デジモンアドベンチャー02 〜導きの灯火〜 (すなぎも)
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第1話『ただいま』

どうも、砂肝です
やっと新天地に辿り着きました。
これより先は前作の彼らの冒険から4年後の世界となります
尚、前作にて主人公が消滅(もとい解雇)しておりその後任となる新たな仲間が加わっております( ̄▽ ̄;)
彼らが一体どのような道をどのように進んでいくのか本当に楽しみです(0゚・∀・) ワクテカ
前作の伏線もまだまだ残っていますしこれから貼る伏線もあると思うので楽しみに待っていただければなぁと思います(*´ω`*)



「それじゃあ行ってくるね」

そう言って肩くらいまでの髪を後ろで束ねた少女はランドセルを背負うと家を出て行く

 

彼女の名前は鉄 華音

かつてデジタルワールドを旅し、救った子供達の一人だった

時はあの戦いから4年近く経ち、今では小学5年生にまで進学したのだった

 

家を出てすぐに彼女は隣の家の居住者、八神ヒカリと合流し、中学生へと進学したその兄太一に挨拶をしてエレベーターに乗り込もうとする

 

「あ、おはようございます。

最近ここに引っ越してきた龍崎 明(リュウザキ アカリ)って言います。」

エレベーターの中には先客が乗っていたらしい

所々天然パーマか、寝癖かは分からないが髪がぼさぼさとはねており左手には何やら本を、右手には家で出たのであろうゴミ袋を持っていた

第一印象はあまりよくはないが礼儀正しい根はいい奴といった感じだった。

 

「おはよう、私は鉄 華音、こっちは友達の八神さん」

華音はそう言って自己紹介をすると明は少し目を見開くとクスクスと笑い出す

そしてエレベーターが1階に着くと同時にこう言って降りていった

 

「なるほど、『鉄』さんにヒカリさんですか。」

 

彼のその言葉に華音は首を傾げる

ヒカリは何かを疑うような眼差しをゴミ捨て場へ向かう彼の背中へと向けていた

 

 

ヒカリと華音は談笑をしつついつも歩く通学路を歩いていく

しばらくすれば目の前に校門が近づいてきてそこをくぐれば中、高学年ほどの子供達がわらわらとサッカーをしていた

そこで目に留まったのはボールを渡す金髪に帽子を被った少年とゴーグルを付けた少年だった

 

目に留まったとは言ってもその時その二人だけがサッカーをしていなかった上すぐ近くにいたからなのだが。

 

そうこうしているうちにいつの間にやら教室へ辿り着く

中では男子と女子が分かれて朝恒例の噂話をしていた

 

ー今日、転校生が来るらしいよ?

ーどっちも男なんだっけ?

 

ー美少女が来るのがお決まりだよな。

ー来ても悲しくなるだけだろ

 

そんな噂話を聞き流しつつ席につき机の中から最近読み始めた小説を取り出す

 

この小説にはなかなか好感が持てた

図書室で算数のテスト対策の為に参考書を探していた時にたまたま見つけたのだがどうやらはまり込んでしまったらしい

 

しかし読めるのもよくて10分程度すぐに先生が引き戸を開け入ってくる

 

「今日は転入生が2人来てるぞー

みんな仲良くしてやれよ?」

先生がとても爽やかな笑顔をしながらみんなに投げ掛ける

正直暑苦しいと思うのは内緒である

 

私のその心の言葉を聞き届けたかのように2人、新たなクラスメイトが入ってくる

 

2人とも朝見た顔で1人はエレベーターであった明・・・だったかな?

もう1人は朝見たどこか見覚えのある金髪の少年だった

 

「どうも、龍崎 明って言います

あれ、鉄さんと八神さんと同じクラスですか。」

絶妙な間抜け感である

すると彼はぼけーっとした顔で頬を掻きながらま、いいかと言い自己紹介を始める

 

「小学1年の夏頃に親の都合でここから離れて4年ほど外国へ行ってました

1年の時には龍とかアキとかって呼ばれてました。

まあ、戻ってきたってことでただいまって言いたいところですね」

女子がそれに対して質問を投げ掛けた

 

「明君はどこに住んでいたの?」

 

すると彼は予想外の行動を取った

 

「先生、それじゃあこっちの子の紹介してあげてください。」

まさかの質問をガンスルー

しかし女子は聞こえなかったのかなという表情でもう一度質問をする

 

「明君は・・・「さあどうぞ!俺なんかに構わず自己紹介をしようぜ?」

 

今度は質問を遮っていた

明らかに悪意のある行動である

 

そんな彼に対してもう1人の方は苦笑いをしながら自己紹介を始める

 

「高石タケルって言います。

よろしくお願いします。」

 

そこで華音は気付いたこの少年が誰なのかを

この名前と容姿からして間違いないと確信した

一緒に冒険した仲間の1人だ

 

後で話してみることにしよう

密かに彼女はそう思った

 

「そ、それじゃあ龍崎の席は鉄の隣

高石の席は八神の隣だな。

知り合いみたいだし席空いてるしな。」

 

先生がそう言うと彼は周りに目もくれず席へ歩き出し

一連の動作で素早く座り

その直後始業のチャイムが鳴り響く

 

「あ、授業始まっちまった・・・

まあいいか、じゃあ前回言った通り確認テストからやっていくぞー。」

1時間目は算数

ある意味先生も人が悪い

転校生が来るというのに1日目からテストなのである。

まあ、やるところは4年生の復習なのでわかるはずだが。

 

 

 

テストが始まって20分ほど経ったのだろうか?

