咲-Saki- 鶴賀編 (ムタ)
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第一局 [先輩]

―――鶴賀学園 放課後

 

 

defaultPlayer:あまり興味がないんで……

 

 

鶴賀学園1-A東横桃子はチャット画面にそう入力してタン、とENTERを押した。

偶然にも同じタイミングにガラリと教室の扉が開く。

つい、と扉に顔を向ける。扉を開けたのは濃い桃色……(梅の蕾の色といえばより近いか?)

の長い髪を腰あたりでぞんざいに結んだ髪が特徴的なクラスメートだった。

 

(脳内ニックネームは梅髪さんで決定っすね)

 

(梅髪さんは確か一ヶ月入院してて今日から学校に来た子っすよね?

体が弱いらしいっすから保健室にでもいたんすかね?)

 

ジロジロと少女を見つめ続ける。無遠慮だが桃子の存在感の無さは金メダル級である。

桃子の視線どころか存在すら気付いていない筈だから問題ないと結論付け観察を続けた。

 

(身長は少し低くて(桃子と同じくらい)肌が白いっす。おっぱいはほぼ無いっすね。

腰は細くてお尻はふつーっす)

 

観察に一区切りつける。

 

(それにしても……)

 

桃子は梅髪さんの蒼い空色の瞳に釘付けになる。

 

「……綺麗な目をしてるっすね」

 

ポツリと呟くが問題ない筈。なぜならば桃子の存在感の無さは

 

……ボン!!

 

と音が聞こえる程に梅髪さんの肌が真っ赤に染まる。

 

(えっ!? 聞こえてたっすか!? ……そういえばさっきからずっと目が合っていた気がするっす!

ジッと見つめた後になんてキザな台詞はいてるっすか! ナンパっすかこれ!?)

 

恥ずかしさのあまり自分ツッコミをする桃子。

桃子の焦りを余所に梅髪さんは多少ふら付きながらも桃子の隣の席(自席)に腰を下ろし、桃子を見る事

なく、火照った体を冷ますように手のひらを頬にあてて『はぁッ……』と息を吐いた。

 

(偶然? 体調が悪くて赤くなっただけっすか? ……そうっすよね。私に気付く人ないて

いるわけないっす)

 

ほっとしたような、残念なような面持ちでチャット画面に向き直る。

 

「あ、しまったっす!」

 

桃子は自席のノートパソコンで麻雀部とネット麻雀をしていた。

半荘終了後、対戦相手だった”かじゅ”さんと”カマボコ”さん”むっきー”さんから麻雀部に入部

しないかと勧誘されており、その回答が冒頭のコメントであった。

それに対するコメントが”かじゅ”さんと”カマボコ”さんからあり、梅髪さんを見つめている間、

二人を待たせた状態になっていた。

このまま放置するのは流石に失礼である。

キーボードに手をかけ、白い指がタカタカと文章を打ち込む。

 

defaultPlayer:あなたたちは決して私を見つけることh

 

必要だと誘ってくれたのは悪い気はしない。だからと言って……

 

「私が麻雀部に行っても誰も気づかないんすよ」

 

「麻雀?」

 

「えっ!?」

 

声のした方角、隣の席に顔を向ける。そこにはじっと桃子を見つめる梅髪の姿があった。

 

(梅髪さん、やっぱり私の事、見えてるんすか?)

 

そう声をかけようとした時、 バン! と教室の扉が勢いよく開かれた。

 

「またっすか!」

 

教室への侵入者は見たこともない生徒。

 

「麻雀部3年の加治木ゆみだ!」

 

「あ……」

 

3年生さんは扉を開けた時の勢いそのまま1-Aの教室に入り室内を見回す。

突然の事に放課後の教室に残っていた数名の生徒は唖然とし、動けないでいた。

侵入者である3年生は目的の人が見つからない事に焦ったのか、綺麗な顔に小さな汗が流れた。

 

「パソコンを持っている人物が誰もいないだと?」

 

(加治木……”かじゅ”さんっすね? わざわざ1年の教室まで出向いてくれたっすね。

でも無理なんすよ。私は誰からも見つからないんです。あ、でももしかしたら梅髪さんは……)

 

 

「私は 君が欲しい!!」

 

 

(え……?)

 

 

加治木さんは教室の中心で、桃子に背を向けながら、1年生から奇異の目で見られながらそう叫んだ。

 

 

(おかしな人っすよね)

 

 

――口元が綻ぶ。

 

 

(誘っても来ないから探しに来て、探しても見つからないなら大勢の人の前で叫んで求めてくれるんすか)

 

 

――ゆっくりと立ち上がる。

 

 

(見つけてもらえないなら差し出されたその手を私から繋げばいいっす。それだけの事を、この人は……)

 

 

――後ろ向きのその手を、必死で私を探すその人の腕を掴む。

 

 

「おもしろい人っすね」

 

 

――先輩の一瞬の驚愕と、そして……

 

 

 

「こんな 私でよければ!!」

 

 

 




桃子視点のお話。

これだけだと意味不明なので次話もできれば……



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第二局 [流血]

―――鶴賀学園 放課後

 

 

 

ガラリと1-B教室の扉を開く。

放課後の教室にチラホラと残る見覚えのない生徒数名が不思議そうな顔で

私を見つめた。

 

「し、失礼しました」

 

そのまま扉を閉める。

 

(……また外れた。)

 

いやそもそもこの判別方法は無理なんじゃないか?

私は廊下に立ち止まり腕を組んで思案する。

もう一度整理しようと私は生徒手帳を開いた。

 

赤に近い桃色の長髪に蒼い瞳の童顔な少女の写真(私の顔……らしい)

私の名前は桜井 梅子で血液型はA型。

鶴賀学園の1-Aで出席番号は……って私1-Aジャン!!

なんてこと……3年の教室から回ってたからとんでもない無駄足。

 

懸念事項『私の教室はいったい何年何組?』は解決した。

 

何なの? バカなの? と思われるかもしれないが勿論理由はあるのだ。

教室どころか私は自分の名前さえうろ覚えだったりする。

可哀相な子なわけではなく、記憶がないのだ。

病院のベッドで目覚めたのは一週間前。入学式の日に通学途中の階段を

転げ落ち、約一ヶ月間眠り続けたらしい。

だから私のもっとも古い記憶は一週間前。検査の結果一般常識や学力は

問題なく、私に関する事のみ記憶がなかった。

病室に篭るより日常生活をした方が記憶も戻るのでは?

という理由で本日復学1日目。

体調不良で授業の半分を保健室で過ごし、今にいたってしまった。

 

(まあ、この体調不良ももう一つの懸念事項なんだけど……)

 

 

1-A教室の扉を開ける。

 

 

(いた。)

 

 

大きいおっぱいに肩まで伸ばした艶のある黒い髪に吸い込まれそうな黒い瞳。

そして大きいおっぱいに透き通るような白い肌。

そしてそして物凄く、物凄く素晴らしいおもちのような柔らかそうな

大きいおっぱい。

うん、もうおっぱいじゃなくておもちでいいや。

私が自分のクラスの目印にしていたおもちもとい、美少女が憂いを秘めた表情

でノートパソコンを弄っていた。

しばらくみつめていると、カメラのピントを合わせる際にボヤケるように

視界がにじむ。

 

あ……やばい、意識し過ぎた!

