やはり俺と彼女は青春をまちがい続ける。 (冬奈水沙)
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プロローグ〜こうして彼と彼女は出会う〜

申し訳ありません。作品を紛失してしまい、また1から書き始めることになってしまいました。バックアップが残っておりましたのでそちらをリメイクして投稿していきます。
前から読んでるくれている読者様には本当に申し訳ありません。また1からとなりますがどうかこれからもよろしくお願いします。


『出会いとは偶然である。いつどこで誰と出会うなんて分かるはずもない』誰と出会うなど分かっていたらきっと誰も人との出会いに希望を持ってないだろう。

 

そんな、もしかしたら出会いがあるかもしれないというほんの少しの希望を心の隅においてぼっちである俺ーー、比企谷八幡は高校2年に進級する。

 

 

 

 

 

 

 

✕✕✕

 

「よし、いくか」

 

俺はいつも学校に向かうよりも早く家を出た。高校二年生になることにうかれているのかもしれない。だって卒業に一歩近づいたんだ!あぁ早くぼっちの敵である学校から抜け出したい……。

 

そんなことを考えながら、いつもと何も変わらない通学路の景色を眺めながら自転車をこいでいた。

 

15分ぐらい自転車をこいでいると大きな交差点にでた。信号の横には飲酒運転は禁止と書いてある看板がやたらと目立っていた。

 

横断歩道を渡り終え再び学校に向かおうとしたとき、後ろからキィィィイ!! という音が聞こえてき、振り返ると青信号の中1台の車が歩いている女の子に迫っている光景が目に入った。

 

「あ、危ない! 」

 

周りにいる人の誰かが叫ぶころには俺は自転車を捨て走り出していた。恐らくこの行動はどう見ても自分らしくなかっただろうーー、だが俺には迷いはなかった。何故なら知ってしまっていたからだ。そう、1年前の丁度同じ日に、1匹の子犬を救ったように自分には救うことが出来る力があることを。

 

女の子に車が当たるギリギリ寸前のところで俺は手を伸ばし、女の子を押し飛ばしたと同時にすぐさま回避をしようとしたが車の距離が思ったより近い。

ーーしまった!

そう思ったときには既に遅く、足と車が衝突し、吹き飛ばされてしまった。

意識が朦朧としていく中、誰かの悲鳴が聞こえる。それが彼女の声なのか、俺が息を漏らした音なのかはわからないまま視界は閉ざされ、次に目を覚ましたのはベッドの上だった。

 

こうして比企谷八幡の高校二年の生活は病院生活で始まるのだった。

 

 

 

 

 

 

✕✕✕

 

意識を取り戻した俺は病院のベットの上で点滴と、片足に包帯を巻かれていた。病院独特の香りが鼻をくすぐる。起きてばかりだからかまだあまり視点が合わない。しばらくぼーっと天井を眺めているとドアの向こうからコンコンっとノックする音が聞こえてきた。

 

「はい、どうぞ」

 

「お兄ちゃんはいるよ」

 

妹の小町が入ってきた。どうやら服装が制服のまんまだということは学校が終わって直で来たみたいだ。

 

小町は急ぎ足で入ってくると俺の寝ているベットに上からのぞき込む形で見下ろして言った。

 

「また車に轢かれて……前とは逆の足だったからよかったけど下手したら死んでたし、もしかしたら歩けなくなってたかもしれないんだよ!」

 

「妹を心配させるなんてお兄ちゃんポイント低いよ……」

 

ひとまず骨折だけで済んだので安心していたが、あの場所にいなかった小町はどうやらずっと心配していたみたいだ。それに流石に今回は危ないと思ったため素直に謝った。

 

「すまない、今度からは気をつける。だから今回は許してくれ」

 

「うん。お兄ちゃんのおかげで一人の命が救われたかもしれないけど小町にとって大切なのはお兄ちゃんなんだからね。本当次はないよ? 」

 

「ああ、約束する」

 

なんせこの世でたった一人しかいない大切な妹だ。悲しませるわけには行けない。

 

小町は約束を交わすと今の俺の状態をつげ帰っていった。退院するには最低でも2週間はかかるみたいだ。その間病院で何をしようか考えていると、再びドアをノックする音が聞こえた。小町のヤツめ……さては忘れものでもしたな。

 

「どうぞ」

 

と、声をかけるが人が入ってくる気配はない。おかしい……小町だったらすぐに入ってくると思うのだがもしかて違う人なのだろうか?

30秒ぐらい間が空いただろうか。そのぐらいたってガララッっとゆっくりドアが開けられた。

 

「し、失礼します……」

 

入ってきたのは総武高校の制服を着ている身長が低いショートボブの女の子だった。

 

「えーっと、なんの御用でしょうか? 」

 

まさか同じ学校の女の子が来るとは思ってなかったので少し動揺してしまった。

 

「え、えっと、あ、あの! あのときはありがとうございました! けがを負ってまで守ってくださってなんてお礼をすれば……」

 

あぁ、そいうことか……。俺ははこの子が朝、俺が助けた女の子だということを今理解した。こうして、俺と違って五体満足でいれているということは無傷だったのだろう。どうやら俺がとった行動は無駄にはならなかったみたいだ。

 

「別に気にしなくて大丈夫ですよ」

 

「いえそんな、体を張って守ってくださったんですし……私あのとき怖くて足がすくんでしまって動けなくて……本当にありがとうございます」

 

女の子は深く頭を下げてきた。こうして病院まで足を運んでくれるだけで俺は満足なのに。

 

「あの、すみません。良かったら名前の方を……教えてください」

 

女の子が少し遠慮気味に言ってきた。

「いいですよ。総武高校の2年の比企谷八幡です」

 

「え、えっと、今年から総武高校に通うことになった水無瀬優花です! あ、あの毎日ここに来てもいいですか? 」

 

どうやら後輩だったみたいだ。

なぜここに毎日来るのかは分からないが、断る理由がないので了解する。

 

「ああ……全然いいですよ」

 

 

 

さっきも言ったように出会いとは偶然である。

これが俺、比企谷八幡と水無瀬優花の出会いだった。



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第一話

2週間とは過ぎるのが早いものだ。案外病院とは退屈しないもので、この2週間は特に退屈することもなく過ごすことが出来た。まぁ、1番の理由はあいつが毎日病院来てくれただからだろう……。

 

「八幡先輩退院おめでとう! 」

 

「おう、毎日わざわざ病院に来てくれてありがとな」

 

そのあいつが誰かと言うと、水無瀬優花だ。彼女は俺の1個したの後輩にあたる子で、俺が入院した日からずっと、病院に見舞いに来てくれている。そして毎日話しているうちに、今ではタメ語で言い合える仲にまで発展したのである。

 

「いや~、八幡先輩が退院してくれよかった、私もぼっちだから学校暇だったんだよね~」

 

水無瀬は警察からの事情聴取や、病院での検査などがあっため、入学式には出席してない。学校の登校できるようになったのは、事故からら3日後だったみたいで、そのため他の人より出遅れてしまったゆえに、ぼっちになってしまったみたいだ。本人は元から人と関わるのが苦手と言っているが……それが本当なのかはわからない。

 

ところで気になったんだが……。

 

「で、なんで過去形なわけ? なに? 学校でも一緒にいるきなの? 」

 

「当たり前じゃん! 八幡先輩と一緒にいるの楽しいもん! 」

 

こ、コイツさらりといい笑顔でいいやがった。そんなこと他の男子にいっちゃダメですよ? 絶対勘違いして告白しちゃってふらるから、ってふられるのかよ。

 

「断る。他の人に見られるとか嫌すぎるから……」

 

「えー、私は全然いいよ〜。ダメ、かな? 」

 

あの、そんな上目遣いで悲しそうな目で見られたら困るんですけど……。

 

「はぁ、わかった。降参だ、降参」

 

「やったぁ! ありがとう! 八幡先輩! 」

 

水無瀬が嬉しそうに跳ねている。俺は口では一生水無瀬には勝てないだろう。いや、そもそも俺が女子に口で勝つことは絶対にないな。まず水無瀬と小町意外と話さないし。

 

「八幡先輩このあとどうするの? 」

 

病院から出て、自動ドアの前で水無瀬が止まり聞いてきた。

 

「そうだな、とりあえず家に帰る。小町も家にいると思うし」

 

「私も行ってもいい、かな? 」

 

「いいんじゃねぇの? 多分小町も喜ぶし」

 

水無瀬と小町は仲がいいのだ。年齢の学校も違う2人が何処で出会ったかと言うと、もちろん俺が入院していた病室だ。水無瀬も毎日見舞いに来ていたが、小町も毎日見舞い来ていて、丁度小町が病室にいるときに水無瀬が来たのが、2人の出会いだったはずだ。

 

それからということ、どちらも毎日見舞いに来るということは、当然2人とも出会うことになるのでどうやら面会時間が終わったあと帰宅中に話して仲良くなったみたいだ。きっと人懐っこい性格の小町のことだ、仲良くなるまでに、そんなに時間はかからなかっただろう。

 

「なら良かった! じゃあ行こっか! 」

 

「ああ、行くか」

 

自動ドアの前で止まっていた水無瀬は俺の一歩前を歩き出していた。水無瀬の声に応え、俺も自宅へと向かため、足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

こうしていま俺たちは俺の家にいる。にしても友達を家にあげるの久しぶりだな。いま思えば友達家にあげたことねぇわ。

 

「お兄ちゃんどうしたの? 目がさらに腐って来てるよ」

 

おっといかん過去に触れていたら目がどんどん腐ってきてたみたいだ。もうあれだよね、ゾンビと間違えられてシャベルでかられてもおかしくないレベル。

 

「いや~でも優花さんが来てくれてよかったです! 」

 

「いえいえ、それよりお邪魔して良かったの? 親とか帰ってくるんじゃないの? 」

 

「あー、その心配は大丈夫だ、親は両方とも今週は会社に寝泊り作業だからな」

 

ほんと親には感謝しないとな。まさに社畜の鏡である。働きたくねぇ・・・・・。

 

「そっか、ならお邪魔させてもらいます」

 

「はーい! あ、どうせなら泊まって行きます? 」

 

「おいこら小町余計なこと言うな」

 

「ごめんね~、今日は泊まりの道具なんも持ってきてないからまた今度ね」

 

あの、水無瀬さんなんで今度泊まる予定なのでしょうか? まぁ口に出したらめんどくさいことになりそうなので、絶対に言わないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

水無瀬と小町は仲良さそうにガールズトークを繰り広げている。そんな光景を眺め、たまに会話に入っていると、いつの間にか3時間たっており、時刻は既に20時をまわっていた。

 

「おーいお前らもう20時をまわってるんだからそこら辺にしとけ」

 

「はーい!わかった!」

 

「あ、ほんとだ。そろそろ帰らないと」

 

外を見てみると既に暗くなっていた。楽しい時とはすぐに過ぎていくものだ。水無瀬と出会わなければこんなに楽しい会話を、家族以外とすることはなかっただろう。

 

「あ、お兄ちゃん優花さん帰るみたいだから送ってあげてね〜」

 

20時をまわると流石に夜も暗い。女の子を1人で歩かせるのは危険だな。

 

「へーい。了解っと」

 

「え、そんな全然大丈夫だよ。1人で帰れるよ」

 

水無瀬が拒否するが、そういうわけにもいけない。

 

「いいって、気にするな。夜、女の子を1人で歩かせるには行けないだろ」

 

「う、うん。ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えてお願いします」

 

水無瀬の頬が少し赤く染まっているように見える。あれ? おかしいな……俺変なこと言ったかな?