どうやら隣人は既に終了したのか撃沈したのかは分からないが終了体制、つまりは睡眠状態に入っていた

 

横目で見てみると配られた計算用の藁半紙には一文字も書かれていなかった

やはり諦めたのだろうか

 

と、そんなことを気にしている暇はないと自身も問題に打ち込む

 

テストは全5問

1問目2問目と基礎計算

3問目でグラフ問題

4問目で筆算練習

5問目では面積の応用問題だった

 

面積の応用問題がさっと見た感じだと地味に面倒になっている

まずAを求め、次にBを求め、AとBを足し・・・という風な面倒なだけの典型的な時間削り問題だった

とは言っても面倒なだけで簡単といえば簡単なのだが。

しかし後一歩と言うところで先生から無慈悲にも終了の合図が出されてしまう

 

ふと気になって隣人を見れば答えだけが書かれた回答用紙を回収役の人に渡しているところだった

残りの国語、理科、社会に関しても同様で

彼は全て開始20分ほどで夢の世界へと入っていた

 

そして最後、全てのテストが返却される

テストは全て全5問、1問20点の高得点配分でケアレスミスの数で減点していく仕様らしい

私は所々で不必要な式を書いたり字が少し違っていたりで結果としては

国語、算数、理科、社会の順に

90 80 98 100だった

 

「さて、で・・・今回のテストだが・・・満点がいた。」

なるほど、大方私の隣の方ですかね。

「龍崎、よく頑張ったじゃないか。」

先生がそう言って龍崎君に声を掛けると突然彼の雰囲気は激変した

ピリピリとした威圧感のような何かを放ち出し、その直後ぼそりと呟いた

 

「失敗は許されない

彼の失敗を繰り返さない為に

ここへ戻ってきたのだから・・・」

先程までとは明らかに違う

人が変わったどころの話ではなかった。

 

ある種、恐怖を感じさせる目と気配だった

その気配はまるで・・・

 

「まるで・・・?」

何かに形容しようとしたのだが思い出せない。

まるで記憶が抜け落ちたかのようにそれは浮かんでこなかった

それと同時に終業のチャイムが鳴り響く

 

号令が掛けられ遅れ気味に慌てて立ち上がる

その時に私の頭から先程の疑問は抜け落ちてしまった

そしてそのままホームルームを終え放課となる

 

「ヒカリちゃん、帰ろ?」

「うん、タケル君も誘っていかない?」

そんな感じで話していると真横を龍崎君が通り過ぎていく

先程の嫌な気配はすっかり鳴りを潜め元のアホっぽい雰囲気に戻っていた

彼は教室を出ると近くの階段を上っていく

確かこの上はパソコン室があったような・・・

 

「久しぶり、鉄さん・・・?

どうかしたの?

龍崎君を食い入るように見てたけど・・・」

「いや、ちょっとね」

そう言って華音はタケルとヒカリの方に向き直る

するとヒカリは顔を背けぷるぷると震え出す

何やら笑いを堪えているらしい

 

「・・・ヒカリちゃん、大丈夫かな?」

そんな私の言葉にタケル君は苦笑いをして目をそらす

 

「最近、太一さんは元気?」

「うん、毎日部活で忙しいみたいだけど元気すぎてうるさいくらいだよ」

「華音ちゃんは・・・いや、ごめんなさい、なんでもないわ」

ヒカリは華音に何かを言おうとして踏み留まる

言うべきではないと判断したのではなく

『わからない』と判断した結果だった

 

「タケル君、あとで電話番号教えてもらえるかな?

話したいことがあるの」

ヒカリがタケルにそう言うとタケルは首を縦に振りランドセルからメモ用紙を二枚取り出し電話番号を書き出す

 

それと同時にバタバタと騒々しい足音が迫ってくる

 

「よう!ヒカリちゃん、華音ちゃん!」

本宮 大輔、うちのクラスの男子の1人だ。

サッカークラブに入っていて恐らく朝ボールを持ってた方の人だろう

ゴーグルが特徴的な太一さんに近いものを感じる少年だった

 

「転校生!お前、ヒカリちゃんのなんなんだよ!」

 

「え?何が?」

大輔の言葉にタケルはそれだけ返して書き終えた電話番号を華音とヒカリに手渡す

その光景を見て大輔は地団駄を踏み始める

 

「あはは、大輔くん、君さ、面白いね」

そう言ってタケルは再び火に油を注ぐ

残る2人はそれを無視して話を始める

 

「そういえば華音ちゃん、もう1人の転校生の・・・龍崎くん?

彼はどうだった?」

「んー、単純に頭の良いひねくれ者って感じだったけど」

そう言うとヒカリは苦笑いを浮かべる

それと同時に噂をすればなんとやら

当の本人が昇降口から欠伸をしながら降りてくる

 

「あ、奇遇だね、ちょうど龍崎くんの話をしてたところなんだ」

そう言って彼女は手をこまねき彼にこっちへ来いとアピールする

 

「あ、すいません。

今日はちょっと急ぎの用があるんで、失礼しますね」

 

そう言ってヒカリの横をするりと抜けとても静かに校舎から立ち去っていく

そんな彼を見て華音達も帰ることを決めたのか四人で固まりになって歩き出す

そして下駄箱のところへ着いたときだった

華音のつま先に何かがぶつかりふと彼女は足元を見た

それはブックカバーの付いた本で何やらメモが大量に書き込まれ挟まれている

 