 

視界がクリアになる。ジワリ……とまるで溶液で溶けるように

おもちおっぱい少女の制服が溶け落ち、白い肌が……

 

「……綺麗な目をしてるっ”ボン!!”すね」

 

何か私に囁いたみたいだけど駄目だ、これ以上みてるとまた保健室に逆戻りだ。

ふら付きながらも自席に座り、頭に上った血を冷やす為に大きく息を吐いた。

時間がたてば視力も普通に戻る。見たいけど我慢、我慢しないとまた……。

もう一度深呼吸。よし、落ち着いてきた。

となりのおもちおっぱいさんに目を向ける。

うん、服を着てる。いや私の脳内以外は最初から着てるんだけど。

あ、そういえば名前知らないな。

 

「私が麻雀部に行っても誰も気づかないんすよ」

 

「麻雀?」

 

おもちおっぱいさんの独り言に思わず声をかけてしまう。

 

「えっ!?」

 

目があう。いや『えっ!?』てそんなビックリするかな?

思わずだけど隣で意味深な独り言言われたら気になるよね?

そのまま話しかけようとすると……

 

バン! と教室の扉が勢いよく開かれた。

 

「またっすか!」

 

おもちおっぱいさんがツッコミを入れる。

扉をあけた侵入者は見たこともない生徒。

 

「麻雀部3年の加治木ゆみだ!」

 

(うわあ! 凄い美人! って危ない、意識するとまた)

 

さっと視線を外し、明後日の方向を向く。パソコンのキーボードに手を

おいたまま侵入してきた先輩をぼんやりと眺めている

おもちおっぱいさんが再び視界に入った。

 

「パソコンを持っている人物が誰もいないだと?」

 

「ブッ!」

 

思わず吹いてしまう。

 

(ええっ!? それボケ? おもちおっぱいさん思いっきりノートパソコン

弄ってるし!?)

 

おもちおっぱいさんを見ると、何故か覚めた表情で侵入者である美人さんを

眺めていた。

 

「私は 君が欲しい!!」

 

(ええっ!? 誰? 誰に言ってるの? そこ誰もいないよ!?)

 

 

ドン引きする私を余所に、カタン……と椅子をひいて隣席の

おもちおっぱいさんが立ち上がる。

そして突然教室に侵入し、叫んだ美人さんの腕を掴んだ。

 

「おもしろい人っすね こんな 私でよければ!!」

 

ハッキリ言って、何が起こっているのかさっぱり解らなかった。

 

「やっと、やっと君を見つけた」

 

ただ美人さん(加治木先輩)とおもちおっぱいさん二人の美少女が

目の前で見つめあっていた。

 

(どっきりじゃないよね? ……それにしても)

 

ゴクリと唾を飲み込む。

 

(ドキドキする。ちゅーとかしちゃうのかな?)

 

好奇心から目が離せない。その時、グニャリ……と視界が滲んだ。

 

「……あ」

 

一瞬ボヤケた視界のピントが合う。

視線の先には美少女二人のあられもない姿という

夢のような世界が広がって……

 

 

ブシャアッ!!

 

 

放課後の教室が血に染まった。

 

 

「ええっ!? 梅髪さんどうしたっすか!? 大丈夫っすか!?」

 

「おもちおっぱいさん……梅髪さんって誰?」

 

意識を失う前、おもちおっぱいさんの心配そうな声にそう答え、

私は自身の鼻血が作り出した血の海に沈んだ。

 

 

本来であればユミちん”1-A乱入事件”

 

 

として後に2年生にまで伝説として語られるゆりゆりしいこのエピソードは、

現時点で二人と全くぜんぜんこれっぽっちも関係のなかった

桜井梅子という少女によって

 

 

”1-A血塗れ乱入事件”

 

 

という何故か血生臭い名称に取って代わられることになる。

 

 

蒲原智美と加治木ゆみが麻雀部を創部した日、

もしくは鶴賀3強が誕生した”1-A血塗れ乱入事件”

この日が鶴賀レジェンドの始まりの日と後に語られる事になる……のだが……

 

「……お、おいしそうなおもち、おっきいおもちとふつうのおもちが……

うふ、うふふふふ(ドクドクドク)」

 

「なんすかそれ? なんでそんな満ち足りた表情でうなされてるんすか?

というか血が、梅髪さんの鼻血が止まらないっす!」

 

「落ち着け、保健室に連れて行くんだ」

 

 

当の3人はその時、それどころではなかったのである。

 




自分の書くSSの主人公は最初必ず気絶する
(汗:引出が一つしかないんじゃ)。

レジェンド。こちらでは個人に対する称号ではないです。


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第三局 [入部]

 

 

―――鶴賀学園 放課後 保健室

 

 

 

 

「……知らない天井だ」

 

「それは嘘っす。梅髪さんは今日半日保健室にいた筈っす」

 

保健室のベッドで寝ていたらしく、お約束のボケをかますとおもちおっぱい

さんのツッコミが返ってきた。

 

「おもちおっぱいさん? どうして?」

 

「……まさかとは思ったっすけど、おもちおっぱいって私のことっすか」

 

ガックリと肩を落とすおもちおっぱいさん。

 

「ご、ごめんなさい。白くて大きくて柔らかそうで美味しそうだったから

つい……」

 

「どんな『つい』っすか!? ていうか最後猟奇的っす!!」

 

そんな会話の最中、ガラリ、と保健室の扉が開き、先ほど教室で誰もいない

空間に『君が欲しい』と叫んだ残念な美人さんが入ってきた。

 

「起きたのか。それと……」

 

辺りを見回す美人さん。

 

「先輩、私はここっすよ」

 

枕元の椅子に座っていたおもちおっぱいさんが恋する乙女のような柔らかい

表情で手をヒラヒラとさせた。

 

「ああ。そうだ教室内の血は片付けておいた。それともう遅いから部員への

紹介は明日にしていいだろうか?」

 

「はいっす」

 

「(血? あっ)スミマセン。なんだかご迷惑を」

 

「いや、私は指示を出しただけで片付けはクラスの子がやっていた。明日に

でも礼を言うといい」

 

「はい、ありがとうございます。でも……」

 

「話は聞いている。入院明けで体が弱いのだろう? 鼻血は突然私が教室に

入って驚かせてしまったのが原因かもしれない。気にしなくていい」

 

(……言えない。とても真実は言えない。あ、いやそれだけじゃなくて)

 

「ええっと……先輩もしかして視力が弱いんですか?」

 

教室から続く先輩の奇行が気になり原因にあたりをつけて質問する。

 

「?……ああ、いや、寧ろ君の目が良すぎるんだろう」

 

「そうっす! 梅髪さん私が見えるんすか!」

 

「……どうしよう? 梅髪さんて私の事だろうか? というかおもちおっぱ

いさんが何を言っているのかわからない」

 

「普通に見えているようだな」

 

「おどろきっす」

 

美人さんとおもちおっぱいさんが頷きあう。二人は何か理解し、わたしは謎

が深まった。

 

「まあ事情説明より先に自己紹介が必要なようだ。私は3年の加治木ゆみ。

麻雀部に所属している」

 

「1-A東横桃子っす」

 

「あ、はい、ええっとたしか桜井梅子です。おもちおっぱ……東横さんの

クラスメートです」

 