 

「流石お兄ちゃん……女の子の気持ちが何も分からないんだね……」

 

小町が何か小声で言ってるが聞き取れなかった。

 

「小町なんか言ったか?」

 

「ううん!なんも言ってないよ! そ、それじゃあ優花さんまた遊びに来てくださいね!」

 

「うん!また遊びに来るね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

家を出発し、俺と水無瀬は暗い道を歩いている。30分ぐらいは歩いただろうか。 その間どちらも無言が多かった。

 

「八幡先輩は今日は楽しかった?」

 

水無瀬が聞いてきた。楽しかった、か・・・・・、まぁ楽しくなかったといえば嘘になるな。

 

「まぁ、楽しかったな」

 

「ならよかった!あ、私の家ここだから家もう大丈夫だよ!」

 

水無瀬は立ち止まり、前に建っているマンションを指さした。

 

「あぁ、わかった。じゃあな」

 

水無瀬にひとこと言うと、後ろを振り返り、再び元来た道を歩こうとすると

 

「八幡先輩!また明日学校で話そうね!」

 

水無瀬が少し大きな声でそう言いながら笑顔で手を振ってきた、俺はそれを不器用に手を振ることしか出来なかった。

 

その笑顔は俺が水無瀬優花と出会った2週間の中で一番のもので、そして・・・・・いまにも消えてしまいそうなものにも見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

俺は水無瀬を送り返したあと、元来た道を歩いていた。そして俺はふと、この2週間を振り返ってみた。

 

今思えばとんでもない出来事だったんだろう。きっと、高校生活で2年連続新学期初日に、事故にあった高校生は、日本全国で俺一人だけだろう。でも、事故のおかげと言ってはなんだが、水無瀬に出会うことが出来た。その出会いには感謝しなければならない。

 

人との出会いとは偶然とはよく言ったものだ。2週間前の俺はそんな言葉信じていなかった。だが、いまなら信じることができる。それぐらい水無瀬との出会いは偶然で危険なものだったのだ。家族にはもっと自分を大切にしろと言われたが、あのとき、あの交差点で水無瀬を助けたことは、俺は一切後悔してない。むしろ、あのとき自分が動くことが出来なかったら……どうなっていたかなんて、想像もしたくない。

 

水無瀬のおかげで、退屈しない入院生活を送ることが出来たのも確かだ。それに、今日だって退屈しない日々を水無瀬のおかげで、過ごすことが出来た。水無瀬も、心の底から楽しいそうに笑っているように見えた。

 

だからなのか分からないが、あのとき見せた水無瀬の儚くて、今にも消えてしまいそうな笑顔が頭の中から離れなかった。



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第二話

「で? 2人ともなんだこの作文は? 」

 

うーん、どうしてこうなったんでしょうね。今日から学校に通えることになり、普通に学校に登校して、授業で作文書いただけなんだが、今俺と水無瀬は教師の平塚静先生に呼ばれ、職員室にいる。

 

「なぁ、比企谷と水無瀬。私が授業で出した課題は何だったかな?」

 

「確か高校生活を振り返ってというテーマでしたね」

 

「私の方は高校に入ってなにか変わったことでしたね」

 

「まぁ、だいたい合ってる。それで何故君たちは犯行声明を書き上げてるんだ? テロリストか? それともただのバカなのか?」

 

「はぁ、だって高校生活なんて振り返えることもありませんよ、 俺は常にぼっちでしたし、青春、青春言ってはしゃいでいる奴等と友達になろうとも思いませんし」

 

「私も同意見ですね、高校も中学もそう簡単に変わりませんよ」

 

それもそうだ、そう簡単に変わるもなら誰も高校生活で失敗などしない。中学でカースト最下位な奴は、高校になっても一気に上位カーストに上がれるというのは夢物語なのだ。にしてもこの説教長いな。あぁ早く家に帰って小町に会いたい……。

 

「うぉ、比企谷、元から腐ってた目が急激にさらに腐っていってるぞ」

 

平塚先生がどん引きしながらゾンビを見るような目で見てきた。いや、現実にはゾンビいないけど。

 

「DHA豊富そうで良さそうじゃないですか~」

 

そんな平塚先生に向けて水無瀬が俺のことをフォローしてくれた。いや、それ全然フォローになってねぇーよ。

 

そんなくだらないことを言っていると、平塚先生が俺と水無瀬を睨んできた。俺たちはすかさず言い訳を並べた。ふぇぇ……怖いよぉ……。

 

「い、いえ、別に、なな、舐めた作文など書いてなくちゃんと高校生活を振り返ってますよ! そ、そそ、そうですよ! 最近の高校生はこんな感じです!」

 

「そ、そそ、そうです! こ、ここ、こんな感じなんです!」

 

俺と水無瀬も噛みまくりのめちゃくちゃ早口の言葉となっていた。

平塚先生はそんな俺と水無瀬を見てまたため息をついた。

 

「……はぁ、ほんと君たちは捻くれているなぁ。」

 

平塚先生は何か考えるような仕草をした。

 

「ふむ、そうだなそのちょうどいい。その捻くれてを直すために君たちは部活に入りたまえ。」

 

……は?部活?

 

「いやいや! なんでそうなるですか! 勝手に決めないでくださいよ! だから平塚先生は結婚できないんですよ!」

 

「え……八幡先輩それは禁句じゃ……」

 

あ、やっべ平塚先生の前で言っては行けない言葉ベスト1位を言ってしまった。

 

「ほぅ比企谷この私相手に喧嘩を売るというのか、私の拳は響くぞ?」

 

牽制するぐらい平塚先生は怒っていたが、拳を下げ、許してくれた。

 

「まぁいい今回は初めてということで許してやる。その代わり君たちには私を傷つけたバツとして強制的に部活に入ってもらう」

 

あぁ良かった……。死なずにすんだ……。

 

「わかりましたよ。部活入ります」

 

「八幡先輩が入るのなら私に拒否権はないです、ね」

 

こうして、俺と水無瀬は平塚先生によって部活に入ることになったのだった。

 

 

 

 

 

 

×××

 

「ついたぞ」

 

先生はなんも変哲のない教室の前で止まった。普通教室の名前などが書いてあるプレートには何も書かれてない。俺と水無瀬がそのプレートを眺めていると先生はがらりと戸を開けた。

 

その教室の端っこには机と椅子が積み上げられており、それ以外はいたって他の教室とはなにも変わらなかった。その教室の中で一人の少女が斜陽の中で本を読んでいた。

彼女はこちらに気づくと本に栞を挟み顔をあげた。

 

「平塚先生。入るときはノックを、とお願いしていたはずですが」

 

「ノックをしても君は返事をした試しがないじゃないか」

 

「返事をする間もなく先生が入ってくるんですよ」

 

彼女は他にも来客がいる事に気づき不満気な視線を送ってきた。

 

「それで?そのぬぼーっとした人と女子生徒は?」

 

そうだ、俺はこの女を知っている。

二年J組の、雪ノ下雪乃

恐らくこの学校に彼女のことを知らない人はいないだろうと言うぐらいの有名人だ。なんせいつも定期テストで学年一位の成績優秀者で学校一の美少女といっていいぐらいの優れた容姿の持ち主なのだ。

 

「彼は比企谷と一年の水無瀬。入部希望者だ」

 

まぁ軽い自己紹介をしておこうと前にでる。

 

「2年Fクラスの比企谷八幡です」

 

「1年C組の水無瀬優花です」

 

「実はこいつらなかなか捻くれている奴等でな、この部活で人との付き合い方などについて学んで貰おうと思っている、彼らの捻くれた性格改善と更生が私からの依頼だ」

 

いやあの、俺なんも悪いことしてないんですけど?

 

「それなら先生がしつければ終わりじゃないですか」

 

雪ノ下は俺を睨みながら言った。

女子から睨まれるのは別に初めてではないが彼女の睨み方はまるで見下すような感じだ。

 

「最近は上がうるさくてなぁ、暴力は振るえないんだ」

 

平塚先生は雪ノ下の問に冷静に答え……って! 上がうるさくなくても生徒を殴ちゃいけないでしょ……てっか平塚先生を説得できる人がこの学校に居るのにも驚きだ。

 

「お断りさせてもらいます、そちらの女子生徒の方はともかく、そこの男の下卑た目を見るところ身の危険を感じます」

 

雪ノ下は自分の身を守る為か、少し椅子を引いた。

 

「あーその心配は大丈夫ですよ~、八幡先輩はぼっちで自分の保身に関してはかなりのものなので罪に問われることはしませんよ」

 

あの二人とも陰口って言うのは本人のいないところで行うものですよー。完全に聞こえてますよー。あと水無瀬さんの発言はフォローになってないと思います!

 

「ぼっちなるほど……」

 

おい、そこ納得するなよ。

 

「そうですね。まぁ先生からの依頼なので無視するわけには行けませんので、承りました」

 

「ならあとのことは任せる」

 

と言うと先生はガラッと戸を引き、教室を出て言った。

 

「あの、ところで、気になったんですがここは何部なのでしょうか?」

 

それは俺も気になっていた所だった。先生からは部活に入れと言われたなんの部か話を聞く前に先生が去っていったのだ。

 

「そういえば、自己紹介がまだだったわね。私は二年J組の雪ノ下雪乃そして、この奉仕部の部長よ」

 

「奉仕部……」

 

「ええ……そうよ、持つ者が持たざるものに慈悲の心をもってこれを与える。人はこれをボランティアというの。困っている人に救いの手を差し伸べる。それがこの部よ」

 

「ようこそ奉仕部へ。水無瀬さんと比企谷君歓迎するわ」

 

これが俺と水無瀬の初めての部活動の初日だった。

 



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第三話

ホームルームが終わり、いつもなら、すぐさま家に帰っている俺だが、今日からはすぐに家に帰ることはできない。昨日、俺と水無瀬は平塚先生の手によって、強制的に学校では誰もが知る雪ノ下雪乃が部長をしている奉仕部に入れられたのだった。

 

俺は奉仕部の戸の前にいる。本当は行きたくないんだけどね? 行かないと平塚先生がうるさいからなぁ・・・・・・。

 

「うぃーす」

 

中に入ると、雪ノ下と水無瀬そして平塚先生がすでに部室に来ていた。

 

「おお、比企谷か。やっと来たな」

 

「あら、こんにちは」

 

「八幡先輩! おそーい!」

 

あれ? おかしいなぁ、雪ノ下と平塚先生が早く来ているのはまだわかるが、なんで水無瀬まで早く来てるの?やる気なさそうだったじゃん。同士じゃなかったのかよ。

 

「うむ、全員揃ったな。それでは昨日言い忘れていたことを話すとしよう」

 

「昨日いい忘れていたこと、ですか」

 

「そうだ、部員も増えたことだし何かしようと思ってな。そこで勝負しようをしようと思う」

 

「勝負?」

水無瀬が首を傾げる。

平塚先生が何を話したいのか意図が全く掴めない。

 

「部活動と言えばやっぱり勝負だろう! ふっ、誰が一番人を導き救い、誰が一番人に奉仕をすることができるか!? そして互の正しさを存分に証明するがいい! 世紀末の戦いの始まりだ!!!」

 

・・・・・・・・・。

 

部室に沈黙が流れる。

まぁそうだろね、いい大人が何子供みたいなことを口走ってるのだろう。しかもドヤ顔で。だから結婚できないだろうか?

