチ先生と違い色仕掛けはある程度できるレベルですが機械関係は凄まじくその腕でビッチ先生の潜入から脱出まで手伝ったので当時あまり感情にのせてませんがビッチ先生はメチャクチャ感謝してます


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意味の時間

鷹岡戦決着
そしてようやく彼女の名前が出せます



先程とは違い、明確な殺意は消えていたが渚はナイフを持ち、寺坂のスタンガンは腰にしまっている

 

「……」

 

殺せんせーもさすがに心配なのかこの状況に何も言えていない。

 

「安心したぜ。ナイフを使う気満々でいてくれてよ。スタンガンはお友達に義理立てして拾ってやったということか」

 

ポケットをゴソゴソと探り鷹岡は3つの液体入りの小瓶を出した

 

「こいつは予備の薬だ。渚クンが本気で殺しに来なかったり下の奴等が俺の邪魔をしようものならこいつも破壊する。作るのに1ヶ月はかかるそうだ人数分はないが、最後の希望だぜ?」

 

何人か助けに向かおうとしていたが薬を盾に抑制されてしまう。

 

(渚の暗殺技術と才能は平和な日本人が持っているとは思えないものだ。だが暗殺者は戦闘が本職じゃない。そうなる前に致命的な一撃を与える職業。故に、戦闘になれば不利になる)

 

渚は静かに忍び寄るような足取りで鷹岡に向かおうとするが渾身の蹴りが腹部に命中しゲホゲホと咳をだす。暗殺の基本は奇襲戦法だそして同じ奇襲は2度は通じない。

 

「おら、どうした?俺を、殺すんじゃなかったのか?」

 

腐りきっているが鷹岡は精鋭軍人。以前は傲り故に敗北したが今回は最初から戦闘モードでかかっている。戦闘経験も技術もない、体格差は圧倒的。勝てる可能性など0だ

 

烏間先生‼︎もう撃って下さい‼︎渚が死んじゃうよ‼︎

 

殺せんせーから鷹岡に聞こえないように危なくなったら撃つように指示をされていた烏間は茅野の言う通り、ナイフをとりだした鷹岡を見て限界だと判断し、銃を構えた。たしかに、このまま戦闘を続けていたら(・・・・・・・・・)確実に渚は殺される

 

「…もう少しまってくれ烏間先生」

 

「風見の、言う通りだ…手出し、すんな」

 

根性で完全に倒れる事なく見ていた寺坂は雄二に賛同した。カルマの方は限界なのか参戦する気でいる。

 

「………あいつの目が死んでない。むしろ、高揚してるように見える」

 

それは、小学生が理科の実験を楽しむかのような

 

「ご明察だ。…カルマはサボりが多くて、風見は別訓練に忙しくて知らねぇだろうが、まだ隠し玉を持ってるよーだぜ」

 

渚の顔は笑っていたそれは以前鷹岡を倒した時と同じ柔らかな笑み。その笑みのまま、すたすたと歩く以前と同じに見えるが

 

「どこか、違う?」

 

それは、ロヴロから教わった技術。通称【必殺技】

 

もう一度言うがこのまま戦闘を続けていては渚は勝てない。ならば戦闘から暗殺に戻す必要がある。だが相手が手練れの軍人ならそうはいかない。ましてここには身を隠す遮蔽物もない。

 

「くっそ、ガキィ〜」

 

この時の鷹岡はあの時のトラウマが脳によぎる。今なら大丈夫と思っていても、相手が殺しに来ていると判断しており、緊張とあの時感じた恐怖が頭の中でうずまき、鼓動が速くなる。

 

なお、【必殺技】というが暗殺者なら必ず殺すのは当たり前だ。この技はその状況に持っていくための技…否、その段階にする為の1つの行為にすぎない

 

(大丈夫だ、もうあの時のようなヘマはしないナイフを動かす前に捻り潰してやる)

 

近づいてくる渚の全ての動きを観察する。が、近づいて来れば来るほど、殺傷能力のあるナイフに意識がいく。そのナイフを渚は…捨てた。まるで、机に置き捨てるように。

 

(ナイフ、ナイフを使う前に、ナイフ…ない、捨てた、なんで)

 

捨てられた直後もまだナイフに意識がいっている。そして空いた手と手を眼前に素早く持っていき

 

パンッ

 

渚ができる最高速度、最高音で手を叩く。それは相撲でいう【猫だまし】他の者から聞いていればただの少し音が大きめな音。だが極度の緊張状態の鷹岡にしてみればそれはスタングレネード等しい。突然の常識外の行動も相まって一瞬意識がふっ飛ぶ。何がおこったのかもわからない。当然その隙を見逃す暗殺者などいない。落としたナイフを拾うヒマなどない。なら、もう1つの武器をつかう腰にしまった本命の武器、スタンガンを流れるように抜き、視界に入るまえに脇にあて、電流を流した

 

「ぎっ⁉︎」

 

どうしてこうなったかなど、わからないだろうそれくらいに一瞬の出来事だった。

 

「すげぇ…」

 

だれがこぼしたかわからないその言葉は全員の総意見だろう

 

「渚、動けないだろうがとどめを刺せ」

 

「おう、首あたりに最大にな。それで気絶する」

 

 

(殺意を、教わった。抱いちゃいけない種類の殺意があるって事、その殺意から引き戻してくれる友達の大事さも)

 

渚はけして鷹岡を許したわけではない。今も怒ってはいる

 

(殴られる痛みを、実践の恐怖を、この人から沢山の事を教わった)

 

だが、鷹岡は短い間だが彼の、彼らの先生であり、結果的に教わった事は多い。反面教師というやつだ

 

(ひどい事をした人だけど…)

 

それとは別に授業への感謝はちゃんと言うべきだと。そして感謝を伝えるならそういう顔(・・・・・)にするべきと判断した

 

その時、鷹岡は理解した。自分の恐怖のトラウマの象徴である、あの顔(・・・)になる

 

(やめろ……)

 

抵抗する力全身痺れてできない。もっとも今できても首にスタンガンがあっては間に合わない

 

(その顔(・・・)で終わらせるのだけはやめてくれ)

 

その顔に、その表情は、普通なら恐怖の象徴でない。だが、一度その恐怖を植え付けられた鷹岡には

 

(もう一生、その顔”(・・・)が悪夢の中から離れなくなる)

 

渚の笑顔は悪魔の笑みに見えていた

 

元凶撃破

 

 

最大出力のスタンガンを受けて泡を吹いて倒れた鷹岡が動かないのを理解するとすぐに落とした梯子を回収して渚をヘリポートからおろし鷹岡は拘束した。しかし以前問題はある。

 

「薬はたったの3本か」

 

「どうしよう、全然足りない」

 

薬がなければ治すことはできない。かと言って助ける人を選択するなどという非道な行為もできない

 

「今はここを出よう。あの毒使いなら治療薬の製法もわかるだろうし、ウィルスの効果を一時的でも弱める方法もわかるかもしれない。烏間先生、頼む」

 

「………どういうことだ」

 

「?どうした」

 

「ヘリを呼ぼうとしているんだが、繋がらない」

 

「「「「「⁉︎」」」」」

 

また異常事態がおきた。ヘリを使えないならまた来た道を戻ることになるが疲労した皆で見つからずに出るのは不可能に近い

 

「とにかく、今はここで待機。おれは毒使いをここに連れてくる」

 

「フン、テメー等に薬なんぞ必要ねぇ」

 

「ついでに、ヘリを呼ぶ必要もないですよ」

 

冷静に対処しようとする烏間の言葉を遮り、声をかけてきた人物の方へ向くとここに来るまでに倒した暗殺者が勢揃いしていた。

 

「ガキ共、このまま生きて帰れるとでも思ったかい?」

 

(なぜ、声をかけてきた?)

 

ここまで来るとこいつらは暗殺する気があるのかと雄二は思った。相当なダメージはあるがそれでもここまで動ける手練れなら尚更だった

 

「お前達の雇い主は既に倒した。戦う理由はもう無い筈だ。俺は充分に回復したし、生徒達も充分に強い。これ以上、互いに被害が出ることはやめにしないか?」 

「ん、いーよ」

 

「あきらめ悪ィな‼︎こっちも薬がなくてムカついて……え?」

 

すぐには理解出来なかったあまりに呆気ない即回答だったからだ。

 

「ボスの敵討ちは俺等の契約にゃ含まれてねぇ。それに今言ったろガキ。そもそもおまえ等に薬なんぞ必要ねーって」

 

「………まさか、鷹岡の言ってた毒じゃないのか?」

 

「その通り。流石に冷静ね」

 

「おまえ等に盛ったのはこれ食中毒菌を改良したものだ。あと3時間くらいは猛威を振るうが、その後急速に活性を失って無毒になる。ちなみにボスが使えと指示したのはこっちだ。これ使えばマジでヤバかっただろうな。まぁ、こんな毒でも命の危機を感じるには充分だったろ?」

 

「ずっと、疑問だった。おまえ達は全員本気で殺しに来てなかった。例外はそこの銃使いだがあれは自身の命の危機のための自衛っていうなら納得できる」

 

そのおかげで暗殺ではなく戦闘で突破できた。もし最初から暗殺なら一方的にやられていたなどすぐに想像がつく。

 

「使う直前にこの4人で話し合ったぬ。ボスの設定した交渉期限は1時間。だったら、わざわざ殺すウィルスじゃなくとも取引は出来ると」

 

「状況に応じ、多種多様に柔軟に作戦を変えるのは暗殺者の基本。覚えておきなさい」

 

「いや、嬢ちゃんのワガママも原因だからな。来るのがわかってて俺等のカメラが細工されてても黙ってたせいでこっちは迷惑なんだけどよ」

 

「その分の治療費も報酬に出してますよ。最初の契約書にも書いてありましたよ」

 

「あの、そういえばなんで風見に固執してたんですか?それに、鷹岡の命令にも逆らってるし」

 

岡野の疑問に女は答える

 

「最初の質問には答えられないわ。まぁ、私の性格の問題と言っておくけど。……もうひとつの方だけど、プロが金でなんでもすると思ってるなら大きな間違いよ。むしろプロだからこそ殺しには意味を持たせなきゃいけないの」

 

「まぁ、依頼人の意にはなるべく沿うように最善は尽くす。だがボスは最初から薬を渡すつもりは無いようだった」

 

「聞いた時はビックリしましたよ。私、契約書を必ず書かせるんですけど、そこには超生物以外は殺すターゲットに入ってなかったんですから。こちらの3人と依頼人と一時的でもチームを組んでいるならそれは私が殺したのと同じになるんだもの」

 

「それ言うならあの坊主もターゲットじゃねーだろ。まぁ、そんなこんなでカタギの中学生を大量に殺した実行犯となるか、命令違反がバレる事でプロの評価を落とすか」

 

どちらが今後彼らのリスクになるか冷静に秤にかけたうえの行動だったのだ。

 

「命は1つ。奪うのは意味がある時。覚えておきなさい」

 

女がそういうとヘリの音が聞こえてくる

 

「ヘリを呼ぶ必要ないって言ったでしょ?先に呼んでおいたの混乱したらいけないから、ちょっとジャマーをかけたの」

 

「……どうやって軍の暗号通信を」

 

「どっちかっていうと私は軍人に近い暗殺者なの。そういう技術を昔習ってロヴロ師匠(センセイ)の元で更に鍛えたから」

 

恐ろしい奴だなと烏間は思っていた。今度は毒使いが錠剤の入ったビンを渡してきた

 

「その栄養剤を患者に飲ませて寝かしてやんな『倒れる前より元気なったからまた殺しに来て下さい』って手紙がくるほどだ」

 

「「「「どんなターゲットだよ」」」」

 

「……信用するかは生徒達が回復したのを見てからだ。事情も聞くし、暫く拘束させてもらうぞ」

 

「来週には次の仕事が入ってるからそれ以内にな」

 

降りてきたヘリから自衛隊員が出てきて鷹岡やその部下を拘束しヘリに乗せる。それを見ながら雄二は女の側に行き小声で話す

 

「…俺に、殺されたかったのか?」

 

「………それが、私の贖罪だから」

 

「ざけんな。殺しには意味を必要にするんだろ?俺には何の意味もないんだよ」

 

「………」

 

沈黙してお互い顔も見ない。仮面は取れているのだから目と目を見た話せるのにだ

 

「あれは、どっちのせいでもない。俺もいろんな意味で未熟で、おまえも本心じゃなかった。だから…そうだな」

 

ぎこちなく雄二はいう

 

「生きていてくれて、少し嬉しい」

 

「こんな世界に生きるからいつかは死ぬかもしれないけどね………私もあえて嬉しかった」

 

そこからもう少しだけ話し、彼女と3人の暗殺者がヘリに乗ることになる

 

さよならユージ

 

またなマーリン

 

それぞれ違う別れの挨拶をした後、彼女、マーリンはヘリに乗った

 

 

 

「いいのかよ?」

 

ヘリの中でガストロがマーリンに話しかけていた

 

「なにがですか?」

 

「あのまま、あそこにいく道があっただろ?」

 

実際、マーリンは交渉してE組にいくこともほんの少し考えた。だが

 

「もう、彼の場所には私は必要ない。何より、彼が殺してくれないなら、この道を進むしかないですから」

 

「「「………」」」

 

3人の暗殺者は全員面倒だと思った

 

(((じゃあ、泣いてんじゃねーよ[ぬ])))

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

「ところで、あのぬーぬー野郎なんだが」

 

「グリップさんがどうしたの?」

 

「あれ、教えなくていいのか?」

 

目を向けるとグリップの背には【私はバカです】と書かれているシールが貼られている。何人かの自衛隊員がツッコもうかと思いつつも仕事を優先しているので言わない

 

「貼り付けたのあなたでしょ?見てたから知ってる」

 

「いや、そうなんだがな」

 

この後服を脱いだ時に気づいたグリップがキレてきたのは、いうまでもない

 




実際マーリンをE組に入れようと思いましたが彼女の心境になると無理かもと思いやめました

でもまだ名残り惜しい感じもしてたりする

感想、意見、あればお願いします

頑張って今月もう1話出す……できるかなOTL


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正体の時間

出せた、短いけど出せた‼︎ちょっと嬉しい


3年E組の大規模潜入ミッションはホテル側の人間誰1人気づかれることなく完了した。もう1機のヘリに乗ってホテルに戻る。疲れと安堵の両方が今になってどっと肩にのしかかり皆なにも話しをしない。ちなみにビッチ先生は烏間からの合図で既にホテルから脱出した

 

「ありがとう、雄二、寺坂くん」

 

「どうした、急に」

 

不意に渚が2人に感謝をした

 

「あの時、声をかけてくれて、それで冷静になれた間違えずにすんだから」

 

「ケ、テメーのために言ったんじゃねぇ。1人欠けたらタコ殺す難易度上がんだろーが」

 

「うん…ごめん」

 

「あやまるな渚。ごめんなさいって言葉は言うほど言葉の価値を下げる。それに寺坂のそれはただのツンデレだ気にすんな」

 

「テメェ…あとでおぼえてろ」

 

その光景にくすりと笑みがこぼれていた。

 

ホテルに戻って皆に全て終わり、もう大丈夫である事を伝えもらった錠剤であっという間に回復した。だが潜入組はミッションの疲れでウィルスも偽物とはいえ相当苦しんだのは変わりなく、竹林と奥田も看病を必死で行いそれぞれクタクタになり、その日は泥のように眠りについた。

 

 

 

「以上が今回の事の顛末だ」

 

【了解したわ。お疲れ様…面倒事になってしまったわね】

 

「まったくだ。今回の件、まさかと思うが報告書を出さないといけないのか?」

 

【残念ながらね】

 

雄二がめんどくせぇと思うがJBもそうだ雄二の報告書を取りまとめ、添削をしなくてはいけない。余計な仕事が増えて嬉しい人などいない。

 

【いちおう聞いておくけど、これ、他の人…特に怪物には聞こえてないでしょうね?】

 

「…それなら大丈夫だ。他の皆は疲れでグッタリしててまだ寝ている。これなら昼過ぎでも起きないだろ。殺せんせーの方は烏間が寝ずに指揮をとって閉じ込めてるからな」

 

朝日が登る海岸…今は軍の特権によってプライベートビーチになったそこには殺せんせーが元の姿になった時に殺せるように、対先生弾で殺せんせーを囲み分厚い鉄板で囲みそれを更にコンクリートで囲み、最後に海の中。すなわち水で囲んだ。だがここまでしても

 

「多分無理だろうがな……あの時、完全防御形態になってなきゃ、仕留めてたんだがな」

 

【そんな切り札持ってるなんて情報はなかったんだから、どうしようもないわ。むしろそこまで追いつめたのはまず間違いなくあなた達だけよ】

 

「それでも、上は納得しないだろ」

 

【そうね】

 

上が欲しいのは結果だけなのはわかりきっている。今回の件で評価上がらない。むしろ下がった可能性すらある。

 

【とはいえ、このままあなたがそこにいる事はできるわ。怪物殺しの手伝いはあなたの任務のついで(・・・)…ここだけの話だけど、奴を殺す算段ができてきている。それも確実にね………覚悟は、決めておきなさい】

 

そうして電話はきれた。

 

「………もうできてるよ」

 

ふぅ、と息をつく

 

「で、ビッチ先生聞いてんだろ?」

 

がさりと音がして見るとビッチ先生が腕を組んで睨んでいた

 

「………会話の内容はわからないけど、マーリンから聞いた事と今のであなたの事はなんとなくわかるわ」

 

「マーリンに会いに行ってたの…」

 

その先を言わせる事なく近付いてきたビッチ先生は思い切りビンタをしてきた。雄二は、防がなかった

 

「なんで、防がないの?」

 

「理由はなんとなくわかる。その権利がある」

 

「バカ言ってんじゃないわよ。本当ならこれは私じゃなくてマーリンの権利よ」

 

「随分と大切にしてんだな、マーリンのこと」

 

その言葉が気に食わないのか反対の手で再びビンタをした

 

「あの子と、あんたが生きてきた場所の事も聞いた。だから仕方ないのはわかる…けど、あの子を泣かせたことは許さない」

 

背を向け、ビッチ先生は去る。ポイっと傷薬を投げて

 

「あの毒使いの作ったものよ腫れないように塗っときなさい。あと、あの子達まで泣かせたら………今度は殺す。覚えておきなさい」

 

殺意のこもった目で睨んだあと去っていくビッチ先生が見えなくなるまで雄二は見ていた。

 

「肝に免じるよ」

 

泣かせないようにする為にもこのまま彼らと問題なく過ごせるよう努力する事を誓う雄二。

 

 

 

余談だが、ビッチ先生の言うあの子達とは雄二を好きな女子の事なのだがそれには雄二は気付いていない

 

 

 

雄二の考えた通り、他の皆は昼過ぎでも起きず、夕刻になってようやく起き出した

 

「おはよう雄二くん。いつから起きてたの?」

 

「朝の7時くらいだ。いつもより遅く起きたから日課のランニングは遅くなってしまった」

 

「そんな早くに起きれるんだ」

 

あれだけの事があったのにと驚いていた。

 

「俺はまだまだだ。烏間先生は不眠不休だそうだ」

 

「ほんと、疲れも見せずすごい人だよねー」

 

「何言ってんだ。ちょっと前までただの中学生だったおまえ達も充分すごい」

 

雄二に言われて嬉しいのか皆照れる

 

「けどさ、後10年で烏間先生と同じ歳くらいになるけどあんな超人になれんのかな?」

 

「……さーな」

 

本当に不眠不休かと思うほどテキパキとした動きと指示を出す烏間を見てそんな感想がでる。

 

「ビッチ先生もああ見えてすごい人だし、ホテルで会った殺し屋達もそうだったけど長年の経験でスゲー技術身に付けてたり、仕事に対してしっかり考えがあったり」

 

「だが鷹岡のような存在もいる。反面教師としてある意味理想の姿だ」

 

「たしかに“ああはなりたくない”っていう大人だった」

 

「いいなと思った人は追いかけて、ダメだと思った奴は追い越して…………多分、それの繰り返しなんだろーな、大人になってくって」

 

この数日で様々な特殊な大人を見た彼らは大人になるという事に考えを巡らせていた。

 

「その時はいつか来る。なら、胸を張れるように、せめて自分の知ってる大切な誰かに誇れる大人になる…そのくらい、簡単な事でいいんじゃないか」

 

「簡単だけど、むずかいね」

 

そうして会話が止まり3秒ほど経った瞬間、海の方からドドーンと爆音が起きる

 

「爆発したぞ‼︎」

 

「殺れたか?」

 

と言うものの結果は皆うすうすわかっていた。

 

「先生のふがいなさから苦労させてしまいました。ですが皆さん、敵と戦い、ウィルスと戦い本当によく頑張りました!」

 

いつのまにか後ろに回り込み、この島に来た時のアロハシャツと帽子を着て生徒の頭を撫でる殺せんせーがそこにいた。雄二はチラリと烏間の方を見るとわかってはいたがやはり残念そうな顔をしているのを見て少し同情した。

 

「皆さん、おはようございます。では旅行の続きを楽しみましょうか」

 

元に戻った触手で全員の頭をなでてそう言う殺せんせーを見てようやくE組がいつもの雰囲気に戻った事を感じていた。

 

「おはようって言っても、もう夜だけどな。それにそれに明日は帰るだけだから今から旅行の続きって言われてもな」

 

「ね、1日損した気分だよね〜」

 

三村と莉桜が言うが殺せんせーは心配ご無用と言いアロハシャツと帽子を脱ぎ一瞬で着替える。その姿は白装束と三角頭巾…いわゆる幽霊の格好だ。

 

「昨日の暗殺のお返しに…ちゃんとスペシャルなイベントを用意してます。真夏の夜にやる事はひとつですねぇ」

 

殺せんせーの見せてきたプラカードには『夏休み旅行特別企画・納涼‼︎ヌルヌル暗殺肝だめし』と最近の視聴率低そうな無駄にタイトルの長い番組名のようなタイトルが書かれていた。

 

「先生がお化け役を務めます。久々にたっぷり分身して動きますよぉ。勿論、お化け役の先生は殺してもOK‼︎暗殺旅行の締めくくりにはピッタリでしょう?」

 

「なるほど、いい考えだ。だが殺せんせーちょっといいか?」

 

「はい?なんでしょうか風見くん?」

 

平常心を装っているが実際はこの肝試しの本当の目的、カップル成立させそれをネタにひやかしたり実録小説を書くのが目的がバレたのかと思う。しかしそんな事ではなく

 

「幽霊になるなら衿元は逆にしとけよ」

 

「まだ死んでないからいいんです⁉︎」

 

衣装のダメ出しだった。

 

「おほん。では、気を取り直してペアをきめましょう」

 

(((雄二くんとペアに)))

 

殺せんせーの企み通り女子3人は我こそがと思っている。本来ならこのまま結果を待ちたいが彼女達も予想だにしない事態が起こった

 

「あぁ、そうそう、風見くん君は参加せずに先生の手伝いをお願いします」

 

(((ガーン⁉︎)))

 

「……わかった」

 

「では、準備が出来たら律さんから皆さんに連絡しますので…いきましょうか風見くん」

 

 

 

「で、なんで俺をここに連れてきたんだ先生?」

 

殺せんせーの指示を聞いて飾りや物を置いて準備を手伝う雄二は聞く。正直こんな作業は殺せんせー1人で充分なのはわかる。理由があってここにつれてきたのだ。他の生徒に聞かれないように

 

「風見くん」

 

黙っていた殺せんせーは顔は見せず話しだす

 

「今回の件と鷹岡先生やあの仮面暗殺者の言葉、今までの君の言動踏まえて、なんとなく君の正体に感づく人もいるでしょう」

 

ピタリと作業の手が止まる。平常心を保てと心が命令を出す

 

「先生は、どうなんだ?俺のこと、知ってんのか?」

 

「君の経歴を調べようと思えば正直に言えば調べられますが調べていません。…が、それでも私もなんとなくあなたが何者なのかは初めて教室に来た時から気付いてました。…別の意味で違和感がありましたけど」

 

「違和感?」

 

「以前言いましたが君が殺意そのものを殺していることもですが仮に先生を殺しに来たのならもっと効率の良い方法があるけど君はただこの時を楽しもうと努力しようとしている(・・・・・・・・・・)。まぁ、それにも違和感ありますが」

 

バレている可能性はあったが全て見透かされいたことに流石に雄二は驚いた

 

「で、先生はどうすんだ?俺に、なにをしてほしいんだ?」

 

「なにも」

 

思わず「は?」と言葉が出ていた

 

「君の過去も、君の正体も、君が話したくないから話さないのでしょう?それを無理矢理だしてもどうしようもありません。ただ、プールの時と同じだと私は思いますがねぇ」

 

気にし過ぎそう言っていた事を思い出していた。

 

「……ごめん、先生」

 

「かまいません。しかし、いずれどんな形であれわかる時が来ると私はおもってますよ。きっと皆さんもね」

 

それはその時まで聞かないと言われたようなものだ

 

「……ありがとう」

 

「にゅふふ。どういたしまして」

 

そうしてまた手を動かす

 

「……ところで、殺せんせー」

 

「なんでしょうか」

 

「ベタすぎないか脅かすためにコンニャクって」

 

「ベタだからこそくっつき……もとい、良いんです」

 

「それにこのツイスターゲームはアメリカ発祥だ。琉球にはないと思うんだが…」

 

「…琉球王国には古い遊びがありそのひとつに似たのがあるんですよぉ」

 

「なん、だと⁉︎」

 

ここにクラスの皆がいたら「あるかんなもん⁉︎」とツッコミが入っているだろうがそんな人はいないので

 

「なら、このやたらピンクでハートの多い椅子も…」

 

「…琉球王国の隠された伝統です」

 

「マジか。琉球すごいな」

 

先生のデタラメにも驚き感心する雄二であった。

 




このまま肝試しからビッチ先生のくだりまで行こうとしましやが長くなるのでキリのいいとこにしました。
けど短い…文才ねぇなと思う今日この頃

そしてなかなか南の島編おわらねぇ

感想、意見があればお願いします


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殺しの時間

南の島編終了ですー

そしてちゃんと休める日が多くなったプラス今回なんか凄い勢いでかけたので2話投稿します




肝試しがどうなったかという質問がくるなら、まぁ予想通りというところだろう

 

「シクシク」

 

肝試しを装い、怖がらせてその吊り橋効果でカップルを作ろうとしたらしい。だが、問題があった。ありすぎるくらいにあった

 

まず殺せんせー自身がめちゃくちゃ怖がりという事。怖がらせようと躍起になるも狭間が逆に怖がらせてからはビビりまくってそこからなんでも怖いものに連想をつけてしまい。生徒よりもキャーキャー叫んで肝試しにならない

 

第2にこれが1番と言っていいが脅かすよりくっつける方に意識が入っていてピンクとハートの椅子に座らせるポッキーゲームをやらせるなどやり方も古いプラス見え見えすぎてお話しにならず肝試しにならない

 

「時代の変化は残酷だな。伝統というものは過ぎ去り、忘れられる。この椅子もそうなんだな」

 

「いや違うから⁉︎絶対に違うから‼︎」

 

ようやくツッコミが入ってデマカセに気付く雄二にやれやれと思うもやはり殺せんせーへの呆れのほうがでかい

 

「先生さー結果を急ぎすぎなんだよ。怖がらせるよりくっつける方に意識が集中してんのが丸わかりだし」

 

「おまけにやり口が古すぎ」

 

責めだすとシクシク泣きながら「だって、だって」と子供のように泣きじゃくる

 

「イチャイチャしてるとこ見たかったんだもん‼︎手をつないでニヤニヤしたいじゃないですか‼︎」

 

「あ、開き直った」

 

「しかも泣き逆ギレ…なんてゲスい」

 

「と言うか、それなら雄二くんとペア組まさせてよー」

 

「いえ、彼は3人に好意を持たれているのでバランスを保つ為に………言ってたらなんか腹が立ってきました‼︎」

 

「うわー嫉妬だ。醜い嫉妬だ」

 

で、当本人はというとせっせと片付けをしていた

 

「先生ーこの椅子処分していいかー?島の景観とも合わないし」

 

「にゅあ⁉︎やめてください‼︎折角作ったんです‼︎この後ネットオークションに出すんですから‼︎」

 

「「「「誰も買わねーよこんなもん」」」」

 

そんな感じで先生を責めているち後方から女性の大きな声が聞こえてきた。

 

「何よ結局誰もいないじゃない‼︎怖がって歩いて損したわ‼︎」

 

「だからくっつくだけ無駄だと言ったろ。徹夜明けにはいいお荷物だ」

 

「うるさいわね、男でしょ‼︎美女がいたら優しくエスコートしなさいよ‼︎」

 

女性の声の主はビッチ先生。もう1人男の声がしそれは烏間だ。どうやら2人も肝試しをしていたようだ。もっとも烏間の方はしかたなくと言ったところだろう。とても鬱陶しそうである。

 

と不意に生徒達とビッチ先生の目が合う。いままで烏間の腕を組んでいたのによそよそしく離れる。

 

「……なぁ、うすうす思ってたけどビッチ先生って」

 

「……うん。どうする?」

 

「明日の朝、帰るまで時間はあるし……」

 

結論

 

(((((くっつけちゃいますか⁉︎))))))

 

結局皆ゲスかった。ビッチ先生をゲスい目温かい目で向かい入れて作戦会議の為ホテルのロビーに集まる。

 

「にしても意外だよなぁ〜。あんだけ男を自由自在に操れんのに」

 

「自分の恋愛にはてんで奥手なのね」

 

木村と茅野がビッチ先生の恋愛の下手さに少し驚きながらいうとそれが気に障ったのかキレだす

 

「仕方ないじゃないのよ‼︎あいつの堅物ぶりったら世界(ワールド)クラスよ‼︎…私にだってプライドあるわ。男をオトす技術だって千を越える。そ、それで、ムキになって本気にさせようとしてる間に…そのうち、こっちが」

 

見せた事のない表情で赤くなるビッチ先生に数人の男子は

 

「不覚にもかわいいと思っちまった」

 

「なんか屈辱」

 

「なんでよ‼︎」

 

不器用な人だなというのが皆の感想だ。というわけで本格的な会議に入った。どこから持ってきたのかホワイトボードを用意し準備万端である。

 

「とりあえず、まずは服装だろう。烏間先生だぞ?以前言ったがあの堅物に色仕掛けは効かない」

 

「うん。雄二くんがそれを言うのは間違ってる気がするけどその通りだと思う」

 

「露出しとけばいーやてきな?烏間先生みたいなお堅い日本人の好みじゃないよ」

 

「そうそう。もっと清楚な感じで攻めないと」

 

「む、むぅ。なるほど、清楚か」

 

いつもビッチ先生に交渉術、接待術を教わっている3人から逆に教わるという奇妙な光景ができていた

 

「清楚つったら、やっぱり神崎ちゃんか。昨日着てたの乾いてたら貸してくんない?」

 

言われて神崎はその服を取りにいき、それにさっそくビッチ先生は着替えてきた。その服は確かに神崎が身につけていれば清楚だろう肩を少しだけ見せてニーソックスをつければいやらしさを感じない。

 

「ほーら。服ひとつで清楚に……」

 

そう、神崎が着れば。ビッチ先生とは胸部の大きさも違う為ボタンは閉まりきらず胸は見せつけるように下半身は見えそうなラインとソックスもはいてないからスラリとした足が視線を誘導させ、上に焦点がいきまた隠せてない胸にいき清楚とは無縁むしろ逆にエロさが際立つ。

 

「…………まぁ、そういうモデルショーにでればいけるな。あと、恥ずかしがるな神崎。あれはビッチが身につけたからああなるんだおまえが着れば清楚な美人だ」

 

「あぁ⁉︎なんじゃその言い方⁉︎」

 

というわけでもうビッチ先生がエロいのは仕方ないとして、人間同士の相性の方に意見を変える。

 

「けど、烏間先生に好みの女性とかあるのか?」

 

「ふむ確かに。誰か烏間先生の女性の好みを知っている人はいますか?」

 

うーん皆考えていると桃花が「あ!」と声を出す

 

「そういえば、TVのCMであの女性のことベタ褒めしてた‼︎“俺の理想のタイプだ”って‼︎」

 

そのCMの女性とは

 

 

 

「彼女は…いいぞ。顔つきも体つきも理想的だ」

 

素晴らしいという言葉が表情になってその女性を評価している

 

「おまけに3人もいる」

 

有名なセキュリティ会社のCMでセキュリティという事で強い人が出ていた。その女性は霊長類最強と言われる金メダル女性だった

 

 

「「「「って、理想の女性じゃなくて、理想の戦力じゃねーか‼︎」」」」

 

「まぁ、単純に強い女性が好みかもしれないが…」

 

「なおさらビッチ先生の筋肉じゃ絶望的だね」

 

うぬぅと悔しがるビッチ先生と生徒たち。ならば手料理でいこうと奥田が発案する

 

「ホテルのディナーも豪華だけどそこをあえて2人だけは烏間先生の好物で」

 

「いやダメだろそれは」

 

雄二のツッコミにすぐクラスは気づいた

 

「軍人は効率第一だからな。仕事がすぐできるもしくは食いながら仕事ができるようにカップ麺かハンバーガーしか食ってるところしか見てないぞ俺は」

 

「「「「確かに」」」」

 

高級感あるレストランで2人だけカップ麺とハンバーガーなど雰囲気もクソもないというより、こんな高級感あるレストランでは出さないから外に追い出されてシートに座って食べさせられる可能性すらある。余計に不憫だ

 

「つけ入るスキが無さすぎる‼︎」

 

「なんか烏間先生の方に原因があるように思えて来たぞ」

 

「でしょでしょ?」

 

「先生のおふざけも何度無情に流された事か」

 

とうとう打つ手が無くなり烏間先生がディスられ始めた

 

「ならせめて、ムードだけでも作るべきだな」

 

「そうですね。女子は堅物の日本人が好むようにスタイリングの手伝い。男子は2人の席をムード良くセッティングしましょう」

 

おおぉーと気合いを入れる。

 

 

 

そうしてディナー開始の時間になり烏間がレストランに来たが

 

「な、なんだこれは」

 

烏間を座らせない為クラス全員で椅子を占拠した必要以上に使い寝転がったりしている。

 

「烏間先生の席はありませーん」

 

「E組名物先生いびりでーす。先生方は邪魔なんで、外の席でどうぞ勝手に食べて下さーい」

 

岡野が指さす場所には特別にセッティングしたテーブルがあり、よくわからないなと思いつつそこへ行こうとすると扉の前に雄二がいる

 

「風見くん?」

 

「今回といつものお礼に、2人には特別な席を用意したそうだ。ありがたく受け取っておけよ」

 

と耳打ちでいうと納得したのか「わかった」と外へ出る。席着いたのを確認すると皆一斉に窓に寄り見守る。

 

「プライバシーゼロだな」

 

 

side:ビッチ先生

 

スミレの作ったショールは素人が作ったもの以上でそこいらの店には置ける。けど所詮はそこいらなのは変わらない。社交界じゃ使い物にならないし……テーブルセッティングも素人仕事。多分携帯で写真だけ調べたりホテルのやり方を見よう見真似ただけだ。カトラリーの知識くらいちゃんと調べなさいよ。おまけに……プライバシーもへったくれも無い野次馬ども。ワクワクという言葉が見えるわ

 

けど、……何よコレ楽しいじゃない!ちょっとだけ大好きよあんた達!ヤッてやろうじゃない!この堅物ここでオトす‼︎

 

「…色々あったな、この旅行は」

 

「えぇ。あんな事態になることも、こんなところで妹弟子(いもうと)に会うことになるとも思わなかったわ」

 

「だが、収穫もあった。怪物の新たな特殊能力もだが、基礎が生徒に身についているのが証明できた。…この調子で二学期中に必ず殺す。イリーナ、おまえの力も頼りにしているぞ」

 

殺す、殺す、………殺すか

 

「どうした?」

 

きた。

 

「……昔話をしてもいい?」

 

気づいたらオトすことも忘れて話していた

 

「私が初めて人を殺したときの話、12の時よ。私の国は民族扮装が激化しててね……ある日、私の家にも敵の民兵が略奪に来た。親は問答無用で殺されて……敵は私の隠れたドアを開けた。殺さなければ殺される。父親の拳銃を至近距離から迷わず撃ったわ」

 

今でも覚えているあの温度を、あの音を、あの声を

 

「敵の死体を地下の蔵に押し込んで…奴等が去るまで死体と一緒にスシ詰めになって難を逃れた。一晩かけてぬるくなってく死体の温もり、今もはっきり覚えてるわ」

 

カラスマはわかっているの?あの子達にさせるその行為を

 

「ねぇカラスマ、『殺す』ってどういう事か本当にわかってる?」

 

「………」

 

不覚考えないようにしてるのかしら。任務だものね。……それにしても

 

「湿っぽい話しちゃったわね。それとナプキン適当につけすぎよ」

 

ナプキンの端を持って自分の口を拭き、そのままカラスマの口を拭った。

 

「好きよカラスマ。…おやすみなさい」

 

side:フリー

 

(バカバカバカ死ね私〜‼︎告白のつもりが殺白してどーすんのよ‼︎)

 

自分のしでかした事に大いに反省して悶えながらクラスの皆の元へ戻ってきたビッチ先生に待っていたのは

 

「何だよ今の中途半端なキスは‼︎」

 

「いつもみたいにした入れろ舌‼︎」

 

生徒からの大ブーイングだった。

 

「あーもーやかましいわガキ共‼︎大人には大人の事情があんのよ‼︎」

 

「事情ってただの逃げじゃん‼︎」

 

「まーまーここから時間かけていやらしい展開にするんですよ」

 

「何言ってんだこのエロダコ‼︎」

 

「もっと情熱的にいけるでしょビッチ先生ならー」

 

「そうですよーこんな感じで」

 

と莉桜の言葉に先生が反応して1枚の写真を見せる。

 

「?んがぁ⁉︎」

 

そこには以前デートの終わりに唇にキスする雄二と莉桜が写っていた

 

「いやぁーよく撮れてますねぇー。風見くんが後ろ姿なのが残念ですが、それが逆にいい味をだしてますねぇ〜実にイイ‼︎」

 

「消せ消せ‼︎つかコロス‼︎消さなきゃコロス。消してもコロス‼︎」

 

「おぉ、大胆なことだねぇー中村さんもだけどそれ以上に雄二が」

 

「中村さんだからしばらく真っ赤になってたんだ」

 

「いや、そうじゃなくて、わたしからじゃなくて雄二くんから」

 

「中村さんからもしてますよぉーほっぺですけど」←写真を出す

 

「うっぎゃああああああ⁉︎」

 

そこから莉桜は顔を真っ赤にして対先生ナイフをぶん回しながら対先生弾を連射しだす

 

「何よディープじゃないならこのくらい普通でしょ」

 

「ビッチ先生…そういう問題?」

 

話題が他人なり落ち着きながら評価をするビッチ先生に冷静ながらもちょっと驚いた感じで渚はツッコミを入れる

 

「「………」」←妬みの視線女子×2

「「……ギギギ」」←特に強い妬みの視線男子×2

「………」←よくわからないが苛立ちのある視線女子

 

さまざまな嫉妬の視線をうけている発端の張本人は

 

「随分賑やかだな」

 

「で、当の本人は全然通常運転だし」

 

こうして南の島で暗殺旅行は終わり、2学期へと向かう

 

完全に余談だが、烏間はイリーナの行為は新しい技の練習と思い、間接キスと考えてない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8月30日午前11時前

 

「なぁJB、コレは何だ?」

 

「見ての通り仕事のファイルよ」

 

渡されたのは3つの資料の入った茶封筒。数は多くこれにもすでにふざけんなと言いたい雄二だが2つはいつもの『ゴミ掃除』…だが、3つ目は到底容認できない

 

「ふざけてんのか?」

 

「ふざけてこんなもの渡すと思う?むしろ他に回さなかった事を感謝してほしいんだけど」

 

「なおさらふざけんな…俺に、同級生を殺せってのか?」

 




次話は今日出します


追記
ミスがあったので直しました報告ありがとうです


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呪縛の時間

いつでもこうならいいんだけどなぁ
もっと早くかけるよう頑張りますモンハンしながら←おい


遠く方から音が聞こえる花火だろう。今日は夏祭りでさらに8月31日、夏休みの最終日、皆どこかで浮かれた気分にもなりたいだろう

 

「すげー疲れる」

 

【愚痴を言うだけの気力があるなら、もう1つ仕事でもする?】

 

「やめてくれ。ただでさえ嫌な仕事プラス疲れる仕事なんだ」

 

スコープ越しに対象をみる。2つの影がある一方だけなら余裕だがもう一方はそうはいかない。匂いは当然だが覚えられている気づかれないように特殊なスーツを着て、さらに独特な匂いを出す匂い袋を持って自身の匂いを消している

 

「こんな事しても意味ないと思うんだが」

 

【じゃあ、他の人に任せる?あなたにまわったのは幸運だと思いなさい。他の人物なら余裕で終わってるわ】

 

その人物が話している存在が驚いているのがわかる。いう事を言ってその人物は頭を下げて帰りはじめる。スコープを外し次の地点に向かう

 

「これ、いつまで続けるんだ?」

 

【あなたがすぐにでも殺せば、終わるわ】

 

「できない事言うんじゃねー…というか、これ以外に方法があるだろ?」

 

【言ったでしょ?烏間から当人の選択を尊重し、信頼して記憶消去は見送らせてたけど、実際はコレ。ようは上は信用してない】

 

合理的ではある。記憶消去をしても万が一がある。しないのなら尚のこと合理的だ殺せばあとは情報操作するだけだ

 

【万が一の時は覚悟をしておきなさい】

 

「あいつはそんなバカじゃないって俺が言っても無駄か……烏間は怒るだろうな」

 

【えぇ。しかもそれをあなたに任せているのだから】

 

明け方まで監視は続き、月も9月に変わった。

 

 

 

 

椚ヶ丘中学校2学期、始業式。皆が夏休みから心を切り替える為に必要な行為。E組にとっても大事な折り返しの時期。

 

そんな朝の始業式に出ている生徒の1人雄二は

 

「ど、どうしたの雄二⁉︎ひどい顔なんだけど⁉︎」

 

「別に、バイトと夜更かしでこうなった。しばらくコレが続きそうだ」

 

目の下にはパッと見でわかるほどのクマができていた。やつれた顔には疲れがたまっているのはよくわかる

 

「さっきの出五(出ばなから五英傑)もあれだけど、おまえのその顔も葬式の人みたいでちょっと縁起悪りーんだけど」

 

「………」

 

「反応がない…相当だなこりゃ」

 

つつがなく始業式は進む。運動系の部活が都大会での結果を報告して賞状をもらったり文系もコンクールで賞をもらったことを報告したりと普通の学校と同じように進み式は終わりを迎える。

 

〔…さて、式の終わりにみなさんにお知らせがあります〕

 

(ついにか)

 

普通ではない理事長がいるこの学校でハイお終いで終わるわけがない

 

〔今日から3年A組にひとり仲間が加わります。彼は昨日までE組にいました〕

 

「「「「「⁉︎」」」」」

 

五英傑の荒木の発言にE組のメンバーの目が見開く。聞いていない事実に驚いたのだ。

 

〔しかし、たゆまぬ努力の末に好成績を取り本校舎に戻ることを許可されました〕

 

その人物は、雄二の新たなターゲット

 

〔では彼に喜びの言葉を聞いてみましょう!〕

 

(さて、どういう言葉を言わされ、どんな顔をするかせめて見せてもらうぞ)

 

〔竹林孝太郎君です‼︎〕

 

毅然とした態度と歩き方のお手本と言うほどのキビキビとした動きで竹林は壇上に立った

 

* 

 

「俺に、同級生を殺せってのか?」

 

「……まずは、説明をさせてちょうだい」

 

雄二はどうにか気持ちを落ち着け話しを聞くがそれも容認できるようなものではない

 

「竹林孝太郎、彼がE組から離れるそうよ」

 

「どういう事だ?」

 

「あの学園ではほぼ毎年ある事よ頑張った生徒に理事長が接触してあのクラスの脱出を打診する。その場で二つ返事で受けたそうよ」

 

「…………で、それと俺があいつを殺す事とどう繋がる?」

 

「本来ならあのクラスを離れる時点で記憶消去の処置を行うのだけど、烏間の判断でかれの将来を優先して記憶消去等の処置は見送られたわ。……表向きはね」

 

そこで雄二は理解した。自分はその裏向きを任されたのだと

 

「あなたが選ばれたのも奇跡よ。あのクラスにいるあなたは情に流される可能性があるそういう意見があったそれでも担当をあなたにできたのだから。他の人物にまわされたら最後、彼の命はすぐに消されてしまう。事故死という事でね」

 

「俺がやるのは監視か?全部に目がいくわけじゃないぞ?」

 

「最終判断は基本的にあなたにあるけど、業を煮やした上の指示もある可能性もあるわ」

 

どうする?と聞かれた時、雄二に選択肢などなかった。

 

 

雄二は今は監視をするだけにしている。だがいざという時、自分はできるのか、出来たとして、そのあとどうしていくのか、見当もついてない。そんな考えの中で竹林はスピーチを始めた。

 

〔——僕は4ヶ月余りをE組で過ごしました。その環境を一言で言うなら地獄でした〕

 

淡々と語る彼の目には何もない。罪悪感も、喜びも、ただの無だ

 

〔やる気の無いクラスメイト達、先生方にもサジを投げられ、怠けた自分の代償を思い知りました。もう一度本校舎に戻りたい…その一心で死ぬ気で勉強しました。生活態度も改めました。こうして戻って来られたことを心底嬉しく思うとともに二度とE組に墜ちる事のないように頑張ります〕

 

以上ですと言い終わり、行儀の良いお辞儀をする生徒達は呆然としていたが壇上から拍手があがる。理事長の息子、浅野学秀だ

 

「おかえり、竹林君」

 

それが起点となり、拍手が広がる。カリスマある人物の言葉と行動は、速攻で伝わるE組を除いた全てのクラス、全ての生徒、教師が拍手喝采し褒め称える。その光景に無表情だった竹林も少し笑みが出ていた。

 

 

 

教室に戻ると皆不満をぶつけだす

 

「なんなんだよあいつ‼︎百億のチャンス捨ててまで抜けるとか信じらんねー‼︎」

 

前原は怒理のあまり黒板を叩いてその怒りを少しでもだそうとするがもちろんそんなものでおさまるわけがない。

 

「しかもここの事、地獄とかほざきやがった‼︎」

 

「言わされたにしたってあれは無いよね」

 

「竹林君の成績が急上昇したのは確かだけど、それはE組で殺せんせーに教えられてこそだと思う。それさえ忘れちゃったのなら…私は彼を軽蔑するな」

 

木村と岡野も同様に不満を出し、片岡はぽつりと冷たい声で言う。

 

「とにかく、ああまで言われちゃ黙ってらんねー‼︎放課後、一言言いに行くぞ‼︎」

 

こうして不満が出るなか、渚は少し気になる事があった。

 

「雄二、どうしたの?」

 

「…あ、あぁ。なんでもない。俺も、竹林に会いたいと思ってたんだ」

 

雄二は心ここに在らずという雰囲気だった。眠気もあるだろうがそれ以外に何かあっただろうという事がわかる。だがチャイムの音がその考えを消してしまい、渚は席に戻った

 

 

 

放課後、竹林が本校舎から出てきたのを見つけて前原が呼び止めた。竹林は立ち止まり、皆の方を向いた眼鏡の奥にある想いは見ない。

 

「説明してもらおうか、何で一言の相談も無いんだ竹林?」

 

「何か事情があるんですよね?」

 

磯貝が聞くと南の島で共に生徒の看病をした奥田は裏切ったとはおもえず問う。それに続きカルマは挑発するように言う

 

「賞金百億、殺りようによっちゃもっと上乗せされるらしいよ。分け前いらないんだ竹林…無欲だね~」

 

無言を貫いていた竹林は少しズレた眼鏡を上げて口を開く

 

「…………せいぜい十億円」

 

「「「「?」」」」

 

「僕単独で百億ゲットは絶対無理だ。上手いこと集団で殺す手伝いができたとして僕の力で担える役割じゃ分け前は十億がいいところだね」

 

竹林は暗殺訓練を真面目にやっていた。だが全体成績は最下位、彼のその考えは正しい。

 

「僕の家はね代々病院を経営している。兄2人もそろって東大医学部。十億って金はうちの家族には働いて稼げる額なんだ。『出来て当たり前』の家なんだ…出来ない僕は家族として扱われない。仮に十億手に入れても、家族が僕を認めるなんてありえないね」

 

「………」

 

それは彼の抱えている闇であり、呪いだ。それは雄二にも通じるところがあった

 

「昨日、初めて親に成績の報告ができたよ。トップクラスの成績を取って…E組から脱けれる事。『頑張ったじゃないか、首の皮一枚繋がったな』その一言をもらうためにどれだけ血を吐く思いで勉強したか‼︎……風見、君ならわかるんじゃないか?」

 

「なんで俺なんだ?」

 

「君のことが気になって、興味本位で、君の姉について調べたよ」

 

なるほどなと雄二は思う。雄二は自分の事を偽らない。ある時クラスの人が聞いてきてその名を出したことがある。雄二のことについて調べても何も出ないが姉ならどうしても隠せないだろう。そういう人物だから

 

「風見一姫……あんな姉がいた君が、そこまでなれたのは相当な努力があったからなのはすぐにわかったよ」

 

「………」

  

「僕にとっては、地球の終わりより百億よりも家族に認められる方が大事なんだ。裏切りも恩知らずともわかってる………君達の暗殺が上手くいく事を祈ってるよ」

 

「………竹林」

 

まだ何かという顔で呼び止めた雄二の顔を見る

 

「メイド喫茶は、もう行かないのか?前に誘うとか言ってたが?」

 

「……ごめん。これからはそういう生活もできない」

 

「おまえがそれでいいなら、俺は何も言うことはないが、今のおまえは本当におまえなのか?」

 

「………」

 

もう言うことはないとばかりに竹林はその場を去る。

 

「待ってよ竹ば…」

 

渚は竹林を呼び止めようとしたが、神崎に止められていた。

 

「やめてあげて渚君。親の鎖って…凄く痛い場所に巻きついてきて離れないの。だから……無理に引っ張るのはやめてあげて」

 

「神崎の言う通りだ。今はそっとしておけ」

 

雄二はそう言ってその場を離れた。雄二の背も竹林の背も重そうに見えていた

 

 

 

その夜も雄二はスコープ越しで彼の家を監視していた。

 

「………JB」

 

【なに?】

 

「竹林の件だが、クラスを抜けただけじゃないんだろ?…今日、一姫の事を調べたという情報を聞いた」

 

【……えぇ。けど、調べたのはあなたの姉に関することだけで、あなたの情報は全く持ってないわ】

 

「ならいいだろ。こんな事…」

 

【それの判断は上が決める事よ………もし、彼が戻るなら話しは別だけど、聞いた限りじゃ望み薄ね】

 

「正直、どうにかなりそうだ」

 

【なら、やめる?】

 

できるわけがない、するわけがない事をJBはあえて聞いた。当然雄二はやると返してきた

 

「俺、なんでこんな事を…」

【それ以上考えるのはやめなさい】

 

そうして今日も徹夜となる。

 

 

 

翌日、いまだに重く暗い雰囲気にあるクラスに、黒い物体が入ってきた

 

「何でいきなり黒いんだよ殺せんせー」

 

南の島でも見せた歯まで真っ黒な日焼け殺せんせーだ

 

「急きょアフリカに行って日焼けしてきました。ついでにマサイ族とドライブしてメアド交換してきました」

 

「なんだそのローテクかハイテクかよくわからん謎の旅行は」

 

雄二のツッコミも無視して殺せんせーは続ける

 

「これで先生は完全に忍者‼︎人混みで行動しても目立ちません」

 

「「「「「恐ろしく目立つわ‼︎」」」」」

 

人混みこんなのがいたら速攻で通報されるだろう。

 

「で先生、竹林のアフターケアか?」

 

「その通りです。自分の意思で出ていった彼を引き止めることは出来ません。ですが、新しい環境に彼 が馴染めているかどうか、先生にはしばし見守る義務があります」

 

「……先生、それ俺もついて行っていいか?」

 

「これは先生の仕事ですので、いつも通り過ごしていてもいいんですよ」

 

そういうが雄二が言い出した時点でもう他の皆も同じ考えになっていた

 

「俺等もちょっと様子見に行ってやっか。暗殺を含め危なっかしいんだよ、あのオタクは」

 

「なんだかんだ同じ相手を殺しに行ってた仲間だしな」

 

「抜けんのはしょーがないけど、竹ちゃんが理事長の洗脳でヤな奴になったらやだなー」

 

前原に続き杉野と陽菜乃が言うと賛同するものが続々とでるその光景を見た殺せんせーは嬉しいのか『うんうん』とうなずき

 

「殺意が結ぶ絆ですねぇ」

 

と口に出した

 

(絆…か)

 

ただひとり、影があることも気付いていたが彼の意思を尊重することにして何も問わなかった

 




感想、意見ありましたら基本的に返すのでお願いします

7月も頑張ります


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親友の時間

タイトルがちょいネタバレな件についてw



E組の皆が心配している竹林は初のA組での授業を受ける

 

「授業の準備はできてるか竹林?」

 

「E組の先生は適当だったと思うけどな、A組の先生は進み早いから取り残されんなよ~」

 

「…はは、緊張するな」

 

「せっかく表舞台に戻って来れたんだ、竹林君ならついてこれるさ。大変だろうが一緒に頑張ろう。ね」

 

他の生徒はどうかわからないが少なく彼、浅野学秀の言葉は心にもないとわかる。ただの社交辞令のようなものだと

 

「………ありがとう、浅野くん」

 

わかってはいるがそれに返さないわけにもいかず受け答え授業に望む……だが始まってすぐに竹林の手が止まってしまう。他の者から見ればE組と違いすぎて呆然としていると思われるだろう

 

(…これが、A組の授業⁉︎)

 

だが呆然ではない唖然だ。そしてペンを止めても問題はない。

 

(E組じゃ…1学期でやったとこだぞ)

 

なぜなら内容はとっくに頭に入っているからだ。だからこの授業でペンを止めて教師の声を聞くだけでもわかる。わかるのだが理解していなかったらまずついていけてなかった。要所を絞ることなく次から次へと無駄に教えていく。しかもそれが常に早口な黒板に書いたもの口で言っている部分を書くのに手一杯で授業で完全理解は不可能。後は独自の学習で理解してくれと言わんばかり。

 

(生徒の都合は一切無視。ついて来れない奴をふるい落とす為の授業だ)

 

 

竹林が殺せんせーに個別に教わったやり方は竹林に合うもの。というより竹林のようにいわゆるオタクにこそ合ったやり方。彼のイチオシのアニメのオープニングを替え歌にして教えいくもの。が、その後殺せんせーの弱点に音痴がつくほどの酷い歌唱力だった為殺せんせーの歌では覚えにくく自分で替え歌にして覚えた。

 

「覚えるのは0°から90°までの角の三角比の値の5つの値だけでいいそれでどうにかなる。さっさと歌詞つくって覚えるぞ」

 

「なんで俺までやるんだよ⁉︎」

 

「竹林、この前田という女のところで重要ポイント作れるか?どうも寺坂のお気に入りらしい」

 

「何で見てるの知ってんだよ⁉︎あと、前田ちゃんって言えや‼︎」

 

どうでもいいかもしれないがだんだん寺坂もそっち(2次元人)側に行こうとしていた。

 

「殺せんせー、キャラの胸ばっか見てないで手伝ってくれ。音痴なんだからそれくらいしかできないんだし」

 

「ちゃんと名前で呼んでください‼︎つねみちゃんです‼︎あと音痴ってハッキリ言わないで‼︎」

 

生徒の2次元の好みを知る為とっくにハマった超生物(笑)

 

「なんだかバカにされた気がします⁉︎」

 

「なに言ってんだ?とにかくこの歌詞作ってたらそれこそ勉強になる作ったらそれを聴いて寺坂も竹林も勉強になるWin Winだろ?」

 

 

(やたら貪欲に生徒の情報を学ぶ先生。寺坂もあいつなりに僕の事ことを知ろうしてくれて、風見は皆の事を知って共に歩もうとしてくれていた。…あいつの過去は知らないけど、あんな超人的な天才の弟にいたら周りからどう思われていたかなど想像がつく)

 

 

風見の姉の名前を聞いた時、どこかで聞いた気はしていた調べてみると少し時間がかかったがあっさり出た

 

(4歳で天才絵画家としてデビュー以降様々な作品をだし、学業でも優秀すぎる結果をだし最年少で紫綬褒章を受章。12歳以降はあまり活動はしないものの動いた時はそのたびに称賛される……なるほど…こんなのが身内にいたあいつは、どう思ってたんだろうな)

 

 

そんな思考をするのは理由がある。今の自分に違和感があるのもあるが

 

(で、いるよな)

 

外の茂みに烏間から教わったカモフラージュ技術で頭に植物をつけて隠れているが本校舎の茂みにある植物と違うので見る人が見れば余計にあやしい。特にツヤツヤ黒ダコ(殺せんせー)

 

(風見がいるならもうちょっとは上手く出来るはずだけど、また殺せんせーの悪ノリに気付かずやってるんだろうな)

 

茂みで1人の男がくしゃみをしていた

 

(なんでまだ、僕の事を知ろうとする?)

