暗殺教室~アサシン・ドライブ~ (ほにゃー)
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何故彼は教室に戻らないのか

世界の破滅ってのは、思いもしない時にやってくる。

 

例えば、下校してる時とか………………

 

あの日、世界の時間が止まる現象、いわゆる''グローバルフリーズ''が勃発した。

 

そして、俺の時間もあの日、止まった。

 

 

 

 

 

『危ない!』

 

『先輩!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お前は自分が何をしたのか分かっているのか!』

 

『お前の所為で未来あるA組の彼は大怪我を負ったんだぞ!』

 

『もう彼は杖なしでは歩けないそうだ』

 

『貴様は成績だけは良かったから、今まで庇ってやったが、俺の評価に傷をつけるなら話は別だ』

 

『半年後、貴様はE組行きだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁ~……………やる気が起きねぇ…………」

 

中学三年になった四月。

 

俺、泊佑一は校舎近くの木の下で上着を枕代わりに、横になっていた。

 

「ま、E組だし、やる気なんか出した所で何にも変わらないか」

 

俺が通う椚ヶ丘学園は中高一貫の進学校で、偏差値は66。

 

理事長の浅野學峯は、創立10年で椚ヶ丘学園を、全国指折りの優秀校にした敏腕経営者だ。

 

更に、理事長は海外の一流大学を出て、様々な資格を取得している。

 

そんな彼が経営する学園の教育方針は徹底したもので、今までにも優秀な生徒達を輩出してきた。

 

ここE組を除いて。

 

三年E組、通称エンドのE組。

 

ここには成績不振や素行不良などとの生徒が送られる特別強化クラスだ。

 

だが、実際は特別強化なんかではない。

 

この学園ではE組は勉強の出来ないクズと言う扱いで、E組以外の生徒はそれを笑いものにし、優越感と緊張感を得ている。

 

そして、これは生徒だけに限ったことじゃない。

 

教師までもE組をクズ扱いする。

 

僅かな生徒を激しく差別することで大半の生徒に緊張感と優越感を与える。

 

教育機関としてどうかと思うが、合理的な仕組みではある。

 

ここを抜け出す方法は一つ。

 

テストで学年50位以内に入り、元担任からのクラス復帰の許可を貰えれば抜け出せる。

 

だが、ここE組の環境は酷い。

 

E組の校舎は椚ヶ丘中学校の古びた旧校舎で、本校舎から1㎞離れた山の上にある。

 

学食もなく、トイレも汚く、劣悪な環境で勉強させられる上に部活動への参加も禁止され、学校行事も低待遇での参加。

 

こんな環境では、それが条件達成の阻害要因となっているため実現は非常に困難。

 

だから、誰もが諦めていて後ろ向きだ。

 

しかし、俺にはどうでもいいことだ。

 

あの日から俺は前に進めなくなった。

 

そんな俺には、ここが十分にお似合いだ。

 

「泊君」

 

「ん?」

 

急に俺の頭上に影が現れ、聞き覚えのある声が耳に入る。

 

「またサボリ?」

 

「神崎か」

 

神崎有希子。

 

俺の隣の席の奴で、清楚な雰囲気をした黒髪のロングヘアーの女子生徒だ。

 

「先生が早く戻ってきなさいって」

 

「で、俺を連れ戻すように言われて来たと」

 

「ううん。私が連れて来るって言ったの」

 

俺は溜息を吐き、体を起こす。

 

教室に戻らないと一部の男子たち、特に杉野がうるさいぐらいに騒ぐため大人しく戻りたくもない教室へと戻った。

 

教室に戻りたくない理由は二つある。

 

一つは授業を受ける気が無い。

 

そして、もう一つは

 

「泊君、戻ってきましたね。遅刻ですが出席したので、それは大目に見ましょう」

 

このタコだ。

 

「全員出席。素晴らしい、先生とても嬉しいです」

 

タコとはあだ名なんかじゃない。

 

文字通り、E組の担任は黄色いタコの様な生物だ。

 

そして、この教室では授業以外にもう一つあることが行われている。

 

それは

 

「今日も命中弾はゼロ。残念ですねぇ。もっと工夫しましょう。でないと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最高時速マッハ20の先生は殺せませんよ」

 

このタコ教師の暗殺だ。

 



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ロイミュードとは何なのか

放課後

 

授業中ずっと寝ていた俺は起き、欠伸をする。

 

「泊君、また寝てたの?」

 

隣の席の神崎が教科書を片付けながら聞いてくる。

 

「いいんだよ。どうせ、俺達E組なんだから、今更勉強したって、人生終わってるんだし」

 

何も入ってないペラペラの鞄を手に立ち上がる。

 

すると、ちょうど教室の扉が開いた。

 

入ってきたのは烏間さんだった。

 

烏間さんは防衛省の人間で、俺達にあのタコ、通称殺せんせーの暗殺を依頼した人だ。

 

「泊君、丁度良かった。ちょっと付いて来てもらってもいいか?」

 

「……分かりました」

 

行き成り呼ばれて少し驚いたが、烏間さんの後に続いて、山の下に停めてある黒塗りの車に乗る。

 

車に乗ること数十分、俺が連れてこられたのはある施設だった。

 

「ここは?」

 

「防衛省が作ったとある組織だ」

 

「そんな所に俺なんか連れて来ていいんですか?」

 

「構わない。むしろ、君だからこそ連れて来た」

 

施設に入るとそのままエレベーターに乗り、地下へと降りて行く。

 

かなり深くまで降りるんだな。

 

「着いてきたまえ」

 

最下層と思われる場所に着き、通路を歩きながら烏間さんが話す。

 

「君は重加速、どんよりと呼ばれるものを知ってるか?」

 

「…………ええ、知ってます」

 

知らないはずがない。

 

俺がE組に落ちるきっかけとなったもので、俺から大切なものを奪ったものだ。

 

「その重加速を発生させているのが、人工生命体、いや、機械生命体“ロイミュード”だ」

 

「ロイミュード?」

 

「詳しい話は彼からしてもらおう」

 

そう言って、ある部屋に着き、烏間さんは電気を付ける。

 

そこには一台の赤いスポーツカーが止まっていた。

 

いや、車にしては形が変わってる。

 

なんだこれは?

 

「クリム、例の彼を連れてきたぞ」

 

『ご苦労、カラスマ』

 

急に誰かの声が聞こえ辺りを見渡す。

 

だが、この部屋には俺と烏間さん以外誰もいない。

 

「泊君、紹介しよう」

 

そう言って烏間さんはテーブルに置かれたやたらごっついベルトを指差した

 

「我々の協力者のクリム・スタインベルトだ」

 

『Nice to meet you!ハジメマシテ、泊佑一君。私はクリム・スタインベルト。よろしく』

 

驚くことにそのベルトは喋り、そしてテーブルの上でガタガタと動いた。

 

「べ………ベルトが喋った……………」

 

「泊君、驚くのは無理もないが取り敢えず彼の話を聞いてくれ」

 

「………別に驚いてませんよ。うちの担任と初めて会った時と比べれば」

 

そう言い、俺はベルトの方を見る。

 

『では、最初に私の事を説明しよう。私はこれでも元科学者でね、中々に優秀だったと自負している。だが、十五年前にロイミュードによって死んでしまった。だが、私は事前に記憶と意識のみをこのベルト、ドライブドライバーの内蔵メモリにインストール・保存することで擬似的に命を繋く準備をしていた。だから、今こうしてここにいる』

 

「なぁ、烏間さんがさっき言ってたけどロイミュードってなんだ?」

 

『ロイミュードとは。「機械生命体」とも呼ばれている総数108体におよぶ増殖強化型アンドロイだ。それを作ったのは蛮野天十郎と言う科学者だ。彼は優秀な頭脳の持ち主であり、15年前に自己増殖型アンドロイドとしてロイミュードをほぼ完成させた。だが、エネルギー源の問題を解決することが出来ず、彼の発明は頓挫しかけた。だが、そのエネルギー源を解決できるものがあった。それは超駆動機関『コア・ドライビア』。私が開発したものだ』

 

それを聞き、俺はベルトを両手で掴み揺さぶりながら尋ねる。

 

「それどういう意味だ?要するに、お前もそのロイミュードの開発に関わっていたってことか?」

 

『………蛮野と私は友人だった。私は彼自身の危険性に懸念を抱きながらも、友人としての情からコア・ドライビアを彼に譲った。だがその結果、初期型ロイミュード達の反逆に遭い私も蛮野も死んでしまった。そして、半年前に大規模な重加速現象とロイミュードによる破壊活動、グローバル・フリーズが起きた』

 

「なんだよ、それ…………烏間さんはこのこと知ってたんですか?」

 

尋ねると烏間さんは無言で頷いた。

 

「知ってるならどうしてそれを発表しないんですか!」

 

「こんなこと、発表した所で誰が信じると言う。発表したくとも発表できないんだ」

 

『更に、ロイミュードは強くそして、頑丈だ。人間の持つ兵器では太刀打ち出来ないだろう。さらに重加速の中では人間はまともに動くことが出来ない』

 

「じゃあ、このまま放っておくのかよ?半年前みたいなことがまた起きるかも知れないんだぞ!」

 

俺は怒りに任せてベルトに怒鳴り散らす。

 

『いや、一つだけ方法がある』

 

「………あるのか?」

 

『ああ、私はコア・ドライビア以外にもある物を開発したのだ。それがドライブシステムだ。それを使えば、ロイミュードと互角に渡り合う事も出来るし、システムに内蔵されたコア・ドライビア-Nの力で重加速現象の影響を受けない。ロイミュードに唯一対抗できる手段と言ってもいい』

 

「だが、これを使うのは誰でもいいというわけではない」

 

そう言うと烏間さん俺の前に立ち、俺を真っ直ぐ見つめる。

 

「泊君、君に頼みたい」

 

「え?」

 

『本来なら私がやるはずだったのだが、ある理由でそれができなくなった。私以外にこのシステムを扱えるのは君だけだ。頼む、悠一。ロイミュードの撲滅の為に、力を貸してくれ』

 

「俺からも頼む。本来なら君のような子供に頼むべきではないことなのだが、仕方がないんだ」

 

烏間さんは頭を下げて言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふざけんなよ」

 

俺は唇を震わせながら言った。

 

「要するに、俺にそのベルト野郎が犯した過ちをそいつの代わりに償ってくれってことだろ。…………………ふざけたこと言ってんじゃねぇよ!」

 

拳をテーブルに叩き付け、ベルトが僅かに跳ね上がる。

 

「こっちはあのタコの暗殺まで依頼されてるのに、それに加えてロイミュードの撲滅までやれとか…………正気じゃねぇよ。…………それに、もう何かの為に何かをするってのは嫌なんだ」

 

そう言い残し、俺は部屋を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「泊君!」

 

『待て!カラスマ!』

 

部屋を出て行った彼を追おうとしたら、クリムが俺を止めた。

 

「クリム…………」

 

『少し急ぎ過ぎてしまったみたいだ。もっと慎重に行くべきだった。それに………彼の言ったことは事実だ』

 

そう言う、クリムの声は悲しみを帯びていた。




次回辺りで変身するかな


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彼は何を思って戦うのか

翌日、俺は鞄を乱暴に机に置き教室を出る。

 

いつもの特等席で上着を枕代わりに木の下に寝転がる。

 

「気に食わねぇ………なんで俺が………それもよりによってあの事件の原因を作った奴の頼みなんか聞けるか」

 

そのまま体を横に向かせ、目を閉じる。

 

暫くすると目が覚め、俺は体を起こし、欠伸をする。

 

「何時だ?」

 

『丁度今日の授業が終わった所だ』

 

「そうかい、ありが……………うお!?」

 

なんと俺の隣にいつの間にか昨日のベルトが居た。

 

「なんだよ?頭でも下げに来たか?って、下げる頭も無いか」

 

『確かに、ドライブシステムを使ってもらってロイミュードを君に撲滅して欲しい。だが、今日は違う。ただ君と話したかっただけさ』

 

「俺は話す気はない」

 

上着を手に取り立ち上がる。

 

『何処に行くんだい?授業はもう終わってるぞ?』

 

「鞄取りに行くんだよ」

 

上着を着直し、ポッケに手を突っ込んだまま教室へ戻ろうとすると神崎が丁度やって来た。

 

「神崎か。何用だ?」

 

「うん。これ泊君の鞄。教室に置きっ放しだったから持って行ってあげようかなって」

 

「そうか。一応例は言う。ありがとう」

 

そう言い、鞄を受け取り神崎に背中を見せる。

 

「あ、待って!」

 

神崎が小走りで後を追ってくるので振り返る。

 

「途中まで一緒に帰ろう」

 

神崎のその言葉に俺は答えず、そのまま歩き出す。

 

神崎はそれを肯定と取ったのか。俺の隣に並んで歩く。

 

山を下り暫く歩くといつの間にか公園に来ていた。

 

「なぁ、神崎。どうして俺に構うんだ?」

 

俺は思い切って神崎に俺に構ってくる理由を聞いた。

 

「どうしてって?」

 

「お前も知ってるだろ。俺がE組に来た理由」

 

俺がE組に来た理由。

 

それは学園中で有名な話だ。

 

サッカー部キャプテンにしてエースストライカー、卒業後はサッカーの名門校への推薦入学も決まっており将来有望とされていた早瀬明先輩に怪我を負わせた。

 

しかもその怪我の原因は俺の個人的な喧嘩に巻き込まれたもの。

 

あの時、重加速の影響で俺は相手を蹴り飛ばす方向を誤ってしまい、先輩はそれに巻き込まれ倒れた。

 

そして、立てかけてあった大量の鉄パイプが先輩とそいつ目掛けて倒れ、先輩は足を怪我した。

 

その結果、先輩はもう二度とサッカーが出来なくなった。

 

「俺は自分勝手で、いつも周りに迷惑を掛けてる。お前はどうして俺に構うんだ?」

 

「泊君本当はとても優しいの知ってるから」

 

「俺が優しい?」

 

何を言ってるのか理解できなかった。

 

「馬鹿も休み休み言えよ。俺の何処優しいんだよ?」

 

「だって」

 

神崎がそう言い掛けた瞬間、俺は急に体が重くなるのを感じた。

 

あの時と同じだった。

 

時間の流れがゆっくりになり、まるで止まったかのような感じ。

 

重加速、どんよりだ!

 

神崎も理解したらしく驚いた顔になっていた。

 

空を飛んでいた鳥も動きがスローになり、遠くを走る車の音も聞こえない。

 

そんな中、一人の男がこっちに向かってゆっくりと歩いて来た。

 

だが、どうみても重加速の影響を受けてないのが一目でわかる。

 

まさか………アイツがロイミュード?

 

男はにやりと笑うと、姿を人間から蝙蝠の様な姿に替え俺達に近づく。

 

胸には『029』と数字が刻まれている。

 

そいつはゆっくりと手を、神崎へと伸ばした。

 

コイツ、神崎が目的か!

 

必死に体を動かすが、殆ど止まってるような時間に体はうまく動かせず、少しずつしか動けない。

 

そうしてる間にも、ロイミュードは神崎との距離を縮める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はまた目の前で失うのか?

 

助けれるはずの者を助けれず、失うのか?

 

嫌だ!

 

もう、もうあんな思いは二度としたくない。

 

だから、E組でも常に一人でいようとした。

 

周りに誰もいなければ、あんな思いをせずに済むからだ。

 

それなのに、神崎はしつこいぐらいに俺に関わろうとした。

 

そんな神崎だから、いつの間にか俺の日常の中に居た。

 

失いたくない!

 

俺は心の中で必死にそう叫んだ。

 

その時、何処からかクラクションが鳴り響く。

 

すると、急に目の前に小さなミニチュアの様な道路が現れ、そこをオレンジ、緑、紫のミニカーが走り、緑と紫がロイミュードに攻撃を仕掛けた。

 

ロイミュードはミニカーたちの攻撃に耐え、手を振り回す。

 

そして、オレンジのミニカーは俺の手の中にすっぽりと収まる

 

その瞬間、体の重さが嘘のように消え、体の自由が戻った。

 

俺は咄嗟に、ロイミュードに攻撃を仕掛け、蹴り飛ばす。

 

肩で息をしながら神崎を連れて逃げようとしたら、俺の前に一台の車が止まった。

 

それは、昨日あの施設で見た赤い車だった。

 

『悠一!』

 

「お前は!?」

 

車の中にはあのベルトが乗っており、俺の名前を叫んだ。

 

『説明してる暇はない!今ここで決断をしてくれ!共に戦うか、逃げるかだ!』

 

「どういう意味だ?お前は俺に戦えって言っただろ!」

 

『………私は焦るあまり、君に無理矢理に危険な宿命を背負わせようとした。だが、もう強要はしない。君がどんな選択を選んだとしても、私はそれに賛成しよう』

 

俺は悩んだ。

 

自分の代わりにロイミュードを撲滅しろって言ってくるベルト。

 

それも担任を暗殺しつつやれって来た。

 

本当にふざけるのもいい加減にしてほしい。

 

だからこそ、俺はベルトに尋ねた。

 

「なぁ、ドライブシステムって奴を使えば、あいつを倒せるのか?」

 

『ああ』

 

「俺は………もうあんな思いをしなくて済むのか?」

 

『………それは君次第だ。だが、手に入れた力を正しきことに使えれば、それは自ずと分かるだろう、泊佑一』

 

「……………分かった。アンタの言葉、今だけは信じてやる。教えろ、ドライブシステムの使い方を!」

 

『OK!まず、私を装着しろ!』

 

言われた通りベルトを車の中から取り出し、普通のベルトの様に着けようとする。

 

すると、ベルトは勝手に俺の腰回りを調整し、勝手に装着する。

 

『次に、ベルトのイグニッションキーを回し、シフトカーを捻って、シフトレバーにし、シフトブレスに装着するんだ』

 

「シフトブレス?なんだよそれ?」

 

そう尋ねた瞬間、またさっきの道路が現れ、今度は赤いミニカーが何かを運んできて俺の左手に装着し、赤いミニカーは手の中に納まる。

 

これかシフトブレスとシフトカー……………

 

言われた通り、ベルトのイグニッションキーを回し、シフトカーの後ろ部分を回転させ、シフトレバーにし、俺はそれを左手のシフトブレスに装着する。

 

「……………なぁ、ベルト。本当に俺に出来るのか?」

 

『安心しろ。君一人に闘わせない。私も、出来る限り力を貸す……………しかし、呼び捨ては失礼だな』

 

「………分かったよ、ベルトさん」

 

ベルトもといベルトさんに声を掛けながら、俺はシフトカーに翻弄されるロイミュードを見る。

 

「彼奴が、俺からまた何かを奪うって言うなら…………俺はそれを守る為に戦う!行くぞ、ベルトさん!」

 

『OK!START・YOUR・ENGINE!!!!!』

 

俺はそのまま、シフトレバーになったシフトカーを倒し、戻す。

 

『DRIVE!!!TYPE!!!SPEED!!!』

 

その瞬間、俺の体に赤い装甲が装着され、車から飛んできたタイヤが俺の体にタスキを掛ける様に装着される。

 

「これが…………ドライブシステム」

 

『そうだ………ドライブシステムによって生まれた仮面の戦士。その名も』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『仮面ライダードライブだ!』

 




なんか暗殺教室要素が少ない。

取り敢えず、次回で初戦闘は終わりで、その次辺りで暗殺教室の本筋に入ります。


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彼は何を決意するのか

「仮面ライダー………ドライブ?」

 

『この姿の呼び名だ。……来るぞ!』

 

ベルトさんがそう叫び前を見るとロイミュードは俺に向かって走って来ていた。

 

『キーを回してシフトレバーを三回倒せ!スピードアップだ!』

 

言われた通り、キーを回してレバーを三回倒す。

 

『SP!SP!SPEED!』

 

すると、俺の体は急に早くなり、一瞬でロイミュードの背後を取った。

 

「はっ!」

 

嵐のような拳を連続で叩き込み、吹っ飛ばす。

 

『よし、タイヤ交換だ!』

 

「は?交換?」

 

『シフトブレスからシフトカーを抜き、オレンジ色のシフトカー、マックスフレアと交換するんだ!』

 

「あれか!」

 

見ると、オレンジ色のシフトカー、マックスフレアはベルトさんの横に着いてるケースのようなものに、紫のシフトカー、緑のシフトカーと一緒に収まっていた。。

 

イグニッションキーを回し、赤いシフトカーとマックスフレアを交換し、三回倒す。

 

『タイヤコウカ――ン!MAX!FLARE!』

 

タイヤが外れ、車からオレンジ色のまるで炎のようなデザインのタイヤが出て来る。

 

なるほど、こうやってタイヤ交換するのか。

 

なら、このタイヤは今はいらないってことか。

 

「だったら、ちょっと使わせてもらうぜ!」

 

俺は外れたばっかで空中にあるタイヤ目掛け跳躍する。

 

そして、新しいタイヤが装着した瞬間、俺はタイヤ目掛けで蹴りを放つ。

 

「食らえ!」

 

すると俺の蹴りは炎をまとい、タイヤと一緒にロイミュードに向かって飛ぶ。

 

「ぐおっ!」

 

此処に来て初めてロイミュードが声を上げる。

 

『いいシュートだ。やるな、悠一』

 

「当然。元サッカー部のレギュラーにして次期エースだった俺を舐めるな」

 

『よし!では、さっきと同じようにキーを回して、シフトレバーを三回倒すんだ!』

 

さっきと同様にキーを回し、レバーを三回倒す。

 

『FL!FL!FLARE!』

 

すると、俺の前に炎のタイヤが現れ、俺はロイミュードを見据える。

 

力を籠め、足を上げ、炎のタイヤを蹴り飛ばす。

 

炎のタイヤはそのままロイミュードに向かって飛び、当たると炎は竜巻のようになりロイミュードを空へ舞い上げる。

 

『スピードタイヤに戻してフィニッシュだ!』

 

マックスフレアを取り、赤いシフトカー、シフトスピードを取り出し入れ替える。

 

タイヤ交換が終わるとキーを回し、シフトブレスの赤いボタンを押し、レバーを一回倒す。

 

『ヒッサーツ!FULLTHROTTLE!SPEED!』

 

赤い車が動き出し、俺を中心に高速で回り出す。

 

そして、落ちて来たロイミュード俺は飛び蹴りを放つ。

 

すると、回転している車に当たり方向回転し、またロイミュードを蹴る。

 

それを何度も繰り返し、最後に強烈な一撃を入れる。

 

足で急ブレーキを掛けながら、止まる。

 

背後では、ロイミュードが悲鳴を上げ、爆散した。

 

爆発の中から『027』と書かれた数字が飛び出し、それも小さな爆発を起こし消滅した。

 

それと同時に、周囲のどんよりは無くなり時間が戻る。

 

『Nice Drive!最初にしては上出来だ』

 

「ありがとよ」

 

そう言い、俺は変身を解除した。

 

「そうだ、神崎!」

 

慌てて神崎の所に戻ると、神崎は地面に倒れていた。

 

「神崎!」

 

『…………安心したまえ。気絶してるだけだ』

 

「そうか………よかった」

 

そう言い、安堵のため息をついて座り込む。

 

『…………佑一、こんな時になんだが、やはり共に戦ってはくれないか?』

 

ベルトさんの声に俺は耳を傾け、黙った。

 

『今の戦い方を見て分かった。ドライブシステムは君にしか使いこなせないんじゃない、君だから使いこなせるんだ。頼む!共に戦ってくれ!』

 

ベルトの形をしているが、何故かベルトさんの気持が伝わって来た。

 

さっきの戦いでもそうだ。

 

一人で戦ってる感じは全くなかった。

 

むしろ、昔不良相手に喧嘩してる時よりも戦いやすく感じた。

 

「……………なぁ、ベルトさん。俺、半年前のあの日。グローバルフリーズの時、大事な物を失ったんだ。それからだよ。物事全部にやる気が無くなって、やる事全部に諦めを持つようになったのは」

 

俺の言葉をベルトさんはただ黙って聞いていた。

 

「…………ドライブになれば………この力があれば、もう何も失わないし、守ることもできるかな?」

 

『言っただろ。それは君次第だ。手に入れた力を正しきことに使えれば、それは自ずと分かる。そして、君一人に闘わせない。私も、出来る限り力を貸す。共に守ろう。君が守りたいものを』

 

「………ああ、ありがとう」

 

俺は立ち上がり、空を見上げた。

 

「戦うよ。ロイミュードと」

 

『悠一!』

 

「それに、もうあんな思いをするのも、誰かにさせるのも嫌だかな」

 

そう言い、俺はあの日からずっと緩めていたネクタイをきゅっと締めた。

 

車のギアを入れるように。

 

「一緒に頑張ろうぜ、ベルトさん」

 

『ああ!』

 



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赤羽業はどんな人物なのか

朝、目覚めると俺は欠伸をしながら起き上がる。

 

『おはよう。佑一』

 

「おお、おはよう。ベルトさん」

 

テーブルの上に載っているベルトさんに挨拶をしながら、朝食のあんパンと牛乳を食べる。

 

昨日、烏間さんにドライブになってロイミュードを撲滅することを話したら、喜び半分、申し訳なさ半分と言った感じの表情をしていた。

 

で、いつどこでロイミュードが現れるか分からないから、常にベルトさんと一緒に居てくれとのことで、こうしてベルトさんと同居してる。

 

さて、学校行くか。

 

ベルトさんを手に取り、鞄に突っ込むと、久々に授業の教科書を鞄に入れる。

 

『ちょ、悠一!私を鞄に仕舞うとは何事だ!?』

 

「仕方ないだろ。ベルトさんみたいなゴッツイベルトつけて街なんか歩けない。悪いけど我慢してくれ」

 

そう言い、学校へと向かう。

 

「そうだ………挨拶しないと」

 

玄関へ向かった足を止め、居間の仏壇へ向かう。

 

そこには、俺の父親、泊信也と俺の母親、泊麗華の仏壇がある。

 

半年前のあの日から仏壇に挨拶するのを止めちまったけど、また今日から挨拶しないとな。

 

「行ってきます、父さん、母さん」

 

そう言って、俺は学校へと向かった。

 

教室に入ると教室で話していた皆は急に黙って俺の方を見る。

 

俺はそれを気にせず席に着く。

 

暫くすると、皆は話を再開するか、時折ひそひそとした声が聞こえる。

 

噂話か。

 

ま、もう慣れたけどな。

 

俺に話し掛けて来る奴はこのクラスではそんなにいない。

 

話し掛けて来るのは……

 

まず担任のタコこと殺せんせー。

 

クラス委員長の磯貝、片岡。

 

後、渚と茅野。

 

そして

 

「泊君、おはよう」

 

神崎だ。

 

「ああ………もう大丈夫なのか?」

 

昨日、あのまま気絶した神崎を病院に運んだあと、神崎の母親が来て神崎を連れて帰ったが、気になったので聞いてみた。

 

「うん、私はもう大丈夫。泊君は大丈夫だった?」

 

「ああ、大丈夫だ」

 

「そう、良かった」

 

そう言って神崎は笑った。

 

数分後、殺せんせーは教室に来た。

 

「おや?泊君、今日は遅刻でもなくちゃんといますね」

 

「まぁ、偶にはね」

 

そう言うと、出欠確認と朝の暗殺が行われた。

 

 

 

 

 

 

五限の体育の時間となった。

 

体育は烏間先生が担当となり、ナイフの振り方を教えていた。

 

ちなみに殺せんせーは何故か体操着に着替え様子を見てる。

 

「この時間はどっか行ってろと言ったろう。体育の時間は興から俺の受け持ちだ。追い払っても無駄だろうからそこの砂場で遊んでろ」

 

シクシク泣きながら砂場で遊び始める殺せんせー。

 

「酷いですよ、烏間さ……烏間先生。私の体育は生徒に評判良かったのに」

 

「嘘つけよ殺せんせー」

 

そう言ったのは菅谷というクラスメートだ。

 

「身体能力が違い過ぎんだよ。この前もさぁ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「反復横飛びをやってみましょう。まず先生がお手本を見せます。まずは基本の視覚分身から。慣れてきたらあやとりも混ぜましょう」

 

『できるか!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アレは異次元過ぎるわ」

 

「体育は人間の先生に教わりたいわ」

 

みんなが殺せんせーの体育授業についての不評を言っていく。

 

とうとう本気で鳴き出し、砂場でせっせと山を作って行く。

 

「でも烏間先生。こんな訓練意味あるんすか? しかも当の暗殺対象の前で」

 

今度は前原が烏間先生に問いかける。

 

「暗殺も勉強と同じことだ。基礎を身に付ければ役に立つ。磯貝君、前原君。ナイフを俺に当ててみろ。かすりでもしたら今日の授業は終了だ」

 

二人は遠慮をしながらナイフを振る。

 

しかし軽々とかわされ、烏間先生は全ての攻撃をいなす。

 

「このように多少の心得があれば素人二人のナイフ位は俺でも捌ける」

 

一気に斬り掛かってくる二人の手首をつかみ、足払いをし、ひっくり返す。

 

「俺に当てられないようではマッハ20の怪物は殺せんぞ。見ろ。今の攻防のうちに奴は砂場で大阪城を立てている。クラス全員が当てられるようにするんだ。体育の授業ではナイフや狙撃の基礎の数々を教える」

 

そこでチャイムが鳴り、全員校舎へと戻る。

 

すると土手の所に赤い髪の男子生徒が居るのに気づいた。

 

「カルマ君。帰って来たんだ」

 

「よー渚君。久しぶり。あれが例の殺せんせー?本トにタコみたいだ」

 

赤羽業。

 

業と書いてカルマと読むらしい。

 

コイツはE組が始まる二年の三月から停学になって、いなかった奴だ。

 

「あれが赤羽カルマか」

 

確か停学の原因は喧嘩で、その所為でE組に落されたんだっけな。

 

「赤羽業くんですね。今日が停学開け初日なのに、遅刻はいけませんねぇ」

 

近寄ってくる赤羽に殺せんせーは、顔に×マークを浮かべる。

 

「あはは、生活リズム戻んなくてさ。下の名前で気安く呼んでよ、よろしく先生」

 

「こちらこそ、楽しい一年にしていきましょう」

 

差し出された手を殺せんせーが握る。

 

するとドチュ!という音と共に触手が溶ける。

 

赤羽はナイフを手首から取り出して攻撃しようとするも、殺せんせーは十メートル程離れた所に移動する。

 

「本トに聞くんだこのナイフ。細かく切って手に張り付けて見たんだけど………確かに早いね。けどさぁ先生こんな単純な手に引っ掛かるとか……しかもそんな遠くまで逃げるなんてさ、ビビり過ぎじゃね?」

 

赤羽が殺せんせーに近づいて行く。

 

「殺せない先生だから「殺せんせー」って聞いてたけど………あっれぇ? もしかしてせんせーチョロい人? 」

 

その言葉に殺せんせーが顔を怒りで赤くしていく。

 

赤羽は手首に取り付けていたナイフを取り外し、器用に回転させながら教室へと歩いて行った。

 



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手入れされたカルマは何を思うのか

六時間目は小テストの時間だった。

 

俺は問題を解きながら、赤羽の様子を観察する。

 

アイツは数分でテストを終わらし、殺せんせーを見ている。

 

殺せんせーは先程のおちょくりが腹立ったのかさっきから触手を壁に叩き付けてる。

 

ちなみに、俺が今日この時間まで教室にずっといることに皆が驚いていた。

 

「よぉ、カルマ。あのバケモン怒らせて、どーなっても知らねーぞ」

 

「またおうちにこもってた方が良いんじゃな~い? 」

 

寺坂と村松が赤羽に絡んでいる。

 

「殺されかけたら怒るのは当たり前じゃん。寺坂、しくじってちびっちゃった誰かの時と違ってさ」

 

「なっ。ちびってねーよ! テメ喧嘩うってんのか!? 」

 

その言葉に殺せんせーが顔を赤くしながら怒る。

 

「こらそこ! うるさいですよ! 」

 

「ごめんごめん殺せんせー。俺もう終わったからジェラート食って静かにしてるわ」

 

「ダメですよ。授業中にそんなもの。どこで買って来て…………それ! 昨日イタリアで買った私のジェラートじゃないですかぁぁぁ!! 」

 

「ごめーん職員室で冷やしてあったからつい」

 

「ついじゃありあません。溶けないように寒い成層圏飛んできたのに!」

 

「で、どーすんの?殴る?」

 

「殴りません!残りを先生が舐めます!」

 

そう言いながら赤羽の席に近づくと、急に足の触手が溶ける。

 

赤羽の席の周りには対先生BB弾がばら撒かれていた。

 

「まーた、引っ掛かった」

 

そう言って赤羽は銃を抜き三発、殺せんせーに発砲。

 

弾は避けられたが………

 

「何度でもこういう手、使うよ。授業の邪魔とか関係ないし。それが嫌なら、俺でも親でも殺せば良い。だけど殺せんせー。その瞬間からあんたという「先生」は、俺に殺された事になる。ただの人殺しのモンスターさ」

 

ジェラートを殺せんせーの服に擦り付け、赤羽は獰猛な笑みを浮かべる。

 

「はいテスト。多分全問正解。じゃね~、先生。明日も遊ぼうね」

 

そう言い残し赤羽は教室を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、教室は異様な空気になっていた。

 

「皆さん、おはようございます」

 

入って来た殺せんせーもその様子に気づく。

 

「おや?皆さん、どうしました?」

 

そして、教卓の上に、対先生ナイフが刺さった蛸を見つける。

 

「ごめーん。先生と間違えて刺しちゃった。捨てとくから持ってきてよ」

 

恐らく、赤羽は殺せんせーを今すぐ殺す気はない。

 

心からじわじわと殺し、そして、最後には肉体を殺す。

 

「……………分かりました」

 

殺せんせーは蛸を持ち上げ、赤羽に近づく。

 

そして、次の瞬間、マッハ20で移動し、触手をドリルへと変え、手にはミサイルを持っていた。

 

「見せて上げましょう。このドリル触手の威力と、自衛隊から奪ったミサイルの火力を」

 

ドリル触手を動かし、何を始める。

 

「先生は、暗殺者を決して無事では帰さない」

 

するといつの間にか、赤羽の口の中に出来立てのたこ焼きが放り込まれてた。

 

「熱ッ!!」

 

「その顔色では朝食を食べていないでしょう。マッハでたこ焼きを作りました。これを食べれば健康優良児に近づきます」

 

ミサイルの火力でたこ焼きを作るとか、普通有り得ない。

 

「先生は、手入れをするのです。錆びて鈍った暗殺者の刃を。今日一日本気で殺しに来るが良い。そのたびに先生は君を手入れする。放課後までに君の心と身体をピカピカに磨いてあげよう」

 

そこからは殆ど一方的だった。

 

授業中、背後から赤羽が撃とうとすると、触手で銃を取り上げ、ネイルアートを施し、家庭科では不破さんの班が失敗したスープを「作り直したら」っと言い、殺せんせーに向けて投げて斬り掛かっても、可愛らしいエプロンを着せられ、空中に捨てられたスープはスポイトで回収、更にひと手間加えたスープの味を良くした。

 

また授業中に背後からナイフを刺そうとしても、触手一本で動きを止められ、髪を手入れされていた。

 

放課後になり、赤羽は山の上にある広場にいた。

 

崖から突き出ている木に腰掛け爪を噛んでいる。

 

俺とベルトさんはその様子を、遠くから見ていた。

 

『悠一、何もこんな遠くから見てなくてもいいんじゃないか?』

 

「話したことも無い、俺がいたらおかしいだろ」

 

そう言いながら、俺とベルトさんは赤羽たちを見る

 

「カルマ君、焦らないで、みんなと一緒に殺っていこうよ。殺せんせーに個人マークされちゃったんだから一人じゃ絶対に殺せないよ。普通の先生じゃないんだから」

 

渚の慰めに、赤羽は反応しない。

 

「………やだね。俺が殺りたい。変なトコで死なれんのが一番ムカつくからさ」

 

そこで殺せんせーが現れ赤羽に声を掛ける

 

「………さてカルマくん。今日は沢山先生に手入れされましたね。まだまだ殺しに来て良いんですよ? もっとピカピカに磨いてあげます」

 

「…………確認するよ。殺せんせーって先生だよね? 先生って命かけて生徒守ってくれる? 」

 

赤羽の目……………アイツ、何かをやらかす気だ。

 

「もちろんです。先生ですから」

 

「そっか。良かった。なら殺せるよ………確実にね」

 

そう言うと同時に赤羽は崖から飛び降りた。

 

なんて無茶の行動だ。

 

殺せんせーマッハのスピードなら助けることは可能だ。

 

だが、人間の身体はマッハのスピードに耐えられない。

 

かと言って、ゆっくり助けたらその間に撃たれる

 

見殺しにすれば、先生として死に、助けに行けば自身が殺される。

 

自分の身を犠牲にした作戦。

 

無茶苦茶だ!

