魔法少女リリカルなのは -転生者共を捕まえろ- (八坂 連也)
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序章
プロローグ


『神様が人に転生したっていう話ってあんまりないよな…』

そんな巫山戯た動機で出来たのがこんなお話




長い時を生きた。1000年の時は長かった。

 

俺の名は『藤之宮アレス』。これは人に転生した時の名で神界に戻った時は『闇の軍神アレス』と言う二つ名を持つ。

 

先ほどまでは【魔法先生ネギま!】の世界で吸血鬼の真祖『エヴァンジェリン』の双子の姉として生きていたのだ。

 

何を悲しくて女の子に転生されなきゃならないのか。

 

ちなみに、エヴァの姉として生きていたときの名は『アリス・マクダウェル』と言う名だった。

 

妹のエヴァは俺の配下の暗黒天使(ダークエンジェル)として神界で生きる事となった。

 

さて、これで暫くは神界でのんびりと過ごす事としよう。

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

開口一番に出たのは気の抜けた返事だった。

 

「誠に申し訳ないが、急遽依頼が来てしまってな」

 

「ったく。で? どの様な依頼ですか?」

 

目の前にいるのは俺の上司に当たるゼルディア様。

 

まあ、簡単に説明すると美神だ。後は想像に任せる。

 

「うむ、これまた他の世界なんだがな。見習いの神が転生者達をとある世界に送り込んでしまったらしい」

 

「……」

 

ツッコミ所が満載だ。

 

同じ神としてちょいと教育してやりたい。

 

「……で、まさかとは思いますが。転生するときに色々と能力を付けたとか言うんじゃないでしょうね?」

 

「よく分かったな。いわゆるチート能力をたっぷりと付けた奴らがだな……」

 

「お待ちください。確かに俺は相当の力を持ってますから大抵の奴らには負けませんが、能力次第では相性が悪くて勝てないのもいますよ?」

 

思い浮かべるのは全ての漫画の能力とか、全ての漫画の魔力、気とか身体能力が全力とか。

 

時を止める能力とかはっきり言って勝てる自信は無い。

 

「大丈夫だ。私が作ったこれなら勝てる」

 

そう言って渡して来たのは指輪だった。

 

「……何ですか? この指輪は?」

 

(ことわり)の指輪だ。どんな能力であろうと破る事は不可能の理を封じてある」

 

「ちなみに?」

 

「『前世に戻る』だ。結界を張ってこの指輪を使えばその内部に居る人物は強制的に前世の姿に戻される」

 

「ほぅ……」

 

思わず口が笑ってしまう。

 

確かにこれなら転生前の能力に戻される。

 

もし、前世が普通の人であるなら問題は無い。

 

俺なら……多分、アリスの姿になるのだろうが。

 

「で、全員の前世は?」

 

「貰ったリストでは全員ただの人だった。前世が我らの様に神だったとか英雄だったとか……みたいなヤツはいない」

 

「なるほど?」

 

俺はリストを受け取り、パラパラとめくる。

 

「…………ゼルディア様?」

 

「どうした?」

 

「……この人物達を転生させた見習い神は何を考えてたのですか?」

 

「……それは私も気にはなっていた。何故そんな人物ばかりチョイスしたのかは聞いていないが」

 

リストを見ると全員の備考欄には『少女偏愛(ロリコン)』もしくは『小児偏愛(ペドフィリア)』とどちらかが書かれていたからだ。

 

挙げ句の果てには『アニメヲタク』『女の子大好き』『シスコン』等々とも書かれている。

 

「ゼルディア様」

 

そう言って現れたのは金髪の美神。

 

俺の姉のアテナだった。

 

「あら? お帰りなさい、アレス」

 

「ただいま、姉さん。どうしたんだ?」

 

「ああ、先ほど手紙が届きました」

 

アテナはそう言って手紙をゼルディア様に渡す。

 

ゼルディア様は手紙を開けてマジマジと読み始めた。

 

「なるほどな。何故こんなちょいと危なそうな奴らばかりと思ったら……」

 

「思ったら?」

 

「その見習い神がその手の奴らの名を綴った名簿にうっかり神酒(ネクタル)をこぼしてな」

 

何となくだが、イヤな予感を感じる。

 

と言うか、酒を飲みながら仕事するなと。

 

「そしたらそいつらが全員事故で亡くなった。その事がばれて叱られると思った見習神は黙らせるのを条件に全員に希望する能力を付けて転生させたそうだ」

 

俺は目の前が真っ暗になった。

 

何というテンプレ的展開。

 

「何と言いましょうか……」

 

苦笑してるアテナ姉さん。

 

「で、転生した世界と言うのは?」

 

「全員、同じ世界だ。『魔法少女リリカルなのは』の世界らしい」

 

某吉本劇場よろしくこけたくなった。

 

はっきり言って全員ろくでもない奴らと言うのは分かった。

 

確かにあの世界の女の子達は全員可愛いし、綺麗なのが揃っている。

 

無印世界とA's世界なんかはヒロイン達は皆9歳と言うまさにロリコン共にとって天国としか言えないだろう。

 

「で? 今度の立場は? また女の子とか言いませんよね?」

 

「その点は安心しろ。今回は久しぶりに『藤之宮(ふじのみや)アレス』として転生して貰う」

 

「……分かりました」

 

「ごめんね、アレス。私も一緒に行きたいけど、追加依頼でね。その見習い神が更に名簿を隠し持っていたからそっちの世話にも行かなきゃならないの」

 

「ああ、分かったよ……姉さん。また暫く会えないけど」

 

「分かってるわよ。私達は不死の存在。また会えるんだから」

 

姉さんは俺の頬を撫でてから出ていった。

 

ちなみに、俺の身長は195㎝、姉さんの身長は175㎝だ。

 

 

 

 

 

 

 

旅立とうとしたらゼルディア様とエヴァがやって来る。

 

「どうかされましたか?」

 

「うむ、今回はエヴァを連れて行くがよい」

 

「は? はあ、分かりました……って、今回の立場は?」

 

いきなり初任務が俺とか。

 

まあ、前世からずっと一緒だったから構わないか。

 

だが、今回は俺は男として転生だからなぁ。

 

「お楽しみだ。転生してからの……な」

 

ちょっと待て。その妙な微笑みはイヤな予感しか感じないんですがね!

 

「もの凄くイヤな予感を感じるのですが?」

 

「大丈夫だ。許嫁とかそう言うのじゃなくて、相棒だよ」

 

「……相棒……ですか」

 

と言うことは…………デバイスで、ユニゾンデバイス辺りかもしれないな。

 

「よろしくお願いします、おね……じゃなくてお兄様」

 

「了解。こちらこそお願いする」

 

俺はそう言ってエヴァの頭を撫でた。

 

顔を赤くして微笑むエヴァ。

 

「それでは、行ってまいります」

 

俺とエヴァは扉をくぐって旅立った。

 

 




下っ端の辛いところです



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主人公設定

主人公の能力、外見など




主人公設定

 

 

名前 藤之宮アレス(CV.朴 璐美)

 

 

身長130㎝(9歳時)→135㎝(19歳時)

 

体重46㎏(9歳時)→96㎏(19歳時・身体に重力負荷をかけている為、骨密度と筋繊維が常人の数倍になっている)

 

 

外観

 

 ややつり目でやんちゃな少年といった感じの顔…だが、化粧をさせるときちんと女の子の顔に見える。ただし、どうやって見ても10~12歳くらいにしか見えない。

 

ちなみに童顔である事をからかうとキレる。

 

 真っ黒な髪で前髪の一部が金髪が混じってる。

 

 右目が蒼い瞳で左目が漆黒の瞳

 

 

 

 

能力

 

 

 

①闇の力を具現、収束出来る

 

いわゆる、『気』と呼ばれるモノ。

ただし、闇の力に特化しているので黒い気である。

具体的には気弾として発射、剣として具現、鎧として纏う事が出来る。

 

 

 

②身体に存在する7つのチャクラを回して戦闘力を上げる『念法』

 

第1チャクラを回せば無限に近い体力を発揮。以降は身体能力を倍化させる。

最高記録は1週間不眠不休で戦った事もある……が、後が凄く大変(3日3晩寝てしまう)だからあまりやりたがらない。

 

 

 

浄化の蒼水晶(スター・サファイア)

 

右目に宿る眼。分類は『神眼』に近い。幽霊・精霊等の存在を一発で見破る。どんなに隠密性が高い幽霊であろうと見ることが出来る。ON・OFF切り替え可能。

 

 

 

④魔法

 

前世のおかげで『魔法先生ネギま!』世界の魔法を使用可能。

得意属性は闇と炎。咸卦法も使用可能。

ただし、魔力総量はなのは達に比べたら少ない。(魔力総量Aランク程度)

始動キーはエヴァと同じで『リク・ラク・ラ・ラック・ライラック』

前世は吸血鬼の真祖(ハイディライト・ウォーカー)だったが、今回は人間の身体だから身体能力は落ちている……が、チートはチート。

 

 

 

⑤使用武器

 

大剣、双剣、槍、刀。一番得意なのは双剣。ちなみに徒手空拳も一番得意。

一応弓矢等の遠距離武器も使える。が、某赤い弓兵よりは速射性能は落ちる。ちなみに命中率は赤い弓兵と同等。

視認距離は2㎞。某赤い弓兵よりは短い。動体視力はライフルの弾が止まって見える位。

 

 

 

⑥奥義・二重身(ドッペルゲンガー)

 

魂を分割して分かれるいわゆる分身の術。最大12体まで可能。

制限時間は3日。3日経つか一定のダメージが分身体に蓄積されると強制的に本体に戻る。

 

 

 

少年偏愛者魅了(ショタコン・キラー)

 

18歳になっても半ズボン・ランドセルが似合う外観(身長135㎝きっかりで止まる)の為、合法ショタである。

 

 

 

困った事になのは・アリシア・フェイト・アリサ・すずか・はやての6人はショタコン属性が付与されてる。あとは…………分かるな?

 

ついでに桃子・プレシア・リンディにも付与されてる。

 

更にシグナム・シャマルにも付与されてる。

 

ちなみにユーノ・クロノ・ザフィーラには全く付与されていない。付与されてたら色々と困るし、作者も困る。

 




よくあるのが背が高く、イケメン仕様の主人公

そこをあえて子供みたいな外見にしてみましたw


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第1話 早速接触!

 
 とりあえずは出会いから


 

「うん……」

 

眩しい光が目に入る。

 

と同時に揺さぶられる身体。

 

どうやら車に乗っているみたいだ。

 

「お目覚めですか? アレス様」

 

目を開けて見ると助手席から覗き込む艶のある黒髪をした女性。

 

記憶を辿るとどうやらこの世界での母親の様だ。

 

「ああ……って。アレス様?」

 

「はい。本来ですとアテナ様の部下であるトオル様とナミ様が夫婦役だったのですが」

 

「ですが?」

 

「急遽用事が出来てしまい、私達が代わりにアレス様の両親役を務めさせて頂きます」

 

そう言う事か。折角久しぶりの親子生活だったのにな。

 

トオルと言ったのは前世の前世で俺の父親だった『藤之宮徹』。

 

ナミと言ったのは同じく前世の前世で母親だった『藤之宮奈美』。

 

2人は死後、アテナ姉さんの部下として天使に転生したのだ。

 

「そうか……。ってちょい待ち」

 

「ハイ?」

 

「……俺の記憶が間違って無ければ……ナオミとジン……じゃないのか?」

 

俺は母親の顔をジッと眺める。

 

黒い髪で前髪に一部、銀髪が混じっている。

 

「その通りでございますわよ? アレスちゃん?」

 

口元がにやけてるぞ。

 

「全く……誰かと思ったら。陣伯父さんと直美伯母さんか」

 

「コラ。それは前世の前世でのお話でしょ。今回は念願の母親なんだからね」

 

頬を膨らませてる直美伯母さん。いや、母さんだったな。

 

「はは、分かったよ、母さん」

 

その言葉を聞いて感動したのか、フルフルと震えていた。

 

「やっぱりアレスちゃんは可愛い……。今夜も添い寝ね!」

 

相も変わらずの少年偏愛(ショタコン)ぶりだった。

 

今回の父親役を務めるのは『藤之宮陣』。

 

前世の前世においては俺の伯父にあたり、その時の名字は若本だった。

 

ちなみに外観は。

 

……剣と魔法のファンタジー系の小説とかに出る強面冒険者を思い浮かべてくれたら分かるだろう。

 

左頬に大きな切り傷が後ろからでも確認出来る。

 

センターミラーから顔が見えるが、左目部分にも大きな切り傷の跡が。

 

まあ、あえてツッコミは入れないでおくが。

 

そして、今回の母親役を務めるのは『藤之宮直美』。同じく前世の前世においては伯母にあたり、奈美の双子の姉だったのだ。

 

まあ、見ての通り前世からずっと少年偏愛(ショタコン)なのだ。しかも俺限定の。

 

「ほらほら、もうすぐ着くぞ」

 

道の先に見えるのは……道場らしい建物がある和風の家。

 

もしや、あれは。

 

 

 

 

 

 

「ん~着いた~」

 

俺はワゴン車から降りて背伸びをする。背骨がポキポキと心地良い音が聞こえる。

 

「ん~」

 

同じ様に母さんも降りて背伸びをしていた。

 

ってちょっと待て。エラい若く見えるんだが?

 

「母さん?」

 

「何かしら?」

 

「無粋な事を聞くけど……今何歳だ?」

 

「あらあら、女の人に年齢を聞くなんて」

 

ハンカチを取り出して目に当ててる。明らかに嘘泣きとわかるのだが。

 

「し、仕方ないだろ……エラい若く見えるんだから」

 

「そうね。はっきり言うと21歳」

 

「ぶふぅ!」

 

激しく吹き出す俺。

 

待てよ?俺は今何歳だ?

 

身体をぺたぺた触って確認する。

 

「……うむ、5歳位か?」

 

「ご名答。俺は23歳で直美は21歳でアレスは5歳だ」

 

……18歳と16歳で結婚して産んでる計算なんだが。

 

「だって、アレスちゃんと歳が近い方が良いし……」

 

駄々をこねる今回の母親、直美であった。

 

家を訪ねてみると、張り紙がしてあった。

 

『ご用の方はこちらまでどうぞ』

 

そこに描かれていたのは『翠屋』と呼ばれる喫茶店の場所までの地図だった。

 

俺達は近くにある翠屋に行く。

 

 

 

 

 

時計を見ると丁度午後2時頃を指していた。

 

つまりは客がほとんど……いや、全くいなかった。

 

「いらっしゃいませー」

 

現れたのは栗色髪の若い女の人。

 

「すみません。今度、隣に引っ越してきた藤之宮陣と申します。で、こちらが家内の直美で……」

 

「よろしくお願いします」

 

「息子のアレスです」

 

「おねがいします」

 

俺と母さんは深々とお辞儀する。

 

「まあまあ……私は高町桃子と申します」

 

同じ様に深々とお辞儀する桃子さん。

 

記憶を辿ると……なるほど、確か……なのはのお母さんだったはず。

 

 

「たっだいま~」

「ただいま」

 

 

店のドアが開いて2人の男女が買い物袋を持って入ってくる。

 

ダークブラウン系の髪をした2人だ。

 

男はやや切れ長の目でいわゆるイケメン系の顔。

 

女は眼鏡をかけていて三つ編みの髪。

 

「あれ、お客さん?」

 

「ええ、隣に引っ越してきた藤之宮さんよ」

 

 

「よろしく」

「よろしくお願いします」

「よろしく~」

 

 

俺達は挨拶する。

 

「俺は高町恭也です」

 

「私は高町美由希です」

 

「ほほぉ、なかなか良いお子さんで……」

 

「ええ。後2人いるのですけど……」

 

……2人?

 

妙に引っかかる。確か……妹のなのはだけだったと思うのだが。

 

「なゆたとなのはは何処に?」

 

「ん~……多分、公園じゃないかしら?」

 

「多分。あの2人、凄く仲が良いし」

 

桃子達3人は口々にそう言ってる。

 

「それじゃあ、あたし達が散歩がてら探して来ましょうか? 陣は家の片づけね」

 

と口を開くのは母さん。

 

「はあ、分かったよ。あまり遅くならないでくれよ」

 

「良いんですか?」

 

「ええ。車の旅でしたからちょっと気分転換に。それで、2人のお子さんの特徴は?」

 

「はい、なゆたは恭也と同じ髪の色で、なのはは私と同じ栗色の髪です」

 

「分かりました。綺麗な栗色ですからすぐに分かると思いますよ」

 

「ありがとうございます」

 

丁度、近所の奥様達みたいな団体さんが入ってくる。

 

「それでは、行って来ます」

 

俺と母さんは翠屋を後にした。

 

 

 

 

「さて、迷子の子猫ちゃんを探しましょうか」

 

「別に迷子になってる訳じゃ……」

 

そう言って母さんは俺の手を繋いで歩き始める。

 

……そう言えば、母さんの前世の時は身長が160㎝位はあったよな。

 

今の俺の身長は……多分、110㎝位のハズ。

 

俺は母さんの顔を見る。

 

「どうしたの?」

 

「母さん、身長何㎝?」

 

「どうしたの? 突然」

 

「いや、確か前世の時は160㎝はあったと思ったから……」

 

「うふふ。よく覚えてるわね。そうよ、今は身長142㎝だったかな?」

 

「え? 何でまた……」

 

らき☆すたの泉こなたと同じ身長かい。

 

「だって、アレスちゃんの身長は……135㎝で止まるんでしょ?」

 

「うぐ……」

 

痛い所を突く。

 

そうなのだ。俺の前世の前世は小学校4年生辺りで身長が止まって135㎝ピッタリだったのだ。

 

おかげで中学と高校の時の制服は特注品で、背広も特注品だったのだ。

 

何せ一般のSサイズでもブカブカだったのだからおして知るべし。

 

「と言う訳で、今回は奈美と同じ位にしたのです」

 

胸を張ってる母さん。ちなみに胸はかなり大きい。

 

そして顔は童顔。マニアックなロリ巨乳と言うヤツである。

 

「はあ……たまには身長180㎝とか味わってみたいよ」

 

「駄目よ! そんなのアレスちゃんじゃなくなるわ!」

 

何ソレ。俺=低身長と言う方程式でも出来とるんかいな。

 

 

 

 

しばし散策すると小さな公園が見えてきた。

 

中を見ると丁度2人の子供が砂遊びしていた。

 

男の子がダークブラウン系の髪で女の子が栗色の髪。

 

多分、高町なゆたと高町なのはであろう。

 

「あ、いたいた」

 

そう言って俺と母さんは2人に近づく。

 

 

「ふぇ?」

「……誰だ?」

 

 

訝しげな表情で俺達を見るなゆたとなのはの2人。

 

「ごめんなさいね。私は藤之宮直美。高町なゆた君となのはちゃんね?」

 

 

「はい……」

「はい」

 

 

「今日、貴方達のお家の隣に引っ越して来たのよ」

 

「え?」

 

なゆたの顔が一瞬驚愕に染まる。

 

無論、俺はその顔を見逃す訳が無い。

 

「で、こちらが息子のアレス」

 

「初めまして。アレスだよ」

 

「うん、アレス君。よろしくね」

 

「よ……よろしく……」

 

満面の笑みのなのはと妙によそよそしいなゆた。

 

なのはは魔力がボチボチ流れ出ている。

 

制御の仕方を知ってるハズ無いから当たり前だ。

 

だが、なゆたの方は……まるで知っているかのように。きちんと制御してほとんどゼロに押さえている。

 

普通のヤツなら気付かないだろうが、俺の目を誤魔化すにはまだまだ鍛錬が足りない様だ。

 

「それじゃ、2人を見つけた事だし。アレスちゃん、帰りましょうか?」

 

「うん」

 

「2人ともどうする? 一緒に帰る?」

 

「う~ん……」

 

「なのは、帰ろうか」

 

悩むなのはをなゆたが促す。

 

「それじゃあ、帰りましょう」

 

こうして俺達は自宅に向けて帰宅する。

 

 

 

 

「それじゃあ、今晩は引っ越しソバを持って行くからね~」

 

「バイバイ」

 

俺と母さんは2人と別れる。

 

 

「バイバ~イ」

「さようなら」

 

 

その時、俺は僅かに魔力を放出する。

 

 

「!!」

 

 

なゆたの顔色が一瞬……僅かに変わった。

 

「どうしたの? なゆた?」

 

「いや、何でも無いよ……。何でも……」

 

気を取り直したなゆたは俺の方をやや睨む様に眺める。

 

「どうしたの?」

 

俺はとぼけて訪ねる。

 

「いや、ごめん……何でも……ない」

 

「変なの。それじゃアレス君、バイバ~イ」

 

そう言ってなゆたとなのはの2人は自宅に入って行った。

 

「どうだった?やっぱり……なゆたは『クロ』だった?」

 

母さんが訪ねて来る。

 

「ああ。間違いなく、転生者だ。俺の魔力に見事に反応した」

 

「そう。と言う事は……」

 

「間違いなく、近いウチに俺に勝負を仕掛けて来ると思う」

 

「ごめんなさいね。あたしと陣は能力を封印して転生してるからほとんど人間と変わらないの」

 

「良いよ。父さんと母さんを巻き込む訳に行かないし」

 

「ありがとう、アレスちゃん……」

 

そう言って母さんは頭を撫でてきた。

 

 

 

 

 

高町家に行って夕食を食べた後。

 

俺は風呂に入っていた。

 

母さんと。

 

「1人で入れるのに……」

 

「駄目よ。5歳と言ったらまだ一緒にお風呂に入るんだから」

 

満面の笑みで言い放つ母さん。

 

「分かったよ……分かったから……」

 

身体を洗った後、一緒に湯船に浸かる。

 

後ろから抱きかかえる様に入ってるから。

 

背中に凄く柔らかい感触が! 当たってるんですがね!

 

「うふふ~アレスちゃんと一緒~」

 

もの凄くご機嫌だった!

 

「はあ……」

 

ちなみに食事の時に聞いたのは高町家の大黒柱でもある士郎さんは大怪我で意識不明と言う事であった。

 

うむ、この点は予定通りだな。

 

 

 

 

部屋に帰る。

 

ちなみに、俺専用の部屋なんだが、母さんがルンルン気分で添い寝に来るのだ。

 

なんか、このまま高校生になってもこの状態が続きそうで怖いんだが。

 

「そう言えば……チャクラは何処まで回せるんだ?」

 

俺は身体に力を入れ、チャクラを回しみる。

 

「ふむ、第2チャクラ迄で第3チャクラがちょっとだけ回せる状態か」

 

せめて9歳頃までに第5チャクラか第6チャクラまで回せる様になっておかないとな。

 

「うん?」

 

本棚を見ると……妙な本が目に入った。

 

「ちょっと待てや」

 

俺はその本を本棚から取りだした。

 

真っ黒い表紙で十字に鎖で封印されてる、見るからに怪しい本だった。

 

「……何で……『夜天の書』がここにあるんだよ。これははやてのだろう」

 

古代(エンシェント)ベルカ式のロストギア。闇の書と呼ばれて幾多の人を不幸に追いやった壊れた魔導書。

 

「……む? そう言えば……アレはどちらかと言えばこげ茶色に近い色だったよな?」

 

頭に浮かぶのはこげ茶色で黄金の装飾が施された姿。

 

だが、目の前にある本は漆黒で所々に赤い装飾。

 

よく見ると……違う。

 

「そうか、これが今回の相棒……か」

 

俺は魔導書を撫でる。

 

もし、夜天の書と同じなら9歳の誕生日に起動するハズだ。

 

「後4年。待っててくれよな、エヴァ」

 

『はい、待ってますよ? お兄様』

 

不意にそんな声が聞こえた……様な気がした。

 

俺は本を本棚に戻した。

 

 

 




いきなり、なのはの双子として転生していますw


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第2話 まずは……1人目!

まず1人目はこんなもんでしょう


 

 

 

 

 

眠りについてから1時間余り。

 

突然、隣家からあふれ出す魔力。

 

どうやら獲物が網にかかったみたいだな。

 

それじゃ、行きますか。初戦だな!

 

俺は母さんを起こさない様に起きたつもりだったが。

 

「お仕事?」

 

しっかりと起きてました。

 

「ああ、隣の高町家から魔力があふれ出している」

 

黒いジーンズを履き、黒いシャツを着る。

 

「行ってらっしゃい」

 

「怪我、すんなよ?」

 

父さんまで起きていた。

 

「あはは……大丈夫だよ。それじゃ、行って来ます」

 

俺は玄関から外に出た。

 

 

 

 

 

-なゆた視点-

 

 

今日引っ越してあのガキ……。

 

間違いなく転生者だ。

 

今日別れるときに出した……あの魔力!

 

普通の子供があんな魔力をきちんと制御してたまるか!

 

おのれ……! なのはとイチャイチャする計画を邪魔されてたまるか!

 

なのはは俺のモノだ!

 

あの神から貰ったこの力があれば……あの程度のガキに負けるものか!

 

さあ、出て来いよ。真っ先に退場させてやるからよ!

 

俺は魔力を解放した。

 

すると隣の藤之宮家から出てくる気配。

 

ビンゴ!

 

やっぱりあのガキは転生者!

 

さあ、ぶち殺してやるよ! ククククク!

 

 

 

-なゆた視点・終了-

 

 

 

 

 

「やっぱりてめぇ……転生者だったか」

 

子供らしくない歪んだ笑みをうかべるなゆた。

 

「ああ。転生者……だな」

 

「来いよ。真っ先に退場させてやる」

 

「そうか。それは楽しみだな。で? 何処で戦るんだ?」

 

「今日出会った公園だ」

 

そう言って俺達は移動する。

 

 

 

 

 

閑散とした公園。

 

こんな時間に子供がいたらびっくりだ。

 

当然、公園内には猫1匹すらいなかった。

 

「さて、1つ聞きたい」

 

「何だ?」

 

「お前は、なのはをどうしたいんだ? 血が繋がってる……兄妹なんだろ?」

 

「決まってるだろ? なのはは俺のモノだ! ずっと一緒に……結婚もさせず、俺とずっと過ごすんだ!」

 

「そうか……。よく分かった。お前は……この世界にいてはいけない!」

 

「ほざけ! そうだな、助けが来ない様に、念入りに結界を張って」

 

周囲に現れる結界。今の俺では破る事は厳しそうだ。

 

さて、どんなモノか……お手並み拝見と行きましょうか。

 

俺は第1チャクラを起動して一気に全力回転まで上げる。

 

「さあ! 雑魚はさっさと……」

 

なゆたの周りに現れるのは。

 

剣、槍などの武具。しかも、1本1本が魔力を秘めた……魔剣、聖剣!

 

ほほぉ! 王の財宝(ゲード・オブ・バビロン)か!

 

やっぱり数々の二次小説で好んで使われる能力だよな!

 

「死ねぇ!!!」

 

一斉放出される宝具。数は30強か。

 

隙間無い様に見えるが。

 

「よく見ると、隙間があるんだよ」

 

俺はそう呟いて降り注ぐ剣や槍の間をかいくぐる。

 

「なっ!?」

 

なゆたの目が見開かれる。

 

そりゃそうだろう。高速で放たれる武具の弾丸を何の気無しにかいくぐるのだから。

 

それに手に闇の力で作った手甲を纏って、宝具を叩いて逸らしているのだから。

 

「な、何なんだてめぇ! あの高速の射撃の中を!」

 

「ふむ、確かに速いが。狙いが雑だな。もうちょっと練習した方が良い」

 

「おのれぇ! これならどうだ!」

 

更に現れる宝具。

 

数は一気に100本位はいったであろうか?

 

それが波状となって襲いかかってくる。

 

「さっきよりはまだマシになったな。だが……」

 

僅かな隙間をぬって俺はそれを全てかわす。

 

薄皮一枚切れる位の傷を負ってはいるが全く支障は無い。

 

「お? 今のはなかなか良かったぞ?」

 

目の前に飛んでくる剣を俺は難なくはじく。

 

「くそくそくそ! 何なんだよ! 何なんだ一体!」

 

なゆたは大声で叫びながら次々に空間から宝具を射出する。

 

もはや英雄王より凄いんじゃね? この攻撃。

 

マシンガンで撃つくらいの速さになってるぞ。

 

「な、何で当たらないんだよぉ! この化け物ぉ!」

 

「ああ、よく言われるな。それと、この程度の速さでは足りないぞ。これの3倍の速さにして貰わないとな」

 

そう言って俺は飛んで来る剣を右手で一瞬の内に掴み、なゆたに向かって投げる。

 

 

「!?」

 

 

なゆたの右頬をかすって飛んで行った。

 

どうやら反応出来なかったみたいだな。

 

そりゃそうだろう、音が後から飛んで行ったみたいだからな。

 

「ち、畜生! こうなったら!」

 

なゆたの手に握られたのは……円筒状の奇妙な……剣?

 

そして先の部分が回転を始める。

 

ああ、英雄王の『天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』を放つつもりか。

 

さすがにアレを避ける程の身体能力は無さそうだ。

 

無論、防げる程の盾は今は作れない。

 

「それじゃ、使いますか」

 

俺は左手の人差し指にはめられている指輪を掲げた。

 

「起動せよ。(ことわり)の指輪」

 

そう呟くと指輪から煙の様な蒸気が噴き出した。

 

「ぶわっ!」

 

むせかえるなゆた。

 

「ぐほっ!」

 

俺もむせかえしていた。こんな煙みたいな蒸気が噴き出すなんて聞いてないぞ、ゼルディア様!

 

「てめぇ! 何しやがった!」

 

なゆたの怒声が聞こえる。

 

視界がほとんどゼロに近くなった。

 

周りが全く見えない。

 

身体が……少しずつ変化していくのが分かった。

 

背が少しずつ伸びて行く。

 

そして、魔力と気が溢れてくる。

 

右手を後ろに回す。柔らかい髪が手に触れる。

 

間違いない。前世の姿、『アリス・マクダウェル』に戻ったのだ。

 

 

吸血鬼の真祖(ハイディライト・ウォーカー)

 

 

この状態なら竜種すら素手で殴り倒していたのだ。

 

ちなみに、服装は麻帆良学園女子中等部の制服だ。

 

少しずつ煙の様な蒸気が晴れて来る。

 

目の前に現れたのは10代後半位で身長が175㎝位の中肉中背の男。

 

眼鏡をかけていて容姿もごく普通の平均的な感じで服はブレザータイプの学生服。

 

「な、何しや……」

 

俺の姿を見てなゆたは呆然としていた。

 

「ようこそ」

 

「な、何で……エヴァンジェリンが……さっきのガキは!?」

 

「その前に、自分の姿を確認してみてはいかが?」

 

「な、何?」

 

目の前のなゆたは自分の身体を見て……叫んだ。

 

「な、なんじゃこりゃあ!? 何で前の姿に……! てめえ! 何しやがった!」

 

なゆたは右手を掲げる。王の財宝(ゲード・オブ・バビロン)を使おうとしてるけど。

 

「出ない!?」

 

「バカね。貴方は今は前世に戻ってるのよ? 前世の貴方は『普通の人間』だった事、忘れたの?」

 

「そ、そんな……バカな!」

 

なゆたはその場に座り込んだ。

 

「さて、アタシの名前は……『アリス・マクダウェル』。貴方が知ってるのは妹の方よ」

 

「な、何だと!? エヴァに姉が居ただと!? そんなの聞いたこと無いぞ!」

 

「そりゃそうでしょ。平行世界で存在していたのだから」

 

「そ、そんなのアリかよ!」

 

「アリなのよ。さて、貴方はこの世界に紛れ込んだ『存在してはいけない存在』。よって、一度死後の世界に戻って貰うわ」

 

「そ、そんな……巫山戯けんな! 俺はあの神に殺されたんだぞ!」

 

「まあ、その点に付いては謝らせて貰うわ。ごめんなさいね」

 

俺は頭を下げる。

 

「え?あ、ああ……」

 

「そうね、大人しく従ってくれるなら……それなりの優遇はさせて貰うわよ?」

 

「……た、例えば?」

 

「う~ん、転生先は貴方が元々いた世界がベースだけど」

 

 

ゴクリ。

 

 

なゆたは生唾を飲む。

 

「人生の伴侶が貴方の大好きな『高町なのは』ちゃん似の女の子になるんだけど?」

 

「乗ったぁ!!!」

 

0.5秒でなゆたは了承した。

 

「話が早くて助かるわ」

 

「ああ」

 

嬉しそうな笑顔を浮かべるなゆた。うむ、どう見てもアッチ的な想像をしてる顔にしか見えない。

 

「良かったわね。ここで拒否してたら……」

 

「してたら?」

 

「痛みが快楽になるような死に方を選んで貰ってたから」

 

俺はそう言って魔力を込めて犬歯が牙になるように伸ばす。

 

「うぉ!」

 

「そして、魂に刻みこんで来世では超ド級のM体質になってるわね。3回くらい輪廻転生したら元に戻ると思うけど?」

 

「そんな変態体質はイヤじゃ!」

 

なゆたは身体を抱えて震えていた。

 

「それじゃ、交渉成立と言う事で」

 

そう言って俺は天界に念話を飛ばす。

 

 

 

 

3分後に現れたのはこっちの天界の死神役の天使だった。

 

ちなみに女の姿であるが、大鎌を持っているのは仕様らしい。

 

男の要望をしっかりと伝えてから天使はなゆたを連れて天に昇って行こうとした所で。

 

「あ、高町家の人にはどうすれば良いのかしら?」

 

俺は天使に訪ねた。

 

「そうですね……ちょっと聞いてみます」

 

「あはは、楽しみだな~」

 

トリップしてるなゆた。これは放っておいても大丈夫だろう。

 

「返答が来ました。元々存在していなかった様に記憶等全てを書き換える……と」

 

「なるほど。分かったわ」

 

そう言うと今度こそ天使となゆたは天に昇って行った。

 

しばらくすると身体が縮み始める。

 

どうやら効力が切れて元の戻るみたいだ。

 

「さて、とりあえず1人目だな」

 

今回はあっさりと終わったが。

 

次はこんな風に終わるとは思いがたい。

 

「そう言えば、この世界を管理してる神は……あいつか」

 

思い出されるのは、2m近い身長で筋肉隆々のマッチョ神。

 

髪も眉毛も無い風貌で子供が見たら絶対泣き叫ぶレベル。

 

しかも、声は『ぶるぅああぁぁぁぁ!!』と吼えたらよく似合う声。

 

※世間では『若本ヴォイス』と呼ばれている。

 

更に服はブーメランパンツをギリギリに面積を減らした超危険なパンツ一丁。

 

ぶっちゃけ言うと真・恋姫無双に出てきた貂蝉の口を小さくして髪と眉を無くした顔なんだけどね。

 

だが、口調は相当な紳士的と言う始末。

 

「あいつ、多分恐育……いや、教育されるだろうな」

 

その神はそういったロリで性的欲望を満たす的思考は大嫌いなハズだから教育するだろう。

 

主に、肉体的言語を使用して。

 

「ま、転生したらバラ色人生……のハズだから大丈夫だろう、うん」

 

俺はそう呟いて家路についた。

 

 

 

 

 

「ただいま~」

 

玄関に入ると母さんが立っていた。

 

「お帰りなさい、アレスちゃん」

 

そう言って抱きついて来る。

 

「か、母さん待ってたの?」

 

「いいえ。何となく、帰ってきそうな感じがしたから3分位前に待機してたのよ」

 

ナニその恐ろしい勘。

 

「あはは……」

 

「さあ、寝ましょう」

 

そう言って母さんは俺の部屋に引っ張って行く。

 

そしてそのままベッドの中に入って眠りについた。

 

ちなみに、母さんは抱きつき癖が時々発動する。

 

そして今回は逃げられない様に抱きつかれたのであった。

 

 

 

 

 

「ふぅあぁ」

 

大きなあくびをしてベッドから起きる。

 

母さんは既に起きた後で、どうやら朝食の準備をしている様だ。

 

キッチンに行くと、父さんは既に仕事に出かけた後だった。

 

「あら、アレスちゃんおはよう」

 

「おはよ、母さん。ところで、今日から俺はどうすんの?」

 

「そりゃあ、幼稚園に行って貰うわよ? 既に連絡してあるからね」

 

そう言って朝食を出して来る。

 

「あ~、分かったよ」

 

ま、5歳児だし。うん、隣のなのはも一緒と言う事になるな。

 

朝食を済ませ、幼稚園の服に着替える。

 

 

 

 

 

家を出て隣に行くと丁度行くのであろうか、恭也さんと美由希さん、そしてなのはも出てきた。

 

「おはようございます」

 

「あら、アレス君おはよう」

 

「おはよ、アレスくん」

 

「おはよう……」

 

「なのはちゃんも幼稚園?」

 

「うん」

 

「そっか、アレス君となのはは同い年だもんね」

 

「はい」

 

「それじゃ、途中まで一緒に行こうか」

 

「うん」

 

俺達は一緒になって登校した。

 

幼稚園で登校と言うのはおかしい気がしないでもないが。

 

ちなみに、恭也さんは不思議そうな顔で俺の方をチラチラと見ていた。

 

おかしいな? 別に何もしてないんだけどな?

 

 

 

 

 

幼稚園も終わる。

 

バスで帰宅する。

 

「う~ん」

 

うなっているなのは。

 

「どうしたの?」

 

「うん、お家に帰っても……1人だし」

 

「そっか。お父さん居ないし、恭也お兄ちゃんも美由希お姉ちゃんもお店の手伝いだもんね」

 

「うん……」

 

「なら、一緒に遊ぼうよ」

 

「良いの?」

 

「良いよ。母さんに聞いたら、母さんも翠屋の手伝いするって。だから、なのはちゃんと一緒に遊んでなさいって」

 

「……うん。アレス君、遊ぼ!」

 

とりあえず、今日の所はなのはと遊ぶ事になった。

 

まあ、このまま士郎さんが寝たきりと言うのもなのはに良くは無いだろう。

 

父親の存在と言うのは結構大きいのだから。

 

だから今夜は病院に忍び込んで……治療する。

 

魔法を使って。

 

これで、4年先に起きる事件まで、ゆっくりと過ごそう。

 

 

 

 

 

 

昨日の様に真夜中に行くことにする。

 

ちなみに母さんが何処の病院に入院しているか聞いていてくれたのですぐに向かう事にする。

 

さすが母さん、俺の事を良く分かってらっしゃる。

 

「行ってらっしゃい」

 

そして今宵も母さんに見送られて家を出る。

 

 

 

 

 

病院に着いた。

 

先程救急車が来たから少し騒がしくなっている。

 

夜は看護師さんも少ないから救急の方に集中してるから都合が良い。

 

「よし」

 

俺は夜間専用口から進入する。

 

 

 

 

 

「さて、士郎さんの病室は……」

 

俺は病院の通路を歩く。

 

気配遮断はさんざんやって来たので一般人にばれる事は無い。

 

これってフツーに泥棒出来るんじゃね?と思うが。

 

目の前には『高町士郎様』と書かれたプレート。

 

ドアを開けて入る。

 

ピッ……ピッ……と規則正しく心音を計る音が聞こえる。

 

個室で士郎さんがベッドの上で眠っていた。

 

「ほぅ……これは手酷くやられたなぁ~」

 

俺は士郎さんの様子を見て呟いた。

 

体中に巻かれた包帯。

 

どう見ても重傷人にしか見えない。

 

「下手したら死んでたかもな」

 

その時、廊下の方から響く音。

 

俺は瞬時にベッドの下に潜り込む。

 

音は部屋の前を通って過ぎて行く。

 

「やれやれ、長居は無用だな」

 

俺はベッドの下から抜け出て立ち上がる。

 

「それじゃ、回復しましょうか。完全回復となると問題だから……そうだな。初級呪文で大丈夫だろ。もっとも、俺のは効力は中級以上だがな」

 

ポケットから指輪を取り出し、右手の人差し指に装着する。

 

ちなみに、これは前世で使っていた指輪でもある。サイズは自動で変わるように改造済み。

 

 

「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック 汝が為に(トゥイ・グラーティアー)ユピテル王の(ヨウィス・グラーティア)恩寵あれ(シット)治癒(クーラ)』」

 

 

すると士郎さんの身体が光輝き、顔色が良くなっていった。

 

「よし……これで大丈夫だろう」

 

「う~……う~ん」

 

まずい。今目を覚まして貰っては困る。

 

 

「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック 大気よ水よ(アーエール・エト・アクア)白霧となれ(ファクタ・ネブラ)この者に(フイク)一時の安息を(ソンヌム・ブレウエム)眠りの霧(ネブラ・ヒュプノーティカ)』」

 

 

空気中の水分を使った眠りの霧を士郎さんの顔に当てる。

 

「う……」

 

寝息を立てて士郎さんは眠りについた。

 

これなら明日の朝辺りに目を覚ますハズ。

 

さて、用も済ませたし、帰りますか。

 

俺は病院から抜け出し、速攻で家に着いた。

 

部屋に帰ると母さんが眠っていた。

 

……もはや何も言うまい。

 

俺は母さんの横に潜り込んだ。

 

眠っているにも関わらず、母さんは分かったのかすぐに抱きしめて来た。

 

そしてそのまま俺は眠りについた。

 

 

 

 

 

昨日と同じ様に目を覚まし。

 

昨日と同じ様に幼稚園に向かう。

 

なのはは昨日と同じ雰囲気を覆っていた。

 

ふむ、どうやら士郎さんが目を覚ましたと言う連絡はまだだったみたいだな。

 

多分、今日帰った時に聞くハズなんだが。

 

 

 

 

 

一緒にバスから降りる。

 

なのはと別れてから家に入ると今日は母さんが居た。

 

「おかえり、アレスちゃん」

 

「ただいま。聞くまでも無いけど、翠屋は?」

 

「ええ。ご主人様が目を覚ましたって事で臨時休業」

 

「そっか」

 

「凄く嬉しそうにしてたわよ、桃子さん」

 

「そりゃ良かった」

 

「お疲れ様、アレスちゃん」

 

「はは、大した事はしてないよ?」

 

「嘘ばっかり。アレスちゃんの魔法のおかげよ?」

 

「きっかけだよ。俺の魔法が無くても士郎さんは回復していた」

 

「ええ。でも、アレスちゃんのおかげで早く回復して、みんなが笑顔になってる。違う?」

 

「まあ、そうだけど……」

 

「それじゃ、夕飯の準備ね」

 

母さんはそう言うと立ち上がった。

 

さて、俺は部屋に戻るとするか。

 

 

 

 

部屋に帰って窓を開ける。

 

隣の家から凄い勢いで飛び出して行く人物。

 

「やれやれ。美由希さんも結構お転婆なのかな?」

 

猛スピードで病院に向かって走って行く美由希さん。

 

そして、なのはを連れて。

 

「にゃ~! お姉ちゃんどうしたのぉ!?」

 

「良いから! 黙ってお姉ちゃんに着いて来なさい!!」

 

……なのはの肩が外れない様に祈っておこう。

 

 

 

 

それから1週間。

 

翠屋で開かれる全快祝い。

 

士郎さんはあれから1週間で退院して高町家に帰ってきた。

 

そして、藤之宮家一同も招待された。

 

「初めまして、藤之宮アレスです。よろしくお願いします」

 

俺は士郎さんに挨拶した。

 

「はは、初めまして。なのはの父、高町士郎だよ」

 

そう言って士郎さんは頭を撫でてきた。

 

「アレス君、こっちに来て~」

 

なのはの明るい声が聞こえる。

 

やっぱり、早く治して良かったな。

 

あの体験があったから……彼女のあり方がああなったのかも、知れないな。

 

「うん。士郎おじさん、それじゃ……」

 

「ああ、行っておいで」

 

俺は士郎さんの所から離れ、なのはの元に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

-士郎視点-

 

 

「とーさん」

 

「ん?」

 

呼んで来たのは恭也だった。

 

「とーさんは……気にならないか?」

 

恭也の視線は……なのはと遊ぶアレス君だった。

 

「ひょっとして、あの子の歩き方……かい?」

 

「やっぱり、とーさんも気付いてたか…」

 

そうなのだ。私も少し気になったのは、アレス君の歩き方。

 

まあ、前髪に一部金髪が混じってたり、右目が蒼いと言う特徴も気にはなるが。

 

だが、それを差し引いても、とても5歳児とは思えない。

 

長年、武術をやってきた……そんな達人と思える様な歩き方だった。

 

「俺は結構同級生とか街中で子供を見てきたが、あんな歩き方をする子供は1人もいなかった……」

 

恭也が呟く様に言う。そうだろう。私も長年生きて来たが、あんな歩き方をする子供は見たこと無い。

 

「だろうな。私も、恭也と同じだ。初めて見た」

 

「とーさん……どうだろう? もし、あの子が『御神』の技を身に着けたとしたら?」

 

「……間違いなく私を超えるだろう。恭也は?」

 

「はは、俺も同じ意見だよ、とーさん」

 

「そうか。どうだ? あの子なら……なのはとは?」

 

「ああ。問題無い。下手な男より……よほど良いと思う」

 

「私も同じ意見だ。あの子なら、なのはを任せても良いかも知れん」

 

「分かった。とーさんがそう言うなら任せてみよう」

 

そう言うと恭也は立ち上がって桃子の方に向かって行った。

 

なのはは良い伴侶を見つけたのかも知れないな。

 

 

 

-士郎視点・終了-

 

 

 

 

 

……?

 

何だろう?

 

変なフラグが立った様な気が。

 

まあ、良いや。とりあえずは小学3年生迄は大きな事件は起きないだろう。

 

祝いはかなり遅くまで繰り広げられて。

 

俺となのは眠くなっていた。

 

「う……ん……」

 

「ね、眠い……」

 

「あらあら……」

 

「さすがにこの時間はもう寝る時間よ」

 

母さんと桃子さんの声が子守歌の様に聞こえる。

 

「それじゃ、アレスちゃんを連れて……」

 

「……直美さん?」

 

「ん? どうしました? 桃子さん?」

 

「ごにょごにょ……」

 

「なるほど。分かりました」

 

何か……妙な予感を感じないでもないが……眠気に勝てない。

 

俺は母さんに抱きかかえられて意識を失っていった。

 

 

 

 

 

チュン……チュン……。

 

雀の鳴く声が聞こえる。

 

そう言えば、昨日は士郎さん全快パーティーしてたんだよな。

 

そして、母さんに抱きかかえられてベッドに入った。

 

入ったのは良いけど、何で……栗色の髪が……見えるんだ?

 

首を左に向けるとスースーと寝息を立てて眠ってるなのはの姿。

 

意味が分からないんだが!

 

そしてなのはは絶賛俺にしっかりと抱きついて離れないんだが!

 

その後、なのはは目を覚まして『ふえぇぇぇぇぇぇぇっ!?』と大声を上げていたのは言うまでも無かった。

 

 

 

 

 

 

朝食後、なのはが隣に帰った後、母さんに聞いてみた。

 

「桃子さんが、『なのはあげるから……アレスちゃんの母親にもなりたい』って」

 

「意味が分からないんだが……」

 

「多分、あたしと同じ理由?」

 

母さんと同じ……だと? もしや、桃子さんにも少年偏愛(ショタコン)の疑いがあるのか!?

 

将来に色々と不安を覚えるが、今はどうしようも無い。

 

とりあえず、4年後に起こる事件までは平穏なんだ。

 

ゆっくりと、過ごさせてもらうぜ。

 

 

 




桃子さんェ…


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無印編
第3話 小学3年生になりました。いよいよ、事件が起こる……ハズ?


いよいよ無印編に突入です


 

 

 

 

 

みんな、こんにちわ

 

藤之宮アレスだぜ。

 

あれから4年の月日が流れて……明日で!

 

ようやく9歳になるんだぜ?

 

毎日、勉強はまあ、適当に済ませて鍛錬の毎日!

 

目標である第5チャクラまで回せる様になった。

 

これなら能力が5倍あげる事が出来るから戦いが楽になる。

 

もっとも、身体がまだ出来てないから無理は禁物だがね。

 

さて、この4年間で起きた事をお知らせしよう。

 

 

 

 

 

まずは俺。

 

小学校に上がったら何故か、高町家で修業をする事となった。

 

一体、母さんと士郎さんとどんなやりとりがあったのか知らないが、ともかく修業する事になったのだ。

 

と言っても身内にしか高町家の技を教えないらしいので。

 

身体作りと剣術の基礎をやっている。

 

ちなみに、俺が徒手空拳時に使用しているのは『古流武術綾野式』と言う……まあ、マイナーな技なのだが。

 

ぶっちゃけ言うとどっかで見た様な技が沢山ある、とだけ言っておこう。

 

むろん、母さんから習っている……と言う事なので、多分これが高町家で修業するフラグが立ったに違いあるまい。

 

なのはも参加しているので、とりあえず運動音痴は治っている。

 

普通の運動神経にランクアップしている。

 

そして困った事に、母さんが『念法』をうっかり……いや、確信犯的にばらしてしまい。

 

ソレを聞いた士郎さんと恭也さんはダボハゼのごとく食い付いて来た。

 

その後、美由希さんも食い付いて来た。

 

と言う訳で、士郎さんは始めるには遅い年齢だった為に半年位前にやっと第1チャクラを回せる様になった。

 

恭也さんが第3チャクラ、美由希さんは何と第4チャクラ。

 

更に言えばなのはも何と第1チャクラを回せる様になっていた!

 

ぬぅはぁ! 『高町一族』から『TAKAMACHI一族』に進化してしまった!

 

……なのはに気を魔力に変換するアイテム渡したら。

 

魔力が尽きる事のない極悪砲台が完成してしまうんだが!

 

 

 

 

小学1年で『アリサ=バニングス』と『月村すずか』と出会った。

 

出会ったのは良いが、これまた2人とも双子の兄が居たのだ!

 

当然の事、2人は転生者だった。

 

で、聞くと前世では2人とも双子の兄弟で。

 

兄がアリサ派で弟がすずか派。

 

無論、なゆたと同じ様に光源氏計画を目論んでいたので戦うことに。

 

能力については兄がドラクエ呪文全部、弟がFFの呪文全部と言う仕様。

 

勿論、魔力は無限と来たもんだ。

 

もっとも、2人とも格闘術に関しては全く能力を貰ってなかったらしく。

 

俺が呪文全てを避けるものだから。

 

3時間に及ぶ戦いはあいつらの根負け。

 

そりゃ、ずっと避けられるし、体力が尽きる気配が全くしないから、精神的に参ってくるよな。

 

と言う訳で、前のなゆたの様に優遇条件を出したらこれまたあっさりと了承。

 

善は急げと言うことで2人もこの世界から姿を消して違う世界に転生して貰った事であろう。

 

まあ、マッチョ神に肉体的教育をたっぷりと受けてから……だろうが。

 

 

 

 

 

出会った時も原作に似たような感じではあったが、今回は俺が穏便に済ませてる。

 

アリサのデコにデコピンをしただけ。

 

尤も、『何であんたのデコピンは頭がグラグラするのよ!』と咆吼されたが。

 

ちなみにすずかは俺の顔を見て真っ赤になっていた。

 

まさか、俺の闇の力に気付いているのかも。

 

大抵のヤツには気付かれないが、やはり闇の力に近い種族ほど気になるのかもしれない。

 

その後、アリサとすずかとも友達となる。

 

私立聖祥学園初等部三大美女をいつもはべらせてる憎いヤツと認識されてるが、俺にはどこ吹く風状態である。

 

 

 

 

 

 

 

と言う事で俺は自室のベッドの上であぐらをかいて待機している。

 

何故かって?

 

明日は4月4日。つまりは9歳になる誕生日で、多分この夜天の書もどきが起動するからなのだ!

 

時間は午後11時55分。後5分で4月4日になる。

 

ちなみに母さんは今晩だけ父さんの隣のベッドでお休みだ。

 

って言うか、本来の寝床に戻っただけなのだが。

 

確か、はやての時も誕生日の0時ジャストに起動して守護騎士達を召喚したんだ。

 

待てよ? この書にも守護騎士達いるのかな?

 

でも、ゼルディア様の話だと相棒はエヴァだけって言ってたしな。

 

という事は管理者がエヴァと言うことであろう。

 

「さて、後30秒だ……」

 

俺は時計を見ながら今か今かと待っていた。

 

「5、4、3、2、1……」

 

時計の針が0の位置で全て並ぶ。

 

「0」

 

その時、本棚から魔力が溢れ出す。

 

鎖で封印された本が浮かび、脈動する。

 

そして鎖が千切れ飛び、本は開いてページがめくれる。

 

速い速度でめくれるページ。

 

【封印を解除します】

 

……見たところドイツ語に似た言語が書いてある。

 

『グラーフアイゼン』『レヴァンティン』『レーヴァテイン』『ゲイ・ボルグ』『グラム』等々……

 

何だこれは?

 

武器の名前ばかり書かれている?

 

確か夜天の魔導書は魔法を記録する為に作成されたデバイスだったはず。

 

それが、武器の名前ばかりとは……もしや、これは古代ベルカに伝われた武器のデバイスを記録した魔導書?

 

そして本はバタンという音を立てて閉じて俺の前に浮かんで来る。

 

真紅に輝く十字の紋章。

 

 

 

起動(アンファング)

 

 

 

声が響き、俺の胸から黒く輝く玉。

 

ああ、リンカーコアか。

 

そして魔法陣が現れて……俺のリンカーコアと合体して光り輝く。

 

「くっ!」

 

俺は腕で目を覆った。

 

数秒経って俺は前を見た。

 

「『武神の魔導書』、起動しました。私は武神の魔導書の管制人格です」

 

目の前に現れたのは、黒い服を着て目をつむっている金髪の少女。

 

見た目10歳位の小柄な少女。

 

「ああ」

 

俺はベッドから立ち上がった。

 

「お久しぶりです、お兄様?」

 

少女は目を開けて立ち上がった。

 

右目は俺と同じ蒼色、左目は藍色の瞳が見える。

 

「久しぶりだな、エヴァ?」

 

「ホント、久しぶりです。ゼルディア様も言ってくだされば良いのに。100年以上は待たされましたわ」

 

そうか。古代(エンシェント)ベルカと言えば結構昔の話だな。その間、エヴァはずっと待っていたのか。

 

「ゼルディア様は意外とテキトーな所があるからな」

 

「そうですの?」

 

「ああ、そうなんだ」

 

「でも、ようやくお兄様とお会い出来ました♪」

 

そう言ってエヴァは俺に抱きついて口づけを交わす。

 

「んん……」

 

30秒位の交わりの後、エヴァは口を離した。

 

「いきなりだな?」

 

「てへへ。待ち切れませんでした」

 

舌をちょっと出して笑うエヴァ。

 

ちなみに俺とエヴァの身長はほとんど一緒である。

 

「ソレで、名前は? 前と同じで『エヴァンジェリン』で良いのか?」

 

「ハイ。それで良いですよ」

 

「了解。これからよろしくな、エヴァ」

 

俺はそう言ってエヴァの頬を撫でた。

 

「こちらこそ、よろしくお願いします。お兄様」

 

頬を真っ赤にして俺の目を見つめるエヴァであった。

 

 

 

 

 

 

「さて、粗方の予想は付いてるが……『武神の魔導書』とは?」

 

ベッドの上で正座しているエヴァに聞く。

 

「ハイ、古代ベルカ時代に作られた魔導書です。当時の騎士達が使用していた武器の記録を残す為に作られました」

 

「やっぱり……。レヴァンティンやグラーフアイゼンの名前が載ってたからなぁ」

 

「さすがお兄様。あの速い速度でめくれるページを読まれましたか」

 

「まあ、粗方だが。で、スペックは?」

 

「同じです。私の姉妹機の夜天の魔導書の守護騎士、『烈火の将』と『鉄槌の騎士』が持つデバイスと全く同じデータが入っています」

 

「なるほど」

 

これはこれで面白そうだな。同じ武器で戦うって言うのも良い鍛錬になりそうだ。

 

「それで、登録とかって出来るの?」

 

「ええ、出来ますよ。まだ半分位の空き容量が残ってますから」

 

「ほう」

 

これなら小太刀二刀も記録出来るな。今度データを作成しておこう。

 

「それで、ユニゾンデバイスなんだよな?」

 

「ハイ。お兄様とユニゾンしたら……多分、性別はそのままで前世の姿に戻るかと」

 

「……なんですと?」

 

今、恐ろしい事を聞いた様な。

 

アリスの姿で性別はそのままだと?

 

……男の娘かよ!

 

これはあまりユニゾンはしない方向で話を進めていこうか。うん、そうしよう。

 

「まあ、ユニゾンはあまりしない方向で」

 

「分かりました」

 

「それで、エヴァ自身の方は?」

 

「私は前世のままです。吸血鬼の真祖と同等の力と再生力で魔法もそのまま」

 

「おぅ……」

 

何と言うチート。下手な魔導師が来ても余裕で撃退出来るな。

 

「あと、血は吸いませんから」

 

「了解。それじゃあ……後は追々やっていくとして、明日の朝は母さんに紹介だな」

 

「バラして大丈夫ですか?」

 

「大丈夫。母さんも父さんもアテナ姉さんの部下やってるから」

 

「それなら大丈夫ですね」

 

「それで、家に居る時はその姿で大丈夫だけど、外に出る時は待機モードで」

 

「分かりました。ネックレス形態になりますから、お兄様の首にかけて下さい♪」

 

「ん、分かった」

 

そう言って俺は布団に潜る。

 

そしてエヴァも何事も無かった様に俺の隣に潜って抱きついて来る。

 

「……全く、エヴァは甘えん坊さんだな」

 

「仕方無いじゃないですか! やっとお兄様と一緒に眠れるんですから!」

 

顔を真っ赤にしてるエヴァ。

 

「分かったよ。それじゃお休み、エヴァ」

 

「もう、お兄様の意地悪」

 

と言いつつエヴァは抱きしめる力を少し強めた。

 

身体に暖かさが広がってくる。

 

そして俺はそのまま眠りについた。

 

 

 

 

 

 

学校が始まって2週間。

 

その間は何事も無く過ごしていたが。

 

とうとう、始まりのフラグが立った。

 

「……ユーノ」

 

起き抜けに言った言葉。

 

まあ、数々の小説等で『淫獣』扱いされてる可哀想な人。

 

夢の中で怪物と戦って、力尽きて倒れ、オコジョ……じゃなくてフェレットの姿になっていた。

 

オコジョだと色々な問題があるならな!

 

アレこそホントの淫獣だし。

 

「おはようございます、お兄様」

 

隣からゴソゴソと現れるのはエヴァだった。

 

「おはよう、エヴァ」

 

そう言ってエヴァの頭を撫でる。

 

「えへへ……」

 

顔が緩みまくってるエヴァ。

 

「さて、今日から始まるぞ」

 

「え? ああ、なのはちゃんとユーノ君が出会うんですね?」

 

「ああ。とりあえず、下校時に出会うハズだからこっそり後をつけて様子を伺うよ」

 

「分かりました、それでは今日からいよいよ行動開始ですね」

 

「ああ。デビュー戦だ」

 

俺はベッドから起きてキッチンに向かった。

 

そして、いつもの様に学校に向かう。

 

 

 

 

 

昼休み。

 

いつもの様に俺はなのは、アリサ、すずかの3人と昼食を食べていた。

 

ちなみに場所は屋上でピクニックみたいにシートを張ってその上で食べてるが。

 

周りには嫉妬の視線を浴びせてくる男子生徒がいるが、その程度の嫉妬目線では俺にダメージなぞ与えられぬ!

 

「将来かぁ……」

 

そう呟いてタコさんウインナーをほおばるなのは。

 

その顔は少し思い悩んでいる。

 

「アレス君とアリサちゃんとすずかちゃんはもう結構決まってるんだよね?」

 

「ウチはお父さんもお母さんも会社経営だし、一杯勉強してちゃんと跡を継がなきゃ……だけど?」

 

とアリサはそう言っておにぎりをかじる。

 

「私は機械系が好きだから、工学系で専門職が良いな……と思ってるけど」

 

すずかはそう言ってご飯を食べる。

 

「で、アンタはどうなのよ、アレス?」

 

アリサがやや睨む様な目で俺を見る。

 

「俺か? 俺はまだな~んにも考えてない」

 

そう言って弁当の唐揚げをほおばる。む、これはエヴァがよく作った味。

 

そうか、母さんに教えたのか。

 

「くっ! 何か余裕ぶっこいてる様に見えてムカつくわね!」

 

「アリサちゃん、口調が……」

 

「そっか、アレス君はまだなのか~」

 

「ああ、まだだなぁ……。それと、別に余裕ぶっこいてる訳じゃないぞ?」

 

「どの口が言うのかしら? 常にテストで学年内トップ3内に輝いてるアレス君?」

 

アリサは額に血管を浮かべて俺の方を睨む。

 

「何を仰るウサギさん。たまたまトップ3内に入ってるだけだ」

 

「な・に・が・た・ま・た・ま・よ! 入学以来常に入ってるクセに! それとあたしはウサギじゃない!」

 

「ほぅ、なら何だね? 虎か? 獅子か? 灰色熊(グリズリー)か?」

 

「何で肉食で凶暴なヤツばかりなのよ! 子鹿(バンビ)とかあるじゃない!」

 

アリサの血管が更に増えた。ちなみに、グリズリーは雑食だぜ。

 

「それこそ何を仰るホオジロザメさんだ。なのはやすずかなら柴犬とか子猫とかフェレットとかリスとか合うが、アリサは……」

 

そう言って俺はアリサの顔をマジマジと眺める。

 

「な、何よ?」

 

頬が赤くなるアリサ。

 

「うん、軍鶏(しゃも)だな。アリサには軍鶏(しゃも)がお似合いだ」

 

 

※軍鶏

 タイ原産の闘鶏用、観賞用、食肉用のニワトリの一種。激しい気性から、気の短い人、けんかっ早い人の喩え、あだ名につかわれる。

 

 

「ぶっ!」

「ぶはっ!」

 

 

なのはとすずかがお茶を吹いた。それはもう、ドリフのコントのごとく。

 

「あんたはぁ! 今日と言う今日は許さないわよ!」

 

そう言ってアリサは右手を振り上げて殴りかかってくる。

 

俺は既に食べた弁当をしまってそれを難なくかわす。

 

「ほらほら、黙って座ってれば可愛いのに台無しじゃないか」

 

「うるさいうるさいうるさーい! あんたは大人しくあたしに殴られれば良いのよぉ!」

 

右から左からボクシングの……某デンプシーロールのごとく殴りかかってくるアリサ。

 

だが、速さは全く足りないから俺はそれを何の気も無しに避ける。

 

「さ、避けるな~!!!」

 

「避けないと当たるじゃないか!」

 

「当たりなさいよ!」

 

「当てたきゃパンチの速度をあげろよ、こうやって」

 

俺はからかう様にアリサの頬を撫でる。

 

「ウッキ――――!!!」

 

顔を真っ赤にして更に殴りかかってくるアリサ。

 

こうして昼休みは過ぎていく。

 

「あはは……アレス君ったら……」

 

「にゃ~……ああ見ると、アレス君って凄いなぁ……」

 

なのはとすずかは苦笑いで俺達の様子を眺めていた。

 

 

 

 

 

放課後。

 

なのは達3人は塾に行くため俺と別れた。

 

ちなみに昼休みの決戦は……アリサの勝利に終わった。

 

敗因は、すずかの助太刀によって。

 

すずかに羽交い締めにされたあと、アリサに引き渡されてそのあとパロ・スペ○ャルをかけられたから。

 

しかもきっちり決まってたから結構痛いのなんの!

 

ってか、何で社長令嬢のアリサがそんな技を知ってるのか少し疑問ではあるのだが。

 

つーかキ○肉マン読んでるのか。

 

さてそれはさておき。

 

3人と確かに別れたが、俺はその3人の後をつけていた。

 

無論、俺の穏行術は素人なら絶対にばれない自信はある。

 

某聖杯戦争でアサシンのクラスとして呼ばれてもおかしくないレベルだと自負している。

 

そうこうしてると林の中を通る。

 

途中、なのはが立ち止まる。

 

〈たすけて……〉

 

ユーノの声だ。

 

そしてなのははまた立ち止まって周りを見渡す。

 

〈助けて!〉

 

二度目の声が聞こえた時、なのははいきなり走り出した。

 

アリサとすずかも後を追う様に走り出した。

 

よし、ユーノを無事に見つけた様だ。

 

俺は更に後をつける。

 

少し走るとなのはがフェレットらしい小動物を見つけていた。

 

それを見たアリサとすずかは少し焦ってる。

 

少し話をしてすずかが携帯で電話をすると3人はまた走り出した。

 

更に俺はその後を追う。

 

 

 

 

暫くすると3人は病院らしい建物の中に入った。

 

看板を見ると『槙原動物病院』と書かれていた。

 

「……よし、これで大丈夫だ」

 

俺はそう呟いてその場を後にした。

 

これで今夜にはユーノからの救難信号が届くであろう。

 

それまでは少し休憩だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈聞こえますか……僕の声が……聞こえますか!〉

 

「ああ、聞こえてるよ……っと」

 

ベッドの上に寝ころんでいた所を起きる。

 

〈聞いて下さい……僕の声が聞こえる貴方……お願いです……僕に少し力を貸して下さい!〉

 

「やれ、なんぼでも貸してやるよっと」

 

俺はいつもの私服に着替える。

 

黒いシャツに黒のジーンズだ。

 

〈お願い! 僕の所へ! 時間が……危険が……〉

 

そう言って声は途切れる。

 

俺は窓のカーテンを開ける。

 

見ると私服に着替えたなのはが走っていった。

 

「エヴァ」

 

「呼びました?」

 

ドアを開けるエヴァ。

 

「行こう。なのはがユーノの所に行った」

 

「分かりました。それでは待機状態になりますね」

 

そう言ってエヴァはペンダント形態になる。俺はそれを首にかける。

 

〈父さん、母さん、行って来るよ〉

 

〈分かったわ。気を付けてね〉

 

〈おう、行って来い!〉

 

父さんと母さんに念話を飛ばして俺は窓から飛び出した。

 

ちなみに靴は部屋に置いてあるのだ。

 

 

 

 

 

「なかなか速いな、なのは」

 

【お兄様が念法教えたのでしょ? 体力がほとんど無限になってるから全力で走って行ったのでは?】

 

「そりゃそうだ……と」

 

俺は今、第1チャクラを回して全力で走っている。

 

暫く走っていると、目の前にいるのは……。

 

なのはだ! そしてユーノを抱いて走っている。

 

そして、上から降ってくるのは……黒い煙の様な化け物。

 

浄化の蒼水晶(スター・サファイア)、起動!」

 

俺は右目に気を通す。

 

どうやら思念体みたいな感じらしい。

 

真ん中には水晶みたいな青い宝石みたいなモノが。

 

アレがジュエルシードか。

 

「エヴァ、武器に杖はあるか?」

 

【ありますよ。『レーヴァテイン』が】

 

「ああ、そう言えばそうだったな。大体は剣で伝わってるが、杖と言う説もあるらしいからな。それを頼む」

 

【分かりました。騎士甲冑は?】

 

「任せる。大丈夫だな?」

 

【分かりました。かっこいいのを作ります! 武神の書、起動!!】

 

俺の身体が輝き、一瞬にして服装が替わる。

 

手甲に頑丈そうなブーツ。

 

申し訳程度の肩当てに胸の部分に鎧。

 

よく見るとザフィーラの服に似てるな。

 

色は黒がベースだが。

 

そして手には……何かドラクエに出てきた武器、『魔道士の杖』に似たデザインの杖だった。

 

「よし、これならミッド式の魔導師に見えるだろ」

 

【残念ながら足下の魔法陣でモロばれですけどね】

 

「それを言うな」

 

俺の足下に見えるのは三角形をベースに頂点に円をくっつけたベルカ式の魔法陣だった。

 

ちなみに色は漆黒。ま、夜だから見えにくいかな?

 

見ると後少しでなのはに襲いかかる怪物。

 

「やらせるかよ!」

 

俺は怪物を杖で思い切り殴った。

 

「ギャッ!」

 

吹っ飛ぶ怪物。バウンドして何処かの家の塀に突き刺さる。

 

「……アレス……君?」

 

大きく目を見開いて俺の方を見てるなのは。胸元のユーノは呆然と怪物を見ていた。

 

「こんな夜遅くに出歩くなんて……なのはは悪い子だな?」

 

俺は口元をつり上げて笑った。

 

「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!? 何でアレス君が!?」

 

「そんな事より。そこのお前!」

 

俺はなのはの胸にいるユーノを見る。

 

「え!?」

 

「アレはどうすれば良い?」

 

塀に突き刺さった怪物はゆっくりと起き上がって俺の方を向いた。

 

「そうだ、これを!」

 

ユーノは真っ赤な色をした丸い宝石をなのはに渡した。

 

「今から言う呪文を唱えて下さい!」

 

よし、それなら俺は時間を稼がせて貰おう!

 

杖と言えどそれなりに扱えるんだぜ?

 

『突かば槍、払えば薙刀、持たば太刀。杖はかくにもはずれざりけり』ってね!

 

俺は左手に杖を持って切っ先の方に手を添えた。

 

竜の一撃、受けてみろ!

 

「はあぁぁ!竜牙ぁ!」

 

一呼吸で5m以上の間合いを詰めて突く槍と刀用の奥義。

 

まあ、ぶっちゃけ言うと『るろうに剣心』に出てきた『牙突』と言う技にそっくりなんだけどね。

 

そこ、パクリとか言わないの。

 

怪物の胴体?らしき場所を突いて怪物はまたも10m近く吹っ飛び、違う家の塀に突き刺さる。

 

 

 

「レイジングハート・セーットアップ!!」

「レイジングハート・セーットアップ!!」

 

 

 

なのはとユーノの声が響く。

 

 

【スタンバイレディ・セットアップ】

 

 

紅い宝石から声が聞こえた。うむ、生レイハさんの声ですな。

 

その刹那、膨大な魔力がなのはから溢れ出した。

 

桃色の光が周囲に溢れる。

 

眩しくてなのはの姿が見えない!

 

なるほど、大きいお友達対策ですね、分かります。

 

「とりあえず、これで!」

 

なのはの声が聞こえた。これで、未来の『魔王』様が誕生しましたな。

 

【しかしお兄様。私と同等の魔力ですわ】

 

「そうか。エヴァと同じタイプか……。魔法に関しては俺よりなのはが上だな」

 

【まあ、お兄様は元々は『気』を使うタイプ。それでもそこまで魔法を使えるのは凄いと思います】

 

「はは、それでもせいぜいが1.5流だな。悪くて二流だ」

 

【もう、そこまで謙遜しなくても良いのに。お兄様ったら】

 

「自慢しまくって天狗になるよりはマシだろ」

 

【そうですわね】

 

エヴァと会話してると光は治まり、そこには。

 

 

「……ゑ?」

【……あれ?】

 

 

なのはが居た。当たり前だがなのはがいる。

 

バリアジャケットのデザインは小学校の制服がベースだ。デザインは良い。全く問題無い。

 

問題なのは色だった。

 

なのはと言えば白色が目立つバリアジャケットだ。

 

『管理局の白い悪魔』とか、『管理局の白い魔王』と言う二つ名が似合う位に。

 

「……何か、不穏当な言葉が浮かんだの」

 

「気にするな」

 

さすがなのは。俺の思考を読んだのか?

 

まあいい。

 

それが、ラインは良い。青いラインだ。

 

杖の形も良い。いや、レイハさんのコア部分の形がおかしいが。それは後で述べる。

 

 

何故……。

 

何故、空色なんだ!?

 

澄んだ水色とでも言えば良いのか!?

 

これでは『管理局の水色魔王』になるではないか!

 

そしてレイハさん! 貴女の……そのデザインは何ですか!?

 

なのはの杖の先と言えば、真紅の宝石で球体が付いている、レイハさんです。

 

それが……何ですか!?

 

なのはと同じ様な色で形が正八面体の形は! そして真ん中にめちゃくちゃ小さく紅くて丸い宝石が見えるだけ!

 

 

……

 

 

…………

 

 

………………

 

 

ちょっと待て。その色、その正八面体……。

 

 

俺は背筋に悪寒が走った。

 

【私も分かりました。あの形……前世でお兄様に見せて貰った……とあるアニメに出てきた】

 

「ああ……」

 

俺はゴクリと生唾を飲んで言い放った。

 

 

 

 

 

【第五使徒ラミエル】

「第五使徒ラミエル」

 

 

 

 

 

俺とエヴァの同時つぶやきはなのはとユーノには聞こえていなかった……。

 

 

 




魔砲少女ラミエルなのは……始まります……!


元凶はニコニコな動画ですw



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アレスのデバイス設定


もはや別人w


 

 

武神の魔導書『エヴァンジェリン』(CV.松岡 由貴)

 

 

アレス専用の古代ベルカ式ユニゾンデバイス。

 

前世名は『エヴァンジェリン=A.K=マクダウェル』

 

 

身長 130㎝

体重 ??? ㎏

スリーサイズ B67 W48 H63

 

 

 

原点は『魔法先生ネギま!』に出てきた600年近く生きた吸血鬼の真祖(ハイディライト・ウォーカー)

 

ただし、こちらは双子の姉と一緒に生きて来たから従順な性格。もはや別の人物と考えた方が良いだろう。

 

キレると怖いのは一緒だが。

 

※前世で1度だけキレて近右衛門を凍らせた事がある。

 

 

結構恥ずかしがり屋。少女偏愛(ロリコン)な方が見れば0.5秒で『お持ち帰り~!』と吼えたくなる。

 

無論、ネギま!に出てきた魔法は全て使用可能。それどころか苦手だった回復魔法・補助魔法も使えるチート仕様。

 

得意属性は闇と氷(水)。当然だが『闇の魔法』も習得済み。

 

合気道も無論の事、アレスのおかげで剣術等も習得。

 

念法も習得。ただし、第1チャクラしか回せない。その代わりだが体力は無限に続く。

 

気を魔力に変換する指輪を装備してるから事実上魔力が尽きる事が無い。

 

 

なんてチート仕様。

 

 

 

 

 

武神の魔導書とは?

 

 

 

夜天の魔導書の双子機として作成されてる。作りはほとんど一緒である。言うことは…分かるな?

 

 

 

 

古代ベルカの技術の全てを結集して作成した魔導書。

 

名の通り古代ベルカで使用されていた武器データを入れてある。

 

無論、シグナムのレヴァンテインとヴィータのグラーフアイゼンも入っている。

 

当然ながらアレスはシグナムとヴィータの動きも9.5割再現できるから結構強い。

 

 

ダブルギガントハンマーとか相手が可哀想になりそうだ。

 

 

 




ちなみにオリジナルのエヴァと会わせて

『私と同じ姿でそんな醜態晒すなぁ!』

と吼えたとかなんとかw

ネタですがw


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第4話 魔法少女?いいえ、『魔砲少女』が誕生しました


ウチのなのはは『ラウンドシールド』を展開すると八角形の盾が現れる仕様にしましたw

どう見てもATフィールドです。本当にありがとうございましたw


 

 

 

 

 

「嘘……何なの? これ?」

 

呆然と自分の身体と持ってる杖を見て呟くなのは。

 

「詳しい話は後で! 来ます!」

 

今度はなのはに向けてとびかかる怪物。

 

弱い方に目標を変えたか!? 確かに戦術としては正解だが……!

 

「きゃあぁぁぁ!」

 

【ラウンドシールド】

 

レイジングハートがそう言うとなのはの前に現れる桃色の壁……なんだが。

 

「あのさ、俺の目には八角形壁が見えるんだが?」

 

【ハイ、私の目にも見えますよ?】

 

どうやら幻覚では無いようだ。

 

なのはの前に現れる魔力の壁は何故か……ATフィールドに見えた。

 

本家は赤い色なのだが、なのはのは桃色の壁だった。

 

ああ、何てタチの悪い……パワーアップ。

 

なのはも転生者?

 

だが、4年間一緒に過ごしてきたが。その様なそぶりは全く見受けられなかった。

 

それに、俺が追ってる転生者達は全員が何かしら歪んだ思考の持ち主。

 

わざわざなのはに転生するとは思えないし、そもそも女の子に転生するか?

 

まあ、中にはいるかもしれないが……。

 

仕方ない。後で天界に連絡取って聞いてみよう。ひょっとしたら何か聞けるかも知れない。

 

「グオォォォォ!!」

 

なのはのシールドに当たってはじける怪物。

 

バラバラになるもすぐに再生する。

 

「あの忌まわしい怪物、『ジュエルシード』は封印するしかありません!」

 

「どうやって!?」

 

「心を澄ませてください。貴女の中に……呪文が浮かびます」

 

なのははユーノからそう聞くと目を瞑ってその場に立った。

 

怪物は再生してなのはに襲いかかろうとするが。

 

「やらせると思うか?」

 

俺はなのはの前に立ち、左手の平を前にかざして防御魔法を発動する。

 

【パンツァーシルト】

 

目の前に現れるベルカ式魔法陣。

 

怪物はそれに阻まれてこっちに来ることが出来ない。

 

「あの魔法陣は!」

 

ユーノがそう呟くのを俺はしっかりと聞いていた。

 

後で追求は免れないかもな。

 

「アレス君、ありがとう! 後は私が! シュート!」

 

俺はシールドを解いて左に身体を避ける。

 

なのはのレイジングハートから桃色の砲撃が怪物……ジュエルシードに直撃する。

 

おかしいな? ここで砲撃だったか?

 

しかもレイハさん、いつの間にシューティングモードですか?

 

「グゥオォォォォォ!」

 

吼えるジュエルシード。プチ・ディバインバスター級だったが、それでもあの直撃は効いただろう。

 

「リリカルマジカル……ジュエルシード、ナンバーⅩⅩⅠ封印!」

 

今度は桃色の光の帯がジュエルシードの身体を貫く。

 

そして、黒い怪物の形をしたジュエルシードは消え去る。

 

バラバラになったアスファルト舗装の中に光り輝く物が見える。

 

「これがジュエルシードです。レイジングハートで触れてください」

 

「ほぉ、これが」

 

俺はバリアジャケットを解除してなのはの後ろに立って壊れた道の真ん中を見る。

 

菱形の形をした宝石……これがジュエルシード。

 

ってか、今のレイハさんも同じ形に見えるのだが。

 

 

【ナンバーⅩⅩⅠ】

 

 

レイジングハートの中に収納されるジュエルシード。

 

そして、なのはの身体が光り輝き、元の服装に戻る。

 

手には真紅の宝石、レイジングハートが握られていた。

 

「あれ……? 終わったの?」

 

「はい……あなた達のお陰で……ありがとう……」

 

そう言ってユーノはその場に倒れた。

 

「ちょっと! 大丈夫!?」

 

なのはがユーノに駆け寄る。

 

遠くからサイレンの音。この音は……消防車とパトカー!

 

 

「なのは」

「……アレス君」

 

 

俺となのはは顔を見合わせた。

 

なのはは冷や汗をかいて頬を引きつらせている。

 

「……補導歴有りと将来書かれたいならこの場に居ても良いよ?」

 

「……それは……」

 

「なら、逃げよう。壊れたてホヤホヤの場所に居た時点で言い逃れ出来ない」

 

「うん!」

 

お互い頷いてその場から走り去った。

 

「ご、ごめんなさーい!」

 

周囲になのはの謝る声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

近くの公園に逃げ込む俺達。

 

「はあ……」

 

「ふぅ……」

 

大きく深呼吸して近くにあったベンチに座る。

 

「す、すみません……」

 

なのはの腕に抱えてたユーノが目を覚ましたようだ。

 

「あ、起こしちゃった? ごめんね、乱暴で。怪我、痛くない?」

 

「怪我は平気です。もうほとんど治っているから……」

 

ユーノはそう言って身体に巻かれてる包帯をほどいた。

 

「ホントだ。怪我の跡がほとんど消えてる~」

 

「へえ~」

 

俺はユーノの身体を眺める。そして腹の辺りをさする。

 

「あ……ちょ……くすぐったい……!」

 

悶えるユーノ。結構からかいがいがあるかもな。

 

「もう、ダメだよアレス君。まだ完治はしてないんだから」

 

「はは、すまんすまん」

 

「助けてくれたお陰で残った魔力を治療に回せました」

 

「そうなんだ。良く分かんないけど……そうだ。自己紹介して良い?」

 

「え、あ、うん」

 

「……エヘン。私、高町なのは、小学校3年生。家族とか、仲の良い友達は『なのは』って呼ぶよ」

 

満面の笑みでユーノを見るなのは。俺も自己紹介しないとな。

 

「俺は藤之宮アレス。なのはと同じ小学校3年生。なのはと同じく家族も友達も『アレス』と呼んでる」

 

「僕はユーノ・スクライア。スクライアは部族名だから、『ユーノ』が名前です」

 

「ユーノ君か。可愛い名前だね」

 

「うむ。ユーナでも良いな」

 

「アレス君……それは何か女の子チックな名前だよ?」

 

ジト目で俺を見るなのは。

 

「……すみません……。あなた達を……巻き込んでしまいました……」

 

顔を下に向けてうつむくユーノ。

 

「気にするな。トラブルに巻き込まれるのは良くある事」

 

「そうだよ。アレス君と一緒に居ると……結構楽しいかな?だから、私は平気だよ」

 

「すみません」

 

「そうだ、ここじゃ落ち着かないから……私のお家に行こう?」

 

「そうだな。その方が良いだろう。ああ、俺も会話には参加させて貰うよ? 〈こうやって……な?〉」

 

「ふぇ?」

 

「念話を!」

 

会話の最後、口を閉じて俺は2人に言った。

 

〈何を驚く。さっきも俺は魔法を使っていたじゃないか〉

 

「そういえば、そうでしたね……。なのは、レイジングハート持っていたらアレスと同じ様に会話出来るよ」

 

「そうなの?」

 

〈そう言う事。それじゃあ帰ろうか?〉

 

「そうだね。それじゃ、帰ろうか」

 

俺達は家に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

「さて、帰ってきたね~」

 

「そうだね~」

 

俺達は高町家の前に立っていた。

 

女の子の家に送るのは基本だし、それに俺は許可を得てるから叱られる心配は全くないのだがね!

 

「叱られる……かな?」

 

「多分。まあ、俺と一緒だったと言えば多少はマシになると思うけど……」

 

「お願い! アレス君!」

 

両手で拝んで来るなのは。なかなか可愛い仕草ではある。

 

「分かったよ」

 

俺は高町家の門を開ける。

 

2人でゆっくりと中に入り、玄関に向かう。

 

「おかえり。何だ、アレスと夜のデートだったのか。なのはにはちょっと早いと思うのだが?」

 

横に現れたのは恭也さんだった。

 

他の二次小説にあるようにシスコン化はしてるが俺には何故か寛容であった。

 

「へ? あ……あの……?」

 

予想外の事を言われてしどろもどろになるなのは。

 

「ははは、すみません……」

 

俺もさすがに謝る事にした。

 

「まあ、同衾した仲だからキスも許すが……」

 

……この人は一体何を言ってるのだろうか。

 

ちなみに5歳の時に一緒に寝かされてから最低でも週に1回はなのはがお泊まりに来てるのだが。

 

「あら、可愛い~」

 

更に現れたのは美由希さんだった。

 

なのはに抱えられてるユーノを見ている。

 

「うん? この動物……」

 

「ああ、なのははこの子が心配になって出たんだ。出た所をたまたま見かけて俺も一緒に出たんです」

 

「そうなんだ~。まあ、アレス君が一緒なら大丈夫だね」

 

そう言って俺の頭を撫でてくる美由希さん。

 

「ふむ……。そうだな。内緒で出掛けたのは頂けんが、アレスと一緒だったのなら良いとしようか」

 

「ごめんなさい……」

 

なのはは頭を下げて謝る。

 

「それじゃ、俺はもう帰りますよ?」

 

「ああ。すまないな」

 

「ありがとね、アレス君」

 

「ありがと~アレスく~ん」

 

俺は高町家を後にして自宅に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

「どうだった?」

 

部屋に帰ると母さんもやって来た。

 

「ああ、とりあえず原作通りなのはとユーノが知り合って魔法の存在を知ったよ。でも……」

 

「でも?」

 

「なのはのバリアジャケットが違うんだ」

 

「どういう風に?」

 

俺は母さんに説明をした。

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど……何やら変な因子が混じってるみたいだけど」

 

「ああ。転生者にしては色々とおかしい点もあるし……」

 

「そうですわね~チートにしてはちょっと足りない気が……」

 

3人で首を傾げている。

 

「それなら、天界に問い合わせてみたら?」

 

「やっぱりそうなるか~」

 

と言う事で俺は天界に念話を飛ばしてみた。

 

以下、天界でのやりとり。

 

 

 

 

 

〈ああ、アレスだけど?〉

 

〈うむ。どうかしたのかね?〉

 

〈ちょいと気になる点が。この世界の『高町なのは』は……どうなってるんだ?〉

 

〈ふむ、あの娘か。あの娘は転生者だ〉

 

〈何?〉

 

〈だが、今回の捕縛する転生者では無い。私の部下がちょいとミスってね〉

 

〈……どういう事だ?〉

 

〈知ってるだろう? アレは余所の世界の天使。現世に降りた仲間の天使を連れ戻そうと人間と戦って……〉

 

〈そう言うことか。殺された弾みでこっちの天界に飛ばされて、この世界に転生されてしまった……と言う事か?〉

 

〈そう言うことだ。本来なら元の世界に帰そうとしたのだが、私の部下がミスしてこの世界に人間として転生させてしまったのだよ〉

 

〈……お互い、部下の育成頑張ろうな〉

 

〈そうだな。言う訳で彼女に関しては天寿を全うさせて貰いたい〉

 

〈了解した。この事は俺の部下の中だけの秘密にする〉

 

〈頼む。用件はそれだけかね?〉

 

〈ああ、それだけだ。ありがとう〉

 

〈分かった。それでは転生者達を引き続きこちらに送り返してくれ〉

 

 

 

 

 

 

「どうだった?」

 

「ああ、なのはも転生者。だが、今回の件には全く関係無いとの事」

 

「それじゃあ、彼女の前世はひょっとして……」

 

「天使『ラミエル』。それが彼女の前世の名前だ」

 

「彼女も……複雑な事情があるわね……」

 

「ああ……」

 

俺達はお互いに顔を見て苦笑するしかなかった。

 

 

 

母さんはエヴァは揃って料理の本を見ていた。

 

ちなみに菓子のページ。桃子さんに挑むつもりか……?

 

それでは、どんな状況か聞いてみよう。

 

俺はなのはに念話を飛ばしてみた。

 

〈どんな状況だ?〉

 

〈アレス君。今、ユーノ君はお母さんとお父さんに構って貰ってるよ?〉

 

なるほど。と言う事は今夜は話になりそうにないな。

 

〈分かった。まあ、用があったら念話を飛ばしてくれ。もっとも、寝てたら返事しないけどね〉

 

〈うん、分かったの。ユーノ君にも伝えておくね〉

 

とりあえず、念話を止めることにした。

 

 

 

 

さて、いつもの様に寝ようかとベッドに入る。

 

ちなみに母さんとエヴァがベッドに入っているのは仕様となってる。

 

「おやすみ、アレスちゃん」

 

「おやすみなさい、お兄様」

 

「おやすみ」

 

左にエヴァで右に母さん。2人とも、腕を抱きしめて来るのは……まあ良いや。

 

〈ごめん。アレス、起きてる?〉

 

頭に響くのは……ユーノの声。

 

〈ああ、起きてるぞ〉

 

〈良かった。さっきはありがとう〉

 

〈良いって事よ。それより、どうした?〉

 

〈アレスは……魔法をどうやって知ったの?それと、アレスが使ったシールドの形……もしかして、『ベルカ式?』〉

 

やはり気になったか。ベルカ式の魔法陣はミッド式と形が全然違うからすぐに分かるよな。

 

〈まずは1つ目。魔法を知ったのはつい最近だ。こっちの暦で4月4日……2週間位前だな〉

 

〈なるほど〉

 

〈で、2つ目。その通りだ。俺のデバイスに教えて貰ったんだがな〉

 

〈珍しいね……ベルカ式は今はほとんど廃れて使う人が居ないんだ〉

 

〈そうなのか?〉

 

〈うん。僕やなのはが使うのは『ミッド式』。主に射撃とか砲撃が主で遠距離攻撃が多いんだ〉

 

〈と言う事は……ベルカ式は……〉

 

〈そう。遠距離、中距離を度外視して武器や素手で戦う近接戦闘向きの魔法だよ〉

 

〈はは、俺向きの魔法じゃないか。俺はどちらかと言えば近接戦闘型だからな〉

 

〈そうなんだ。でも、どうやって入手したの?〉

 

〈それがな。親に聞いた話だと俺が生まれた時に何故か家に現れてたとの事〉

 

〈え?〉

 

〈面白いだろ?持ち主を選ぶのか知らないが。ちなみに名前はエヴァンジェリンだ〉

 

〈へぇ……。でも、アレスが持ってたのは杖だったけど?〉

 

〈まあ、あまり人に言わないでくれよ?俺のデバイスな、ベルカの人達が使ってた武器のデータが入ってるんだ〉

 

〈……えぇ?〉

 

〈何でも、『武神の魔導書』と呼ばれてたらしい〉

 

〈凄いな……下手したらジュエルシードと同等の貴重品かも〉

 

〈さあ? そこら辺はよく分からないなぁ。そうだな、明日にでも紹介するよ〉

 

〈え? それってレイジングハートみたいに……〉

 

〈ああ。結構お喋りだぞ〉

 

〈ベルカ式でインテリジェントデバイス……〉

 

〈さて、この辺で終わりにしよう。明日は学校があるし〉

 

〈あ、ごめん。それじゃあ、おやすみ〉

 

〈おやすみ〉

 

俺とユーノの会話は終わる。

 

ちなみに、エヴァと母さんはぐっすり眠っていた。

 

 

 

 

 

次の日。

 

俺となのははアリサとすずかと会話した。

 

簡潔に言うと。

 

フェレット(ユーノ)はなのはの家で預かる事になった。

 

何であんたが知ってるのよとアリサ。

 

昨日、たまたまなのはが出掛けるのを見かけたから一緒に行ったんだと俺。

 

ふぅん……と何やら言いたげな表情のアリサ。

 

とそこでチャイムが鳴って授業開始。

 

 

 

 

授業中にユーノからジュエルシードの事を聞いた。

 

要約すると……

 

 

 

①ユーノの世界に伝わる古代遺産である。

②手にした者の願いを叶えてくれる魔法の石である。

③ただし、力の発現が不安定で夕べの様な暴走をたびたび繰り返す。

④そして、人や生き物を取り込んで暴走することもある。

 

 

 

改めて聞くとろくでもない道具だよな。

 

〈そんな危ない物がどうしてうちのご近所に?〉

 

なのはのツッコミももっともだ。

 

〈僕のせいなんだ。僕は故郷で遺跡発掘を仕事にしてるんだ。そしてある日、古い遺跡の中でアレを発見して調査団に依頼して保管して貰っていたんだけど……〉

 

〈だけど?〉

 

〈運んでいた時空艦船が事故か何らかの人為的災害にあってしまって……〉

 

まあ、ぶっちゃけ言うとプレシアさんのせいなのだが、ここで言う訳にもいかない。

 

〈そして、21個のジュエルシードはこの世界にちらばってしまいました〉

 

〈21個だな?〉

 

〈ハイ。そして、見つけたのは昨日のを含めてまだ2つです〉

 

〈あと19個か……〉

 

その時、チャイムが鳴り響く。

 

だが、先生はまだ授業を続ける。

 

延長戦ですか? ロスタイムですか?

 

〈あれ? ちょっと待って。それって……別にユーノ君のせいじゃ……〉

 

〈それは俺も同感だな〉

 

〈でも、アレを見つけてしまったのは僕だから……きちんと集めて、元の場所に戻さないといけないから……〉

 

全く、ユーノは苦労する性格かもな。責任感が強すぎると言うか。将来、ハゲなければいいが……。

 

〈何となく、ユーノ君の気持ちが分かるかもしれない〉

 

〈ま、分からんでもないが〉

 

〈それで、ほんの少し。僕の魔力が戻るまでの間、1週間……いや。5日もあれは十分だから……〉

 

〈それで? ユーノ君は魔力が戻ったら……どうするの?〉

 

〈え? その後は1人で……〉

 

〈待て待て待て。ユーノ、2日前にジュエルシードにボッコにされてたの忘れたのか?〉

 

〈う……〉

 

〈アレス君も夢を見たんだ〉

 

〈見てたよ。ま、俺もなのはも巻き込まれた形ではあるが、関わった以上は全部集める迄協力させて貰うぞ?〉

 

〈そうだよ。アレス君と私が居たらだいぶ楽になると思うよ?〉

 

〈すみません〉

 

〈そう。こちらの世界のことわざに『袖振り合うも多生の縁』とある。なのはとユーノ、そして俺との出会いだって前世の何かかもしれないだろ?〉

 

でもぶっちゃけ言うと俺は違うんだがね。

 

〈アレス君は難しいことわざを知ってるの……〉

 

〈あの、それはどういう意味ですか?〉

 

〈道ばたで全く知らない人同士が袖……まあ、この場合は肩にしようか。肩が触れ合うのも前世からの縁があったからと言う意味だよ〉

 

〈そうなんですか〉

 

〈そうなんですよ。こうして3人が知り合ったんだ。だから、協力させて貰う〉

 

〈ありがとうございます〉

 

〈なのはも協力するだろ?〉

 

〈うん。私だけ仲間外れはイヤだもん。よろしくね? ユーノ君〉

 

こうして時間は流れていった。

 

 

 

 

 

夕方。

 

アリサとすずかと別れてからなのはと一緒に商店街を通って帰る。

 

「今日のおやつは何かな~」

 

「はは、なのはは食いしん坊さんか?」

 

「むぅ~違うもん!」

 

その時、魔力を感じた。

 

「これは……」

 

「アレス君……ひょっとして……」

 

〈……新しいジュエルシードが発動している! すぐ近くに!〉

 

ユーノからの念話。

 

〈分かった。行こう、なのは。ユーノもすぐに来てくれ〉

 

〈分かった〉

 

俺となのはは魔力を感じた場所に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

ユーノと合流して階段を駆け上がる。

 

確か、この上は神社があったはず。

 

「なのは、レイジングハートを」

 

「うん」

 

さて、俺も準備はしておこう。

 

右手にペンダント化したエヴァを握っておく。

 

鳥居をくぐり、目の前に現れたのは。

 

「原住生物を取り込んでる……」

 

うん、確かに取り込んでるね。

 

俺は目の前の生物を見た。犬を取り込んだのだろう。

 

近くには20代前半らしき女の人が倒れてる。この姿を見て気絶したのだろう。

 

そりゃそうだろ。首が3つになった犬なのだから。

 

ってか、この犬はケルベロスになりたいと願ったのか? ツッコミを入れたいのだが。

 

「取り込んだらどうなるの?」

 

「実体がある分手強くなってる!」

 

「ふん、首が3本に増えた程度で! なのは、セットアップを」

 

俺はなのはの前に立ち、起動準備にかかる。

 

「エヴァンジェリン、セットアップ」

 

【了解です、おにい……いえ、主様】

 

さすがに外でお兄様と呼ばせるのはアレだったので主様と呼ぶように言ってある。

 

一瞬にして騎士甲冑を纏う。

 

「……あれ?」

 

「どうした?」

 

「呪文……忘れちゃった……」

 

「もう一度僕が言うから!」

 

目の前のケルベロスが俺達に向かって走ってくる。

 

「ええい! 変身途中は攻撃してはいかんと言う法律を知らないのか!」

 

そう言って俺はケルベロスの真ん中の頭を杖で上から殴る。

 

「ギャブン!」

 

ひるんで後退するケルベロス。

 

【スタンバイレディ・セットアップ】

 

なのはが呪文を唱えず起動するレイジングハート。

 

「さ、行くぞなのは。俺があいつを弱めるから、封印してくれ」

 

「うん、分かったの」

 

俺はケルベロスに向かって疾走した。

 

 

 






そりゃ子犬が大きくなってケルベロスみたいに頭が3つになったら気絶したくなるわなw



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第5話 町中が破壊されるフラグはへし折ってしまいませう

ちょっと長いかな?




 

 

 

 

 

 

「ガアァァァァァ!!」

 

吼えて俺に向かって突撃して来るケルベロス。

 

「そんな単純な突撃でどうにかなると思うか?」

 

俺は左に避けて右の頭に杖を打ちつける。

 

「ギャッ!」

 

怯んだ所を更に眉間目がけて突きを放つ。

 

右の首が目を瞑った所、真ん中の首が俺に噛み付こうと口を開けて襲いかかってくる。

 

「遅い!」

 

俺は下にかいくぐって顎下から杖で思い切り突き上げる。

 

真ん中の首は思いっきりのけぞって胴体部分が丸見えになる。

 

「ハアァァァァァ!!!」

 

一気に第3チャクラを回して身体能力を上げて喉より下の部分を突いた。

 

「グゥアァッ!?」

 

ケルベロスの身体が5m程宙に舞い、そして地面に叩き付けられてひっくり返った。

 

ケルベロスは頭を打ったらしく、ジタバタともがいていた。

 

「ふぅ、……ん? 困るなぁ、なのは。呆然と見てないで封印をやって貰いたいんだが……」

 

なのはは目を見開いて俺とケルベロスの戦いを眺めていてユーノは顎が外れんばかりに口を開けていた。

 

「す、凄いのアレス君……あんな怪物でも全く動じないで戦ってる……」

 

「うん……何か……戦い慣れてるって言うか……」

 

「もしもし?」

 

俺はなのはの顔向けて顔を近づける。鼻の頭同士がくっつくくらいに。

 

「わぁ!」

 

なのはは驚いて飛び退く。

 

「いや、封印してくれないと……俺のデバイスは封印機能が無いから……」

 

「あ……ごめんなさいなの……」

 

頬がリンゴの様に赤いなのは。

 

そしてレイジングハートを未だ起き上がろうともがいてるケルベロスに向けて……

 

「リリカルマジカル、ジュエルシードⅩⅥ……封印!」

 

レイジングハートから桃色の光線がケルベロスの身体を貫く。

 

……もはや砲撃にしか見えないのだが。

 

間違いなく砲撃特化型にしか見えん。

 

将来は固定砲台か、魔力無限の。下手な魔導師なら秒殺されるな。

 

そうこうしてたらジュエルシードと犬が分離して、ジュエルシードはなのはのレイジングハートに収納された。

 

俺は犬を見た。

 

子犬だ。こんな子犬がケルベロスとは、何の冗談だか。

 

俺は子犬の頭を撫でる。特に目立った外傷はなさそうだ。

 

倒れた女の人も同じく外傷は無いみたいだ。

 

俺は女の人を担いでお賽銭箱の所に寄りかからせておいた。

 

さすがに地面の上はアレだし。

 

 

 

 

 

暫くすると女の人は目を覚まして周りを見渡した。

 

「アレ? ……疲れてたのかな?」

 

そう呟いて駆け寄る子犬の頭を撫でた。

 

「……疲れてたんだよね?」

 

そう呟いて女の人は神社を降りていった。

 

これで一件落着……かな?

 

「それじゃ、帰ろ? アレス君」

 

そう言って俺となのはは帰路についたのであった。

 

 

 

 

 

それから数日は目立った事は無かった。

 

とりあえず、更にジュエルシードを2つ封印して5つ集まっていた。

 

そうそう、天界から贈り物が届いた。

 

前世で使用していた魔法のポシェット。

 

ぶっちゃけ言うと某猫型ロボットが使用しているポケットと同じで色々な物を収納出来るのだ。

 

前世で使用した魔法具とかその他諸々が収納されている。

 

しかも、俺とエヴァ以外の人が手を突っ込んでも反応しないセキュリティ付き!

 

まあ、問題は見た目のデザインが思いっきり女の子向きである事だ。

 

前世の姿なら全く問題無いが、今の姿だと……ちょっとアレなんだよね。

 

外見をいずれ改修しないといけないが、それは先の話だ。

 

そう言えば、無印編が始まったのに転生者達が現れないな。

 

4年経つがまだ3人だからなぁ。

 

狡猾な奴らが揃っているのか、様子をうかがっているのか。

 

まあ、同じチート同士でつぶし合いしてるのか。

 

つぶし合いしてくれた方が(作者的に)手間が減って助かるのだが。

 

うん? 今何か変な単語が混じった様な?

 

まあ、良いか。詮無きことだ。

 

さて、本日はジュエルシード探しは少し小休止で俺となのははちょっとした事に顔を出していた。

 

それは……。

 

「頑張れー!」

 

「ファイトだよー!」

 

士郎さんがコーチ兼オーナーを務めてるサッカーチーム、翠屋JFCの試合であった。

 

なのは、アリサ、すずかの3人はベンチに座って応援。

 

俺は試合……ではなくなのはとすずかの間に座って応援していた。

 

ちなみに士郎さんは俺に試合に出て欲しかったらしく、ギリギリまで俺に頼み込んで来ていたのだが。

 

まあ、俺サッカーあんまり好きじゃないし。

 

「しっかし、あんた……」

 

ジト目で俺を見てくるアリサ。

 

「どうした?」

 

「こうしてベンチで応援してるだなんて……男として恥ずかしいと思わないの?」

 

「ふん。別に試合に出ないと死刑になるわけじゃないしな」

 

「そりゃあ、確かにそんな極刑にはならないけど……。折角美少女3人が来てるんだから良いところを見せようとか思わないわけ?」

 

「別に思わないし、そんな下心見え見えで調子こいてると失敗したときの恥ずかしさは3倍に膨れあがる。それと美少女は2人しか見えないが?」

 

「ちょっと待ちなさい。ここにも居るでしょうが!」

 

自分を指差すアリサ。

 

「ほほぉ? まあ、確かに『黙って座っていれば』美少女と言うカテゴリーに入るのだがねぇ?」

 

口元を吊り上げて微笑む俺。

 

「待ちなさいよ! それだと喋るとダメと言ってる様に聞こえるんだけど!?」

 

「当たり前じゃないか。それに、何処の世界にパロ・スペ○ャルをキッチリ極める女の子が居ると言うのだ」

 

「それは……乙女の必修科目よ!」

 

「何を戯けた事を。それならハリケー○・ミキサーも必修科目になるのか?」

 

「当たり前じゃない! 48の殺人技と52の関節技を全て修めて初めて乙女になるのよ!」

 

握り拳を作ってそう言い放つアリサ。

 

色んな意味で終わってるような気がするのだが。

 

 

「それに……」

「それに?」

 

 

「アレスはあたしの初めてを破った人だからね……」

 

アリサは頬を真っ赤にして俺の顔を見ながらそう言い放った。

 

「誤解を招く言い方はお止め下さい! それと、なのはとすずかと……士郎さんの視線が突き刺さって痛いんだが!」

 

見るとなのは、すずか、士郎さんの視線が突き刺さる!

 

「アレス君……君はなのはが居ながら浮気をしたと言うのかね?」

「アレス君……散々私の裸を見ておいて!」

 

 

「!!!」

「!!!」

 

 

アリサとすずかの目が見開かれる。

 

「ちょ! その発言は!」

 

全てが終わったように思えてしまった。

 

ちなみに、なのはとはたまにお風呂に入る仲……とだけ言っておこう。

 

 

 

 

 

「ほぅ……一緒にお風呂……ねぇ?」

 

「なのはちゃん……結構大胆……」

 

顔を赤くしてるのはアリサとすずか。

 

「だって、アレス君の洗い方……凄く丁寧で気持ちいいから」

 

なのはの顔も赤い。

 

良かった……士郎さんが呼ばれて向こうに行っていて。

 

ホッと胸を撫で下ろす。

 

「ふふぅん?」

 

アリサの邪悪な笑み。

 

もの凄くイヤな予感しか感じないのだが。

 

「さてと……俺はちょっと急用を思い出したから」

 

ベンチから立ち上がる俺。

 

「逃げられると思う?」

 

左腕を掴んでくるアリサ。

 

「……だが、そこを逃げる!」

 

振り払って逃げようとしたが。

 

「逃がさないよ?」

 

なんと、すずかも俺の右腕を掴んでいた!

 

「何だと!」

 

「アレス、O☆HA☆NA☆SHIしましょ?」

 

「何だそれは! 高町式交渉術はいらぬわ!」

 

「ウチはそんな物騒な交渉しないよ!?」

 

そのあと、俺は今度の温泉旅行で一緒にお風呂に入る事を約束された。

 

アリサとすずかに。

 

こうなったら、ユーノのヤツも道連れだ!

 

 

 

 

 

突然のホイッスル。

 

見ると、選手の1人が怪我をしたらしくこっちにベンチに帰ってくる。

 

「弱ったなぁ……今日は補欠の選手は用事があって休みなんだよな」

 

そう呟く士郎さん。

 

すると、士郎さんは俺の方を向いた。

 

「……アレス君?」

 

「……まさかとは思いますが?」

 

「頼む」

 

両手で拝んでくる士郎さん。

 

「む~……」

 

 

「チーズケーキ、1週間タダ」

「やりましょう」

 

 

0.5秒で陥落してしまった。仕方ないだろ、桃子さんのチーズケーキはシャレにならんくらい美味いんだから!

 

予備の服を借りて俺は着替え、スパイクを借りる。

 

 

 

 

 

「頼む、アレス!」

 

一応自己紹介したから名前は知ってる……のは良いが!

 

いきなり俺にパスを回すんじゃない!

 

ちなみに今は0-1で負けてるのだ。

 

ボールが回ってきた。敵チームが何人かが寄ってくる。

 

「いただき!」

 

1人がボールを奪おうと駆け寄ってくる。

 

「……」

 

俺はボールを左足で弾いてそれを難なくかわす。

 

「な!?」

 

「こいつ、出来る!?」

 

今度は複数人が一斉に駆け寄ってくる。

 

「よっと」

 

俺はボールを右足で弾いて頭に乗せ、軽くヘディングする。

 

まるで水族館でボールを乗せてるオットセイみたいだな。

 

「……なあ、アレ……どうすれば良いんだ?」

 

「あんなのは初めてだ……」

 

「下手に体当たりしても反則取られるし……」

 

敵チームも攻めあぐねていた。

 

「コラー! 真面目にやりなさいよー!」

 

ベンチから聞こえるアリサの野次。

 

「へいへい、分かったよ」

 

俺はボールを地面に落としてゴールをちょっと見てから左足で思いっきり蹴る。

 

「何処蹴ってるのよ~!」

 

俺が蹴った先はゴールより外れた……いわゆるあさっての方角。

 

「良かった……」

 

「ノーコンだ……あいつ……」

 

だが、ボールはゆっくりと曲がっていく。

 

「あ……あれ?」

 

「う、嘘だろ? 何であんなにカーブするんだよ!」

 

「おい! キーパー!」

 

気を抜いていたキーパーが驚いてボールに飛びつく。

 

「くっ!」

 

何とか反応してはじくのは成功したが、味方が運良く目の前にいたため。

 

「そら!」

 

それを蹴ってとどめのゴール。

 

1-1の同点に追いつく事に成功した。

 

「やったー!」

 

「すごーい!」

 

はしゃぐなのは達3人。

 

士郎さんも驚いて俺の方を見ていた。

 

 

 

 

 

 

その後はあまり目立たないように……するつもりだった。

 

が、そうは問屋が卸さないらしく。

 

仕方なしに俺は遠距離からのシュートを放つ。

 

ちなみに、『ドライブシュート』でだめ押しの1点をもぎ取って2-1で俺達のチームが勝利した。

 

そう言えば、なのはとユーノはサッカーの事とか話をしていたな。

 

まあ、そこら辺は粗方知ってるからいいか。

 

 

 

 

 

その後は俺達は翠屋に行ってご飯を食べる事となった。

 

ちなみに、「すっげーよな」「チームに入らないか?」「サッカーやってたのか?」等々聞かれたり言われたりしていたが、それなりに応答しておいた。

 

無論、サッカーはやる気は一切無いがね!

 

さて、俺の気が確かじゃなくて記憶が確かなら……キーパーの子がマネージャーの女の子にジュエルシードを渡して暴走するんだよな。

 

まあ、そんなの起きたら大変だから。

 

俺はネックレスをポケットに忍ばせていた。

 

銀で自作したアクセサリー。

 

何の効力も無いタダの飾りなのだ。

 

前世の時に魔法具を作る時にどんなデザインにするか試しに作ったヤツだからだ。

 

何でも取っておくものだな……と思ってみたり。

 

そして、俺は外のテラスにてなのは達3人と一緒に白いテーブルに着いていた。

 

真ん中にフェレットになったユーノ。顔には冷や汗がダラダラ流れていたが。

 

「それにしても……改めて見るとこの子、フェレットと違わない?」

 

「そう言えば……そうかな? 動物医院の院長先生も他の子と少し違うって言ってたし」

 

マジマジとユーノを眺めるアリサとすずか。

 

俺はそっぽを向いてオレンジージュースを飲んでいた。

 

「まあまあ、ちょっと変わったフェレットと言う事で……ユーノ君……お手!」

 

なのはが右手を差し出すとユーノも手をその上に乗せる。

 

 

「おおっ」

「可愛いぃ~」

 

 

驚くアリサと頬を赤くするすずか。

 

〈大変だな、ユーノ〉

 

〈うん……〉

 

「賢い賢い~」

 

「すご~い」

 

アリサとすずかはユーノの頭をやや強めに撫でていた。

 

〈ご、ごめんね……ユーノ君〉

 

〈だ、大丈夫だよ……〉

 

俺となのはは苦笑しながらそれを眺めるのであった。

 

 

 

 

 

暫くすると翠屋のドアが開いてサッカー選手達が出てくる。

 

挨拶をして解散した後、キーパーをやっていた少年がスポーツバッグのポケットから青い菱形をした宝石らしい物を取り出し、それを眺めて微笑んだ後ズボンの右ポケットに入れた。

 

そして、マネージャーと一緒に帰っていく。

 

「あ……」

 

なのはが気付いたみたいだ。

 

ちなみにユーノはアリサとすずかの2人に玩具のごとく構われていたため気付いていない。

 

〈どうした?〉

 

〈今、キーパーやってた男の子……ジュエルシードみたいなのを持ってた様な……〉

 

〈うん、俺もそれらしい物が見えた。どうする?〉

 

〈アレス君も見えたなら……やっぱりジュエルシードだね。どうしようか?〉

 

〈そうだな、このまま追いかけて奪うのはほとんど強盗だし。そうだな、1つの案がある〉

 

〈どんなの?〉

 

〈そりゃあ、物々交換。あれと同等位の何かを渡してジュエルシードを貰う〉

 

〈で、でも……私そんなの持ってないよ?〉

 

〈大丈夫。こんな事もあろうかと、良い物を持ってきている。テーブルの下で渡すから手を……〉

 

〈うん、分かったの〉

 

俺はポケットから銀細工のネックレスをなのはの右手に渡す。

 

〈そして作戦はこうだ。俺が魔法の霧であの2人を眠らせるからなのはが少年のポケットからジュエルシードを取り出してレイジングハートに収納して渡したネックレスをポケットに入れる〉

 

〈うん、了解なの〉

 

「あ~面白かった。ハイ、なのは」

 

アリサはそう言ってユーノを渡してきた。

 

散々弄ばれたらしく、目を回していたが。

 

「さて、あたし達も解散だね」

 

そう言ってアリサとすずかは鞄をテーブルの上に置く。

 

「そっか、2人とも午後から用事があるって言ってたね」

 

「そうなの。お姉ちゃんとお出かけ」

 

「あたしはパパとお買い物!」

 

「良いね、月曜日にお話聞かせてね」

 

「そして、俺となのははデートだ」

 

「にゃ!?」

 

途端、顔が真っ赤になるなのは。

 

「ほぅ? あたし達の方こそ、月曜日にたっっっっっぷりとお話を聞かせて貰うわよ?」

 

「そうね。何処まで逝ったのか……そこんとこみっちりと……」

 

アリサとすずかの雰囲気が変わった。背後に般若の面が見えるのだが。

 

「ジョークだ。フランス・ジョークだ」

 

「フランスと言うよりイタリアン・ジョークの様な気がしないでもないけど?」

 

「……何が言いたいのかね?」

 

「別にぃ?」

 

「……」

 

ニヤニヤと笑うアリサ。

 

これ以上は地雷原に飛び込む様なものだからあえて何も言わない事にした。

 

 

 

 

 

アリサとすずかと別れてから行動を開始する。

 

15分位走るとさっきの少年とマネージャーが楽しそうに歩いていた。

 

ちなみにその間にユーノには説明をしておく。

 

〈とりあえず、ユーノが封鎖領域を作ってから魔法の霧で眠らせる。その後はなのは、お願いする〉

 

〈了解なの〉

 

〈うん、分かった〉

 

ユーノが呪文を唱えると空間が変わって周りの人が居なくなる。

 

 

「な、何だ?」

「こ、恐い……」

 

 

2人は驚いて周りを見渡していた。

 

「それでは……リク・ラク・ラ・ラック・ライラック 大気よ水よ(アーエール・エト・アクア)白霧となれ(ファクティ・ネブラ)彼の者らに(イリース・ソンヌム)一時の安息を(ブレウエム)。『眠りの霧(ネブラ・ヒュプノーティカ)』」

 

2人の周りに霧が現れてすぐに2人はその場に崩れた。

 

「それじゃ、なのは」

 

「凄く手際が良いの……」

 

その後、少年のポケットからジュエルシードを取り出し、代わりに銀のネックレスをポケットに忍ばせておいた。

 

ちなみに、少年の記憶をちょっといじって元からこのネックレスを持っていたと記憶させておく。

 

「これで良しかな」

 

「だね」

 

2人を近くのベンチに座らせておいて……結界を解除する。

 

「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック 花の香りよ(フラーグランティア・フローリス)仲間に元気を(メイス・アミーキス・ウィゴーレム)活力を(ウィーターリターテム)健やかな風を(アウラーム・サルーターレム)活力全快(レフェクティオー)

 

さわやかな香りが2人の周りに集まる。

 

そして、2人は目を覚ます。

 

 

「あ……あれ?」

「……ここは?」

 

 

目をこすりつつ周りを見る。

 

何事も無かったかのように歩く人、道路では車が走っていた。

 

 

「疲れてたのかな?」

「わ、私も……かな?」

 

 

2人は顔を見合わせて微笑んでいた。

 

 

 

「これで良し」

「良かった良かった」

 

 

俺となのはは2人の様子を見て一安心していた。

 

「で、人が持って発動していたらどうなってたんだ?」

 

「そうだね……前回の犬とは比じゃない被害が出ていたかも」

 

「だってさ、なのは。もし、なのはが気付いていなかったら……街が大変な事になってたかもな」

 

「うん……」

 

「終わりよければ全て良し。さあ、帰ろうか」

 

俺となのははそのまま家に帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後。

 

俺はなのはに連れられて月村邸に遊びに来る事となった。

 

ちなみに本日は恭也さんも一緒である。

 

すずかの姉、忍さんと恭也さんは恋人同士である。

 

月村邸に着いてドアをノックする恭也さん。

 

ドアが開くとメイド長の『ノエル・K・エーアリヒカイト』……ノエルさんが現れる。

 

「恭也様、なのはお嬢様、アレス様。いらっしゃいませ」

 

一礼してお出迎えである。

 

「ああ、お招きに預かったよ」

 

「こんにちわ~」

 

「こんちわ」

 

微笑んでお出迎えのノエルさん。

 

恭也さんやなのはにはフツーの対応なのだが……。

 

「アレス様?」

 

何故か俺だけは身体検査を行う。

 

何回も『何も持ってないですよ?』と言っても聞かない。

 

ちなみにその時の様子は頬が妙に赤く、目が潤んでいる。

 

……気のせいだと思いたい。まさか、俺の身体をなで回したいだけ……と思いたくない。

 

「はい、今日も変な物は持っていませんね」

 

「……ハイ」

 

藪をつついて蛇……いや、餓えた虎を出したくないからあえて何も言わない。

 

その後は普通に案内される。

 

 

 

 

 

部屋に通されると忍さんとアリサとすずかがテーブルに着いて紅茶を飲んでいた。

 

そして、周りには猫、猫、猫、猫。

 

猫屋敷かここは。

 

すずかの後ろでは専属のファリン嬢が立っていた。

 

「いらっしゃい、恭也、なのはちゃん、アレス君」

 

忍さんが立って恭也さんの前に立つ。

 

なのはに聞いた話だと恭也さんと忍さんは高校の頃からの同級生……とのこと。

 

まあ、今はしっかりと恋人同士と言う雰囲気がプンプンと。

 

「それじゃあ、私と恭也は部屋に居るから……」

 

「分かりました。それでは後で紅茶をお持ちします」

 

ファリン嬢とノエルさんはお茶の準備に向かい、恭也さんと忍さんは自室に行って……まあ、詮索は止めよう。

 

俺となのはもアリサ達が着いてるテーブルに着くと。

 

 

「ニャー」

「ファー」

「キシャー」

 

 

妙に猫達が寄って来て周りに座る。

 

なのはにも寄ってるが、俺の方が多いのだ。

 

ちなみに最後の鳴き声も一応は猫だ。決して地球外生物ではない。

 

「しっかし……あんた……今日も猫が寄ってくるわね」

 

「言うな」

 

「あんたって……マイナスイオンでも放出してるの? ウチに来ても犬がやたら寄って来てるし」

 

目を丸くして俺の方を見るアリサ。

 

確かにマイナス側の闇の力だがマイナスイオンかどうかは分からんわ。

 

「アレス君はマイナスイオン製造器なの? それならウチも欲しいなぁ~」

 

すずかさん、それだと俺に婿に来いと言う遠回しの発言なのですか?

 

「確かに……犬を躾るのにもってこいよね。駄犬を躾るのは主人の役目だし!」

 

アリサ。違うキャラ入ってないか? 異世界から使い魔(平賀○人)でも呼んだのか?

 

「ダメだよ……アレス君は……」

 

何やらブツブツ呟いてるなのは。あえて聞かないぞ、俺は。

 

気を紛らわそうと周りを見るとユーノが猫に追いかけ回されていた。

 

……まあ、殺される訳じゃないから大丈夫だろ。

 

俺は放っておくことにした。

 

〈た、助けて~〉

 

〈頑張れ! 気合いがあれば何とかなる!〉

 

ユーノから救難の念話が来たが一応、応援だけはしておいた。

 

「は~い、お待たせしました~。イチゴミルクティーとクリームチーズクッキーで~す」

 

お盆を持ったファリン嬢が現れ、その足下をユーノと子猫が走りまくる。

 

「あ、あわわわわ」

 

ファリン嬢はバランスを崩して倒れそうになる。

 

俺は瞬時に駆け寄り、ファリン嬢を支える。

 

「はわわわ、アレス君ごめんなさい!」

 

どうにか惨事にならず、一件落着と言ったところか。

 

 

 

 

 

暫く、お茶を飲んで菓子を食べて会話を楽しんでいた。

 

ちなみに俺は会話にはほとんど参加はしていない。

 

と言うか、アリサと軽い口喧嘩になるからだ。

 

まあ、彼女は俺を嫌っている訳でもないし、俺もこういう関係は嫌いではない。

 

「む?」

 

魔力反応が現れた。

 

どうやらジュエルシードが発動したみたいだ。

 

〈アレス君……ユーノ君……〉

 

なのはからの念話。

 

〈すぐ、近くみたいだ。どうする?〉

 

〈どうするも……ユーノ、レッツゴーだ〉

 

〈え?〉

 

〈ユーノが突然茂みに飛び込む。そして俺となのはが探すと言ってこの場から離れる。何の違和感も無い〉

 

〈そうだね……それが良いよ〉

 

〈善は急げ、だ。頼む、ユーノ〉

 

〈分かった。それじゃあ行くよ〉

 

そしてユーノはなのはの膝元から離れて草むらに飛び込んで行った。

 

「あ……」

 

「どうしたの?」

 

「何か……見つけたのかな? 探してくる」

 

「それじゃ、俺も一緒に行くよ。アリサとすずかは待っていてくれ。すぐに戻ってくる」

 

「うん、分かった。早く戻ってきなさいよ?」

 

「分かってるって」

 

俺となのはは魔力反応があった場所に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

「ユーノ、封鎖領域を」

 

「了解。僕に出来るのはこれくらいだからね」

 

そう言ってユーノの足下にミッド式魔法陣が展開される。

 

すると、周りの空間が切り離される。

 

その直後、森の上に何かが見えた。

 

「……あれは?」

 

俺達は呆然とした。

 

「……でかい。でかいんだが、子猫だな」

 

「……うん」

 

「……」

 

ユーノは呆然としていた。

 

高さ7~8mはあると思われる子猫。

 

『でかい子猫』とはこれまた如何に!?

 

ドシンドシンと大きな足音を立てて子猫は歩いて行く。

 

「アレは……」

 

「た、多分、あの子猫が願った『大きくなりたい』と言う願いが叶ったのかな……と」

 

「確かに間違ってはいないのだが、何か釈然としないんだが」

 

「同感」

 

俺は子猫を見ながらそう呟いた。

 

「だけど、このままだと危険だから……元に戻さないと」

 

「そ、そうだね……」

 

「まあ、こんなでかい子猫見たらすずかとアリサが倒れるな」

 

「確かに……」

 

苦笑してるなのは。

 

「それじゃ、さっさと元に戻そうぜ」

 

俺はペンダント化したエヴァを握りしめる。

 

最近、空気化してるが気にしない。

 

レイハさんもあまり喋ってないし。

 

「うん。レイジングハート!!」

 

なのはが胸元から真紅の宝石を取り出した瞬間。

 

後ろから来るのは!

 

「来たか……」

 

呟くが2人には聞こえていない。

 

黄金色の魔力光。

 

その魔力光は子猫に当たって子猫は泣き叫んだ。

 

「ミャアァァ!」

 

「誰!?」

 

なのはが後ろを振り返った。

 

100m位後ろの電柱の上に立っていたのは……金髪のツインテールをした女の子だった。

 

手には黒い杖の様な物が握られていた。

 

「バルディッシュ、フォトンランサー電撃」

 

【フォトンランサー・フル・オート・ファイア】

 

金髪の女の子から放たれる魔法。どうやら電撃タイプだな。

 

まあ、知ってるんだが!!

 

数発が放たれ、子猫に当たって更に子猫はよろける。

 

「なっ! 魔法の……光! そんな!」

 

「レイジングハート、お願い!」

 

【スタンバイレディ・セットアップ】

 

「エヴァ、頼む!」

 

【了解です、主様。起動(アンファング)!!】

 

俺は騎士甲冑を纏い、なのははバリアジャケットを纏う。

 

その時、もう1つの反応が現れた!

 

「これは」

 

何かが違っていた。これはなのはの手には負えない!

 

まさか、転生者!?

 

もし、転生者ならなのはではなく……俺の仕事だ!

 

「なのははあの女の子を! 俺は現れたもう1つの反応を見る!」

 

「分かった!」

 

なのはは子猫の方に向かって飛んでいった。

 

 

ィン……

 

 

僅かに聞こえた……投擲音!?

 

「くっ!」

 

装甲手楯(パンツァーシルト)!】

 

エヴァが自動で目の前に障壁を展開する。

 

何本かがシールドに当たって弾かれ、地面に刺さる。

 

「この短剣は……ダーク!?」

 

地面に刺さった短剣を見ると、Fateで真・アサシンが使用していた投擲用の短剣に酷似している。

 

「へぇ? 転生者の分際でわざわざベルカ式を使ってるとはね……」

 

現れたのは黒を基調としたバリアジャケットを纏う男だった。

 

黒髪で手には紅く輝く魔力光で出来た鎌を持っていた。

 

身長は155㎝位で年齢は14歳前後か?

 

切れ長の目に漆黒の瞳。見ると濁って見える。

 

こいつ、善人では……ないな!

 

「そう言うお前だって、ミッド式を使ってるじゃないか」

 

「ふん。郷に入っては郷に従えってね。デバイス無しで魔法を使うのなんて怪しいじゃないか」

 

「ま、そりゃそうだ」

 

俺は左手の杖を握る。

 

「しかし、変なヤツだな。ベルカ式なのに見た目はミッド式の杖だなんて」

 

「俺の趣味だ」

 

「ふぅん、そうかよ」

 

男はそう言って鎌をかざす。

 

「行くぜ、ハサン。フォトンランサーだ!」

 

【イエッサー】

 

男の周りに現れる紅い玉。それが一斉に襲いかかってくる。

 

数は……30前後か!

 

俺はそれを避けて弾きつつ男に近づく。

 

「やっぱりベルカの使い手だけあって近接戦闘で来るか」

 

「まあ、な」

 

何となくだが、イヤな予感を感じる。

 

何だか分からないが、俺の六感が何かをささやくのだ。

 

(ことわり)の指輪』は今は使えない。近くではなのはとフェイト、見てないけどユーノとアルフも戦ってるんだ。

 

巻き込む訳には……いかない!

 

「さて、と。ここでちょいと交渉と行かないか?」

 

「何?」

 

男は鎌の先を地面に下ろす。

 

「あんたの狙いはなのはだろ? なら俺はそれ以外のキャラを頂いても良いよな?」

 

……この男は何を言ってるのだ?

 

もしや。

 

「……まさか、フェイトやはやて、アリサやすずかも」

 

「ご名答。なのははあんたに譲るが、その他の女の子は俺が幸せにしてやるよ!」

 

男の口元がつり上がる。久しぶりに見たぜ、あんな邪悪な笑みは。

 

「楽しみだ! ああ、楽しみだぜぇ! 股ぐらがいきり立つ! フェイトとはやては同時に頂いた方が良いよなぁ!?」

 

だんだんと腹に黒い物が溜まっていく。

 

この外道は……極刑に値する!

 

「黙れ……」

 

「あん?」

 

「黙れぇ!!!!」

 

俺は一気に第4チャクラまで回して身体能力を上昇させて男の鳩尾を突く。

 

「ぐぅはぁ!」

 

男は10m位吹っ飛び、木に激突する。

 

「貴様の様な外道と組むつもりは毛頭無い! さっさとこの世から消し去ってやる!」

 

魔力を放出して自動障壁も展開させる。

 

「てめぇ……『ネギま!』の魔法も使えるのかよ」

 

男は口から出た血を手で拭うとゆっくりと立ち上がった。

 

「さて? 何の事だか?」

 

「ナメやがって……だが、この技を見ても貴様は戦えるかな?」

 

男は右手を掲げた。

 

空中に現れる霧の様な物。そして、それは固まってある形になっていった。

 

「心臓……?」

 

俺は何となく、イヤな予感を感じた。

 

「くくく……宝具『妄想心音(ザバーニーヤ)』」

 

 

 




型月系の能力が多いのは気のせいですw



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第6話 聖○士に同じ技は二度通用しないと言うのを忘れたか?

 


気と魔力は使えますが、小宇宙(コスモ)までは感じてませんよ?




 

 

 

 

 

「くくく……宝具『妄想心音(ザバーニーヤ)』」

 

それを聞いて俺は即座に無詠唱の魔法の矢3発を地面に刺して爆発させた。

 

爆風が周辺に覆われて視界が見えなくなる。

 

あの技はダメだ。

 

魔力が高ければ防げる率は高くなるがゼロにはならない!

 

ここで死んでしまっては色々面倒になる!

 

そして、回避して……もしなのはとかユーノを人質に取られたら……。

 

ダメだダメだダメだ!

 

こうなったら……アレを使うか。

 

「奥義・二重身(ドッペルゲンガー)

 

俺はそう呟くと魂を2つに分ける。

 

分身体を囮として本体である俺はひとまず隠れるしかない!

 

仮にあの技をしのいだところで下手をしたらなのはの心臓を握りつぶすかもしれない!

 

今回は、逃げるしかないみたいだな!

 

俺は気と魔力を完全にゼロにしてその場を離れた。

 

 

 

 

 

-分身体アレス視点ー

 

 

本体は……よし、ここから離れてるな。

 

あくまで俺はここであいつの足止め。分身体の俺が死んでも本体に戻るだけ。

 

結構、便利と言えば便利な技かもな。

 

「くくく、目くらまししても無駄だ! 『妄想心音(ザバーニーヤ)』」

 

その言葉と共にグシャッと言う音が響き、同時に俺の心臓が潰された。

 

「ぐ……が……」

 

俺はその場に片膝を付いた。

 

「残念だったな? 目くらましをしようが俺のこの技からは逃れられん!」

 

「ぐ……」

 

「さて、このまま放っておいても貴様は死ぬだけ。後は……まあ、なのははゆっくりと手に入れるとしようか」

 

男は後ろを振り返ってそのまま飛んでいった。

 

「くくく……ざまぁみろだな……」

 

俺はそう呟きつつその場に倒れて意識を失っていった。

 

 

 

-分身体アレス視点・終了-

 

 

 

 

なのはの元にたどり着くと既に負けていたのか、気を失って倒れていた。

 

ちなみに子猫も元の姿に戻っていた。

 

その後はなのはを治療してすずか達の元に帰っていった。

 

 

 

 

 

その夜。

 

なのはは恒例と化してしまった俺の家でお泊まり。

 

無論、ユーノも一緒である。

 

「アレス君……負けちゃった」

 

ベッドの上で正座をして下を向くなのは。

 

まあ、確かにラミエルの力でパワーアップはしてるがまだまだ戦いに関しては素人の域を出ない。

 

「ああ、俺も何とか逃げるに精一杯だった」

 

「そんな……アレスでも?」

 

「いや、勝てるには勝てたんだが……」

 

「?」

 

「あいつの切り札がな……」

 

俺は切り札である『妄想心音(ザバーニーヤ)』の事を教えた。

 

ちなみに、分身体の記憶も本体の俺にきちんと残るのだ。

 

「嘘……」

 

「そんな……」

 

2人は目を見開いていた。

 

「まあ、魔力が高ければ防げただろうが、もし防げたとしてもなのはやユーノを人質に取られたら……」

 

「ごめんなさい……」

 

「気にするな。俺だって100%防げる自信は無いし、それになのははあの金髪の女の子と戦うんだろ?」

 

「うん……」

 

「ま、この調子だと次も出会うだろうから……俺はその時にカリを返してやる」

 

【そうですわね。お兄様は同じ相手からの二度の敗走はありませんもの】

 

「あ……」

 

エヴァはいつもの調子で喋ってしまった。

 

「こ、こらエヴァ」

 

【あ……】

 

なのはとユーノ、2人の目線が妙に冷たい。

 

「ねえ、ユーノ君? デバイスに『お兄様』って普通呼ばせる?」

 

「いや、僕は聞いたこと無いよ?」

 

【私もありませんね】

 

レイハさんもバッサリだった!

 

「へぇ? アレス君ってそういう趣味があったんだ」

 

「いや、ちょっと待て。なのはは勘違いしているぞ?」

 

「今度アリサちゃんとすずかちゃんに教えてあげようかなぁ?」

 

「待て待て待て! すずかは良いにしてもアリサに教えた日には!」

 

ここぞとばかりにおちょくって来るに違いない!

 

満面の笑みで『お兄様ぁ?』と言ってくる! 間違いなく!

 

その後、『今度の温泉旅行では一緒に洗いっこしようね♪』と言われてしまった。

 

え? 混浴はもう逃れられないのですか?

 

そもそも、海鳴温泉に混浴はあるのですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

世間は連休に入りました。

 

所謂GW(ゴールデン・ウイーク)と言うヤツです。

 

まあ、当然の事ながら……俺は旅行に出掛けてます。

 

高町家、藤之宮家、アリサと月村家(メイドさん含む)と言う大人数。

 

車で揺られること2時間半。

 

温泉宿に到着した俺達は……。

 

少し周りを散策した後、颯爽と風呂に入りました。

 

「どうしてこうなった……」

 

俺は今、世の中の男性が大喜びする桃源郷、女湯に来ていた。

 

無論、混浴ではない。つーか、女湯だって言ってんだろ! それに、そうそう混浴の温泉なんぞあってたまるか!

 

理由は単純明快。

 

温泉入り口に張ってあった紙。

 

 

 

『女湯への男児入浴は11歳以下のお子様のみでお願いします』

 

 

 

ちょっと待てやコラ。

 

このネタはStSのネタじゃないのか?

 

それとも、またやるのか?

 

まあ、メタ発言は止めておこう。

 

ちなみにユーノも強制連行済み。

 

淫獣と淫魔人の二つ名を刻もうじゃないか!

 

……母さんに泣きつかれたから拒否は出来ないんだけどね。

 

『エヴァが一緒に入りたいです~』と言ってるが『今はダメだろ』と何とか断ってるが。

 

腰にタオルを巻いてからゆっくりと行く。

 

ユーノは入る前から既にのぼせているように見えるが。

 

後で頭に水をかけておこう。

 

 

 

 

 

 

「アレスく~ん、背中洗って~」

 

なのはが頼んで来る。

 

「はいはい……」

 

言われるがままになのはの背中を洗う。

 

「やっぱりアレス君の洗い方が一番良いよ。丁度良い加減で洗ってくれるし……」

 

少し頬が赤いなのは。

 

ちなみに左右に分かれてアリサとすずかの2人がジーッと眺めていた。

 

 

「……ゴクリ」

「ホント気持ち良さそう……」

 

 

2人の頬も赤かった。

 

なのはの背中を流した後。

 

「さあ、アレス! あたしの背中も洗いなさい!」

 

 

 

15分後

 

 

 

 

「あ、あんたのその……あ、あ、洗い方は……どういう事よ!?」

 

顔が茹で蛸の様に真っ赤になっていたアリサがいた。

 

「どういう事と問われても。普通に洗っただけだが……?」

 

「巫山戯ないで……あんたのその洗い方は……何というか……」

 

アリサはそのまま湯船の方に向かって歩いていった。

 

「次は私の番だよね?」

 

 

 

15分後

 

 

 

 

「ふあぁぁぁ……」

 

もはや言葉になってないんだが。

 

アリサと同じように真っ赤になったすずかがここに居た。

 

「大丈夫か? すずか?」

 

「だ、大丈夫……だよ……?」

 

やや目が虚ろになってませんか?

 

「すっごいね~アレス君は」

 

「そんなに気持ちいいのかしら? すずか?」

 

現れたのは忍さんと美由希さんだった。

 

更にノエルさんとファリン嬢と……母さんと桃子さん。

 

ものすげーイヤな予感を感じるのですが。

 

以下、ダイジェスト風にお送りします。

 

 

 

 

 

「くっ、この洗い方は!!」

「な、何なのこの絶妙な……!」

「これは……!」

「はわわわっ凄く気持ち良いです~」

「さすがはアレスちゃんね~やっぱり気持ちいいわ~」

「な、直美さん、週一でも良いからレンタルをお願いして良いかしら?」

 

 

桃子さん、俺はレンタル物件では無いのですが!

 

 

 

 

6人の女性方を洗ったのでようやく自分の身体を洗うことが出来る。

 

「ふぅ、これ以上居たらのぼせちまう」

 

スポンジを泡立てて腕をこすろうとしたら。

 

「……あら?」

 

握っていたスポンジは何故かノエルさんの手に。

 

 

「お礼に洗ってあげます」

「そうね。お礼は大事よね」

 

 

後ろからは桃子さんの声が。

 

「へ? あの……自分で……?」

 

「何か言いました?」

 

ノエルさんの目が据わっておられました。逆らえません。

 

あと、鼻から赤い液体が流れてる様な気がするんですが。

 

鼻から出る忠誠心なら某紅魔館のメイドさん(十六夜咲夜)の得意技であってノエルさんが習得して良い技では無いのですよ?

 

あと、それは忍さんとすずかにお願いしたいのですが!

 

 

 

「それでは行きます!」

 

 

 

結果的にはノエルさんは前の方を。

 

桃子さんは後ろの方を。

 

洗って頂きました。

 

ええ、上手でしたよ。

 

上手でしたが……まあ、ここはあえて言いませんが。

 

その後はなのは、アリサ、すずかの3人も来て頭を洗って貰いましたよ……。

 

ええ、隅々と……綺麗にさせて貰いました。

 

何この後宮(ハーレム)的な扱いは。

 

 

 

 

その後はなのは達3人に連れられて旅館内を散策。

 

ちなみに、全員浴衣を着用している。

 

すると、前から来るのは額に宝石みたいなモノを入れてる橙色髪の女の人。

 

まあ、アルフさんですね、分かります。

 

「はぁい、おチビちゃん達」

 

そう言って俺達の元に歩いてくる。

 

「! ……そんな……あんたは……確か、あいつが……」

 

アルフは驚愕の表情で俺を見るアルフ。

 

大方、あの男があの小僧なら病院送りにして当分出てこられないとか言ったのであろう。

 

「ん? 何か……用ですか?」

 

俺は何事も無いかの用に返した。

 

「い、いや、何でも無いよ……」

 

そう言ってなのはの方を見る。

 

「ふぅん、この子が……ねぇ……」

 

〈どうした? 重傷と伝えられてた俺がいてびっくりしたのか?〉

 

アルフに念話を飛ばす。

 

「っ!」

 

俺の方を見るアルフ。

 

〈まあ、あの男に伝えておく事だな。俺を簡単に退場させられると思わないことだ……と〉

 

〈……伝えておくよ〉

 

「ちょっと? 何処のどちら様ですか?」

 

アリサがアルフに詰め寄る。

 

「あははは、ごめんごめん、ちょっと……知ってる子に似てたからさ」

 

アルフは頭をかきながら笑い出す。

 

「そうですか……」

 

「あら、可愛いフェレットだね~」

 

そう言ってユーノの頭を撫でるアルフ。

 

〈まあ、いいさ。今は挨拶だけ。忠告はしておくよ。子供はお家に帰って仲良く遊んでな。おイタが過ぎると……ガブッと行くわよ?〉

 

アルフは八重歯を見せながら微笑んできた。

 

〈くくく、子供だからと言ってナメてると……そちらがガブッとやられるかも知れんぞ?〉

 

〈良いね~悪ガキを躾るってのも……悪くないね〉

 

〈ほぅ? 悪さをする『狼』を躾るのも悪くなさそうだな?〉

 

俺は少しだけ……殺気を放出した。

 

〈くっ!〉

 

アルフは俺から目を逸らした。

 

「さぁて、俺は行くが……なのは達はそのお姉さんと遊ぶのか?」

 

俺はアルフの横を歩き出した。

 

 

「あ、待ってよアレス君」

「待ちなさいよ!」

「待って~」

 

 

なのは達3人も俺の後を着いて来た。

 

 

 

 

 

その後は俺達は卓球をやった。

 

ちなみに、アリサ・すずかペアと俺・なのはペアになってプレイした。

 

接戦だったが、俺となのはペアが勝った。

 

アリサは顔を真っ赤にして咆吼していたのは言うまでも無かった。

 

更にアリサは俺にシングルでアリサ・すずかはペアと言う変則対決を強制。

 

代わりとして俺はラケット二刀流でやらせろと提案。

 

結果は……。

 

圧勝だったがね!

 

その時アリサは……

 

「何でそんなに早く反応するのよ!どういう目をしてるのよ!?」

 

と吼えました。

 

まあ、ライフル程度なら止まって見えるんですが。

 

「し、しかも……右でも左でも凄く器用に打ち込んでくる……」

 

すずかも肩で息をしていた。

 

「にゃははは……アレス君……両手利きなんだよ?」

 

なのはは知っていたがアリサとすずかは知らなかった……と言うか、教えていなかったり。

 

「聞いてないわよ!」

 

そんなこんなで時間は流れる。

 

 

 

 

 

就寝時間。

 

大人部屋と子供部屋に別れて寝る俺達。

 

朝起きたら母さんが布団に潜り込んでいそうで恐いんだが。

 

アリサとすずかは既に眠っている。

 

なのははモゾモゾと時折動いてるからまだ起きてるのだろう。

 

〈眠れないのか?〉

 

俺は念話をなのはに飛ばした。

 

〈うん……〉

 

〈あの金髪の娘が気になるのか?〉

 

〈うん……。あんな寂しそうな瞳……してるんだもん……〉

 

〈そうか。俺は見てないから何とも言えないが〉

 

〈きっと、アレス君も見たら分かるよ。何もない……空っぽな瞳だから〉

 

〈そうか。彼女とは……どうする?〉

 

〈友達になりたい〉

 

〈そうだな。なのはとなら、良いお友達になれそうだ〉

 

〈うん。それに、アレス君とも友達になったら彼女も幸せになれるかな?〉

 

〈どういう事だ?〉

 

〈だって、アレス君と知り合った時に嬉しいことがあったから……お父さんが……退院してくれたから……〉

 

〈なのは……〉

 

〈アレス君もお友達になってくれるよね?〉

 

〈ああ〉

 

その時、魔力反応を察知した。

 

どうやら、ジュエルシードが出たみたいだな。

 

〈アレス君〉

 

〈ああ。どうやら……ジュエルシードだな。ユーノ、起きてるよな?〉

 

〈う、うん〉

 

こ、こいつ……俺となのはの会話を……聞いてるハズは無いか。

 

なのはにだけ行くように調整してるはずだし。

 

その後、俺となのははこっそりと抜け出して外に出た。

 

ちなみに、母さんと父さんには他の人が気付かないように誤魔化す様にお願いをしておいた。

 

 

 

 

 

行く途中。

 

俺は、なのはに話を持ちかけた。

 

「あの黒衣の男は俺が転移魔法で転送してから戦う」

 

「うん。私はあの子だね」

 

「僕は、あの使い魔を押さえるよ」

 

ちなみにアルフの正体は既になのはに伝えてある。

 

「ああ、頼む。だが、黒衣の男はなのはとユーノを人質に取るかもしれない」

 

「それは……」

 

「う……」

 

「大丈夫だ。それをさせない為に俺は……1つ能力を使う」

 

「能力?」

 

「ひょっとして、レアスキル?」

 

ユーノの問いに俺は頷いて答える。

 

「なのはとユーノに1つ約束がある。それは、俺のこの能力を口外しないで欲しい」

 

「うん」

 

「分かった。レアスキルは希少故に狙われる対象になる事だってあるからね」

 

2人は頷いてくれた。

 

「ありがとう。それじゃあ、俺の能力……『二重身(ドッペルゲンガー)』」

 

そう呟くと俺の身体が2つに分かれる。

 

「なっ!」

 

「アレス君が2人に……!」

 

「これが俺の能力、『二重身(ドッペルゲンガー)』だ。まあ、魂を2つに分けて分身体を作る大技かな?」

 

「た、魂を……」

 

「2つに……分ける?」

 

なのはとユーノは呆然と俺達を見ていた。

 

「本体と分身体に別れて、分身体は一定のダメージを喰らうと本体に強制転移する」

 

「故に、分身体の心臓が潰されても……本体にはほとんどダメージが残らないんだ」

 

俺達はお互いに見合っていた。

 

「そうか、それなら……アレスが言っていた技を回避出来る!」

 

「そう言う事だ。今からは分身体が一緒に行くから本体は気配を完全に消して様子をうかがう」

 

「うむ、それじゃあ行くぞ? なのは? ユーノ?」

 

「何か……変な感じなの……」

 

「僕も同感……」

 

なのはとユーノは俺の分身体と共にジュエルシードの方に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

-分身体アレス・視点-

 

俺達が魔力源に辿り着くとジュエルシードを手にしたフェイトとアルフ、そして黒衣の男。

 

全員が俺達の方を向いた。

 

「て……てめぇ!」

 

全員が驚いた視線で俺達を見ていたが、特に男の目は見開かれていた。

 

「よう、また会ったな?」

 

俺は口元を吊り上げて微笑んだ。

 

「慎二?」

 

金髪の少女……フェイトは不思議そうに男……慎二を眺めた。

 

「気にするな、フェイト。あいつらは敵だろ?」

 

「うん……そうだね……」

 

フェイトはジュエルシードをバルディッシュにしまうと黄金色の魔力刃を出して構えた。

 

「どうやって復活したかは知らんが……」

 

慎二は両手を掲げた。

 

そして、両手に現れる疑似の心臓。

 

「今度こそ、念入りに……ぶち殺す!」

 

俺は杖を持って構えた。

 

「おっと、動くなよ? 動けば……なのはの心臓がグッシャリ逝くかも知れないぞ?」

 

口を三日月の様に吊り上げて微笑む慎二。

 

所謂、邪笑と呼ばれる笑い方だ。

 

「慎二! やりすぎだよ!」

 

フェイトが慎二の方を向いてそう言った。

 

「何を言ってる、フェイト? あいつはひょっとしたら……お前の母さんを殺すヤツなのかもしれないんだぞ?」

 

「……っ!」

 

「そうだよ、フェイト! あたしは旅館でキツめの殺気を受けたんだ! あいつは……あたしとフェイトも殺すかもしれないんだよ!?」

 

まずったな……。旅館で少々やりすぎたか?

 

心の中で苦笑するしかなかった。

 

「そんな! アレス君はそんな人じゃないよ!」

 

「くくく、君は騙されてるんだよ! さあ、僕が救ってあげるよ! 『妄想心音(ザバーニーヤ)』!!!」

 

慎二は左手の疑似心臓を握り潰した。

 

同時に俺の心臓も握り潰された。

 

こいつ……こいつの宝具は……少し強力になってるみたいだな。

 

だんだんと意識が遠くなっていく。

 

 

「アレス君!」

「アレス!」

 

 

なのはが俺に駆け寄る。

 

〈上手い演技だ、なのは〉

 

〈えへへ〉

 

〈僕はどんな感じ?〉

 

〈ユーノもなかなかいい感じだな。俳優としてデビューするか?〉

 

〈い、いや、それはさすがに……〉

 

「はははは! 今度は復活しないように死体をバラバラにして海に捨て去ってくれるわぁ!」

 

慎二が左手にデバイスを持って来ようとしたその時。

 

「残念ながら、そんな機会はもう来ないぜ?」

 

本体の俺が後ろから慎二の右手を掴んで捻っていた。

 

 

-分身体アレス視点・終了-

 

 

 

 

 

 

俺は慎二が左手にデバイスを持って歩み寄ろうとしたとき。

 

一気に第5チャクラまで回してから背後に寄ってこう言った。

 

「残念ながら、そんな機会はもう来ないぜ?」

 

後ろから左腕を首に回して、右腕を慎二の右手首を掴んで背中に回して捻りあげる。

 

右手の上に現れていた疑似心臓は霧散した。

 

「そ、そんな!?」

 

「な、何で!?」

 

フェイトとアルフは目を見開いて俺の顔を見ていた。

 

「その声は……! てめぇ! どうして!?」

 

「ふん。よく見てみろ」

 

慎二はなのは達の方を見る。

 

倒れていた俺は亡霊みたいに透けてから俺の方に飛んできて……合体する。

 

「な! 『偏在』か! ゼロの使い魔の魔法も使えたのか!?」

 

「まあ、そう言う事にしておいてやるよ。頼む! エヴァ!」

 

【了解です。次元転送します】

 

足下に広がるベルカ式魔法陣。

 

「き、貴様!」

 

「てめぇとは一対一(サシ)で勝負したいんでな!」

 

一気に視界が変わる。

 

次元転移で簡単に戻れない場所に転移したのだ。

 

周りに広がる……地平線。

 

周りには草木が生えてない荒れ地。岩や石がゴロゴロ転がっている……不毛な大地だった。

 

「そう簡単に逃げられないようにリク・ラク・ラ・ラック・ライラック……」

 

【そうですわね、魔法の監獄(ゲフェングニス・デア・マギー)

 

同時に展開される結界魔法。

 

ネギま!式とベルカ式の両方で展開されてるからそう簡単に逃げる事は出来ない。

 

「くっ……てめぇ……だが良いか。どうやら本体だから……てめえをぶち殺せば結界も解けるって訳だ」

 

慎二は左手に鎌のデバイスを持ち、また右手を高く掲げた。

 

そして、また疑似心臓が現れる。

 

俺は第5チャクラまで全力運転、魔力も限界まで身体に張り巡らせて防御に回る。

 

【装甲手楯(パンツァーシルト)】

 

目の前に現れる漆黒のベルカ式魔法陣。

 

「今度こそくたばれ! 『妄想心音(ザバーニーヤ)』!」

 

慎二は右手の心臓を握り潰した。

 

 

パキィン

 

 

甲高い音を立てて……何も起こらなかった。

 

どうやら防御は成功したみたいだ。

 

「そ、そんな……幾人もの転生者共を葬って来た俺の宝具が!」

 

「残念だったな。聖闘士(セイント)に同じ技は二度通用しないという法則があるのを知らないのか?」

 

「な、何だよ、それ!」

 

「それに、お前はそんな事をしていたのか?」

 

「わ、悪いか!? お前だって、転生者を葬ってきたんだろ!?」

 

「いや、礼を言わせて貰う」

 

「へ?」

 

「ま、ぶっちゃけ言うと俺はお前らみたいに転生した奴らを捕まえに来たんだよ」

 

俺はそう言うと左手の指輪を掲げた。

 

「『(ことわり)の指輪』起動」

 

そう言うと煙の様な蒸気が噴き出して結界内に広がる。

 

「うわっ」

 

身体が少しずつ変化していく。

 

……何だ? 隣に……誰かが……この気配は!

 

隣に現れる、誰か。忘れるものか。1000年の時を一緒に生きてきたのだから。

 

俺の隣に現れたのは、前世の妹、エヴァであった。

 

そう、麻帆良女子中等部の制服を着ていた。どうやらエヴァも前世の姿に戻ったみたいだ。

 

俺も下を向くと分かる。エヴァと同じ制服。

 

さあ、ヤツはどんな反応をしめすかな?

 

俺はゆっくりと慎二がいた方角に向かって歩き出した。

 

「ち、畜生! 何だよこの蒸気みたいなのは!」

 

慎二が腕を振り回していた。

 

ゆっくりと視界が開けて見ると。

 

「これは」

 

「あらぁ?」

 

俺とエヴァはちょっと驚いた。

 

慎二と呼ばれた男は、そう。黒髪でちょっとウェーブかかった髪型。

 

黄土色の学生服。

 

まあ、ぶっちゃけ言うとFateの間桐慎二そっくりだったのだ。

 

「ひっ! エヴァンジェリンが……2人!?」

 

顔を真っ青にしてその場に座り込む。

 

ふむ? エヴァの存在を知ってると言う事は……Fateの世界とは全く関係ない、そっくりさんなのだろう。

 

しかし、ここまでそっくりとは。

 

「さて、と。貴方の外道っぷりには随分と辟易させてもらったわ」

 

「ひっ……」

 

「エヴァ? 貴女はどう思う?」

 

「そうですわね。私も……ちょっと許し難いかな……と」

 

ゆっくりと慎二もどきに近づく。

 

「それじゃ、栄えある貴方は……」

 

「貴方は……?」

 

「痛みが快楽に変わる体質に変わって貰ってから天に召されるのよ」

 

俺とエヴァは魔力を込めて八重歯を牙に変えて……慎二もどきに襲いかかった。

 

結界内に慎二もどきの叫び声が木霊した。

 

 

 

 

 

 

 

慎二もどきを天界から来た天使に引き渡し、元の世界に転移した。

 

着いた時は既に決着が着いたのであろう、フェイトとアルフが帰る所だった。

 

うむ、記憶の書き換えも無事に済んでるのであろう。

 

「さっすが、あたしのご主人様♪それじゃあねぇ~おチビちゃん」

 

アルフはそう言って飛び立っていった。

 

フェイトも飛び立とうとしたが……。

 

「待って!」

 

なのはが呼び止める。

 

「出来るなら、もう私達の前に現れないで。もし、次があったら……今度は止められないかも知れない」

 

フェイトは背中を見せながらそう言った。

 

「名前……貴女の名前は!?」

 

「……フェイト。フェイト・テスタロッサ」

 

「あの……私は……」

 

なのはが自己紹介しようとしたらフェイトはそのまま飛び去ってしまった。

 

「行っちまったな……」

 

「うん……」

 

「……負けたのか?」

 

「うん……」

 

なのはは今にも泣きそうな顔をしていた。

 

「そうか。強く……なりたいか?」

 

「……うん……」

 

「そうか……」

 

俺はなのはに抱きつく。

 

「アレス君……」

 

「一緒に、魔法の練習するか?」

 

「うん……。アレス君……ユーノ君……私を鍛えて」

 

「分かった。なのは、君を最強の魔導師にしてあげよう」

 

「分かったよ、なのは。僕も協力する」

 

こうして、フェイトとの戦いに2連敗したなのはは俺とユーノの元、魔法の練習を開始するのであった。

 

 

 




 

ちなみに二重身(ドッペルゲンガー)で分かれた分身体は『アストラル体』とか『エーテル体』みたいな分類になります。

質量を持った幽霊みたいな感じ?

物理攻撃を何割か削減可能です

もっとも、気や魔力などの力がこもった攻撃は普通に通用します


……微妙に穴がありそうな設定ですなw


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第7話 さて、これは…どうしたものか

 


ユーノ君も幸せになって貰おうかw


 

 

 

 

 

 

温泉宿での戦いから1週間が過ぎた。

 

あの日からなのはと俺は魔法の練習と模擬戦を行うようになった。

 

なのはの上達具合は凄まじいモノがある。

 

特に、収束型の砲撃は……威力は原作のディバインバスターを凌駕してプチ・スターライトブレイカー級になってなおかつそれが6連射が可能になっていた。

 

あと、他の射撃も一度に40個の魔力弾をコントロール出来る様になっていた。

 

しかも一撃が下手な魔法障壁を突き破ると来たもんだ。

 

そして、接近戦の回避能力も格段に向上。俺の攻撃も5回に1度は回避出来る様になっていた。

 

俺の動きに慣れたら大抵のヤツは遅く感じる事だろう。

 

……これでカートリッジシステムを使用した日にはどうなるのか。

 

背中に寒いモノが走るぜ!

 

そう言えば、なのはは魔力切れを起こしにくいな。

 

あれだけ巫山戯た砲撃を撃っておいて尽きる気配がほとんど無い。

 

……リンカーコアに『S2機関』でも搭載してるんじゃなかろうな。

 

まあ、そのうちスターライトブレイカー12連射とか出来そうになりそうだから……機会を見て気を魔力に変換する指輪を渡しておこう。

 

魔王を超えた『魔皇』を作ったかもしれないが気にしない事にした。

 

気にしたら……負けだ!

 

 

 

 

 

いつもの様にジュエルシードを散策していると。

 

かつてユーノが倒れていた場所に。

 

〈お腹すいた……〉

 

念話が聞こえて来たので見ると、ユーノと同じ様な姿をしたフェレットが倒れていた。

 

「っ!」

 

ユーノが動揺しているのが分かった。

 

「……ユーノ君?」

 

なのはがユーノを見る。

 

「あの……この子は」

 

冷や汗をダラダラ垂らしているユーノ。

 

「どうした? 押し掛け女房か?」

 

「ハイ……」

 

小さな声で呟くユーノであった。

 

……え? マジですか?

 

ユーノにこんな恋人がいたと言う話は聞いたことが無い。

 

ひょっとして、転生者?

 

うむ、例によって後で聞いておこうか。

 

俺達は行き倒れになっているフェレットを拾って俺の自宅に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

なのはの自宅からユーノが寝てる籠を持ってきてその中に寝かせる。

 

そしていつもユーノが食べてるビスケットを持ってきて傍に置いておく。

 

「……ユーノ君の匂いだぁ」

 

そう言いながら籠の中でゴロゴロ悶えてる様に見えるフェレット。

 

「それで? このフェレットとはどう言う関係?」

 

「……彼女の名は『ユナ・スクライア』。僕と同じ部族で育った幼馴染みなんです」

 

おいおい、マジかよ。

 

高確率で転生者じゃねぇかよ……。

 

「血は繋がってません。彼女とは……将来を約束した仲なんです……」

 

少し、俯いてそう語るユーノであった。

 

その割には彼女を恐れてる様に見えるのだが?

 

「ただ……彼女は……常にベッタリで……」

 

ひょっとして?

 

ヤンデレ属性が付与されとるんかいな?

 

「僕が女の子と話をしていると……ちょっと不機嫌になると言うか……」

 

「へぇ~ユーノ君、愛されてるんだね」

 

にこやかな笑顔で話すなのは。

 

「行かないで!! ユーノ!」

 

大声を上げて起き上がるユナ。

 

そして周りを見渡す。

 

「ここは……ああ! 見つけた!」

 

そう言ってユーノに抱きつくユナ。

 

「ぎゃあぁぁぁ! 背骨が折れるぅ!」

 

相撲のサバ折りのごとく抱きつくユナ。そして叫ぶユーノ。

 

やはり俺の家に連れてきて良かった……と思う俺がいた。

 

 

 

 

 

まあ、ユナは何処に住むようになったかと言うと。

 

当然高町家だった。

 

今更1人(?)増えても大差無いだろうし。

 

「ああ、ユーノと2人っきりでお風呂に入りたい時は俺の家を使うと良いぞ」

 

「アレスー!」

 

「あ、ああ、ありがとうございます!! それじゃあ、早速お借りしますね!!」

 

そう言ってユナはユーノを引きずって風呂に向かって逝った。いや、『行った』だった。

 

「で、なのははどうする? もう少し、俺とイチャイチャするか?」

 

 

 

ボンッ

 

 

 

何か爆発したのかと思ったらなのはの頭から蒸気が。

 

「あああ、も、もう帰るね! そろそろご飯だと思うから!」

 

そう言ってなのははすっ飛んで出ていってしまった。

 

【なかなかやりますわね、お兄様?】

 

「まあ、意外となのはは純情みたいだからな」

 

【お兄様も純情でしょうに……】

 

「何か言ったか?」

 

【いいえ。それより、ユナの事は?】

 

「そうだな、ちょっと聞いてみるか」

 

俺は例によって天界に念話を飛ばしてみた。

 

 

 

 

 

〈ああ、久しぶり。アレスだけど?〉

 

〈ああ、久しぶりだな。どうしたのかね?〉

 

〈ユーノの幼馴染みのユナって子の事だけど〉

 

〈何? ちょっと待ちたまえ。調べてみるから……〉

 

 

5分経過

 

 

〈どうやら、元見習神の仕業らしい。聞けば、ユーノの幼馴染みと言う立場で転生してなのはに近づく予定だったみたいだが……〉

 

〈もしやとは思うが〉

 

〈うむ。うっかり女性として転生させてしまったらしくてな。どうやら魂は身体に思い切り引っ張られてしまったか、うっかり記憶を消し去ってしまったか……〉

 

〈何処の『あかいあくま』だ。で、どうする?アレもそっちに送った方が良いのか?〉

 

〈君の目から見てどう思う?〉

 

〈……。多分、大丈夫じゃね? ユーノ以外眼中になさそうな雰囲気だと思うし〉

 

〈そうか。ならば君の判断に任せる。もし、害をなそうとするのであれば天界に送り返して欲しい〉

 

〈ああ、分かった。とりあえずは様子を見ることにするよ〉

 

〈それでは、頼む〉

 

 

 

 

【どうでした?】

 

「ああ、ユナも転生者だが」

 

俺は説明をした。

 

【ん~……何とも言い難いですねぇ】

 

「だろ? まあ、ユーノにとってはいい話なのかもしれないが」

 

俺は顎に手を当てて考えた。

 

ユナのベタ惚れぶりは演技とは考えにくい。

 

前世で男だったのがあそこまで演技出来るとは思いがたい。

 

まあ、前世では男でも今世では女として生まれてるし。

 

本人が良ければそれで良いだろう。なのは達に害は無いだろうし。

 

尤も、嫉妬が暴走してなのは達に害が及ぶ可能性は否定できないが。

 

そこら辺は何とかするしかあるまい。

 

【お兄様?】

 

「ま、暫くは様子を見ておこう。多分、大丈夫と思うけどね」

 

と同時に部屋に入ってくるのはユナとユーノ。

 

フツーに人間の姿で入ってくる。

 

ちなみに、ユナは何かユーノに似た雰囲気の女の子であった。

 

つーか、ユーノも女の子に見えなくもないが。

 

そしてユナはほっぺが艶々していてユーノは何故かゲッソリとしていた。

 

お前ら、風呂でいかがわしい事してないだろうな?

 

そう思わずにいられない雰囲気を漂わせていた。

 

「ふぅ、さっぱりしました♪」

 

「……」

 

ユーノは何も答えなかった。

 

「……ツッコミを入れて良いか?」

 

「やぁん! 突っ込むだなんて!」

 

一瞬、天界に送り返したろかと思う。

 

「……君達は人間だったのか?」

 

「へ?」

 

ユーノが惚けた様な声で返答する。

 

「はて? 俺はユーノと出会ってからずっとフェレット姿しか見ていなかった様な気がするのだが?」

 

 

「……」

 

 

ポクポクポクチーンといった擬音が聞こえそうだな。

 

「ああ! そう言えば人間になれるって言ってなかった!」

 

手をポンッと叩いて驚くユーノ。本来ならこっちが驚きたいのだが。

 

「もう、ユーノったら♪お茶目なんだから~」

 

そう言って頬をつつくユナ。

 

こ、こやつはいちいち惚気ないと話が出来んのか。

 

「なるほどな。まあ、なのはには自分から伝えておけよ」

 

「うん、分かったよ」

 

ま、そのまま忘れてアースラで披露してなのはが『ふぇぇぇぇぇぇ!?』と驚くのだろうが。

 

その方が面白そうだし。黙っておこう。

 

「で、聞くのを忘れていたが……ユナがここに来た目的とは?」

 

「へ? 決まってるじゃないですか! ユーノを追いかけて来たのですよ! 浮気しないように!」

 

予想通りの答えをありがとう。

 

「……そうか。なら、ユーノ。君がしっかりと説明をしておけよ」

 

「……うん、分かったよ……」

 

そう言ってユーノとユナはなのはの家に帰っていった。

 

何とも言い難い気分であったが、まあ、ユーノの将来は約束されたから大丈夫だろ……多分。

 

 

 

 

 

ある日の事。

 

俺はなのはと別れてジュエルシード探しを行っていた。

 

街を歩いたり、住宅街を歩いてみたりとしてはいるが、一向に見つかる気配は無い。

 

「しっかし、他の二次小説の人達ってどうやってジュエルシード探してるんだ? アニメとかは何処にあるのか描写は無いし……」

 

【お兄様。あまりメタな発言してますと作者から天罰が届きますわよ?】

 

「エヴァ、君もメタな発言をしてるじゃないか」

 

【うふふ】

 

その時、車道を1台のワゴン車が通りすがる。

 

ほう、日○のキャラ○ンか……大体ならト○タのハイ○ースを選ぶのだがな。

 

しかし……助手席と運転席以外の窓は全部フルスモーク貼って中がほとんど見えなかった。

 

見えなかったのだが、もの凄く……何かがひっかかった。

 

杞憂で済めばそれで良い。

 

【お兄様?】

 

「追うぞ。何か……妙な予感を感じた」

 

【分かりました。お兄様の勘は……結構当たりますからね】

 

俺はそのワゴン車を追う事にした。

 

 

 

 

 

引き離される事無く俺はワゴン車が到着した場所に着いた。

 

そこは港で人気が全くない倉庫だった。

 

「……あれは」

 

物陰に隠れているとワゴン車の後ろのドアが開いた。

 

「早くしろ!」

 

男が数人降りて人を抱えていた。

 

「……! アレは!」

 

目を疑いたくなった。

 

アリサ、すずか……そして、『八神はやて』。

 

何て事だ。もうすずかと知り合ってたのか。

 

そして、アリサとすずかの誘拐に巻き込まれたのか!

 

男達はアリサ達3人を抱えて倉庫の中に入って、シャッターを閉めた。

 

【お兄様】

 

「分かってる。どうやら3人は眠らされたみたいだ」

 

グッタリした様子だったからだ。

 

さて、中に進入を……む、あそこにあるのはエアダクトか。あのサイズなら俺でも充分通れるな。

 

60㎝四方の四角いダクトの中に飛んで入る。

 

こういう時は空を飛べるとかなり便利だな。

 

通気口の金網を気の力で斬り破って中に入る。

 

〈さてさて、どんな風になってるかな?〉

 

〈お兄様、僅かですが……何か力を感じます……〉

 

〈何?〉

 

〈魔力です。用心して下さい〉

 

〈分かった。ひょっとしたら転生者かもな〉

 

俺は物音を立てずダクトの中を進む。

 

暫く進むと、出られそうな場所を発見。

 

またも金網だったが同じように斬り裂いて出る。

 

勿論、周囲の確認は忘れずに。

 

どうやら吹き抜けで俺は2階部分に当たる箇所に居るみたいだ。

 

下を見たら……手足を縛られたアリサ、すずか、はやてが居た。

 

目を覚ましているようだ。金切り声を上げてアリサは暴れていた。

 

その周りには男が3人。そして、見張りと思われる男が7人。

 

10人か、とりあえずは。

 

「静かにしやがれ!」

 

男がアリサの頬を叩いた。

 

アリサは1m位吹っ飛んでしまった。

 

「へっへっへっ……今からお嬢ちゃん達に男の味ってヤツを味わって貰うからよ!」

 

アリサとすずか、はやてに襲いかかろうとする男達。

 

ズボンのベルトを外して……パンツを脱ぎ、反り返ったモノを見て3人は悲鳴を上げた。

 

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

-アリサ視点-

 

 

目の前の男の姿を見てあたしは恐怖した。

 

あんな……汚らわしいモノが!

 

いやよ……! 散々陵辱されて……最後に殺されるなんて!

 

そして、この地で地縛霊として残るなんて!

 

助けて……助けて……助けて……

 

アレス……助けて……

 

まだ…………死にたく…………無いよぅ…………

 

「アレスッ!! 助けてよ―――――――――――っ!!!」

 

あたしは渾身の力を込めて叫んだ。

 

「ハアァァァァァァァァァァッ!!!」

 

聞き覚えのある……声……。

 

そうか……神様は……あたしの願いを……聞いてくれたのね……。

 

頬に走る……涙。

 

あたしは声の主を見て安堵した。

 

 

-アリサ視点・終了-

 

 

 

 

 

〈エヴァ、頼む!〉

 

〈了解です! 起動(アンファング)!〉

 

一瞬にして騎士甲冑を着込む。武器は例によって杖のレーヴァテイン。

 

「アレスッ!! 助けてよ―――――――――――っ!!!」

 

アリサの渾身の叫び声!

 

俺は一瞬にして男達の背後に回り、3人を殴り飛ばす。

 

「ハアァァァァァァァァァァッ!!!」

 

3人は一瞬にして倉庫の壁に激突して気絶する。

 

残りの7人は驚いた目で俺を見ていた。

 

「呼んだか? アリサ?」

 

俺は微笑んでアリサ達を眺めた。

 

「く、来るのが遅いわよ……アレス……」

 

「あ、アレス君……」

 

「だ、誰や……?」

 

はやてのみは困惑した表情で俺を見ていた。

 

「何だこの小僧はぁ!」

 

体格の良い男が殴りかかってきた。

 

俺は殴りかかってきた右手を左手で逸らして杖で男の喉を突く。

 

「ぐえぇ!?」

 

男はのたうち回って倒れる。俺は男に向かって杖を振り下ろし、右太股の骨を一撃で折る。

 

鈍い音が周囲に響く。

 

「こ、こいつ……」

 

たじろぐ男達。

 

「何やってんだ! たかがガキ1人じゃねぇか!」

 

リーダーらしき男が周囲の男達に一喝する。

 

男達は目線を合わせると一斉に襲いかかってきた!

 

「……遅い!」

 

俺は1人目の胸元を杖で突いて吹き飛ばし、2人目を横払いで横腹を殴って吹っ飛ばす。

 

「背後ががら空きだぜぇ!」

 

背中から聞こえる声。

 

ああ、ダメダメだな。普通のヤツなら有効だろうが…。

 

「ほほぉ?」

 

杖を頭の上に掲げて男の一撃を防ぐ。どうやら鉄パイプ辺りで殴ろうとしたのだろうが。

 

「な……!?」

 

「ヒヨっこめが!!」

 

左足からの回し蹴りで男の鳩尾を蹴る。

 

「ぐぅぇ!!」

 

男はその場に崩れる。

 

「くたばれぇ!」

 

同じく鉄パイプで殴りかかってくる男。

 

それは身体をずらしてかわしてから杖で男の顎目がけて突く。

 

「ぐがっ!」

 

後ろに倒れる。

 

「てめぇ!」

 

更に殴りかかってくる男。俺は男の右手首を掴んで投げ飛ばし、倒れた所を杖でスネを殴って骨を折る。

 

俺の周りには身動きしない男達が寝ていた。

 

残ったリーダーは懐から拳銃を取り出した。

 

「へへへ……動くなよ……動けばてめえの眉間に大穴が開くぜ?」

 

男はニヤニヤ笑いながら近づいて来る。

 

「ほら、その杖を捨てろよ」

 

男は拳銃を構えていた。

 

「卑怯者~!!」

 

「黙ってろ! どんな手でも勝てば官軍、負ければ賊軍ってね!」

 

「……ああ、そうだな」

 

俺はレーヴァテインを床に投げる。

 

「へっへっへっ……あばよ」

 

 

パンッ

 

 

乾いた音が鳴り響いた。

 

「アレスッ!!」

 

俺は顔を傾けて弾を避けた。

 

あの程度の速度なら容易い。

 

「え……?」

 

男の呆然とする顔。

 

「どうした? しっかり狙わないと、当たらないぞ?」

 

「く、くそっ!」

 

男は連射した。弾が飛んで来るが俺はそれを全て避ける。

 

「ど、どうなってるんだよ!?」

 

5発鳴り響いたあと、むなしく響く拳銃の撃鉄音。

 

「さてと……」

 

「ひっ……!」

 

俺は床にあったレーヴァテインを拾う。

 

「言いたいことは?」

 

「お、俺達は……頼まれたんだ!」

 

「へぇ?」

 

「あの3人を浚えば、金をやるって…」

 

3人だと?

 

はやても……浚う対象に……なっていたのか!?

 

「……どんなヤツだ?」

 

「背広を着た普通のヤツだったが……」

 

「が?」

 

「3人の屈強な男が……」

 

「お喋りはそこまでにして貰おうか」

 

声が響いて何かが飛んで来た。

 

「があぁ!!」

 

男の胸に刺さる槍の様なモノ。そして血が噴き出した。

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

アリサ達の叫び声。まずい……! この光景は見せるわけには!

 

「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック 大気よ水よ(アーエール・エト・アクア)白霧となれ(ファクティ・ネブラ)彼の者らに(イリース・ソンヌム)一時の安息を(ブレウエム)。『眠りの霧(ネブラ・ヒュプノーティカ)』」

 

アリサ達の周りに霧を発生させて眠らせる。

 

「ほぅ……魔法使いか?」

 

背広を着た男。

 

手にはアーム型のコンピューター。

 

あんな形は見たことは……待て。

 

頭にゴーグルみたいなのに線が伸びて繋がっている。

 

……そして。男の背後に立っているのは……中華風の服を着た男達。

 

1人は左右にちょび髭みたいな感じで優しそうな雰囲気。

 

1人は豹のようなゴツゴツした頭にグリグリの目玉、エラが張った顎には虎髭。

 

1人は身長が2mを超えてて50㎝の黒くて長い髭。

 

さっき、男の胸に刺さった武器は……槍だが……独特な刃先。そう、アレは『青龍偃月刀(せいりゅうえんげつとう)

 

そういう事か。

 

あいつは……真・女神転生の様に悪魔だけでなく、人物までプログラム化して……召喚して戦うのか!

 

そして、呼び出したのは……古代中国において戦乱の世を生きた武人。

 

後に三国志と呼ばれる時代で『蜀』と言う国を建て、そして『桃園の誓い』で義兄弟の契りを交わした伝説の武将。

 

「劉備玄徳、関羽雲長、張飛益徳……!」

 

 




 

お馴染みの誘拐イベントです

はやても巻き込まれてますがw


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第8話 時の庭園に行ってみよう

 


色んな転生者がいるものです




 

 

 

 

 

「劉備玄徳、関羽雲長、張飛益徳……!」

 

俺は背筋に冷たいモノが走った。

 

かつての力を取り戻していたら勝てるであろうが、今はそのかつての7割~8割迄しか使えない。

 

身体がまだ出来てないのだ。

 

あの3人の能力が上乗せされていたら……負けを覚悟しないといけない。

 

いよいよとなればエヴァにも手伝って貰わないといけないかもな。

 

「へぇ、良く知ってるじゃないか」

 

「当たり前だろ。特に関羽は神格化して『関帝聖君(かんていせいくん)』と呼ばれるまでになってるじゃないか」

 

頭に思い出すのは違う神界で模擬戦した時の事だった。

 

双剣か徒手空拳なら何とかなるが同じ槍とか剣だと勝てる自信が無い。それ程までに強かったのを思い出す。

 

もし、それ以上に腕力と速さが上がってるなら勝率は更に下がることになる。

 

う~ん、虎牢関の戦いの再現みたいに俺が『方天画戟』でも持って戦えば良いのか?

 

一応、登録はしてあるが……俺は『呂布』程には扱えない。絶対に負ける。

 

こうなったら……仕方が無い。双剣に切り替えるか。小太刀二刀流に……。

 

「さあ、行け!! あの小僧をぶち殺せ!!」

 

一斉にかかってくる劉備、関羽、張飛の3人。

 

「エヴァ、双剣『天照(アマテラス)』と『月夜見(ツクヨミ)』を出してくれ」

 

【了解です。モード『天照(アマテラス)』『月夜見(ツクヨミ)』】

 

手に持ったレーヴァテインが変化して長さ60㎝の小太刀が左右に握られる。

 

ちぃ、これが恋姫の3人なら劉備こと『桃華』嬢が戦いでは話にならないから関羽こと『愛沙』と張飛こと『鈴々』の2人だけになるのにな!

 

「はぁ!」

 

関羽は振りかぶって上段からの切り落とし。

 

俺はそれを避けて間合いを詰めて下から左手で突く。

 

「ぬぅ!」

 

関羽は左手の手甲でそれを弾く。そして、左膝蹴り!

 

「っ!」

 

俺は後方にバックステップでかわす。

 

「でやぁ!」

 

左、3時の方向から張飛が蛇矛で突いて来る。

 

「はっ!」

 

俺はそれをジャンプしてかわして蛇矛の上に乗り、その上を走って張飛の頭目がけて剣を振り下ろす。

 

「くっ!」

 

だが、それは済んでの所で劉備の剣で止められる。

 

さすがに上手い……!

 

そして後ろから関羽の横凪ぎ払いが来る。

 

ここで下手にかわしても張飛の突きか劉備に斬り落とされる!

 

「ちぃ!」

 

俺はギリギリのタイミングで飛んで関羽の青龍偃月刀の上に乗る。久しぶりだよ、剣や槍の上に乗ってかわすなんて。

 

 

「……!」

「……!」

「……!」

 

 

3人は声を出してはいなかったが、驚いてはいたみたいだ。

 

「ヒュ~♪驚いたぜ。その3人の猛攻をかわしているなんてよ」

 

男が口笛を吹いていた。

 

「はは、そうだな……」

 

「面白いじゃねぇか。まるで、虎牢関で3人が苦戦した……『呂布奉先』じゃねぇか」

 

男は口元を釣り上げて笑っていた。

 

「まあ、あれほど上手いかは分からないがね」

 

「なるほどな。よし……」

 

男はコンピューターをいじる。

 

すると、3人はコンピューターの中に帰っていった。

 

「……?」

 

「それなら、希望にお答えして出してやるよ」

 

「何だと……!?」

 

コンピューターの中から出てきたのは……先程の関羽と同じくらいの背丈(210㎝)位の筋肉隆々の屈強な男だった。

 

頭に2本の黒い羽根飾りを着けて、手に握られているのは……『方天画戟』!

 

畜生……! この状態では勝てる率が更に下がってしまったぞ……!

 

「さあ、お前が何処までいけるか、見せてくれよ」

 

男の右手にも方天画戟……!

 

まさか……!

 

「お前……まさか」

 

「そう。俺の身体能力は全く呂布と同じにしてあるんだ」

 

男の言葉で少し目が眩みそうになった。

 

体格の差はあれど、要は呂布を2人同時に相手にしろだと!?

 

「さあ、耐えて見せろよ!」

 

男と呂布が同時に斬りかかって来た!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どれぐらい、斬り合ってきたのか?

 

10分なのか、1時間なのか、時間の感覚が狂ってしまう。

 

「ふぅ~」

 

深く深呼吸する。既に第1チャクラは全力回転だから体力が尽きる事は無い。

 

相手も特に疲労の色は見られない。

 

せめて、咸卦法が使えれば負ける気はしないのだが。

 

あちこちに擦り傷があるが、戦闘に支障は全くない。

 

だが、決定打が無いからジリ貧と言えばジリ貧。

 

あの嵐の様な斬撃と突き、刹那の気の緩みで頭をかち割られて終わってしまう。

 

「大したガキだよ、呂布を2人相手にしてその程度で済むなんてよ」

 

「褒めて頂いて幸いだよ」

 

せめて、第6チャクラが回せれば。ギリギリ何とかなるかも知れないのだが。

 

やってみるか? 一途の望みをかけて、第6チャクラを起動させるのを。

 

ちょいと危険な賭けになりそうだが、このまま無惨に殺されたら。

 

まあ、復活は出来るが、こっちの時間で1週間かかる。

 

その間にアリサ、すずか、はやての3人は……この男の毒牙にかかるやも知れない。

 

巫山戯るな。もう、俺の前で……同じ目に遭わせるわけにはいかない。

 

かつて、『妹』を俺の目の前で陵辱され、無惨に殺された……あの光景を忘れたか。

 

忘れるモノか。周りの大切な人を守れなくて……何が世界の守護神だ。

 

ゼロじゃない。僅かな望みをかけて……やる!

 

俺は身体に気を巡らせる。

 

「第6チャクラ……起動!」

 

第1から第5までのチャクラを全力運転。

 

身体から溢れる闇の力。

 

だが、第6チャクラは回る気配はしない。

 

「くそ……」

 

「何をするかと思えば。何も変わってないな」

 

男と呂布はゆっくりと俺に近づいて来る。

 

〈お兄様、私を出して下さい!〉

 

〈ダメだ、エヴァ。エヴァの技量ではキツイ。それに、なるべくならお前の存在はまだ知られたくないんだよ〉

 

〈でも!〉

 

〈頼む。なるべくなら……エヴァが出るのは姉妹機、夜天の魔導書の戦いの時にしたいんだ〉

 

〈分かりました……お兄様……〉

 

我が儘を言って悪いな、エヴァ。それに傷つく姿を見たくないんだよ。

 

「こうなりゃ仕方ない。粘って粘ってお前達が疲れるのを待つか……」

 

俺は双剣を構えた。

 

その時……。

 

俺の後ろから走り寄ってくる、気配。

 

それも、2人。

 

前の男と呂布は……気付いて……いない?

 

と言うことは、後ろから来るのは相当の手練れと言うことか。

 

「くくく、随分と消極的な戦いに……」

 

男の言葉が終わる前に俺はしゃがんだ。

 

 

「はぁっ!」

「ふっ!!」

 

 

背後の2人は空中に飛んで男と呂布に跳び蹴りを喰らわせる。

 

 

「くっ!?」

「……!?」

 

 

男と呂布はそれぞれの武器で防いだが、よろめいた。

 

後ろから跳び蹴りを喰らわせた2人は空中でクルクル回転して俺の前に着地した。

 

「……はは、マジかよ」

 

俺は意外な人物に驚くしかなかった。

 

そう、月村家のメイド、ノエルさんと……バニングス家の執事、鮫島さんだったからだ。

 

「大丈夫ですか? アレス様!」

 

「助太刀に参りました」

 

2人は俺の方を見てそう言った。

 

鮫島さんはいつもの執事服だったが、ノエルさんはいつもより短いスカートのメイド服だった。

 

「……なるほどね。アリサとすずかの救援に……それと、2人の援護ですか? 恭也さん」

 

「やはり、分かったか。そうだ、俺も来てるぞ?」

 

後ろにいた気配はやはり恭也さんだった。

 

4対2。勝率は少し上がった。

 

「やれやれ、少し……時間をかけすぎたか」

 

男は方天画戟を持って構える。

 

「失礼ですが、藤之宮様。あの方は……もしや……」

 

「ええ、想像通りです。三国志にて虎牢関の戦いで劉備、関羽、張飛の3人と引き分けた飛将軍『呂布奉先』ですよ」

 

「……っ!!」

 

恭也さんの驚きの顔。

 

「ほほぉ、これはこれは……」

 

鮫島さんの口元が少し、つり上がった。

 

「出来れば、若い時にお相手したかったですな……」

 

鮫島さんは構えた。あの構えは……八極拳! しかも、かなり鍛錬を積んで来たモノと思われる。

 

一応、俺も八極拳は使えるが、鮫島さん程ではない。

 

「恭也さんとノエルさんはそっちの男を。俺と鮫島さんで呂布と戦う」

 

「……分かった」

 

恭也さんはそう言って男の方を見た。

 

「では、『バニングス家元ゴミ処理係』……鮫島、参る!!」

 

 

 

 

 

その後の戦い?

 

ええ、だいぶ助かりましたよ。

 

結構時間がかかりましたが、男を撃退。

 

撤退したあと追いかけて、例によって結界に封じ込めてから前世の姿に戻してからは皆様の予想通り。

 

痛みが快楽に変わる呪いを受けてから天使に引き渡しました。

 

改心の見込みが全くありませんでしたからね。

 

現場に戻ると鮫島さんはアリサを既に運んだのか、居なかった。

 

ノエルさんだけが残ってた。聞けばファリン嬢に任せたとの事ですずかの姿は無かった。

 

恭也さんも居なかった。聞けばはやてを運んで行ったとの事。

 

「アレス様には何とお礼を言って良いのか……」

 

そう言ってノエルさんは俺の手を両手でしっかりと握って離さない。

 

「いえ、その、お気になさらずに……」

 

「いいえ! それでは私の気が済みません! どうか、私の身体を好きにして良いですから……!」

 

その時、ノエルさんの後頭部に衝撃が走った。

 

見ると忍さんがハリセンを持って立っていた。

 

「全く、何をやってるのかしら?」

 

「し、忍様……」

 

「まあ、確かにアレス君が可愛いのは分かるわよ。でもね? 貴女はウチの専属メイドなのよ? そこんとこを……」

 

ああ、説教モードに入りましたね。

 

ノエルさんは忍さんに手を引っ張られて行ってしまった。

 

「ああ、アレス様! お礼はいずれしますから……お待ち下さいね!」

 

いえ、ノエルさんのお礼はイヤな予感を感じますからいらないんですがね!

 

 

 

 

 

無事に家に帰る。

 

しまった、全員の記憶を改竄するのを忘れてた。

 

……まあ、別に知られても良いか。魔法を知られたらオコジョにされるとかそう言った罰は無いし。

 

『魔法少年やってます♪』とでも言っておこう。

 

そう言えば、ミッドの方では魔法文化の無い世界では魔法を教えるのは禁止とか言ってたな。

 

別に俺は管理局員じゃないし。知ったことじゃないね~。

 

俺はベッドに潜る。そして1日が過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日。

 

いつもの様になのはとバスに乗ると。

 

アリサとすずかの2人がおられました。

 

 

「おはよう、アレス、なのは」

「おはよう、アレス君、なのはちゃん」

 

 

いつも通りの挨拶。いつも通りの雰囲気だ。

 

 

「おはよう、アリサちゃん、すずかちゃん」

「おはよう、アリサ、すずか」

 

 

いつもの様に端っこのなのはの隣に座ろうとしたら。

 

「アレスはこっち」

 

アリサに手を引っ張られてアリサとすずかの真ん中に。

 

「お、おい……」

 

「さて……アレス。今日の放課後は空いてるわよね?」

 

俺の目をジッと見つめて来るアリサ。瞳の奥に炎が見えそうだ。

 

「いや、どうだったかな」

 

「……あたしの家でお茶会があるの。来てくれるわよね?」

 

声のトーンが低いです、アリサさん。

 

「ああ、わ、分かった……」

 

「了解。すずか、忍さんとノエルさんにも連絡しておいてね」

 

「うん」

 

「にゃー! 私は!?」

 

思いっきり仲間外れのなのは。

 

「なのはも……来る? アレス君の秘密……知りたい?」

 

「え……?」

 

アリサの言葉を聞いて呆然とするなのは。

 

〈どういう事なの? アレス君?〉

 

〈まあ、簡単に言うぞ?〉

 

〈うん〉

 

〈アリサとすずかにバレた。魔法が〉

 

〈にゃ―――――――――――――っ!? ど、どどどどどどう言う事!?〉

 

〈まあ、昨日……アリサとすずかが誘拐された時に魔法を使って救出したのをしっかりと見られてしまった〉

 

〈き、昨日!?〉

 

〈うん、まあ、(精神的に)疲れてたから言ってなかったけど〉

 

〈にゃ――――――――――――――――――――っ!!〉

 

「どうしたの、なのはちゃん? 頭抱えて?」

 

「あ、あははは……何でも無いよ?」

 

冷や汗をかいてるなのは。顔が少し青くなっていた。

 

「で? なのはも来るの? 来ないの?」

 

「……行きます」

 

「了解。良かったじゃない、愛しのアレス君の秘密が聞けるんだから♪」

 

「え!? そ、そんなのじゃないよ~!!」

 

 

 

 

 

時は流れ。

 

あっという間に放課後。

 

俺はアリサとすずかに連れられて校門に着く。後ろにはなのは。

 

既に到着していた黒のリムジン。

 

そして、鮫島さん。普段はフツーの執事なのだが……あの呂布との戦いは武人としか見えなかった。

 

見かけによらないとはこの事だな、うん。

 

そして俺達はバニングス家に連れて行かれるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

応接室に着くと、忍さん、恭也さん、ノエルさんにファリン嬢。そして、はやても来ていた。

 

そして、俺達が到着すると鮫島さんが紅茶を持ってきてくれた。

 

俺はその紅茶に角砂糖2個放り込んで溶かす。

 

一口飲んでみて……。

 

「ぬぅ……足りぬ」

 

もう1個放り込んで溶かした。

 

「あんた……どんだけ甘党なのよ」

 

アリサがツッコミを入れてきた。

 

「やかましか。俺は甘いモノ大好きなんだ」

 

「そうだよね、アレス君はウチのお母さんのケーキ大好きだもんね」

 

「なるほど……ねぇ?」

 

アリサとすずかの目が光ったように見えた。

 

「さて、全員揃ったようね」

 

忍さんが全員の顔を見てから言った。

 

「それでは、アレス君に月村家当主としてお礼を言わせて貰うわ。すずかを助けて頂き、誠にありがとうございます」

 

立ち上がって深くお辞儀する忍さん。

 

「私からもお礼を言わせて頂きます、アレス様」

 

同じくお辞儀するノエルさん。

 

そしてあわててお辞儀するファリン嬢。

 

「私からもです、藤之宮様。後に家の方へ旦那様と奥様もお礼に参ります」

 

そう言ってお辞儀する鮫島さん。

 

「いえ、たまたま……ですよ」

 

俺は頬をかいて視線をアリサとすずか、はやてに向けた。

 

「私からも……お礼を言わせてな? ありがとうな。あ、私の名は『八神はやて』や。よろしくな?」

 

はやても車椅子に乗ってお辞儀してきた。

 

「ああ、俺は藤之宮アレス。アリサとすずかと同じ学校に通ってる同級生だ。こちらこそ、よろしくな?」

 

俺ははやての方に向かってお辞儀した。

 

「さて、アレス君。貴方は何者ですか? その幼い身体で10人の大人を……撃退した」

 

忍さんが目を細めて俺の方を見た。

 

室内の空気が少し、冷たくなってきた。

 

「さてさて、何と言いましょうか。そうですね、『魔法少年』と言うことでお願いできませんか?」

 

「へ?」

 

「いや、悪いヤツを退治するのは魔法少女とか正義のヒーローが居るじゃないですか。俺が使ってるのは、魔法。そして少女じゃなくて少年だから……」

 

「ふむ。確かに……」

 

恭也さんは顎に手を当てて頷いていた。

 

まあ、魔法以外も使用してるが面倒だから魔法扱いでいいや。

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい! 魔法だって言うなら杖とか……」

 

「持ってたじゃないか」

 

「え……あ……」

 

「そう言えば、丸い宝石みたいなのが付いた杖みたいなの持ってたね……」

 

すずかは顎に手を当てていた。

 

「まさかとは思うが、アニメに出る魔法少女みたいなファンシーな杖を想像していたんじゃあるまいな?」

 

「ま、まっさか~?」

 

俺の顔から視線を逸らすアリサ。

 

「なのは、すずか、あとははやてとかが持ってるなら似合うが、俺が持ってたらどうかと思うだろ?」

 

「……何であたしの名前が入ってないのよ?」

 

「……自分であんなファンシーな杖持って『ラミ○スラミパスルルルルル~』みたいな呪文唱えたいか?」

 

俺はアリサの目を見つめて言い放った。

 

「……くっ……無理だわ……」

 

テーブルに突っ伏すアリサ。

 

アリサの場合はモーニングスターで『突撃ぃ!』の方が似合っている様に思える。

 

「魔法……ね。ここで見せることは出来る?」

 

「はい、構いませんよ。っと、その前に紹介しておきましょう。エヴァ?」

 

【はい、おにい…コホン、主様。皆様、初めまして。武神の魔導書、エヴァンジェリンと申します】

 

俺は首から待機状態のエヴァを取り出してみんなに見えるように掲げた。

 

「ネックレスが……喋った……」

 

「ま、これが変身するアイテムみたいなモノかな? 頼む、エヴァ」

 

俺はゆっくりと広いところに向かって歩く。

 

【了解です、主様。起動(アンファング)

 

俺の身体が光り輝き、騎士甲冑を身に纏う。

 

 

「おー……」

「かっこいい……」

 

 

アリサとすずかの声。

 

「めっちゃかっこええ……」

 

遅れてはやての声。

 

「とまあ、昨日誘拐犯達をボッコにした時もこの服装でした」

 

「へぇ~。で、防御力はどれくらいかな?」

 

忍さん……何かスイッチが入りませんでしたか? ノエルさん。身体が小刻みに震えてますよ? 抱きつきたいとか言わないでくださいよ?

