渇くのどを潤す血 (ザルバ)
しおりを挟む
渇くのどを潤す血
(渇く・・・・・)
強い日差しが創真を照り付けていた。しかし、創真の渇きは日差しからくるものではなかった。
(マズイ・・・・・今日に限ってストックが切れてる・・・・・)
極星寮への帰り道、幸平創真は葛藤していた。そんな創真に田所恵が声を掛けてきた。
「あれ、創真君大丈夫?顔色悪いよ」
恵みが創真の顔を覗く。その瞬間、女性特有のにおいが創真を刺激した。
「(ヤバイ!)だ、大丈夫だよ田所」
創真は恵と距離を取る。しかし恵は創真を心配し距離を詰める。
「でも顔色悪いよ。本当に大丈夫?」
恵みが創真と目と鼻の先の距離まで近づいた瞬間、創真の抑え込んでいた本能が起きた。
「ひゃっ!」
創真は恵の手を取ると無言で森の中へと恵を連れて行く。
「そ、創真君!」
田所は顔を赤くしながらも創真に話しかけるが、創真は無言のまま森の奥へ奥へと恵を引っ張る。
そして創真は恵を森の奥まで連れて行くと木に恵を押し付ける。
「そ、創真君!?」
「悪い・・・・・・・・田所」
創真はそう言うと恵の首を犬歯で噛む。
「あ・・・・・・・・・・・・・っ」
恵は甘い声を上げる。首から血が出る感触がした途端であった。
・・・ュウ、チュウ、チュウ、チュウ、チュウ、チュウ、チュウ
「んん!!」
首を、血を吸われる感触に恵は感じてしまう。
(そ、創真君が・・・・・私の血を吸っでる/////////)
恵みは頬を赤くする。
しばらくして創真が血を吸い終わると口を首から離した。創真の口元には恵の血が垂れていた。
「そ・・・・創真君・・・・なんで・・・・」
恵みはそこで意識を失った。
「ん・・・・・・・・・・・」
恵が目を覚ますと真っ先に目に移ったのは青空をバックに恵の顔を覗いている創真の顔であった。
「そ!そ、そそそそそ、創真君!」
恵は今の自分の状況をすぐに理解した。創真に膝枕をしてもらっていた。
「い、いぃやぁあああああああああああああ!」
「ぶべらっ!」
恵は創真を思いっきり殴ってしまった。
「あっ!ごめん創真君!」
「い、いいって・・・・・大丈夫だから」
創真はそういいながら殴られた頬に手を当てる。恵は膝枕から離れ、なぜか正座で創真と対面する。
「創真君・・・・・・・・・・あの・・・・・・・・その・・・・・・・」
恵は手をもじもじしながら話そうとするがなかなか話を切り出せないでいた。
「田所、お前が言いたいとはわかるぜ。なんで俺があんなことしたかだろ?」
「うん・・・・・」
「あのさ、俺が吸血鬼だったらどうする?」
「え・・・・・・・・・」
恵は創真の言葉に間抜けな声を出してしまう。
「も、もしかして・・・・・・・・・・」
「ああ。田所が思う通り・・・・・・・・・俺、吸血鬼なんだ。」
その後、恵は創真から話を聞いた。
自分は吸血鬼の中でも真祖の血の方を濃く受け継いでいること。一般的に知られている吸血鬼とは違い太陽、聖水、十字架、銀食器も大丈夫。
時折、吸血衝動はあるがそれは父・城一郎から送られる輸血パックで何とかしている。今日はたまたま輸血パックが切れていたため、このような行動に至った。
「とまあ、こんな感じだ。なんかあるか?」