 

「ベルトさん!」

 

『やむを得ん!変身だ!』

 

ドライブになれば赤羽を助けれる。

 

変身しようとした瞬間、赤羽の脇を殺せんせーが通り、触手でネットを作り、赤羽はそのネットのような形状になった触手に落ちる。

 

「えっ……」

 

「カルマくん。自らを使った計算ずくの暗殺、お見事です。音速で助ければ君の肉体が耐えられず、かといってゆっくり助ければ撃たれる。ので先生。ちょっとネバネバして見ました」

 

何でもアリなのかよ、あの触手…………

 

「これでは撃てませんね。ヌルフフフフ………あぁそれと、見捨てるという選択肢は先生にない。いつでも信じて飛び降りて下さい」

 

殺せんせーの言葉を聞いて赤羽は苦笑した。

 

「平然と危険な事したよね。カルマくん」

 

「そう? 今のが思い付いた限りで一番殺せる作戦だったんだけど。しばらくは大人しく計画の練り直しかな」

 

渚と赤羽の会話を聞いて殺せんせーが手入れ用品を出しながら言う。

 

「おやぁ? もうネタ切れですか? 報復用手入れ道具はまだまだありますよ? 君も案外チョロいんですねぇ」

 

「………殺すよ。明日にでも」

 

そう言う赤羽の表情は何処か清々しいものだった。

 

「健康的で爽やかな殺意。もう手入れの必要は無さそうですね」

 

そう言って殺せんせーの顔に〇のマークが浮かぶ。

 

「帰ろうぜ、渚くん。帰りに飯でも食ってこーよ」

 

そう言って、赤羽が財布を取り出す。

 

「ちょ! それ先生の財布! 返しなさい! 」

 

「いいよー」

 

「中身抜かれてますけど!? 」

 

「はした金だから募金しちゃった」

 

「にゅや――!!! 不良偽善者めぇ! 」

 

そんな赤羽と殺せんせーの会話に渚は苦笑していた。

 

その時、急に体が重くなるのを感じた。

 

だが、シフトカーのお陰でその重さはすぐに消えた。

 

「これはどんより!ロイミュードか!」

 

「渚君!カルマ君!大丈夫ですか!」

 

見ると、殺せんせーは普通に動けていた。

 

マッハ20のスピードを出せる殺せんせーならこの程度のどんよりは平気みたいだ。

 

だが、今の殺せんせーなら簡単に殺されるだろう。

 

すると、殺せんせーたちに近づくロイミュードがいた。

 

だが、その姿はこの前の蝙蝠みたいなのとは違い、手にはかぎ爪みたいなのがあり、全体的に黒い色をした者だった。

 

『あれは進化体だ!』

 

「進化体?」

 

『人間の欲望を吸収することで覚醒に至る強化形態だ!あれは通常のロイミュードより、広範囲に重加速を出せるだけでなく、固有の能力もある!』

 

「どっちにしろ倒さないといけないんだろ!」

 

『待て!まだ彼等とあの生物が居る!ここで変身するのはダメだ!ドライブの存在を知られては』

 

「そんなこと言ってる場合か!」

 

そう言って俺は走り出す。

 

「この野郎!」

 

俺はかぎ爪のロイミュードに体当たりし、蹴りを入れる。

 

「ぐえっ!」

 

すると辺り一帯のどんよりが消え、皆が動き出す。

 

「殺せんせー!早く二人を!」

 

「泊君!」

 

「こいつは俺が引き付けます!」

 

「ダメです!危険過ぎます!」

 

殺せんせーがそう叫ぶと、急に何かが俺の足を掴んだ。

 

それはかぎ爪のロイミュードだった。

 

ロイミュードはそのまま俺の足を引っ張り、崖下へ俺ごと一緒に落ちた。

 

「泊君!」

 

殺せんせーが叫ぶ声が聞こえた。

 

俺は崖下の道路に落ちる寸前、咄嗟にロイミュードを下にし、ダメージを食らわない様にした。

 

すぐさま起き上がり、ロイミュードから距離を取る。

 

「ベルトさん、ここなら変身できるだろ」

 

『まさかそのために生身で突撃したのか!?』

 

「そうしないと、三人から離れられないだろ」

 

『なんていう無謀なことを……』

 

「さぁ、行くぜ、ベルトさん!」

 

イグニッションキーを回し、シフトレバーをシフトブレスに装着する。

 

『分かった……START・YOUR・ENGINE!!!!!』

 

「変身!」

 

『DRIVE!!!TYPE!!!SPEED!!!』

 

その声と共に俺は赤い仮面の戦士。

 

仮面ライダードライブになった。

 

「ぐっ、貴様が仮面ライダードライブか……!」

 

「ロイミュード側にも俺の事を知られてるみたいだな」

 

俺は拳を鳴らしながら、ロイミュードを見据える。

 

「来いよ、ロイミュード。ひとっ走り、付き合えよ!」

 



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何故佑一のネーミングセンスはアレなのか

「はっ!」

 

かぎ爪ロイミュードもといタロンロイミュードの腹部を殴りつける。

 

タロンロイミュードは一瞬ひるむが、両手の巨大なかぎ爪を振り回し、攻撃する。

 

かぎ爪を躱すと、木に爪跡を残さず、木の一部をそのまま削り取り破壊した。

 

「うおっ!凄い切れ味と破壊力だな」

 

『奴のかぎ爪に気を付けろ!悠一!』

 

「言われなくても。取り敢えず、タイヤ交換と行くか」

 

ケースから紫のシフトカー、ミッドナイトシャドーを取り出し、シフトブレスに取り付けタイヤ交換を行う。

 

『タイヤコウカ――ン!MIDNIGHT!SHADOW!』

 

タイヤが外れ今度は、手裏剣のような形をした紫のタイヤが装着される。

 

「行くぜ!」

 

『SHA!SHA!SHADOW!』

 

ミッドナイトシャドーの力を使い、手にエネルギーの手裏剣を生み出しタロンロイミュードを攻撃する。

 

手裏剣が当たるとタロンロイミュードから火花が上がり、激しい音を出す。

 

「ぐうっ………!?」

 

「そろそろ決めるぜ!」

 

タイヤをシフトスピードに戻し、一気に決めようとした時、タロンロイミュードは手を大きく振り上げた。

 

「舐めるな、人間が!」

 

そして一気に手を振り下ろすと、かぎ爪からエネルギー刃が飛び出し、俺に襲い掛かった。

 

「うおっ!?」

 

慌てて、横に飛び退きエネルギー刃を躱せたが、エネルギー刃は地面を切り裂き、俺の背後の木を縦に切り裂いた。

 

「あの爪、本当に厄介だな」

 

『悠一、新兵器を使え』

 

「新兵器?」

 

『ドライブの新戦力になる武器だ』

 

ベルトさんがそう言うと、赤い車、トライドロンが現れ、そして、俺の手元に何かが飛んできた。

 

これは――――――――

 

「ハンドルの付いた………剣?」

 

『新開発の圧縮SO-1合金で構成され、超高速振動してあらゆる物を斬り裂く剣だ。だが、名前はまだ未定だ』

 

「なら、今名付けてやるよ。コイツの名前はハンドル剣だ」

 

『いや……もうちょっとなんとかならないのかね?』

 

「こういうのは、シンプルかつ見たまんまの名前が一番だ」

 

ベルトさんにそう言い、俺はハンドル剣を手に走り出す。

 

タロンロイミュードのかぎ爪をハンドル剣で受け止める。

 

『悠一、ハンドルを回せ!』

 

ベルトさんに言われた通り、ハンドルを回す。

 

『TURN!』

 

その掛け声と共に、ハンドル剣の切れ味が上がりタロンロイミュードのかぎ爪を弾き返す。

 

そして、そのままタロンロイミュードの脇をすり抜けるように切りつける。

 

再びハンドルを回すと今度は『UTURN!』と聞こえ、再度切れ味が上がる。

 

車でUターンするように動き、そのままもう一度タロンロイミュードを切り裂く。

 

「ぐああああああっ!」

 

タロンロイミュードは悲鳴を上げ、その場に倒れる。

 

「決めるぞ、ベルトさん」

 

「さ………させるか!」

 

必殺技を使おうとしたら、タロンロイミュードは四方八方にエネルギー刃を投げ飛ばした。

 

当たりの木を切り裂いて倒し、暴れまわる。

 

更に、強烈な風が吹き荒れ、思わず顔を両手で覆ってしまう。

 

「そこだ!」

 

するとタロンロイミュードは、腕を大きく振り上げ、さっきとは比較にならないエネルギー刃を俺に向かって投げ飛ばした。

 

「しまっ!」

 

俺の言葉は其処で終わった。

 

最後の言葉を言うまでも無く、攻撃は俺に当たった。

 

「はっはっはっはっ!やったぞ!仮面ライダーを倒した!」

 

タロンロイミュードは高らかに笑い、大声で叫ぶ。

 

「それはどうかな?」

 

「何!?」

 

だが、俺は無傷だった。

 

しかし、タロンロイミュードが驚いていたのは、俺が無傷だったことにじゃない。

 

俺が数人いることに驚いていた。

 

奴がエネルギー刃を四方八方に投げ飛ばした時、俺はミッドナイトシャドーの力を使い、分身体を作り、それを囮に使った。

 

「どれが本物か分かるか?」

 

「くっ………これか!」

 

タロンロイミュードは近くの俺に攻撃をするが、分身体だった。

 

「終わりだ!」

 

すかさず、タイヤをスピードに戻し、鍔のスロットにシフトスピードをセットし、ハンドル剣を回しクラクションを鳴らす。

 

『ドリフトカイテ―ン!!』

 

俺は地面を滑走してすれ違い様にタロンロイミュードを両断する。

 

「ぐあああああああああああ!!!!?」

 

タロンロイミュードは悲鳴を上げ、そして、爆発し、数字のコアも爆発した。

 

『NiceDrive!』

 

ベルトさんからの労いの声を聞き、俺は変身を解いた。

 

「進化体のロイミュードか…………厄介なのが出てきたな」

 

『ああ、ドライブの戦力も、もっと増やさねばならないな』

 

その言葉に頷き、烏間先生に報告しようとE組に戻る為、後ろを向く。

 

すると、そこには見知った顔がいた。

 

「か………神崎……」

 

「と……泊君………今の、何………?」

 




ヒロインもとい神崎さんに正体がバレました。

神崎さんには協力者になってもらうので、早々にバレました。


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誰が協力者なのか

「今日も泊君、ちゃんと学校に来てて良かった」

 

神崎有希子は帰り道を歩きながら、今日の事を振り返っていた。

 

カルマの事でクラス中が騒がしい中、神崎はそのことを気にもせず、隣の席の佑一の事をずっと気に掛けていた。

 

「そう言えば、あの日から泊君、人が変わったみたいに授業に真面目に出てるっけ。暗殺の方も積極的じゃないけど参加してるし」

 

一人呟きながら歩いていると、急に何処からか車のクラクションに似た軽快な音が聞こえた。

 

「………あそこから?」

 

気になり、茂みの中に手を突っ込んで探ってみると何かが手に当たった。

 

それを掴み、茂みの中から引っ張り出す。

 

「………ミニカー?」

 

神崎の手にあったの白で、表赤い文字で777と書かれたミニカーだった。

 

「落し物?」

 

そう思った時、体が急に重くなり、時間が止まった感覚に襲われた。

 

(これって、つい最近感じた奴………!)

 

その瞬間、急に体の重さが取れ、神崎の体は普段通りに動いた。

 

「………今のは………?」

 

不思議そうにしていると、近くの森でなにやら激しい音が聞こえる。

 

「なんだろう?」

 

好奇心に駆られ、神崎は森の中を進む。

 

すると、そこでは謎の生物と戦う赤い仮面の戦士がいた。

 

(な、何なの………?それに、あの戦ってる人は一体………)

 

その光景に圧倒され、神崎はその戦いをずっと見ていた。

 

「終わりだ!」

 

仮面の戦士は、手についてる装置から赤いミニカーを取り出しに、持っているハンドルの付いた剣の鍔にセットし、ハンドルを回しクラクションを鳴らす。

 

『ドリフトカイテ―ン!!』

 

仮面の戦士は地面を滑走してすれ違い様にかぎ爪の生物を両断する。

 

「ぐあああああああああああ!!!!?」

 

その叫びと共に、その生物は爆発し、後から出て来た089の文字も小さく爆発した。

 

『NiceDrive!』

 

その声と共に、仮面の戦士は変身を解き、その正体を現す。

 

(え!?泊君!)

 

戦っていた戦士が先程自分が考えていた佑一であったことに神崎は驚く。

 

そして、悠一が振り返り、二人の目があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佑一SIDE

 

「か………神崎」

 

「と……泊君………今の、何………?」

 

まずい、神崎に戦ってるところを見られた。

 

いや、待てよ。

 

どんよりの所為で、戦ってるところは見られてないかも!

 

「か、神崎さ、いつからそこに?」

 

「…………えっと、多分、泊君だと思う赤い人がかぎ爪の生えた生物と戦ってるあたりから」

 

な!?……なんで、どんよりの中で動けてるんだ!

 

思わず狼狽えてると、神崎の手に白いシフトカーがあることに気付いた。

 

「神崎!そのミニカー、何処で?」

 

「これ?帰り道の途中の茂みで見付けて…………」

 

『あれはドリームベガスだ。ある任務の為、出掛けていたのだが戻っていたのか』

 

ベルトさんが神崎に聞こえないように俺に話す。

 

「で、偶然神崎に拾われて、そのお陰で神崎はどんよりを感じずにいたのか」

 

しかし、参ったな。

 

烏間先生からも、俺がドライブでロイミュードと戦ってることは他言無用って言われてるのに…………

 

「神崎、さっきの事も含めて話がある。付いて来てくれ」

 

そう言うと神崎は頷き、俺の後を付いて来る。

 

校舎に戻ると殺せんせーと渚、赤羽が近づいて来た。

 

「泊君!無事でしたか!」

 

殺せんせーが顔面蒼白で俺に迫ってくる。

 

「あ、はい。あの生物どっかに逃げたんで…………」

 

「それ本当、泊?」

 

すると赤羽が俺を疑うように見て来る。

 

「カルマ君、泊君のこと信じてあげてよ。ごめんね、泊君。でも、本当に大丈夫?」

 

渚は俺に謝り、俺の心配をしてくる。

 

「無事ならいいですが、今後二度とこのようなことは許しませんよ!」

 

殺せんせーは顔を赤くして×のマークを浮かび上がらせる。

 

「分かったよ。俺と神崎、烏間先生に用があるからもう行くよ」

 

殺せんせーたちにそう言い残し、俺と神崎は校舎の中へと入る。

 

「烏間先生」

 

職員室になってる部屋に入り、烏間先生を呼ぶ。

 

「泊君、どうした?」

 

「実はさっき、ロイミュードの進化体と会って、倒しました。番号は089でした」

 

「……そうか。ご苦労だった」

 

「それと、もう一つ話が………」

 

「何だ?」

 

俺は部屋に神崎を招き入れ、烏間先生に正直に話す。

 

「神崎に正体がバレました」

 

「な!?」

 

正体がバレた理由を正直に話すと、烏間先生は頭を抱え唸り声を上げた。

 

「………バレてしまったのはどうしようもない。神崎さん、今から君に彼の事、そして、奴等の事を説明しよう」

 

烏間先生は俺にした説明を同様に神崎に話す。

 

「そんな………それじゃあ、泊君はずっと一人で戦っていたんですか」

 

「いや、戦い始めたのは最近だ。それに一人じゃない」

 

そう言って、俺はベルトさんを出す。

 

「俺の相棒のベルトさんだ」

 

『やぁ、初めまして、神崎有希子。クリム・スタインベルトだ。呼ぶときはベルトさんと呼んでくれ』

 

「わぁ……ベルトが喋ってる」

 

まぁ、普通の人ならそう言う反応が普通だよな。

 

「泊君は怖くないの?あの生物と戦うのが?」

 

そう言われ、俺はベルトさんを見つめ直し、口を開く。

 

「確かに怖いさ。でも、それよりまた何かを失ったり、守れなかったりする方が一番嫌だ。それに、一人じゃない。ベルトさんも一緒に戦ってくれる。だから、大丈夫だ」

 

そう言うと、神崎は少し考えると。驚きの事を口に出した。

 

「烏間先生、私も協力させてください」

 

「な、何を言ってるんだ!」

 

「神崎、話聞いてなかったのか!これは、俺達がやってる暗殺とは違う。本当に命の危険があるんだぞ!」

 

「分かってるよ。でも、こんな話を聞いたら黙ってなんかいられない。私も泊君に協力したいの!」

 

神崎の意志は固く、強いものだった。

 

俺は思わず、ベルトさんと烏間先生を見る。

 

『烏間、ここは有希子にも協力してもらおう』

 

「な!?本気か!クリム!」

 

『元々、内部に協力者を一人作る予定だったんだ。なら、彼女になってもらおう。バレてしまったし、何より彼女なら信頼できそうだ』

 

烏間先生は悩んだ表情になり、数秒後溜息を吐いた。

 

「分かった。神崎さんにも協力してもらおう。今後はなるべく泊君と行動してくれ。少なからず、君は今後ロイミュードとかかわってしまう。そうなれば、命の危険がある。泊君には、彼女を守ってもらうことになるだろうが…………できるか?」

 

烏間先生が俺を心配そうに見て来る。

 

「大丈夫です。それに、どんなロイミュードが来ても俺とベルトさんなら守り切れます」

 

俺は笑顔でそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「089がやられたようだな」

 

「………また友達が一人減ってしまったか」

 

赤いロングコートを着た青年が悲しそうに言う、

 

「ふん。仮面ライダードライブと言ったかな?人間が作った兵器にやられたんだ。結局は、あのロイミュードもその程度と言う事さ。進化体だから期待してたんだけどね」

 

全身を白装束で包んだ男、シロはそう吐き捨てる。

 

「貴様!俺の友達を愚弄する気か!」

 

「おっと、私を殺すのかい?私を殺せば、君たちの復活手段がなくなるよ?」

 

「くっ………!」

 

青年が悔しそうにするのを見て、シロは面白いかのように笑い立ち上がる。

 

「君たちの目的がなんであろうと私にとってはどうでもいい。私は、あいつさえ消えてくれればそれでいい。では、今日は失礼するよ。もう一人、面倒を見ないといけない子がいるんでね」

 

笑い声を残し、シロはその場を立ち去った。

 

「今だけは貴様に従ってやろう………だが、何時までも貴様の思い通りになると思うなよ…………シロ」

 



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あの日何があったのか

神崎が協力者になって数日。

 

俺は今日、あるところに向かっていた。

 

椚ヶ丘総合病院。

 

そこの五階にある病室。

 

見舞いの品である花を手に、俺はそこに向かった。

 

部屋の前に立ち、深呼吸をし、扉をノックする。

 

『どうぞ!』

 

許可を貰い中に入る。

 

「明先輩、お久しぶりです」

 

「佑一、来てくれたんだな」

 

この病室に居る患者は、早瀬明先輩だ。

 

あの日以来、明先輩はリハビリと手術の為ずっと入院している。

 

俺は、あの日の罪悪感から今日の今まで明先輩に会うのを避けていた。

 

「………足の方はどうですか?」

 

「ああ、長時間走るのは無理だが結構良くなってる。先生も驚いてたよ。こんな回復力驚きだってさ」

 

明先輩はいつも通りけらけらと笑っていた。

 

「……サッカーの方は?」

 

「……走るだけならともかく、スポーツをやるには俺の足はもう無理だ」

 

………俺の所為だ。

 

俺があの時、あんな喧嘩しなければ明先輩がこんな目に会うことは無かったはずだ。

 

全部俺の所為だ。

 

「すみません、俺があの時あんなことしなければ」

 

「全く持ってその通りだな」

 

後ろからの声に振り返ると、そこには前原が居た。

 

「よぉ、泊。どの面下げて早瀬先輩に会いに来たんだよ?」

 

前原は俺を通り過ぎると、明先輩に挨拶をした。

 

「どうもです、早瀬先輩」

 

「あ、ああ」

 

明先輩はどうすればいいのか分からず困惑している。

 

「早瀬先輩に怪我負わせて、今の今まで見舞いにも来ないでよく心が痛まないな。俺だったら心が張り裂けるぜ」

 

前原は嫌味たらしく行ってくる。

 

「おい、前原!止せ!」

 

明先輩が前原にそう言うが、前原は明先輩の言葉を無視する。

 

「はっきり言わせてもらうけどな。お前の所為で早瀬先輩はこうなったんだぞ。それに対して詫びの一つもないのかよ!それとも自分はE組に落ちて、サッカー部止めたから、それで償いになったと思ってんのかよ!」

 

「前原!俺は別に、佑一の事を責めるつもりはないし、これは俺の自業自得だ!」

 

「早瀬先輩がどう思って用が関係ないんですよ!」

 

そう言って、前原は俺に指を突きつける。

 

「俺は絶対お前の事許さねぇよ!」

 

「……………明先輩、今日はもう失礼します。また来ます」

 

そう言い残し、病室を出て行こうとする。

 

「もう来なくていいぞ」

 

「前原!」

 

その言葉を最後に、俺は病室を出た。

 

結局そのまま変えることも出来ず、俺は病院の屋上に上り空を眺めていた。

 

『佑一、大丈夫か?』

 

「ベルトさん………ああ、大丈夫だ」

 

前原か……………

 

「アイツ、明先輩の事、滅茶苦茶慕ってたもんな。やっぱ俺の所為だよな

 

「それは違いますよ、泊君」

 

「うおっ!」

 

いつの間にか、近くに殺せんせーが居て、何故かマカダミアナッツチョコをボリボリと食っていた。

 

殺せんせーに見つからないようにベルトさんをこっそりと鞄に隠す。

 

「泊君、よろしければあの日何があったのか教えてもらってもいいですか?」

 

殺せんせーにそう言われ、俺はなんとなく話した。

 

あの日、何が起きたのか…………

 



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前原陽斗は何故泊佑一を許さないのか

俺と先輩の出会いは俺が小学校五年の時だった。

 

親を亡くして落ち込み、悲しんでいた俺の前に明先輩が現れたんだ。

 

最初、明先輩は俺をサッカーの足りないメンバーにしようと俺に声を掛けて来た。

 

断ったが、明先輩は無理矢理俺をサッカーに連れて行った。

 

そしたら、サッカーが楽しく俺は夢中になった。

 

両親を亡くしてから始めて俺は笑った。

 

明先輩は俺を救ってくれた。

 

だからこそ、俺は椚ヶ丘学園に進学し、サッカー部に入った。

 

明先輩とサッカーをしたかったから。

 

俺は一年でありながらレギュラーになり、明先輩とのコンビはたちまち有名になった。

 

だが、俺には一つ問題となることがあった。

 

それは、困ってる人を見過ごせないと言うことだった。

 

街中で絡まれてる人がいれば例え相手が大人でも、それを助けようとする。

 

その所為で、何度か不良の高校生と喧嘩になったことがある。

 

幸い、俺は勉強もできる方だったので、顧問や学年主任、担任などが俺を庇ってくれた。

 

だがそれもあの日までだった。

 

半年前のグローバル・フリーズ。

 

雨が降ったあの日、俺は明先輩と帰っていた。

 

もうじき明先輩は引退で、新たな新三年生に部長職もといキャプテンの座を渡すことになっていた。

 

明先輩は俺を次の部長にと顧問に推薦していた。

 

嬉しかった半面、俺にキャプテンが務まるのか不安だった。

 

そのことで相談に乗ってもらおうと俺は明先輩と一緒に帰っていた。

 

だが、相談に乗る前に、俺は不良が一人の女の子に絡んでるのを見付けてしまい、それを助けようと不良たちの前に立ち塞がった。

 

そっから、不良との喧嘩になった。

 

俺一人に対し、向うは七人。

 

多勢に無勢だった。

 

一人がナイフを出し、俺に向かって走り出した。

 

「危ない!」

 

その様子を見ていた明先輩がそいつに体当たりし、俺を守ってくれた。

 

俺は咄嗟に、蹴りを放ち、男を蹴り飛ばそうとした。

 

その時、俺達はどんよりを感じた。

 

どんよりの所為で、動きがずれ明先輩ごと男を蹴り飛ばしてしまった。

 

明先輩はその男と一緒に鉄パイプの下敷きになり、足を負傷した。

 

その結果、明先輩は二度とサッカーが出来なくなり、スポーツ推薦は取り消しになり、明先輩の夢であるプロサッカー選手は諦めなければならなかった。

 

そして、今まで俺を庇ってきてくれた大人たちは一斉に俺を非難し、俺はE組へと落ちた。

 

「これが、あの日何が起きたのかの話だよ。殺せんせーもどんよりがなんなのかは知ってるだろ?」

 

「ええ。この間感じたあの感覚。あれですね。話には聞いてましたが、体験したのはあの時が初めてです」

 

「………前原が言ったことは正しい。明先輩は、俺の所為で………」

 

屋上の手すりにもたれながら、俺は呟く。

 

すると頭を柔らかい触手で触られる。

 

「早瀬君が泊君をどう思ってるのかは先生には分かりません。ですから………連れて来ました」

 

「よ!」

 

なんと殺せんせーの後ろに明先輩が居た。

 

なにやってんだよ、国家機密!

 

「事情はこの殺せんせーから聞いた。だから、はっきり言わせてもらうぞ、佑一」

 

明先輩は真面目な表情になり、拳を握る。

 

殴られるんだろうな…………

 

俺は下を俯き、殴られる準備をした。

 

すると

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿野郎」

 

明先輩は俺の頭を軽くこっついた。

 

「俺がいつお前の所為だって言った」

 

「で、でも………俺の所為で明先輩は………」

 

「うぬぼれるな」

 

その言葉に俺は顔を上げた。

 

「お前の所為で俺が怪我しただって思ってるのか?俺は俺の意志でお前を守って怪我した。そこに、お前の所為なんでもんは欠片もねぇよ」

 

「明先輩………」

 

明先輩はただ笑って俺を見ていた。

 

「お前は誰よりも責任感が強い。だからこそ、お雨に次のキャプテンを任せようと思った。でも、背負わなくていい物まで背負っちまう。それがお前の悪い所だ」

 

俺の肩を軽く叩き、明先輩は更に言い続ける。

 

「楽になれ。それができれば、お前は優秀なキャプテンになれる。あの日の俺がお前に言えるのはそれだ」

 

「明先輩……俺が相談したいこと分かってたんですか?」

 

「お前は俺の相棒だ。お前の事なんかお見通しだ」

 

「…………俺、少し難しく考え過ぎてたんですかね?」

 

「ああ。少しどころか、大きく考え過ぎた」

 

そうやって笑う明先輩を見て、俺は殺せんせーの方を見る。

 

「なぁ、殺せんせー。俺、前原と分かり合えるかな?」

 

「ええ………きっと彼も君の事を理解してくれますよ、泊君」

 

自然と俺は笑っていた。

 

だが、次の瞬間、大きな衝撃が俺達を襲った。

 

見ると、青い生物が病院を襲ってた。

 

あれはロイミュード!

 

「殺せんせー!明先輩を頼みます!」

 

「待ちなさい!泊君!」

 

殺せんせーが叫ぶが俺はそれを無視して、屋上を飛び出す。

 

病院内は大騒ぎだった。

 

医師や看護師の指示が飛び交い、患者や怪我人が呻き声を上げてる。

 

すると、曲がり角から怪我をした男性が現れたので、俺はその人に駆け寄る。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「あ……ああ、俺は大丈夫だ。それより………まだ奥に子供か」

 

「子供?」

 

「……中学生ぐらいの男の子だ。その子が俺を守ろうと、青い化け物に…………」

 

中学生…………まさか、前原か!

 

「すみません!この人お願いします!」

 

近くの看護師に、その男性を任せ、俺は男性が来た方向を行く。

 

暫く進むと、通路の所で前原が青いロイミュードに胸倉を掴まれ、持ち上げられていた。

 

俺は足元のコンクリートの欠片を蹴り飛ばし、ロイミュードの側面にぶつける。

 

ロイミュードは欠片が飛んできた方向を振り向うとするが、振り向き切る前にタックルし、前原を解放してもらう。

 

「大丈夫か!前原!」

 

「……余計なお世話だよ」

 

前原は素っ気無い態度を取り、立ち上がる。

 

「んなことより、逃げるぞ。あいつ、殺せんせーなんか話にならないぐらいヤバイ」

 

前原はそう言うが、俺は引くことが出来ない。

 

「前原、お前だけ行け」

 

「は!?何言ってるんだよ!」

 

「どうせ二人で逃げても追付かれる。それに、まだ避難できてない人たちが大勢いる。その人達が避難できるまで誰かが残ってアイツを食い止めないと」

 

「だからって、何でお前がやるんだよ!」

 

「……俺だからやるんだ」

 

そう言ったら、前原が俺の胸倉を掴んできた。

 

「いい加減にしろよ!そうやって毎回毎回!背負わなくていいもんまで背負いやがって!」

 

前原が怒鳴った。

 

だが、病室での怒鳴り方とは違う感じだった。

 

「どうして周りを頼らねぇんだよ!どうして一人で解決しようとするんだよ!どうして……………俺を頼らねぇんだよ、佑一」

 

「……そうやって名前で呼ばれるの久しぶりだな、陽斗」

 

「たりめーだ。なんの言い訳もせずサッカー部止めたお前を、俺は許してねぇんだからな」

 

「話は済んだが?」

 

はっとし、俺はロイミュードの方を見る。

 

「感動の仲直りの後で悪いが、死んでもらうぜ」

 

ロイミュードはノコギリみたいな刃が付いたチャクラムを出し、それを投げ付けて来た。

 

「危ねっ!」

 

俺と陽斗は咄嗟にしゃがむ事で攻撃をかわす。

 

「おっと、俺の刃は何処までも追うぜ」

 

ロイミュードが指をくいっと引くとチャクラムは俺達の方に戻ってきた。

 

だが、そのチャクラムはやってきた黒と白のツートンカラーのシフトカー、ジャスティスハンターが弾き、助けてくれた。

 

「陽斗、早く逃げろ!」

 

「で、でも!」

 

「いいから行け!」

 

俺は立ち上がり、陽斗を庇うように移動する。

 

「許さなくていい…………でも、今は俺を信じてくれ!」

 

「………………すぐに助けを連れて来る!それまで死ぬんじゃねぇぞ!」

 

陽斗はそう言い、走る。

 

「………おい、一つ聞かせろ」

 

「なんだ?」

 

「どうして重加速を使わない?そうすればもっとやりやすいだろ?」

 

「俺はな、人間が苦痛に顔を歪める表情を見るのが大好きなんだ。重加速の中じゃ、そんな良い顔も台無しになっちまう。だからだよ」

 

「そうか、なら、俺はお前を絶対に許さない!」

 

ベルトさんを取り出し、装着する。

 

「ベルトさん、行くぜ!」

 

『ああ、やるぞ!佑一!』

 

シフトスピードをシフトブレスに設置し、構える。

 

『START・YOUR・ENGINE!!』

 

「変身!」

 

『DRIVE!!TYPE!!SPEED!!』

 

ドライブに変身し、ハンドル剣を構えロイミュードに言う。

 

「さぁ、ひとっ走り、付き合えよ!」

 



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チェイスとは誰なのか

久々の更新です。


「せいっ!」

 

ハンドル剣を手に、ロイミュードへと斬り掛かる。

 

ロイミュードは持っていたチャクラムで俺の剣を受け止め、チャクラムを使い俺を切り裂く。

 

その攻撃を躱しながら、俺はシフトレバーを操作する。

 

『SP!SP!SPEED!』

 

スピードを上げ、そのままハンドルを回す。

 

切れ味が上がり、俺はロイミュードの周りを動き回りながら斬りつける。

 

「どうだ!少しは襲われる恐怖を理解できたか!」

 

「くっ……舐めるな!」

 

ロイミュードは今度は左右の手から三枚ずつ、合計六枚のチャクラムを取り出す。

 

それを同時に俺に投げつけ、攻撃する。

 

ハンドル剣とタイプスピードの速さを活かしてチャクラムを弾くが、チャクラムの一つが俺の手に当たりハンドル剣を弾く。

 

「しまった!」

 

『佑一!前だ!』

 

ベルトさんに言われ、前を見るとチャクラムの一つが俺の眼前へと迫っていた。

 

避けられない!

