仮面ライダー555vsGE ~神喰らう者と紅の閃光~ (ジュンチェ)
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第零話

あ、うんリザレクションやったらノリでできました。

別小説、鎧武GE2の前日談になりますが冒頭にあの人が出てくる以外、鎧武要素はないです。では!


貴方たちは知っているだろうか……?

 

 

葛葉紘汰=仮面ライダー鎧武たちが荒ぶる神々の世界に来る前に……最初の来訪者がいたことを。

 

 

 

彼には夢が無かった……だからこそ、誰かの夢を護ろうとした…………そして、戦い抜いた果てにその物語は終わりを告げるはずだった。あとは朽ちるままの我が身がもつまで人間らしくいきようと考えた。

彼は満足だった……例え、自分の『夢』が得られなかったとしても…

 

 

 

「だが、それじゃあ報われないよな?」

 

 

否。奇妙な植物が生い茂る森に立つ男は唱える。勝者には然るべき報酬を……戦い抜いた勇者には喝采を。物語に関わらずも『観客』として見守ってきた彼の持論。『DJサガラ』は銀の果実を弄びながら語る……やはり、ハッピーエンドには良くも悪くも対価があるべきだと。

 

……されど、『勝者』は灰になりつつある身体を木に寄りかかっていながらも、憎々しいと叫ぶ。

 

 

「ふざけんな、俺はそんな報酬だがなんだか知らねえがいるかそんなもん!」

 

茶髪の髪に己から崩れおちる灰まみれ黒の服……。男はただ静かに最期を迎えようとしてただけなのに、気がついたらワケの解らん奴に勝者とか報酬とか更にワケの解らないことを言われてうんざりだった。本来なら、今まで出会った仲間…人々、それらを思い浮かべながら安らかにというのが理想だったのに。

 

「クソ……神様ってのも、随分とヒデェもんだ……」

 

「なんだ、生きたいとは思わないのか?」

 

「…」

 

サガラは問うが男は答えない。いや、もうこの奇人が最期に見る生きた人間の顔というのが気にくわないが諦めることにして、反応するのをやめたのである。これに、サガラは…何かを察したのか彼の前に立って膝を屈めた。

 

「ははーん、さてはお前……自分が生きてたところで、どうしようもないと考えてるな?自分は戦士であり救世主〈メシア〉……しかし、戦いが終わればそれはただのお荷物でしかない。ましてや、生きながらえたところで害悪だと?」

 

「…」

 

男は応えない。別に図星だが、せめて走馬灯くらいゆっくりと浸からせてくれ……と…

 

「惜しいな、お前ほどの物語の役者が朽ちるのを選ぶとは……。まあ、確かにハッピーエンドのあとの緩慢かつ幸せな日常ってのもお前の役には相応しくもない。死をあえて選ぶのも美しい。ああ、どちらにしても惜しい………」

 

「悪いな、神様だが悪魔だが知らねえがいい加減、黙ってくれないか?」

 

……嘆くサガラにイライラする男。おかしな表現になるかもしれないが、快く死ねないだろ…と文句を言いたいところだが、ふと…サガラは何か思いついたように動きを止めた。

 

神……?

 

目を見開いて、蛇がスルリと巻きつくように立ち上がり、銀の果実を片手にフムフムと考える。

一方で男は『何だよ…』と怪訝そうな顔で眉をひそめるが、すぐに奇人は笑顔を向けてきた。

 

「良いことを思いついたぞ!お前に最も相応しい報酬は命じゃない、ましてや緩慢なハッピーエンドでも無い。『新しい物語』だ!これなら俺も楽しめるし、お前も価値を失わない。救世主はやはり、戦いの中に無くてはならないな!」

 

「は?」

 

いやいや、あんたなにいってんだ……と口を開けようとしたら、男の口に果実は放りこまれた。すると、次の瞬間には背中の感触が無くなり…重力に引っ張られる感覚があった。

 

嫌な予感がする……

 

 

「え?」

 

 

振り向くと、衛星写真からじゃないと見れないような風景が見えた…。密集する建物の天井の数々って、これまさか………

 

 

「これが、銀の果実の報酬だ!さあ、また観客である俺を楽しませてくれよ……乾 巧!!」

 

 

 

「ふざけんなぁぁぁァァァァ!!!!!!!!!!!!!?」

 

 

 

 

予感的中。こうして、新たな物語の幕は人知れず上がろうとしていたのである。

 

神を喰らう者たちと紅の救世主……

 

 

 

…はじまりへ続くはじまりへ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~仮面ライダー555〈ファイズ〉×GOD EATER~~

 

Φ

 

〈【仮面ライダー555〈ファイズ〉vsGOD EATER】〉

 

~神喰らう者と紅の閃光~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……Φ Φ Φ Φ Φ

 

 

 

 

 

この世界に神はいない…

 

男は瓦礫から這い出して思った。王とか神とかまともな奴がいた試しが無い…。今回もそうだと、『乾 巧』は改めて身に染みる。

 

「ちっ……此処は何処だ?」

 

やれやれと、立ち上がって煤と灰をポンポンッとはらうと……

 

はらうと………?

 

 

「身体が…!?」

 

なんと、死に向かっているはずの肉体が完全に再生していた。調子も健康そのもの、崩れさる様子も無い。快調である。

理由としてはあの怪しい男に喰わされたこれまた怪しいあの果実。何者なのかは結局は解らず終いだったがまずそれよりもだ……

 

「…」

 

目の前は荒廃したビル街……くり貫かれた、いや『食いちぎられた』ような光景に巧は息を呑む。時は夕暮れもあってか、光の加減が美しく茜色で哀愁を感じさせる……

 

「世紀末ヒャッハーでも出てきそうだな、おい。」

 

昔見た漫画の世界を思いだしながら、目を細める…。そういえば、最近はいちご味とかなんとか……まあ、良いや。

振り返ってみると、今度はとてつもなく巨体な壁……何かを囲うように果てしなく続いている。

 

「今度は進●の巨人かよ……」

 

こっちはテレビとかで話題になってたはず……

おいおい、何なんだここ?テーマパークなんてレベルじゃないし、地獄にしても天国にしても奇妙過ぎる。まあ、明らかに生きている自分からすればこんな考えはふざけているのは理解している。

「はぁ……木場、どうやら、お前のとこに逝くのはまだ先そうだ。」

 

確かなのは一足先に灰となり、天に召されたであろう戦友の所にはまだいけそうに無い。溜め息をつきつつも、生きているならまずは歩かねばと巧は壁へ向かった。明らかに廃墟より真新しい雰囲気の建築物は人造物とみて間違いなし。瓦礫の山を降りて、とにかく壁に沿って歩いてみることにした…。

 

「…これ、マジで夢とかじゃないんだよな?」

 

向かって、左……要は時計回りで歩いてみる。更に近づくと壁のスケールに圧倒されそうになる。それにしても、何故にこんな壁が造られたのか気になるのだが……まさか、本当に人を喰う巨人か世紀末ヒャッハーがいるのだろうか?右と左の違う景色が巧の思考をウダウダと動かせるが、そうこうしている内に壁のゲートらしきものが視覚に入ってきた…。ジープらしき車に人が乗ってるのも確認できる。思わず、彼は声をあげた…!

 

「おーい!」

 

すると、ジープの周りで何やら受付か手続きをしていた軍人らしき制服の男が近づいてくる。良かった、普通の人間のようだ…。巧は安堵していたが、制服の男は訝しげに巧を眺める。

 

「貴様、外の人間か…?」

 

「外?」

 

「このアナグラに入っていない人間のことだ。しかし…」

 

「?」

 

男は首を傾げる。そんな彼にまた巧も首を傾げる……今の自分は普通の人間の姿なので怪しまれる要素は無いはず…

また、その後方では黒とも茶ともつかない金の装飾が入ったコートを着た男が煙草をふかして様子を眺めていた。

 

「…ねぇ、リンドウ?あれって外の人よね?なんで、すぐに検査しないのかしら?」

 

隣には黒と緑の露出が高いエプロンのような服を着た女性。男をリンドウと呼び、巧について訊ねると彼は答えた…。

 

「分からないか、サクヤ?アイツ、外にいたにしては服装〈ナリ〉が綺麗過ぎる。俺達の関係者ならともかく……あれは妙だ。」

 

「…そう?」

 

リンドウ……彼は警戒していた。直感的に面倒事が起こる気がした。彼自身も、万が一のために動けるようにジープから降りて黒髪の合間から覗く瞳で見据える。

最中、巧の取り調べは続く……

 