そしてその沈黙を破ったのは氷の女王こと雪ノ下だった。

 

「嫌です」

 

おお、ストレート一発。恐らく相手の打者は三振だ。

だが平塚先生は動揺することもなく前から雪ノ下が拒否することが分かっていたような顔をしていた。

 

「うむ、そうか。ならこうしよう、死力や尽くして戦うわけだ、この戦いに勝利した人は負けた人になんでも命令が出来るという報酬をあげよう」

 

「「な、なんでもっ!?」」

 

俺と水無瀬の声がハモった。

 

「その勝負やりましょう!先生!!」

 

水無瀬は先生の意見に全面的に賛成みたいだ。

それとなんでもって、なんでもいいんだよね?

がたっと椅子が引く音が聞こえたと思いきや雪ノ下が二メートルほど後ずさり自分の身体を抱える防御体制に入っていた。

 

「嫌です。水無瀬さんだけならともかくこの男も相手となると身の危険を感じます」

 

「いや、あの俺そんないやらしいこと考えてませんよ?」

 

少し、いや半分ぐらいは考えてました。

 

「ほう、雪ノ下雪乃でも恐れるものがあるのか・・・・・・。勝つ自信がないのかね?」

 

平塚先生が挑発するように言ったが普通はそんな安い挑発に乗るやつはいないのだが・・・・・・。

 

「いいでしょう。その挑発に乗るのは少しばかり癪ですが、その勝負受けて立ちます」

 

そう、雪ノ下はとてもプライドが高く、そんな安い挑発にも乗ってしまうのだ。

 

「てことは決まりですね!? 先生!」

 

水無瀬が先生をキラキラと目を輝かせながら言う。

 

「うむ、そうだな。勝負の裁定は私の独断と偏見で決める。あまり気にせず奉仕活動に専念したまえ。では私は仕事に戻るとする」

 

と、言い残すと先生は部室から出ていった。

あの僕の意見は聞いてもらえないのでしょうか・・・・・・?

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

平塚先生が帰って20分ぐらいはたっただろうか。その間、戸は開かれることはなく誰も入ってこない。全員が読書をしており時々水無瀬と雪ノ下が話してる。あれ俺空気なのでは? いやぁ、やっぱり人に存在を認識されないことにおいては最強だな。しかし、依頼者が誰も来ないとなると勝負とかどうなるんだろう?

 

そんなことを考えていたからか、弱々しいノックの音が聞こえてきた。

 

「どうぞ」

 

雪ノ下が扉に向かって声をかけた。

 

「し、失礼します」

少し小さめのソプラノボイスが聞こえてきた。どうやら、女子みたいだ。

がらりと戸が開けられ彼女が入ってきた。

肩までの茶髪にウェーブを当てた女の子で俺と目が合うと、小さく悲鳴をあげた。いや、僕怪しい人ではないです。

 

「なんでヒッキーとみっちーがここにいるの!?」

 

ヒッキーっとみっちーって誰だよ? あ、俺と水無瀬か、なんでこいつ俺達の名前知ってるの?

 

「なんで私達のこと知ってるんですか?」

 

俺が思っていた疑問を水無瀬が聞いていた。

 

「いや、だって普通に昼休み、みっちー教室にヒッキーのこと呼びに来ているからクラスでめっちゃ有名だよ?」

 

あー、そりゃぁ目立つなうん。 って!!もしかして!

 

「もしかしてお前同じクラス!?」

 

「はぁ!?ヒッキー知らなかったの!? 同じクラスなのに知らないとかありえない!」

 

ま、まじかよ。いま知ったぜ。と言うかのクラスで顔を覚えてる奴いたかな・・・・・・。うん、いないな。

 

「まぁまぁ八幡先輩はぼっちだから人と関わる必要がないから覚えてないだけだよね?」

 

うん、そうなんだけどこのタイミングで言われるとなんか虚しくなるな。

 

「まぁろくにクラスの人の顔を覚えれないアホ谷君のことはほっといて。なにか依頼があってここに来たんでしょう? 由比ヶ浜結衣さん」

 

雪ノ下が話を切り替えて本来の話題に戻した。

なんか悪口言われた気がするが気のせいだろう。

 

「あ、私のこと知ってるんだ。平塚先生から聞いたんだけど、ここって生徒の願いを叶えてくれるんだよね?」

 

「そうなのか?」

 

てっきり本を読む読書クラブかなんかかと思っていたぜ。

 

「そうね、少し違うわね。あくまで奉仕部手助けをするだけ。願いが叶うかどうかはあなた次第ね」

 

「どう違うんですか?」

 

水無瀬が問う。それは俺も疑問であった。

 

「飢えた人に魚を与えるか、魚の捕り方を教えるかの違いよ」

 

なるほど、それなら納得できる。つまり生徒のために働くという部活ってことだな。うん。

 

「な、なんかすごいね!」

 

いかにも分かってないような納得の仕方で、由比ヶ浜は納得していた。いや絶対分かってないだろこいつ。

 

「必ず願いが叶うという訳でもないけどできる限り手助けするわ」

 

由比ヶ浜はなにか思い出したようにあっと声をあげた。

 

「あのね、クッキー・・・・・・」

 

俺の顔をちらっと見てきた。

俺、クッキーじゃないよ?ましてはヒッキーでもない。比企谷だ。比企谷。

 

「あ、そいうことか! 八幡先輩!」

 

水無瀬が廊下の方を指さした。うん?出ていけということかな?

あぁ、なるほど。いわゆる女子会って奴ですね! いやまぁ、ただ単に女子同士でしか話せないことだろう。

そいえば、中学のときの女子だけ集めた保険体育の授業って何してたんだろう?そんなことが気になる高2の春。

 

「まぁちょっと飲み物買ってくるわ」

 

と理由を付けて俺は廊下に出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

どうやら由比ヶ浜の依頼は手作りクッキーを焼くことみたいで、いま家庭科室にいる。ちなみに俺は味見役だ。雪ノ下いわく、男子の意見が必要になってくるらしい。まぁ俺はたいていのものはうまいという感じる素直な人だからな。うん。・・・・・・俺役に立たなくね?

 

女子たちも準備が終わったみたいで、エプロンを着ていた。制服にエプロンってなんだかいいと思います!

 

「それじゃあ、一回作って貰えるかしら?」

 

「そうですね、一回由比ヶ浜先輩の腕がどのぐらいか知りたいですし」

 

「うん!わかった!」

 

由比ヶ浜は元気良く返事をしていたが、そこからは地獄だった。クッキーごときで大袈裟かもしれんが、シンプルなものこそ料理の上手さが見えてくるのだ。

 

まずは卵のからは入ってる。

それから小麦粉はダマになっている。

バターは固形。

あ、もうダメだ、俺味見役じゃないわ、毒味役やわ。

 

雪ノ下と水無瀬はというと、どちらとも青い顔をして立っている。そりゃあそうですよね・・・・・・あんなもん見てしまったら戦慄しますよね。

 

由比ヶ浜の方に向きを変えるとコーヒーを取り出していた。

それをなにに、使うのだろう?

 

「飲み物ですか? 確かにその方が食が進むかもしれませんね」

 

水無瀬もどうやら由比ヶ浜がコーヒーを取り出しているところを見ていたみたいだ。

 

「いや違うよ〜、隠し味だよ! ほら男子って男子って甘いの苦手な人多いじゃん?」

 

由比ヶ浜は水無瀬を方を見ながら作業をしているため、手元を見ていない。その為にボウルには中には黒い山ができていた。

 

「由比ヶ浜先輩! 全然隠れてませんよ!」

 

「え、あ本当だ。じゃあ砂糖を入れて調整する!」

 

いや、もう本当ダメだ。由比ヶ浜は料理スキルが最初から備わってないわ。俺食べても死なないよね?

 

例のブツが出来上がったころには何故か真っ黒のホットケーキらしき物体が出来上がっていた。

 

「な、なんで?」

 

由比ヶ浜が自分で作った物体を見ながら言う。

 

「理解できないわ、どうやったらあんだけのミスを重ねることができるのかしら・・・・・・」

 

「でも、ほら! 食べてみたら案外美味しいってこともあるじゃないですか!」

 

雪ノ下は理解できないような顔をしていた。水無瀬に関してはお世辞を言っているようなものだった。

 

「そうね、味見をしてくる人もいることだし」

 

「ふははは! 雪ノ下これは味見じゃない! 毒見だ!」

 

「ど、毒じゃない!」

 

おい、どこからその自信は湧いてくるんだよ・・・・・・。

 

「なぁおい、これ食べても死なないよな?」

 

一応怖い為に確認の為に聞いておく。いや誰も食べたことないから死なないとかわからんけど。

 

「食べれない材料は使ってないから大丈夫だと、思うよ・・・・・・」

 

あの水無瀬さん? なんで途中から声が小さくなるですかね?

 

「大丈夫よ、私も食べるから。あなたには試食をお願いしただけで、別に処理まではお願いしてないわ」

 

「あ、なら私も食べますね」

 

そんな光景を見ていたからか、由比ヶ浜も仲間に入りたそうな目をしていた。

ちょうどいい! お前も食え! 人の痛みをしれ!

 

✕ ✕ ✕

 

 

由比ヶ浜の作ったクッキーはギリギリ食べることができた。

むしろ、マンガみたいに気絶できるほうが幸せだなということがわかった。

 

その後なんとか食べ終わった俺たちは由比ヶ浜が手作りクッキーを作るにはどうしたらいいかを話し合い結果一回雪ノ下がお手本を見せるということになった。まぁ由比ヶ浜が料理をしなければ済む話なんだけどね!