「うん・・・・・・・・あっ!私も吸血鬼になるの?」
「いいや。オヤジからの話だと、俺の血を送らない限り大丈夫だそうだ。後、噛んだ後も吸血鬼の治癒能力で傷跡が残らない。それとオヤジは薄い方で吸血衝動はない。」
「そうなんだ。」
「すまねぇな田所。それで・・・・・・・・・・・・その・・・・・・・ちょっと頼み聞いてくれるか?」
「うん・・・・・・・・・・・何?」
「正直に言うと田所の血が・・・・・・・・・・美味かったんだ。」
「え・・・・・」
創真の言葉に恵は驚いた。
「輸血の血はどれもイマイチだったんだ。野兎とかは特にひどかった。」
「輸血パックなくなった時はそうやってたの?だからたまにウサギの肉を使った料理が極星寮で多く出てたんだ。」
「まあな。ふみ緒さんは喜んでたけど。」
大勢の寮生がいる極星寮で食料が手に入るのはいいことだとふみ緒は言っていた。
「それでな、輸血パックが無くなった時でいいから・・・・・・・・・・・血、吸わせてくれないか?」
創真は頬を掻きながらそう言う。
「・・・・・・・・・・うん、創真君が困ってるなら・・・・・・・・・・・いいよ。」
恵は顔を赤くしながらそう答えた。創真は恵に何度も感謝の言葉を述べた。
それからというもの、創真は輸血パックが無くなると恵を呼んでは人気のない所で血を吸っていた。数時間はいつも放課後。普段から一緒に行動している機会が多い創真と恵に周りの人間は何ら不信感を抱かなかった。ただし、ごく一部を除いて。
ある日の夜のこと。恵の部屋で極星寮女子会が開かれていた。
「ねえ、恵」
「なに、悠姫ちゃん?」
「最近よく思うんだけどさ、幸平と一緒にいること多くない?」
同じ寮生の吉野悠姫に鋭い所を突かれる。
「確かにそうね。前より多く一緒にいる時間が多い気がするわ。」
榊涼子も悠姫の言葉に共感した。
「そ、そんなことないよ。た、たまたまだよ」
恵は顔を赤くしながら否定するが全く説得力がなかった。
『ふ~ん』
二人はニヨニヨしながら恵を見た。
「な、なに?」
『べ~つ~に~☆』
二人は面白いものを見つけた表情で恵を見ていた。
恵は創真と一緒に廊下を歩いていると、耳元で囁かれた。
「すまん、田所。アレが切れたから今日の放課後・・・・」
「う、うん」
真組は顔を赤くしながら答える。しかしそんな二人の姿を喜ばしく思っていない人物がいた。
「クッソ―――!幸平のヤツ田所とイチャイチャしやがって!」
その人物は幸平に“肉魅”とあだ名で呼ばれている水戸郁魅であった。
「あいつらなんで最近何でイチャイチャしてんだ?ちょっと付けてみるか!」
郁魅は二人を尾行する。途中までは特に変わった様子はなく。普通に歩いていた。
「なんだよ。普通に歩いているだけで特にこれと言って・・・・・・・・」
その時であった。二人は森の中へと入ってくのを郁魅は見た。
「おい!あの二人森でナニしようってんだよ!」
郁魅は急いで二人の後を追う。
「ここでいいか」
「創真君・・・・・・・・・いつでも・・・・・・いいよ」
「わるいな、田所」
遠くから聞こえてくる二人の声に郁魅は顔を赤くする。
(お、おい!いくらなんでもアブノーマルすぎるだろ!こ、こんな郊外でナニしようとしてんだ!)