「そのおっぱいに対するこだわりはいったいなんなんすか? それ以前に

そんな自信なさげな自己紹介初めて聞いたっす」

 

「それは事情があって、実は……」

 

目の事以外、主に転落事故から記憶喪失について二人に話した。ちなみに

おっぱいに対するこだわりについては自分でも理由不明なのでノーコメント

を貫いた。

 

「そんな事情が……」

 

「頭を打って目が良くなったんすかね?」

 

うーんと二人が思案顔をする。まあどうにもならない事なので話を続ける。

 

「そうだ、そっちの事情は?」

 

「私は彼女を麻雀部に勧誘しに来ただけだ。彼女が見えなかったのはその

ままの意味だ」

 

「私は存在感ゼロどころかマイナスの気配なんすよ。だから普通の人は私

のこと見えない筈っす」

 

予想外の回答。

というかそれって……

 

「そんなオカルトな」

 

「事実っす。だから私の事見えてる桜井さんの方こそオカルトっす」

 

「え~(心外な)」

 

(無茶な理論。だけど実はそうかもしれない。服が透けて見えるってオカルト

だよなあ……言えないケド。あ、この力があるから東横さんが見える!?)

 

会話が止まったのを見計らったのか、加治木先輩が別の会話を切り出した。

 

「……桜井は麻雀をするか?」

 

「いえ、ドン●ャラを嗜む程度です」

 

「ドンジャ●? ……ッ。まさか麻雀ができるか聞いて●ンジャラと答える

とは」

 

顔を反らし、小刻みに震えていた。失礼だったかな? 冷静な口調の加治木

先輩につられて嗜むとか使っちゃったけど。

 

「その記憶があってなんで自分の名前が即答出来ないんすかね?」

 

「いいさ、興味があったら桜井も明日麻雀部に来て欲しい。歓迎しよう」

 

 

ここで解散となった。

 

 

 

 

 

『先輩と帰りたかったっすけど病み上がりの桜井さんを一人で返すわけにも

いかないっすからね』

 

そう言った桃子と梅子は一緒に下校する事になった。

 

「おもちおっ……東横さんは麻雀部に入るの?」

 

「入るっすよ、先輩の為にがんばるっす」

 

少し前を歩いていた桃子はクルリと半回転して梅子に微笑んだ。

 

「好きなんだね。まああんな告白されればねー」

 

そのシーンを思い出しているのか梅子はどこかうっとりとした表情で言葉を

返した。

 

「!? ま、まあいいっす。桜井さんはどうするっすか?」

 

「麻雀はよく解らないけど、東横さんが入るならわたしも入部しようかな」

 

「何でっすか? まさか私の体目当てっすか?」

 

「うん」

 

「即答っす! 貞操の危機を感じるっす!」

 

桃子は両手を胸の前でクロスしてザザザッと数歩後ずさった。

 

「ごめん(半分)冗談。東横さんとの会話楽しいし」

 

「私はセクハラしか受けてない気がするっす。でも……」

 

 

―――こんなに誰かと会話したの久しぶりっす。

 

 

「『でも』何?」

 

「何でもないっす。まあ少しなら麻雀教えられるし」

 

「ありがとう東横さん」

 

「うっ……」

 

蒼い瞳と梅色の髪が夕日に映えて、キラキラと輝いて見えた。

 

「そうだ、じゃあ友達からお願いします」

 

本日二度目、桃子に差し出された手。

 

「『友達から』ってその先は無いっすよ? わかってるっすよね?」

 

桃子のジト目に対し、梅子はまるで無垢な天子のような笑顔で……

 

「うん、わかってる。最終的に私はももっちの愛人でいいから」

 

最低の返事を返した。

 

「何にもわかってないっす!! って『ももっち』?」

 

「うん。嫌かな? 友達のあだ名」

 

「いいっすよ(おもちおっぱいよりずっと)。じゃあ私はうめっちって

呼ぶっす」

 

彼女は、桃子は差し出されたその手を掴む。

 

 

この日、東横桃子は大好きな人と、当たり前のように自分を認識する友人

を手に入れたのである。

 

 

 

『……純粋そうな笑顔に騙されたっす! この時点で発言が色々

おかしかったっす!』と、加治木ゆみとの出会いで浮ついていたのが

原因だったのか、この変●と友人になった事を若干?後悔することに

なるがそれは後の話。

 




次話は麻雀をする……筈。


主人公の立ち位置の話。略奪とか嫉妬とかさらさらなくて
むしろいちゃいちゃしてる二人を見てハアハアと興奮する
残念な子。


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第四局 [部活]

牌について

萬子  一二三四五六七八九
筒子  ①②③④⑤⑥⑦⑧⑨
索子  ⅠⅡⅢⅣⅤⅥⅦⅧⅨ
四風牌 東南西北
三元牌 白發中

赤ドラ 【⑤】こんな感じ

Q覚える必要は?
Aないと思います。


―――鶴賀学園 放課後 麻雀部部室

 

 

 

後に鶴賀伝説の始まりの日と語り継がれる”1-A血塗れ乱入事件”の翌日、

わたしは麻雀部を訪ねた。

 

 

「こんにちは」

 

「きたか」

 

雀卓の椅子に座り目を閉じていた、相変わらず美人な加治木先輩が視線を向け、歓迎するように頷く。

そして加治木先輩の隣で機嫌がいいのかニコニコ顔で座っているおもち

おっぱい美少女ももっち。

 

「……」

 

無言ながらペコリと頭を下げて挨拶してくれたポニーテールの美少女。

 

「おー、ゆみちんが言ってた期待の新人か?」

 

後ろ髪がピンと跳ねたショートカットの美少女が『ワハハ』と笑いながら

気さくに声をかけた。

 

(って何この部活!? 美少女レベル高すぎ!!※)

 

私は透視能力が発動する前に目を閉じ、念の為口を含めた鼻を手のひらで隠す。

鼻血対策と、もうなんだか思わず顔がニヤけてしまうのを隠しつつ、わたしは

嬉しい悲鳴を叫ばずにはいられなかった。

 

「加治木先輩、私を殺す気ですか!」

 

「梅子はいきなり何を言っているんだ?」

 

「……うめっちはおっぱいと美少女が大好きなんすよ」

 

スウッ……っと霧が晴れるように東横桃子が姿を現した。

 

「!?」

 

ポニーテールの美少女が驚き椅子から立ち上がる。

 

「ワハハ、びっくりしたぞ」

 

全然びっくりしてない表情でショートカットの美少女がワハハと笑った。

 

「桃子、いつのまに?」

 

「ももっちならわたしが来たときには座ってましたよ。あ、ちなみに期待の

新人はももっちの方です」

 

訂正もかねて桃子より先に説明する。

 

「すいませんっす。声をかけるのを忘れてたっす」

 

そのまま自己紹介。

 

ポニーテールの美少女が2年生の津山睦月先輩。

ショートカットの美少女が3年生で部長の蒲原智美先輩……って加治木先輩

が部長じゃなかったのか。

 

「これで佳織を幼馴染権限で入部させる必要はなくなったか?」

 

「いや、桜井は素人で体も弱い。そのまま勧誘を続けて欲しい」

 

「わかったぞゆみちん。それじゃさっそく一局打ってみるか」

 

麻雀の始め方についてざっくりと説明を受ける。

ふむふむ、持ち点は25000点で、半荘……要は2週するって事か。

その目印が親であって一周目が東、二週目が南。

 

こうかな?