 

そう思った時、そのチャクラムを一台のシフトカーが弾いた。

 

それはジャスティスハンターだった。

 

「すまない、ハンター」

 

ハンターに感謝し、ハンドル剣を拾って構える。

 

「くそっ!ここは撤退だ!」

 

「逃がすと思うか!」

 

走って、追い掛けようとするがロイミュードは光弾を撃ち、怯ませてくる。

 

ロイミュードは走って病院の外に出ると、バット型の下級ロイミュードを呼び、空を飛んで逃げる。

 

「くそっ!」

 

足で地面を蹴るように悪態を吐く。

 

すると、俺の前にトライドロンが現れ、扉が開く。

 

『佑一!トライドロンで追うぞ!』

 

「ああ!」

 

運転席に乗り込み、ハンドルを握ってアクセルを踏む。

 

運転の仕方は烏間先生から教わった。

 

チャクラムロイミュードは下級ロイミュードの脚を掴んで悠々空を飛んでる。

 

「逃がさねぇぞ!」

 

他の車を追い越し、俺は徐々にチャクラムロイミュードと下級ロイミュードとの距離を縮めて行く。

 

チャクラムロイミュードは俺に気付くと、下級ロイミュードに指示を出し、さらに上空へと登る。

 

「くそっ!このままじゃ逃げられる!ベルトさん!なんか方法はないのか?」

 

『待ってくれ!今考え……佑一!アレを使うんだ!』

 

ベルトさんが言う、その先には立体駐車場があった。

 

「なるほどな」

 

俺はトライドロンをそっちに向け、どんどん上に登って行く。

 

「でも、ベルトさん。奴等に追付けても、どうやって倒す?」

 

『安心した前、私にいい考えがある。………タイヤフエール!』

 

最上階に着くと、ベルトさんの声と共に、スパイク、フレアのタイヤがトライドロンのタイヤにくっ付く。

 

『このまま奴等に向かってアクセル全開だ!』

 

「よし!」

 

アクセルを全開にし、そして、立体駐車場の屋上から飛び出す。

 

そして、ちょうどチャクラムロイミュードと下級ロイミュードの真横に飛び出す。

 

スパイクタイヤが棘を下級ロイミュードに撃ち込むと、チャクラムロイミュードはそのまま下に落ちる。

 

そして、フレアの力でトライドロンが炎を纏い、下級ロイミュードを貫く。

 

見事トライドロンで着地をし、地面に落ちたコアを踏み潰す。

 

トライドロンから降り、俺はチャクラムロイミュードを見下すように達、ハンドル剣を構える。

 

「もう終わりだ。諦めろ」

 

「うるさい!俺が…………負けるか!」

 

チャクラムを出し、四方八方に投げる。

 

俺はそれをハンドル剣一本で弾き、叩き落とす。

 

「チャクラムは落とせるけど、厄介だな。近づけれない」

 

『奴の動きを封じよう』

 

「なら、良い奴を知ってる」

 

ケースからジャスティスハンターを取り出し、シフトスピードを入れ替える。

 

『タイヤコウカーン!JUSTICE!HUNTER!』

 

パトカーのサイレンの様なタイヤがくっつき、手には鉄格子の様なフリスビーが装備される。

 

「何だコレ?」

 

使い方が分からず悩んでると、チャクラムが飛んでくる。

 

俺は思わず、鉄格子を振り、チャクラムを叩き落とす。

 

「こうじゃねぇよな」

 

苦笑いしつつ、鉄格子の様なフリスビーを投げ、キーを回してレバーを倒す。

 

『HUN!HUN!HUNTER!』

 

投げた鉄格子の様なフリスビーはチャクラムロイミュードの頭上で大きくなり、チャクラムロイミュードの周りに鉄の棒を撃ち込み、その上に蓋をする。

 

捕獲完了だ。

 

チャクラムを使い出ようとするが、チャクラムが檻に当たると、電流が流れチャクラムロイミュードにダメージを与える。

 

『ヒッサーツ!FULLTHROTTLE!HUNTER!』

 

必殺技を発動させると、俺の周りにタイヤが現れ、俺はそれにはじき出されるように飛び出す、それを数かい繰り返し、そして、拳を握り、ロイミュードへと向かう。

 

俺が当たる直前で檻が空き、俺は檻にぶつかることなく、ロイミュードに拳を叩き込む。

 

「ぐああああああああああああ!!?」

 

チャクラムロイミュードは断末魔の様な悲鳴を上げ、爆散し、コアを散らした。

 

「お前が今日、人々に与えたものは、そんな痛みなんかじゃ済まないんだぞ」

 

俺は誰に言う訳でもなくそう言った。

 

『NiceDrive!よくやったな、佑一』

 

「ああ………これで、ロイミュードは残り104体か」

 

『先は長いな』

 

「大丈夫さ。俺とベルトさんの二人なら必ず乗り切れる!」

 

根拠のない俺の言葉にベルトさんはそうだなっと言い、俺はトライドロンに乗ってその場を離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「またしても友達が減ったか」

 

「ありえない!チャクラムロイミュード、054は今いる進化態の中でもあれほど強く、威圧的で、破壊的な力を持っています!それがやられるとは……………」

 

赤いコートを着た青年の傍で眼鏡を掛け、手には電子タブレットを持った男が狼狽えるように言う。

 

その時、一台のバイクが二人の後ろに止まり、背後に立つ。

 

「来たか、チェイス」

 

紫と黒のライダースーツ風のジャケットを身に纏った少年は、ヘルメットを脱ぐと、二人を見て、言う。

 

「次は……どいつを倒せばいい?」

 



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ビッチはE組で何を思うのか

病院での襲撃事件の翌日

 

俺はいつもの坂道を上っていた。

 

正直、陽斗とのわだかまりが完全に解けたとは言えない。

 

「どんな顔して会えばいいんだか…………」

 

『普通に挨拶したまえ。自分から歩まなければ、直る関係も直らない』

 

鞄の中からベルトさんがそう言ってくる。

 

「挨拶ね」

 

そう呟きながら、靴を仕舞い教室へと入る。

 

すると陽斗と目が合った。

 

俺は陽斗の近くに近づき、顔を合わせず――

 

「………よぉ」

 

そう言った。

 

すると陽斗はきょとんとした表情になると、すぐに昔の様に笑い――

 

「よぉ!」

 

そう言ってくれた。

 

ちょっとだけ嬉しく感じた。

 

そしてHRが始まる。

 

「今日から外国語の臨時講師を紹介する」

 

「イリーナ・イェラビッチと申します。皆さんよろしく! 」

 

新しい教師イリーナ先生が何故か殺せんせーの腕に抱き付き言う。

 

殺せんせーはつけていたヅラを外すが、構いませんと言う。

 

「そいつは若干特殊な体つきだが気にしないでやってくれ。本格的な外国語に触れさせたいとの学校の意向だ。英語の半分は彼女に受け持ちさせるが、問題ないな? 」

 

「………仕方ありませんねぇ」

 

渚は殺せんせーが人間の女性に抱き付かれたらどのような反応をするかを記録するためにメモ帳を取り出す。

 

反応は……………普通にデレデレだった。

 

「あぁ。見れば見るほど素敵ですわ。その正露丸のようなつぶらな瞳。曖昧な間接。私、虜になってしまいそう♪」

 

「いやぁ、お恥ずかしい」

 

いや、そこがツボな女なんていないだろ。

 

ま、どちらにしろあの理事長が俺達E組の為にここまで献身的になる理由は無い。

 

恐らく、烏間先生が用意した殺し屋。

 

それも様子からして色仕掛けを専門に扱う奴だな。

 

そんな手にこうも易々と引っ掛かるとは殺せんせーにはがっかりだ。

 

それとも何か手でもあるのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

休み時間になり、俺達は校庭で暗殺サッカーをする。

 

殺せんせーがキープするボールを奪いつつ、暗殺を行う。

 

これが結構難しい。

 

「ヘイ!暗殺!」を掛け声に全員で殺せんせーを襲うが、誰一人としてダメージを与えてる奴はいない。

 

「殺せんせー! 」

 

暗殺サッカーに精を出していると、イリーナ先生が走ってきた。

 

「烏間先生から聞きました。すごく足が早いんですって?」

 

「いえ、それほどでも」

 

「お願いがあるの、一度本場のベトナムコーヒーが飲みたくて。私が授業してる間にお願い出来ないかしら? 」

 

「お安いご用です。ベトナムに良い店を知っています」

 

そしてマッハ20のスピードで飛んでいってしまった。

 

それと同時にチャイムが鳴り、磯貝がイリーナ先生に声を掛ける。

 

「……えーと……イリーナ先生? 授業始まるし教室戻りますか? 」

 

「授業? あぁ。適当に自習でもしなさい。それと、ファーストネームで気安く呼ぶのやめくれる? あのタコの前以外では先生を演じようとは思ってないし、「イェラビッチお姉様」と呼びなさい」

 

凄い豹変だ。

 

殺せんせーの前ではせんせーに惚れてる女教師。

 

それ以外の前では暗殺者。

 

見事な使い分けだと思う。

 

だが、行き成りの事に全員が唖然としてる。

 

そんな空気の中、最初に沈黙を壊したのは赤羽だった。

 

「で、どーすんの?ビッチ姉さん」

 

「略すな!!」

 

「あんた殺し屋なんでしょ? クラス全員でも殺れないモンスターにビッチねえさん1人で殺れるの? 」

 

「ガキが。大人には大人のやり方があるのよ………潮田渚ってあんたね? 」

 

そう言うと、渚に近づき行き成りキスをする。

 

それもディープキス、通称大人のキスだ。

 

数秒で渚は骨抜きにされ、その場に崩れ落ちる。

 

「後で、職員室に来なさい。アンタが調べた情報聞きたいわ。その他にも、有力な情報を持ってる子は話に来なさい!男には良いことしてあげるし、女子には男も貸してあげる。技術も人脈もすべてあるのがプロの仕事よ。ガキは外野でおとなしくしてなさい………あと、少しでも私の暗殺の邪魔したら、殺すわよ」

 

やって来た屈強な男達からデリンジャーを受け取り、そう言い放つ。

 

プロとしての重みのある殺す。

 

恐らく全員がそう実感したに違いない。

 

そして、それと同時に、全員が思ったことがある。

 

それは

 

 

 

 

 

 

 

 

《この先生は………嫌いだ》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから、ビッチは渚から情報を聞きだすと、それを元にタブレットを使い操作してる。

 

恐らく、作戦を立てているんだろう。

 

授業そっちのけで。

 

「なービッチねえさん。授業してくれよ-」

 

陽斗がビッチにそう言うと、ビッチは椅子の上でずっこけた。

 

「そーだよ、ビッチねえさん」

 

「一応先生だろビッチねえさん」

 

「ビッチビッチうるさいわね!まず正確な発音が違う!あんたらBとVの区別もつかないのね!正しいVの発音は歯で下唇を噛む!」

 

その言葉に全員が従う。

 

「そのまま一時間。これで静かになったわ」

 

《なんだこの授業……!》

 

ビッチのおざなりな授業に全員が怒り心頭になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五時間目の体育の時間になる。

 

今日は銃の訓練だ。

 

エアガンを持ちながら、俺はふとあることが気になり烏間先生に近づく。

 

「烏間先生。ドライブの武器に銃とかはないんですか?」

 

「ああ、現在こちらで銃の方も開発を進めてる。近日中には完成するだろう」

 

戦う手が増えるのは嬉しい。

 

それに、他のシフトカーの力もある。

 

ちなみに協力者になった神崎にはドリームベガスが常について回っている。

 

なんでも初めて会った時から親近感が湧いてるそうだ。

 

すると、殺せんせーがビッチに連れてかれ、体育倉庫にへと連れてかれてるのが見えた。

 

「おいおいマジか。二人で倉庫にしけこんでったぜ」

 

「……なーんか、ガッカリだよな。あんな見え見えの女に引っ掛かって」

 

三村と木村の二人がそんな殺せんせーに呆れて声を上げる。

 

「烏間先生……私達、あの女の事好きになれません」

 

「……すまない。プロの彼女に一任しろと国の指示でな」

 

片岡がみんなの気持ちを代弁するが、烏間先生は申し訳なさそうに謝る。

 

「泊君は、あの人、どう思う?」

 

ふと神崎が隣りに立ち、そんなことを聞いて来る。

 

「俺も好きになれないよ。でも、一日で全ての準備を整える手際と、それをすぐに実行する行動力。間違いなく一流だと思う」

 

その直後、体育倉庫から銃声が聞こえた。

 

銃声に驚き、全員がそちらを向く。

 

無論、俺もだ。

 

だが、俺達が使ってるエアガンの様な発砲音ではなく、実銃中の様な轟音だ。

 

数秒ほど銃声が響くと、その後、倉庫からビッチの悲鳴とヌルヌルという効果音が聞こえた。

 

「な、なに!?」

 

「銃声の次は鋭い悲鳴とヌルヌル音が!?」

 

ヌルヌル音が聞こえる度に、ビッチの悲鳴が聞こえる。

 

「執拗にヌルヌルされてるぞ!!」

 

「行ってみよう!」

 

全員で倉庫へと向かうと、殺せんせーがつぎはぎの服を着て出てきた。

 

「殺せんせー!」

 

「おっぱいは?」

 

岡島、そういう聞き方はないと思うぞ。

 

「もう少し楽しみたかったんですが、皆さんとの授業の方が楽しいですからね。六時間目の小テストは手強いですよ」

 

「あ、あはは………まぁ、頑張るよ」

 

渚が力無く答えると、倉庫からビッチが現れた。

 

何故かブルマ姿で。

 

《健康的でレトロの服にされている!!》

 

「まさか……わずか一分で、肩と腰のこりをほぐされ、オイルと小顔とリンパのマッサージされて……早替えさせられて………その上………ヌルヌルとあんなこと…………」

 

そこでビッチは力尽き倒れる。

 

……………………だから、ヌルヌルってなんだよ?

 

「殺せんせー、何したの?」

 

「……大人には大人の手入れがありますから」

 

「悪い大人の顔だ!!」

 

「さ、教室に戻りますよ」

 

渚の叫びをスルーし、殺せんせーと共に、校舎へと戻る。

 

……………ヌルヌルってなんだよ?

 

殺せんせーによってマッサージとヌルヌルをされたビッチはいらいらとしながらタブレッドを操作する。

 

黒板には自習と書き込み授業そっちのけだ。

 

自習しようにも、殺せんせーみたいにプリントを用意してくれるわけでもないので、自習しようにもできない。

 

それを思ったのか、男子委員長の磯貝がビッチに声をかける。

 

「先生、授業してくれないのでしたら、殺せんせーと変わってください。俺たち、今年受験なんで」

 

「はっ!ガキはお気楽でいいわね。地球の危機と受験を比べられるなんて。それに、聞けばあんたたちE組ってこの学校の落ちこぼれだそうじゃないの」

 

その言葉に全員の雰囲気が代わる。

 

明らかに苛立ってる。

 

「それより、あんたたち私に協力しなさいよ。あいつの暗殺に成功したら一人五百万分けて上げる。勉強するよりずっと有益でしょ」

 

その瞬間、ビッチの横を消しゴムが通り、黒板に当たる。

 

消しゴムは跳ね返り、教卓の上に転がる。

 

「出てけよ」

 

誰かがそう呟くと同時に、全員が口々に騒ぐ。

 

「出てけ、くそビッチ! 」

 

「殺せんせーと代わってよ! 」

 

「な、なによあんた達! 殺すわよ!? 」

 

「上等だやってみろコラァ! 」

 

「そーだそーだ! 巨乳なんていらない! 」

 

「そこ!?」

 

約一名、変なことを言ってるが気にせず、俺も叫ぶ。

 

騒ぐ俺たちに耐え切れず、ビッチは慌てて教室を出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、教室で、あれから少しだけ仲良くなった渚と赤羽の二人と話してるとビッチが教室に入ってくる。

 

そういえば次は英語だったな。

 

ビッチは何も言わずチョークで黒板に英文を書く。

 

「You're incredible in bed! Repeat!

 

いきなり英文を書いて、それを読めと言って来た。

 

全員がぽかーんとする。

 

「ほら! 」

 

『ユ、ユーアーインクレディブルインベッド』

 

全員、ためらいがちに言う。

 

「アメリカであるVIPを暗殺した時、まずそいつボディガードに色仕掛けで迫った時に、言われた言葉よ。意味は『ベッドでの君は凄いよ……♪』」

 

中学生になんちゅう英文を読ませやがる!

 

「外国語を上手いかつ手早く習得するならその国の恋人を作るのが手っ取り早いとよく言われるわ。相手の気持ちを知ろうとして、必死で言葉を理解しようとするからね。私はその方法で色々な言語を身に付けてきたわ。だから私の授業では外人の口説き方を教えてあげる。身に付けておけば実際に外国人と対話する時、必ず役に立つ。受験に必要な勉強はあのタコに教わりなさい。私が教えるのは実践的な会話術で、中間にも定期に期末テストにも受験にも出ないわ。もしそれでもあんたたちが私を先生として認められないっていうのなら、その時は暗殺は諦めて出ていく。それなら文句ないでしょ? …………後、色々悪かったわよ」

 

謝るビッチに全員が驚き、そして次には

 

『あははははは!』

 

みんな一斉に笑い出した。

 

「何ビクビクしてんのー。さっきまで殺すとか言っちゃってたのにさ」

 

「なんか普通の先生になったな」

 

「もうビッチ先生なんて呼べないね」

 

ビッチの眼に涙が浮かぶ。

 

「あ、あんた達。分かってくれたのね」

 

「考えてみりゃ先生に向かって失礼だったな」

 

「うん。呼び方変えないとね」

 

「じゃあ、ビッチ先生で」

 

赤羽の発言にビッチもといビッチ先生は涙が引っ込む。

 

「せ、折角だからこの際、ビッチから離れましょ? 気安くファーストネームで呼んで良いのよ?」

 

「今更イリーナ先生って呼ぶのに違和感あるし」

 

「よろしくな、ビッチ先生」

 

口々にビッチ先生と呼び、ビッチ先生は体を震わせる。

 

「キーーーッ! やっぱあんたら嫌いよ!」

 

何はともあれ、これでビッチ先生も俺たちの仲間となった。

 




今回セリフが少ないですね。

次回は集会の話となります。

あの二人が登場となります。


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番人とはなんなのか

全校集会。

 

こういったことはどこの学校でもある。

 

だが、E組は、他のクラスよりも早く整列してないといけない。

 

だが、E組の校舎がある旧校舎は山の上。

 

本校舎からはかなりの距離があるため昼休み返上で本校舎へと向かわなくてはいけない。

 

本校舎まで行く道中、岡島が川で溺れたり、岡島が蛇に襲われたり、岡島が落石にあったり、岡島が蜂に追い掛け回されなどの、ハプニングがあった。

 

やっとの思い出本校舎に着き、E組のメンバーが整列をする。

 

その後、他のクラスが整列を始めるが、他のクラスはE組のみんなを指差して笑ったり、態々声をかけて馬鹿にしてくるなどする。

 

「おい、泊だぜ」

 

「どんなツラしてここに来てるんだろうな」

 

余所のクラスから、おそらくサッカー部の人間と思われる奴からそんな声が聞こえる。

 

俺はそれを無視し列に並ぶ。

 

全クラスが並び終わり、生徒会からのプリントが配られるがE組の分はなかった。

 

「すみません!E組の分がまだなんですが」

 

磯貝が手を上げて言うと、生徒会のやつはにやっと笑う。

 

「あれ?おっかしいなー、すみませーん。3-Eの分は忘れてきてしまったみたいです。3-Eの方たちは覚えて帰ってください。ほら、記憶力とか鍛えないとでしょう?」

 

生徒会の奴のセリフに全校が笑う。

 

胸糞悪い。

 

すると、風が吹きE組の皆の手元にはプリントがあった。

 

そして、俺の手元にも。

 

これって…………手書きのプリント?

 

「磯貝君、問題はありませんね。手書きのコピーが全員分あるようなので」

 

いつの間にか烏間先生の隣にはお世辞にもうまいとは言えない変装をした殺せんせーがいた。

 

磯貝はうなずき、手を上げる。

 

「すみません。プリントあったんで、続けて下さい」

 

「嘘!?なんで!?……誰だよ、笑いどころ潰した奴………………んんっ!では、続けます」

 

生徒会の奴は悔しそうに生徒会からの連絡を報告する。

 

「それでは最後のお知らせです。校長の柳校長先生が本日より一身上の都合によりご退職されました。それにつきまして、新任の校長先生の就任と、もう一人新たな先生の就任を発表します」

 

そう言うと、教壇に二人の教師が上がる。

 

眼鏡を掛けた紳士の様な老人が前に出て挨拶をする。

 

「ご紹介に預かりました。新たに校長に就任しました真影壮一と言います。皆さんをE組の様にならないように、この学園をよりよい環境にするため尽力させてもらいます。」

 

真影校長は俺達の方を見て、嫌みたらしく言ってくる。

 

そして、もう一人の教師が挨拶をする。

 

「四月の入学式・始業式に諸事情で参加できませんでしたので、この場を借りてご挨拶申し訳上げます。本日からこの学園で理科の教鞭を取ります、能美壮と申します。教師としてはまだ新米ですが、皆さんの為になれるようにしっかりと学ばさせてもらいます。皆さんもE組の様にならないように、しっかりと勉学に励みましょう」

 

能美先生も嫌みたらしくE組を見ながら言ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

集会の後、残りの授業を終え俺は帰路に着いていた。

 

隣には神崎がいる。

 

「相変わらずのE組イビリだったな」

 

「そうだね。でも、まさか新任の先生からもされるとは思わなかったよ」

 

「この学校は良くも悪く有名だしな」

 

そう話してると、俺と神崎は一瞬体が重くなるのを感じた。

 

俺はそれを感じた方向を向くと、そちらから何かが壊される音が聞こえた。

 

「ロイミュードか!」

 

「泊君!」

 

「行ってくる!神崎、鞄頼む!」

 

鞄からベルトさんを取り出し、残りを神崎に預ける。

 

「烏間先生に連絡を頼んだ!」

 

そう言い、俺は走り出す。

 

行くとそこには下級のロイミュードが手当たり次第に街を襲っていた。

 

「まだだ!俺が進化体になるにはこんなもんじゃ足りない!もっと人間の絶望を!」

 

「そこまでだ!」

 

ベルトさんを腰に巻き付け、ロイミュードの前に立つ。

 

番号は032か。

 

「悪いが、ここでお前を破壊させてもらう!」

 

『START・YOUR・ENGINE!!DRIVE!!TYPE!!SPEED!!」

 

仮面ライダードライブに変身し、ハンドル剣を構える。

 

その瞬間、ロイミュードの背後から誰かが現れる。

 

紫と黒のライダースーツ風のジャケットを身に纏ったそいつは、乗って来たバイクを降りヘルメットを取る。

 

その姿は俺と同い年ぐらいの少年だ。

 

少年は立ち上がり、ロイミュードに近づく。

 

「おい!近づくな!危険だ!」

 

叫ぶが少年は無視し、どんどんロイミュードに近づく。

 

「お、お前は……死神!?」

 

しかし、ロイミュードはその少年を恐れるように後ずさりする。

 

すると少年は手に、メリケンサックと銃を組み合わせたようなものを取り出し、それを胸の前に持っていき、左手の掌に押し当てる。

 

《Break up》

 

その音声と共に音が鳴り、少年の体に寄せ集めの様な機械がくっ付き、体を覆う。

 

すると、そいつは走り出し、ロイミュードへと攻撃を仕掛けた。

 

《Gun》

 

すかさず銃口をロイミュードに向け連射し、攻撃は全部ロイミュードに命中する。

 

そして油断したところに再び武器の銃口を押す。

 

《Break》

 

ロイミュードに接近し、銃口の下にあるメリケンサックの様な部分を使い攻撃する。

 

「ヤダ!死にたくない!」

 

「安心しろ。死にはしない。作り直すんだ」

 

そう言い、とどめの一撃を当て、ロイミュードは爆発する。

 

爆炎から現れたコアはそいつが取り出した黒いシフトカーの様な物で回収した。

 

「お、お前は………」

 

俺はその光景に呆然とし、そいつに尋ねる。

 

そいつはゆっくりと俺の方を向き、答えた。

 

「俺の名は魔進チェイサー。ロイミュードの番人にして、死神だ」



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チェイサーの目的とは何なのか

「ふん!」

 

「ぐあっ!?」

 

チェイサーに殴り飛ばされ、俺は地面を転がる。

 

「コイツ、強い…………」

 

『他のロイミュードとは桁違いだ!』

 

「こんな弱い奴が、四体のロイミュードを、俺の仲間を倒していたとはな」

 

「仲間だと?」

 

腹を押さえながら立ち上がり、チェイサーを見る。

 

「お前はその仲間を今攻撃してただろ!それも、命乞いをした奴を!」

 

「殺していない。俺はロイミュードの肉体を破壊しても、コアは破壊しない。そして、壊すには理由がある。目立った行動は、俺達、他のロイミュードにとって迷惑だ。だから、破壊し、肉体を作り直す」

 

「どんな理由にしろ、お前が仲間を破壊したのは事実だ!」

 

ハンドル剣を握りしめ、走り出す。

 

『止めろ、佑一!怒りに任せて戦ってはダメだ!』

 

「うおおおおおおお!」

 

ベルトさんの声を無視し、俺は突っ込む。

 

「ふん」

 

チェイサーを向かってくる俺に向けった、銃口を手の平で押し、向ける。

 

《Gun》

 

光弾が俺に向かって撃たれる。

 

「ぐあっ!」

 

いくつもの光弾が俺に当たり、俺はハンドル剣を手放し崩れ落ちる。

 

「終わりだ、仮面ライダードライブ」

 

チェイサーが銃口を向ける。

 

「ダメ!」

 

その時、神崎が俺の前に立ち、俺を守るように立つ。

 

「神崎!何やってる!早く逃げろ!」

 

「ダメ!今ここで逃げたら、泊君やられちゃう。それに、私は逃げない!」

 

「くっ!」

 

体をなんとか動かし、神崎を下がらせ前に立つ。

 

「俺の事はいい!早く逃げろ!」

 

その時―――

 

「…………」

 

チェイサーは無言で武器を下ろし、変身を解いた。

 

「……なんのつもりだ?」

 

「……俺の目的はドライブ、貴様の排除だ。人間を巻き込むつもりはない」

 

そう言って、チェイサーはヘルメットを被り、バイクに跨り、どこかへと去って行った。

 

「………なんだったんだ、アイツは?」

 

「見逃してくれた……のかな?」

 

『分からない。取り敢えず、烏間に報告しよう。トライドロンを呼ぶ』

 

ベルトさんはトライドロンを呼びよせ、俺は助手席に神崎を乗せ、E組へと向かった。

 

「ロイミュードを破壊するロイミュード……魔進チェイサーか」

 

「本人が言うには、肉体を破壊し、コアは回収してるって言ってました」

 

「コアの回収?どうやってだ?」

 

「黒いシフトカーに似た物でコアを回収してました」

 

「黒いシフトカー?何はともあれ、ロイミュード側に復活の手段があるとなれば、今後はコアを確実に破壊しなければならない。そして、魔進チェイサー。そいつの事はこちらで調べよう。今日はもう帰って良い。ご苦労だった」

 

烏間先生に頭を下げ、俺と神崎はそのまま下校した。

 

しかし、魔進チェイサー。

 

アイツ、どうも他のロイミュードは違う気がする。

 

『……俺の目的はドライブ、貴様の排除だ。人間を巻き込むつもりはない』

 

アイツは、本当に敵なのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれが仮面ライダードライブか」

 

椚ヶ丘にあるネット喫茶。

 

そこにある個室で、白に赤いラインが入ったパーカーを着た少年が、佑一の移った写真、そして、佑一がドライブに変身する所を収めた写真、チェイサーと戦ってる写真を見る。

 

「おもしろそうじゃん」

 

少年はにやっと笑い、荷物を手に個室を出ようとする。

 

「おっと、忘れる所だった」

 

そう言い、個室の中にあるパソコンの隣に置いていた、白いバイクのオモチャのようなものを手に取り、その場を後にした。

 




最後に出てきた少年は一体誰なのか?

次回は中間テストの回です。


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泊佑一の学力はどれ程なのか

俺と神崎は、現在ドライブピット、トライドロンの整備に使ったりする場所に来ていた。

 

「烏間先生、俺と神崎を呼んだ理由は何ですか?」

 

「それを今から話す。まず、神崎さん。君には君自身の自衛手段となる物を渡す」

 

そう言って取り出したのは、神崎の履いてる靴と似た靴だった。

 

「これには重圧発生器が仕込まれていて、威力の高い蹴りが出せる。試しに、そこの鉄板を蹴ってみなさい」

 

烏間先生が指さすところに何故か鉄板が立て掛けられていた。

 

神崎はその前に立ち、そして体育の授業で習った格闘技の蹴りを放つ。

 

すると、鉄板は凹み、そして、二撃目の蹴りで砕けた。

 

「凄い威力だな。予想以上だ」

 

「泊君、どうだった?」

 

神崎が近づいて聞いて来る。

 

「ああ、凄かったと思うぞ。だけど………そのスカートが……」

 

神崎はきょとんとするが、とたんに意味を理解しスカートの裾を抑える。

 

さっきの蹴りの瞬間、烏間先生の位置からは見えないが、俺の位置からは神崎のスカートの中が見えてしまった。

 

「………見た?」

 

「………ああ」

 

俺も神崎も顔を真っ赤にして俯く。

 

『若いと言う物はいいな、烏間』

 

「そうかもしれんな」

 

「……って、用事ってこれだけですか?」

 

「いや、君にも要件はある。例の銃の方の完成はまだだが、コイツを君に」

 

そして、小型のジュラルミンケースを開けるとそこにはシフトスピードより一回り大きい黒いシフトカーと緑色のシフトカーがあった。

 

「黒いのがシフトワイルド、緑がシフトテクニック。ドライブの新戦力だ」

 

「ドライブの?」

 

「ああ、シフトワイルドを使えばタイプワイルドに変身し、力が上がる。テクニックは、高精度の射撃や精密機械の操作などの精密作業に特化したタイプに変身できる」

 

「凄い。これならチェイサーにも」

 

『ただ、シフトワイルドを使うには強い情熱の心、テクニックにはクールな心が必要になる』

 

なんでそんな設定なんだ?

 

正直、情熱もクールも俺のキャラじゃねぇよな。

 

まぁ、なんとかなるだろう。

 

「要件は以上だ。そう言えば、もうすぐ中間だったな。頑張りなさい」

 

「「はい」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さて、始めましょう』

 

翌日、登校すると、殺せんせーは高速で動き分身体を沢山作っていた。

 

「学校の中間テストが迫ってきました」

 

「そうそう」

 

「そんなわけでこの時間は」

 

「高速強化テスト勉強を行います」

 

分身体で分けて喋るな。

 

なんか変は聞こえ方する。

 

「「先生の分身が一人ずつマンツーマンで」」

 

「「それぞれの苦手科目を徹底に復讐します」」

 

丁寧に頭に鉢巻をつけてる。

 

「なんで俺のはちまきがNARUTOなんだよ!?」

 

「寺坂君の場合、苦手科目が複数ありますからねぇ」

 

寺坂も大変だなぁ。

 

ちなみに俺の所の分身には社会とあった。

 

それにしても、これだけの分身を作って体力は持つのか?

 

ふと、窓の外を見ると、分身の一体が休憩していた。

 

いや、むしろ疲れね?

