F-1で怪異に物申す! (べっけべけ)
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プロローグ

友人にPVを見せられストパン(?)を知りました。ウィッチーズと話す話よりネウロイを撃墜する話を書きたくなったのでこうなりました。


ウィッチーズは全く出てきません。


雲一つ無い青く澄みきった空の中、幾筋もの白線が真っ直ぐに描かれてゆく。

 

 

 

その先頭を爆音をたてながら飛行している影…青空には適していない……むしろ空では目立つ森林迷彩に包まれたその機体には白縁の日の丸が数ヶ所に施されており、日本の空自にそれが所属していることが誰にでもわかるようになっていた……が、

 

 

そんな考えはこの世界では全く通用しない別次元のものだった。

 

 

 

(ホントいったい何なんだあいつらは……さっきからずっと追いかけ回して来てるし……あぁもうあの()全然言ってた事違うじゃないか……)

 

左フットペダルを踏みつつ操縦桿を左へ傾け機体を左へやったりその逆をやったりするが後ろの連中はピッタリくっついてくる。幸い機銃を撃ってきたりミサイルのレーダー照射のアラートも鳴らないのでまだただの追いかけっこだ。

 

 

 

 

 

僕は徐に置いている左手を見つめ……前方に意識を戻し集中させると

 

「これなら……追い付けまい……!」

 

そう呟いてエンジンのスロットル・レバーをMILの位置からMAXまでゆっくりと押し進めアフターバーナーた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……時を遡ること数日前……

 

 

 

 

 

 

(……ん?……あれ?夢……?)

 

何があったか知らないが…ふと気がつくと何処かわからないが和風な屋敷の縁側に座っていた……ちゃんと温かいお茶が入った湯飲みを持った状態で。

日の光と鳥の鳴き声……植物の匂いや温かい風が心地良い……

 

(…………でも何故に?……てか此処何処……?)

 

「あら、珍しいですね。こんな所にお客さんが来るなんて。」

 

いきなり後ろから声が聞こえビックリしたので後ろに振り向けば其処に居たのは綺麗な黒髪をした割烹着姿の女性が湯飲みを載せたお盆を持って立っていた。

 

 

「ど、どうも…こんにちは……」(うわぁ……状況が全く理解できないや……)

 

「ふふふ、こんにちは。あ、少し待っててくださいね。」

 

「あ、はい。」

 

そして彼女は微笑んだ後僕からは襖によって見えない部屋の奥へと消えていった。

 

(………あの人誰だ?……夢にしては随分と意識とかハッキリしているし体の感覚もある……)

 

現実とは到底かけ離れた非現実的な状況に現在陥っているわけだが……もしこれが夢だったとしたら?

 

……どうしようもない。僕には為す術が全く無い状態であり、場に流されていくしかないと思える。

 

今まで夢の中で「あ、これ夢だ」と自覚できた経験は1度のみであり、その時は自分に起きろと割りと強く念じたのだが……何も起こらなかったことが強く印象に残っていた。

 

 

これから何が起こるかだなんて生憎見当がつかないためか急に頭の中が不安と恐怖で一杯になってゆくのが自分でも感じた……そんな不安で仕方ない僕の頬を冷や汗がダラダラと伝っていき…顎に到達しようというちょうどその時彼女が戻ってきた。

 

 

「お待たせ致しました。申し訳ありませんがこちらについて来てもらっても?」

 

「は、はい。」

 

そう立ち上がろうとして気がついた。なんで俺甚平着ているんだ?まぁよく寝るときは着てたから慣れてるけど……気を取り直して立ち上がり、湯飲みもちゃんと持って彼女の後をついていく。

 

四部屋分ほど移動した先に居たのは……布団で寝ている様子の御爺さんだった。

 

(おぉ…テンプレな神様みたい……)

 

その老人は頭髪は残っておらず、それとは逆に眉と口周りが伸び放題でシワが至るところにあるというありきたりな神様のイメージをそのまんま具現化したかのような外見だ。

 

 

 

「テンプレかは知らんがわしはれっきとした神じゃよ?」

 

「………へ?」

 

「ところで唐突なんじゃがお主アニメの世界で戦ってみたいと思わんか?」

 

「………へ?」

 

神を名乗るその人は仰向けの体勢から少しこちらへ頭をずらして顔を向けてくる……けど目が眉毛に隠れて表情が一切見ることができない。

 

「きえぇぇぇいぃぃぃぃ!」

 

「っっ!?!?!?」

 

そしていきなり布団から荒ぶる鷹のポーズで高く飛び上がったと思ったら…

 

「ぐえぇっ!?」ゴンッ!!

 

案の定低い天井に頭を強打し床にある布団にまた頭からダイブ……八つ墓村にでてきそうな体勢で固まっている。なんか…このじいさんの行動はなにかと俺の心臓に悪いな……

 

 

「だ、大丈夫です…か……?」

 

声をかけるとその人は起き上がり

 

「ふぇ……ふぇっふぇっふぇ…だ、大丈夫じゃよ……グハッ」

 

(だ、大丈夫なんだよ…ね?青い顔して血反吐吐いてるけど本人大丈夫って言ってるから大丈夫…なんだよね?…あ、また倒れた……)

 

「フフフフ♪」

 

隣で彼女笑ってるから大丈夫なの…かもしれない。

 

「お主っ!」

 

「はっ、はいっ!」ビクッ!

 

「少々時間をわしにくれぬか…?」

 

「え、えぇ………」

 

 

 

 

~二、三分ほどしてから~

 

 

とりあえず二人で向かい合った状態で落ち着いた……お茶と和菓子を楽しみつつ。

 

 

「ほっほっほ、なにやら最近此所に来る客が多いのでの。ちーっとばかしテンションが上がって…。」

 

 

「多い…?他にもここに来た人が?」

 

「そうじゃよ?それにしてもお主……小心じゃのう~。」

 

「まぁ…そうですかね?」

 

「うむ。前回来た者はわしの娘のことを鼻の下を完っ全に伸ばし切ってガン見しておったぞ?全く包み隠さずにな」

 

「へ、へぇ…度胸あるんですかね…」

 

ちなみにその娘さん(彼女)は先程違う部屋へと行ってしまっていた。

 

 

ズズッ「…ふぅ。その前の者は俗にいう[オタク]というやつなのじゃろう。ここに現れたかと思ったらいきなり[おい!じじい!さっさとチート寄越して転生させろ!]なんて言っておった。そんなに自分が特別な存在になりたかったのかのぅ…」

 

「初対面の人に対していきなりじじいですか…かなり失礼な人だったんですね。その人は…その後どうなったんですか?」

 

「知りたいかの?」

 

「は…い…」

 

「知っても後悔しないか?」

 

「…やっぱり止めておきます…」

 

「嘘じゃよ嘘、そんなに怯えなさんな。まぁ…結果からしていうと其奴はの…すぐ死によったよ」

 

「仲間とかに殺されました?」

 

「ほう!よくわかったの?確かに其奴は相手を武力で押さえつけてやりたい放題だったのでな、仲間に夜中…寝首をかかれて死によったわい」

 

「うわぁ……」

 

「さて、話を戻すが……」

 

そう言って神様から少し真剣な雰囲気が漂い始めた。

 

「お主、もう一度人生をやり直してみたくはないかのぅ?但し違う世界で」

 

 

(ん?もう一度(・・・・)?……俺死んでたの?)

 

「らしいの。本来この屋敷は何らかの事があって肉体から離れた魂しか来ることはできんのじゃが…まぁようするに[あの世]じゃな。原因はわからぬがお主は死んだのかもしれぬ…まぁ珍しい幽体離脱ともみてとれるんだがのぅ……」

 

「まじでか……」ボソッ

 

「おう、マジじゃよマジ。本気と書いてマジと読むくらいにマジじゃよ」

 

(なんか凄い親しみやすい神だなぁ)

 

「ほっほ、ありがとう…ところでお主行きたい世界はあるかの?アニメでも小説でもゲームでもOKじゃ」

 

「んん~……行きたい世界は……特に無いです…………でも!」

 

「でも? なんじゃ?」

 

「戦闘機に乗りたいです!」

 

「ほっほー男の子じゃのおぅー」

 

「か……可能ですか?」

 

「そんなの軽ーくばっちぐーじゃよ」

 

そう言いながら彼は湯飲み片手にOKサインをしてくれた。

 

「ほ、ホントですか!?ありがとうございます!」

 

「じゃがどういうのがいいのかわからんからとりあえず、(ポンッ)これにまとめてみてくれぃ」

 

そう言い指パッチンで出てきたメモ帳と鉛筆を受け取り箇条書きに書いていく。

 

 

 

・機体は日本の[F-1支援戦闘機]

・急旋回で壊れたりしない

・武装、電源、酸素、燃料無限

・整備不要、修復機能

・身体にかかるGを軽減

・食事の必要無し

・風呂、トイレに行かなくてすむ

 

ここまでチート(エースコンバット状態)だと拒否されるところがあるかもしれないがそこは無いと願うしかない。目の前に神がいるから何に願えばいいのかわからないが……。そして神に書いた紙を手渡す

 

 

「どれどれ……うむ、全部OKじゃな」

 

「え?そんな数のチート良いんですか?」

 

「いいんじゃよ。それにな、最初からお主の心をみとるのじゃがこれといって悪い部分などは見当たらん。よってお主ならちゃんとした使い方ができるであろうと考えた…結果よしとするかの」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

「にしてもお主不死身にしてほしいとか言わないんじゃな?あとイケメンに~とかハーレムに~というやつが今までにいたんじゃが……」

 

(イケメン?ハーレム?もう恋愛は諦めた俺にそんなものが必要とでも?そんなことに願いを使うなら俺は戦闘機につぎ込むね!)

 

「お、おう…お主…少し寂しいのう……」

 

「そうですか?至って普通ですよ?僕の高校では」

 

「それはそれで悲しい高校じゃのう……」

 

(そうかな?工業だと女子がいないから気が楽だったしけっこう楽しかったけど……まぁ欠点は┏(┏^р^)┓←これくらいかな……)

 

「わ、わしは嫌じゃな……まぁそれはさておきお主の願いはこの内容でいいんじゃな?」

 

「ハイ!」

 

「それでは叶えるぞ……その願い。準備がよければ目を閉じよ」

 

「お願いします」

 

そして俺は両目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

 

 




…ごめんなさい疑問点があっても何も言わないで…


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チュートリアル

ストパンなのにウィッチーズが出てこなくてすみません


心の準備ができギュッと目を閉じる。

 

 

すると一瞬強い風に吹きつけられたかのような感覚に陥り体に伝わる感覚が劇的に変化するのがわかった。

 

直後頭のてっぺんから足の先まで圧迫感が襲い耳も耳栓をしたときのように頭の中でモスキート音が流れる。目を開けてみれば計器類とHUDに夜空……

 

 

自分の姿を見てみれば…耐Gスーツに酸素マスク、グローブにヘルメットをしていて冷たく乾いた空気が肺の中へと入ってくる。よくパイロットが太ももとかに書類をつけているが、そこにはタブレットがありいろいろと載っていた。

 

 

前も上も左右も暗い夜空が広がり星明かりしか見当たらない。……ここはいったい?

 

ザーッ…カチリ「えーっテステス……こちらじじいの神じゃ。お主無事にそちらへ着いたかの?」

 

 

「あっ、はいっ!無事着きました…ってここ何処ですか?」

 

「あーっとそこはのぉ…確か…ス…ス…「ストライクウィッチーズでは?」そうじゃ!そうそう!ストライクウィッチーズじゃ!」

 

神様の声に割り込んであの女の人の声がする。

 

(あ、アニメのやつか)

 

「まぁまずはその世界と敵の説明じゃ。お主の乗るそのF-1はまずその世界には存在しないはずのオーバーテクノロジーのようなもの……じゃからあまり他人に渡したりするもんじゃないぞう?」

 

「うっす」

 

「敵はネウロイと呼ばれる脅威で……まぁ未確認生物のようなもんじゃろう。それに侵略されるらしいんじゃが、お主にはできるだけ人間を助けてもらいたい」

 

「言われなくとも助けますよ?」

 

「お主ならそう言うと思っとったわい。それではまずチュートリアルを始めるぞい」

 

そこからいろいろと説明が始まった。計器類の説明に操縦方法に空戦や対地攻撃の仕方。ある程度教えられた後にそれは始まった。

 

明るい都市の上空に突如広がるドス黒い雲のような物体の渦。

 

明らかに異様なその中心から出てきたのは…まるで昔ドイツ軍の試作偵察機Bv141のような左右非対称のフォルムをしたネウロイだった。

 

表面上には黒と赤の正六角形が広がりまるで蜂の巣が広がっているかのような模様柄をしていた。そして普通の飛行機の大きさではなく、まるでエースコンバットに出てくる航空要塞のような巨体をしており迎撃に出てきたレシプロ機が豆のように小さく見える。

 

「神様…あいつを落とせば良いんですか?」

 

「そうじゃ。さっき教えた事をしっかりと復習しつつ攻撃するんじゃぞ。それでは…死ぬんじゃないぞぅ」プツッ

 

「大丈夫…です。…多分…」

 

そう呟いて操縦捍を右に倒し機体を反転させた。

 

 

F-1の主な任務内容は対艦攻撃、対地攻撃、要撃戦闘の3つ。空中で浮遊するだけのネウロイには空対空ミサイルと空対地装備で対応できるだろう。

 

 

 

タブレットで使用する兵装を選択する。最初に選んだのはAIM-9L空対空ミサイルを4発……この機体に兵装を取り付ける箇所は全部で7つだが、あとの3つは空けておこう。理由としては余計なものを装備して機体を重くしたくないから。

 

入力するとレーダースコープの下に配置された兵装管制コンピューターのパネルの一部が一瞬の間光る……これで自動的に兵装の各種データが入力されたらしい。

ガードで覆われたマスターアーム・スイッチをONにし武装を使用可能にした後後ろを向いて主翼を確認する……すると主翼下と翼端にはしっかりと選択した空対空ミサイルが左右に2発ずつの計4発が搭載されていた。

 

レーダースコープを見ると巨大な1つの反応と、複数の小さな反応を示した…この大きな反応があのネウロイで、他の細かいのがあの戦闘機たちなのだろう。ネウロイとの距離は現在50kmほどでミサイルの射程距離は18km……もう少しで……エンジンの出力を一気に上げて近づきたいがこれは実戦な為失敗は許されない。

 

焦ってしまえばそこで終了だ……慌てず急いで正確に。なるべく視認されぬよう機体の照明も全てOFFにするなどして工夫する。

 

他にも昔自衛隊のF-86が害獣駆除の為射撃をする際気づかれぬようエンジンの出力を絞ったとされたという本を思い出しそれを真似てスロットルレバーをIDLEにまで下げてエンジンの出力と音量を小さくする。

 

 

 

 

これでネウロイに真っ直ぐ向かえば気づかれにくいはず……そしてヘッドアップ・ディスプレイ画面内にてミサイルのロックオンがかかる……が、コンピューターが狙っているのはおそらくネウロイではなくそれに立ち向かっているレシプロ戦闘機。

 

すぐにレーダー調節パネルのスティックで方向を決め標的を切り替えると、本来の目標であるネウロイにミサイルのロックがかかる。

 

敵機捕捉を知らせる電子音が鳴り響く中兵装の安全装置を解除し発射スイッチに指を添える。大丈夫……さっきの通りやれば成功する……そして俺は深い深呼吸を1つした後スイッチを静かに押した。

 

シュパァァァァァ

 

燃えるような音がし前方が少し煙で視界の右側が一瞬塞がる。

 

発射後すぐに引き起こしにかかり180゜ロールして上(地面)を向き先程のミサイルに目を向ける。

 

発射されたミサイルが真っ直ぐネウロイへと向かっていく。当たる!そう思ったときそれは起きた。

 

ピュンッ!

 

変な音がした瞬間赤色のレーザーが主翼、胴体、水平尾翼などいろんな所の赤色の模様から発射されミサイルが迎撃されてしまう。一応ミサイルは最高速度ではなかったとはいえそれなりに速かったはずなんだが。

 

(落とされるか、しかもレーザーかよ……航空要塞のスピリダスの誘雷兵器やビルのエクスキャリバーみたいなレーザー兵器と考えてOKか?)

 

ネウロイから少し離れ後方を見つつ…何か後ろ見づらいな……20kmほど離れたらロールして方向転換、再び目標捕捉に取り掛かる。

 

 

次は1発だけではなく残り3発一辺に発射する。さっきと同様にミサイルが2発迎撃されてしまうが1発がキャノピーに似た部分に命中する。すると

 

「キィィィィアァァァァァ!!」

 

突然ネウロイから悲鳴のような超高音が町全体へと響き渡る。

 

(っ!?何なんだあいつ?生きてんのか?)

 

爆炎と煙にネウロイが包まれ表面の黒や赤の色をした六角形状の装甲が一部分吹き飛ばされて散ってゆく。一種の無人兵器か何かと思っていた俺は驚きを隠せない。

 

 

 

 

 

 

また次の攻撃を……そう思っていると突然機体に衝撃が走る。

 

「っ!?何だ!?」

 

『Fire・Fire・Right.Fire・Fire・Right.』

 

女性の高い声と警告音が鳴り響く。どうやら右エンジンが損傷、出火したらしく機体の操作が余計に困難になっていく。

 

……あのレーザーでやられたか?生憎後方は視界が悪く煙を吐いているかどうかも確認することができない。

 

すると首から下げていた御守りが光りだし警告音が消える。その御守りは通称[タリスマン]……エースコンバットをやった人ならわかるかもしれないが、持っていれば機体を修復してくれ、損傷したとしても回復を自動的にしてくれるチートアイテムだ。

 

ハッキリ言ってこれ無しでネウロイに立ち向かうのは自殺行為だと思う。そこまで機動性が良い機体ではないし、ましてや相手の兵装はレーザー。避けるのには難しすぎる。

 

 

先程のミサイルの次弾装填までは数分時間がかかるようなので他の兵装に切り替える。タブレットで次に選択するのは対地攻撃などに使用されるCBU-87/Bクラスター爆弾。 

 

それは中に202個ものBLU-97/B子爆弾が入っており広範囲にわたる爆撃を可能とするクラスター爆弾のことで、中~近距離からであれば投下後にネウロイ下に広がる都市部に巻き添えにすることもないだろう。

 

それを5発選択し搭載……する前に機体の修復を待つ。

 

ご存じかもしれないがこの機体、通常のジェット戦闘機に比べてエンジンの出力が機体に対して不足していて、片発の状態で旋回はかなり失速、墜落しやすく…そうはなりたくない。

 

 

確実に機体の損傷率が0%に近づくのを待つ。するとネウロイは都市部への攻撃を開始した……レーザーが一線……着弾した辺りが破裂するかのように爆発し、燃え上がり至るところに火の手が回る。

 

(はやく!…じゃないともっと人が……!)

 

 

エンジンが回復し損傷率が一桁になる。もうこれでいける……というかいかなけれならないという勝手な使命感にかられる。

 

 

 

45度程度の角度でネウロイへと機首を向け急降下爆撃。投下された瞬間カチャンッという音が響き機体の引き起こしが少し軽くなる。

 

「っ!!??」

 

引き起こしの瞬間前から向かってくるのはレシプロ機。まるで流れる時間がゆっくりになったかのように遅く見え視界から色が消えモノクロになる。すぐに操縦捍を左に倒し機体をロールさせて回避を試みる。相手は既に機体を垂直にさせていたのでギリギリですれ違い事なきを得た。

 

偶然にも空中衝突することはなかったが今のはかなり焦った…走馬灯ではないが周りの時間がゆっくりと流れるさっきのはいったい?

 

…それよりもネウロイだ。機体が垂直なまま操縦捍を引きネウロイを視界に入れる。

 

 

1度に全て投下されたクラスターは空中で分解、子爆弾を大量に撒き散らしてゆきネウロイの広範囲に着弾し表面の黒い装甲を吹き飛ばしていく。

 

落下途中のBLU-97/B子爆弾のうち幾つかはミサイルの時のようにレーザーで迎撃されてしまっていたが、それ以上の数を大量に叩き込んでやったのだから先程の攻撃よりも損害を与えられた……はず。

 

 

そして上空から見ていた俺にあるものが目に止まる。それはネウロイの胴体横……キャノピーに似た部分の中央付近に赤色の光り輝く物体がほんの数秒見えたのである。

 

神様からの説明ではネウロイには赤いコアがあり、それを破壊すればいいと言っていた。だとしたらあれがコアなのかもしれない。

 

 

(武装は何にすれば…?対艦ミサイル?対地爆弾?……いや、どれもアレで落とされる……なら……)

 

機体をには引き起こし垂直上昇させてタブレットに左手をやる。

 

選ぶのは爆弾でもなくミサイルでもない。選択したのはJLAU-3ロケット弾ポッド……1つのポッドに2.75inのロケット弾を19発装填可能な空対地兵器である。それを4ヶ所のハードポイントに搭載していく…と、少し速度が下がっていく。空気抵抗か何かかもしれない。

 

かなり高度まで上がってきたのでエンジン出力をIDLEにまで絞りつつ操縦捍を手前に引く。

 

すると機体は失速、背面飛行に入りかけていた姿勢から一気に機首が真下を向く。そこで再び出力を戻していく。

 

そこから見えるネウロイはとても小さく遠い。

 

HUD内にネウロイを収め発射の瞬間を待つ。そこであることに気がついた…遠くから見ていて初めて気がついたがゆっくりとだがネウロイが進んでいた。

 

それならば相手の進路方向の予測地点に着弾するようにしなければならない。降下する途中でラダーとエルロンを操作しネウロイの後方から攻撃を仕掛けられる進路になるまで調節する。

 

 

 

無誘導であるロケット弾を当てることは容易ではない。先程は大丈夫だったのに急に不安とプレッシャーに駆られ呼吸が荒くなっていく。

 

(さっきのクラスターの時を思い出せ……大丈夫…当たる…当てる…当てる…!)

 

 

そして俺は兵装リリースボタンを押した。

 

 

瞬間視界の左右ほとんどが眩い閃光で包まれ発射されたロケット弾が操縦席の真横を次々に通り抜けて行く。

 

発射後すぐに引き起こしに掛かり体に負荷がほんの少し掛かってくる。

 

「ァァァァァァァァ!!」

 

気味の悪い悲鳴がヘルメット越しに微かに聞こえる。

 

旋回機動に移りネウロイを確認すると…黒かった表面は白色に輝き正六角形状の物体が次々に剥がれ散ってゆく。それはまるで花弁が散りゆくようでネウロイがどんどんその姿を無くしていっていた。

 

 

ネウロイが全て塵と化し消え失せた後には……焼けた家々に崩れた建物、ネウロイによる深い爪痕を残した都市……犠牲者は少なくないだろう。

 

この世界の人々がどんな人たちかは知る由も無いが、自分に力があるというのならばその力を使って守れる命を守りたい……熟そう考えさせられる光景が下には広がっていた。

 

 

(もっとネウロイを倒すことに慣れておかないとこれからもずっと手こずりそうだな……)

 

 

 

都市上空を旋回し続けるのも何なのでその場から離脱する。

 

(さて…どこで練習しようか?)

 

 

 

 

 

ここから当ての無い放浪の旅兼ネウロイ殲滅の生活が始まった。

 

 




すぐ完結させるんで許してください(泣)


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対オルゴイ

ストパンのストーリーとは何ら関係ありません。

エスコンのPSPのジョイントアサルトに出てくるアレをネウロイっぽくしてみましたが…弱体化しました(泣)



あと、F-1のHUDってどういった情報が表示されるのでしょうか?どなたかご存知でしたら教えてください。


あの左右非対称なネウロイとの戦闘をきっかけに僕のネウロイ撃墜が始まるようになった。

 

奴等の特徴は何故か試作機や失敗兵器の面影を持っていることが多く、この二週間で10機墜としたところだ。全翼機だったり円盤だったり…とにかく奇抜なものばかりだったとしか言いようがない。

 

神様はどうやらF-1のレーダーだけじゃ届く範囲が決められているからか、レーダー範囲外のネウロイもタブレットで表示してくれるようになっていた。何故か彼らとはあれから連絡がとれなくなり、音信不通の状態になっている。

 

 

本来人間に必要な食事や睡眠、排泄をしなくても済むこのチートは物凄くありがたい。しかも兵装や燃料は無限なため整備も不要。

つまり、いつまでも飛び続けることができる。整備や補給が必要無いということは、その分時間ができるので訓練や遊覧飛行に回せる。

 

ネウロイが出てこない日は旋回や引き起こしを少しでもベテランパイロットのようにするため繰返し練習していた。

 

ヴーヴー

 

タブレットが震えてレーダーのような画面が表示される。今向いている方角とは真反対側にそのネウロイがいるようなので右に90度バンクし引き上げる。

 

 

 

自前のレーダースコープには何の反応も無い。そんなに離れた距離に居るのか?

 

機首の角度を水平にしスロットルレバーをMILからMAXにまで押し込み、瞬間体に少し掛かる圧力。Gなど気にすることなくネウロイのいる方角へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レーダーに反応が出る。敵は2体のネウロイでサイズはまた馬鹿みたいにデカイ。

 

3分ほどが経ち視界に2つの黒い影が映り込む。

 

 

 

 

 

 

 

(ん?……あれって……オルゴイ?)

 

 

その2体は編隊飛行でこちらに高速で近づいてくる。

……最悪なことにヘッドオン状態となった。

 

 

2体の隙間をかなりの高速で通り抜ける。何せアフターバーナーを使用して最高速で飛行していたのだから。

 

視界の上半分…キャノピー真上がネウロイ独特の赤と黒の模様で一瞬埋め尽くされヒヤッとする。

 

 

すれ違った後は機体がバランスを崩す寸前ギリギリの急旋回で方向転換、ネウロイの後を追いに向かう。

 

ネウロイ達は速度を出すだけで進路を変更せずに一直線に飛んでいて、その速度は約430kt(約800km/h)程を出していた。

 

最大出力で2体の真後ろにつく。

 

大戦中の雷撃機のようにネウロイには下手に腹を見せないよう弾幕と平行に飛び距離を保つ。

 

今は広い海の上、流れ弾など気にせずにトリガーを引き、JM61A120mmバルカン砲の弾幕を叩き込む。

 

ブゥゥゥゥ!

 

重なりすぎて繋がったかのような破裂音がヘルメット越しに耳に伝わり、視界の左後方が白煙に包まれていく。本来のF-1ならば20mmは7.5秒分しか積まれていないがこの機体は兵装が無限。

 

回転する6本の砲身から放たれた数えきれない量の20mmの弾丸は1体のネウロイに雨のように襲いかかりネウロイの装甲を広範囲に渡って蜂の巣にしていく。

 

(まさか機関砲の散らばり具合がこんなところで役に立つなんて……)

 

「イィィィィィィ!!」

 

「っ!?」

 

悲鳴をあげたと思ったら突然2体は編隊を崩し、1体は速度を上げて引き起こし、もう1体の方は反転し急降下していく。

 

(あの巨体で連携!?…いったいなに考えてやがるんだあいつら…)

 

 

2体の主翼下から大量の極短レーザーが発射され機体を掠めてゆく。

 

1体は上昇したため真上から、もう1体は急降下しつつロールで腹をこちらに見せているため弾幕を張ってくる。上からも下からもくる攻撃は避けるのがかなり難しく、主翼に数発被弾する。

 

一度奴等と距離を取り作戦を練ろう。そう思いエンジン出力をIDLEにまで一気に落とし、エアブレーキを全開にした。

 

 

 

 

 

 

 

ネウロイが小さな点に見える距離辺りでエアブレーキを戻しスロットルをMILへと進め、タブレットで兵装を選ぶ。

 

装備するのはネウロイとの初の交戦でも使ったAIM-9L空対空ミサイル。

 

 

HUD内にネウロイを捉えてレーザー照射を行い目標捕捉、兵装リリースボタンを押す。

直後にミサイルが発射され視界前方が白煙に包まれてゆき、ネウロイへと迫っていく。

 

 

 

 

 

やはりどうしてもミサイルの類いはネウロイの弾幕に落とされ、命中する割合がかなり低い。もうそんなことは初戦の時から知っており、次の段階へと移行する。

 

空対空ミサイルは1つだけ?そんなことない。

 

 

AIM-9Pを4発、AIM-9Eを4発と次々に装填、発射しロケット弾の雨のように叩き込んでいく。同じなようで違う兵装なのですぐに切り替えができるためすぐに装填することができる。

 

急降下して腹をこちらに見せていた1体のオルゴイの片翼に集中的にミサイルは命中、根元からへし折れその翼を白い結晶として散らしていく。

 

片翼となったオルゴイはきりもみ状態になりながら海面へと向かって落下していく。その航跡には真っ黒な黒煙だけが残っていた。

 

 

 

 

 

 

残るは1体。ミサイルが再装填するまで時間がかかるのでひたすら20mmバルカン砲で攻撃していく。

 

(……張り合いのないやつだったな……)

 

大量の弾幕は敵ネウロイの再生が追い付かない勢いで組織を破壊していき、内部から露出した真っ赤な核まで到達し砕け散る。

 

 

ミサイルでトドメを刺したかったが、やれるうちにやっておくべきなので拘る必要はそれほどない。

 

 

(……暇だ……)

 

何か暇潰しになるものはないだろうか……

そう考えながら高度を落とした。

 

 

 




友人に「赤城に着艦させよう!」と言われたのですが…どうすればいいのやら。

頑張れば着艦できるかもしれないけど…発艦は?