「いや、そのあんたたちは何者なんだ…?というより、ここは何処だ?」

 

…ただ、やはり話が噛み合わない。言葉は通じるが、お互いの母国語を知らぬ国の者同士が無理に会話をしようとするようだ。その様子にジープに乗っていた一番の歳の若い黒を帯びる銀髪の青年がリンドウに話かける。

 

「リンドウさん………」

 

「…イッシン、気持ちは解る。だが、身内でもない役立たずを受け入れるほど余裕はない。」

 

優しい後輩だが、このご時世は全ての人間に優しい世界ではないのが現状。現実にシュン………と肩を落とす青年に、リンドウはその優しさは失ってほしくないと願うのだが…

 

 

【…リンドウさん、聴こえますか!?】

 

「ん…?どうした?」

 

突然、通信機より響く声に彼は耳を傾けた。オペレーターである少女の焦る声色は明らかに緊急事態と察せられるもの。

 

【B26地区エリアの装甲壁が突破されました!任務後で申し訳ありませんが速やかに防衛班と共に侵入したアラガミの討伐にあたって下さい。】

 

「了解。サクヤ、新入り………楽しい、楽しい、残業の時間だ。」

 

すると、ジープは方向を変えて壁に沿って去っていく。無論、巧も話の内容を含め様子を確認しており…銃を持つ話し相手が敬礼して見送る瞬間に『変身』し、死角を縫ってその後を追った…。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

阿鼻叫喚………そこは『殺戮』の場…

 

 

1体の巨大な異形が並ぶあばら屋をなぎ倒し、悲鳴をあげて逃げまどう人々を蹂躙していく………

 

『ヴァジュラ』

 

 

黒虎のような外見に角…赤いマントと何よりも巨体が見る者全てを畏怖に陥れる。慢性的に飢えた獣はあちらこちらに駆け回る人間〈エサ〉を喰らおうと舐めるように視線を動かす。

 

「あぅ!」

 

その内、赤毛に近い茶髪の少女が躓いて転んだ。ちょうどいい、コイツが今回のランチだ…

 

『グルルル………』

 

「ひぃっ!?」

 

獲物は恐怖にうちひしがれて動けない。獣は絶えない飢えを満たすため、大口を開け………

 

 

ーーズギュン!!

 

『…グゥ!?』

 

その時、頬をかすめた弾丸に動きを止めた。 痛い………という感覚がヴァジュラにあるかは不明だが、振り向いた瞬間にチェンソーの刃が眉間を斬り裂く。

 

「おぉら!」

 

『ギァ!?』

 

それは先の男、リンドウが持つ身の丈ほどあろう剣。これはヴァジュラに手痛いダメージを与え、身を翻って距離をとらさせた。

 

「逃げろ…!」

 

「…は、はい!」

 

一方、少女はリンドウに促されてもつれる足で逃げ出した。しかし、折角の獲物を逃がすまいとヴァジュラはリンドウから離れて少女を追う。

 

「行かせるかよ!」

 

咄嗟に剣を振るい、立ち塞がろうとするリンドウ。その瞬間、獣は地を蹴って跳躍した………。しまったと思った時にはもう遅い。

 

………ヴァジュラは非力な少女に飛びかかり…

 

 

 

『オラッ!』

 

『!?』

 

あと一息………の所でまたしても邪魔が。空中で脇腹に体当たりを喰らった獣はバランスを崩してゴロゴロと転がった。忌々しい………と睨めばそこには見慣れぬ影がひとつ。

 

『…』

 

白く………刺々しく………

 

彫像のようで、シルエットはまさに人狼…

 

 

 

『…たく、なんだってんだこの世界は。』

 

本来、この世界に現れるべきではない存在。ウルフオルフェノクが少女の危機を救ったのであった。

 

 

 

To be continued…

 




ノリだよ、ノリでまた増やしちゃったよ。仮面ライダーコラボ系だから感想ふえて欲しいなぁ…


目標、リザレクションまでやりたい!最低限、バーストまではいきたい!


では、感想おまちしてます!



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第零話 Ⅱ


内定獲得したどぉぉ!!
バリバリ更新していけたらいいと思う日頃……

リザレクション一通りのストーリーは終わりました。

アリウスノーヴァ強すぎww



そして、たっくんを出来るだけ4号付近のキャラに寄せようとしてるけど意外と難しい。


『…っ』

 

ウルフオルフェノク=巧はヴァジュラと対峙しながら、舌打ちをした。咄嗟に少女を助けるために飛び込んでみたものの、この先はどうしたものか。『逃げろ!』とまずは少女を逃がし…異形と化した肉体と五感で相手〈自らとは異なる未知の異形〉を見据える…。

体当たりのダメージはさして無いようで、外見のように知能や様子も獣に近いよう。パッと見たところ、自分がいた世界の虎に近いが巨体は遥かにそれを上回る。ただ、同じなのは人間だろうと構わず襲う…血肉を喰らう存在。肉食動物の部類であるはず……

この狩人たる異形は異質な乱入者である自分を警戒していおり、何者かを測りかねていた。

 

『…グルァ!!』

 

「!」

 

瞬間、飛びかかって降り下ろされた強靭な腕をバックステップでかわす。その流れで飛びかかってきたのも、横に飛び紙一重の回避。その時にガラ空きになった背中を蹴りつけてみたが、軽く唸るくらいでろくにダメージが入らない。

硬い……人が喰らえばただでは済まない怪人〈オルフェノク〉の攻撃を容易く耐え抜くヴァジュラ。蝿がいくら鳥に立ち向かったとて喰われるのみように、今まで戦ってきた経験からこのままではジリ貧間違いなし…

 

(せめて、ファイズギアさえあれば……)

 

巧の持つ最大の武器さえあれば、まだ善戦できたろう。生憎、ベルトは愛車と一緒に前の世界に置いてきてしまった…。無いものねだりは虚しいだけ………なのだが、彼は知らない。

 

この世界には、すでに強者に抗う『力』があるのだと……

 

 

 

「どりゃあ!」

 

『!』

 

ヴァジュラの死角……不意をつくように迫った人影は再びチェンソーのような剣で襲いかかる。今度こそ、えげつない回転刃は猛虎の左目を抉り…悲鳴を上げさせた。そこに、またも何処からかスナイプされて傷口に弾丸が直撃。激痛にこの恐るべき巨体は地に伏した。

 

「おい!そこの白いお前!!こっちの味方なのか…!?」

 

剣からサッと振って血をはらい、彼…雨宮リンドウは問う。さて、こっちとはどういう意味なのか………

今はごちゃごちゃと考えている時ではない。

 

ならば……

 

答は…

 

そう、乾 巧はいつだって……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…俺は仮面ライダー〈人間の味方〉だ!」

 

 

 

 

 

 

 

悪と対峙し、理不尽に抗い、誰かの夢を守る。

 

ベルトが無かろうと、別の世界であろうと、たった独りであろうとも……

 

 

……仮面ライダーである在り方は変わらない。

 

 

『うおおっ!』

 

ウルフオルフェノクは飛び上がり、起き上がりかけたヴァジュラの頭を殴る。傷口が開いていた箇所であったため、先の時とは違い衝撃によりダメージが入り…白い異形は帰り血を浴びる。加え、更に容赦なく傷口に蹴りを全力で入れると彼は半分、白い表皮を真っ赤に染めていた。

…その様子に、リンドウは首を捻る。本当に彼は味方なのであろうか…いや、事情はあとで良い。剣を構えて彼は仲間に叫ぶ!

 

「サクヤ、バックアップを頼む!白いのはまだ射つな!!」

 

【ちょっと、リンドウ正気なの!?あれもアラガミかもしれないのよ!】

 

「…今は共闘!新人を下がらせておけ!」

 

通信から驚愕の声が響くが、勢いで反論を黙らせて彼は走る!ウルフオルフェノクがつくった決定的な隙を逃さず、半壊した猛虎の頭を踏んでジャンプすると身体を捻って回転をかけた一撃。背中と尾を斬り裂いて、着地すると反転して巨体を支える後ろ脚を刻み、ヒラリとウルフオルフェノクの前に着地した。

 

「…白いの、んじゃあんたをこの場は信じて良いな?」

 

『!……ああ!!』

 

さあ、ここからは本番だ。立ち上がり、疾走しはじめて逃走しようとしたヴァジュラを遥かに上回るスピードで回りこみ、傷つく脚を腕にものをいわせて攻撃。バランスを崩して足がもつれたところをリンドウが再び狙い、地から踏み出す!