 

そう思い、正面を向き直すと、殺せんせーの顔が歪んでいた。

 

「カルマ君!急に暗殺しないでください!それ避けると残像が全部乱れるんです!」

 

結構繊細な分身だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

『さらに頑張って増えてみました。さぁ、始めましょう』

 

何があった?

 

確かに分身は増えたが、残像が雑だったり、キャラ違かったりしてる。

 

授業が終わると、殺せんせーはグロッキー状態になり、顔は真っ赤になり茹タコ状態になってる。

 

「流石に相当疲れたみたいだな」

 

「今なら殺れるかな?」

 

「なんでここまで一生懸命なのかね~」

 

前原、中村の順に喋り、最後の岡島の疑問に殺せんせーは答えた。

 

「全ては君たちのテストの点を上げる為です。そうすれば」

 

 

『殺せんせーのお陰でいい点が取れたよ!』

 

『もう殺せんせーの授業無しじゃいられない!』

 

『殺すなんて出来ないよ!』

 

① 生徒たちの尊敬の眼差し

 

『先生!私達にも勉強を教えて♡』

 

② 評判を聞いた近所の巨乳女子大生

 

 

「と、言う具合に先生にとっていい事ずくめになるわけです」

 

絶対に、後者の女子大生が目当てだろ。

 

てか、存在自体が国家機密のアンタの情報が外部に漏れることはまずないだろ。

 

「いや、勉強はほどほどでいいいよな」

 

「なんたって暗殺すれば百億円だし」

 

『百億あれば成績悪くてもその後の人生バラ色だしさ』

 

「そういう考えをしますか!」

 

まぁ、確かに暗殺に成功すれば残りの人生は楽できるとは思うが………

 

「俺達エンドのE組だしな」

 

「勉強より暗殺の方が余程身近なチャンスなんだよ」

 

その言葉に殺せんせーは黙り込み、立ち上がる。

 

「分かりました。今の君たちに暗殺者の資格はありません」

 

その言葉に皆が唖然とする。

 

「全員校庭に出なさい。烏間先生とイリーナ先生も呼んできてください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殺せんせーの指示に従い、烏間先生とビッチ先生を連れて来ると殺せんせーは草や石で荒れてる校庭で、サッカーゴールをどかしていた。

 

何してるんだ?

 

「イリーナ先生。プロの殺し屋として貴方に伺います。貴方が仕事を行う時、用意するプランは1つですか? 」

 

「………いいえ。本命のプランが思った通り行く事なんて少ないわ。不測の事態に備えて、予備のプランを綿密に作っておくのが暗殺の基本よ。あんたの場合は規格外過ぎて全部狂ったわ」

 

「次に烏間先生。ナイフ術を生徒に教える時、重要なのは第一撃だけですか? 」

 

「…………第一撃はもちろん重要だが、次の動きも大切だ。強敵相手ならば、第一撃は高確率でかわされる。第二、第三をいかに高精度で繰り出すかが勝敗を分けると言ってもいい」

 

「とまぁ、この様に次の手があるからこそ暗殺者は自信を持って暗殺をします。しかし、キミらはどうです?俺達には暗殺があるから勉強なんていいやと目標を下げていますね。……それは、劣等感から目を背けて逃げているだけです……仮にせんせーが、教室から消えたら……他の暗殺者に殺されたら貴方達に残るのはE組としての劣等感しか残りません」

 

殺せんせーはクラスの皆に言う。

 

「だから、何が言いたいんだよ」

 

「つまり」

 

第二の刃を持たざる者に、暗殺者を名乗る資格なし

 

殺せんせーは校庭の中心で高速回転し、次の瞬間校庭は綺麗に整理されていた。

 

「校庭に雑草や石が多かったので少し手入れしました。先生は地球をも消せる超生物。この一帯を平らにすることも容易いこと。もしも君たちが自信の持てる第二の刃を示せなければ相手に値する暗殺者ではないとみ無、校舎ごと平らにして先生は去ります」

 

「それっていつまでに?」

 

渚が恐る恐る聞くと殺せんせーは笑って答えた。

 

「明日の中間テスト。クラス全員50位以内に入りなさい」

 

その答えに誰もが驚いた。

 

はっきり言って無謀にも程がある。

 

だが、殺せんせーは自信たっぷりに言う。

 

「君たちの第二の刃は既に先生が育てています。本校舎の教師に劣るほど、先生はトロい教え方をしていません。自信を持ってその刃を振ってきなさい。仕事(ミッション)を成功させ、恥じることのない笑顔で胸を張りなさい。自分たちが暗殺者(アサシン)であり、E組であることに!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テストは本校舎で受けるのが決まりの為、E組はテストの時、本校舎に移動しなければならない。

 

D組担任の大野っていう教師が試験監督を務めるが、指でリズムを刻むかのようにあからさまな集中乱しをしてくる。

 

「E組だからってカンニングなんかするんじゃないぞ。俺達本校舎の教師がしっかり見張ってるからなー」

 

だが、俺達はそんなものを気にも留めず、テストを続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テストが終了し、答案の返却後、烏間先生は本校舎に抗議の電話を入れていた。

 

全教科の出題範囲大幅変更。

 

それもテスト二日前に。

 

その情報をわざとE組には流さず、本校舎の連中のみに知らせ、理事長自らE組以外に授業を行ったそうだ。

 

周りの様子を見ると、全員が落ち込んでいる。

 

第二の刃を示すことが出来なかったからだ。

 

「先生の責任です。この学校の事を甘く見てました。…………君達に顔向けできません」

 

如何にも落ち込んでる様子の殺せんせーに向かって、赤羽が対先生ナイフを投げた。

 

案の定躱され、殺せんせーは怒る。

 

「カルマ君!先生は今落ち込んで……」

 

殺せんせーの最後の言葉も聞かずに、赤羽はテストを教卓にばら撒く。

 

赤羽業

合計点数:494点

186人中4位

 

「俺の成績に合わせて余計な範囲まで教えたからだよ。だけど、俺はこのクラスから出ていく気ないよ。前のクラスに戻るより、暗殺の方が断然楽しいし。でしょ、泊」

 

赤羽が俺の方を見ながら聞いて来る。

 

クラス全員が俺の方を向く。

 

「そうだな、赤羽」

 

そして、俺も教卓に答案用紙と成績表を置く。

 

泊佑一

合計点数:493点

186人中5位

 

その結果に、クラスがおおっ!っと声を上げる。

 

「で、そっちはどうすんの?まさか、全員50位以内に入らなかったからって理由付けて逃げ出す気?それってさ、ただ単に殺されるのが怖いだけなんじゃないの?」

 

「まさか、教育熱心な先生がこの程度で逃げ出すなんてことないですよね?」

 

そう聞くと、殺せんせーは顔を真っ赤にして怒る。

 

「にゅや――――――!逃げわけありません!!期末テストであいつ等にリベンジです!」

 



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修学旅行でおイタをする輩は誰なのか

「泊君、修学旅行の班、決まった?」

 

修学旅行間近になり、班活動で何処を周るかで盛り上がっていた。

 

「いや、まだ決まってない。それに、今更誰かの班に入れてもらうのもなぁ~」

 

「ならさ、私の班に来ない?」

 

「神崎の?」

 

「うん。渚君とか茅野さん、カルマ君に杉野君、奥田さんがいるよ」

 

そのメンツなら大丈夫か?

 

渚と赤羽、茅野ならそこそこ話すしな。

 

奥田さんとも別に仲が悪いわけでもないな。

 

杉野は…………ちょっと面倒だな。

 

ま、いっか。

 

「なら、頼めるか」

 

「うん」

 

そして、俺は神崎に連れられ、神崎たちの班に混じる。

 

「お、泊も一緒なの?」

 

「よろしくね、泊君」

 

「泊……」

 

杉野、そんなに睨むな。

 

別に神崎を取ったりしねぇよ。

 

てか、お前のでも無いけどさ。

 

「泊君、よろしくね」

 

「えっと、よろしくお願いします!」

 

茅野と奥田さんも挨拶してくれた。

 

取り敢えず、班はこれで大丈夫だろう。

 

今回の修学旅行は暗殺を兼ねた物だ。

 

殺せんせーは班ごとに付き添いをする。

 

そこを国が雇った狙撃手が、狙撃を行う。

 

俺達は狙撃手の手伝いをする。

 

成功したら貢献度に応じて、百億円の中から分配される。

 

狙撃手にとって殺り易い環境を整えるのが、俺達のすることだ。

 

「ふん。まだあんたらも餓鬼ねぇ。世界各国を渡り歩いた私から言わせてもらえば、国内の旅行なんて………」

 

「それじゃぁビッチ先生は留守番な」

 

「花壇に水あげといて」

 

「ここなんてどう? 」

 

「暗殺の兼ね合いを考えると………」

 

ビッチ先生そっちのけで、ルートを決め始めると。

 

「何よ! 私抜きで楽しい話しないでくれる!? 」

 

叫びながらデリンジャーを抜く。

 

「行きたいのか行きたくないのかハッキリ口で言えよ! 」

 

めんどくさい人だな。

 

「一人一冊です」

 

今度は殺せんせーが手に大量の本を持って入ってくる。

 

「重っ!」

 

「何これ、殺せんせー?」

 

「修学旅行のしおりです」

 

辞書だろ、コレ!

 

何処に千ページを超えるしおりがあるんだよ!

 

「イラスト解説の全観光人気スポット、お土産人気トップ100、旅の護身術入門~応用。昨日徹夜で作りました。初回特典は組立紙工作金閣寺です」

 

「どんだけテンション高いんだよ!?」

 

本当に重いな、このしおり。

 

人殺せるぐらいには固い。

 

「てか、先生なら京都まで一分で行けるでしょ」

 

「ええ、そうです。ですが、旅行と移動は違います。皆で楽しみ、皆でハプニングに会う。先生は皆さんと一緒に旅できるのが嬉しんです」

 

そう言う殺せんせーは本当に嬉しそうに語る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

修学旅行当日。

 

ここでもE組差別は起きる。

 

修学旅行恒例の話が始まり、いつも通りのE組弄りを受け、新幹線に乗り込む。

 

A~D組はグリーン車で、E組は普通車。

 

他にも、ビッチ先生が過激な服で着てきた事に烏間が怒り、普通の服に着替えさせたり、殺せんせーが駅中スイーツを買って乗り遅れたりなどがあった。

 

そして旅館に着くと、殺せんせーは酔っていた。

 

「新幹線とバスで酔ってグロッキーとは……」

 

岡野、片岡、磯貝の三人は殺せんせーに声をかけながらも、ナイフを振り下ろすが、全て躱される。

 

「殺せんせー、部屋で休んだら」

 

「いえ、この後、すぐに東京に戻ります。先生、枕を忘れてしまって」

 

そんな中、神崎は鞄の中にしまっておいた手帳が無いことに気付き、探していた。

 

その手帳には修学旅行の予定が纏めて書かれている。

 

「どう?神崎さん、日程表見つかった?」

 

「ううん……」

 

「神崎さんは真面目ですからねー。独自に日程を纏めているとは感心です。でもご安心を、先生の手作りしおりを持てば全て安心」

 

「それ持ちたくねぇから纏めてるんだろ」

 

「確かにバックに入れた筈なのに……どこかで落としたのかなー……」

 

結局、神崎の日程表は見つからず、そのまま一夜が開けた。

 

 

 

 

 

 

 

修学旅行二日目

 

俺達四班は殺せんせーを暗殺するためのコースを歩いていた。

 

「ここなら、狙撃には持って来いかもな」

 

「狙撃手の人に見えるかな」

 

「でもさぁ、京都に来た時ぐらい暗殺のこと忘れたかったよなー。いい景色だし、暗殺なんて縁の無い場所でさぁ」

 

杉野がそう言って来た。

 

「そうでもないよ、ちょっと寄りたいコースがあるんだ。すぐそこ」

 

渚に案内され全員が着いた場所には、石碑があった。

 

石碑には坂本龍馬・中岡慎太郎遭難之地と刻まれていた。

 

「坂本龍馬って……あの?」

 

「あ~、1867年龍馬暗殺。「近江屋」の跡地ね」

 

「ここから歩いてすぐの所にも本能寺もあるよ。当時と場所はズレてるけど」

 

「そっか、1582年の本能寺の変も暗殺の一種か」

 

「それだけじゃない。京都は当時日本の中心だった。それだけに多くの人間が狙われた。有名なものから知名度の低いものまで数えたら数えきれない。まさに暗殺の歴史が刻まれた街だ」

 

「なるほど、確かにこりゃ、暗殺旅行だわ」

 

杉野が納得し、俺たちは、次の目的地へと向かう。

 

次の目的地は祇園。

 

「へぇ~、祇園って奥に入ると人気ないんだね」

 

「一見さんお断りの店ばかりだから目的もなく来る人はいないし、見通しが良い必要もない、だから、私の希望コースにしてみたの。暗殺にぴったりなんじゃないかって」

 

流石は神崎だな。

 

良く調べてある。

 

だが、少々問題があるようだな。

 

「なんでこんな拉致やすい所来るかねぇ普通」

 

いかにも不良っぽい恰好をした奴等がぞろぞろと現れてきた。

 

「何? お兄さんら。観光が目的っぽくないね」

 

赤羽が挑発をする。

 

「男に用はねぇんだ。女置いて帰れ」

 

そう言った瞬間、赤羽が男の顎に掌底を撃ち込み、そのまま頭を電柱に叩き付けた。

 

「ほらね、渚君。目撃者がいなければ喧嘩しても問題無いでしょ」

 

赤羽が渚の方を見ながら言う。

 

「赤羽!」

 

俺は赤羽の背後から接近する男に向かって走り、蹴り飛ばす。

 

「サンキュー、泊」

 

謝り、次の不良に喧嘩を挑もうとした時背後から女子の悲鳴が聞こえた。

 

見ると、神崎と茅野が男に捕まっていた。

 

「チッ!」

 

赤羽が舌打ちをした瞬間、リーダー各と思われる男が、赤羽の頭を殴る。

 

「しまっ!」

 

「何処見てんだよ!」

 

倒れた赤羽に気を取られ、俺は背後からスタンガンを食らう。

 

「あがっ………」

 

意識を奪われ、俺はそのまま地面に倒れ込む。

 

そして、渚と杉野もやられ、神崎と茅野は連れて行かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆さん!大丈夫ですか!?」

 

意識を取り戻した時、奥田さんの声が聞こえた。

 

「奥田さん、無事だったんだね」

 

「すみません、思いっきり隠れてました」

 

「いや、正しいよ。向かって行って、捕まるよりずっといい」

 

謝る奥田さんに赤羽が声を掛ける。

 

「彼奴等、車のナンバー隠してたし、きっと盗難車、それもよくある車種。犯罪慣れしてやがる。通報してもすぐには捕まらないよ。てか、俺に直接処刑させて欲しいんだけど」

 

「でも、何処に向かったのか分からないんだぞ。どうするんだ?」

 

「大丈夫だ。渚、しおり、持ってないか?」

 

「え?持ってるけど」

 

「殺せんせーのことだ。こういう状況の時のマニュアルが書いてあるかもしれ」

 

俺の言葉に従い、渚は分厚いしおりを開く。

 

「いや、いくら殺せんせーでも、そこまでは」

 

「あった!」

 

「嘘!?」

 

杉野に続いて、俺達もしおりを覗くとやっぱり書いてあった。

 

「流石殺せんせーだ」

 

「こんなしおり見たことねぇーよ」

 

「色々書いてあるよ。『京都で買ったお土産が、東京で売ってた時のショックの立ち直り方』」

 

「何手先まで想定してるんだよ!?」

 

「『鴨川の縁でイチャつくカップルを見た時の寂しい自分の慰め方』とか」

 

「大きなお世話だ!」

 

「だが、これで少しは落ち着いただろ」

 

俺が言うと、杉野は俺の方を見る。

 

「冷静じゃない時ほど、人間は本来の力を発揮できない。殺せんせーのしおりのお陰で大分落ち着いたはずだ」

 

「泊君の言う通りだ。これで、今何をすべきが分かったよ。行こう、茅野と神崎さんを助けに」

 




次回、あの彼が登場。


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その少年の正体はなんなのか

しおりにある他県からの不良学生がたむろするだろう場所を記したマップに従い、俺達は虱潰しに当たって行く。

 

すると、運が良く俺達は一発目で見付けることが出来た。

 

殺せんせーの到着を待ってから、二人を助けようと思ったがどうも間に合いそうにもない。

 

だから俺達は到着を待たず、部屋に入り込んだ。

 

「な、テメーらは!!」

 

リーダー格の奴が驚き、俺達を見る。

 

「渚、1243ページ復唱してくれ」

 

「班員が何者かに拉致られた時の対処法。犯人の手かがりが無い場合、まず会話の内容や訛りなどから地元民であるかそうでないか判断する。地元民で無く更に、学生服を着ていた場合→1244ページ。考えられるのは相手も修学旅行生で旅先でオイタをする輩です」

 

「皆!」

 

「ど、どうしてここが!?」

 

「土地勘のないその手の輩は拉致した後遠くへは逃げない。近場で人目につかない場所を探すでしょうその場合は→付録134ページへ。先生がマッハ20で下見した拉致実行犯潜伏対策マップが役立つでしょう」

 

「凄いよなこの修学旅行しおり。完璧な拉致対策だ」

 

「やっぱ、修学旅行のしおりは持っとくべきだね」

 

『ねーよ!そんなしおり!』

 

不良たちの的確なツッコミが炸裂する。

 

「で、どすんのお兄さん達。こんだけのことしてくれたんだ。アンタらの修学旅行はこの後全部入院だよ」

 

赤羽は怒りを込めた言葉を吐く。

 

その時、背後から大きな足音が聞こえた。

 

「呼んどいたツレ共だ。これでこっちは十人。おまえらみたいな良い子ちゃんが見た事も無い不良共だ」

 

だが現れたのは丸坊主にぐるぐるメガネを付けた連中だった。

 

「不良などいませんねぇ。先生が全部手入れしました」

 

殺せんせーが黒子の恰好で不良共を倒していた。

 

「遅くなってすみません。この場所を君達に任せ、他の場所しらみ潰しに探していたもので」

 

「で、何その黒子みたいな恰好?」

 

「暴力沙汰ですので、この顔が暴力教師と覚えられるのが怖いのです」

 

月を破壊して、揚句地球を破棄する宣言をしてる生物が何を言う。

 

「渚君がしおりを持っていたから、先生にも迅速に連絡できたのです。これを期に、全員ちゃんと持ちましょう」

 

殺せんせーはそう言って、俺達の手に修学旅行のしおりを乗せる。

 

「先公だとぉ!?」

 

「ふざけんな!」

 

「ナメた恰好しやがって!!」

 

不良が殺せんせー目掛けて襲い掛かるが、殺せんせーは一瞬で倒した。

 

リーダー格を残して。

 

「ふざけるな?それは先生の台詞です。蝿が止まるようなスピードと汚い手で、うちの生徒に触れるなどふざけるんじゃない」

 

「………け!エリート校は先公まで特別所為かよ。テメーも肩書き見下してんだろ?馬鹿高校と思ってナメやがって!」

 

「…………先ほど君は彼等をエリートと言いましたが、エリートではありません。彼等は名門校の生徒ですが、学校内では落ちこぼれ呼ばわりされ、クラスの名前は差別の対象になっています。ですが、彼等はそこで様々なことに前向きに取り組んでいます。君たちの様に他人を水の底に引っ張るような真似はしません。学校や肩書きなど関係ない。清流に棲もうがドブ川に棲もうが前に泳げば魚は美しく育つのです。………さて、私の生徒達よ。彼等の手入れをしてあげましょう。修学旅行の基礎知識を、身体に教えてあげるのです」

 

殺せんせーの言葉を合図に、俺たちはもっていた修学旅行のしおりで不良共の頭を殴る。

 

これ、鈍器に丁度いいな。

 

そう思い、俺はすぐに神崎と茅野を助けに行った。

 

「二人とも大丈夫か?」

 

「う、うん、ありがとう」

 

「助かった~。ありがとね、泊君」

 

二人にお礼を言われると、俺は神崎の足元に落ちてた携帯に目を付け拾う。

 

「あっ……」

 

拾い上げると、神崎が短く声を上げた。

 

そこには、茶髪でアクセサリーをジャラジャラ付けた神崎の写真があった。

 

「これ………神崎か?」

 

「………うん。親が厳しくて、良い肩書きばかり求めて来るの。そんな肩書き生活から離れたくて、誰も私を知らない場所で遊んでたの。それが私がE組になった理由」

 

神崎は俯き言う。

 

「………そうか」

 

俺は携帯を操作し、画像を消すと、メモリーカードを取り出し、それも破壊する。

 

「過去なんかどうでもいいだろ。お前はベルトさんと同じ、俺の相棒だ。俺は気にしないし、大事なのは今だ」

 

「泊君………ありがとう」

 

神崎が笑ってそう言う。

 

「やっぱ、神崎には笑顔が似合うな」

 

そう言って立った瞬間、急に俺達の周りで爆発が起きた。

 

「うわっ!?」

 

「わあ!?」

 

「きゃあ!?」

 

「にゅや!?」

 

全員が様々な悲鳴を上げる。

 

すると不良の三人が立ち上がっていた。

 

そして、その三人はロイミュードの姿になり、その内一人は青で両手がハンマーの様に変化したロイミュードになった。

 

ロイミュードに変身すると同時に、どんよりが起き、全員の動きがゆっくりになる。

 

その中で動けるのは俺と神崎、そして殺せんせーだけだった。

 

「くそっ!」

 

俺は鞄からベルトさんを取り出し、腰に装着するとそのままロイミュード三体に攻撃をする。

 

「俺が相手だ!神崎、皆を頼む!」

 

そう言い、俺は三体を引き連れたまま、店の奥へと移動する。

 

奥の倉庫に移動し、俺はシフトスピードを取り出す。

 

「行くぞ!」

 

『START・YOUR・ENGINE!!DRIVE!!TYPE!!SPEED!!」

 

ドライブに変身したはいいが、相手は三体。

 

その内一体は、進化態。

 

俺の方が分が悪い。

 

「どうする、ベルトさん」

 

『こうなっては仕方がない。破壊は後回しにし、逃げることを考えろ。この状態での戦闘は危険だ』

 

「でも、コイツらを野放しには…………」

 

ハンドル剣を握りしめ、困っていると、急にエンジン音が聞こえて来た。

 

「なんだ?」

 

「なんだ、この音は!?」

 

ロイミュードたちの作戦ではないらしく、向うも困惑する。

 

すると、倉庫の壁をぶち破り、一台の白いバイクが乱入してくる。

 

白いバイクに乗ってる操縦者は、手に車輪が付いた様な銃を持ち、ロイミュードに向かって撃ち、俺の隣にバイクを止め、並ぶ。

 

「よぉ、ピンチかい?仮面ライダードライブ」

 

「………ア、アンタは?」

 

「自己紹介は後。まずはこっちが優先でしょ」

 

そう言うと、ソイツはヘルメットを脱ぎ、大きなバックルの様なものを取り出し、下腹部に当てると、ベルトが伸び、腰に装着される。

 

そして、白いバイクのオモチャのようなものを手に持ち、ベルトになったバックルの部分を持ち上げ、そこに入れる。

 

『まさか……それは!?』

 

ベルトさんが驚きの声を上げる。

 

《シグナルバイク!!》

 

「LET'S………変身!」

 

《ライダー!!マッハ!!》

 

その少年に白いアーマーが装着され、首にはマフラーがなびいていた。

 

「追跡!撲滅!いずれも………マッハ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「仮面ライダー…………マッハ!」

 

その少年、仮面ライダーマッハと名乗った少年は謎の爆発演出と共に、俺の助太刀として現れた。




ちなみに爆発演出はアメージング・サーカスがやってるってことで。


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マッハは何処からやってきたのか

「仮面ライダー……マッハ?」

 

『完成していたのか!?ネクストシステムが!』

 

「ネクストシステム?」

 

聞きなれない言葉に俺は首をかしげる。

「下級のロイミュード二体は俺がやる。アンタは、向うの進化態を頼むよ」

 

そう言うとマッハは、走り出し下級二体相手に戦い出す。

 

『とにかく、チャンスだ!今の内に進化態を!』

 

「あ、ああ!」

 

ハンドル剣を握りしめ、斬り掛かる。

 

しかし、ハンマーロイミュードはその攻撃を手のハンマーで防ぐ。

 

「くっ………硬っ!」

 

『ハンドル剣は無理だ!奴の体を削ろう!!ランブルダンプ!』

 

ベルトさんの声に反応して、ダンプカーのシフトカーが俺の元に来る。

 

「頼むぜ、ランブルダンプ」

 

シフトスピードを外し、ランブルダンプを入れ、レバーを倒す。

 

『タイヤコウカーン!!RUMBLE!DUMP!』

 

タイヤがランブルタイヤに変わり、右腕にドリルが装備される。

 

「こいつなら、奴の硬い表面を削れそうだ!」

 

そう言い、ドリルを起動させると、俺は荒ぶるドリルに振り回された。

 

振り回されるが、威力は凄まじくハンドル剣で傷一つ付けれなかったロイミュードの体は削られていた。

 

「うおおおおお!!?」

 

なんとか無理矢理操り、起動を止める。

 

「ダメだ!威力はあるけど、タイプスピードじゃ扱えない!」

 

『なら、タイプワイルドに乗り換えるだ!ワイルドなら使いこなせるはずだ!』

 

「でも、あれを使うには情熱の心が………」

 

『大丈夫だ。君は既にその心を持ってる』

 

「え?」

 

『君があの日、有希子を守ろうと決め、ドライブに変身した時。私は君の中で熱く燃える心を見た気がしたんだ。一見熱く見えなくても、私には分かる。君は、誰よりも熱い情熱を持ってる。自信を持ちたまえ。君ならできる』

 

俺はケースからシフトワイルドを抜き、握りしめる。

 

「……そうだ。俺は誓ったんだ。もう何も失わないって。それが、俺の情熱だ!」

 

シフトワイルドを入れ、レバーを倒す。

 

『DRIVE!!TYPE!!!WILD!』

 

赤いアーマーの代わりに黒のアーマーが付き、顔は無骨なヘルメットみたいになり、タイヤが右肩に装着される。

 

「よし、ワイルドに変身出来た!」

 

『ランブルダンプを使うぞ!』

 

再びランブルダンプを使い、タイヤ交換をする。

 

ドリルを起動させると、今度は振り回されること無く扱えた。

 

「行ける!」

 

ドリルは徐々にロイミュードの体を削り、着実にダメージを与えて行く。

 

「なんかこの前のチャクラムやかぎ爪の奴と違って弱いな」

 

『恐らく進化したてなんだろう。奴が自分の力に慣れる前に決めるぞ!』

 

「よし!」

 

『DUM!DUM!DUMP!』

 

ドリルが唸りをあげ回転し、俺は腰を落とす。

 

「はぁ――!」

 

勢いよく踏み出し、そのままハンマーロイミュードの体を突き抜ける。

 

そして、激しい爆発を背にし、ロイミュードのコアの破壊を確認する。

 

「よし!」

 

『喜んではいられないぞ!早く、マッハの応援に行かなくては!』

 

「そうだった!」

 

俺は慌ててマッハの応援に向かおうと走り出す。

 

「おい、大丈夫か!?」

 

俺がマッハが戦闘している所に着くと、俺は思わず唖然とした。

 

「はっ!」

 

マッハは手に持って武器を巧みに操り、ロイミュードに攻撃をし、時には撃ち、時に銃に着いた車輪で叩き、時に蹴りや拳などの攻撃をする。

 

するど二体のロイミュードは左右二手に分かれ、身を隠した。

 

「悪いけど、逃がさないよ」

 

そう言うと、ベルトのバックルを上げ、白いバイクを取り出すと、別のバイクを入れる。

 

『シグナルバイク!シグナルコウカーン!マガール!』

 

そして、銃から二発の弾が発射される。

 

マッハは、ベルトの上に着いたボタンを叩く。

 

『シューター!マガール!』

 

すると、弾は軌道を変え左右に分かれ、隠れていたロイミュード二体に当たる。

 

再び二体が姿を現す。

 

『シグナルバイク!シグナルコウカーン!トマーレ!』

 

別のバイクに交換し、もう一度撃つ。

 

するとSTOPの文字の入った逆三角形、道路交通標識みたいなものが現れロイミュードに当たり、ロイミュードの動きが止まる。

 

「これで終わりだぜ!」

 

白いバイクに変え、ベルトを操作する。

 

『シグナルバイク!ライダー!マッハ!ヒッサーツ!フルスロットル!マッハ!』

 

「はっ!」

 

マッハは飛び上がり、空中で回転をし、そのまま蹴りを当てる。

 

同時に蹴りで貫かれた二体はそのまま崩れ落ち、そしてコアごと爆発した。

 

「どうだい?いい絵だったでしょ?」

 

『オツカーレ!』

 

俺の方を見ながらそう言い、マッハは変身を解く。

 

「ほら、アンタも変身解きなよ。泊佑一」

 

俺の名前を知ってるだって!?

 

俺は驚きながらも、シフトワイルドを取り外し、変身を解く。

 

「どうして俺の名前を知ってる?」

 

「そりゃ、同じ仮面ライダーとして、そして、これからクラスメイトになるんだし、知ろうとするのは当然じゃない?」

 

「は?クラスメイト?」

 

「俺は、詩島隼人。アメリカ帰りの仮面ライダーだ。修学旅行が終わった後、E組に転校することになってる。よろしくな、佑一」

 



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生徒達は何を話し出すのか

仮面ライダーマッハ、もとい詩島隼人は修学旅行後転校してくると言い残すと、すぐにバイクに跨りその場を去った。

 

俺はその光景に唖然としながら、急いで皆の所に戻った。

 

もちろん、殺せんせーからはお叱りの言葉を受けた。

 

そして、現在。

 

俺は、旅館の自販機コーナーの隣で牛乳瓶を手にぼーっとしていた。

 

ちなみにベルトさんは烏間先生に預けてる。

 

「あれ、泊。なにしてんの?」

 

一人でいると赤羽がやってきた。

 

「別に、牛乳飲んでただけだ。お前は?」

 

「俺は煮オレ買いにだよ」

 

そう言うと自販機でレモン煮オレを買い、プルタブを開ける。

 

「俺戻るけど、泊は?」

 

「ああ、戻る」

 

牛乳瓶を籠に入れ、俺と赤羽は大部屋へと戻る。

 

大部屋では男子たちが部屋の中心で固まって何か騒いでいた。

 

「おっ、面白そうなことしてんじゃん」

 

「おっ!カルマ、それに泊も」

 

「良い所に来た、お前ら、気になる女子いる?」

 

どうやら女子のランキング付けをしていたみたいだ。

 

「う~ん……俺は奥田さんかな」

 

「お、こりゃ意外」

 

「なんでだ?」

 

「だってあの人、怪しい薬とかクロロホルムとか作れそうだし、俺のイタズラの幅が広がるじゃん」

 

「うわっ………」

 

「絶対にくっつかせたくない二人だな」

 

「泊は?」

 

三村が俺の方を見て声を掛ける。

 

思えば、最近E組の男子とも話すようになったな。

 

陽斗と和解した辺りから俺は徐々に男子とも会話するようになった。

 

流石に友達とまでは言えないが、日常会話をするぐらいには仲はいいはずだ。

 

「俺は…………神崎かな」

 

「泊も神崎か」

 

「気になるって言うか、神崎ぐらいなんだよ。E組で話してる女子って」

 

そう言い、俺は座布団に座る。

 

「分かってるとは思うが、投票結果は、男子の秘密だ。女子や先生には絶対に言うなよ」

 

磯貝が髪を持ち上げ言うと、窓の外で殺せんせーがメモを取ってこっちをニヤニヤと見ているのに気付いた。

 

そして、男子たち全員気付く。

 

殺せんせーはニヤニヤと笑い、素早く逃げた。

 

「メモ取って逃げたぞ!」

 

「あれは男子だけの秘密だ!」

 

「殺せ!!」

 

男子たちは各々対先生ナイフや銃を手に追いかける。

 

騒がしいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~少し前の女子部屋~

 

女子たちも女子たちでクラスの気になる男子ランキングを制作していた。

 

やることは皆同じだった。

 

「えっと一位が烏間先生って、生徒じゃないよね?」

 

集計をしていた片岡が結果に、苦笑いしながら言う。

 

「え~、でもカッコいいよ」

 

「そうだけど、クラスの男子にしなさい」

 

そんな話をしてると部屋の扉が開けられた。

 

「まだ起きてたの?早く寝なさい」

 

「あ、ビッチ先生」

 

入って来たのはビッチ先生で、片岡の持っていた紙に目をやる。

 

「クラスの気になる男子ランキングねぇ。まぁ、アンタ達は私と違って、危険とは縁遠い国で生まれたんだから、こんな風に青春を謳歌しなさい」

 

ビッチ先生の言葉に全員が、その言葉の重さを感じ取る。

 

「で、ランキングはって、一位が烏間って………まぁ、アンタ達ぐらいの年頃なら大人の男性に惹かれてもおかしくはないわね。で、二位が磯貝。打倒って所ね。赤羽と渚が一票。あら、泊も一票ね。一体誰が居れたのかしら?」

 

「ビッチ先生。一応誰が誰に入れたか分からないようになってるからそう言う詮索は」

 

「分かってる分かってる。まぁ、私ぐらいの女なら表情で誰が入れたのか分かるけどね」

 

その言葉に反応して、神崎は下を向く。

 

「ん?この集計、一人足りないけど誰?」

 

その時、ビッチ先生が数が会わないことに気付き、尋ねる。

 

「あ、それ私」

 

手を上げたのは倉橋だった。

 

「あら、陽菜乃なの?」

 

「うん、私、好きな人がいるから」

 

その言葉に全員が驚く。

 

「え!?陽菜ちゃん、好きな人がいるの!?」

 

「誰!?誰!?」

 

女子らしく恋には興味津々らしく女子全員が倉橋に詰め寄る。

 

「小学生の時アメリカに転校しちゃった幼馴染なんだ。カメラが大好きで、カメラマンになるんだって言ってたよ。元気かな~…………」

 

嬉しそうに幼馴染の事を語る倉橋に女子一同は羨ましそうにする。

 

「あ、そうだ!ねぇねぇビッチ先生の話が聞かせてよ!」

 

「私の?」

 

「オトしてきた男の話聞かせて」

 

「あ、興味ある!」

 

「……フフフ、いいわよ。子供には刺激が強いから覚悟しなさい。例えば、あれは十七の時の………」

 

そこまで語ってビッチ先生は気づいた。

 

女子に混ざって、殺せんせーがいることに。

 

「おいそこぉ!!さりげなくまぎれこむな女の園に!!」

「いいじゃないですか、私も…その…色恋の話聞きたいです」

 

「そーゆー殺せんせーはどーなのよ」

 

「そーだよ人のばっかずるい!!」

 

「先生は恋話とか無いわけ?」

 

「巨乳好きなんだし、片思いぐらい絶対あるでしょ」

 

女子に指を指されまくり、殺せんせーはその場を逃げ出す。

 

「逃げやがった!」

 

「捕えて吐かせて、殺すのよ!」

 

女子は片岡を先頭に、殺せんせーを追う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員が殺せんせーを追う中、俺は一人廊下の窓を開けて、風に当たっていた。

 

「ふぅ~、風が気持ちいい」

 

「泊君、なにしてるの?」

 

振り向くと神崎がそこに居た。

 

「ああ、ちょっと休憩。今日も色々あったし」

 

主にもう一人の仮面ライダーのこととか。

 

「ねぇ、泊君」

 

「ん?」

 

「初めてロイミュードに襲われた時、私が言おうとしたことなんだけど」

 

初めて?