 

「いい? 一度お手本を見せるからその通りにやってみて」

 

雪ノ下の動きはまさにプロそのものの動きだった。その手際は由比ヶ浜とは比べ物にならないもだった。あっという間に生地を作ると、ハートやら星やら丸やら型抜きで抜いていく。

 

焼き上がったクッキーをお皿に移して、雪ノ下がすっと差し出して来た。お手並み拝見というわけで一つ手にとって食べてみた。

 

「うまっ! お前何色パティシエールだよっ!?」

 

「本当に美味しいですね」

 

「雪ノ下さんすごい」

 

三人の素直な感想に雪ノ下は

 

「ありがとう」

 

と優しくなんの嫌味もなく微笑んだ。

 

「でもレシピに忠実に作っただけだから、由比ヶ浜さんもきっと同じような物が作れるようになるわ」

 

それからということ、それはまさに死闘だった。雪ノ下のスパルタ指導に由比ヶ浜は戸惑いながらも必死にクッキーを作ってた。雪ノ下さん怖いっス。

 

何回か繰り返すごとに由比ヶ浜と上達をしていきまともな物が作れるようになっていた。さっきとよく似たいい匂いが漂っていた。

 

「なんか違う・・・・・・」

 

由比ヶ浜の言う通り、食べ比べて見れば確かに先ほど雪ノ下が作ったものとは明らかに違う。

 

「どう教えれば伝わるかしら?」

 

雪ノ下の由比ヶ浜も納得がいかないみたいだ。

すると水無瀬が雪ノ下と由比ヶ浜に近づいていって言った。

 

「すみません。あのここは私に任せて貰えませんか?」

 

「「「え」」」

 

水無瀬以外が驚いたような声をあげたが

 

「私が本当の手作りクッキーを見せて上げます!」

 

それにひるむことなく水無瀬は宣言した。

 

 

✕ ✕ ✕

 

「入ってきて大丈夫ですよ〜」

 

水無瀬が廊下で待っている俺たちに声をかけてきた。

 

「で? その手作りクッキーとは?」

 

雪ノ下が興味ありげに水無瀬に聞く。

 

「まぁまぁ少し待っててください。すぐにわかりますよ」

 

と、水無瀬は言うと俺のそばに来た。手にはセロハンの包みを持っていた。え? 俺なんかした?

 

「あ、あの!八幡先輩良かったら手作りクッキーどうぞ!」

 

水無瀬が頭を下げ、セロハンの包みを両手で俺に差し出してきた。そのとき俺は、水無瀬の意図を理解した。なるほど、流石水無瀬だよく考えてるな。

 

その可愛らしくラッピングされたセロハンの包を開けると中には黒色の形も不器用なかろうじてクッキーとわかる物体が入っていた。

 

ふと横を見てみると雪ノ下は全てわかったような顔をしていて、由比ヶ浜は何がなんだかわからないような顔をしていた。

 

「実はその・・・・・・少し、失敗しちゃって・・・・・・でも頑張って作ったので食べてみてください!」

 

ここまで言われて食べない奴は男じゃないと思い、俺は恐る恐るそのクッキーを口に運んだ。余り美味しくはないがまぁ……悪くはないと思う。

 

「まぁ、悪くないんじゃないの」

 

俺は素直に感想を水無瀬にいった。

 

「ありがとうございます!まぁ全部由比ヶ浜先輩のクッキーですけどね!」

 

にやりと水無瀬はいたずらが成功したような笑顔を浮かべていた。

やっぱりな、そんなところと思ったよ。

 

「え、えええ!? それ私のクッキーなの?」

 

自分のクッキーだと言われた由比ヶ浜はかなり驚いている。

 

「なるほど。そいうことね、女子が作った手作りクッキーだからこそ意味があると」

 

流石雪ノ下、気づくのが早い。

 

「そうです! 女子からクッキー貰ったら普通にときめきますし、美味しいと思いますよ! 八幡先輩以外は!」

 

あの水無瀬さん? なんか俺侮辱されてませんかね?

 

こうして奉仕部初の依頼は後輩のナイスアイディアによって解決した。

 

 

✕ ✕ ✕

 

「やっはろー!」

 

いかにも馬鹿そうな挨拶とともに部室入ってきたのは、初めての依頼者の由比ヶ浜結衣だった。

 

「・・・・・・何か?」

 

「この前のお礼をしようと思ってクッキーを自分で焼いてきたの! はいこれ! ゆきのんのね!」

 

由比ヶ浜は雪ノ下に可愛らしくラッピングされたセロハンの包みを渡していた。

 

「いまは食欲ないから家で食べるわ。あとその呼び方は辞めなさい」

 

多分雪ノ下は家でも食べるきはないな。それと、どうやら由比ヶ浜の頭の中では雪ノ下さんからゆきのんに昇格したみたいだ。

 

「これはみっちーのね!」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「ちょっと、由比ヶ浜さん話聞いてる?」

 

由比ヶ浜はクッキーを渡すのに夢中で雪ノ下の話を聞いていない。

 

「で、これがヒッキーので。うん? ゆきのんなんか言ったー?」

 

「はぁ、もういいわ。なんでもないわ」

 

おお、雪ノ下が折れたぞ。由比ヶ浜恐るべし。まぁ料理の腕も殺人級だけど・・・・・・。

 

こうして奉仕部にトラブルメーカーが入ってきたのだった。




お久しぶりです。冬奈水沙です。
今回はご報告があり、後書きを書きました。
まずこの第三話ですが、三点リーダーの調子がおかしく、いつもと違う感じになってしまいました。次の投稿のときまでには元に戻せるようにします。
もうひとつのご報告なのですが、再来週に学校の方の期末テストがありますので、申し訳ないですが20日まで投稿を休止したいと思います。いつも読んでくださってる方々には申し訳ないですが、今後もよろしくお願いします。


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第四話

お久しぶりです。無事テストが終わったので投稿を再開します。
今後もよろしくお願いします。


いつものように水無瀬と一緒に部室へ向かうと、珍しいことに雪ノ下と由比ヶ浜が扉の前に立ち尽くしていた。

 

「なにしてんの?」

 

「ひゃうっ!」

 

可愛らしい悲鳴とともに2人が飛び跳ねた。

 

「ひ、比企谷君と水無瀬さんか・・・・・・びっくりした・・・・・・」

 

「驚いたのは俺のほうだよ・・・・・・」

 

あんたは夜中に俺と出くわしたときのうちの猫か。

 

「いきなり話しかけないでもらえるかしら?」

 

いや、なんでこいつ不機嫌になってるの?あれか、ほんとに前世は猫か。

 

「で、どうしたんですか?」

 

水無瀬が元の話題に戻すために由比ヶ浜に尋ねると、部室の中をそっとのぞき込んだ。

 

「なんかね、部室に不審者がいるの」

 

不審者はどうみたってお前らだよ。

 

「いいから中を見てきて頂戴」

なんで声に出してないのに聞こえるんですかね。あれが噂のテレパシー能力かぁ〜。そんなもんねぇよ。

 

俺が慎重にドアを開くと、一陣の風が吹き教室内のプリントを撒き散らした。そしてその白い世界の中に一人の男が佇んでいた。

 

「クククッ、まさかこんなところで出会うとはな。待ちわびたぞ比企谷八幡!」

 

「な、なんだとっ!?」

 

偶然出会ったような言い方なのに待ちわびたってなんだよ!驚いたわ。てっかこいつ誰?こんな厨二病みたいなやつハチマンシラナイ。

 

「でも、八幡先輩のこと知ってるよ」

 

水無瀬が俺の後ろに隠れながら言う。

 

「まさか、あの地獄のような時間を共にした相棒を忘れるとは・・・・・・見下げ果てたぞ八幡」

 

「ただ、体育でペア組んだだけじゃないか・・・・・・」

 

これだといつまでたっても本題に入らないのでそろそろ切り上げるとしよう。

 

「で? なんのようだ材木座」

 

「おっと、そうであった。奉仕部とはここでいいのか?」

 

「ええ、ここが奉仕部よ。依頼者かしら?」

 

雪ノ下が答えるが材木座は俺の方を向いて喋っている。

 

「実は奉仕部に依頼があってきたのだ」

 

「ちょっと話してはのは私なんだけど。話すときは人の方を向いて話なさいって習わなかった?」

 

おっと、どこかの厨二病は氷の女王の怒りに触れてしまったみたいだ。

 

「ハッハッハ、それはしかり」

 

「その喋り方もやめて」

 

氷の女王こと雪ノ下雪乃に冷たくあしらわれると、材木座は下を向いてしまった。

 

「まぁまぁ雪ノ下先輩、相手は厨二病なんだしそこら辺にした方が・・・・・・」

 

「ちゅうにびょう? 病気なの?」

 

「さぁ、私もそんな病気聞いたこともないわ」

 

そんな微妙な空気が流れるなか水無瀬と由比ヶ浜の会話のおかげで少し和らいだ。

 

「えーっと、病気って訳でもないんですけどスラングみたいなものですかね」

 

「まぁ、あれだ。自分は特別な力を持っているとか思い込んでる痛い人のことだ。」

そう、男の子の誰もが通らなければならない道なのだ。

 

「なるほど、つまり自分で作った設定に基づいてお芝居をしているようなものね」

 

流石雪ノ下飲み込みがはやい。ほんとこいつとの会話は助かる。

 

「で?あなたの依頼はその病気を治すこと?」

 

「え、いや、病気じゃないんですけど・・・・・・」

 

材木座、素に戻ってるぞ・・・・・・。またもや、部室に不穏な空気が流れてこようとしたとき、水無瀬が散らばっていたプリントかき集めて見せてきた。

 

「八幡先輩これって・・・・・・」

 

水無瀬からそのプリントを見せてもらうと、それは原稿用紙だった。その瞬間俺は材木座の依頼がわかった。

 

「材木座お前の依頼って・・・・・・」

 

再び息を吹き返した材木座が目を輝かせて話し出した。

 

「うむ、いかにもライトノベルの原稿だ。実はこの原稿を読んでもらいたいのが我には友達もいないし、投稿サイトにだす勇気もない。そこでこの奉仕部の者にこの小説の読んでもらって感想を聞きたい」

 

なるほどな、つまり材木座はチキン野郎で投稿サイトに自分の小説を投稿する勇気もなければ友達いない。そこで俺たちに読んでもらいに来たというわけか。おい、全国のネットに小説を投稿してる人に謝れや。

 

それにあまり関わりのない俺たちだとあまり厳しい感想は言えないしな。でもなぁ・・・・・・

 

「多分投稿サイトもり雪ノ下の方が厳しいよ」

 

この部活に例外がいるんですよね。

 

 

 

 

 

 

 

✕✕✕

 

 

はっきり言おう。材木座の小説は全く面白くなかった。むしろ徹夜して最後まで読んだ自分を褒めてあげたいまでである。 眠気をこらえて放課後部室へと続く道を歩いていると

 

「あれ?ヒッキーめっちゃ眠そうじゃん! どうしたの?」

 

いつもと変わらない元気な声が聞こえて来た。

 

「いやいやいや、普通あんなの読んだら元気なくなるだろ・・・・・・。お前なんでそんなに元気なの?」

 

「あ、いやー私も少しは眠いかな」

 

あ、こいつ読んでないな。

部室の前までたどり着き、ドアを開けると机に伏せて寝ている。雪ノ下と水無瀬がいた。

 

「お疲れさん」

 

「・・・・・・驚いたわ、あなたの顔を見ると一発で目が覚めるのね」

 

「八幡先輩遅いよ〜」

 

どうやら雪ノ下は寝起きでも毒舌は収まらないらしい。それと水無瀬さんあなたが来るのが早いだけです。

机に鞄をおき、椅子に座ろうとすると、戸が開き

 

「たのもう」

 

俺たちを疲れさせた元凶材木座が入ってきた。

 

「では感想を聞かせてもらおうか」

 

おい、なんでそんな自信ありげな顔ができるんだよ。

 

「あまりこのようなジャンルの小説は読まないんだけど・・・・・・」

雪ノ下が前置きを言い、話し始めた。

 

「読むのが苦痛であるほどのつまらなさだったわ」

 

「げふぅっ!」

 

雪ノ下の暴言と材木座の悲鳴をスタートに毒舌ラッシュが始まった! 氷の女王の容赦ない攻撃が連続で続く! 材木座は倒れた!