 

「くらえっ!」

 

『ガァッ!?』

 

狙ったのは先に切断した尾の傷口。脆くなった場所は最もダメージが入りやすい。このままリンドウは背中にマウントすると、そこに剣を突き立てる!

 

「サクヤ!コイツの頭をぶち抜いてやれ!」

 

【待って!そんなに暴れてちゃ、狙いがつかないわ!】

 

狙撃手にトドメを依頼するが、リンドウに貫かれたことにより激痛から暴れまわるヴァジュラ。そこへ、一気にウルフオルフェノクが距離をつめて拳を握りしめ……

 

 

「……おとなしく、しやがれぇ!」

 

 

ドゴォォ!!!!

 

 

顎から、殴り抜き……盛大にアッパー。瞬間、狙撃手の標準が猛虎の頭蓋をとらえる……

 

【今ッ!】

 

その時、引き金は引かれた。流れ星のような閃光が、ヴァジュラの頭を貫き……鮮血が舞って………

 

傷ついた身体が近くのあばら家を押し潰す形で寄りかかった。

 

『やったか…』

 

ウルフオルフェノクは勝利を窺う。されど……

 

「まだだ……」

 

 

 

 

 

 

『グルルル……』

 

猛虎はまだ…立ち上がる。自らはまだ負けていないと……敗北という屈辱は受け入れないと……

やがて、マントを逆立て……その身体は稲妻を帯びる。

 

ヴァジュラはただの虎ではない。容姿がいくら似ていても、コイツの一番の特徴は『雷』……故に、今、追い詰められた雷虎は自分の最大の技を放とうとしていた。

 

「来るぞ、かわせ!」

 

 

「ああ…!」

 

リンドウが叫ぶ!すぐに逃げようとしたウルフオルフェノクだが、足を止める。ヴァジュラの足許……よく見れば倒れて腰を抜かしている人影。

 

「!」

 

リンドウから死角になる位置に見覚えのある顔……先程の少女がいるではないか!?逃げ遅れたのか………いや、どうこう考えるより先に雷虎に向け疾走する脚。滑りこむ身体。リンドウの制止すら届く前に振り切り、幼い身体を掴むと彼方へと放る。これで、稲妻は届かないが………

 

 

 

……当の本人は逃れる時間は無い。

 

 

『グルアァァァ!!!!!!!!!!』

 

バチバチチチ!!!!っと同時にプラズマが弾けてウルフオルフェノクを襲う!

背後からもろに電撃を受けた彼は『かっ!?』と気の抜けたような声を出し……黒焦げとなり灰を撒き散らしながら地面に転がった…。

 

「おい!?ぢぃっ!クソッたれが!」

 

気を失う直前、耳に響いたのは毒づくリンドウの声。後はヴァジュラの断末魔に……自分に駆け寄る少年のような人影を見たような気がした。

 

 

……その後、彼が目を覚ますのはしばし先である。

 

 

 

 

 

 

 

Φ Φ Φ Φ Φ

 

 

 

 

 

 

「さ~て、だいぶ面白いことになってきたな。」

 

サガラは今までの様子をとあるカフェの一室からタブレット端末から覗いていた。手元には大きな錠前式の果実が描かれたアイテムかキラリと鈍く光る…。こちらが本来の彼の本業のものだが、ある程度の並行世界で自由が効く身になるとやはり、また別の楽しみとして…『観客』として手を貸して物語を見届けるのはやめられない。何故かって…?

 

面白いからに決まっている……

 

 

いつから、こんなことをはじめたのか当の昔に忘れた……いや、思い出すつもりが無いだけだが楽しみが多いに越したことはない。

 

「さて、このあとはどうする?乾巧…荒ぶる神々の世界といえど、人間はそう甘くは無いぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

Φ Φ Φ Φ Φ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!」

 

見知らぬ天井は容赦なしに覚醒したばかりの巧の網膜を照らした。眩しい…と顔を背けて手をかざそうとしたが、腕ごと動かない。おまけに、全身が動かない…。

見れば、頑丈そうなベッドに皮や鎖の拘束具が自分を縛り…よくわからない病院とかの患者の脈拍をはかる機械らしきものが並べられている。されど、ここは病室ではなく円柱状の広いホールのような鉄の部屋。目前の壁には狼の紋章にこの場を見下せる位置にある窓ガラス。人影も奥に見える……

 

【…目覚めたようだね、狼男くん。】

 

その人物だろうか……スピーカー越しの男の声。若くはないが力強くハリのある声……声色からそれは指導者に準ずる者だろうか?とにかく、巧は寝ている間に手厚い歓迎をしてくれたであろう顔が見えない犯人にキツイ視線を向ける。

 

【そんなに怖い顔をしてくれないでくれたまえ。別に我々は君に危害を加えるつもりはない。】

 

「おいおい、こんだけ人を厳重に拘束しておいて良く言うぜ。ふざけるのも大概にしてとっとと、外せ!」

 

【…それは君の対応次第だ……と言っておこう。】

 

「ちっ……」

 

あ、コイツは俺の嫌いなタイプかもしれないと思った巧。正直、イラッときたので舌打ちすると徐々に四肢に力を込めていく……

 

「一応言っておくが……俺は気が短いからな。交渉をするなら対等〈フェア〉からってのが常識だろ?ブチキレる前に…拘束具を外せ。3つ数えるからな……」

 

【何?】

 

「いーーっち……」

 

 

顔が見えない男は困惑した……共に、鼻で笑った。この男はいったい何をしているのだ?なんともシュールなカウントダウンに臆せず、男はマイクに口を近づける。

 

【言っておくが、その拘束具は並みの神機使いでも外せ……】

 

「にぃ~……」

 

【…ない……。って訊いているのかね?】

 

勿論、巧は聞いてすらいない。何故なら……

 

「3…時間切れだ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……覚悟はいいな?」

 

 

【!】

 

このくらいの拘束ならウルフオルフェノクになってしまえば簡単に破れるのだから。

不意を突き、再び狼となった巧は弾けとぶ拘束具を払い……窓ガラスを睨む。首と手をポキポキと鳴らして不機嫌全開で口を開く。

 

「責任者出せ、この野郎。」

 

その時、背後の扉が開き…勢いよく細く巨大な銃身が向けられた。反射的に身を反らして撃たれたレーザーをかわすと鋼の壁を蹴って一気に距離を詰めにかかる。あと少しで爪を突き立てそうになったが、ギリギリで止め狙撃手の顔を見る。

この時、彼は気がついた……

「あんた……あの時の…」

 

おかっぱ頭にスタイル抜群の妙に露出が多い服。確かジープにリンドウの隣にいた女性だ…。男だったら、気にも留めないだろうが割りと美人は忘れられないのはオルフェノクであっても男の性か……

とはいえ、警戒されているのですぐにバックステップで距離をとられた。戦闘は避けられないようだ…………

 

「おーい、ストップ!ストップ!」

 

…と思われた時、ウルフオルフェノクの前にある男が現れた。それを名は知らずとも共に一時でも共闘したなら忘れない……雨宮リンドウという男だとすぐ判別したウルフオルフェノク。彼はポンポンと異形の肩を叩きながら頭をボリボリと書いて説明をはじめる。

 

「いやあ…わりい、わりい。どうもウチの御偉いさんは部下の話を聴かない節があってねぇ。全く困ったもんで。支部長、コイツが起きる時は俺も呼んで下さいって言ったじゃないですか!それと、敵じゃないと言ったでしょ!!」

 

【リンドウ大尉、君が出る幕ではない。ここは我々が片付けるべき問題だ。】

 

「リンドウ、どいて!コイツは危険よ!!」

 

ふむ、大体の流れが解ってきたウルフオルフェノク…。多分、先のヴァジュラ戦と寝ている間とかに検査とかされて怪人ということもバレているはず……ならばと拘束してある程度、拘束にも始末にも少しでも安全性に長けるほうをとったに過ぎない。捕らえた野生の狼をわざわざ首輪をつけず、病室のベッドに寝せると同じようなことするわけあるまい。

 

「サクヤも上官命令……打ち方まて。俺の指示に従え。」

 

「でもっ!」

 

「俺を信じろ。」

 

されど、自分を信じてくれるリンドウという存在は大きい。この流れならわざわざ事を荒立てる必要は無いかもしれない…

 

「いや、改めてすまない。俺はフェンリル第一部隊所属・雨宮リンドウだ。隊長をやってる。こっちは『橘サクヤ』……んで、なんかさっきから偉そうな声をだしてこの場にいないのが俺の上司。失礼を重ねすぎて申し訳ないが、あんたの名前は……」