 

ああ、俺のどこが優しいのかって話か。

 

今となってはどうでもいいが、折角だし聞いておこう。

 

「半年前の事、覚えてる?」

 

「………ああ、覚えてるよ」

 

俺にとっては忘れちゃいけない出来事だ。

 

「あの時、不良に絡まれてた私を助けてくれたんだよ」

 

「え?」

 

一瞬驚いたが、よくよく考えると、あの時、俺が不良に絡まれてた人を助けようと思ったのは、その人が椚ヶ丘の制服を着ていたことに気付いたってのもあったな。

 

「あの時の絡まれてたのって神崎だったのか?」

 

「うん。あの後、泊君、早瀬先輩とすぐにどっか移動しちゃったしお礼言う暇なくて。だkらずっとお礼を言う機会探してたんだ」

 

そうか。

 

だから、神崎は俺によく付きまとっていたんだ。

 

「だからさ、今ここで言わせて」

 

神崎は俺の隣に立って、俺の方を若干見上げるように笑って言う。

 

「あの時は助けてくれてありがとう、泊君」

 

その神崎の笑顔が直視できず、俺は思わず顔を背け、星空を見上げる。

 

「あ……ああ。どういたしまして」

 

そんな俺を見て、神崎はくすりと笑うと黙って俺の隣で、一緒に星空を見上げた。

 



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彼は何に焦っているのか

「唐突だが、転校生を紹介する。入れ」

 

修学旅行が終わった次の日、烏間先生に呼ばれて入って来たのは詩島だった。

 

「詩島隼人だ。ついこの間までアメリカにいた。趣味はカメラ。まぁ、よろしく頼むよ」

 

この間来ていた赤いラインの入った白いパーカーの上から制服の上着を羽織り、詩島は挨拶をした。

 

「ハヤ君!」

 

すると倉橋が詩島を見ると声を上げ、立ち上がった。

 

「よ、陽菜乃!久しぶり!」

 

詩島の奴、倉橋と知り合いなのか?

 

一時間目が終わると、詩島の周りには皆が集まった。

 

そして、質問の内容はと言うと、倉橋とはどういう関係なのか?だ。

 

「陽菜乃とは幼馴染だよ。俺は小学校四年の時にアメリカに引っ越しちまったし、会うのは五年ぶりかな」

 

「正確には四年と八ヶ月、二十七日だよ」

 

「………マジで?」

 

今の「マジで」は多分、細かく覚えてることに対する「マジで」だと思う。

 

「アハハ!冗談だよ!」

 

なんだ冗談か。

 

「本当は四年と七か月、十六日だよ」

 

「そっちかよ!」

 

思わず、詩島がツッコんだ。

 

その後、の授業では詩島は凄かった。

 

殺せんせーの出した数学の問題はいとも簡単に解き、英語ではビッチ先生ですら舌を巻く程流暢な英語を言い、全ての教科に置いてE組でもトップに、いや、この学園でトップに食い込むであろう学力を披露した。

 

昼休みになると俺は詩島の席に駆け寄る。

 

「詩島!ちょっと来てくれ!」

 

詩島の手を掴みそのまま校舎裏へと連れてく。

 

「なんだよ、佑一」

 

「なんだよじゃない!こっちは色々と追い付いてないんだよ!」

 

「カリカリしちゃって。カルシウム不足なんじゃないの?」

 

「そうじゃねぇよ!」

 

詩島の話に一々突っ込み、俺は一息つく。

 

「取り敢えず、いくつか質問させてくれ。お前は、俺と同じ仮面ライダーなのか?」

 

「そうだよ。仮面ライダーマッハ。新型エンジン・NEX-コア・ドライビアを中心としたネクストシステムを搭載した新型のドライバー。性能だけなら、ドライブより上だぜ」

 

ドライブよりも上の……………

 

「ちょっと無謀だったけど、アメリカでの訓練を早急に終わらせてこっちに来た。ま、これからよろしく頼むよ、佑一」

 

詩島は俺の肩をポンッと叩いて教室に戻ろうとする。

 

「あ、おい!詩島!」

 

「隼人でいいよ。俺はもう佑一って呼んでるし」

 

そう言い残し、詩島もとい隼人は教室へと戻っていく。

 

「アイツ………なんなんだ?」

 

『ネクストシステムは私の恩師であるハーレー・ヘンドリクソン博士が開発したもので、詩島隼人はそのネクストシステムを使うもう一人の仮面ライダーとして選ばれた人間だ』

 

「ベルトさん、どうしてそれを隠してたんだよ」

 

『いや、別に隠してるつもりはなかったんだ。ただ、私の予想より、早くネクストシステムが完成していたようで』

 

「それでも、そう言うのがあるってことぐらい教えてくれても良かったじゃないか」

 

シフトスピードを通して話して来るベルトさんにそう言い、俺は地面に寝転がる。

 

「仮面ライダーマッハ………か」

 

そう呟き、俺は急に襲って来た眠気に身を任せてしまし、そのまま眠ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ん?寝ちまったか」

 

ポッケからスマホを取り出すと時刻は既に午後の授業が終わってる時間だった。

 

「やっべ。随分寝ちまったな…………」

 

体を起こして軽く伸びをすると、近くで誰かが横になってるのに気付いた。

 

横を見ると、神崎が何故か俺の隣で寝ていた。

 

「なんで神崎か?」

 

不思議に思ったが、このままにするわけにも行かなから体を揺すって起こす。

 

「おい、神崎」

 

「………ん?……あれ、泊君?」

 

「神崎、お前寝てたぞ。いつから此処に居るんだ?」

 

「えっと………お昼休みがもうすぐ終わりそうで……詩島君は戻ってきたけど泊君が戻ってこないから探しに行ったら、ここで寝てて………気持ちよさそうでつい寝ちゃった………」

 

神崎は恥ずかしそうに笑う。

 

「つまり、ミイラ取りがミイラになったってわけか」

 

俺はそう言って笑い立ち上がる。

 

「帰ろうぜ、神崎」

 

「うん」

 

教室に置きっぱなしの鞄を取りに行こうと立ち上がった瞬間、烏間先生が慌てた様子でやってくる。

 

「泊君!すぐに来てくれ!」

 

「え?」

 

烏間先生の尋常ではない焦り具合に、俺と神崎は驚きながらも烏間先生の後を追った。



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チェイスの行動は一体なんなのか

「烏間先生、一体どうしたんですか?」

 

神崎と一緒に職員室に向かうと、烏間先生は神妙な面持ちで封筒を取り出す。

 

「実は先程、これが届けられた。届けたのは先日、君が言っていたロイミュード“チェイス”だ」

 

その名前に俺は驚いた。

 

チェイスが封筒を?一体何のために?

 

「それで、チェイスは?」

 

「中身は読んでないが、恐らく果たし状だろう」

 

「どうして分かるんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦いを行う時、果たし状を送る。それが人間のルールなのだろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言ってたからだ」

 

意外と律儀だな!?

 

そう思いながら、封筒を受け取り、中身を見る。

 

『山の開けた広場にてお前を待つ チェイス』

 

「筆で書いてますね」

 

「ああ、しかもかなり達筆だ」

 

てか、そんなことはどうでもいいんだよ。

 

「先日のやり直しをするって言うのか」

 

「泊君………どうする?」

 

「……行きます。どの道、ロイミュードは倒さないといけないんだ」

 

神崎に鞄をお願いし、シフトスピードを手に取る。

 

「行くぜ!ベルトさん!」

 

『OK!START・YOUR・ENGINE!!!!!DRIVE!!!TYPE!!!SPEED!!!』

 

ドライブに変身すると、俺はトライドロンに乗り込み、指定された場所へと向かう。

 

「しかし、山道でもトライドロンはすいすい行けるな」

 

『トライドロンは私の作った発明では最高傑作と言ってもいい!』

 

「それにしても、ベルトさんいい趣味してるね。この車、結構いいデザインじゃん」

 

『おおっ!この良さが分かるとは!佑一、君は中々見どころがあるぞ』

 

「ありがとう。そろそろ、チェイスが指定した場所だ。ベルトさん、気を引き締めて行くぞ」

 

『ああ!』

 

指定された場所に着くと、そこにチェイスが立っていた。

 

俺はトライドロンから降りて、チェイスの前に立つ。

 

「来たか、ドライブ」

 

「果たし状、確かに受け取ったぞ」

 

「なら、始めるぞ」

 

チェイスはあの武器を取り出し、銃口を手の平に押し付ける。

 

《Break up》

 

チェイスはあの姿になると、攻撃を仕掛けて来た。

 

俺もハンドル剣を手に攻撃する。

 

武器同士がぶつかり合い、金属音を響かせる。

 

「果たし状を送るなんて、何処で習った?」

 

「知らん。気が付けば、既に頭の中にあった」

 

「なるほど。そう言う所、ちょっと好きになれそうだぜ」

 

「俺はそう言う趣味は無い」

 

「俺にだって無いわ!今のはそう言う意味じゃねぇよ!」

 

剣と銃をぶつけ合いながら戦う。

 

何故だが、妙にこいつとの戦いは心が躍るって言うか、なんか楽しい。

 

前回の時は、味方を破壊したことで、頭に血が上ってたから余裕が無かったが、今回は違う。

 

こいつの戦いは実にフェアプレイだ。

 

卑怯な手を使わず、正面から正々堂々と向かってくる戦い。

 

まるで戦士そのもの。

 

そう思った瞬間、突如背中に向かって攻撃が飛んできて、俺に当たる。

 

「ぐあっ!?」

 

「……なん……だと……」

 

チェイスも驚き、俺の背後に目をやり、驚く。

 

膝を地面に付きながら、俺も背後を見る。

 

するとそこには、腕が銃の形をしたロイミュードがいた。

 

「なっ……伏兵!?」

 

まさか………チェイスの奴、俺を騙したのか?

 

「貴様………これはなんのつもりだ?」

 

チェイスは怒りを露にしながら、そのロイミュードに尋ねていた。

 

「決まってるだろ。仮面ライダーを倒す手助けさ」

 

「そんなものはいらん。仮面ライダーは俺一人で倒す」

 

「人間の乱入で戦いをを止めちまうテメーがか、死神?」

 

どうやらコイツの登場はチェイスにとっても予想外なんだろう。

 

しかし、まずいぞ………

 

チェイスに加え、進化態ロイミュード。

 

この二体を相手にするのは厳しい。

 

チェイスが気が削がれたとか言って退散してくれたらいいんだが………

 

「言っておくが、もし戦いを放棄する様ならハートたちにお前が裏切ったと伝えるぜ」

 

「………わかった」

 

チェイスは短くそう言うと、俺の方を向く。

 

「やっぱ、そう都合よくはいかないか」

 

覚悟を決め、ハンドル剣を構えると、バイクのエンジン音が聞こえた。

 

「この狙ったかのようなタイミング………覚えがあるぞ……」

 

『奇遇だね……私もだよ』

 

俺とベルトさんの予感は見事的中し、隼人がバイクに乗って現れた。

 

「よう、佑一。援護はいる?」

 

「悪いが頼めるか?」

 

「OK!」

 

バイクから降り、隼人はマッハドライバーを取り出し、腰に付ける。

 

《シグナルバイク!!》

 

「LET'S………変身!」

 

《ライダー!!マッハ!!》

 

「追跡!撲滅!いずれも………マッハ!仮面ライダー…………マッハ!」

 

マフラーをなびかせ、隼人はポーズを取り叫ぶ。

 

「進化態は任せな。佑一はあのスクラップの寄せ集め野郎を頼むよ」

 

俺の返事を聞かず、隼人は銃のロイミュード、ガンナーロイミュードへと向かって走り、ゼンリンシューターで攻撃をする。

 

「さて………これで邪魔者はいなくなったぞ。さぁ、前回のリベンジマッチと行こうぜ!」

 

「ふん!言われなくとも」

 

そして、俺とチェイスは戦いを再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第三者SIDE

 

「こんな所かしら」

 

裏山のに作られた簡易射撃場で速水はハンドガンを鞄に仕舞い、下校の準備をしていた。

 

最近、射撃のスコアが伸び悩んでおり、ここ数日は一人で射撃の特訓を速水はしていた。

 

伸び悩んではいるものの、クラスでは遠距離暗殺女子一位の成績。

 

それでも納得が居ないのは速水の性格でもあるのだろう。

 

訓練を終え、速水は一人下校準備に取り掛かっていると、遠くで何かの金属音が聞こえた。

 

「今のは……」

 

そして、金属音に続き、銃声。

 

ただ事ではない。

 

そう直感した速水は、鞄を手に、音がしたところへと向かった。

 

そして、音が聞こえた場所で、速水が目にしたのは、ドライブとマッハがチェイスとロイミュード相手に戦っている光景だった。

 

「な……何よアレ……」

 

速水は目の前の光景が信じれず、思わずそう言う。

 

「……あ、あの人は!」

 

その時、速水はドライブを見てあることに気付いた。

 

グローバル・フリーズが起きた半年前。

 

あの日、速水は雨が降る中、一人下校していた。

 

クラスメイトの仕事を代わりに頼まれ、断ることが出来ず引き受けて、帰りの時間が遅くなってしまった。

 

早く家に帰ろうと、普段は通らない裏道を通り、自宅へと向かう。

 

そして、速水はロイミュードを遭遇した。

 

重加速の所為で身動きが取れず、ロイミュードは速水に襲い掛かろうとした。

 

速水は何も出来ず、ゆっくりと倒れて行く。

 

その時、速水の背後からシフトカーが数台飛んできて、そのロイミュードに攻撃を仕掛けた。

 

エネルギーの手裏剣を飛ばすシフトカー“ミッドナイトシャドー”。

 

炎を纏ったシフトカー“マックスフレア”。

 

棘を飛ばし攻撃するシフトカー“ファンキースパイク”。

 

そして、そのシフトカーを従え、ロイミュードを倒す仮面の戦士“ドライブ”。

 

ドライブはロイミュードを倒すと、倒れて気を失い掛けてた速水を抱き上げた。

速水が覚えているのはそこまでだった。

 

次に目が覚めた時、速水は自宅近くの公園のベンチに横になっていた。

 

「似ている……あの時、私を助けてくれた人と…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佑一SIDE

 

「はぁ!」

 

「ぐっ!?」

 

隼人の方は心配なさそうだな。

 

ガンナーロイミュードを追い込んで、確実にダメージを与えている。

 

やっぱり問題はチェイスだな。

 

さっきから攻撃してるけど、全部防がれてる。

 

このまま行けば、隼人の方が先にガンナーロイミュードを倒すだろう。

 

それなら、それまで粘って、隼人と一緒に倒すのが一番だけど…………それはしたくないな。

 

「どうせなら………正々堂々戦いたいしな」

 

《Gun》

 

チェイスは持っている武器の銃口を手の平で押し、俺に向かって撃ってくる。

 

「おっと!?」

 

地面を転がるようにして銃撃を躱し、ハンドル剣を手に斬り掛かる。

 

《Break》

 

武器同士がぶつかり、また金属音を響かせる。

 

「おらぁ!」

 

俺はハンドル剣で、チェイスの武器を抑え込み、足蹴りで武器を蹴り飛ばす。

 

「しまっ!?」

 

すかさずハンドルを回し、チェイスの脇を切りつける。

 

『TURN!UTURN!』

 

二度切り付けられ、チェイスは脇を抑えながら後ろに下がる。

 

「これで決めるぜ!」

 

鍔のスロットにシフトスピードをセットし、ハンドル剣を回しクラクションを鳴らす。

 

『ドリフトカイテーン!!』

 

「はあああああああ!!」

 

「ぐああああああああ!!?」

 

チェイスの身体から紫電が走り、大ダメージを与えたのが一目でわかった。

 

「これで!」

 

俺は剣を振りかぶり、チェイスにトドメを刺そうとする。

 

その時だった。

 

「そこだぜ!」

 

ガンナーロイミュードは銃を隼人ではなく、森の方へと向けていた。

 

そして、銃口の先には……………

 

「速水!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第三者SIDE

 

「はっ!」

 

「ぐあっ!?」

 

ガンナーロイミュードは隼人の事を侮っていた。

 

侮っていたからこそ、隼人に追い詰められていた。

 

視界の端ではチェイスが佑一にやられているのが見えた。

 

(死神の野郎の助けは期待できねぇ………!)

 

その時だった。

 

隼人の背後の森から人の姿をガンナーロイミュードは見た。

 

(チャンスだ!)

 

隼人の足元に銃を発砲し、隼人の攻撃のタイミングを遅らせると同時に、銃口を速水の方に向ける。

 

「そこだぜ!」

 

「しまった!?」

 

隼人も佑一も、ガンナーロイミュードが偶然にも現れた速水を狙っているのに気付く。

 

(人間は人間を助けようとする愚かな奴等だ!奴等もあの人間のメスを守ろうと動くに決まってる!それが貴様らの敗因だ!)

 

そして、ガンナーロイミュードは引き金を数回引く。

 

放たれた弾丸は速水に向かって音速の早さで飛ぶ。

 

佑一も隼人も間に合わない。

 

それでも二人は走った。

 

その瞬間、佑一の前をある影が通った。

 

それはチェイスだった。

 

チェイスは一瞬で速水の前に立つと、両腕を広げ、速水を銃弾から守った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佑一SIDE

 

「ぐあっ!?」

 

チェイスが速水を庇った。

 

全身に銃弾を浴びたチェイスは膝を付く。

 

「死神!?テメー……一体何のつもりだ!?」

 

チェイスが何故あんな行動を取ったのかは分からないが、今がチャンスだ!

 

「隼人!決めるぞ!」

 

「え?…あ、おお!!」

 

俺はイグニッションキーを回し、必殺技を繰り出す。

 

隼人も俺の意図を理解し、必殺技を出す。

 

『ヒッサーツ!FULLTHROTTLE!SPEED!』

 

『ヒッサーツ!フルスロットル!マッハ!』

 

俺と隼人は同時に飛び上がり、ガンナーロイミュードに向かって必殺技を放つ。

 

「ぐあああああああああああああ!!!?」

 

蹴りはガンナーロイミュードを貫き、コアを破壊して、爆発する。

 

俺と隼人はガンナーロイミュードを貫くと同時に、空中で交差し、地面を滑るようにして止まる。

 

『Nice Drive!』

 

ベルトさんからねぎらいの言葉を賭けられる。

 

だが、俺は返事をせず、チェイスの方に走る。

 

「俺は……一体……何故……」

 

チェイスは変身が解け、自身の手を見つめ呟いていた。

 

「なんでコイツがはや……人間を庇ったか知らないけど、弱ってるし倒すチャンスだよね」

 

隼人はゼンリンシューターを手に、チェイスに近づく。

 

「待て」

 

俺は手で隼人を静し、チェイスに声を掛ける。

 

「チェイス。今回は見逃してやる」

 

「は!?」

 

「…………俺を助けるのか?」

 

「勘違いするな。こんな決着の付け方、俺もお前も望まないだろ。それに、お前は前、無関係の人間を傷つけないと言って、俺を見逃した。その時の借りを返してるだけだ」

 

「………後悔しても知らんぞ」

 

チェイスはそう言い、立ち上がるとフラフラの身体でバイクに跨る。

 

「あ、ちょっと!」

 

その時、速水がチェイスに声を掛けた。

 

チェイスは何も言わず、速水の方を振り返る。

 

「その…………守ってくれて……ありがとう……」

 

「………………」

 

その言葉にチェイスは言葉を返さず、そのままバイクで走り去っていった。

 

「いいのかよ?アイツはロイミュードだぞ」

 

「分かってる。見逃すのは今回だけだ。次会ったら………容赦はしない」

 

俺はチェイスが走り去った方を見つめ、拳を握る。

 

出来ることなら、……………アイツとは戦いたくないな………………

 



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転校生の正体とは何なのか

ガンナーロイミュードを倒してから数日。

 

俺はドライブピットにいた。

 

そして、傍らには神崎と隼人が俺の様子を見ていた。

 

「よし………変身!」

 

シフトレバーを倒そうと力を込めるが、シフトレバーはピクリとも動かず、変身できなかった。

 

「やっぱまだダメか………」

 

そう言って俺はシフトブレスから緑色のシフトカー“タイプテクニック”を取る。

 

「テクニックを使うにはクールな心が必要なんだっけ?」

 

隼人が何処から持ち出したのかルービックキューブを手に聞いて来る。

 

「正直、佑一ってクールってよりは熱血キャラじゃね?」

 

「まぁ……どちらかって言うとな」

 

「なら……E組でクールだと思う人を参考にしてみたらどうかな?」

 

神崎の提案に、俺はE組でクールだと思う奴を思い浮べる。

 

「クールって言うと…………千葉と速水か?」

 

「ああ、確かにあの二人はクールだよな」

 

俺はE組で寡黙な仕事人である二人の顔を思い浮べる。

 

「そう言えば、速水の奴にバレてないといいんだけどな」

 

ガンナーロイミュードを倒し、チェイスが去った後、速水は俺と隼人、正確にはドライブとマッハを見て、何者なのかを訪ねて来た。

 

正体を明かすことは出来ないので、取り合えず、俺と隼人は仮面ライダードライブと仮面ライダーマッハとだけ名乗り、その場を後にした。

 

声色を変えて行ったからバレてないと思いたいが………………

 

「ま、大丈夫っしょ。バレたらその時はその時さ」

 

隼人の奴はお気楽思考だな。

 

「なんだ、三人共揃ってたのか」

 

そこに烏間先生がやってくる。

 

「烏間先生」

 

「泊君、例の物が完成した」

 

そう言って、烏間先生がアタッシュケースから一丁の銃を取り出す。

 

…………………銃?

 

「烏間さん………これを銃って言うのは少し無理があるんじゃない?」

 

隼人も俺と同じ意見らしく、烏間先生にそう言う。

 

「デザインに関しては俺も同意見だが………」

 

烏間先生は苦虫を噛み潰した様な顔をする

 

「わ、私は個性的でいいデザインだと思いますよ?」

 

神崎はフォローをする。

 

なぜなら、その銃は見た目が車のドアの形をしている。

 

『ドアの部分は圧縮SO-1合金製で、敵からの攻撃を受け止める盾としても機能し、ドア型の小型エネルギーシールドを展開可能だ。ドア部分を開閉することで空気中のエネルギーを吸収し、強力なエネルギー弾に変換して発射する。佑一、試しにドアを開けたままトリガーを引いてくれ』

 

ベルトさんに言われ銃を手にして、ドアを開けたままトリガーを引く。

 

『半ドア!』

 

「……………」

 

思わず、言葉を失った。

 

「このようにエネルギーの流出防止のため、ドア部分が完全に閉まっていない状態でトリガーを引いた場合はエネルギーの補充ができずに警告音が鳴る」

 

「なんてチョイスの警告音だ」

 

後ろで神崎と隼人が笑いをこらえてるぞ。

 

「ちなみに名前は?」

 

「いや、まだ決まっていない」

 

「なら、ドア銃だな」

 

『いやだから、もうちょっとネーミングセンスをだね』

 

「シンプルイズベストだって」

 

「出た。ネーミングセンスの無い奴が使う魔法の言葉」

 

「うるせー。銃にゼンリンシューターとか付けてる奴に言われたくねぇよ」

 

「俺が名付けたわけじゃねぇぞ!」

 

「騒ぐのは構わないが、せめて話が終わってからにしてくれ」

 

烏間先生がそう言うので、俺たちは静かになる。

 

「まず君達にいくつか言う事がある。まず。ドライブとロイミュードの存在がとうとう世間にばれてしまった」

 

そう言って、見せられた新聞の一面にはロイミュードと戦うドライブの写真があった。

 

「これって病院の時の!」

 

「今まで報道制限を掛けて規制してきたが、それも最早意味をなさない。だが、これはある意味チャンスでもある」

 

「と言うと?」

 

「今までは秘密裏にロイミュードを倒してきたが、これからは街中でロイミュードが現れても堂々と対処できる。だが、中にはドライブの正体を掴もうと考えるマスコミも増えるだろう」

 

となると正体がバレないように注意をしないとな。

 

「そして、近々、ハーレー・ヘンドリクソン博士が来日してくる」

 

「博士が!?」

 

隼人が嬉しそうな声を上げる。

 

「そう言えば、ネクストシステムを作ったのってそのハーレー博士だっけ?」

 

「ああ。隼人、お前が無理矢理な訓練で半ば強制的に訓練を終えたことが心配で来るそうだ」

 

「あっちゃ~……だよね~」

 

そう言えばそんな事言ってたな。

 

「そして、最後に。明日、E組に転校生が来る」

 

「転校生って……急ですね」

 

「まだ詩島君が来て数日なのに………」

 

「本来なら隼人が転校してくるのはもっと後で、先にこっちが来る予定だったんだ。その転校生はロイミュード関係ではなく、暗殺関係での転校生だ。多少外見で驚くだろうが、あまり騒がず接してくれ。話は以上だ」

 

暗殺関係の転校生って事は殺し屋とかか?

 

そんな事を思いながら、俺たちはピットを出て、帰宅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、俺は途中で神崎と合流し、E組へと向かっていた。

 

「転校生暗殺者……一体どんな奴なんだ?」

 

「外見で驚くってどう言うことなんだろう?」

 

「ま、見れば分かるだろ」

 

校舎に到着し、教室に向かうと、渚と杉野、岡島の三人が教室の前に立っていた。

 

「渚、どうした?」

 

「あ、泊君。実は……」

 

渚が指さした方を向くと、そこには黒い直方体の何かがあった。

 

上の部分には液晶パネルのようなものがはめ込まれてる。

 

すると、パネルが光り、映像が出る。

 

「おはようございます。今日から転校してきました。“自律思考固定砲台”と申します。よろしくお願いします」

 

そう言って、パネルは再び暗くなる。

 

…………………そう来たか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「知ってると思うが、転校生を紹介する」

 

烏間先生は体と声を震わせながら、転校生を紹介し始めた。

 

「ノルウェーから来た自律思考固定砲台さんだ」

 

「よろしくお願いします」

 

烏間先生も大変だな。

 

自律思考固定砲台を見て殺せんせーは、ぷーくすくすと笑う。

 

「笑うな。このイロモノ。言っておくが、彼女は思考能力(AI)と顔を持ちれっきとした生徒として登録されている。あの場所からずっとお前に銃口を向けるが、お前は彼女に反撃できない」

 

殺せんせーがE組の教師になる条件の『生徒に危害を加えてはならない』か。

 

それを逆手にとって機械の生徒を転校させる。

 

なりふり構わないな。

 

「いいでしょう。自律思考固定砲台さん。E組へ歓迎します!」

 

自己紹介も終わり、授業が始まる。

 

「なぁ、佑一」

 

授業を受けてると、後ろの席の隼人が声を掛けて来る。

 

「どうした?」

 

「アレ、固定砲台って言ってるけど、銃が見当たんねぇなって思ってよ」

 

「………言われてみれば………いや、あの形から考えると………」

 

俺がそう言った瞬間、箱の両側が開き、そこから銃が現れる。

 

やっぱりか。

 

現れた銃から対先生用BB弾が発射される。

 

俺達は頭を庇いながら身を伏せる。

 

殺せんせーはいつものスピードで濃密な弾丸を躱し続ける。

 

「ショットガン四門に機関銃二門。濃密な弾幕ですがここでは当たり前にやってますよ。それと、授業中の発砲は禁止ですよ」

 

当たりそうな弾はチョークで弾きながら殺せんせーは言う。

 

「気を付けます。続いて攻撃に移ります」

 

直方体から機械の作動音が聞こえ、全員がそれに集中する。

 

「弾頭再計算、射角修正、自己進化フェイズ5-28-02に移行」

 

そして、再び銃が展開され、BB弾が発射される。

 

「こりませんねぇ」

 

殺せんせーは先程同様、BB弾を避け、当たる弾はチョークで弾いた。

 

だが次の瞬間、殺せんせーのチョークを持っていた手が弾け飛んだ。

 

その光景に全員が驚く。

 

まさか、弾で弾を隠したのか?