やっぱりこの作品消さないでおこうと思います。


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ウィッチ?

少し本編を原作に重ねます。

友人に言われた赤城への着艦の件は番外編…ifの話でやろうと思います。もちろんネタです。
明日は試験なのでまた今度進めようと思います。


(……何もない……)

 

日々新しいネウロイを撃墜してきたが…最近ネウロイが弱体化した気がしてならない。

 

馬鹿みたいにデカイ個体が出現する頻度が少なくなってきており、最近では最大でB-29、最小でXF-85サイズのものしか出てこなくなりAIMのミサイルがたった1発当たっただけで墜ちてしまう弱さになってしまった。

 

ただの作業ゲーのような状態になってきた日常に最近自分は飽き飽きしてきており、[暇]以外の言葉が常に頭から離れない。

 

(敵は弱い。仲間はいない。…あ~…暇だ)

 

 

本来なら何処かの滑走路にでも着陸して仲間を作るべきなのだろうが、何処に行けばいいのやらさっぱりわからない。

 

それに加えて…もし、いきなり未確認機が迫ってきたらどうなるだろうか?

 

日本の空自のように警告なんて優しいことはしてくれるわけがない。絶対スクランブルされて攻撃されるだろう…しかも外国の言葉が全くわからない。

 

……詰んだ(^q^)

 

 

 

(もうどうでもいいや……)

 

 

特に行く宛もなくそのまま真っ直ぐ飛び続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてある日…

 

 

(あれ?……なんか…眠く……?)

 

いつも通り海上を遊覧飛行をしていると突然睡魔に襲われ視界がぼやける。本来ならばチートで眠る必要は無いはずで、自分の身にいったい何が起こっているのか理解できなかった。

 

 

 

(…う…無理……)

 

 

薄れゆく意識の中AFCS(オートパイロット)装置を高度保持モードに切り替えたその直後、俺の意識は暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う……」

 

(くそ…いったい何がどうなって…!?)

 

目が覚める。まだ視界がぼやけて……ハッキリと見えない。

 

コンコンッ

 

「んぁ?………なぁっ!?」

 

キャノピーになにか当たるような音がしたので上を見ると…人がいた。しかも女の子。

 

(はぁっ!?人!?何で外でいられるんだよ!?)

 

頭の中が混乱してわけがわからなくなる。

 

(とっ、とりあえず…!)

 

スロットルをMAXにまで押し込んで一気にアフターバーナーに点火する。その瞬間にドンッという爆発音とともに体に圧力がかかり加速していく。

 

(なになになになに!?)

 

全く状況がつかめない。俺がくたばってた間に何が起こった?

 

眠くなる。

 

寝る。

 

起きる。

 

女の子。

 

うむ、さっぱりわからん。それにさっきのは本当に人だったのだろうか?もしかしたら幻覚だったかも…そう考えだした時、後ろから曳光弾が横を通り過ぎる。

 

(威嚇射撃?警告?それとも指示に従え…とかか?)

 

弾道から見てこちらに命中させる気は無いのだろう。エンジン出力を下げてエアブレーキを開く。

 

機体の失速速度に近づいてきたのでエアブレーキを戻してAFCS(オートパイロット)装置を操作、速度を維持する設定に切り替える。

 

左右を見るが…誰も居ない。気のせい…?だがさっきの曳光弾が誰か居る証拠だ。

 

(ってことは…後方?)

 

さっき操作した装置を止めて左に90度バンクして旋回に移る。完全に進路方向が逆方向になったところで機体を水平にすると…小さな影が見えてきた。

 

 

目をこらすと…やはりその影は人のようだった。…その身長には似合わない程長い銃火器を持っているという物騒な格好ではあったが。

 

 

彼女らはやはりさっきの速度に追いつけなかったようで、失速寸前のスピードで飛んでいるこの機体の隣を必死な顔をして飛んでいた。

 

先程から何やら口をパクパクさせてるのだが…エンジン音にかき消されて全くわからん。三人は目を合わせて喋っているので意思疏通しているようだが…

 

(あ…無線か!)

 

普通気づくようなことに気づかなかった自分を殴ってやりたい。これまで1度しかつかったことのなかった無線機をONにしてカチカチと無線機の周波数を一つ一つ変えていく。

 

『……………ザザッ…』

 

変えていく中一瞬雑音が混じっていたのでそれに合わせるが…

 

『ザザッ…ザーー…』

 

ノイズしか聞こえない。

 

…ダメだこりゃ(´・ω・`)

 

(まぁ人がいることだけはわかったし…いっか。アニメのタイトル通りのウィッチ…だっけ?その人達が出てきたんだし…)

 

俺が寝る前の時にはまだレシプロ機体だけが飛んでいたが…どうやら時代が違う世界に来たらしい。…たぶん。

 

(もし誘導に従ったら…?)

 

・歓迎は…まずされないだろう。

 

・未知の機体は調査対象に…押収されること間違いなし。

 

・そして色々と尋問でも受けるのかもしれない。

 

・下手したら敵とみなされ殺されかねない。

 

(うん、やっぱ無理。怖い!)

 

とりあえず左右にバンクだけして…一気に機体を引き起こした。それと同時にエンジン出力も上げその場から撤退する。

 

(…怖くなって逃げちゃったけど…大丈夫かな)

 

 

そう思ったが時すでに遅し。さっきの人達とはかなりの距離を離していて、今更戻っても変なやつと思われそう。…もうそう思われているだろうが。

 

(ネウロイでも墜として暇潰しでもしますか)

 

そのままわけのわからない方向へ飛び続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***夜になり***

 

月明かりの綺麗な夜、俺は雲の上を飛んでいた。

 

日没後の暗さでネウロイと戦うのにはまだ慣れず、どうもあの黒い色が保護色となって視認しづらい。まだ戦闘での勘などといえるようなものは全く感じられないのでこれから鍛えなければ…。

 

 

 

F-1に乗り始めたあの日からというもの、昼間も夜間も飛びっぱなし。それは毎日のように繰り返され退屈になってきていた。

 

(あーあ、なんか起こらないかなー)

 

そんな風に妄想に浸ろうとしていた時だった。

 

ポロロンポロロンポロロン

 

「っ!?」

 

いきなり鳴り響くレーダー警戒警報装置。どうやらミサイルか何かが接近しているらしく、それはレーダーにも映った。

 

立て続けに2発。飛んでくる方向は11時の方向…ほぼ目の前からだった。そしてレーダースコープを確認すると確かにその方角に飛行物体の反応が表示されていた。た

 

(はぁっ!?ミサイル!?そんなもんあいつら持ってたか!?)

 

今までこんな攻撃はされたことがない。ずっとレーザーの弾幕を張ってきてばかりだったが…まぁ極稀に突撃してくるのもいたが。時代の差ってやつだろうか?ネウロイも進化しているということだろうか…?

 

この機体…F-1支援戦闘機にチャフやフレア、ジャマーなどといったミサイルを回避するための装置は生憎何処にもついていない。…つまり今の状況のF-1は丸腰かそれ以下だ。

 

(避け切れる…か…!?)

 

一気にアフターバーナーを点火、機体を最高速度まで加速させて機体を右へと曲げていく。

 

直撃はなんとか免れ、数秒後に後ろから爆発音が鳴り響き機体がガタガタと揺れる。

 

(なんだよありゃ…空間制圧兵器かよ…?)

 

ミサイルのように目標を捕捉、追跡してくるうえにあの破壊力…その爆風は広範囲に渡って辺りの雲を吹き飛ばし空にポッカリと大穴を開けていた。あの威力はもはや小さな大量破壊兵器の名が相応しそうだった。

 

あんなものを1発でも食らえば命は無いだろう。直撃ならば即死、爆風に巻き込まれようものならキャノピーなどは砕け散り俺は無事では済まされない。

 

(早くここから離脱しないと…殺される…!)

 

反応のある方角とは逆方向へと機体を操作しようとしたその時、機内に警告音がまたもや響き渡る。

 

さっきとは違い弾数は1発のみだが、追ってくる脅威であることに変わりはない。

 

 

 

 

いくら加速させてもしつこく付きまとってくるミサイルはゆっくりとではあるが、確実にその距離を縮めていった。

 

(どうする!?このままだと…!)

 

距離が300mを切ったとき…頭の中にある1つの案が思い浮かぶ。

 

「だあぁぁしつけえぇ!こんちきしょおぉぉぉ!」

 

パニックになったためかいつもとはおかしなテンションになりつつ…普段は操作することのない装置のハンドルをガチリと引いた。

 

ガクン!

 

直後に機体に大きな空気抵抗がかかり機体が小刻みに揺れる。

 

使ったのは…普通は着陸時の機体を減速するために使う物。ドラッグシュートである。

 

開いたらすぐにハンドルを捻りながら引いてドラッグシュートの緊急切り離しを行い、破棄する。

 

数秒とたたずに起こる後方からの爆発音。その爆発による光と衝撃波は凄まじく、機体をまるでストールを起こしたかのようにガタガタと揺らすと同時に上前方に広がる雲までをも明るく照らしていた。

 

そして気づいたのは2つのレーダー反応。1つはどうやら通常の飛行機サイズのようで、ソレは先程のミサイルが飛んできた方向とほとんど同じだった。もうひとつは俺が先程まで居たところらへんの方向に反応を示していた。

 

それと同時にタブレットが反応し、ネウロイ反応有りと表示される。

 

(あれ?…ってことは…ネウロイじゃない…?)

 

レーダースコープには反応が2つ表示されており、タブレットには1つだけ。ということは片方はネウロイではない何かということになる。

 

 

世間的にはこちらが未確認機になるのだろうが、俺からしたらこの世界そのものが未確認な何かだ。何せレシプロの時代だったのがいきなりミサイルだもの…わけがわからない。

 

 

ひとまず今はあの未確認機から距離をとろう。

 

後ろを振り返ることなく俺はその空域から離脱した。

 

 

 

 

 




ストパン好きな方は申し訳ない…
リクエストなどありましたら活動報告のコメント欄でお願い致します。
感想に制限は無いはずなので誰でもOKですよー。


さて…赤城の制動ワイヤーでも引き千切りに行きますか。


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番外編:赤城へ着艦(墜落)

ネタです。この小説を投稿し始めた時から友人に「赤城に着かry」と言われてきたのでやってみました。絶対に不可能なことができちゃっているのでご都合主義みたいになってます。ごめんなさい。


(ん…何が…どうなって…)

 

まだハッキリとしない意識の中でボヤけた目をこす…ろうとしたが手がバイザーにぶつかり届かなかない。カチャ…とバイザーを押し上げて霞んだ瞼を擦っていると…不可解な音が微かに耳に入る。

 

ダダダダン!

 

「…えっ?………………え?」

 

何処からか聞こえる発砲音。もちろん俺にはトリガーを引いた覚えなど全く無い。

 

キョロキョロと左右を見渡すと……外の8時方向に人がいた。

 

 

見た感じ女の子っぽい誰かが左に並走していた。機内でない所に人が居るだけでも理解不能であるというのに彼女の手の中の物を見た時俺は…絶句した。

 

(いやいやいや!長い長い長い!)

 

アメリカのバーレットM82A1なんて玩具に思えるほどの長い銃身をもった機関銃…?を持っていた。

 

その大きさはまるでそれはル○ン三世のカリ○ストロの城にてソ連の対戦車ライフルのようであんなもの1度も見たことがない。あんなものを扱うなんてとてもじゃないが人間とは思えないが…というか絶対アレは地面に置いてから使うような銃だろう…。

 

そして視線を銃から相手の顔へと移すと…またも驚愕。彼女の頭にはなんか付いていた。

 

 

 

 

付いていたもの…それは獣耳のようなもの?である。いったい何処ぞのカフェのメイドだよあんたはとツッコミたくなるその容姿は今までそういう店などを見たこと無い俺にとってただただ異様な光景にしか見えなかった。

 

 

(…え?…ま、まさかのコスプレ?それともファッション?あ、そういう趣味をお持ちの方なんだな。うん。そうに違いない)

 

勝手に自分で結論を出し納得する俺。だってこの世界(アニメ)を俺知らないんだもの…仕方ないじゃないか。

 

 

なんか知らんがすごく鋭い視線を向けてくる。そ、そんなに睨み付けられると…胃が…。

 

友達に[ストライクウィッチーズ]のPVは見せてもらった事があるが…本編を見ていないため、さっぱり内容を知らない俺には誰が誰なのかさえわからない…というか名前さえ誰一人として知らない。

 

外からこちらを覗き込む人物の外見は…白色の軍服?にポニーテール。そして眼帯らしきものを右目に付けていた…目が無い…?それとも頭の耳同様コスプレ…?なのだろうか?

 

 

 

 

そして気づいたことがもうひとつ。

 

(パンツ…だと……)

 

白い軍服に紛れていたため気づかなかったが…履いていない。そう、履いていないのだ…あ、ノーパンの意味じゃないよ?

何故だか彼女は上は軍服を着ているというのにその下…下半身は足に付ける機械とパンツしかない。ズボンは?…スカートは…?

 

(ろ…露出狂………なの…?なに?どういうこと?)

 

太ももがチラチラと見え隠れし目のやり場に困る。いったい何なんだこの状況は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ザザッ…ザーザー』

 

(ん…?無線…?)

 

無線に何か反応のようなものが起こると同時に向こうで何か叫んでる。声は全てエンジン音で書き消されて何も聞こえないがだいたいは予想できるが…。

どうせ「てめぇ!何処の組のモンやぁぁ!」みたいなことをいっているのだろう。……たぶん。

 

 

「あーあー。テステス。聞こえてますかー?」

 

周波数を変えながら交信を試みる…が、ノイズしか聞こえない。すぐに無理だと諦めて無線の電源を落とす。…だってノイズがザーザーガーガーってうるさいんだもの。

 

 

結局相手との通信は困難なので昔の戦闘機乗りのようにハンドサインや機体をバンクさせるしかないな、これは。

 

最初は機銃でモールス信号でも…と思ったが、生憎イロハニホヘトもアルファベットもわからない。タブレットで検索?そんなのどんだけ時間がかかるんだ、というかめんどくさい。

 

 

 

白の軍服の女性は銃を片手に大きなジェスチャーをしてきた。腕を大きく下から上へと振りこちらに来いとでも言っているかのような…というかその意味でたぶん合っているだろう。こちらも返答として何度か大袈裟なくらいの勢いで頷く。

 

 

すると相手は進路を10時方向へと変えたので俺もそれに続いていく。30度ほど左にロール、左フットペダルを少しずつ踏み込みながら操縦悍を少し引き続け機首を下げぬようにして機体の進行方向を変えた。

 

 

 

 

 

 

 

(…この状況で俺…何すればいいんだろう…)

 

ただただ並走して空を飛ぶ。…それ以上でもそれ以下でもない…本当にそれだけなのだ。

 

レーダーにも反応無し、タブレットもネウロイ反応無し…ということで今この機体には機銃以外何の兵装も取り付けておらず、主翼や機体下部にはパイロンすら1つも装着されていない。

塗装さえ変えれば昔懐かしいT-2ブルーインパルスもどきにだってなれる状態である…後部座席は無いがな。

 

 

武装を外した状態のF-1はパイロット達から[スーパーF-1]と言われるほど軽々と飛行してくれると言われていた。

まぁ、練習機であるT-2を元としているため当たり前と言えば当たり前かもしれないが、操縦性に関して癖が比較的少ない。そのため機動性が他の機体と比べて悪かろうとも素直に操縦者のいうことを聞いてくれたりする優しい機体だ。…たぶん。

 

これまでとは違って兵装が無い。よって機体が軽くなったことから上昇力や加速性能、旋回やロールなどといった機動がこれまでより向上しているため現在、グルグルとロールを繰り返していた。

 

隣にいる白軍服に変な目で見られるが気にしない。だって暇なんだもの。

 

 

 

 

 

 

そして暇な時間が過ぎていくこと数分、何やら海上に船のようなものが見えてきた。というか船だった。

 

 

 

よく見てみると戦艦のような武装は見えず、まっ平らな甲板にあるのは規則的に塗られた白線。見たところ航空母艦だった。

 

アメリカの原子力空母のように離艦と着艦を行うところが別れているものではなく、第二次世界対戦の頃に使われていたような一直線な甲板をもった空母…あまり戦時中の頃の兵器は詳しくないので名前はわからないが、零戦などを運用する空母であることだけは確かだった。

 

どんどんと高度を下げていき、空母へと接近していく。

 

(さて……どうやって降りよう?)

 

常識だがF-1支援戦闘機に着艦することができるような機能など付いていない。というか[着艦]の[ち]の字も見当たらない。

 

普通、着艦が可能な艦上戦闘機には着艦用フックが付いており車軸の方も衝撃に耐えられるよう頑丈に作られている。

 

 

…しかしF-1はそうはなっていない。着艦用フックではなく緊急着陸用の制動フックならば備え付いているが、一度下ろすと自力では戻せなくなるほどの緊急用だ。車軸の方は開発当初にコスト削減ということでF-104の車軸を流用しているため着艦だなんてとんでもない。

十中八九…というか確実にへし折れるだろう。

 

…もし着艦したところで良くて機体が大破、悪くて俺が即死といったところだろうか。

 

(ん~…………うん、無理だ)

 

F/A-18Eなどの海軍機は通常着艦する際にフックがかからなかった場合に備えて着艦と同時にエンジン出力を上げる。そんなことを現在の状況に置かれている俺がやってみろ…木造の甲板が燃えるぞ?お?炙るのか?炙ればいいのか?

 

甲板をバーナーで軽く炙りましたーとでも言えばいいのだろうか。……さて、どうしよう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(チャンスは1度だけ…か)

 

着艦するためにどうするか考えていた。…何故するか?……何故だかやらなければいけない気がしたからだ。

 

 

何度も空母の上を素通りしイメージを固めていく…その数が二桁に達したところで本番に移行させた。

 

 

 

 

 

空母からかなり離れ着艦(?)体勢に入る。

 

エンジンスロットルの隣にあるフラップコントロール・レバーの上部カバーを解除、UP位置にあったレバーをLD位置へと押し下げてフラップを作動させていく。

すると数秒後に計器板のフラップのポジション・インディケーターにLANDの表示がされフラップが正常に作動したことを知らせてくれた。…フラップはこれでよし。

 

次にスロットルレバーの右側スロットルに配置されているエアブレーキのスイッチをOUTにさせる。左右のブレーキを作動させ最大角にまで開いて空気抵抗を大きくしていく。すると計器のSPEEDBRKと書かれたライトが点灯しブレーキが動いていることを意味した。

 

その後すぐに降着装置操作ハンドルをギイィ…と降ろしその後アレスティング・フック操作ハンドルを引く。ちゃんとフックの警告灯が光っていることを確認していつでも着陸…改め着艦を行えるように覚悟を決めた。

 

 

「フーッ…フーッ…」

 

冷たい空気が肺に入る中、何故だが実感が湧かない。下手すれば死に直結するというのにまるでゲーム感覚のようだった…俺って頭のネジ全部取れたのかなぁ?ドキドキとワクワクが混ざりあったようななんとも言えない感覚になりながらそう考えた。

 

 

HUDには第4世代の戦闘機のように色んな情報は投影されないので、前をみて…計器を見て…を繰り返していく。高度もとても低いのでかなり精神力が削られるものだが第3世代のF-1なのだから仕方がない…。

 

速度が失速速度である117kt(216.7km/h)以下にならないようにエンジンスロットルを押したり引いたりと出力を調節しながら空母へとどんどんと接近していく。

 

 

 

 

 

空母までの距離が200mを切った時というとき、スロットルに付いているフィンガーリフトを引きながらIDLEの位置からOFFの位置へと移動させる。これで最早自機はグライダー状態で滑空していることになる。

それから2秒と経たないうちにドラッグシュートのハンドルを一気に引いてさらなる減速を図っていく。

空母はもう目の前…ストールを知らせようと振動していた操縦悍をほんの少しばかり引く。

 

機首が少し上がったかと思えば直後にガクンと幾度も伝わる大きな振動。いったい何本のワイヤーに引っ掛かったのかなどわからないがどうやら幸運にも引っ掛かったらしい。

 

バキィッ!

 

機首が水平を向いて前脚が甲板に叩きつけられた瞬間耳に入ってくるのは金属がへし折れるような嫌な音。続いてバチンという何かが切れる音と共に体が狭い操縦席の左側にねじ伏せられた。

 

物凄い勢いで回る世界。あまりに早すぎて捉えられない視界には艦橋が一瞬映ったと思えば真っ赤になっていく。…レッドアウトだろうか。

 

(ああ…俺死ぬんだな…)

 

回転が止まる…そう思ったら今度は垂直上昇のように機体が傾き出す。甲板から落下でもするのかもしれない。操縦席が日に照らされるがキャノピーがひび割れて何も見えない、まるで曇りガラス越しに照明でも見ているかのようだった。

 

 

どんどんと角度が垂直に近づいていき甲板から滑り落ちようとしたその時、機体が動きを止める。

 

何がどうなったのかなど俺にはわからず、不思議でしょうがなかった。すると、機体は水平に近づいていき甲板へと戻っていく。

 

ガリガリと甲板と機体が擦れ合う音が聞こえ、動きを止める。直後にキャノピーの上に人影が映り、俺はなにもしていないというのにキャノピーが吹き飛ぶ。

 

「おい!大丈夫か!?」

 

白色の軍服を着た眼帯の女性がそう叫んだような気がした。

 

 

 

 

 

 




よくわからなかったらごめんなさい。イメージとしてはグリペンの事故映像のように回転する感じです。

友人にはF-35出そう!と言われましたがそれはそれでいいのか…な?感想待ってます。

(ちなみに主人公機を変える予定は無いっす。)


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やっとこさ来ただよ

やっとこうなりました。同じ表現ばかりでも怒らないで(泣)


ロックオンをされたあの日から次の日。今日はエアブレーキ(スピードブレーキ)を使ったゲームのような急旋回の練習をしていた。

 

 

 

……結果としては失敗だった。ブレーキを開いたとしてもそこまで減速は叶わず、それよりも単純に操縦悍を目一杯引いたりフラップを少し下ろした状態の方がより効果的なことがわかった。

 

エースコンバットのようにできないことは少しばかり残念だったが他の方法が判明したので儲けもんだろう。……というかフラップを動かせる時点でエスコン以上なのだが。

 

 

あと発見したことが1つ。機銃を撃つときは敵ネウロイにHUDのピパーを照らし合わせるわけだが……若干下の方に合わせて撃つと当たりがいいことがここ数日で判明した。そこまで大きくはない発見ではあるが、対地攻撃の時や狙い撃ちたい時なんかには役立つ……かもしれない。

 

 

あとは……いつもと変わらない。ネウロイを撃墜することが日常な時点で非現実的ではあるが気にしない。気にしたら負けだ、うん。

 

 

 

 

 

 

 

暇な時間を過ごしていた間、対艦攻撃を行うF-1を思い出したので何を思ったか低空飛行に挑んでみた。

 

最初は高度50m程から始まって、現在じゃ高度20m……やっと素人なりにここまで落とせた。これ以上は無理だ。絶対に。

 

HUDに高度等は詳しく表示されないので低空飛行中は計器と前方を目線が行き来する。……はっきり言ってこれ……生ぬるいゲームに慣れた俺には辛すぎる。

 

 

かなり高度な技術を要するシュミレーターゲームのような操作がまず必須となる。が、この高度で飛行することがまず必要とはされず、普通は中高度から高高度でしかネウロイとは戦闘を行わないためそう頻繁に必要となるものではないだろう。

 

(そういえば……何でネウロイって飛行機型はあっても船型とかは無いんだろう?)

 

ふと思ったのだが、海上を見ていて今まで船を模したようなネウロイを見たことがない。何かしらの理由があるのだろうか?……そもそもあいつらが兵器なのか生物なのかすら危ういところではあるのだが……。

 

できることなら……というより是非とも船を模したネウロイに出現してもらいたい。

 

 

本来F-1は対地、対艦の方が向いている…はずの機体。何より対空用の兵装よりも対地攻撃用の通常爆弾や空対艦ミサイルなどの方が種類が豊富なことからほぼ攻撃機なことは明らかだった。

 

(最初はF-15とかF-2とかにしといた方がいいかなって思ったけど…何だかんだでF-1で十分だったな。俺英語得意じゃないし)

 

 

F-1より機動性も空対空能力も優れた機体はいくらでもある。けどそれじゃあグラスコクピットのHUDや多機能ディスプレイの情報が読み取れず、ちんぷんかんぷんになっちまう。

 

シンプルを目指したいのなら零戦や零観のコクピットがいいかもしれない。なぜなら計器にほとんど日本語が書かれているから……。

 

だが俺はそこでF-1で行く。何故か?……俺も知らん。

 

 

そうしてまた時間は過ぎていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして夕方。

 

敵ネウロイにピパーを合わせてトリガーを引く。もう既に聞き慣れた破裂音とともに機関砲から弾丸が吐き出され、前方にいたネウロイの被弾した場所ガンからドス黒い煙が噴出される。

 

もう一度トリガーを引いてトドメを刺す。あれほど黒かったネウロイが今度は白い破片へと姿を変えて海へと散ってゆく様子はなんともいえず、時々自分が何をしているのかさえわからなくなる。

 

自分は何をしているのか?相手の目的はいったい何なのか?ネウロイとは一体何者なのか?

 

この頃、心に余裕が生まれてきたからか最初は気にも止めなかった事に最近気にするようになってきた。

味方となる存在はこの世界に居るのだろうか?このまま一人で戦い続けるのか?

 

疑問ばかりが頭に募っていく。

 

 

ヴゥゥゥゥ…ヴゥゥゥゥ…

 

膝に付いたタブレットが振動しネウロイ反応を知らせる。

 

(距離は……此処からだいたい2000kmくらいか…アフターバーナー焚けば二時間くらいで着くってとこかな)

 

さっきまで頭に思い浮かべていたことはすぐに切り捨てて俺は機体を傾けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして二時間後、もうとっくに日は落ちていた。

 

(レーダーにも反応が出ているんだけど……何処にいるんだ?)

 

これが真っ昼間ならすぐに発見できるのだが、生憎今は夜。ネウロイの表面が黒いこともあり目視での確認が困難となっていた。

 

レーダー上ではネウロイは12時の方向にいるはず。だけどいくら目を凝らしても何も見えず敵が何処にいるのやら……

 

「ん?」

 

ふと斜め上へと視線を向けた時、ようやくネウロイが見えた。

灰色の雲から突き出た黒い物体。鮫の背鰭のように一部だけが飛び出たソレはかなり高速で移動しており、発見できなかったら逃げられていたかもしれない。

 

雲のすぐ下にまで高度を上げてミサイルを選択、マスターアームスイッチが入っていることを確認する。

 

ピー…

 

ネウロイにロックをかけ、親指で兵装リリースボタンをカチリと数回押す。

 

 

命中が確実といえない範囲では数撃ちゃ当たるとは言ったもんだ。敵はフレアやチャフといった自己防衛のための装備を持っていないが、代わりにレーザーがある。……しかも全方位に発射可能なやつ。

 

 

4本のAIM-9Bは瞬く間に雲の中へと姿を消し、操縦悍を前へと押し倒す。予想通りと言うべきか、先ほど俺が居たところ周辺がネウロイのレーザーで埋め尽くされ内心ヒヤリとする。

 

(あの量のレーザーじゃあミサイルは……まぁ落とされるわな)

 

すると突如ネウロイが蛇行し始める。……何の意味があるというのだろうか…?