 

(麻雀のルールは割愛します)

 

加治木:25000 親(東)

東横 :25000

津山 :25000

蒲原 :25000

 

 

とりあえず一番強いであろう部長(蒲原)の後ろに椅子を置いて見学。

 

「声とかだすなよーマナー違反だからなー」

 

と注意されたので黙って見学となった。

 

 

 

東4局――四巡目(ドラ八)

 

(津山)三四五六七八九③③【⑤】【⑤】ⅡⅢ  ツモ=二

 

先ほどからの引きの良さに津山は内心で(うむ。)と一人頷き、③を打牌する。

部長の捨て牌は”北”、先輩の捨て牌は”①”。まだまだ聴牌には遠いと見えた。

『……っす』一瞬何か聞こえた気がしたが気のせいだろうと麻雀に集中する。

 

――五巡目

 

(津山)三二四五六七八九③【⑤】【⑤】ⅡⅢ  ツモ=一

 

(うむ。)津山再度、満足の『うむ』。

 

(リーチしなくても平和、一気通貫ドラ2で満貫。十分だが……)

 

蒲原 :捨て牌 Ⅸ一北北Ⅱ

加治木:捨て牌 北白①Ⅸ二

 

(まだ五巡、河に一枚も無く、捨て牌から見て索子もため込んでいないか?)

 

「リーチ……」

 

③を打牌しリーチを宣言する津山。

 

「……いいんすか?」

 

どこからともなく声が聞こえた。

 

「うむ……何?」

 

「ロン」という掛け声と共にパタンと隣から牌を倒す音が聞こえ、津山は

この時、初めて上家に東横がいた事を思い出した。

 

(麻雀の面子を忘れていた? リーチをかける前に自分は確かに全員の捨て

牌を確認した筈!?)

 

蒲原 :捨て牌 Ⅸ一北北Ⅱ

加治木:捨て牌 北白①Ⅸ二

東横 :捨て牌 北西⑧八‐④(リーチ)

 

(直前にリーチまでしていた!?)

 

「リーチ一発ドラ1、5200(ごんにー)っす」

 

小首を傾げ、軽く微笑む。

東横桃子、ステルスモード初披露であった。

 

 

 

 

「……う、うむ」

 

津山先輩は軽く目を擦りながら点棒を渡した。後に理由を聞くと

(桃子の体の部分が霧にかかったように霞んで見えたとの事。)

 

「ワハハ、モモのリーチ発声に気付かなかったぞ」

 

「ちゃんとしたっすよ」

 

「してましたよ」

 

私もももっちが『リーチっす』(見てて覚えた)と発声したのは聞こえて

いたのでフォローする。

 

「南入っすね」

 

 

その後……

 

「ロン、7700(ちっちー)っす」

 

「ワハハ」ジャラッ←(ももっちに部長が点棒渡す音)

 

「ロン、1000点です」

 

「ワハハ」ジャッ←(津山先輩に部長が点棒渡す音)

 

 

結果……

 

 

東横 :44200

加治木:39600

津山 :13200

蒲原 : 3000(部長)

 

 

部長ーーーッ!!

 

 

「麻雀は運の要素が強い。半荘一回程度ではとても実力ははかれないさ」

 

驚愕の表情のわたしを見て察したのか加治木先輩がそう言った。

 

「でもモモの強さは本物だぞー」

 

「うむ。気が付いたら上がられている」

 

「そうだな。モモが入部してくれてよかった」

 

「先輩、嬉しいっす! もっと頑張るっす!!」

 

加治木先輩の微笑みに対し抱きつかんばかりに満面の笑みで答えるモモッっち。

わたしを萌え殺す気なのかと疑わざるをえないほどに可愛い。

 

「どうだー? うめちんもやってみるか? ……って凄い顔だな!」

 

にへらっと笑っていた(部長談)表情を見られ、多少引きながらも麻雀に誘われた。

うん、結構な無茶振り。でも見ててチョットわかった気になっていたわたしは

即答した。

 

「はい、やります部長!」

 

「でもうめっち役知らないっすよ?」

 

「●ンジャラの知識を応用するから大丈夫だよももっち」

 

「……それトイトイか四暗刻くらいしか応用できないんじゃ?」

 

津山先輩の呟き(暗刻ってなんだ?)を余所に麻雀初デビュー。

 

 

桜井 :25000 親(東)

蒲原 :25000

加治木:25000

津山 :25000

 

 

一局目

 

(梅子:親)Ⅸ④白東ⅨⅢ八北①⑦⑧二④五

 

 

まず自分が一枚捨てるんだよな。えっと確か揃ってない字から捨てれば

いいから、これだ。

 

”東”を捨てる。

 

後ろで見てたももっちがビクッと動く。ありゃ? 何か間違えたかな?

 

一周回って牌をツモる。牌は”東”!!

 

 

(梅子:親)Ⅸ④白ⅨⅢ八北①⑦⑧二④五 ツモ”東”

 

 

ううー損した。”東”をツモ切りする。

 

「ワハハ、損したな梅子」

 

何故解るの!? 超能力者ですか部長!?

 

驚愕に震えながらツモる。牌はまたも”東”!!

 

 

(梅子)Ⅸ④白ⅨⅢ八北①⑦⑧二④五 ツモ”東”(手抜きではありません)

 

 

「……」

 

こちらの損をまるで知っていたかのように呟いた部長。そして連続の”東”ツモ。

導き出される答えは一つ。

 

「罠だッ!!」

 

「違うっす!」

 

ピシリ! と後ろに座っていたモモっちからツッコミが入る。

 

「そーゆうのは良くあることっす。そもそもこの配牌で最初に”東”を

捨てるのが間違いっす」

 

「そうなの?」

 

「そうっす。まず……あ、すいませんっす」

 

「いや、梅子に教えてやって欲しい。その方が梅子も覚えるだろう」

 

加治木先輩の言葉に部長と津山先輩も『うむ』と言って頷いた。

部長はワハハとしか言ってないけど。

 

「先輩のお許しが出たっす。勝ちに行くっすよ、うめっち!」

 

勝気な表情の桃子が椅子を近づける。

フワリ……と風に乗っていい匂いがした。

 

「はぅあっ!」

 

「何で気の抜ける返事なんすか? まずは見やすいように理牌するっすよ」

 

牌を並べ替える為に前に乗り出す。

 

ぷにょん……と、肩に桃子のおもちがあたった。

 

「……ゴクリ」と喉が鳴る。

 

「……何で突然唾飲み込むんすか?」

 

怪訝な表情で顔を覗き込む桃子。

 

「駄目ッ、ももっちのおもちが肩にあたって最高ッとか表情に出しちゃ駄目!」

 

「……口にでてるっす」

 

蔑んだ眼差しを受けつつ距離をおかれた。ああっもったいなかった。

 

 

そして……

 

 

―――東場終了、南入開始。

 

 

「一回もあがれなかったっすけど、振込もないし悪くないっす」

 

結局面倒を見てくれたももっち。優しい、可愛い!

 

「ありがとう! ももっちのおかげでコツが解ったかも」

 

「刻子手しか出来ないのに凄い自信っすね」

 

そう、わたしは今のところ同じ牌を3つ揃える手しか解らない。

でも、次にツモる牌、いや積まれている牌が何処にあるのか解るのなら!!