 

確かにそれなら、前の弾を弾いても後ろの弾が当たる。

 

「右指先破壊。増設した副砲の効果を確認しました。次の射撃で殺せる確立0.001%未満。次の次の射撃で殺せる確立0.003%未満。卒業までに殺せる確立90%以上。卒業まで、よろしくお願いします、殺せんせー」

 

プログラムされてる笑顔で自律思考固定砲台は微笑みながら、殺せんせーを殺すための進化を再び始めた。

 



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何故E組が狙われたのか

結局あれから二時間目、三時間目と射撃は続き、授業はまったく進まなかった。

 

おまけに、自律思考固定砲台が撃った弾は俺達が片付ける。

 

「掃除機能とか付いてないのかよ、固定砲台さん」

 

村松が固定砲台に聞くが、固定砲台は何も答えない。

 

「チッ!シカトかよ」

 

「機械に絡んでも仕方がねぇよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、自律思考固定砲台は起動し、画面に姿を映す。

 

「朝八時半。システム全面起動。今日の予定、六時間目までに215通りの射撃を実行。引き続き殺せんせーの回避パターンを分析………」

 

だが、自律思考固定砲台は体をガムテープで拘束され、銃が出せないことに気付いた。

 

「殺せんせー、これでは銃を展開できません。拘束を解いてください………これは明らかに契約違反です」

 

「俺だよ」

 

寺坂がガムテープを見せながら答える。

 

「どー考えたって邪魔だろーが。常識位身に着けてこいよ、ポンコツ」

 

「ま、分かんないよ。機械に常識はさ」

 

「授業が終わったらちゃんと解いてあげるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございます!泊さん、神崎さん!」

 

翌朝、俺と神崎を出迎えたのは、自律思考固定砲台さんだった。

 

自律思考固定砲台の全身が表面に映し出され、昨日とは変わり、良い笑顔で、そして、明るい声で話掛けてきた。

 

俺と神崎は驚いたし、後から来た渚、杉野も口を開けて驚いた。

 

「親近感を出すための全身表示液晶と体・制服のモデリングソフト。全て自作で八万円!」

 

殺せんせーが後ろで騒ぐ。

 

「今日は素晴らしい天気ですね!こんな日を皆さんと過ごせて嬉しいです!」

 

「豊かな表情と明るい会話術。それらを操る膨大なソフトと追加メモリ。同じく十二万円!そして、まさかのタッチパネル機能付き!同じく十万円!」

 

「お、おお」

 

「先生の財布の残高………五円!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「庭の草木も緑が深くなって春も終わり、近づく初夏の香りがします」

 

「たった一晩でえらくキュートになっちゃって……」

 

「固定砲台さんでいいのかアレ………」

 

「けっ!結局、全部あのタコが作ったプログラムだろ。どーせまた空気読まないで射撃すんだろポンコツ」

 

皆が自律思考固定砲台の変わりように驚いてる中、寺坂は苛立つように声を上げた。

 

「おっしゃる気持ちは分かります。昨日までの私はそうでした。ポンコツ………そういわれても仕方ありません」

 

そう言って自律思考固定砲台さんは泣き出す。

 

「あー、泣かした」

 

「寺坂君が二次元の女の子泣かせちゃった」

 

「なんか誤解される言い方やめろ!!」

 

すると竹林は眼鏡を直し言う。

 

「いいじゃないか、2D(二次元)。女はDを一つ失う所から始まる」

 

「竹林!お前の初セリフそれだぞ!いいのか!?」

 

「けど、皆さん。ご安心を。私は殺せんせーに協調の大切さに気付かせてもらいました。なので、私は皆さんが好きになって頂けるように努力し、合意を得れるまでは単独での暗殺を控えます」

 

自律思考固定砲台はにっこりと笑い言う。

 

休み時間になると自律思考固定砲台の周りには人が集まる。

 

「私の体内で生成する特殊なプラスチックはデータさえあれば、多くのものを生みます。銃でも武器でもです」

 

「へえ~じゃあ、花は?」

 

「分かりました、データを学習しておきます。王手です千葉君」

 

「三局面でもう勝てなくなった」

 

「なんつー学習力だ」

 

自律思考固定砲台は殺せんせーの入れたソフトのお陰で、表情もやわらかくなり、人気が出ていた。

 

「まずい………先生とキャラが被ってる」

 

「被ってねぇよ!」

 

「このままでは先生の人気が奪われかねない。……………皆さん皆さん!」

 

何か勝手に危機感を感じとり、殺せんせーは皆の所に行く。

 

「先生だって人の顔の表示ぐらいできます。こうして皮膚の色を変えれば」

 

「キモいわ!」

 

キモいと言われた殺せんせーは落ち込み、泣き出す。

 

「ところでさ、この子の名前決めない?いつまでも固定砲台さんって言うのもなんだし」

 

「そうだな」

 

「なんて名前にする?」

 

「律はどう?」

 

「安直だな」

 

「お前はどうだ?」

 

「はい!嬉しいです!では、これからは律とお呼び下さい」

 

出された名前に律は嬉しそうに答えた。

 

「なぁ、佑一はどう思う?」

 

隼人が意味深に聞いて来る。

 

「俺はいいと思うけど、一番の問題は開発者があの律をどう思うかだろ」

 

「だよな。何事も無ければいいんだけどよ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございます、皆さん」

 

翌朝、律は前と同じに戻っていた。

 

「「生徒に危害を加えない」契約だが、今後は改良行為も危害に加えると言って来た。君らもだ。彼女を縛って壊れでもしたら賠償を請求するそうだ。開発者の意向だ。従うしかない」

 

「開発者とはこれまた厄介な………親よりも生徒の気持を尊重したいんですがねぇ」

 

殺せんせーはそう呟き、授業を開始する。

 

授業が始まって数分、律が起動音を上げる。

 

全員が教科書で頭を庇ったり、身を屈めたりする。

 

だが、撃ち出されたのは対先生用BB弾ではなく花だった。

 

「………花を作る約束をしていました。殺せんせーは私のボディーに…計985点の改良を施しました。そのほとんどは…開発者が暗殺に不要と判断し、削除・撤去・初期化してしまいましたが、学習したE組の状況から、私個人・・・は協調能力が暗殺に不可欠と判断し、消される前に関連ソフトをメモリの隅に隠しました」

 

「素晴らしい。では、律さん。貴女は」

 

「はい。私の意志でマスターに逆らいましたました。殺せんせー、こういった行動を反抗期と言うのですよね。律は悪い子でしょうか?」

 

「いえいえ、中学三年生らしく大いに結構」

 

律がE組の仲間に入り、これから、この28人で殺せんせーを殺すことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「泊君、帰ろう」

 

「ああ」

 

放課後になり、鞄を手に取って神崎と帰宅する。

 

隼人はいつの間にか倉橋と一緒に帰ってしまった。

 

それにしても、ここ最近神崎と一緒にいることが多いよな。

 

まぁ、協力者って立場上、神崎の身に危険がせまったら大変だしな。

 

「佑一!」

 

その時、隼人が行き成り教室に入って来た。

 

「隼人、どうした?」

 

「大変だ!千葉と速水がロイミュードに攫われた!」

 

「なんだって!?」

 

「追い掛けたんだが、下級のロイミュードに邪魔されて、倒し終わった頃には………!」

 

「助けに行こうにも………場所が分からないんじゃ………」

 

「私ならできます」

 

すると、携帯から律の声が聞こえる。

 

携帯を出すと律が映っていた。

 

「千葉さんと速水さんの携帯にハッキングし、居場所を探せます」

 

「……律、頼めるか?」

 

「はい」

 

「隼人、二人を助けに行くぞ!」

 

「ああ!」

 



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エレクトロの目的とはなんだったのか

律のハッキングのお陰で俺と神崎、隼人は二人が捕えられてると思われる、廃工場に着いた。

 

「ここに二人が……」

 

「携帯のGPS反応はここから出ています。………あの、よろしかったんですか?殺せんせーや烏間先生に連絡を取った方が」

 

律が不安そうに携帯から声を掛けて来る。

 

「ロイミュードが相手なら俺や隼人が適任だ。律、ナビを頼む」

 

「はい」

 

俺たちは律のナビを頼りに、廃工場内へと入る。

 

「神崎、俺から離れるなよ」

 

「うん」

 

神崎は本当なら付いて来てもらいたくなかったが、本人がどうしても付いて行くと言って聞かなく、仕方なく連れて来た。

 

「そこの部屋です。そこからお二人のGPSの反応があります」

 

「よし……行くぞ」

 

扉を開け、中に入る。

 

そして、部屋の奥に千葉と速水を見つけた。

 

「千葉!速水!」

 

二人に駆け寄り、俺達は声を掛ける。

 

二人はコードが大量についた機械に繋げられ、動きを封じられていた。

 

「これは何だよ?」

 

隼人が二人を拘束している器具を外そうと触れる。

 

すると、電流が流れ弾かれる。

 

「隼人!」

 

「大丈夫だ……この機械、電気を溜めてやがる………」

 

「私に任せてください」

 

すると律が声を出した。

 

「私がこの機械にハッキングし、二人の拘束を解きます」

 

携帯の画面が一瞬光り輝き、二人が拘束されてる機械に付いていたディスプレイが動き出す。

 

「そ、そんな!」

 

「どうした、律?」

 

「……ハッキングできません」

 

律の言葉に、俺たちは驚愕する。

 

「機械の構造自体単純なんですが、二人を救うには、同時に二人の拘束を解除しないといけません。そうしないと、残された片方が溜まった電気の所為で感電死します、私ではどちらか一人しか………」

 

「その通りだ!」

 

背後から声が聞こえ、振り向くと。

 

底には電球の様な形をしたロイミュードと下級ロイミュード二体がいた。

 

「ロイミュード!」

 

「貴様らが仮面ライダーだな。俺はエレクトロロイミュード。俺の目的は話した所で、意味は無い。敢えて言うなら、俺は電気を集めている」

 

「電気を?」

 

「何のためにだよ?」

 

「それを答えるほど、俺は愚かじゃない。お前らに良いことを教えてやろう。俺は既に必要な電気を集め終えた。だから、余った電気は必要ない。だから、それをまとめて人間どもに返してやるつもりだ。逆流と言う形でな」

 

「なんだって!?」

 

「そんなことしたら、町中の電子機器が壊れちゃう!」

 

「壊れるならまだマシだ。下手すりゃ、大火災になるぞ!」

 

「それはそれで好都合。俺がコピーした人間は酷く歪んた心を持っていてな。その人間の願いは、“人々の混乱と叫びを招きたい”だ。それが実現されれば、きっと俺はこの先に………約束の数の一員に!」

 

約束の数?

 

なんだそれは?

 

「う……うわあああああああ!!」

 

「ああああああああああああ!!」

 

エレクトロの言葉について考えていると、千葉と速水が悲鳴を上げた。

 

見ると機械から紫電が走り、二人を苦しめていた。

 

「溜まった電気が暴走し始めてるな。何とかしないと、二人は死ぬぞ、もっとも、仮面ライダーと言えども、一ヶ月間かけて、この町中から集めた電気に触れるのは自殺行為だがな。精々、そこで指をくわえて見てるんだな」

 

エレクトロロイミュードは高笑いをしながら去ろうとする。

 

「待てよ」

 

「……ん?」

 

「お前らは逃がさない」

 

「ほぉ……なら、友達を見捨てるのか?」

 

「助けるに決まってるさ………それにしても、驚きだな。いつもなら頭に血が上って冷静でいられなくなるけど、今の俺は怒りが頂点越えて、頭が冷えて、落ち着いてる」

 

そう言い、俺はシフトテクニックを取り出す。

 

ベルトさんを鞄から出し、装備する。

 

「隼人……あの三体を五分だけ任せてもいいか。その間に、二人を助ける」

 

「………五分だけでいいのか?あんな奴等、三分で片付けてやるよ」

 

隼人もマッハドライバーを出し、装備する。

 

「なら、やっぱ二分だ」

 

「上等………」

 

《シグナルバイク!!》

 

「LET'S………変身!」

 

《ライダー!!マッハ!!》

 

「追跡!撲滅!いずれも………マッハ!仮面ライダーマッハ!」

 

隼人がマッハに変身したのを見て、俺はシフトテクニックを使い、変身をした。

 

『START・YOUR・ENGINE!!DRIVE!!TYPE!!TECHNIC!!』

 

黄緑色のアーマーを纏い、胸部にタイヤが横向きに填まる。

 

ゼンリンシューターを手に、隼人がロイミュードに攻撃を仕掛けると同時に、俺は千葉と速水の二人を助けようとする。

 

「律、お前は千葉の拘束の方を。俺は速水をやる」

 

「泊さん、その姿……いえ、お願いします」

 

俺はテクニックの力を使い、律と同時にハッキングを開始する。

 

「ぐあっ!?」

 

その時、背後で隼人の声が聞こえた。

 

すると、目の前に隼人と戦ってるロイミュードの姿と、こちらに向かって電撃を放とうとするエレクトロの姿が見えた。

 

「ドア銃!」

 

そう言うと、ドア銃が飛んできて俺の手に収まる。

 

ドアの部分を翳すと、そこから小型のエネルギーシールドが現れ、電撃を防ぐ。

 

そして、敵をロックオンし、銃口を向ける。

 

片手でハッキングをしながら、片手で銃を撃つ。

 

光弾はロイミュードに当たり、隼人を助ける。

 

「後ろの敵を見ずに銃撃か、やるじゃん!」

 

隼人はそう言うと、ゼンリンシューターのゼンリン部分を回転さえ、下級ロイミュードに叩き付ける。

 

それと同時に、二人の拘束が外れた。

 

俺が速水を装置から外し、神崎が千葉を装置から外す。

 

「この装置はこのまま破壊する」

 

シフトカーホルダーから消防車のシフトカー、ファイヤーブレイバーを取り出し、ドア銃に装備する。

 

『ヒッサーツ!FIRE BRAVER!FULLTHROTTLE!』

 

銃口からははしご型のエネルギーが出て、装置を掴む。

 

そして、俺達から遠くまで移動させると、エネルギー弾が放たれ、俺達を巻き込むことなく破壊する。

 

「神崎!二人を頼む!」

 

「任せて!」

 

二人を神崎に任せ、俺は隼人の援護に向かう。

 

「きっかり三分。遅かったね」

 

「三分で倒せなかったくせに、偉そうに言うなよ」

 

「見せ場を残してやったんだよ」

 

互いに背中合わせになりながらドア銃とゼンリンシューターを構える。

 

「下級は任せな。そっちは進化態を」

 

「ああ」

 

互いが倒すべき相手を決め、俺たちは走り出す。

 

「くそがっ!」

 

エレクトロの拳を躱し、テクニックの精密さを活かして、エレクトロの身体に的確に拳を叩き込んで行く。

 

「はっ!」

 

回し蹴りを放ち、工場の窓からエレクトロを蹴り飛ばす。

 

「せやっ!」

 

『シグナルコウカーン!キケーン!』

 

隼人は下級ロイミュードを鮫と弾丸を融合させた形状の魔獣を召喚し、二体を攻撃する。

 

二体はまとめて外に飛ばされ、エレクトロの隣に立つ。

 

するとエレクトロは何かを取り出し、それを一体のロイミュードに渡した。

 

「これをハートに!」

 

「は、はい」

 

それを受け取り、下級ロイミュードは翼を出し、飛び上がる。

 

「逃がすか!」

 

『ヒッサーツ!フルスロットル!マッハ!』

 

「はっ!」

 

マッハの必殺技が炸裂し、逃げ出そうとした下級ロイミュードは爆発した。

 

「なっ!?」

 

「これで、最後はお前達だけだ」

 

別のシフトカーを取り出し、タイヤコウカンをする。

 

『タイヤコウカーン!ROLLING GRAVITY!』

 

すると、俺の手に10tと書かれた錘が装備された。

 

予想外の重さに、身体がよろめく。

 

それを好機と見て、エレクトロと下級が襲い掛かって来る。

 

俺は無理矢理錘を持ち上げ、振り回し、二体を殴り飛ばす。

 

「「ぐあっ!?」」

 

二体は地面を転がり、倒れる。

 

「これで、終わりだ!」

 

錘を投げ飛ばし、二体の傍に落す。

 

すると、重い音が響き、二体は地面に倒れ込む。

 

ローリングラビティをシフトブレスから外し、ドア銃にセットする。

 

『ヒッサーツ!ROLLING GRAVITY!FULL THROTTLE!』

 

上空にタイヤ型のエネルギーを発射し、無数のエネルギー弾が降り注ぐ。

 

エネルギー弾に撃ち抜かれ、二体共爆発する。

 

『Nice Drive!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり、お二人は仮面ライダードライブ、仮面ライダーマッハでロイミュードと戦ってると」

 

あの後、千葉と速水を家まで送り届け、俺と隼人は律に仮面ライダーのことを話した。

 

「ああ、そうなんだ。それと、この事は内緒で頼む」

 

「はい、正体がバレるといけないのは分かってます」

 

「話が早くて助かるよ」

 

「そうです!私も、御二人のお手伝いをさせて下さい!」

 

「「え?」」

 

律の行き成りの提案に俺と隼人は口を開ける。

 

「私の力で、ロイミュードの情報を探したり、どんよりの発生ポイントからロイミュードの隠れ家の予想索敵なんでも出来ます。それに、クラスメイトとしてお二人のお力になりたいんです」

 

「……じゃあ、頼めるか。正直、律が仲間になってくれたら心強い。な?」

 

「確かに、こんな頼れる仲間はいないわな」

 

隼人も賛成らしく、俺達の答えは決まった。

 

「これからよろしくな、律」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隼人の攻撃を食らった下級ロイミュードはまだ生きていた。

 

フラフラになりながらもある廃教会へと辿り着き、倒れ込む。

 

そんな下級ロイミュードに一人の青年が近づく。

 

下級ロイミュードは青年にエレクトロから託されたある物を手渡す。

 

「ご苦労だった。お前ももう休め、ナンバー103」

 

下級ロイミュード103はそれで安心したのか、そのまま動かなくなり、身体がコアと共に、消えた。

 

「ハート、それはなんです?」

 

「ブレンか」

 

青年、ハートに声を掛けたのは、眼鏡を掛け、緑色の服を着た男の名は能美壮。

 

またの名をブレンと呼ぶ、ロイミュードだ。

 

「こいつは……エレクトロからの贈り物……いや、友情の証だ」

 

そう言って、ハートは祭壇に寝かされた一人の少女を見つめる。

 

「これで蘇る……約束の数の一人になれる、大切な仲間が」

 

ハートはその少女に近づき、エレクトロからの贈り物を少女にインストールさせる。

 

膨大な電力が少女に供給され、そして、少女は目を開け、祭壇から降りた。

 

「おはようございます、ハート様」

 

「おはよう、メディック」



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彼らはどのように屈辱を晴らすのか

実に一年ぶりの更新です。

久しぶりのアサシン・ドライブ、どうぞ。

今回は戦闘はありません


梅雨の六月

 

この時期はよく雨が降る。

 

そして、雨が降ればいやでも思い出してしまう。

 

半年前のグローバルフリーズ。

 

あの日も、こんな風に雨が降っていた。

 

いつもなら授業そっちのけでずっと窓の方を見ているのだが、今日に限ってはすごく気になることがある。

 

「なぁ、佑一。デカいよな……?」

 

「ああ、明らかにな」

 

隣の席の隼人がそう声をかけてくる。

 

そう、教壇に立つ殺せんせーの頭部は異様なまでに大きく膨らんでいた。

 

「殺せんせー、頭部が33%程巨大化したご説明を」

 

律が全員が思っていることを口にし、殺せんせーに尋ねる。

 

「これですか?水分を吸ってふやけました。湿度が高いので」

 

生米かよ………

 

「雨粒は全部よけたのですが、湿気ばかりはどうにもなりませんからね」

 

そう言って、殺せんせーは顔を絞り、水を切る。

 

それも仕方がない。

 

E組の環境は最悪だ。

 

夏は暑く、冬は寒い。

 

そして、梅雨の時期には雨漏りはする。

 

教室のいたるところにバケツが置かれ、雨漏りの受け皿になっている。

 

そんな中、倉橋が殺せんせーの頭がの帽子が浮いてることに気付く。

 

「先生、帽子がちょっと浮いてるよ」

 

「よくぞ聞いてくれました。実は先生、ついに生えてきたんです。髪が」

 

そう言って帽子をめくった殺せんせーの頭には確かに生えていた。

 

キノコが。

 

「「「「「「「「「「キノコだよ!!」」」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下校時刻になり、俺は玄関へと向かうと、そこには神崎がいた。

 

「神崎?どうしたんだ?」

 

「あ、泊君。実は傘忘れちゃって……」

 

「そうなのか?この様子だと、今日は止みそうじゃないな」

 

「うん、それでどうしようかなって悩んでて……」

 

そう言って神崎は雨空を見上げる。

 

「………なら、入ってくか?」

 

「え?」

 

「どうせ、途中まで帰り道は一緒だろ?それに……いや、なんでもない。行こうぜ」

 

あの日みたいに不良に囲まれたら大変だろっという言葉を飲み干し、俺は傘を差す。

 

あの日のことは神崎にとっても不良に囲まれたっていう嫌な日だろうし、俺は言わなかった。

 

「じゃあ、お願いね」

 

神崎はそう言い、傘の中に入ってくる。

 

神崎が雨に濡れないように、傘を神崎寄りに動かし下校する。

 

山道を降り。舗装された道に出ると、神崎が俺の肩を見て気づく。

 

「泊君、肩濡れてるよ?」

 

「え?ああ、そうだな」

 

神崎寄りに傘を差してるため、自然と俺の右肩は濡れていた。

 

「教えてくれて、ありがとな」

 

神崎に礼を言って傘を間に置くように差す。

 

そして、歩き出すとさりげなく。また神崎寄りに傘を動かす。

 

「(あ、また傘がこっちに寄って来てる。……本当に優しいな、泊君)ふふっ」

 

急に笑い出した神崎にどうしたのかと一瞬、神崎の方を見る。

 

すると、神崎は俺との間を詰めてきた。

 

俺と神崎は、体がぶつかり合う様な距離になっていた。

 

やっぱり、わざと傘を動かしてたことに気づいてたんだな…………

 

男としてそこはさりげなく、そして、気づかれないようにやったんだがな………

 

『佑一、ちょっといいかね?』

 

すると、突如ベルトさんがシフトスピードを通して、俺に声をかける。

 

「ベルトさん。どうしたんだよ?」

 

『私としては、若い男女の楽し気な一時を壊すのは不本意ないのだが、教えとかねばと思ってね。後ろを見たまえ』

 

そう言われ、神崎と一緒に振り向く。

 

するとそこには、殺せんせーと渚、茅野に岡野、そして杉野がいた。

 

杉野は血走った眼をしているが。

 

「殺せんせー!?それにお前らまで!?」

 

「皆、どうしてここに?」

 

「いや、覗くつもりはなかったんだよ。ただ偶然に……」

 

渚が申し訳なさそうにそう言ってくる。

 

「もちろん、偶然ですよ。ただ三学期までに生徒全員の恋話をノンフィクション小説として出す予定なのでその取材を」

 

「相変わらず生徒のゴシップが好きだな、先生」

 

そんな先生に呆れていると、殺せんせーは手帳を取り出す。

 

「第二章なんかは、泊君の物語とかはどうでしょう?見てましたよ、神崎さんとの相合傘」

 

「別に、神崎が困ってたから傘にいれてやってただけだよ。他意はない」

 

「そうですか。では、さり気なく傘を神崎さん側に寄せてたのも、それに気付いた神崎さんが君に近寄って吐息も聞こえるような距離になったのにも他意はないと」

 

「どこから見てたんだよ!?」

 

そう怒鳴るが、すぐに殺せんせーだしと納得し、引き下がる。

 

しかし、クラスメイトと担任に、偶然とは言え女子との相合傘を見られるとは………

 

それに、渚と杉野は修学旅行の時、俺が気になる女子ということで神崎の名前を挙げたことを知ってる。

 

加えて杉野は神崎に好意を持ってる。

 

色々と最悪だし、恥ずかしい。

 

隣の神崎も恥ずかしいらしく俯き、顔を赤くしている。

 

その時だった。

 

「あれ?前原君だ」

 

渚がそう言い、渚の視線の先を見るとそこには陽斗が本校舎の女生徒と相合傘をしていた。

 

「ほうほう。前原君、駅前で相合傘………と」

 

こんな時でも、殺せんせーは小説のネタをメモする。

 

「一緒にいるのって、C組の土屋果穂でしょ?」

 

「前原君って、モテるからね。しょっちゅう一緒にいる女子変わるし」

 

「そりゃそうだ。アイツは顔も良いし、スポーツ万能。成績だって本校舎に居た時はそれなりに良かったんだ。椚ヶ丘じゃなかったら、もっと上の成績でもおかしくない程だ。モテない方がおかしいだろ」

 

俺は渚にそう言い、陽斗を見る。

 

しかし、本校舎にも俺たちのことを差別しない人間もいるんだな。

 

「あれェ?果穂じゃん、お前何してんの?」

 

「……!!瀬尾君!」

 

そんなことを思っていると、突如、本校舎の男が現れ、土屋は驚いた顔になり、陽斗を突き飛ばし、その男に近づく。

 

確か、あの男って………

 

「生徒会の瀬尾だったか?」

 

「うん。本校舎じゃ、五英傑って呼ばれてる人だよ」

 

「五英傑?」

 

「本校舎の成績上位五人のこと」

 

神崎がそう言って来て「へ~」っと呟いた。

 

五英傑なんて初めて知ったな。

 

「あー、そゆことね」

 

前原は何かに納得し、そう言う。

 

「最近電話しても出なかったり、チャリ通学から電車通学に変えたのも全部そういうことか。で、新カレが忙しいから俺もキープってわけ?」

 

どうやら、あの女、陽斗とあの瀬尾って奴に二股仕掛けてたみたいだ。

 

酷い女だな。

 

そう思ってると、突如土屋は、陽斗の方を向く。

 

「あのさ、自分が悪いってわかってる?努力不足でE組に飛ばされた前原君」

 

攻撃的になったその女に、陽斗は少し驚いた顔をする。

 

「それに、E組の生徒は椚ヶ丘好悪工に進めないし、遅かれ早かれ私たち接点なくなるじゃん。E組落ちてショックかなって思って、気遣ってハッキリ別れは言わなかったけど、言わずとも気付いて欲しかったなぁー。けど、E組の頭じゃ、わかんないか」

 

「お前なぁ、自分のこと棚に上げて」

 

陽斗が何か言おうとした瞬間、瀬尾は行き成り陽斗を蹴り飛ばした。

 

「陽斗!?」

 

俺は思わず傘を放り投げ、陽斗のもとに駆け寄る。

 

「陽斗!?大丈夫か!?」

 

「佑一……ああ、平気だ………」

 

「お前ら……!」

 

俺は陽斗の前に立ち、瀬尾を睨み付ける。

 

「なんだよ?E組が俺たち本校舎の人間に盾突く気か?」

 

「……謝れよ」

 

「あ?」

 

「陽斗に……謝れって言ったんだ」

 

「はっ!E組如きに頭なんか下げれるかよ。てか、俺なんか悪いことした?俺は果穂にしつこく言い寄る虫を追い払っただけだぜ。な、そうだろ?」

 

瀬尾は後ろにいた仲間にそう尋ねる。

 

「ああ、そうだな」

 

「本当、E組は礼儀を知らない野蛮な奴ばっかで困るよな」

 

そう言って俺たちを見下すように笑う。

 

「てめーら……!」

 

「やめなさい」

 

拳を握り、今にも殴ろうとした時、俺たちの前で止まった黒塗りの車から、理事長が現れる。

 

「り、理事長先生……!」

 

瀬尾たちは理事長の登場に驚き、一歩下がる。

 

「泊君、その拳を解きなさい。暴力はよくない。暴力は、人の心を、今日の空模様の様に荒ませる」

 

その言葉は正論だった。

 

正論だったのに、俺はまるで心臓を掴まれた様な気分になった。

 

「……はい、すみません」

 

理事長に思わず謝った。

 

「それでいい」

 

理助長は笑みを浮かべると、陽斗の前に立ち、雨に濡れたアスファルトに膝をつく。

 

「これで拭きなさい。酷い事になる前でよかった。危うく、この学校にいられなくなる所だったね。君と、彼が」

 

そう言い、理事長は立ち上がる。

 

「じゃあ、皆さん。足元に気を付けて。さようなら」

 

理事長は笑顔でそう言い、車に乗り込む。

 

「人として立派だよな、理事長先生は。膝が濡れるのも気にせずハンカチを差し出すなんて」

 

「あの人に免じて見逃してやるよ、間男」

 

「感謝しろよ」

 

「嫉妬してつっかかって来るなんて、そんな心の醜い人だとは思わなかった。二度と視線も合わせないでね」

 

そして、瀬尾たちは笑いながら去っていった。

 

「前原!大丈夫か!?」

 

「お前ら……見てたのかよ……それにしても、上手いよな、あの理事長。事を荒立てず、かと言って差別も無くさず、絶妙に生徒を支配してやがる」

 

「そんなことより、あの女だろ!とんでもねービッチだな!まぁ、ビッチならウチのクラスにもいるけど………」

 

「違うよ」

 

渚が杉野の言葉を否定する。

 

「ビッチ先生はプロだから、ビッチの意味も、する場所も知ってる。でも、彼女は、そんな高尚なビッチじゃない」

 

「いや、俺は別にビッチでもいいんだよ」

 

「いいの!?」

 

陽斗は二股かけられたことを気にも留めずに、立ち上がる。

 

「好きな奴なんて変わるモンだし、気持ちが冷めたら振りゃいい。俺だってそうするし」

 

「中三でどんだけ達観してんのよ」

 

岡野は呆れ気味に、そう言ってタオルを渡す。

 

陽斗はそれを受け取り、頭を拭きながら言う。

 

「さっきの彼女見たろ?一瞬罪悪感で言い訳しようとしたけど、その後すぐに攻撃的になった。「コイツはE組だった」「だったら何言おうがわたしが正義だ」ってさ。後はもう、逆ギレと正当化のオンパレード。醜いとこ、恥ずかしげもなくまき散らして…………なんかさぁ、悲しいし、恐ぇよ。人って、皆ああなのかな?俺も、相手が弱いと見たら、ああいう事しちゃうのかな…………」

 

陽斗は悲しそうにそう言う。

 

俺は陽斗がそう言うので、思わず、もし自分がE組ではなかったらと考えた。

 

もし、まだ本校舎に居たら、俺は皆をどういう風に見てたんだ………

 

そんなこと考えていると、俺たちの隣で頭を今朝以上に膨らませてご立腹な殺せんせーがいた。

 

「殺せんせー!膨らんでる、膨らんでる!」

 

「仕返しです。理不尽な屈辱を受けたのです。力無き者は泣き寝入りする所ですが、君たちは違う。気づかれず、証拠も残さず標的をしとめる、暗殺者の力を持っています。屈辱には屈辱を。彼女たちにはとびっきり恥ずかしい目に遭ってもらいましょう」

 

殺せんせーはヌルフフと獰猛に笑い、渚たちも獰猛な笑みを浮かべていた。

 

それを見て、俺も思わず笑った。

 

「やっぱ殺せんせーは最高だよ。俺も、ひとっ走り付き合うぜ」

 

俺は、ネクタイを締め直し、今度は渚たちみたいな獰猛な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~おまけ~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「あれ?」

 

『ん?どうかしたのかね、佑一?』

 

「そう言えば、朝から雨降ってたのに、傘忘れたって神崎の話おかしくないか、ベルトさん?」

 

『…………やれやれ、そこまで女心に鈍感とは呆れるよ』

 

「え?何が?」



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ベルトはどこへ向かうのか

翌日、陽斗へした仕打ちの仕返しのために、俺たちは集まった。

 

現在、瀬尾とあの女はオープンカフェで楽しくお茶をしている。

 

そこに老夫婦がやってきて、二人の後ろの席に座る。

 

その老夫婦とは菅谷がパーティーグッズの変装マスクに手を加え、それで変装した渚と茅野だ。

 

殺せんせーを騙すにはまだまだだが、一般人程度なら騙すには十分過ぎる出来だった。

 

「しかし、よくこの家の人が俺たちを上げてくれたな」

 

そう。

 

俺たちは、そのオープンカフェの向かいにある民家の二階で様子を観察している。

 

「ああ、矢田と倉橋がやってくれたよ。ビッチ先生直伝の接待術。大したもんだ」

 

「ヌルフフフ、守備は上々ですね。では、作戦を開始しましょう」

 

殺せんせーの言葉を合図に、俺たちは行動を開始した。

 

こちら側の準備が整い、俺は渚に作戦開始のメールを送る。

 

それを見た渚と茅野は頷き合い、動き出した。

 

作戦では、茅野が席を立ち、店のトイレに向かう。

 

そして、渚がテーブルの上の物を落とす。

 

その瞬間、二人はそっちに気を取られカップから意識を外す。

 

すると千葉と速水の二人がエアガンで、奥田の持ってきた特製のBB弾を二人のカップの中に撃つ。

 

弾は寸分狂いなく、カップの中に入る。

 

二人に気づかれないうちに。

 

二人は渚に怒鳴り、渚は謝る。

 

変装してるとはいえ、老人に対して酷い奴らだな。

 

二人はぶつくさと文句を言って、カップの中身を飲む。

 

これで作戦は概ね完了。

 

「あとは下の皆さんにお任せです」

 

殺せんせーはそう言い、コーヒーを飲んでいたカップを食べる。

 

「なぁ、奥田。アレはなんなんだ?」

 

「アレはマグネシウムを主成分として調合した物で、市販薬の数倍の刺激を大腸に与える強力下剤です」

 

笑顔でそう言う奥田に、ちょっと恐怖し俺は凄いなっとだけ言って観察を再開する。

 

見ると、下剤の効果が現れたのか二人は慌てて、店の中のトイレに向かったが、その後すぐに店を慌てて飛び出す。

 

トイレは茅野が立て籠もっており使えない。

 

事前の調査であの店にはトイレがないのは把握済みだ。

 

ちなみに調べてくれたのはシャドーだ。

 

そして、この辺にあるトイレは百メートル先にあるコンビニのみ。

 

加えて、コンビニに向かうための道はいま、工事中で、コンビニに行くには、一度横断歩道を渡って、俺たちがいる民家の前を通らないといけない。

 

そこで待ち構えるのは…………

 

「三人とも、今だ」

 

合図を送ると、民家の木の上でスタンバってた陽斗と磯貝、岡野の三人が木の枝を切り落とす。

 

切り落とされた木の枝は見事、下を通った二人に直撃し、二人はずぶ濡れの毛虫まみれになった。

 

なお、木の枝を切り落としたのは民家の人が塀からはみ出て、切り落とすのに困っていたからだ。

 

何が起きたのかもわからず、二人はずぶ濡れの姿のまま、コンビニへと走り去った。

 

「これで幾分かは気が晴れたでしょ。汚れた姿でおお慌ててトイレに駆け込む。そして、どちらが先に入るか醜く争う。彼らには随分な屈辱でしょう。それで、どうですか、前原君?まだ自分が、弱いものを平気でいじめる人間だと思いますか?」

 

「………いや、今の皆見てたらそんなことできないや。一見弱そうなのに、頼れる武器を隠し持ってるし」

 

「そう言う事です。強い弱いは見た目では測れません。それを学んだ君は、この先、弱者を簡単には蔑むことはないでしょう」

 

「……うん、そう思うよ。あ、そうだ。佑一」

 

陽斗が俺の方を向く。

 

「昨日はありがとな。お前が、あいつらに向かってった時、少し嬉しかったぜ」

 

「そんなの当たり前だろ。親友がやられてるのに我慢できるかよ」

 

そう言って俺と陽斗は拳を合わせた。

 

「あ、俺これから他校の女子とメシ食いに行くから。じゃあ、皆ありがとな!また明日!」

 

そう言い残し、陽斗はささっと去っていった。

 

なんというか、切り替えの早い奴だよな………

 

『親友……か………』

 

「ん?どうした、ベルトさん?」

 

誰にも見つからないように、俺はベルトさんに話しかけた。

 

『………佑一、ちょっと付き合ってくれないか?』




Q佑一は何をしたのか?
A連絡係です


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何故、奴は彼の前に現れたのか

あの後、俺は皆から離れ、トライドロンを呼び、乗り込んだ。

 

目的地まではベルトさんが運転し、俺はただ黙って運転席に座っていた。

 

「なぁ、ベルトさん。一体、どこに俺を連れていくんだ?」

 

『着いたら話す。それまでは待っていてくれ』

 

「……分かったよ」

 

そこから俺は一言も話さず、外を眺め続けていた。

 

トライドロンは途中で山道に入り、そのままぐんぐんと山を登って行った。

 

『着いた。ここだ』

 

傘を差し、外に出るとそこには何もなかった。

 

「ここは?」

 

『かつて、私の家が有った場所だ。そして、私が死んだ場所でもある』

 

「ここが……」

 

辺りを見渡しよく見ると、石造りの階段があったり、門と思しき石柱があった。

 

『君と陽斗を見ていて、つい蛮野のことを思い出してね』

 

「そう言えば、蛮野博士とは友人だったんだけ」

 

『ああ、同じ師を持ち、ライバルとして切磋琢磨し合い、親友として共に助け合った。よく私の家でワインを飲みながら夢を語り合ったものだ』

 

ベルトさんは懐かしむようにそう言う。

 

『思えば、コア・ドライビアもロイミュードも、夢として語ってる時がよかった。どのような感じにし、どのような力があり、どのように使うか。語ってるだけでも十分よかった。だが、私と蛮野は、夢を現実にしようとした。その結果が……私のこの姿だ』

 

ベルトさんは自嘲する様に言う。

 

『君と陽斗の二人を見ていたら懐かしくなってしまってね。個人的な理由で付き合わせてすまない。戻ろうか』

 

「………なぁ、ベルトさん。折角だ。もっとベルトさんの話聞かせてくれよ」

 

『え?』

 

「思えば、ベルトさんって自分の事といい、ネクストシステムの事といい、隠し事が多過ぎる。全部とは言わないけどさ、せめてもう少し話してくれてもいいんじゃないか?」

 

ベルトさんと出会ってまだ二ヶ月ぐらいしか経っていないが、俺はベルトさんの事を知らなさ過ぎる。

 

正直、ここに連れてこられて蛮野のことを話してくれたのは嬉しかった。

 

まるでやっと俺のことを認めてくれたような感じがした。

 

『…………そうだな。たまには昔を語るのもいいだろ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ベルトさん、独身だったのか」

 

『ああ。若い頃は何度か付き合ったことはあるんだがね。だが、私は仕事一筋のような人間でね。気が付けば、別れていたよ。お陰で、独り身だった』

 

こうして腹を割って話してみると、意外とベルトさんも普通の人だった。

 

科学者とかって、常人が思ってもないようなことばっか考えてるような奴ばっかと思ってたからちょっと驚きだ。

 

『ちょっと話し過ぎたかな。佑一、そろそろ帰ろう』

 

「そうだな。ありがとな、ベルトさん。話してくれて」

 

『どうってことないさ。No Problem!さぁ、帰ろう』

 

ベルトさんを手に立ち上がった瞬間、水たまりが跳ねる音がした。

 

そちらを振り向くと、赤いコートを着た一人の男がいた。

 

雨が降っているのに傘も差さずに立っていた。

 

「誰だ?」

 

『お、お前は!?』

 

ベルトさんはそいつを知っているのか、声を上げる。

 

男は笑い、口を開いた。

 

「久しぶりだな、クリム。実に半年ぶりだ」

 

「半年ぶり?それってグローバルフリーズの………」

 

「ソイツが今の仮面ライダーか?随分とひ弱なやつを選んだな」

 

俺が仮面ライダーってことを知ってる!?