二人を止めようと足を速める郁魅。二人の姿を捉えた時に目にしたのは恵の首を正面から噛んでいる創真の姿であった。
「なっ///////////」
郁魅は顔を思いっきり赤くする。
「嘘っ!」
「ひゃー」
その光景を悠姫と涼子も目撃していた。思わず物音を立ててしまい、三人は二人に気づかれた。
「っ!誰だ!・・・・・・・・・・・て、え?」
『あ・・・・・・・・・』
創真は口を話し後ろを振り向くと三人の姿が目に入った。しかし三人の目には創真ではなく、恵の首から垂れている血が目に入った。それを見た瞬間、郁魅は冷静さを失った。
「お、おい幸平!なにこんな場所でそんなアブノーマルなことしてんだ!」
「あぶのーまる?なんのことだ肉魅?」
「肉魅って呼ぶな!その田所の首から垂れてるもんって血だろ!何、血が出るまで噛んでんだ!」
「いやこれは――――」
「ゆーきーひーらー!」
「うおっ!」
郁魅に対し訳を話そうとした創真に悠姫がドロップキックを喰らわそうとするが幸平は間一髪のところで避ける。
「悠姫ちゃん、これにはワケが―――」
「純粋な恵を怪我した雪片は万死に値するわ!今ここでその罪を断罪してやる!」
「アタイも力を貸すぜ!」
悠姫に郁魅も加わった。
「ちょ、お前ら!」
「死ねー!」
「幸平―!」
「ちょ、まぎゃ――――――――――――――!」
森に幸平の悲鳴が響き渡った。
「―――というわけなんだ。」
ボロボロになった幸平の側で恵が事情を話した。
「ふーん、幸平君吸血鬼なんだ。」
「それならそうと早く言えってんだよ。」
「全くだ!」
悠姫の言葉に郁魅は相槌を打つ。
「でも、あなたたち二人が先走ってこうなったんでしょ」
涼子が二人をツッコム。
「それで、幸平君は恵ちゃんに血を吸わせてもらってたと」
「まあな。田所の許可ももらってるからな」
「へー」
涼子は視線を恵に移す。恵は顔を赤くする。
(く~っ!このままじゃ雪片との距離をどんどん開けられちまう・・・・・・・・・・そうだ!)
郁魅はあることを思いついた。
「ゆ、幸平!田所だけ血を吸ってたら田所の身体が持たないだろ?だったらアタシの血も吸えよ!」
「「ええ!」」
郁魅の言葉に恵と悠姫は驚いた。
「いいのか?」
「お、おう!さすがに田所一人に負担はかけられないからな」
郁魅は腕組みをして顔を赤くしながらそう言った。
「ありがとよ。でも味が・・・・」
「だ、だったら今吸うか?」
郁魅はそう言うと首筋を創真に差し出すように見せる。
「ありがとな、肉魅」
「肉魅って呼ぶな!は、早くしろ!」
郁魅の言葉に応えるように創真は正面から郁美に近づく。
「んじゃ味見するわ」
創真の胸に郁魅の胸が当たる。郁魅の鼓動は張り裂けんばかりにバクバクしていた。
「あ~ん」
「んんっ!!」
噛まれた瞬間、郁魅は顔を赤くしながら声を上げてしまう。
(う、うっわ~~~~~~~~~~!)
(あわわわわわわ!)
(これは過激ね~。二人の反応が初々しいわ。)
恵と悠姫は手で顔を覆いながら顔を赤くし、涼子は冷静に見ていた。
「ん・・・・・・・・・・・・あ・・・・・・・・・・」
(エ、エロい////)
(私もあんな感じだったんかな//////////)
(すごいわねー)
創真は吸い終わると口を郁魅の首から離した。郁魅の首から血が少し垂れ、噛み跡は塞がっていた。
「もったいね」
幸平は郁魅の首筋の血を舐め取る。
「っ~~~~~~~~~~~~~~~!!」
郁魅の顔は赤さをより一層増した。
「ん?どうしたんだ顔を赤くして?」
「な、なんでもねぇ!」
郁魅はぶっきらぼうに答えた。
「ま、まぁなんだ。・・・・・・・・その・・・・・・・た、たまになら血を吸ってもいいぜ///////////」
「っ!そ、創真君!私のも吸っでいいがらな!」
「お、おう・・・・」
二人の勢いに押される創真。しかしなぜ二人がそんなにも必死になるのか創真にはわからなかった。悠姫はそんな創真に呆れ、涼子は微笑ましく見るのであった。
目次 感想へのリンク しおりを挟む