 

エンジン出力を上げネウロイとの距離を2kmほどまで接近、機銃用のピパーがネウロイと重なるようにHUD内に捉えて引き金を引いた。

 

何度も蛇行を繰り返すネウロイに当たることは殆ど無く、大量の弾丸は命中せずにバラけていくものが殆どだった。

 

(くっそ…当たらない!せめて蛇行さえしななかったら…!)

 

そう思ったその時、空を覆い尽くしていた雲がネウロイのすぐ近くだけ爆発の炎により吹き飛ぶ。ぽっかりと大きな口が空いたかのように円形に抉り取られた雲の穴からは何も見えない。いったい誰の仕業だろうか?昨日のウィッチだろうか?

 

数秒後、今度は立て続けに爆発が起きネウロイに損傷を与えた。数kmとはいえその後ろを飛んでいる俺には地獄絵図にしか見えない…突如目の前で大爆発、ちょうど目の前で炎が消えるというのは本当に肝を冷やされる。

 

するとネウロイは雲の中に潜んでいた形から突然上昇、雲の中へと姿を消していく。それを追うべくネウロイ同様に雲の中へと入っていくがここで不可解な現象が起きた。

 

[ザーッ…♪~ザッ…♪~♪~]

 

今まで開きっ放しにしていた無線にいきなり通信が入ったのだ。しかしその内容は言語や信号ではなく何かの曲のようだった。

 

(……誰からだ?)

 

相手がわからないので返事も返しようがない。よくわからない内容だったので無線の音量を下げておく…操縦の邪魔だ。

 

 

高度を上げていき雲の上へと辿り着く。雲を突き抜けた瞬間、最後までキャノピーにまとわり付く小さな雲が幻想的だがそれは後回し。目の前にまだ居たネウロイをHUD内に捉える。

 

ピー……カチッ

 

燃料が燃焼されるのを知らせるかのようなロケット音とともにAIM-9Eミサイルが飛翔し、ネウロイへと狙いを定め始めた。

 

発射したと同時に目に写るのはネウロイの飛行先。数km離れた暗い空に浮かんでいたのは幾つかの青白く丸い円をした何かが浮かんでおり、そこからは二筋の弾幕が曳光弾によって描かれていた。

 

そしてミサイルが着弾、後方に居た俺の機体に黒い煙がそのまま覆い被さる。

 

(うっ…何も見えな[ガァンッ!]はぁっ!?)

 

ネウロイの破片か何かが当たったのかわからないが突然キャノピーがヒビ割れ、ウインドシールドとキャノピーの間にできた隙間から風が機内へと物凄い勢いで入り込み、細かい塵か何かが下げていたバイザーの表面を傷付けていく。

 

すぐにタリスマンが光を放ち始め修復を開始するがそんな時間も待っていられない。直ぐさま操縦悍を引き黒煙の中から機体を離脱させ、曇りガラスと化し使い物にならなくなったバイザーを上げて視界を確保する。

 

いつもより眩しく見える月明かりに照らされながらも機体を反転、下に居たネウロイの姿を今一度視界に入れる。タブレットでAIM-9P空対空ミサイルを瞬時に選択、反転した機体をそのまま降下させHUD内にてネウロイにミサイルロックをかける。

 

「これで……墜ちろ…!」

 

立て続けに放たれた4発の飛翔体は螺旋を描いた後に真っ直ぐネウロイへと接近、4発中3発がその真っ黒な体に叩き込まれる。

 

「ギイィィィィィィィィィィィ!!」

 

大気を擘くようなネウロイの悲鳴が辺り一面に響き渡り、密閉され切っていなかった機内にもその悲鳴は反響する。エンジン音があまり耳に入らないようにイヤープロテクトの役目も果たすヘルメットをしているにも関わらずネウロイが発する叫び声(?)は俺の鼓膜を破らんとばかりに揺らした。

 

(っ………てめぇらの声は空間制圧兵器か何なんかか?あぁ!?)

 

何かが頭のなかでプツリと切れた気がする。そこからはあまり覚えていない。

 

 

気付けば目の前でネウロイは白い結晶となりその命を散らしており、自分でも自分が何をしたらこうなったのか理解できずにいた。たぶんさっきの弾幕を張っていた者がトドメでも刺したのかもしれない、うん、たぶんそう。

 

(さて、何処かにでも行くか。宛なんて無いけど)

 

そう思い高度を下げるべく機体を反転させると、視界に入るのは幾つかの黄色く光る照明。さっきの弾幕を張っていた正体だろうと予想し目を凝らすが……ひとつの何かだと思っていたが、どうやらその考えは間違いだったようだ。

 

彼等は向こうから近付いてきて接触(コンタクト)を図ってきた。で、わかったことだが……彼等は彼等ではなく彼女等(・・・)だった。

 

 

まるで父親がうちの子は渡さん!とでも言っているかのように睨んでくる銀髪で長髪の子、頭の上に[?]を大量生産している茶髪でセーラー服の子、何か光る触角を頭から生やした子……それぞれが手に持つ銃が馬鹿でかくて逃げ出したくなります。はい。お兄さん怖くてチビっちゃいそう。

 

 

フラップを最大まで下ろし失速ギリギリまで機体の速度を落とす。万が一誤射があったら恐ろしいので緊急切り離し装置で両翼下に1つずつ取り付けてあったパイロンを投棄、クリーン形体にした後にマスターアームスイッチをOFFへと切り替える……これで全兵装はスイッチをONにしない限り使用不可能となった。

 

「フーッ……ハァー……」

 

やっとタリスマンでの修復が完了したので1つ深呼吸。綺麗に元通りになったバイザーを下ろすと視界にいつもの色が戻る。

 

かなり速度が彼女等のと近くなったからかどうにか編隊を組むことができた。横に並ぶ姿はさぞかし異様だろう……何せ人、人、人、ときていきなりドーンと馬鹿でかい森林迷彩をした機械なのだから。

 

「あ……忘れてた…」

 

そう一人で呟いてスイッチをOFFからONへと切り替えた。触れたスイッチが意味する内容は機体の外部照明……両翼端や機体下部なんかが光っていたりするあの部分だ。今まで僚機なんて存在居なかったし、ネウロイと戦闘を行う時にこちらが光っていたりすると位置がバレるため照明を切りっぱなしだったこと……すっかり忘れていた。

 

 

3人は進行方向を変え始めたので同じようについていく。が、彼女等……機動性が化け物だ。方向転換がほとんどその場で行われており、Su-27ファミリーも真っ青な動きだった。そんな機動にF-1が付いていけるとでも?答えは言わずともわかるだろう。

 

付いていこうとして思わずエンジン出力を忘れていた俺はロールしたと同時に操縦悍のシェーカーが震え始めたことに気が付いた。操縦悍が震えることはストールを知らせるため。もう遅い判断ではあるがスロットル・レバーをMAXまで押し込み、アフターバーナーに点火させる。

 

ゴオォォォォォ

 

基地の近くに住んでいた頃の懐かしいエンジン音が響き渡ると同時にエンジンの回転数、排気温度を表す計器の針がグンッと跳ね上がる。

 

なんとか失速、落下することは免れ進行方向も無事変えることができた。あとはまた先程までと同じように彼女等の後を付いていくだけだ……そしてまたエンジン出力を俺は落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして飛ぶこと十数分。3人は雲の中へと突っ込んでいった。

 

その後を追うべく操縦悍を前へと倒すのだが……これが間違いだった。

 

「う"っ……うえっ……おぇ……」

 

反転して+Gにしなかったのがいけなかった。-Gは体を襲い、機内を一時的な無重力状態に陥らせたのだった。エレベーターで軽くなるあの現象がレッドアウトまでとはいかないが俺を襲ryうえ…。

 

 

 

 

 

 

 

何てことも起きてぐったりしながら基地上空にまで来た(泣)。自動操縦の機能が無かったらもっと症状が悪化していたかもしれない……。

 

 

彼女等が降りていった基地……ん?あれほんとに基地か?俺としては城に滑走路を付けただけにしか見えないのだが……。そしてこの島の構造考えた奴出てこい!とんだ欠陥抱えてんぞこらぁ!

 

滑走路の先が基地って……万が一オーバーランしたら仏になること確実だろ……。せめて基地に対して垂直じゃなく平行に作って欲しかった。

 

事故に繋がりやすいと思うとハラハラするが……物は試しだ。ぶっつけ本番とはいかなくても先ずはタッチアンドゴーといこうじゃないか。

 

 

 

 

ある程度(7km程?)滑走路から距離を取った後、高度を下げていき着陸体勢に入る。フラップはあれから下げたまま、あとはスピードブレーキと降着装置だ。

 

車輪を下ろすため動きの堅いハンドルをガリガリと音を立てながらDOWNへと動かしていき、計器が車輪が正常に下りたことを知らせる。

 

(これでよし)

 

滑走路へと近付いていくに連れてスロットルレバーについているエアブレーキの作動スイッチをOUTにする。空気抵抗が増した機体はゆっくりと速度を落としていき高度も徐々に下がってくる。

 

計器の姿勢指示装置と高度計を見ながら操縦悍を引き、機首を5度程上げ……タッチダウン。キュッ!という車輪の擦れる音と共にやって来るのは割りと大きな衝撃……俺ってば着陸下手だなぁ……。

 

数秒後、スロットルをMAXまで押しつつ親指でブレーキのスイッチをINにする。

 

すると機体は速度を急激に上げていき、ガタガタと振動を起こした。

 

充分飛行が可能な速度に達すると同時に操縦悍を慎重に引いていき、離陸。すぐに車輪を仕舞うとフラップを少し上げて旋回へと移っていった。

 

 

 

 

 

 

 




次で原作キャラに会うわけですが……キャラ崩壊しないように気を付けないと…アワワ(´Д`)


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この世界って何なんだ

どうも、べっけです。最近更新速度が落ちてきたと思いますがちゃんと生きています。原作をどうするか原作漫画見ながら考えている途中です……

3000字と短いですがどうぞ。


キュッ!

 

 

タイヤが地面に触れる音が耳に入ると同時にドラックシュートを作動させるためのハンドルを引っ張る。

今回は引っ張るだけ。もしここから捻りでもすれば……あの時行った回避のように切り離して捨ててしまうからだ。

 

エンジンの出力はIDLE。スピードブレーキもOUTになっていて、フラップの位置を示す計器も全開を知らせている。今度はタッチアンドゴーではなくそのまま速度を落としていった。

 

 

(100kt……80kt……60kt……)

 

 

甲高いエンジン音が小さくなり機体の振動する音だけが操縦席にガタガタと響き渡ってくる。

 

視界の先には彼等(彼女等?)の基地であろう建物がゆっくりとではあるが迫っており、やはり危機感を覚えていた。自分はこの先どうなるのか、そもそも無事でいられるのかなどとビクビクしながなら操縦悍を握るグローブの中は冷や汗で大変な事になっていた。

 

 

 

 

 

速度も無くなり格納庫と思われる建物の前に駐機させる。

 

(……この辺で……良いのかな?)

 

場所を決めたらスロットルを操作してIDLEからOFFへと切り替える。甲高く唸っていたエンジンが自ら回転することを止めウウゥゥ……と音が低くなっていき、ずっと着けていた酸素マスクを口元から取り外す。

 

酸素供給のスイッチを切ったりと計器類を操作して降りる用意をしていく。

 

一通り終わったら電源も切りキャノピーを開けて今まで体を固定していたベルトを外していく。全て外し機体から降りるが気付いた。

 

「…………ま、いっか。よいしょっ!」

 

梯子が無かった……なので仕方なく飛び降りることにした。

 

ドンッ!

 

「う"……」

 

コックピットから元気に飛び降りたはいいが着地が可笑しい事になった。

自衛隊員達のような訓練など受けている訳など当たり前のように無く、着地の衝撃を殆ど吸収することが出来ずにいた俺は着地から数秒の間まるで踏ん張っているかのような変な体勢でプルプルと痛みを我慢する事しか出来なかった。

 

 

 

(いってー……さて、ここから俺は一体全体どういったことをすればいいのやら……)

 

そう、ここからが本番である。それを示すかのように俺の目の前には銃を持った獣耳の女性達と色んな物を手に持った作業着姿の男性達が集まっていた。対戦車ライフルだろうとしか思えない銃からバズーカのように担ぐ物までと様々な武装をした女性陣に対して男性陣の装備はというと……

 

 

 

ある者は大きなスパナを持ち、またある者はボルトアクションのライフルを、またある者は箒を……他にも木の棒、掃除用ブラシ、火ばさみ、やかん、枕を手に……ってかおい最後の二人、お前らは何処のパニックになったの○太だ?

 

 

 

 

 

内心で初対面の人に突っ込みつつ、俺は取り敢えず両手を上げて抵抗の意思が無いことを示すことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって……何処かわからない場所。執務室か何かだろうか?

 

今目の前にはこの基地の司令官?幹部?上層部?まぁお偉いさんであろう女の人が座っていた。軍人にしては少しばかり若すぎるような気もするが異世界なのだからこれが当たり前なのかもしれない。

 

「さて……まずは自己紹介としましょうか。私はミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ。ここ、連合軍第501統合戦闘航空団の指揮官を担わせてもらっている者よ」

 

「え?統合戦闘航空団?……はい?」

 

「だ、大丈夫?わかるかしら?」

 

「いや。全くもって知りません……」

 

「そう……それは置いとくとして貴方の名前は?あと所属している部隊とか」

 

「えっと……」

(……あれ?名前……なんだっけ!?ヤバイ!記憶が無い!……えっと……考えろ考えろ…………そうだ!)

 

「名前は……た、武内一(たけうちはじめ)です!所属は……していません!」

 

「……え?所属先が無い……?」

 

ミーナと名乗ったその女性は目を見開き、書き始めようとして持っていたペンでも落としたのかカシャンと音がしたのを合図に二人の間を静寂が包む。

 

「えっと……そもそもただの一般人です……」

 

「へ?……でも貴方はアレを……」

 

話が上手く進まない。俺が未確認機に乗っていたのに軍人っぽくないからだろうか?生憎俺には初対面の人に馴れ馴れしく話しかけるなんて出来ないし、上から目線もとてもじゃないが不可能だ。

 

オドオドしていちゃいけないのは頭ではわかっていても体がそうはいかない。今でも口の筋肉は硬直してるし、手足はプルプルと震えて手には汗が滲んでいた。

 

 

 

そこからはそれはもうグダグダだった。片方は目の前の人物が何をしたいのかさっぱりだし、もう片方はアワワワといった感じに上手く呂律も回っていない状況で会話のキャッチボールなんて全く成立していなかった。

 

 

 

結局話し合った内容はこんな感じだ。

 

・自分はどういった存在なのか

A,自分でもあまりわからない

 

・何故ここへ来たのか

A,ネウロイを倒しているとここの部隊員に遭遇、興味本位でついてきた

 

・所属先が無いというのはどういう事か

A,ずっと野良でやってきました

 

・アレ(F-1)は何なのか

A,誰にも絶対渡さない自分の愛機です

 

・これから自分はどうするのか

A,また宛もなくネウロイ墜としの日々です

 

はっきり言ってふざけた回答だと思う。何せ何一つわかり合えていないんだもの。暫くしたらまた話すとのことで1度解放してもらった。監視付きでいいなら見て回ってもいいとか何とか。

 

 

 

 

 

と、いうことで現在俺は彼女らの基地の中を見学していた。

 

「何かこの基地って色々と設備揃ってて快適ですねー」

 

「ほう、そう思うか?まぁ此処はネウロイとの戦闘での最前線と言っても良い所だからな。それなりに物資は他よりも運ばれるさ」

 

俺の監視役としてついた彼女の名は坂本美緒さん。最初は眼帯をしていたので(え?もしかしてこの人……)と思ったがどうやら思春期に発症するあの病ではないとのことで、ちゃんと理由があるらしい。

なんと彼女……この年齢で軍人、階級は少佐なのだそうだ。

 

(……少佐って……空自でいうところの3等空佐ってこと?……親父よりも高い階級じゃないですかヤダー)

 

そう思ってしまったのは仕方が無い筈。

 

少佐……そこまでの幹部になればデスクワークになるのでは?……そう思ったがどうやら違ったようで、彼女は今なお前線で敵ネウロイとの戦闘を交えているらしい。

 

(それってホントに大丈夫か?もしも万が一に指揮官が前線で死んだ場合ってどうするんだろう……)

 

この疑問はかなり失礼なので俺にはとてもじゃないが聞くことは出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてわかったことがもうひとつ。この世界は国の名前が全然違っていた。きっかけはこうだ。

 

「なぁ……武内?」

 

「どうしました?」

 

「その名前からしてお前は扶桑国の人間なのか?」

 

「……え?フッ素?」

 

「いや、扶桑だ。ふ・そ・う。まさか知らないとは言わせんぞ?」

 

「……フソウって何ですか?」

 

「……おいおい……」

 

 

 

 

ということである。生憎俺は原作の知識なんざ全くもって無いため彼女らが何を言っているのか全然理解ができずにいた。

 

 

どうやら少佐が先程から口にしている扶桑とは国の名前らしく、特徴やら文化やら内容を聞いていくとその国は大方日本ではないかとの予想がついた。しかもこの世界では第二次世界対戦の年代にも関わらず国同士での争いは一切起きていないらしい……共通の敵となるネウロイが現れたからではないかと伺える。

 

 

 

この世界のことを知ろうとも思っていなかったが……まさかこうも違う世界とは思ってもみなかった。世界地図を見せてもらったが北アメリカ大陸もかなり異なった形状をしていたし、国名もその殆どが俺の知識にある名前とは合致しなかった。

 

 

 

 

 

 

 

……さすが異世界としかいいようがない。

 

 

 

 

 

 




面白かったら幸いです。

感想いつでも待ってます


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何も思い浮かばない

そのまんまです。サブタイトルが思い浮かばない……何故ならこれといってストーリーに進展が無いから!

つまらない小説ですみません……。


坂本少佐に一通り基地の中を案内されたあと、現在俺は個室?のような部屋にいた。一時的に部屋を貸してもらったわけだが、今までずっと操縦し続けたのだから本来眠る必要など俺には無い。

 

まず夜間飛行中の彼女らに遭遇したのだから時間的には現在かなりの深夜となっていた。

 

(でもまぁ……ベッドもあるし久々に寝ようかな?)

 

そう思い横になる。

体がベッドに少しだけ沈み込み力が抜けていく。これまで狭い操縦席にずっと座っていたのでこうして体を大の字のように伸ばすのは何時ぶりだろうか?

 

「んん~……」

 

目一杯に体を伸ばすと両肘や腰からパキパキと関節で空気が破裂する音が骨越しに伝わるのを感じながら、久しぶりに体を伸ばす気持ちよさを噛み締めていた。

 

 

 

 

……深い溜め息が無意識の内に溢れ、部屋の中を静寂が包む。

 

 

 

 

 

 

 

睡眠とまではいかなくともうつらうつらと瞼が重くなり、思考が鈍くなっていくのを感じる。 

 

……やがて時間が経つに連れて体から力が抜けていき意識が本格的に遠退いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………あれ?」

 

いつの間にか寝たのか、意識が飛んでいた。

 

あれほど暗い真夜中だったというのに現在は窓から日の光が差し込んでいた。

 

(何だろう……この感覚……?)

 

体に走る感覚が今までとは何かが違うように思える。強いて言うのならばまるで一部の感覚が遮断された状態のような……何とも不可思議な感覚に陥ったものだ。

 

 

とりあえず起きて窓の外を見るとちょうど日の出の様子が見えていた。そこで壁に掛けられていた時計に目をやると短針は5時を指しており、早朝らしい。

 

空自の基地の近くに住んでいた時は毎日6時頃に朝のラッパが鳴っていたが……ここはどうなのだろうか?今のところスクランブルのようなサイレンも鳴っていないだろうしよくわからん。

 

(誰か起きてるかな……?)

 

廊下へと続くドアを開けると物音1つ立たない不気味な程の静けさが漂っていた。

 

早朝だからかはしらないが誰か一人くらい起きていてもおかしくはないのではなかろうか?そんなことを考えつつ廊下を一人寂しく進んでゆく……彼女等は戦闘員なのでゆっくりしているかもしれない。

そう考え整備員達が居るであろう格納庫へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……あれ?あいつ(F-1)は何処行った?)

 

無い……昨日置いておいた機体が無い。あんなに大きなシルエットが消えるなど微塵も無く、神様仕様によってボルト1本微動だにしないようになっていたはずだ。

 

……ならば一体何処にいった?

 

キィィィィン

 

遠くの方から小さく聞こえるのは聞き覚えのあるエンジン音。音の発信源はどうやらこの格納庫の外にいるようで、その正体を確認するために1度俺は外に出ることにした。

 

 

 

 

 

 

「…………まじかよ」

 

思わずそう呟く。

外には坂本少佐らしき人影がいて、足にあの機械を装着して空を飛んでいた。しかしよく音を聞くととそれはレシプロ独特のプロペラが空気を切り裂くようなではなくやはり甲高いジェットの音だった。

 

こちらに気がついたのか白い軍服が迫ってくる。やっぱり坂本少佐だ。

 

「おお!お前も起きたのか!朝早くから外に出るとはな、朝練か?だとしたら感心感心」

 

俺はまだ何も答えていないのに腕を組み頷いて勝手に自己完結する坂本少佐。

 

(……ていうかなんでこの人は朝から真剣振り回しているんだ!?)

 

彼女の手には竹刀……でもなく木刀……でもなく紛れもない日本刀、それも模造刀ではなさそうな真剣が握られていた。少佐ではなく刃紋の方に見とれていたことは余談である。

 

「お……おはようございます。少佐……その~……足に着いているそれは一体?」

 

「ん?このストライカーユニットのことか?それが……その……今朝お前の機体に興味本意で触れてな……するとこの姿に形を変えてしまったんだ」

 

そう言いながら頬をポリポリとかく少佐の顔には冷や汗が流れていた。

 

(エ?ドユコト?)

 

今の俺は一体どんな顔をしているのだろうか?全身真っ白になっているか死んだ魚の目をしていることだろう。

 

その事実を理解したとき両膝からガクンと力が抜けていきorzの体勢へと自動的に移行していった。

 

 

(機体が無いとなると俺の存在価値って……あ、元から無いじゃねぇか……)

 

 

「嘘だ………………」

 

ポツリとそう口にする。

 

 

 

 

 

 

 

「嘘だぁぁぁぁぁぁ!……あ?」

 

そう叫んでいた。しかもベッドの上で。

 

(……あれ?……夢?)

 

辺りをキョロキョロと見渡すと昨夜寝たあの部屋だった……壁にかけられた時計が指すのは午前5時40分。今度は夢じゃないぞ……たぶん。

 

「…………良かった……」

 

本当によかった、夢オチで。ホッとしたのかかなり深い溜め息が漏れ現実であることを実感する。

 

(…………あんな夢見た後だとなんか凄く不安になってきた……。俺のF-1何もされていないよな?大丈夫だよな?)

 

正夢にならないことを切実に願おう。

……とはいってもリアルな悪夢を見たので一応この目で確認しておきたいところだ。

 

(よし……行こう)

 

念のため見ておくために俺は体を起こした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(えっと……たしかこっちに行けば格納庫に行ける……よな……?)

 

靴と床が擦れ合う音が静かに響く廊下を一人歩く俺は、昨日坂本少佐に案内してもらった微かな記憶を辿りつつ自分の機体が置かれているであろう格納庫へと向かっていた。こうしてみると今見ている景色と今朝ベッドで叫ぶ前まで見ていた基地内の光景とは一致しないからやはりあれは夢だったのだと実感する。

 

(案内してもらった時はそんなに時間がかからなかったし……

 

 

 

 

 

 

 

 

~数分後~

 

 

「……ここ…………どこ?」

 

 

あれから結局迷った。デパートのように案内図が基地内にあるわけなど無く、さっきからあっちへ行ったりこっちへ行ったりと繰り返していた。

 

どうやら前の世界から方向音痴の特性までも持ってきてしまったらしい。個人的にはこういった人工物に囲まれた環境というものはどうも慣れずにいる……まるで京都の碁盤のような形をした都市は俺の天敵だと言えば良いだろうか?北○○条○○丁目などといった住所は目が眩みそうになる。

 

 

(よし、これでいこう……多少危険だけどまぁいっか)

 

ある考えを思いついたので来た道を戻っていく。方向音痴なのに来た道は覚えるところが矛盾していると自覚しているが……どのみち覚えていられるのは数時間と満たないのでなんとも言えない。

 

 

(んで、自分の部屋に着いたわけだが……)

 

早速ベッドのすぐ近くにある外開き式の窓を開けて身を乗り出す。するとレンガのように白い石が敷き詰められた壁が目に入り、なおかつ窓のすぐ横には雨水用であろうパイプが設置されていた。

 

すぐにスリッパから耐Gスーツを着ていた際のブーツに履き替えると窓の縁に足を掛ける。手にはグローブも着けている為壁で怪我をすることもないだろう。

 

(…………割りと高いように感じるなぁ……)

 

高さとしては三階程だが落ちれば死にはしなくとも骨折なんかは免れないだろう。俺は何処ぞの狂ってる団と揶揄される隊員達のように身体能力が優れているわけではないため飛び降りる事など不可能だ。

 

 

(よし……大丈夫だよな?う……怖っ)

 

パイプに掴まって下を見たが最後、下半身に猛烈な悪寒が走っていく。一瞬平衡感覚が狂う事に加えて耳元で風を切っていく音がする……谷の上に掛けられた橋から下の光景を覗いたかのようなあの感覚といえばわかるだろう。

 

これ迄の戦闘機に乗っていた時の方が高度としては高いが環境が段違いだ。ベルトに固定された状態と命綱無しのこの状況とでは比べ物になりやしない。

 

 

少しずつではあるが確実に下りていく。パイプを固定しているボルトや固定具に足先を引っ掻けて一段一段をゆっくりと。

 

(……もうちょい?)

 

心に余裕ができ始めたその時だった。

 

 

 

 

 

ズルッ

 

 

「……あ」

 

そう口にするが最後……足が空を蹴る。

 

「ぬわぁっ!?ちょっ!?」

 

それまで支えていた体重が全て両手に切り替わった為にパイプから手が引き剥がされる。

 

 

 

 

 

 

 

「あらぁぁぁぁぁぁ!?」

 

某ファストフード店のマスコットキャラクターの人のような声を発しながなら約三階の高さから地面へと真っ逆さまに落ちていく。

 

 

(どうか生きてますように……)

 

全てを諦めたかのような表情をしながら俺は自由落下に身を預けるしかなかったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「案外大丈夫だった……」

 

そう口にした通り案外大丈夫だった。建物の下辺りには垣根?のように植物が生い茂っていたためそれがクッション代わりになったようだ。……にしてもこの体勢は酷いと思う、なにせ八○墓村のように上半身だけ木に突き刺さり下半身がVの字のように突き出しているのだから。

 

(……大丈夫?誰も見てない?)