 

『……乾 巧だ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

Φ Φ Φ Φ Φ

 

 

 

それから、暫くして巧は人間の姿になると……リンドウに付き添われ彼の上官の部屋へ向かう。窓の無い廊下……並ぶゲート式のドア。白い清潔な通路を進み、一番突き当たりにあるソレへと進む。

 

「んじゃ、俺の上司とご対面。思うところはあるだろうけど、出来るだけ抑えてくれな……悪い人間じゃないんだ。」

 

「ああ……一応、心掛けとく。」

 

リンドウにたしなめられながら、巧はまだ燻る怒りを呑み込み開け放たれる先を見た。無機質にプシュッと音が鳴り、廊下と部屋の境であるゲートがスライドするとまず目についたのは立派なオフィスデスク……壁の絵画、皿………そして、先の部屋でも見た壁に描かれた狼の紋章。それらを眺めるように巧たちに背を向けて立つ白いコートの男が立っている……。背丈は高く、金髪…マフラーを首にして毅然に立つ姿はすぐに直感させる。

この男があの声の主であると………

 

「…先程は随分と失礼をした。私がここの責任者、フェンリル極東支部支部長『ヨハネス・フォン・シックザール』だ。そこのリンドウくん曰く、部下の話を聴かない節のある上司でね……」

 

このしゃべり方……雰囲気、支部長というだけに怪人を目の前にしても臆さない物腰………許しを乞うのではなく、あくまで会話をかけてくる様子は彼の上に立つものとして器量を感じさせる。カリスマ……とでも呼ぶべきか、巧はそれを感じとると吐き出そうと思った苛立ちを喉で止めた。

 

「だが、解ってほしい。人間でもアラガミでもない存在を野放し…ましてや、ただで病室に放り込むわけにはいかなくてね。そこは、上司として組織と部下を守る立場として相応の態度をとったつもりだ。どうしても、怒りがおさまらないというのなら私の命ひとつで許してくれないか……?」

 

「…」

 

さて、どうしようか?別に巧だって人殺しをしたいわけではないし、ここで支部長を八つ裂きにすればリンドウを含めてここの施設にいる人間たちが皆、敵にまわるだろう。まず、落ち着いて考えて必要な情報を引き出そうと思いつく。

 

「別に、あんたを殺すつもりは無い…代わりに幾つか質問する。アンタらはさっきの怪物のことを知っているのか?」

 

…1つ目、明らかにオルフェノクではない異形。巧にとってはこれが最初の問題だった…。すると、支部長やリンドウが少し驚いた顔をする。まるで、誰もが知る常識のことを真顔で訊かれたように……

 

「…アラガミのことかね?」

 

「アラガミ?」

 

聞き慣れぬ単語……最初は神様かなんかと思ったが、あの雷虎の姿を思い出すにあんな神がいてなるものかと予想を捨てる。

 

「奴等の……その名前なのか?」

 

「…」

 

巧は続けて問うが、支部長やリンドウが明らかに戸惑う反応を見せる。とにかく、オルフェノクでは無い……この世界の固有の存在で並行世界から来た自分では常識の範囲内にあるあの怪物の存在もわからないということ。彼等は知る由も無いのだが………

 

「度重ねて失礼になるが……頭でも打ったのかね?」

 

「……高い所から落とされた。」

 

 

 

 

……嘘は言っていない。

 

 

 

「そうか………記憶がショックで混濁しているのだろう。ふむ……あれは『アラガミ』…君が戦ったあの種はヴァジュラと呼ばれているアラガミの中で大型に部類されるものだ。」

 

「……その言い方、まだ他にもいるのか?」

 

「ああ……多種多様のアラガミが、今は世界の大半を闊歩している。」

 

成る程、だからこそ壁の外は荒れ果て、人の気配が無かったのか…。それにしても、随分と厄介な世界に飛ばされたものである。あのサガラという男…次会う時が来たら殴る理由がまた1つ増えた。

 

「じゃあ、アンタらはそのアラガミと戦ってるってわけだな。」

 

「無論だ。我々フェンリルはアラガミの脅威から人々を護るために存在している。そこのリンドウくんもまたその一員だ……」

 

 

 

 

「……さて。今度は私が問おう。」

 

ここで、立場が逆転する。巧が質問する側から質問される側にまわる…。支部長は強く巧を見据え、彼に問うた。

 

「君は我々の味方かね?それとも、アラガミと同じ人類<ヒト>を仇なすものか……?」

 

「…」

 

我々…組織?いや、そんな小さい括りでは無い。人類の全ての敵なのか、味方なのかという意味。敵なら容赦なく目の前の怪人とこの男は戦うだろう……決意の色は眼差しから見るに充分だった。

リンドウも緊張の汗をかく中……巧もまた目をそらすことなく対峙する。

 

「つまり、アンタらは人間の味方……護る側ってこと良いんだよな?」

 

「…そう解釈してくれて構わない。」

 

 

 

なら、答えは決まっている……

 

 

 

「良いだろう、そういうことなら俺はアンタたちの味方だ。人間を護るのが俺の仕事<バイト>だからな。」

 

 

 

……今、ここに彼は告げた。

 

………新たな物語はこの荒ぶる神々の星であると…

 

 

 

 

 

 

ファイズギアも、バイクも無いゼロからのスタート………

 

 

これは、神喰らう者と救世主のプロローグである。

 

 

 

To be continued……

 

 





☆次回予告

ペイラー「…なぁにちょっと痛いだけさ。」

支部長「彼の監視を続けるように……」

サクヤ「見極めさせてもらうわ。貴方が本当に信用に足る人間か……」

コウタ「俺、あんたに礼を言いたくて……」

ペイラー「これがこの世界の…人類の抗う牙。」


巧「……仮面ライダーと…ゴッドイーターのバイトさ。」


See you!!Next episode!!


感想お待ちしています。


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第一話


更新遅くなりましたぁ。いや、本当に……

ちゃんと完結させるんで、はい…(汗)


……残るは、卒論だぁ…はぁ……






 

 

「……」

 

「まあ、そんなに邪険にしないでくれたまえ。」

 

巧は一悶着のあと、リンドウと新なとある人物と共に先の拘束されていた部屋に来ていた。本来なら訓練施設に当たるとかなんとか言っていたが…まずこの白髪の狐のような眼鏡男が気になって仕方ない。巧を前にしても微笑を崩さず、ローブともつかぬ茶色の服を着た研究者の雰囲気を持つこの男……

 

「そんなに、険しい顔なさんな。この人はペイラー・サカキ……うちのラボ・ラトリで研究・開発を担う科学者のながらでトップ…んで、この支部だとNo.2ってところだな。実質上……」

 

「おやおや、リンドウくん…私はあくまでも一介の研究者だよ。まあ、支部長とは長い付き合いなのは事実だけど初対面の方に誤解を生むような言い回しは控えて貰いたいね?」

 

「おーぉ、何処の口が言うんだか……」

 

正直、組織の上で研究者なんていう肩書きが揃えば嫌な予感しかしない。というより、まともな人間がいる気がしない…。この『ペイラー・サカキ』という男が持つ独特の雰囲気は多分、先の支部長とは違う意味合いで友好ではない関係になりそうだ。

そんなペイラーが指した場所には巧が拘束されていたベッドがあった場所……そこに、上下に空いたバイオリンケースのような赤い台座があり、身の丈ほどある『槍』らしき武器がある。

 

「さて、乾君。そういえば、まだちゃんと話をしていなかったね?これからの正式な君の処遇についてだが……我々と同じフェンリルの職員…その中でもアラガミと直接、戦闘を行う神機使い<ゴッドイーター>として働いてもらおう。しかし、いくら君が言う『オルフェノク』と呼ばれる力が特殊でもアラガミに対しては決定打を与える力にはなり得ない。」

 

それは、巧自身も承知している。ヴァジュラには自分の攻撃はあまり効いてはいなかったのは実感していた…。『そこでだ…』とペイラーは続ける。

 

「君はゴッドイーターになる気はないかい?人々のためにアラガミと戦うなら、この神機の力は必要不可欠だ。勿論、選ぶ権利は君にある。」

 

今、ファイズギアは無い…そして、オルフェノクの力も通じない。なら、あの神の名を与えられた異形を相手にどう立ち向かう?