 

「試した事はありませんが……かなりの防御力かと。物理攻撃はどうか知りませんが」

 

「盾とか出せるの?」

 

「一応は。頼む、エヴァ」

 

【はい、装甲手楯(パンツァーシルト)

 

俺の前に現れるベルカ式魔法陣の盾。

 

 

「か、かっこいい……」

「ええなぁ~」

 

 

……はやてさん。貴女ももう少ししたら同じの出せますよ。

 

「ま、分かったわ。これならすずかをお嫁に出しても大丈夫ね」

 

……ちょっと待て。何の話だ?

 

「ふむ。藤之宮様ならお嬢様の身の安全をお守りすることが出来ますな」

 

鮫島さんも何を言ってるのだ?

 

「アレス君は私のなの……」

 

なのはの呟きが聞こえるが俺には何も聞こえない!! 聞こえないったら聞こえない!!!

 

「……しかし、どうやってそれを入手したのだ?」

 

恭也さんが聞いてきた。

 

「はい、実は生まれた時から本棚にあったのです」

 

エヴァは元に戻って今度は本形態になる。

 

「……そんな!?」

 

はやての呟き。

 

俺は聞こえないふりして続ける。

 

「そして、9歳になる今年の4月4日。丁度1ヶ月半前ですね。その時にこの本が起動してこうなったわけでして」

 

「へぇ~生まれた時からか~」

 

「アレス君は選ばれた訳だね」

 

「……」

 

はやての顔が少しずつ青くなっていく。

 

「……どうした? はやて?」

 

「あんな……聞いてくれへんかな? 私の家にも……似た本があるんよ……」

 

 

「!」

 

 

俺とエヴァ以外の全員が息を呑んだ。

 

「エヴァ?」

 

【ハイ、主様。私と同じ姉妹機、『夜天の魔導書』があります。外見はかなり酷似していますから……それでしょう】

 

「はやてちゃんも……なの?」

 

なのはも驚きの顔ではやてを見ていた。

 

「まだ、アレス君みたいに動いてないけどな……私の誕生日……来月の6月4日で9歳になるんよ……」

 

「なるほどな。多分、俺と同じように動くハズだ。俺の時も0時ジャストで起動したんだからな」

 

「そっか。私もアレス君みたいな魔法少女になるんかぁ……って、この足じゃなぁ……」

 

自分の足を眺めるはやて。

 

【はやてさん。今度、その本を見せていただけませんか?】

 

「え? ええけど……」

 

【私とその夜天の書は契約してもそんな足が動かなくなると言う事はありません。もしかしたら、何か致命的な欠陥が生じてる可能性があります】

 

「え?」

 

【ですから、はやてさんが9歳になった6月4日以降で一度、見せてください】

 

「うん……分かったわ……お願いして……ええよね?」

 

「ああ。俺は全く構わない」

 

「なるほどねぇ~。不思議な事もあるもんだねぇ~」

 

忍さんは紅茶を飲んで微笑んでいた。

 

〈なのははどうする?〉

 

〈……決めた。私も……みんなに言う!〉

 

なのはからの念話。彼女も決心したみたいだ。

 

「あの、聞いて欲しいの!」

 

 

 

 

 

なのはも魔法少女と言う事で全員がまた驚いていた。

 

途中、ユーノとユナも現れて(呼びつけたとも言う)、更に人間の姿になってから更に事態は少し大きくなった。

 

「にゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! ユーノ君が……ユーノ君が!!」

 

「あ、ああ、ああ……あんた……海鳴温泉の時にしっかり見てたのね!?」

 

「ち、違う……僕はアレスに連行されて……!」

 

「ユーノ、浮気……したんだね?」

 

ユーノは壁際に追い込まれていた。

 

ユナに両肩を掴まれ、隣にアリサが仁王のごとく立っていた。

 

〈骨は拾ってやるぞ、ユーノ。だから……安心しろ〉

 

〈助けてくれないの!?〉

 

〈……俺に地雷原に飛び込めと?〉

 

〈そもそもアレスのせいだよね!? アレスが僕を風呂に連行したから!〉

 

〈俺は過去を振り返らない主義なんだ〉

 

〈鬼! 悪魔!〉

 

〈まあ、頑張れ〉

 

俺はユーノに向けてサムズアップしておいた。もちろん、満面の笑顔で。

 

「なるほどな。ご近所にこんなモノがバラまかれたのか」

 

ジュエルシードをじっくり見てる恭也さん。

 

「ええ。あまり、大事にしたくは無かったので……」

 

「全く。こういうのは大人の役目。分かったわ、私も大学で見かけた人がいないか聞いてみる」

 

「そうですね。近所でも聞いてみます」

 

「では、私も……」

 

忍さん、ノエルさん、鮫島さんが協力してくれる。

 

「なのは……」

 

「うん。お父さん、お母さん、お姉ちゃんにも話すね」

 

こうして、魔法の存在を話すこととなった。

 

原作と離れたけど……良いよね?

 

ちなみに、はやてはファリン嬢と話をしていた。

 

 

 

 

 

高町家にお邪魔してから全てを話した。

 

「ふぅむ……魔法少女か……」

 

「良いなぁ~」

 

「ねえねえ、私もアレス君と1回パートナー組んでみたいんだけど?」

 

桃子さん、貴女は何を仰るのですか?

 

「えっと……なのは……さん以外は魔法が使えるリンカーコアが無いみたいなので……ちょっと厳しいかと……」

 

ユーノの言葉を聞いて両手、両膝を着いて落ち込んでる桃子さんが居た。桃子さんの周囲の空気だけ暗くなってた。

 

「まあ、俺と美由希が探して……」

 

「そうだな。俺と桃子で喫茶店に来る常連さん達に聞いてみよう」

 

「すみません、何から何まで……」

 

「良いんだよ。ウチだって、近所にこんな物騒なモノがあっても困るし」

 

「そうそう。何かの縁だと思って……ね?」

 

こうして、みんなを含めたジュエルシード探しが始まるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

3日後。

 

午後7時過ぎ。

 

俺となのははいつもの様にジュエルシード探し。

 

町中を歩きつつ散策していた。

 

ユーノとユナも一緒で近くをフェレット姿になって散策している。

 

「見つからないねぇ~」

 

「まあ、そんなに大きくないし、数が数だしね」

 

その時、町中に魔力が溢れ出してきた。

 

「!?」

 

「これは!?」

 

〈そんな!? 町中で強制発動!?〉

 

そう言えば、そんな話があったな。

 

〈ほら、ユーノ。広域結界張るよ〉

 

〈わ、分かった〉

 

これは将来は尻に敷かれると言う事で。がんばれ、ユーノ!

 

同時に光の柱が立ち上る。どうやらジュエルシードだ。

 

「なのは!」

 

「うん、レイジングハート、セットアップ!」

 

【スタンバイ・レディ・セット・アップ】

 

バリアジャケットを纏うなのは。

 

「エヴァ、頼む!」

 

【了解です! 起動(アンファング)!】

 

俺も騎士甲冑を纏う。手にはいつものレーヴァテイン。

 

そして、なのはは砲撃モードに入る。

 

「見えた! ジュエルシード……シリアルⅩⅣ……封印!」

 

桃色の光線がジュエルシードに当たる。

 

見ると黄金色の魔力光も当たってるから……フェイトも来てる!

 

数秒後に光の柱は治まる。俺達はその場所に向かって走っていった。

 

 

 

 

 

宙に浮いてるジュエルシード。

 

周りを見てもフェイト達は来てる様子は無い。

 

「ふむ……」

 

「やった! さあ、早く封印を!」

 

「そうはさせるか!」

 

ビルの上から降ってくるのは……アルフか!

 

装甲手楯(パンツァーシルト)!】

 

右手を上にかざして魔法陣でアルフの攻撃を防ぐ。

 

「ちぃ! 堅いシールドじゃないか! それに……見たことない魔法陣だよ!」

 

そう言ってアルフは弾かれてから8m位先に着地した。

 

そして、ゆっくりと降りてくる……フェイト。

 

「いけ、なのは」

 

俺はなのはを歩かせる。

 

「こないだは……自己紹介出来なかったけど……私はなのは。高町なのは! 私立聖祥大付属小学校3年生!」

 

バルディッシュが鎌の形になった!

 

そして、上空に飛んで斬りかかってくるフェイト。

 

「っ!」

 

なのははフライヤーフィンを発動して空に逃げる。

 

さあ、なのは。俺との特訓を見せてみろ。

 

俺はなのはとフェイトの戦いを眺める事にしようとしたが。

 

「……む?」

 

妙な……感じだ。何か、感覚が……おかしい。

 

「……」

 

俺はジュエルシードを見た。

 

何やら……発動しそうな。

 

「エヴァ?」

 

【はい、とりあえずジュエルシードの周りに結界を張っておきますね。魔法の監獄(ゲフェングニス・デア・マギー)

 

「どこ見てんだよ!」

 

アルフが後方から襲いかかってくるが。

 

装甲手楯(パンツァーシルト)

 

エヴァの自動防御でそれも防ぐ。

 

「な、何なんだよ……あたしの方を見ないで……簡単に防いじゃってさ!」

 

「ふむ? なら、俺と遊ぶか?」

 

俺はゆっくりとアルフの方を振り向いた。

 

「くっ……」

 

「念の為に言っておくが……俺はあの水色の娘とは違って」

 

「違って……?」

 

「接近戦が得意なんだぜ?」

 

俺はアルフとの間合いを一瞬で詰める。

 

アルフの頭に杖をそえる。

 

「は、速い……!」

 

「ま、俺としてはあの戦いをちょいと眺めていたいのだがね?」

 

俺はなのはとフェイトの方を見る。

 

「隙あり!」

 

アルフは俺の左腕に噛みつこうとしたが。

 

「甘い」

 

そう言って飛びかかって来るアルフの鼻先にデコピンを喰らわせた。

 

「~~~~!!!」

 

その場で声にならない叫びをあげてのたうち回ってるアルフ。

 

〈凄いね、アレスは。相手を見ないでも攻撃を当てるんだから〉

 

〈ああ、鍛錬すれば誰でも出来る。空気の流れを読んでるからな〉

 

〈……どれくらい鍛錬すれば良いの?〉

 

ユナからのツッコミも入る。

 

〈さあ? 人によるけど……3年あれば何とかなるんじゃね?〉

 

〈……ホントに?〉

 

〈まあ、目隠しして生活出来るようになれば〉

 

〈イヤイヤイヤイヤ、それはおかしいから〉

 

「な、何なんだよあんたは! 何であたしの方を見ないでそう簡単に……」

 

「ああ、空気の流れを読んでるだけだ」

 

「……何なのよ……この達人は……おかしいよ……」

 

アルフはその場に座ってしまった。

 

下を俯いてしょげてる様に見える。

 

「お、接戦だな」

 

 

 

 

 

 

-なのは視点-

 

 

フェイトちゃんが斬りかかってくる!

 

でも、アレス君の方がよっぽど速かったの!

 

私は斬りかかってくるフェイトちゃんの攻撃をかわして一気に後ろに回り込む。

 

「っ!」

 

【ディバイン・バスター】

 

私が一番得意とする砲撃をフェイトちゃんに向かって撃つ。

 

【ディフェンサー】

 

バルディッシュがシールドを張って防ごうとするけど……。

 

「私のディバイン・バスターはその程度では止められないの!」

 

ガラスの様に砕け散るフェイトちゃんのシールド。

 

「っ! そんな!」

 

かろうじて避けるフェイトちゃん。まだまだなの!

 

「レイジングハート、お願い!」

 

【イエス、マスター! ディバイン・バスター6連射】

 

私は動いているフェイトちゃんに向けてさらなる砲撃を繰り出す。

 

「ひぃ!」

 

次々に砲撃がフェイトちゃんに向かっていく!

 

驚いた顔でフェイトちゃんは全ての砲撃を避ける! さすがはフェイトちゃん!

 

「全部避けるのなら……レイジングハート!」

 

【イエス! マスター!! ディバイン・バスター12連射!】

 

今度はさっきの2倍! これならフェイトちゃんに当てられるの!

 

さあ、私のお話を聞いて貰うからね!

 

 

 

 

-なのは視点・終了-

 

 

 

 

 

「……」

 

【……おに、いえ、主様?】

 

「何も言うな、エヴァ」

 

何となく、イヤな予感は感じていた。

 

なのは……意外と熱くなりやすい性格なんだな。

 

なのはは砲撃を避けるフェイトに向けてディバイン・バスターを撃ちまくっていた。

 

フェイトの後方のビルは崩壊して更にその奥のビルも崩壊していた。

 

このまま放っておくと周辺が焼け野原になりそうだし、いくら非殺傷設定と言ってもフェイト……半年は再起不能になるぞ?

 

「ちょっと! フェイトが殺されるよ! な、何なんだよあの砲台は!」

 

アルフが詰め寄ってきた。

 

〈アレス……どんな鍛え方したの?〉

 

〈どんなって……ただ模擬戦しただけ〉

 

〈どんな様子だったの?〉

 

〈そりゃあ、俺があまりに避けるからなのはもアレを終いには32連射とか……〉

 

〈死んじゃうよ!? 非殺傷だって言ってもあの一撃が戦艦並みの砲撃喰らったら……あの子……重傷になるよ!?〉

 

〈だよな……? だって、俺のシールドでもヒビ入ったし……〉

 

いや、あの時はさすがに背中に冷や汗かいたからね~。

 

「わ、分かったよ……止めて来るから」

 

俺はなのはの背後に回ってハリセンで叩く。ちなみに、これはエヴァの中に登録してある専用のハリセンだ。

 

 

「やりすぎ」

「にゃっ!?」

 

 

砲撃は止まった。

 

フェイトは肩で大きく息をしていた。

 

目が潤んで……いや、少し泣いてる様に見える。

 

「ハア……ハア……」

 

トラウマにならなきゃ良いが。

 

「も~何で止めるかな……後少しで撃墜出来たのに……」

 

「……もう少し、加減と言うモノを考えんかい」

 

更に俺はなのはの頭を叩いた。

 

「いや、すまんすまん。この子には後で聞かせておくからさ……アレ、持っていって良いよ」

 

 

「!?」

「にゃ!?」

 

 

「あれだけしておいて……持って帰れるか?」

 

俺はフェイトの背後を指差した。背後には瓦礫が無くなった更地と化していた。

 

「う……」

 

言い詰まるなのは。

 

「ってな訳だ。今回は、こちらの反則負けで良い」

 

「ありがと……」

 

「じゃあ、な」

 

俺となのははフェイトの前から立ち去る。

 

 

 

 

 

俺は二重身(ドッペルゲンガー)で2人に分かれた後、分身体でなのは達を自宅に送る。

 

【フェイト達の居場所が分かりました。隣の遠見市のマンションです】

 

「ふむ。確か……明日にフェイト達は母親の元に向かうなよな?」

 

【ええ。原作ではそうなってましたが?】

 

「よし、こっそり後をつけよう」

 

【分かりました。それでは、明日ですね】

 

とりあえず、俺達は自宅に帰り、明日の為に準備をして眠りについた。

 

 

 

 

 

 

目を覚ましてから二重身(ドッペルゲンガー)で2人に分かれた後、分身体を学校に行かせる。

 

まあ、3日は大丈夫だから良いか。

 

その後は遠見市に向かって転移した。

 

 

 

 

 

超高層マンションの屋上に来た。

 

予定通り、フェイトとアルフが立っていた。

 

フェイトの手にはケーキを詰め合わせたであろう箱があった。

 

無論、2人は俺に全く気付いていない。

 

〈エヴァ、会話は聞こえるな?〉

 

〈ハイ、大丈夫です〉

 

〈頼む。俺は風の音で途切れ途切れにしか聞こえない〉

 

〈了解です〉

 

しばし会話をしたあと、魔力が溢れる。

 

そして、光に包まれてフェイトをアルフの2人は消え去った。

 

「エヴァ?」

 

【大丈夫です。きちんと転移先を聞いていますから。次元転移!】

 

足下に広がるベルカ式魔法陣。そして、俺の身体を包み込んでいった。

 

 

 

 

 

「ここは……」

 

【……変ですねぇ?】

 

確かに、時の庭園と思われる場所に着いたのだが。

 

「思ったより位置がずれたか?」

 

【そうかもしれませんね】

 

俺達は散策しながら歩いていった。

 

「うん?」

 

歩いていると、何かの気配。

 

だが、視界には何も映ってはいない。

 

【どうかされましたか?】

 

「いや、何かがいる様な気配が……浄化の蒼水晶(スター・サファイア)

 

右目に気を通して起動させる。

 

すると、通路に佇むおぼろげで透けて見える女の人。

 

白い基調の服で頭に白い帽子。ベージュ色っぽい髪。

 

そして、お尻から猫みたいな尻尾が生えていた。

 

 

「……」

「……」

 

 

女の人は俺の顔を眺めていた。

 

「……見えるのですか?」

 

「ああ、見える。君は……幽霊か?」

 

「はい。私の名はリニス。『プレシア・テスタロッサ』の使い魔をしておりました」

 

「……プレシア?」

 

「ええっと……『フェイト・テスタロッサ』と言う女の子はご存じで?」

 

「ああ、知ってる」

 

「その子の母親です」

 

「なるほどね……」

 

「ぶしつけですが……プレシアを……助けて頂けませんか?」

 

リニスは涙を流していた。

 

 

 

 

 

リニスから大まかな話を聞いた。

 

昔、最愛の娘『アリシア』を事故で亡くした事。

 

そして、最愛の娘を甦らせる為に娘のクローン『フェイト』を造った事。

 

だが、プレシアは納得せず今度は死者蘇生でアリシアを復活させる事。

 

「なるほどね……」

 

「今のプレシアは……病魔に冒され、余命幾ばくも無いのです。せめて……フェイトに母親として接して欲しいのですが…」

 

さて、どうしたモノか。

 

病魔に冒されてるから視野狭窄に陥っているのかもしれない。

 

余裕が無いからフェイトに情愛を捧げていられないのかもしれない。

 

病魔を治せば……何とかなる……だろうか?

 

とにかく、病魔を治さないことにはどうにもならないな。

 

「うん、とりあえずはプレシアに会ってみないことには何とも言い難い」

 

「そうですか……」

 

「……さて、リニスさん」

 

「はい?」

 

「もう1度、生を謳歌してみる気は?」

 

「え?」

 

「もう1度、フェイトとアルフに会う気は?」

 

「叶うなら……会いたいです。この手で……頭を撫でたいです」

 

「分かった。ところで、貴女の身体は?」

 

「……どうなさるのですか?」

 

「ま、それは見てのお楽しみと言う事で」

 

「……。分かりました。私の遺体はこちらです」

 

リニスに連れられて歩いていった。

 

 

 

 

とある部屋に到着するとミイラ化した猫らしいモノがあった。

 

「ほほぉ……」

 

骨だけだとちょっと厄介だったが。

 

組織が残ってるなら……何とかなるかもしれない。

 

「あの?」

 

「ふむ。これなら何とかなるだろ」

 

「それなら……!」

 

「まあ、あわてなさんな。すぐに復活と言うのは無理だから……遺体を箱に詰めて……と」

 

俺は部屋を探って箱を探し、リニスさんの遺体を箱に詰める。

 

で、メモに大雑把な事情を書いておいて、箱に貼っておく。

 

中に入れておくと開けた時に母さんがビックリするからね。

 

「エヴァ」

 

【はい、次元転送!!】

 

ベルカ式魔法陣が発動して箱は俺の家に転移された。

 

「!! 貴方は……古代(エンシェント)ベルカの使い手ですか!?」

 

「ああ。ま、詳しいことは家に送るから……母さんに聞いてくれ」

 

リニスの足下にも同じくベルカ式魔法陣が発動する。

 

「わ、分かりました……」

 

リニスは光り輝いてその場から消え去った。

 

「さて、寄り道したがフェイトを探してみよう」

 

【お兄様、魔力反応が2つ。多分、プレシアとフェイトちゃんでしょう】

 

「分かった。そこに転移してみよう」

 

【分かりました。それでは、転移!!】

 

足下が光り輝いてから俺はその場から転移した。

 

 

 

 

 

転移した先は……丁度プレシアがフェイトに罰を与えていた所だった。

 

「あらあら……小ネズミが進入していたと思っていたけど」

 

プレシアが俺の顔を見てそう言った。

 

「あ、貴方は……」

 

フェイトは部屋の中央で釣り下げられていた。

 

身体には生々しい傷跡が残っていた。

 

「……やれやれ、お仕置きにしてはちょいとやりすぎじゃないのか?プレシアさんよぅ?」

 

 

 




 


鮫島さんの元ネタは某ヘルシング機関の長の執事ですw








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第9話 原作から乖離しはじめました(何を今更)

 



ジュエルシードに捏造設定があります

この小説オリジナルです


 

 

 

 

 

 

「やれやれ、お仕置きにしてはちょいとやりすぎじゃないのか? プレシアさんよぅ?」

 

「私の名を何処で!」

 

「何処だって良いだろ? フンッ!」

 

俺はフェイトを吊っている魔法の鎖を解いた。

 

【次元転送!】

 

魔法陣に包まれるフェイト。そして、姿が消える。

 

何処に送ったかって? 扉の外にいるアルフの所だよ。

 

〈フェイトを連れてどっかに行け!〉

 

〈そ、その声は! 何でアンタが……!〉

 

〈いいから、早くフェイトを連れて転送しろ!〉

 

〈わ、分かったよ……〉

 

そう言って扉の外の気配は無くなった。どうやら転移したと思われる。

 

「あらあら、いきなり来て何のつもりかしら?」

 

「娘を虐待する母親をちょいとお仕置きに」

 

「娘?」

 

「さっきの子は娘じゃないのか?」

 

「あははははは! あの失敗作が娘!? 冗談は止めて貰いたいわ!」

 

大声を上げて笑うプレシア。

 

「そうか……失敗作か……」

 

「そうよ! あんな人形、私の娘ではないわ!」

 

狂気に満ちた表情で俺を見るプレシア。

 

「エヴァ。カートリッジロードだ」

 

【え……アレは……まだ……】

 

「いい。さすがの俺もちょっと頭に来たぜ」

 

【……分かりました。無理はしないで下さいよ? 起爆(エクスプロズィオーン)!!】

 

ベルカ式魔法の真骨頂、カートリッジシステム。一時的に魔力を高めて戦闘力を上昇させるシステムだ。

 

身体にちょいと負担がかかるからいずれは改良しようとしていたのだが。

 

ちょっとこのオバハンにお仕置きしてからだ!

 

「それは! ベルカ式……! 貴方はベルカの騎士!?」

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 竜の一撃、受けて見ろ! 竜牙!」

 

左手に持ち替えての片手突き。

 

プレシアの前に防御の魔法陣が現れるが。

 

「その程度で止まると思うか!」

 

一瞬止まったが、魔法陣はガラスの様に砕ける。

 

「くっ!」

 

プレシアは2層目の防御魔法陣を展開する。

 

「無駄無駄無駄ぁ! この突撃を止めたければその3倍の強度の魔法陣を構成するんだなぁ!」

 

あっさりと砕け散るシールド。

 

「く……! 何て言うパワー!」

 

プレシアは3層目の防御魔法陣を展開。

 

「何枚展開しようが!」

 

「ぐ……ゴホッ」

 

その時、プレシアの口から血が溢れ出す。

 

「……」

 

俺は突きを止めてプレシアの前に立つ。

 

「……ゴホッ……どうしたのよ……」

 

「どうしたも、こうしたも。病人相手にお仕置きしてもな」

 

「そう。だから、私には残された時間は無いの……」

 

プレシアは口元を拭う。

 

「さて、1つ聞きたいのだが。ジュエルシードを集めて……何がしたいんだ?」

 

「……貴方に関係無い話よ」

 

「……そうか。そうそう、俺のデバイスはな……古代ベルカで造られた『武神の魔導書』と言う名前らしいんだが?」

 

「っ! まさか……『夜天の魔導書』の双子機として造られた……僅かな文献だけで実在するかどうかも怪しかった魔導書が」

 

「そう言う事だ。昔の古い事も知ってるかもな?」

 

「『アルハザード』。かつて、死者をも復活させた技術を持つ伝説の都よ。私はそこに行きたいのよ」

 

 

 

 

 

 

プレシアから聞いた話はこうだった。

 

事故で死亡した娘、アリシアを復活させたい。

 

クローン人間でフェイトを造ったけどアリシアでは無かった。

 

まあ、確かに同じ遺伝子でも環境が違えば違う人格になるのは当たり前だろう。

 

「なるほどね~」

 

「……で、貴方のデバイスにその記録が載ってるのか知りたいのよ」

 

「どうなんだ? エヴァ?」

 

【ハイ、記録ありますよ?】

 

1秒待たずのエヴァからの回答だった。

 

「お、おおお教えなさい!!」

 

俺の両肩を掴んで来るプレシア女史。目が真っ赤になってますが。

 

「……条件がある」

 

「……何よ」

 

「フェイトを実の娘として接すること。それが条件だ」

 

「……今更……散々ひどい仕打ちをしてきた私に……」

 

「今ならまだ間に合う。このままだとフェイトの心に深い傷が残るぞ」

 

「……でも……」

 

「それと、アンタの後ろの方でフェイトに似た女の子がふくれ面してアンタの事を見てるのだが?」

 

「へ?」

 

口を開けて呆然とした表情で俺を見るプレシア女史。

 

「言ってなかったな。俺の右目は幽霊とか精霊とかそう言ったモノを見ることが出来るんだ」

 

俺は自分の蒼い目を指差して笑った。

 

「え? へ?」

 

「まあ、アンタには見えないだろうが。その子がアリシアと言う子ではないのか?」

 

俺は右手に魔力を込めてアリシアに当て、一時的に普通の人が見える様にした。

 

「お母さん!」

 

「ひっ!?」

 

驚くプレシア女史。ゆっくりと、後ろの方を向いた。

 

そこには両手を腰に当てて頬を膨らませてプンプンと言った感じが似合う様子の金髪の女の子が立っていた。

 

「あ……アリシア……?」

 

「アリシアじゃないよ! って……やっと私の事気付いてくれた~!」

 

アリシアはプレシア女史の方に駆け寄ってきた。

 

抱きしめようとしたが、アリシアはプレシア女史の身体を通り抜けてしまった。

 

「あ、あれ?」

 

「ほらほら、アリシアは身体が無いから……」

 

俺は苦笑いしてアリシアの方を向いた。

 

「そっか、私の身体はアッチの方にあったんだ」

 

舌を出して笑うアリシア。

 

「……どういう事かしら?」

 

「どういう事も。ここに居るのはアリシアの魂だよ。どうやら成仏はしてなくてずっとここに居たみたいだけどな」

 

「え゛」

 

俺の言葉を聞いて顔が青くなるプレシア女史。

 

「そうだ! お母さんにずっと言いたかったんだ! せっかく妹が出来たのにお母さんったら!!!」

 

そこからはアリシアの説教タイム(ずっと私のターン)が始まった。

 

プレシア女史は正座してアリシアの言うことをずっと聞いているのであった。

 

 

 

 

 

小一時間経過したらアリシアの身体が透け始めた。

 

「あ……あれ?」

 

「時間だよ。見えなくなるだけだから」

 

「そっか……」

 

ちなみにプレシア女史は某ボクサーの様に真っ白に燃え尽きていた。

 

横たわって口からエクトプラズム的な何かが出てる様に見えるが。

 

気のせいだろう。

 

「ま、俺はずっと見えるけどね」

 

その言葉を聞いてプレシア女史は俺の足首を掴んで来た。

 

「えっと?」

 

「ずっとここに居る気は無いかしら?」

 

即座に立ち上がって顔を近づけて来るプレシア女史。鼻と鼻が当たってるんですが……。

 

「仰る意味が分からないですが?」

 

「貴方が居てくれたらアリシアと会話が出来る。そうでしょ?」

 

「まあ、確かに。俺はアリシアの姿と声は確認できますが?」

 

「それに……よく見ると……貴方、すごく可愛い顔してるじゃない?」

 

プレシア女史は頬を赤くして俺の頬を撫でてきてるのですが?

 

もの凄く、イヤな予感を感じるんですが?

 

「ますます訳が分からんのですが?」

 

「まあ、単刀直入に言うわ。私の義息子になりたいと思わない?」

 

「なぬ?」

 

「アリシアかフェイト、どちらかをお嫁にあげるから……それとも、2人とも欲しいならあげるわよ?」

 

プレシア女史はアリシアに説教されて頭のネジが外れたのか?

 

『お母さんったら! もう! でも……お兄ちゃんならお嫁さんになっても良いな~』

 

プレシア女史の後ろでは顔を真っ赤にして頬に両手を当ててやたらクネクネ動いてるアリシアの姿が目に入った。

 

見えぬ! 俺には何も見えんし聞こえんぞ!

 

「ま、まて……俺はまだ9歳だぞ?」

 

「あら、婚約と言う形を取っても良いわよ?」

 

「その前に、フェイトの確認くらい取ってから……」

 

「そうね。多分、貴方なら大丈夫だと思うけどね。ま、確認しておきましょ」

 

ニヤリと口元をあげて笑うプレシア女史。

 

確かに大丈夫そうだから恐いんだが。

 

「……ほれ」

 

俺は小瓶をプレシア女史の方に向けて差し出した。

 

無論、魔法のポシェットから出したのだが。

 

「何かしら?」

 

「とりあえず、アンタの胸にある病気を治せ。アリシアが蘇生してもアンタが亡くなっては意味がない」

 

「確かに……。でも、私のこの病気は……」

 

「騙されたと思って、飲んでみろ。治るから」

 

「分かったわ。騙されたと思って飲んでみるわ……」

 

まあ、完治はするのは間違いない。前世で俺とエヴァが2人で共同開発した秘薬なのだから。

 

問題は、言葉に言い表せない位に不味いと言う事だ。水を飲んでも、歯磨きしても最低3時間は口の中に味が残るのだ。

 

良薬は口に苦し。まさにこの事だな。

 

でも、それで病が治るなら良いと思うがね。

 

【あ、お兄様?】

 

「どうした?」

 

【アルハザードに行くにはどのみちジュエルシードがいりますわよ?】

 

「何?」

 

【万全を期すなら全21個で最低でも9つ必要ですわ。元々はアルハザードの門を開ける為の宝石でしたのよ?】

 

「そうだったのか。そう言う事ならなおさら集める必要があるなぁ……」

 

「へぇ……それは知らなかったわね。ところで……貴方、デバイスに『お兄様』と呼ばせてるの?」

 

プレシア女史がニヤニヤしながら寄ってきた。後ろではアリシアが未だにクネクネしていた。

 

 

「……う」

【あ……】

 

 

「まあ、人には色々な事情があるからこれ以上の詮索は止めておくわ」

 

それでもプレシア女史はニヤニヤと笑っていた。

 

「く……俺は帰るぞ。いいか? その薬を飲んでおけよ」

 

「分かったわよ。それじゃ、またお会いしましょう? 小さな勇者さん?」

 

「藤之宮アレス。それが俺の名だ」

 

「分かったわ。アレスちゃん?」

 

プレシア女史、貴女もちゃん付けで呼びますか。

 

「ああ」

 

俺は時の庭園から転送した。

 

 

 

 

 

 

 

「おや?」

 

転送してみたら何故かフェイトとアルフが居た。

 

「な、何でアンタがここに……」

 

フェイトに包帯を巻いているアルフ。フェイトは気を失っていた。

 

「ああ、うっかりここに転移したみたいだな、ハッハッハッ」

 

「ハッハッハッじゃないよ、全く……。でも、アンタにはお礼を言わないとね。ありがとう、フェイトを救ってくれて」

 

「気にするな。たまたま転移したらあそこに飛んだだけだ」

 

「……ま、どこまでがホントかアタシは突っ込まないけどさ。それでも、フェイトを救ってくれた事は間違いないだろ?」

 

「そうだな。結果としてはフェイトを救ってるな」

 

黙々とフェイトの腕に包帯を巻き始めるアルフ。

 

「治癒魔法、使わないのか?」

 

「アタシが魔法を使うと、フェイトに負担がかかるからさ。とりあえず、応急処置だよ」

 

「なるほどね」

 

俺はアルフの横に移動する。

 

「どうしたんだい?」

 

「ああ、せっかくだからちょいと魔法を……リク・ラク・ラ・ラック・ライラック 汝が為に(トゥイ・グラーティアー)ユピテル王の(ヨウィス・グラーティア)恩寵あれ(シット)治癒(クーラ)』」

 

フェイトの身体が光り、傷がどんどん塞がっていく。

 

「へぇ。凄いじゃないか。あれだけの傷を一瞬で」

 

「まあな。魔法のセンスは無いんだが」

 

「冗談。アレで魔法のセンスが無いって言ったら大半のヤツが魔法のセンスが無いって事になるよ」

 

「それでもだ。フェイトの方が上だよ。魔法の才能は……ね」

 

「ううん……」

 

フェイトからの呻き声。

 

見るとフェイトの目がゆっくり開いた。

 

「ここは……」

 

「自宅だよ、フェイト」

 

「そう……じた……」

 

俺の顔を見て動きが止まるフェイト。

 

「フェイトを助けてくれたんだよ。あの鬼婆の所から転移させて……傷まで治してくれたんだ」

 

「そう……ありがとう……」

 

そう言ってソファーから起き上がるフェイト。

 

「さて、と。他に異常は無いか?」

 

「……ん……無いよ」

 

その時、フェイトのお腹から可愛い音が聞こえてきた。

 

 

「……」

「……」

 

 

「……ま、そっちは正常だな」

 

耳まで真っ赤になってるフェイト。隣ではアルフがニヤニヤ笑っていた。

 

「乗りかかった船だ。飯の準備位してやる」

 

俺は立ち上がってキッチンと思われる場所に向かって歩いていった。

 

 

 

 

 

 

「……何も無いんだが」

 

俺は冷蔵庫を開けて愕然とした。

 

見事に空っぽだったからだ。調味料1つ存在しない冷蔵庫。

 

いや、奥に消臭剤のキムコはあったが。

 

【さすがのお兄様もこれではどうしようもありませんね~】

 

「……買いに行くか」

 

俺は街に転移した。

 

 

 

 

 

 

適当に食材と調味料を買ってきた俺はキッチンで料理を始める。

 

まあ、それなりに料理は出来る。……が某赤い弓兵の様にはいかないが。

 

「さて、出来た」

 

俺は料理をテーブルに並べた。

 

「わあ」

 

「お、美味そうな肉じゃないか~」

 

テーブルの上に並べたのはサイコロステーキ、ツナを入れたコーンサラダ、ワカメが具の味噌汁に白いご飯。

 

後は豆腐の上にショウガを乗せた冷や奴だ。

 

「ほら、しっかり食べないと大きくなれないぞ」

 

「アンタだって大きくなれないよ?」

 

「やかまし。俺は良いからフェイトの方だろ」

 

「……うん……」

 

そう言って俺達は食事を始めた。

 

 

 

 

 

 

「そう言えば、アンタの名前って?」

 

アルフが肉をほおばりながら俺の方を向いた。

 

「……言ってなかったか?」

 

「いいや、聞いてない」

 

フェイトの方を見ると首を横に振っていた。

 

俺は顎に手を当てて思い出した。

 

確か、なのはは自己紹介してたけど……俺は言った記憶が無いな。

 

「確かに言った記憶は無いな」

 

「でしょう?」

 

「それでは、改めて。藤之宮アレス。年齢は9歳。こないだ会ったなのはの幼馴染みだ」

 

「なのはって……」

 

「こないだ戦った水色の子だよ」

 

「極悪固定砲台の子だね……」

 

酷い言われようだが、大体合ってる。

 

「それで? 何で、ジュエルシードを集めてるんだい?」

 

「うむ、それはだな……」

 

俺は事情を説明した。

 

 

 

 

 

「なるほどねぇ」

 

「私も……頼まれてるから……」

 

「良いよ。まあ、プレシアさんと話をしてるから俺もフェイトの協力をする。なのはとユーノにも俺から言っておく」

 

その言葉を聞いてアルフとフェイトが目を見開いた。

 

「そんな……あの鬼婆が……」

 

「母さんが……」

 

「ああ、あの後……誠心誠意を持ってプレシアさんとお話したぞ?」

 

「ホントにぃ? まあ、確かにあんたの腕ならあの鬼婆もそう簡単に勝てないだろうけど……」

 

「そう言えば、アレスの魔法って……何か違うね?」

 

フェイトは冷や奴を口に運んでいた。

 

「ああ、俺の魔法はベルカ式と言う形式でフェイトやアルフ、なのはにユーノが使ってる魔法とはちょっと違うんだ」

 

「そう言えば、リニスに聞いた事ある。かつて、アタシやフェイトが使ってるミッド式と二分する位、繁栄してた形式だって」

 

「うん。ミッド式は遠距離、広域魔法とか射撃系が多いけど、ベルカ式はその遠距離と広域魔法を度外視して対人戦、主に近接戦闘向きの魔法だってさ」

 

「へぇ~」

 

「それに、俺は武器を使った戦いなら得意分野だし」

 

「確かにねぇ~。背後からの攻撃でも簡単に避けるんだもん。どうすりゃ勝てるか、アタシは困ったよ」

 

「簡単、簡単。前からの攻撃なら俺の動体視力を上回る速さで攻撃、背後からなら完全に気配を消して空気を全く動かさずに攻撃するとか」

 

俺は味噌汁をすする。うむ、今日もいい感じに出汁が取れてるな。

 

「どうすりゃ空気を動かさずに攻撃しろと。それに、アンタの動体視力はどれくらいなんだ?」

 

「ん? フェイトがよく撃ってる魔法の弾が止まって見える位」

 

「ブーッ!!!」

 

豪快に味噌汁を噴き出すアルフ。

 

「あ、アルフ!?」

 

「こらこら、ドリフのコントしてるんじゃないぞ?」

 

「フェイトのアレが止まって見えるって……アンタの目はどういう作りしてるんだい!?」

 

「どういう作りと言われても……説明しようが無いのだが?」

 

「ベルカの魔法で強化してるとか?」

 

【ベルカにはその様な魔法はありませんよ? お兄様の生来の目ですよ?】

 

エヴァが突然喋った。ってか、もう主様って呼ばないのね?

 

「エヴァ、主様って呼ぶ気は無いのね?」

 

【もう、いいじゃありませんか! お兄様はお兄様なんですから!】

 

エヴァが開き直りやがった!

 

「デバイスにお兄様呼ばわりねぇ……?」

 

「バルディッシュ?」

 

【私は聞いたことありません】

 

レイハさんに続いてバルディッシュ卿もバッサリだった!

 

アルフとフェイトの目が妙になま暖かかった。

 

「まあ、俺とエヴァの関係は置いといて……」

 

「……アンタ、妹が欲しかったとか?」

 

「……何が言いたいのかね?」

 

アルフの口元が妙につり上がってるように見えるのだが。

 

「いや、デバイスにわざわざお兄様呼ばわりさせるなんて……シスコンとか?」

 

「何を戯けた事を。そもそも俺は一人っ子だ」

 

「なるほどねぇ~」

 

アルフは腕を組んでウンウン頷いていた。

 

「一人っ子故に妹が欲しかったと……。うん、そうかそうか」

 

アルフはどこからかハンカチを取り出して目を拭いていた。

 

嘘泣きだろ、コラ。

 

「そっか、アレスも寂しかったんだね……」

 

何故かフェイトにまで同情の眼差しを受けていた!

 

どうしてこうなったんだ!?

 

「うが~! 俺は別に寂しかったわけじゃねぇ!」

 

 

 

 

 

 

食事も終えて後片付けを済ませる。

 

アルフとフェイトは風呂から出てきた所だった。

 

「俺はもう帰るぞ」

 

「ああ、ありがとね」

 

「ありがとう」

 

「そうそう、今度機会があったら一緒にプレシアさんの所に行こうか?」

 

「え?」

 

「誠心誠意持ってお話したから大丈夫だ」

 

「う……うん……そうだね」

 

少し、戸惑ってるフェイト。

 

「ま、もうちょいジュエルシードを集めてからだな」

 

俺の足下にベルカ式魔法陣が展開される。

 

「それじゃ、俺は帰るぞ。しっかり食事取って、体調管理しろよ」

 

「うん……」

 

「分かったよ」

 

俺は自宅に向けて転移した。

 

 

 

 

 

 

 

自室に着いたらリニスさんが体育座りしていじけていた。

 

「……遅いです」

 

「すまん、フェイト達の所に行ってた」

 

「そうですか。元気にしてました?」

 

「ああ。ちょいと顔色悪かったから食事の準備して飯を食ってきた」

 

「そうですか……ありがとうございます」

 

「気にするな。で、俺の母さんから話は聞いたか?」

 

俺はベッドに上着を投げた。

 

「ハイ、一通りは。凄いですね、古代(エンシェント)ベルカ式と言えば滅多にお目にかかれないんですよ?」

 

「そうなのか?」

 

「ハイ。しかも、『武神の魔導書』と言えば存在するかどうか疑わしかった伝説の魔導書。そんなのを持っているなんて……下手したら管理局に狙われるかも?」

 

「まあ、その管理局が来たにしても……ここはそいつらの管轄になるのか?」

 

「いえ、管理外ですね」

 

「なら、大丈夫だろ。来ても撃退するし」

 

「……まあ、アレスさんなら大丈夫そうですけど」

 

「そう言うこと」

 

「そうそう、直美さんがご飯の準備してましたけど?」

 

「なぬ?」

 

【お兄様? 直美さんにご飯がいらない事を伝えてましたか?】

 

エヴァの言葉を聞いて俺は背中に少し、冷や汗が流れた。

 

そう言えば、念話で今日の晩ご飯はいらないと伝えた記憶は……無い。

 

「アレスちゃ~ん? 帰って来たの~? ご飯出来てるわよ?」

 

そう言って部屋に母さんが現れた。

 

「あ……母さん……実は……既に外で済ませたと言うか……」

 

「え……?」

 

母さんの目が見開かれて驚愕していた。

 

そして、ハンカチを口にくわえて言い放つ。

 

「ああ……アレスちゃんが……とうとう反抗期に……外でご飯を済ませて来るなんて……」

 

当然、嘘泣きなのはバレバレなのだが。

 

「だから、うっかり伝え忘れたんだって……」

 

「いいえ。あたしのご飯が不味いからなんでしょ?」

 

「いや、母さんのご飯は美味しいから……」

 

「それじゃ、何が不満なの!? 量? おかずの品数が少ないとか!?」

 

「いや、それも問題ないから……」

 

「分かった! あたしが食べさせてくれないからなのね!? 分かったわ! 今度からあたしが食べさせてあげるから!」

 

「そ、それだけは止めてくれ!」

 

なのはが泊まりに来た時にそれをされたら……どんな要求が来るか! 同じように『あ~ん』させられるに違いない!

 

「それなら、忘れないように連絡頂戴ね? 今度忘れたら……問答無用であたしが食べさせてあげるから♪」

 

そう言って母さんは俺の部屋から出ていった。

 

「……」

 

リニスを見ると……『何この変な親子』と言いたげな表情で俺の方を見ていた。

 

 

 

 

 

さて、リニスを復活させるのだが。

 

この家にはそんな設備は無い。

 

「さて、久しぶりにアレを出すか」

 

そう言って俺はポシェットからダイオラマ魔法球を出す。

 

無論、修業用の部屋もあるが今は使用する気は無い。

 

もっとも、他の部屋を繋げていないから使用出来ないのだが。

 

「ここに設置して……と」

 

俺は部屋の真ん中にダイオラマ魔法球を置く。

 

「時間は……よし、1日1時間のままだな」

 

外の1時間がダイオラマ魔法球の中では1日。便利は便利だが、今回は寿命があるからあまり使用しないようにしようか。

 

床に魔法陣を書いて発動させる。これで中に入れる寸法だ。

 

「あの……これは?」

 

「まあ、中に入って説明するよ」

 

俺はリニスさんの遺体が入った箱を持ってからリニスさんに魔法陣の上に乗るように促す。

 

「分かりました」

 

そう言って俺達はダイオラマ魔法球の中に入る。

 

 

 

 

 

「わ~凄いですね~」

 

リニスさんは城の窓からの景色を堪能していた。

 

青い空にジャングルの様な森、先には青い海も見えた。

 

「これもベルカ式の魔法なんですか?」

 

「う、うん……そんなもんかな……」

 

とりあえず、ベルカ式と言うことにしておいた。

 

説明となると色々と面倒になるし。

 

確か、3階にクローンシステムの設備があったよな。

 

俺は3階に向かって階段を昇る。

 

 

 

 

 

部屋に入ると生体ポッドとかそれに繋がれた、いかにもと言った機械が鎮座していた。

 

「これは……?」

 

「ん、ぶっちゃけ言うとクローン作る機械」

 

「ええ!?」

 

「まあ、リニスさんの身体を復元してそれにリニスさんの魂を定着させる。多分、1週間くらいで出来ると思うよ?」

 

「す……凄いです……プレシアが見たら大喜びするかも」

 

確かにプレシア女史なら狂喜乱舞するかもしれないな。

 

「それでは、リニスさんの身体を……」

 

箱から取り出してテーブルの上に置いた。

 

 

 

 

 

組織片を機械に入れてリニスさんの遺伝子情報を解析する。

 

ちなみに、この機械は前世の前世において未来の人から貰った機械である。

 

本来は身体を失った人の腕とか足とかを復元させる機械なのだが。

 

無論、全身全て復元可能と言うとんでもない機械。

 

故に、あまり人には見せられないんだよね。

 

リニスさんにも喋らないように言っておこう。

 

「あ、リニスさん」

 

「はい?」

 

「ここで見たこと、余り喋らないでくださいね?」

 

「あ、ハイ。分かりました。折角生き返らせて貰うんですからね」

 

そう言ってリニスさんは機械をジロジロ眺めていた。

 

 

 

 

 

暫くすると機械が本格稼働しはじめた。

 

生体ポッドの中に肉片みたいな何かが出来始めた。

 

「これって……」

 

「そう。リニスさんの身体になるんだよ。後は時々様子を見に来るくらいでやることは無いよ」

 

「そうですか」

 

「さて、後は出来るまでは休憩だ」

 

 

 

 

 

3日後(外では3時間)。

 

様子を見に来た。

 

生体ポッドの中には猫らしき生き物が浮いていた。

 

「……そうか、リニスさんは……」

 

「ハイ。私は山猫の素体だったので……」

 

人の身体ならもうちょっと時間がかかったであろうが、山猫ならもうじき完成するかもしれない。

 

【お兄様、出来たみたいですよ?】

 

ディスプレイを見ると100%完了と出ていた。

 

すると、ピーピーと音が鳴って生体ポッドの中の培養液が抜き取られる。

 

「おお、出来た出来た」

 

俺はリニスさんの身体を取り出し、魔法陣が描かれた絨毯の上に置いた。

 

「後は……魔力供給してリニスさんの魂を入れたら無事に復活だな」

 

「えっと……ひょっとして……」

 

「主人はとりあえず俺にしておこうか。まあ、プレシアさんは俺の薬を渡したから病気は治ってるだろうけど……」

 

「あ……そうでしたね。確かに負担をかけるわけにはいかないですし……」

 

そして魔力供給を開始する。

 

ラインは繋がってリニスさんの身体が光り輝いてきた。

 

「よし、後はリニスさんが身体に触れて」

 

「分かりました!」

 

リニスさんは自分の身体に触れる。するとリニスさんの魂は身体に入っていった。

 

すると、目の前の山猫が変化して……

 

「……マジですか?」

 

人間形態で全裸のリニスさんが横たわっていた。

 

「うん」

 

目を覚まして起き上がるリニスさん。

 

凄く……大きいです……じゃなくて!

 

「ずっと山猫形態かと思ってたら! こういうオチかよ!」

 

俺はバスタオルをポシェットから取り出してリニスさんに渡す。

 

「あ、ごめんなさい。私ってずっと人間形態で山猫形態ってほとんどとってなかったから……」

 

そう言ってリニスさんはバスタオルを身体に巻いた。

 

はちきれんばかりの胸は……凄まじい。シグナムと同等かもしれない。

 

そして、視線を下に向けると……。

 

下が隠れて無いんですが。パ○パンなんですか? リニスさん?

 

これ以上はリニスファンに刺される恐れがあるからあえて言わない。

 

見えぬ! 俺には何も見えぬ!

 

「あ~……下で服を探して来ますね」

 

俺は2階に向かって服を探すことにした。

 

 

 

 

 

リニスさんに合うのが紺色のメイド服しか無かったので仕方なくメイド服をリニスさんに渡す。

 

ぶっちゃけ言うと胸のサイズが……メイド服しか無かったのだ。

 

まあ、デザインは古来からのロングスカートタイプで落ち着いた雰囲気が出てる。

 

リニスさんにはお似合いだと思ってる。

 

「ん~……召使いの人がよく来てる服の様な?」

 

知ってましたか、リニスさん。

 

「あ~……まあ、確かに召し使い用の服ですよ?」

 

「そうですよね。私はアレス君の召使いですものね。それでは、不肖のメイド・リニス。夜の奉仕も頑張らせて頂きます!」

 

「ぶ――――――――――――――っ!!!」

 

もの凄くとんでもないことを言い放つリニスさん。

 

「どうされました?」

 

「リニスさん……俺の年齢知ってて言ってるのかな? かな?」

 

「……そう言えば、そうでしたね。アレス君の年齢は……確か9歳?」

 

「ええ。こちらの世界のこの国では成人扱いにされるのは20歳なんですよ?」

 

「でも、実際には子供を作れるのは早い人で11歳とかでも大丈夫なんですよね?」

 

まあ、個人差はあるが……。確かにそれでもアレを迎える人は迎えるよな。

 

ってか、このネコ耳メイド(ネコ耳は生えては無いが)は何を言ってるのだろうか。

 

「ああ、まあ、個人差はあるが……可能と言えば可能なんですが……」

 

「分かりました! それでは来年にアレス君が子供を作れるように夜の鍛錬を私が手伝えば良いのですね!?」

 

『我が骨子は捻れ狂う』もビックリする位の勢いで身体を捻って飛んでいきたいんだが!

 

「そっちの鍛錬はどうでもいい! いいから、リニスさんは普通に過ごして良いですから!」

 

「はい、分かりました。それと、夜の奉仕は冗談ですよ?」

 

そう言ってリニスさんは舌をちょっと出して笑っていた。

 

うぬぅ! からかったのか!

 

「くっ……やられた……」

 

「それとも、ホントにします? 私の舌って、素体が山猫だからザラザラしてるんですよ?」

 

そう言ってリニスさんはしゃがんで来て俺の右手を取り、指先を舐めて来た。

 

確かに、ネコに舐められた様な感覚が指先に広がる。

 

「おぅ……くすぐったいと言うか……ホントにネコの舌なんだ」

 

「これで色んな所を舐められたら……どうなるかな?」

 

リニスさんから妙な色っぽさを感じてくるんですが。

 

【さっきから……黙って聞いていたら。ダメですよ? お兄様は私が奉仕するんです!】

 

エヴァが乱入してきた!

 

大体は黙っているのに……さすがに耐えきれなくなってきたのか!

 

「あら、さっきから気になってたのですが。アレス君は自分のデバイスに『お兄様』と呼ばせてるのですか?」

 

口元がつり上がってるんですが……リニスさん。

 

「いや、これは……」

 

【お兄様はお兄様なのです! ポッと出の使い魔にそんな役目はさせません!】

 

「うふふ」

 

そう言ってリニスさんは立ち上がって俺の頭を撫でて来た。

 

「?」

 

「冗談ですよ。アレス君は私を助けてくれたのです。アレス君の望まない事をするわけないじゃないですか」

 

「また……騙された……」

 

「それにしても……エヴァでしたか? デバイスの身でどうやってアレス君に奉仕するのか……気になりますね」

 

【私はユニゾンデバイスなのです。身体はちゃんと持ってるのです!】

 

「あ! まだそれは!」

 

【あ……】

 

エヴァが暴露しやがった! ドジッ娘属性が付与されてたか!?

 

「わ! そうだったの! それじゃあ姿を見せて~!」

 

もはや言い逃れは出来そうになかった。

 

仕方なくエヴァは姿を変えて本来の姿に戻った。

 

金髪の幼女姿に。

 

ちなみに服装はリインフォースさんと同じ服装なのだ。言ってなかったが。

 

簡単に言うと、エヴァンジェリンがリインフォースさんのコスプレをしてるような感じだ。

 

「わー! 可愛い姿じゃないですか!」

 

そう言ってエヴァの頭を撫でるリニスさん。

 

……まさか、ロリの気は無いですよね?

 

「アレス君の姿も可愛いかな~と思ってたけど、エヴァちゃんの姿も可愛いわね~」

 

ひょっとしたらロリとショタが50対50なのかもしれない。

 

「え~重ね重ね言いますが……エヴァがユニゾンデバイスと言うのは」

 

「分かってます。アレス君が秘密を明かすまで黙っておけば良いのですね?」

 

「お願いします」

 

「うふふ。アレス君と秘密の共有ですか。それにしても、アレス君とエヴァちゃん……並んでも違和感が無いわね」

 

「まあ、確かにそうですが……」

 

「それに、アレス君。君が大きくなった時……少女偏愛(ロリコン)扱いされるんじゃないですか?」

 

「それは。まあ、その時に考えます」

 

来年に成長が止まる事は言わなかった。

 

言う必要が無いしね。

 

あ~、なのはとかアリサとかすずかが少年偏愛(ショタコン)でない事を祈る。

 

桃子さんと母さんは……放っておこう。実害があるのは俺だけだし。

 

「それで、お兄様。リニスさんは……どうなさいますか?」

 

「そうだな。魂と身体が馴染むまで2週間はかかると思うから」

 

「そうなんですか?」

 

「ああ。頭を強くぶつけたらショックで幽体離脱するかも知れないから気を付けてね」

 

「分かりました。大人しく生活しておきます」

 

 

 

 

 

リニスはダイオラマ魔法球の中で2週間位生活することに。

 

彼女の家事能力は高いから1人でも大丈夫だろう。

 

まあ、2週間経ったら外に出るように言ってるし。

 

さて、リニスさんも復活させたし、本格的にジュエルシード集めましょうかね。

 

ってか、俺の役目は転生者を天界に送り返すのが役目なのになぁ。

 

 

 




 

みんな大好きリニスさんですよ~

パ○パン仕様はこの小説オリジナルですw





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第10話 そう言えば、管理局が来ないなぁ

 


物語も佳境?






 

 

 

 

 

 

次の日。

 

学校は滞りなく終わってジュエルシード探し。

 

恭也さんと忍さん、ノエルさんと鮫島さんとアリサとすずか。ファリンと美由希さん。

 

ユーノとユナ。俺となのは。

 

と言った組に分かれて捜索。

 

まあ、そう簡単に見つからないみたいだ。

 

と思ってたら海鳴臨海公園の方から魔力反応が。

 

 

「なのは!」

「うん!」

 

 

俺達は頷き合ってから公園の方に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

到着するとユーノとユナが結界を展開して木に取り憑いたジュエルシードが暴走していた。

 

お前はドラ○エに出てきた人面樹かとツッコミたいね。

 

「ヴオォォォォ!!」

 

人面樹もどきは咆吼して地面から抜け出て来た。

 

周辺に根っこが出てから暴れ始める。

 

「なるほど、ああなるわけですか」

 

「あれ?」

 

見ると恭也さん、忍さん、ノエルさん、鮫島さん、ファリン嬢に美由希さん、アリサ、すずかも居た。

 

 

「うっわー」

「わぁ、人面樹…それともウ○ラーかな?」

 

 

ウ○ラーなら青い身体で葉っぱが赤いでしょうが。

 

うむ、ヤツなら世界樹の葉を持ってるからアリシアを生き返らせそうなのだが。

 

ってかすずか。貴女はドラ○エやったことあるのか。そもそもこの世界にドラ○エあるのか。

 

 

「ふむ……木○拳を思い出しますな」

「そうですね。映画があった次の日に学校で男子が真似してましたね」

 

 

鮫島さんとノエルさんが人面樹もどきを眺めながらそう言った。

 

いやいやいや。アレの何処が木○拳かと。ジャッ○ーさん吹っ飛ばされますよ。

 

 

「そう言えば、怪○くんにもあんなヤツが出てたな」

「そうね~懐かしいわね、○物くん」

 

 

懐かしいな~って! 何で知ってるんだよ! 年代がおかしいように思えるんだが!

 

ツッコミ所満載ですよ、恭也さんに忍さん!

 

 

「よく、指輪物語にあんな感じのヤツ出てきてなかったけ?」

「ロード・オブ・ザ・リ○グですか? そう言えば、トレ○トって言う名前で出てましたね」

 

 

と会話してるのは美由希さんとファリン嬢。

 

ああ、確かに出てたよね。もっとも、こっちのヤツは凶暴化してるからトレ○トさんに失礼かと思いますが。

 

「……エヴァ。とりあえず、大丈夫なように結界を」

 

【ハイ、魔法の監獄(ゲフェングニス・デア・マギー)

 

そう言って俺は全員の周りに結界を張っておく。

 

「それじゃ、俺はなのはの所に行きますね」

 

 

 

 

 

人面樹もどきの所に行くとなのはとフェイトも現れていた。

 

2人の共同作業で人面樹もどきは秒殺されてジュエルシードが空に浮いていた。

 

「アレス君? フェイトちゃんにジュエルシードをあげるってどういう事かな? かな?」

 

なのはの目がおかしい。据わってる。

 

アニメ的表現を言えばハイライトが無い。所謂ヤンデレ目になってる。

 

あと、その台詞はなのはじゃなくてティアナだと思う。

 

なのはなら『にぱー☆』であろう。

 

「あ、すまん。言ってなかったな。だから、そのシューティングモードになったレイハさんを下ろせ! あと身体の微妙な揺れをどうにかしろ!」

 

手がガタガタ震えてるなのは。アルコールが切れた人に見えるぞ。

 

【アレス、早く説明して下さい。このままではマスターの魔力で私が壊れそうです!】

 

おおぅ。大容量と言われてるレイハさんを破壊に導くとは。なのは、恐ろしい娘!

 

「うう……」

 

同じくガタガタと震えてるフェイト。

 

いつぞやの砲撃連射を思い出してるのだろうか。

 

「そんなのはどうでも良いの! だから、早く説明を! 早く(ハリー)早く(ハリー)早く(ハリー)!!」

 

いつからアー○ードになったんだよ!

 

「まて、落ち着け! 今から説明してやるからな!」

 

 

 

 

※説明中

 

 

 

 

説明してるとユーノとユナもやってきた。

 

「ええ! そうだったの!?」

 

エヴァからジュエルシードはアルハザードに行く為のキーと聞いてびっくりのユーノ。

 

「とまあ、一度使用してアッチに認証登録しておけばあとはフツーにアルハザードに行けるらしい」

 

「へー」

 

……なのははよく分かって無いと思う。俺には分かる。

 

「お願い……」

 

フェイトはなのはの手を握っていた。

 

「アタシからもお願いするよ」

 

いつの間にか来ていたアルフも人間形態に戻って同じくなのはの手を握っていた。

 

「う……ユーノ君は……」

 

なのはは冷や汗をかきながらユーノを見る。

 

「僕ははんた……」

 

「ユーノってね、昔……部族にいた女の人の下着を……」

 

「わ――――――――――――っ! 良いよ! どんどん使って良いよ!」

 

ユナの説得によってユーノは折れた。

 

ま、こっそりユナに向けて〈ユーノを説得したら3日間お風呂使って良いぞ〉と念話しておいたのだが。

 

ちなみにユーノとユナがウチのお風呂を使うと妙に長い上、使った後に入ったら妙な空気が漂っていたからだ。

 

別に変な匂いがした訳でも無いのだが、俺の六感と言うか何かが訴えてきたから使用を禁止していたのだ。

 

なのはとフェイト、アルフの視線が妙に冷たかった。ただし、ユーノに向けてだが。

 

「うん、分かったの。これからはフェイトちゃんの協力するね」

 

「ありがとう……」

 

フェイトの目から涙が溢れていた。

 

 

 

 

 

そんなこんなで人面樹もどきから取ったジュエルシードはフェイトが持つことになった。

 

なのはが持っていたジュエルシードもフェイトに渡してある。

 

……そう言えば、この戦いの後にクロノが乱入して来たような。

 

周りの気配を探ってみても誰も転送してきた様な気配は無い。

 

おかしいな~? 確か、この戦いの時に来たと思ったんだけど。

 

まあ、良いか。居ても居なくても今回は問題ないし。

 

 

「また明日~」

「うん」

 

 

そう言ってフェイトとアルフは転移した。

 

そして、俺達も解散して自宅へと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

「おおぅ……そう言えば」

 

「どうかなさいましたか? お兄様?」

 

風呂に入り、ご飯も平らげてからエヴァと2人で部屋の中でくつろいでいた時の事。

 

「いや、確か……今日辺りにクロノが乱入して来るはずだっただろ?」

 

「そう言えば……そうでしたわね」

 

顎に指を当てて考え込むエヴァ。

 

「考えてみたら。管理局がここに来た原因はなのはとフェイトが戦って、ジュエルシードを暴走させて次元震を起こしたから来たんだよな」

 

「……あ」

 

「そう。なのはとフェイトが戦ってたけど、ジュエルシードは次元震を起こしていない」

 

「そうですわね。今日も起こしていない」

 

「だから、アースラはまだここの所在地が分かっていない」

 

「そりゃ~来るわけありませんわね、お兄様?」

 

俺とエヴァは冷や汗を垂らしつつ笑い合っていた。

 

 

 

「どないしよ……」

「どうしましょう……」

 

 

 

ふと思う。実際、管理局来ても……なんか役に立ったか?

 

無印では時の庭園に突入してプレシアさんにボッコにされて退却だろ?

 

A'sでは……最後にアルカンシェルと言う波動砲もどき撃って闇の書の防衛プログラムを消滅させた位だろ?

 

StSでは……無限の欲望に良いようにボッコボコにされてたよな。

 

でも、無限書庫はそれなりに役立ちそうだよな……。

 

ユーノが散々こきつかわれそうだが。

 

でも、今回は同じ能力持ちのユナもいるから……。

 

一応、かかわり持っても良いけど、本格的に入局するなら高校生が終わってからにしようかな。

 

中卒は……こっちの世界に帰ってきた時に色々とキツそうだし。

 

嘱託魔導師でまったり頑張るかな。

 

なのは、フェイト、はやての3人は……どうするかな。

 

……。

 

ま、その時考えるかな。

 

「う~ん。ま、そのうち来るんじゃね?」

 

「そうですわね。お兄様の事だから……」

 

「ああ。関わりは持つが、入局はしない。嘱託魔導師でのんびり過ごす」

 

「ですわよね~」

 

「あんな子供の頃からこき使う組織、信用なるかって。どさくさに紛れて最高評議会ぶっ潰しておこうかな……」

 

「あまり大きな行動をすると他の転生者達の的になりかねませんわよ?」

 

「……そうだった。俺の役目は転生者達をとっ捕まえる事だったんだ」

 

「忘れてたとか……」

 

「よくある話だ」

 

「……ま、作者もよく忘れますし」

 

「だから、メタな発言は止めろと……」

 

こうして夜は更けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―アースラ艦内―

 

 

「はっくしょん!」

 

「あら? 風邪かしら、クロノ?」

 

機械チックなブリッジにいるのは黒い髪をした黒い服装に身を固めた少年『クロノ・ハラオウン』。

 

そして、そのクロノに話しかけたのは水色っぽい髪をして額にマークがある女性、『リンディ・ハラオウン』。

 

「いえ、別に……誰かが僕の噂をしてるのかと」

 

「あら、例えば……ここにいないエイミィとか?」

 

「……何でそこでエイミィの名前が出るんですか? かあさ……じゃなくて艦長?」

 

クスクス笑ってるリンディ。手には湯飲みが握られていた。

 

「さあ? どうしてでしょうねぇ?」

 

そこへ、ドアが開いて栗色っぽい髪をしたショートヘアの女性が入ってきた。

 

「艦長、次の捜索場所ですけど……」

 

「あら、ご苦労様、エイミィ。ところで、さっきクロノの噂とかしてなかった?」

 

「か、艦長!」

 

「え? してませんよ。どうしたの~クロノく~ん? 風邪ならお姉さんが看病してあげようか~?」

 

そう言ってクロノの頭を撫でるエイミィ。

 

「風邪じゃない! それと上官の頭を撫でるな!」

 

「良いじゃないの。リンディ艦長も頭を撫でるのいかがですか?」

 

「そうねぇ……。最近、クロノも少し背が伸びてきたからねぇ……。どっかに可愛い男の子いないかしら」

 

そう言って遠い目をしてお茶をすするリンディ。

 

「……かあさ、艦長」

 

「リンディ艦長……いい加減に幼い男の子を毒牙にかけるのはどうかと」

 

「人聞きの悪い事を言わないで頂戴。可愛い男の子と一緒に寝たりとかお風呂に入ったりする位だから!」

 

 

「……」

「……」

 

 

クロノとエイミィの眉間に皺が寄っていた。

 

 

『ダメだこりゃ』

 

 

2人の頭にこんな台詞が浮かんでいた。

 

「……まあ、リンディ艦長のアレは今に始まった訳じゃないし……」

 

「……はぁ……世の中こんなハズじゃなかったのに……」

 

「ところで。エイミィ? 何か報告か用事があったのでは?」

 

「ああ、そうでした。次の捜索場所ですが……」

 

そう言ってエイミィは空間ディスプレイを切り替えた。

 

「あら、綺麗な星ね」

 

「第97管理外世界でこの惑星の名は『地球』と言います」

 

「ふむふむ。で、魔法は?」

 

「無いですね。文化レベルはBで次元移動手段も無し」

 

「なるほど……。ここは確率は低そうだから違う世界に……」

 

クロノがそう言おうとした時。

 

「……何を言ってるの、クロノ。私の勘が騒いでる。ここに私が望む男の子が……」

 

「エイミィ? 違う世界にしよう」

 

「ダメです。ここからだと違う世界に行くにはロスが多すぎます。とりあえず、調べてからにしましょう」

 

「……そうか。分かった」

 

そう言うとクロノはブリッジから歩いて出ていく。

 

「……何かしら……この星には何かがあるわ」

 

リンディは画面の星をジッと見つめていた。

 

「(艦長の勘は意外と当たるからねぇ~。ま、可愛い男の子がいるのは間違いないでしょうけど)」

 

「何か言ったかしら?」

 

「いいえ。それじゃあ、クロノ君の調査を待ちましょうか」

 

そう言ってエイミィとリンディはそれぞれの席に着いて仕事を再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……?」

 

妙な寒気を感じた。

 

何だろう?

 

この肉食獣に狙われてる草食獣的な予感は。

 

う~む? もしや、リンディさんもウチの母さんや桃子さん、プレシア女史みたいにショタ属性が付与されてるとか……?

 

「それはさすがに無いか」

 

この時ばかりは俺の先行きの甘さを後悔するしかなかった。

 

 

 




 


アレス君逃げてー!





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第11話 近状報告とはやての家に行ってみた

 


段々となのは達の性格が変わってきましたよ?





 

 

 

 

 

それから2日後。

 

土曜日を迎えて学校は休みだ。

 

本来ならジュエルシード探しと思っていたが、フェイトが一緒にプレシア女史の所に行こうと誘ってきた。

 

ふむ、薬を飲んで体力も回復しただろうから一度行ってみた方が良いだろう。

 

今回はフェイトとプレシア女史の和解……まあ、和解だよな、一応。

 

仲直り的な目的で行くのだからなのははお休みだ。

 

出る時になのはに捕まり説明したら『う~』と薄目で睨まれた。

 

今度、連れて行ってやるから我慢しろと言って何とか納得して貰った。

 

そんなこんなでフェイトとアルフが住むマンションの屋上に転移した。

 

 

 

 

 

 

 

「来たぞ~」

 

来るとフェイトとアルフが待っていた。

 

「うん、時間通りだね」

 

「遅れたらたっぷりとイヤミを言ってあげようと思ったのに……」

 

その時はそれなりの反撃はさせてもらうからな?

 

「それは残念。ほら、土産だ」

 

俺は翠屋のケーキを入れた箱を渡す。

 

「ありがとう。良いの?」

 

「良いよ。俺からの快気祝いと言う事で」

 

「気が早く無いかい?」

 

「ま、アレで治ってなかったら考える」

 

そう言って俺達は時の庭園に向けて転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「チィーッス、三河屋で~す」

 

転移した先にはプレシア女史が椅子に座っていた。

 

 

「……三河屋?」

「……?」

 

 

フェイトとアルフはよく分かってないらしい。

 

「あら、丁度良かったわ。醤油がきれてたのよ。あと、可愛い男の子分が不足していてね……」

 

そう言ってプレシア女史は立ち上がって俺達の方に向かって歩いてきた。

 

最後の台詞がもの凄く、イヤな予感を感じたんですがね!

 

そして、頭を撫でてくるプレシア女史。

 

 

「あ……」

「おぅ……」

 

 

フェイトとアルフは驚いた顔で俺とプレシア女史の様子を見ていた。

 

「おかえり、フェイト、アルフ」

 

そう言ってフェイトの頭を撫でるプレシア女史。

 

「……た、ただいま……母さん……」

 

フェイトの目から涙が溢れてきた。

 

「うんうん……」

 

アルフの目からも涙が溢れていた。

 

『えへへ、良かったね』

 

いつの間にか俺の隣に来ていたアリシア。

 

無論、プレシア女史、フェイト、アルフにはアリシアの姿は見えていない。

 

「やっぱり親子ってああでないとな」

 

『そうだね。後は、あたしが復活するだけだね』

 

「そうだな。アリシアもフェイトと一緒に居たいだろ?」

 

『当たり前だよ、アレスお兄ちゃん! 復活したらアレスお兄ちゃんのお嫁さんになるんだからね!』

 

「……気が早いだろ、アリシア……」

 

俺は苦笑するしかなかった。

 

気が付くとプレシア女史、フェイト、アルフが不思議そうな表情で俺の顔を見ていた。

 

「……ひょっとして、アリシアがいるのかしら?」

 

 

「アリシア?」

「アリシア?」

 

 

プレシア女史のツッコミとフェイトとアルフ同時のツッコミ。

 

「ああ、居るぞ。念の為に言っておくが、独り言呟いてる訳じゃないぞ」

 

「ごめん、思い切り独り言かと思ってた……」

 

両手の指をつついて顔を赤くしてるフェイトが居た。

 

「……まあ、説明してやれ」

 

「分かったわ。実はね……」

 

プレシア女史の説明が始まった。

 

 

 

 

 

 

「そうだったんだ……」

 

「ごめんなさいね、フェイト。貴女は私の娘よ」

 

そう言って頭を撫でていたプレシア女史。

 

「良かった……良かったよ……」

 

アルフも目から涙を流していた。

 

「……そうそう、思い出したわ」

 

そう言って俺に早足で近づいてくるプレシア女史。

 

「あの薬は何?」

 

「あれか? 難病と言われてる病気を一発で治す万能薬だが?」

 

「ええ。確かに、飲んだら胸の苦しみが取れたから凄い万能薬と言うのは分かったわよ。けど……」

 

プレシア女史は一呼吸置いてから言った。

 

「あの味は何? 言葉で言い表せなかったわよ?」

 

「……あの薬の欠点でな。そこは我慢してくれ」

 

「それならあの時に言って貰いたかったわね……。飲んだ瞬間、吐きそうになったわ。それに、水飲んでも歯磨きして口の中を洗っても味がずっと残ってたわよ……」

 

プレシア女史の顔が青くなっていた。

 

『お母さんったら、半日は凄く苦虫潰した様な顔してたのよ?』

 

隣ではアリシアがクスクス笑っていた。

 

う~む。今度、エヴァと一緒に永遠亭のえーりんさんの所に行って薬の作り方を教わってこようかな。

 

あの人なら同じ効能でもうちょっと美味い味の薬を作れるだろうし。なんせ『あらゆる薬をつくる程度の能力』と言う能力を持ってるからなぁ。

 

ま、余所の話は置いといて。

 

「良いだろ。病気は治ったんだから」

 

「そりゃ、確かに全快したけど……。何か釈然としないわね」

 

「気にするな。フェイトとアルフに紹介しなくて良いのか?」

 

「え?」

 

「誰を?」

 

フェイトとアルフは目を丸くしていた。

 

「誰って……フェイトのお姉さんだよ」

 

「え? アリシア姉さんは……事故で亡くなったって……」

 

「死んだ人をどうやって紹介するんだよ~」

 

「まあ、ここにいるぞ?」

 

さっきから俺の横でニコニコ微笑んでるアリシア。

 

「……ひょっとして、アリシアはそこにいるのかしら?」

 

「俺の右目を忘れたのか?」

 

「……そうだったわね。貴方のそれは……もはやレアスキルだわ」

 

「さっきから何の話してんだよ~!」

 

アルフが吼えた。

 

「だから、アリシアを紹介するんだよ。ほれ」

 

俺は右手に魔力を込めてアリシアの頭を撫でた。

 

すると、アリシアの身体が光り輝いた。

 

「えへへ。フェイト、あたしがアリシアだよ」

 

「え……? ええ!?」

 

「ちょ……フェイトにそっくりな」

 

「アリシア~!」

 

プレシア女史がアリシアに抱きつこうとしてまたすり抜けていた。

 

「あ、身体が無いんだった……」

 

 

「……説明を求む……」

「私も……これは……」

 

 

フェイトとアルフは呆然とプレシア女史の姿を眺めていた。

 

俺は2人に俺の右目の能力を教えた。

 

 

 

 

 

「は~トンでもないスキルだよ、それは」

 

「幽霊……ホントに居たんだ……」

 

フェイトとアルフは俺の顔を呆然と眺めていた。

 

「ま、俺は常にアリシアと会話出来るんだ」

 

「良いなぁ~私もアリシアとお話したいなぁ……」

 

「ん~……まあ、こればかりはちょっと仕方ないと言うか」

 

「だよね。無理言ってごめん」

 

「それで……ジュエルシードはどれくらい集まったのかしら?」

 

俺とフェイトの所に来るプレシア女史。

 

後ろではアルフとアリシアが会話していた。

 

「えっと……15個……」

 

そう言ってバルディッシュからジュエルシードを取り出す。

 

「そう、後6個ね。頑張ってるわね、フェイト」

 

「ううん、私だけじゃない。アレスやなのはも一緒だから……」

 

「なのは?」

 

「ああ、俺の幼馴染みだよ。フェイトと同じミッド式の魔法を使うんだ」

 

「へぇ~。そう、今度連れて来なさい」

 

「母さん……うん、紹介するね」

 

もう、プレシア女史とフェイトは大丈夫だろう。

 

だいぶ話が変わってしまったが、これで良かったと俺は思う。

 

「……そう言えば、ジュエルシードは輸送中に何かに襲われて地球に落ちたらしいんだが? 何か、知ってるか?」

 

 

「……」

 

 

俺がプレシア女史を見ると顔を青くして、妙な汗をかきながら視線をあさっての方に向けた。

 

「……母さん?」

 

フェイトが怪訝な顔でプレシア女史を見る。

 

「まさかとは思うが……プレシアさん……アンタの仕業とか……」

 

「……」

 

無言で頷くプレシア女史。

 

「管理局のお尋ね者か?」

 

「多分……」

 

「どうすんだよ。自首するか?」

 

「そ、それは……アルハザードに行ってアリシアを復活させるから……捕まる訳には……」

 

だよな。捕まったらどんな結果が待ってるか、明らかに分かる。

 

それに、プレシア女史の能力を考えると。管理局に良いようにこき使われる可能性が高い。

 

「さて、どうしようかね」

 

【それなら、やはり偽装死ですね。プレシアさんはジュエルシードの暴走に巻き込まれて次元の狭間に旅立ってしまいました~と】

 

エヴァの提案。うむ、喋らないと空気と化すからな。

 

「ウチのデバイスからの案はどうだ?」

 

「う~ん、それだとずっとアルハザードに居る事になるわねぇ……」

 

「それなら、地球に来いよ。あそこは管理局の管轄にならないし」

 

「そうね。あそこなら管理局員達も来ないと思うし。そこにしましょうか」

 

「そうだな。っと、そうそう、最近知り合った女の子なんだが。どうも、俺の持つ『武神の魔導書』の姉妹機を持ってる可能性が高いのだが」

 

その言葉を聞いて眉をピクリと上に上げるプレシア女史。

 

「……夜天の魔導書かしら?」

 

【ええ。私と全く同じデザインと言えば夜天の魔導書しかありません。その子、足が悪くて動かないんですよ】

 

「……そう言えば、その夜天の書は確か10年位前に何か事件を起こしてた様な」

 

「そうか。壊れてる可能性が高いな」

 

「そうね。……遠回しに、私に直せと?」

 

「いんや。オリジナルを持ってる俺でも修復可能と読んでる。ただ、興味は?」

 

「非常にあるわね。ついでに言えば、貴方のデバイスと身体も」

 

……何を言ってるのだろうか、この人は。ツッコミを入れたら話が変な方に進むからあえて入れない!

 

「母さん?」

 

不思議そうな表情でプレシア女史の顔を見るフェイト。

 

「コホン。そうそう、フェイトに聞きたい事があったのよ。フェイト、アレスちゃんのお嫁に行かない?」

 

「へ?」

 

口を開けて呆然とプレシア女史を見るフェイト。

 

「だって、こんな可愛い義息子が出来るのよ? 貴女かアリシアがアレスちゃんのお嫁さんになればアレスちゃんは私の義息子になるのよ?」

 

「か、母さん?」

 

「あたしがなるー!!」

 

突然乱入してきたのはアリシアだった。

 

アルフは床に座っていた。狼形態になって。

 

「あ、アリシア!?」

 

「フェイトがアレスお兄ちゃんのお嫁さんにならないならアタシがお嫁さんになるよ!」

 

「そう、それならアリシアにお願いしようかしら?」

 

何を勝手に話を進めてるのか。俺の意見はどうなってる。

 

「(母さんの期待に応えなきゃ……!)わ、私がアレスのお嫁さんになるよ!」

 

フェイトが暴走を始めた模様。暴走特急フェイト号は止まりそうにありません。

 

「そう? 私はアレスちゃんが義息子になるなら構わないわよ?」

 

「……それは確定事項なのか?」

 

「アレスお兄ちゃんはアリシアの事嫌いなの?」

 

「アレスは私の事嫌いなの?」

 

右側にアリシアが涙を浮かべて立って、左腕にはフェイトが抱きついてきていた。

 

え? 何この美少女2人に責められてる様な展開は?

 

「いや、2人とも嫌いでは無いが……」

 

「やった~♪」

 

「ほっ……」

 

安堵の息を漏らす2人。

 

「ま、仮にフェイトと結婚してもあたしはアレスお兄ちゃんの愛人になるけどね」

 

「ぶ――――――――――っ!!!」

 

アリシアのとんでも発言で俺は盛大に噴き出した。

 

「プレシアさん、アンタどんな教育を……」

 

プレシア女史を見ると首が千切れん位、横に振っていた。

 

「……まさか」

 

俺はアルフを見た。

 

 

「~♪」

 

 

わざとらしい口笛を吹くアルフ。

 

「……ちょっと、身体を動かしたくなったな」

 

「え゛?」

 

「ヲヲ、そこの可愛い狼さん。ちょっと俺の模擬戦やらないか? エヴァ、頼む」

 

【……全殺し(ホームラン)しちゃダメですよ、お兄様? 半殺しを目標にしてくださいね。起動(アンファング)

 

不穏当な台詞をかわしつつ俺は騎士甲冑を身に纏う。

 

「プレシアさん、どんなのが見たいですか?」

 

「そうね、大剣は出来るのかしら?」

 

「大丈夫だ。エヴァ、『素戔男尊(スサノオ)』モード」

 

【了解です。モード『素戔男尊(スサノオ)』】

 

いつも使ってる杖のレーヴァテインが長さ1.7m、幅40㎝位、厚さ4㎝位の大剣に変わった。

 

 

「わ、大きい」

「凄い……」

「あらあら、これは凄いわね」

 

 

アリシア、フェイト、プレシア女史の順で感想を述べる。

 

「ちょっとー!! そんなの喰らったら死んじゃうよ!」

 

「大丈夫だ、きちんと非殺傷設定にしておく」

 

「そ、そんなでかい剣……が……」

 

アルフはすこしずつ後ずさりする。

 

「さて、純真無垢な女の子に妙な事を吹き込んだ悪い狼さんにお仕置きしないとな」

 

「え? アルフなにか悪いこと言ったの?」

 

「ええ。アリシアにちょっとイケない事を教えたからね。フェイト、貴女は手出ししちゃダメよ」

 

「うん、分かった」

 

「助けておくれ~フェイト~!」

 

「楽しいお仕置きタイムだ!!!」

 

アルフと俺の強制模擬戦が始まった。

 

 

 

 

 

 

「きゅ~」

 

目を回して気絶してるアルフ。

 

頭には大きなタンコブが出来ていた。

 

「わぁ~アレスお兄ちゃんつよ~い」

 

「あんな大きな剣でも素早さが全然変わってない……」

 

「全く、私は大魔導師と呼ばれてるけど、貴方とだけは戦いたくないわ……」

 

プレシア女史は苦笑いしてアルフの様子を見ていた。

 

「ま、お粗末様でした」

 

俺は騎士甲冑を解除して元の服に戻る。

 

「あ……」

 

アリシアの身体が透け始める。

 

「やれやれ、時間だな」

 

「そう……バイバイかな?」

 

「と言ってもここから居なくなる訳じゃない。見えなくなるだけできちんと居るからな」

 

「あ、そっか」

 

そしてアリシアの姿が見えなくなる……のはプレシア女史とフェイトだけの話で俺にはしっかりと見えてるが。

 

「さて、とりあえずは15個。確かに納めたからな」

 

「分かったわ。後6個、お願いね? フェイト」

 

「うん、母さん」

 

「それじゃ、俺達は帰るぞ」

 

俺は気絶してるアルフを背中に背負って転送魔法を発動させる。

 

「ええ。また会いましょう」

 

『バイバイ、アレスお兄ちゃん、フェイト』

 

「じゃあな、プレシアさんにアリシア」

 

「バイバイ、お母さん、アリシア」

 

俺達は元の場所に向けて転移した。

 

 

 

 

 

 

 

次の日。すずかからはやての家に遊びに行こうと誘われた。

 

無論、なのはも誘われた。そしたらなのはがフェイトちゃんを紹介しようと言い出した。

 

善は急げとフェイトを呼び出す。

 

フェイトはすぐにやって来た。

 

アルフの事を聞いたら今日は家でごろ寝するとの事。

 

ユーノとユナは……デートだった。

 

まあ、単にユーノがユナに強制連行されただけだが。

 

フェイトもやってきて、なのはとお話。

 

昨日の顛末を話す。

 

「今度、お母さんに紹介しなさいって言われたから招待するね」

 

「うん♪」

 

等々、色々話をしながら月村邸に到着した。

 

玄関に居たのはアリサとすずか。

 

「あ、来た来た」

 

「チッ、遅れたらここぞとばかりに責めてあげたのに……」

 

アリサ、俺に恨みでもあるんかい。

 

「来て早々それかい。俺に恨みでもあるのか?」

 

「恨みは無いわよ。まあ、将来の結婚生活に置いて有利になるだろうと……」

 

結婚生活……? アリサ、とうとう頭がバグったのか?

 

「アリサ、俺は大人しい、可憐な少女が好みなんだが……?」

 

「目の前にいるじゃない!」

 

「モーニングスター持って団体に殴り込みをかけそうな少女はちょっと……」

 

俺の言葉を聞いてなのはとすずかは肩を震わせていた。笑いをこらえてる模様。

 

「そっか……アレスはそう言うのが好みなんだ……」

 

フェイトの呟きはスルーだ。聞こえないぞ。

 

「ちょっと!? あたしはそんなの持って殴り込みなんてかけないわよ!」

 

「だが、俺には違和感が無いように思えるのだが……」

 

「あんた、あたしの事どう思ってるのよ!?」

 

「さあ? それはアリサの想像に任せるよ」

 

「吐け! 良いから吐きなさい!!」

 

アリサが俺に組み付いて来そうになるが。

 

「さて、はやての家は何処だ?」

 

「避けるな!」

 

俺はアリサからの攻撃を避ける様に歩き始めた。

 

ちなみに、すずかとフェイトはいつの間にか自己紹介を交わしていた。

 

 

 

 

 

はやての家に到着。

 

道中にアリサとフェイトも自己紹介を交わしていた。

 

そして、魔法の話もしっかりとしていた。

 

インターホンを鳴らしてからはやての指示で中に入る。

 

うむ、生八神家ですな。

 

しかし、車椅子の少女が1人で生活とは……。何か釈然としないな。

 

はやての自室に通される。

 

……。なのは達は良いが、俺まで通すのはいかがかと思うのだが。

 

フェイトの自己紹介。ああ、これで機動六課の3人が揃ったのか。

 

「お茶入れてくるな~」

 

「あ、私も手伝うよ」

 

そう言ってはやてとフェイトは出ていった。

 

ちなみに、俺達は菓子を持ってきていたのでそれも渡してある。

 

中に入ると本棚だらけ。本が沢山ありましたよ。

 

活字だらけの本だけかと思ったら、漫画もありました。

 

有名どころの本から結構マニアックな本もチラホラと。

 

そして、俺は一角を見て背中から冷や汗が流れた。

 

「『魔法先生ネギま!』……。あったのか……」

 

俺は聞こえないように呟く。

 

〈お兄様……これって……〉

 

エヴァが念話で俺に語りかける。

 

〈ああ。俺達の前世の世界。尤も、エヴァは双子じゃないから話はだいぶ違うが……。世界観は全く一緒だ〉

 

〈……私の名前、どうしましょう?〉

 

〈今更、変更出来ないだろ。まあ、エヴァのファンなんだと言って誤魔化すさ〉

 

〈ごめんなさい、お兄様……〉

 

〈謝るな、エヴァ。まさかこの世界に『ネギま!』があるなんて俺も予想外だったんだ〉

 

俺はネギま!を手に取る。

 

1巻を手に取って中を開く。

 

前世の前世で読んだ内容と全く一緒だった。

 

3巻を手に取って中を開いた。

 

ああ、なまはげ扱いの恐いエヴァです。

 

多分、俺のデバイスと関係無いと思われたら良いけど、多分無理か。

 

俺はそう思いつつ本を元に戻す。

 

「アレス君もネギま読んでるの?」

 

後ろからすずかの声が。

 

首を後ろに向けるといつの間にかすずかが後ろに立っていた。

 

「いや、何となく、気になったと言うか……」

 

「何よ? アンタもハーレム系のラッキースケベ属性に憧れてるのかしら?」

 

アリサも食い付いて来た!

 

 

「何や何や? 面白そうな話やなぁ」

「何の話かな?」

 

 

はやてとフェイトもお茶を持って登場してきた!

 

「アレスがね、女子中学生に揉みくちゃにされたいんだって」

 

アリサがロクでもないことを言い放った。

 

「ほほぉ~なかなかワルですな、お代官様?」

 

はやてがニヤニヤしながら俺の方を見ていた。

 

考えてみたら、今の状況もそれに近い様な気がするのだが。

 

ちなみに、なのはとフェイトはイマイチ分からないからネギま!を読んでいた。

 

「お代官じゃねぇ。そんな事してたらご老公とか暴れん坊とかそう言うのに成敗されるだろうが」

 

「そんなの呼ばなくても、あたしがたっぷりと成敗してあげるわよ?」

 

アリサがニヤニヤ笑っていた。

 

「ほほぉ? またいつぞやみたいに頬を撫でて撫でて撫でまくってやろうか?」

 

「あんた……可憐な美少女の頬を撫でてタダで済むと思ってるの?」

 

「んん~? 俺はタダで済むと思ってるが。それとも、違うところ撫でてやろうか?」

 

「撫でてみなさいよ。その時は責任取って貰う為にアンタに嫁ぐから!」

 

「ごめんさない……カイザーナックル装着して殴ってくる様なお嫁さんはちょっと……」

 

「あたしがいつそんな物騒なモノ装着して殴って来たのよ!!」

 

そう言ってアリサは殴りかかってきた。

 

「ほら、装着はしてないが殴りかかってきてるじゃないか!」

 

「うるさいうるさいうるさーい! アンタが減らず口を減らせばそれで万事解決なのよぉ!」

 

「ホンマ、仲がええんやな」

 

「そうなの。大体学校でもこんな感じなのよ」

 

すずかとはやてが俺とアリサの戦いを面白そうに眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

「これ……」

 

なのはがネギま!を見ながら口を開いた。

 

ちなみに戦いはまたもすずかに捕まって、アリサの関節技を喰らってしまった。

 

今度はオ○ップと言うパロ・ス○シャルの対として開発された技……だった。

 

アリサ……キ○肉マンⅡ世も読んでるのか……。

 

「どうしたの? なのは?」

 

フェイトがなのはに問いかける。

 

「この漫画の魔法……どっかで聞いたことあるの」

 

「え? そんな……どう見ても私達の魔法とは違うよ?」

 

……もの凄くイヤな予感を感じるのですが。

 

眠らせるか? イヤイヤ、面倒だし、あんまり記憶改竄ばっかりするのもアレだし。

 

〈私は凄くイヤな予感を感じるんですけど?〉

 

〈ああ。だが、ここでわざとらしく逃げるのもやばい。知らんぷりするしか無いな〉

 

〈果たして、逃げられますか?〉

 

〈……多分、無理かも〉

 

といった念話でのやりとりをエヴァとしていた。

 

「この『リク・ラク・ラ・ラック・ライラック』って言う単語……何処かで聞いたの」

 

「これって、吸血鬼の真祖、エヴァンジェリンの始動キーだよね」

 

「エヴァンジェリン……?」

 

「そう言えば、アレスのそのデバイスだっけ? それの名前も『エヴァンジェリン』って言ったわよね?」

 

全員の視線が俺の方を向く。

 

背中に冷や汗が流れる……!

 

「あ、ああ。エヴァンジェリンの大ファンなんだ」

 

「あ~そっか。どっかで聞いたことあるような声かと思ったらその子の声、アニメ版ネギま!のエヴァと声が似てるんや」

 

はやてが手をポンと叩いていた。

 

「あ、確かに」

 

すずかも食い付いてきた。貴女も知ってますか。

 

「そんなに似てるの?」

 

「うん。ホンマにクリソツって言うヤツかな? 似てるんよ」

 

そう言ってはやては……アニメ版ネギま!のDVDを取り出してきた。

 

「それじゃあ、ちょっと見てみようか」

 

こうしてアニメ鑑賞会が始まった。

 

 

 

 

 

1時間後。

 

エヴァとネギが戦うシーンを見終わった。

 

「ホント似てる……」

 

「そっくりなの……」

 

「似とるやろ? アレス君のデバイスの声とそっくりや」

 

まあ、同一人物だから似てるのは当たり前だろ。

 

 

「ふうん?」

「じーっ」

 

 

アリサとすずかも俺の方を眺めていた。

 

「な、何だよ?」

 

「アンタ……何か隠してない?」

 

「な、何を隠せと?」

 

「アンタのそのデバイスよ。偶然にしては出来過ぎてないかしら?」

 

「偶然とは重なるモノだ」

 

俺はお茶をすする。

 

「あ―――――――っ! 思い出したの!」

 

突然、なのはが叫び出した。思わずお茶を噴き出しそうになった。

 

「どうしたの? なのは?」

 

驚いた顔でなのはを見るフェイト。

 

「前にアレス君、人が拾ったジュエルシードをちょっと交換する時にその呪文を使ってたの!」

 

ああ、確かに前に使ったよね。まさか、この世界にネギま!が存在してると思わなかったから。

 

今度、アニメとか漫画をきちんと確認しておこうと思いました。もっとも、後の祭り(アフター・ザ・カーニバル)とはこのことですが。

 

「ホント? なのは?」

 

「聞き違いとかじゃなくて?」

 

「ホントなの! レイジングハート、記録してる?」

 

【ハイ、きちんとしてます】

 

レイハさん、こう言う事はキッチリしてるよね!

 

そして、音声が再生される。

 

 

 

 

 

【それでは……リク・ラク・ラ・ラック・ライラック 大気よ水よ(アーエール・エト・アクア)白霧となれ(ファクティ・ネブラ)彼の者らに(イリース・ソンヌム)一時の安息を(ブレウエム)。『眠りの霧(ネブラ・ヒュプノーティカ)』】

 

 

 

 

はい、実にクリアな音声で俺の声が流れましたね。

 

誰が聞いても俺の声にしか聞こえません。

 

「この後、2人いたけど……その2人は霧に覆われてからすぐに眠りについたの」

 

なのはの説明でフェイト、はやて、アリサ、すずかの視線が俺に突き刺さる。ザクザクと突き刺さる。

 

「ああ、お茶が美味い」

 

俺は素知らぬフリしてお茶をすする。

 

 

 

「……」

「……」

「……」

「……」

 

 

 

アリサが俺の右側に、すずかが左側に回り込む。

 

そして、肩を掴んでくる。指が肩に食い込んで痛いのですが。

 

前に回り込むなのは、フェイト、はやての3人。

 

「さあ、キリキリ吐いて貰うで?」

 

「アレス、隠し事は良くないよ? バルディッシュ!」

 

【……イエッサー】

 

「私達に隠し事は許されないの! レイジングハート!」

 

【……イエス、マスター】

 

なのは、レイハさんを起動させるな。

 

フェイト、お前もだよ。バルディッシュ卿が何か切なそうだぞ。

 

「どうしても言わなきゃダメか?」

 

「往生際が悪いで。さあ、私らに隠し事は無しや!」

 

「言えば、解放してくれるか?」

 

「そうだね。言えば解放してあげるよ」

 

「そうか……分かった」

 

「そうそう、始めからそうやって言えば良かったの」

 

 

 

 

 

 

「だが断る」

 

 

 

 

 

 

俺は言い放った。

 

「なっ! 言いなりなると見せかけて断る……それが本当の『だが断る』の使い方! アレス君……やるやないか!」

 

「それ程でも」

 

【それは良いんですけど、お兄様? 状況が悪化してると思いますけど?】

 

なのはとフェイトの目が据わってます。

 

ヤバいです。あの目なら睨むだけで人を殺せそうです。

 

アリサとすずかの目もヤバいです。一言で言い表しますと……『目がイッてる』と言う雰囲気です。

 

 

 

「……」

「……」

「……」

「……」

 

 

無言が恐いです。

 

肩を掴む手の力が更に増してます。

 

レイハさんはバスターモードで俺の胸に、バルディッシュ卿はハーケンモードで俺の首筋に。

 

どう見ても死亡フラグ満載の状況だな!

 

ま、俺と前世の事を喋っても別に問題は無いしな。

 

「あー分かったよ。話す……話すから解放してくれ」

 

そう言うと俺を解放してくれた。

 

解放はしてくれたが、全員が俺の周り居て逃げる隙は無い。

 

まあ、逃げる気は無いけどね。

 

「さあ、話して貰うで! 何でアレス君がネギま!の魔法が使えるのか!」

 

「そうなの! アニメの魔法が使えるなんて……びっくりなの!」

 

「ワクワク」

 

「さあ、どんなお話かしら?」

 

「楽しみだね~」

 

全員目を輝かせて俺を見つめてる。

 

「さて、みんなは『輪廻転生』を知ってるか?」

 

「え? 輪廻転生って言ったらアレやろ? 死んでから違う生き物とかになってまた生まれる……アレやろ?」

 

「うん、確か色んな宗教でも伝わってるよね」

 

はやてとすずかは顎に手を当ててる。

 

「それが一体どういう関係があるのよ?」

 

「うむ、簡潔に言うと俺には前世の記憶が残ってる」

 

俺は頭に指を当ててトントンとつつく。

 

「え?」

 

「それって」

 

なのはとフェイトがビックリ顔で俺を見つめる。

 

「そう、俺の前世はその『ネギま!』世界で魔法使いだった」

 

「う、嘘やろ? この世界にはそんな麻帆良とかあらへんで?」

 

「ああ。『パラレルワールド』を知ってるか? ある時空から分かれた平行する『もう一つの世界』」

 

「そうか、そう言う事ね。アレス君の前世が生まれた世界はこっちと違った魔法使いがいる世界……つまりは『ネギま!』の世界だったのね?」

 

「まあ、そんな所だ。まあ、俺が使ったのは前世で習った魔法なんだよ」

 

「それじゃあ、始動キーがエヴァと同じなのは?」

 

「それは。良いか? これは誰にも言わないで欲しい」

 

俺は全員の顔を順に見ながらそう言った。

 

 

 

「うん、分かった」

「分かったで」

「分かったわよ」

「分かったなの」

 

 

全員が了承して、一斉にお茶を飲む。

 

「俺の前世の名は『アリス・マクダウェル』。ネギま!の世界で600年生きた吸血鬼の真祖(ハイディライト・ウォーカー)、『エヴァンジェリン・A.K・マクダウェル』の双子の姉だ」

 

 

 

 

「ぶ――――――――――――――――――――――っ!!!」

「ぶ――――――――――――――――――――――っ!!!」

「ぶ――――――――――――――――――――――っ!!!」

「ぶ――――――――――――――――――――――っ!!!」

「ぶ――――――――――――――――――――――っ!!!」

 

 

 

全員一斉に茶を噴き出した。

 

【そして、私の前世の名は『エヴァンジェリン・A.K・マクダウェル』と申します】

 

エヴァがそう言うとはやては上半身を傾けてなのは、フェイト、アリサ、すずかの4人はすっころんだ。

 

「おー、4人一斉に転けると壮観な眺めだな」

 

俺はそう言って茶を啜った。

 

「ど、どどどどどどどどどういう事や! ぜ、前世がそんな……エラい凄い事になってるやないか!」

 

「アレス君……凄い……」

 

「アレ……? ちょっと待って。と言うことは……アレスの精神年齢って……」

 

「……そこんとこ、どうなのよ? 600歳超えてるの?」

 

「……うむ、1000歳まで生きてたからな」

 

「あ、あかん……。1000歳って……おかしいやろ」

 

テーブルに突っ伏すはやて。

 

「それに、そのデバイスがさらっと恐ろしい事言ってなかった?」

 

「そうなの。『エヴァンジェリン・A.K・マクダウェル』って言ってたの」

 

「……ギャグとかじゃなしに?」

 

【私はギャグはほとんど言いませんよ? 本当に『エヴァンジェリン・A.K・マクダウェル』と言う名前でした】

 

「……と言うことは、アレスの事をお兄様と呼ぶのは」

 

【ハイ、お兄様は前世ではお姉様でしたのよ?】

 

「納得なの……」

 

「そっか、前世からの絆……」

 

【これは驚きです。アレスはデバイスにハァハァと欲情していたわけでは無かったと】

 

【それなら納得だ】

 

レイハさん、毒吐きまくりですが。

 

バルディッシュ卿は納得して貰えたようで。

 

「と言うことは。アレス、アンタ……漫画の中であの修学旅行で鬼を倒したじゃない? あんな魔法使えるの?」

 

「あ~、俺が得意だったのは闇と炎だ。だからあそこまで凍らせるのは……どうだろうな」

 

「ほー」

 

【私は原作と同じで闇と氷です。同じ真似が簡単に出来ます】

 

「あ……あかん……なんかテンションが上がってきそうや!」

 

「私もだよ……リアルで出来る人がいるなんて想像してなかった……」

 

はやてとすずかの羨望の眼差し。顔が赤くなっていた。

 

「ねぇ、火が出せるのかな?」

 

「ああ、出せるぞ。『火よ灯れ(アールデスカット)』」

 

俺は指先から炎を出す。

 

「おー! って、杖は?」

 

「ここだよ」

 

俺は右手の人指し指を指し示す。

 

「これって……」

 

「もしかして、杖代わりの指輪?」

 

「ああ。認識阻害をかけてるから気付きにくいが、魔法を使うための指輪だ」

 

「も、もう無理や! アレス君! 魔法を教えて!!」

 

「わ、私も!」

 

はやてが迫ってきてすずかが抱きついて来た。

 

「わー! お、教えてやるから離せ!」

 

「やったー!」

 

「あ、あたしにも教えなさいよ!」

 

アリサが顔を真っ赤にしていた。

 

「分かったよ、教えてやるよ……」

 

もはやため息をつくしかなかった。

 

まあ、アリサとすずかは一応魔力があるみたいだし、そこそこの魔法は使えると思うが。

 

「で、なのはとフェイトは?」

 

 

「う~ん……」

「う~ん……」

 

 

2人は腕を組んで考えていた。

 

「ま、今のミッド式に慣れたら少しやってみるもの良いかもな。今は2人とも発展途上だし」

 

「そうだね……」

 

「うん、慣れて来たらお願いしようかな……」

 

 

 

 

 

「そう言えば、前世では何処まで強かったん?」

 

「そうだな、とりあえず……竜種を笑いながら殴り倒せる位」

 

 

「……バグキャラやろ」

「バグキャラだね……」

 

 

「失敬な。俺をあんなジャックみたいなヤツ一緒にして貰っては困る」

 

「で、ジャックと戦った事は?」

 

「ああ、154戦154勝0敗だな」

 

 

「やっぱりバグキャラやん……」

「チートだね」

 

 

はやてとすずかの視線が冷たかった!

 

「何と仰る。たかが咸卦法を使った位で」

 

「ちょい待ち! 吸血鬼の真祖で咸卦法とか……」

 

「ひょっとして、今も使える?」

 

「いんや。今は身体が出来てないから使えない。15歳以降になれば使えると思うけど……」

 

「あかん……。私、絶対にアレス君怒らせんで。死にとうない」

 

「私も。チートが身近にいるなんて」

 

はやてとすずかは身震いしていた。

 

「気と魔力を合成して爆発的に戦闘力をあげる戦闘法……あんた、チート街道も大概にしなさいよ?」

 

「ほっとけ。それにエヴァだって『闇の魔法』で信じられない位強かったのだぞ?」

 

「ど……どれくらい……?」

 

フェイトがおそるおそる聞いてきた。

 

「俺が咸卦法使って最大攻撃で殴ってもかすり傷を付けるのが精一杯だった」

 

「お、おかしいのー! アレス君もエヴァちゃんもおかしいのー!」

 

ディバイン・バスターを32連射出来るなのはに言われたく無いんだが!

 

「とりあえず、分かったわ。アレスもエヴァもチートだと言う事に」

 

【イヤですわ、アリサさん。お兄様はチートですけど私は一般的な魔法使いでしたわよ?】

 

「どの口が言うのよ! あの鬼を一瞬で凍らせただけでも充分おかしいわよ!」

 

そんなこんなではやての家での騒動は続いていった。

 

 

 




 

今度から転生した時はどの漫画があるのか確認しておこう……と思うアレスであったw



ちなみに、この世界では

『魔法少女リリカルなのはシリーズ』

『新世紀エヴァンゲリオン』

この2作は存在しておりませんw



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第12話 ついに現れた管理局!

 



実はクロノ君は原作より有能なのかも知れないw






 

 

 

 

 

 

八神家で俺の前世を暴露されてから数日経ちました。

 

あれからはやて、アリサ、すずかの3人はネギま!式魔法の鍛錬を行っています。

 

まあ、そう簡単には出来ませんがね!

 

ちなみに、悪用は絶対にしない事と言及はしておきます。

 

もっとも、あの3人なら大丈夫と信じているが。

 

そのうち、ダイオラマ魔法球の事も言及されるだろうけど、今は黙っておこう。

 

さあ、海にあるジュエルシード回収しようかな。

 

管理局は来そうに無いし、このまま探すのもアレだし。

 

そんなこんなで本日もジュエルシードを捜索していました。

 

本日のなのははフェイトと一緒になって探しています。

 

「……?」

 

何か視線を感じた。

 

俺は立ち止まって周りを見る。

 

周りは買い物帰りの主婦、中学生、高校生、会社帰りの人などが大勢いて皆俺の事など気にせず歩いていた。

 

【お兄様?】

 

「……気のせいか。何か視線を感じたのだが……? これは上?」

 

【気のせいではありませんわ。上空に何か魔力反応があります】

 

「何?」

 

俺は上を見つめた。

 

上空に浮かぶ何か。俺はそれに向けて視線を集中した。

 

人だ。人が浮いていた。

 

赤毛の少年。背広を着ているが、何処か幼げな雰囲気。

 

「……ビンゴ。アレは……転生者だ。この世界にあんなヤツは居ない」

 

俺はビルとビルの隙間に入る。

 

「頼む、エヴァ」

 

【ハイ、お兄様。起動(アンファング)!】

 

騎士甲冑を纏って一気に上空に飛び上がる。

 

「!?」

 

赤毛の少年は俺の顔を見て目を見開いた。

 

「エヴァ、結界を頼む」

 

【了解です。魔法の監獄《ゲフェングニス・デア・マギー》】

 

瞬時に展開される結界。この中にいるのは俺と目の前の赤毛の少年だけだった。

 

「君は……」

 

赤毛の少年は驚いた顔で俺の方を見ている。

 

俺は赤毛の少年の顔を見て驚いた。

 

魔法先生ネギま!の主人公、『ネギ=スプリングフィールド』だったからだ。

 

もっとも、少しつり目気味でちょっとだけ雰囲気が違っていた。

 

だが、俺には分かった。

 

こいつは……邪悪な気が満ちている。

 

巧妙に隠しているが、こいつは。

 

「……なあ、少年?」

 

「はい、何でしょうか?」

 

「君は、高町なのは、フェイト・テスタロッサ、八神はやて。この3人に何か用があるのかな?」

 

「何の事でしょうか?」

 

とぼけたフリをしているネギもどき。

 

その頬には冷や汗らしきモノが流れていた。

 

「それとも、アレかな? アリサ・バニングスか月村すずかに用があるのかな?」

 

「何が言いたいのですか?」

 

「ああ、彼女達は既に俺の恋人になってるのだが?」

 

「!!」

 

その言葉を聞いてネギもどきの魔力が膨れあがってきた。

 

「ん……? どうした?」

 

「ククク、そうか。それなら……お前を殺せば彼女達は俺のモノになる訳だ」

 

本性を現したネギもどき。

 

「ほぅ? 彼女たちをどうするのか、教えて貰おうか?」

 

「知れた事を! 俺のハーレムの一員にするんだよ!!」

 

分かりやすい目標を有り難う。

 

とりあえず、こいつは天界に送り返す事が決まった。

 

「そうかそうか……」

 

俺は右手に持つレーヴァテインを握りしめた。

 

「認めると思うか!? 魔法の射手・火の101矢!!」

 

レーヴァテインから繰り出される炎の矢がネギもどきに向かって放たれる。

 

「なっ!?」

 

驚いて魔法障壁を張って攻撃を防ぐネギもどき。

 

「ふむ、この程度は防ぐか……」

 

「てめぇ! ベルカかと思ったら……俺と同じ魔法を!」

 

「それなら……奈落の業火(インケンディウム・ゲヘナエ)

 

闇の炎が巻き起こり、ネギもどきに向かって飛んで行く。

 

「ちっ!」

 

ネギもどきは避ける。意外と余裕があるよけ方だ。

 

「くそっ! 千の雷(キーリプル・アストラペー)!! 固定(スタグネット)、掌握《コンプレクシオー》、|魔力充填『術式兵装』《スプレーメントゥム・プロ・アルマティオーネム》、|雷天大壮《ヘー・アストラペー・ヒューペル・ウーラヌー・メガ・デュナメネー》!!!」

 

ネギもどきは千の雷を取り込んで精霊状態になる。

 

あの状態になると下手な攻撃は効かなくなる。

 

「ふん! 斬魔剣 弐の太刀!!」

 

俺は斬撃をネギもどきに向かって放つ。

 

精霊状態でも斬る事が出来る奥義だ。

 

前世の時に詠春から習った奥義だ。

 

滅多に使う事は無かったが、習っておいて損は無いな。

 

「っ!」

 

ネギもどきはそれを避けて一瞬で間合いを詰めて殴りかかってくる。

 

どうやら、オリジナルと一緒で中国武術も使うみたいだ。

 

下からの右パンチ。

 

俺は上体を逸らしてかわす。

 

雷並みの速度だが、弱点はある。

 

ジャックが見つけた、先行放電。

 

ネギもどきが攻撃する時、攻撃箇所に僅かな放電が起こる。

 

まあ、雷天大壮2は時間がかかるから出来ないのだろう。

 

さすがにアレになると手こずるのが目に見えてる。

 

「精霊状態でも、俺はダメージを与える事が出来るんだぜ?」

 

右手と左手の手甲に闇の気を纏う。手甲の色が黒く染まる。

 

「な、何だよてめぇ!」

 

「さぁて? とりあえず、お前みたいなヤツを捕まえる任務を負ったんだよ!」

 

ネギもどきの腹に向けてパンチを繰り出す。

 

「ごふぅ!」

 

鈍い音が響き、ネギもどきの身体がくの字に曲がる。

 

足にも気を纏ってからネギもどきの顔に蹴りを入れる。

 

「がぁ!」

 

ネギもどきは50mくらい吹っ飛んだ。

 

「どれ、氷漬けにしてやろう。リク・ラク・ラ・ラック・ライラック 契約に従い(ト・シュンボライオン) 我に従え(ディアー・コネートー・モイ・ヘー) 氷の女王(クリュスタリネー・バシレイア)。 来れ(エピゲネーテートー) とこしえのやみ(タイオーニオン・エレボス)! えいえんのひょうが(ハイオーニエ・クリュスタレ)!!」

 

その時、結界が破れて誰かが進入して。

 

「!?」

 

「あ」

 

その人物に当たって周辺が一気に凍ってしまった。

 

当然、人物はその中で氷漬けとなってしまった。

 

 

 

「……」

「……」

【……】

 

 

 

俺とネギもどき、後エヴァも呆然としていた。

 

「くっ、誰か知らないが今は感謝するか……」

 

そう言ってネギもどきは穴の開いた結界から飛んで出ていった。

 

「追いかけたいが……」

 

【お兄様! 早くしないと本当に氷漬けになりますわよ!】

 

仕方が無い。今回はあのネギもどきは諦めて氷漬けになったヤツを助けるか。

 

誰だよ、わざわざ結界破って入って来るヤツは。

 

こんな事なら俺も結界張っておけば良かったかな。

 

「ん~『おわるせかい(コズミケー・カタストロフェー)』やったらヤバいよな?」

 

【中の人が粉々になりますわよ?】

 

「仕方ない、『奈落の業火(インケンディウム・ゲヘナエ)』」

 

俺は闇の炎を出して氷を少しずつ溶かしていく。

 

「おー、これだけでかいと溶けないな。ちょっと壊していこう」

 

俺は氷を殴って少しずつ砕いていった。

 

 

 

 

 

「……そう言うことか」

 

【運が悪いと言いますか……】

 

少しずつ砕いていったら中心にいるのは……クロノだった。

 

しかし、よくベルカ式の結界を解いたモノだ。

 

ひょっとして原作より有能なのかもしれない。

 

だが、今回はその有能さが仇となったみたいだ。

 

炎の魔法で少しずつ溶かしていってようやく終わるとクロノは気絶していた。

 

脈はあるし、一応呼吸もあるから死んではいないようだ。

 

おんぶして結界を解くと魔法陣が広がり、真ん中に画面が。

 

あ、リンディさんだ。

 

青色の髪をした妙齢とは言い難い女の人が映っていた。

 

「クロノ! ようやく連絡がと……」

 

リンディさんの目が俺の顔を捉えた。

 

 

「あ……か……」

 

 

リンディさんの口は開いたまま。

 

そして、何故か頬が赤くなっていく。

 

……ああ、リンディさん。貴女もアッチ側の人でしたか。

 

俺は心の中でため息をついた。

 

「え、えええっと……あ、あ、貴方は……?」

 

少しどもってるリンディさん。

 

「えっと。何て言いましょうか……。ひょっとして、背中のこの人の関係者ですか?」

 

「え、ええ! その子の母親をやっているリンディ・ハラオウンと申します!」

 

「……藤之宮アレスと言います」

 

「アレス……ちゃんね。よし! 覚えたわ!」

 

「どうしましょうか。この人……ちょっとした事故で気を失ってしまって」

 

「それならこちらから転送ポートを開きます! すぐに来てください!」

 

リンディさんの手が鬼の様に速くキーボードを叩いていた。

 

すると、俺の横の方に緑色の転送ポートらしき場所が現れた。

 

〈お兄様……〉

 

〈なるようにしかならんだろ。幸い、俺達がジュエルシードを集めてるのは知らないはずだからな〉

 

〈そうですわね。今回も単にクロノさんが巻き込まれただけですからね〉

 

そう念話でエヴァと会話しながら俺は転送ポートに乗ってアースラに向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

アースラに着くと栗色髪の女の人がやって来た。

 

「ありゃ~見事に気絶してるね、クロノ……。あ、私はエイミィ・リミエッタだよ」

 

「藤之宮アレスだ」

 

「それじゃあアレス君。クロノをこっちに連れて来て~」

 

俺はエイミィさんに連れられて医務室に行った。

 

 

 

 

 

クロノを医務室に連れて行ってからエイミィさんに連れて行かれたのは。

 

見事な和室だった。

 

盆栽が3段に並べられて、獅子脅しが音を立てて、何故か茶道で使う茶釜がある。

 

何故、ここまで揃えられたのか……ツッコミを入れたい!

 

誰かがミッドチルダに日本製品を持ち込んだのか……と!

 

「艦長、お連れしました」

 

赤い絨毯がしかれ、その下は一応畳らしいのが。

 

そして、リンディさんは正座をしていた。

 

もっとも、ウズウズといった擬音が似合いそうな雰囲気で座っていたのだが。

 

「さあ、どうぞどうぞ♪」

 

そう言って目の前に座るように促すリンディさん。

 

あの、俺とリンディさんの膝頭が当たってるのですが。

 

「……艦長。それだとお茶とお菓子が出せないんですけど?」

 

「ああ、ごめんなさいね!」

 

そう言ってリンディさんは後ろに下がる。

 

そして俺とリンディさんの前にお茶と羊羹が置かれた。

 

ミッドチルダでは羊羹売ってるのか。

 

「それじゃあ、詳しい事情を教えて貰えるかしら?」

 

俺は事情を話すことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどね、たまたまクロノがそこに入ってしまって……」

 

「はい。俺の魔法が当たってしまって」

 

そう言って俺は茶を啜った。

 

うむ、苦いぜ。

 

「しかし、凄いね~。クロノ君もろとも周囲を凍らせるなんて」

 

エイミィさんも目を丸くしていた。

 

「でも、アレスちゃんはどうやって魔法を? この世界は魔法は無いと思ってたけど?」

 

「あ~。まあ、確かに魔法は無いのですが、魔力を持った人はたまに生まれるみたいで。で、俺は漫画で見た魔法を真似したら出来たと言う事で……」

 

「漫画……」

 

エイミィさんは苦笑いしていた。

 

「(欲しいわねぇ~。クロノを一瞬で凍らせるなんて、かなりの使い手だわ。でも……無茶をしてアレスちゃんに嫌われるのは……ダメよ! そんなの!)」

 

「……」

 

何となくだがリンディさんが何を考えてるのか分かってしまった。

 

と言うか、百面相の様に表情が変わってるのだが。

 

「あ、ご、ごめんなさいね。艦長は考えると表情が出る時があるから」

 

口元が引きつっているエイミィさん。

 

「う~酷い目にあった……」

 

そう言って現れたのはクロノだった。

 

無事に回復出来たみたいだ。

 

「紹介するわね、私の息子のクロノよ」

 

「クロノ・ハラオウンだ。よろしく」

 

「藤之宮アレスだ。こちらこそよろしく」

 

クロノはリンディの隣に正座した。

 

「君が魔法を使えるのはさておき。ちょっと聞きたいことがあるのだが……」

 

うむ、ジュエルシードの事だろう。

 

「ジュエルシードと言う物を知ってるか? 青い色をして菱形の形をした宝石みたいな感じのヤツなんだが……」

 

「さあ? 初めて聞きました」

 

「そうか。知らないか……」

 

そう言ってお茶を啜るクロノ。

 

「ところで……だ。君が張ったその結界……かなり強固だったな」

 

その時、リンディさんとエイミィさんの目が光った。

 

ひょっとして、俺が張った結界に興味が出たとか?

 

ああ、古代(エンシェント)ベルカ式だもんね。ミッド式が主流だと分からないよな。

 

「ん? そうですかね?」

 

とりあえず、とぼける事にしてみた。

 

「そうよ。アレス君が張った結界は見たことない術式だったからかなり手こずったよ」

 

「そうね。まるで私達と違う術式の様な……」

 

目が少し細くなるリンディさん。ひょっとして、知ってるんじゃなかろうな。ベルカ式だと言う事に。

 

「君の見た目は確かに僕と同じに見える。だが、使用している魔法の術式は僕達と全く違う」

 

「そうね……アレス君は知ってるんじゃない? 自分が使ってる術式を」

 

「さて? 何の事でしょうか?」

 

俺は羊羹を口に放り込んだ。甘い味が口に広がった。

 

「しらばっくれてもダメよ? アレスちゃん? 貴方が持ってるその杖……古代ベルカのとある神官騎士が使用していた武器、『レーヴァテイン』と形状がそっくりなのだから」

 

しっかりばれてました。

 

なるほど、神官騎士ね。そう言うのもいたのかもしれないな。

 

「……君はベルカの使い手なのか?」

 

「なるほど、今はほとんど使い手が居ないベルカ式だったのか……」

 

エイミィさんは顎に手を当てていた。

 

「はぁ……分かりましたよ」

 

俺はそう言って騎士甲冑を解除して私服姿に戻る。

 

ちなみにエヴァはネックレス状態だ。

 

「さて、俺が使ってるのは確かにベルカ式ですよ。そして、全員に1つだけお願いがあります」

 

「それは、何かしら?」

 

「俺が持ってるデバイスを秘密にして欲しいと言う事です。皆さんが見たら……必ず驚くでしょうから」

 

「どういう事だ?」

 

「約束出来ないなら喋りません」

 

「分かったわ。他ならぬアレスちゃんの頼みですものね。クロノもエイミィも良いわよね?」

 

リンディさんがクロノとエイミィさんの顔を見た。

 

何だろう……?『私の邪魔をしたら殺すわよ』的な何かを感じたのだが。

 

「……分かりました、艦長」

 

「了解です、艦長」

 

クロノとエイミィさんも了承してくれた。

 

「それじゃあ、アレスちゃん?」

 

「分かりました。エヴァ、ブックモード」

 

【了解です、お兄様】

 

ネックレスを手に取ってエヴァに頼む。

 

ネックレスが光り輝いて1冊の本が俺の手元にあった。

 

 

「……!!!」

「そ、そんな!」

「そ、それは……闇の書?」

 

 

三者三様に驚く。

 

「さて、俺が聞いた名は『武神の魔導書』。あなた方が言う闇の書では無いですよ?」

 

「武神の魔導書……?」

 

「そう言えば、違う。違うわ。あの時見たのは……ダークブラウンで黄金の装飾が施してあった。でも、これは……」

 

「母さん?」

 

「クロノ。これは違う。あの時見た本と色が全然違うのよ」

 

「そうなのですか?」

 

そう言って、俺の本を眺めるクロノ。

 

「ああ、違うぞ。エヴァ、自己紹介だ」

 

【了解です。初めまして、私の名は『武神の魔導書』の管制人格、エヴァンジェリンと申します】

 

「……何かしら? エイミィと声が似てるような?」

 

「艦長もそう思いましたか? 何か他人の様な気がしなくて」

 

リンディさんとエイミィさんは首を傾げていた。

 

まあ、確かに似ているよな……と心の中で呟いていた。

 

「武神の魔導書か。確か、闇の書は魔法のデータをためておく蓄積型デバイスだったな」

 

「これは古代ベルカの騎士達が使っていた武器のデータが入っているだけで魔法は入っていません」

 

「なるほど、だから『レーヴァテイン』が入っていたのね」

 

「そして、闇の書と呼ばれた『夜天の魔導書』の姉妹機として制作されたデバイスだ」

 

「!!」

 

「だから、そっくりだったのね」

 

「闇の書の姉妹機ならロストロギアに該当するな」

 

クロノはジッと俺の手にある本を眺めていた。

 

「う~ん、闇の書の姉妹機なら確かにロストロギアに該当はするけど……」

 

「実際には被害とかは報告は聞いたこと無いですし……」

 

「そもそも、実在するかどうか怪しかった本だからな……。それに、アレスは制御してるから暴走する事も無い」

 

「そうね。この本に関してはアレスちゃんにお任せしとこうかしら」

 

どうやら大丈夫そうだな。難癖つけて取ろうとしたら全員眠らせてから脱出するところだったぜ。

 

「分かりました。この件に関しては上層部に報告はしないと言う事で」

 

「そうね。テキトーに報告書を書いて提出して頂戴」

 

そんなので良いのか、管理局。

 

ってかクロノ、意外と砕けてる?

 

「それでは、俺は無罪放免と言う事で」

 

「待って頂戴」

 

リンディさんからの引き留め。

 

「何か?」

 

「アレスちゃんに、ジュエルシードの捜索をお願いしたいのだけど……」

 

目をウルウルさせて俺の手を握りしめるリンディさん。

 

ああ、崩壊してますね、色々と。本来なら一晩考えてきてね~と言って相手から頼ませるのに。

 

「か、艦長!?」

 

「クロノは黙ってなさい。私のライフワークの邪魔をするのかしら?」

 

「……」

 

クロノは黙ってしまった。

 

エイミィさんは額に手を当てて上を向いていた。

 

 

『ダメだこりゃ』

 

 

不意にエイミィさんの声が聞こえたような気がした。

 

「分かりました、分かりましたよ。そんなに懇願していて断るのはアレですから」

 

「やった♪」

 

ウキウキ気分で羊羹を食べ始めたリンディさん。

 

「……とりあえず、よろしく頼む」

 

疲れた表情でお茶を飲むクロノであった。

 

 

 

 

 

 

 

「と言う事があったんだ」

 

俺は後日、プレシア女史の所にやってきた。

 

なのはとユーノ、ユナを連れて来てフェイトとアリシアを紹介してから5人はそれぞれ話をしていた。

 

おっと、アルフも当然含まれてるぞ。

 

俺とプレシア女史はこっそり離れてから昨日あった事を話した。

 

「なるほどね。とりあえず、1つだけ分かったわ」

 

「何が?」

 

「そのリンディさんとは美味しいお酒が飲めそうだ……と」

 

「何故に」

 

「そりゃあ決まってるでしょ?」

 

プレシア女史は俺の頭を撫でてきつつ一呼吸おいてから言った。

 

「アレスちゃんの可愛さが分かってると言う事よ」

 

急に時の庭園から逃げ出したくなった。

 

「帰って良いか?」

 

「何を言ってるのかしら? アレスちゃんはこれから最低1時間、私とお話をするのよ?」

 

プレシア女史はニコニコ笑ってるのだが、俺は妙なプレッシャーを感じていた。

 

それから暫くは雑談が続くのであった。

 

 

 

 

 

さて、管理局と知り合ってしまったから早くジュエルシードを揃えてしまおう。

 

ま、ショタ化したリンディさんならそれなりの手が使えそうだし。ばれても大丈夫だろう。

 

問題は、逃がしたネギもどきだよな。

 

俺の姿見られたし、そう簡単に尻尾は掴めないだろうな。

 

ちなみに、今は寝室でベッドに潜り込んでいた。

 

もちろん、隣には母さんとエヴァが添い寝していた。

 

まあ、なるようになれってヤツだな。

 

あいつの動向は注意しておこう。

 

 

 

 

 

 

と言う事で次の日に俺は海に来ていた。

 

エヴァの探索で海の中にジュエルシードが6つあるとなのは、フェイト、アルフ、ユーノとユナに話す。

 

ちなみに捜索に協力してくれた人達は今回はお休みだ。

 

空飛べないから仕方が無い。

 

「さて、海の中にあるジュエルシードをどうやって回収するかだが」

 

「魔力弾撃ち込んで強制発動は?」

 

フェイトさん、何をトンチキな事を。

 

「フェイトさん。そんな事したら管理局がすっ飛んでくるでしょうが」

 

ちなみに管理局の事は全員に教えてある。

 

「あ、そっか……」

 

ふむ。まあ、風の魔法を使って俺の周りだけ空気の玉を作って捜索が良いかもしれないな。

 

全員となるとちょっとジュエルシードが発動するかもしれないから俺1人が良いだろう。

 

一応、15分位なら息を止めていられるから大丈夫だろう。

 

「とりあえず、俺が潜って取ってくる。皆は監視していて。もし、誰かが来そうになったらどっかに隠れるなり逃げてくれ」

 

全員が頷くと俺は空気を纏って海の中に潜り込んだ。

 

 

 

 

 

あっという間に見つけて6つのジュエルシードをエヴァの結界魔法で封じてから空中に持っていく。

 

「見つけたぞ~」

 

「早いね~」

 

そして6つのジュエルシードはフェイトに渡す。

 

フェイトはそれをバルディッシュの中に入れる。

 

「これで全部集まったと」

 

「だな。さあ、プレシアさんの所に持っていこうか」

 

「うん」

 

その時、俺は感じた。

 

遠くの方から何かが飛んで来るのを。

 

そして見た。アレは……雷で出来た……槍。

 

巨大な槍がこちらに向かって飛んで来るのを!

 

「エヴァ!!!」

 

【はい! 装甲手楯(パンツァーシルト)!】

 

ベルカ式魔法陣の盾でその槍を止めた。

 

衝撃が走り、身体に少しだけ痛みが走った。

 

「ど、どうしたの!?」

 

「て、敵の攻撃!?」

 

「一体誰が!?」

 

全員が俺の方を見て驚いていた。

 

「これは……!」

 

俺は飛んできた槍を見て驚いた。

 

「これは! 『雷神槍(ディオス・ロンケー)巨神ころし(ティタノクトノン)』!!! まさか!」

 

遙か遠くに浮かぶ……ネギもどきの姿。

 

野郎! この時を待っていたのか!!

 

【お兄様! この火力は私の盾では防げません!!】

 

「なら俺以外の5人を転送しろ! このままだと巻き込まれる!」

 

【分かりました! 転送!】

 

「あ、アレス君!?」

 

「何をするんだ!?」

 

「悪いな、アレは俺に用があるみたいでな」

 

「そ、そんな!」

 

そして全員転送した。とりあえず、人質に取られる事は無いだろう。

 

【もうダメです! お兄様! 回避してください!】

 

「はぁ!!!」

 

シールドが破れ、槍が俺の腹をかするように突き刺さった。

 

「ぐぅあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

体中に走る電撃。

 

血液が沸騰しそうな位に身体が熱くなる。

 

【お兄様ぁ!!!】

 

「だ、大丈夫だ……エヴァ……何とか避けはしたが……」

 

「ふふふ、それでもかなりのダメージだね」

 

そう言って俺の前に現れたのはこないだのネギもどきだった。

 

既に戦闘状態になっていた。

 

しかも、両手で『千の雷』を取り込んだ状態、『雷天大壮2』になっていたのだ。

 

これはかなりまずい状態かもしれない。

 

あの状態は常時雷化で思考速度も半端なく上がっている。

 

「だが、ここで引く訳には行かないんだよ! 第5チャクラ起動!!!」

 

俺はチャクラを回して身体能力を上げた。

 

「はあぁぁぁぁぁ!」

 

「遅い!」

 

殴りかかるも払われて顔に衝撃が走る。

 

「ぐぅ!」

 

「まだまだいくぜぇ!!!」

 

ネギもどきの連続攻撃が俺の身体に突き刺さる。

 

「がっ! ぐぅ! がはぁ! うぐっ!」

 

「どうしたどうした! こないだの勢いは何処に消えたんだよ!」

 

ネギもどきの動きは分かるのだが身体がついてこない!

 

ダメだ、今の状態ではこいつに打撃を当てることも出来ない!

 

1秒間に20発以上の打撃が俺の身体に突き刺さる!

 

着実にダメージが蓄積されていく。このままでは負けてしまう。

 

「ははははははっ! さっさとくたばれよ! そうすればなのは達は俺の恋人兼性欲処理係にしてやるからよ!!!」

 

その言葉を聞いて頭に血が上った。

 

その時、頭にガチャンと撃鉄が落ちた様な感覚が襲ってきた。

 

〈お兄様! 私を出してください! このままではお兄様が殺されます!!〉

 

〈待て……今……身体に何かが起きた〉

 

〈お兄様……?〉

 

〈今なら……全チャクラ回せる! そうすれば、咸卦法で……こいつを葬る!〉

 

〈分かりました……お兄様……〉

 

「なめるなよ……小僧! 第6、第7チャクラ起動!!!」

 

今度は完璧だった。

 

身体の力がかつての力に戻ったのだ。

 

だが、長時間はまずい。短期決戦で決めないと……身体にどんな負荷がかかるか分からない。

 

一気に膨れあがる闇の力。

 

身体の動きが軽くなった。

 

さあ、反撃開始だ! この小僧に今までのお礼をたっぷりとしないとなぁ!!!

 

 

 




 



リンディさんェ…




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第13話 旅立ちの時&サプライズ・プレゼント

 



虚数空間の事で捏造設定がありますw




 

 

 

 

 

 

「これでとどめだぁ!」

 

ネギもどきが右拳を大きく振りかぶって殴りかかってくる。

 

その瞬間、俺はその拳を受け止めて手首を持ち、捻りを入れて投げる。

 

「ぐっ!?」

 

ネギもどきは俺から少し離れる。

 

その隙に咸卦法を行うべく、左手に魔力、右手に気を込める。

 

「左手に魔力、右手に気……合成!!」

 

瞬間、俺の身体から爆発的な風圧が発生する。

 

「て、てめぇ! 咸卦法も使えるのか!?」

 

「ふん。前世では1000年の時を生きていたんだ。咸卦法の1つ位使えてもおかしくはあるまい?」

 

「前世で1000年の時……だと?」

 

「俺の前世の名は『アリス・マクダウェル』と言う名だった」

 

「マクダ……ウェル……!?」

 

「そうだ、小僧。平行世界の可能性の1つ、エヴァンジェリンに双子の姉が存在していた世界だ」

 

「っ!」

 

「その世界では俺は『吸血鬼の真祖(ハイディライト・ウオーカー)』として生きていたのだよ! 斬魔剣 弐の太刀!」

 

俺はレーヴァテインを振りかざしてから一気に切り裂く。

 

衝撃波がネギもどきを襲い、左腕を切り裂いた。

 

「ぐぅあ!?」

 

「この程度で済むと思うなよ?」

 

俺は更に連続で弐の太刀を放つ。

 

今度は左足に当たり、ネギもどきの雷化が解けて普通の状態に戻った。

 

「今度こそ、逃がしはしないぞ」

 

魔法の監獄(ゲフェングニス・デア・マギー)

 

闇の牢獄(ダークネス・プリズン)

 

俺とエヴァで念入りに結界を張る。

 

「ぐ……」

 

「さあ、大人しく捕縛されるか、苦しみながら天に召されるか……選べ」

 

「誰が……捕まるかよ!」

 

無詠唱で魔法の矢を20本くらい飛ばしてくるネギもどき。

 

俺はそれを障壁で全て弾き飛ばす。

 

「ひぃ! く、来るな!来るなぁ!!」

 

ゆっくりと近づく。

 

「大人しくしろ」

 

「ひぃ……」

 

そう言ってネギもどきと目が合った。

 

「喰らえ!!」

 

ネギもどきの目が光り、俺の頭に妙な違和感を感じた。

 

が、それだけだった。

 

別に足下から石になるとか、頭痛が起きたとかそう言った事は全くなかった。

 

「……」

 

〈お兄様……アレは魅了の魔眼みたいですわよ?〉

 

〈ほぅ?〉

 

〈でも、私もお兄様にも効かないんですけどね〉

 

エヴァは吸血鬼の真祖のスペックそのままだから魅了とかその手の精神攻撃は効かないが、俺はある理由があって人の身であろうとその手の攻撃は一切効かないのだ。

 

う~ん、我ながらチートだな。

 

「はははははははは! これでお前は俺の言いなりだ!」

 

「……」

 

俺は黙ってその場に浮いていた。

 

「さあ、忠誠の証として……自害しろ!」

 

「分かりました……」

 

〈エヴァ、モード『レヴァンティン』〉

 

〈了解です〉

 

俺はエヴァをレヴァンテインモードに切り替えた。

 

「へぇ……シグナムの剣だな。まあ、どうでも良いか。そうだ、お前が死んだ後はそのデバイスを使ってやるよ! 感謝しろ!」

 

馬鹿笑いをするネギもどき。

 

「感謝します」

 

そう言って俺はネギもどきの身体を切り裂いた。

 

左肩から右わき腹にかけて袈裟斬りにした。

 

「がっ!? な、な……ん……で……? 俺の魅了は……どんな……ヤツでも……!」

 

血が噴き出し、口から血を流すネギもどき。

 

「残念だったな。俺には魅了とか催眠とかその手の精神攻撃は一切効かないのだ」

 

「ちくしょう……そんなの……アリかよ……」

 

そう言ってネギもどきは気絶して下に落ちて行く。

 

俺はそれを受け止めてから天界に連絡を取って天使を呼んだ。

 

 

 

 

 

「それではお届けしますね~」

 

ネギもどきの魂を壺に封印する。

 

「ああ。それと、そいつの来世は『陵辱される女の子の気持ちがよく分かる』と言う存在が良いのだが。無論、記憶は残ったままで」

 

「分かりました。一応、報告はしておきます」

 

そう言って天使は天界に帰っていった。

 

【お兄様……かなり鬼畜な所業かと……】

 

「ふん。ああいった輩は一度その立場にならんと分からんだろ。それに、俺はそう言ったヤツは大嫌いだ」

 

【まあ、女の子を肉奴隷としか見えない男は私も許し難いですけどね】

 

「そう言う事だ。さ、帰るか」

 

俺はなのは達の所に転移した。

 

 

 

 

 

 

なのは達の所に戻るとなのはとフェイトの2人からいきなり抱きつかれた。

 

「わ……いきなり何だよ」

 

「それはこっちの台詞だよ!」

 

「1人で戦うなんて……」

 

2人とも目に涙を浮かべていた。

 

ふと、周りを見るとボロボロになったアルフとユーノ、ユナが居た。

 

何故3人ともそんなにボロボロになってるんだ?

 

「……どうしたんだ?」

 

俺はユーノに声をかけた。

 

「……なのはとフェイトが……アレスと助けに行くって言って……僕達が止めてたんだ」

 

そう言うことか。

 

それにしても、よくなのはを止められたな。

 

そしてフェイトも加われば相当な戦力になってたのに。

 

「そう言う事か。よく止められたな」

 

「自分でも奇跡かと思ってるよ……。スターライトブレイカー……まさに星を破壊する桃色の光線だった……」

 

スターライトブレイカー……もう完成させていたのか。

 

まあ、ユナもいたから何とか止められたのかもしれないな。

 

ユーノ1人だったら撃墜されていたな。

 

「それで、さっきの相手は?」

 

「ああ、捕まえて知り合いに引き渡した。だから安心しろ」

 

「そっか」

 

「それで? さっきの相手って何だったの?」

 

「……さあな。俺にもよく分からなかった」

 

「……ホントに?」

 

なのはの目が少し細まった。

 

「……ああ」

 

「……嘘や隠し事……してないよね?」

 

「してないぞ」

 

「……もし、嘘ついてたら……お仕置きだからね?」

 

「ああ」

 

ひょっとしてなのはは気付いているのかもしれない。

 

こうして俺達は無事にジュエルシードを全て集める事が出来た。

 

 

 

 

 

 

明日に時の庭園に行く事を伝えてフェイトとアルフと別れる。

 

そして今日はなのはが俺の家にお泊まりに来る日だった。

 

何か忘れてる様な。

 

「ただいま~」

 

「あら、おかえりなさい」

 

そう言って出迎えて来たのはリニスさんだった。

 

ああ、リニスさんは魂と身体の同調が安定したからもう外の世界で生活してたんだ。

 

「……アレス君? この人は?」

 

「説明するから……」

 

仕方がないからなのは、ユーノ、ユナを家に入って貰ってから説明することにした。

 

 

 

 

 

「へぇ~」

「ほぉ~」

 

ユーノとユナは不思議そうにダイオラマ魔法球を眺めていた。

 

なのはは身体を揺らしていた。

 

『うずうず』と言う表現が似合う状態だった。

 

「はやてはアリサ、すずかにはまだ言うなよ……」

 

「分かったの。アレス君と2人だけの秘密なの」

 

「まあ、明日は一時フェイトとお別れになるからはやてとアリサ、すずかも連れて行こうか」

 

「そうだね」

 

といった感じで夜は過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

そして運命の日。

 

ちなみに管理局はここの居場所は突き止めてはいない。

 

例によってアリシアに魔力を与えてから全員に見えるようにしておいた。

 

恒例の自己紹介が始まっていた。

 

俺とプレシアは今後の事について話を進める。

 

「で、アリシアを復活させたら俺の家の隣に引っ越して来るんだな?」

 

「ええ。なるべく早くお邪魔しようかと思ってるわ」

 

「まあ、来る時は連絡をくれ。俺も父さんに言って戸籍とか準備があるからな」

 

「分かったわ。きちんと連絡するわ」

 

そう言ってプレシア女史はなのは達の方を見た。

 

「貴方がいてくれたおかげでフェイトとアリシアの笑顔が見ることが出来たわ」

 

「気にするな」

 

「気にするわ。だから、アリシアとフェイトはきちんとお嫁に行かせるから貰ってね?」

 

「その時まで本人が望むのならな」

 

もはや何を言っても無駄であろうと思って了承するしかなかった。

 

 

 

 

 

「さて、これからジュエルシード21個を起動させてアルハザードへの道を開く」

 

俺は全員の顔を見ながら言った。

 

「その前に、プレシアさんに紹介する人がいる」

 

「え? 私に?」

 

「あ、あの人だね?」

 

なのはの言葉に俺は頷いた。

 

「エヴァ、頼む」

 

【了解です、お兄様。召喚!】

 

俺の前にベルカ式魔法陣が展開され、真ん中から人が現れた。

 

ベージュ色の髪をした女の人、リニスだ。

 

「あ、貴女は!」

 

「り、リニス!?」

 

「そ、そんな!?」

 

「リニ……ス?」

 

プレシア、フェイト、アルフ、アリシアの4人は目を見開いてリニスを見ていた。

 

ちなみにアリサ達への説明はなのはが行っている。

 

「どうして……貴女は私と契約を破棄したから既に亡くなっているはず」

 

「ええ。確かに私はプレシアとの契約を破棄され、魔力を失って死んでしまいました」

 

「なら、どうして……?」

 

「そこに居るアレス君のお陰ですよ」

 

リニスが俺の方を向いて微笑んでいる。

 

俺は視線を逸らして口笛を吹いていた。

 

「私も、アリシアの様に幽霊となって時の庭園の自室へずっと居たのですよ?」

 

「そう……だったの……」

 

「そして、たまたま現れたアレス君の手によってこうして復活出来たのです」

 

「……ちょっと待ちなさい」

 

首をギリギリギリと音を立てる様な感じで俺を見るプレシア女史。

 

「どうした?」

 

「貴方……どうやってリニスを復活させたのかしら?」

 

「ん~? 地下にあるリニスの自室にあったリニスの遺体を使っただけだが?」

 

「……その遺体ってどんな感じだったかしら?」

 

目が段々と細くなっていくプレシア女史。

 

「そりゃあ、ミイラ化してたが?」

 

「……ミイラ化してたリニスをここまで復活させるなんて……さあ! アリシアを復活させなさい!」

 

両肩を掴んで俺の鼻に当たる位まで顔を近づけるプレシア女史。

 

「お、お母さん!?」

 

「プレシア!?」

 

「待て待て待て! いかに俺でもミイラ化した遺体から復活出来る方法は持ってないわ!」

 

「ならどうやって復活させたのか言いなさい!」

 

「ええぃ! 言ってやるから! ちっと落ち着け!」

 

俺はプレシア女史の額にデコピンを喰らわせた。

 

「ぐっ!?」

 

思いっきりのけぞって倒れそうになる。

 

「うわぁ……」

 

「つくづくアレスのデコピンっておかしいわよね……」

 

「下手したら首がもげるんちゃうか?」

 

外野からの声は聞こえないフリで対処した。

 

「ったく。もうこうなったら……俺も一緒にアルハザードに行く! そこで説明してやるから良いだろ!?」

 

「え?」

 

「ちょ、ちょっと! アンタ、学校とかどうするのよ!?」

 

「言っても最長3日だけしかいないからな。3日であっちの環境を整備してやる。それで良いな?」

 

「……分かったわ。折角アレスちゃんと一緒に過ごせるから構わないわ」

 

「ちょ、ちょっと! 学校3日も休むつもり!?」

 

アリサのツッコミが入る。

 

「大丈夫だ。学校は休まない」

 

「でも、アンタはアルハザードに行くって……」

 

「随分と矛盾した事を言ってるように聞こえるけど……」

 

「アレス君なら何か秘策があるんちゃうか?」

 

アリサ、すずか、はやての言葉。

 

「アレス君、アレ使うのかな?」

 

「多分、同時に存在するならアレしか……無いよね」

 

なのは、ユーノの呟きが聞こえる。

 

「さ、全員を信頼してるぞ? 俺のこの能力を他言しないと思ってな。奥義・二重身(ドッペルゲンガー)

 

俺はそう告げると2人に分裂した。

 

「は?」

 

「え?」

 

「嘘……!?」

 

「何で!?」

 

「ふ、2人になった!?」

 

「分身の術!?」

 

「ど、どないなっとるんや!?」

 

全員が驚いていた。なのはとユーノは除くが。

 

「これが俺の能力の1つだ。魂を分割して存在出来る奥義だ」

 

「そして、一定のダメージを受けるか、3日立てば分身体は自動的に本体に戻るんだ」

 

俺と分身体はお互いを見て頷いた。

 

「それなら……確かにアルハザードに行って学校にも行けるよ」

 

「にしても……どんだけ技を隠してるのかしら?」

 

アリサがジト目で俺の方を見ていた。

 

「さあ? これで終わりかも知れないしな?」

 

「嘘仰い! アンタの事だからもう3つか4つは何か隠しているに違いないわ!」

 

「私もその意見には賛成だわ。私の勘が訴えとる。だから、キリキリ吐いて貰うで?」

 

「ちょっと待たらんかい! これから旅立つって言うのに何を!」

 

「そうなの! アレス君の秘密は分身体の方に聞けば良いの!」

 

なのはも何を言ってるんだ。

 

「……。分身体は死と言う概念無いからな。脅しは効かないぞ」

 

「……そうだった……心臓が握りつぶされても大丈夫だった」

 

「何それ恐いわ……」

 

「とりあえず、そろそろ旅立つぞ」

 

俺と分身体は合体して元に戻る。

 

「それじゃ、プレシアさん。ジュエルシードを床に並べてくれ」

 

「分かったわ」

 

大広間の真ん中に円を描くように置かれたジュエルシード。

 

「おっと、ジュエルシードが起動して俺達が行ったら、なのはとユーノ、ユナの3人で一斉封印してここから退去してくれ。多分、時空管理局が現れると思うから」

 

「うん、分かった」

 

「分かったわ」

 

「それから俺が戻ったら何食わぬ顔でジュエルシードを管理局に返す。これでこの事件は終わる」

 

「うん」

 

全員が一斉に頷いた。

 

「それじゃ、エヴァ」

 

【了解です、お兄様。ジュエルシード、起動!】

 

魔力を込めてジュエルシードを発動させる。

 

もの凄い魔力がほとばしるが、俺とエヴァが制御するから暴走する気配は一切無い。

 

そして、空間に割れ目が走り、穴が開いた。

 

向こうは虹色の様な不思議な色をした空間が広がっていた。

 

「これは」

 

「……どうした?」

 

「まずいわね。虚数空間かしら……? 魔法が使えないかも知れないわ」

 

そう言えばそうだったな。

 

どうだろうか。魔力は確かに無効化するが、気の力は大丈夫だろうか?

 

それなら俺が全員を連れて行くしかないな。

 

「ふむ?」

 

俺は再び2人に分身してから分身体の手に縄をくくってから虚数空間に飛び込ませてみた。

 

「アレス君!?」

 

「あっちが分身体で俺が本体だ」

 

「見分けがつかないから凄く紛らわしい……」

 

「大丈夫だ」

 

空間の中で俺は飛んでいた。どうやら気の方はキャンセルされないみたいだ。

 

「え? 嘘……魔力は使えないはず……?」

 

「さあ、行くぞ。今は安定してるがどうなるか分からない。全員、手に縄を繋いでおけ」

 

プレシア女史、フェイト、アルフ、リニスはそれぞれ手に縄をくくった。

 

アリシアは俺の背後に憑依状態でいて貰うことにした。そう簡単に離れないようになっている。

 

「それじゃあ、俺は3日後には帰ってくるからな」

 

「分かったなの」

 

「しっかりやりなさいよ!」

 

「頑張ってね」

 

「しっかりや~。お土産、期待してるで~」

 

といった感じで俺はプレシア女史達を連れてアルハザードに向けて旅立った。

 

 

 

 

 

 

空間に入ると全員の4人分の体重が腕に来る。

 

腰に回せば良かったかな?と思いつつも俺は更に二重身(ドッペルゲンガー)で分かれた。

 

 

「え?」

「嘘でしょ?」

「アレスが……」

「5人いる?」

 

 

全員の手を繋いで俺は虚数空間の中を飛んだ。

 

全員が驚いて俺と分身体達の顔を見ていた。

 

「さてさて? 俺は2人だけとは言ってないぞ?」

 

「確かに、分身出来ると言ってたけど……2人までとは言ってなかったわ」

 

「じゃ、じゃあ……何人まで出来るんだよ」

 

「本体入れて12人まで。ちなみにその場合は力と素早さが3分の1に落ちる」

 

「へぇ~凄いとしか言いようが無いよ」

 

「えへへ。これなら私とフェイトと同時にデート出来るね♪」

 

俺の背中で笑ってるアリシア。

 

「別に、アリシアとフェイトと2人同時で良いんじゃね?」

 

「お兄ちゃん分かって無いなぁ~。2人っきりになりたい時もあるんだよ?」

 

「……それもそうか」

 

そう言えばそうだったな。

 

神界に行ってからはアテナと妖子(あやこ)のダブルデートが基本になってしまって本来は2人っきりなんだよな。

 

「うふふ。これもなのは達には秘密にしてるのでしょう?」

 

プレシア女史が微笑みながら俺の方を見た。

 

「ああ。いつかはビックリさせるつもりだから……フェイト、アリシア? この事は秘密な?」

 

「うん、分かった」

 

「分かったよ~お兄ちゃん♪」

 

「アルフとリニスもな?」

 

「分かりました、アレス君」

 

「あたしはどうしようかな~? 美味しいお肉を所望するけど?」

 

「……アルハザードに行ったらネギ祭りだな」

 

「ちょ! 狼の素体であるあたしにそんなの食わしたら身体壊すよ!」

 

「アルフ、お願い」

 

「分かったよ~フェイトがそう言うなら黙ってるよ」

 

「それならアルハザードに着いたら肉料理作ってやるよ」

 

「ラッキー! ありがと、アレス」

 

そんなこんなで俺達はアルハザードに向かってひたすら飛び続けた。

 

 

 




 
外道転生者は容赦しません


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第14話 アリシア復活

 


 
これにて無印編は閉幕と相成ります





 

 

 

 

 

 

無事にアルハザードに着いた。

 

もうちょい廃墟化してるかと思ったら意外と綺麗な状態であった。

 

ちなみに見た感じはいかにもと言った未来都市的な作りだ。

 

前世の前世において見た科学都市になった東京を思い出す。

 

【ここの管理室で認証登録しておけばジュエルシード無しでアルハザードに来る事が出来ます】

 

管理室らしい部屋に来た俺達は全員分のデータ全てを入力しておく。

 

もっともアリシアは後で登録することになるのだが。

 

「これならそんなに時間はかからないだろう」

 

「そうね。しかし、凄いわね。昔の技術なのに今の技術より優れてるなんて」

 

プレシア女史は周りの機械を眺めながら呟いた。

 

「ああ。これだけの技術を持っていながら滅んだのか」

 

「やはりどんなに優れた技術を持っていても自然には勝てないのかしらね」

 

「そうだなっと。ここはどうだ? ここなら居住区と……どうやら生体工学の研究施設の近くだ」

 

俺はコンピューターから地図を出して指で指し示した。

 

「どれどれ? 良いわね。ここにしましょうか」

 

俺達は地図の場所に向けて移動した。

 

 

 

 

 

着くと大きめな建築物に辿り着いた。

 

中に入るとちょいと埃まみれだったが掃除をすれば問題は無い。

 

と言う訳で俺は最大限に分裂して掃除等雑用にとりかかる。

 

「その能力はかなり便利ね……」

 

「ネコの手も借りたい時に重宝しますね……」

 

リニスさん、貴女はネコでしょうに。

 

全員が目を丸くして俺が複数になって片づけていく様を見ていた。

 

 

 

 

 

一段落ついた所でリビングに集まって休憩した。

 

「さ、どうやってリニスを復活させたのか……言って貰うわよ?」

 

目が据わってるプレシア女史を眺めつつ俺はリニス復活の経緯を話した。

 

 

 

 

 

「なるほどね……異世界の技術……ね……」

 

顎に手を当てて考え込むプレシア女史。

 

「プレシア、この技術が管理局に知れ渡ったら……」

 

「まずいわね。絶対に人造魔導師とかろくでもない使い方しかしないわね」

 

「それに俺だって何かしら制限をして来るだろう」

 

「そうね。アレスちゃんが持ってるデバイスだってロストロギアみたいな物だから奪って保管せよ! って言う馬鹿が出るに違いないわ」

 

【まあ、私はお兄様以外に使われる位なら自爆しますけどね】

 

サラリと恐いこと言うな、エヴァは。

 

「え? 自爆機能あるの?」

 

【ええ。どうやら当時のベルカの技師が付けたみたいで。『自爆はロマンだ』といった記述が私の中に残ってます】

 

「……やはり今も昔も科学者は自爆装置は好きみたいね」

 

苦笑しているプレシア女史。

 

「…………」

 

その会話を聞いて不安な表情を見せてバルディッシュを眺めるフェイト。

 

【私にはそんな機能はついてません】

 

「良かった……」

 

バルディッシュ卿の返答にホッと安心した呼吸をするフェイト。

 

「私は自爆装置はつけませんよ? フェイト?」

 

「いや、リニスを疑ったわけじゃ……」

 

リニスが頬を膨らませて、フェイトが大慌てで弁解している光景を俺は眺めていた。

 

そう言えば、複雑な機構を全て廃して『ボタンを押すだけで自爆出来るロボット』を作成していた科学者がいたな。

 

起動実験でボタン押して自爆してたが。

 

自爆マニアもあそこまで行くともはや理解しがたい。

 

 

 

 

 

 

 

次の日。

 

そんなこんなでアリシアを復活させる算段が整った。

 

生体工学所と思われる場所で俺達は準備を進める。

 

生体ポッドの中にアリシアの身体を入れてチェックをする。

 

全裸ではあるがアリシアからの許可は取ってある。

 

 

『将来のお婿さんだから隅々まで観察して良いよ~』

『私も全く構わないわ。好きなだけ観察して勉強しなさい』

 

 

プレシア女史もアリシアも頭が少しバグってる様だ。

 

フェイトは頬を膨らませて『う~』と唸ってるし、リニスとアルフは苦笑していた。

 

まあ、前世は女だったから『そんな観察とか必要は無いんだぜ!』とは当然言えない。

 

ちなみにプレシア女史がメイン、俺とリニスが補佐、フェイトとアルフとアリシアは見学だ。

 

キーボードをカタカタと叩いて機械の操作をする。

 

とりあえず、今はアリシアの身体の状態をチェックする。

 

このチェックでアリシアの身体にある損傷等を探し出して修復するのだ。

 

そうすればアリシアは復活出来るはず。

 

とりあえず、機械がチェックに入ったので俺達は休憩する。

 

 

 

 

 

機械の方から完了と思われるブザー音が聞こえた。

 

ディスプレイを見る俺とプレシア女史、リニス。

 

「これは……」

 

「なるほど、これが原因か……」

 

「さすが失われし技術。ここまでの精度を……」

 

身体の絵が出て頭の部分にチェックが入っていた。

 

どうやら頭の部分に何か問題があるから身体が蘇生出来なかったのだろう。

 

「それじゃ、治療してもらおうか」

 

3人お互い顔を見合わせてから機械のプログラムを開始した。

 

 

 

 

 

とりあえずセット出来たのでまたも俺達は終わるまで待つことになった。

 

さて、無事にアリシアを復活出来たなら俺はお払い箱だろう。

 

適当に頃合いを見て帰ることにしよう。

 

「そう言えば、私とアリシアはどんな立場になるの?」

 

不意にフェイトが訪ねて来た。

 

「そうねぇ……生まれた順で言えばアリシアが姉でフェイトが妹になるんだけど」

 

と言ってプレシア女史はポッドの中に入るアリシアとフェイトを見比べていた。

 

「見た目はフェイトが姉になるんだけど……」

 

「いや~! あたしがお姉さんなの~!!」

 

アリシアが駄々をこねる。

 

「そうは言ってもねぇ」

 

確かにそうなのだ。

 

アリシアとフェイトを並べると、アリシアが頭半分くらい低いのだ。

 

まあ、フェイトは数えで9歳、アリシアは5~6歳位で事故にあったためそこで成長が止まってるのだ。

 

要は同じ身体年齢を2人とも同じにすれば良いのだ。

 

となると、方法はとりあえず2つ。

 

薬を使用して強制的に身体を大きくするか、ダイオラマ魔法球を使用して自然に身体を大きくするか。

 

プレシア女史に聞いてみるか。

 

「なら、アリシアの身体を大きくすれば良いだろ」

 

「そうは言ってもねぇ」

 

「俺が提示出来るのは2つ。薬を使って強制的に成長させるか」

 

「薬はちょっと……」

 

「なら、これを使う」

 

俺は魔法のポシェットからダイオラマ魔法球を取り出した。

 

「何かしら? コレは?」

 

不思議そうな顔で魔法球を見るプレシア女史。

 

「魔法の箱庭だ。名前はダイオラマ魔法球。時間の流れが違うように細工してある。中の1日は外の1時間に当たる」

 

「へ?」

 

「つまり、外では1日だがこの中では24日過ぎる事になる。外の時間で60日入っていればえっと……1440日か?ちょいと多いが、4年分。兎に角、アリシアの身体を成長させることは出来る」

 

「それこそ魔法じゃない」

 

唖然としているプレシア女史。

 

リニス以外も目を丸くして魔法球を見ていた。

 

「プレシアさん、1日おき位に入っていけば良いから。もっとも、早く歳を取りたいならずっと中に入っていても……」

 

「入るわけないでしょうが!」

 

プレシア女史の背中に般若の面が浮かんでいた。

 

「私が入ります。元々寿命はあってないような物ですし」

 

リニスなら大丈夫だろう。多分……。

 

そうこうしてたらポッドのディスプレイから音が鳴り響いた。

 

どうやら完了したみたいだ。

 

プレシア女史がアリシアの身体を取り出してから近くのベッドに寝かせる。

 

「さて、これで大丈夫だと思うが?」

 

「ですが、心臓が動いていません……」

 

「とりあえず、俺の気を少し送ってみるか」

 

俺はアリシアの頭に手を当ててから気を少し送ってみた。

 

「……どう?」

 

「大丈夫です。心臓が動き出しました!」

 

「アリシア?」

 

「うん!」

 

アリシアが頷いてから身体の所に行って重なる。

 

少し光輝いてから光が収まる。

 

「……ん……」

 

ベッドの上に眠っていたアリシアの目が開いた。

 

「あ、アリシア!」

 

プレシア女史が抱きついた。

 

「お母さん……」

 

「アリシア……やっとこの手で……」

 

プレシア女史の目から流れる涙。

 

見るとリニス、フェイト、アルフも目に涙を浮かべていた。

 

さて、感動の対面だから俺はちょいと席を外すかな。

 

俺は外の空気を吸いに建物から外に出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしてこうなった……?」

 

俺は今、浴場に来て呆然としていた。

 

1人ではなく、プレシア女史、アリシア、フェイト、リニス、アルフの5人と一緒に。

 

どうしてこうなったのか、時を少しだけ戻す。

 

 

 

 

 

アリシアを蘇生した後、全員で食事を取って俺は帰ろうと思っていた。

 

そこへフェイトがサラッと言って来た。

 

「お風呂に入ろうか?」

 

何を躊躇せずにサラッと言うのかね?

 

「何?」

 

「お風呂。なのはと一緒に入ってるんでしょ?」

 

なのは、何を教えてるのかね。そんなのは軽々しく言ってはいけないと……教えてなかったな。

 

「あ、まあ、確かに……たま~に入ってるが……」

 

「なら入ろ? アリサやすずかとも入ったんでしょ?」

 

おぅ……いつぞやの旅行の時の事まで聞いてるのね。

 

「う……うん……」

 

「お兄ちゃんずるい~! あたしも一緒に入る~!!」

 

更に追い打ちをかけるかの様にアリシアも参戦してきた。

 

「え、あ、お、おぅ……」

 

「あらあら。なら私も一緒で良いわよね?」

 

そう言って背後に回るのはプレシア女史。

 

だから頬を撫でるのは……クセなのか?

 

「そうですね、皆で一緒に入りましょうか」

 

「良いね~、一家団欒だねぇ~。酒持って行こ」

 

リニスとアルフも一向に止める気は無いようだ。

 

あんた方、俺が男だって言うの忘れてるんじゃあるまいな!?

 

 

 

 

 

とまあ、今に至る訳だが。

 

腰にタオル巻いていたらそんなのはいらないよ~とか言ってアリシアにはぎ取られるし。

 

何かプレシア女史の視線がまったりと絡んでくると言うか。妖しい雰囲気を帯びてるし。

 

確かになのはや母さん、エヴァと一緒に入ってるから多少の免疫は出来てますが!

 

違う人となるとやはり緊張はするんだがね!

 

プレシア女史とリニスさんの胸はたゆんたゆんと揺れてるし!

 

アルフは程良い大きさでスラッとした体型だし!

 

フェイトとアリシアは子供体型だ。

 

……ロリが見たら鼻血を噴くだろうが。

 

熱い衝動を抑えつつも俺は身体を洗おうと思ったら。

 

「えへへ」

 

そう言って目の前に現れたのはアリシア。

 

前を隠せよ! 堂々と腰に手を当てて立ってるんじゃありません!

 

「どうした?」

 

「お兄ちゃん、洗って~」

 

そう言って俺の横にあった椅子に座った。

 

ちなみに今入ってる浴場は大人数対応の銭湯みたいな作りになっている。

 

「しょうがないなぁ~」

 

そう言って俺はアリシアの身体を洗う。

 

 

 

 

10分後。

 

「えへへへへへへへへへ♪ お兄ちゃん上手♪」

 

顔を赤くするアリシア。

 

うむ、俺が身体を洗うと皆こうなるんだよな。

 

「なのは達から聞いてはいたけど……」

 

驚いた表情で俺とアリシアの様子を見ているフェイト。

 

「私も洗って?」

 

そう言って俺の隣に座るフェイト。

 

アリシアはふらふらしながら湯船に向かっていった。

 

ちなみにその先にはプレシア女史が居たが。

 

「……ああ」

 

俺は同じようにフェイトの身体を洗うことにした。

 

 

 

10分後。

 

 

「……はぅ……凄い……」

 

目が虚ろになってるフェイトが居た。

 

顔がリンゴの様に真っ赤で酒に酔ったのか?と問いたくなるくらい赤い。

 

「……大丈夫か?」

 

「……だ、大丈夫……」

 

そう言って俺はフェイトの背中から湯をかける。

 

「なのはの言うとおりだった……。アレスに身体を洗って貰うと凄く気持ち良いって……」

 

「……そりゃ、ありがとう」

 

「時々で良いから一緒に入ろ?」

 

「ああ。分かった……」

 

断る事が出来なかった。

 

「娘2人を堕とすなんて……ね」

 

そう言って俺の背後に現れたのはプレシア女史。

 

スゲーイヤな予感。

 

フェイトはフラフラとした足取りで湯船に向かって行った。

 

「お礼にアレスちゃんの身体を洗ってあげるわ♪」

 

やはりこのパターンかよ!

 

「いえ、ひ、1人で洗え……」

 

「遠慮しないの。(男の子の身体を洗ってみたかったのよ)」

 

何か最後の方は聞こえなかったが。でも、妙な予感は感じる。

 

「ほらほら」

 

そう言ってプレシア女史は俺の背中を洗い出した。

 

ああ、気持ち良い。意外と上手に洗う。

 

「痛くないかしら?(プニプニしてて柔らかいわね)」

 

「あ、ああ……」

 

次に腕を取って同じように洗う。

 

これも同じように程良い力加減で気持ち良い。

 

「それじゃあ、前ね」

 

そう言ってグルンと対面になるように回転させた。

 

まて……今、エラい力を発揮しなかったか?

 

「……」

 

「どうしたのかしら?」

 

プレシア女史の目が少し血走ってる。しかも据わってる。

 

暴走しないだろうな。リニスさんが止めてくれるのを期待するしかない。

 

「何でもない」

 

「そう」

 

プレシア女史は俺の胸、腹と洗う。

 

少し妖しい雰囲気を醸し出しているが、大丈夫そうだ。

 

足を洗う。足の指から綺麗に、丁寧に洗ってくれる。

 

このまま何事もなく終わってくれるだろうと思ってたら。

 

 

 

「……」

「……」

 

 

プレシア女史は何事も無かった様に俺の股間に手を伸ばして洗う。

 

 

「……」

「……」

 

 

お互い何も言わない。

 

無言の空気が流れる。

 

湯船ではリニスさん、アルフ、フェイト、アリシアが談笑していてこちらには気付いていないようだ。

 

 

「……」

「……」

 

 

…………エラい丁寧なんだが。

 

他の箇所よりも明らかに丁寧に洗ってくれている。

 

 

 

「……(この歳で既に……皮が……!)」

「……」

 

 

 

何が言いたいか分かった。

 

俺の……そうだな、『男性専用アームドデバイス』と仮称しておこうか。

 

ぶっちゃけ言うと、俺の男性専用アームドデバイスは……先端部分は装甲が無くて剥き出しと言っておこうか。

 

「……(コレは……アリシアもフェイトも泣かされるわね。ついでに私も)」

 

「……いつまで洗ってる?」

 

「あ!」

 

プレシア女史は驚いて俺のアームドデバイスを強めに握る。

 

 

「おぅ!?」

 

「ごめんなさい!」

 

 

 

 

 

その後、ついでに頭も洗って貰う。

 

そして湯船に向かう。

 

見ると全員少し赤くなっていた。

 

だが、アルフは酒で出来上がっているだけだが。

 

プレシア女史はリニスさんに向かって何やら耳打ちしている。

 

リニスさんは驚いた顔で俺の方を見て……僅かに視線を下に向けた。

 

何を報告してるんだ!

 

今度はリニスさんがプレシア女史に耳打ちして……。

 

フェイトとアリシアの方を見てから大きく頷いていた。

 

もうイヤな予感しか感じないよ、勘弁してくれ。

 

 

「えへへ」

「……うん」

 

 

両脇にはアリシアとフェイトがしっかり腕を取って抱きしめていた。

 

そんな感じで俺達の風呂は過ぎていった。

 

 

 

 

 

「それじゃ、俺は帰るぞ?」

 

「ええ。アレスちゃんには返しても返しきれない恩が出来たわ」

 

「気にするな」

 

「気にするよ。あんたのお陰でフェイトも……全員笑い合える事が出来たんだから」

 

アルフが少し涙を浮かべていた。

 

「ありがとう、アレス……」

 

「アレスお兄ちゃん、ありがとね」

 

「アレス君には感謝しきれません……」

 

フェイト、アリシア、リニスさんもそれぞれお礼を言ってきた。

 

「じゃあな。ま、1週間に1度位は来ようと思うが……」

 

俺はエヴァを見た。

 

「そろそろ、『アレ』が目覚める。『アレ』が目覚めたらちょっと来にくくなるかもしれない」

 

「ああ、『アレ』……ね」

 

『アレ』とは闇の書。いや、夜天の魔導書と言うべきだな。

 

はやての誕生日は6月4日、あと少しだ。

 

「アレって?」

 

フェイトが不思議そうに聞いてきた。

 

「ああ、プレシアさんから聞いた方が良いだろう。多分、フェイトも協力をお願いするだろうが」

 

「うん、分かった。母さんに聞いてみる」

 

「ぶ~、あたしは~?」

 

「アリシアはまだかな。でも、いつかはアリシアにも何かしらお願いするから今は我慢してくれ」

 

「うん、お兄ちゃんがそう言うなら……待ってる」

 

「さて、と。そろそろお暇するぞ」

 

「うん、また会おうね」

 

「バイバイ、お兄ちゃん」

 

「アレス君、また会いましょう」

 

「へへ、ありがとう、アレス」

 

「アレスちゃん、また会いましょう」

 

そう言って俺は次元の穴に飛び込んで元の世界に向かって飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

テスタロッサ一家とアルハザードで別れてから3日。

 

俺はなのは、ユーノ、ユナを連れてアースラに来ていた。

 

用件はジュエルシードを渡す為。

 

アルハザードに登録しておいた俺にはもう必要ない代物だ。

 

なのは達を連れて行く時は一緒に転送すれば問題ない。

 

例によって畳敷きの部屋に通された。

 

 

 

 

 

「いや~、まさか俺の幼馴染みが集めてたなんて」

 

しれっと俺は言った。当然、嘘だがね!

 

「偶然って恐いわねぇ……」

 

「いや、ホントホント」

 

俺とリンディさんは笑い合っていた。

 

「ホントはアレスちゃんも協力してたんでしょ?」

 

笑顔でリンディさんは俺に向かって言い放った。

 

「さあ?」

 

「……まあ、良いわ。無事に全部揃った事だし。これ以上の詮索は無用ね。(アレスちゃんに嫌われたくないし)」

 

そう言ってお茶を啜るリンディさん。

 

「しかし、少し無謀ではあったな」

 

「すみません……」

 

「何よ! ユーノは頑張ったんだからね!」

 

クロノはユナに責められていた。

 

「そうそう、スクライア一族からあなた達2人の捜索願いが出てたけど……」

 

「そうですね。一旦帰ります」

 

「そうだね……。あたしも何も言わずに飛び出して来ちゃったし」

 

ユーノとユナは帰宅するみたいだ。

 

「にゃはは、コレで一件落着かな?」

 

「だな」

 

俺となのはは見つめ合ってから少し微笑んだ。

 

「そうそう、貴方達にお願いがあるんだけど……」

 

リンディさんがキラキラした目で俺達を見てきた。

 

「……まさかとは思いますが?」

 

「そのまさかよ。管理局に入らない? 2人とも相当のランクだし」

 

魔力総量ランクを計ったのだが、なのはは『S』で俺は『A』だった。

 

僅か9歳でこれならリンディさんでなくとも入局を勧めて来るわな。

 

「えっと……」

 

「嘱託魔導師で良ければ」

 

「え……」

 

ビックリ顔のリンディさん。簡単に話が進むとは思わなかったのだろう。

 

「まだ小学生ですからね。もし本格的に入局するなら高校を卒業してからにしますよ」

 

「え、ええ。それで構わないわ」

 

「なのはは?」

 

「私もアレス君と同じ。嘱託魔導師でお願いします」

 

なのはも俺と同じになったか。

 

「それじゃあ、書類とかお願いね」

 

「あ、俺はリンディさんの下でお願いしますね。それか、リンディさんの目に叶った人物で」

 

「ええ! 分かってるわ!(アレスちゃんみたいな子、そう易々と渡さないんだから。特にレティみたいなのには!)」

 

最後の方は聞こえなかったが、大方ろくでも無い事だろうからスルーすることにした。

 

こうして、俺となのはは管理局と関わる事となる。

 

ちなみに、学業優先だからそんなに出動出来ないかもしれないとの旨は伝えておく。

 

 

 

 

 

一通りの書類を書いてエイミィさんに渡す。

 

ちなみにミッド語は英語と類似してるから俺は大丈夫だった。

 

前世で大抵の言語は覚えてるから。

 

隣ではなのはが頭から煙を出していた。

 

要勉強であるな、うん。

 

 

 

 

 

そして、ユーノとユナとお別れの時。

 

「お世話になりました♪」

 

「ああ、かなりな」

 

ユーノとユナは主に俺の家の風呂で。

 

結構入りに来たんだよね。

 

「ありがとう、アレス」

 

「頑張れよ、色々と」

 

「うん」

 

俺とユーノは握手を交わす。

 

ユーノが大人の階段に差し掛かったらユナに食べられるであろう、性的に。

 

「なのはもありがとう」

 

「にゃはは……そんなに役に立ってないような気がするけど?」

 

苦笑いのなのは。

 

「そんな事は無いと思うけどな……」

 

「アレス君の方が凄かったよ」

 

「俺を引き合いに出すな」

 

「確かに……アレスは……ねぇ」

 

ユナも俺の顔をジロジロと見ていた。

 

「俺はいいんだよ」

 

俺は転送ポートの方に向かって歩く。

 

「エヴァもありがとう」

 

【お気になさらずに。私は大したことしてませんから】

 

「それじゃ、お別れだね」

 

俺達は頷いた。

 

「またな」

 

「バイバイ、2人とも」

 

「ありがとう、アレス、なのは」

 

「また会いましょうね、アレス、なのは」

 

こうして俺達は別れて元の生活に戻っていった。

 

 

 

 

 

はやての誕生日まで、あと僅か。

 

さあ、夜天の魔導書が目醒める。

 

リインフォース、あんたは消滅させないからな。

 

 

 




 
とりあえず、これにて無印編は終了です


アレス君、爆発しなさいw




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第15話 日常生活編①

 




ここらでちょっと一息






 

 

 

 

 

~はやて、アリサ、すずかの魔法訓練~

 

 

 

 

ユーノ達と別れてから3日後。

 

いつも通りの生活を満喫していた。

 

今はなのはと模擬戦を行っていた。

 

ギャラリーははやて、アリサ、すずかの3人。

 

3人には双眼鏡を渡しおいた。

 

地上で俺となのはの戦いを眺めていたのだ。

 

「ディバイン・バスター!!」

 

なのはの砲撃が俺に向かってくる。

 

装甲手楯(パンツァーシルト)

 

俺の前にベルカ式魔法陣が現れる。少し傾斜を付けてなのはの砲撃を逸らすようにする。

 

「くっ!」

 

それでも身体に衝撃が走る。毎回思うがこれは本当に非殺傷設定なのか、疑問は尽きない。

 

「にゃあ! それならディバイン・バスター12連射!!」

 

【イエス、マスター!! ディバイン・バスター12連射!!】

 

連続で桃色の砲撃が繰り出される。毎回思うが、あの砲撃を連射とかオリジナルを超えてるだろ!? それとレイハさんがやたらハイテンションだ。

 

さすがにアレを逸らすのはイヤだから俺はそれを全て避ける。

 

なのはの杖の向きを見てから砲撃の来る方向を予想しているからかわすのは簡単だ。

 

「俺に当てたいならもう少し工夫をすることだな!」

 

俺は避けながらなのはの間合いを詰めて行く。

 

「ひゃ!」

 

なのはの喉元にレーヴァテインを突きつける。

 

「終わりだな?」

 

「ううぅ~……参りました……」

 

【これでマスターの89連敗目が決まりました】

 

レイハさん、傷口に塩を塗り込むような言動を…。

 

こうして俺となのはははやて達の所に降りる。

 

 

 

 

 

「……」

「……」

「……」

 

 

3人は呆然と俺達を見ていた。

 

「どうだった?」

 

「色々と言いたいことはあるけど……」

 

「なのは! アンタ……何よ、あの砲撃は! 固定砲台になってるじゃない!」

 

「にゃ!?」

 

アリサに頬をつねられてるなのは。

 

「あかん……あんなの見てるとなのはちゃんに勝てるか自信が……」

 

はやての顔が少し青くなってた。

 

「アレス君も……。あの砲撃を易々と避けるし……」

 

すずかも苦笑していた。

 

「まあ、俺はちょっと特殊と思わないと。1000年の経験があるし」

 

「そうやね……」

 

「そうだったね……」

 

「なのはの方は……アレだけど」

 

「初めてまだ1ヶ月半位やろ? この先どうなるか……。私はなのはちゃんと戦いとう無いで」

 

「私も。アレはバグとしか言いようが無いよ……」

 

酷い言われようである。確かに1ヶ月半位であの始末だからな。

 

「アレス!」

 

「な、何だよ……」

 

「あの巫山戯た弾幕を易々とかわして! どうなってるのよ!?」

 

「どうなってるって……俺には見えるんだから」

 

「何処ぞのニュータイプみたいに『見える!』って感じかな?」

 

暗い部屋、ベッドの上で1人爪を噛んでろと言うのか。

 

「まあ、アレス君の動体視力は凄いからねぇ」

 

【お兄様の見切りは凄いのですよ? 額に付いた米粒が切れて皮膚は切れない間合いで剣でもかわすのですから】

 

「何処の宮本武蔵よ……」

 

まあ、出来るのだから仕方ない。

 

「だからお兄ちゃんとお父さんもアレス君に当てられないんだ……」

 

なのはの言うとおり、今は恭也さんと士郎さんと稽古してるが未だ当たったことが無いという。

 

どんだけチート仕様だと自分でもツッコミを入れたいねぇ。

 

 

 

 

 

「それで、調子はどうだ?」

 

俺ははやて、アリサ、すずかの3人に訪ねる。

 

言わずとしれたネギま!式魔法の練習の事だ。

 

なのはは後ろで魔力弾を缶に当てる訓練をしていた。ってか、既に連続150回超えてるのだが。

 

そして弾速も速いから『カカカカカカカカカカカカカ』とか言ってるし。

 

缶が粉々になりそうだな。

 

それでも疲れた様子が無いのは……どういう事だか。

 

「う~ん、まだ火は出ないわ」

 

「わたしもや」

 

「わたしも」

 

3人ともまだ火は出ない様だ。

 

あれって結構時間がかかるんだよね。

 

原作の夕映でも相当練習してやっと出したんだし。

 

「まあ、急がずゆっくりとだ」

 

「ダイオラマ魔法球使えば?」

 

そう言って俺の後ろから言い放ったのはなのはだった。

 

「なのは?」

 

「あ……ごめん♪」

 

謝ってるわりにはニヤニヤ笑ってないか?

 

「ちょい待ち」

 

「それは聞き捨てならないわ」

 

「考えてみたら……アレス君の前世はエヴァのお姉さんだから……」

 

黒いオーラを立ち上らせて俺の前に立つはやて、アリサ、すずかの3人。

 

「何で早く気付かなかったのかしら……」

 

「アレ使えば早かった……」

 

「さあ! あるなら早く出して貰うで!!」

 

「すまん、アレはフェイトに貸してる」

 

「なんやとー!?」

 

俺は事情を説明した。

 

 

 

 

 

 

「なるほど、それなら仕方ないわ……」

 

「姉が小さいんじゃ、威厳も何も無いわ……」

 

「と言うことは、今年中に2人とも転校してくるんか?」

 

「ああ。一段落が付いたら俺の家の隣に引っ越してくる予定だ」

 

ちなみに何故か俺の家の隣はここ何年も買い手がついてないと言う。何かあるのだろうか?

 

 

 

「アレス君の隣……?」

「アレスの家の隣……?」

「隣……やて?」

 

 

 

3人の表情が怪訝な感じに変わる。

 

そして3人はなのはを連れて少し離れてひそひそ話を開始する。

 

 

 

 

 

会話の様子(アレスには聞こえてない)

 

「なのはちゃん、フェイトちゃんとアリシアちゃんが抜け駆けせんように見張りをお願いするわ」

 

「にゃっ!?」

 

「無論、アンタも抜け駆けしたら……どうなるか分かってるわよね?」

 

「なのはちゃん、私達、親友だよね?」

 

「わ、分かったの……」

 

 

 

 

 

何となく、あの3人が言う事は予想は出来るが。

 

まあ、大丈夫だろ。

 

そんなこんなでこの日は3人の訓練は続いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

~初出勤~

 

 

 

 

 

学校帰り。

 

なのはと2人で下校途中の事。

 

アリサとすずかは別の用事で別れてる。

 

〈アレス君、なのはちゃん〉

 

突然の声。どうやらリンディさんだ。

 

〈どうかされました?〉

 

〈突然でごめんなさい! 近くの次元世界に犯罪者が逃げ込んだの!〉

 

なるほど、要は捕まえろと言うことか。

 

〈良いですよ。犯人は……〉 

 

〈データを送るわ。近くに転送ゲートを開くからすぐにお願いね!〉

 

「と言うわけだ。行こうか?」

 

「うん」

 

俺達は近くに現れた転送ポートに入った。

 

 

 

 

 

着いたら何やら大勢の人達が。

 

見ると一般局員と思われる人達が5人位。

 

全員がビックリした顔で俺となのはを見る。

 

「君達は……?」

 

「あ、リンディさんの依頼で応援に来ました、藤之宮アレスと言います」

 

「同じく、高町なのはです」

 

全員が驚いた顔をしていた。

 

「リンディ提督から聞いていたが……君達が?」

 

「詳しいことは後で。どんな状況ですか?」

 

「すまない。何とか包囲することは出来たのだが、相手は魔導師ランクAAA級の魔導師で少し手を焼いているのだ」

 

確かにAAA級は一般局員達から見たらかなり手強いだろう。

 

「で、君達のランクは?」

 

「えっと、俺は魔力総量ランクはAでした」

 

全員が『ブッ!!』と噴き出していた。

 

「私は魔力総量ランクはSです」

 

全員が某吉本劇場みたいにすっころんでいた。

 

「おー……」

 

「わ、分かった……とりあえず、君達ならあいつに勝てるだろう……」

 

隊長さんと思われる人が犯人を指差した。

 

確かにあれぐらいなら勝てそうだ。

 

よし、初の実戦だ! 行ってみようか。

 

「なのは、なのはは後ろで援護射撃。大丈夫、俺は当たらないから」

 

「うん、分かった」

 

「すいません、俺となのはの2人で行きますんで」

 

「あ、ああ。分かった。任せよう」

 

「それじゃ、エヴァ?」

 

【了解です! 起動(アンファング)!】

 

俺の足下にベルカ式魔法陣が広がって一気に騎士甲冑を纏う。

 

「レイジングハート!」

 

【セットアップ】

 

なのはも同じようにバリアジャケットを身に纏う。

 

「ベルカ式だと!?」

 

「あの子……凄い魔力量だ!」

 

周りが少し騒がしくなる。

 

「行きます! なのは、頼む!」

 

「了解なの!」

 

俺は一気に飛行魔法で相手の方に向かって飛んで行く。

 

「何だてめぇは! AAAランクの俺に勝てると思ってるのかよ! ヒャッハー!」

 

明らかに雑魚的な台詞を吐くな。でもAAAランクと言えば結構強いんじゃなかったのか?

 

相手が魔法弾を10発近く放ってくるが俺は全て避けて更に間合いを詰める。

 

「げげっ! 速い!?」

 

「遅い!!」

 

俺はレーヴァテインで殴りかかる。

 

「うひょお!?」

 

男はシールドで俺の攻撃を防ぐ。

 

「てめぇ……殴りかかってくるなんて……」

 

「俺は遠距離は苦手でね」

 

そして俺は右に身体をずらす。

 

その直後、桃色の砲撃が男に直撃した。

 

バリアが砕ける音が聞こえてから爆発音が響く。

 

俺はシールドを張って爆発から逃れる。

 

「さすが、超遠距離砲撃でもこの精度か」

 

【相も変わらず凄まじい砲撃ですね】

 

あっさりと勝負が付いて拍子抜けした。

 

その後、ボロボロになった男を担いでからさっきの場所に戻る。

 

 

 

 

 

「ありがとう、助かったよ」

 

「いえ、大したことはしてません」

 

「いや、君達がいなければまだ被害が出ていたかも知れない」

 

「まあ、確かにそうですけど……」

 

「これからも、頼むよ。リンディ提督に報告しておくから」

 

「分かりました」

 

そんな感じで俺となのはの初出勤は終わるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

~看板娘と看板息子?~

 

 

 

 

学校が終わってから帰宅すると玄関にメモが置いてあった。

 

「何々……『翠屋に来てねby母より』か。何だろう?俺の誕生日はとっくに過ぎてるし?」

 

【何でしょうね?】

 

俺とエヴァは首を傾げるしかなかった。

 

 

 

 

 

着替えてから翠屋に向かおうと玄関に出ると丁度なのはも出てきた。出掛けるのであろうか、私服に着替えていた。

 

「なのは?」

 

「アレス君?」

 

「お出かけか?」

 

「うん。メモがあって翠屋に来てって」

 

なのはの言葉を聞いて何だか妙なモノを感じた。

 

「俺の方も同じ様に翠屋に来てくれってメモがあったんだが……」

 

「アレス君も?」

 

「まあ、とりあえず行ってみよう」

 

「そうだね」

 

俺となのはは翠屋に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

扉を開けて中に入ると

 

「いらっしゃ……あら、アレスちゃんになのは」

 

「来た来た」

 

母さんと桃子さん。それに近所のおば……げふんげふん、お姉さん方が集まっていた。

 

「可愛い~」とか「良いわねぇ~」とか「少年……食べたい」とか。

 

最後の方は危険な雰囲気が漂っていたのですが!

 

「何事?」

 

「何も言わずにコレを着なさい」

 

そう言って母さんは箱を渡してきた。

 

何となく、イヤな予感を感じるのだが。

 

「拒否権は?」

 

「あると思う?」

 

「……分かった」

 

そう言うと俺は更衣室に向かっていった。

 

ちなみに今日はなのはが泊まりに来る予定だから拒否すれば母さんから夕飯を食べさせられる事態になるのだ。

 

 

 

 

 

「そう言う事か」

 

俺は箱を開けて納得した。

 

中には執事服が入っていたからだ。

 

着てみると少し大きいがピッタリだった。

 

「母さんの仕業だな」

 

俺の身長が135㎝きっかりで止まると知ってるから用意したのだろう。

 

ちなみに今は130㎝を超えたかどうかといった具合だ。

 

とりあえず、店内に戻るか。

 

 

 

 

 

 

「きゃあ!」

 

「似合ってる!」

 

「藤之宮さん! 1日いくらで貸してくれるの!?」

 

奥様方の黄色い歓声が店内に響く。

 

「かっこいいの……」

 

なのははメイド服を着せられていた。

 

「なのは……なのはも可愛いぞ」

 

 

ボンッ

 

 

なのはの頭から蒸気が出ていた。

 

「こ、これは……良い」

 

見ると鼻にティッシュを詰めていた桃子さんが。

 

……見なかったことにしよう。

 

「で? 説明を求めたいのだが?」

 

俺は『してやったり』と言いたげな母さんの顔を見ながら訪ねた。

 

 

 

 

 

聞けば今日は店員さんが急遽出られなくなったと。

 

それを聞いた母さんが秘密裏に用意していた執事服を着せて俺に手伝いをして貰おうと。

 

ちなみになのはは半分おまけらしい。

 

そしてたまたま近所の奥様方が俺が執事服を着て手伝うと聞いて連絡して呼んだらしい。

 

『可愛い男の子を愛でる会』と言う集まりらしい。

 

とどのつまりは『ショタ』の集まりだろ!

 

「分かったよ」

 

断る理由は無いのでとりあえず今日は翠屋でウエイターとしてお手伝いすることにした。

 

 

 

 

 

終わってみたら過去最高の売り上げを記録したとか。

 

確かに女子高生とか女子大生とかOLみたいな客が多かった。

 

俺の方を見ては顔を赤らめていた。

 

その中に混じって背広を着た男性客も数人いた。

 

目線はなのはの方ばかり追っていたが。

 

どさくさに紛れてロリの方も来ていたのか。

 

この世界の海鳴市はショタが多いのか?

 

何となくやるせない思いをしながらも時は流れていった。

 

 

 

 




 
この世界はショタが多い仕様となっておりますw


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A's編
第16話 ついに目覚めた魔導書


 



いよいよA's編です

原作?