 

物凄く恥ずかしい状況に陥った俺は顔を真っ赤にしつつも外からなら見えやすいであろう格納庫へと向かっていくのであった。

 

 

 

 

 




今日からやっと部活が無いので他の小説も進めたいと思っています。なのでまた期間を空けさせて……一月には高校のロボット大会があるので書けませぬ。すいません……。

この小説を見てくれてる人でその大会に出る人がいたら僕はその日個人を特定されるかも(笑)


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さぁ出げ……あり?(´・ω・`)

お久しぶりです。こんな小説を見ていただけることにまず感謝です。


建物に沿って島をグルグルと回っていくこと20分。崖に心底ビビりながら進んだ先には滑走路の端が目に入る、ということは格納庫があるはず。

 

(やっとか……つか割とデカかったんだな、この基地って)

 

建物の角を曲がり滑走路の根元へと向かう。昨日の着陸の際見たオーバーランしたら終りな滑走路と格納庫の位置関係にはかなり驚かされたためこの周辺だけは鮮明に覚えている。

 

(たぶん方向的に考えて……こっちに行けば……)

 

方向音痴な頭を精一杯フル稼働させて考える。そして行き着いた結果としては無事に格納庫に着くことができた。……まぁ島の沿岸を辿るだけなのだが。

 

(……何の為の装置だ?)

 

格納庫内にあったのは見たこともない不思議な機械。レシプロ機を思わせるカラーリングが施された脚につけるアレ、それを固定している変な台のような機械には黄色と黒のシマシマ模様があるため何とも近寄りがたい雰囲気を醸し出していた。

 

それらがズラーっと並ぶ中、壁際の空いているスペースに俺のF-1は駐機されていた。

 

(……よかった……)

 

機体に触れながら一周してみたところ、外見的には異常は見当たらず、ひと安心した。

 

(……でもなんでこんなに汚れが無いんだ?あんなに塩とか煤みたいなのが付いていたのに……)

 

機体をなぞりながら一周した筈なのに自分の人差し指には何の汚れも付いておらず、機体の表面は磨き上げられていた。

 

勿論自分にはそんなことやった覚えなど無く……昨日は事情聴取でさんざんな目にあった。なので機体から降りてからは1度も触れていなかったが……これも自動的な機能?それとも誰かが……?そう考えていた時だった。

 

「あ、おはようございます」

 

「お、おはようございます……」

 

格納庫の奥から現れた人物に気付かず、一瞬身構えしてしまった。

 

「いや~……昨日はホントに驚きましたよ。いきなりうちの班長が白兵戦用意!なんて指示出すんで何かと思ったら、貴方の乗ったこの飛行機が来るんですもん」

 

「白兵戦ですか……そんな指示が急に出たからモップやら箒やら持った人が居たんですね」

 

「ぷっ……確かに……」

 

(あ、思い出すとヤバイ……(笑))

 

「「ぶはははははっ!」」

 

脳内再生であの光景がもう一度甦ると堪えきれずに思わず吹いてしまう。……特にヤカンと枕が。

 

 

「ひー……お腹痛い……あ、そうだ忘れてました。自分の名前は佐藤健(さとうたける)です。この基地では整備員をさせてもらっている者です」

 

目の前の作業着姿の男性はそう名乗った。

 

「え……と、僕は武内一。一応この機体のパイロットの人間です」

 

「「宜しくお願いします」」

 

そうして互いに握手をした。

 

 

 

──────────────

 

 

 

 

「すいません、自分の機体を掃除してもらって……」

 

あれから聞いたところ、やっぱり健さんを始めとしたこの基地の整備員達の手によってF-1は掃除してもらったらしい。それも雑巾一枚で。

 

「いやいや。自分達がやりたくなったからやったまでです。むしろこっちが怒られなくて良かったですよ……俺の機体に触るなーとか機密だからとか言われたらもうどうしようかと思いましたし……ところでひとつ質問いいですか?」

 

「?……ええ」

 

「……あなたは一体何者ですか?」

 

(……ここで俺はなんて答えるのがベストなんだ?)

 

「う~ん…………」

 

「いや、そう無理しなくてもいいんですよ。本人が良かったら聞きたいな~くらいでしたし」

 

「すいません……自分でも何とも言えないんです」

 

実際自分では何て言えばいいのかわからない。馬鹿正直に神様の頼みで来ましたとか言うか?俺には無理だと思う……というか信じられないだろう。こういう質問に対してあやふやな返事はするべきではないだろうが……いつか言えばいいよね。

 

 

 

「見た感じハジメさんは外見的にも名前的にも僕と同じ扶桑国の人間に思えるんですが……違ったりするんですか?」

 

「たぶん同じじゃ……ないですかね?」

 

「でしたらこれなんか知ってます?」

 

そう言って健さんは作業着の胸ポケットから小さな袋を取り出し、中から出てきたのは……

 

「金平糖ですか」

 

色んな色をした小さなモヤ○とボール。金平糖だった。

 

 

「ええ、食べます?」

 

「それじゃ1つ……」

 

 

甘い。やっぱりというか当たり前というか金平糖は金平糖だった。そこは変わらないらしい。

 

この世界の日本……扶桑にはかなり日本と共通点があるようで、懐かしむように健さんは語りだす。

 

自分が生まれ育った土地の話や軍に入隊するまでの出来事。その入った軍ではどんな経験をしてどんな感情を抱いたかやこの世界の人類の敵……ネウロイについても。

 

健さんの家では犠牲者があまり出たりはせず、壮絶な過去を送ったりはしていないそうで……ネウロイに異常なまでの執着心や復讐心は持ち合わせといないとのこと。それでも町が襲われたりした後の焼け野原を見たときの喪失感は何物にも言い難く思えるそうで、一匹でも多くのネウロイを掃討できるように軍に入隊したそうだ。

 

 

 

 

……しかし軍に入隊しただけでは何も出来ない。聞いたところウィッチ達のような《魔力》は男性が持ち合わせることは皆無だそうで、せいぜい神話の中でぐらいしか魔力を持った男性は確認されていないそうだ。

 

そうするとウィッチのようにネウロイの発する《瘴気》とやらを弾き返すことができず、遠距離からの砲撃などしか攻撃手段がないとのこと。

 

 

 

それで最初は海軍の軍艦に乗るか陸軍の戦車に乗るかで迷ったそうだが、なんやかんやで何故か整備士になったそうだ。

 

……何でも、最前線で戦うウィッチーズの装備を完璧な状態に保つことも重要なの事なのではないかとある日突然思い始めた事がきっかけらしい。

 

 

 

 

「なんか色々あったんですねぇ……」

 

「そうですね、でもこうして今を生きていることがまず幸運なわけですし……だったら意地でもネウロイに一矢報いてやろうと何故か思ったんですよね」

 

「へー……ところで健さ『ウウウゥゥゥゥゥ!』えっ、何々!?」

 

自分の声を遮って響き渡るのは明らかに緊急事態を知らせる警報。

……一瞬消防署から正午に鳴るサイレンかと思ってしまった自分が恥ずかしい。

 

「ネウロイの出現を知らせる警報です。では僕はウィッチ達の緊急出撃を手伝わないといけないので、また後で……」

 

そう言って健さんは立ち上がり、格納庫内に広がる機械に手をつけ始めた。

 

(ここは下手に動かない方がいいよな……てか俺も出撃した方が良いか?)

 

このスクランブルで全員無事に帰ってくる保証は何処にも無い。……ならば邪魔にならない範囲でネウロイ撃墜に参加すべきだろう……というかやりたい。

 

 

(ならエンジンを始動させ…………ん?エンジン?)

 

自分の考えに何か引っ掛かりを感じる。F-1には何の異常も無い……ならこの何か忘れているような感覚はなんだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…………あ……)

 

そこで気がついた。これで自分の中の引っ掛かりも無くなることだろう……ああ、良かった良かった。

 

 

「エンジン始動車無いやん(´・ω・`)」

 

何故気がつかなかった。スクランブル発進しようにもエンジンが元から動かないこの状況、どうやって打破しろというのだろう。

 

 

現代の自衛隊で使用されているF-15EJやF-2は外部からの干渉無しに自力でエンジンを始動させることが可能だ。だが数世代前のF-1支援戦闘機は自力でエンジンを動かすことが出来ない。

 

某動画投稿サイトなどで「F-1戦闘機 エンジン始動」などと入力すればわかると思うが、エンジンを始動させる際に機体の下部にホースが左右のどちらから一本ずつ接続され、機体のすぐ近くに機材が置かれていると思う。おそらくそれがエンジン始動車だろう。

 

 

この基地にはジェットエンジンを始動させる機材なんてあるわけが無いし、そもそもジェットエンジンすら実用段階ではないのかもしれない。

 

……この状況で自分に出来ることは?

 

 

 

 

(……じっとしておこう……)

 

自分の愛機の上で胡座をかいた俺はウィッチ達のプロペラが風を切る音を聞きながらただ虚しくその飛び立つ後ろ姿を見ることしか出来なかった。

 

 

 

 

 




できれば主人公の僚機となる人物を出したいなーとは考えたのですが……

・友人の小説の主人公を引っ張り出す(チート)

・ある友人の性格を元に作る(MiG-17)

うう……周りにF-1好きな(というか知ってる)人が少ない……

もしよかったらコメント、アドバイスください。誤字脱字、事実とは違う点があればそちらも遠慮無くお願いします。


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選択肢

はっはっはー!今日からテストだー!(錯乱




「……ハァ」

 

スクランブルでウィッチーズが出撃してから数分……俺はまたもや暇をもて余していた。

 

事情聴取をするのかと思っていたが……坂本少佐はスクランブルに出てしまったし、ヴィルケ中佐は無線で現場に指示を出していた。

 

(……俺こんなんしてて良いのかな……?)

 

ハッキリ言ってしまえば俺は敵か味方かも定かではない存在なわけで、普通監視対象にされたり監禁されても十分おかしくないと思っていたが……本当に野放しだ。

 

(健さん達整備班も忙しそうだし……こっちはこっちでやりますか)

 

重い腰を上げて主翼から飛び降りたら……暇潰しにかかろう。

 

 

(……えっと……これを……こうか?……ん?それとも……?)

 

ベタベタと機体をまさぐりあるものを探す。

 

今行おうとしている作業は……ガンカメラとストライクカメラのフィルム確認。

 

ストライクカメラとは……まぁよく戦闘機の動画を見る人はガンカメラの似たような物と考えて欲しい。

 

ガンカメラはヘッドアップディスプレイの付近に設置されていたりするが、このストライクカメラとやらはノーズギア(前脚)の辺りに取り付けられてある。

 

こちらの方は爆撃戦果の評価に使用されるもので、ガンカメラとはそう大差無い。ただ単にヘッドアップディスプレイから見た様子を撮影するか、投下した爆弾の着弾地点を撮影するかの違いである。

 

 

(あ、ここから開けるのか)

 

カメラの近くの機体の側面にあったアクセスパネルを開け、中からそっとカメラフィルムを取り出す。

 

「すいませーん!どなたかいらっしゃいますかー!?」

 

叫んでみるが格納庫には自分以外誰もおらず、寂しく声が響き渡る。

 

(……他の人達の部屋って何処だろうまぁ後でいいか)

 

次はガンカメラのフィルムを……そう思ったが……操縦席までたどり着けない。

 

操縦席まで割と高いのに梯子が無い。どうする?自分。

 

 

「……はぁ」(どっかにないか探すか)

 

辺りを見渡し2秒。それはいとも簡単に見つかった。

 

格納庫の壁に脚立が横になって吊るされていたのである。

 

少しだけ拝借させてもらおう。

 

「よっこいしょっと」

 

壁に固定するためのフックから脚立を外して折り畳む……梯子などとして使う場合のあの一番長い状態で置かれていた為だ。

 

そのまま操縦席の左側辺りに持っていき、脚立を立てる。あとはいつも使うようにロックの金具を掛け、何度か揺らして大丈夫か確かめ……まあ、大丈夫だろう。

 

カンカンと脚立の音を鳴らして操縦席にまで上りって座ると、やはり落ち着くというか……安心する閉塞感に包まれた。

 

決して寝やすいようなものではない。むしろ居心地の悪い空間に感じる人の方が多いかもしれないが、個人的にはやっぱりこの方が良いと思える。

 

(あ、ガンカメラの事忘れるところだった。あぶねあぶね)

 

カチャカチャとカメラを弄り、中からフィルムを同じように取り出す。ネウロイを撃墜する際にはこまめにカメラをONにしていたのでおそらく撮影されているはず……。

 

(これ、現像してもらえるかな……)

 

俺はデジカメしか使ったことがないような青いガキなのでこういった写真のフィルムの現像の仕方を全くもって知らない。せいぜい赤い照明に照らされた室内で何かの液体を使うことくらいしか知らない。

 

(中のフィルムが出ないようにしとけばいいの……?)

 

フィルムを取り出した際にはよくわからないケースに入っており、全く中が見えないようになっていた。……素人が下手なことするよりも手を出さない方が最善策と自分で勝手に結論付けることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こういうのは初めて見るフィルムですね……」

 

あれから時間は過ぎてお昼頃。昼休みに入った健さん達整備員を訪ねていた。

 

「んー……仕組みは見たところ同じようですしできないこともない……といったところでしょうか……」

 

「び、微妙で怖いですね……」

 

「やれるだけやってみたらいいんじゃねぇの?ま、絶対にフィルムは無事とはいえんがな」

 

顎髭が印象的な一人の整備員が健さんの肩に肘を乗せながらそう言う。

 

「じゃあ……保証はできませんが……それでも?」

 

「はい、僕には何にもできないので……」

 

「それでは承りますけど……くれぐれも期待はしないでくださいね?」

 

「はい、お願いします」

 

「よし、さっそく現像室行くぞ。……ああそうだパイロットさん、俺ん名前はオースティン・テニソンってんだ。まぁ気楽にやろうや」

 

「どうも、武内一です。今後お世話になります」

 

こちらも自己紹介をして差し出された右手に握手する。外国人のはよくシェイクハンドとは言っていたが……そのシェイクが凄い激しい。俺の腕が肩からもげるんじゃね?って思わされる程強かった……痛い。

 

 

 

 

……ここで疑問がひとつ。……なんで日本語がこんなに流暢に通じるんだ?英語を喋った覚えなんて全く無い。

 

(……こ、これがこの世界の理なんだよ……たぶん。うん、そうだ、そうに違いない)

 

なんて無理矢理なんだと思うがそれがこの世界なのかもしれないし、じいちゃん(神様)がなにも言わずに特典(?)のようなものをつけてくれたのかもしれない。……言葉の壁はかなりキツかった自分としてはかなりありがたい。

 

 

 

そして俺の手が周りより小さいというのもあるが、このオースティンってい人……めっちゃ手がゴツくてデカイ。手の甲までもっさもさに生えた体毛や作業着越しからもわかるようなゴツい筋肉……まるで絵に描いたような外国人男性だった。

 

そうしてオースティンさんと健さんは渡したフィルムを見てみる為にこの基地内にあるという現像室へと向かっていった。

 

(……あれ?今って昼休みだったんだよな?……俺二人の昼休み潰したも同然じゃんか……しかも本来の仕事とは違う厄介事を押し付けちゃったんだけど)

 

今度なにかやって借りを返そう。そう思えた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝のスクランブルからウィッチ達が昼頃に帰投してきて数時間……基地内の放送でなんか執務室に来いと言われた。まぁネウロイ云々で忙しかったから一区切りついたところで……もうひとつの厄介事(武内一)に取り掛かるのだろう……お疲れ様としか言えない。

 

(ってことでここまで来たけど……何て言いながら入ればいいんだ!?中学の時の職員室と同じ要領でいいのか!?)

 

まだ社会にも出ていなかったただの高校生がこうなるのは当たり前(?)かもしれないがここは異世界……何が前の世界と同じで何がダメなのか全くわからない。ただでさえ日本の常識、マナーと外国の常識、マナーは合致しないというのに……。

 

 

 

コンコンコン

 

恐る恐るで扉を三回ノック。二回ノックはトイレノックだからするなってとーちゃんに言われた。

 

「はい」

 

扉の向こうから聞こえるヴィルケ中佐の声。

 

急激に高まる心拍数。頭の先からサーっと血の気が抜けていく感覚。扉の向こうに行くことを急激に拒みたくなるこの衝動は中学生の時から変わることの無いものだった。

 

最初にこの部屋に入ったときは自分も彼女らも軽いパニック状態だったから変な空気の中で対談していたが……今は落ち着いており心に余裕が生まれているのでこうして緊張してしまう。

 

(うう……俺どうなるんだろう……)

 

キリキリし始めた胃を押さえながら俺は……重苦しい扉のノブをゆっくりと捻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼します……」キィ…バタン

 

(……死ぬかと思った……)

 

ヴィルケ中佐の雰囲気が凄かった……。なんというか日頃のストレスが積もりに積もって今にも爆発しそうな……ようするにイライラしてただけです。はい。

 

部屋に入るや否や漂ってくるのは重苦しい空気。それは通夜などの悲しみに包まれたどんよりとしたものではなく、テスト前の職員室のような……そんな感じ?(学生視点ではこれが限界)

 

まぁ悲哀ではなく疲労感が漂う重い空気だったわけである。しかもそのうち貧乏神でも寄ってきそうで怖いレベルでだ。

 

できることならアリナ○ンVやリポ○タンDを箱単位であげたいぐらいだ。……まぁそんなものこの時代には無いだろうが……。

 

(滋養強壮剤……スッポン?ヒ○ポン?んん……わからん)

 

それはさておき。

 

ヴィルケ中佐と話をした内容は要約するとこれからどうするか……ということ。

 

あの機体F-1を押収されること覚悟で上層部の人間と接触を図るか、このまま上層部とは関わらずここ第501統合戦闘航空団の基地を基本的な拠点とするか……もしくは自分達が出会ったことを無かったことにするか……である。

 

(さすがに押収されるのは嫌だなぁ……上層部の人に関わるのは気が引けるな……「情報を全て渡せ」とか脅迫されそうだし……となると?)

 

そう頭の中で結論付けた結果、残る二つの選択肢のうち片方を取ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここを拠点にさせてください」

 

……これが僕の答えだ。

 




ここで主人公のF-1の見た目設定です。

・機首にシャークティースや飛行隊長の印は施されておらず、基本塗装図そのまんまです。

・機首のナンバーは278、垂直尾翼のシリアルナンバーは70-8278といった感じで存在しないはず?の番号でお願いします。

・飛行隊マークのところにはエスコンX2Pixy Cloverであり、インフィニティのLucky Girlのあのマーク。

・日の丸は確定事項。異論は認めん(笑)

……あとは改修させるかどうか……改修した場合チャフポッドやダートターゲットが使用可能になる……はず。


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上映会

遅くなりました……スミマセンm(__)m

これを投稿した後また検定の勉強に取り掛かりたいので感想に気づくのが遅くなったらスミマセン。感想どしどし待ってまーす


ヴィルケ中佐に答えを述べてから数時間後。

 

あれから基地内の放送でブリーフィングルームに集合がかかった。ウィッチーズ+α(俺)に。

 

 

今俺はちょっとした教室のような……ブリーフィングを行う部屋?でウィッチ達の前に立たされていた。

 

「はい、皆さん注目!改めて今日から皆さんの仲間に加わる新人を紹介します」

 

手を叩いて呼び掛ける中佐。

 

ザワザワと騒ぐ……というわけではなくむしろグダグダとだらけている一部ウィッチは結局態度を改めないのでそのまま話を進めていく中佐。

 

(中佐……それじゃまるで小学校の先生…………まぁいいか)

 

「皆さんも知ってるとは思いますがこの間この基地に着陸してきた未確認機……あの機体に乗っていたパイロットの……」

 

「これからお世話になります、武内一です。魔力はありませんので皆さんのようには色々と出来ませんが極力援護に回っていく所存ですのでよろしくお願いします」

 

今の自分は作業着姿で、帽子を片手に持った状態で頭を下げていた。

 

……普通はこういう時は制服であることが望ましいであろう。しかしそんなものは現在の俺の手元には存在せず、なぜかこの航空自衛隊の使用しているデジタル迷彩の作業着しかなかった。

 

ちなみにこの服は何処に有ったのか?

 

F-1の後部座席のようなあの手荷物室だ。ガンカメラ云々を終わらせてから暇だったので後ろのキャノピー(?)を何やかんやして開けてみると少数ではあるが色んな物が入っていた。

 

9mm拳銃に9mm機関けん銃、64式小銃とミニミ機関銃、あとは弾薬箱が幾つかと作業着&安全靴……これくらいである。

 

「彼はここ第501統合戦闘航空団基地に協力はしてくれますが、それは非公式となっています。本部には本人の意向により存在を報告していないので呉々も言いふらしたりしないように。この事は我隊の機密事項となりますので万が一漏らした場合は……ね?」

 

(いや……ね?じゃないでしょ……めっちゃ怖いよこの人!後ろからドス黒く見えるの出てんだけどぉ!?)

 

中佐の横顔をみていただけなのに背筋が凍りつき冷や汗が滝のように流れ出る。手足からは感覚が抜けていく始末で、血の気が引いていくのがわかる…………わかった。この人だけは絶対に怒らせたらダメだ……!

 

「あと、階級が無いと色々と不便なので彼には仮としての階級を給与します。しかし我が隊での規則のこともあるため……階級は伍長とさせてもらいます」

 

(えーっと伍長って……自衛隊でいう……ニ等空曹……?え、マジで?)

 

幹部学校卒業などの人はもっと上の階級からスタートだろうが少なくとも俺の親父とその知り合いでそういう人は居なかった。全員が高校卒業後に教育隊に入ったという人ばかりだったのでこの階級は高く感じる……俺が変なのか?正常なのか?まぁいいや。

 

「それじゃあ貴方には必要と思われる書類と衣類一式、階級章が入ったこの鞄と拳銃を渡しておくので後で自室に持っていってください」

 

「はい……」

 

(お、ワルサーPPK……)

 

手渡されたアタッシュケースのような鞄にはHAJIME TAKEUTIと書かれており、その上にはワルサーPPKが載っていた。……拳銃なら自分のあるんだけどなぁとは言ってはいけない。

 

「彼には今格納庫に置かれているあの機体で出てもらうことになります。なのでこれからのネウロイに対する作戦の際にはウィッチーズだけではなく彼にも参加してもらいます……以上です。解散!」

 

(え、はやっ!もうブリーフィング終わり!?)

 

自身に注がれるのは幾数もの警戒と好奇心の目線だった。実験台に置かれたモルモットのような気分を味わいながら自分はこれからどうすればいいのか……そう考えていた時だった。

 

「武内……一さんでしたよね?私、宮藤芳佳って言います!同じ扶桑の人ですか?」

 

すごくフレンドリーな人が来た。特徴的な癖っ毛で白セーラーに身を包んだ彼女は扶桑……ここでいう日本人らしい。

 

「え、えぇ。そんなところです」

 

(……見ちゃダメだ見ちゃダメだ……)

 

目線を顔から下へ下げない、というか下げられない。……何故か?それはこの世界が少し俺の常識とは大きく違っていたからだ。……主に女性の服装についてである。

 

ここに呼ばれる前に健さん達にも聞いたが女性は皆下半身の防御がかなり薄い。

 

彼曰くは「昔から皆そうしている」ということで違和感も何も感じないそうだ……まぁ確かにそれが昔から皆の当たり前であるなら誰も疑問を持たないだろう……。

 

 

あれが普通とは……いったい冬の間はどういった格好をしているのか?ずっと太ももは露出しっぱなしなのか?

 

……煩悩が噴水のように溢れ出る。

 

 

それからウィッチ達の自己紹介を聞き……まぁ煩悩に遮られて全然頭に入ってこなかったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからとはいうものの俺はまた機体のある格納庫へと来ていた。

 

(……これからどーすっかなー俺……)

 

愛機の上で寝転がって考え事をしていると誰かの足音が耳に入ってきた。

 

どんどんと近付いてくる様子から自分に様子がある……かもしれない。

 

「あ、……どうも」

 

そう思って上半身を起こすと案の定、健さんが満面の笑みを浮かべてこちらに歩いていた。

 

「ありゃ、寝てませんでしたか。せっかく驚かそうと思ったのに……」

 

少し悔しそうな表情を浮かべながらそう言う。

 

「一さん。単刀直入に言いますと……無事出来ました!あのフィルム!」

 

「……っ!ホントですか!」

 

「ええ、早速見るためにシアタールームまで来てください。こちらです」

 

それから起きるや否や健さんについていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここですよ」

 

(うぉぉ……古いものばっかりだ……)

 

部屋の中には窓が無く、照明を消せば真っ暗になる造りになっていた。椅子が幾つも並ばれておりその先には大きな白い布が垂れていた。

 

(あーゆーのって学校の教室とかにも吊るされてたっけな)

 

布とは反対の方向には面積の小さな机があり、その上にはよく昔の映画や番組に出てくる映写機が置かれていた。この部屋だけでちょっとした史料館のようだ。

 

「あ……どうも、ヴィルケ中佐に坂本少佐。それにオースティンさんも」

 

「なーに、せっかく現像したんだったら見たくなるもんだろう?機密事項でもないみたいだし。ましてやあのわけわからん戦闘機でネウロイを落としたってんならどうやったのか知りたいしよ」

 

「さて、本人も揃ったんだったら拝見しましょ。あなたがこれまで何体のネウロイを撃墜したのか知りたいところだし」

 

ヴィルケ中佐にそう促され健さんが照明を消し、映写機に手を掛ける。するとカラカラと音を立て始めた映写機から強烈な光が発せられ、吊るされていた布へと映写され始めた。

 

 

カタカタカタカタ……

 

まるで金曜○ードショーが放送される時のあのおじさんを連想させるレトロな音をBGMにちょっとした上映会モドキが始まった。

 

(おおぉぉ……あの時ってこういう風に映ってたんだ……)

 

まず最初に倒した左右非対称な外見が特徴的だったあのネウロイが映される。……いやはや、懐かしい。

 

 

 

 

 

 

「武内伍長、ちょっといいかしら?」

 

「?……はい、中佐」

 

「この……ロケット兵器?は見たところ動いているようだけど……これも貴方の?」

 

ガンカメラに映る4本のAIM-9Lの事を彼女は不思議に思うらしく、自動追尾に興味をもったようだ。

 

「はい、自分の世界の人達はミサイルと呼んでましたが。空対空兵器です」

 

「魔力の補助も無しに……か……ふむ」

 

坂本少佐も気になっていたらしく、顎に手を添えながら考える素振りを見せていた。

 

「ミサイル……魔力無しでこんな物が作れるなんて……貴方の世界はどうなっていたのよ……」

 

(ま、簡単に言ったらパラレルワールドって奴でしょうね。但し魔力の有り無しがあるっていう大きな違いがありますが……)

 

心でそう呟きながら映像を見続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カラカラカラ………

 

暫くの間映り続けていた布は元の白へと戻り、ただ映写機から眩しい光が漏れるだけとなった。

 

「この映像によると武内さんのネウロイ撃墜数は……23機ね」

 

見てみると中佐の手元にはメモとペンがあり、そのメモには外国でよくある数の数えかた……日本でいうと「正」の字で数える時のあのやり方である4本の縦線とそれに重ねる斜めの線が合計5個程書かれていた。

 

 

(転移してからだいたい二ヶ月で23機か……そんなもんなのかな?)