喰らうための『牙』は目の前にある。掴む権利も覚悟も自分にはある。

 

「どうすれば良い?」

 

「…即答かい?一応、言っておくけど後戻りは出来ないよ?」

 

後戻り?必要ない…ここにくるまで退ける道なんて無かった。手が届くなら戦って誰かを救うために必死だった…。

 

上等だ……

無言でおさめられた槍の前に立つのが彼の返答。ならばと、ペイラーは告げる。

 

「…言うまでも無し、か。なら、台座の窪みの部分に腕を置く形で神機を握りたまえ。後は成り行きに任せれば良い。」

 

言う通り、巧は槍を握る。重い………やはり、重い。リンドウは身の丈ほどあろう小枝のように扱っていたが、質量に見合うだけの重量をこの武器は持つ。オルフェノク化するならもしくはといった具合だが、生憎なところ巧の能力はパワータイプではないためそうであっても難しいかもしれないが……

 

……なら、普通の人間のリンドウが何故に神機と呼ばれる神をほふることができる武器が使えるのか?

 

 

この時、窪みの部分がリンドウのつけていた腕輪を半分にしたようなものだと気がつけば良かったと彼は後悔することになる。

 

 

「ああ、良い忘れていた……ちょっと痛いだけとさっきは言ったけど…それ、死ぬほど痛いよ!」

 

 

…は?

 

 

 

 

 

 

 

 

…ガタンッ!とまるで、ギロチンのように無慈悲に台座の上部が落ちてきて巧の腕を挟んだ。フリーズした彼の不意を完璧について、『ナニカ』が焼けつくような痛みで血肉を掻き分け植物が根をはるように自分の中に侵入してくる!

 

「……ぅうう、がぁ、ガアァァァ!?!?」

 

激痛に悶える巧は荒ぶるままに、意図せず自らをウルフオルフェノクの姿となって腕を引き抜こうとするが台座はピクリともしない。そんな様子をリンドウとペイラーは息を呑みながら見守っている……

 

『…がっ、ァア!?』

 

もがく男は台座を殴りつけ、拳サイズ凹むまでの衝撃を与えた。それでも、気は紛れず腕から全身に異物が侵蝕は止まらない。

今まで歴戦とまでは自惚れるつもりはないが、受けてきた物理的な苦しみのトップクラスのそれに経験の甲斐なくもう気絶しそうだった。

 

「……落ち着け、あと少しだ。踏ん張れ。」

 

あれ…今、耳許でリンドウの声がしたような……

 

 

直後、激痛がおさまったかと思うと…蒸気がプシューッと気抜けするような音を出しながらケースが開く。右手首には不恰好な腕輪が縫いつけられ、槍からはあるべき重さが失われて持ち心地はさながら羽根のようであったのである。人の姿に戻った巧はこれをサッと空を切り裂くように振るとペイラーに突きつける。

 

「……おい、こんなに痛ぇなんてきいてないぞ?」

 

「言ったじゃないか、やる前に?後戻りは出来ないってね。」

 

「オッサン、色々とボカしまくると叩き斬るぞ…コレで。」

 

勿論、彼はご立腹…噴火直前の活火山だった。その巧を目の前にしても、ペイラーはひょうひょうと『おー、怖い怖い』とやり過ごしてみせる。研究者なんて言っているが、随分と肝がすわりくえない奴だ。まあ、本当に手をあげるつもりはないが……

 

「あ、そうそう。また言い忘れていたけど…その腕輪は一生とれないから!」

 

…前言撤回。やっぱり、一太刀いれても良いような気がしてきた。

そんな内心を察したのかペイラーは風のように逃げさった。文句を投げつける暇すら与えず……。これでは、胸から込み上げる苛立ちを何処に吐き出せば…などと考えていたら肩を気さくに笑いながら叩くリンドウ。

 

「おめでとう、巧!晴れてお前は新人3号……いや、4号か?まぁ良いや。これで晴れて俺達、

ゴッドイーターの仲間入りだ。サカキのオッサンはあんな調子だが、こうやってお前の居場所を用意してくれたのもあの人なんだ。そんなわけで、俺の顔も免じて…多目にみてやってくれ。」

 

「…ッッ。納得いかねぇ。」

 

気持ちは晴れないが、ここで唸っていても仕方ないだろう。槍を肩に担いで、溜め息をつくと……諦めたのだと察してリンドウは今後について語りはじめた。

 

「んじゃ、今後の話。お前さんは俺の率いる第1部隊の配属になる手筈だ。そこには、俺の部下2名に…新人2人がいる。歳はまあアレだが、新人どもと一緒にスタートすることになる。」

 

歳はアレ……という言い回しが引っ掛かったが大方、リンドウの様子をみれば想像はつく。多分、そこそこ離れているんだろう……歳が下に。新しい職場にひとりだけ歳くってる先輩のような同僚とか留年した先輩のような同級生みたいな立ち位置ということになるのだろう。ただ、引っ掛かるのは……

 

「おい、それじゃあ新人の数があわなくないか?」

 

さしたことではないが、巧を新人4号とするなら…1人足りない。そんな指摘をされたリンドウはあー…と目をそらす。

 

「…実はなぁ、第1部隊のメンバーってのはまだ揃いきってねぇんだ。最後のひとりがな、まだロシアから来てなくてな。そういうことだ。」

 

なんか、いい加減さが漂ってきて不安になる巧。根は善人だろうが、それとは別の意味合いで心配になってきた……

 

「うん、そうだな…細かいことは気にするな!良いな?んじゃ、改めましてだ……フェンリル極東支部・第1部隊は貴殿の配属を歓迎する!これから一緒に頑張っていこうぜ?」

 

「ああ。」

 

だが、悪人でなければまず良い。リンドウとの握手を皮切りに、異界での仮面ライダーファイズの物語……神を喰らう者たるゴッドイーター、乾巧の章が幕を開けたのである。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「ペイラー!何故、彼に神機を与えた!?」

 

支部長室には怒号が響いていた。支部長が声を荒ぶらせるのはよく知る人からすれば珍しいことだが、相対するペイラーは巧の時と同じくのらりくらりと壁の絵画に目をやっている…。

 

「何を言っているのかね、ヨハン?彼をゴッドイーターにするのは契約の内だろう?」

 

「ああ、ただの人間なら良いが…彼はオルフェノクと名乗る怪物だ!もし、適合に失敗でもしたりしたら!」

 

「成功したから良いんじゃないか。」

 

「それは、結果論だ博士!しかも、よりにもよって…試作型のポールタイプの新型神機を与えるとは…正気とは思えんよ!」

 

 

その時、彼は静かに……不気味に微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

「…何を今更……君が正気を問うとはね。」

 

 

 

 

 

途端、支部長は黙った。まるで、泣き所を突かれた弁慶のように……

すると、『これは言い過ぎた…』と謝罪したペイラーだが改めて支部長に向き直る。

 

「ヨハン、我々は既に幾つもの危ない橋を渡ってきた。それは、少しでも多くの人々を救うためさ。」

 

「わかっている…わかっているさ。そのためのフェンリルだ。人類の存続……アラガミの駆逐……だから、我々は…」

 

 

「私だって、何も考え無しでこんなことはしない。勿論、何かあったら責任はとるさ……でも、巧くんの力は飼い殺しにするのは惜しい。君もそう思ったのは事実だろう?」

 

彼の言い分も確かに認めざらえないところもあった支部長。確かに未知のオルフェノクの力に神機があれば……より多くの人を救うなことができるのは思い浮かんだ。でも、リスクの側面を考えると無謀な冒険だった……わけのわからない存在に人を守る刃にして自分たちの財産を預けるなど…

 

「大丈夫さ。彼を信じてみたらどうだい?私は基本、科学的根拠の無いことは言わないけど…今までだって冒険を重ねてきたじゃないか?」

 

「……冒険か。そんな夢と希望に溢れるような響きではなかったがね。我々のここまできた道は…」

 

遠い目をした支部長…。憂鬱そうな顔は彼が歩んできた半生が生易しいものではないと語るようだ。決して、明るく誇れるようなものばかりではないと……

この研究者とはそれらを共に歩んできた戦友であるが、彼の読みきれない腹黒さは困ったものである。

 

「良いだろう、今回は不問にしよう。勿論、乾巧の存在は本部に伏せる…この極東支部内の機密に規定する。口外は厳禁だ。」

 

やってしまったもの勝ちを認めるようで癪だが、ここは折れることにした。すると、ペイラーは満足げな内心を奥底に秘めた微笑みを向ける。どうやら、彼の満足いく結果だったらしい……

 

「ありがとう、支部長。彼はいつ以来かの興味深い観察対象だからね。感謝するよ。」

 