「なんだろ、これ・・・鉄・・・龍・・・?」

意味は理解が出来ないが何やら人のような形の枠が描いてありそこへ向けて矢印が描かれていた

他のページでは人と人とが入れ替わる絵、人の体内で燃える2つの炎、13個の水晶玉などがあった

最後のページのメモにはよほど慌てていたのか殴り書きの字で『ごめんな』と記されていた

誰かが水でも零したのか最後のページだけにシミが付いており紙もぐしゃぐしゃだった

 

名前でもないかとブックカバーを外すとその中からまた新しくメモが落ちる

 

その紙には割れた仮面、折れた刀、炎の中にマルの入った模様が描かれていた

 

その絵にヒカリが即座に顔を青くする

ヒカリの異常に気付いたのか、タケルと大輔がそれを介抱する

「どうしたの?ヒカリちゃん、この絵が・・・」

すると彼女の本を持つ手を何者かが背後から掴む

 

「その本、返してもらえますかね。」

 

先程足早に立ち去った龍崎だった。

恐らく本を落としたことに気付いて戻ってきたのだろう

中身を見られていないか気にしているといった様子で、額に汗を浮かべ華音の手を握る手に心無しか力が籠っていた

 

「うん、いいよ。

それにしても随分と慌ててたみたいだね。」

「それはあなたには関係ない事ですね。」

そう言って彼は本を無理やり奪い取るとそれを片手に立ち去ろうとする

その時に華音が挑発を掛ける

 

「本の中身は何だったんだろうな〜。

奇妙な絵やら言葉やら不気味な程に書き込まれてたんだよなー。」

完全に棒読みだがその一言で彼は再びあの気配を放つ

 

「中身を見た・・・と、言いたいのですかね?」

彼はそう言って前を向いたままこめかみの辺りを爪で軽くかく

華音はそれに対して何も言わずただその背中を睨み続ける

 

「見たのか、見てないのか。

それを僕は聞いてるんですが・・・答える気はないのか?」

彼はそう言うと右回りに身を半分翻すといつの間にやら紅く染まった右目で華音を睨み据える

左側も同じ様になっているのかは知らないが威圧感は授業の時の比では無かった

 

「答 え ろ 。」

 

彼の言葉が途端に超スロー再生の様に遅くなり声が異常なほど低く聞こえる

それと同時に彼の腕が目や口、首に拘束具を掛けられたような悍ましい龍に変貌し物凄いスピードで飛び掛ってくる

 

華音はそれに驚き後ろへと尻餅をつく

しかし次に目の前を見た時龍どころか当の本人の龍崎すら姿を消しており狐につままれたようだった

 

「鉄さん?聞いてる?」

気付けば真横からタケルが顔を覗き込んでおり先程のショックで呆然としていたため少し驚く

そんな華音にタケルはやっぱり聞いてなかったのかという表情でこう言った

 

「何もいないのになんで下駄箱なんか見てるのさ。

とりあえずヒカリちゃんを保健室まで運ぼう。」

 

ヒカリは完全に意識を失っており大輔が肩を貸して担いでいると言った形だった

 

「ああ、うん、そうだね。」

 

華音はそう言ってヒカリを運ぼうとする大輔とタケルに手を貸す

しかしその間中ずっと先程までいた「ハズ」の彼の存在が頭の中から消えることは無かった

寧ろ、今まで忘れていた何かを思い出したような感じがした。

 

そしてヒカリを保健室へと運び込むと保険医の先生は恐らくはヒカリの家へと電話を掛けたのだろう

すぐに話は済んだようでもう帰っていいとのことで保健室から追い出されてしまう

 

「まあ、帰ろうか。

ヒカリちゃんの異常については明日以降にでも聞いてみよう」

それだけ言うとタケルは何やら用があるのか駆け足で走り去っていく

 

しかし大輔と2人だけで取り残された華音にとってはたまったものではない

華音が明日あの金髪を毟ってやるなどと物騒なことを考えていると突然隣を歩いている大輔が質問を掛けてくる

 

「なあ、あいつ・・・一体なんなんだ?」

華音はその言葉に一瞬反応を遅らせる

しかしすぐに取り繕う言葉を発する

「あいつ・・・?」

すると大輔はバカでも見るような呆れた目で華音を見る

 

「龍崎だよ、さっきいただろ?

なんかめちゃくちゃ嫌な気配出してたじゃねーかよ。

特に右腕の辺りなんか吐き気がするほど特に気持ち悪かったんだよな〜。」

 

その言葉に華音は少し驚きを見せる

タケルは恐らく

彼の存在に気付いていないもしくは彼の気配を感じ取れていなかった

恐らくは華音に向けられたモノだから華音に感じ取れた

それだけなのだろうがまさか右腕のことまで感じ取れていたとは思わなかった

 

「ふーん、大輔くん、面白いね?」

そう言って華音が笑うと階段を滑るように降りてきた光の玉が大輔の眉間に鮮やかな弧を描いて命中する

その様子に華音は何やってんだと言った表情で苦笑いを浮かべる

しかしその苦笑いもすぐに姿を消す

 

彼のそばに落ちていたのは明らかに空なんて飛ぶわけも無さそうな「トランシーバー」のような形をした何かだった

 

「これは・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第2話『闇と呪い』

うん、なんか、すいませんでした。
すごい遅れてしまいました。
駄文なのでそこだけご注意させていただきます
それではどうz...