 

「ミーナ隊長?まだフィルムはもうひとつありますよ?」

 

「……え?」

 

(あ、そう言われてみればそうか)

 

先程のはガンカメラ。ストライクカメラがあることを忘れていた。

 

「ちょっと待ってくださいね。今交換するので」

 

そう言って健さんがフィルム交換を進める。

 

フィルム交換はものの数分で終了し、再度上映が始まる。

 

しかし先程のとは違って時間が短く、ストライクカメラの映像は開始から約10分で終わりを告げた。 

 

 

「こっちの映像だと4機……ねぇ……爆弾でネウロイを落とすなんて聞いたこともないんだけど……」

 

「は、ははは……」

 

何と返せばいいのやら。自分でもよくわからぬ。

 

「なんというか……凄いね。一君。僕はウィッチーズがどうやって落としているのかイマイチわからないけどなんというか……凄かった」

 

部屋の中に居る全員が苦笑いを浮かべていた……。お互いに何と言ったらいいのかわからず、ただ気まずい雰囲気が辺りを包む。

 

 

 

「そ、それにしてもこの短期間でこれだけのネウロイを……しかも単独で落としたとなると……」

 

「ああ……本来なら勲章ものだが……」

 

中佐と少佐が額に手を当てながら悩む素振りを見せる。

 

(何をそんなに悩んで……あ、そういうことね)

 

自分はあくまでここに所属していない存在。そうホイホイと勲章なんぞ給与していたら色々と面倒なことになるのは当たり前だな。

 

「あの~……」

 

「「……?」」

 

「勲章とかって面倒なことになりますし僕はいりませんよ?」

 

「そうは言っても……」

 

「んんん……」

 

(あ、こりゃまずったかな?なんか余計に面倒に……)

 

「とりあえずこの件については保留ってことにしときません?」

 

面倒臭くなったら後回し。社会人になったら真っ先に指摘されるなこの性格。

 

「そもそも機密な扱いの人間に勲章って変な話じゃありません?」

 

などといった感じでひたすら愚痴を連発したら二人共渋々ではあるが承諾してくれた。所詮軍人でもないガキの言うことなんて聞かないかもと思っていたがそうでもないらしい。……疑ったことを反省しないと。

 

 

 

 

 

上映会(?)が終わり一息ついてから。

 

 

 

「あの……ヴィルケ中佐」

 

「?どうかしましたか?」

 

「ちょっとご相談がありまして……」

 

今のうちに聞いておかないと。また中佐は色々とデスクワークがあるだろうから……そう思った時には口が動いていた。……元コミュ障の俺とは思えない。

 

 

 

 

部屋を出て廊下を歩く……ヴィルケ中佐は自分と長く話すことは出来ないため廊下で歩きながらでの話ということだそうだ。……まぁ本人はそんなに重要性のあるものとは思っていないみたいだし……。

 

「それで?相談っていうのは?」

 

「ええっと………………」

 

言いづらい。このうえなく言いづらい。

 

……だけど今言わなかったらタイミングを失いそうだ。

 

 

 

 

 

「率直に言います」

 

「?…………ええ」

 

「今のままだとあの機体は飛ぶことすらままなりません」

 

 

 

 

 

 

 

「………………はい?」

 

 

 

 

この時の中佐の表情は色々とカオスなことになっていたとだけ言おう。

 

 

 

 




主人公の外見とかって具体的に書いた覚えがあまり無いので今ここになんとなーくで書いときます。

・黒髪短髪(ヨルムンガンドの東條くらい)
・身長167cm程
・F-1に乗ってない時は視力や体力が落ちるが、人並みには十分ある(それでもウィッチには遠く及ばないが)





装備は基本航空自衛隊に沿っていこうと思っていますので空自に配備されていないLOVEマシーンこと62式機関銃も出ませんし89式小銃やカールグスタフ、M24対人狙撃銃も出す予定はありませぬ。どうかご了承を。


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エンジン始動

すいません……遅すぎましたね。言い訳すると、検定や勉強、掃除や部活で投稿を後回しにしてました……ごめんなさい。


「………………はい?」

 

間の抜けた声を思わず出してしまう中佐。

 

(う……やっぱこうなるよな。藪から棒……だよな)

 

一瞬重くなったように感じる空気。そう自分が勝手に思っているだけかもしれないが、こういった雰囲気は苦手だ。胃が締め付けられるような感覚に陥りながらも口を開いた。

 

 

 

「えっと……あの機体のエンジンを動かすためには専用の機材が必要でして……」

 

「と、なると貴方の機体は……」

 

「動きません……何か代わりになる物があればと思ったんですけど……」

 

「それはどういったものか聞いても良いかしら?」

 

「ええ……あの機体は…………」

 

エンジンの始動の仕方を大まかに伝えた。メモが無かったのでどうすればいいのか分からなかったが……貰ったあのタブレットがあった。

 

落書き帳に似たアプリを開き、そこに描いた絵を交えて説明していく。

 

 

 

 

 

 

 

……数分後。

 

「……つまりそこの穴から空気を流し込めればいいのね?」

 

「簡単に言ったらそんな感じ……ですね」

 

「だったら……その問題、解決するかもしれないわ」

 

「…………え?」

 

「空気云々なら適任のウィッチがここの部隊に居るわ。悪いけどちょっとついてきてもらえる?」

 

「はい……」

 

最初に見た驚愕した表情は何処へやら。会話が終わる頃には何時もの微笑んだ中佐に戻っていた。

 

(あぁ……やっと楽になった気がする……)

 

しかしまだ完全な解決策が見つかったわけではない。

 

未だに不安を拭いきれていないからか俺の体は廊下を進む中ずっと鼓動を大音量で全身に響かせていた。

 

 

 

 

 

 

 

途中で執務室に中佐の持っていた書類を置きに行き、話に上がったウィッチのいる部屋へと向かっていく。

 

 

「ここよ」

 

 

他のウィッチの部屋とは何も変わらない扉。どうやら異質なウィッチなどといったものではないらしく、普通にここの部隊のウィッチのようだ。

 

……まぁ魔法が使える時点で俺にとっては異質な存在なわけだが。

 

 

 

「ちょっと待っててね。あの子起こしてくるから」

 

(あの子……?)

 

中佐がノックする。しかし返事が帰ってくることは無く……。

 

「……ハァ。エーリカ?入るわよ」

 

 

 

 

その言葉と同時に開け放たれる扉。その先には……

 

 

 

 

 

なんとも言えない光景が広がっていた。

 

 

 

 

 

 

床やベッドの上には脱ぎ捨てられた衣類が散乱し、床を覆い尽くしていた。

 

その中には酒類のように思える瓶や食べた後の缶詰め等も混じっており、それらはテーブルの上や周りを中心に占拠していた。

 

 

 

 

 

……ようするにゴミで溢れている状態なのである。

 

あえて言うなればあの黒いG(悪魔)が見当たらないのが救いだろうか?

 

(…………俺、この世界に来る前に部屋片付けておけばよかった……)

 

 

 

 

 

 

ゴミ屋敷

 

もはやこの言葉以外思い付かない。もし現代だったらあと一歩でテレビ番組から取材が来るかもしれないといったところだ。

 

 

 

……パタン

 

 

中佐が室内へと進み、扉が閉じられる。……俺は廊下で待とう。

 

 

「ほら、起きなさい!夜も十分寝てるでしょう?」

 

「ん~……まだ寝る……」

 

 

 

扉越しに二人の会話が聞こえる。このやり取りだけ聞いたら絶対上司と部下の会話ではなく母親と子供の会話に思えるよな……。

 

 

 

そんな事を考えていると突然の怒声。

 

 

「なっ……ちゃ、ちゃんとズボンを履きなさい!」

 

 

 

ここまでなら普通の会話だろうが……問題がある。

 

この世界……女性のパンツ=ズボンという認識なので履くのはたった一枚。紙装甲もいいところだ。で、そのたった一枚を履いていないということは…………そういうことである。

 

 

 

 

今中佐は顔を真っ赤にして叫んでいるんだろうなー……などと思いながら聞き流せるように苦悩する。

 

 

 

……そしてその後十数分間に渡って廊下に一人寂しく二人を待つ俺だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって格納庫。

 

論より証拠、試して合点ということでF-1のすぐ隣には俺、ヴィルケ中佐、ハルトマン中尉の3人が集まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んー……で、私は何をすればいいの?」

 

目を擦りながら中尉が呟く。どう見ても寝惚けているが……大丈夫だろうか

 

「えーと、中尉にはこの……」

 

徐にしゃがみこんだ俺は機体下部にある二つの蓋を拙い手つきで開ける。

 

「ここと……あと、ここから空気を送ってもらいたいのですが……」

 

「はーい」

 

何とも軽い返事と共に中尉がしゃがみこむ。蓋が開いたことによって露になったスターターの接続部分に手をかざすと、梁わりとした光が彼女の手のひらに集束してゆく。

 

(……これが魔法……か)

 

整備班の人達の話では聞かされていたが……実際こんなに近くで目の当たりにするのはこれが初めてだ。まるでアニメや映画のエフェクトをそのまんまにしたような光景が目の前で起こっていた。

 

「あ、なるべく徐々に出力を上げてもらえますか?あと、左側から先にお願いします」

 

「うん。いいよー」

 

「えーと……すいません、ちょっと時間下さい」

 

本人の了承を得たところで俺は急ぎ足で脚立を取りに行く。

 

そして操縦席の真横に設置し、かけ上がる……と、その前に空気取り入れ口の中を確認しておく。

 

異物があったとしても自己修復機能があるので機体の方は大丈夫だが……機体の点検は必須だろう。

 

(見た感じ……大丈夫そうだな)

 

懐中電灯を片手に素人なりに点検を行った後、電灯を胸ポケットに仕舞いつつカンカンと金属音を鳴らしながら上ると操縦席に手を掛ける。

 

 

 

 

「よいしょ……っと」

 

独り言と共に勢い良く座るとボスッと席が音を音をたてて出迎える。心地良い閉塞感に包まれたことに少しホッとしながら、コクピットの電源に手を伸ばした。

 

 

 

 

 

「お願いしまーす!」

 

座席から身を乗り出すようにして左後方に居る中尉にエアーを送るよう頼む。すると数秒後、左エンジンの回転数を示す計器の針がピクリと振れた。

 

空気がエンジン内に送られ始めたのを確認した俺はスタートスイッチをONにすることでイグニッションを作動させる。

 

 

 

 

(……えーと、あとはエンジンの回転数が……へ?)

 

左手に持っていたタブレットに目を通しながら操作していると……そこにはこう表示されていた。

 

《後はエンジンの回転数が10%を超えると》

 

 

タブレットの説明では%表記。……だが目の前に並ぶ計器類のひとつであるエンジンの回転数を見ると……rpmでの表記となっていた。

 

(……マジすか)

 

これまでエンジン系統の計器類に目を通したことなど殆ど無く、どうやらそれが今回仇となったようだ。

 

 

(燃料計と酸素量計は良いとして……燃料流量計と回転数とかには気を配るべきだったか……!?)

 

俺氏、撃沈。そんな表現がピッタリになりそうな感情に埋もれつつ計器に目を通していると……

 

パチッ

 

まるでスイッチが入ったような音と共に、回転数計の上に設けられた複数のランプの内一緑色のランプが点くのが目に入る。

 

 

 

……今ので回転数が約10%になったらしい。

 

 

(で……次はスロットルを……)

 

説明に従いスロットルをIDLEに……しようとするが、固い。

 

動く気配を全く見せないので不思議に思っていると、指先に伝わるある感触がその原因を示していた。

 

 

 

 

 

 

スロットルの付け根の部分に存在する部品。エンジン出力操作においてはかなり重要な役割を果たす……フィンガーリフトがそこにはあったのである。

 

 

(そういえばこれがあったか……ヤベ。忘れてた)

 

最近使ったといえば……この基地に来た際に行った着陸時くらいだ。エンジンをカットオフした時以外に使った記憶を俺は生憎持ち合わせていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

それはさておき。

 

改めて左側のスロットルをOFFからIDLEの位置からへと進める。

 

するとエアーで回っていたであろうタービンの風切り音がより高音で甲高い音へと変わる。エアーに加えて自分でも回りだしたようだ。

 

 

 

 

 

 

操縦席のすぐ近くに立って見ていたヴィルケ中佐に事前に説明しておいた合図を送り、ハルトマン中尉に出力を上げてもらうようにお願いする。

 

 

 

 

……本来なら無線機で俺が中尉に直接言いたいところだが……生憎そういった機材が無かったのである。彼女達ウィッチーズ間では俗に言う《魔力》を主電源とした連絡手段があるのだが、俺にそういった《魔力》とやらは存在しない。

 

……少しだけ魔力があるんじゃないかと期待したとは言ってはいけない。

 

 

 

 

左エンジンの回転数、温度が共に安定し始め……先程の緑色のランプが消える。これで片側は終了だ。

 

また中佐に合図し、今度は右側のエンジンの始動に取りかかる。……といっても先程の行程をそのままもう一回するだけだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エンジン始動が完了し、一度機体から降りようと思ってふと周りを見ると……そこには多くの見物人達がズラリと並んでいた。

 

 

 

(そりゃあ……こんな煩いんだから皆見に来るよな)

 

 

 

 

 

普段聞き慣れない音が基地内で流れているのだから不思議に思うのは当たり前だ。ましてやこの時代、ジェットエンジンなんてせいぜいドイツのMe262の物くらいだろう……今どの段階まで開発が進んでいるのかは不明だが。

 

 

 

 

「おいハジメ!この金切り声みてーにうるせぇのはこいつか!?」

 

 

そうして質問攻めになるのはデジャブ。整備班の人達に色々と聞かれ……終わるのは一時間程経過した後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…………」

 

この時俺は自室に戻り、机で頭を抱えていた。

 

今日の出来事でエンジンの問題は解決……なんど、全くできていない。

 

 

まずエンジンを始動させるためには高圧の空気が必要だ。その空気を送るためには?

 

1.今日のようにハルトマン中尉にやってもらう

 

2.誰かに頼んで始動できる機械を作ってもらう

 

3.常時エンジンをかけておく

 

 

容量の少ない頭で頑張って捻り出した結果がこれだ。もっと頭が柔らかければより良い案が浮かんだかもしれないが、俺にはこれが限界だ。

 

1は……もし中尉さえ良ければ手伝ってもらいたい。だがそれだとスクランブルで俺が出る際に中尉が何らかの形で手伝える状況に無かったら?

作戦により不在だったり、負傷、睡眠、色々可能性はあるわけだ。

 

2は……できたら凄い。だが整備班の人達に相談したところ、難しい話らしい。材料も無ければ設計図も無い。もし設計図があるとしても材料の面で厳しいそうだ……何故ならそういった予算は連合軍本部から出ている。そういうわけで現実的では無いとされた。

 

3……実際今現在の状況がこれだ。メリットは俺が何時でも出られるという点……のみ。あとは中尉が手伝わなくても済むぐらいだ。

 

整備班の人達に協力してもらい、空気取り入れ口にはお手製の異物混入防止の柵というか網が現在取り付けられている。……そういった光景はあまり見ないが、安全防止策なのでこの際気にしない。

 

 

 

 

 

 

 

(……今のところはエンジンによる騒音が一番の問題点か。防音の壁とかで囲えれば良いんだけど)

 

 

ブーッブーッ

 

手元で震えるタブレットを見た俺は、直ぐ様出撃の準備に取り掛かる事となった。

 




曖昧なエンジンスタートですみません。もう少し正確な方法がわかり次第編集させていただきます。

……今のところ全てネットが情報源なので、スタート方法が正確ではないのでご了承下さい。


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ランピリダエ

スマホが壊れ約一ヶ月何も出来ませんでした……すみません。



このサブタイトル……見たことあります?もしピンときた人が居たらかなり軍用機を知っている人かと思われます。




バイブ音を鳴らしながら震えているタブレット。

 

その画面には幾つものネウロイ反応が映し出されていた。

 

 

(坂本少佐やヴィルケ中佐が言っていた【予報】では確か筈……知らせるか?)

 

報告を優先にするべきか出撃を優先するべきか。

 

 

 

「……よし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エンジンのファンが回る甲高い音。

 

そんな爆音を鳴らしながら迷彩色をした機体が一機、格納庫からその顔を覗かせ始めていた。

 

 

(よし、チェックは完了……後は隊長達がこっちに来てくれれば……)

 

一通り計器類のチェックを済ませ、滑走路上へと機体を進めていく。これだけの事をすれば誰かは気が付く……筈だ。

 

 

確証は持てない。だが自分が上官らを探して報告しに行って戻って来るよりは手っ取り早く、可能性が高い。そう判断した。……それにある事を既に頼んであるのでどの道ウィッチ隊も気付くことになる。

 

 

(……部下として今の俺って……)

 

報告、連絡、相談……合わせて【ほうれんそう】は社会で一般常識だ。ましてや此処は軍隊であり、情報はより重要な物……それが敵であるネウロイに関することなら尚更な筈である。

 

 

「まぁ……いいか」

 

ウゥゥゥゥゥゥゥゥ

 

その言葉を肯定するかのように鳴り始めるサイレン。しかしこの警報はレーダーにネウロイが探知された訳では無い、だがこれも予定通り。すぐさま離陸する為に口元にはマスクを取り付ける。

 

「……フー……ハァー……」

 

息を吸った瞬間、乾いた空気が肺に半ば強制的に入り込み、ついこの間まで慣れ親しんでいたこの感覚を思い出す。

 

そんな機内の環境を本の少しだけ懐かしく思いながら、ヘルメットに付けられたバイザーを下ろす。

 

(よし…………)

 

薄暗くなった視界。そんな中でも照らす太陽は眩しく、未だに上空を直視できずにいた。

 

 

「……行くか」

 

その一言と同時にガコッと音を立ててキャノピーフレームを……下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜基地内〜

 

(本当にやっちゃったよ俺……)

 

そう項垂れていた青年の手の中にはレバーが握られており、その位置は本来とは違う状態になっていた。

 

「ハァ……」

 

(ミーナ隊長にどやされるのかなぁ……)

 

自らが作動させた警報のサイレンが鳴り響く中でこの整備員、佐藤健は深い溜息をつく。理由は簡単……異世界から来た少年にネウロイの存在をウィッチ達に教えてほしいと頼まれたからである。

 

個人的にミーナ隊長の所へ行っても他のウィッチ達への情報伝達が遅れる。……ならばコレが確実に非常事態という事が伝わり、尚且つ基地内に居るほぼ全ての人員に即座に知らせる事ができると判断した為である。

 

(減給とかだったら嫌だなぁ……)

 

そんなのんきな事を考えながら、彼はレバーを元の位置へと戻しておくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって大西洋上空約40000ft(12192m)。

 

白い巻雲の中に浮かぶ緑色はかえってその存在を目立たせ、擬装の為に施されたその塗装は全くもって役割を果たしていなかった。

 

 

規則的に放たれる呼吸音は全てエンジン音にかき消され、。一向に姿が見えないネウロイを俺は血眼になって探していた。

 

(……クソッ……何処にいる?)

 

タブレットの表示には既にネウロイの反応が3機。距離的にも自前のレーダーに映っていい筈なのに……映らない。

 

おおよそその距離は約30km。目視内戦闘にはまだ及ばない距離である。

 

(もっと近づくか……?)

 

そう思い立ったが直後、スロットルを一段階先へと進めてアフターバーナーへと点火した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レーダー上での敵との距離約15km。そろそろ機影が見えてきてもおかしくない距離まで縮めた。

 

操縦桿を横に倒し、上下を反転。薄い雲越しに見える大海原にはネウロイと思われる影が……見当たらずにいた。

 

上下反転のまま操縦桿を引き、機首を下げていく。

 

(何処だ……?何処にいる?)

 

スロットルから手を離し、キャノピーに手を付きながらあちこちを見渡す。

 

ここまでF-1のレーダーに敵が引っかからないことは初めてで、若干ではあるが焦りが見えてきていた。

 

タブレットを確認すると、そこには前方に数え切れない程の小さな点が表示されていた。

 

「なっ……!?」

 

思わず漏れる驚愕の声。距離が離れていたからか最初は大きな反応が2つあるだけだった……それが今は軽く見ても30は超えているであろう数。俺1人にはあまりにも困難な状況だった。

 

 

 

 

……なら何故見つからない?

 

その疑問に応えるかのように視界に映り始めたのは黒いモヤの様な何か。まるで蚊柱のようなソレは言わずもがな……正真正銘ネウロイだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい……マジかよ」

 

頬を冷や汗が伝うのを感じながら呟いたその言葉はエンジン音にかき消され自らの耳にも届く事は無かった。

 

 

カチッ

 

赤いガードで覆われていたスイッチをONにし、全兵装を使用可能な状態へと移行させる。

 

兵装は両翼端のミサイルランチャーと主翼下パイロンのアダプターに取り付けられたAIM-9。搭載可能な種類はB、E、P、LとAAM-1(69式空対空誘導弾)で、現在は所有できる物の中で最も射程が長いとされるAIM-9Pを4箇所全てに取り付けているため計4発を搭載中である。

 

 

 

 

 

(さて……やってやるか……!)

 

未だ米粒以下にしか見えない黒い機体を真正面……それもHUD内に捉え、ロックオンを仕掛けに入る。

 

すると数秒後、電子音が鳴り始めるとともにHUD内で標的にロックが掛かり発射準備が整った。

 

「……すまん」

 

その呟きと共に押される兵装リリースボタン。直後、翼端からバシュッと音を立てて放たれる一筋の白煙。それは真っ直ぐな線を描きながらネウロイの大群へと突っ込んでいった。

 

そしてすぐさま他のネウロイにレーダーロックを行い、ボタンを押していく。

 

ミサイルが切れたら次のをタブレットで選択、また1連の動作が始まる。

 

 

 

 

 

攻撃開始から数分後、複数機の敵ネウロイが進路方向を反転しこちらへ向かって来たのでこちらも回避行動に入る。敵に背を向ける事となるがこちらにはアフターバーナーがある……スロットルは躊躇無く全開にされた。

 

 

 

 

(よしこのくらい離れれば相手の視界からも……)

 

そう思っていた時だった。

 

 

 

 

 

ポロロン ポロロン

 

突如機内に鳴り響くオーラルトーンの電子音。その音はウィッチ隊の夜間哨戒担当のリトヴャク中尉に誤って狙われてしまった時の軽いあのトラウマを呼び起こした。

 

機体を直ぐ様左にバンクさせ、回避行動をとる。体が操縦席に押し付けられる中、重たくなった首を回してどうにかキャノピーの外を見る事ができた。

 

 

 

タブレット上でしか反応しないネウロイ。その姿を間近に見る事でレーダーに映らない理由が今ハッキリとわかった。……まるで削ぎ落としたかのように薄い翼、まるで折り紙のような角を持った胴体に平面で覆われた機体。

 

まるでステルス機のF-117のようなフォルムからレーダーに映りにくい事は一目瞭然だった。

 

……因みにこのネウロイにとても酷似した軍用機がある。1980年代にドイツのメッサーシュミット・ベルコウ・ブローム社によって計画されていたステルス機。

 

MBBランピリダエ

 

幾つもの平面から成されたその機体は飛行する事なく計画が中止、実際には模型だけで終わってしまったのだが……どういうわけかネウロイは外見がこの機体にそっくりになっており、そのステルス性能までもコピーしていたのである。

 

 

そして何故1機もF-1のレーダーで捕捉できなかったのか……その疑問に対する答えは何とも簡単なものだった。

 

タブレットに表示されるネウロイを示すのは一種類のみ。レーダー上に映るあの大群全てがステルス性能を持った同型のネウロイだったということだ。

 

唯一の救いは赤外線ミサイルの狙いを定められるという事で、原理は不明だが恐らくネウロイのコアか何かが熱源となっている可能性が挙げられる……あくまでも可能性だが。

 

 

 

それはさておき。

 

ロックオンしてきたネウロイに目をやるとそこにはゆっくりたこちらに飛んで来るレーザー。しかし今迄とは異なり、真っ直ぐではなくこちらを追ってきていた。

 

(そういう事か……!)

 

エンジン出力はそのままの状態でスピードブレーキの操作ボタンをINの位置からOUTへと。それと同時に操縦桿を目一杯引いていった。

 

ミサイルを撃たれた時の機動でビーム機動というものがある。簡単に言えばミサイル等の飛翔体に対して自機の向きを垂直に保つ事で、ミサイル等を振り切ろうというものである。

 

ホーミングレーザーは音速も超えられていないのではないかと思わせる程の低速でこちらに迫って来ており、まるで某戦闘機ゲームを思い出させる状況だった。

 

鳴り止まない自機とタブレットの警告音。タブレットのレーダー上には先程と同様の誘導型が多数映っており、まるで自機を先頭としたカルガモの親子のように追跡していた。

 

 

 

(……くそっ……!)

 

そんな愚痴しか言葉に出来ずにいた。この機体に自己防衛機能なんてものは無いし……というかそもそもあのレーザーがチャフやフレア、デコイ等に惑わされるかどうかさえ不明なのだが。ネウロイは何を使ってこちらを狙ってきているのかがわからない為どの道対策の立てようがない。

 

 

機体を操り機首を海面へと向ける。

エンジンの出力を下げ、スピードブレーキも全開にしていく。

 

重力に従って機体の落下速度は徐々に加速していき、僅か数秒で雲を突き抜けて目の前には青一色が視界に広がっていた。

 

 

ガタガタと揺れる機体を捩じ伏せるかの如く操縦桿を目一杯引き、激しいGの中機首の向く方向は海面から水平線へと徐々に変わっていった。

 

高度は約5m。今迄で最も低いであろうこの高さで姿勢指示器は漸く水平を指した。

 

 

 

ボンッ

 

レーザーが海面にぶつかり、石を投げ込んだ時に似た鈍い音を立てながら水蒸気を上げる。そんな事は露知れず、一先ずミサイルのように海面に叩きつければ追跡は困難になる事に対して俺は安堵していた。

 

 

後方約30km。残り1機となった撃ち漏らしにこの距離で打つ手は無く、ただただ迷彩柄に包まれた敵機を追うことしか出来ずにいた。

 

 

 

(……よしっ……撃ってこないな)

 

 

目視外まで離脱した後、今迄通り敵のいる方向へと転換する。

 

 

そしてガラスが割れるような音を立てて最後の1機が……散ったのだった。

 

「ハァ……」

 

深く溜息を1つ。一度体から力を抜いた後、タブレットに目をやる。そしてウィッチーズの居る基地へと機体を向かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は過ぎて基地に到着後。

 

俺は執務室に居た。……健さんと一緒に。

 

 

「「ハァ……」」

 

わかるとは思うが、ヴィルケ中佐に注意を受けたのである。

 

内容としては俺は無許可で離隊した事伝々、健さんはサイレンを鳴らした事についてだった。

 

かといって軍法会議等ではなく、まるで母親の「全くあんたは……」のような軽いものだった。

 

 

「失礼しました……」

 

執務室を出た俺達は

 

「これからの課題は……」

 

「「無線ですね」」

 

「「ハァ……」」

 

またも出てきた課題に溜息をついた。

 

 

 




ウィッチーズとの会話ってどうすれば……?
下手に会話させてメチャクチャになるのが怖くて手を出せない今日この頃……。


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小火器

ゴメンなさい。サボってました。


「ふーっ……こんなもんか」

 

基地に帰投後の機体清掃。外部に付いたゴミやすす、機銃の発射カスなどを入念に清掃していく。

 

雑巾をバケツに入れ、瞬く間に水が黒くなっていくのを目にしながらこれからの事について考える。

 

ネウロイは何処から来るのか、何が目的なのか。まるでSF映画だなと思いながら手を動かしていく。

 

……ちなみに今はエンジンも電源もOFFになっている。

 

一応空気取り入れ口には網のカバーが掛けられているが、もしもフィンが回っている時に近づこうものならAV-8BハリアーⅡの事故寸前の映像のようになってしまう。

……まぁあの吸い込まれた人は偶然衣服の金具が空気取入口の縁に引っかかったからいいのだが。

 

ヴィルケ中佐曰く、なんでもハルトマン中尉が妹さんに水面下でエアーを送る機材の設計を頼んでくれていたという。以前、ハルトマン中尉にエンジン始動を頼んだ際に、自分が今代わりにやっている仕事を本来はどういった仕組みの機材が行うのか聞かれたので説明した事があった。どうやら中尉はその後説明した内容をご自分の妹さんに頼んでくれていたようで、あと一週間程で試作の機材がこちらに届く予定との事。

 

この世界の人達の作業はいくらなんでも早すぎる。そう思わざるを得ない報告だった。

 

 

「さて……」

 

額に浮き出た汗を拭うと、雑巾とバケツの後片付けを済ませる。

 

遠くから聞こえるウィッチ隊のエンジン音と発砲音が俺を空へと誘うが、生憎エンジンを唯一始動させられる中尉も居ない為に俺には今飛ぶ事はできない。これじゃほとんどただの一般人だ。

 

 

 

それからというもの場所は変わって武器保管庫。

 

そこではウィッチ隊の使用する為の火器の整備を行っていた。坂本少佐の刀の様に自分の武器は自分で整備する人もいるが、ここでは殆どが彼等整備兵によって行われていた。

 

自分の命を預ける物だから……とも思ったが、軽機関銃などの小火器(?)に至っては弾切れと同時にウィッチ達には投棄されてしまう事が多いので俺からは何も言わなかった。

 

室内に立ち篭める金属と油の重い匂い。工場から納品されたばかりなのであろう木箱が大量に積まれており、壁際には何時でも持ち出せるように銃の類が立て掛けられていた。

 

 

 

 

 

何故ここへ来たのか?