「今回だけは友人のよしみと彼がもたらすであろう可能性を鑑みてだ。だが、次は無い…覚えておきたまえ。」

 

「…心しておこう。」

 

忠告。さて、この男にどれだけの意味と効果があるかは謎だが…気休めの牽制くらいになれば良い。支部長はペイラーが受諾して部屋を後にするのを見送り……やっとひとりになったのでフカフカの黒椅子にもたれてひと息をつく。

 

「さて、ペイラー……全てが君の思惑通りに行くと思ったら大間違いだぞ。」

 

その時、入れ替わりでおかっぱ頭の女性隊員が入ってきた。リンドウと同じ部隊の彼女である。

 

「やあ、君か。サクヤくん…やはり、乾巧の処遇についてか?」

 

「はい。やはり、彼の扱いについては納得しかねます!」

 

「しかし、君の部隊の隊長は既に承認しているのだ…文句は言えまい。だからといって、好き放題をさせるつもりは毛頭に無い。引き続き、彼の監視を続けるように……」

 

「……わかりました。失礼します。」

 

彼女も同様に巧の処遇に不服をとする者であった。得体の知れない存在を身近にいるとなればそれは不快感を覚えても仕方ない。だが、自分の上司は耳を傾けず……よって、その上司たる支部長にまで異議を唱えにいったが満足いく返答は無かった。

そのまま、引き下がらざらえず…孤独な廊下の先で彼女は物思いにふける。

 

(…やっぱり、彼は危険に思う。)

 

狙撃手としてスコープの先から見た狼の異形へと変身したあの男。人が神々に抗う唯一の手段無しで、ヴァジュラを退けるまでの足掛かりを作った存在。そして、敵か味方かわからない……

 

(……でも、リンドウは彼を信じた。)

 

 

 

 

ならば

 

(見極めさせてもらうわ……貴方が本当に信用に足る人間かどうか…)

 

エレベーターの前に立つ新米の神を喰らう者に内心で宣言する。

その視線に気がついたのか、彼は振り向いて挨拶がわりに…自分らしく告げた。

 

「はじめまして。今日から新しいバイトの乾巧だ。」

 

 

 

 

……はい?バイト?

 

 

「……決まってんだろ?仮面ライダーと……ゴッドイーターのバイトさ。」

 

 

 

 

 

To be continued…

 

 






☆次回予告

リンドウ「緊急任務?」

巧「新人にしちゃ、随分とハードワークすぎしねぇか?」

コウタ「よ、よろしくお願いします!」



???「私より優れたゴッドイーターはいません。」


See you!Next FaizGE!!

感想おまちしてます。


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第弐話 前編

唐突に思ったんだ、更新しないとって。


ロシアより愛を込めて……ハラショー(違)

あ、ちょっとアニメ寄りの展開になります。


……巧のゴッドイーター生活が始まるちょうどその頃…

 

遥か北の地であるロシアは猛吹雪にみまわれていた。視界は真っ白な吹き荒れる粉のおかげで、3割くらいしか辺りを確認できず…おまけに血管まで凍てつくような鋭い寒さに忌々しいと誰もが悪態をつく。

そんな絶対零度の土地を今、まさに飛び立とうとする鋼の巨大な機影……白の暴風の中でも存在感を示す正体はフェンリルの輸送機。これは物資と『ある1人の少女』を送り届けるため…そのエンジンに火を灯していた。

 

その少女は、お気に入りの赤い帽子を脱いで手元に抱くと……自分の銀の髪を手櫛ですきながら客席に座る。ここは外と隔絶されて明るくて暖かい。外ではコートを着こんだ男たちが騒がしく動いているのが分厚い窓越しに見えた……全く、自分のためにご苦労なことである。

 

「…やぁ、アリサすまない。吹雪がもう少し弱まったら発つ予定だ。すまないね、待たせてしまって。」

 

…そんな彼等を鼻で笑っていると、眼鏡をかけた中年の男が話しかけてきた。外の者と同じく、コートを羽織り…黄色いバンダナが目印の彼はよく知る仲だ。窓から顔を返すと反対に男には愛想の良い笑みを向けた。

 

「…平気ですよ、オオグルマ先生。それより、私の神機が凍っていたりしませんよね?」

 

「ああ、勿論だ。そうだ、アリサ……極東で君に続く新たな『新型』の神機使いが現れたそうだ。君と同じ第一部隊の配属になるそうだが……」

 

男は自分の専属の医者だ……そして、色々と世話をやいてくれる良い先生。だが、たまにお節介なのが鬱陶しくなるが……

 

「…名前は乾巧……槍使いという話だ。剱崎イッシンに続き、極東は新型を3人も揃うことになる。流石、最前線といったところだな……」

 

「オオグルマ先生?」

 

「…?なんだね…?」

 

少女は屈託なく…自分より歳上の男に向かって笑った。自信に満ちた口は……

 

「そんなこと、どうだって良いじゃないですか?」

 

 

………礼儀など構わず告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんにせよ…私より優れたゴッドイーターなんていませんから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【第2話】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ふッ!!ふッ!!」

 

雪に染まる古い寺……そこに、巧の姿はあった。ファイズに代わる新たな武器の槍…チャージスピアというらしいが、巧はこれを素振りしていた。手に馴染ませるため、ブンブンと振ってはみるもの…性格上の故か今まで長い獲物を扱ったことが無い故か、動きは粗っぽい。巧は巧なりに工夫はしているつもりなのだが、『オラァ!』と突きを繰り出した辺りは隣で見ていたリンドウは苦笑していた。

 

「いやぁ、まあそのうち慣れるだろ?筋は悪くないと思うぞ、うん。」

 

気休めを言われると内心、恥ずかしいが自分のせいだ。まあ、良い……突きだした槍を肩に担ぐと、巧は後続してやってきた仲間たちに目線を向けた。

 

「紹介するぞ。こっちの美人が橘サクヤ…形式上、俺には次ぐお前の上官にあたる。」

 

「もう彼女とは自己紹介は済ませてある。」

 

「あ、そうだっけ?んじゃ、あとは新人2人…ほら、はやく自己紹介しろ。」

 

狙撃手の彼女…サクヤとは面識がある。あとは後ろの2人の少年…彼等が新人だろう。アサルトの銃身を持つ神機の人懐こそうな赤毛のような茶葉の少年に至って平凡そうな顔をした銀(それとも灰?)の髪をした少年。後者の彼はリンドウと同型の神機を手にしていた。

 

「藤木コウタっす!一瞬だけ俺らが先輩だけど、まあ新人同期ってことでよろしくぅ!」

 

「け、剱崎イッシンっす。よろしくッス…」

 

何だろう…後者の彼、イッシンはどうにも畏縮しているようだ。まあ、巧も自分はあんまり人相が好まれやすいタイプではないと自覚している。なら無理にコミュニケーションを拡げるよりかはと『よろしく…』と短く済ませておこうとしたが…活発なコウタと呼ばれる少年がくいついてきてしまった。

 

「巧さん、コイツさシャイなんで……ああ、でもさその仏頂面はやめといたほうが良いよ。」

 

「うるさい。コイツは元々、生まれつきだ。」

 

「ううん…でもさ、俺達の同期だし。仲良くしたいんだけどなぁ……そうだ、ニックネームで呼ぼうぜ!あんた、巧だから…『たっくん』なんてどうだ!?」

 

「たっ…!?」

 

おまけに、まさか異世界でこんな呼び方をされるなんて夢にも思わなかった。戸惑いは隠せないが…そこをイッシンがフォローに……

 

「…た、『たっくん』さんに、失礼ですよ。仮にも、歳上に。」

 

「おいお前…」

 

まわることは無かった。まぁまぁ、予想外の展開だがこの程度に突っ掛かっていても仕方ないと『好きにしろ…』と巧はたっくんに折れた。その様子にリンドウはゲラゲラと笑い、サクヤは拍子抜けをした顔をする。

さて、楽しい時間はいつまでもとはいかない。

 

「おーい、新人ども。自己紹介は済んだか?そろそろ、楽しい楽しい任務の時間だ。」

 

リンドウの言葉に一気に全員の顔が冷水をかけられたように引き締まる。残念ながら、今は楽しいピクニックではなく死と隣り合わせの任務なのである。

 

「今回の相手はコンゴウ……中型のアラガミだな。本来なら群れを為す知能の高い奴だが今度の任務では単体で確認された。そこで、新人諸君は実践も兼ねてこれを討伐してもらう。今回はサクヤがバックアップにつくが、オウガテイルといったザコとはわけが違う。くれぐれも油断はするなよ?」