バキッ


大輔の元へと飛んできたのは間違いなくデジヴァイスだった

しかし華音のものとはなにやら形が違っていた

華音のものはポケベルのような形なのに対してこちらはトランシーバーのような形で青いラバーグリップがつけられている

 

「デジタルワールドが選ばれし子供を呼んでるの・・・?」

華音はそれだけ呟くと目を回している大輔の首根っこを引っ掴む

そしてそのまま引き摺る形で階段を駆け上がる

 

向かった先は『コンピューター室』

つまりはパソコンの置いてある部屋だ。

 

この学校では唯一機械だけが置いてある無人の部屋になることがある部屋

今も無人だとすれば騒ぎになってないことから恐らく『これ』はそこから飛び出してきたのだ。

 

そんなことを考えながら階段を駆け上がり廊下を走り抜ける

そしてコンピューター室へと辿り着きドアを思いっきり引いて開ける

 

瞬間、目の前は銀色の羽で覆い尽くされる

あの時、あの敵と戦った時にいた鳥がいた

外の夕陽によってその羽は提灯の灯火のような色を放っていた

 

しかし、瞬きをするとそれは羽と共に消え去る

幻覚かと薄らと笑みを浮かべると不自然なことに気付いた。

何故だかあるのだ。

彼女の家に置いてある筈のあの鳥の置いていった『折れた刀』が。

 

「なんでこれがこんなところに・・・」

そう呟くと階段側からドタドタと騒ぎが聞こえてくる

 

「鉄!?」

現れたのは龍崎だった

しかしかなりの疲弊感を醸し出しておりいかにも急いで来たという様子だった

そう思ったのも束の間彼はすぐさま息を整え華音の目の前にある刀の前で屈み刀を持ち上げる

 

「これは・・・鉄のか・・・?」

「ん・・・家に置いてある刀だけどね」

龍崎はそれを聞いてなるほどと言って刀を鞘に収める

 

そしてそのまま刀を華音に手渡すと

「さっきは悪かったな」

そう言い残してさっさと立ち去っていく

 

それに対して華音は何も言わずにすぐに大輔のデジヴァイスをパソコンと繋ぎ合わせる

すると特殊なプログラムでも入っているのか自動的に初めて見るウィンドウが開かれる

 

そこにはアルファベットで「GATE」と記されていた

 

「これは・・・ゲート?

なんでここに・・・」

 

画面を睨みながら思案していると不意に頭の中に不安が過る

それと同時に空耳か、彼らの声が聞こえた気がした

 

「これがゲートなら・・・」

華音はパソコンのディスプレイへと手を伸ばす

手がぐにゃりと歪みパソコンの画面へと飲み込まれる

 

行ける。

 

両手をディスプレイに突っ込みさらに頭からゆっくりと入っていく

華音の作れたゲートとは似て非なる物なのか中は暗闇のトンネルではなくまるで一点集中の絵の様に光が1点を目掛けて駆け巡り常に視界が明るかった

 

目が乾いてきたのをきっかけに一度瞬きをする

再び目を開けると華音は先程とは全く違う異質な土地に立っていた

背後を振り返れば今までに一度も見たことのない黒い塔が建っており彼女はデジタルワールドの変化をその身に感じ取った

 

「華音・・・なの・・・か?」

塔を眺めていると後ろから聞き覚えのある声がした

かつて共に戦った唯一無二の彼女のパートナーの声だった

しかし、その声はかなり弱々しいものだった

 

「リュウダモン・・・?」

 

その声に不安を感じ急いで振り返るととても痛々しい彼の傷が目に映る

彼の装備している鎧の様な甲殻は一部は砕かれ腹部には袈裟掛けに切り傷が入っていた

そして閉じられた右目には上から3本の太い爪痕が残っており彼の右目が既に光を失っていることを容易に伝えていた

 

「なんでそんな酷い傷を・・・」

「デジモンカイザー・・・奴が現れてから・・・原種(アルカイオス)狩りと・・・紋章と繋がる者の、排除が・・・行われ始めたんだ」

そこまで言ってリュウダモンは地面にべたりと倒れ込む

 

リュウダモンを胸の前に抱え辺りを見回すと確かに森は荒れていた

ぱっと見ではわからないのだろうが枝葉が折れたり完全に枯れた木などが多く塔の真下などには闇の瘴気でも放たれているのか草一本生えていない

 

「ふざ・・・けるな・・・」

怒りがふつふつと燃え上り始める

 

「ふざけるな?

何を言っているんだい?異物の存在で・・・」

 

その声に振り返ると紺色の燕尾服のような服を着て黄縁のサングラスを掛けた少年がいた

 

「その塔は傷が付いたら困るんでね

今すぐ離れてもらおうか。

次いでだし、拘束しておくかな。」

そう言って彼は指をパチンと鳴らす

 

すると地面や森の中からデジモン達が現れる

その目は妖しく紅く光りいかにも操られているといった様子だった

 

「ふーん・・・」

その瞬間華音は背後の塔に向け勢いよく裏拳を叩き込む

その一撃で塔にヒビが入り轟音と共に崩れ落ちる

 

「これは宣戦布告・・・

次から、少しでもこの世界を荒らしてみなよ。

私はあなたを殺してそれを止めるから。」

 

そう言い放つ華音の両目は彼の様に紅く輝いていた

華音が苦しむリュウダモンの腹部の傷に手を当てる

しかしそれを見逃すことなく少年の指示が出され周りにいたティラノモン、デルタモン、モノクロモンなどの成熟期が襲い掛かってくる

 

しかし彼らの爪や牙は届くことなく彼女によって頭や腕諸とも粉微塵に消し飛ばされる

 

「・・・なんだ・・・?