 

答えは簡単、暇だったからである。

 

 

何故なら此処で行われる作業でどんな素人でも出来る(かもしれない)作業がある。それは実包への油の塗布と弾倉などへの装弾だったりする。

 

ウィッチ隊は多国籍なのでそれぞれで違う銃を使う為、それに合わせて弾薬の種類も変わってくるので装填が面倒臭いのが彼等の最近聞いた愚痴だった。

 

まぁそれでウィッチ達の実力が引き出されるならばと無理やり納得した様子だったが。

 

 

 

 

 

紙箱に入れられた実包を取り出すと油の付いた布で軽く拭き、箱型弾倉へと入れていく。

最初は手で入れ、途中からは専用の装弾器を使って込めていくのだが……これが微妙に固く力が必要となる作業となった。

 

微かな呼吸と金属の擦れ合う音が淡々と流れる中で進む作業。こういった作業に耐えられないという人もいるだろうが、俺はむしろ好きな部類だ。

 

(でかいなぁ……13mmって)

 

この基地で使われる銃は対ネウロイ戦を想定したものなので一部の使用弾薬がやたらデカイ。ルッキーニ少尉やイェーガー大尉のように7.62mm弾を使う人もいる程ネウロイの装甲はそこまで硬くないらしく、過去に拳銃弾での撃墜記録もあるらしい。……やっぱウィッチは化け物レベルで強いようだ。

 

「お?ハジメじゃんか」

 

不意に出入口から掛けられる声。別の場所に飛んでいた意識は

 

「あ、どうも。オースティンさん」

 

「弾込めてんのかよ……飽きるだろ、それ」

 

「そうですかね?ところでここへは何をしに?」

 

「ああ。ちとストレス発散にな」

 

そう言って手に取ったのは棚に立て掛けてあったMG34。ウィッチ隊ではMG42に更新されたとのことで、これはその在庫……つまりお下がりだそうだ。

 

「おめーも自分の好きな銃持って来て一緒に撃たねぇか?」

 

「じゃあ……」

 

残り数発だった弾帯にモーゼル弾を込め、ドラムに詰めて蓋をする。それを所定の場所に置くと、銃を取るべくF-1が置かれている格納庫へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって屋外の射撃場。自分達の他にも何人か射撃を行う人もおり、どうやらネウロイが基地を襲撃してきた際には普段整備に明け暮れている男性陣も銃を手に交戦するらしい。航空自衛隊の「最低でも〇〇発は年内で撃っとけ」のようなものかと勝手に納得した。

 

「お前……随分と持ってきたな……」

 

「これで全部です」

 

俺の押す台車には64式小銃、MINIMI、9mm機関けん銃、9mm拳銃が乗せられていた。

 

「知らない銃ばっかだな……つってもあんな戦闘機に積まれてたんだから当たり前っちゃ当たり前か」

 

「まぁもしかしたらこの世界の未来でも作られるかもしれないですね」

「未来ねぇ……」

 

そう呟きながら9mm拳銃を手に取るオースティン。

 

「もし未来ではネウロイが居なくなっていたとしたら……俺達軍人はどうなるんだろうな」

 

「…………」

 

どう答えるべきかわからなかった。確かにこの世界の人々はネウロイという共通の敵を前にして結託している。

 

……その共通の敵が居なくなったら?

 

今度は人間同士で殺し合うのだろうか?前の世界では主に土地が云々で戦争をしていたように思えるが、それはこの世界でも同じだろう。何処までがこの国で何処までがあの国。そんな問題も今はネウロイに土地を奪われているから後回しなだけであって、いざ土地を取り返せば今度はその土地を巡った争いにでもなるのではなかろうか。

それまで人類の為に一緒に戦ってきた戦友達が今度は国の為に敵になる?そんな事はありえるのだろうか?政府の人間にはどうとでも言えるがそれry

 

「いだぁあ"!?」

 

脳天に走る鈍痛。その衝撃は明らかに鈍器で殴られたことによるものだった。

 

「……ったく、急に黙り込みやがって。考え事とかは後にしろ!後に!」

 

(オースティンさん……なにもMG34の銃身で殴る事は無いでしょうが……)

 

鉄帽でもしておけば良かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダン! ダダダダン!

 

絶えず繰り返される数種類の破裂音とカラカラ跳ね回る空薬莢。燃えた火薬の臭いが鼻を刺す中で、俺は立射体勢で64式の引金を引いていた。

 

ものの数秒で空になる弾倉。もう一つの弾倉も先程までは空だったのだが、取り替える頃には既に実包が装填されていた。

 

節約とは言っていた自衛隊とは程遠く、遠慮も無しに俺は引金を引き続けていく。

 

ちなみに標的となる的の形状は四角や丸形をしており、ネウロイの核を模した赤く塗られた小さな部位も存在していた。

 

セレクターを引っ張り単発から連射に切り替え、これから襲われるであろう反動に身構える。

 

 

 

 

 

 

凄まじい数の弾痕で色が塗り替えられていく的。塗装が剥げた後に待ち受けるのは弾、弾、弾。既に凹んでいた箇所に襲い掛かった弾頭はいとも簡単に標的とそれを吊るす金具との接続部分を貫通し破壊していく。

 

「……あ」

 

反動で大きく振れる銃口は上に跳ね、撃ち抜く予定ではなかった金具部分までも壊してしまった。

 

 

弾倉内が空になった事を知らせるホールドオープンによる少しの静寂。

ガシャンと土煙を立てて落ちるネウロイの的を目にした他の射手達の手が止まった。

 

「「「「ブハハハハハハ!!」」」」

 

途端に笑い声が響く。

 

「…………」

 

状況が上手く掴めていない俺の肩を叩きながら笑うオースティンは腹を抱えていた。

 

「おまっ……あそこに当てるか!初めて見たわ!」

 

やらかした。そう思いながら小銃を置いたところで頭に軽い衝撃が襲う。

それが整備班の班長の手に握られた雑誌によるものだと気づくと、班長が口を開いた。

 

「はぁ……なんでお前はあんなピンポイントに連続で当てるかねぇ……」

 

自分でもそう思う。

 

 

 

 

 

ね、狙い通りだし?(震え声)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからしばらくして。ようやく俺にも的にはどうにか当てられるようにまで上達した。

 

単発射撃ならまだしも、跳ね上がりがキツく俺には抑制できない連射は二脚を立てた伏射限定で行おうと思う。

 

 

 

 

 

「なんだこれ?ダッサいサブマシンガンだな」

 

「まぁ僕はその設計になった経緯を知らないんですけどね……」

 

そう馬鹿にされていたのは9mm機関拳銃。あくまでも拳銃と言い張るためなのか何なのかわからない奇妙な見た目がダメ出しされていたのである。

 

銃床も付けられず、長い銃身と見せかけ施条の無い消炎制退器。主にその辺りを言われてしまった。

 

そして何より皆を驚かせた事が1つ。弾倉何個分か撃った際、どういう訳か初弾装填には大切な槓杆部分が途中でへし折れ、宙を舞うのだ。しかも根元から。

 

「「「「…………」」」」

 

その時の皆の表情は凄かったとだけ言おう。

 

F-1と同じようにすぐにお守り効果で修復されるのだが、現役自衛官が予備パーツも無しにこれを持って海外派遣は自殺行為だと思う。有事の際には対応できない。

 

(マイクロUZIとかの方が良かったんじゃない?)

 

そんな事を考えながら9機関拳銃のアタレのセレクターを押し上げながらカチャカチャと変えて暇を潰していた。

 

 

 

 

 

 

 

結果、一番の高評価はダントツでミニミだった。

 

……当たり前だよなぁ!?

 




見てくださった方、ありがとうございますm(_ _)m

今年で高校三年生。就職希望で色々あるのでもはや亀更新が地球に接近する彗星並の更新速度になっていくと思います。

※誤字脱字のご報告ありがとうございます。次からは減らせるよう頑張ります……


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番外編:今度は異世界ファンタジーらしいです(絶望

何をとち狂ったか友人の小説とコラボ(?)する事に。

最近流行りの異世界×ファンタジーの世界でまたもや無理ゲーと化したF-1です
……何か書いてる内にどんどん長くなり4~5話になりそうです。くだらない内容ですが御容赦下さいませ。

4/7 挿絵入れてみました。あくまでもイメージです。


日が高くある事からおそらくは昼頃。いつもとはほんの少し違った青い空の下にて操縦桿を握っていた。

 

地平線の彼方まで続く緑、緑、緑。

 

見渡す限りの森と山の上を飛んでいた。前方に何か居ないか健気に探すレーダーのスコープにも反応は一切映らず、目の前の木々も山も全てがクラッターとして処理されていく。晴れ渡る青い空には雲が薄らとかかっていた。

 

 

(本当に誰か居るのか?それにこいつ(F-1)で何かするって言ったってなぁ……)

 

戦闘機としてはゲーム風に言うならば【苦行】に値するであろうこの機体では対地攻撃が関の山。ただでさえチャフもフレアも未搭載、対空兵装も短距離でしか撃てないミサイルと20mmの機銃だけであり、エンジンにものを言わせた維持旋回などといった芸当も行うことなど無理な話だ。そもそも【支援戦闘機】であるこの機体に空戦をさせようというのが酷というもの。

 

 

第三世代機の中では対艦性能や搭載する電子機器において他の戦闘機に比べて割と優れているが、如何せんチャフやフレアなどといった自己防衛装置を搭載していないのがこの機体。元パイロットの人もスクランブルで出た際の国籍不明機がSu-27系統だった場合は「生きた心地がしなかった」……そりゃそうだ。

 

チャフに関しては、射出座席で緊急脱出した際にチャフは撒かれるが……撃墜されてからでは遅すぎる。そもそもそれは味方のレーダーに映りやすいようにであって、自己防衛ではない。

 

その昔チャフをスピードブレーキの内側に貼り付け、空中で散布する事で陽動に使った事があるとか。しかしそれらしい機材は無いので再現は不可能だろう。

 

 

現在の高度は160ft(約50m)。さらに高度を落とすために操縦桿を少しだけ前に倒すこと十数mm。ゆっくりと回り出す電波高度計の針に注意しつつもHUDの向こう側へと目をやった。

 

 

 

 

 

 

 

 

時を遡ること数十分前。いつもの通りに敵ネウロイを撃墜すべくウィッチ隊の先行をしていたところ。

 

捕らえた。

 

HUD内に1機のネウロイを捕捉しそう思った時にそれは起こった。

 

 

『おい!ハジメ!』

 

突然入ってきた無線の音声がヘルメットの中に響いたと思うと、HUD内に収めていたはずのネウロイはいつの間にか消えており、変わりに白いモヤのようなものが存在していた。

 

『避けるんじゃ!』

 

そう言い終わるのが先か俺が方向舵のペダルを踏むのが先か。しかし間に合わず、その白いモヤの中へと機首から突っ込んでいってしまう。

 

キャノピーの外が雲よりも濃い白に包まれた時。迎え角、高度、レーダー警戒などといった警告音が一斉に鳴り響く。しかし計器類の表示と外の状況とがあまりにもかけ離れていた為どちらを信じれば良いのかわからなくなっていた。計器飛行も無理だ。

 

上がったり下がったりと著しく数値を変える高度計。まるでルーレットのようにグルグルと脅威電波の到来方向を示し警報を鳴らすレーダー警戒の指示器とディスプレイ。速度計は振り切りそうになったり失速速度を示したりを繰り返しており、迎え角指示器も色々と凄い事になっていた。

 

現実ではありえない事態に動揺し、思わず左手だけが緊急脱出用のハンドルを握ってしまう。

 

万が一目の前に何かが出てきたら迷わずに引こう、そう判断した。

 

そして数秒後。まるで乱気流に巻き込まれた時のようにガクガク機首が大きく振られたかと思うと、ようやくモヤが消えていき視界が確保された時。思わず叫んでしまった。

 

「はぁっ!?」

 

視界に映るもの。それは紛れも無く地上だった。

 

地上が見える、ということは機首は若干下を向いているわけであり姿勢指示器も黒い部分……-20度程の値を示していた。姿勢を水平にすべく操縦桿を引いた際に掛かるGが今の状況が現実なのだと物語る。

 

先程までは海上に居たはずであり、当然地上なんてこんな短時間で辿り着くわけが無い。考えられる可能性は自分が気絶していたか、何処か違う場所に来てしまったかのどちらかだ。

 

 

夢であって欲しいと何度考えただろう。そもそも此処は何処なのか、ウィッチ達の存在があるのか。

 

敵も味方もわからないこの状況でするべき事はまず何だろうか。着陸できそうな所を探す?それとも誰か話ができそうな者に接触を図る?

 

(まずは飛んで何かしら探すしか……)

 

レーダーの向きを若干上方向に調節すると、超低空飛行を行うべく改めて操縦桿を握り直した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(んで、ここは一体何処だよ……)

 

モヤのせいで突然変わった景色。何も無い海上だった筈なのに今の目の前に広がる光景には緑ばかりだった。

 

あの時突然入ってきた無線、あの声は間違い無く神様のものだった。【避けろ】という事は何かマズイ状況だったのかもしれない。

 

左太股に付けていたタブレットにはこれまで現在地やナビが表示されていた筈が、今では《NO DATA》の一点張りだった。

 

レーダーのレンジのモードは40NM(74km)で探知中、この機体は低高度が得意なので現在は木の上約20m辺りで飛んでいる。少々低すぎるが幸い翼面荷重が高いので低空飛行の最中でも比較的マイナスGになりにくく、元々練習機でもあるからか操作はしやすい。……まぁ元となるT-2がどのような感じなのかはわからないが。

 

翼端と主翼下にそれぞれ2発ずつ計4発のAIM-9Lが現在の兵装状況。B型よりもL型の方が性能も良いし、何より全方向からの捕捉が可能となる。万が一ヘッドオン状態で敵と遭遇した時に少しは抵抗する事ができるだろう。尚、B型など古いモデルはその昔太陽光に向かって飛んだり、日光を反射させた水田に突っ込んでいった事があるらしく、何が来るかわからない今の状況で使うのは気が引ける。

 

 

増槽は付けていない。燃料計は相変わらず指針を一切振らないからだ。幸いこういった能力(?)は無くなったりしてはおらず、そのままだった。その為相変わらず酸素も燃料も湯水の如く湧きっぱなしである。

 

(反応も無し……か)

 

スコープの中で左右に走査をするB-スイープバーは何かを映すことは無く、行ったり来たりをただ虚しく繰り返していた。

 

 

 

 

 

 

 

そして飛行を続ける事数十分。そこで俺は今までに経験した事の無い事態に陥る事となる。

 

鳴り響く電子音。

 

突如反応を示すRHAWS(レーダー警戒装置)のディスプレイ。そこには二つの脅威電波を示していた。

 

電波の到来方向は両方共に11時方向。種類は航空機ではあるが、機種までの特定には至らずに航空機を意味する【 ^ 】と未確認機を示す【U】だけが表示されており、詳しい距離は不明との事だった。

敵味方識別装置はそもそも設定されていないので当たり前のように反応する事は無かった。

 

(嘘だろ?方向的には映っても良い筈なのに……もしかしてステルス機か?)

 

頭を()ぎったある考え。それは俺にとっては最悪とも言ってもいい事態だった。

 

ステルス性を有しているとすれば、第四世代から第五世代。異世界だとしたら第六世代や未知の機体かもしれない。現にこちらのレーダーには映っていないわけで、反対に向こうのレーダー波はこちらに届いている。低空な為ミサイルの射程は短くなるので撃ってこないのかもしれない。最大射程の数値と現実とでは噛み合わない点が必ずしも浮上する事があるからだ。

 

(……逃げるか?)

 

ひとまずスロットルをミリタリー位置まで押し進めると、左のペダルを少しだけ踏み押した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピッ ピッ

 

時折反応を見せるレーダーにはひとつの反応が表示されていた。方位にして10時から11時、どうやら上の方に居るらしい不明機達からはミサイル攻撃が検出される事が無くずっとこちらにレーダー波を当て続けているだけだった。

 

(攻撃……してこない?それとも中距離用のミサイルを持ってない?)

 

してこないのかできないのか。敵意の有無がわからない以上近づいて目視内戦闘に入る事はは避けるべきだろうか?これで自衛隊のスクランブルのように誘導や警告で済ませてくれるならこちらも歓迎だがそう上手くいくとは思わない方が良いかもしれない。何処ぞの国のように旅客機だろうと問答無用で叩き落としてくる事があるかもしれない。

 

万が一ネウロイ達のような敵だった場合には目視内の射程に収まった途端に攻撃を仕掛けてくるかもしれない。しかしこの反応が俺にとってはこの世界の第1村人(?)なわけで……

 

 

 

と、こうしている間にも敵機との距離はどんどんと縮まっていくのであまり悩んでいる時間は無かった。レーダーの様子からも敵機はかなりの上空をいるらしくこちらのレーダーには既に映らなくなってきていた。

 

(……切るか。レーダー)

 

もう既に向こうにも逆探知されているかもしれない。その為とっくに遅い判断ではあると思うが左コンソールのレーダーのモードセレクトをA/A(空対空)からSTBY(スタンバイ)を通り過ぎて一気にOFFの位置へと切り替える。

 

そしてスロットルのフィンガーリフトを引いた状態でほんの少しだけ前進させ、アフターバーナーに点火させる。「ゴォッ」という後方からの爆発音が小さく聞こえた事を合図に身体に掛かる加速度が増していく。

 

(何処だ?何処にいる?)

 

自動操縦の高度維持の機能をONにして幾度となく上を見上げる。相手が自分よりも高高度にいるのならとルックダウン能力が少しでも低い事を祈りつつ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スロットルをミリタリー推力に一旦戻し、バイザーを上げたまま上空を探し始めて数十秒。いつ現れるかわからない脅威に怯えながらの索敵は終わりを告げた。

 

(……見えた!)

 

10時方向の上空にまるでパソコンの液晶のドットひとつのような大きさに見えた小さな黒い点。白い雲を背景に浮かび上がるその二つの点はRHAWSのディスプレイに表示される方向的にも先程からの脅威なのだと決定付けていた。

 

迫り来る何か。その2機編隊の内の1機が突如エルロンロールによる上下反転をさせるのが見えると、垂直尾翼らしきものが下を向いていた。もしかすると向こうも目視でこちらを発見した事を意味するのかもしれない。

 

RHAWSのディスプレイの航空機反応も次第に中心のF-4のシルエットマークへと近づいていき、とうとうそれは殆ど重なるまでに至った。

 

レーダーはOFFのまま、しかしレンジのセレクターを40NM(74km)から10NM(18km)へと切り替える。万が一目の前に敵機を捉えることができた場合に備えてだ。

 

数秒を過ぎてすれ違う俺と敵機達。互いの距離はおおよそ1000m程と近かったがそのおかげでようやく相手の機体を確認する事が出来た。

 

 

直線翼に近い少しの後退角を持つ主翼。水平尾翼と主翼との間に配置され、少しだけ傾いた二つの垂直尾翼。そして主翼の付け根から機首にかけてのストレーキ。翼端にサイドワインダーと主翼に増槽らしきものを備えたその機体は1度はインターネットなどで目にしたものだった。

 

(……ホーネットかよ。よりによって……)

 

戦闘機と攻撃機の役割をどちらも果たせるマルチロール機であるF/A-18のそれだった。単座である事からCかEのどちらかだったのかもしれない。

 

俺の後ろへと通り過ぎた2機のうちの1機はそのままスライスターン(スライスバック)と言われる機動に似た動きで降下を行う姿が一瞬バックミラーに映り込む。その通りで案の定RHAWSのディスプレイには自機に対して6時と8時方向に付かれていた。

 

すぐさまバイザーを下ろして戦闘態勢には入る……が、インメルマンターンなどの切り返しでブレイクを行うか?それともシザースで敵機の後ろに?

 

 

……そもそも空戦なんて可能か?

 

 

(・×・)ムリダナ

 

旋回半径や上昇力、推力比など様々な面でこちらが劣っている事は明確……ただひとつだけ優っているかもしれないのはこちらが増槽も無しにアフターバーナーを焚き続けられるという事のみ。

相手も燃料が無尽蔵でも無い限り距離は取ることができるだろう。しかし本当にそれで逃げ切れるかどうか。

 

このままでは真後ろに付かれてしまう。相手の回避不能領域に入ってしまう事……それだけは何としてでも避けなければならなかった。

 

左フットペダルを踏み込み、左に傾いてバンク状態になった機体を操縦桿を一気に引く事でそのまま垂直に打ち上げる。失われていく速度を補う為にアフターバーナーを点火させているとGを示す荷重計の指針が一気に跳ね上がるのが見えるが、なりふり構わず機首の方向を捻じ曲げていった。

 

ビーム機動への移行。それが今の俺が考えた策だった。

 

 

 

 

 

スロットルをミリタリー以下に落とすと、少しでも機体の重量を減らす為に主翼下の兵装支持架ごとミサイルを緊急投棄する。増槽を切り離した際のように機首が一瞬ガクンと持ち上がるがそれはむしろ好都合。そのまま操縦桿とフットペダルを使って左への旋回を維持していく。

 

エンジンの甲高い音にかき消された小さな爆発音。さっきのミサイルが爆発した事による爆音だったが、キャノピーで仕切られエンジン音に支配された操縦席にはその音が届く事は無かった。

 

相手には背面のみを見せるように僅かにバンクした状況を維持して飛行していく。昔F-1が米軍のF-16と模擬戦を行った際にそうやってエンジンノズルから出る熱を尾翼で隠す事でサイドワインダーのロックを掛けられる事を避けた人が居るらしい。しかしその当時のF-16はまだ初期型であり、AIM-9もX型程性能も良くなかったからできた芸当である。

 

向こうの機動性は比べ物にならない程優れており、どこまでも付いて来る。キャノピー・トゥー・キャノピーの状況にすら持ち込めない機体性能と自分の技量がこの上なく焦れったい。高度が低すぎる為シザースかスリップ(横滑り)程度しかできる機動が見当らないこの状況をどうしてくれようか。

 

そうしてもう一度アフターバーナーを焚いてここから離脱しようかと思った時、突如耳元にオーラルトーンの電子音が鳴り響いた。

 

ポロロン ポロロン

 

自機にロックがかけられた事を知らせる警告音は自身の心臓を鷲掴みにする。

 

捕捉された

 

その事実がより一層焦りを募らせていく。RHAWSのディスプレイに映るのは敵が武器発射状態にある事を意味する【◇】がひとつと、もうひとつには最も新しい脅威である事を意味する【⌒】が重なっていた。

 

この機体が出せる最高速度は高高度でM1.6で、サイドワインダーは種類にもよるがM2.5だと資料で読んだことがある。チャフもフレアも積んでおらず対抗手段を持たない俺が今撃たれたら振り切る手段は何一つとして無かった。

 

 

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

ふたつの脅威の反応は自機を意味するF-4のシルエットの下に鎮座しており、それは相手の回避不能領域に捉えた俺をまるで嘲笑うかのよう。

 

いくら振り切ろうとシザースのように往来を繰り返したとしてもピッタリと後ろに絡み付いてくる。超低空飛行の中で追いかけてくる敵機もなかなかだが、本心としては相手はベテランではなく腕の下手なパイロットであってほしかった。

 

でも何故このタイミングでの捕捉なのか。普通ならもっと遠くからでもロックが可能な筈なのだが、そんな疑問点を相手においそれと聴けるわけがない。

 

刹那、上のバックミラーに映り込むふたつの影。エンジンにものをいわせたのだろう、それらはすぐそこまで近付いていた。

 

機体を水平に戻したところで右から1機がこちらを追い越して2時の方向に留まる。その距離は僅か40m程であり、昔ニュースで見た中国軍機と自衛隊機との異常接近を彷彿とさせるものだった。

方向舵の向きを変えれば俺は彼の後方から突っ込む形となり両者が墜ちるのは確実に思える。

 

(前に付いた?ってことは撃墜する気は無いって事か?)

 

落とす気があるならとっくに落とせたはずだ。だとしたら何か他の意図があるのかもしれない。

 

垂直尾翼に描かれたマークから部隊の判別など俺にできる訳が無く、緊張と不安が渦巻いていた。2機のF/A-18はそれぞれ2時と7時方向にて自機を挟むようにしていた。前方の機体は誘導、後方の機体は監視とでもいったところだろうか……まるで鹵獲される気分だ。実際そうなのだが。

 

前方の機が現在の位置に付いた時、2、3回程ゆらゆらと明らかにバンクを振っていた。まるで「ついて来い」とでも言うかのように。どの道逃げられない運命なので従う他無いだろう。

 

操縦桿を2、3度左右に倒す事でこちらもバンクを行い、了承の意を示す。……伝わるかどうかはわからないのと同時に相手の意思もこちらの予想でしかないが。

 

すると数秒後、ずっと鳴り響いていた後方のもう1機からのロックオンのアラートが解除される。おそらくこちらの意思を降伏や武装解除などと受け取ったのかもしれない。

 

パイロットの姿も確認できるほどの近い距離。それは本当で、前方のパイロットが左手で上を指差す姿が目に入った。

 

《上昇する》

 

そう受け取った俺は向こうからもわかるように大袈裟に頷いた。

 

 

前方の1機が機首を徐々に空へと向ける。翼端から白い糸を引きながら機首上げを行う姿には性能差を見せつけられた。こちらも操縦桿を引くと共に、失われていく速度を補う為にスロットルをミリタリーの位置へ進める。

 

機体の100%の出力を出して追いつける程度。そんな化け物のような相手に挟まれたまま高度はどんどんと上昇していき、約35000ft(約10600m)までその勢いは収まる事は無かった。

 

(なんでこんな高度まで……?)

 

この時俺は忘れていた。普通の航空機の場合空気抵抗や効率を考えて高高度を選ぶ事が多いという事を。旅客機などを考えたらわかるというのに燃料が無制限な俺は既に感覚が狂っていた。

 

速度は大体450kt(830km/h程)で飛んでおり、キャノピーの外には速度を体感する為の比較対象が何一つ存在しない青い空。それはまるで時の流れが止まったかのように思わせる。僅かに上下する高度計と2時方向に位置するF/A-18がゆらゆらと揺れて見える様が今も空を飛んでいるのだと自覚させられた。

 

バシュッ

 

外ではそんな音を立てているのだろう、前後の機体の主翼下から増槽が二つずつ投棄され重力によって落下していく。少量の燃料を噴出しながら落下していく増槽はすぐに小さくなって見えなくなっていった。

俺のように機首が上がったりしないのはコンピュータによる自動操縦だろうか。だとすれば羨ましい。

 

しかしその後は何かが起こるわけでもなく時間はただただ虚しく過ぎていく。そこでしばらく相手の機体を観察する事にした。

 

増槽が無くなったことでよりスマートな見た目になった機体の兵装支持架には何やらミサイルらしき物が装着されており、外見的には飛翔制御の為と思える翼がAIM-9のように先端部ではなく中間部分と後部にある事から中距離レーダー誘導方式の空対空ミサイルと予想した。代表的なのはAIM-7通称スパローとAIM-120通称アムラームのふたつなのでこのどちらかだろう。なお、これらで狙われた際には俺は問答無用で七面鳥と化す運命は避けられない。

 

俺から見える左の空気取り入れ口のすぐ後ろに何やら白い筒状の機材が取り付けられていた。見た様子飛翔用の羽根は見当たらないので何かしらのポッドか何かだろう。偵察、電子戦、チャフもしくはフレア散布など色々ある筈だ。

 

翼端には短距離用のサイドワインダーらしきミサイルが装着されており、胴体下の中央には未だに増槽らしき物が吊り下げられている。他に兵装らしきものが見当たる事は無かった。

 

垂直尾翼に描かれたマークの意味を俺が知るはずも無く、所属部隊はわからない……が、主翼と機首に描かれた国籍マークだけは俺にも判断がついた。

 

左右に帯を携えた円に、中央には星のマーク。昔何度か実際に目にした事もあるそれは、紛れも無くアメリカのラウンデルそのものだった。

 

尾翼の下辺りの胴体にはNAVYと書かれているが、この付近に空母は……そもそも海洋はあるのだろうか?しかしもしもあった場合、この機体では着艦が不可能な為どうしようもないのだが。

 

 

 

 

 

前方の機体がバンクを振る。また真横に少し減速して近づいて来ると、今度は大きく下を指すジェスチャーを行っていた。どうやらこの辺りで高度を下げようという事らしい。

 

目の前でエルロンロールが始まったところでこちらも操縦桿を横へ。同じく機体を反転させると、そのまま高度を落としていった。

 

 

 

 

そうして4900ft(1500m)程まで高度を落としたところで機首を水平に戻す。地平線とまではいかないがかなり遠い所に何か人工の建造物があるのが見えた。タワーやビルなどといった高層建築物ではないが、10階建てマンション程の高さといったところか。

 

その建築物が一体何なのか。それを知る事になるのは数分後の事である。

 




レーダースコープはF-4,F-104,F-5Eのレーダーを元に、RHAWSに至っては何の資料らしいものも見つからなかったのでほとんどRWRと化しました。
……これからの描写に使えそうなので。


友人は全部繋げた状態で投稿すると言っていたので最終話にでもURLを貼り付けます。(活動報告には既に貼っています)


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番外編:異世界ファンタジーその2 強行着陸?