何処かに放り投げてきましたw


 

 

 

 

 

6月3日。

 

とうとうこの日がやってきた。

 

明日ははやての誕生日だ。

 

今夜の0時になったら夜天の書が起動して守護騎士4人が召喚されるのだ。

 

そんな訳で、俺は八神家に泊まる事となった。

 

晩ご飯ははやてのお手製で舌鼓を打つ。

 

9歳でこの腕なら将来が楽しみである。

 

ちなみに魔法の事を知ってからはウチの母さんやすずかの所のノエルさんとファリン嬢がはやての世話をしに来ていた。

 

車椅子の生活で9歳の女の子が1人だなんて物騒だしおかしいだろうに。

 

多分、認識阻害の魔法がかけられていたに違いないだろう。

 

そんな事はどうでも良い。

 

今現在の問題は、はやてがお風呂に入れてくれと言ってるのだ。

 

そりゃあ、足が不自由だから風呂に入るのも一苦労だろう。

 

それは分かる。湯船に入る時は下手したら滑って怪我とかするだろう。

 

問題は、俺と一緒に入って欲しいと、裸で。

 

断ろうとしたが。

 

「私の身体はなのはちゃんやアリサちゃん、すずかちゃんよりも見苦しいんか?」

 

しっかりと聞いてたのね。

 

「……分かったよ」

 

と言う具合に一緒にお風呂に入ることになった。

 

 

 

 

 

風呂に入ってはやての身体を洗ったら言われたよ。

 

「アレス君、あかん……それはあかんよ。毎日一緒に入りとうなるわ」

 

顔を真っ赤にして言われましたよ。

 

その後は一緒に湯船に漬かって軽く暖まりましたよ。

 

ちなみにはやてはこう言いました。

 

「裸で抱き合うって何か恥ずかしいわ」

 

その後、はやての頭を軽く叩いておきました。

 

 

 

 

 

一緒にゲームしたりと時間が過ぎていく。

 

そして、はやての寝室に入ってベッドの上に向き合って座る。

 

時計を見ると時刻は午後11時50分。

 

あと10分で午前0時になる。

 

俺の時と同じなら……夜天の書が起動して守護騎士4人が召喚されるはずだ。

 

原作ははやてのみだったから気絶して大騒ぎになったが。

 

今回は俺が居る上に知ってるから気絶することは無いだろう。

 

「なあ、どんな人が召喚されるんや?」

 

【私も一度しか会ったことはありませんが。確か、女性が3人で男性が1人です】

 

「ほぉー」

 

【名前は『烈火の将シグナム』、『鉄槌の騎士ヴィータ』、『湖の騎士シャマル』、『盾の守護獣ザフィーラ』と私の記録に残ってます】

 

「何かかっこいい名前やね」

 

【確か当時、最強とまで言われた4人のデータを元に作られたとか。少なくとも戦闘面ではかなりの使い手と思います】

 

「戦闘面……ね。私は家族が居ればそれでええんよ」

 

はやては俺の顔をジッと眺めた。

 

「将来の旦那様や♪」

 

「俺より良い男は世の中に沢山居るぞ?」

 

「私はアレス君が良いんよ?」

 

「大きくなったらな。その時まではやてが俺を好きで居てくれたらな」

 

「アレス君は私の事……嫌いか?」

 

「嫌いな訳無いだろ」

 

「分かった。でもなのはちゃんやアリサちゃん、フェイトちゃんにアリシアちゃん、すずかちゃんには負けへんで?」

 

はやては俺の顔を見て微笑んだ。

 

時計を見たら丁度0時を指した。

 

その時、本棚から魔力が溢れ出す。

 

鎖で封印された本が浮かび、脈動する。

 

そして鎖が千切れ飛び、本は開いてページがめくれる。

 

速い速度でめくれるページ。

 

【封印を解除します】

 

夜天の書から声が聞こえる。

 

中は何も書かれていない。

 

そして本はバタンという音を立てて閉じてはやての前に浮かんで来る。

 

黄金に輝く十字の紋章。

 

起動(アンファング)

 

声が響き、はやての胸から青白く輝く玉。

 

はやてのリンカーコアはあんな色なのか。

 

そして魔法陣が現れてはやてのリンカーコアと合体して光り輝く。

 

「くっ!」

 

「まぶしい!」

 

俺とはやては腕で目を覆った。

 

数秒経って俺とはやては前を見た。

 

「っ!」

 

「『闇の書』の起動を確認しました」

 

桃色髪の女性が喋る。

 

「我ら、闇の書の蒐集を行い、主を守る守護騎士にてございます」

 

金髪の女性が喋る。

 

「夜天の主の元に集いし雲」

 

白色髪の男性が喋る。

 

「ヴォルケンリッター、なんなりとご命令を」

 

赤髪の少女が喋る。

 

4人はひざまずいて目を瞑っていた。

 

 

「……」

「……」

 

 

俺ははやてを見た。

 

目を見開いていて視線の先はさっき召喚された4人に向けられていた。

 

 

「こりゃっ」

「……はっ!」

 

 

俺ははやての頭を軽く叩いた。ペチッと言う音が響く。

 

 

「……」

「……」

「……」

「……」

 

 

4人はずっと同じ体勢で動かない。

 

「はやてが命令しないと動かないぞ?」

 

「そ、そやな……えっと、みんな目を開けてくれないかな?」

 

はやてがそう言うと全員が目を開けてはやての方を見た。

 

わずかだが、俺の方も一目見る。

 

「とりあえず、全員こっちに来て自己紹介やな。アレス君、リビングにお願い」

 

「うむ」

 

俺ははやてを車椅子に乗せるとリビングに向けて押して行く。

 

その後ろを4人はついて来る。

 

 

 

 

 

 

リビングに着いてから全員をテーブルに座らせる。

 

「アレス君、何か飲み物をお願い」

 

「ああ。とりあえず……麦茶で良いな?」

 

「そやね」

 

俺は全員分の麦茶を用意して全員の前に置いた。

 

 

 

「……」

「……」

「……」

「……」

 

 

 

全員が怪訝そうな顔で俺を見る。

 

……とよく見たら桃色の髪の女性・シグナムと金髪の女性・シャマルの視線は……何か引っかかるモノを感じた。

 

まさかとは思うが。いらない属性(ショタコン)が付与されてるんじゃないだろうな。

 

「それじゃあ自己紹介や。私の名は『八神はやて』や。この家に住んでる主や」

 

「……私の名はシグナム」

 

桃色髪の女性が喋った。

 

「私はシャマル」

 

金髪の女性が喋った。

 

「私はザフィーラ」

 

青色髪で犬耳を付けた感じの男性が喋った。

 

「あたしはヴィータ」

 

赤髪の少女が喋った。

 

「シグナムにシャマル、ザフィーラにヴィータやな。覚えたで」

 

はやては全員の顔を眺めながら喋った。

 

「俺は藤之宮アレス。はやての友人だ」

 

「え? 恋人違うん?」

 

「まだだろ。今はまだ友人だ」

 

「いけずやなぁ~。でも、まだって言うことは脈ありやな♪」

 

どさくさに紛れて何て事を教えようとしてるんだ、この狸嬢は。

 

「まあ、アレス君の事は置いといて……や。と言っても皆の事は分かってるで。この書を完成させるんやろ?」

 

「はい。それを完成させたら主は強大な力を手に入れることが出来ます」

 

「強大な力……ね。私はそんなのはいらんわ」

 

「なっ!?」

 

はやての言葉にシグナムは驚きの声を上げた。

 

「それに、完成させるには……どうするんや?」

 

「……魔力です。人から魔力を蒐集して666ページになった時に完成します」

 

「あかん! 人様に迷惑かけるなんて……あかん!」

 

「そう……ですか……」

 

うなだれるようにしてるシグナム。

 

他の3人もうなだれるようにしている。

 

「残念だが、はやて。それはある程度蒐集しなきゃダメだ」

 

「え? な、何でや?」

 

【その疑問は私がお答えします】

 

エヴァが喋ると4人は驚いた顔で俺を見つめた。

 

「ああ、俺も魔導師だ。言っておくが、はやての味方と言うのは理解して頂きたい。だから恐い目で睨むんじゃない」

 

ヴィータとザフィーラが目を細めて俺を見つめていた。

 

【初めまして、ヴォルケンリッターの皆様。私は武神の魔導書と呼ばれるデバイスです】

 

「武神の……魔導書……?」

 

「何か……ひっかかるわね……」

 

【どうやら忘れてしまってる様ですわね。お兄様?ブックモードになりますわ】

 

「ああ」

 

そう言って俺の首にかかってるネックレスが本の形になる。

 

「!?」

 

「そ、そんな!?」

 

「な、何で……闇の書が!?」

 

「な、何故だ!? 何故お前がその本を!?」

 

全員が驚いていた。

 

はやての手にはこげ茶色のカバーに装飾は黄金色の本が。

 

俺の手には黒いカバーで装飾は真紅の本が。

 

【私はその闇の書の姉妹機として作られたのです。もっとも、魔法を蒐集するのではなく、武器を蒐集するのですが】

 

「武器を……蒐集……」

 

【そして、そちらにも私と同じ管制人格がいるはずです。ある程度のページを蒐集すれば管制人格が起動するはずです】

 

「と言うことは……その管制人格を起動させなきゃいけないんやな?」

 

【そうです。それが起動しない事にはその本の能力は発揮出来ないし、修復も出来ません】

 

「……修復?」

 

シグナムが怪訝な顔でこちらを見つめてきた。

 

【残念ですが、その書は壊れています】

 

「な、何だと!?」

 

【おかしいと思いませんか? 私のマスターは私と契約しています。見ての通り、五体満足です。ですが、貴方達の主、はやてはどうですか?】

 

「……下半身不随……ですね」

 

シャマルがはやての方を見ながら呟いた。

 

【私の記録では、その書と契約しても別に身体に異常は来していません。それと1つ聞きます。貴方達の前の主はどうなったのですか?】

 

「前の主だと? 決まってる。書を完成……む?」

 

「……おかしいわね……。前の主の記憶が……無い?」

 

「……確かに……おかしい。記憶が……残ってねぇ……」

 

「記憶が……無い?」

 

4人は頭を抱えていた。

 

【それと、その本が起動してからはやてさんの魔力を吸う量が多くなりました。このままでは……年末辺りに下半身麻痺が胸まで来て命を落とす可能性があります】

 

「……!」

 

4人は息を呑んだ。

 

「マジ……で?」

 

【マジです。ですから、魔力蒐集を行う事をオススメします】

 

「そうは言ってもなぁ~。人様に迷惑をかけるのは……」

 

「ならば余所の世界に行って魔法生物から死なない程度に魔力を蒐集するしかあるまい。後は俺から魔力蒐集するか」

 

「前者の案はともかく後者の案は論外で却下や」

 

0.5秒で否決されました。

 

「なら、違う世界に行って魔法生物から死なない様に魔力蒐集と言う事で。皆も良いか?」

 

「うむ……主の為だ……」

 

「そうですね」

 

「……分かった」

 

「従おう」

 

4人は不承不承ながら納得してくれた。

 

「さて、それなら俺も魔力蒐集に協力させて貰うからな」

 

「ええの?」

 

「良いも何も。姉妹機のデバイスのマスターとして、そして大事な友人を助ける為だ」

 

「ありがとう……アレス君」

 

涙を浮かべてるはやて。

 

「さて、と。こうなったらアレをやるか」

 

「え? アレって?」

 

「エヴァ、起動だ。双剣『天照(アマテラス)』と『月見夜(ツクヨミ)』だ」

 

【了解です、お兄様♪】

 

俺は騎士甲冑を身に纏う。

 

ヴォルケンリッター達は驚いて身構えた。

 

「待て待て。俺の足下の魔法陣見てみろ」

 

「……これは」

 

「私達と同じ……ですね」

 

「ベルカ式……」

 

4人は俺の足下に広がる魔法陣を見て驚いていた。

 

手には双剣が握られていた。

 

俺はそれを腰に指してからはやての前に行ってひざまずいた。

 

「え!? アレス君!?」

 

「闇の書……いや、『夜天の魔導書』の主、八神はやて。武神の魔導書の主、藤之宮アレスが剣となり、盾となりて守護することをここに誓おう」

 

【同じく武神の魔導書、エヴァンジェリン。微少な身ですが私も貴女をお守りいたします】

 

「了解……や。よろしくお願いするで? 可愛い騎士様♪」

 

顔を赤らめて俺の顔を見つめるはやて。

 

そして俺は立ち上がってヴォルケンリッター達の前に立った。

 

「……これからもよろしくな?」

 

俺は手を差し伸べた。

 

4人は顔を見合わせてから同じように俺の手の上に手を差し出した。

 

 

 

「ヴォルケンリッター、烈火の将シグナム」

「ヴォルケンリッター、鉄槌の騎士ヴィータ」

「ヴォルケンリッター、湖の騎士シャマル」

「ヴォルケンリッター、盾の守護獣ザフィーラ」

 

 

一呼吸置いてから、言った。

 

 

 

『我らヴォルケンリッター、藤之宮アレスを友として主、八神はやてを守護する事を誓う!』

 

 




 


 
ついに来ました、ヴォルケンリッター!

もし、アレス君が武神の魔導書を持ってなかったらどうなっていたでしょうねぇ…


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第17話 誕生パーティー……?

 
とりあえずは皆に顔見せ




 

 

 

 

 

その後、明日の予定を立ててから俺達は眠りについた。

 

住と食は良いとして衣の方が問題あった。

 

ヴィータははやてのおさがりで何とかなるにしてもシグナム、シャマル、ザフィーラの3人の服は、はやての家には存在しなかった。

 

「私が主なら、全員の衣食住はきちんと面倒見たらなあかん!」

 

と言う訳でデパートに買いに来ました。

 

無論、俺も一緒に来ています。

 

ってか、はやては自分の誕生日の事を忘れてるみたいだな。

 

仕方が無いから俺は二重身(ドッペルゲンガー)で分かれてから分身体をなのは達に向かわせて誕生会の準備を進めるように伝えた。

 

それとフェイト達も一旦こっちに来て貰う為にエヴァも分身体に持たせてから向かわせる。

 

多分、服とか日用品買うのに時間がかかるだろうから帰るのは夕方になるだろう。

 

その頃にはパーティーの材料とか色々買ってはやての家に着いてる頃だろう。

 

ダイオラマ魔法球内でパーティーだからな。

 

さて、来るメンツは俺の両親、高町家、テスタロッサ家、月村家にアリサ、それとユーノとユナ位だな。

 

まあ、分身体にまかせておけば大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

 

シグナム、シャマル、ヴィータの3人ははやてにまかせる事にした。

 

服だけならまだしも、下着までとなったら俺の出番は無い。と言うかそんな出番はいらぬ。

 

そんな訳で俺はザフィーラの服を見立てる事となった。

 

「さて、何か希望はあるか?」

 

「……普段は狼形態だから服はいらぬのだが」

 

「ずっとと言うわけにはいくまい。たまに気分転換でその形態で出掛ける時に同じ服と言うのも味気ないぞ?」

 

「……うむ……」

 

そんなこんなでザフィーラの服を選んでいく。

 

黒、青、紺系統の服を5着選ぶ。

 

ザフィーラは肩幅が広いからやや大きめの服を選ぶ必要がある。

 

そもそも、こんな体格の良い人はなかなか居ないよな。

 

見てると通りがかる人とか驚いた顔してザフィーラを見ていた。

 

もっとも、あの獣耳で驚いてるのかも知れないが。

 

そしてたまに俺とザフィーラの顔を見てから顔を真っ赤にして足早に通る女の人も居た。

 

もしや、妙な想像(BL的なアレ)をしとりゃせんだろうな。

 

俺は心の中で少しため息をつきながらザフィーラの服を選んでいった。

 

 

 

 

 

はやて達と合流したのは良いが。

 

「……また買い込んだな」

 

「えへへ……」

 

照れ臭そうに笑うはやて。

 

シグナム、シャマル、ヴィータの両手に持たれた買い物袋。

 

はやての膝上にも買い物袋。

 

「そっちも結構買ってるじゃねーか」

 

ヴィータがジト目で俺とザフィーラを見ていた。

 

ザフィーラの両手に買い物袋、俺の片手に買い物袋。

 

無論、全部ザフィーラの服だった。

 

「う~ん……全部コインロッカーの中に預けた方がええんやろか?」

 

この後、日用品も買わないといけないのだ。

 

「ってか、帰る時に地獄を見そうなのだが?」

 

「そうよねぇ~。一旦帰るのも面倒やし……」

 

「それなら俺のコレに入れよう」

 

「へ?」

 

はやては呆然とした顔で俺の腰にあるポシェットを見ていた。

 

他の4人は『どう見ても入らんだろ……』的な目で俺を見ていた。

 

「……周りの人は……大丈夫だな」

 

周りを見渡すが誰もこちらの方は見ていない。

 

「これぞ魔法のポシェット」

 

と言って俺は自分の手荷物をスルスルっとポシェットの中に入れた。

 

「は!?」

 

はやてが目を見開いて俺の方を見ていた。

 

 

「何と……!?」

「ど、どうなってんだ?」

「むぅ……」

「あら……コレは凄い……」

 

 

4人は驚いて俺のポシェットを見ていた。

 

「ほれ、次々に入れるぞ」

 

そう言って俺は全員に荷物を次々取ってポシェットの中に納めた。

 

 

 

 

 

 

手ぶらになった俺達はファミレスに入った。

 

無論、禁煙席に向かって俺達は思い思いに席に座る。

 

6人席に着いたのは良いが、俺の右隣にシグナム、左隣にシャマルが座った。

 

対面にははやてで隣にヴィータとザフィーラ。

 

……何か妙な感じがするが……。気のせいだろう。

 

「ほら、先にそっちが頼め」

 

そう言って俺はメニューをはやて達に渡す。

 

「ありがと。う~ん……どれにしようかな……」

 

「……あたしは……これが……」

 

ヴィータが指したのはお子様用のメニューだった。

 

「なら私もこれやな。ヴィータとお揃いや」

 

はやてもヴィータと同じメニューだ。

 

「……」

 

ザフィーラが無言で指差したのはステーキセットだった。

 

はやてやヴィータと同じメニュー指したらどうしようかと思ったが、その様子なら大丈夫だ。

 

「なら次はそっちや」

 

そう言ってはやてがメニューを渡してきた。

 

俺はメニューを開く。

 

シグナムとシャマルも隣から覗き込んでくる。

 

覗き込んでくるのは良いが、俺の肩の部分に柔らかいモノが当たってるのだが!

 

「とりあえず、満腹になりたいならここら辺のメニューで、程々にしたいならここら辺だ」

 

そう言って俺は2人に説明する。

 

 

「ふむふむ……」

「へぇ……」

 

 

ますます俺の肩に当たるのが激しくなってるような気がするのだが。

 

ちらりと2人の顔を見るが全く気にしていない様に見える。

 

前を見ると、自分の胸を見ながらため息をついてるはやての様子が見えたが俺はスルー。

 

 

「私はコレだ」

「私はコレ」

 

 

シグナムが指したのはハンバーグセットでシャマルはスパゲティ・カルボナーラだった。

 

「じゃあ、俺はコレだ」

 

俺が指したのはシグナムと同じハンバーグセットにサラダをつけたヤツだった。

 

「じゃあ、店員さん呼ぶな~」

 

そう言ってはやては店員を呼び出すボタンを押した。

 

その後俺達は何事も無く食事を終えた俺達は日用雑貨を買って。

 

そしてヴィータに『のろいうさぎ』を買ってから家路に着いた。

 

 

 

 

 

家に着いた俺達は荷物整理をしてからリビングで少しくつろいだ。

 

「今日の晩ご飯は何にしようか~?」

 

「今日は作らなくて良いぞ」

 

「へ?」

 

「これから全員で行くところがあるからな」

 

全員が不思議そうな顔で俺の方を見る。

 

「こっちだ」

 

そう言って俺達ははやての部屋の隣の空き部屋に入る。

 

家具も無い部屋の真ん中にポツンと置いてあるのはダイオラマ魔法球。

 

その隣に魔法陣が描かれてる。

 

まあ、俺の分身体が来てたから抜かりは無いだろうとは思うが。

 

「アレス君……これって……」

 

「はやての想像通りのモノだぞ?」

 

「……なるほどなぁ……」

 

ニヤリと口元を釣り上げて微笑むはやて。

 

「これは……?」

 

「ダイオラマ魔法球。魔法の箱庭と言ってな……」

 

俺は説明した。

 

 

 

 

 

 

「ほぅ……」

 

「スゲーな……」

 

「ベルカ時代でもこんなのは無かったわ……」

 

「と言うわけだ、俺とはやてが入ったら同じようにそこの魔法陣の上に立ってくれ。そうしたら中に入れる」

 

4人は頷いた。

 

その前に、変なヤツが来ないように結界を張っておいて……と。

 

それと空間を操るヤツが来ても良いように少し空間をいじって……と。

 

「それじゃ、中に入るか」

 

俺達はダイオラマ魔法球の中に入った。

 

 

 

 

 

中に入るとはやてとヴォルケンリッターの4人は驚いていた。

 

豪華な城に周りは自然に囲まれた環境。

 

ちなみにオプションの砂漠とか極寒の雪山とかは繋げていないから行くことは出来ない。

 

手すりも何もない高所の所を500m歩けば城に到達する。

 

さて、俺の分身体が全員をあの城の中に招待してるはずなのだが。

 

「さあ、行こうぜ」

 

 

 

 

 

城の大広間の扉前に着いた。

 

「なあ、何で私らを……」

 

「入れば分かるさ」

 

そう言って扉を開けて中に入った。

 

鳴り響くクラッカー。

 

『お誕生日おめでとう!!!』

 

中に入るとなのは達が居た。

 

「へ……?」

 

呆然とするはやて。

 

「ほら、今日ははやての誕生日だろ?」

 

「……あ」

 

「ほら、行こうぜ」

 

「ありがとな……アレス君……」

 

 

 

 

 

 

一通りヴォルケンリッター達の紹介も終えて。

 

全員が思い思いの場所で会話をしていた。

 

まずはシグナム。

 

高町一家の所に居ました。

 

やはり剣士と言う所に惹かれたのか、士郎さんと恭也さん、美由希さんの所で会話をしていた。

 

時々俺の方を見るのは……何故だ?

 

ヴィータは黙々と料理を食べている。

 

隣でアリシアも同じように料理を食べている。

 

時々、アリシアがヴィータに料理をあげたりしている。

 

悪くない雰囲気のようだ。

 

ザフィーラはアルフ、リニスさんと一緒に居る。

 

ふと視線を変えて一角を見ると。

 

母さんと桃子さん、プレシアさんが居た。

 

会話が弾んでいるのか、3人とも微笑んでいた。

 

だから何故俺の方を見るのか……。

 

「アレス君」

 

俺を呼ぶのはなのは、フェイト、はやて、アリサ、すずかの5人だった。

 

「と言う訳で。アレス君には洗いざらい吐いて貰うことにしたで」

 

「何がと言う訳でだ。俺は何も悪いことはしとらん」

 

「ダメだよ? アレス君の秘密は私達が知る権利があるから」

 

すずかはサラッととんでもないことを言ってるように思うのだが。

 

「秘密も何も、これ以上は何も無いのだが?」

 

「12人まで分身出来るの聞いてなかったけど?」

 

なのはの台詞で少し背筋が寒くなった。

 

「何が?」

 

「フェイトちゃんから聞いたの。アレス君は最大12人まで分身出来るって」

 

「フェイト?」

 

「ごめん……私も命は惜しい……」

 

どんな事言われたんだ、フェイト……。

 

「12人……」

そう言ってアリサはなのは、フェイト、アリシア、すずか、はやてを見る。

 

「まだ半分ね」

 

「何が!?」

 

「何がじゃないわよ。アンタの事だからまだ増えるんでしょ?」

 

「言ってる意味が分からんのだが……」

 

「お嫁さん候補だよ?」

 

すずかが底冷えする様な声で言う。

 

「いや、増やしても日本は一夫一婦制じゃないか」

 

「法律は破るためにあるんだよ?」

 

なのはの台詞はおかしかった。

 

「おかしいから! その論理はおかしいから!」

 

「ええツッコミやなぁ」

 

「大丈夫だよ。私とアリシアは妾でも良いから」

 

誰だ、フェイトにこんな事を吹き込んだのは……。

 

「二号さんかぁ……。まあ、アレス君と一緒に過ごせるならええかな……」

 

「私もお姉ちゃんは恭也さんと結婚するから大丈夫かな……」

 

「う~私は正妻が良いなぁ……」

 

はやて、すずかは妾でも構わなくてなのはは正妻か。

 

「……」

 

俺は無言でアリサを見た。

 

「あたしも正妻が良いけど。でも、アレスとつき合いが一番長いのはなのはなのよね……」

 

アリサはブツブツ呟いていた。

 

「良いわ。正妻はなのはに譲る。あたしも妾で良いわ」

 

ってか、何でこんな話になったんだ?

 

「……アリサは確か一人娘かと思ったのだが?」

 

「パパとママには言っておいたわ。『アレスに初めて破られた』と」

 

「ぶ―――――――――――――――――――っ!!!」

 

俺は盛大に噴き出した。

 

 

「わわっ」

「ひゃっ」

 

 

「アリサ、お前は一体どんな説明したんだ!?」

 

「どんな説明も何も……将来の旦那様に決まってるじゃない」

 

サラリと旦那様発言かよ。俺はフラグを立てたつもりは無いのだが。

 

「まあ、色々ツッコミたい事はあるが、会社はどうするんだよ」

 

「その点なら大丈夫よ」

 

「ほぅ?」

 

「あたしの従兄弟に継がせるわ。同い年だしね」

 

アリサに従兄弟が居るとは初めて知った。原作でもそんな描写は無かったし。

 

「ふーん。どんなヤツだ?」

 

何となく、面白そうなので聞いてみることにした。

 

「平賀。平賀才人って言うのよ」

 

「……」

 

ちょっと待て。

 

もう、何処からツッコミを入れて良いのか分からなくなってきたぞ。

 

これはアレか? 将来は空中に浮いた鏡に入って異世界に召喚されてピンク髪のツンデレ女の子に駄犬扱いされるのか?

 

「これがとんでもないコンジョー無しでね。駄犬も良いところなの」

 

……アリサと某ピンク髪の少女が重なって見える。

 

中の人が同じだからって良いのだろうか。

 

ってか、そんなコンジョー無しなヤツに会社継がして良いのか?

 

まあ、アリサの家庭事情だから口出しはしないが。

 

「なんや、『ゼロの使い魔』の主人公と同じ名前やな」

 

「そうだね……。将来ホントにハルケギニアに召喚されたりして」

 

はやてとすずかが呟いていた。

 

どうやらゼロの使い魔は存在するみたいだ。

 

「あ、そう言えばあの小説の主人公と同姓同名だったわね。けど、あっちの方がまだマシよ」

 

アリサが口をとがらせていた。

 

「そ、そうなのか……?」

 

「そうよ! 全く、あいつときたらね!」

 

そう言ってアリサの愚痴が始まったのであった。

 

 

 

 

 

「少し、良いか?」

 

俺の所に来たのはシグナムだった。

 

「どうした?」

 

「主はやての為に手伝ってくれると言ったよな? だが、我々はアレスちゃんの腕がどの程度なのか分からない」

 

ん?

 

今、このピンク髪はサラリと俺を『ちゃん』付けで呼んだ様な気がしたのだが。

 

まあ、ツッコミを入れるのは止めておこう。

 

「ああ、そうだな。紹介も兼ねて模擬戦でも行うか?」

 

「それはありがたい提案なのだが、まだ我々は主から騎士甲冑を承ってないのだ」

 

そうか、ヴォルケンリッターのあの騎士甲冑デザインを考えたのははやてだったよな。

 

「なるほど。それなら……手伝いする人があと2人いるからその2人の紹介も兼ねる事にしようか」

 

「すまない」

 

「良いって事よ」

 

そう言って俺はなのはとフェイトの所に行って説明することにした。

 

 

 

 

 

 

と言う訳で始まった模擬戦。

 

なのはとフェイトの2人組と俺1人の模擬戦だ。

 

「さて、頼むぞ? エヴァ」

 

【了解です、お兄様】

 

そう言って騎士甲冑を身に纏う。

 

手に持たれたのは杖・レーヴァテインだ。

 

「フェイトちゃん、アレス君と戦ったことは?」

 

「あるよ。何回か、模擬戦をやったことがある」

 

「勝ったことは?」

 

「ダメ。リニスとアルフと組んで3対1で戦っても勝てなかった」

 

「やっぱり……」

 

「なのはも?」

 

「うん。私もユーノ君とユナちゃんと組んでも勝てなかったの」

 

2人の会話が耳に入ってくる。

 

下の方からは……。

 

「いけー! アレスを叩きのめしちゃえー!!」

 

とアリサのヤジが飛んでいた。

 

そんなに俺が負ける姿を拝みたいのか。

 

ひょっとして、俺がいたぶられる姿を見て快感を得たいのか。

 

そうか、アリサはSだったのか。

 

「だから、全力でいかないとアレス君に勝てないの!」

 

そう言ってなのはの魔力弾が30個一斉に襲いかかってきた!

 

 

 

 

 

15分後。

 

「きゅ~」

 

「もうダメ~」

 

なのはとフェイトは気絶していた。

 

「どうだ? こんなもんだが、手伝うことは出来そうか?」

 

 

 

「……」

「……」

「……」

「……」

 

 

 

 

ヴォルケンリッターの4人は呆然と俺の方を見ていた。

 

「……シグナム?」

 

「あ、ああ! すまない。大丈夫だ、アレスちゃんのその腕なら充分過ぎる」

 

「う、うん! 大丈夫よ!」

 

「すっげーな……さすがのあたしでもあの砲撃魔とはあんまりやりたくないぜ」

 

「うむ……」

 

ヴォルケンリッターの4人の評判は上々だった。

 

ちなみに台詞順番はシグナム、シャマル、ヴィータ、ザフィーラの順だ。

 

「あ~少し良いかい?」

 

そう言って来るのは士郎さんだった。

 

「どうしたのですか?」

 

「恭也と美由希も手伝いたいと言ってるのだが……」

 

なるほど。

 

2人は既に気で空を飛べる様になったし、飛び道具も持ってる。

 

接近戦も結構出来る。これならローテーション組んでも良いし、少々強い所に行っても大丈夫だろう。

 

「大丈夫ですよ?」

 

「それで、アレス君と模擬戦がやりたいと言ってるのだが……」

 

「え?」

 

「いや、ウチでやってるのは剣術のみの鍛錬だよね? 戦いの模擬戦はやってないよね?」

 

確かにこういった模擬戦は恭也さんと美由希さんとはやってない。

 

「それは……全く構いませんが?」

 

こうして俺は連続で模擬戦を行う事になった。

 

 

 

 

 

 

「……アレ?」

 

気が付いたら目の前にはかなりの人数が居た。

 

その後、アリサが『どれくらいの人数ならアレスを沈められるのか』と言った事が発端になって。

 

そこへエヴァが【全員でも大丈夫ですよ】と言ったからさあ大変。

 

あれよあれよと参加する人が増えて。

 

今に至った。

 

俺の前に居るのは、なのは、フェイト、ユーノ、ユナ、アルフ、リニスさん、恭也さん、美由希さん。

 

8対1ッスか!?

 

流石にレーヴァテインだとキツイ……かな?

 

「あ~……」

 

俺は手を挙げた。

 

「拒否は認めないよ?」

 

「いや、武器の変更を求める」

 

「それくらいなら構わないよ」

 

「ありがたい。エヴァ、『天照(アマテラス)』と『月夜見(ツクヨミ)』を頼む」

 

【了解です、お兄様♪】

 

そう言って俺の両手に片刃の双剣が現れる。

 

「悪いな、流石にこの人数になったらコレでないとキツイ」

 

俺はそう言って構えた。

 

そして、模擬戦が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

-はやて視点-

 

さすがのアレス君でもキツイんちゃうかな?

 

8対1やろ?

 

普通なら袋叩きや。

 

そう思っている時期がありました。

 

「何でや……」

 

私の目に映るのは8人からの攻撃を綺麗にかわし、そして防ぐアレス君の姿が見えました。

 

そして、フェイトちゃんや恭也さん、美由希さんからの剣戟を防ぎ、かわす。

 

なのはちゃんの砲撃、魔力弾をかわす。

 

ユーノ君、ユナちゃん、アルフさんのバインドをかわす。

 

リニスさんも指示を出しつつ魔力弾を発射してるけどことごとくかわして、時に剣で切り裂いている。

 

あかん……アレはもうバグの領域や。

 

確か、前世はバグキャラのジャックを沈めていたとか。

 

バグじゃなきゃチートかな?

 

 

 

「……」

「……」

 

 

アリサちゃんとすずかちゃんを見ると呆然と様子を眺めていた。

 

 

「……」

「……」

「……」

「……」

 

 

ヴォルケンリッターの4人を見ても同じ様子で眺めていた。

 

「……シグナム?」

 

「……素晴らしい」

 

「シグナム?」

 

「あ! す、すみません、主はやて」

 

「なあ、シグナム達はアレス君に勝てる?」

 

「……正直、勝てる自信がありません」

 

「そっか……やっぱりアレス君は相当強いんやな?」

 

「はい。アレスちゃんのあの二刀流は天性と相当の鍛錬を上乗せしたまさに『剣神』と呼んでもおかしくない腕前です」

 

……シグナムが何かサラッとアレス君の事をちゃん付けしとるのが気になるんやけど!

 

「ヴィータはどうや?」

 

「あたしもシグナムと同意見だ。あいつの動きは……ホントに9歳児の動きか? あたしには相当の年月を重ねた老練の戦士の様にも見えるぜ」

 

やっぱり。

 

アレス君のあの両腕の動き。独立して綺麗に動いてる。

 

ってちょい待ち。関節の動きがおかしいわ。

 

曲がってはいけない方向に曲がってる。

 

そして、背後から魔力弾が来ても見向きもせずにかわしたり魔法の盾で防いでる。

 

まるで、背中にも目があるように見えるわ。

 

「シャマルはどうや?」

 

「私は後方支援ですから。アレスちゃんに適いっこありません」

 

シャマルもちゃん付けか。

 

「なるほど。で、ザフィーラは?」

 

「……正直、厳しいと言うのが現実です」

 

「そっか~アレス君はそんなに強いのか~」

 

「はい。先程の杖を使うのならば我ら4人がかりでも何とかなると思いますが、あの双剣ならば我ら4人がかりでも歯が立たないかと」

 

シグナムの言うとおり、アレス君のあの剣技は……素人の私から見ても凄いとしか言いようが無い。

 

なのはちゃんのお兄さんやお姉さんも双剣……じゃなくて小太刀二刀で戦ってるけど。

 

あ、2人の小太刀が弾かれた。

 

……その後、2人が気絶したみたいやな。

 

いつの間に一撃入れたんやろか。私の目には見えなかったわ。

 

はぁ~……仮に魔法が使えたとしてもアレス君には一生勝てへんかも。

 

 

 

-はやて視点・終了-

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

手足が動かない!?

 

見れば魔力の鎖が俺の四肢に絡みついていた。

 

「やっと、捕まえた……」

 

「これなら、さすがのアレス君でもそう簡単には!」

 

よく見るとユーノ、ユナ、アルフ、リニスさんの4人共同のバインドだった!

 

「これならアレス君を沈める事が出来るの!」

 

「今回は勝たせて貰うよ!」

 

上空にはなのはとフェイトの2人。

 

2人のデバイスに魔力光が集まってくる。

 

まさか……『スターライト・ブレイカー』と『プラズマ・ザンバー・ブレイカー』か!?

 

いかに俺でも原作より3倍以上強化されたスターライト・ブレイカーとプラズマザンバーブレイカーの同時攻撃は防げない!

 

【お兄様!】

 

「く、凶悪なバインドだな!」

 

【お兄様でもあの直撃を喰らっては……】

 

「さすがに撃沈だ。だから、咸卦法を使う」

 

身体が出来上がって無いから長時間は使いたくはないが。

 

【それなら大丈夫ですね】

 

「さて、早くしないと超巨大な砲撃が来るぞ。っと、手は塞がってるから……体内で合成だな」

 

右手に気、左手に魔力を込めて合成した方がイメージしやすいが、慣れてきたら別に体内で合成も出来る。

 

「受けてみて! これが私の『全力全壊』!! スターライト・ブレイカー!!!」

 

「行くよ! プラズマ・ザンバー・ブレイカー!!!」

 

桃色と金色の砲撃が俺の方に向かって飛んでくる。

 

もはや回避は不可能。

 

「くっ! 気と魔力の合一(シュンタクシス・アンティケイメノイン)!」

 

その瞬間、四肢に絡まっていた鎖が砕け散る。

 

「エヴァ、シールドを!」

 

【了解です! 装甲手楯(パンツァーシルト)!】

 

闇の盾(ダークネス・シールド)!!」

 

俺の前に展開されるベルカ式魔法陣の盾と漆黒の盾が現れる。

 

その瞬間、身体に強烈な衝撃が襲いかかってきた。

 

「ぐぅ!!!」

 

【うぅ!】

 

長い砲撃が続く。

 

【ああ、ダメです! もう持ちません!】

 

エヴァの言葉通り、ベルカ式の盾にヒビが入り、粉々に砕け散った。

 

そして、俺が作った盾に直撃する。

 

「うぁ! これだけの砲撃を喰らったのは久しぶりだ!」

 

俺の盾にもヒビが入ってきた。

 

咸卦法で強化したにもかかわらず、俺の盾を破るのか…!

 

なのはとフェイトの強烈かつ凶悪な砲撃に俺は舌を巻くしかなかった。

 

「だ、ダメか! 俺の盾でももたねぇ!」

 

精神甲冑(パンツァーガイスト)!!!】

 

エヴァが全身を纏うタイプの装身型バリアを展開する。

 

後は、俺の騎士甲冑の強度に期待するしかない。

 

両手の籠手に気を纏わせて強度を上げる。

 

その刹那、俺の盾も砕け散って全身に衝撃が襲いかかって来た。

 

「ぐぅおぉぉぉぉ!? ホントにコレが非殺傷設定か!?」

 

両腕を顔の前に上げてガード体勢で砲撃を防ぐ。

 

そして、30秒くらい経ってから砲撃が止んだ。

 

「これ、普通のヤツならとっくに撃沈だよな?」

 

【ええ、お兄様だからこそ耐えられたかと。あと、私でも何とか耐えられるけど……】

 

周りからは「さすがにコレを喰らって耐えたら……」とか「アレを耐えられたらもう勝ち目無いよ」とか聞こえる。

 

そして俺は言った。

 

「ならばもう勝ち目は無いと言うことだな?」

 

「っ!!!」

 

全員が息を呑んだ。

 

下の方からは「何であの巫山戯た砲撃を耐えられるのよー!!」とアリサの野次が聞こえたが。

 

「悪いな、さすがにアレは耐えられそうになかったから咸卦法を使わせて貰ったぞ」

 

「そ……そんな……」

 

「ま、全員良かったぞ? 俺に咸卦法を使わせるまで追い込んだんだからな」

 

俺は双剣を腰に差して無手になる。

 

ちょっとタカミチの技を借りるとしようか。

 

「さあ、多分、大丈夫だろうけど、全員耐えろよ?」

 

下の方から「あかん! みんな逃げて~!」とか「アレが来るよ~!」とはやてとすずかが叫んでいた。

 

どうやら2人は俺がこれから使う技が分かったみたいだ。

 

「とりあえず……全員に一撃プレゼントだ! 『豪殺居合い拳』!!!」

 

左右の手から放たれる拳圧が全員に襲いかかる。

 

轟音が辺りに響き渡る。

 

 

「うぁ!」

「うそっ!?」

「そ、そんな!?」

「ぐっ!」

「ダメ!」

「にゃあ!?」

 

 

全員シールドで防いだが、なのは以外シールドにヒビが入っていたのを見逃すはずも無かった。

 

「もう一丁!」

 

連続で放たれる居合い拳。

 

ガラスが砕ける様な音が周囲に響いてなのは以外全員吹っ飛ばされ、なおかつ気絶していた。

 

さすがなのはのシールドはそう簡単に破れそうにない。

 

なのはの前に八角形のシールドが現れていたから。

 

どう見てもATフィールドにしか見えないが。

 

「うぅ~……」

 

「あの盾は半端無い堅さだな……」

 

【そうですねぇ~】

 

「……なら、斬るか」

 

【分かりました。カートリッジロードですね?】

 

「ああ」

 

俺は双剣を手に取る。

 

「エヴァ、カートリッジロード!!」

 

【了解! 起爆(エクスプロズィオーン)!!!】

 

双剣から1本ずつ薬莢が排出される。

 

「そんな……!」

 

「いくぞ、なのは! その盾、斬り裂いて見せよう!! 神鳴流奥義・二刀連撃斬岩剣!! 」

 

その瞬間、なのはの盾は四分割に切り裂かれて砕け散った。

 

そして、なのはの首筋に剣を当てて寸止めする。

 

「……参りました……なの」

 

 

 

 

 

全員を一通り治療したあとシグナム達に総評を聞いてみた。

 

「合格だ。むしろ我々がお願いしたい位だ」

 

「そりゃあ良かった」

 

「しっかし、あの巫山戯た砲撃を耐えるのか~」

 

ヴィータが目を丸くしていた。

 

「うむ。いかに我々とて、あの砲撃を耐える自信は無い。ザフィーラは?」

 

「……状況次第だな。それでも防げる率は二割を下回るだろう……」

 

「一番防御が高いザフィーラでそれなら私は秒殺ですね」

 

シャマルが苦笑いしていた。

 

ってか、ザフィーラ……アレを何とか防げる方が凄いと思うのですが。

 

「アレスー!」

 

遠くからすっ飛んでくるのはアリサだった。

 

後ろからすずかも来る。

 

「どうした?」

 

「どうしたもこうしたも……あ、ああ、アンタ! あんな波動砲みたいなの喰らって大丈夫なの!?」

 

「まあ、咸卦法使ったし」

 

「……なるほどね。アレ使ったから何とか防げたと?」

 

「ぶっちゃけ言うとその通り」

 

「うぅ~ん……アレス君に勝とう思ったらアレを超える砲撃が必要なんか~」

 

顎に手を当てて考え込むはやて。

 

「アレを超える砲撃って……」

 

「人の身で出せるのかしら?」

 

アリサとすずかも同じ様に考え込んでいた。

 

そんなに俺が負ける姿を拝みたいんかい。

 

「さて、風呂に入ってさっぱりするかな」

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、アレス」

 

「どうした? ユーノ?」

 

「僕達、何でこんな所に居るの?」

 

「……気にするな」

 

「気にするよ!」

 

俺とユーノは大浴場の入り口で佇んでいた。

 

ユーノの声が浴場内に木霊する。

 

「ほらほら、ユーノ♪」

 

ユナがユーノの手を引っ張って行った。

 

「うあぁぁぁぁぁ……」

 

とりあえず、俺は胸の前で十字を切っておいた。

 

「南無三……」

 

「ほら、アレス君も行くよ」

 

「えへへ、背中流してね♪」

 

俺はなのはとアリシアに2人に手を握られて浴場に入っていく。

 

どうしてこうなったのかな。

 

考えるまでもないが。

 

なのは、アリシア、フェイト、はやて、アリサ、すずかの6人に一緒にお風呂に入るように命じられ。

 

そこへ母さんが桃子さんとプレシア女史を口車に乗せてから3人で俺に入るように命じて来て。

 

シグナムとシャマルははやての口車に乗せられて俺と一緒に入るように懇願してきた。

 

このままだと『淫魔人』から『淫魔王』の称号に昇格しそうだったからユーノを連行して来たのだ。

 

旅は道連れと言うヤツだ。

 

ちなみに男性陣に救援を求めようとしたが、父さんは母さんに睨まれて目を逸らし。

 

士郎さんと恭也さんは桃子さんに睨まれて目を逸らし。

 

ザフィーラはシグナムとシャマルに睨まれて目を逸らしていた。

 

何かね、君達は全員尻に敷かれてるのかね?

 

パワーバランスは明らかに女性陣の方に傾いていた。

 

全く、こんな事ばかりしてたら読者から『アレス、モゲろ』とか『爆発しろ』とか言われるじゃないか。

 

そう思いつつも俺は例によって女性陣の背中を流す事となった。

 

 

 

 

 

「多すぎるんだが」

 

身体を洗う依頼を受けたのは。

 

母さん、桃子さん、プレシア女史。

 

なのは、アリシア、フェイト、はやて、アリサ、すずか。

 

おまけにシグナムとシャマル。

 

多すぎるわ! そんなに洗ってたら逆上せて倒れるわ!

 

「流石に多すぎる。1……2……3……11人か。二重身(ドッペルゲンガー)

 

俺は11人に分裂してからそれぞれの所に行った。

 

「おわっ!アレス君が増えとる!」

 

「実際に見ると……何というか」

 

「……」

 

「……」

 

シグナムとシャマルは呆然と俺達を見ている。

 

「……おかしいだろ、あいつ。ホントに人間か?」

 

ヴィータがリニスさんに身体を洗われつつ呟いていた。

 

「一応、人間ですよ?」

 

リニスさん、一応じゃなくてれっきとした人間です。魂は違いますが。

 

 

 

 

「ん~」

 

全員の身体を洗い終えて俺が身体を洗っていると。

 

「……どうした?」

 

見るとすずかが俺の横で立っていた。

 

「確かに……違うなぁ」

 

左からははやての声が。

 

……なんだろう。もの凄く、イヤな予感を感じる。

 

「……何の用だ?ってか、何処を見てるんだよ!」

 

すずかとはやての視線は……俺の股間、つまりは男性専用アームドデバイス(仮称)を見ていた。

 

「いやね? よく漫画とかで男の子の……ソレって見ると可愛いらしく描かれてるから……」

 

「実際はどんなのかなぁと」

 

お前ら、どんだけマセてるんだ!

 

「ユーノ君の方が漫画のアレに似とったなぁ」

 

「そうだね。アレス君のは……亀の頭? そんな感じ」

 

どうやって説明しろと。ってか説明出来ねぇ!!!

 

そしてユーノ。ご愁傷様と言えば良いのか。

 

「ふっふぅん~♪アレスのは……何か……違う。ユーノと形が違う」

 

アリサの声が聞こえてきた。

 

横を見るとユーノは壁際に追い込まれてなのは、アリシア、フェイトにじっくり観察されていた。

 

隣ではユナが解説(?)らしき事をしてるようにも見えるが。

 

見なかったことにしておこう。

 

〈アレス、助けて……〉

 

〈すまん、俺も似たような状況になりつつあるんだ……〉

 

〈そんな……〉

 

〈骨は拾ってやるぞ〉

 

〈うわぁぁぁぁぁん!!!〉

 

念話でユーノの断末魔を聞いた後。

 

周りには6人の少女達が集まっていた。

 

そして、視線は俺の股間の男性専用アームドデバイスだった。

 

これってセクハラで訴えて良いですか?

 

「ねえ、アレスお兄ちゃん」

 

アリシアが屈託のない笑顔で聞いてきた。

 

周りの5人を見ると瞳を輝かせている。

 

「うん?」

 

「アレスお兄ちゃんとユーノ君の……どっちが正しいの?」

 

正直に言うと俺の方が正しいのだが。

 

「俺の方だな……」

 

「そうなんだ~。で、コレって何の為に付いてるの? あたしやフェイト、周りのみんなにも付いてないし~」

 

 

 

 

……!!!

 

 

 

 

ついに来てしまったこの質問!

 

正直に答える……訳にはいかないだろ!

 

横目で大人組を見ると。

 

アルフはニヤニヤしながら様子をうかがってる。

 

お前は後で模擬戦(と言う名を借りた私刑)だ。

 

シグナム、シャマル、ヴィータは何事も無かったかのように湯船につかってる……が、何か、耳がダンボの様に大きくなってる様に見えるのは気のせいか?

 

桃子さん、プレシア女史、リニスさんは『あらあら、微笑ましい光景ですね』と言いたいような微笑みで見てる。

 

保護者なら止めてください!

 

母さんは『あらあら、罪作りよね? アレスちゃん』と言いたげなにこやかな笑みで見ていた。

 

母さんが来るとロクでも無いことになるのは間違いないからあえて無視することにした。

 

ユーノは『お婿に行けなくなったちゃった』とか言って湯船につかっていた。

 

大丈夫だ、ユナがきちんと引き取ってくれるから。

 

周りの援軍は全く期待出来ないと言う事は分かった。

 

こうなったら!

 

「あ! あんな所にスキマ妖怪が!」

 

「どこや! どこどこ!」

 

(ゆかり)!?」

 

はやてとすずかがエラい勢いで食い付いてきた。

 

「へ?」

 

「スキマ妖怪?」

 

なのはとアリサは不思議そうな顔で俺が指差した所を見る。

 

「今だ!」

 

俺はジャンプしてから逃れようとしたら。

 

「ダメだよ?」

 

背中から抱きつくのはフェイト嬢だった。

 

おおぅ! 微妙に柔らかい感触が!

 

そうか、膨らみはじめてるのか!

 

「お兄ちゃん? コレの説明を求めてるんだよ?」

 

アリシア! 俺の男性専用アームドデバイス兼ユニゾンデバイス(仮称)を握るんじゃありません!

 

そんなことしたら某悪魔将軍の硬度10・ダイヤモンドアーマーみたいな堅さになるじゃないか!

 

これだとラチがあかん!

 

〈プレシアさん、救援を求む!〉

 

〈あら、ソレの説明なら貴方が適任でしょう?〉

 

〈確かにそうだが。まだ、早いだろう?〉

 

〈教えても良いわよ。何事も早い方が良いわ〉

 

〈良い訳あるか。教えたらイヤな予感がするんだ〉

 

〈大丈夫よ。2人とも月のアレはまだだから〉

 

〈1年間、俺との会話が一切無くても良いなら〉

 

〈すぐに助けに行くわ!!〉

 

全く、この人は何を考えてるのか。

 

いつぞやアリシアに説教を喰らってから頭のネジが2、3本は抜けてしまったのかも知れない。

 

そのあと、プレシア女史と母さん、桃子さんが来てから事態は何とか収拾を迎えた。

 

「お兄ちゃん、いつか教えてねぇ!」

 

アリシアの台詞に俺は苦笑するしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなでこの魔法球の中で3日過ごした。

 

外ではまだ3時間しか経っていない。

 

そして俺達は別れを告げて八神家を後にしたのだった。

 

 




 
段々となのは達は思春期を迎えてきてますw


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第18話 魔力を蒐集しよう

 
とりあえずは魔力蒐集しないと話になりません


 

 

 

 

 

 

と言う訳で俺達はとある世界にやって来た。

 

ちなみにこの世界のデータはエヴァの中に残っていたので全員のデバイスにソレを転送しておいた。

 

メンツはまずは下見と不測の事態を防ぐために戦える人全員だ。

 

つまり俺、なのは、フェイト、ヴォルケンリッター、ユーノ、ユナ、アルフ、恭也さんに美由希さん。

 

プレシアさんとリニスさんはアルハザードにいる。

 

これだけの手練れが居れば大抵のヤツに負けることはないと思う。

 

どんな世界なのかはエヴァが教えてくれなかったのでまだ分からない。

 

エヴァ曰く、「お兄様好みの世界ですわ」と嬉しそうに言っていた。

 

着いた場所は牧草みたいな草が生えた丘みたいな場所。

 

周りに居るのは草食恐竜みたいな動物……ってちょっと待て。

 

俺は牧草らしい草が生い茂ったところでモシャモシャと草を食べてる動物を見て唖然とした。

 

〈なあ、エヴァ?〉

 

〈どうされました?〉

 

〈俺の記憶が間違ってなければ……コイツ……アプトノスじゃねぇか?〉

 

〈さすがお兄様、きちんと覚えておられますか〉

 

〈ひょっとして……この世界って……〉

 

〈お兄様の予想通り、『モンスターハンター』の世界ですわよ?〉

 

〈おー……〉

 

何とも言えない気分になった。

 

リアルモンハン生活を送ることになるとは。

 

ちなみに前世でも、前世の前世でもモンハンシリーズのお世話になってる。

 

2Gとか3とか。

 

以降も出ていたがここでは割愛する。

 

「どうだ? こいつは」

 

モシャモシャと草を食べてるアプトノスを眺めつつ俺は聞いてみた。

 

「ん~……大した魔力じゃねぇな」

 

とヴィータが言う。

 

「そうだな。これでは1ページにもならないな」

 

シグナムの言葉になるほど、と返答する。

 

やはり最低でもクック先生並みのヤツが良いみたいだ。

 

上手い具合に見つかれば……と思ったら空を飛ぶ物体が。

 

「アレは?」

 

「……イケるな。よし、アレにしよう」

 

俺達は空を飛ぶ物体に目を付けた。

 

鳥の様な感じの竜種、鳥竜種と言う分類に入るモンスター、『イャンクック』2匹。

 

俺達はそれの後をつけていった。

 

 

 

 

 

草原みたいな開けた土地に着陸したイャンクック2匹。

 

見ると蒼色と桃色のコンビだ。

 

亜種と普通種のセットだ。

 

「なんか、はやてちゃんやすずかちゃんがやってるゲームで見たことあるの」

 

なるほど、モンスターハンターは存在するのか。

 

「そうか、今度はやてとすずかに聞いてみろ。多分、教えてくれるぞ」

 

「うん」

 

「さて、とりあえず俺が行ってみる。皆はあいつの行動パターンを記憶してくれ」

 

全員が頷くと俺は蒼色のイャンクックに向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いは15分位で終わらせた。

 

結果?

 

もちろん、頭を殴って気絶させましたが?

 

イャンクックとイャンクック亜種は気絶して倒れていた。

 

ちなみに動きはゲームと大差ない行動パターンでした。

 

まあ、実際の動きとゲームを一緒にしてはアレだが、大体似ていた。

 

「しっかし、あっさりと倒したな~」

 

ヴィータが少し驚いた顔で俺の方を見る。

 

「うむ。だが、アレスちゃんの動きは全て先読みしていた。まるで……知っているかのように」

 

顎に手を当てて考え込むように言うシグナム。ちゃん付けが雰囲気をぶち壊しているが。

 

「ああ、答えは簡単。この世界の奴らはな、俺達のとあるゲームに出てくるモンスターと一緒だから」

 

「何?」

 

「とりあえず、シグナム達ははやてに聞いてみろ。『イャンクック』と言う名のモンスターを知っておられますか?と」

 

「う、うむ」

 

「恭也さんは忍さん、なのはとフェイト達はすずか、美由希さんは……同級生の男子に聞けば良いんじゃね?」

 

「なんかあたしの扱いがテキトーに聞こえるけど?」

 

「気のせいじゃね?」

 

「ぶー」

 

頬を膨らませてる美由希さん。

 

シャマルが2頭のイャンクックから魔力を蒐集する。

 

「……4ページですね」

 

「おお、意外と魔力持ってるな」

 

「こんな調子なら早くいけるかもな」

 

「と言うわけで、次回は皆に戦ってもらおうかな」

 

 

 

「ゑ?」

「ゑ?」

「ゑ?」

「ゑ?」

「ゑ?」

「ゑ?」

「ゑ?」

 

 

 

全員が驚いた顔で俺の方を見る。

 

「いやいやいや、ヴォルケンリッター……守護騎士と呼ばれる腕前ならばいけると思うのだが?」

 

 

 

「ぬ……」

「く……」

「それは……」

「そう言われたら、やるしかあるまい」

「そう……だな。主の為、ここで引く訳にはいかぬ」

 

 

 

シグナム達のやる気が上がった。

 

「御神の技が通じないとか言わないですよね?」

 

「う……」

 

「そこまで言われてはとーさんの顔に泥を塗ってしまう。美由希、逝くぞ」

 

「ええ!? 恭ちゃん字が違うよ!」

 

その時、上に現れる物体。

 

「……ほぅ?」

 

俺の目には見えた。

 

正統派の竜の形をした……竜種。飛竜種のリオレウスとリオレイア。

 

クック先生の次にいきなりキツい様に思えるかも知れないが、このメンツなら大丈夫だろう。

 

「あ、次の目標はアレね」

 

俺は空を飛ぶリオレウスとリオレイアを指差した。

 

大きさは10m位の西洋風の竜だ。

 

リオレウスは赤い風貌でリオレイアは緑色の風貌だ。

 

「ねえ、私にはアレは竜に見えるんだけど?」

 

引きつった顔で俺を見るなのは。

 

なのはの火力なら充分戦えると思うのだが。

 

「ん~? 竜だねぇ」

 

「サラリと言ってるけど……」

 

「アレス……本来なら僕達も逃げたいんだけど」

 

ユーノが冷や汗を流しながら言う。

 

ってか、ユナが何事も無かったようにユーノの腕に抱きついてるのだが。

 

「大丈夫、大丈夫。俺の前世ので付けられた二つ名にこんな名があったんだぜ?」

 

「アレス君の前世……あ……」

 

なのはが思い出した様に呟いた。

 

「……どんな二つ名だよ?」

 

ヴィータが半目で訪ねてきた。

 

「『竜殺し(ドラゴン・スレイヤー)』だよ」

 

 

 

 

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

 

 

 

 

全員は沈黙していた。

 

【懐かしいですわね~。たまにお兄様、凶暴化した火竜とか素手で殴り倒していましたし】

 

「……1つ聞いて良いか?」

 

「どうした?」

 

「オメー、ホントに人間か?」

 

「失敬だな、ヴィータ。刺されたら血も出るし、大怪我負ったら死ぬぞ?」

 

「いや、オメーが怪我を負うシーンとか想像出来ない。何かあたしのアイゼンの攻撃喰らっても無傷そうだし」

 

流石にギガントとか喰らったらヤバいと思うんだが。

 

姉のアテナなら大丈夫だと思う。なんせ、耐久力とか俺の3倍はあるんじゃね?と思う時があるし。

 

もっとも、前世は『吸血鬼の真祖(ハイディライト・ウォーカー)』で身体能力が上がってたから出来た芸当だし。

 

普通の人間ベースの今ならそれなりに苦戦はすると思う。多分。

 

「いやいや、さすがにそんなハンマーで頭殴られたら血だって出るぞ?」

 

「ホントかぁ? シグナムもレヴァンテインで斬っても無傷そうなのが想像出来るよな?」

 

 

「……ヴィータ。私にアレスちゃんを斬れ……と言うのか?」

 

 

目が据わってるピンク髪の侍が居た。

 

「……悪かった」

 

ヴィータは頬に冷や汗を垂らしながらシグナムから視線を逸らす。

 

「大丈夫よ、シグナム。アレスちゃんが重傷を負っても私が即座に治癒しますから。命に代えても!」

 

……この2人は1度、フォーマットした方が良いんじゃね?と思う俺が居た。

 

「……とにかく。どういう連携で行く?」

 

ザフィーラが話を変えてくれた。ナイス!

 

「そうだな、シグナム達は空中戦と地上戦、どっちが得意だ?」

 

「む……? そうだな……どちらも大丈夫だが?」

 

「恭也さん達は?」

 

「俺と美由希は空中はまだ不慣れだな。出来れば地上戦だ」

 

「なるほど……なるほど……」

 

俺は頭で考える。

 

リオレウスは空の王者と呼ばれるくらい空中戦が好きなヤツだ。

 

まあ、『ワールドツアー』を開催する位だしな。

 

それに対してリオレイアは陸の王者と呼ばれる位、地上で戦う事が多い。

 

となると。

 

レウスはヴォルケンリッター4人にフェイト、アルフ。

 

レイアは恭也さん、美由希さん、なのは、ユーノ、ユナ。

 

俺は両方の後援支援と指示。

 

こんなもんだろ。

 

「それじゃあ、2組に分かれましょう。まず……」

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間後。

 

そこそこ苦労はしたが、無事にレウス・レイアの2頭を倒した。

 

2頭の傷は俺が癒しておいたから大丈夫だろう。

 

「ぜぇ……ぜぇ……」

 

「はぁ……はぁ……」

 

俺となのは、恭也さんと美由希さんを除く人達は全員息切れしていた。

 

なんで俺と高町兄妹は大丈夫か……だって?

 

念法を習得してチャクラを回しているから体力は尽きることが無いのだ。

 

チート街道まっしぐらだね!

 

「大丈夫か?」

 

「……何で……4人は……そんなに平気そうなの?」

 

フェイトがやや虚ろな目になって聞いてきた。

 

「うむ、簡単に説明するとだな。身体にあるチャクラを回して体力を無尽蔵状態にしてるのだ」

 

「……それって……かなりインチキみたいな」

 

「だろうな。何時間でも戦えるのだから相手にとっては悪夢としか言えないと思う」

 

「……あたしは絶対にアレスやなのはと戦わないぞ!」

 

座り込んでるヴィータが呟いていた。

 

「24時間戦えるのか……。それは素晴らしいな!」

 

息切れをしながらも目を輝かせているシグナムが居た。戦闘狂(バトルジャンキー)め。

 

「しかし、我らもソレが出来ればかなり楽になると思うのだが」

 

「アレスちゃん、私達はそれが出来るのかしら?」

 

ザフィーラとシャマルが聞いてくる。

 

「う~ん?」

 

ヴォルケンリッターの4人はプログラム生命体だ。

 

気と言う概念は無いと思う。

 

魔力のみだから……主のはやてからの魔力供給が無限になれば同じ様に戦えるだろう。

 

「残念だが、シグナム達はこの技法は使えないだろう」

 

「そうか……」

 

「だが、手はある。はやての協力を得られればシグナム達も俺や恭也さん達の様にいけると思う」

 

「本当か!?」

 

「ああ。今ははやての治療が優先だからちょいとキツイと思うが、いずれは出来るだろう」

 

「そうか。ならば早いところ魔力を蒐集しようか」

 

そんなこんなで俺達は魔力の蒐集を再開するのであった。

 

 

 

 

 

ちなみに、この日に蒐集した魔力は45ページであった。

 

 




 


 
モンハンやってなきゃ分からないネタですよね…



※リオレウスのワールドツアー

空中に飛んだまま降りてこない様子

コレに煮え湯を飲まされたプレーヤーは多い事でしょうw


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第19話 この先生は……様子を見るべきか? うん、様子を見ようか

 
転生者の事は忘れてませんよ?


 

 

 

 

 

初の蒐集から1週間流れました。

 

日によってページ数は違ったが、何とか80ページまで集まりました。

 

確か、400ページで管制人格を起動出来るから。

 

この調子で行けば1ヶ月半でイケると思う。

 

まあ、時に5ページしか集まらなかった日もあるからちょっと延びる可能性もあるが、それでも12月末まではかからないだろう。

 

ちなみにメンツは5人1組くらいに分かれて蒐集している。

 

日によってまちまちだが、そう大した事態は起きていないから大丈夫だろう。

 

それに、あの世界はまだ管理局も発見していないみたいだし。

 

さて、話は変わるが。

 

今日は学校に新任教師がやって来るのだ。

 

まあ、単に1人産休で休むから臨時と言う形で来ると言う話らしいが。

 

別に何にも怪しい所は無い。

 

前世の前世でもよくあった話だしな。

 

情報は隠していても漏洩は免れないと言うことで。

 

なのはと来てみたら教室はその新任教師の話で盛り上がっていた。

 

聞くと、男性教師で若いみたいだ。

 

容姿はかなりかっこいいとの事。

 

まあ、俺にとってはどうでも良い話でもある。

 

すると今日は俺達より早めに来ていたアリサとすずかがやって来た。

 

 

「おはよう、なのは」

「おはよー、なのはちゃん」

「おはよ、アリサちゃん、すずかちゃん」

 

 

なのはに挨拶したあと、机に突っ伏していた俺の方を向いた。

 

 

「アレス君、おはよう」

 

「アレス、おはよう」

 

「ああ、おはよう。アリサ、すずか」

 

「ねえ、アンタも今日来る先生の話聞いた?」

 

「ん? ああ。他の人の会話を聞いて一応は」

 

「ふぅん」

 

「どうした? 気になるのか?」

 

「べ、別に」

 

アリサが何を言いたいのかよく分からないが。

 

「何でも、凄くかっこいい男の人らしいよ?」

 

すずかがアリサの隣に来てそう言った。

 

「へぇ。そう言えば、女子の様子が少し嬉しそうと言うか、ウキウキしてると言った雰囲気だな」

 

笑顔で会話する女子達を眺める。

 

男子は何か別にどうでも良さそうな雰囲気だった。

 

「私はアレス君一筋だからね♪」

 

朝から暴走するなのは。

 

周りの男子は目を光らせて俺の方を見る。

 

だが、俺にはそんなもん効かぬ!

 

「あ、ずるい。私もアレス君の方が良いのに」

 

すずかも頭が暴走してる様だ。

 

俺はアリサの顔を見た。

 

「べ、別にアンタの事なんか好きじゃないんだからね? アンタの事……一生をかけていじめてやるんだから!」

 

真っ赤な顔と言ってる事がおかしいのだが、アリサ。

 

「……そうか」

 

俺はそう返すしかなかった。

 

ちなみに周りの男子から「呪呪呪呪呪呪呪……」とか「嫉妬で人を殺せるなら……」とか「爆発しろ……」とか聞こえてきたが。

 

残念だったな、俺に呪殺は効かぬ。

 

精神、呪殺、破魔は無効だからな。

 

やるなら万能属性が有効だぞ? メギ○ラオンとか至○の魔弾とかな。

 

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

 

チャイムが鳴り響いたのでなのは達は席に戻った。

 

 

 

 

 

 

全校集会が開かれて、今日から来る新任教師の紹介が始まるのだが。

 

俺は校長の挨拶の後に現れた新任教師の顔を見て愕然とするしかなかった。

 

〈なあ、エヴァ?〉

 

〈お兄様の言いたいことは分かります……〉

 

〈そうか。俺の目がおかしくなった訳じゃないんだな?〉

 

〈大丈夫です。私の目にも多分、お兄様と同じ容姿で映ってますから〉

 

〈そうか。アレ……どう思う?〉

 

〈十中八九、転生者かと〉

 

〈だよなぁ……〉

 

壇上の上でやたらと爽やかそうな雰囲気を振りまいて話すイケメン教師を見ながら俺はため息をついた。

 

その容姿はFFⅦのセフィロスが背広を着た様にしか見えなかったから。

 

名前は『伊集院(いじゅういん) (れん)』とあからさまな名前。

 

もうね、容姿が日本人離れして日本名とか……。

 

『おまいはアホか』と言いたいね。

 

もっとも、俺の名前も日本名じゃないから人のことは全く言えないのだが。

 

〈ねぇ……アレス君〉

 

突然のなのはからの念話。

 

〈どうした?〉

 

〈あの先生…私の方をチラチラ見てるの〉

 

…確定だな。

 

〈気のせいじゃなしに?〉

 

〈ううん。あと、アリサちゃんとすずかちゃんも見てるの〉

 

やはり、なのはも人外魔境の高町家の娘なんだな。

 

普通の人では分からないと思うのだが。

 

〈そうか。まあ、何かあったら俺が守ってやるからな〉

 

〈うん♪〉

 

そのあと、イケメン新任教師の様子を眺めながら全校集会は終わるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

何事も無く授業は進んで昼になった。

 

俺達のクラスはあの教育実習生の時間はまだ無く、顔合わせはしていない。

 

どんな能力持ちなのか分からないが、昼間の学校で何か起こす程の馬鹿でもあるまい。

 

俺はいつもの様になのは達と一緒に弁当を食べる。

 

「なぁんか、あの先生……きな臭いのよねぇ」

 

アリサはサンドイッチを囓りながら呟いた。

 

「うん。何でなのか分からないけど、私も何かイヤな雰囲気と言うか、予感と言うか、そう言うのを感じたの」

 

すずかもミートボールを口に頬張りつつも呟く。

 

ふむ、乙女の勘と言うのかな? アリサとすずかの2人は良い印象を持ってはいないようだ。

 

「う~、私も……今朝の朝礼の時にあの先生から何か視線を感じたの」

 

そう言ってなのはは唐揚げを口に入れる。

 

「ますますきな臭いわね……いつぞやあたし達をさらった誘拐犯みたいなヤツじゃないの?」

 

俺の頭に浮かぶのはアリサ、すずか、はやての3人をさらったあの事件。

 

確か、あの時はアリサが強姦されかけたのを間一髪で俺が救ったのだ。

 

……あの時にアリサ、すずかのフラグが立ったのかもしれないな。

 

「まあまあ、それだけであの誘拐犯みたいなヤツと決めつけるのは早計かも知れないぞ?」

 

俺はおかずのミニハンバーグを一口囓る。

 

ぬぅ、冷凍じゃなくてエヴァお手製のハンバーグだったか。

 

エヴァの手は小さいからミニハンバーグとか楽に作るんだよな。

 

「何よ。あの先生の肩を持つの?」

 

「いや、持つ気は一切無いが」

 

「だよね。もし、私達を裏切るとか言ったら……」

 

「言ったら?」

 

俺は生唾をゴクリを飲む。

 

「アレス君に心と身体を陵辱されたと周りの人に言うから」

 

そんなのが先生の耳に入ったらどんな事になるか!

 

想像するだけで恐ろしい。

 

「HAHAHA、裏切る訳無いじゃないか。なのはもアリサもすずかも大事な友人だからな」

 

 

 

「友人……?」

「ゆう……じん……?」

「友人……ですって?」

 

 

 

なのは達の表情が少しずつ変わっていった。

 

片目を吊り上げ、眉間に僅かな皺が寄ってる。

 

「……待て。友人じゃないのか?」

 

「あははは、何を言ってるのかな? アレス君?」

 

とアリサ。口調が若干変わってるんだが?

 

「もう私達はアレス君と将来を誓い合ったんだよ?」

 

とすずか。背後に見える闇のオーラは俺の目の錯覚だよな?

 

「アレス君、少し頭を冷やそうか……?」

 

待て、なのは。その台詞は10年後のハズだろう。今言っても良い物じゃないぞ?

 

「ゑ……? 友人がダメなら……恋人……なのか?」

 

 

「当然!」

「当然よ!」

「当然に決まってるじゃない!」

 

 

3人とも即答だった。

 

まだ、告白とかもしてないんだが、良いのか?

 

俺は心の中で首を傾げていた。

 

「やあ」

 

そこに現れたのは今朝赴任したばかりの伊集院先生だった。

 

さっきから俺達の方に向かって歩いてくる存在が居るな……と思っていたが。

 

爽やかそうな笑みで俺達の方を見ている。

 

なんだろう、胡散臭そうな雰囲気も見えるのだが。

 

俺の気のせいと思いたい。

 

「あ、伊集院先生」

 

「おや? 僕の名前を覚えていてくれたのかな?」

 

「ええ、一応は」

 

なのは達の対応は実によそよそしく見える。

 

「ところで……何か用ですか?」

 

「いや、屋上に出たらたまたま君達の姿を見てね」

 

「そうですか」

 

「……」

 

伊集院先生は俺の方を少し見てからなのは達の方を見る。

 

「ふむ。この子は……?」

 

「なのはの幼馴染みの藤之宮アレス君ですけど?」

 

「なるほど……なるほど……」

 

先生は俺の顔を見てから全身をジロジロと眺める。

 

「アレス君が何か?」

 

「いや、特には。悪かったね、食事の邪魔をして」

 

そう言うと伊集院先生は立ち去っていった。

 

「変なの」

 

なのはは小さく呟いた。

 

多分、俺の存在を確認しに来たのだろう。

 

どんな能力持ちなのか。

 

ひょっとしたら、今までのヤツより狡猾かもしれない。

 

注意した方が良いかも知れない。

 

「外見は良いかも知れないけど、ちょっと変わった先生ね」

 

「そうだね」

 

アリサとすずかの評価は高くなさそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

昼休みが終わって午後の授業が始まる。

 

午後一番の授業は英語だった。

 

ちなみにこの学園では小学生時に既に英語を組み込んでいるのだ。

 

と言ってもまだ基礎の段階なのだが。

 

もっとも、前世で英語を喋ることが出来る様になった俺には簡単の一言に尽きるのだが。

 

クラス全員、俺が英語を喋る事が出来るのは知っている。

 

アリサもハーフなのか、喋る事が出来る。

 

すずかは喋る事は出来ないが、聞き取ることは出来る。

 

なのはは以前、ミッドの書類を見て頭から煙を出していたから英語は壊滅状態だ。

 

チャイムが鳴って5分経ってから先生が登場した。

 

あれ? 一緒に伊集院先生が来るって事は英語担当なのか?

 

どんなもんかお手並み拝見しようかな。

 

『やあ、初めまして。新任の伊集院先生だよ』

 

コレは……。

 

いきなり日本語でない言葉で喋る伊集院先生。

 

「アレス……」

 

後ろからアリサが喋りかけてくる。

 

そうそう、俺の右隣はなのは、左隣がすずか、後ろがアリサなのだ。

 

「どうした?」

 

「あの先生、何語を喋ってるの? 英語……じゃないわよね?」

 

さすがのアリサも戸惑いを見せている。

 

担当の先生が止めないところを見ると、他のクラスでも同じ事をやっているのだろうか?

 

それにしてはちょっと意地悪なパフォーマンスではある。

 

ちょっと強めのアクセントのあの言語。

 

普通なら誰も分からないだろうな。

 

『ふむ、やはりこのクラスでも分からないかな?』

 

ゆっくりと喋って分かりやすくしてるようだが、英語とはちょっと違うからなぁ。

 

もっとも、俺は何を喋ってるのかは分かる。

 

〈ちょっと意地悪なパフォーマンスですわね〉

 

〈ああ、かなりな。英語もろくに喋ることが出来ないのに、アレは無いだろう〉

 

エヴァもツッコミを入れてくる。

 

右隣を見るとなのはは頭から煙を出していた。

 

左隣を見ると、「???」と困惑した表情で伊集院先生の言葉を聞いているすずか。

 

『ははは、ちょっと意地悪だったかな?』

 

爽やかな笑みを浮かべる伊集院先生。

 

仕方ない、俺がちょっとやってやるか。

 

『いえ、分かりますよ? 伊集院先生?』

 

俺は伊集院先生に問いかける。

 

周りのクラスメイトは驚いた表情で俺の方を見る。

 

『ほぅ? 君は分かるのかね?』

 

『はい。しかし、ちょっと意地悪じゃないですかね? 英語の時間なのに、【ドイツ語】で喋るなんて』

 

そう、伊集院先生が最初に喋ったのはドイツ語なのだ。

 

英語より強めのアクセントだから初めて聞く人は困惑するだろう。

 

アリサとすずかも英語は耳にする機会はあってもドイツ語はあまり無いんだろう。

 

「アレス……あんた、分かるの?」

 

「ああ。先生が喋ってたのはドイツ語だよ」

 

「ドイツ語ぉ!? そりゃダメだ……。滅多に聞かないから忘れてたわ」

 

「うう……アレス君凄いの……」

 

机に突っ伏しているなのは。

 

「ははは、これは参った。まさか、ドイツ語を喋る事が出来る子がいるなんて」

 

今度は日本語で喋る伊集院先生。

 

周りからは『すげー』とか『どうなってんだ?』とか色々と騒がしくなっていた。

 

「改めて紹介するよ。英語担当の伊集院蓮。短い期間になるがよろしくお願いするよ」

 

そう言って一礼する伊集院先生。

 

「伊集院先生は英語、ドイツ語の他にイタリア語とフランス語も喋れるんですよ?」

 

後ろから担当の先生が話しかける。

 

ほぅ、イタリアとフランスか。

 

ちょっと試してみるか。

 

(伊)『先生、本当にイタリア語を話せるんですか?』

 

俺はイタリア語で話しかける。

 

周りがまたざわめいた。

 

(伊)『君は凄いな。そんな流暢にイタリア語が喋れるなんて』

 

伊集院先生もイタリア語で返してきた。

 

(仏)『いえいえ、努力すればどうとでもなりますよ』

 

俺がフランス語で返すとまた驚いた顔になる伊集院先生。

 

(仏)『本当かね? しかもフランス語まで喋るとは、驚くしかないよ』

 

先生は同じようにフランス語で返してくる。

 

どうやら本当にどちらも喋ることが出来るみたいだ。

 

周りは呆然とした顔をしていた。

 

後ろの担当の先生を見ても同じようにビックリした表情を浮かべていた。

 

〈まあ、1000年あれば喋れる様になりますもんね〉

 

〈まあな。普通の人だと相当苦労しないといけないが〉

 

〈ですわねぇ~〉

 

ちなみにエヴァも大半の言語を喋ることが出来る。

 

要は時間とやる気さえあれば大抵の事は何とかなるものである。

 

「失礼しました。どうやら本当でしたね」

 

「いやいや、こちらも驚いたよ……。まさか、イタリア語とフランス語を喋れるなんてね」

 

そんなこんなで時間は流れていった。

 

 

 

 

 

(英)『アンタ、実は他の言葉も喋れるんじゃないの?』

 

後ろからアリサが問い訪ねてくる。

 

しかも、英語だ。

 

(英)『さあ? 日本語、英語、ドイツ語、フランス語で打ち止めかもよ?』

 

(英)『嘘仰い! アンタの事だから中国語とかロシア語辺り喋ってもおかしくないわ!』

 

さすがアリサ、俺の事が分かってるみたいだ。

 

ぶっちゃけ言うと両方とも喋る事は可能である。

 

(英)『さあ? それはアリサの想像に任せるよ』

 

(英)『吐け! あたしに隠し事なんて許されると思ってるの!?』

 

段々ヒートアップするアリサ。今は授業中なんだが。

 

「おやおや、バニングスさん。どうしたのかな?」

 

アリサの隣に立つのは伊集院先生。

 

「いえ、な、何でもありません」

 

「レディがそんなに熱くなるものではありませんよ?」

 

そう言ってアリサの頭を撫でる伊集院先生。

 

……?

 

何だ? 伊集院先生の口元が……僅かに歪んだ?

 

周りの女子を見ると……。

 

何だ? 羨ましそうな表情で見ている?

 

何故だ……? たかが頭を撫でるだけなのに。

 

……。

 

もしや、二次小説によくある『ナデポ』的な事を狙ってるんじゃあるまいな?

 

妙に気になる。

 

帰ってから久しぶりに天界に聞いてみるか。

 

「……あの? 先生?」

 

「ん? どうしたのかね?」

 

「あんまり……頭を撫でられるのは……好きじゃないです」

 

「……そうか、それは失礼した」

 

一瞬、驚愕の表情を見せたがまたいつも通り爽やかそうな顔に戻る。

 

先生は自分の右手を眺めてからまた授業に戻った。

 

 

 

 

 

「レディの頭を気安く撫でるなんて!」

 

放課後になって一緒に帰ってるとアリサが憤慨した雰囲気でそんなことを喋っていた。

 

よほど伊集院先生に撫でられたのが気に入らなかったみたいだ。

 

「頭を撫でられた位で……」

 

「アンタには分からないでしょうね! 大人の男に撫でられただなんて……気持ち悪い!」

 

もしかして、いつぞやの誘拐事件のせいで大人の男に嫌悪感を抱くようになったのかもな。

 

「アリサちゃんの気持ち……分かるよ。私も……大人の男の人に近寄られるのは……ちょっと……」

 

とすずかも同じように嫌そうな表情を浮かべていた。

 

「アリサちゃん……すずかちゃん……」

 

「だが、俺もいずれはあんな風に大人になるんだぞ?」

 

その言葉を聞いてアリサとすずかの2人は俺の顔をジッと見つめた。

 

2人の瞳に俺の顔が映っていた。

 

「……ど、どうした?」

 

無言で俺の顔を見つめる2人。

 

「アレス君は……大丈夫だよ」

 

「そうそう。あたしの勘が告げるのよ。アンタはずっとそのままだって」

 

何それ恐い。

 

六感超えて七感の域に達してないか?

 

そのうち小宇宙(コスモ)とか感じる様になったら俺は困る。

 

「アリサちゃんとすずかちゃんも? 実は、私もアレス君ってずっとこのままじゃないかな~と思ってたりして」

 

 

 

 

ブルートゥス、お前もか。

 

 

 

なのはの台詞で俺は何とも言えない気分になった。

 

「え? それって大きくならないって事?」

 

 

 

「うん」

「そうだよ」

「そうに決まってるじゃない」

 

 

 

……。

 

即答だった。

 

「まあ、とりあえずはやての家に行くぞ」

 

釈然としなかったが、はやての家に向けて俺達は歩くのであった。

 

 




 
しかし、銀髪オッドアイのイケメンとか誰が考えたんだろうか?


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第20話 片角のマオウ

 
またしてもモンハンネタですw




 

 

 

 

 

八神家に到着すると出てきたのは主のはやて。

 

今日のお留守番はザフィーラだけとの事。

 

リビングに通されてからはやてはお茶の準備でキッチンに向かっていく。

 

ザフィーラは家事スキルは皆無なので仕方ない。

 

狼形態のザフィーラはなのは達の様子を観察していた。

 

 

 

 

 

 

俺ははやてと一緒にキッチンに居た。

 

はやてはアレス君はお客さんなんだから待ってええんよ~と言ったが、俺はそれを却下してはやての車椅子を押す係を担当した。

 

お茶の準備を終えてリビングに向かう。

 

今日は翠屋特製のチーズケーキや~とはやての声が聞こえる。

 

実に楽しみだ。

 

桃子さんのあのチーズケーキは真似するがあの味は出せないのだ。

 

エヴァと2人で首を傾げてケーキを作ってるのは秘密なのだが。

 

……。

 

そうだ、最近あの『スキル』を使ってなかったな。

 

はやての気分転換になるだろうし、俺の勘を取り戻すのも良い。

 

俺は心の中でしめしめ……と思っていた。

 

 

 

 

 

リビングに到着してからはやてがお茶を入れる準備をしようとしたところで。

 

「はやて」

 

「ん?」

 

「しっかりお盆持ってろよ」

 

「へ?」

 

俺は魔力を纏った糸をはやての全身に纏わせてから。

 

左手の指をクイッと動かす。

 

「ひゃわぁ!?」

 

いきなり立ち上がるはやて。

 

その様子をなのは達は目を見開いていた。

 

ザフィーラも口を開けて呆然と眺めてる。

 

「な、なななな何事やぁ!? あ、アレス君! 私に何かしたんか!?」

 

【お兄様ったら、いきなりソレはかなり心臓に悪いですよ?】

 

顔を真っ赤にしてるはやて。いきなりだったから驚いてるのか?

 

「ん~? エヴァの二つ名を思い出してみたら?」

 

「エヴァちゃんの? 確か……『闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)』やろ?」

 

「うむ?」

 

「『不死の魔法使い(マガ・ノスフェラトゥ)』やろ?」

 

「それから?」

 

「『悪しき音信(あしきおとずれ)』やろ?」

 

「まだまだ」

 

「『禍音の使徒(かいんのしと)』やろ?」

 

「もうちょい」

 

「『童姿の闇の魔王(わらべすがたのやみのまおう)』やろ……それから……あっ」

 

はやては一息ついてからゆっくりと言った。

 

「『人形使い(ドール・マスター)』……」

 

【ん~、私はそこまで凄いことはしてないのですけど?】

 

まあ、漫画のエヴァがやったからなぁ~。

 

その言葉を聞いてなのは達の息を呑む声が聞こえた。

 

「ご名答。エヴァの姉なんだから出来てもおかしくないだろ?」

 

「失念しとったわ……確かに出来てもおかしくないわ」

 

そう言ってはやてはお茶を入れて全員の前に置く。

 

言っても俺が操作してるのだが。

 

「感覚が無いから違和感あるけど、立てるのは良いもんや」

 

部屋の中をうろうろと歩かせる。

 

「自分通りに動かへんのがもどかしいけど、まあ、しゃあないか」

 

「それは勘弁してくれ。四六時中はやてに付きっきりになってしまう」

 

「……なあ? 私の足が動くようになるまでずっと一緒に住まへんか? 一緒に添い寝からお風呂の世話まで♪」

 

この狸娘は何を仰るのか。

 

軽い目眩を覚えつつ俺は返答する。

 

「何を戯けた事を。シグナムやシャマルの役目を奪うわけにいかんだろ」

 

「シグナムとシャマルなら歓喜すると思うけどなぁ~?」

 

確かに。

 

その光景が目に浮かぶ様だ。

 

「ヴィータとザフィーラは?」

 

「ザフィーラはどうや? アレス君と一緒に住むのは反対か?」

 

「……主が望むなら反対はしません」

 

デスよねー。

 

予想通りの返答ありがとう、ザフィーラ。

 

仮にヴィータが反対してもはやて、シグナム、シャマルの3人にO☆HA☆NA☆SHIされて終わりだろう。

 

ふと、なのは達を見ると。

 

「うぉっ!」

 

背後に浮かぶのは般若の面。

 

炎が燃えさかってその中に般若が見えていた。

 

 

 

「いくらはやてちゃんでもそれは許されないの……」

「そうよ。アレスはあたしがいじめて遊ぶ玩具なんだから……」

「…………」

 

 

 

すずかは紅茶カップを持ってるが、手がカタカタと震えていた。

 

表情はニッコリ微笑んでるから余計に恐い。

 

「い、いや、ジョークやで? ただ、たまにこうやってくれるのもありがたいかな~と……」

 

苦笑いのはやて。

 

このままいくとはやての頭が冷やされるかも知れないから話を変えるか。

 

〈アレス! 聞こえるか!?〉

 

突然聞こえるヴィータの声。

 

はて、ヴィータは魔力蒐集に向かっていたはずだが。

 

〈どうした? 突然?〉

 

〈すまねぇ、休みの所。実は、厄介なヤツが現れてな〉

 

どうやら応援を求めてる様だ。

 

珍しいな、確か……今日のメンツはシグナム、ヴィータ、フェイト、シャマル、美由希さん。

 

やや前衛寄りだが、悪くないパーティーだと思う。

 

これだけのメンツが苦戦するのはあまり想像出来ないのだが。

 

〈どんなヤツだ?〉

 

〈ああ、砂漠で地面を泳ぐ魚みたいなヤツをブッ倒してから蒐集してたらな〉

 

〈うむ。それから?〉

 

なるほど。砂を泳ぐのは『ドスガレオス』だな。

 

まあ……鬱陶しいが、そんなに強いヤツじゃないな。

 

ヴィータなら音爆弾的な魔法持ってたし。

 

〈遠くの方にかなりでかい魔力反応があったからあたし達は向かって行ったんだ。そしたら、砂の中から角が生えたドラゴンみたいなヤツが現れて……〉

 

砂から出るドラゴンみたいなヤツって言うのは……『モノブロス』か『ディアブロス』のどちらかだろう。

 

どちらも砂の中に潜ったり、ちょっと鬱陶しいがそれでも5人の敵では無いと思うんだが。

 

〈確かに厄介そうではあるが。それでもヴィータ達ならそう簡単に負けないと思うぞ?〉

 

〈いや、それがもの凄いタフなんだよ。シグナムが連続で斬ってあたしが巨人族の一撃(ギガントシュラーク)で殴ってもなかなか弱くならねぇんだよ!〉

 

ヴィータの巨人族の一撃(ギガントシュラーク)で殴っても……だと? アレを耐えるなんて、相当のヤツだぞ?

 

〈ヴィータの巨人族の一撃(ギガントシュラーク)でも仕留められないだと?〉

 

〈ああ。フェイトがファランクスって言うヤツぶち込んでも効いた様に思えないんだ〉

 

……もの凄いタフだな。

 

普通のモノブロスとかディアブロスならとっくに気絶してると思うのだが。

 

そんな巫山戯たヤツが……待てよ?

 

〈ヴィータ、1つ聞くぞ? 其奴の特徴は?〉

 

〈ああ、頭の角が本来は2本みたいだけど。あたし達と会った時は既に1本折れてたんだ〉

 

俺はその言葉を聞いて背筋が寒くなってきた。

 

ゲームの中だけかと思ったら、ホントに居たんだ。

 

 

 

 

『片角のマオウ』

 

 

 

 

モンスターハンター2Gに出てくるモンスターで。

 

普通のディアブロスなのだが、そいつは初めから2本ある角のうち、片方が既に折れた状態なのだ。

 

厄介なのは、上級クエストなのに耐久力が上のクエストであるG級と同等なのだ。

 

兎に角、やたらとタフなのだ。

 

かつてゲームでやった時、上級だから楽勝だろうなと思いつつG級用の武器で行ったのにも関わらず、時間ギリギリで倒した覚えがある。

 

上級クエストの分際でG級並みとはどういう事かと。

 

〈分かった。なのはとザフィーラ連れてすぐに行く。それまで何とか持ちこたえろ〉

 

〈ああ、分かった。なるべく早く頼む〉

 

ヴィータの通信が切れる。

 

「なのは、ザフィーラ」

 

なのはとザフィーラが俺の方を向いた。

 

「シグナム達を助けに行くぞ。『片角のマオウ』が出たみたいだ」

 

 

「ブフッ!」

「ブフッ!」

 

 

その言葉を聞いてはやてとすずかの2人は紅茶を噴き出していた。

 

「わっぷぅ!」

 

アリサが少し被害を被ったみたいだが、そこはスルー。

 

「なるほど、シグナム達が苦戦するほどのヤツか」

 

「ああ、耐久力がやたらとあるんだ。ヴィータの巨人族の一撃(ギガントシュラーク)でも仕留められなかったそうだ」

 

「……なるほど。それは相当のヤツだな」

 

「にゃあ~ヴィータちゃんのアレを耐えるの?」

 

「そう言う事だ。行くぞ?」

 

俺となのは、ザフィーラの3人で転送しようとしたら。

 

 

 

「ちょっと待ちぃ!」

「あたし達も連れて行きなさい!」

「置いてきぼりは嫌!」

 

 

 

はやて、アリサ、すずかの3人も付いてくる事に。

 

まあ、家を守る人が居なくなるからその方が良いかもな。

 

あっちでシャマルに守らせる手もあるし。

 

「ああ、それじゃあ行くぞ」

 

俺達は一斉に転送した。

 

 

 

 

 

 

「キィエェェェェェェェェ!!!」

 

「ぶちぬけぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

ディアブロスとヴィータが戦っていました。

 

ヴィータのアイゼンが頭に直撃しているにも関わらず、あのディアブロスはまだ元気でした。

 

ってか、この世界のモンスターはオリジナルよりも遙かに強いと思われる。

 

「なのはとザフィーラはヴィータの援護を。俺は3人をシャマルに預けて来る」

 

「分かったの」

 

「心得た」

 

2人と分かれてから俺はシャマルの方に向かう。

 

ちなみに分身してからアリサ、すずか、はやてを抱えている。

 

 

「……」

「……」

「……」

 

 

3人は呆然とディアブロスを見ていた。

 

「でかいな」

 

俺はディアブロスを見ながら呟く。

 

目測30mはあるんじゃね?

 

確か、普通のディアブロスは平均20mらしいからかなり大きい個体だ。

 

「アレが……片角のマオウ……」

 

「ゲームで見るより遙かに凄まじいわ……」

 

ゲームと現実は違うのだよ? 3人とも。

 

「さて、とりあえずシャマルの所に行くぞ」

 

 

 

 

 

シャマルの所に行くとシグナムとフェイト、美由希さんが治療を受けていた。

 

「う~攻撃当てても怯まないよ~」

 

「う~ん……やられた……」

 

うなされてる美由希さんとフェイト。

 

確かに、あいつのタフさには辟易させられる。

 

「いつつ……あ、主はやてにアレスちゃん。無様な姿を見せて申し訳ない」

 

「いや、そんな日もある。全員が無事で良かった」

 

「そうやで~怪我は治るけど死んだらそこまでやからなぁ~」

 

「ありがとうございます。そう言って頂けると少しは気が楽になります」

 

「さて、シャマル?」

 

「はい!」

 

嬉しそうな顔で返事するシャマル。

 

尻尾があったらハタハタと振っているだろう。

 

「俺はヴィータ達の援助に向かう。だから、全員の守りを頼むぞ?」

 

「はい!」

 

「シグナムも治療が終えたらシャマルと2人でここの守り頼む」

 

「分かりました。命に代えてもここは守ります」

 

「ダメだ」

 

「え?」

 

「命に代えずに守ってくれ。勝手に死ぬのはダメだ、許さん。なあ? はやて?」

 

「そうやね。シグナム? シグナムも私達の大事な家族なんやからね」

 

「……分かりました。それでは、アレスちゃんも怪我せぬ様に」

 

「ああ。行ってくるぜ?」

 

俺はヴィータ達の所に向かって飛んでいった。

 

 

 

 

 

「大丈夫か?」

 

俺は肩で息してるヴィータに話しかける。

 

「ああ、何とか……な」

 

ディアブロスはザフィーラとなのはに標的を向けてそちらに向かっている。

 

「にゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? ディバイン・バスター喰らっても平然としてるぅ!?」

 

なのはの驚きの声が聞こえる。

 

 

 

「キィエェアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

 

 

ディアブロスは口から黒い煙を吐きながら咆吼した。

 

どうやら怒りモードになったみたいだな。

 

全くもって厄介だ。

 

確か、怒りモードになったらパワーとスピードが少し上がるハズ。

 

「ぬうぅぅぅぅぅ!?」

 

あ、ザフィーラが地中からの突き上げで吹っ飛ばされていた。

 

アレも厄介だな~。

 

足止め出来れば楽……あ。

 

そうだ、ザフィーラが居るなら出来るな。

 

〈ザフィーラ、其奴の足止め……出来るか?〉

 

〈ああ。ちとキツイが出来ないことは無い〉

 

〈どれくらい止められそうだ?〉

 

〈15秒……位だな〉

 

上等。15秒あるなら何とかなるかも。

 

〈なのは〉

 

〈うん?〉

 

〈今からスターライト・ブレイカー撃つのにどれくらいかかる?〉

 

〈ん~30秒あれば何とか〉

 

〈そうか。なら、今からザフィーラがあいつの足止めしてから俺とヴィータがあいつに一撃喰らわせる。その直後になのはがスターライト・ブレイカーでとどめを刺す。どうだ?〉

 

〈分かったの。今からチャージに入るね〉

 

なのはは空中に向かって飛んでいく。

 

「ヴィータ、巨人族の一撃(ギガントシュラーク)はあと何発いける?」

 

「あとギリギリで2発……だな」

 

「よし。俺と一緒に巨人族の一撃(ギガントシュラーク)を同時にあいつにぶちかまそう。噴進式鉄槌(ラケーテンハンマー)の要領で横殴りだ」

 

「……それは良いけど。お前、巨人族の一撃(ギガントシュラーク)って出来るのか?」

 

「出来るぞ。俺の持ってるデバイスを忘れたか? エヴァ、モード『アイゼン』」

 

【了解です、お兄様。モード『グラーフ・アイゼン』】

 

武神の魔導書が光り輝くと俺の手に握られたのはヴィータと全く同じ形状のハンマーだった。

 

「っ! へへ、それなら……いけるな!」

 

ヴィータはニヤリ……と笑った。

 

「ザフィーラ! こっちは準備出来た! 頼む!」

 

「! でぇぇぇぇい! 縛れ! 鋼の(くびき)!!!」

 

ザフィーラがそう叫ぶとディアブロスの足下から尖った魔力の刃が現れてディアブロスの足、胴体に突き刺さりその場に縫い止める。

 

 

「ギィエェアァァァァァァ!」

 

 

咆吼するディアブロス。しかし、どんなにもがいてもザフィーラのソレから逃れることは出来ない!

 

「ヴィータ!」

 

「ぶちかませぇ!! アイゼン!!!」

 

了解(ヤヴォール)!! 起爆(エクスプロズィオーン)!!!】

 

ヴィータのアイゼンがカートリッジロードする。

 

「エヴァ! 頼む!」

 

了解(ヤヴォール)!! 起爆(エクスプロズィオーン)!!!】

 

俺の手に持たれるエヴァも同じ様にカートリッジロードする。

 

身体に魔力が溢れてくる。

 

「行くぜぇ!! これを耐えられるか見せて貰うぞ!? 片角のマオウ!!」

 

アイゼンモードのエヴァの形状が変わる。

 

超巨大ハンマーに変化して俺は左回りに回転する。

 

ヴィータも同じように回転する。

 

 

 

噴進式巨人族の一撃(ラケーテン・ギガントシュラーク)!!」

噴進式巨人族の一撃(ラケーテン・ギガントシュラーク)!!」

 

 

 

高速回転で回る俺とヴィータのハンマーがディアブロスを挟み込んで一撃を加える!

 

 

 

「ギィエェェェェェェェェ!!!」

 

 

 

ディアブロスの咆吼と轟音が周りに響いて爆風の様な風が周りに広がる。

 

俺は上を見る。

 

なのはの周りに桃色の魔力光が集まる。

 

「ヴィータ、離れろ! なのはの砲撃が来るぞ!!」

 

「分かった! あんなの直撃したくねーよ!!」

 

俺とヴィータは即座にディアブロスから離れる。

 

ふらふらのディアブロス。

 

ギガントハンマーのサンドイッチを喰らって気絶しないのかよ、あいつは!!

 

 

 

「全力全壊! スターライト・ブレイカ―――――ッ!!!!」

 

 

 

 

桃色の砲撃がディアブロスを包み込んで、その直後、台風を上回る爆風が俺に襲いかかる。

 

 

「ぐぅぅぅぅ!」

 

「で、出鱈目も良いところだよ、アレは!」

 

俺とヴィータは薄目を開けて様子を見る。

 

アレが非殺傷とは思いがたいのだが。

 

ってか、既に原作のカートリッジロードしたスターライト・ブレイカーより上回ってるんじゃね?

 

そんな事を思いつつ俺は煙が晴れるのを待つ。

 

「これでまだ意識あったらもう諦める。あんなタフなヤツとやってらんねぇよ!」

 

ヴィータはそうぼやいてその場に座る。

 

「おーい」

 

シグナム達がやってくる。

 

ザフィーラは狼形態になってはやてを背に乗せて。

 

シクルゥに乗るナコルルみたいだな。

 

シグナムはアリサを抱きかかえ、シャマルはすずかを抱きかかえてる。

 

美由希さんとフェイトもフラフラした感じではあるが、こちらにやって来る。何とか回復したのであろう。

 

なのはも何事も無かった様に降りてきた。

 

「なのは……アンタのアレってホントに非殺傷設定?」

 

「にゃっ!? 非殺傷だよ?」

 

「いくら非殺傷と言っても……喰らいたくはないね」

 

「大丈夫だよ~? ちょっと痛いだけだから♪」

 

「あれでちょっと痛い……? 我が妹ながら恐ろしい」

 

身震いしてる美由希さん。

 

下手に姉妹喧嘩したら超高確率で美由希さんが負けると思うんだ。

 

俺はなのは達の会話を聞きつつもディアブロスの方を見る。

 

段々と煙が晴れてくるのを見てると、巨大隕石が落ちた様なクレーターが見えるんだが。

 

「晴れた~って……これは」

 

夜天の書を持ったシャマルは目の前の光景を見て絶句していた。

 

二の句が継げない……と言えば良いのか。

 

大きなクレーターが出来ていて、真ん中で砂に埋もれてるディアブロス。

 

ピクピク痙攣してるから一応は生きてるんだろうが。

 

「とりあえず、引っ張り出すか」

 

俺はディアブロスの角を持って引きずり出す。

 

無論、咸卦法を使って身体能力を上げてる。

 

前世なら身体能力で何とかなったんだがなぁ。

 

身体が成長し終えたら重力使って身体を鍛えるかな。

 

「……アレを簡単そうに引きずり出すお前はおかしいと思うんだ、あたしは」

 

ヴィータの呟きはスルーして。

 

シャマルはディアブロスから魔力を蒐集する。

 

ページがペラペラペラとめくれていく。

 

「……45ページ」

 

「……そうか」

 

「それだけ苦労した甲斐はあったな」

 

そのあと、俺は傷の治療をしてディアブロスを解放しておいた。

 

俺達の姿を見ると脱兎のごとく逃げていったのは余談である。

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、ヴィータのアイゼンが入ってるとはな」

 

「ああ。当然ながらシグナムのレヴァンテインも入ってるぞ?」

 

「そうか……私と同じ武器で戦えるのか。まるで夫婦の様だな?」

 

やたらに顔が赤いシグナム。

 

「夫婦……ねぇ……」

 

「年上女房は……嫌いか?」

 

……なんか、口説かれてる様に思えるのは気のせいだろうか?

 

「……シグナム? 何抜け駆けしてるのよ?」

 

ジト目でシグナムを見るシャマル。

 

ものすげー嫌な予感。

 

「待て、シャマル? ここでアレスちゃんから年上女房は嫌いだと言われてみろ。我々は明日から何を糧にして生きていけば良いのだ?」

 

「…………確かに。ソレはもの凄く重大な死活問題ね」

 

そんな事じゃなくてはやての家族として生きていけば良いじゃねぇか……と思った俺は悪くないハズだ。

 

「で? アレスちゃんは年上女房は……どうかしら?」

 

やけに血走った目で俺を見るシグナムとシャマル。

 

やっぱりこの2人は一度、頭をフォーマットした方が良いとボクは思うのですよ☆にぱー☆

 

おっと、違うモノ(古手梨花)が頭に降臨してたな。

 

「まあ、別に年上女房でも全く問題は無いが」

 

その言葉を聞いて2人の目はもの凄く輝いていた。

 

夜天の書のバグはここまで影響を及ぼしていたのか……と思わざるを得ない。

 

「主人を差し置いて……アレス君をナンパするんて!」

 

額に青筋を立ててるはやてが来る。

 

ザフィーラはやけに疲れてる様に見えるのだが。

 

「すみません、主はやて!」

 

「ごめんなさい、はやてちゃん! アレスちゃんが嬉しいことを言ってくれたから……」

 

「いーや!そもそも、私がアレス君と結婚したら2人も一緒に住めるやないか!」

 

 

「あ……」

「そうだ!」

 

 

シグナムとシャマルの顔は驚愕に溢れていた。

 

俺はザフィーラの顔を見る。

 

「……すまん」

 

そう言ってザフィーラは顔を逸らした。

 

俺はヴィータを見た。

 

「あ~砂漠はあちぃなぁ……」

 

空を眺めて俺達の方を一切見ないヴィータがそこに居た。

 

「そうやろ!? 2人の主である私がアレス君と結婚したら、家族のシグナムとシャマルにも寵愛がイってもおかしゅうない!」

 

おかしいから。

 

そもそも、シグナムとシャマルは従姉妹のお姉さん扱いだろ?

 

従姉妹丼か……。

 

新しいジャンルだな。

 

 

 

「何を言ってるのかな? かな?」

「アレスは私とアリシア姉さんとも結婚するんだよ?」

「アレス君は私とも結婚だよ?」

「アレスは私のいじめ相手よ! そう簡単に渡さないわよ!?」

 

 

 

なのは、フェイト、アリサ、すずかがやって来る。

 

わー、コレは始末に負えない予感。

 

「こうなったら、私達の中で誰が正妻にふさわしいか! 競い合おうやない! 負けた人は妾で我慢! これでどうや!」

 

「乗った!!」

「乗った!!」

「乗った!!」

「乗った!!」

 

おいおい、ちょっと前は妾で良いって言ってたのが、どうしてこうなった!?

 

「よっしゃ! それなら……とりあえず、舞台は……アレス君の家や! アレス君のお義母さんにアピールや!」

 

待てや! なんでお義母さんになってるんだよ、この狸娘は!

 

「ちょ、ま……」

 

5人は一斉に転送してしまった。

 

なのはとフェイトが一斉転送したのだ。

 

 

 

「主はやて!?」

「はやてちゃん!?」

 

 

 

後を追うようにシグナムとシャマルも転送していった。

 

呆然と佇む俺の肩を叩くのは美由希さん。

 

「もてる男は辛いわね……」

 

「妹さんを止めると言うのは?」

 

「アレス君、あたしにこの世から消えろと?」

 

「ですよねぇ~」

 

俺はヴィータとザフィーラを見る。

 

「……すまん、我は主を守護する大事な役目があって死ぬわけには」

 

「……あたしも同じだ。せめて、シグナムとシャマル位は止めたいけど……あいつら、お前が絡むと通常の3倍の力を発揮するというか……」

 

赤い彗星かよ。あれは3倍の速さだが。

 

ちなみに、実際に赤い彗星ザクはノーマルザクの1.3倍にチューンナップされた専用ザクで3倍と言うのは誇張であるらしい。

 

 

 

あと、郵便ポストはシャア専用ではない。

 

 

 

「まあ、気にするな。アレは止められないのは分かってる」

 

「すまねぇ……」

 

「さて、今日はコレくらいにして帰るか」

 

「そうだね~」

 

とりあえず、今日の魔力蒐集は終わりを告げた。

 

そして、家に帰宅する。

 

 

 

 

 

美由希さん、ザフィーラ、ヴィータ達3人と別れて家に帰ると母さんがニヤニヤしながら出迎えてきた。

 

「ただいま、母さん?」

 

「モテモテね~?」

 

もの凄い嫌な予感。

 

「嫌な予感を感じるんだが……」

 

「ご名答よ。お嫁さん候補が沢山来てから大騒ぎよ?」

 

目の前が暗くなってきた。

 

とりあえず、俺は自分の部屋に戻るべく、ドアを開けた。

 

すると……なのは、アリシア、フェイト、はやて、アリサ、すずかの6人がトランプのババ抜きで戦っていた。

 

そして、なのはの後ろには桃子さん。

 

アリシアの後ろにはプレシア女史。

 

フェイトの後ろではリニスさん。

 

はやての後ろではシグナムとシャマル。

 

すずかの後ろではノエルさん。

 

アリサ以外、保護者役の人達が手に汗握る様相で見守っていた。

 

 

 

「にゃあぁぁぁぁぁっ! ババ引いたー!」

 

「大丈夫よ! コレをアリシアちゃんに引かせれば良いのよ!」

 

「そう簡単にアリシアが引くと思わない方が良いわよ! 桃子!」

 

「私の娘をなめて貰っては困るわ!」

 

「貴女こそ、私のアリシアをなめて貰っては困るわ!」

 

「はやてちゃん、私のクラールヴィントを使えば!」

 

「あかん! そんな事したらわたしは海鳴湾の藻屑に消えるわ!」

 

「大丈夫です! その時は私とシャマルで、主はやての分も含めてアレスちゃんを愛でる事にします!」

 

「あんたはどっちの味方や!? シグナム!」

 

「何とかなのはにババを引かせたけど……」

 

「大丈夫です、フェイト。アリシアにプレシアが付く以上、私がフェイトの補佐をして見事、アレス君の正妻の座をプレゼンしますから!」

 

「ねぇ、ノエルの能力で何とか出来ないかな?」

 

「難しい質問ですが、愛しのアレスちゃんの為です! 何とかすずか様を勝利に導きます!」

 

「アレスのくせに……アレスのくせに! アレスはあたしのモノなのよ!」

 

「うぅ……なのはちゃん……! 手が読めない! アレスお兄ちゃん! 私に加護を!」

 

 

 

一言で言えば『混沌(ケイオス)』状態だった。

 

ちなみに俺の部屋はかなり広いので、この大人数でも大丈夫なのだ。

 

 

「…………」

 

 

俺は無言でドアを閉めた。

 

全員、勝負に熱中していて俺に気付いていない。

 

 

「俺は何も見ていない。気のせいだ」

 

【残念ながら、これは現実ですよ? お兄様?】

 

 

 

「なん……だと……?」

 

 

 

エヴァのツッコミが俺を現実に引き戻す!

 

何なんださっきの空間は!

 

俺の部屋が女の子の匂いで一杯になってるじゃないか!

 

まあ、ベッドの下にはいかがわしいモノは無いが。

 

あ、俺は今現在⑨歳だからあったらそれはそれで問題なんだが!

 

「なぁ? 部屋に戻った方が良いか?」

 

【ん~……。餓えた狼の中に羊を放り込む様な感じがしますけど、戻らないと暴動が起こるかも知れませんよ?】

 

「だよなぁ……」

 

俺は不承不承ながら部屋に戻る事にした。

 

 

 

 

 

 

接戦は続いたが、今回はなのはが勝利を収めた。

 

勝利に喜ぶ高町親子だったが、翠屋を士郎さんに丸投げしていた桃子さんは美由希さんに連行されていった。

 

聞けば、恭也さんと忍さんまでも手伝ってるとか。

 

それで良いのか、翠屋。

 

その後、ヴィータとザフィーラもやって来た。

 

いつまでも帰ってこない主と同僚に業を煮やして3人を連行しに来たが、あえなく玉砕。

 

八神一家はウチに泊まる事となった。

 

テスタロッサ一家も泊まることになった。

 

アリサも鮫島さんに着替え等を持ってきて貰っていた。

 

泊まる気満々ですね。

 

すずかとノエルさんも忍さんの許可を得ていた模様。

 

ノエルさんは忍さんのメイド仕事をファリン嬢に丸投げしていた。

 

すずかにこっそり聞いたら忍さんに相当頼み込んだようだ。

 

『後生ですから、一度で良いですから!』

 

後で忍さんに聞いたが、許可しなかったら自殺しかねない勢いだったから許可したとか。

 

忍さんも色々と大変だな。

 

あ~、俺の家が大きくて助かったぜ。

 

母さんも『こんな事もあろうかと、大きい家を建てておいて良かったわ』とのこと。

 

いつから真田さんになったんだ。

 

こうして、初のお泊まり会が開かれることになったのだ。

 

余談だが、週に一回、こうして俺の家に泊まる事になったのだが。

 

まあ……これから騒がしくなるなぁ。

 

 




 



片角のマオウさんの耐久力をチートにしてみましたw

あれだけの攻撃を喰らわせてようやく戦闘不能状態ですからねw

実際にあそこまでの耐久力があったら心が折れますw



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第21話 ネコを捕まえたんだが……

 
お待ちかね、ネコ姉妹登場です


 

 

 

 

 

-???視点-

 

 

 

そう言えば、そろそろ闇の書が覚醒していたはず。

 

私はそう思って第97管理外世界の惑星、『地球』の方に向かってサーチャーを飛ばした。

 

この世界は魔法文化が無いからサーチャーの存在に気付く者はいない。

 

数分後、画面を見ると車椅子に乗って押される闇の書の主、『八神はやて』。

 

押しているのは、どうやら守護騎士の1人であろう、金髪の女だった。

 

お父様から守護騎士達の容姿は教えて貰っているから問題ない。

 

確か……湖の騎士だったと私の頭の中に浮かぶ。

 

他の騎士達の姿が見えない所を見ると、蒐集に出かけているのだろうと思う。

 

「どうやら、無事に起動したようね」

 

私はディスプレイに浮かぶ八神はやてと湖の騎士を見ながら呟いた。

 

あの子には悪いけど、全世界の為。

 

闇の書をこのままにしておくわけにはいかない。

 

11年前、多くの犠牲者を出した、あの事件。

 

お父様は今でもあの事件の事を気にしておられる。

 

部下を多く失い、自らの手で部下を殺してしまったあの忌まわしい事件。

 

9年前にあのはやてを見つけた時はお父様と大喜びしたモノだ。

 

宿主を見つけてしまえばこちらのモノだ。

 

後は、上手く暴走させてお父様が作成したデバイス、『デュランダル』で永久封印する。

 

そうすれば、お父様は枕を高くして寝ることが出来るのだ。

 

「アリア~?」

 

ドアが開いてやってきたのは私の妹、ロッテ。

 

(リーゼアリア)とロッテは双子なのだ。

 

「どうしたの?」

 

「いや、そろそろ闇の書が目覚めたと思ってね」

 

ロッテも同じようにサーチャーが映し出す画像を見る。

 

「うん、目覚めてるね。確か、コイツって湖の騎士じゃなかったか?」

 

「そうね。確か、後方支援が得意だったはず」

 

私とロッテは画面の中で微笑むはやてと湖の騎士を眺める。

 

「……なんか……罪悪感が出るね」

 

「……そうね。でも、ここで封印しないと更に多くの犠牲者が出るわ」

 

9を救うため、1を切り捨てる。

 

今、私達が出来るのはこれしか方法が無いのだ。

 

「……そうだね。これも父様の為……うん?」

 

「どうしたの?」

 

ロッテが何かを見つけた様な声を上げたので私はディスプレイを見た。

 

はやてと湖の騎士に駆け寄るのは……はやてと同じ年頃の少年だった。

 

白い制服に身を固め、黒髪。

 

前髪に一部、金髪が混じっていた。

 

少しだけ、つり目に見えて右目が蒼く、左目が黒い……オッドアイの少年だった。

 

「おかしいわね。確か、はやてにはあまり人が寄らない様な魔法がかかっていたと思ったけど?」

 

「そうだね。それに……あの少年は……臭うよ」

 

「そうかしら? 普通の少年に見えるけど?」

 

私には、外見はちょっと変わってるけどそこら辺にいる現地の子供に見えた。

 

「アリアは格闘とかしないからね。あたしは分かるよ。あの子供、何か格闘技をやってるよ?」

 

「そうなの?」

 

「ええ。歩き方が普通じゃない。重心をあまり乱していない」

 

ロッテがそう言うなら普通の少年じゃないのだろう。

 

しかし、何処かで見たような?

 

「……んん? こいつ……何処かで見たような?」

 

ロッテが首を傾げていた。

 

「ロッテも? 私も最近何処かで見たような気がするんだけど」

 

「アリアも? う~ん……」

 

私とロッテは顔を見合わせてから首を傾げる。

 

「思い出した! リンディ提督が最近、この世界で嘱託魔導師2人見つけたって言ってた!」

 

ロッテの台詞で私も思いだした。

 

1ヶ月位前にリンディ提督がこの地球で滅多にいない魔導師をスカウトしたと小耳に挟んだのだ。

 

その時、リンディ提督から聞いたのが。

 

「……少年はベルカ式を使うって聞いたわ」

 

「ベルカ式? 珍しいね……確か、闇の書も古代ベルカだとか」

 

私は何となく妙な引っかかりを感じた。

 

もしや、この少年ははやてが闇の書の主だと気付いている?

 

コレは面白くない。

 

私達の計画は管理局に知られてはいけないのだ。

 

どんな切欠で計画が破綻するか。

 

「ロッテ?」

 

「ええ。この子は……排除しましょう。半年位、ベッドの上で過ごして貰いましょうか」

 

「だね」

 

そして、私は見てしまった。

 

画面の中の少年が……こちらを見ていた事を!

 

サーチャーに……気付いている!?

 

「そ……そんな!?」

 

「しっかりしなよアリア! 認識阻害かけてるの!?」

 

「かけてるわよ! 私がそんなヘマするわけないでしょ!」

 

「なら、何で……あいつはこっちを見てるんだよ!」

 

あり得ない!

 

あっちの世界は魔法文化は発達していないのだ。

 

見つけられるハズは……無いのに!!

 

「待って。あいつ、何か言ってる?」

 

ロッテが画面を見ながら呟いた。

 

「『この子に手を出すな。出した時は……』だって?」

 

その後、少年は右手の親指を立て、首を斬るような仕草をて、親指を下に向けた。

 

コレは脅しだ。

 

はやてに手を出したら……容赦なく消すと言う事だろう。

 

「面白いじゃない! アリア!」

 

「ええ」

 

「コイツ……病院に送ってやろう」

 

私はロッテと顔を見合わせてから同時に頷いた。

 

 

 

 

 

 

-リーゼアリア視点・終了-

 

 

 

 

 

〈行ったか〉

 

〈みたいですね〉

 

俺ははやてとシャマルの2人と一緒に帰宅していた。

 

他のヴォルケンリッターとなのは、フェイト達はいつものように魔力蒐集。

 

アリサとすずかは塾だった。

 

俺達の様子を探るように何かが来ていたのだ。

 

強力なジャミングをしていたのだが、わずかだけ違和感を感じたのだ。

 

多分、グレアムおっさんの使い魔のネコ姉妹だと思う。

 

確か、格闘向きと魔法向きの2人だったと思ったが、どっちがどっちだったか忘れてしまった。

 

まあ、仮面を着けた男で襲って来るだろうからその時に聞いてみるとしようか。

 

〈見つかったからには近いウチに襲撃に来るでしょうね〉

 

〈だな。まあ、どこぞの金ピカ鎧の様に慢心はしないようにな〉

 

〈ですわね。油断が過ぎるとラスボスから雑魚に急転落ですからね〉

 

腹ぺこ王の話ではかなりの強敵だったが、黒桜の話になったら噛ませ犬になってた金ピカ鎧を思い出した。

 

あんなのだから慢心王とか言う痛いあだ名が付けられるのだ。

 

「アレスちゃんは意外とメイド服とか似合いそう」

 

シャマルの声で俺は気が付く。

 

このパツキンは何をほざいているのか。

 

「あ~なるほど。確かに……アレス君の顔……ちょっとメイクしてやればいけるかもなぁ~」

 

そしてタヌキのこの台詞である。

 

「何故に俺がメイド服なんぞ着にゃならんのだ?」

 

「聞いたで~なのはちゃんから。お手伝いで執事服着たんだってなぁ?」

 

そう言えば、翠屋で執事服を着てウエイターをやった記憶がある。

 

「執事服……ですか」

 

シャマルは俺の顔を見て、それから全身をくまなく眺める。

 

「良い……幼い執事……アリね」

 

このパツキンは無視した方が良いのか。

 

「そやろ? シャマル? だから今度執事服着たアレス君が私に色々奉仕してくれると言う……」

 

タヌキも訳の分からん事を!

 

「執事服を着る必要性が分からないんだが?」

 

「アレス君は分かっとらん! アレス君だって私がメイド服着て奉仕してくれたら嬉しいやろ!?」

 

力強く力説するはやて。後ろでもシャマルがウンウンと頷いていた。

 

「まあ、メイド服は良いんだが……はやての場合は眠り薬とか普通に仕込みそうなんだが」

 

「失礼やなアレス君! 私はせいぜい痺れ薬しか盛らんわ!」

 

「似たようなもんだろうが!」

 

俺はエヴァをハリセンモードに切り替えてはやての頭を叩く。

 

「あたっ! なしてや!眠り薬だと相手が寝てるだけで面白うないやないか!痺れ薬なら身動き取れないし、相手が怖がる様子がやな……」

 

「もうええわ!」

 

俺は更にはやての頭を叩いておいた。

 

周囲に心地よい音が鳴り響く。

 

 

 

 

 

 

 

2日後。

 

部屋でくつろいでいると天界から通信が来た。

 

〈あ~、今大丈夫かね?〉

 

紳士的口調の若本ヴォイス。

 

この世界を管轄する神である。

 

〈ああ、大丈夫だ〉

 

俺は返答する。

 

隣ではエヴァが鼻歌歌いながらお菓子の作り方の本を読んでいた。

 

〈では、伊集院蓮の事だがね……〉

 

数日前に転任して来た明らかに転生者臭い先生の事を問い訪ねてみたのだ。

 

〈間違いなく転生者だ。能力は『頭を撫でた異性を惚れさせる程度の能力』と……〉

 

俺はその言葉を聞いてベッドからずり落ちる。

 

エヴァが驚いた表情で俺を見てるが今は無視する。

 

ホントに『ナデポ』能力だったとは!

 

〈『想像した人間を人形にして作る事が出来る程度の能力』だ〉

 

その言葉を聞いて俺は一瞬耳を疑いたくなった。

 

〈……ギャグじゃないよな?〉

 

〈ギャグではない。部下に私自らきちんと問い訪ねたからな〉

 

どんな問い訪ね方をしたのかはあえて聞かないが。

 

〈戦闘には向いてない能力だな〉

 

〈そうだな。だが、前者はハーレム作りには向いてるだろう?〉

 

確かに。頭を撫でただけで惚れさせるんだからその点は便利であろう。後者の能力はマニアック向けだが。

 

〈なるほどな。戦闘に持ち込んでも苦戦はしないだろう〉

 

〈うむ。魔力はそちらの高町なのはよりやや下回る程度であろう。気とか妖気とか霊気とかは付与させてない様だ〉

 

どの程度鍛錬しているかは知らないが、特殊能力が無いならそこまで苦戦はしないだろう。

 

しかし、アリサがヤツに頭を撫でられていたが、惚れた様子は無かった。むしろ、嫌悪していたのは何故だろうか?

 

〈そう言えば、アリサがあいつに頭を撫でられていたが、惚れた様子は無かったぞ?〉

 

〈ああ、その事なんだがな。どうやら、好感度がマイナスの相手には全く通用しない……との事だ〉

 

〈何?〉

 

〈つまり、少しでも嫌われていたら頭を撫でられても嫌悪感しか与えないとの事だ。頭を撫でられたアリサは転生者の事をどう思っていたかね?〉

 

〈ふむ……そう言えば、当初から良い印象は持ってなかったな。いつぞやの事件で大人の男に近寄られるのを嫌ってる傾向がある〉

 

〈それならば惚れる事は無いな〉

 

〈確かに〉

 

皮肉な事に、違う転生者によってアリサ、すずかは大人の男に嫌悪感を抱く様になっていたのだ。

 

時間が経てば多少は解消するかも知れないが、長い時間がかかるのは間違いない。

 

今日、明日に治る訳がないのだ。

 

ひょっとして、少年好きになってしまったかもしれないが!

 

まあ、20歳までには治る……と思いたい。

 

〈それで……だ。どうだ? あやつの素行は。危険因子になるか?〉

 

〈どうだろうな。今の所、学校の中では特に変な事を起こしてはいない。取り立てて普通の先生だな。外見はアレだが〉

 

〈なるほど。なら今回も任せる。もし、問題アリと思ったら……〉

 

〈ああ。そちらに送る〉

 

〈よろしく頼む〉

 

そう言って俺は天界との交信を終える。

 

「どうなされたのですか? いきなりベッドから転げ落ちて」

 

エヴァが心配そうな顔で俺に聞いてくる。

 

「いや、最近学校に来た先生の能力を聞いてな」

 

俺はエヴァに説明する。

 

 

 

 

 

「それは……また……変な能力を……」

 

苦笑してるエヴァ。苦笑した顔も可愛いな。

 

「まあ、エヴァも見てたと思うが、アリサ、すずかは大人の男に嫌悪してるから能力にひっかからない。なのはもそんなに好きそうな雰囲気じゃないから大丈夫だろう」

 

「ですね。いつぞやの誘拐事件が起きてなかったらどうなってたでしょうね~」

 

確かに、あの誘拐事件が起きてなかったら……どうなってたんだろうな?

 

「ま、終わってしまった事を言ってもしょうがないだろう。とりあえず、あの先生は様子を見ておこうか」

 

「そうですね。初日に会ってから時々校内とか昼休みに会いますけど、別に変な様子は見受けられませんし」

 

エヴァの言うとおり、校内で会うし、授業でも普通に進めてるし、昼休みに屋上で会うが少し話をしたらすぐに別れるのだ。

 

今の所、問題は無いのだ。

 

にしても、他の転生者共は何をしてる事やら。

 

ひょっとして、勝手に争ってから自滅してる可能性も否定出来ないな。

 

本来なら俺が捕まえて来なければいけないのだが、今は夜天の書事件で余り離れられないのが実情だ。

 

まあ、この事件が収まったらボチボチ探しに行こうかな。

 

 

 

 

 

 

 

数日後。

 

たまたま1人で帰宅途中の事だ。

 

はやては病院、シグナムは付き添い。

 

アリサとすずかは塾でなのはとフェイトは魔力蒐集。

 

そう言えば、久しぶりに1人で帰った様な気がするな。

 

商店街を抜けて、住宅街を1人で歩く。

 

ってちょっと待て。いくら昼間だと行っても閑散としすぎだろう。

 

ふと気付いた時には結界に覆われていた。

 

「っ!」

 

〈お兄様?〉

 

〈なかなかいい腕してるよ。この結界を張ったヤツは……な!〉

 

〈ですわね。久しぶりじゃありません? お兄様に気付かず結界を張るなんて〉

 

〈だな〉

 

俺は騎士甲冑を纏う。

 

目の前に仮面を着けた青髪の男が現れた。

 

どっちだ? アリアか? ロッテか?

 

「何者だ?」

 

「ふん。今から病院に入院するヤツに名乗る名前は無い」

 

冷たく言い放つ男。

 

面白い、俺を病院送りにするだと?

 

そう簡単に送れると思ったら大間違いだぞ?

 

「ほぅ? 俺を病院送り……だと?」

 

「そうだ。これから貴様は半年以上は病院生活を送ってもらう」

 

男はそう言って俺から遠く離れる。

 

遠距離攻撃か! 言うことは、姉のアリアか!

 

魔力弾が20個近く俺に向かって飛んでくる。

 

どうやら俺が遠距離攻撃を持ってないと思っての事だろうが。

 

残念だったな? 俺はきちんと遠距離からの攻撃を持ち合わせているぞ?

 

「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック 闇の精霊29柱、集い来たりて敵を切り裂け。『魔法の射手・連弾・闇の29矢』」

 

俺の手から放たれる闇の矢がアリアの魔力弾を全て打ち落とし、アリアに向かって飛んでいく。

 

「くっ!?」

 

驚いて声をあげてアリアはミッド式の魔法陣シールドを張って闇の矢を防ぐ。

 

「何を思ったか知らんが、俺は遠距離攻撃だって出来るんだぜ?」

 

背後から襲いかかってくる気配。

 

ロッテも一緒に来ていたか!

 

俺は左側に半身ずらして避ける。

 

「避けたか!」

 

男が俺の横を飛んで目の前に着地する。

 

跳び蹴りを喰らわせようとしたのだろうが、俺がかわしたから当たらない。

 

「2対1……か」

 

「そう言うことだ。さあ、大人しく病院に入って貰おうか」

 

目の前の男……多分、ロッテであろう……がゆっくりと歩いてくる。

 

「いやいや、残念だったな」

 

「何?」

 

「今までの相手なら確実に病院送りに出来たのだろうけど」

 

俺はゆっくりとチャクラを起動させる。

 

「今回は噛みつく相手を完全に間違えたと言うことだ」

 

一気に第7チャクラまで起動させる。

 

俺の周辺の空気が一気に外側に吹き飛ばされる。

 

「な……!?」

 

「この力は!?」

 

2人は驚きの声を上げていた。

 

仮面をかぶっているから表情は分からないが、驚いているのは確かだろう。

 

「さあ、お仕置きの時間だ!」

 

俺は縮地でロッテとの間合いを詰める。

 

ちなみに俺が使用してる縮地は足に気(魔力でも使用出来る)を纏わせて一気に間合いを詰める方法。

 

古流武術も会得してるから両方の良い所取りの縮地でもある。まあ、どうでも良いが。

 

「!?」

 

目の前に俺が現れて驚くロッテ。

 

「シィッ!!」

 

右手に力を込めてロッテの顎目がけて裳底を放つ。

 

「ガッ!?」

 

避ける間も無く一撃がロッテの顎に入る。

 

かする様な感じで入れたから脳が揺さぶられたと思う。

 

ロッテは2,3歩後ろに歩いてから横に倒れた。

 

「ロッテ!? 貴様!!」

 

もう1人、アリアが怒りの声を上げて魔力弾を50発放ってくる。

 

「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック 闇の精霊101柱、集い来たりて敵を切り裂け。『魔法の射手・連弾・闇の101矢』」

 

俺は瞬時に魔法を唱えてアリアの魔力弾に向けて放つ。

 

今度は数が倍違うのでアリアの魔力弾を全ておとしてなおかつ50発近くがアリアに向かって飛んでいく。

 

「そ、そんな!?」

 

闇の矢は容赦なくアリアに向かって飛んで行って全て命中する。

 

最初の30発近くはシールドで耐えていたが、シールドが破れて残りがアリアに命中する。

 

「ああぁぁぁ!!」

 

叫び声と共にアリアもその場で気絶して倒れる。

 

「ざっとこんなもんかな」

 

【さすがですね、お兄様】

 

身体をパンパンと払ってからアリアとロッテを見る。

 

すると、2人の身体が光り輝き、輝き終わった後そこに居たのはネコが2匹、気絶していた。

 

「さて、とりあえず拾って帰るか」

 

周りを見ると少しずつ結界が解け始めていた。

 

早いところ拾って帰るとするか。

 

俺は2匹のネコを拾って自宅に帰宅するのであった。

 

 

 

 

 




 
相手が悪すぎましたねw


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第22話 管理局に話してみよう

 

 
やはりここはお話をしておかないといけませんね


 

 

 

 

 

ネコを2匹、拾った。

 

グレアム氏の使い魔だったはずだが。

 

先程の戦いで気絶させてから拾って帰ったのだ。

 

家に着くと母さんがちょっと目を見開いてからこう訪ねてきた。

 

「えっと……今晩のおかずはネコ鍋? 母さん……ネコは捌いた事無いんだけど」

 

「違う!」

 

ネコを食材にする国なんか滅多に聞いた事無いし、日本はそんな食文化は無い。

 

「もしかして……獣姦? アレスちゃんは人より獣が好きなの?」

 

母さんが泣きそうな顔で俺に聞いてくる。

 

泣きたいのは俺だよ!

 

【ええ!? お兄様……そんな趣味が? 初めて知りました!】

 

エヴァが勘違いしてるんだが。

 

「違うっちゅーに! こいつらは今度の事件の関係者なの! 襲って来たから返り討ちにして連行してきたんだよ」

 

俺がそう説明すると母さんはホッとした表情を見せる。

 

「だよね~。アテナ様や妖子(あやこ)から聞いてたけど、アレスちゃんは『人の女の子』が大好きだもんね」

 

アテナと妖子から聞いていたんかい!

 

「どんな事を聞いたかは聞かないけど……」

 

 

「そうね、3日3晩、3人でセック……」

「言わなくて良いからね!?」

 

 

 

俺は即座に反応して最後まで言わせない。

 

「うふふ、分かったわよ」

 

全く、恐ろしい事を言う母親である。今の台詞をなのは達に聞かれたら誤魔化し様が無い。

 

【へぇ~……お兄様、今度私にもお願いしますね?】

 

エヴァが何かとんでもないこと言ってるんですが…。

 

「……何ヲ?」

 

 

【もちろん、セック……】

「分かったからそれ以上言うんじゃありません!」

 

 

同じように最後まで言わせずに言葉を被せる。

 

【分かりました♪】

 

くっ、2人して楽しんでやがる!?

 

「と、とりあえず……部屋に連れて行く」

 

「じゃあ、段ボールとか用意して行くわね」

 

母さんは段ボールを探しに奥に行った。

 

いらない布きれとかを敷き詰めてペット用の簡易ベッドを作る為だ。

 

 

 

 

 

 

 

さて。

 

このままでは逃げられたりとか暴れたりされても困るので。

 

寝てる最中に首輪を装着しておく。

 

アリアとロッテに着ける首輪は只の首輪だが、同じ形で爆弾を仕組んだタイプも持ってるのだ。

 

とりあえず、首と胴体がおさらば出来るだけの威力を持っている。

 

コレでこの2匹は大人しくなるだろう。

 

【寝てる分には普通のネコで可愛いんですけどねぇ】

 

「うむ。蓋を開けたらかなりの凶暴な生物だがな」

 

俺は簡易ベッドの中で眠るネコ2匹を眺めていた。

 

 

「んにゃ……」

「にゅ……」

 

 

同時に目を覚ます2匹のネコ。

 

目を開けて周囲を見渡し、俺の顔を見て箱から飛び出そうとしたが。

 

「んにゃ!? バインド!?」

 

「何コレ!? ミッド式じゃない!?」

 

すかさず四肢にバインドをかけておく。

 

見た目はミッド式だが、中の術式はベルカ式だ。

 

しかし、見た目だけだとどっちがアリアでどっちがロッテか分からないな。

 

「さて、君達が何処の者だかしっかり吐いて貰うぞ?」

 

俺は身動き出来ないネコ2匹達の目を見据えて言う。

 

「だ、誰が!」

 

「私達は屈しないよ!」

 

「そうか……」

 

俺はネコのぬいぐるみを2匹の前に持ってくる。

 

ぬいぐるみには2匹に着けてる首輪と同等の物が装着されている。

 

「……?」

 

「な、何よ?」

 

更に俺は手鏡を持ってきて2匹の前にかざす。

 

「さて、君達の首を見て貰おうか?」

 

2匹は鏡を見て驚く。

 

首に装着された首輪を見て。

 

「な!? 何よコレ!?」

 

「んにゃ~!」

 

「そして、このぬいぐるみにも同じのがあるな?」

 

「……ええ」

 

「っ! もしかして!」

 

「そう、そのもしかして……だ!」

 

俺は右手の指をパチンと鳴らした。

 

部屋に音が鳴り響いた瞬間、ぬいぐるみの首輪が爆発して首と胴体が千切れ飛んだ。

 

「!」

 

「っ!」

 

息を呑むアリアとロッテ。

 

「俺としては、こんな事はしたくないのだがね?」

 

口元を少し吊り上げて俺は微笑んだ。

 

「卑怯者!」

 

「ろくでなし!」

 

「そうか、まあ、姉妹2人で逝くのも良かろう」

 

俺は左手を掲げた。

 

「……ま、待って! 喋る! 喋るわよ!」

 

 

 

 

 

 

 

ってな訳で洗いざらいお話を2人から聞きました。

 

大体は前世の時に観たアニメと同じでした。

 

まとめると。

 

 

 

・ギル=グレアム氏は11年前に夜天の書が暴走して部下を何人も亡くしてる。

・その部下の仲にリンディさんの夫、クライドさんが居た。その時、クロノは3歳。

・ハラオウン親子に負い目を感じていたので自らの手で夜天の書を封印しようと決意。

・後に両親を失った八神はやてを発見、そして夜天の書の主であることを突き止めた。

・夜天の書が起動した時、主であるはやてごと封印する計画を立てる。

・そのためにも、両親、親戚がいないはやての保護者となる。

 

 

 

「ふざけるな! ふざけるなよ! はやてを……闇の書もろとも封印だと?」

 

実際に聞くと腹が立つ。

 

これだと、彼女は何のために……生を受けてこの世に生まれたんだ!

 

「し、仕方なかったんだよ……闇の書には転生機能が付いていて、主を亡くすと次の主を求めて転送されてしまう」

 

「私達だって、本当は……そんな事したくなかった。お父様だって、本当は……」

 

そうか、彼女達だって、辛かったのか。

 

大本は、夜天の書を改悪した先代の主達だな。

 

「まあ、良い。俺がいれば、そんな計画は中止だ」

 

俺は自分の胸を親指で差した。

 

「どういう事?」

 

「こういう事だ。エヴァ、ブックモード」

 

【了解です、お兄様】

 

ネックレスが光り輝いて、俺の手には漆黒で、紅い装飾の本が現れた。

 

「……そ、そんな……」

 

「な、何で……あんたが……その本を?」

 

アリアとロッテは目を見開いて俺の本を見つめた。

 

「この本の名は『武神の魔導書』。かつて、古代ベルカの騎士達の武器を蒐集するために作り出された魔導書だ。そして……」

 

俺は一呼吸おいてから言った。

 

「闇の書……いや、正式名称『夜天の魔導書』と同時に作られた姉妹機だ」

 

 

「!!」

「!!」

 

 

アリアとロッテは声を出さずに驚いていた。

 

【私の中には姉妹機、夜天の書のバックアップデータが入っております。このデータを使用すれば闇の書……いえ、夜天の書は元の魔法蒐集デバイスに戻ります】

 

「と言う訳だ。これで良いか?」

 

 

「……」

「……」

 

 

アリアとロッテは無言だった。

 

「どうした?」

 

「……良かった……お父様、今でも……1人でお酒を飲んで悔やんでいたから……」

 

「ええ……」

 

やはり、はやてごと封印すると言うのは苦肉の策だったのだろうな。

 

「で、どうする? 俺に協力するか?」

 

「分かったわ。貴方に協力する」

 

「ええ」

 

アリアとロッテの協力を得られる様になった!

 

「さて、俺はグレアムさんと面識無いからなぁ……とりあえず、リンディさんと連絡を取ってみるか」

 

「やっぱり、リンディ提督と知り合いだった」

 

「そうだよ。リンディさんに頼まれて嘱託魔導師やってるけど?」

 

「……思い出した! 最近、リンディ提督がウキウキしてた理由……貴方でしょう!?」

 

アリアが驚いた口調で俺に語りかける。

 

「何故に?」

 

「だって、リンディ提督って幼い男の子が好みだって話よ? 有名だもの」

 

 

……。

 

 

リンディさん……貴女は一体管理局でどんな事をやってるんだ?

 

思わず眉間に皺を寄せたくなるが、そこは我慢する。

 

「まあ、参考に聞いてみるが……リンディさんは普段、どんな行動を?」

 

「ん~…、私が聞いたのは、たまに通りがかる男の子に『子供を見つめる母親な視線』じゃなくて、『獲物を狙う肉食獣的な視線』を向けたとか……」

 

「あたしが聞いたのは、10歳位の男の子に過剰なスキンシップをする……とか。頭を撫でて、抱きついて、ほっぺたスリスリ的な?」

 

やべぇ。どっちも違和感が無いぞ。

 

原作のリンディさんなら絶対にしないだろうが、こっちのリンディさんは俺を見る目が全然違うからなぁ。

 

「……良く分かった」

 

「……ひょっとして、身に覚えがあるとか?」

 

「いや、流石にそこまでは。ただ、一目会った時から『アレスちゃん』と呼ばれたり、ちょっとだけ艶めいた視線を向けられる事があった位だが……」

 

「滅茶苦茶ストライクゾーン入ってるじゃん。そのうち、管理局内で抱きしめられたり、ほっぺたスリスリされるわよ?」

 

 

両方あり得るからタチが悪い!

 

 

「……昔からああなのか?」

 

「そうだねぇ~クロスケが小さい時とかかなり可愛がっていたからねぇ~。最近は背が伸びてきたからあんまりやらなくなってきたけど」

 

「そう言えば、同僚のレティ提督も貴方みたいな男の子が好きって言う噂聞いたわね。最近は自分の息子にご執心らしいけど」

 

おぅふ。レティさんもショタでしたか!

 

うーむ、俺みたいな容姿やなんかは最高の獲物なんだろうな。

 

「管理局はショタが多いのか?」

 

「ん~? 言われてみれば、結構いるかもね。そうそう、あたしとアリアは違うよ」

 

「ええ。小さな男の子よりも渋いおじさんの方が良いわね」

 

「そうだね~、あたしもアリアと同じかな」

 

この姉妹はオジコンと申すか。

 

管理局は一癖も二癖もある連中ばかりなのか!

 

 

もし、レジアスのオッサンが少年偏愛(ショタコン)とかだったら俺は全力で排除せねばなるまい!!

 

 

「ああ、分かった。とりあえず、リンディさんに連絡取ってみる」

 

俺はリンディさんに向けて通信を飛ばす。

 

 

 

 

 

『ハイハーイ。あら……アレスちゃん♪』

 

声からして嬉しそうな雰囲気が伝わってきます。

 

表情もニコニコしてご機嫌なのがよく分かります。

 

「お久しぶりです、リンディさん」

 

『どんな用かしら? デートのお誘いならいつでも、喜んで受けるわよ♪』

 

「いえ、デートでは無いんですが……」

 

『そう…………』

 

途端にどんよりした雰囲気に包まれるリンディさん。

 

後ろのアリアとロッテは呆然としていた。

 

「えっと……ですね。ギル・グレアムさん……とお話がしたいのですが」

 

『え? グレアム提督と? どんな用件かしら?』

 

俺は後ろのアリアとロッテを見せてから今日あった出来事を話す。

 

 

 

 

 

話終わった時にはリンディさんの背後には黒いオーラが立ち上っていた。

 

顔は笑顔なんだが……なんだ? 笑顔に見えない。

 

『アレスちゃんに……怪我を……? しかも、半年も……。半年“も”入院生活ですって……?』

 

アリアとロッテは真っ青になってガタガタ震えていた。

 

「あ、リンディさん、気持ちは受け取りますが。とりあえず、頭を冷やしては……」

 

『ありがとうアレスちゃん♪でも、それとこれは別です。今からそのいけないネコ達を引き取りに行きますから……』

 

ん? リンディさん……近くにいるんかいな?

 

『ちょっと、かあ…ゴホン! リンディ提督! 何処に行かれるのですか!?』

 

姿は見えないが、声が聞こえた。

 

この声は、クロノだな?

 

『邪魔はさせないわ、クロノ。貴方のお師匠様が……アレスちゃんに……大怪我を負わせようとしたのよ!?』

 

『はぁ!?』

 

リンディさんは顔を横に向けてから画面の死角にいるであろう、クロノと会話していた。

 

『だから、今から2人を引き取りに行ってから然るべき恐育を……!』

 

口から煙の様な蒸気を吐き出して目が妙に光り輝いているリンディさん。マジにキレております。ってか、スゲー恐い。

 

『いや、だからって……』

 

『そこをどきなさい……クロノ』

 

『くっ!』

 

ドアが開く音が聞こえた。どうやらクロノは逃げた模様。

 

後ろでは『クロスケ! もうちょい粘りなよ!』とか『根性無し! エイミィの尻に敷かれろ!』とか聞こえたがスルーしておく。

 

『さあて、アレスちゃん? アレスちゃんのお家……住所を教えてくれないかしら?』

 

非常に恐いです、リンディさん。

 

目が血走ってて普段の優しさが全く見えません。

 

『言っちゃダメよ!』とか『言ったらアンタの貞操が危険だよ!』と小声で話しかけてくるアリアとロッテ。

 

〈どうした方が丸く収まるかな?〉

 

〈ん~……『取り付く島も無い』ですね〉

 

エヴァもお手上げだった。

 

すると、ドアの開く音が聞こえた。

 

誰かがやってきたのだろうか?

 

『リンディ! 貴女、何処に行くのかしら!?』

 

『レティ!?』

 

驚いた顔で横を見るリンディさん。

 

どうやら、同僚のレティさんが来たみたいだ。

 

アニメでは余り出番が無かったが……確か、つり目で眼鏡をかけたキャリアウーマン風な感じの人だったな。

 

『もしかして、仕事を私に丸投げして……最近、嘱託魔導師になった『アレス』ちゃんの所に行くんじゃないでしょうね!?』

 

レティさんェ……。

 

俺は心の中でため息をついていた。

 

『そ、そんな事……するわけ無いじゃない! クロノ! 貴方! レティに言ったわね!?』

 

『~♪』

 

音程が少し狂った口笛が聞こえてくる。ひょっとして……クロノ?

 

だとしたら意外とお茶目だな。

 

『さあ、早く仕事を片づけて貰うわよ……!』

 

そう言ってリンディさんの耳を引っ張るレティさん。

 

『痛い! 痛いわよ!』

 

そして、俺の目の前に現れるレティさん。

 

 

『……』

「……」

 

 

俺とレティさんはお互いに目を合わせていた。

 

「えっと……?」

 

『あ、私はレティ・ロラウンと申します。(リンディのヤツ~! 私にほとんど報告しなかったのはコレが理由だったのね!?)」

 

「藤之宮アレスです。リンディさんにはお世話になってます」

 

『良いのよ。リンディの事はテキトーにして良いからね』

 

『レティ! 貴方は息子がいるでしょう!?』

 

『五月蠅いわね! グリフィスも可愛いけど、この子も捨てがたいのよ! それにアンタはクロノがいるでしょう!?』

 

『クロノはもう大人なの! アレスちゃんは子供! しかも私の勘がささやくのよ! アレスちゃんはずっとこのままだって!』

 

『っ! さすがリンディね! 私も今会った時にそう思ったのに!』

 

画面の向こうで言い争うリンディさんとレティさん。

 

言い争ってる内容が色々と終わってる様に思えるのだが。

 

後ろの方で『あー、噂は本当だったのか』とか『クロスケも大変だねぇ~』とか他人事の様に呟いているアリアとロッテがいた。

 

『うう~! アレスちゃんは私が先に見つけたのよ! 貴女には渡さないわ!』

 

『そんなのは関係無いわ! 私が運用部提督を務めてる限り、アレスちゃんは貴女の好きなようにさせないから!』

 

お互いににらみ合って互角の戦いをしている。

 

『これは話にならないな』

 

クロノが画面の前に立つ。

 

どさくさに紛れてクロノがリンディさんとレティさんを押しのけていた。

 

2人は気付かず不毛な言い争いを続けていた。

 

「おお、クロノ」

 

『話は聞かせて貰った。闇の書……いや、夜天の魔導書が元通りになるならこちらも何とか協力しよう』

 

「すまないな。で、この2人は?」

 

俺はアリアとロッテを指差す。

 

『明日にでも迎えに行く。今日はそちらに泊まらせてくれないか?』

 

「ああ、それは構わないが」

 

『あと、母さんが訳の分からない事言ってすまない……』

 

「……気にするな。いつもの事だろう?」

 

『確かに、ソレはそうなんだが。母さんもこの癖が無かったらなぁ……』

 

クロノは言い争ってるリンディさんとレティさんを眺めながら深いため息をついた。

 

「まあ、良いんじゃないか? 美人だが、この癖のお陰で変に言い寄ってくる男が来ないだろう?」

 

『母さんに美人とか言わないでくれ……。君がそんな事言うと母さんは喜んで明日の迎えに行くかもしれないだろ』

 

……否定出来ない所が怖い。

 

「そうだな。あまりリンディさんを褒めるのは止めておくよ」

 

『そうしてくれ……。さすがに将来、歳下の君をお義父さんと呼びたくない。明日の午後にでも迎えに行くよ。その後の予定は会った時に話し合おう』

 

「俺も年上の義息子とか勘弁してくれ状態だ。うむ、分かった」

 

『それじゃあな。母さんとレティ提督が気付かないウチに通信を切らせてもらうよ』

 

「了解」

 

そう言って通信が切れる。

 

ちなみにこの後、通信を勝手に切った為にクロノがリンディさんとレティさんに追いかけ回されて大変だった……と本人の口から聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

次の日。

 

学校が終わってからクロノと会うために翠屋に行く。

 

面倒だから俺がそこに指定したのだ。

 

なのはは丁度夜天の書の蒐集に行ってるからいない。

 

桃子さん、士郎さんには昨晩こっそり説明しておく。

 

そうそう、アリアとロッテも人間形態で翠屋に一緒に来ているハズだが。

 

店に入るとクロノ、アリア、ロッテの3人はテーブルに着いていた。

 

「ウィーッス」

 

俺はクロノの隣に座る。

 

「来たか」

 

「ああ。それで、どうする? とりあえず、グレアムさんと会話したいのだが」

 

「そうだな。近いウチに会う様に段取りしておこう」

 

桃子さんがニコニコしながら俺の前にオレンジジュースとケーキが置かれた。

 

ケーキを頼んだ覚えは無いんだが?

 

「……アレ?」

 

「うふふ、試作品よ。アレスちゃんの口に合えば良いけど……」

 

「分かりました、頂きます」

 

俺はケーキをフォークですくって口に入れる。

 

チーズケーキに苺を混ぜたのか? 甘酸っぱい味が口に広がる。

 

美味い! やはり桃子さんのケーキは最高だぜ!

 

「どうかしら?」

 

「美味いです。さすが、桃子さんですね」

 

「ありがと♪」

 

「ただ、俺的にはもうちょっと甘みが欲しいかな~と思ったりしましたが」

 

「なるほどね。うん、今度作った時はアレスちゃんスペシャルで作るわね」

 

何ですか、そのスペシャルは。

 

「あ、ありがとう……ございます……」

 

俺は苦笑しながらお礼を言う。

 

桃子さんは違う客が来たのでそちらの方に向かっていった。

 

「……なあ」

 

「……言いたいことは分かる」

 

クロノが頬に冷や汗を流しながら聞いてくる。

 

「あの……なのはの母親は……ウチの母さんと同類か?」

 

「……」

 

俺は無言で頷いた。

 

「うわぁ……」

 

「アンタも大変だね」

 

同情の目で俺を見てくるアリアとロッテ。

 

「ちなみに俺の母親も全く同じだ」

 

「そうか。君もか……」

 

遠い目をしてるクロノ。

 

「だから、リンディさんとレティさんを見てもいつもの光景にしか見えない」

 

「なるほど」

 

「確かに、いつもあんな調子なら2人を見ても別に何とも思わない訳だ」

 

それに更にプレシア女史までいるのだからもう慣れている。

 

「それで、夜天の書は今はどんな状態だ?」

 

クロノが話を切り替えてきた。

 

「ああ、250ページを超えたと思ったが。とりあえず、400ページを超えないと管制人格が起動出来ないみたいだ」

 

「なるほど……って、何処で蒐集してるんだ?」

 

「うむ、とある世界だ。蒐集相手は其処に住む原生生物だ。人じゃない」

 

「う~む、本来ならあまりよろしくないんだけどなぁ。かと言って魔導師から蒐集したら大事になる。目をつぶるしかないか……」

 

軽いため息をつくクロノ。

 

「ちなみに俺を蒐集すれば早く済むぞ、と進言したが0.5秒で却下された」

 

「サラリと言う君も大概なんだが」

 

俺を蒐集すれば666ページまでいけるのだがなぁ。

 

気を魔力に変換する指輪装備してるから魔力が尽きる事は無いし。

 

「まあ、そんなところかなっと、そうだ。こないだ……乗った船って?」

 

「ん? ああ、アースラの事か?」

 

「あれって……何か強力な砲撃とか搭載されてるか?」

 

「……どういう意味だ?」

 

「万が一だが。もし、失敗した時の保険だな。出来るだけ失敗はしないようにしておくが」

 

「……分かった。アルカンシェルを搭載するようにしておく」

 

「それはどんなヤツだ?」

 

性能は知っているが、一応聞いておく。

 

「魔力弾を発射して着弾後一定時間の経過によって発生する空間歪曲と反応消滅で対象を殲滅する。その効果範囲は発動地点を中心に百数十キロに及ぶ代物だ」

 

「過去にクロスケの父さんと一緒に闇……いや、夜天の書を葬った魔導砲さ」

 

ロッテの言葉でテーブルの空気が暗くなる。

 

「そうか。嫌な事を思い出させる事を言ってすまない。まあ、最善は尽くす。失敗はしない様にする」

 

「気にしないでくれ。僕は当時の事は余り覚えていないから。それじゃあ、頼む」

 

そのあと、クロノ達と別れる。

 

【成功させましょうね? お兄様?】

 

「ああ。エヴァが一番の要だからな。頼むよ、エヴァ?」

 

【お任せ下さい、お兄様♪】

 

さあ、物語は佳境に入ってきたか?

 

リインフォース、待ってろよ。

 

主と幸せな時を過ごして貰うんだからな。

 

 

 




 
レティさんェ…


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第23話 グレアム氏との対談

 
原作乖離は更に進みますw



 

 

 

 

 

 

とりあえず、グレアム氏との対談の約束をこぎ着けた。

 

さてさて、他の皆にもこの事は話しておこうかな。

 

勝手な事をしたから皆キレるかもしんないなぁ~。

 

殺されないように覚悟しとこ。

 

魔力蒐集が終わってから全員、八神家に集まる様に言っておく。

 

本日休みだった人にも連絡して来るように伝えておいた。

 

集まったのは俺、なのは、フェイト、ヴォルケンリッター、ユーノ、ユナ、アルフ、恭也さんに美由希さん。

 

それとプレシア女史とアリシア、リニス、家主のはやてとアリサ、すずか。

全員勢揃いだぜ!

 

女の子比率が高いから部屋の中が非常に華やかな感じではある。

 

石鹸とかシャンプーとか甘~い香りが漂っているが。

 

全員が俺の方を向いていた。

 

「いきなり呼び出すなんてアレスちゃんったら。それで? 何か起きたのかしら?」

 

カップを傾けて中にある紅茶を飲むプレシア女史。

 

「うむ、単刀直入に言うと、昨日の夕方に管理局のヤツに襲われた」

 

俺がそう言うと、部屋の空気が変わった。

 

え……? 何か、室温が15℃位下がった様な気がするんですが?

 

「……それは聞き捨てならない話ねぇ?」

 

カタカタと手を震わせて紅茶を飲むプレシア女史。

 

 

「……ああ。確かに、聞き捨てならん話だ」

「コレは由々しき事態よねぇ?」

 

 

瞬時に騎士甲冑を纏ってるシグナムとシャマル。

 

ソレを見てからため息をつくヴィータとザフィーラが居た。

 

 

 

「アレス君を……襲ったの?」

「アレスを……?」

「それはあかんなぁ~……。実にあかんよ?」

「ええ……はやてちゃんの言うとおり、非常にいけない事だね?」

「……許さない」

「アレスお兄ちゃんを……殺そうとしたの? 許せない!」

 

 

 

なのは、フェイト、はやて、すずか、アリサ、アリシアの順に喋る。

 

全員、瞳が濁ってる様に見えるんだが!

 

なのはの様子を見て『ちょ、ちょっと!恭ちゃん助けて!』とか『すまん……無力な兄で済まない、美由希』とか言ってる兄妹がいたが、無視した。

 

フェイトの様子を見て『ひぃ~! フェイトが修羅になった~!』と言ってるアルフが居たが、コレも無視した。

 

ユーノとユナはお互い抱きしめ合ってガタガタ震えていた。ちなみに顔は真っ青である。

 

リニスは『さすが、アリシアとフェイトですね。これならいつでも抹殺(エリミネート)出来ますよ』と呟いていた。もう知らん。

 

「さあ、アレスちゃん? その管理局員は誰なのか喋って貰うわよ? 私自らの手でこの世から消し去ってあげるから……」

 

狂気の微笑みを繰り出すプレシア女史。

 

いつでも抹殺(エリミネート)可能状態になってます。ぶっちゃけ言うと恐いです。

 

「私も手伝うよ……母さん。アレスを襲うだなんて!」

 

もうやだ、バーサーカーテスタロッサ親娘。

 

「待て待て待て。見ての通り俺は無傷だし、相手は返り討ちにした」

 

ここで止めないと全員で管理局に殴り込みに行きかねん。

 

俺が参戦しなくても管理局の半分以上は破壊出来るだろう。

 

「流石だね」

 

「ってか、アレスは何をしたの?」

 

ユーノとユナが聞いてくる。

 

「うむ、話せば長くなるのだが」

 

俺は昨日起きた事を洗いざらい話した。

 

 

 

 

 

「私のせいでアレス君が襲われたんか……ごめん……ごめんな……アレス君」

 

今に涙を流しそうな雰囲気のはやて。

 

「はやてのせいじゃないよ。どのみち、この夜天の書に関わっていた以上、なのはやフェイトだって襲われていたかもしれないよ?」

 

「確かに」

 

「うん、私やフェイトちゃん、お兄ちゃんやお姉ちゃんだって同じように戦いになったかも」

 

「そうだな。しかし接近戦なら何とかなるが、遠距離となると」

 

「ん~……私と恭ちゃん一緒なら何とか引き分けくらいに持ち込めるかもしんないけど……」

 

ぶっちゃけ、高町兄妹ならそのうち何とか勝てるようになると思うのは俺だけだろうか?

 

縮地みたいな神速持ってるからそれをマスターした日には下手な魔導師より強いと思うのだが。

 

「しかし、許し難いな。我らだけでなく、主はやてまで一緒に封印するとは」

 

歯ぎしりしながらシグナムは呟く。

 

「ああ。あたしもはらわたが煮えくりかえる思いだぜ」

 

ヴィータも同じ様に歯ぎしりしていた。

 

「確かに、その気持ちは俺も分かる。だが、もしも……だ。このままこの壊れた夜天の書を放置していたら、シグナム。君はどうしていた?」

 

俺はシグナムの目を見ながら問い訪ねた。

 

「アレスちゃんが前に言った様に、主はやての下半身麻痺が進行して……多分、我らは蒐集を始めていたでしょう」

 

「そして、何も知らずに666ページ集めて……どうなる?」

 

「……主はやてごと取り込み、この街……いや、この世界を滅ぼしていたかも……知れません」

 

「だろうな。もしくは、あの姉妹がやって来て君達は封印か滅ぼされていた可能性も、ある」

 

「確かに、損害を考えると……はやて。貴女を夜天の書ごと封印した方が良い結果になったわね」

 

プレシア女史が口を開いた。

 

「だからって!」

 

「ああ。だからと言ってそれが許される訳じゃない。だが、グレアム氏はそれしか方法が無かったんだ。アルカンシェルと呼ばれる魔導砲で滅ぼしても転生機能で違う世界に転生してまたその世界で暴走して多くの命を奪って……。イタチごっこだよ。永遠に続く……な」

 

俺が呟くと、全員が口を閉じてしまった。

 

【ですが、私がここにいるならもう大丈夫です。私と夜天の書は99%同じ構成で作られた魔導書。しかも、私の中には作られた頃の夜天の書のデータがバックアップとして残っています。これさえあれば、夜天の書はかつての姿に戻ることが出来ます】

 

俺の首にかけられたネックレス、エヴァが喋る。

 

「ほんま、アレス君とエヴァちゃんがおって助かったわ。私は……アレス君にどうやって恩返しすればええんやろか?」

 

「さあ? とりあえず、元気に歩く姿を見せてくれれば良いさ」

 

俺はそう呟いて紅茶を飲んだ。

 

「言う事は、早く歩けるようになってアレス君に嫁げと言う事やな? 了解や!」

 

「ぶふぅ!」

 

俺は豪快に紅茶を噴き出した。

 

「わぁ!」

 

目の前にいたユーノがシールドを張る。ミッド式の魔法陣が展開された。

 

「何でそこまで話が飛躍するんだよ!」

 

「仕方無いやんか! ここまでやって貰ってお金で済む問題じゃあらへん!こうなったら私の身体をアレス君に捧げるしか無いやんか!」

 

「主はやてが捧げるなら私も捧げるしかあるまい!」

 

「私もよ! アレスちゃん! シグナムほどナイスバディじゃないけど……私の身体を好きにして!」

 

はやて・シグナム・シャマルの3人は暴走させたら始末に負えん!

 

「……わりぃ。あたしの身体じゃ、さすがにアレだからさ。でも、困った時はいつでも協力してやる」

 

「うむ。遠慮無く頼んでくれ」

 

「じゃあ、時にこの3人の暴走を止めてくれ」

 

俺はヴィータとザフィーラに頼んでみた。

 

「すまねぇ……まだ死にたくねぇんだ……」

 

「……不甲斐ない我らを許してくれ」

 

やっぱり役立たずコンビの2人だった。

 

 

 

「……いくらはやてちゃんでもそれは許し難い行為だよ?」

「ダメだよ、はやて。私だってアレスに身体を捧げたいんだから」

「ちょーっとそれは了承し難い行為だよ?」

「はやて? どさくさに紛れて自分だけ良い思いしようとしてないかしら?」

「アレスお兄ちゃんはそう簡単に渡さないよ?」

 

 

 

予想通りの展開。

 

俺は恭也さん、美由希さん、ユーノ、ユナ、アルフ、リニスに救いの目を差し向けた。

 

 

 

「すまない、忍を残して逝くのは」

「ごめん、あたしも将来結婚したいし」

「無事を祈ってるよ」

「ユーノを残して逝きたくないよ」

「ちょっあのフェイトを止めるのは……あたしも死にたくないし」

「諦めて下さい♪」

 

 

 

実に薄情な言葉を言われてしまった。

 

俺はプレシア女史に目を向けた。

 

「アレスちゃん? アリシアとフェイトをよろしくお願いするわ」

 

『四面楚歌』と言う単語が頭をよぎった瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

また例によって勝負が始まった。

 

なのは、フェイト、アリシア、はやて、アリサ、すずかの6人による七並べだった。

 

白熱した勝負が繰り広げられていた。

 

俺はプレシア女史に話しかけた。

 

「なあ、リンディさんにプレシアさんの事話して良いか?」

 

「ん~……以前のジュエルシード事件がどうなってるかよねぇ。輸送船のアレが只の事故なのか故意的に起きた事故なのかが管理局にどう伝わってるか……」

 

「なるほど。そこら辺をちょっと探ってみるか。もし、プレシアさんが指名手配されて無かったら?」

 

「その時は喋っても良いわよ。フェイトの事も大丈夫」

 

ふむ。多分、リンディさんは食い付いて来るな。

 

「分かった。俺の楽観的予想なら大丈夫そうだが。ちなみに輸送船のアレは証拠を残した記憶は?」

 

「もちろん無いわよ。事故を装う様にしたんだから」

 

まあ、どんな手を使ったかは聞かないが。

 

「分かった。今度会った時に聞いてみる」

 

「そうね。しかし、リンディさんとは仲良くなれそうね」

 

「どして?」

 

「だって、アレスちゃんを襲った奴らを厳重に処罰しようとしたからね」

 

そう言って頭を撫でてくるプレシア女史。

 

「まあ、そうだが」

 

「だからね? こっそり私に教えて頂戴? どんなヤツだったのか。私直々にお礼をしてあげるから」

 

プレシア女史の目は黒く輝いていた。

 

今なら視線を合わせただけで人を死に追いやることが出来そうだ。

 

「いや、その気持ちだけ受け取っておくよ」

 

これ以上あのアリア・ロッテ姉妹の敵を増やしたらマジでシャレにならんと思う。

 

「そう? もう、アレスちゃんは優しいのね♪」

 

そう言って抱きしめてから頬を撫でてくるプレシア女史。

 

俺は心の中で苦笑するしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

と言う訳で約束の日が来ました。

 

本来なら、俺だけ来るはずだったのですが。

 

「ほー、ここが時空管理局本部かー」

 

「確かに大きいな」

 

「でけぇ……」

 

俺の後ろに居るのは八神ファミリーの面々。

 

『アレス君だけに任せるなんて嫌や! 私の事なんだから私も加わるで!』

 

と言う事でグレアム氏との会談に来ることとなりました。

 

入り口にいるのですが、周りからの視線が突き刺さります。

 

男性職員の視線はシグナムとシャマル。一部にヴィータとはやての両人をジロジロ見てる。

 

一部のお前ら……少女偏愛(ロリコン)じゃあるまいな?

 

女性職員の視線は大半が俺。たまにザフィーラ。

 

そしてその女性職員達の視線は肉食獣的な雰囲気を帯びていた。

 

ここの管理局本部の女性職員はショタが多いんかい!

 

微妙に嫌な予感を感じるが、とりあえず中に入ろうか。

 

 

 

 

 

 

グレアムさんの応接室に案内されて中に入ると。

 

グレアムさん、リンディさん、レティさん、クロノの4人がいた。

 

クロノは俺の顔を見てから手を前に出して拝むようにしていた。

 

どうやら、『すまない、この2人を止めることが出来なかった』と言いたいのだろう。

 

まあ、クロノじゃ止めることは出来まい。

 

無論、俺でも無理だがね!

 

さて、グレアムさんは別段変わった様子は見受けられないが。

 

リンディさんはレティさんはニコニコ微笑んでいた。

 

実に嬉しそうに見える。

 

そう言えば、アリアとロッテの2人はどうなったのだろうか。

 

少し気になったが、以前リンディがあの2人にお仕置きするような事を言っていたのを思い出したので聞くのを止めておいた。

 

触らぬ神に祟り無し、頭に浮かんだことわざだった。

 

似たようなヤツで『触らぬハゲに抜け毛無し』と言う言葉も浮かんだが、アレは某ギャルゲー(同級生2)の中だったなと更に思い出した。

 

「初めまして……だね。私がギル・グレアムだ」

 

「こちらこそ、嘱託魔導師をやってる藤之宮アレスです」

 

「あの、八神はやて……です」

 

そのあと、次々と自己紹介をする。

 

「さて、本日ここに赴いたのははやてが持つ『夜天の書』に関する事です」

 

「夜天の書? 闇の書では無いのかね?」

 

不思議そうな表情で聞いてくるグレアムさん。

 

「はい。私が持ってるこの書、『武神の魔導書』のデータから明らかになっております」

 

俺の手には黒色で真紅の装飾が施された本がある。

 

「……数々の文献でも名前だけ載っていて存在を誰1人として確認した事なかった幻の……魔導書。まさか、この目で見ることが出来るとはな」

 

「しかも、闇……いえ、夜天の魔導書の姉妹機だったなんてね」

 

グレアムさんとレティさんの2人は驚いた顔で俺の持つ魔導書を見つめていた。

 

「アリアさんとロッテさんから全てを聞きました。夜天の書はこちらで元に戻す予定です」

 

「そうか。ならば、私が立てた計画は全て白紙に戻す。すまない……」

 

そう言ってグレアムさんははやての前で土下座する。

 

「グレアムおじさん……」

 

場が湿っぽくなって来たが、そこは切り替える様に誘導する。

 

「さて。グレアムさんにお願いがあります」

 

「……どんなお願いかね?」

 

「お願いするのは、はやてが独立するまで資金援助を打ち切らないようにすることですね。あとは、気軽に八神家に遊びに来て欲しい」

 

「アレス君?」

 

「見ての通り、はやてには母親、父親がいない。最近になってシグナム達がいる様になったが……」

 

「……そうだな。そうさせて貰うよ」

 

「グレアムおじさんがお父さん代わりかぁ……ほんなら、お母さんは誰になるんかな?」

 

はやての呟きで反応する人がいた。それはリンディさんとレティさんだった。

 

「その手があった……! はやてちゃんを義娘にしてアレスちゃんと結婚……そうすればアレスちゃんは義息子に!」

 

「グリフィスも妹がいたら喜ぶでしょう!」

 

2人のとんでもない呟きに俺はクロノの顔を見る。

 

「……」

 

クロノは無言で首を横に振った。

 

やはりクロノでは荷が重すぎるか。

 

「何故2人が今日の会談に喜びながら来たのか理由が分かったよ……」

 

グレアムさんは苦笑しながらリンディさんとレティさんの様子を見ていた。

 

「オメーも大変だな……」

 

ヴィータのボソボソと俺に語りかける。

 

「……いつもの事だ」

 

俺はそう返答しておいた。

 

いちいちツッコミを入れていては話が先に進まなくなるからな!

 

しかし、この暴走淑女×2はどうすれば良いのか。

 

ふむ、フェイトがリンディさんの養女になるフラグはキッチリとへし折ってるからな。

 

このままはやてがリンディさんの義娘になるのは問題ないだろう。

 

「さあ、はやてちゃん♪私の事はお母さんと呼んで良いのよ?」

 

「ダメよ、はやてちゃん♪こんなお母さん持つと将来は超甘党になって糖尿病になるわよ?」

 

はやては2人に詰め寄られて視線を右往左往させていた。

 

「主はやてに任せます……」

 

「はやてちゃんの好きな方を選んで下さい」

 

シグナムとシャマルははやてに丸投げしたようだ。

 

確かに、どちらが母親になっても2人には特に問題は無いだろう。

 

はやてが俺と結婚したら自動的に2人も一緒に付いて来るのだから。

 

「え、ええっと……アレス君は? お義母さんにするなら……どっちがええかな?」

 

何で俺に話を振るのかねぇ!?

 

ぶっちゃけ言うと、どちらがなっても同じ未来しか思い浮かばないんだが。

 

「な、何故に俺に話を振る?」

 

リンディさんとレティさんの視線が俺の方を向く。

 

一言で言えば、羨望の眼差しと言うのであろうか。2人とも『私がお義母さんが良いわよね?』と目で語っていた。

 

「アレスちゃんはどちらがはやてちゃんの母親にふさわしいと思う?」

 

「もちろん、こんな何でもかんでも砂糖漬けにする人より私よね?」

 

何気なく毒を吐くレティさん。

 

まあ、確かにリンディさんのあのお茶はどうかと思うけどね。

 

ちなみに2人の目は光り輝いていた。

 

目から光線でも出せるんじゃないかと思えるくらいに。

 

「俺は2人ともどちらでも問題は無いのですが。それよりも、他の家族の意見は聞かれないのですか?」

 

 

「え?」

「え?」

 

 

2人は驚いた顔で俺を見る。

 

「確か、リンディさんにはクロノが、レティさんには息子さんがいると伺っていますが?」

 

「アレス、君は……」

 

「クロノは黙ってなさい!」

 

有無を言わさずクロノを黙らせるリンディさん。

 

「まあ、引き取った先で兄妹の折り合いが悪くなるようならちょっと考え物ですよねぇ?」

 

ぶっちゃけ言うと、クロノもグリフィスもはやてをないがしろにする様な人物ではないと知ってるが。

 

「確かに、はやてちゃんと仲が悪くなるのは……問題ね」

 

「うちのグリフィスに限って……。でも、あり得ない話では無いわね」

 

2人は顎に手を当てて考え込む。

 

「上手いな……」

 

「見事に責任を2人の息子になすり付けてるぞ……アイツ……」

 

ヴィータとザフィーラのヒソヒソ声が聞こえる。

 

「さすがね。はやてちゃんの目は間違っていないわ」

 

「ああ。さすがは我らの主。そこに痺れて憧れます」

 

シグナムとシャマルの会話。

 

シグナムははやての部屋でジョジョでも読んだのだろうか。

 

確かにジョジョ全巻は存在はしているのだが。

 

「ふむ……この2人をこうも手玉に取るとは……侮りがたいな」

 

グレアムさんも目を細めて顎に手を当ててリンディさんとレティさんの様子を見ていた。

 

「さあ、クロノ? 妹が欲しくないかしら? 義妹だけど、欲しいわよね? ね?」

 

クロノに詰め寄るリンディさん。

 

クロノは冷や汗を流しながら後ずさり、壁際に追い込まれていた。

 

こちらからはリンディさんの顔は見えないが、かなり迫力あるのだろう、クロノの目が涙ぐんでいた。

 

「え? えっと」

 

返答に窮するクロノ。ここでいらないと答えたら……どうなるかはすぐに予想出来る。

 

レティさんは通信を開いていた。

 

空間ディスプレイには12歳位の少年が映っていた。

 

眼鏡をかけていて、レティさんに似ている。

 

「グリフィス? 妹が欲しくないかしら? 欲しいわよね? 欲しいと……言いなさい!」

 

もはや脅しに近いんですが。

 

『い、いきなりどうしたんですか!? 母さん!?』

 

混乱しているグリフィス少年。

 

まあ、母親から通信が来ていきなり妹が欲しいわよね?と問われたら混乱するわな。

 

〈お兄様も人が悪いですわね。クロノさんとグリフィスさんに丸投げするなんて〉

 

〈仕方ないだろ。この場で俺が選んだら、片方が自殺しかねない勢いになりそうだったし〉

 

〈確かに、そうですわね〉

 

〈それと、面白そうだったし〉

 

〈やっぱり、人が悪いですわね〉

 

エヴァと念話で会話していると、驚きの声があがっていた。

 

「な、何ですって!!? 妹はいらない!?」

 

声の主はレティさんだった。

 

どうやら、グリフィスはいらないと返答したようだ。

 

「あ、ああー、妹が欲しかったんだ、はやてみたいな妹がー」

 

明らかな棒読み口調のクロノ。

 

そりゃ、折れるだろ。リンディさんから闇のオーラみたいなのが立ち上って見えるし。

 

俺の目の錯覚かも知れないが。

 

「コレで決まりね?」

 

満面の笑みでレティさんの方を向くリンディさん。

 

「ちょっと待ちなさい、リンディ! グリフィス、どういう訳か説明して頂戴!」

 

『だって、いきなり妹が欲しいって……ネコの子貰ってくるみたいに言われても』

 

「別に人さらいみたいな真似してる訳じゃないのよ!」

 

『え? 母さん……いつ男の人を見つけたの?』

 

目を大きく開いて驚いた顔でレティさんを見るグリフィス。

 

「違うわよ!」

 

『それなら、いきなり妹なんて出来ないよ? 母さん……人は独りで子供出来る訳じゃないから』

 

「そっちから離れなさい! 兎に角! 貴方が『うん、良いよ』と言えば万事解決なのよ!」

 

レティさん、それはもはや力技ですよ?

 

『母さん、ソレを言ったらいきなり僕に妹が出来そうじゃないか。理由を説明してよ』

 

「しょうがないわね! 簡潔に説明するわ!」

 

そんな訳でレティさんはグリフィスに説明をする。

 

 

 

 

 

『なるほどね』

 

「分かったかしら? だから、『うん』と言いなさい!」

 

『母さん……僕は別に妹はそこまで欲しくは無いんだけど。それに、そっちのクロノさんが欲しがってるじゃないか』

 

苦笑いしているグリフィス。

 

「……貴方にはアレが本当に欲しがっているように見えるの!?」

 

「あー、はやてが妹なら良いなぁー」

 

明らかな棒読み口調を続けるクロノ。

 

『うん、見えるよ』

 

サラリと言うグリフィス。

 

「……今度、貴方の眼鏡を調整しに逝きましょうか? 眼科か眼鏡屋に」

 

微妙に発音が違うんだが。

 

「そう言うわけで、ごめんなさいね~、グリフィス君?」

 

『あ、ハイ。それでは失礼します』

 

リンディさん満面の笑みで通信を切る。

 

レティさんは膝と両手を床について絶望的なポーズを取っていた。

 

彼女の周りの空間だけ、何故か暗さが増していた。

 

「と言う訳で。家族の同意も取れたから……はやてちゃん? 私の事はお義母さんと呼んで頂戴ね?」

 

「あ、は、ハイ……お義母さん……」

 

「う~ん……これで後ははやてちゃんとアレスちゃんが結婚すれば全てが叶うわね」

 

「まあ、こんな母だが……。不肖な兄になるかも知れないが。これからよろしくな?」

 

「はい、お義兄ちゃん」

 

「! お義兄ちゃん?」

 

びっくりした顔ではやてを見るクロノ。

 

……シスコン化してるのか?

 

「あの……お兄ちゃんって言うのダメ?」

 

「……いや、全然構わない」

 

「良かった~それなら、これからよろしくお願いします、クロノお義兄ちゃん?」

 

「……妹が増えて良かったな、うん」

 

大丈夫か? こいつ。

 

その後は、ヴォルケンリッターのメンツはクロノをどう呼ぶか、一悶着あったが。

 

 

シグナムは「義兄上」

ヴィータは「義兄貴」

シャマルは「義兄さん」

ザフィーラは「義兄者」

 

 

と言う風になった。

 

頑張って大きくなれよ、クロノ。

 

 

 

 

 

 

あとは、完成が近くなったらリンディさん、クロノ、グレアムさんは地球に来て貰う。

 

その他諸々の段取りを確認しあって夜天の書に関する会談は終了した。

 

はやてとヴォルケンリッターの面々はグレアムさんと話していた。

 

丁度、アリアとロッテも来たのでややぎこちないが、会話している。

 

「リンディさん?」

 

「ん? いやねぇ~お義母さんで良いのよ?」

 

既に頭の中でははやてと結婚してる事になってるんかい!

 

「いやいやいや、まだ結婚してませんが」

 

「でも、それは確定事項でしょ? なら問題無いわ♪」

 

問題だらけだわ! 管理局内でんなこと言ったらどうなるか、たまったもんじゃねぇ!

 

「いえ、さすがに局内では。とりあえず、今まで通りで呼ばせて貰います」

 

「もう、アレスちゃんったら。それで? どんな用事かしら?」

 

俺はレティさんを立ち直らせようとしてるクロノを見ながら喋る。

 

「最近、魔導師と知り合ったんですよ」

 

「へぇ?」

 

リンディさんの目が少し細くなる。

 

「名前は『フェイト・テスタロッサ』。ミッド式の魔法を使いますね」

 

「テスタロッサ? まさか?」

 

「知り合いにいるんですか?」

 

「いえ、昔……管理局の動力炉の研究していた人に『プレシア・テスタロッサ』さんと言う方がいて」

 

「そう言えば、母親がそんな名前でしたよ?」

 

「っ!」

 

驚いた顔で俺を見るリンディさん。

 

「まあ、なのはが先に知り合ったんですがね。そしたら、2人とも仲良くなって。それで、今は一緒に夜天の書の魔力蒐集に協力してもらってるんですよ」

 

「なるほど……いえ?でも、テスタロッサさんの娘さんは……確か……事故で……」

 

ブツブツ呟くリンディさん。

 

どうやら、ジュエルシードの件は知らないみたいだ。

 

コレは好都合と言えば好都合だな。

 

「そう言えば、双子のお姉さんがいましたよ? アリシアって言う名前の」

 

「……! まさか……!」

 

「プレシアさんが何か悪いことしたんですか?」

 

俺は少し悲しそうな顔でリンディさんに尋ねる。

 

「いえ、大丈夫よ。特に何もしてないわ。(そうよね……。人造魔導師と言う証拠は……無いし。あの事故以降、噂は聞いてないし)」

 

「まあ、機会があったら紹介しますよ。魔導師としての腕は結構良いみたいですし」

 

「そう? それならお願いするわね、アレスちゃん♪」

 

「ダメよー! それ以上リンディに戦力を増強させないわよ! アレスちゃん! 貴方だけは私の所に来て頂戴!」

 

レティさんがいきなり乱入して叫びだした。

 

「何を言ってるのよ貴女は! アレスちゃんは私の直属の部下よ!」

 

「認めないわよ、リンディ! 貴女はいずれアレスちゃんの義母になるんでしょうが! だから、今のウチでも私に貸しなさい!」

 

「何を戯けた事を! なのはちゃんを貸してあげるわよ!」

 

「くっ! それはそれで悪くないけど……ダメよ! やっぱりアレスちゃんよ! 頭撫でたりほっぺたスリスリしたいのよ!」

 

わー、本音が出ましたよ、レティさん。

 

「本性を現したわね? アレスちゃん、間違ってもレティの部屋で2人っきりはダメよ? 上がりたくもない大人の階段を上がるかも知れないわよ?(私だって頭ナデナデしたりほっぺたスリスリしたいわよ!)」

 

「何をアレスちゃんに刷り込んでるのよ! ごめんね? このオバハンは砂糖の取りすぎで時々頭が呆けるのよ?」

 

「貴女こそ何を吹き込んでるのよ! あとオバハンって何よ!!」

 

ああ、リンディさんとレティさんの口喧嘩は止まらない。

 

クロノはレティさんに吹っ飛ばされたのか知らないが、床で大の字になって気絶していた。

 

〈お兄様ってモテモテですわね?〉

 

〈俺は何か違うと思うのだが?〉

 

〈やっぱりそう思います?〉

 

〈なんか、マスコットって感じなんだよね〉

 

〈あー、確かに。直美お母様や、プレシアさん、桃子さんも似たような感じですわね〉

 

〈何だか変な世界だよな、ここって〉

 

〈ですわね。本来なら、あのお二方もしっかりした提督なんでしょうけど〉

 

〈微塵も感じさせないくらい暴走しとる〉

 

〈ですわね。でも、見ていて飽きが来ないですわね〉

 

〈それは言えてるな〉

 

といった念話をエヴァと交わしつつ、俺はリンディさんとレティさんの口喧嘩を眺めていった。

 

 

 




 
はやてがリンディさんの養女になるフラグが立ちましたw


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幕間 その頃の天界

 
捕まえられた者達はどうしてる事でしょう


 

 

 

「ぶるわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

「ぐわあぁぁぁぁぁ!!!」

「うおぉぉぉぉぉぉ!!!」

「のぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

 

身長2m位の男が数十人の団体に突撃する。

 

数10人の団体―――10代後半から20代前半の青年の集まり―――は蜘蛛の子を散らすように吹っ飛ばされた。

 

「貴様等、10代前半の少女を見て欲情だと!? その様な邪な考えを抱く以上は転生なんぞ認めんぞぉ!!」

 

そう怒鳴るのは全身筋肉ムキムキで股間に僅かな布で出来たブーメランパンツを履くスキンヘッドの男だった。

 

ちなみに、髪も無ければ眉毛も生えてないと言う、子供が見たら超高確率で泣き叫ぶ外見を持つ……この世界を管理する神だった。

 

そして周囲に響く声は若本ヴォイスだった。

 

神はボディビルダーのポーズの1つ、『モスト・マスキュラー』(両拳を胸の前で合わせて筋肉を見せるポーズ。詳しくはググってくれ)を見せていた。

 

「全く、ここまで私が矯正したにも関わらず、未だ転生条件を満たす者が現れぬとは」

 

神はそう言って身体に流れる汗をタオルで拭く。

 

吹っ飛ばされた男達は頭から地面に突き刺さって足を痙攣させていた。

 

「しかし、次から次にやってくるな。まあ、こやつらも運が悪いな。最も、特殊スキルばかりに気を取られて『運』の方を忘れているとはな」

 

神は部下から聞き出した事を思い出していた。

 

「全く、『来るヤツ来るヤツ我欲にまみれた事ばかり抜かすから頭に来たからスキルは与えたが運を極限まで落としてやった』か。まあ、その点は褒めてやるか」

 

マッチョ神の部下は始めはそれなりにこなしていたが、来るヤツ全員が自分勝手な事を言う上、自分を駄神扱いするのが多く、頭にきたので運の数値を落としてやったらしいのだ。

 

結果、転生したのは良いが、事故とか同じ転生者同士の戦いで相打ち等の不運で結局アレスに会わず天界に舞い戻ったヤツも結構いるのだ。

 

そこ、ご都合主義とか言うな。

 

それでも、結構多数残っているのも事実。

 

ただ、笑える位不運になっているのだ。

 

「ふむ……これはこれでなかなか楽しいモノだ。そう言えば、人間でも出来の悪い子供ほど後に良い思い出が出来ると言っていたな」

 

そう言ってマッチョ神はタオルで頭を拭く。

 

毛が生えてない頭が光り輝く。

 

「××様、また新たな者が来ました」

 

現れたのは純白の羽根が生えた女性型の天使。

 

黒い髪に色白でそこそこスラリとした体格の美女である。

 

「ふむ、また来たか。今回は?」

 

「はい、アレス様の手ではなく……不幸な事故によるものと」

 

「不幸な事故?」

 

「はい。次元転送に失敗して壁の中に入って……壁と同化してしまった模様で」

 

 

※某3Dダンジョンゲームの様に『いしのなかにいる』みたいな感じ

 

 

「……」

 

眉間に皺を寄せて額に指を当てて考えるマッチョ神。

 

「しかし、独創的な亡くなり方をする人が多いですね」

 

「うむ……」

 

「こないだは……何でしたっけ? バナナの皮で足を滑らせてピンと張った縄に引っかかって転んだ所にタライが降ってきて……」

 

「うむ。そのタライの角が後頭部に突き刺さる様に当たってそれが致命傷だったと」

 

 

「……」

「……」

 

 

マッチョ神と女性天使の間に奇妙な無言が流れる。

 

「これは……コントと言うヤツか?」

 

「はい。人間の娯楽にありますね」

 

「まあ、良い。とりあえず、連れて来たまえ」

 

「分かりました」

 

女性天使はそう言うと姿を消す。

 

「さて、どの様な者が来たかな……」

 

マッチョ神が呟くと、先程の天使が現れる。

 

前に、かなり太った男を連れて。

 

長髪で眼鏡をかけていて、かなり太っている男だ。

 

「な、何すんだよー! もう1回転生させてくれるんじゃないのかよー!」

 

太った男は文句を言いながらマッチョ神の前に連れてこられた。

 

「……」

 

マッチョ神が太った男を見る。

 

「ひぃ! 何で恋姫の貂蝉がいるんだよ!」

 

男は顔を真っ青にしてその場に座り込む。

 

「……やれやれ。また私をゲームのキャラと間違えたか」

 

マッチョ神はため息をついてからそう語る。

 

「え……? 貂蝉じゃないのか?」

 

「うむ。私はこの世界を管理する神だ」

 

「ちょっと待てよ。こないだ会ったのは?」

 

「あれは私の部下だ。まだ見習いの神だ」

 

「見習い……」

 

「さて、君の処遇なんだが」

 

「ちょっと待てよ! もう1度、あの世界に転生させろよ! まだなのはちゃんとか会ってないんだぞ!」

 

男は立ち上がってマッチョ神に詰め寄ろうとしたが、マッチョ神のあまりの迫力にその場に立ち止まった。

 

「それは出来ない。だが、元々はこちらの不手際で亡くなったのは事実。希望に叶う様にするつもりだ」

 

「そうか! それなら……銀髪のオッドアイで……」

 

男が嬉しそうに言う所で。

 

「だが。その前に、私のテストに合格してからだ」

 

「な、何だよそれ……」

 

「何、簡単なテストだ。今から私が質問するから答えて欲しい。君の本心が知りたいのだ」

 

腕を組んで男を見下ろすマッチョ神。

 

身長が2m近くあるから迫力満点だ。

 

「分かったよ。それで? どんな質問だ?」

 

「うむ。それでは……『友人の所に遊びに行ったら小学校高学年の女の子がいた。聞けば友人の妹。その妹が君になついてきた。どうする?』」

 

「もちろん、遊んであげるよ。仲良くなってから、(性的に)頂くけど」

 

「……ふむ。では、次……」

 

マッチョ神と男の会話は続く。

 

ちなみに天使はすでにその場にはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「では、最後。『小学生高学年の義妹と一緒にお風呂に入ることになった。その日は両親もいない。君はどうする?』」

 

「決まってるっしょ? 一緒に入って中で(性的に)頂きますよ」

 

男は興奮状態でマッチョ神に自信満々に語った。

 

「そうか……分かった」

 

マッチョ神は腕を組んでウンウンと頷いた。

 

「やっと終わりか~。じゃあ、イケメン、銀髪、オッドアイで能力は……」

 

「何を言ってるんだ貴様?」

 

「え? だって、質問が終わって……テストに合格したら……」

 

「誰が合格と言った?」

 

底冷えするような低い声でマッチョ神は男に語りかける。

 

「合格……じゃないの?」

 

「ぶるあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「ひぃぃぃぃぃぃ!」

 

マッチョ神が咆吼して男はその場に座り込んでうずくまった。

 

「貴様の様な輩を転生させると思ったかぁ!! 貴様の様な『少女偏愛(ロリコン)』はこの私自らの手で矯正させてやるわぁ!!」

 

「な、何だよ! 小さい女の子可愛いじゃねぇかよ!!」

 

「1つ教えておこう」

 

「な、何を……」

 

「転生したければ、その『少女偏愛(ロリコン)』を完全に矯正させることだな」

 

「今、治りました! 年増のお姉さんサイコーッス!」

 

男は立ち上がってその場で敬礼する。

 

「……神にその様な嘘が通用すると思うか? 魂の色ですぐに分かるぞ?」

 

「え……?」

 

男は顔が青くなる。

 

「さあ、貴様も今日から私の『修行』に参加だ。小柄な少女を見ても性的興奮しなくなる様になって貰うんだからな」

 

「え? ええっ!?」

 

「さっさと行かぬか! ぶるぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「うぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

男はマッチョ神に片手で頭を掴まれてから吹っ飛ばされた。

 

「さあ、貴様等が真人間になるまで100年だろうが1000年だろうが続けるからな!」

 

マッチョ神は腕をグルグルと振り回しながら吹っ飛んで行った男の方に向かって歩き出した。

 

 

さあ、我欲にまみれた男達が真人間になって転生出来るのはいつのことだろうか?