 

山をじっと見つめる……変化なし。

 

「梅子どうした?」

 

「あ、すみません」

 

牌をツモる。

ん~もしかしてわたしの透視能力ってHな目的にしか使えないんじゃ?

なんと難儀な……溜息をつきつつ牌を捨てた後、顔をあげる。

対面の加治木先輩と目があった。

 

「あ……」

 

「どうした? 鳴くのか?」

 

「あ、いえなんでもないです」

 

そっか、牌しか見てなかったケド、相手は全員美少女女子高生だよ!

先ほど声をかけてくれた加治木先輩のおもちをじっと見つめる。

 

「……」

 

わたしの視線を感じたのか、麻雀中、終始ポーカーフェイスだった加治木先輩

の額にタラリ、と汗の滴が流れた。

 

ジワリ……と視界が滲む。その先には!

 

 

「見えた!」

 

 

 

 

 

加治木ゆみは異様な雰囲気を感じ、息をのんだ。

 

「……」

 

(なんだ? 梅子の舐め回すような視線を感じた後、場がなにか異様な雰囲気

に飲まれたような? 桃子はネット麻雀時の手堅さだけでなく、まるで気配を

消したかのような打ち筋だったが……梅子のこれは真逆!

まるでこちらを舐めつくすかのようなギトギトした視線。

この不快感はいったい!?)

 

現実ではない。しかし表現するのならギラギラと両目を光らせる梅子の背後に

禍々しい黒い影が見えた。

その影がゴゴゴゴゴ……と、まるでブラックホールが現出し、場を呑み込むかの

ような威圧感を放つ。

左右を見る。蒲原、そして後輩の津山は何も気づいていないのか、先ほどまでと

変わらず麻雀を続けていた。

 

俗に言う、ヤングガンガ●のグラビア等を見る時の思春期少年の視線であったが、男ならぬ加治木ゆみには、それは形容しがたい黒の波動と例えるしかなかった。

 

(なんだこの威圧感は? 梅子はいったい!?)

 

「見えた!」

 

正面の梅子が目をランランと光らせながら突然叫びだす。

 

(見えただと? いったい何が見えたというんだ? 自分の勝利? 私の敗北か?

それともこれからツモる牌でも見えたというのか?)

 

ゴクリ……と唾を呑み込み、梅子の次の言葉を待つ。

 

梅子から発せられた言葉は……

 

 

ブシュッ! ……バタン。

 

 

静まり返った部室に、ビチャリ! と、異質な音が響き渡り、部室が血に染まる。

 

鼻血と、それに続く麻雀卓につっぷした梅子によって続く言葉は永遠にかき

消された。

 

 

 

 

 

全員が梅子に駆け寄る。

 

「梅子大丈夫か? それに見えたとはいったい何を見たんだ?」

 

「先輩、加治木先輩の……」

 

「私の何だ?」

 

「加治木先輩のおもち」

 

「なんだって?」

 

 

桜井梅子はとても、とても幸せそうな、満ち足りた表情で気を失った。

 

『加治木先輩のおもち』

 

という謎の言葉を残して。

 

 

 

 

桜井梅子

本日の麻雀成績。

 

気絶によりリタイア。

 




※咲コミックス4巻155ページ参照。鶴賀麻雀部は脅威の美少女率である。

>前回あとがき:麻雀をするかも?
嘘は書いてないと思う(開き直りですか?)

4話中2話が鼻血気絶オチですが、次話は鶴賀最大のおもちお姉さんが登場
するのでオチはもう避けようがないと思います。


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第五局 [儀式]

「ええっ!?」

 

鶴賀学園の制服を着た女の子が空から降ってきた。

いや正確には落ちてきた。

一回転さながら、オーバーヘッドキックのように見事に右足を上空に

振り上げる女子高生。

天高く舞い上がったバナナの皮。

それはもう、芸術的としか言いようのない程見事なプロセス。

道に落ちていたバナナの皮を踏んで空中一回転をかました少女は、見事

柵を飛び越え、階段下の道へ真っ逆さまに転落した。

 

いや、転落中だった。

 

「いやいや危ない、死んじゃうって!」

 

下の道で一部始終見ていた俺は何とか受け止められないかと必死に駆け寄る。

それにしてもなんて命懸けのドジっ子。走りつつ少女を見る。

赤みがかった桃色の長い髪に白い肌。凹凸の少ないほっそりした体躯。

 

「は? わたし?」

 

 

ゴンッ!!

 

 

頭部に受けた衝撃と共に世界は暗転し、星が瞬いた。

 

 

 

 

「ん~?」

 

うすぼんやりと瞼を上げる。蛍光灯の白い光が目覚めたばかりの視界を

眩しく遮っていた。

 

「あ、……き……た……さ…?」

 

なんだって?

 

枕元に座っていたらしい誰かの声が聞こえるが聞き取れない。

光が眩しくて鶴賀の制服は解るが顔が見えかった。あと誰の声だったかな?

視覚、聴覚がハッキリしなければ触覚しかないよね。うん仕方ない。

誰に言い訳したのか私も解らないが仕方ないのだからしょうがない。

右手を挙げる。

 

とっぷん

 

「ヒャア!?」

 

手のひらに柔らかい、しかしずっしりとした重みが広がる。

これだけのおもちの持ち主は自分の知る限り二人しかいない。ただももッち

ならもうちょっと軽めで弾力があり、感触がとっぷんではなくぷにょんであ

る筈と推理する。

 

「このおもちは……かおっち先輩?」

 

「……せめて悲鳴で識別して下さい」

 

視覚、聴覚が正常に戻る。声をかけてくれたのは麻雀部2年、妹尾佳織先輩。

わたしとももっちの後麻雀部に入部した、髪の毛フワフワでおもちが大きく、

メガネの似合うおもちが素晴らしい部長の幼馴染とゆー可愛らしい先輩だった。

 

「あれー? あー……いつもの保健室だ」

 

「梅子さんは部活中気絶したんですよ」

 

 

それもいつもの事だった。

 

 

 

 

――――鶴賀学園 麻雀部部室

 

 

「……」

 

「考え事か、ゆみちん?」

 

部活動休憩時、お茶請けにと津山睦月が持ち込んだ大量のせんべいを

バリバリと食べていた蒲原智美はカップを持ったまま思案顔をしていた

加治木ゆみに気づき声をかけた。

 

「明後日からのインターハイ予選レギュラーをどうするか考えていた」

 

「そうかーたいへんだなー」

 

「……それは本来部長の仕事では?」

 

「フシギだなー」

 

津山のツッコミにワハハと笑いながら答える蒲原。

 

「でも嬉しいなやみだな」

 

「ああ、二ヶ月前には参加すら危ぶまれていたが、モモにウメ、妹尾が

入部してくれたおかげで各学年二名ずつという理想的な状態になった」

 

加治木は心なし口元を綻ばせながらそう言って目をつぶった。

3人だけだった部活、それぞれ感慨深いものがあったのだろう。

時間にして一分程、静かな時間が流れた。

 

「それでオーダーはどうするんですか?」

 

津山が言葉を切り出す。

 

「オーダーもレギュラーもほぼ決まっている。問題は……」

 