 

竹林は愚かでも自惚れてもない。E組で暗殺の役に立っていないのはわかっていたそれもあったから本校舎に戻った。裏切りとわかったうえで、自分の為に

 

(今の僕を見て、何を学ぶ?なんの価値がある?…そもそも僕は何を学びにここへ戻ってきたんだ?)

 

今の竹林であれば、授業を聞かずとも内容の一部から効率よく勉強し余裕を持てる。ここでやっていける。だが意味があったのか?そう問われた時、彼に答えはでない

 

「どうだい竹林君、クラスにはなじんだ?」

 

「…‼︎ま、まぁ」

 

思考の海から引き上げたのはいつのまにか近くに来た浅野だった。

 

「理事長室に行ってたんだよね?どうしたの?」

 

「うん。突然だけどついてきて。理事長が君を呼んでるよ…逆境に勝った君を、必要としているようだ」

 

 

一方竹林の様子を見にきたE組の皆は

 

「理事長室に入ったようですねぇ」

 

「くそ、カーテンで中が見えねぇ」

 

浅野のに何か言われ追って見ると理事長室に行くのがわかったがさすがにあの理事長が手の内を明かす事はしないのは分かっていたのでやはりといった感じだ

 

「だが、見たところ問題はなさそうだな。うまくなじめてそうだし」

 

「……そう見えるか?」

 

雄二は気付いていた。その違和感に

 

「?んなことねーだろ。ちゃんと溶けこんでじゃねーか」

 

「俺には、今の竹林が別人に見える。気付かないか?あいつ、オタクっぽさが消えてる」

 

「「「「………」」」」

 

「というより、オタクっぽさを殺している感じですかねぇ」

 

「窮屈そうだな、あいつ」

 

だからといって彼の人生の選択にあれこれ口出しなどできない…できないが

 

 

 

 

「風見?」

 

塾帰りの帰路で竹林は風見と会った

 

「よ、奇遇だな」

 

「……待ち伏せだろ?」

 

「そうとも言う。まぁ、ちょっとだけ帰るついでにつきあってくれ」

 

「…そういう言葉は矢田さんとかに言えば?」

 

「?」

 

(相変わらず鈍感だな…千葉は見た目がギャルゲー主人公だけど風見は存在がギャルゲー主人公だな)

 

まぁ実際そうですし

 

「なんか変な声しなかった?」」

 

「いや、別に。それより帰ろうぜ」

 

そうして2人は歩き出すだが会話はない。竹林は理事長室で明日の事を話していたその日は理事長が今の椚ヶ丘の前身である私塾を開いた日で創立記念日としているそこでの集会で竹林はE組の監視・再教育するという名目の“E組管理委員会”の設立の同意を求めるもの。E組がどれだけ拒否しても本校舎の生徒は良しとして全員が賛同するだろう

 

かつての友を囚人のような或いは奴隷のような扱いをする。理事長曰く、強者への一歩。そんな事をしようとしているとは思ってもいないだろう相手に会話などどうすればいいかわからなかった

 

「何も言わないの?」

 

「言ってほしいなら言うが…どうする?」

 

一瞬だけ考え竹林は頷いて肯定する

 

「A組の連中はどうだ?オタク友はいたか?」

 

「いると思う?それに、もう僕はそういうのとは……」

 

「卒業か?せっかくアニメについて語ろうかと思ったんだがな」

 

「見てるんだ……ちなみ今何見てるの?」

 

「動物の擬人化アニメの第2期だ………本音と建前どっちが聞きたい?」

 

竹林はそのアニメの事は知っているだが1期と比べ2期は…

 

「嫌な予感がするけど建前で」

 

「オープニングはなかなか良いなあとペンギン達の歌も良い」

 

「歌の事しか言ってないじゃん本編は?」

 

「……ノーコメント」

 

「おい」

 

ついツッコミを入れると雄二はクスリと笑う

 

「やっぱりそっちがいいぞおまえは。遠慮せずにもっと自分を出してもいいんじゃないか?結果さえ出せば、何も言われないさ」

 

「………」

 

もうできないやめると思っていたが話し出すとこんなに弾んでいた事に気づいた竹林は黙ってしまった

 

「…別の話にしようか?というよりそろそろ俺もツッコミを入れた方がいいのか?アレに」

 

「いや、僕がやるよ。…殺せんせー、警察呼びますよ」

 

「にゅやッ!な、なぜ闇に紛れた先生を⁉︎」

 

「いやぜんぜん紛れてないぞ、むしろ悪目立ちしてる」

 

黒い物体が電灯に照らされているさまは違和感しかない。

 

「というか、毎回前に来て観察するなよ…せめて後ろにつくべきだろ。ほんとにマッハの無駄遣いだな」

 

容赦なくダメ出してわかりやすく落ち込んでいた。

 

「で、僕に何の用ですか?殺しとはもう無縁のこの僕に…⁉︎」

 

「って誰だ⁉︎」

 

マッハで竹林のイメチェンメイクをほどこしオタク系からビジュアル系のイケメンに変貌させた。

 

「君の個性のオタクキャラを殺してみました」

 

「…こんなの僕じゃないよ」

 

「たしかに。これでさっきの会話してたら違和感しかない…っておれにまでしようするなよ先生」

 

「にゅう〜気付かれますか〜逆にオタク系メイクをしようと思ったのですが。まぁそれはいいとして、竹林君、先生を殺さないのは君の自由です」

 

でもねと先生は続けて言う

 

 

「“殺す”とは日常に溢れる行為ですよ。現に家族に認められるためだけに…君は自由な自分を殺そうとしている。でも君ならいつか君の中の呪縛された君を殺せる日が必ず来ます。それだけの力が君にはある」

 

「………」

 

「焦らずじっくり殺すチャンスを狙って下さい。相談があれば闇にまぎれていつでも来ます」

 

「ならこんどはもうちょっとわかりにくく来いよ先生。ぜんぜんまぎれてないから」

 

グサっという音が聞こえ怯みながら今度こそ殺せんせーはマッハで闇に消えた

 

「じゃ、俺もこの辺失礼させてもらう。…竹林、俺からももう1度いうぞ。今のおまえは本当のおまえか?」

 

「…僕は」

 

「答えはすぐに出さなくていいさ。時間は常に限られていても、余裕はあるんだからな」

 

その先の竹林の答えは聞かず、雄二は去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

去ったふりをした。今日もいつもの装備でいつもの場所から見ていた。

 

「なぁ、JB」

 

【なに?また愚痴?今回の件はしかたないから聞いてあげるわ】

 

ただ、少し違う

 

「いや、違う。多分もうすぐこの仕事は終わるからちゃんと給金の準備をしてくれ」

 

雄二には予感があった。もう大丈夫だという

 

【……そう。でもどうするの?そんな事を聞いて?】

 

「詫びってわけじゃないが、今回は俺が奢ろうと思う行きつけのメイド喫茶のな」

 

 

 

翌日、創立記念日の集会にいつも通りE組は早くに来ていた

 

「なんか、目が死んだ魚みたいな目になってるよ、大丈夫雄二君?」

 

「あぁ、ようやく昨日で深夜のバイトが終わったから今日からはちゃんと寝れる……と思いたいが、烏間先生からまた嫌な役目を押し付けられそうだ」

 

「なに、それ?」

 

「…ここだけの話だがどうも2学期から暗殺に新しい要素の1つとして火薬を組みこむそうなんだが、それに生徒1人が専門知識を覚えて火薬の安全に取り扱う必要があるらしく、それに俺があたりそうなんだ」

 

「……国家資格の勉強かぁ〜大変だねそれは。…お弁当、スタミナメニューにする?」

 

「いや、いい。多分変わりができる」

 

うちのクラスにやりそうな人が他にいるのかなと思いつつ桃花は列に並びだした。

 

全生徒が集合してすぐに壇上に竹林が出てくるとざわざわと何が始まるのかと困惑している。マイクの前でペコリと小さくお辞儀をして手にもったメモを前に出す。彼の異変にE組の観察力に優れている者は気付いた

 

「胸騒ぎだ。竹林から殺気を感じる…何か大事な物をメチャメチャに壊してしまいそうな」

 

千葉に言われ彼の背後に悪魔ようなものすら見えた気がした

 

〔僕の…やりたい事を聞いてください。僕のいたE組は弱い人達の集まりです。学力と言う強さが無かったために本校舎の皆さんから差別待遇を受けています…でも〕

 

彼の心は誰にもわからない。本校舎の人間もE組の皆にも

 

『今のおまえは本当におまえか?』

 

その言葉が彼の中にある事など誰にもわからない。だが雄二は予感はあった。ぶち壊してくると

 

[でも僕は、そんなE組が…メイド喫茶の次ぐらいに居心地が良いです]

 

「「「「「「‼︎⁉︎」」」」」」

「ふはっ」

 

たった1人はまさかそうくるとは思わずついツボにハマった。他の皆が呆気に取られるがお構いなしとばかりに言葉を続ける

 

〔…僕は嘘をついていました。強くなりたくて、家族に認められたくて〕

 

建前なしの本音。もう彼は覚悟を決めていた。

 

(見てるか風見?これが僕だ)

 

本当の自分を全面にだしてぶち壊していく

 

〔でもE組の中で役立たずの上裏切った僕をクラスメイトは何度も様子を見に来てくれた。先生は僕のような要領の悪い生徒でもわかるように手を替え品を替え工夫して教えてくれた。僕の……」

 

ちょっと言うのが恥ずかしいがもう良いとぶちまける。

 

〔僕の親友は、ずっと僕の事をわかってくれて、助け船をどこでも出してくれた〕

 

「………」

 

雄二は少し複雑な目になって言葉を聞き続ける

 

〔家族や皆さんが認めなかった僕の事をE組の皆は同じ目線で接してくれた。世間が認める明確な強者を目指す皆さんを……正しいと思いますし尊敬します。…でも、もう暫く僕は弱者でいい〕

 

竹林を止める為、理事長の指示で教師が動き出し、独自の判断で浅野も動きだすだがもう遅い。竹林は隠していた物を出した。ガラス製のそれは表彰楯。そこに書かれた名は理事長の名前

 

〔理事長室からくすねてきました。私立学校のベスト経営者を表彰する楯みたいです。…理事長は本当に強い人です全ての行動が合理的だ〕

 

それを服の内側に隠していたおそらくお手製の木と刃先が鉄板で出来たナイフを出し、振り上げる。この時点で何をする気など言わずともわかる。楯を粉々に粉砕した。

 

〔浅野君が言うには、過去これと同じ事をした生徒がいたとか…前例から合理的に考えれば……〕

 

下を向いていた竹林の顔が上がり表情は遠くからはみえずともハッキリとわかる

 

〔E組行きですね僕も〕

 

とても晴れやかだった

 

 

 

皆がE組校舎に戻ってほんの少し遅れて竹林は入ってきた。おかえりとよくやったとかそんな言葉と、寺坂に髪をクシャクシャにされたがどうも楽しそうだ

 

「なぁ、竹林」

 

「別に名前でいいよ、雄二。というか、何か厄介ごと?」

 

「何で俺が話す=厄介ごとなんだ」

 

違うの?という顔をされので正直に話す。火薬の取り扱いを覚えるのをかわって欲しいと

 

「できるでしょ?」

 

「正直面倒だ」

 

実は既に(・・)できるが烏間も彼の正体がバレる可能性を下げたいのもあり他にやりそうな人物を探していた

 

「……まぁ、勉強の役に立たない知識だけど…これもどこかで役に立つかもね」

 

「できるか?」

 

「まぁね。2期オープニングの替え歌にすれば余裕だよ」

 

「そうか、それはよかった」

 

と安堵していたが竹林は「何言ってんの」とメガネをキラリと光らせる

 

「君にも替え歌作りに付き合ってもらうよ覚えてる人が多ければ多いほどいいだろ?」

 

以前よりも積極的に絡んでくる彼にはぁとため息をつく

 

「わかった。報酬にメイド喫茶の奢りもつけてやるよ孝太郎」

 

 

 

 

 

 

その後、雄二に与えれていた任務は話し合いの結果破棄された。最初は始末しろとの声があったがその話し合いの会議に烏間が乗り込んで来てやいのやいのと怒号が飛んだそうだ。その情報をどこで、誰が出したかは、わからない。JBの記録にもなかった事から彼女ではないとして内部犯の存在を探すのに必死になるが、その捜索も地下の教授の判断で打ち切りになったそうだ




今回の竹林編はグリザイアの世界観と合わせる為以前から考えてました。暗殺教室では彼が出て行っても許されていましたがグリザイアの世界観で見ると許されないだろうなーと考えこうしました

烏間に情報を出した人物はいうまでもない



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プリンの時間

短いのでさっさとできました。プリンについて調べて「へぇー」と口に出していた自分にちょっと笑ってしまった


プリン:お菓子のイメージがあるが元はプディングという溶き卵に肉や野菜の余りなどを入れて、一緒に蒸して固めて作った料理であったそうだ。現在よく見るプリンはカスタードプディングで元のプディングから2世紀以上経ってから開発されたといわれている。そして現代、プリンは世界で愛されるお菓子となった

 

閑話休題

 

「これはまた、金がかかってそうだなー」

 

烏間曰く、ぶっ飛んだ計画とのことだが雄二もそれに納得していた。E組の校庭にある機材、特殊冷却車のタンク巨大なかき混ぜ機色々あるが1番に目を奪われたのはやはりその独特な形をした巨大な容器。その花形の容器の形、そして今回の暗殺企画を出した茅野は破棄される卵を救済すると言っていた。卵とこの特徴的な花形巨大容器を見れば何を作るなどすぐにわかる

 

「そう、今から皆で巨大プリンを作りたいと思います。名付けて“プリン爆殺計画”‼︎」

 

以前、殺せんせーは茅野に言った

 

『いつか自分よりでっかいプリンに飛びこんでみたいですねぇ』

 

「ええ叶えましょうそのロマン‼︎ぶっちゃけ私もそれやりたいけど‼︎」

 

「自分の欲望に正直だな」

 

概要は巨大プリンの底に対先生弾爆薬を密閉し、殺せんせーが底の方まで食べ進めたのを合図に発破し仕留めるというシンプルな物だ。シンプルではあるが相手は殺せんせー

 

「…やってみる価値はあるな」

 

「殺せんせーってエロとスウィーツには我を見失うとこあんもんな」

 

「というより、スウィーツ系の罠は俺も以前試した」

 

そうなの⁉︎と何人かが反応した

 

「結果は失敗だったんだろうけどどうだったの?今回の計画大丈夫と思う?」

 

「心配はないぞ。むしろあんな古典的な罠に引っかかるくらいだ」

 

 

雄二の言う古典的な罠とは

 

「あっ!こんなところに〔ラ・ヘルメス〕のケーキが置いてある‼︎」←メガホン拡声器で

 

「ケーキ、ケーキ、ケーキ‼︎…あった‼︎もーらった‼︎さてさっそく……あれ、中身がおもちゃのケーキ?」

 

瞬間、上から巨大な籠(対殺せんせー物質で作った)に捕まった

 

「にゅわぁぁぁ⁉︎捕まったぁぁ‼︎」

 

「…殺せんせー、スズメじゃないんだからこんな単純なてに引っかかるなよ」

 

 

「結局、皆を呼ぶ前に穴を掘って逃げられたがな」

 

(((((そんなキャラどっかで見たことある)))))

 

「ともかく、その時もうまくいったし、先生の欲望に忠実な部分を見ても必ず食いつくだろう保証する。それに、後方支援の茅野が前に出て計画してるのも意外性がある。意外性は先生に対して最高の武器だ」

 

「なら決まりだな先生のいないこの三連休で勝負に出るか‼︎」

 

掛け声と共に巨大プリン作りが開始された。

 

巨大プリンということはそれに使う卵の量もハンパではない。ケーキ屋が1日で作るプリンに使用する卵の3倍はくだらない。それを1つ1つ割って入れていては時間かかる上に鮮度も落ちる。

 

「だからマヨネーズ工場の休止ラインを借りて機械で割って混ぜてもらった。それに砂糖と牛乳バニラオイルが基本の材料」

 

既に作業済みである。だが問題は他にもある様々な番組で○○を大きくしてみたというのはあるがその多くで大きくした結果、通常よりいい結果が残せない、もしくはあまり良くない結果に終わる。体積が多くなれば重量も多くなる。故に自重のせいで潰れたりする

 

「その対策として、凝固剤にはゼラチンの他に寒天も混ぜてる。寒天の繊維が強度を増してゼラチンよりも融点が高いから9月の野外でも溶けにくく崩れにくくしてくれるの。容器に入れるときも下の層はゼラチン上の層を生クリームを多めにすれば自重を支えつつ上をふんわりできるの」

 

効果的に爆破する為には先生に早く食べてもらう必要がある。巨大プリンがずっと同じ味なら飽きがくる可能性があるが当然それも茅野は考えている

 

「はいこれ、ときどき投げ入れて」

 

各班にプルンとしたゼリーの塊のような物を渡された色は様々で赤や緑、オレンジがあり微かにフルーツの匂いがする。それはオブラートで包んだ味変わり

 

「フルーツソースやムースクリームが溶け出して…あちこちで味に変化がつく部分が生まれるようにするの」

 

そして最後は固める為の冷却だがそれは巨大カップに取り付けられている

 

「この容量じゃ外気だけじゃ冷えないからパイプを通して冷却水を流して冷やすの」

 

これを作成するにあたって茅野は1週間かけて烏間に手配の依頼、そして研究を重ねた。いわばその集大成だ

 

「恐るべきはそのプリンに対する愛だな」

 

「うん。…っていうか、前から作ってはみたかったんだけどお金がないからできないって思ってたから」

 

当然諸経費は全て防衛省持ちである。烏間が結果がどうあれどう報告するか頭を抱えているのがすぐにわかる

 

「今までサポートをしてた茅野がここまで行動力あるとは思わなかったよ」

 

「えへへ。私、そうと決めたら一直線になっちゃうんだ」

 

(どうやら、大丈夫そうだな)

 

以前のプールの件もあり茅野が自分から計画を出してきたので心配していたが杞憂に終わり雄二もホッとした。

 

作業は1日では終わらず液をカップに入れ一晩冷却させる。そして翌日、冷却水を流していたパイプを抜いてその穴から空気を吹き込み型枠を浮かせて外し、ゆるめのゼラチン寒天でプリン肌をなめらかに整える。最後にカラメルソースをかけて表面をバーナーであぶり

 

「「「「「できたぁーーーー‼︎」」」」」

 

「前に不破に貸してもらった漫画にあったプリン山を思い出すな」

 

「原作者があれをみたときどんな感情だったのか知りたいよねー」

 

「不破さん、メタ禁止」

 

記念写真を撮ったりして楽しんだ後、連絡を受けた殺せんせーがそれを煌々とした目をしよだれを出している今にも飛びつきそうだ

 

「…こ、これ全部先生が食べていいんですか?」

 

「どーぞー廃棄卵を救いたかっただけだから」

 

「もったいないから全部食べてね~」

 

「もちろん‼︎あぁ、夢がかなった‼︎」

 

サッとスプーンと皿を持ってきて「いただきまーす」とプリンに飛びついた。それを後ろ髪を引かれるように見つめつつ茅野は起爆を見守る為教室へ移動する。

 

「茅野?どうした?」

 

「…ううん別に」

 

別にというが雄二には「私も食べたいな」というのが顔に書いてあるようにも見えた。窓から見ると殺せんせーはものすごい勢いでプリンを食べていく。巨大プリンの半分が食べられている。

 

「孝太郎、準備は?」

 

「いつでも。タイミングは周りのプリンがなくなり、暗闇の画面がうっすら光ったときだね」

 

ドクンドクンと緊張が走る。

 

「いよいよだな茅野………茅野?どうした」

 

「プリン…爆破」

 

茅野はこの日のためにかけた1週間をプリンのかわりに走馬灯のように思い出す。思い出は何よりも尊く、輝いていて…

 

「ダメだーーーーっ‼︎‼︎」

 

「うぉ⁉︎どうした茅野⁉︎」

 

「愛情こめて作ったプリンを爆破なんてダメだーーー‼︎」

 

「まずい押さえるんだ!」

 

雄二の指示で寺坂が止めていなければ起爆装置を奪っていただろう。そのくらいに必死だ

 

「落ちつけって茅野‼︎」

 

「プリンに感情移入してんじゃねー茅野‼︎フッ飛ばす為に作ったプリンだろーが‼︎」

 

「いやだ‼︎」

 

「まるで恋人から引き剥がされるヒロインだな…相手はプリンだが」

 

「言ってる暇あるなら手伝え‼︎」

 

プリンに感情移入した結果妙に力が上がっている

 

「いやだって言ったらいやだ‼︎ずーっとこのまま‼︎校庭のモニュメントとして飾るんだい‼︎」

 

「「「「「いや腐るわ‼︎」」」」」

 

「やはりプリン愛は恐るべしだな」

 

「いえ、まったくですねぇ」

 

その声はいつのまにか来ていた殺せんせーのものだった全員「えっ」という表情になり持っていたものを見る。

 

「爆弾…しかも起爆装置が外されている」

 

「異物混入をかぎとったので土を食べて地中に潜って外してきました」

 

またしても地中からやられてしまう。たしかにそれならカメラには何の変化もみられないだろう。だが、それはそれとして

 

「つか、もしかしてあの時も掘ったんじゃなくて食べたのか?土を?」

 

「いえいつでも食べているというわけではないのでそんなに引かないでください⁉︎」

 

引きつつあった雄二にどうにか弁明をした。

 

「まぁそれはともかく竹林君、プラスチック爆弾の材料には強めの匂いを放つものもあるので、先生の鼻にかからない成分も研究してみてください」

 

「………っ…はい」

 

悔しそうな顔をする孝太郎だが。次こそはと燃えていた。それをみて全員の張り詰めていた気が抜けた

 

「そして、プリンは皆で食べるものですよ。綺麗な部分をより分けておきました」

 

グラスにはプリンが均等に分けられているちゃんとカラメルソースも均等にかかっていた

 

「…殺せんせー、1つ頼みがあるんだが」

 

「はい、どうぞ」

 

渡された箱を見ると皆と別により分けられたプリンと保冷剤が入っていた

 

「保護者に渡したいのでしょう?そういうと思い、皆さんのご家族分もしっかりと用意してますので風見君もどうぞお食べください」

 

(…ほんと、今回は全部お見通しってことか)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、今回の作戦の報告をしにJBの元へ向かうと案の定イライラしていた。この作戦のためにかかった経費に頭を抱えているのは彼女も同じだったのだ

 

「大変そうだな。ほら、お土産だ」

 

と雄二が渡したプリンにそんなものくらいでストレスが収まるかと言っていたが

 

「ん〜ん〜。おいしいぃ〜」

 

充分に解消されていた

 

「これ、そこいらのプリンよりもおいしいわ。これだけの経費がかかってるだけあるわね」

 

「そりゃな。あんだけ研究されてんだ当然だろ」

 

プリンを徹底して研究した茅野の成果に舌鼓していると封筒を渡された

 

彼女の情報(・・・・・)よ」

 

「もう少しかかると思ってたんだが…早かったな」

 

そうしてその資料を見ていく。

 

「どうする?彼女に問いただす?」

 

「これ以上の情報はないのか?」

 

「ないわ。素人としてはよく隠せたなとは言えるけどその程度ね」

 

「父は健在、母は逝去、姉は最近事故で亡くなった……なぜこれを隠すのかはわからないが…いいさ。隠し事はお互い様だしな」

 

 

後にこの判断を後悔する事になるとは思うはずもない雄二であった




正直この話は本編で見たときは箸休め回と思っていたので後からほんとビックリしました

感想、意見は遅れても基本返すのであればどうぞ


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確保と逃走の時間

泥棒編でーすそろそろ1人進めてみようかと考える今日この頃


暗殺訓練は今日も始まる。今までは基礎だったがこの2学期からは応用に入る。1つはプリンの時に使用した火薬。そして今回は

 

「2学期から教える応用暗殺訓練……そのもう1つの柱がフリーランニングだ」

 

「フリー…」

 

「ランニング?」

 

よくわからないのか首をかしげていると雄二が補足する

 

「パルクールって言ったらわかるか?あれに似たものだ」

 

それで何人かが「あぁー」と納得しているがやはりわからない者もいる

 

「百聞は一見にしかずってやつだな。烏間先生?」

 

「うむ。例えば、今からあの一本松にまで行くとして……三村君、大まかでいい。たどり着く為にどのように行って何秒(・・)かかる?」

 

三村は再度距離を確認し、次に周囲を観察して答えを出した。

 

「えーっと…まず、この崖を這い下りて10秒。そこの小川は狭いところから飛び越えて…茂みの無い方から回りこんで岩場をよじ登ぼるからまぁ、だいたい1()でいければ上出来ですかね?」

 

このクラスの素早い者達もだいたい同じ答えなのか頷いている。

 

「三村、甘いぞ」

 

「?何が」

 

「最初に烏間先生はなんて言ってた?何秒かかるだぞ」

 

論より証拠といわんばりに烏間はネクタイを外し、ストップウォッチを三村に渡す。三村に聞いたのは最初から渡す為だろう。動画編集をしてきた彼なら正確に測れる。

 

「これは1学期でやったアスレチックや崖登り(クライミング)の応用だ。フリーランニングで養われるのは自身の身体能力の把握する力、受身の技術、目の前の足場の距離と危険さを測れる力、これが出来ればどんな場所でも暗殺が可能なフィールドになる」

 

10メートルはある崖を背に立っていた烏間はそのまま倒れるよう落ちるが空中で一回転して着地と同時にしゃがんで勢いを殺し同時に残った勢いでバク転し、小川の崖を登り小さな滝を越える為ジャンプする再び空中で一回転して見事に小川を越えた地面に着地し勢いそのまま進んで近くの木に飛びつき登る。そこから一本松が立っている崖と立っていない崖を壁キックで左右に動いて最後のジャンプで一本松の枝の太い部分を持ち到着した。

 

「タイムは?」

 

「じ、10秒です」

 

「さすがって感じだな」

 

余裕そうに服についた汚れを取りつつ烏間は説明を続ける

 

「道無き道で行動する体術。熟練して極めれば、ビルからビルへ忍者のように突破する事も可能になる。……だがこれも火薬と同じで初心者のうちから高等技術に手を出せば、死にかねない危険なものだ。この裏山は地面が柔らかくトレーニングに向いているここ以外や危険な場所での使用、俺が教えた以上の技術を使う事は厳禁とする」

 

「はーい!」と元気な声が響くと皆チラリと雄二を見る

 

「ん?なんだ?」

 

「ひょっとしてさ、雄二君もできたりする?」

 

「…………できたとしてどうしろってんだよ」

 

「「「「「じー」」」」」

 

目線が訴えかけてくる。チラリと烏間を見ると頭をかきつつ。小さくコクリとうなずいた。

 

「まぁ、正直烏間先生は凄すぎてお手本といってもオーバーキル感があるからなっ」

 

烏間と違いせを向けてではなくそのままぴょんと軽く飛ぶように落ちていくが落ちる瞬間に体勢を変え着地と同時に前転して勢いを殺す。同時にダッシュして岩を使い滝側の崖を走るように登り滝を回避するため烏間と同じく飛ぶ。着地して木の方に行きささっと登り枝を掴むと逆上がりのように回って勢いをつけて飛ぶそして崖登りをして到着した

 

「ま、こんな感じか」

 

「えーと多分15秒くらい」

 

「……測ってなかったのかよ」

 

いきなりすぎたのでタイムをリセットして測るのを忘れていた為測れなかった。多少がっくししながら雄二も烏間のところに着地した

 

「流石というべきか」

 

「あんたみたいなバケモンに言われてもな。まぁ、最近はやることがなかったしこの機会に基礎をやり直すのもいいかもな」

 

「そうか。……それと久しぶりだが言うぞ、ここでは先生だ」

 

「はいはい」と少し気だるそうに言って皆のところに戻ると称賛され基礎を習いつつ雄二もそれとなく指導をしていた。

 

その姿をうずうずと見ている超生物がいるのに気づかず

 

 

 

「あれ、風見くん?もしかしてバイト?」

 

不破の言う通りバイトをして雄二は遅れた

 

「あぁ。ちょっと『でかいゴミ』らしくてな南の島に行って休んだ分を補ってた。そっちは?」

 

「私の方はジャンプがどこも売り切れでさーあちこちのコンビニ探しちゃって」

 

「買ったのなら後で読ませてもらっていいか?」

 

いいよーと受け答えながら教室に入ると同時にカシャンと音がして手に違和感が出た2人は見ると手錠をかけられていた。

 

「遅刻ですねぇ、逮捕する」

 

サングラスをしてクチャクチャとガムを噛み、海外映画でよく見るガラの悪い警官みたいな格好と言動で言ってくる殺せんせーにまた何かに触発されたのかと雄二は考えていた

 

「なるほど、今の先生のブームの趣味は高速ならず拘束プレイか」

 

「違いますから⁉︎やめてぇそういう勘違いを起こさせる言葉は‼︎」

 

「じゃあ何なんだよ殺せんせー朝っぱらから悪徳警官みたいなカッコしてよ」

 

木村の言葉によくぞ聞いてくれたと言わんばりに笑いだす

 

「最近皆さんフリーランニングをやってますねせっかくだからそれを使った遊びをやってみませんか?」

 

「なぜかすこぶる嫌な予感がするが何をするんだ?」

 

「それは…ケイドロ裏山を全てつかった3D鬼ごっこ‼︎」

 

 

ケイドロ:ドロケー、ドロジュン、ドロタン、助け鬼など地方によってさまざまに名称が変わる遊び。2チームに分かれて鬼の逃げる側、捕まえる側になって捕まった鬼は牢屋地点に入り、鬼側はその捕まった人をタッチすることで助けてまた逃げることができる制限時間以内に全員捕まえる。制限時間逃げ切るかで勝負が決着する

 

 

「追いかける警官役は先生自身と烏間先生、そして風見君です」

 

「何…⁉︎」

「マジか?」

 

「1時間目以内に皆さん全員をタッチできなかった場合先生が烏間先生のサイフで全員分のケーキを買ってきます」

 

おい‼︎と烏間がツッコミを入れるが無視して続けていく。

 

「ちなみに俺はどうするんだ?」

 

「相談された生徒1人の言う事を聞くということで」

 

「何だそりゃ?」

 

それに反応した生徒が一気にやる気が出るが次の言葉で愕然とする

 

「ただし、全員捕まったら宿題2倍です。あ、風見君もですよ」

 

「何でだ⁉︎」

 

「つーか待てよ‼︎殺せんせーから1時間も逃げられるかよ‼︎」

 

当然のようにブーイングがおきる

 

「その点はご安心を。最初追うのは烏間先生のみ先生は校庭の牢屋スペースで待機し、ラスト1分で動き出します」

 

「…なるほど、それならなんとかなるか……」

 

「よっし、やってみるか皆!」

 

と意気込む中

 

「なーこれ俺だけ勝っても負けてもなんの報酬無くないか?」

 

不満タラタラな雄二の言葉が教室の声に消えた

 

 

開始後1分の逃げる猶予が与えられそれぞれがバラバラにチームを組んで逃げる。そしてここには雄二が好きと公表してる3人があつまっていた

 

「いくら烏間先生と雄二君でもこの広い裏山で私たち全員を捕まえるのは不可能」

 

「うん。なら殺せんせーが動くまでが勝負だね」

 

「とりま、今は共同戦線って事で」

 

3人はよしと意気込む

 

「まぁ、誰が当たっても文句なしで」

 

「莉桜ちゃんと陽菜乃ちゃんはこのあいだデートしたじゃん私に譲ってよ」

 

3人はそれぞれもう苗字でなく名前で呼ぶ仲になっていた。

 

「いやいや。君だって毎回お弁当作ってるじゃんおあいこおあいこ」

 

ポン

 

「でも莉桜ちゃんは雄二君とKISSまでしてるよー私の時してないもーん」

 

「ちょ、それ蒸し返すのやめてぇ!」

 

ポン

 

「そうだよせめて今回くらい引いてよ」

 

ポン

 

「「「………」」」

 

「莉桜、陽菜乃、桃花、3人とも逮捕だ」

 

「「「えーーーっ⁉︎」」」

 

いつのまにか音もなく近付き3人の肩をポンっと叩いて静かに宣言した雄二の顔は

 

(((すっごいイライラしてる)))

 

(何で俺だけ報酬無しなんだ)

 

意外と小さな事であった。だがもうやけくそだと本気にもなっていた。スマホを見ると同時に律の音声で現状が伝えられる

 

「岡島君、速水さん、千葉君、不破さん、中村さん、倉橋さん、矢田さん、アウトぉー」

 

デデーンと年末によく聞く音と共に報告がいくと3人は戦慄する。そして「あ、これやばいかも」とようやく気付いた

 

「烏間先生は一気に4人か俺もまだまだだな…」

 

とすぐに茂みの中に消えていく姿を3人は眺めるだけであった。

 

 

 

「あ、今気づいた。これ無理ゲーだ」

 

牢屋スペースで莉桜はそう愚痴る

 

「黙らっしゃい囚人ども‼︎おとなしく刑務作業に没頭していなさい‼︎」

 

ちなみ刑務作業とはドリルで勉強させていることである。と近くの茂みを見ると渚を含めた5人の生徒が悔しそうにこちらを見ていた。牢屋の泥棒を解放するためきたがここを守るのは音速の超生物殺せんせー。ラスト1分まで動かないという事はラスト1分までここを死守することができる。

 

(…そうだ‼︎)

 

と岡島はそれを取り出す

 

 

「原、孝太郎、片岡、木村、逮捕だ」

 

「風見ちょっとマジ過ぎないか⁉︎」

 

「報酬がない事がだいぶイラつかせているね。流石にちょっと同情するよ」

 

「だからって私達にその鬱憤をぶつけるのはどうかと思う」

 

彼らの愚痴を無視して再びスマホを見るデデーンという音がして捕まった人物が出る

 

「前原君、寺坂君、村松君、狭間さん、吉田君、原さん、竹林君、片岡さん、木村君、アウトぉー」

 

「…これなら30分どころか15分かからないかもなさっさと終わらせて…」

 

「脱走〜」

 

「………は?」

 

今何いったという顔をして再び見る牢屋にいた全員が脱走していた。

 

「…殺せんせー、まさか」

 

と烏間に連絡し確認をとる

 

「どういう事だ?」

 

【…君の考えている通りだ】

 

あの収賄警官がと愚痴をだしたがさっさともう一回捕まえてやると意気込み移動する。程なくして再び何人か捕まえたが

 

「脱走〜」

 

【烏間さん、風見君、聞こえるか‼︎どうして牢屋から犯人が脱走するんだ‼︎】

 

【こっちのセリフだザル警官‼︎】

「こっちが聞きてーよザル警官‼︎」

 

再び脱走された。ちなみ今度は再び捕まった桃花の真実半分以下の情報を交えた嘘泣きで脱走したそうだ

 

「純情派かあんたは⁉︎」

【もう2度と同じ手で出すなよ‼︎】

 

と言ってたら

 

「脱走〜」

 

【「………」】

 

その後も泥棒の取り逃しは続いた。最初の岡島からのグラビア写真の賄賂に始まり今度はお菓子で釣られて、暇になって寝る、新しいドリルを取りに行く、そして

 

「あのバカタコはどこだ?」

「どこにいる‼︎出てこい‼︎」

 

「ヒマだから長野県まで信州そばを食べに行くって言ってましたー」

 

逃げる生徒を横目にどこかの警察みたいなコントをする2人と超生物

 

「これ以上逃すなら俺は降りるぞ?ただでさえ報酬もないんだからな」

 

「俺もだな。これじゃゲームとして成立しない」

 

「えぇ、もう絶対に逃しません」

 

本当だろうなと思うが殺せんせーの次の言葉でそれをなんとなく2人は確信する

 

「ーーーでもお2人共、ここから先は泥棒の性能も上がっていますので、油断しないように」

 

 

そこから先、すぐにわかった。

 

(あいつらの気配がとらえにくくなった)

 

すぐに烏間に連絡する

 

「烏間先生、あいつらの姿を見たか?」

 

【いやまだだ。というより痕跡すらない。おそらく生徒達が牢屋にいる間に逃走のコツを吹き込んだのだろう】

 

「なるほど、殺せんせーは最初からこれが目的だったのか。ここまで短時間で急成長するとはな。これじゃ、時間的にも俺達2人でもギリギリ全員捕まえるのは無理だな」

 

【だが、奴1人でも1分あれば全員捕らえるだろう。少しでも可能性をつぶすため可能な限り捕まえる】

 

そうして2人は本気で捜索、確保をしだし捕まえていく。

 

【こちらに機動力の特に優れた4人組を発見。待ち構えて挑戦する気だ時間的にもこれが最後だろう】

 

「了解した…こっちも、どうやらリベンジしたい奴らがいるようだ」

 

通信を切りその相手、ゲーム開始後に最初に捕まえた3人がそこにいた。

 

「もう油断しない方がいいよー雄二くーん」

 

「人のことより自分の方だろ陽菜乃?この中でお前が1番に弱い」

 

「だからチームなんじゃん……いくよ‼︎」

 

ババっと同じ方向に逃げだす

 

「同じ方に逃げたら意味がないだろっ⁉︎」

 

踏み出す瞬間に足がもつれる。それは小さな落とし穴。だが人工ではない。そんな物すぐに雄二は見抜く。故にそれは自然のもの……否、準自然と言おう。彼女達はただこの場所を選んだのではない。ここは穴熊の縄張り。穴熊は脱出用の穴をいくつか作るその1つを細工して小さな落とし穴を作った

 

「やるな。だから陽菜乃と行動したのか」

 

行動が遅れると捕まえるのに時間をロスする。ちなみ雄二は知らないが捕まえられた人は今回の報酬は無しと取り決めている。それはすなわち逃げ切る気満々という事。

 

「逃げ切るの満々ってか?……たしかにフリーランニングにブランクは少しあったが…」

 

逃げ切るつもりという事だけはわかり、バッと動き出した。3人とも既に分かれて移動しているが相手は烏間の次にフリーランニングの猛者。

 

「あッちくしょー‼︎」

 

「うわ、うわわ」

 

「ひゃー」

 

本気を出せばロスタイムなどすぐにどうにかなる

 

「こっちは確保した。なかなかよくやったなってところだ」

 

【こっちもだ。ずいぶん逃げた。だが、もうすぐラスト1分奴が動けばこちらの勝ちだ】

 

「てなわけだこっちの勝ちだな」

 

と言うが3人はニヤリと笑う。

 

「ねぇ、雄二くん?ここからプールまで、どのくらいかかるかなぁ?」

 

「?…………あっ」

 

この夏、ほぼ全員が水中での行動できるよう訓練をして、訓練を終えた者は全員1分以上水中での行動ができるようになった。わざわざ自分が殺られる可能性が上がる水中に行くほど殺せんせーは愚かではない。

 

「なるほど、既に何人かはプールの底か……烏間先生ー」

 

【こちらも聞いたところだ】

 

2人がため息をはくと同時にタイムアップの音が鳴った。

 

 

「で、今回の報酬なんだが」

 

「あぁ、私はそれいいよ」

 

「あたしもー」

 

「えと、残念だけど、私も」

 

理由を聞くと捕まえられた3人の間で捕まったら今回の報酬は無しとしていた

 

「……なら、俺が決めるがいいか?」

 

「「「‼︎」」」

 

3人がゴクリとなる。が

 

「神崎、何か俺にして欲しい事はあるか?」

 

「え?」

 

なにぃという言葉が聞こえてくるかのような顔で皆見る

 

「お前ら、気づかなかったのか?……烏間先生、今回1度でも神崎を捕まえたか?」

 

「いや。最後の1分で奴が捕まえいたが、それ以外は捕まえてない」

 

「オンラインの戦争ゲームに役に立つかもって風見君から色々隠れ方とか逃げ方とか聞いて今回使えるかなってやってただけなんだけど」

 

「それで実戦で活かせるのは大したもんだ。これは文句ないだろ」

 

うぅと唸るが認めるしかない。

 

「なら、今度またゲームしよう。いいゲーセン知ってるから、修学旅行の時の班の皆で」

 

とこれであるほっした女子3人と影でよっしゃあ!とガッツポーズをする男子1人。そして

 

(……2人の方が良いって思ってるのは何でだろ)

 

と考える女子1人があった

 




原作より神崎を多少ですが強化しました

1人進めるが、まだヒロインには入れません←おい



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学習の時間

神崎とのゲーセンでの話はイトナ編がちゃんと終わった後になります



ぱらりとひらいていた新聞を閉じる。連絡を入れるため携帯をだす。

 

「今見たんだがこれ、そういうことか?」

 

【あら、もうわかっちゃったの】

 

その言葉が答えを言っているものだった。同時に不思議に思う

 

「なんで受け答える?俺に話す行為はあまりしない方がいい的な事はもういわれてるんじゃないか?」

 

【初めから気付いてるのに話さないというわけでにもいかないでしょ?それにハッキリと答えは言ってないしね】

 

「何が起こるかはわからんが、とりあえず俺は……いや、きっと俺達はいつも通りになるぞ」

 

少しだけ沈黙し、再びJBは言う

 

【邪魔をしない程度に好きにしなさい】

 

「どんな注意だよ」

 

 

 

 

「2学期も滑り出し順調!生徒達との信頼関係もますます強固になってますねぇ」

 

ここ最近の生徒の成長とそれぞれの交友関係の広がりがうれしく浮き足立つ殺せんせー

 

「今日も生徒たちは親しみの目で私を見つめ……」

 

ガラリと戸を開ければいつもの生徒の笑顔…ではなく

 

「汚物を見る目⁉︎」

 

「仕方ないと思うぞ殺せんせー……ホラ」

 

雄二が渡したの1枚の新聞紙。地方記事だがそこにはデカデカ『下着ドロ再び出没‼︎』と書かれている。

 

「“多発する巨乳専門の下着ドロ。犯人は黄色い頭の大男。ヌルフフフ…と笑い、現場には謎の粘液を残す”これって完全に殺せんせーよね」

 

「正直ガッカリだよ」

 

「こんな事してたなんて」

 

記事を読みながら冷や汗をダラダラと流しだす殺せんせーは当然弁解しだした

 

「ちょ、ちょっと待ってください‼︎先生まったく身に覚えがありません‼︎」

 

触手をぶんぶん横に振り、必死の形相である

 

「じゃ、アリバイは?この事件のあった昨日深夜、先生どこで何してた?」

 

言われて殺せんせーは昨日の事を思い出すが

 

「何って高度1万m〜3万mの間を上がったり下がったりしながらシャカシャカポテトを降ってましたが…」

 

「「「「「誰が証明できんだよそれをよ‼︎」」」」」

 

「つかなぜそんな事をする?意味がわからないんだが…それにアリバイは最初からないに等しい。先生なら大体マッハで戻る事も可能だしな」

 

雄二の言葉に大半が賛同した

 

「待てよ皆‼︎決めつけてかかるのはひどいだろ‼︎」

 

皆のまとめ役でもある磯貝が庇うと殺せんせーも多少だがほっとしていた

 

「殺せんせーは確かに小さな煩悩はいっぱいあるけど、けど今までやった事といっても…エロ本拾い読みしたり…水着写真で買収されたり……狂った用にグラビアに見入って『手ブラじゃ生ぬるい、私の触手ブラをさせて下さい』と要望ハガキ出したり………」

 

「…磯貝。いい」

 

「風見………」

 

「もう、いいんだ」←めっちゃイケボかつイケメン顔

 

「……先生、正直に言ってください」

 

「磯貝君まで⁉︎というかなんでちょっといいドラマ風にしてるんですか⁉︎納得いきません⁉︎」

 

ついに最後の味方もいなくなり、なら身の潔白を証明すると言う

 

「先生の理性の強さを証明するため、今から机の中のグラビア全部捨てます‼︎」

 

「多分また回収するんじゃないか?潔白できたと思ったら」

 

ギクぅという音がした気がしたがあえて無視して皆準備室に向かう

 

 

「見なさい‼︎机の中身全部だし…て…」

 

机の中のグラビア写真集を出していると紐状の物を見つけ、つい引き上げるといくつかブラジャーが出てきた。なぜと殺せんせーに再び冷や汗が出てくる

 

「ちょっと‼︎皆見てクラスの出席簿‼︎ 女子の横に書いてあるアルファベット……全員のカップ数が調べられてるよ」

 

岡野は皆に出席簿を見せるとたしかにはっきりと書かれていた。ただ例外もある

 

「私だけ永遠の0って何よこれ‼︎」

 

茅野だけは狙っているかのように違う書き方をされていた。意味は…いうまでもない

 

「なかなかの名作だぞ。誇っていい」

 

「ケンカなら買うよ風見君‼︎」

 

意味を理解していなかった風見はコードネームみたいなものかと思い本心で言っていた。そんなコントを横に前原がページを捲っているとまた新たに発見した

 

「最後のページ……街中のFカップ以上のリストが」

 

ドンドン出てくる疑惑に殺せんせーへの視線が厳しくなり、信頼が下がっていく。

 

「そ、そうだ!い、今からバーベキューしましょう皆さん‼︎放課後、やろうと準備しておいたんです‼︎ほら見てこの串‼︎美味しそ〜で…しょ…」

 

殺せんせーはどうにかしようとかなり強引に話題を変えようとクーラーボックスから串を取り出す。だが出てきたのは肉と野菜が刺さった串ではなくブラジャーが刺さった串だった

 

「「「「「………………」」」」」

 

クラスの目が完全に死んだ瞬間であった。自分の評価がドン底になってしまった事を感じた殺せんせーはの顔は青ざめていた。

 

 

 

終わりのベルが鳴り、今日の授業は全て終わった

 

「きょ、今日の授業は…ここまで」

 

とぼとぼと力なく教室をさる殺せんせーを見とどけ、しばらくして渚が教室の外をキョロキョロと見る

 

「大丈夫、もういない。聞かれてないと思う」

 

「うむ。なら、会議といこうか」

 

全員が雄二の机による

 

「にしても、ビビるわ。ほとんど風見の言った通りじゃん」

 

「殺せんせードヘンタイ疑惑の擁護って言われて新聞をラインに送られてきた時はたしかに目を疑う内容でも、先生ならあり得るって思ったけどさ」

 

「先にこんなにも色々見せられてたら逆に冷静になって違和感がバリバリなのがわかるよね」

 

と言って見せてくるのはバスケットボールにつけられたブラジャーに先生が来る前に準備室の机の中にあったブラジャーを発見した時の写真などを見せてくる。

 

「名簿にも細工はあるだろうと思っていたが、まさか串もとはな」

 

「何も知らない状態で見たらドン引きだけど、雄二君が色々教えてくれてたからね」

 

そう、実は皆とっくに今回の事件について知っていた。雄二が誰よりも先に情報をキャッチし教師以外にその事を連絡そして先生がいない間にさまざまな事を調べていた。ただ、それを殺せんせーに言わず、あえてこのような態度をとるよう指示したのは

 

「この間のフリーランニングの返礼だ」

 

「たまに思うけど雄二って変なところを気にするよね」

 

未だに根にもっていた小さな事であった。

 

「というか、ここまで見せたら正直言って俺が犯人と疑うと思ったんだが…」

 

と言うと全員何言ってんだこいつといわんばかりの顔になる

 

「いや、雄二君しないでしょ」

 

「うん」

 

「これもよくあるけど、雄二って意外と自分の評価が低いよね」

 

「それにブラジャーの隠し場所とかは岡島君の推理でしょ。岡島君なら仕方ないって」

 

「そうそうって俺なら仕方ないってなんだよ⁉︎」

 

雄二は目をパチクリとさせ、フッと軽く笑う

 

「話しを戻そう。今回の件、もうわかると思うが不自然な点が多すぎる」

 

 

不自然な点。

1、普段雄二でも気づかない程に忍び寄ることができる相手がこんなにもモロバレの行動をするのか?