 

 

 




 
どうみてもギャグですw

ありがとうございましたw



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第24話 壊れてしまった心〈前編〉

 


 
今回はちょっとシリアス路線に走ってみました


 

 

 

 

-アリサ視点-

 

 

 

 

「へっへっへっ……今からお嬢ちゃん達に男の味ってヤツを味わって貰うからよ」

 

そう言って作業服を着た男はズボンをずらした。

 

「ひぃ!」

 

「あ……あ……い、いやぁ……」

 

あたしは逃げようとするが、手足を違う男数人に押さえられて身動きが取れなかった。

 

「運が良いぜ? こんな早くに『男』を知ることが出来るんだからなぁ!」

 

そう言って男はあたしにのし掛かってきた。

 

「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――――っ!!!」

 

 

 

 

 

「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――――っ!!!」

 

あたしは全身の力を込めて起き上がる。

 

「ハア……ハア……」

 

動悸が激しく、脳が酸素を求めている。

 

身体は汗だくだった。

 

周りを見ると、誰もいない。

 

当たり前だ。ここはあたしの自宅で自室なのだから。

 

部屋の中は暗いが、そろそろ夜明けなのだろうか―――窓の向こうは少し明るくなってきていた。

 

「……夢……」

 

あたしはそう呟いた。

 

「また、あの夢……」

 

思い出される悪夢。

 

そう、あの夢は……今から1ヶ月半位前に誘拐された時の……夢。

 

あの時はアレスに助けて貰った。

 

あたしは、あの男の股間は何だったのか。

 

気になったので、家にあった家庭の医学書とかで調べて、知ってしまった。

 

『子供の作り方』

 

男と女の身体の違い。

 

子供って、ああやって出来るんだ……と。

 

でも、アレがあたしの中に……。

 

そう考えただけで寒気が起きた。

 

いつぞや、お風呂でアレスとユーノのを見た時は少し驚いた。

 

そう……アレスのを思い出していても別に大丈夫。

 

でも、夢のは……、ダメ。

 

もし、あの時、アレスが助けてくれなかったら。

 

あたしは……どうなってたかな。

 

アレが……あたしのここに……。

 

想像していたら、目から涙が溢れてきた。

 

恐い……。

 

恐いよ……。

 

大人の男が、恐い。

 

あの日以来、あたしは男の大人に近寄るのが恐くなった。

 

近寄られるのはもっと恐くなった。

 

どうしちゃったのかな……あたし。

 

パパや、鮫島でも……身体が強ばる時がある。

 

学校でも、男の先生が……席の近くを通るだけで……。

 

同級生は大丈夫なのに。

 

こんなんじゃ……ダメなのに……。

 

誰か……助けて……アレス……助けて……。

 

あたしは布団を頭からかぶってもう1度寝ようとした。

 

眠れなかった。

 

うとうとしているうちに、鮫島が起こしに来たのであたしは仕方なく起きた。

 

 

 

 

-アリサ視点・終了-

 

 

 

 

 

 

 

-すずか視点-

 

「へっへっへっ……今からお嬢ちゃん達に気持ち良くなってもらうからよぅ」

 

「ひっ!」

 

そして男はアリサちゃんにのし掛かろうとする。

 

「いやぁ!」

 

抵抗するアリサちゃん。

 

「何処を見てるんだ?」

 

私の手足を押さえ、同じ様に男がいた。

 

「ひぃ!!」

 

「さあ、『夜の一族』はどんな具合かな?グフフフ……」

 

「え?」

 

何で……この男は……私が夜の一族だと言う事を……!

 

「意外そうな顔をしてるじゃねぇか。こちらは何でも知ってるんだぜ?お前等一族は人の生き血を啜らないと生きられない『バケモノ』だって言う事をな!」

 

「ち、ちが……う……違う!」

 

「違うモノか。貴様の姉だって、恋人の血を啜っているじゃねぇか!」

 

「ち、違う……アレは……身体を維持する為に……」

 

「認めたな? お前の姉が……血を吸うバケモノだと……認めたな!?」

 

「っ!」

 

「さあ、バケモノと分かったからには……バケモノがどんな具合か……味わわせて貰うぜぇ!!」

 

男が私にのし掛かってくる!

 

どんなにもがいても、手足は動かない!

 

「いやぁぁぁぁぁ―――――――――――――っ!!!」

 

 

 

 

 

「いやぁぁぁぁぁ―――――――――――――っ!!!」

 

私は全身全霊を込めて全身を動かした。

 

目が覚めると、見知った天井。

 

頭を起こして、周りを見ると……自分の部屋だった。

 

無論、周りには誰も居ない。

 

身体は汗だくで、気持ち悪かった。

 

「夢……だった……」

 

私は、安堵した。

 

1ヶ月半位前にあった誘拐事件。

 

あの時、私はアリサちゃんとはやてちゃんと一緒に誘拐されたのだ。

 

運良くアレス君に助けて貰ったけど、もし……アレス君が来てくれなかったら。

 

それを思うと背筋が寒くなってきた。

 

男の膨らんだ股間。

 

私はそれが何なのか、知ってはいた。

 

子供を作るために必要な……モノ。

 

お姉ちゃんの部屋でこっそりとその手の本を2、3回見たことがあった。

 

そう思ったら身体が強ばってきた。

 

前にアレス君とユーノ君と一緒にお風呂に入った時、見させて貰ったことがある。

 

アレス君のはそんなに恐いとは思わなかった。

 

でも、夢に出てきたアレは……ダメ。

 

大人の男の人が全部……あんなのだったら。

 

恐い。

 

恐くて近寄られない。

 

近寄って来ないで……。

 

でも、何で夢の男は私が夜の一族だと言うことを知っていたのだろうか。

 

夜の一族とは、血を飲んでいる、所謂吸血鬼の事である。

 

これは、アリサちゃん、なのはちゃん……そして、アレス君にも言ってない……事実。

 

やはり、みんなに知られるのが恐いのかな。

 

そして、私はあの事件以降、大人の男の人が恐くなってしまった。

 

幸い、私の家にはお姉ちゃん、ノエル、ファリンしかいない。

 

学校では、男の先生が……恐い。

 

どうしても、忘れられない。

 

……恐いよ、アレス君……。

 

助けて……アレス君……。

 

私の目には涙が溢れていた。

 

今日、学校でアレス君に抱きつこう。

 

そうすれば、少しは落ち着く。

 

アレス君、私が血を吸う一族だって知ったら驚くかな?

 

でも、アレス君だって……前世は『吸血鬼の真祖(ハイディライト・ウォーカー)』だったから……そんなに驚かないかな?

 

そうだ……アレス君なら……私の秘密、喋っても大丈夫……かな?

 

でも、アリサちゃんやなのはちゃんはどう思うかな。

 

やっぱり、私の事、バケモノ扱いするのかな。

 

やっぱり、喋るのは止めておこう。

 

……まだ、起きるには早い。

 

もう少し、寝よう。

 

私はそう思って、布団を頭からかぶった。

 

ようやく、眠りにつけそうな所でファリンが起こしに来た。

 

 

 

 

-すずか視点・終了-

 

 

 

 

 

 

 

 

いつもの様にエヴァに起こされ、朝食を取る。

 

昨日はなのは達のお泊まりの日ではなかったので、エヴァもキーホルダーから実体になっている。

 

俺の目の前にはパンとサラダ、そしてミロ。

 

隣にエヴァが椅子に座り、同じメニューが目の前に並んでいた。

 

朝はかったるいと言うか、喋るのがおっくうになるので無言でパンを囓る。

 

エヴァも俺の朝はめんどくさがり状態を知っているので、同じく無言でパンを囓っている。

 

ちなみに、俺はTシャツにボクサートランクスでエヴァもTシャツにパンティと言う出で立ち。

 

母さんも、苦笑いしながら俺とエヴァの様子を見ている。

 

だって、そろそろ夏で暑くなるし。

 

と言うか、結構暑くなってきている。

 

ちなみに、なのは達がお泊まりの時はさすがに短パンをはいているが。

 

食べ終わり、エヴァはペンダントになって俺の首元に。

 

そして、歯を磨いて着替えていつもの様に学校に向かう。

 

 

 

 

 

なのはと一緒に歩き、途中からバスに乗る。

 

いつもの様に後部座席にはアリサとすずかが乗っている。

 

2人の間は1人座れる様になっていて、アリサ、すずか両名は空いた真ん中部分をポンポンと叩く。

 

俺にそこに座れと言うことか。

 

これもいつもの事なので、俺は間に座る。

 

なのはも慣れた様で、すずかのとなりに座る。

 

 

「おはよう、アリサ、すずか」

「おはよう、アレス、なのは」

「おはよう、アレス君、なのはちゃん」

「おはよう、アリサちゃん、すずかちゃん」

 

 

挨拶を交わしてから、談笑が始まる。

 

始まったのは良いが、アリサ、すずかの2人は俺の手を握って離さない。

 

しかも、小刻みに震えていたのだ。

 

そう言えば、半月位前から2人ともこんなことがあったな。

 

会話を交わしつつもアリサとすずかの顔を見る。

 

僅かだが、顔色が良くない。

 

しかも、少し目が赤い。寝不足なのだろうか?

何かがひっかかる。

 

俺は何かを忘れていないだろうか?

 

〈お兄様?〉

 

〈ん……? どうした?〉

 

〈アリサさんとすずかさんの気が少し乱れています。身体の調子が良くないみたいですわ〉

 

エヴァからの念話。彼女はデバイスになってからそういう気とか流れを読めるようになったらしい。

 

〈なるほど。やはり、不調なのは間違いないみたいだな〉

 

〈はい。ただ、原因が分からないのが〉

 

〈だよな。そこまで分かったら医療デバイスとして活躍しても良いよ〉

 

〈シャマルさんとコンビを組んでですか?〉

 

〈うむ。しかし、シャマルとコンビを組むのは良いが、俺のデバイスが無くなるんだが……〉

 

〈えへへ、そうですわね。お兄様と一緒が良いですもん〉

 

〈まあ、そう言う訳だ。とりあえず、アリサとすずかの様子は見ておくか〉

 

〈そうですわね。一過性の物であれば良いのですが〉

 

エヴァとそんなやりとりをしつつ俺達は学校に向かう。

 

 

 

 

 

 

本日も滞りなく終わりました。

 

昼休みは、何故かすずかが抱きついてきました。

 

それを見たアリサも『アンタ、すずかに抱きつかれてタダで済むと思ってんの!?』と言って何故か抱きついて来る始末。

 

なのはは『2人ともずるいよー!』と言って俺の背中にのし掛かってくる始末。

 

お陰様で、昼休みの屋上では嫉妬に燃える男子生徒達の視線が厳しいこと厳しいこと。

 

まあ、俺には効かないがね!

 

そして今日もなのはは魔力蒐集で俺は八神家で魔法の講師。

 

はやて、アリサ、すずかの3人でネギま!式魔法の練習である。

 

意外とスジが良いのか、3人とも杖を振るった時に光が少し出るようになったのだ。

 

もう少ししたら、火も灯せるようになると思う。

 

まあ、実を言うと俺が魔力を通して火を灯させる技もあると言えばあるが。

 

魔力に慣れてない身体に強制的に魔力を通すと言うのははっきり言えば身体に良くないので俺はそれは3人には喋っていないのだ。

 

出来れば、少しずつ慣れて貰って魔法を行使して貰いたいのが俺の本音。

 

そのうち、プレシア女史からダイオラマ魔法球を返して貰うから今度はその中で練習しようかと思ってる。

 

……多用すると色々アレだから週に1回程度にしようかとも思ってる。

 

なのはと別れ、俺達ははやての家に向かう。

 

アリサとすずかも今日の塾はお休みなのだ。

 

それは良いのだが、2人は今日に限って腕を組んで来る。

 

……別にそれは良いのだが、妙におかしい。

 

2人は、何かに脅えている?

 

俺が抱いた印象だった。

 

「……今日は何故にそんなに腕を組んでくる?」

 

「良いじゃない! こんな美女に組んで貰えるなんて嬉しいでしょ!?」

 

顔を茹で蛸の様に真っ赤にしているアリサ。

 

怒って真っ赤なのか、照れて真っ赤なのか。

 

多分、両方だからもの凄く赤いのだろう。

 

「アレス君は……腕組まれるの……嫌?」

 

すずかも頬を赤くして俺に聞いてくる。

 

「嫌じゃないが」

 

確かに、女の子と一緒に腕を組んで歩くのは嫌ではない。

 

前世の前世では、嫁さんと一緒に歩いた事もあるし、一時期は仲間ともデートまがいな事もしたものだ。

 

……問題は、俺の嫁さんとその仲間の2人は身長が175㎝と女性にしては高かった。そして俺は身長135㎝だった。

 

言いたいことは分かるな?

 

つまり、俺はその2人と腕を組んだら足が地に着かず、宙ぶらりんで引っ張られるのだ。

 

男としてかなり悲しいぞ、それは……。

 

まあ、それはさておき。

 

「そっか。なら良いよね?」

 

屈託のない笑顔で俺を見るすずか。

 

顔が近いよ? あんまり近づくと口と口がくっつくよ?

 

「ふっふふぅ~ん?」

 

横からアリサがニヤニヤ笑いながら俺の顔を見る。

 

「なんだよ?」

 

「アンタ、顔を近づけられると顔が赤くなるの?」

 

「え?」

 

「アンタの顔、真っ赤よ?」

 

言われてみると、顔が熱いような気がする。

 

夏の暑さのせいかと思っていたが。

 

「……夏だからな」

 

まあ、確かにすずかに顔を近づけられて少し恥ずかしいのは確かだが。

 

「本当にに夏の暑さのせいかしら?」

 

「どれどれ、あたしも顔を近づけて確かめてみよう」

 

そう言ってアリサも俺の顔に近づいて来る。

 

吐息が首筋に当たってくすぐったい。

 

「や、やめ! あ、暑いだろ!」

 

「あらあら? 今は日が陰ってるんだけど?」

 

ニヤニヤと邪悪的な微笑みで空を指差すアリサ。

 

「……と、とにかく! 少し暑くなったからジュースを飲む!」

 

俺は途中にある公園に寄ってジュースを買うことにした。

 

 

「照れちゃって」

「照れてるね、アレス君?」

「照れてなぞおらぬ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

アリサ、すずか両人を木陰にあるベンチに休ませてから俺はジュースを買う為に自販機に向かう。

 

周りを見ると、俺達と同等か、少し小さい子供数人が遊具で遊んでいた。

 

うむ、実に平和である。

 

少し暑いが、まあそこまででも無い。

 

夏が近い……いや、もう夏になってるのか。

 

しかし、海鳴市は雨はあまり降らないのだろうか?

 

今年は梅雨らしい梅雨ではなかったように思える。

 

まあ、いい。2人のジュースを買って持っていくとしようか。

 

アク○リアスで良いだろ。炭酸はゲップが出て大変だろうし。

 

それとも、すずかはトマトジュースが良かったかな?

 

そんな事を思いつつ、俺はボタンを押してジュースを購入。

 

ジュースを3本抱えて、アリサとすずかの元に帰ろうとした時。

 

 

 

「何よこれ!?」

「アレスくーん!」

 

 

 

俺は目を疑った。

 

アリサとすずかの2人は……足下に出来た空間の穴に引きずりこまれたのだ!

 

〈お兄様!〉

 

〈分かってる!〉

 

俺は即座に駆け寄るが、僅かの差で2人は穴に落ちてしまった!

 

そして穴はすぐに閉じてしまって飛び込む事も出来なかった。

 

10秒と満たない数秒の出来事に俺は呆然としてしまった。

 

周りを見ても魔力等の力は感じられない。

 

「っ! くそぉ!」

 

やられた。油断した!

 

多分、コレは転生者の仕業!

 

俺が離れた隙に2人を誘拐したのだ。

 

〈お兄様、申し訳ありません! 私が付いていながら!〉

 

〈いや、エヴァの責任は無いよ。しかし、何の力も感じられなかった……〉

 

思い起こされる、2人の足下に現れた、空間の穴。

 

まるで、神隠しに遭った……神隠し?

 

まさに、今の状況は神隠しだ。

 

周りを見ても他の子供達や保護者は全く気付いていない。

 

それはそうだ、普通の誘拐ならさらわれる時には高い確率で目撃される。

 

真夜中とかなら例外だが、今は午後。まだ日中なのだ。

 

〈相手の能力は次元干渉系か。その手のヤツは沢山いるからな……〉

 

〈ですわね。まあ、私もお兄様も影を使って空間転移出来ますし〉

 

〈だが、ああやって空間に穴を開けて干渉するヤツはだいぶ限られて来ると思う。エヴァ、アリサとすずかの位置特定出来るか?〉

 

〈ええ、今サーチしています。これは、相当の手練れでしょうか? 2人の位置が……絞れません!〉

 

〈ちぃ! 頼む! 今はエヴァが頼みなんだ!〉

 

〈大丈夫です! 私に任せてください!〉

 

俺はベンチに座って何事もないフリをしてエヴァからの探査結果を待つ。

 

「落ち着け……今ここで取り乱しても仕方ない」

 

 

 

 

 

 

 

-アリサ視点-

 

……何だろう?

 

身体が動かない?

 

その前にあたしは……確か、アレスとすずかと一緒にはやての家に行くハズだったような?

 

あたしはゆっくりと目を開けた。

 

見たこと無い部屋。ごく普通のマンションの一室に思える。

 

ただ、カーテンが閉められていて部屋の中が薄暗い。

 

「っ!? 何よコレ!?」

 

あたしは動こうとしたが、手足が何かの器具に固定されていて全く動かないのだ。

 

しかも、足は大股を広げるようにしてあり、隠そうにもどうにも出来ない。

 

「くくく、目が覚めたみたいだね?」

 

「誰よ!?」

 

あたしは声の方に向かって顔を向ける。

 

薄暗くて見えにくいが、大人の男性であることが分かった。

 

……いや……何よ……これ……。

 

心臓が……鼓動が跳ね上がる。

 

いつかの、誘拐された時と状況が……似ている。

 

ゆっくりと近づいて来る男。

 

見た目はかっこよさそうに見えるけど、あたしは気に入らなかった。

 

雰囲気と言うか、何かがあたしの癪に触る。

 

「は、離しなさいよ! あたしをどうしようって言うのよ!」

 

「……どうする? もちろん、決まってるじゃないか!」

 

男はそう言ってあたしの服を破る。

 

素肌が露わになる。

 

「いやぁ!」

 

「グフフフフ! 綺麗な肌だねぇ!」

 

そう言って男はあたしのスカートもナイフで破り、その場に捨てる。

 

「やめて……やめてよぅ……」

 

あたしの目から涙が溢れて来る。

 

ああ……あの時の続き……。神様は……あたしに過酷な運命を与えるのね?

 

「ハハハハ、あのアリサがこんなに弱く、泣き虫だとはね……良いよ……素晴らしい!」

 

そう言って男はあたしの胸に顔を近づけ、舌を出して舐める。

 

「ひぃ!」

 

「良いねぇ……少女の汗……美味しいねぇ」

 

男はゴクリ……と唾を飲み込む。

 

嫌だ……気持ち悪い……嫌だよぅ……。

 

「嫌……嫌……やめて……」

 

「やめる? 何を言ってるんだい? 君はこれから僕のモノになるんだよ?」

 

そう言って男はあたしのパンティをナイフで切り裂いて、破り捨てた。

 

「おお、綺麗な色だねぇ」

 

そう言って男はあたしの股間部分を凝視していた。

 

「見ないで……見ないで……っく……」

 

もう嫌だ……何で……こんな目に……。

 

アレス……助けて……助けて……何で助けに来てくれないの?

 

早く来て? 前みたいにコイツをぶっとばしてよぅ……。

 

「くくく、これは楽しめそうだよ!」

 

男はそう言ってズボンを脱いだ。

 

「ひぃやぁぁぁぁぁぁ!」

 

あたしはもう、恐怖しか残っていなかった。

 

「ふははは、大丈夫だよ? ちょっとした儀式の後はこれの事が大好きになるんだからね。お友達のすずかちゃんと一緒になってね」

 

そう言って男はゆっくりと近づいてくる。

 

「さあ、アリサちゃん……いただきます」

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

-アリサ視点・終了-

 

 

 

 

 

-すずか視点-

 

 

「……ん……」

 

私はいつ眠ったのだろうか?

 

確か、アレス君とアリサちゃんと一緒にはやてちゃんのお家に行って……。

 

「そうだ!」

 

公園で足下に穴が開いて……落ちたんだ。

 

私は周りを見渡す。

 

どこかのマンションの一室みたいだけど?

 

私は薄暗い部屋の中を見る。

 

すると、アリサちゃんが奇妙な器具に固定されていた。

 

アレは、お姉ちゃんが持ってる大人な漫画の中で見た……確か、産婦人科で使う診察台……だ。

 

アリサちゃんはそれに固定されて身動きが取れなくなってる!

 

男がアリサちゃんに近づき、服を破ってる!

 

それにしても、おかしい。あっちの声が全く聞こえない。

 

兎に角、アリサちゃんを助けないと!

 

私はベッドから降りようとした。

 

「おっと、お嬢ちゃんはこっちだぜ?」

 

野太い男の声が響いて私は腕を掴まれた。

 

「っ!?」

 

体格の良い男が私の腕を掴んでいたのだ。

 

私の頭に誘拐された時の記憶が戻る。

 

「へっへっへっ……」

 

イヤらしい笑い声をあげる男。

 

ダメ……身体に力が入らない……。

 

「だ、誰?」

 

「誰か? だって? そんな事はどうでも良いことだぜ。1つ言えるのは、お嬢ちゃんに気持ち良い事を教えてあげるお兄さんってとこだ」

 

その言葉を聞いて私は……身体が強張る。

 

「い……いや……」

 

「へへへへ、その言葉も俺との行為が終われば出なくなるぜ?」

 

そう言って男は私の制服を鷲づかみしてから力を入れて破る。

 

「いやぁ!!」

 

抵抗するも力が入らない! 上着から中に来ていたシャツを全て破られ、上半身裸になる。

 

「ふへへへへ、少し膨らんでるじゃねぇか」

 

男は私の胸を見ながらイヤらしい薄笑いを浮かべる。

 

気持ち悪い……。気持ち悪いよ……。

 

「どれ、下もいらないな」

 

「いやぁ!」

 

そう言って男は私のスカートを掴み、強引に脱がす。

 

抵抗するも、無惨にも私はスカートを脱がされる。

 

私はパンティ1枚になってしまった。

 

「へへへ、青縞模様のパンティか……嬉しいねぇ」

 

そう言って男は着ていたシャツを脱ぎ、ズボン、そしてパンツ一丁になった。

 

「!」

 

私は男の股間を見て絶句しそうになる。

 

「こ、来ないで……!」

 

私は尻餅をついた状態で後ずさりする。

 

「そう言うなって。なぁに、俺との行為が終わった後はコレが欲しくてたまらなくなるからな? へへへへ……」

 

「イヤ! いやぁ!」

 

私は更に後ろに下がる。

 

「……っ壁!」

 

背中に当たる感触。どうやら壁に当たったみたいだ。

 

「さぁて、おしまいだぜ? すずかお嬢ちゃん……いや、夜の一族のお嬢様?」

 

 

 

……え?

 

 

 

今、この男は……何て言った……?

 

『夜の一族』のお嬢様……?

 

何で……私の名を知ってるのよ? 何で私が……人と違う……夜の一族だって……知ってるのよ!?

 

何で何で何で?

 

男は私に近寄り、左手で私の両手首を押さえる。

 

近寄る男の恐怖に私は力が入らない!

 

「な、何を……言ってる……の?」

 

「おやおや、しらばっくれるのか? 人の生き血を吸うバケモノの一族だろ?」

 

「ち、違う! 違うわよ!」

 

「何を言ってるのかな? お嬢ちゃんのお姉ちゃんは……恋人の血を吸ってるんだろ?」

 

 

 

!!!

 

 

 

何で、お姉ちゃんの事を……恭也さんの事を……知ってるのよ!

 

「ち、違う……! 違う違う違う!」

 

「くくく、あちらのお友達がすずかちゃんの事を知ったら……どんな顔するかな?」

 

「!」

 

「お友達を騙していたんだからねぇ? 嫌われるかも……しれないねぇ?」

 

「そ……そんな……事……」

 

私が恐れていること。

 

親友のアリサちゃんやなのはちゃんに嫌われる……事……。

 

もし、知られて疎遠になったら……恐い……。

 

「さて、コレもいらないよなぁ?」

 

男は右手で私のパンティを掴み、一気に千切る。

 

「いや! いやぁ!」

 

私の目から涙が溢れてくる。

 

もう、イヤだ!

 

男なんて……男なんて!

 

アレス君! アレス君! いつかみたいに……来てよ!

 

早く来て、こんな男……倒してよぅ!

 

「それじゃあ、夜の一族のすずかちゃんの大事なモノ、頂くぜぇ!!」

 

 

「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

-すずか視点・終了-

 

 

 

 

 

 

〈見つけました!!〉

 

エヴァの声で俺はベンチから立ち上がる。

 

〈よし! すぐに行けるか!?〉

 

〈ハイ! 隣街のマンションの一室です!〉

 

〈よし、そのマンションの入り口に転移だ!〉

 

〈了解です!〉

 

俺の足下にベルカ式魔法陣か広がって周囲の景色が変わる。

 

 

 

 

 

着いた先はいつぞやフェイトが使用していたマンションに似ていた。

 

〈……この部屋か?〉

 

〈ハイ。この部屋の中にアリサさんとすずかさんの反応があります〉

 

〈よし。ところで、敵の数は?〉

 

俺はマンションの入り口の表札を見る。

 

だが、名前がかけられていなかった。

 

〈……2人います。どうしますか?〉

 

少しだけ、やっかいではあるな。

 

二重身(ドッペルゲンガー)で2人に分かれて行っても……。もし、敵が強いなら。

 

この作戦は100%成功させなければならないのだ。

 

もはや、出し惜しみは無しだ。

 

〈エヴァ、今回は一緒に頼む。万が一を考えて二重身(ドッペルゲンガー)はやらない〉

 

〈了解です。影の転移で行きますか?〉

 

〈ああ。敵の虚を突くにはもってこいだ。それと、今回だけは俺も許せない。アレを……使うぞ?〉

 

俺は自分の握り拳を見る。開いて閉じて、拳に力を入れる。

 

〈……はい。私も、お兄様の気持ちは……分かります。だから、使います。『綾野式・裏』を〉

 

エヴァがキーホルダーから実体になる。

 

俺の隣に金髪の少女が立っていた。

 

ただで済むと思うなよ? 転生者共め!

 

俺とエヴァは影に沈み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

影から頭を出すと、男が器具に固定されたアリサにのしかかろうとしていた!

 

「っ!」

 

俺は影から上半身を出して、男の左ふくらはぎ向けて左腕を伸ばし、指を食い込ませる。

 

「っいぎゃぁ!?」

 

男は驚いて下の方を見る。

 

俺は瞬時に男の背後に取り付いて、左腕を男の首に回し、締め上げる。

 

「が……がはっ!?」

 

男が背中側に重心を崩し、俺は右足で男の右膝部分を蹴る。

 

更に男はバランスを崩して背中から倒れそうになる所で、俺は右手を男の腰の中心、背骨向けて思いっきり押す。

 

指が食い込み、血が流れる。

 

「奥義・蜂刺殺(ほうしさつ)!」

 

俺は一気に体重を後ろにかけて、男の背骨を押す。

 

 

ゴキリ

 

 

鈍い音が響いた。

 

「んぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 腰が……腰があぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

男はその場でうずくまって動けなくなる。

 

そう、俺は男の腰……背骨をずらして『椎間板ヘルニア』にしたのだ。

 

一撃で戦闘不能に追い込み、人体を破壊する技の一つ。

 

これが、古流武術綾野式・裏奥義・蜂刺殺。

 

本来なら絶対に使わないのだが、相手が外道なら……俺は容赦なく使う!

 

「おらあぁぁぁ!!!」

 

俺はうずくまった男に更に攻撃を繰り出す。

 

右腕の筋肉を切断し、両足の股の筋肉を切断する。

 

全て、指で行う慈悲のない攻撃。

 

そして、最低限血が出ないようにして戦闘不能に追い込む。

 

「あぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

男の声が響く。

 

だが、俺は一切止める気無く無慈悲に男の身体を破壊する。

 

骨を砕き、筋肉を切断する。

 

痛みの余り男は気絶したのだろうか、声をあげなくなった。

 

口から泡を吹いていた。

 

俺はポシェットからロープを取り出し、男を縛りあげる。

 

周囲を見渡してから、俺はアリサを発見した。

 

服は全て脱がされ、産婦人科で使う診療台の上で縛られていた。

 

顔を見ると、涙を流した跡があった。

 

俺は涙をこらえながらアリサの手足を縛っていたロープを闇の剣で切る。

 

「くそ……間に合わなかったか?」

 

診療台の下を見るが、血の跡はなかった。

 

どうやら、すんでの所で間に合ったみたいだ。

 

俺はアリサをお姫様抱っこでかかえて、床に寝かせる。

 

顔を近づけると息はしているので、命に別状はないだろう。

 

「……すまん、アリサ……」

 

俺はポシェットから毛布を取り出し、アリサの身体を包む。

 

……エヴァの方はどうなったのだろうか?

 

俺は薄暗い部屋の中を見渡した。

 

 

 

 

 

 

-エヴァ視点-

 

 

「それじゃあ、夜の一族のすずかちゃんを頂くぜぇ!!」

 

「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

私が見たのは、すずかさんにのし掛かろうとする男の姿だった。

 

いけない!

 

私はすぐに影から飛び出して男の首を掴み、後ろに引っ張る。

 

「ぐげぇ!?」

 

男は後ろに重心を崩して倒れる。

 

私はすずかさんの前に立ち、身を守るように仁王立ちする。

 

「つぁ……だ、誰……」

 

男が私の顔を見る。

 

「……エ、エヴァンジェリン……!?」

 

男は驚いて立ち上がった瞬間、私は瞬動で間合いを詰めて男の前に立つ。

 

「初めまして。そして、さようなら」

 

私はそう言って、男の頭を両手で挟むようにして……技を繰り出した。

 

「裏奥義・菩薩掌(ぼさつしょう)

 

 

 

パァーン

 

 

 

乾いた音が周囲に響く。

 

「……」

 

男は何事も無かったかの様に見えたが。

 

「……っ!」

 

すずかの声がかすかに聞こえた。

 

私の目の前の男は……目から、鼻から、耳から……血を流して……倒れた。

 

頭と私の手の間、僅か数㎝の間を揺さぶる様に頭を叩き付け、脳を揺らす奥義。

 

一瞬にしてボクシングのパンチドランカーの様にする。

 

これで、彼の脳はズタズタだ。

 

「……」

 

私はすずかさんの方を見た。

 

すずかさんは半放心状態で私の顔を見ていた。

 

「……エヴァ……ンジェリン……?」

 

小さな声で呟く声が聞こえる。

 

私はすずかさんの所に向かう。

 

ベッドの上で全裸で座っているすずかさん。

 

「はい、私の名前ですよ?」

 

私はすずかさんに微笑みかけながら続けた。

 

「アレスお兄様のデバイス『武神の魔導書』管制人格、エヴァンジェリンと申します。よろしくお願いします、月村すずかさん?」

 

私はそう言ってすずかさんの前で一礼した。

 

すずかさんは唖然とした顔で私の顔をただ見ていた。

 

 

-エヴァ視点・終了-

 

 

 




 
外道も行きすぎるとこうなります


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第25話 壊れてしまった心〈後編〉



 
これでアリサとすずかの運命が変わってしまったのです……


 

 

 

 

 

 

薄暗い部屋を見渡し、ベッドがあるのが分かった。

 

その上にエヴァとすずかがいた。

 

すずかもアリサと同じ様に服を全て脱がされ、全裸になっていたのだ。

 

さっきから何か変だと思ったら、真ん中に結界らしいモノが張られていた。

 

普通に通る事が出来たから、音だけを遮断する結界だった様だ。

 

「どちらの能力だったのかな。まあ、良いか」

 

俺は闇の剣で結界を切り裂いた。

 

結界は音もなく消滅して、向こうの音が聞こえてきた。

 

「っく……アレス君……」

 

すずかのすすり泣く声が聞こえる。

 

エヴァはすずかを襲おうとした男を縛っていた。

 

〈とりあえず、縛っておきますね。まあ、目が覚める事は無いと思いますが〉

 

〈分かった、頼む〉

 

〈ハイ♪〉

 

縄で縛ってるエヴァを横目に俺はすずかに近寄る。

 

すずかは身体を一瞬震わせた後、顔を上げる。

 

俺と視線が合った後、すずかの目から涙が溢れて来た。

 

「あ……アレス君……アレスくーん!」

 

嬉しそうな顔をしてすずかは立ち上がって俺に抱きついてきた。

 

「恐かった……恐かったよぅ……アレス君……うえぇぇぇぇぇん!」

 

すずかは大きな声で、泣き叫んだ。

 

「……ごめんな……来るのが遅くなって……」

 

俺はすずかの背中を撫でながら耳元でささやいた。

 

「ううん……大丈夫……だよ……見ての通り、裸だけど……ギリギリ大丈夫だったよ……」

 

すずかもギリギリだったのか。

 

もし、あと30秒遅れていたら……。

 

大変な事になっていただろう。

 

エヴァに感謝しないとな。

 

俺だけだったら、間違いなく遅れていただろう。

 

「そっか……間に合ったなら……良かった」

 

俺は安堵のため息をつく。

 

そして魔法のポシェットから毛布を取り出してすずかの身体に掛ける。

 

「あ、ありがと……アレス君……」

 

「いつまでも、裸でいるのも恥ずかしいだろ?」

 

「……大丈夫だよ……私、アレス君になら見せてあげたい位だよ?」

 

「……すまねぇ、俺が恥ずかしいんだ」

 

「うふふ、お風呂で散々見てるのに?」

 

「見てても恥ずかしいモノは恥ずかしいんだよ……。それに、お風呂で見るのと部屋で見るのはまた違うんだ……」

 

「アレス君ってウブなのかな?」

 

すずかさん、貴女は何処でそんな言葉を覚えるのですか?

 

「うぅ……ん……」

 

気を失ってるアリサから声が聞こえてきた。

 

どうやら目を覚ましたみたいだ。

 

俺はアリサの元に駆け寄る。

 

 

「……」

「……」

 

 

目を覚ましたアリサは俺を視線が合った。

 

「お目覚めか?」

 

「……」

 

アリサは上体を起こしてから自分の身体を見つめてた。

 

「どうした? どっか痛いのか?」

 

「……」

 

俺の言葉に反応せず、今度はアリサが固定されていた器具を見つめる。

 

そして、また俺の顔を見つめてきた。

 

「………いわよ……」

 

「え?」

 

「遅いわよ! もっと早く来なさいよ!」

 

いきなり大声で怒鳴ってくるアリサ。

 

「……す、すまん、アリサ……」

 

「恐かったんだからね! 恐かったんだよ……!アレスのばかぁ……ばかばかばかぁぁぁっ!!!」

 

そう言ってアリサは目から涙を溢れさせてから俺に抱きついて来た。

 

身体に掛けていた毛布は落ちてアリサは全裸で抱きついてきたのだ。

 

「ごめんな、アリサ……」

 

俺はそう言ってアリサの背中を撫でる。

 

「許さないよ……アレス……ずっと……許さない……だから、ずーっとあたしと一緒にいるのよ?」

 

「私も……許さないよ? アレス君は……許すまでずっと私と一緒にいるのよ?」

 

これって、遠回しのプロポーズじゃね?と思う俺がいた。

 

 

 

 

 

 

 

ロープでグルグル巻きに拘束された2人の男達。

 

男達は違う部屋に放り込んでおいた。

 

天界に連絡して確認したら2人とも転生者だった。

 

まあ、違っていた場合は深層意識を書き換える勢いで記憶操作しておくところだったが。

 

今回はアリサとすずかに天使姿を見られるのはまずいから、人間の姿で引き取りに来る様にお願いしておいた。

 

来るまでに失血死しないように傷は塞いでおいた。

 

もっとも、腕とか足とかは骨と筋肉をズタズタにしているからまともに動けはしないが。

 

エヴァの方は身体は無傷だが、頭の中がズタズタなのでこれも動けはしない。

 

アリサとすずかは身体を毛布で覆ってからベッドの上で大人しく座っていた。

 

「あ~、この部屋少し暑いね……」

 

「暑いね……」

 

そう言って2人は下半身部分だけ覆って上半身は裸のままお構いなしにしていた。

 

……淑女なら恥じらいを持って貰いたいモノだが。

 

ちなみに、胸が微妙に膨らんでいるように見えたが、気のせいだと思うことにした。

 

「で? そこの金髪美少女は誰かしら?」

 

アリサがにこやかな笑みで俺の顔を見る。ただし、額に青筋を立てているが。

 

俺の隣にはちょこんと正座しているエヴァがいる。

 

「えっと、初めましてアリサさん。私はアレスお兄様専用デバイス『武神の魔導書』の管制人格、エヴァンジェリンと申します」

 

「……へ?」

 

口を開けて呆然と驚くアリサ。

 

「……まあ、そう言う訳だ。実はな、こうやって実体化出来るんだよ」

 

「……嘘?」

 

「嘘も何も、現にこうやって目の前にいるじゃないか」

 

「……じゃあ、アンタがいつも身に付けてるあのネックレス……なの?」

 

「ハイ、ですから初対面と言う訳では無いのですよ?」

 

「……確かに、以前見たネギま!のDVDで聞いた声と一緒ね」

 

そう言ってアリサはエヴァの頬をつついたり、頭を撫でたり、髪を手に取ってから眺めていた。

 

すずかはアイドルを見るような目でエヴァを見ていた。

 

「……大丈夫だぞ? ウチのエヴァは滅多に怒る事は無いからな」

 

俺がそう言うとすずかもエヴァの方に行き、同じように顔を見つめたり、頬をつついたり、髪を手に取っていた。

 

「はぁー、ホントお人形さんみたいな容姿ねぇ……服装がなんかコスプレチックだけど」

 

「良いなぁ……エヴァちゃん……アレス君と一緒に生活かぁ……」

 

〈アレス様、転生者を引き取りに来ました〉

 

死神職の天使が来たようだ。

 

「エヴァ、2人を頼む。俺はちょっとだけ席を外す」

 

「了解です、お兄様」

 

「……すぐ、帰ってくるよね?」

 

「あたし達を置いて帰らないでよ?」

 

アリサ、すずかの目を潤ませた視線が俺を射抜く。

 

「……大丈夫だ。ちょっと『荷物』を渡すだけだから」

 

そう言って俺は別室にいる2人を担いでから玄関に向かう。

 

 

 

 

 

「お疲れ様」

 

「そんな、私みたいな下っ端天使に……」

 

俺の前にいるのは黒髪のロングヘアの女性だった。

 

ちなみにかなりの美人と表現しておこうか。

 

「良いの良いの、気にしない。ああ、コレお願いね」

 

俺は拘束されている2人を見せる。

 

「……これは……またエラいズタズタですね」

 

頬に冷や汗を流す女性。

 

「……ああ、アリサとすずかを強姦しようとした愚か者だ」

 

「……なるほど、そういう事でしたか」

 

女性は壺を取り出し、2人をその中に吸い込ませる。

 

「まあ、そいつら1万2千年位修行させてやってくれ。改心しても続けてくれ」

 

「分かりました。そう進言しておきます」

 

そう言うと、女性は玄関の扉を開ける。

 

「それじゃあ、私はこれで……」

 

「ああ。頼んだよ」

 

「はい」

 

そう言って俺は2人を天使に託してまた部屋に向かう。

 

 

 

 

 

部屋に着くと3人で談笑していた。

 

ふぅ、これで決着がついたかな?

 

しかし、これでははやての家には行けなくなったな。

 

後で連絡しておこうか。

 

アリサとすずかの2人を自宅に送らないとな。

 

服も下着も全部破られているから転移しないといけないな。

 

ちなみに、2人の鞄は大丈夫だった。

 

まあ、身体が目当てなんだから鞄は放置するよな。

 

「さて、先にどちらの家が良いか?」

 

「う~ん……」

 

「あ、あたしより先にすずかの家に行きましょうよっ」

 

……? アリサは少し……焦ってる?

 

まあ、良いか。とりあえず、すずかの家に行こうか。

 

「エヴァ、ネックレスになってくれ」

 

「はい、お兄様」

 

そう言うとエヴァは光り輝いてネックレスになる。

 

そして俺はそれをいつも通り首にかける。

 

「へぇ~」

 

「なるほどねぇ~」

 

アリサ、すずかの2人は目を丸くしていた。

 

「ああ、エヴァが実体化出来るのは黙っててくれよ? いずれは他の皆に言うが、まだ秘密にしたいんだ」

 

「……ふっふぅ~ん?」

 

「まだ、秘密なんだ?」

 

……何だ? その『これは良いことを知ったわ!』と言いたそうな表情は。

 

「……2人に貸し1つずつな。コレで良いか?」

 

「良いよ~」

 

「良いわよ。さあ、どんなお返しして貰おうかしらねぇ~」

 

「余り妙なお願いはしないでくれよ……」

 

とりあえず、2人には毛布で身体を覆って貰う。

 

そして、転移魔法ですずかの家に向けて転移した。

 

 

 

 

 

 

 

「ありゃ?」

 

転移先はすずかの家にしたハズだが?

 

着いた先は女の子の部屋。

 

色んな漫画とか小説等、本が沢山ある部屋だった。

 

「あ、ここ私の部屋だよ。そっか、アレス君は私の部屋に入ったこと無かったっけ?」

 

なるほど、確かにすずかの家はリビングまで来たことは多々あるが、すずかの部屋に案内された事は無かったな。

 

「とりあえず、私とアリサちゃんはベッドに腰掛けるね」

 

そう言って2人はベッドに腰掛ける。

 

俺は周りを見渡す。

 

色んな漫画、小説がある。

 

大半が前世、前世の前世で読んだ事がある本ばかりだ。

 

もっとも、『魔法少女リリカルなのは』と『新世紀エヴァンゲリオン』だけは無かったが。

 

「そう言えば、すずかの家には結構来た事あるけどすずかの部屋は来たこと無かったなぁ……」

 

「そっかぁ……じゃあ、今度から案内してあげるね」

 

「あ、ああ……」

 

「その時はあたしも一緒だからね!」

 

やたら息巻いているアリサ。

 

「何故に?」

 

「決まってるでしょ! すずかの家に来る時はあたしも一緒なんだから!」

 

まあ、確かに俺1人で来る事は無いからな。

 

「……すずか様? お帰りになられてましたか?」

 

そう言って部屋のドアが開いた。

 

現れたのはノエルさんだった。

 

「っ!?」

 

ノエルさんは俺達の様子を見て目を見開いた。

 

「ど、どうなされたのですか!? すずか様、アリサ様!」

 

「あ、ごめんねノエル。悪いけど、私とアリサちゃん、お風呂に入りたいの。それと下着と私服を用意してくれないかな?」

 

身体を毛布で包んでるアリサとすずかを見たらそりゃビックリするよな。

 

「は、はい。かしこまりました。(もしや、アレスちゃんと……なんて羨ましい……!!)」

 

ノエルさんは羨望の眼差しで部屋から出ていった。

 

……絶対、変な勘違いしてるよな、あの人。

 

〈絶対してますわよ……〉

 

エヴァの念話が頭に響く。

 

すると、ノックが響く。

 

「すずか様? おられます?」

 

今度はファリン嬢だった。

 

「大丈夫よ。入ってきて」

 

「はい……ノエルさんに言われて服と下着を……ひゃわ!アレス君!」

 

部屋に入って俺の姿を見るなり驚くファリン嬢。

 

「あ、久しぶりですね?」

 

「アレス君がいるとは思わなかったなぁ~」

 

そう言ってファリン嬢はすずかとアリサの姿を見る。

 

「……アレス君の仕業?」

 

「……何が言いたいのかね?」

 

「だって、2人とも全裸ですし……」

 

「……俺が犯人じゃねぇ。あ、忍さんいる?」

 

「忍様ですか? おられますよ」

 

「じゃあ、ちょっと用件があるんだ。行って大丈夫かな?」

 

「大丈夫ですよ。先程、紅茶を持っていったら本を読まれてましたし」

 

「了解。すずか、アリサ。行って来て良いかな? 報告したいし」

 

俺は2人の方を見て話す。

 

「うん、大丈夫だよ」

 

「早く帰って来なさいよ?」

 

そして俺は忍さんの部屋に向かう。

 

今日遭った事件の事を話す為に。

 

 

 

 

 

 

 

忍さんの部屋の前に立つ。

 

ドアをノックすると、中から「どうぞ」と声が聞こえた。

 

俺はゆっくりとドアノブを回して扉を開ける。

 

「失礼します……」

 

ゆっくりと中に入る。

 

忍さんはソファーに座って本を読んでいた。

 

ちなみに読んでいた本は漫画版『魔界都市ハンター』だった。

 

何やねん、そのチョイスは。

 

「あら、アレス君。今日はすずかとアリサちゃんと一緒にはやてちゃんの家で魔法の練習じゃなかったかしら?」

 

「ええ、その予定だったのですが」

 

「……アレス君? 何かあったの?」

 

神妙な顔つきで俺の顔を見る忍さん。

 

俺は今日起きた事件を説明した。

 

 

 

 

 

 

 

「と言う訳だ……申し訳ない! 妹さんを大変な目に遭わしてしまって!」

 

俺はテーブルに頭がひっつく位頭を下げる。

 

「……ん~……とりあえず、すずかは大丈夫なんでしょ?」

 

「ああ、それは大丈夫だけど……」

 

「それなら良いわ。前に1度助けて貰ってるし。それに今回だって、アレス君が居なければ……今頃……」

 

そう言って忍さんは紅茶を飲む。

 

確かに俺がいなければアリサ、すずかは散々陵辱されていたのだ。

 

もし、2人が塾へ行く途中ならなおさらだ。俺の発見が遅れて2人はあのバカ転生者共の慰み者に……。

 

それを考えると、俺がいたから2人はこうして無事に助かったのだ。

 

何とも、釈然としないが。

 

「……まあ、確かに……俺が一緒に下校していたから……でも、俺自身は……」

 

「良いの。私としては、アレス君に感謝しても、しきれないの。だから、言わせて」

 

忍さんは一呼吸置いてからこう言った。

 

 

 

「ありがとう」

 

 

 

その一言で少し気が楽になった。

 

忍さんは慈しむような微笑みで俺の顔を眺めていた。

 

「……ありがとう、忍さん……。そろそろ2人の所に戻りますね」

 

「ええ。お願いするわ」

 

俺は忍さんの部屋からお暇してリビングの方に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

はやてに今日は行けないことを伝えた後、リビングに向かう。

 

『そっか。それならしゃあないなぁ。今度来た時に理由を話して貰うで?』

 

と言われてしまった。

 

……なのは達に説明して良いモノやら。

 

学校でも性教育まだだしなぁ。

 

非常に悩むなぁ。

 

と頭の中で考えながら、リビングに着くといつも通り2人はテーブルに着いてお茶を飲んでいた。

 

服は2人ともワンピース。すずかは淡い水色でアリサは淡い黄色だった。

 

いつも通りの光景で俺は一安心した。

 

テーブルに近づくといつもの様にネコ達が近寄ってくる。

 

「お、おい……そんなに近づくなって……」

 

 

「ミャー」

「フニャー」

「キシャー」

 

 

相変わらず地球外生命体みたいな鳴き声をあげるネコがいるな。

 

見た目は普通の三毛猫なのだが。

 

もしかして、中身違うのか?

 

俺は怪しい鳴き声のネコを抱える。

 

「キシャシャシャシャ……」

 

余計怪しい鳴き声あげるな、こいつ。

 

見た目はかなり可愛いのに、残念チックな雰囲気が漂ってる。

 

まあ、人でも見た目はかなり可愛いのに中身が残念な場合があるからな。

 

「どうしたの?」

 

「あら、アンタそのネコがお気に入りなの? 鳴き声がかなり変なヤツなのに?」

 

「いや、常々思うのは見た目可愛いのに鳴き声で損してるなぁと……」

 

「そうだね、見た目はとても可愛いのにね……」

 

「そうそう、見た目は良いのになぁ……」

 

そう言って俺はアリサを見る。

 

「何でそこであたしを見るのよ……?」

 

「特に深い意味は無いのだが……」

 

「嘘仰い! あんた、『見た目は良いのに中身が凄く残念だなぁ』とか思ってるんでしょ!?」

 

「ばれたか」

 

「そこは否定しなさいよぉ! あんた、そこに直りなさい! あたしの中身の素晴らしさを教えてあげるから!」

 

「どうやって教えるんだよ?」

 

「もちろん、肉体言語に決まってるじゃない!」

 

「その時点で残念美少女になってる事に気付かないのか?」

 

「うるさいうるさいうるさーい! アンタはもうあたしの大事な人なんだから文句を言わないの!」

 

なんつー無茶苦茶な理論。

 

そして、しれっと大事な人とか言うなって。

 

飛びかかってくるアリサの攻撃をかわしつつ俺はお菓子を食べる。

 

こうして時は流れる。

 

 

 

 

 

 

 

アリサとすずかとの談笑も終わりに近い。

 

時計を見ると午後5時半を指そうとしていたから。

 

「さて、アリサを送ろうか。今日起きた事を話さないといけないだろ?」

 

「……うん」

 

「アリサ……ちゃん?」

 

途端、元気がなくなるアリサ。

 

おかしい。『青菜に塩』と言う言葉が合う位、しょんぼりとしてるアリサ。

 

「……どっか、痛いのか?」

 

「ねぇ、今日はアンタの家に泊まっても……良い?」

 

「……それは構わないが。でも、1回アリサの家に行ってご両親に……」

 

「……うん」

 

どこか、歯切れが悪いアリサ。

 

俺の頭で警鐘が鳴る。

 

何かが、ひっかかる。

 

まるで、家に帰りたくないみたいだ。

 

では、何故……すずかの家に?

 

俺はリビングを見渡す。

 

視界に入る、ノエルさんとファリン嬢。

 

……すずかの家は、忍さん、すずか、ノエルさんとファリン嬢だけで、全員女性だ。

 

アリサの家は、使用人の鮫島さんを筆頭にメイドさんもいるが、執事の人もいる。

 

それに、ご両親も……いる。

 

 

……。

 

 

…………。

 

 

………………。

 

 

待てよ? アリサは前に伊集院先生に頭を撫でられた時、言ってたな。

 

『アンタには分からないでしょうね! 大人の男に撫でられただなんて…気持ち悪い!』

 

そして、その後にすずかはこう言った。

 

『アリサちゃんの気持ち……分かるよ。私も……大人の男の人に近寄られるのは……ちょっと……』

 

もしかして……。

 

俺は頭にある事項が浮かんだ。

 

アリサとすずかは完全に男性恐怖症になったのではないのかと。

 

「俺の勘違いなら良いが」

 

俺はアリサとすずかの2人を見つめた。

 

「もしや、2人は……大人の男性が……恐いのか?」

 

俺がその言葉を告げる。

 

 

 

「……」

「……」

 

 

 

2人は無言で頷いた。

 

目には涙が浮かんでいた。

 

「そうか……」

 

全て分かった。

 

アリサとすずかは、心が壊れてしまったのだ……。

 

大人の男性に相当の恐怖を抱いてしまったのだ。

 

アリサは親しい執事の鮫島さんや、自分の父親にすら、近寄ることが出来なくなったのだ。

 

だから、自宅に帰りたくないのだ。

 

俺はノエルさんの方を向く。

 

ノエルさんも俺達の方を見る。

 

『し・の・ぶ・さ・ん・を・よ・ん・で・く・だ・さ・い』

 

俺は声に出さず、ノエルさんの方を見ながら口を動かした。

 

ノエルさんなら、読唇術で分かる……と思う。

 

すると、ノエルさんは一礼してから部屋を出ていった。

 

「恐いの……家に帰るのが……男の人が……」

 

アリサは目に涙を浮かべ、唇を噛みしめながら呟く。

 

「パパや鮫島に……くすん……」

 

「もう良い。分かったよ、アリサ」

 

俺はアリサを抱きしめた。

 

「男の人が恐いのよ……もうイヤだよ……」

 

泣くじゃくるアリサ。

 

「アレス君……私も……」

 

すずかも、同じだった。

 

「すずか、今日はウチに泊まりに来るか? アリサと一緒に」

 

「……え?」

 

「何しようか? トランプか? ゲームか? モンハンでも良いな」

 

「……うん」

 

そう言ってすずかも俺を抱きしめてくる。

 

「忍さん、今日はすずかをウチに泊めて良いですか?」

 

入り口に立つ忍さんに向かって俺はそう訪ねた。

 

「ええ。お願いするわ、アレス君」

 

 

 

 

 

 

 

 

-分身体アレス視点-

 

 

アリサとすずかは本体に任せて。

 

俺はアリサのご両親に説明しないといけないな。

 

と言う訳で、俺は母さんと忍さんを連れてバニングス家に行く事となった。

 

アリサの家に着いて、俺達は応接室に通される。

 

まあ、豪華な内装でさすがバニングス家だなと感心してしまう。

 

事件の事は母さんにはきちんと説明しておく。

 

話せない部分は念話で言っておく。

 

すると、ドアが開いてバニングス夫妻がやって来る。

 

どうやら今日は上手い具合家に在宅だったようだ。

 

企業のトップだから家にいないことが多々あるのだが。

 

「これはこれは、藤之宮さん」

 

「ようこそ、今日は娘を泊めて頂いて申し訳無いですわ」

 

ちなみに、ウチの父さんと母さんはアリサの父さんと母さんと仕事のつき合いもしているとか。

 

何気なく侮れない両親だな!

 

「突然お邪魔して申し訳無いです。実は、ウチの息子がお二人にお話したいことがありまして……」

 

「ほう? アレス君がですか?」

 

「あらあら、どの様な事かしら?」

 

「ほら、アレスちゃん」

 

母さんが促す。

 

「申し訳ない、バニングスさん。聞いてください、今日遭った出来事を」

 

俺は今日遭った誘拐事件をバニングス夫妻に話した。

 

 

 

 

 

 

 

「という訳で、今夜はウチに泊まらせて頂くと言うことでお願いしたいのです」

 

俺は一息ついてから紅茶を口に含む。

 

うむ、高価な紅茶なのだろうな。パックのモノとは何か違う。

 

 

「……」

「……」

 

 

バニングス夫妻は無言だった。

 

「申し訳ない、俺が付いていながら、アリサさんにあんな目に遭わせてしまって……」

 

俺がそう言うと、奥さんは手を挙げて制止する。

 

「謝らないで、アレス君。貴方のお陰でアリサは無傷で済んだのでしょう?」

 

「……ハイ、確かにアリサは無傷です。ただ……」

 

「ただ?」

 

「アリサさんは、極度の男性恐怖症になってしまいました。鮫島さんやお父さんですら、近づくのを怖がる様に……」

 

「っ!」

 

「な、何だって……!?」

 

驚いた顔で俺を見るバニングスさん。

 

「ウチのすずかも同じようになってしまったの。これは、かなりの問題です」

 

「ええ、1月半前の誘拐事件でも同じ様に強姦未遂に遭い、そして今回も同じ様に……。9歳の女の子が2度、そんな目に遭えば……」

 

「なんたる事だ……。藤之宮さん、その犯人は……?」

 

「その犯人は、こちらの手で然るべき処置を。詳しくは言えませんが、1つだけ言える事があります」

 

母さんは一息ついてから、こう言った。

 

「この世にいない……と言う事です。ですから、アリサちゃんとすずかちゃんに害を及ぼす事は一切ありません」

 

「……そう……ですか。せめて、私のこの手で……」

 

「貴方」

 

握り拳を作って、歯を食いしばるバニングスさん。

 

奥さんはその握り拳の上からそっと手を添える。

 

「ですから、当面はウチのすずかは塾は休ませる事にしました。学校の方は何とか男性教師と接触を控えさせますが、塾はそうもいきませんから」

 

「……そうですな。月村さんの言うとおり、アリサも塾を休ませる事にしましょう」

 

大きく2人の人生が変わってしまったな。

 

本来なら、何事も無く過ごして大学に行くはずだったのにな。

 

「……そう言えば、アレス君。確か、魔法で記憶改竄出来ると聞いていたけど?」

 

忍さんが唐突にそんな事を言ってきた。

 

「ほう? そんな事も出来るのかね?」

 

ちなみに、バニングス夫妻も魔法の事は話してある。

 

「確かに、記憶改竄は可能です。ですが、今回の場合は……」

 

「場合は?」

 

「2人の深層意識にまで男性恐怖症が食い込んでいる可能性があると言うこと。例え、誘拐された事を忘れさせたとしても、無意識に男性を恐れる可能性が高いと言うことです」

 

「そうですか……」

 

「もう少し、早くこの事に気付いて記憶改竄していればここまで症状が進む事は無かったと思いますが……。まあ、今更言っても後の祭りですが」

 

「そう……よね。こればかりはどうしようも無かったわ……」

 

「ですから、時間をかけてゆっくり改善させるのが一番良い方法かと。あと1つはあるにはありますが、俺はやりたくありません」

 

「……それは、どういう方法かね?」

 

「記憶を『全て消す』。深層意識から全て、綺麗に真っ白にする……方法。忍さん、バニングスさん、認められますか? 9年生きた、2人の全てを消すんですよ? これは、『アリサ・バニングス』と『月村すずか』を殺すのと同じ事です」

 

 

「……」

「……」

「……」

 

 

忍さんとバニングス夫妻は無言になった。

 

「ですから、俺はそれだけはやりたくないのです」

 

出会って3年。

 

小学1年生からつき合ってきた2人。

 

俺だって、その思い出を消したくは無いのだ。

 

「分かった。アレス君が拒否する訳が。それは、私達とて望まない方法だ」

 

「ええ」

 

「それで、当面は……どうしましょうか? お2人は、ウチで泊まらせますか?」

 

母さんが訪ねて来る。

 

「しかし、藤之宮さんに迷惑が……」

 

「ウチは全く構いませんよ? 見たところ、アリサちゃんもすずかちゃんもウチのアレスちゃんにゾッコンみたいですし」

 

イヒヒヒと笑いそうな顔で俺を見る母さん。

 

シリアス空気が壊れそうになってきたんですが?

 

「……なるほど、2度助けて貰ったアレス君なら」

 

「そうねぇ……アレス君と一緒なら……。2人も安心出来るわね」

 

「……まあ、当面は良いのですが」

 

俺は苦笑するしか無かった。

 

「まあ、いつ治るか分からない以上はねぇ……」

 

「そうですわねぇ……。大人になるまで治れば良いのですけど……」

 

「うむ……。男性恐怖症では会社経営は困難だな……。まあ、従兄弟の才人君に継がせるから良いとして……」

 

「アリサの嫁ぎ先は……もう、決まった様なモノねぇ……。あの子、いつもアレス君の事ばかり楽しそうにお話するし……」

 

「あら。ウチのすずかもアレス君の事、楽しそうにお話するんですよ?」

 

何か、段々ときな臭い話しになってきたんだが。

 

「まあ、致し方ないか。もし、治らなければアレス君が面倒を見てくれるでしょう」

 

「そうですわね。惚れてしまった以上は好きにさせましょうか」

 

あれ? なんか、公認になってるんだけど?

 

何このご都合補正?

 

親なら止めても良いと思うんだけど?と言うかむしろ止めて。

 

「アレスちゃん、諦めなさい。アレスちゃんが2人の心を奪ったんだから」

 

「母さん、意味が分からないよ。俺は別に2人の心を奪った記憶は無いんだが?」

 

「心も体も陵辱される所を颯爽と助けに来たのよ? 2人の目には白馬に乗った王子様みたいなモノよ? しかも、2度も」

 

「いや、確かに、結果助ける事になったんだけど……」

 

「なら良いじゃない。まあ、結婚話しになったらその時にはその時で」

 

何その未来に丸投げ的な先送り。

 

「それでは、アレス君。ウチの娘を頼む。ちょっと、お転婆な所があるが……」

 

「お願いするわ」

 

「アレス君。すずかを頼むわね」

 

保護者3人はそう俺に言ってきた。

 

そう言われると拒否出来ないんだが……。

 

「……分かりましたよぅ……。この先どうなるか分かりませんが、2人をお守りします」

 

こんな訳で、俺はアリサ、すずかの保護者達公認でお付き合いとなってしまった。

 

その時、俺の頭に浮かんだのは……。

 

 

 

 

機械仕掛けの神(デウス・エクス・マーキナー)

 

※古代ギリシャの演劇において、劇の内容が錯綜してもつれた糸のように解決困難な局面に陥った時、絶対的な力を持つ神が現れ、混乱した状況に解決を下して物語を収束させるという手法を指した。

 

 つまり、ご都合主義と似たようなもんである。

 

だった。

 

あの野郎、今度異世界の神界で会った時1発殴っておこうか!

 

ちなみに、俺は『機械仕掛けの神(デウス・エクス・マーキナー)』と知り合いである。

 

 




 
実は色んな神族とお知り合いなのですw

あと、シリアスやるなら最初からやれと言う話w


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第26話 男と女の違い、すずかの決断

 

 
変態に技術と知識をむやみやたら与えてはいけませんw



 

 

 

 

 

「ん……」

 

雀の鳴き声で目が覚める。

 

起きようとしたが、両腕をしっかりと握られて起きあがれなかった。

 

そう、両隣にアリサとすずかが可愛い寝息を立てて眠っているのだから。

 

しかし、母さん。この事を見越して……このベッドを買ったのか?

 

俺達が今寝ているベッドは特注サイズと言っても過言でない、7人は並んでも大丈夫な位大きなベッドだったからだ。

 

2人はしっかりと俺の腕を掴んで放す気配は微塵も無かった。

 

昨日、母さんが帰ってきて、アリサとすずかに全てを話した。

 

それを聞いて2人は大喜びしていた。

 

まあ、しばらく俺の家でお世話になるのだからな。

 

今日はアリサとすずかの着替え等を持って来るとの事。

 

幸い、部屋は結構空いてるし、2人増えるのは全く問題は無いのだ。

 

と言うか、2人は平然と俺の部屋で着替えるのだが。

 

小学校低学年の体育の着替えじゃないんだが……。

 

まあ、いいか……。

 

そうこうしてたらエヴァが起こしに来る。

 

寝ぼけ眼で2人は目を覚まして起き上がる。

 

「おはよう、アリサ、すずか」

 

俺は焦点が合ってない2人の顔を眺めながら挨拶する。

 

「……おはよ……アレス……」

 

「おはよう……アレス君……」

 

「ほれ、朝だぞ。学校に行くんだぞ?」

 

 

「……」

「……」

 

 

2人はまだ寝ぼけてるみたいだ。

 

男なら容赦なく関節技の1つでもかけて目を覚まさせるのだが、この2人にそんな事するわけにもいかない。

 

「しょうがねぇなぁ……」

 

俺はとりあえず、すずかに抱きついた。

 

「ひぇい!?」

 

驚きの声をあげて目を覚ます、すずか。

 

そのあと、更に俺はアリサに抱きつく。

 

「ひゃっ!?」

 

同じように驚きの声を上げてアリサも驚いた。

 

「朝だぞ? 遅刻するぞ?」

 

「アンタはぁ! 朝からレディに何て事するのよぉ!」

 

起き上がってアリサは俺にパンチを繰り出してくる。

 

「そんなことしてる暇があるなら、顔を洗うなり準備してくれよ」

 

俺はアリサのパンチをかわしながら部屋から出る。

 

「待ちなさい! レディに朝から抱きついて許されると思うの!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

今日もパンとミロ、サラダに目玉焼きだった。

 

目の前にはアリサ、左斜め前にすずかが座ってる。

 

隣にはエヴァも座っている。

 

ちなみに、父さんは既に仕事に出ていた。

 

「アンタ、今日もミロ? たまには大人のあたしみたいにブラックコーヒー飲んでみるとかどう?」

 

そう言ってコーヒーを飲むアリサ。

 

はて?

 

アリサってミルクと砂糖入れていたような気がしたのだが?

 

そんな事を思いつつ俺はアリサがカップを口に付けてブラックコーヒーを飲む所を見つめた。

 

 

「にがっ」

 

 

アリサの小声が聞こえてきた。

 

単に大人ぶっていただけだった。

 

「今、『にがっ』って聞こえた気がしたのだが?」

 

「き、きき気のせいよ! 朝から空耳が聞こえたんじゃないの!?」

 

顔を赤くするアリサ。

 

「ほらほら、ミルクと砂糖を入れたらどうだ? ん~?」

 

俺は口元を釣り上げて笑いながらミルクと角砂糖を入れてる容器を指差す。

 

「う、うるさいわね! あたしはアンタより大人なのよ!? だからブラック飲むのよ!?」

 

そう言ってアリサはブラックコーヒーを飲む。

 

その度に苦虫を噛み潰したようなしかめ面していた。

 

「アリサちゃんったら……」

 

隣で苦笑しているすずか。ちなみに、すずかは紅茶に角砂糖を1つだけ入れて飲んでいた。

 

 

 

 

 

2人の制服と本日の時間割分の教科書等が届けられて。

 

あっと言う間に着替えて登校となる。

 

家を出ると、なのはが待っていた。

 

「アレス君おは……アリサちゃん、すずかちゃん?」

 

驚いた顔で俺達を見るなのは。

 

「おはよう、なのは」

 

「おはよう、なのはちゃん」

 

「おはよう、アリサちゃん、すずかちゃん……。2人とも、昨日はアレス君の家にお泊まりだったの?」

 

「うん、ちょっと……事情があって……」

 

「ごめんね。昨日はちょっとゴタゴタがあって……」

 

俺達は歩きながらそんな会話をする。

 

「そうなんだぁ……今日は私も泊まって良いかな?」

 

俺はアリサとすずかの顔を見る。

 

2人はゆっくりと頷く。

 

まあ、なのはなら別に問題は無いよな。

 

……しかし、アリサとすずかが誘拐された事件は言わざるを得ないのか。

 

実際には俺が関わる事件なのだが。

 

だが、なのはやフェイト、はやてだって無力化されてしまえば2人と同じ様に陵辱される可能性は大いにある。

 

アリシアも似たようなモノだな。

 

プレシア女史とかリニス、フェイトにアルフがいるからそう簡単に……と言いたいが。

 

昨日みたいな空間干渉系だと後手を踏んでしまう。

 

……やはり、魔導師がやった事件と言う事で皆に話した方が良いかもしれない。

 

こういう事例があると話せば、少しは警戒出来るだろうし。

 

俺だって四六時中皆と一緒にいられる訳じゃない。

 

だが、話すにしても内容が内容なだけに被害者の許可を得ないとダメだな。

 

「……なあ、アリサ、すずか。昨日の事件、なのは達に話しても大丈夫か?」

 

俺は2人の顔を見ながらそう言った。

 

「昨日の……事件?」

 

なのはは不思議そうな表情を浮かべていた。

 

「ああ、ちょっとした……事件だ。アリサとすずかに関わる事でな。2人が良いと言えば、話せるんだが……」

 

アリサとすずかはお互い顔を見合わせていて、頷いた。

 

 

「良いわよ」

「良いよ」

 

 

あっさりと了承を得た。

 

「エラいあっさりと許可を出したな……」

 

「……まあ、なのは達にあたし達みたいな目に遭って貰っても困るし……」

 

「そうだね……。あんな目に遭うのは私達だけで充分だよ……」

 

2人はそう言って俯いた。

 

「えっと……な、何があったの?」

 

なのはは困惑した表情を浮かべていた。

 

「そうだな。今日学校が終わった後、はやての家に行こう。そこで話そうか」

 

「そうね」

 

「そうだね」

 

「……うん、分かったの」

 

そんな感じで俺達は学校に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

『あっ』と言う間に放課後になったぜ。

 

別段、今日はこれと言った事は起きていない。

 

強いて言えば、男性教師が担当だった教科は全て女性に変わったと言う事だな。

 

バニングス家と月村家が手を回したのだろう。

 

伊集院先生の接点が更に減ってしまったな。

 

……しかし、転生者のハズのあの先生は別に何もして来ないんだよな。

 

現状維持なのか、それとも……あの闇の書暴走事件の時に介入してくるのか。

 

ちなみに暴走事件は起こるのは間違いないと思う。

 

夜天の書の防衛プログラムを切り離すのは確実なのだろうから。

 

そう言えば、そろそろ400ページになると思うのだが。

 

今度、確認しておこうかな。

 

そんな事を思いつつ、俺達ははやての家に到着した。

 

 

 

 

 

勝手知ったる他人の家と言う訳でもないが、俺達はいつもの様にはやての家に上がる。

 

中に入ってはやての部屋に行くと主のはやてにフェイトとアリシアがいた。

 

3人とも読書タイムだった。

 

そう、昼休みにこっそりと分身してからプレシア女史の所に行き、事情を説明しておいたのだ。

 

無論、『しっかり教えておいてね♪』と非常に良い笑顔で言われたのは言うまでも無かった。

 

ちなみに、アリサとすずかの許可も得ている。

 

「あ、いらっしゃい」

 

はやては視線を上げて俺達の方を見る。

 

「久しぶり……かな?」

 

「みんな、久しぶり~」

 

フェイトはちょくちょく蒐集で会ってるが、アリシアと会うのは久しぶりだな。

 

結構成長した様に見える。

 

「久しぶりだね、アリシアちゃん」

 

和気藹々と挨拶を交わす。

 

「あ、お茶用意せんとあかんね」

 

「良いよ、俺が準備する」

 

そう言って俺は分身する。

 

分身体はキッチンに向かって行った。

 

「……つくづく思うけど、アンタって完全犯罪が出来るわよね?」

 

アリサがジト目で俺の方を見る。

 

「そうやね……アリバイ作れるし。こんなんじゃ推理小説にならんわ!」

 

「まあ、確かに可能と言えば可能だが。だからと言って俺はそんな事しないぞ」

 

「まあ、確かにアンタはそんな殺人事件とかはしないと信じてるけど……」

 

アリサは周りの皆の顔を一周してから言った。

 

「浮気とか完全に出来るわよね?」

 

「……」

 

いきなり何を言うのか、このツンデレパツキンは。

 

「だって、そうでしょ? アンタ最大12人まで分かれる事が出来るんでしょ?」

 

「うむ」

 

「ここにいるのは……1……2…………6人。つまり、あたし達全員に1人ずつ付いていても後6人はフリー。ほら、あたし達の知らない所で女の子を拐かして来る事も可能よね?」

 

 

 

「そうやね……」

「そうね……」

「そうだね……」

「うん、可能性はあるね……」

「可能性は否定出来ないの……」

 

 

 

チミ達、そこは否定して貰いたいのだが!

 

「待て待て待て! 俺はそんな事はしないぞ!?」

 

「ホントにぃ? アンタ、実際こうやって6人の女の子を囲ってるじゃない」

 

 

 

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

 

 

 

全員が俺の顔をジッと見つめてくる。

 

12の瞳が俺の顔をジロジロと見ていた。

 

え? 何か、四面楚歌状態なんだけど?

 

「……俺にどうしろと?」

 

「そうやね、まあ……私達はアレス君に骨抜きにされたんやから……」

 

「そうだね……」

 

「にゃはは、それは否定出来ないね」

 

アリサ以外が苦笑していた。

 

「ぶっちゃけ、あたし達の中で誰が一番好きか言いなさいよ!」

 

顔を真っ赤にして言い放つアリサ。

 

「あ、それ私も興味ある」

 

「アレスお兄ちゃんの好きな人か~」

 

テスタロッサ姉妹は輝いた目で俺の方を見る。

 

一番好きな人……だと?

 

俺は全員の顔をそれぞれ見る。

 

なのは……ちょっと子供っぽくて明るい女の子。

 

フェイト……落ち着いた雰囲気でたまに天然が入った発言する女の子。

 

アリシア……元気溢れる快活な女の子。

 

はやて……明るくて、冗談が言い合えるつき合いやすい女の子。

 

アリサ……お転婆で、口喧嘩とかするけど一緒にいると元気が出てくる女の子。

 

すずか……大人しいけど、一緒にいると落ち着ける女の子。

 

 

 

選べる訳ねえだろうが!

 

全員それぞれ個性があって俺は好きなんだから。

 

誰が一番好きかと言われても……全員好きなのは間違いない。

 

うむ、夜道で背中から刺されてもおかしくない発言だな。

 

「誰が一番好きかって……俺は全員好きなんだけど……」

 

 

「へ?」

「へ?」

「へ?」

「へ?」

「へ?」

「へ?」

 

 

「いや、だって……なのははなのはで良いところあるし、フェイトはフェイトで良いところあるし……全員良いところあるし……」

 

俺は全員の顔を見つめてから言った。

 

「それに、誰かが誰かの代わりにすることは出来ないよ。アリサがすずかの代わりにならないし、はやてがアリシアの代わりは出来ないし。比べたくないんだ。全員、個性があって……。良いところもあれば悪いところもある。人間なんだから、それは当たり前なんだ」

 

神だって個性があるのだから。

 

「だから、俺の中では全員が1番好きなんだよね」

 

そう言って俺は頬を指先でポリポリとかいた。

 

全員、頬を赤くして俺の顔を見ていた。

 

「チィーッス! お茶お届けしましたー!」

 

キッチンに行っていた分身体が戻ってきた。

 

「ん~? 本体の。お前、また何かやらかしたか?」

 

「やかましい、分身の。良いからさっさと元に戻れ」

 

「へいへい」

 

そう言って俺は分身体と合体する。

 

「……お茶にするか」

 

俺はお茶の準備をする。

 

「……この……女ったらし……!」

 

「反則やね……!」

 

「アレス君は浮気者なの……!」

 

「アレスお兄ちゃんはこうやって女の子を毒牙にかけるんだね……!」

 

「アレス君……ダメだよ……そんな事平気で言っちゃ……」

 

「アレス……反則だ……」

 

全員のジト目が俺に突き刺さった。

 

「何でじゃ!」

 

 

 

 

 

 

お茶を全員で飲んで一息つく。

 

「さあ、昨日来られんかった理由を話して貰おうかな!」

 

鼻息荒く俺の方を見るはやて。

 

俺はアリサとすずかの顔を見る。

 

2人はゆっくりと頷いた。

 

「さて、昨日来る事が出来なかったのは、途中でアリサとすずかが誘拐されたからだ」

 

「……え?」

 

「う、嘘……」

 

アリサ、すずか以外の4人は驚いた顔をしていた。

 

「ああ。はやての家に来る途中、公園で休憩していたらアリサとすずかの2人が次元の穴に引きずり込まれたんだ」

 

「次元の穴……?」

 

「まあ、八雲紫のスキマみたいなもんだな。俺がジュースを買っている間の僅か15秒足らずの出来事だったんだ」

 

「まさに神隠しやなぁ……」

 

「それから俺はエヴァに頼んで2人の居場所を探してから救ったと言うわけだ」

 

「へぇ~」

 

「えへへ、お兄ちゃんは2人の王子様って訳だね!」

 

「まあ、それだけで済めば良かったんだがなぁ……」

 

俺はため息をついた。

 

「まだ、何かあったの?」

 

不安そうな顔で俺とアリサ、すずかの顔を見るフェイト。

 

「うむ、それなんだが……」

 

あの件を話すには、まず知識を知っておかなければならない。

 

俺はポシェットの中から本を取り出した。

 

小学生向けの……性教育の本だった。

 

きちんと人数分ある。

 

高校生とか中学生向けのはまだ早い内容だから、彼女達には見せられない。

 

「……えっと……アレス君これ……」

 

顔を赤くしてるはやて。

 

そうか、知ってるんだな、はやては。

 

「……まあ、いずれは知らなければならない事だ」

 

俺だって、こんなのを女の子に教えるとか恥ずかしいわ!

 

「それじゃあ、一通り読んで貰おうか」

 

「ごめん、私まだこっちの言葉はまだ……」

 

「私も~」

 

「そうか、まあ……解説してやるよ」

 

アリシアとフェイトに解説しながら話は進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

「にゃあ~……」

 

顔が真っ赤ななのは。頭から湯気が出てる様に見える。

 

「そうなんだ……」

 

「ほぇ~」

 

同じように顔が赤いテスタロッサ姉妹。

 

 

 

「……」

「……」

「……」

 

 

アリサ、はやて、すずかの3人は無言だった。

 

無論、顔が赤いのは言うまでもない。

 

「とまあ、こうやって子供って出来るんだ」

 

俺も顔が赤いのは分かる。

 

顔が凄く熱いから。

 

エアコン、かかってるよな?

 

うん、かかってる。

 

さっきからヒンヤリとした空気が流れてる。

 

「……じゃあ、アレスお兄ちゃん。お兄ちゃんと私がしたら……私とお兄ちゃんの子供が私に出来るんだね?」

 

「……まあ、そうだな」

 

「お兄ちゃんの子供欲しいなぁ~」

 

こう言うんじゃないかと思ったよ!

 

だからまだ早いと俺は思ったわけで。

 

「アリシア、ダメだよ。私だってアレスの子供欲しいんだから」

 

この姉妹は全く……やはり似てないようで根本はそっくりなんだから。

 

「フェイトちゃんもアリシアちゃんも何を言ってるん? アレス君の子供は私だって欲しいんよ?」

 

だから、タヌキさん……貴女も何を言ってるんだ!

 

「にゃあ……アレス君の子供……私も欲しいの……」

 

収拾がつかなくなるんだが!

 

「ええい! おのれら! 俺はまだ身体が子供作れる状態じゃねぇんだよ!」

 

「そうなの?」

 

「全く、こう言うのは女の子が早く迎えるの。大体、みんなアレを迎えてないだろ?」

 

「……アレって……アレ?」

 

「ああ、月一起こるらしいのアレだ。アレも迎えてないのにしたって子供なんか出来るか!」

 

「あはは……」

 

苦笑いを浮かべるなのは達だった。

 

「とまあ、男と女の身体の違いは分かったと思う。さて、子供作りの時は……まあ、『快感』が得られるんだ」

 

「快感?」

 

「簡単に言うと『気持ち良い』と言う事だな。好きな人とだとなおさら気持ち良いのだが……」

 

俺が言うと全員がジーッと俺の顔を見ていた。

 

その表情は何か期待を込めた眼差しだった。

 

「……何を期待しとるか知らんが、実演とかはせんぞ?」

 

「いけずやなぁ、アレス君は」

 

全く、耳年増になったな……。

 

「さて、と。話が脱線したが、普通は男と言うモノは大人の女性が子供作りの対象になるのだが……」

 

俺は全員の顔を一瞥する。

 

「たまにいるのが、全員みたいな可愛い少女を見て欲情する戯け者がいるんだ」

 

その言葉を聞いて全員が顔を赤くしていた。

 

「ん?」

 

俺は全員の顔を眺める。

 

「そこでサラッと可愛いとか言わないでよ」

 

「何故に? 可愛いのを可愛いと言っても別に問題は無いだろ?」

 

「それは……まあ、そうなんだけど……」

 

すずかはしどろもどろになって答える。

 

「まあ、要はアリサとすずかはそんな奴らに強制的に子供作りを迫られた……これは『強姦』と言うんだが。つまり、2人は昨日はそんな目にあったのだ」

 

 

 

「……」

「……」

「……」

「……」

 

 

 

なのは、フェイト、アリシア、はやては無言になった。

 

「そのせいで、2人は……大人の男性に近づく事も、近づいて来られる事もダメになったんだ」

 

「……そう言えば、今日の学校の先生が皆女の人になったのも」

 

なのはは顎に手を当てて思い出していた。

 

「ああ。2人の保護者が学校に指示しておいたんだ。2人の授業担当は全て女性教師にしてくれと」

 

「……そっか。まあ、確かに……アレを見せられたらなぁ……」

 

はやても過去に誘拐された時、同じように見せられていたのだ。

 

 

 

「……」

「……」

 

 

俯くアリサとすずか。

 

「まあ、そんな訳で当分は2人は俺の家で同居生活を送る事になったんだ」

 

「ん~……まあ、そんな理由ならしゃあないけど。ところで、私等はいつも通りにお泊まりに言ってもええんやろ?」

 

「それは構わないが?」

 

「そうだね、私達もずっとお泊まりにしようか?」

 

「ぶ~! あたしも泊まりたい~!」

 

なんか、このままだとずっと俺の家で全員同居生活を始めそうで怖いのだが。

 

「……ってか、2人が泊まるのは一時的なもんだぞ? ずっとじゃないんだぞ?」

 

「そうなんか? でも、将来はずっと一緒になるんだから今からでもええやん?」

 

はやてはサラリとそんな事をのたまう。

 

「いや、独立したなら構わないが。今は親の世話になってる以上、あんまりそういうのは」

 

「にゃ? 直美さんなら多分大喜びじゃないかな? 『アレスちゃんのお嫁さんが沢山出来る~♪』って」

 

なのはの台詞を聞いて否定出来ない俺がそこにいた。

 

と言うか、独立する時は100%泣いて引き留めそうだ。

 

「まあ、兎に角。当面はアリサとすずかの2人は俺の家で過ごす事になったからな」

 

そう言って俺はこの事について終わらせる事にした。

 

 

 

 

 

ちょっとした談笑を全員とかわしていた。

 

すずかの様子を見ると何か神妙な顔をしていた。

 

「どうした? 何か……気になる事でもあったのか?」

 

俺はすずかに話しかけた。

 

「……えっと……実は……みんなに言いたいことが……」

 

いつもより小さい声で話すすずか。

 

……もしや、月村家の秘密である『夜の一族』の事を言うのだろうか。

 

「そっか。アリサ、すずかが何やら言いたいことがあるそうだぞ?」

 

「ん? そうなの? すずか、何かあったの? アレスにキスでもされそうになったとか?」

 

「なんでやねん」

 

思わずはやての口調が移ってしまった。

 

「アレス君私の真似せんといてやー!」

 

騒ぐはやてを無視する。

 

「なあ、アリサ? 何故に俺がすずかにキスを迫らないといけないんだ?」

 

「ん~……何となく? あんたなら何事も無かったかのようにそのまま自然にキスとかしそうだし?」

 

実に心外な台詞であった。

 

ちなみに、迫るより迫られる方が多いのは秘密である。

 

「……俺はそんな事しないぞ」

 

「そうやね、アレス君は迫るより迫られそうな感じや」

 

このタヌキ、意外と勘が良いな!

 

「あ、何となく分かるかな」

 

フェイト……お前もか!

 

「にゃあ……そう言えば、私……アレス君とキスした事無かった!」

 

いらん事思い出さんでも良いぞ、なのは。

 

「え? なのは、アンタ……アレスとファーストキスしたこと無かったの!?」

 

「意外……てっきり私達と知り合う前に既にしてると思ったのに」

 

なのはの台詞で驚いてるアリサとすずか。

 

「ならお兄ちゃんのファーストキスはあたしが貰うー!」

 

いきなり飛びかかってくるアリシア。

 

俺はアリシアの両肩を掴んで止める。

 

ええい、こんな公開処刑的なファーストキスがあるか!

 

前世の前世でも似たような状況だったと言うのに!

 

「だ、ダメだよアリシア! 私だってアレスのファーストキス欲しい!」

 

「あかんあかんあかん! 認めへんで! 私が貰うんや!」

 

「にゃー! アレス君と一番長いつきあいの私が貰うのー!」

 

「ダメだよ! なのはちゃんとは既に済ませてると思ったから諦めてたのに!」

 

「アレス! 何でなのはとファーストキス済ませてないのよ! お陰でアンタのファーストキス奪いたくなったじゃない!」

 

アリサは逆ギレしていた。

 

ってか! お前のいらん台詞でこんな事態を招いたんだろ!

 

「あ、アリサのいらん台詞のせいだろうが!」

 

「アンタ、あたしに口答えする気!?」

 

「なんぼでもしてやるわ! なんなら、そのうるさい口を俺の口で塞いで黙らせてやろうか!?」

 

「へぇ?」

 

アリサが口元を釣り上げて笑う。

 

邪悪的な雰囲気が漂ってくる。

 

周りを見ると、全員の目が据わっていた。

 

非常にヤバい状況になってしまった。

 

この状況では……誰を選んでも角が立ちそうだ。

 

〈お兄様……どうしてこんな面白い状況になるのですか?〉

 

エヴァが問いかけてきた。

 

〈面白いもんか。こういう修羅場は第三者の立場で見るのが面白いんだ。当人の立場はろくなもんじゃない!〉

 

〈まあ、私は面白いですけどねー〉

 

エヴァ、ちょっと拗ねてないか?

 

〈何か、打開策は無いか?〉

 

〈無いですわよ? ええ、こんな女の子に揉みくちゃにされてウハウハしてるお兄様なんか知りません!〉

 

やっぱり拗ねていた。

 

と言うか、どうすればこの状況がウハウハに見えるのか不思議なんだが。

 

〈今夜、晩ご飯の時にあーんして一緒に風呂入って一緒に寝てやるから〉

 

〈……仕方ありませんね。お兄様、二重身(ドッペルゲンガー)を使えば良いんじゃないですの?〉

 

〈その手があった!〉

 

〈お兄様、たまーに抜けてますわね?〉

 

〈ほっといてくれ……まあ、今夜してやるからな?〉

 

〈楽しみにしてます♪〉

 

エヴァとの念話を終えて、俺はアリシアから離れる。

 

「誰を選んでも角が立つと言うなら!」

 

俺は二重身で6人に分かれた。

 

「……確かに」

 

「そうか、その手があったか!」

 

「にゃあ……アレス君便利だね」

 

全員が目を丸くしていた。

 

そして、俺達はなのは達の肩を掴んでそれから初めてのキスを交わした。

 

もっとも、数年後には更なるとんでもない事態になるのは……この時は思わなかったがな!

 

 

 

 

 

「あ、あああ、アンタはぁ!!! 舌を入れるなんてぇ!!!」

 

「何事も経験だろ?」

 

向こうで分身体の俺とアリサが戦っていた。

 

いや、リンゴの様に顔を真っ赤にしたアリサが一方的に殴りかかっていて分身体の俺はそれを軽快に避けているだけの話だが。

 

どうやらディープキスしたみたいだ。

 

初めてのキスにそれは……いかがなものだろうか。

 

ちなみに、俺は舌でさくらんぼの枝を結ぶことが出来るのだ。

 

「……あっちの俺はほっといて良いぞ」

 

なのは達は苦笑しながら分身体の俺とアリサの様子を見ていた。

 

あ、捕まってアリサにテキサス・クローバーホールド決められてる。

 

 

 

「ノ―――――――ッ!!!」

 

 

 

おおぅ、自分の分身だが、見てるだけで痛そうだぜ。

 

「ウホッ、アリサちゃんは大人の階段昇ったいうことか?」

 

はやてがニヤニヤしながら眺めていた。

 

「話がずれたが、すずかは何を言おうとしたんだ?」

 

「……えっと……ね? 私の一族の事なんだけど」

 

それからはすずかの話を聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

・人間ではなく、血を吸う吸血鬼みたいな『夜の一族』と言う名の種族

・弱点は特に無い

・身体能力が普通の人より高い

・別に血を吸わなくても弱る事は無い

・特定の時期になると血を吸いたくなる衝動が襲ってくる

・異性にこの秘密を喋る場合は伴侶になってもらうか、一生黙っていて貰う。

 

 

 

 

 

とまあ、こんな感じであった。

 

「へぇ~」

 

「ほぉ~」

 

全員、そんなに驚いた感じではなかった。

 

俺の方がある意味上なのだから。

 

「アレス君なら……絶対に私の事、バケモノ扱いしないと思ったから」

 

確かにその通りである。

 

前世が『吸血鬼の真祖(ハイディライト・ウォーカー)』だった俺だとその気持ちは分かるのだ。

 

いやー……ずっとバケモノ扱いだったからね。麻帆良に行くまでは。

 

「まあ、前世が似たようなモノだったからね……」

 

苦笑する俺。

 

「にゃ? そう言えば、お兄ちゃんも……知ってるの?」

 

なのはが訪ねてくる。

 

「知ってるよ。つき合う時に話したって」

 

なるほど、恭也さんは既に知ってると。

 

「はぁ~……ここんところ驚く事ばかり……」

 

ため息をつくアリサ。

 

「ごめんね……黙ってて……」

 

「良いわよ。あたしだって、同じ立場なら……かなり躊躇すると思うから」

 

「そうやね~……他の人と違うのって……目立つやんなぁ~」

 

「でも、アレスお兄ちゃんに話したって事は……」

 

「アレスをお婿さんにするって事……だよね?」

 

アリシアとフェイトは顔を見合わせていた。

 

その言葉で全員が一斉に沈黙した。

 

「……仮に伴侶にならなくても一生喋らないぞ」

 

俺は一応釘を刺しておいた。

 

【大丈夫ですよ、お兄様はきちんと皆さんのこと愛してくれますから♪】

 

突然何を言い出すのかな?エヴァちゃん?

 

その言葉を聞いて全員頬を赤くしていた。

 

「俺より良い男は世の中沢山いるぞ?」

 

ため息をつきながら俺はそう言った。

 

 

 

「それは無いの」

「いないと思うな」

「アレスお兄ちゃんよりいい男なんていないよ?」

「あかんよ。私はアレス君が一番好きなんやで?」

「私もアレス君の事好きだよ?」

「仕方がないわね! あたしもアンタの事好きなんだからね!」

 

 

 

とりつく島も無い様だった。

 

「ところで……思い出した事があるの」

 

なのはは紅茶を一口飲んでからそう切り出した。

 

「何を……だ?」

 

「私とアレス君が初めて会った日。そして、2日後にお父さんが意識不明の重体から回復したの」

 

ああ、あの時の事か。

 

なのはの父、士郎さんを魔法で治療したのだ。

 

……少しだけ、きな臭い予感がするが。

 

「……そう言えば、なのはと知り合った時は士郎さん入院していたよな」

 

「……それってかなり都合が良くないかな?」

 

「偶然とは重なるモノだ」

 

俺はそう言って紅茶を一口、口に含んだ。

 

「ホントに? アレス君、何かしたんじゃないのかな?」

 

そう言って俺の目を見つめて来るなのは。

 

なのはの瞳はユラユラと揺れて少し潤んでいた。

 

「……そうやな。アレス君は前世の記憶を持ってる位だから……病院に忍び込んで魔法使って治療とかしてそうやな」

 

だから何でそんなに的確に核心を突いてるんだよ、このタヌキ娘は!

 

「あ~……なんか容易に想像出来るわね。で? アンタ何かやったんじゃないの?」

 

「し、知らん! 知らん!」

 

「ん~? アレス、妙に汗かいてない? 背中がビッショリだよ?」

 

そう言って俺の背中を撫でて来るフェイト。

 

「お兄ちゃん、何か隠してるのバレバレだよ?」

 

「何も隠してはおらぬ!」

 

そう言うとすずかは俺の方に寄ってくる。

 

「……? ど、どうした?」

 

すずかはいきなり俺に抱きつき、左の頬に流れる汗を……舐め取った。

 

暖かく、柔らかい舌の感触が頬を走る!

 

 

 

「この味は! ……嘘をついてる味だよ……アレス君!」

 

 

 

ブチャラティやったよ! この子は!?

 

「すずか……アンタ……凄い大胆な事やってる事に気付いてないの?」

 

「うわ~、リアルブチャラティやってるわ……。私もやりたかったな……」

 

はやてもろくでも無いことを言ってるが、今は無視だ。

 

「へぇ~汗の味で嘘かホントか分かるんだ」

 

「なるほど……今度試してみようかな……」

 

フェイト、貴女がそれすると色々シャレにならないから止めてください。

 

「すずかちゃん、アレス君……嘘ついてるんだね?」

 

「うん」

 

しかもなのはがソレを信じ切ってる!

 

「さあ、アレス君? 私に嘘や隠し事は無しって言ったよね?」

 

「……」

 

俺は立ち上がろうとしたが、いつの間にかアリサとフェイトが来て両肩を掴んでいた。

 

ちなみに、すずかは抱きついたままだった。

 

【もう、お兄様ったら、素直に言えば良いのに。士郎さんの治療はお兄様が行いましたよ?】

 

エヴァが暴露してしまった。

 

「エヴァ―――――――――ッ!!!」

 

「アレス君の嘘吐き!」

 

そう言ってなのはは抱きついて来た。

 

「嘘吐きのアレス君にはお仕置きだよ?」

 

そう言ってなのはは俺の唇に唇を合わせてくる。

 

柔らかい唇の感触が唇に伝わる。

 

「んちゅ……」

 

舌を俺の舌に絡ませてくる。

 

「おほ」

「わっ」

「わー」

「……」

 

20秒位流れただろうか。

 

そしてなのはは口を離す。

 

「アレス君はずっとお仕置きだからね?」

 

なのは、それはお仕置きではないぞ。

 

 

 

 

 

結局、なのはにばれてしまった。

 

まあ、他の家族には言わない事を約束したが。

 

別に、ハーレム作るつもりは無かったのだがなぁ。

 

気が付いたら、全員のフラグを建ててしまったようだ。

 

ま、良いか。

 

将来、彼女達に良い伴侶が現れたら祝福してやろう。

 

わざわざ、俺でなくとも良いからな。

 

さて、そろそろ夜天の書が400ページ超えたと思ったが。

 

物語もいよいよ大詰めと言った所だな。

 

ちゃっちゃと終わらせて、転生者共を捕まえるかな。

 

 

 

 




 
すずかファン「我々の業界ではご褒美です」


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第27話 目覚めた夜天の書

 
物語は更に加速します


 

 

 

 

 

アリサとすずかが誘拐された事件から1週間過ぎました。

 

気が付けば、もう夏休み直前。

 

毎日暑い盛りの日々が続きます。

 

例によって、はやての家に行く俺達。

 

アリサとすずかも塾はお休みでいつ復帰するか目処は全く立っていません。

 

復帰出来る日が来るのか疑問でもありますが。

 

昨日、シグナムから連絡があって400ページ到達したとの事。

 

それなら、明日に行くと伝えておいた。

 

だから、今日ははやての家は全員勢揃いしている。

 

ちなみに、フェイトは来ていない。

 

アリシアがようやくフェイトと同じ位の体格になったので、こちらに引っ越して来る準備の為だ。

 

……気が付いたら、隣の家が既にウチに買われていたのだが。

 

いつの間に進めていたのやら。

 

とりあえず、近日中にテスタロッサ一家はウチの隣に引っ越して来る予定だ。

 

 

 

 

 

 

はやての家に到着して、俺達はリビングに案内される。

 

リビングに着くと八神家全員揃っていました。

 

アリサとすずかは練習用杖を持ってネギま式魔法の練習でこちらの方は見ていない。

 

まずは集中させないと成功率は低くなるのは当たり前だからな。

 

「プラクテ・ビギ・ナル 火よ灯れ(アールデスカット)

 

「……点かないね」

 

「ウキー! あとちょっとなのにー!」

 

杖からキラキラと光が出てるからあとちょっとなのは確かなのだが。

 

まあ、精進あるのみだ、頑張れアリサ。

 

咆吼してるアリサを後目に俺ははやて達の方を見る。

 

「主はやて、400ページ超えたので管制人格を起動させる事が出来ます」

 

そう言ってシグナムははやてに向けて夜天の書を差し出した。

 

「そっか……いよいよやな。ところで、みんなはその管制人格さんと会った事あるんかいな?」

 

「……会った事はあるはずなのですが」

 

「わりぃ……記憶に無いんだ」

 

俯くシグナムとヴィータ。

 

シャマルとザフィーラも同じように俯いていた。

 

「そっか……。エヴァちゃんは? 知ってる?」

 

【ハイ、知ってますよ。と言っても、完成した数日しか一緒にいませんでしたけど】

 

「ほほぉ~、どんな感じの人や?」

 

【そうですね、そちらのシグナムさんみたいな大人の女性で性格は冷静な感じです】

 

「ほ~、クール美女か……それはええな。で、胸は? 大きいんかいな?」

 

……このタヌキ、やっぱり胸フェチだったか。

 

あんまりシグナムとかシャマルにそう言う事してる様に見えなかったが。

 

【えっと、結構ありましたよ? シグナムさんと同格……だったと思いました】

 

「それは楽しみやな! よし、クールタイプなら眼鏡とか似合いそうやな!」

 

このタヌキはコスプレでもさせる気か。

 

「んな事は良いからさっさと起動させんかい」

 

「焦る男は嫌われるで? あと、夜が早い男も」

 

ニヤニヤ笑いながらはやては夜天の書を手に取った。

 

と言うか9歳児の台詞じゃねぇ。1回、部屋を捜索して怪しげな本は没収しないといけないな。

 

『言っておくが、俺の夜は一回の時間は長いし、回数も半端無いんだぜ?』と言いたかったが、どう見てもろくでもない事になりそうだったので黙っておいた。

 

「良いから、起動しろ」

 

「分かったで~」

 

そう言ってはやては夜天の書を見つめた。

 

全員が固唾を飲んで見守っていた。

 

 

 

「……」

「……」

「……」

「……」

 

 

 

「何て言えばええんや?」

 

全員がすっころんだ。

 

【えっと、特に決まった呪文とかはありませんけど。それなら『我は夜天の書の主なり。この手に力を……封印、解放』と】

 

「エラい中二臭い台詞やけど……ええか。『我は夜天の書の主なり。この手に力を……封印、解放』」

 

そう言うと、夜天の書は光輝いた。

 

解放(ベフライウング)

 

夜天の書は開いて勢い良くページをはためかせる。

 

「うわわ!」

 

【……また、全てが終わってしまった……。一体、幾たびこんな悲しみを繰り返せば良いのだろう……】

 

夜天の書から聞こえてくる女性の声。

 

うむ、リインフォースの声だ。

 

と言っても、今はまだその名は付けて貰ってはいないのだが。

 

「なんや……エラい暗い雰囲気を漂わせとるなぁ……」

 

そう呟くはやて。

 

確かに、暗い雰囲気が漂ってる。

 

ってか、その台詞はちょっと違うと思うのだが。

 

【……ん? まだ、完全状態ではない……?】

 

「えっと、管制人格さんでええかな?」

 

【……その声は……主ですか。はい、私は夜天の書の管制人格です】

 

「そっか。無事に起動出来たみたいやな」

 

【ええ。ですが、そのままですと主のリンカーコアはいずれは……】

 

【久しぶりね?】

 

エヴァが話しかけた。

 

【……その声は……姉上……ですか?】

 

少しビックリした感じの声をあげる夜天の書。

 

【ええ、そうですよ。久しぶりに会うけど、貴女……随分と変わってしまったわね?】

 

【……はい。姉上と別れてから、何代に渡っていろんな人と契約して来ました。ですが、その中に私を改造するマスターがいて……】

 

【それで、今はそんな無茶苦茶になってしまったのね?】

 

【そうです。無限転生機能と防衛プログラム『ナハトヴァール』が……暴走してしまう……壊れた魔導書になってしまいました】

 

【全く。ろくでもない人がいたものですね。安心なさい、私の中にかつての貴女の姿のデータがバックアップとして残ってます】

 

【え?】

 

【だから、私がここにいる限り、貴女はもう『闇の書』とは呼ばせないわ。かつての姿、魔法蒐集デバイス『夜天の魔導書』に戻るのよ】

 

【ありがとうございます、姉上】

 

話は一旦区切りがついたみたいだから、自己紹介しようかな。

 

「話は良いか? エヴァ?」

 

【はい、大丈夫ですよ?】

 

【貴方は?】

 

「初めまして……だな。『武神の魔導書』の主、藤之宮アレスだ。よろしくな?」

 

【こちらこそ、よろしくお願いします。貴方が……姉上の主ですか。しかし、今……姉上の事を『エヴァ』と読んでいましたが?】

 

声だけだからどんな表情してるかよく分からんが、多分不思議そうな顔をしているのだろう。

 

「ああ、名前を付けたんだ。武神の魔導書だと呼びにくいしな。『エヴァンジェリン』と言う名前だ」

 

【そうですか】

 

「そうやな、アレス君の書に名前付けてて私の書に付けない訳にいかへんな。待っててな? ええ名前つけたるわ」

 

はやてはそう言って腕組みしてうんうん唸り始めた。

 

「どんな名前がええやろか……エリザベス……なんか違うな」

 

「アンネ……と言うのは?」

 

「いや、あたしはクラーラと言うのが……」

 

「私はシャルロッテが……」

 

「カタリーナと言うのはどうだろうか……?」

 

八神一家がゴソゴソ話し合ってるのが俺の耳に聞こえる。

 

はやてが言ったのは英語名だが、さすがヴォルケンリッターと言ったところか。

 

全員ドイツ名で言ってるんだが。

 

ちなみにザフィーラ、『カタリーナ』はエヴァがかつて使っていた『キャサリン』のドイツ名だぜ?

 

 

ちょっとうんちく話しになるが、エヴァの前世の名は『エヴァンジェリン・A.K・マクダウェル』と言う名だ。

 

他の二次創作とかでは『A.K』は『アタナシア・キティ』とよく呼ばれてるが、実際には『アタナシア・キャサリン』なんだぜ?

 

もちろん、証拠はある。

 

エヴァの仮契約カードである。

 

 

EVANGELINA(エウアンゲリナ) ATHANASIA(アタナシア) ECATERINA(エカテリーナ) MACDOVELL(マクダウェル)

 

 

ラテン読みにするとこうなるのだ。

 

ちなみに『ECATERINA(エカテリーナ)』はロシア系、ルーマニア系の女性の名で英語圏になると『CATHERINE(キャサリン)』である。

 

 

 

いや~、調べると奥が深いんだな~と思う。

 

「何か……みんなのはエラい強そうと言うか……独特な名前になるなぁ……なしてやろ?」

 

首を傾げるはやて。

 

まあ、あちらは放っておこう。

 

「ま、そんな訳だ。夜天の書さん、もう悪夢は終わりに近いんだぜ?」

 

【そうです。全く、今までの主達は何を考えていたのでしょうか】

 

【ありがとうございます、姉上、アレス殿】

 

「あ~、呼び捨てで良いぜ?」

 

【……分かりました、アレス。これからもよろしくおねがいします】

 

 

 

 

 

「決めた! 夜天の主の名において汝に新たな名を贈る。強く支えるもの、幸運の追い風、祝福のエール、『リインフォース』! どうや!?」

 

胸を張ってエヘンと言いそうな雰囲気ではやては言う。

 

うむ、違う名前になったらどうしようかと思ったが、杞憂だったな。

 

「おお、良い名前じゃないか」

 

【良い名前ですわ】

 

俺とエヴァは賛同する。

 

ヴォルケンリッターのメンツも全員頷いていた。

 

「良い名前だね」

 

アリサとすずかの所に行っていたなのはも戻ってきてはやてにそう言う。

 

【ありがとうございます、主はやて……】

 

「さあ、名前も決まった! ……あとはどないするんや?」

 

【そうですわね……私の中にあるバックアップをリインフォースの中にコピーすれば良いのですが……】

 

【姉上、その前に私の中にある自動防衛プログラム(ナハトヴァール)をどうにかしないと……姉上を浸食する可能性があります】

 

ちなみにエヴァもブックモードになってるから、2冊の本が声を出して会話しているのだ。

 

端から見るとかなりシュールな光景である。

 

【ん~……一応ですが私はリインフォースより上位の型式みたいですから、浸食の可能性は低いのですが。でも、改変されてるから私でも浸食される可能性は否定出来ませんわね。自動防衛プログラムを切り離すとか、一時的に停止させる事は出来ますか?】

 

【それでしたら、管理者権限を使用可能にして自動防衛プログラムを切り離す事は可能です】

 

【……なら大丈夫ね。管理者権限を使用可能にするには?】

 

【私を完成させる事です。666ページ集めると可能になります】

 

【分かったわ、リインフォース。当面は666ページまで集める事を目標にしましょう】

 

【はい、姉上】

 

「良かったな、リインフォース」

 

【ありがとうございます、アレス。もし、貴方と姉上がいなければ……私はまた……】

 

「気にするな。悪夢は終わらせてやる」

 

「良かったな、リインフォース。みんな」

 

全員が微笑んでいた。

 

あと、少しで……終わる。

 

もう、呪われた書とも闇の書とも呼ばせない。

 

古代ベルカ式魔法蒐集デバイス……「夜天の魔導書」なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

そして、夏休みが来た。

 

例によって『夏休みの友』だとか、『算数ドリル』、『国語ドリル』だとか、面倒な宿題が沢山出てきました。

 

漢字の書き取りが非常に面倒なのだが。

 

分身体にやらせたろか……?

 

だが、分身体も文句言うだろうな……。

 

仕方ない、自力でやるか。

 

今年の夏休みは面倒な事が多いから、さっさと終わらせておかないと。

 

最後になって発狂したくないからな。

 

と言うわけで、終業式が終わった日の晩に片づける事にした。

 

家に着いて2階に上がり、隣の家を見ると何やら家の掃除をしている人が。

 

見るとテスタロッサ一家だった。

 

窓を拭くプレシア女史、中のふき掃除をしているリニス、アリシアとフェイトは何やら運んでいる。

 

アルフもゴミを片づけていた。

 

しかし、女性だけの家と言うのも大丈夫だろうか?と思ったが、全員下手な一般人より強かった事を思い出す。

 

アリシアだけはまだ普通の子だが、他のメンツが充分強いから大丈夫だろう。

 

強盗とか入ったら強盗がヤバいな。

 

「あら? フェイトとアリシアじゃない。そっか、今日引っ越してきたのね?」

 

「でも、アリシアちゃんとフェイトちゃん……ホントそっくりだね」

 

アリサとすずかは隣の家の光景を見ながらそんな事を言っている。

 

と言うか、普通に俺の部屋に来てるんだが。

 

「にゃ! フェイトちゃんとアリシアちゃんが引っ越して来てるね」

 

扉を開けて現れたのはさっき別れたなのはだった。

 

速攻で私服に着替えての登場だった。

 

「エラい早い登場だな……」

 

俺はまだ着替えていないのだが。

 

……アリサ、すずか。だから普通に着替えてるんじゃねぇよ。

 

 

 

 

 

「アレスちゃ~ん。隣のテスタロッサさんから引っ越しソバ来てるわよ~」

 

下から呼ぶ母さんの声。

 

と言うか、引っ越しソバの知識はどこから仕入れたのか。

 

まあ、プレシア女史だしな……と言うことで片づける事にした。

 

「ほら、行くぞ。早く来ないと全部食べるぞ?」

 

俺は3人に促す。

 

ちなみに、夏休みの宿題をやっていたのだ。

 

アリサとすずかは大丈夫だったが、なのははかなり疲れているのが目に見えて分かった。

 

「ううぅ~休憩なの……」

 

「なのは……アンタ……」

 

「行こ?」

 

アリサとすずかはなのはを両脇に抱えて一緒に降りる。

 

 

 

 

 

リビングに到着すると実に華やかな事になっていた。

 

テーブルの上にあるのは暑い日にもってこいなザル蕎麦だった。

 

ちなみに俺のだけは大盛りのざる蕎麦。

 

まあ、母さんなら俺の事熟知してるから当然なのだが。

 

そして、今更ながら気付いたのは、男性は俺だけじゃないかと言う事。

 

まあ、アリサとすずかが男性恐怖症だから仕方ないのだが。

 

……気分は女子校に紛れ込んでしまった新任男性教師みたいな感じである。

 

「それでは、改めまして……隣に引っ越して来たプレシア・テスタロッサと申します」

 

「こちらこそ、藤之宮直美です」

 

俺の母さんとプレシア女史がお辞儀した。

 

その後、ちょこっと自己紹介をしてから全員で蕎麦を食べる。

 

「そちらのアレスちゃんには大変、お世話になりまして……」

 

「あらあら、アレスちゃんから伺ってはおりますけど……」

 

他愛ない会話が母さんとプレシア女史の間で繰り広げられる。

 

「それで、ウチの娘2人をお嫁さんにして貰いたいと……」

 

一瞬にして他愛なくなってきた。

 

聞こえないフリして俺は蕎麦をすする。

 

 

「む~」

 

 

「?」

 

呻るような声が聞こえたので見ると、なのはが頬を膨らませていた。

 

どう見てもヤキモチです。

 

 

「じー」

「ジトー」

 

 

更に声が聞こえたので見るとアリサとすずかの2人がジト目で俺の顔を見ていた。

 

「……」

 

何事も無かった様に俺は蕎麦に視線を移す。

 

 

「えへへ」

「うふふ」

 

 

「……」

 

嬉しそうな笑い声が聞こえたので見るとアリシアとフェイトの2人がニコニコ微笑んでいた。

 

なんつーか、どうあがいても絶望みたいな雰囲気に思える。

 

と言うか、これ以上いらん事は言わんで貰いたいんだが。

 

「あらあら、アレスちゃんのお嫁さんですか。困ったわねぇ~、お隣のなのはちゃんとバニングスさんのアリサちゃんと月村さんのすずかちゃんもお嫁にって言われてるのにねぇ~」

 

「それはそれは競争率が高そうですわね。(う~ん、ミッドのベルカ自治区は確か……一夫多妻だと思ったけど)」

 

プレシア女史の最後の呟きはしっかり聞こえたが、今は聞こえなかった事にする。

 

「フェイトを頼むよ~」

 

「アリシアをよろしくお願いします」

 

アルフとリニスに頼まれてしまった。

 

え? もう確定事項なんですか?

 

「でも、最終はアレスちゃんが決めることですからね」

 

「そうですわね(もし、2人を選ばなくても妾として送るしかないわね)」

 

プレシア女史が最後にろくでも無いこと言ってるが、俺はそれも無視することにした。

 

全員の視線が俺の顔にザクザクと突き刺さる。

 

「……結婚出来るのは男18歳、女の子は16歳だからな。今すぐには決めないぞ」

 

俺はそう言って蕎麦をすすった。

 

 

 

 

 

―――――八神家

 

 

「はっ!? なんや……出遅れた気が!?」

 

「どうしたのかしら?」

 

「シャマル! 何か、アレス君の家で起きとる気がする!」

 

「何ですって……!?」

 

「なんやろ……何か大きく遅れた気がする……!」

 

「……大丈夫です、私とシグナムがいればアレスちゃんの心は!」

 

「そうやな。2人とも、胸大きいから……それを使えば!」

 

「そうです! アレスちゃんは胸が大きい人が好みと私は予想してます!」

 

「なるほど……それなら私も頑張らんといけんな!」

 

「ええ! アレスちゃんの心をがっしりと掴みましょう!」

 

 

 

 

 

―――――アースラ艦内

 

 

「!?」

 

「どうしました、艦長?」

 

「エイミィ……何か、大きく遅れた様な気がしました」

 

「え? 別に……アースラにアルカンシェル搭載状況に遅れは」

 

「いいえ。アレスちゃんに関わる何か……です」

 

「……はあ……」

 

「……拙いわね……これは早くはやてちゃんを養子に迎えろと言う神託かも知れないわね」

 

「……(艦長の勘はこの場合は99%当たるからね)」

 

「そう言えば、最近アレスちゃんから連絡が無いわね。うん、ちょっと様子がてら見に行ってみようかしら?」

 

『そうは問屋が卸さないわよ! リンディ!』

 

「レティ! 貴女!?」

 

『そろそろ、貴女が行動を起こす様な気がしてたけど。私の予想通りだったわね!』

 

「何よ! 私はきちんと仕事してるわよ!」

 

『嘘仰い! ここんところ、アレスちゃんから連絡が来ないから寂しいなぁ……とか思ってたんでしょ!?』

 

「ぐ! そ、そんなことは無いわよ! (全く、何でこういう勘だけはずば抜けて高いのかしら!?)」

 

『私の目の黒いウチは貴女の好きな様にさせないわよ! さあ、この書類をさっさと提出して頂戴!』

 

「!? 貴女、その書類は期限がまだ1ヶ月あるでしょ!?」

 

『気が変わったのよ! 締め切りは明日! お願いするわよ? リンディ提督?』

 

「く! レティ! 貴女、いつか地獄に落としてあげるわよ!」

 

「……(不毛な争いに見えるけど。まあ、良いか)」

 

 

 

 

 

……?

 

何だろう、はやてとリンディさんが何か決意した様に思えたが?

 

あと、シャマルが何か心外な事を言ってるような?

 

まあ、いいや。

 

ちなみに俺達は俺の部屋に集まってネギま!式魔法の練習大会(?)的な事になっていた。

 

「プラクテ・ビギ・ナル 火よ灯れ(アールデスカット)!」

 

アリシアが持つ練習用杖から小さな火が点る。

 

「あー!」

 

「良いなぁ」

 

ビックリ目で見るアリサと羨望の眼差しで見るすずか。

 

「えへへ、凄いでしょ?」

 

「へ~、出来るようになったんだ?」

 

「うん。でも、リニスの話だと魔法の素質はあんまり無いんだって。これが出来るようになったの1年かかったし」

 

少し俯き気味に話すアリシア。

 

なるほど、1年はちょっと遅い方だな。

 

ひょっとして、アリシアは『気』の方が向いてる可能性があるな。

 

今度、試してみるか。

 

「い、1年」

 

「アレス君の話なら半年から8ヶ月位だって言ってたけど…」

 

「まあ、すずかが言ったのはあくまで平均だからね。中には3ヶ月で出来る人もいれば1年半かかったと言う人もいたし」

 

「アンタはどうだったのよ?」

 

「俺か? 俺は……どれくらい掛かったっけ? エヴァは覚えてる?」

 

【えっとですね……確か……お兄様は1年3ヶ月じゃありませんでした? 私は3ヶ月くらいでしたけど…】

 

「あ~あ~、そう言えばそうだったな。魔力の流れ掴むのに相当時間かかったからな~」

 

「え……アレス君、アリシアちゃんより時間かかってる……」

 

ビックリしてるすずか。

 

なのはとアリサもビックリ顔で俺の方を見てる。

 

「だから言っただろ? 魔法に関しては俺は素質無いって。1000年近く鍛錬してようやくここまで到達したんだからな」

 

「1000年って、普通の人だと無理だよ?」

 

「まあな。少ない魔力で効率良く魔法を行使する技術を磨いてきたからここまで来られたんだ。実際、魔法だけ使用した勝負ならなのはやフェイト、エヴァには絶対勝てないからな」

 

何度も言ってるが、俺は魔法の素質は無いのだ。

 

『気』の方は幸い素質あったのでここまで来ることが出来たのだ。

 

「え? でも、いつもアレスが勝ってるんだけど」

 

「そりゃあ、俺はこれがあるからな」

 

俺はそう言って床にあぐらかいて座る。

 

「第1~第7チャクラ、起動」

 

俺は身体にある7つのチャクラを起動させる。

 

周囲の空気が変わる。

 

「こ、これは……」

 

「うわ、お兄ちゃんに……魔力と違う力が……」

 

「うう、こればかりはアレス君に勝てないの……」

 

「あ、アンタ……その力は……」

 

「これって……アレス君の……本気?」

 

全員一様に驚いている。

 

「身体にあるチャクラに気を通して回して身体能力を上げる戦闘技法、『念法』だ。これを習得してるか俺は全員に勝てるんだ」

 

【元々お兄様はこちらが専門なのですよ?】

 

「なるほど、アンタが強いと言うのはよーく分かったわ。1つ聞くけど、あたし達にそれは使う事は可能なの?」

 

「まあ、可能だな。ちなみになのはも一応使えるが、素質が無いから1段階で止まってる」

 

「え? なのはちゃんも使えるの?」

 

「えっと……一応だけど。でも、アレス君を象としたら私は蟻みたいなものなの……」

 

「なるほど……」

 

「不思議な事に、魔力量が多い人ほど気はあまり上手くないんだ。まあ、この場合だとなのはとエヴァだな。2人は絶望的に気を扱う素質は無い」

 

「にゃはは……」

 

両手の人指し指の先をつんつんとつついて顔を真っ赤にしてるなのは。

 

「なるほど……ね。と言うことは、あたしやすずか、アリシア辺りはまだ気を扱う素質はある……と言うわけね?」

 

「うむ、あるだろうと思う。極希に両方ダメな人もいるらしいが、俺は未だ見たこと無いな。とりあえず、素質があるのは……」

 

俺は全員の顔を眺める。

 

「アリシアが一番あるな。次にアリサ、すずかの順だな。フェイトは多分、なのはとエヴァと大差無いな」

 

「えへへ、あたしが一番あるんだ~」

 

「うう、私はそっちの素質は無いんだ……」

 

「まあ、フェイトは魔法の素質が高いからエヴァやなのはと一緒に魔法の鍛錬だな。で……だ。アリシアはどうする? 俺と一緒に気を扱う方にするか?」

 

「うん! 早く強くなってお母さんやフェイトを守れる様になりたいからね!」

 

着々と進むアリシアチート計画。

 

俺の予想では最低で第5チャクラはまでは回せる様になるだろう。

 

上手くいけば俺と同じ第7チャクラまでいけるな。

 

やり方次第では下手な魔導師より強くなることが出来るな。

 

「むー……」

 

「まあ、アリサとすずかも同時進行だな。まずはチャクラを回すのには座禅を組んで自分の中にある気を感じるようにならないとダメだから」

 

「座禅?」

 

「まあ、座禅でなくとも精神を落ち着かせる事が出来れば良いが……」

 

「……座禅が無難ね」

 

そんなこんなでとうとうアリサとすずかも念法を操る道に一歩踏み込んできた。

 

「さあ、はやての事件を終わらせてゆっくりと修行したいものだな」

 

「アンタ、どんだけ強くなるつもりよ?」

 

「さあ? とりあえず、身体が出来てきたら身体に重力の負荷かけて身体能力を強化する予定だが?」

 

「アレス君、サ○ヤ人になるつもり?」

 

頬に冷や汗を流すすずか。

 

「とりあえず、前世の身体能力に匹敵する力は欲しいからな」

 

「今の状態じゃ……足りないの?」

 

【足りませんね。前世は龍樹を拳だけで沈めていましたから……】

 

 

「ぶふっ!!!」

 

 

エヴァの台詞を聞いてすずかが紅茶を噴き出していた。

 

「龍樹……?」

 

「ほれ、これだ」

 

俺は本棚にあるネギま!の単行本を指差した。

 

「あ~……思い出した。アレね……って! アンタ! あんなのを沈めたの!?」

 

「うむ、殴っても殴ってもなかなか気絶しないから流石に焦ったぜ」

 

「こっちが焦るわよ! あんなゴ○ラみたいなのと肉弾戦とか!」

 

「まあ、今の状態ならちょっと素手で勝てる気がしないな」

 

「にゃあ……これと……」

 

「凄い……」

 

「うわぁ……お兄ちゃん……実はバグキャラだったんだ」

 

ネギま!を見ていたなのは、フェイト、アリシアの3人が驚いた表情で俺の方を見ていた。

 

「ま、そんな訳だ。おっと、返して貰ったダイオラマ魔法球は隣の部屋に置いとくぜ。使うのは良いが、身体の年齢が増えていくと言うことだけは頭に入れて置けよ。調子に乗って入り浸ってたら……俺は責任取らんぞ?」

 

「分かったの」

 

「分かってるわよ」

 

「さすがに……ね?」

 

そんなこんなで時間は過ぎていくのであった。

 

 

 

 




 
フェイトは『魔力』、アリシアは『気』と言う風にしましたw


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第28話 姿を見られてしまった!

 
『あかいあくま』に取り憑かれた模様ですw

※うっかり属性付与


 

 

 

 

 

 

夏休みに入って数日経った。

 

暑い日が続き、外では蝉が五月蠅い位に鳴いていた。

 

と言っても、今は朝なので其処まで暑くはなっていないが。

 

目が覚めてゆっくりと上体を起こす。

 

横にはアリサとすずかの2人が眠っている。

 

スースーと寝息を立てて特に変わった様子は無い。

 

アリサも大人しいなら実に可愛い。

 

「うっさいわねアレス! ほら、あたしの……むにゃむにゃ……」

 

タイミング良すぎてビックリしたんだが!

 

アリサの寝言に心臓をバクバクと鼓動を激しくしながら俺はゆっくりとベッドから出る。

 

「うん?」

 

机を見ると指輪が2つ、置いてあった。

 

デザインは……『前世に戻る』と言う『(ことわり)』を封じた指輪に似ていた。

 

「……おかしいな? 寝る前にこんなもんあったか?」

 

更に見ると、封筒が置いてあった。

 

そこに書かれていたのは、『闇の軍神アレス殿へ』と書かれていた。

 

「っ! 見られたらどうすんだ!」

 

小声で怒鳴りながら俺は封筒を手に取って破って中を見る。

 

中には便箋らしい紙が入っていたので俺は取り出して、それを開いた。

 

『追加機能を搭載した『理』の指輪を送る。それを装着すれば、1時間限定で前世の姿に戻る事が出来る。従来の相手を前世の姿に戻す機能はそのままだ。有効活用してくれ マッチョ神』

 

と書かれていた。

 

『追伸・前の指輪は返却してくれ』

 

更にそう書かれていた。

 

なるほど、わざわざ霧を出して前世に戻らなくても装着して前世に戻る事も出来るようになったのか。

 

前世のスペックならば死ぬ率はかなり減るからな。

 

吸血鬼の真祖(ハイディライトウォーカー)』だし。

 

2つあると言うことは、エヴァにも装着させろと言う事だな。

 

双子の真祖とか、もはや悪夢に近いだろうな……と思いつつ俺は指輪を装着する。

 

前の指輪は転移させる。

 

アレは人間界にあってはいけないモノだからな。

 

あと、手紙は細かく破ってからゴミ箱に捨てておいた。

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

深い深呼吸をする。

 

俺は今は学校のプールに来ていた。

 

唐突にプールに来たくなった……訳でなく、伊集院先生の様子を見る為に来たのだ。

 

なのはとフェイトは蒐集に、アリシア、はやて、アリサ、すずかはダイオラマ魔法球の中で魔法の練習だ。

 

はやて達には余り入り浸るなと釘は刺しておいたが。

 

多分、大丈夫と思いたい。

 

さて、ソレはさておき。

 

俺の前にはプールの監視員をやってる伊集院先生の姿が見える。

 

容姿が容姿だから傍目から見るとすごく格好良く監視員を行っている様に見えるが……。

 

俺の目は誤魔化されないぞ。

 

伊集院先生の視線は……女子ばかり追っているのだ。

 

だが、その視線は……欲望を帯びた視線ではなく……何というか、娘を見守る父親みたいな印象を受けるのだ。

 

ますます分からなくなる。

 

報告では転生者は幼い女の子を性愛対象にする堕ちた者達ばかりのはずだが。

 

……やはり、接触して追求するしかないな。

 

さて、どうやって接触するかだが。

 

下手な接触は拙いしなぁ。

 

っと、見ると伊集院先生は俺の方をジッと見ているぞ。

 

俺と目を合わせる。

 

 

「……」

「……」

 

 

少ししたら、伊集院先生は視線を外した。

 

確か、魔眼の類は持っていなかったはずだが。

 

真意が全く分からない。

 

やはり、接触するしかないなぁ。

 

よし、プールが終わって昼になったらちょっと職員室に行ってみるか。

 

 

 

 

 

「失礼します」

 

俺は職員室に入る。

 

夏休みだから先生の人数は少ないが、何人かの先生は書類か何か作業を行っている。

 

「あら、藤之宮君」

 

担任の先生が俺に話しかける。

 

「あ、伊集院先生はおられますか?」

 

「いるわよ」

 

先生の視線の先には弁当を黙々と食べる伊集院先生の姿が見えた。

 

……何か、哀愁を漂わせてる様に見えるんだが。

 

「ありがとうございます」

 

俺は黙々と弁当を食べてる伊集院先生の方に近づくと。

 

俺の目には妙なモノが入った。

 

伊集院先生の視線の先。

 

女の子の……人形。

 

フィギュアだった。

 

5㎝位のデフォルメされた小さなタイプだったが、俺はソレを見て声を上げそうになる。

 

この世界には存在しないハズのモノだからだ。

 

そして、呟いてしまった。

 

「綾波……レイ」

 

「!?」

 

伊集院先生は驚いた顔で俺の方を向いた。

 

「……先生……」

 

「藤之宮君……君は今……」

 

「綾波レイ……と言いました」

 

「……何故、その名を知ってる? この世界には存在しないハズなのに……」

 

「……屋上に行きましょうか。ここでは……拙いです」

 

「……分かった」

 

 

 

 

 

 

 

屋上に上がる。

 

丁度、日が陰っていて直射日光の暑さは感じられない。

 

屋上には誰もいない。

 

伊集院先生にベンチの方に行くよう促される。

 

俺はそれに付いて行く。

 

伊集院先生はベンチに座り、俺はその前に立つ。

 

「……ふぅ。アレス君、君も転生者なのかい?」

 

単刀直入だった。

 

「……まあ、そんなもんですね。ただ、俺は頼まれただけですが」

 

「何を、頼まれたんだい?」

 

「……伊集院先生、1つ聞きたい。貴方は、なのは達の事をどう思ってるんですか?」

 

俺の正体を伝える前に、伊集院先生の本音を知りたかったのだ。

 

なのは達にそこまで付きまとう事をしないで、ただ学校の先生を続けている伊集院先生。

 

「……まあ、彼女達と何かしら縁を持ちたかったのは事実だよ。だけど、学校の先生を続けていくウチにね」

 

伊集院先生は一呼吸置いて、俺は生唾をゴクリと飲み込む。

 

「小学生の女の子を眺めている方が良いと言う事に気付いてね」

 

俺は足を滑らせた。

 

「勘違いしないでくれよ? 僕はイエス! ロリータ! ノー! タッチ! を信条にしてるからね」

 

なるほど、つまりはいずれは大人になっていくなのは達に固執するより、小学校の先生をやって色々な女の子を眺めている方が良いと言う事か。

 

限りなくクロに近いグレーゾーンだが。

 

だが、事件を起こしていたらこうやって教職員になる事は不可能だし。

 

一応は……真面目にやってると言う事だろうか。

 

何かしら被害が起きていたならさっさと天界に送り返してやるのだが。

 

今現在はこの学校で騒ぎを起こした訳でもない。

 

……気と魔力の波長をエヴァに記録させておくか。

 

事件を起こさないと信じて今はこのまま続けさせるか。

 

「……まあ、先生の言葉を信じますが。俺は先生を転生させた見習い神の上司に頼まれて、この世界に転生した奴らを捕まえに来たのです」

 

「何と!」

 

「先生はギリギリセーフですが、もし少女を傷つけるとかそう言う行為をした時は天界に戻って貰います」

 

「……分かった。僕としても、この学校はなかなか楽しいからね。大人しくさせてもらうよ」

 

一応は交渉は成立したみたいだ。

 

しかし、こんなので……結婚は出来るのだろうか。

 

まあ、人それぞれだから俺はそこまではツッコミは入れないが。

 

「それに、僕の能力を使えばなのは達だってずっと幼い姿でいるからね」

 

なるほど。なのは達の人形を作って飾っておくわけか。

 

まあ、人形なら……実質被害は無いな。

 

ただ、本人達に知られると精神的苦痛が出るかもしれないが。そこら辺は……言わないでおこうか。

 

実物大人形持ってはいけないと言う法律は無いしな。

 

「……その言葉を信じてますよ。それでは」

 

俺は伊集院先生と別れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日はヴォルケンリッターの4人と魔力蒐集だ。

 

なのはとフェイト、恭也さんと美由希さんは用事があって来られないとの事。

 

……なのはとフェイトははやて、アリサ、すずか、アリシアの4人と過ごすとか。

 

……。妙な悪巧みとか考えていないだろうな。

 

〈女の子は色々と秘密が多いのですよ? お兄様?〉

 

〈それはまあ、そうなんだが〉

 

エヴァにそう言われると信じるしかない。

 

まあ、多分大丈夫だろうと思うのだが。

 

「それじゃあ、アレスちゃんは私と一緒に行きましょうね~」

 

そう言って俺の手を取るのは後方支援担当で参謀を務めるシャマルさんだ。

 

「待て? シャマル?」

 

そう言ってレヴァンティンを鞘から抜いて構えるシグナムがいた。

 

言うまでもなく、目が据わっていた。

 

ヴィータとザフィーラは顔に手を当てていた。

 

『ダメだこりゃ』

 

声は聞こえなかったが、2人の様子を見てそんな声が聞こえてきた。

 

「シグナム? 貴女は一人でも充分に戦えるわ。でも、私は後方支援担当だから護衛が必要なのよ? そうなると必然的にアレスちゃんが私の護衛に付く事になるのよ?」

 

言ってることは至極正論なのだが、シャマルは俺をしっかりと抱きしめていてなおかつ頭を撫でている状態だった。

 

どう見ても説得力が皆無だ。

 

「シャマル、なんて羨ましい……じゃなくて! そんなにひっついたらアレスちゃんに迷惑だろう! 離れろ!」

 

「そんな事無いわよね? こんな美人のお姉ちゃんに抱きしめられて嬉しいわよね?」

 

シャマルさん、其処でそんな話題を振らないで下さい。

 

まあ、シャマルは意外と胸が大きいんだが。

 

「の、望むなら私も抱きしめてあげるぞ? いつでも良いんだぞ?」

 

顔を赤くしてるシグナムがいる。

 

最近、この2人だけバグが進行してるように思えるのだが。

 

〈ヴィータ、俺はどうすれば良いんだ?〉

 

〈あ、あたしに振るなよ〉

 

やはりヴィータでは無理か。

 

俺は無言でザフィーラを見る。

 

無言で視線を逸らすザフィーラ。

 

普段は頼りがいがあるが、この時だけは不甲斐ない状態になるんだよな。

 

「あ~? シグナムはザフィーラ、シャマルはヴィータと行けば? 俺は1人でも大丈夫だし」

 

 

「……」

「……」

 

 

明らかに落胆してる表情で俺の顔を見るの止めて貰えませんかねぇ?

 

「あんまり我が儘言うと……嫌いになるかも知れませんよ?」

 

「行くわよ! ヴィータ!」

 

「さあ!行こうか、ザフィーラ!」

 

ザフィーラの手を掴んで飛ぶシグナムとヴィータの襟首を掴んで飛んでいくシャマルがいた。

 

「シャマル! あたしはネコじゃねぇ!」

 

怒鳴るヴィータ。

 

そんな感じで4人はおのおのの場所に飛んでいった。

 

〈上手くいきましたわね?〉

 

〈ああ、このままだと俺にとんでもない事が起こりそうだったからな〉

 

〈確かにそうですわねぇ。でも、シャマルさんが後方支援担当ですから正論と言えば正論でしたけど〉

 

〈そうなると、これから先ずっとシャマルと一緒になるだろ。シグナムが不利になる〉

 

〈お兄様は優しいですわね?〉

 

〈別に、優しいわけじゃないんだがな。平等にしないと、不公平って言うのは嫌いなんだ〉

 

〈うふふ、そう言うことにしておきますね♪〉

 

〈……〉

 

さて、俺も獲物を探すとしようかな。

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

【お兄様】

 

「ああ、これは……どうやら転生者っぽいな」

 

散策していたら突然現れた気配。

 

気と魔力は……それなりにある。

 

一体、どんな能力なのだろうか。

 

俺は現れた気配に向けて飛んで行く。

 

 

 

 

 

 

 

「……」

「……」

 

 

俺の目の前に現れた男。

 

銀髪で如何にも……な容姿の美男子だった。

 

何処かで見たような感じではあるが。

 

思い出せない。

 

「くくく、既にはやて達と接触していたのか」

 

男はイヤらしい笑みを浮かべていた。

 

「……貴様は?」

 

「ふん。貴様の様な小僧、さっさと殺してはやてと恋仲になるか」

 

典型的な外道転生者の様だ。

 

この様な輩はさっさと退場をお願いしようかな。

 

「エヴァ、結界を頼む」

 

【了解です、お兄様。魔法の監獄(ゲフェングニス・デア・マギー)

 

俺と転生者の周囲が魔力結界に覆われる。

 

これでネコの子1匹出入りが出来なくなる。

 

「くふふふふ……」

 

男は突然、笑い出した。

 

「……何がおかしい?」

 

「これが笑わずにいられるモノか。今まで出会った奴らは……貰ったチート能力で勝てると慢心して俺に勝負を挑み、全員負けて来た」

 

「……それがどうした?」

 

「逃げられないように、わざわざ結界を張って……むざむざ俺に殺されたんだよ。バカな奴らだった」

 

何が言いたいのだろうか。如何に自分の能力が優れているのか自慢したいのだろうか?

 

「前世は無力な人間だったと言うことを忘れて、貰った能力で有頂天になって……な」

 

「なん……だと?」

 

少しだけ、きな臭い予感を感じた。

 

「さあ、てめぇはどんな姿に戻るのか! 見させてもらうぜ!」

 

ヤツの身体から噴き出す霧の様な蒸気。

 

もしや、ヤツは!

 

「お前の能力は! 前世に強制的に戻すのか!?」

 

「ご名答! 幽遊白書にもあっただろ? 蔵馬が人間から前世の妖弧・蔵馬に戻ったシーンがよ! だが、転生者共の前世は全て人間! 普通の人間が、魔力と気を扱う俺に勝てる道理があるわけないだろ!」

 

そう言って高笑いする男。

 

なるほど、よく見たら男の容姿は妖弧・蔵馬に似てるのか。

 

どうやら、この霧はヤツ自身には作用しないみたいだ。

 

だが、実に残念だったな。

 

〈運が悪いですわね、あの転生者〉

 

〈ああ。わざわざ、俺とエヴァを最強状態に戻してくれるのだからな〉

 

俺は心の中で大笑いしていた。

 

わざわざ、自分から虎の穴に飛び込んで来てくれたのだから。

 

ことわざであったな。『鴨が葱を背負ってやって来た』と言うのが。

 

今回の場合は、更に鍋と調理器具まで背負っていた状態だ。

 

俺とエヴァの身体に変化が起こる。

 

エヴァは本の状態から前世の吸血鬼の真祖に戻る。

 

俺も同じ様に吸血鬼の真祖に戻る。

 

「さあ、どんなブサイク面を……!」

 

男は俺とエヴァの姿を見て絶句した。

 

さて、口調を前世の時の口調に戻そうかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、どうしたのかしら? アタシの姿に見覚えがあるのかしら?」

 

「お久しぶりですね、お姉様?」

 

アタシはエヴァと互いの顔を見合っていた。

 

今の服装は、学生時代のブレザーだった。

 

ちなみに、中等部の制服だ。

 

「あ、な、な……何で……エヴァンジェリンが……2人……」

 

顔を青くして絞り出す様な声で喋る転生者。

 

「初めまして、アタシの名はアリス」

 

「私の名はエヴァンジェリンと申します」

 

アタシとエヴァはピッタリ息を合わせて一礼する。

 

「アリス……? エヴァンジェリン……?」

 

「まあ、貴方が知ってる世界ではエヴァは一人っ娘だったと思うけど、アタシがいた世界では双子だったのよ?」

 

「ッ!」

 

「それにしても、わざわざアタシとエヴァを最強状態に戻してくれるなんて、感謝するわ」

 

「な、何で……お前等の前世は……人間じゃなかったのか?」

 

「あら? アタシとエヴァは貴方達と違って頼まれたのよ。貴方達みたいな存在を捕まえてくれと……ね」

 

「そ、そんな」

 

後ずさりする転生者。

 

「あら、折角アタシ達の姿を見たのだから」

 

「そうねですわねぇ? ちょっと、お相手をお願いしようかしらね?」

 

「ひ……ひぃー!」

 

アタシは有無を言わさず転生者に襲いかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「金髪幼女恐い金髪幼女恐い金髪幼女恐い……」

 

虚ろな目をしてブツブツ呟く転生者。

 

縄でグルグル巻きに縛り上げて身動きが取れない状態にしている。

 

「しっかりトラウマを植え付けてしまいましたね……」

 

「良いんじゃないの? また転生したら今度は真人間として生きることが出来そうだから」

 

アタシとエヴァは顔を見合わせていた。

 

「転生者を引き取りに……」

 

アタシ達の前に現れたのは男性型の天使だった。

 

「アレス様、また女の子として転生されたのですか?」

 

「うるさいわね。こいつの能力のせいで前世の姿に戻らされただけよ」

 

そう言って転生者の背中を軽く蹴る。

 

「ふぎゃっ!」

 

「そ、そうでしたか……。てっきり、女の子の姿の方が気に入られてしまったのかと思いましたよ?」

 

「それ以上ナメた事言うと、神界に戻った時に特別稽古(と言う名の私刑(リンチ))つけてあげるわよ?」

 

「ナマ言ってすいませんでしたー!」

 

器用に空中で土下座する天使。

 

たまーにこんな事を言う天使がいるもんだから、アタシの神界において威厳が無いのか悩む時がある。

 

「えっと……お姉様って……神界ではそんなに偉い方では無いのですか?」

 

エヴァはちょっとの期間しか神界にいなかったから、アタシの立場の事は詳しくは知らないのだ。

 

「えーっと……」

 

視線が右往左往している天使。

 

「まあ、詳しく説明してなかったアタシが悪いのだけど。アタシが存在する世界では、アタシが1番下の神よ。役職上はね……」

 

「役職上……ですか?」

 

「そう、役職ではね。人間の会社で言えば、ヒラ社員みたいなもんよ」

 

「ヒラ社員ですか……」

 

苦笑いのエヴァ。

 

「その代わり、戦闘においての強さは1、2位を争うわね。アテナ姉さんとはほとんど互角と言ったところかしら」

 

「アテナ様ですか。1度しか拝見しておりませんでしたが。確かに、強さのオーラと言うか強者の感じをひしひしと感じましたわ……」

 

「ま、役職が上がると色々と面倒な事も起こるからアタシは今のままで充分だわ」

 

「そうなのですか」

 

「それじゃあ、コイツはお願いするわね」

 

「分かりました」

 

そう言って、天使は転生者を連れて転移した。

 

 

「……」

「……」

 

 

アタシとエヴァは顔を合わせる。

 

「いつになったら元の姿に戻るのかしら?」

 

「……さあ?」

 

まさか、ずっとこのままのハズは無いだろうと思う。

 

幽遊白書でも効力は一時的のモノだったし。

 

戻らなかったら非常に困る。

 

しかし、どれくらいの時間で元に戻るのだろうか?

 

このままではヴォルケンリッターの面々と顔を合わせられない。

 

「はあ……しばらくはこのまま雲隠れしておきましょうか。見られたら説明するのが面倒だし……」

 

「そうですわね。たまにお姉様と一緒に過ごしたかったですし」

 

しかし、エヴァは若干百合の気があるのでは無いかとアタシは思うことがある。

 

いえ、アタシがどんな姿でも好きなのでしょうね。

 

「さあ、結界を解いて……!?」

 

「お姉様!?」

 

「紫電一閃!!!」

 

聞き覚えのある声と共に結界が切り裂かれる。

 

「アレスちゃんは大丈夫!?」

 

直後に聞こえるのはシャマルの声だった。

 

……もしや、アタシの反応が結界で無くなったから、シグナムとシャマルが暴走して……。

 

「ぜぇぜぇ……アレスの事になると驚異的な力を発揮しやがる」

 

「……全くだ」

 

結界が解けてアタシとエヴァの前に現れたヴォルケンリッター。

 

「……非常に拙いわね」

 

「ええ、これはどうしましょうか」

 

お互い、頬に冷や汗を流しているアタシとエヴァ。

 

「アレスちゃんは無事か!? さあ、アレスちゃんを傷付けたヤツはレヴァンティンの錆にしてやる!!!」

 

「アレスちゃん! 怪我したなら私が癒してあげるわよ!」

 

予想通り暴走しているみたいだ。

 

「……全く、あたしとザフィーラの事も……ん?」

 

「……見覚えの無い娘がいる」

 

ヴィータとザフィーラの視線がアタシとエヴァを捉える。

 

 

「……む?」

「あら?」

 

 

同じようにシグナムとシャマルの視線もアタシとエヴァを捉えた。

 

 

 

「……」

「……」

「……」

「……」

 

 

 

全員が怪訝な表情に変わる。

 

 

「……」

「……」

 

 

アタシは頬をポリポリと掻いて、エヴァは視線を右往左往させている。

 

「……ここにいた黒髪の男の子がいたと思うんだけど? オメー、知らないか?」

 

ヴィータが目を細めてアタシに問い訪ねて来る。

 

「そうよ! 黒髪で右目が蒼くて左目が黒くて、クリクリした可愛い目で、小鼻で小さな口の可愛い顔した男の子よ! 知らない!?」

 

半狂乱になりかけのシャマルがそこにいた。

 

「何処に隠した? 言わねば斬る!」

 

目が据わってるピンクの侍はどう対処すれば良いのか。

 

「……」

 

ザフィーラと目が合う。

 

「……」

 

しばし見つめ合っていると。

 

「……ひょっとして、アレスか?」

 

何で分かったし。

 

野生の勘と言うヤツだろうか?

 

〈凄いですわね、ザフィーラさん。共通点は1つしか無かったはずですし〉

 

〈確かにねぇ……。エヴァ、貴女もアタシと同じで右目が蒼いはずなのにね〉

 

〈……そう言えば、そうでしたわね。でも、それだけで分かるのは凄いですわよ?〉

 

〈そうね。野生の勘が働いたのかもね〉

 

「……ザフィーラ? オメー、何言ってるんだ?」

 

「そうですわよ。確かに、この子達の右目はアレスちゃんと同じ蒼い瞳ですけど……」

 

「……だが、何故か知らないが。私もこっちの金髪の少女がアレスちゃんと重なって見えるんだ」

 

シグナムはアタシの顔を見ながら呟く。

 

「シグナムまで何を……あら? 確かに、見える……わ。どういう事なの?」

 

全員が困惑していた。

 

「もうちょっと待てば、アタシの正体が分かるわよ」

 

アタシはそう呟いた。

 

「え? 何を言って……」

 

その時、アタシとエヴァの身体が光り輝いた。

 

 

「っ!?」

「眩しい!」

 

 

その直後、元の身体に戻った俺と隣には漆黒で真紅の装飾が施された魔導書が浮いていた。

 

 

 

「……」

「……」

「……」

「……」

 

 

 

全員が呆然と俺の姿を見ていた。

 

エヴァはペンダントになって俺の首にかかる。

 

「ま、こういう訳だ」

 

「ちょ、ちょっと待て! どういう訳かさっぱり分からないぞ! 説明しろ!」

 

顔を赤くするヴィータがいた。

 

「これは……さすがにアレスちゃんでも見逃す事が出来ない事象だわ?」

 

「ああ……。たっぷりと説明をして貰おうかな。でなければ、私とシャマルも主はやての様に可愛がって貰うしかあるまい!」

 

シグナムの最後の台詞は無視した方が良いのだろうか。

 

「分かったよ。とりあえず、はやての家に帰ってから説明するよ」

 

ここで説明するより、はやての家に帰ってから説明した方がいいだろう。漫画も置いてあるし。

 

こんな事なら説明しておくべきだったよなぁ。

 

 

 

 




 
『うっかり』前世の姿を見られてしまいましたw


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第29話 カートリッジシステムを搭載フラグが立ちました

 
更なる力を求めますw


 

 

 

 

 

前世の姿を見られてしまった。

 

あ~、説明するのを忘れてたよな。説明しておけば良かった。

 

そんな事を思いつつはやての家に着く。

 

そう言えば、はやての家にはなのは達全員が勢揃いしていたような気が。

 

〈とりあえず、改めて説明しておきましょうか〉

 

〈そうだな。今度は画像付きだから……はやて達が何と言うか〉

 

〈う~ん、ちょっと予想出来ません……〉

 

〈だよな〉

 

エヴァと念話をしているが、俺の今の状況は。

 

右手側にシグナム、左手側にシャマルと両腕を組まれた状態なのだ。

 

いわゆる、逃げられないようにと言う事なのだが。

 

それは単なる言いがかりでつまりはそういう理由につけこんで俺と腕を組みたいだけなのだろうと思う。

 

ザフィーラとヴィータの視線が少し哀れみを含んでる様に見えるからだ。

 

「……何か、悪さをした子供が連行されてる図にしか見えねぇな」

 

「……ほっといてくれ」

 

ヴィータの呟きにそう答えるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

家に上がり、リビングに連行される。

 

入ると、なのは達は驚いた様子で何やら片付けていた。

 

「……何を慌ててるんだ?」

 

「い、いややな! こんなにはよ帰って来るなんて予想して無かったわ!」

 

「そ、そそそうよ! 早く帰って来るなら連絡くらい欲しかったわ!」

 

顔を赤くしてるはやてとアリサ。

 

ふと視線を逸らすと、狼形態になったザフィーラの姿があった。

 

いつの間に変身したんだか。

 

あくびをして普通の犬みたいな雰囲気で指定の場所に丸まっていた。

 

普通の犬と大差ない様子で違和感が全く仕事をしていなかった。

 

「にゃ、にゃんでもにゃいよ! にゃんでもにゃいからね!」

 

少し噛んでるなのは。同じ様に顔が赤い。

 

「お、女の子には秘密が沢山あるんだからね!」

 

「うんうん」

 

「余計な詮索はダメだよ?」

 

アリシア、フェイト、すずかの順に喋る。

 

やはり、3人とも顔は赤かった。

 

非常に気になるが、何故か知らないがこれ以上詮索するとロクな事にならないと自分の勘が囁いていた。

 

自分の勘を信じて詮索を止めようとしたとき。

 

「うん?」

 

フェイトが前に抱えている本から1冊の本が床に落ちた。

 

「あ!」

 

俺はその本の表紙を見た。

 

「……可愛い男の子の攻略法」

 

「だ、ダメ!」

 

フェイトはその本を拾おうとして、更に数冊の本を床に落とした。

 

「『これで貴女も可愛い男の子を虜に!』、『可愛い男の子に惚れられるには!』、『将来、可愛い男の子を旦那にするには!』」

 

見なきゃ良かったと激しく後悔した。

 

俺はなのは達の顔を見た。

 

全員、視線を逸らしてくれました。

 

「……」

 

未だ俺を抱えてるシグナムとシャマルの両人の顔を見た。

 

両人とも視線を逸らしてくれました。

 

一体、誰がこんな本を渡したのだろうか。

 

該当すると言えば、俺の母さんか桃子さんしかいない。

 

プレシア女史はこちらの世界に来て間も無いからこんな本を探して来る事はまだ出来ないと思う。

 

と言うか、なのは達は段々と少年偏愛(ショタコン)の道に引きずり込まれてるんではないかと思うんだが。

 

シグナムとシャマルは手遅れにしても。

 

ヴィータは落とした本を何事も無かったかのように拾う。

 

「ほらよ」

 

「ありがと、ヴィータ」

 

何事も無かったかのようにお礼を言うフェイト。

 

「……」

 

ザフィーラから『頼むから話しかけて来ないでくれ』と言うオーラを身体から出していた。

 

「なあ……」

 

「あ、本片付けて来るね!」

 

フェイトは速攻で部屋から出ていった。

 

他のなのは達を見ても本は持っている様子は無い。

 

 

 

「さあ、お茶にしようで!」

「あ、私が準備して来るね!」

「私も!」

「た、たまにはあたしもお茶を入れてあげるわよ!」

「お兄ちゃんに美味しいお茶を入れてあげるね!」

 

 

 

全員がリビングからキッチンに向かって出て行ってしまった。

 

「……あたしもはやて達のお手伝いしてくる」

 

ヴィータまでも出て行ってしまった。

 

 

 

「……」

「……」

「……」

 

 

 

俺とシグナム、シャマルは呆然としていたが。

 

「とりあえず、ソファーに座るか」

 

「そうね」

 

「そうだな」

 

俺がそう言うとシグナムとシャマルはそのままソファーに連れて行ってくれた。

 

離してくれないのね。

 

ソファーの所に行ったらシグナムはソファーに座り、足を広げてその間を手でポンポンと叩いた。

 

「……シグナム?」

 

「アレスちゃんの席はここだぞ?」

 

「10分経ったら次はここよ?」

 

隣を見ると同じように足を広げてその間をポンポンと叩いているシャマルがいた。

 

このショタコンコンビをどうすれば良いのだろうか。

 

「……」

 

2人の目は少し濁っている様にも見えたので、もはや俺は何も言わずにシグナムの前に座った。

 

「ふふふ……」

 

そう言ってシグナムは俺を抱きしめてきた。

 

背中には柔らかいが弾力のある2つの大きな山が押しつけられてきた。

 

「……当たってるぞ?」

 

「当ててるんだ」

 

そう言ってシグナムは俺の腹の方をさすってくる。

 

非常にくすぐったいのだが。

 

「ああ、スベスベして触り心地が良いな」

 

そう言ってシグナムは俺の後頭部に顔をくっつけてきた。

 

「……良い香りだな」

 

「……」

 

俺は何と答えれば良いのだ?

 

ふと隣を見ると……。

 

『良いなぁ~早く10分経たないかな~アレスちゃんを抱きしめてお腹とか色々と撫でたいなぁ~』

 

と言いたげなシャマルがいた。

 

「全くアレスちゃんはけしからんな……柔らかい髪と言い、スベスベの肌と言い……」

 

けしからんのはアンタの言動だと思うんだが。

 

暫く、シグナムは俺を抱きしめてからお腹をさすったり色々と堪能した様だ。

 

「シグナム! 10分経ったわよ! ほら、早くアレスちゃんを渡しなさい!」

 

「む? 仕方ないな……」

 

シグナムは渋々といった感じで俺から手を離す。

 

俺は立ち上がってからシャマルの所に座る。

 

「ん~♪アレスちゃんの香り~♪」

 

そう言って抱きしめてきて俺の首筋に顔を埋める。

 

「く、くすぐったい……」

 

「ん~♪スベスベのプニプニの肌~♪」

 

俺の発言は一切無視して俺の腹をさすってくるシャマル。

 

そんなに俺の肌は触り心地が良いのだろうか?

 

自分ではそこまで良いとは思わないのだが。

 

俺としてはなのは達やシグナム、シャマルの方が柔らかくて良い感じだと思うのだが。

 

無論、そんなこと言うと俺の手を自分の胸やらお尻やら腹の方に引っ張ってきそうなので言わない。

 

「お茶が出来たで~」

 

そう言ってはやて達が帰ってきた。

 

「む~」

 

「こ、これは……」

 

ヴィータは顔に手を当てている。

 

なのは達は驚愕の表情を浮かべていた。

 

 

 

「……実にけしからんわ。けしからんけど、今後の私達の参考になりそうやね」

「良いなぁ~……私もあんな風にアレス君を抱きかかえたいなぁ……」

「にゃ~……私達の体型じゃまだ無理そうだね」

「早く大きくなりたいなぁ……」

「アレスお兄ちゃんをあんな風に抱きかかえる……良いなぁ……」

「……アレはありだわ! 早く……大きくなって……」

 

 

 

全員がそんな事を呟いていた。

 

全員少年偏愛(ショタコン)街道に入ってるみたいなんだが!

 

これはもう、修正不可能と判断するしかなかった。

 

俺は何気なくヴィータを見ると……。

 

「……ヴィータ、何故に胸の前で十字を切る?」

 

「……気にするな」

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、アレスちゃんの『あの姿』を説明して貰いましょうか?」

 

シャマルは真顔になって俺の顔を見る。

 

普段からこんな感じなら良いんだがな。

 

「あの姿?」

 

怪訝な表情を浮かべるはやて達。

 

「ヴィータ、映像を出せるか?」

 

「……ああ、大丈夫だぜ。アイゼン、頼む」

 

了解(ヤヴォール)

 

シグナムがヴィータに頼んだ……のは良いけど!

 

アイゼンってそんな機能があったのか!?

 

うーむ、考えてみたらヴィータってシグナムより汎用が効くとは思っていたけど、デバイスもだったのか。

 

侮れないな。

 

そんな事を思ってると空中ディスプレイに現れたのは、シグナムが紫電一閃で結界を切り裂き、中に入るシーンだった。

 

「おー、かっこええな~シグナム」

 

はやての呟き。

 

「問題は次のシーンです」

 

シグナムが続きを見るように促す。

 

結界の中に入り、目の前に現れたのは。

 

ブレザー制服を着た身長130㎝位で金髪の少女が2人。

 

全く同じ容姿で双子の様に見える。

 

自分の前世の姿を第三者の目で見るのは何とも言えない感じだよな。

 

「あれ?」

 

「これって……」

 

まあ、アリサとすずかはエヴァが実体化出来るのは知ってるんだが……。

 

ただ、同じ人物が2人いる事が不思議に思ってるのだろう。

 

「可愛いね……」

 

「うん、何か……お人形さんみたいだね?」

 

アリシアとフェイトは目を丸くしている。

 

と言うか、2人も充分可愛いと思うのだが。

 

「にゃ~綺麗な子だね~」

 

「……エヴァンジェリンやん。しかも2人って……まさか!」

 

はやては俺の顔を見る。

 

「知っておられるのですか?」

 

「知ってるも何も、この女の子……アレス君とエヴァちゃんやろ?」

 

そりゃあ、一発で分かるよな。

 

「はやてちゃん、知ってるの?」

 

驚いた表情で聞いてくるシャマル。

 

「そっか、シグナム達には教えて無かったんやな。アレス君には前世の記憶が残っててな。それで、その前世の姿が……その女の子や」

 

「言うことは、オメー……前世は女の子だったのか?」

 

ヴィータがジト目で俺の顔を見る。

 

「……まあ、な」

 

俺は苦笑しながら答える。

 

「なるほど、前世が可愛かったから今世でも可愛いんだな!」

 

「金髪で小柄でお人形さんみたいだったわね……」

 

シグナムとシャマルは盛大な勘違いをしていますが。

 

「でも、どうしてこんな姿になったんや?」

 

「どこの次元から転移したか知らないが、妙な輩と対決になってな。そいつはレアスキルで相手を前世の姿に戻すと言うとんでもない能力の持ち主でな。俺はそいつの攻撃を喰らって前世の姿に戻されたって訳だ」

 

「へー……幽白に出てきた裏浦島みたいな能力やな……」

 

「にしても、ホントに双子だったんだね~」

 

「そうね。アンタから話は聞いていたけど……」

 

画像を見ながらそう言うすずかとアリサ。

 

「とりあえず、納得は出来たか?」

 

「そうですね、納得出来ました」

 

「ああ。アレスちゃんの秘密を1つ知る事が出来て満足だ」

 

嬉しそうな表情を見せるシグナム。

 

「しっかし、あたしと大差無い風貌だったんだな……」

 

「……そうだな……」

 

ヴィータの呟きには肯定するしかない。

 

「そんな訳や。だから、シグナムもシャマルも遠慮せずにアレス君と一緒にお風呂に入ったらええねん!」

 

「うむ、前世が女の子なら問題は無いな!」

 

「そうよね! 全く問題無いわね!」

 

タヌキさん、シグナムとシャマルをあおるのを止めてくれませんかねぇ?

 

「ってか、前世関係無いだろ?」

 

俺の呟きは完全にスルーされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば、シグナムのあの『紫電一閃』だっけ? アレ、かっこええなぁ~」

 

「ありがとうございます」

 

はやてがシグナムの技を見て褒めている。

 

「にゃあ、そう言えば……シグナムさんやヴィータちゃんのそのデバイス、変わってるのが付いてるよね?」

 

「そうだね。確か……カートリッジシステムって言ってたよね?」

 

「ああ。あたし達ベルカ式魔法にあるシステムでな。魔力を込めた弾丸で一時的に能力を底上げしてるんだ」

 

ヴィータはそう言って自分の首にかかっているアイゼンのキーホルダーを眺める。

 

「そう言えば、アンタのにもそのカートリッジシステムと言うのが付いてるわよね?」

 

アリサがクッキーをかじりながら俺に聞いてくる。

 

「うん? ああ、俺もベルカ式だからな。付いていても不思議じゃないだろ?」

 

ちなみに、弾丸作成はエヴァに任せてる。

 

俺が作ろうとしてもエヴァが奪い取って作るのだが。

 

「……ねぇ、私のレイジングハートにそのカートリッジシステムって付ける事出来るかな?」

 

ここで装着のフラグが立ちますか。

 

ぶっちゃけ言うと、この世界のなのはには付けなくても充分強いと思うが。

 

「私も欲しいかな……」

 

フェイトさん、貴女もですか。

 

「なのはとフェイトのはだいぶ形式が違うからな……。一応、装着は可能だと思うが?」

 

「えへへ、アレス君とお揃いにしたいんだ~」

 

「なのはも? 私もだけど……」

 

そんな理由かよ。

 

まあ、誰に頼むかだが。

 

フェイトはプレシア女史とリニスさんにお願いすれば大丈夫だろう。

 

なのはは……リンディさん辺りにネタを振ってみるか。

 

そう言えば、プレシア女史とリンディさん……会わせてないな。

 

そろそろ会わせても良いだろうな。

 

「ん~……シグナムやヴィータは使い慣れてるからだが。このシステムってちょいと癖があるからなぁ~。意外と身体に負荷がかかるし」

 

「そうなん?」

 

「はい。多用しすぎると身体に多大な負担がかかります。ですから私も1日に使用する回数を決めています」

 

「でも、戦闘でここぞと言う時に使うとやっぱり勝率は上がるけどな」

 

「まあ、切り札の1つとしては必要かも知れないな。フェイトはプレシアさんとリニスさんに相談してみ。なのははリンディさん辺りに」

 

「うん、母さんに相談してみるね」

 

「にゃあ~リンディさんに相談だね」

 

とりあえず、最終決戦までには使いこなせるようにしてもらわないとな。

 

何回も言う様だが、なのはには必要無いかも知れないと思う。

 

 

 

 

 

 

 

「初めまして、プレシア・テスタロッサです」

 

「アリシア・テスタロッサで~す」

 

「フェイト・テスタロッサです……」

 

「時空管理局提督のリンディ・ハラオウンです」

 

「時空管理局執務官のクロノ・ハラオウンです」

 

「えっと……時空管理局勤務のエイミィ・リミエッタです」

 

お互いに自己紹介しあうテスタロッサ親子とハラオウン親子とエイミィさん。

 

シグナム達に前世がばれてから3日後、プレシア女史とリンディさんを会わせる事にした。

 

今居る場所は翠屋である。

 

客の数はそれなりだが、こっそり魔法を使って外野には他愛ない会話の様に聞こえるように細工している。

 

ちなみに、店にはなのはと母さんがこっそりと店員としてお手伝いしているのは愛嬌だ。

 

特に母さんは重要な話が終わったら連絡する様に釘を刺されている。

 

イヤな予感しか感じないが、逆らうわけにはいかない。

 

「アレスちゃんから伺っておりますが、その子が魔導師の資質が高い娘さんですか?」

 

「ええ。出来る事ならアレスちゃんと同じ所属が……」

 

「なるほどなるほど……とりあえず、嘱託魔導師試験を受けて頂いてからですわね」

 

滞りなく会話は進む。

 

「それで、他に何か特記事項はありますか?」

 

「そうですわね、雷の変換資質を持ってますわ」

 

「雷……ですか。氷ほどでないにしても珍しいですわね」

 

リンディさんとプレシア女史の話は続く。

 

「なるほど、雷持ちか。結構珍しいな……」

 

「そう……なんですか?」

 

「ああ。他にも炎と氷もあるけど、局員で持ってるのはごく僅かだ。重宝されると思う」

 

以上がフェイトとクロノの会話だ。

 

「良かったじゃん、フェイト。私は何も無いからね~」

 

アリシアはそう言ってアイスココアを一口。

 

アリシアはフェイトみたいに変換資質持ちではないのだ。

 

エイミィさんは『こ、この味は!』とか『むぅ! 今までに食べた事無いわ!』とか呟きながらケーキを食べていた。

 

ちなみに、エイミィさんが食べてるのは俺が一番の好物のチーズケーキである。

 

「それで、お願いしたい事が1つありますの」

 

「何でしょうか?」

 

 

「『CVK792-R』を入手出来るかしら?」

 

 

「それは……まさか」

 

リンディさんが口を少し開けて驚きの表情を見せた。

 

確か、『CVK792-R』って言ったらベルカカートリッジシステム専用のパーツでリボルバータイプのヤツだったよな。

 

やっぱり、バルディッシュはリボルバータイプが組まれるか。

 

「インテリジェントデバイスにカートリッジシステムを組むのか。あまりオススメはしないんですけど……」

 

クロノはブラックコーヒーを一口飲んでから呟く。

 

「ええ、ちょっとキツそうだけどね。フェイトが『アレスとお揃いが良い』ってね……」

 

母性に満ちた視線でフェイトを見つめるプレシア女史。

 

「そうか、君は古代(エンシェント)ベルカ式だったからな。カートリッジシステムは既に搭載済みか」

 

「分かりました。手配しておきます」

 

「お願いするわ」

 

『バルディッシュ』が『バルディッシュ・アサルト』にランクアップするフラグが立ちました。

 

「えっと……」

 

丁度、なのはがやって来た。

 

「あら、なのはちゃん。どうしたのかしら?」

 

「私のレイジングハートにも同じモノを組んで貰いたいのです」

 

「え? なのはちゃんも?」

 

目を丸くするリンディさん。

 

「……君のその魔力でカートリッジシステム……だと? デバイスが保つかな」

 

「多分、大丈夫……? 女の勘だけどね」

 

クロノの呟きにエイミィさんが答える。

 

「ひょっとして、なのはちゃんも?」

 

「はい、アレス君とお揃いにしたいので……」

 

顔を赤くして両手の人指し指をツンツンとつつくなのは。

 

「あら~アレス君、モテモテじゃない」

 

ニヤニヤと邪悪な匂いをプンプンさせた笑みを浮かべるエイミィさん。

 

「にゃはは……将来の夢はアレス君のお嫁さんです」

 

どさくさに紛れて何を言ってるのかね? この栗色髪の少女は?

 

「なのは……ずるい! 私もアレスのお嫁さんになりたい!」

 

「私もアレスお兄ちゃんのお嫁さんになりたいんだよ!」

 

テスタロッサ姉妹ももはや手の付けようが無い。

 

「アレス君、ハーレムじゃん♪(確か、ベルカ自治区は一夫多妻制だったはずだけど、面白そうだから黙ってよ)」

 

「……頑張れ」

 

エイミィさんはニヤニヤと笑い、クロノは胸の前で十字を切っていた。

 

クロノ、人を死地に送る様な真似をするでない。

 

「時にリンディさん。以前、アレスちゃんを病院送りにしようとした者がいると聞いたのですが?」

 

急にプレシア女史の目が黒く輝きだした。

 

「……その事ですか。申し訳ないです、こちらの監督不行届で。ええ、その2人はこちらでみっちりと……!」

 

「分かりました。『アレスちゃんの可愛さが分かる同士』として、信じています」

 

段々と話がおかしげな方に進み始めたような?

 

「プレシアさん。アレスちゃんを見て……どう思いますか?」

 

「……可愛い真ん丸でちょっとつり目のドングリ眼、可愛い小鼻に可愛い口。柔らかい髪……まさに至高の名にふさわしい姿だわ」

 

「……そう……ですか」

 

プレシア女史とリンディさんの視線が俺の顔を射抜く。

 

そして、お互いに顔を見合った後。

 

 

 

 

 

「貴女とは良い酒が飲めそうです」

「貴女とは良い酒が飲めそうね」

 

 

 

 

 

同時にそう言って2人は固い握手を交わした。

 

会話を聞いていなかったら美女2人が握手する結構良いシーンなのだがなぁ。

 

会話を聞いていた俺にはもはや『ダメだこりゃ』と言う言葉しか浮かばなかった。

 

 

 

 

「同士ですね」

「同士ですね」

 

 

 

 

そう言って現れたのは……桃子さんと母さんだった。

 

あれ? 確かこの結界は会話は何気ない日常会話に聞こえる様に細工したハズなのだが?

 

「あら、直美さんと桃子さん……」

 

「アレスちゃんの可愛さについて話し合ってると聞いて」

 

「ウチの自慢の息子です」

 

「時に直美さん。アレスちゃんはレンタル可能……ですか?」

 

目を潤ませて母さんに尋ねるリンディさん。

 

「……将来のお嫁さん候補がおられるなら」

 

「実は、はやてさんを養子に迎えようかと……」

 

「それなら大丈夫ですわね」

 

色々とツッコミを入れたいのだが、待てや。

 

「母さん? 俺はいつからレンタル物件になったんだ?」

 

「あら、アレスちゃんの可愛さを世に知らしめる為よ?」

 

後ろでウンウンと頷く桃子さん、プレシア女史、リンディさん。

 

ダメだ、この少年偏愛(ショタコン)四天王どうにかしないと。

 

「いや、知らしめなくて良いから。目立つの嫌いだから」

 

「そんな事言ってもねぇ。最近、店に来る女性客に『執事服来た可愛い男の子は何処にいますか?』って言われてるのよねぇ」

 

いつぞやの執事服着てやったウエイターやった時の事か。

 

この町は少年偏愛(ショタコン)がそんなに多いんかい。

 

「執事服……ですって?」

 

「それは……実に興味深いですわね?」

 

あ、プレシア女史とリンディさんの目が光った。

 

「はい、これです」

 

そう言って母さんは写真を1枚取り出して2人に見せる。

 

其処には執事服を着た俺とメイド服を着たなのはが写っていた。

 

 

 

「っ!」

「これは!」

 

 

 

2人の目は少し血走り、鼻から出てはならない赤い液体がツツーッと。

 

もうイヤだ、このショタコン達。

 

「良いなぁ……なのは、アレスとツーショット……」

 

「ブ~私もアレスお兄ちゃんと一緒に撮りたい~」

 

まあ、予想通りでしたね、テスタロッサ姉妹は。

 

「……アレス、君は」

 

「ありゃ~、これは艦長のど真ん中ストライクゾーンだね」

 

「にゃはは、アレス君とお揃いだね♪」

 

そうなのだ。母さんが用意したメイド服と執事服は同じ人がデザインしたのであろう、ピッタリとマッチするのだ。

 

 

 

『リンディ! 貴女今至福の時を過ごしているでしょう!?』

 

 

 

リンディさんの前に突如現れた空間ディスプレイ。

 

其処には眼鏡を掛けたキャリアウーマン風の女性、レティさんが怒りの形相で佇んでいたのだ。

 

「レ、レティ! 貴女ここは管理外世界で魔法文化が無いのよ!?」

 

『そんなのはどうでも良いわ! リンディ! 愛しのアレスちゃんの写真を見て悦に浸っているでしょう!?』

 

恐ろしくピンポイントで事実を突いてくるレティさん。

 

恐ろしい勘である。

 

〈エヴァ、念のため結界を追加しておいてくれ〉

 

〈了解です、お兄様。しかし、凄まじい勘ですわね〉

 

〈……ああ。あの勘は流石に真似出来ないぜ〉

 

〈私でも無理ですぅ……〉

 

そんな感じでエヴァと念話をしてると。

 

リンディさんとレティさんが激しい口論を繰り広げていた。

 

内容は、実に下らなかったが。

 

「母さん……」

 

クロノは額に手を当てていた。

 

目も当てられない状況とはよく言ったものだ。

 

その光景を唖然と見守ってる他のメンツ。

 

まあ、母さんは全く動じていないが。

 

「母さん?」

 

「ん?」

 

「その写真、焼き増しある?」

 

「勿論、沢山あるわよ?」

 

どんだけ作ったんだか。

 

「……レティさんにあげて良いか?」

 

「良いわよ~? 同士は多い方が良いからね」

 

正直これ以上増えるとシャレにならないと思うんだが。

 

「クロノ」

 

「ん?」

 

「これを渡しておくから、帰った時にレティさんにこっそりあげておいてくれ」

 

俺は写真をこっそりとクロノに渡す。

 

「……分かった。母さんの分も頼む。ばれたら殺される」

 

「……了解した」

 

その後、何とか場を収めてから今後の話を進めるのであった。

 

何だ、このグダグダ感は!

 

 

 

 




 
直感と言うよりもはや未来予知かもしれないw

某腹ペコ王でも真似出来ないかとw


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第30話 決戦前の準備

 
搭載したからにはやはり試運転は大事です


 

 

 

 

 

 

 

レイジングハート、セットアップ!」

 

「バルディッシュ、セットアップ!」

 

なのはとフェイトの声が響く。

 

「え……コレって?」

 

「違う……?」

 

戸惑う2人。

 

『2人とも聞いて! その子達には新しいシステムを搭載したの! だから、新しい名前で呼んで!』

 

エイミィさんの声が聞こえる。

 

 

 

「うん!」

「うん!」

 

 

2人はお互いの顔を見て、頷いた。

 

 

 

「レイジングハート・エクセリオン!」

「バルディッシュ・アサルト!」

 

 

 

一呼吸置いてから2人は言った。

 

 

 

「セーットアップ!」

「セーットアップ!」

 

 

 

そして2人はバリアジャケットを身に纏う。

 

さて、今は管理局も知らないとある世界に来ている。

 

まあ、某モンハンのモンスターがいるあの世界である。

 

荒野で生き物がほとんど居ない場所で俺となのは、フェイトは模擬戦を行う事になった。

 

理由は、先日組み上がったレイハさんとバルディッシュ卿のテストの為だ。

 

レイハさんには『ベルカ式カートリッジシステムCVK792-A』を組み込み、バルディッシュ卿には『ベルカ式カートリッジシステムCVK792-R』を組み込んだのだ。

 

これが逆になってたらどうなっていたが冷や汗を流す所だったが、無事にオリジナルと同じ形態になった。一安心、一安心。

 

【|Master, please call me “Cartridge Load.”《マスター、『カートリッジロード』を命じてください》】

 

レイハさんがなのはに指示する。

 

「うん。レイジングハート、お願い!『カートリッジ・ロード!』」

 

【ロード・カートリッジ!】

 

レイハさんから1発、弾丸の薬莢の様な物が排出される。

 

「バルディッシュ、お願い!『カートリッジ・ロード!』」

 

【ロード・カートリッジ】

 

フェイトのバルディッシュ卿からもリボルバー部分から薬莢が排出される。

 

2人の魔力が跳ね上がった。

 

今までの倍近くの魔力になったんじゃないか?

 

『おーかっこええな~』

 

はやての声が響く。

 

ちなみに、この世界にアースラを待機させてはやて、アリサ、すずか、アリシア、プレシア女史、リニス、ヴォルケンリッター、アースラ班達が乗り込んで今回の模擬戦を見学している。

 

【マスター、アクセルシューターを撃って下さい!】

 

「うん、アクセルシューター!」

 

なのはの周囲に桃色の球が現れる。

 

 

 

その数、300個近く。

 

 

 

OK、ちょっと待とうか。

 

何でそんな巫山戯た数の球を出せるのか、俺に説明してくれや。

 

「わ、なのは凄い……」

 

フェイトも驚いていた。

 

ちなみにフェイトの鎌も大概大きくなっているんですが、これはまだ許容範囲内だ。

 

「にゃ!凄い数だけど……アレス君なら大丈夫!」

 

なのはさんや。勝手な言いぐさは止めて貰おうか。

 

まあ、確かに大丈夫なんだがね!

 

「コレは想定外! だから俺もやらせてもらうぜ! エヴァ、頼む!」

 

了解(ヤヴォール)! 起爆(エクスプロズィオーン)!】

 

レーヴァテイン(杖)モードのエヴァから同じように薬莢が1発、排莢される。

 

「あー! ずるいー! 今日はカートリッジロードしない約束だったのにー!」

 

「アレス! 嘘吐きだー!」

 

不平不満を言うなのはとフェイト。

 

「話が違うのはこっちだ! 何だそのアクセルシューターの数は! いつもの3倍から増えてるじゃないか!」

 

「アレス君なら大丈夫なの! 今日こそは勝たせて貰うの!」

 

「今日こそ初勝利!」

 

なのはのアクセルシューターが一斉に襲いかかってきた。

 

「さすがにこの弾の量は! おかしいだろぉ!」

 

 

 

 

 

 

 

――――アースラ艦内

 

 

「ねぇ、リンディさん?」

 

「どうされました? プレシアさん?」

 

「なのはにはカートリッジシステムは必要無かったのではないかしら?」

 

「……その意見には同意せざるを得ないわね」

 

2人の目に映るなのはのアクセルシューター。

 

300個近くと、もはや普通の魔導師では対処出来ない数だ。

 

なのはちゃん1人で中隊位なら大損害を与えられそうだ……とリンディは思っていた。

 

 

 

 

「いや、アレは……おかしいだろ?」

 

「うん、アレは……色々と……おかしいよね?」

 

クロノとエイミィは呆然となのはのアクセルシューターを眺めていた。

 

 

 

 

 

「アレだ、なのはだけ模擬戦の時はカートリッジロードは禁止だな」

 

「うむ、ベルカの騎士は1対1に負けは無いと言いたいが……」

 

「アレはどう見ても30対1の戦いに見えるわね」

 

「……防ぎ切れるか……いや、アレは無理だな」

 

ヴォルケンリッターの方々は冷静を保ってる様に見えるが、4人とも頬に一筋冷や汗が流れていた。

 

 

 

 

 

 

「なのは……」

 

「なのはちゃん……」

 

「アレかな? 人間止めたんやろか? 『俺は人間をやめるぞ!! ジョジョ――――!!!』みたいに?」

 

「なのはちゃん、石仮面なんか持って無かったよ?」

 

「でも、なのはの所の士郎さんや恭也さんと美由希さんは人外じみて来てるわよ?」

 

「実は『柱の一族』の亜種ちゃうか? 身体能力が明らかにおかしくなってきとるし」

 

「はやてちゃん……それ言うと違和感が無くなるから」

 

なのはの友人達はろくでも無い事を言っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むぅ……何かはやてちゃんとO☆HA☆NA☆SHIしたくなったの!」

 

なのはは突然止まってからアースラが泊まってるであろう空を眺めてから何か呟いていた。

 

 

『あかんって! そんな物騒なお話はしとうないで!』

 

 

 

タヌキ嬢の声が聞こえてきたが、俺はスルーする事にした。

 

「まあ、良いか」

 

俺はなのはをほっといてからフェイトと向き合っていた。

 

フェイトの攻撃は苛烈を極めていた。

 

速度を上げての高速攻撃。

 

もはや9歳の攻撃では無いと思う。

 

「くっ! 段々速度が上がってくる!」

 

「はぁぁぁぁっ!」

 

真上からフェイトが斬りかかってくる。

 

「何の!」

 

俺はそれを身体を少しずらしてからかわす。

 

「はぁ、はぁ……」

 

息切れを起こしてるフェイト。

 

俺は例によって第1チャクラを回しているから体力は切れていない。

 

「にゃー! こうなったら、もう1発なの! カートリッジロードなの!」

 

【ロード・カートリッジ!】

 

業を煮やしたなのはがもう1発カートリッジロード……ってちょっと待て!

 

今の巫山戯た状態で更にカートリッジロードなんかしたら……!

 

なのはがもう1発カートリッジロードした瞬間、信じられない魔力がなのはから溢れてきた。

 

そして、なのはの双眸は真紅に輝きだした。

 

蒼い正八面体のコアが変形して……砂時計の様な風貌に……!

 

アレは、劇場版ヱヴァのラミエル……!

 

もしかして、進化……したのか?

 

俺は背筋に冷たい物が走った。

 

〈お、お兄様!〉

 

〈ちっ! このままだとなのはの身体が保たない! もしもの時は『魂と身体の合一(ソウル・ドライブ)』を使う!〉

 

魂と身体の合一(ソウル・ドライブ)』とは、魂と身体をシンクロさせて一時的に『気』を『神気』にする技だ。

 

神気とは呼んで字のごとく神が扱う力であり、人の身である状態で使えば寿命を縮めてしまう諸刃の剣なのだ。

 

前世の時は寿命があって無い様なモノだったから多用出来たが、今世では余り使いたくないのだ。

 

〈分かりました、仕方……ありませんね〉

 

その時、なのはから飛んでくるのは、もはや光線に近い魔力弾だった。

 

速度が今までの比で無い。

 

「ちぃ! フェイト! 離れろ! 巻き添えを喰らうぞ!」

 

俺はフェイトから離れる。

 

その瞬間、信じられない数の弾が俺に向かってくる。

 

隙間無く襲ってくる魔力弾……もはや、弾幕射撃だ。

 

「エヴァ、『精神甲冑』を!」

 

精神甲冑(パンツァーガイスト)!】

 

「まだ使いたく無かったがな……! 『闇の鎧(ダークネス・アーマー)!』」

 

俺は纏っている騎士甲冑を消して自身の気で作り上げた漆黒の鎧を身に纏う。

 

デザインは、『フィールド・アーマー』と呼ばれる種類で所謂全身鎧みたいな感じである。

 

分からない人は、某運命の四次聖杯戦争の狂戦士が着ていた感じの全身鎧を思い浮かべれば分かるだろう。

 

防御に特化しているから素早さが落ちるが、360度からの攻撃ならもはや防ぐしかない。

 

兜がちょっと厳つい感じだから滅多に使わないんだが、怪我を負うよりはマシだ。

 

全く、なのはがここまで成長するなんと思わなかったぜ。

 

そんな事を思っていると、全身に凄まじい衝撃が走った。

 

「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」

 

10人以上から袋叩きにされてる様な感じだった。

 

絶え間なく続く攻撃にさすがの俺でもしびれるモノを感じた。

 

〈お、お兄様……! だ、大丈夫ですか!?〉

 

〈だ、大丈夫だ! だが、さすがにコレはキツい!〉

 

エヴァの心配する念話を聞きながら俺は攻撃を耐え続けた。

 

30秒近くの攻撃は止んだ。

 

爆風に覆われていて周囲は一切見えなかった。

 

「や、やっと……止んだ……」

 

俺は小声で呟くと風が吹いて煙が晴れてくる。

 

前を見ると、顔を真っ青にしているなのはとフェイトの姿が見えた。

 

「ア、アレス……?」

 

「アレス……君?」

 

呆然とした感じのなのはとフェイト。

 

「ん? どうした?」

 

「だ、だって……顔見えないから……」

 

ああ、そう言えば全身鎧で覆われてるからな。

 

 

 

ピシッ

 

 

 

「ん?」

 

何かにヒビが入った様な音が?

 

 

 

パキパキ

 

 

 

陶器が砕けるような音が聞こえたかと思うと俺の全身鎧が粉々に砕け散る。

 

「ありゃ」

 

いつもの黒系統でまとめた私服に戻る。

 

と言うか、俺のこの闇の鎧を砕くとは……なのは、恐ろしい娘!

 

「ホントにアレス君なの」

 

「良かった~」

 

なのはとフェイトの2人は安堵のため息をついていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アレスちゃんの身に何かあったらどうするのかしら!?」

「アレスちゃんを殺す気だったのかしら!?」

 

 

 

「ごめんなさ~い!」

 

なのははリンディさんとプレシア女史にたっぷりと叱られていた。

 

まあ、自業自得ではあるから放っておくことにした。

 

「アレスちゃん、痛いところは無いかしら?」

 

「痛いところがあればすぐ言うんだぞ?」

 

シグナムとシャマルが俺の両側に座って心配そうな表情を浮かべていた。

 

どさくさに紛れて身体をまさぐるのはどうかと思うんだが。

 

「あ、あんた……あれだけの攻撃を喰らって……む、無傷……とか……」

 

「やっぱりオメー、今世も人間じゃねぇだろ?」

 

アリサとヴィータが冷や汗を流している。

 

「一応、痛かったんだぞ?」

 

「けど、傷自体は負って無いみたいやけど?」

 

「そりゃあ、切り札使ったからな」

 

「切り札?」

 

不思議そうな表情を浮かべて聞いてくるすずか。

 

「あの全身鎧。防御に特化してるから滅多な事じゃ怪我は負わないんだ」

 

「お~、西洋風のあの鎧か~。確かに頑丈そうやったな~」

 

「まあ、実際にはあれでないとなのはのあの攻撃は防げないと判断したんだがな」

 

俺はリンディさんとプレシア女史に絞られているなのはを見る。

 

「あ~……確かに……アレは……」

 

「……確かに、普通の人なら走馬燈とか見そう」

 

「……なのはは今後はカートリッジロードは禁止だね」

 

「うん、フェイトの言うとおり禁止だね」

 

はやて、すずか、フェイト、アリシアは叱られているなのはを見ながら呟いた。

 

「で? またアンタの秘密が1つ明かされたみたいなんだけど?」

 

アリサが口元をヒクヒクと釣り上げながら俺の前に腕を組んで立っていた。

 

「……何の話だ?」

 

「アンタのあのごっつい鎧姿よ! あんな芸当が出来るなんて聞いてないわよ!?」

 

アリサの台詞で『そう言えば、気を収束・具現化出来ると言った記憶が無いな…』と思い出していた。

 

「……良くある話だ」

 

俺はそう言ってテーブルにある紅茶を一口飲んだ。

 

「やっぱり、ここは今後の為に尋問する必要があるなぁ?」

 

「そうだね……次から次に隠し技が出てくるから……」

 

「お兄ちゃんの隠し事は……」

 

「ここで全て明かして貰おうか?」

 

アリサ・はやて・フェイト・アリシア・すずかの目が据わりだした。

 

「気を収束・具現化してるだけだ。こうやってな」

 

俺は両手に闇の剣を作り出した。

 

「わっ! 黒いラ○トセイバーや!」

 

「なるほど、気を使ってた訳ね」

 

「けど、アレス君何でも器用にこなすね」

 

すずかの台詞で俺は心の中で『まあ、考えてみたら何でもそつなくこなすよな』と思っていた。

 

「そうやね。東方系の言い方やと『ありとあらゆる事をそつなくこなす程度の能力』やな!」

 

便利の様な不便の様な……何とも言い難い感じの能力だな。

 

 

 

 

 

 

「なのはちゃんは暫くはカートリッジロードは禁止です!」

 

「そんな~」

 

「当たり前でしょ。まだ身体が出来てないからあんな強大な魔力、身体が保たないわ」

 

プレシア女史の言い分は最もである。

 

カートリッジロード2発分のあの増幅魔力は……前世の前世で戦った魔王の腹心級だったぞ。

 

あれで原作みたいに5発近くカートリッジロードしたら魔王級(サタン・クラス)に到達出来そうだ。

 

……その前に、身体がどうなるか非常に恐いんだが。

 

「分かりました……」

 

しょんぼりとしょげてるなのは。

 

「まあ、今回は俺の負けだ。切り札の『闇の鎧(ダークネス・アーマー)』を使ったからな」

 

「え?」

 

「想定外だったよ。なのはがあそこまで強くなってるなんてな」

 

「えへへ……」

 

頬を赤くするなのは。

 

【マスター、良かったですね。100連敗を迎える前に勝つ事が出来たのですから】

 

何気に傷に塩を擦り込む様な事を言ってるレイハさん。

 

ちなみに、今回負けていたら記念すべき100連敗を迎えていたのだが。

 

さあ、これで準備は万端だ。

 

最終決戦に向けてレッツゴーだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決戦前夜。

 

ページは665まで集まって僅か1ページで夜天の書は完成する所まで来た。

 

今夜ははやての要望で2人っきりで夜を過ごす事となる。

 

と言っても、俺が今いるのは八神家のはやての部屋で他の部屋にはヴォルケンリッターの4人はきちんといる。

 

……シグナムとシャマルが聞き耳を立ててないか少し心配ではあるが。

 

「いよいよ明日……やな」

 

「……ああ、明日……だな」

 

俺とはやてはベッドに一緒に入っていた。

 

はやては俺の左腕にしがみつく様に抱きついている。

 

枕元にはエヴァとリインフォースが本の状態で待機している。

 

そうそう俺も気付かなかったが、リインフォースは完全起動していないから外の様子は全く分からないのだ。

 

魔力の波長と音声のみ認識出来る状態との事。

 

エヴァは完全起動しているから外の様子はしっかりと認識出来るとの事。

 

つまり、リインフォースは視覚とか全く効かない状態だ。

 

ちなみに、俺とエヴァは魔力の波長がほとんど同じらしい。

 

リインフォース曰く、『ここまで同じだった人は見た事が無いです』との事。

 

「いよいよリインフォースの姿を拝めるわけやな」

 

【そうですね。私もマスターはやての姿とアレスの姿、それに久しぶりに姉上の姿を見てみたいです】

 

「そうやね、エヴァちゃんの姿……姿?」

 

はやては頭を上げて俺の顔を覗き込む。

 

「アレス君……ちぃーっと聞きたい事あるねんけど?」

 

「何だ?」

 

「ひょっとして、エヴァちゃん実体化出来るん?」

 

「zzz……」

 

俺は目を瞑っていびきをかいて寝たふり。

 

「……」

 

何やらはやては動く。気配で何となく分かる。

 

「zzz……ムッ!?」

 

鼻をつままれ、口に柔らかい感触が走る。

 

それから口に何か柔らかくて暖かいモノが入ってくる。

 

驚いて目を開けると眼前にははやての顔。

 

「んんっ」

 

しばし、はやての舌が俺の口の中を蹂躙する。

 

そしてはやてが離れる。

 

「……寝たふりなんかする悪い子にお仕置きや」

 

頬を赤くするはやて。つーか、その妙技はどこで覚えてくるんだ!

 

「……エヴァも実体化出来るぞ」

 

「……ネギま!のあの姿?」

 

俺は頷く。

 

「うわぁ……。けど、実際に見てみたい思うとったんや♪」

 

「そうか」

 

「今すぐ実体化出来るん?」

 

「……明日の決戦にお披露目したいんだ。良いだろ?」

 

「了解や。1つ楽しみが増えたわ」

 

ウキウキ声で話すはやて。

 

「ところで、だ。さっきのキスは……何処で覚えた?」

 

「ん? さっきのか? すずかちゃんの家にあった本や。すずかちゃんが忍さんに頼んで買って貰った本に載ってたんや」

 

ちょっと待とうか。忍さん、あんた妹に何を買って与えてるんですか!

 

「……ツッコミ所が満載で非常に困るんだが」

 

「ちなみにお気に入りは長身のお姉ちゃんが小学生位の男の子を襲うシチュエーションやな!」

 

 

 

「今度すずかの家に行ったらその本は灰燼に帰してやる」

 

 

 

このタヌキ娘は踏み込んではならない領域に踏み込んだ可能性が非常に高い。

 

引き戻す事は出来るのだろうか?