 

「ベルトさん!此奴は誰なんだ!?それに今の仮面ライダーって………」

 

『………此奴はハート。私を殺したロイミュードの一人で…………君の前のドライブを倒した奴だ』

 

此奴がベルトさんを!?それに、前のドライブって………いや、今はそんなこと気にしてる場合じゃない!

 

「やるぞ!ベルトさん!」

 

『だ、ダメだ!ハートと戦ってはならない!』

 

「え?」

 

いつになく取り乱したように言うベルトさんに俺は驚く。

 

『ソイツは今まで戦ってきたロイミュードとは格が違う!今戦っては君が死んでしまう!ここは逃げるんだ!』

 

「…………なら、聞くけど………此奴は逃げ切れるような相手か?」

 

『それは………』

 

「戦ってなくてもわかる。此奴は強い。………でも、だからって逃げるのか?どうせいつかは、此奴とも戦うんだ。遅いか早いかの違いだけだ」

 

『だが………』

 

「………大丈夫だって。俺は……死なない」

 

『…………わかった。やるぞ、佑一!』

 

「ああ!」

 

ベルトさんを装着し、シフトブレスを腕に付ける。

 

「変身!」

 

『START・YOUR・ENGINE!!DRIVE!!TYPE!!SPEED!!』

 

ハンドル剣を手に俺はハートへと走り出す。

 

「やれやれ、俺の友達を倒してきた奴の顔を見に来ただけのつもりだったんだが、いいだろう。戦ってやる」

 

そして、ハートも心臓を髣髴させるような形の赤いロイミュードの姿へと変える。

 

「来い、仮面ライダー!」

 

「行くぞ、ハート!」




次回、ドライブVSハート


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デットヒートレースを征するのはどちらか

ドライブに変身した俺は、ハートに拳を振った。

 

ボディに連続で拳を叩き込み、蹴りを打つ。

 

だが、ハートは効いてないのか平然と攻撃を受け続け、攻撃してくる。

 

「ふっ!」

 

「ぐあっ!?」

 

強い衝撃が体中をめぐり、吹き飛ばされる。

 

背中から地面に叩きつけられるも、何とか体を動かしシャドーを手に取る。

 

『タイヤコウカ――ン!MIDNIGHT!SHADOW!』

 

シャドーにタイヤを変え、手裏剣型のエネルギーを手に纏う。

 

「はっ!」

 

手裏剣を投げつけるも、ハートは全て素手で叩き落し、防ぐ。

 

「この程度が仮面ライダー!思ったより弱いじゃないか」

 

「へっ!そう思いたきゃ思ってろ!後悔させてやるからよ!」

 

今度は手裏剣を手に纏ったまま接近し、叩き付ける。

 

「はっ!せいっ!やっ!」

 

「ぬっ!くぅ!」

 

さすがに至近距離でぶつけられるのはキツイのか、ハートは呻き声をあげる。

 

「せやっ!」

 

そのまま、ありったけの力を込めて、蹴りを腹部に入れる。

 

「ぐおっ!?」

 

「今だ!」

 

『タイヤコウカ――ン!SPIN!MIXER!』

 

今度はスピンミキサーにタイヤ交換する。

 

そして、タイヤに付いた12門の射出口をハートへと向ける。

 

そこから、生コンクリートの塊が発射され、ハートに当たる。

 

「これは!?」

 

「特殊な生コンクリートだよ。簡単に動けねぇだろ」

 

ハートは下半身をコンクリートによって固められて動けない。

 

「終わりだ!」

 

タイヤをシフトスピードに変え、必殺技を放つ。

 

『ヒッサーツ!FULLTHROTTLE!SPEED!』

 

「はあっ!」

 

飛び蹴りをハートに向かって放ち、ハートに当たる。

 

そして、俺の背後で爆発が起きる。

 

「やったか!?」

 

『………ダメだ。アレではハートは倒せない………!』

 

「くっははははははは!」

 

爆炎の中からハートが笑い声とともに現れる。

 

「中々の威力だった。訂正しよう……半年前よりは幾らか強くはなったみたいだな。この力で………この世にたった108人しかいない、俺の友達を次々と…………!」

 

ハートの声から怒っているのよくわかる。

 

コイツ、本気で仲間のことを…………!

 

「お前は………決して許さん!」

 

その瞬間、ハートが赤く燃えだした。

 

そして、その巨体からは信じられないスピードで俺との距離を詰める。

 

「ふんっ!」

 

腹に拳が撃ち込まれる。

 

さっきのとは比較にならない重い一撃だった。

 

「ぐっ………なんなんだ………この一撃………!」

 

『半年前より明らかに強くなってる!?プロトドライブを倒した時よりも、遥かに………!』

 

「俺たちも日々成長する。人間を支配するために人間を学び、進化するのだ」

 

ハートはゆっくりと歩み寄り、拳を握る。

 

『奴がこんな力に覚醒していたとは…。まさにハート…心臓部の力だ!!』

 

「心臓部?」

 

『内燃機関の能力を、怒りの力で限界値以上に解放しているのだ!』

 

その言葉を聞き、俺はハートを見る。

 

見ると胸元には心臓の様な物が露出していた。

 

まさか…………

 

「終わりだ、仮面ライダー、クリム。デッドゾーンに突入してしまった以上、もう俺自身でも止められない………仮面ライダーは、二度死ぬ」

 

ハートの拳が俺に振り下ろされる。

 

その瞬間、俺はシフトスピードを外し、シフトテクニックを使った。

 

『タイヤコウカ――ン!DRIVE!!TYPE!!TECHNIC!!』

 

テクニックの力で、ハートの胸元の心臓をロックし、正確に掴む。

 

 

 

「ぐふっ!?」

 

「ハートって名前から考えれたが、やっぱりここが弱点か!」

 

そして、心臓部ってだけあってかなり熱い………!

 

今にも、オーバーヒートしちまいそうだ…………!

 

「くっ!舐めるな!」

 

ハートは心臓を掴まれているにも関わらず、俺の首に手を伸ばし掴んでくる。

 

息苦しく、おまけに喉は焼けそうなぐらい熱かった。

 

だが!

 

「アンタが燃え尽きる覚悟で俺を倒しに来るって言うなら、俺も覚悟を決める!このデッドヒートレース………最後まで付き合ってやる!」

 

「………ふっ!恐ろしい男だ………だが、面白い。クリム、いい奴を選んだな」

 

ハートは苦しそうにしながらも笑って言う。

 

『やめろ、佑一!死んでしまう!』

 

ベルトさんが声を上げる。

 

「……ごめん、ベルトさん。死なないって言ったけど、約束破りそうだ。でも、アンタだけは死なせない!」

 

俺はもう片方の手でベルトさんを掴む。

 

『佑一!何をするんだ!?』

 

「アンタさえ生きてれば、新しい誰かを次のドライブにできるはずだ!」

 

ハートの心臓をさらに強く握り、もう片方の手でベルトさんを強く握る。

 

ハートの心臓を破壊と同時に、ベルトさんを引き千切って捨てる。

 

そうすれば、ベルトさんが爆発に巻き込まれることはないはずだ。

 

「そこまでの覚悟で来るか。いいだろ……どちらの心が強いか勝負といこうか!!」

 

「望むところだ!!」

 

互いに心臓と、首を掴む手の力を強くする。

 

『やめろ佑一!よすんだ!やめろ!やめるんだーッ!!!』

 

「はああああああああああああっ!!」

 

「うおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

一気に勝負を決めようとした。

 

その瞬間だった。

 

「ハートっ!?」

 

紫と黒のライダースーツ風のジャケットを身に纏った男、チェイスが現れた。

 

《Break up》

 

チェイスは魔進チェイサーになり、武器を構え、跳躍する。

 

「ふんっ!」

 

「ぐあっ!?」

 

殴り飛ばされ、ハートの心臓を離してしまう。

 

変身も解除された。

 

だが、同時にハートも俺の首から手を離す。

 

「止まれ!」

 

チェイスはハートの方に向き直り、俺同様、殴り飛ばす。

 

ハートは地面を転がり、苦しそうにもがくが、動かなくなる。

 

だが、死んでないのはわかる。

 

「くっ……お前……!」

 

「…………今のお前と戦っても意味などない。次に会う時、その時が俺とお前の決着の時だ」

 

チェイスはそう言い残し、人間態に戻ったハートを抱え、去って行った。

 

「…………あっ!つうっ!…………!?」

 

二人が去ったのと同時に、俺の体を激痛が襲った。

 

『佑一!しっかりしろ!佑一!』

 

ベルトさんが騒ぐ声が聞こえた。

 

そして、俺はベルトさんのその言葉を最後に、意識を失った。

 



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誰に一番心配をかけたのか

ハートを連れたチェイスはいつもの廃教会へと戻ってきた。

 

ハートを椅子に座らせ、落ち着かせる。

 

「大丈夫か、ハート?」

 

「…ありがとう。すまんな、チェイス」

 

「デッドゾーンに入ったら…俺が止める。お前との…約束だ。メディックを呼んでくる」

 

チェイスはそれだけ言い、部屋を去る。

 

「お前は、本当に頼もしい友だよ」

 

ハートは去って行くチェイスの背中を見ながらつぶやき、目を閉じた。

 

メディックが来るまでの暫しの休憩のつもりで…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?……ここは……イッツ!?」

 

目が覚めた俺を最初に襲ったのは、身体の痛みだった。

 

痛みに耐えながら起き上がると、そこはドライブピットだった。

 

「佑一!?目が覚めたのか!?」

 

入ってきた隼人が俺に気づき、声をかけてくる。

 

「隼人……お前が助けてくれたのか?」

 

「いや、助けたのは俺じゃない。助けたのはそっちさ」

 

そう言って隼人が指さした方を見ると、椅子に座って眠っている神崎がいた。

 

「ベガスが危機に気づいて神崎をあそこまで連れてったんだよ。で、そのままトライドロンでドライブピットまで運んだ。神崎の奴、お前の目が覚めるまで傍に居るって言って聞かなかったんだぜ」

 

「そうだったのか………」

 

寝ている神崎を見て、心の中で感謝する。

 

「隼人、俺はどのぐらい寝てた?」

 

「大体四日ぐらいかな」

 

「結構寝ちまったな………」

 

「一応皆には風邪ってことにしてるから大丈夫だとは思うけどね。とりあえず、神崎が目、覚ましたらちゃんとお礼言えよ。じゃ、また明日な」

 

隼人は見舞い品なっと言ってプリンを置いて行って帰った。

 

「う、ううん………!」

 

すると神崎が、起きる。

 

寝ぼけたまま、俺をじっと見てくる。

 

「………泊君?」

 

「よぉ。迷惑かけたな」

 

笑顔でそういうと、神崎はいきなり抱き着いてきた。

 

「お、おい!?」

 

「よかった……泊君が……目が覚めてくれて良かった………!」

 

涙声で神崎は、そう言う。

 

本当に迷惑をかけちまったな。

 

「悪い、ちょっと無茶した。心配かけてごめんな」

 

神崎の頭を撫で、謝る。

 

『ちょっと無茶だと?あれの何処がちょっとだ!?』

 

すると怒鳴り声が響く。

 

テーブルにはベルトさんがおり、ご立腹だった。

 

「ベルトさん……」

 

『死神の介入がなければ君は死んでいた!わかっているのか!?それに、私が生きてればほかのだれかをドライブにできるだと!?いい加減にしたまえ!…………君の代わりなど……他にいない』

 

ベルトさんがトーンを落としてそう言う。

 

「……すまない」

 

『……トライドロンは、プロトドライブが倒された後、私が開発した。何故かわかるかね?』

 

その言葉に、俺は首を振る。

 

『私自身が、戦士を守れる強さを持ちたい、と願ったからだ』

 

「ベルトさんの、願い?」

 

『半年前は、まだドライブの機能にロイミュードのコアを破壊するだけの力はなかった。その結果、ロイミュードは復活し、プロトドライブはハートに敗北した。私は後悔したよ。ロイミュードのコアを破壊する力を作っていれば、私が彼を守れる力があれば……………だからこそ、トライドロンを作った。戦士を守る、私の体を』

 

「…………そうだったんだ」

 

『君が地獄に落ちると言うなら、私も次は付き合おう。このトライドロンで』

 

「………ベルトさんの気持ち、わかったよ。もう無茶はしない」

 

『わかってくれたならいい。さて、そろそろ大本命に来てもらおうか』

 

「大本命?」

 

「泊君、クリムから話は聞かせてもらったぞ」

 

背後に殺気を感じた。

 

振り向くと、そこには烏間先生がいた。

 

酷くご立腹だった。

 

「ハートロイミュードとの戦闘について詳しく話をしよう。随分と無茶をしたようだな」

 

その後、五時間説教された……………

 




次はイトナの登場です。

お楽しみに


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転校生の力は一体何なのか

烏間先生にメッチャ怒られた。

 

どうやら烏間先生もハートのことは知っていたらしく、今後はハートと出会っても戦わず、逃げるように釘を刺された。

 

『今の君では、奴の相手は荷が重すぎる』

 

わかってはいるけど、はっきりそう言われると、傷つくよな。

 

『佑一、君は強くなってる、それは確実だ。ただ、まだ戦うべき時ではない。それをわかってくれ』

 

「分かってる。そこまで子供じゃないさ」

 

ベルトさんにそう返事を返すも、俺はハートのことを考えていた。

 

(ハートか………敵としては恐ろしい奴だったけど、アイツは本気で俺に倒されたロイミュードの死を悲しんでいた。それに、部下じゃなくて、友達か。案外、いい奴だったな………)

 

そんなことを考えながら、E組に着く。

 

E組内は異様に賑わっていた。

 

「隼人、なんだか今日は騒がしいな」

 

「烏間さんから昨日連絡があったんだよ。律に続いて、二人目の暗殺者転校生が来るってさ」

 

「ふ~んってか、E組は無駄に転校生が多いな。お前とか」

 

「ま、教師がアレだし、それも仕方ないんじゃない?」

 

隼人とそんなやり取りをし、席に着く。

 

「烏間先生から聞いているとは思いますが、転校生のことは知っていますね?」

 

せんせーの問いかけに、皆が頷いた。

 

「まあ、ぶっちゃければ殺し屋でしょ?」

 

「ヌルフフ、律さんの時は油断しましたが、今回は油断しません。それに何より、このクラスにまた新しい仲間が増えることはうれしいです」

 

嬉しそうにするせんせーを見つつ、原が後ろにいる律に問いかけた

 

「律は何か知ってるの?」

 

「はい。当初は私が遠距離での暗殺を行い、彼が近距離での暗殺をする予定でしたが、二つの理由でキャンセルされました」

 

「その理由は?」

 

「一つは彼の調整が予定より時間が掛かったから。そして、もう一つは、私が彼より暗殺者として劣っていたからです」

 

その言葉に、全員が戦慄する。

 

殺せんせーの指を吹き飛ばした律が、劣っているとか………一体、どんな奴なんだ?

 

その時、教室の扉が開いた。

 

全員が一斉にそちらを向く。

 

そして入って来たのは全身を白い和服で身を包み、顔も白い頭巾で覆った人だった。

 

全員がその恰好に驚く。

 

そして手を差し出し、なぜか鳩を出した。

 

「ごめんごめん驚かせたね、私は転校生ではなく保護者、…まぁ白いしシロとでも呼んでくれ」

 

シロと名乗った人物は自己紹介を始める。

 

殺せんせーはというと、奥の手の液状化を使い、天井の隅に避難していた。

 

「ビビってんじゃねーよ殺せんせー‼」

 

「いいや…律さんがおっかない話するもので…」

 

天井から降り、元の姿に戻ると殺せんせーは挨拶をする。

 

「初めましてシロさん。それで肝心の転校生は?」

 

「初めまして殺せんせー。色々特殊な子でね、私が直に紹介させてもらおうと思いまして」

 

シロは一度、E組のメンツを見渡す。

 

「みんないい子そうですなぁ、これならあの子も馴染めやすそうだ。おーい、イトナ!!入っておいで!!」

 

全員がもう一度扉の方に注目する。

 

そして、教室の後ろの壁を壊し、何事もなかったかの様に転校生は席に着いた。

 

壁を壊した時点で、ただの人間じゃないよな…………

 

「俺はこの教室の壁に勝った。この壁より強いことが証明された。それだけでいい……」

 

しっかし、また変なのが来たな…………

 

「ねぇ、イトナ君」

 

隣の席になったカルマがイトナに話掛ける。

 

「今、外から手ぶら来たよね。外、雨降ってるのにどうして濡れてないの?」

 

赤羽が聞くが、イトナはそれを無視し、赤羽の頭を掴む。

 

「お前は、強い、だけど、俺より弱い。俺は俺より弱い奴は殺さない。殺すのは俺より強いと思った奴だけだ」

 

そう言ってイトナは殺せんせーへと向かう。

 

「この教室では殺せんせーあんただけだ」

 

殺せんせーはシロからもらった羊羹を頬張りながら話す。

 

「強い弱いとは喧嘩の事ですか?残念ながら君では先生と同じ土俵に立つことは出来ませんよ」

 

「立てるさ」

 

イトナは殺せんせーが食ってる羊羹と同じ羊羹を取り出す。

 

「だって血を分けた兄弟なんだから」

 

そう言って羊羹を包装ごと齧り食べる。

 

『兄弟ッ!?』

 

全員が行き成りのことに驚く。

 

「兄弟同士、小細工はいらない。お前を殺して俺の強さを証明する。放課後、この教室で勝負だ。今日があんたの最後の授業だ。こいつらに別れでも言っておけ」

 

イトナはそう告げると、壊した壁から出て行き、シロも教室を出て行った。

 

「おい!先生、兄弟ってどういうことだよ!?」

 

「そもそも人とタコじゃん!?」

 

「し、知りません!先生、生まれも育ちも一人っ子です!両親に「弟が欲しい」ってねだったら、家庭内が気まずくなりました!」

 

結局その日は、先生とイトナが本当に兄弟なのかで教室では様々な憶測が飛び交った。

 

俺は昼休みの時間に外へ出て、ベルトさんと話す。

 

「ベルトさん、あいつの力、どう見ても普通の人間じゃないよな」

 

『それは私も同意見だ。だが、ロイミュードでないのは確かだ』

 

「ベルトさんがそう言うならそうなんだろうけど、ロイミュードでもないのに、あんな力が出せるのか?」

 

『………いや、ロイミュードではないが、尋常じゃない力を持つものならいる』

 

「本当か?誰なんだ、それは?」

 

『殺せんせーだ。彼は月を破壊したほどの人物だ。あの子が、自分を殺せんせーの弟というなら、あの力も頷ける』

 

「なるほど。兄弟ってのも、本当の兄弟じゃなくて、同じ力や能力を持っているって意味での兄弟か」

 

だとすると、殺せんせーは勝てるのか?

 

今までは能力も力も、まったく及ばない俺たちが相手だった。

 

だが、今回は殺せんせーと同等の力を持った奴が相手だ。

 

もしかしたら、本当に暗殺されるかもしれない。

 

それはそれでいいかもしれない。

 

だが………なんだろう?

 

それはすごく嫌な感じがする…………



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彼らにはどんな繋がりがあるのか

放課後、机で作った即席のリングの中に殺せんせーとイトナが立つ。

 

「ただの暗殺は飽きてるでしょ殺せんせー、ひとつルールを決めないかい?リングの外に足がついたら死刑、どうかな?」

 

「…いいでしょう。ただしイトナ君、観客に危害を与えた場合も負けですよ?」

 

殺せんせーの言葉にイトナは無言で頷いた。

 

「では合図で始めようか」

 

シロの手が上がると同時に生徒達の緊張も高まっていく。

 

「暗殺……開始!!」

 

その瞬間、殺せんせーの腕の触手が斬り落とされた。

 

目にも止まらぬ斬撃。

 

全員が驚く。

 

殺せんせーの触手を斬ったことにじゃない。

 

触手を斬ったものに驚いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『触手!?』

 

なるほど、今朝濡れてなかったのは触手で雨を弾いて来たからか。

 

「………こだ……」

 

殺せんせーから掠れるような声が聞こえる。

 

「どこで手に入れた!その触手を!」

 

今度は怒りと殺気を込めて言う。

 

その殺気に思わず身震いする。

 

「君にいう義理は無いね殺せんせー。これで彼が君の兄弟ということはわかってもらえたかな?しかし怖い顔をするねぇ、何か…嫌なことでも思い出したかい?」

 

「…どうやらあなたにも話を聞かなきゃいけないようだ」

 

そう言って殺せんせーは、切り落とされた触手を再生した。

 

「聞けないよ、死ぬからね。」

 

そう言いながら、シロは袖口から何らかの光を放った。

 

その光を浴び、殺せんせーの体は硬直していた。

 

「全部知っているんだよ。君の弱点は。」

 

「死ね、兄さん」

 

硬直した体に、イトナの触手の攻撃が繰り出されるが、殺せんせーは隠し技の脱皮を使いなんとかかわしていた。

 

「脱皮か…そういえばそんな手もあったっけか。…でも、その脱皮にも弱点はある。脱皮、そして再生は見た目よりもエネルギーを消耗する。更に自慢のスピードも低下する。また触手の扱いは精神状態に大きく左右される。…さらには献身的な保護者のサポート」

 

またしても袖から光を発して殺せんせーの動きを止める。

 

次から次へと殺せんせーの弱点が出て来る。

 

このままいけば殺せんせーは間違いなく殺せると思う。

 

だが、気にくわない。

 

このまま殺せんせーが殺されたら、俺達は何のために暗殺技術を磨いたんだ?

 

「最後だ。殺せんせー」

 

シロがトドメと言わんばかりにまだ光を放とうとする。

 

その瞬間、俺はシロの元へと走り、蹴りを撃つ。

 

シロはそれをガードするが、俺はテーブルに手をつき、今度は反対方向から蹴りを撃つ。

 

「ぐっ!?」

 

蹴りはシロの顔に当たり、シロをヨロつかせる。

 

「………一体何のつもりだね?」

 

「決まってるだろ。暗殺の邪魔だよ」

 

「やれやれ、あの生物に情でも湧いたのかい?あの生物を倒さねば、地球は滅びるんだよ?それを一時の情なんかで不意にするつもりかい?はっきり言って愚かだよ」

 

「勘違いしないでもらおうか。殺せんせーが倒されるなら、それは残念だけど、仕方ないって諦めるさ…………でも、アンタが手を出すのは許さない」

 

俺はシロを睨み付け、そう言う。

 

「イトナはE組の生徒だ。だから、殺せんせーを殺したって文句はない。でも、アンタは違う。紛れもない部外者だ!これ以上、手を出すのは止めてもらうぞ」

 

 

「………まぁいいさ。どうせこれで終わりだ。やれイトナ」

 

イトナが殺せんせー目掛け触手で攻撃する。

 

だが、直後イトナの触手が崩れ落ちる。

 

「おやおや、落し物踏んでしまったようですね」

 

イトナの触手が壊した床を見ると、そこには対先生ナイフが転がっていた。

 

「同じ触手なら対先生ナイフが効くのも同じ。そして動揺するのもね。ですが、先生はちょっとだけ老獪です」

 

脱皮した皮でイトナを包み、窓から外へと放り投げた

 

「先生の抜け殻で包んだのでダメージはゼロです。さて、ルールに照らせば、キミはこれで死刑。二度と先生を殺せませんねえ」

 

殺せんせーは舐めきった表情になり笑う。

 

「生き返りたいのなら、このクラスでみんなと一緒に学びなさい。性能計算ではそう簡単に計れないもの。それは経験の差です。君たちより少しだけ長く生き…少しだけ知識の多い。

先生が先生になったのはね、経験を君達に伝えたいからです。この教室で先生の経験を盗まなけば…君は私に勝てませんよ」

 

その言葉にイトナの様子がどんどん変わる。

 

「勝てない…俺が、弱い…?」

 

その瞬間、イトナの触手が真っ黒に染まり、暴れ出す。

 

「黒い触手!?」

 

「やべぇキレてんぞ、あいつ!!」

 

全員が一斉に窓際から離れる。

 

イトナは窓際に着地し、殺せんせーを睨む。

 

「俺は、強い、この触手で、誰よりも強くなった、誰よりも」

 

イトナは完全に我を忘れて、殺せんせーに飛びかかろうとした。

 

その時、何処からかの攻撃でイトナは意識を失い倒れる。

 

シロが袖に隠していた麻酔銃らしきものでイトナを撃ったみたいだ。

 

「すみませんね、殺せんせー。どうもこの子は…まだ登校出来る精神状態じゃなかったようだ。転校初日で何ですが…しばらく休学させてもらいます」

 

シロはイトナを肩に背負う。

 

「待ちなさい!担任としてその生徒を放っておけません。一度E組に入ったからには卒業するまで面倒を見ます。それにシロさん。貴方にも聞きたい事が山ほどある」

 

「いやだね、帰るよ。力尽くで止めてみるかい?」

 

シロの兆発に殺せんせーは触手を伸ばし、シロの服に触れる。

 

しかし、掴んだ瞬間その手は溶けた。

 

「対先生繊維、君は私に触手一本触れられない心配せずとも、またすぐに復学させるよ殺せんせー。三月まで時間は無いからね。責任もって私が…家庭教師を務めた上でね」

 

シロはそのままイトナを連れ、教室を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「恥ずかしい恥ずかしい」

 

机を元に戻している間、殺せんせーはずっと両手で顔を隠していた。

 

「何してんの殺せんせー?」

 

片岡が机を戻しながら聞く。

 

「さぁ…さっきからああだけど」

 

「シリアスな展開に加担したのが恥ずかしいのです。先生、どっちかというとギャグキャラなのに」

 

自覚してたのかよ。

 

「カッコよく怒ってたね~。“どこでそれを手に入れたッ!!その触手を!!”」

 

「いやああ言わないで、狭間さん!!あぁ、つかみ所のない天然キャラで売ってきたのに、ああも真面目な顔を見せてはキャラが崩れる」

 

「なぁ、殺せんせー」

 

恥かしがる殺せんせーに俺は声を掛けた。

 

「あの二人とはどういう関係なんだ?流石に、あの触手を見た以上、聞かずにはいられないぞ」

 

皆も同じ気持ちらしく、殺せんせーを見る。

 

「……仕方ない。真実を話さなくてはなりませんねぇ。実は先生…………………人工的に造り出された生物なんです!!」

 

『……………で?』

 

「にゅやっ!?反応薄っ!これ結構衝撃告白じゃないですか!?」

 

「…つってもなぁ。自然界にマッハ20のタコとかいないだろ」

 

「宇宙人でもないなら、そん位しか考えられない」

 

「で、イトナ君は弟だと言ってたから…」

 

「先生の後に造られたと想像がつく」

 

「俺達が知りたいのはその先だ」

 

「どうしてさっき怒ったの?イトナくんの触手を見て。殺せんせーはどういう理由で生まれてきて…何を思ってE組に来たの?」

 

渚の質問に、暫く殺せんせーも皆も無言になる。

 

「……残念ですが、今それを話した所で無意味です。先生が地球を爆破すれば、皆さんが何を知ろうが全て塵になりますからねぇ。…………逆にもし君達が地球を救えば…君達は後でいくらでも真実を知る機会を得る。もうわかるでしょう。知りたいのなら行動はひとつ。殺してみなさい。暗殺者と暗殺対象。それが先生と君達を結び付けた絆のはずです。先生の中の大事な答えを探すなら…君達は暗殺で聞くしかないのです。質問がなければ今日はここまで、また明日!」

 

そう言って殺せんせーは教室を出て行き、そして顔を覆って去る。

 

「烏間先生!」

 

指示をしていた烏間先生に声が掛かけると烏間先生は驚いた表情をする。

 

「…君達か、どうした大人数で」

 

「烏間先生、俺達を今以上に暗殺の技術を教えて下さい」

 

「…?…今以上にか?」

 

「はい」

 

「今までさ、“結局誰が殺るんだろ”ってどっか他人事だったけど」

 

「ああ、今回のイトナ見てて思ったんだ。誰でもない、俺らの手で殺りたいって」

 

「もしも今後、強力な殺し屋に先越されたら、俺等何のために頑張って来たのか分からなくなる」

 

「だから、限られた時間、殺れる限り殺りたいんです。私達の担任を」

 

「殺して、自分達の手で答えを見つけたい」

 

そう言う俺たちを見て、烏間先生は笑った。

 

「…分かった。では希望者は放課後に追加で訓練を行う。より厳しくなるぞ」

 

『はい!!』」

 

「では早速新設した垂直20mロープ昇降、始めッ!!」

 

『厳しッ』

 

全員がキツイ訓練を始める中、俺は一人だけその集団から離れる。

 

皆から離れた所で、トライドロンを呼び、乗り込む。

 

『佑一、急にどうした?』

 

「………あのシロって男、どうもきな臭いんだ。ちょっと後を追う」

 

『構わないが、居場所はわかるのかね?』

 

「ああ。奴が帰るとき、シャドーを追跡に送った」

 

俺はシャドーの後を追い、シロを追った。

 

そして、ついたのは古い教会だった。

 

「こんな処に一体何の用だ?」

 

『この感じ……佑一、気を付けろ。何か、嫌な感じがする』

 

「ああ」

 

俺はベルトさんを装着し、いつでも変身できるようにする。

 

「それにしても、随分と寂れた所だな」

 

『ここもかつては人々に神の教えを説く場所だったんだろう。時の流れとは、残酷なものだ』

 

「俺は別に神とか信じないけど、こういうの見ると、ちょっと悲しいよな」

 

その時だった。

 

背後から何かが近寄り、俺は咄嗟にその場を飛びのく。

 

すると、俺が立っていたところにいくつものの光弾が撃ち込まれる。

 

「お前は、チェイス!」

 

そう、俺を撃とうとしたのはチェイス、死神だった。

 

「何故この場所がわかったかは、どうでもいい。だが、言ったはずだ。次に会う時、その時が俺とお前の決着の時だとな」

 

「……いいぜ。遅かれ早かれ、お前とは決着をつけないといけなかったんだからな」

 

俺はシフトスピードをセットし、変身する。

 

『START・YOUR・ENGINE!!DRIVE!!TYPE!!SPEED!!』

 

《Break up》

 

「行くぞ、仮面ライダー!」

 

「終わらせるぞ、チェイス!」




次回ドライブVSチェイス

チェイスの正体、明かされる!?