その・・・姿は・・・?」

少年は後退りながらうわ言の様に呟く

その時の華音の姿が明らかに異形と言える姿だったからだ

 

彼女の尾骶骨辺りから金属質で白銀色のうねる鋭い刃の付いた尾が生え、左側のこめかみ付近からは稲妻のような形の角が生え、左目の周りには隈取りのように紫色の紋様が浮かび上がっていた

 

その姿に他のデジモン達は既に逃げ出していた

少年も不利と見たのかすぐにワープシステムでどこかへと転送される

 

華音のその状態は何事もなかったかのように華音の体内へと戻り華音自身もその変化には気づいていなかった

 

華音は「相手が逃げた」とだけ感じそのままリュウダモン抱え・・・・

 

帰れないことに気付いた・・・

 

「ちょっと待って、帰る道無いじゃん・・・」

そこで彼女は過去の冒険を思い返す

ここの中からなら出来るかもしれない

 

まず現在地の座標と現実世界の座標同士を結びつける。

次にリアライズ機構をゲートに張り巡らせ・・・

最後に入り口を開ける・・・

 

この時、華音は目を閉じてこれを行った

失敗するような嫌な予感がしたのだ

目をゆっくりと開けると目の前には渦巻く闇の道が出来上がっていた

 

「・・・成功・・・した・・のかな?」

ゆっくりと久しく見ていなかった渦へと手を伸ばす

その時ゲートから人の切断された腕が転がり出てくる

 

「えっ・・・」

華音はそれを見た途端に口を抑えて一、二歩後ずさる

 

「なに・・・これ・・・?」

その表面も切断面も血に汚れてはおらずまるで生きているかのような生々しさだった

 

すると突如、彼女を異常なまでの頭痛が襲った

 

 

-----------------華音-------------------

頭がぐちゃぐちゃに掻き回される

頭が割れる。

痛い、痛い、イタい、いタい、いたイ、イタイ・・・

「華音」

「さよなら」

「また会える」

誰、誰、誰?

私はあなたを知らない

知らないのになんでこんなに・・・

 

右腕が・・・切断・・・?

魂?

なにそれ・・・・・・

 

 

 

ハッとして顔をあげるとそこには彼女の顔を心配そう覗き込むタケルと大輔の顔があった

どうやらデジタルワールドから戻ってこれたらしい

 

「大丈夫?鉄さん。」

タケル君の言葉に呆然としながら頷くと大輔君が首根っこを持ちながら治療の施されたリュウダモンを見せてくる

 

「こいつから話は聞いたよ」

ちなみにこの後大輔君には手を軸にした強烈な回転蹴りを食らった

 

 

「さっき、デジタルワールドに行ったの。

何だかは分からないけど、紺色の服を着た不審者が荒らし回ってるみたい。」

リュウダモンを小脇に抱えた私はタケルにそう言う

しかしタケルもいまいち理解が出来ていない様子で頭に?を浮かべていた

 

「明日、また行ってみよう。

きっと行けると思うんだ。」

そう言って私はそそくさとその場を立ち去る

 

至極個人的な理由だった

 

何故だか今日は変な日だ。

鳥肌が収まらない

恐怖を感じているのか自ずと足も速くなっていく

 

家に着いた時にはすっかり息も上がってしまっていた

しかし家に辿り着いた安心感からか疲労はあまり感じてはいなかった

 

ドアを開ければきっといつも通りの我が家なのだと思っていた

しかし今日だけは違った

 

「どうも、お邪魔してます」

何故か入ってすぐ左のキッチンで中華鍋を振るう龍崎がいた

「・・・なんでいるの。」

「あなたのお母様に頼まれたので。」

そう言って彼は一心不乱に中華鍋を振るい米を炒めていた

 

「・・・炒飯」

「材料の問題でこれしか作れませんでした。」

 

妙に手際がいいのが地味に腹が立つ

次第に鼻に食欲を刺激する良い香りが漂ってくる

数分後には皿の上に黄金色の炒飯が盛られていた

また彼の炒飯に関しては何故か花びらのような謎の造形が施されていた

 

「なにこの無駄なテクニック・・・」

「パフォーマンスは義務です」

 

よく分からないことを言うと彼はいきなりその手に持ったスプーンで炒飯を再造形し始める

 

「義務だのなんだの言っておいて食べないんだね?」

「パフォーマンスは、義務です」

「それ以前に食べ物を粗末にしないのも義務でしょ」

 

私が眉間に皺を寄せながら突っ込みを入れると彼は一気に造形の速度を速める

数秒後私の眼の前には鍋を振るった時のような姿で固定された炒飯があった

 

「どうしてこうなった!!?」

「パフォーマンスです。」

そう言って彼は真顔で炒飯を掬い食べ始める

 

「こ、これは・・・パフォーマンス超えてるよ・・・」

私は苦笑いを浮かべながら呟いた

 

 

 

------------デジタルワールド------------

 

「総員、衝撃に備えろ!」

燕尾服の少年、デジモンカイザーが全員に指示を出した瞬間極太のレーザーが彼らの潜む要塞の横を過ぎ去る

 

「現在距離2,000!

再び奴が形態を変えます!」

「何に特化した!?」

その言葉を聞き届けたかのように彼らの敵の後背部にブースターが展開される

 

「ここまで一気に突撃してきます!」

「カウンターを狙え!