いや・・・・・・まじで、見てるこっちも引くぐらいの毒舌ラッシュだったわ。

 

「おい、もうそのへんにしとけ。全員の感想が聞けないだろ」

 

「まだ言い足りないのだけど・・・・・・。それもそうね、次由比ヶ浜さん」

 

「わ、わたし!? えっとー、難しい字をいっぱい知ってるね」

 

「ひでぶっ!」

由比ヶ浜がとどめを刺した。作家にとってこの言葉は禁句であるのである。

 

「じゃあ次はみっちーの感想だね!」

 

「そうですね・・・・・・、二次創作を出してはどうですか?」

 

「ぴゃあっ!」

 

材木座は何回死んだのだろうか? てっか水無瀬さんあなたそれはパクリと言っているようなものです。

 

「ぐ、ぐぬぅ。八幡! お前なら理解できるよな?」

 

あぁ、わかっている。ここで言う言葉はひとつしかない。

 

「イラストがあればましなんじゃね?」

 

「ぶぶっ!? ぶ・・・・・・ぶひひ」

 

材木座はもう立ち上がれなくなりました。あ、とどめを指したの俺でした☆

 

「あなたが一番容赦ないじゃない・・・・・・」

 

「まぁヒッキーらしいと言えばヒッキーらしいけどね」

 

「八幡先輩それは言っちゃだめですよ」

 

なんだよみんな。俺は普通に材木座わフォローしただけだよ?けして文書がダメとか言ってないよ?

 

結論を言おう。書いている本人が面白ければそれでいい。



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第五話

先日の材木座の依頼が終わりここ最近は特に依頼もなにもなく、ダラダラと部室に集まってはそれぞれ別のことをして時間を潰している奉仕部である。

 

「全然依頼者来ないねー」

 

さっきまで携帯をいじっていた由比ヶ浜だが調べることもなくなったのか話題を振ってきた。

 

「いいんじゃねぇの?依頼者が来ないってことは誰も悩みがないってことだろ」

 

もちろんそんなことはない。人は誰だって心の中に悩みを抱いている。それを打ち明けるには相当勇気のいる行為だろう。ましては友達でも何でもない人に悩みを打ち明けるなどそうそうできない。

 

「けどさー、それじゃあこの部活意味無いじゃん」

 

そんな俺が考えてることなどアホの由比ヶ浜には届くこともなく普通に会話が進んだ。

 

「そうですね・・・・・・確かに暇ですね」

 

「そうね。依頼者が来ないとなるとここはただの暇な部活なってしまうわね」

 

依頼者が来ないと暇になるということはどうやら雪ノ下も悩んでいたことらしい。依頼者が来ないときに何をするかを女子三人(俺は会話に加わってません)が話し合っているとコンコンっと控えめなノックの音が聞こえてきた。

 

「すみません、あの奉仕部ってここであってますか?」

 

開かれた戸の先には天使がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

✕✕✕

詳しく話を聞くと部室に入ってきた天使の名前は戸塚彩加で、由比ヶ浜の話によると同じクラスの子らしい。

そして何より驚いたのは・・・・・・

 

「うぅ、なんか女子として敗北した気分・・・・・・」

 

水無瀬が敗北を感じるほどの溶質なのに男の子なのだ。いやあ、男の子と聞いたときは倒れそうになった・・・・・・。

まぁそんなこともありながらいまに至っている。

 

「それで?あなたの依頼は何かしら?」

 

雪ノ下がいつもの調子で依頼の内容を聞く。

 

「あ、うん。その僕テニス部で部長なんだけど・・・・・・。あんまり上手くなくて・・・・・・少しでも上手くなりたいだけど・・・・・・できる、かな?」

 

なるほど。つまり戸塚は部長になったのはいいが、自分の実力が部長という肩書きと釣り合ってなくて少しでも上手くなりたい、ってことか。果たしてうちの部長はその依頼になんと答えるのだろう。

 

「わかったわ。その依頼受けます。明日の昼休みテニスコートに集合ね」

 

雪ノ下が言い終えると同時に部活動終了のチャイムがなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

✕✕✕

そして、ときは昼休み。いよいよ氷の女王雪ノ下監督主催の地獄の戸塚強化練習が始まる・・・・・・。

 

「むぅ、八幡これはなにが始まるのだ?」

 

おい、俺のかっこいいナレーションを返せ。ってかなんでお前いるの?

 

「なんか、比企谷君と話したそうにしてたから連れてきちゃった」

 

あ、なんだ。戸塚が連れてきたのかならいい。てっか材木座俺のこと好きなの?なんなの?

 

「それじゃあ始めるわよ」

 

「楽しみだね〜みっちー!」

 

「そうですね〜」

 

どうやら女子グループも準備を終えたようだ。そして地獄の練習が本当にスタートした。

 

 

・・・・・・

 

え?みんな大丈夫かよ・・・・・・。

 

地獄の練習が開始して約30分。早くも由比ヶ浜と材木座はリタイヤした。てっか材木座に関しては寝転がって動かないし・・・・・・。水無瀬に関してはたっているのはがやっとぽいな・・・・・・俺に関しては一年の頃事故にあって以来ずっと体を鍛えてるからこのぐらいまだ大丈夫だ。

戸塚はというと・・・・・・正直言うと水無瀬と一緒でたっているのがやっとぽいな。それでも俺が打つラインギリギリの球を跳ね返してくる。

 

「ちょっと休憩にしましょう」

 

雪ノ下の言葉と同時に戸塚は地面に座り込んだ。雪ノ下はそのあと何処かに消えていった。

 

「僕なんか怒らせることでもしちゃったかな?」

 

「ああ、雪ノ下か大丈夫だろ。多分救急箱かなんかを取りに行ったと思うぞ」

 

「それに、雪ノ下先輩は頑張ってる人を見捨てたりしませんからね〜」

 

そう、あいつは努力するヤツは絶対に見捨てたりしない。それは断言できる。

 

「あれーテニスしてるじゃん」

 

はしゃぐ声がして、見てみると同じクラスの葉山と三浦だったかな?まぁいわゆるリア充の集団がこちらに向かってきている。

 

「あ、ユイたちだったんだ」

 

どうやら三浦の女子グループの1人が由比ヶ浜がいることを確認したみたいだ。

 

「ねー、戸塚ー。あーしらもここで遊んでいいよね?」

 

「えっと、遊んでるんじゃなくて・・・・・・練習を・・・・・・」

 

「なにー?聞こえない!」

 

戸塚が小さな声が言ったのが聞き取れなかったのをいい事に。三浦が更に威圧をかけてくる。よし、うん。俺は関わらないようにしよう。平和大事。

 

「だーかーら、練習中って言ったんです!」

 

突然大きな声が聞こえてきたと思うとそれは水無瀬の声だった。

 

「ちょっと後輩は黙ってなさい!」

 

すると三浦の隣にいた女子が水無瀬向かって対抗してきた。

 

「ちょ、ちょっと2人とも落ち着いて!」

 

由比ヶ浜が中立になろうとするが火に油を注ぐだけだった。

 

「はぁ?ユイはこんなやつの肩を持つって言うの?」

 

・・・・・・どうやら三浦は俺の逆鱗に触れてしまったようだ。

 

「まぁまぁ、ここは公平にテニスで勝負して勝った方が使うってので」

 

葉山がけりをつけようとするがそれは俺には逆効果だった。

いまこいつらはなんて言った?水無瀬をこんなやつて言わなかったか?一生懸命練習をしている戸塚に向かって遊び半分でコートの取り合いをしようと言わなかったか?絶対に許さねぇ・・・・・・。

それにいま戸塚はとても不安そうな顔をしている。今にでも泣き出しそうだ。そんな状況を脱出することができるのはこの中では俺しかいない。

 

そう、俺は知ってしまったのだ。二年の春の水無瀬との出会いのきっかけの事故で。誰かを助けることが俺には出来ることと、それができても誰かを悲しませてしまうことを。ならばいまこの状況を無事誰も傷つかないで脱出できれば俺は少しは成長したことになるんじゃないか?それに戸塚の為にも・・・・・・、戸塚が怒ることができないから変わりに起こっているか水無瀬の為にも・・・・・・俺は絶対にコートを守る。

 

 

「おい、葉山と三浦そのテニス勝負俺が受ける。まとめてかかってこい!」

 

 

 

 

 

 

 

✕✕✕

格好つけて言ってみたものの、正直体力的にきつい……。

一応再認識しよう。どうやら三浦というやつは中学のときテニスをしていたみたいだ。そして、葉山の方はさすがの運動神経としか言いようがない。

 

一応俺はリハビリで走り込みなどをしてきたために、前より断然運動神経が良くなってるものの、二人がかりとなると同点をキープするのがやっとだ。

 

「まだ続けるのかい?」

 

葉山が諦めるように、俺に言ってくる。

うるせぇ、勝てないのは分かってるがここで諦めるかよ。

 

「あぁ、どちらかが勝つまでが勝負だ」

 

いまの得点は11対11だ。この勝負はただの打ち合いでどちらかが後ろに逸らすか、サーブを2回ミスるかで点数が入る単純な試合だ。ただ、15点マッチとあって、正直2対1だと体力的にきつい。

 

「なに?まだやるの?それじゃあいくよ」

 

相手のサーブというわけで三浦が打ってきた。それを返すと今度は葉山が叩き込んでくるがそこはよんでいたので、また打ち返す。さっきからこれの繰り返しだ、恐らく相手は俺の体力を削り確実に点数をとる作戦だろう。

まぁそう簡単に負けないけどな!