 

「そんな殺生や! そもそも、アレス君がさっさと私達を襲ってくれへんからあんな本に頼る事になるんや!」

 

意味が分からない逆ギレ。

 

「意味分からんわ!」

 

『やはり性教育は早すぎた』とちょっと後悔しながら俺とはやてはベッドで会話を繰り広げるのであった。

 

 

 

 




 
変態淑女(へんたい)に知識を与えた結果がコレだよ!w


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第31話 悪夢の終わり

 
いよいよ決戦です


 

 

 

 

 

 

「本当に良いんだな?」

 

「ああ」

 

俺の前に立つのは夜天の書を持つヴィータ。

 

後ろでは、なのは、フェイト、プレシア女史、リニス、シグナム、ザフィーラ、クロノ、アルフ、ユーノ、ユナ、そして……エヴァと言うフルメンバーが揃っていた。

 

俺の後ろでははやてがシートの上に座って不安そうな顔でこちらの方を見ている。

 

遙か上空の宇宙空間ではアースラが待機している。

 

その中のブリッジではリンディさん、アリシア、アリサ、すずか、エイミィさんが固唾を飲んで見守っている。

 

「たかが1ページ位なら大丈夫だ。それに、俺にはコレがある」

 

俺は小指に装着されてる指輪を見せる。

 

それは、前世の時に開発していた気を魔力に変換する指輪だった。

 

念法を習得している俺なら、気をほとんど無限に作り出せる。

 

気を魔力に変換したならば俺は魔力切れを起こす事は無いのだ。

 

「私的にはええ気分せんのやけどなぁ……」

 

後ろで呟くはなて。

 

「それじゃあ、いくぜ」

 

ヴィータは夜天の書を起動して俺から魔力を蒐集する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『アルカンシェルは宇宙空間で撃てるか?』ですって?」

 

リンディさんが驚いた表情で俺の方を見る。

 

「はい。自動防衛プログラムを切り離し、弱体化させた後に宇宙空間に転移させてからアースラのアルカンシェルでとどめを刺す……と言う手を考えたのですが」

 

アースラ内の作戦会議室で俺はリンディさんにそう告げた。

 

「なるほど、地表に撃てば何かしらの被害は出る。宇宙空間ならばその制約は無いからな……」

 

クロノは顎に手を当てて考え込んでる。

 

「大丈夫だよ。アルカンシェルは宇宙空間でも問題なく撃てるよ」

 

エイミィさんはニッコリと微笑んで答える。

 

「転送に関しても大丈夫か?」

 

俺はユーノ、リニス、アルフ、ユナ、シャマルの5人を見る。

 

 

 

「大丈夫だよ」

「大丈夫ですよ」

「大丈夫!」

「大丈夫よ」

「いけるわよ」

 

 

 

5人は臆することなく答えた。

 

「もしもの時の為、エヴァも転送魔法に参加させるからな」

 

「へ?」

 

なのはがキョトンとした顔で返答する。

 

【はい。実は私は実体化出来るのです】

 

その言葉を聞いてリニス、アリサ、すずか、はやてを除くメンツが呆然とした表情で俺を見る。

 

「そうだな。そろそろ皆に紹介しようか」

 

【はい、お兄様】

 

エヴァはそう言って本の状態になって俺の前に飛んで……光り輝く。

 

俺の前に立つのは、金髪で色白、人形の様な容姿の少女が立っていた。

 

「皆様、改めて初めまして。『武神の魔導書』の管制人格を務めている『エヴァンジェリン』と申します。以後、お見知り置きを……」

 

そう言ってエヴァは優雅に一礼する。

 

ちなみに服装はリインフォースと同じ服装である。

 

リニス、アリサ、すずか以外はただ、ただ驚いていた。

 

 

 

 

 

 

「驚く事ばかりね……」

 

頬に冷や汗を流しながらそう返答するリンディさん。

 

「とりあえず、自動防衛プログラムを切り離した後は魔力ダメージを与えるだけ与えて弱体化させれば良いんだな?」

 

【はい。再生機能が付いているから効いていないように見えるかもしれませんが、効果はあります。ですから、迷わず攻撃を行ってください】

 

リインフォースはそう答える。

 

「なのは、フェイト。とりあえず、全力全壊で攻撃してくれ。分かりやすいだろ?」

 

「うん、凄く分かりやすいの」

 

「分かった。出し惜しみは無しだね?」

 

「ああ」

 

「私も全力攻撃しても良いのかしら?」

 

「勿論。生半可な攻撃は効かないんだろ?」

 

【はい。複合バリアが展開されていますので、中途半端は攻撃は魔力の無駄になってしまいます】

 

「了解。久しぶりに全力攻撃させてもらうわ」

 

プレシア女史も嬉しそうだった。

 

「よし、それでは実行に移そうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

蒐集(ザルムング)

 

俺のリンカーコアから魔力が奪われる。

 

少し、気怠い感じだが大した事は無かった。

 

ヴィータが持つ夜天の書のページが1枚めくれる。

 

ついに、666ページになった。

 

夜天の書ははやての前に飛んで行く。

 

はやての足下に現れる三角形の頂点に円を足した魔法陣……ベルカ式魔法陣が展開される。

 

色は、白。

 

そして、それが漆黒の色に染まる。

 

解放(ベフライウング)

 

はやての身体から凄まじい魔力が溢れ出して来る。

 

「くっ!」

 

俺は前に装甲手楯(パンツァーシルト)を展開して衝撃を防ぐ。

 

「あ……ああっ!」

 

はやての身体が成長して大人の体型になる。

 

髪は伸びて銀髪、そして瞳は真紅の瞳が輝いていた。

 

そして、そのまま空中に浮かんで停止していた。

 

「……」

 

俺は固唾を飲んで見守る。

 

後ろを見ると、全員バリアジャケットと騎士甲冑を身に纏っていつでも戦闘出来る状態になっていた。

 

確か、あの姿はリインフォースの姿だと思ったのだが。

 

その時、リインフォースの背中に黒い翼が生えた。

 

「……」

 

リインフォースは俺の姿を見て……猛スピードで飛んできた。

 

「っ!」

 

前に展開している俺の盾に殴りかかり、一撃で俺の盾を砕く。

 

ちぃ! 自動防衛プログラム(ナハトヴァール)が暴走してやがる!

 

エヴァと別れている今、俺が展開する装甲手楯(パンツァーシルト)の強度はいつもの半分しか無いのだ。

 

そのあと、続け様にパンチを繰り出す。

 

俺は手首を掴み、そのまま背負い投げにして投げる。

 

リインフォースは地面に食い込むようにして背中から叩き付けられる。

 

「っ!」

 

僅かだが、彼女の表情が歪んだ。

 

 

「お兄様!」

「アレス君!」

「アレス!」

 

 

エヴァ、なのは、フェイトが心配の声を上げてくる。

 

「大丈夫だ! 俺一人で時間を稼ぐ! 全員はいつでも攻撃を撃てるように待機していろ!」

 

俺は地面に叩き付けられ、少し埋まってるリインフォースを見る。

 

すると彼女は即座に起き上がり、またも俺に向かって攻撃を仕掛けてくる。

 

「闇雲に殴る蹴るだけで、俺に勝てると思うなよ! 自動防衛プログラム(ナハトヴァール)!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ、主はやてはどうさなれたのだ!?」

 

「多分、自動防衛プログラム(ナハトヴァール)が暴走しているから管理者権限が使用出来ないのだわ!」

 

「だが、待つしかあるまい。中で主とリインフォースがどうにかしてくれるハズだ」

 

シグナム、シャマル、ザフィーラの声が聞こえる。

 

確かに、その通りなのだ。

 

後少ししたら動きが止まるハズなのだが。

 

と思っていたら目の前のリインフォースの動きが止まった。

 

『アレス君! 今何とかこの子の動きを止めたから魔力ダメージを与えてくれへんかな!?』

 

「了解だぜ! なのは、頼む!」

 

「分かったの! レイジングハート!」

 

【マスター、エクセリオン・モードで行きましょう!】

 

「分かったの! エクセリオン・モード!!」

 

レイハさんがカートリッジロードして変形する。

 

確かアレって……まだフレーム強化してないから使ったらダメって……まあ良いか。

 

レイハさんなら保つだろう、多分。

 

「エクセリオン・バスター!!!」

 

槍みたいな形になったレイハさんの前に桃色の魔力弾が形成される。

 

狙いは、動きが止まっているリインフォース。

 

「ブレイクシュート!」

 

魔力弾は一直線にリインフォースに向かって……直撃する。

 

轟音と共に煙に包まれ、様子が分からなくなる。

 

煙の中から黒い球体が地面に向かって飛んでいく。

 

黒い球体はは地面に降り立つと何かに変化するみたいだ。

 

煙が晴れると、其処にははやてが浮かんでいた。

 

どうやら、無事にリインフォースとユニゾン出来たみたいだ。

 

 

「はやてちゃん……?」

「はやて?」

「主はやて……?」

「はやて……ちゃん?」

 

 

一様に驚くなのは達。

 

「お待たせや、みんな! 魔法少女プリティーはやて、ここに推参や!」

 

その題名だとファンシーな魔法少女モノになるんだが。

 

「見て見て! アレス君とお揃いや!」

 

はやての足下に広がるのはベルカ式魔法陣。

 

まあ、確かにはやてだけだもんな、ベルカ式は。

 

「むぅ~」

 

「アレスとお揃い……良いなぁ……」

 

物欲しそうな表情ではやてを見るなのはとフェイトだった。

 

「状況は良いとは言えないんだがな」

 

口元をヒクヒクと吊り上げながらはやてを見るクロノ。

 

地上には真っ黒い球体……ドーム状の物体……いや、あれはもはや澱みと言った所だろうか。それがある。

 

魔力反応は明らかに禍々しい感じを受ける。

 

「リインフォースが言うにはな、アレはもう理性も何も無い破壊の権化やそうや。だから、みんなの手で眠らせて欲しいんや」

 

少し、俯く様に言うはやて。

 

「そう……か」

 

デュランダルを握りしめるクロノ。

 

「後少しでアレが目覚めるみたいだな。さあ、もう一踏ん張りと言ったところだな」

 

「……さっき、散々戦った人が言う台詞じゃないよね?」

 

「だよね。ユーノ、夜もアレくらい元気でお願いね?」

 

「言ってる意味が分からないよユナ!?」

 

ユーノとユナの会話は無視することにしておいた。

 

『えっと……計算では後10分位で暴走が始まると思うんだけど』

 

エイミィさんの声が響く。

 

「よし、リインフォース。アレの詳細を教えてくれ」

 

【分かりました、教えます】

 

 

 

 

 

 

 

「と言う順番で良いな?」

 

俺達は話し合って段取りを組む。

 

大まかな流れは原作と同じだが、僅かに違う所があったのだ。

 

原作では物理、魔力を防ぐ複合四層式のバリアだったが、六層に増えていた。

 

ご丁寧に、一番外は『気』以外は無効化すると言うイヤらしいバリアだ。

 

こうなると、一番手は俺が一撃を喰らわせてバリアを破壊するしかあるまい。

 

順番は俺、ヴィータ、なのは、シグナム、フェイト、プレシア女史の順でバリアを破壊。

 

その後はクロノとエヴァが氷結魔法で凍結させて動きを止めてからとどめになのは、フェイト、はやてと俺の4人で最大攻撃。

 

計算ではこれでコアが露出するはずだからそこでユーノ、ユナ、リニス、アルフ、シャマル、エヴァの6人で転移魔法をかけてアースラの前に強制転移だ。

 

まあ、原作と大差ない流れだよな。

 

多分、俺が全力砲撃したら六層バリアなら全て貫通出来そうな気はするが。

 

皆に仕事残しておこうかな。

 

 

 

※BGM  BRAVE PHOENIX

 

 

 

「始まった……!」

 

黒い澱みの周囲に闇の柱が立ち上る。

 

うごめく触手。

 

魔力反応は高まるばかりだ。

 

「アアァァァァ――――――――――――!!!」

 

澱みが無くなり、現れたのは異形の物体。

 

まさに、バケモノと言った風貌だった。

 

ちなみに、大半はモンハンのモンスターの部分が大半を占めているのだが。

 

てっぺんには銀髪の女性がいる。

 

リインフォースと同じ容姿だ。

 

 

 

「チェーンバインド!」

「チェーンバインド!」

「ストラグルバインド!」

「ストラグルバインド!」

「縛れ! 鋼の(くびき)!! でぇやぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

リニス、アルフ、ユーノ、ユナ、ザフィーラの魔法が防衛プログラムの周囲にうごめく触手を斬り捨てる。

 

「アアアアァァァァァァ――――――――――――!!」

 

防衛プログラムが悲痛の叫び声を上げる。

 

「まずは俺の番か!! 天の使者を落とす一撃、見せてやる! 『天使滅殺(エンジェル・バスター)』!!!」

 

左手に溜めた闇の力を砲撃として解放する。

 

大きさ的にはなのはのディバイン・バスターと同等である。

 

轟音と共に防衛プログラムの直撃して一層目のバリアを粉々に粉砕する。

 

「そら、次頼むぜ!」

 

「分かってるよ! 行くぞ、なのは!」

 

「うん、ヴィータちゃん!」

 

原作の様にコンビを組むなのはとヴィータ。

 

ヴィータはアイゼンを振りかざす。

 

「鉄槌の騎士、ヴィータと! (くろがね)の伯爵グラーフアイゼン!」

 

アイゼンがカートリッジロードする。

 

【ギガントフォーム】

 

アイゼンは変形して超巨大なハンマーに切り替わる。

 

しかし、あの大きさはもはや反則に近いだろう。

 

 

 

「轟! 天! 爆砕! 巨人族の一撃(ギガントシュラーク)!!!」

 

 

 

超巨大なハンマーは防衛プログラムに直撃して容易くバリアを破壊、粉々にする。

 

「なのは、いけぇ!」

 

ヴィータがなのはに声をかける。

 

「うん! 高町なのはとレイジングハート・エクセリオン! 行きます!」

 

【ロード・カートリッジ】

 

レイハさんから1発、薬莢が排出される。

 

確か、原作では3発か4発は排出されていたのだが。

 

4発もされたら防衛プログラムが消え去る可能性が高い。

 

杖をクルクルと振り回し、構える。

 

「エクセリオン・バスター!!!」

 

【バレル・ショット】

 

防衛プログラムから触手がなのはに向かって飛んでくる。

 

しかし、第一弾目が触手ごとなぎ払って防衛プログラムに直撃。

 

「ブレイク・シュ――――――――ト!!」

 

続け様に桃色の砲撃が防衛プログラムのバリアに当たってバリアを粉々に砕く。

 

「アアアアアアアァァァァァァァァァァァ―――――――――ッ!!!」

 

防衛プログラムの声が周囲に響く。

 

「次、シグナムとフェイトちゃん!」

 

シャマルの声が聞こえる。

 

上空ではシグナムが佇んでいた。

 

「剣の騎士、シグナムが魂。炎の魔剣、レヴァンティン。刃と連結刃に続くもう1つの姿を!」

 

そう言って何故か俺の方に熱のこもった視線を送ってくる。

 

いいから防衛プログラムに集中しろやコラ。

 

【ボーゲンフォルム】

 

鞘をレヴァンティンの束と連結させて弓の形に変形させる。

 

カートリッジロードしてから矢を作り出す。

 

防衛プログラムに狙いを定める。

 

「翔けよ、隼!」

 

烈風の隼(シュツルムファルケン)

 

かけ声と共に矢は放たれ、一直線に防衛プログラムに突き進み、刺さる。

 

爆音が響いて一瞬にしてバリアを破壊、粉々にした。

 

「やったぞ、アレスちゃん! 私の勇姿を見たか!」

 

大喜びで俺の方を見つめるシグナム。

 

ああ、さっきの勇姿は格好良かったよ。

 

だが、今やってる投げキッスとかで全てぶち壊しなんだがね!

 

原作と違って色々とはっちゃけてるシグナムだった。

 

「フェイト・テスタロッサとバルディッシュ・アサルト……行きます!」

 

既に『ザンバーフォーム』で大剣形態になってるフェイトがバルディッシュ卿を振りかざし、一気に振り下ろす。

 

魔力の刃が何発も防衛プログラムに当たる。

 

「打ち抜け、雷神!」

 

【ジェットザンバー】

 

魔力の刃が伸びて防衛プログラムに直撃、左肩部分を切り裂く。

 

「アアアアアアアアアアアァァァァァァ――――――――――――ッ!!!!」

 

叫び声が響いて防衛プログラム周辺に遠距離攻撃を行えそうな触手が生えて魔力弾攻撃を行おうとする。

 

だが……!

 

 

「盾の守護獣、ザフィーラ! 砲撃なんぞ、撃たせん!!!」

 

 

ザフィーラの前にベルカ式魔法陣が現れて防衛プログラムの前に魔力の刃を出現。

それを全てに突き刺して防衛プログラムの砲撃を防ぐ。

 

「次、プレシアさん!」

 

「任せて頂戴!」

 

プレシア女史は杖を振りかざす。

 

 

「その程度のバリアでこの私の魔法を防げると思わない事ね! 撃ち抜きなさい、轟雷! サンダースマッシャー!!」

 

 

一瞬の溜めの後に放たれる直射型の雷。

 

一撃でバリアを粉々にする。

 

さすが、偉大な大魔導師と呼ばれていないと言う事か!

 

「さすが、母さん」

 

フェイトも驚いた顔でプレシア女史を見ていた。

 

「フェイト、貴女も頑張ればこの程度出来るようになるわ。何たって、私の娘ですからね!」

 

プレシア女史は優しい笑みを浮かべてフェイトを見つめていた。

 

「うん!」

 

フェイトは満面の笑みを浮かべていた。

 

「次、はやてちゃん!」

 

「やっと私の出番か! やったるでぇ!」

 

はやては左手の夜天の書を開いている。

 

 

 

「彼方より来たれ、宿り木(やどりぎ)の枝。銀月の槍となりて、撃ち貫け。石化の槍、ミストルティン!」

 

 

 

はやてのいる反対の方にベルカ式魔法陣が浮かぶ。

 

はやてがシュベルトクロイツをうち下ろす。

 

ベルカ式魔法陣の周囲に現れた6本の槍が防衛プログラムに突き刺さる。

 

全身に刺さった槍は周囲の身体を一気に石化させる。

 

「アァァァァァアァァアアアァァァァァ――――――――ッ!!」

 

叫び声を上げながら防衛プログラムは全身を石化させて砕ける。

 

だが、内部から体組織を再生させて身体を修復させる。

 

形は更に異形な姿になる。

 

 

 

「うわ……」

「これは……」

「ますます……酷い事に……」

「何だか……凄い事に……」

 

 

 

アルフ、ユーノ、ユナ、シャマルが苦虫を潰した様な顔で防衛プログラムを見ている。

 

『やっぱり、並みの攻撃じゃ通じない! ダメージを入れた端から再生されちゃう!』

 

エイミィさんの声が聞こえる。

 

「だが、攻撃自体を無効化されてる訳じゃない!」

 

「アレスの言うとおりだ! 攻撃は通ってる! プラン変更は無しだ!」

 

クロノがデュランダルを持って構える。

 

「行くぞ、デュランダル!」

 

【オッケー、ボス】

 

「悠久なる凍土 凍てつく棺のうちにて 永遠の眠りを与えよ」

 

クロノの周りに氷の結晶が現れ、大地が氷に覆われる。

 

防衛プログラムの身体が凍り始める。

 

「凍てつけ!!!」

 

【エターナルコフィン】

 

そして防衛プログラムの身体が完全に凍ったかに見えたが!

 

「あれでまだ動くのか……!」

 

「エヴァ!」

 

「はい、お兄様!」

 

エヴァは呪文詠唱に入る。

 

 

 

 

 

「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック 契約に従い(ト・シュンボライオン) 我に従え(ディアー・コネートー・モイ・ヘー) 氷の女王(クリュスタリネー・バシレイア)。 来れ(エピゲネーテートー) とこしえのやみ(タイオーニオン・エレボス)! えいえんのひょうが(ハイオーニエ・クリュスタレ)!!!」

 

 

 

 

 

エヴァによる氷結魔法が防衛プログラムに襲いかかる。

 

かつて、鬼神を氷漬けにしたあの魔法である。

 

まあ、あの防衛プログラムがコレくらいで負ける様なヤツではないと思うが。

 

防衛プログラムの周囲が一瞬にして氷に覆われる。

 

「あ、あかん! スクナの再現や! テンションがめっちゃ上がるわ!」

 

「す、凄い……」

 

「氷の変換資質も無いのにあそこまで……」

 

エヴァは俺の方を見る。

 

俺は頷いた。

 

 

 

 

全ての(パーサイス)命ある者に(ゾーサイス)等しき死を(トン・イソン・タナトン)其は(ホス)安らぎ也(アタラクシア)。『おわるせかい(コズミケー・カタストロフェー)』」

 

 

 

 

エヴァは指を鳴らした。

 

鳴らした音が響くと氷漬けになった防衛プログラムは甲高い音を立てて粉々に砕け散る。

 

「あわわわわわ……リアルでこの魔法を見られると思わなかったわ……」

 

感動して涙を流してるはやて。

 

「す、すごいわね……」

 

さすがのプレシア女史も驚いていた。

 

「……さすが、エヴァだな」

 

「えへへ、久しぶりに使いました♪」

 

「しかし、あれでもまだ生きてるんだな……」

 

砕け散った中からまだ再生する防衛プログラム。

 

「さあ、とどめだ! なのは!」

 

「うん! 行くよ、フェイトちゃん、はやてちゃん!」

 

なのははフェイトとはやてとお互いの顔を見て頷いた。

 

【ロード・カートリッジ】

 

レイハさんから4発の薬莢が排出される。

 

ちょっと待て! なのは!

 

 

【スターライトブレイカー】

「全力全壊! スターライト……」

 

 

なのはの前に超巨大な魔力弾が形成される。

 

周りの大気から魔力を収集しているのだ。

 

恐ろしいまでの……魔力が……収束される。

 

もはや、ヤマトが波動砲を撃つ前の様に……レイハさんの前に光が集まっている。

 

……収束が間に合わない!?

 

仕方ない! 俺とフェイト、はやての3人で先に撃つしかないか!

 

「雷光一閃! プラズマザンバァァァァー」

 

フェイトの大剣に雷が落ちる。

 

「ごめんな……おやすみな……響け、終焉の笛 ラグナロク……」

 

はやてのシュベルトクロイツに魔力が溜まる。

 

「見せてやる、『闇の軍神』の力を……な! ダークネス……」

 

俺は両手にありったけの闇の力を凝縮させる。

 

なのはほどの収束は出来ないが、それでも全力の一撃を放つつもりだ。

 

 

 

「ブレイカ――――――――――――ッ!!!」

「ブレイカ――――――――――――ッ!!!」

「ブレイカ――――――――――――ッ!!!」

 

 

 

一斉に放たれる砲撃。

 

今まで数回しか聞いた事も無い程の轟音が周囲に響く。

 

 

「トリプルブレイカーとか意味分から……」

 

 

ん? 何か、聞き覚えの無い声が聞こえた様な?

 

まあ、良いか。

 

防衛プログラムは煙に包まれて見えなくなった。

 

煙が晴れる。

 

……バカな……! あれだけの攻撃を喰らって……まだ再生するだと!?

 

俺は背筋に冷や汗が流れる。

 

予定外だ。あそこまで、タフだとは……もしや!

 

蒐集した『片角のマ王』の耐久力が影響してるのか!?

 

もし、そうなら……、もう1度……撃ち込んだ方が……。

 

 

 

 

「ブレイカ――――――――――――ッ!!!」

 

 

 

 

遅れてなのはがスターライトブレイカーを撃ち込む。

 

桃色の砲撃が再生する防衛プログラムに襲いかかる。

 

 

 

「何で魔王の一撃がぁぁぁぁぁ!?」

 

 

 

またも妙な声が聞こえた。

 

さっきから何なんだろうか?

 

まあ、良いや。今は忙しいし。

 

その時、俺は気付いた。

 

その一撃は……俺とフェイト、はやてと3人で撃った砲撃を更に上回る威力だと言う事に気付いたのだ。

 

1人で……上回るだと……!?

 

轟音が周囲に響く。

 

周囲が薄暗くなる量の土砂が舞い上がる。

 

星を貫通したんじゃないかと疑いたくなる威力だった。

 

「な、なのは……」

 

「なのはちゃん……」

 

フェイトとはやては驚愕の表情でなのはを見る。

 

「にゃはは、思わず4発カートリッジロードしちゃった♪」

 

確信犯と言うヤツだった。

 

6発したらもう俺は防げないかもしれない。

 

背中に冷や汗が流れる。

 

周囲の視界が見えなくなった。

 

 

 

「本体コア……見えない」

 

 

 

シャマルの声が聞こえる。

 

「へ?」

 

「コアが消えちゃったの」

 

泣きそうな声になるシャマル。

 

 

 

 

『……』

 

 

 

 

 

 

その場にいた全員、沈黙していた。

 

『……コア消滅したみたい』

 

エイミィさんの声が聞こえる。

 

マジか!?

 

なのはの砲撃で……消し去ったのか!?

 

俺は背筋に冷たいモノを感じた。

 

なのははアルカンシェルと同等の砲撃を放てると言う事なのか……!

 

「にゃはは……消えちゃった……ね」

 

恥ずかしそうに頬をポリポリとかくなのは。

 

「まあ、消せたのは良いんだが……」

 

「アレを消し去る砲撃ねぇ……」

 

クロノとプレシア女史も苦笑いしていた。

 

「なのは、オメーは今後あの砲撃は禁止な」

 

「にゃ!?」

 

「うむ、アレは非殺傷と言っても精神的に殺されるのと大差無いからな」

 

ヴィータとシグナムにダメ出しされるなのは。

 

「え~? 今回は殺傷設定にしたけど模擬戦の時はきちんと非殺傷にしとくよ~?」

 

「当たり前だ! 殺傷設定になんぞされた日にはあたし達は骨も残らないわ!」

 

「確かに、アレは勘弁やな~」

 

「……」

 

無言で身体をガタガタ震わせてるフェイト。

 

いつぞやの砲撃連射がトラウマになってるようだ。

 

 

「……」

「……」

 

 

お互い、身体を寄せ合ってガタガタ震えてるユーノとユナ。

 

そう言えば、この両人もスターライトブレイカー見てたんだっけ。

 

まあ、今回のは前回の比じゃない威力だがな!

 

「……けど、オメーなら耐えられそうな気がするんだけどな?」

 

ヴィータが俺の顔を見ながら呟く。

 

「いやいやいや、流石にアレは直撃したら俺でも消え去るぞ?」

 

俺は前で手を振って否定する。

 

 

「……」

「……」

「……」

 

 

 

なのは、フェイト、はやては俺の顔を見ている。

 

「ど、どうした?」

 

「ヴィータちゃんの言うとおり、何か……アレス君なら直撃でも何とかなりそうなの」

 

「そうだね……」

 

「……確かに、なんだかんだ言って無傷で済ませそうな気が」

 

「……君達、俺を何だと思ってるんだ?」

 

まるで髪の毛1本残っていてもそこから再生出来そうに思ってるんじゃ無かろうな?

 

「さすがにお兄様でもあの直撃はしのげませんわよ? 前世なら大丈夫でしたけど……」

 

「前世なら大丈夫なのね」

 

目を丸くするフェイト。

 

「ええ。身体の半身を吹っ飛ばされても再生出来ましたし」

 

「……まあ、そうやろ……な」

 

「……けど、なんかその能力も引き継がれてそうで恐いんだよな~オメーの場合」

 

「引き継がれるわけねぇだろ……ゲームじゃあるまいし」

 

俺は苦笑するしか無かった。

 

『と言う訳で、現場のみんな……お疲れ様でした!』

 

何がと言う訳かよく分からんが、無事に防衛プログラムを消滅出来た。

 

『除去、無事に終了しました! この後、残骸の回収とかがあるけどみんなはアースラに戻って一休みしていってね』

 

なのは、フェイト、はやては仲良くハイタッチしていた。

 

「お疲れ様、アレスちゃん」

 

プレシア女史が近づいてくる。

 

「ああ、やっと終わった」

 

「そうね……。久しぶりに全力魔法が撃てたからスッキリしたわ」

 

「そうか……」

 

 

「アレスちゃん」

「アレスちゃん」

 

 

シグナムとシャマルが近寄ってくる。

 

何となくだが、妙な予感を。

 

「私の活躍はどうだった?」

 

頬を赤くしたシグナムが俺の頭を撫でてくる。

 

「せっかく、私の格好いい所見せたかったのに……」

 

同じ様なシャマルも俺の頭を撫でてくる。

 

「ははは、高町には感謝しないとな」

 

「……どういう意味かしら? シグナム?」

 

「決まってるだろ? シャマルの活躍は無しで私の活躍を可愛いアレスちゃんに見せる事が出来たのだからな♪」

 

「シグナム?」

 

シャマルは目を細めている。

 

「安心しろ、私が堪能した後にシャマルにも情けを与えてやろう」

 

胸を張ってドヤ顔を見せるシグナム。

 

 

 

「主を差し置いて、活躍とか……許さんで」

「アレス君の気を引くなんて許さないの……」

「シグナム……流石にそれは許容出来ないよ?」

 

 

 

目の光がおかしく見えるなのは、フェイト、はやて。

 

俺は少しずつ、シグナムから距離を離す。

 

「あ、主はやて? テスタロッサ? 高町?」

 

冷や汗を流すシグナム。

 

 

 

「O☆HA☆NA☆SHIなの♪」

「O☆HA☆NA☆SHIやな♪」

「O☆HA☆NA☆SHIだね♪」

 

 

 

笑顔だが、笑顔に見えないなのは、フェイト、はやて。

 

俺は視線を外す事にした。

 

シグナムの叫び声が遠ざかっていった。

 

「シグナム、貴女の亡き後はきちんとアレスちゃんを可愛がるからね♪」

 

シャマルの嬉しそうな声が聞こえる。

 

「なあ、烈火の将と湖の騎士があんなので良いのか?」

 

俺はヴィータに話しかける。

 

 

 

「……もう諦めた」

「……右に同じ」

 

 

 

ため息をつくヴィータとザフィーラ。

 

ああ、医者が匙を投げたみたいなもんか。

 

月の頭脳と呼ばれた薬師が月に向かって全力で匙を投げる様な感じで。

 

2人の雰囲気がそう語っていた。

 

 

「はやて!」

「はやてちゃん!?」

 

 

なのはとフェイトの声が聞こえた。

 

俺は声の方を見ると、気を失っているはやての姿があった。

 

そう言えば、はやては魔法を使って間もないから……魔力切れを起こしたのだろう。

 

「はやてをアースラに運ぶぞ!」

 

「ああ!」

 

俺達はアースラに転移した。

 

 

 




 
1人で消滅とかどんだけの威力なんだかw


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第32話 A's編エピローグ

 
これにてA's編は終了と相成ります


 

 

 

 

 

アースラの医務室。

 

はやてはそこで眠りについていた。

 

周りには、ヴォルケンリッターとリインフォース。

 

あと、俺もいるんだが。

 

俺以外全員が神妙な顔ではやてを見つめている。

 

「なあ、はやては大丈夫だよな?」

 

ヴィータははやての手を握りしめている。

 

「……大丈夫だ。俺の予想なら、いきなり魔法を使ったから疲れたのだろうと思う」

 

「なるほど……アレスちゃんの言うとおり一理あるな」

 

顎に手を当てて呟くシグナム。

 

「いきなりの実戦だったから精神的にも疲れてると思う。心配する事は無いと……」

 

俺の言葉が終わる前に医務室のドアが開く。

 

そこに居たのはリインフォースとお揃いの服装をしたエヴァだった。

 

「検査結果が出ましたよ」

 

「そうか、で? どうだった?」

 

「はい、魔力切れによるものです。リンカーコアも正常ですし、身体には特に異常はありませんとの事です」

 

「良かった……」

 

安堵の息を吐くリインフォース。

 

「とりあえずは万事解決か?」

 

「……そうだな。リインフォース、そちらの調子はどうだ?」

 

「ああ、基礎構造はもはや原型をとどめてない状態だ。このまま放って置けば自動防衛プログラム(ナハトヴァール)を構築して主はやてを浸食してしまうだろう」

 

「……最も、私がいるから大丈夫ですよ? リインフォース?」

 

「その通りですね、姉上がいる限り私はかつての姿を取り戻す事が出来ます」

 

リインフォースはそう言ってエヴァを見つめていた。

 

「……しかし、姉上。確か……昔見た記憶では私より背が高かったと思いましたが?」

 

首を傾げてから考える仕草をするリインフォース。

 

可愛い仕草だなと俺はひっそりと思ったり。

 

「う……し、仕方ないじゃないですか……姉と呼ばれるには……こんな小柄な体型だと……威厳も何も……」

 

どうやらエヴァは幻術を使ってナイスバディになっていたようだ。

 

「大体、あの変態野郎のせいなのよ……何をトチ狂ったか『小さいは正義だ!』とか抜かしてこんな体型に仕上げて!」

 

小声でブツブツと呟くエヴァ。

 

どうやら、エヴァの外観を設計したヤツは少女偏愛(ロリコン)だった様だ。

 

「……ああ、アイツ……ですか。しかし、私を設計したヤツも『やはり乳は大きい方が良いだろう』とかほざいてましたが……」

 

古代ベルカの発明家は変態しかおらんかったのか。

 

まあ、聞く気も無いのでこの件はスルーしとく。

 

「ですが、私は姉上が少し羨ましく思います」

 

「どうしてですか?」

 

「主はやても可愛いのですが、アレスはもっと可愛いからです」

 

俺はリインフォースの瞳を見た。

 

……コレは、少年偏愛(ショタコン)の目!

 

タイムマシンがあればリインフォースを設計したヤツを殴りに行きたい。

 

「……リインフォース、やはり分かってるな」

 

「さすが、私達の管制人格です」

 

そこにシグナムとシャマルが便乗してきた。

 

俺はヴィータとザフィーラを見る。

 

 

「zzzz」

「zzzz」

 

 

ヴィータははやての手を握ったまま眠ってる……のか?

 

妙に呼吸が不自然なのだが。

 

ザフィーラも狼形態で丸まって眠ってるように見える。

 

やはり、呼吸が不自然だ。

 

今度ヴィータが楽しみにとっておいたアイスを食っておいてやろう。

 

ザフィーラは今度組み手した時、腹に雷華崩拳を喰らわせてやる。

 

「まあ、お兄様の良さが分かるのは良い事です」

 

「時に姉上、何故アレスの事を兄と呼ぶのですか?」

 

「それはですね……」

 

エヴァが説明する。

 

 

 

 

 

「……なるほど……それは興味深い話です」

 

「今世ではお兄様はお兄様になってしまいましたが、私にとっては『お姉様』でもあるのです」

 

「……姉上に選ばれる訳だ」

 

そう言ってウンウン頷くリインフォース。

 

「私的にはアレスちゃんに『シャマルお姉ちゃん』と呼んで貰いたいのだけどね」

 

唐突に妙な事を言い出すシャマル。

 

「……うむ、私の事は『シグナム姉さん』と呼んでも良いのだぞ?」

 

そこに便乗しようとするなや。

 

「なあ、リインフォース? この2人はアンタの影響を受けてるのか?」

 

「……まあ、受けてると言えば受けてるな。最も、私も最初は別に小さな男の子が好みでは無かったのだぞ?」

 

 

なん……だと……?

 

 

「……そこんとこを詳しく」

 

「何代目の主だっただろうか。とある主がだな、魔力蒐集は小さな男の子限定にしてな」

 

ろくでもない主だな!

 

「あろう事か、私に小さな男にしか興味が湧かなくなるプログラムを組んでな」

 

 

 

 

 

 そ い つ が 元 凶 か 

 

 

 

 

 

「結果、私はアレスみたいな男の子しか興味が湧かなくなった訳だ、エヘン」

 

妙に胸を張ってどや顔を見せるリインフォース。

 

そんな事で胸を張るなや。あと、胸が大きすぎるわ。たゆんたゆんと揺れてるじゃねぇか。

 

「……そう言えば、そんな主がいたような」

 

「ですわね。確か、名前はアヤカ……だったような?」

 

ちょっと待とうか。

 

そいつって、容姿は金髪で赤毛の少年が好みとか言うオチじゃなかろうな?

 

「ああ、そんな名でしたね。小さな男の子ばかり指定してましたが、特に赤毛の男の子が多かったですね」

 

これ以上は聞きたくないんだが。

 

「エヴァ?」

 

「何でしょうか?」

 

「過去に戻る魔法って無いかな?」

 

「えっと……ごめんなさい。それは無いです」

 

「そっか……」

 

とりあえず、その主を一度ハリセンで頭をしばいておきたかったんだが。

 

「まあ、そんな訳だ。今度、私と添い寝しようか? それともそれ以上の事を希望か?」

 

どんな訳か理解出来ないんだが!

 

「ずるいぞ! リインフォース! 私とて1度も添い寝した事無いんだぞ!?」

 

「管制人格だからって横暴だわ!」

 

ブーイングを起こすシグナムとシャマル。

 

「分かった分かった、今度4人で一緒に寝れば良いのだろう?」

 

「うむ、それなら良いな」

 

「問題無いです」

 

「アレ? 何か勝手に話が進んでるんだけど?」

 

サラッとリインフォースが進言してシグナムとシャマルが勝手に了承してる?

 

「良いでは無いか。今度、姉上と一緒に……」

 

「そうですわね」

 

エヴァちゃんや。貴女も勝手に話を進めるのですか。

 

「……もういいや」

 

俺は反論する気を失ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさいね。2、3日はこの船で過ごして貰うから」

 

リンディさんは次の日になったらそんな事を言ってくれた。

 

理由は不明だが、次元転移が出来ないそうだ。

 

まあ、夏休みだから別に帰宅しなくても大丈夫だし。

 

ちなみに、母さんに連絡しておいたから何の問題も無い。

 

母さんから桃子さんに連絡は伝わってるから大丈夫だ。

 

さて、俺が今いるのはデバイスを整備する部屋。

 

そこにいるのはちょっと太眉でおでこを出している眼鏡っ娘、更にタレ目の女性だった。

 

「初めまして……かな? 時空管理局でデバイスのメンテナンスを受け持っているマリエル・アテンザと申します。愛称はマリーで良いわよ」

 

あ~、そう言えばそんな人がいたなぁ。

 

若干失礼な事を思いつつも俺は挨拶する。

 

「あ、嘱託魔導師の藤之宮アレスです」

 

「なるほど、レティ提督の超ストライク・ゾーンですね」

 

眼鏡が光るマリー。

 

「まあ、そんな事はどうでも良いですから。ちょっと、この部屋を貸して貰えますか?」

 

「うん? 良いわよ。デバイスのメンテナンスでもするのかな?」

 

「いえ、武神の魔導書から夜天の魔導書にデータを送る為にちょっと」

 

「ちょっとお姉さんの耳がおかしくなったのかな? 今、もの凄い単語を聞いたような?」

 

「おかしくはなってないですよ。聞こえた言葉の通りですよ?」

 

「……是非とも、見学させてくれるかな? ロストロギアと呼ばれた夜天の書と超貴重な武神の書のデータ転送とか……」

 

マリーさんの心に響くモノがあったようだ。

 

「ちなみに、自爆装置ってどう思います?」

 

「ロマンの1つと思ってるわ」

 

この言葉を聞いてマリーさんの思考回路が少しだけ分かった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

「それでは、私とリインフォースは暫く動けないので……」

 

そう言って、エヴァとリインフォースは本の姿に変わる。

 

それからは2冊の本が宙に浮いて光の様なモノがエヴァからリインフォースに向かって飛んでいる。

 

どうやら、データを送信しているみたいだ。

 

「へ~、ミッドのデバイスと大差ない通信のやり方ですね~」

 

様子を見ているマリー。

 

俺はマリーに監視をお願いして何かあったらすぐに連絡をくれるように言付けてからメンテナンスルームから出る。

 

そこから、なのは、フェイト、アリシア、アリサ、すずかの5人と一緒に俺の部屋に戻って一休みする事となった。

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、はやてが目を覚ましたぞ~」

 

ヴィータの声が聞こえた。

 

そう言えば、何か……忘れてた様な……?

 

ドアが開き、ヴィータが入ってくる。

 

「……全く、オメーはとことん好かれてるんだな」

 

軽いため息をつくヴィータ。

 

まあ、そこは否定出来ないが。

 

俺の身体を抱きつくように眠ってるなのは、フェイト、アリシア、アリサ、すずか。

床で雑魚寝していた様だ。

 

いつの間にか、眠ってしまったようだな。

 

「……まあ、俺は別に何をやったと言う訳じゃないんだがな」

 

「……んな訳ねーだろ。オメーとしては大した事したつもりでなくても、こいつ等にとっては相当嬉しかった事なんだろうよ」

 

「まあ……確かに、その通りかもな」

 

「それにあたしも感謝してるんだ。はやてを救ってくれて……な」

 

「そうか」

 

「だから、何かあったら遠慮無く言ってくれよ? ああ、シグナムとシャマルのアレは無理だけどな」

 

ヴィータは苦笑しながら言う。

 

「ああ。ヴィータに頼める事があったら、頼むよ」

 

「そうか。それじゃあ、はやてが目を覚ましたから。来てくれよ」

 

「分かった」

 

俺はなのは達を起こしてからはやてがいる病室に向かう事にした。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、アレス君」

 

病室に入るとリンディさんとヴォルケンリッターのメンツがいた。

 

「気分はどうだ?」

 

「うん、何か身体の気怠い感じが無くなった様な気がするなぁ。それと、足の感覚が戻ったで~」

 

嬉しそうに語るはやて。

 

「そうか、それは何よりだ」

 

「はやて、良かったね」

 

「はやてちゃん、おめでとうなの」

 

フェイトとなのはが祝福の言葉を贈る。

 

「ありがとな、なのはちゃん、フェイトちゃん」

 

ドアが開き、入ってきたのはリインフォースとエヴァだった。

 

「主はやて……」

 

「終わりましたよ~」

 

「おかえりや、リインフォース。ところで、終わったって何の事?」

 

「あ、はやてさんには言ってませんでしたね。私の中にある夜天の書のバックアップデータを移したのです」

 

「え……? それって」

 

「もう大丈夫です。本来の姿に戻ったのでもう私は暴走もしません。いつまでも主と一緒にいることが出来ます」

 

そう言ってリインフォースは涙を流す。

 

「そっか……うん……うん……。これからはずっと一緒や! リインフォースも私達の家族や!」

 

はやても涙を流している。

 

良かった……。

 

これで、俺のやりたかった事が1つ終わった。

 

原作では納得いかなかった終わり方だったが、コレなら俺は文句ない。

 

しかし、リインフォース(ツヴァイ)はどうしようか。

 

リインフォースが存命なら(ツヴァイ)の必要性が無いなぁ。

 

「あ、主に1つ、言付けがあります」

 

「うん? 何や?」

 

「実は、主とユニゾン出来なくなってしまいました」

 

「へ?」

 

「実を言うと、ユニゾン機能は後から付けられた機能なのです。姉上には元々付けてあったのですが、私には付いていなかったのです」

 

……そうだったのか。

 

ん? 

 

と言う事は。新たにユニゾンデバイスを作成する必要がある訳だ。

 

そうなると、リインフォースを元にして作成すれば良いのだから。

 

なるほど、無事に(ツヴァイ)が作られるフラグは立った訳だ。

 

「なるほどなぁ~。まあ、その件はまだ先の話やな。とりあえず、歩けるようになってからやな」

 

「そうですね。今は身体を治す事が先決ですね」

 

「とりあえず、いずれはいる様になるでしょうから、マリーに話しておくわね」

 

リンディさんがそう口を開く。

 

「すいません、リンディ義母さん」

 

はやてがリンディさんに向かってお礼を言う。

 

そうか、もう養子縁組したのかな?

 

そんな事を思ってると、リインフォースが俺の方を見る。

 

「アレス、姉上。私はお二方に何とお礼を言えば良いのでしょうか?」

 

そう言って俺とエヴァの前で跪いた。

 

「気にするな。俺のやりたい様にやっただけの事なんだからな」

 

「そう言う訳には参りません。私だけでなく、主の命も救って頂いたのですから」

 

「まあ、そこら辺はリインフォースに任せるよ」

 

「そうですか……ならば、今後アレスの夜伽は私が担とふ……いふぁいでふ!(痛いです!)はねぇふへ!(姉上!)」

 

「リインフォース? それは私の役目だから違う事を考えなさい?」

 

エヴァがリインフォースの頬をつねりあげる。

 

ってか、エヴァもそれは違うと思う。

 

 

「アレス……アンタ……」

「アレス君ひょっとして……」

「そんな……」

 

 

なのは達は驚愕の表情を浮かべてる。

 

 

「なん……だと……?」

「そんな……」

 

 

シグナムとシャマルは盛大に落胆している。

 

 

「アレス……オメーそんな性癖が……」

 

 

俺からツツツ……と間合いを離すヴィータ。

 

 

「……」

 

 

ニコニコ顔のリンディさん。

 

見た目は大丈夫そうだが、額には冷や汗がダラダラと流れている。

 

内心はかなり動揺しているみたいだ。

 

「……言っておくが、俺は別に少女偏愛(ロリコン)じゃねぇぞ」

 

その言葉を聞いて全員が安堵のため息をついていた。

 

ザフィーラは狼形態になって床で丸まって眠っている。

 

関与しないぞ……と言いたげな雰囲気が出ていた。

 

「お兄様は私みたいな体型からリインフォースみたいな体型まで幅広く愛せる方なんですよ♪」

 

エヴァや、フォローのつもりかも知れないが……まるで俺が節操無しに聞こえるんだが?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぷにぷにね……」

 

「ぷにぷに……でしょ?」

 

俺の身体を洗うのはショタ四天王の内の2人、リンディさんとプレシア女史だ。

 

ここはアースラ艦内の大浴場で女湯だ。

 

例によって俺はまた女湯に連行されたのだ。

 

他にも女性船員が一緒に入っているし、なのは達とシグナム、シャマル、ヴィータ、リインフォースも入ってる。

 

ちなみにシグナム、シャマル、リインフォースはリンディさんとプレシア女史とのじゃんけんに負けてしまって血涙流して湯船につかっている。

 

他の女性船員の何人かも俺の方を見て羨ましそうな視線を向けている。

 

そうそう、ユーノとユナも一緒に入っている。

 

今回は俺は関与していないが、やはりユナに連行されたのだろうか。ユナに身体を流して貰っているユーノの姿が見えた。

 

「アレスちゃん、綺麗な肌してるわねぇ~」

 

そんな事を言いながら俺の腕やら上半身を洗うリンディさん。

 

リンディさん……。一児の母とは言えない身体してますね。

 

まあ、プレシア女史やら桃子さんも大概な身体してますが。

 

「それに……コレは反則ね」

 

そんな事を言って俺の股間の男性専用アームドデバイスを洗うリンディさん。

 

実に嬉しそうに見えるのは目の錯覚と思いたい。

 

 

「……」

「やっぱりリンディもそう思うかしら?」

「ええ、女性にとっては凶器になるかもしれないわね!」

 

 

 

「……」

「アリシアやフェイトは将来コレに泣かされるのかしらね?」

「はやてもコレには逃れられないでしょうね」

 

 

 

「…………」

「ついでに私達もお相伴されましょうか?」

「それは良いわね! これだけのモノを見せられて大人しくしてはいられないわね!」

 

 

 

「……あのさ?」

「どうしたの?」

「どうしたのかしら?」

 

 

 

リンディさんとプレシア女史は不思議そうな表情を浮かべて俺の顔を見る。

 

リンディさんは洗う手を止めようとしない。

 

ってか、聞いてると段々と恐ろしくなってくるのだが。

 

そのうち、『今夜は一緒に寝ましょうか?』に発展しそうだし。

 

「いつまで洗ってるんだ?」

 

俺は異様なまでに重点的に股間のアームドデバイスを洗う手を眺めながら訪ねる。

 

「あら、コレ?」

 

「そうねぇ。1回、最高硬度になる所を見たいと思ってるんだけど?」

 

「なかなか硬くならないわね? どうすれば硬くなるのかしら?」

 

硬くするわけねぇだろ。

 

ってか、妙な力加減で洗ってくるのはそれが目的だったのか。

 

と言うか、カートリッジロードすんな。

 

この状況下で硬くしたらなのは達やシグナム、シャマル、リインフォースがすっ飛んでくるわ。

 

今でもこの状況を遠目で眺めてるというのに。

 

あとシグナム、シャマル、リインフォースの目が血走っているが、目の錯覚として片付ける事にした。

 

「……硬くしてどうしろと?」

 

 

 

「そ、そりゃあ……今後の対策の為よ?」

「そ、そうね? 女の人は柔らかいより硬い方が好みなのよ?」

 

 

 

リンディさんがスゲーとんでもない事仰ってます!

 

周囲を見ると他の女性職員も同意するかの様にウンウンと頷いているんだが。

 

この鑑には痴女とショタしかおらんのかい。

 

「2人とも、甘いですよ。アレスのアームドデバイスを起動させるならコレくらいしないと」

 

背後から聞こえるのは……リインフォースの声だった。

 

その直後、背中に柔らかい感触が走る。

 

どうやらリインフォースが抱きついてきているようだ。

 

「……リインフォース?」

 

「昔の主達から聞いた情報だとコレは効果的だと」

 

「なるほど……」

 

「私達の胸なら十分出来るわね……」

 

昔の主達は何を吹き込んだのだろうか。

 

背中には柔らかい感触が絶え間なく続いている。

 

前世の前世で嫁にこんなことをされていたのを思い出す。

 

……っていかん! そんな事を思い出すと股間のアームドデバイスが反応してしまうではないか!

 

「効果ありね? 少し硬度が増したわ♪」

 

「リインフォース? もうちょっと続けて頂戴♪」

 

「了解です♪」

 

やってる事が超高級泡風呂並みなんだが。

 

なのは達を見ると。

 

 

 

 

「なるほど……コレは……」

「参考になるの……」

「アレスの弱点が分かるわね……」

「さすが母さんだね……」

「お兄ちゃんへの攻め方の参考になるね……」

「早く胸が大きくならへんかな……」

 

 

 

ダメだな、これは。

 

 

「ふんふ~ん」

「お兄様は……と」

 

 

エイミィさんとエヴァの声が聞こえてきた。

 

2人は俺達の様子を見て動きが止まった。

 

「艦長、きちんと合意を得て下さいよ?」

 

エイミィさん、止める気は一切無いのですか?

 

「分かってるわよ~」

 

「……」

 

エヴァは無言でこちらに近づいてくる。

 

そして、いきなり俺の前に立ってからこう言い放った。

 

「リインフォース? お兄様のソレを起動させるならコレくらいは必要ですよ?」

 

椅子に座った俺の上に座り、抱きついてくる。

 

エヴァの柔らかい身体が俺の身体に密着する。

 

足を俺の腰に絡めて木にしがみつく様な格好だ。

 

「エヴァ、何を……!」

 

そして、唇を合わせてきてから舌を口内に絡ませてくる。

 

「ん……」

 

「姉上……上手いですね……」

 

「そこまで……なるほど!」

 

「しかし、私達の体型ではちょっとキツいわね」

 

顔を真っ赤にしているプレシア女史、リンディさん、リインフォース。

 

エヴァの舌技はまだまだ続く。

 

周りからは『ショタとロリのコラボレーション!?』とか『あのナリで何て淫靡な!?』とか『あの金髪の子良いなぁ~私もあんな男の子とキスしたいな~』とか。

 

最後のは聞かなかった事にした。

 

 

 

ブシャー!

 

 

 

ん?

 

激しい水音が聞こえるな。

 

シャワーが壊れたのか?

 

俺は視線を音源に向けた。

 

見るとなのは達とシグナム、シャマルが鼻血を出して倒れていた。

 

「!?」

 

俺は唇をエヴァから離す。

 

「やり過ぎちゃいました☆テヘッ☆」

 

頬を赤くしているエヴァ。

 

まあ、何でなのは達が鼻血を流しているのかと言うと。

 

俺の男性専用アームドデバイスが最高硬度になってしまったからなのだ。

 

天に向かって突き上げる形になってしまった。

 

ちなみに日本刀の様に少し湾曲してるのがポイント?

 

「……こ、コレは……」

 

「もはや……ロストロギアに認定しても良いかも?」

 

「そ、想定外でした……」

 

プレシア女史、リンディさん、リインフォースは手で鼻を押さえている。

 

指の間から赤い液体が流れていた。

 

俺はエヴァを下ろしてから3人に詰め寄る。

 

 

「……ごめんなさい」

 

 

上目遣いで少し目を潤ませてから3人に謝る。

 

 

 

 

ブシャッ

 

 

 

3人は鼻血の量を増やしてからその場に倒れた。

 

うむ、どうやらこのコンボはもはや最終兵器扱いにした方が良いな。

 

 

「……わ、我が生涯に……」

「一片の……」

「悔い……無し……」

 

 

鼻から血を流して恍惚の表情を浮かべているプレシア女史、リンディさん、リインフォース。

 

血を出したからこれで少しは頭が冷えると思うのだが。

 

周りを見ると、全員俺の方から視線を逸らしていた。

 

「……どうすんだよ、コレ……」

 

ヴィータが俺の方を見ないで話しかけてくる。

 

「……色々と……すまん……」

 

謝るしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「で? 君は風呂で何をしたんだ?」

 

目の前にはこめかみをピクピクと痙攣させてるクロノがいる。

 

「……」

 

どうやって説明しようかな。

 

俺の男性専用アームドデバイスの最終形態を見て倒れたとはあんまり言いたくないし。

 

 

ってか、俺のコレを見ただけで倒れるとか理解し難い。

 

 

ちなみになのは達は医務室で寝込んでいる。

 

全員鼻にティッシュを詰めている光景はかなりシュールだが。

 

「えっとね、アレス君のここを見ただけなんだよね~」

 

いきなり現れて説明するエイミィさん。

 

「そうですよ~。お兄様のアームドデバイス見ただけなんですよ~」

 

エヴァも状況説明をする。

 

 

 

「……」

「……」

 

 

 

クロノは俺の股間部分を一瞥してからまた俺の顔を見る。

 

「君の其処はロストロギアなのか?」

 

「アホな事抜かすなや」

 

「しかし、見ただけで女性を気絶に追い込むなんて」

 

「まあ、アレは仕方無いわよねぇ~」

 

「そうですわねぇ~」

 

腕を組んで頷くエイミィとエヴァ。

 

「……何故だ?」

 

「だって、太さといい、長さといい……バランスが取れていると言うか……」

 

「色合いも綺麗でした」

 

「まるで芸術品の様な……」

 

2人は妙に頬を赤くしていた。

 

褒められても凄く恥ずかしいんだが!

 

「……今度から男湯に入った方が良い」

 

「……リンディ提督が許してくれるなら」

 

「……それは無理だな」

 

あっさりと諦めるクロノ。

 

 

 

「クロノ君も見習った方が良いよ? 先端に皮の兜をかぶってるのは良くないよ?」

 

「何故知ってる!?」

 

 

 

「……ん~? 冗談で言ったつもりだったのに~?」

 

「……っ! しまった!」

 

エイミィさんの口元がつり上がる。

 

ああ、邪笑と呼ばれる笑い方だ。

 

クロノ、お前もユーノと同じだったのか。

 

 

 

『クロノ執務官! リンディとアレスちゃんが一緒にお風呂に入ったですって!?』

 

 

 

クロノの前に現れた空間ディスプレイ。そこには血涙を流しているレティさんが映っていた。

 

「え!? あ、そ、その!」

 

突然現れたレティさんに対処出来ないクロノ。

 

何でこの人はすぐに情報を得るんだろうか?

 

あ、マリーさんからだな。確か、レティさんの部下だったハズだし。

 

鼻血出して倒れたのはすぐ分かるし、倒れた原因も目撃者が沢山いるからこれもすぐ分かるし。

 

コレも勘なら恐いモノがあるがな!

 

『さあ、キリキリ吐いて貰うわよ? 事実なのね?』

 

口から煙の様な蒸気を吐き出すレティさん。

 

某運命の第五次聖杯戦争で召喚された狂戦士を彷彿とさせるな。

 

「……えっと…………ハイ」

 

それしかあるまい、クロノ。下手に嘘付いたら……もう会えなくなるしな。

 

『リンディ……貴女は……帰ったら、ただじゃおかないわよ! で、リンディは何処かしら? 通信が繋がらないんだけど?』

 

「……それが……」

 

「リンディ提督なら今医務室で眠っています」

 

エイミィさんがクロノの隣に来て返答する。

 

「エイミィ!」

 

『医務室で? どうしてまた?』

 

「お風呂で……アレス君の股間のアームドデバイスを見てしまったから」

 

だから、その表現はどうかと思うんだが。

 

『なん……ですって……? アレスちゃんの……アームドデバイス?』

 

「ええ、男性専用アームドデバイスです」

 

『エイミィ? 聞かせて貰うわ。どんな感じだったのかしら?』

 

「……」

 

俺の方を一瞥するエイミィさん。

 

《どうぞ、お好きにしてください》

 

俺はそう目で語った。

 

エイミィさんは頷いた。あれで分かったのだろうか。

 

「……太くて、長くて、少し反っていました」

 

正直に話してますよ。

 

『!? 太くて……長くて……反ってる……!? ショタ巨○ン。ロリ巨乳がいるならショタ巨チ○がいてもおかしくないわね!』

 

ブツブツと呟くレティさん。

 

呟く様は格好良く見えるが、呟いてる内容は果てしなくろくでも無かった。

 

『けれど、ソレは有りね。良いわね……アレスちゃんみたいな子をベッドで……楽しみが増えたわ!』

 

突然、トリップしてる様に見えるレティさん。

 

俺はクロノの方を見る。

 

クロノも俺の方を見る。

 

 

 

《通信切っちまえ》

《大丈夫なのか?》

《多分、大丈夫だろ。俺の情報を得たから》

《まあ、君がそう言うなら》

 

 

 

この間僅か5秒。俺とクロノは目線のみで会話する。

 

『やっぱりアレスちゃんはリンディには勿体ない子だわ。いつか救ってあげないと!』

 

クロノは通信を切る。

 

何やら不穏な言葉を言ってた様な気がしたが、ここはスルーしとくか。

 

 

 

「……」

「……」

「……」

 

 

 

俺達は無言になる。

 

「管理局は……あんな人が多いのか?」

 

「いや、あそこまでアグレッシブな人はそんなにいないが……」

 

「けど、アレス君みたいな子が好みの人は多いよ?」

 

エイミィさん、それは聞きたくなかったぜ!

 

「そうか。まあ、嘱託魔導師辞めるって言ったらリンディさんもレティさんも自殺しかねないから言わないが……」

 

「……すまない」

 

クロノは小声で謝った来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

何だかんだで元の世界に戻ってくる事が出来た。

 

俺達ははやての家に送ってもらった。

 

「ありがとうございます」

 

「良いのよ。こちらとしても1つ、ロストロギアの存在が減ったのだから……」

 

はやてとリンディさんが挨拶を交わす。

 

リンディさんとクロノが見送りに来てくれた。

 

と言っても、週に何日かはこちらに来るみたいだが。

 

はやての家は広いから別に大丈夫だろう。

 

「さあ、明日からは平穏な日常に戻るな~」

 

俺は背筋を伸ばしながら呟いた。

 

背骨がポキポキと音を立てる。

 

「と言う訳でアレス君、遊びにいこっ」

 

いきなり明日のお誘いをかけて来るなのは。

 

「なのは、ずるい……私が先に誘いたかったのに……」

 

「お兄ちゃん? 私とフェイトと一緒に遊びに行こうよ~」

 

「あ~あかんあかん! アレス君は明日から私の足のリハビリにつき合って貰うんや!」

 

「何言ってるのよ! あたしとすずかの魔法の練習につき合って貰うのよ!」

 

「アレス君? もちろん私とアリサちゃんだよね?」

 

フェイト、アリシア、はやて、アリサ、すずかが俺に寄ってくる。

 

「俺は1人しかおらんのだが?」

 

「何言ってるのよ。アンタ、分身出来るでしょうが」

 

「まあ、そうだが」

 

「そう言えば、最大12人まで出来たんだよね?」

 

その言葉を聞いてリンディさんの耳がダンボの様に大きくなった……様に見えた。

 

「……なんですって?」

 

そう言えば、リンディさんには教えて無かったような。

 

詰め寄ってくるリンディさん。

 

「……俺のレアスキルです。本体を含めて12人になります」

 

「1人頂戴! 良いでしょ!?」

 

「制限時間があります。制限時間が過ぎると本体に強制的に戻ります」

 

「仕方ないわねぇ……。ちなみに時間は?」

 

「3日です」

 

「明日貸して頂戴? 良いでしょ?」

 

「俺はモノじゃないんですが……。まあ、良いですよ」

 

「やった♪」

 

小躍りしてるリンディさん。

 

ソレを見てクロノは深いため息をついていた。

 

「……12人」

 

「まだ余裕はあるわね……」

 

「私達にもお願いしたいのだが……」

 

物欲しそうにしているリインフォース、シャマル、シグナム。

 

もう、どうにでもなれ~としか言えなかった。

 

明日はなのは、フェイト、アリシア、はやて、アリサ、すずか、リンディさん、リインフォース、シャマル、シグナムの10人か。

 

まあ、大きな事件は終わったんだから良いか。

 

リインフォースも消滅しなくて済んだし。

 

あ、ちなみにプレシア女史とリニス、アルフは既に自宅に戻っている。

 

ユーノとユナもアースラ艦内で別れている。

 

さあ、そろそろ本腰を入れて転生者共を捕まえるかな。

 

そんな事を考えつつも俺達はリンディさん達と別れて家路に着くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オマケ・家に着いてから

 

〈無事に転生者達はこちらに来たぞ〉

 

マッチョ神から念話が届く。

 

はて? ここんところ転生者をそっちに送った記憶は無いんだが?

 

〈何の話だ?〉

 

〈む? 昨日転生者が2名、こちらに来たんだが?〉

 

〈自滅したヤツじゃないのか? 昨日は俺は転生者と戦った記憶は無いんだが……〉

 

〈そうなのか? しかし、送られてきたヤツは『トリプルブレーカー恐いトリプルブレーカー恐いトリプルブレーカー恐い』と『桃色砲撃が……桃色砲撃が……桃色砲撃が……』とずっと呟いているぞ?〉

 

トリプルブレーカーと桃色砲撃?

 

あの技使った時と言えば自動防衛プログラムの最後のだめ押しに使った時しか……。

 

そう言えば。

 

〈そう言えば、戦ってる最中に聞き覚えの無い声が聞こえたな〉

 

〈……なるほど、戦いに巻き込まれたみたいだな〉

 

どうやら、自動防衛プログラムの所に転移してトリプルブレーカーに巻き込まれたみたいだな。

 

桃色砲撃は確か、なのはのとどめの一撃だろうな。

 

もの凄く運が悪いな。

 

〈もの凄く運が悪いヤツらだな〉

 

〈全くだな〉

 

〈さて、大きな事件が終わったからボチボチ送る事にするわ〉

 

〈うむ、またよろしく頼む〉

 

こうして名も無き転生者は天界に送り返されているのだった。

 

 

 




リインフォースェ…

次は日常生活編です


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第33話 日常生活編②

 
久しぶりのまったり


 

 

 

 

 

――――― 私立聖祥大学付属小学校、六大美少女誕生

 

早いモノで夏休みが終わってしまった。

 

まあ、よくあるパターンで夏休みの宿題を溜めてしまって最終日にニワトリのごとく大騒ぎすると言うのがあるが。

 

終業式当日に終わらせた俺には死角は無かったのだ!

 

なのは、アリサ、すずかも同じように終わらせている。

 

ちなみになのはは終わった時に某ボクサーの様に真っ白になっていたが。

 

それはさておき。

 

明日から始業式であるが、隣のプレシア女史から連絡があった。

 

『アリシアとフェイト……明日から同じ学校に通うからよろしくね♪』

 

いつの間に編入届けを出していたのか。

 

編入テストは大丈夫だったのか。

 

疑問は尽きないが、プレシア女史がそう言うなら大丈夫だろう。

 

それから間を置かずにリンディさんから通信があった。

 

『はやてちゃん、明日から同じ学校に通う様になったから♪』

 

そう言う事か。

 

最近は車椅子に乗る事も少なくなって来たから石田先生に了承を得たのだろう。

 

まだ松葉杖を使ってるが、車椅子よりは融通は利くのだろう。

 

ってな訳で明日のHRは騒がしくなりそうだな。

 

 

 

 

 

 

 

「アリシア・テスタロッサで~す」

「あの……フェイト・テスタロッサです」

「八神はやてやで~」

 

 

 

教室の黒板の前で自己紹介するアリシア、フェイト、はやての3人。

 

始業式が終わった後、LHRにて紹介となった。

 

男子はアリシアとフェイトを見て顔を赤らめさせていた。

 

ちなみに俺のクラスの男子は妙に大人びている。

 

女の子に興味が湧いてる年頃なのだ。

 

……早すぎるのも問題だよな。

 

女子達もアリシアとフェイトを興味津々で見ている。

 

まあ、金髪で双子だから目立つよな。

 

「うう、アリシアちゃんとフェイトちゃんに喰われてもうた……」

 

若干影が薄くなってるはやてだった。

 

「それじゃあ、席はアレス君の後ろね」

 

担任の台詞で男子達の視線が俺に集まる。

 

無論、嫉妬の視線以外無かった。

 

席替えで俺は後ろの移動して前にアリサ、右横になのは、左横にすずか。

 

それで後ろはアリシア、フェイト、はやて……だと?

 

何か、肉食獣に囲まれた様な気がしないでもないが。

 

 

 

「よろしくね?」

「よろしく?」

「よろしくやで~」

 

 

 

3人は席に来る時にあからさまな挨拶を俺にする。

 

おおぅ、嫉妬の視線が殺気の視線に進化しそうだぜ。

 

「折角ですから、これからの時間は質問タイムにしますね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コラー! 好雄! アンタさっきアリシアちゃんの所で質問してたでしょうが! きちんと並びなさいよ!」

 

アリシア、フェイト、はやての所でクラスメイト達に指導するアリサ。

 

大半がアリシアとフェイトの所ではやての所はボチボチいる……と言った感じだ。

 

俺は面倒だからその光景をぼんやりと遠くに離れて眺めている。

 

そこへ来たのはなのはとすずかだった。

 

「にゃはは、アリサちゃんも大変だね」

 

「フェイトちゃんも大変そうだよ?」

 

まあ、フェイトの性格だとこういった感じの騒がしさは苦手かもしれないな。

 

「……ってか、アリサの手伝いとかしなくて良いのか?」

 

「大丈夫だって。それよりアレス君の監視をお願いされたよ?」

 

すずかの後半の台詞はどこかおかしかった。

 

「何故に俺の監視を?」

 

「ん~? アレス君の事だから何かするんじゃないかって」

 

俺は歩く事件発生器か。まあ、確かに前世の前世とかでも何もしてないのに勝手にトラブルに巻き込まれる事はあったがな!

 

「……実に心外なんだが。俺は見ての通り何もしてないぞ」

 

「でも、何もしなくてもトラブルからやって来る事あるよね?」

 

なのはの台詞に反論出来ない俺がいた。

 

「あ~、なのはちゃんの台詞……何となく分かる」

 

納得するすずか。

 

「そんなに俺はトラブルメーカーなのか?」

 

そう言って2人の方を見ると。

 

「藤之宮ぁ!」

 

何やら俺を呼ぶ声が聞こえる。

 

聞こえた方を見ると怒りの形相の好雄……と周りの男子達。

 

もの凄く、イヤな予感。

 

好雄は俺に駆け寄り、こう言った。

 

「お前、アリシアちゃんとフェイトちゃんをお嫁さんにするつもりか!?」

 

目の前が真っ暗になりそうだった。

 

「しかも、はやてちゃんもか!?」

 

他からも声が聞こえる。

 

いきなり俺と知り合いだったとバラしてくれたんですね、この3人は!

 

「ほら、トラブル発生したよ?」

 

「にゃはは、やっぱりアレス君はトラブルに巻き込まれやすいんだね」

 

2人は苦笑いしていた。

 

「アレス! アンタ、あたしをお嫁にするんでしょうが!」

 

アリサが更に乱入してきたからもはや収拾がつかなくなりそうなんだが。

 

 

「……」

 

 

俺は窓際に座っていた担任を見つめた。

 

 

 

『藤之宮君、六股とか救いようが無いよ? とりあえず、みんなからお仕置きされなさいな♪』

 

 

 

と目で語られてしまった。

 

敵だらけしかいない事に気付いた。

 

「……戦略的撤退!」

 

「逃がすかぁ!」

 

逃げようとしたが、男子生徒達に囲まれてしまった。

 

 

 

「うぬらに止められると思うてか!(CV.内海賢二)」

 

 

 

俺は周りの男子達にデコピンを喰らわせる。

 

ボゴンとかズゴンとかデコピンに相応しくない音を立てながら俺は周りの男子達を沈めていくのであった。

 

ちなみに、この話は他のクラスにも回って同学年の男子生徒達から言われ無き恨みを買ってしまった。

 

 

 

そうそう、いつの間にかなのは、アリサ、すずか、アリシア、フェイト、はやての6人は『私立聖祥大学付属小学校六大美少女』としてずっと語られる事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――― 残念な転生者

 

 

「ぶるあぁぁぁぁぁぁぁっ! あのクソ見習い神! 今度天界に行った時ぶち殺してやるわぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

周囲に響く若本ヴォイス。

 

俺の目の前では身長2mを超える筋肉隆々の男が大暴れしていた。

 

容姿は髪が一切生えてない頭でオマケに眉毛もない。

 

服装はビキニパンツ一丁と言うかなり危険な雰囲気しか感じない。

 

さて、俺が今いるのは管理局も知らないとある次元世界。

 

生き物は一応いるが、人間はいない世界だ。

 

まあ、何で来たかと言うと……ただの偶然。散歩みたいな感じで来ただけだったのだが。

 

来てみたら泉の縁で大暴れしている色黒でマッチョな男。

 

と言うか、この世界を管理しているマッチョ神にそっくりなのだ。

 

「お兄様……」

 

「エヴァ、言いたい事は分かるが。アレは単に似てるだけの転生者だ」

 

「そう……ですわよね。本来、神族が降臨するのは禁止されているハズですし。もし、干渉したいのであればお兄様みたいに人として転生か幽体で一時的に降臨するしか無いですものね」

 

エヴァは頬に冷や汗を流しながら目の前のマッチョ男を眺めている。

 

言うか、どういった経緯であんな容姿になったのか気になるが。

 

……大方の予想はつくが。

 

「まあ、近づく気が失せてしまうが……一応近づいてみるか」

 

「……ええ、行きましょうか。ちょっと……恐いですけど」

 

俺とエヴァはイノシシの様に大暴れしているマッチョ男に近づいていった。

 

 

 

 

 

 

「何をそんなに大暴れしてるんだ?」

 

「フゥーフゥー……む?」

 

口から煙の様な蒸気をあげて呼吸しているマッチョ男。

 

子供が見たら泣くレベルだな。

 

視線は俺とエヴァの方に向かう。

 

「何で、ここは人がいないはず……む?」

 

マッチョ男の目が俺の後ろにいるエヴァを捉える。

 

「っ」

 

さすがのエヴァもあの容姿は慣れるのに時間がかかりそうだ。

 

組んでる腕に力が入る。と言うか、エヴァちゃん? あんまり力入れると俺の腕の骨が折れるんだけど?

 

「エヴァンジェリン……! ここは『リリカルなのは』じゃないのか!?」

 

はい、転生者確定だね。

 

「いんや、『リリカルなのは』だぜ? 転生者さん?」

 

「!? お前も転生者か! 畜生! 何でお前にはエヴァンジェリンがいて俺は!」

 

そう言って地面を叩くマッチョ男。

 

少し、地面が揺れる。

 

「くそぅ、こうなったらお前を殺してそこのエヴァを奪ってやる!」

 

そう言って男は俺に向かって襲いかかってくる。

 

「お兄様!」

 

「エヴァは離れてろ!」

 

「金髪幼女貰ったあぁぁぁぁぁ! ぶるあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

俺は殴りかかってくるマッチョ男の右拳を逸らし、鳩尾に向けて右肘を食い込ませる。

 

「んぶるあぁっ!?」

 

「はあぁ!」

 

更に俺はマッチョ男の顎目がけて左ジャンプアッパーを繰り出す。

 

「ぶえぇあぁ!?」

 

マッチョ男はのけぞるようにして倒れる。

 

うーむ、俺の身長だと昇竜拳の方が良かったかな。

 

マッチョ男は足をピクピクと痙攣させている。

 

「こ、恐かったですぅ……お兄様ぁ~」

 

そう言って俺に抱きついてくる涙目のエヴァ。

 

まあ、2m超えた男が130㎝位の金髪少女を襲ってるのみたらどう見ても犯罪行為にしか見えないよな。

 

とりあえず、俺は魔法のポシェットから縄を取り出してマッチョ男を大木に縛り上げる事にした。

 

ちなみにこの縄、魔力と気を大幅に半減する仕様なので下手なヤツでは千切る事は不可能である。

 

 

 

 

 

 

 

「っ! ここは……」

 

マッチョ男が目を覚ましたようだ。

 

俺とエヴァはシートを敷いてピクニック気分で弁当を広げていた。

 

「目が覚めたか?」

 

「おのれ! 縄をほどけ! あと、そこの金髪幼女を寄こせ!」

 

「誰がやるか、ボケ。それより、お前のその凶悪な容姿はどうしたんだ?希望したのか?」

 

「ぶるあぁ! 誰が希望するか! 転生させてくれた見習い神に任せたらこんな容姿にしやがったんだ!」

 

どういう観点でこんな容姿にしたのか、よく分からないが。とりあえず、希望したわけではなさそうだ。

 

そう言えば、あのマッチョ神も自分の姿を相当気に入っていたな。

 

前にゼルディア様から聞いたのだが。

 

以前に手違いで人を死なせてしまって転生させる際に。

 

容姿の指定が無かったから自分と同じ姿にさせて転生させた事がある……と言ってたな。

 

……その転生者に同情したくなったぜ。

 

最も、その転生者は一応天寿を全うして無事に天界に迎えられた時。

 

そのマッチョ神と殴り合いになったとか。

 

同じ姿のモノが殴り合いとか、異様な光景だっただろうな。

 

と言うか、暑苦しいことこの上なしだな。

 

少し、話が逸れたが。

 

どうやら、今回のケースは嫌がらせのつもりだったのかもな。

 

何となくだが、この転生者……見習い神をバカにしたのだろう。

 

でなきゃ、こんな姿にはしないだろ。

 

「なるほどな。参考までに聞くが、お前……見習い神をバカにしたとか?」

 

「おうよ。酒飲んで仕事するようなヤツ、神(笑)で充分だろ?」

 

なるほど、これは怒りを買っても仕方ないな。

 

さて、どんな口車に乗せて天界に戻って貰おうかな。

 

俺は顎に手を当てて考える。

 

どんな能力を貰ったか知らないが、この容姿ではなのは達と接点を持つ事は無理だろう。

 

アリサとすずかは特に見た瞬間、卒倒するし。

 

エヴァなんか俺の後ろに隠れて目の前のマッチョ男を見ようとしないし。

 

「聞くまでも無いが、お前は自分の容姿を気に入ってるか?」

 

「だぁれが気に入るか! こんな容姿だと白い魔王様に撃ち殺されるわ!」

 

まあ、ここのなのはは白い魔王じゃないのだがな。

 

「それなら、俺の口利きで何とかしてやろうか?」

 

「何とかなるのか?」

 

「まあ、また転生と言う形になるが。それと、ここの世界じゃなくなるな。だが、望みならなのはやフェイトとかに似た人がいる世界辺りに転生させてくれるように頼んでも良いが?」

 

「た、頼む! 折角転生してもこんな容姿じゃハーレムとか無理だ!」

 

ハーレムを望むか。

 

まあ、ハーレム位ならアイツも許容はしてくれるだろう。

 

少女偏愛(ロリコン)はダメだが。

 

「商談成立だな。とりあえず、天使を呼ぶぜ」

 

俺は天界に向かって念話を飛ばす。

 

「す、すまねぇ……恩に着るぜ……」

 

 

 

 

 

 

「アレス様~……って! 何で××様がここに!?」

 

大木に縄でくくられているマッチョ男を見た死神職の天使が驚きの声を上げる。

 

何と、よりによって小柄な少女が来たのか。

 

「ウホッ、良い幼女じゃないか!」

 

鼻息が荒くなるマッチョ男。その容姿で幼女に反応とかもはや犯罪以外の何者でもないぞ。

 

「……似てるが、違うぞ。今回の騒動の見習い神の仕業だ」

 

「ああ~、そう言う事ですか。考えてみたら、××様が地上に降臨される事は無いですもんね。それに、私を見て欲情とかあり得ませんし」

 

ハッハッハッと犬みたいな息をしているマッチョ男。

 

これで縄をほどいたらこの場で襲いかかりそうだな。

 

「まあ、とりあえず頼む」

 

「了解です。とりあえず、魂をこの壺に……」

 

「おい、一緒に連れて行って……」

 

有無を言わさず男の魂を壺に封印する。

 

「ふぅ~、あんな危険な香りのするヤツと一緒に行きたく無いです」

 

確かに、その通りだな。

 

「それじゃあ、アイツにきちんと届けてくれ」

 

「了解です! それにしても、アレス様って人間の姿は可愛いですね~」

 

二ヒヒと言う笑いが似合いそうな感じで笑う小柄な天使。

 

と言うか、お前も似たような体格じゃないか。

 

俺と目の前の死神職の天使は背の高さが一緒なのだ。

 

「何が言いたい?」

 

「イヤですよ~? 今度、その姿でデートしませんか?」

 

「アテナと妖子(アヤコ)の許可を得る事が出来たらしても良いが?」

 

「……聞かなかった事にしてくれませんか? あのお二方にそんなお願いは…」

 

顔を真っ青にする天使。

 

まあ、そうだろうな。

 

アテナと妖子は俺のこの人間の姿を気に入っているし。

 

ちなみに、アテナと妖子は前世の前世で一緒に冒険した仲間でもある。

 

アテナは神界では俺の姉、妖子は暗黒天使(ダークエンジェル)で俺の部下である。

 

目の前の天使よりも階級は上なのだ。

 

「まあ、機会があれば鍛錬くらいつき合っても良いが?」

 

「アレス様の鍛錬はアテナ様よりも過酷と聞いてるんですけど?」

 

「そうか? 慣れたら戦闘でも他の天使より強くなれるぞ?」

 

「それは……まあ、確かに……そうなんですが」

 

声が段々と弱くなっていく天使。

 

「無理強いはしないがな。それじゃあ、そいつを送ってくれ」

 

「了解です! それでは!」

 

天使はそう言うと転移する。

 

「ふう、とりあえず、穏便に済んだな」

 

「……お兄様? お兄様とデートするにはアテナ様とアヤコ様の許可がいるのですか?」

 

顔を青くするエヴァ。

 

「何言ってるんだよ。エヴァなら大丈夫だよ。前世で1000年近く俺一緒だったじゃないか」

 

「え? 大丈夫ですか?」

 

「大丈夫だよ。1000年寝食を共にして、一緒に戦って俺を守ってくれたじゃないか」

 

「それは……お兄様だって私の事、ずっと守ってくれたじゃないですか」

 

涙目になるエヴァ。

 

「それだけの絆があるんだ。アテナもアヤコもそれを知ってるからな?」

 

「はい、分かりました、お兄様?」

 

そう言ってエヴァは俺に抱きついてキスしてくる。

 

「さあて、家に帰るか」

 

「そうですわね。アリサさんやすずかさんが待ってますわよ?」

 

「はは、そうだな」

 

俺とエヴァは家に向かって転移する。

 

 

 

 

 

 

 

――――― エヴァちゃんの実力ってどれくらいやの? byはやて

 

 

 

フェイト、アリシア、はやての3人が転校してきて数日経ったある日の事。

 

「なあ、アレス君とエヴァちゃん……どっちが強いんかな?」

 

はやてが不意にそんな事を聞いてきた。

 

ネギま!式魔法を練習していたアリサとすずか。

 

2人の動きがピタッと止まった。

 

アリシアは座禅を組んでいたが、片目だけ開けてこっちの様子をうかがっている。

 

なのはとフェイトは宿題をやっていたが、手を止めてこっちを見ている。

 

「姉上とアレスちゃんですか……これは興味深いです」

 

最近、俺の事をちゃん付けで呼ぶようになったリインフォースがやってくる。

 

「確かに、リインフォースの言うとおりだな……実に、興味深い」

 

「何か……最強の盾と槍をぶつける様な感じになりそうだな」

 

顎に手を当てて考え込むシグナム。

 

ヴィータ、それはこちらでは『矛盾』と言うんだぜ?

 

「アレスちゃんとエヴァちゃんが戦う……結果が想像出来ないわ」

 

「うむ……」

 

シャマルとザフィーラも同じ感想だった。

 

「そうですわねぇ……前世でしたら『千日手』みたいにラチがあかなかったのですが」

 

エヴァはちらっと俺の方を見る。

 

「今のお兄様は身体能力が私よりも落ちてますから……ひょっとしたら私が勝てる……かも?」

 

エヴァは首を傾げながらそんな事を言う。

 

「……! それは面白い事を聞いたわね!」

 

エヴァの言葉を聞いて食い付いて来たのはアリサだった。

 

ええぃ! 大人しく魔法の練習をしとけ!

 

「エヴァちゃん? 身体能力だけで俺に勝てると思ってるのかな?」

 

俺は口元を少し釣り上げてからエヴァを見る。

 

「どうでしょう? そう言えば、転生してからお兄様と模擬戦を行ってないですわね」

 

「そう言えば、そうだったな。久しぶりに……」

 

「やりましょうか?」

 

俺とエヴァはお互いの顔を見合いながら頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、今度こそアレスが負ける姿を拝めるわよっ!」

 

嬉しそうな声を上げるアリサ。

 

だから、そこまでして俺の負ける姿を拝みたいのか……アリサ。

 

ダイオラマ魔法球に入って、城の近くの海岸で俺とエヴァは立っていた。

 

ギャラリーはなのは、フェイト、アリシア、はやて、アリサ、すずか。

 

ヴォルケンリッターの4人にリインフォース。

 

ちなみに、レイハさんとバルディッシュ卿、アイゼンは記録係となっている。

 

別に、そこまで凄い戦いになるとは……いや、なるか。

 

「さあ、て。とりあえず……やってみるか?」

 

「ええ。いってみましょうか?」

 

俺とエヴァは空中に飛ぶ。

 

 

「まずは、小手調べ! いくぜ、リク・ラク・ラ・ラック・ライラック 闇の精霊五千一柱。集い来りて敵を射て。『魔法の射手・連弾・闇の5001矢』」

 

 

俺の手から放たれる闇の矢。

 

数は俺が放つ事が出来る限界数5000本である。

 

数えるのが面倒になる程の闇の矢がエヴァに向かって飛んでいく。

 

 

 

「お兄様? それ位の数で私を仕留める事が出来るとお思いで? リク・ラク・ラ・ラック・ライラック 氷の精霊一万二千一柱。集い来りて敵を射て。『魔法の射手・連弾・氷の12001矢』」

 

 

 

エヴァの手から放たれる氷の矢。

 

数は俺の最大数を上回る12000本の矢だ。

 

やっぱり、魔法に関してはエヴァには勝てないなぁ。

 

そんな事を思いつつ、向かってくる氷の矢を作り出した『断罪の剣(エクスキューショナーソード)』で打ち落とす。

 

無論、両手に『断罪の剣(エクスキューショナーソード)』を作り出している。

 

所謂、双剣状態なのだ。

 

俺とエヴァの矢の威力は同等。

 

だが、数が全然違うから俺の方に矢は飛んでくるが、俺は臆する事無く全てを弾き飛ばしている。

 

「やっぱり魔法はエヴァには勝てないなぁ~」

 

「お兄様こそ、それだけの数の矢を臆する事無く落とすなんて……私には無理です」

 

お互いに苦笑しながら会話する。

 

さあて、どんな手を使おうかな。

 

 

 

 

 

―はやて視点―

 

 

 

私は目の前の戦いを呆然としながら見る事しか出来へんかった。

 

何やねん、下級の魔法のハズなのに……もう決め手に近いやん。

 

エヴァちゃんの12000矢とかもう意味が分からへん。

 

なるほど、前世では2人ともバグやったんやな~……。

 

「にゃあ……アレス君、私の砲撃魔法見てバグだバグだって言ってたけど……アレス君の方がバグなの!」

 

「だね……5000本って言ってたよね? あんなの飛んで来たら……無理」

 

なのはちゃんとフェイトちゃんも私と同じように呆然と戦いを見ていた。

 

「あたしは今後エヴァとも模擬戦はしないぞ……!」

 

「ううむ……エヴァは近づけば勝機はある……いや、アレスちゃんの攻撃をいとも簡単にいなしている……一筋縄ではいかないな」

 

「アレで後方支援とか……。前線もこなせる後方支援とか……意味が分からないわ」

 

ヴィータ、シグナム、シャマルはそれぞれの感想を述べてる。

 

確かにシャマルの言うとおり、アレで後方支援とか詐欺に近いわ。

 

そう言えば、アルバートオデッセイって言うゲームで仲間に『ソフィア』って言う女の子がおったなぁ。

 

赤毛の14歳の女の子。

 

職業は魔法使い。

 

けど、鍛えると杖でストーンゴーレムを一撃で殴り殺せる様になるんやけどね!

 

何処の世界にストーンゴーレムを杖で殴り殺せる魔法使いがおるっちゅーねん!

 

う~ん、エヴァちゃんも同じ真似出来そうやな。

 

〈お望みなら、やってあげましょうか♪〉

 

エヴァちゃんからの念話が届いて来た……って!

 

「か、堪忍や! 頭がザクロみたいに割れてまう!」

 

私は大声で叫ぶ。

 

〈失礼ですよ? 私はこう見えてもか弱い女の子なんですよ?〉

 

絶対嘘や。

 

バッファ○ーマンとか第五次聖杯戦争の某狂戦士とかでも笑いながら殴り殺せそうやん。

 

〈はやてさん、氷漬けになると若い姿で歳を重ねる事が出来るそうですよ?〉

 

『えいえんのひょうが』とか堪忍や!

 

「ごめんなさい、口が過ぎました!」

 

これ以上は本当に私の氷漬けが出来そうや!

 

大人しく戦いを観察しとこ……。

 

 

 

―はやて視点・終了―

 

 

 

 

 

「やっぱり魔法だけだとキツい!」

 

「けれど、お兄様が言い出した事ですわよね?」

 

エヴァの言う通り、気は使わず魔法のみで戦う事を選択したのだが。

 

「ちょっと後悔してるぜ……!」

 

容赦なく飛んでくる氷の矢を打ち落とす。

 

「やっぱり、使うしかないか……。エヴァ、1分程時間をくれるか?」

 

「ええ、良いですわよ。その代わり、私も同じようにさせて貰いますから」

 

余り使ってなかったからなぁ。ネギみたいに早く装填出来ないんだよな。

 

 

「|特殊術式「夜に咲く花」《アルティス・スペキアーリス・フロース・ノクティクルス》|リミット30《リミタートゥル・ペル・トリーギンタ・セクンダース》。|無詠唱用発動鍵設定《シネ・カントゥ・クラウィス・モウエンス・シット》キーワード「風精の主」(ウェルパ・ドミヌス・アエリアーリス) 契約に従い(ト・シュンボライオン) 我に従え(ディアー・コネートー・モイ・ホ)炎の覇王(テュラネ・フロゴス)来れ(エピゲネーテートー)浄化の炎(フロクス・カタルセオース)燃え盛る大剣(フロギネー・ロンファイア)ほとばしれよ(レウサウトーン)ソドムを焼きし(ピューム・カイ・テイオン)火と硫黄(ハ・エペフレゴン・ソドマ)罪ありし者を(ハマルトートゥス)死の塵に(ハマルトートゥス)。『燃える天空(ウーラニア・フロゴーシス)』『術式封印(ディラティオー・エフェクトゥス)』」

 

 

 

炎の呪文を遅延呪文で一時遅らせる。

 

 

 

「|特殊術式「夜に咲く花」《アルティス・スペキアーリス・フロース・ノクティクルス》|リミット30《リミタートゥル・ペル・トリーギンタ・セクンダース》。|無詠唱用発動鍵設定《シネ・カントゥ・クラウィス・モウエンス・シット》キーワード「風精の主」(ウェルパ・ドミヌス・アエリアーリス)  契約に従い(ト・シュンボライオン) 我に従え(ディアー・コネートー・モイ・ヘー) 氷の女王(クリュスタリネー・バシレイア)。 来れ(エピゲネーテートー) とこしえのやみ(タイオーニオン・エレボス) えいえんのひょうが(ハイオーニエ・クリュスタレ)術式封印(ディラティオー・エフェクトゥス)』」

 

 

 

目の前のエヴァも同じように遅延呪文で氷結呪文を遅らせる。

 

 

 

「|特殊術式「夜に咲く花」《アルティス・スペキアーリス・フロース・ノクティクルス》|リミット30《リミタートゥル・ペル・トリーギンタ・セクンダース》。|無詠唱用発動鍵設定《シネ・カントゥ・クラウィス・モウエンス・シット》キーワード「風精の主」(ウェルパ・ドミヌス・アエリアーリス) 契約に従い(ト・シュンボライオン) 我に従え(ディアー・コネートー・モイ・ホ)炎の覇王(テュラネ・フロゴス)来れ(エピゲネーテートー)浄化の炎(フロクス・カタルセオース)燃え盛る大剣(フロギネー・ロンファイア)ほとばしれよ(レウサウトーン)ソドムを焼きし(ピューム・カイ・テイオン)火と硫黄(ハ・エペフレゴン・ソドマ)罪ありし者を(ハマルトートゥス)死の塵に(ハマルトートゥス)。『燃える天空(ウーラニア・フロゴーシス)』『術式封印(ディラティオー・エフェクトゥス)』」

 

 

 

そして、もう1回遅延呪文で遅らせる。

 

 

 

「|特殊術式「夜に咲く花」《アルティス・スペキアーリス・フロース・ノクティクルス》|リミット30《リミタートゥル・ペル・トリーギンタ・セクンダース》。|無詠唱用発動鍵設定《シネ・カントゥ・クラウィス・モウエンス・シット》キーワード「風精の主」(ウェルパ・ドミヌス・アエリアーリス)  契約に従い(ト・シュンボライオン) 我に従え(ディアー・コネートー・モイ・ヘー) 氷の女王(クリュスタリネー・バシレイア)。 来れ(エピゲネーテートー) とこしえのやみ(タイオーニオン・エレボス) えいえんのひょうが(ハイオーニエ・クリュスタレ)術式封印(ディラティオー・エフェクトゥス)』」

 

 

 

 

エヴァも同じようにもう一度遅延呪文で遅らせる。

 

 

「……」

「……」

 

 

俺とエヴァは見つめ合う。

 

 

左腕解放(シニストラー・エーミッタム)固定(スタグネット) 燃える天空(ウーラニア・フロゴーシス) 右腕解放(デクストラー・エーミッタム)固定(スタグネット) 燃える天空(ウーラニア・フロゴーシス) 双腕掌握(ドゥプレクス・コンプレクシオー)! 術式兵装(アルマティオーネム) 『炎の魔神2』」

 

 

俺は左右に闇の炎を出現させ、両手でソレを取り込む。

 

身体が闇の炎に包まれる。

 

 

左腕解放(シニストラー・エーミッタム)固定(スタグネット) |千年氷華《アントス・パゲトゥー・キリオーン・エトーン》 右腕解放(デクストラー・エーミッタム)固定(スタグネット)  |千年氷華《アントス・パゲトゥー・キリオーン・エトーン》 双腕掌握(ドゥプレクス・コンプレクシオー)! 術式兵装(アルマティオーネム) 『氷の女王2(クリュスタリネー・バレイシア・ツー)』」

 

 

エヴァの身体が氷に覆われる。

 

さてさて、炎と氷か。

 

確か、前は俺が勝ったハズだからな。

 

今回も、勝たせて貰おうか!

 

 

 

 

 

 

 

 

―すずか視点―

 

 

「何よ、アレスったら……。魔法の才能は無いって……嘘ばっかり……」

 

私の隣でアリサちゃんがブツブツと呟いていた。

 

確かに、アレス君はいつも『魔法の才能は無い』って言ってるけど。

 

私に言わせれば、あれだけ出来れば充分だと思う。

 

基本形の魔法の矢が5000本とか普通の人が見たら悪夢に近いよ?

 

現になのはちゃんやフェイトちゃんも言葉を失っているから。

 

確かに、エヴァちゃんの魔法の才に比べたらアレス君は下になるのは間違いないかな。

 

あ、あの呪文は……最新刊(ネギま!23巻)に出てた確か……『闇の魔法(マギア・エレベア)』じゃない!

 

※この世界ではネギま!はまだ23巻までしか出てない

 

しかも……なんか……凄い事になってる!

 

アレス君とエヴァちゃんが……精霊みたいに……。

 

ひょっとして、今後の展開にあんな風に使う技があるのかな?

 

すごく、気になる。

 

……。

 

……あの技、私なら使えるかも。

 

『夜の一族』の私なら、ほとんどペナルティー無しで使えるかも。

 

アレくらい強くなれば、お姉ちゃんやみんなを……アレス君を守る事が出来る。

 

アレス君には2度救って貰ったから。

 

いつも守って貰ってばかりじゃダメ。

 

私もアレス君やみんなを守れる様にならなきゃ。

 

うん、アレス君とエヴァちゃんの模擬戦が終わったら聞いてみよう。

 

 

 

―すずか視点・終了―

 

 

 

 

「奥義・火神(ヒヌカン)!!!」

 

「っ!!」

 

僅かな…油断。

 

ほんの僅かな油断で俺はエヴァの攻撃を喰らう事となった。

 

「がっ!!!」

 

胸に一撃が入る。

 

前蹴りで胸に親指を食い込ませる様に蹴る。

 

全身の捻りを集約したとどめの一撃に使う技だ。

 

まさか、ここで使うとは思ってもみなかった。

 

くっ、今の一撃は痛かった!

 

「はぁ、はぁ……」

 

「うふふ、お兄様。油断が過ぎましたわね?」

 

「ああ、全くだ。まさか、ここでソレを放つとは思わなかったよ」

 

おかげで闇の魔法が解けてしまった。

 

「どうされます? 降参します?」

 

エヴァは微笑みながら俺に問いかけてきた。

 

「……悔しいが、今日は俺の負けだ」

 

やはり、身体を強化する必要があるなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

「やっとアンタの負ける姿を拝めたわ! さあ、あたしが介抱してあげるわよ!」

 

「介抱されるほど怪我はしとらんのだが?」

 

「ウッキー! 怪我したところを手当してあげてあたしの好感度をあげようと思ったのにー!」

 

そう言う魂胆だったのか、アリサ。

 

ってか、怪我してもすぐ回復出来るからその手はほとんど意味が無いと思うぞ。

 

「頭が暴走しとるアリサちゃんはほっといて……や。アレス君……ちぃーっと言いたい事あるねんけど」

 

はやてが目を細めながら俺の方を向く。

 

「どこら辺が魔法の腕は二流か教えて欲しいんやけど……」

 

「へ? ああ、見ての通りだ。エヴァに負けただろ?」

 

「いやいやいや、確かに負けてんねんけど……比較対象がおかしいやろ?」

 

「そうか?」

 

「そうや! なのはちゃんとフェイトちゃんを見てみい! 両手両足を地面につけて落ち込んでるやん!」

 

はやてが指を指した先にはなのはとフェイトの2人が落ち込んでいる。

 

「お、お兄ちゃんはバグだから比較しちゃダメだよ~!」

 

アリシアは必死になって2人を慰めていた。

 

バグとは失敬だと思わないかね?

 

「素晴らしい戦いでした」

 

手を叩きながら現れたのはリインフォース。

 

「まあ、あんなもんだぜ?」

 

「アレをあんなもんで過ごすオメーはおかしいと思う」

 

ジト目で俺を見るヴィータ。

 

「うむ、アレスちゃんは近接戦だけかと思っていたが、遠距離も大丈夫なのだな」

 

そう言って頭を撫でてくるシグナム。

 

「ここまでいけば、アレスちゃんは万能型と言っても差し支えないわよ」

 

シグナムに張り合う様に頬を撫でてくるシャマル。

 

シグナムとシャマルの目線が合う。

 

間に火花が見える様に見えるが、気にしないでおこうか。

 

「そう言えば、俺かエヴァを蒐集したらこの形式の魔法使えるんじゃないか?」

 

「! 確かに、そうでしたね」

 

その言葉を聞いてはやての耳がダンボの様に大きくなったように見えた。

 

「よし! リインフォース! 蒐集や! 許可するで!」

 

「分かりました! 姉上でも良いのですが、やはりここはアレスちゃんの方が良いでしょう!」

 

「そうやな! ついでにアレス君のプライベートデータとかも蒐集出来へんかな?」

 

「すみません、主はやて……。その様な素晴らしい機能は付いてないです」

 

この主従コンビは色んな意味で一番最悪じゃないかと思う。

 

「さあ、アレスちゃん! ちょっとこっちで蒐集をお願いしましょうか」

 

そう言って城の方に向かって手を引っ張るリインフォース。

 

当然、俺は動こうとしない。

 

「何故に城の方に向かう?」

 

「本来ならリンカーコアからデータを蒐集可能なのですが。ですが、アレスちゃんの場合はですね……アレスちゃんのそのアームドデバイスを私のここに……」

 

俺の股間を指差してから自分の股間部分を指差すリインフォース。

 

 

 

 

 

何だ、この痴女は!

 

 

 

 

 

「エヴァ?」

 

「はい、お兄様♪」

 

にこやかな笑みでリインフォースににじり寄るエヴァ。

 

「あ、姉上? ちょっとした……ジョークですよ? ああ! その手は! 関節がゴキゴキ鳴ってます!」

 

後ろにジリジリと下がるリインフォース。

 

「とりゃ!」

 

エヴァは瞬時に間合いを詰めてリインフォースの背中に取り付いてから。

 

「ああ! 姉上! 頭が! 頭が割れそうです! 砕けそうです!」

 

リインフォースのこめかみに両拳をあててグリグリと力を込めてる。

 

「全く、けしからん魔導書だな」

 

「そうやな。私だってアレス君とベッドの上で合体(ユニゾン)したいのに!」

 

「お前もな~」

 

俺ははやての背後に回ってから同じように両拳ではやてのこめかみをグリグリと挟み込むように押さえる。

 

「あたたたた! アレス君! 頭が砕ける!」

 

「お前等主従揃ってロクな事言わんからな」

 

「痛いけど、お尻にアレス君のアームドデバイスが当たって……あたたたた!」

 

確かに、俺ははやてと肌が密着している。

 

はやてのお尻部分に俺のアームドデバイスが当たってるのも事実だが。

 

更に力を込める。

 

「はやて……良いなぁ……。私もアレスにあんな風にされてみたいなぁ」

 

……なんか、怪しげな台詞が聞こえてきたんですが。

 

声の方を見ると、指をくわえて羨ましそうに俺とはやてを見るフェイト。

 

「……色々とツッコミを入れたいんだけど?」

 

「私、アレスにだったら何されても良いよ? 痛いのも平気だよ? むしろ、痛いのをお願いしても良いかな?」

 

 

帰って来いフェイトさん!

 

 

それは行ってはいけない道だぞ!

 

「うわ~ん! お母さんのせいでフェイトが~!」

 

アリシアが涙を浮かべてフェイトを抱きしめている。

 

まあ、一時期鞭でフェイトをお仕置きしていたからな…。

 

プレシア女史のせい……だと思う。

 

「フェイト……その道は……まあ、確かに分からんでもないが」

 

シグナム、納得してもらっては非常に困る。

 

「フェイトってそんな趣味が……あたしはアレスの泣く姿とか見てみたいけど……」

 

やはりアリサはドSの可能性が非常に高い。

 

「アリサちゃんもフェイトちゃんもその道は……茨の道だよ……」

 

苦笑しているすずか。

 

「アレス君?」

 

「うん?」

 

俺ははやてを解放してすずかの方を見る。

 

「うう、頭がひょうたんみたいになってないやろか」

 

頭をさすってるはやて。

 

「私にも……『闇の魔法(マギア・エレベア)』使えるかな?」

 

そう言う事か。

 

まあ、すずかなら適性は高いから充分使う事が出来るだろう。

 

「……あまりオススメはしないが。すずかなら使う事は出来る」

 

「そっか。いつか、教えてね? お姉ちゃんや、みんな……アレス君を守りたいから」

 

「……ああ。守る為に使うならしっかり教えてやる」

 

「ありがと、アレス君」

 

すずかはそう言って俺に抱きついてきた。

 

 

 

 




 



リインフォースファンの人達「それなら俺達を蒐集してくれ!」

リインフォース「闇に染まれ……魔性の放出(デアボリック・エミッション)

リインフォースファンの人達「うぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!」


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空白期編
第34話 修学旅行〈小学校編〉 前編


 
ここで時が少し流れます

なのは達の体型に注目w


 

 

 

 

 

 

夜天の書事件から3年の月日が流れた。

 

俺達も小学校6年生。

 

色々な事があったが、ここでは割愛。

 

転生者共も20人近く捕らえて天界に送り返している。

 

さて、予想通り俺は小学4年に上がる前に身長が止まった。

 

135cmキッカリで止まってしまった為、全校朝礼でも一番前に並ぶようになった。

 

ちなみに、12歳での平均身長は150cm前後だ。

 

いかに小柄なのか、理解頂けただろうか。

 

情けない事に、小学3年生の教室に紛れ込んでも違和感無くとけ込める。

 

悲しくなってきたぞ……。

 

そして、なのは達。

 

二次性徴を迎えたから。

 

身長が伸びました。

 

 

 

胸が大きくなりました。

 

胸が大きくなりました。

 

 

 

大事な事だから2回言わせて貰いました。

 

とりあえず、どんな感じかと言うとですね。

 

一番身長が高くなったのはフェイトとアリシア。

 

こないだの身体測定で160cm突破したとのこと。

 

12歳ですよ?

 

下手な大人の女性と大差ない身長です。

 

次にアリサで158cm。

 

その次がなのはで157cm。

 

次がすずかで155cm、はやてで152cmと言う順番だった。

 

そう言えば、なのはがStS公式では160cmと言う話らしいから。

 

あとちょっとで19歳なのはさんと同等の身長になるとか?

 

しかし、A's編最終話で出た中学生なのはさんとかそこまで背は高くなかった様な気がするんだが。

 

……まあ、後少ししたら全員身長も止まるであろう。

 

身長の事はまあ、さておき。

 

問題は、彼女達の胸……だ。

 

ペッタンなまな板ではなく、きちんと膨らんできている。

 

何で知ってるんだって?

 

仕方ないだろ。

 

今でも俺を風呂に連行していくんだから!

 

そしたら、俺が風呂に入っているにもかかわらず、胸の話をするんだぜ?

 

ちなみに大きさの順はだな。

 

 

 

フェイト=アリシア>アリサ>なのは>すずか>はやてと言う順番だ。

 

 

 

聞いてもいないのに勝手に喋ってくる彼女達が悪いんだ……うん。

 

フェイトなんか『やっとCカップ迎えたんだ♪』とか喜んでた。

 

だから、何故に俺に言うのか理由を説明してくれや。

 

彼女達は俺が男だと言う事を忘れてるんだろう……多分。

 

こないだなんか下着買いに連行されるし。

 

しかも俺に選んで貰いたいとか、もはや意味不明の領域だ。

 

まあ、他の客とかは蔑んだ目ではなく、微笑ましい目で眺めていたのが不幸中の幸いだったかと。

 

普通の男なら発狂してもおかしくなかったぜ。

 

まあ、近況報告はコレくらいで良いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「明日から修学旅行でしかも、広島ときたもんだ」

 

明日から3泊4日の修学旅行だ。

 

前世の前世の時は島根に住んでいたから。

 

広島市に行くのは理解出来たのだが。

 

まさか、関東圏に住んでてあっちに行くとは思わなかった。

 

※この小説では海鳴市は関東圏にあると言う設定です

 

バッグに着替え等を詰め込んで準備は万端。

 

「てっきり、京都・奈良かと思ったんですけどね~」

 

ベッドの上で正座しているエヴァ。

 

「ああ。広島ってこっちの方じゃ結構マイナーだからなぁ」

 

「まあ、そうですわね……」

 

お互いに苦笑している俺とエヴァ。

 

「しかし、こっちの歴史ではこうなってたのかぁ」

 

「え?」

 

「いや、何でもない。ただの独り言だ。(小声)アメリカ(・・・・)って言う国は前世の前世には無かったんだがな」

 

俺はエヴァに聞こえないようにそんな事を呟いていた。

 

 

 

 

 

 

東京駅から新幹線に乗って広島駅に行く。

 

時間にして確か、4時間はかかった記憶が。

 

飛行機で行った方が良いような気がするんだが……、まあいいか。

 

ってか、人数半端ないから新幹線の方が良いのか。

 

ちなみに、乗るのはのぞみだ。

 

班編制は……俺といつもの6人だ。

 

クラス男子共は血涙流して悔しがっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ってな訳で広島に着いた。

 

そう言えば、路面電車なるものがあったんだよな。

 

と言ってもさすがにこの人数(200人)で路面電車とか無理なので。

 

手配していた観光バスに乗る。

 

初日は移動日だから、まだ原爆ドームとかには行かない。

 

とりあえず、旅館に移動と相成った。

 

 

 

 

 

 

部屋に着く。

 

そう言えば、部屋割りってどうなってたかな……と思いつつ部屋に行くと。

 

同級生の好雄、匠、純一郎、正輝、卓男、学、正志の7人がいた。

 

色々とツッコミを入れたいが、このメンツか。

 

一癖も二癖もあるメンツを一同に集めた感じだ。

 

「来たか、このハーレム野郎」

 

好雄は俺を見るとそんな事を言う。

 

「のっけから意味不明な事をぬかすでない」

 

「好雄の言うとおりだ! あれだけの美少女に揉みくちゃにされる……許すまじ!」

 

学もそんな事を言う。

 

好雄も学も思考回路が似てるからタチが悪い。

 

「気にするな、アレス。こいつらはモテないからひがんでるだけだ」

 

正志がそう言う。

 

まあ、いつもの事だから気にはしてないが。

 

「しかし、お前……いつもあんな風なのか?」

 

顔を真っ赤にしている純一郎。

 

女の子と会話するのにも真っ赤になる純情なヤツなのだ。

 

ちなみに、純一郎には新幹線での様子をしっかりと見られている。

 

順番に、なのは達の膝の上に座ってから子供の様に扱われている様子を。

 

「……まあ、想像に任せる」

 

肯定したら好雄と学が暴走するからお茶を濁すように返答した。

 

 

 

コンコンコン

 

 

 

扉からノックが聞こえた。

 

ドアが開いて顔を覗かせてきたのはフェイトだった。

 

「あの~……」

 

「うひょ~! フェイトちゃんじゃん!」

 

「やっぱり可愛いなぁ~! 俺達にも運が向いてきたか!」

 

「どう考えてもアレスがいるからだろ……」

 

暴走する好雄と学。それにツッコミを入れる正志。

 

「えっと……アレスいるかな?」

 

「チッ! アレス、お呼びだぜ」

 

あからさまな舌打ちをしてから俺を呼ぶ好雄。

 

「どうしたんだ?」

 

俺はフェイトの顔を見ながら返答する。

 

「えっと……お風呂のお誘いなんだけど……」

 

「ブフッ!!!」

 

その言葉を聞いて俺は丁度飲んで口に含んでいた茶を噴き出す。

 

 

 

「どわぁ!」

「うおっ!」

「ぐわっ!」

 

 

 

噴き出した茶の被害を喰らうのは匠、正輝、卓男の3人。

 

「……今の台詞はどういう事だ?」

 

「返答如何によっては貴様を私刑(リンチ)にせねばなるまい!」

 

背後に炎のオーラを纏わせているのは好雄と学の2人。

 

ちなみになのは達と一緒にお風呂に入っているのは同級生達は誰1人として知らない。

 

「あ、ちょっと用を思い出したぜ!」

 

俺はそう言うと立ち上がってドアに向かい、フェイトの手を取って部屋から離脱する。

 

後ろでは好雄と学の発狂する声が聞こえたが、俺は無視する事にした。

 

「えっ……と?」

 

目を白黒させて俺を見るフェイト。

 

と言うか、フェイト1人だけで来たのか?

 

「言ってなかったな。修学旅行中は一緒にお風呂には入れないぞ?」

 

「え、そうなんだ……。せっかくクラスのみんなにもアレスの上手な洗い方を体験して貰いたかったのに……」

 

天然発言もここまでいくと恐ろしいモノがあるな!

 

「……そんなことしたら担任の先生が発狂するだろ」

 

さすがに女風呂に入ったら色々と拙いだろ。

 

何気なく女子風呂に入ったら伝説に残るだろうな。

 

「うん、仕方ないね……。分かった」

 

「悪いな。修学旅行が終わったらいつも通りにするからな」

 

「うん♪」

 

俺とフェイトは別れる。

 

さあて、好雄と学(バカコンビ)はどうやって対処しようかな。

 

俺はそんな事を思いつつ部屋に帰る。

 

 

 

 

 

風呂の時間である。

 

当然の事ながら、俺は男湯に来ている。

 

そう言えば、ここ数年は女湯ばかりに連行されていたから男湯に来るのは久しぶりに思える。

 

周りを見ると、同級生ばかりだ。

 

中には一般と思われる男性もチラホラといる。

 

同級生の大半は二次性徴が進んで男らしい身体つきになっているのが大半だ。

 

声変わりが始まっているヤツからまだのヤツまで、千差万別といったところか。

 

ちなみに、俺は前世の前世においても声変わりはしていなかったがな!

 

さて、男の身体を観察していてもちっとも面白くないのでさっさと中に入るかな。

 

俺は腰にタオルを巻いて洗面用具一式を持って中に入る。

 

 

 

 

 

 

適当に座る場所を見つけて座る。

 

何事も無くシャワーを浴びて身体を洗う。

 

そう言えば、自分で身体を洗うのは久しぶりの様に思える。

 

毎日の様になのは達に身体を洗って貰っているのだから。

 

しかし……だ。彼女達は俺の股間にある男性用アームドデバイスを念入りに洗うのはどうかと思う。

 

顔を赤らめつつもどこか嬉しそうに洗うんだが。

 

もはや痴女の領域に突入しているよな。

 

断ろうとしてももの凄く悲しそうな顔をされては断る事も出来ない。

 

それと、『アレス君のアームドデバイスはまだ砲撃を撃てへんのかな?』などと戯けた事を嬉しそうに問い訪ねて来るタヌキ嬢のこめかみをグリグリした俺は悪くないと思う。

 

まあ、それと全員俺の身体の洗い方を熟知してきてるんだよな。

 

俺もなのは達の身体の洗い方を熟知してきてるからお互い様か。

 

「藤之宮のは……って! な、何だソレは!」

 

妙な台詞が聞こえたので見ると……確か、同級生の慎二?

 

雰囲気が間桐慎二に似てるから転生者かと思い、天界に聞いた事あるのは良い思い出だ。

 

ちなみにシロだったが。どうやら他人のそら似らしい。

 

慎二は偉そうに立っていたが、視線の先は……俺の男性専用アームドデバイスだった。

 

そう言えば、こいつなのは達にちょっかいを出していたな。

 

全く相手にされていなかったが。

 

まあ、俺の事が憎いんだろうな。

 

「何の用だ?」

 

俺は慎二の方を全く見ないで身体を石鹸の付いたスポンジで洗っている。

 

「お前のソレ……何なんだよ!」

 

「……見ての通りだが?」

 

「何でそんなにデカいんだよ!」

 

「んなもん知るか」

 

慎二が大声出したもんだから同級生達が集まってくる。

 

そして、全員が驚きの声を上げていた。

 

非常に鬱陶しいんだが。

 

どんな感じかと言うと。

 

 

 

 

「あの太さと長さはおかしいだろ!?」

「体は子供なのにアソコだけ大人かよ!」

「しかも下手な大人よりデカいじゃん!」

「毛が生えてないから余計大きく見える!」

「天は二物を与えないと言うが、そう言う事だったのか!」

 

 

 

 

実に騒がしい。

 

そんなに俺のアームドデバイスが珍しいのか。

 

「な、なあ……藤之宮……お前、そのイチモツでなのはちゃん達を……」

 

これ以上はシャレにならないから慎二を黙らせる事にする。

 

慎二の鳩尾に軽くパンチを喰らわせる。

 

「ぐぇ!?」

 

少しうずくまった所で顎先に更にパンチを繰り出す。

 

かするようにして脳を揺さぶる様にして気を失わせる。

 

「!?」

 

慎二はそのままその場に倒れる。

 

「おいおい、逆上せたみたいだぞ?」

 

ちなみに普通のヤツには見えない速度でのパンチだから誰も俺の仕業とは気付いていない。

 

「あー、運び出そうぜ」

 

「だな」

 

周りにいた奴らが慎二を担いで外に出ていく。

 

ふう、コレで静かに身体を洗えるぜ。

 

そう言えばここって、会話とかが女湯に聞こえる仕様じゃなかろうな。

 

俺は天井を見る。見ると女湯と繋がってるように見えた。

 

ぐあ……。聞こえてない事を祈る。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――女湯

 

 

 

「えっと……なのはちゃん……アレス君と一緒にお風呂入ってるの?」

 

「うん♪」

 

「それでそれで? アレス君のアソコってどうなのよ?」

 

なのはは身体を洗いながら同級生2人と話をしていた。

 

「にゃはは、太くて長いよ? それに、少し反ってるの」

 

顔を赤くして返答するなのは。

 

「嘘! アレス君って実は凄いの!?」

 

「見た目に騙されるってこの事よね~」

 

同級生2人は驚いた顔でなのはとの会話を繰り広げてる。

 

「へぇ~アレス君ってああ見えて凄いんだ~」

 

「うん、見せてあげたかったけど……。一緒にお風呂入ろうって誘ったけど断られちゃった」

 

「いや、それはまずいっしょ……。先生が倒れるよ?」

 

フェイトも同じように同級生と話をしている。

 

「えへへ♪アレスお兄ちゃんに洗って貰うと凄く気持ちいいんだよ♪」

 

「へぇ~…って、全身なの!?」

 

「うん、そうだよ?」

 

「だ、大事な……ここも?」

 

「うん。すごく気持ち良いよ?」

 

アリシアは顔を赤くしながら同級生と話をしていた。

 

「アレス君ってまだ迎えてないんだっけ?」

 

「みたいよ? 私もこないだ聞いてみたらこめかみの所グリグリされたわ」

 

「はやて、平然と聞くアンタが恐いわ」

 

アリサ、すずか、はやて他同級生が会話している。

 

「それでそれで? アレス君の初めてはいつ奪うの?」

 

「そうやなぁ~……せめて砲撃を撃てる様になってからやな。お互いに気持ち良うなりたいし……」

 

「はやてちゃん……そうはさせないよ?」

 

「そうよ! アンタだけ良い思いはさせないわよ!」

 

「アレス君もモテモテだね」

 

同級生は苦笑しながらアリサ達の言い争いを眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

部屋に入ってくつろいでいると何か……妙な予感を感じた。

 

何だろう……? なのは達がとんでもない事をしたような気がするんだが?

 

ちなみに、好雄達は今現在他の部屋に遊びに行っている。

 

〈なあ、エヴァ?〉

 

〈ハイ?〉

 

〈なんか、なのは達がろくでも無い事を言ってるような気がするんだが?〉

 

〈う~ん……? 私の予想ですと、同級生の方達にお兄様とお風呂に入ってる事を喋ったのでは?〉

 

〈あり得る……! 特にはやて辺りがロクでもない事を言ってる気がする!〉

 

〈……超高確率であり得ますわね〉

 

顔は見えないが、エヴァの苦笑してる顔が頭に浮かぶ。

 

よーし、とりあえずはやては今度バインドをかけて全身くすぐりの刑にしてやる。

 

そんな事を思いつつ俺は布団を敷いてそのまま潜り込んで眠りにつくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが……原爆ドーム……」

 

俺の前にあるのは数十年前に落とされた1つの爆弾で廃墟になった建物の前にいる。

 

周りの生徒達は興味が無いのか、余り説明を聞いていない。

 

〈お兄様、人はどうして戦争を起こすのでしょうか?〉

 

〈……残念だが、神である俺でも分からない。俺が戦う理由は護る為の戦いなのだがな〉

 

落とされた日時も前世の前世と同じで8月6日。

 

ちなみに、今は5月下旬だから人の数は少ない。

 

8月6日になれば、多くの人が集まるのだが。

 

力の使い方を間違えないようにしよう。

 

俺は今一度、それを心に刻み込む。

 

 

 

 

 

 

 

市内を離れて来たのは、有名な厳島神社だ。

 

海の中にある赤い鳥居はここでしか見る事が出来ないだろう。

 

満潮になると、赤い鳥居は海の真ん中に建っている様に見えるのだ。

 

〈凄い幻想的な風景に見えますわね〉

 

〈ああ。確か、世界遺産に登録されてなかったか?〉

 

〈そうですわね。確か、されてますわ〉

 

そう言えば、島根の石見銀山も登録されるとかなんとか。

 

あそこは何も無いんだがな!

 

銀が採掘されるわけでもなし。

 

島根と広島の差を思い知らされてる様な気がしないでもないが。

 

そう言えば、ここって鹿がいるんだよな。

 

鹿……ねぇ。

 

俺はふと、とある恋愛シミュレーションゲームを思い出していた。

 

 

 

北海道に行けば、キラーヒグマと戦い。

沖縄に行けば、ハブ・ロードと戦い。

京都・奈良に行けば鹿・グレートと戦うのだ。

 

 

 

 

ちなみに、広島は選択肢にないから関係はないのだが。

 

「……ん?」

 

ふと気付くと、周りの人がいない。

 

「……何故だ?」

 

周りを見ると、妙に閑散としていた。

 

いつの間にかはぐれたのだろうか?

 

「アレスくーん!」

 

呼ぶ声が聞こえたので、視線をそちらに向ける。

 

見れば、なのは達だった。

 

「どうした?」

 

「アレス君、早く逃げよう!」

 

「何故に?」

 

「地元の人に聞いたんだけど、この時間になるとたま~に現れるんだって」

 

現れる? 一体何が?

 

「…(ぬし)だって。見られないと大丈夫だけど、見られると……」

 

その時、俺の後ろに巨大な何かが現れた。

 

「ひぃ!」

 

目を見開いて俺の後ろを見るはやて。

 

俺は後ろを見る。

 

そこには、尋常な大きさでない鹿がいた。

 

通常の鹿の3倍近い大きさだ。

 

……どう見ても鹿・グレートです。ありがとうございました。

 

ってちょっと待て。何故にここで鹿・グレートなんぞが現れにゃならんのだ。

 

お前が現れるのは京都・奈良ステージだろうが!

 

「出た……噂では1ヶ月前から現れるようになった巨大な鹿……」

 

「何人もの猟師とか警官を撃退しているんだって……」

 

アリサとすずかが解説してくれる。

 

色々とツッコミ所があるんだが。

 

とりあえず、何故に俺が狙われるのか理解出来ん。

 

「フシュルルルルル……」

 

鼻息を荒くして俺の方を見る鹿・グレート。

 

「ふむ……」

 

俺は鹿・グレートを見る。

 

確かに、普通の人なら勝ち目は無いが。

 

俺なら勝てるな。そこまで苦戦しなくとも。

 

なのは、フェイトでも大丈夫だ。

 

そう言えば、1ヶ月位前にアリサ、すずか、アリシアのデバイスを改良してたな。

 

はやてを補助に回して3人に戦ってもらうのも良いな。

 

もちろん、非殺傷だが。

 

「どうするのよ?」

 

「うむ、なのはとフェイトは今回は見学だな。はやては補佐でメインはアリサ、すずか、アリシアだ」

 

「分かったわ」

 

「分かった」

 

「分かったよ~」

 

「分かったで~」

 

「了解なの」

 

「分かったよ」

 

なのはとフェイトは俺の後ろに来る。

 

「それじゃ、この鹿にあたし達の恐ろしさをたっぷりと教えてあげようかしらね! 行くわよ、贄殿遮那(にえとののしゃな)!」

 

【了解だぜ、相棒!】

 

アリサが選んだのは近代ベルカ式。

 

近代ベルカと言うのは、ミッドチルダ式魔法をベースにして古代(エンシェント)ベルカ式魔法をエミュレートして再現した形式だ。

 

まあ、そこら辺はStSを見たら分かると思うが。

 

それより色々とツッコミを入れたいのは。

 

デバイスの形状は大太刀。アリサの身長よりちょっと長いのだ。

 

何より、名前は……。

 

『灼眼のシャナ』が使用している武器だ。

 

アリサ曰く、声が似てるからあたしが使っても良いよね?との事。

 

まあ、似てると言えば似てるんだが……。

 

そして、人格だ。

 

何を思ったのか、『ゼロの使い魔』の大剣『デルフリンガー』の人格をチョイスしたのだ。

 

これに関しては『嫌いじゃないのよね~あの口調』との事。

 

……まあ、本人が気に入っているなら良いか。

 

ってかさ、『ゼロの使い魔』も『灼眼のシャナ』もアリサと中の人的(釘宮理恵)に繋がってるんだが。

 

バリアジャケットは。

 

まさか、リアルで見るとは思わなかった。

 

『バーニングアリサ』そのままとは。

 

白いジャケットでオリジナルなのはに似ている。

 

知らない人は、『バーニングアリサ』で調べてみると分かる。

 

 

 

「行くよ、『セラス』?」

 

【りょ、了解です、マスター】

 

次はすずか。

 

彼女はミッドチルダ式を選んだ。

 

いや、なのはとフェイトに選ばされた(・・・・・)が正解だろうか。

 

後述するアリシアは近代ベルカ式を選び、アリサも近代ベルカ式。

 

はやては古代ベルカ式ですずかまでベルカ式を選ぶとミッド式はなのはとフェイトだけになる。

 

……ぶっちゃけ言うと、足下に広がる魔法陣を俺とお揃いにしたかった為に全員ベルカ式を選んだ模様。

 

武器形態は銃だ。

 

デザインは『ヘルシング』に出てきた吸血鬼、『アーカード』が使用している『454カスール カスタムオートマチック』と『ジャッカル』だ。

 

バリアジャケットのデザインは少女アーカードと同じコートで中は黒いシャツだが、コートの色は赤だ。

 

ああ、絵に描いてやりたいくらいだぜ。

 

ちなみにデバイスの人格は何故か『セラス』をチョイスしてる。

 

アンデルセン神父やアーカードじゃなくて良かった。

 

はやてはソレを見て『かっこええな~』とかなんとか。

 

「さあ、初めての実戦だね。『シールケ』?」

 

【ええ、そうですね】

 

最後にアリシア。

 

彼女は近代ベルカ式を選んだ。

 

まあ、フェイトと違って『気』の方が得意になっていたので、近接戦闘が得意になっていたのだ。

 

武器は……大剣。

 

『ベルセルク』の『ガッツ』が使用している『斬魔刀(ドラゴンころし)』みたいなデザインになってる。

 

一言で言えば、『それは剣というにはあまりにも大きすぎた。大きく、ぶ厚く、重く、そして大雑把すぎた。それはまさに鉄塊だった』

 

まあ、フェイトにも大剣モードあるけど、あれは魔力刃だし。アリシアのはベルカ式だから本物なんだよね。

 

160㎝くらいの女の子が2m近い大剣振るうとは何て言って良いのか。

 

人格は……『ベルセルク』に出てくる小柄な魔術師、『シールケ』。

 

まあ、コレも本人が気に入ってるのだからツッコミは止めておこうか。

 

「さあ、こんな図体だけがでかい鹿なんかさっさと沈めるわよ!」

 

アリサのかけ声で戦闘が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゅ~」

 

鹿・グレートは鳴き声をあげて退散していった。

 

うむ、順調に全員強くなってる。

 

アリサは刀の使い方は上手になってるし。

 

すずかも二丁拳銃の撃ち方も様になってる。

 

アリシアも大剣を器用に使ってるし。

 

まあ、全員俺が教えたんだがね!

 

「にゃはは、みんな強くなったね」

 

「うん、強くなった」

 

なのはとフェイトも嬉しそうに頷いている。

 

……まあ、ちょいと魔改造した様な気がせんでもないが。ま、いっか。

 

しかし、アリシアはフェイトと対極の位置にきたな。

 

フェイトの戦闘スタイルはスピードを生かした戦い方だ。

 

ヒット・アンド・ウェイと呼ばれる。

 

アリシアは逆のパワータイプだ。

 

大剣で相手を完膚無きまでに叩き潰す……まあ、ガッツみたいな戦い方そのまんまだな。

 

パワータイプと言っても速さもかなりある。

 

フェイトと比べたら僅かに遅い位で下手な速度では確実に大剣の餌食になる。

 

シグナムも『あの大剣とまともに打ち合いたくはないな』と言わしめるほど。

 

「えへへ、どうだった~? お兄ちゃん?」

 

アリシアはニコニコ笑いながら俺の方に寄ってくる。

 

しかし、背の高さは今や逆転してるから俺にお兄ちゃんと言っても違和感があるんだが。

 

「ああ、上手くなってきたな」

 

「ありがと~」

 

そう言って俺を抱きしめて抱っこしてくるアリシア。

 

だから、俺はもう子供じゃないのだが。

 

「あたしはどうだったのよ?」

 

「私はどうだったかな?」

 

アリサとすずかも同じように聞いてくる。

 

「アリサとすずかも良かったぞ。上手く連携してるし」

 

「と、当然よね!」

 

「良かった……」

 

そう言って2人とも俺の頭を撫でてくる。

 

「しかし、なんやったんやろね? あのでかい鹿は?」

 

はやては逃亡していった鹿の方を眺めている。

 

「……さあ? 何の目的だったのかは分からないな」

 

「…そうやね。魔力は感じなかったし…」

 

厳密に言えば、ごく微量の魔力を感じたんだが。まあ、良いか。

 

「とりあえず、戻ろうか。そろそろ時間だし」

 

俺達はホテルに向かって帰る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何故、俺はここにいる?」

 

自分で自分を問いたくなる。

 

目の前にはなのは、フェイト、はやて、アリサ、すずか、アリシア。

 

何の事はない。

 

なのは達の班が泊まる部屋に連行されたのだ。

 

風呂上がりに自室に戻ろうとしたらフェイトとアリシア両人に抱えられて部屋に連れてこられた……と言うわけだ。

 

なのは達は部屋に備え付けてあった浴衣みたいな服を着ている。

 

全員風呂上がりなのだろうか、顔が少し紅潮して実に色っぽく見える。

 

問題は全員何故か着くずしている様に見える。

 

胸とかお腹とかチラチラと……。

 

う~む、しかも全員妙に目がギラギラと輝いている。

 

対応を間違えると俺は大人の階段を上がってしまいそうだな。

 

さすがに12歳で脱童貞は……どうだろうな!

 

「まあ、修学旅行の定番の1つ、枕投げしたかったんやけどな~」

 

「にゃはは、アレス君入れたらシャレにならないから止めたんだ」

 

まあ、確かに枕投げなんぞした日には大変な事になるだろう。

 

〈確かに、あの時は大変でしたわよね……〉

 

エヴァが苦笑してる顔が思い浮かぶ様だ。

 

前世の時の修学旅行で大暴れしたのは良い思い出だ。

 

「まあ、枕投げしても良いぞ? 首が折れるかも知れないが、その時はごめんな?」

 

「アンタねぇ……枕投げで首が折れるとかどんだけ物騒なのよ!」

 

「予想通りだったわ……。最近、身体能力がおかしくなってきとるアレス君とは枕投げ出来へんし」

 

言うのを忘れていたが、身長が止まってから俺は身体を鍛えるべく身体に重力をかけて負荷をかけてるのだ。

 

とりあえず、10Gまでかけてるがな!

 

「と言うわけで、今夜はアレスお兄ちゃんと心ゆくまで『ワイ談』をすることにしました!」

 

アリシア……。何でそんな結果になったのか、途中経過を教えて頂きたい。

 

「……ちょっと、用を思い出した」

 

「……逃がさないよ?」

 

「ダメだよ?」

 

すずかとフェイトが俺の両腕をキッチリと捕らえる。

 

ちなみに、肩の部分に両人の胸が当たって柔らかい感触が広がってるのは言わないでおこう。

 

「チミ達は『ワイ談』の意味を知ってるのカネ?」

 

一途の望みをかけて聞いてみる。

 

「知ってるよ?」

 

「うん、知ってる」

 

「要は、エッチな話やろ?」

 

「きちんと勉強したよ~?」

 

「あたしが知らない訳ないじゃない!」

 

「ちゃんと勉強したよ?」

 

何という無駄な勉強だ。

 

と言うか、思春期モードに突入してるじゃねぇか。

 

「まあ、知識としては知ってるけどなぁ……。そこでアレス君の出番や!」

 

はやてが目を輝かせて俺ににじり寄ってくる。

 

「そこのタヌキ、その妙な手の動きは何だ?」

 

「タヌキちゃうわ! この手か? アレス君の男性専用アームドデバイスをカートリッジロードするつもりなんやけど?」

 

「色々とツッコミたいが。カートリッジロードしてどうするんだ?」

 

「もちろん! 早く砲撃を撃って貰いたいからや!」

 

胸を張って答えるはやて。

 

こやつの頭の中は白濁の液が詰まってるんじゃなかろうか?

 

「あ、私も撃つ瞬間見てみたいな~」

 

すずかの思わぬ援護。

 

「そうやろ!? よく漫画でもかなりの量が出てるからなぁ~。ぶっちゃけ言うとそれの検証したいんやけど」

 

……まあ、大人専用漫画では白濁液の量が半端ない描き方してるからぁ。

 

「……あんなに出る訳ないだろ」

 

「そうだね。お兄ちゃんに聞いたけど実際にはあんなに出ないよ?」

 

俺の台詞の後、なのははとんでもない事を言ってるように聞こえたのだが。

 

「なのは……アンタ……聞いたの?」

 

「にゃはは、ちょっと恥ずかしかったけど聞いてみたの」

 

恭也さん、ご愁傷様です。

 

「そうだね。お姉ちゃんから聞いてはいたけどあんなに溢れる程は出ないよ?」

 

忍さん……聞かれたからと言ってそんな事を教えるんじゃねぇ。

 

「なるほど……それは興味深い結果だけど……。その前に」

 

アリサはそう言って俺の顔を見る。

 

「アンタ……。さっき、『あんなに出る訳ないだろ』って言ってたわよね?」

 

「……ん?」

 

そう言えば、そんな事を言った記憶が。

 

って、考えてみたらそんな言い方したら……俺は大人専用漫画を読んだ事があると肯定してる様なモノじゃないか!

 

「そう言えば……」

 

「言ってたね」

 

顔を見合わせるフェイトとアリシア。

 

その後、全員の視線が俺の顔に突き刺さる。

 

「……」

 

俺はテーブルにあったまんじゅうを手に取りソレを口に入れて咀嚼する。

 

「なるほどなるほど……前にアレス君の部屋を捜索しても発見する事は出来なかったけど……。見た事あるんやな?」

 

はやての口が三日月を描く様にニタァッとつり上がる。

 

その前に……俺の部屋を捜索したんかい!

 

「……黙秘権を発動させて貰おうか」

 

「にゃはは、そんな権利は無いよ?」

 

「さあ、どんな感じの本を読んでるのか……教えて貰おうかな!」

 

何で同級生の女の子と大人漫画について話し合わなきゃならんのだ。

 

「想像に任せる……」

 

「……なるほど……それなら私達の都合の良いように解釈させてもらうで!」

 

「……参考までに聞かせて貰うが?」

 

「にゃはは、私は幼馴染みで最後に結ばれるシチュエーションかな?」

 

まあ、なのはとは長いつきあいだからな。

 

「えっと……双子丼で妹が虐められるシチュエーション……」

 

「あたしも双子丼だけど、姉が小悪魔的に虐めるシチュエーション!」

 

エラいマニアックな話だな!

 

「私はムチムチなお姉さんが小学生位の男の子を襲う話やな! 前も言った様な気がするけど」

 

変わってないな、この腐タヌキは!

 

「あたしは可愛い男の子を虐めてウルウルと泣いてる所を襲うお話!」

 

アリサェ……。

 

「わ、私はヒロインが吸血鬼で可愛い男の子の血を吸いながら襲うシチュエーション……」

 

すずか、濃すぎる。

 

なのは以外、自分の願望が駄々漏れじゃねぇか。

 

【残念ですけど、お兄様は『小学生位の女の子を襲う』のがお好みなのですよ?】

 

エヴァ……それは違う!

 

「そ、それは……」

 

「あ、あかん……アレス君の容姿なら問題無いけど……」

 

「私達の容姿じゃ該当出来ないよ……」

 

「お兄ちゃん……お兄ちゃんのそのアームドデバイスだと女の子が可哀想……」

 

「アンタのソレは凶器だと自覚出来ないの!?」

 

アリサに意味不明のお叱りを受けたのだが。

 

【まあ、それはジョークですわ。お兄様は幅広いから皆様の要望に応える事は出来ますけど】

 

いや、それも違うから。

 

エヴァの台詞を聞いて全員が安堵のため息をついていた。

 

おのれら……それをやらせようと思ってないだろうな!

 

「まあ、アレス君が初めての砲撃を撃ってから考えようか?」

 

俺はソレを迎えてもこの先その報告は絶対しないぞ!

 

「大人しくしてるか~?」

 

突然ドアが開き、顔を見せて来たのは。

 

隣のクラスの担任、横島先生だった。

 

赤毛のセミロングで美人系の顔つきで背も高く、スタイルも良い。

 

授業も分かりやすく、男女問わず人気の高い先生だ。

 

ただ、問題なのは……。

 

「……藤之宮君……」

 

俺の姿を見ると見事な速さで部屋の中に入ってくる。

 

つまり、年下好きで幼い容姿の男の子が好みと言う噂を聞いている。

 

ストレートに言うと。

 

極度の少年偏愛(ショタコン)である。

 

「ん~? ここは女子の部屋だぞ? いけないなぁ……実にいけない! よって、私の部屋でお仕置きだな!」

 

嬉しそうな顔で俺に抱きついてから連行しようとする横島先生。

 

「あ~! あかんあかんあかん! 私達が連行してきたんや! 私等も一緒や!」

 

「何だと? 全く……まあ、女子に誘われたと言うのであれば私も目を瞑ろうではないか」

 

横島先生はコホンと咳払いをする。

 

「その代わり、私も参加させて貰うぞ?」

 

そう言って、テーブルに着席する横島先生。

 

つーか、見回りしてたんじゃないのか?

 

「……色々とツッコミを入れたいのだが」

 

「む? 君が突っ込んで良いのはここだぞ?」

 

そう言って自分の股間を指差す横島先生。

 

ダメだ、聖職者が生殖者になっとる!

 

「しかし、聞いたぞ。君のコレは大層なモノらしいじゃないか」

 

そう言って俺の股間の方をまさぐってくる横島先生。

 

「……噂の出所が気になりますが……」

 

「む? 風呂に入っていたら女子達が君の噂をしていたぞ」

 

「……」

 

俺ははやての顔を見る。

 

「……」

 

無言で視線を逸らすはやて。

 

「……後でお仕置きだな」

 

「堪忍や!」

 

「どんなお仕置きなのか気になるのだが」

 

「全身固定してくすぐるだけです」

 

「……それはキツいな。私としては君のソレでお仕置きかと期待したのだが……」

 

「それだったらなんぼでも受けたるで! むしろ今からでもええ位……」

 

「はやてちゃん、少し頭冷やそうか?」

 

「わ、私の頭は充分冷えとるで!」

 

はやてはなのはに捕まって部屋の隅の方に行った。

 

あえて視界には入れなかったが、『ちょ、関節はそっちには曲がらへんよ!?』とか『な、なんやねん! その禍々しい物体は!?』とかはやての声が聞こえる。

 

全員それはスルーしている。

 

「……ううむ、コレはもはや女性専用の凶器になるな」

 

気が付けばズボンの上からでなく、直に触ってきてるんだが!

 

「セクハラで訴えて良いですか?」

 

「何故だ? 男なら女性にこんな事されると喜ぶハズなのに! まさか……君は男色の……」

 

「それは絶対にありませんから」

 

危うく『ウホッ』な人に認定されるところだった。

 

「しかし、だ。他の男子達は皆女の子に興味津々なのだぞ? 君は恵まれた立場にいるんだぞ? そこんところ分かってるのか?」

 

よく分からない事を仰る横島先生。

 

「……単刀直入にお願いします」

 

「君の太巻きが食べたい。上の口でも下の口でも」

 

実に最悪なお願いをありがとうございます。

 

教師として最悪な台詞ですね。

 

「ダメですよ、アレス君の太巻きはなのはちゃんが最初に頂く予定ですから」

 

すずかさん? その予定は初めて聞かせて頂いたのですが?

 

「なん……だと?」

 

「そうです。私達6人の後なら問題ありませんが」

 

アリサ、そこで公認してどうする。

 

「……分かった。それなら、君達が頂いた後に私が相伴させて貰おうか」

 

この人は何を言ってるんだ?

 

「……部屋に帰って良いか?」

 

「ダメだよ? 今夜は寝かさないよ?」

 

意味が分かりません、アリシアさん。

 

「そうだな。今夜は寝かせる訳にはいかないな」

 

横島先生、アンタは見回りに戻らなくて良いのか?

 

そんな事を思ってると、突然ドアが開く。

 

「横島先生! 見当たらないと思ったら!」

 

そこにいたのは俺のクラスの担任、『氷室先生』だった。

 

ちなみに、この2人は同じ大学の同級生との事。

 

「っ!」

 

「さあ、先生のクラスの子達が大騒ぎしてます! さっさと静めて下さい!」

 

氷室先生はそう言うと、横島先生の耳を引っ張る。

 

「い、痛い! 痛いぞ!」

 

「全く、前から藤之宮君を見る視線が妖しいと思ってたら……。さあ、こっちに!」

 

2人はそのまま部屋から出ていった。

 

俺達は呆然とその光景を見ていた。

 

「……アレスの事、気にしてなかったね?」

 

「ええ。確か、女子の部屋には男子は入っちゃいけなかったはずだけど」

 

そう言えば、そんな事言ってた様な気が。

 

「まあ、とりあえずはこのまま『ワイ談』に突入~」

 

この後の会話は。

 

皆の想像に任せるとする。

 

そんなこんなで騒がしい夜は過ぎていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 




 

言っておきますが、なのは達は12歳です

まあ、なのはは早生まれですからまだ11歳ですがw

なのは→157㎝
フェイト→160㎝
アリシア→160㎝
はやて→152㎝
アリサ→158㎝
すずか→155㎝

コレが小学6年生の身長かい……w


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第35話 修学旅行〈小学校編〉 中編

 
もちろん、普通に終わる訳がない


 

 

 

 

 

「ううぅん……」

 

窓から明るい光が目に当たる。

 

どうやら、朝らしい。

 

そう言えば、今は修学旅行に来ていたんだよな。

 

昨晩はなのは達に連行されてなのは達の部屋で過ごしていた。

 

ん?

 

そう言えば、俺は昨晩は自室に戻ったっけ……?

 

それに、身体が動かない。

 

柔らかい……女の子と思われる人に抱きしめられているみたいだ。

 

……もしや。

 

俺は目をゆっくりと開ける。

 

目に入ったのは綺麗な金髪。

 

誰だ……? 該当するのはアリシア、フェイト、アリサの3人。

 

「うぅん……お兄ちゃん……」

 

どうやら身体をしっかり抱きしめているのはアリシアの様だ。

 

ちなみに、部屋は和室で畳が敷いてある。

 

雑魚寝が可能である。

 

両手は万歳が出来る様に斜め真上にあげられた状態で妙に柔らかい何かに挟まれている感じがする。

 

首を捻って手の先を見ると……。

 

「……はやて、すずか……」

 

右手を見るとはやてがあろうことか自分の股間に向けて俺の右手を滑り込ませて挟み込んでいる。

 

左手も同じようにすずかが自分の股間に滑り込ませて両太股で挟んでいる。

 

「……」

 

俺は両手を抜け出そうと動かすと……。

 

 

「あん……」

「あぁん……」

 

 

はやてとすずかはあえぎ声を上げる。

 

艶っぽい声を上げるんじゃねぇ!

 

ここで目を覚まされてもロクな事にならないのは目に見えてるので。

 

それと両手が妙に湿っぽいのは気にしない事にする。

 

ふむ、アリサ、なのは、フェイトはどこだろうか?

 

俺は左の方に首を捻ってみる。

 

「……おのれら……」

 

思わず小声で呟いてしまう。

 

視線の先にはなのはとフェイト両人。

 

普通に寝ていれば俺も気にはしなかったのだが。

 

なのはとフェイトは何故か抱きしめ合っていた。

 

しかも、浴衣は結構はだけていて胸とか見える。

 

もの凄く、色っぽい。

 

コレで小学6年生とか将来が末恐ろしく感じる。

 

 

 

「アレス君……」

「アレスぅ……」

 

 

 

なのはとフェイトは俺の名を呼びながら激しく抱き合ってから……口づけしていた。

 

……まあ、見なかった事にしたいのだが。

 

これがまた実にいやらしくキスしていたので。

 

「くっ……!」

 

股間の男性専用アームドデバイスが反応してしまった。

 

朝なので余計に……だ。

 

「うぅぅん……何よこの枕……」

 

視界に入らなかったアリサの声が、何故か俺の股間辺りから聞こえる。

 

ってか、俺の股間辺りに誰かが頭を乗せている様な感じがするのですが?

 

「……もしやと思うが」

 

俺は首を少し上げてから股間の方を見る。

 

アリサが俺の股間に頭を乗せて枕の様にしているのが見えた。

 

どうしてこうなった!

 

もはや意味が分からない領域だ。

 

「アレスお兄ちゃ~ん……」

 

俺を抱きしめているアリシアが寝ぼけて俺の身体をまさぐる。

 

アリシアの白い手が俺の浴衣の中に入って胸をくすぐる。

 

「あ、アリシア……」

 

「えへへへ……」

 

目を覚ましているのか、覚ましていないのか分からないが。

 

実にイヤな予感を感じる。

 

アリシアの手はくすぐる様に俺の胸をまさぐってくる。

 

「き、気持ち良い……」

 

いかん。

 

股間のアームドデバイスが硬度を増してしまう。

 

浴衣ははだけて下半身はボクサートランクス1枚なのだ。

 

その上にアリサが頭を乗せている。

 

「何よ、この枕……。エラい硬く……」

 

アリサが頭を上げて枕元を見る。

 

 

「……」

「……」

 

 

アリサと目が合う。

 

 

 

「……おはようだぜ、アリサ?」

「……おはよう、アレス?」

 

 

 

妙な空気が漂う。

 

「そろそろ起きなきゃまずいんじゃね?」

 

「……まだ大丈夫よ。もうちょい寝かせなさい」

 

「……寝る……とな?」

 

「ええ。アンタのコレ、意外と気持ち良かったから。だから、早く柔らかくしなさいよ」

 

なんつー願いだ。

 

そんないきなり言われて柔らかく出来るかって。

 

「いきなり言われて柔らかく出来るか!」

 

「何でよ」

 

「そう言う仕様だ」

 

「全く、男の身体って意外と難儀なのね。そう言えば、柔らかくするには砲撃を……」

 

「まだ撃てないと言ってるだろうが」

 

「もう! 面倒だから今撃てる様にしなさいよ!」

 

そう言ってアリサは俺のパンツを両手で持つ。

 

「お、おい……何を」

 

「何って? ナニよ? あたしが手伝ってあげるのよ? 感謝しなさい?」

 

「どうやって感謝しろと?」

 

「ほらほら、良いから……」

 

アリサはゆっくりと俺のパンツを下ろそうとしたが。

 

「アリサ? 抜け駆けはダメだよ?」

 

俺の身体をまさぐっていたアリシアが顔を上げていた。

 

「アリシア……」

 

「アリサ? 1人で良い事しようとしてたんでしょ? もう、言えばあたしも協力するのに」

 

状況は変わっていなかった。

 

むしろ、悪化していた。

 

「それに、今ならアリサの望むシチュエーションじゃない?」

 

「……確かに。身動きが取れないみたいね」

 

アリシアとアリサの口がニヤッとつり上がった。

 

非常にまずい展開だ。

 

このままだとシャレにならない。

 

これで仮に横島先生辺りでも来た日には……!

 

目も当てられない状況になる。

 

 

 

「はわわ! ごめん! フェイトちゃん!」

「あわわ! ごめん! なのは!」

 

 

 

なのはとフェイトの焦った声が聞こえる。

 

どうやら目を覚ましてどんな状況だったのか認識したらしい。

 

 

 

「うぅ~ん……」

「なんや……うるさいなぁ……」

 

 

 

それにつられてはやてとすずかも目を覚ましたようだ。

 

「っ! もう! 折角アレスのお手伝いが出来たと思ったのに!」

 

残念そうな物言いをするアリサ。

 

「タイミング悪いよフェイト……」

 

頬を膨らませて不機嫌そうな顔を見せるアリシア。

 

ナイスタイミングだ! フェイトとなのは!

 

俺は心の中で賞賛する。

 

「……夢の中でエラい気持ち良かったのはこういう事やったんか」

 

「アレス君……触りたいなら触りたいって言えば良いのに……」

 

はやてとすずかの声が聞こえる。

 

台詞も不穏当に聞こえる。

 

「……朝起きたらこうなってたんだが」

 

「まあ、アレス君なら好き放題触ってもええけどな!」

 

「そうだね。けど、どうしようか……コレ」

 

すずかは人差し指と親指を合わせる。

 

ゆっくりと離すと指先に付いている液体が糸を引いていた。

 

「……とりあえず、替えてこい」

 

これ以上のツッコミはシャレにならないと思った。

 

「そうやね。まあ、こんなこともあろうかと用意しとったけどな!」

 

タヌキさんや、どんな想定をしていたのか聞いてみたいのだが。

 

はやてとすずかは部屋の片隅の方に行く。

 

片手には換えの下着が見えるが、気にしない事にする。

 

言うかね、普通なら俺の見えない所で着替えるでしょう!?

 

何で平然と俺の視界の入る所で着替えてるの?

 

「アレス君は使用済み下着に興味あるんかな?」

 

よし、後でお仕置きだ。

 

月に代わらなくてもこのタヌキはお仕置きだ。

 

「……」

 

俺は満面の笑みで握り拳を作ってから左手で上から覆い被せる。

 

某世紀末主人公の様に拳をボキリボキリと鳴らす。

 

 

 

「……『あべし』とか言う断末魔叫びとうないで」

 

 

 

「大丈夫だ。『ひでぶ』にしてやる」

 

「そっちもイヤや!」

 

そんな事を叫びながら下着を替えてるはやて。

 

「でも、フェイトちゃんの唇……結構柔らかかった……」

 

「……なのはも柔らかかったよ?」

 

妙な会話が聞こえて来たので見ると、お互いに顔を赤らめさせてるなのはとフェイト。

 

……百合の世界にようこそ?

 

「……よし、これでアレスを狙うライバルが減った」

 

小声で囁きつつ拳を握ってガッツポーズするアリサ。

 

「……お姉ちゃんは応援するよ、フェイト……」

 

なま暖かい視線を向けてるアリシア。

 

「にゃ!? アレス君を諦める事はしないよ!?」

 

「そ、そうだよ!? 確かになのはの唇は柔らかかったけど、やっぱりアレスとキスした方が……」

 

 

 

「チッ」

「チッ」

 

 

 

アリシアとアリサは舌打ちしている。

 

朝からやる会話じゃないと思う。

 

「おニューのパンティやで~!」

 

唐突に来たのははやて。

 

浴衣の前を全開にして大股を広げ、腰に手を当てて立っている。

 

 

 

「…………」

 

 

 

俺は眉間に皺を寄せてしかめっ面ではやてを見る。

 

「何やねん! その残念そうな顔は!」

 

「色気も何も無いポーズだ」

 

「見てみぃ! 流行の横縞模様のパンティやで! 緑か青が定番らしいからここは青を選んだんやで!」

 

そんなの力説されても困るんだが。

 

「それともアレス君はこんな穴開きが良かったのかな?」

 

すずかが手に持ってるのは。

 

妙な雰囲気の布きれ……?

 

「アレス君なら喜ぶかと思ったんだけど……?」

 

どうやら穴が開いてる超マニアックなパンティだった。

 

「……普通ので良い。そんな奇をてらったヤツはいらぬ」

 

何処から入手したんだ。

 

忍さんのお下がりとか言われた日には吹っ飛びそうになるが。

 

 

 

「やっぱりアレス君はピンクが好きだと思うよ?」

「違うよ? 多分、黒だと思う」

「あたしは白だと思うな~」

「赤の下着とかかもしれないわよ?」

 

 

 

何やら妙な会話が聞こえてきたのでそちらを見ると、なのは達が。

 

浴衣をはだけてお互いが身に付けてる下着を見せ合いながら会話していた。

 

「……」

 

俺は視線を逸らした。

 

何か、女子校に迷い込んだ気分だ。

 

「それにしてもアレス君……なんかキツそうだね?」

 

「ん?」

 

声の方を見るとすずかが顔を赤らめさせて俺の股間を眺めていた。

 

股間は未だに朝モード状態だ。

 

「やっぱりすずかちゃんもそう思うやろ!? 言うわけで、アレス君。私に1発撃たせてくれへんかな?」

 

はやてはニヤニヤ笑いながら近寄ってくる。

 

右手は筒を握って上下にこする様な感じで動かしている。

 

「まだ砲撃は撃てないと言ってるだろう?」

 

「ええやん! 今、ここで撃てる様になれば無問題や!」

 

「それをここで公開しろと言うのか貴様は!」

 

「乙女の疑問をここで解決させると言うボランティアだと思って!」

 

そもそも乙女はそんな疑問を持たんわ。

 

これ以上いたらもの凄くイヤな予感を感じるから……逃げるか。

 

「……あ、そろそろ時間だ。部屋に戻る」

 

「え? あ、ちょ?」

 

俺は素早く部屋から抜け出して部屋に戻る事にした。

 

扉を閉める時に『私は諦めへんからな~!』と声が聞こえたが、無視する事にしておいた。

 

 

 

 

 

 

 

「昨晩は何処にいたのか説明して貰おうか?」

 

「うむ。これは問いたださなければならない事項だ」

 

部屋に帰ったら帰ったで好雄と学が血涙流して俺に追求してくる。

 

まだ寝てると思ってたのだが、意外! 目を覚ましていやがった。

 

「ちょっと、余所の部屋で……」

 

「嘘をつくな! なのはちゃん達の部屋にいたんだろ!」

 

恐ろしい勘だ。

 

「……フンフン……女の子の香りがするぞ……」

 

学が犬の様に鼻を鳴らして匂いをかいでいる。

 

まあ、アリシアとかアリサとかなのはとフェイト以外全員と触れあって寝ていたのだから香りが移っても仕方あるまい。

 

「てめぇ……1人で大人の階段登りやがって! 誰だ! 誰と一緒に上ったんだ!」

 

「もしや……全員とじゃなかろうな!?」

 

「な、な……なん……だと? 六大美少女全員と……だと?」

 

勝手に暴走する好雄と学。

 

放っておいたら全員と関係を持ったと勘違いしそうだ。

 

「……上ってねぇよ」

 

「嘘だっ! こうなったら氷室先生に報告してやる!」

 

学はそんな事を言って部屋から出て行ってしまった。

 

「……」

 

「へへ、これでお前ももう終わりだぜ」

 

俺は唖然とするしか無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

顔を洗って浴衣から制服に着替えていると学が帰ってきた。

 

明らかにしょんぼりとした様子だ。

 

「どうだった?」

 

「……証拠を見せろって。アレスがなのはちゃん達の部屋に入っていたと言う証拠を」

 

うむ、それははっきり言って無理に等しいな。

 

なのは達が先生に訴えて……と言う流れなら大事になるが。

 

なのは達は120%そんな事しないしな。

 

「……証拠かよ。アレスの身体から漂う香りじゃ……決め手に欠けるな」

 

顎に手を当てて考え込む好雄。

 

「一番良いのは部屋に入ってる、もしくは部屋に入る直前の写真なんだが……」

 

「撮ってる訳無いよな……」

 

「だな」

 

2人は神妙な顔になる。

 

「どうでも良いが、そろそろ朝食だぞ?」

 

既に起きて制服に着替えている正志がいまだ浴衣を着ている好雄と学にツッコミを入れる。

 

 

「……」

「……」

 

 

2人はお互いに顔を見合わせてから……。

 

 

「ヤバい」

「ヤバい」

 

 

急いで準備する。

 

「助かった」

 

「良いって事よ」

 

俺は正志に礼を言っておく。

 

 

 

 

 

 

 

騒がしい朝食も終わり。

 

3日目の今日は……市内散策。

 

自由に行動しても良いのだ。

 

言っても、見て回る所はそこまで無いのだが。

 

前もって決めた班でおのおの回るのだ。

 

まあ、俺が所属する班はなのは、フェイト、アリシア、アリサ、はやて、すずかの6人がいる班。

 

ちなみに、班編制で揉めに揉めたのは言うまでも無い。

 

男子達はなのは達、女子達は何故か俺を入れたがっていた。

 

別に俺を入れてもしょうがないと思うが。

 

散策するのは原爆ドームと平和公園周辺。

 

一見、真面目そうに散策する様に見えるのだが……。

 

「さあ、広島のプチ秋葉原と呼ばれている場所……どんなモノか見せて貰うわよ!」

 

そう言ってアリサは腰に手を当てて立っているのは……。

 

アニ○イト広島店前。

 

1階は書籍を主に扱っていて、2階部分にグッズを扱う店舗。

 

ちなみに、2階店舗隣に同人書籍等を扱うメロン○ックス。

 

更に、アニ○イト前にメイド喫茶が。

 

ここら辺は前世の前世と同じみたいだ。

 

自作パソコンパーツを扱う店もあるし。

 

前世の前世でもお世話になったものだ。

 

そうそう、さすがに制服姿だと拙いからデバイスに登録している私服姿に着替えているぜ。

 

……俺の場合は補導されそうな気がするが、なのは達なら多分大丈夫だろう。

 

わざわざ大人っぽい服装をチョイスしてなおかつ化粧してるように見せてるから。

 

アニ○イトは海鳴市にもあるからわざわざ行く必要も無い。

 

はやてとすずかのお目当ては隣のメロン○ックスらしい。

 

メロン○ックスは海鳴市に無く、電車で1時間の所にあるからホイホイと行ける場所に無い。

 

そこで東方だとかその手の同人ゲームやら同人誌を入手している……みたいだ。

 

ちなみに、俺のポシェットの中には前世コレクションと前世の前世コレクションも入っているからわざわざ買う必要は無いのだが。

 

全員で中に入る。

 

さすがに平日だけあって客は少ないが、客は男性客しかいない。

 

客全員が少し驚いた顔で俺達の方を見る。

 

まあ、なのは達みたいな美少女達がこんな店に入るのは驚くだろうな。

 

※作者でも驚きます。

 

「あ、東方……」

 

「どれどれ?」

 

なのは、フェイト、アリシアが東方系を置いてる場所に向かっていく。

 

「あ、これなかなか見つからなかった……やっぱり地方に来るとある場合があるのね……」

 

アリサは何やら同人誌を1冊手に持って見本ページを見ている。

 

アリサも意外とハマッてるのね……。

 

「さて、と」

 

俺も何か面白いのを探そうかな……と思った時。

 

「アレス君はこっちや」

 

「そうそう、こっちだよ?」

 

はやてとすずかに手を引っ張られる。

 

「……」

 

引っ張られた場所は奥の同人誌コーナー。

 

ただし、18歳未満購入禁止の大人専用同人誌だが。

 

「さあ、私等のおごりや! 好きなの買ってええで!」

 

「アレス君にはお世話になってるから……」

 

お世話してる記憶は無いが、それにしてもこういう返し方ってアリなのか?

 

「……どういう経緯でこうなったんだ?」

 

俺は額に指先を当てて考える。

 

「イヤ~、アレス君の部屋を捜索しても見当たらへんかったし~。どんなのがお好みなのかなぁ~と」

 

「そうそう。エヴァちゃんから一応聞いてるのはどんなのでも大丈夫だっていう曖昧な返答だったし……」

 

〈エヴァ……〉

 

〈えっと……実際そうじゃありませんか〉

 

〈まあ、否定はしないが……〉

 

「特にこだわりは無いんだが……」

 

「なるほど……巨乳だろうと貧乳だろうとどちらでも良いと」

 

「メモやメモや」

 

ホントにメモ取ってるぞ……。しかも表紙に『アレス君のお好み(ハート)』と書かれている。

 

どんな内容なのか確認したいんだが。

 

「じゃあ、背の高いお姉さんタイプと背の低い妹タイプは?」

 

「……それも特にはこだわりないな」

 

「なるほどなるほど……」

 

エラい勢いでメモ取ってるぞ。

 

「お転婆娘タイプとおっとりタイプだと?」

 

「……まあ、どちらも嫌いじゃないな」

 

「……手強い。アレス君の性癖は万能タイプなんかな?」

 

ってか、何でそんな質問に答えにゃならんのだ。

 

ちなみに、周りの客を見ると嫉妬を超えて殺意が芽生えてる視線になっていた。

 

「じゃあ、この同人誌は?」

 

すずかが持ってきたのはネギま!だった。

 

委員長の雪広あやかが主人公のネギを美味しく頂いている同人誌だ。

 

俺はそれを手に取って見本部分を読む。

 

一言で言うと。

 

あやかがネギを襲って頂いている。

 

……そう言えば、前世でも未遂が何回かあったしな。

 

「……実際に近いの何回か見てるし」

 

「ぶはっ」

 

はやてが噴き出していた。

 

「え……前世ではネギ先生頂かれちゃったの!?」

 

俺は即座に認識阻害魔法を展開して周りの客には他愛ない会話の様に聞こえる仕様にした。

 

「いや、未遂が数回あっただけだが……」

 

「未遂……そっちのいいんちょはかなりアグレッシブやったんやな!」

 

「だねぇ~」

 

はやてとすずかは同人誌を見ている。

 

「まあ、私としてはこの襲われてるネギ君の立場もええな~と思ってるんやけどな! 襲う人はアレス君限定で!」

 

「うん、私もはやてちゃんと同じかな。アレス君に襲われたいな♪」

 

俺は何と返答すれば良いんだ?

 

〈お兄様?〉

 

〈うん?〉

 

〈もう、発射出来なくても良いですから皆さんを襲ってみては如何でしょうか?〉

 

エヴァが恐ろしい提案をしてくるんだが。

 

〈何故そうなる?〉

 

〈皆様、いつも悶々とした日を過ごしていそうですので。ここはお兄様が癒して差し上げたら解消なさるかと……〉

 

〈……本音は?〉

 

〈私もお兄様としたいです〉

 

〈……もう6年位待たれんのかい〉

 

〈6年待てばしてくれますか?〉

 

〈……約束する〉

 

〈それなら待たせて頂きます〉

 

エヴァとの約束を交す。

 

何か、とんでもない約束をしたような気がしないでもないが。

 

気にしない事にした。

 

「襲ったら犯罪者のレッテルが貼られるだろ……」

 

「大丈夫や! 訴えるとかせぇへんから!」

 

「私とアリサちゃんの家の力を使えば、そのレッテルは消せるから!」

 

金持ちの恐ろしさを垣間見た気がした。

 

「兎に角、そう言うのはまだ早いからな」

 

 

 

「え~」

「え~」

 

 

 

同時に残念そうな声を上げるはやてとすずか。

 

って言うかね? 周りの男性客の視線が非常に鬱陶しいんだけどね?

 

まあ、確かにはやてとすずかはかなりの美少女に見える。

 

中身はビックリするくらい残念な所があるが。

 

常に思春期に突入している。

 

言っても、他の男子とか女子には普通に接しているが。

 

俺の関する時だけ、発想が斜め上に飛んでいくんだよな。

 

そうそう、アリサとすずかは男性恐怖症が少しだけ改善したぞ。

 

と言っても、間合いを1m位離して会話だけだがな。

 

アリサに至っては鮫島さんと父親と会話出来る様になっていた。

 

3年前に比べて改善はされている。

 

この調子で行けば大人になった頃には元通り……のハズなんだが。

 

何だろうか……? 『そうは問屋がおろさないぜ!』みたいな予感を感じるのは。

 

「とりあえず……や。アレス君が好みそうなのチョイスしとこかな」

 

「そうだね。ちょっと待っててね?」

 

はやてとすずかが俺から離れる。

 

言うか、俺1人だと補導されそうなんだが。

 

「アレ? はやてとすずかは?」

 

俺の所に来たのは数冊の同人誌を持ってるフェイトだった。

 

後ろにも同じ様な感じのアリシアがいる。

 

「……何でも俺好みの本を探してくると言って奥に行ったぞ」

 

「アレスお兄ちゃんの好みか~。コレなんかどう?」

 

アリシアが渡して来た本は……。

 

俺は本を手に取ってみる。

 

「……双恋とな」

 

某雑誌企画で誕生した物語で。

 

主人公が双子の女の子に同時に告白されて三角関係を維持していくと言うトンデモストーリー。

 

 

……。

 

 

 

今の俺とアリシア、フェイトの状況そのまんまなんだが。

 

思わず苦笑してしまう。

 

「あ、お兄ちゃん知ってたんだ。今の私達と一緒だね♪」

 

「うん、この本見てると参考になるよ」

 

確かに、参考になるかも知れないが……。

 

「……ひょっとして実践するつもりか?」

 

渡された本は大人専用漫画版になっていた。

 

分かりやすく言うと、主人公が双子の女の子達に美味しく頂かれていた。

 

あまり細かく描写するつもりはないが。

 

主人公のアームドデバイスが同時に舐められたり……等。

 

モテない男性からみたら銃殺刑に処されてもおかしくないと思うな。

 

「そうだよ?」

 

「うん。アレスは双子萌えじゃないの?」

 

2人はジーッと俺の顔を見つめてくる。

 

全く同じ顔で俺の方を見つめてくる。

 

「……双子は嫌いではないが」

 

 

「良かった」

「良かった」

 

 

2人は安堵のため息をついていた。

 

しかし、双子に縁があるよな。

 

前世では双子の姉妹として。

 

前世の前世では母親は双子だったのだ。

 

今世で母親だった母さんは、前世の前世では伯母だったのだ。

 

ちなみに、サウンドノベルの元祖と言うべき作品……『弟○草』。

 

そのヒロインの名前が前世の前世における母親の名前と一緒。

 

そう、『奈美』。

 

『藤之宮 奈美』が前世の前世の母親で今世は『藤之宮 直美』。

 

『奈美』と『直美(ナオミ)』。

 

何の因果なのかねぇ。

 

俺は心の中で苦笑する。

 

あと、前世の前世では俺は母親似だったとの事。

 

まあ今世も一緒なのだが。

 

翠屋で手伝いしている時も一目で俺と母さんの関係がばれてしまうのだ。

 

初めて来た客でも……だ。それだけ似ている。

 

しかし、たまーに化粧させてくる母さんはどうかと思うのだが。

 

「ツンデレは如何かしら?」

 

俺の背後から声をかけてくるのは。

 

「……アリサ」

 

アリサだった。

 

自分でツンデレと自覚してるのか。

 

「アンタみたいな可愛い男の子はあたしみたいな美少女に虐められるのがお似合いよ!」

 

言ってる事が何かおかしいアリサだった。

 

「……アリサ?」

 

「……何よ、そのなま暖かい視線は。まるで残念な娘を見てる様じゃない」

 

「何で分かったし」

 

「あたしは残念じゃない!」

 

「まあ、そう言う事にしておいてやろうではないか。ハッハッハッ」

 

「何か引っかかる言動ね」

 

アリサはブツブツ言いながらまた大人専用同人誌を手に取って見本ページを眺めている。

 

「あ、これ良いわね……。金髪少女が可愛い男の子を虐めてる……。絵もあたし好みだし……」

 

 

 

……。

 

 

 

やっぱり残念美少女の名は返上出来そうに無いな。

 

周りを見ると、驚きつつも羨ましそうな顔でアリサを見る男性客がちらほらと見受けられた。

 

 

 

 

 

 

客達の心の声

 

 

『さっきから、何なんだあの小僧は!』

 

『うむ。あれだけの美少女を6人も……』

 

『しかも、何の躊躇もなく我らの聖域(18禁コーナー)に突入してきたぞ……』

 

『ってか、あの小僧はここに来るのは早すぎるだろ!』

 

『だが、あの超美少女達に連行されて来たんだぞ?』

 

『パルパルパル……妬ましい妬ましい……』

 

『神は死んだ! 何故にあんな子供にあんな超美少女が6人も!』

 

『我らにも1人分けて貰いたい位だ!』

 

『しかし……だ。同志達よ。彼女達はひょっとして……少年偏愛(ショタコン)……なのか?』

 

『なるほど。金髪の双子は見た目は大学生くらい、他の4人も今年高校卒業しそうな雰囲気が漂っている……』

 

『うーむ、惜しいと言えば惜しいのか。いずれはあの小僧も大人になったら彼女達に捨てられるであろう』

 

『確かに。エターナル・ロリ……いや、エターナル・ショタは二次元だけの存在だからな』

 

『ククク、今のウチだぞ……。後々に後悔するがよい』

 

 

 

 

 

 

 

 

……?

 

何だ?

 

周りの奴らの視線が『せいぜい今のウチに可愛がって貰うが良い』と言いたげな視線になったぞ?

 

こいつら、どんな想像してるんだ?

 

まあ、良いか。

 

俺は携帯を取り出して時計を見る。

 

そろそろ昼を迎えそうだ。

 

このまま入り浸るのもアレだから出ようかな。

 

「そろそろ出るか?」

 

「あ……そうだね。もう昼だし」

 

なのはを見かけて俺は話しかけるとそう返答してくる。

 

……手には大人専用同人誌が数冊。

 

見ない事にした。

 

「にゃはは、アレス君が好きそうなのをチョイスしといたからね」

 

何故に全員、俺に大人専用同人誌を見せようとするのか。

 

「……まあ、せっかくの修学旅行だから何も言わないが」

 

俺がそう言うと、周りにいた男性客数人が驚愕の表情でこっちを見ている。

 

さっきから何なんだ、こやつら?

 

鬱陶しい位で実害はないから放っておくが。

 

 

 

 

 

 

 

客達の心の声

 

 

『なん……だと……?』

 

『修学旅行だと?』

 

『確か、今日修学旅行でこの市内に来ているのは……』

 

『うむ。確か、関東にある【私立聖祥大学付属小学校】しか来てないはず』

 

『詳しいな』

 

『あの学校は関東圏でも美少女が勢揃いしているので有名だ』

 

『ああ、ネットでも写真が出回っているからな』

 

『……待て。そう言えば、あの金髪の双子は……私立聖祥大学付属小学校の非公式ランキングで常に1位~6位に入ってる……』

 

『……!! 思い出した! 確か、【アリシア・テスタロッサ】と【フェイト・テスタロッサ】ではないか!!!』

 

『待て、同志達よ。他の4人も……』

 

『間違いない。【聖祥大学付属小学校六大美少女】と名高い……』

 

『【高町なのは】、【アリサ=バニングス】、【月村すずか】、【八神はやて】じゃないか!』

 

『実物を見るのは初めてだが……確かに可愛い』

 

『……アレで小学生……だと?』

 

『……ええい! 聖祥大学付属小学校の女子は化け物か!?』

 

『だが、あれだけの美少女が……』

 

我らの聖域(18禁コーナー)に来る……』

 

『ある意味将来が楽しみだな』

 

『と言う事は。あの小僧は……?』

 

『……あの姿で小学6年生……?』

 

『バカな。アレはどう見ても小学3年生止まりだ。あれで6年生なら……』

 

『……!!! エターナル・ショタ……だと?』

 

『何と言う事だ! 彼女達はあの小僧に……』

 

『骨抜きだな』

 

『やはり神は死んだ! 美少女が集まる所には美少女が集まるのか!?』

 

『……唯一の救いはあの小僧が大人でイケメンじゃない所だな。これでイケメンなら……』

 

『うむ、某五次聖杯戦争の狂戦士みたいに吼える所だったな』

 

『あれは諦めるしかあるまい。我らは我らでエターナル・ロリを探そうではないか!』

 

 

 

 

 

 

……?

 

何だ?

 

今度は諦めの顔をしだしたぞ?

 

よく分からんが、さっさとここから出ていった方が良いな。

 

妙な感覚を感じつつも俺達は店から出ていく。

 

さあ、次は何処に行こうかな。

 

 

 

 

 

アニ○イトから出て左に30m位歩いた所にある『松○(○屋とも言う)』にて昼食を済ませた俺達。

 

ちなみに、中にいたサラリーマン風の人や学生風の人達は俺達を見て少し驚いたみたいだったが。

 

確かに、歩いているとなのは達は注目を集めている。

 

主に、男ばかりだが。

 

しかし、まだ12歳でこれなら中学や高校に上がったらもっと凄まじい事になるのだろうか?

 

……。

 

まあ、そこら辺は考えないでおこうか。

 

「な~、次は何処に行こうか?」

 

はやてはウキウキしながら俺の前を歩いている。

 

さてさて、ここら辺にあるのは……。

 

イエローサ○マリン、と○のあな、パ○コン工房…。

 

フィギュアは……まあ、わざわざこちらで買わなくとも通販で入手は可能だし。

 

と○のあなは……また同人誌買えってか?

 

パソコンは今は組む必要性が無いし。

 

何故なら、既に3台組んで家にあるからだ。

 

高性能マシン、予備、ネット用の3台。

 

ちなみに、高性能マシンは俺以外使えないようにパスワードを入れてあるがな!

 

そして、はやてとアリサが意地でも中のデータを見ようと頑張ってるが、未だに見る事が出来ていない。

 

やましいモノは入ってないのだが。

 

それを説明しても2人は納得していない。

 

何故なら、前世の写真と前世の前世の写真を入れてあるからだったり。

 

ふと、見たくなる時があるんだよな。

 

迂闊にアルバムに入れておきたくないし。

 

まあ、レイハさんとバルディッシュ卿にパスワードを解く様に依頼したはやて、なのは、フェイトには後でお仕置きをしておいたがな!

 

主犯格のはやてにはそれ相応のお仕置きを……。

 

そこいら辺は読者諸兄の想像に任せるとしよう。

 

「……そう言えば、こっちにゲーセンがあったな」

 

松○から南方面に30m歩くと……。

 

アーケードになっていて、すぐの所に『タ○トーステーション』と描かれたゲーセンがある。

 

赤いインベーダーが目印だからすぐに分かるよな。

 

ここの2階はフィギュアとかの景品が多いのだ。

 

設定がキツいがな!

 

気が付いたら財布の中身が消え去ると言う事態もあるのだ。

 

もっとも、俺の場合はそれなりに景品は頂いているが。

 

「ウッキー! 何よこのアームは! 貧弱にも程があるじゃないのよー!」

 

今日もアリサは元気です。

 

フィギュアが景品のUFOキャッチャーの前で咆吼するアリサ。

 

まあ、ゲーセンのUFOキャッチャーの握力は赤ん坊以下に設定されてるからな。

 

ある程度金をつぎ込まないと取れない仕様になってる。

 

撲殺天使の金棒(エスカ○ボルグ)で筐体ぶっ壊すなよ?」

 

「あたしがいつそんな物騒な金棒で物を壊したって言うのよ!」

 

「いや、だって……アリサなら……ねぇ?」

 

俺は後ろにいるすずかに向かって訪ねる。

 

「えっ……と……ノーコメントで♪」

 

苦笑いしながらすずかはそう返答する。

 

「すずか……そこは否定しなさいよ」

 

力無くうなだれるアリサ。

 

「にゃはは♪アリサちゃんならそんなモノ使わなくても拳で充分だよ♪」

 

手に数個の景品を持ったなのはがやってくる。

 

「どの口が言うんか! この口か!」

 

アリサはそう怒鳴ってなのはの両頬をつねり上げる。

 

「い、いふぁい! いふぁいよ! ありふぁちゃん!」

 

涙目で叫ぶなのは。

 

「ほらほら、騒ぐと店員につまみ出されるぞ」

 

「そもそもアンタがいらない事言ったからでしょ!?」

 

「俺が景品取ってやるから」

 

「そ、そこまで言うなら、勘弁してやらないでもないわよ?」

 

頬を赤くするアリサ。

 

「どれ、仕方ないなぁ」

 

俺は筐体の前に立って景品を眺める。

 

……。

 

なるほど、絶妙な位置に置いてるな。

 

100円で取るのは無理だ。

 

最小限の出費で取れば良いだけの話。

 

俺は硬貨投入口を見る。

 

1回200円で3回500円。

 

500円でこのフィギュアを取れば充分だろう。

 

出来は悪くない。

 

「……どうなの? 取れないの?」

 

少し不安そうな顔で俺を見るアリサ。

 

「……500円あればイケる」

 

そう言って俺は500円硬貨を投入する。

 

アームを横に移動する。

 

次に奥に移動。奥に移動は立体感覚が必要だから意外と難しいのだが、俺の目は大丈夫だ。

 

「……」

 

アリサはごくりと喉を鳴らす。

 

「……まずは1回……」

 

アームが景品をずらす。

 

前に穴があってそこに落とすのが定石。

 

そもそも、こんなでかい景品掴める訳が無いんだが。

 

「……なるほど、掴んで取るわけじゃないのね」

 

アリサがそう呟く。

 

そんなに簡単に景品取られたらゲームセンターもつぶれるぞ。

 

「それで、次はここ」

 

俺は更にアームを移動させて景品を移動させる。

 

「う、上手いじゃない……」

 

「それで、次はここで……落ちるハズだが」

 

そう呟くと、アームは景品をずらしてから穴に落とす。

 

ゴトンと音を立てて筐体の下にある受け取り口に落ちる。

 

俺はそれを手に取り、アリサに差し出す。

 

「……あ、ありがと……」

 

頬を赤くしながら景品を取るアリサ。

 

「上手くいったな」

 

俺は周囲を見ると……。

 

 

「アリサちゃんばっかり……」

「上手いなぁ~」

「じ~」

「お兄ちゃん、取って欲しいのがあるんだけどなぁ~」

「お願い……出来るかな?」

 

 

いつの間にか来ていたなのは達がいた。

 

羨望の眼差しで俺を見ている。

 

「ああ、分かったよ」

 

 

 

 

 

 

 

「すいません、もう勘弁してください……」

 

俺の目の前で華麗なDO☆GE☆ZAをするのはこのゲーセンの店員だった。

 

何で土下座される状況になってるのか……だって?

 

そりゃあ、さっきから500円で景品を取りまくっているからだろう。

 

追加してはコイン1枚で取られるんだからゲーセンとしてはたまったものでは無いだろう。

 

ちなみに、後ろでは景品を沢山持ってホクホク顔のなのは達が立っている。

 

客達も驚いた顔で俺達を見ている。

 

大半がなのは達を見て驚いているみたいだが。

 

この景品をいくらで仕入れているかは知らないが、少なくとも500円で1つ取られては大赤字なのは間違いない。

 

「そっか、それじゃあそろそろ出るとしようか」

 

「そうだね」

 

俺達はゲーセンから出る事にする。

 

 

 

 

 

 

 

出る時になのは達の景品は俺の魔法のポシェットに入れておく。

 

デザインは俺が持っても違和感ない仕様にしている。

 

「あの店員の顔は見物だったわね」

 

「ああ、俺が景品を取るたびに顔色が青くなっていったからな」

 

まあ、今日は厄日だったと諦めてもらうしかないな。

 

どうやら、アリサは3000円程つぎ込んでいたみたいだ。

 

……。

 

アリサは令嬢でお金持ってるんだから3000円位で目くじら立てなくても……と言ったら。

 

『1円笑う者は1円に泣くのよ!』と叱られた。

 

なるほど、バニングス夫妻は良い教育を行ったみたいだな。

 

さて、そろそろ帰ろうかと思った矢先。

 

アーケード街は人が溢れている。

 

しかし、俺達の前には妙な集団が歩いている。

 

学ランを着ていて、しかも長い学ラン。

 

スキンヘッドにリーゼント。

 

どう見ても一昔どころか二昔前の不良といったところか。

 

今時あんなのがいる事自体が驚きなんだが。

 

人数は10人前後。

 

しかも、視線は俺達の方を見ている。

 

……妙な予感を感じる。

 

もう、典型的なパターンが目に見えて来た。

 

男達は下卑た笑いを浮かべながら俺達の方に向かってくる。

 

周りの人達も関わりたくないのか、皆避けている。

 

「へっへっへっ、可愛い姉ちゃんがいるじゃねぇか」

 

「こりゃあかなりの上玉だぜ」

 

「おうおう、俺達と一緒に遊ぼうぜ」

 

典型的な誘い文句だ。

 

今時こんな誘い方で来る女の子はいないだろう。

 

いや、昔でもいないか。

 

アリサとすずかは俺の後ろに隠れる。

 

……背が低いからあまり意味がないようにも思えるが、まあ良いか。

 

周囲の人達もこちらを見ないように歩いている。

 

なるほど、こいつ等はここら辺で暴れてる有名な奴らなのか。

 

と言う事は多少手荒な事をしても大丈夫と言う訳かな?

 

「残念だが、彼女達は遊びたくないそうだぞ?」

 

俺は不良達の方を見ながらそう言い放つ。

 

「あん?」

 

「何だ? このガキ?」

 

「オメーには言ってねぇんだよ。さっさと帰ってママのオッパイでも飲んでな!」

 

「ギャハハハハハハハハ!!」

 

不良達は大笑いする。

 

「ふん、群れでないと行動出来ないのか、貴様等は?」

 

「……何だと?」

 

「このクソガキ……言わせておけば!」

 

不良達の様子が変わる。

 

やはりこの程度で頭に血を上らせるのだからやりやすいと言えばやりやすい。

 

「全員は離れていてくれ。この程度の奴ら……数のウチに入らない」

 

「うん」

 

「そやね。アレス君なら余裕やろね」

 

「気を付けなさいよ? 油断大敵よ?」

 

なのは達は少し離れる。

 

「来いよ。俺をそこら辺の子供だと思っていると……痛い目見るぜ!」

 

俺は左手を前に出して構える。

 

空手っぽい構えに見えるが、古流武術の型と思って貰えれば良いだろう。

 

「やっちまえぇ!」

 

「こんなガキ一捻りだぁ!」

 

一斉に襲いかかってくる不良達。

 

俺は冷静に対処すべく、様子を見る。

 

まず、1人目が上から殴りかかってくる。

 

上背を生かした力任せのパンチだ。

 

そうそう、目の前の不良達の身長は平均180㎝位だ。

 

皆、体格が良い方だ。

 

最も、体格が良いからと言って勝負に勝てるのかは別物だが。

 

「ふっ!」

 

俺は手首を掴み取り、勢い良く投げる。

 

「どわぁ!?」

 

1人目は地面に叩き付けられてその場で身動きが取れなくなる。

 

一応、手加減はしてるからそんなに大きな怪我はしてないだろう。

 

「こ、このやろぉ!」

 

続けて2人目がミドルキックを繰り出してくる。

 

意外と良い形に蹴りを入れてくるが……。

 

「ふっ!」

 

俺はそれを足で止める。

 

交差するように相手の蹴りを止める。

 

「な!?」

 

「遅い!」

 

俺は相手の懐に潜り込み、下から掌底で相手の顎目がけてかする様に当てる。

 

「ぐがっ!?」

 

これで脳を揺らして一時的に動けないようにする。

 

「これで2人目」

 

「な、何だこのガキ……」

 

「恐ろしく強い……」

 

不良達は少し躊躇している。

 

周りの方も驚いた様でざわざわと少し騒がしい。

 

「こんなガキ1人に何手こずってやがる! 一斉にかかれぇ!」

 

リーダー格らしい男が指示を出す。

 

俺の周りに取り囲むように来る不良達。

 

見ると、いつの間にか鉄棒やナイフとかを取り出している。

 

周りのギャラリー達もさらにざわめいている。

 

さて、警察が来ると色々面倒だな。

 

普通にやっても勝てるし。

 

ここは二度とこういう事をしないように恐怖を植え付けておく必要がある。

 

となると、攻撃をかわしていても効果は少ない。

 

攻撃を喰らって無傷なら……普通の人は恐怖する。

 

やはり、この線で行くか。

 

この大勢の観衆の中でやるのは少し気が引けるが。

 

「はあ~、やるしか無いか~」

 

「アレス君! 後ろ!」

 

なのはの声が聞こえる。

 

まあ、後ろから攻撃が来るのは分かってるが。

 

「後ろががら空きだぜぇ!」

 

と言う声と同時に頭に何かが当たる感触がする。

 

ゴィンと音が聞こえる。

 

鉄で出来た何かで殴ったのだろう。

 

「……な、何なんだよ……てめえは……」

 

俺は後ろを振り返る。

 

不良が持っていたのはこのアーケード街の真ん中に設置している自転車に乗ってはいけないと指示した赤い看板。

 

結構大きめでこれを振り回すのはなかなかの力がいると思うが。

 

だが、相手が悪かったな。

 

「相手が悪かったな」

 

俺は男が手に持っている看板の支柱部分を握る。

 

 

 

グシャ

 

 

 

 

アルミ缶を潰す様に、難なくと支柱部分が潰される。

 

「ひ、ひぃ!」

 

周りのギャラリー達も息を呑む声が聞こえる。

 

「残念だが、そんなもんで俺を倒そうと考えない方が良いぜ?」

 

俺は人指し指を立てて、それを左右に振る。

 

周りの不良達も動きが止まっている。

 

「さて、噛みつく相手を間違えたと言う事をしっかりと教えてやろう」

 

俺は指をゴキゴキと鳴らしながら不良達に近づく。

 

不良達はその場に座り込んで後ずさりする。

 

〈お兄様?〉

 

〈ん?〉

 

〈警察が近づいていますわよ?〉

 

〈ん、分かった〉

 

エヴァからの念話が頭に響く。

 

「警察だ! ここを開けろ!」

 

観客達の後ろの方から男の声が聞こえる。

 

台詞からして警察のようだ。

 

〈警察が来たみたいだから逃げるぞ〉

 

俺はなのは達全員に念話を飛ばす。

 

なのは達は俺の方を見て頷いた。

 

「これに懲りたらもうこんな事は止める事だな」

 

俺はそう言うと、観客達の頭を飛び越えてその場から逃げ出した。

 

なのは達も同じように逃げ出したのであった。

 

 




 
厳島神社に行ってもこんなでかい鹿はいませんw


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第36話 修学旅行〈小学校編〉 後編

 

 

 

 

 

その後、俺達は市内を散策してから時間が来たので旅館に帰ってくる。

 

明日は海鳴市に帰るので、今日は最後のお泊まりである。

 

それだけに、結構今夜は騒がしくなりそうな……予感。

 

いや、昨夜以上の事は起こらないだろうと思う。

 

俺はそう思いつつも自室に戻って風呂に行く準備をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どうして……こう……なった……」

 

俺は息絶え絶えに呟いた。

 

今居るのは、女湯の更衣室だ。

 

周りでは女子の同級生達が興味津々で俺の方を見ている。

 

貴女方、みんな思春期を迎えたのですか?

 

「ほらほら、観念して脱げばええやん♪」

 

黙らっしゃい、この元凶(タヌキ)めっ!

 

どうしてこうなったのか―――――

 

 

 

 

 

 

 

「~♪」

 

口笛を吹きながら風呂場に向かっていると。

 

「お兄ちゃん♪」

 

俺の前に来たのはアリシアだった。

 

周りを見ると、特に誰も見当たらない。

 

「ん? どうした?」

 

「えへへ~お兄ちゃんを連行しに来ました♪」

 

「……なぬ?」

 

「もう、2日もお兄ちゃんと一緒にお風呂に入ってないの」

 

「ああ、そりゃ修学旅行に来てるから仕方ないよな」

 

段々ときな臭い予感を感じる。

 

「だから、一緒に入ろ♪」

 

「どうして、そこで『だから』になるのか理解出来ないんだが!」

 

「もう! お兄ちゃんは男だから細かい事は気にしないの! さあ、一緒にお風呂に入ろうよ~」

 

そう言って俺の腕を掴んでくるアリシア。

 

いかん、アリシアはフェイトと違って……。

 

「問答無用で連行だよ~♪」

 

「ウヲヲヲヲヲヲヲッ!」

 

アリシアの手をほどく事も出来ずに俺はそのまま連行された。

 

 

 

 

 

 

 

――――――と今に至る。

 

アリシアはフェイトと違って力に任せて事を進める事があるのだ。

 

……アリシアの名誉の為に言っておくが、脳筋とは少し違うのだぞ?

 

力持ちで素直なだけだ。

 

問題は、こんな事を画策した奴に問題があるのだ。

 

言うまでも無く、はやてである。

 

実は女湯にはこんな条件があったのだ。

 

 

『10歳以下の男児入浴可』

 

 

旅館の人に確認済みで、そんな事を聞いたのははやてだった。

 

俺はもう12歳を迎えているのだが、見た目はどう見ても10歳……いや、9歳と言っても通用する外見なのだ。

 

担任にばれたらエラい事になるが、それも対策済みで。

 

今の時間帯の監視人を……。

 

あろう事か、横島先生にしたのだ。

 

これもはやてが横島先生に交渉している。

 

……0.05秒で了承する横島先生の姿が目に浮かぶようだ。

 

ちなみに、混雑を避けるために2クラスごとに入る様に設定されている。

 

故に、クラス全員が俺と一緒に入る事を了承してしまえば……バレる事は無い。

 

思春期女子共の行動力を侮った俺が悪いのか……!

 

「くそ……帰ったらお仕置きしちゃる……」

 

俺はブツブツと呟きながらボクサートランクスを脱ぐ。

 

もう、こうなったら自棄である。

 

 

 

「わあ……」

「嘘……」

「昔見た、お父さんのアレみたい……」

 

 

 

 

女子達の声が聞こえる。

 

俺は動物園の珍獣扱いか?

 

女子達の視線は俺の男性専用アームドデバイスに向かっていた。

 

「さあ、アレス君に洗って貰わないと色々と欲求不満やからな!」

 

「そうだね。今日はたっぷりと洗って貰うからね」

 

はやてとすずかに両手を引っ張られて俺は中に入る。

 

うむ、男湯と大差ない作りだ。

 

中は当然だが女性しかいない。

 

……たまに小さな男の子らしいのはいるが。

 

 

 

『……ジュルリ』

 

 

 

背筋に何か冷たいモノが走ったんだが。

 

「……なんか、肉食獣に狙われる草食動物の気分なんだが」

 

「あら、あそこに横島先生がいるわよ?」

 

アリサが指を指し示す先には、目をぎらつかせて俺の方を見る横島先生がいた。

 

バスタオルも身体に巻かず、腕を組んで威風堂々といった感じで立っています。

 

……隠せよ。

 

「素晴らしい……!」

 

横島先生は唐突にそんな事を言ってくる。

 

「……聞きたくは無いのですが。何が、素晴らしいのですか?」

 

「決まっているだろう? 君みたいな小柄な少年が……そんな逞しいイチモツを持っている事にだよ」

 

横島先生の視線は俺の股間の男性専用アームドデバイスに向けられている。

 

「見ていても何もありませんよ?」

 

「何を言う。しっかりと目に焼き付けて今後のおかずにするんだ」

 

しっかし、最悪な先生だよな。

 

「……好きにしてください」

 

「……何……だと? それなら今夜は私の……」

 

「それは却下です」

 

危なかった。

 

この先生には言葉を選ばないと恐ろしい事になる。

 

「……それにしても……だ。君達は……」

 

横島先生はジロジロと俺達を見る。

 

「全員、ツルツルが好みなのか?」

 

……?

 

一体、何の事を言ってるんだ?

 

「何を仰ってるんですか?」

 

なのはは不思議そうな表情を浮かべている。

 

「何、君達の下手な大人顔負けの体型なんだが……。アソコは毛が生えていないのかと……」

 

そう言う事か。

 

まあ、確かに横島先生の言うとおり、俺はアームドデバイス周辺に毛は1本も生えていない。

 

だが……。

 

なのは達も何故か毛が生えていないのだ。

 

世界の修正なのか、よく分からないが。

 

彼女達も……いわゆるパ○パンなのである。

 

一部のマニアには大ウケなのだろうな。

 

「あ~。そう言えば、私達……」

 

「生えてない……わね」

 

フェイトとアリサがお互いの股間を見ながら苦笑している。

 

「まあ、アレス君がボーボーになるのは許されへんがな!」

 

「そうだね。生えたら剃ろうね」

 

満面の笑みで俺を見るすずか。

 

安心しろ、前世の前世でも生える事はなかったのだから。

 

 

 

「……無毛(パ○パン)六歌仙と呼ぼうか?」

 

 

 

「横島先生? 少し頭を冷やしてあげましょうか?」

 

「……遠慮しておく」

 

なのはの笑顔に見えない笑顔に顔を青くする横島先生。

 

「まあ、とりあえず。後で私の身体を洗って貰うからな」

 

「ゑ?」

 

「八神とそう言う契約を結んだのだからな」

 

「……」

 

俺ははやての方を見る。

 

「……」

 

はやては頬に冷や汗を流しながら俺から視線を逸らす。

 

「……後日に石抱き(ソロバン責め)だな」

 

「堪忍や!」

 

顔を青くするはやて。

 

ちなみに、石抱きとは十露盤(そろばん)板と呼ばれる三角形の木を並べ、その上に囚人を正座させ、さらにその太ももの上 に石を載せる。

 

江戸時代の拷問である。

 

前世の前世でもやられた事があったが。

 

痛いなんてもんじゃなかったな!