2、証拠を残しすぎている事。いくらうっかりが目立つ殺せんせーでも多すぎる。また見つけやすい場所に置いてあるのも疑問

3、E組の教師でありたいと思っている殺せんせーがこのような行動に出れば信用がなくなるなど容易に判断できる。

4、いくら殺せんせーのスペックが高くとも、短期間で街中の女性のカップ数を測る…しかもかなりハッキリとした情報を得るのは現実的ではない

5下着ドロが出て3日目の新聞は13面だがデカデカと載っている。地方紙とはいえ現代日本でさまざまな情報が出る中こんな事をわかりやすく載せるのはおかしい

 

「以上を考えると意図的に情報操作をしている奴がいる」

 

「でも、そしたら一体誰が…」

 

「それは…」

「偽よ」

 

雄二が言う前に後ろから声がしてみると不破がフフフと笑いどこかワクワクした顔になっている

 

「にせ殺せんせーよ‼︎ヒーロー物のお約束!偽者悪役の仕業だわ‼︎」

 

「いやまぁ、実際偽者だろうが…お約束なのか?」

 

「うんまぁ、そうだね」

 

聞かれてそうだと渚に言われ、そうなのか…顎に手をつける雄二の目は無駄に真剣であった

 

「犯人は殺せんせーの情報をもった何者か‼︎律に助けてもらいながら手がかりを探してみる」

 

「…その線だろうね何が目的かわかんないけど、こういう噂が広まって賞金首がこの街に居られなくなっちゃったら元も子もない。俺らの手で真犯人ボコってタコに貸し作ろーじゃん」

 

「ただ、全員で動くのは得策じゃないな俺と調べる担当の不破、それとあと数人だな」

 

協議の結果、カルマ、渚、寺坂、茅野、不破、雄二となった。寺坂は体力を生かす為。カルマは頭脳、渚は暗殺者の腕を見込んで雄二が決めた。ちなみ、茅野は雄二がビビる程の殺気を纏い、同行を頼まれた為である。雄二曰く、あの執念もとい怨念みたいなものはどこからくるんだ…とのこと

 

 

結局、犯人の情報は新聞に書かれている以上の事はわからなかったが次に狙うであろうポイントはわかった。その夜、その場所に集合してフリーランニングを活かして侵入した。

 

「某芸能プロの合宿施設でこの2週間は巨乳を集めたアイドルグループが新曲のダンスを練習してる。その合宿は明日には終わる真犯人ならこの極上の洗濯物を逃すはずがないわ」

 

不破の説明を受けなるほどと納得する。…1名を除いて

 

「妙だな」

 

「ん?なにが?」

 

「この街で下着ドロが多発してるのは記事にもなってる。なのにわざわざここで合宿してわざわざ外に干す…おかしくないか?」

 

と言われて渚も気づいた。だがそれをこれ以上考察する前に事態が動く

 

「あっ、あそこ!殺せんせーがいる」

 

言われたところをみると忍者のような服装に黒いサングラスと頭巾をつけた殺せんせーがいた。身を隠す為なのだろうがどうみても盗み来た者のカッコである

 

「見て‼︎真犯人のへの怒りのあまり下着を見ながら興奮してる‼︎」

 

「あいつが真犯人にしか見えねーぞ‼︎」

 

「あんなだからこういうことが起こった時に疑われるのがわかんねーのか?」

 

ごもっともなツッコミをしているとカルマが気づき、指をさす。素早い身のこなしをして高い壁を登って降りる。その人物は大柄で黄色いヘルメットをつけている。バイザーもあって顔が見えないがその動きで只者ではないのはわかる。下着に近づき、持ち取ろうと手を伸ばした瞬間

 

「捕まえたー‼︎」

 

マッハでつめより触手で腕を拘束しそのまま重心をかけて押し倒す。

 

「よくもナメたマネしてくれましたね‼︎押し倒して隅から隅まで手入れしてやるヌルフフフ」

 

どったんばったんと触手を絡めてながら犯人ともみあう様子はセリフも相まって少々危ない光景である

 

「俺ら来た意味あったかコレ」

 

寺坂が言ったあと隠れる必要もなくなり先生のもとへ行く

 

「さぁ、素顔を見せなさい偽者め‼︎」

 

ついにヘルメットを掴み奪うように取った。だが、その正体を見て驚いた

 

「あの人…確か…」

 

「烏間先生の部下、確か鶴田だったはず」

 

なぜ彼がと動揺して反応が遅れた殺せんせーを周囲の物干し竿が干してあったシーツごと高く伸び先生の周囲を取り囲む

 

「国にかけあって烏間先生の部下をお借りしてね、この対先生シーツの檻の中まで誘ってもらった」

 

隠れていた今回の事件の本当の犯人が現れた

 

「君の生徒が南の島でやった方法を参考にさせてもらったよ。当てるよりまずは囲むべし」

 

「なるほど、妙だとは思ったがお前の差金だな、シロ」

 

「そういう事。街で下着ドロを重ねたのも殺せんせーの周囲に盗んだ下着やらを仕込んだのもね…あぁそうそう、そこの彼を責めてはいけないよ仕上げとなるこの場所だけは、代役が必要だったのでね」

 

「……すまない。烏間さんのさらに上司からの指示で断れなかった」

 

鶴田は申し訳なさそうにうなだれて謝罪をする

 

「チッ、どこもおんなじだな。烏間先生は今回の事は……知ってるわけないか」

 

言えば反発してくるなど容易にわかる。そんな面倒な事を上が起こすわけがない

 

「先生が俺たちの信用を取り戻す為なら、多少不自然でもここにくる事も想定済みってか?」

 

「フフフ、理解が速くて助かるよ。お礼に、中の様子がわからないから私の戦術を細かく解説してあげよう」

 

自慢するかのようにシロは説明をしだす

 

「シーツに見せて囲っていたのは対先生繊維の強化布とても丈夫で戦車の突進でも破けないから君が何かしようとしても無駄だよ。ちなみに匂いは洗剤臭でごまかした」

 

「俺らがくる事も想定済みか」

 

「そうさ。イトナは触手に刃先が対先生物質で出来たグローブを装着している高速戦闘にも対応するため混ぜ物をしてるから本来のナイフに比べ効果は薄れるが防御するため触手に触れるたび、じわじわダメージを与える。そしてイトナは常に上から攻撃して標的を逃さない。穴を掘って逃げようとすれば大ダメージを負う」

 

「……ご丁寧に説明ありがとうよ」

 

説明を聞き終わり、雄二はため息が出る

 

「さすがにこれではどうしようもないだろ?」

 

「あぁ、そうだな」

 

と頭をかいてシロを見下すように見て

 

「合格ライン50点で甘く評価して40点…赤点だな」

 

「何?」

 

そう口にするとシロも渚達も困惑する

 

「ちなみに、辛口の評価だとどうなんの?」

 

「15点だな」

 

「へー0点じゃない上に2桁なんてーよかったじゃん」

 

カルマも煽りだし、表情はフードで隠されてわからないがシロがキレているのはわかる

 

「…理由を聞こうじゃないか」

 

「1つ目先生相手に同じ手を使うのは期間を離した方がいい新しい作戦をもう一度すぐに使うのはリスクがある。2つ目先生相手にじわじわダメージを与える攻撃厳禁。目が慣れてしまう可能性があるやるなら一撃一撃が致命傷になりかねない攻撃だ毒とかな…まぁ、先生に通じる毒があるか知らないが…3つ目先生は生徒に攻撃できない。なら上から攻撃せず上も塞いで狭い中で畳み掛けるような攻撃にする方が効果的だ」

 

雄二が言うたびにシロの手に怒りが込められていく

 

「そして」

「4つ目、先生も学習するんです。生徒が日々成長していくなか、私も成長しなくてどう生徒に教える事ができるでしょうか。1学期だったらともかく、この期間で様々な作戦を仕掛けられてきましたし、しかもイトナ君の攻撃は3回目流石に目が慣れます。とまぁ、ここまでが風見君の考えでしょうが…5つ目、夏休みの完全防御形態の経験から、先生はひとつ技を学習しました」

 

殺せんせーが余裕ある感じで話し出したという事はもうイトナは仕留める事はできない。そして檻の内部から強い光が出だし、強大なエネルギーを感じる。それはシロも予想外だったのか驚いている

 

「全身ではなく、触手の一部だけを圧縮し、エネルギーを取り出す。…憶えておきなさいイトナ君先生にとって暗殺は教育、暗殺教室の先生は、教えるたびに強くなる」

 

瞬間、世界から音が消えた。だが本当に一瞬。とてつもない衝撃波おき、対先生繊維の檻を破壊し、余波で周囲の窓ガラスが壊れ、イトナは近くで余波を受けた為吹っ飛んだ。力なく落ちるイトナを抱き抱えてキャッチして静かに地面に下ろした。

 

「そういう事ですシロさん。この手の奇襲はもう私には通じませんよ。彼をE組に預けておとなしく去りなさい」

 

ビッと触手を向けてそう言う。これだけで終えればいいものの

 

「あと、私が下着ドロでないという正しい情報を広めてください」

 

「私の胸も正しくはび、Bだから‼︎」

 

「しまらねぇな。まぁE組らしいけどな」

 

そしてシロは…表情は相変わらず見えない。だが何かを諦めたか、冷めたような、そんな表情をしているのではないかと思える態度をとっていると

 

「い…痛い、頭が、脳みそが、裂ける…‼︎」

 

イトナが急に頭を抱え目の焦点が合わなくなり、苦しみ出す

 

「度重なる敗北のショックで触手が精神を蝕み始めたか。……ここいらが限界だねこれだけ私の術策を活かせようでは」

 

何を言っいるのか、雄二はすぐに理解した。それは、己を重ねるように

 

「イトナ、君の触手を1ヶ月健全に維持するのに火力発電所3基分のエネルギーが要るこれだけ結果が出せなくては組織も金を出さなくなるよ。…君に情が無い訳ではないが、次の素体を運用するためにも見切りをつけないといけない。さよならだイトナ後は1人でやりなさい」

 

「待ちなさい‼︎あなたはそれでも保護者ですか‼︎」

 

「教育者ごっこしてんじゃないよモンスター。何でもかんでも壊すことしかできないくせに。私は許さない……おまえの存在そのものを。どんな犠牲を払ってもいいおまけが死ぬ結果だけが私の望みさ」

 

憎悪と悪意が混じったその言葉は彼の見えない顔の表情がわかるようだった。そして

 

(⁉︎なんだあのジャンプ力…人間…なのか?)

 

高い壁をゆうゆうと一飛びで登るシロに驚愕を隠せないがそれよりも大変な事が起こる

 

「それよりいいのかい?大事な生徒をほっといて」

 

「伏せろ‼︎」

 

雄二が指示しながら皆に覆い被さり、殺せんせーが暴走したイトナの攻撃を防ぐ。

 

「ガァあぁぁあっ‼︎」

 

獣のように吠え、一瞬で夜の闇に消えた。静寂だけがその場に取り残された

 




ちなみに
かけませんでしたが雄二が殺せんせーに伝えてないのは意趣返しだけでなく、今回のシロ作戦を邪魔しない為でもあります。烏間はどうせ知ってるだろうと思い話してないです。もし最初からシロの作戦だと知っていたら殺せんせーにはそれとなく烏間にはハッキリと教えていました。


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助ける時間

シロがイトナを見放したのは正直酷いですが維持し続けると100億もらっても赤字というのを最近知りました
そうなんだ……でも結局人権無視なのは変わんないけどね!


「堀部糸成、これがあいつの正式な名前か」

 

「そう。そして彼を殺すのが今回のミッション」

 

資料を全てみて、彼の過去と触手を得た経緯を理解し、その彼の抹殺にあてられた雄二は

 

「また俺に同級生を殺せってか?ふざけるのも大概にしろ」

 

「竹林孝太郎の時とは訳が違うの。この騒ぎが広まってしまえば、どうなるかくらいわかるでしょ?現状は人的被害はないけど、このままいけば時間の問題よ。……それに、すぐに殺す必要はないわ」

 

「どういう事だ?」

 

「まず言っとくけど上の連中はね、堀部糸成も、それに触手を与えたシロも組織も信用してない。あの怪物と触手の専門家だから雇ってるだけ。そして今回そのシロの要請で泳がせているの」

 

「……こんどは何をする気だあの野郎」

 

「悪いけど、これ以上は教えられない。あとはあなたのタイミングで処理しなさい」

 

このような依頼が出たのには当然だが理由がある。この数日で携帯電話ショップが破壊されている。堀部糸成があの夜姿を消したその日からだ。まだニュースになってないが今日中に発表されるだろう。犯人が誰かなど言うまでもない。

 

「1ついいか?」

 

「何かしら?無理とかはなしよ。いくら触手持ちでも、弱体化してるならいくらでもやりようはあるでしょう?」

 

「いや、もし………」

 

 

 

その日遅れて雄二が教室につくと律がニュースを見せており、皆がそれをみていた

 

「おう、風見これみろよイトナが……」

 

「おれも新聞で見たよ。携帯電話ショップが立て続けに破壊されている。複数犯って警察は言ってるがおそらく情報統制だろう。破壊活動はイトナがいなくなってからだ。そうだろ、殺せんせー?」

 

「ええ。使い慣れている先生にはわかりますよ。この破壊は触手でないとまず出来ない」

 

「でもどうして携帯ショップばかりを?」

 

「……いま重要なのはそこじゃない。これ以上放置していたら人的被害がいずれ出るという事だ。ケガで済めばいいが、死者が出たら当然だが政府も隠しきれない。触手の情報とともに暗殺のことも伝わって、最悪ここでの授業、俺達の生活にも関わってくる」

 

悪くなる未来を言われ全員の顔が青くなるなか

 

「彼を止め、保護します。…担任として、責任を持たなければ」

 

殺せんせーがそう言うも皆否定的な意見が出る。つい先日まで商売敵のような存在で巻き込まれて命の危機になった事もある。しかもイトナを率いていたシロは他人を全て捨て駒扱いしている。そんな奴が何をしてくるかなどわかったものではない。だが

 

「……それでも担任です。“どんな時でも自分の生徒から手を離さない”先生は先生になる時、誓ったんです」

 

「…はぁ、殺せんせーならそうくるとは思ってたよ。でも、それ俺もついて行っていいか?」

 

「俺もいくぜ。あいつには借りもある。何よりシロにいいようにされた仲だ」

 

雄二、寺坂がそう言うと自分もと言いだし、結局は全員で行く事となった

 

 

ロケットが突っ込んできたかのような速さで携帯ショップに突撃し扉とその周囲の物を破壊して、着いてすぐに周囲の携帯を触手を振るっていくつか破壊する。そのたびに自身の命と体力が減っていくのを感じつつ触手を暴れさせるのを止めるがすぐに破壊する

 

「キレイ事も、遠回りもいらない。負け惜しみの強さなんてヘドが出る」

 

触手でいくつか携帯電話を掴んでそれをグシャリと破壊する。彼は気付いてない。いま自分が心の中で言うはずの言葉が声に出ていることにそれほどまでに疲弊している

 

「勝ちたい。……勝てる強さが欲しい」

 

「やっと人間らしい顔が見れましたよイトナ君」

 

声に気付いてそちらを見ると殺せんせーとE組メンバーがそこにいた

 

「感謝しろよ。おまえが人的被害を出さないように烏間先生に頼んでここの警備員を退散させたんだからな」

 

雄二はイトナを探す為に現在被害にあった店をマッピングしそこから次に狙うであろう店をピックアップした。だが当然だが警察もバカではない。同じように被害にあった店の場所から次に狙うであろう場所を見極め警備員を置く。故に、雄二は烏間に頼みそれを防いだのだ。もし来ていたら最低でも気を失うレベルのダメージを負っていただろう

 

「スネて暴れてんじゃねーぞイトナァ。テメーにゃ色んな事されたがよ、水に流してやるからおとなしくついてこいや」

 

「…うるさい」

 

寺坂の言葉などどうでもいいと言わんばりに残った力で触手を動かすがキレがなくなっているのはよくわかる

 

「…兄さん、勝負だ…今度は…勝つ」

 

「殺せんせーと呼んでください私は君の担任ですから」

 

「というかその設定まだあったのか?いい加減どうかと思うぞ?コレが兄だぞいいのかおまえ?」

 

「コレとか言わないでください⁉︎普通に傷付きます‼︎………おほん。まぁ勝負は受けてもいいですが、お互い国家機密なんですからどこかの空き地でやりましょう」

 

「国家機密だってわかってるならもうちょい普段からそれらしい行動しろって烏間先生にほぼ毎日言われてる奴が何言ってんだ」

 

「シャラップ‼︎」

 

雄二はへいへいと言って黙るが生徒達にはウケたようである

 

「暗殺が終わったらその空き地でバーベキューでも食べながら皆で先生の殺し方を勉強しましょう」

 

「そのタコしつこいよ〜。ひとたび担任になったら地獄の果てまで教えに来るから」

 

気の抜けたような感じでカルマが言うがそれは身をもって受けた経験と殺せんせーへの信頼からくるものだ。

 

「当然です。目の前に生徒がいるのだから…教えたくなるのが先生の本能です」

 

触手の力が抜けいくのが素人目でもわかった。このまま彼の心の扉を開き、触手を取り除く……はずだった

 

「逃げろ‼︎」

 

時すでに遅い投げ込まれたものが爆発し大量の粉末が飛び出す

 

「(煙幕弾?違う粉爆弾か)目と鼻を塞げ‼︎ゲホっ」

 

そしてただの粉爆弾ではない。これは対先生物質を粉状にしたもの。殺傷能力は低いが触手を溶かし弱体化はできる。そこに外から一斉射撃が行われ対先生弾が殺せんせーを襲う。当然避けられるがこれはブラフ。真の目的は

 

「がっ…」

 

同じく触手が溶かされただで弱っていたイトナはどうすることもできず捕獲網に捕まえられそれを発射した砲台付きのトラックに引っ張られていく触手で強化されていなければすぐに死んでしまうだろう。そして死なないにしても、相当のダメージが入る

 

去っていくトラックにはシロとシロと同じく白いフードをつけた集団が乗っていた。

 

「クソっ舐めやがって」

 

ゲホゲホと咳き込みながら様子を見るどうやら怪我人はいないようだ。殺せんせーは全員の無事を確認するとイトナを助けに飛んでいった

 

「さて、正直ここまでされて俺も憤慨なんだが、おまえらはどうだ……って聞くまでもなかったな」

 

「おう、当然だろうよ」

 

全員が怒り浸透である。

 

「…あンの白野郎〜…とことん駒にしてくれやがって」

 

早速行動を起こす為簡単な作戦会議をし、トラックが逃げた方に向かった

 

 

トラックを上空で探していや殺せんせーは見つけ出す。停止しており、周囲には不自然なほど人がいない。どう見ても罠だが構わず地上に降りてイトナを捕らえているネットをどうにかしようと触れようとしたが止まる。捕まっているイトナの触手がネットに触れて少しずつとけているからだ。そこからこのネットが対先生繊維であると理解した

 

「お察しの通り。そしてここが君達の墓場だ」

 

シロがそう言って合図を出すと周囲の木々からライトが当てられる。以前教室でも使われた殺せんせーの動きを一瞬止める圧力光線。そしてトラックと木々の上から狙いを定めているがその砲身が向けられているのは殺せんせーではない

 

「撃て。狙いはイトナだ」

 

そしてあえて殺せんせーに聞こえるようにシロは指示を出す。発砲音と共に大量の対先生弾がイトナに向かう。どうにか反応して自身の服と風圧でイトナを守る。そして防御しつつハサミでネットを切ろうするが

 

「無駄だよチタンワイヤーを対先生繊維でくるんだネットだ。いくらおまえでも弾を防ぎつつ救い出すのは難しいよ」

 

シロの言うとおりなかなか切れない。その間も攻撃は続く。弱体化したイトナの触手が破壊されてしまえば彼の命は失われてしまう。故に先生は防御するしかない。だが先程のダメージと光線によって動きづらい中で守り続けるのは至難だ。

 

「今までの暗殺で確認は取れている。おまえは自分への攻撃は敏感に避けるが自分以外への攻撃は反応が格段に鈍い。しょせんは自分の事しか大事にできない身勝手な生物なのさ」

 

シロの計画は完璧…………

 

 

 

 

 

 

 

「…身勝手ね。おまえが言うか、そのセリフ」

 

にはほど遠い。いつの間にか近くにいた雄二に驚くがその瞬間に木の上にいたシロの部下がカルマと前原の蹴りで落とされた。突然のことに

驚く暇もなく落ちたとこには布を広げた生徒がキャッチしそのまま簀巻きにして縛り上げる。フリーランニングの成果で全員が素早く木に登る。部下達は全員が対先生繊維の服を着ている。だが、この服は先生では触れられないし当然掴めないが、普通の人間には掴みやすくなっている。それを逆手にぽんぽんと落とされ簀巻きにされていく。

 

「こいつらっごうぅ!」

 

「きさま…がぁ!」

 

「う、うわああああ!」

 

「トイガンの弾と同等なら目を狙えよ」

 

トラックに乗った3人はあっという間に雄二に倒される。

 

「…おまえら、なんで…」

 

かすれた声でイトナは問う。

 

「カン違いしないでよね。シロの奴にムカついてただけなんだから殺せんせーが行かなけりゃ私達だってほっといてたし」

 

「…速水がカン違いしないでよねって言ったぞ」

 

「生ツンデレは良いものだね」

 

「あそこまでリアルなツンデレは俺も初めてだな」

 

意図して言ったわけではなかったが後方の岡島と孝太郎、前方の雄二にからかわれて速水はちょっと赤くなっていた。ちなみにイトナを捕らえていたネット付きの砲台はすでに雄二と入れ替わりでトラックに乗っていた殺せんせーが根元から外して分解していた

 

「さて、雄二〜今回は何点?」

 

「甘口辛口ともに0点だ。前回は俺らの介入を意識してたくせして今回はない。学習能力が無いのかおまえ?あと、部下は軍人じゃないな?どうせここまでするなら軍人にしとけだから訓練してるとはいえ学生にいいようにされるんだ」

 

「その通りです。どれほど用意周到に計画を練ろうとも、生徒達を巻きこめばその計画は台無しになる。まずその事に早く気付いた方がいい」

 

雄二と殺せんせーの指摘を受けたシロは手を顎にあてる

 

「モンスターに小蝿たちが群がるクラスか…大層うざったいね。だが確かに私の計画は根本的な見直しが必要なのは認めよう」

 

「否定せずようやくそこに気づくなんて大したもんじゃないか、えらいえらい」

 

「黙れよ駄犬。そもそも君がいなければこんなにも鬱陶しくはなってない」

 

「前言撤回。人のせいにしてるようじゃ、永久に何も得られない」

 

睨み合いが少しだけあったが、すぐに「フン」といって踵をかえしてトラックに乗り込む。部下達の武器を取り上げた後解放すると全員悔しそうに乗り込みエンジンをふかせる

 

「くれてやるよそんな子は。どのみち2~3日の余命、皆で仲良く過ごすんだね」

 

窓を開けてそう言うシロに雄二は告げる

 

「一応言っておくぞ、烏間先生からだ」

 

正確に言えば烏間ではなくもっと上(・・・・・・・・・・)からなのだがこの場で言えるわけないのでそういう事にする。

 

「政府はあんたらの組織を信用してない。ここまで失敗したんだ人のせいにする前にまずその信用をどうにかした方がいいんじゃないか?」

 

「もとより信用(そんなもの)必要ない。最終的に結果さえあればそれでいいのさ」

 

「ああそうかい」

 

そうしてトラックは去っていく。残る問題はイトナの触手だ。

 

(ここまではまぁ、予想通りだが)

 

 

 

 

「もし、人的被害が出ないプラスあいつの触手を取り除いて、あの教室に来たら、その時は処理を無効にできるか?」

 

「………正直言って難しいわよ。上の説得も堀部糸成の方も」

 

「承知の上だ」

 

ハァとJBはため息をだす。

 

「上の相手は私なのよ、もう」

 

と言いつつやってくれる事がわかり雄二は感謝した。

 

 

 

(死なせねーよ。助ける。……これでいいよな、麻子?)




ちなみに
烏間とJBはよく雄二の報告をする為よく電話をしていますが一度だけ直接あっています。その時お互いに感じたのは
「なんだか苦労人(同類)の気がする」
です。烏間 &JBほんと苦労人ですわ。
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いつかの時間

イトナ編スパートでも短い。(T-T)


どうにか網から出したイトナを寝かせたがかなり衰弱している。

 

「まず確認させてくれ先生、シロが言ってたのは本当か?あと2、3日の余命ってのは」

 

雄二の質問に殺せんせーはうなずいて肯定した

 

「なら、どうにか外すことはできないのか?」

 

「外せないことはありません。しかし、触手は意思の強さで動かすものですイトナ君に力や勝利への執着がある限り、触手は強く癒着して離れません」

 

「つまり、こいつの執着を消せば、どうにかなるんだな?」

 

「ええ。しかし何度も言いますがあまり時間もありません。そうこうしている間に肉体は強い負荷を受け続けて衰弱していき最後は触手もろとも蒸発して死んでしまう。2、3日と言ってましたが状況が変化したり、彼の触手がまた暴走した場合もっと早くに死ぬ可能性もあります」

 

執着を消すにはそうなった原因をもっと知らないといけないが、時間はなく、おまけに心を閉ざした相手が素直に身の上話をするとも思えない。……唯一それを知っているのは雄二だが、どう知ったかをを問われれば答えられない。故にどうしようか思っていると不破が声を出す

 

「あのさ、実はどうしてイトナ君がケータイショップばかり襲うか気になってさっきまで律とやりとりしながら調べてたんだけど、そしたらここ…『堀部イトナ』ってここの社長の子供だった」

 

律が調べた情報を皆のスマホに見せる。『堀部電子製作所』世界的にスマホの部品を提供してた町工場だが

 

「一昨年、負債を抱え倒産……社長夫婦はイトナを残して雲隠れ…か。なるほどな、だいたい想像ができてきたな。こいつが、イトナが力を求めて、勝利に固執する理由が」

 

「ケッ、つまんねー。それでグレただけって話か」

 

「寺坂!」

 

寺坂の言い方は褒めたものではない。磯貝も注意をしようと声を出すが、寺坂は気にも止めず続ける。

 

「皆それぞれ悩みあンだよ。重い軽いはあンだろーがよ……けどそんな悩みとか、苦労とか、わりとどーでもよくなったりするんだわ」

 

寺坂は吉田と村松の肩を叩き、イトナの首根っこを掴んで引きずる

 

「俺等んとこでこいつの面倒見させろや。それで死んだらそこまでだろ」

 

寺坂、吉田、村松、狭間。寺坂グループで面倒を見るようだが

 

「…寺坂、俺もいいか?」

 

「はっ、お人好しのテメーなら言うと思ったよ…勝手にしろ」

 

「なら、まずはこいつの触手だな。気休めだが少しでも抑えるためだしんどいだろうが、この対先生ネットをリメイクしてバンダナにしよう」

 

 

ささっと作業に取り掛かり行動する。夜は深まり、この辺りは静けさが増す。そんな中、ふらふらのイトナを加えて6人はアテもなく歩く。そう、本当にアテもなく。

 

「多分無計画なんだろうなとは思ったが……なんつうか、残念だな」

 

「黙れや風見ぃ‼︎その可哀想な者を見るような目をやめろ‼︎」

 

「「いやお前が無計画だからだろ‼︎」」

 

「うるせー‼︎5人もいんだ、何か考えくらいはあると思ってもいいだろうが!」

 

「タコ並の逆ギレね」

 

「あぁ⁉︎アレと一緒にすんなや‼︎」

 

チームワークは0である。とりあえずまずは気を楽にしようと近くに村松実家兼ラーメン屋があるのでそこに行くこととした。肩の力を抜くという意味の食事としてラーメンはうってつけだろう。だが

 

「「マズい」」

 

それは基本的だが味も良くなくてはいけない

 

「おまけに古い。手抜きの鳥ガラを化学調味料でごまかしている」

 

「自慢気にナルトが中心にトッピングしてっけどこれスーパーによくあるやつだろ?」

 

「チャーシューもだ。おまけに安物」

 

「海苔の置き方テキトーすぎだろせめて汁に斜めにさせよ」

 

総合評価10点満点中

 

「本当はもっと下だが、クラスメイトのサービスで3点」

 

「四世代前の昭和ラーメンだな。なんとか食えるレベルだから1点だ」

 

「意外と知ってんなお前ら……いや、ツッコムぞ、なんで風見も食ってんだ⁉︎あとそのサービスやめろ‼︎逆に傷つくわ‼︎」

 

「ここはラーメン屋だろ、ラーメン屋食べて何が悪い」

 

「確かにそうだけどよ、その採点はねーだろ。ハッキリ0点って言う方がまだマシだぞ」

 

「寺坂〜お前もお前だからな」

 

とは言うものの村松もマズいのはわかっている。父親に何度もレシピを改良する様に言ってはいるが聞き入れてもらえないようだ

 

「んじゃ、次はうち来いよ。こんな化石ラーメンとは比較になんねー現代技術見せてやッから」

 

「ンだとォ⁉︎」

 

てなわけで次に来たのは吉田の実家兼モーターサイクル販売店。バイクを走らせる場所で思いっきり走らせる

 

「んなっ⁉︎ノーブレーキのカーブターンだとぉ⁉︎」

 

「こっちは手加減してんだ追いついてみろ!」

 

「んなろう…イトナ‼︎ちょっとスピード上げるぞ‼︎」

 

「かまわない」

 

なぜか雄二も乗って軽くレースをしていた。

 

「いいの?中学生が無免で?」

 

「まぁ、あいつの家のバイク屋の敷地内だし、いいんじゃね?風見もやたらテンション高くやってんのがビックリだけどよ」

 

スピードを肌で感じ、イトナのテンションもほんの少しだがあがっていた。

 

「行くぜ‼︎必殺高速ブレーキターン‼︎」

 

夢中になってやったがそれは後ろに人が乗ってる時にやるのはNGな技。イトナはぽーんと垂直に飛んで茂みにささっていた。

 

「バカ早く助け出せ‼︎このショックで暴走したらどーすんだ‼︎」

 

「いやいや、この程度じゃ平気じゃね?」

 

「おい気絶してんぞ。水でもかけるか?」

 

計画も何もない。ただ遊んでいるだけのようだと彼らを見守る他の生徒たちは言っていた。

 

続いては狭間。頭の良い彼女ならと思うが…どこから出したのか分厚い本を7冊出した。

 

「復讐したいんでしょシロの奴に。名作復讐小説『モンテ・クリスト伯』全7巻2500ページ。これ読んで暗い感情を増幅しなさい。あ、でも最後の方は復讐やめるから読まなくていいわ」

 

「「「難しいわ‼︎」」」

 

「狭間テメーは小難しい上に暗いんだよ‼︎」

 

「何よ心の闇は大事にしなきゃ」

 

「だが小難しいのは確かだ。ここはやはり漫画だろう。これなんてどうだ?『グラスホッパー』元は名作小説でそれを漫画化したものだ」

 

雄二が漫画を出してちょっとほっとする3人に狭間が口を出す。

 

「あら、それも良いわね。復習を題材にしてかつ暗殺者も登場するし、私たちにぴったり」

 

「「「テメーもか風見‼︎つか悪ノリしてんな⁉︎」」」

 

雄二にツッコミを入れているとイトナの様子がおかしくなる

 

「な、なんだ?」

 

「なんかプルプルしてんぞ!ちょっとふざけすぎてキレてんじゃねーか」

 

だが、狭間と雄二は表情を見て気づいた。目の焦点があっておらず、感情が高ぶっている。

 

「触手の発作だな」

 

「まずわ。また暴れだすよ」

 

抑えていたバンダナを裂いてまた触手が出てくる。動くたびにイトナは弱っていくのがわかる

 

「俺は、違う、適当にやってるおまえらと違う。今すぐ、あいつを殺して、勝利を…」

 

吉田、村松、狭間が逃げ出すが雄二と寺坂は逃げず正面からイトナに向き合う。

 

「おうイトナ、俺も考えてたよ。あんなタコ今日にでも殺してーってな。でもな、テメーにゃ今すぐ奴を殺すなんて無理なんだよ。無理のあるビジョンなんざ捨てちまいな……楽になるぜ」

 

「おー経験者は語る」

 

「うっせ」

 

「なら、俺からも言おう。イトナ、勝利を求めるのは良いがその考えつまらないぞ」

 

「あぁ⁉︎」

 

「勝利ってのはただの通過点だ。おまえは、勝利してどうしたい?何もないんだろ?それはな、ビジョンがあるって言わない。その場しのぎの現実逃避だ」

 

「黙れ…うるさい‼︎」

 

雄二の言葉にキレたイトナは触手で吹き飛ばそうとした。瞬間、天地が逆転していた

 

「グハッ」

 

「弱ってるのもあるんだろうが、目的のないビジョンを持ってるやつに負けるほど弱くはないぞ」

 

触手を掴み、相手の勢いを利用して叩き落とした雄二は上から見下すように告げる

 

「エホッ、エホッ‼︎」

 

「と、ちょっと強くやりすぎたか。吐きそうか、大丈夫か?」

 

「っぐ!」

 

イトナは睨みながら立とうとするも立ち上がれない。その気力も力もなくなってきている

 

「あ、吐きそうで思い出したわさっきの村松ん家のラーメン屋」

 

「あぁ⁉︎」

 

離れたところで寺坂に言われたことに村松はキレるが無視して続ける

 

 

「あいつなあのタコから経営の勉強奨められてるんだ。今はマズいラーメンでいい。いつか(・・・)店を継ぐときがあったら…新しい味と経営手腕で繁盛させてやれってよ」

 

「あぁ、そういえば受けてたな。吉田もそうだろう?いつか(・・・)役に立つかもしれないって」

 

寺坂はイトナに近づき、おもむろに頭を拳骨をした

 

「1度や2度負けたぐらいでグレてんじゃねぇ。いつか(・・・)勝てりゃあいーじゃねーかよ。タコ殺すにしたってな今、殺れなくていい。100回失敗したっていいんだ。3月までにたった1回殺せりゃ……そんだけで俺等の勝ち。そんで賞金もらって工場を買い戻しゃ、親も戻ってくらァ」

 

 

 

「…耐えられない。次の勝利のビジョンが出来るまで…俺は何をしてすごせばいい」

 

「おまえ、本気で言ってんのか?もうさっきから見てたろ。意外と生真面目なんだな」

 

雄二は親指で寺坂達を指す。

 

「あいつ等とバカやって楽しむんだよ。まだまだ先にある楽しい事をしないなんてもったいないだろ?生きてたら嫌な事も死にたくなるような事もある。それは事実だ。でも、それ以上に楽しいこともある。また嫌なことがあったらバカをしよう。ここはE組はそういうとこだ」

 

触手の力が抜けていく。暴走が収まり、目の色が正常になり穏やかになっていた。

 

「俺は、焦っていたのか」

 

「おう。だと思うぜ」

 

「焦った時は、少し立ち止まってみろよ気分変えてな」

 

触手がダランと力なく下がる。

 

「目から首着の色が消えましたねイトナ君」

 

離れて見ていた殺せんせーが近づきピンセットを触手にいくつか持ってこちらに来た

 

「今なら君を苦しめる触手細胞を取り払えます。大きな力のひとつを失う代わり…多くの仲間を君は得ます。殺しに来てくれますね?明日から」

 

皆が見守るなかイトナは先生を見て

 

「……勝手にしろ。この触手(ちから)も兄弟設定ももう飽きた」

 

吹っ切れて、つきものが落ちた様に笑みを出した。

 

 

翌日。いつもの教室に新しく仲間が正式に加わる

 

「よう、堀部君。体調は…良さそうだな」

 

「いや最悪だ。触手をあんだけ振り回して取り除いて翌日だ。それと、イトナでいい。急に変えられると逆に気持ち悪い」

 

「そうだろうな。なら、あらためてよろしくイトナ……そのバンダナ、昨日のとは違うが似てるな。気に入ったのか?」

 

「そんなところだ」

 

「おはようございますイトナ君。気分はどうですか?」

 

「こいつにも言ったが最悪だ。力を失ったんだからな。でも、」

 

指を先生に向け、元気のいい殺意を見せる

 

「弱くなった気はしない。最後は殺すぞ、殺せんせー」

 

「お、兄さんじゃなくなったな………ぶっちゃけどうだったんだ?先生と兄弟設定」

 

「…超、最、悪」

 

「にゅわんと⁉︎」

 

 

問題児、堀部イトナがようやくクラスの仲間入りした。

 

ちなみにJBはこの件を上に報告し説得に成功した。曰く、嫌味をこれでもかと言われたそうだ。

 

そしてその嫌味をJBから雄二が聞くことになるのはいうまでもない




前に書きましたが基本的に5000文字以上を目指して書いてますが最近なかなかいかねぇ

あと次の次で神崎達とのゲーセンの話にします。

まずはラジコンです


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紡ぐ時間

イトナ編はこれでようやく終わりですね……今回も短いけど


目の前にはターゲット、これだけ近いなら或いは…などという事は全く思わない

 

「そういうのまだいいんで。はい、次のテスト」

 

「ちゃんと解きながら暗殺できるのは大したもんだがそれで仕留められんならとっくにやってる」

 

「……お前はまったく仕掛けないんだな」

 

「やってできるならそうするがな」

 

イトナは殺せんせーから現在の学力を確かめる為と遅れていた勉学を取り戻す為の学習と小テストを受け続けていた。雄二は付き添いだ

 

「はい。風見くんは終了です。ここ最近は残って皆と遊んだり勉学を共にしたりと青春を楽しんでいてなによりです」

 

「まぁ、バイトが少し落ち着いてきたからな」

 

ここ最近、『ゴミ』の数が多くなっていた。正式入ってくる中で紛れ込むのがほとんどだが、その中には何かから逃げてきた様に必死なものもいれば、少し違うが同業者に狙われているものもいた。どうやら最近同業者があまり動けておらず。動ける者はろくな人材ではないらしい。だが、多くなったなったで一網打尽にしたりできる。そしてここ最近なかったバイトのない穏やかな日々に雄二本人は気付いてないがどこか嬉しくもあった。

 

「じゃ、先帰る。イトナ、あとガンバ」

 

「…………」

 

1日勉強漬けでストレスが溜まっているのだろう恨めしそうに雄二を見送った

 

 

 

翌日。鞄とは別に工具箱を持ってきたイトナは事前に作ったパーツを組み立てていた。

 

「イトナ君、それ、何作ってんの?」

 

「見ての通りだ。ラジコン戦車を作っている。…昨日は1日タコに勉強漬けにされてストレスが溜まった、腹が立ったからこいつで殺してやる」

 

方針と計8つのタイヤと特徴的な砲身は確かに戦車だ。それは見てわかるだが問題はそこではない。細やかな電子機器や配線があり素人の物とは思えない。

 

「スゲーハイテクに見えるんだけど⁉︎」

 

「すごいなイトナ…自分で考えて改造してるのか」

 

杉野と磯貝はイトナの作業を感心して言い、他の皆も釘付けになる。なにより手作りのラジコン戦車だ。男なら心惹かれて当然だろう

 

「親父の工場で基本的な電子工作は大体覚えた。こんなの寺坂以外誰でもできる」

 

「なんで俺をいちいちひきあいに出すんだ」

 

「そりゃあ……アレだからだろ」

 

少し遅れて雄二が教室に入ってそういう

 

「おい風見、そういうのは正直に言うのがやさしさだぞ。ハッキリバカと言ってやれ」

 

「そうだな。訂正だ寺坂…バカだからだろう」

 

「おまえらなぁ!」

 

イトナ&雄二。毒舌コンビ誕生の瞬間であった

 

「まぁ、それはいいとしてモデルは16式か?」

 

「いや、色々なのモデルにし自分なりの形にした。いわばオリジナルだな」

 

「なるほど、先生を狙うならある程度の走行力と走行音を気にする必要があるがそこはどうだ?」

 

「舐めるな電子制御を多用してギアの駆動音を抑える」

 

「ふむ。だがここは平地じゃないとこも多い。段差に耐えれるよう、タイヤはもう少し改良したほうがいい」

 

「む、確かになら…」

 

「なんか専門的な話になってきたぞ」

 

「雄二のミリオタが久々に炸裂してるね」

 

触手を持っていた時、イトナはエネルギーのほとんどを触手に吸い取られ、触手に意識を奪われて『強くなりたい』という思いだけを強くしていた。本来彼の強みはこの技術力だったのだ

 

「カメラの方は……問題なさそうだ。もともとこの手の装輪戦車は偵察に使う物だからなそこはしっかりしてないと」

 

「砲撃時の音も抑え奇襲にも使うことができる。当然だが銃の照準も映像と連動してコントローラーに送られている。これなら充分奴の急所に狙いを合わせられる」

 

「急所?」

 

「…あぁ、おまえらは知らないんだったな。シロから聞いた事だが教えといてやる…奴には心臓がある位置はネクタイの真下。そこに当てることができれば、1発で絶命できるそうだ」

 

新たに判明した弱点はここ最近の中でかなり重要な物だ。

 

(あのやろう、そんな情報こっちに無かった…自分達の暗殺が優位にできるようにわざと伝えてないな。JBに報告しとくか)

 

シロの評価を落とすことになんの躊躇いもない雄二はそう判断した

 

「動きは問題ないな。早速奴を狙うとしよう」

 

「いやイトナ、殺せんせーはいないぞ。欧州地方の旅行のパンフレットを見てたからまたどっか海外で遊んでるだろう」

 

イトナは多少悔しそうにしていたがどっちにしろコレは試作機だ。「百回失敗してもいい」ダメもとでだったのでここからさらに向上させる為目的を試運転兼ねて辺りの偵察に切り替える。低い位置からの偵察で今まで見えていなかったものが発見できるかもしれないからだ

 

「ん、なんか女子の声すんな」

 

ちなみに映像と一緒に音も拾えるので何が来ているかもわかる。バタバタと足音が聞こえラジコン戦車の横を通り過ぎていく。もう1度いうが、低い位置からの偵察で今まで見えていなかったものが発見できるかもしれない。そして今回は普段隠されている魅惑を…

 

見ていた男子達の声は止まり、しーんとなる

 

「見えたか」

 

「いや…カメラが追いつかなかった。視野が狭すぎるんだ」

 

「むぅ、偵察機としては視野の狭さはかなり痛いな。高性能のカメラにはできないか?」

 

注:雄二は偵察機の向上の為の発言です

 

「できなくはない。が、そうなると大きめのものしないといけないから肝心の機動力が落ちて標的の捕捉が難しくなる」

 

「ならばカメラのレンズを魚眼にしたらどうだろうか。送られた画像をCPUを通して歪み補正をすれば小さいレンズでも広い視野を確保できる」

 

「岡島、小型魚眼レンズは持ってるか?できるならカメラの感度を上げ下げできるものがいい」

 

注:雄二は偵察機向上の為の…以下略

 

岡島はどこか出したのか小さめのジュラルミンケースを出し、開けると様々なカメラ道具があった

 

「まかせろ。こんなこともあろうかと常に様々なカメラ道具は持っている」

 

「殺せんせーの暗殺以外の用途があるよね、絶対」

 

渚のツッコミを無視して孝太郎の意見も聞きつつカメラを選び律に歪み補正のプログラムを組んでもらう。

 

「こんなもんか?」

 

「しゃあ!女子(ターゲット)を追え‼︎」

 

「いや、殺せんせーは今はいないぞ」

 

「これも全て暗殺のため‼︎行け‼︎」

 

取り付けた試作機は早速外に出る。が、段差に対応できず転倒してしまった。

 

「復帰させてくる」

 

「いや、まずは回収だ木村。足回りも改良する必要があるな」

 

「俺が開発する駆動系や金属加工には覚えがある」

 

同じく技術屋の吉田が手を組み開発に着手する。イトナも様々な対応ができるよう各パーツの予備は持ってきていたのでわりと早く開発できた。

 

「あと、迷彩も変えた方が良くないか?殺せんせー(ターゲット)に気付かれてしまう。場所によって迷彩は変えた方がいい。菅谷、やれるか?」

 

注:雄二は偵察機向上の…以下略

 

「任せろ。学校迷彩、俺が塗ろう」

 

「頼もしいな」

 

「まてまて風見、こいつはラジコンだぜ。人間とはサイズが違う。快適に走れるようにはマッピングが必要だろう?」

 

「ふむ。どうすつもりだ」

 

「そりゃ、ここ使うんだよ」

 

パンっと自らの足を叩いて前原はいう

 

「なら任せた」

 

注:雄二は…以下略

 

「考えてた腹減るだろうおまえらには校庭のゴーヤでチャンプルー作ってやらぁ

 

「村松、マッピングの前原に携帯食を作ってくれ」

 

注:…以下略

 

「FSRの作り方は、前に教わったよ任せろ」

 

FSR(ファーストストライクレーション):移動しながら栄養が取れるように開発にされたものだ。以前雄二に言われて教わりまずかったものを美味しく改良するに至っていた。

 

それぞれの得意を活かして改良は進む。無愛想なイトナがすっかりE組に馴染んでいることに渚は心配が杞憂に終わってよかったと思った

 

(最初から、ここから始めれば良かったのかな)

 

最初は細い糸でも徐々に紡いで強くなるそれが『糸成』という彼の名のルーツ。それを思い出し、無愛想も毒舌も変わらないが間違いなく楽しんでいた。

 

「カメラに影ができたな」

 

「……あ」

 

カメラには動物が映っていたどう考えても敵意ありである

 

「化けモンだぁー‼︎退避ー‼︎退避ー‼︎」

 

「バカ撃て‼︎撃ちまくれ‼︎」

 

カメラに映る化けモン…もとい、イタチに向かって撃つが威力はお粗末だ全く効果ない。そして数秒後カメラが暗くなった。

 

再び木村が回収してきた試作機はみるも無惨にぐしゃぐしゃになっていた。

 

「ここまでやられたら、修復は難しいな。次は銃の威力アップ、それと移動と砲撃を戦車と同じく分けた方がいいだろう」

 

 

「なら、次は射撃は頼むぞ千葉」

 

「…おっ、おう」

 

つい受けてゲスい計画に巻き込まれてしまっていたが、雄二からも頼むと言われて本格的に断れない千葉であった。

 

「開発には失敗はつきもの…糸成一号は失敗作だ」

 

壊れた部品にマジックで糸成Iと書いてイトナは呟く。失敗作というがそこまで悔しがっても落ち込んでもいない。むしろ殺る気に満ちていた

 

「ここから紡いで強くする何度でもやって何度でも失敗して、最後に必ず殺す…よろしくなおまえら。また手伝ってくれると助かる」

 

「「「「「おう!」」」」

 

新たな仲間はクラスの大きな力となり成長していく。それを皆が感じ楽しそうに笑う

 

「よっしゃ‼︎3月までにはこいつで女子全員のスカートの中を偵察するぜ‼︎」

 

「……殺せんせーの偵察じゃなかったのか?」

 

「バッカおめー風見ぃさっきの見たろー隠されているものを見る‼︎これはそう、男のロマンだ‼︎」

 

「そうなのか⁉︎」

 

「おうよ!なんなら一緒にロマンについて語り合おうぜ」

 

前原もそこに加わり雄二にうながす。

 

「へー随分と面白そうね。私達も入れてもらえるかしら?」

 

「おう、もちろん…だ、ぜ…」

 

ギギと女子の声がした方を見る。いつのまにか女子全員が戻ってきていた。その表情は笑顔だ笑顔だが、目は笑ってない

 

「岡島くん、何を偵察するって?前原くん、何がロマンなのかな?」

 

片岡の質疑に応答はできない。できるはずもない。助けを求めようとするもすでに他の男子は知らなーいとばかりに退散している。後ろに下がるがそこに回り込んでいたのは桃花を含めた雄二に恋する乙女達

 

「あと、雄二くんになーに植え付けるつもりかなぁ?」

 

「岡島くん、知ってる?人喰いザメって結構日本の近海にもいるんだって〜すごいよね〜」

 

「前原くん、速いし、富士の樹海に縛って放置しても平気だよね」

 

冷や汗をダラダラだし2人がとった行動は

 

「「すいませんでした‼︎」」

 

速攻土下座で謝った。が、当然許されるわけもなく女子全員からこんこんと説教を受けていた。

 

「開発のは常にトライアンドエラー、ロマンには常に犠牲がつきものだな」

 

「しみじみ言ってるけどロマンは違うからね」

 




次回は神崎とのゲーセンデート……じゃないな他いるし。進展させてヒロインにするかは……未定

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ゲーセンの時間

今回短すぎたのでもう1話出します


コミカルなリズム音が鳴り響くもの、爽快に感じさせる演出を見せる銃撃音、何やらアニメの音楽のようなものも流れている。

 

「こんな感じなんだなゲーセンってのは」

 

「その感じだと雄二ってゲーセン来たことないの?」

 

「まぁな」

 

金を入れてゲームをする場所、ゲームセンター略してゲーセン。時代が経つにつれて中のゲームはどんどん変わるが変わらないものも多い例えば

 

「しゃあ!ようやく取ったぜ!…あ、あの神崎さんこれあげるよ」

 

「えぇ、で、でも」

 

「いいから、いいから楽しむためにやってただけだから」

 

杉野は手に入れたゆるキャラのようなクマのぬいぐるみを神崎に渡す。悪いなと思いつつもせっかくだからと言われて受け取りお礼を言う

 

「なぁ、杉野いくら使った?」

 

「うーん多分8000円くらいじゃね?」

 

「すでにクマのぬいぐるみの金額を超えている気がする……そこまでするくらいならいっそ別の店かネットで買った方が安くつくと思うんだが」

 

「わかっててもつい取りにいく。人間の悲しいサガってやつだねぇ」

 

クレーンゲームは入れた値段分のものが実際には手に入らない。それでもやるのは人間が心の中に誰しもが持ってる欲によるものか、はたまたギャンブル精神のものか…

 

「じゃあ、私もお返しだね」

 

神崎は100円を入れて機械の中でお菓子がぐるぐる回るプライズゲームを始めるこの手のゲームはどれだけお菓子をすくうか、どの大きさを狙うか、どのタイミングで落とすかに決まる。うまくすくえてもそれが手に入るわけでない台座に乗せてその量が一定になると押し出すように最初から台座に乗っているものが落ちる仕組みなのだが

 

「あぁ、一個だけか〜」

 

神崎がすくいあげたのは長いラムネのようなお菓子だこんなもの一個では落ちはしない……はずだった

 

「あっ縦向きに落ちました!」

 

「で、それを棒みたいに押して…」

 

並べられていたお菓子の山が雪崩のように崩壊した

 

「うん、計算通り。うまくいってよかったー」

 

「たった100円で1000円分のお菓子が出てきたな」

 

出てきたお菓子をみんなに配る。

 

「あれ、渚、神崎さんは?」

 

杉野の質問で指をさすそこには新たに大量のお菓子をゲットした神崎がいた。しかも中には100円では到底買えないアイスカップもいくつか混ざってる

 

「俺の見間違いか?これ1個300円くらいするはずだが?」

 

「間違いなくそれだね」

 

流石にアイスは溶けるからといま食べることになった。茅野は普段高くてなかなか手が出せないカップアイスに目を輝かせ「ヒャッハー」と世紀末的な声まであげている。

 

「おいみろ、店の人泣いてるぞ」

 

「そりゃねこんだけやられたらね」

 

「ゲームが得意なのは知ってたが、ここまでとは。……神崎、もう少し取れるか?」

 

「うん。できるよ」

 

店員の勘弁してください的な目を無視して荒稼ぎならず荒取りをした。神崎のしようした金額はだいたい1000円ほどだが手に入れものの合計はその10倍以上のものだろう

 

「すげー集まったな」

 

「お菓子、お菓子、お菓子〜!」

 

「か、茅野さん。目が目がやばいです」

 

まさしく大量だ。茅野の目がキラキラさせるのも無理はない

 

「さて……おい殺せんせー、ほしいなら食え。俺はあまりいらないから」

 

「「「「「え⁉︎」」」」」

 

「にゅわ⁉︎」

 

見るとルーレットの台でわざわざ変装して見ている殺せんせーがいた。

 

「殺せんせー、来てたんだ。雄二いつから気づいたの?」

 

「ちょっと前に見られている気がした。具体的に言うと神崎が子供にイキって大人ゲーマーを思いっきり負かした時から。でカメラのシャッター音が聞こえたからほぼ間違いないと思ってな。お菓子で釣ってみたんだが視線が鋭くなって確信した」

 

「にゅううう風見くんにはいつも見つかってしまいます」

 

「いや、正直わかるまで時間かかったよ先生が盗撮なんかしなきゃわかんないと思う」

 

「あ、そうだ!さっきの撮ったんですか⁉︎」

 

「えぇ、よく撮れていますよぉ」

 

と先程の写真を見せる触手と高速移動を駆使してわざわざ自分も映るように撮っていた

 

「おい恥ずかしがってるぞ」

 

「まぁ、これも思い出ということで」

 

「盗撮容疑で学校に言うけどいいのか?」

「どうぞ神崎さんお渡しします」

 

速攻で渡してきたのでどうにかなった神崎だった

 

「ほら、とりあえずこのお菓子やるから、今日のところはもう帰れって」

 

「ゴクリ…にゅう…わかりました……」

 

「オカンみてーだな」」

 

「じゃあさ、帰る前に次あれにしよう」

 

茅野が言った方を見ると球体型で中に入るための扉があるゲームが数台並んだゲームだった。

 

「なんか、コックピットみたいだな」

 

「みたいなじゃなくて、コックピットをイメージしてつくってるんだよ中でロボットを操縦してチームで戦うの」

 

「1度にできるのは1チーム4人か。ゲーム自体は8台あるがそれぞれ分かれて戦えるな」

 

「殺せんせーも入れてちょうど8人だからいいかなって」

 

「でもさ殺せんせー大丈夫か?」

 

「マッハに機械がついてこれず壊れるんじゃないか?」

 

と言われて茅野も気づくが殺せんせーはフフフと笑い

 

「ご安心ください。私、そのゲームはやりつくしてます…ホラ」

 

殺せんせーが見せたのはこのゲームをする為のカードだがそこには階級が書かれている

 

「すげぇ軍曹だって!」

 

「…やり込んでんなぁ〜壊した事とかないの?」

 

「ゲームには真摯ですので私」

 

「嘘つけ。この間人生ゲームでぼろ負けしそうになってゲームをひっくり返したくせに」

 

「……それはそれ、これはこれです。ともかく、私のことは殺軍曹と呼んでください」

 

「はいはい。とにかく殺軍曹、店の人に迷惑だから壊さないようにな」

 

雄二が注意すると「はーい」といい返事をしたので「やっぱオカンだ」と杉野はツッコミでいた

 

 

会員のカードを持っているのは殺せんせー、神崎、杉野の3人のみだったのでそれぞれバラけるようにチームを決め、テストステージ的な場所で戦ってようやく本番になる。最初は全員二等兵から倒れた敵の数などで階級を上げていくそうだ。そしてようやく始まるのだがそこで階級が明かされた

 

Yukiko階級:大佐

 

((((((もっと上がいたー‼︎)))))

 

しかも神崎の機体だけカラーリングが赤なのだがメチャクチャ早い

 

「あ、赤い彗星⁉︎」

 

「おい、殺せんせー軍曹なんだろ!指示を…」

 

「ぬ、にゅわわわあ、やられたぁ⁉︎」

 

「クソ役にたたねぇ」

 

ちなみにチームは殺せんせー、雄二、杉野、渚の青チームと神崎、カルマ、奥田、茅野の赤チームだが圧倒的だ。というかまともに赤で動いているのは神崎だけなのにその1人に圧倒されている。

 

「俺が狙い撃ちするって使い勝手悪すぎだろもうちょといいライフルがあってもいいんじゃねーか⁉︎」

 

「風見、いいから援護、援護‼︎」

 

結果、青チームの惨敗だった

 

 

「あんなの卑怯です!始まって数秒で私やられましたよ⁉︎」

 

「しかも速攻で拠点落とされたな。なんやかんや神崎に目がいってる隙にカルマが中距離で攻撃してたからな」

 

「でも雄二俺を狙い撃ってたから撃破数は稼げたじゃん」

 

「つか、殺せんせーてんぱりすぎて何にもできてないじゃん本当に軍曹かよ」

 

負けた原因神崎以上にチームワークのなさかもしれないなぁと醜い言い争いを聞いて思う奥田であった。

 

「なら、次は上の階にあるボーリングでもする?」

 

「しゃあ!これは負けないぜ」

 

「杉野、ボーリングと野球は違うと思うぞ」

 

「風見こそ、狙撃とボーリングはと違うんだぜ」

 

また変な事にこだわってるなーと渚が思っていると神崎がふふっと微笑んでいた

 

「いい笑顔ですねぇ神崎さん」

 

「あっ、はい。なんか、すごく楽しくて」

 

修学旅行の時に雄二に言われた事を思い出していた色々な人達と繋がりを持つための最高のツール。まさしくその通りだった

 

(笑ってる私が魅力的だって言ってたけど、そうしてくれたのは風見くんなんだよ)

 

神崎は今の自分の気持ちに気付きつつあった。けど、それよりも今は

 

「オールストライク…だと」

 

「なぁ風見、次のゲームする時は協力しね?」

 

この時間を長く、皆と楽しみたいとその感情を意識から手放した

 




次は名前の時間です今日中には出します……たぶん


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名前の時間

今回何が面倒って。いちいちルビふるのが超面倒だった‼︎


椚ヶ丘中学3-E組、木村はかたる。

 

(病院は嫌いだ)

 

別に注射がいやとか、薬が苦くて嫌だとか、そんな理由ではない。彼も中学3年だ。先端恐怖症でもなければ、苦い薬が飲めない子供でもない。なら何故嫌うか

 

(うちの近所の病院は皆フルネームで呼ぶからだ。これのせいで…俺の人生の苦労が絶えない)

 

そう言っているように今彼は風邪をこじらせその病院に来ていた。他の病院に行くにしてもただの風邪程度ならやはり近場にしてしまう。

 

「次は…っと木村さーん」

 