進行路上をバリスタで潰せ!」

彼らの要塞の前面にバリスタが設置され一気に矢を放ち出す

 

「竜剣【剛尾】」

背中のブースターが悲鳴のような甲高い音とともにしなるとても太い尾へと形を変える

そしてそれは俊敏に動き、突撃時のスピードをほとんど緩めることなくバリスタを弾き飛ばす

 

「竜鱗【切雨】」

そう言うと彼は要塞の手前で尾を使い自身の体を上空へと跳ね上げる

そして再び尾が変形を起こし鱗に包まれた巨大な翼と化す

 

羽ばたくごとに自身の翼に生えた鱗を撒き散らし

巻き起こした風でそれを弾丸のように撃ち込んでいく

 

まさに弾の雨だった

 

要塞はみるみるうちに穴を開けられ縁を削り取られ見るも無残な残骸へと姿を変える

 

「竜轟【吼】」

 

彼はそう呟き背中の翼をたたみ地面に降り立つ

その瞬間に翼を一気に変形させ巨大な砲台を作り出す

 

「塵芥と化すがいい。

傲慢なる穢れた帝王よ。」

その一言と共にデジモンカイザーの基地目掛けて極太のレーザーが再び放たれる

 

じゅわじゅわと肉が焼けるような音を立て

要塞どころか地面すらも溶かし消し去っていく

 

後にはレーザーが削り取った大地が残り要塞は跡形もなく消え去っていた

 

「・・・逃したか。」

 

そう呟くと彼は砲台を液状化させ体内に取り込む

それを終わらせるとふらふらとどこかへと向かう

 

恐らくはデジモンカイザーの向かった先へと。

 

 

 

 

 



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第3話『破壊の八頭龍』

再び時間が掛かってしまいました・・・
本当に申し訳ありません・・・m(_ _)m


「やっぱりデジタルワールドは変わらないね。」

タケルは自身の帽子を取って青く晴れ渡った空を眺める

時刻はおよそ15時過ぎ学校は既に放課となり華音、タケル、ヒカリの3人はデジタルワールドを訪れていた

そんな彼らの元に慌しく羽を動かしテントウムシのやうなデジモン、テントモンが飛んでくる

 

「タケルはんもデジタルワールドに来なさったんやな!

いや、今はそれどころじゃあらへんな。

華音はん、あんさん昨日は夕方頃、どこにいはった?」

 

ものすごい剣幕でテントモンが尋ねてくる

その様子に華音は一歩退いてからその時自身が人間界にいたことを答える

するとテントモンは1つの画像ファイルを取り出し中に保存されている画像を広げる

 

「これは・・・!?」

 

痛々しく地面が抉られた映像と先端部分を除いてドロドロに溶け固まったダークタワーの映像だった

 

「昨日、デジモンカイザーの拠点を誰かが単身突撃したんや。

みんなはレジスタンス軍の有力な究極体や言うてたんやけど・・・」

 

「破壊力の関係で私を疑ったわけね。」

華音が苦笑い気味に呟く

しかし、いくら華音が本気で攻撃をしたとしても地面ならまだしもダークタワーを『溶かす』というのは不可能に近かった

 

「ねえ、みんな、この画像の端見てみて?」

そういってタケルは地面の抉られた画像を指差す

示された場所を見てみるとなにやら抉った傷痕の根元に楕円形のような跡が2つ、そしてその後ろに杭を突き刺したような穴が付いていた

 

「これは、足跡じゃないかな?

だとすればこの後ろのは自身を固定するためのストッパーを立てた跡なんじゃない?」

 

確かに一理ある

レーザーか、砲撃かは分からないが使ったのは相当な威力の、それも巨大な兵器であることが見て取れた。

ならばそれ相応の反動も付くはずである

 

体を固定しなければ後ろに移動してしまうほどの反作用の力が。

 

「テントモン、この時、近くに衝撃波の報告はあった?」

華音が尋ねるとテントモンは少し思案する

その数秒後に彼は首を縦に振った

 

「・・・これをやったのは多分人間だよ。

しかも私と同じ、デジモンと融合するタイプだと思う。」

「華音ちゃん、どうしてそう思うの?」

 

ヒカリが尋ねると華音は1つ1つ、疑問点をあげていく

 

「まず1つに体を固定する必要があるほどの兵器。

それを移動させるには何が必要だと思う?」

その言葉にテントモンは大声を出して答える

 

「そうや!そんなトンデモ兵器なら移動した跡すら無いんはおかしいで!」

華音はその言葉に頷く

そして再び続ける

「ヘリコプターみたいな空中を移動できる兵器も考えたけど杭の跡、足跡が風にかき消されていない事から少なくとも砲撃が終わるその瞬間まではここに何かがいたと言う事になる」

 

するとタケルが後の言葉を代弁していく

「だけどこんな威力の兵器は普通の人間では跡を残さず運ぶこともほぼゼロ距離の位置での反動にはどうやっても耐えられない

つまり、これを撃った何かは人間サイズの言うなれば化け物

だけど、この辺りにこんな威力の攻撃を行える強力な究極体はいない」

 

それに繋げて華音は補足を加える

「そう、だからこれを起こしたのは

間違いなく人でない人間、要するに私みたいなデジモンと融合するタイプ

もしかしたら常に融合してるのかもね。」

 

そう言った直後に華音の頬を黒いリングが掠めていく

そのままリングは近くを歩いていたモノクロモンの脚にガチャリと音を立ててはまる

 

その次にはモノクロモンが狂い暴れ出す

 