「うめちんだなー」

 

「梅子ですね」

 

コクリ、と加治木は頷いた。

 

「ウメはどういうわけか刻子系以外さっぱり覚えない」

 

「というか覚えると他の役を忘れるぞー?」

 

「刻子以外の手を使おうとすると役なし、振聴が頻発します。ですが……」

 

「全く振り込まない。ここ一ヶ月分の牌譜なんだが、稀に初回振込はあるが

放銃率はほぼ0%だった」

 

「……凄いですね」

 

「とはいえツモられればふつーに持ち点も減るし刻子系しか狙えないから

あんまり上がらないしなー」

 

「後は体調だな。最近は鼻血も少なくなってきたと思っていたが、今日は熱く

なってきたからだろうか?」

 

「いやーうめちんの鼻血の原因は体調かんけーないと思うぞー」

 ↑(なんとなく察しがついてる)

 

加治木は『何だ?』と視線で促したが……

 

(まあ後輩の性癖を憶測で語れないからなー)

 

蒲原はワハハと笑って答えなかった。

 

「物覚えの点では妹尾の方が上だな」

 

「変なピラミッド作るけどなー」

 ↑(役を解りやすくする為に配牌を高く積み上げる癖を言っている)

 

「あと稀にトップであがりますよね?」

 

「偶然だと思いたいが、役満を上がる率が高い気がするな」

 

「無欲の勝利かー。なるほどどっちを選ぶか微妙だなー」

 

「ああ」と頷きつつ会話を一区切りし、加治木は腕を組み直し思案する。

 

「予選一戦目の風越、龍門渕はシード。ある程度なら私とモモで取り返せる……

決勝はまた考える必要はあるが、ここは……」

 

「決まったかゆみちん」

 

「ああ、県予選はこのオーダーで行く!」

 

 

 

 

―――鶴賀学園 保健室

 

 

「それじゃ戻りますね」

 

「はい、つい触ってしまってゴメンナサイ。ごちそうさ……ありがとう

ございました」

 

「そ、それはもういいですから!」

 

妹尾は、保健室の扉を閉め部室に戻って行った。

コツコツ……と、遠ざかる足音を確認する。

 

「うふ、うふふふふふふ……」

 

ベッドの中で押し殺した不気味な笑い声をあげた後、右掌を見つめる。

 

「まだかおっち先輩のおもちの感触が残ってる」

 

掌を頬にあてる。

 

「はーーーーっ、ほんのりあったかいかもー」

 

傍から見たらど変態である。

なんだか夢で記憶喪失の手がかりになりそうな事があったような気がしたが、

そんなことは既に意識の彼方から消え去っていた。

 

「その掌をその後どうするっすか?」

 

「どうしよう? ニオイかいじゃったり? うふ、うふふふふ」

 

「ニオイをかいだ後どうするっすか?」

 

「ええっ!? その先行っちゃっていいの? な、舐めちゃったり

……でもちょっと変態っぽいかも?」

 

「……うめっちはもう手遅れっす」

 

「……」

 

 

……桃子がいた。

 

 

「……ももっち、いつから?」

 

「最初からいたっす。かおりん先輩に気付かれないよう、かつその後ろに

隠れてたっす」

 

生ごみを見るような視線がチクチクと梅子を苛んでいた。

 

「……見なかった事に」

 

「無理っす。元親友の残念な姿にドン引きしたっす」

 

「ああっ、ももっちから親友って初めて言われたかも!?凄く嬉しいのに

初めて聞いた時点で”元”ってついてる!? 喜べばいいの? 悲しめば

いいの?」

 

「笑えばいいと思うっす」

 

「ももっちの失笑が痛い! これは違うんだよ、ついとゆーか思わず

とゆーか我慢できずとゆーか……」

 

「どの言葉も違うという言葉と相反するっす」

 

「ごめんなさい。どうかお怒りをお鎮め下さい」

 

梅子はベッドの上でそれは見事な土下座をしてみせた。

 

(……怒る? そういえばそうっすね。わたしも先輩に抱きつきたいし

頬にスリスリしたいと思うっす。性癖は人それぞれだから……怒るのは

何か筋違いっす)

 

「それじゃ、そーゆう行為は程々にしとくっす。あと我慢できない時は

回りを確認してからするっすよ」

 

と、桃子はなんだかよく解らないお説教をしたのだった。

 

 

 

 

 

―――下校時、某公園

 

 

今回の出来事を思春期男子に例えるなら、荒ぶる若きパトスを解放する為の

聖なる儀式であるが絶対人に見せられない自家発電の最中に、好きな女の子

にその行為を目撃され、あげく『あんまりやり過ぎないようにね(呆れた笑

い)』と蔑んだ目で言われたに等しい。

 

どちらかといえばMであるが、女性の裸を見ただけで鼻血を吹き出し、気絶

するメンタルの弱い桜井梅子が落ち込み、部活終了後も『もう少し休んでい

きます』と保健室のベッドからしばらくの間出てこなかったのもしかたのな

いことであった。

 

「はーっ、ももっちに変態と思われたかも……」

 

随分前から思われていたので、その心配事態は杞憂であった……悪い意味で。

 

「あれ?」

 

傷心を癒すため立ち寄った公園で、ベンチに座る見慣れた後姿を見つける。

 

「ももっち?」

 

声をかけられた少女がビクン!と跳ねた。

 

「うめっちっすか……ビックリしたっす」

 

普段誰かに気付かれる事がない桃子にとって、声をかけられる行為自体に

免疫がなかった。

 

「元気ない? なにか……あうっ」

 

隣に腰かけつつ、微妙な呻き声をあげる梅子。

 

「どうしたっすか?」

 

「あの……元気ないのは本日お見苦しいモノをお見せしたからでしょうか?」

 

「……ああ、そんな事もあったっすねえ」

 

どこか遠くを見つめる桃子。

 

「違うんです! やっぱりおもちはももっちのが絶対美味しくて、あれは

浮気とかではなく!」

 

「ホントに何の話っすか!? 全く……実はさっき先輩と帰った時少し

話したんすよ」

 

「うん」

 

「『先輩は3年生っすよね』って」

 

「……」

 

梅子は無言で桃子のおでこに手を当てた。

 

「……病院行こう? 付き添うよ?」

 

「違うっす! まだ出だしの部分だから聞いてて欲しいっす!」

 

「『明後日の県予選で負けちゃったりしたら私と先輩が一緒にいる意味って

なくなっちゃうんすか?』って」

 

「……も、ももっち」

 

「先輩は答えてくれなかったっす」

 

「県予選明後日だったの!?」

 

「そこっすか!? って何で知らないっすか!? うめっちレギュラーっ

すよ!?」

 

「えーっ、そうなの!? そういえばぶちょーが大事な話があるって言って

たけど、一緒にいたかおっち先輩に合わせる顔がなくて、布団からでれな

かったんだ。『じゃあ明日話すぞー』って」

 

「……ああもう、うめっちと話してると悩んでるのがバカみたいっす」

 

「うん、そっちは悩む必要ないでしょ」

 

「? どういう意味っすか?」

 

「県予選負けなければいいんでしょ? ももっちもかじゅっち先輩も

ぶちょーもつっちー先輩も強いから大丈夫だよ。わたし全然勝てないし」

 

梅子の空色の瞳がキラキラと輝き、つられて桃子の口元が綻ぶ。

 

「うめっち……その全然勝てないうめっちがレギュラーっすけど

大丈夫っすか?」

 

「それは……どうしよう?」

 

「なんかもうクタクタっす」

 

桃子はもう堪えきれない笑みを見られないようにそそくさと立ち上がり、

そして……

 

「頑張るっすよー!!」

 

大きな声で叫んだ。

 

「はい?」

 

「うめっちはもっと頑張らなきゃ駄目なんすから、うめッちも続くっす!」

 

「う、うん?」

 

「それじゃ、せーの」

 

「頑張るっすよー!!」

 

「お、おーっ!!」

 

 

きっと一人でも笑えた。

 

でも二人だから大笑い出来た。だから……

 

(頑張るっすよ、皆で頑張るっす!!)