(きたか)

 

木村は覚悟を決める。彼が病院で嫌なことはまずカルテに名前を書くこと。フルネームで呼ぶと言う事は、ちゃんとここにもフルネームで書き、ふりがなも書かなくてはいけない。

 

「木村さーん…木村………⁉︎」

 

そこに書かれた名前を受付の看護師は二度見する。間違いなく書かれているその名をフルネームを凝視して確認後、しっかりと周りに聞こえるように言う

 

「き、きむら…正義(ジャスティス)さーん…」

 

自分が呼ばれるまで待つ男性も検査が終わって落ち着くために茶を飲んでいた老人もこれから帰ろうとしていた者も驚き、フキ出す。そんな見慣れたくもないが見慣れた光景を見つつ、木村正義(キムラジャスティス)はため息を深く出した

 

 

「ジャ、『正義(ジャスティス)』⁉︎てっきり『正義(まさよし)』かと思ってた…」

 

「たしかに茅野も俺も皆が『まさよし』って呼んでるのを聞いてたからな……というか、茅野はその辺知らないのか?」

 

「あ、私は皆より後にE組に転入してきたから」

 

「おっ。俺とおんなじだったのか…まぁそれはいいとして、なんで皆は『まさよし』って呼んでんだ?」

 

「武士の情けってやつだよ。殺せんせーにもそう呼ぶように頼んでるしな」

 

とはいえ彼らは入学式にその名を知った時はかなり驚いたそうだ。

 

「となると卒業式にも呼ばれるだろうな」

 

「おい言わないでくれ。また公開処刑されるって思うだけ嫌なんだから」

 

「そいつはすまないな。そもそもおまえの親はなんでそんな名前をつけたんだ」

 

「ウチ両親が警察官と元警察官だからさ正義感で舞い上がってつけたんだそうだ。ちなみに弟がいるんだが、そっちは『勇気(ユウキ)』と書いて『勇気(ブレイブ)』だ。そっちも武士の情けで『ユウキ』って言われてる」

 

「た、大変だな」

 

名前に対する特別な感情のない雄二は木村の辛さなどわかるわけもなくそう言うしかなかった

 

「しかも《親の付けた名前に文句言うとは何事だ‼︎》って叩いてくるしよー…子供が学校でどんだけからかわれるか考えたことねーんだろーな」

 

愚痴が止まる様子もないなと思っていると狭間がぬぅと出てくる

 

「そんなモンよ親なんて。私なんてこの顔で綺羅々(きらら)よ、『きらら』‼︎『きらら』っぽく見えるかしら?」

 

「い、いや」

 

覗き込むように言う狭間は『きらら』という名に合わないどちらかといえば魔女を彷彿させる笑みを見せる

 

「雄二は、なんかわかりやすいよね」

 

「たしかに一姫二太郎的な感じだったんだろうな。にしても、最近はそういう名前をつけるのがはやってるのか知らんが、大変だな」

 

「本当にねー」

 

「……それはおまえもだろ?『(カルマ)』?」

 

雄二の意見に皆うんうんと頷く。

 

「あー俺は結構気に入ってるよ、この名前。たまたま親のへんてこなセンスが子供に遺伝したんだろーね」

 

「…人それぞれだが、木村もあまり考え過ぎないほうが逆にいいんじゃないか?」

 

カルマの意見に悩んでいると殺せんせーも話に入ってきた

 

「先生も、名前については不満があります」

 

「そうなのか?ならあらためて殺エモンと呼ぼうか?」

 

「いやそういう意味ではありません⁉︎茅野さんがつけてくれたこの名前は気に入ってます」

 

「じゃあ何が不満なんだよ

 

杉野の問いに殺せんせーは気に入ってるから不満だという。それはこのクラスの2名ほど…ぶっちゃけビッチ先生と烏間がその名で呼んでくれないからだ

 

「烏間先生にかんしては『おい』とか、『おまえ』ですよ…熟年夫婦じゃないんですから…」

 

「…だって…いい大人が『殺せんせー』とか…正直恥ずいし」

 

烏間も同意なのか小さく頷く。

 

「あ!じゃーさ、いっそのことコードネームで呼び合うってどう?南の島で会った殺し屋さん達みたいに」

 

「あーあいつらな」

 

男3人と女1人。その女の涙の事を一瞬だが頭によぎりすぐに振り払い雄二は桃花に言う

 

「あの人達、皆コードネームで呼び合ってたじゃん。なんかそういうの殺し屋っぽくてカッコよくない?」

 

「良いですねぇ。頭の固いあの2人もあだ名で呼ぶのに慣れるべきです」

 

殺せんせーを大きなお世話だと言わんばかりの視線で睨むが当然スルーした。

 

「皆さんが親になった時に名付けセンスも鍛えてられる。…ではルールですが、皆さん各自で全員分のコードネーム候補を書いてもらい…その中から先生が無作為に1枚引いたものが皆さんの今日のコードネームです」

 

(ふむ、全員分か…なるべくそいつに合ったコードネームにしたほうがいいな)

 

渡された紙に全員分のコードネームを書く。他の皆も真剣な者、ふざけている者、適当に書く者、明らかに悪意あって書く者様々だ。

 

そして決まった後で殺せんせーは言った

 

「今日1日…名前で呼ぶの禁止‼︎」

 

 

 

そして迎えた1限目は烏間の体育。今日は森に中で烏間をターゲットにして全員で背中、もしくは腹につけた的に当てるというもの。全員参加のためチームプレイができるよう、各員に携帯による無線をありにしている。

 

野球バカ‼︎ 野球バカ‼︎標的(ターゲット)に動きあるか⁉︎」

 

「まだ無しだ美術ノッポ

 

野球バカ(杉野)に連絡しつつ自分の位置を把握する美術ノッポ(菅谷)は移動を開始する

 

堅物は今一本松の近くに潜んでる。貧乏委員チームが堅物の背後から沢に追いこみ… ツンデレスナイパーが狙撃する手はずだ」

 

貧乏委員(磯貝)の指示で徐々に距離をつめて堅物(烏間)に襲撃しようとするがそれにもちまえのカンで気づき、包囲の穴を即座にみつけて離脱する

 

「甘いぞ2人‼︎包囲の間を抜かれてどうする‼︎特に女たらしクソ野郎‼︎銃は常に撃てる高さに持っておけ‼︎」

 

甘く見ていたわけではないそんな相手でない事は女たらしクソ野郎(前原)もわかっているが銃の使い方がまだまだできてない事を指摘され何も言えなくなる。

 

「逃すな‼︎あつ森‼︎ キノコディレクター‼︎そっちに行ったぞ‼︎」

 

「まかして〜…あッ方向変えた‼︎」

 

あつ森(陽菜乃)キノコディレクター(三村)が構えた時にはすでに射程圏外にあり撃つ暇がない。

 

MOTO GP ‼︎ 喜久蔵ラーメン‼︎ コロコロ上がり‼︎」

 

MOTO GP(吉田)喜久蔵ラーメン(村松)コロコロ上がり(イトナ)が指示を受けて銃を構える。だがこれは囮だ。言葉に出して支持する事で意識は地上に引きつけられる。ここでE組のスナイパーが狙うよりも意外性のある人物に攻撃させたのが成功する。木の上から攻撃されて背中にペイントがつく。 鷹岡もどき(寺坂)の狙撃だ。これには堅物(烏間)も評価をしていた。

 

「だが足りない‼︎俺に対して命中1発じゃとうてい奴には当たらんぞ‼︎それと毒メガネ永遠のゼロ‼︎射点が見えていては当然のように避けられるぞ‼︎」

 

気付かれてしまい作戦の変更を余儀なくしてしまう毒メガネ(奥田)永遠のゼロ(茅野)は冷静に仲間を頼りにする。

 

「そっちでお願い凛として説教‼︎」

 

「OK‼︎いくよヘタレギャル性別‼︎」

 

凛として説教(片岡)の指揮でヘタレギャル(莉桜)性別()の3人よる攻撃を行うがその攻撃は射手の位置を特定させないようにしていた。

 

(背後に… 変態終末期このマンガがすごい‼︎だな。距離を保って隙を窺っている、なかなかのものだ……⁉︎)

 

変態終末期(岡島)このマンガがすごい‼︎(不破)の接近を感じ移動しようとしたが止まる。足元に極細のワイヤーがあったからだ

 

(引くと…あの木につけた袋が爆発し、ペイントを放射する仕組みか。… メガネ(爆) の考えだけではない。おそらく…‼︎)

 

瞬間、その場所にペイント弾が降りそそぐ。その超距離射撃をしていた人物は今回の作戦を共に立案したメガネ(爆)(孝太郎)に聞く

 

「どうだ?」

 

「ダメだね気付かれてトラップは発動せず。弾は回避…いや、肩、それと左足に命中してる」

 

「俺とツンデレスナイパー、それとギャルゲーの主人公の狙撃は常に警戒しているとはいえ1発も的に当てられないとはな」

 

「けど、目標地点には着実に追い込んでる」

 

「なら、そろそろ行け」

 

「了解、DHA ‼︎」

 

そうして1人の男子が向かう。今回の主役は彼だから

 

「にしても、サプリメントみたいな扱いはどうかと思う」

 

DHA(雄二)のポツリとこぼした言葉にメガネ(爆)(孝太郎)は仕方ないでしょと冷たく言う。彼も彼でこのコードネームは嫌だからだ。

 

一方どうにか的に当たるのを回避した堅物(烏間)は退路が塞がれたことに気付く

 

(中ニ半か…退路を塞いだということは次は)

 

中ニ半(カルマ)のいる位置からの離脱は無理と判断した瞬間にまた頭上からペイント弾が飛んでくるが今度はそれを木片で防ぐ。

 

「ギャルゲーの主人公‼︎君たちの狙撃は常に警戒されていると思え。俺に対して2度も同じ手は通用しない‼︎」

 

ギャルゲーの主人公(千葉)とてそれは言われなくてもわかっている。彼の目的はこれで仕留める事ではない。この攻撃で動きを止め、意識を自分に移すため。そして、DHA(雄二)ならすでに指示している事、そして指示を出された彼が決めてくれると信じている

 

(仕上げは俺じゃない)

 

気配を消し、フリーランニングを活かしてその人物は背後をとった

 

(やれ‼︎ ジャスティス‼︎)

 

完全に裏をかかれ、これだけ近くからの攻撃は避けらようもない。ジャスティス(木村)の二丁の銃からペイント弾が発砲される音が山に響いた。

 

 

訓練は終わり、皆教室に戻っていた

 

「で、どうでした?1時限目をコードネームで過ごした気分は?」

 

「「「「「「なんか…どっと傷ついた」」」」」」

 

殺せんせーはわかっていたのか、そうですかと言っている。

 

ポニーテールと乳って…」

 

ポニーテールと乳(桃花)はどストレートすぎるコードネームに赤面していたしかもそれを好きな人にも言われたのだから尚更である。

 

「ヘタレってなによ…ヘタレって…………そりゃ、キスされても告白できてないけどさ」

 

ヘタレギャル(莉桜)はどこか納得できるところがあり、自分でそれを認めて口に出し余計にダメージを受けていた

 

「それで殺せんせー、何で俺のだけ本名のままだったんだよ」

 

「今日の訓練内容は知ってましたから、君の機動力なら活躍すると思ったからです。さっきみたいにカッコよく決めた時なら…ジャスティスって名前でもしっくりきたでしょ」

 

「うーん…」

 

たしかにその通りだがそれでもなぁと腕を組み考える

 

「安心のため言っておくと木村君。君の名前は比較的簡単に改名手続きができるはずです。極めて読みづらい名前、普段から読みやすい名前で通している。改名の条件はほぼほぼ満たしています」

 

「…そうなんだ」

 

「なら、さっそく改名するか?」

 

「いえ、まってください風見君。もし木村君が先生を殺したら世界は彼の名前をどう解釈するでしょう?」

 

殺せんせーの質問に雄二はなるほどと笑みを出し答えた

 

「…『まさしく正義(ジャスティス)だ。地球を救った英雄の名に相応しい』…こんなところか?」

 

殺せんせーは顔に丸を出してニコニコしている

 

「親がくれた立派な名前に正直大した意味は無い。意味があるのはその名の人が人生で何をしたか。…名前は人を作らない、人が歩いた足跡の中にそっと名前が残るだけです。ですからもうしばらくその名前……大事に持っておいてはどうでしょう。少なくとも暗殺に決着がつくまでは…ね」

 

木村は今日つかった銃を手に持ってまじまじと見てさっきの事をおもいだしながら

 

「…そーしてやっか」

 

と答えた。

 

「…さて今日はコードネームで呼ぶ日でしたね。先生のコードネームも紹介するので、皆さんは先生の事をこの名で呼んで下さい」

 

殺せんせーは黒板に自身のコードネームを書いた。

 

「えいえんなるしっぷうのうんめいのおうじ?」

 

「いえいえ違います 永遠(とわ)なる疾風(かぜ)運命(さだめ)皇子(おうじ)です」

 

精神的疲労もあってストレスはピークであり、生徒達から大ブーイングが上がる

 

「なんだそのドヤ顔‼︎」

 

「1人だけ何スカした名前付けてんだ‼︎」

 

「無駄にルビふりすぎだろ‼︎中ニか‼︎」

 

「にゅわわわ、いーじゃないですか自分のことですし!1日くらい‼︎」

 

こうして殺せんせーは今日1日バカなるエロのチキンのタコと呼ばれた

 




ちなみに
原作とコードネームが違うのは中村莉桜をのぞいて全部雄二の考えた名前です。雄二のコードネームは渚が考え、莉桜は前原です

MOTO GP(吉田):バイクつながりで

喜久蔵ラーメン(村松):マズイラーメンの代表名みたいなものだから(実際はうまい)

あつ森(陽菜乃):孝太郎に貸してもらったゲーム名とマッチしてるなと思ったから

ヘタレギャル(莉桜):あそこまでいって告白なしとか

DHA(雄二):このあいだマグロまんが宣伝してたから。マグロまんにしようとしたが悪いかなと思い


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イケメンの時間

久々に遅くなりました。
最近5000字いかないからいくためにどうにか考えてたらつい…


イケメン。意味だけで言えば、顔のいい男だろう。だが真のイケメンは中身も良いものである

 

「うーむ、イケメンだ」

 

とある喫茶店、渚達に誘われて来た雄二は茅野の言葉を聞きながらその件の人物、磯貝を見ていた

 

「いらっしゃいませー!あ、いつもどうも原田さん、伊東さん」

 

「ゆーまちゃん元気~?もーコーヒーよりゆーまちゃんが目当てだわこのお店」

 

イケメンがいるだけで店は繁盛する。特におばさまの年齢などどストライクだろう。

 

「いやいや、そんなん言ったら店長がグレちゃいますから」

 

苦笑しつつ、客を席に案内する。相手を立てつつ店のフォローも忘れない。

 

「原田さんモカで、伊藤さんエスプレッソWでしたよね?本日店長のおすすめでシフォンケーキありますけど」

 

「あ、じゃあそれ2つ~」

 

テキパキと注文を受けてさりげなくおすすめを言って店の利益も上げる。

 

「実にイケメンだ、うちのリーダーは…」

 

「殺してぇ」

 

「岡島、心の声はもう少し抑えとけ」

 

妬みありありの声で岡島は言うがイケメンその2ともいえる雄二が言っても焼け石に水である。実際獣のような目で「テメーに何がわかる」とい言いたげに訴える。それをスルーして雄二はコーヒーを飲みつつ磯貝を見る

 

「たしかに、真のイケメンってのはあいつの事をいうんだろうな」

 

雄二は知らないが修学旅行の女子の気になる男子で磯貝は雄二に次いで2位だった。だが雄二の場合は彼のことが好きな女子の票もある事、そして人格面を考えると実質の1位は磯貝だろう。他にも前原やカルマも顔だけでいうならイケメンの部類だろう。しかし、この2人と違い危なっかしさも無く、友達に優しく、目上の人にも礼儀正しい。能力も元から高く、E組が現在のようになって訓練と勉学により更に向上した彼はイケメン度も上がる。

 

「器用だなー」

 

空になったいくつものグラス、皿、食器。数は合計で30は超えているがそれを器用に全部運んでいる

 

(イケメンだ‼︎)

 

「おまえら粘るなー紅茶とコーヒー1杯で」

 

こちらに来た磯貝は苦笑いをし、文句ともいえないような文句を言う。

 

「いーだろ、バイトしてんの黙っててやってんだから」

 

「はいはい、ゆすられてやりますよ。出がらしだけど紅茶オマケな」

 

前原の言葉に磯貝はそう言うと秘密だぞと人差し指を立ててサービスでカップに紅茶を注いだ。

 

((イケメンだ…‼︎))

 

「磯貝、コーヒーおかわり。サービスじゃなくて、注文な」

 

「はいよ。コーヒー好きなんだな、風見」

 

「前の学校でコーヒー好きの奴がいてな。女にコーヒーを入れてもらってたんだが、そいつが入れれなくなってからは俺が入れてて随分と気に入られてな。それもあって俺もコーヒーが好きになった」

 

「なるほどな。なら、下手なコーヒーは出せないな」

 

ニコニコと言う磯貝は緊張はしてない。入れるのは自分ではないがこの店のコーヒーは素人の彼でも美味しいと思えるからだ。表情だけでそれを教えることができる。それは

 

((イケメンだ‼︎))

 

「あいつの欠点なんて貧乏くらいだけどさ、それすらイケメンに変えちゃうのよ。例えば私服は激安店のを安く見せず清潔に着こなすしよ」

 

((イケメンだ‼︎))

 

着る人物、着こなしだけで安物も変化する。下手な絵が高級な額縁に入るといい絵に見えるそれと似ているが彼はそんな意識など無い。あくまで普通の事をしているのだ

 

「この前、祭りで釣った金魚を食わせてもらったんだけどあいつの金魚料理メチャ美味いし」

 

((イケメンだ‼︎))

 

台所に立つ男はモテる当たり前だが彼がすると品もある。

 

「後、あいつがトイレ使った後よ、紙が三角にたたんであった」

 

((イケメンだ‼︎))

 

清潔感をさりげなくだす行為は女子に受ける

 

「あ、紙なら俺もたたんでるぜ三角に」

 

「「汚らわしい‼︎」」

 

……ただしイケメンに限る。声に出されて岡島はズーンとがっくししている。

 

「見ろよあの天然マダムキラー」

 

客のおばさま達にホストのように会話をしている。まさに

 

(((イケメンだ‼︎)))

 

「あ…僕もよく近所のおばちゃんにおもちゃにされる」

 

((((シャンとせい‼︎))))

 

渚なら仕方ないがそれでもである。

 

「未だにな、本校舎の女子からラブレターもらってるしよ」

 

置かれた立場ですら関係ない魅力。それは

 

(((イケメンだ‼︎)))

 

「あ…私もまだもらうなぁ……女子から」

 

((((それはイケない恋だ‼︎))))

 

片岡メグ、女子からのウケが良く下手な男子よりもイケメン。ついたあだ名はイケメグである

 

「しかもあいつの将来の夢はフェアトレードに尽力して貧困で苦しむ途上国の人達を救うことだぞ」

 

将来の夢も、それに向けた努力も合わさりまさに

 

((((イケメンだ‼︎))))

 

「そういや昔俺は姉にあなたの将来は私の伴侶とか言われてキスされた」

 

(((((色んな意味でイケない‼︎)))))

 

彼らは知らないがこれ以上に彼の姉はヤバい人物である。

 

「イケメンにしか似合わないことがあるんですよ。磯貝君や…先生にしか」

 

(((((イケメ…何だ貴様‼︎)))))

 

いつのまにか殺せんせーは前原の後ろの席で一心不乱、イケメン風?の表情でハニートーストを食べていた。

 

「ここのハニートーストが絶品でねぇ。これに免じて磯貝君のバイトは目を瞑ってます」

 

「現金な奴だ……俺の方のバイトはいいのか?見た事ないけど」

 

「美人の上司さんを見れたのでよしとします」

 

「(もうだいたい知ってんのか……つか、最近JBがつけられている気がするって言ってたが…) 先生、いい加減ストーカーはやめとけ、また前みたいなことになった時庇えない」

 

「はいわかりましたから烏間先生にメールしようとするのはやめてください⁉︎」

 

後にやっぱり怒られるのは別の話。

 

「ところで皆さん、彼がいくらイケメンでもさほど腹が立たないでしょ。それは何故?」

 

殺せんせーは質問するが前原はさも当然のように答える。

 

「何故って…単純にいい奴だもんあいつ。それ以外に理由いる?」

 

前原の答えに渚達は頷いて肯定する。それを見て殺せんせーは満足そうな笑顔になる。

 

と店のドアが開く音がした。新しい客が来た程度に思って気にしてなかったがその人物達が声を出した事で見ざるを得なくなる

 

「おやぁ?」

 

「おやおや~?情報通りバイトをしてる生徒がいるぞ」

 

「いーけないんだぁ~磯貝君」

 

五英傑の荒木と小山、わざとらしくいう他のメンバー2人も入ってきてこれまたわざとらしく小学生が先生にチクルぞーと言うようないやらしい目で見てきた。そして間を開けて最後1人も入ってくる。

 

「これで二度目の重大校則違反。見損なったよ、磯貝君」

 

もともとたいして評価してもいないだろうがわざとらしく浅野は言う。だが事態は深刻だ。よりにもよって何をしてくるか検討もつかない相手に見つかったのだ。それにどんな理由があっても言い分は向こうが正しい

 

「…とりあえず、ここじゃ店と客に迷惑がかかる外で話そう」

 

「ふん、君に言われなくともそのつもりだよ」

 

外に出て磯貝は浅野に頼み込む

 

「…浅野この事は黙っててくれないかな。今月いっぱいで必要な金が稼げるからさ」

 

「……そうだな、僕も出来ればチャンスをあげたい」

 

死活問題である磯貝は必死に言うと浅野は手に顎を当て考え込んでいる素振り(・・・)をする。

 

「では、ひとつ条件を出そうか。闘士を示せたら……今回の事は見なかった事にしよう」

 

「…闘志?」

 

椚ヶ丘(うち)の校風はね、社会に出て闘える志を持つ者を何より尊ぶ」

 

それは浅野理事長の考えだがそれは言葉に出せばいい風に聞こえるが、実際は社会に出て相手を蹴落す闘志である。そして、その遺伝子を受け継ぐ彼の提示する示して欲しい闘志とは当然だがロクなものではなかった。

 

 

 

「体育祭の棒倒しィ?」

 

「そう、A組に勝ったら目を瞑ってくれンだとよ」

 

前原が皆に昨日の事の内容を話した。

 

「…でもさ俺等もともとハブられてるから…棒倒しは参加しない予定じゃんか」

 

木村の言う通りE組は団体戦のほとんどを出ることを許されていない。絶対に優勝できない弱者と見せつける為だ

 

「そもそもA組の男子は28人でこっちは16人。…とても公平な闘いには思えないけどね」

 

孝太郎がそう言うがそれも浅野は織り込み済みだ

 

『だから君等が僕等に挑戦状を叩きつけた事にすればいい。それもまた勇気ある行動として称賛される』

 

との事だが

 

「何が勇気ある行為だ。勝たなきゃただの蛮勇じゃねーか」

 

「赤っ恥かかせる魂胆が見え見えだぜ」

 

雄二の呆れた言いように寺坂も同意して言う。

 

「とはいえ、受けなきゃ受けないで磯貝にペナルティがくだる」

 

「もう既にE組に落ちてるし、下手すりゃ退学処分もあるんじゃね?」

 

どうしたものかと考えるが磯貝が皆を止める

 

「いや…やる必要はないよ皆。浅野の事だから何されるかわかったモンじゃない。これは俺が撒いた種だから責任は俺が全て持つ。退学上等!暗殺なんて校舎の外からでも狙えるしな」

 

皆を守る為の自己犠牲、その様は

 

「「「「「イッ、イケ…てねーわ全然‼︎」」」」」

 

「ええ⁉︎」

 

まさかの大ブーイングに驚く。

 

「なに自分に酔ってんだアホ毛貧乏‼︎」

 

「アホ毛貧乏⁉︎」

 

新たな2つ名(コードネーム)に嫌そうにしてると前原が対先生ナイフを持って机の上に腕ごとドンと置く。

 

「難しく考えんなよ磯貝。ようはA組のガリ勉どもに棒倒しで勝てば良いんだろ?わかりやすくていいじゃん」

 

「日頃のあいつらの鬱憤を晴らすチャンスとくりゃ、やる以外ねーだろ」

 

前原に続いて寺坂がそこに手を置いて参加する決意を出すとつられるように皆置いていく

 

「倒すどころかへし折ってやろーぜ!なぁ、イケメン‼︎」

 

「むしろ、バイトバレたのがラッキーだったて思うようにしようぜ」

 

がしがしとどんどん置いていく

 

「おまえら、簡単に言うなよ、棒倒しは暗殺じゃなくて野戦だ人数差はでかい。おまえけに相手はあの理事長の息子だ何仕掛けてくるかわからないぞ」

 

と冷静な考えでいう。普通なら空気読めよの言動だが

 

「て言いつつ寺坂より早く1番に手を置いてるじゃん」

 

「あれれー」

 

クスクスと皆笑う

 

「どんな状況でもクラスメイトがピンチなんだ。助けない理由はないだろ?」

 

「違いない。でどうすんだ、あとおまえだけだぜイケメン」

 

「…おまえら」

 

クラスメイトというのはもちろん皆ある。だが最大の理由、それは磯貝の人徳。日々の行いによって得たものこそが彼らが助ける理由、そして彼がこのクラスのリーダーである理由なのだ。そしてここまでされて引き下がるような人物でもない

 

「よし、やってやるか!」

 

殺る気は出た。あとはそれを達成する為の作戦だ。円陣を組んで作戦を練りだした。

 

 

 

 

「いいわよ」

 

「は?」

 

多分断るだろうがちゃんと報告をしに来た雄二はあっさりと許可をだしたJBに驚く。

 

「なに惚けてんのよ。いいって言ってるでしょ?」

 

「いや、そんなにあっさり許可するとは思わなかった」

 

「ちょっと前までなら許可できないけど、もうだいたいクラスメイトには身体能力はバレてるわけだし、それに体育祭ではその棒倒し以外で身体能力を見せる事はないし…なに、拍子抜け?」

 

「まぁ、な」

 

「ふふ。せいぜいがんばりなさい。応援するわ。応援だけね」

 

「他人事だと思って」

 

「実際そうだもの」

 

ニマニマ笑う彼女はとても魅力的であったがイラつかせるには充分であった。隠そうともせず雄二は舌打ちをしたが今回はJBの勝ちだ

 

「それにしても、あの変態怪物…最近の妙な視線があいつだったなんて…部屋の下着、大丈夫かしら」

 

「心配しなくても盗まないさ。……ただ」

 

「えぇ。この件は上には話せないわね」

 

これまでJBは自分の存在を知られても、姿を殺せんせーに見られないようにしていたがそれが見られていたとなると上は黙ってない。当然だが烏間も黙っている。

 

「ストーカーはもうしないだろうが、気をつけろよ、いろんな意味で」

 

「そうね。…まぁでも………いえ、なんでもないわ」

 

「?…なんだその顔は」

 

明らかに何か企んでそうな顔になったJBに雄二は問いかけた

 

「べっつにー」

 

雄二は考えた。麻子曰く、女の涙と女の企みにはロクなものはない。

 

(いやな予感がすごくする)

 

「ふふん、さーてどうしようかしら〜」

 

どこかるんるん気分の彼女を見つつ深いため息を吐く雄二

 

(ただでさえA組の連中の作戦がわかって気落ちしてんのに、これ以上心の不安になるのはやめてほしいもんだ)

 

どれだけ不安でも、いやでも、結局その日は来る。実際雄二のいやな予感は当たることとなり、一波乱が起こる事になる。

 

「はぁ」

 

今日2度目のため息は空へと消えた

 




ちなみに
殺せんせーは雄二の正体に気付いてますがそのバイト風景は見てません。
でも見ても黙認しそう。

ちなみに2
JBを見た殺せんせーの第一印象
「グッッッッド、バイン‼︎」


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仲間の時間

体育祭編。今回もちょっとオリジナル要素があります


体育祭、その名の通り運動競技をいくつかこなし、順位、勝利数などでポイントを得て最終順位を競い、同時に学生同士の交友を広げ結束力を高め合う。……本来なら

 

「まぁ、E組は当然のように参加資格のある競技が少ないから総合優勝はない。おまけに皆、特に運動部系はE組にだけは負けられないから必死で来る」

 

「木村ちゃん以外は苦戦してるねー」

 

陽菜乃の言う通りトラック競技で勝ているのはE組でもっとも俊足な木村、それと雄二だ

 

「陸上部は速く走ることに特化した動き作り、体力作り、身体作りをしてる。専門分野が違うんだ。元から足が速い木村はそれをさらに向上させる為近い訓練を行ってきた。俺は単純に相手が陸上部のやつじゃなかったから勝ったんだ。むしろ確実に2位以上が取れるだけいいじゃないか場を荒らすくらいはできてる」

 

総合優勝はないものの、他のクラスの点を下げているので総合最下位はないだろう。

 

「うぐぅぅ」

 

「茅野、悔しいのはわかるが、そんなに睨まなくてもいいだろ?」

 

「………多分睨んでるのは相手のクラスじゃないと思う」

 

「?」

 

陸上競技は体をよく揺らす、すなわち一部発育の良い部分は特に目立つ。彼女が、桃花がわざとやってないのはわかるだがイラつくものはイラつくのだ。

 

「殺せんせーも、その様子撮ったら……」

 

「反省してますからぁ」

 

涙目でカメラを下げる殺せんせー。普段ならそれでも撮っていただろうができない理由がある。

 

「雄二〜ハイこれ、お弁当ー」

 

その声がしてビクッと震えてフードでおもいっきし顔を隠す殺せんせーと聞こえるくらいの舌打ちとイラッとした顔になる雄二。

 

「おいJB、100歩譲ってここにいるのはいいとして、いい加減その言い方やめろ」

 

「仕方ないじゃない〜最近妙につけられてる気がするし、ちょっと前には下着ドロのもいたそうだし家にいるより一緒の方が気が楽なのよ〜」

 

わざとらしく殺せんせーの方をチラリと見つつ言う。どうやら烏間にこっ酷く叱られただけでなく給料を落とされ、プラス黄色の顔ストーカーが出たという噂が一時広まって肩身が狭くなっているようだ。本来なら殺せんせーがいるここに来るなどとんでもない事だが、公式には2人は会っておらず、見てもいないし、ここに殺せんせーはいない。その上雄二の定期観察として来た。

 

「春寺さん、お久しぶりです」

 

「えぇ。陽菜乃さんも元気そうで何よりね。このまま応援したいけど、雄二にお弁当を届けに来ただけだからもう帰るわ」

 

「いいからさっさと帰れ」

 

シッシッと手を振る

 

「もー雄二君はまた〜。あ、私は中村莉桜です雄二君とは…」

 

「あぁ…それ、陽菜乃さんに聞いて問い詰めたけど…ごめんなさいね」

 

言った瞬間莉桜はその言葉の意味を理解した。顔を真っ赤にして下がったのを見てJBは言わない方がよかったなぁとちょっと反省した

 

「で、あなたが矢田桃花さんね。雄二がよくお弁当をもらってるそうだけど、仏頂面だけど気に入ってるみたいよ」

 

「ホントですか‼︎やったー‼︎」

 

「余計なこと言ってないで帰れって。ヒマじゃねーんだろ?」

 

「はいはい帰りますよ。ヒマじゃないしね……それじゃ先生お願いします」

 

「……あぁ」

 

烏間が言ったあとぎろりと殺せんせーを睨む。ここ最近の殺せんせーの問題行動を報告したからだ。すなわち『二度とするなよ』と直接言いに来たものである。

 

「あー羨ましいなぁ風見の奴…殺してぇ」

 

「だから岡島君、心の声が漏れてる」

 

苦笑しつつJBをみた渚は彼女は雄二の保護者なのだと思うと同時に何か別の感情があるようにも感じていた

 

「いやーなんつーか。ビッチ先生に似てるけど顔だけだな」

 

「なー。ビッチ先生と違って清楚な美人外人さんって感じ?風見が最初にビッチ先生にちょっかい出した理由がなんとなくわかるわ」

 

「ね、あれをいつも見ててそっくりだけど性格180度違う人がいたらねー」

 

「やかましい‼︎黙りゃおまえら‼︎」

 

嵐のように来て雄二、殺せんせー、ビッチ先生にそれぞれ心のダメージを与えてJBは帰っていった。雄二曰く「チョロいくせに侮れない女」だそうだ

 

そんなこんなで体育祭は進んでいくなか雄二は競技内容を何度も見ていた

 

「次にE組が出れる競技は障害物競争。網抜けやら平行棒に跳び箱、スプーンリレー……」

 

「どうしたの、じっと見てるけど」

 

「あぁ、いや…ここくらいだと思ったんだがやっぱりないな」

 

「なにがだよ?」

 

「今回俺たちの最終目的は棒倒しで勝つことだろ?その妨害として後の競技に支障が出るような細工をしてくると思ったんだが…」

 

怪我をさせるようなものがあると思っていたので拍子抜けと思う雄二だが

 

「そんな事必要ないって思ってるんでしょ」

 

カルマが少し焦りと緊張の表情でいう。あのカルマ焦る…それがどういうことかなど言うまでもない。それほど深刻な事態という事だ。先日A組の戦略を知るためイトナの作ったマシンでその一部内容を録音した。だがそれでわかったことは

 

「律、データをもう一度見せてくれ」

 

「はい」

 

律が移したデータを見つつ目の前の様子もチラリと見る。…結果は見なくてもわかるが。

 

「おーよく飛ぶな。綱引きで人が飛ぶなんて初めて見た」

 

A組とD組による綱引き対決。始まった瞬間にD組の生徒達が吹っ飛んだ。いくら勉学も運動も秀でた者たちでもここまで圧勝はできない。ならなぜか?それはA組に偶然(・・)外国の留学生が来ていて、しかも偶然(・・)その外国人達が体格がものをいうスポーツの後に一流選手になるであろう猛者達だったからだ。

 

「たまたま、偶然ねぇ……そんな偶然あるものなんだな」

 

「…わかってて言ってるでしょ」

 

渚のいう事をスルーして資料を読む

 

「カミーユ・ミュレー、フランスの有名レスリングジム次代のエース。試合総勝利数、29戦26勝。なお内1敗は前試合の怪我による欠場によるもの。ジョゼ・オリビェイラ、ブラジルの世界的格闘家の息子。試合数40戦中37勝内21はノックアウト。イ・サンヒョク、韓国バスケ界期待の星、ポジションSG、得点ランキングでは常に1位。ケヴィン・スミス、全米アメフトジュニア代表、ポジションTE、大柄を生かして常にプレー中に活躍、得点、ブロック数歴代1位。……まぁよくこんな連中を呼べたもんだ」

 

全員まさに一流。だが1番すごいのはこんな連中と交友関係をもてる浅野の語学力、そして彼らが認める底が知れない実力にある

 

「今更だけどよ、こいつらマジで15歳なんだな」

 

「外人ならあまり珍しくもない。海外いた時は周りの連中はそんな感じだった」

 

平然と言う雄二だが焦りもあった。先程彼が言ったように何かに特化した身体作りは他者と大きく違うこの4人の外人はいずれもその競技に合わせた体格を作る為の行為をしてきた。直接的な暴力は棒倒しではできないが、タックルや掴んで投げるくらいはできるし、関節技ならルールにもギリギリセーフだ。それを彼らがしてくる。それは間違いなく脅威であり、恐怖だ。しかし、

 

「だが、そこに勝機がある(・・・・・・・・)。あとは、リーダーの指示次第だな…磯貝、大丈夫か?」

 

ずっと暗い表情をする磯貝に雄二は問う。やはり皆を巻き込んだ事に悩んでいるようだ。

 

「正直わからない。ねぇ殺せんせー、俺は浅野みたいな語学力は無い。俺の力はとても及ばないんじゃ……」

 

「………そうですねぇ、率直に言えばその通りです。浅野君を一言で言えば『傑物』です。彼ほど完成度の高い15歳は見た事がありません。君がいくら万能といえども社会に出れば君より上はやはりいます彼のようなね」

 

殺せんせーは事実を淡々と語る。万能と言えば聞こえはいいだが言い方を変えるならば器用貧乏という事でもある。

 

「…どうしよう。俺のせいで皆が痛めつけられたら」

 

と不安を声に出した瞬間、肩をポンっと雄二が叩く。

 

「おまえのせいじゃない。今日ここにいる奴らは全員、自分の意思で来た。怪我するかもなんて誰でも考える…たとえ負けても、誰もおまえを責めはしない。それに、おまえにあって浅野にないものがある。それは仲間だ」

 

浅野にとって彼らは友であっても仲間とは言えない。盤上の駒のようなものだ。それが悪いわけではない。対象を駒として動かし大成を成した人物はいる。それができる秀才であれば

 

そして磯貝のように仲間と歩み同じく大成を成した者もまたいるのだ

 

「風見君の言う通り、仲間を率いて戦う力。1人では限界でも共にピンチを乗り切っていく仲間を持てる人徳。その点で君は浅野君をも上回っている。先生もね、浅野君よりも君の担任になれたことが嬉しいんですよ」

 

殺せんせーはハチマキを磯貝の頭に巻き付けてた。その頃には磯貝の不安はなく、笑顔に満ちていた。

 

 

それぞれのクラスが棒倒しの棒を持って入場する。磯貝に迷いはもうない。覚悟も想いも充分だ…そして殺る気も万全だ。

 

「よっし皆‼︎いつも通り殺る気で行くぞ‼︎」

 

掛け声に全男子が同調する。体育祭最後の目玉、棒倒しのゴングが鳴る。

 

競技内容に書かれてあるが改めて棒倒しのルールが説明される。

 

1:相手側の支える棒を先に倒した方の勝ち。

 

2:武器使用禁止。殴る、蹴るも原則(・・)禁止だが棒を支える者が足を使って追い払う、腕や肩でのタックル、また掴むのもOK。

 

3:チームの区別の為、A組は帽子と長袖を着用する。

 

 

「って、あれ帽子じゃなくてヘッドギアだぞ」

 

「向こうは防具ありってことね」

 

「ほんと今更だけど、こういう差別はどうなんだまったく」

 

準備運動をしながらツッコミを雄二は入れる。圧倒的な勝負というのは皆楽しみなものだその為の演出も当然大切なのだ。それに巻き込まれる者はたまったもんじゃないが。

 

「思った通り、相手は人数を活かして防御しつつ攻撃に出れるようにしたな」

 

アメフト選手のケヴィンを筆頭に5人ずつのチームが3つ。

 

「まず奴らが攻めてくるだろうな。なら、作戦通りでいい」

 

正面に雄二、が立ちあとは全員が自軍の棒に寄る。陣形名、『完全防御形態』誰1人攻めず防御に徹底する。無策で攻めれば数の差で殲滅される。無理に攻めるより内に籠る籠城戦のようなものである。対してA組は陣地を築き、そこを守りつつ攻撃する布陣だ。

 

(頼むから。A組は作戦と目的を変えないでくれよ)

 

そう思っているとケヴィンの部隊が悠々と歩き出す。その姿は獰猛なゴリラが近付いてくるかのようだ。

 

(どうやら、変える気はなさそうだ)

 

と安堵していると

 

「くそが…」

 

「無抵抗でやられっかよ‼︎」

 

「吉田‼︎村松‼︎」

 

雄二の横から2人が飛び出していくそれをなんの苦も無くタックルで吹っ飛ばし、2人は10メートル先の客席に吹っ飛ばす。その光景を見たE組以外は歓喜の声をあげる。

 

(ふん、たわいない)

 

ケヴィンにとってこんなものは当たり前だ。彼が目に入れる強者は1人

 

Why don't you come and attack us, especially you?(攻めて来たらどうだ、特におまえ)

 

浅野から唯一気をつけろと言われた人物、それが雄二だが見てなるほどと思う。体格と目を見れば強者だとすぐわかる

 

Wild gorillas are so healthy.(野生のゴリラは元気だな)

 

ビキィという音がケヴィンからした。

 

I wonder if looking at a female's ass is any different?(メスの尻を見るのも変わらないのかなぁ?)

 

血管が破裂しそうな音がした。チラリと浅野を見ると殺れとの合意が出る

 

How long do you think you can keep talking less‼︎(減らず口がいつまで言えるかな‼︎)

 

あいつは俺がやると言いドンドンと向かう。だがただ向かうだけでない。雄二がなにをしてくるかわからないがアメフト選手として様々な技も知っているかれはパワーを逆に利用した手でくると思った服を掴んで引っ張っぱる程度だろうと。だが競技がまるで違う。ケヴィンはあくまでスポーツ。雄二は武術

 

「え?」

 

気付いた時には天地がひっくり返るそして棒の方へ落ちていくがそこに防御する生徒達はいない全員がジャンプしどいていた。そしてそのまま突っ込んで来たA組の生徒諸共押さえ込まれた。ちなみ仰向けに倒したケヴィンの腹にモロに入る。ダメ押しに自軍の棒を半分倒して棒の重みでガッチリ固めた。事でケヴィンは完全に落ちた。意識が飛ぶ瞬間に見たのは雄二の自分などまったく気にもしていないクールな目だけであった

 




外人達のフルネームはわからなかったのでそれぞれの国でよく使われる苗字を探してつけました。あとそれぞれの戦績もつけました。……ちょっと盛りすぎかな

JBを出しましたがちょっと悩みました。原作には保護者らしき人物達が見えなかったので

意見、感想があれば返信は遅くなりますが基本するのでお願いします。


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違いの時間

体育祭編最後です。

早く死神編いきたい実はそれだけは最初にどうするか決めてたから尚更に


(ふむ、思った以上に強いな。挑発されていたとはいえあのケヴィンをああも投げ飛ばすとは)

 

浅野は自軍の棒に背をつけジッと戦況を見る。

 

(それにチーム全体の指揮も良い。巧みな防御で攻撃の5人を封殺し、棒の土台に組み込んだ。おそらくケヴィンが倒されるのは想定していたができれば良い程度のものだったということか)

 

彼は他のA組同様、E組を下として見ているが、認める部分は認めることができる。そして冷静に物事を見る事もできる

 

(風見雄二、やはり厄介……でもないな)

 

だからこそそう判断した。

 

「両翼遊撃隊、指令(コマンド)K」

 

2人が場外に飛ばされ気絶、7人が防御にかかりきりなのを見て攻めの手を更にかける。温存していた部隊を使い数による突破を計る

 

「よし、こっちも出るぞ‼︎攻撃部隊‼︎作戦は“粘液”‼︎」

 

雄二、前原、カルマ、岡島、木村、杉野、そして司令塔の磯貝を含めた7人で両サイドからの攻撃でできた中央を突破する。だが、A組の目的は棒を倒す事ではない(・・・・・・・)

 

「おい、A組の攻撃部隊が転進して…こっちにくんぞ⁉︎」

 

「攻撃はフェイクかよ‼︎」

 

「いや、前からもくる」

 

残りの外人部隊の内2人を合わせた防御部隊も攻撃に移り、包囲網を形成したのだ

 

「おい風見‼︎さっきみたくできないか⁉︎」

 

「ムリ」

 

「まぁ、そうだよね」

 

風見雄二の戦闘能力は並外れたものだ。が、それは戦闘に特化した動きの時。この棒倒しではあきらかな暴力はできない。動きは制限される。おまけに相手は格闘家が2人。先程の光景を見たあとだ、警戒しつつ本気でくるだろう。A組はある程度暴力好意をしてもスルーされるかもしれないがE組はそうはいかない。どこでいちゃもんをつけられて退場になるかわからない。集団戦の混乱の中でなら尚のことだ

 

「じゃあ、予定通りに」

 

が、そもそもE組は事前にイトナのマシンで相手の目的は把握している。だからこの作戦も事前に考えることができた。A組攻撃部隊はE組攻撃部隊を追いかけてくるのも当然だ。彼らの目的は棒を倒す事ではなくE組を潰す事なのだから。E組は当然逃げるそして追われるから逃げるが、ここは壁に囲まれた闘技時ではないし、ルールに場外はない

 

「ちょ、おい、あいつら、こっちこね?」

 

「迫力ある場面見れていいじゃん」

 

「いやでも、どんどん…どんどん…」

 

椚ヶ丘中の体育祭は観客席が近い。先程吉田達がふっ飛ばされて観客席に突っ込むなどが起こるほど全ての競技を1番迫力がある距離で観戦できる粋な計らいだ。…それを利用する

 

「き、来たぞオイィぃぃ⁉︎」

 

「逃げろ⁉︎」

 

突然観客席に追い追われる選手達全員が入り込んできた。観客はパニックになり観戦どころではない

 

「来なよ、この学校全てが戦場だよ」

 

「それとも異国の方々にはこんなのやってらんねーってか?」

 

カルマが来いよと人差し指で雄二が中指を立てて挑発する。2人の外国人格闘家は日本語で喋ったカルマと雄二の言葉を理解したわけではない。だが指に動きと表情でだいたい理解して「上等だ」と向かってくる

 

「いくぞ‼︎粘液地獄だ‼︎」

 

これがE組の新たな陣形。名を、『粘液地獄』‼︎

 

「陣形もクソもねーけどなっと」

 

「ちょっと雄二〜独り言喋ってたら、やられるよ〜っと」

 

呑気そうに会話しながらも迫り来るA組生徒と外人部隊を時にイスを使い、時に観客の生徒を土台にしたり盾がわりにしたり常に一定の位置にとどまることなく、されど棒から離れ過ぎないようにぴょんぴょんと逃げ続ける。捕まったら終わりのゲームは今までの訓練でなんどもあった。使える障害物が多いならそれほど広くなくても充実に回避ができる。

 

(とはいえ、凌いでるだけじゃ勝負にならないし勝てない。それに相手の指揮官浅野ならこの状況を見ても……やっぱ焦りもしないか)

 

A組の棒のほうを見ても全く動転する事なくむしろ冷静にその様子を観察していた。この時点でA組の戦略が意味をなさなくなったのにだ。この様な作戦をE組がしてくると考えたわけではないがこの棒倒しが異形のものになる事は想定済みだったのだろう。

 

「橋爪‼︎田中‼︎横川‼︎3人は深追いせず守備に戻れ‼︎混戦の中から飛び出す奴を警戒しろ‼︎特に磯貝、木村、赤羽だ‼︎ジョゼ‼︎カミーユ‼︎君達は風見をマーク‼︎決してこっちに近付けるな‼︎」

 

(やれやれ、俺だけ特別ってか)

 

ポキポキと腕を鳴らして近付いてくるが当然雄二は逃げるし避ける。

 

(真っ向から勝負に持ち込めればいいが、それはできない。やっぱ逃げるしかない……早くしてくれ(・・・・・・))

 

「雄二、そろそろだからあとちょっとがんばりなって」

 

「ちょっとって言ってもなー…どっちにしても俺は攻められないし」

 

「風見、すまない。時間稼ぎ頼む」

 

磯貝もお願いをしながらチラリと逆サイドの観客席を見る。もう一度言うがこの学園の体育祭で観客席の近さが目立つそれを利用して作戦が2つあり、今雄二達がしている観客席へ逃げこむこと。これによって全ての視線は一時的に一方向へ向けられるそこに逆サイドからの伏兵

 

「⁉︎」

 

ここでようやく浅野の表情が驚きに変わった。まさか、序盤でケヴィンに吹っ飛ばされた吉田と村松がもう動けるとは思わなかったのだ。2人は棒に飛び付きその影響で棒が揺れる

 

「客席にまで飛ぶ演技はしっかり騙されててくれよかったぜ」

 

「こっちは受け身は嫌ってほど習ってんだよ。しかも今回はどっかの誰かが考案したバカみたいな訓練でな」

 

 

 

それは体育祭3日前。吉田と村松が伏兵になる為最初にやられる役をすると決めた後だった。

 

「…おい、なんだよこれ」

 

「見ての通り鉄柱に紐で吊るした大木だ」

 

「まさかと思うけどこれで練習しろってか?」

 

「大丈夫安心しろ烏間先生から許可はもらった」

 

「「そういう問題じゃねー⁉︎」」

 

ツッコミをせずにはいられない。なにせ人間1人分の大きさの大木を当ててくるのだから

 

「棒倒しでタックルありなら、まず間違いなくアメフト選手のケヴィンが最初の攻撃をしてくる。本物はこんなものじゃないぞ〜骨が折れたくないなら受け身の練習はしっかりな」

 

 

 

「まぁどう考えてもあっちの方が痛かったけどな、木に布付けて俺ら防具つけてたけど」

 

「その鬱憤晴らさせてもらうぜぇ」

 

ニマニマと笑い棒を起こされないようへばりつく。

 

「磯貝、こっちは任せた。行け‼︎」

 

「了解‼︎皆、逃げるのは終わりだ‼︎“音速”でいくぞ‼︎」

 

雄二の言葉を聞き、即座に行動を開始する。今A組の棒は攻撃部隊を追った部隊が離れ守りが手薄になり2人の奇襲で指揮系統が乱れた。そこに今まで逃げていた雄二を除く全員が懐に入る。これがE組の攻撃陣形『音速飛行』‼︎

 

「クソっ戻…」

 

「すとでも思うか?それとも、俺もあっちに行っていいのかなぁ〜」

 

いつのまにか2人の外人の前に立つ雄二は挑発をする。彼らに今与えられた命令は雄二を近付けさせない事。今雄二を向かわせればそれこそ危うい。とはいえ自軍の棒が倒されるかもしれない状況でこいつにかまけていいのかという疑問が頭をよぎる。だが

 

「2人ともそのまま風見を見てろ。心配はいらないサンヒョクが支えている。…残りは僕ひとりで片付ける」

 

浅野はその指示を出すとすぐさま吉田を投げ飛ばし、岡島は蹴り飛ばした

 

(武道の心得もあるのか。…しかもあいつらは皆訓練で受け身も攻撃対する回避防衛も習っているのに)

 

E組は決して浅野を舐めてはいない。だが想像以上に浅野は単体で隙なく強いのだ

 

Vous allez devoir vous battre encore un peu(もう少しだけやろうや)

 

「フランス語はあんまりなんだけどな」

 

迫り来る2人を避けつつ掴まれそうになるとどうにか手で払う。2対1、しかも攻撃を制限されているならなおさら不利だ。このままでは客席に散ったA組が戻って殲滅になる。守りが浅野1人だが上をとり蹴りで攻めを止めている。

 

 

 

「磯貝、本当に助けにいかなくていいんだな?」

 

「心配してくれてるのか?」

 

「…いや違う。俺に陽動をさせるんだから、助けて呼んでも来ない事を言っておこうと思っただけだ」

 

聞く人が聞けば冷たい言葉だろうが、それは違うと磯貝はわかる。雄二が信じるように、磯貝も信じるのだ仲間の存在を

 

 

 

磯貝は浅野の激しい攻撃で棒から離れる。だがそれはわざとだ最後の作戦、総攻撃の為に

 

「な、にぃ⁉︎」

 

浅野の動きが新たに攻めてきた渚、菅谷、三村、千葉の4人によって封殺されてしまう。さすがにこのタイミングで増援など思わなかった。なぜなら彼らは

 

「ってちょっと待てあいつら守備部隊だろ⁉︎」

 

「E組の守備は…ふ、2人だけ⁉︎」

 

守備は寺坂と孝太郎の2人のみ守備を捨てた特攻とも言える。抑えられている4人と意識が飛んでいたケヴィンもそろそろ動ける。それをしないのは目的が違うから。棒を倒すのでなくE組を潰す目的でここにいてそれに沿って浅野の指示で動く。ここにきてゴールの違いと連携の違いが仇となる。

 

「おいおい、行かなくていいのか?……まぁ、行かせないけどな」

 

2人とも指示通り雄二の妨害をしていたが今度は雄二が妨害する立場になる。前に立ち2人の道を塞ぐ

 

「まぁ、いま戻ってももう遅いがな」

 

その言葉はわからないだが雄二が親指を向けた先には助走をつけている男子、イトナがいた。外人部隊はわかりやすい脅威だったが、1番の脅威はそれが脅威と思われない事。イトナは触手外したとはいえ、その身体強化は未だに残っていた。勢いのまま磯貝が組んでいた両手に片足を乗せてそれを軸にし、磯貝も力のかぎり持ち上げるようにイトナを飛ばした。立てられた棒のてっぺんに届くその跳躍に観客とA組は釘付けになる。勢いのまま棒を掴み、一気に傾いていき、地についた

 

静寂はほんの少しですぐに歓声があがる

 

「やったな、磯貝」

 

グーサインをしている磯貝に同じくグーサインをし仲間達の元へゆっくり歩く。どう見ても不利な戦いを塗り替えた。その歓声はまるで英雄を称えるかのようだ。一体誰がこの状況を予見できるだろうか?誰もできない……いやただひとり

 

[3年A組浅野くん、理事長先生がお呼びです。留学生の皆さんと理事長室に来てください]

 

理事長だけは予見していたのかもしれない。

 

 

 

体育祭も終わり、片付けに勤しんでいると下級生が磯貝に声をかけていた。これはいつも通りだが全体的に、特に下級生達のE組を見る目が変わっていた。

 

「手のひら返しってのはこういう事なのかもな」

 

「こんだけ劣勢を引っ繰り返したんだし、当然だろ……嬉しくねーのか?」

 

「いや、嬉しいさ。自分の事以上にな」

 

E組の評価が上がったのは雄二のおかげでもあるがどうもしっくりこない彼の答えに首を傾げていると浅野がやって来た。理事長と話して何があったかわからないが担架が4つ運ばれいるのを雄二は見逃さなかったが、あえて何も言わない事にした

 

「おい浅野‼︎二言は無いだろうな?磯貝のバイトの事は黙ってるって」

 

「………僕は嘘をつかない。君達と違って姑息な手段は使わないからだ」

 

ただ前原の問いにイラついた表情をするも冷静な口調で答えるのを見るとリベンジには燃えているようだ。ただ、言ってることは「おまえが言うな」的な発言でありE組の皆は口に出さないがそう思っていた

 

「…浅野、さすがだったよおまえの采配。最後までどっちが勝つかわからなかったまたこういう勝負しような」

 

爽やかな笑顔で磯貝は言うが、差し出された手をスルーして進む

 

「消えてくれないかな次は(・・)こうはいかない。全員破滅に追い込んでやる」

 