 

「まあ、24時間鬼ごっこだな」

 

「……それも堪忍やけど……」

 

「ま、帰ってから考えるか」

 

そんなこんなで風呂に入る事になった。

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ~、良い湯だった」

 

部屋に帰ると好雄と学がやたらに睨む様な目つきで俺の方を見る。

 

「……お前、何処の風呂に行ってた?」

 

わざわざ俺の事探したのか。

 

「は? 何言ってるんだよ。一緒に風呂に入ってたじゃないか」

 

「嘘だッ!」

 

学が間髪入れずに返答する。

 

背後に鉈を持ってセーラー服を着た栗色髪の少女(竜宮レナ)が見えるんだが。

 

……幽波紋(スタンド)

 

「ネタは上がってるんだぜ?」

 

「……何の事だ?」

 

「匠のヤツが、こんな写真を持っていたんだ」

 

好雄が差し出した手には。

 

アリシアに連行される俺が写ってる写真が。

 

「……」

 

思わず閉口する。

 

「てめぇ……もしや……女湯に行ってたんじゃ……」

 

好雄と学の背後には金剛力士像の姿が見える。

 

こんな所で阿吽の呼吸を合わせんでも。

 

つーか、ポラロイドカメラ持ってきてたんかい。

 

「……そこら辺は想像に任せる」

 

「殺ろーす! 氷室先生に報告だ! 好雄!」

 

「おうよ! 今度こそ……このハーレム野郎に人誅を下してやる!」

 

好雄はエラい勢いで部屋から出ていった。

 

「……」

 

「まあ、ご愁傷様?」

 

ニヤニヤ笑う匠が俺の方を見る。

 

「……元凶が何を言うか」

 

 

 

 

 

 

 

 

30分後。

 

「……ただいま」

 

元気が無い好雄が帰ってくる。

 

「……どうした?」

 

「……氷室先生に言ってみたらさ、『その時間の担当は横島先生だから横島先生に聞いてみて?』って言われたんだ」

 

「そしたら?」

 

「『藤之宮君? 何言ってるの? 男湯に入っていたんじゃないの?』だってさ。証拠の写真見せても……」

 

「見せても?」

 

「『これってアリシアさんが藤之宮君を引っ張ってるだけじゃない。これが女湯に連れ込んでる証拠?』だって」

 

「……確かに……アリシアちゃんがアレスを引っ張ってるだけだよな……」

 

好雄と学は写真を眺めながら呟いてた。

 

うむ、横島先生に任せて正解だったと言う事か。

 

同級生達もばらす事はしないだろうし。

 

なんだかなぁ。

 

俺は何となく釈然としなかった。

 

 

 

 

 

 

 

さて、今夜は修学旅行最後の夜だ。

 

昨夜はなのは達の部屋でそのままお泊まりしてしまったので今夜は大人しくしておこうと思う。

 

これ以上は好雄と学が発狂してしまいそうだ。

 

……今でも充分発狂しているが。

 

「さて、折角だから……旅館内を少し散歩してから就寝しようかな」

 

俺は部屋から出て館内をうろついてみることにしてみた。

 

ちなみに、俺以外のヤツは全員他の部屋に遊びに行っている。

 

何処に行ってるかは知らないが。

 

 

 

 

 

 

 

「藤之宮君♪」

 

「ん?」

 

呼び止められる声が聞こえたのでそちらの方を見る。

 

見ると、同じクラスの女子が4人。

 

「どうしたんだ?」

 

「えへへ~」

 

女子達は妙な笑いで俺の方を見る。

 

非常に嫌な予感を感じる。

 

「……さて、そろそろ寝る時間だ」

 

俺はきびすを返して部屋に戻ろうとする。

 

「逃がさないよ~?」

 

女子達が俺の身体を掴む。

 

実に最悪の展開だった。

 

「お、おのれら……どこに……」

 

「さあ、可愛い男の子をご招待~♪」

 

「人の話を聞けぇ!」

 

俺はそのまま連行される。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何だコレは」

 

連れて行かれた先は案の定、なのは達の部屋。

 

だが……!

 

 

 

「キャハハハハハハハハ!」

「アレスが襲ってくれないから……私はいつでも準備オッケーなのに……」

「お兄ちゃんの浮気者! 早くあたしを襲ってよ!」

「アレス! アンタ……何で3人もいるのよ! 良いから早くあたしにいじめられなさいよ!」

「アレス君……アレス君の血が欲しいよ~……」

「さあ、アレス君のアームドデバイスをやね……」

「藤之宮……食べて良いかい? むしろ食べさせろ!」

 

 

 

 

顔を真っ赤にしているなのは達+横島先生がいた。

 

な、何だこの状況は……。

 

俺は呆然となのは達を見ていた。

 

「……えへへ、来てみたらこんな状況でさ」

 

「こうなったらアレス君を連れて来るしか無かったんだよね」

 

つまりは生け贄と言うヤツか?

 

言うか……なのは達の近くに転がっている……空き缶。

 

チューハイと呼ばれるお酒です。ありがとうございました。

 

40缶近く転がってるぞ。

 

1人頭5本を超える計算なんだが。

 

つまり、彼女達は酒に酔っていると言う状況だ。

 

……ばれたらシャレにならんだろ!

 

〈お兄様……〉

 

〈……彼女達が出ていったら防音結界を張っておこう〉

 

〈その方が良いですわね〉

 

「……ああ、分かったよ。彼女達のおもりは俺がしておくから」

 

「ごめんね、アレス君」

 

そう言って同級生の女子達は部屋から出ていった。

 

「さて……」

 

俺は防音結界を展開しておく。

 

これで音が部屋の外に聞こえる事は無いだろう。

 

「これはどういう事ですか? 横島先生?」

 

元凶は明らかに横島先生以外いない。

 

「……いや、これには太平洋の海溝よりもふか~い事情が……」

 

「なるほど。どうやら肩がこってるみたいですね?」

 

「へ? それはどういう……?」

 

俺は横島先生の背後に回り、両肩を掴む。

 

「揉みほぐしてあげましょう」

 

「い、いや……別に肩は……いたたたたたたたたた! い、痛い!」

 

問答無用で俺は横島先生の肩を揉む。

 

「おやおや、結構こってるじゃないですか♪」

 

「べ、別にこって……と言うか……見た目に寄らず君は力が強いんだな!」

 

「ええ、外見に騙される人が多いです」

 

「だ、だから! 肩が! 骨が砕ける~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐは……」

 

畳に突っ伏している横島先生。

 

そして、俺は酔っ払い達に取り囲まれていた。

 

もはやへべれけで言語がおかしい。

 

素面でもたまにおかしい時はあったが、今回は酔っているから余計におかしくなっている。

 

「私の酒が飲まれへんのかぁ!」

 

はやては絡み酒みたいだ。

 

〈お兄様……〉

 

〈言いたい事は分かる〉

 

〈気を付けてくださいね?〉

 

俺は酒はそれなりに強いが、許容限界を超えると記憶が無くなる。

 

前世の時も、前世の前世の時もそれでエラい事になっている。

 

「分かったよ」

 

俺ははやてから梅酒のチューハイを貰ってから飲み始める。

 

それからと言うもの、全員が俺に酒を勧めて……。

 

記憶が無くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……うん」

 

やけに肌寒いんだが、何か……暖かくて柔らかい感触が。

 

ってちょっと待て。

 

俺は寝ぼけた頭を覚醒すべく、目を開ける。

 

左右を見るとなのは、フェイトが俺に抱きついている。

 

どういう訳か、俺は全裸。

 

しかも、なのはとファイトも全裸。

 

昨日よりも状況が悪いじゃねぇか!

 

股間の男性専用アームドデバイスは天に届かせようと建設した塔(バベルのとう)よろしく、真っ直ぐ起立している。

 

これは男の朝の現象ゆえにどうしようもないのだ。

 

「はあ……」

 

ため息しかでない。

 

多分……大丈夫と信じたい。

 

酒に酔った勢いで肉体関係を持ってしまうのは……どうかと思う。

 

しかも、まだ12歳なんだぞ!

 

 

 

「……ドキドキ」

「……これは……!」

「直に見ると……」

「凶器に見えるわね……」

「……しゃぶりたい」

 

 

 

 

声が聞こえるのでそちらの方を見ると、なのはとフェイト以外のメンツが目を覚まして俺の方を見ている。

 

視線の先は勿論、そそり立つ男性専用アームドデバイス。

 

ちなみに、最後の台詞は横島先生だ。

 

「見物料取るぞゴルァ!」

 

「身体で払ってええよな? むしろ払わせてぇな!」

 

頬を赤くして両手を胸の前でツンツンとつついてるはやてがそう言う。

 

……全裸だし。

 

「それ以外にしやがれ」

 

「え~? 私の身体じゃ駄目なんかぁ……」

 

そう言って自分の胸を揉んでるはやて。

 

……まあ、充分なのだが。しかしそれを言うと面倒なので言わない。

 

言うか、他のメンツも全裸だった。

 

横島先生、何で貴女も全裸なのですか?

 

「む? 皆が全裸になるなら私も全裸になるしかあるまい?」

 

なにそのドヤ顔。

 

全裸になる必要性が無いだろ。

 

「ほれほれ、小娘には無い大人の魅力が満載だろ?」

 

そう言って自分の胸を下から掴んで揺する横島先生。

 

あんた……それでも教師か?

 

「何を……やりたいのですか?」

 

「とりあえず、パイ○リ。先っちょをペロペロと舐めてあげるぞ?」

 

「訴えて良いですか?」

 

「全く、冗談が分からんヤツだな……」

 

貴女の冗談は冗談に聞こえないのです、横島先生。

 

「にゃはは……おはよ、アレス君?」

 

「アレス……おはよ?」

 

気が付くとなのはとフェイトも目を覚ましていたみたいだ。

 

「おはよう、なのは、フェイト」

 

「今日もアレス君のソレは元気だね?」

 

「うん。ソレで突かれたらどうなるんだろうね?」

 

なのはとフェイトの頬は赤い。

 

視線は俺の男性専用アームドデバイス。

 

「どうなんだろう……なぁ?」

 

「……という訳で……や! 私が実験体になってあげるわ! さあ、ガンガン突いてええで!」

 

朝から何を暴走してるのか、このタヌキは。

 

「朝から暴走するな。いい加減に服を着ろ」

 

「え~? ええやん。もうちょいこのままでええやろ?」

 

「何故に」

 

「アレス君のソレを頭に焼き付けておきたいからや」

 

……もう、何て言って良いのやら。

 

ちなみに、アリサとアリシアとすずかは先程から無言で俺の男性専用アームドデバイスをじっくりと眺めている。

 

目を見開いて、頭に焼き付けているのだろう。

 

ツッコミを入れるのは止めておいた。

 

 

 

 

 

 

 

「申し開きは?」

 

「何を申し開けと?」

 

部屋に帰ると案の定、好雄と学がいた。

 

背後に金剛力士像のオーラを出しながら。

 

「また朝帰りだと……! 何処の部屋にいたのか……言えぇ!」

 

「ノーコメントだ」

 

「畜生……証拠さえあれば……!」

 

「このハーレム野郎に人誅を下せるのに!」

 

2人は血の涙を流しながら着替えている。

 

……そう言えば、なのは達はあれだけ飲んだにも関わらず……二日酔いしてなかったな。

 

恐るべし!

 

 

 

 

 

 

 

広島駅に着いた。

 

後は新幹線に乗って海鳴市に帰るだけだな。

 

しかし、今回の修学旅行はなかなかドタバタしたよな。

 

鹿・グレートと不良達の戦い。

 

女風呂連行事件。

 

……中学校に行って修学旅行に行ったらどうなる事やら。

 

何となくだが更に恐ろしい事になりかねないが、まあそん時はその時だ。

 

さあ、海鳴に帰るかな。

 

 

 

 

 

 

 

〈なあ、昨晩は酔ってたから記憶に残ってないんだが。俺は一体何をしたんだ?〉

 

新幹線で俺はエヴァに念話で聞いてみる。

 

ちなみに、マルチタスク使用しているので問題はない。

 

〈えっと……皆様を口説いていました〉

 

……。

 

〈横島先生もか?〉

 

〈いえ、横島先生は早々と酔いつぶれていました〉

 

〈そうか。で、だ。俺は彼女達と肉体的な関係を持ってしまったのか?〉

 

〈……そこは大丈夫です。私が皆様を眠りにつかせました〉

 

ナイスだ、エヴァ!

 

〈ナイスだ。さすがにこの年齢でなおかつ酒の勢いとかもはやシャレにならん〉

 

とりあえずは、エヴァに感謝する。

 

〈その後は私がお兄様のアームドデバイスを……〉

 

〈ちょっと待て〉

 

〈えへへ、冗談ですわよ?〉

 

〈……かなりのブラックなジョークなんだが〉

 

こうして新幹線での時は流れる。

 

ちなみに、俺はなのは達の膝の上に座らされるハメになっていたのが。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま~」

 

海鳴駅で解散となり、そのまま家に直帰した。

 

なのはとフェイトとアリシアはそのまま自分の家に戻り、アリサとすずかも今日は自宅に戻るとのこと。

 

はやても途中で別れて同じように家に帰る。

 

「おかえり、アレスちゃん」

 

「おかえりです~お父様~」

 

「……何故に?」

 

出迎えに来たのはリインフォース・(アインス)とリインフォース・(ツヴァイ)の2人だった。

 

言うのを忘れていたが、昨年にはやて専用のユニゾンデバイスを作る事になって出来上がったのがツヴァイの方だ。

 

見た目は似た様な雰囲気で髪の色とか瞳の色が違う位でそっくりなのだ。

 

何故に俺の事を『お父様』と呼ぶのかというと。

 

アインスをベースに俺がエヴァに入っているユニゾンデバイスのデータを取り入れて作成したからだ。

 

無論、俺1人で作ったわけではないが。だが、かなり関わったのは事実でもある。

 

それをあろうことか、はやては『悔しいけど、アインスとアレス君の子供やな!』と言い。

 

それに気を良くしたアインスが『ならばお父様と呼ばせるしか有るまい!』と暴走。

 

結局、そのまま俺が父親扱いになってしまったのだ。

 

……もう反論する気は起こらなかった。

 

ちなみにシグナムとシャマルがかなり嫉妬していたのは見なかった事にする。

 

「つれない事を言うな。ツヴァイがアレスちゃんに会いたいと言うから来たんだ」

 

その割には貴女も嬉しそうにしてますね、アインス?

 

尻尾が生えていたらハタハタを振っている様な感じだ。

 

「お父様に会いたかったです~」

 

そう言って俺に抱きついて来るツヴァイ。

 

ちなみに、ツヴァイの身長は90~1mの間位だ。

 

親子と言うより兄妹と言った方が違和感無いだろう。

 

「全く、甘えん坊だな」

 

そう言って俺はツヴァイの頭を撫でる。

 

「えへへ~」

 

「お兄様……私もお願いします」

 

いつの間にかエヴァも実体化して俺の後ろから抱きついている。

 

「エヴァ伯母様は後です~!」

 

「だから、私は伯母じゃないです!」

 

まあ、確かにアインスの姉だから伯母で合っているのだが。

 

でもユニゾンデバイスのデータを提供したのはエヴァだから……。

 

一応は母親なんだろうがな。

 

「やはり、はやてさんは一度氷漬けにした方がよろしいですわね……!」

 

黒い笑みを浮かべてるエヴァ。

 

エヴァを伯母扱いしたのははやての仕業なのだ。

 

「ほらほら、2人とも落ち着けって」

 

俺は2人の頭を撫でる。

 

「は~い」

 

「はいです……」

 

頬を赤くして笑みを浮かべてるツヴァイをエヴァ。

 

「……羨ましい……。私もアレスちゃんにああやって頭を撫でて貰いたい……」

 

羨ましそうに俺の方を見るのはアインス。

 

確かに、アインスの身長はシグナムと大差無い165㎝。

 

※作者独自の解釈です。公式ではありません。

 

俺より30㎝高いアインスの頭を撫でるのは無理である。

 

最も、俺が宙に浮かんで頭を撫でれば良いだけの話だが。

 

「それはそうと、母さんは?」

 

「直美さんですか?直美さんは翠屋の手伝いですよ?」

 

そうか、今日は手伝いの日だったか。

 

そう言えば、母さんが手伝いを始めてから売り上げが上がったと桃子さんは喜んでいたな。

 

看板娘の1人だ~って。

 

……看板娘って言う歳でも無かろうに。

 

 

 

 

『アレスちゃん? 今夜は食べさせてあげようかしら?』

 

 

 

 

ゾク……!

 

俺は背筋に恐ろしく冷たいモノを感じる。

 

これ以上は、ヤバい。

 

シャレにならん。

 

年齢の事は気にしない事にしよう。

 

……ちなみに、母さんの年齢は28歳である。

 

見た目はどう見ても中学生くらいにしか見えないが。

 

いや、小学校高学年かもな。

 

これ以上は……言わせないでくれ。

 

「まあ、勝手知ったるなんとやらだ。私が留守番を頼まれた」

 

「なるほど……」

 

下手な泥棒来ても泥棒が可哀想になるだけだな。

 

「そう言えば、シグナムとシャマルは?」

 

「ああ、シグナムは隣町の剣道場の稽古、シャマルは管理局で回復魔法と支援魔法の講師だ」

 

なるほど、そう言う事か。

 

「ヴィータとザフィーラは?」

 

「ヴィータは敬老会の誘いでゲートボール、ザフィーラは家で留守番兼鍛錬だ」

 

「聞くまでもないが、シグナムとシャマルの様子は?」

 

「無論、歯ぎしりして悔しがっていたぞ?」

 

……予想通りでした。

 

アインスが実に嬉しそうに語っている。

 

「お父様♪私もお父様とユニゾンしたいです♪」

 

「……ツヴァイ? ツヴァイははやてとユニゾンする様になってるんだよ?」

 

ツヴァイがニコニコしながら俺にそう言ってくる。

 

満面名笑みだが、ここはきちんと教えておかないと。

 

「え~? アインスお母様やはやてお母様は許可してくれましたよ?」

 

……何となくだが。妙な予感を感じる。

 

「……つかぬ事を聞くが、2人からどんな事を聞いたのかな?」

 

俺は優しく聞いてみる。

 

「えっとですね。お父様のアームドデバイスを私のここに挿入すれば良いと……」

 

 

よっし、2人は後で全殺し(ホームラン)だ。

 

 

無垢なツヴァイに何を教えてるんだ!

 

「アインス?」

 

「……娘の為に教えただけです」

 

頬に冷や汗を流しながら俺から視線を逸らすアインス。

 

「おのれら主従コンビは今度の土曜日は24時間鬼ごっこの刑な」

 

「そ……それは……」

 

ダラダラと脂汗みたいな感じで汗を流すアインス。

 

ちなみに、以前は24時間笑ってはいけない刑だった。

 

笑うと年末にやってる笑ってはいけないシリーズの様に黒いしなやかな棒で尻を叩くのだ。

 

長年生きた経験でありとあらゆる笑いを誘う手法で2人を地獄に追い込んだのだ。

 

叩く人は交代でなのは、フェイト、アリシア、アリサ、すずか。

 

アリサは恍惚表情で叩いていたのを俺は見逃さなかった。

 

……アリサ本人は気付いていなかったみたいだが。

 

「ツヴァイ? それはちょっと厳しい願いだが、今度一緒に寝てあげるからそれで勘弁な?」

 

「それでも良いです~お父様と一緒に寝ると凄く暖かくて気持ちいいです~」

 

ちなみに、ツヴァイは俺限定で抱きつく癖があるみたいだ。

 

はやてとかアインスとかだとたまにしかしないらしいが、俺の時は100%抱きついてくる。

 

別に、俺の体温は高い訳じゃないんだがな。

 

「それじゃあ、お父様~遊びましょう~」

 

ツヴァイが俺の手を引っ張る。

 

「はは、分かったよ」

 

「申し訳ないです、旅行から帰ってきたばかりなのに……」

 

「これくらいなら大丈夫だ」

 

俺達はリビングに行ってからゲームをするのであった。

 

 

 




 
ツヴァイファンの皆様、ご安心下さいw


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幕間  妹《なのは》は思春期

 
こんな妹は大丈夫ですか?


 

 

「お兄ちゃん、男の人ってこんなに出るの?」

 

「ぶほっ!」

 

 

 

妹・なのはの問いかけに兄・恭也は盛大にお茶を噴き出していた。

 

どうしてこうなったのか。

 

少しだけ時を戻してみる――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にゃあ……こんなに出るんだ……」

 

顔をリンゴの様に真っ赤にしているのはご存じ、高町家次女のなのは。

 

彼女は自室で本を読んでいた。

 

今年の3月で11歳を迎えた彼女。(なのはは早生まれの為、1歳皆と離れている)

 

身長は157㎝と平均を少し上回って大人びた体型になっている。

 

だが、今はまだ成長期でこれからも大きくなるのだ。

 

そして、彼女は思春期真っ盛りであった。

 

「すずかちゃんから借りてみたけど……大人の人ってこんな事するんだ……」

 

彼女が今読んでいる本は……大人専用漫画だった。

 

つまりは、『18歳以下が読んではいけません!』と言う本である。

 

レディースコミックならまだアレなのだろうが、彼女が読んでるのは男が読むタイプの方である。

 

※作者はレディースコミックを読んだ事ないのでよく分からない。

 

「にゃあ……凄い……大きい……」

 

彼女は一心に漫画を読んでいる。

 

ちなみに、こういう漫画の大半の男性専用アームドデバイスは大きめに描かれている。

 

【マスター、この計算でいくとアレスのを受け入れた場合は……】

 

「レイジングハート、それは言わないで……」

 

彼女は幼馴染みのアレスの男性専用アームドデバイスを思い出していた。

 

長く、太く、少し反り返っているソレは彼女の目には逞しく見えていた。

 

「これは……みんなと話し合わないと駄目だね……」

 

今の状態ではちょっとスプラッタな事になるのは目に見えていた。

 

「受け入れるには準備がいるね……」

 

そんな事を呟きながらページをめくる。

 

「にゃ! これ……こんなに出るの!?」

 

そこには男性専用アームドデバイスからの砲撃シーンが描かれていた。

 

液体が多量に発射されている。

 

ソレを見た彼女は顔を少し青くする。

 

「うわ……こんなに出たら……お腹が……」

 

そう言って自分のお腹をさする。

 

ちなみに、男性専用の雑誌では液が出る量がパンパ無く描かれている。

 

「こんなに出たら……双子とか三つ子になっちゃうよ……」

 

そんな事を呟きながらそのページを注視している。

 

「……アレス君もこれくらい出すんだろうね?」

 

【そうですね。アレスの事ですから、これの3倍は出すかと】

 

「3倍!? 無理だよ~! こんなに出されたら……お腹がパンパンになるよ~!」

 

なのははベッドの上でバタバタと暴れている。

 

見た目は可愛いらしく見えるが、喋ってるのを聞くと本当にロクでもなかった。

 

【しかし、こうして漫画で見ているだけでは想像の域を出ません。やはり、ここは聞くなり見せて貰うなりした方が良いかと】

 

「そうだね……。確か、百聞は一見にしかず……だっけ?」

 

【少しニュアンスが違うように思いますが、おおむねそんな感じですね】

 

「にゃあ……さすがにアレス君に聞くとか見せて貰うのは……」

 

頬に両手を当ててから顔を隠すなのは。

 

【それでしたら、家族の誰かに聞いてみるのは?】

 

「そうだね……お父さんかお兄ちゃんに聞いてみるかな……」

 

【士郎さんでは卒倒しかねません。ここは兄の恭也さんに聞いてみるのは?】

 

「そっか、お兄ちゃんなら忍さんと仲が良いから知ってるかも」

 

なのははそう言うと本を手に持ってベッドから立ち上がる。

 

【恭也さんは確か……今日は部屋でレポートをすると言ってましたから隣の部屋でしょう。反応もあります】

 

「ありがと、レイジングハート」

 

【どういたしまして】

 

なのははレイジングハートに礼を言うと本を持って部屋から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

「ふう……後少しだ……」

 

恭也は右手で左肩をトントンと叩いていた。

 

大学4年生になってからは卒業に向けて論文を作ったり、レポートの量が増えたりと忙しい日々が続いている。

 

恋人の忍と充実した毎日を過ごしている。

 

彼自身、特に問題ないと思っている。

 

「……しかし」

 

時々思うのは末っ子のなのはの事。

 

最近は背も伸びて身体が女らしく丸みを帯びてきている。

 

将来は美人になるな……と少し誇らしくも思っている。

 

一緒に朝の稽古をしたりとコミュニケーションも良好。

 

ただ、隣にいる幼馴染みのアレスの事になると……少し、暴走する事がある様だ。

 

5歳(なのははまだ4歳だった)の時に知り合ってからはいつも一緒に遊んだりしている。

 

小学3年生の時に魔法を知ってからは更に仲が良くなっているみたいだ。

 

「だが……たまに……ここを見るのは……何故だ?」

 

そう呟いて恭也は自分の股間を見る。

 

たまになのはは恭也の股間部分を凝視することがあったのだ。

 

「……まあ、あの年頃になると性教育を受けるのだから知ってはいるのだろうが」

 

それにしても、明らかに興味津々な様子の時もあるのだ。

 

ただ、それが最近は回数が増えたようにも思える。

 

ひょっとして、なのはもそう言うのに興味が出てきたのだろうか。

 

幸い、その手の本は買ってないから問題は無い。

 

「なのはにはまだ早いな」

 

なのははまだ中学生になってないのだ。

 

そう言うのはまだまだ先の話。

 

……隣のアレスもそう言う事はしっかりしてるみたいだし。

 

「さて、もう一息だな」

 

恭也はシャーペンを持った時。

 

 

 

コンコンコン

 

 

 

 

ドアから聞こえるノック音。

 

「誰だ? 開いてるから入って良いぞ」

 

恭也はドアに向かってそう言う。

 

「……ごめんね、忙しいところ……」

 

「なのはか……」

 

ドアを開けて覗かせてきたのはなのはだった。

 

「入って良いぞ」

 

「お邪魔します……」

 

ゆっくりと中に入ってきてテーブルの所に来て座る。

 

「どうした? 何かあったのか?」

 

恭也は机から立ち上がってなのはの対面に座る。

 

「えっと、お兄ちゃんに聞きたい事があって……」

 

「そうか。お茶はいるか?」

 

「うん」

 

恭也はそう言って備え付けのポットからお茶を出してなのはと自分の前に置く。

 

「ありがと……」

 

なのははそう言って左手で湯飲みを持ってからお茶を飲む。

 

……?

 

右手に何か持ってる?

 

恭也はそんな事を思いつつ湯飲みを持ってからお茶を飲む。

 

「どうした? 何か悩み事か?」

 

「うん……」

 

妹の悩み事を聞く……。兄として頼られているな。

 

少し誇らしく思う恭也。

 

「答えられるかどうかは分からないが、言えばすっきりする事もある。遠慮無く言ってくれ」

 

「……うん」

 

そう言ってなのはは後ろに隠している右手を自分の前に差し出す。

 

そこに持っていたのは、恭也も予想だにしなかったモノだった。

 

「……は?」

 

恭也は自分の目を疑った。

 

大人専用の漫画本だったからだ。

 

 

 

年端もいかないなのはが何故、こんなモノを持っているのか。

 

こんなモノを持って何故自分の部屋に来たのか。

 

そして、何を聞こうとしてるのか。

 

 

 

恭也の頭の中で様々な情報が迷走していた。

 

頭を落ち着かせる為、恭也はお茶を一口、口に含む。

 

なのはは顔を赤くしながらページをめくる。

 

そして、あるページで止まる。

 

そこは、男性キャラが女性キャラに向かって男性専用アームドデバイスから放出する液体を大量にかけているシーンだった。

 

なのはは一呼吸おいてからこう言った。

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん、男の人ってこんなに出るの?」

 

「ぶほっ!」

 

 

 

 

 

恭也は盛大にお茶を噴き出してしまった。

 

幸い、なのはの方に向かってはいない。

 

「ど、どうしたの!? お兄ちゃん!?」

 

「ゴホッ! ゴホッ!」

 

むせかえる恭也。

 

慌てるなのは。

 

少し咳き込んでから恭也は回復する。

 

「……こんな相談を受けたら誰でもむせる!」

 

「そうなの?」

 

なのはは不思議そうな表情を浮かべている。

 

「全く。色々と聞きたい事があるが、何故こんな事を聞いてくる?」

 

「えっと……ね」

 

なのはから事の経緯を聞く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言う訳なの」

 

「……」

 

恭也は眉間に皺を寄せ、こめかみに手を当てていた。

 

妹の……アグレッシブな行動にもはや絶句するしかなかった。

 

つまり、隣のアレスとこの漫画の様な事をしてみたいと。

 

幸い、アレスはそうならないように回避しているみたいだが。

 

すまない、ウチの妹が迷惑をかける……。

 

恭也は心の中でそう呟いていた。

 

「……お兄ちゃん?」

 

「……色々とツッコミたい事はあるが、1つだけ言っておこう」

 

間をおいてから恭也は言う。

 

「男の人はそんなに出ない。だから安心しろ」

 

とりあえず、この誤解だけは解いておこう……と恭也は思った。

 

「そうなの? 良かった~」

 

安堵のため息をつくなのは。

 

そして、更にとんでもない事をこの後言う。

 

「それなら、後はアレス君の大きさを克服しないとね!」

 

「……」

 

ソレを聞いた恭也はこう思った。

 

 

 

(……すまない、なのはを止める事が出来そうにない。アレス、こんな変態な妹だが……頼む)

 

 

 

遠い目をしながらお茶をすする恭也。

 

「ありがと、お兄ちゃん♪」

 

満面の笑みで立ち上がってから部屋から出ていくなのは。

 

左手には年頃の少女が持ってはいけない大人の漫画を持ちながら……。

 

「……」

 

恭也は少し疲れた様子で立ち上がり、机に座る。

 

「……アレだと嫁の貰い手は無いな」

 

そんな事を呟きながら恭也はシャーペンを走らせる。

 

「アレス、なのはを頼む」

 

恭也の呟きは虚空に消えるのであった……。

 

 

 

 




 
止めないレイハさんもレイハさんだよなw


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第37話 うわ、こんな転生望むヤツいたんだ

 
中学生になりました


 

 

 

 

 

「諸君、入学おめでとう」

 

壇上で挨拶をするのは、校長先生だ。

 

俺は今、私立聖祥大学付属中学校の入学式に出席しているのだ。

 

さてさて、原作の小説版では私立聖祥大学付属中学校は女子中だったのだが。

 

押し寄せる少子化の波に勝てずに今年から共学化したのだ。

 

小学校から一緒のヤツもいれば、家庭の事情、学力事情等で違う学校にいったヤツもいる。

 

まあ、人生は色々な事があるものだ。

 

出会いもあれば、別れもある。

 

と、感傷的な事を言ってみたが。

 

実際の所、なのは達と別れた訳でもない。

 

一緒の学校にきちんと来ているぜ?

 

まあ、違う所から来たヤツもいるから。

 

今もなのは達は周りからの視線に晒されているだけなのだが。

 

絶賛、俺も周りから『何で……小学生がここにいるんだ?』的な視線を受けている。

 

非常に鬱陶しいのだが。

 

ちなみに、なのは達の場合は。

 

全員……中学生にしては胸が大きくなっているからなのだ。

 

大きさの順位は。

 

 

 

アリシア=フェイト>アリサ>なのは>すずか>はやて

 

 

 

と言った順番か。

 

何故知っているのかと言うと。

 

彼女達は逐一、俺に大きさを報告してくるのだ。

 

「お兄ちゃん!とうとうDカップになったよ♪」

 

と嬉しそうに語るのはアリシア。

 

「私も負けてへんで~! Cカップやで~♪」

 

一番小柄なはやてですら日本人平均のCカップを突破しているのだ。

 

……1年前に比べたら、成長速度が早くなってるように思う。

 

ひょっとして、俺から何かを吸い取ってるんじゃなかろうな。

 

榊さんがちよちゃんから何かを吸い取ってるみたいに……。

 

 

※実際には何も吸い取ってはいません

 

 

まあ、たまにマッサージをお願いされて胸を揉んでいるのは事実なのだが。

 

前世の前世では嫁にやったが別に効果は無かったし。

 

前世でもエヴァに試してみたが、同じように効果は無かったし。

 

たまたまだろう……と思いたい。

 

とまあ、波乱に満ちた中学生活を送りそうな予感を感じてる。

 

 

 

 

 

 

 

「えっと……清祥小学校から来ました、高町なのはです。趣味は……身体を動かす事かな? よろしくお願いします」

 

なのははそう言って一礼した後、席に着席する。

 

「噂の六大美女の1人、なのはちゃん……!」

 

「うおぉぉぉ……全員勢揃いしているぞ……」

 

「このクラスで良かった……!」

 

ヒソヒソ声が聞こえる。

 

無論、男達の感想であるが。

 

俺となのは達は同じクラスになっている。

 

アリサとすずかの為に、若干だが女子の比率が多いのだ。

 

本来なら全員女子にしたかったらしいのだが、さすがにそれは厳しかったようだ。

 

ちなみに、その中に俺だけが入る格好にする予定だったとか。

 

……それはさすがに、やりづらいのだが。

 

まあ、なのは達全員は俺と一緒のクラスだったのでホクホク顔なのは言うまでも無かった。

 

にしても……だ。

 

クラスの女子の大半は俺の方を見て嬉しそうにしてるのは何故?

 

もしかして、全員……少年偏愛(ショタコン)と言う属性が付与されてるんじゃなかろうな。

 

それと、男子全員が嫉妬に狂った目で俺を見てくるんだが。

 

ううむ、中学生活も波乱に満ちてくるのは確定済みの様だな……。

 

 

 

 

 

 

 

「藤之宮アレスだ。よろしく」

 

俺は素っ気なく自己紹介を終える。

 

「ええ~? もっと何か言ってよ~」

 

そんな事を言うのは今年担任になった『美神先生』。

 

聞けば、小学時代に色んな意味で世話になった横島先生と氷室先生と大学時代の同級生だったとか。

 

変な所で変な縁があるものだ。

 

しかし、美神、横島、氷室……。

 

 

……。

 

 

…………。

 

 

 

あえて、何も言うまい。

 

それに分かる人にしか分かるまい。

 

「……とりあえず、こんな外見だけど飛び級とかそんなのじゃないぞ」

 

自虐的なネタに走ってみた。

 

「え……あれで同い年だったのか……」

 

「エターナルショタ……ますます欲しくなっちゃった!」

 

「恋人に欲しいけど……駄目なら義弟に欲しいなぁ!」

 

数々の独り言が聞こえてくるが、俺は聞こえない事にしておいた。

 

「はい、次の人お願いね~」

 

美神先生は次の人に自己紹介を促していた。

 

 

 

 

 

 

 

「にゃはは、改めまして……3年間よろしくね?」

 

満面の笑みで俺を見るなのは。

 

「光栄に思いなさいよ! あたしみたいな美女と一緒なんだからね!」

 

「アリサちゃんったら。でも、アレス君と一緒で良かった」

 

「うん。アレスと離ればなれになるとちょっと不安になる」

 

「まあ、ここら辺はご都合主義で一緒になると思っとったけどな!」

 

はやて、メタな発言は控えて貰おうか。

 

俺の席の周りに集まるのはいつものメンツである。

 

周りを見ると、羨望の眼差しの女子達と嫉妬溢れる眼差しの男子達が俺達の方を見ていた。

 

いつもの光景だったので俺は見なかった事にしておいた。

 

 

 

ガララ

 

 

 

教室後ろ側の扉が開く音が聞こえる。

 

誰か来たのだろう。

 

俺は別に気にする事無くなのは達を見ている。

 

「見つけた」

 

聞こえるのは男の声。

 

低い声でもなく、高い訳でもない声。

 

声の主はそんな事を言って……俺達の方に近づいて来る。

 

「?」

 

全員が怪訝な表情で俺の後ろの方を見ている。

 

「やあ、初めまして! 三千院(さんぜんいん)隼人(はやと)って言うんだ! よろしく!」

 

いきなり来た男はいきなり自己紹介を始めていた。

 

俺は後ろの方を見る。

 

そこには、銀髪で右目が真紅で左目が蒼いオッドアイの少年がいた。

 

いや、青少年と言った顔つきだろうか。

 

一言で言うと。

 

イケメン……である。

 

「……」

 

全員が呆然と自己紹介をした男……隼人を見ていた。

 

「あれ……? どうしたのかな?」

 

隼人は少し、戸惑った様子で俺達を見ている。

 

「……アレス、知り合い?」

 

「……」

 

アリサに問われたので、俺は無言で首を横に振った。

 

「えっと……? 私達に何か用……かな?」

 

はやてが戸惑った隼人に問いかける。

 

「いやぁ、ハニー達に会いに来たんだけど。これは誤算だったよ。アリシアちゃんまでいるなんて」

 

「……何であたしの名を知ってるの?」

 

「そりゃあ、知ってるよ。高町なのはちゃん、フェイト=T=ハラオウンちゃん、八神はやてちゃん、アリサ=バニングスちゃん、月村すずかちゃんだろ?」

 

 

 

「は?」

「ん?」

「あれ?」

 

 

 

はやてが呆然と隼人の顔を見て。

 

フェイトが少し考えていて。

 

なのはは何かが違ってるみたいなの……と言いたげな顔をしていた。

 

どうやらコイツは転生者みたいだ。

 

しかも、最近介入してきたみたいだからこっちの差違に気付いていない。

 

「……私、フェイト=テスタロッサですけど?」

 

少し頬を膨らませて不満そうな表情を浮かべてるフェイト。

 

「え? プレシアさん生きてるの?」

 

「勝手に母さんを殺さないでくれませんか?」

 

額に血管を浮かべてるフェイト。

 

どうみても怒ってますね。

 

「なあ……アンタ……私の義母さん知ってるんか?」

 

「……へ?」

 

隼人は驚いた顔ではやてを見る。

 

「ハラオウンって言ってたやん。アンタ、時空管理局に行ってるんか?」

 

「……あ、ああ……今日辺りにちょっと行ってみようかと……」

 

「……ふぅん……」

 

はやては舐めるように隼人の頭のてっぺんからつま先まで見ている。

 

「私はアンタみたいな人の事……聞いとらんけどなぁ……」

 

「……は……はは……ちょっと……用を思い出したよ……。これで失礼するよ……」

 

隼人はそう言うと俺達の方から離れ、後ろのドアから教室の外に出ていく。

 

ちなみに、はやてはミッドチルダでは『はやて=Y=ハラオウン』と名乗っているのだ。

 

こっちの世界では今まで通り『八神はやて』だが。

 

「何だったのかしら?」

 

「変な人……」

 

アリサとすずかはバッサリだった。

 

「変な人だったね~。それに、フェイトの事を何か間違えてたし」

 

「そうだね。まるで、私がリンディさんの義娘になったみたいだよ」

 

まあ、本来の流れならそうなっているのだが。

 

「まあ、ええわ。それじゃあ、今夜の予定はアレス君と合体と言う事で」

 

「ちょっと待て」

 

「どないしたん?」

 

「その予定はどっから降って湧いて出た?」

 

「ん? 今や」

 

「却下に決まってるだろ」

 

「いけず~」

 

はやてはいつも通りに戻ったみたいだ。

 

〈お兄様?〉

 

エヴァからの念話。

 

無論、皆には聞こえていない。

 

マルチタスクを使用しているからなのは達にも気付かれない。

 

〈ああ、どう見ても転生者だろ。あれで転生者でないなら俺も困る〉

 

〈ですわよね~〉

 

〈さあ、どうやって捕まえるかな。尻尾を掴んでから……だな〉

 

〈ですわね。と言うか、お兄様の事眼中に無かったみたいでしたけど?〉

 

〈どうせ『モブキャラ』としか認識していなかったんだろ。あの手の転生者には良くある事だ〉

 

〈あ~……なるほどです〉

 

〈どんな能力か。少し見極めてからにするか〉

 

〈そうですわね。もう少し、情報を集めてからにしましょう〉

 

俺とエヴァはそんな事を話し合ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

―――― 隼人 視点

 

 

 

くそ……。

 

折角原作キャラと接点が持てると思ったのに。

 

考えてみたらアリシアがいるならプレシアも生存してるはずだよな。

 

あの見習い駄神め……。

 

A's編から4年後の時代に送りやがって。

 

介入出来るのはStS編だけじゃねぇか。

 

中学校は女子中かと思ってたら共学でラッキー……と思ってたら。

 

なのは達は何か……小柄な小僧と一緒だったし。

 

ただのモブキャラだと思ったが。

 

まあ、いい。これから彼女達と関係を築けば良いだけだ。

 

さあて……どんな風にしようかな。

 

まずは、管理局に入局しておこうかな。

 

魔力はSSSだから即戦力になるだろうし。

 

そうすれば、段々と彼女達も俺の事を気に掛けてくるだろう。

 

よし、近々管理局に行ってみるか。

 

 

 

 

 

 

―――― 隼人 視点終了

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

トイレに行って部屋に帰ってくると。

 

なのは達が特大ベッドの上にいる。

 

今日はお泊まりの日だから、全員揃っているのはいつもの事だ。

 

問題は。

 

全員が下着姿だと言う事だ。

 

そして、部屋に流れている妙な曲。

 

 

 

 

チャーチャラリラリラリラリー♪

 

 

 

 

……真・女神転生Ⅱと真・女神転生ifと言うゲームに使用されている。

 

邪教の館ので流れる曲だった。

 

ああ、そう言う事ね。

 

邪教の館でやる事と言えば、悪魔合体である。

 

そう、悪魔『合体』である。

 

もうね、どうやってツッコミを入れたら良いモノやら!

 

ちなみに、音楽の音源はレイハさんとバルディッシュ卿から流れてきている。

 

大変だな、この2機のデバイスも。

 

「……まあ、ツッコミを入れさせて貰うが。何のつもりだ?」

 

元凶と思われるタヌキ(はやて)に問いかける。

 

「このBGMの通りや! 合体や合体! 7身合体やで!」

 

7身って。俺となのは、フェイト、アリシア、はやて、アリサ、すずか……と言う事か。

 

「合体結果が『我ハ外道スライム。今後トモヨロシク』になりそうなんだが?」

 

「ぐ……そ、そんな事あらへん! ひょっとしたら『女神』になるかも知れへんで?」

 

「素材に『珍獣(タヌキ)』が混じってる時点でそれは無いだろ」

 

俺の台詞を聞いてはやて以外が噴き出す。

 

「な! 私の種族は『珍獣』なんか!」

 

「何だと思ってたんだ?」

 

「勿論、『女神』や!」

 

「少なくとも、そんな変態的な思考回路を持ってる時点で女神はありえんだろ」

 

「え? 私……変態なんか?」

 

はやては自覚してなかった模様。

 

「……もし、風呂上がりに俺の部屋に来て俺が裸で寝ていたら?」

 

「そりゃ勿論、据え膳喰わぬは恥やから頂くで♪」

 

この解答で変態淑女以外の何者でも無い事が分かる。

 

「……半ズボン履いた小柄な男の子は?」

 

「ちょっと路地裏辺りに連れて行って悪戯してみたいなぁ♪」

 

もはや犯罪者一歩手前の解答なんだが。

 

 

 

「あ、それ分かるの」

「小柄な男の子って、良いよね」

「そうそう! ちょっと虐めて涙目になった所とか……」

「お兄ちゃんみたいな子とか……もう最高かも♪」

「男の子の血ってどんな味かな……」

 

 

 

……はやて以外のメンツも食い付いてきた。

 

ってか、もうこの6人は骨の髄まで少年偏愛(ショタコン)化してるわ。

 

矯正不可能だわ。

 

俺は心の中でため息をつく。

 

こんな変態淑女を世に放つのは忍びないから……。

 

俺がしっかりとつなぎ止めておかないと駄目か。

 

「で、はやては珍獣ね。あたし達はどうなのよ?」

 

アリサが聞いてくる。

 

はやて以外ねぇ。

 

俺はなのはを見る。

 

本来なら『魔王』になるのだが。

 

ここのなのはは……前世の事を加味すると。

 

「なのはは『大天使』かな……」

 

「えへへ♪」

 

頬を赤くしているなのは。

 

「私は?」

 

「フェイトか……」

 

フェイトの場合は。

 

鎌持ってるから……。

 

「フェイトは『死神』辺りか」

 

「う~ん、鎌持ってるから仕方ないね……」

 

フェイトは納得してくれた。

 

「私は?」

 

すずかが聞いてくる。

 

「すずかは『夜魔』だろ」

 

「やっぱり?」

 

ヴァンパイアとかは『夜魔』に分類されてるからである。

 

「あたしは~?」

 

アリシアか。

 

アリシアはイメージがあまり湧かないんだよな。

 

天真爛漫で無邪気な所が……む。

 

「アリシアは『魔人』か?」

 

「あ、『魔人アリス』だからね。うん、良いよ」

 

「……」

 

アリサは無言で俺の顔を見ている。

 

「……」

 

俺もアリサの顔をジッと眺めている。

 

『人間』だと面白く無いから。

 

さて、何があったかな……。

 

「あたしは『女神』よね?」

 

「……『地母神』だろ。『女神』って言うイメージは無いな」

 

「……まあ、はやてよりはマシだから良いわ」

 

ちなみに俺の種族は『軍神』だと思ってるが。

 

『破壊神』とか『魔人』でも良いが。

 

「……何で私だけ『珍獣』……」

 

ベッドの上で『の』の字を書いてるはやて。

 

「まあ、珍獣は珍しいんだぜ?」

 

「そりゃあ、珍獣やからな……。当たり前やん……」

 

「分かった分かった、今夜は隣で寝て良いからな」

 

「ホンマか? それなら我慢したるわ」

 

そう言ってはやてはベッドに横になる。

 

「さあ、ここやここ!」

 

そう言ってはやては横をポンポンと叩く。

 

「む~」

 

「はやてちゃんずるい……」

 

「こうなったら、隣は……」

 

「実力行使!」

 

そう言ってはやて以外の5人は下着姿でトランプを始めるのだった……。

 

お前等……服を着ろよ。

 

俺ははやてに抱きしめられながらなのは達のトランプの戦いを眺めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中学入学から1ヶ月経ちました。

 

なのは達は初めての体験が多くてたまに戸惑う事もあったみたいだが、慣れたみたいだ。

 

俺?

 

俺は前世の前世とか前世でも中学校やっていたから別にそこまで戸惑う事は無かったぜ。

 

まあ、それはそれとして。

 

やはり、中学生になると異性を意識してか。

 

誰と誰がつき合っているとか、告白しただとか話題になる事がある。

 

ちなみに、俺となのは達の事も話題に上がる。

 

と言うか、今も一番の話題のネタにされる事は多々ある。

 

そりゃそうだろうな。六股とか、普通なら刺されてもおかしくないし。

 

だが、今では公認になりつつあるのだが。

 

最初の1週間は、よその小学校から来た奴らがなのは達に告白していた。

 

結果は火を見るより明らかであろう。

 

ラブレターを下駄箱に入れるヤツ、昼休みにいきなり告白してくるヤツ……。

 

様々な奴らがいたが、全員撃沈している。

 

まあ、なのは達の様子を見れば分かるだろう。

 

当然ながら、ふられた奴らは俺を目の敵にする。

 

下校時にいきなり体育館裏に呼び出してくる奴ら。

 

上級生に兄がいて、上級生をありったけ呼びだして来て。

 

結果?

 

全員、地に伏してしまいましたが何か?

 

しまいには覆面付けて闇討ち!

 

コレも当然ながら返り討ちにしてやったぜ。

 

たかが10人や20人程度の人数で勝てると思っているのが甘いのだが。

 

……まあ、普通の人なら無理なんだが。

 

そんな訳で、気が付いたら誰も俺に喧嘩をふっかけてくるヤツはいなくなった。

 

転生者の隼人?

 

あいつは、今現在は大人しくしているみたいだ。

 

こないだ、管理局に入局したみたいだ。

 

リンディさんの所に行ってなのはやフェイトとコンビを組みたいって進言していたな。

 

却下されていたが。

 

リンディさんの話によると、魔力は今まで類を見ない位高いが。

 

戦い方が雑との事。

 

つまり、大魔力にモノを言わせたごり押し戦法……らしい。

 

それと、我が強すぎてチームワークが取れないと。

 

言うわけで、嫌いな高官がいる空の方に丸投げしたらしい。

 

哀れなヤツだ……。

 

空の方は大喜びしていたみたいだが。

 

リンディさんに言わせると、『魔力が高い人なら誰でも良いって言う考えの人ばかりだから』との事。

 

まあ、俺も空の奴らは嫌いな奴が多かったが。

 

明らかに俺をコケにした事を言ってきた高官の腹を殴った俺は悪くないと思う。

 

ってな訳で、空の方は俺の事を嫌っているみたいだし。

 

その話を聞いたなのは達は絶対に空に行きたくないって行ってたし。

 

ちなみに、海の方も似たような感じだった。

 

クロノは良いヤツなんだがなぁ

 

 

 

……。

 

 

 

…………。

 

 

 

このままだと、陸に行くような気が。

 

陸は確か……高ランクの魔導師は空と海に吸い取られていつも人手不足だとか。

 

でも、陸の人達はみんないい人が沢山いたのを覚えている。

 

ま、どうなるかは分からないけどな。

 

そうそう、戦闘機人事件は実は既に起きていたのだ。

 

2年前に……。

 

まあ、俺の目的は転生者達を捕まえる事であって原作介入が目的じゃないのだ。

 

ここら辺は史実通り、ゼストさん、メガーヌさん、クイントさんは死亡扱いになっている。

 

ちなみに、なのはとフェイトとはやての3名は魔導師ランクSを取得している。

 

アリシア、アリサ、すずかはAAランクだ。

 

俺?

 

俺は面倒だからAのままで止まってるぜ。

 

気が向いたらAA辺りでも行ってみるつもりだが。

 

とりあえず近状はこんな感じである。

 

 

 

 

 

 

 

 

「藤之宮アレス!」

 

何事もなく登校してくると、入り口で佇むのは……かなりの数の男子生徒達。

 

何事だろうか。

 

なのは達も俺の後ろでちょっと驚いた様子で見ている。

 

「……何の用だ?」

 

俺は問い訪ねる。

 

 

「貴様は我らが天使、高町なのはちゃんを奪った! よって『なのはちゃん親衛傭兵団・NNN(なのなのなのはちゃん)』の殲滅リストに登録する事となった!」男がそう宣言した。

 

 

……どこからツッコミを入れれば良いんだ。

 

俺が思考の海に埋没していると……。

 

 

「同じく、我ら『フェイトちゃん電撃護衛隊・FFF(フルフルフェイトちゃん)のブラックリストにも登録だ!」

 

 

「こちら『はやてちゃん護衛傭兵団・HHH(ホクホクはやてちゃん)。怨敵、藤之宮アレスを閻魔帳に掲載……」

 

 

「我らは『アリシアちゃん防衛陸士隊・AAA1(アンアンアリシアちゃん)』だ。標的リストに登録済みだ!」

 

 

「そう言う事だ。我らの名は『すずかちゃん突撃防衛隊・SSS(好き好きすずかちゃん)』だ!」

 

 

「さあ、貴様の息の根を止めてやる!『アリサちゃん突撃護衛団・AAA2(アリアリアリサちゃん)』の手によってな!」

 

 

それぞれの非公式ファンクラブと思われるリーダー達が自己紹介をする。

 

「……」

 

俺は何と返答すれば良いのか。

 

なのは達を見ると、苦笑していた。

 

そりゃそうだろう、上級生と思われる男子生徒達もいたのだから。

 

にしても、どっかで聞いた事あるような名前だよな、このファンクラブ。

 

あと、フェイトが電撃属性持ちって気付いてるのか? こいつ等……。

 

モンハンに出てきた『白いあいつ(フルフル)』の名前を偶然につけてるし。

 

「……それで? 俺にどうしろと?」

 

「愚問だ。独り占めでなく、誰か1人に絞れと言う事だ!」

 

「……」

 

俺はなのは達を見る。

 

全員が突然、目を潤ませて俺の方を見る。

 

いや、アリサのみ『あたしを捨てたらどうなるか分かってるでしょうね?』と目で語っていた。

 

仮に誰か1人に絞ったとしても、他の5人は超高確率でヤンデレ化すると思うのだが。

 

そんなのシャレにならんわ!

 

まあ、こうなったら開き直るしかあるまい。

 

「ハッハッハッハッ! それは出来ないな! 全員俺の嫁だぁ!」

 

その言葉を言うと、周りの男子生徒達は殺意に満ちた目で俺の方を見る。

 

……前世の前世で億に近い魔族達から殺気を浴びせられたんだ。この程度人数……温いわ!

 

ちなみになのは達を見ると頬を真っ赤にしてから嬉しそうな表情で俺を見ていた。

 

……今夜は俺の貞操を守らねばなるまい。

 

「……スクランブル・ダーッシュ!!!」

 

俺は叫んでから校舎に向かって駆け出した。

 

「捕まえろぉ!」

 

「この人数なら……ヤツに人誅を!」

 

「滅殺!!!」

 

背後から来る多人数の足音。

 

さあ、これから毎日鬼ごっこってか!?

 

 

 

 

 

 

 




 
メガテンシリーズやってなきゃ分からんネタだなw

ちなみに今回では種族はシリーズにもよりますが存在していますw


なのは達の非公式ファンクラブの元ネタは知ってる人は知ってるでしょうw


大天使 なのは

死神 フェイト

魔人 アリシア

夜魔 すずか

地母神 アリサ

珍獣 はやて


はやてだけギャグだなwww





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第38話 赤髪の少年と桃髪の少女を保護したんだが……

 

エリキャロ登場です


 

 

 

 

 

「えっと……ここら辺かな?」

 

「……だな。明らかに、妙な魔力と言うか……何かを感じるぞ」

 

俺は今フェイトと2人でとある管理世界に来ている。

 

執務官としての仕事である。

 

俺とフェイトは執務官の試験を受けて合格したのだ。

 

原作のフェイトは2度落ちているが、こっちのフェイトは1発合格である。

 

まあ、俺と一緒に勉強していたのと、あっちの世界みたいになのはは撃墜されて大怪我していないからでもあるのだが。

 

何故か、俺も一緒に試験を受けようと言う事で受けたら。

 

合格してしまったのだ。

 

……この試験って、難しいので有名なのだが。

 

と言っても、前世で法律関係とかしこたま勉強して大方は頭に入っているので何とかなるものでもあった。

 

とりあえずは、この世界にあるらしい違法研究所を潜入・捜査するべく俺とフェイトは来ている。

 

まあ、よほどの事が無い限り大丈夫だとは思うが。

 

いよいよとなれば、フェイトだけでも強制転移させて逃がすつもりでもある。

 

「……この下にある森の中……怪しいよね?」

 

「……だな」

 

俺とフェイトは今は空中を飛んでいる。

 

眼下に広がるのは、木が生い茂っている森。

 

さしあたっては何も無いように見えるのだが。

 

右目で見ると、妙な力の流れを感知する。

 

何かがおかしい。

 

「とりあえず、降りてみるか?」

 

「うん」

 

俺とフェイトは森の中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――研究所内

 

 

 

「所長、管理局の職員が来ました」

 

「何? どんなヤツだ?」

 

「金髪の美女と小柄な少年です」

 

所長室で報告を受ける所長。

 

「……ほほぅ……コレはたいそうな美人じゃねぇか……」

 

「……まあ、確かにそうですが」

 

下卑た薄笑いを浮かべる所長。

 

「そうだな。捕まえて、研究素材だ!」

 

「……大丈夫ですか?」

 

「どう見ても、若い経験不足なヤツらだ。罠でも張っておけ」

 

「分かりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……見つけた」

 

「……だね」

 

俺とフェイトの前にあるのは、妙な岩山。

 

しかし、岩肌を見ると妙なボタンが見える。

 

「……押してみるぞ?」

 

「うん」

 

俺がボタンを押すと低い音を立てて岩肌部分が開く。

 

隠し扉だ。

 

巧妙に隠された入り口。明らかに怪しい。

 

「油断大敵……だぜ?」

 

「うん……」

 

俺とフェイトは様子を窺いつつも入り口かな中に入っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

人工的建造物の通路。

 

金属剥きだしではあるが、明らかに人の手で作られた通路だ。

 

俺とフェイトはゆっくりと進む。

 

今の所は、何の気配も感じられない。

 

奥の方に人がいるみたいではあるが。

 

「……長い通路だな」

 

「……だね」

 

カツカツと俺とフェイトの足音が木霊する。

 

すると、少し広い部屋に出る。

 

20m辺りの正方形の部屋。

 

壁は金属で覆われていて、リベットで打ち込まれた無骨な作り。

 

目の前には重たそうな金属の扉。

 

実に、嫌な予感を感じる。

 

……ここの研究所は、確か……違法な人体実験をやっているって話だったよな。

 

俺はリンディさんに聞いた話を頭に思い浮かべる。

 

管理局員も数人、行方不明になっているらしい。

 

……俺とフェイトも、興味が湧く実験体に見られる可能性はある。

 

実験体を無傷で入手するには?

 

毒とかは駄目だ。

 

麻痺か……麻酔で眠らせる。

 

俺は周囲を見る。

 

天井にある妙な形の……ノズル。

 

ガスとか気体を噴出する形に見受けられる。

 

麻痺させるガスとかはあまり使われないから……麻酔ガスの可能性が高い。

 

〈フェイト?〉

 

〈どうしたの?〉

 

俺はフェイトに念話で問いかける。

 

〈フェイトは何分息を止める事が出来る?〉

 

〈ん~っと……鍛錬してたから……10分くらいなら〉

 

それって結構凄い事だと思うんだが。

 

〈……それならいけるか。俺もソレくらいならいけるし〉

 

〈どういう事?〉

 

〈多分、麻酔ガス辺りを噴射して俺達2人を眠らせる。その後は、お楽しみってヤツだ〉

 

〈……分かった〉

 

フェイトはゆっくりと深呼吸を繰り返す。

 

俺も同じように深呼吸をする。

 

すると、天井の方からプシューっと何かが噴出される音が聞こえだした。

 

〈フェイト、息を止めてから眠ったふりをして倒れるんだ〉

 

〈分かった〉

 

俺とフェイトは息を止めてガスを浴びる。

 

眠くなった演技をしてからその場に倒れる。

 

〈大丈夫か?〉

 

〈うん、大丈夫〉

 

フェイトからの返信。

 

どうやら大丈夫のようだ。

 

少し経つと、奥の扉が開く音が聞こえる。

 

足音からして……6人だな。

 

呼吸音からしてマスクを装着しているみたいだ。

 

俺は目をつむっているが、大体の様子は分かる。

 

「しめしめ……だな」

 

「これは……超大物だな!」

 

「こんな美女は一生お目にかかれないぞ!」

 

男達の声が聞こえる。

 

「ち、こんな子供かよ……」

 

「同じ様な美女がもう1人来てくれたら良かったのによう」

 

足と手を持って抱きかかえる男達。

 

〈フェイト、様子は分かるか?〉

 

〈ん……目をつむっているからちょっと分からないかな……。あ……胸触られた……〉

 

〈……死なすか〉

 

〈お願い〉

 

俺は目をつむりつつ、腕を素早く動かして男が装着しているであろうマスクははぎ取る。

 

「!?」

 

男は驚いた様子だったが、力を失ってから俺を床に落とす。

 

寝息が聞こえてきた。やはり、睡眠ガスだったか。

 

「お、おい!?」

 

足を持つ男が驚いた様子で声を上げる。

 

俺は素早く手を伸ばして同じようにマスクをはがす。

 

「!? てめぇ……」

 

そして、そのまま力を失って倒れる。

 

即効性のガスみたいだな。

 

俺は目を開いて起き上がり、フェイトを担いでいる男達を見る。

 

「な!?」

 

「ガスが効かないのか!?」

 

瞬時に間合いを詰めてフェイトを担いでいる男達のマスクもはぎ取る。

 

「ふが……」

 

「……ふごぉ……」

 

同じように意識を失って倒れる。

 

〈目を開けて良いぞ?〉

 

〈ん。やっぱり手際が良いね……〉

 

〈長年の鍛錬の賜物ってね〉

 

〈私も目を瞑っても戦えるようにした方が良いのかな……?〉

 

〈……日常生活で目を瞑って過ごせるようになれたら大丈夫だぜ?〉

 

〈……無理かも〉

 

俺とフェイトはそんな念話をしつつ扉をくぐって奥に進む。

 

 

 

 

 

 

 

――――――所長室

 

 

 

「……なんて事だ……!」

 

「どうされました?」

 

「……研究データを持って逃げるぞ」

 

所長は顔を真っ青にしていた。

 

「え……?」

 

「『金色の死神』と『闇の魔人』だ」

 

「ッ!?」

 

部下は所長の言葉を聞いて驚愕の表情を浮かべる。

 

「うっかりしていた……まさか、闇の魔人があんな小柄な子供だったとは!」

 

悔しそうな表情を浮かべる所長。

 

数年前から聞いていた噂を浮かべる。

 

曰く、遠距離からの攻撃もかわす。

 

曰く、近接戦闘に挑もうものなら当たらない。

 

曰く、漆黒のベルカ式魔法陣が足下に浮かぶ。

 

曰く、黒髪で前髪に一部金髪が混じり、右目は蒼い瞳で左目は漆黒の瞳である

 

曰く、捕まったら最期。100%管理局に引き渡される……。

 

曰く、10人で挑んでも余裕で負ける。

 

つまり、チェックメイトである。

 

所長はデータディスクを手に取る。

 

「残念だったな」

 

子供の声が所長室に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

所長室と思われる部屋に来ると、逃げだそうとする人物が2人。

 

どちらかが所長と思われるが。

 

「くっ……こんなに早く……」

 

「……」

 

2人は立ちつくしている。

 

「さあ、大人しくして貰おうか」

 

俺はゆっくりと2人に近づく。

 

「ああ……」

 

所長と思われる年上の中年男性の男は手に何かを?

 

「このまま大人しく捕まると思うかぁ!」

 

男は床に何かを投げる。

 

その瞬間、まばゆい光が俺の目に飛び込んでくる。

 

「っ! てめぇ!」

 

「どんなに強かろうが、目を封じられたらどうにも出来まい!」

 

視界を失ってどんな状況か分からなくなってる。

 

最も、普通の人ならここで逃げられるのだろうが。

 

俺の横を通り過ぎようとする2人。

 

「逃がすと思うか!?」

 

俺は2人の前に立ちはだかる。

 

「なっ!?」

 

「どけぇ!」

 

部下と思われる男が殴りかかってくる。

 

上からのパンチを俺は首を傾けてかわし、カウンターで男の腹に目がけて拳を食い込ませる。

 

「ぐぇぇ!?」

 

男はその場にうずくまる。

 

「畜生! こんなのありかぁ!?」

 

所長は棒みたいなモノを振りかざして来る。

 

上から殴りかかってくるみたいだ。

 

「残念だったな」

 

俺はソレを右手で難なく受け止める。

 

「っ!?」

 

「大人しく寝てろ」

 

左手からの攻撃で顎にかする様にパンチを出す。

 

「ぐが……!?」

 

脳を揺さぶられ、所長はその場に倒れる。

 

「さて、捕獲完了だな」

 

俺は男2人を縄で拘束する。

 

 

 

 

 

 

 

「ここか……」

 

「うん、職員から聞いた話だとここらしいよ?」

 

俺とフェイトは施設のとある一角に来ている。

 

制圧後に管理局の職員達が来てここの職員達を連行していったのだ。

 

目の前にあるのは重々しい扉。

 

鉄で出来ていて、上部に鉄格子が付いていて中の様子を見る位しか出来ない仕様。

 

俺の身長だと届かないのだが。

 

話によると、プロジェクトFで造られた人造人間がここにいる……らしい。

 

プロジェクトF……確か、プレシア女史が関わっていたはずだが。

 

フェイトも同じ様な存在だし……な。

 

「開けるよ……?」

 

「ああ」

 

フェイトは鍵を持って鍵を開けてからドアノブを持って捻る。

 

ゆっくりとドアを開いて中に入る。

 

中は色々な物が散乱している。

 

明らかに大暴れした様な感じだ。

 

 

 

「……」

「……」

 

 

俺とフェイトはお互い顔を見合う。

 

それから部屋の中を見る。

 

「フー!」

 

声が聞こえる。

 

何だろう、口を塞がれた様な感じの声だ。

 

「アレス……あそこ……」

 

フェイトが指し示す先には。

 

赤毛の男の子が猿ぐつわされて、手足を拘束されてベッドの上に横たわっている。

 

俺達を睨むような目で見る少年。

 

世の中の全てを恨む……そんな感じに見える。

 

「……どうやら、散々な実験で人間自体が憎くなってるみたいだな」

 

「……」

 

「さて、と。どうする?」

 

「……」

 

フェイトは無言で赤毛の少年を見つめている。

 

多分、この子が『エリオ・モンディアル』のハズ。

 

「……連れて帰ろう。この子は……私が保護しないといけない。そんな気がする」

 

「そうか。この件はリンディさんに報告しておこうか」

 

「そうだね」

 

さて。

 

問題は、どうやって連れて帰るかだが。

 

「どうやって連れて帰る?」

 

「ん~……とりあえず、アレス……眠らせて?」

 

「……それが無難か。リク・ラク・ラ・ラック・ライラック  大気よ水よ(アーエール・エト・アクア)白霧となれ。(ファクタ・ネブラ)この者に一時の安息を。(フイク・ソンヌム・ブレウエム)眠りの霧(ネブラ・ヒュプノーティカ)』」

 

赤毛の少年の顔周りに霧が発生する。

 

すると、少年はそのまま眠りについた。

 

「便利だね……」

 

「まあ……な」

 

「……(そう言えば、はやてもこの形式の魔法使えるんだったけ。今度お願いしてアレスを寝かせれば良いのか)」

 

「……」

 

俺はフェイトの顔を見つめてる。

 

……何か、邪な匂いを感じるんだが。

 

「……(はやてと一緒に……でも、アレスの初めてを奪えるならソレくらい目を瞑ろうかな……)」

 

何だろう、もの凄くロクでもない事を考えてる様に見えるのは。

 

「フェイト?」

 

「あ、ごめん! それじゃあこの子連れて行くね?」

 

「いや、俺が連れて行く。途中で目を覚ましたら面倒だし」

 

「そうだね。うん、お願いする」

 

俺は赤毛の少年を担いでからフェイトと一緒に研究所を後にする。

 

そして、そのままフェイトの自宅に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フェイトの家に辿り着いた。

 

赤毛の少年の拘束を解いて多少暴れても大丈夫な部屋に入れる。

 

柔らかいベッドに寝かせておく。

 

この部屋には余計な物は置いてないので暴れての大丈夫なのだ。

 

「全く、同じ研究者として恥ずかしいわ」

 

そう言って赤毛の少年の頭を撫でるプレシア女史。

 

「そうですね。こんな年端もいかない子供をモルモットだなんて……」

 

リニスさんは絞ったおしぼりを少年の額に乗せる。

 

「うぅ……痛い……痛いよ……」

 

うなされる少年。

 

「そう言えば、キズとか治療していなかったな。リク・ラク・ラ・ラック・ライラック 汝が為に(トゥイ・グラーティアー)ユピテル王の(ヨウィス・グラーティア)恩寵あれ。(シット)治癒(クーラ)』」

 

俺は治療魔法を少年にかける。

 

少年の身体が少し輝いてから、大人しく眠りにつく。

 

 

「お見事」

「お見事です」

 

 

プレシア女史とリニスが褒めてくる。

 

「褒めても何も出ないぞ」

 

「私から出してあげるわよ?」

 

妙に頬を赤くするプレシア女史。

 

コレを受け取ったら……何かヤバい気がする。

 

「……気持ちだけ受け取っておく」

 

「そう? 欲しくなったらいつでもあげるわよ?」

 

何をあげる気だ、何を!

 

「……何ヲ?」

 

「そりゃあ、貞操……とか?」

 

「……親子丼をしろと申すか」

 

「親子丼と双子丼を同時に味わってみる?」

 

そんな大人の漫画的な展開をやれと申すか!

 

「……社会的にヤバいだろ」

 

「そうかしら? 愛する人の為ならソレくらい……ねぇ?」

 

艶っぽい目で俺を見るプレシア女史。

 

「ほらほらプレシア。アレス君が困ってるわよ」

 

ナイスだ、リニスさん!

 

「アリシアとフェイトを頂いている時に乱入すれば良いだけの話です」

 

全然ナイスじゃないです、リニスさん!

 

むしろ悪化してます!

 

「……とりあえず、この子をどうするか決めようぜ」

 

「そうね。フェイトが帰ってきてからにしましょう。アレスちゃんに貞操をあげる云々はまた今度ね」

 

「……」

 

そう、フェイトは今リンディさんに報告に行ってるのだ。

 

とりあえず、今はフェイトが帰ってくるのを待つだけだ。

 

しかし、貞操貰っても……俺にどうしろと?

 

 

 

 

 

 

 

「リンディさんに報告したよ」

 

そう言ってフェイトはリビングに戻ってくる。

 

「そうか、どうだった?」

 

「とりあえず、こっちで療養しても良いって。ミッドの方も今は施設が満杯だって」

 

なるほど。

 

まあ、この家なら治療施設も整っているから問題は無いだろう。

 

プレシア女史もリニスさんも治療の腕は確かだし。

 

「それで、あの少年の身元は分かった?」

 

「うん、『エリオ・モンディアル』って言う名前。モンディアル家の子供の……クローンだって」

 

「……そうか」

 

フェイトの台詞で一同の雰囲気が重くなってくる。

 

「……プロジェクトFの子供なのね……」

 

「プレシア……」

 

「私のせいでもあるわね」

 

「……母さん……」

 

「フェイト。あの子は貴女の弟よ」

 

「……そう……だね。私と同じ……か」

 

「私が、完成させなければ……あの子だってあんな辛い思いはしなくても……」

 

「ストップだ。過去を悔やむより、今と未来を考えよう」

 

俺は話が湿っぽくなりそうな所を止める。

 

「……そうね。アレスちゃんの言うとおりね。起きてしまったからには……これからの事を考えましょ」

 

「そうですね。それじゃあ、エリオ君が起きても良いように何か食べる物を作っておきますね」

 

そう言ってリニスさんは立ち上がってキッチンの方に向かう。

 

「……そう言えば、アリシアとアルフは?」

 

「アリシアはまだ仕事みたいね。アルフは……ザフィーラさんの所に行くって言ってたわ」

 

なるほど。

 

そう言えば、アルフとザフィーラの仲は結構良好だったな。

 

……そのうち、恋人同士になるかもな。

 

結構お似合いだし。

 

「私は様子を見てみるね」

 

「俺も行こうか。そろそろ目を覚ますかも知れない」

 

俺とフェイトはソファーから立ち上がる。

 

「何かあったらすぐ呼びなさいよ?」

 

「ああ」

 

俺とフェイトはエリオが眠っている部屋に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

「さて、大人しくしてる寝てるかな~」

 

俺はエリオが寝ているドアを開ける。

 

「うあぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

怒鳴り声と共に殴りかかってくるエリオ。

 

「起きてたか」

 

目の前にベルカ式魔法陣の盾を展開して防御する。

 

エリオはそれに阻まれてこちらに攻撃を当てる事は出来ない。

 

見ると、エリオの手は電撃がほとばしっている。

 

やはり、フェイトと同じ電気の変換資質を持っているようだ。

 

「落ち着け」

 

「うるさいうるさいうるさぁーい!」

 

目に涙を浮かべながら何度も殴りかかってくるエリオ。

 

さて、どうやって落ち着かせるべきか。

 

眠らせるのも意味が無い。起きるたびにこれでは進まない。

 

「落ち着いて、エリオ!」

 

「うるさい! あんた達も、僕を……実験に使うんだろ!」

 

フェイトも説得を試みるが、エリオを聞く耳を持たない。

 

ん~、ここは……何度攻撃をさせても効かないと言うのをアピールした方が良いか?

 

そのウチに体力が切れて疲れてくるだろうし。

 

「フェイト、少し俺から離れてろ」

 

「え、う、うん」

 

フェイトは俺から少し離れる。

 

その間にもエリオは俺に連続で殴りかかってくる。

 

なかなか良い攻撃力を持っていると思う。

 

「ふぅ、久しぶりに使ってみるか」

 

【お兄様、電撃が入ってますけど……大丈夫ですか?】

 

「まあ、何とかなるだろ」

 

【気を付けてくださいね?】

 

俺は全身に力を入れて、足を内股に閉じる。

 

空手とかに伝わる防御方法だ。

 

股を閉じるのは金的を防御する為。

 

そして、装甲手楯(パンツァーシルト)を解除する。

 

「うあぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

エリオの攻撃が俺を襲う。

 

流れるような打撃が上半身に打ち付けられる。

 

電撃が流れるが、この程度なら問題ない。

 

「うあぁぁ!!」

 

何度も何度も俺の身体を殴りつける。

 

しかし、俺にはほとんど痛みを感じる事はない。

 

重力で高負荷をかけられた俺の身体は骨密度、筋繊維の硬度は常人を遙かに上回っているのだ。

 

前も見せたが、鉄パイプで殴られても鉄パイプの方が負けるのだ。

 

1分近く殴られていたら、段々と攻撃数が少なくなってきた。

 

「うあぁぁ……」

 

エリオは体力尽きたのか、その場にへたり込む。

 

「手が……痛い……痛いよ……」

 

見ると拳部分の皮がはがれ、血が流れている。

 

「ったく、無茶するからだ」

 

俺はエリオに近づく。

 

「……っ」

 

「暴れるな。『治癒(クーラ)』」

 

俺は無詠唱魔法でエリオの手を治療する。

 

「え……」

 

「殴り方がなってないからこうなるんだ。今度、拳の使い方を教えてやるよ」

 

「え……?」

 

キョトンとした表情で俺を見るエリオ。

 

「えっと……もう大丈夫?」

 

フェイトがおそるおそる近づいてくる。

 

「ああ、ようやく落ち着いたみたいだ」

 

「うん」

 

ゆっくりと近づいてくるフェイト。

 

「……」

 

「駄目だよ? こんな事しちゃ」

 

そう言ってエリオの頭を撫でるフェイト。

 

「……ハイ……」

 

何が何だか分からない……と言った表情を浮かべてるエリオ。

 

「よし、こんなもんだろ。痛むか?」

 

「えっと……痛くないです……」

 

「よし。立てるか?」

 

「あ、ハイ……」

 

エリオは立ち上がろうとするが、少しふらつく。

 

「いきなり運動したからか?」

 

俺は腕をエリオの肩に回す。

 

フェイトもエリオの右手を持つ。

 

「ゆっくり……よし。こっちだ」

 

「……」

 

ベッドの方に向かって連れて行く。

 

「ほら、座って横になれ。まだ本調子じゃないだろ」

 

「……ハイ」

 

エリオはベッドに入り、横になる。

 

「晩ご飯まで少しかかるから、それまで休んでろ」

 

「ハイ……」

 

「えっと……何か聞きたい事ある?」

 

フェイトはエリオの頭を撫でながら問いかける。

 

「ここは……何処ですか?」

 

「私のお家。第97管理外世界だよ」

 

「……僕を……どうするんですか?」

 

「どうもしないよ? エリオの好きにして良いんだよ?」

 

「え?」

 

驚いた顔でフェイトを見るエリオ。

 

「当面は、身体を元に戻す事かな。だいぶ痩せてるからな……」

 

「そうだね。ここで身体を元に戻してそれから考えようか?」

 

「苦い薬も、痛い注射も無いんですか?」

 

「無い無い。見たところ、病気とかはなさそうだから……美味しい物を一杯食べて貰おうかな?」

 

「ありがとうございます……」

 

目に涙を浮かべるエリオ。

 

「自己紹介がまだだったな。俺の名はアレス。藤之宮アレスって言うんだ」

 

「私はフェイト。フェイト・テスタロッサだよ」

 

「僕は……エリオ。エリオ・モンディアルです」

 

「よし、それじゃあ晩ご飯が出来たら呼ぶからそれまではゆっくりしていろ」

 

「……ハイ……」

 

「それじゃあ、また後で来るね?」

 

俺とフェイトはエリオの部屋から出ていく。

 

 

 

 

 

 

 

「~♪」

 

リニスさんが鼻歌を歌いながらキッチンで料理している。

 

その隣ではフェイトも手伝いをしている。

 

プレシア女史はソファーに座って本を読んでいる。

 

ちらりと題名を読んでみると……。

 

 

 

 

『これで決まり! 可愛い男の子を更に可愛く見せる百の方法!』

 

 

 

 

……。

 

見なかった事にしておく。

 

たまに俺の方をチラチラと見るのは……。

 

本の内容と俺を合わせてるに違いない。

 

変な事を言い出さなきゃ良いんだが。

 

俺はプレシア女史の様子を窺いつつも目の前にあるココアを飲む。

 

「ただいま~」

 

玄関の方から声が聞こえる。

 

どうやら、アリシアが帰ってきたみたいだ。

 

歩く音が聞こえてきて、リビングの扉が開く。

 

そして、アリシアは開口一番にこう言った。

 

「お母さん、女の子拾って来ちゃった」

 

……そこら辺でネコの子を拾ってきたみたいに軽く言わなくても。

 

「……」

 

プレシア女史はアリシアの方を見ている。

 

頬には一筋の冷や汗が流れいてる。

 

「……」

 

俺もどんな言葉をかけて良いのやら。

 

アリシアを見ると、背中には桃色髪の女の子がおんぶされてる。

 

……ってか、この子ってキャロじゃね?

 

そう言えば、エリオと大差ない年齢だったから生まれているのは問題は無い。

 

問題なのは、キャロを保護したのはもっと後だったと思うのだが。

 

ル・ルシエの里はこんなに早くキャロを追い出したんかい!

 

まあ、既に原作は崩壊してるからこんな事もあるのだろう。

 

これから先はどうなるか分からないし。

 

「……とりあえず、ソファーに寝かせましょうか」

 

「だな」

 

アリシアに背中の女の子をソファーに寝かせるように指示する。

 

放浪の旅をしていたのだろう、ボロボロの服を着て少しうすら汚れている。

 

見たところ、怪我とか病気といった雰囲気は感じられない。

 

多分、体力が限界に来ていたのだろう。

 

アリシアは洗面器に水を入れて持ってくる。

 

「はい、これ」

 

「ああ」

 

アリシアは濡らしたタオルを渡してくる。

 

俺はそれを手に取ると女の子の顔を拭く。

 

汚れが取れて、白い肌が見える。

 

「で? どういった経緯でこの子を?」

 

「うん、第6管理世界でちょっと探索してたら見つけたんだ」

 

「第6管理世界?」

 

「確か……アルザスって言う場所がなかったかしら? 召喚師の一族がいたと思ったけど?」

 

プレシア女史が顎に手を当てて考えてる。

 

「そう、そんな場所あったよ。で、この子を連れて行ったら……」

 

途端、アリシアの表情が険しくなる。

 

「行ったら?」

 

「この子は、災いを呼ぶ子だって。引き取ってくれって」

 

 

 

「……」

「……」

 

 

 

俺とプレシア女史は言葉を失う。

 

「……この子も」

 

後ろでフェイトが顔を青くしている。

 

「フェイトはいらない子じゃないよ! あたしの大事な妹だもん!」

 

「ううん、今日……私と同じプロジェクトFの子を引き取ってきたんだ。その子も……身寄りが無くて……」

 

「……そうだったんだ……」

 

アリシアはそう言って桃色髪の女の子の頭を撫でる。

 

「あらあら、晩ご飯追加しないと少し足りないかしら?」

 

リニスがこちらの様子をうかがいながらそう言う。

 

「そうねぇ……メニューをもう1品か2品追加かしら?」

 

「分かりました。追加しますね」

 

リニスはそう言うとまたキッチンに引っ込む。

 

さて、どうしたもんかねぇ。

 

そんな事を思いつつ俺は桃色髪の少女を眺めていた。

 

 

 

 

「ううぅん……」

 

桃色髪の少女は少しうなってから目をゆっくりと開ける。

 

「お、目を覚ましたぞ」

 

「!!」

 

少女は目を見開いて飛び起きる。

 

「ほらほら、急に起き上がると身体に悪いぞ?」

 

「……ここは……何処ですか?」

 

少女は少し脅えながら問いかけてくる。

 

「ここは第97管理外世界であたしの家だよ?」

 

アリシアは満面の笑みで少女に返答する。

 

「……管理外……世界……」

 

少女は反芻するように呟く。

 

「えっと、お名前教えてくれるかな? あたしはアリシア。アリシア・テスタロッサだよ」

 

「アレス。藤之宮アレスだ」

 

「……キャロです。キャロ・ル・ルシエです」

 

「じゃあ、キャロちゃん。簡単に事情を教えて貰えるかな?」

 

「ハイ……」

 

キャロから事情を聞く。

 

 

 

 

 

 

 

 

キャロから聞いた話は前世と前世の前世で見たアニメと一緒だった。

 

強すぎる力と、制御しきれていない力の為だ。

 

そもそも、制御の仕方を教えられないお前等にも問題あるだろうに。

 

小学生に因数分解の問題を出して『解け』と言われて解ける訳がないだろう。

 

「そんな訳で、各地を転々としてました。ですから、体力が回復したら出ていきますんで……」

 

「駄目だ」

 

俺は即答する。

 

「え?」

 

「そんなの、出来なくて当たり前だ。誰も教えていないんだからな」

 

「そうだね、いきなりそんなの出来る方がおかしいと思うよ?」

 

「むしろ、出来たら出来たで別の問題が出そうね」

 

俺、アリシア、プレシア女史の順で答える。

 

「え……と?」

 

困惑した表情で俺達を見るキャロ。

 

「どうする? プレシアさん?」

 

「どうするもこうするも。この子もウチで引き取っちゃいましょう」

 

即答だった。

 

「ミッドの施設は?」

 

「リンディさんに聞いたら今は空いてないって」

 

「そっか、それならウチが良いかも。アレスお兄ちゃんもいるし……」

 

ウンウンとうなづくアリシア。

 

何故に俺がいると都合が良いんだ?

 

「何故に俺?」

 

「お兄ちゃんなら何とかしてくれるんでしょ?」

 

「……まあ、何とかするつもりだけど」

 

「ほら、これなら宇宙戦艦ヤマトに乗ったつもりで大丈夫だね♪」

 

どんな例えだよ。確かにあの戦艦は公式チートに近い耐久力と再生速度を持ってるがな!

 

「どんな例えだよ……」

 

「言い得て妙でしょ? リンディさんに報告してくるね」

 

アリシアはそう言ってリビングから出ていく。

 

「あの……私の召喚する竜は危険なんですよ? 皆さんに迷惑をかけたくないです……」

 

目に涙を浮かべるキャロ。

 

「大丈夫だよ」

 

キッチンからフェイトが来る。

 

「あれ?」

 

「あ、私はフェイト。さっきのアリシア姉さんの妹なんだ」

 

「そっくりです……」

 

「双子だからね。大丈夫だよ、アレスがいる限りそんな事にはならないから」

 

そう言ってフェイトはキャロの頭を撫でる。

 

「そうよ。アレスちゃんなら何とかしてくれるわよ。あ、私はアリシアとフェイトの母のプレシアよ」

 

「……そう……なんですか?」

 

「ええ。こう見えても、アレスちゃんは私達の中で一番強いから」

 

「凄いです……」

 

俺の顔をジッと見つめるキャロ。

 

「とりあえず、体力回復までこの家で過ごして貰うからな」

 

「……分かりました、お世話になります」

 

キャロはそう言ってお辞儀した。

 

 

 

 

 

 

 

「いつの間にこんな可愛い住人が増えたんだい? あ、あたしはアルフ。フェイトの使い魔だよ」

 

「私はリニス。プレシアの使い魔をやってます」

 

食事前にアルフとリニスが自己紹介をする。

 

「あの……エリオ・モンディアルです……」

 

「キャロ・ル・ルシエです……」

 

2人はおそるおそる自己紹介する。

 

「ほらほら、ここはもう2人の家だから。もっとゆったりして頂戴?」

 

「あ、ハイ……」

 

「ハイ……」

 

「それじゃあ、自己紹介も終わった所で頂きましょうか」

 

 

 

『頂きます』

 

 

合唱してから食事に入る。

 

 

「美味しい……」

「美味しいです……」

 

 

エリオとキャロは驚いてスープをすする。

 

「ありがとうございます。お代わりは沢山あるから遠慮無く言ってね?」

 

 

 

「はい」

「はい」

 

 

 

黙々と食事を取るエリオとキャロ。

 

見てると微笑ましく見える。

 

しかし、いきなり2人増えて食費とか大丈夫だろうか。

 

プレシア女史もリニスも管理局で嘱託としてたま~に働いているが。

 

そこまでの給料が出てるのだろうか。

 

……でも、考えてみたら全員働いているから……何とかなるか?

 

〈プレシアさん?〉

 

〈どうしたのかしら?〉

 

〈いきなり2人増えたけど、食費とかは大丈夫なのか?〉

 

〈コレくらいなら大丈夫よ。いざとなったらアレスちゃんのお家にフェイトとアリシアの2人を差し上げるから〉

 

何それ。2人を担保にするつもりかいな。

 

〈……まあ、大丈夫って言うなら良いけど〉

 

俺はツッコミを入れるのを止めておいた。

 

2人も喜んで来そうだし。

 

そんなこんなで食事は滞りなく進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひ、1人で洗えますよぅ……」

 

「駄目だよ、きちんと洗わないと」

 

弱々しい声エリオの声と優しく言うフェイトの声が聞こえる。

 

俺は今、テスタロッサ家の風呂に来ている。

 

全員で仲良くお風呂タイムである。

 

しかし、無駄に大きく作ってあるんだが。

 

湯船に入ってるのはプレシア女史、リニス、アルフ。

 

桃色肌で程良く暖まってるのが分かる。

 

俺は今、キャロの背中を洗ってあげているのだ。

 

「あ……あの……」

 

「どした?」

 

「い、いえ……何でも……無いです……」

 

力を込めすぎないように、丁寧に洗っている。

 

キャロの前ではアリシアが座っていて、キャロの頭を洗っている。

 

「女の子は髪が命だから、綺麗にしておかないとね」

 

そう言ってわしゃわしゃとキャロの頭を洗っている。

 

隣を見ると、フェイトとエリオは対面に座っている。

 

丁度、頭を洗って貰う所なのだろう。フェイトは手にシャンプーを取っている。

 

……。

 

フェイトが動くたびに大きな胸がたゆんたゆんと揺れている。

 

エリオはソレを見るたびに顔が赤くなっている。

 

頑張れ。フェイトとアリシアの胸はもはや凶器扱いにしても良いだろう。

 

アレで中学1年とか、もはや将来が末恐ろしい。

 

確か、Dカップ迎えたとか言ってたし。

 

止まっても良いはずなのだが、2人の話ではまだ胸が張ってるとか。

 

まだ大きくなるんすか!?

 

これだと原作を上回るんですけど!

 

クーパー靱帯切れちゃいますよ?

 

「お兄ちゃん? 背中終わった?」

 

「ああ、良いぞ」

 

「じゃあ、目をきちんとつむっててね。開けるとしみるよ~」

 

「ハイ……」

 

アリシアはシャワーをキャロの頭から当てる。

 

……。

 

まあ、普段から見慣れてると言っても……確かにこの胸は反則だな。

 

重力に負けることなくきちんと形を保った胸。

 

揺れるたびに痛そうに見えるが、意外と痛くないらしい。

 

「……ん?」

 

アリシアが俺の顔を見る。

 

 

 

「……」

 

 

「……揉みたい?」

「揉まない」

 

 

 

「舐めたい?」

「舐めない」

 

 

 

「好きにして良いんだよ?」

 

 

アリシアは両手で胸を持ってゆさゆさと揺らしている。

 

「……また今度な」

 

「いつでも待ってるよ♪」

 

さすがにエリオとキャロがいる前でそんな事出来るわけ無いだろ!

 

まあ、いなくてもしないが。

 

その後は皆で仲良く湯船に漬かる。

 

エリオは終始顔が真っ赤だった。

 

逆上せなければ良いが。

 

そんなこんなでお風呂タイムは過ぎていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、おやすみ~」

 

「おやすみ~」

 

「お、おやすみなさい……」

 

「おやすみなさいです……」

 

「……おやすみ」

 

俺とフェイト、アリシア、エリオ、キャロの5人は1つのベッドで並んで寝る事になった。

 

幸い、今日は俺の家でお泊まりの日ではないから問題は無い。

 

真ん中に俺、右にキャロ、左にエリオ。

 

キャロの隣にアリシア、エリオの隣にフェイトといった順だ。

 

キャロは俺に抱きついて来る。

 

エリオも何故か俺に抱きついてくる。

 

って言うか、フェイトとアリシアの両名は段々と俺の方に寄ってくるんだが。

 

キャロとエリオが挟まれるだろ。

 

 

 

「……ありがとう」

「ありがとう……」

 

 

エリオとキャロの声が聞こえた。

 

2人の顔を見ると、目はつむっていたが少しだけ涙が流れていた。

 

俺は2人の頭を撫でながら眠りについた。

 

 

 

 




 
エリオ&キャロ登場w



アリシアファン「揉ませて舐めさせて!」

アリシア「おととい来な!」

アリシアファン「うぎゃあぁぁぁぁぁ!!」


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第39話 プレシアさん、もう1人お願いします!

 

 

 

 

 

「こっちか!?」

 

「こっちよ、アレス!」

 

「あと少しなのに!」

 

俺達はリンディさんからの応援依頼である管理世界に来ている。

 

メンツは俺、アリサ、すずかの3人だ。

 

空戦魔導師が1人で犯人を追いかけていたら数人の仲間に今追いつめられているらしい。

 

応援を求めてる魔導師の名前を聞いて俺は驚愕した。

 

『ティーダ・ランスター』一等空尉。

 

そう、StS編で出てきたティアナ・ランスターの実の兄だ。

 

関わった以上は何とかしてあげたい所だ。

 

しかし、地形が分からない上に敵の攻撃もそこそこキツい。

 

それに敵も連携が上手いのだ。

 

俺1人突撃する訳にもいかず、こうして攻めあぐねている状態だ。

 

「ちぃ! こうなったら、俺も遠距離魔法を使うしかあるまい!」

 

一応、ベルカ式の使い手だから遠距離魔法は苦手……と言う事にしてあるが。

 

こうなっては仕方ない。魔法の矢を敵にぶち込んでやる!

 

さっきからすずかとアリサが遠距離魔法で応戦しているが、相手は15人近くいるのだ。

 

「良いの? アンタは表向きは遠距離魔法は使えないって事になってるんだけど?」

 

「もはやそんな事言ってる場合じゃないだろ。たった1人で救援待ちしてるんだ。さっさと片付ける!」

 

「分かったわ。あいつ等にぶちかましてやりなさい!」

 

「言われなくとも! リク・ラク・ラ・ラック・ライラック 闇の精霊75柱、集い来たりて敵を切り裂け。『魔法の射手・連弾・闇の75矢』!!!」

 

俺の手から放たれる闇の矢。

 

1人あたり5矢行く計算だ。

 

「なっ!?」

 

「嘘だろ!?」

 

「聞いてないぞ!?」

 

敵の驚いた声が聞こえる。

 

その直後、爆音が周囲に響いて敵の攻撃が止む。

 

一応手加減しておいたから死人は出てない……ハズ。

 

「行こうか」

 

「ええ」

 

「うん」

 

俺達は先に進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

【こちらの方に微弱の魔力反応があります!】

 

エヴァの指示に従って進むと。

 

「っ!」

 

「そんな!」

 

血まみれになって倒れている男が1人。

 

茶髪の20代前半の男性だ。

 

間違いない、ティーダさんだ。

 

間に合わなかったのか?

 

「駄目か?」

 

【いいえ、微弱ですが生命反応が有ります! まだ大丈夫です!】

 

エヴァの声が頼りに聞こえる。

 

だが、一刻も争う状況だ。

 

「アリサ、すずかは周囲の警戒を。俺はこの人を助ける」

 

「分かったわ。でも、大丈夫?」

 

「分からん。だが、やるだけはやってみる」

 

「うん、お願いね?」

 

アリサとすずかは空を飛んでいって周囲の警戒をしている。

 

【お兄様、復活(リザレクション)でいきましょう!】

 

「分かった。エヴァも実体化してくれ。2人でかけよう!」

 

【了解です!】

 

エヴァは俺の隣に実体化する。

 

「よし、一緒にいくぞ?」

 

「はい、お兄様」

 

俺とエヴァは手を握る。

 

 

 

「聖なる癒しの御手よ 母なる大地の息吹よ 願わくば 我が前に横たわりしこのものを その大いなる慈悲にて救い給え 聖なる癒しのその御手よ 母なる大地のその息吹 我等が前に横たわる 傷付き倒れしかのものに 我等総ての力もて 再び力を与えん事を 『復活(リザレクション)』」

 

 

 

「聖なる癒しの御手よ 母なる大地の息吹よ 願わくば 我が前に横たわりしこのものを その大いなる慈悲にて救い給え 聖なる癒しのその御手よ 母なる大地のその息吹 我等が前に横たわる 傷付き倒れしかのものに 我等総ての力もて 再び力を与えん事を 『復活(リザレクション)』」

 

 

 

俺とエヴァの声が重なり、横たわってるティーダさんの身体が光り輝く。

 

傷口があっと言う間に塞がり、呼吸も元に戻る。

 

「ふう、これで大丈夫だろう」

 

「ですが、失った血までは回復しきれてませんわ」

 

「そうか。なら後は病院に……」

 

「ちょっと待って下さい、お兄様……」

 

エヴァはティーダさんが持っていたデバイスを手に取る。

 

しかし、デバイスは一部壊されている。

 

よく見ると、メモリが抜けている。

 

誰かが抜いたのだろうか?

 

「……何かあったのか?」

 

「……プレシアさんの所に行きましょう」

 

俺の顔をジッと見つめるエヴァ。

 

いつもの優しい雰囲気は一切感じられない。

 

「……。分かった」

 

俺はティーダさんを背負う。

 

「身代わり人形を」

 

「……なるほどな。俺のアレに入ってる。エヴァなら出せるだろ?」

 

「はい、大丈夫です」

 

エヴァは俺が常に持っているポシェットに手を突っ込む。

 

「……確か……ありました」

 

手を取り出すと、白い小さな人形が握られていた。

 

前世で開発した身代わり人形だ。

 

血を付けるとその人の姿になる。

 

偽装死させるにはもってこいの人形だ。

 

「これに血を付けて……」

 

エヴァはティーダさんの小指を傷付け、人形に血を垂らす。

 

人形は光り輝いてティーダさんの姿になる。

 

「あとは、同じように傷を付けて……と」

 

エヴァはティーダさんの姿をした身代わり人形に傷を上手く付ける。

 

そして、血が多い場所に寝かしておく。

 

「これで大丈夫。お兄様? 周囲に監視等の目は?」

 

「……うん、いない。大丈夫だ」

 

「分かりました。それでは、アリサさんとすずかさんを呼びますね」

 

エヴァはアリサとすずかの元に飛んでいく。

 

その後は2人に事情を説明したあと、2人を先にプレシア女史の元に帰らせる。

 

むろん、ティーダさんを2人に任せて……だが。

 

2人が転移した数分後、管理局員3名が到着する。

 

「……間に合いませんでした」

 

「……そうですか」

 

「くそっ! ティーダ……お前が逝くなんて……!」

 

同期の人だろうか。涙を流している。

 

「敵の姿とか確認出来ました?」

 

「いえ、来た時には既に……」

 

「そうですか」

 

「それで、どうしましょうか?」

 

「そうですね、アレス君はとりあえずは帰還してください。後はこちらで処理します」

 

「了解です」

 

俺は悲しんでる局員を後目にリンディさんの所に帰還する。

 

 

 

 

 

 

 

リンディさんの部屋に行き、事の顛末を報告する。

 

「そう……間に合わなかったの……」

 

「はい、到着した時には既に息を引き取っていました」

 

俺の言葉を聞いてリンディさんはお茶を飲む。

 

ちなみに、例によって砂糖とミルクをたっぷり入れたあのお茶である。

 

俺のお茶は普通の緑茶ではあるが。

 

「やるせないわね。将来有望だったのに……」

 

「そうだったのですか。しかし、気になる点が1つだけ」

 

「……それは?」

 

「デバイスが壊され、中のメモリが抜き取られていました」

 

「……なるほど」

 

リンディさんは顎に手を当てて考え込んでる。

 

「何か、心当たりでも?」

 

リンディさんは周りを見る。

 

そして、手招きをする。

 

俺はリンディさんに近づく。

 

「ここだけの話だけどね」

 

耳打ちしてくるリンディさん。

 

吐息が耳に当たってくすぐったいです。

 

「はい」

 

「ティーダ君、独自で管理局の汚職を調べていたって言う噂を聞いたの」

 

「……なるほど」

 

「ひょっとしたら、今回の殺害も上の高官の指示の可能性もあるわ。でも……」

 

「証拠は無い……ですね?」

 

「ええ。けど、私の勘ではかなりの確率だと思うわ」

 

「でしょうね。俺も今回はなんかきな臭い物を感じてるんですよ」

 

「やっぱり、アレスちゃんもそう思う?」

 

「はい」

 

「さすがアレスちゃんね♪それじゃあ、ご褒美ね♪」

 

「へ?」

 

その瞬間、リンディさんは俺を抱きしめてくる。

 

「ん~♪アレスちゃんはやっぱり可愛いわ~♪」

 

「あの?」

 

「プニプニのほっぺた、さらさらの髪の毛……どれも一級品ね~」

 

頭を撫で、ほっぺたをスリスリしてくるリンディさん。

 

今までのシリアス空気を返して貰おうか!

 

「ありがとう……ございます?」

 

とりあえず、礼を返しておく。

 

「それで? はやてちゃんはもう頂いちゃったの?」

 

「ぶほっ!」

 

盛大に噴き出す俺。

 

「まだなの? はやてちゃん、早くアレス君に(性的に)食べて貰いたいっていつも愚痴ってたわよ?」

 

「……まだ早いでしょう」

 

あのタヌキはそんな事までリンディさんに言ってたんかい!

 

「そうね、はやてちゃんの話だとまだ精○(○通とも言う)迎えて無いんですって?」

 

……やはりあのタヌキはとことんお仕置きをした方が良いかもしれない。

 

「……ノーコメントで」

 

「それなら、今迎えてみる?」

 

「ゑ?」

 

「ここは大人の女性として、アレスちゃんに教えておかないといけないわね♪」

 

もの凄く、不穏当な台詞に聞こえるんですが?

 

「久しぶりだから、余り上手くないけど……許してね?」

 

そう言ってリンディさんは俺のズボンのベルトを緩める。

 

「あの……? リンディさん?」

 

「うふふ、私に任せておけば大丈夫よ♪」

 

これは色々とシャレにならないんですが!

 

このままだと大人の漫画的な展開が待ち受けてるんですがねぇ!

 

「!? バインド!?」

 

気が付いたら四肢が固定されていた。

 

俺に気付かず……だと!?

 

〈お兄様、ここは早く大人の階段を上って頂けたら幸いかと……〉

 

〈うをををっ!? 助けると言う選択肢は!?〉

 

〈有るわけないじゃないですか♪お兄様と久しぶりに肌を重ねたいのですよ?〉

 

ここでエヴァの裏切り!?

 

「さあ、ご対面♪」

 

ズボンを脱がされ、パンツが見える。

 

絶体絶命のピンチ!?

 

そんな事を思っていたら。

 

「リンディ~? この書類なんだけど……?」

 

ドアが開いて現れたのは。

 

手に数枚の書類を持つレティさんだった。

 

「……」

 

レティさんは俺達の状況を見て動きが止まる。

 

手に持っていた書類は床にばらまかれる。

 

 

 

「……」

「……」

「……」

 

 

 

時が止まった様に部屋が鎮まる。

 

「……レティ? こ、これは……ね?」

 

「リ、リリリリンディ!? 貴女、何羨ましい事してるのかしら!?」

 

そう言って詰め寄ってくるレティさん。

 

あ、大して状況変わらなさそうな予感。

 

「あ、アレスちゃんが……ちょっとここに攻撃を受けたって言うから……」

 

うぉい!? なんだその言い訳は!?

 

「!? それは一大事ね! 私が治療してあげるわ!」

 

余計悪化したぞ!

 

「だ、駄目よ! 私が責任持って治療してあげるから! レティ、貴女は用が済んだならさっさと退室してちょうだい!」

 

「何を言ってるのよ! 私の方が治療魔法上手いって言うの忘れたの!? ほら、アレスちゃ~ん♪私が痛いの治してあげるわ~」

 

レティさんはそう言って俺のパンツに手をかける。

 

こ、これ以上はもう色々とシャレにならん!

 

「『眠りの霧(ネブラ・ヒュプノーティカ)』!!」

 

俺は無詠唱で霧を発生させる。

 

霧はリンディさんとレティさんの顔周りを覆う。

 

 

「あ……」

「え……」

 

 

2人は途端に眠りにつく。

 

「ふぅ、これで一安心」

 

俺は手足を固定しているバインドを破壊する。

 

その後は、2人をソファーに座らせる。

 

テーブルに書類を置いておく。

 

ついでに記憶をちょっと弄っておく。

 

まあ、無詠唱で弱めにしておいたから15分で目を覚ますだろ。

 

「それじゃあ、お疲れさまでした~」

 

俺はリンディさんの部屋からこっそりと出ていく。

 

〈エヴァ、今夜はニンニク餃子な〉

 

〈ごめんなさいです! それだけは!〉

 

〈そうかそうか。なら、身体を重ねた時は……抜かず5発だな〉

 

〈それは……〉

 

〈楽しみだな~〉

 

〈お兄様は鬼畜です……〉

 

エヴァの呟きを無視しつつ俺はプレシア女史の家に向かって転移するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男性専用アームドデバイスをリンディさんの手でカートリッジロードされそうになった所を逃げ出して来た。

 

あのままだとリンディさんにケフィア的な液をぶっかける所だったぜ。

 

その後は……大人の漫画的な展開になっていたに違いあるまい。

 

色々とシャレにならん所だったぜ。

 

そんな事を思いつつもプレシア女史の家に到着。

 

アリサとすずかはきちんと届けてくれたかな~と。

 

俺はテスタロッサ家のチャイムを鳴らす。

 

 

 

 

 

 

 

 

出迎えてくれたのはリニスさん。

 

いつもの様に中に案内してくれる。

 

リビングに着くと、プレシア女史、アリサ、すずかの3人がいた。

 

アリシアとフェイトはエリオとキャロのお勉強の講師をやっているとの事。

 

リニスはお茶の準備で離れる。

 

「おかえり、アレスちゃん? いきなり怪我人をここに連れてきた理由をお願いして良いかしら?」

 

「それについては私から説明致しますわ」

 

エヴァが実体化してソファーに座る。

 

事の顛末を説明する。

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどねぇ……確かにミッドの病院に入れるのは良くないわね」

 

そう言って紅茶を飲むプレシア女史。

 

「全く、汚職するヤツって言うのは何処にでもいるのね」

 

少し語尾を荒げつつクッキーを手に取ってかじるアリサ。

 

「そうだね。このままだと、ティーダさん……本当に殺されちゃうわ」

 

紅茶のカップを両手に持ちつつソレを眺めてるすずか。

 

「とりあえずは、偽装死用の遺体を置いておいたから当分は大丈夫だろう」

 

「そうね。それにしても、アレスちゃんは色んな物を持ってるわね」

 

「まあ、な。備えあれば憂いなしって言うヤツだ」

 

「それで、この人もウチで預かれば良いのかしら?」

 

「出来れば、そうしてもらいたいんだが……」

 

「良いわよ。見たところ、身体に異常は無さそうだしね。1週間あれば大丈夫でしょ」

 

「すまない、ここんところ連続で人を預けてばかりで」

 

「良いのよ。他ならぬアレスちゃんの頼みですもの」

 

「でも、食費とか本当に大丈夫なのか?」

 

「大丈夫よ。ウチは全員で働いてるし、私も管理局の仕事が無い時は翠屋でウエイトレスしてるから」

 

その話は初耳なのだが。

 

いつの間にアルバイトしていたのだろうか。

 

まあ、プレシア女史だから……な。

 

「えっと……もし何かあったら言ってくださいね?」

 

「あたし達も協力しますから」

 

「ええ、その時はお願いね?」

 

プレシア女史はアリサとすずかに微笑みかける。

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫か?」

 

俺はティーダさんを寝かせている部屋に入る。

 

中ではアルフが看病していた。

 

「大丈夫だよ。しかし、凄いねぇ~アリサとすずかに聞いたけど、ほとんどやばかったんだろ? それをここまでねぇ~」

 

そう言ってティーダさんの額に乗せてるタオルを取って洗面器につける。

 

「まあ、五分五分の賭けでもあったんだがな」

 

「大したもんだって。あたしやフェイトでも出来ないと思うよ?」

 

「まあ、今は出来なくともいつかは2人も出来ると思うが?」

 

「そんなもんかねぇ……」

 

そう言ってタオルを絞ってティーダさんの額に乗せる。

 

「うぅ……」

 

「お? 目を覚ましたみたいだね」

 

「ああ、リニスさんかプレシアさんを呼んで来てくれ」

 

「了解」

 

アルフは部屋から出ていく。

 

俺はティーダさんの顔を覗き込む。

 

「……」

 

目を開けるティーダさん。

 

「……目が覚めましたか。分かりますか?」

 

「……ああ。ここは?」

 

「第97番管理外世界の地球です」

 

「97……」

 

「大怪我を負った貴方を知り合いの家に連れて来たんですよ」

 

「そうか……ひょっとして、君は……アレス君?」

 

「俺の事をご存じで?」

 

「ああ。古代(エンシェント)ベルカの伝説の魔導書を持つ少年だからね。色々と噂は聞くよ」

 

「はは、どんな噂かは聞かないでおきますよ」

 

「そうだね……っ!」

 

苦しそうな表情を浮かべるティーダさん。

 

「どこか……痛みますか?」

 

「すまない……リンカーコアが少し。どうやら、魔力生成が困難になってるみたいだ」

 

「……そうですか」

 

どうやら、俺の魔法ではさすがにリンカーコア修復までは厳しかったみたいだ。

 

「しかし、死んだと思ったのに……」

 

「本当にギリギリでした」

 

「……君が?」

 

「はい、術式が少し違いますが。相当の重傷でも回復させる魔法を知っています」

 

「凄いなぁ。いつか、教えて貰いたいよ」

 

「そうですね」

 

ドアが開き、入ってくるのは……。

 

「元気そうね」

 

プレシア女史だった。

 

「……貴女は……」

 

「私の事を知っているのかしら? 一応自己紹介しておくわ。プレシア・テスタロッサよ」

 

「……ティーダ・ランスターです」

 

「さて、と。貴方……リンカーコア損傷してるわね?」

 

「……ええ」

 

「まあ、ソレは追々治す事にしましょうか。それよりも……知ってはいけない事を知ったわね?」

 

「……」

 

プレシア女史から目を逸らすティーダさん。

 

「全く。好奇心はネコを殺すって言うわよ。まあ、管理局の腐敗具合は酷いのは分かるけど」

 

「すいません」

 

「当面、貴方はミッドでは死亡扱いになるように偽装しておいたわ。この方が都合良いでしょ?」

 

「……ええ。ですが、妹がいるので、妹だけは」

 

「知らせてあげたいのは山々だけど。そこから貴方が生きてる事を知られるのは今はまずいのよ。それだけは我慢して頂戴」

 

「そうですか。分かりました」

 

「貴方の身体が完全復帰したら、知らせてあげるわ。ただ、数年かかるかも知れないけど……」

 

「ありがとうございます」

 

「それまでは、ウチで療養しておきなさい。困った事があったらリニスに言いなさい」

 

「はい……」

 

「それじゃ、後はごゆっくりどうぞ」

 

プレシア女史はそう言うと部屋から出ていく。

 

「ま、そんな訳だ。当面はここで生活して貰いたい」

 

「色々とありがとう」

 

「どうも致しまして。そうそう、妹さんの名前は?」

 

「ティアナ。将来は僕みたいに管理局に入りたいって言ってたからな。もし、会う事があったら、お願い出来るかい?」

 

「分かりました」

 

俺はティーダさんと約束をかわして部屋を出るのであった。

 

 

 

 




 
ティーダさん生存です


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第40話 レジアスのおっさんと知り合いになったんだが……

アットノベルスでは掲載していなかったお話を入れました

あちらは……

ログインするたびにログイン画面に戻るとか嫌がらせw

半放置ですねw

消すなりなんなりしたいのですが……


 

 

 

 

 

 

「はぁ~……」

 

俺はため息をついていた。

 

周囲は黒服を着た人が沢山いる。

 

俺は今、葬式に来ているのだ。

 

誰の葬式か……だって?

 

ティーダさんの葬式である。

 

一応、ティーダさんは公式に亡くなった扱いになってるのだ。

 

生存してる事を知ってるのは……ここにいる人達の中では俺だけだな。

 

周囲では涙する人達が沢山いる。

 

ティーダさんの人柄の良さが伺えるな。

 

そして、皮肉な位の天気。

 

そう言えば、生前の行いが良いと亡くなった時の天気は快晴になるらしい。

 

ちなみに悪いと大雨とか季節外れの嵐みたいな天気になるとか。

 

……まあ、ティーダさんはまだ生きてるんだがな。

 

しかし、それを知れ渡る事は許されない。

 

今の管理局は……ちと腐敗が進んでるいるみたいだから。

 

エヴァがこっそり調べてみたら。

 

出るわ出るわ、汚職の数々。

 

『空』と『海』の高官共の汚職の数々。

 

『地上』の方は、ほとんどいない。

 

やっぱり地上の方に行くべきかもしれない。

 

そうそう、なのは達は今回の葬式は来ていない。

 

接点が無いからである。

 

俺は発見者としてであるが、アリサとすずかは面識が無いからである。

 

建前だが。

 

そんなこんなで式は粛々と進んでいく。

 

 

 

 

 

 

「兄さんを馬鹿にするなぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

突然響き渡る怒声。

 

何事かと声が聞こえた方を見ると。

 

40代後半のオッサン達と茶髪の少女がいた。

 

どうやら、声の主は茶髪の少女と思われる。

 

少女は目に涙を浮かべながらオッサン達の方を睨んでいる。

 

周りの人達もオッサン達をとがめたい様子だが?

 

って、あのオッサンは……確か、『ベンシ・メルデセス』とか言う名前だったな。

 

管理局航空隊……通称『空』の高官だったな。

 

なるほど、腐っても高官だから誰も注意したがらない訳か。

 

ちなみにその名前を聞いてアリサが『何よ! ベンツを劣化させたような名前!』とか言って爆笑していたな。

 

その気持ちはよく分かるが。

 

ベンシのオッサン達はニヤニヤと嫌らしい笑いを浮かべている。

 

あ、何かまた殴りたくなってきた。

 

以前に俺がムカついたので思わず殴ってしまった高官がこのオッサンでもある。

 

「しかしねぇ、結局は取り逃がしたのは間違いないんだよ? 君のお兄さんは何の役にも立たなかったんだよ」

 

「そうだな。無駄死にと言っても過言でも無いな」

 

「うむ。エリートなら死んでも取り押さえるべきだったのだよ」

 

オッサン達は好き放題勝手な事を言っている。

 

あ~、たまにいるよな。こんなヤツ。

 

俺の一番嫌いなタイプだ。

 

〈お兄様、アレを凍らせてもよろしいですか?〉

 

〈……我慢してくれ〉

 

〈……分かりました。お兄様、お願いしますね?〉

 

エヴァもご立腹の様だ。

 

茶髪の少女は目から涙が流れている。

 

……ってアレはどう見てもティアナだな。

 

このまま見過ごす訳にもいくまい。

 

俺はティアナ達の方に近づく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたんだい?」

 

俺はティアナと思われる少女に近づく。

 

「……っく」

 

俺の方を見るティアナ。

 

泣きすぎで上手く喋る事が出来ないのだろう。

 

目の前の高官達もあからさまに嫌そうな顔で俺を見る。

 

「これはこれは……こんな所で会うとは思わなかったよ」

 

「そうですね。こちらも会うとは思わなかったですよ」

 

周りの目から見ても険悪な雰囲気が漂っているのは分かるだろう。

 

向こうも俺の事を嫌っているみたいだし、俺も嫌っているのだから。

 

「君がティーダ君と面識があるとは知らなかったよ」

 

「ええ。彼の最後を看取ったのが俺でしてね」

 

「おやおや、君ともあろう者が間に合わなかったのかね?」

 

目を細め、口元をニヤリと吊り上げて笑うベンシ。

 

「……そうですね。誰しも限界と言うものがありますから」

 

俺がそう言うと、周りからは『所詮はその程度』とか『魔力総量がAランク程度が粋がった結果だ』とか好き放題言っている。

 

無論、俺はその程度の事は無視している。

 

俺は魔法に関してはその程度だと自覚しているのだから。

 

「それよりも。大の大人数人でこんな少女を虐めて楽しいのですか?」

 

俺は周りの大人達の顔を眺めながら言い放つ。

 

「な、何を言っているのかね。我々は大人の世界の厳しさを少し教えていただけだ」

 

「大人の世界ねぇ……」

 

俺はティアナの顔を見る。

 

……ってか、俺と大差ない身長だな。

 

確か、彼女はまだ10歳位だったのか?

 

「兄さんを……馬鹿に……された……」

 

彼女は途切れ途切れにそう呟いていた。

 

「……もう大丈夫だよ」

 

俺はティアナの頭を撫でる。

 

「あ……」

 

少しだけ、気持ち良さそうな顔をしているティアナ。

 

「……少なくとも、俺にはあんた達が死者を冒涜している風にしか聞こえなかったぞ」

 

「な!?」

 

「なぁにが『死んでも取り押さえるべきだった』だ。そこまで言うなら手本を見せて頂けませんかね? 部下を育てるにはやはり上司がお手本を見せるのが常識でしょう?」

 

俺は口元を少し釣り上げてから微笑む。

 

「き、君! 口の利き方を考えたまえ!」

 

「嘱託魔導師風情が我らに刃向かってただで済むと思ってるのか!?」

 

「その気になれば君のそのデバイスもロストロギアとして接収しても良いんだぞ!?」

 

面白い事を抜かすな、こいつら。

 

俺から……エヴァを取る?

 

実に面白くてヘソで茶を沸かす事が出来そうだ。

 

「……へぇ?」

 

俺は満面の笑みを浮かべる。

 

「やってみろよ。言っておくが俺は貴様等の言う事なんぞ一切聞かないぞ。実力行使? 上等だよ。『空』と『海』の管理局員全員でかかって来いよ。その代わり……」

 

俺は奴らの目の前で全チャクラを回す。

 

俺の身体から闇のオーラが立ち上り、周りに電気の様なモノがほとばしる。

 

「全滅しても……俺は責任は取らないからな?」

 

「……っ」

 

「……くそ」

 

「……な、何なんだこの力は」

 

「ま、魔力……じゃない」

 

高官共は全員顔を青ざめさせている。

 

ティアナも驚いてその場に座り込んでいる。

 

……悪い事したかな。

 

「何だ、騒々しい」

 

後ろから声が聞こえる。

 

低めの声で男性と思われる。

 

誰かと思い、後ろをちょっと見る。

 

……厳ついオッサンが1人。

 

と言うか、レジアス・ゲイズさんだった。

 

俺はすぐにチャクラの回転を押さえて通常モードにする。

 

目の前のベンシのオッサン達を見ると『嫌なヤツが来たな』と言いたげな表情を浮かべていた。

 

どうやら、『空』と『地上』の仲は良くはなさそうだ。

 

「……嘱託魔導師の藤之宮アレスです。実は、この子が彼らに虐められていたというか……」

 

「何だと?」

 

そう言うとレジアスのオッサンはベンシ達を睨むように見る。

 

「彼らは……この子の兄を冒涜するような事を言っていたのです。それで俺は彼らに対して……」

 

「なるほど、事情は分かった」

 

レジアスのオッサンはベンシ達を睨み付ける。

 

「貴様等、死者を冒涜するなど人間として最低の行為だ! 管理局の恥を晒すな!」

 

一喝するレジアスのオッサン。

 

ベンシのオッサン達も何も言い返せないみたいだ。

 

どうやら、レジアスのオッサンの方が上の立場みたいだな。

 

「分かったら失せろ! 貴様等みたいなのがいても彼は成仏出来んわ!」

 

まあ、ティーダさんはまだ存命なのですが。

 

ベンシ達は無言で立ち去る。

 

おー、武道派と呼ばれるだけあってなかなかの迫力だな。

 

俺は拍手を贈る。

 

「ありがとうございます。これでティーダさんも浮かばれるかと……」

 

「……気にするな」

 

「ありがとう……」

 

後ろから小声が聞こえる。

 

「ん?」

 

レジアスのオッサンが俺の後ろの方を見る。

 

そう言えば、ティアナがいたんだっけ。

 

「この子は?」

 

「……多分、ティーダさんの身内かと。えっと……お名前は?」

 

後ろを振り返ってティアナの方を見る。

 

「……ティアナです。ティアナ・ランスター」

 

「そうか、妹さんか」

 

「ティアナか。俺はアレス、藤之宮アレスって言うんだ」

 

「おっと、ワシも自己紹介をしないとな。ワシは『レジアス・ゲイズ』だ」

 

満面の笑みを浮かべるレジアスのオッサン。

 

うむ、厳ついのは大して軽減していないがな!

 

「う……うん。アレス君に…レジアスおじさんだね……」

 

どうやら同い年として認識されてるみたいだ。

 

「そう言えば、ご両親の姿が見えないのだが……」

 

レジアスのオッサンは周りを見る。

 

いるのは管理局の職員達ばかりである。

 

「……お父さんもお母さんもいません……」

 

ティアナが目に涙を浮かべている。

 

「す、すまん」

 

慌てるレジアスのオッサン。

 

「そうか、お父さんもお母さんもいないのか……」

 

そう言えば、原作でも両親は既に他界しているって言う設定だったな。

 

「……こうなると、ティアナはどうなるんですか?」

 

「そうだな、施設に行く事になるんだが……」

 

「空いてますか?」

 

「…………そう言えば、今は何処も一杯だと言っていたな」

 

頬に冷や汗を流すレジアスのオッサン。

 

「こちらで引き取りましょうか?」

 

「……いや、ワシが引き取ろう。これも何かの縁かも知れん」

 

おや、だいぶ変わってきたぞ?

 

ティアナは何が何だが分かってない様子だ。

 

「そうですか。それなら、ティーダさんの遺言をお伝えします。『ティアナをよろしく頼む』と」

 

「……分かった。彼女が成人するまで責任を取って育てよう」

 

そう言ってレジアスのオッサンはティアナを見る。

 

「……?」

 

「今日からワシがお父さんだ」

 

そう言ってティアナの頭を撫でるレジアスのオッサン。

 

「え? え?」

 

ティアナは目を白黒させている。

 

「ちょっとお父さん!」

 

レジアスのオッサンの背後から聞こえる女性の声。

 

見ると眼鏡をかけた女の人が。

 

「おお、オーリスではないか。今日からこの子が義妹になるぞ」

 

「もう、ネコの子を貰ってくるみたいに言わないでよ!」

 

「しかし、両親のいないこの子はこのままだと路頭に迷うぞ? それともこんな子が路頭に迷っても良いと言うのか?」

 

「え? 両親がいないの?」

 

「ああ。だからワシが引き取る事にしたんだ」

 

「そ、それなら……文句は無いわよ」

 

話はこれで終わったみたいだな。

 

「それでは、ティアナをお願いします」

 

俺は2人に向かってお辞儀する。

 

「あ、あら? 貴方は……アレス君じゃない?」

 

「え……えっと?」

 

「あ、自己紹介がまだだったわね。私はオーリス・ゲイズ。見ての通り、レジアス中将の娘よ」

 

似てないから初対面で見ても分からないと思うんだが。

 

「なんだ、彼の事知っていたのか?」

 

「知ってるも何も。嘱託魔導師の中でも一番の実力者よ。魔導師ランクこそはAだけど、戦いに関してはSSランクの人でもひけを取らない位強いって」

 

「なるほど。噂では聞いていたが」

 

「彼みたいな子が本格的に入局していたら喉から手が出るほど欲しいんだけど……」

 

「すいません、せめて高校卒業まで入局は待って頂きたいです」

 

「そうか。後何年後だ?」

 

「今は13歳ですから…6年後ですかね」

 

「え? あたしより年上だったの!?」

 

今更ながら驚きの声を上げるティアナ。

 

「……まあ、誰も勘違いするわね」

 

「……だな」

 

身長135㎝の童顔は誰が見ても勘違いするみたいだ。

 

「ハッハッハッ、こう見えてもお兄さんなんだぞ」

 

そう言ってティアナの頭を撫でる。

 

「……」

 

ティアナは俺の顔をジッと見つめる。

 

少し、瞳が潤んでるように見えるんだが?

 

「……お兄ちゃんって呼んで良い?」

 

……変なフラグ立ちましたよ?

 

「何故に」

 

「兄さんは格好いい兄さんでした。でも、可愛いお兄ちゃんも欲しかったんです……」

 

頬を赤くしているティアナ。

 

えー、少年偏愛(ショタコン)属性付与ですかー?

 

とりあえず、この世界に来る事になった元凶はマッチョ神の見習いの仕業なのでアッチに帰った時は見習いをボコボコにするつもりである。

 

「……分かったよ。好きにして良いよ」

 

諦めた様に俺は言い放つ。

 

「えへへ、よろしくね? アレスお兄ちゃん?」

 

こうしてティアナはレジアスのおっさんに引き取られる事となった。

 

 

 

 

 

 

 

「そうか、ティアナはレジアス中将に引き取られたのか……」

 

安堵した表情を浮かべてるティーダさん。

 

確かに、地上のトップであるレジアス中将に養って貰うなら安心であろう。

 

「さて、後はティアナが今後どうするかだな。このまま普通の人生を送ってくれれば良いんだがな」

 

「……多分、ティアナは僕の跡を継ぐ様に管理局に入るだろう」

 

「だろうな」

 

「それまでにリンカーコアが回復してくれたら良いけど……」

 

「そればかりは分からないなぁ」

 

「だね。もし、回復していなくてティアナが管理局に入局したら……お願い出来るかな?」

 

「ああ。なるたけ彼女を護る様にする」

 

「すまない。不甲斐ないけど今はお願いするしかないんだ」

 

こうして、更に原作から乖離する事件が起きたのであった……。

 

 

まあ、今更ってヤツだな。

 

 




でもティアナは『ティアナ・ゲイズ』と改名はしませんw



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第41話 大人の階段を一歩昇ってしまった……

さあ、なのは(変態淑女)達が本領を発揮し始めましたよw

・鬼に金棒
・水を得た魚
・ポ○イにほうれん草
・マ○オにキノコ

こんな感じですねw


 

 

 

 

 

 

中学に入学してから1年経過しました。

 

何? 経過しすぎだろうって?

 

こちらも色々と都合があるのだ。

 

そう言えば、さっき『キンググリムゾン!』とかほざくヤツが来たような気がしたが……。

 

まあ、そいつの事はどうでもいい。

 

1年も経てば、結構変わる事もあるものだ。

 

昨年引き取ったエリオとキャロ。

 

2人は仲良くなっている。

 

魔法もボチボチと使えるようになっている。

 

劇的な変化は無いが、少しずつ上手くはなってきている。

 

ティーダさん。

 

リンカーコアは少し回復したが、怪我する前の水準には戻っていない。

 

翠屋のウエイターとしてボチボチと働いている。

 

結構かっこいいからそれなりに人気が出ている様だ。

 

まあ、この3人に関しては今のところ特筆することは無いのだ。

 

 

 

……。

 

 

 

問題は、なのは達である。

 

まあ、性格とかは相も変わらずと言った所なのだが……。

 

 

 

背が伸びてます。

 

 

胸も大きくなってます。

 

 

胸も大きくなってます。

 

 

胸も大きくなってます。

 

 

 

大事すぎるので3回ほど言わせて頂きました。

 

どんな感じかと言うと。

 

 

 

 

なのは =167㎝

フェイト=172㎝

アリシア=172㎝

はやて =161㎝

アリサ =168㎝

すずか =163㎝

 

 

 

えっと。

 

これ中学2年生の身長ですか?

 

普通の大人と大差無いんですけど。

 

フェイトとアリシアなんか170㎝超えで下手な男子生徒より高いんだが。

 

某赤い弓兵の高校生時代(168㎝)より高いよ、コレ。

 

俺(135㎝)なんか常に見上げてるんだけど。

 

しかし、彼女達はかなり嬉しいのか、いつも俺を抱きかかえるようにしている。

 

もはや玩具扱いでもある。

 

ソレよりも……。

 

問題は彼女達の胸……である。

 

もはや、凶器と言うか。

 

胸にメロンとか小玉スイカとかグレープフルーツとか入れてるんじゃね?と問いかけたくなるレベルである。

 

例によって彼女達は俺に報告してくるのだが。

 

 

 

なのは =Eカップ

フェイト=Fカップ

アリシア=Fカップ

はやて =Dカップ

アリサ =Dカップ

すずか =Dカップ

 

 

 

色々と言いたいが…なのは、フェイト、アリシア。

 

お前等そのサイズはどういう事だ?

 

中学生のサイズを超えてるだろ。

 

体育の授業でも走ると揺れまくってるじゃないか。

 

おかげで男子生徒達はいつも釘付けじゃねぇか。

 

今年のプール開きの時なんか……男子生徒達は狂喜乱舞していたぞ。

 

『我が生涯に一片の悔いなし!』とか『俺は人間を辞めるぞ!』とか『波動砲発射あぁぁぁ!』とか。

 

もはや何が言いたいのか分からなかった。

 

……まあ、俺のマッサージのせいかも知れないが。

 

ソレと、フェイトとアリシア。

 

胸が大きくなって重くなったからと言って俺の頭に乗せて休憩するな。

 

俺の頭は胸専用の休憩場じゃねぇんだぞ。

 

そんな感じで毎日を過ごしている。

 

 

 

 

 

 

 

夏休みに入って2週間。

 

8月に入り、毎日蝉が鳴いております。

 

宿題は初日に全て終わらせて、後は遊ぶだけ!

 

そうそう、中学に入ってから料理部に入部しました。

 

体育会系は俺の身体能力ならとんでもない事になるので、あえて文化系です。

 

なのは達全員も同じ料理部です。

 

今年の新入生勧誘時は恐ろしかった。

 

なのは達目当てと俺目当ての邪な心を持つ新入生がわんさかと。

 

真面目にやる気がある人以外は全て叩き出しました。

 

おかげで、料理部は人数が多くなり安泰です。

 

なのは達も料理の腕は上達しているみたいで何より。

 

将来結婚した時は……交代で食事当番だな。

 

ちなみに、ベルカ自治区が一夫多妻制と言うのはまだ知らない模様。

 

どういう訳か、皆それを喋らないんだよな。

 

少し、不気味ではあるが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アレス君……」

 

「……? なのは?」

 

なのはは頬を赤くしながら俺に近づいてくる。

 

見ると、全裸。

 

どういう事だ!?

 

俺の身体を見ると、俺も全裸。

 

な、何が起きたのか……理解出来ない……!

 

「もう、良いでしょ? 私……我慢出来ないの」

 

そう言って俺にキスしてくるなのは。

 

「ま、待て……状況が……」

 

「駄目なの。アレス君はもう私に(性的に)食べられる運命なの」

 

そう言ってしゃがみ込む。

 

気付けば、俺の股間にある男性専用アームドデバイスは既に最高硬度になっている。

 

「な、なの……は?」

 

動こうにも身体は何故か動かない!

 

「頂きま~す♪」

 

なのはは俺の男性専用アームドデバイスを口にくわえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ア―――――――ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ!」

 

何かが放たれる感覚が襲う。

 

コレは……そうか。

 

久しぶりの感覚で忘れていたが。

 

ついに、男性専用アームドデバイスから砲撃が放たれた……と言う事。

 

夢○(○精とも言う)を迎えたと言う事か……。

 

そう言えば、前世の前世でも迎えたのは中学2年だったから。

 

大体同じ時期だったと言う事か……。

 

ふぅ、久しぶりだから……やっぱり気持ち良いと言えば気持ちいいな。

 

さて、起きてから始末しな……い……と……。

 

段々と頭が覚醒してくる。

 

さっきから、動こうにも両腕は動かない。

 

柔らかい……女の子の足に挟まれた様な感覚だ。

 

昨日は……なのは達のお泊まりの……日。

 

背筋が段々と冷たくなる。

 

大ピンチ。

 

頭にこの単語がよぎる。

 

目を開ける。

 

右にはアリシア。

 

左にはフェイト。

 

2人は俺の手を股間に滑り込ませてしっかりと固定している。

 

妙に湿っぽいのは気にしない事にした。気のせいったら気のせいだ!

 

今は夏で、2人とも下はパンティのみで上はタンクトップにブラは無し。

 

はだけて丸見え。

 

それはまあ、いつもの事だから良いとして。

 

何故、よりにもよってこの時に砲撃を迎えなきゃならん……!

 

全てにおいてタイミングが最悪である。

 

抜け出そうと思って手を動かせば……。

 

 

「あぁん……」

「だめぇ……」

 

 

とシャレにならない声が。

 

どうすれば、このピンチを逃れる事が出来る!?

 

エヴァを呼ぶか?

 

呼べる訳無いだろ……!

 

母さんも父さんも呼べない。

 

これは俺1人で解決しなければならないのだ!

 

換えのパンツを取ってきて、履かなければ……全てが終わる!

 

考えろ……! 知恵を絞りだせ!

 

長年生きた経験を生かせばこの苦難も乗り越えられる!

 

「うぅん……」

 

すずかの声が聞こえる。

 

「んふぅ……」

 

アリサの声も聞こえる。

 

「さて……起きるかな」

 

はやての声が聞こえる。

 

最悪である。

 

俺はジロリと自分の股間を見る。

 

……灰色のボクサートランクス……。

 

最悪としか言えない。

 

黒なら濡れても目立たないが、灰色は……凄く目立つ。

 

全てが最悪の方に重なっている。

 

はやてが起き上がる。

 

俺の方を見て、俺が目を覚ましているのを気付いたのか。

 

「おはよう、アレス君」

 

「おはよう……はやて……」

 

にっこりと微笑んでくる。

 

「今日もアリシアちゃんとフェイトちゃんに固定されとるなぁ」

 

「ああ……いつもの事だがな」

 

「さて、顔を洗って……ん?」

 

起き上がろうとしたはやては何かに気付いた。

 

このまま気付かずに行ってくれれば良かったモノを!

 

「……何や……この匂い」

 

鼻をフンフンと鳴らして周囲の匂いを嗅いでる。

 

「ん~栗の花の匂いに似とるなぁ…」

 

「んん~」

 

すずかも起きる。

 

早く逃れたいが、フェイトとアリシアはがっちり固定している。

 

「おはよう、すずかちゃん」

 

「おはよう、はやてちゃん、アレス君」

 

「すずかちゃん、何か匂わへん?」

 

「え?あ、ホントだ。栗の花……みたいな匂いだね」

 

俺の背中に段々と冷や汗が流れる。

 

「何やろな~?」

 

「何だろ?」

 

2人は首を傾げてる。

 

「ん~何よ……このイカみたいな匂いは…」

 

アリサもとうとう起きてしまった。

 

「イカの?」

 

「イカの匂い……」

 

「イカ臭い?」

 

はやてとすずかは顔を見合わせた後、俺の方を見る。

 

「……アレス君……この匂いの正体……分かるかな?」

 

「アレス君の方から匂いが来てるよ?」

 

2人はジッと俺の方を見る。

 

「……」

 

俺は無言を貫いている。

 

「あら? ……アンタ……パンツ濡れてるわよ?」

 

アリサが俺の股間を見ながら言う。

 

 

「ホンマや」

「ホントだ」

 

 

はやてとすずかも俺の股間をジッと見ている。

 

最悪の展開だ。

 

もはや、逃れる事は出来ないのか……!?

 

「……アンタ、いい歳してお漏らししたの?」

 

口元を釣り上げ、ニヤニヤと笑うアリサ。

 

「……お漏らしにしてはこの匂いはおかしいで」

 

「そうだね。アレス君……教えてくれないかな?」

 

2人も口元を少しだけ、吊り上げている。

 

「にゃあ……イカの夢を見たの」

 

なのはがそんな事を言って起きて来た。

 

「ん? アレス君……撃っちゃった?」

 

なのはの突然の台詞。

 

「……何を?」

 

「この匂いは……迎えたんでしょ? 私、調べたんだ。男の人が撃つアレって、タンパク質が多いから栗の花とかイカの匂いに近いんだって」

 

どんな勉強してたんだよ!

 

 

「ほほぉ……」

「そう言う事」

「なるほどねぇ……」

 

 

はやて・アリサ・すずかの口元が三日月の様に釣り上がっていく。

 

邪笑と呼ばれる笑みだった。

 

「さあて、アレス君の口から聞きたいなぁ~」

 

ニヤニヤしながら俺の方に寄ってくるはやて。

 

「……」

 

俺はそれでも無言を貫く。

 

「あらあら、アレスちゃんはいい歳してお漏らししちゃったんだ?」

 

ニヤニヤと笑うアリサがそんな事を言う。

 

くそ、どっちに転んでも恥さらしにしかならん……。

 

むしろ、お漏らしの方が恥じ晒しだ!

 

 

「アレス……お漏らししちゃったの?」

「お兄ちゃん、お漏らし?」

 

 

フェイトとアリシアも起きて俺の股間を見ている。

 

頬が赤くなっていくのが自分でも分かる。

 

「アレス君の頬が赤くなっていくの……可愛いの……」

 

「こ、コレは滅多に見られへん……」

 

「さあ、言って貰うわよ?アンタの股間が濡れている原因を…」

 

そう言ってアリサは俺の股間をまさぐる。

 

「うわ……ぬるぬるしてる」

 

「ホント?わ、ホント」

 

すずかも触ってきて驚いている。

 

「これはもう、確定やな!アレス君……とうとう大人の階段を一歩昇ったんやな!」

 

鼻息荒くしてるはやては俺の顔を見ながらそう言う。

 

もはや、逃れる事は出来なくなった。

 

 

 

「…………」

 

 

 

俺は無言で頷くしかなかった。

 

 

 

「認めた!」

「やったで!」

「おめでとうなの!」

「お兄ちゃんおめでとう!」

「おめでとう、アレス!」

「やっと大人の仲間入りしたのね!」

 

 

 

こんな祝い方はスゲー嬉しくないんだが!

 

「コレでお兄ちゃんの子供が作れるね♪」

 

「駄目だよ、姉さん。私も欲しいんだよ?」

 

「にゃあ! 私が一番乗りなの!」

 

すぐにその話題かよ!

 

中2で子供が出来るとかシャレにならんわ!

 

…なのははまだ13歳だった…!

 

「皆さ~ん? 朝ご飯の時間ですよ?」

 

ドアから顔を覗かせるのはエヴァ。

 

「ああ……」

 

「……ん?」

 

エヴァは鼻をヒクヒクさせてる。

 

「……お兄様?とうとう迎えられましたか♪」

 

一発で見破りました。

 

「直美さんに報告してきますね♪」

 

「ちょ! まっ!」

 

止める間も無く出ていってしまった。

 

ヌゥオォォォォッ!

 

穴があったら入りたいぞ!

 

すると、ドタドタドタと走る音が。

 

「とうとう大人になったのねアレスちゃん!」

 

そう言ってドアを開けて抱きついてくるのは我が母親。

 

「ああ、ホント。大人の香りが漂ってるわ♪」

 

それで大人判定はどうかと思うんだが。

 

「さあ、どの子と子作りしたい?」

 

母さんがそう言うと、全員俺の前で土下座する。

 

『ふつつか者ですが……』

 

全員ピッタリ合わせて喋る。

 

恐いんだが!

 

「まあ、順番だけで全員と作ってもらうのは確定なんだけどね!」

 

「うぉい!」

 

「桃子さんも、プレシアさんも、リンディさんも許可を得てるわ♪」

 

「アリサの両親と忍さんは?」

 

「勿論、無問題よ♪」

 

早すぎるだろ!

 

そんなに早いと巨神兵も腐っちゃうよ!?

 

「ヌゥオォォォォッ! 中学生で父親とか駄目だろ!」

 

「大丈夫! アレスちゃんが18歳になったらきちんと戸籍に入れるから」

 

「そう言う問題じゃねぇ!」

 

頭をかきむしりたくなる。

 

「え~? アレスちゃんの子供なら凄く可愛いと思うんだけどなぁ~?」

 

「それと関係無いだろぉ!」

 

全員貞操観念をどっかに投げ捨ててきたのかよ!

 

「もう、しょうがないわね~。でも、彼女達のお世話はきちんとするのよ?」

 

「……何の世話?」

 

「そりゃ、夜のお世話よ?」

 

「……」

 

『ヨロシクね?』

 

……この変態少女共め!

 

 

 

 

 

その日の晩の風呂は大変な事になっていた。

 

俺の家の風呂は大きい。

 

10人位なら余裕の大きさなのだ。

 

いつもなら俺に身体を洗ってもらっているなのは達も、今日は何故か俺の身体を洗うと言う始末。

 

気が付いたら、アリシアから後ろから羽交い締めされて右腕をすずか、左腕をアリサ。

 

右足をなのは、左足をフェイトに固定され。

 

はやては……俺の股間の男性専用アームドデバイスをカートリッジロード。

 

砲撃を発射してしまう。

 

ちくせう、気持ち良くて力が入らなかった。

 

飛び散る液体の量を見て全員驚愕していた。

 

「……コレは……ヤバいわ」

 

「……双子とか三つ子が簡単に出来そうよね」

 

「その前に、私達のここ……もつよね?」

 

「でも、赤ちゃん出来ると大きくなるから……案外大丈夫かも?」

 

「あ、それもそうね」

 

あなた方、どんな相談してるんだよ……。

 

俺はうなだれるように湯船に漬かるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

寝る前になったらなったで。

 

 

「なあ、ええやろ?」

「ならぬ」

 

 

「先っちょだけでも?」

「ならぬ」

 

 

「間を取って素股とか……」

「ならぬと言ったらならぬ」

 

 

食い下がってくるのははやて。

 

なのは達も後ろの方で応援している。

 

「もう! 1発も2発も一緒でしょ!」

 

アリサが訳の分からないキレ方をする。

 

「子供が出来たら大変だ」

 

「それなら、外で出せば大丈夫やん♪」

 

それね? 意外と出来ちゃうんですよ?

 

前世の前世でも、外に出していても子供が4人出来てた人がいるんだから。

 

精神コマンドの『必中』を使ったに違い有るまい。

 

それに、6人全員妊娠とかシャレにならん!

 

嫁さん6人で子供6人とか、真・恋姫無双の一刀君かい!(呉ルート限定)

 

「う~ん、今度『明るい家族計画』買って置いとかないと駄目か」

 

「そうだね。でも、何処で売ってるんだろ?」

 

「確か……薬局で売ってたかも?」

 

「そうだ、お姉ちゃんが買ってた」

 

忍さん、見つからないように買ってくださいよ。

 

「しゃあないな~今夜は諦めるか~」

 

はやてはそう言うと俺の隣に寝っ転がる。

 

他の皆も思い思いに横になる。

 

うむ、明るい家族計画を見たら灰燼に帰しておこう。

 

そんな事を思いつつ俺は眠りにつくのであった。

 

あ~、これから大変だ……。

 

 




ちなみになのはさんの公式身長は160㎝です。

中学2年の時点で167㎝になってるウチのなのはは……。

どこまで大きくなることやらw

胸も超えてますしw




バゼット・五次ライダー「素晴らしいですね」

※上記2人は身長172㎝


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第42話 プレシア女史の依頼

歳の差が気になるお年頃


 

 

 

 

 

 

初の砲撃から1ヶ月。

 

夏休みの間は……そりゃもう、色んな意味で大変でした。

 

寝てる最中に馬乗りになって合体(ユニゾン)しようとするはやて。

 

何とか気付いて未遂に終わらせてるが。

 

しまいには全員で俺の身体を固定してから襲って来る始末。

 

無論、全員眠らせて記憶を改竄しているからこれも何とか回避している。

 

このままだとエスカレートするから妥協案で。

 

 

 

『手だけ使うなら良い』

 

 

 

と言う条件を出したら。

 

「やったで♪」

 

「良い練習なの♪」

 

「アンタの意外と握りがいがあるから……良いわ」

 

全員納得して頂きました。

 

当面はこれで大丈夫だろうが、1年しないウチに多分また暴走するだろう。

 

その時はその時で考えるか。

 

ってな訳で、お風呂とか寝る前に手でカートリッジロードして貰う事が多くなった。

 

風俗並みの事をして貰ってる俺がいるのであった。

 

……同級生とかに知られたら刺されそうだな。

 

困った事に、段々とテクニックが上手くなっているから始末に負えない。

 

……変態淑女の名に恥じない彼女達だった。

 

 

 

 

 

 

 

ざわ……ざわ……。

 

少し、騒がしい。

 

いつもより少し、浮ついた空気が漂う。

 

何故か……だって?

 

そう、今日は授業参観日である。

 

子供達の授業風景を見て貰う、子供にとってはちょっと恥ずかしい日でもある。

 

授業が始まると、少しずつ保護者の人達が中に入ってくる。

 

いつもより着飾って、化粧をしている母親とか、背広を着て頭をきちんと整えている父親とか。

 

普段見る事のない自分の親を見て少し驚いているヤツもちらほら。

 

すると、妙に若い人が入ってきたな……。

 

って、忍さんじゃん。

 

そりゃあ、お姉さんだから若いのは当たり前だろう。

 

髪の色とかすずかにそっくりだからすぐに分かる。

 

次に入ってきたのは……アリサのお母さん。

 

金髪で顔の感じも似てる。

 

まあ、アリサよりちょっと背が低いのだが。

 

そう言えば、結構若く見えるよな。

 

ちらちらと様子を見ながら授業は進んでいく。

 

次に入ってきたのは……リンディさん。

 

少し、空気が変わる。

 

確かに、リンディさんの見た目は20代半ばくらいにしか見えないからな。

 

小声で『綺麗な人だな~』とか『誰のお母さんだ?』とか聞こえる。

 

まあ、アレでも1児の母なのだが、見えないんだよな。

 

そうこうしてたら、また次に。

 

プレシア女史だった。

 

さすがにあの悪の魔女風で来たらシャレにならんかったが、ごく普通のスーツを着ている。

 

……そう言えば、プレシア女史も結構な年齢のハズだよな。

 

多分、他の人より一回り上のハズだが。

 

年齢の事を聞こうとしたが、もの凄いプレッシャーを感じたので聞けなかった。

 

やはり女性に年齢の事を聞くのは禁句だよな。

 

しかし、フェイトとアリシアに似てないのは……何と言うべきか。

 

髪の色と瞳の色は父親に似たのであろうか。

 

ちなみに声は『すげー恐い』とか『なんかスパルタママっぽい』と言った声が。

 

まあ、かつてはムチ持ってフェイトにお仕置きしていたから違和感は無いんだが。

 

でも、今は優しいお母さんになってるから大丈夫だ。

 

……プレシア女史は周りの人を一通り見てから何かため息をついてるんだが。

 

どうしたんだろ?

 

そんな事を思いつつ授業を受けてたら……。

 

また空気が変わった。

 

誰かと思ったら、桃子さんと士郎さん。

 

……あの夫婦は時を止めたんじゃなかろうか。

 

出会った時から一切変わっていない。

 

老化と言うモノをどっかに放り投げてきたんじゃ無いかと思う。

 

2人とも20代前半の姿にしか見えない。

 

周りの方からも『若い……』とか『あれで子持ち?』とか。

 

同級生からも『すげー』とか『あんなお母さん欲しかったな~』とか。

 

確かに、あの姿を見たら驚くよな。

 

恐るべし、高町一族。

 

『ざわっ』

 

更に空気が変わった。

 

今度は誰だ?と思ってみたら。

 

我が母親でした。

 

……いつも見てるから何とも思わなかったが。

 

あの姿はどう見ても中学生だよな。

 

胸は大きいが、背が低い(142㎝)。

 

顔も……俺とほとんど一緒。

 

髪は腰まで伸ばしてるロングヘアで前髪に銀髪が混じってる。

 

そして、俺と同じで右目が蒼く左目は黒い。

 

誰がどうみても俺の母親と分かるだろう。

 

〈ほらほら、授業に集中しないと当てられちゃうよ?〉

 

〈大丈夫だ。そんなヘマはしないよ〉

 

母さんからの念話が届く。

 

周りからは『どう見ても……アレスの母親だよな……』とか『お母さんそっくり……』と声が。

 

担当の先生も一瞬動きが止まっていたが、咳払いしてから授業を再開する。

 

しかし、我が母親ながら。

 

ここの制服着ていても違和感なくとけ込めるよな。

 

俺も人の事言えないがな!

 

そうこうしてたら。

 

『……』

 

何か、空気が凍った様な雰囲気が。

 

どうしたのかと思って入り口を見たら。

 

俺の父さんだった。

 

まあ、あの外見は……ヤバいよな。

 

どうみてもヤ○ザの幹部以上組長の右腕級の雰囲気を身体から出している。

 

短めの髪でスポーツ刈りっぽく、困った事に左目と左頬には切り傷が残っている。

 

失明はしていないが、見た目は良くないからサングラスをしているがほとんど効果が無い。

 

むしろ悪化してる様な気が。

 

身長は195㎝で肩幅が広く、胸板も厚い。

 

ボディビルダーが服を着たような感じに見える。

 

あーあ、他の父親なんか視線を逸らしてるぞ。

 

『目を合わしたら殺られる』と思ってるに違い有るまい。

 

母さんの隣に行って頭をポンポン。

 

母さんは父さんの顔を見てから少し頷いて。

 

おもむろに抱きかかえてから母さんを肩に乗せる。

 

そして、後ろの方に回る。

 

おいおい、周りの人が避けてるぞ。

 

あの一角だけオーラが出てる様に見える。

 

なんつーか、美少女と野獣?

 

苦笑してるのは高町夫妻、プレシア女史、リンディさん、アリサの母さん、忍さん。

 

知り合いでなきゃ……逃げたくなるわな。

 

ありゃ……担当の先生も黒板を書く手が震えてるぞ。

 

まあ、俺にはどうにも出来ないんだがな!

 

『あれって……アレスの親父さんか?』とか『……アレは反則でしょ』とか『俺……父さんが普通で良かった』とか。

 

……。

 

確かに、我が父親ながらあの外見は……。

 

前に一緒に歩いていたら……警官に職質されたし。

 

誘拐犯に間違われたのかも。

 

そんな感じで授業は進むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「ふう……やっぱり俺が入ると全員緊張するんだよな」

 

そんな愚痴をこぼすのは我が父親。

 

「仕方ないでしょ。その身長と体格の上に顔の切り傷とかどう見てもRPGの強面冒険者じゃない」

 

「まあな。この傷は勲章だしな」

 

どういった経緯でついたのか、興味はあるが。

 

まあ、聞くのを止めておくか。

 

ジョッキでビールを飲む姿なんかどう見てもRPGに出てくる冒険者にしか見えない。

 

「でも、アレスちゃん……小さいわね」

 

「小さい言うなし」

 

「駄目よ。その小さい所がアレスちゃんの可愛い所の1つなんだから♪」

 

もはや何も言うまい。

 

 

 

ピンポーン

 

 

 

ん?

 

誰か来たみたいだ。

 

「誰かしら?」

 

母さんはそう言って玄関の方に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

「こんばんわ」

 

「こんばんわ」

 

「こんばんわ~」

 

来たのはプレシア女史1人。

 

リビングに通してからテーブルに座る。

 

「今日はどうも」

 

「こちらこそ」

 

そう言って父さんとプレシア女史はお辞儀している。

 

「今日はどういった用件で?」

 

父さんがプレシア女史に尋ねる。

 

「あの……恥ずかしいのですが……」

 

「……ふむ。ならば私は席をはずしましょうか」

 

そう言って父さんは自室に戻る。

 

リビングに残ったのは俺、母さん、プレシア女史。

 

「どうぞ」

 

そう言ってプレシア女史の前にお茶を出す。

 

「ありがとうございます」

 

一口お茶を飲むプレシア女史。

 

「……アレスちゃん。若返りの薬ってあるかしら?」

 

「……なぬ?」

 

経緯を聞いてみた。

 

 

 

 

 

 

要は、今日の授業参観で若い母親が多かった。

 

それに比べて自分は少し歳を取ってる様に思えたと。

 

見た目は若く見えるのだがなぁ。

 

確かに、俺の母さんや桃子さん、リンディさんに比べたら……。

 

アレは比べない方が良いのだが。

 

「数年前に、私の治らないと思ってた病気を治した薬を持ってたから……ひょっとしたらと思って」

 

「なるほど。確かに、数年前にプレシアさんの病を治したからな」

 

「それで? ある……かしら?」

 

「うむ、あるか無いかと問われたらある」

 

「!」

 

驚いた顔で俺を見るプレシア女史。

 

「だが、問題があるんだ」

 

「……それは?」

 

俺は湯飲みを持って一口茶を飲み、こう言った。

 

「不味い」

 

「……なるほど」

 

苦虫を潰した様な顔になるプレシア女史。

 

以前の万能薬も言葉に表現出来ない位の不味さだったのを覚えているみたいだ。

 

「でも、少々不味くても……」

 

「いや、以前飲んで貰ったあの薬の3倍は不味いと思う」

 

「……3倍……」

 

顔が真っ青になるプレシア女史。

 

「しかも、1歳若返るのに2リッターは飲んで貰わないといけない」

 

「う……それは……」

 

頬が引きつってるプレシア女史。

 

もはや罰ゲームの領域である。

 

まあ、後味が1日近く残る青汁2リッターを一気飲みして貰うような感じである。

 

前世で作って、近右衛門に飲んで貰ったが。

 

 

『勘弁してくれんかのぅ……ワシこのままでええから……』

 

 

と涙ながらに訴える位である。

 

確かに、小指で少しつけて舐めてみたら『ぶほっ!』と噴き出す位不味いのだ。

 

理論上は若返るはずなのだが、不味くて誰も飲んでいないのだ。

 

「改良とか……出来ないかしら?」

 

「それなんだよな。俺は薬の専門じゃないからなぁ……」

 

「さすがに、私もその手の知り合いはいないわね……」

 

2人で腕を組んで悩んでると。

 

〈お兄様? あそこはどうでしょう?〉

 

エヴァからの念話。

 

〈うん?〉

 

〈永遠亭ですよ。あの方ならもっと良い薬を作れるのでは?〉

 

〈おお、そうだったな〉

 

思い出すのは前世の時。

 

ちょっと暇だったので、世界を渡ってから『幻想郷』と呼ばれる世界に行って、薬の作り方を習ったのだ。

 

基礎的なヤツしか教わってなかったから、都合が良い。

 

「プレシアさん、とりあえずこの件は何とかします。ちょっと伝手を思い出したので」

 

「ホント?」

 

「ええ。すぐには出来ませんが、出来たら持っていきますので」

 

「分かったわ♪やっぱり、アレスちゃんは頼りになるわ♪」

 

プレシア女史は俺の頬にキスしてから帰るのであった。

 

 

 

 

 

〈と言うわけだ。大丈夫か?〉

 

俺は部屋に帰ってからこの世界を管理するマッチョ神に連絡を取る。

 

〈うむ。その点については大丈夫だ。帰還する時間を1日後にすればこちらでは1日しか経過してない事になる〉

 

なるほど。それなら問題は無いな。

 

〈我が儘言って悪いな〉

 

〈構わんよ。君のおかげでだいぶ集まったからな〉

 

〈そう言えば、後何人残ってる?〉

 

〈そうだな……名簿は300人だったから…………確か後20人は下回っていたと思ったが〉

 

〈了解だ。それと、もう1つ〉

 

〈む?〉

 

〈なのは達と俺の子供が出来ないようにしておいてくれ。全員捕まえたなら良いが、今の状況で妊娠はまずい〉

 

〈ふむ、分かった。その様にしておこう。しかし、悪かったな……〉

 

〈ん? 何の事だ?〉

 

〈よもや、小柄な少年が好みの人が多い世界だったとは。私もコレは予想外だった〉

 

〈……まあ、俺も予想外だった。でも、それなりに楽しく過ごさせて貰ってるから大丈夫だ〉

 

〈……そうか。まあ、子供が欲しくなったらいつでも言ってくれ。解除するから〉

 

〈了解だ〉

 

こうして、なのは達と俺に子供が出来ないように対策を立てておくのであった。

 

 




何という避妊対策w



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第43話 行ってくるぜ、その名も『幻想郷』

やっとアットノベルスに追いつきました

さて、あっちはどうしようかな…




 

 

 

 

参観日から1週間。

 

取り立てて、事件は起きていない。

 

さて、プレシア女史の依頼もこなしておかないとな。

 

今日は丁度土曜日で予定は入っていない。

 

と言うか、今回は全て断っている。

 

向こうでは何日滞在するか分からないが、こちらでは土日しか経過しないから問題は無い。

 

父さんと母さんにもその事は伝えてある。

 

ちなみに行くのは俺とエヴァ。

 

姿が変わってるからなぁ。

 

えーりんさん……覚えてくれてるかな。

 

そうそう、前に行った時は丁度えーりんさんが永遠亭から出てきた頃だったから……永夜抄辺りだったな。

 

うむ、今度は星蓮船が終わった辺りにしておこうか。

 

その旨をマッチョ神に伝えておく。

 

〈それじゃあ、頼む〉

 

〈うむ、転送するぞ〉

 

俺の足下にこの世界では見る事の出来ない形式の魔法陣が広がる。

 

さあ、久しぶりの異世界だ。

 

あちらでは、こっちみたいな変態淑女はいなかったはずだから。

 

のんびりと薬剤師の勉強をしようではないか。

 

 

 

 

 

 

 

「……うん?」

 

「ここは……」

 

着いた先はごく普通の住宅街。

 

周りには人の姿も無く、俺達の転移した姿を見た者はいない。

 

そりゃあ、夜だから当たり前だろう。

 

遠くでは野良犬と思われる遠吠えが聞こえるだけ。

 

あ~、そう言えばいきなり幻想郷に転移はいけなかったハズだから。

 

外の世界から妖怪の賢者に入れて貰ったんだっけ。

 

(ゆかり)……元気にしてるかな。

 

胡散臭いのは直らないだろうけど。

 

「えーっと。確か……外の世界の博麗神社に行けば良かったよな」

 

「そうでしたわね。こっち……でしたか?」

 

「……だな。何となくだが見覚えがある」

 

俺とエヴァは山に続く道に向かって歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

「ここだここだ」

 

数百段ある石積みの階段を昇って行った先にあるのは、廃墟と化した神社。

 

色あせた赤い鳥居には『博麗神社』と書かれている。

 

立ち入り禁止のテープが張ってあり、看板が立てられている。

 

その看板には『株式会社ボーダー商事所有地』と書いてあった。

 

色々とツッコミを入れたいが、ここはあえて無視しておく。

 

境内を通って神社の中に入る。

 

屋根は何とか大丈夫そうだが、壁とかは朽ちてボロボロだ。

 

「お化けとか出そうですわね……」

 

「見たところ、そう言うのはいないみたいだぞ?」

 

右目を起動させて見るが、周囲には幽霊等の類は一切見当たらない。

 

一応、神社だからだろうか。

 

「さて、とりあえず休憩するか」

 

「ですわね」

 

ポシェットからレジャーシートを出して敷く。

 

さすがに、直に座る気にはならない。

 

俺とエヴァは寄り添って座る。

 

どうやら今は春を過ぎた辺りだろうか。

 

夜でも少し寒い気がする。

 

「お兄様、寒くありませんか?」

 

「いや、大丈夫だ」

 

前世の時を思い出すな。

 

真祖になった時はこうして2人で寄り添って夜を過ごしたものだ。

 

「しかし、なのはさん達も凄いですわね。虎視眈々とお兄様を狙っているんですもの」

 

「……まあ、な。俺もあそこまでアグレッシブだとは思わなかった」

 

「でも、お兄様は嫌いではないですわよね?」

 

「……まあ……な。滅多にない体験だと思ってる」

 

「うふふ」

 

そう言ってエヴァは俺の唇にキスをする。

 

「なのはさん達と身体を重ねたら、私もお願いしますわね?」

 

「……ああ」

 

前世の時はそういう行為をした事は何度もあったが。

 

この身体になってからはしていない。

 

まあ、俺とエヴァは体格的に大差無いからお似合いと言えばお似合いなのだろうが。

 

「……来たか」

 

「来ましたわね」

 

周囲の気配が変わる。

 

何かが……来る。

 

俺達の目の前の空間がピシッと割れる。

 

中は暗くて目が沢山見える。

 

「うふ……うふふふふふ……」

 

中から聞こえるのは少し高い声質の女性の声。

 

 

「……」

「……」

 

 

俺とエヴァは黙って割れた空間を見つめている。

 

「こんな夜更けに……こんな可愛い男の子を見つけるなんて……運が良いわぁ」

 

 

 

……。

 

 

 

何だろう。

 

もの凄く、妙な予感を感じるんだが。

 

割れてた空間から洋風の純白パラソルを手に持った女性が現れた。

 

金髪で、頭にはドアノブに付けるような感じの可愛らしい帽子をかぶって。

 

紫色のワンピースを着ている。

 

背が高く、胸とお尻は大きいナイスバディな体型だ。

 

原作の紫は小柄な少女らしいが、こっちの紫は20代半ばの感じに見える。

 

「こんな夜更けに、こんな所にいたら妖怪にさらわれるわよ?」

 

よく言うぜ。

 

たまに神隠しにしてるのはアンタだろうに。

 

「……その妖怪にさらわれに来たんだ」

 

俺は目の前の金髪の女性にそう告げる。

 

「あらあら、貴方達みたいな子供がこの世の中に嫌気がさしたのね?」

 

「まあ、ちょっと違うが。そっちの『世界』に用があるんだ」

 

俺の言葉を聞いて、目の前の女性は頬をピクリと動かす。

 

「知っているの? 妖怪が闊歩する……『幻想郷』を」

 

「ああ。昔、世話になった」

 

「ふぅん?」

 

扇子で口元を隠して俺の方をジロジロ見る。

 

相も変わらず胡散臭い雰囲気が漂ってるな。

 

「おかしいわね? 貴方みたいな可愛い子……見た事無いんだけど?」

 

そう言って、エヴァの方を見る。

 

「……貴女は見覚えあるわね……」

 

「私も貴女にお世話になってますわよ?」

 

「ふぅん?」

 

「俺達を幻想郷に招待してくれたら、俺とこの子の正体を話す」

 

「……幻想郷に害をなさない?」

 

「それは約束する」

 

金髪の女性は俺の顔をジッと見つめてる。

 

……段々と、目が潤んできてるんだが。

 

「……良いわ。もし、幻想郷で害をなす行動を取ったら……(性的に)食べてあげる」

 

「……ん?」

 

何か、変な単語が混じった様な?

 

「それじゃ、2名様ごあんな~い」

 

俺とエヴァの足下が開く。

 

「おっ」

「あら」

 

俺とエヴァはそのまま下に落ちるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

長い空間をくぐり抜けた先には。

 

赤い鳥居の神社の境内。

 

大勢の人が賑わっている。

 

どうやら、宴会してるみたいだ。

 

おお、いるわいるわ。

 

見覚えのある人がわんさかと。

 

まあ、実を言うと今は上空から落下中なんだがな!

 

「おーい」

 

「呼んだ?」

 

「このまま落ちたら俺はトマトみたいにつぶれるんだが?」

 

「……貴方なら飛べるのじゃなくて?」

 

「ばれてたか」

 

俺は力を込めてからゆっくりと降下する。

 

エヴァも同じように降下する。

 

境内の石畳に着陸。

 

神社を見ると、いい具合に痛んでる。

 

手入れをしてる様に見えて、微妙に手抜きが見受けられる。

 

「変わってませんわね」

 

「だな」

 

俺とエヴァは互いに顔を見合わせる。

 

「さ、到着したわよ。貴方達の正体を話して貰おうかしら?」

 

「そうだな。その前に、自己紹介だけしておく。藤之宮アレスだ」

 

「私はエヴァンジェリンです」

 

「八雲(ゆかり)よ」

 

「さて、後は師匠の所で話さないか? その方が早いだろ?」

 

「師匠? ここに貴方の師匠がいるの?」

 

「ああ」

 

「その師匠の名前は?」

 

「永琳。八意(やごころ)永琳(えいりん)さんだよ」

 

俺は大勢の中にいる銀髪で赤と青が交互になってる服を着ている女性の顔を見る。

 

宴会してる人達は俺とエヴァの方を見ている。

 

喧噪が止まり、通夜みたいに静かになっている。

 

さて、どんなメンツがいるか見てみるか。

 

博麗神社の巫女、霊夢。

 

霧雨魔法店の魔女、魔理沙。

 

紅魔館のメンツ……レミリア、フラン、パチュリー、咲夜、美鈴、小悪魔を確認。

 

珍しいな、美鈴も呼ばれたんだ。

 

白玉楼の妖夢と幽々子確認。

 

八雲家の藍と橙確認。

 

永遠亭の輝夜、鈴仙、てゐ確認。

 

妹紅も確認。

 

アリスも確認。

 

プリズムリバー三姉妹も確認。

 

萃香もいる。

 

文、はたて、幽香、小町、映姫もいる。

 

秋姉妹と雛も確認。

 

にとり、椛もいる。

 

早苗、神奈子、諏訪子も確認。

 

阿求と三月精もいるのか。

 

チルノと大妖精もいるな。

 

衣玖と天子もいるんか。

 

地霊殿の……キスメ、ヤマメ、パルスィ、勇儀、燐、空、さとりに……見えにくいがこいしもいる。

 

命蓮寺のナズーリン、一輪、雲山、水蜜、星、白蓮確認。

 

離れに小傘とぬえもいる。

 

わお、ほとんどオールスターじゃん。

 

東方好きが見たら悶死するんだろうな。

 

そんな事を思いつつ、俺とエヴァは永琳さんの所に歩く。

 

全員が興味津々で俺とエヴァの方を見ている。

 

後ろでは紫さんが着いてきている。

 

……なんか、妙に呼吸が荒い様な。

 

ちらりと見ると妙に頬が赤く、瞳が潤んでるんだが。

 

非常に嫌な予感を感じる。

 

まあ、とりあえず永琳さんの所に行くか。

 

永琳さんの所に着くと、輝夜、鈴仙、てゐが怪訝な顔で俺の方を見る。

 

「……えっと。お久しぶりです、師匠?」

 

「へ?」

 

呆然と俺の顔を見る永琳さん。

 

やっぱり、分かるわけないか。

 

「永琳は貴方の事知らなさそうよ? コレは私に頂かれても良いと言う事ね?」

 

妙に鼻息荒い紫が俺の肩を掴む。

 

「お兄様、それは厳しいと言うものですよ。お久しぶりです、永琳さん」

 

俺の隣にエヴァが立って永琳に挨拶する。

 

「……貴女は……エヴァ……エヴァじゃない! 久しぶりね!」

 

途端に明るい顔になる永琳さん。

 

エヴァの名を聞いて輝夜、鈴仙、てゐも『あ……』と言った表情を浮かべてる。

 

「久しぶりねぇ~。5年位かしら?」

 

「えっと……ソレくらいでしょうか?」

 

「懐かしいわね~。っと、この可愛い男の子は?」

 

やけに艶めいた視線を俺に向ける永琳さん。

 

何か……ひっかかるんだが。

 

「気付かないのも無理ありませんわね。お姉様ですわよ」

 

「お姉様……え? アリスなの?」

 

驚いた顔で俺を見る永琳さん。

 

「はい。私とお姉様は一度死んでから転生したのです。私は以前と同じ姿ですが、お姉様は見ての通りお兄様になりました」

 

「へぇ~、輪廻転生かぁ。それでもこうやって記憶を持って出会うんだから凄いわねぇ~」

 

そう言って永琳さんは俺の頭を撫でたり頬をつついたりしている。

 

「……なるほど、思い出したわ。双子の真祖ね?」

 

「はい。今はこうして普通の人間になりましたが」

 

「……ふぅん……」

 

ジロジロと俺を見る紫。

 

「……良いわね」

 

「へ?」

 

「何でもないわ。とりあえず、貴方達が害を成すことは無さそうだから」

 

「すっかり可愛い子になって~。どうしたの? 私の所に来るってことは、薬師の修行?」

 

「ええ、作りたい薬があるんですよ」

 

俺は事情を説明する。

 

 




やっとアットノベルスに掲載している分に追いつきました

ここからは更新速度が遅くなりますw


さあ、紫と永琳さんの様子がおかしいですよ?

どんな事が待っているのでしょうねぇ?w



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第44話 コレは予定外だったんだが

遅筆にも程があるだろう!

放置はしませんよ?

かなり遅くなる時がありますがw


 

 

 

 

 

「なるほどね……」

 

「どれくらいの時間がかかります?」

 

「そうねぇ……」

 

顎に指を当てて考えてる永琳さん。

 

少し小首を傾げてる様は可愛く見える。

 

最も、俺より背が高いから常に見上げているのだが。

 

周りの人達には紫、輝夜が説明を行っている。

 

鈴仙やてゐも同じように説明をしている。

 

「今の薬を作る腕前にもよるわね。以前作ったって言う若返りの薬のサンプルはある?」

 

「ああ、ここに」

 

俺はポシェットから小瓶を取り出す。

 

見た目は普通の緑色なのだが、味がもの凄く不味い恐ろしい薬である。

 

「ふぅん?」

 

小瓶を手に取り、しげしげと眺めてる永琳さん。

 

「凄いですね、若返りの薬を作るなんて……」

 

横から現れたのはウサギ耳で淡い紫色の髪をして何処ぞのブレザー制服を着た……鈴仙だった。

 

彼女も永琳さんの元で薬を作る修業をしている。

 

そう言えば、俺の姉弟子でもあるな。

 

「どうだろうな。効力は誰も飲んでないから『多分ある』としか言えないんだが」

 

「それでも、私よりは上だと思いますよ?」

 

「そうか? 俺は鈴仙の方が上だと思ってるんだが?」

 

お互いに顔を見合っている。

 

ちなみに、鈴仙の能力である波長(狂気)を操る程度の能力は俺には効かないのだ。

 

精神を操る類は一切効かないのが俺の売りでもある。

 

睡眠薬とか魔法による眠りとかそう言うのは効くが。

 

視線で操る系は一切効かないのだ。

 

「あ、私の能力は大丈夫ですか? 今は普通の人間だったのでは?」

 

「ああ、大丈夫だ。効果は発揮していないぞ」

 

「……良かった」

 

安堵のため息をついてる鈴仙。

 

「どれどれ?」

 

小瓶の蓋を開けて匂いを嗅ぐ永琳さん。

 

「匂いは……まあ、そこまで酷くはないわね。ちょっと薬臭いけど」

 

そう言って小指に薬を付けて舌で舐め取る。

 

「ぶほっ!」

 

女性ではあまりやって欲しくない吹き出し方をする永琳さん。

 

「不味いでしょう?」

 

「ゴホッゴホッ! ……こ、コレは……今まで生きてきた中で5本の指に入るくらいの不味さね」

 

そこまで言うって事は相当不味いって事か。

 

「なるほど……」

 

思わず苦笑してしまう俺。

 

「けど、若返りの効果は出てるわ。これなら……2週間位あれば習得は出来るわ」

 

「出てたのか。それは良かった」

 

「けど、どうすればこれだけ不味いのが出来るのかしら。レシピを教えて貰いたいわね」

 

「レシピは教えますが。こんなの役に立つんですか?」

 

「ええ。てゐと姫様のお仕置きに……」

 

黒い笑みを浮かべる永琳さん。

 

見なかった事にする。

 

「……そんなに不味いんですか? お師匠様?」

 

「貴女も舐めてみたら分かるわ」

 

そう言って鈴仙に小瓶を渡す永琳さん。

 

「……ゴクリ」

 

生唾を飲み込む鈴仙。

 

小指に薬を付けて舐める。

 

「ぶほっ!」

 

同じように女の子らしくない吹き出し方をする鈴仙。

 

「ね?コレは色んな意味でヤバいでしょ?」

 

「ゴホッ……ゴホッ……コレは……私は初めてです。ここまでの味に出会ったのは」

 

まあ、俺もこの味に匹敵するモノは滅多にないなと思ってるが。

 

「さて……と。それなら……今日から手取り足取り腰取り教えてあげようかしら♪」

 

最後の腰取りはいらないと思うんだが。

 

「待ちなさい」

 

いきなり呼び止められる。

 

見ると、紫が立っている。

 

背後にオーラらしいモノが立ち上ってるように見えるんだが。

 

「……どうしたのかしら?」

 

「…………薬の修業は寺子屋と同じ時間割にしなさい」

 

「……どうして?」

 

「……夜は私の所に泊まって貰うからよ」

 

……現実逃避をしていたが。

 

ここの紫にも少年偏愛(ショタコン)属性が付与されてたのね。

 

前世の時は金髪少女の姿だったから大丈夫だったのか。

 

「何を戯けた事を。夜こそお風呂から添い寝までたっぷりと堪能させて貰うのよ?」

 

 

永琳さんェ……。

 

 

貴女も少年偏愛(ショタコン)属性が付与されてたんかい。

 

俺は鈴仙を見る。

 

「……」

 

無言で視線を逸らす。

 

「……貴女ばかり甘い柿を食べさせる訳にはいかないわ。こういう可愛い男の子は滅多にいないから私が保護するわよ」

 

別に保護しなくても大丈夫なのだが。

 

紫と永琳さんの視線がぶつかる。

 

間に火花が飛び散ってるように見える。

 

 

 

「おいおい、勝手に決めて貰っては困るよ?」

「そうよ、紫?」

「……可愛い男の子は護る対象です」

 

 

 

声が聞こえるのでそっちを見ると。

 

赤い服に赤いスカートをはいて足下は草鞋。

 

藍色の髪に頭に紅葉の髪飾りを付けた女性。

 

……八坂神奈子か。

 

水色の着物に頭に三角巾。

 

その三角巾には『@』に似たマークが。

 

背後に火の玉が浮いてる。

 

髪の色は淡い桃色。

 

ちょっと童顔の女性。

 

……西行寺幽々子。

 

白いワンピースっぽい服に黒の上着。

 

マントを羽織って髪は先が茶色っぽい色になってる。

 

……聖白蓮……。

 

ってか、もの凄く嫌な予感を感じるんだが。

 

「……えっと?」

 

俺は3人の顔を見る。

 

「自己紹介がまだだったね。あたしは守矢神社に奉られてる1柱、八坂神奈子って言うんだ」

 

赤い服を着た女性が喋る。

 

「私は白玉楼と言う屋敷の主を務めてます。西行寺幽々子と申します」

 

水色の着物を着た女性が喋る。

 

「私は命蓮寺と言う寺の主、聖白蓮です。よろしくお願いします」

 

白いワンピースっぽい服にマントを羽織った女性が喋る。

 

「……藤之宮アレス。前世の記憶を持つ者だ」

 

「なるほど、それなら『アレスちゃん』と呼んで良いかな?」

 

神奈子が頬を赤らめて俺の顔を見ている。

 

「まあ、拒否されても勝手に呼んじゃいますけどね♪」

 

満面の笑みで俺を見ている幽々子。

 

「……出来れば、そう呼ばせて貰えたらありがたいかな」

 

同じように頬を赤らめてる白蓮。

 

この3人も少年偏愛(ショタコン)持ちですか。

 

と言うか、よりによって五大老……いや、この呼び名は止めておこうか。

 

「……構わないよ」

 

もはや拒否する気も全く起こらない。

 

 

「よっしゃ」

「うふふ」

「ありがたいです」

 

 

「さあさあ、邪魔者はさっさとお消えなさい。幽々子、例え親友でもこの子だけは譲らないわよ?」

 

うわー、修羅場じゃん。

 

俺はエヴァを見る。

 

「お兄様? 貞操はきちんと守って下さいね?」

 

「……ああ」

 

またしても『四面楚歌』と言う単語が頭をよぎった瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

宴会もお開きになり。

 

と言うより、先に永遠亭のメンツと一緒に帰る事となった。

 

あの後……八雲家、白玉楼、守矢神社、命蓮寺に泊まる事を約束して何とかその場を収める。

 

これで泊まらなかったら色々とシャレにならないだろう。

 

「それでは改めて、藤之宮アレス。前世名は『アリス・マクダウェル』だ」

 

「私はエヴァンジェリン。前世名は『エヴァンジェリン・A.K・マクダウェル』でした」

 

永遠亭の人は前世の時に自己紹介をしてもらっているからここは省略する。

 

迷いの竹林をのんびりと歩く。

 

「そう言えば、知らない人達が増えていたな」

 

「そうだね、アレスがこっちを去ってから色々と事件が起きたから」

 

輝夜とは呼び捨てで呼び合う仲である。

 

「帰ってから教えてあげますね」

 

「うどんげ? それは私がやる役目よ?」

 

「ひっ! りょ、了解ですお師匠様!」

 

俺の方からは見えないが、永琳さんの顔を見て涙目になってる鈴仙がいる。

 

どんな顔してるんだ…。

 

「てゐ? お兄様に悪戯しちゃ駄目ですよ?」

 

「や、やらないよ……!」

 

額から滝の様に冷や汗を流しているてゐ。

 

前に来た時、エヴァを怒らせてお仕置きを受けているのだ。

 

以来、エヴァには頭が上がらない。

 

どんな事をやったんだか。

 

俺は直接見てはいないから詳しくは知らないんだが。

 

「……」

 

輝夜が近くに寄ってくる。

 

ちなみに、彼女の方が10㎝くらい背が高い。

 

「……永琳に気を付けなさいよ」

 

「……いきなりどうした」

 

「最近はなりを潜めてたんだけどね。月にいたときから可愛い男の子を見てはハァハァと欲情していたから」

 

「……」

 

生来からのフェチだったのか。

 

「前に来た時は貴方は女の子だったから大丈夫だったけど。今は……見事にストライクゾーンに入ってるから」

 

見ていれば分かる。

 

前の時と対応が変わってるから。

 

「……一応、気を付けてはおく」

 

「全く、これが無かったら文句なしなんだけどね」

 

苦笑している輝夜。

 

「だな」

 

俺は同意するしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

永遠亭に到着。

 

純和風の作りは相も変わらずといった所か。

 

「別々の部屋が良い? 一緒の部屋が良い?」

 

「一緒の部屋でお願いします」

 

輝夜の問いにエヴァが間髪入れず返答する。

 

「私の部屋はこっちよ。いつでも来ても良いわよ。特に夜は大歓迎ね」

 

永琳さん、何を仰ってますか……。

 

「それじゃ、部屋に行った後は……お風呂に入ります」

 

「お風呂はこっちよ」

 

廊下の奥を指差す輝夜。

 

「とりあえず、部屋に案内しますね」

 

俺とエヴァは鈴仙に連れられて廊下を進む。

 

 

 

 

 

 

 

「……世の中、ままならない事もあるものだ」

 

俺は小声で呟く。

 

「~♪」

 

目の前では永琳さんがもの凄く楽しそうに俺の身体を洗っている。

 

そう、俺は今……永遠亭の風呂に入っているのだ。

 

風呂の作りは現代の風呂と遜色ない作りになっている。

 

最も、シャワーは無いが。

 

湯船は薪を燃やして沸かすタイプ。

 

少し開けられた窓から煙が入ってくるのはご愛嬌。

 

「ん~♪凄い肌がぷにぷにしていて……触れば触るほど虜になるわね」

 

先程から二の腕とか腹とか揉むようにして洗っている。

 

対面座りだから目の前では永琳さんの大きな胸が揺れている。

 

こちらの永琳さんはそう言う設定の様だ。

 

「……それに、コレは実に危険ね」

 

そう言って俺の男性専用アームドデバイスの砲身部分を手に取る。

 

「……」

 

「貴方の歳なら大体は皮を被ってるモンなんだけどね……」

 

そう言って実に丁寧に洗う永琳さん。

 

「……俺、14歳になったんですけど」

 

「それなら皮が被ってなくても不思議じゃないわ」

 

変なところで納得する永琳さん。

 

「で? もう迎えたの?」

 

「……何ヲ?」

 

「射○よ、○精。貴方位の年齢ならもう迎えてるんじゃないの?」

 

ニヤニヤしながらも俺の男性専用アームドデバイスを洗う永琳さん。

 

硬度を上げる気満々だろ……。

 

「……こないだ迎えたばかりだ」

 

「ほぅ」

 

そう言って永琳さんは洗う手を強める。

 

「何故そこで強めるんですか?」

 

「検査よ。貴方の将来がかかってるからね」

 

もの凄い大きなお世話だと思うんだが!

 

それと、これ以上は大人の事情にひっかかるんだが!

 

「……心配しなくても大丈夫ですよ」

 

「そう?」

 

「ハイ」

 

「……なら、きちんと硬度が保てるか私の身体で試してみる?」

 

妙に頬を赤らめさせてる永琳さん。

 

すっげー嫌な予感。

 

「言ってる意味が分からんのですが……」

 

「単刀直入に言うわ。ヤりましょう♪」

 

直球ど真ん中に来ましたよ!

 

「いや、それはさすがに……」

 

「良いでしょ?私も初めてだし、アレスちゃんも初めてだからおあいこ♪」

 

何で俺が童貞だと知ってるんだ!

 

「……私が許すと思う?」

 

ここにいないはずの声が響く。

 

俺と永琳さんの真横の空間に亀裂が入る。

 

そこから現れたのは……紫だった。

 

顔だけを覗かせて俺と永琳さんを見ている。

 

「っ……鬱陶しいのが来たわね……」

 

小さく舌打ちをする永琳さん。

 

「私の勘が囁いてたからね。貴女の事だからお風呂から寝床に直行しかねないから」

 

そう言って俺の方を見る紫。

 

「うふふふふ……これはこれは……」

 

紫の視線は俺の股間に釘付けだった。

 

「里の男の子達を長年観察していたけど……ここまでのイチモツを持ってる子はいなかったわ……」

 

もの凄く不穏当な台詞が聞こえてきたが、ツッコミを入れるのを止めておいた。

 

「さあ! 一緒にお風呂入りましょ!」

 

スキマから飛び上がって来る紫。

 

っておい!

 

スキマ部分に残された紫色の服が見えた。

 

こ、この妖怪は『ルパンダイブ』を習得しとったんかい!

 

ってか、女性がやって良いんかい!

 

無論、紫は全裸である。

 

永琳さんと同じ巨乳である。

 

「どっせい!!」

 

俺に抱きつこうとした瞬間に光弾に吹っ飛ばされる紫。

 

永琳さんが弾をぶつけた様だ。

 

「いったいわね! 何するのよ!」

 

「貴女こそ何してるのよ! ここは私の家なのよ!」

 

「そんなのは関係ないわ! 可愛い男の子がいたら襲えと言う名言があるの知らないの!?」

 

「あるのは知ってるわよ! それをこれから実践しようとしてたら貴女が邪魔するからじゃない!」

 

どっちにしてもロクでもない事は分かる。

 

2人は立ち上がってわめき散らしている。

 

……2人とも、毛が生えてないのね。

 

そんな事を思いつつ俺は身体に付いてる泡を流す。

 

それから湯船に漬かり、一息。

 

「って! いつの間にお風呂に入ってるのよ!」

 

「そうよ!」

 

俺が湯船に漬かっていると慌てて2人は湯船に入ってくる。

 

ちなみに永遠亭の湯船は5人くらい入れる大きさである。

 

「さあ、こっちにいらっしゃい」

 

「駄目よ。そっちに行ったら搾り取られるわよ」

 

俺の両手を取るのは永琳さんと紫。

 

「……時間制で良いだろ?」

 

「仕方ないわね」

 

「そうね。今回はそれで良いわ」

 

その後、永琳さんと紫の両人に抱きつかれながら湯船に入るのであった。

 

言うか。

 

こっちに来てもあっちと状況が変わらないのはどういう事だ……。

 

その時、頭に声が響いた。

 

 

 

『知らなかったのか…? 少年偏愛(ショタコン)からは逃げられない…!!!』

 

 

 

 

えー? どこの大魔王様ですかー?

 

ってか、この声……。

 

いや……追求は止めておこうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん~あったか~い」

 

「この暖かさは病み付きになるわね……」

 

寝床に入ると隣に永琳さんと紫が何事も無かったかのように入ってくる。

 

2人は俺の身体を抱きしめている。

 

俺を湯たんぽか何かと間違えてないか?

 

本来はエヴァと寝る予定だったのを永琳さんと紫が頼み込んで交代して貰ったと言う経緯がある。

 

「俺は湯たんぽじゃねぇぞ…」

 

「何を言ってるの? アレスちゃんは湯たんぽ以上の性能を誇っているのよ?」

 

「そうそう。湯たんぽは暖かいだけだけど、アレスちゃんは柔らかいし、いい匂いがするし」

 

「そうね。抱き心地がもう最高よね! ねぇ? このままここに永住しない?」

 

紫が恐ろしい提案をしてくるんだが。

 

「いや、帰るところあるし」

 

「……残念ねぇ……もし飽きたらこっちに来なさいよ? 何があろうと受け入れてあげるから♪」

 

駄目だ、もう骨の髄まで少年偏愛(ショタコン)化しとる。

 

「……まあ、飽きたらな」

 

お茶を濁す様に返答するしかなかった。

 

こうして夜は更けていくのであった。

 

 

 




八雲紫、西行寺幽々子、八意永琳、八坂神奈子、聖白蓮。

この方々はカリスマがあるはずなのですが、アレスの事になると投げ捨ててしまいますw


よりにもよってこの方々に少年偏愛(ショタコン)が付与されておりますw




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IF…なお話

はい、本編に全く関係ないお話ですw

申し訳ない、今ちょっと依頼で違う二次小説を書いてる最中です

Fateの五次聖杯戦争のお話で

アレスがサーヴァントとして遠坂凛に召喚されるお話ですw

時系列はこれより遙か先のお話

リリカルなのは→ゼロの使い魔→SHUFFLE!と続いた先の話です

それぞれの話で伴侶を得て一緒にサーヴァントとして出ます

ちなみにアレスのクラスは『召喚師(サマナー)』で召喚するのは4人ですw

さあ、誰が出るかな?

※正解しても何も出ませんw


 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

俺は一呼吸ついた。

 

目の前には大きな鏡、

 

そしてその鏡には……白いタキシードを着た俺の姿。

 

ちなみにこのタキシードは特注品でもある。

 

「……こうなるだろうとは思っていたけどなぁ」

 

思い起こされるのはなのは、フェイト、アリシア、はやて、アリサ、すずかとの思い出。

 

なのはとは5歳の時に知り合って、アリサ、すずかとは7歳の時に。

 

フェイト、アリシア、はやてとは9歳の時に知り合った。

 

あれから10年。

 

俺は19歳になっていた。

 

背は9歳の時に止まってから1㎜たりとも伸びていない。

 

身長135㎝。

 

そして、なのは達は。

 

 

 

 

なのは =175㎝

フェイト=180㎝

アリシア=182㎝

アリサ =176㎝

すずか =172㎝

はやて =168㎝

 

 

 

 

 

うん、モデル級の身長だね。

 

全員長身で足が長い。

 

そうそう、全員股下比率55%とか言う恐ろしい比率なんだよね。

 

アリシアなんか1mあるんだぜ、足の長さが。

 

ちなみに俺は53%と長い様だが、いかんせん背が低いから大したこと無い。

 

まあ、足の長さはさておき。

 

胸……なんだが。

 

全員、胸に要塞を建設したんじゃないのか?と言うくらい大きくなりました。

 

では、どの位になったのか。

 

 

 

 

 

なのは =102㎝(Hカップ)

フェイト=106㎝(Iカップ)

アリシア=109㎝(Jカップ)

アリサ = 99㎝(Gカップ)

すずか = 95㎝(Fカップ)

はやて = 90㎝(Eカップ)

 

 

 

 

 

 

えっと。

 

3桁っすか。

 

しかもカップが普段聞き慣れない単語なんですが!

 

形は半球型と円錐型の中間みたいな感じです。

 

アレですか? アフロダイAみたいにミサイル撃つんですか?

 

そんな感じの胸です。

 

柔らかいけど弾力があって……。

 

寝てる最中に何回か窒息させられる事がありましたが。

 

抱きしめられる、上に乗っかる。

 

それだけで呼吸困難になりましたよ。

 

そういえば、はやてやすずかはギリギリ大丈夫らしいのですが。

 

なのは、フェイト、アリシア、アリサは紐靴を履かなくなりました。

 

理由を聞いたら足下が見えなくて紐がほどけた事に気付かないとか。

 

……まあ、胸にあんな山脈あったら足下が見えないよな。

 

それと。彼女達は俺の頭を胸の休憩台にするようになりました。

 

……世の中の胸マニアに聞かれたら刺されそうだよな。

 

と言うか、管理局では一部の方々に恨みを買ってますが。

 

話を戻そうか。

 

そして、今日……。

 

俺となのは、フェイト、アリシア、アリサ、すずか、はやての6人と結婚式を挙げる事となりました。

 

いや、追加でティアナとスバルもいるから8人か。

 

ベルカ自治区での挙式だから一夫多妻制なんですよね。

 

いや~、この1年は長かった。

 

試験的に部隊を設立して、ジェイルと戦って。

 

あと、転生者達を全員捕まえて。

 

まあ、この辺は割愛しようか。

 

その間にもなのは達から『結婚! 結婚!』とコールが。

 

そんなに急がなくても大丈夫だと思うんだが。

 

気が付いたらティアナとスバルも一員に入っていたんだが。

 

そして、ようやく一段落ついたから『そうだ、結婚式を挙げよう』と言う話になり。

 

いや、『京都に行こう』みたいに言わんでもとは思ったが。

 

通常の三倍の早さで準備を進めて今日に至ったワケだ。

 

……何か忘れているような。

 

 

 

コンコンコン

 

 

 

ドアから聞こえるノック音。

 

「どうぞ~」

 

『パパー!!』

 

ドアが開かれると一斉になだれ込んでくる……子供達。

 

子供達は俺に抱きついてくる。

 

その子供達の後ろにはエヴァ。

 

「お兄様? 準備は出来ました?」

 

「……出来たが。どうした? 何かあったのか?」

 

俺は子供達の頭を撫でながらエヴァの方を見る。

 

「いえ、パパに会いたいって言うモノですから……」

 

「そうか」

 

俺は子供達……6人の娘達を見る。

 

 

 

 

なのはそっくりな子供……『(さくら)

フェイトそっくりな子供……『ディアナ』

アリシアそっくりな子供……『ミネルバ』

アリサそっくりな子供……『レア』

すずかそっくりな子供……『(あおい)

はやてそっくりな子供……『(あい)

 

 

 

全員母親似であった。

 

もっとも、全員俺と同じで右目が蒼いのだ。

 

だから一目で俺の子供だと分かるのだ。

 

引き取ったヴィヴィオも義妹が沢山出来て嬉しそうにしている。

 

さてさて、いつ娘が出来たのか。

 

それは今をさかのぼる事4年前。

 

中学3年生の事。

 

……まあ、ぶっちゃけ言うと俺はなのは達に頂かれたのだ。

 

大層気に入った様子で1週間、爛れた生活……性活を送ったのだ。

 

どうもその時に精神コマンドの『必中』が発動した模様。

 

1ヶ月後に全員から『来ないの』と聞かされた時は目の前が真っ暗になった。

 

いや~、あの時は通常の三倍の早さで天界に念話を送ったね。

 

そして、マッチョ神の台詞を聞いた時は。

 

マジで一旦あっちの神界に戻ってゼルディア様をボコろうかと思った位に。

 

『む? ゼルディアが解除して良いと言っていたから解除したのだが。君が言ったのではないのかね?』

 

そう、いつの間にか俺の上司である駄女神様(ゼルディア)が避妊状態を解除する様にマッチョ神に言っていたのだ!