 

「おい、リンドウ。お前は何を…」

 

「ん?ああ、俺はこのあとちょいとお忍びのデートに誘われててね。」

 

全く、この男は…。呆れていた巧だが、ふと目線をずらすとサクヤが心配そうな表情でリンドウを見ていたことに気がつく。『デート』…なんて言っているが何となく違う意味合いがあるのではと少し察したがこれだけでは流石に全ては解り得ない。

そして、リンドウは去り際に部下たちに告げる…

 

「んじゃ、命令はいつもの3つ。『死ぬな…』『死にそうになったら、逃げろ…』んで『隠れろ…』運が良かったら『不意をついてぶっ殺せ!』…良いな?」

 

「リンドウ、それ毎度ツッコミを入れるのも面倒だけど4つじゃない。」

 

「ん~…じゃ、細かいことは気にしないってことで。全員、生きて帰れ!勿論、巧…お前もな!」

 

すると、彼はそそくさに去っていった。ただ、巧は自分に念をおされるなんて思っておらず、…返事を返すことが出来なかった。

さあ、いよいよ任務の開始だ。真っ白な雪の絨毯の上に降りた一行は寂れた廃寺をゆっくりと辺りを警戒しながら進んでいく……

 

「コンゴウは聴覚がとても鋭いの。知能も高いし、死角から私達の様子を窺ってるかもしれないわ。注意して!」

 

背後からサクヤの警告が届くが、聴覚云々と言う割には彼女の声はよく通るので如何なものかと思う巧…。ただ、デカイ相手が奇襲をしかけてくると一気に一網打尽にされる可能性もある。彼はオルフェノクの力に加えてゴッドイーターになったことで更に鋭敏になった感覚を目を閉じて研ぎ澄ます……

近くにいるなら、何処かに隠れているはず……

 

「…たっくんさん?」

 

イッシンが心配してくる…。その先…古い寺院跡の上……

 

『ハァ…ハァ……!!』

確かに、異形の荒い息遣いが聞こえた…!

 

 

『グルァァ…!!!』

 

「「「!」」」

 

サクヤと新人たちはすぐに飛び退き、そこへ巨体が獲物を粉砕しようと着地する。赤い面をつけたようなゴリラらしきボディ……

 

「気をつけて!コンゴウよ!!」

 

…コイツが討伐目標のアラガミ『コンゴウ』。ヴァジュラより一回りくらい小さい中型種…背中の4本のパイプに裂けたような口に牙がズラリと並ぶ様はまさに異形。だが、この程度で巧はビビらない。

 

「…このくらいのデカさなら、大したことないな。」

 

シャンッと軽く槍を振ると彼は躊躇いなく、突撃していた。サクヤが止める間もなく、懐にブスリと撃ち込み間髪いれず頭をシールドパーツで殴りあげる!

 

「ちょっと!?神機をそんな乱暴に使ったら…!?」

 

これには、コンゴウは愚かサクヤすら悲鳴をあげざらえない。まあ、巧にとって何処ふく風だったが……

そして、ゴロゴロと転がったコンゴウへ片手を軽く降って追撃を迫ろうと刹那…

 

『オオォ……!』

 

まだ終わらんと異形の背のパイプから風が漏れだした…。はて?と歩を止めた巧…そこへ、サクヤの悲鳴が響く!!

 

 

「よけて!風のブレスよ!」

 

「!」

 

瞬間、勢いよく飛び退くと弾丸のような竜巻が巧をかすめた。あと少し遅かったら直撃をもらっていただろう。

こうなれば、流石に見ていられないとサクヤが援護射撃のスナイプ。雷の閃光がコンゴウの頭蓋を貫き、心臓部のコアを粉砕した。

 

『…グゥ……!!!』

 

崩れ落ちる異形の肉体。最初こそ驚いたが、最期はあっけないものだった…。

 

「…なんだ、意外と拍子抜けだな?」

 

「ふざけないで!?私の援護が無ければ……!」

 

サクヤはカンカンだった。初めて組むメンバーかつ、新人を含めた任務であったのにいきなり指揮を待たず独断専行をされては仕方ないことだろう……おまけに、貴重な武装である神機を乱暴に扱われては……

 

 

『ググルァ!!!!』

「!」

その時、サクヤの頭上からもう1体のコンゴウが…!不意を突かれたサクヤは逃げられず、すかさず巧が彼女を突き飛ばしてチャージスピアの装甲を展開。間一髪で異形の剛腕を防ぎきる…!

 

「…戦いに集中しろ!」

 

間一髪…でこそあれど、今の状況は芳しくは無かった。やはり、相手はアラガミでゴリラのような姿だけあってパワーも馬鹿に出来たものではなく…ゴッドイーターになった巧ですら圧されていく…!

まずい!と思った巧はすぐさまウルフオルフェノクへと変身。逆に力任せにコンゴウを押し返してみせた。

 

『さあ、来いよ。』

 

調子が良い。ゴッドイーターになって更に……

自分は戦闘狂なんて微塵も思っていないが、高揚感が彼の闘争本能を煽る。もっと、存分に力を振り回し…昂り…引きちぎり………!!!喰らえ!!!!と……

 

『ッ!!!』

 

それに、反応するように展開するチャージスピアの刃。刹那、つむじ風と彼は消え…同時にコンゴウの背中のパイプが吹き飛ぶ!直後、異形の背後にヒラリと着地するウルフオルフェノク。

 

『ちっ……浅かったか。』

 

『オォオオ!?』

 

浅かった…あくまでもウルフオルフェノク感覚ではだが、喰らった側からすれば別。コンゴウはすぐさま、悲鳴をあげて寺を飛び越えて逃走していった。

「逃がすか…!」

 

 

PPPPPP……

 

「誰?こんな時に…!」

 

いざ、追撃せんとしたサクヤ…しかし、よりによってタイミングを謀ったように鳴る端末。おまけに相手は支部長からのようだ……無視するわけにもいくまい。

 

「はい、こちらサクヤです。……緊急事態?…なんですって!?」

 

『?』

 

何やら雲行きが良くないようだ……ウルフオルフェノクは槍をおさめて、巧の姿へと戻ると眉を潜める…。すると、任務開始より険しい顔をしていたサクヤが更に厳しい顔をして口を開く…。

 

「乾くん、このミッションは中止。支部長から直接、緊急ミッションの依頼が来たわ…。そして、とりわけ急ぎの……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Φ Φ Φ Φ Φ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

極東支部付近北方上空……

 

 

フェンリル輸送機内、格納庫にて溜息がひとつ。荷物がひしめき、薄暗い空間にて少女は呆れと面倒臭さを口から吐き出しながら相棒の入っている身の丈ほどあるアタッシュケースを持ちあげる。

 

(まさか、対策で組み込んでいた輸送機の偏食因子に逆に反応して大群が寄ってくるなんて……)

 

パチンッ!と留め金を外せば深紅のボディに黒く輝くガトリング銃身の相棒。これを取り出すやアタッシュケースは適当にぶん投げ、ゆっくりと雲の上へと開いていくゲートへ向かう。すると、荒れ狂うような突風が身を撫でていくが怯むことなく見据えるは夜明け前の遥か雲の彼方……

 

…これに紛れて蠢く無数の黒い影。

 

 

「ふぅ……あらまあ、大量ですこと。」

 

なびく銀の髪を抑えながら、彼女は呟く。数が多い……?それがどうした?

 

 

…別に、全て倒してしまえば問題無い。

 

 

 

【アリサ、極東支部にも支援は依頼してある!くれぐれも、無茶はするなよ!?】

 

「平気ですよ、オオグルマ先生。私の実践での実力を極東の方々示す良い機会ですしね。とっとと、片付けますよ!!」

 

イヤホンタイプの通信機からの恩師の心配する声…まあ、無用なものだが笑顔で応えておく。

そして、腰に命綱がわりのワイヤーをフックで繋げ、相棒の銃身を明るくなっていく空へとガチャリ!と向ける。負ける道理など無い……数は多くとも相手は雑魚の寄せ集めだ。この『新型』で最も優れているゴッドイーターたる自分に勝とうなど笑わせてくれるというもの。

 

 

「ハラショー………………アリサ・イリーニチナ・アミエーラ、敵を殲滅します。」

 

さあ、任務〈ショー〉の始まりだ……。

 

 

極東より遥か北の地、ロシアより……新たなる新型神機使い、『アリサ・イリーニチナ・アミエーラ』は高らかに叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

 

 

……そんな様子を彼女に気がつかれず、無言で見つめる人影。

 

その手には『SMART BRAIN』と刻まれた銀に鈍く輝くアタッシュケースが握られていた。

 

 

 

 

 

 

Φ Φ Φ Φ Φ

 

 

……To be continued

 

 




ま た せ た な (謝)


今回は前編だぞ!フラグだぞ?