(次…か。なんらかんら言って好敵手って認めてるあたり、できるやつだ)

 

「ケッ負け惜しみが」

 

「いーのいーの負け犬の遠吠えなんて聞こえないもーん」

 

「緊張感は持っておけよ次はテストだ。そこが真の本番だ」

 

「雄二君はクールだねぇ。まぁ、そこが良いんだけど」

 

雄二とて嬉しいが浮かれ過ぎないように寺坂達と自身に言う

 

「にしても、なんか理事長室から戻ってから随分表情に雲があったな」

 

「彼も苦労人なのさ。境遇の中でもがいている。磯貝と同じでね」

 

A組に一時身を置いていた孝太郎はその辺の事を理解していた

 

「いや、俺なんてあいつに比べたら苦労人でも何でもないよ。皆の力に助けてもらった今日なんかさ、貧乏でよかったって思っちゃったよ」

 

「…知ってるか磯貝、金持ちが絶対に手に入れられないもの」

 

「?なんだ、大切な友達か?」

 

「いや違う。答えは貧乏だ」

 

「ってなんだそりゃ?またいつものジョーク?」

 

「そういうわけじゃない。ただ、そこでこそ手に入り、わかるものがある。それを知れていて、脱する為の環境を持ってるおまえは間違いなくこの先大成するさ」

 

貧乏が良いわけではない。でも最初から持っている者が背負う物と持っていない者が背負う物は違う。浅野と磯貝はそれぞれ違うがどちらも乗り越えていく力はある。ただ、磯貝は共に進む仲間がちゃんと居る。それだけだが大きな違いだ

 

「なんか照れくさいな」

 

「リーダーなんだ。甘んじて受け入れろよ」

 

磯貝は頬をかきつつ皆の笑顔を見ていた。とそこにカラカラとカートを押す音がしてみると台の上にケースがあり中にはパンが敷き詰めてあった

 

「うわっ‼︎パン食い競争の余りがある‼︎これ持って帰って良いかな?ねっねっ?」

 

「磯貝、貧乏に慣れるなよ…」

 

締まらないが皆は苦笑し、雰囲気は悪くない。次に向けて幸先のいい勝利だった

 




次回、わかばパーク編……の前にちょっとやっときたいことあるのでオリジナルでいきます

前書きのあれはなんだったのって言わないで

感想意見は遅れても基本返信しますのでよろしくお願いします


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デートの時間・3時限目

よくよく考えてみたら、矢田デートできてないと気づき今回書きかました。
オリジナル要素ちょこちょこありです


「あれ、ねーちゃんどうしたの?ずいぶんとおめかししてるけど」

 

「んーふふふ。デート!」

 

ピキッとという音がした気がした

 

「と、桃花?それってもしかしていつもお弁当を作ってやってる相手か?」

 

「うんそうだよ〜」

 

ウキウキした表情で用意をする自分の娘を見ながらちょっと悲しくなっていた。

 

「もうお弁当を作ってあげるような相手ができたと思ったら、デートか…さみしいなぁ」

 

「気がはやすぎよあなた…」

 

というより既に涙ぐんでいた

 

「ふーん、そう彼氏かぁ…」

 

姉の彼氏のことは聞いているが正直彼も複雑だ。聞いてる限りではチャラそうな感じがしてならない。

 

「うん。正直モテるから、うじうじしてたら取られちゃう。今日は気合入れないと‼︎じゃ、行ってきまーす」

 

しばらくして矢田の弟、紅木(こうき)はよしと決め早速着替えて姉の後を追った

 

 

 

「お待たせ、雄二君‼︎」

 

「いや、そんなに待ってはいない」

 

「…そういう時は、俺も今来たって言うべきだよ」

 

「実際にそんなに待ってないんだ。あまり変わらないだろ?それにそういうのは大抵漫画の中ぐらいだ」

 

むーとしたがすぐに笑顔になって矢田は雄二の隣に立つ

 

「じゃ、行こ!」

 

腕を組み歩く。桃花の動きに合わせて雄二も歩幅を変えて歩く。2人と違いまだデートのできてない桃花は思い切って頼んでみたが雄二は断らずOKをその場でした。陽菜乃と莉桜は以前デートしたのもあり今回は認めた。

 

ちなみに雄二がOKを出したのも似たような理由だ2人とデートしたなら桃花ともちゃんとしなさいというビッチ先生からの無言の圧力によるものである

 

「しかし、もうすぐ中間テストだろ?いいのか、こんな時期にデートなんて?」

 

「たまには息抜きをしないと。暗殺とおんなじでずっと張り詰めてたら大変だし。それに……」

 

「?」

 

「ううん、なんでもない」

 

あきらかになんでもなくはないのはわかる。だが、それを無理に聞き出す行為は今するべきでないと考えた。

 

「今は、楽しむか」

 

「うん」

 

とりあえずは今は楽しもうと考えて進もうとしたが雄二は止まる

 

「雄二君?」

 

「…………いる」

 

何がと言う前に雄二が抱きついてきた

 

(え、えぇぇぇぇ⁉︎なに、なになになに⁉︎この状況⁉︎)

 

混乱している桃花に雄二は耳元で声をかけた。

 

「桃花、よく聞いてくれ。大事な話だ」

 

(そ、それって⁉︎)

 

「後ろから誰かつけてきている。もしかすると殺せんせー目当ての暗殺者かもしれない」

 

「……そう…え⁉︎」

 

一瞬「なんだ違うのかぁ」的な事を考えたがすぐに正常な判断に戻る。

 

「おそらくは俺たちを拉致してそれで誘き寄せるそんなとこだろう。俺に合わせてしばらく動いてくれ。何故が分からんがこうしてから相手の気配が強くなった。おそらく気付かれたかと思ってる絶対後ろは見ず、前方だけ見るんだ」

 

桃花はコクリと頷く。そして再び歩きだす。ちょっと名残惜しいなと思いながら

 

「お、見ろハロウィンの用意がされてある。そういや、うちのクラスではなんかするのか?」

 

「うーん殺せんせーの事だし、するかもね」

 

「おおかた仮装パーティーだろ。元々のハロウィンからだいぶ離れたと思うな日本のハロウィンは… ジャッコランタンの衣装をしたら逆に浮くってなんだよ」

 

「最近は海外もそんな感じだよね。日本に触発されたのかな」

 

「まぁ、クリスマスもバレンタインもなんでもお祭りにする日本人らしいっちゃらしいがな」

 

後ろは見ず、普通にデートしているカップルのように自然な会話をする。全く緊張なくできている桃花に雄二は関心していた。

 

「どう?相手は?」

 

「パターン1おそらく素人。さっきからドンドン気配が強くなってる。だが、パターン2…気付かれているのかと警戒心が上がりわざとやっている可能性もある」

 

時折小声で状況の把握をする。雄二としてもちゃんと相手の姿くらいは見たいが人通りが多いこの場所ではどうにもならない。そして以前のように素人と判断できない理由がある。

 

「さっきからまいてやろうとしてるが大通りで人も多いのに相手の視線がまだある。その上、チラリと見ても姿が見えない」

 

「やっぱりプロ?」

 

「判断が難しい………殺せんせーに連絡してもいいが、その瞬間に逃げられる可能性が高い」

 

ならばどうするか。既に桃花も覚悟を決めた。

 

「俺達で捕まえる。人通りが多いこの場所ならいきなりは襲われないがじり貧だ。思い切って行動するに限る」

 

「どうするの?」

 

雄二は視線を商店街の外に向ける。その先を少し歩くと公園がある。公園といっても遊具などは無く、人気もない。当然人も少ない。この街の事をある程度調べた雄二はこの時間なら人はいない可能性があるとそこに向かう。桃花もそれを理解してついて行く

 

「公園に近づくたびに気配が強くなってる……ここからは俺も後ろは見ない。桃花も見るなよ」

 

「わかってる」

 

そうして着くと後ろからの視線が消える。移動したなと思い、雄二はベンチに座り桃花がすり寄る。

 

(さっきから、桃花が近くに来ると気配が強くなってるならそれを利用する)

 

狙い通り気配が強くなる。靴紐を直すふりをして礫を拾い即座に視線を感じたところに投げた。あたりはしてない。最初からそんなつもりなどない。これは牽制と警告だ

 

「隠れてんのは気づいてんだ。さっさと出てきたらどうだ」

 

茂みがガサリと動いたのは確認済み。まず間違いなくそこにいる

 

「出てこないね。もしかして当たったんじゃ?」

 

「いや、外した…つもりだったんだがな。…当たってるのか?」

 

罠の可能性もあるがソロリとそこに向かう。桃花を下がらせておこうと思ったが共犯者がいた時の事も考え一緒に向かう。

 

(ここまで近づいても反応なし。なんなんだ?)

 

スーと茂みの向こうを見た

 

「……子供?」

 

礫が頭を掠めたと思われる部分の髪がおかしな形をしていた。少年はプルプルと恐怖で震えていた。

 

「って、紅木⁉︎なんでここにいるの?」

 

「知り合いか?」

 

「知り合いっていうか、弟」

 

マジかという顔に雄二がなる。そして姉の顔見て涙を出してその子供、紅木は抱きつく

 

「ね、ねーちゃんんん‼︎怖かったぁぁぁぁ‼︎」

 

「あーそうだろうねー」

 

よしよしと頭を撫でながらあやす。雄二は正直混乱した。「なんだこの状況」と

 

 

 

 

「つまり、私がどんな人と付き合ってるか気になってつけて来たと」

 

「うん。そしてわかった……ねーちゃん、オレ、コイツ、嫌い」

 

「なんでカタコトなの?」

 

あと雄二を睨むが同時に怖がっている

 

「俺は別に取って食いはしないぞ」

 

「ねーちゃん、コイツ絶対普通じゃない。あとチャラ男、絶対チャラ男」

 

「失礼だな」

 

「そうだよ。たしかにわざとって言うほど女の子にカッコいい言葉言ったり、好きな人が私含めて3人いるけど、チャラ男じゃないよ」

 

「信用できるか⁉︎そんなこと聞いて⁉︎」

 

やれやれだなぁと桃花は思うが弟の言うことの方が正しい。

 

「ところで、この後どうする?弟が来たなら解散にするか?」

 

「ううん。せっかくだし、紅木も一緒に遊ぼう!雄二君を知ってもらうチャンスだし」

 

「………」

 

姉の後ろに下がって睨む紅木を雄二は面倒な事になったなと思いつつ承諾した

 

 

 

ギスギスしてるから楽しくできるか。姉の目を覚まさせる。そんな事を考えていた紅木だったが

 

「オラオラオラ!くらえ10連コンボ‼︎」

 

「ふむ、ならこうしよう」

 

「ガードすんな‼︎なんでそんなに上手いんだよ‼︎俺一回もダメージ与えてないのに‼︎つか、小学生相手にガチすぎだろ!」

 

「知り合いにゲームが得意な奴がいてな。勝つためにやってたらうまくなった」

 

とりあえずと入ったゲーセンにてすっかり楽しんでいた。

 

「これで5連敗だな。どうする?金は俺が出すからまだやってもいいんだぞ?」

 

「いい。これ以上おまえから仮をもつの嫌だ」

 

「おまえじゃないよ、雄二君。風見雄二君だよ」

 

「フン」

 

「嫌われたもんだなぁ」

 

「雄二君もちょっとやりすぎ。手加減してあげなよ」

 

「男ってのは、そういうのに敏感なんだ。手加減は逆に失礼だ」

 

「ぐ、ぐぐぐぐ」

 

その通りだったのか紅木は歯軋りをしていた。

 

「そろそろ昼食にするか。この先にいい喫茶店があったはずだ。お子様ランチもあるぞ」

 

「バカにすんな!もうそんなのに興味ないわ‼︎」

 

「もう、2人とも」

 

デートがこんなカオスな展開に変わったがこれはこれでいいものだと思う桃花だった

 

 

 

桃花が席を外した。2人は顔を見ず人の波を見て黙っている

 

「言いたい事ないのか?」

 

「別に」

 

時折会話があってもこのような感じである。そろそろ雄二もちゃんと接するべきと考えて話す。

 

「桃花の、お姉さんの事は好きか?」

 

「まぁ、な。迷惑かけちゃったから、少し話しづらいけど」

 

「迷惑?」

 

「……オレ、体が弱くほうでさ。ねーちゃんが3年になる前に病気で倒れて、その看病をねーちゃんがしてくれたんだけどそのせいで大切なテストに出れなくて結果的にE組ってとこに落ちて…」

 

なるほどなと雄二は思った。

 

(だからあんなにも桃花を心配してたのか。しかも、E組の事は話せないかどういう扱いをされてどう過ごしているかわからないなら尚更だな)

 

そしてその気持ちは同じく姉いた雄二にもある程度だがわかる。全く違う形ではあるが、それでもあそこにひとつの家族愛があった

 

「俺にも姉がいてな。だから少しはわかる。その上で言うが、無償で無益に、ただそうするのが当たり前かのように愛情を傾ける。それが『家族』………らしい」

 

「らしいって…なんか信用なんねーな」

 

「………すまん。だが、姉が弟を心配するのは当たり前なんだそう姉が言っていた」

 

「受け売りかよ」

 

「悪いか?」

 

「いや………あんがと」

 

「お待たせー、クレープ買って来たよー。なんかずいぶん仲良くなってるね」

 

「なってない‼︎」

 

と言うが他の人が見たら仲の良い兄弟のように見えていた

 

 

 

その後もショッピングをしたりして弟付きのデート?を楽しんだ。

 

「で、紅木だったか?あいつがいないから聞くぞ…なに悩んでんだ?」

 

紅木がトイレへ行ったのを見て雄二はいい頃合いだと思い聞くことにした

 

「やっぱりわかっちゃうか……ねぇ、もう10月だよ」

 

「ハロウィン近いな」

 

「茶化さないで……暗殺期限まであと5ヶ月。テストも大事だけど、やっぱり暗殺スキルを高めておいた方がいいんじゃないかな」

 

そろそろ中間テストのため、殺せんせーのテスト対策勉強が進められるそうなると暗殺訓練時間はどうしても減ってしまう。かと言って成績で結果を出さなければ殺せんせーはあの教室を去ってしまう

 

「もどかしいな」

 

「うん」

 

「で、それを烏間先生や殺せんせーに相談したのか?」

 

「え?」

 

「悩みってのはそいつにしかわからない所がある。いま2人とも、それぞれ俺達の向上の為必死になってるそれは俺達を想っているからこそだ。なら、その不満のひとつくらいは尋ねても文句は言わないさ」

 

「…………」

 

「なんなら、俺が聞いてくるぞ」

 

「ううん大丈夫。ありがとう雄二君」

 

 

 

「今日は楽しかったよ。ほら、紅木も」

 

「………………………ありがと」

 

「間が長いな。まっ、いいけどな」

 

なんらかんらあったが雄二の事は認めていた。そう、認めていた(過去形)

 

「けど、ねーちゃんのその、き、き、したのは…」

 

「キスか?」

 

「はっきり言うなよ‼︎」

 

帰る少し前、莉桜ちゃんがしたならとキスをした大胆にも弟の前で。やはりなんらかんら言ってもビッチ先生の弟子である。しかし莉桜の時とは違い自分から行ったのだ

 

「うれしかった?」

 

「相手からは初だ」

 

(多分ウソだ。なんかキス慣れしてたし)

 

とは思うもののでいた事が嬉しい桃花であった。ちなみに見えなくなるまで紅木はギャーギャー雄二に罵倒していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side:???

 

「ふむ、この程度か。噂の9029……別の尾行がいたとはいえ、気付かないとはね。やっぱりまだ若いってことかな」

 

「?あのまだですか」

 

「あぁ、すいません。イチ君、車からビニール出してニー君は紙の用意を」

 

指示されたイチとニーと言われた少年は黙って作業をする。

 

「はい、どうぞ」

 

「ありがとう……バイトの子?」

 

「ええまぁ、そんな感じです。とある人に雇うよう言われて…不快でしたか?」

 

「いいえ。ああいう寡黙に作業する人も悪くないわ」

 

「それはよかった。…ありがとうございました」

 

営業スマイルだがまた来たいと思わせる笑顔で客を見送る

 

「もう、2人とも今は花屋なんだから、笑顔と接客は忘れないでよ………まぁ、無理か。やっぱり本番までは身を隠してもらった方が良さそうだな」

 

男はまったく面倒だなと思いつつ彼らをどう使うか考えていた

 




感想、意見があればお願いします。遅くはなりますが基本返します

次回わかばパーク編です


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間違いの時間

さて、わかばパーク編です
この話途中までできたのですがかなり短くどうしようと悩み最後は読んだ通り殺せんせーを動かしましたが…ちょい不安です


思考と死力を尽くした体育祭の後は学生からしたらあまり乗り気になれないがこの椚ヶ丘では全ての生徒が気合を入れるもの、テストがある

 

「さぁーさ皆さん、2週間後は2学期の中間ですよ‼︎」

 

生徒が成長するように、殺せんせーも成長する。高速移動による分身は以前より精度を増して顔だけなら30以上出せる。しかも1人に対してだ。2週間後の中間テストに向けて殺せんせーは猛烈に早くなり猛勉強である

 

「いよいよA組を越える時が来たのです‼︎熱く行きましょう‼︎」

 

教師の腕の振るいどころと言わんばりに教えていく。分かりやすさ倍増スピードも倍増

 

「鉄は熱いうちに‼︎熱く!熱く‼︎もっと熱く‼︎‼︎」

 

「「「「「暑苦しい‼︎」」」」」

 

暑苦しさも倍増。ついでにうっとおしさも倍増である。

 

「暑すぎて冷房もないのに暖かいくらいだ。でも先生、今回A組に勝ってもまだ期末がある。当然そこも視野に入れてんのか?」

 

「当!然!です‼︎まっかせなさーい‼︎」

 

テンションがおかしな事になっている殺せんせーをよそに雄二も勉強を進める。一方で他の皆も集中しているが焦りの顔もあった。

 

月日は10月に入り殺せんせーの殺す期限はあと5ヵ月。もう半月もない。

 

 

 

 

 

「失礼します。烏間先生、頼まれていた皆の訓練評価値、俺が独断でつけたものだが……ってどうした?」

 

ノートパソコンをジッとみて思考を巡らせている烏間は微笑んでいる

 

「さっきからずっとよ。何か嬉しいことでもあったのカラスマ?」

 

「いや、テスト明けは訓練の厳しさも増す。それは伝えているな風見くん」

 

「はい。…そのぼろぼろのジャージと何か関係あるんですかこの話?」

 

記憶を思い返す。それはテスト勉強期間に入る前に最後の訓練で岡島が破いてしまった物だ

 

「うむ。ちょっとした報酬だ」

 

くるりとパソコンを向けて見せてくる。

 

「これは、随分金がかかってんな………性能は言うまでもないな」

 

2人はそれの機能も理解してもっとも効率の良い形に仕上げるように話す。

 

「って、あんたら女心がわかってなさすぎ」

 

「?機能的にはこの方がいいだろう?」

 

「はぁ、ダメね……女子の分は私が選ぶわ」

 

「…卑猥なのは厳禁な方向で」

 

「おい、勝手に…」

 

「では男子の分は私が烏間先生はイリーナ先生へのプレゼントを選んでください」

 

「消えろ、邪魔共‼︎」

 

殺せんせーススッと寄って来てついにキレた

 

「というか、プレゼント?」

 

「えぇ、もうすぐ10月10日。イリーナ先生の誕生日ですからねぇ」

 

「……ベッドとかいいんじゃないか?仕事上使う機会多いし」

 

「あぁん‼︎」

 

相変わらずの雄二の発言にキレるビッチ先生をおいて雄二は続ける

 

「まぁ、仕事の合間にちょっとは考えてやれ」

 

「カザミ、あんた」

 

「じゃないと拗ねて使い物にならないどころか濡れて溶けるぞこのビッチ」

 

「ほんっとムカつく‼︎今の私の感動を返せ‼︎」

 

毒プラスセクハラな発言にキレるのもいつも通りであった。

 

「そういうあんたも、女子の事は大切しなさい」

 

あと釘を刺された。面倒だなぁと思っていると烏間の携帯が鳴りだす。

 

「もしもし。あぁ…………⁉︎わ、わかった。全ての実務が終わり次第行く」

 

表情が変わる。何かよくない事があったのはすぐにわかる

 

「部下がセクハラで捕まったのか?」

 

「あんたじゃないっての。……カラスマ?」

 

「烏間先生。どうしました?」

 

そこで雄二もビッチ先生も殺せんせーも、ただごとでないのがわかった

 

「…生徒達の一部が、街でフリーランニングを無断で行ったそうだ。その結果、通行中の老人が怪我をし病院に運ばれた」

 

ここは暗殺教室。いつ、どんなタイミングで非日常が起きるかわからない。…良い事も、悪い事も。

 

 

すぐさまやらなくてはいけない業務を片付け雄二は烏間と共に病院に向かうと他の生徒達は病院の外にいた。

 

「俺が見てるから、烏間先生は件の人物を頼む」

 

「わかった。……バイト先から連絡はあったか?」

 

「検討中だそうだ。JBが頑張ってる」

 

「何もない事を祈っておこう。任せたぞ」

 

病院内に入って行く烏間を見届けて皆をみる。顔を伏せ、見ようとしてない。…それがどれくらい経ったかわからないが長い時間だったろう。烏間が病院から出てきてその沈黙が終わる。烏間は結果を告げる

 

「右大腿骨の亀裂骨折だそうだ。君等に驚きバランスを崩して転んだ拍子にヒビが入った」

 

話しを聞くとフリーランニングで建物の屋根伝い隣の駅前まで行くつもりだったそうだ。通学しながらの訓練をしようと何人かが参加して移動して行って最後の着地の時人通りが少ない細道を自転車で通っていた老人に出くわした。病院への連絡はたまたま近くにいた移動式の花屋の男性がしたそうだ

 

「程度は軽く2週間程で歩くことはできるそうだ。……だが」

 

程度が軽い、後は事後処理とは簡単にはいかない。E組の事は国家機密だ。どうして屋根から人が、しかも山に校舎がある生徒が?調べていけば必ず真実が明るみにでる。

 

「故に今、口止めと示談の交渉をしている。頑固そうな老人だが部下が必死に説得中だ」

 

烏間が喋るたびに罪悪感が彼らを覆う。と、ゾクリと背後からとてつもない殺気がした。雄二もそれに気づき、見る。殺せんせーだそれもいつぞやのイトナや南の島で見せた時と同じ全身がドス黒く、ビキビキと血管が浮かんでいた。

 

「だ、だってまさか、あんな小道に荷物いっぱいのチャリに乗ったじーさんがいるとは思わねーだろ‼︎」

 

「悪いことをしたのは、認めるよけど、自分の力を磨くためにやってんだし」

 

「地球を救う重圧と焦りがテメーにわかんのかよ」

 

岡島の言葉を起点に抱えていた物を言い訳のように吐き出していく。だがそれは本当に言い訳。自分達の犯した事から逃げる行為だ。それを理解させるように目を覚ますような。高速触手ビンタが雄二を除いた皆にくだされた。

 

「…生徒への危害と報告しますか烏間先生?」

 

生徒への危害を加えない。これは先生が教師をする上で決められたルールの1つだ。それを破ってまでしたという事はそれを上に報告して教師として殺してしまえば何故かわからないがこの生物は死を選ぶだろう。烏間はチラリと雄二を見る。さっきからそっぽを向いていた何も見てない星を見てたと言わんばりにだ

 

「……今回だけは見なかった事にする。暗殺期限まで時間がない。危険を承知で高度な訓練を取り入れたが…やはり君等には早すぎたのかもしれん。俺の責任だ」

 

烏間は烏間で殺せないまま過ぎていく期限に思うところがあった。言い終えた彼は交渉の為、病院内に戻って行った

 

「君達は強くなりすぎたのかも知れない」

 

顔に✖️を出して殺せんせーは説教を続ける

 

「身につけた力に酔い、弱い者の立場に立って考えることを忘れてしまった。それでは本校舎の生徒と変わりません」

 

殺せんせーに叩かて痛くて悔しいはずだが返す言葉がない。間違いをしたとそれに気付いていたのに目を逸らそうとしたが引き戻った

 

「話は変わりますが今日からテスト当日まで丁度2週間、今回の件に関わってない人も含めたクラス全員のテスト勉強を禁止します。これは罰ではありません。テストよりも優先すべき勉強をするだけです」

 

取り出した教科書を破きながら殺せんせーは言う。椚ヶ丘でそれをするというのはテストを捨てるに等しい。否、文字通り捨てるのだ

 

「教え忘れた先生にも責任があるまずは被害者を穏便に説得します………風見くん」

 

「!」

 

「君ならわかるのではないですか?」

 

「……… 正しく使えば『力』、間違って使えば『暴力』…か」

 

思い返すように雄二は告げた。

 

「そう。だが君が……いえ、この先は言っても同じですね。彼らへの言葉は自分で言いなさい」

 

そうして殺せんせーは移動した。被害者の元に向かったのだろう。ほんの少し皆が黙っていた。雄二の顔を見れないでいた

 

「…すまん」

 

「「「「「⁉︎」」」」

 

突然雄二が頭を下げて謝った。謝るべきは自分達だと思っていた。

 

「以前、桃花が暗殺期限が迫って焦ってる事を聞いた。その時点で、他もそうだと思うべきだった。解決できたかもしれないのになにもしなかった、俺の中で勝手に解決してた………すまない」

 

「ちょ、雄二、謝らないでよ⁉︎」

 

「今回は、そう、私達が…力の使い所を、間違えてた。雄二くんが謝る必要なんて…」

 

「何かできるのに、できたのに何もしない。俺がしたのはそれと同じだ。もちろんおまえ達の罪を被るつもりはない。罪は自分で感じなきゃ意味がない。それをおまえ達はもうできてる。だから、俺からも言いたいんだ」

 

彼らにとって雄二は目指すべき、越えるべき目標だ。その人物からの謝罪は心にくるものがあった。俯いてると雄二は近づいてぽんっと肩をたたく

 

「ほら、下を向いてんな。殺せんせーの事だしっかりとした説得をするさ」

 

そう言って皆を元気づける。だが、内心雄二は焦っている。胸ポケットの携帯がいつ震えるか、その結果がくるのが恐ろしくもあった

 

(信じてるぜ烏間、殺せんせー)

 

他人に祈るしかできない事に歯痒さを感じながら

 

 

 

結果を言うとどうにかなった。いや、なるかもしれないだ。いまだにその可能性はある。

 

「正直かなり上は荒れているわ。対象が病院にいるのもあって処理は簡単だろとか、平気で出るくらい」

 

JBの目に隈がある。寝ずに交渉、情報統制を行なっていたのだろう。感謝をせずにはいられなかった

 

「すまない。俺にも責任がある」

 

「えぇ、そうね。実際あなたの後継人を送る案すらあったわ。使い物にならない物を作る為にあそこに送ったわけではないってね」

 

ギリっと拳が握られる。血が出そうな勢いだ。

 

「ハイハイ、そこまでよ。私だってイライラしてるんだから。で報告、続けて」

 

「聞いてるんだろう?そっちの方が有力だ」

 

「あなたの口からも聞いてちゃんと裏合わせをするのよ。いいから答えなさい」

 

「………その後、殺せんせーが戻ってきて被害者のもとに向かった」

 

 

室内は大量の見舞いの花で満ちていた。どうにか通り道だけはある。いくつかどけたのか床に花びらが落ちていた。そして変装もしてない殺せんせーがいたので皆驚く。誠意を見せる為に正体と実情を話し見せたのだろう。殺せんせーは被害者の老人に近づき肩を揉む

 

「保育施設を経営している松方さんです。まずはしっかりと謝りましょう」

 

皆、頭を下げて謝罪をした。そして先生は続けて話す

 

「君達はプロの殺し屋である以上に責任ある1人前の人間だ。訓練中の過失には君達自身が責任を持つべきです。さすがに治療費は烏間先生が出しますが」

 

今回の件がどうにかなっているのは自分の烏間がポケットマネーでどうにかするのもある。

 

「しかし、慰謝料と仕事を休む分の損害は、君達が支払いましょう」

 

「つまり、タダ働きって事か?」

 

先生の顔に○が出る

 

「その通りです。2週間後、松方さんが歩けるようになった時点で賠償分の働きぶりが認めれれば今回の事は公表しないでくれるそうです」

 

 

「てな感じだ。明日からはそこに行く」

 

「調べてるわ『保育室学童保育:わかばパーク』入ってる生徒人数はそれなりに多いけど、格安で入れてるから職員数は生徒を見きれる分はいない園長であるその松方が色々働いてるみたいね………ちょっと待って」

 

「いや、俺もだ」

 

2人の携帯がなる。雄二の方は……知らない連絡先だったが一応出た

 

「もしもし、俺はあんたの家族でも恋人でもない一般人だ電話を間違えてるならすぐに[では、あなたの教師ならいいですか風見くん]…殺せんせー?」

 

相手は殺せんせーだった。だが先生には自分の連絡先は伝えてない雄二は驚き隠せない。

 

[君の電話番号はきちんと調べてますよ。本来なら、かけるつもりはありませんでした。君に緊急事態などが起きない限りは]

 

どうやって調べたとか聞いても無駄だろうがなんのようだと思っていると

 

「はぁ、なんですって⁉︎……わかりました処分は追って連絡を」

 

目の前のJBが立ち上がり叫んだ。そして気持ちを静めて座る

 

「……独断で上層部が松方の処分にかかったそうよ」

 

「なっ!おい、まさか⁉︎」

 

[大丈夫、ちょっと手入れをしただけです]

 

そこで何があったのかわかった。雄二はすぐにスマホをテーブルに置き、スピーカーをタッチしJBにも聞こえるようにする

 

「おい、先生いまスピーカーにした……というか、もう色々わかってる感じか?」

 

[ええ。君がしてきた事もね。勘違いしないでほしいですがそれは責めはしませんよ。しかし、問題は彼らです]

 

電話の向こうで殺せんせーがキレているのがわかる。きっと黒くなっている

 

[そこに君の上司がいますね?]

 

JBは特殊な機械を取り出してスマホに取り付けた

 

「気付いてるようなので答えさせていただくとそうです。声はそちらでは変わってるでしょうね」

 

[えぇ、そう聞こえますね]

 

無駄なことだろがそこはちゃんとしなければいけない

 

[私が言いたい事は1つ、今後このような事はやめてください。そして松方さん及びその関係者には絶対に手を出さない…まぁ、監視はギリギリ許しましょう。約束できないなら、わかってますね?]

 

あの教室を去るという事だ。

 

「ええ。こっちも正直驚いていました。まさか強行するなんて……対処と処理はお任せください」

 

[その言葉、確かに聞きました]

 

ブツっと切れて会話が終わる

 

「本当、油断できない怪物ね」

 

「俺も、久々にそう思ったよ」

 

冷や汗をかいたJBに共感する雄二であった

 

 

後日、ゴミ捨て場に親父狩りにあったとされる男たちが捨てられていたのを発見。彼らに罰則、指示した者は更迭されたそうだがそれを知る者は少ない

 




ちなみに
矢田桃花は原作と違い岡島達について行く事はしてません。むしろ止めてましたが全員に押し切られる形で見送りました

ちなみに2
先生は雄二の事を理解してますがさすがに過去は調べてません。だから彼の心の闇を理解しきれているわけではないです


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温もりの時間

しゃあ‼︎ようやく次回は死神編じゃー‼︎


「みんなきいてー。園長先生はおケガしちゃってしばらくお仕事できないの」

 

ダダ働き初日、職員の女性が子供達が園長が来てない事を気にしていたのもありその理由を告げる。

 

「そのかわりにね、このお兄ちゃん達が何でもしてくれるって」

 

子供達の前で紹介され、すぐに室内に響くいい声で「はーい‼︎」と子供は答えた

 

(まさか、俺が子供の面倒を見る機会が来るとはな)

 

どう接するべきかと来る前から考える

 

(麻子もこんな気持ちだったのかな)

 

とはいえ気持ちに整理はつけている。ここに来る前にJBの相談して少しはできる自信があるのだ。きゃっきゃっと来る大勢の子供が相撲のように雄二の明日に来た。

 

「そーりゃっと」

 

「うおー!にーちゃんすげー‼︎」

 

「なー次俺もー!」

 

腕を持たせてそのままグイと持ち上げた。宙ぶらりん状態なのに子供は楽しいのか笑顔が止まらない。が

 

グシャ

 

「ぬをっ!」

 

重量が増えて床が抜けて埋まってしまう

 

「いえぇい‼︎俺たちの勝ちぃー‼︎」

 

「くっ、床が脆いのは理解してたのにのせられた」

 

どうやら最初からこれが目的だった子供にまんまと嵌められたのを悟り雄二は悔しがっていた。ちなみ床が抜けるのはこれが初ではない先程さくらという名前の園児が箒を持って渚に攻撃しようとしたがその時も老朽化した床に沈んでしまった。

 

「あーあー何壊してんだよ」

 

「すいません。ここ直しときます」←雄二です

 

「「「風見の敬語…気持ちわりぃ⁉︎」」」

 

バカ3人に軽い鉄拳をして黙らせた

 

「ありがとう。でも謝らなくていいのよ。修繕できてないこっちにも非はあるんだから」

 

職員曰く、どうやらこのように壊れるのは日常的にあるようだ。直したくてもお金がない

 

「うちの園長、待機児童や不登校児がいれば片っ端から格安で預かってるから職員すら満足に雇えず本人が一番働いてるわ」

 

(JBが調べた通りってわけか)

 

この施設は園長1人によって全体が賄っていた。事故当日も大量の荷物を運んでいたのがいい証拠だ

 

「だが、幸いここには29人の人手がいる」

 

「だな、色々やれそうだ」

 

「なら、まずは何をどうするか話さないとな。磯貝、頼めるか?」

 

「任せろ。そんじゃ作戦会議といこう」

 

入院費の倍以上の働きをしようと気合を入れた。

 

2日目

 

まずは子供達との距離を近付ける。そのため原を中心に衣装を縫い、100円ショップにあるような安い小道具を使い数人で劇を始めた。

 

内容は勇者が悪い魔物を倒して姫と国を助けるありがちなもの……のはずだった

 

「やめて‼︎騎士カルマ、もう誰も傷つけないで‼︎」

 

姫(茅野)の言葉に耳を傾けているがまったく攻撃の手を緩めず魔物(寺坂)に剣でなく拳でゴスゴスと割とマジで殴る

 

「いやいや姫‼︎、この魔物を退治して魔王をどうにかしないと王国の平和はありませんって」

 

「カルマっ!テメぇ、当てるのなしって台本に…最初から殴るのが目的か‼︎」

 

「おい、何してる異界の魔物。もっと本気だせ。ほらほら強くなる魔法だー」

 

手に持った杖をグリグリと押し付けて力を与える魔王(雄二)。力を与えているので暴力ではない。ないったらない

 

「おまっ、味方なら助けてろや⁉︎」

 

「ね、眠れ魔物よ‼︎」

 

カオスになってきた時控えていた魔法使い(奥田)が口に布を押し付けると意識を失い泡を吹いて魔物は倒れた。

 

「ふー終わった。魔王もなかなかやるじゃん」

 

「勇者、素晴らしい(けん)であった」

 

ガシッと手を組んでお互いとってもいい笑顔である

 

「こうして魔法使いのクロロホルムで魔物は無傷で眠り、お互いを讃え合って勇者と魔王は仲良くなったのでした。めでたしめでたし

‼︎…はい皆さん、面白かったらはーくしゅー‼︎」

 

無茶苦茶な内容なのにも関わらず普段からありがちな童話やお伽噺を聞いていて飽きていた彼らにはずいぶんと受けたようで拍手喝采だった。

 

子供が楽しくなるよう率先して茅野が盛り上げるようヒーローショーのように声掛けをしていたのが良かったのだろう

 

「よし、つぎは外で爆破でもいくか…寺坂に」

 

「いいねーそれきっとウケる事間違いなし」

 

「俺はアクション人形でも俳優でもねー‼︎」

 

3日目

 

この日雄二は外で老朽化した施設修復及び立て直し、改善のための作業をしている。

 

「お、風見今日はこっちか」

 

「あぁ。力仕事もできるなら両方したほうがいいだろ?」

 

木材を運びながら雄二は中を見ると昨日とはまた違った光景があった。数人の生徒が勉強を教えていたのだ。

 

「教えるのって難しいからなー大変そうだ」

 

「そうだな。まぁ、普通じゃないやり方の授業を受けてきたんだどうにかなるさ」

 

「雄二くーん!ちょっと来てー」

 

木材を置いたとき陽菜乃が呼ぶ。何か手が必要な案件があるのか行ってみるとネコが木の上に登り動けなくなったようだ

 

「まだ子猫だから木登りの経験が少なくて降りられなくなったの」

 

「ネコによくあるパターンだな」

 

「俺が行こうか風見?体育祭の時のイトナみたいに」

 

木村が言ってくるが頼まれた身として自分が行くと雄二は答えて軽くストレッチをした。わかったと木村は木の下に移動していつでも来ていいぞ合図を送る。

 

「…ふっ!」

 

ダッと駆ける。加速しきったところで木村の組んだ手に足をかけて軸にして飛ぶ。木村も勢いをつけて持ち上げ上昇力が上がり木の上高い部分に到達し、フリーランニングを活かしてネコの元へ行き、スッと軽く抱き上げてくるりと一回転し着地した。

 

「こんなものか…ん?」

 

子供達がポカーンとした表情で見ていたがそれはすぐに歓喜に変わる

 

「すっげー‼︎すっげー‼︎」

 

「ねぇ、今のどうやったの⁉︎」

 

「俺もできるようになりてー‼︎」

 

まるでヒーローを讃えるように雄二の元へ子供が集まりてんややんわである。

 

「カッコいい……」

 

「王子様みたい」

 

(また惚れさせてんな)

 

(渚もあのさくらって子に無自覚で惚れさせてるし…意外と似たもの同士なのかもね)

 

その光景に3人の女子はときめきつつもちょっと嫉妬していた

 

 

4日目

 

この日雄二はバイトで遅れてきたがきた瞬間に子供達から昨日のもう一回やってとせがまれる

 

「…昨日のは子猫を助けるためだ。いつでもするようなものじゃない。俺には師匠がいるが曰く、間違って使った力は『暴力』だ。正しく使う時を選ぶからカッコいいんだ。ヒーローはいつでも闘うからヒーローじゃないってわかるか?」

 

「あっ、そっか。ライダーもいつも戦ってるわけじゃないしな」

 

「怪人がでた時とみんなを守る時だな」

 

どうやら納得がいったようだが

 

「じゃあ、やり方教えてよー」

 

と今度は教えてとせがまれ困る。一応訓練の事は秘密にした方がいいし何より素人どころか子供に教えるなどどうすればいいかなどわからないからだ

 

「じゃあ、私が軽く教えるよ。それでいいかな風見くん」

 

「神崎か…頼む」

 

神崎は子供ウケがよく男の子からは『俺の嫁』とか言われている。かと言って女の子のウケも良い。日本人が憧れる大和撫子みたいなお淑やかな女性で気立もできるという女の子の憧れとなっている。

 

「片足を上げると上げた方に体が倒れるからその勢いを利用して動くのでも慣れないと転んじゃうから地面が柔らかいところで練習してみるといいかな」

 

神崎は動きやすい足の使い方を他にも説明していく。子供達はなんとなくでも真似をしてステップが軽やかになる

 

「ありがとうおねーちゃん」

 

「どういたしまして」

 

心からのお礼が嬉しく神崎も笑顔になった。

 

「ねぇ、おねーちゃんっておにーさんの恋人?」

 

「え?」

 

子供は純粋だ。だからこれも純粋な質問

 

「違うよ。でもどうして?」

 

「お母さんが言ってたの。好きな人を見つけると女の子はもっと可愛くて笑顔が素敵になるって」

 

なるほどなーと神崎は思うがそれは否定できる。だから「違う」と言ったのだ

 

「もしそうなら、男の子に好きになってもらう方法知りたかったんだけどな〜」

 

「好きな子がいるの?」

 

コクリと頷く

 

「じゃあ、まずはその子の事をいっぱい知る事からだね。たくさん遊んで、観察して、それでそこから攻めるポイントを見つけていくの好きなこと嫌いな事色々とね。そうすると相手も知ろうとしてくるから」

 

「わかった」

 

パァと笑顔になる。自分なりに教えたが納得してくれてよかったと思う神崎であった

 

 

ちなみに神崎にした質問は他の女の子もしていた……雄二が好きな女子3人に。

 

そしてその4人の女の子が好きな男の子は全員同じであると知らずに。のちに知らない内にその男の子のあずかり知らぬところでハーレムを築くことになるのは随分と先になる

 

 

そうして2週間という期間はあっという間に過ぎていき園長の松方が戻って来る日が来た

 

「さて、私の生徒は良い働きをしましたかねぇ」

 

「フン、何人いようと所詮は烏合の衆だ。ガキ共の重みで施設が潰れてなければ上出来だろ……というかおまえ、やけにワシに付き添うがなんなんだ⁉︎このあいだは真夜中にベットの隣に立ってたから思わず昇天しそうになったぞ‼︎」

 

「いや、すいません。看病するのも誠意の一環だと思い」

 

「だからってナース服姿でくる理由があるのか⁉︎」

 

「それに、一応警戒もしといた方がいいですし」

 

「なんじゃって?」

 

「いえ、別に」

 

そうして目的地に向かい歩みを進めていると殺せんせーが立ち止まる

 

「おいなにを止まっておる」

 

「いえ着きましたので」

 

ニヤリとしてその方角を見る

 

「は、ついたって………なっ⁉︎」

 

わかばパークを見て園長の目が飛び出る

 

「なんという事でしょう‼︎」

 

目の前には自分が知ってる木造平家プラス屋根裏部屋もついた2階建の木造ログハウスと進化していた

 

「というより別物だろ‼︎」

 

「よう、じーさん。2週間分の損害に見合ってるか」

 

「中もぜひ見てください」

 

屋根の上で点検やニス塗りをしていた寺坂と磯貝が言う。

 

言われて中に入る。1階は壁の一部を新しく作った部屋と繋げ職員室にした。雄二がバイト先にある使用してないホワイトボードを持ってきた事で教えるのも捗る。

 

「っと、この先見るのは後にして、まずは2階を見てくれ」

 

吉田が止めて1度外に出て階段を登り、2階へ移動する2階は広い空間を作り2つの部屋に分けた。図書館と室内遊技場だ

 

「これだけの本もそうだが、いったいどこからこれだけの木材を」

 

「俺たちがいる校舎の裏山には沢山の間伐した木があるからそこから。設計は知り合いの建築士に頼んで作ってもらってそれ通りに組み立てた」

 

「本は近所を回って読まなくなったのをかき集めてもらったの」

 

「当然ここでも勉強はできようテーブルと椅子もいくつか作ってある」

 

続いて遊技場を見ると簡素だがしっかりした滑り台、回転遊具、ボルダリングなどが作られていた。安全性の向上のためネットやマットを入念に敷いている。遊具は室内だから雨で錆びたりしない。

 

「さぁて、じーさん。さっき見せなかった部屋に行こうぜ。あの回転遊具覚えといてな」

 

吉田は自信たっぷりとした表情で案内したの職員員室兼ガレージ

 

「ってガレージ?」

 

気になるワードを言われて困惑しつつ向かう。

 

「これは…ワシの自転車か⁉︎」

 

パーツの色やいくつか知ってる部分の傷を見てそう判断したが以前と違い吉田とイトナの技術班が作り上げた改良型だ前輪2後輪1の三輪自転車しかも電動アシスト機能がついておまけに積載重量も増えている。

 

「こんなパーツ何処から」

 

「日本では毎年何台もの放置自転車が回収されるが、そのほとんどは持ち主が来ないまま廃棄される。その一部を頼んでもらったんだ」

 

疑問に雄二が答える。ちなみにそれを交渉したのはJBだ。

 

「しかもだ、上の部屋にある回転遊具と充電器がつながっているから子供達が遊べば遊ぶほど助かる仕組みになってんぜ」

 

「…………で、出来すぎとる‼︎というよりちょっと手際が良すぎて逆に気持ち悪い‼︎」

 

「ちなみに園長先生の思い出のこもった古い入れ歯は自転車のベルに再利用した‼︎」

 

「気持ち悪いわ‼︎いらんしそんな匠の気遣い‼︎」

 

ツッコミ疲れたのかちょっと息切れをしたがすぐ戻って真剣な表情になる

 

「…たしかにこれは素晴らしい。が、ここで最も重要な仕事は建築がメインではない。子供達と心と心が通っているかだ。建て直してくれた事は感情する。だがそれが出来ていないのなら、悪いがこの2週間を働いたとは認めんぞ」

 

「それなら問題ないって言うよりそっちの方が良いかもしれないぞ」

 

チラリと後ろを見て指す

 

「おーい、渚ー‼︎ ジャーン‼︎テスト見てくれ‼︎95点‼︎クラスで2番だぞ‼︎」

 

「おーすごい、頑張ったね‼︎」 

 

さくらは悪質なイジメを受けて不登校になり、勉学も遅れていた。そこで渚は勉強を教えるのともうひとつイジメっ子への戦い方を教えた

 

「算数のテストの時間だけ(・・)不意打ちで出席して終わったら速攻で帰った」

 

教師意外にそれを教えていないのでイジメっ子は相当驚いたそうで集中できず点が落ちたそうだ

 

「自分の一番得意な一撃を相手の体勢が整う前に叩き込む。これがE組(ぼくら)の戦いだよ。今回は算数だけしか教えられなかったけど、こんあ風に一撃離脱を繰り返しながら…学校で戦える武器を増やしていこう」

 

「だ、だったら……これからもたまには教えろよな」

 

「もちろん‼︎」

 

「あ、正義の魔王!来てたんだ‼︎」

 

雄二のあだ名は正義の魔王というわけのわからないものになっていた

 

「今日で終わりかーもっと教わりたかったなー俺、競争で早くなったんだぜ!」

 

「縄跳びが上手くなったのありがとう‼︎」

 

「体を動かす方ばっかりだけだが、それはよかったよ」

 

無愛想に見えるが他の者には照れてるもしくは嬉しそうだなと感じていた

 

「……クソガキ共、文句のひとつも出てこんわ」

 

子供達の頭をなでつつ松方は悪態を吐きつつ告げる

 

「認めるよ。というか、もとよりおまえ達の秘密など興味ない。ワシの仕事だけで頭はいっぱいだからな」

 

こうして、たくさんの感謝と笑顔を背に軽やかにE組は自分達の場所へ戻る

 

 

 

 

 

「で、中間テストはボロ負けっと」

 

「あの学校で2週間も勉強しないでテストなんて自殺行為に等しいんだぞ。そこんところわかってほしいんだがな」

 

「結果が全てでしょう?順位も落ちてるし」

 

「一応4位なんだがな」

 

風見雄二:総合点数484『学年4位』

 

もとより勉学自体はどこでも出来た。バイトで自分の仕事がくるまで待つ気晴らしなどである

 

「それより、そっちの問題は?松方って方の」

 

「完全に独断で行ったとして更迭されたわ。いくらなんでも命令違反は許されないし、ホイホイ命を奪うものでもないんだから。ただ、しばらく監視としてあそこに職員として送ったんだけど…」

 

「どうした?」

 

「どうもそこが気に入って、退職届が来たわ。で、そいつの監視のために新たに送ったらそいつも退職届出してきて…」

 

「ここはブラック企業か?」

 

「…………似たようなものでしょ?というか、どんな改造したんだか」

 

「多分、飢えてんだろ。温もりに」

 

「…………そうかもね。あなたは、どうなの?」

 

「さぁな」

 




ちなみに
退職届をだした人物達は監視と報告書を出し続ける人生もそれ以上のペナルティがあるのも容認して出しました。しかし2人も出したので職員としてはもう送らず遠くからの監視になりました。
2人とも人生エンジョイ中。あとそのうち登場させます


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プレゼントの時間

死神編です。この話自体はどうするかはこの話を始めた初期からある程度考えていました。雄二が強化した生徒達と雄二に死神が対応できるよう原作よりも死神サイドは強くしてます。それが2人の助っ人


side???