 

 

 

そして……

 

 

インターハイ県予選が始まる。

 

 




次話から県予選です。


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第六局 [予選]

―――インターハイ予選会場

 

 

 

 

鶴賀学園麻雀部3年、加治木ゆみは、自身の倍以上はある巨大なトーナメント

表を見上げていた。同じ制服に身を包む少女は彼女を含め4人。

 

「どうっすか先輩? 良かったっすか?」

 

ゆらり……と、先ほどまで誰もいなかった筈の空間、ゆみの隣に突然姿を現し

た鶴賀学園麻雀部1年、東横桃子が声をかけた。これで5人。

 

「悪くはないよ。モモ」

 

微笑み返すという程ではないが、自分を慕ってくれる特別な存在の後輩に優し

いまなざしを向けるゆみ。

普段ならこの微笑ましい二人を見て、どういう思考回路か性癖か謎だが

ハアハアと荒い息を吐く外見は良いのに非常に残念な少女は席を外していた。

 

「悪くないどころかかなりいいのでは?」

 

鶴賀学園麻雀部2年、津山睦月はトーナメント表を食い入るように見つめ、

普段の大人しい雰囲気とは裏腹に多少声を弾ませそう呟いた。

去年のインターハイ出場校である龍門渕高校、去年は県2位で終わったが、

7年前から2年前までの6年連続インターハイ出場を果たしていた強豪風越

女子高校。

県最強の2校とグループが別なのだから津山睦月でなくても声くらい弾んだ

かもしれない。

 

「一回戦の相手、裾花高校は県ランキング3位の強豪校だ」

 

「ッ……!!」 「ふえっ!?」 「ワハハ」

 

津山睦月、鶴賀学園麻雀部2年、妹尾佳織、鶴賀学園麻雀部3年で部長の

蒲原智美が息をのむ。

 

「まてまてゆみちん、たしか3位は城山商業だったはずだぞー」

 

「インターハイはな。裾花高校は秋の選抜でその実力を見せつけ、県ランキ

ング3位まで上り詰めた本物の強豪だ」

 

「つ、強い人がいるんですか?」

 

「ああ。インターハイ時は1年生だった為出場しなかったようだが、秋の

選抜でレギュラー入りした現2年生の二人。志波令と雨宮須摩子の2年生

二大エース。この二人が裾花高校を県3位まで押し上げたといっていいだろう」

 

妹尾佳織の質問に答える加治木ゆみ。

 

「私と同じ2年で、既にエースですか」

 

津山睦月がゴクリと唾を飲む。

 

「志波令は狙い撃つかのようにその時トップの面子から役満であがる率が高い。

雨宮須摩子はデータ+デジタル型で隙がない打ち手だ。オーダーも変則的で

雨宮須摩子が次鋒で、志波令が副将」

 

「うめちんとモモかー」

 

蒲原智美が笑顔のままタラリと汗を落とし、多少浮かれかかっていた鶴賀学園

のメンバーの表情が引き締まった。東横桃子以外。

 

(みんな違うっすよ。ここは緊張するんじゃなくて、今日戦うかどうかすらわか

らなかった相手校の情報をここまでスラスラ答える先輩の頼もしさに惚れる所っ

す! 先輩が『悪くはない』と言ったってことは勝てる算段があるってことっす)

 

「まーゆみちんが考えてくれるだろうしだいじょーぶだろー」

 

蒲原智美はワハハと緊張した場の空気ををおおらかに吹き飛ばした。

 

(……流石ぶちょーさんっす。先輩と長年一緒にいただけはあるっす。

でも負けないっすよ!)

 

「なんでモモは睨んでるんだー?」

 

「智美ちゃんが部長なのに働いてないからじゃないかな?」

 

「佳織はおかしなことをいうなー」

 

嫌味なく、緊張した場をなごませる目的で呟いた妹尾佳織の言葉に意味不明の

返事が帰って来た。

このやり取りで若干緊張を解した津山は何か思い出したのか、辺りを見回した。

 

「どうした、むっきー?」

 

「いえ、あの、いつもならここらで梅子の鼻血オチなんですがいないな、と」

 

「そういえばトイレに行ったきり帰ってきませんね。梅子さん携帯も持って

ないですし」

 

「裾花高校対策のミーティングをしたいのだが。モモ探してきてくれるか?」

 

「了解っす」

 

ゆらり……と、東横桃子は現れた時と同様、霧に包まれるようにその場から

姿を消した。

 

「……(消えたよね?)」

 

妹尾佳織は今日始めて会った(と本人は思っている)東横桃子が先ほどから

突然消えたり現れたりとオカルトな現象をしている事が気になってしょうが

なかったのだが……

 

「佳織、ミーティング食堂だぞー」

 

「う、うん智美ちゃん今行く」

 

他の部員が全く動揺していなかったので(見間違いかなあ?)と無理矢理

納得するしかなかった。

 

 

 

 

 

「いないっすね」

 

東横桃子は予選会場の女子トイレを覗き、探している親友?の桜井梅子が

いない事を確認する。

 

「さてうめっちはどこ行ったっすかね?」

 

とりあえず予選会場の通路をゆらゆらと歩く。

 

「うめっちのことっすからおっぱいの大きい女の子にフラフラついていった

可能性が高いっすね」

 

冗談のような発言だが桃子の独り言は本気だった。つまり手がかりはおっぱいの

大きい可愛い女の子という事になる。

 

「そんな都合よく……いたっす」

 

梅子ではなく、おっぱいの大きい可愛い女の子がである。

通路のベンチに3人で腰かけている中の1人、長い黒髪を真っ直ぐに切り揃え、

眼鏡をかけた清楚ないでたち。足首まで足を隠した長いスカートに制服を

きっちりと着こなしていて、全体的に地味な印象を受ける。しかしその地味さが

おおきな胸を逆に目立たせてしまっていた。

 

「……」

 

「ともきーどうしたの?」

 

ベンチに腰かけた3人の中の1人。可愛らしい小さい顔の頬に星のタトゥー

をし、両腕を鎖で繋ぎ、長さの違うニーソックスと緑の制服に身を包んだ

小柄な少女が、桃子がマークしたおっぱい少女に話しかけた。

 

「さっきの人が……」

 

「さっき? 清澄?」

 

”違う”という意思表示かフルフルと頭を振る。

 

「学校名は今検索中。どこかの生徒が物凄い強い視線で私を見ていた」

 

「いやー男の子ならついともきーをみちゃうと思うよー」

 