 

あの時は咆吼しまくったモノだ。

 

わざわざ声を若本ヴォイス仕様にした位だからな。

 

堕胎させるワケにもいかず。

 

仕方ないから高町夫妻、プレシア女史、リンディさん、バニングス夫妻、忍さん達に報告。

 

……全員大喜びしていたが。

 

普通ならスズメバチの巣をつついた位の大騒ぎですよね!?

 

全員、早く孫を見る事が出来て大喜びだった。

 

ちなみに。

 

恭也さんと忍さんとクロノは『伯父か……』『伯母か……』『もう伯父か……』と苦笑しながら呟き。

 

美由希さんは『あは……あは……もう伯母ちゃん……』と真っ白になっていたが。

 

リインフォース、シグナム、シャマル達は『アレスちゃんに似れば最高ですな!』と言っていたし。

 

……おのれらは俺の子供も毒牙にかけるつもりかと当時は思ったり。

 

この3人もはやてにそそのかされてそういう関係になってしまった。

 

そして、はやてを含めて4人でヴィータをそそのかしている。

 

……近日中にヴィータも俺の寝床に来る可能性が高いな。

 

もっとも、二重身(ドッペルゲンガー)あるから1人増えても問題は無いが。

 

「そろそろ時間ですよ。行きましょうか」

 

「ああ」

 

俺はエヴァと子供達を連れて部屋から出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

盛大な結婚式が行われる。

 

そして、披露宴になると恐ろしい宴と化したのだ。

 

どんな光景だったのか……だって?

 

それは想像に任せる。

 

……15年後には、ヴィヴィオも俺のお嫁さんになる事だろう。

 

何故か……だって?

 

目を見ていれば分かる……。

 

なのは達を同じ目をしているからだ。

 

俺をパパと呼ばずお兄ちゃんと言っているから……。

 

聖王から性王にクラスチェンジしたんですか?

 

それと皆さん? 2人目が欲しい?

 

ティアナ、スバル?

 

最低でも3人だと?

 

どんだけ俺に子供を持たせる気なんだ……!

 

このままだとネズミ算式に子供が増えるんだが!

 

そりゃあ、ミッドでは人口が少ないから大歓迎でしょうけど……。

 

……俺の娘はそう簡単にやらんぞ!

 

 

 

『俺に勝つ事が出来たら結婚を許してやろう』

 

 

将来娘達が適齢期を迎えたらそう言い放つつもりだ。

 

そんな事を思いつつ俺は乱痴気騒ぎになってる披露宴の様子を眺めるのであった。

 

 

 




あくまで本編と関係ありませんw

それと。

娘達が後家になるじゃねーか!と言うツッコミは受け付けておりませんw


ホントは子供の日(5月5日)に掲載したかったのですが


農作業の手伝い、そして右下の歯の治療の影響で右肩がこっているので長時間文字を打つのが辛い

奥歯の1本の半分を抜いたので右側はまだ物を噛めません

それと、10年前に右手をベルトコンベアに巻き込まれてしまい、手の甲の皮膚を全て失っております

腹からの皮膚移植で皮膚は復活しておりますが、血流が悪くなったらしく怪我以降は右肩がこりやすくなってしまいました

その2つが重なって右肩が今現在こりやすい状態になっております

つまり……

長時間パソコンで字を打てない!

ご迷惑をおかけしますが、お待ち下さいませ

※今月から自動車整備士の資格を取る為に土日は講習が入ってまともに小説が書けるか分かりません
でも、途中放棄は絶対にしませんので気長に……気長にお待ち下さいませ



つーか、ウチの会社って給料安すぎるよね


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第45話 あんた等下心見え見えだな!

うぉぉぉ……右肩が……右足もおかしい……右半身がおかしい……何が起きてる……

幻想郷編も余り長くは続けられないですなw

時間が欲しいですw

※幻想郷住人が一部おかしくなっていきます


 

 

 

 

 

 

「うぅん……」

 

誰かに抱きしめられている。

 

暖かくて柔らかい。

 

なのは達とはまた違う感じだ。

 

と言うか、股間をまさぐられている。

 

そんな事をするのははやてが一番多い。

 

しかし、触り方がいつもと違う。

 

やけに手慣れていると言うか、男のツボを突いた攻め方……って!

 

頭が覚醒してくると、誰の仕業か分かってくる。

 

「……朝から何をしている?」

 

目を開けて見ると、嬉しそうな笑顔で俺の股間を揉んでいる紫がいる。

 

「そりゃあ、朝ってここの硬度が増してるじゃない?」

 

「まあ、そこは否定はしないが」

 

「1発出せばすぐに柔らかくなるでしょ?」

 

朝から既に暴走状態の紫。

 

「朝から出せと申すか」

 

「あら、こちらでは重要よ? 産めよ増やせよがこっちのルールだからね」

 

確かに、こっちの医療技術とか科学技術は明治時代で止まっているから……。

 

子供が亡くなる率も外の世界よりも高いのだ。

 

故に、婚姻とかは12~15歳辺りからお嫁に……と言った感じなのだ。

 

まあ、現代のルールから見たらもはや犯罪なのだろうけど。

 

今でこそ寿命が80歳前後だから言えるけど、昔は50歳まで生きていたら長生きとまで言われていたのだ。

 

30歳過ぎたら中年扱いだ。

 

……確かに俺の年齢なら大丈夫と言うわけだ。

 

幻想郷内限定だがな!

 

「と言うか。何回も言うようだが俺はここに永住する訳じゃないんだが?」

 

「何を言ってるの? アレスちゃんの子なら小柄な子が生まれるに決まってるじゃない。育てるのは私が責任持って育てるから子種だけでも……」

 

段々と恐ろしい方向に話が進んでるんだが。

 

「その前に、妖怪である紫と俺との間に子が出来るのか?」

 

半人半妖かよ。その前に紫が子を成せるのか。疑問が山ほど出てくる。

 

「その点は大丈夫よ。霊夢か魔理沙にお願いするから♪」

 

どちらにしても高確率で断ると思うが。

 

……もし、2人にも少年偏愛(ショタコン)属性が付与されていたら。

 

……。

 

後の展開をどう想像しても俺は2人に美味しく頂かれてしまうのだが!

 

どうなのだろうか。ここの幻想郷は……ショタの集まりなのだろうか。

 

今現在確認が取れているのは紫、幽々子、永琳さん、神奈子、白蓮の5人だ。

 

よりにもよってこの5人か!とぼやきたいが、確認してしまった以上は現実から目を逸らすわけにもいくまい。

 

「……2人がどう言うか知らんが。強制はさせるなよ?」

 

「分かってるわよ?」

 

本当に分かってるんだろうな。

 

境界を弄くって俺みたいな小柄な男の子でなきゃ駄目になったとか。

 

……本当にやりそうで恐いな、こいつは。

 

「アレスさーん? 朝食の用意が出来ましたよー?」

 

そう言って襖が開く。

 

現れたのは鈴仙だった。

 

「……えっと」

 

「気にするな。コイツが勝手に現れた上に勝手に布団に潜り込んだだけだからな」

 

「わ、分かりました」

 

「さて、朝食を頂きましょうかね」

 

朝食まで頂く気満々だな、紫は。

 

「……どうぞこちらへ……」

 

口元をヒクヒクとさせながら案内する鈴仙だった。

 

 

 

 

 

 

 

「おっはよー」

 

 

 

「……」

「……」

 

 

 

俺と紫は無言になる。

 

食卓に着いてるのは赤い服に紺色のスカートを履いた女性……八坂神奈子だったから。

 

美味そうに味噌汁をすすっている。

 

同じ食卓に座ってる永琳さんと輝夜の額には血管が浮かんでる。

 

てゐは顔を青くしながら……人参ジュースと思われる飲み物を飲んでいる。

 

エヴァは黙々とご飯を食べている。俺の方を見て『頑張ってくださいね?』とアイコンタクト。

 

……ロクでも無い予感しか感じないが。

 

「……えっと? おはようございます?」

 

「お、来たな? おはようアレスちゃん。さあ、こっちに座りなよ」

 

そう言って神奈子は自分の隣の席の座布団を叩く。

 

「何を言ってるの? アレスちゃんはこっちの席よ?」

 

紫が同じように隣の席をポンポンと叩いている。

 

えーと。

 

俺にどうしろと?

 

二重身(ドッペルゲンガー)使っても良いけど……。

 

使ったら使ったで何か面倒な予感もするし。

 

それに永琳さんの視線がもの凄く痛い。

 

ザクザクと突き刺さるように。

 

ここは永遠亭。

 

やはり永琳さんの隣に座った方が後々の為にも良いだろう。

 

俺は永琳さんの隣に座る。

 

「うんうん♪分かってるじゃない」

 

「……まあ、ここは『永遠亭』なんで」

 

俺は永遠亭の部分を強調して言う。

 

 

 

「……なるほど」

「……そう言う事ね」

 

 

 

神奈子と紫も即座に納得してくれたようだ。

 

八雲家とか守矢神社に行った時が少し恐くもあるが。

 

その後は滞りなく朝食は進むのであった。

 

ちなみに、神奈子はご飯2杯食べて紫は3杯食べていた。

 

永琳さんと輝夜の額には更に青筋が浮かんでいた事を報告しておこう。

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「……」

 

「……なんだかなぁ」

 

朝食も終わって俺は永遠亭の一室にいる。

 

そこは教育も出来る様な作りになっている。

 

要は学校の教室みたいな作りと思ってくれれば良いだろう。

 

最も、教室みたいに広くはない。

 

何で其処に来ているのかと言うと、まずは座学から始める事となったのだ。

 

つまりは大雑把な復習を兼ねてと言う事だ。

 

目の前には講師役の永琳さん。

 

眉間にしわを寄せて、頬はピクピクと痙攣させている。

 

つまりは怒り状態である。

 

隣の席にはエヴァ。

 

表情は苦笑している。

 

「……何のつもりかしら? 貴女達は……」

 

永琳さんが俺の後ろの方を見ながら言う。

 

俺の背後には。

 

 

 

「ちょっと、急に薬の勉強をしたくなってね」

「最近、亡霊達が風邪をひくようになったのよ~」

「こういう知識は信仰が上がると思って」

「妖怪達の治療で使うために」

 

 

 

紫、幽々子、神奈子、白蓮の4名が座っている。

 

つまりは急に乱入してきたと言うわけだ。

 

明らかに俺と一緒に居たいと言う目的がバレバレであったが。

 

幽々子、亡霊が風邪をひくなんて俺は聞いた事無いぞ。

 

白蓮だけの言い分は納得出来るが。

 

「はぁ…まあ良いわ。その代わり、授業の妨害はしないでよ?」

 

ため息をついて永琳さんは俺に冊子を渡してくる。

 

薬の作り方の冊子だった。

 

基礎的なヤツから応用を生かしたヤツまでの説明が書いてある。

 

実に分かりやすいな。

 

そんな事を思いつつ授業は開始されるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

休憩を2回ほど挟んで座学はまだ続く。

 

後ろをチラッと見ると、少しだれた感じの4人がいる。

 

さすがにここまで長いと飽きてくるだろう。

 

少し集中力が落ちているようにも見える。

 

「……とまあ、こんな感じね」

 

永琳さんの講義は続く。

 

「……ちょっと話の腰を折るようで悪いけど」

 

「……ええ。バキバキに折ってるわね」

 

紫の問いかけに毒舌で返す永琳さん。

 

「惚れ薬って作れるのかしら?」

 

紫が言った台詞の瞬間、部屋の空気が何か変わった。

 

妙に背筋が冷たくなったような……?

 

「…………作る事は出来るわよ。私の能力は『あらゆる薬を作る事が出来る程度の能力』だからね」

 

紫の台詞を聞いてもの凄く嫌な予感を感じるのだが。

 

「是非、作って貰いたいわね」

 

「……聞くまでもないけど、それをどの様な目的で使うのかしら?」

 

「も・ち・ろ・ん・♪アレスちゃんに飲ませて私に惚れさせるのよ?ああ、アレスちゃんになら初めてを捧げても良いわね♪」

 

頬を赤くして両手を頬に当ててから身体をクネクネさせている紫。

 

自分の欲望駄々漏れだな。

 

 

 

「……紫?」

「このスキマ妖怪は……」

「どうしてくれようかしら……」

 

 

 

 

ちらりと後ろを見ると幽々子、神奈子、白蓮の目が据わっておられます。

 

 

 

「その役目は私がするのよ!?」

「その役目は私がするんだ!」

「その役目は私がするのです!」

 

 

 

間を置かずに言い放つ3人。

 

これはもう授業が進まない予感。

 

「貴女達は何を戯けた事を言ってるの!? アレスちゃんの初めては私が頂くに決まってるじゃない!」

 

えーりんさん、そこで参戦しないで下さい。

 

ああ、講師がコレでは今日の授業は終わりだな。

 

5人は笑顔で睨み合っている。

 

背景に『ゴゴゴゴゴゴ』と言う効果音が浮かびそうな勢いだ。

 

〈今日はもう駄目そうだな〉

 

〈ですわね〉

 

〈このままこっそりと抜け出すか〉

 

〈……その方が良さそうですわね〉

 

こっそりとエヴァと念話を交わす。

 

エヴァと目が合う。

 

頷くエヴァ。

 

気配を消して俺とエヴァは部屋から逃亡する。

 

そして、永遠亭から抜け出して自由気ままに散歩する事にしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、抜け出したのは良いが。どこに行こうか」

 

「そうですわねぇ……」

 

俺とエヴァは空に浮かんで周囲を見渡す。

 

山とか川とかで特に気になるモノは見当たらない。

 

「ん~……そろそろ昼か……」

 

「あら、そうみたいですわね」

 

俺とエヴァは空に浮かぶ太陽を眺めながら呟く。

 

「……博麗神社に行ってみるか」

 

「行ってみましょうか」

 

俺とエヴァは顔を見合わせて頷いてから博麗神社があると思われる方角に向かって飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

赤い鳥居が見える。

 

山頂にある古い神社が見える。

 

あんな辺鄙な場所、誰が参拝に来るんだろうか。

 

疑問は尽きないが。

 

まあ、色々と事情があるから仕方有るまい。

 

境内では独特なデザインの巫女服を着た少女――――博麗霊夢が箒を持って掃き掃除を行っていた。

 

「あ~、そろそろお昼ねぇ……。全く、昨日掃除したばかりなのに……もう葉っぱが……」

 

独り言を呟く霊夢。そろそろ集中力が落ちてくる頃だろう。

 

「チィーッス、三河屋でぇす!」

 

「お兄様、霊夢さんにその挨拶が通用すると思ってるのですか?」

 

俺はそんな事を言いながら博麗神社の境内に降りる。

 

エヴァのツッコミは気にしないで。

 

「アンタは……確か、アレスって言ったわよね?」

 

「ああ、藤之宮アレス。こっちはエヴァだ」

 

「それで? 何の用かしら? そうそう、素敵なお賽銭箱はそこよ?」

 

そう言って奥に鎮座する大きな賽銭箱を指差す霊夢。

 

賽銭を要求するか。

 

見たところ金に困ってるワケでもなさそうに見えるが。

 

実際はどうかは分からない。

 

……もしくは信仰か。

 

と言うか、神が神を参拝しても良いモノだろうか。

 

まあ、今は人だから大丈夫だろう。多分……。

 

しかし、これも何かの縁だろうから賽銭でも入れておこうか。

 

「ふむ……」

 

俺は賽銭箱に近づき眺める。

 

「じー」

 

後ろでは霊夢が俺の方を見つめている。

 

ポシェットに右手を突っ込む。

 

せっかくだから、コレくらい入れてみるか。

 

どんな反応をするか楽しみだし。

 

取り出した右手には『慶長小判』と呼ばれる小判が1枚。

 

8割位金で出来た貴重な小判だ。

 

「ぶはっ」

 

後ろから噴き出す声が聞こえる。

 

俺は気にせず2回お辞儀してから賽銭箱に小判を放り込む。

 

ゴトンと重たい音が響く。

 

「幻想郷が平和でありますように。あと、俺の人生が平穏でありますように」

 

そう言って2拍手。

 

ここの神社はどんな神様を奉ってるのか分からないから普通の神社(二拝二拍手一拝)の様にしておく。

 

出雲大社なら『二拝四拍手一拝』(2回お辞儀して4回拍手して最後に1回お辞儀する)なのだが。

 

そして最後に1回お辞儀する。

 

 

 

『前の願いは叶えてやろう。だが、次の願いはちと叶えられぬなぁ』

 

 

 

「!?」

 

不意に頭に響く声。

 

と言うか、俺の今後の人生は波瀾万丈になるんかい!

 

声の主は分からなかった。

 

ボイスチェンジャーでも使ったかのようなくぐもった声だったから。

 

ぬぅ……とりあえず判明したらボコボコにしてやる。

 

「どうかされました?」

 

エヴァが俺の様子を見て不審に思ったのか、聞いてくる。

 

「……いや、何でもない」

 

俺は何事も無かったかのように返答する。

 

振り返ると目の前には霊夢が。

 

目は光り輝いている。

 

「……どうした?」

 

「アンタ、この神社にずっと住む気無いかしら?」

 

……この巫女は唐突に何を抜かすのだろうか。

 

「何故に」

 

「アンタと一緒ならこの神社を盛り上げる事が出来そうだから♪」

 

俺を博麗神社の祭神にするつもりか。

 

それと、瞳の中に『¥』マークが見えるんだが。

 

「……俺の金目当てじゃなかろうな?」

 

「まっさかぁ~?」

 

俺の顔から視線を逸らす霊夢。

 

この巫女はロクでも無い事が分かる。

 

「……他を当たってくれ」

 

「……残念」

 

断るともの凄く残念そうな表情を浮かべる霊夢。

 

「ま、折角だからお昼ご飯をご馳走するわ。少し待ってなさい」

 

そう言って霊夢は裏手の方に回る。

 

一緒に付いて行くと縁側が見える。

 

そして、そこには黒いとんがり帽子を被った金髪の少女が座っている。

 

「お邪魔してるぜ」

 

普通の魔法使い、『霧雨魔理沙』だった。

 

手には湯飲みがあってその中にはお茶らしき液体が。

 

どうやら勝手に入れて飲んでいた模様。

 

「……また勝手に。まあ、良いわ。今日は気分が良いからね」

 

「ほほぉ? 珍しいな。ん、あんたは……確かアレスとエヴァって言ってたかな?」

 

魔理沙は俺とエヴァの方を見る。

 

「ああ。藤之宮アレスだ」

 

「私はエヴァンジェリンと申します」

 

「あたしは霧雨魔理沙だ。霊夢、ご飯はまだか?」

 

「またご飯たかりに来たの?」

 

「そう言うなって。材料持ってきたから」

 

魔理沙の手にあった籠。その中には色々なキノコが入っていた。

 

「もう、しょうがないわね」

 

霊夢はぼやきつつ魔理沙の籠を取る。

 

そして台所と思われる場所に向かっていった。

 

この場に残ったのは俺とエヴァ、魔理沙の3人。

 

「さて、と。霊夢の機嫌が良い理由を教えて貰おうかな。ここ近年にない機嫌の良さだからな」

 

魔理沙はズズイッと寄ってくる。

 

パッチリ目に高い鼻。

 

美人系の顔つき……ではあるが、背は俺より10㎝高いかどうかだ。

 

結構小柄なのだ。

 

まあ、江戸時代とか男性の平均身長は155㎝、女性は140㎝位だったらしいから魔理沙はちょっとだけ高いのだが。

 

「……賽銭箱にコレを放り込んだだけだが」

 

俺は慶長小判を見せる。

 

「なるほど、こんなの入れられたら大喜びするよな……。と言うか、結構酔狂な所があるんだな」

 

目を丸くしている魔理沙。

 

「まあな。何となくだが、コレを入れたら面白そうな予感を感じたから」

 

「確かに、面白そうだな」

 

「で、ここの神社って参拝客と言うのはいないのか?」

 

知っていながら俺は魔理沙に尋ねてみる。

 

「あ~、人里からここに来るまで大抵は妖怪に襲われるからなぁ……。しかもこの長い階段途中とか格好の餌食だし」

 

やはり予想通りの答えだった。

 

空から見たが、この博麗神社に来るまでの階段が長いのだ。

 

疲れた所を襲われてはひとたまりも無い。

 

「……まあ、参拝客いなくても食っていけるなら大丈夫なのか」

 

「まあな。それに霊夢は妖怪退治が本職だからな」

 

「なるほど」

 

「けど、時々横着して放置する時があるけどな」

 

やはり霊夢らしいと言えばらしいのか。

 

「自由奔放な巫女だな」

 

「そうだな。長年のつき合いだからな」

 

「お昼出来たわよ~」

 

霊夢の声が聞こえる。

 

「出来たみたいだな。行こうぜ」

 

魔理沙に促されて俺とエヴァは霊夢の所に行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご馳走様でした」

 

全員一斉に挨拶する。

 

昼食は麦と粟、稗入りご飯、味噌汁、キノコの油炒め、玉子焼きだった。

 

そう言えば、玉子って結構貴重じゃなかったっけ?

 

まあ、差し入れとかお裾分けとかもあったのだろう。

 

ちなみに麦入りご飯とか脚気に良いらしいとかなんとか。

 

なるほど、霊夢は健康に気を使っている……ではなくて単に食費節約の為だと思う。

 

「さあて、食べた事だし。紅魔館に行って本を借りてくるかな。あたしが死ぬまで」

 

エラい長い借用期間だな。

 

「……魔理沙。いい加減に借りた本返してあげなさいよ」

 

「そうは言ってもなぁ。次から次に借りたい本が増えてさ」

 

「信用失っても知らないからね」

 

「……まあ、そのうちな」

 

そんな感じで霊夢と魔理沙は食後のお茶をすする。

 

実にまったりとした空気が流れる。

 

俺とエヴァも同じようにお茶をすする。

 

 

 

「……のどかだな」

「……のどかですね」

 

 

俺とエヴァは同時に口を開く。

 

 

 

「やぁっと見つけたわ」

 

 

 

 

「……のどかじゃ無くなったな」

「……のどかじゃ無くなりましたね」

 

 

 

 

俺とエヴァは空間が割れたスキマから嬉しそうに顔を覗かせる紫を見ながら呟く。

 

「あら、紫じゃない。宴会は昨日開いたばかりだから開かないわよ」

 

「……何となくだけどみょんな予感を感じるぜ」

 

魔理沙、ソレは妖夢の台詞だと思うんだが。

 

「全くアレスちゃんったら。いつの間にかいなくなって」

 

「あの状況につき合うほど暇じゃなくてな」

 

「まあ良いわ。それに丁度良いところに魔理沙もいるじゃない」

 

紫はそう言って魔理沙の方を見つめる。

 

「うわ、何か嫌な予感を感じるぜ」

 

身震いしている魔理沙。

 

「それで、用件は何なのよ。これからお昼寝しようかと思ってたんだけど?」

 

腋を出したこの巫女はぐうたら仕様なのか。

 

「単刀直入に言うわ。霊夢か魔理沙、2人ともアレスちゃんの子供作ってくれない?」

 

 

 

 

「ぶほっ」

「ぶはっ」

 

 

 

 

同時にお茶を噴き出す霊夢と魔理沙。

 

ちなみに俺とエヴァは退避済みである。

 

「お、おいおい……いきなり何を言い出すかと思ったら……」

 

「そうよ、紫。理由を説明しなさいよ」

 

「理由なんて……決まってるじゃない」

 

そう言って紫はスキマから全身を出して俺の背後に回り込む。

 

「霊夢、魔理沙。アレスちゃんの年齢知ってる?」

 

 

 

 

「……」

「……ん~」

 

 

 

 

霊夢と魔理沙は俺の顔をジーッと見つめてくる。

 

「そうねぇ……小柄だし、10歳位かしら?」

 

「何言ってるんだよ、11歳だろ?顔は童顔だけど背はちょっと高いじゃないか」

 

霊夢と魔理沙はそう宣言する。

 

どちらにしても外れているんだが。

 

「……14歳だ」

 

「え?」

 

「……そうなの?」

 

2人は目を丸くしている。

 

「14歳にしてこの外観よ?もはや至高と言っても過言じゃないわよ?」

 

「……そう言えば、紫……。アンタ、よく里の方で小柄な男の子を物欲しそうに見つめてたわね……」

 

「そう言えば、そんな事聞いた事あったな……」

 

「でも、年齢を重ねたら大きくなるわよね?」

 

「そりゃあ、大人になるんだからしょうがないじゃない?」

 

「……そこでアレスちゃんの血筋が重要になってくるワケよ」

 

「……なるほど、そう言う事ね」

 

霊夢はすぐに理解したようだ。

 

「……ああ、分かったぜ……」

 

魔理沙もため息をつくように紫を見ている。

 

「それで?作ってくれるの?くれないの?」

 

目をランランと輝かせる紫。

 

「……ん~、あたしはまだ子供は欲しくは無いぜ。魔法の鍛錬もしたいしな」

 

魔理沙は少し考えてから返答する。

 

「あら、残念。霊夢は?」

 

「……あたしも今は欲しくは無いわよ。生活だって結構不安定な所があるから子供産んでも……」

 

「なら、生活が安定出来れば良いのね?」

 

紫はそう言って霊夢の両肩を掴んで顔を寄せる。

 

……何となくだが嫌な予感を感じるんだが。

 

「もし産んでくれるなら生活費とか養育費を出してあげるわよ?」

 

「……ホントに?」

 

「ええ。一生食いっぱぐれる事は無くなるわよ?」

 

紫の口元が釣り上がる。

 

邪笑と呼ばれる微笑みだった。

 

「……」

 

霊夢が俺の方を見る。

 

……また瞳の中に『¥』マークが見えるんだが。

 

こ、この巫女は……金さえ積めば大丈夫ってヤツなのか!?

 

「……アレス。紫もああ言ってることだし」

 

霊夢はゆらりと立ち上がる。

 

「子作りしましょうか!」

 

そう言って霊夢は飛びかかってくる。

 

「そうは問屋が卸すまじ!!」

 

掴まれるところを俺は容易く回避する。

 

「何で避けるのよ! 折角あたしが子供を作ろうって言ってるのに!」

 

「ええい! どうやって子供を作るのか知ってて言ってるのか!」

 

「知ってるわよ! アンタの股間にある棒をあたしのここに突っ込めば良いんでしょ!」

 

そう言って自分の股間を指差す霊夢。

 

色気も何もあったもんじゃない。

 

「しかも、ここで公開しろと言うのか!?」

 

「お金の為ならこの程度、問題ないわ!」

 

なんと言う恐ろしい発言。

 

「お~、それはちょっと興味あるぜ」

 

頬を赤くしている魔理沙。

 

「アレスちゃんのはちょっと大きいけど……。まあ、霊夢なら大丈夫でしょ」

 

「え? アレスは大きいのか?」

 

「ええ。太くて、長めね。少し反っていて綺麗なデザインよ?」

 

「へぇ。ちょっと見てみたい気もするぜ」

 

紫と魔理沙は妙な会話を繰り広げている。

 

「ぐぎぎぎぎ……おのれ等は何を話し合っているんだ……!」

 

迫り来る霊夢の両肩を持って何とか止めている。

 

「お兄様? 霊夢さんと終わったら次は私ですね♪」

 

頬を赤くして嬉しそうな笑みを浮かべてるエヴァ。

 

「……助けると言う選択肢は?」

 

「私は1番が誰でも問題は無いのですよ? 2番手で大丈夫です♪」

 

つまり、助ける気は全くないと。

 

それにしてもこの巫女は恐ろしいまでの怪力を発揮しているんだが!

 

このままだとAVの撮影会みたいになりそうだ!

 

「とりゃ!」

 

俺は後ろに体勢を崩し、霊夢を巴投げで放り投げる。

 

「ひゃあ!」

 

霊夢は庭先に転がり出る。

 

「このままではシャレにならん!」

 

俺は魔理沙の方を見る。

 

「え?」

 

「ちょっと影を借りるぜ!」

 

俺は魔理沙の影に飛び込む。

 

影を使った転移で俺は博麗神社から逃げ出す事に成功するのであった。

 

当分博麗神社に来る事は出来ないな!

 

 

 




霊夢が紫の口車に乗せられてしまいましたw

さあ、影の転送で逃げた先はどこなのでしょうねぇw




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第46話 一難去ってまた一難?

受難と捉えるか、ご褒美と捉えるか


大半の方がご褒美と捉えそうですがw


 

 

 

 

 

 

「ふぅ、ランダム転移したのは良いが。ここはどこだ?」

 

俺は影から頭を出して周囲を見渡す。

 

「……」

 

見上げると目を思いっきり見開いて口を開けて今にも叫び出しそうな雰囲気の女の子が。

 

緑色の髪で蛙と蛇の髪飾りを着けた女の子。

 

霊夢と似たような感じの服でスカートは青。

 

どう見ても守矢神社の風祝(かぜほうり)(※古代の読みでは『かぜはふり』)を務めている東風谷(こちや)早苗さんその人だ。

 

「……」

 

「……こんちわ」

 

「ひゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

俺は苦笑しながら挨拶すると大声で叫ぶ早苗。

 

その場で腰を抜かしたのか、ペタンと座り込む。

 

「ああ、すまんすまん」

 

影からゆっくりと身体を出す。

 

「か、影から……」

 

「どうしたんだい! 早苗!」

 

そう言って現れたのは目玉を2つ付けた市女傘と呼ばれる帽子を被って胴体部は紫、袖は白色の服を着た少女。

 

前には蛙の絵が描かれている。

 

どう見てもここ守矢神社の祭神の1柱、『洩矢(もりや)諏訪子』である。

 

どうやら神奈子の方はまだ帰って来てない様だ。

 

「あ、すまんすまん」

 

俺は頭を掻きながら諏訪子の方を見る。

 

「……アンタは、確か……アレスって言ってたっけ。どうしてこんな所に?」

 

「まあ、色々と事情があってな。っと、自己紹介がまだだったな。『藤之宮アレス』って言うんだ。よろしく」

 

「アタシは『洩矢諏訪子』。ここ、守矢神社の祭神の1柱さ」

 

「私は東風谷早苗です。守矢神社の風祝を務めさせて頂いてます」

 

俺達はお互いにお辞儀しあう。

 

俺は諏訪子と早苗を見る。

 

目の前に立つ2人は……背の高さは150㎝を超えている様だ。

 

そう言えば、この守矢神社は外の世界から最近ここに引っ越してきたばかりだったな。

 

意外や意外。実は諏訪子の方が背は高いんだな。

 

他の二次小説では大体、神奈子>早苗>諏訪子と言った背の高さなんだが。

 

でも実際には諏訪子の方が少し高い……らしい。

 

まあ、1つ言えるのは俺よりも高いと言う事だ。

 

「……まあ、色々と聞きたい事はあるけど。1つ聞いて良いかい?」

 

目を細めて俺の顔を見つめてくる諏訪子。

 

一呼吸置いてから口を開く。

 

「……神奈子から逃げて来たとか?」

 

「……まあ、一枚噛んでるのは違いないが」

 

「…………あの、ウチの祭神が……申し訳無いです」

 

頬に汗を一筋流しながら頭を下げてくる早苗。

 

「あー、ソレは災難だったね~。アタシからも謝らせて貰うよ」

 

そう言って同じ様に頭を下げる諏訪子。

 

「それにしてもアレスさん。気になる事があるのですが……」

 

早苗は俺の顔をジロジロ見ながら聞いてくる。

 

また年齢の事か?

 

「先程、私の影から出てきましたよね?」

 

「ん? ああ、出てきたが?」

 

どうやら年齢の事では無いようだ。

 

「……アレスさんと一緒にいた金髪の女の子……『エヴァ』って呼ばれてましたわよね?」

 

「ああ、そうだけど」

 

妙な事を聞いてくるな。

 

……もしやと思うが。

 

「もしかして、そのエヴァさんの本名って『エヴァンジェリン・A.K・マクダウェル』?」

 

ああ、そう言う事ね。

 

外の世界には『魔法先生ネギま!』があるのね。

 

隠していてもしょうがないから……俺は頷く。

 

「キャー! エヴァちゃんホントにいるんだ! ねぇねぇアレスさん! どうやって知り合ったのですか!?」

 

俺の手を取って目を輝かせて顔を寄せてくる早苗。

 

「あーうー、ごめんねぇ……早苗って漫画とかアニメとか大好きッ娘だから……」

 

いや、それはそれでアリかと思うのだが。

 

「まあ、ちょっとだけ話は長くなるが……」

 

俺はエヴァとの関係とこの世界の住人ではないと言う事を話す事にした。

 

もちろん、他の人には秘密と言う事で。

 

「なるほど、平行世界ですか。確かに最終巻でパラレルワールド的な事も言ってたからエヴァさんに双子の姉がいてもおかしくはないけど……」

 

早苗は顎に手を当てながらブツブツと呟いている。

 

「……」

 

諏訪子が俺の顔をジーッと見つめて来ている。

 

半目……いわゆるジト目で俺の方を見ている。

 

「何か?」

 

「アンタ、他にも何か隠してない?」

 

「何の話だ?」

 

「いや、アンタとエヴァが輪廻転生して出会って。しかもエヴァの方は前世と同じ姿で」

 

「……」

 

「それも、記憶を持っていて。普通じゃあり得ない。まるで、あの世の方に知り合いがいて頼む位しないとここまで重なるのはおかしいさね」

 

「…………」

 

俺は無言を貫く。

 

 

 

「……それに。アンタから何か匂うんだよね。()()()()()()()()()()()()()()()()()。むしろ、アタシや早苗、神奈子の匂いに近いんだ」

 

 

 

諏訪子の台詞で俺は背中に冷や汗が流れる。

 

やはり、同じ神族の目は誤魔化されないと言う事か!

 

……神奈子は多分、気付いてなさそうだが。

 

「諏訪子……様? それは……どういう……」

 

「早苗。アンタはまだ現人神になって日が浅いから気付いて無いだろうけど。コイツは……人の皮を被った何か……だ。しかも、妖怪とかそんなチャチなヤツじゃない」

 

「では……」

 

「……コイツは……アタシと同じ闇側の……神さ」

 

見破られた。

 

さすがは同じ神族と言う事か。

 

「……神……ですか」

 

「ああ。巧妙に隠しているけど、魂の力が人と全く異なっている」

 

「……そう言えば、ギリシャ神話に出てくる主神『ゼウス』の息子に『アレス』と言う神がいます」

 

「そう言えば、西の方にそんなヤツがいたね。直接会った事は無いけど。でも、聞いた話ではこんな性格じゃないよ。もっと粗野で乱暴だったはず」

 

早苗と諏訪子の視線がバシバシと突き刺さる。

 

「さあ、喋って貰おうかね? 何故、わざわざ人に転生してまでこの世界に来たのかを」

 

全く、ついてないと言えばついてないな。

 

「その前に、お二方にお願いがある」

 

「とりあえず、言ってみな。聞けるかどうかは分からないけど」

 

「聞いて貰わないと困るんだが。これから言う事は他言無用出来るか?」

 

「……神奈子にもかい?」

 

「ああ。これは最重要事項でな。知られてはいけないんだ」

 

「……分かった。ならアタシと早苗だけの秘密にする」

 

早苗の方を見るとコクリと頷く。

 

「さてと。俺の神としての名は『闇の軍神アレス』。ギリシャの戦の神『アレス』とは違う存在なんだ」

 

こうして俺は諏訪子と早苗にこの世界に来た理由を説明する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ツッコミ所満載だね」

 

「……よくネットで色んな漫画の二次小説を見てましたけど。ホントにあるんですね……」

 

早苗と諏訪子は頬に冷や汗を流しながら苦笑している。

 

「くれぐれも他言無用でお願いするぞ?」

 

「分かってるよ。腐っても神だから約束は守るよ」

 

「私もです。というか、今はリリカルなのはの世界なのですか。なのはちゃんとか会ってみたかったですね……」

 

「そればかりはさすがに駄目なんだな。不可能ではないが、デメリットの方が多いと思う」

 

「分かりました。その辺は我慢します」

 

早苗は納得してくれたようだ。

 

「やっと見つけました~」

 

俺の影から出てくるのはエヴァだった。

 

「もう、お兄様ったら! 置いていくなんて酷いです!」

 

頬を膨らませているエヴァ。

 

その様子は『プンプン! 私怒ってます!』と言った感じだ。

 

しかし、どう見ても可愛い雰囲気が助長されてる様にしか見えない。

 

「すまんすまん、あのままだとシャレにならなかったからな……」

 

俺は頬をポリポリと掻きながら返答する。

 

「まあ、確かにあのままでしたら公開撮影みたいな感じになってましたわね。私は別に構わなかったのですが……」

 

構ってくださいエヴァちゃん、さすがにそれは無理です。

 

「……?」

 

何やら変な視線を感じるんだが。

 

俺は周囲を見渡すと。

 

「……エヴァちゃん可愛いよぅ」

 

瞳を潤ませてる早苗さんがいました。

 

隣では『あちゃー』と言う表情を浮かべて額に手を当ててる諏訪子が。

 

え~? 早苗さんは少女偏愛(ロリコン)なんですか~?

 

 

 

「……」

 

 

 

エヴァは少し顔を青くして俺の背後に。

 

「ねぇ、アレスさん? ちょっと……エヴァちゃん貸して貰えませんか?」

 

「……何をするつもりだ?」

 

「いえ、一緒にお食事したり、一緒にお風呂に入ったり、一緒に添い寝したり……」

 

両手を頬に当てている早苗。

 

その頬はかなり赤い。

 

諏訪子は一歩後ろに下がってから『了承しちゃ駄目だよ』と目で語りかけてきている。

 

守矢神社って…一体。

 

俺の頭にそんな事が浮かぶ。

 

「……なんか知らんが、妙な予感を感じるから却下させて貰う」

 

「残念です……」

 

あっさりと引き下がる早苗。

 

「ごめんねぇ、早苗って昔から小さな女の子が好きみたいでさぁ……」

 

「小さい女の子、可愛いじゃないですか♪」

 

……この幻想郷はいつか神々にポイされないかどうか不安なんだが。

 

「……ちなみに小さな男の子は?」

 

試しに聞いてみる。

 

「ん~、神奈子様は小さな男の子が好みみたいですけど。私は小さな男の子はそこまで……。むしろ、そこのエヴァちゃんとか……もうサイコーですね♪」

 

 

「ひっ」

 

 

小さく悲鳴をあげるエヴァ。

 

「……ここの神社って、小さな男の子と女の子は来ちゃいけない仕様になってない?」

 

「よく分かったね。色々と問題があるから大人限定にしてるんだ」

 

「諏訪子様!? それは初耳なんですけど!?」

 

酷く狼狽している早苗。

 

「アレ? 言ってなかったっけ? アタシがそう言う風にしておいたんだけど?」

 

「だから……来るのは大人の方ばかりだったのですか……。神奈子様と一緒に『おかしいですね?』と首を傾げていました」

 

どうやら諏訪子がこの神社の最後の防波堤と思われる。

 

ありがとうと心の中で言っておく。

 

「……なるほど……諏訪子……アンタがそんな事をしていたから……」

 

俺の背後から聞こえる女性の声。

 

諏訪子や早苗より少し低い声質。

 

後ろを振り返ると、赤いシャツに群青のスカート。

 

神奈子だった。

 

「……おかげで私のストレスがマッハじゃないか! 可愛い男の子と触れあう事すら許されないのか!?」

 

咆吼する神奈子。

 

喋ってる内容はアレだが。

 

「触れあったが最後、アンタそのまま寝床に連れ込むじゃないか」

 

「う……」

 

諏訪子の指摘に絶句する神奈子。

 

と言うか、んなことやってたんかい!

 

「しかし、全て未遂だったじゃないか」

 

「アタシが防いでからね。そのままだったらアンタ最後までイッてたじゃないか」

 

「可愛い男の子を寝床で愛でて何が悪い!」

 

わー開き直りましたよ、このショタ軍神。

 

「そうです! 私なんか実害(子供が出来る)が無いから神奈子様よりマシじゃないですか!」

 

「早苗、アンタのは違う実害(トラウマ)が出来るじゃないか」

 

「そ、そんな事はありません! 寝床ではたっぷりと可愛がりますから!」

 

と言うか、寝床に行くのは確定なのか。

 

「……兎に角。アタシはこの結界を変更するつもりは無いよ」

 

 

 

「いじわるです、諏訪子様」

「くぅ、いつかこの結界をぶち破ってやる……」

 

 

 

 

色々とこの神2柱はロクでもない事は分かった。

 

下手したら小さな子供達からは邪神扱いされそうなんだが。

 

 

 

「じゃ、そゆ事で」

「お疲れ様でした」

 

 

 

俺とエヴァは手をあげて守矢神社から去ろうとする。

 

「何処に行くんだい?」

 

「今日はこちらでお泊まりですよ?」

 

気が付いたら俺は神奈子に、エヴァは早苗に抱きかかえられていた。

 

 

 

「!?」

「!?」

 

 

 

俺とエヴァはお互い顔を見合わせていた。

 

「エヴァ……あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!」

 

「言わなくても分かります。『おれは神奈子達に別れを告げて去ろうと思ったらいつのまにか捕まっていた』ですよね?」

 

さすがエヴァ、よく分かっている。

 

「私の能力を知らなかったのですか? 『奇跡を起こす程度の能力』なんですよ?」

 

早苗の言葉を聞いて俺は思った。

 

『能力の無駄遣いだな』と。

 

「……ごめんな。今夜は2人につき合ってくれ」

 

諏訪子、そこで胸の前で十字を切るな。と言うか、それは違う宗教だろ!神が神に祈りを捧げてどうするんだ!

 

そんなこんなで俺とエヴァは守矢神社に泊まる事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふ♪」

 

目の前にいるのは神奈子。

 

しかし、全裸状態である。

 

今の状態は単に守矢神社の風呂に入っているのだ。

 

この神社のお風呂はやや大きめで、7人位入る事が出来るくらいの大きいのだ。

 

そして俺は神奈子に頭を洗って貰っている状況なのだ。

 

「しかし、アレスちゃんの髪は柔らかくて触り心地が良いな。羨ましいよ」

 

優しく頭を撫でる様に洗う神奈子。

 

手慣れた感じで気持ちが良い。

 

「そうか?」

 

「そうだよ。私の髪は少し硬くて癖毛で……」

 

確かに神奈子の髪は少し癖がある様に見える。

 

でもそこまで気にするモノだろうか。

 

アレはアレで問題ないと思うのだが。個人的には。

 

「でも……髪よりも……ココだな。この体格でコレは反則だな」

 

神奈子の視線は俺の股間にある男性専用アームドデバイスに向けられていた。

 

「……」

 

「まあ、里の方とか外の世界にいる時にアレスちゃんみたいな子を見てきたけど。私の心に響く子はいなかったな。一時的にはちょっと味見したいな~と思った事はあったけど」

 

言うに事欠いて何て事言ってるんですか、この神様は。

 

「と言うワケで。アレスちゃんには私の初めてを貰って欲しいんだけど……」

 

だから、どうしてこんな風に話が進むんだ。

 

「……俺はそんな殊勝なヤツではないのだが」

 

「何を言ってるんだ? アレスちゃんは私と同じ神族なのだろう?」

 

 

 

……マテ。

 

 

 

この軍神は……今、何と言った?

 

「……何の話だ?」

 

「む? アレスちゃんは私と同じなのだろう? 一見すると普通の可愛い子供に見えるが、私の目は誤魔化されないよ?」

 

……腐っても神族と言う事か。

 

諏訪子と言い神奈子と言い、あっさりと俺の正体を見破るんだな。

 

「まあ、どんな理由でここに来たのかは聞かないけどね」

 

「……すまんな」

 

「謝らないで良いよ。だから、今夜は私とアレスちゃんの子供を作ろうじゃないか♪神族同士で作ればどうなるか、ちょっと分からないけど……」

 

下手したら幻想郷内最強に存在になったりして。

 

「私の身体では不満か? それなら諏訪子も一緒に……」

 

神奈子がそう言うと、パコンと言う音と共に神奈子の頭が左に振られる。

 

落ちてくるモノを見ると木桶だった。

 

「この変態ショタ軍神、勝手にアタシを売るな」

 

見ると腰に手を当てて仁王立ちしている諏訪子。

 

身体には何も身に付けていない、いわゆる全裸状態だった。

 

……ファンが見たら狂喜乱舞しそうだな。

 

「あたた、諏訪子はアレスちゃんの良さが分からないのか?」

 

「確かに可愛いのは認めるが、アタシはアンタみたいに変態じゃない」

 

「……でも、あんたの子孫は見事変態街道を突っ走ってるじゃないか」

 

「……言うな」

 

神奈子と諏訪子が見た先は。

 

顔を赤くして満面の笑みでエヴァの身体を洗っている早苗の姿だった。

 

何か、周囲が百合の花に囲まれている様に見えるんだが。

 

ちなみにエヴァは少し顔色が青くなっている。

 

頑張れとしか言いようがないが。

 

〈助けて下さいです、お兄様〉

 

〈俺も似たような状況なんだが〉

 

 

 

〈私、初めてはお兄様が良いです。女の子に奪われるのは間違っていると思います。お兄様のその太くて長くて反ったモノで純潔を失いたいです。ゾリゾリと中の壁をひっかいて貰いたいのです。ズンズンと突かれたいのです。熱いモノをドクンドクンと注いで貰いたいのです。それからそれから……〉

 

 

 

 

エヴァはかなりテンパってる様だ。

 

〈諏訪子に頼んでおくからそれまで何とか頑張れ〉

 

〈了解です……〉

 

エヴァは涙目でこっちを見ている。

 

あの顔は良心がごりごりと潰されるように痛いんだが。

 

「諏訪子、早苗の様子を見張って置いてくれ」

 

「了解さね。如何に言ってもアレはアタシもどうかと思うし」

 

諏訪子は早苗の方を眺めつつ向かっていった。

 

「……アレはさすがの私でもどうかと思うけどね」

 

苦笑している神奈子。

 

いや、ドングリの背比べと言うことわざを知っているのか?

 

そんな事を思いつつ俺は神奈子に身体を洗って貰うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「諏訪子さん、ありがとうございますです」

 

「あ~う~、そんなに気にしなくても……」

 

エヴァは諏訪子に抱きついている。

 

さて、今は寝床に就いている状態だ。

 

順番は。

 

早苗、エヴァ、諏訪子、俺、神奈子の順になる。

 

早苗と神奈子は駄々をこねたが、諏訪子の本気モードによって閉口せざるを得ない状況になったわけで。

 

諏訪子は母性に溢れているように見える。

 

早苗と神奈子は変態性が溢れているが。

 

不服そうではあるが、早苗はエヴァに抱きつき、神奈子は俺に抱きついている。

 

どうやら守矢神社では諏訪子のお陰で安泰な夜を過ごせそうだ。

 

ちなみに。

 

お風呂でまたしても紫が登場したが。

 

例によってルパンダイブをやってきた。

 

しかし、神奈子と早苗によって迎撃。

 

そのあと、自分の式である藍にとっつかまっていた。

 

『紫様! いい加減に結界の修復を行ってください!』

 

『藍! 目の前に可愛いアレスちゃんがいるのよ!? 据え膳食わぬは女の恥よ!?』

 

『んな事は良いですから、ちゃっちゃとやってください。行った後なら何をしようと構いませんから』

 

『分かったわ。今日の所は引き下がってあげる』

 

こんな感じで紫と藍はお風呂場から去っていったのである。

 

どうやら藍も大丈夫そうではあるが。

 

うーむ、なんにせよ。

 

この幻想郷でも貞操に気を付けていた方が良さそうだな。

 

俺はそんな事を思いつつ眠りにつくのであった。

 

 

柔らかい感触に包まれながら―――――。

 

 

 




ここの守矢神社は信仰を得る事が出来るのだろうかw


ちなみに、里からも参拝客は来ております。

道中も妖怪の山から派遣されている鴉天狗や白狼天狗達の護衛を受けているので安心!

極たま~に文や椛も護衛することも有る……らしい。



しかし、この幻想郷は神々にポイされそうなんだがw

ショタのみとかもはや誰得かもしれないw


八坂神奈子→身長170㎝前後

洩矢諏訪子→身長155㎝~160㎝位

東風谷早苗→身長153㎝前後

ここではこんな設定になっておりますw





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第47話 人里にて

暑くてなかなか書けません

我が家にはエアコンと言うモノはありませんからw


守矢神社にて朝食を頂いた後に永遠亭に戻り、永琳さんとの授業を再開する。

 

ちなみに、朝は神奈子が俺のズボンに手を突っ込んで俺の男性専用アームドデバイスを握っていたので。

 

とりあえず頭を叩いておいた。

 

曰く。

 

『理想的な硬さと太さだったよ』

 

との事。もうええっちゅうの。

 

そして、例によって紫、幽々子、神奈子、白蓮の4人も交えての授業。

 

ううむ、背中から狙われている視線がザクザクと突き刺さるんだが。

 

昼前頃になり。

 

神奈子がボソッと呟いた。

 

 

 

「アレスちゃんの身体……良かったなぁ」

 

 

 

ちょっと待て。

 

何か言葉が足りないぞ。

 

それだと俺と神奈子が身体を重ねたように聞こえるんだが。

 

その言葉を聞いた紫、永琳さん、幽々子と白蓮の4人はぶち切れて。

 

神奈子を追いかけ始めたのだ。

 

永遠亭の上空で弾幕合戦が始まったのだ。

 

……。

 

放っておく事にした。

 

こんな調子では進みそうにないから。

 

明日もこんな事になったらキレる事にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ってなワケで、今日は何処に行ってみようか」

 

「そうですわねぇ……」

 

例によって俺は幻想郷内を散策することにした。

 

「人里に行ってみてはどうでしょう?」

 

エヴァの提案。

 

なるほど、ここの人達の様子を見てみるのか。

 

トラブルに巻き込まれそうな予感がしないでもないが、行ってみる事にしようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言うわけで人里に来てみたワケだが」

 

俺とエヴァは人々が生活を営んでいる里に来てみた。

 

なんつうか、江戸時代の雰囲気を味わえる。

 

飛脚みたいな人とか、結構人が歩いている。

 

入り口には門番がいたのだが、俺とエヴァの姿を見て特にとがめる事はしなかった。

 

紫の事だから境界を弄くって俺の存在に違和感をもたれないようにしたとか。

 

あり得そうだな……。

 

まあ、良いか。

 

とりあえず、少し小腹が空いたから何か食べようかと思ってたら。

 

「……アレって」

 

「どう見ても、小町さんですよね?」

 

茶屋と思われる店で、長いすに座って片手に団子の串、左手に団子が乗ってる皿を持ってる少女。

 

どうみても『小野塚小町』である。

 

赤毛で青色の着物っぽい服装に草履を履いている。

 

……胸が要塞なんだが。

 

アリシアやフェイトに匹敵する大きさである。

 

足下に鎌を寝かせている。

 

何というか、どう見てもサボタージュしてるようにしか見えんのだが。

 

表情は満面の笑みで団子を食べている。

 

……この後の展開が見え見えだが、とりあえず話しかけてみるか。

 

「隣、良いか?」

 

「っ! 映姫様! こ、これはですね! ちょっとした休憩と言うか……」

 

驚いた様子で俺の方を見る小町。

 

「……俺はその映姫と言う人物では無いのだが」

 

「……どちら様でしょうか? あむあむ……」

 

そう言って団子を口に運ぶ小町。

 

「永遠亭で居候している藤之宮アレスと言う者だ」

 

「同じく、エヴァンジェリンです」

 

「ふーん。あ、自己紹介がまだだったね。あたいは小野塚小町。三途の河で死者をあの世に送ってるんだ」

 

そう言ってまた団子をほおばる小町。

 

「なるほど、いわゆる死神と言うヤツか」

 

「あー、あたいはそっちの方じゃないね。わざわざ迎えに行くなんて面倒だし」

 

やはり横着な性格のようだ。

 

「ならカロンと同じと言う事か」

 

「アレ? ソイツはこっちじゃなくて西の方の担当だね。アンタ知り合い?」

 

「いや、全然面識無いが」

 

「無いのか。さも知り合いの様な言い方だったからね」

 

「そもそもそんな三途の河の渡し守に知り合いがいる方が問題だが。あ、みたらし団子2皿ね」

 

俺は店員と思われるお姉さんに注文する。

 

「あたいも1皿追加で。それにしてもここの団子は美味しいねぇ」

 

最後の1串を食べる小町。

 

「今日は休日なのか?」

 

「ああ、今日は休みだよ。たまにはこうしてのんびり過ごすのも悪くないし」

 

しれっと小町は言ってるが。

 

俺の目には何となくだがサボっている様に見えるんだが。

 

「ふーん。まあ、言いたい事は分かるが」

 

「でしょう? あくせく働いても変わらない事は変わらないし」

 

そう言ってお茶を飲む小町。

 

「はい、みたらし団子です」

 

店員さんのお姉さんは俺とエヴァに団子の皿を渡してくる。

 

「美味しそうです」

 

エヴァは微笑んでいる。

 

うむ、エヴァを見ていると何か落ち着くなぁ。

 

エヴァは団子を1串手に取り口にほおばる。

 

「美味しいです」

 

嬉しそうな笑みで団子を食べるエヴァ。

 

俺も食べてみるか。

 

1串持って口に入れる。

 

甘くて僅かなしょっぱさが口に広がる。

 

なかなかの腕前の様だ。

 

「美味いな」

 

「でしょう? あたいのお気に入りの店だよ」

 

小町も同じくみたらし団子を注文したみたいだ。

 

同じように1串手に取ってほおばる。

 

……何か、妙な予感を感じる。

 

何となくだが、小町の身に何か良くない事が起こりそうな気が。

 

「……無粋な事を聞くが」

 

「何だい?」

 

「実は、仕事をサボってるワケじゃないよな?」

 

俺の台詞を聞いて小町の動きがピタッと止まる。

 

口をあーんと開けて、右手には団子の串。

 

「な、なななな何を言ってるんだい? あたいは今日は休みだよ!」

 

思いっきり動揺しているのが分かるんだが。

 

「そうか、休みか……」

 

「休みですか」

 

俺とエヴァは呟く。

 

「そう、休み! 午前中はちょっと死者を送り過ぎてね! 映姫様に止められたんだ!」

 

小町はまくし立てる様に喋る。

 

頬には妙な汗が流れているんだが。

 

なるほど、死者を沢山運んで送り過ぎたから上司の人に止められたと小町は言いたいわけだ。

 

「ふぅん?」

 

「そうですか……」

 

エヴァの表情がみるみる変わっていく。

 

『ご愁傷様です』と言いたそうな顔をしている。

 

俺も心の中で十字を切りたい気分だ。

 

何故なら、小町の隣に立っているのは……。

 

ちょっと高貴そうな服を着て。

 

右手には悔悟棒(かいごぼう)を持っている。

 

見た目はみょうちくりんな板切れに見えるが。

 

この棒に罪状を書き記すと、罪の重さによって重さが変わり、罪人を叩く回数が決まる。そして叩く。

 

そんなお仕置きグッズを持っているのは。

 

この幻想郷の閻魔を務めている『四季映姫・ヤマザナドゥ』である。

 

ちょっと小柄で童顔だが、その雰囲気はなかなかのモノと言うか。

 

背中からオーラ的な何かが立ち上っている。

 

「へぇ…………それは初耳ですね?」

 

「え゛」

 

小町は声が聞こえた方をゆっくりと声の方に振り返る。

 

壊れた機械のごとく、ギギギと音が聞こえそうだ。

 

「映姫……様」

 

小町は滝の様に汗をかいていた。

 

「死者を送りすぎて私が止めた……と? おかしいですねぇ? 今日は私の所には『1人』も死者が来なかったのですよ?」

 

映姫の背後に『ドドドドドドド』と言う効果音が見えるんだが。

 

「あの……ですね? コレには三途の河の幅よりも長~い訳が……」

 

「良いでしょう。それが正当な理由なら咎めません。もし……不当な理由なら……分かってますね?」

 

口元をニヤリと吊り上げて微笑む映姫。

 

「…………」

 

顔を青くして身体をガタガタ震えさせる小町。

 

どう見ても詰んでる様にしか見えない。

 

小町はこっちの方を見て『助けて』と目で訴えてくる。

 

俺はゆっくりと首を横に振る。

 

小町の目が涙目になってエヴァの方を見る。

 

エヴァも俺と同じ様に首をゆっくりと横に振る。

 

「実は、この子に誘われて……」

 

まさかの巻き込み!?

 

「この子?」

 

そう言って俺の顔をジロジロと眺めてくる映姫。

 

俺と目線が合う。

 

……大丈夫だ、彼女にショタ属性は付与されていない。

 

「……2、3日前の宴会で見かけましたね……。あ、自己紹介がまだでしたわね。『四季映姫・ヤマザナドゥ』と申します」

 

「藤之宮アレスだ」

 

「エヴァンジェリンと申します」

 

「で、本当の所は?」

 

「小町の勘違いかと」

 

「まさかの裏切り!?」

 

裏切るも何も。ここで小町を援護してもメリットが皆無に等しい。

 

むしろデメリットしかない。

 

「……サボるだけでなく、嘘をついてまで……全く持って貴女は救いようがありませんね。今夜はたっぷりとそこの所について問い聞かせてあげましょう」

 

映姫の背後に見えるのは炎だった。

 

「とほほ……」

 

しょげている小町。それでも団子を食べる姿勢はある意味凄いと思うが。

 

「それにしても」

 

俺の顔をジロジロと見つめてくる映姫。

 

「貴方は……あのスキマ妖怪に好かれそうな雰囲気ですね」

 

「やはり分かりますか」

 

「全く。幼子を毒牙にかけるような真似はするなと再三言ってるのですが。効果は無いようですね……」

 

まあ、アレを改善出来るとは思えないが。

 

「コレも何かの縁。それに貴方は前世の記憶を持っているとか。貴方がどんな人物なのか、少し見させて頂きます」

 

映姫の手に現れたのは見た目普通の手鏡。

 

……アレが噂の『浄玻璃の鏡(じょうはりのかがみ)』か。

 

この鏡に罪人を映すと、その者の過去の行いが全て映し出されるという代物。

 

まあ、罪人でなくても普通に見る事は出来るようだが。

 

「……出来れば勘弁して貰いたいが。まあ、見た事を誰にも他言しないなら見ても構わない」

 

「分かりました。他言しない事を誓いましょう。それでは……」

 

そう言うと映姫は呪文を唱える。

 

手に持った鏡が光り輝く。

 

映姫はソレをジッと眺めている。

 

ちなみに、周りに人はほとんどいない。

 

いや、人はそれなりに通るがほとんど俺達に気にかけていない。

 

どうやら映姫がこうやっている姿は日常茶飯事みたいなんだな。

 

「…………」

 

映姫の顔が青くなったり、赤くなったり。

 

顔色がコロコロ変わっているのが分かる。

 

どんな風に写っている事やら。

 

俺とエヴァは黙々と団子を食べる。

 

「…………失礼いたしました」

 

そう言って映姫は俺に深いお辞儀をする。

 

「ブッ」

 

その様子を見て小町はお茶を噴き出す。

 

「……まあ、そんな訳なんだ」

 

「大変なんですね。異世界の神も」

 

「え? え? 異世界……の神?」

 

映姫の台詞を聞いて目を白黒させる小町。

 

「余りその名称は言わないでくれ。それと、小町にも喋っても構わない」

 

「分かりました。小町、耳を貸しなさい」

 

そう言って小町の耳に口を当てて小声で喋る映姫。

 

「ええぇ!」

 

「ですから、コレは他言無用。誰にも喋ってはいけません」

 

「……わ、分かりました……」

 

小町は顔を真っ青にして身体をガタガタと震わせていた。

 

「ま、見ての通り今は普通の人なんだがな」

 

「……中身は全然違いますが」

 

「コレも何かの縁かもな」

 

「そうですね。今日はもう仕事は止める事にしました」

 

そう言って小町の隣に座る映姫。

 

「みたらし団子一皿お願い」

 

「はいよー」

 

映姫もみたらし団子を注文する。

 

こうして、映姫と小町の2人と時を過ごすのであった。

 

ちなみに、『俺を裁くのは?』と聞いてみたら。

 

『さすがの私も異世界の神を裁く権利はありません』との事だった。

 

 

 

 

 

小町と映姫と別れる。

 

映姫に引きずられるように連れて行かれた小町。

 

今宵はたっぷりと絞られそうだな。

 

「ご愁傷様としか言えませんでしたね」

 

「ああ」

 

脳裏にドナドナの曲が流れたのは言うまでもなかった。

 

 

 

「さて、どうしようか」

「どうしましょうかねぇ」

 

 

 

俺とエヴァは周りを見る。

 

コレと言った珍しいモノは見当たらなかった。

 

たまに俺とエヴァの姿を一目見るも興味が無い様に視線を戻す住人達。

 

「ん……輝夜の所にいる2人じゃないか」

 

俺達の後ろに現れたのは。

 

銀髪で赤いもんぺを履いてる女性。

 

藤原妹紅であった。

 

「どうしたんだ? 輝夜のだらけっぷりが嫌になって逃げ出したのか?」

 

少し口元を釣り上げて微笑む妹紅。

 

「いや、色々とあってな……」

 

「ふぅん? まあ、輝夜には気を付けなよ。アイツはああ見えて腹黒いからな」

 

やはり輝夜と妹紅の仲は良くはないみたいだ。

 

もっとも、関係者と分かった時点で襲いかかってくるほど憎いわけでもなさそうだが。

 

「まあ、忠告として聞いておくよ。……えっと、お互い自己紹介したっけ?」

 

「すまないな、私は藤原妹紅」

 

「俺は藤之宮アレス」

 

「私はエヴァンジェリンです」

 

俺達は自己紹介を交わす。

 

「さて、こんな所でどうしたんだ?」

 

俺はさっきあった事を妹紅に話す。

 

 

 

 

 

 

「全く、あの船頭は週に5回位ああやって閻魔様に連行されてるんだ」

 

ため息をつきながら妹紅はそう話す。

 

週5回って、ほとんど毎日じゃないか。

 

なるほど、だから映姫が来ても誰も余り気にしてなかったんだ。

 

日常茶飯事とはこの事だろう。

 

「っと、ここだここだ」

 

妹紅が示したのは……寺子屋と書かれた看板がある大きな建物。

 

作りは寺みたいに広い畳の部屋が見受けられる。

 

つーか、寺だね。

 

「私の友人がここで子供達に色々と教えているんだ」

 

妹紅の友人と言えばあの人しかいないな。

 

人里を守護する上白沢慧音。

 

後天的に妖怪のハーフとなった人だ。

 

満月時に半獣になるんだが。

 

二次創作ではよく妹紅の事を百合百合しく好きになってる場合があるが、ここの慧音はどうだろうか。

 

変な属性が付与されていないだろうか。

 

下手にショタが入っていても困るし。

 

「ん、まだ早かったみたいだ」

 

中を見ると長机が並んでいて其処に15人近くが何やら書いている。

 

どうやら何か問題を解いているみたいだ。

 

……と言うか、生徒と思われる子供達の中に。

 

チルノ、大妖精、ミスティア、リグル、ルーミアの姿が。

 

まあ、大妖精はチルノと仲が良いからいつも付いてきているのだろう。

 

バカルテットの4人はいつもの事だろう。

 

そして、教師を務めている慧音はチルノの傍で何やら教えている様だ。

 

見た目は微笑ましく見えるが、実際はどうだろうか。

 

俺は2人の会話に耳を傾けてみる。

 

「良いか?『6×5』はいくつかな?」

 

「えっと……『6×5』はろくご……」

 

チルノは少し間を置いてからこう喋る。

 

「30?」

 

「そう! やっぱり出来るじゃないか! もう半分も出来たの同然だ!」

 

「そうか! ろくご30ね! あたいったら天才ね!」

 

そう言ってチルノは解答用紙に何やら書いている模様。

 

ふむ、かけ算は一応出来るみたいだな。

 

「ふむ、大妖精は大丈夫みたいだな」

 

「はい、何とか出来ます」

 

そう言って隣の大妖精を見てからリグルの方を見る。

 

「むぅ……惜しいが、其処はそうじゃない」

 

「そうなんですか?」

 

「ああ、そこは……」

 

そう言ってリグルに教える慧音。

 

なかなかほのぼのとした光景ではあるな。

 

「……今日は大丈夫そうだな」

 

妹紅の妙な台詞が耳に聞こえる。

 

「ん?」

 

「いや、何でもない」

 

そう言って視線を慧音の方に向ける妹紅。

 

「やったーッ! 終わったよ、慧音。どう?」

 

チルノは解答用紙を慧音の方に向ける。

 

「ン? 出来たのか? どれどれ……」

 

そう言ってチルノから用紙を受け取り、それを見つめる。

 

「何これ……?」

 

慧音は目を細めてチルノの方を見る。

 

その様子は何やら不穏な感じがする。

 

「へへへ(ハート)当たってるでしょ?」

 

チルノは気にせず鼻を高くして満足そうに慧音を見ている。

 

 

 

ザグゥ

 

 

 

その瞬間、慧音は机の上にあった鉛筆を手に取りそれをチルノの右頬に突き立てる。

 

僅か1秒足らずの出来事だ。

 

「あぎゃアァァ――――!」

 

叫ぶチルノ。

 

「このボケ妖精が私をナメてんのか! 何回教えりゃあ理解できんだコラァ!」

 

そう言ってチルノの頭を両手で掴んで持ち上げる。

 

その瞬間、慧音の頭に2本の角が生える。

 

ええー? 満月じゃないのに変身出来るんですかー?

 

「ろくご30ってやっておきながらなんで30より減るんだ、この……」

 

そう言って慧音は頭を振りかぶる。

 

「ド低脳がァ―――――――――ッ」

 

台詞と同時にチルノの頭に頭突きを喰らわせる慧音。

 

ドグシャァと言う独特な音が周囲に響く。

 

ちなみに、周りの子供達は顔を真っ青にして今の光景を見ている。

 

「あ~あ……キレたか……」

 

そう言ってため息をつく妹紅。

 

どうやら日常茶飯事に起きている光景みたいだ。

 

「……お兄様?」

 

「……某漫画の第5部の有名シーンに似てるな」

 

知ってる人は知ってるシーンでもある。

 

ちなみにチルノは机に突っ伏してピクピクと痙攣していた。

 

「今日と言う今日は勘弁ならん! 貴様等、二桁の計算が出来るまで帰さん!」

 

ルーミア、リグル、ミスティアの3人を名指しで指差す慧音。

 

指された3人は顔を真っ青にしてガタガタを震えている。

 

「ほら、落ち着けよ。今夜は違う仕事があるんだろ?」

 

妹紅が口から煙の様な蒸気を吐いている慧音に声を掛ける。

 

「妹紅か」

 

そう言ってチルノを見る。

 

「ああ、またやってしまったか……」

 

見ると角が無くなって通常状態に戻っている慧音。

 

「全く。切れると見境が無くなるな」

 

「面目無い。今日はコレでお終いだ。まだ出来ていないのは明日の授業までにやっておくように」

 

慧音がそう言うと子供達は急いで帰宅準備を始める。

 

「それで、今度は何が原因だったんだ?」

 

「コレだよ」

 

そう言ってチルノの解答用紙を手に取る。

 

ちなみに、チルノは大妖精以下4人がそのまま運んでいった。

 

其処には。

 

 

 

16×55=28

 

 

 

と書かれていた。

 

筆算なのだが。

 

確かに、6×5=30なのに30より減ってるな。

 

これはキレるレベルだな。

 

「やっぱりチルノはチルノだったと言う事か」

 

その後は2人に自己紹介したあと数時間話をして別れる。

 

特筆すべき事は無かったので割愛させて貰おう。

 

 

 

 




知ってる人は知ってるネタですねw


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第48話 雉も鳴かずば撃たれまい

同じ意味で『口は災いの元』と言う言葉もありますよ?


 

 

 

 

さて。

 

昨日はみょん……いや、妙な出会いがあったが。

 

その後は何事も無く永遠亭に帰ってからいつも通り……。

 

いや、何故か紫、幽々子、神奈子、白蓮の4人も永遠亭に泊まる事となり。

 

ドタバタとした夜になってしまった。

 

面倒になったから眠りの霧で全員寝かしつけておいたが。

 

うーむ、どうすれば彼女達は大人しくなるのだろうか。

 

一発ヤってしまえば落ち着くだろうか?

 

……多分、歯止めが効かなくなって更に襲いかかってきそうだな。

 

もしかしたら俺の男性専用アームドデバイスは常習性があるやも知れんな。

 

まあ、なのは達を優先することにするか。

 

そんな事を思いつつ、俺は今幻想郷内を彷徨っている。

 

ぬ? 永遠亭で薬の勉強をしているんじゃないのか……だって?

 

まあ、度重なる妨害で授業が止まってしまい、さすがの俺もブチ切れて飛び出して来た所だ。

 

全チャクラ全力運転で永遠亭の一室が崩壊してしまったが、それは些細な事だろう。

 

ちなみに。

 

全員顔を真っ青にしていたが。

 

あー、少し頭を冷やしたいが。

 

ま、適当に空を飛んでいたら少しは冷えるであろう。

 

そんな事を思いつつ俺はのんびりと空を飛ぶ事にする。

 

そう言えば、エヴァを置いてきてしまったが。

 

……多分、4人を叱っておいてくれるだろう。

 

 

 

 

 

 

「ん~、ようやく頭が冷えてきたな~」

 

当ても無く彷徨う俺。

 

空を飛んでいたら頭が冷えて来た。

 

そろそろ昼も近いだろうから永遠亭に帰ろうかな。

 

「……ん?」

 

飛んでいると遠くに何かが見える。

 

目を凝らすと人が飛んでいた。

 

「……妙な何かを感じるな」

 

俺は更に近づいて見る事にする。

 

近づくと、学生服っぽい服装の男。

 

「ほぅ……」

 

俺は呟く。

 

明らかに怪しい。

 

あんな服装をした男がこの幻想郷に居る訳が無い。

 

転生者か?

 

この世界の転生者ならば俺の出番は無い。

 

俺の仕事はあくまで、あのマッチョ神に頼まれたあの世界に転生した者達を捕まえる事。

 

この世界の事までしゃしゃり出る訳にはいかないのだ。

 

神様って言うのも意外と面倒なのだ。

 

「さてさてっと……」

 

近づくと人物の様子が更に分かってくる。

 

金髪で上着はクリーム色で下のズボンは紺色のブレザー。

 

っていうか、何故にCLANNADの春原陽平なんだよ!

 

まあ、春原は見た目はそこまで酷くはない。

 

中身がへタレなだけで。

 

「……」

 

俺は目の前で宙に浮いている男の前に姿を見せる。

 

「……お前も転生者か」

 

見た目と反して落ち着いた雰囲気を出しているな。

 

「……アンタ、何者だ?」

 

俺は目を細めて目の前の春原もどきを見つめる。

 

「……ここは、何処だ?」

 

どうやら今来たみたいでここの場所が分からない様だ。

 

「幻想郷。聞いた事あるはずだ」

 

「っ! あのボケ見習い神め! 送る世界を間違えてるじゃねぇか!」

 

ぼやく様に呟く春原もどき。

 

見習い神?

 

何か引っかかるモノを感じる。

 

「ほぅ? 参考までにどんな世界に送ってもらう予定だったか教えてくれないか?」

 

「『リリカルなのは』だ」

 

……こいつは俺が今いる世界に来るはずだった転生者の様だ。

 

どういう訳かこの世界に来てしまった様だが。

 

偶然とは恐ろしいモノだ。

 

さて、どうやって捕まえるべきか。

 

どんな能力か分からない以上は下手な真似は出来ない。

 

だが、ひょっとしたら……。

 

こいつがどんな性格なのか。

 

性格次第なら見逃しても良いかも知れない。

 

「なるほど。人気有るからなぁ、あの世界は」

 

「そうだろ? ああ、小学生のなのはとかフェイトとか可愛いからなぁ」

 

途端に顔が歪む春原もどき。

 

ああ、こいつはアウトだ。

 

「……その世界に行って何するつもりだったんだ?」

 

「決まってるだろ? 彼女達を囲ってハーレム作るんだ。姿は小学生のままにしておいてな!」

 

うわぁ、コイツ最低の部類に入るな。

 

やっぱり、あの名簿に載ってた奴らは大半が終わってるな。

 

「そうかそうか……」

 

俺は腕を組んで頷いている。

 

さて。

 

外道と分かった以上は捕まえないといけないが。

 

どうやって捕まえようか。

 

そんな事を思っていたら。

 

 

 

「見つけた……」

 

 

 

春原もどきの背後で空間が割れる。

 

その割れ目から顔を覗かせるのは……紫。

 

「何の用だ?」

 

俺はやや冷たい口調で語りかける。

 

「……」

 

春原もどきは振り返って無言で紫の方を見ている。

 

「アレスちゃんに謝りたくて……。あの後エヴァに散々叱られたのよ?」

 

「そうか」

 

「ちょ……! 分かったから!」

 

「?」

 

紫は何やら慌てている。

 

紫がスキマから飛び出すと……。

 

続けざまに人が1……2……3……4人。

 

幽々子、永琳さん、神奈子、白蓮の4人。

 

どうやら、紫のスキマを使って俺の所に来たようだ。

 

「ごめんなさいね」

 

「申し訳ない」

 

「申し訳ないです」

 

頭を下げてくる幽々子、神奈子、白蓮の3人。

 

まあ、神奈子は本来なら1柱なのだが面倒だから一緒にまとめておく。

 

「こうして反省しているみたいだから……ね?」

 

永琳さんも彼女達を許しているみたいだ。

 

「お兄様~」

 

後ろからエヴァの声が聞こえる。

 

「エヴァ?」

 

声の方を見ると、エヴァが飛んでくる。

 

「……エヴァンジェリン?」

 

春原もどきの小声が聞こえてくる。

 

が、今はとりあえず置いておく。

 

「どうやら紫さん達と合流出来たみたいですね。お兄様、私がキッチリと叱っておきましたから♪」

 

 

 

「……」

「……」

「……」

「……」

 

 

 

顔を青くする紫、幽々子、神奈子、白蓮の4人。

 

うーむ、キッチリ絞られたみたいだな。

 

普段のエヴァは優しいが、キレた時はシャレにならんからな。

 

そう言えば、俺が怒らせた時はいつだったかな。

 

……そもそも俺がエヴァを怒らせた事ってあったのだろうか?

 

記憶に無いな。

 

「そう言えば、この人は?」

 

永琳さんが春原もどきを指差す。

 

「ああ……」

 

「ん~?」

 

紫がジロジロと春原もどきを見つめている。

 

「な、何だよ……」

 

「どうやら外来人ね。こんな服装した人見た事無いし。そもそも、顔も見覚えが無いわ」

 

「外来人ですか」

 

他のメンツもジロジロと春原もどきを見つめている。

 

「な、何だよ。俺はBBA(ババア)連中に見つめられて喜ぶ趣味は無いぞ」

 

 

 

 

――――ピシリ

 

 

 

 

周囲の空間が凍った様な感覚が俺を襲う。

 

何か、周囲の温度が一気に20℃は下がった様に思えるんだが。

 

「……おかしいわね? 私……今、何か凄い事を聞いた気がするんだけど?」

 

紫が白い日傘を差しながら春原もどきの方を見つめる。

 

その表情は……笑顔に見えない笑顔だ。

 

よく見ると、額の方に血管が浮かんでいる。

 

「なぁに言ってやがんだ。歳の取り過ぎで耳が遠くなったのか? やれやれ、歳は取りたくないねぇ」

 

春原もどきはやれやれと言った感じで首を振っている。

 

「ふぅん? 貴方……私の事どう見えてるのかしら?」

 

「ん? 見た目は若く見えるが、中身は妖怪BBA(ババア)じゃねぇか」

 

「ふふぅん?」

 

紫の手がプルプルと震えている。

 

「……つかぬ事を聞きますが。達と言う事は……」

 

「決まってるだろ。お前等も立派なBBA(ババア)だよ」

 

春原もどきが言い放つと幽々子、永琳さん、神奈子、白蓮の4人の額に血管が浮かぶ。

 

 

「大食らいBBA(ババア)

 

 

幽々子を指差す春原もどき。

 

 

「年齢が億とかもはや論外BBA(ババア)

 

 

永琳さんを指差す。

 

 

「髪型とか服装が既にBBA(ババア)

 

 

神奈子を指差す。

 

 

BBA(ババア)になってから若返りしてるが実際にはBBA(ババア)だろ?」

 

 

白蓮を指差す。

 

……アイツ、骨も残らないな。

 

俺は少しずつ距離を離す。

 

5人からオーラが立ち上っている。

 

「お兄様? アレは……アホの類ですか?」

 

「ああ、アレは見た目通りのアホだな」

 

俺とエヴァは小声で話す。

 

「地雷を思いっきり踏み抜いてますわ」

 

「しかも、超特大のヤツをな」

 

更に会話を続ける。

 

「あ~あ~、俺は小さな小柄な娘が好みなの。アンタ等みたいなBBA(ババア)じゃあ勃ちもしないっつーの」

 

そう言って春原もどきはあっちに行けと言わんばかりに手をシッシと振る。

 

 

 

 

―――――ブチッ

 

 

 

 

 

「ん?」

 

「とりあえず、バインド」

 

「同じくバインドです」

 

俺とエヴァは春原もどきの手足にバインドをかけて固定する。

 

「!? てめぇ、何しやがる!?」

 

驚いて自分の手足を見る春原もどき。

 

「アレスちゃん、ありがとう♪」

 

「久しぶりです、ここまで殺意を芽生えさせて頂いたのは♪」

 

「初めてです、ここまで私をコケにしてくれたのは」

 

「外の世界でもここまでおちょくられた事は無かったよ……」

 

「……」

 

順に紫、幽々子、永琳さん、神奈子、白蓮である。

 

最後の白蓮は某世紀末主人公の様にボキリボキリと拳を鳴らしていた。

 

「え? あの?」

 

ここまで来て春原もどきは自分が今どんな状況になってるか気付いたみたいだ。

 

……やっぱりアホだった。

 

「とりあえず、俺は少し離れますんで。そうそう、こいつは別に俺と何の縁も無いので。好きにして下さい」

 

その言葉を聞いて5人は満面の笑みを浮かべていた。

 

俺とエヴァはゆっくりとその場から離れる。

 

「こいつ、どうしようか?」

 

「決まってるでしょ? 私達のスペルカード全てを叩き込むのよ♪」

 

「良いですねぇ。ルナティック弾幕祭りですか♪」

 

「運が良いですね。私達全員からこうして遊んで貰えるのですから♪」

 

「しかも5人同時ですよ♪」

 

「うおぉぉぉぉぉぉ!」

 

春原もどきはバインドから逃れようとするも全く解ける気配はしなかった。

 

 

 

「それじゃ、ごゆっくり」

「ごゆっくりです」

 

 

 

俺とエヴァは手を挙げて更に距離を離す。

 

その直後から紫達のスペルカードを宣言する声が響き渡る。

 

 

 

 

 

 

2時間後。

 

春原もどきは真っ黒に焦げていた。

 

一応生きてはいるみたいだが、身体をピクピクと痙攣させている。

 

5人は満面の笑みを浮かべていた。

 

一斉に『実にスッキリした』と言う言葉を残して。

 

春原もどきの処遇は俺に任せると言う事で5人は永遠亭に戻っていった。

 

丁度昼前なので春原もどきを天界に渡してから永遠亭に帰ることにしよう。

 

と言うか、この男は『口は災いの元』と言うことわざを知らなかったのだろうか。

 

とりあえず、俺の仕事が一歩進んだから良しとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、もうちょっと。そうそう、そんな感じよ?」

 

「む、難しいです……アレスさん、痛かったら言って下さいね?」

 

「ああ……」

 

その後、永遠亭に帰ってから薬の授業を受けた後。

 

紫の家に泊まる事となった。

 

食事を済ませた後は恒例のお風呂タイム。

 

当然ながら紫に連行されてしまった。

 

エヴァと橙が一緒に身体の洗いっこをしているのが目に映る。

 

あっちは微笑ましく見える。

 

こちらは、何というか。

 

ショタが何も知らない男の子を毒牙にかけるような感じに見えそうだ。

 

何故なら。

 

紫と藍が俺の男性専用アームドデバイスを丁寧に洗っているからだ。

 

絵的にもどう見ても18歳未満禁止以外の何者でもないと思う。

 

紫の口車に乗せられた藍が一緒になって洗っている。

 

ちなみに藍の胸は大きいです、ハイ。

 

それと、藍のお尻から生えている9本の尻尾がモフモフしております。

 

あれを触ってみたいです、ハイ。

 

「もう、触れば触るほど欲しくなるわ。ねぇ、良いでしょ?」

 

目を潤ませて頬を真っ赤にしている紫。

 

口の端から涎が少し垂れている。

 

どう見ても危ない人です。

 

「ならぬ」

 

「先っちょでも?」

 

「ならぬ」

 

「口でも?」

 

「…………ならぬ」

 

「今、かなり悩まなかった?」

 

「気のせいだ」

 

一瞬でも心が揺らいだ俺は最低かも知れない。

 

「じゃあ、胸で」

 

「……ならぬ」

 

そんなこんなで紫と押し問答が続く。

 

 

 

 

 

 

 

寝床に入る。

 

両脇には紫と……何故か藍も。

 

2人とも身体は実にけしからん仕様である。

 

胸は大きく、ウエストもくびれてお尻も大きい。

 

つまりはナイス・バディと言う事だ。

 

紫が抱きついて来るのは分かるが、何故か藍も。

 

聞くと『いつもは橙と一緒なのだが、エヴァに取られてしまった。だから今日は君に抱きつく事にした』との事。

 

色々とツッコミを入れたいが、ここは無視した方が良いのだろうか。

 

そうそう、風呂では紫の手でカートリッジロードされましたが何か?

 

砲撃を見た紫は満面の笑みだった。

 

曰く『コレなら双子とか3つ子とか楽勝ね!』

 

意地でも俺に子供を作らせたいんかい。

 

種馬みたいにあっちこっちに子供を作る訳にいかない。

 

幻想郷にいる間は気を付けておこう。

 

そんな事を思いつつ俺は眠りにつくのであった。

 

 

 




そもそも春原の外見にする時点でフラグが立ってましたがw


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第49話 さすがにコレはまずいか

このままだと幻想郷の話がグダグダと続きそうなのでここで終わりに

外伝的な話で後の方で書く……かも?w


 

 

 

 

「お世話になりました」

「お世話になりました」

 

 

俺とエヴァは永遠亭の入り口で別れの挨拶を交わしていた。

 

1ヶ月に及ぶ修業で無事に若返りの薬を作ることが出来た。

 

……何か話が飛んだ様な気がしないでもないが。

 

このままいくと後10話位は使いそうな気がしたので。

 

まあ、メタな思考はその位にして。

 

その間にも紫、幽々子、永琳さん、神奈子、白蓮の5人は意地でも俺と身体を重ねようと襲って来たり。

 

だが、全て失敗に終わっている。

 

やはり邪な心を持ってると上手くいかないのだろうか。

 

で、結局の所はいつか重ねてくれると言う約束の元、別れる事となった。

 

……まあ、なのは達の件が終わったらの話なんだがな。

 

余り子種をばらまきたくないんだが。

 

「うぅぅぅぅ……」

 

マジ泣きしてる永琳さん。

 

そんなに俺としたかったのかい!

 

「ほら、永琳。今生の別れじゃないんだから」

 

輝夜が慰めている。

 

「そ、そうね……私と輝夜は大丈夫でしたね」

 

確かに、この2人は永遠の命を持っているから大丈夫と言う訳か。

 

「ま、元の世界が落ち着いたらまた来るよ」

 

「ええ! いつでも待ってるわよ!」

 

そう言って俺の手を握りしめてくる永琳さん。

 

そしてそのまま抱きしめてくる。

 

「ああ、この柔らかい感触も今日で終わりかぁ……」

 

背筋からお尻の方まで撫でてくる永琳さん。

 

ほとんど痴女に近いんだが。

 

「ほら、さっさと離れなさい!」

 

永淋さんの後ろの方で隙間が開いてそこから足が伸びてくる。

 

そして永琳さんの背中を蹴る。

 

 

 

「このスキマ!」

「いつまで抱きしめてるのよ!」

 

 

 

にらみ合う紫と永琳さん。

 

「まあ、輝夜も頑張れ」

 

「ええ、何とかね」

 

「お師匠様……」

 

「……」

 

鈴仙とてゐは呆然と永琳さんと紫の様子を眺めている。

 

「じゃあな、鈴仙とてゐも頑張れよ」

 

「はい……」

 

「元気でね」

 

俺は2人と握手する。

 

妙に頬が赤くなった鈴仙。

 

「うどんげ? アレスちゃんに手を出したら……どうなるか分かってるでしょうね?」

 

「ひぃ!」

 

底冷えする様な声で鈴仙を追いつめる永琳さん。

 

「……頑張れ」

 

「頑張ってね」

 

俺とエヴァは紫のスキマに飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

スキマから出た先は外の博麗神社だった。

 

廃墟なので勿論、誰もいない。

 

俺達の姿を見る者は誰もいない。

 

「それじゃあ、しばしの別れね」

 

「ああ、そうだな」

 

「また来てよね? 今度来た時はちゃんと身体を重ねて貰うわよ?」

 

口元に扇子を当ててクスクスと笑う紫。

 

頬が赤く、目が潤んでいる。

 

「そうだな。こっちの方が落ち着いたら……だな」

 

「約束よ?」

 

紫は小指を立てて右手を差し出してくる。

 

「分かったよ」

 

紫の小指に俺の小指を絡める。

 

「嘘付いたら……7日7晩私と一緒よ?」

 

「……枯れ果てるだろ」

 

「それならきちんと来てね?」

 

紫はそう言ってスキマに飛び込もうとして足を止める。

 

「あ、忘れてた」

 

「ん?」

 

紫は俺に近づき、抱きついて来る。

 

そして、俺の唇に唇を重ねてくる。

 

「ん……」

 

暖かい舌が俺の口内に入って来る。

 

紫の舌が俺の舌に絡まってくる。

 

ピチャリピチャリと少しイヤらしい音が周囲に響く。

 

「お兄様ったら……」

 

エヴァも頬を赤くして俺と紫のキスシーンを眺めている。

 

少し経ってから紫が離れる。

 

「やっぱりアレスちゃんのキスは最高だったわ」

 

ちなみに、紫とキスしたのはコレが初めてである。

 

あとは永琳さんとだけで幽々子、神奈子、白蓮とはまだである。

 

「それじゃ、こんどこそバイバイね」

 

紫はスキマに飛び込み、上半身を出しながら手を振る。

 

俺とエヴァも手を振る。

 

そして紫はそのままスキマに入っていった。

 

「……」

 

「行ったみたいだな」

 

「ええ。お兄様ったら、良い土産を貰いましたね?」

 

「アレは土産と呼んで良いのか?」

 

「さあ? 良い思い出だと思いますよ?」

 

「ま、なかなか楽しめたから良いか。それじゃ、帰るか」

 

俺は天界に念話を飛ばす。

 

しばらくして迎えの天使が来たので俺とエヴァは元の世界に帰るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま~」

「だだいまです」

 

 

自分の部屋に転移する。

 

時間は旅立ってから1日しか経ってないから部屋の様子はほとんど変わっていない。

 

「おかえり、アレスちゃん」

 

部屋に現れたのは母さんだった。

 

「で、どうだった?」

 

「きちんと作って来たよ。でも、隠しとかないと色々面倒だよなぁ……」

 

「そうね。バレたらかなり面倒よ。プレシアさんにはきちんと言っておくね」

 

「そうだな……」

 

何せ若返りの薬とか誰もが欲しがる薬だよな。

 

「それで、ごはんは?」

 

「向こうで食べてきたよ」

 

「そう……ならお昼は食べるわよね?」

 

「うん、今日は家でくつろぐ予定」

 

「分かったわ」

 

そう言って母さんは部屋から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

通信でプレシア女史を呼ぶ。

 

3分経たずして俺の部屋に現れる。

 

見た目からしてウキウキしてるのが分かるんだが。

 

「嬉しそうだな」

 

「そりゃあ勿論よ♪」

 

まあ、女性としてはずっと若くいたいモノだろうし。

 

「で、何年分の量を渡せば良いんだ?」

 

プレシア女史は人差し指を立ててそれを顎に当てて考えてる。

 

「……」

 

「30年分?」

 

「ブッ」

 

と言うか、プレシア女史は今何歳……。

 

「アレスちゃん? 『好奇心は猫をも殺す』って言うわよ?」

 

プレシア女史の背後から紫色のオーラが立ち上っているんだが!

 

「よし、30年分だな!」

 

俺はすぐに薬を取り出す。

 

この藪を突いたらヤマタノオロチで済まなくなるわ!

 

アザトースとか出てきたらシャレにならん!

 

1度見た事あるが……。

 

アレはシャレにならんかった。

 

人の身体の時だったら無条件で死んでもおかしくなかったな。

 

ちなみに不滅の神体の時だったから大丈夫だったのだが。

 

そんな事はさておき。

 

リポビタンD位の大きさの瓶を並べる。

 

味も少し甘い感じで飲みやすい仕様になっている。

 

「あら、結構あるわね」

 

「1本で1年若返るからな」

 

30本並べる。

 

「とりあえず、これだけだ」

 

「ありがとう、アレスちゃん♪」

 

「一気に飲むなよ。副作用は無いが、一気に飲んで身体にどんな影響が出るかまでは試していないからな」

 

「分かったわ。1日に1本か2本程度にしておくわ」

 

そう言うとプレシア女史はデバイスの中に薬を入れていく。

 

「それと、若返りの薬がある話は他言無用でお願いする」

 

「分かったわ。それじゃあ、早速飲んでみるわ♪」

 

そう言うとプレシア女史は軽やかなステップで部屋から出ていく。

 

よほど嬉しかったのだろうな……。

 

 

 

 

 

 

「アレスちゃ~ん、リンディさんが来てるけどどうしようか~?」

 

下から母さんの声が聞こえる。

 

久しぶりにリンディさんが来た様だ。

 

最近はウチに来る事が少なくなったんだよね。

 

「上がって貰って良いよ」

 

俺は母さんにそう返答する。

 

「リンディさんが来るのも久しぶりですね?」

 

ベッドで寝そべって漫画を読んでるエヴァ。

 

ちなみに呼んでる漫画は『ロザリオとバンパイア』だった……。

 

「だな。変な用件で無ければ良いんだが……」

 

最近はなりを潜めたが、たまにみょうちくりんな事を言ってくるんだよな。

 

少ししてから扉からノックが聞こえる。

 

「どうぞ」

 

扉がゆっくりと開く。

 

リンディさんが顔を覗かせる。

 

「お休みの日にごめんなさいね?」

 

ゆっくりと部屋に入ってくるリンディさん。

 

俺はベッドから降りて真ん中にあるテーブルの所へ座る。

 

リンディさんも同じように座る。

 

その直後に母さんがお盆にお茶を乗せて入ってくる。

 

俺はそれを受け取ってからリンディさんの前に置く。

 

母さんはそのまま部屋から出ていく。

 

「ありがとう」

 

そう言うとリンディさんはお茶を一口飲む。

 

「たまにはミルクも砂糖も無しも有りね」

 

そんな事を呟くリンディさん。

 

俺の前ではその飲み方をしないように釘を刺しておいたのだ。

 

さすがにアレは耐えられなかった。

 

「それで……本日はどの様な用件で?」

 

俺は単刀直入に聞いてみる。

 

「実は……アリシアちゃんとフェイトちゃんの事なんだけど……」

 

アリシアとフェイトの事ねぇ。

 

はて?

 

別に2人は問題は起こしてはいないが。

 

むしろ、事件も結構解決しているから特に問題は無いと思ったんだが。

 

俺は首を傾げる。

 

「あ、別に2人が問題を起こした訳じゃないのよ?」

 

慌てて弁明するリンディさん。

 

「では、一体何が……?」

 

「……2人のバリアジャケットよ」

 

 

……。

 

 

…………。

 

 

なるほど。

 

リンディさんの台詞で納得してしまった。

 

さて、賢明な読者の皆様は分かっていただけだろうか。

 

まずはフェイトのバリアジャケットを頭の中で思い浮かべて頂こう。

 

大人時代でなく、小学生時代の方である。

 

レオタードっぽい服に腰にベルトとスカートみたいなヒラヒラ。

 

膝上までのブーツにマント。

 

……小学生にしてはちょっと過激かもしれないデザインだ。

 

オリジナルの方ではいつ変更したのかは不明だが、StS編ではきちんと変わっている。

 

真ソニックフォームは別にして。

 

さて、何が言いたいのかお分かり頂けただろうか。

 

つまり……。

 

フェイトは今だにあのレオタードっぽいバリアジャケットなのだ!

 

そして、彼女の身長は14歳時点でオリジナルを超える172㎝。

 

ちなみにオリジナルは19歳時点で165㎝前後である。

 

しかも、胸はFカップ。

 

更に大きくなる可能性がある。

 

それと……アリシアもフェイトの色違いのデザインなのだ!

 

背は高いわ、胸は大きいわ、腰はくびれてるわ、お尻は大きいわ……。

 

そんな男にとって凶器みたいなスタイルで……。

 

身体のラインがよく分かるレオタードっぽいバリアジャケットを纏って。

 

……管理局の男性陣が股間のアームドデバイスをカートリッジロードしてそうだな。主に夜で。

 

つまりは。

 

リンディさんはバリアジャケットのデザインを変えさせてくれと言いたい訳だ。

 

そりゃそうだよな……。

 

常に真ソニックフォームだもんな。

 

俺は頭に真ソニックフォームのフェイト(大人版)を思い浮かべる。

 

……。

 

いや、今のバリアジャケットはアレより更にきわどいな。

 

真ソニックの方は前側に剣道で使う『垂れ』みたいに一応ガードらしいものがあったよな。

 

しかし今のアリシアとフェイトの方は……。

 

そんなモノが存在しない!

 

食い込みが丸見えです!

 

しかも、スクール水着みたいにローレグ(ローライズはヘソから股間部分が短いデザインに該当)のはずだったのだが。

 

いつの間にかハイレグになってました。

 

おいおい、ハイレグとかバブル時代に流行ったんだがな!

 

しかも、角度が半端無いスーパーハイレグとかもはや『けしからん!』と言われてもおかしくない位だ。

 

ちなみにスーパーハイレグがいまいち分からない人はストリートファイターシリーズのキャミィとかヴァンパイアシリーズのモリガン辺りを見れば参考になるかと。

 

つまり、ウエストラインから股下までの角度で切れ込みが入っているレオタード状態なのだ。

 

バブル時代のレースクイーンかよ!

 

ったく、誰があんなデザイン変更したのやら。

 

……プレシア女史とリニス辺りが非常に怪しいのだが。

 

「やはり、苦情が?」

 

「ええ、男性陣から……」

 

ヲヤ?

 

これはちょっと予想外。

 

てっきり女性陣辺りからと思ったのだが。

 

「ちなみにどんな理由か聞いてます?」

 

ちょっと興味が湧いたので聞いてみる事にした。

 

「ええ……アレスちゃんに言うのもアレなんだけど……2人を見てるとどうしても女の子とニャンニャン的な事をしたくなるからそう言う店についつい行ってしまうとか何とか……。お陰で給料が足りなくなるらしいの。中には前借りする人もいるらしいわ」

 

 

……。

 

 

まあ、アレは独身男性から見たらもはや凶器に近いわな。

 

「ちなみに今頃はいなくなったけど前は2人にちょっかいかける人もいてね……」

 

「ほぅ?」

 

俺は目を細める。

 

「でも大抵は撃退されてるわね。物理的に」

 

大方予想は出来たんだが。

 

アリシアもフェイトも身体能力はかなり高い。

 

アリシアは力が、フェイトは素早さが高い。

 

多分、アリシアは額にデコピンでフェイトは顎にかするようなパンチ辺りを使っているだろう。

 

何故なら、俺が教えたからな!

 

「今となっては誰もちょっかいをかける人はいないわね」

 

だろうな。まるまると肥えたウサギかと思ったら実はグリズリーでした♪みたいな感じだろう。

 

気になるのは女性陣の反応だろう。

 

あのスタイルであんなきわどい服だと嫉妬とかしそうな気がするんだが。

 

「女性陣からは苦情は無いんですか?」

 

「全くない訳じゃないわ。けど、あそこまでのスタイルであんなきわどい服だと逆に感嘆するんだって」

 

なるほど。

 

中途半端なスタイルで中途半端にきわどいと嫉妬したくなるのだろうが。

 

あそこまで行くと逆にすがすがしくなるわけだ。

 

そう言えば、フェイトとアリシアと一緒に管理局本部に行くと男性職員から恨まれる様な視線で見られたのは。

 

ソレが原因だったのだろうか。

 

うーむ、やはり2人のバリアジャケットのデザインは変えた方が良いだろう。

 

頭に思い浮かぶのはStS編のバリアジャケットだろう。

 

アレをベースに考案すれば良いか。

 

アリシアはソレの色違いにして。

 

真ソニックは後回しにしておこう。

 

「分かりました。2人を説得して、俺がデザインしておきます」

 

「それじゃあ、お願いするわね♪アレスちゃん♪」

 

リンディさんは俺の頬にキスした後に帰っていった。

 

「しかし、あのスタイルであのバリアジャケットは……確かに男性から見たら凶器ですもんね」

 

苦笑しているエヴァ。

 

「うーむ、なのははさすがに小学生の制服がベースだから『恥ずかしいからそろそろ変えるね』って言って変更したのだが」

 

ちなみになのはは既に変更済みである。

 

デザインはStS編のバリアジャケットそのまま。

 

ただし、白地が全て水色に変わっているが。

 

「いつになったら変えるかなーと思ってあえて放置してみたが……」

 

「多分、19歳になってもあのままだった可能性が……」

 

エヴァの台詞が否定出来なかった。

 

おいおい、19歳であのデザインかよ。

 

そう言えば、アリシアとフェイトはまだ胸が張るって言ってたし。

 

まだ成長期なんですか!?

 

と問いかけたくなる。

 

今でも結構大きい胸なのにあれ以上大きくなって、あのレオタードっぽいバリアジャケットは駄目だろ。

 

大半の若い男性が『けしからん!』と言いながら写真を撮りそうだし。

 

そうそう、はやて、アリサ、すずかの3人は特に変更はしていない。

 

強いて言えば、アリサのデザインがオリジナルのなのはに似ていると言った感じか。

 

色は白で赤ラインが入っているが。

 

「さてと。2人に話してみようかな」

 

俺はそうしてアリシアとフェイトのバリアジャケットのデザインを考えるのであった。

 

 

 




幻想郷好きの皆様には申し訳無いですがw

このまま続くとグダグダ感が出そうなので……。


全く出ないわけでは無いですよ?

外伝的な話でちょこちょこっと書く事はあるでしょう

まあ、紫との約束がありますのでw


ちなみに、テスタロッサ姉妹はあのきわどいバリアジャケットでもほとんど気にしておりませんでしたw

むしろ、『何で見てるんだろ?』と思ってる始末w

自分の身体がある意味凶器だと自覚していませんw


天然って恐いねwww



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第50話 空港火災

チクセウ

ハードディスクがご臨終なさって最新話がパーになりました

やっとの思いで書いたという訳です




 

 

 

 

 

さて。

 

気が付いたら中学3年生になってました。

 

こないだ15歳の誕生日を迎え、盛大に祝っていただきました。

 

15歳になったにも関わらず俺の身長は135㎝ですがね!

 

今でも管理局に行くとたまに驚く人がいるが。

 

特に入局したての新人さんが主だが。

 

さて、誕生パーティーではなのは達6人がトチ狂った事をしでかしましたが。

 

と言うか、毎年恒例の事だったが。

 

部屋に戻ると全裸に申し訳程度のリボンを身体に巻いているなのは達。

 

いわゆる『プレゼントは私♪』と言うヤツである。

 

どこぞの18歳未満禁止の漫画かと。

 

例に漏れず速攻で睡眠魔法で眠らせて記憶を消しています。

 

つまり、学習能力を消しているから毎年同じネタを繰り返しているわけです。

 

こうしておかないと年々ヤバくなるのは目に見えているからな!

 

ちなみに。

 

彼女達は手だけでは満足出来なくなってきたので口も解禁しております。

 

ええ、ええ!

 

俺の男性専用アームドデバイスのカートリッジロードを『手と口』で行っている状況なんですよ!

 

……。

 

…………。

 

石を持って投球ポーズは止めてくれよ?

 

それもこれもショタが多いこの世界に転生者を送った見習い神が全ての元凶なんだからな?

 

ショタがいなければ俺も平穏に過ごしていたんだからな?

 

……。

 

説得力が皆無に等しいが。

 

さてさて。

 

恒例のなのは達の様子なのだが。

 

 

 

 

胸が要塞になりました。

 

胸が要塞になりました。

 

 

 

大事な事だから2度言わせてもらいました。

 

 

その前に身長を言っておこうか。

 

 

 

 

なのは =175㎝

フェイト=180㎝

アリシア=182㎝

アリサ =176㎝

すずか =173㎝

はやて =170㎝

 

 

 

 

 

……。

 

…………。

 

高っ!

 

一番低いはやてでも170㎝ですよ!?

 

オリジナルは150㎝前後なんですよ!?

 

ちなみにシグナムは167㎝です。

 

並ぶとほとんど大差無い状態です。

 

多分、これで成長も止まったと思いたいんですがね!

 

そして、胸なんだが……。

 

 

 

 

 

 

 

なのは =102㎝(Hカップ)

フェイト=106㎝(Iカップ)

アリシア=109㎝(Jカップ)

アリサ = 99㎝(Gカップ)

すずか = 95㎝(Fカップ)

はやて = 91㎝(Eカップ)

 

 

 

 

 

えっと。

 

三桁っすか。

 

もうね、カップが普段聞くことないアルファベットなんですがね!

 

アイドルマスターの千早さんが聞いた日にはもうシャレにならん状況になりそうだ。

 

ちなみになのは、フェイト、アリシア、アリサの4人は紐靴を履かなくなりました。

 

理由?

 

靴紐がほどけた事に気づかないからだそうで。胸が邪魔をして足下が見えづらいそうな。

 

すずかとはやてはギリギリ見えるらしいが、そのうち紐靴は止めるつもりらしい。

 

そうそう、6人とも胸の張りが無くなったそうだ。

 

どうやらこれで成長は止まった……と思いたい。

 

さて。

 

ついでだからなのは達のスリーサイズも言っておこうか。

 

何故知ってるのか……だって?

 

彼女達が逐次報告してくるからに決まってるじゃないか。

 

 

 

 

 

なのは =B102 W62 H93

フェイト=B106 W65 H96

アリシア=B109 W65 H95

アリサ =B 99 W63 H92

すずか =B 95 W61 H91

はやて =B 91 W60 H90

 

 

 

 

 

ツッコミ所満載だが、これが真実だ。

 

もやは日本人の平均を上回っている。

 

つーか、モデルでもここまでの黄金比を持った人はなかなかいないと思うのだが。

 

そうそう、彼女達の股下比は55%だ。

 

この数字が如何にデタラメか、グーグル先生に聞けば分かるであろう。

 

アリシアなんか足の長さ1mあるんだぜ。

 

ちなみに俺は53%ですが何か?

 

だが、身長135㎝だから誰も気づいてはいないんだけどね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エヴァ、こっちの方か?」

 

【ハイ、こちらの方から反応があります】

 

灼熱の炎が俺の前で燃えている。

 

だが、この程度の炎なら問題は無い。

 

俺は今、ミッドチルダの空港に来ている。

 

そう、StS編の序盤でスバルとギンガが巻き込まれたあの空港大火災である。

 

時にミッドチルダの時間で言えば、新暦71年4月29日の出来事だ。

 

……ただ、今日の日付は28日である。

 

つまり、予定より1日早く起きてしまったのだ。

 

1週間前から『何か嫌な予感がする』とリンディさんに言ってはおいたが。

 

地上の方はそれなりに警戒してくれることになったが、空の方は全くだった。

 

いやー、空と海にはかなり嫌われているからねぇ~。

 

下の方はそうでもないが、上の方は……と言った感じか。

 

まあ、起きてしまったのは仕方ない。

 

今は救援活動を行うのが先決だ。

 

 

 

 

 

 

「キャアァァァァァッ!!」

 

女の子の叫び声が聞こえる。

 

【お兄様!】

 

「ああ!」

 

50m先に座り込んでいる青髪の少女の姿が。

 

そしてゆっくりと倒れてくる巨大な石像。

 

大きさは10m超であれに潰されたらひとたまりも無い!

 

俺は足に力を込める。

 

瞬動と呼ばれる技法で俺は一瞬にして距離を詰める。

 

そして俺は石像を左手で支えるように止める。

 

「……え?」

 

「危なかったな?」

 

「え? え?」

 

ありえない。そんな言葉が出そうな雰囲気を出している少女。

 

少女は目を見開いて俺と今に倒れてきそうな石像を見つめている。

 

「さ、帰ろうか。っと、その前に!」

 

俺は左手に力を込める。

 

指が石像に食い込む。

 

「邪魔だ!」

 

俺は石像を左手1本で放り投げる。

 

石像は放物線を描き、反対の壁に突き刺さる。

 

轟音と共に壁に穴が開き、そしてその壁も崩れる。

 

「……す、凄い」

 

少女は呆然と放り投げられた石像の方を見つめている。

 

「頑張ったな?」

 

俺は少女に近付き、頭を撫でる。

 

「あ……」

 

少女は目を細める。

 

頬が少し紅潮しているような気がするが。

 

……多分、周辺で燃えている炎のせいだろう。

 

「それじゃあ、帰るか?」

 

「……ハイ」

 

少女はゆっくりと立ち上がる。

 

「アレスくーん!」

 

俺を呼ぶ声がこだまする。

 

現れたのは、なのはだった。

 

「おお、なのはか」

 

「アレス君、大丈夫だった?」

 

心配そうな表情で俺を見つめてくるなのは。

 

「大丈夫だ。っと、この子を頼めるか?」

 

「うん、良いよ」

 

大丈夫とは思うが、フェイトの方にも行っておくか。

 

「フェイトの方は?」

 

「えっと。まだみたい……」

 

「分かった。フェイトなら大丈夫だとは思うが、念の為だ」

 

「だね。何が起こるか分からないからね」

 

俺となのははお互い顔を見合わせてから頷く。

 

「それじゃあ、私は行くね?」

 

「頼む」

 

「じゃあ……えっと。お名前聞かせてくれるかな?」

 

「……スバル。『スバル=ナカジマ』です」

 

「了解。それじゃあ、行くよ?」

 

なのははスバルを抱きかかえる。

 

「あ……」

 

顔に当たるのはなのはの……胸。

 

まあ、あの胸は同性でも驚くかもな。

 

柔らかいけど何とも言えない弾力があるし。

 

……癖になる揉み応えがあるんだよな、あの胸は。

 

「それじゃあ、一気に……」

 

なのはの身体から桃色の魔力が溢れる。

 

「レイジング・ハート?ランスモードで」

 

【了解です、マスター】

 

レイハさんの形状が馬上で使うランスに切り替わる。

 

……おかしいな、ここではディバイン・バスターで天井をぶち破って出るハズなんだが。

 

「行くよ~……牙突!!」

 

なのははそう言うと天井に向かって突撃する。

 

って言うか!

 

救助者担いだまま突撃するヤツがいるか!

 

そのままなのはは天井をぶち破っていく。

 

「……後で少しお仕置きした方が良いか?」

 

【……お兄様にお任せします】

 

まあ、帰ってからそれは考えるか。

 

俺は更に奥に向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

開けた階段に出るとちょうどフェイトがギンガを救った所だった。

 

フェイトはギンガを抱きかかえている。

 

「む、大丈夫だったか?」

 

「あ、アレス。見ての通り、大丈夫だよ」

 

微笑むフェイト。

 

ギンガは……なんだろう。ちょっと熱がこもった視線を俺に向けてきているんだが。

 

「えっと? お名前は?」

 

「ギンガ……『ギンガ・ナカジマ』、陸士候補生です」

 

「そっか、将来の同僚……かな?」

 

そう言えば、俺達はまだ嘱託魔導師なんだよな。

 

本来ならなのは、フェイト、はやての3人は既に管理局に入局しているハズなんだが。

 

「あの……妹とエントランスホールではぐれて……」

 

「妹の名は?」

 

俺は訪ねる。知ってはいるが。

 

「スバル・ナカジマ。11歳です」

 

「その子ならさっき俺が助けた。今はもう救急車の方に着いているだろう」

 

「良かった……」

 

安堵のため息をつくギンガ。

 

「それじゃ、帰ろうか」

 

「だな。もう救助する人はいないし」

 

フェイトはギンガを抱きかかえたまま宙に浮かぶ。

 

「俺が運ぼうか?」

 

「私が運ぶから大丈夫だよ。それに、アレスの方が少し小さいみたいだし……」

 

くすくす笑ってるフェイト。

 

……釈然としないが、パッと見ギンガの方が少しだけ背が高い様に見える。

 

ちなみにフェイトは180㎝の長身である。

 

「……何故俺の背は止まったのだろう」

 

ポツリとつぶやく。

 

「駄目だよ? アレスはその背だから良いんだよ? 背が高くなったアレスはアレスじゃなくなるよ?」

 

言ってる意味が分かりませんよ、フェイトさん?

 

そしてギンガ? 何故に同意するようにウンウンと頷いている?

 

「ギンガ?」

 

俺はギンガの顔を見つめる。

 

ギンガは潤んだ瞳で俺の方を見ている。

 

……ってか、この目は少年偏愛者(ショタコン)の目に見えるんだが。

 

「ん? ギンガ? ひょっとしてアレスみたいな子が好み?」

 

「……ハイ」

 

頬を真っ赤にして返答するギンガ。

 

なんてこったい。

 

また1人、少年偏愛者(ショタコン)が増えてしまった。

 

この世界はどんだけ変態淑女と少年偏愛者(ショタコン)を増やせば気が済むんだろうか。

 

「……とりあえず、外に出るぞ」

 

俺とフェイト、ギンガの3人は空港の外に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

空港火災から1週間。

 

俺となのは、フェイトの3人はスバルとギンガの父、ゲンヤさんに娘を救ってくれたお礼と言うことで食事に来ていた。

 

スバルとギンガは検査入院で3日ほど入院していたのだ。

 

ちなみに特に異状は無かったとの事。

 

何にしても怪我が無くて良かった。

 

そうそう、あの空港火災ではアリシア、アリサ、すずかも救援活動を行っていたんだぜ。

 

はやては外で広域魔法を使って鎮火。

 

特筆することは無かったが。

 

他の人は面識が無いので今回はパスしているのだ。

 

機会があったら紹介しておこうか。

 

店に入ると既にナカジマ親子は来ていた様だ。

 

「こっちだー」

 

ゲンヤさんが俺達の姿を見ると手を振ってくる。

 

……。

 

そう言えば、この店は安くて美味くて量が多いお得な店だったな。

 

やはり食費で苦労してるんだろうな……。

 

まあ、そこら辺はさておき。

 

俺達はゲンヤさんの所に向かう。

 

6人用テーブルの片側にゲンヤさんとスバル、ギンガの3人が座っている。

 

俺達は対面に座る。

 

ギンガとスバルは嬉しそうに俺の顔を見つめてきている。

 

「それじゃあ、始めるか」

 

俺達は思い思いに料理を注文する。

 

 

 

 

 

「それじゃあ、改めて。あの時は世話になった。お陰で娘達は怪我を負わずに済んだ」

 

一礼するゲンヤさん。

 

「ギンガとスバルに怪我が無くて良かったですよ」

 

ギンガとスバルから呼び捨てで呼ぶように言われたのでその通りにしている。

 

「ああ、そうだな……にしても」

 

ゲンヤさんは俺となのは、フェイトの顔をジロジロと眺めている。

 

『?』

 

「噂では聞いていたが、3人とも同級生……なんだってな?」

 

……あ~、確かに俺となのは、フェイトの3人が並んでいても誰も同い年と信じてくれないのだ。

 

 

「え?」

「へ?」

 

 

そこへ驚きの声を上げるギンガとスバル。

 

「にゃはは、私とアレス君は1歳離れてるんだよ? ちなみに私の方が年下ね」

 

スパゲティをフォークにクルクル巻いて口に運ぶなのは。

 

「うーむ、これは絶対誰も騙されるな……」

 

「あ、私も年下だよ? 3ヶ月くらい前に誕生日を迎えたからね」

 

フェイトも同じようにスパゲティをクルクル巻いて口に運んでいる。

 

ちなみに、フェイトとアリシアの誕生日は1月21日である。

 

更に、なのはは3月15日である。

 

ついでに。

 

はやては6月4日、アリサは5月30日、すずかは3月26日である。

 

……早生まれが多いんだが。

 

今まで誕生パーティーの話をしてなかったが、大方予想出来る事であろう。

 

全員が全員、俺に『リボンを身体に巻いて来る事!』と言うのである。

 

無論、無視してプレゼントを用意しているがね!

 

「……アレスさんって……何歳ですか?」

 

頬を少し引きつらせて俺に聞いてくるギンガ。

 

「今月の4日に15歳の誕生日を迎えたんだが」

 

「15……!」

 

「と言うことは、なのはさんとフェイトさんは……14歳!?」

 

「……これで14歳か……ギンガと1つしか違わないのになぁ……」

 

遠い目をしてなのはとフェイトを見ているゲンヤさん。

 

見た目は140㎝前半位だったかな? ギンガの身長は。

 

フェイトと40㎝位の差があると言うわけだ。

 

頭一つ分の差はあるのか。

 

まあ、なのはとフェイトが大きくなりすぎた気がしないでもないが。

 

「『アレスお兄ちゃん』って呼んで良い?」

 

スバルの突然の提案。

 

「……別に構わないが」

 

「スバルずるい! 私もお兄さんって呼んで良いですか?」

 

「ああ、良いよ」

 

断る必要性が無いので了承する。

 

「アレス君?」

 

「アレス? 増やすならきちんと報告してね?」

 

目を細めてるなのはとフェイト。

 

「ああ、きちんと言うよ」

 

背筋に少しだけ冷や汗が流れる。

 

「はぁ……やっぱりクイントに似てたか……」

 

ため息をついているゲンヤさん。

 

「クイント?」

 

「ギンガとスバルの母親だ。既に鬼籍に入ってるが」

 

「なるほど。だからこの場に来てなかったと」

 

「そのクイントさんがどうしたのです?」

 

「いや、クイントはな……小柄な男の子が好みでな……」

 

「……」

 

俺は眉間にしわを寄せている。

 

「生前からギンガとスバルの旦那は『大人だけど見た目は子供』が良いわねって……」

 

うん、クイントさんはどう見ても少年偏愛(ショタコン)です。ありがとうございました。

 

「で……だ。出来ればお前さんに2人を貰ってくれないかと。このままだと2人は将来捕まりそうでな……」

 

クイントさん、貴女はどんな事をやってたんですか!

 

「ゲンヤさん? ミッドは一夫一妻ですよね?」

 

なのはの問いかけ。

 

「ん? 知らなかったのか? ベルカ自治区の方は一夫多妻制だぞ?」

 

ゲンヤさんの台詞でなのはとフェイトの顔が真顔になる。

 

 

「その話、詳しくお願いします」

「包み隠さず、全てお願いします」

 

 

「あ、ああ……」

 

俺とギンガ、スバルと言うと。

 

「えへへ、アレスお兄ちゃんって可愛いよね?」

 

「うん、小柄で可愛いね」

 

2人は俺の方を見てから嬉しそうに顔を見合わせていた。

 

えっと。この2人も俺のお嫁さん候補に入ると言うことですか、そうですか。

 

 

 

 

 

 

 

ナカジマ親子と別れて俺達は家に帰る。

 

今日は俺の家でのお泊まり会。

 

そこでなのはとフェイトははやて達にベルカ自治区の事を話す。

 

「な、なんやとー! 一夫多妻制やとー!」

 

食いついてきました。

 

ダボハゼのごとく。

 

「やったねお兄ちゃん! そこならみんなと好きなだけ一杯出来るよ!」

 

アリシアちゃん?

 

何が出来ると言うのかね?

 

「これは朗報ね……。これでみんな仲良く子供が作れるわ!」

 

アリサ?

 

貴女は何を不穏当な事を言ってるのかね?

 

「良かった、世間の目を気にしなくイチャイチャ出来るね♪」

 

え? 世間の目を気にしていたのですか?

 

俺には気にしているようにはとても見えなかったのですが。

 

「高校を卒業したらすぐにそこに住もうね?」

 

「約束だよ?」

 

なのはとフェイトは俺に迫ってくる。

 

「……ああ」

 

もはや頷くしかなかった。

 

「でも、何で誰もベルカ自治区の事言ってくれへんかったのかなぁ?」

 

確かに、はやての疑問は俺も気になっていた。

 

ふと、俺は思った。

 

管理局とか行っても俺達は仲良くしている。

 

……もしや、既にベルカ自治区の事を知っていると皆が勘違いしていたのか?

 

あり得る。

 

俺達はベルカ自治区の事を既に知ってると、管理局の人達は勘違いしていたのだろう。

 

「……多分、俺達は既にベルカ自治区の事を知ってる……と皆がそう勘違いしていたのだろう」

 

「あ、そう言う事ね」

 

「にゃはは、確かに私達って見た目既に一夫多妻だもんね」

 

「なるほどな~。ほんなら、今日もお風呂に行こうな?アレス君?」

 

こうしていつもの通り俺はなのは達とお風呂に入るのであった。

 

ちなみに。

 

シグナム達が生まれた頃はまだ一夫多妻ではなかったとの事。

 

戦乱の後期頃にその制度が出来たのだろう。

 

その話を聞いてリインフォース、シグナム、シャマルの3名は感無量の涙を流していたのは言うまでもなかった……。

 

 

 




これでようやくなのは達の成長は止まりますw

ちなみにスリーサイズはきちんと計算して出していますよ?

あと、外観はどこぞの18禁漫画みたいに恐ろしい胸……みたいな大きさではありませんw

イメージ的にはシグナムよりふたまわり大きくなったと思って頂けたらw

そもそもシグナムが大きすぎる様な気がするんですがねw



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第51話 駆け上がれ! 大人の階段!

『知らなかったのか? 変態淑女からは逃れられない!』と言うことをw




 

 

 

 

 

空港火災から1ヶ月。

 

さしあたって事件と言う事件は起きていない。

 

そうそうナカジマ姉妹とティアナ、エリオとキャロを会わせてみた。

 

初めはやや緊張気味だったがうち解けて仲良くなっていた。

 

これで将来機動六課を作った時に色々と有利になるだろう。

 

多分だが。

 

しかし、ティアナとナカジマ姉妹が意気投合していた。

 

将来は俺のお嫁さんになると言って。

 

いや、意味が分からないんだが。

 

3人はベルカ自治区の事を知っていた模様で。

 

なのは達の事を聞いて自分達も加わりたいと……。

 

……9人ッスか。

 

一刀君超えちゃった。

 

前世の前世でもこんなにモテた事無かったんだが。

 

せいぜい嫁さん1人だけだが。

 

……いや、仲間の妖子(あやこ)もいたか。

 

だが、彼女とは決して結ばれる運命では無かったが。

 

まあ、前世の前世の話をしてもしょうがない。

 

とりあえずは今と将来の話だな。

 

将来は結婚をしないといけないのは分かる。

 

こんな変態淑女達を野に放すのは色々とヤバいからだ。

 

学校の帰りに男子小学生を見かけると。

 

 

 

「アレス君が駄目なら……」

「いっその事……」

「路地裏に連れ込めば……」

 

 

 

等々。

 

実に不穏な発言をしているからだ。

 

君達?

 

それってもう犯罪だからね?

 

ちなみに。

 

変態度と言うと。

 

 

 

はやて≧アリシア=アリサ≧フェイト=すずか≧なのは

 

 

 

と個人的には思ってるが、ほとんど僅差は無いと思っても良いだろう。

 

とにかく、彼女達は思っていた以上に思春期なのだから。

 

さて、今日は恒例のお泊まりの日だ。

 

今宵も彼女達の欲望を抑えようかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

眠りの霧(ネブラ・ヒュプノーティカ)!!」

 

迫り来るなのは達を眠らせるべく俺は無詠唱で呪文を唱える。

 

『……』

 

しかし、魔法は発動しなかった。

 

「……アレ?」

 

俺は首を傾げる。

 

「ふっふっふっ……無駄やで、アレス君?」

 

はやては口元をつり上げて笑っている。

 

邪悪さがプンプンと臭う笑みである。

 

「ど、どういう事だ?」

 

「エヴァちゃんに教わったんや。魔法封じの結界を……ね」

 

「なん……だと?」

 

俺は背筋に冷や汗が流れてくる。

 

前世の時にエヴァと共同で開発した魔法封じの結界。

 

効果は覿面(てきめん)でことごとくの魔法使い達が無力と化したのだ。

 

まあ、明日菜の能力をベースにしたのだから当たり前ではあるのだが。

 

「ならば、チャクラを使って……」

 

チャクラを回して逃れようとするも。

 

「…………アレ?」

 

チャクラが上手く回らない。

 

と言うか、何か身体に上手く力が入らないと言うか。

 

妙に気怠いと言うか。

 

まるで、闇の力を封印されている様な。

 

そんな感じなのだ。

 

かろうじて第1チャクラは回るが、その上が全くと言って良いほど回らない。

 

「うふふふ、アンタのその驚く顔、可愛いじゃない?」

 

同じようにニヤニヤと笑っているアリサ。

 

「ど、どういう事だ……?」

 

ますます背筋に冷や汗が流れる。

 

「アレス君? エヴァちゃんにもう1つ……教わったんだ」

 

「『闇の力』を封じる結界を……ね?」

 

すずかからアリシアに続いて喋る。

 

アリシアの台詞を聞いて俺は……身体から力が抜けてしまった。

 

闇の力を使う俺にとって最悪の結界だ。

 

まさか、ここで使われるとは思ってもなかったのだ。

 

コレが人の身体でなく神としての身体ならどうとでもなるが、人の身でこれを破るのは……時間が足りない。

 

おまけに身体能力を封じるかの様に重力がかかっている。

 

術式をいじって俺の身体能力を普通の子供と変わらない位にしてやがる。

 

 

詰んだ。

 

 

もはやコレしか頭に浮かばなかった。

 

口八丁で逃れようと思ったが、彼女達の目を見て諦めざるを得なかった。

 

あの目はヤバいって!

 

後一歩で狂化……いや、凶化しそうなんですもん!

 

何を言っても火に油を注ぐと言うか。

 

コレが世に言う『知らなかったのか? 変態淑女からは逃れられない!』と言うヤツなのか!?

 

「さあ、アレス君? 脱ぎ脱ぎしようね~?」

 

そう言ってなのはは俺のズボンに手をかける。

 

「じゃあ、私は上着の方を……」

 

フェイトが俺のシャツを脱がしてくる。

 

「……」

 

もはや抵抗する気も失せていたのは言うまでも無かった。

 

 

 

 

「よっしゃ!」

「うふふふ、待ちに待ったこの時!」

「アレス君? 一緒に気持ちよくなろうね?」

「お兄ちゃんと子作り……楽しみ!」

 

 

 

 

はやて、アリサ、すずか、アリシアの4人は嬉々として服を脱いでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「順番……どうしようか?」

 

なのはが周りを見ながらつぶやく。

 

俺の目の前には全裸になってるなのは達。

 

全員が正座をしている。

 

そうそう、今いるのは俺の自室で特大サイズのベッドの上なのだ。

 

俺も正座をしている。

 

……股間の男性専用アームドデバイスが反応している自分が憎い!

 

全員の視線は俺の男性専用アームドデバイスに注がれいる。

 

「それやねぇ……順番で言えばなのはちゃん、すずかちゃん、アリサちゃん、フェイトちゃん、アリシアちゃんで最後に私か?」

 

「それが妥当と言えば妥当かしらね……」

 

「でも、待つのも結構辛いと言うか」

 

「そうだね。1人30分としても最後のはやては3時間後になりそうだね」

 

「……それはちと辛いなぁ……。その間にアレス君とヤってる皆を見てるのか……」

 

「その間にベッドがずぶ濡れになりそうだね」

 

……確かに、アリシアの言うとおりになりそうだな。

 

ちなみに。

 

彼女達は結構濡れやすい……とだけ言っておこう。

 

「ねぇ、アレス君?」

 

すずかが俺の方を向く。

 

「アレス君の分身と……出来る?」

 

「そうか! その手があったやん!」

 

「これなら全員一緒で出来るじゃない!」

 

全員がキャイキャイと騒ぎ出す。

 

「……可能か不可能かと問われたら可能だ。ただ、子供は出来ない……と思う」

 

分身体でヤった事は無いが、行為自体は可能と思ってる。

 

ただ、子供は出来ないと思う。

 

……もし出来たら俺の子供が一気に出来るじゃないか。

 

まあ、今はマッチョ神に頼んで子供は出来ない状態なのだがな!

 

「よっしゃ! なら本体はなのはちゃんで後は分身体やな!」

 

「で、そのあと本体はローテーション!」

 

「そうだね! 1回は注いで貰わないと!」

 

え? 6回戦ですか?

 

砲身がエラい事になりそうなんだけど!

 

「大丈夫だよ? アレスのソレって……頑丈そうだもん」

 

フェイトさん?

 

何その根拠のない理由は?

 

そんな訳で今夜は肉欲に溺れる夜が始まったのだ……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【18禁展開が続いてます】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

深呼吸している俺。

 

目の前には気を失っているなのは達6人。

 

全員、全裸で体中が濡れている。

 

部屋の中は……独特な匂いが充満しているとだけ言っておこう。

 

何故気を失っているのかと言うと、気持ち良すぎて気絶したのだ。

 

その光景は読者の皆に任せるが。

 

たった今、分身体が俺と合体したのだ。

 

分身体の疲れが一気に俺に襲いかかったという訳だ。

 

「くそ、ここまでとは思わなかった」

 

1人につき6回戦。

 

全員、本体と重ねるまで頑張ったと言うわけだ。

 

つまり、6×6で36発。

 

36発分の疲れが俺に来たと言うわけだ。

 

「あ~、もうこのままだ」

 

俺はベッドの真ん中……なのはとアリサの間に入ってそのまま眠ることにした。

 

2人の暖かさを感じながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の朝。

 

俺達は朝の風呂に入って身体を綺麗にする。

 

さすがにあのまま1日を過ごすのはどうかと思うので。

 

なのは達は嬉しそうに身体を洗っている。

 

全員、満面の笑みを浮かべている。

 

満ち足りたと言った方が分かりやすいか。

 

ちなみに。

 

彼女達はこんな感じの会話をさっきから行っている。

 

「あ~……アレは想像以上やったわ」

 

「だね……」

 

「わ、私なんて……何回イカされたか……」

 

「10回は軽く超えてるよね……次から次に快楽の波が来て……思い出しただけでも」

 

すずかが身体を震わせている。

 

「アレは反則としか言いようが無いわよ……何なのよ……あの気持ち良さ……」

 

「えへへ~もうコレは病み付きになるよね♪」

 

「そうやな! もうこれからアレ無しで生きるのは無理やな!」

 

「それは同意だね」

 

「もう指とかじゃ無理だね」

 

「うん、無理」

 

「と言うわけでアレス! アンタ無しじゃ生きられない身体になったからキチンと責任取りなさいよ!」

 

全員が俺の方を見つめている。

 

「……ああ」

 

同意するしか無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

風呂から上がり、朝食を取る俺達。

 

ニコニコと微笑んでるのは我が母親。

 

……絶対気付いてやがるな、コレは。

 

「アレスちゃん、とうとう大人になっちゃったんだ♪」

 

開口一番これである。

 

「で、誰が一番良かった?こっそりとお母さんに教えて頂戴?」

 

いや、その質問は非常に答えづらいのですが。

 

全員、俺とピッタリの相性だったとしか言えないのですが!

 

何がピッタリだったのかは読者の皆様の想像に任せるが。

 

「甲乙付けがたかった」

 

無難に答える事にしておいた。

 

……無難なのかはちと疑問に思うが。

 

「それじゃ、みんなはアレスちゃんの身体どうだった~?」

 

何気なく恐ろしい質問を問いかけるなと言いたい。

 

 

 

 

「凄かった」

「最高でした」

「メロメロでした」

「無しでは生きられなくなりました」

「虜でした」

「相性ピッタリでした」

 

 

 

 

ツッコミ所満載の返答ですがね!

 

「そりゃそうよねぇ~。アレスちゃんの身体って体温が高いから♪」

 

「……言われてみれば確かに」

 

「今まで一緒に添い寝してて気付かへんかった……」

 

フェイトとはやてが少し驚いていた。

 

「にゃはは、アレス君と一緒に寝ると気持ち良い理由が分かったの」

 

「そういうカラクリがあったわけね……」

 

「で?お兄ちゃんの体温で何℃くらいなの?」

 

アリシアが訪ねてくる。

 

「……滅多に計らないからな。確か……平熱時で37.5℃だったかな」

 

「……幼児の平熱並みじゃない」

 

苦笑しているアリサ。

 

「なるほど……冬場とか抱きしめたら凄く気持ち良かったのはそう言うカラクリがあったのね」

 

「そうそう、お兄様の手は40℃前後はあるのですよ?」

 

エヴァが追加の卵焼きを持ってくる。

 

「そう言う事か! アレス君に揉んで貰うと気持ち良いのはそれもあったんか!」

 

手をポンと叩いてるはやて。

 

エヴァの言うとおり、俺の手は常に40~42℃あるのだ。

 

つまり、冬場に触れられるともの凄く暖かいのだ。

 

「もう人間ホッカイロね……」

 

「そうだね……」

 

「にしても、見た目だけじゃなくてそう言うところも子供なのね」

 

「ほっといてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「主はやて! アレスちゃんと寝たと言うのは本当ですか!?」

 

「はやてちゃん! 詳しく教えて!」

 

「主! それなら次は私達の番です!」

 

部屋で思い思いにくつろいでいたら部屋に飛び込んで来る者が。

 

シグナム、シャマル、アインスの3人だ。

 

「……」

 

俺はジト目ではやてを見る。

 

「あはは、えっと……な? つい、口が滑った言うか……自慢したかった言うか……」

 

本音が後者くさいな。

 

「まあ、いずれはバレるだろうとは思っていたが」

 

「アインス? 私が先ですよ?」

 

ジロリとアインスを睨むのはエヴァ。

 

「う……ならば姉上も一緒に……」

 

「そうですわね♪お兄様の夜は激しいと聞いてますから、4人で……」

 

「私達も加わるのは?」

 

はやてからのツッコミが入る。

 

「……お前ら、俺を枯渇させるつもりか?」

 

まさかの11Pと言うヤツか。

 

エロゲーでもこんなシチュエーションは無いぞ。

 

「え~駄目かいな~? 私達は中に3発で良えんやけど……」

 

それでも18発だろうが。

 

「私達は出来れば6発が……」

 

「そうよね」

 

「コレばかりは譲れないな」

 

 

 

6×4=24

18+24=42

 

 

 

俺の男性専用アームドデバイスがエラい事になりそうなんだが。

 

「……単純計算で昨日より多いんだが」

 

「それはそこ、アレス君の根性で」

 

「いや、根性で済む話じゃないだろ」

 

「なら薬か何かで……」

 

「んな薬は無いわ」

 

作る事は可能だが、作る気が全く起こらない。

 

「んもう! しょうがないわね! 今夜は無しにしてあげるわ! 次の時は1人8発ね!」

 

アリサさん?

 

増えてますよ?

 

「8発か……」

 

「これは期待して良いよね?」

 

「あんなに熱いのが8発分も……」

 

「早く子供出来ないかな~?」

 

口々に恐ろしい事を言ってるんだが。

 

「それじゃあ、今夜はアインス達をお願いするわ」

 

「あんまり無茶するんじゃないわよ? アンタの暴れん棒将軍様は硬くて太くて長いんだからね?」

 

「そうそう。あの先端部分なんかで中をゴリゴリとかき回された日には……」

 

「うん、4人とも何回イカされるかな~?」

 

「思い出してきたら……」

 

6人とも頬が赤くなってきている。

 

……股間に手が伸びているのは見なかったことにしよう。

 

 

 

 

「ゴクリ」

「……ドキドキ」

「ジュルリ」

「お手柔らかにお願いしますね?お兄様?」

 

 

 

 

エヴァ、シグナム、シャマル、アインスの4人は期待の眼差しを俺に向けるのであった。

 

そして、その夜は4人とも気を失うのであった。

 

歓喜の表情を浮かべて。

 

 

 

 




 

はい、とうとう頂かれてしまいましたw

胸を通り越して『合体』と相成りましたw

詳しい内容は皆様の脳内で補完して下さいw




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第52話 予定外の展開! それは神の悪戯か?

かなり間が空いてしまいまして

ネタは沢山ありますが書くのが追いつかないと言うか……


とりあえず、どうぞ!


 

 

 

 

みんな、こんにちはだぜ。

 

初体験の日から2ヶ月の時が流れたぜ。

 

その間も彼女達は嬉々として俺の所に来ては身体を求めるという……。

 

……何というか、水を得た魚って感じ?

 

実に彼女達は嬉しそうだった。

 

まあ、不特定多数の男と……ではないからまだマシと言うモノであろう。

 

むしろ多数の女性と重ねてる俺の方が刺されてもおかしくないと思う。

 

本来なら。

 

そうそう、学校では身体を重ねた事はバレてはいないぜ。

 

バレた日には俺は停学か退学になるだろうからな。

 

……アリサとすずかが裏で手を回して撤回させそうだが。

 

さて、夜の生活は……。

 

もうここで語る事が出来ない位の内容になっている。

 

語ったら世界の修正を受けそうだから。

 

まあ、簡単に言うと。

 

明るい家族計画は装着していない……とだけ語っておこう。

 

うん、俺の容姿で買うのは不可能だし。

 

と言って彼女達に頼むのもどうかと思うし。

 

それにマッチョ神に言って避妊対策はバッチリだし。

 

そんな訳で俺は今日も彼女達に身体を弄ばれるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゑ?」

 

それは唐突な出来事だった。

 

俺の耳がおかしくなったのだろうか。

 

聞こえてはいけない事が聞こえてきたのだから。

 

「す、すまない。俺の耳がおかしくなったのかなぁ……。もう一度、言ってくれないか?」

 

俺の前にいるのはなのは、フェイト、アリシア、アリサ、はやて、すずかの6人。

 

つまり、いつものメンツと言う事だ。

 

ここは俺の自室で、彼女達は特大サイズのベッドの上に思い思いに座っている。

 

俺は椅子を持ってきて座っている。

 

「何度でも言ったるで? 『あの日』が……来ないんや」

 

はやてがニコリと微笑む。

 

あの日、と言うのは女性特有の『あの日』の事だろう。

 

簡単に言えば、子供が出来てないと普通に迎えるのである。

 

「いや、ちょ……待て?」

 

俺は言葉が続かない。

 

確かにこの2ヶ月、彼女達にたっぷりと注いで来ている。

 

何を……とはあえて言わないがな!

 

 

 

「にゃはは、最近なんか身体が変わった気がするの」

「そうだね、何か……身体の中に出来た様な感じがするよ?」

「うん、よく分からないけど……何か変わったかも」

 

 

 

なのは、フェイト、アリシアの台詞。

 

 

 

「そう言えば、最近よく喉が渇くんだよね~」

「最近、味覚が変わったような気がするのよね……」

 

 

 

すずかとアリサの台詞。

 

待て待て待て!

 

それは明らかに妊娠の兆候が見られるぞ!

 

前世の時にネギの嫁達を見てきたから分かる!

 

背筋に冷や汗が滝のごとく流れる。

 

シャツがずぶ濡れになりそうだ。

 

「おめでとうございます♪お兄様♪」

 

部屋に現れたのはエヴァ。

 

実に嬉しそうな表情を浮かべておりますね!

 

「待て! まだ決まった訳じゃない!」

 

俺は最後の抵抗を試みる。

 

「それならお兄様? 私が調べてみましょうか?」

 

エヴァの提案。

 

そう言えば。

 

前世の時に魔力探知を使って妊娠してるかどうかの検査を行ってきたな。

 

俺が行ったのは気を探知する方。

 

これで100%当てていたのだ。

 

方法は簡単。

 

お腹部分に手を当てて調べるだけ。

 

「……頼む」

 

この時ばかりは外れていてくれと心の底から願うのであった。

 

……ちなみに。

 

前世の時はネギがクラス全員と関係を持ってしまっていたので。

 

俺とエヴァと茶々丸以外の全員を調べたら全員的中していたと言うオチが待っていた。

 

あの時のネギの顔は……忘れられない。

 

まさか、俺が同じ目に遭うとは思ってもみなかったがな!

 

 

 

 

 

 

 

「お兄様? もう、逃れることは出来ませんよ?」

 

「……」

 

「全員、おめでたです♪」

 

「……マジか」

 

「マジです♪」

 

エヴァの台詞で俺は目の前が真っ暗になった。

 

何故だ? 確かにマッチョ神に頼んで子供が出来ないようにしていたハズなのに!

 

何が起きたんだ!

 

コレは後で聞いてみるしかあるまい!

 

 

 

「やったー♪」

「お兄ちゃんの子供♪」

「アレス君の愛の結晶♪」

 

 

 

彼女達は大喜びしていた。

 

あんた等! 事の重大さを分かってるのかね!?

 

まだ独立していないのに子供が出来るなんて……シャレにも何にもならんのだぞ!

 

ぐぬぅ……堕胎だけは絶対駄目だ。

 

こうなったら腹をくくって6人の子供を育てるしかあるまいか。

 

「あ、そうそう。皆様のお腹にいる子供は全員双子ですよ?」

 

 

ドグシャ!

 

 

俺はエヴァの台詞を聞いて盛大に椅子から転げ落ちる。

 

「ノォォォォォォォ―――――――――――ッ!!!」

 

そして頭を抱えて床を転げ回る。

 

「わ、アレス君が壊れた!」

 

「傷は浅いで!しっかりするんや!」

 

傷は深いわぁ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、俺は彼女達のお腹を触り、確認してみる。

 

「……なんて……こったい」

 

認めたく無かったが。

 

俺の手に感じられる気のは2つの気。

 

彼女達のお腹に2つの気を感じたのだ。

 

双子である。

 

しかも、全員。

 

……6人の嫁に子供が12人?

 

妹が12人出来るよりキツいんですけど!

 

俺は床にパタリと倒れ込む。

 

「わわ、アレス君が倒れた」

 

「さ、さすがに12人の子供が出来たら……」

 

「いかに言ってもそれはキツいよね……」

 

彼女達の声が聞こえる。

 

ああ、このまま現実逃避したい。

 

体中の力が抜ける。

 

「お兄様? ここで気を失っても解決にはなりませんよ?」

 

エヴァの人形操りで無理矢理起こされる。

 

「あ……ああ……」

 

気分は真っ白に燃え尽きたボクサーのごとく。

 

「さて……。愚問だとは思うが、子供は産みたいんだな?」

 

予想通りの答えが返って来るとは思うが、尋ねてみる。

 

『うん』

 

全員一致でした。

 

さて、これは彼女達の保護者に隠し通せる問題じゃないな……。

 

潔く話をするしかないか。

 

将来を約束されてる仲ではあるが、さすがに子供が出来たとなれば話は別だろう。

 

アリサとはやては15歳、なのは、アリシア、フェイト、すずかはまだ14歳なのだ。

 

う~あ~……シャレにならん。

 

少女偏愛者(ロリコン)の烙印を押されるじゃないか!

 

……見た目は20歳超えてる様に見えるが。

 

「……とりあえず、全員の保護者に説明する。これはもう隠し通せる問題じゃない」

 

俺はなのは達の方を見つめながら言う。

 

「そうだね……」

 

「うん、さすがにこれはどうあがいても無理だね……」

 

「パパとママ……卒倒しなきゃ良いけど……」

 

なのは、フェイト、アリサが苦笑いしている。

 

「……とりあえず、今日の夜だな」

 

「場所はどうする?」

 

「かなりの人数が集まるから」

 

「なら、私の家かアリサちゃんの家はどう?」

 

確かに2人の家ならかなり広い部屋があるな。

 

「……すずかの家は?」

 

「私の家? うん、良いよ。お姉ちゃんも今日は家にいるし」

 

と言うわけですずかの家に集まって貰うこととなった。

 

連絡は母さんに頼む事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母さんに報告したら。

 

「あら、アレスちゃんもうお父さんなんだ♪しょうがないわねぇ……分かったわ。みんなに連絡しておくね」

 

普通ならしょうがないで済まないと思うんだけどね!

 

ちなみに父さんも……。

 

「出来てしまったのは仕方あるまい。お金の心配は大丈夫だ」

 

と言われてしまった。

 

……こんなにあっさりと済むモノだろうか。

 

何かがおかしいと思うのだが。

 

まあ、ひょっとしたら2人ともこうなることを予想していたのかも知れないな。

 

さて、それはそうと。

 

天界に念話を飛ばしてみるか。

 

そうそう、なのは達は特大サイズのベッドの上で子供達の名前を決めていた。

 

気が早い様な気もするが、とりあえずは放置しておこう。

 

……頼むから当て字みたいな漢字の名前だけは勘弁してくれよ。

 

俺はそんな事を思いつつ天界に念話を飛ばす。

 

 

 

 

 

 

〈アレスだけど、聞こえてるか?〉

 

少しすると念話が返ってくる。

 

〈どうした?〉

 

〈いや、何か知らんがなのは達に俺の子供が出来たんだが……〉

 

〈む? ゼルディアから聞いていないのか?〉

 

……何故そこで俺の上司の名が出る?

 

〈いや、何も聞いていないが……〉

 

〈むぅ……。3ヶ月位前にこちらに来てな。君となのは達の関係を元に戻すように指示されたのだ〉

 

〈なん……だと……?〉

 

〈私もさすがに君の許可も得ずにいけないと思ったのだが。ゼルディアは後で君に連絡すると言ってな〉

 

〈何も無かったが〉

 

〈……どうやら忘れていたのか、確信犯なのか〉

 

〈確信犯なら……全殺し(ホームラン)確定だな〉

 

〈そう言えば、別れ際に『アレスなら上手く回避するし、出来たら出来たで面白いだろう』と小声が聞こえたな……〉

 

〈よし、今すぐ俺をそっちに戻せ。そして神界に転送してくれ〉

 

〈うむ……む? 何だと?〉

 

〈どうした?〉

 

〈ゼルディアから伝言だ。君は寿命を迎えるまでこっちに帰ってきてはならないと〉

 

〈っ! 先手を打たれたか!〉

 

その命令を出されてから無理に帰還するとペナルティを喰らう事になる。

 

しかもそのペナルティはランダムだからタチが悪い。

 

何が起こるか分からないのだ。

 

〈……伝えておいてくれ。帰った時はアテナと一緒に『50年特訓コース』だとな!〉

 

〈……了解した。伝えておこう〉

 

とりあえず、念話を切る。

 

ああ、実に楽しみだぜ。ゼルディア様?

 

俺とアテナの全力モードの模擬戦50年間コースだからな!

 

光の軍神と闇の軍神二柱とたっぷり戦えるんだからな!

 

ちなみに、ゼルディア様は戦いは専門じゃないのだ。

 

ったく、以前楽しみにしておいた神酒(ネクタル)を飲み干したからってまだ根に持ってやがるのか。

 

そりゃあ、1000年モノの極上のヤツを全部飲み干した俺も悪いかも知れないが。

 

代わりに500年モノを置いておいたんだがなぁ。

 

500年位待てなかったのかねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

やって来ましたすずかの家。

 

そして、俺は大広間に通される。

 

中にいるのは。

 

まず、なのは関係は高町一家の士郎さん、桃子さん、恭也さん、美由希さんの4名。

 

そして、アリシアとフェイト関係でテスタロッサ一家のプレシア女史、リニス、アルフの3名。

 

はやて関係でハラオウン一家のリンディさん、クロノとエイミィさんの3名。

 

あと、ヴォルケンリッターのリインフォース・アインスとツヴァイ、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラの6名。

 

すずか関係で忍さん、ノエルさん、ファリン嬢の3名。

 

アリサ関係でデビットさんとお母さんのマリアさん2名。

 

わーい、凄い人数が集まった訳ですね。

 

総勢21名ですか?

 

それに俺と父さん、母さんになのは達。

 

30名がこの大広間に集まったと言うわけですか。

 

「直美さんから呼ばれて来たけど……」

 

「このメンツと言うことは結構重要な事みたいね」

 

プレシア女史とリンディさんがニコニコしながら俺の方を見る。

 

「ん~……なのはに子供が出来たとか?」

 

 

 

ビクッ

 

 

 

桃子さん、ニュー○イプよろしく何か感づいたのですか?

 

「……ん~?」

 

忍さんがジロジロと俺の顔を見つめてきている。

 

俺は全員の前で土下座する。

 

 

 

『!?』

 

 

 

全員、驚いている様だ。

 

「俺は士郎さん、桃子さん、プレシアさん、リンディさん、忍さん、デビットさん、マリアさんにどうしても謝らなければならない」

 

「……アレス君?」

 

「……子供を作ってしまいました」

 

 

『!!?』

 

 

全員が更に驚いている。

 

その光景はまさに『驚愕!』と言った雰囲気だ。

 

「……もしや……」

 

「はい、なのは、フェイト、アリシア、アリサ、すずか、はやて……6人です」

 

 

『……』

 

 

空気が凍り付いた様に思える。

 

「ふぅ……いずれアレス君となのはの子供を見るだろうなと思っていたが。こんなに早くとは思わなかったよ」

 

「そうね」

 

士郎さんと桃子さんは互いに顔を見合わせて微笑んでいる。

 

「そう、もう孫の顔を見ることが出来るのね」

 

「そうですね。プレシアさん? 貴女は孫が2人になるのですよ?」

 

「そうよね……でも、アレスちゃんの子供なら可愛いと思うわよ?」

 

「それについては同感ね」

 

プレシア女史とリンディさんも同じように顔を見合わせて微笑んでいる。

 

「パパ、ママ……ごめんなさい……」

 

「良いんだよ。いずれはこうなると思っていた。アリサは後悔しているのか?」

 

「……してないわ。だって、アレスの事……大好きだから」

 

「それなら良いわよ。アリサに後悔はして欲しくないですから」

 

バニングス夫妻とアリサはお互いに見つめ合っている。

 

「参ったわね……すずかに先を越されちゃった」

 

「お姉ちゃん……」

 

「良いのよ。すずかが幸せなら……」

 

忍さんとすずかも見つめ合っている。

 

……そう言えば、結婚云々の話が出ないな。

 

こっちは一夫一婦制だし。

 

もしかして。

 

「母さん? ひょっとして、全員にベルカ自治区の事言った?」

 

「うん、プレシアさんとリンディさんに頼んでおいたわよ」

 

「……了解した」

 

つまり、全員了承済みと言うわけね。

 

子供は(かすがい)とはよく言ったモノだ。

 

ちなみに。

 

 

「もう伯父か……」

「そうか、伯父になるのか……」

 

 

恭也さんとクロノは顎に手を当ててそう呟いている。

 

「アハハ……もう伯母ちゃん……」

 

美由希さんの口から何か魂的なモノが出てるように見えるんだが。

 

目の錯覚と言うことにしておこう。

 

 

 

「アレスちゃんに似たら良いわね!」

「だな! 将来が楽しみだ!」

「親子丼……なんと甘美な響きだ!」

 

 

 

シャマル、シグナム、アインスの順に聞こえる台詞。

 

お前等、一体何を言ってるんだ!

 

俺の子供に毒牙をかけるつもりじゃあるまいな!

 

「へぇ~フェイトとアレスの子供かぁ~」

 

「どうなるか、予想が出来ませんわね」

 

「お父さんに似て可愛くなるのか、お母さんに似てりりしくなるのか……」

 

「ま、どっちにしても楽しみだね」

 

アルフとリニスさんはこんな会話をしている。

 

「すずかお嬢様……羨ましいです」

 

「……お姉様……」

 

羨望の眼差しですずかを見ているノエルさんとその様子を苦笑しながら見ているファリン嬢。

 

そのうちすずかの専属メイドがノエルさんになりそうだ。

 

「それと、もう一つ皆様に報告があります」

 

実体化したエヴァが皆に話しかける。

 

「子供は全員双子です」

 

 

『…………』

 

 

一瞬の沈黙。

 

『え――――っ!』

 

母さんと父さん以外の全員が一斉に驚いていた。

 

そしてこの後、全員に説明するのであった。

 

 

 

 

 

「全員双子って……」

 

「どんだけの確率よ」

 

忍さんと美由希さんが呆れた表情を浮かべている。

 

「……え? 言うことは私は孫が4人?」

 

頬に冷や汗を流しているプレシア女史。

 

「その様ですね……」

 

「滅多に無い体験ですよ?」

 

苦笑しているのはリンディさんと桃子さん。

 

「まあ、私の方が大変なんですけどね…………」

 

「ですよね……孫が12人ですもの」

 

苦笑している母さんとマリアさん。

 

一夫一妻の日本では無理そうだな。

 

こっちの正式な妻はなのはにしておこうかな。

 

ミッドチルダのベルカ自治区なら大丈夫なんだが。

 

 

 

 

 

 

さて。

 

このままだと色々と面倒だから。

 

夏休みにダイオラマ魔法球内で出産して貰うことに。

 

まあ、臨月が近付いたら石田先生がいる海鳴大学病院に入院して貰おうかな。

 

……石田先生、卒倒しなきゃ良いけど。

 

出産費用等は折半と言うことで。

 

当初はウチが出す予定だったが、12人分となるとさすがの母さんも涙目でした。

 

……必ず返すからね、母さん。

 

そんな訳でなのは達の子供出産計画は着々と進んでいくのであった。

 

 

 




 
妹ではなく娘が12人出来ましたw


やったね! 一刀君もびっくりだよ!





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第53話 新たなる命

遅れましたが、新年あけましておめでとうございます!

今年もよろしくお願いします




 

 

 

 

 

夏休みに入ってから10日。

 

明日で11日目である。

 

計算では1日で24日過ぎる計算だから……。

 

11日で264日のハズだ。

 

明日の夕方にでもダイオラマ魔法球から出て貰ってかつてはやてが入院していた海鳴大学病院に入院して貰う予定である。

 

まあ、毎日の様に石田先生の親友の佐久間先生(産婦人科担当)に来て貰って検査をしてもらっている。

 

石田先生と佐久間先生も魔法の話をして驚いていた。

 

そして、6人同時に妊娠でなおかつ全員双子と聞いて卒倒しかけていた。

 

『一生に一度しかない経験だわ……』との事。

 

ちなみに俺も同時に入っていて彼女達の様子をきちんと見ている。

 

中ではかつて使用していた自動人形(オートマタ)を復活させて彼女達の世話を行って貰っている。

 

1人につき3体つけているので何かあったときも安心!と言うわけだ。

 

入るたびに彼女達のお腹は大きくなっていって、父親になる自覚が大きくなる。

 

だが、いきなり子供12人は誰も経験したこと無いだろうな。

 

そうそう、性別を調べてみたら。

 

何と、全員女の子であった。

 

娘12人ですよ!

 

俺に似たら小柄な女の子になりそうだな。

 

そこら辺は生まれてからのお楽しみと言うわけだ。

 

さて、明日の午後は皆にダイオラマ魔法球から出て貰って入院といこうか。

 

 

 

 

 

 

 

あっという間に病院に着いて入院手続きを済ませる。

 

部屋は6人部屋で医師と看護士以外は立ち入り禁止となっている。

 

下手に知り合いに見られた日には大変な事になるからな!

 

看護士達にもなのは達の事は誰にも喋らない様に言ってる……らしい。

 

もっとも、噂好きの女性看護士達の口を封じる事は出来そうに無いなと俺は思っているが。

 

あ~、今もジロジロと俺の方を見てはヒソヒソと会話をしているんだが!

 

まあ、全員モデル級のスタイルだし、それにすずかとアリサは政財界では結構有名っぽいから……。

 

このスキャンダルでバニングス家と月村家に迷惑をかけなきゃいいけど……。

 

デビットさんも忍さんも心配しなくても良いよとは言ってはいるけど。

 

もし、何かあった時は協力を惜しまないつもりではある。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや~、またこの病院に入院するとは思わなかったわ」

 

大きくなったお腹をさすりながらはやては病室を見渡す。

 

「そっか、はやてはずっとお世話になってたね」

 

フェイトも同じように大きくなったお腹をさすっている。

 

「でも、変な感じよね。こっちではまだ11日だっけ? ソレくらいしか経ってないないのよね?」

 

「ああ、まだ夏休みの真っ盛りだぜ」

 

アリサの質問に返答する。

 

「私達の感覚ではもう9ヶ月位は過ぎてるのにね……」

 

「お兄ちゃんのダイオラマ魔法球は凄いね~」

 

すずかとアリシアもベッドの縁に座ってからお腹を撫でている。

 

「にゃはは……それにしても……みんなお腹が大きくなっちゃったね……」

 

なのはは苦笑しながら自分のお腹を見て、それから他の人のお腹を見ている。

 

「……まあ、双子だからな」

 

俺も苦笑せざるを得ない。

 

誰か俺に双子の呪いでもかけたんじゃなかろうかと思うときがある。

 

「ま、何にしてもあとちょっとやな。体重は2人とも3000g超えてるからそろそろ産まれてもええ頃や」

 

「と言うか、ちょっと育ち過ぎたんだけどね」

 

なるほど。

 

まあ、双子で3000gはかなり大きいんだが。

 

それならそろそろ産まれても良い頃合いだな。

 

そうこうしてると保護者達が一斉に部屋に入ってきてから大騒ぎになるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

なのは達が入院してから一週間。

 

8月8日。

 

暑い夏真っ盛りの中。

 

俺が部屋で涼んでいたその時。

 

「アレスちゃん! 病院からなのはちゃん達が産気づいたって!」

 

「何!」

 

俺はすぐに着替えて海鳴大学病院に向かう。

 

 

 

 

 

病院に着くと何故か大手術室前に案内される。

 

分娩室では狭すぎて駄目だから一番広いこの手術室内で出産を行う事にしたそうな。

 

中に臨時の分娩台を作ってとの事。

 

色々と迷惑をおかけします……。

 

保護者達は既に来ていた。

 

どうやら全員一斉に産気づいたらしい。

 

うーむ、言うことは全員同じ日に出来たと言うことか。

 

個人差も何もあったもんじゃないな。

 

病院としては結構パニック状態だな。

 

一斉に6人出産でしかも全員双子。

 

看護士達がてんてこ舞いしている。

 

……何か申し訳ない気持ちが出てくるんだが。

 

「いや~……コレは滅多に見ることが出来ない体験だな……」

 

士郎さんが苦笑している。

 

……聞けば翠屋は臨時で休業したとのこと。

 

「なのはを産んだ時を思い出すわ~」

 

桃子さんはニコニコしている。

 

「そうねぇ……クロノを産んだ時を思い出すわ」

 

「アリシアとフェイトの時もこんな感じだったわ」

 

「アリサ……懐かしいわ」

 

リンディさん、プレシア女史、マリアさんの順で当時を思い出している様だ。

 

実質はフェイトは違うのだが、名目は双子だからこう言っておかないと色々とおかしくなるからな。

 

「そう言えば、こんな感じだったわね……私は当時は小学生だったけど」

 

忍さんは目を細めている。

 

考えてみたら、普通は旦那だけが来てるんだけどね。

 

でも、俺もなのは達も未成年だから致し方ない訳で。

 

普通じゃあり得ないシチュエーションだよな。

 

とりあえず、俺は据え付けのベンチに座って待つことにする。

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくすると赤子の泣き声が聞こえる。

 

しかも、複数。

 

それから5分後に更に複数の泣き声が。

 

すると佐久間先生が大手術室から出てくる。

 

「……もう一生体験することないでしょうね……6人同時出産でしかも全員双子だなんて」

 

疲れ切った表情を浮かべてる佐久間先生。

 

「しばらく処置しますので。お子様は全員大丈夫そうですので2時間後には会えると思います」

 

なるほど。

 

大丈夫なら安心だ。

 

「それでは、もうしばらくお待ち下さい」

 

 

 

 

 

1時間半位経ったら病室に案内される。

 

中に入ると全員が赤子を抱いている。

 

両手に抱きかかえている。

 

実に器用だなと思う。

 

……さすがに全員抱きかかえるのは無理だがな!

 

いきなり子供が12人とか理解の範疇を超えている。

 

ちなみに子供達は皆スヤスヤと寝ている。

 

「みんな、お疲れ様」

 

全員に労う言葉をかける。

 

「あはは、疲れたの」

 

「子供を産むのって……大変やなぁ」

 

「確かに。でもこの痛みは母親になる儀式みたいなモノだし……」

 

「そうよ~? これでみんな晴れてお母さんになったのよ?」

 

母さんが微笑みながらなのは達を見る。

 

……ちなみに俺の母親は身長142㎝で顔はどう見ても小学5年生~中学1年生にしか見えない童顔である。

 

胸が妙にでかいが、子供にしか見えない。

 

そんな外見の母に『お母さんになったのよ~』と言われても何か説得力が少ない気が。

 

もっとも、外見が10歳前後の俺に至っては父親と言われても全員が吹き出すのが関の山であるが。

 

さて、今は出産と言う一大イベントが無事に終わったことを安堵する事にするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う~む」

 

俺は目の前の紙を見つめている。

 

白紙で何も書かれていない。

 

右手にはシャーペンを持ってクルクルと回す。

 

さて、何を悩んでいるのかと言うと。

 

名前である。

 

そう、子供達の名前だ。

 

出生届を書くためである。

 

14日以内に書いて市役所に持っていかないと追加の書類が出て面倒になるのだ。

 

ちなみに、名前が決まってない場合は『未定』と書いて提出することも出来る。

 

ただし……。

 

名前が決まったら『追完届』なるモノを提出しなければならない。

 

面倒であるので早めに決めておいた方が良いだろう。

 

と言ってもポンポンと適当につける訳にもいかない。

 

やはりここは一生モノの名前であるからキチンと考えてあげないと。

 

……12人いっぺんは辛いモノがあるが。

 

「お兄様? いっぺんに考えても良い名前は浮かびませんよ?」

 

「確かにエヴァの言うとおりだよなぁ。まあ、大まかな方向性だけでも考えてみるか」

 

「方向性……ですか?」

 

「ああ。なのは、はやて、すずかは和風の名前だから子供は和風の名前にして。フェイト、アリシア、アリサは洋風の名前だから洋風で」

 

「なるほど」

 

「で、そこから更に絞って……う~む」

 

絞ったところでそう簡単に名前が浮かぶわけでもなかった。

 

「そう言えば、一文字名前って結構和風ですよね?」

 

「ああ、確かに。……その線でちょっと考えてみるか」

 

俺は思い浮かぶ名前の候補を紙に書いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

なのはの子供……『(さくら)』『春華(はるか)

 

すずかの子供……『(あおい)』『(らん)

 

はやての子供……『(ゆい)』『初唯(うい)

 

 

 

 

 

まあ、こんな感じに決まった。

 

どっかで聞いた事あるような名前に聞こえるが、それは多分気のせいだろう。

 

さて、次はフェイト、アリシア、アリサの子供達だが。

 

 

 

 

 

 

 

フェイトの子供……『レイア』『エリス』

 

アリシアの子供……『マリア』『ソフィア』

 

アリサの子供………『ヴェスタ』『ミネルバ』

 

 

 

 

 

……まあ、コレもツッコミどころ満載の名前が多いが。

 

ちなみにアリシアの子供のマリアとソフィアは俺の前世の前世の時のご先祖様の仲間の名前から拝借させて貰った。

 

アリサの母さんもマリアだが、まあ大丈夫だろう。

 

これがまた困った事に二つ名持ちだったのだ。

 

暗黒魔女(ダークネス・ウイッチ)マリア』と『疾風の槍使い(ウインド・ランサー)ソフィア』だ。

 

どんな容姿と性格だったのかは読者諸兄の皆様の想像に任せるぜ。

 

さて、とりあえず名前は決まったから後はなのは達の了承を得られる事を祈るとするか。

 

 

 

 

 

 

 

後日、病院に行ってなのは達の様子を見る。

 

母子共に健康で1週間以内に退院出来るとのこと。

 

そしてなのは達に名前を告げると全員了承してくれた。

 

子供達がちょうど全員起きていたので俺は子供達の顔を見る。

 

……全員、雰囲気がそれぞれの母親にそっくりだ。

 

コレは全員母親似と言うことであろう。

 

別に俺に似なくても問題は全くない。

 

ただ、全員俺と同じ右目が蒼い瞳のオッドアイなのだ。

 

左目はそれぞれの母親とそっくりなのだが。

 

俺の浄眼の能力まで遺伝してないだろうな。

 

そこら辺は大きくなるまで分からないが。

 

彼女達には平穏な人生が訪れますように……。

 

そして俺は出産届を市役所に提出するのであった。

 

もちろん、桃子さんやプレシア女史、リンディさんに忍さん、マリアさんを連れて行ってだが。

 

さすがに俺が提出するわけにいかない。

 

出産届を受け取った担当の人は引きつった顔をしていたのは印象深かった。

 

まあ、12人分まとめてだからな。

 

しかも双子ばっかりだし。

 

こうしてなのは達の子供は無事に戸籍を得ることが出来たのであった。

 

……父親の名前は無いのだが。

 

 

 




やったね! 娘が12人だよ!


妹が12人増えるより凄い事じゃなかろうか……?


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第54話 産後の肥立ち?

前回と今回は短いので連続投稿です


 

 

 

 

 

 

子供が生まれて約1ヶ月。

 

激動の夏休みであったと伝えておこう。

 

子供達は全員俺の家で育てる事となり。

 

なのは達保護者を巻き込んでの育児となったのである。

 

保護者以外にも面倒を見てくれる人は沢山いるわけで。

 

とりあえずは何とかなった訳である。

 

ちなみに。

 

エリオとキャロは12人の子供を見て目を丸くして。

 

ティアナ、ギンガ、スバルの3名は羨望の眼差しでなのは達を見ていた。

 

……これ以上は勘弁してください。

 

そんな訳で俺達は何食わぬ顔でいつもの通りに学校に通うこととなった。

 

多分、誰も俺達の関係には気付いていない……と思いたい。

 

そうそう、学校の校長先生だけには真実を伝えておいた。

 

盛大に顔を引きつらせ、挙げ句の果てには『聞かなかった事にしておきます』との事。

 

暴露した日には色々と大変な事になるからな。

 

主に校長の首が立場的に吹っ飛ぶかも。

 

そりゃそうだろ、俺1人で6人と子供を作ったからな。

 

他の保護者達の耳に入ろうモノなら俺を退学処分にさせろと言うだろう。

 

だが、そこはアリサとすずかの実家の力を使って校長は聞かなかったことに。

 

……心労がたたって倒れないことを祈っておくよ。

 

 

 

 

 

 

 

「もう、みんなして失礼やな!」

 

「そうだよ、1ヶ月会わなかっただけで……」

 

「『太った?』だなんて!」

 

はやて、フェイト、アリサの順で口を開く。

 

「にゃはは……」

 

「でも、言われてみると……」

 

「ちょっと太ったかも?」

 

なのは、すずか、アリシアの3名は腹の肉をつまんでいた。

 

おいおい、授乳最中に危ないぞ。

 

まあ、ここは俺の部屋でなのは達は子供に母乳を与えているのだ。

 

……双子だから両方の乳で与えている姿はまさに壮観な眺めと言うか。

 

ちなみに。

 

全員、胸が一サイズ大きくなったとの事。

 

あれか、妊娠した影響だろう。

 

母乳が溢れてくるとか言っていたが、もはや大人の漫画の世界だな。

 

子供達はずっと吸っている。

 

……補乳瓶の出番が無いんだが。

 

買ってからまだ一回も使ってない。

 

彼女達の胸の大きさ通り、母乳生産量が半端ない様だ。

 

……はやて。

 

『パパも飲んでみる~?』

 

邪悪な笑みを浮かべながら俺の方を見るんじゃない。

 

先に子供が満腹になるらしい。

 

恐ろしいことに彼女達は俺に母乳を飲めと。

 

それはシャレにならんだろ!

 

特殊プレイ過ぎて俺のレベルではきついです。

 

 

 

 

 

……言いたくないが、彼女達の母乳はほんのり甘かったと報告はするが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

子供達はお昼寝の時間。

 

全員グッスリとお休みである。

 

赤子は寝るのがお仕事ですからね。

 

ちなみに赤子専用の部屋もあってベビーベッドが12台置いてある。

 

実に壮観な眺めだと思う。

 

監視する人……人と言うか、ダイオラマ魔法球でお世話していた自動人形を出して子供達を見て貰っている。

 

何かあったときはコレで安心!

 

とりあえず、俺達はつかの間の休息と言うわけだ。

 

「う~ん……」

 

「コレはいけないわね……」

 

はやてとアリサは自分のお腹……脇腹をつまみながら唸っている。

 

ぶっちゃけ言うと。

 

彼女達はちょっぴり太ってしまったのだ。

 

俺に言わせればまだ誤差範囲だと思うのだが。

 

確か、なのは達の体重は……。

 

 

 

 

 

なのは = 58kg

フェイト= 61kg

はやて = 55kg

アリサ = 58kg

すずか = 56kg

アリシア= 62kg

 

 

 

 

 

だったな、確か。

 

だが、子供が生まれてからは……。

 

 

 

 

 

 

なのは = 68kg

フェイト= 72kg

はやて = 65kg

アリサ = 69kg

すずか = 67kg

アリシア= 74kg

 

 

 

 

 

 

……まあ、大体10kg前後は増えていると言うことだ。

 

どうやってなのは達の体重を知ることが出来たのか?だって?

 

彼女達のデバイスがこっそりと会話を記録しているのだ。

 

それをエヴァがまとめて聞いて俺に報告してくるのだ。

 

知られたら袋叩きにされそうな気がしないでもないが。

 

数字で見るとエラい数字ではあるが、彼女達の身長も考慮してもらいたい。

 

全員170㎝超えであると言うことを。

 

それでもムッチリとした感じではあるが。

 

これ以上はさすがの俺も困るが、今の状態ではそこまで気にならないと思うが。

 

だが、彼女達は納得してない模様。

 

「ねぇ、アレス君?」

 

なのはは俺の方を向く。

 

「ん?」

 

「何か方法無いかな?」

 

「痩せる方法か?」

 

「うん。リバウンドしない方向で」

 

「それなら食事制限は駄目だな。強いて言えば、炭水化物を控え目にするまでで」

 

「なるほど」

 

「ほうほう」

 

はやてとアリサが食いついてくる。

 

「身体の筋肉を多くすれば消費カロリーが増える。そうすれば自ずと脂肪も減ってくる」

 

「確かにそれは理に適ってるね」

 

「と言うわけで、一番効果的なのは筋トレとなる」

 

「筋トレか~」

 

「運動もせずゴロゴロして痩せたいとかそんな甘い話は無いな」

 

「だよね~」

 

「けど、結構育児に時間取られるから筋トレとかの時間は取りづらいかも……」

 

「そんな時にはコレだ」

 

「指輪?」

 

アリシアが小首を傾げている。

 

「重力負荷をかけられる魔法が付与されている」

 

「あ、アレス君が常にしてるヤツ?」

 

「……つまり、亀の甲羅を背負うヤツね?」

 

間違ってはいないな。

 

「ああ、コレで日常生活で負荷をかけて筋肉アップ。そうすれば消費カロリーが増えて脂肪も減ってくる」

 

「食事制限よりも一番健康的な方法ね」

 

「そう言うこと。全員分あるぞ」

 

俺はポケットから指輪を6つ取り出す。

 

「えへへ……」

 

「プレゼントだ♪」

 

全員は笑みを浮かべながら指輪を取る。

 

そして迷いなく左手の薬指に装着する。

 

……あのね?

 

それ付けて学校行ったら騒ぎになるよ?

 

「騒ぎになるからその指以外にしてくれ」

 

 

『はーい』

 

 

全員、『仕方ないなぁ~』と言いたげな表情で指輪を付け替えるのであった。

 

「っと、どれくらいの重力にする? 10Gか?」

 

「全員潰れるわよ!」

 

 

「だよな~なのはなら68kgが680kgに、フェイトなら72kgが720kgに、はやてなら65kgが650kgに、アリサなら69kgが690kgに、すずかなら67kgが670kgに、アリシアなら74kgが740kgになるもんな~」

 

 

 

ピシリ

 

 

 

ん? 何か部屋の空気が20℃位下がったような?

 

 

 

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

 

 

 

全員が目を細めて俺の方を見つめてくる。

 

……ヲヲッ!

 

うっかり体重を言ってしまったぜ!

 

「アレス君?」

 

「私達の耳がおかしゅうなったんかな?」

 

「今、凄いことを聞いたような気がするんだけど?」

 

「何で……私達の体重を知ってるのかな?」

 

「これはちょっといけない行為だよ?」

 

「……アンタ、今夜は眠れない夜になるわよ?」

 

わーい、全員の目が据わってます。

 

それと、目のハイライトが消えてる様に見えるのは俺の目の錯覚でしょうか?

 

……これは非常にやばいと思われる。

 

「お兄様~? ちょっと聞きたい事が……」

 

エヴァが扉を開けてヒョイっと顔を覗かせる。

 

 

『……』

 

 

全員が一斉にエヴァの方を見る。

 

「ひぃ!」

 

顔を青ざめさせてエヴァは即座に扉を閉めて逃げ出す。

 

「乙女の秘密を知ってしまった悪い子にはお仕置きやな?」

 

「そうね、コレは万死に値する行為ね?」

 

はやてとアリサの口が三日月の様に弧を描いている。

 

どう見ても死亡フラグです。本当にありがとうございました!

 

ジリジリと間合いを詰めてくるなのは達。

 

「……スクランブルダーッシュ!!!」

 

俺は部屋から脱出しようとドアノブをつかもうとする。

 

しかし、浮遊感を感じてドアノブに手が届かなくなった。

 

「駄目だよ? お兄ちゃん?」

 

背後から聞こえるアリシアの声。

 

俺は振り返る事が出来なかった。

 

体中から冷や汗が流れ出てくる。

 

襟首を捕まれて俺は宙ぶらりん状態だ。

 

「アレス君?」

 

「これから……」

 

「たっぷりと……」

 

「可愛がってあげるね?」

 

「ノォォォォォォ―――――――――!!?」

 

部屋に俺の叫び声がこだまする……。

 

その日、俺と顔を合わせた人は全員こう尋ねてきた。

 

 

『エラい痩せたけど、何があった?』

 

 




 
乙女に年齢と体重の話は厳禁ですw


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第55話 修学旅行〈中学校編〉前編

なぁんてこったい!

気が付いたら3月でした

ネットで小説見てると……

いつの間にか寝落ちしているという罠w

しかし、ネットで人気が出ると本になるなんて昔ではあり得なかった話ですね


……

うらやましい(ボソ)



 

 

 

 

 

ふぅ。

 

女の子に体重の話は禁句と言うことを思い知らされたぜ。

 

あの後は……。

 

思い出したくない。

 

簡潔に述べたら……搾り取られたとだけ言っておこうか。

 

さて、明日は修学旅行である。

 

普通は中学2年生でやるハズなのだが、ウチは何故か3年生で行うのだ。

 

まあ、私立聖祥大学付属高等学校にエスカレーター式に上がるからほとんど受験勉強は無いと言っても良いだろう。

 

ネギま!でも3年生になってから修学旅行に行ってたし。

 

それは良いが、体育祭の準備の最中に行くのは結構凄いと思うのだが。

 

と言っても11月に開催だから準備期間は結構あるが。

 

そして文化祭が3学期にやると言う妙な仕様ではあるが。

 

あの寒い時期に文化祭って……。

 

まあ、ツッコミは入れないでおこうか。

 

 

 

 

 

 

修学旅行当日。

 

俺は例によってなのは、アリサ、すずか、はやて、フェイト、アリシアの6人と一緒の班となった。

 

もはやご都合主義としか言いようがないが、なってしまったのはしょうがない。

 

そうそう、今年の担任は横島先生だ。

 

小学校からいつの間にか中学に上がってきていたのだ。

 

毎朝、絡みつくような視線を俺に送ってきているが、もう慣れてしまった。

 

さて、小学校時は広島だったが今回は……京都・奈良である。

 

定番中の定番である。

 

 

 

 

 

 

 

無事に京都に到着!

 

新幹線内ではそれなりに楽しませて貰ったが、それは割愛させてもらう。

 

そしてやって来たのは、高い舞台でおなじみの清水寺だ。

 

……前世の時に来たんだがな。

 

そう言えば、あの時は夕映がこの寺の説明していたな。

 

久しぶりにアレをやってみるか。

 

俺は心の中でほくそ笑む。

 

 

 

 

 

 

 

「高いねー」

 

「飛び降りたら痛そう」

 

「痛そうで済むとは思えないけど……」

 

なのは達は下を眺めている。

 

 

 

『ここが清水寺の本堂、いわゆる清水の舞台ですね』

 

 

 

「ん?」

「何処かで聞いたことあるような……」

 

 

 

はやてとすずかが首をあげて反応する。

 

俺は更に続ける。

 

 

 

『本来は本尊の観音様に能や踊りを楽しんでもらう為の装置であり国宝に指定されています』

 

 

 

「ん~?」

「アレス君?」

 

 

アリサとなのはが俺の方に振り返る。

 

 

 

『有名な【清水の舞台から飛び降りたつもりで……】の言葉通り江戸時代実際に234件もの飛び降り事件が記録されていますが』

 

 

 

「……お兄ちゃん?」

「その声は……」

 

アリシアとフェイトが目を丸くして俺の方を見ている。

 

 

 

『生存率は85%と意外に高く……』

 

 

 

「なあ、アレス君?」

 

はやてが苦笑しながら俺に問いかけてくる。

 

 

『どうされましたか?』

 

 

「……その声、夕映ちゃんそっくりなんだけど」

 

すずかが驚いた顔で俺の方を見つめてくる。

 

 

『そうですか。そっくりですか』

 

 

「……似すぎて怖いわ!」

 

「そうか、それは良かった」

 

「良くないわよ! ホントに夕映がいるのかと思ったじゃない!」

 

「ねぇ? ひょっとして……あたし達の声も真似出来るの?」

 

アリシアが少したじろぎながら俺の方を見ている。

 

「ん? 出来るぞ?」

 

「マジ出来るんかいな!」

 

『はやてちゃん? 少し、頭冷やそうか?』

 

俺はなのはの声で喋る。

 

「ひぃ!」

 

顔を真っ青にするはやて。

 

「……なのはそっくり……」

 

「にゃはは……凄い変な感じなの……」

 

苦笑しているなのは。

 

『なのは? 今夜は裸で一緒に寝よ?』

 

「ふぇ!? フェイトちゃん!? それはちょっと……」

 

「わ、私じゃないよ!?」

 

顔を赤くするなのはとフェイト。

 

「アンタねぇ……」

 

額に青筋を立ててるアリサ。

 

『アリサちゃん、お風呂で洗いっこしようね?』

 

「すずか? さすがにこの歳で洗いっこは……」

 

「私じゃないよ!?」

 

「お兄ちゃん、やりたい放題だね……」

 

アリシアは苦笑している。

 

 

 

 

『我らは神の代理人。神罰の地上代行者。我が使命は我が神に逆らう愚者を、その肉の最後の一片までも絶滅すること――――

 Amen(エィィィィィィィメェン)!!!』

 

 

 

 

「恐っ!」

 

「それは恐いよアレス君!」

 

若本ヴォイスを再現したら不評でした。

 

「駄目か?」

 

「駄目に決まってるやろ! アレス君のその可愛い外観で若本ヴォイスとか……ロリカードの声がお譲さん位の反則やわ!」

 

確かにアレは何とも言い難かったな。

 

いや、アレはアレでありかも知れないが。

 

「そうか、なら仕方ないな」

 

「にしても、アンタの声帯はどうなってるのかしらねぇ?」

 

「気にするな」

 

「7色の声どころの騒ぎじゃないと思うけど……」

 

ちなみに周りの人はあまり気付いていない模様。

 

「そう言えば、アレス君の声って……鋼の錬金術師のエドワードに似てるよね?」

 

「……まあな」

 

「……んん?」

 

「言うことは……」

 

はやて、すずかがアリサの方を見る。

 

「な、何よ?」

 

「アリサちゃん、アルフォンスの声が真似出来たわよね?」

 

……そう言えば、中の人的には同じ人だったよな。

 

 

 

『兄さん、ほら落ち着いてよ~』

『誰が豆粒ドチビだぁ!』

 

 

 

アリサがアルの真似して俺はエドの真似をする。

 

「そっくりやー!」

 

「わぁ!」

 

「……ほら、物まねしてると置いて行かれるぞ」

 

気が付くと周りの人達は移動を始めているのであった。

 

 

 

 

 

「いらっしゃ~い」

 

「どうぞここへ~」

 

俺の目の前にいるのは全裸のなのはとはやて。

 

そして俺が今いるのは……修学旅行で泊まっている旅館の女湯である。

 

風呂に行こうとしたらいきなり袋を被され、連行されて服をあっという間に脱がされて放り込まれたらここだった。

 

俺を連行した犯人はアリシアとフェイトだった。

 

あのね? それって誘拐に近いよ?

 

「……まあ、良いけどさ」

 

もはや達観するしかなかった。

 

「ほらほら、身体を洗ってあげるから♪」

 

なのはに抱きかかえられて俺はそのまま椅子に座らされる。

 

同級生達の視線がバシバシと突き刺さるんだが。

 

「さ、今日も綺麗にしてあげるね~♪」

 

「キレイキレイや♪」

 

そう言ってなのはとはやての両名は手に石鹸を泡立てる。

 

「……ん?」

 

妙な違和感を感じる。

 

いつもなら身体を洗うスポンジを手に持ってるハズなのだが。

 

「ふんふ~ん」

 

「今日もアレス君の肌はスベスベやな♪」

 

なのは、はやての両名は両手で俺の身体を洗い始める。

 

スポンジ無しで撫でる様に……。

 

「……スポンジは?」

 

「ん~? たまには手でええやろ?」

 

「そうそう♪」

 

まあ、良いけどさ。

 

俺は反論する気も無く2人に身体を洗って貰う。

 

 

 

むにゅ

 

 

 

背中に柔らかい感触が2つ。

 

その柔らかい感触は背中をゆっくりと擦るように……。

 

「……なのはさん?」

 

俺は何となく妙な予感を感じるので聞いてみる事にする。

 

「ん? どうしたの?」

 

「背中に凄く柔らかいモノが当たってるんですが?」

 

「ん~? 胸だよ? アレス君がいつも揉んでくれてる胸だよ?」

 

余計な言葉も混じってるんですが。

 

「……周りの視線が凄いんだけど」

 

「気にしない気にしない♪」

 

俺が気にするんですが!

 

背中をまんべんなく洗うなのは。

 

そして目の前のはやては丹念に俺の男性専用アームドデバイスを洗っている。

 

困った事になのはのせいで硬度が10になってしまっている。

 

「うふふふ、いつも世話になってるからなぁ♪たっぷりと洗わんと♪」

 

はやての台詞で周りの女子達がざわざわと騒ぎ始めている。

 

「……はやて?」

 

「ん? どうしたんや?」

 

「……周りを見てみろ」

 

「ん?」

 

周りには目を輝かせている同級生達(♀)の姿が。

 

「はやて?」

 

「ちょっと聞かせて貰おうかな?」

 

「とうとうアレス君食べちゃったんだ?」

 

「あ、コレは……その……」

 

冷や汗をかいているはやて。

 

 

「連行!」

「ひゃあぁぁぁぁぁ!」

 

 

はやてはあっという間に連れ去られていった。

 

「にゃはは、はやてちゃんったら……」

 

苦笑してると思われるなのは。

 

シャワーを身体にかけてくる。

 

「なのは?」

 

「ん?」

 

「なのはもアレス君食べたんだって?」

 

「にゃ!?」

 

「はやてから聞いたわよ?」

 

「さあ、聞かせて貰うわよ?」

 

「にゃあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

なのはも連行されていった。

 

「……さて、髪を洗うか」

 

俺は何事も無かったかの様にシャンプーを探す。

 

「アレス君♪」

 

「ほら、髪を洗ってあげるわよ!」

 

アリサとすずかがやって来た。

 

「……ハイ」

 

俺は動きを止めて大人しく椅子に座ることにする。

 

右側にアリサ、左側にすずか。

 

2人は身体を密着させながら俺の頭をワシャワシャと洗う。

 

両腕の上腕部に柔らかい感触が……。

 

「かゆい所は無い?」

 

「あったら言いなさいよ?優しくかいてあげるから」

 

「……特にありません」

 

俺は言われるがままにすずかとアリサの両名に頭を洗って貰う。

 

いや、もう、やってることが後宮並みなんだがな。

 

「はい、目をつむってね~」

 

「シャワーをかけるわよ」

 

シャワーをかけてもらう。

 

その間も優しく頭を洗って貰う。

 

……最近、自分で身体を洗った記憶が無いんだが。

 

……読者諸兄に刺されなければ良いが。

 

「ふぅ」

 

「アリサ」

 

「すずか」

 

 

「ん?」

「ん?」

 

 

「2人もアレス君食べたんだって?」

 

「な、なな、何の事かしら?」

 

「し、知らないよ?」

 

同級生に問われてどもりまくるアリサとすずか。

 

「……連行!」

 

「ちょっと! 放しなさいよー!」

 

「いやぁぁぁぁ!」

 

アリサとすずかは連行されていってしまった。

 

「……とりあえずリンスだな」

 

ちらっと見るとなのはとはやては同級生達に囲まれていた。

 

……子供の事まで暴露しないことを祈る。

 

俺はそんな事を思いつつ頭にリンスをかけるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「さて……と」

 

俺は湯船に向かう。

 

「お兄ちゃん」

 

「アレス~」

 

声の方に首を向けるとアリシアとフェイトが並んで湯船に浸かっていた。

 

頭にタオルを乗せて肩まで浸かっている。

 

少し顔が赤くなっているが、さっき浸かったばかりと思われる。

 

「お兄ちゃんはここだよ~」

 

「アレスはここ」

 

2人は間が空いている所を指さす。

 

そこに座れと申すか。

 

「……うむ」

 

断る事は不可能なので俺は2人の元に向かう。

 

湯船に浸かり、2人の間に座る。

 

2人はくっついて来る。

 

腕に柔らかい感触が走る。

 

 

「……」

「……」

「……」

 

 

無言で風呂に浸かる。

 

右側にアリシア、左側にフェイト。

 

2人は俺の手を取ってから軽く握ってくる。

 

「……柔らかいね」

 

「うん」

 

2人はそんな事を言ってくる。

 

「それに……小さくて可愛いね」

 

「うん」

 

まあ、若干だが2人の方が手は大きいのだ。

 

身長180㎝超えと135㎝だから仕方ないのだが。

 

 

「でもこっちは大きくて逞しいよね♪」

 

 

アリシアは右手を俺の股間に回す。

 

俺の男性専用アームドデバイスを握る。

 

「うふふ、握りがいがある太さだよね♪」

 

「うん、これで中をかき回されたらすぐだね」

 

「おいおい、そんな事したら風呂から出られなくなるだろ」

 

「大丈夫だよ、アレスのそれならみんな虜になるから」

 

「ならなくて良いよ!」

 

下手したら通報されそうで恐いんだが。

 

まあ、見た目は10歳位にしか見えないから大丈夫だと思うんだが。

 

……もう15歳なんですがね。

 

「なるほど……アリシアさんとフェイトさんもアレス君を頂いたと……」

 

後ろから声が聞こえる。

 

俺は後ろを見る。

 

見ると黒髪のショートボブみたいな感じの髪型の少女が立っていた。

 

……つーか、前を隠せよ。

 

少女は一糸まとわぬ姿……全裸で身体には何も身につけていない状態で立っている。

 

「……(あや)か」

 

面倒なヤツが来てしまった。

 

彼女の名は射名丸(しゃめいまる)(あや)

 

某幻想郷にいる鴉天狗と同姓同名であるが、違う人物である。

 

外見は酷似しているが。

 

将来は新聞記者で売れる新聞を作りたいとか言っていたな。

 

「……サウナはあっちだぞ」

 

俺はサウナ室を指さす。

 

「あやややや、つれないですねぇ~。6人の少女に食べられたアレス君?」

 

「……何の話だ?」

 

「この期に及んでまだしらばっくれるのですか? もう言質は取っているのですよ?」

 

文が指さす先にはなのは、はやて、アリサ、すずかの姿が。

 

……何故に顔を赤くして両手を頬に当てて『いやん♪』と言いそうな雰囲気で話をしているんだ?