 

いついかなる時も準備は万端である事が望ましい。当たり前の事だがそう上手くはいかない。時間はいつでも有限、用意したものがないなんてこともザラにあるし、急遽目的の変更などで準備もパァになる事もある。

 

「そんな中でもキッチリ仕事をこなしてこそのプロだ。……君達の存在もそう。手持ちのカードが増えても使いこなせなかったり、使えなければただの余分な荷物になる。だから、しっかりと僕の言う事に従ってくれ」

 

2人はコクリとうなずく。テスト結果は上々、使っても問題なさそうだ。

 

「じゃ、残りの準備とこれの跡片付けよろしくね。小さいとはいえヤクザの事務所だからね証拠は全て抹消しないと」

 

2人がテキパキと動いてくれてすぐに片付く。発見されるのはせいぜい1週間後、それだけあれば問題ない

 

「じゃ、そろそろ君達がいると警戒して花が売れないから、目標場所で身を隠しててね」

 

*sideフリー

 

燃える音が山の中ではあるが聞こえる。万が一のことも考えて川辺で行なっている。

 

「ヌルフフフ。宴の始まりですねぇ」

 

ご自慢の触手を動かしてケースから用意しておいたそれを殺せんせーは出した。

 

「では、早速」

 

ささっと鉄製の網をひいて用意しておいたもの肉と野菜が交互に鉄串に刺さっているものを置く…要するにバーベキューだ

 

「フランスの直売所でこっそりかったフォアグラでバーベキュー、こればかりは生徒達には内緒ですねぇ」

 

相変わらずのマッハの無駄z…有効活用である

 

「ではひと口目を…」

 

食べようとした瞬間、意外な場所から攻撃が来た

 

「ってにゅやー⁉︎」

 

空中から莉桜が落下して来た。呑気にバーベキューしてたとはいえ警戒はしてたので落下ざまに振って来たナイフは避けたがまさか火のある真上から来るとは思わなかったのか殺せんせーはびっくりしていた

 

「なっ、なんて場所から落ちてくるんですか中村さん‼︎」

 

「注意してるのはいいけど良いのか殺せんせー?」

 

「にゅわ⁉︎風見くん⁉︎」

 

迷彩で周囲の岩盤と同化して気配を消して近付いていた雄二が言う。ちなみに殺せんせーは存在には気付いていたが位置と誰かまではわからなかった

 

「俺にかまってていいのか?…もう肉食われてるけど」

 

「ってあー⁉︎」

 

莉桜と雄二に気を取られている間に先生が回収した肉達は生徒の皆がもぐもぐと食っていた

 

「殺せんせー前に行ってたバーベキューの件忘れてなかったんだねありがとー」

 

「いやーいい先生だよねー」

 

「理事長に給料上げてもらうよう頼んでみる?」

 

「さぁ、いくらべも食べなさいチクショウ‼︎…私のフォアグラぁぁぁ」

 

「…先生、俺のやるから」

 

結局フォアグラは少ししか食べられなかった。

 

「で、どうだ莉桜?」

 

「すごいとしかいえないね。結構な高さからバーベキュー台に落ちたのに痛くも熱くもない。それに傷も無いよこの体育着」

 

先程、先日烏間が話した報酬、防衛省からのプレゼント…と言う名なのモニターとしての支給として渡された特定強化体育着。ちょっと着てみるだけ…で済むはずない。性能を試したくて皆うずうずしていた。

 

「なら、早速試そう」

 

と雄二が言った事で皆各々で速攻で動いた。まずはバーベキュー中の先生へ強襲

 

「さっきも試したが、とんでもない迷彩効果があるな」

 

「全五色の組み合わせでどんな場所にも合う迷彩にできる。烏間先生の言った通りだ」

 

「装填よし。迷彩よし。行くわよ」

 

「菅谷は待機。迷彩塗装感謝する」

 

「お、おう(仕事人感が上がってるな)」

 

ターゲットの殺せんせーの動向はすでに掴んでいる。この時間はこの日当たりの良い場所で不破から買った中古のジャンプをじっくりと読む。退廃的な休憩ともいえる

 

「目標確認。固くなるな、練習通りにいくぞ」

 

「「了解」」

 

「標準指示をする俺に続いて撃て。目標の位置が当初の予定位置からズレあり誤差修正002、003……ファイア」

 

放たれた弾は殺せんせーの持っているジャンプに命中したちょうど次のページをめくった瞬間であり、もうそのページは命中したペイント弾で読めなくなった

 

「にゅあー⁉︎ここからいいシーンなのに見れない⁉︎ん、しかも束部分に濃い色がぁ⁉︎他もいい感じに読めなくなってる‼︎風見くんと千葉くん、それに速水さんですか今のは‼︎」

 

せっかく買ったジャンプがパァである。ちなみにこのジャンプ、雄二の指示で不破は別口で安く仕入れて先生に少し高めで売ってる

 

「迷彩効果バッチリだ」

 

「色もすぐに落ちてすぐ変わる。カメレオンみたいだな」

 

「狙撃のポイント選びの幅も広がって満足」

 

「おまえら会話がいちいち仕事人だぞ」

 

「「「そんなことないだろ(でしょ)」」」

 

(そういうとこだって)

 

嫌がらせを含めた先生への狙撃

 

「ニュフーこのロケットおっぱいの再現の難しさ‼︎芸術家としての腕のふるいどころですねぇ」

 

グラビア雑誌を見ながら少しずつ石彫を削り仕上げていく。マッハの先生をもってしても1時間以上の時間をかけている。もっと有意義な時間の活用法はないのかと言いたいレベルだ

 

「ってさっきからモノローグが酷い気がしま…」

 

ガシャァン‼︎

 

「にゅやーッ‼︎今度は何事ですか⁉︎」

 

窓を突き破って生徒突入してきた。先程の莉桜の時も肩、背中、腰は衝撃吸収ポリマーが効果的に守ったからだが、当然前も同様な守りがあるうえにフードを被って内部のエアを入れる事で頭と首も守れ危険な暗殺も無傷で実行できる。窓を突き破ったにもかかわらず生徒にはガラス片も木屑も刺さっていない。そして先生が愛情と丹精…あと煩悩を詰めた石彫を弾幕によって破壊した。

 

「なんなんですか今日は‼︎息つくヒマもない‼︎」

 

いままでもこういった事はあったがいままで以上である

 

「せっかくの新装備。手の内をさらすのはやめとけと言ったんだがな」

 

ずっと遠くで見ていた烏間がやれやれといった感じで言いつつことの発端である雄二を見るがソッポを向いていた

 

「彼等がおまえに見せたかったそうだ新しい(ちから)の使い方を」

 

「教えの答えは暗殺で返す。それがE組(ここ)の流儀だからな」

 

「怒られた後だしね。真面目に殺しで応えなきゃ」

 

「約束するよ殺せんせー。私達のこの『力』は…誰かを守る目的以外で使わないって」

 

「皆、力の本当の使い方も持つものとしての志もわかった。先生、今回の問題もクリアって事でいいだろ?」

 

殺せんせーはニンマリと笑みを浮かべ

 

「満点の答えです。明日からは通常授業に戻りますよ」

 

生徒から渡された新しい窓をつけながら殺せんせーは何かを思い返すように遠くを見ていた。

 

 

 

「…うん。モニターとしての評価はいいわね。今後もこれを使った時の報告をお願いね」

 

「ウチで使うのか?これ」

 

「少なくともあなたにはないでしょうね」

 

あっそうと雄二は心底つまらなそうに言う

 

「で、そんな事の為だけに呼んだわけじゃないだろ?」

 

「えぇ。最近現場でおかしな事が起きているのはあなたもしってるでしょ」

 

「あぁ。ずいぶんと怯えていたらしいな」

 

「取り調べたんだけどどうも内容がわからないの「言えない、言えないんだ」って感じでね。これは推測に過ぎないけど、彼等は死にかけたわけでも殺されかけたわけでもなく、ああなるように仕掛けていたのかもしれないわ。そうでなきゃこんなにも続かない」

 

「だが、何のためにだ?」

 

「それが分かれば苦労しないわ。ただ、あなたがする事は変わらない…これまで通り、『ゴミ』の処理をお願いね」

 

ファイルを渡された。

 

「?今日じゃない。しかもずいぶんと期間が空くな……が、よかった」

 

「?」

 

なにが嬉しいのかわからないのかJB首をかしげる

 

「ビッチ先…イリーナのプレゼントを烏間に渡させる計画を立ててなって…どうした?おまえにも誕生日プレゼント渡したろ」

 

「そうじゃないわ……あなたが楽しそうで嬉しいだけよ」

 

「なんだそりゃ?…今回の報告はもういいんだろう?学校にいる時にはなるべく呼ばないでくれ」

 

鞄を持って遅れる事が決まっているが早足で再び登校をはじめた

 

「…………でも、任務を忘れちゃダメよ」

 

最後に冷たくもしっかりとした声が聞こえて

 

「…わかってるさ」

 

雄二もしっかりと告げた

 

 

E組の校舎に近づくたびに音楽が聞こえる。『ビッチ&烏間くっつけ計画:第2弾(雄二曰くまんまのネーミング)』としてビッチ先生を外に出したのだろうなと雄二はわかった

 

「あっ、雄二くんおかえりー」

 

「こんな時間にも呼び出されるんだね」

 

「まぁ、いずれはそこで働くしな仕方ない。ところでビッチ先生の方は引き付けてるみたいだな」

 

「うん。雄二くんも烏間先生の方にさりげなくお願いね」

 

ビッチ先生と烏間を離しその隙にプレゼントを買い出し班が用意する。そして雄二には遊撃が与えられたそれとなく烏間にプレゼントの事を除いてビッチ先生のアピールせよとの事。ちょうど報告もあったので職員室へと向かう

 

「戻ったか」

 

「ああ。報告は今いりますか?」

 

「心配ない。あのタコも今外でないかしている」

 

事務的すぎだろというツッコミを入れる人物がいない為2人の会話は驚くほど少ない。

 

「ところでさっきあいつらとはしゃぐビッチ先生を見たんだが」

 

「どうした?」

 

ここで見ただけではそれで会話終了だが「見たんだが」と入れる事で多少の興味を持たせた

 

「なんか、随分変わったな。まるで、姉か友達だ」

 

「あぁ、そうだな」

 

「…烏間先生、あんたも変わったと思う」

 

「俺が?」

 

「少なくとも最初よりな。あいつらを大切にしてる」

 

「任務は忘れてはいない。新しい服にしたんだどんどん厳しくいくぞ」

 

「それが、良いって事だよ。ただ、ターゲットの殺せんせーはともかく、ビッチ先生は仲間なんだ。もう少しだけあいつらみたいに接してやれよ。そうじゃなきゃ、俺に飛び火する」

 

「…………善処する」

 

そうして会話は止まる書類とペンの音が職員室に響き、そろそろ出るかと思っていると渚含めた買い出し班が入ってきた

 

「あ、雄二帰ってたんだ」

 

「あぁ。こんな日に呼び出すなんて全く嫌なもんだ……ところでそれは?」

 

渚の持っていた花束を指さす。当然狙ってだ

 

「あぁ、これは遅くなったけどビッチ先生への誕生日プレゼントなんだけど……烏間先生、渡してもらえますか?」

 

意図に気付いて渚もあわせて烏間に言う

 

「イリーナに誕生日の花束?何故俺が?君等が直接渡した方が喜ぶだろう」

 

相変わらずの鈍さだなぁと思いつつ渚達はどうしようかと思っていたが

 

「…いや、やはり俺が渡そう気遣い感謝する」

 

とあっさり受け取ったので説得しようと思っていたカルマも驚く。

 

「善処すると言ったばかりだからな」

 

と、雄二の方を見て言うのを見て援護があったのだと理解した

 

「あ、俺等が用意したのはナイショね」

 

「わかった」

 

お願いしますと告げ皆その場を去り、窓の外側に殺せんせーを含めた全員が張り付く。

 

「あーカラスマ‼︎聞いてよ、ガキどもがね…」

 

陽動班が退却したのでさっきまで生徒達に慕われてちょっといいなと思ったところにいきなり全員が帰ってた事にお怒りのようでその愚痴を烏間に述べようとしたが

 

「丁度良いイリーナ」

 

烏間がビッチ先生にいつも以上に真剣な眼差しで見つめてきたので彼女も愚痴を言うの忘れてしまう

 

「誕生日おめでとう」

 

ビッチ先生は一瞬呆けてしまう。ゆっくりと花束を手に取り信じられないという顔になる

 

「……うそ。あんたが?」

 

正直彼女は烏間が自分にプレゼントなんてしないだろうと思っていた。

 

「遅れてすまなかったな。色々と忙しかった」

 

「やっば…超うれしい。ありがと」

 

 驚きはあったがそれ以上によろこびの感情が多くなり花束を再度見つめる

 

「あんたのくせに上出来よ。なんか企んでんじゃないでしょうね」

 

「バカ言え。祝いたいのは本心だ」

 

………ここまでならよかった。

 

「おそらくは最初で最後の誕生祝いだしな」

 

空気が変わった感じがしたのを何人か感じた。ビッチ先生も同じだ

 

「何よ、最初で最後って」

 

聞くべきではない事かもしれない。聞いてしまえば何かが終わるそう思っているが聞かずにはいられなかった

 

「当然だ。任務を終えるか地球が終わるか2つに1つ。どちらにせよあと半年もせず終わるんだ」

 

それは事実上の拒絶。今の関係はこの時のみ以降は何もないから断つと

 

そこで彼女は全てを察した。スッと烏間を横切りガラッと窓を開ける。

 

「やべーバレた…」

 

ビッチ先生の表情は冷たい。つまらない映画のオチを見たような顔だ

 

「こんなことだろうと思ったわ。この堅物が…誕生日に花贈るなんて思いつくはずないもんね」

 

太ももから拳銃を素早く出して撃つ。当てるつもりは一切ないのか奥の木に命中した。

 

「楽しんでくれた?プロの殺し屋が、ガキどものシナリオに踊らされて舞い上がってる姿見て」

 

自虐的なセリフを言いつつ冷たい笑みをうかべる。

 

「先生、それは違う。確かに少しは楽しむ目的もあったが、根本は先生への好意で…」

 

弾が雄二を掠めた

 

「あんたもよ。いい加減、目を覚ましたらどう(・・・・・・・・・)?」

 

ビッチ先生はバサッと花束を叩きつけるように烏間に返し、帰っていく。

 

「ちょ、ビッチ先生‼︎」

 

「…そっとしておきましょう明日になれば冷静に話もできるでしょう」

 

止めようとする生徒を殺せんせーが止める。この状況で呼び止めるのは逆効果だと判断したからだ。

 

「烏間先生、なんか冷たくないスかさっきの一言‼︎」

 

「まさか……まだ気づいてないんですか⁉︎」

 

鈍いにしても鈍すぎると生徒達も批難するが

 

「そこまで俺が鈍く見えるか」

 

「え」と数人が呟いた

 

「非情と思われても仕方ないが、あのまま冷静さを欠き続けるなら他の暗殺者を雇う」

 

堅物で鈍感だが他者からの好意に気付けない烏間ではない。そして接する内に気付いたのだろう。その好意がどのような好意なのか

 

「色恋で鈍るような刃なら…ここで仕事する資格はない。それだけの事だ」

 

「プロとしての一線を引く。それが答えか」

 

「ああ」

 

烏間の出した答えは生徒達には理解できるが納得はできない。だが、雄二にはわかる。だから彼を責める事などできない。そして雄二も答えを出さなければならない存在だといま一度再確認していた

 

 

 

 




本誌を見てた当時は烏間が好意に気付いてない故のセリフと思ってたのでビックリした記憶があります。
雄二もキスまでされているので好意に気付いてますが彼はまぁ、あれですし。今回の件で彼女達含めた生徒との関わりを悩むように持っていく予定です。


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死神の時間

さて、どう彼らを戦わせようかな


あれ以降、ビッチ先生は学校に来ていない。その期間は3日目になる

 

「私達、余計な事しちゃったかな」

 

桃花が落ち込み気味に言うと皆同じ事を考えていたのかうつむく

 

「烏間先生は厳しい人だからね。特に、一人前の大人相手だと」

 

先ほどまで烏間はいたが殺し屋との面談があるとの事で先に帰って行った

 

「こればかりは時間が解決する事ですからねぇ」

 

殺せんせーも関わった者としてそして烏間の考えもわかる故、どうにもできなかった。

 

「イリーナ先生に動きがあれば呼んで下さい。先生これからブラジルまでサッカー観戦に行かなくては」

 

「にわかファンのくせに」

 

「普段は野球派でしょ。そっちもそっちでにわかっぽいし」

 

「応援する方も毎回違うし」

 

「ぬぐぅ!……君達最近毒が多くないですか?風見君の影響ですか?」

 

わりと心にダメージを負いながら以前から行きたいと思っていたサッカー観戦の為ブラジルへ向かった

 

「あーあ。雄二君もバイトで今日は来れないそうだし」

 

「来てたら相談してたけどね。…まぁ、流石に今回はどうにもなんないかもしれないけど」

 

彼女達言う通り今日は以前JBから受けた仕事の為ここにはいない

 

「うーんダメ。ビッチ先生ケータイもつながんない」

 

桃花は時間をおきつつ何度も連絡するが毎回出られませんコールばかりだ

 

「まさか…このままバイバイなんて事はないよな」

 

「そんな事はないよ、彼女にはまだやってもらう事がある」

 

千葉の不安をやわらげるようなんて事ない仕草と声で丁重に花束を運びつつ花屋の男は教室を歩く

 

「だよねーなんだかんだでいないと寂しいし、いてくれたら楽しいし」

 

「そう、君達と彼女の間には充分な絆が出来ている。それは下調べで確認済みだ」

 

岡野の言葉に同調するように答える。口から出る言葉は自然に例えるならそよ風の様にクラスの皆に通っていく。

 

「だから僕は、それを利用させてもらうだけさ」

 

バサっと花束を教壇に置く。もっと静かに置くこともできたが合図とする為あえて音がするように置く。そこでようやく全員がその異常に、花屋に気づく。

 

平然とまるで最初からクラスにいたようにその男は溶け込んでいた。それがどれだけ異常なのかなど彼らならよくわかる。訓練をしてきたなら尚更だ。

 

「はじめまして、僕は『死神』と呼ばれている殺し屋です」

 

『死神』…その名はロヴロから聞いていた者もいる。世界最高の暗殺者

 

「今から君達に授業をしたいと思います」

 

だがニコニコとした表情、見た感じの印象、その声を聞くだけではとてもじゃないがそうには見えない。マジックの様に手のひらから花を出し説明をしだす

 

「花はその美しさにより、人間の警戒心を打ち消し人の心を開きます。これは渚くん達にも言ったよね。種類にもよりますが、香りは精神と肉体の疲労感と緊張感をほぐす効果があります。アロマセラピーなどがコレに入りますね」

 

その言葉に渚達買い出し組はわずかだが反応する。彼らがもって帰った花束は彼から購入したからだ

 

「けどそれは本来花がしたくてやってきた進化じゃない。花が美しく芳しく進化してきた理由は虫をおびき寄せるためです………律さん、画像が送られてきたでしょ?表示して」

 

時間差で自分が話をするタイミングに合わせて送る様にセットしていた。つまりは全てが計画通りだという事だ。そしてその画像には…ビッチ先生が写っている。だだし手足を縛られて身動きがとれにくい人がギリギリ入れる箱に詰め込んだ状態だ。所々汚れも見える怪我をしている可能性も充分にある

 

「手短に言います。彼女の命を守りたければ先生方、それとこの場にいない生徒がいるならその子にも決して言わず、君達全員で僕が指定する場所に来なさい」

 

ビッチ先生の状態に驚く生徒達を横目に死神は淡々と説明を続ける

 

「あ、来たくないなら来なくてもいいよ。その場合は彼女の方を君達に届けます。全員に平等に行き渡るように小分けにして、花を詰めてね」

 

黒板にビッチ先生の簡単な絵を描き縦線と横線を書いて表現する。

 

「それでもダメなら次の『花』は君達のうちの誰かにするでしょう」

 

先程から目の前にいて、恐しい事を平然と言っていて、感覚でそれがハッタリでないのはわかる。それなのに全く危機を、恐怖を、敵意を、まるで感じない。むしろ安心してしまう。警戒できない。恐怖ではなくおかしな困惑がそこにあった

 

カルマ曰く、「怖くないって実は1番怖い」その言葉の代表が今目の前にいた

 

「おうおう兄ちゃんよ好き放題しゃべってくれてっけどよ、別に俺等はあんな高飛車ビッチを助ける義理はねー」

 

この様な歪な状況下でもすぐに口を出し、行動できるのは寺坂の才能と言ってもいい。それに呼応する様に吉田と村松も立ち、死神を囲い込む

 

「俺等をどうこうしようってんならそれも無理だぜ。烏間とあのタコがそんな真似ゆるさねー。それ以前に、俺等を無視に例えてんならそれは逆だぜ」

 

「飛んで火に入る夏の虫…かな?」

 

死神は「夏じゃないけどね」っととぼけたように言う

 

「おうそうだ。ここでボコられる事を想定してなかったのかよ誘拐犯?」

 

寺坂の睨みと言葉に一切動じず、ニコニコした表情のまま死神は「不正解」と否定する

 

「君達は自分達が思ってる以上に彼女が好きだ話し合っても見捨てると言う結論は出せないだろうね」

 

優れた殺し屋は万に通じる。それが世界一ともなれば訓練しているとはいえたかが中学生の思考を読むなど造作もない。

 

「そして僕は虫ではなく死神。死神を人間が刈り取る事などできはしない」

 

持ち込んだ花束をバラしながら軽く投げる。多くの花びらを撒き散らし落ちていく。そして死神は彼らの目の前で煙の様に消える

 

「畏れるなかれ、死神が人を刈り取るのみだ」

 

そんな言葉と一枚の地図を残して

 

 

 

 

「目的地到着。これより待機する」

 

【了解。9029待機に入りました】

 

無線を通してその場待ちを開始する。用意したモノを多少整備と微調整をして後は適当に脳内で次に終わった後どうするかを考えていると横に置いた仕事用の携帯からバイブ音がする。掛かってくる相手は限られている。

 

「なんだ?」

 

【調子は?】

 

「悪いって言えば外れられるのか?つか、そんなことのためにいちいち連絡するな」

 

イラッとして雄二は言う。ついでにいうと今日は完全にクラスメイトに会えない事もイラつかせる理由だ

 

【仕事なんだからごちゃごちゃ言わない】

 

「だからって現地集合から作成会議の時間ながくねーか?ほとんどの話が事前にしたもので意味のない会議だったぞ?」

 

【ちょっとは私の気持ちがわかった?】

 

「切るぞ」

 

いい加減イライラしてきたのでそう言って電源ボタンに手をかけようとした

 

【ここ最近のゴミの情報についてよ。ようやく1人だけ自白したわ】

 

すぐに聞く姿勢になる。

 

「よく自白したな。正直、俺はしないと思ってた」

 

【苦労したわ。誰もかれも恐怖でいっぱいだったんだから………まず、結論から言うと彼らは襲われて、脅されたそうよ。指定した場所に行けいかなければ殺すって感じでね。目の前で仲間を複数人殺したり、散々痛めつけたり、影から姿を見せて常に脅したり、まぁ色々ね】

 

「回りくどいやり方だな」

 

【私達の気を逸らすのが目的だったのは間違いないわ。何せ、全員がそれなりに大きな『ゴミ』だし】

 

「それを指示した奴の名は……流石に言わなかったんだな?」

 

【言わなかったわ。というより、言う事ができなくなった】

 

「?……⁉︎それは…」

 

【ええ。その対象が死んだ…というより殺されたの】

 

雄二も流石に驚く。対象はおそらく保護プラス監視もある施設にいたはずだそこで死んでいるという事は

 

「内部の者か?」

 

【可能性としてはね。けどそうだとするなら、上層部は何か、もしくは誰かを知っている】

 

「この通信は大丈夫か?」

 

【秘匿通信よ私以外には通信できないし、私が今いるところも盗聴の類はないわ】

 

少し安心する。だが、そうなると雄二は今その何者かによって今ここに誘導されている可能性もある

 

「JB、この場所は【目標到着、9029号、支援体制をお願いします】」

 

安全を確かめる前にもうひとつの通信機から指示が出たのでそちらに集中する事とした

 

 

 

 

 

「想定外の事態は常にある。そういう事態で敵と接敵したらまず逃げる判断。接敵してない、逃げれない、そういった際は残された情報をまずは徹底的に調べる事……雄二君の言葉だけど、冷静になれてよかった」

 

あの後、調べるとビッチ先生へのプレゼントとして買った花束から盗聴器が見つかった。殺せんせーは盗聴器やカメラは見つけたら即座に片付けるがコレに関しては鼻の匂いで盗聴器の機械臭を消したのだろう。指示された建物付近でまずイトナ製の偵察機でまずは観察していた

 

「盗聴器を仕掛けたって事は、それ以前の情報は持っていない。この超体育着も、俺達の現在の能力もだ。これは間違いなく武器になる」

 

プランとしてはおとなしく捕まりに来たフリをして、スキを見てビッチ先生を見つけて救出。全員揃って脱出

 

「けど、間違いなく死神もそのくらいの事は読んでる」

 

「何を仕掛けてくるかはお互いにわからない。後は、臨機応変、それぞれの長所を活かしていこう」

 

そうと決まればと全員で侵入をする。来客用の扉には鍵がかかっておらず、いかにも入って来いと言わんばりだ。内部はだだっ広いが周囲には何もないし、死神もビッチ先生もいない。警戒を緩めず、端々に散って全員が捕まるのを防いでいると取り付けられたスピーカーからピーンとスイッチが入った音がする

 

【全員きたみたいだね。それじゃ、閉めるよ】

 

出入り口が自動で閉まる。取り付けられた窓も、シャッターが降りて閉まる。こんな倉庫にここまでの開閉システムがあるのはおかしい。おそらくは随分前から作られたものだろう

 

「用意がいいね。こっちの動きは全部わかってるんだ。死神って言うより覗き魔だね」

 

【皆そろってカッコいい服を着てるね。スキあらば一戦交えるつもりかな?】

 

カルマの挑発に何の反応も見せず、死神は問う

 

【へえ、部屋の端々に散ってる……油断はしてないみたいだね。よく出来ている】

 

突然褒めたと思ったら部屋が揺れだす。数名の生徒が驚く。何せ部屋全体がエレベーターのように下へ動いているからだ

 

「捕獲完了。予想外だろ?」

 

降りた所に死神がいたそれを挟むように柵があり、この部屋が檻となった。そして死神の後方に気絶したビッチ先生がいる

 

「お察しだと思うけど、君達全員があのタコを呼び出す人質だ。大人しく来れば誰も殺さないから、心肺しないで」

 

「それってつまりちょっとでも反抗したり、先生を殺す為なら容赦なく殺すってこと?」

 

莉桜が聞くと死神は笑顔のまま

 

「うん、そうだよ」

 

軽く、どこまでも軽い声で言った。

 

「とはいえ人質は多い方がいいし、場合によっては見せしめが必要だ。少なくとも今は殺さないよ」

 

「そう。じゃ、安心した」

 

安心。それが命を奪われないことへのものと考えたが違うとすぐに気付く。

 

「ここだ竹林‼︎空間のある音がした‼︎」

 

先程から彼らは捕まった事に焦り、周囲の壁を叩いていた。そう思っていたが実際は脱出経路を探していたのだ。奥田の煙幕で視界を塞ぎ、竹林の指向性の小型爆薬で壁を破壊した。煙幕が晴れると既に全員が移動した後だった。爆発してからほんの一瞬で27人全員が乱すことなく行動した。それは死神にとって予想外だった

 

「いいね」

 

だがその予想外は、良い意味(・・・・)でだが

 

「嬉しいよ…そうこなくちゃ!」

 

自身の技術の振るいどころその相手がこれだけいるのが嬉しいのだ。

 

「あぁ、君達もちゃんと使わないとね」

 

「「…」」

 

いつに間にか来ていた2人の男。花屋として活動していた時にいた2人

 

I(ワン)(トゥ)。おそらく彼らは3班に分かれて動く。戦闘と彼女の救出、それと脱出経路捜索班。僕の虹彩認証が必要だからね」

 

コクリと頷く

 

「戦闘班は僕が、救出班は無視、捜索班を任せる。あぁ、殺しちゃダメだよ」

 

またコクリと頷く

 

「会話がスムーズで良いね。んーこれが終わった後も試して、ものによっては…購入(・・)してもいいかな」

 

 

 

 

【状況終了。各員、片付けを終えたあとは自由にしてよし】

 

「……」

 

今日のバイトも終わった。終わったが雄二は違和感がある。先のJBの発言から何か仕掛けくるとふんでいたが結局何も起こらなかった。しかも今回は相手今までの怯えたものではなく普通に大きい『ゴミ』だった。

 

「(胸騒ぎがする。とりあえずJBに)…烏間?」

 

個人用の携帯が鳴る。

 

「どうした烏間?」

 

【風見君、今すぐ来れるか?】

 

「(君とつけたって事はクラスの誰か、もしくは殺せんせーが一緒にいる。だが…)烏間先生、そこにターゲット(・・・・・)はいるか?」

 

「?……あぁ、ここにいる」

 

「どうやら本物みたいだな」

 

「?」

 

「こっちの話だ」

 

もし偽者ならもう少し会話量が長い。ここまで事務的な会話は間違いないと判断した。

 

「こっちは今終わった所だ。それでどうした?」

 

「生徒達が行方不明だ。おそらく囚われいる」

 

もし、これが偽者だったとしても、彼には選択肢はなかった




ちなみに

オリキャラ
I(ワン)(トゥ)この2人についての情報は次に明かしますが、死神は彼らをワリと真面目に購入しようかと悩んでる。

「使えるけど人間だしなぁ」
的な感じです。今は貸し出し&試験中で逆にお金もらってます


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死神の時間・2時限目

オリキャラの活躍……これでいいかなぁと思うこの頃


閉じ込められたがすぐに脱出をして当初の予定通りビッチ先生の救出&即この場からの撤退を考えていた時、死神がスピーカーでここを出るには奴の眼、つまり虹彩認証が必要とわかり、戦闘、救出、情報収集にわかれた。律による円滑な連絡はモバイ律をハッキングされて使えない。

 

「なら、トランシーバーアプリを使おう。雄二くんも言ってるじゃん、想定外には臨機応変に柔軟に対応するって」

 

「だとしたら。問題はやっぱり死神か」

 

 

 

渚は以前、死神の存在のことをロヴロから聞いた事をそのまま雄二に言って質問した

 

「雄二はさ、そんな相手に勝てる?」

 

雄二は言った。

 

「正直言って無理だな」

 

それはその時の渚でも驚いたし、南の島で見た戦闘の後ならなお驚いて当然だろう。だがそれは強さ云々の問題ではない

 

「相手の情報が無さすぎる。そんな相手に正面から戦って勝てるって言えるほど自惚れるつもりもない」

 

だからと雄二は続ける

 

「まずは逃げ、もしくは情報収集に専念するだな。絶対に戦闘に持ち込ませないことも必須だ」

 

「戦闘?相手は暗殺者なのに」

 

暗殺者は正面戦闘は基本しないし得意ではない。南の島のあれは本当に特殊な状況だったのだ

 

「99%暗殺にはいらないが、絶対にいらないわけじゃない。あのぬーぬー野郎がいい例だ」

 

「…まだその名前なんだね」

 

ぬーぬー野郎こと、グリップは確かに戦闘ができていたし、スモッグや仮面の女も相手が悪かっただけできちんとできていた

 

「つまり、世界最高なら、戦闘面も超1流の可能性が高い」

 

 

 

「今の僕らは死神についてあまりにも情報が不足している」

 

「でもよぉ、だからって逃げに徹しても、奴の眼がねぇといけないんだろ?」

 

「うん。だから、少しでも情報が収集できて、戦闘でなく暗殺にできるか、戦闘になってもそこから自分達に有利な暗殺にできるか」

 

これを成すにはこの人数でも足りない。各班に戦闘者が多く必要だ。

 

「じゃあさ、救出班は私達だけでもいいよ」

 

手を挙げたのは雄二のことが好きな乙女3人。同時に彼とよく共にいた事で特殊訓練を多く学んだ3人でもある。死神は自分達を今は殺す気はない。ならそれを逆手に取ってこちらに有利な状況を作る。2つの班にぶつかって戦力差で攻めたてる

 

「それは流石に少ないよ!気絶してるビッチ先生を運ぶなら男手も必要よ」

 

片岡の言う通りだ流石に3人は少ない

 

「なら、あと2人だけ男子と女子」

 

そうして同じく指導経験のある神崎と杉野が入るがそれでも5人だ。不安はあるがこのB班の戦力はそれなりに高い残った人員を2つの班に分ければ戦力も上がる。

 

そう思っていた

 

「C班の原さんから。岡島に持たせてたマイクで聞いた限りだと、全滅したみたい」

 

莉桜は冷静に言うがかなり焦っている。自分達の班の戦力を下げてまで、特にA班の戦力を上げたというのにそんなものは意味ないと理不尽に言い渡されたごとくあっけなく戦闘班がやられたのだ

 

「ど、どうすんだ?」

 

「落ち着きなよ杉野。こっちはこっちで目的を遂行するよ」

 

「うん。死神を倒してしまえばこっちの勝ち。私達も負けてないよ。奥田さん特製の催涙液入りペイント弾は顔の近くに当てればパニックできるし、竹林君の爆薬で脅しもできる」

 

「そして……今の私達なら雄二君相手でも10分は戦える。ヒットアンドアウェイに徹して他の班と合流。できないならそのままジリジリと弱らせてから殺るだけ」

 

雄二に指導を受けた莉桜、陽菜乃、桃花の発言に若干「こえぇ」と思いつつも安心感が出てくる杉野だった。

 

「神崎さんもまたあのケイドロ以降も風見から指導受けてるんだっけ?」

 

「たまにだけどね。3人の邪魔しちゃ悪いし」

 

と言うが本心ではもう少し習いたいなという思いがあるが

 

「さて、この先がビッチ先生が捕まってる部屋だと思う。カウント3で扉の鍵を爆破して同時に突入するよ」

 

入ったら死神がいました。という状況でも必ず対応する。その心持ちで突入した。周囲の状況を見るが先程自分達が捕まっていた檻があるだけで死神はいない。

 

「まだこっちには来れないか…とりあえずは第1目標クリアだな」

 

縛られたロープをカッターで切って救出し、杉野が背に抱える。

 

「よっしゃ。じゃ、次は寺坂達C班と合流だね。杉野とビッチ先生を守るから前後2人ずつでフォーメーションを…」

 

瞬間、莉桜は見た。見てしまった。ビッチ先生…否、イリーナの顔をいつのまにか手にある注射器のような銃おそらく気絶させる為の麻酔弾入ったそれを杉野に刺すように撃ちこむ光景とそれを自分に向けた光景。正確に、イリーナは特殊体育着の防御の薄い腕の部分を狙い撃ちした。最後に見たのは薄ら笑いをする自分達の教師……と思っていた女性の姿だった

 

「り、莉桜ちゃん!」

 

驚きつつすぐさま下がり3人は戦闘体制になる。

 

「6ヶ月くらいかしらね……随分と眠ってたから鈍ってなくてよかった」

 

イリーナは、実際迷走していた。暗殺者である彼女は明かりの灯った場所で過ごした為その本来の自分も忘れてだが

 

「目が覚めたのカレ、死神のおかげでね」

 

教唆術。死神のもつ技術の1つ。相手の心に寄り添って、その犯意を増長させる。だがこれは、対象がもともとその才能や片鱗がある時に限る。誰しも心の中にはこうしたい、やったらどうなるのような悪意の部分がある。それを外して強行させることも可能だがその強さが低いと意味がない。つまり、イリーナにあった暗殺者としての冷酷さを引きずり出した

 

「さて、逝かせてあげるわ」

 

「……ビッチ先生、本気?」

 

「あんた達と可能性の見えない暗殺を続けるよりも、可能性の高い方を選んだだけよ」

 

新たな麻酔銃を出してイリーナは意地の悪い顔でいう

 

「悪いけど、商売敵は黙らせろってカレが言うのよ」

 

「…ひどいよビッチ先生」

 

「これが私よ。今までどんなふうに…」

 

「いくらビッチ先生が性欲が服着て歩いてる人でも死神にまで手をだすなんて…」

 

「男が常に側にいないと性欲が抑えられなくて血が沸騰する人でも死神もなんて…」

 

「なんじゃその設定⁉︎あんたら罵倒がカザミにちょっとに似てきてるわよ‼︎」

 

「ふ、2人とも落ち着いて。確かにビッチ先生はHに身を捧げたビッチの中のビッチだけど…」

 

「ユキコ‼︎おまえもか⁉︎」

 

「ご、ごめんなさい。淫乱会の女帝でした!」

 

「フォローしてるようだけど貶してるだけだからね‼︎あとなんだ淫乱会って⁉︎」

 

イリーナのツッコミが落ち着くと再び桃花が聞く

 

「で、ビッチ先生。ほんとに死神の手先になってショックだけど、1人で私達3人の相手するの?莉桜ちゃんと杉野は隙を突いたけど今の私達は警戒してるし、日々の訓練と雄二くんから受けた訓練もあるし……もう先生1人じゃ」

 

勝負にならない。そう言われた。イリーナはにぃと笑う

 

「そこまで言うなら、試して見る?ちょうど、最後の授業にはもってこいの相手だしね」

 

莉桜、桃花、陽菜乃の3人はイリーナから女磨きの為、教鞭を受けていた。その最後授業として倒すという事だ。

 

「「「!」」」

 

ゆらぁと近づくイリーナに警戒して半歩下がる。何を仕掛けてくるのか。いや、仕掛けてくるなら数で囲んで返り討ちにと思ってた

 

「さぁ、痛ったい⁉︎」

 

これからだ!と思ってたら急に痛みを出してイリーナは倒れた。膝をつき、足の裏をさする

 

「び、ビッチ先生?」

 

どうしたのかと尋ねた

 

「…ぬぐ、は、ハダシなの忘れてた…石を踏んで…痛い」

 

あまりにも情けないその姿に緊張の糸が完全に緩んだ。緩んでしまった

 

「だ、だいじょ…」

 

神崎と陽菜乃が看る為半歩引いていた体制から前に出た瞬間、まるで、通り抜けるかのようにスッとイリーナは2人の間を通り、すれ違いざまに麻酔銃を至近距離で撃ち込む。

 

「!」

 

倒れていく2人を見て咄嗟に下がって追撃を避けたがここまで近くに来た時点でほぼ詰んでいる。どうにか回避しようと更に下がろうと思うがイリーナはそれをさせない。先程死神がかけていた布を足でグイっと引っ張り、そのまま蹴るように飛ばして桃花の視界を遮る。抱き抱えるように近づき薄い布越しに麻酔を撃つ

 

「よ、弱ったフリなんて…一瞬心配しちゃったじゃん…」

 

倒れながら桃花は責めるがイリーナはそれがどうしたと言わんばりの眼で言う

 

「あいつから教わらなかった?油断大敵って言葉」

 

もちろん似た事は教わった。油断はしていなかった。だが彼女達の最大の敗因はイリーナと共に過ごした期間で警戒心より信頼が強くあった事。イリーナは当たり前のようにそれを利用した。

 

「いいことヒヨッ子共。どれだけ訓練で結果が良くても、本番でそれと同じ、あるいはそれ以上の結果を出せないならなんの意味もない。目的の達成に手段を選んだり、悩んだり、取らなかったその時点であんた達は負けていたの。ま、これが経験の差ってやつよ…場数が違うって言った方がいいかしら?…ってもう聞こえてないか」

 

全員意識が完全に落ちて眠りについた。

 

「…なんだ、君ひとりに負けちゃったのか」

 

少し遅れて死神が着く。

 

「あんたの言った通りだったわ。やっぱりこの子達と組む価値はない」

 

「そう。生きてきた世界が違う…綺麗な世界で綺麗な空気と水を吸って生きてきた彼らに、薄汚れた世界で泥と血煙を吸って生きてきた僕等とは違うんだよ」

 

「……そうね(カラスマ、それはあんたもよ)」

 

「…まぁ、ひとり例外がいるけどね」

 

「カザミね」

 

ただひとり、それがわかる人物とするなら

 

「けど、彼も元は同じ世界で生きてきたから、そういう覚悟がやっぱり薄いんだろうね」

 

「………」

 

イリーナは既に雄二について死神から聞き知っていた。だから

 

「ほんと、あいつもあいつで愚かよね」

 

そう吐き捨てた

 

「正直期待外れだったな。もう少し戦術を用意してると思ったのに」

 

買ったゲームがつまらないクソゲーだったかのような残念そうな子供のように項垂れる死神は画面を見る

 

「さて、もう1つの方は……あれ?」

 

「どうしたの?」

 

少し驚いたように死神は画面を見る

 

「おかしいな?苦戦してる(・・・・・)

 

 

 

 

救出班が突入する少し前、それが彼ら情報収集班の前に現れた。

 

「なんだ?こいつら?」

 

2人の男の人間。それはわかる。だが問題はその顔だ。特に目立つ顔ではないが、目は空虚で虹彩がないけどこちらを見ているのだから視覚はある。表情は表情筋がないのでかというほどの真顔。まだマネキンの方がいい表情に見える。そしてその顔は瓜二つ。おそらくは一卵性双生児の暗殺者だろうがどちらの同じ人に見えない表情は気持ち悪さもある

 

「実はロボットって線はなさそうだな」

 

「どう見ても人だ。吉田の節穴でもわかるレベルだ」

 

「うおぃ!」

 

と、ツッコミを入れてもなんの反応も見せない。なんなのだと思うと急に走りだす

 

「ノコノコ出てきたかよ!」

 

「戦力増してんだ殺ってやらぁ!」

 

スタンガンを片手に吉田と村松が仕掛けた。死神じゃないなら他の暗殺者。おそらく死神が雇った者だろうと考え正面から出てきた事に舐めているなと考えて戦闘に持ち込む。

 

さぁどう避けると考えてたが、

 

((避けない?))

 

避けることもなく受ける。スタンガンからけして低くない電流が流れた。にもかかわらず、

 

「うごぉぁ!」

 

「むら…えぐぅ‼︎」

 

そんな物効かないと言わんばりにお互い膝蹴りを受けて倒れる。その瞬間に手からスタンガンが離れて空中を舞う。それを掴んで2人の男は首筋に最大の電流を流してトドメを刺した。

 

「村松‼︎吉田‼︎」

 

死んではいないが相当なダメージが入った。もう戦闘はできないしろくに動けないだろう。ゆらりと幽霊のように2人の男は無理に使ったのかスタンガンが壊れてしまって捨てながら次はと言うように寺坂達を見る。

 

「……上等だよ!行くぜイトナ‼︎俺とテメーでこいつら叩きのめすぞ‼︎」

 

目の前で仲間がズタボロにされて黙っていられる寺坂ではない。いまだに肉体改造で身体能力が高いイトナと共に戦うつもりだったが

 

「降伏だ」

 

イトナは冷静だった。もちろん悔しさも憎さもある。だが、目の前の相手が自分達で超えれない壁だとわかるくらいは落ち着いて判断できる

 

「死神ほどじゃないが格が違う。戦っても損害だけだ」今日敗北してもいい。いつか勝つチャンスを待つ」

 

手を挙げて降伏を示し近付いた時だった

 

バンっと音がして、次に煙の匂い。そして、イトナの両足に弾丸が撃ち込まれた。2人の男がそれぞれ撃ったのだ

 

「イトナァァ‼︎」

 

イトナが痛みで崩れる。まさか降伏したのに、しかも本物の銃で足とはいえ撃ってくるとは思わなかった

 

「テメーらぁぁぁ‼︎」

 

もはや我慢できるはずもない。寺坂は特攻をするが、男達はなんの反応もなく近付いてきた寺坂を巴投げして倒す

 

「このっや」

 

「だ、めだ、寺坂」

 

イトナが言うがそれでも立とうとする寺坂の両足にも銃弾が撃ち込まれた。痛みで寺坂が声にならず、呻く。2人の男はまた次は?と言っているかのように虚な眼で見てくる。

 

この相手はある意味死神よりもヤバいと皆怯える。

 

(なんだ、こいつら)

 

ただひとり、孝太郎を除いて。

 

(イトナと寺坂をなぜ撃った?死神の命令?それにしても不自然だ撃つ必要性がない)

 

ここまでされてはもう勝てないのは誰が見てもわかるそれなのになぜ無意味に弾薬をつかったと

 

(一応動けなくするなら足なんて撃たない。動けない人質なんて万が一の時の荷物にしかならない。それに、こいつら気付いてない(・・・・・・)?もしかして、ひょっとするとだけど…勝てる?)

 

そうして瞬時に頭で作戦を立てた

 

「皆、聞いてくれ…勝てる。たぶんだけど」

 

孝太郎がこんなことを言うと思わず、その時あった恐怖が飛んだ。そして、

 

(こんな言葉を言ったのにまるで反応ない。やっぱり)

 

孝太郎は皆に聞こえるよう(・・・・・・・・)作成を言う

 

「「やってやらぁ‼︎」」

 

やぶれかぶれの特攻を仕掛ける。2人の男が銃を構えるが

 

「いまだ寺坂!イトナ!」

 

倒れて動けないであろうと思われていた寺坂とイトナが2人の男の足首を持ち、力の限り引っ張るバランスを崩しながら2人の背中に銃を撃つが

 

「いってぇぇぇぇぇ!」

 

「いっつぅ!‼︎⁉︎」

 

2人は痛いでは元来済まない。だが、彼らの着ているのはただの体育着ではない耐火性、衝撃耐性、切断耐性、そして防弾耐性。ありとあらゆる耐性の最先端が組み込まれている。死ぬほど痛いが、並の銃では貫けない

 

「「うおらぁぁ‼︎」」

 

首にスタンガンを当て強力な電流を流す。

 

「こっちもだぁ!」

 

寺坂とイトナもスタンガンを出して当てる。男達の身体がビクンビクンと痙攣し、バタンと倒れた

 

「おい、竹林ぃ‼︎痛いんだよ!つか、もし頭撃ってきらどうすんだ‼︎」

 

「その点は………ちょっと賭けだった」

 

「うぉい⁉︎まぁ、当たりみたいだな。こいつら、オレらの言葉に眼中にねぇ」

 

しっかりと痛みがあるが動けるであろう2人にも作戦を伝えたが彼らは何もしない。その時点でもう確信していた

 

「って、あれだけ受けてまだ立つかよ」

 

ビクビクさせているが男達は全く変わらない無表情で寺坂達を見ていたが

 

「もう良いよI(ワン)(トゥ)待機」

 

そこに現れたのは、死神だった

 

「んー捕獲にはちょっと向いて無いね。これはちゃんと報告しないとなぁ…」

 

2人の男を評価しながら死神は言う

 

「ごめんね、降伏したかったのに。後できつく言っておくよ」

 

「………今度は、降伏していいか?」

 

イトナが警戒しつつ問う

 

「うん。もちろん」

 

E組の3班はここで全て捕まった

 




次回、雄二来る。

ちなみに
オリキャラ達の食事はものすごい簡素。というか栄養だけ詰まった超不味い物を餌として支給されています



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死神の時間・3時限目

死神編、思ったより長くなりそうだなぁと今更ながら思う今日この頃


捕まった生徒達が新たな牢屋に入れられて腕を後ろに組まされ警察が使っている物よりも丈夫な手錠をつけられる

 

「…はーあ。ビッチ先生に裏切られて悲しい〜」

 

必死の悪足掻きとばかりに陽菜乃は手錠をつけるイリーナに悪態を吐くがそんなものが効くはずもなく、手錠を取りつけられる。

 

「な、渚」

 

渚は死神から自身が使う猫だましの上位互換『クラップスタナー』を受けいまだ神経が麻痺して碌な反応を取ることができないのか、茅野の声にも反応せずぼーっとしている

 

「練習台はもう結構、あとはそこで人質でいればいいよ。一応言うけど、この牢屋はさっきと違って脱出は不可能だから」

 

興味はもう無く、物のように扱う様子にカルマが反論をする

 

「どんな方法で殺せんせーを殺そうとしてるのか知らないけどさ、そう計算通りに行くのかね?」

 

死神は何かな言わんばりにニコニコとカルマの話を聞く

 

「だってあんた、俺等の誰にも大したダメージを与えられなかったじゃん。この計算違いが俺等じゃなくて殺せんせーだったら、あんた返り討ちでやられてるよ。おまけに世界最高の暗殺者の癖して…」

 

視線を死神の後ろで直立不動で表情をまったく変えない2人の男に向ける

 

「ビッチ先生とは別に、あんな暗殺者を雇ってさ、相当臆病なんだね」

 

カルマの挑発に死神は作り物のような笑顔を崩すことなく、その反論をきる

 

「でも結果はどうだ?君等は牢屋にいるじゃないか」

 

絶対的な事実を告げるとカルマは何も言えない

 

「情報なんて不足して当然、ましてやあの怪物は…どんな能力を隠し持っているのか誰も知らない。たとえどんなに情報不足でも結果を出す…それが世界一の殺し屋だよ」

 

これがもし暗殺なら、気絶した時点で、捕獲された時点で、死が確定している。並大抵でない訓練で実力をつけた彼らを一蹴し、イリーナを容易く引き抜き、ありとあらゆる技術をもって結果を出す。仮にあの2人の暗殺者がいなくとも平然と捕まっただろう。

 

桁違い…そう表現できる圧倒的な差

 

「あぁ、それと君は勘違いしてる。僕は彼らを雇ってない。彼らが僕を雇った(・・・・・・・・)のさ。扱いが結構難しいという点は、少々予定外だけどたいした問題じゃないさ」

 

その言葉の意味がわからない。死神を雇ったというあの2人の暗殺者はなんなのか、その言動を聞くとそもそもなぜ死神は彼らが裏切らないという自信を持っているのか。ただ、それを知ったところでどうすることもできない。囚われている身ではそんな情報無意味なのだから

 

「さて、次は烏間先生と風見雄二君だ。それぞれ別々に誘いだして人質に取る。彼らなら君達より良い練習台になるだろうし、烏間先生の方は捕らえておくと色々メリットが多い。風見君の方は後でやる事があるから絶対生かしておく必要があるけど…まっ、生きてたらそれでいいかな」

 

あの2人を捕まえる。正直そんなの無理と思いたいがこの死神はやると思えてしまう

 

ただ、死神も言ったが情報は不足して当たり前。

 

「ねぇ、死神さーんモニター見てみ。あんたまた計算違いしたみたいだよ」

 

牢屋の外にある監視カメラのモニターの変化に気づいたカルマは再び挑発する。言われた通り見ると、流石に死神も予想外だったのか眼が少しばかり見開く

 

「………なぜ、わかった?」

 

 

 

モニターの先にいた人物達、雄二、なぜか首輪付き犬の着ぐるみを着た殺せんせー、そしてそのリードをもつ烏間がいた

 

「ここです。犬に変装したおかげで自然ににおいを辿れました」

 

「こんなうすらでかいどこが自然だ」

 

「そもそも変装になってないし、する必要性もまるでかんじない」

 

今の彼らは生徒達には救世主みたいに見えていた。そんなことは知ることもないが雄二は建物の周囲を見る

 

「監視カメラか…この先の相手はこっちが来たことは承知してるだろうな」

 

「えぇ。しかし、花と生徒達のにおいで私を誘き寄せて殺すのがプランだったのでしょうが、私がサッカーの試合を見ずに帰ってきたこと、烏間先生と風見君が一緒に来たことはおそらく計算外でしょう」

 

「その根拠は?」

 

「私なら風見君と烏間先生もどうにかして別々に捕らえますよ。同時など厄介ですし。その2人が捕らえられてないのがいい証拠です」

 

確かにと雄二は思う。バイトにちまちまとちょっかいをしてきたのは生徒と烏間、殺せんせーから引き離す準備の為だったのだろう推測もした

 

「てことは、迎撃準備は不充分…勝算はあるな」

 

「えぇ。入りますよ烏間先生、風見君」

 

殺せんせーの言う通り、これは死神とっては大きな計算外であった。だが、それで焦りもしていなかったが

 

「倉庫みたいだが、さすがに入ってすぐあいつらが捕まってるみたいな状況じゃないみたいだな」

 

「どこかに、地下に行く方法があるはずまずはそれを探しま」

 

ガコンと音がして次に床がエレベーターのように動きだす

 

「歓迎するってやつか」

 

このようなシステムがあるのは予想外だが、動揺する3人ではない。何がきてもいいよう身構えると、最初に生徒達が降りてきた場所と違う階層に着いた。そこには4人の人物。1人はイリーナ手錠をつけられて銃を持った若い男に捕まえられている。残りの2人の男はその後ろに控え、マネキンのように動かない

 

「…!おまえ、この前の」

 

「知ってるのか、烏間先生?」

 

「先日偶然会った花屋だ。奴が主謀者だったか」

 

「そう。風見君と殺せんせーは今日会ったからはじめましてだね。聞いた事はあるかい?『死神』の名を」

 

死神、こいつがと雄二は警戒する。いや

 

(警戒したいのに、警戒できない。なんだこいつの変な安心感は)

 

銃を持ち、いつ撃ってきてもおかしくないのに、その声が安心感できてしまう。そしてこの距離なのに気配がぼやけている。何をするのか、何を考えているのか、まったく読めない。それは雄二ですら感じる、気持ち悪さだった

 

「生徒達も、ここのどこかに?」

 

殺せんせーはどこか焦りがあるのか少し間をあけて死神に問う

 

「そうだよ殺せんせー。君が死ねば、この娘も、生徒も殺しはしないよ」

 

そう言ってイリーナを乱暴にこちらへ投げる

 

「人質をわざわざ返してくれた…わけじゃないみたいだな」

 

「もちろん。彼女と生徒全員の首に爆弾をつけた。僕の合図ひとつで爆破できる」

 

烏間がイリーナの様子を見るが問題は無さそうだ意識はある。爆破しないということは、そのくらいは許すということ。だがどこまですれば爆破するかわからないので迂闊に動けない

 

「ずい分と強引ですねぇ。人質で脅しただけで私が素直に死ぬとでも?」

 

死神はどうだろうねとはぐらかすだけだが自身があるのだろう。後ろにいる動かない男達も気になるが今は目の前の死神だ

 

(殺せんせーなら、以前の修学旅行の時みたいに気絶せる事はできる。2人の男との距離、死神の距離、気をつけるべきは死神の手の銃のみ)

 

そう、雄二と殺せんせーは考えていた。

 

だが、雄二達が来たのは確かに予想外だったが予想外は死神だけでなく、雄二達もだった。プシュっと小さな音がした

 

「なっ⁉︎」

 

殺せんせーの触手のひとつが、とても小さいがダメージを負いバランスを崩す。撃った射線には手錠の鎖が外れて片方から出た仕込み銃を撃ったイリーナがいた

 

それに3人が同様するがまだ終わらない。イリーナは隠し持ったスイッチを押すと殺せんせーの床が抜ける所謂落とし穴だ。

 

(すぐには飛べない、捕まらなければ!)