わーすごーい!僕は更新が亀以下なフレンズなんだね!
……ほぼ3ヶ月ておい……

友人が投稿したのでこちらも投稿します。最初に僕が考えて……それを友人に学校で見せて……友人がちょっと変えたりして書いて……それを僕が見て調整して……まぁ長くなりますね。


近付くにつれて段々とハッキリしてくる地上物。まるで横たわる大蛇の如く伸びるモノは遠目で見てもかなりの長さだった。数kmはある長さ……そんなものが並行に二つ並んでいた。

 

(おいおい、マジかよ……)

 

アスファルトのように黒っぽい色を基にした道路のようなものに点々と中央に引かれた白い線。遠目でも見ればわかる程に長いそれは紛れもなく滑走路だった。

 

一つは2km前後、もう一つはその倍以上の長さを誇っておりオープンパラレル方式と呼ばれるものに近い配置の仕方をしていた。2本の平行に引かれた滑走路の間には先程から目にしていた人工物が健在しており、遠目でも見えたのはおそらく管制塔の類いだったらしく、その下には大きめの格納庫(ハンガー)が建てられていた。そして滑走路から少し外れた脇には〇に囲まれた【H】のマークが三つ点在している事からおそらくあそこにヘリなどが来るのだろうか。

 

 

 

RHAWSのディスプレイには地上からのレーダー波とSAMのものであろう多数の反応が表示されている事からここは対空兵器がかなりの数あるらしい。

 

距離を縮めるにつれてRHAWSの表示の上半分を埋めていく脅威電波の表示と慌ただしく更新される最新の脅威の様子はまるでシューティングゲームかなにかに出てくる敵の大隊のようだった。

 

あまりにも数が多過ぎて警告音が鳴り止まないので音声のスイッチを切ってしまった。

 

少しだけ操縦席が静かになったところで前方のF/A-18が数回バンクを振り、編隊から離脱していく。状況的にもあの基地に帰投するという意味合いと捉えていいだろう。

 

(……俺はどのタイミングで着陸すりゃいいんだ?)

 

ピッチアウトの合図も何も無いこの状況。

本来なら「頭がおかしい」と表現する際のクルクルパーの手の動きで「ピッチアウト、〇秒後」と表すらしいのだがそういったものは無かった。なのでこちらで勝手に判断しろ、という事なのかもしれない。

 

そもそも2本の滑走路が離着陸両用とは限らないし、離陸用、着陸用と用途によって別れているのかもしれない。しかし指示が……

 

(……ん?指示?)

 

ふと思い計器類に目をやる。

視線の先にはUHF選択チャンネルセレクター。

 

(……スクランブルの時の周波数ってあるんじゃなかったっけ)

 

本来ならば国際緊急周波数だとかいう無線の周波数がちゃんとあるらしいのだが、この時俺は全然知らないでいた。というよりはそもそも無線の電源を切っていたのである。理由としてはウィッチ達や仲間との無線機とは交信を上手く行えなかった事と下手に無線を撒き散らして脅威になりえる存在などにこちらの存在を教えたくないからなのだが。

 

(降りたな。次は俺と考えて良いのかな?)

 

国籍不明機を1番最後に着陸させるなんていうのもおかしな話になるだろうし……というか強行着陸になるが良いのか?

 

それはさておき、ひとまず着陸態勢に入る。アプローチの目標は先程F/A-18(ホーネット)が降りていった滑走路。

滑走路の端に格納庫らしき建物があるので着陸後そこへ行けるように滑走路付近に何も無い方向から進入していく。無論、あの機体が降りた方向と同じである。

 

目線が計器類と光学照準器(ヘッドアップディスプレイ)とを往復する中、フラップを最大まで下ろしてギアダウン。抵抗が増えた事により少し不安定な動きを見せるがそれは操縦桿を少し動かす事で姿勢は安定していった。

滑走路には進入方位などこれといった数字が無かった為に自分の目測だけで方位を合わせていく。

 

速度は120kt(222km/h程)。高度は300ft(91m程)。

 

徐々に細かく小さい数値を表していく高度計が0の表記の方へと指針を近づけていく。

滑走路の脇に置かれた紅白の縞模様の吹流しはダラリと真下に垂れており、ほとんど無風である事を指していた。

 

滑走路がかなり長いので3分の1程過ぎた辺りから接地する。主脚が地面に接地しガクンとそれなりの衝撃が伝わってきた後、上を向いていた機首が水平を向いた瞬間にもう一度衝撃が席を揺らした。

 

 

前輪が接地した事を確認しドラッグシュートのハンドルを引っ張った直後、体に感じる速度が明らかに失われキャノピーの外の景色が変わる速度も段々と変わっていく。タイヤのブレーキもあるが、自分には必要以上に滑走路が長いのでおそらくその必要は無いように思えた。

 

十二分に減速した後に滑走路上をしばらく進んで格納庫や管制塔など施設がある所まで行くと、操縦桿の一番下にある赤いステアリング/マイクスイッチを小指で押しながらペダルを踏む事で機首を急旋回させる。これから自分はどうなるのか、相手は一体何者なのか。不安に駆られながらロックされていたキャノピーを操作するレバーに手を掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

未だに格納庫の中に入るまでは至っていなかったF/A-18(ホーネット)。格納庫の手前の広い駐機場(エプロン)のスペースに駐機していたその隣に機体を進めていく。また飛び立つ事があれば動けなくなってしまうのでスロットルをアイドル状態で留めておいてハーネスを外し始めたその時、エンジンの音に混じって微かにではあるが声が聞こえた。

 

「───────!!」

 

F/A-18がある左の方へ視線を向けると、そこには1人の男と思しき人物が銃を持って立っていた。

 

暗いバイザー越しに見えた彼の姿はイメージでは米軍などに近かった。おそらくM4系統であろう見覚えのあるフォルムの小銃に、MOLLEシステムらしきプラットフォームが目立つプレートキャリアのようなものを装着していた。足下には航空機用のヘルメットと酸素マスク、それと太股などを覆っていたであろう耐Gスーツが脱ぎ捨てられており、独特の丸みとバイザーのカバーの無い航空ヘルメット、そして転がる酸素マスクは正面ではなく片側から伸びたホースがつい最近、もしくはそれに近いものだとわかった。

 

降りてこい。武器を捨てろ。

 

このどちらかであろう言葉を叫んでいるようだが、俺の耳には自身の乗るこの機体の甲高い声しか聞こえない。

ようやく体を固定していたハーネスを外し終えると、マスクを外して左コンソールのパネルの上に置いた。キャノピーから身を乗り出すと、ようやく彼の声が耳に届いた。

 

「エ……ンを……れー!」

 

必死に叫んでいるところ悪いがエンジンを止めたらそこにあるホーネットと違って自力でのエンジン始動は不可能なんだよなぁ。そんな悪態を心の中で愚痴りながら俺は首を左右に振って拒否の意を示した。

 

すると小さく聞こえた破裂音。威嚇なのか警告なのかは知らないが彼の上空に向けている銃の先から漏れ出る微かな白煙と駐機場(エプロン)のコンクリートの上で何度か弾む金色に輝く空薬莢が誰の仕業なのかを物語っていた。

 

「ハイハイわかりましたよ……」

 

エンジンの音でどうせ聞こえる事は無いだろうとボソッと呟いた。

若干不機嫌になりながらも両方のスロットルをフィンガーリフトを引きながらOFFの位置へとやる。するとそれまでけたたましく叫んでいたエンジンの高い音とその音量は比例するかのように急激に低くなり沈黙していった。これでもうエンジン始動の為の機材が無い限り再び息を吹き返すことは不可能となった。

 

(というか……日本語?)

 

先程彼の叫んでいた言語。あれはハッキリと日本語だった。何故日本人がホーネットを操作していたのか……FX計画辺りから外れたパラレルワールドか何かだろうか?しかしそれでは何故機体にアメリカを示すラウンデルが描かれていたのかが説明できない。

 

「よいしょっ……いだぁっ」

 

操縦席から飛び降りると案の定襲ってくる着地の衝撃。未だにフワフワと体が浮いているような感覚と先程の衝撃でビリビリと足に痺れが残る足を黙らせてがひとまずヘルメットを脱いで小脇に抱えると、敬礼。

 

挨拶。これ大事。

 

「ええと……武藤です」

 

普通なら『〇〇飛行隊所属の〇〇です!』なんて名乗るのだろうけど、生憎こちらは自衛隊員でも何でもないただの一般人。何処かの部隊に配属された覚えも無いのでここは正直に行くとしよう。

 

幸い銃口はこちらを向いていないし日本人なら……撃たないよな?

 

そんな甘ったるい考えが頭の片隅にはあった。俺の知ってる自衛隊は仲間が撃たれない限り敵を撃つ事すら叶わない。F/A-18(ホーネット)に乗っている時点で自衛隊ではなく国防軍など組織そのものが違う可能性も十分にあったが、そうではあって欲しくなかったので信じない事にした自分が居た。

 

「─────っ!?」

 

鼻先を一瞬照らす赤い光。視界に映った発光体に俺は何が起こったのかわからずたじろいだ。

自身の胸に目をやると、そこには今さっき鼻を照らした赤く光る物があった。その正体はレーザーサイトによるものだった。

 

(一体何処から?)

 

そう思い顔を上げると……あった。狙うには都合の良い場所、もとい建物が。管制塔である。

するとそこには本当に人影らしきものがふたつ程。

 

1人の小柄そうな狙撃手は膝立ちの状態で脚らしきものを落下防止の柵の上に立てて銃口とスコープらしきものがしっかりとこちらを向いている。もうひとつの人影は……立射の状態で肩に何かを担いでいた。型はわからないがあの構え方をすると言えばRPG系統、AT4、M72LAW、FGM-148(ジャベリン)カールグスタフ(84mm無反動砲)パンツァーファウスト3(110mm携行対戦車弾)etc……いくらでも危なっかしいモノを思いつく。

 

目の前には自動小銃、管制塔には狙撃手と何か担いだヤバイ奴。絶望的である。

 

何か手があるとすれば、救命胴衣のポケットに入ってる照明弾を彼らに直接撃ち込むくらいだろうか。目くらまししか思いつかない。

 

この状況から形勢逆転を現実にできるというのなら是非ともご教授願いたい。

 

 

ブォォォォォォォォ

 

「……?」

 

視界には映らないが何処からか聞こえてくるエンジンと思しき唸る声。腹の中を直接揺さぶるような重低音はそこらの車とは違った重機のような音だった。

 

それらは格納庫の陰から姿を現した。濃緑色の二色迷彩を施した車体にタイヤではなく履帯による走行。特徴的な砲塔から伸びた砲身はこちらを向いたまま近づいてきた。

しかもそれらは1両に留まらず、その後ろから2両目3両目とどんどんとその数を増やしていく。

 

(うそん……)

 

90式

 

俺はその名でこの車両を知っている。前方から見ると傾斜装甲など見られない垂直な前面砲塔には見覚えがあった。

 

その数5両。……かに思えた。

 

目の前の戦車の停止の数秒後。走行時の振動が途切れたかと思えたが、その思いはすぐに裏切られる事となった。

 

ガタガタガタガタガタガタ

 

硬い駐機場(エプロン)のコンクリートと擦れ合う履帯の金属音が大きくなると共に現れる第二の鉄の怪物。それもまた複数の車両だった。

同じく履帯を履いてはいたが、砲塔などの形状は戦車というよりは装甲車だった。

プーマ装甲歩兵戦闘車くらいなら知っているがこの車両の名前は生憎出てこない。90式の砲身よりは小さく短い……おそらく機関砲を備えたソレは同じく5両。荒々しくその姿を現したのだった。

 

(……マジ?)

 

89式装甲戦闘車

陸自好きな友人が興奮しながら説明していたのを思い出す。小銃と同じ名前だからか偶然にも覚えていた。

 

F-1と俺を取り囲む戦車と装甲車。綺麗に円形に並んだそれらの武装が向く方向は案の定俺であり、袋のねずみとなった。

彼らが一斉に射撃でもしようものなら俺らは粉微塵になる事間違い無し。塵一つ残らないであろうオーバーキルである。

 

「こちらには敵意は無い。こちらへ来てくれ、話を聞ききたい」

 

全く説得力の無い声は想像よりも高く若い声。もっと軍人らしい(しゃが)れた声かと思っていたがそうでもないらしい。そしてやっぱり日本語だった。

 

俺は頷いて応えた。もとい、そうする他無かった。彼は敵意は無いと言いつつもこの状況が「どこが?」とさえ思わせる。

 

(ん?……航空基地に戦車に装甲車?)

 

ここは大人しく従う中で一つ疑問が浮上した。元の世界で航空自衛隊基地に遊びに入った際には軽装甲機動車辺りしかなかった。履帯で移動するのは作業用の重機ぐらいだ。少なくとも戦車はなかったはず……。

 

この基地は空軍なのか陸軍なのか。しかしホーネットにはハッキリとNAVYとあったので色々と混ざりあっているのかもしれない。

 

彼が進む先にいた車両達が一気に後退していき道を開ける。

 

(なんとまぁ……コンビネーションの良いことで)

 

この状況の中でもそんな風に内心感動していた。まず戦車のこんな運用の仕方を知らない。まるでコンピュータのように正確で一致した動きを見せる彼らには違和感があった。それこそドローンを幾つも列べて同時に集団行動のように動かす動画のように。

そして誰1人として姿を見せないのだ。車長も操縦手も誰も顔を出していない光景は鉄の怪物という雰囲気を醸し出していた。

 

ただ車両達のエンジン音だけが

 

 

 

 

(あの空気取り入れ口(エアインテーク)……E型かよ)

 

案内される中でホーネットの前を通り過ぎる。その時見えたのはF-22のように直線的な空気取り入れ口。ステルス性を考慮されたそれはF/A-18Eスーパーホーネットのそれだった。

前面限定ではあるがステルス機であるこいつとヘッドオンしていたからこっちのレーダーに映りづらかったらしい。というか映った瞬間があっただけ儲けもんだろう。

 

 

それにF-1は第3世代の支援戦闘機であり、F/A-18Eは第4.5世代のマルチロール機だった筈。初飛行の年で20年もの差が生まれているが、それはとてもじゃないがその差を技量で埋める事は自分には不可能に思えた。

 

 

 

ガチャガチャと俺が騒がしい音を立てながら歩く廊下には俺と彼ともう一人、装備から見てあのウイングマンをしていたと思しき女性……いや、女の子がいた。やはり彼女もかなり若い印象を受けたが、あまり後ろを見ると警戒されるのでぱっとでしか見てないがその腰には拳銃と思しき何かが装着されており、いつでも抜いて俺の事を撃つ事が可能だろう。そして彼女も彼と同様にフライトスーツだけを着ており、その太股にはカイデックス製と思われるホルスターが装着されていた。拳銃の種類は恐らくベレッタのモデル92系統と思われた。

 

……それにしても人がいない。建物の中に入っても生活感の無い様子だった。新築といえば聞こえが良いかもしれないが、悪く言えば無人の廃墟のような印象だった。白い廊下には擦れた痕ひとつ無く、壁はまるで塗料を塗りたてのようで、本当にそれは新築そのものだった。

 

どうやら俺は随分と物騒な世界に来てしまったらしい。まあここに来る前の世界も物騒さは負けていないと思う。女の子が銃器振り回しながら空を飛ぶような世界だったし……。

 

「どうぞ」

 

口調は礼儀正しいが如何せん手に持っている物が……。

 

部屋の扉の上には【応接室】とあり、これからO☆HA☆NA☆SHIするようだ。

 

(俺……これからどうなるんだろ)

 

カチャリと扉は閉められ、退路は塞がれた。

さぁ、どうなる俺の人生。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(な……何なんだこの状況は……)

 

室内はまるで中学の頃の校長室。黒い椅子にテーブルを挟んだ状態で俺達は向き合っていた。

 

「えーと……」

 

彼は顎に指を当てて悩む素振りを見せると、持っていた小銃が光り輝く。

 

「───────っ!?」

 

いきなり何か攻撃手段に出たのかと思い両腕で頭を守る。

 

光が収まったかと思うと、そこにあった筈の銃は無くなっており……代わりにその手にはお盆があり、三つの湯飲みが載っていた。

 

これには流石に驚いた。何せ現実世界ではありえない事を今彼は平然とした顔でやってのけたのだから。

 

「とりあえず、お茶でもどうぞ。込み入った話はその後にしよう」

 

そう言って彼は微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

敵か味方かもわからない人物から渡された緑茶らしき飲み物を飲むフリをして喉を動かす事数分。すっかり飲み干され空になった湯呑みをテーブルに置くと、彼が口を開いた。

 

「……で、君は一体何者なんだ?」

 

単刀直入に一言、やはり彼にとって俺は不可思議で奇妙な存在だろう。それもそうだ、今では旧式のとても実戦では使えないような古い機体が領空を飛んでいたのだからそりゃ驚いただろう。ましてやあのシリアルナンバーは存在する筈が無く、製造番号がひとつ多い。

 

「俺はあんなのを見た事が無いんだ。見た様子日の丸が付いていたようだけど……」

 

(……あぁ、そっちか……)

 

何故旧式の機体が飛んでいるのか、ではなく彼にとっては知らない航空機だったらしい。たぶん今のパイロット達が突然Leduc(レドゥク)0.10などと出会った場合機体の存在そのものを知らない者も出てきそうだ。そんな感じだろう。

 

「自分の名前は武藤一(むとうはじめ)です。気がついたらこの世界に来てました。……あの機体は空自のF-1です」

 

緊張して喋り方が変な風になったが伝えたい事は伝わった……筈。

 

「エフ……ワン?」

 

「F-2って……わかります?日本の支援戦闘機の」

 

「ああ、あれなら」

 

「あれの前任です」

 

「……?」

 

F-2は知っているようだが……最近の人なのだろうか?

 

「退役した機体って事です」

 

その一言で彼もピンときたのか何も無い虚空からスマホを……

 

(……すまほ?……え、ここってネット繋がってんの?)

 

 

 

「F-1っと、えーと…………これの中にある?」

 

そう言って見せてきたスマホの画面にはGoogle検索が掛けられていた。そしてその検索内容は【F-1】の文字があり、案の定軍用機ではなく車の方ばかりが検索結果として表示されたいた。

 

「それに軍用機って付け足してみれば多分出ます」

 

「…………あ、ホントだ。へー、こんなのがあったのかぁ」

 

本当に知らなかったようで、凄く関心した様子で頷いていた。まあF-1と聞いて普通は車の方を思い浮かぶだろう。世界的に見ても軍用機として思い浮かぶのはせいぜいミラージュF-1の方であって三菱F-1と思うのは少数派である。

 

 

 

「そしたら、そのF-1という機体で何処から来て何をしに来たんだい?」

 

この状況なら当たり前な質問。しかしその【何をしに】の部分は今最も知りたい人は当事者である俺だ。今でも少し混乱しているが一応答えよう。

 

「言うなれば此処とは違った世界、でしょうか?」

 

「そうか……君もか」

 

そう呟いて彼は顎に指を添えた。

 

(……()?)

 

「と、いうと……?」

 

「私達はこの世界とは違う場所から来た異世界人なんです。あの戦闘機に乗っていたならあなたも……そうなんですよね?」

 

そう口を開いたのは目の前の彼の隣に座る彼女。

この世界とは違う世界からの人間。その事実は予想の斜め上を行くものだった。

 

「まぁそういう事なんじゃないでしょうか……」

 

「ところで……君の名前は?俺は新島吉晴(にいじまよしはる)、歳は……まだ15?かな?」

 

( マ ジ で か )

 

あろう事か彼は俺よりも二つ年下だった。15歲で異世界転移に加えて戦闘か……そう考えると何か胸に突き刺さるものがあった。

 

「私は新島結奈(にいじまゆうな)です。吉晴君とは同級生で、一応魔法が使えます」

 

(魔法……この世界にもあるのか)

 

「改まして、武藤です。特に能力とかは無いけど……強いて言うならあの機体が能力?歳は17歲になるかな」

 

「へー、先輩かぁ」

 

「まぁさっきの空の上では先輩面なんてできないような結果だったけどね……。ところで2人の名字は……双子って事?」

 

すると2人は急に顔を赤くして顔を見合わせ、微笑む。その初々しく照れる様子には思わず「新婚かっ!」と叫びたい衝動に駆られた。

 

「「夫婦です////」」

 

「ホントに新婚じゃねぇかっ!」

 

声を荒げて思わず机に両方の拳を振り下ろす。

デレデレと照れくさそうにする2人の姿の背景にはピンク色に染まりに染まったお花畑しか俺の目には映らず、猛烈にMk.82かJM117の爆弾を今すぐこの場所に叩き込みたいと思った。ああ、何もかも吹き飛ばしたい。爆ぜろ。

 

「あ、こっちの世界ではちゃんと合法ですからね?15歲から成人と定められていますし」

 

「マジかよ……」

 

思わず項垂れた。

異世界恐るべし。確かに世界が違えば法律も変わってくるだろう。まさかその世界で結婚にまで至るとは……いやはや、凄い。

 

「ところで2人はこの世界では一体何を?」

 

「此処へは女神様に連れてこられて……今はこの世界でお世話になっている国を助けています」

 

(女神……異世界……それに銃……)

 

【チート】

 

頭の中ではその結論に至った。

 

「さっきから出したり消したりしてるソレも能力?」

 

「ああ、これ?」

 

そう言いながら彼の手の平の上から光が放たれ、収まったと思うとその手の中には1発のライフル用の実包が握られていた。大きさからして.223弾……メジャーな5.56mmNATO弾かそこらだろう。

 

「元の世界で俺達の存在が消えちゃったからってフィーリアさん……まぁ神様からのお詫びってとこかな?」

 

机の上にコトリと立てられた実弾からはまるで今製造されたかのような輝きが放たれていた。

 

「存在が消える……」

 

前に見た事がある異世界ファンタジーでは【死亡】か【行方不明】が多かった。しかし彼らは元の世界での自分達が居た全ての証拠がひとつ残らず消え去ってしまっている。それがどういう事なのか、何の意味を示すのか容易には想像できなかった。

 

もしこの世界でのラスボス的な存在を倒したとする。……その後は?元の世界への帰り道が見つかった所で向こうの世界に自分達の帰りを待つ人はおろか家族や友人でさえ自分の事を知らない。そんな現実はあまりにも酷な気がした。

 

「ハジメは何処から来たんだ?」

 

「んーと……こっちに来る前は1943年頃で……その前にいた元の世界では……特に何も無かったかな?」

 

「1943!?第二次世界大戦じゃないか!」

 

「まぁそこの人達は殺し合ったりしていないパラレルワールドだったんだけどね」

 

「へぇー……俺達さ、この世界に来る時なんか普通に授業中でさ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな風にたわいもない雑談が続いていった。転移する前の自らの身辺状況などを話すと、どうやら俺と彼らとは転移する前の世界が同じだった可能性が高かった。その時の総理大臣の名前や隣国との国際的な状況などニュースを見ればわかる事が幾つか一致したからだ。

 

 

「突然だけど……ハジメ、頼みがあるんだ」

 

「? 頼みってのは?」

 

「今俺達はある国と戦争をしている。その国には絶対にあの機体を渡さないで欲しいんだ」

 

敵側の技術発展。それを阻止しようとすることは敵としてごく普通の事だろう。

 

「そう言われてもねぇ……この世界じゃ右も左もわからないから何とも言えないなぁ」

 

どの国とどの国が戦争中なのか、同盟国はどこなのか、根本的な原因は誰にあるのか。そういった事を全く知らない。結局勝てば正義なのだから歴史なんぞ隠蔽工作に情報操作を行えばねじ曲げる事ができるだろう。

そして今は日本人らしく曖昧な答えを出した事に少しだけ緊張と後悔を感じていた。

 

「その敵国との戦争の原因っていったい何なんだ?」

 

「……どうしても聞きたいか?」

 

「まぁ教えてくれるなら」

 

「今起きている戦争の理由は……」

 

今1度椅子に座り直し、態度を改めて聞く態勢に入る。戦争が起こる程の事だ、異世界ならではの重い話に違いない。

 

 

 

 

「向こうの大使が俺の嫁を犯して売ろうとした」

 

「よし、ちょっと爆撃してくるわ。場所教えてくんない?」

 

女の子をレ〇ープしようとする輩には〈粛清〉をしなければ。そんな真っ赤な思想に駆られた俺はそいつをシベリア(あの世)送りにするべくその場に立ち上がった。

 

 

 

「ちょっとソイツの息の根止めてこなきゃ」

 

過失致死ならばまだしも、意図的───ましてや拉致監禁と強姦と人身売買なら日本人の俺としては生まれてきたことを後悔させてやるぐらいの事をしてやったらいいと思ってる。

 

 

「あ、それには及ばないよ。もうすでに息の根は止めてあるから」

 

(なん……だと?)

 

サラッと口にされた吉晴の殺害発言。一瞬身体が硬着してしまったが、その理由は人を殺した事ではなく【目標】が既に達成されていた事からだった。

 

「後悔……してるか?」

 

何故そう問いたのかは自分でもわからないが、気づけばそう口にしていた。

 

「まさか。今後同じようなことは起こさないと決めたし、異世界という物も本当の意味で理解できた。もし今度しようとした輩には50.AE弾で自分の息子が旅立つ瞬間をご覧頂いた後、痛み付けるように22口径拳銃で体の節々を砕いてやるさ。まぁ、あえて言うならあのゴミクズな大使は即死だったが……あれは惜しかったな」

 

「ならばよし」

 

まぁ襲われたのが嫁さんだから仕方が無い。少しばかり過激な言葉が聞こえたかもしれないがそこはスルーしておこう。どのみち此処は異世界。法律やなんやかんやあるだろうし、バレなければ犯罪を犯したという認知すらされる事は無い。【バレなきゃ犯罪じゃないんですよぉ】……その言葉通りである。なのでこの世界で彼が歪まない事を祈ろう。

 

「ところでその、君達が守っているっていうのはどんな国なんだ?」

 

最初の自己紹介の際に言っていた「今はお世話になっている国を助けています」という発言。この世界で何が起きているのかわからない俺としてはそういった情報はかなり重要だ。助けてくれと言われて助けたら実はソイツが世界を滅ぼそうとする魔王でした、なんて話は洒落にもならない。

 

 

 

 

 

 

「あぁ~それね。んじゃ、観光にでも行こっか」

 

( ´・ω・`)……ハイ?