 

「ほいよ」

 

強い打ち合いが続いたせいか葉山たちは前の方が空いているのを忘れているみたいだった。俺はそのすきに前の空いてるペースにボールを落とした。見事に決まった。これで12対11,。

 

「悪いがここら辺で決めさせて貰う」

 

サーブは交互にするというルールなのでこちら側のサーブとなる。

俺はある程度までボールを上げると相手が動けないラインギリギリの所をめがけて打った。

葉山が腕を伸ばすがそれは見事に空振りをし、コートにボールが落ちる音だけが聞こえる。これで13対11。いままで騒いでいたギャラリーの声が小さくなっていく。

 

「くっ、やるな。どうやら甘く見ていたのは俺の方だったみたいだなヒキタニ君」

 

「まぁな、人を見かけて判断してはいけないってことだ」

 

俺と葉山はお互いを見つめ、改めて再確認する。てっかこの小説いつからスポーツする小説になったの?

 

「それじゃあいくよ!」

 

葉山が速いスピードのサーブを打ってくる。それを辛うじて跳ね返すとそれをチャンスとみた三浦が飛び込んできた。

「あーしが負けることなんてありえないし!」

 

猛スピードで打ってきたが力み過ぎたせいか別の方向にボールが飛んでいったが……

 

「あ、やば!」

 

俺はラケットを放り投げて走り出した。そう、ボールのゆくえの先には水無瀬がいて、ちょうど高さ的に顔にボールが当たりそうだからだ。運良く、俺の方が水無瀬に近かったためにボールより先に追いつくことができ、水無瀬を抱きしめながらボールを避けるようなかっこうになった。だが避けた先には……フェンスがあった。俺はフェンスに激突しそのまま意識が落ちた。誰かの声が聞こえたような気がした……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

「八幡先輩!八幡先輩ってば!」

 

あれ?俺は確か葉山たちとテニスの試合をしていたはずじゃ……。

 

「こ、ここは?」

 

まだはっきりしない意識の中場所を確認しようとすると、水無瀬が抱きついてきた。

 

「バカ!心配させないでよ!死んじゃうかと思ったよ……」

 

あ、そうか。俺はあの後水無瀬を庇いながら頭からフェンスに飛びこんだんだった。となるとここは保健室か……。

 

「その、すまない。心配かけた。お前の方は大丈夫か?」

 

今にも泣き出しそうな水無瀬に謝り、水無瀬に大丈夫かどうか聞いた。

 

「うん。八幡先輩がかばってくれたから大丈夫だったよ。ありがとう」

 

そうか、なら良かった。そいえば勝負はどうなったんだ?

水無瀬にあのあとのことを聞くとどうやらさすがに負傷者が出ては勝負は出来ないということで途中で切り上げたみたいだ。どうやらこの勝負はある意味コートを守れたから俺たちの勝ちかもしれない。

 

「あの2人もすまなかったって謝ってたよ。私は許さないけど!」

 

どうやら水無瀬さんはお怒りの様です……。

立てるかどうか確認すると俺は保健室を出ることにした。

 

「それじゃあ部室に戻るとするか」

 

今回のやり方が良かったのかは正直わからないが、まぁ犠牲者が俺だけだったから多分良かったのだろう。きっと今度なにかあったときもなんとかできる……と俺は思っていた。この先の展開なんて誰もわかるはずがないのに。

 



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第六話

お久しぶりです。今回は少し短めです。


いつものように、学校の授業が終わり俺は奉仕部の部室へと向かう。

最初の方は、平塚先生に無理やり入れらたせいなのか、あまり良くは思ってなかった部活も、月日が過ぎると同時に少しずつだが居心地のよい場所へと変わってきている。

 

しかし、その関係もいつまで続くのか俺にはわからない。せいぜい持って高校卒業と俺は思っている。どうせ、お互い別の進路の道を歩くのだ、そしたら自然に疎遠になるのは中学の友達から遊びに誘われないことから経験済みだ。人との繋がりなんてそんなもんだ。でも今はーー、そんな関係を大切にしたいと思っている。そんなことを考えながら今日も俺は部室の戸を開ける。

 

「うぃーす」

 

「あら、今日は早いのね」

 

「あ、八幡先輩!」

 

「あ、比企谷君やっと来たぁ~」

 

いつものように軽く挨拶をして入ると、雪ノ下と水無瀬と何故か戸塚がいるが由比ヶ浜だけが見当たらない。

 

「由比ヶ浜さんなら今日は家の用事でお休みよ」

 

俺のが周りをキョロキョロしていたせいか雪ノ下が先に答えてくれた。となると戸塚の方は……

 

「僕?僕はただお礼をいいに来ただけだよ! この前比企谷君は必死になってコートを守ってくれたからね。ありがとう」

 

満面の笑みでありがとうと言われた……。これに落ちない男子はいないのでは?

 

「お、おう。気にするなただああいう悪ノリみたいなのに頭にきて勝手に勝負を初めてしまっただけのことだ」

 

「それでも!比企谷君かっこよかったよ! もうほんとテニスうまかったよ!」

 

お、おい。そんなこと言うなよ。惚れちゃうだろ。

 

「戸塚……俺と友達になってくれ」

 

あ、言っちゃった。いやむしろ恋人になってくれと言わなかった分まだ戸塚を男子と認識してるってことだ。大丈夫だ。うん。

 

「え、僕男子と友達少ないからなってくれると嬉しいな。これから八幡って呼んでいい?」

 

「お、おう。いいぞ」

 

こうして俺と戸塚は友達になったのでした。めでたし、めでたし……ってまだ終わってませんでした☆

 

「はぁ、友情の確かめ合いなら他のところでやってくれるかしら?」

 

「お、おう。すまんなついうかれてしまって……」

 

だってあの戸塚だよ!! あの天使と仲良くなったんだよ!! ここ死後の世界じゃないよな、俺成仏しないよな?

 

「むぅ。八幡先輩のバカ」

 

「はぁ?なんで水無瀬怒ってんだよ。って! 痛いからつねるなよ……」

 

どうやら水無瀬さんはご機嫌斜めのようで……ってほんと痛いから腕をつねるのやめてくれませんかね……。

 

「八幡ってあれだよね。そいうことには鈍いよね」

 

戸塚か何かを言っているが、今は水無瀬をなだめるのが先だな。だってこいつ本気で怒ったら怖いし、1日口聞かなくなるもん。

 

「だって八幡先輩が私のこと構ってくれないのがいけないもん」

 

あ、あの……それだけできれていたのですか……。うん、まぁ確かに今までの会話は完全に水無瀬入ってきてなかったな。しかし……俺が悪いのか?と真面目なことも考えつつ女の子がいう、もんは可愛いと思いましたまる。

 

「いや、ごめんな。水無瀬のこと気にせずに会話を進めてしまって」

 

だがここで、そんなことを考えていたなど言ったらそれこそ人生の終わりである。そしてこの場面では、謝るのが1流のぼっちである。

 

「それだけで怒ってるだけじゃないんだけでね……。まぁいっか!じゃあ先輩今日先輩の家よっていい?」

 

「お、おう。いいぞ」

 

NOと言える日本人に初めてなりたいと思ったこの頃でした。

 

「と、言うわけで雪ノ下先輩と戸塚先輩!今日はこれで失礼します!!ほら先輩行くよ!」

 

と言って水無瀬は俺を引っ張って戸を開いて外に出た。

 

「はぁ、全くあの子は……」

 

「まぁ、元気があっていいと思うけど……」

 

 

 

 

 

 

 

×××

まぁ、今までの流れでいま俺と水無瀬は俺の家にいます。

 

「へぇーお兄ちゃんかそんなことを」

 

「うん!凄くテニスも上手くてね!それに私を庇ってくれたんだよ!」

 

お前ら絶対に本人がいるの忘れてるだろ。恥ずかしいからやめてくれませんかね。

 

「ほうほう。とうとうお兄ちゃんにも春が……。そいえばその奉仕部には他に誰がいるんですか?」

 

「雪ノ下先輩と由比ヶ浜先輩だよ!どっちも凄い有名人でね、とっても美人なんだよ!」

 

「なに!?優花さんだけではなくとうとう他の人もおとすとは……お兄ちゃんおそるべし」

 

「おい、ふざけんな。俺は誰もおとしてない。ましてや大変なのはこっちだ」

 

「え?なんで?」

 

小町が不思議そうに聞いてくる。

 

「考えて見ろよ、こんなカースト最下位の俺がカースト上位の3人と一緒の部活にいることが知れてみろ。多分俺が刺されて死ぬ」

 

「別に私はカースト上位じゃないよー。まぁ友達に1年のカースト上位はいけるけど……」

 

いや、水無瀬は普通に可愛いと思うよ。うん。そんなことより……

 

「はぁ!?お前いつ友達できたの!?」

 

そう、水無瀬は自分からぼっちと名乗るぐらいで、あまり人と関わるのが好きじゃないはずの水無瀬に友達ができたって……。

 

「う、うん。ちょっと前に前の席の女の子と仲良くなって……」

 

く、くそ。俺が成し遂げられなかった。高校生では友達1人以上作るを成し遂げやがった!! 水無瀬恐ろしい子だ……。

 

「いや、お兄ちゃんも友達いるじゃん……。まぁそんなごみぃちゃんにもちゃんと春は平等にくるよ! 今の小町的にポイント高い!」

 

最後の一言がなければな。

平等にみんな春が来る、ならこの世に振られる男はいねぇよ。

そんなことを考えながらふと窓の外を見ると、日が暮れていた。

 

「水無瀬そろそろ帰った方がいいんじゃないか?」

 

「は? なに言ってるのお兄ちゃん?」

 

いや、俺は当たり前のことを聞いただけですけど。

 

「今日は金曜日。明日は土曜日! つまり明日は休みだから優花さんは泊まりだよ!」

 

「え、えっと。今日は泊まるからよろしくね」

 

さいですか……。

 




どうも冬奈水沙です。
今回の話によって前回投稿していたときの話に追いつきました。
これかも定期的に投稿を目指して頑張りまのでどうかよろしくお願いします。


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第七話

第七話

夢を見た。それは俺たち奉仕部に関わる内容で、とても辛い話だったような気がする。

だが所詮夢だ。夢の中の話が現実で起こるなどありえるわけがない。何故言いきれるかと言うと、そんな経験俺は1度もしたことがないからだ。

誰かが自分の名前を呼ぶ声とともに、この悪い夢から俺は覚めた。

 

 

 

 

 

×××

 

「八幡先輩! 朝ですよ! 起きてください!」

 

・・・・・・今の状態を説明しよう。時刻は朝の7時半。いつものように朝が来たのはいいのだが、起こしてくれたのは妹である小町でも、目覚まし時計でもなく、いや最初に妹という選択肢がある時点でおかしいのだが・・・・・・その予想は違った。水無瀬だったのだ。