 

すぐに触手を伸ばすが銃で弾かれる。触手が破壊されないという事は実弾だが逆にそれが原因で次の動きを死神は見切る。マッハ20は初速ではできない、せいぜい時速600Kmだ。だが、それを見切るなどそう簡単にはいかないできているこの状況がいかに恐ろしいかなどいうまでもない

 

あっという間に殺せんせーは生徒達が閉じ込められた牢屋に落ちていった

 

「あっけなかったな」

 

死神は幾つものプランを用意していた。3人がここに来てもまるであせらず、すぐに新しい作戦を使う。そして普通は不可能に近い作戦すら、その人間離れした能力と技術で成功させる。それを抜きにしても、意外とあっさり殺せんせーを捕獲したのはつまらないようだ

 

「生徒達人質に使うまでもなかったな。こうなるともう確定だ。お別れの挨拶を言いに行こう。(ワン)(トゥ)君達は所定の位置で待機。連絡があるまで大人しくしていてくれ」

 

死神とはまた別の気持ち悪さの2人の男を横に死神の後を烏間と雄二は追う。いくつか階段を降りて行くと広い空間の一部は檻に挟まれて牢屋となっている。そこにクラスの皆がいた

 

「無事……ってわけでもなさそうだな。殺せんせーと一緒に閉じ込めて、どうするつもりだ神擬き」

 

「…死神だよ。ここは、殺せんせーが最後を迎える場所さ」

 

「広々とした横長の空間、少しの腐臭、水が乾いたような跡……まさか」

 

死神はへぇと雄二の洞察力に関心したような反応をみせる

 

「ご明察。ここは洪水対策で国が造った地下放水路さ。密かに僕のアジトと繋いでおいた。地上にある操作室から指示をだせば、近くの川から毎秒200tの水がこの水路に流れこむ」

 

弱点の水によって殺せんせーは身動きが取れなくなり、水圧によって檻に押しつけられる。当然檻は対先生物質が含まれている。生徒が逃げれないなら鉄のような金属を混ぜているのだろう。あとはところてんのようにバラバラになる。だが

 

「待て…生徒ごと殺す気か⁉︎」

 

今檻には生徒達がいるそんなことをすれば生徒も巻き添えになる。だが死神は「当然さ」と当たり前のように言う

 

「今さら待てない。それに、生徒と一緒に詰め込んだのも計画のうちだ乱暴に脱出しようとすればひ弱な子供がまきぞえになる」

 

「おい、操作室って言ったな?流石にそこにいるのは民間人だろ?」

 

「そんなの占拠すればいいだけさ」

 

皆殺しにする。言葉が無くともすぐにわかった。

 

「あぁ、外部と連絡はここではできないけどできてもしない方がいい。彼らを殺されたくなければね」

 

舌打ちをして雄二は死神を力なく睨む。

 

「イリーナ‼︎おまえそれを知った上で…」

「プロとして」

 

烏間の言葉を遮り、イリーナは告げる

 

「結果優先で動いただけよ。あんたの望む通りでしょ」

 

「…プロってのは目的の為なら罪のない一般人も殺すってか?被害は最小限にしてこそプロじゃねーのか?」

 

雄二の言葉に死神はクスクスと笑う

 

「随分と甘い考えだね。君もあのクラスで過ごして緩くなったのかな?」

 

ぎりぃと歯が軋む。

 

「ご心配は無用ですよ風見君。この対先生物質と金属を組み合わせたこの檻…非常に厄介ですが、ついに私の肉体はこれを克服したのです」

 

表情こそ崩さないが死神に警戒が走る

 

「初めて見せますよ…私のとっておきの体内器官を‼︎」

 

何をするのだっという警戒はあっさり終わる。

 

「…先生、犬の真似か?」

 

檻を出した舌でぺろぺろと舐めだす。ジュワァァと溶ける音がするがあまりにも小さな音。

 

「いや、確かに殺せんせーのベロ初めて見たけど‼︎」

 

「消化液でコーティングした舌ですこんな檻なら半日で溶かせます」

 

「「「「「いや遅いわ‼︎」」」」」

 

1ヶ所溶かすのにどれだけかけるのかもわからない。というか死神の前でそんなことが続くはずもない

 

「そのぺろぺろ続けたら全員の首輪を爆破してくから」

 

「えぇっ!そんあァ‼︎」

 

当たり前である

 

「さて、急ごう。他にどんな能力があるかわからないし、モタモタして生徒の怪我を考慮せず動かれてもいけない」

 

制御室を占拠するためイリーナと移動しようとする死神を、烏間が肩を掴み止める

 

「なんだいこの手は?日本政府は僕の暗殺を止めるのかい?あっちは大人しいのにね…いや違うか。手を出さないフリをして、僕の移動を防ぐため扉の前に立っているのか」

 

「………」

 

雄二とて動いて止めたいがわかりやすい形ではできない。烏間が止めると信じての行動だ

 

「確かに多少手荒なのは認めるけど、少数の犠牲で地球を救える最大のチャンスだそれをみすみす逃せって言うのかな?それに本来は君達2人も倒して人質に加える予定だった。君達じゃこの僕を止められないよ」

 

雄二には今、選択権がない。この場で死神を止める権利を持っているのは烏間だ。生徒の命と地球の存亡、天秤にかけてその判断をくだす。政府はそれについて明確に答えを出していない。ハッキリと言えばどこかで問題が発生した際、隠蔽できなかった際、それらの問題があるからだ。

 

自分達の手は汚したくない、汚いものを見せない、持っていないと見栄を貼る。だからこそ、

 

「日本政府の見解を伝える」

 

この場で烏間が出した判断が全て。烏間は手を離す

 

ゴッと鈍い音がし、烏間の裏拳が死神の頭にはいる。受けたダメージを相殺するため咄嗟に下がる。視線を崩さないでズザザと下がり、烏間を見る

 

「捕まった27人、その命は地球よりも重いそれでも彼等ごと殺すなら、俺が止める」

 

「…ふ。なら、俺も参加するぞ烏間。正直言ってこいつは1発くらいは殴りたかった」

 

烏間は上着をとり、雄二は制服を脱ぎ捨てる。その下には超体育着を装備済みだ。

 

「あと、こいつらもなぁ‼︎」

 

音もなく近づいて来た先程の2人の男、ⅠとⅡを回し蹴りからの鉄拳で左右に吹っ飛ばす。

 

(!効いてないのか……いや、こいつらまさか…痛覚がないのか)

 

無表情のまま、2人の男は雄二を見る。烏間は死神を、雄二はⅠとⅡを見据える。拮抗した状態は

 

「「⁉︎」」

 

ヌッと風のように死神が動き後に続くように2人がついていくことで切られた

 

「操作室だ!」

 

「追いかけるぞ風見君!」

 

「烏間先生、風見君、トランシーバーをオンにして!」

 

殺せんせーの言葉を聞きつつ上へ追いかけて行く

 

 

戦力は未知数それでも、彼らを守る為、烏間と雄二は足を速めた




ちなみに
ⅠとⅡは死神が生徒の元へ移動中にメールを受けて近くで待機してました。内容は『合図と共に部屋の中の扉前にいる男を殺せ』です。

ちなみに2
ⅠとⅡは死神の動きを見るたびにそれをコピーしてだんだん近付いています。あと1ヶ月あればほぼ同じ動きになりますが技術力は盗めないので死神には及びません。また作品内でも語れるかわからないのでここ書きますが長いこと生きれるようにはできてませんから1ヶ月生きるのは多分無理です


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死神の時間・4時限目

死神追跡が多少レベルアップしております




歴戦の殺し屋は、当然のごとくさまざまな技能を持っている。そのなかで最高の称号を持つなら簡単なトラップを瞬時に作れる

 

「!………」

 

「追いつけなくなるぞ……トラップか?」

 

先頭を走っていた烏間はドアノブに違和感を感じ、何かしらのトラップがあると確信した。雄二の質問に軽く頷きそのまま静止する

 

「風見君、下がるんだ」

 

「!」

 

この短時間で仕掛けられるのはせいぜい爆薬のみ。だが当然殺傷能力くらいはあるだろうそれを理解してなお、烏間はなんの躊躇もなく開けた。

 

何かが切れる音がしたと思うと次の瞬間ドアを吹き飛ばした。そのあと

 

「チッ思ってたより強力だった」

 

爆発に巻きこまれていた烏間は服が汚れ、多少のダメージはあるが本当に多少のため何事もなく進む。雄二は見た爆風と同じ速さ後ろに受け身を取り、ドアを盾にして爆発から身を守るところを

 

「つくづく規格外だよな」

 

「君も似たようなことくらいできるだろう」

 

「無茶言うな。あそこまでできるのはあんたくらい…!」

 

雄二が気づいた時烏間も気づいた。向かってくるのは銃弾。連射している速度からしてマシンガンだろう。そしてそれを撃っているのは人間ではなく

 

「銃猟犬ってのは本来獲物の発見と挑発がメインなんだがな」

 

6匹のドーベルマンその背中には銃器が取り付けられている。銃を撃てるよう調教されたものだろう。

 

「どんなだけ用意がいいんだまったく………烏間、銃を貸してくれってどうした?」

 

不気味な笑顔…否、人を恐怖させる笑顔をした烏間がいた

 

「俺はな、犬が大好きなんだ」

 

「それは俺もそうだが、まさか強行突破すんのか?」

 

「いや、傷つけるのも、後の事を考え傷つくのもダメだ。動物なら、いい笑顔を見せれば通してくれる」

 

「その威嚇みたいな笑顔を見れば通したくなりそうだが、俺は万が一を考えたいんでな…借りるぞ」

 

「っておい」

 

「殺さねーよ」

 

雄二とて犬を殺すのはあまりしたくない。犬の口元に付けられたものからコードのようなものが見える。それは背中の銃に続き、引き金部分へ繋がっている。その引き金部分に狙いを定める。

 

「っ!」

 

集中時間、射界の狭さ、距離、全てが超難易度。おまけに今使っている銃はスナイプ機能はない。一般的な拳銃に近い。だというのに

 

「よし、無力化した」

 

「…流石だな。では」

 

行くかと進む。銃は撃てないが威嚇をしていたドーベルマンは

 

「殺さねーって言ってるだろ?もう撃てないんだから下がってくれ」

 

「お前らの主人には悪いが、優しく通させてもらうぞ」

 

2人の笑顔。1人は見るものを威圧してしまう笑顔。もう1人は笑顔だけで内面は手を出したものを食らいつくぞ言わんばりのニヒルな笑み。ドーベルマンの戦意が喪失する瞬間だった

 

 

 

「えー。もう、えーだよ」

 

牢屋から死神が取り付けていた監視モニターでその一部始終を見ていたクラスメイト達はハラハラしながら見ていた。しかし、トラップをものともせずに進む2人に唖然としていた

 

「さっきのドーベルマン、風見の狙い撃ちも恐ろしいけど、実際あの2人の笑顔だけでどうにかなったんじゃね?」

 

「わかる。烏間先生笑顔メッチャ怖えーし」

 

「人間を襲っている時が多かったしね」

 

「雄二君の方も、あの笑顔はちょっと怖かったなぁ」

 

「あいつ、たまに殺せんせーを罠にかける時にああいう笑顔してるけど、何しでかすかわからん笑顔だよなぁ」

 

ドーベルマンが礼儀正しいお座りをして道を譲るのを見て苦笑しつつ2人を評価する

 

「烏間先生の真価は、強い理性で抑えこんだ暴力的な野生」

 

殺せんせーが烏間を評価しているとセンサーに反応し鉄柱が除夜の鐘を鳴らすがごとく向かってくる。それを烏間は重心をぶつかる瞬間に下げ、あとは強靭な腕一本で抑えこんだ

 

「一方風見君は数多の知識、それらを上手に使いこなす技量による手札の多さ、修羅場を乗り越えてきた数による経験則による直感」

 

烏間が追撃のボウガンをもう片手で防ぐとさらに別方向からボウガンの矢が飛んでくるが烏間は動揺しない。その矢は烏間を避けるように外れ壁に当たる。直前に後方にいた雄二がボウガンを撃ち、軌道が逸れるように角度を僅かに変えたのだ

 

「彼の能力は烏間先生や死神にはまだ及ばないものの、限りなく近い位置にいます。追いつくのは時間の問題でしょう」

 

「人類最強決定戦にわずかながらでも参加できてるってどんだけだよ」

 

「というか殺せんせー、そう言えるってことはやっぱり雄二君について何か知ってるんですかぁ?」

 

「ある程度は。というか、君達もなんとなくでも気づいているんでしょう?」

 

「そりゃね」

 

皆、やれやれといった表情になる

 

「あれ隠してるつもりなのかな?」

 

「いや、むしろ隠し続けるには不可能って最初からわかってるからあえてかも」

 

「別に話したくらいでどうこうしないんだけどねぇ」

 

雄二に好意のある女性3人はその程度のことで嫌うわけないと口にだし、他の皆も同意する

 

「まぁ、話したくないなら放っておきましょう」

 

その後もぽんぽんと罠を突破していく2人を見ていた

 

「こりゃ勝てないわけだ。才能も積み上げてきた経験も段違いだ」

 

木村の呟いた言葉は生徒全員の答えだ。結局は未熟だから負けたのだと

 

「で、それで君達はどうしますか?」

 

殺せんせーは優しく尋ねる。

 

「今すぐ彼らよりつよくなるか?敵わないからと諦めるか?」

 

強さはすぐに手に入るものではない。どれでだけの才能があろうとも、長い経験、強く印象に乗る経験を何度も積まなければ強くなれない。でも諦めるのは性に合わない

 

「もうわかりますよね。弱いなら、弱いなりの戦法がある。いつもやってる暗殺の発想で戦いましょう」

 

 

一方、烏間と雄二は少々困ったことになる。罠がではない

 

「烏間、どう思う?」

 

「ここまでの罠の数、短時間であれほどつけたのは凄まじいが、多すぎる」

 

死神の技量は凄いとしか言いようがないが、1人で取り付けるには多い。死神は操作室を迅速に占拠するため、追いつかれないように罠を作ったがそれに時間をかけては本末転倒だ。にもかかわらず途中から罠の量が増えている。つまり

 

「あの2人の男達が手伝っていたのだとして、こんな短時間に技量を盗み取ったって事か?」

 

「そうとしか考えられない。……そして、今度はその2人そのものを足止めにしてしたと言う事か」

 

ⅠとⅡ。2人の瓜二つの男がこちらを無機質な目で見据える。だがいつでも攻撃できる体制なのに動かない

 

「実はすんなり通してくれる…わけないか」

 

「命令に従う存在なのだとしたら、おそらく『ここを通ろうとする者を排除しろ』だろうな」

 

広い部屋だ。カメラもない。物置に使っているのかいくつか荷物がある。この先の扉はⅠとⅡの後ろ、距離は1mほど離れて立っている

 

「時間が惜しい。迂回したらそれだけ時間がかかる。烏間、あいつらの相手は俺がする。先に行ってくれ」

 

「いいのか?」

 

「いいも悪いも、死神の技量は俺じゃ届かないおまえの方がいい」

 

「……わかった」

 

雄二と烏間はまず早歩きで進む。スタスタと歩くがまだ反応しない。更に近付く…まだと思った瞬間早撃ちをしてきた

 

「「⁉︎」」

 

 

直前で回避して物陰に左右に分かれて隠れる。が、それはほんの1秒ほど。すぐに烏間が動きだし、両者はそれに反応して銃を向けた。

 

「やっぱり扉に向かう奴を優先するんだな」

 

飛び膝蹴りがⅡに当たり、巻き込まれてⅠも飛ばされる。あらかじめ雄二は烏間よりも後方になるように分かれた。狙いどおり2人は烏間の方が扉に近いとして一斉攻撃をしようとしたが雄二の速力を考えより上だったのかそれとも考えなかったのかはわからないが特攻してきた雄二の攻撃を防ぎきれなかった

 

「まかせる!」

 

烏間を追撃しようとするが今度は雄二がⅠとⅡの前に立って扉を塞ぐ

 

「お前らの相手はこっちだよ」

 

 

「あれ、烏間先生だけになった」

 

カメラのない部屋に入ってすぐ出てこないと思っていたら。出てきたのは烏間だけであった

 

「何かあったのかな」

 

心配になるが烏間が雄二をただ置いていくとは思えない

 

「烏間先生、風見君は?」

 

【さっきの双子暗殺者と戦闘中だ】

 

殺せんせーは烏間に連絡をとって確認したが思わぬ答えだった

 

「そんな!相手は2人だよ⁉︎」

 

「いくら雄二君でも、流石に暗殺者2人と戦闘なんて無茶だよ‼︎」

 

【死神はあの2人を捨て駒にしかしていない。あのまま風見君と共に戦っていれば時間を確実に取られる】

 

葛藤は烏間にもあった。だが彼は信じる方に賭けたのだ

 

【贔屓目じゃなく、真実だけ言おう。彼の方が強い】

 

ⅠとⅡの成長速度は半端ない。だが成長途中だ。今なら2人同時でも倒せると判断した。

 

「信じましょう。私も、風見君の方が強いと思ってますので」

 

 

発砲音が室内に響く。ⅠとⅡは命令に絶対だ。本来なら、今すぐに烏間を追いかけて殺しに行くが彼らが受けた命令は『ここを通ると判断した者は殺せ』だ。雄二もまた通ろうとする者。そして目下最大の障害と判断し攻撃してくる。

 

(武装は、サブマシンガンがそれぞれ2。腰に拳銃それぞれ1。腰にナイフがあったがまだある可能性あり)

 

ⅠとⅡは弾切れになると交代してリロードと攻撃をしてくる。命令を受けるだけの存在だとしてもそれぞれのチームワークは最低限はあるようだ

 

(このまま隠れていたらそのうちやられる…なら)

 

攻めるl。そう決めて物陰から出る瞬間、2人からの砲撃が始まる

 

「で、そう簡単には、いかないか」

 

再び隠れる。雄二の武装は烏間から借りた拳銃が1弾はあと4発。これだけだ

 

(せめてマシンガンの弾が無くなるまで待つか?いや、ダメだな)

 

痺れを切らして攻めてくる可能性もある。

 

「あー2対1とか、やっぱきついな。孝太郎曰く、無理ゲーってやつか」

 

荷物に隠れれば砲撃は続き、物陰なら止まる。ここまで得た情報をもとに、雄二は逆転を模索する

 

(つか、あいつらやっぱり)

 

ある確信を抱いた雄二はその連絡をし、またある命令を受け取る為、烏間に連絡する

 

【苦戦してるのか?】

 

「それなりにな。……あいつら、多分ブースターを使ってる」

 

【‥確かか?】

 

「容赦のなさ、痛覚の無さとそれによる動き。まず間違いない。……だから許可をくれ、烏間」

 

烏間は一瞬黙るが直ぐに

 

【わかった】

 

「ありがとう、烏間」

 

烏間が肯定しその命を出す前に【すまない】と言い、その命令を口にする

 

 

「雄二君大丈夫かな」

 

「あ、見て烏間先生連絡取ってる。多分大丈夫なんだよ」

 

映像に映る烏間は今生徒たちと喋ってない。トランシーバーのチャンネルを変えて雄二と話していると確信した。

 

「…え?」

 

「茅野ちゃん?どったの?」

 

「え。いや、なに話してるのかなぁっておもって」

 

莉桜の言葉に誤魔化す。彼女は烏間の口元を見た。そして、彼女だけがもつ理由ゆえに口元のセリフがなんとなくわかった。その言葉が

 

(気のせいなのかな。見間違い、だよね?いくらなんでも……殺せって)

 

 

side:雄二

 

【聞こえるか、風見雄二?】

 

声が聞こえる通信越しに烏間の声が

 

【目を閉じて、想像しろ風見雄二】

 

想像しろ。その言葉で、頭にまず何もない空間ができる

 

【今、こうしている間も、おまえの仲間が死へ近づいている。わかるか?】

 

わかる。見えてくる。檻の中で死だけを待つ自分のクラスメイト達の姿が

 

【様々な訓練を、様々な時間を、様々な困難を、共に過ごして乗り越えてきた、大切な仲間だ】

 

仲間。そう、仲間だ。大切な

 

【掛け替えの無い仲間だ】

 掛け替えの無い仲間だ

 

【それを奪おうとする者達が、今君が戦っている敵だ】

 

敵。……そう、敵だ

 

【わかるだろ?相手は人間じゃない。獰猛なナニカだ】

 

獰猛なナニカ。得体の知れないナニカ

 

【そのナニカが、君の仲間を殺す。大切な場所を壊す。…いいのか?】

 

いいわけない

 

【本当は殺したくない、それはわかる。だが、殺さなければ殺される状況で何もしないのは臆病者、まして仲間を殺されるのなら、それは裏切りだ】

 

裏切り?

 

【選ぶんだ風見雄二。呆然として仲間も君も死ぬか?血を吸ってでも生きて助けるか?】

 

決まっているそんなもの

 

【では戦え、殺せ、風見雄二。全責任は俺がもつ……目の前の敵を、殺せ】

 

殺す、敵を殺す

 

side:フリー

 

ⅠとⅡはマシンガンの弾切れが近いとし、目標を確実に殺すため一気近付こうと動きだす。

 

「!アァ」

 

だがそれとほぼ同時に雄二が荷物を蹴り飛ばして出てくる。荷物を避けるため、回避行動にでたⅠの右足を撃つ。姿勢が崩れるが痛覚が無いのですぐに立ち直る。ⅠとⅡは同時にマシンガンを向けた。

 

「!」

 

残った弾を全てⅠの引き金がある手を狙って撃ち、指が飛び、血が噴き出すがそれでもⅠはもう片方の手で腰の銃を出すがその腕を取りそのままⅠを盾にする

 

「っつぅ!」

 

防ぎきれない弾丸が雄二の手足に命中したが、痛みを耐えてⅠの腕に持つ拳銃の引き金を無理矢理引いて発砲した。狙いの定まってない弾丸だが多少怯む。その隙にまだ動くⅠを腰にあるナイフがを奪って喉元を切り裂く。血潮を出して絶命させた。その瞬間もⅠは無表情のままだ

 

「んのやっ⁉︎」

 

最後の抵抗か雄二の手を握っていたそのせいで回避が間に合わない。Ⅱは2本のナイフを投げていた。雄二に刺さるまであと1秒といったところで爆発音がし、少し揺れる。

 

雄二は知らないが死神が烏間を倒すためイリーナを巻きこむ形で天井を落したのだ。それが結果的に雄二を助けた。銃によって足にダメージがあったのもあり、ガクリと崩れてナイフを避けるのに成功した。だがすぐに追撃が来るⅡは再びマシンガンを拾い撃ってくる

 

「ぐっおぉ!」

 

どうにかして回避したがまた何発かかする転がり、荷物の影に隠れた。Ⅱはそこに連射した荷物を貫通して当たっている。弾全て使い近付く

 

「終わりだ」

 

いつのまにか雄二が後ろにいた。雄二はナイフでⅠの腕を切り落とし荷物の死角に入って後ろに回り込んでいた。さっきから荷物後ろで流れている血は全てⅠのものだ

 

「あばよ」

 

ゴキリとねじれる音がして、Ⅱは力の全てを失いドサリと倒れた。

 

「チッ、手間取らせやがって」

 

早く、次の敵を、死神をと、雄二は追いかけた




どうやってもⅠとⅡは殺すつもりでした。そして烏間による催眠暗示で強制的に殺し可能状態にするのもここでと決めてました。

言うまでもなく雄二は血だらけですがどっかである程度洗い流します。傷にはスゲー染みるけど



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死神の時間・5時限目

死神編ラストスパート!

こんな感じでいいかなぁと思いつつ投稿しております


雄二がⅠとⅡと死闘をしている時、雄二への命令の後に烏間も死神と接敵していた

 

「くっ‼︎」

 

禍々しいほどの殺気を感じて反射的に烏間は物陰に身を隠した。雄二に銃を預けたがまだもうひとつあり、腰からそれを出して警戒する

 

「殺気の感知も完璧か……ⅠとⅡが追って来ていないなら、彼が1人で足止めしてるのかな?だとしたら、正直、君も彼も見くびってたかな」

 

「……トラップの見本市のようだった。多彩なもんだな」

 

「人殺しの技術を身に付けたらね、片っ端から試したくなるのが殺し屋の性さ」

 

「あの双子暗殺者はなんだ?ブースターを使っているということは…」

 

「なに、ちょっとしたビジネスみたいなものさ。彼らの性能をチェックして、報告するっていうね。商品価値としては、プロから見たらなかなかだけど、成長までの時間と彼らの生命時間を考えたら難しいね」

 

烏間はやはりかと思う。

 

(あの双子は一定の行動、今回で言うなら暗殺に特化して作られた存在…痛覚や感情を無くして、ただ相手を殺し、目標を達成させる事のみに忠実なロボットに近い)

 

そしてさまざまな薬品を使用して無理矢理作った体は長くは保たない。言うなれば、消耗品なのだ。非人道的なそれはもはや見るだけも不快である。躊躇すれば殺されるし、殺す気でないなら烏間とて危うい。相手は自信の命を選択肢に入れない。自爆すら躊躇いなく決行する

 

(色々調べたいが、今はこいつを)

 

その瞬間、後ろから烏間の顔を掠めるように弾丸が飛んでいく

 

「ちゃんと当てなよ、イリーナ」

 

「ごめんね、次はちゃんと当てるわ」

 

後ろから奇襲をしてきたイリーナを見る烏間の眼にある感情は、失望でも、怒りでもなく、諦観に近い。受け入れたからこそ、死神に注意しつつ烏間は銃口を向ける。

 

「…死ぬぞ、イリーナ」

 

烏間ほどの強者を殺すなら、完全な奇襲しかなく、今のがその最大の奇襲だった。それがもうできない今、烏間はイリーナが撃つより早く撃つ事も可能だ。だからそれは最期通告。これ以上相手をするなら本当に殺すぞと

 

「死ぬなんて、覚悟の上よ。あんたには理解できないだろーけど」

 

だが、イリーナはそういった世界で生きてきた。いつ殺されるか、それとも殺すのか、そんな世界で

 

死神(カレ)理解(わか)ってくれた。僕とおまえは同じだって」

 

「テロの絶えない貧困のスラムに生まれ、命が曖昧な世界。そこで信用できるのは、金と己の技術と『殺せば人は死ぬ』という事だけ……僕はイリーナの気持ちがわかるし、イリーナは僕の気持ちがわかる」

 

死神は語りながらタブレット端末を操作し、その罠を発動させる

 

「なっ⁉︎」

 

天井が爆破され、大量の瓦礫が降り注ぐ。死神にとって、ⅠとⅡも、イリーナですら、目的を達する為の捨て駒でしかない

 

「……へぇ、さすがだな」

 

「…ぐ、天井全てを落とすとは」

 

瓦礫の完全回避は不可能と判断した烏間は最もダメージを低くする為、あえてひとつの瓦礫を腕で受けた。残りの瓦礫の盾にする為だ

 

「けど、閉じこめた。おそらく、君や風見雄二、それとあのタコ単独ならこのトラップも抜けただろう。だから、彼女を使った」

 

烏間がイリーナを見ると彼女は瓦礫に下半身が埋もている

 

「可愛いらしいくらい迷ってたよね、彼女」

 

最初の奇襲で外したのはその迷い。『かつての仲間を巻きこんでいいのか?』それに彼女が気付いていたかはわからない。だが、死神は気付き、利用すると瞬時に判断した

 

「迷いは伝染する。君も彼女を攻撃するべきか迷った。その結果が今の君だ」

 

烏間はすぐに判断を下せなかった自分を恥じるがそんな暇はないすぐに瓦礫を退けていく

 

「当分は追ってこれないね。それじゃ、遠慮なく最後の仕上げに入るとしよう」

 

確信を持って死神は制御室へ向かう。

 

【烏間先生‼︎モニターを見ていたら爆発したように映りましたが、大丈夫ですか⁉︎イリーナ先生も‼︎】

 

「……俺は大丈夫だが、あいつは瓦礫の下敷きだ。だが、構っているヒマはない。道を塞いでる瓦礫を退かして死神を【ダメ‼︎ 】……倉橋さん」

 

耳元で大声を出されて怯む。その声が彼女の指導をよく受けている1人の陽菜乃とわかり、感情的になるなと言いたいが、そんな簡単に割り切れる歳でもないとまずは話しを聞く事とする

 

【どうして助けないの⁉︎】

 

「…彼女なりに結果を求めて死神と手を組んだ、その結果だ」

 

烏間はその判断を肯定しないが批判もしない。プロはさまざまな考えの下、最も有益だと思える行動と考えを常にする。そしてそれは常に自己責任で成り立っている

 

「彼女の考えを責める気はないが、助けもしない。一人前のプロなら、自己責任だ」

 

【プロだとかどうでもいーよ‼︎15の私が言ってもなんだけど、ビッチ先生まだ二十歳(はたち)だよ⁉︎】

 

成人したて、つい最近まで子供だった、それがイリーナだ。経験は豊富だが、時折見せる姿は彼らより若く、子供に見えるほどアンバランスだ

 

【たぶん、安心の無い環境で育ったから、大人になる途中で大人のカケラをいくつか拾い忘れたんだよ】

 

「………」

 

烏間は、その言葉を聞き、また考える。イリーナと、そして彼の事を。育った環境は人を変える。良い意味でも、悪い意味でも……それを知ったからこそ彼を、風見雄二には、その尊い普通を体験して少しでも彼の心の助けになればと思っていたから

 

【助けてあげて、烏間先生】

 

【私達が間違えた時も、許してくれるように】

 

【ビッチ先生の事も】

 

陽菜乃、桃花、莉桜。イリーナから指導を受けた、弟子と言って過言でない3人の言葉を聞き選択に迫る

 

「だが、その場合、君達が時間のロスで死ぬぞ」

 

たった1人の為に多くの命を犠牲にする行為など、烏間にはできない。だが通信から【大丈夫】と磯貝の自信のある声が出る

 

【死神はたぶん、目的を果たせずに戻ってきます。だから、烏間先生はそこにいて】

 

烏間が取るべき選択は2つ彼らを信じて留まるか、それでも先に進むかだ。

 

 

イリーナは、夢の中にいた。だがそれは走馬灯に近い。民兵を殺し、どうにか生き延びた彼女は血に怯える日常か、血に向かい仕事として飼い慣らす選択を迫られた。そして彼女は血に向かい合う選択をした

 

(いつからだろう。感じなくなった血の温もりじゃなく、暖かい穏やかな温もりを感じ始めたのは)

 

だがそれはイリーナはわかっている。この生活が、E組の皆と過ごしてきて……いや、それが確かに9割を占めるが、きっかけは

 

(あの子、マーリンを妹のようだと思い始めてからかもしれない)

 

イリーナ今でも思い出せる。あの時感じたものは、共感。形が違えど同じく安心などない環境で育った者同士の共感。あの時、誰かを教えるという行為が変わるきっかけだった。あのまま彼女と仕事をこなしていれば、もっと早くにその温もりを思い出していた。だからこそ、ロヴロは成長してきた段階で彼女と引き離した。イリーナが迷いで死なないように

 

だが、それでも運命は彼女を逃がさない。怪物の暗殺としてきたこのクラスで彼女はまたその温もりに触れた。

 

(冷たい血の海が私の日常だったのに、結局は捨てきれなかった。そんな私が、裏切られて死ぬのはきっと正しいんだろう)

 

暖かい優しい温もりをもつ者達を裏切った報い。それでも

 

(終われてよかった)

 

またあの温もりを思い出してしまう前に、血の海より深い闇へ沈む。それは今彼女が望んだ形。ゆっくりとその闇が彼女を覆っていくその時、また光が彼女の視界を広げる

 

大きな物が動く音する。意識が回復してイリーナが最初に見たのは

 

「さっさと出てこい重いもん背負ってやる」

 

言葉通り、巨大な瓦礫を背負い、イリーナの、もしかしたら心のどこかで願った光を見せる烏間が、思い人がいた

 

 

「クソっ」

 

烏間の進んだ道とは違う道を進み、バシャっと水が溜まった場所に体が倒れた。血の汚れが取れていくが己の血も流れる。雄二はズリズリと体を動かして移動を再開した。烏間の命令で己のリミッターを外したが、それにダメージによる限界が来たことで冷静になったが疲労と痛みが一気に出てきたのだ。それでも先へ進む

 

【風見君、大丈夫ですか⁉︎ボロボロじゃないですか⁉︎それに血も⁉︎】

 

通信を取り、雄二は殺せんせーに連絡する

 

「奴らのマシンガンの弾がかすめただけだ。超体育着でも、さすがにマシンガンの鋭い弾丸を防ぐのは無理みたいだ」

 

【それでも、君が動いているという事は、双子暗殺者は】

 

「…………あぁ、無力化した」

 

殺したとは言わないが、きっと殺せんせーは気付いているなと確信する。

 

「それより、烏間…先生は、死神は、どうなった?」

 

【現在、死神は私達が爆弾付きの首輪を外し、超体育着の迷彩で壁と同化した事で戻ってきたところ、裏切り返したイリーナ先生の策で烏間先生との1対1の接近戦をしています。通常戦闘なら死神よりも烏間先生に部がありますが】

 

「相手は死神、何をしてくるかわからないか‥‥俺の現在地って烏間先生から遠い?」

 

【多少、しかし間に合わない距離でもないです】

 

【雄二君、烏間先生を信じて休んで‼︎】

 

「陽菜乃…」

 

雄二とて、烏間を信用してないわけではない。だが、彼を今動かすのは烏間からの命令

 

「まだ、敵がいるなら、俺も何かしないとな」

 

冷静さは取り戻しているが、その命令を上書きしない限り、彼は止まらない

 

【どうして!】

 

「どうしても何も、それが俺の役目だ」

 

【役目って……それで雄二君が死ぬなら、意味ないよ⁉︎】

 

「死なないさ。俺を信じてくれ、莉桜」

 

這いずる足の痛みが慣れだし、雄二は走る準備をする前に、耳を地面につけた。音を感じる。戦闘の音を

 

「こっちだな」

 

そしてすぐさま向かうそして、立坑の中間地点に到着し、そこの階段を降りているとイリーナと合流した

 

「カザミ⁉︎その怪我…」

 

「そっちもだいぶ痛手だな。しばらくベッドはお預けだな」

 

「その減らず口を言えるなら大丈夫ね!つか、最近あの子達あんたに似てきたのよ!どーしてくれんの⁉︎」

 

ソッポを向いて雄二はスルーした。

 

「時間がないな…その話は後にしよう」

 

「飛び降りる気⁉︎その怪我で⁉︎」

 

「烏間先生はたぶん1番上から飛び降りたんだろう?それと比べたらあまりにも低い。大丈夫だ……それと」

 

「?」

 

「ビッチ先生、おかえりって言ってくれる場所は、大切にしておけ」

 

「…………あんたが言うなっての」

 

違いないと心の中でツッコミ、雄二は飛び降りる。着地の瞬間は死神が腕から隠しナイフを出したところだ。バシャン‼︎と水飛沫が舞い、死神も思わず気がそちらに向いてしまう。その隙を烏間は当然狙うが即座に冷静な対応で防ぎ、ナイフを振るう。最初の動転もあり、回避は楽にできた

 

「気持ち悪い顔だなぁ‼︎」

 

死神の顔は皮のない顔だ。顔の筋肉がハッキリと見え、骨格すらわかる

 

「顔の皮なんて、変装の邪魔なんだよ‼︎」

 

死神の技術を求めるそれは狂気だ。自分を高める為に犠牲にできる物を容赦なく切り捨てられる。その狂気を纏うナイフの腕を持ち、投げに入る。

 

「!ぐぁ」

 

だがそれはできなかった。死神の口から釘のように鋭い針が出てきて、どうにか下がり回避するが1部が顔をかすめた。本来ならここで死神も止めに入るがここには超人がいる

 

(2対1は流石に厄介だな)

 

烏間の猛攻を防ぐとまた雄二もきて拳を向けてくるが烏間の攻撃を防ぎ、時に反撃しつつ、足に仕込んだナイフを蹴るように雄二へ向けた。加速を急速に落とした瞬間、そのナイフがパシュと音を立てて飛んできた

 

「ぬぉ!」

 

(怪我と少し冷静さがなくなっている。なら、先に始末するなら烏間(こっち)……と思わせて)

 

死神は烏間の攻撃をあえて受けてその反動で下がりながら向きを雄二に向ける

 

「⁉︎」

 

「動けないでしょ?さっきの針、毒付きだからさ!」

 

強い毒でなく、短時間動きを鈍らせる程度だが、充分に効果はあった。直感で腹にくると感じて腕でガードし、腹に力を入れたがそれでもクリティカルヒットといえる一撃で雄二は本当に戦闘がほぼ不能になる

 

「風見君!」

 

だが、そのおかげでで死神は無防備となり、持っている仕込み武器も使い果たした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………あとひとつを除いて

 

(さぁ、見せてあげよう。暗殺技術の極致を)

 

胸元に手を入れた事で烏間は飛び道具を疑い止まってしまう。取り出したのは一輪のバラ。それを上へ投げる

 

意味のない行為に見えるそれは、烏間に一瞬の油断が生まれる。戦闘から、暗殺へと戻す為の布石。死神は烏間が一瞬バラに意識がいった瞬間に親指を立て、人差し指を烏間に向ける。それは、子供が銃を撃つ真似をする時するもの。だが、聞こえないほどの小さな音と共に人差し指の先から極小の弾丸が発射された

 

そのサイズは、10口径… 2.5mmの弾、本来殺傷能力はほぼないに近い。だが、それを撃つのが射撃技術が頂点に達した死神の物なら別だ。筋肉、骨、その隙間を針に糸を通すごとく、正確に大動脈に裂け目を入れ、その裂けた部分から血流圧で裂け目が広がり、心臓近くで血が吹きだして、大量出血を起こす

 

「……っ」

 

胸元からブシュと生々しい音を立てて液体が漏れ出る。

 

「極小の弾丸は血流に流されて体の奥へ銃声はしないから凶器もわからない。標的の体と精神の波長を見極めて鍛え抜かれた動体視力で急所を撃ち抜く、死神でしかできない、まさしく総合芸術だよ」

 

相手が相手なので完全にトドメをさす為に近付くと、流されていく血に違和感を感じた

 

(なんだ、皮膚と同じ色のチューブが、血を噴いて……⁉︎)

 

死神はその鍛えた視力で見た。そのチューブは烏間の体のさらに向こう、生徒と殺せんせーが捕まっている檻に続いて、中にいる殺せんせーが器用に1本だけ触手を檻からだして、血と同じ色のトマトジュースを飲んで、それをこちらに送っていたのだ。

 

「(だとし…)‼︎⁉︎うぐおあおあおあ‼︎⁉︎」

 

気絶したフリをした烏間の鉄拳は、どんなに鍛えても、決して鍛えることのできない男の弱点…股間に命中し、悶絶する

 

「やっと決定的な隙を見せたな。死神も急所が同じでホッとしたぞ」

 

死神の隠し玉を、殺せんせーは最初から見抜いていた。

 

「おまえにやられた殺し屋の様子を話したた、瞬時にあのタコは正体を見抜いていた。奴の頭の速さをみくびっていたのか、檻に入っているなら大丈夫と油断したかはどうでもいい……俺の大事な生徒と同僚に手を出したんだ。覚悟はいいな?」

 

「ぐっ…うおっ!なん…だ………⁉︎」

 

どうにか逃げようとする死神のズボンをしっかりと持っていたのは雄二だった。

 

「助けにきて何もできないとかかっこ悪すぎだろ?」

 

「まっ、待てッ‼︎僕以外に誰が奴を殺れると…」

 

命乞いのように死神は己の有用性を強調するが、そんな物は無意味だ。確かにその技術は素晴らしく多彩だがその全て既に

 

「既に技術(スキル)は、E組(うち)に全て揃っている」

 

今までの鬱憤を全て込めた1撃の鉄拳は、死神を空中で1回転させ、そのままゴッと鈍い音を地面に打ちつけ、完全に意識を落とした

 

「…大丈夫か、風見君」

 

「問題ない。と言いいたいが、早いとこ治療頼む」

 

ふっと笑い

 

「忘れてないか、ひさしぶりに。ここでは先生だ」

 

全員でもぎ取った勝利。だが、雄二には後に引く余韻が残っていた

 




ちなみに
超体育着を貫通する弾丸はある程度威力ある物か鋭い物です。前回読み直したら「あ、やばい超体育着着てんだ」と思い出してつけた後付けですハイ…すいません

ちなみに2
もそⅠとⅡのダメージが少ないと烏間が気絶させた後トドメを刺してました。

ちなみに3
殺せんせーはⅠとⅡを殺したことに気付いています。クラスの皆は半信半疑ですが、知って受け入れることはたぶんできる



たぶん。だから殺した事はここでは教えません


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進路の時間

最後に彼らを出しました。
そろそろ動かさないとね


「なぁ、早くしてくれって」

 

「待ってくれ、頼む、待ってくれ」

 

「こっち我慢できねーんだ。頼むから早くしてくれ」

 

「頼む、もう少しだけ……………考えさせてくれ」

 

ぷるぷると手を震わせて烏間は思考する。どうすれば良いかと

 

「どうにか、どうにか、コイツだけを閉じこめたまま殺す方法はないのかぁ…」

 

「考えても無駄ですねぇ烏間先生」

 

「そうそう、無駄無駄」

 

「君はどっちの味方なんだ⁉︎」

 

ぷークスクスと笑う殺せんせーに同意しながらちょっと煽る雄二に烏間の血管が破裂しそうになっていた

 

「死神も言ってたけど仮に殺せんせーだけ閉じこめることに成功しても、生徒たちがいない状態なら乱暴な脱出もできるだろう?」

 

「その通りです。出ようと思えば出れるんですよこんな檻。マッハで壁に何度も体当たりしたり、音波放射でコンクリートを脆くしたり」

 

「あーあの音痴なのやっぱ仕様なんだな」

 

「音痴と言わないでください!味があると言ってください‼︎…おほん。とにかく、それをすればどうあっても一緒にいる生徒にも大きな負担をかけてしまう。だからこそ、あなたと風見君に死神達を倒してもらったんですよ」

 

と説明するが殺せんせーも、雄二も、烏間が言わずとも理解していると思っている。ついでに、E組の結束を強めるために最小限の手出ししかしてない事も。諦めた烏間は死神から奪った端末を操作して檻を開けた

 

「なー殺せんせー、秘蔵のエロ本やるからまたそこに入ってくんない?」

 

「え、マジで…いや、嫌ですって⁉︎」

 

「先生、頼むから単純な手に嵌まらないでくれって…っと」

 

岡島の誘惑に一瞬躊躇う殺せんせーをあきれていると体がふらりと揺れて倒れそうになり、両脇を陽菜乃と莉桜が、背中を桃花が受け止めて抑える

 

「雄二君、無理しすぎ。怪我の部分は応急処置なんだから早く診てもらわなきゃ」

 

「…助かる」

 

「そう言うくらいなら、最初から無理しちゃダメだよ」

 

「そうそう。心配するこっちの身にもなってよ」

 

3人から言われ流石に反省をしながら雄二は肩をすくめた。その後、烏間の連絡で部下を含めた隊員が死神をぐるぐるに拘束する

 

「落ち着いてから見ても、やっぱり気持ち悪い顔だ」

 

「うぇ、ほんとだ」

 

改めて雄二は死神の顔を評価していると他の皆も同じ感想なのか引きつつ言う

 

「…驚異的な技術を持った男だったが、スキルを過信しすぎ、人間としてもどこか幼かった。だからこそ隙もあった」

 

「逆を言えば、まだまだコイツは成長していく可能性があったって事か。もしやりあってたのが5年後なら、俺と烏間先生の共闘でも負けてたかもな」

 

「そこまでか。……けどよ、なんで、顔を潰してまで技術を求める心理がわかんねーよ」

 

「幼い頃の経験だそうだ。殺し屋高度な技術を目の当たりにして、ガラリと意識が変わったらしい」

 

「…なるほどな。けど、わかる必要なんてねーよ。殺し屋の殺人の場面を実際に見て、殺し屋になりたいなんて考えるような狂人だったてだけだ」

 

そう吐き捨てる雄二に殺せんせーは「違いますよ」と言う

 

「影響を与えた者愚かだっただけですよ。これほどの才能ならば、本来もっと正しい道で技術を使えたはずなのに」

 

ここまでされたというのに随分と死神を庇う殺せんせーに雄二は少し不思議に感じたがわずかな違和感だったので気にしない事にした

 

「人を活かすも殺すも、周囲の世界と人間次第…か」

 

「…………まぁ、確かに。ところで、どうすんだ?そこでコソコソと逃げようとしてるビッチ先生」

 

「あ」

 

気付かれて停止するイリーナ。数秒くらいして、何事もないようにまたそろりとこそ泥のように移動するが

 

「おい!ビッチ‼︎なに逃げようとしてんだコラ‼︎」

 

「ぎゃぁぁ!」

 

生徒全員から拘束された

 

「あーもー‼︎いいわよ!好きなようにしなさい!裏切ってんだから制裁受けてトーゼンよ‼︎女子は私の美貌への日頃の嫉妬を‼︎男子は溜まりまくった日頃の獣欲を‼︎思う存分性的な暴力で発散させなさい‼︎」

 

「いや、その発想…」

 

「つか、自分で自分の美貌がーとか」

 

「やっぱり元がビッチだからそこはどうやっても変わらないんだ」

 

「おいコラ!カザミ‼︎ちょっとこの子達に注意しなさいよ‼︎あんたの責任でもあんだから‼︎」

 

「いや事実じゃねーか」

 

冷淡な声でそう言われて青筋が入る

 

「いーから、いつまでもバッくれてねーで普段通り来いよ学校」

 

寺坂が言い出した言葉を一瞬理解できなかった。他の皆も同じで来てまた色々教えてほしいと言う

 

「……殺す直前まで行ったのよ?それだけじゃない過去に色々ヤッてきた。それこそあんた達が引くような事」

 

「あのなぁビッチ先生、それこそ今更だって」

 

この暗殺教室で皆さまざまな殺し屋を見てきた。そういった世界でいる事など百も承知だ

 

「たかがビッチと学校生活楽しめないで、うちら何のために殺し屋兼中学生やってんのよ」

 

莉桜の言葉に賛同しながら烏間はイリーナに近付きスッと水に濡れているがそれでも艶やかな赤をだしているバラをだす

 

「それ、さっき死神が持ってた」

 

「ああ。生徒達からの借り物でなく、俺の意志で敵を倒して得たものだ。誕生日は、それで良いか?」

 

花はたったの一輪、飾り気もない、手にした方法は普通ではない、ムードもない。それでもこれが烏間らしく、暗殺教室でいる者にふさわしい最高のプレゼントと言えるだろう

 

「…はい」

 

言いたい事はもっとあっただろう。文句もあったかもしれない。それでも、短く、ただそれを受け取りイリーナ…いや、ビッチ先生は嬉しそうに微笑んだ

 

「さて、烏間先生。いやらしい展開になる前に一言いいでしょうか?」

 

「断じてそんな事にならないが、言ってみろ」

 

殺せんせーは触手をペタッと生徒の頭に置き、顔を赤にして言う

 

「今後、このような危険に成長を巻きこみたくない。安心して殺し殺されることができる環境作りを、あなた方防衛省ならびに政府に強く要求します」

 

防衛省だけでなく、政府とつけた。

 

(これ、俺にも言ってんな。俺もJBもどっちかっていうと烏間側なんだがなぁ)

 

 

 

 

後日、生徒からの要求が上に提出された。内容は

 

『暗殺によって生徒を巻き添えにした場合、賞金は支払われないものとする』

 

「拒否すれば、生徒全員があの教室をボイコットする。当然そうなればあの怪物の行き場はなく、また逃げられ続ける…ね。一応聞くけどこの生徒全員ってところ、あなたも入ってるの?」

 

「ご想像におまかせする。と言っておこうか?」

 

でかいため息をJBはだす

 

「ハッキリとは言わず、はぐらかす。もう、報告するのは私なんだからね」

 

そう言いつつちゃんと寄り添うのがJBだ。

 

「けど、随分あっさりと認められたな。あのクラス……って言うより殺せんせーの最大の弱点をなくす選択だってのに」

 

以前イトナとシロが生徒を巻き込む形で殺せんせーを殺そうとしていた。あの時は皆、寺坂がようやくクラスに馴染んできたのもあってその嬉しさから気付いてなかったが、雄二はあの時点で気付いていた

 

「そんなものが些細なことで終わるような事態になってきてるってだけよ。以前も言ったでしょ?奴を殺す算段ができてきてるって。各国共同で進めている最終暗殺プロジェクトよ。残念ながら、私はその内容は知らないけどね」

 

「…知ったところで俺がどうにかすると思ってるのか?」

 

「普段の行いのせいもあるだろうけど、秘密は厳重にしたいんでしょうね。それと、シロの方も」

 

「あ?」

 

「あっちもあっちで最終兵器の用意があるそうよ。用意ができ次第、それぞれの最終兵器による共同作戦が発動される。まぁ、本命は各国共同プロジェクトの方で、シロの方はあくまでもおまけ扱い。ぶっちゃけ無くても問題ないみたい」

 

「それなのにするって…なんでそこまで必死になんだ?」

 

「信用回復。それでだけでしょ?以前の鷹岡の件と全く変わらないわ」

 

だからこそなにをしでかすかわからない

 

「決行予定は来年の3月……あの教室であの怪物が逃げなければいいなら、この要求を呑むのは理に適っているってところよ。あなたも、身の振り方をそろそろ考えなさい」

 

「…進路相談なら必要ないし問題ない。もう決まってんだからな」

 

JBは首を横に振り「それだけじゃないでしょ」と諭す

 

「あの教室に怪物の暗殺は期待してないけど暗殺自体はできる。そして問題はその後、そっちは意外と期待があるのよ。残念ながら…ね」

 

「…させねぇよ」

 

低くく、だが決意ある声で雄二は言って立ち上がる

 

「そろそろ登校する。……JB、もしもの時は」

 

「わかってる。暗殺なんてものに関わっているけど、あの子達は元々ただの中学生の一般人なんだから。烏間とも連携して絶対に阻止するわ」

 

ようやく安心した雄二はその場を後にする

 

「9029プロジェクト……まったく、上の連中はいつでも国民の事なんて考えない」

 

自分しかいない部屋でそう言いなが窓を見る。晴れやかな空にふさわしくない気持ちにJBはなっていた

 

 

雄二が着くとちょうど殺せんせーが1枚の紙を渡したところだった

 

「進路相談か」

 

「もし誰かが先生を殺せて地球が無事なら、皆さんは中学卒業後も考えなくてはなりません。まぁ、殺せないから多分無駄になりますがねぇ」

 

「うぜぇ」

 

舐めてる時にでる黄色と緑のシマシマ顔になった殺せんせーを見送りつつ雄二は進路希望を書く紙を見て、渚に話を振る

 

「渚は………そうか、頑張れ」

 

「なに納得してるの⁉︎違うから⁉︎中村さんが勝手に書いただけだから⁉︎」

 

「大丈夫だ。今は多様性を求められる時代だ。きっとおまえならできる」

 

「話聞いてる⁉︎」

 

「渚君、卒業旅行でタイとモロッコ、どっちに行く?」

 

「カルマ君は何で僕からとろうするの⁉︎」

 

渚の進路希望表には女子高と書かれ、その下の職業はナースとメイドだった。当然だが、莉桜の悪ふざけである。そうこうしながら次々と順番に殺せんせーの相談を受けていく

 

「なによガキ共、進路相談やってんの?」

 

ガラリと扉を開けて入って来たのはビッチ先生だが、衣装は以前のような露出のあるものではなかった

 

「ふつーの安物よあんた達に合わせてやっただけよ」

 

とは言うが隠された分以前よりもその体型が目立つようになっていたので岡島などは鼻血を出していた

 

「あ、サイズシール貼りっぱなしだ」

 

安物に慣れていないのもあって剥がし忘れたのだろう。言ってもいいがこう言うのは本人に言うと恥ずかしいものでもある

 

「僕が取るよ」

 

どう伝えようか悩んでいると渚が立ち上がってそう言う。だが伝えるではなく、取る(・・)と言う。ちょうど次は自分が進路相談をするつもりだったのか希望表も持って歩く。その時渚にはビッチ先生の意識の波長が見えていた。それ感じつつ歩くついでに持ってたゴミをゴミ箱に捨てるごとく平然と、ビッチ先生に気付かれることなく、首筋のサイズシールを取った

 

(………死神っていう頂点を見た影響だろうが、ここまでなるとはな)

 

今のが実際の暗殺なら、ビッチ先生は死んでいる。もちろん殺意が最初からないのもあるが、それでも歴戦の殺し屋である彼女がまったく気付く事がないとなるとその成長は桁違いだ

 

(進路希望表、なにも書いてなかったな。まったく……俺と、おんなじかよ)

 

殺せんせーならその迷いも考えて渚に適切な事を言えるとは思っているが少し心配ではあった

 

しばらくし、渚は戻ってきた

 

「どうだった?」

 

何気なく雄二が聞くと苦笑いをしながら

 

「もう一度見つめ直して、もう一度相談しようってさ。どうしようかちょっと悩んでて」

 

「そうか。なら、次は俺だな」

 

やはり悩んでいると思うがそれこそが大切だと雄二は考えあえてそれ以上聞く事をしなかった

 

「君で最後ですね、風見君」

 

「あぁ。けど、俺が出せる進路なんてないよ、殺せんせー」

 

なにも書いてない進路希望表を手渡す。殺せんせーはわかってたのかその事にはなにも言わない。そう思っていた

 

「単刀直入に聞きますよ風見君。君は今のまま君がしている『バイト』を本職にするのか、しないのか」

 

だからその質問は予測できなかった

 

「……俺には他には何もない。あいつらみたいな夢とかもない。渚のような悩みもない。ただ、生き方を選べない身だ。先生は、その辺がわかっていると思ってたんだがな。……気付いてんだろう?俺があの時、あの双子暗殺者になにしたか」

 

「えぇもちろん。君の正体についてもね」

 

「だったら」

「その上で聞きます。もし、選べるなら、君はこの先、どうしたいか?どうなりたいか?何を望むのか」

 

「…………」

 

そんなもしもなど、考えた事もなかった。その答えは何もでない

 

「答えができた時、もう一度相談をしましょう。その時、その紙に何を書いてもいいですよ。今のままでも、違うでもね。私は全力で応援します」

 

答えない、出口のない、そんな迷宮が雄二の前にあるような気がしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ⅠとⅡのテストモニターからの連絡が途絶えましたが、おそらく両方とも死んだと思われます」

 

「はぁ、まったく死神の名が聞いて呆れてるね。まだまだ未熟だったって事か、彼もアレも……そうは思わないかい?」

 

「所詮は考えの浅い人型の兵器、もっと多様性が必要かと」

 

男の質問に答える少年は無機質だがしっかりとした意見を言えていた

 

「確かに。まだまだ実用化には程遠い……やっぱり、彼が必要か」

 

「では、予定通り決行を?」

 

「あぁ。トラビス、準備は?」

 

男は先程ⅠとⅡの報告をしてきた男、トラビスに問う

 

「いつでも大丈夫ですが、なぜまだ決行しないのですか?」

 

「怪物の件があるからね。脅しをかけるならギリギリ尚且つタイミングが必要なんだ。そうだね決行は2月としよう。あぁ、そういえば日本のバレンタインはチョコを送るんだよねぇ…できればその日がいいなぁ」

 

うっとりとした表情で男は思い浮かべる。彼の最高の興味を

 

 




ちなみに
JBが言った期待があると言っているところですが正確に言うと上の期待度は40%くらいです。でも殺せんせーの暗殺の期待は限りなく0なのでそれと比較したら充分あります


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進路の時間・2時限目

ちょい間隔あいてしまいました。




「三者面談?」

 

「うん」

 

渚が言うには彼の母親は渚を早いうちに転級させたい。何も知らない人からすれば地獄のような扱いをされる場所からお金を払ってでも復帰させる行動を良しとするだろう。だが実際は自分の息子を自分が思うような勝手な理想に付き合わせるだけ

 

「正直、孝太郎から聞いた話しを総合したら、本校舎でおまえがこれ以上成績が上がるとは思えない」

 

教え方はE組の方が早くわかりやすい。何よりお金を出して本校舎に戻れば実力至上主義みたいなこの学校では間違いなく蔑まれ、友達はできず精神的にも悪くなって余計に成績は落ちる

 

「何より、渚はこの教室に居たいんだろ?」

 

「…………うん」

 

もう答えは出ている。だが、

 

「渚の家に遊びに行った時に俺会ったんだけど、まぁわりとキツい反応されたわ」

 

「話聞くかぎり、随分とヒスっぽいからなぁ」

 

「本人の子どもの前でハッキリいうなぁ〜」

 

苦笑しながらだが否定してないところを見ると渚も理解しているのだと風見は感じた

 

「でだ、その三者面談の方だが……烏間先生がいま出張中だから殺せんせーが代役するわけだが…大丈夫か?色んな意味で」

 

「殺せんせーは任せとけって言うけど…」

 

「不審者って言葉が服着て動いてるようなもんだからなぁ」

 

うーんと皆頭をかかえながら考えていると話を聞いていたビッチ先生が提案を出す

 

「なら、私がやってやりましょうか?」

 

「おお、ビッチ先生か!」

 

人間、しかもこのクラスで何度も授業をし、苦楽を共にした。お互いの事はわかっているし代役としては最適と言えるだろう。だが、

 

(なんだ?この嫌な予感は)

 

大事な事を彼らは忘れている。早速予行練習として片岡が親役で質問する

 

Q1:担任として最も大切にしている事は?

 

「そうですね、あえて言うなら『一体感』ですわ」

 

Q2:渚にはどういった指導方針を?

 

「まず、渚君にはキスで安易に舌を使わないように指導してます。

 

Q3:……………

 

「唇の力を抜いて数度合わせているうちに、相手に唇から緊張感消え、柔らかくなります。密着度が上がり、どちらがどちらの唇かわからなくなったら、『一体感』を崩さないようにそっと唇を忍ばせるのです」

 

そう、彼らは忘れていた。彼女が痴女と言っても問題ないレベルの先生、ビッチ先生だということを

 

「アウトだな」

 

「そもそも形式上は私達の担任って烏間先生だよね?」

 

桃花の言う通り、機密である殺せんせーが三者面談などできるはずもなく、いつもは烏間が三者面談をしてきた

 

「親同士の話し合うことなんてよくある事だし、統一しとかないと話が合わないよ」

 

結局はそこの問題がある。

 

「なら、副担任という程で変装した殺せんせーが出たらどうだ?この際烏間先生が出張中ってのを話して」

 

「僕達の成績が上がったのが担任のおかげっていうのは話してす、母さんは担任と話したいっていうし」

 

「そもそも、教師の出張って何?って話しになるでしょ?しかもこの時期に」

 

またも皆がうーんとなる

 

「ヌルフフフ。心配ご無用です…私が烏間先生に変装すればいいだけです」

 

扉の向こうにいる殺せんせーの影はちょっと体格が烏間よりぽっちゃりしている程度

 

「変装って…いつものクオリティ低い変装じゃあ誤魔化せねーぞ」

 

「すれ違うくらいならまだしも、面と向かってじっくり長く話すからね~」

 

木村と陽菜乃の言うことはもっともだ。

 

「言ったでしょう?心配ご無用と…今回は完璧です‼︎」

 

ガララッと扉を開けて入って来た殺せんせーの変装レベルは

 

「おうワイや、烏間や」

 

鬘、烏間先生っぽい。顔、殺せんせー。手足、殺せんせー。服装:殺せんせー。

 

「ただの下手くそなコスプレをしている殺せんせーだな」

 

「再現度が低すぎてそれで良いと思った殺せんせーにもはや涙が出てくる」

 

「烏間先生そんなダッッッッサいパンタロンはいてない〜」

 

「最近爆売れしだしてるコスプレを題材にした漫画の作者と全国のコスプレイヤーに正式な謝罪がほしいレベル」

 

「そこまで言いますか⁉︎というか、あなた方本当に風見君と口調が似てきてませんかぁ⁉︎」

 

まぁ酷いレベルの変装…と言ってはいけないレベルのものに真っ当な評価をされて傷つく殺せんせー

 

「モノローグまで酷い⁉︎いやほら、眉間のシワとかそっくりやろ」

 

「目だ!」

「鼻だ!」

「口と口調‼︎」

 

「耳もだよね?」

 

桃花、莉桜、陽菜乃、そして神崎の容赦ないダメ出しに怯む殺せんせー

 

「その腕、某有名なギフトセットのハムみたいな感じになってるし」

 

「あ、いや、烏間先生のガチムチ筋肉を再現を…」

 

「無駄なとこばっかり凝ってるな‼︎」

 

「表現しようと努力した所が全部空回りになってるし」

 

正直このままではいけないが時間がない。烏間は来れない。ビッチ先生は訴えられるレベルの痴女、任せられるのはもはや殺せんせーしかいない

 

口元はマシな形に、デカすぎる顔と体は机の下にしぼり出して細くする。口調は元に戻してもらう。そうこう準備しているうちに渚の母親が来た

 

髪は短く、衣装も持っている鞄も着飾ってはいないがそのぶん美形の顔が目立つ。キャリアウーマン。その言葉が似合う

 

「掃き溜めを見るような眼だな」

 

ここに来るまであの山道を来たことでストレスもあるのだろうが、この校舎を一眼見た感想が眼だけでわかった

 

(さて、どうでる殺せんせー?)