 

まさかの〇〇って国は何?と聞いたら じゃあ行こうか という話になってしまった。

 

本人の様子からして「百聞は一見にしかず」と悪気も無く言いたいのかもしれないが、俺にはいまだに拭いきれない不安が「強制連行」「軟禁生活」という悪い方向に翻訳していた。

 

「お、おう……」

 

断ればどうなる事やら。まだ彼が腹の中で本当の事は何を考えているのかはわからない為、今は普通な態度を装って大人しく従おう。いざという時は多少は弾丸を喰らってでも抵抗するしかない。

 

「じゃあついて来てくれ」

どうなる事やら。少し胃が酸っぱくなるのを感じながら席を立つと、ちょうど彼の奥さんの結奈さんがドアノブに手を掛けたところだった。

 

「「「あっ……」」」

 

まるで漫画か何かのように3人?の女性達が聞き耳を立てていたらしい。何かバツの悪そうな表情をしていた。

 

 

「お、お初にお目にかかります……吉晴様の妻、ミーシャリア・トローデスです……」

 

「初めまして……私も吉晴様の妻のリュミです……」

 

「私はシヴィよ」

 

「あれ、いたの?」

 

突然の自己紹介が始まった事に頭がついていかない。しかし結奈さんよ……アンタ絶対わかってて聞いてるだろ?

 

「いや、あの……盗み聞きするつもりは無かったんですが……ミーシャさんがどうしてもって」

 

「わっ!? 私は気になっただけですよ!? 行くって言ったのはシヴィさんですよね!」

 

「私は行けば良いじゃないって言っただけよ」

 

何か知らんが責任の擦り付け合いのようなものが始まった。

盗み聞きがバレて誰が悪いか擦り付け合うとか修学旅行で友達が先生の部屋に連れて行かれた時を思い出すな。

 

……それにしても先程シヴィと名乗った妖精?が気になる。創作物に登場しそうな妖精をそのまま具現化したような外見をしている。2対4枚のトンボのような羽根を背中から生やしており、肩に乗りそうな身長……20cm程だろうか?【THE・妖精】という感じだ。

 

「3人とも、別に気にしてないからね。それよりも久しぶりにトローデスの王都に行くんだけど……3人はどうする?」

 

「「「行きます(行く)!」」」

 

何やら俺の知らないところで話が進んでいる。

 

「なぁ吉晴……彼女達は?」

 

「金髪の彼女はトローデス王国の第3王女様で、」

 

「はぁ!?」

 

先程【トローデスの王都に行く】と言っていたのに目の前にいる金髪の女性は【トローデス王国の第三王女】だという。

 

「んで、銀髪の彼女は魔界最強の吸血鬼ヴァンパイア族……族長の一人娘だっけ?実質魔界の姫と、その小っさいのはそのおつきの妖精」

 

「ちっさいのとは何よ。ちっさいのとは」

 

軽い口調で説明されるが頭に入って来ない。というか2人は異世界あるあるの人外っ娘のようだ。

 

「わー、すごーい。たーのしー」

 

そんな気の抜けた感想しか言えない。

 

「彼は武藤一だ。詳しくは後で話すけど今のところ一緒に行動することになるよ」

 

「吉晴様がお認めになったのなら悪い方では無いのでしょう。よろしくお願いいたします」

 

「あ、こちらこそよろしくお願いします」

 

頭を下げられればこちらも下げなければなるまい。最敬礼を思わせる程のカクカクさで腰を曲げた。

 

「それじゃあ…………あ、そうだ」

 

歩き出した吉晴が何か思い出したようで、唐突に振り向いた。

 

「ところでハジメは武器は携帯しているのか?」

 

「銃……まぁ多少と言ったところかな?航空自衛隊の装備って言ったらわかるか?9mmと9mm機関、あとは64式とミニミ。……それにしても武器が必要なのか?」

 

「これから行くトローデス王国は治安は良い方なんだけど、この世界の文化レベルは中世ヨーロッパか……そうだなモンスター狩人ってゲーム知ってる? あんな感じだよ」

 

何かメジャーなゲームの題名が聞こえた。

 

「それに日本みたいに軽犯罪法とか銃刀法も存在しない。町でも多くの人が剣なり弓なりを持ち歩いてる世界なんだ。もしもの時に最低限身を守れる物は必要だよ」

 

要するに物騒なんですね、わかります。

 

彼が言うにはアサシンクリードのような町並みに冒険者が多数。異世界ファンタジーでは一番想像がしやすい感じだな。

 

「その説明の前半はとても面白そうだな。だけど後半はなかなかだな……その、もしもの時が来たときは?」

 

「迷わず撃て」

 

はい。射撃許可頂きました。何処ぞの異世界と繋がった自衛隊の2等陸尉の「各自の判断で撃ってよし」みたいだな。

 

「まぁ、わかった」

 

俺は未だに人に向けて引き金を引いた事が無い。たった一本の人差し指で人の命を容易く奪う事の出来るこの武器の口から火が吹かない事を祈ろう。

 

「重い話して悪いね。それじゃあハジメも準備が必要だろうし駐機場にでも行こうか」

 

「そうしてくれると助かるよ」

 

さてと、9mmと9mm機関のどちらにしようか。

 




いくら何でも僕の小説の主人公で友人の小説の世界で生き残るのはキツイっす。ずっとA/B焚きっ放しだったら勝てる可能性が微レ存?否、(勝て)ないです

友人の貼っときますね
http://ncode.syosetu.com/n9019cn/67/


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番外編:異世界ファンタジーその3

どうもおはこんばんにちは。
前回投稿した話を一旦区切ってこの話が友人の投稿小説と同じ所で終わるように調節しました。


場所は変わってあの駐機場(エプロン)。操縦席まで登る機材が無いので機体の空気取り入れ口(エアインテーク)に手足を掛けてよじ登る。

 

しばらくの間陽射しの下に晒されていたからか、触れた手にはかなり温かい温度が伝わってきていた。

 

キャノピーのヒンジ部分の少し後ろにはこの機体の電子機器室がある。T-2の頃には後部座席のキャノピーだった部分をF-104やT-4のキャノピーのように横に開けると、その開けたドアの裏に黒い箱のような部分が見受けられた。

 

手荷物室の中から9mm拳銃を取り出す。航空自衛隊である事を示す桜のみのマークが刻印されていた。

 

「それは……9mm拳銃か?」

 

「そうそう。護身用には良いかなって」

 

それともう二つ手荷物から取り出した。

 

「……それは?」

 

「さすがにこの格好で歩き回るのはちょっとアレだからね」

 

取り出したのは作業着と半長靴。電子機器室を閉じてから機体の上から飛び降りるとまたもや鈍い痺れが脚から腰にかけて走り回った。

 

「コックピット見てみたいんだけど……梯子とかあるかな?」

 

救命胴衣と耐水服を脱いでいる途中で吉晴に聞かれた。

 

「一応ある筈だよ。外付けのやつ」

 

そう答えるのもつかの間。吉晴が手をかざすとF-1の操縦席の淵に梯子が掛けられていた。

 

「これ?」

 

「うん、たぶんそれ」

 

何やら後ろの吉晴嫁〜ズが騒いでいるかと思えば、自分の格好に気がついた。

 

耐水服を脱いだ状態なのでパンツ一丁なのである。

 

俺はすぐに着替えを再開した。

 

 

 

 

 

 

 

「……よしっと」

 

半長靴の紐を結び終わり立ち上がる。制式配備ではないが、カタログなどにも載っているP220対応のカイデックス製のホルスターに9mm拳銃を差した。

 

「うわー……」

 

梯子の上では吉晴が未だに結奈と機体の中を見ていた。どうやら計器が古い事に驚いていたようだった。

 

(アイツは零戦の計器は名称もあるから見やすいって言ってたな……)

 

懐かしい友達の事を思い出し、少し耽っていると彼から声を掛けられた。

 

「んじゃ、今度はこっちも良い物を見せよう!こっち来てー」

 

カンカンと金属音を立てて梯子を降りると、足早に歩き出してしまった。

 

 

……そして歩く事数十秒。先ほどの駐機場(エプロン)とは真反対の所にもう一つの巨大な格納庫(ハンガー)がそびえていた。

 

正面の大きな扉ではなく作業員用の小さな出入口から中へと入る。

 

「おおっ暗いな……」

 

そう俺が呟く隣で吉晴は証明の操作でもしているのだろう、操作盤のスイッチをガチャガチャと切り替えていた。

 

すぐに慣れた目にボンヤリと映る何か。何本もの垂直尾翼らしきものが幾つも佇んでおり、その内の半分程はステルス性を有しているのかある程度角度が付けられていた。

 

「うわっ……」

 

徐々に明るくなる室内。白く照らされたそれらの光景はどこかゲームのようだった。

 

F-22A(ラプター)Su(スホーイ)の……30?MKIか」

 

すぐにわかったF-22と違いスホーイファミリーは判別が難しい。何故わかったかというと、灰色に塗られた機体とそのキャノピーの下に丸いインド空軍の国籍マーク(ラウンデル)が塗られていたからである。

 

2機のF-22Aと1機のSu-30MKI。現役戦闘機がこんなにも並んでいるとは思ってもみなかった。

 

どちらも今までに見たことが無い機体。はしゃがずにはいられなかった俺は隅々まで眺め始めた。

 

 

 

 

 

「吉晴達が戦ってる国はこんな戦力が必要な程なのか?」

 

「俺はそう思ってる。なんてったって敵の戦闘機にF/A-18(ホーネット)が機動戦で負けたんだ。こいつらで負けたら、今度こそ困るな……」

 

「そんなにか……」

 

おそらく機動戦というとキャノピー・トゥ・キャノピーからの巴戦で負けたのだろう。……視界外戦闘範囲からでは攻撃する事のできなかったのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって草原地帯。俺は今 M998HMMWV(ハンヴィー)の後部座席で上下左右に揺られていた。

 

「けっ、けっこう揺れるんだな」

 

口を開けば舌を噛みそうな程激しい振動がひっきりなしに襲う。

 

「舗装路じゃ無いからっねっ、多少はガマっンさ」

 

かく言う彼も途切れ途切れに話す。

 

何故か全く木の無い草原……まるで牧場内を走っているようだ。

 

唐突にブレーキが掛けられ、俺の身体はシートベルトに食い込んだ。

 

「───っ、どうしたの?」

 

「吉晴さん、前方600mにゴブリンの群れです。数は15程ですかね、まだこちらには気づいていないようです」

 

「さすがリュミ、助かるよ」

 

そう言って吉晴はシートベルトを外し、後部座席の方へとやって来た。

 

(ゴ、ゴブリン?)

 

ただ1人状況が理解出来ていない俺は何をすべきかわからなかった。

 

吉晴の手によって開けられる天井の銃座ハッチ。すると彼の手には1丁の小銃が握られていた。

 

外見はAR-15やM16などあの有名どころっぽいが、どうやら5.56mmでなさそうだ。それは彼の手中にある弾倉の大きさが物語っていた。

 

二脚を開きガコン、と重い金属音を立てて置かれたその銃にはスコープが付いていた。

 

「その銃は?」

 

「SR-25。聞いたことない?」

 

「あぁ、アレか」

 

よくFPSゲームなどをやっていた友人が何度か口にしていた名前。沢山あるバリエーションに覚えることを諦めた中学の俺が懐かしい。

 

弾倉が押し込まれ、槓杆(チャージングハンドル)が引かれカシャン!と薬室内に実包が装填される音がした。

 

(マジか、撃つのか)

 

あとは引き金を引くだけで発砲が可能な銃を目の前にして俺は自分の耳を両手の人差し指で塞いだ。

 

 

 

パアァン!

 

耳を塞いでいる為か少し篭った破裂音が1つ。銃床から顔を離した彼は何か話しているようだったので耳から手を離すことにした。

 

「──。そうだ、ハジメも銃持ってたろ?」

 

「イヤ……こいつ(9mm拳銃)でやれと?」

 

「……そうだった」

 

ホルスターに手を添えながら半笑いすると、彼も思い出したように苦笑いをしていた。

 

「こんなのから……こんなのまであるよ?」

 

そう言いながら彼の両手に次々と銃が光を放ちながら召喚される。

 

猟銃などでよく見るM700系統やM4A1、終いにはM82A1が車内の足元に置かれた。

 

この中で撃てるとすれば12.7mmよりも小さな口径。しかし俺としてはこれらの銃よりも今は機体の中に置いてきてしまっているアイツ(・・・)の方が使いたいと思った。

 

「64とか出せる?」

 

「ロクヨン……64式小銃の事か?」

 

「ああ」

 

「別に良いけど……」

 

少し驚いたような、呆れたような顔をすると、彼の手にはしっかりと64式小銃が握られていた。

 

「ほい」

 

「ありがとう」

 

そう礼を言って受け取り一通り確認をする。

真新しい輝きを放つ木製の握把(グリップ)銃床(ストック)。スライドから銃口まで塗られた黒い塗装は全く剥げた箇所が無かった。

 

車内の銃座には吉晴が居るので俺は下車してから撃とうと思ったが、俺に撃たせる気満々なのか場所を譲ってくれた。

 

「スコープとかいる?」

 

「うん、お願……いや、やっぱりいらないや」

 

最初はスコープを付けてやってみたいと思ったが、生憎俺にはミルなどの調整はわからない。……1km先の1mのズレが1ミルだっけか?

 

「ほい、マガジンと7.62mm弾」

 

そう言って渡された黒い64式用の弾倉と弾。しかし問題が起きた。

 

問題があるのは弾の方。手渡された紙箱に描かれた表紙だった。

 

茶色の箱に描かれているのはライフル銃を持って夕焼けに照らされる男性。明らかに日本の自衛隊で運用される物とは違うものだった。

 

箱を開けて1発取り出すとその薬莢底部には【.308 norma】の刻印が。これでは猟銃に使う為の装薬量になる為、規整子の方を調整しなければならない。

 

「これって減装弾…じゃないな」

 

「減装弾?」

 

最初は「?」といった感じで首をかしげた彼だったが、すぐに理解したのかすぐに召喚を行った。

 

「これでいいかい?」

 

その手には枯草色の箱が握られていた。

受け取るとそこには

 

A1・22 JA

7.62mmM80普通弾、

減装弾、20発

 

と印刷されていた。これなら間違いない。

 

箱から5発程実包を取り出し、弾倉に詰めていく。

 

レールとスコープを手に取るが……やはり自分には使えない。そう判断してハンヴィーの屋根の上に置いた。

 

耐水服から作業着に着替えた時から持って来ていたタブレットを操作してあるアプリを開く。

 

銃 クリック計算機

 

そう書かれたアプリを開くと、幾つかの入力画面が表示された。

 

距離 600m

風向 3時

風速 1m

 

修正量 右へ2クリック

 

指示された通りに右へ2クリック修正。コイツ(64式)の有効射程は確か400mだった筈……いくら何でも無茶がある。照門下の上下調整部分を回してガンガン上に上げていった。

 

「この方は何をしていらっしゃるのですか?」

 

「この銃を……何て言うかな……自分に合うように調整してるんだ。ちなみに自衛隊……伝説の勇者かな。彼らもこの銃を使っていたかも知れないよ」

 

「っ!?それは本当ですか!?」

 

下の車内で吉晴達が何か喋っていると思ったら金髪の王女さんが突然目の色を変えた。

急に食い入るようにこちらを見る視線は俺の体に穴が開くんじゃないかと思う程。

 

王女さん、そんな鼻息荒くしないでもっとお淑やかにいこう?

 

「な、なんだかやりづらいんだけども……」

 

「あっ申し訳ありません!」

 

「それより伝説の勇者……だったっけ?他にもこの世界には転移者が居るの?」

 

自衛隊が伝説の勇者……まぁ陸上自衛隊だろうなその部隊。

 

「いや、大昔の伝説だよ。その話は後でゆっくり話すよ。それより腕前を拝見しようか」

 

「そんなに期待されてもなぁ……」

 

俺みたいな素人の射撃は見るものじゃない。少しプレッシャーを背中に受けながら弾倉を差し込んだ。

 

槓杆を引いて薬室内に初弾を装填。切換金(セレクター)を引っ張り(安全)から(単発)に切り換えて人差し指を引き金にそっと添えた。

 

ゆっくりと引き絞り……解放。

もはや横に細長い影にしか見えないゴブリン達の群れへと弾頭が尻を一瞬こちらに光らせて消えていく。

 

キィィィィィィン……

 

イタズラで耳を叩かれた時のように甲高い音が耳の中で長鳴りする。

 

「───────ぇ」

 

なんて言ってるのかわからない。聞き返そうとすると、そこで耳鳴りは治まっていった。

 

「足元に着弾してたよ。もうちょい上」

 

「わかった……イヤーマフとか無い?」

 

「……渡すの忘れてたね」

 

大きさ的には補聴器程のイヤープラグを渡され、耳に押し込んだ。

 

(もうちょい上……)

 

照門の高さをもう少し上げると、再び構えた。

ちなみに2脚は使用していない。車の天井に両肘を置き、左手は弾倉前の下部被筒(ハンドガード)に手首を返した状態で掌底に載せていた。

 

息を吸い、8分目。

 

絞り切る。

 

ダァンッと空包とはまた違う重い音が少し篭った状態で聞こえた。すぐにイヤープラグは小さな音を拾い始め俺の耳にも周囲の音が届くようになっていた。

 

「おぉっ!」

 

「あ……当たったのか?」

 

「おぉ~首かな?ありゃ即死だねぇ。なかなかやるじゃん」

 

全然そうした感覚が無い。ナイフなど近接武器のように(コイツ)には人や動物の命を絶つ感触が伝わってこない……伝わるのは燃焼後の火薬の匂いと多少の反動だけである。

 

 

「………ありがとう?……だけどあれゴブリンこっちに向かって来てない?」

 

前方では何やら砂埃が立つ程に駆け足をしているらしい。砂色を背景に影の塊が横に広がっていた。

 

「ハジメ、そこ代わってくれ。一気に蹴散らす」

 

「あいよ」

 

すぐに銃座から降りると、俺はドアを開けて外に出た。

車内からでは彼の手元が今ひとつ見えづらいからだ。

 

「……こい!」

 

銃座でそう言いながら両手を伸ばすと両手の中心でまた召喚が発生した。長い銃身を幾つも束ねた無痛ガン……M134が姿を現した。

 

(ミニガンかよ……)

 

「よしっ!」

 

撃つ気満々。俺は彼の視線の先に居るゴブリン達の群れらしき黒い影へと手を合わせた。南無三。

 

途端に音を遮断するイヤープラグ。繋がり過ぎて一つにしか聞こえない銃声がこの辺りに木霊でもしているのだろう。無縁火薬にも関わらずハンヴィーの周りは薄くはあるが真っ白になっていた。

 

「……よしっ!行ってみるか!」

 

そう言って彼は車内の運転席に戻っていった。

…………真っ赤になった銃身のM134は支える主が居なくなってしまった為かバランスを崩し斜めに上を向いていた。

 

 

 

足下の7.62mmNATO弾の空薬莢をジャラジャラと足で蹴飛ばしながらハンヴィーに揺られていると、先程のゴブリン達の居た場所に到着した。何でもゴブリンから体の一部を剥ぎ取ってギルドに持って行くそうだ。

……ミニガンの掃射を受けて死体が残っていると良いな、吉晴よ。

 

 

車から降りると第1歩目。グチャリと地面が沈んだ。やはり辺りのゴブリン達はゴブリンだったナニカに変貌を遂げていた。鹿や熊、猪などとは少し違った臭いが鼻を刺し思わず顔をしかめた。

 

これまた吉晴に渡されたM9銃剣でゴブリンの頭部を探し、頭蓋骨の上顎に刃先を当てる。

ミシリと骨と骨との結合が外れていく音が銃剣を通じて手に伝わる。

 

狙いはコイツらの犬歯。1本単位でギルドで引き取っているそうだ。さすがは異世界、冒険者ギルドがあるらしい。

 

血の匂いと内容物だった物の放つ悪臭が鼻を刺す。どうやら吉晴の嫁〜ズはこの臭いに耐えられないらしく、大人しく車内で待っていた。

 

幾度となく嘔吐感に襲われながらもどうにか犬歯の回収を進めていく。

 

「今頃だけどハジメはこういうのは平気なのか?」

 

こういうの……とはこの目の前のR-18指定の掛かりそうな光景のことだろう。

 

「まぁ、慣れてる……ってわけじゃないけど元の世界で叔父さんの鹿の解体見てたからなんとか耐えられる状況」

 

しかしアレは作業場であり食肉加工のようなものだ。今のこの状況は殺戮の現場であり辺りが血の海とかグロすぎる。

 

「そうか……俺は口の中が酸っぱい……」

 

幾つかの犬歯は主諸共粉々のミンチになってしまっており、とてもじゃないがどれがどれだか判別も不可能な状態だった。……やっぱミニガン(M134)はオーバーキルすぎたな、吉晴よ。

 

「ふんっ!」

 

吉晴が先程のSR-25とやらの銃床をゴブリンの亡骸へと叩きつける。どうやら彼はそれで回収しているようで、その銃床は血に濡れて肉片までもがへばり付いていた。

 

ピチョン

 

そんな音を立てて一つの肉片が俺の顔……鼻先にくっついた。

 

スーパーで並ぶ肉や解体中の鹿や猪の肉とは違う匂い。血なのかどうかわからないが、それは解体中に内蔵、それも消化器官を傷付けた際のトラウマを思い起こさせる。もしくは相当な年月が経って変質した機械油に似ていた。

 

「う"っ……」

 

「大丈夫か?ハジメ」

 

「大丈bおろろろろろろろろ」

 

「ハジメぇぇぇぇぇぇ!」

 

訂正。やっぱ無理だった。

……そもそも俺の胃袋にモノって入っていたんだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

召喚してもらった飲料水で濯いだがまだ喉が痛い。

 

「これは……どうするんだ?」

 

目の前の赤黒い池を前にそう口にする。ここまで悪臭を放つものを放置しようものなら他の野犬などが来るわ腐敗して伝染病などの原因にもなるわで大変な事になる。

 

「これは食おうにも食えないからねぇ。かと言って売れもしないし、ほっとけば他の魔獣呼び寄せるだけだから、燃やす」

 

そう言って手元に召喚された赤いポリタンク。吉晴が撒き始めると揮発油の独特の臭いがしたのでおそらく引火性の液体なのだろう、灯油だろうか?

 

どこからともなくマッチを取り出し、着火。火を纏いながらほんの少し宙を舞った木片は地面に落ちると同時に一気にその燃焼範囲を広げていった。

 

「よし、じゃあ行こうか」

 

「あいよ」

 

(……大丈夫か?これ?)

 

辺りには草原だけが広がっているが、元の世界で野焼きが原因で山火事が起きた事を思い出しながらも知らないふりをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから暫くの間吉晴の運転により揺られること数十分。ある程度舗装された街道に到達した。

 

それからこの世界の文明レベルを示すような馬車を何度か目にし、話に聞いていた街の様子が脳裏に浮かび上がった。

 

「どう?モンハンみたいな世界に現代兵器持ち込んだチートは」

 

「何というか……カオスだね。きっと今無敵でしょ?」

 

俺は異世界ファンタジーで俺TUEEEしてるものだと思っていたが、意外な答えが返ってきた。

 

「いんや、案外そうでも無いんだ。7.62mmを弾く魔獣もざらに居るし、電撃で銃弾を融かす化け物もいるし、20mm機関砲を弾くドラゴンはいるわ戦艦大和の46cm砲でも倒せないやつも居る……」

 

サラッと大和って言いやがった。てかあの主砲で倒せないとはいったい何なのか……

 

「うわぁ大和って……本当に何でも出せるんだな……代償とかないの?」

 

ここまでポコポコ出しているのを聞くと思わず聞いてしまった質問。

 

「そういうのは無いかな。寿命とか犠牲にしなくて本当によかったわ。まぁあえて代償と言うなら、元の世界を捨てたことかな? まぁ、それに余りある恩恵を受けてるけどね」

 

あのフィー何とかさんっていう女神の事なのだろう。

 

「そうみたいだな……とても幸せそうだ。爆破したい程に」

 

彼の隣の座席と俺の隣に座っている嫁〜ズを見るが、そういった印象しか受けなかった。

 

「お、見えてきた。あれがトローデスの入り口、関所みたいなもんだ」

 

そう言って彼が指差すその先には……城壁らしき壁。

 

「あれって……モンハンっていうよりも進撃の巨人かアサシンクリードじゃね?」

 

 

 

 

かなり近づき、街道に並ぶ馬車が見え始めた。その先には門があるらしく通行の許可でも貰っているのだろう。

 

「あの甲冑の人は兵士か?」

 

「そうだよ。門番的な?並んでいるのは他国の商人とか冒険者とかハンターとか色々だ。特に商人の集団がいるとかなり時間を取られる」

 

「なら結構かかりそうかな」

 

「いや、俺達はこっちだ」

 

そう言ってハンドルが切られた。唐突に街道から外れた道なき道をガタガタ揺れながら街道に並ぶ馬車の横を通り過ぎていく。

 

一応屋根のある荷馬車は見た様子はアメリカのフロンティア時代の物が1番近い物だと思う。それらの真横を次々と抜けると、停車したのは門の目の前だった。

 

 

「っ!?姫様がお見えになられたぞ!」

 

「なっ!そんな予定……」

 

「馬鹿野郎!ご多忙なミーシャリア様だぞ!予定なんぞあてになるか!さっさと表へ出ろ!」

 

目の前に居た検問を行っていたのであろう兵士が彼女の存在に気がつくと、弾かれたように周りの人間へと伝え始めた。

 

すると隣に居たミーシャリアさんはシートベルトを外し、天井のハッチから身を乗り出した。

 

「毎度、いきなりで申し訳ありません。私どもはすぐに去りますのでお構いなくお仕事にお戻りください」

 

「慈悲深きお言葉、身に余る光栄にございます……。姫様自ら前線に行かれているというお噂は私どもにも伝えられております。姫様のご苦労に比べれば私など足下にも及びません」

 

何やらお固いやり取りが始まった……かに思えたが、先程やり取りをしていた現場監督?が部下に命令を出し始めた。

 

再び各自の持ち場へと戻る甲冑姿の兵士達。……あの装備で沼地に行ったらやはり沈んでしまうのだろうか?

などと考えていると、車はノロノロと徐行運転で進み始めた。

 

「ハンヴィーは割と浸透しているのか?」

 

先程からの疑問。周りの人の視線は物珍しさがあまり見受けられず、むしろ笑顔で手を振る人が多かった。

 

「最初は大変だった。奥にある2つ目の門あるでしょ?あれが王都への入り口なんだ。あの中はサイズの問題で入れないから手前で下ろすよ」  

 

「了解」

 

「そうだ。絶対俺達と離れるなよ?間違っても店の裏路地には近づかないこと」

 

「例えばどんなのがあるんだ?」

 

「……ゲイバー」

 

「…………わぁお。まぁ気をつけるよ」

 

一瞬で想像がついた。

 

 

「やはり自分の国に貧困で苦しむ者が居ると思うと、胸が痛いです……」

 

「気に病むことは無いよ。俺達の国でも程度の差こそあれども、確かに存在したから。どこの国でもいるさ。もっとも今は軍に志願して居るやつも多いだろうし」

 

彼曰く、軍隊に入れば衣食住は必ず提供されるらしい。そしてこの国は現在吉晴達が相手にしている国と戦り合っている。そこで人員の募集枠が広がった事で志願する人数も増えているらしい。

 

 

 

王都の前で停車。ここからは徒歩となるので全員が下車し、ハンヴィーは光り輝くと消失した。それと同時に彼の出した火器の類いも薬莢の一つも残さずに消えていった。

 

「ごっはん~♪ごっはん~♪」

 

「ふ~っっ!はぁぁ~ずっと座ってたから体が鈍ったかも……」

 

「王都は久しぶりですね、お買物したいです」

 

皆それぞれ楽しみにしている事があるらしい。俺は何があるのかなど全く知らないので誰かについて行くしかないが……それでは彼らのお邪魔虫だ。どうしよう?

 

「ようこそ、トローデス王都へ。ハジメ君」

 

HAHAHAHAと笑いそうな顔をして吉晴は振り向いた。

……俺はいったい何をすれば良いのだろうか?

 

 

 

 

 

……この時既に事は始まっていたのを俺は知る由も無かった。

 




本編の方はどうしましょうかね……原作沿いにするべきか少し違う話にしていくか……

ちなみに吉晴に空戦で勝つ方法を考えましたが……無理でした。

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最近GATEを見直したら空自視点の二次創作書きたくなってきてしまった……短編で出すかもです


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