 

「あぁ、そうか。水無瀬今日泊まってたんだったな」

 

眠たい頭で考えてみるとその答えは簡単なものだった。水無瀬は昨日から俺の家に泊まっていたことを俺はすっかり忘れていた。つまり、朝になってもいつまでも起きてこない俺を起こしに来てくれたわけだ。

 

「八幡先輩寝ぼけてるよ・・・・・・八幡先輩って意外と朝に弱いんですね」

 

「まぁな、特に土日は早起きしないしな」

 

学生のいいところは土日が基本休みという所だな。土日普通に出勤がある会社がある時代だし学生時代が案外1番いいかもしれない。

 

「そうなんですか? 私は平日も休日もあまり起きる時間変わりませんよ?」

 

どうやら水無瀬さんは俺とは違い規則正しい生活を送られているようです。

 

「お兄ちゃーんと優花さーん! 朝ご飯できたよー!」

 

1階から小町の声が聞こえてきた。どうやら朝食を作っていたみたいだ。さてや水無瀬が起こしに来たのも、小町が俺を起こしに来るように言ったからだな。

 

「それじゃあ行こっか、八幡先輩」

 

「あぁ、そうだな」

 

俺と水無瀬は下に降り、小町の待つリビングへと向かった。

朝から今日は騒がしいなぁ・・・・・・

 

 

 

 

 

 

×××

リビングに向かい、俺と水無瀬そして小町は朝食を食べ始めた。

小町も料理上手くなったなぁ〜、これならどこに嫁に出しても大丈夫だ、うん。そんなことになったら比企谷家は大騒動だ。主に親父が。

 

「お兄ちゃん! 丁度駅ビルの店がセール中だって! 優花さんも入れて3人で遊びに行かない?」

 

って、3人ってことは俺も行くのかよ。断ろうとして「俺は行かない」と言いかけたとき一つの考えが頭に浮かんだ。・・・・・・まてよ、駅ビルの店ということは本屋も入っているんじゃないか? そいえばまだ今月のラノベの新刊買ってなかった。よし、行こう。

 

「たまには運動も必要だな、うん」

 

「いま行かないって言いかけたよね!?」

 

水無瀬さんそこはスルーでお願いします。

 

「優花さんごめんなさい。こんな兄で……」

 

小町が申し訳なさそうに水無瀬に言った。なんだよ! ちゃんと行くって言ったじゃないか!

 

「ううん。八幡先輩はいい先輩だよ! それじゃあ八幡先輩の気持ちが変わらないうちに行こっか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

✕✕✕

 

「うぁ・・・・・・すごい人混みだね」

 

「そうですね・・・・・・少し出遅れましたね」

あれこれと支度をしていたためか、駅ビルの前の広場に着いたのが午前11時。 そして広場まで来たのはいいのだが、セール中の為か人混みが凄い。この場合はステルスヒッキーを発動し、さっさと目的地に辿り着きたい所なのだが、いまは水無瀬と小町がいるため発動出来ない。あの技はぼっちを極めし者にしか使えないのだ。

 

「時間はあることだしゆっくり行けばいいんじゃねーの」

 

「もう! お兄ちゃんは全くわかってないなぁ! 女の子の買い物はすごく長いの! こんなに人が多かったらまわりきれないよ!」

 

何がすごく長いだ。いつも長いのは行く予定のない店もまわってるからだろ。

 

「まぁまぁ。せっかく3人で来たんだしいろいろと見てまわろうよ」

 

うーん。やっぱり水無瀬さんはいい子ですね。何処かの妹とは違うや。いや、兄がひねくれてるから妹もあんな性格かもしれない・・・・・・決して俺のことじゃないんだからね!

 

 

 

とりあえず、水無瀬の提案で店を回ることにした。どうも女子ウケの店が多く、男では到底理解のできなさそうな香水やら化粧品の話を、水無瀬と小町が繰り広げていた。

 

いや、マジでわかんねぇよ。お前ら何語話してるんだよ。その間の俺はラノベを買いに・・・・・・行けるはずもなく荷物持ちしてます。ハイ。こんなことになるなら来なければ良かった・・・・・・。

 

ふと、ある店の前を通り越したときに2人ら足を止め、ヒソヒソと俺に聞こえないように話をすると、その店に入っていた。って俺はまた待っとくのかよ。

 

しばらくすると2人が店から頭に何かをつけて戻ってきた。その何かとは

 

「お兄ちゃん見てこれ! 似合う!?」

 

それは猫耳のついたカチューシャだった。おいおい、そんなもの売ってる店あるのかよ。

 

「あーうん。世界一似合ってるよ」

 

と、棒読みで流してやった。

 

「うわーこの人テキトーだなー」

 

小町が何か呟いていたが、聞かなかったことにしよう、うん。

ふと、肩を叩かれたため、振り返ってみるそこにはーー、

 

「八幡先輩・・・・・・これ似合う、かな?」

 

八幡は1万ポイントの攻撃を食らった。八幡は倒れ・・・・・・てない!!

そうそこには何を隠そう少し顔を赤くした水無瀬が猫耳つけて立っていたのだ。

上目遣い+少し恥ずかしそうな声に大ダメージを食らった八幡でした。ショートカットに猫耳て似合うな。メモメモ。

 

 

昼食もとり、そんなことをしながら店をまわっていると、気がつけば午後の15時を回っており、最後に小町の「ゲーセンに寄ろう!」の一言でゲーセンによって帰るようになった。

 

結局ラノベの新刊買えなかったなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

✕✕✕

ゲーセンの前につき、中に入ろうとしたときふと見慣れた顔が目に入った。

 

「八幡先輩あの人って・・・・・・」

 

どうやら水無瀬も気づいた見たいだ。そう何を隠そう奉仕部の部長である雪ノ下雪乃が、道路側にあるUFOキャッチャーとにらめっこしていたのだ。

 

「うん? 2人ともどうしたの?」

 

「いやちょっとな。うちの部活の部長さんがいたからびっくりしたんだ」

 

「お兄ちゃんの入ってる部活ってことは奉仕部の?」

 

「そうだ。って! 水無瀬はどこいった!?」

 

ふと横見ると水無瀬の姿がなかったが、その心配はすぐにになくなった。

 

「八幡先輩! 雪ノ下先輩連れてきたよ!」

 

うん。わかってた。水無瀬さんが雪ノ下を見つけた時点でだいたい予想はついてたが、まさか本当に行動に移り、こちらに連れてくるとは少し驚いた。

 

「あら奇遇ね。 比企谷くん」

 

ほんと奇遇だよ。

 

「どうも!どうも~!初めまして! いつも兄がお世話になってます、妹の小町です!」

 

小町が雪ノ下の方を見て挨拶を始めた。

 

「初めまして。比企谷の……何かしら?」

 

そこは嘘でも友達と言ってくれたら嬉しいけどどうせ言ってくれないんだろうなぁ~。

 

「同じ部活仲間でいいだろ」

 

「そうね。同じ部活で部長をしている雪ノ下雪乃です。よろしくね、小町さん」

 

「はーい!雪乃さんですね!よろしくお願いします!」

 

しっかしほんとこいつ礼儀正しくよなぁー。小町も見習って欲しいものだ。

 

「ところで雪ノ下、お前こんな所で何してるんだ?」

 

「考えてみると雪ノ下先輩が来そうな場所じゃないよね」

 

水無瀬の言う通り、ゲーセンというリア充か、ゲームヲタクの集まりの場所である所に、雪ノ下いるイメージが出来ない。

 

「え、えっとその・・・・・・パンさんのぬいぐるみが見えて・・・・・・欲しいのだけど、ゲームの仕方がわからなくて・・・・・・」

 

少し声が周りのゲームの音にで聞こえにくかったが大体の理由はわかった。どうやら雪ノ下はパンさんが好きらしい。そもそもUFOキャッチャーの仕方がわならないやつとかこいつ以外いるのかよ。

 

「それなら取ってあげようよ! お兄ちゃんUFOキャッチャー得意だし!」

 

「え!? 八幡先輩得意なの!?」

 

「ま、まぁな。小さい頃に小町の変わりに取って上げてたりしたからな」

 

と、言うと俺は筐体へと向かいお金を投入した。だが、久しぶりにしたためか取れない。

 

しばらくしてみたが、取れそうな雰囲気ではない。これで700円目の挑戦だ。

 

 

パンさんの腰の部分を目掛けてアームを下ろすと、運良くそのまま持ち上げてくれた。そのまま商品を落とす穴に、持って行くことができた。

よし! なんとか取れたぞ! 良かった~、この状況で失敗したら恥ずかしすぎるだろ。

 

「ほれ」

 

パンさんのぬいぐるみを筐体の下から取り出すと雪ノ下に渡した。

 

「え、えっと、これはあなたが取ったのだからあなたが手に入れるべきよ」

 

「なんでこんなところまで礼儀正しいんだよ・・・・・・いいって、別に俺はいらないし」

 

雪ノ下に押し付けるようにして、パンさんのぬいぐるみを渡した。少し強引過ぎたかと思ったが、雪ノ下が受け取ってくれたのでよしとしよう。

 

「あ、ありがとう。返さないわよ」

 

「だからいらないって言ってるだろ・・・・・・いいよ、それはお前のものだ」

 

雪ノ下が小さくガッツポーズをしているのが見えた。まぁなんだその、喜んでくれてるならラノベ1冊分ぐらい使って取って良かったものだ。

 

「あれ? 雪乃ちゃん?」

 

ふと後ろから女性の声が聞こえた。




お久しぶりです。冬奈水沙です。
今年最後のまちがい続けるの更新となります。
今年はいろいろとあり、こちらの不手際で誤って作品を紛失してしまったりが、たくさんの読者さんに支えられ、再び前と同じ投稿の話のところまでこれました。ありがとうございます。
まちがい続けるはまだまだ続きます。
来年もよろしくお願いします!