 

皆心配そうに外の窓から見る。殺せんせーは渚の母が好きなグァバジュースに高級菓子のマカロンを出す。相手の好きな物と甘い物でまずは気持ちを落ち着ける為だろう

 

「渚君のこのクラスでの成長ぶり、ここまで利発に育ててくれたお母さんへのお礼です」

 

生徒を評価して親である相手を褒める

 

「渚君に聞きましたが体操の内脇選手のファンだそうで、この前の選手権も大活躍でしたねぇ。彼の頂点を目指す姿勢は素晴らしいです」

 

相手のツボを押さえて会話をし、打ち解けていく

 

「大丈夫そうじゃね?」

 

「どうだかな」

 

菅谷の言うことに皆同意するなか、雄二はジッとみる

 

(あの顔に覚えがある。………父親が客として来ていたあの男に向けた眼と同じ。そして、渚を見る眼は)

 

話しが母親の美貌が渚にも似たというワードが出た途端、眼が変わる。嫉妬のようにも見え、愛玩動物を見るようなものにも見える。いずれにせよ実の子どもに向ける眼ではない

 

「女であれば、私の理想(・・・・)にできたのに」

 

「あなたの理想?」

 

「ええ。このくらいの歳の女の子だったら長髪が一番似合うんですよ。私なんか子供のころ短髪しか許されなくて」

 

まったく渚のことを話していない。自分語りだ。今の渚の髪型すら初めは怒っていたともいう

 

(まるで、育成ゲームをしてるみてーだ)

 

「そうそう、進路の話でしたわね」

 

思い出したように渚の進路について話し出す。

 

「私の経験から申しますに、この子の歳で挫折する訳にはいきませんの。椚ヶ丘高校は蛍大合格者も都内有数ですし、中学までで放り出されたら大学も就職も悪影響ですわ。ですからどうか、この子がE組を出れるようにお力添えを」

 

言っている事は正しい。なのに圧を感じる。自分の意見は正しいと絶対の意志がある

 

「……渚くんとはちゃんと話し合いを?」

 

「この子はまだ何もわかってないんです。失敗を経験している親が道を造ってやるのは当然でしょう」

 

愛情と言えば聞こえが良い。だがこれは行き過ぎた愛情

 

(いや、調教か?)

 

渚も何か言いたいようだが「黙っておきましょうね」と言われ、その圧を隣で感じ、黙ってしまう

 

(あぁ、まったく違う。けど同じだ。親という鎖で、家族という鎖で己の意見を全て押し殺していた俺と)

 

「なぜ渚くんが、今の彼になったのかを理解しました」

 

 そう言うと殺せんせーは自身の頭を掴み、つけていた鬘を剥がした

 

「⁉︎…ヅ…!」

 

「そう…私、烏間惟臣は……ヅラなんです‼︎」

 

ちょっとかっこよく言っているが鬘をとっただけだ。だが、相手の圧を緩めることに成功した。

 

「お母さん、髪型も高校も大学も、親が決めるものじゃない。渚くん本人が決めるものです」

 

とった鬘を、ビリっと破く

 

「渚くんの人生は渚くんのものだ。貴女のコンプレックスを隠すための道具じゃない。この際ですからはっきり言います渚君自身が望まぬ限り、E組から出る事は認めません」

 

それが最後のトリガーだった。渚の母親からこの世の罵倒、悪意、拒絶。全てを凝縮したような言葉がどんどん出てくる。

 

「ヒステリックここに極めりってやつだな」

 

「笑いながら言うそれ?」

 

雄二にツッコミはするが否定してないという事は莉桜も同意見なのだ。というより全員がそうだ

 

「渚‼︎最近妙に逆らうと思ったら‼︎この烏間ってヅラの担任にいらない事吹き込まれたのね‼︎」

 

己の意見は絶対の人物にあのような否定をされたら、そりゃキレるだろうなと観察しながら雄二は思っていた

 

「見てなさい‼︎すぐに私がアンタの目覚まさせてやるから‼︎」

 

最後まで己の意見だけを言って乱暴に出ていった。嵐が過ぎ去っていったように感じる

 

 

 

 

渚の母親が去り、しばらくして皆が教室に入り意見を言い合う

 

「ありゃ大変だな」

 

「えぇ。つい強め言ってしまいました。……もう少し言いようがあったかもしれませんねぇ」

 

「殺せんせーでもそんなふうに思う時あるんだ?」

 

「ええそうですよ。完璧はないんですから」

 

「………渚、先生に言われたおまえの意志。難しいのはわかるが、ここにいる皆が味方だ。時間掛けても良いから、見つけてみろ」

 

渚は不安が隠せていない。この後帰ってどうなるかという不安もあるが、自分の意志をどう伝えるかわからないのが1番だろう

 

「ところで殺せんせー、大丈夫か?」

 

「えぇ。これからも渚君の為に…」

 

「いやそれもなんだがさ」

 

「?」

 

「烏間先生にヅラって設定を勝手に付けて」

 

「…………………」

 

押し黙る。皆も「あぁーたしかにー」と言いたげな表情になる

 

「いずれバレるけど、まぁ、頑張れ先生」

 

「その頑張れにまっっっっったく応援を感じない⁉︎」

 

当然ない

 

「ねぇ、雄二」

 

カルマが雄二に静かに話しかける。どうも見てほしい物があるそうだ

 

 

 

「これ、この足跡なんだけど」

 

少し大きめの足跡。烏間達のものでもない。

 

「この辺りを調べている奴がいるな。………まぁ十中八九殺し屋だろうな」

 

「やっぱりそう思うよね。どうする?殺せんせーに教える?」

 

少し考える

 

「必要ないな」

 

そもそも足跡があるなら、どう隠そうとしても匂いの1つや2つくらいあるだろう。気付いてないわけがない

 

「俺達に危害をだす事はもうないし、ほっといても殺せんせーは回避するよ。見た限り複数犯でもないしな」

 

「うーん……まぁ、そうだね」

 

カルマも納得した

 

(それよりも、渚の母親の方が問題だな。…目を覚まさせるとか言っていた)

 

自分の意見第一のヒステリックがキレたのだ。何をしでかすかわかったもんじゃない

 

(あの母親は渚をここから出したい。だがそれは烏間…もとい、殺せんせーがいる限り不可能。いくた金を注ぎ込んでも担当教師が拒否するなら無理だろう。渚が50位以内に入ってないとこを考えても本気でいれる事はしない。……となると)

 

1つの考えがでる。早速雄二は仕事用の携帯でJBと連絡を取る

 

「JB、今日は仕事はないよな?ちょっとここに残りたいんだが」

 

 

 

夜の道、明かりを便りにE組校舎へ。道中に車があった。ナンバーの写真を律に見せて検索させたがどうやら渚の母親の物らしい。そこから動向を追わせみたが

 

「1日に複数のガソリンスタンドに行っている。走行距離的にもおかしな数字だな」

 

「はい。それから病院から睡眠薬をもらったようですね。そしてこれがついさっきの道路のカメラに残った記録です」

 

画像解析をして見えにくかったソレが見えた。助手席で眼が隠され、ガムテープで縛られている渚が映っている

 

「予測計算した結果ですが…」

 

「いや、いい言わなくて。だいたいわかった………ここまでするかよ」

 

目的地に着くと松明に火をつけて校舎を燃やす事を言いだす渚の母親。しかもそれを渚本人にやらせようとしている。

 

「自身の手で退路を断たせるつもりか?いくらなんでもなぁ」

 

「まぁ、もう少し様子見しましょう」

 

「………………超自然に近づいていきなり会話するのやめてくれないか殺せんせー?」

 

とはいえ、多分殺せんせーがいるのはわかっていたので雄二もさほど驚かない。その時、渚の母親の松明が切られ、火が地面に落ちる

 

「あいつ、ここを偵察してた殺し屋か?」

 

「ええそうでしょうね。この時間帯は普段律さんと10時のドラマを見てますから」

 

「興味本位で聞くが何のために?女同士のドロドロ感情を学ぶ為です」

 

キランと効果音が入った気がした。雄二は「あっそう」と聞くんじゃなかったと後悔していた

 

「あの鞭で先生を殺す気だな。その速度、テレビ見て油断してる殺せんせーならほんの僅かくらいは可能性はあるな」

 

「まぁ、匂いが残ってたのを考えれば、どう出るかわかりますけどねぇ」

 

しかし観察はここまでだろうと雄二は動くこととする。このままでは渚の母親が殺されかねない

 

「ストップです」

 

「殺せんせー…さすがに止めねーと」

 

「まぁまぁ、見ていてください」

 

渚が動く。殺し屋は油断が僅かな警戒へと変わるが、渚が丸腰で近づいてくる事に違和感がでて、意識の波長が乱れだすそして

 

「クラップスタナー……以前の猫騙しから確実に進化してるな」

 

「まだまだですがね。麻痺が浅い。さて、私は行きますが、君はどうしますか風見君」

 

「いや、いいさ。俺ができることは何もない」

 

そうして雄二は立ち去ろうとしたが

 

「風見君、何かできたことが大切じゃない。何かしたいと思って行動したことが大切なんです」

 

「………そう、なのかな」

 

「ええ。ではまた明日」

 

「……あぁ、また、明日」

 

少しだけ、雄二は心が満たされた気がしていた

 




この話は本当にサクッと終わらせて文化祭編に行きたかったけど無理でした

ちなみに
最初は雄二を烏間に変装させてという案がありましたがここはやはり殺せんせーが言わせる場面と思いカットしました

でもやろうと思えばできそう


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食材の時間

少しこちらがスランプ状態になりました

ある程度の道筋は考えてるのですが組み立てが難しいです。


学生の思い出に出るであろう修学旅行、体育祭に次ぐもの学園祭。当然だが椚ヶ丘にもそれはある。だが、強者弱者を区分し、優劣を決めている学校が普通に学園祭が進むはずもない。

 

そして、雄二はある疑問を聞く

 

「どうでもいいが、文化祭と学園祭って何が違うんだ?」

 

「そこ⁉︎最初のモノローグとなんにも関係なくない⁉︎」

 

椚ヶ丘の学園祭が他とどう違うのかと聞かれると考えていた渚はおもいっきりツッコミを入れていた

 

「真面目にしよう。実際のところ椚ヶ丘の学園祭ってのはどういうものなんだ?やたら生徒が気合いが入ってるのは見ればわかるが」

 

「たしかに。そんなにすごいの?」

 

一緒に登校していた茅野も気になっていたのか尋ねる

 

「うちの学園祭はガチの商売合戦で有名なんだ」

 

収益そのものは寄付をされるが、その収益順にテストの時と同じく校内にデカデカと張り出される。

 

「競争心を掻き立てるのはやっぱりって感じだな」

 

「しかも、トップを取ったクラスは商業的な実績として、就活でもアピールできるんだ」

 

故に、必死に商売をする。プロ顔負けの店も少なくないとのことだ

 

「とはいえ、やっぱりE組は山の上で店をださなきゃなんねーんだな」

 

わかりきったことだが不利だ。わざわざ山の上に登ってまで行って、且つ金を払いたくなる店など、どう作ればいいかなどわからず途方に暮れるのが普通だ。

 

が、それはいままでの話。今のE組は普通とは言いづらい

 

「本校舎のやつら、また俺らが何かするかと思ってるな……まぁ、するんだがな」

 

雄二の言葉に2人は頷いた

 

「とりあえず、まずは情報だ。A組がなにをするかもだが、これまでの順位、あまり期待できないが過去のE組がなにをしてきたか調べてみよう。律、頼めるか?」

 

「風見さんならそう言うと思い、事前に調べておきました!」

 

「……頼もしいな」

 

最近の律の進化が加速してるような気を感じながらスマホに映る情報を見ていた

 

「やはり、上位は高校A組と中学A組がほぼ独占。E組はそもそもやる気が感じられないものばかりで………!」

 

「どうしたの雄二?」

 

雄二の表情が一瞬変わったのを見た渚はそのわけを問う

 

「いや、1度だけE組が上位5組中5位になってるのを見つけてな。それの情報をみよう思ったが…ないな」

 

「意図的に消された形跡がありました」

 

「たぶん理事長だろうね」

 

底辺のE組が上位に食い込んだ理由を調べて、後々のE組が真似をしないためと椚ヶ丘の校風を乱さない為だろう

 

「……役に立つ情報はなさそうだ。教室で改めて考えよう」

 

教室に着くとやはり皆、学園祭について話し合っていた。

 

「なぁ、殺せんせー。本校舎のやつら盛り上がってんだ。勝てなくてもE組は何かやるんじゃないかって」

 

「ふむ、君達はどうですか?この勝負、勝ち行くか行かないか?」

 

殺せんせーの問いに皆「勝つ!」と声を揃えて告げる

 

「なら決まりですね。今までもA組をライバルに勝負してきたことで、君達はより成長してきた。この戦いは暗殺と勉学以外のひとつ集大成となるでしょう」

 

これまでやってきた事をつぎ込む。そこに勝機があると殺せんせーは言う

 

「でもよぉ、勝つのは正直言って難しいぜ」

 

吉田の言う通り、難しい。使える予算も限られている。店系は300円イベント系は600円までと単価が決まっている。1kmの山道というハンデも大きい

 

「それに、A組……浅野の方は大手の食品及びファーストフード店を経営してる会社と、スポンサー契約をしたらしい」

 

「つまり、食品関係はタダで手に入るってことか?」

 

「そう。さらに、浅野の知り合いには芸能人やアイドルなんかもいて、客の方も顔の広さで呼べる。おまけに浅野以外の五英傑もそれなりに顔が広い」

 

集客率は確定している。死角はまったくない

 

「浅野君は正しい。必要なのはお得感です。安い予算でも、それ以上の価値を生み出せばいい」

 

と殺せんせーは言いつつ、どこからかどんぐりを出す

 

「E組における価値とは、例えばこれ。裏山にいくらでも落ちているどんぐり、今回は実が大きくアクの少ないマテバシイが最適ですね」

 

殺せんせーの指示の元、皆で山中から集めてきた。虫食いなどを取り除く、殻と渋皮を除いて、砕き、布袋に入れて1週間川の水に浸けておく

 

「これ、もしかして粉を作るのか?」

 

「お、気付きましたか風見君」

 

「昔読んだ本の中にあったからな。とはいえ、使えないとか思ってた」

 

元々は戦地においての食糧の調達に使えないかという考えから見ていたから、時間がかかるこれは使えないと雄二は今まで考えていた。

 

「覚えておいて、無駄な事はないですよ」

 

「だな」

 

1週間後、3日かけて天日干し、石臼で細かく砕いて粉にする

 

「この10日で、どんぐり粉でできるメニューを色々調べてきたが……どれも300円ではどうにもならない。なにを作る?」

 

さすがの雄二もこればかりはどうにもできない。

 

「客を呼べる粉物の食べ物といえば、ずばりラーメン‼︎」

 

それにいち早く反応したのは家がラーメン屋でいずれ自身の店を出そうと考えている村松だった。粉を指につけ、ペロっと舐め、舌の上で塊になって転がす

 

「なぁ、風見。おまえ調べる時にラーメンって考えたか?」

 

「粉物と言えば麺類だからな当然考えたが、調べてみてもそんなものは無かった。大抵がお菓子だがクッキーで正直パッとしないし、ほかに関してもダメだ。というか、どんぐり粉は片栗粉の代わりとして使うってのが多かった」

 

「だろうな。味も香りも確かに面白ぇけど、粘りが足りねー。滑らかな食感を出すなら、つなぎに大量の卵がいる。材料費がかかって肝心のスープに力が入らないぜ」

 

ラーメンは麺は大切だが味に決め手をかけるのはスープ。それがショボいなら意味がない

 

「ご安心ください。つなぎの事も考えています」

 

殺せんせーは少し移動して木に巻きつくツルを見つけた

 

「!これってまさか」

 

「ニュルフフフフそうですよ風見君。さすが山育ち」

 

殺せんせーはスコップで慎重に根本を掘りそのツルの根っこを掘り出した

 

「うおおおおおっ‼︎とろろ芋だ‼︎」

 

正式名称、自然薯。天然のものは数千円はする高級な食材だ。だが、この山にはどこにでも生えている。早速標的を捕えるごとき観察眼で探してきた

 

早速つなぎとして使ってみると香りも粘りも一段と良くなった

 

「俺、中学出たら自然薯掘りになろうかな〜」

 

「磯貝の将来設計がおかしな方に行こうとしてる⁉︎」

 

「販売の基盤と値段、それと客層、調べる事は多いな」

 

「でおまえはノリノリで進めてるんじゃねー‼︎」

 

片岡からハリセンで叩かれ、杉野からツッコミを受けつつも割と本気で考えていた雄二だった

 

麺の材料費はタダ。残りをスープにつぎ込める。そこで村松はラーメンからつけ麺にするように提言した。

 

「この食材には野生的香りがある。なら濃いつけ汁にしてスープ少なめのつけ麺の方が相性もいいし利益率も高くなる」

 

「殺せんせーから経営の勉強を受けてきた甲斐があったな」

 

「おう。今回はその成果を存分に活かしてやるぜ」

 

少しずつ完成形が見えてきた。だがラーメンだけでメニューは心許ない

 

「大丈夫ですそれも今皆さんが探してます」

 

殺せんせーが言っているとプールに行っていた寺坂と孝太郎、陽菜乃が戻ってきた。ザルには川魚と手が異様に長いエビが乗っている

 

「プールにわんさか住みついてたわ」

 

「ヤマメにイワナ、オイカワそれとテナガエビ。川魚はシンプルに塩焼き、燻製にするの良いかも。テナガエビは泥を吐かせて素揚げがおいしいよ」

 

「サイドメニューには控えめにとっても充分な量だ。元がタダだから激安でも元は取れる」

 

時期を越したプールは今水位を変えて魚を呼び込めるようにし、他の生物が住めるような高環境を作り出した

 

「おーい殺せんせー。言われた通り、適当に木の実とか取ってきたけど」

 

「私たちが知ってるクルミと柿それと栗。デザートにはもってこいのものだけ……こっちはちょっとわかんない。食べれんの?」

 

木村と桃花が山の中でいくつか木の実をとってきた知らないようなものが多い。桃花が見せた紫色のブドウのようなものだ

 

「これはヤマブドウだ。で、こっちがヤマゴボウ」

 

「雄二君知ってるの?というか、これ違う種類なんだ」

 

「ヤマブドウは甘いが酸味が強い。だから砂糖で微調整が必要だ。ヤマゴボウは有毒だ見分けるのに慣れないうちは専門の人に見てもらうのが良いが、殺せんせーはわかるか?」

 

「ええ、おまかせください。こんな時の為、山の植物についての知識はもう勉強してますので」

 

「俺も山育ちだからある程度は知識があるが、先生の方が知識がありそうだ」

 

「なら、これの鑑定もしてよ殺せんせー」

 

カルマがドサっとカゴいっぱいに入ったキノコを下ろして言う

 

「猛毒キノコが混ざってたら俺が預かるよ。責任もって捨てとくから」

 

「何に使うのカルマ君?」

「何に使うんだカルマ?」

 

渚と雄二は良い笑顔で毒キノコを預かると言うカルマに「絶対ウソだ」という確信をツッコミとしてだした

 

「これなんかいんじゃない?真っ赤でいかにも毒あるって感じで」

 

「……⁉︎」

 

「雄二?どうしたの?」

 

 

「麻子、こんなの意味あるのか?」

 

「山の食材の事は知っといて損はねぇ。非常時の食糧採取に必ず役に立つ」

 

「料理壊滅的なやつが何言ってんだ」(ボソっ)

 

「聞こえてんだよ!でも、キノコはやめとけ素人が手を出したら痛いめにあう。まぁ、ある程度は見た目でわかるがな。これとか見ろよ真っ赤でいかにもだろ?こんなのは…」

 

「麻子、それ」

 

雄二が言う前にキノコを蹴り飛ばした

 

「こうしてやればいい。結構スッキリするぞ」

 

「麻子、今のキノコ食べれるぞ。しかも高級なキノコ」

 

「はぁ⁉︎なんでおまえの方が私より詳しいんだよおかしいだろ⁉︎」

 

 

「カルマ、それは確かに毒で有名なテングダケ科だが、それは食べられるぞ」

 

「え、マジ?」

 

「風見君の言う通りです。しかも皇帝キノコとも言われるタマゴタケです。まだ人工栽培できてない希少な高級食材ですよ」

 

つまんないなぁという顔をするカルマ

 

「まぁ、毒キノコに見えても仕方ないカラーだ。だから大抵蹴り飛ばされる。昔、師匠が見つけた時もそうだったしな」

 

「猛毒のベニテングダケと似ているのも一因ですね。実際、日本ではつい最近まで毒キノコ扱いされてましたから」

 

「…殺せんせーはともかく、雄二もキノコ詳しいね」

 

「気になった事はとことん調べろって師匠に言われたからな」

 

「その師匠は知らなかったのに?」

 

カルマのツッコミに雄二は眼を逸らし「言ってやらないでくれ」と呟いていた

 

「しかし、そうそう食用のキノコなど見つかりません。カルマ君が取ってきたものは半分が毒キノコです。しかし、中にはとんでもないものありますこれとかね」

 

殺せんせーが取り出したものに皆、輝きを感じた

 

「おい、カルマ……あれがあったのか?」

 

「うん。俺もビックリしたよ。今回の採取品の目玉さ」

 

その食材の名は、マツタケ‼︎

 

「これだけの食材をタダ手に入れることができる……これは大きなアドバンテージです」

 

店で買いたいと思っても値段の関係で手が出せないものが当たり前のように見つけられるのはE組の校舎ならではだ

 

「これ、いけんじゃね?」

 

「これだけ食材が揃ってお得な値段って最高だよ!私なら遠くても行くよ」

 

食はまず食べたいと思わせることが大前提それはこの時点でできた

 

「山奥に隠れて誰もその威力に気付けない。君達と同じです。故に、このクラスの出し物にふさわしい」

 

隠し武器で戦う。まさに暗殺教室らしい

 

「菅谷君がポスター、三村君が特設ホームページを作りCMをして、岡島君の食品の写真と狭間さんの語学力でその説明でメニューを作り、更に興味を引き立てましょう」

 

すべき事、やるべき手段がわかり、それぞれ出来ることをしていく

 

 

最終決戦の期末テスト前の1つの前哨戦になるであろう学園祭戦争が、始まろうとしていた




学園祭はまた彼が出るし、次の期末テスト編の後の方がまだ楽だけどなぁ〜ままならないです

はやくバレンタイン編(仮)を書きたい


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客達の時間

見てわかると思いますが原作と少し時系列を変えてます


スンスンと匂いを嗅ぎつつ、警戒心をもって匂いの方へ向かう落ちている木の実の匂いは食欲をそそられる。それを口にした瞬間にガチャリという音がし、獣は捕らえられた。

 

「すまんな、命は繋ぐ」

 

捕らえられたその獣がその言葉を理解できたかはわからないが、それを聞いた後気絶させられた。

 

「さて、後は任せていいか?」

 

「おう。血抜きもしとくから安心しろ」

 

「今更だが、猟師の免許とか持ってるのか?」

 

「安心しろ。その辺は大丈夫だ」

 

「なら、助かる」

 

風見は捕らえた獣(イノシシ)を写真でしか見たことがないが修学旅行で世話になったレッドアイに渡した

 

「にしても、この山は色あいがいいな。まさか、そんなものまであるとは」

 

「これだけの広い山なら、あるとは思ってたよイノシシもいるしな」

 

それが入ったビニール袋を見せつつ雄二はそう言う

 

「ところで、あんた随分と俺に馴れ馴れしいな」

 

「いやなに、あんたが修学旅行の時に会ったあのスナイパーの教官なんだなって思ってな」

 

「エディに合ったのか?」

 

仕事が終わればそれまでという関係だから顔合わせもしていないと雄二は考えていたので多少驚く

 

「お、俺と会ったて情報を言ってないあたりはやっぱりプロだな。つっても、あっちはたぶん軍人なんだろうがな」

 

「いったい何があったんだ?」

 

「お前さんのタコ教師に聞いてみな」

 

「なるほど、だいたい理解した。それと、俺のこと知ってるってのはロヴロからか?」

 

「まぁな。それなりに金は取られたけど」

 

雄二には理解できない。なぜそこまでして自分の情報を手に入れたかったのかが

 

「今回の件に、9029が関わってるって噂程度の情報があってな。俺は先代の9029と、ちょっとした縁があるんだよ」

 

「麻子と?」

 

気になってどんな関係かと訪ねた

 

「あいつの命を獲る役割をおったのさ。……完敗したけどな」

 

レッドアイは「あの時の俺はまだまだだったからだがな」と言い訳みたいなことを言いつつ続ける

 

「よく死ななかったなあんた」

 

「生かされたんだよ。あの時の9029の本来の標的は別で、その護衛件の仕事だったからな。あの時の俺は、仕事がうまく行きすぎて調子に乗ってた。それを目を覚まさせられたよ。いつか決着つけたかったんだが」

 

「…………」

 

「すまん。こんな話するべきじゃなかったな」

 

レッドアイは「血抜きをしてくる」と去る。雄二はその背を少しだけ見つつ、すぐにE組の校舎へ戻った。

 

 

 

「あ、雄二君おかえり〜」

 

莉桜がテーブルの片付けをしながらむかえる

 

「ああ。木の実といいのがあった」

 

ビニール袋を渡し、莉桜はその中を見る

 

「こ、これってまさか」

 

「西洋松露、所謂トリュフだな」

 

「そんなものまであったの!この山に⁉︎」

 

「ああ。原と殺せんせーに頼んで、これで限定メニューが作れるか聞いてみよう」

 

任せてと莉桜と厨房へ向かう

 

「客足は、なかなか伸びないな。桃花が下で客引きしてるみたいだが」

 

「まぁ、可愛い女の子が宣伝しても、結局はここまで来たいって思わせる物がないとね〜」

 

莉桜は「でも」と指をさした方を雄二は見た。

 

「あいつら、たしか修学旅行の時の」

 

「あ、そうらしいね。本日2回目だね、来るのは」

 

「2回目?」

 

どういうことだと思っていると彼らにビッチ先生が近づき何か言っている。そうすると男達は食事のおいしさと美人に話しかけられた喜びで舞い上がり食べ終わるとものすごい勢いで下へ向かう

 

「ここはそういう店だったか?」

 

完全に貢ぎコース一直線になった彼らに少しだけ同情しながら雄二はつぶやくも莉桜は口笛を吹くだけである

 

「それでも、まだまだ客が足りないし、A組の方はイベントカフェで浅野君の友人のアイドルとかお笑い芸人が無償で出てるらしいよ」

 

「どんな交友関係だよ」

 

芸能人は、自分の芸を売る仕事。それがタダでやってくるなど本来ならあり得ない

 

「しかもマイナーな奴じゃなくて、大物かよ」

 

出演しているのが名の売れた者となれば尚更だ。

 

「こっちも負けてられないな。桃花に連絡をとる。それと菅谷に即席でポスターも作ってもらおう。ここで天然のトリュフを出してますって宣伝する。ちょっとは効果あるだろう」

 

「了解!」

 

雄二はとりあえずまずはこのトリュフをどうするかを原と村松、それと殺せんせーで考える

 

「トリュフラーメンはあるにはあるが、これは香りが強いからこのどんぐりつけ麺に合わないな」

 

「いっそそのまんま売るってのは?」

 

「いえ、一般家庭でトリュフを使う事はそうありません。買っても使いどころがなくて腐ってしまってはもったいない。それに、風見君がとってきた数にも限りがありますしね」

 

「今ある材料なら、それなりにいい出汁もできるし、やっぱり吸い物か」

 

「何にせよまずはどんな売り方するか考えてくれ。そうじゃないと描く物が浮かばない」

 

4人の議論に菅谷は言う。やるなら早い方がいいが悩む。

 

「取り込み中かい?」

 

とそこにレッドアイが血抜きを終えたイノシシとキジを持ってきた。

 

「レッドアイ!」

 

近くで皆の手伝いをしていた烏間が気づき向かう。

 

「死神にやられたと聞いていたが」

 

「一時は死線を彷徨ってたが、どうにかなった。若い分回復も早かったわ」

 

「というか、なぜここにいる!しかも、(それ)はなんだ⁉︎隠せ‼︎」

 

「平気平気。世界各国の狩猟免許持ってるから。つか、あいつから何にも聞いてないのか?」

 

雄二は「俺に指をさすな」と思っていると烏間はズイッと近付いてくる

 

「どういう事だ?」

 

「いや俺も、山で木の実とキノコの散策をしてたら偶然あったから、いっそのこと手伝ってもらおうかと」

 

烏間は頭を抱えて大きなため息をだす

 

「キジだ⁉︎これの肉にトリュフを包んで出そうよ」

 

「それとつけ麺のタレで焼き鳥もしよう」

 

「イノシシの方はすぐに出すのに生姜焼きに、明日に出す物としてチャーシューを作りましょう」

 

「よし、なら描く物は決まりだな」

 

「もしもし桃花か?新商品が出るんだが」

 

あっという間に用意をしていく。

 

「ポスターはできた!」

 

「俺が下まで持っていく」

 

菅谷の出来上がったポスターを受け取り、雄二は下へ降りていく。……道中にすごい勢いで駆け上がっていく帽子の男を見たが無視した。またビッチ先生の貢ぎ相手だろうと思ったからだ

 

「桃花、新しいポスターを持ってっきた」

 

「あ、それが例の?」

 

雄二はトリュフを使った料理がありますと書かれたポスターを立て掛ける

 

「これで人が集まればいいんだけどねー」

 

「わからないな、そこは」

 

「そういう時はちょっとは大丈夫とかいうべきじゃないの?」

 

声をかけられて見るとJBがそこにいた

 

「ハァイ、ユウジ〜」

 

「帰れ」

 

「ちょ、雄二君…」

 

「せっかく来た客に向かって随分なものね。悪い噂が広まるわよ」

 

「何しに来た?ヒマじゃないだろ」

 

心の底から「来んな」と思っていたのか雄二はだいぶご立派である

 

「様子見プラス客としてきたのよ。あ、足弱い方だから中服まで送ってね」

 

足腰が弱い人は中服まで送れるようにリアカーを付近に置いてあり、力担当の寺坂と吉田いるのだが、「いつでも行けるぜ」的な表情でサムズアップをしていた

 

「女の魅力(武器)を使ったなこのビッチ2号」

 

「失礼ね!普通に頼んだわよ‼︎」

 

「まぁまぁ、その辺にして。春寺さん改めて、いらっしゃいませ」

 

「うんうん。本当にいい子。雄二にはもったいない」

 

「嘘泣きしながら言うのやめろ」

 

ポスターを持ってくるだけだったので雄二は校舎へと戻る。中服からはJBと上がる

 

「あ、春寺さん!」

 

「こんにちは陽菜乃さん。いつも雄二がお世話になってるから、来ちゃった」

 

初めて会ったのが陽菜乃だったからか、姉妹のように仲が良い

 

「いい雰囲気が作れてるわね。あのシャチホコとか、いいじゃない」

 

「…………」

 

屋根に付けられたシャチホコは殺せんせーが入れるスペースがあり、今ちょうど入っていた。JBは気づいていてわざとそう言う。

 

ちなみに眼線でこんな会話がされていた

 

(おとなしくしてくれてありがとうございます。今度やったら、わかってますね?)

 

(ヒィぃぃぃぃ、わかりましたからぁ〜)

 

一方それとは別に話題もあった

 

「あ、風見、おかえり」

 

「ん?なんでまたその呼び名なんだ?」

 

「さっきまで南の島であった雄二くんとおんなじ名前のチャラ男いたんだ」

 

「あーあ、渚を女と勘違いして惚れた?…そうか」

 

「なにその【大丈夫、俺は否定しないよ】みたいな表情⁉︎そんな展開ないからね‼︎あと、もう僕が男だって告げたし!」

 

「もったいないよねーあのままコスプレの撮影会で金取れたのに」

 

「だから僕でどういう稼ぎをしようとしてるのカルマ君⁉︎」

 

そんなこんなでJBもさっそくラーメンを食べた

 

「これ、本当に美味しいわ!」

 

「そうかよ。食ったらさっさと帰れ」

 

「雄二、春寺さんのこと嫌いなの?」

 

「バイト先の上司でもあるからな。正直無理な仕事もさせられて困ってる」

 

「誤解されるような事言わないで」

 

渚は2人のやりとりを見てなんらかんだ言っていても仲が良いなと思っていた

 

「…あ、そうだ。どうせなら宣伝にひと役頼む」

 

「まぁ、そのくらいなら良いわよ」

 

「よし。岡島!」

 

「ここに!」

 

「いつのまに⁉︎」

 

渚の後ろからカメラを持って出てきた岡島は完全に気配を消していた。

 

「え、なにこれ?」

 

「お前はそのまま食べてれば良い」

 

「撮られながら食べるの⁉︎」

 

さまざまな理由故に断ろうとしたが既に岡島は数枚撮っていた。断ろうと思うが陽菜乃の「ありがとうございます」的な視線と協力すると言った手前断れない。さらに

 

「はい、そこで一言!」

 

「とっても美味しいわ!ってなにさせてなに撮ってるのよ!」

 

「あざとい笑顔…完璧だな。客の反応を動画で出せばそれなりに集客できるだろう」

 

「ビッチ先生なみのボンキュな美人なら尚更だな!」

 

結局特設ホームページにお客の反応の動画を出されて顔出しをしてしまい、上司からお叱りを受けるハメになったのは言うまでもない

 

「子供の感想とかも欲しいな」

 

「それなら、ちょうどいいみたいだよ。ほら」

 

渚の言っている方を見ると、わかばパークの園児と松方含めた職員が来ていた

 

「渚ーーー来てやったぞー‼︎」

 

真っ先に声を出してこたのはサクラという渚が勉強を見ていた女の子だ

 

「懐かれてるな」

 

「うん。ときどき勉強を教えにも行ってるからね」

 

「とりあえず、客数は稼げたな。松方さんも元気そうで何より。あの後はどうなんだ、園の方は?」

 

「あれ以来、職員もふえてな。桐原君と及川君。気立も良いし、良く働いてくれるし、お前たちなみに運動神経もいいから助かってるわ」

 

と指した方にはその新しい職員の2人の男がいた

 

「最初は日雇いのバイトだったんだけどここは働きやすくて、楽しいしいい感じだよ」

 

「まぁ、色々と難儀なことも多いけどな」

 

「お2人は、しりあいなんですか?」

 

「俺ら2人ともおんなじ会社に勤めててな。副業の方をそれぞれ本業にしたってこと」

 

その2人をJBと雄二はチラリと見て、2人も気付いたのか小さくお辞儀をした。

 

(あいつらが?)

 

(えぇ。つい最近うちを辞めていった職員)

 

楽しそうな表情を見ていると胸に穴が空いたような気がしたが、雄二は2人に話しかける

 

「楽しそうなのは何よりだな」

 

「「え、えぇ」」

 

「前の会社辞めたそうですけど、辛くないんですか?」

 

(雄二がそんなこと聞くなんて珍しい)

 

「正直、前の会社では色々とあって、でもそれが普通なんだって思ってたんだけど、本当の普通って多分わかってなかったんだ」

 

「あのまま働いてても、問題なかったかもしれないけど……子供達の顔見てたら、なんか、ちゃんと見てあげたいっていうか守りたいって思って」

 

彼らは国を守る者だった。故に、自分の事は2の次だった。だが、いざ自分達が日々守っていた者達と、面と向かって接した事で……

 

(本当にやりたい事が見つかったってところか)

 

彼らの人生はこれから大変なものとなる。日々監視があり、提出すべき報告は多いそれでもこの生き方を選んだ。選べた事が、雄二にはたまらなくうらやましかった

 

「ところで、ここは随分と色んな方々いるのですね」

 

「まぁ、な」

 

正直戻ってきた時から雄二もツッコミたかった。席のいくつかが殺せんせーを殺せなかった殺し屋達で埋まっていた。

 

(殺せんせーが呼んだんだろーが、壮観だな。というか、見る奴が見れば何事かと思うな)

「ただ呼ばれただけでは彼らは来ないよ」

 

といつに間にかロヴロが隣に立っていた

 

「おー忍者だ忍者だー」

 

「ばーか、外国の人だからスパイだよ!」

 

「おい、子供がいるんだから目立つなよ」

 

「フフフ、心配はいらない。そういうショーをしている者としてここにいるからな」

 

本当かよと心の中でツッコミを入れていると

 

「ひさしぶりね」

 

「ん」

 

あの時とほぼ同じ服装で違うのは仮面を付けておらず、代わりにサングラスをしていることだけのマーリンがいた

 

「ああ。南の島以来だな」

 

「あ、あの時の仮面さん!」

 

「あーなんか雄二君ボコったていう」

 

「誤解を招く発言をしないでくれ莉桜」

 

「マーリンよ。あと、誤解じゃなくて結構最初からマジだったじゃない」

 

曰く、彼女も殺せんせーに言われて来たそうだが

 

「ここにいる連中は、なんらかんだであなた達の能力を評価してるから来てるのよ。だから、諦めないでやりなさい。明日も私達は来るから、感謝してしてね」

 

「ありがとうございます!マーリンさん」

 

「まぁ、ちょっとした詫びでもあるから…ね」

 

彼女が南の島で雄二にしたことは知っている。そして、彼らはなんとなく雄二との関係も察している

 

「あ、私ちょっと姉さんに挨拶してき」

「必要ないわよ」

 

「い、イリーナ姉さん⁉︎……………イリーナ姉さんだよね?」

 

「なによ?」

 

「えぇと、服が随分普通だから」

 

「あんたも私をなんだと思ってんだ⁉︎」

 

最近になって変化した彼女の服装にマーリンは困惑していた。

 

「あんた、まだそんな服なの?もうちょっとおしゃれしなさい。明日もいるなら、この後一緒に買い出しに行きましょう。いいですか?ロヴロ師匠(せんせい)

 

「構わん」

 

師匠(せんせい)⁉︎」

 

「お前はもう少し女を磨いた方が仕事捗る。いい機会だ久々に色々教えてやれ、イリーナ。遠慮はいらん」

 

じゃああっちで計画立てましょうと引きずられていった

 

「いいのか?」

 

「あれで気を遣ったんだ」

 

雄二と一緒にいたいが、それで彼に辛い記憶を出して欲しくない。けど、少しは女として見れるようにはという複雑な思いをビッチ先生は汲み取ったのだ

 

「しかし、立地条件が悪い分どうにかできんものか……君のところからも、客を呼んではどうかね?」

 

「あいにく、こっちは普段は忙しいもので」

 

ロヴロがJBに声をかけたが本当の理由はあわよくば他の職員についても知りたいからだが、当然断った

 

「……まぁ、そんなことしなくても、どうにかなると思いますけどね」

 

スマホを見ながらJBは呟く。そこに映し出されたブログを見つつ




ちなみに
JBは常にE組の情報(特に殺せんせー関係)が出てないか調べる役目もあり、最後にブログを見ていたのはE組の情報が出ていますという報告がメールであったから。見たけど問題ないと報告をしてます


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縁の時間

5月中にもう1話出すつもりが忙しくできませんでした


学園祭2日目

 

「前日の売り上げは……この立地でこの売り上げはなかなかのもんだな」

 

「風見、もっと正直に言ってくれていいぜ」

 

登校中、雄二は売上を見つつ評価するがかなり甘い評価だ。周囲のクラスメイト達はそれに気付いており、菅谷が代表するように言う

 

「……あくまでもこの立地で学生がする商売としては、なかなかというだけで、他クラスの飲食店と比べてもそこまででもない。おまけにA組は既に高校の店を押さえてトップ。どう見積もっても追いつけないレベルだ」

 

「だよなぁ」

 

「ちなみに、俺等が追いつくには前日の10倍の客は最低でも必要だ」

 

無理すぎてため息が出てくる

 

「なにか、客が興味を引く物が必要だな」

 

「ここまでしてるのにこれ以上なにがあるんだよ」

 

そう言われてしまっては雄二もなにも言えない。菅谷のポスター、岡島と狭間の写真と解説付きのメニュー、三村の特設ホームページ。ここまでしているのだから昨日の客によるコミットもあれば前日よりも集客は見込めるが、あと一押し…何かが必要

 

「たとえば………………メディアとか?」

 

「そんなもん来るわけ……」

 

三村が言おうとしたが雄二が指を向けた方向を見ると撮影用のカメラや機材一式を持ったスタッフとマイクを持ったアナウンサーと思われる人物が急かしたてながらE組の校舎へ向かっている

 

雄二もどういうわけかわからず呆然としている。彼らを追いかけつつ校舎に向かうと早くから開店を待つ客がずらっと並んでいる。

 

「な、なんだこりゃ⁉︎」

 

「これ全部うちの開店待ちかよ」

 

「この時点で既に昨日の集客率は越えているな」

 

いったいなにが起こっているのかわかない。とそこに不破が駆けつけてきた。律と共に今回の情報発信および評価の検索をしてもらっていたのだ

 

「すごいよこれ‼︎ネットで口コミが爆発的に広がってる‼︎」

 

いつの時代も、もっとも人に宣伝するのは口コミだ。人から人への噂、評価、感想はそれだけでも意識をさせる。だが

 

「口コミの量が異常だ。椚ヶ丘の学祭が有名でも、ここまで、しかもこの立地の場所でここまで行くとは思えない」

 

コミットするのが一般人である以上、そこには必ず限界はある。故に、どれだけ魅力のある人物が、どれだけ影響力のある人物が口コミするかでも決まるが、ネットの評価は基本顔が見えない他人だ。それを信じて行動に移させるには至らない。

 

「ネットの中を少し潜って発信源を探しました。その結果、とあるブログに辿り着きました」

 

律が見せてくれたそのブログには既にE組の出し物とそこで販売している商品についての感想があり、アクセスカウントが伸びている

 

「法田ユウジ。今、1番勢いのあるグルメブロガーです」

 

「!」

 

「こいつ法田ユウジ…って、もしかして昨日渚が接待してた」

 

「言い方⁉︎でもそうだよ!こんなにすごいなんて」

 

別ブログで感想や評価を見ると批判はあるがそれは金持ちのボンボンである事のみで舌の確かさには折り紙付きなようでかなり信頼できるらしい。金持ちだからこそそれを利用して色々食い歩きして舌が肥えているのだろう

 

「ちょっと、早く着替えて手伝って!」

 

「申請出したから早く開店できるよ!その為には人手がいるんだから!」

 

「雄二君!急いで急いで!」

 

3人の女性から引っ張られる雄二をちょっと羨ましいなと思いながら見ていた男子達も既に着替えて準備していた生徒に促されて準備に取り掛かる

 

「よう!盛況だな」

 

「レッドアイ!手伝うのか?」

 

「依頼があってな。匿名で」

 

(たぶんJBだな)

 

先日彼女はできる限りの宣伝と応援をすると言っていたがこの事であろうと推測した。

 

「ま、お前んとこの上司だけど」

 

「言っていいのかそれ?まぁいいか…それで首尾は?」

 

「上々だ」

 

既にいくつかの材料を原達調理担当に渡しているらしい。ちなみに彼もブログに顔と免許証を載せているので信頼性のある商品となっている

 

「いいのか。顔見せして」

 

「この程度じゃ仕事に影響なんてないさ。それよりボーっとしてる暇あるのか?」

 

「開店します」という掛け声のもと、客が次々と座りだす。雄二も即座に客の対応に行動を変えた

 

そこから先は、皆必死だった。

 

「こちら、採取第1班!状況は‼︎」

 

【栗が切れそう!モンブランが想像以上に売れてる!】

 

「栗か…2班が近い筈だ、そちらに連絡する。それとさっきの追加のキノコ採取なんだが、タマゴダケを見つけた!かなり運がいいぞCMを要請してくれ!」

 

【了解!】

 

機動力を活かして注文が入るたびに採ってくる。豊富な山の幸はそれだけでも宣伝になる

 

 

「神崎、スープ追加のできたぞ!」

 

「うん!入れてくね」

 

続いて調理班に入り手伝いをする。生活力は0の師匠と過ごしていた雄二は逆に生活力を上げてここでも貢献できていた

 

「風見!麺の方は⁉︎」

 

「大丈夫だ今追加の材料が来た」

 

「少し多めに作っておいて正解だったね」

 

「ああ。……なんか昨日来た殺し屋が色々手伝ってくれたみたいだし」

 

殺し屋というのは意外と生活力があり、万に通じているので色々できる。

 

「おまけに客としても色々食ってくれるから助かるぜ」

 

「その分忙しいがな…追加のオーダー来たぞ!」

 

「チャーシューなくなりそう⁉︎」

 

「ラーメンそのものが美味いんだきっと売れる。だが、ちゃんとそれも言っとかないとな!」

 

連絡、調理、味見をテキパキとしていく

 

 

続いて今度はウェイターになって接客をする。ここでもフリーランニングで得た機動力でまるで忍者のように移動しているがそれもウケているらしく客の反応もいい

 

「またテレビ局だ。三村行ってくれ!」

 

「任された!」

 

テレビ局就職を考える彼にとっては自身を見せる絶好機会だ。機材の使い方や光の当て方をプロ並みに熟知しており、感謝と称賛をうけている

 

「で、かなり客が増えたが………リピーターも結構いるな」

 

「だね。主に貢ぎが多いけど」

 

渚が見ている方には強面の連中…昨日の高校生集団と殺し屋の面々だ。

 

「いつの時代も、男は単純だな」

 

「…それ、男の雄二が言って悲しくない?」

 

ツッコミをしていると新たな客が来る

 

「いらっしゃいま…雄二!」

 

「どうした?」

 

呼ばれて見るとそこには

 

「やぁ、今日も来たよ」

 

「………………ん」

 

ロヴロとその後ろに隠れようとしているがロヴロがさっとよけてその姿を見せるマーリン。昨日の南の島で見せたような姿でなく、フリルのついたスカートに胸元を隠しているがフィット感でボディラインを強調する服だ

 

「姉さんに言われて着たけど、ロヴロ師匠(せんせい)、これ意味ありますか?」

 

「言っただろう?女を磨けとその第一歩だ」

 

「顔見せていいんですかぁ⁉︎」

 

顔を隠したい彼女は少々困っていた

 

「似合ってるぞ。南の島と違いすぎてちょっと驚いた」

 

「‼︎あ、う、感謝は、するわ」

 

顔を真っ赤ににしてマーリンは言った

 

「はーい雄二くーん。ナンパはいいから仕事してよねー」

 

莉桜が額に青筋を立てて襟を引っ張りながらズルズルと雄二を引きずる

 

「ナンパはしてないが……というか、何をそんなに怒って…すまない」

 

怒っているんだと聞こうとしたが「ん?何か?」と青筋の入った笑顔で言ってきたのでこれ以上言ったら藪蛇と判断して即座に謝罪した

 

「えーとそれじゃあ、席にご案内します」

 

取り残された渚はロヴロとマーリンを案内した

 

 

「すみません、注文いいですか?」

 

「⁉︎は、ハイ(なんだこの男?気配を感じなかった…ユニフォームを着てるってことは、学生の何か大会か練習試合の後か?)」

 

注文を聞きつつそんな事を考える。実際はただ影が薄いのが理由なのだが

 

「それと、場所取りで先に来たので後からもう少し人数がきますけど、大丈夫ですか?」

 

「はい。人数を教えてください(まぁ、一般人みたいだな)」

 

その後後から来たチームメイト達と食べて行った。…内1人は全メニューを食って行った

 

「あの、シャチホコがどうかしましたか?」

 

「いえ、別に」

 

(この頭についてるのは…飾り、か。直接頭から生えているような)

 

その後もそのお客はシャチホコを見ている。雄二は殺せんせーの知り合いなのかと考えつつ接客をしていた。

 

(この客、見たらわかる。そっちの人間だ。殺せんせーを殺せなかった殺し屋なのか?後ろに立ったら嫌な予感がする。こいつの接客は俺がしよう)

 

そうして色々な客が来て売上はどんどん上がっていく。当然だが、在庫もなくなる。再び調理班に入った雄二はそれに気付いて奥田に声かけたが案の定だった

 

「大変です!どんぐり麺の在庫がもうすぐなくなります‼︎」

 

余分に作っていたのもかかわらず予想以上に売れて在庫切れを起こしていた

 

「でも、A組はそれ以上に稼いでるはず」

 

不破の言う通り、いまだに追いつけてはいない。だがサイドメニューは豊富にある残り時間をこれで稼ぐ事を原が提案する

 

「だがそれでも材料が足りなくなるな」

 

「もう少し山奥に行けば、まだ在庫は生えてる。風見、いけるか?」

 

「まぁ、いけるって言えば、な」

 

歯切れの悪い返事に声をかけた木村は困惑する。雄二は殺せんせーに声をかける

 

「殺せんせー、正直言ってA組に勝つなら山のルール(・・・・・)に反する。それでもいいか?」

 

「山の、ルール?」

 

「山で山菜などを採取する時の暗黙のルールだよ。あるからといって、全部取ることはしてはいけない。来年の芽の為にっていう」

 

陽菜乃が代弁して答える。雄二の言葉を聞く前から彼女もそれを考えていた。

 

「風見君と倉橋さんの言う通りです。これ以上採ると山の生態系を崩しかねない。ここいらで打ち止めとしましょう」

 

勝利を捨てる選択を取った。皆勝ちたい気持ちはあるが雄二が見せた表情と殺せんせーの言葉で理解していた

 

「植物も、鳥も、魚も、菌類も、節足動物も、哺乳類も…ありとあらゆる生物の行動が『縁』として恵みとなる。もう皆さんもこの学園祭で実感したいるのではないですか?」

 

今日来たお客達は、様々な縁があってこそ。それを教えたかったのだろう

 

「くっそ、勝ちたかったけどしかたねぇか」

 

「桃花、売り切れが近い。あと少し経ったら寺坂達と上に戻ってきてくれ。後片付けがあるからな」

 

【りょうかーい】

 

客がいなくなり、片付けを始めていると1人の女性が来た。桃花は売り切れの事を告げたがその人物を見て止まる

 

「あれって」

 

「…母さん」

 

渚の母親だった

 

「祝杯ように残してた山ぶどうのジュースがあったな。それ出すか…渚、接客しに行ってこい」

 

雄二はトンと背中を押して言うと渚はコクリと笑顔を見せた。母親と話す渚の表情は、以前と違い、柔らかだ

 

「一件落着ってやつか。烏間先生、このあいだの事は聞いてるか?」

 

「…あぁ。渚君の母親からな」

 

「何事もなくてよかったよ」

 

「過ぎた事です」

 

大事件になりかけた事をそれだけで終わらせる。本当はいけない事だが、雄二はなにもなかったとしてJBにも報告をしなかった

 

「ああ。校舎何事もなかったが…その後、彼女は…………俺のヅラの事は黙っておくって言ってたが、どういうことだ?」

 

キレた笑みで問う烏間に無表情で答える

 

「コイツが犯人です」

 

「ちょ、風見君⁉︎」

 

即座にに教室内での教師同士の追いかけっこという名の暗殺劇が開始された。

 

「殺せんせー、縁の事はについて言ってたけど…」

 

「烏間先生は、あのタコと関わったのが縁の尽きだね〜」

 

「ある意味ではいいコンビとも言えなくもないがな。片付けに影響が出ない程度で頼むぞ〜」

 

とピタリと烏間は止まる

 

「ところで風見君、これについて君は何か知っているか?」

 

とスマホに見せるのは烏間の写真だ。違うのは加工されて髪がなくなりハゲになったという事。面白半分で三村に作ってもらったもので後からJBにウケ狙いでメールしたもの

 

「…………」

 

「「「「「犯人はコイツです」」」」」

 

「「「「「コイツが依頼してました」」」」」

 

シュバと逃げる

 

「殺せんせー、先にやられてくれないか?」

 

「ぜっっっっっったい嫌ですぅぅぅ‼︎」

 

追いかけっこはしばらく続いた

 

 

 

その後、雄二はバイト先に来ていた。その事を話すとJBは腹を抱えて爆笑していた

 

「あー面白いわ。そこまでなるなんてね」

 

「やっぱり確信犯か」

 

どうにか片付けて逃げ切って来た雄二は恨みありの眼で睨むが全く効いてない

 

「ったく。殺し屋達に手伝い求めたくせして俺にはこれかよ」

 

不満を口にした瞬間

 

「なんのこと?」

 

「は?」

 

とぼけている…わけではない。本当に何を言っているのだという顔だ

 

「おまけじゃないなら、殺せんせーが?いや、違うな。そんな事一言も言ってなかった」

 

「その殺し屋達は、誰に言われてたか言ってた?」

 

急に笑いが止み、冷静な評価で話し出す

 

「匿名と言ってたな」

 

「匿名…ね」

 

その後、地下の教授に依頼して調べたそうだが何も得られるものはなく、更にこの件は一方的に打ち切られた

 




ちなみに
マーリンはその後岡島に写真を撮られていましたがロヴロが回収しました。帰る時も雄二を気にしつつやっぱりここに来たいという思いがありましたが我慢してます

ちなみに2
殺し屋達に依頼したのは言うまでもなく彼女。
ちなみに料金は秘密にネットで稼いだお金の一部


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