隼人「最近………俺もといマッハの出番なくない?」←と思った方。安心して下さい。そろそろ出番ありますよ



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死神の正体はなんなのか

拳が交差し、俺とチェイスは同時に殴り飛ばされる。

 

飛ばされながらも、俺はドア銃を手に、チェイスへと反撃する。

 

だが、チェイスは光弾をものともせず、銃を構える。

 

《Gun》

 

チェイスも俺に向け光弾を撃ってくる。

 

横に躱しながら、互いに銃を打ち合う。

 

柱の陰に隠れ、チェイスの出方を伺う。

 

「流石はチェイス。いい腕だ」

 

「貴様こそ、中々やる。だが、それもここまでだ」

 

《Break》

 

チェイスは俺の隠れてる柱まで飛んできて、柱ごと俺を攻撃する。

 

「うわっ!?」

 

柱ごと吹き飛ばされ、俺は協会の窓を破り、外に放り出される。

 

「はっ!」

 

チェイスも窓から飛び出し、俺に向かって銃を振り下ろしてくる。

 

「ハンドル剣!」

 

トライドロンからハンドル剣が出され、俺の手に収まる。

 

それでチェイスの武器を受け止め、腹部に蹴りを入れる。

 

チェイスを退け、立ち上がり、ハンドル剣とドア銃を構える。

 

チェイスも銃口をこちらへと向ける。

 

お互い、一歩も動かなかった。

 

その時、チェイスの足が僅かに動き、砂利の音がする。

 

その瞬間、俺はドア銃を連射した。

 

チェイスはドア銃の攻撃を自身の銃で相殺しながら、走ってきて、ドア銃を下から弾き飛ばす。

 

ドア銃をはじかれた瞬間、すぐさまハンドル剣を振り下ろすが、チェイスはそれを素手で受け止め、逆にこちらの顔に銃口を向ける。

 

すぐさま手を伸ばし、チェイスの手を掴み、銃口をずらす。

 

「さすがに、これで倒せるほど甘くないか……」

 

「やるな、まさかここまで凌ぐとは……」

 

「それなりに修羅場潜ってんだよ。そう簡単にやられるか………」

 

気を緩めることを許さないこの状況。

 

千日手に近いな。

 

この勝負、緊張が緩んだ方がやられる!

 

そう思った時だった・

 

突如、チェイスの背中にいくつものの光弾が直撃する。

 

「ぐあっ!?」

 

「なっ!?」

 

いきなりの事態に、俺は驚き、チェイスの手を放してしまった。

 

「危ないとこだったね。佑一。でも、もう大丈夫だ。助けに来たよ」

 

チェイスの背後には、ゼンリンシューターを手にした隼人がいた。

 

「隼人、お前が撃ったのか?」

 

「ああ。いいタイミングだったろ?」

 

確かにいいタイミングかもしれない……だが!

 

「いきなり後ろから撃つなんて、卑怯にも程があるだろ!」

 

「卑怯?ハッ!上等だね!俺は、ロイミュード共を殲滅できるなら、卑怯と言われようが、なんだってしてやるよ」

 

そう言うと隼人は必殺技を放とうとする。

 

「やめろ!」

 

俺は隼人を止めようと走り出す。

 

「悪いけど……邪魔はさせないよ」

 

『シグナルバイク!シグナルコウカーン!トマーレ!』

 

「がっ!?」

 

体が痺れ動けなくなる。

 

「さぁ、終わりだ」

 

『ヒッサーツ!フルスロットル!マッハ!』

 

 

「はっ!」

 

マッハは飛び上がり、空中で回転をし、そのまま蹴りを当てる。

 

「ぐあああああああああっ!!?」

 

チェイスはそのまま吹き飛び、地面を転がる。

 

「チェイス!?」

 

敵であるチェイスの心配なんてするべきじゃにかもしれない。

 

だが、俺はどうしてもチェイスが敵とは思えないかった。

 

だからこそ、正々堂々戦いたかったのかもしれない。

 

「ぐっ……あ………!」

 

チェイスはまだ無事だった。

 

変身は解けていたが、コアは無事だったみたいだ。

 

「しぶといね……でも、もう虫の息か」

 

隼人はゼンリンシューターを手に、チェイスへと近づく。

 

「………なんのつもりだい?佑一」

 

俺は隼人の前に立ち、チェイスを庇った。

 

「チェイスは、俺が倒す。だから、ここは退いてくれ」

 

「別に手柄を横取りにされようが、構わないけどさ。わざわざ敵を見逃すなんて、どうかと思うよ?」

 

「勝手は重々承知だ。だから、頼む」

 

「…………嫌だね」

 

「隼人!」

 

「そもそも、見逃すのは今回だけ。次会ったときは容赦しないって言ったのはそっちだ。約束、守ってもらうよ」

 

隼人はチェイスを倒す気だ。

 

正直、チェイスとが戦いたくない。

 

だが、俺は仮面ライダーで、チェイスはロイミュード。

 

戦うのは決まってる。

 

なら、せめてチェイスは俺が…………………

 

「ぐっ………ああっ………!」

 

その時だった。

 

チェイスの体に異変が起き、その姿が人間の姿からロイミュードの機械体へと変える。

 

だが、その姿がどうもおかしかった。

 

俺が知ってるロイミュードは、バット型、コブラ型、スパイダー型の三種類のみ。

 

ベルトさんも、その三種類しかロイミュードはいないって言ってた。

 

だが、チェイスのそれは、人間の姿に酷似していた。

 

そして、胸にあるナンバーは…………

 

「000?」

 

どういうことだ?

 

ロイミュードは合計で108体しかいないはず………

 

『馬鹿な………あのナンバーは………!』

 

「ベルトさん!?どうしたんだ?知ってるのか?あのロイミュードを」

 

『そんなはずはない………お前は、半年前に………』

 

「いえ、貴方の考えはあってますよ、クリム」

 

すると、脳を髣髴とさせる姿をしたロイミュードが突如現れる。

 

『貴様は……ブレン!』

 

「ブレン?」

 

『ロイミュード003の進化態。ハートの右腕的存在だ』

 

「つまり、幹部ってことか」

 

「ブレン………俺のこのナンバーは、一体………」

 

チェイスが震える手で自身のナンバーをなぞり、ブレンに尋ねる。

 

「では、お答えしましょう。チェイス。貴方は、半年前、私たちの同胞を倒し、そして、ハートによって敗れた者です」

 

その言葉に、俺も隼人も驚いた。

 

『では、本当に彼は………!』

 

「その通り。彼こそが、仮面ライダー。貴方の言う、プロトドライブなのですよ!」



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死神に迫る手とはなんなのか

「俺が……俺が、仮面ライダーだと……!」

 

「ええ。私は貴様なんぞ、早急に処分すべきと思ったんですが、ハートが、数少ない友だからと、貴方を助けたのです。私が記憶を改変し、ハートと001と共に、改造し、ロイミュードの番人、魔進チェイサーへとしたんです」

 

「そんな、俺は……俺は………ぐっ!?」

 

突然、チェイスは頭を抱え苦しみ出す。

 

そして、そのまま倒れ、動かなくなった。

 

「ダメージに加え、プロテクトしていた記憶が蘇り掛けた所為で、一時停止しましたか。ま、いいでしょう」

 

そう言ってブレンはチェイスを担ぐ。

 

「ここはひとまず退くとします」

 

「待て」

 

俺はドア銃をブレンの背中に向ける。

 

「チェイスを置いてけ」

 

「おや、何故です?」

 

「これ以上、チェイスのことを好き勝手弄らせてたまるか」

 

「ふっ……いいでしょう。相手になって差し上げます」

 

ブレンはチェイスを下すと、俺に向かって光弾を撃ってくる。

 

それを躱し、ドア銃で反撃する。

 

「隼人!手伝え!」

 

「………はぁ、あのロイミュードの為ってのが、気に食わねぇが、幹部クラスを倒せるってならいいか。ハッ!」

 

隼人もゼンリンシューターを使い、応戦する。

 

「ふっ!」

 

すると、ブレンは緑色の衝撃波を出し、俺と隼人は吹き飛ばされる。

 

「ぐあっ!」

 

「うおっ!」

 

「あまり、私を舐めないでくださいね」

 

ブレンはそう言い、俺の首を掴む。

 

「ぐっ……!何を……!」

 

「愚かで、哀れで、惨めな男……そんな仮面ライダーにご褒美をと思ってね。無謀にも、私を倒そうとしたんだですからね」

 

そう言ってブレンは、人差し指から緑色の液体を出し、俺に掛ける。

 

「うっ!があっ………!い、今のは………!」

 

「ただの毒を垂らしただけですよ。もっとも、仮面ライダーと言えども、助からないでしょうけどね」

 

よほど強力な毒なのか、体が全く動かない。

 

それだけでなく、息をするのも辛い………!

 

「くそっ!ここは一時撤退だな………!」

 

『シグナルバイク!シグナルコウカーン!カクサーン!』

 

隼人はシグナルバイクを交換し、上空に撃つ。

 

すると、上空に放たれた光弾が分裂し、地上に降り注ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、逃げられましたか。ま、いいでしょう。チェイスの回収は済んだことですし」

 

ブレンはそう言い地面に倒れるチェイスを見る。

 

「全く、こんな危険で、愚かで、仲間殺しだった奴など早々に処分すべきなのに、ハートは一体何を考えているのやら」

 

ブレンはそう愚痴りながらも、チェイスを抱えなおし、教会を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隼人の機転のお陰で、あの場を離脱した後、俺は隼人に連れられ、ドライブピットに連れてこられた。

 

「おい、しっかりしろ!佑一!」

 

「す、すまない……!」

 

壁にもたれながら床に座り込んだ俺は、変身を解除しようとシフトスピードに手を伸ばす。

 

『待つんだ!強化されたドライブの体でこの様だ!変身を解除したら、毒で一気に死んでしまう!』

 

「じゃあ、どうすれば……!」

 

そんな時、救急車に似たサイレンが聞こえ、俺たちの前に一台のシフトカーが現れる。

 

「このシフトカーは……?」

 

『マッドドクターだ!彼は本来、人間を救助する為のシフトカーだが、フルスロットルで使えば、ドライブの肉体も急速に回復できる』

 

「本当か。なら、頼むぞ。マッドドクター」

 

俺はマッドドクターを装備し、フルスロットルで使用する。

 

『タイヤコウカーン!!MAD!!DOCTOR!!ヒッサーツ!FULLTHROTTLE!!DOCTOR!!』

 

「うわぁぁあ!?痛ぇぇえ!!」

 

フルスロットルで使用した瞬間、俺の体をとてつもない痛みが襲った。

 

『言い忘れたが、マッドドクターの高速治療は死ぬほど痛いのが難点だ』

 

「えぇっ!?今、言うなよ!うわぁああ痛ぇええ!!痛い痛い!!」

 

「ゆ、佑一?だ、大丈夫か?」

 

「これが大丈夫に見えるかよ!あああああ!痛い痛い!イッテエエエエエエエエエ!!」

 

ドライブピットに、俺の絶叫が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廃教会とは違う、薄暗い隠れ家。

 

そこでブレンは動かないチェイスを指さし、ハートに言う。

 

「ハート。チェイスは人間に影響され、自分の使命すら見失った不良品です。処分を」

 

「なら…もう一度リセットしますわ。」

 

そう言ったのは、メディックだった

 

「無駄だ。こいつの記憶を消したのは私だ。なのに…。」

 

「だから私のやり方で消しますわ。ちょっと危ない方法で。いいでしょ?ハート様」

 

「………任せる」

 

ハートはそれだけ言うと、部屋を出て行った。

 

そして、メディックは邪悪な笑みを浮かべ、チェイスへと手を伸ばした。

 



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隼人を走らせるのはなんなのか

ドライブピット内を沈黙が支配した。

 

ベルトさんと神崎、烏間先生はことの成り行きを見守っていた。

 

「……隼人、どうしても納得できないのか?」

 

「ああ。ロイミュードは全員ぶっ潰す。もちろん、チェイスの野郎もだ」

 

「だが、アイツはプロトドライブだった!奴らに利用されてるだけだ!」

 

「だから救うって?甘いよ。いくら取り繕ったって所詮は機械、ロイミュードだ。ロイミュードである以上、ぶっ倒す」

 

そう言って隼人は鞄を手に取る。

 

「アイツを救いたけりゃ、勝手にやってくれ。俺は、俺のやり方でやる。…………ロイミュードは、絶対に居ちゃ行けないんだ」

 

そう言い残し、隼人はドライブピットを出ていく。

 

「隼人!…………アイツ、どうしたってんだよ……!」

 

俺は隼人の態度にイラつき。テーブルを叩く。

 

『あそこまでロイミュードを敵視してるとは、ちょっと私も驚きだ』

 

「もしかして、半年前の事件で誰かを失ったんじゃ……」

 

「いや、それはないだろう」

 

俺の考えを烏間さんが否定する。

 

「隼人の母親は数年前に病死している。父親も、隼人がまだ幼い頃に離婚し、それ以来音信不通。祖父母も既に他界していて、母親の死後は叔父が面倒を見ていたらしいが、その叔父は今もアメリカに滞在している」

 

「身内を殺されたことによる敵討ちじゃない、か」

 

「多分………単純なことじゃないと思う」

 

すると、神崎がそんなことを言い出した。

 

「うまく言えないんだけど…………多分、きっと詩島君にとってとても大切で、深い問題なんだと思うな」

 

神崎の言葉に、妙な重みを感じ、俺は何も言えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから隼人と何も話せないまま、時間だけが過ぎた。

 

そして、梅雨が開け、もうすぐ夏本番に入ろうとする時期に、球技大会が行われる

 

「…………クラス対抗球技大会ですか、でも、なんでE組がないんですか?」

 

「E組は一チーム余るって素敵な理由で本戦にはエントリーされないんだ。代わりに、大会のシメのエキシビジョンに参加しないといけないんだよ。簡単に言えば、見せ物だな」

 

「なるほど………いつものやつですか」

 

「心配しないでも大丈夫よ、殺せんせー、いい試合して、全校生徒を盛り下げよう!!」

 

すると、女子がおー!と言って、団結し始めた。

 

「チッ!俺ら晒し者とか無理だわ、お前たちでやってくれ!!」

 

寺坂たちはそういい残し、教室から出て行く。

 

「野球となりゃ頼れんのは杉野だけどなんか勝つ秘策ねーの?」

 

陽斗は杉野に問いかけるが、すぐに応えることはなかった。

 

「…無理だよ。俺とあいつらじゃ経験の差がありすぎて勝負にならねー。…勉強もスポーツも一流とか不公平だよな人間って。…だけど勝ちたいんだ殺せんせー。…E組のこいつらとチーム組んで勝ちたい!!」

 

そう言って殺せんせーを見る杉野だったが、殺せんせーは楽しそうに野球のユニフォームを着ていた。

 

「先生、こういうスポ根ものの監督とかに憧れていたんです。体罰はできないので、代わりにちゃぶ台返しをします」

 

用意がいいな。

 

「最近の君たちは目的意志をはっきりさせるようになりました。そこで、殺監督が君たちに勝てる秘策を授けましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

球技大会当日

 

球技大会は終わりに近づき、最後のエキシビジョンマッチとなった。

 

応援席には多くの生徒が集まり、俺たちが負けるのを見に来ている。

 

まったくいい見せ物だよ。

 

「あ、泊君」

 

「ああ、神崎。そっちも今からか?」

 

「うん」

 

「そっか。頑張れよ。でも、無理だけはしないようにな」

 

「ありがとう。泊君も無茶だけはしないようにね」

 

女子は体育館に向かい女子バスケ部と試合で、男子はグラウンドで野球部と試合。

 

体育館へ向かう神崎を見送りながら、俺も九ラウンドへ向かう。

 

「それでは、E組対野球部選抜のエキシビジョンマッチを行います」

 

最初はE組の先攻。

 

木村がバッターボックスに立つ。

 

野球部の進藤が第一球を投げるが、あまりの速さに木村は打つことができなかった。

 

それを見て殺監督が指示を出す。

 

殺監督は烏間先生に目立つなと言われて、遠近法を使い転がってるボールまぎれている。

 

顔色で指示を出し、木村はその指示に従う。

 

続いての第二球を木村はバントで受け止める。

 

向こうはバンドをするとは思ってなかったのか、慌て出す。

 

その間に足の速い木村が一塁までダッシュし、見事塁に出る。

 

二番の渚も三塁線に強めのバントを放ち、ノーアウト一、二塁となっていた。

 

球技大会の日まで、ずっと殺監督相手に練習してきたんだ。

 

いくら速い球でも殺監督の球を見た後じゃ遅く感じる。

 

三番バッターの磯貝もバントにより出塁し、ノーアウト満塁。

 

そして、四番の杉野がバッターボックスに立つ。

 

もちろんバントの構えで。

 

進藤はボールを投げるが、動揺し、ボールがいつもより遅くなる。

 

杉野はバントの構えからヒッティングに変え、ボールは深々と外野を抜けた。

 

「走者一掃のスリーベース!!な…なんだよコレ予定外だ…E組三点先制ー!」

 

誰もが予想していなかった出来事に野球部顧問も唖然としていた。

 

すると、理事長がグラウンドに入ってきて、野球部顧問に何かを話す。

 

話し終わると、野球部顧問は泡を吹いて倒れた。

 

野球部顧問は試合前から重病で、選手たちもそれが気になって試合に集中できなく。急遽理事長が野球部顧問に代わって指揮を執るとのことだった。

 

嘘だな。

 

だが、そんなのはどうでもいい。

 

理事長が来たからには今までの戦術は効かないと思ったほうがいいな。

 

「泊君」

 

「あ、神崎。そっちはもう終わったのか?」

 

「うん。負けちゃったけどね。そっちはどう?」

 

「今の処は勝ってるよ。でも、次はどうかな………」

 

俺の考えは当たって、内野手も外野手も全員内野に集め、野球部はバントを封じる作戦にきた。

 

フェアゾーンならどこを守ってもいいルールらしいが、これは明らかにバッターの集中を乱す。

 

審判が違反といえばいいのだが、あの審判は理事長側。

 

違反とは言わないだろう。

 

結局、守備のプレッシャーにやられE組は一回表三点獲得で終わった。

 

一回裏で野球部の攻撃。

 

杉野の変化球のおかげでこの回は、なんとか零に抑えることができた。

 

二回表でカルマからの打順。

 

カルマはバッターボックスに立つ前に大声で叫ぶ。

 

「ねーえ、これズルくない理事長センセー?こんだけジャマな位置で守ってんのにさ、みんなおかしいと思わないの?あーお前らバカだから守備位置とか理解してないか」

 

観客を煽るカルマ。

 

それに観客は口々に文句を言う。

 

結局カルマの意見は受け入れてもらえなかったが、殺監督は満足そうだった。

 

何か策でもあるのか?

 

二回表もバント封じにをしにきて、E組は無得点。

 

二回裏、理事長に何かされたのか進藤は先ほどと様子が変わっていた。

 

進藤は杉野の変化球に対応し、特大の一撃を打つ。

 

進藤は二塁へと出て、次のバッターが打ち、そのまま二点取られる。

 

どうやら、杉野の変化球を見極めたぽいな。

 

次のバッターに杉野は、あせりからストレートを投げる。

 

それを見たバッターは一気にバットを振る。

 

結果、それがホームランとなり、さらに一点取られたが、次でアウトを取り、同点で止めることができた。

 

最後の三回表。

 

二人続いて、ストライクを取られ、ここにきて、俺の打順だ。

 

バットを握りしめ、バッターボックスに立つ。

 

まずは第一球。

 

これは見逃し、ストライク。

 

第二球。

 

バットを振るもタイミングが合わず、空振りでストライク。

 

残り一球。

 

もう後がない。

 

第三球はなんとかタイミングは合うも、当たり方が悪く、後方へと飛び、フェンスに当たる。

 

「ファール!」

 

タイミングはばっちりだ。

 

後は、前に飛ばすだけ。

 

だが、そこからが苦戦した。

 

バットにボールは当たるも、ヒットにならずファールのみ。

 

ファールにするだけで精一杯かよ……………

 

そして、十球目。

 

先程と同様タイミングを合わせてバットを振るが、バットは空しく空を切り、俺は空振りしてしまった。

 

ここまでか………

 

「泊君、走って!」

 

その時、神崎がが叫んだ。

 

何事かと思って、見ると、キャッチャーがボールを取り損ねていた。

 

どうやら、僅かにボールが掠ったらしく、それで軌道が変わり、取れなかったみたいだ

 

だが、そう考える前に、俺は走り出し、一塁ベースを踏んでいた。

 

そして、一塁にボールが回るのと同時に、俺は二塁へと走った。

 

一塁の野球部員が慌てて二塁へとボールを回そうsるが、投げる際に指が滑り、ボールは二塁を守ってる部員の頭上を飛ぶ。

 

そのまま二塁も踏み、三塁も回って、ホームベースまで戻る。

 

「うおおおおおおおおおおおおっ!」

 

そして、勢いよく滑り込む。

 

俺がホームベースに入るのと、キャッチャーがボールを受け取ったのはほぼ同時だった。

 

結果は――――――

 

「せ、セーフ!」

 

キャッチャーの手からボールは零れ落ちており、俺はセーフだった。

 

これで、4対3………

 

三回裏。

 

野球部は俺たちが一回表でやったバントでやり返してきた。

 

普通野球部が素人相手にバントなんて大人気ないが、向こうには先に俺たちがやったから、ちゃんとしたバントを見せると言う大義名分がある。

 

ノーアウト満塁。

 

そして、最後に進藤がバッターボックスに立つ。

 

だが、まるでドーピングでもしてるんじゃないかと思うぐらいに変貌してる。

 

杉野は敬遠するしかないと判断するが、カルマが来て磯貝に耳打ちする。

 

磯貝は苦笑いしながら了承する。

 

カルマと磯貝は前進して進藤の前に立つ。

 

「さっき、そっちがやったとき、審判は文句言わなかったよね。なら、俺たちがやっても問題ないよね、理事長せんせー」

 

「………構わない。真の強者はそんなことでは取り乱さない」

 

「それじゃ御遠慮なく」

 

カルマと磯貝はさらに前進し、進藤がバットを振れば当たる距離につく。

 

さすがにこれは、理事長によって集中力を高めた進藤でも呆気を取られた。

 

「くだらない、構わず降りなさい進藤君。例え骨を砕かれても彼らは文句は言えない」

 

進藤は大きく振ってびびらせればいいと思い、バットを振るが、カルマと磯貝はほとんど動かずによける。

 

「…ダメだよそんな遅いスイングじゃ。次は殺すつもりで振ってごらん?」

 

完全に集中が切れ、腰の引けた進藤は次の杉野が投げた球をよろめきながらも打つ。

 

だが、その打球はカルマが取り、キャッチャーである渚の元へ投げる。

 

そして、三塁の木村、一塁の菅谷のもとへ渡った。

 

トリプルプレー

 

E組は見事、野球部との試合に勝利した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チェイス、目を覚ましたか」

 

廃墟の中で、ハートはチェイスへと声をかける。

 

「……ハートか。俺はどうやら、長く寝ていたらしい………すまんかった」

 

「気にするな。お前が無事なら構わない」

 

「寝ていた分の仕事はこなす。………仮面ライダーは俺が倒す。ロイミュードを守る為にな」

 

「そうか。では、これを渡しておこう」

 

そう言うとハートは手にしたケースから三つの銀色のバイラルコアをチェイスへと差し出す。

 

「俺からお前への、細やかな贈り物だ。受け取ってくれ」

 

「………感謝する」

 

それを受け取り、チェイスは廃墟を出ていく。

 

「メディック、チェイスに何をしたんだ?」

 

「記憶を消すのや、改竄は時間が掛かります。それに、何かの弾みでその記憶が戻る可能性もあります。ですから、簡単に書き換えだけをしました」

 

「書き換え?」

 

「はい。チェイスの中にある「人間を守る」という基幹プログラムを「ロイミュードを守る」へ書き換えました。単純でいて、強力な洗脳ですわ」

 

「………そうか。すまなかったな」

 

ハートはそう言うと壊れかけの椅子へと座り込む。

 

(洗脳か……あまりいい響きではないな。だが、仕方ないことか……いずれチェイスも分かってくれるだろう…………)



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暴れ馬を乗りこなすのは誰か

「くそっ………佑一の奴、甘過ぎんだよ」

 

隼人は一人街を歩き、イラついていた。

 

「ロイミュードは敵だ………俺が倒すんだ。俺が、全て…………」

 

一人で呟いてるその時だった。

 

突如、どんよりが街を襲い、ロイミュードが力を使ったことが分かった。

 

「出やがったか!」

 

隼人はすぐに走り出し、騒ぎのある方へと向かう。

 

着いた先は倉庫街。

 

そこでは二体のロイミュードが暴れていた。

 

「ちょうどいい………今ちょっとイラついてんだよ………相手になりな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

烏間先生から連絡をもらった俺はすぐに現場へと向かった。

 

現場の倉庫街ではすでに戦闘音が聞こえ、戦っているのがわかる。

 

「隼人………!」

 

戦闘音がする方へ向かうと、そこでは隼人がロイミュード二体相手に戦っていた。

 

『ヒッサーツ!フルスロットル!マッハ!』

 

「はあああああああああああっ!」

 

ゼンリンシューターでの必殺技が炸裂し、ロイミュードは二体とも破壊される。

 

「随分と遅かったじゃない?悪いけど、ロイミュードは俺が倒しちまったよ」

 

「流石だな。でも、なんで俺を待たなかったんだ?」

 

烏間先生から連絡を貰った時、烏間先生は隼人にも連絡して俺を待つように言ったらしいが、隼人はそれを無視し、一人で戦ったとのことだった。

 

「ふん、決まってるだろ。ロイミュードは一刻も早く殲滅しないといけないんだ。佑一を待つなんて時間の無駄さ。俺は………一刻でも早くロイミュードを倒さないと行けないんだ…………」

 

「……隼人、お前何を……!」

 

その時だった。

 

俺と隼人の周りに光弾がばら撒かれる。

 

俺は顔を覆い、光弾が来た方を見る。

 

「チェイス!?」

 

光弾を撃ったのはチェイスだった。

 

「仮面ライダー……貴様は、俺が倒す!」

 

《Break up》

 

チェイスは武器で俺達に殴りかかってくる。

 

俺は体を捻って躱し、隼人がゼンリンシューターでチェイスの武器を受け止める。

 

「分かったかい、佑一?これでも、まだこいつが利用されてるって?違うね!元々、コイツラはそういう連中なんだよ!」

 

チェイスの武器を弾き、至近距離で銃を撃つ。

 

「あー……くそっ!どうしてこうなるんだよ!変身!」

 

『DRIVE!!TYPE!!SPEED!!』

 

二人の戦いに乱入しようとした瞬間、俺の前にある人物が立ち塞がった。

 

「邪魔はよしてもらおうか。俺の友の、晴れ舞台だ」

 

「ハート!?」

 

「折角だ。あの時の、決着と行こう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!」

 

隼人はゼンリンシューターでチェイスを殴りつつ、撃ち抜く。

 

チェイスはそれを躱し捌きながら、手にしたブレイクガンナーで撃つ。

 

「はっ!元仮面ライダーも大したことないね。このまま決めさせてもらうよ!」

 

「舐めるな」

 

そう言いチェイスは、銀色のバイラルコアを取り出し、ブレイクガンナーにセットする。

 

《TUNE!CHASER!SPIDER!》

 

すると、超硬化金属製の巨大なクローが右腕に装備された。

 

「なんだよ、それ!?」

 

隼人が驚いているも、チェイスはお構いなしに攻撃を仕掛けてくる。

 

ゼンリンシューターでそれを受け止めるも、そのままゼンリンシューターを弾かれ、数発攻撃を食らってしまった。

 

「ぐああああああ!!」

 

《TUNE!CHASER!COBRA!》

 

今度は超硬化金属製の鞭が装備され、それを振るう。

 

鞭で叩かれ、隼人は地面を転がる。

 

「うわああああああっ!!く………そっ!」

 

隼人はゼンリンシューターを拾い、シグナルキケーンを取り出し、セットしようとする。

 

「ふん!」

 

だが、セットする前にシグナルキケーンは弾かれ、下から掬い上げる様に振られた鞭で叩かれる。

 

「ぐあああああああ!!?」

 

地面に倒れ、隼人は動けなくなる。

 

「まずい………!そろそろ限界時間が………!」

 

ネクストシステムは基本スペックでドライブの能力を大きく上回る反面、隼人への負担も大きいことから変身時間に制限が設けられている。

 

つまり隼人自身の体も限界に近いのである。

 

「これで終わりだ」

 

《TUNE!CHASER!BAT!》

 

巨大な弓が右手に装備され、高密度のエネルギーが溜められ、隼人に向けられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隼人!」

 

「よそ見をしてていいのか?」

 

「うおっ!?」

 

ハートの拳をハンドル剣で受け止め、俺は隼人を見る。

 

明らかに苦戦してる。

 

おかしい……!

 

チェイスの戦い方に容赦のなさが感じられる!

 

あいつは確かに強かった。

 

でも、その強さの中には戦士としての誇りや信念があった。

 

なのに、今のあいつからはそれが感じられない。

 

「ハート!お前、チェイスに何をした!?」

 

「何もしてないさ。俺は、チェイスを解放したのさ」

 

「戻しただと?」

 

「そうさ。奴はロイミュードだ。本来なら俺たちと共にあるべき存在だ。それなのに、奴はロイミュードを倒す存在にされた。……俺たちは、もうただの機械じゃない!」

 

ハンドル剣を弾き、俺を殴り飛ばす。

 

「ぐおっ!?」

 

「俺たちは、新たな種だ」

 

新たな種…………か。

 

「………例えそうだとしても、俺は人間たちを襲うお前たちを肯定できない!」

 

立ち上がり、ハンドル剣を握りしめる手を強める。

 

「構わない。元より貴様らに理解してもらう気はない」

 

互いに見合い、隙を窺う。

 

「ぐあああああああっ!!?」

 

その時、隼人の悲鳴が聞こえ、俺は隼人を見る。

 

見ると、隼人が地面に倒れ、チェイスが弓を構えていた。

 

「隼人!?」

 

「隙を見せたな!」

 

隼人の方に意識が移り、ハートが俺に拳を振ろうと接近してくる。

 

「しまっ!?」

 

『いかん!come on!DEADHEAT!』

 

ベルトさんがそう叫ぶと、赤いオープンカーのようなシフトカーが現れ、ハートを弾き、俺の手元に来る。

 

「ベルトさん、デッドヒートって………」

 

『ああ。ハートのデッドゾーンに対抗できるように開発した新たな装備だ。恐らく、現時点で、最強の装備だろう。だが、まだ未完成だ。暴走を起こせば、あの時のハートの様になる!』

 

「………それを今ここで呼んだってことは、これ以外に対抗の術はないってことだろ?上等だ!暴走結構!止め方は………走りながら見つける!ベルトさん………俺とひとっ走り、付き合えよ!」」

 

『……君ならそう言うと思った。さぁ、共に行こう!』

 

シフトデッドヒートをシフトブレスに装備し、スイッチを入れる。

 

その瞬間、俺の体から赤い電流が放たれる。

 

「うっ……!ぐっ……!がっ……!う、うおおおおおおおおお!!」

 

『DRIVE!!TYPE!!DEADHEAT!!』

 

爆炎と共に俺の姿か変わり、俺は自分の姿を見る。

 

「これ………少しマッハと似てる?」

 

『シフトデッドヒートはマッハと兼用できる装備だ』

 

「なんだ、その姿は?」

 

「こういうことだよ」

 

俺は素早く動くと、ハートを殴り飛ばす。

 

「ぐおっ!?」

 

ハートが倒れるのを確認すると、俺はすぐに隼人の前に立つ。

 

チェイスが矢を撃つ瞬間、二人の間に立ち、矢を叩き落す。

 

「貴様!?」

 

「佑一!?」

 

二人が驚いているは、構わない。

 

俺は走り出し、チェイスを蹴り飛ばす。

 

「ぐおっ!?」

 

チェイスは地面を転がって倒れ、俺を見る。

 

「この力は……!」

 

イグニッションキーを回すと、タイヤの形をした赤いエネルギーが現れ、俺はそれを蹴り飛ばす。

 

チェイスが驚いた表情になる。

 

だが、攻撃が当たる瞬間、ハートが飛び出し、攻撃を受ける。

 

「ハート!?」

 

「………ふっ、ははははははははははは!この力、どうやらお前もデッドゾーンに………!やはり、つくづく面白い奴だな、貴様は!」

 

「これで決める!」

 

『DEADHEAT!』

 

赤いエネルギーを身にまとい、俺は飛び蹴りをする。

 

「来い!」

 

ハートもあの時の様に赤かくなり、拳を握る。

 

「はあああああああああああ!」

 

「うおおおおおおおおおおお!」

 

蹴りと拳がぶつかり、爆発が起きる。

 

爆発が収まると、そこにハートとチェイスの姿はなかった。

 

どうやら、倒したってわけじゃなさそうだな。

 

「たっく、随分とすごい力だね」

 

隼人がわき腹を押さえ、立ち上がる。

 

「もうお前ひとりでも十分なんじゃない?」

 

「…………隼人」

 

「ん?」

 

「このデッドヒートって、デッドゾーンに入る為のものなんだ。その意味………わかるよな?」

 

「は?」

 

その瞬間、警告音の様な音が響き、タイヤが回転しだし破裂する。

 

「………え?」

 

「う、うおおおおおおおおおお!!?」

 

「ぐほっ!?」

 

いきなり俺の体が動き出し、隼人を殴りつけた。

 

「な、なにすんだよ!?」

 

「か、体が……止まらないんだ……!ぼ、暴走してる!」

 

「はぁっ!!?」

 

「は、隼人おおおおおおお!止めてくれえええええええええええ!!」

 

「おいおいおい!?こっちくんな!」

 

そう言いながら隼人はゼンリンシューターを構える。

 

『ヒッサーツ!フルスロットル!マッハ!』

 

「ぐああああああああああああああ!!?」

 

結局、必殺技を食らい、俺は止まることができた。

 

確かに、こりゃ未完成だわ……………

 

この暴れ馬、乗りこなせるのか?



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