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第八話

一ヶ月以上も間をあけてしまい申し訳ありません。
時間が少し取れたので続きを書きました。前回の続きなので今回は短いです。これからもよろしくお願いします。


 

「ね、姉さん!」

 

ふと、後ろから雪ノ下を呼ぶ声が聞こえ、振り返るとそこには彼女が姉さんと呼ぶ、雪ノ下によく似た、大学生ぐらいの人が立っていた。

 

「雪乃ちゃんにこんな所で会うとは珍しいね〜。 あ、そちらはお友達さん?」

 

「……姉さんには関係ない」

 

雪ノ下は睨みつけながら言うが、お姉さんの方は軽く流すと、こちら側に向かってきた。

 

「へぇ……君たちが雪乃ちゃんの友達か〜。私は雪ノ下陽乃って言います。よろしくね♪」

 

陽乃さん、陽乃さん。印象が強すぎておぼえてしまったじゃねぇか。

雪ノ下に似た顔つきで、誰もが恋に落ちるような満面の笑み。

きっと昔の俺ならここで理由もなく好きなっていただろう。だが、今は違う。 俺は騙されたりしない。

この人の笑顔は偽物だ。外面だけの笑顔だ。俺は本当の笑顔というのをつい先見たばっかりだ。

 

「は、はい。よろしくお願いします」

 

「しかも、ボーイフレンドもいるのか〜。君の名前は?」

 

「比企谷八幡です」

 

にしてもこの人こっち側に寄ってきてから距離が妙に近い。ちょっと離れてくれませんかね。

 

「ちょっと! 八幡から離れて下さい! 」

 

水無瀬が俺と陽乃さんの間に割り込んできて、陽乃さんを睨み付けている。

おかしい……いつもの水無瀬なら敵対心なんて出さず、とりあえず話しかけようとするはずなんだが……。

 

「あはは、ごめんね。そんな焦らなくても大丈夫だよ〜。取ったりしないから〜」

 

「まぁまぁ、水無瀬さん落ち着いて。 あ、どーも、 比企谷八幡の妹の小町です」

 

そんな様子の水無瀬を止めるように小町が前に出た。

 

「比企谷くんに、水無瀬ちゃんに小町ちゃんね! うん! 覚えた!」

 

またもや陽乃さんはこちらに外面の笑顔を向けてくる。

 

「もう、用は済んだでしょう。 さ、帰りましょう」

 

「もう〜。 雪乃ちゃんは可愛げがないな〜! たまにしか会えないんだしもう少し話して行こうよ!」

 

「生憎今日は他にも連れがいるわ」

 

雪ノ下はよほど陽乃さんのことが嫌いなのか避けようとしている。

 

「ふぅん……そっか……。それじゃあせっかく友達といる所を邪魔したら悪いし私は帰るとしますか〜。あ、比企谷くん!」

 

「は、はい」

 

不意に自分の名前が呼ばれ少しドキッとした。

 

「近いうちにまた会おうね」

 

と、意味ありげな言葉とゾクッと来るような笑みを残して雪ノ下の姉ーー、陽乃さんは去っていった。

 

「ごめんなさい。 姉さんが邪魔しちゃって……」

 

「そんなこと気にするな。にしても凄いなお前の姉ちゃん」

 

「そうね。容姿端麗、成績優秀、文武両道……誰もがあの人に惹かれていくわ」

 

マジかよ……あの容姿で文武両道で成績優秀かよ。

 

「いや、俺が言いたいことはそのことじゃ無くてな……」

 

「あー八幡先輩が言いたいのそれじゃなくて外面のことと思いますよ」

 

そう、俺が言いたかったことはあの外面のことだ。確かに素敵な笑顔なんだろう。だが俺から見たらそれは外面にしか見えない。

そこが怖いのだ。外面のいい笑顔を完璧に見えるのが。

 

「……気づいていたのね」

 

「まぁな」

 

「にしても優花さんがあんな態度とるとは珍しですね〜どうしたんですか?」

 

小町が水無瀬にさっきの出来事のことを聞いた。確かにあのときの行動は少し水無瀬らしかぬ行動だった。

 

「うーん。 なんかあの人のこと好きになれない…… なんか鏡を見てる感じなんだよね」

 

「好きになれなくても別に大丈夫だろ、別にこれから毎日会うわけでもないし」

 

「そうね。姉さんもいろいろと忙しいみたいだし、そんなに頻繁に会いに来たりなんてしないわよ」

 

 

 

 

 

 

×××

その後、雪ノ下と駅前の交差点で別れ、一旦家に戻ると、水無瀬の荷物をまとめて家まで送り、今ようやく家に帰りついた。

 

いろいろと今日はあった。だが1つどうしても気になる事があった。あの水無瀬の態度がどうしても頭から離れない。

そんなことを考えていたが、疲れからきた睡魔には勝てず、俺は目を閉じた。




いろいろな企画が重なっており、忙しく、少し投稿は遅れますが完結はさせますのでよろしくお願いします。


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第九話

嵐のようだった週末も去り、俺たち2年の間では「職場見学」の話で盛り上がっていた。

そして部活では、いつものように俺と雪ノ下は読書をし、由比ヶ浜と水無瀬が駄弁っている。なにも変わりもしない部活の風景が広がっていた。

「フフフ……とうとう道は開かれた! 我は手に入れたのだ! エルドラドへの道筋を!!」

 

「で、さっきからなんだよ材木座。言いたいことがあるなら日本語で言え」

 

悪い……いつものようにという言葉は撤回な、1人うるさい奴が混じってたわ。

 

「聞いて驚け八幡! とうとう我はラノベの新人賞の道筋を手に入れたのだ!」

 

ああ、なんだそういう意味か、あまりにもありえない事で候補から外したわ。

 

「なんだよ、受賞でもしたのか?」

 

「いやそれはまだだ……。しかしッ!! それも時間の問題。小説が完成すればこちらのものだ!」

 

コイツのこの謎の自信何処から来ているのだろう……。まあ作家に大切なのはメンタルと言うしな、うん。ネットに投稿しろよ。

 

「比企谷くん、このうるさいのなんとかならないのかしら? さっきから夢物語が聞こえてきて読書に集中出来ないのだけど」

 

どうやら今日も氷の女王こと雪ノ下雪乃は健在のようです。

 

「もう! 厨二声がでかい! みっちーの声が聞き取れなかったじゃん!」

 

「そうですよ! てっか道筋が決まってるなら早く小説書いてください!」

 

女性陣から文句を言われ、悲鳴を上げならがら材木座は倒れた。 うあ、流石にこれは俺でも可哀想だと思ったぞ……。

 

もうすぐで部活終了の時間にもなるし、ここにいても邪魔なだけだから材木座を起こそうとしたとき、ノックの音が聞こえてきた。

 

「どうぞ」

 

雪ノ下がドアの向こう側に声を掛ける。

 

「お邪魔します」

 

なかに入ってきたのは誰もが認めるイケメンな容姿をした人物である葉山隼人がいた。

 

 

 

 

 

 

 

✕✕✕

 

「すまない……部活が長くなってしまって来るのが遅くなってしまった。材木座くんにヒキタニくんもほんとうにすまない」

 

葉山は、最初女性陣たちの方を見て謝り、次は俺達の方に笑顔を向けながら謝ってきた。なんで材木座の名前は覚えてて俺の名前は間違っているんですかね。

 

「い、いや、我はこれで!」

 

人との対人スキル0である材木座は爽やかな笑顔を向けられたからか、逃げるようにして去っていた。

 

「前置きはいいわ。依頼しに来たんでしょう?」

 

「ああ……そうだった。平塚先生に悩みごとの解決の依頼をするならここがいいって言われてね。1つ依頼があってきた」

 

ほう、完璧人であるあの葉山に悩みがあるとは……凄く気になるな。

 

 

「最近うちのクラスでまわっているチェーンメールを流している犯人を見つけるのを手伝ってほしい」

 

「あ、それってもしかしてこれのこと?」

 

由比ヶ浜がなにか思い出したかのように携帯をいじり、メールの画面を見せてくる。

 

「ああ、どうやらこのメールがうちのクラスで回ってるらしい」

 

そのチェーンメールの内容とは酷いものだった。そして、書かれている人物は戸部、大和、大岡だった。こいつらはたしか、いつも葉山のグループにいる奴らだったはず。

 

「うぁあ、酷い内容ですね」

 

「そうね。確かにこれは放っておけないわ。私たちで食い止めないとね、葉山くんその依頼受けるわ」

 

「ありがとう雪ノ下さん。奉仕部のみんなが協力してくれたら解決できそうな気がするよ」

 

「とりあえず最近なにか変わっとことはなかった?」

 

最近か、とくに大きな行事はなかったな。しいていうなら……

 

「職場見学のグループ決めとかか?」

 

「あー絶対にそれのせいですよ」

 

水無瀬がなにか勘づいたように言った。だが俺はどうも納得出来なかった。

 

「「え? そんなことでか?」」

 

……どうやら葉山も同じことを考えてたらしい。クッソ、なにが「ハモったな」だよ。まてよ、考え方を変えるとイケメンとハモった=イケメンじゃないのか? いや、ないな。

 

「うん、私もそれが理由と思う。それに犯人も分かっちゃったかも……」

 

由比ヶ浜が言いにくそうにしているのが分かったのか、雪ノ下がその先の言葉を繋いだ。

 

「恐らく犯人はその3人の中の誰かだわ」

 

「え、ちょっと待ってくれ! どうして3人のなかの誰かになるんだ? それに悪口を書かれているのはその3人だぜ?」

 

「今回はゆきのんの意見に賛成かな。だって職場見学のグループわけの人数3人じゃん。葉山くんのグループはいつも3人だったでしょ? それ省かれた1人結構きついよ……」

 

なるほど、でも由比ヶ浜の意見は一理ある。

 

「省かれたくないから、か」

 

人を蹴落として、自分を優位に立たせようとするか。なにそれ、この学校怖すぎでしょ。

 

「しかし、これからどうする?」

 

犯人が3人のなかの誰かだという事は分かった、しかし、これからどう犯人を見つけるかが問題となってくる。

 

「まだ情報が少ないわ。明日にでも聞き込みをしましょう」

 

「あ、それなら私がやるよ!」

 

「あのー、みなさんちょっと意見いいですかね?」

 

「どうした水無瀬?」

 

「私、この依頼の解決方法分かったかも知れません。」

 

「ほ、ほんとか!?」

 

葉山が珍しいく大きな声を出した。しかし、驚いたのも俺も同じだ。なんせ1つもまだ解決方法は浮かんでなかったのだから。

 

「は、はい。ですがまだ証拠が足りなくて……」

 

「それならこうしましょう。由比ヶ浜さんと……比企谷くんが聞き込みで水無瀬さんが証拠集め、これでどうかしら?」

 

雪ノ下の指示に全員が了解した。

 

「奉仕部のみんなありがとう! 助かる!」

 

そして、葉山がまたお礼の言葉をいい、今日の部活は解散となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

✕✕✕

 

信号が赤に変わり、足を止めると、ふとあることを思い出した。

あの水無瀬の解決方法が分かったと言ったときの目、あれはいつもの水無瀬と違っていたような気がした。

たまに彼女の事が怖くなるときがある。 まるでなにか恐ろしいものを見ているような感じがする。

「そんなこと考えても意味がねぇな。いまは依頼だ、切り替えよう」

 

信号が青に変わり、俺は夏の夕暮れの道を再び歩き始めた。

 

 




こんばんは。冬奈水沙です。
久しぶりの投稿になります。ようやく生活が落ち着いてきたので定期的に投稿出来そうです。まちがい続ける。以外にも作品の投稿を考えていますのでそちらの方も楽しみにしていて下さい!しばらくはまちがい続ける1本で行きます! 情報はTwitterに載せます!
これからもよろしくお願いします!


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