 

「……さて、身体も暖まったことだし」

 

「そうだね」

 

「風呂上がりの牛乳は美味いよ?」

 

俺とアリシア、フェイトは立ち上がろうとする。

 

「逃がしませんよ?」

 

前に回り込む文。

 

……結構なスタイルですな。

 

なのは達と比べるのは酷だが、それなりのスタイルである。

 

「なるほど、コレが皆さんを虜にした逸物ですか」

 

文はそう言ってジロジロと俺の股間を見ている。

 

「そんなに観察するんじゃない」

 

「何をそんなに恥ずかしがっているのですか?私も興味があって色々とネットで見させて頂いたのですが。これはかなりの一品かと思いますよ?」

 

そう言って文は俺の男性専用アームドデバイスを握ってくる。

 

「この硬さと太さは……!なるほど、硬いけどこの握った時の微妙なしなやかさが良いですね」

 

文は俺の男性専用アームドデバイスを軽く握って感触を確かめている。

 

「……端から見ると女子高生が男子小学生に性的な悪戯をしているようにしか見えんと思うが」

 

……文の手も柔らかくて暖かいな。

 

「分かる?」

 

「この硬さと形が良いんだよ?」

 

アリシアとフェイト。そこで話を合わせるんじゃない。

 

「……なるほど。確かにこの先端部の傘は……。これは凄そうです」

 

ゴクリと生唾を飲む文。

 

「……とりあえず、なのは達6人と身体を重ねたのは事実だ」

 

「なるほど。で、誰が一番良かったですか?」

 

「ノーコメント」

 

これ以上は地雷を踏み抜く恐れがあるから喋るのを止めておく。

 

「これ以上は駄目ですか。しょうがないですね~」

 

文は立ち上がる。

 

「そうそう、なのはさん達に飽きたらいつでも言って下さいね? アレス君を狙ってる人は沢山いますから♪」

 

「……世話になることは無いから安心しろ」

 

全く、どんだけ少年偏愛者(ショタコン)がいるんだよ、このクラスには。

 

ひょっとしたら違うクラスにもいるかも知れないな。

 

俺はそんな事を思いつつアリシアとフェイトと共に風呂を上がる。

 

ちなみに、今夜は何とか自分の班の部屋で無事に寝ることが出来たことを報告しよう。

 

 




アレス君はいつも通り

なのは達もいつも通りw

ちなみに文は幻想郷の文と全く関係はありません

同姓同名で外見も似てるだけです



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第56話 修学旅行〈中学校編〉後編

 
修学旅行と言えばやはり……


 

 

 

 

「当たらない!」

 

「にゃあぁ! 何なのぉ!?」

 

俺となのはは戦っていた。

 

何と戦っているのか……だって?

 

4年前に戦った鹿・グレートである。

 

以前戦った時より一回り大きくなっている。

 

〈4年前の屈辱を返すぞ!〉

 

しかも念話魔法を修得してるときたもんだ。

 

俺となのは達と一緒に歩いていたら、結界に覆われて俺となのはだけ取り残されてしまったのだ。

 

何故なのはだけ取り残されたのかは分からないが。

 

理由は後だ。

 

今は、この目の前の鹿を撃退するのが先決だ。

 

〈お兄様、目の前の鹿・グレートの解析が終わりました!〉

 

〈そうか!〉

 

〈名前が『鹿グレート・改』になってます! それと結果は以前戦った時より全ての能力が3倍近く強化されています! ただ、素早さだけ9倍です!〉

 

〈『鹿グレート・改』? 何者かがヤツを改造したと言うのか……? まあいい。速度特化か!フェイトよりも上回っているな、コレは!〉

 

動きが某モンハンのキリンに似ているが、あれの倍以上タチが悪いな!

 

残像を残して移動とか、質量を持った残像とか!

 

しかも、避けるだけではない。

 

ヤツの足下にはミッドチルダ式魔法陣が展開されて魔法弾が発射されているのだ!

 

しかも結構上手いときたもんだ。

 

だが、俺に当てるにはまだまだだがな!

 

俺は両手に持った剣で魔法弾を切り裂いている。

 

なのはもレイハさんではじいたり、シールドで防いでいる。

 

「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック 闇の精霊二百五十五柱。集い来りて敵を射て。『魔法の射手・連弾・闇の255矢』」

 

指先から発射される闇の矢。

 

一斉に鹿グレート・改に向かう。

 

しかし、鹿・グレートはそれを難なくと避ける。

 

もはやどこぞのF91とかああいうヤツにしか見えない。

 

「にゃあぁぁぁぁ! フェイトちゃんより速いよ!」

 

なのはもアクセルシューターを放つがそれすらも避ける。

 

 

〈その程度の速さで我に勝てると思ってるのか! 大人しく我の一撃で……死 ぬ が 良 い !〉

 

 

「ふざけるな! 貴様こそ二度と出てこない様にきっちり叩きのめしてやる!」

 

こういったものの、この状態では千日手状態である。

 

接近戦で叩き斬ってやろうと思ったが、俺の今の状態では攻撃を当てるのが難しい。

 

身体に負荷をかけている重力魔法を解除するのに少し時間がかかる状態になっているのだ。

 

今度から簡単に解除する様にしとかないとないけないな!

 

「にゃあ! このままじゃジリ貧だよ! 何か手は無いの!?」

 

「鹿グレート・改……使いたくは無かったが」

 

俺はジロリと鹿グレート・改を見る。

 

〈何をするか……無駄な事を〉

 

俺は身体に魔力を纏わせる。

 

「アレス……君?」

 

「なのは……耐えろよ?」

 

「う、うん……」

 

なのはは身構える。

 

 

 

 

「きらめき高校・演劇部奥義……! 『脱力漫才』!!」

 

 

 

 

俺は今から喋る言葉に魔力を込める。

 

いわゆる言霊に近い物があるが、これから喋る言葉はあんな高尚なモノでは無いとだけ言っておこう。

 

 

 

 

 

 

『土管が爆発、どかーん!』

 

 

『母艦が爆発、ぼかーん!』

 

 

『ちわー、東京ガスでがす!』

 

 

『猫が……ねころんだ!』

 

 

『ネギを……値切った!』

 

 

 

 

 

 

……。

 

 

…………。

 

 

 

その時、空間が凍り付いた様な感覚に陥る。

 

よし! 衰えてはいないな!

 

後ろを見るとなのはは呆然としている。

 

鹿グレート・改を見ると凍った様に動きが止まっている。

 

「隙ありだぁぁぁ! 天使滅殺(エンジェルバスター)!」

 

〈なんだとぉ!? うぐおぅ!?〉

 

左手から発射される闇の光線が鹿グレート・改に直撃する。

 

「……はっ!?」

 

なのはが復帰したようだ。

 

「もう! 何言ってるのよアレス君!」

 

なのははそう言ってレイハさんで俺の頭を容赦なく殴ってくる。

 

パカンと言う音が周囲に鳴り響く。

 

「いくら俺が頑丈と言っても殴るのはどうかと思うんだが?」

 

「アレス君のせいなの! お陰で身体が凍るかと思ったの!」

 

本来なら凍ってもおかしくないのだが、なのはの耐魔力が高かったお陰だろう。

 

鹿グレート・改の方を見る。

 

煙が晴れて来る。

 

直撃が効いたのであろう、足が少し震えている。

 

〈くっ、今のは効いたぞ……!〉

 

怒りに震えているのかも知れないな。

 

「よし、もういっちょ!」

 

「駄目なの! 今度聞いたら凍死するの!」

 

そう言ってなのははまた俺の頭をレイハさんで殴ってくる。

 

今度は『ゴスッ』と響く。

 

「ならどうしろと……」

 

「……」

 

なのはは俺の目をジッと見つめてくる。

 

わずかに上の方を見る。

 

……この合図は、『バインドで固定してスターライトブレイカーで葬るの』と言うヤツである。

 

やれやれ、上手く誘導してやるとするか。

 

俺は武器を無くして徒手空拳モードに切り替える。

 

「……闇の玉(ダークボール)!」

 

両手から連続で闇の玉を発射する。

 

どこぞの戦闘民族の王子みたいに連続発射だ。

 

鹿グレート・改は弾を避ける。

 

よし、さっきよりも素早さは落ちているな。

 

〈無駄だ! 先ほどは油断したが、この程度の速さでこの我に……〉

 

鹿グレート・改は弾を避け続ける。

 

そして。

 

〈!?〉

 

鹿グレート・改の足全てに桃色のリングが装着される。

 

〈バインド!?〉

 

「もう一丁!」

 

俺は更にバインドを鹿グレート・改にかける。

 

同じように黒い色のリングが鹿グレート・改の4本の足にかかる。

 

「なのはぁ!」

 

「うん! 全力……全壊!スターライトブレイカー!」

 

【スターライトブレイカー】

 

レイハさんの前に集まる桃色の魔力光。

 

一瞬の溜めの後、一気に放出される。

 

その瞬間。

 

俺の目に閃光がほとばしる。

 

「っ!」

 

俺は即座に目をつむる。

 

ちなみに目の前には魔力の盾を展開している。

 

轟音が周囲に響く。

 

常々思うのだが、何か……撃つたびに威力が上がってきている様な気がするんだが。

 

アレで非殺傷か……。

 

そりゃ、管理局で『人間アルカンシェル』とあだ名が付くわな。

 

俺の中では『人間波動砲』だがね!

 

煙が晴れて来る。

 

一応、非殺傷だから消滅することは無い……ハズなのだが。

 

っと、ちゃんと生き残っていた。

 

どう見ても満身創痍と言うヤツなんだが。

 

足は生まれたての子鹿の様にプルプルと震えて、身体には血が流れている。

 

〈おのれ……!〉

 

だが、ヤツの目は今も燃えている。

 

アレを喰らって心が折れないのは褒めてやろう。

 

「もう、その身体では戦えないだろう。諦めて山に帰るんだな」

 

〈くそ! ここは撤退するしかないか……! 今度会った時が貴様の最期の時だ!〉

 

鹿グレート・改の足下に広がる魔法陣。

 

コレは……転移魔法陣!?

 

鹿グレート・改はあっという間に転移して逃げ出してしまった。

 

「……逃げちゃったね」

 

「……ああ」

 

隣になのはが降りてくる。

 

「にゃはは、よっぽど恨みがあったのかな?」

 

「……だろうな」

 

何とも言えない気分になったが、ヤツは明らかに殺意を持っていた。

 

さすがにむざむざと殺される訳にはいかない。

 

今度会った時……か。

 

会うとしたら、3年後だろうな。

 

 

 

 

 

結界が解けてなのは以外の5人と合流する。

 

聞けば全員違う生物に襲われたとの事。

 

アリシアとフェイトが『ハブロード・改』でアリサ、はやて、すずかが『キラーヒグマ・改』との事。

 

色々とツッコミを入れたいが、何者かがこの世界に送り込んできたのだろうか。

 

しかも、ご丁寧に名前の後ろに『改』と付いている。

 

何者かが奴らを改造した……と言うことだろう。

 

生物を改造……?

 

俺の頭に1人の人物が浮かぶ。

 

『ジェイル・スカリエッティ』

 

何か、あいつならやりそうな気がする。

 

もう原作から乖離しているからどんなイレギュラーがあるか予測も出来ない。

 

ひょっとしたらまだ捕まっていない転生者共の可能性もある。

 

そうそう、この世界には『ときめきメモリアル』は存在する。

 

誰かがスカリエッティに入れ知恵して……と言う可能性も考慮する必要がある。

 

何にせよ、少し注意した方が良いかも知れないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま~」

 

家に帰宅する。

 

あの後は何事もなく過ごす。

 

特に目立ったことは無かったので割愛させて貰う。

 

「お帰りなさい、お兄ちゃん♪」

 

「お帰り、お兄ちゃん♪」

 

藍色髪の少女と栗色髪の少女が出迎えに来る。

 

ティアナとスバルである。

 

どうやら遊びに来ていた様だ。

 

「お、お帰りなさいアレスさん」

 

「お帰りです」

 

後ろに現れたのはエリオとキャロ。

 

どうやら2人も来ていた様だ。

 

「おお、来ていたのか。どうしたんだ、今日は?」

 

俺は部屋に帰る。

 

ティアナ達も一緒に部屋に入る。

 

「えっと。アレスさんの子供を見たくて」

 

なるほど。

 

エリオとキャロは隣だから結構ウチに来て見ているが、ティアナとスバルはしょっちゅう来ている訳ではないのだ。

 

鍛錬はミッドチルダで行っているが。

 

ちなみにギンガは学校が忙しいので滅多に来ることが出来ない。

 

「まあ、今は寝てばかりだからな。もうちょっと大きくなったら楽しくなると思うんだが……」

 

言っても12人だからシャレにならんと思うんだが。

 

「ねーねー、アレスお兄ちゃん?」

 

スバルが俺の顔を見つめてくる。

 

「ん?」

 

「私もお兄ちゃんの子供欲しいなぁ~?」

 

「……」

 

この娘はいきなり何を抜かすのだろうか。

 

「何言ってるのよ、スバル。年上の私から先に決まってるでしょ?」

 

ティアナがスバルをたしなめる。

 

コレって、たしなめるに該当するのか?

 

そもそも……だ。君達は何歳になるのかね?

 

「……お前達、今年で何歳になる?」

 

俺はスバル、ティアナ両名を見つめる。

 

「んっと、12……歳?」

 

「私は11歳♪」

 

「両人とも却下だ!」

 

小学生と子供作りとかもはやシャレにもなんにもならん。

 

「え~?」

 

「駄目なの~? こないだ何か血が出てきたから父さんに聞いたら大人になった証拠だって……」

 

ゲンヤさん、ご愁傷様と言っておきましょうか。

 

「え、スバル早いね。私はこないだ血が出てきたから義父さんに聞いたんだけど……」

 

……レジアスのおっさんがテンパって娘さんのオーリスさんに相談している姿が見えたんだが。

 

血が出てきた事を知ってるって事は、子供作りの事も知ってる事だろう。

 

誰が教えたのか……はやて辺りが怪しいが。

 

「兎に角。2人の年齢で子供は早い」

 

「じゃあ。なのはさん達の年齢になったら良いのね?」

 

にっこりと満面の笑みで俺の顔を見つめるティアナ。

 

「じゃあ、あと3年後だね♪」

 

馬鹿野郎、3年後って言ったらStS編に……引っかからないな。

 

確か、数えで19歳の頃の話だし。

 

大丈夫と言えば大丈夫なのだが。

 

畜生!14歳で子供作った前例のせいで断れないじゃないか!

 

やっぱり神界に帰った時はゼルディア様特訓100年コースに延長だ!

 

「……好きにしてくれ……」

 

断りたかったが、スバルとティアナ両人の目を見て諦めるしか無かった。

 

何故なら、なのは達みたいに凶化しかねない勢いだったから。

 

ちなみに。

 

 

「エリオ君♪私もこんな子供欲しいなぁ♪」

「ええっと……」

 

 

キャロが俺の子供達を見つめている。

 

エリオが救いを求める視線を俺に向けてきたが、それどころではなかった。

 

 

 

 

 

 

『お話は聞きました! 来年はアレスさんの子供を作れると!』

 

部屋で休憩していたら何故かギンガからのこんな通話が。

 

「色々とツッコミを入れたいが、何故に来年?」

 

『え? 14歳になったらアレスさんと子供作りが出来るとスバルから聞きましたが?』

 

とりあえず、あの娘は今度会った時にお仕置きをせねばなるまいて。

 

「……ギンガは良いのか? 俺には見ての通り嫁が6人いるんだぞ?」

 

『問題ありません! ベルカ自治区は一夫多妻制です! 友達にもお母さんが複数いる人もいます!』

 

鼻息荒いギンガの姿を見てもはや諦めるしか無かった。

 

「……そうか。まあ、来年の話だからな」

 

来年の俺に丸投げすることにした。

 

頑張れ、来年の俺。

 

「ちなみに、ゲンヤさんは?」

 

『お父さんは問題無いと言ってます』

 

止められなかったのね、ゲンヤさん。

 

俺は心の中で手を合わせる事にした。

 

あ~、マッチョ神の部下をボコボコにしてぇ。

 

俺はそんな事を思いつつギンガと会話をするのであった。

 

 

 




 
脱力漫才ではホントにこんな感じのダジャレを言いますw

個人的に一番気に入ってる奥義ではありますが




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IF…なお話 その2

 
本日はエイプリルフールなのでw




 

 

 

 

 

「う~む」

 

「どうされました? お兄様?」

 

俺は自室のベッドの上であぐらをかいて座っている。

 

そして、腕を組んで考え事をしている。

 

そこへエヴァがやってくる。

 

おっと、状況を言ってなかったな。

 

俺は今年で30歳を迎えた。

 

そして今は夏休み。

 

なのは達は久しぶりの休みで家族サービスで出掛けている。

 

俺の分身体が連れてな!

 

さて、ソレは良いとして。

 

娘達は今年の8月で15歳を迎えたのだ。

 

俺が15歳の時の子供、15年経ったから15歳なのは当たり前だよな。

 

娘達の名前を言っておこうか。

 

 

 

なのはとの子が『(さくら)

 

フェイトとの子が『ディアナ』

 

アリシアとの子が『ミネルバ』

 

アリサとの子が『レア』

 

すずかとの子が『(あおい)

 

はやてとの子が『(らん)

 

 

 

そして、妹に当たる娘が。

 

 

 

ギンガとの子が『スターシア』

 

ティアナとの子が『レナ』

 

スバルとの子が『サーシャ』

 

 

 

 

ん? 双子じゃないのかって?

 

何の話だ? それは平行世界の俺の事じゃないのか?

 

話が少しずれたな。

 

スターシアはなのは達の娘より2つ下の13歳。

 

レナは3つ下の12歳。

 

サーシャが4つ下の11歳。

 

……まあ、ぶっちゃけ言うとギンガ、ティアナ、スバルがそれぞれ14歳の時の子である。

 

……色々あったんだ、察してくれ。

 

まあ、なのは達の娘はすくすくと育って……。

 

母親とそっくりになったがな!

 

身長も体型も全く同じになってるんだが!

 

唯一、右目だけが俺と同じ蒼色なだけで目をつむったら見た目では全く母親と区別がつかない!

 

授業参観でも騒ぎになったものだ……。

 

まあ、病気もなく元気に育ったのは良い事だ。

 

問題は。

 

娘達は母親に似て思春期だと言う事だ。

 

悪く言えば変態淑女……と言う事だ。

 

しかも、少年偏愛(ショタコン)もしっかり受け継いでいる。

 

 

 

『パパのお嫁さんになりたい♪』

『パパの子供が欲しい♪』

 

 

 

この台詞でどれだけ恐ろしいことになってるか想像も出来るだろう。

 

近親相姦とかもはやシャレにならん!

 

そんなのはギリシャ神話だけで沢山だ!

 

……俺の名は某軍神と同じだが、関係は無いぞ?

 

着実に俺の寝床に入ってくる娘達。

 

こないだは……。

 

なのは達と入れ替わって。

 

ご丁寧に右目にカラーコンタクトを入れて色を誤魔化し。

 

全裸で待機していると言う始末。

 

……危うく娘と肉体関係を結ぶところだった。

 

見た目では全く気付かなかった。

 

決め手は気と魔力の波長と言うか、量と言うか。

 

さすがにそこは全く同じではなく全員微妙に違っているのだ。

 

微妙すぎて危うく見逃す所だったがな!

 

違和感を感じて問いつめたら娘達のボロが出て母親と入れ替わってる事が判明したのだ。

 

娘達のがっかり具合と言ったら。

 

……そんな訳で。

 

そのうち実力行使されたら敵わないので。

 

何とか解決策を考えているのだが。

 

「いい手が浮かばない」

 

「娘さん達の事ですか?もう諦めてしまっては……」

 

「恐ろしい事言うなよ……さすがに近親相姦がばれたら俺の立場が……」

 

俺はその光景を思い浮かべて背筋が凍る。

 

「手っ取り早いのは誰かを紹介すれば良いのだが……」

 

「……それは厳しいのでは?皆さん、お兄様みたいな小柄な子が好みですし」

 

そうなのだ。

 

俺の知り合いに俺みたいなショタっ子は存在しないのだ。

 

いたらとっくに紹介してる訳だ。

 

「ふぅむ、この世界はエターナル・ショタはごく僅かにしか存在しないのかもな」

 

「そもそも、お兄様みたいに成長しない方が珍しいですわよ?」

 

そりゃそうだ。

 

今年で30歳を迎えたが、なのは達と旅行に行って1人行動を取ると必ず迷子扱いされるからな。

 

ちなみに身分証明書を見せると全員が顎が外れんばかりに大口を開けて驚くが。

 

……身長135㎝なめんなよ。

 

「となると。神界の方から連れてくるか」

 

こうなったら俺かアテナ姉さんの配下にいる天使を1人……人じゃないから1体の方が良いのか?

 

まあ、1人にしとくか。

 

兎に角、1人こっちに転生させるか。

 

と言っても、ほとんどが元々は人間だったから前世の姿になる。

 

そして俺みたいに小柄でどう見ても子供にしか見えなかったヤツと言えば……。

 

俺は頭の中に思い浮かべる。

 

黒い髪でぱっちりした目でちょこんとした小鼻と小さな口。

 

ややたれ目で見るからに気弱そうな雰囲気が漂う顔。

 

目の色は右目はやや緑色で左目は黒のオッドアイ。

 

俺と同じ位の童顔で10~12歳位にしか見えない。

 

「そんな方がおられるのですか?」

 

「……ああ、いる」

 

俺が生まれてから1000年位先の未来で生まれた少年。

 

和也(かずや)虹村(にじむら)和也だ」

 

「……初めて聞きます。どういった方で?」

 

「そうだな。俺の1000年位先の子孫の旦那だ」

 

「1000年先の?ええっと……」

 

「美奈子の旦那だ」

 

「ああ、美奈子さんの。思い出しました!ちょっとたれ目のくりくりした目の可愛い方でしたね」

 

「そう、その俺と似た感じの子だ」

 

言っててなんだが、俺はややつり目で和也はたれ目である。

 

イメージ的にはエヴァンゲリオンの碇シンジを更に気弱に、そして童顔にさせた感じ……と言えば分かりやすいだろう。

 

「でも、お兄様よりは背が高かったかと」

 

俺が和也に唯一負けてたのは背である。

 

和也は155㎝、俺は135㎝であったのだ。

 

と言っても、和也の嫁である美奈子は身長が195㎝と某左肩の後ろに星形の痣がある一族(ジョースター家)の男性と同じ身長なのだ。

 

身長差40㎝!

 

そして、美奈子は自分では認めてはいないがショタの疑惑があったり。

 

俺みたいなやんちゃ小僧より和也みたいな気弱な子供タイプの方が好み……らしい。

 

……俺の子孫って一体。

 

「ま、この世界に来る時は俺と同じ135㎝にする予定だが?」

 

「……鬼ですね、お兄様」

 

「やるなら完璧にしないとな。下手に俺に矛先が向いても困る」

 

と言う訳で。

 

神界に念話を飛ばしてみる。

 

 

 

 

 

 

 

〈ゼルディア様、聞こえるか?〉

 

〈その声は……アレスか?〉

 

頭に響く透き通った女性の声。

 

俺の上司にあたる女神、ゼルディア様だ。

 

〈唐突だが。和也と美奈子はいるか?〉

 

〈む? ……うむ、任務から帰って今は休暇中だな〉

 

〈なら話は早い。和也をこっちの世界に転生させてくれ〉

 

〈何故だ?〉

 

俺は今の現状を説明する。

 

 

 

 

 

 

 

〈ふむ、別にアレスが嫁にしても大丈夫だろ〉

 

〈大丈夫じゃねぇよ〉

 

全く、神族って言うのはこう言うところが無頓着なんだからな。

 

〈私的にはアレスが嫁にした方が面白いのだが……〉

 

〈最近、ゼルディア様って身体がなまってるだろ?〉

 

〈……む?〉

 

〈大丈夫だ、俺とアテナ姉さんが引き締まった身体にしてやるよ。500年コースで〉

 

〈うむ! すぐ呼んでくるぞ!〉

 

初めからそうすれば良いのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

〈呼ばれましたか、アレス様?〉

 

〈アタシまで呼ぶ理由が分からないんだけど……?〉

 

数分すると2人の声が聞こえる。

 

〈休暇中に悪いな。美奈子、和也を70年位貸してくれ〉

 

〈は?〉

 

〈単刀直入に言うと。こっちにいる俺の娘達の旦那にしたいんだ〉

 

〈へ?〉

 

〈ぶっちゃけて言うと。俺の娘は全員少年偏愛(ショタコン)だからそれに見合った人物が欲しかったと〉

 

〈……アレス様。何をやってるんですか〉

 

美奈子の呆れた声が聞こえる。

 

〈元凶はこの世界に転生者共を送ったボケナスに言ってくれ。この世界はショタが多いんだ〉

 

〈……分かりました、分かりましたよ! 和也は貸しますよ!〉

 

〈あれ? 僕の意見は?〉

 

〈……和也? 残念だが君の意見は自動的に却下されるんだよ?〉

 

〈酷いです! アレス様!〉

 

〈と言うか、何でアタシにわざわざこんな事を?〉

 

〈だって。真・魔竜神剣の血糊になりたくないから……〉

 

真・魔竜神剣とは美奈子が持つ竜と神を殺す概念を持つ剣である。

 

さすがの俺でもその剣で斬られたらシャレにならんのだ。

 

これで美奈子の言質は取った。

 

後は、和也とこっちに転生させるだけである。

 

 

 

 

 

 

 

その後、和也を娘達に紹介する。

 

娘達は1週間断食させた虎のごとく食い付いてきた。

 

「アレスさん! こんなに娘がいるなんて聞いてないですよ!?」

 

「言ってないからな」

 

「酷いです!」

 

 

 

「涙目になった和也ちゃん可愛い!」

「パパありがとー!」

 

 

 

和也は娘達にあっという間に連行されていった。

 

俺は和也に満面の笑みでサムズアップしておいた。

 

 

 

 

 

 

 

そして、初孫の顔を拝む事となった。

 

30歳で初孫とかもはや……。

 

9人の孫を眺める。

 

またしても全員女の子。

 

呪いか!

 

兎に角。

 

この孫達はショタで無いことを祈るとしようか。

 

孫達に幸あれ。

 

 




 
エイプリルフール関係無いだろと言う意見は却下しますw


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第57話 知っていながら……

 
当初の題名は『確信犯』でしたが、実際にはそう言う罪名は無いらしいのでw

あと、かなり遅れてすまないと言うか。



 

 

 

 

 

更に時は流れて。

 

高校1年生になりました。

 

本来ならばもう管理局に入局しているのですが。

 

万が一の事を考えて高校を卒業しておく事にしたのです。

 

ちなみに高校は私立聖祥大学付属高等学校。

 

エスカレーター式に進学しました。

 

一応は試験もあるが、そこまで酷い点数でもない限り落ちる事は無いそうな。

 

もっとも、入学してからがキツいとは思うが。

 

当然の事ながらなのは達とはクラスは同じになりました。

 

中学の時もずっと同じクラス。

 

どうやら高校になっても同じクラスになるだろう。

 

多分、裏から圧力がかかってるのかも知れないが。

 

まあ、そこら辺の事情はどうでも良いがな。

 

ただ、男女比率が男2の女8と言う割合なんだが。

 

ぶっちゃけ言うとアリサとすずかの男性恐怖症は9割方は改善はしている。

 

もっとも、マッチョ神みたいな風貌だとさすがに後ずさりするが。

 

※身長2mで丸坊主の眉毛無しは一般の人でも後ずさりします。

 

そして、担任は横島鳴子(なるこ)先生。

 

そう、小中学時代に色んな意味で世話になった変態淑女のあの先生だ。

 

聞けば俺の姿見たくてわざわざ高校の教員免許を取ったそうな。

 

何を考えてるんだか。

 

 

 

 

 

「うふふふ、高校になればもう肉体関係を結んでも大丈夫でしょ?」

 

「大丈夫じゃない、問題だ」

 

 

 

この台詞で彼女の残念っぷりがよく分かるであろう。

 

もっとも、彼女の同僚の美神麗子先生と氷室(きぬ)先生も一緒に配属しているのでとりあえずは大丈夫なのだが。

 

波乱に満ちた高校生活になりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

「すまねぇな……押しつける様な形になって」

 

「良いな~……お姉ちゃん……」

 

目の前にはゲンヤさんと妹のスバル。

 

今いるのは海鳴市内のとある喫茶店。

 

と言うか、翠屋なんだが。

 

そして俺の右隣には嬉しそうに俺に腕を絡めてくるギンガ。

 

頬を真っ赤にして『いやん♪』と言いそうな雰囲気。

 

左隣には母さん。

 

「良いですよ。1人増えても2人増えても一緒ですから♪」

 

いや、結構重要な問題でしょ?

 

はい、何が増えたのかと言いますと。

 

 

 

 

2ヶ月前、ギンガに(性的に)食べられる。

ギンガ、懐妊。

双子と発覚。

ゲンヤさんに報告←今ココ

 

 

 

 

 

……。

 

子供が増えたんですよ!

 

しかもまた双子とか!

 

「でも、こんなに早く孫の顔を見る事が出来るのも良いかもしれねぇな」

 

「そうですよ? 私なんか12人の孫がいますからね♪」

 

まあ、なのは達の子は今年の8月で満1歳を迎える。

 

……我が家は毎日が保育園状態なんだが。

 

それはさておき。

 

また例によってダイオラマ魔法球で過ごして貰うことにするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏休み。

 

そして8月の中旬。

 

そうそう、ギンガの子は無事に産まれました。

 

またしても8日と言う……。

 

容姿はギンガそっくりで右目は俺と同じ蒼の瞳。

 

名前は『スターシア』と『サーシャ』。

 

……別に16万8000光年の彼方にある星の女王様と関係は無いぞ?

 

ちょっと名前を借りただけだ。

 

来年はティアナの可能性が高いんだが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん~……何か身体に違和感を感じるんよね~」

 

はやてが唐突にそんな事を言いだした。

 

「……また子供が出来たとか言うんじゃないだろうな」

 

「いややわ~、それとは違うんよ。でも、アレス君との子供なら5人でもええで?」

 

ニヤリと口元をつり上げるはやて。

 

「……それだと総勢30人の子供になるんだが」

 

「良いじゃない。子沢山で。今は少子高齢化の時代だから子供が多いのは喜ばれるのよ?」

 

アリサさん? それはちょっと違うと思うんだが?

 

「でも、はやての言ってる事はなんとなく分かるかな」

 

フェイトもそんな事を言っている。

 

「にゃはは、みんなも? 私も最近は食べる量が凄く増えた様な気がするんだよね……」

 

少し顔を赤くするなのは。

 

そうなのだ。全員大きめの茶碗3杯は食べている。

 

それでも身体は太る気配は無い。

 

それはどういう事なのか?

 

犯人(?)は全員が身につけている重力魔法が付与されている指輪である。

 

身体に負荷をかけて筋肉量が増えている。

 

それを維持する為に食事の量が増えているのだ。

 

それゆえ、彼女達の身体には無駄な肉……脂肪が無い状態である。

 

どういう事かと言うと。

 

腹が6つに分かれている。

 

腕と足の筋肉がムキムキ状態。

 

いわゆる、ボディビルダー状態。

 

ただ、胸の脂肪はキチンとついてるのが摩訶不思議な事だが。

 

そして、彼女達はそれに気付いていない。

 

何故なら、俺が彼女達のデバイスに指示して幻覚魔法で普通の状態になってると見せているのだから。

 

本来なら先に教えておく事があったのだ。

 

それは筋肉操作。

 

空手とかに伝わる『コツカケ』とかああいう技である。

 

一番わかりやすいのは某世紀末救世主の様に怒りで服が破れる様な感じだ。

 

ちなみに俺は既に修得しているので身体は普通の子供みたいな感じである。

 

本来ならムキムキマッチョ状態なんだがな。

 

何故彼女達にソレを教えていないのか……?

 

だって……。

 

 

 

 

 

お も し ろ そ う じ ゃ な い か !

 

 

 

 

 

 

彼女達の目には胸が大きくて腰はくびれてお尻は大きい所謂モデル体型に見える。

 

しかし、俺の目にはムキムキのマッチョ状態に見える。

 

彼女達の驚く顔が目に浮かぶと言うモノだ。

 

「ああ、それはそうだろう。だって、身体の筋肉が増えてるからソレを維持しようと食べる量が増えたんだからな」

 

「そうなの?」

 

アリシアが驚いた顔で俺の方を見る。

 

「気にならなかったか? 重力で負荷がかかってるんだ。本来なら……」

 

俺はTシャツを脱いで上半身裸になる。

 

「ん?」

 

全員が不思議そうな顔で俺の身体を見つめてくる。

 

「こんな身体になってるんだぜ?」

 

俺は本来の身体に戻す。

 

筋肉が発達してムキムキの状態になる。

 

「どわっ!」

 

「わわっ!」

 

「ちょ!」

 

「凄い!」

 

イメージ的にはホントにマッチョ状態である。

 

でも、どちらかと言えば細めではあるが。

 

「わ~……」

 

すずかが興味津々で俺の身体を見つめてくる。

 

そして腹の方をつついてくる。

 

「柔らかい……」

 

「力を入れるとガチガチになるぞ?」

 

「ほほぉ? アレス君の男性専用アームドデバイス並みになるのかな?」

 

「……多分」

 

はやてからのツッコミは適当に答えておく。

 

「ちょっと待ちなさい。その言い草だと……あたし達の身体も……」

 

アリサの頬が引きつっている。

 

「想像通りだぞ、アリサ?」

 

俺は右手で指をパチンと鳴らす。

 

「ああ!」

 

「そ、そんな!」

 

「こ、これは!」

 

全員、自分の身体を見て驚いている。

 

腕とか足は筋肉質になっているから。

 

「細マッチョになったのー!」

 

なのはは着ているTシャツを脱いで下着姿になる。

 

「ムキムキや! こんなん女らしゅうないで!」

 

そんな事を言いつつはやては何故かボディビルのポーズ、モストマスキュラーを決めている。

 

そして似合っているんだが。

 

「良かったな~? ダイエットに成功してるぞ?」

 

「確かに脂肪はとれたけど! コレじゃ行き過ぎよ!」

 

顔を真っ赤にしているアリサ。

 

「健康的じゃないか」

 

「そりゃ、確かにガリガリに痩せるよりは健康的だけど……」

 

「さすがにコレは方向性が違うような……」

 

アリシアとフェイトはお互いの身体を見ながら言ってくる。

 

「それよりも」

 

「アンタ……普通の身体からいきなりマッチョになったわよね?」

 

「言うことは……」

 

「本当ならそっちの方法が先だったんじゃ……」

 

「ご名答♪」

 

俺は満面の笑みでなのは達を見る。

 

「……」

 

「……私刑」

 

「フェイトちゃん? アリシアちゃん? サンドイッチね?」

 

「うん♪」

 

「お兄ちゃんにお仕置き♪」

 

邪悪な笑みで俺に近付いてくるフェイトとアリシア。

 

「……弁護士を呼べ!」

 

「そんなのは呼ばないよ~?」

 

「さすがにコレは駄目だよ?」

 

俺はフェイトとアリシアの胸に顔を挟まれると言うお仕置きを受けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は下着を買いに行くで!」

 

「は?」

 

惨劇から3日後の事。

 

あの後俺は全員に物理的にたっぷりと搾りとられた。

 

毎度の事ではあるがな!

 

それから筋肉操作を教えて彼女達はすぐにマスターした。

 

まあ、気を操れるならすぐ覚える事が出来るからな。

 

そんな訳で彼女達の体型は子供を産む前と全く変わらない体型となったのだ。

 

「まあ、最近は忙しかったし。そろそろ下着が寿命なんよ」

 

そう言ってブラジャーを見せてくるはやて。

 

「わざわざ見せんでも」

 

見ると色々な箇所がほつれている。

 

見た感じちぎれそうである。

 

確かにこの中で一番小さいはやてでもEカップなのだから仕方ないと言えば仕方ないのか。

 

「と言うか。わざわざ俺を連れて行く必要性が……」

 

「何を言ってるのかしら?」

 

「未来の旦那様に選んで貰うんだよ?」

 

「やっぱりお兄ちゃんにも選んで貰わないと!」

 

アリサ、フェイト、アリシアが次々と口を開く。

 

と言うか、ランジェリーショップに行くのは気が引けるんだが。

 

……まあ、良いか。

 

俺の容姿ならまだマシと言うモノ。

 

下手に190㎝位のイケメンだったら恥ずかしい以外の何者でもないからな!

 

と言うわけで。

 

俺はなのは達の買い物につき合うこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

と言うわけでやって来たのは市内にあるランジェリーショップ。

 

名前は……『リリス』。

 

結構有名らしい。

 

もっとも、男である俺が知るよしもないが。

 

大きめの店舗で……下手なショッピングセンターより大きいんだが。

 

そして、若い女性客が今もぞろぞろと入っている。

 

男性客は皆無だ。

 

俺はアリシアとフェイトと一緒に手をつないでいる状態だ。

 

女性の大半は俺達の方を見て『ぎょっ』と言いたげな顔でチラチラと見てくる。

 

まあ、一番低いはやてで170㎝なのだからおして知るべし。

 

……ある意味問題なのは……。

 

なのは達の服装だろうか。

 

全員、暑いと言うことでTシャツにホットパンツと言う……。

 

あのね?

 

君達のスタイルでソレは兵器に近いんだよ?

 

アリシアとフェイトは3Lサイズで他はLLサイズのTシャツ。

 

それでも胸の部分は盛り上がってピッチリとしている。

 

ホットパンツに至っては……。

 

エロい。

 

ソレしか言いようが無い。

 

ちなみに俺もTシャツに半ズボン……はっきり言って小学生スタイルである。

 

くそ!

 

これでも16歳なんだぞこんにゃろ!

 

「やっぱり多いね~」

 

「だね~」

 

「にゃはは、仕方無いよ。今日は『ピクシー』の『Ed(えど)ブランド』の新作が出るらしいし……」

 

んん?

 

何やら聞いたことがあるような名が。

 

俺は店の入り口を見る。

 

そこには『ピクシーEdブランド新作入荷!』とチラシが貼ってある。

 

「ピクシー?」

 

「アレス君は知らないよね。有名な下着メーカーだよ?」

 

……マジか。

 

そう言えば、漫画の『甘い生活』は見てないな。

 

甘い生活とは下着の話なのだ。

 

詳しいのはググって見たら早いだろう。

 

「少し高いけど、気持ち良いんだよね」

 

「そうそう。アレス君に揉んで貰うのと同じ位にね♪」

 

こんな所でそんな暴露話はやめて貰おうか。

 

「でも、私等の胸に合うサイズを探すのは骨が折れるんよね……」

 

「……だね」

 

「……うん」

 

少し雰囲気が暗くなるなのはとフェイトとはやて。

 

「そうよ! 大体アンタがあたし達の胸を生で揉むからこんなに大きくなったんだからね!」

 

アリサ! 天下の往来でそんな事を言うんじゃない!

 

周りの女性客達が興味津々で俺の方を見てるじゃないか!

 

「嘘……あんな幼気(いたいけ)な可愛い子に胸を揉ませるなんて……!」

 

「けしからんね……」

 

「でも、あの胸……」

 

「あの胸の1割でも分けてくれたら……」

 

「お金払うから揉んでくれないかな……」

 

何か次から次に怪しげな台詞が聞こえてきますよ?

 

「……中に入ろうか?」

 

「……うむ」

 

俺達は急いで店の中に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

中に入ったら服独特の匂いと女性の化粧、香水の匂いで一杯でした。

 

まあ、女性客しかいないから当たり前なんだがな!

 

年齢層も結構幅広い。

 

女子高生っぽい人から40代後半の人まで。

 

「やっぱりあっち側は多いね~」

 

すずかが集まっている人たちの方を見る。

 

ちなみに俺達の周りは人は少ない。

 

何故なら、ここは大きいサイズのコーナーなのだから。

 

Fカップ以上が置いてあるコーナーなのだ。

 

Eカップのはやては少し離れた所で物色している。

 

……Jカップのアリシアのブラもちゃんとあるのが凄いんだが。

 

「やっぱりEdブランドは凄いね! あたしのサイズもちゃんと設定があるんだから!」

 

「そうだね」

 

嬉しそうな笑みを浮かべてブラを手に取るアリシアとフェイト。

 

うん、ブラの大きさがおかしいね。

 

まあ、2人とも胸にスイカを入れてる様な感じだから仕方ないんだが。

 

小玉ではなく大玉に近いがな。

 

ふと周りを見ると。

 

羨望の眼差しで俺達を見る女性客の姿が。

 

……胸はやや小振り。

 

心の中で頑張ってくださいと呟いておいた。

 

 

 

 

 

 

「なーなー」

 

「ん?」

 

気が付いたらはやてがこっちに来ていた。

 

「聞くところによるとデザイナーさんが来とるらしいで?」

 

「デザイナー?」

 

「えっと……確か江戸伸介やったかな?」

 

「……なるほど」

 

記憶が確かなら『神の手(ゴッドハンド)』を持つ男……だったかな。

 

女性に触れるだけで気持ち良くさせると言う……ある意味女性にとっては最悪の相性だな。

 

……コレにミシャグジ様の能力(漫画・『御石神落とし』を参照)を追加したらもはや女性では100%勝てぬな!

 

「何やら下着のフィッティングをやってくれるとか……」

 

「つまり、興味があると」

 

「そう言うことや。アレス君も一緒に来てぇな」

 

「何故に」

 

「正しい下着の付け方は重要やろ? それに、たまにはアレス君に着けて貰うのも……」

 

「……分かった分かった」

 

拒否のしようが無いので俺ははやてに付いて行く。

 

 

 

 

 

 

 

女性客が列を作って並んでいる。

 

それなりの人数だな。

 

俺達はその最後尾に並ぶ。

 

ちなみに俺はアリシアとフェイトに両手を繋がれている。

 

気分は捕らえられた宇宙人(グレイ)の様だ。

 

そして目の前にいる女性達はチラリチラリとこちらの様子を窺っている。

 

まあ、俺以外全員背は高いし。

 

特にアリシアとフェイトなんかそこら辺の女性より頭一つ高いし。

 

スタイルはエラい事になってるし。

 

窺いたくもなるわな。

 

そして後ろには誰も並ばない……。

 

さすがにこのメンツの後に並ぶ勇気は持っていないようだ。

 

 

 

 

 

 

 

時折、女性の喘ぎ声みたいな声が聞こえるが。

 

俺はあえて聞こえないふりをしている。

 

彼の能力なら朝飯前の事だから。

 

そして、先頭に並ぶはやての番だ。

 

「ほら、一緒に入ろ」

 

俺ははやてに引っ張られてカーテンをくぐる。

 

中に入ると黒髪でかなり若く見える男性と金髪で前髪に癖がある女性と黒髪の女性がいた。

 

「……えっと?」

 

男性は困惑した顔を浮かべている。

 

「あ、すんまへんな~この子は彼氏や♪」

 

ストレートな返答だった。

 

後ろで金髪の女性と黒髪の女性は『ぶっ!』と吹いていた。

 

「は、はあ……」

 

困惑気味の男性。

 

「連れて来た理由はプロの下着のフィッテングを見て貰おうと思って」

 

「そ、そうですか……」

 

更に困惑している男性。

 

彼の後ろの方では何やらヒソヒソ話しをしている女性2人の姿が。

 

 

「……どう見ても小学生よね?」

「アレってどうなのよ? どう見ても大人の女性がそこら辺の小学生を攫ったとしか思えないわよ?」

「……少年偏愛(ショタコン)ね」

「何よそれ」

少女偏愛(ロリコン)って知ってる?要はそれの性別を入れ替えたバージョンよ」

「……世の中広いわね」

 

 

 

そんな会話が俺の耳に入ってくる。

 

まあ、確かにどう見てもそうなるわな。

 

「あ、それと後ろに控えている5人は友人なんで一緒に入ってもろうてええですか?」

 

「え? それは構いませんが……」

 

「入ってええよ~」

 

はやてが声をかけるとなのは達は一斉に入ってくる。

 

「嘘!」

 

「いつぞやのスーパーモデル並みじゃない!」

 

驚きの声を上げる2人の女性達。

 

「あ、すいません……押し掛ける様な形になって」

 

すずかが断りの声をかける。

 

「い、いえ……」

 

男性はたじろいでいた。

 

「それで……脱いだ方が良いですか?」

 

見るとフェイトは既にシャツと短パンを脱いで下着姿になっている。

 

早いな。

 

「……何よアレ。スーパーモデルと立花 小夜を足して2で割った様なスタイルは」

 

何やら怨嗟の声に聞こえるんだが。

 

「と言うか。全員あり得ないスタイルなんだけど」

 

気が付いたらなのは達は全員下着姿になっていた。

 

「……」

 

見ると男性は何やらプルプルと震えている。

 

……ひょっとして、あの発作かな?

 

「凄い!」

 

いきなりはやての胸を揉み出す男性。

 

「あ、こら!」

 

「発作が!?」

 

付き添いの女性2人も驚いて男性を止めようとする。

 

「お? おお? アレス君と一緒やな♪」

 

はやては後ろに手を組んで胸をはっている。

 

「凄いですね! キチンと大きさを把握して着こなしています!」

 

「……大して感じていない?」

 

「……と言うより、慣れてる?」

 

唖然とした表情で様子を見ている付き添いの女性2人。

 

「やっぱりアレス君と一緒?」

 

「そうやな。甲乙付けがたいって感じやな」

 

「なるほど……」

 

「強いて言えば、アレス君の方が手は温かいかな?」

 

「冬場限定ならアレスの方が上なのね」

 

「す、凄い……」

 

「江戸さんの手であそこまで揉まれてそこまで冷静でいられるなんて……」

 

「う~ん、ここまできっちりされてるともう言うことが無いですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん」

 

顎に手を当てて考え込んでる伸介さん。

 

あの後俺達は自己紹介をしていた。

 

金髪の女性が若宮弓香さんで黒髪の女性が河野美也さん。

 

2人とも本来の仕事ではないが、伸介さんの付き添いが多いそうだ。

 

「どうかされたのですか?」

 

俺は尋ねてみる。

 

「ああ、彼女達なんだけど……1回子供を産んでないかな?」

 

さすがと言うか。触っただけで分かるのか!

 

「え……」

 

「コラ!」

 

そう言って伸介さんの頭をスリッパで叩く弓香さん。

 

スパーンと言う音が響く。

 

「いたた……」

 

「何て事聞くのよ! うら若き乙女が聞いたら刺されるわよ!」

 

「でも、以前病院で妊娠されてた方のサイズを測った時の感触と似てたから……」

 

「んな訳無いでしょ! 彼女達はまだ高校生なのよ!」

 

何故知ってるのかと言うと。

 

ネットで写真が出てたのだ。

 

非公式だが、ファンクラブ投票まである始末。

 

……以前のあいつ等(37話参照)の仕業だろうがな。

 

グーグル先生に『私立聖祥大学付属高校6大美女』と検索したら彼女達の非公式ファンクラブのサイトに行ったんだが。

 

大半は隠し取りだが、下着とか着替えのシーンは無かったから……まあ、目をつぶる事にした。

 

中にはキチンと正面から取ってなおかつカメラ目線のヤツもあったし。

 

……夜のおかずにしてない事を祈るしかないが。

 

無理か。

 

「ごめんなさいね~」

 

苦笑して謝ってくる弓香さん。

 

俺も苦笑するしかなかった。

 

「さすがやな! そんな事まで分かるんかいな!」

 

はやてさん。暴露してどうするんですか。

 

「え……」

 

はやての台詞を聞いて顔を青ざめる弓香さん。

 

「えっと……ココだけの秘密にして貰えませんか?」

 

俺は苦笑しながら弓香さんに言う。

 

「嘘……有名な彼女達が……子持ち……」

 

同じように顔を青ざめさせている美也さん。

 

「良かった、僕の手がおかしかった訳じゃなかった」

 

安堵している伸介さん。

 

「え、いや、ちょ? 全員出産経験が有るって……相手……は?」

 

弓香さんの台詞を聞いてなのは達は一斉に俺を指さす。

 

 

「ファッ!?」

「……」

 

 

弓香さんと美也さんは顎が外れんばかりに大口を開けて呆然としている。

 

「へー」

 

余り驚いて無いように見える伸介さん。

 

まあ、彼はおいといて。

 

「6股……」

 

「ちょ、ちょっと? アレス君って言ったわよね? 責任取れるの?」

 

「若宮さん? コレは私達が望んだんです。アレス君は悪くないんです」

 

「そう……なの?」

 

「そうなんです。みんなでお兄ちゃんと一緒になろうって決めたんです」

 

アリシアの台詞。

 

「……お兄ちゃん?」

 

怪訝な表情を浮かべる弓香さん。

 

「あ、私達……全員同級生ですよ? アレスを含めて」

 

フェイトの台詞。

 

 

「ブハッ!」

「ブフッ!」

 

 

激しく吹き出す弓香さんと美也さん。

 

「しかも、私達の中では一番早く産まれてるから」

 

「確かにお兄ちゃんなんだよね~?」

 

アリサがニヤニヤしながら俺の方を見ている。

 

「……何が言いたい」

 

「今度から、アタシも『お兄ちゃん』って呼んであげようかしら?」

 

「……何か背筋が寒くなるんだが」

 

「何でよ!」

 

「もう、アリサちゃん。お兄ちゃんって呼んで良いのは私だけだよ?」

 

「しょうがないわね……」

 

「もの凄い違和感を感じるのはあたしだけ?」

 

「いいえ、あたしもなんだけど」

 

最後の呟きに近い台詞は弓香さんと美也さんだった。

 

 

 

 

 

 

 

こうして、妙な縁が出来たのであった。

 

後にミッドチルダにてピクシーブランドの下着が出回り、特にEd(エド)ブランドが馬鹿売れするのは別の話である。

 

ちなみに、リンディさんとレティさんが大いにハマってついでにエイミィさんもハマるのであった。

 

あと、何故か就職に迷ったらウチにどう?と誘われたのも余談である。

 

 

 




江戸君の能力とミシャグジ様の能力を足してはいけませんw



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第58話 フラグが立った?

お久しぶりッス!

生きてはいましたよ?

『小説を書きましょうか~』パソコンの前に座る

猛烈な眠気に襲われた!

Zzzzzzz

よくある話ッスね!





 

 

 

 

 

更に時は流れ。

 

高校2年生になりました。

 

何?

 

時間が流れるのが早いって?

 

色々とあるんだよ、大人の事情ってヤツだ。

 

まあ、当然の流れと言うか。

 

夏休み前に今度はティアナに『いただきます♪』されて。

 

ギンガの時と同じようにダイオラマ魔法球内で養生してもらって。

 

同じように8月8日に女の子……が2人。

 

またしても双子ですよ!

 

名前は姉が『レナ』で妹が『リナ』。

 

まかり間違っても姉を『ルナ』にはしないぜ。

 

妹がドラまた(ドラゴンもまたいで通る)みたいになったら困るからな!

 

……姉が鉈好きにならないことを祈るが。

 

娘が16人。

 

日本ではありえんな!

 

まあ、来年はスバルも加わるだろうから。

 

もう開き直るしかないな!

 

そうそう、なのは達は成長期は終わったから問題は無いが。

 

ナカジマ姉妹とティアナだ。

 

どういう訳か。

 

成長しました。

 

どのくらいかと言うと。

 

 

 

 

 

 

ギンガ =177㎝

 

スバル =174㎝

 

ティアナ=174㎝

 

 

 

 

 

 

どういう事なの……。

 

なのは達と互角の身長。

 

そして、スリーサイズなのだが。

 

 

 

 

 

 

ギンガ =B 98(F)W64 H96

 

スバル =B 98(G)W63 H96

 

ティアナ=B 93(E)W64 H94

 

 

 

 

 

 

 

もはや何も言うまい。

 

なのは達と遜色無いスタイルになっている。

 

彼女達の話では、色々と目立って仕方ないそうな。

 

……原作の彼女達は何処に行った……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日の事。

 

海鳴市の隣の街にて。

 

俺とアリサは一緒に歩いてた。

 

他のメンツは子供の世話である。

 

最近は子育てに時間を取られる様になってしまった。

 

まあ、メイドはいるし、俺の母さんやなのは達の保護者の方々も協力してくれるので負担は少ない。

 

かと言って全部を任せるのもどうかと思うのでちょくちょく世話をしているのだ。

 

 

ちなみに。

 

 

娘達は母親より何故か俺の方に寄ってくる。

 

そりゃあ、1人とか2人位なら微笑ましくも見えるだろうが。

 

……一斉に12人寄って来たらどうしろと。

 

父親としては嬉しいのだが。

 

さて。

 

たまにこうして2人っきりになって遊ぶ時もある。

 

そして今回はアリサの番と言うわけだ。

 

分身体を置いてこようとしたが、なのは達から『パパ懐かれ過ぎだから自重してね♪』と言われた。

 

 

解せぬ。

 

 

「~♪」

 

鼻歌を歌いながらアリサは俺の手を取って歩いている。

 

すれ違う人は『ぎょっ』と言いたげな顔をしている。

 

まあ、アリサの身長高いからな。(176㎝)

 

そして俺の身長低いからな。(135㎝)

 

恋人同士には見えないだろう。

 

近所に住むお姉さんが近くに住む小学生の子と遊んでる……という風にしか見えないだろう。

 

たま~に『羨ましい!』と言いたげな女性の方も見受けられるが。

 

「今日はどうするの?」

 

「ん~……とりあえず、何か新刊出てないか見てみるか?」

 

「そうね。最近はちょっとご無沙汰の様な気もするし」

 

久しぶりにメ○ンブックスに行くことにする。

 

「その後は?」

 

「適当にウインドショッピングかしらねぇ……。ま、夜はラブホでたっぷりと楽しむとして」

 

何か言ってるよ?

 

「……あのな。俺の容姿でそんな所行っても入れないだろ」

 

「……そう言えばそうだったわね。前にはやてが言ってたし」

 

以前にもはやてに連れられて休憩出来るホテルに入ろうとしたが。

 

たまたま国家権力(けいさつ)の方が近くにおられて。

 

いやー、超ダッシュで逃げましたよ。

 

俺は良いが、はやてがお縄につく所でしたよ。

 

見た目女子大生以上のお姉さんが見た目小学生の男の子を連れてホテルに入る……。

 

残念ながらこれでも犯罪らしい。

 

捕まったら新聞でどんな見出しになるか見物ではあったが。

 

「ん~……人気の無い所しか無いわね」

 

「あのな、諦めが肝心な時もあるんだぜ?」

 

「良いじゃない!たまには2人っきりでしっぽりとヤっても!」

 

だから! 天下の往来でそんな事を言うんじゃない!

 

ああ! 道行く中年のサラリーマンが睨んでる!

 

「声が大きい!」

 

「わ、分かったわよ……。とりあえず、最低5発だからね?」

 

「……分かったよ」

 

了承するしか無かった。

 

 

 

 

 

「ねえ、アレス?」

 

「うん?」

 

「アレって……アンタの目にどう見える?」

 

アリサが見てる先には。

 

Tシャツにジーンズと言うごく普通の服装をした黒髪の少年が何やら光り輝く鏡の様なモノの前に立っていた。

 

その様子は首を傾げている。

 

「……なんかどっかで見たことあるようなシーンに見えるが」

 

「そうよねぇ。しかもあの子どっかで……」

 

うーん?

 

しかも周りの人達は気付いていない。

 

何となくだが。

 

あの扉をくぐると異世界に召喚!の様な気がするんだが。

 

異世界召喚?

 

光り輝く鏡?

 

……ゼロの使い魔じゃあるまいし。

 

「何か、ゼロの使い魔を思い出すんだが」

 

「……誰かと思ったら、才人じゃない」

 

「才人?」

 

「ほら、昔言ってたじゃない。あたしの従兄弟よ」

 

……ああ、アリサの代わりに会社を継がせようって言ってたよな。

 

確か、名字は『平賀』……。

 

 

……。

 

…………。

 

 

ちょっと待て。

 

あのままだとアイツ、ハルケギニアに召喚されるんじゃねぇか?

 

「……なあ、アリサ?」

 

「奇遇ね。あたしも今アンタと同じ事を考えたわよ」

 

「助けるか」

 

「そうね。このままだとアイツ行方不明になりそうだし」

 

俺とアリサは才人と思われる少年の元に近付く。

 

「ほら、才人! そんな怪しいモノに手を触れない!」

 

「どわ!」

 

ビックリ声をあげてこちらを振り向く少年。

 

……どう見てもゼロの使い魔に出てくる平賀才人にしか見えないのだが。

 

「……どちら様で?」

 

首を傾げて俺とアリサを見る才人。

 

「アンタねぇ。従姉妹の顔も忘れたって言うの?」

 

「…………ひょっとして、アリサ?」

 

「そう、そのアリサよ。しばらく会ってなかったからって顔まで忘れる?」

 

「無茶言うなよ……最後に会ったのって9才の頃じゃないか……」

 

8年も経てば気付かないわな。

 

「兎に角。その妙な鏡に触れるのはよしなさい」

 

「何でだよ」

 

「引きずり込まれるからよ」

 

「……そう言うことね」

 

才人は鏡を見ながら呟く。

 

そう言えば、この世界には『ゼロの使い魔』は存在しているのだ。

 

「けど、このままだとずっと俺につきまとっていそうな気がするんだけど……」

 

光る鏡の様なモノを才人はジッと見つめている。

 

「ん~……。そうね~……何か良い手ある?」

 

アリサは俺の方を見る。

 

「……さっきから気になってたけど、この子は?」

 

「あたしの恋人よ」

 

「ぶっ!」

 

アリサの台詞を聞いて盛大に吹き出す才人。

 

「いや、ちょ?」

 

交互に俺とアリサの顔を見比べる才人。

 

「なあ、アリサ?」

 

「何よ?」

 

「俺とアリサは同い年だよな?」

 

「そうよ。ソレがどうかしたの?」

 

「いくら何でも小学生を(さら)うのはどうかと思うんだけど……」

 

「失礼ね! ちゃんとあたしから告白してOK貰ってるわよ!」

 

少し顔を赤らめさせているアリサ。

 

「いや、でも……いくら何でも小学生に告白するのは……」

 

「何か勘違いしてるみたいだけど、この子はあたしやアンタと同い年よ?」

 

「……は?」

 

呆然と俺の顔を見ている才人。

 

「……」

 

俺は無言でポケットから学生証を取り出す。

 

そこには『私立聖祥大学付属高等学校2年生 藤之宮アレス』と書かれている。

 

もちろん、顔写真付きだ。

 

来年には車の免許を取るから今度から身分証明書はそれにするつもりだが。

 

「……嘘だろ!?」

 

そう言って才人は俺の学生証をまじまじと見つめる。

 

「……本物だな」

 

「そう言う訳よ。だから、問題は無いわ」

 

「……合法ショタかよ」

 

「とりあえず……こうしてみるか」

 

俺は左手に闇の力を溜める。

 

「……え?」

 

驚いた顔で俺の様子を見る才人。

 

闇の玉(ダークボール)

 

左手の平からソフトボール位の玉が発射されて鏡の中に吸い込まれる。

 

 

 

「…………」

「…………」

「…………」

 

 

俺達は鏡を見つめる。

 

 

 

 

『キャー!?』

 

 

 

 

僅かだが。

 

アリサによく似た声が鏡の中から聞こえてきた。

 

そして鏡はスーッと消え去る。

 

「コレで大丈夫だろ」

 

「……何か、あたしに似た声が聞こえてきたんだけど」

 

「気にするな」

 

「……そうだな。でもあの世界に行って7万の軍隊と戦いたくないぞ」

 

しばらくその場に居たが、もう鏡は現れる事は無かった。

 

「さて。もう大丈夫だろ」

 

「そうね。これでアンタも平穏な生活を送る事が出来るわね」

 

「ああ、ありがとう……」

 

その後、別れようとしたが。

 

アリサが才人を引き留める。

 

『久しぶりに会ったんだから食事位どう?』

 

と言うことで3人でファミレスに入って食事を取る事に。

 

ちなみに。

 

才人は俺とアリサの様子を見て悔しがっていた。

 

「くそ~俺もアリサみてぇな巨乳の子を探すぞ!」

 

……やはりこのこの才人も巨乳好きの様だった。

 

 

 

 

 

 

 

数日後。

 

アリサから聞いた話では。

 

才人が通う学校に3人の転校生がやってきたそうな。

 

唐突に3人とは多いなと思いつつその3人の名を聞いて俺は顎が外れそうになった。

 

 

 

『ルイズ=ヴァリエール』

『キュルケ=ツェルプストー』

『シャルロット=オルレアン』

 

 

 

いやいやいやいや!?

 

どういう事ですか!?

 

更に聞くとどう見ても『ゼロの使い魔』のあの3人にしか見えないらしい。

 

そしてその3人は才人と仲良く(?)なってるとか。

 

正確には『ゼロの使い魔』と似たような展開になってるとか。

 

……運命から逃れる事は出来なかったか、才人。

 

俺はそんな事を思っていた。

 

 

 

 





実は、この事件はかなりの重要性を秘めてる……かも?




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第59話 逃れられぬ運命

バタフライ効果と言うヤツです


 

 

 

 

「……本当に良いのか?」

 

「良いの。これは油断……いえ、慢心した私が悪いんだから」

 

なのははそう言う。

 

ベッドの上で仰向けで寝ている。

 

その姿は痛々しい姿だ。

 

右目部分と顔の大半は包帯で巻かれている。

 

そしてここでは見えないが腹の部分も包帯で巻かれている状態だ。

 

「……頑固者」

 

「えへへ、結構私って頑固なんだよ?」

 

微笑むなのは。

 

とある任務の最中、なのはは大怪我を負ってしまった。

 

右目部分と左頬を切り裂かれ。なおかつ腹部分にも大きな切り傷を負ってしまったのだ。

 

俺は即座に治癒魔法で治そうとしたのだが。

 

なのはは『油断した私が悪いの……』と言って俺の魔法を拒否したのだ。

 

くそ、こんな事なら一緒に行けば良かった。

 

たまたま違う任務があったので俺となのはは別行動していたのだ。

 

その時になのはは怪我を負ってしまった訳だ。

 

医者の見立てでは最低で全治2ヶ月との事。

 

不幸中の幸いと言うか、綺麗に斬られているからくっつくのは早いだろうとの事。

 

ただ、どうしても傷跡は残ってしまうそうだ。

 

「顔に傷跡が残るんだぞ?」

 

「良いの。戒めと思って残すんだから。それに、お嫁さんの貰い手はあるもんね?」

 

「……ったく」

 

諦めるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

自宅に帰宅する。

 

するとドヤドヤとフェイト、アリシア、はやて、アリサ、すずかが出迎えてくる。

 

「おかえり~」

 

「どうだった?」

 

「リビングで話そうか」

 

リビングに上がる。

 

そこには士郎さんと桃子さんがいた。

 

「申し訳ない」

 

俺は2人に深々とお辞儀する。

 

「……命に関わる怪我では無いんだね?」

 

「はい。ただ、どうしても顔に傷跡が残ってしまいます」

 

「そんな……」

 

「消すことは出来ないのかい?」

 

「……魔法で消す事は出来ます。ですが、なのはがそれを拒否するのです」

 

「……そう……か」

 

士郎さんはため息をつく。

 

「アレス君」

 

「はい」

 

「改めて、なのはを頼む。頑固な子で申し訳ないが……」

 

「……分かりました」

 

子供を作って今更別れ話とかあり得まい。

 

 

 

 

 

 

 

「で、なのはを襲ったのって?」

 

ニコニコ顔のフェイトが俺に問い尋ねてくる。

 

だが、右手に持たれた紅茶のカップが震えている。

 

こぼれるぞ、フェイト。

 

「うむ、残骸なら本局に渡してきた。結果はまだ出てないが……。俺の予想では『スカリエッティ』の仕業だと思う」

 

知らない人はいないと思うが。

 

スカリエッティ……『ジェイル=スカリエッティ』はStS編で出てきた黒幕的存在の男だ。

 

古代ベルカ時代に作られた大型戦艦『聖王のゆりかご』を復活させて管理局に戦いを挑んできたのだ。

 

目的ははっきりと描写されていなかったから最後まで分からなかったが。

 

「そう……」

 

そう言うとフェイトは立ち上がって瞬時にバトルジャケットに着替える。

 

「フェイトさん?」

 

「……ちょっとスカリエッティを殺してくる」

 

『ちょっとコンビニ行ってくる』みたいな軽げに物騒な発言してるんですか!

 

よくよく見ると目が据わってる様に見えるんだが!

 

「あ~、フェイトってお兄ちゃんの次になのはの事が好きだからねぇ~」

 

アリシアは苦笑しながらそんな事を言う。

 

「そうやねぇ……たまになのはちゃんとフェイトちゃんキスしてる時あるし」

 

……まあ、確かに夜の運動会の時とか百合な事してる時あるもんな。

 

と言っても!

 

他の方々も百合な事してるじゃないか!

 

 

 

 

 

・例1…アリサ×すずか

・例2…すずか×はやて

・例3…アリサ×なのは

・例4…アリシア×フェイト

 

 

 

 

 

どんな光景なのかは読者諸君の妄想力に任せるとして。

 

とりあえずはフェイトの頭を冷やさないと色々と大変な事になる。

 

「とりあえず、落ち着け」

 

俺は素早くフェイトの前に回り込み、抱きついてみる。

 

抱きつくと言うよりしがみつくが正解かも知れないが。

 

「……うん」

 

顔を赤くするフェイト。

 

落ち着いた様だ。

 

「そもそも、スカリエッティの居場所も知らないのにどうするつもりだったんだ?」

 

「ん~、とりあえず虱潰しに」

 

……大半の管理世界を焦土にするつもりか。

 

「管理局に捕まるぞ」

 

「でも、アレス君が大怪我した場合だったら?」

 

すずかがそんな事を言う。

 

どうなるかは予想が出来るんだが……。

 

 

 

 

 

「あ、それはもうアカンね」

「うん、片っ端から魔法を撃ち込むよ」

「リンディさんもレティさんも許可してくれるでしょうし……」

 

 

 

 

全員の目が据わっている。

 

とりあえず、スカリエッティは命拾いしたのかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あっという間に2ヶ月が過ぎ。

 

なのはは無事に退院してきた。

 

迎えは士郎さん、桃子さん、そして俺というメンツ。

 

なのは曰く、顔の傷が少し恥ずかしいそうな。

 

丁度夏真っ盛りで麦わら帽子と大きめのサングラスで顔を隠しているなのは。

 

しかし、左頬の傷はしっかりと見えている。

 

さすがにマスクは暑くて断念したようだ。

 

「みんなに見られるのは良いけど……さすがに不特定多数の人に見られるのは……」

 

まあ、確かにそれはあるだろうな。

 

何せなのはの身長は少し高い。

 

しかも、スタイルはかなりのモノだし。

 

桃色のワンピースを着ているが、身体のラインは隠しようがない。

 

胸は大きく、腰はくびれていて、お尻は大きい。

 

日本人離れした体型なのだから。

 

今でも時折すれ違う人はなのはの事をチラチラと見ているのだから。

 

「まあ、慣れるしかないね……」

 

「うん。自分で選んだ道だもん」

 

「さあ、帰ろうか」

 

俺達は士郎さんに促されて帰路につく。

 

 

 

 

 

 

 

 

なのは達と一緒に学校に行く。

 

なのはと一緒に教室に入った時はクラスが静まりかえった。

 

まあ、それはそうだろう。

 

なのはの顔には大きな傷跡が残されているのだから。

 

右目部分に大きな裂傷跡が斜めに2本。

 

そして左頬に十字の傷跡。

 

……何処の歴戦の戦士ですか?と問いたくなる雰囲気だから。

 

ちなみに腹部分にも大きな傷跡があるが、知ってるのは一部の者だけだ。

 

「どうしたの!?」

 

「うわー…」

 

クラスメイト達が一斉に駆け寄って問い尋ねてくる。

 

「ちょっと……事故で」

 

なのはは苦笑いしながら応答するのであった。

 

 

 

 

 

ちなみに。

 

なのはファンクラブ『NNN』は減るかと思ったが、減ってなかった。

 

むしろ、増えてた。

 

 

 

『かっこいい……』

『アレはアレでありだ』

『ファンタジーの女騎士みたいだ』

 

 

 

……なんだかな。

 

俺はとりあえず放置することにした。

 

 

 





ヒロインの顔に傷跡を残すなんて俺位なもんだろ!w


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第60話 3度目の正直?

さあ、因縁(?)の対決もこれで終了です


 

 

 

 

「ホンマ大きな注連縄やねぇ」

 

「ほんと」

 

「でもこれって6~7年で変えてるんでしょ?」

 

「これを毎年って、なると作る人もかける人も大変やで」

 

「だよね~」

 

神楽殿の前に吊られている大注連縄を眺めている。

 

俺達が今来ているのは、島根県にある出雲大社。

 

そう、俺達は高校3年生を迎えて修学旅行に来たのだ。

 

場所は……さっきも言ったが、中国地方にある島根県出雲市にある出雲大社。

 

祭神は『大国主神(おおくにぬしのかみ)』である。

 

神界で会ったが、見た目はイケメンであったが。

 

6柱の女神を嫁に貰った、リア充な神様でもある。

 

……俺も人(?)の事を言えないが。

 

そして、何故この神社に修学旅行に来る事になったのかというと。

 

60年に一度の大遷宮と呼ばれる儀式の為だ。

 

早い話が神社の建て替えみたいなモノだ。

 

まだ本格的に建て替えは始まっていない。

 

つまり、建て替える前の姿を見ておこうと言う訳で来ることとなったのだ。

 

……俺、前世の前世で見たんだけどね。

 

とりあえず、移動するか。

 

 

 

 

 

「でも、この神社って縁結びで有名なんやろ?」

 

「ああ」

 

「私等にはもう必要無いんよね……」

 

「そうだね……」

 

苦笑しながらお互いの顔を見ているはやてとフェイト。

 

「確かにねぇ……。もう縁なら結んで貰ってるし」

 

「それもガンガラ締めに締めて貰ってるもんねー♪」

 

すずかとアリシアが俺の頭を撫でてくる。

 

「それともアンタ、まだ増やすつもり?」

 

「にゃはは、アレス君の夜はまだ余裕みたいだから」

 

ジト目のアリサと頬を赤らめさせてるなのは。

 

うわ、隣にいるモテなさそうな男性が『憎しみで殺せたら……』とか言いそうな表情を浮かべてるんですが。

 

「いや、増やさないし。それに余り変な事を言うな。誤解を招くだろ」

 

「誤解も何も、事実やん」

 

「そうそう、事実だよ」

 

「現時点で6人のお嫁さん貰ってて予定が後3人追加だし」

 

うわ、30代と思われる男性が血涙流してるぞ!

 

「これ以上は色々と拙いから場所移動するぞ」

 

 

 

 

 

 

 

揃って移動する俺達。

 

出雲大社の松が並ぶ道に入ったその時。

 

「……!?」

 

違和感を感じた瞬間。

 

俺達以外の人の姿が消えたのだ。

 

「アレス君……!」

 

「これって、結界!?」

 

「異相空間に切り離された?」

 

周りを見ても違和感を感じない。

 

ただ、人の姿が消えてしまったのだ。

 

〈……見つけたぞ〉

 

頭に響く声。

 

この声は……。

 

「……来るんじゃないかと思ったが……やっぱりお前だったか」

 

俺達の前に現れたのは……もはや因縁の相手に近い鹿。

 

『鹿・グレート』である。

 

身体の傷跡が増え、何やら強者の風格を増している。

 

【お兄様……】

 

エヴァが何かを告げたい様だ。

 

「どうした?」

 

【……目の前の鹿なんですが……名前が……】

 

「鹿・グレート改じゃないのか?」

 

【いえ、『鹿・グレートγ(ガンマ)』になってます】

 

「は?」

 

何故にγ(ガンマ)α(アルファ)β(ベータ)は?

 

「お兄ちゃん……」

 

「まさか、こいつらまで……ね」

 

アリシアとアリサの声が聞こえるのでそっちの方を見る。

 

「なるほど」

 

居たのは巨大なヒグマと蛇。

 

あの模様は、ハブと思われる。

 

「もしやとは思うが」

 

【はい、それぞれ『キラーヒグマα(アルファ)』、『ハブ・ロードβ(ベータ)』と名前が出ております】

 

色々とツッコミ所が満載なんだが!

 

〈3年前の屈辱を……今こそ!〉

 

俺となのはは鹿・グレートγ(ガンマ)と戦う事に。

 

アリシアとフェイトが『ハブロードβ(ベータ)』でアリサ、はやて、すずかが『キラーヒグマα(アルファ)』と戦う事になった。

 

俺達は邪魔にならないように鹿・グレートをおびき寄せる。

 

 

 

 

 

 

「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック 闇の精霊二百五十五柱。集い来りて敵を射て。『魔法の射手・連弾・闇の512矢』」

 

俺は前回の事を思い出して倍の数の矢を放つ。

 

今度は全方位からの攻撃だ。

 

〈ふっふっふっ……〉

 

しかし、鹿・グレートは避ける動作に移ろうとしない。

 

そして矢が当たろうとした瞬間。

 

「何!?」

 

俺は目を見開いた。

 

闇の矢が全て鹿・グレートの周りを逸れる様に飛んであらぬ方に飛んでいく。

 

「え!?」

 

なのはの声も聞こえる。

 

彼女も目を疑ったのであろう。

 

「矢が逸らされた!? この光景は……!」

 

【お兄様! 鹿・グレートの周りが……歪んでいます!】

 

「何だと!?」

 

俺は目を凝らして見る。

 

鹿・グレートの周りが……僅かに歪んで見える。

 

それで全てが分かった。

 

「にゃあ! ディバイン・バスターが……曲げられた!?」

 

なのはがディバイン・バスターを放つがそれすら強制的に曲げられ、当たらない。

 

「なのは! ヤツに攻撃は通用しない!」

 

「そんな!?」

 

「ヤツめ……空間歪曲(ディストーション)能力を身に付けたか!」

 

「何なの?」

 

「分かりやすく言うと、ヤツの周りの空間がねじ曲げられている。物理攻撃は全て曲げられて命中しない」

 

「にゃ! インチキなのぉ!」

 

頬を膨らませて怒ってるなのは。

 

〈ふふふふ、そう言うことだ! 貴様達の攻撃は一切通用しない!〉

 

鹿・グレートからアクセル・シューターが飛んで来る。

 

俺となのははそれを難なく避ける。

 

こちらの攻撃は無効であっちの攻撃は通過かよ。

 

八雲紫みたいに境界を弄るわけにも行かないし。

 

その前にそんな真似は出来ないし。

 

「くそ、何て面倒な!」

 

「もう! レイジング・ハート! 何か手段は無いの?」

 

【見た所相手の空間歪曲(ディストーション)シールドに穴らしいモノは確認できません】

 

レイハさんが解析をかけてる様だが、やはり弱点は無いか。

 

しょうがない、ちょっとこのまま牽制攻撃をかけて様子を見るか。

 

俺となのはは連続で攻撃を仕掛ける。

 

 

 

 

 

 

 

30分経過。

 

戦いは膠着状態だ。

 

俺となのははダメージを受けてない。

 

相手の鹿・グレートもダメージを受けていない。

 

将棋で言う千日手に近い状態だ。

 

「にゃあ……身体は疲れてないのに何か疲労感が……」

 

シールドを展開して弾を防ぐなのは。

 

面倒くさい事この上ない。

 

さて、そろそろこの事態を打開するか。

 

俺は足を止め、その場に立ちつくす。

 

〈ふはははは! ついに諦めたか!〉

 

鹿・グレートが弾を撃つその瞬間。

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

左手から闇の力を放出する。

 

光線状態で真っ直ぐ伸びる。

 

〈!?〉

 

光線は曲がらず鹿・グレートに直撃する。

 

〈ぐぅおぉぉぉぉぉぉ!?〉

 

右前足部分に直撃する。

 

焼けこげた様になり、血が噴き出す。

 

しかし、傷は徐々に再生している。

 

「ちっ、再生能力も付いてるか」

 

「アレス君?」

 

『どうして?』と問いかけそうな表情で俺の方を見る。

 

「駄目だなぁ、なのは?」

 

「え? え?」

 

「確かに、空間歪曲(ディストーション)はほとんどの攻撃を無効化出来る。でも……攻撃する瞬間にどうしても穴を開けないとなぁ?」

 

俺は口元をニヤリと釣り上げる。

 

「……確かにそうなの。自分の攻撃も……」

 

「まあ、転移魔法も併用すれば何とかなっただろうが……」

 

【残念ながら、そこまでは気が回らなかったのでしょうね】

 

〈ぐぅぅぅ……おのれぇ……〉

 

俺を睨み付けてくる鹿・グレート。

 

「再生時間なんぞ、くれてやると思うか? なのは」

 

俺はなのはの顔を見つめる。

 

「……良いんだね?」

 

「ああ、俺がカタを付ける。1つ、とっておきを見せてあげよう」

 

「うん」

 

なのはは俺から離れる。

 

俺は首を捻る。

 

「……汝ら我が肉に組まれし唱える者共――――っ 絶えたし血と肉と骨の痛み 今しい出唱えよ アーニ・マラウス・ミーンマ・シーネ・フェイ・スレスド・ワルー・ウード・モドルンド・アーク・セトプス……!」

 

俺の右肩、左肩、腹に顔が浮かび上がる。

 

右肩のは女性の顔、腹と左肩には鬼に近い顔だ。

 

激力鬼神三面瘡(ユー・ディー・オー)!!!」

 

〈何を企むか知らぬが……させん!〉

 

【それはこちらの台詞です!装甲手楯(パンツァーシルト)

 

俺の前にベルカ式魔法陣の盾が現れる。

 

鹿・グレートの攻撃を全て防ぐ。

 

 

 

【バータ・フォー・ティルズ 囲え 死の荊棘 ヴェルカム・イン・タイ 】

【ルーイ・エリ・グレ・スコルビリー 汝 黒き魂にて 我を清めたもう…… 】

【ジ・エーフ・キース 神霊の血と盟約と……】

 

 

 

それぞれの顔が呪文を唱える。

 

「いくぜ……四重呪殺!」

 

盲死荊棘獄(ブラインド・ガーディアン)!!】

 

左肩の顔が魔法を発動する。

 

その瞬間、鹿グレートの周りに無数のイバラが生えて鹿・グレートの身体に巻き付く。

 

〈ぐあおおおお!〉

 

鹿・グレートの身体から血が噴き出す。

 

「次ぃ!」

 

【おお冥王よ 至高なる者の強き集いのうちに 我は死の凍嵐を身に纏いたり 今新たなる契りによる氷雪の力束ねん!!】

 

右肩の女性の顔が魔法を発動する。

 

絶対零凍破(テスタメント)―――――!!!】

 

右手から冷気が放出され、鹿・グレートの身体を一気に凍らせる。

 

〈のああああぁぁっ!!〉

 

雄叫びを上げる鹿・グレート。

 

〈馬鹿な……人間が……普通の人間が……!こんな力……が……あるはずが……ないいいいいいい!〉

 

「人間を侮って貰っては……困るんだよ!」

 

【祭壇を背に我精霊に命ず 雷よ 落ちろ!!】

 

腹に浮かんだ顔が魔法を発動する。

 

轟雷(テスラ)!!!】

 

鹿・グレートの頭上に雷雲が発生して数十の落雷が鹿・グレートに直撃する。

 

〈がばおおおおおおお!!!〉

 

鹿・グレートの身体が焼け焦げる。

 

「くくく、そのダメージじゃあ空間歪曲(ディストーション)は発動出来まい!」

 

俺は地面に左手を付ける。

 

「とっておきってヤツを見せてやる!グレン・ケネ・ヒル・ハルフォード!」

 

鹿・グレートの周辺に魔法陣が現れる。

 

地面に描かれてるのではなく、空間にも。

 

『積層型立体魔法陣』と呼ばれる代物だ。

 

そして、魔法陣周囲に椅子に括られた魔神が現れる。

 

見た目はグロテスクといった感じだ。

 

「さあ、我が虜の4匹の巨大な悪魔共よ!その苦痛と憎悪を今吐き出しやがれぇ!!」

 

 

 

「あ゛―――――――!!!」

「い゛―――――――!!!」

「とわぁ――――――!!!」

 

 

 

魔神の咆吼と共に鹿・グレート周辺の空間が歪み始める。

 

〈うぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!〉

 

「さあ、これでお終いだ!」

 

俺は両手に魔力を込める。

 

「『超原子崩壊励起(ジオダ・スプリード)――――――!!!」

 

黒い玉が鹿・グレートに直撃する。

 

ヤツの周辺は闇に覆われる。

 

〈おぉぉぉぉぉ……〉

 

鹿・グレートの声が少しずつ小さくなっていく。

 

「ふぅ」

 

俺は首を捻る。

 

コキコキと音が聞こえた。

 

「終わったの……?」

 

なのはが近づいて来て俺に尋ねる。

 

視線は鹿・グレートの方を見ている。

 

「ああ、終わった」

 

「……非殺傷だよね?」

 

「勿論」

 

俺は満面の笑みでなのはの顔を見る。

 

「……アレス君も私の事言えないと思うよ?」

 

「何故に」

 

【最後の魔法はマスターのスターライト・ブレーカーと遜色無い威力でした】

 

「……マジか」

 

俺はレイハさんの言葉を聞いて苦笑せざるを得なかった。

 

【映像を記録しておきましたので、他の方にも見てもらいましょう。多分、マスターと同じ事を思うでしょうが】

 

映像記録してたのね。

 

暗黒の玉が消え去ると鹿・グレートは倒れていた。

 

ピクピクと痙攣していたから死んではいない。

 

もう、これ以上は不毛な戦いになりそうだから記憶を消す事にした。

 

ちなみに。

 

ハブ・ロードとキラーヒグマの方も記憶を消しておいた。

 

こうして、よく分からない戦いは幕を閉じたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

その夜。

 

 

 

 

「うわー……」

 

「これって……」

 

「アレス君の姿がダー○・シュ○イダーにしか見えんわ……」

 

「って言うか、よくここまで再現出来たわね……」

 

「なのはちゃんも大概だけどアレス君も大概なんだね……」

 

「にゃはは……それに比べたら私なんて可愛いもんだね♪」

 

 

 

「それは無いわ」

「それは無いよ」

「それは無いと思うよ?」

「それは無いよねー」

「なのは……アンタも似たようなもんだって言うの自覚しなさい」

 

「にゃんで!?」

 

 

フェイト、アリシア、はやて、アリサ、すずかに引かれていた。

 

 

 

 

 

 解 せ ぬ 

 

 

 




元ネタは「BASTARD!! -暗黒の破壊神-」のとあるシーンですw


どーでもいいですけど、作者存命のうちに終わるんですかねぇ?www


ちなみに、キラーコアラΩもだそうとしましたが、収集がつかなくなる恐れがあったのでボツにしましたw


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第61話 第一種普通自動車運転免許

分かる人にしか分からんネタですよね、この車はw




時は流れに流れ。

 

3学期に入りました。

 

高校3年生なので最後の学期でもある。

 

もう自由登校ではっきり言って冬休みの延長みたいなものだが。

 

さて、今は何をしているのかというと。

 

車の免許を取る為に自動車学校に通っております。

 

例によってなのは達と一緒に。

 

もっとも、俺が入校するときは色々とゴタゴタがあったがな!

 

見た目が小学生(135cm)にしか見えないから……推して知るべし。

 

しかし、色々と変わったんだな。

 

前世の前世で免許を取った時は四段階まであったんだが。

 

今は基礎を教えてもらう一段階と応用の二段階のみ。

 

まあ、昔の一段階と二段階を足して今の一段階に。

 

昔の三段階と四段階を足して今の二段階になっただけだがな。

 

とりあえず。

 

仮免許試験ではやてが撃沈してみたり。

 

「あと1点やったのに……!」

 

頭をかきむしっている姿は笑わせてもらった。

 

まあ、他の地区から来た男達がなのは達をナンパしていたが秒殺されていたり。

 

おかげで俺に殺意の目線が絶えないこと絶えないこと……。

 

何回も言うが、その程度の視線ならもはや慣れたから痛痒にも感じないがな!

 

ちなみに。

 

俺の担当の教官はショタ属性持ちの美女だった事を伝えておく。

 

……。

 

毎回、終わった後にホテルに誘うのはどうかと思うんだがね!

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだかんだで無事に免許を取る事は出来た。

 

なのは達も同じように免許を取る事が出来た。

 

それぞれ車はどうしようか~と言う話になったが。

 

来年からミッドチルダのベルカ自治区で生活するようになるから。

 

車は必要ないと思うが。

 

その旨を伝えると全員納得して車の話は無くなった。

 

もっとも、俺は前世の前世からの車を持ってるから買うつもりはさらさら無かったが。

 

……そう言えば、ミッドチルダはディーゼルエンジンは大丈夫だろうか。

 

うーむ、こっちでベース車手に入れてあっちで改造しようかな……。

 

ま、それは後々考えようか。

 

さあ、久しぶりに乗っていた車を出そうかな!

 

ちなみに、登録して車検も終わってるから何の問題もないぜ。

 

 

 

 

 

 

 

「~♪」

 

俺は鼻歌を歌いながら車のチェックをする。

 

魔法のポシェットに入れていたからボディに腐食とかは見られないし。

 

時が止まっていたからその他の不具合も見あたらない。

 

さて、どんな車を出したのかと言うと。

 

「アレスく~ん……って、なんやこの車」

 

「わ、凄いごつい……」

 

「……アンタにこんな趣味があるなんて」

 

なのは達が庭に来て俺が手入れしていた車を見ての感想がこれだ。

 

「お兄ちゃん……これって」

 

「何か、たまに自衛隊だっけ? その人たちが乗ってる車に似てる」

 

「あ、これって『三菱ジープ』だよね?」

 

すずかが言い当てる。

 

「良く知ってるな」

 

「えへへ、お姉ちゃんの知り合いの人が乗ってるの見たんだ」

 

「ほー、ジープって言うことは4WDやな」

 

「まあな。大概の悪路なら走れるな」

 

「けど……こんなに車高は高く無かったし、こんな大きなタイヤは履いてなかったな~」

 

そう言ってタイヤをジロジロと見るすずか。

 

「思い出した。鮫島の友達もこんな車を乗ってたわ。……でも、何か微妙に違うわね」

 

……多分、鮫島さんの友達が乗っていたのは50系ジープであろう。

 

50系はホイールベース(前輪と後輪の間の距離)が短いタイプだ。

 

4人乗車ではあるが、後部の2人乗り部分はほとんど荷物扱いだ。

 

「……その友達が乗っていたのはこれより短くなかったか?」

 

俺は携帯電話を取り出し、画像を出してからアリサに見せる。

 

「あ、これよ。こんな感じ」

 

「だろうな。俺のこれは20系と呼ばれるヤツでちょっとだけ車体が長いのと、後ろが観音開きなんだ」

 

自衛隊では1973年(昭和48年)に正式採用されたから73式小型トラックと言う名前でもある。

 

1996年にジープベースからパジェロベースに変更しているが、それでも73式小型トラックと言う名前である。

 

ジープとパジェロだと全然違うんだがな!

 

ちなみに、プロトタイプのパジェロはどう見てもジープにしか見えなかったがな!

 

「ほー」

 

「へー」

 

はやてとなのはが珍しそうに見ている。

 

ちなみに。

 

今ここに出しているのは。

 

シャシー部分は民間用20系ジープで上のボディ部分は自衛隊のヤツを貰って載せている特注仕様である。

 

色は黒に塗り替えて幌も特注の黒に作り替えている。

 

ついでにエンジンも非力なNAの4DR5型からJ55に載せているインタークーラー+ターボの4DR5型に換装済みだ。

 

カタログスペックではJ55はネット出力100馬力、NAの4DR5はグロスで80馬力(ネット換算64馬力位)だから大分違うと思う。

 

最も、J53に載せている4DR6型エンジンは直噴で低速の粘りと低速からの吹け上がりは下手なディーゼルと上回る。

 

だが、4DR6はなかなか入手出来なかったから以前乗っていたJ55のエンジンを流用したわけだ。

 

 

※作者はJ54ナローボディ(4DR50型・渦流室式・ターボ無し)とJ55(4DR52型・渦流室式・インタークーラー+ターボ)とJ24A(4DR50型・渦流室式・ターボ無し・自衛隊仕様)しか乗ったことが無いのでJ53(4DR6型・直噴・ターボ)のフィーリングは良く知らない。

 

 

ただ、昔のエンジンだからうるさいのが難点だが。

 

そうそう、トランスファー(副変速機)は昔の三速ガソリンジープ(J3・J52等)のトランスファー(DANA18)に換装して更に低速ギアを組んでるから普通のジープより出足は速いぜ。

 

更に、高速道路を快適に走るためにウォーン製(今現在はアドバンス・アダプター社が商標登録)オーバードライブギアも装着済み!

 

そして、足回りはとある四駆ショップの『ZERLサスペンション』に板を二枚増した仕様!

 

ショックはプロコンプのMX-6と言うショックを装備!

 

フロントシャックルは90mmのグリスアップ仕様のシャックル、リヤは110mmのグリスアップ仕様のシャックルに交換!

 

タイヤはダンロップのグラントレックMT2・ナローの235/85/16に4×4エンジニアリングのブラッドレーV、幅6Jでオフセット-6!

 

※今はオフセットではなく、マイナス側をアウトセット、0をゼロセット、プラス側をインセットと呼ぶようになりました。

 

 

 

……。

 

 

 

まあ、4駆知らなきゃ分からんネタばかりだがな!

 

兎に角。

 

改造しまくっている仕様なのだ。

 

「なるほど……ちょっと興味はあるなぁ」

 

はやては興味津々だ!

 

「乗ってみるか?」

 

「ええの?」

 

「まあ、俺の予想ではちょいと乗ったら『あかん! こんな車よー乗らんわ!』って言いそうだがな」

 

「……全く、アンタの声真似はいつ聞いても恐ろしく感じるわね」

 

苦笑いのアリサ。

 

「聞いとる私もそう思うわ。まあ、とりあえず乗らせて貰うわ」

 

そう言ってはやては運転席に乗り込む。

 

俺は助手席に乗り込み、サポートする。

 

後ろは……。

 

「狭いの」

 

「これは新感覚と言うか」

 

「ほとんど荷物扱いね」

 

「戦場に向かう兵士の気持ちが少しだけ分かる気がするわ」

 

「と言うか、定員オーバーな気が」

 

うん、20系の幌は6人乗りなんだが。

 

ハンドルシフト仕様なら前3人の後ろ4人で合計7人まで乗れるのだが。

 

ハンドルシフトなんか乗ってられっか!

 

「アレス君!」

 

「どうした?」

 

「レバーがいっぱい生えとる」

 

うむ、初めて乗るヤツは絶対言うだろうと思ったよ。

 

真ん中の長いレバーがミッション切り替えのシフトレバー。

 

運転席側に2本生えてて長めのが2WDと4WD切り替えレバー。

 

短いのがトランスファー切り替え。

 

通常走行は『H』で悪路走行は『L』だ。

 

真ん中の『N』はオプションでPTOウインチを付けたときに使うのだ。

 

そして、俺のはオーバードライブギアを付けてるから更にそれをON-OFF切り替えのレバーもある。

 

うん、そりゃあ教習車から比べたらレバーがいっぱいあって訳が分からないだろう。

 

その旨を説明してはやては理解する。

 

「さすが軍用車。一般の車と違うわ」

 

「とりあえず、道路ではこれしか使わないからな」

 

俺は長いミッションレバーを指す。

 

「了解や」

 

そう言ってはやてはクラッチを踏んでエンジンキーを回す。

 

 

 

 

キュルキュルガラガラガラガラガラガラガラ

 

 

 

うむ、独特なディーゼルサウンドが聞こえるな。

 

「……なあ、これトラック?」

 

はやては口元を引きつらせている。

 

「まあ、昭和45年にキャンター(T90型)と言う2tダンプに積んでいたから間違いではない」

 

もっとも、アレは初期の4DR5型ではあるが。

 

「まあ、ええわ。……バックが逆についとる」

 

「ああ、気を付けろよ。1速はここだ」

 

「ここ……ね。慣れるまでは大変やな」

 

「トルクは太いから少々クラッチ操作誤ってもエンストはしないぞ」

 

「その点はええな」

 

そう言ってゆっくりと前に出る。

 

「うわ、ハンドルが重いで」

 

「パワステなんぞ付いてないぞ」

 

「なるほど。まあ、これくらいならどうって事はないな~」

 

そう言ってゆっくりと公道に出る。

 

 

 

 

 

 

近くの国道に出て走る。

 

 

 

「エンジンがうるさいの!」

「クッションが固いね!」

「私達、荷物扱い!?」

「戦場に向かう兵士の気持ちが本当に良く分かる車だね!」

 

 

 

後ろの方でなのは達が騒いでいるが、俺はとりあえず無視することにする。

 

「坂道が面白いなぁ! 4速でも軽々登っていくわ!」

 

うーむ、オーバードライブがONになってるから5速なのだが。

 

まあ、噴射ポンプを調整してあるから大抵の坂なら余裕で上がるのだが。

 

それと。

 

後ろの車との車間距離が妙に空いてるのは何故だ?

 

……おっと、そう言えば。

 

後ろのタンクに旭日旗のマークを貼っていたな。

 

右の翼的な人に勘違いされてるのだろう。

 

……まあ、良いか。

 

「そう言えば、後ろの車の車間距離が妙に空いてるのは、なして?」

 

はやてがバックミラーをちらりと見てから話しかけてくる。

 

「うむ、多分これのせいだろう」

 

俺は旭日旗のマークを見せる。

 

「ぶっ!」

 

吹き出すはやて。

 

「ぶふっ!」

 

後ろからも同じように吹き出す声が聞こえる。

 

「この車にこのマークはあかんやろ!」

 

「うむ、似合うかと思っていたんだが」

 

「似合うけど違うベクトルに向かってるやん!」

 

「まあ、『十六八重表菊』とかはさすがに躊躇したぞ?」

 

「当たり前やー! 右の翼的な人達と勘違いされるやん!」

 

そんな感じでドライブは続く。

 

 

 

 

 

 

 

30分近く走って休憩にとある道の駅に入る。

 

結構人がいるな。

 

「何処に止まろうか」

 

ジロジロと駐車スペースを探すはやて。

 

「んーと……」

 

俺も助手席に座っているので同じように探す。

 

……。

 

何かいるな。

 

視線に入ったのは、VIP系の車が数台。

 

クラ○ンとか、シー○とかVIP系と言うヤツだ。

 

車高を限界まで下げている。

 

その周りにいるのは、頭を金髪にした男性が10名位。

 

どうみてもD○Nと呼ばれそうな雰囲気の方々だ。

 

あー、歩く人達皆視線を逸らしているぞ。

 

あれの近くに止めると絶対にロクでもないことが起こるな。

 

「あれの近くは止めてくれよ」

 

「……うわぁ……アレはあかんな」

 

「どれどれ……うわ」

 

「……どこにでもいるんだね」

 

「触らぬ神に祟りなしってね」

 

そんな感じで遠くに止める。

 

 

 

 

 

 

「ん~」

 

降りて背伸びするはやて。

 

他のメンツも同様に降りて背伸びをしたりしている。

 

……。

 

何か、やたらに視線を感じるな。

 

周りを見ると、驚いた表情を浮かべてる方々が沢山。

 

ふむ、やはり俺達は目立つのだろうか。

 

車も目立つが、運転手と同乗者も目立つか。

 

 

 

※平均身長170㎝以上の女性が6人でモデル並みの体型なら十分目立ちます。

 

 

「さて、どうする?」

 

俺は皆に尋ねる。

 

「とりあえず、休憩だね」

 

「ジュース飲みたい!」

 

「面白そうな食材とか無いかな?」

 

「と、とりあえず……お花摘みかな」

 

顔を少し赤らめさせてるフェイト。

 

「お花……摘み? ああ、行ってらっしゃい」

 

俺は即座に納得してそう返す。

 

「……一緒に来る?」

 

「……行ってどうしろと?」

 

「一緒に入って……とか?」

 

俺にはそんな趣味は無いんだが!

 

「一人で行って来なさい」

 

「……うん」

 

少し残念そうな顔で歩いていくフェイト。

 

変な道に走らなければ良いが。

 

「あ、私もちょっとお花摘みに行って来るね」

 

そう言ってすずかもフェイトの後を追う。

 

……考えてみたら、フェイトって俺にキツめに攻めて貰うの好きだったよな。

 

うーむ、少し道を踏み外しかけているが。

 

いや、まだ許容範囲内だろう!

 

「うーむ、フェイトちゃんもなかなかマニアックな方に入って来てるな!」

 

「……お母さんのせいだね」

 

「え? プレシアさんのせい?」

 

驚いた顔でアリシアを見るアリサ。

 

「昔、お母さん……フェイトの事、鞭で叩いてたから……」

 

 

 

「……」

「……」

「……」

 

 

 

アリシアの台詞で全員沈黙する。

 

 

 

 

「プレシアさんのせいだね」

「うん、間違いない」

「だから、アレス君にいじめられて感じてるんだ」

 

 

 

 

「これ以上は色々と問題が出るから止めない?」

 

 

 

 

 

 

 

中に入って休憩していると。

 

なかなか帰ってこないフェイトとすずかから念話が。

 

〈アレス……助けて〉

 

〈絡まれちゃった〉

 

2人からこんな救援が。

 

……十中八九あいつ等だろうな。

 

車を駐車場に止める時に見たD○N共だろう。

 

その他あり得るのはヤのつく職業だろうけど。

 

いや、それより下位になるチのつく職業か。

 

どちらにせよ、助けにいこうか。

 

すずかはまだあの手の男に苦手意識を持ってるからな。

 

「フェイトとすずかがアホ共に絡まれてるから助けに行くわ」

 

そう告げると、全員ついてくる事になった。

 

中に残っていると集中的に注目を集めて鬱陶しいとの事。

 

 

 

 

 

 

 

先ほど見たVIP系の車が止まっている場所に来ると。

 

フェイトとすずかを取り囲んでいる男達。

 

「そんなつれないこと言うなって」

 

「そうだぜ? 俺達に付いてくると楽しいことがいっぱいだぜ?」

 

「とりあえず、今夜はホテルで沢山遊ぶことだがな!」

 

「ぎゃはははは! それ良いな!」

 

何とテンプレ的な台詞が満載。

 

うーむ、こんな馬鹿共を相手にせにゃならんのか。

 

ちょっとため息が出るが、仕方ない。フェイトとすずかの為にもな。

 

「悪いが、その2人はこっちの連れなんだがな」

 

俺は馬鹿共に声をかける。

 

「あん?」

 

「何だ?」

 

一斉に俺達の方を見るD○N共。

 

その隙にフェイトとすずかはすり抜けて俺の後ろに回る。

 

「何だこのクソ餓鬼?」

 

「おいおい、見てみろよ」

 

「うひょ! すげぇ美人!」

 

「こりゃ良いな!」

 

「6人もいたらずいぶん楽しめるじゃねぇか!」

 

ざわめく馬鹿共。

 

……見てるだけで疲れそうだからこのまま帰ってみるか。

 

「駄目だぞ、こんな奴らの相手をするなんて」

 

「うん……」

 

「私がうっかり目を合わせたせいで」

 

何事も無かったかの様に帰ろうとするが。

 

「おいおい待てよ」

 

「これも何かの縁ってヤツだぜ?」

 

「とりあえず、全員置いていけよ」

 

「お前みたいな餓鬼には勿体ないぜ」

 

馬鹿共が俺達の回りを囲む。

 

え? イベント戦闘ですか?

 

逃げられないんですか?

 

……まあ、負ける要素が一つも無いがな!

 

とりあえず、少し挑発してみるか。

 

「置いていく理由が全く見当たらないんだが……」

 

「だから言ってるだろ? お前みたいな餓鬼にこんな美女は勿体ないって」

 

うーむ、確かに第三者の目から見ると大学生から社会人の美女が小学生の男の子を連れ回している……と言う認識に近いよな。

 

それはさておき。

 

「あ、お前等勘違いしてるみたいだが。俺と彼女達は同級生だぞ?」

 

俺がそう言うと目の前のD○N共は動きが止まる。

 

そして。

 

「どわっはっはっはっはっはっ!」

 

「何だよそのジョーク!」

 

「どう見てもお前小学生じゃねぇか!」

 

爆笑しやがった。

 

うーむ、久々に腹が立ってきたぞ。

 

「うわー……」

 

「お兄ちゃんにそれは禁句に近いよー」

 

「……地雷原でジクザク走りするくらいの危険な行為だよー」

 

アリサ、アリシア、すずかの声が聞こえる。

 

うむ、以前に管理局で思いっきり子供扱いした新人を殴り飛ばしたのは良い思い出だ。

 

ちなみに。

 

ヴィータも『よくやった!』と褒めていたがな!

 

状況はエヴァとヴィータと歩いていたら、『ここはいつから小学校になったんすか?』とニヤニヤしながら言う男がいたので。

 

思わずボディブローをかましてしまったのだ!

 

その後、その男はリンディさんとレティさんに連行されていったが。

 

数日後に会ったら、従順になっていた。

 

どんな事があったのやら。

 

まあ、いい。

 

今は目の前の状況を片づける事にするか。

 

「よーし、良いだろう。俺とタイマンで勝ったら彼女達を連れて行って良いぞ?」

 

そう告げると浮かれだすD○N共。

 

うむ、無理ゲーと言うモノを見せてやろう。

 

「うわー、至上最悪の無理ゲー」

 

「でも、安心して見ていられるね」

 

安心しきっているなのは達。

 

そうこうしていると目の前に現れたのはがたいの良い男。

 

身長は190~2m前後か。

 

スポーツ刈りだが、金髪に染めている。

 

鼻にピアスつけてるぞ!

 

出来れば関わり合いたくない風貌だな。

 

「へっへっへっ」

 

薄ら笑いを浮かべている。

 

俺は男を見上げている。

 

その瞬間。

 

男の右手が僅かに動くのを見る。

 

このモーションは……何かを投げつける?

 

俺は即座に眼を閉じる。

 

顔に何か粉の様なモノが……!

 

僅かに鼻に入った瞬間。

 

コショウだった。

 

即座に呼吸も止めるが、クシャミが出てしまう。

 

「クシュン!」

 

僅かだが、スキが出来てしまう。

 

「はーっはっはっはっはっ! どんな相手でも俺は油断しない! どんな手を使ってでも……最終的に……」

 

男の台詞がいったん止まる。

 

「……勝てばよかろうなのだァァァァッ!!」

 

うーわー。

 

どこぞの究極生命体の台詞だよ、それ。

 

お望みなら宇宙に放り出してやろうか?

 

……まあ、それは酷だから止めておこうか。

 

そして、予想通り男は上背を生かした上からの右パンチ。

 

眼をつむっていても空気の流れで男の動きは読める。

 

「ま、その考えは嫌いじゃないぜ」

 

俺はそう呟きながら男のパンチを難なく左手で受け止める。

 

「なっ!?」

 

驚愕する声が聞こえる。

 

それもそうだろう。

 

余裕で当たると思ったパンチが難なく受け止められたのだから。

 

「目潰しか。金的に匹敵するあくどい手段だよな」

 

俺は受け止めた拳を握りしめる。

 

「な、何だこの力は……!」

 

俺は眼を開く。

 

「ま、お疲れ様ってヤツだ」

 

そう言って俺は右拳を握りしめて、一気にパンチを繰り出す。

 

相手の鳩尾目がけて拳は食い込む。

 

「うげぇ!」

 

男は腹を押さえてその場にうずくまる。

 

あ、もちろん手加減はしてますよ?

 

周りを見るとD○N共は眼を見開いて動きが止まっていた。

 

「はい、これで終わり。それじゃあ、帰ろうか」

 

俺はなのは達にそう言う。

 

「ま、まだだ!」

 

「こうなったら、力ずくで!」

 

「やっちまえ!」

 

D○N共はそう言うと一斉に襲いかかってきた。

 

「はあ……」

 

俺はため息をつくしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

15分後。

 

俺達は帰路に着いていた。

 

え? あのD○N共はどうしたのかって?

 

勿論、瞬殺と言う単語が似合うかのごとく沈めましたが何か?

 

なのは達を人質に取ろうとするもこれまた同じように瞬殺。

 

ま、普通の一般人が鍛えまくったなのは達に勝つなんて無理ってもんだが。

 

「うーん、とうとう私達も人外の域に達したのかー」

 

後ろに乗ってるはやてがそんな事を言っている。

 

いやいや、とうの昔に人外になってるんですよ?

 

「でも、あの手の奴らをぶっ飛ばすのは凄く気持ち良いね~」

 

アリシアちゃん? 言ってることが物騒になってるよ?

 

「それは分かる……アレスみたいな子を夜いじめるのとは違う快感が……」

 

……アリサェ。

 

「コレにこりてあの人達も大人しくなれば良いね」

 

「そうだね」

 

なのはとフェイトの声も聞こえる。

 

「ま、大丈夫じゃね? あれだけ言い聞かせれば」

 

「……アレは言い聞かせると言うより脅迫に近かったよ」

 

すずかの台詞は敢えてスルーすることに。

 

どんな事をしたのかと言うと。

 

あいつ等の目の前でスチール製の空き缶を指で簡単そうに引きちぎったり、その辺に落ちていた石を粉々に握りつぶして見せただけだが。

 

顔を真っ青にしていたがね!

 

「良いじゃないか。これであいつ等も更正すれば結果オーライってヤツだ」

 

「それはそうなんだけどね……」

 

そんな感じで俺達は家に向かって帰るのであった。

 

 

 

 




今でもこんな輩はいるんですかねぇ?w



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第62話 衝撃の卒業式

いよいよ、アレス達も高校を卒業します


 

 

 

 

ざわ……ざわ……。

 

俺はいつもの通り学校の教室にて席に着いていた。

 

目の前では残念担任の横島先生が話をしている。

 

内容は……まあ、珍しく担任らしくこれからの人生観とかを話してくれている。

 

この人、実は真面目にしてたらかなり有能なんじゃね?と思う。

 

しかし、視線は常に俺の方を見ていたが。

 

……言動と視線がここまで違う人も珍しいな。

 

おっと、言うのを忘れていたな。

 

今日で高校を卒業することとなった。

 

長かったが、終わるとなると少し寂しい気もするな。

 

卒業式も終わって今はLHRの時間だ。

 

……まあ、教室内が妙に騒がしいのは訳がある。

 

後ろにはずらりと保護者が並んでいる。

 

卒業式だから当たり前だ。

 

だが、その中に。

 

12人の子供が混じっている。

 

年齢は5歳前後。

 

全員女の子。

 

そして、容姿が今も教室内で話題になっているのだ。

 

「……どう見てもなのはちゃんに似てるよね」

 

「言うか、フェイトちゃんとアリシアちゃん……だよね?」

 

「アリサちゃんとすずかちゃんにも……」

 

「どう見ても、あれってはやてそっくりだよね?」

 

生徒達は後ろを見ながらそんな会話を繰り広げている。

 

……。

 

詳しく説明すると。

 

士郎さんと桃子さんに連れられているなのはそっくりの子が2人。

 

『高町(さくら)』と『高町春華(はるか)』姉妹。

 

プレシア女史、リニスとアルフに連れられているアリシアとフェイトそっくりの子が4人。

 

アリシアの子が『マリア=テスタロッサ』に『ソフィア=テスタロッサ』。

 

フェイトの子が『レイア=テスタロッサ』に『エリス=テスタロッサ』。

 

グレアムさんとリンディさんに連れられているはやてそっくりの子が2人。

 

『八神(ゆい)』と『八神初唯(うい)』。

 

バニングス夫妻に連れられているアリサそっくりな子が2人。

 

『ヴェスタ=バニングス』と『ミネルバ=バニングス』。

 

忍さんとノエルさん、ファリン嬢に連れられているすずかそっくりの子が2人。

 

『月村(あおい)』と『月村(らん)』。

 

……まあ、全員俺の子なんだがね!

 

「……って言うか、全員右目だけ蒼いんだよね」

 

 

「蒼い?」

 

 

「……」

「……」

 

 

 

とある女生徒2名が俺の顔をジッと見る。

 

「……もしかして」

 

「……マジで?」

 

俺はそっと視線を逸らす。

 

「とまあ、これからの人生は後悔しないように。所で……だ」

 

担任の横島先生は一呼吸置いた。

 

「後ろの方におられる女の子達が非常に気になるんだが。ちょっと良いかな?」

 

横島先生が手招きをすると子供達は前の壇上の方に歩いて並ぶ。

 

「んーと、自己紹介出来るかな?」

 

『うん!』

 

子供達は一斉に返事する。

 

「それじゃあ、そっちの……高町さんにそっくりな子から」

 

横島先生がそう促す。

 

「たかまちさくら!」

「たかまちはるか……」

 

「マリア=テスタロッサ……」

「ソフィア=テスタロッサ!」

 

「レイア=テスタロッサ!」

「エリス=テスタロッサ……」

 

「やがみゆい!」

「やがみうい……」

 

「ヴェスタ=バニングス!」

「ミネルバ=バニングス!」

 

「つきむらあおい……」

「つきむららん……」

 

 

自己紹介は終わる。

 

少し、教室内の空気がほっこりする。

 

「んーと、それじゃあ、みんなにそっくりなお姉さん達があそこに座ってるよ? どんな関係かな?」

 

横島先生がなのは達を指さす。

 

『なのはママ!』

 

『アリシアママ!』

 

『フェイトママ!』

 

『はやてママ!』

 

『アリサママ!』

 

『すずかママ!』

 

子供達は笑顔でそう返答する。

 

「……ママ?」

 

『うん!』

 

一斉に返事する子供達。

 

完全に頬が引きつっている横島先生。

 

「……年が離れた妹ではなく。娘……」

 

そう呟く横島先生。

 

「…………じゃあ、パパは?」

 

 

 

『アレスパパ!』

 

 

 

子供達は一斉にそう返事した。

 

教室内の空気が凍り付いた。

 

俺は天井を見上げている。

 

「……アレス君?」

 

「……認めたくないものだな……自分自身の、若さ故の過ちというものを」

 

横島先生の問いかけにそう返答する俺。

 

今の状況にぴったりではないか!

 

 

「……」

「……」

 

 

無言で見つめ合う俺と横島先生。

 

「……私と 『や ら な い か』」

 

「それはダメでしょう」

 

「何故だ! 君はもう童貞を立派に卒業した大人だ! そして、今日高校も卒業するから記念に……」

 

「いえ、そう言う記念はちょっと……」

 

「そんな事言わずに! 先っちょ! 先っちょだけでも良いから!」

 

「先っちょってアンタ……」

 

「それでもダメか!? ならしゃぶらせてくれないか! 推定25㎝はありそうなそのおチ○ポを!」

 

何勝手に俺のサイズを暴露してるんですか!

 

「な、ななななに勝手なこ、ここここことを!」

 

思わずどもってしまう。

 

 

 

「でかいわね……」

「あの体型で」

「……ちょっと見てみたいわね」

 

 

 

後ろの方から不穏な発言が聞こえてきますよ?

 

しかも、保護者達の方から。

 

……あえて聞こえなかった事にしようか。

 

すると、突然教室のドアが開かれる。

 

そこに立っていたのは、同級生の好雄と学だった。

 

見るからに憤怒の表情を浮かべている。

 

……非常にイヤな予感を感じるんだが。

 

「おのれぃ! なのはちゃん達の子供だと!?」

 

「アレス! 貴様、6人全員と子供を作ったのかぁ!」

 

2人の怒りの様子を見て子供達はサーッとそれぞれの母親達の所に向かう。

 

「……まだLHRの最中なんだが」

 

ジト目で2人を見る横島先生。

 

「止めないで下さい横島先生!」

 

「俺達はこのハーレム野郎に人誅を下さねばならないんだ!」

 

「おうよ! 今、同志達に呼びかけてこの地に集結している!」

 

同志?

 

何となくイヤな予感を感じるが……。

 

「呼びかけ? 同志?」

 

「聞きたいか? ネットで呼びかけてこの学校の校庭に集結させているんだ」

 

そんなに来る暇人がいるのか?

 

俺は何気なく校庭の方を見る。

 

……。

 

黒山の人だかりで一杯でした。

 

何やら旗を持ったり、段幕を持っている男達がわんさかと。

 

明らかにサラリーマン風の人も見受けられる。

 

余計なお世話かも知れないが、上司に叱られますよ?

 

「……」

 

「コレでお前も年貢の納め時ってヤツだな!」

 

「これだけの人数なら……」

 

まあ、残念な事に前世の前世で俺は五対五(がい)と言う不条理な戦いを強いられたんだぜ?

 

※垓……10の20乗。億、兆、京、垓と続く。

 

あの時は……3年近くずっと戦っていたなぁ……。

 

っと、過去の事はさておき。

 

とりあえずは目の前の事に集中しようか。

 

「うーむ、とりあえず下に行ってみるわ」

 

俺はそう言うと窓から飛んで降りる。

 

上の方で騒ぐ声が聞こえるが、とりあえずスルーしておく。

 

 

 

 

 

 

ざわざわ……。

 

俺は大人数の男達の前に立っていた。

 

「いたぞ!」

 

「こいつが……!」

 

「おのれぃ! なのはちゃんと子供を作っただと!」

 

「フェイトちゃんと子供……! 許すまじ!」

 

全員から殺意の目線が突き刺さる。

 

「……全員母親似の双子……だぜ」

 

俺はそう告げる。

 

「なん……だと……?」

 

「双子……だと……?」

 

「見ろ! ネットに画像が出てるぞ!」

 

男達はスマホを取り出して操作する。

 

はて?

 

別に子供達の写真はネットに出してはいないのだが。

 

なるべくなら人にもあまり紹介していないし。

 

俺はスマホを左手に取って操作する。

 

とある掲示板になのは達にそっくりな子供の画像がアップされていた。

 

って言うか、さっきの教室の光景じゃねーか!

 

いつのまに撮ってやがったんだ!

 

色々とツッコミを入れたいが、今は止めておく。

 

何故なら、男達は騒ぎ出していたからだ。

 

「待て、この様子なら将来は……」

 

「間違いなく、お母さんにそっくりだ!」

 

「11年経てば……結婚も可能!」

 

まあ、気の長い話ではあるが。

 

さて、諍いの種でも蒔いてみるか。

 

「別に俺は、娘が気に入った男なら止めるつもりは無いぜ?」

 

その言葉を聞いて男達の動きが止まる。

 

「それに同じ男を好きになっても、別に構わないぜ? 俺だって人の事は言えないんだからな」

 

 

「……」

「……」

 

 

「ま、逆ハーレムは認めないがな! なのは達だって1人の異性しか愛してないんだからな!」

 

男達はざわざわと騒ぎ出す。

 

「運が良ければ、俺と同じになれるかもな」

 

「一つ聞きたい。娘さんが認めてくれるなら、どんな男でも良いのか?」

 

「ああ。犯罪とか迷惑をかけていないならな」

 

 

 

「……」

「……」

 

 

 

男達は周りを見る。

 

「……全員平等だぜ?」

 

俺はニヤリと邪悪な笑みを浮かべる。

 

「11年後をお楽しみに……な? 別に、ここでバトルを繰り広げても俺は何も言わないぜ」

 

その言葉を皮切りに男達は……一斉に、ジリジリと戦うかの様に、周りに敵意を振りまきだした。

 

今日の味方は、明日の敵ってヤツか?

 

俺はこっそりと教室に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

「うらぁ!」

「死にさらせぇ!」

「ぶるわぁぁぁぁぁぁぁ!」

「ヒャッハー! 桜ちゃんに近づくヤツは消毒だぁ!」

「最終的に……勝てば良かろうなのだぁぁぁぁ!」

「貴様等程度に、この我が負けると思っているのかぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

 

下の校庭から聞こえる乱闘騒ぎとかけ声。

 

男達は死闘を演じていた。

 

「……アレス君……」

 

「アンタ……」

 

「ギリシャ神話に出てきたエリスみたいだね……」

 

「あの、パリスの審判ってヤツだっけ?」

 

「そうそう、アテナとヘラとアフロディーテを争わせたヤツ」

 

「アレよりまだ酷いと思うけど……」

 

なのは達は校庭を見ながらそう会話していた。

 

「お、なかなかの腕前」

 

「へぇ、結構強いのがいるわね」

 

「うむ、あれだけ強いなら……」

 

俺の保護者達は呑気に校庭の乱闘騒ぎを眺めていた。

 

「……アレス君」

 

口元をヒクヒクさせてる横島先生。

 

「俺は何もしてませんよ? ちょっと会話をしていただけです」

 

「……君は見かけによらずなかなか悪辣だな……」

 

「人を見た目で判断しない方が良いですよ?」

 

「……だな」

 

「お、とうとう警察が介入か」

 

見ると校庭の外側にはわんさかとパトカーが。

 

機動隊の車も……って、自衛隊も来てるな!

 

わー、これはすさまじい事になってきたぞ。

 

俺は校庭の戦闘を眺めていた。

 

ちなみに。

 

次の日の新聞に三面記事として掲載されたのは当然の結果だった。

 

 

 




問題は、娘達が認めてくれるかですがねw



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StrikerS編
StS編開始前の状態


いわゆるステータス画面?

30分後にもまた更新します。


 

・藤之宮アレス 19歳

 

 

身長135㎝ 

 

体重105kg

(重力付加訓練により、骨密度、筋肉密度が常人の数十倍になっている)

 

 

階級 二等陸佐(レティさんとレジアスのおっさんにより無理矢理)

 

 

魔術術式 古代ベルカ式・空戦SS++ランク(魔力総量A・成長限界)

 

 

念法 第七チャクラ(完全習得)

 

 

所持資格 戦技教導官/戦技教官/戦技試験官/執務官/大隊指揮官/戦力統御/広域防御A/B級デバイスマスター/普通自動車運転免許

 

※描写は無かったが、色々と資格を取っている模様

 

 

 

 

・エヴァンジェリン 

 

 

身長130㎝ 

 

体重??? B67(A)W48 H63

 

 

階級 三等陸佐(レティさんとレジアスのおっさんにより以下略)

 

 

魔法術式 古代ベルカ式・空戦SS++ランク(魔力総量SS++ランク)

 

 

所持資格 特になし

 

 

 

 

 

 

・高町なのは 18歳

 

 

身長175㎝ 

 

体重116kg B102(H)W62 H93

(重力付加訓練により、骨密度、筋肉密度が常人の数十倍になっている)

 

 

 長女 桜 次女 春華

 

 

階級 一等陸尉(アレスと同じくレティさんとレジアスのおっさんの仕業) 

 

 

魔法術式 ミッドチルダ式・空戦SSランク(魔力総量SS+・成長中)

 

 

念法 第一チャクラ(成長限界)

 

 

所持資格 戦技教導官/戦技教官/戦技試験官/小隊指揮官/普通自動車運転免許

 

 

※右目に切り傷が斜めに2本、左頬に十字の傷、お腹に40㎝位の切り傷(斜めに)が残っている

 

 

 

 

 

 

・フェイト=テスタロッサ 18歳

 

 

身長180㎝

 

体重122kg B106(I)W65 H96

(重力付加訓練により、骨密度、筋肉密度が常人の数十倍になっている)

 

 

 長女 レイア 次女 エリス

 

 

階級 一等陸尉(レティさんとレジアスのおっさんが以下略) 

 

 

魔法術式 ミッドチルダ式・空戦SSランク(魔力総量SS+・成長中)

 

 

念法 第一チャクラ(成長限界)

 

 

所持資格 執務官/小隊指揮官/普通自動車運転免許

 

※たまにアリシアと間違えられるらしい

 

 

 

 

 

・八神はやて 18歳

 

 

身長170㎝

 

体重110kg B91(F)W60 H90

(重力付加訓練により、骨密度、筋肉密度が常人の数十倍になっている)

 

 

 長女 唯 次女 初唯

 

 

階級 二等陸佐(レティさんとレジアスの以下略)

 

 

魔法術式 古代ベルカ式・空戦SS+ランク(魔力総量SS+・成長中) 

 

 

念法 第一チャクラ(成長限界)

 

 

所持資格 大隊指揮官/戦力統御/普通自動車運転免許

 

 

 

 

 

 

・アリシア=テスタロッサ 18歳

 

 

身長182㎝

 

体重124kg B109(J)W65 H95

(重力付加訓練により、骨密度、筋肉密度が常人の数十倍になっている)

 

 

 長女 マリア 次女 ソフィア

 

 

階級 一等陸尉(レティさんと以下略)

 

 

魔法術式 近代ベルカ式・空戦S+ランク(魔力総量A+・成長中)

 

 

念法 第六チャクラ(成長中)

 

 

所持資格 執務官/小隊指揮官/普通自動車運転免許

 

 

※たまにフェイトと間違えられるらしい

 

 

 

 

 

 

・アリサ=バニングス 18歳

 

 

身長176㎝

 

体重116kg B99(G)W63 H92

(重力付加訓練により、骨密度、筋肉密度が常人の数十倍になっている)

 

 

 

 長女 ヴェスタ 次女 ミネルバ

 

 

階級 一等陸尉(レティさ以下略)

 

 

念法 第五チャクラ(成長限界)

 

 

魔法術式 近代ベルカ式・空戦S+ランク(魔力総量AAA・成長中)

 

 

所持資格 戦技教導官/戦技教官/戦技試験官/小隊指揮官/普通自動車運転免許 

 

 

 

 

 

 

・月村すずか 18歳

 

 

身長173㎝

 

体重113kg B95(F)W61 H91

(重力付加訓練により、骨密度、筋肉密度が常人の数十倍になっている)

 

 

 長女 葵 次女 藍

 

 

階級 一等陸尉(以下略)

 

 

魔法術式 ミッドチルダ式・空戦S+ランク(魔力総量AAA・成長中)

 

 

念法 第五チャクラ(成長限界)

 

 

所持資格 B級デバイスマスター/小隊指揮官/普通自動車運転免許

 

 

 

 

 

・ギンガ=ナカジマ 16歳

 

身長177㎝

 

体重58kg B98(G)W64 H96

 

 

 

 長女 スターシア 次女 サーシャ

 

 

 

階級 陸曹

 

 

魔法術式 近代ベルカ式・陸戦AAランク(魔力総量Aランク・成長中)

 

 

念法 第三チャクラ(成長中)

 

 

所持資格 捜査官/2級通信士

 

 

 

 

 

 

・スバル=ナカジマ 14歳

 

 

身長177㎝

 

体重58kg B98(G)W63 H96

 

 

 

 長女 エリー 次女 リリー

 

 

階級 二等陸士

 

 

魔法術式 近代ベルカ式・陸戦Cランク→Bランクにアップ予定(魔力総量B+ランク・成長中)

 

 

念法 第三チャクラ(成長中)

 

 

所持資格 災害担当部隊フォワードトップ

 

 

 

 

 

 

・ティアナ=ランスター 15歳

 

 

身長174㎝

 

体重57kg B93(E)W64 H94

 

 

 

 長女 レナ 次女 リナ

 

 

階級 二等陸士  

 

 

魔法術式 ミッドチルダ式・陸戦Cランク→Bランクにアップ予定(魔力総量B+ランク・成長中)

 

 

念法 第三チャクラ(成長中)

 

 

所持資格 災害担当部隊シューター/バイク免許

 

 

 

 

 

 

・エリオ=モンディアル 9歳

 

 

身長130㎝

 

体重35kg

 

 

 

階級 三等陸士

 

 

魔法術式 近代ベルカ式・陸戦Cランク(魔力総量Bランク・成長中)

 

 

念法 第三チャクラ(成長中)

 

 

所持資格 今のところ無し

 

 

 

 

 

・キャロ=ル=ルシエ 9歳

 

 

身長124㎝

 

体重31kg

 

 

 

階級 三等陸士

 

 

魔法術式 ミッドチルダ式・陸戦C+ランク(魔力総量Bランク・成長中)

 

 

念法 第三チャクラ(成長中)

 

 

所持資格 今のところ無し

 

 

 

 

 

 

・リインフォース=アインス

 

 

身長165㎝

 

体重52kg B97(G)W61 H89

 

 

 

階級 一等陸尉

 

 

魔法術式 古代ベルカ式・総合S+ランク

 

 

所持資格 広域防御SS

 

 

 

 

 

 

・リインフォース=ツヴァイ

 

 

身長120㎝(子供モード)通常時30㎝

 

 

 

階級 地曹長

 

 

魔法術式 古代ベルカ式・総合AAA+ランク

 

 

 

 

 

 

・シグナム

 

 

身長167㎝

 

体重53kg B98(G)W62 H91

 

 

 

階級 二等陸尉

 

 

魔法術式 古代ベルカ式・空戦Sランク

 

 

所持資格 中隊指揮官/普通自動車運転免許

 

 

 

 

 

 

・ヴィータ

 

 

身長125㎝

 

体重33kg B65(A)W47 H61

 

 

 

階級 三等陸尉

 

 

魔法術式 古代ベルカ式・空戦Sランク

 

 

所持資格 戦技教官/小隊指揮官

 

 

 

 

 

 

・シャマル

 

 

身長165㎝

 

体重51kg B94(F)W60 H88

 

 

 

 

役職 主任医務官 

 

 

魔法術式 古代ベルカ式・総合S-ランク

 

 

所持資格 主任医務官C-Ⅲ種

 

 

 

 

 

 

・ザフィーラ

 

身長195㎝

 

体重98kg

 

 

 

階級 三等陸尉

 

 

魔法術式 古代ベルカ式・空戦Sランク

 

 

所持資格 要人警護/広域防御S

 

 

 




まあ、別に読み飛ばしても問題は無いと思いますがね



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第63話 古代遺物管理部機動六課

長かった……

ようやくStS編に入ります

原作?

既に虫の息どころの話ではありませんw

ご都合主義?

ヒャッハー!と大騒ぎですw




 

 

 

 

「と言うわけで、君達は今日からこの部隊を運営してもらいたい」

 

時空管理局に来て、レジアスのおっさんに呼び出されて言われたのがこの言葉。

 

紙を渡される。

 

そこには『古代遺物管理部機動六課』と書かれていた。

 

……何か、強引な気がしないでもないが。

 

「……いきなりッスね」

 

「まあ、嘱託ではあったが君達は何度も難事件を解決している。故に、そのまま一部隊任せようと思ってな」

 

「……その心は?」

 

「……リンディ提督とレティ提督に……な」

 

そう言って何やら遠い目をし始めるレジアスのおっさん。

 

何を言われたのやら。

 

「……でも、俺達今日から本格入局したペーペーですよ?」

 

「それについては問題ない」

 

「へ?」

 

「オーリス」

 

「はい」

 

レジアスのおっさんの娘であるオーリスさんから何やら紙を更に渡される。

 

「はい、アレス君はこれ」

 

手渡された紙を見ると、辞令書と書かれている。

 

更に見ると……。

 

「本日より、『二等陸佐』の位を授与する……っておい!」

 

その下には『古代遺物管理部機動六課副部隊長に任命する』と書かれている。

 

陸佐って、幹部級じゃねーか!

 

階級を何段階すっ飛ばしてるんだよ!

 

「……だから、リンディ提督とレティ提督に……」

 

「……分かった」

 

もうツッコミを入れるのを止めようかな……。

 

「えっと、私は三等陸佐でお兄様と同じ副部隊長ですわね」

 

エヴァも紙を受け取って読んでいた。

 

「わ、私も二等陸佐でしかも六課の部隊長やん……」

 

はやてが六課のトップらしい。

 

「にゃあ……私は『一等陸尉』でスターズ分隊隊長なの……」

 

「私は……あ、なのはと同じで一等陸尉、ライトニング分隊隊長だって」

 

なのはがスターズ分隊隊長でフェイトがライトニング分隊隊長か。

 

そこら辺は原作通りか。

 

「あたしは……あ、一等陸尉だ。ライトニング分隊副隊長だって」

 

「何? 私もライトニング分隊副隊長だぞ? 位は二等陸尉だが」

 

アリシアとシグナムがライトニング分隊副隊長……?

 

と言うことは。

 

「あら? あたしはなのはと同じ隊みたいね。スターズ分隊副隊長で一等陸尉だわ」

 

「……あたしもだな。三等陸尉だけど」

 

アリサとヴィータがスターズ分隊副隊長ねぇ。

 

「私はロングアーチ隊隊長で一等陸尉だよ」

 

すずかがそっちか。

 

「私もロングアーチ隊で主任医務官みたい」

 

「……同じくロングアーチ隊で三等陸尉」

 

シャマルとザフィーラがそう言う。

 

「ふむ、私もロングアーチ隊で一等陸尉……だと?」

 

「私もロングアーチ隊で地曹長です!」

 

 

さて、まとめてみるか。

 

 

 

 

・総隊長   八神はやて(空戦SS)

 

 

・副総隊長  藤之宮アレス(空戦SS++)

       エヴァンジェリン(空戦SS++)

 

 

・スターズ分隊隊長 高町なのは(空戦SS)

 

 

・スターズ分隊副隊長 アリサ=バニングス(空戦S+)

           ヴィータ(空戦S)

 

 

・ライトニング分隊隊長 フェイト=テスタロッサ(空戦SS)

 

 

・ライトニング分隊副隊長 アリシア=テスタロッサ(空戦S+)

             シグナム(空戦S)

 

 

・ロングアーチ隊長 月村すずか(空戦S+)

 

 

・ロングアーチ隊員 リインフォース=アインス(総合S+)

          リインフォース=ツヴァイ(総合AAA+)

          シャマル(総合S-)

          ザフィーラ(空戦S)

 

 

 

 

……。

 

 

原作より戦力充実してるよね?

 

リミッターかけないとヤバくね?

 

「……なにこの超高ランクの集まり部隊」

 

「……にゃはは……クロノ君が見たら頭をかきむしって発狂しそうだね」

 

「確かに」

 

「普通ならこんな部隊任されたら胃に穴が空きそうやな」

 

そんな事を呟く俺達。

 

「うむ、リミッターをかけようと思ったのだが」

 

「だが?」

 

「君達が使ってる『念法』だったかな? それがあるなら魔力リミッターかけても意味無いんじゃないかと言う意見が出てな」

 

確かに。

 

魔力制限かけても気の方で戦えば良いんだしな。

 

……なのはとフェイトとはやてはキツイが。

 

「よって、リミッター制限は無しにした」

 

「そうですか」

 

「それに、地上の方は高ランクが少ないから平均で見たら空と海と大差無くなるしな!」

 

どんだけ高ランクを空と海に吸い取られてるんですか。

 

つーか、俺達が入らなかったらどんだけ差が開いていたのか。

 

「まあ、アレス様々って言うことだな。空と海の奴らはアレス以外を欲しがっていたみたいだが」

 

あ、やっぱり何やらそう言う引き抜き的な事はあったのね。

 

「……まあ、レティ提督とリンディ提督に助言されて……な。離ればなれにしたら、ロクな事にならんとな」

 

どんな助言をしたのやら。

 

「兎に角、数年はこの部隊で頑張って貰いたい」

 

『分かりました』

 

俺達はそう言って部屋を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

さて、一週間の時は流れて。

 

明日は『古代遺物管理部機動六課』発足の日だ。

 

準備期間を経てようやくと言った所か。

 

俺達が住むのはベルカ自治区のとある屋敷……ではなく、六課にある宿舎。

 

自治区の方は購入しておいて、プレシア女史、リニス、アルフに管理を任せる事となった。

 

……たまに母さんとか桃子さんが来る事もあるが。

 

週一に帰る位に考えておこうか。

 

宿舎の方は……四階全てが俺の関係者達がしめる事となる。

 

ちなみに、男子禁制ではあるが俺は例外となる。

 

まあ、子供達も一緒で半分保育園状態でもあるが。

 

そして、ギンガ、スバル、ティアナも一緒になる。

 

3人は感無量の涙を流していたが。

 

スバルとティアナも六課に入ることとなったが、ギンガも入る事となった。

 

状況に応じてスターズかライトニングのどちらかに入る一種の遊撃隊みたいな感じである。

 

既に原作はどこかに消えたみたいだ。

 

まあ、A's編で崩壊していたから今更って感じだが。

 

「念願の同棲生活♪」

 

「これでアレスお兄ちゃんと一杯出来る♪」

 

「毎晩が楽しみだね♪」

 

満面の笑みを浮かべるギンガ、ティアナ、スバル。

 

えー、9人っすか。

 

精力剤を作るのも視野に入れた方が良いかも知れない。

 

全員、毎晩2~3発をお望みなのだから。

 

いや、まあ、毎晩ヤるのは良いよ?

 

全員がそれぞれ違うのだから。

 

何が違うのかは、想像に任せるがな!

 

……今宵も肉欲に溺れた宴が始まるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の早朝。

 

俺とフォワード4人(ティアナ、スバル、エリオ、キャロ)は早朝訓練を開始する。

 

「はい、と言うわけで。皆に戦って貰うのはこいつだ」

 

俺は念話で遠くに離れているシャーリーにガジェットドローンを出すように指示する。

 

ティアナ、スバル、エリオ、キャロの目の前に現れるのは。

 

カプセル型のちょっと変わった魔導機械が現れる。

 

「わー」

 

「へぇ」

 

「まあ、見ての通りちょっと変な形をしているが」

 

俺は魔法の矢を作り、放つ。

 

 

キィン

 

 

魔法の矢はかき消される。

 

「わっ」

 

「消えた……」

 

「この様に魔力をかき消す能力を備えている」

 

俺は念話で更にシャーリーに指示を出す。

 

浮かび上がるガジェットドローン。

 

「スバル、ウイングロードでヤツに近づいて見ろ」

 

「え、あの……」

 

「スバルの想像通りだ」

 

「はい、分かりました」

 

スバルはそう言うとウイングロードを展開してガジェットドローンに近づく。

 

「わわ、やっぱり!」

 

スバルのウイングロードはかき消される。

 

しかし、すぐに気による飛行に切り替えてその場に浮かぶスバル。

 

そしてゆっくりと降りてくる。

 

「見ての通り、ヤツの周囲は魔力阻害する空間が展開されている。とりあえず、『AMF(アンチ・マギリンク・フィールド)』と呼んでるが……」

 

俺はガジェットドローンに近づき……。

 

「フン!」

 

左手から繰り出すパンチ。

 

ガジェットドローンに突き刺さる。

 

「ま、物理攻撃はこの様に通る」

 

「……なるほど」

 

「ねぇねぇティア……気で強化してもいけるよね?」

 

「うん、アレスお兄ちゃんのあの様子だと気の方ならいけるって言いたげみたいよ?」

 

「それなら、炎でもいけるかも……」

 

4人はヒソヒソと会話している。

 

「という訳だ。これからこいつと戦って貰うぞ」

 

俺は指を鳴らす。

 

ガジェットドローンが8体現れる。

 

「とりあえず、初級編だ。殲滅か、捕獲。時間は……ぬるめの15分」

 

そう言うと、ガジェットドローンは一斉に逃げ出す。

 

「失敗した場合は、そうだな……なのは、フェイト、アリシア、はやて、アリサ、すずかの6名による3時間みっちりきっちり模擬戦といこうか」

 

そう言うと4人は顔を真っ青にして一斉にガジェットドローンを追い始めた。

 

……ま、あの6人は気が付いたら人外領域にようこそ状態だからな。

 

どのくらいかと言うと。

 

一番小柄なはやて(それでも身長は170㎝あるが)でも鼻歌混じりでコンクリの壁に大穴開けたり。

 

どこぞのストリートファイターみたいに車を1分でスクラップにしたり。(拳のみで)

 

「あかん! リアルで星の白金(スタープラチナ)が出来るとは思わんかったわ!」

 

と笑いながら拳の弾幕で鉄板(1㎝)をボコボコにしたり。

 

……魔改造しすぎた様な気がせんでもないが。

 

まあ、良いか。

 

そんな感じである。

 

俺?

 

俺の場合はパンチ1発で車をスクラップに出来ますが、何か?

 

 

ちなみに、4人は5分でガジェットドローンを破壊してました。

 

なかなかいい感じである。

 

 




序盤の方はアニメを観ながらある程度の流れにそって書いています。

まあ、既に全員の能力が魔改造されてるので起きないイベが多々ありますがw


特に、ティアナのイベとかwww



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第64話 ファーストアラート

ラピュ○は滅びぬ!何度でも甦るさ!

ぶっちゃけ言いますと、StS編って……

書くの面倒www

人数多すぎ!

ナンバーズとか未だに分かってないし!

とりあえず、アグスタまでは通常の流れで

……ちょいと変わっていても気にしないでくださいwww




 

 

 

 

 

「それじゃ、本日の早朝訓練ラスト1本。みんな、まだいける?」

 

『ハイ』

 

目の前では空に浮かぶなのは、地上ではだいぶ汚れてしまったフォワード4人。

 

俺は近くでその様子を眺めている。

 

「じゃあ、シュートイベーションにいこっか。レイジングハート?」

 

【分かりました】

 

レイハさんを振りかざすなのは。

 

【アクセルシューター】

 

なのはの足下に桃色のミッド式魔法陣が浮かび上がる。

 

そして……桃色の弾が現れる。

 

俺は過去で見たアニメの様子を思い浮かべる。

 

確か……15発前後だったよな、あの時は。

 

しかし、目の前のなのはの周りに現れる弾の数は……。

 

「……エヴァ?」

 

【どうされました?(何か、久しぶりの台詞の気がします)】

 

「俺の目がおかしくなったのだろうか?」

 

【いえ、私の目にもきちんと写ってますよ? 300発近くの弾が】

 

目の前のなのはの周りに浮かぶ、数えるのが面倒になる位の弾。

 

……フォワード4人を見ると、目の光が失われてるぞ!

 

【放っておくと、多分……殺されるかも?】

 

「ちょっと止める」

 

俺は空間転移でなのはの後ろに現れる。

 

 

「こりゃ!」

「にゃ!?」

 

 

ハリセンモードに切り替えてなのはの頭を叩く。

 

スパーンと軽快な音が響く。

 

「にゃあ……何で叩くの?」

 

しかめっ面で俺の方を見るなのは。

 

「スバル達を殺す気か?」

 

「えー? これ位でも大丈夫でしょ? アレス君も余裕で出来てるし」

 

「俺を基準にするな!」

 

そう言って更に頭を叩く。

 

「うにゃ!」

 

「兎に角、数を減らせ。15発位に」

 

「えー? それ位じゃすぐ終わっちゃうよ~」

 

「……20発。それ以上はダメだ」

 

「ん~、分かったよ~。もう、アレス君は甘いな~」

 

【全くです。マスターの時はまだ厳しかったと思います】

 

何故か2人(?)に責められる俺。

 

「早朝からいきなりそれはキツイだろ。段々と増やすもんだ」

 

「……まあ、そうだね」

 

【……そう言えば、そうでしたね】

 

過去に段階的に増やしていったのを思い出す2人。

 

そうすると、弾が少なくなっていく。

 

俺はチラリ、とティアナ達を見る。

 

涙目で『ありがとうございますぅ』と言ってるのが見て取れた。

 

「それじゃ、5分間被弾無しで過ごすか、私に一撃当てるかで終了だよ」

 

そう言ってなのはは構える。

 

フォワード4人も構える。

 

「それじゃ、始め!」

 

なのはのかけ声と共に開始される。

 

俺はそっと離れる。

 

ちなみに。

 

3回被弾してから5分間逃げまくってようやく終了のであった。

 

……4人は果敢に攻撃を当てようとしていたが、全て回避されて逆に迎撃されて終了していた。

 

……考えてみたら、原作より体術が半端無く上回ってるから当たる訳無いわな。

 

俺は倒れ込んでいるフォワード4人を見ながらそう思うのであった。

 

 

 

 

 

「コレが……」

 

「私達の新デバイス?」

 

スバルとティアナがそれぞれのデバイスを見ながら言う。

 

「そうでーす♪設計主任はあたしで、アレスさん、なのはさん、フェイト

さんにすずかさんとエヴァさんにリイン曹長と……」

 

言葉に詰まるシャーリー。

 

「えっと、とりあえず、アレスさんのお嫁さん6人が関わってますね」

 

「ストラーダとケリュケイオンは変化無さそうですけど……」

 

「そうなの……かな?」

 

エリオとキャロは自分のデバイスを見ながら呟く。

 

「違いまーす!」

 

「変化無しは外見だけだぜ?」

 

俺は口元を少しつり上げて微笑む。

 

「あー! お父様、私の台詞ー!」

 

「あ、すまんすまん」

 

頬を膨らませるツヴァイ。

 

「お2人には今回に限り、最低限の機能しか追加していないデバイスを渡していました」

 

「まあ、ちぃっと物足りなかったかも知れないがな」

 

「言われてみると……」

 

「そうだったかも」

 

エリオとキャロは顔を見合わせる。

 

「コホン、今までのデータを集約して、六課のスタッフとアレスさん達の意見を採り入れて……」

 

「長い時間かけて作り上げたデバイスだ」

 

「ですから、皆さんの能力にピッタリのデバイスだと思います」

 

「そうだったのですか……」

 

ティアナはデバイスカードを手に取る。

 

「ですから、ただの武器と思わずに相棒と思っていただけたら幸いです」

 

「そうだよね、アレスお兄ちゃんが監修してくれたんだよ?」

 

「……確かに! コレは私達への愛情が籠もったデバイスと思わないと!」

 

スバルとティアナは目を輝かせて手を取り合っている。

 

……放っておこう。

 

「ま、あの2人は放っておいて。エリオとキャロのもきっちりと仕上げているからな」

 

「はい!」

 

「ありがとうございます!」

 

「この子達も、目一杯使って貰う事を望んでいるから……」

 

シャーリーがそう喋っていると、ドアが開く。

 

入ってきたのはなのはだった。

 

「あ、遅れちゃった?」

 

「いや、遅れてないな。むしろ、丁度良かった」

 

「そっか。それじゃ、使う事は出来るんだよね?」

 

「はい。それじゃあ、今から機能説明ね」

 

そう言うと、シャーリーは説明を開始する。

 

「とりあえず、今は出力リミッターをかけてるから、驚くほど出力は出ないわよ」

 

「ま、そのうち慣れるとは思うが」

 

「慣れていったら、はやてちゃんやアレス君、私とフェイトちゃんにアリシアちゃんとすずかちゃんとアリサちゃんの判断でリミッターを解除していくね」

 

「他にも、シグナムとヴィータ、アインスやツヴァイの判断も含まれるが」

 

「……改めて聞くと凄いメンツの気が」

 

「……確かに」

 

苦笑いのティアナとスバル。

 

「それと、本来ならデバイスだけじゃなく。俺達自身にもリミッターをかける予定だったのだが……」

 

チラリとなのはを見る。

 

「まあ、レジアスのおっさんに必要性が少ないだろうと言う理由でかけてないんだ」

 

「かけてないんですか……」

 

「ああ。俺の場合は……魔力総量で言えばせいぜいAランク。出力リミッターなんぞかけたらそれこそティアナの半分位になるな」

 

「……確かに」

 

苦笑しているなのは。

 

「そんなになったら俺は魔法は使わず……」

 

俺は第三チャクラまでを回す。

 

「こっちで戦う」

 

身体から闇のオーラが立ち上る。

 

「気……ですね」

 

「あわわ、アレスさんがそれを使うのは」

 

「死ぬ気で戦わないとダメかも」

 

何気に結構酷い事言ってね? キャロとエリオ君?

 

「それに、気の方は使う人がほとんどいないから……」

 

「限定かける必要もないし」

 

「そもそも、かける機械もまだ作られていない」

 

「と言うわけで」

 

「気に関してはほとんど野放し状態って訳」

 

「それって何か……インチキ臭いような」

 

少し目を細めるティアナ。

 

「ん? 要望なら気も制限かける機械を作ってみようか?」

 

「……いいえ! 勘弁してください!」

 

俺の台詞を聞いて少し考えた後、拒否するティアナ。

 

まあ、ティアナも気を使える様になってるからな。

 

下手に制限をかけられると困るだろう。

 

「それでも、俺の場合は問題は少ないがな!」

 

そう言って、くず鉄置き場にあった鉄球を手に取る。

 

そして、握りつぶす。

 

粘土の様に、簡単に。

 

 

 

「……いつ見ても」

「……アレスお兄ちゃんの」

「……身体能力は」

「……凄いです」

 

「にゃはは、アレス君……重力負荷で身体能力が普通の人の10倍以上だから……捕まったら、ミンチだよ?」

 

「そう言う訳。それに……スバル?」

 

「え、は、はい?」

 

「殴ってみ?」

 

「え? 良いんですか……? 騎士甲冑纏って無いじゃないですか」

 

「ああ。腹を……な?」

 

俺はウインクする。

 

「……分かりました!」

 

そう言ってボディを殴って来るスバル。

 

 

ゴィン!

 

 

分厚い鉄板を殴った様な音が響く。

 

「―――――――――ッ!!!」

 

涙目になって右手を押さえるスバル。

 

「……えっと?」

 

「見ての通り、筋肉繊維が常人の数倍になってるから……」

 

「にゃはは? 鉄の棒で殴っても……鉄の棒が折れ曲がるの……」

 

「……そうだったんですか。いえ、前に……アリサさんが殴ってから手を持ってうずくまる姿を見てましたが」

 

「……そう言う事だったんですね」

 

「……人間の身体って凄いんですね」

 

目を丸くして驚くキャロ。

 

「アレスさんにデバイスって必要なのかな……」

 

シャーリーの言葉が俺にだけ聞こえたが。とりあえず、おいておこうか。

 

その時。

 

周りのディスプレイが赤く光り、中には『ALERT(アラート)』の文字。

 

……コレは、一級警戒態勢!

 

どうやら、ガジェットドローンが現れたって訳か。

 

「グリフィス君!?」

 

〈はい、教会本部から出動要請です!〉

 

〈グリフィス君、アレス副隊長となのは隊長、フェイト隊長! こちらはやて!〉

 

〈状況は?〉

 

フェイトからの通信も入る。

 

〈教会騎士団の調査部が追ってたレリックらしきモノが見つかったんや。場所は、山岳丘陵地区で対象は山岳リニアで移動中や〉

 

〈移動中って……〉

 

「まさか」

 

〈その……まさかや。リニア内にガジェットが進入して、車両の制御が奪われてる。リニアレール内にいるガジェットは最低でも30体。大型に飛行タイプも出てるかも……〉

 

ふむ、初出勤にしてはちょいとレベル高めだな。

 

〈ええ! 他に地区にも……ガジェットやて? そっちは……アリシアちゃんにアリサちゃん、すずかちゃんも行って貰う……え? うわ! そっちも! そっちはシグナムにヴィータ、アインスにお願いや!〉

 

ディスプレイ向こうでテンぱってるはやて。

 

「……こっちは俺となのは、フェイトにフォワード4人で良いな?」

 

〈そやな……お願い出来るか?〉

 

「了解だ、隊長」

 

〈それじゃ、お願いや! ティアナ、スバル、エリオ、キャロ。みんなも、初出勤がいきなりハードだけど……お願い!〉

 

〈了解です!〉

 

4人はそう答える。

 

〈よし、それならアレス君にフォワード4人の補佐をお願いや!〉

 

〈私もすぐに追いつくから、先行お願いします!〉

 

「了解」

 

「了解!」

 

俺達は一斉に準備に取りかかる。

 

 

 

 

 

 

 

現場に到着して、フォワード達と共に暴走する列車の天井に乗る。

 

「あれ……このジャケットって?」

 

「ひょっとして、隊長達の……」

 

「ああ、俺達の騎士甲冑やバリアジャケットと参考にデザインした。まあ、多少の癖はあるかもしれないが」

 

「ぶー! また私の台詞取ったー!」

 

「あ、すまんすまん」

 

「もう! 今夜は添い寝を強要します! ぷんぷん!」

 

頬を膨らませてるツヴァイ。

 

「む」

 

足下から衝撃が伝わってくる。

 

どうやらガジェットがこっちに反応したみたいだ。

 

「ほれ、敵が来るぞ?」

 

俺は杖を手に取り、構える。

 

「あ、スバル!」

 

「はいです!」

 

天井が突き破られてガジェットが飛び出してくる。

 

「シュート!」

 

ティアナが魔法弾を射出する。

 

飛び出してきたガジェットは穴を開けられ、すぐに大破する。

 

「うぉぉぉぉぉぉっ!」

 

スバルは穴に飛び込んでいく。

 

「ったく、突撃が大好きだな」

 

「アレスお兄ちゃん、スバルをお願いします!」

 

「私は列車の操作室の方に向かいます!」

 

「ん、了解」

 

俺はスバルの後を追う。

 

中に入ると一撃でガジェットを殴り壊して次にガジェットに殴りかかるスバルの姿が見えた。

 

ふむ、敵の攻撃もキチンと見切っている。

 

「リボルバーシュート!」

 

右手の一撃が天井に張り付いているガジェットに炸裂する。

 

と同時に天井を突き破って空中に飛び出してしまう。

 

「わわ!」

 

「っと、加減を間違えたな?」

 

俺は即座に虚空瞬動でスバルの背後に回ってスバルを受け止める。

 

「わっ」

 

「ほら、そのままだと落ちるぞ?」

 

「あ、その、すいませんっ」

 

顔を真っ赤にするスバル。

 

「ま、新しいデバイスで威力も上がってるから加減を間違えるのも仕方ないが……」

 

「その……」

 

「それをフォローするのが俺の役目ってね。ほら、次のヤツが待ちかまえてるぞ?」

 

俺は下の方を見る。

 

新手のガジェットが現れてくる。

 

「あ、はい!」

 

スバルはまた飛び降りて次のガジェットに殴りかかっていく。

 

「よしよし、いい調子だな! スバル!」

 

「はい、ありがとうございます! って、アレスお兄ちゃん!?」

 

「分かってるよ?」

 

後ろから寄ってくるガジェット。

 

勿論、お見通しである。

 

「そんな見え見えの奇襲なんぞ当たるかよ」

 

俺は左手の裏拳でガジェットを一撃で破壊する。

 

「さすがだね……」

 

「油断するなよ?」

 

俺はスバルの背後に寄るガジェットを殴り飛ばす。

 

縮地で間合いを詰めているので端から見ると瞬間移動したように見えるだろう。

 

「さすがですね……」

 

ゆっくりと振り向くスバル。

 

「ま、この域に達するにはかなり時間を要するが」

 

「ですね……」

 

【大丈夫です。私の計算ではあと2年で縮地はマスターしているはずですので】

 

エヴァからの助言も入る。

 

「あ、スバル?」

 

「え、はい」

 

「人間、死ぬ気になれば……大体の事は出来るらしいよ?」

 

「へ?」

 

「大丈夫、ちょいとあの世が見る事が出来る位さ!」

 

「……ひぃ!」

 

スバルの背後にムンクの叫びが見える様な気がするが、まあ大丈夫だろう。

 

「応援に来ました!」

 

ティアナがやって来る。

 

「ああ、っと?」

 

〈ライトニングFがエンカウントしました! 新型です! アレス副部隊長、8両目に応援願えますか?〉

 

シャーリーからの念話が届く。

 

「ん、了解」

 

俺はスバルとティアナを見る。

 

「どうやら、エリオとキャロの方に新型ガジェットが出たみたいだわ」

 

「っ!」

 

「と言うわけで、応援に行くわ。2人は大丈夫だろ?」

 

「はい」

 

「大丈夫です」

 

「ま、この調子なら余程のヘマしない限り大丈夫だろ。じゃ、行ってくる」

 

俺はスバルが開けた穴から上に出て後ろの車両に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

「うぉぉぉぉぉぉ!」

 

たどり着くと、屋根の上で新型ガジェットを切り裂くエリオの姿。

 

うーむ、あっさりと倒しているじゃないか。

 

「む、大丈夫だったか」

 

「あ、アレスさん」

 

フリード(大)に乗ってるキャロ。

 

まあ、既に召喚制御出来てるから原作の様な展開にはなってなかったんだろうけど。

 

「シャーリーから何やら新型とエンカウントしたから応援をお願いされて来たのだが……」

 

「えへへ、倒しちゃいました」

 

「倒したなら問題ないな」

 

「アレスさん……何とか倒しました」

 

「うむ、良くやった」

 

その時、後ろの車両から同じ様な機体が現れる。

 

「あ……」

 

「また……」

 

「よし、ちょっとだけ休憩と取らせよう」

 

「え?」

 

「へ?」

 

「そんな、大した休憩にならないかも知れないが」

 

俺は左手に杖を持って構える。

 

「やっぱり、槍の突破力は大事だよな?」

 

「え、はい、そう……ですね」

 

「いずれは、エリオもコレくらい出来るようになって貰いたいと思う訳よ」

 

俺は第5チャクラまで回す。

 

身体から闇のオーラが立ち上り始める。

 

「竜牙」

 

 

 

ズンッ

 

 

 

俺は縮地の勢いで突きを放つ。

 

目の前には身体を貫かれて煙を吐く新型ガジェット。

 

「よっと」

 

食い込んだ左手を抜く。

 

新型ガジェットはそのまま倒れる。

 

 

「……」

「……」

 

 

 

目を見開いて俺の方を見るエリオとキャロ。

 

「お粗末様ってヤツだな」

 

俺は2人の前に立つ。

 

「あ、あの~」

 

「す、すみません」

 

「ん?」

 

おずおずと手を挙げる2人。

 

「ちょっとしか……見えませんでした」

 

「私も……ちょっとしか……」

 

「はっはっはっ、そうかそうか。でもだいぶ慣れて来たな」

 

「……はい」

 

「……いつ見ても、アレスさんの竜牙は凄いです」

 

〈車両内、上空のガジェット反応全て消失!〉

 

〈スターズF、レリックを無事確保!〉

 

〈車両のコントロールも取り戻しました! 今止めます!〉

 

〈ほんなら、丁度ええな。スターズ2人とリインはヘリで回収してレリックを搬送。アレス君とライトニング2人はそのまま現場待機で事後処理の引継や〉

 

はやてからの指示が来る。

 

「ん、了解」

 

こうして、初の出動は無事に終えるのであった。

 

 

 

 

 

 




こうして見ると、イベントがだいぶ削られてね?

キャロ→既に召喚術マスター済み。フリードとかも自由に操れる

ティアナ→劣等感はまるで抱いていない



まあ、原作は既に息してないから気にするのは止めようか!



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第65話 訓練風景


閑話的な?

ちょっと短いです




 

 

 

 

 

「でりゃあぁぁぁぁぁぁっ!」

 

アイゼンを振りかざして殴りかかるヴィータ。

 

「マッハキャリバー!」

 

【プロテクション】

 

スバルはその攻撃を防ぐべく目の前にバリアを発生させてヴィータの攻撃を防ぐ。

 

「ぐ……」

 

「うぉりゃあぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

二撃目を繰り出してスバルを吹っ飛ばそうとする。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

スバルは第三チャクラを回転させて身体能力を上げる。

 

そして、ヴィータの攻撃をはじき飛ばす。

 

「ぐぅ!?」

 

逆に吹っ飛ばされるヴィータ。

 

ほぅ、ヴィータのアレをはじき返すか。

 

だいぶいい感じに身体能力が上がってきたな。

 

「はあ……はあ……」

 

肩で息をしているスバル。

 

「いちちちち、やっぱり突破力に関してはあたしに引けを取らないって訳か」

 

ズボンの埃を払うヴィータ。

 

「あ、ありがとうございます」

 

「ふむ……それでも第三チャクラなんだろ?」

 

「は、はい」

 

「それで第五チャクラまでいけたら、あたしがはやてから魔力供給を受けた位の攻撃力と遜色無くなるな」

 

ため息をつくヴィータ。

 

「そ、そうなんですか……」

 

「ああ。その調子でいけばフロントアタッカーとして充分やっていけるぞ」

 

「はい」

 

「知ってると思うけど、フロントアタッカーは敵陣に単身で突っ込んだり、最前線で防衛ラインを守るのが主な仕事だ」

 

「はい」

 

「防御スキルとか、生存能力が高ければ高いほど攻撃時間も長く取れるし、サポート陣に頼らなくて済むというメリットがあるんだ」

 

「はい」

 

「具体例で言えば、そこであたし達の様子を見てる副部隊長とかな」

 

チラッと俺の方を見るヴィータ。

 

「あ、アレスお兄ちゃん……」

 

「副部隊長のフロントアタッカーとしての戦い方とか見る機会があったらしっかり見た方が良いな。単身で敵陣に突っ込んでも無傷だ」

 

「……確かに」

 

「回避率も半端ないが、防御スキル……と言うか、身体が既に人外以外の何者でもないからな」

 

「…………確かに」

 

自分の右手を見るスバル。

 

いつぞや殴った時の感触を思い出しているのだろうか。

 

「ああ、安心しろ。スバル」

 

「はい?」

 

「こいつはな、あたしがアイゼンでぶん殴ってもあたしの手の方が痛いと言うとんでもないヤツだ」

 

「……はあ……」

 

「だいたい、あたしの『巨人族の一撃(ギガントシュラーク)』を素手で殴ってはじき飛ばすんだよ……」

 

遠い目をして空を見上げるヴィータ。

 

「……」

 

苦笑してヴィータを見るスバル。

 

「まあ、真似しろとは言わないが、戦いに関しては学ぶ事は多いから見て損は無いと思う」

 

「真似しても良いんだぜ?」

 

「スバルを殺す気か?」

 

「大丈夫、死なないようにするのは得意なんだ」

 

「……ま、そんな訳だ。ちょいと不安になる台詞だが、なのはやフェイト、アリシアにアリサ、はやてにすずか。全員の近接戦闘のお師匠様だからな」

 

「……えっと、一応はなのはさん達の戦う様子を見て知ってはいるのですが」

 

「はやてもなのはも、元々は遠距離型だって言うの知ってるか?」

 

「え……」

 

「たまに、あたし達ベルカの騎士顔負けで近接戦するけど……」

 

ちらっと俺をみるヴィータ。

 

「アレスとずっと模擬戦とかしてたらこうなってた」

 

「マジですか」

 

「何だかんだで教えるのは上手だからな。あたしでも教わる時がある」

 

「へー」

 

「ま、そんな訳だ。分からない事があったらあたしでもアレスでもアリサでも教わると良い」

 

「分かりました!」

 

「で、副部隊長から何かあるか?」

 

「ふむ、ちょっと遊んでみるか?」

 

俺はヴィータを見る。

 

「……何をするつもりだ?」

 

「ちょっとした、回避術だ」

 

俺は両手に力を入れる。

 

「参考になるかは分からないが……とりあえず、殴ってきてくれ」

 

「分かった」

 

そう言ってヴィータは上段から殴りかかってくる。

 

「ふん!」

 

俺はハンマーの叩く面部分に拳を当てる。

 

 

 

ゴゥン!

 

 

 

「うわ!」

 

はじき返されるヴィータ。

 

「とまあ、芯にキチンと当てるとこうやって弾く事も出来る」

 

「いやいやいや」

 

手を振るスバル。

 

「いつー! そんなの出来るのお前だけだよ!」

 

手をピラピラと振ってるヴィータ。

 

「ふむ、コレは上級者向けだからな。他にも……」

 

ヴィータをチラッと見る。

 

「……分かったよ、もう一回だな?」

 

同じように構えてもう一度上段から振りかぶって殴りかかってくる。

 

「よっ」

 

俺はハンマーの横っ面を小突いて軌道をそらす。

 

「わっ」

 

ヴィータはそのまま地面を叩く。

 

ハンマーが地面にめり込む。

 

「コレは剣でも有効だからシグナムとかアリシア、アリサの時に使ってくれ」

 

「いえいえいえ、簡単に言いますけど」

 

「ちなみに、中級者向けには気、もしくは魔力を腕に纏わせて槍とかの突きをそらす技もある」

 

「わー……」

 

「いっぺんに言われても厳しいだろうが。まあ、いずれは出来るようになるさ」

 

俺はスバルに微笑みかける。

 

「……命がかかると人間、普段の能力を簡単に上回る事が出来るぞ?」

 

「ひぃ!」

 

顔を真っ青にするスバル。

 

「んじゃ、俺は他を回るわ」

 

「ああ、スバルはあたしが見ておくから」

 

俺はヴィータとスバルの所から離れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら! 腰に力入ってないわよ!」

 

「ひゃあ!?」

 

素手でギンガの攻撃をはじき返すアリサ。

 

こっちはギンガとアリサか。

 

そうそう、ギンガもこっちの六課に配属となった。

 

フォワード4人より実力は上だから遊撃扱いだが。

 

「いつも思いますけど、素手でその攻撃力は反則だと思います!」

 

「何言ってんのよ! 鍛えれば誰でも出来るわよ!」

 

「誰でもって……! どれだけ鍛えれば……!」

 

「んなもん、身体に重力負荷をかけてればイヤでも身に付くわよ!」

 

「重力負荷って……どれくらいですか!?」

 

「あたし達は今は200Gでアレスは今300Gよ!」

 

「潰れます! 道端で車に踏みつぶされた蛙みたいにペラペラになります!」

 

「大丈夫よ! 最初は2Gからだから!」

 

「2Gでも倍じゃないですか!」

 

「んなもん、気合いと根性があれば何とでもなるわよ!」

 

半分言い争いに近い感じで模擬戦らしい事をしているアリサとギンガ。

 

ギンガが攻撃してはアリサの拳で全てはじきとばされてる。

 

蹴りですら難なく弾かれてるから攻撃する方としてはたまったもんじゃないだろう。

 

「ほらほらほら! そんな貧弱な身体だとアレスとの夜はすぐに終わるわよ!」

 

「……くっ! それを言われると!」

 

……何か、話が変な方に向かってないか?

 

「知ってるでしょ! アレスは抜かず3発が好きなんだからね!」

 

「でも、その間に私達は20回はイってるんですけどね!」

 

「そうよ! アレスのアームドデバイスはキノコみたいに傘がデカいから中でかき回されて……」

 

「言わないで下さい! 思い出すと……」

 

2人は妙に顔が赤くなって動きが妙に遅くなってくる。

 

「……この2人は放っておこうか」

 

【そうですわね】

 

とりあえず、会話が聞かれるとアレだから認識阻害の結界を張ってその場から離れる事にした。

 

 

 

 

 

 

 

「エリオとキャロは、ヴィータやスバルみたいに頑丈じゃないから……」

 

「反応と回避が最重要だよ」

 

アリシアとフェイトがエリオとキャロに回避法を教えていた。

 

「最も、アレスみたいに頑丈でしかも回避が高いのが理想なんだけど……」

 

「実際には厳しいんだよね~。固い上に回避率高いとか攻撃側としてはもう無理ゲーとしか言えないけど」

 

「それで、はぐれメ○ルみたいにHPが低いならまだ良いけど……」

 

「真・女神転生Ⅲ〈ノクターン・マニアクス〉に出てきた魔王ル○ファーみたいにHPは高いわ(65535)、特定のスキルつけてないと攻撃は10分の1になるわ……(全ての敵に有効なハズの万能属性ですら10分の1のダメージにする)」

 

「アレスの事はとりあえず、置いといて」

 

「今は2人の回避率を上げる訓練にするね」

 

確かに、『貫通』を付けたら通常と同じ攻撃になるけどね!

 

ってか、そのネタ2人に分かるのか?

 

「まあ、前にも何回か言ってるからおさらいみたいなものだけど」

 

「基礎って大事だよ? アレスお兄ちゃんも毎日軽くは運動したりして動ける様にしてるし」

 

チラリと俺を見るアリシア。

 

「それじゃ、おさらいだね」

 

フェイトはサーチャーからの魔法弾を飛んで避ける。

 

「同じ場所に長居せずに、動き回ると相手も狙いをつけづらくて避けやすくなる」

 

「慣れてくれば、弾の軌道を読んではじくのも良いけど……」

 

アリシアは素手で弾をはじいていく。

 

「最初のうちは動き回って回避するのが良いかな。出来れば、低速で確実にね」

 

身軽に弾を避けていくフェイト。

 

「で、慣れてくるとスピードを上げていく」

 

弾の射出速度が上がってきた。

 

そして、一斉射撃する。

 

爆煙が上がって状況が分からなくなる。

 

ふむ、アリシアもフェイトもやっぱり速いよな。

 

ほんの僅か、フェイトが速いがアリシアもかなりの速さだと思う。

 

「こんな感じに」

 

「ね」

 

エリオとキャロの後ろに回り込んでるアリシアとフェイト。

 

「す、すごい……」

 

「わあ……」

 

目を丸くして驚くエリオとキャロ。

 

「最初はゆっくりとしたアクションで」

 

「それを速くしていけば良いだけの事なんだよ」

 

「勘とかはね……」

 

「お兄ちゃんみたいになれば良いんだけど……」

 

「アレは、2人にはまだ早いかな……」

 

少し、苦笑いのアリシアとフェイト。

 

「えっと……」

 

「アレは……」

 

俺の普段の光景を思い出したのか、同じように苦笑いのエリオとキャロ。

 

「丁度良いから、見てみる?」

 

「お兄ちゃんがどんな回避をするのか」

 

アリシアとフェイトが俺の方を見る。

 

「ん?」

 

「え……」

 

「いつの間に」

 

驚いているエリオとキャロ。

 

「まあ、ご指名だから見せるが。参考になれば良いけどなぁ……」

 

俺はさっきアリシアとフェイトが立っていた場所に立つ。

 

サーチャーが一斉に俺の方を向く。

 

「……ん?」

 

そして、一斉に射撃を始める。

 

「おいおい! いきなり弾幕射撃かよ!」

 

俺は即座に弾を回避する。

 

弾の隙間を縫うように身体を動かして弾を避ける。

 

「容赦無いな!」

 

連続で発射される。

 

それでも俺は周りに生えてる障害物の柱を蹴って空中に逃げて。

 

「空中でも当てられると思わない事だな!」

 

虚空瞬動で空中を蹴って軌道を変えて弾を避ける。

 

「凄い!」

 

「やっぱり、アレスさんの虚空瞬動が一番綺麗です!」

 

「アレスの虚空瞬動はもう芸術の域に達してると思うな」

 

「そうだね。アレに当てるのって……どうすれば良いのかな?」

 

「……360度からの一斉射撃しか無いと思う。隙間を全く無くして」

 

「……それって、撃ったらみんな一斉に逃げないと同士討ちになるよ?」

 

「そうだよね……」

 

「いつまで続ければ良いのかね?」

 

俺は非常識と思える弾幕射撃からずっと回避を続けている。

 

「あ、もう良いよ」

 

フェイトがそう言うと、弾の発射は止まる。

 

「よっと」

 

俺は4人の前に着地する。

 

「参考になったか?」

 

「うん、上級過ぎて参考になってないかも」

 

「残像見えてたし……」

 

「とりあえず、凄く速かったとしか……」

 

「私もです……」

 

「だろうな。ま、いずれはエリオとキャロもコレくらい出来るように……」

 

「え……」

 

「ホントですか……」

 

冷や汗を流すエリオとキャロ。

 

「いずれだぞ? 今日明日とか言う話じゃないからな?」

 

「出来るように……なるのかな?」

 

「自信……無いです」

 

「うむ、人間って言うのはな……」

 

エリオとキャロの肩に手を置く。

 

「死ぬ寸前になると、驚異的な力を発揮できるからな」

 

 

 

「……」

「……」

 

 

 

顔を真っ青にするエリオとキャロ。

 

「……鬼だね」

 

「お兄ちゃん……その笑みは悪魔にしか見えないよ……」

 

と言うわけで、アリシアとフェイトに任せて俺はここから離れる。

 

 

 

 

 

 

 

なのは達の所に来る。

 

なのはが魔力弾を射出してティアナが打ち落としている。

 

その様子をすずかが見ている。

 

「良いよ、その調子!」

 

すずかが指示を出している様だ。

 

そう言えば、すずかも拳銃型だからティアナに教えるのは都合は良いな。

 

「ティアナや私みたいな精密射撃型は避けたり受け止めたりしたら仕事が出来ないからね!」

 

「はい!」

 

「なのはちゃん!」

 

「はいな!」

 

次々と射出される魔力弾。

 

流れるように弾はティアナを襲ってくる。

 

「くっ!」

 

ティアナはそれを連続で打ち落とす。

 

うむ、いい感じになってるよな。

 

「へー?」

 

更に魔力弾を増やすなのは。

 

……ん?

 

それを更に打ち落とすティアナ。

 

すげーな、もう原作超えてね?

 

「わぁ、それならコレは?」

 

そしてもっと増やすなのは。

 

……何か、イヤな予感を感じる。

 

「……なのはちゃん?」

 

すずかの声が聞こえるが。

 

「うぅ!」

 

それでも何とか打ち落とすティアナ。

 

「すごいの! それならこれは!」

 

最初の3倍近くに弾数増えてね?

 

「……ひぃ!」

 

さすがのティアナも猛ダッシュで弾を避け出す。

 

おお、瞬動術使ってるぞ! すごいな!

 

「わ! ティアナ、瞬動が上手くなったじゃない!」

 

喜々とした表情で次々に弾を発射するなのは。

 

「ちょ! なのはさん!?」

 

それでも回避するティアナ。

 

フォワード4人の中で一番瞬動術が上手くなってるな!

 

一応他の3人も使う事は出来るが、たまに失敗する。

 

虚空瞬動も出来るが、よく失敗する。

 

【お兄様……アレは明らかに命がかかってるから火事場の馬鹿力を発揮しているのでは?】

 

「……まあ、俺もそんな気はしていたが」

 

「なのはちゃん! やりすぎよ!」

 

すずかが背後から蹴る。

 

その前蹴りは……どう見てもヤ○ザキックにしか見えんのだが。

 

「うにゃ!」

 

踏みとどまるなのは。

 

「はぁ、はぁ……」

 

涙目のティアナ。

 

「もう! ティアナを殺す気!?」

 

「えへへ、アレス君と特訓していた時を思い出しちゃって……」

 

舌を出して『てへぺろ』と笑うなのは。

 

「アレス君と一緒にしないの! アレス君は確かにF91みたいに質量を持った残像でかわす上に装甲を改造15段階に上げて精神コマンドの鉄壁をかけて気力150で防御態勢に入ったマ○ンカイザーみたいにすごく固いけど!」

 

そうして聞くとチートにしか聞こえないんだが。

 

「ティアナは改造していないボ○ル並みの装甲しか無いんだよ!」

 

それはそれでどうかと思うんだが! ってか、もはや紙装甲って言ってるようなもんじゃねーか!

 

「それじゃ、ティアナに失礼だよ? せめて、ザ○Ⅱとかボ○ボロットって言ってあげないと」

 

どっちも似たようなもんじゃねーか。

 

「……それ、どっちも変わらないからね?」

 

「にゃはは」

 

「あ、ありがとうございます……すずかさん……」

 

ボロボロのティアナがやって来る。

 

「お疲れ、ティアナ」

 

「お疲れ様です……アレスお兄ちゃんが前に言った『人間、死ぬ気になったら出来る』って言うのがよく分かりました」

 

「……ああ。それにしても、見事な瞬動だった。それが普段から出せるようになると……」

 

「なると?」

 

「なのはの弾幕は大体かわせるようになる」

 

「……その前に、ストレスで死ぬかも知れません」

 

「そうか?」

 

「そうです……ですから、今夜はたっぷりとヌカロクで……」

 

 

 

 

チャキ

 

 

 

右手の拳銃をティアナのこめかみに当てるすずかと。

 

同じくバスターモードのレイハさんをティアナのお腹に当てるなのはがいた。

 

2人の目は……据わっていた。

 

 

 

「ティアナ?」

「ダメだよ?」

 

 

 

「……はい」

 

うなだれるティアナ。

 

 

※『ヌカロク』→ググってみよう!ただし、18歳になってないそこの君はダメだよ!

 

 

「まあ、折角綺麗な瞬動が出来る様になったんだ。3発位良いだろ?」

 

「はい!」

 

「そうだね……」

 

「うん、確かに出来るようになってたもんね」

 

目をギンギンに輝かせるティアナ。

 

……ティーダさんが見たらどんな顔を見せる事やら。

 

そんな感じで本日の特訓は続くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 





このメンツで良識があるのはエリオとキャロ位かな?


他はヴィータとザフィーラだろうなー。


後の娘は頭のネジが少しゆるんでいるというか、何処かがおかしいですwww


まあ、ぶっちゃけアレスも少しおかしい所があるので気にしないでくださいwwwww




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第66話 ホテル・アグスタ


ついに来ました!

ティアナがやらかす話!


なんですが、ウチのティアナはやらかしませんwww


やらかすシーンを見たいなら、原作見てくださいwww


あ、感想返しは気が向いた時しかやりませんので……







 

 

 

 

 

 

バラバラバラ……。

 

 

 

俺達は今、ヘリに乗って移動中だ。

 

中に乗ってるのは、俺を筆頭になのは、フェイト、アリシア、はやて、アリサ、すずか、フォワード4人にギンガとシャマルとザフィーラとツヴァイ。

 

シグナムとヴィータとアインスは先にホテルに行って警備中である。

 

こないだ捕らえたガジェットを分解していたら『ジェイル・スカリエッティ』の名を発見したので、今後はレリックとスカリエッティを追う方向で捜査は進む。んー、そう言えば、転生者も残す所あと2人なんだよな。

 

管理局に入った『三千院隼人』はもう、いつでも捕まえられるが。

 

ちなみにヤツは何をやらかしたのか知らないが、今は辺境の次元世界に左遷されてる。

 

場所は知ってるからいつでも大丈夫と言うわけだ。

 

で、もう1人……が未だ見つかっていない。

 

もの凄く、巧妙なのか知らないが。全くもって、見つからないのだ。

 

ここまで来て痕跡が無いのは……記憶を失ってるのか?

 

……まあ、焦っても仕方ない。

 

地道に、こっそりと探すしかあるまい。

 

「で、今回の場所は……ホテル・アグスタ!」

 

「骨董美術品オークションの会場警備と人員警護が今日のお仕事だね」

 

「取引許可が出ているロスト・ロギアがいくつも出品されてるから、レリックと間違えてガジェットが出てくる可能性が高い……との事で、機動六課が呼ばれたのです」

 

「この手の大型オークションになると、違法密輸品の取引の隠れ蓑になるから。油断は禁物だよ」

 

「現場には、昨夜からシグナム副隊長とヴィータ副隊長とアインス他、数名の隊員が警備してるんや」

 

……そう言えば、昨日の夕方にアインスとシグナムが何やら今生の別れみたいな雰囲気になってたのはこのせいだったか。

 

「……アインスとシグナムは行きたくなかったみたいだけど」

 

「……くじ引きで決めたんやから仕方ないやん」

 

口を尖らせて返答するはやて。

 

 

くじ引きで決めたんかい!

 

 

「凄かったもんね……『主は私達に死ねと仰いますか!』とか」

 

「そうそう。『アレスちゃんのエキスが無いと干からびるんです!』とか」

 

……駄々っ子の様にごねる光景が目に浮かぶんだが。

 

つーか、夜天の魔導書と烈火の将の二つ名が泣くな。

 

「まあ、ヴィータが2人の頭を殴って気絶させてから連れて行ってたけど」

 

「ヴィータに感謝やな」

 

それって端から見るとスゲー光景だな。

 

「あの……シャマルさん?」

 

「はい?」

 

「そこの……ケースは?」

 

シャマルの足下に積んであるケース(6つ)を指さすキャロ。

 

「あ、これは……アレスちゃんのお嫁さん達のお仕事着です♪」

 

「……私らも、アレス君と離れて仕事なんや」

 

「……そうそう、ホテル内での警護」

 

「……あのオーナー、明らかにあたし達の身体をなめ回すように見てたわよね」

 

「……うん。特に、胸とか」

 

「え、私の方はお尻だったけど……」

 

「それは、違う人だったんじゃない?」

 

「あ、そう言えば私の方はすだれハゲだった」

 

フェイトさん、何気に酷い事言ってね?

 

つまり、なのは達は中で綺麗なドレス着て警護と言うわけだ。

 

「と言うわけで、フォワード4人とギンガちゃんは外で警護。ザフィーラも加わってね」

 

「うむ」

 

 

「で、アレスちゃんは私の警護♪」

 

 

頬を赤くして身体をもじもじさせてるシャマル。

 

 

 

 

ジャキジャキジャキジャキジャキ!

 

 

 

 

なのは、フェイト、アリシア、アリサ、はやて、すずか、ギンガ、ティアナ、スバルが自分達のデバイスを起動させてシャマルに突きつけていた。

 

 

『……』

 

 

全員の目は据わっていた。

 

「……それはダメだろ」

 

「ふぇーん! むさい男ばっかりでつまんないのー! アレスちゃんみたいな可愛い男の子を診たいのー!」

 

……そう言えば、何人かは俺やエリオみたな小柄な男性も局員にはいる。

 

だが、シャマルの所にだけは回さないように通達が流れているのだ。

 

……何をやったんだ?

 

「ったく、可愛い男の子を診察しとる時にやたらに鼻息荒くして診てるからそうなるんや」

 

「……だって、アレスちゃんを思い出すんだもん」

 

大丈夫か、湖の騎士……。

 

俺はチラリとザフィーラを見る。

 

首を横に振っていた。

 

「兎に角……や。アレス君はフォワード四人とギンガをフォローや」

 

「ん、了解」

 

俺は頷く。

 

「エリオ、ティアナとギンガとスバルがアレスに悪戯しそうになったらストラーダで刺して良いよ?」

 

「ええっ!?」

 

「キャロ、ティアナとギンガとスバルがお兄ちゃんに悪戯しそうになったらヴォルテールで燃やすか踏んづけて良いよ?」

 

「ふぇ!?」

 

何か、目の光加減がおかしいアリシアとフェイトが訳の分からん事言ってるよ?

 

 

『そ、そんな事しないですよ!』

 

 

言われた3人は何故か目をそらしながら言い訳してる。

 

「俺の目を見て話そうか?」

 

「ま、アレス君に襲われたなら不可抗力で不問にするけどな!」

 

はやてがそう言うと、ティアナ、ギンガ、スバルの3人は俺の方を見て何やら目を潤ませている。

 

「……仕事中に、んなことするわけねぇだろ」

 

「そうそう、アレスの方から襲われたなら休憩扱いね」

 

「うん、アレス君……溜めるのは良くないよ?」

 

アリサ、すずか?

 

「にゃはは、アレス君に襲われるなら仕方ないね」

 

「うん、それなら文句は無いね」

 

「うーん、3人ともお兄ちゃんに襲われたらたっぷりとヌいてあげてね?」

 

 

『はい!』

 

 

そこの返事は凄く良いな!

 

「……」

 

シャマルは『私も襲って下さい!』と目で訴えている。

 

 

「…………エリオ、キャロ」

 

 

「はい」

「はい」

 

 

「こんなダメな大人になるなよ」

 

 

「……」

「……」

 

 

苦笑いのエリオとキャロ。

 

とりあえず、ヘリはホテル・アグスタに向かうのであった。

 

ちなみに。

 

エリオとキャロは性教育は既に済ませている。

 

 

 

 

 

 

 

なのは達は中に入って警護にしている。

 

フォワード4人とギンガとザフィーラ、先行部隊のアインスとシグナム、ヴィータも加わりそれぞれ単独警護。

 

シャマルも上で司令の役目。

 

ま、俺も単独警護してるが。

 

一晩ぶりに会ったアインスとシグナムが抱きついて来た。

 

……ヴィータにまた引きずられて行ったが。

 

〈ガジェットドローン1型、機影80!陸戦3型……20!〉

 

シャーリーからの念話通信が届く。

 

さて、敵が来なさったか。

 

〈全員に通達。広域防御戦だ。フォワード4名とギンガはホテル前で防衛ラインを設置。そこの指揮はティアナだ〉

 

《了解です!》

 

〈俺とシグナム、アインス、ヴィータ、ザフィーラは迎撃戦だ。シャマルは後方での現場指揮だ〉

 

《了解》

 

〈おっと、シャマルはティアナに前線モニターを渡してくれ〉

 

〈分かりました〉

 

「それじゃ、いっちょ揉んでやるか!」

 

俺はガジェットが飛んでいる方に向かって飛ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

目の前に現れたのは15機位の群れのガジェット。

 

「エヴァ、天照(アマテラス)月読(ツクヨミ)を頼む」

 

【了解です】

 

左右の手に現れるのは2本の剣。

 

直刀に近いデザインだ。

 

「さて、俺の斬撃……耐えられるかな?」

 

俺は縮地で間合いを詰めて右の剣をガジェットに突き刺す。

 

煙を吐いて一撃で行動不能になるガジェット。

 

「特に変更点は無し……と」

 

背後に回り込むガジェットに左の剣を突き刺す。

 

同じように煙を吐いてその場に落ちる。

 

「さて、この程度なら5分あれば終わるな」

 

 

 

 

 

 

 

5分後。

 

15機全てを破壊した俺は次に目標に向かう事にする。

 

「ん……?」

 

【コレは……召喚魔法?】

 

割と近くで召喚魔法を使う者がいる。

 

……そう言えば、ルーテシアって言う女の子がいたな。

 

その子と一緒に行動する……確か、ゼストって言う人もいたよな。

 

【お兄様、確か……レジアスさんとゼストさんて親友じゃありませんでしたか?】

 

「む?」

 

俺はエヴァに言われて原作の内容を思い出す。

 

確か、2人は親友で。

 

ゼストはレジアスのおっさんに会いに行くんだったよな。

 

んで、最後の方でレジアスのおっさんはドゥーエに刺されて殺されてたな。

 

で、ゼストはシグナムに斬られて。

 

……さすがに、こっちのレジアスのおっさんは結構良い人だし。

 

見殺しにするのはちょいとイヤだな。

 

それに、前にオーリスさんから聞いた事があるな。

 

親友を殺してしまった事を悔やんでる……と。

 

酒を飲んだ時に、たまにそう愚痴る事があると。

 

「ふむ」

 

【会いに、行かれますか?】

 

「逃げられるやも知れんが、ちょっとコンタクトを取ってみるか」

 

俺は魔力が感知された場所に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

「いた」

 

ちょっと広い広場に立っている2人。

 

背の高い男と小柄な女の子。

 

……しかし、あの女の子。

 

Fateに出てきたライダーによく似てるんだが。

 

偶然か?

 

まあ、いい。

 

俺は2人の前に立つ。

 

両手の武器は消して、無手状態になって両手を上げる。

 

「っと、ちょいと聞きたい事がある」

 

 

 

「!」

「!」

 

 

 

2人は驚いている。

 

「見ての通り、武器は持っていない」

 

 

 

「……」

「……」

 

 

 

2人はジッと俺の方を見ている。

 

「自己紹介がまだだったな。俺の名は藤之宮アレス二等陸佐。時空管理局、古代遺物管理部機動六課の副部隊長を務めてる」

 

 

「!」

「!」

 

 

自己紹介を聞いて目を見開く2人。

 

「二等陸佐……だと?」

 

男の方が呟く。

 

「それってすごいの?」

 

少女が聞いている。

 

「……俺がかつてついていた役職よりもかなり上だ」

 

「へぇ……じゃあ、最年少エリート?」

 

「……歳はまだ19だ」

 

 

 

「!」

「!」

 

 

 

また目を見開く2人。

 

「あれで……19だと?」

 

「……私と大差無いのに」

 

「それについては放っておいてくれ……」

 

俺は口を尖らせる。

 

「……ひょっとして、『闇の魔人』……か?」

 

……エラい中二臭い二つ名が出てきたな。

 

「……誰?」

 

「昔、とある犯罪者が言っていた。時空管理局にいる……黒髪で前髪に一部金髪が混じり、右目は蒼い瞳で左目は漆黒の瞳である子供みたいなヤツがいると」

 

ジッと俺を見る2人。

 

「そう言えば、そんな名で呼ばれる事が多々あったな」

 

「決して逃れられる事は出来ぬ。捕まったら最期、100%管理局に引き渡される……とな」

 

「……!」

 

「……思い出してきた。確か、10年前に嘱託魔導士として入局して来たとか。古代ベルカ式『武神の魔導書』を持つとかなんとか」

 

「……ゼスト。ゼスト・グランガイツだろ?」

 

俺は問いかける。

 

「!」

 

「レジアスのおっさんが、酒を飲んだ席でたまに愚痴ってたよ」

 

「……」

 

「謝りたい。部下の不手際で、親友を殺してしまったと……な」

 

「……」

 

「今すぐ、とはいかないが。いずれは……会わせたいと思うんだが、良いか?」

 

「……分かった」

 

ゼストは頷く。

 

「ゼスト?」

 

少女はゼストを見る。

 

「……レリック11番だったかな?」

 

「!」

 

驚いた顔で俺の方を見る少女。

 

「見つけたら、うっかり落とすかも知れないな」

 

「……」

 

「それに、ゼストさん。あんたの身体……」

 

「……」

 

「俺の嫁に双子の子がいるんだ。名字はテスタロッサ。母親の名は……プレシア」

 

「!」

 

驚くゼスト。

 

「身体に不調が出る前に一度来てくれ」

 

「……ああ」

 

「レリック11番は俺も探しておく。もし見つけたら、連絡してやるから……お母さんを連れてこい」

 

「!!」

 

「それじゃ、名前……聞かせてくれるかな?」

 

「ルーテシア……」

 

「分かった。それまではドクターの言う事を適当に聞いておいてくれ」

 

「……ん」

 

頷くルーテシア。

 

「さて、ここには誰も居なかった……と」

 

振り返る。帰還するか。

 

「そう言えば、あのホテルに何の用だ?」

 

「ドクターに頼まれて、欲しい物があるって」

 

「どんなヤツ?」

 

「……ねじ巻きみたいな形で」

 

「ふむ」

 

「箱に『まきますか まきませんか』って書かれてる」

 

……何か、どっかで聞いたような気がするんだが。

 

【お兄様、それは今回のオークションの名目には載ってませんでした】

 

……メチャメチャ密輸品じゃねーか!

 

密輸品の方までは知らねーよ!

 

「……まあ、あまり手荒にならないようにな」

 

もう面倒だから止めるのやめよ。

 

つーか、スカリエッティは真紅でも入手したのだろうか。

 

ツッコミどころ満載なんだが。

 

こうして、俺はゼストとルーテシアと別れるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

そして、ガジェットを全て破壊して。

 

オークションは遅れて開催されるのであった。

 

ちなみに。

 

ティアナは別に問題なくガジェットを倒していた。

 

ミスショットも無く、うっかりスバルに向かって弾を暴発させることもなく終わっていた。

 

まあ、こっちのティアナは別にそんなコンプレックスは持って無かったからな。

 

っと、何やらなのはが地下の駐車場の車から何かを発見したらしいな。

 

行ってみるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これか」

 

「これなの」

 

箱に入っていたのは、水晶みたいな……宝石。

 

七色の輝きが放たれて綺麗である。

 

見た目からの用途はまだ不明だ。

 

「……名目には?」

 

【入っておりません】

 

「密輸品だね」

 

それなら、とりあえず没収になるな。

 

調べて問題無いなら返却されるが。

 

「さて、とりあえず持ち主を捜し……」

 

 

 

 

パキン

 

 

 

何かが割れる音が聞こえた。

 

俺は音源の方を見る。

 

宝石が……光り輝いていた。

 

「!?」

 

「封印が……解けた!?」

 

宝石の光が増していく。

 

「エヴァ!」

 

【ダメです! 間に合いません!】

 

【マスター! 封印出来ません!】

 

「そんな!?」

 

レイハさんでも……封印出来ないだと!!

 

周りを見る。

 

俺達の周りを……覆っている!?

 

この感じ……空間転移!?

 

「なのは!」

 

俺はなのはに抱きつく。

 

「アレス君!?」

 

「空間転移だ! 離れるなよ!」

 

「うん!」

 

なのはも抱きしめてくる。

 

そして、視界が真っ白に覆い尽くされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





さあ、2人はどうなるのか!?


また作者の悪い癖が出てきた!www


ヒント・世界移動


答えが合っていても何もありませんwww

正解とも言いませんwww





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