チラリ、と、ともきーと呼んだ少女の胸に視線を向けた後、頭の後ろに両手を

置いてタトゥーの少女が笑った。

 

「違う。女の子」

 

「まあそれもあるんじゃないか? オレもよく女子から告白されるしな」

 

3人組最後の1人、美男子と見間違えかねない容姿の、スカートの下にズボン

を履いた背の高い少女が小型のペットボトルから口を離し会話に参加した。

 

「純くんのそれはまた別のモノだと思うけどね」

 

「恐ろしい、禍々しい視線だった。まるでケダモノのような……」

 

「それどんな女子高生!?」

 

「ハアハアと息も荒かった」

 

「それはもう変態じゃねーか?」

 

「あった。鶴賀学園」

 

「どこだそれ?」

 

「初出場校」

 

「ふーん、それじゃきっと緊張してたんじゃないかな? ボク達は優勝

候補だからつい見ちゃったとか?」

 

「かもな。さっき会場入りしただけで『オオオオオッ』とかざわついて

たしな」

 

「そう……かな?」

 

ともきーと呼ばれた少女は、納得したような出来なかったような? 

微妙な表情で小首をかしげていた。

桃子は姿を見られているわけではないが赤面しつつ3人組から離れた。

 

「最悪な形で強豪校に学校名を覚えられたっす。でもとりあえず手がかり

はあったっすけど、うめっちがさっきの人をジロジロと見た後は……」

 

そこまで発言した後、桃子はガックリと膝を落とした。

 

「どこまで、どこまでお約束っすか!」

 

床に点々と血の跡が続いていた。

 

 

 

 

色々やる気を失くしつつあったが、大好きな先輩に探してきてくれと

頼まれた以上見つけるしかない。

桃子はなえる気持ちを振り絞って血の跡を追った。

 

「うわっ最悪っす」

 

点々と続く血の跡を追っていた桃子の前に、次に現れた美少女を見て桃子は

呻いた。

その美少女は丈のとんでもなく短いスカートのセーラー服に身を包み、

何故か大きなペンギンのヌイグルミを小脇にかかえていた。

ピンクの長いサラサラな髪を赤いリボンでふたつに結び、青く大きな瞳と

白い肌が童顔な可愛らしい小さな顔に合わさってキラキラと輝き、そしてその

童顔な可愛らしさと正反対にとんでもない自己主張をする迫力のおっぱい。

 

「とんでもないおっぱいさんっす。これはうめっちの命が危ないっす」

 

もしこの少女を梅子が見たら鼻血の噴水を吹き出すと確信した桃子は辺りを

見回す。

 

「先ほどの方大丈夫でしょうか?」

 

当然桃子に気づいていない少女は、同じ学校の仲間と思われる少女に話しか

けた。同じセーラー服の少女は全部で5人と男子1人。

 

「原村さんどうしたの?」

 

「いえ、先ほど物凄い目を見開いて私を見ていた人がいたんですが……」

 

「京ちゃんそんな人いた?」

 

「いや気付かなかったけど?」

 

「見てないじぇ」

 

「そんな不審人物おったかのう?」

 

「そういえば、何か一瞬禍々しい視線を感じたわね。和を見ていたのか」

 

男+3人の少女が気付かず、2人がその視線に気付いた。

 

おっぱい不等号=梅子の視線

のどか>部長>(視線を感じなかった壁)>ワカメ>咲>タコス 論外京太郎

 

このロジックはさしもの清澄高校学生議会長兼麻雀部部長、竹井久も思い

至らなかった。……くだらな過ぎて。

 

「その人がどうしたの?」

 

「いえ、わたしが視線に気づいて振り返ったら顔を青ざめまして、口元を

抑えてあちらの通路に走って行かれたので大丈夫かな? と」

 

「きっとのどちゃんのおっぱいを見て恐れをなしたんだじぇ!」

 

「そんなおかしな人ありえません!」

 

(すみません、それ正解っす)

 

いたたまれない気持ちになりながらも今聞いたヒントを元に梅子が走ったと

言われた通路へ向かう。

 

「でもあのおっぱいさんを見てうめっちはよく我慢したっすね」

 

そう呟いた桃子の言葉を梅子は即座に裏切る事になる。

 

「……床に点在する血の量が増えてるっす。というか蛇行したりしてるっす」

 

いよいよもって体が限界なのだろう。早く見つけないと大変な事になりかね

ない。

 

 

キャー!!!

 

 

その時、誰かの悲鳴が予選会場に響き渡り、ざわめきが起こった。

 

「手遅れだったっすか!?」

 

悲鳴の先へ向かい走り出す。その先には……

 

 

 

 

 

ざわめく人ごみの中心にそれ(梅子)はいた。

 

強豪風越女子高校の制服、その制服の上からでもはっきりと解る豊な胸。

黄金色の髪を肩口まで伸ばした優しい、なにか暖かさを感じさる可憐な美少女

に膝枕されている桜井梅子の姿があった。

 

これだけなら美しい光景を想像できるかもしれないが、膝枕されている美少女

(梅子)は両方の鼻の穴にティッシュを詰め込み、苦悶の表情を浮かべ、床に

は殺人事件でも発生したのかと疑わん程大量の血が散らばり、血生臭いニオイ

が初夏の熱さに合わさって異臭を放っていた。

 

(いやおかしいっす、いつものうめっちならあんな美少女さんに膝枕されて

たら幸せそうな顔で気絶してる筈っす!)

 

血の量というか、その他もろもろスルーして出てくる疑問がソレの時点で桃子

も毒されていたのだろう。ツッコミが既に次元を超えていた。

 

「すいませんっす!」

 

桃子は人ごみをゆらりとすり抜け、膝枕している風越の生徒に声をかけた。

 

「あら? どこから……いえ違うわ。その制服だとこの子と同じ学校の生徒

さんかしら?」

 

「そうっす。一応、残念っすけど知り合いっす。ご迷惑おかけして申し訳ない

っす。あの、いったい何があったっすか?」

 

「それが、私にもわからなくて、フラフラと歩いてきたと思ったら私と目が

合った瞬間に鼻血を吹きだして倒れて……」

 

(ああ、それはいつものことっす)

 

「それでティッシュをあげたのだけど足りなくなって、その時までは大丈夫

だったのよ?」

 

「その後深堀さんが持っていたティッシュをこの子に手渡してくれた直後に

『ドムッ!?』って叫んで白目を剥いて気を失ってしまったの」

 

「深堀さん?」

 

「……(ペコリ)」

 

桃子の倍以上の体重はありそうな、まあある意味物凄いおっぱいさん

(ウエストも物凄い)が私ですと主張する為頭を下げた。

 

(……その苦悶の表情は、そういうことっすかうめっち※)

 

 

『キャーこっちの通路にも血の跡が……』

 

 

『こっち、こっちにもあるわ!!』

 

 

騒ぎは更に大きくなり、くだらない、あまりにもくだらないこの出来事は

鶴賀レジェンドの1エピソードとして語り継がれる事になる。

 




前回のミス
×「うん、そっちは悩む必要でしょ」
○「うん、そっちは悩む必要ないでしょ」
意味が解りません。スミマセン。

※どういうことかは語りません。


・いいわけ
梅子の強敵(ライバル)となるキャラを一気に出したかった。
・結果
酷い展開になった。


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