「まずい、逃げよう!」

タケルはそう言ってヒカリと華音の手首を掴み自身が通ってきたテレビ型のゲートの中へ投げ込む

そしてそのすぐ後に自分も連なって飛び込んでいく

小脇にリュウダモンを抱えながらだが。

 

すると飛び込んだテレビの画面が人間界行きのゲートを残し砂嵐模様を出して消失してしまう

恐らくモノクロモンに破壊されてしまったのだろう

 

「あらら、このエリアには行けなくなっちゃったね〜・・・」

華音は呑気にそう呟く

そして現実世界側のゲートを潜りパソコンの画面から元の世界へと飛び出す

偶然目の前にいた大輔が華音によって顔を蹴られてしまったのだがその話はとりあえず無視しておく

 

 

「さて、それじゃあそろそろデジタルワールドに戻ろうか。」

タケルはそう言うとゲートの開門準備を始める

そこに目の色を変えた大輔が割り込むと一言

 

「俺も行けるんだろ?」

 

確かにデジヴァイスさえあればこの世界に行くことは可能だ。

大輔の物に関しては形が違うが間違いは無いだろう。

 

「多分いけるよ。

君が来たいなら来ればいい。」

華音はそう言って少し目を細めて笑う

 

するとタケルがゲートを開けたらしく彼の体が画面の中に飲み込まれていく

それに続いて華音、ヒカリと飛び込んでいく

 

 

目を開ければ既にデジタルワールドへと到着し、辺りには先程と似た光景が広がっていた

 

直後、近くで何が起こったのかは分からないが強烈な地鳴りと強風が吹き荒れる

 

「まさか・・・あれがいるの?」

風が弱まると華音がぼそりと呟く

 

「かもしれない。

その時は俺が出る。」

そう言ってリュウダモンは風の元を睨みつける

 

「それにしても驚いたな。

こんな威力だとは思いもしていなかった・・・」

タケルは自身の帽子を右手で押さえながら傍観を始める

ここまでの威力なら仕方ないのだが・・・

 

「お、おい?

あれってなんだよ・・・?」

大輔が消え入りそうなか細い声で呟く

しかし3人はそれを無視する

 

「とりあえず行くよ、リュウダモン!」

「応!」

 

デジヴァイスを使いリュウダモンを進化させようとする

 

リュウダモンが一時的にデータの塊となりその形を変えようとする

しかしそれは叶わず何故か元の姿に戻ってしまう

 

「あ、あれ・・・?」

華音は少し困ったような表情を浮かべる

リュウダモンは珍しく額に汗を浮かべ

若干苦笑い気味に華音を見つめ出す

 

その直後に森を薙ぎながら何かが近くの岸壁に吹っ飛んでくる

轟音が響き土埃が巻き上がる

刹那、機械音と気持ちの悪くなる不快音が響き岸壁に砲台が現れる

 

「みんな!伏せて!」

華音はそれを見た瞬間にはそう叫んでタケル、ヒカリ、大輔の3人にラリアットを掛けたような形で無理やり地面に押し倒す

 

その直後にジュっと鉄板に肉でも押し付けたような音を立て砲台の前方にあった森が撃ち出されたレーザーの形に消滅する

 

「竜剣【八岐】」

先程の砲台が形を変え8つの龍の頭へと形を変えレーザーを撃った方向へとものすごい速度で伸びていく

地面が揺れ、岸壁が崩れ始める

 

「一旦ここから離れよう!」

タケルはそう言って全員に声を掛ける

しかし華音は退かずに寧ろ突撃していく

 

「リュウダモン‼︎」

彼女がパートナーの名を叫ぶと彼もそれに応え先程とは違い、今度は銀色の塊に変化する

 

『リュウダモン!ワープ進化ッ‼︎

 

オウリュウモン‼︎』

今度は進化に成功する

理由は分からないがともかくこの戦いを止めるべき

華音はそう考えるとすぐさまオウリュウモンの背中に飛び乗る

 

 

オウリュウモンは先程の八岐の龍が突撃を行った方向へと移動を開始する

移動を始めて数秒でその惨状は目に入ってきた

 

これはデジモンカイザーとの戦争だ。

彼女はそう思った

 

辺りの木々は根こそぎ薙ぎ倒され

所々で火の手が上がっている

 

戦場の中央では先程の龍がとぐろを巻いており周囲の砲台やらの兵器から大量の弾をその身に受けていた

 

「オウリュウモン、武装進化!」

彼女はそう叫びその身に龍の鎧を纏っていく

しかし今回は普段の1本の巨大な斧ではない

それなりに重量のある2本の青龍刀のような刀だった

 

「永世竜王刃」

華音は近くにあった兵器の真後ろに降り立つと右手の刀でその砲台を地面ごと粉砕する

その直後に両手の刀をブーメランのように斜め前方それぞれ二方向に向けカーブさせつつ投げつける

 

その軌道上にはカイザーの用意したであろう兵器。

 

青龍刀は鉄製の砲台だろうとバリスタだろうと関係なく粉砕し最後にはデジモンカイザーにまで迫る

しかしそれよりも先にデジモンカイザーの姿が消えてしまう

龍の咆哮がデジモンカイザーのいた場所諸共抉り消し去ったのである

 

・・ーヴォォォォォォォ‼︎

龍が天に吼えその直後にとぐろの痕を残し何処かへと森を爆進していく

そのとぐろの痕の中心には幼年期、成長期のデジモン達が身を寄せ合い震えていた

 

「なるほど、護ってた・・・のかな?」

華音はそんな様子を考えくすりと笑う

よくよく見てみれば近くにダークタワーらしき黒い破片が散乱していた

恐らくは先程華音が来る前にあれが破壊したのだろう

 

「お疲れ様、オウリュウモン」

華音はそう言うとオウリュウモンと分離する

 

「この塔、我々の進化を邪魔する力があるとみても?」

そう言ってオウリュウモンはリュウダモンへと退化する

「だと思うよ・・・」

その時リュウダモンは彼女の返答に違和感を覚える

元気というか、核エネルギーの塊のような華音にしてはやけにおとなしい返事だった

 

不思議に思って華音の顔を見上げてみれば全体的に顔を赤く染め息が荒くなった彼女が目に入る

 

「か、華音?」

「え?どうしたの・・・?」

彼女は何事もないかのようにふらふらと歩き始める

 

「おいおいおい!!華音、大丈夫か!?」

今にも倒れそうな彼女に彼はそうたずねる

しかしとうとう返事すら返ってこなくなり何処かへと歩こうとするだけだった

 

「ちょっ!!だ、誰か来てくれ!!」

リュウダモンはそう叫び進もうとする彼女の足をつかみ無理やり引き止めていた

 

 

彼がこの苦行から解放されたのは

およそ5分後のことだった

 

 

 

「なんで・・・急に熱なんか・・・」

「デジモンと融合なんかするからじゃないの?」

タケルはぐったりと項垂れる華音を背負いながらゲートのテレビへと大輔、ヒカリとともに歩いていく

 

「でも、結局あの龍って・・・?」

「そうだぞ、アレのこと、ずっと気になってたんだよ」

ヒカリの言葉に大輔が後押しをしつつ賛同する

 

「ああ・・・あれなら、害はないと思うよ。

ところでタケル君・・・そろそろ降ろして。」

華音はそう言いつつタケルの頭を鷲掴みにして後半の言葉を囁く

タケルは背負っている生物の危険性を理解したのか昔のように逆らわずにすぐに彼女を地面に降ろす

 

降りるなり彼女はすぐさま両耳を隠している髪を上げゴムで留める

恐らくは熱がこもる要因となる髪が鬱陶しかったのだろう

 

しかしその時、彼女の左耳付近に浮き出たアザが露わになる

まるで炎のような形の紅い、正体不明のアザ

おまけにそのアザは爛々と鈍く紅に光っていた

 

「か、華音ちゃん?なにそれ?」

ヒカリが口元を押さえながらアザを凝視する

 

「そんなの知るわけないでしょ。」

そう言いながら華音はぷにぷにとそれをつつき始める

特に顔色を変えることもなくつついていることから痛みは無いのだろう

 

「にしてもそのアザ気持ち悪いなぁ。

なんつーかさぁ、さっきの蛇みたいでさ」

よくよく見てみれば確かに大輔のその言葉には一理あった

見方を変えてみればアザは一箇所から8つに分かれ先程の竜に見えなくもなかった

 

そんなことを言っているうちにアザが溶けるように薄くなり消えていく

「・・・もう大丈夫みたいだね。

帰ろっか」

顔からは火照りが消えていた

熱も下がったらしい

 

「うん、そうだね」

ヒカリはそう呟いて微笑む

 

それから帰る間はずっと大輔からの質問攻めだった

デジモンとは、デジタルワールドとは、進化とは

 

華音の、武装進化とは

 

分かるとは思うが、華音は彼女自身のことに関しては全て流した。

 

 

 

------------カイザー------------

「あ゛ぁぁあ゛あ゛あぁぁ!!」

怒りに身を任せ思いっきり壁を叩き耳障りな声を出す

「ふざけるな・・・あのトカゲに女・・・

何度僕の邪魔をするつもりだ!!!」

 

頭を掻き毟りメガネを鷲掴みにし握りつぶす

 

「トカゲに関してはこれで何度目だと思ってる!

今月だけでも23回!

あんな規模でこれ以上邪魔されたらどうしようも無いだろうが!!」

 

「け、賢ちゃん・・・落ち着いて・・・」

ワームモンが僕を宥めてくる

正直賢ちゃん呼ばわりはいらつく。

ぶん殴りたい

「これが落ち着いて・・・待てよ」

 

恐らくトカゲの方は僕の居場所を常に察知しているのだろう・・・

ならばあの女をトカゲにぶつけてやればいい

人質を取ればそれも簡単だろう。

 

「あいつらがどこに現れるか、それまでどれだけ襲撃されるか・・・だな。」

笑いが込み上げてくる

これで邪魔な物は掃除できる

 

「賢ちゃん・・・それは無理だよ。」

「うるさい!口答えをするな!」

鞭を叩きつけ大声で怒鳴りつける

しかしワームモンは反抗的な目でこちらを睨んでくる

 

「あいつは理性があるはずだ。

今日のあいつを見たの!?

成長期のデジモン達を守りながら平然と兵器の攻撃を受け続けていたんだよ!?」

 

「あの女から攻撃したなら関係無い。

あのトカゲは目的を邪魔する物なら全て等しく無に帰す」

僕はそう言ってワームモンの頭の悪さに右側の額を抑える

そしてワームモンを睨む

 

しかし、ワームモンがこちらに向けていたのは畏怖や尊敬、反抗といった期待していた眼ではない。

むしろ、哀れむとか、蔑むとか、そんな嫌な眼だった

 

「・・・・・・ッチ!」

小さく舌打ちをして移動の準備を始める

餌は己、武器は敵

なかなか起こることのない組み合わせだ。

だがあの女は味方のためなら何でもする

そう確信できた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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