そういえば、ラケル先生の中の人って確か子供の頃……

記憶違いだったら申し訳ない。


感想おまちしてます。


https://twitter.com/poNxJunche?s=09 ←Twitterです、ハラショー。




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第弐話 後編

 

「おいおい、マジかよ。」

 

巧が口から溢してしまうのは無理もなかった。支部長からの緊急ミッションということで慌てて引き返して、極東支部から輸送ヘリ…そして、現在・極東支部北方空域付近上空。眼下は真っ白な雲が荒々しい雪原のようである。別に巧は高所恐怖症なわけではないのだが……悪態を突きたくなる理由とは…

 

「全く、洒落にならないわね……この数。」

 

歴戦の勇士のサクヤすら呆れるほどのアラガミ…………アラガミ…アラガミアラガミアラガミアラガミアラガミ。例えるなら、地面に落ちた飴に群がるアリの大群か腐肉に集る蝿の数百倍といったところか……

種は黒い卵型のボディに禍々しい単眼と女神像がついた『ザイゴート』。肉体がパックマンのようにバックリと口が開くから気持ち悪い。しかも、これが数えるのもうんざりするような群が輸送ヘリより遥かに大きい輸送機を覆い尽くさんばかりにいるのだから吐きそうになる…。

 

「なあ、これ全部か?相手にするの……?」

 

「ええ。今回の任務は救出だから、免れないわね。」

 

サクヤからの確定通告。それにしても、この数をどうやって相手取るというのだろう……このヘリからでは無理があるのでは…

 

「まず、乾くんとイッシンくんには機体に直接、飛び移ってアラガミの駆逐を。私は後方から援護するわ。良いわね?」

 

……本当、無茶を言ってくれる。テメェもやってみろよソレと言いたいところだが、口に出すより早くヘリが上昇していき言い損ねてしまった。畜生め…

 

やがて、輸送機の頭上へとやってきた彼等はあるものを目撃する。

 

「サクヤさん、巧さん、あれ!!」

 

イッシンの叫びに目を凝らせば既に機体の表面に張り付き、戦っている少女が。赤の帽子にミニスカ…だが、深紅の神機を振り回し…迫りくるザイゴートたちをバッサ、バッサ、と切り捨てている。

 

「彼女が今回の最重要対象ね。良い?なんとしても、あの娘は連れ帰るのよ。」

「うっす!」

 

「…」

 

とにかく、援護をしなくては……

後方支援はサクヤに任せて、輸送ヘリから飛び移る巧とイッシン。手短なザイゴートをぶち抜いてクッション代わりにすると、アリサは彼等に気がついた。

 

「極東支部からの増援ですか…?」

 

「そうっす!只今から援護にうつりま……」

 

イッシンはすぐに彼女へ駆け寄ろうとしたが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「必要ありません。」

 

 

 

 

 

 

 

 

……はい?

 

 

 

「うろちょろされるとかえって邪魔です。役立たずは引っ込んでいて下さい。」

 

「いやっ……あの…その……」

 

何故?いきなり初対面から役立たず言われたんですが……

戸惑うイッシンを尻目に神機の深紅のブレード刀身を収納し、ガトリング銃身を展開するアリサ。そのまま、盛大に弾を轟音をたて雨霰と撃ちまくりザイゴートの一団を叩き落としていく…。

 

「……次ッ!!!」

 

そして、身体を反転させると腰についている命綱のベルトを伸ばして機体の側面へとダイブ。張りつくザイゴートをえげつない銃撃で蹴散らす………更に、またブレード形態に神機を戻すと駆け上がりながら、異形をなぎはらってまた機体の背に着地した。

 

(すごい……)

 

イッシンは息を呑む。同じ神機使いでありながら、彼女は遥かに先を行く…例えるなら、刃の先端のように鋭利に感じられた。これに自分が続かねばならぬのだと……

 

「…何、ジロジロ見てるんです?」

 

 

 

「……あっ、いや…」

 

そんな視線に気がついたのか、アリサは苛立ってしまったようで慌てるイッシン。その時……

 

 

『シャアアッ!!』

 

「!?…ちいッ!!!」

 

不意をつき彼女の背後からザイゴートが襲いかかる!咄嗟に銃身を反転させようとしたアリサ……

 

 

 

 

 

 

ズビュッ!!!!

 

 

『ギィ!?』

 

「!」

 

だったが、寸前で槍が異形の肉を後ろから串刺しにして投げ棄てた…。そこには、チャージスピアを構える巧が睨みつけるように立っている。

 

「おい、クソガキ。役立たずかどうかはちゃんと見てから判断しろ。」

 

アリサも佇まいからして判った……この男、ただ者ではない。イッシンとは違い、存在感に重みがある…そう経験によって積み重ねられた風格の重みだ。

されど、アリサはそう易々と臆したりなどしない。

 

「へえ?貴方が、3人目ですか…?随分と偉そうですが…極東は先輩を敬うのがしきたりではないんですか?」

 

「あ?」

 

「神機使いになったのは私が先ですよ?なら、私を敬うっていうのが筋じゃないです?」

イッシンは二度めの絶句。信じられない発言の二発目はよりにもよって巧に……これは怒るだろう。胸ぐら掴んだりワンパンしてもおかしくない……

 

 

しかし、巧は……

 

 

「ハッ……笑わせんな。」

 

「…?」

 

少女の煽りを鼻で笑いとばす。何故なら……

 

 

「俺のほうが、歳も…そして、人間を守ってきた数もお前みたいなひよっこより遥かに上だ。大口叩くなら、世界の危機の2つや3つ…乗り越えてみせろ!」

 

 

ゴッドイーターとしては後輩でも、彼は彼女より長く生き…その分、救ってきたのだ……『仮面ライダーファイズ』として…幾度となく世界の危機を…多くの人を………

それが、たかが十代のピーピー言っている高飛車な小娘の戯れ言など真に受けるものか。

「ふんっ!」

 

勿論、口だけではない。巧は勢いよくザイゴートたちへと立ち向かっていき、アリサの倒した数に迫らんと次々と斬り裂いていく…。対して、アリサは不快そうにしながらも銃身を構えて目の前の異形の軍勢を見据える。

 

「…何ですか、それ。まあ、良いでしょう…お手並み拝見といきますか!!」

 

 

 

 

 

 

 

(俺……完全に蚊帳の外ッス……リンドウさん。)

 

 

 

因みに、誰も孤独感に苛まれるイッシンに気を留めてなかった。

 

 

 

Φ Φ Φ Φ Φ

 

 

 

 

 

 

 

……その頃、ヘリではサクヤが狙撃を必死に行い…巧やアリサの手の届き辛いところへのフォローへとまわっていたが、あまりのザイゴートの多さに焦りを感じていた。全く迎撃が追いつかないどころか、時が経つにつれ増えるばかり……これではキリが無い。

 

(この数、いくらなんでもおかしい…。何処かにこの群れを率いるボスがいる?)

 

なら、可能性としてあげられるのはボスに相当する個体。アラガミは神なんて呼ばれているが、無機質な物体でもなくエネルギー体でもなく『生物』であるのは確か。殺せば、そのアラガミは死ぬ……

故かは知らないが、時たまにライオンや狼のように群れを率いる強い個体がいたりする。取り敢えず、アラガミに性別の概念や機能は無いようだが強い個体ほど自らに並ぶアラガミや数多の下級クラスのアラガミを引き連れていることがたまにあるのだ。それは、単体でいることよりも狩りの成功率をあげ…最低限の犠牲で被害を抑えることもできる。……ならば、この大群の中にボスに相当する個体がいてもおかしくはない。スコープのレンズをあちこちに向けてザイゴートの影を掻い潜るように捜し………ついに……

 

「見つけた!………あれは、サリエル!?」

 

ザイゴートよりも巨大で…雲に紛れるように飛翔しつつも、圧倒的に違う存在感を放つ青のドレスを纏う令嬢のような異形。一見、華やかなで見とれてしまいそうになるが…冠の単眼はザイゴートと同様は間違いなく人に仇なすアラガミ。その名は『サリエル』……ザイゴートの進化したと言われるヴァジュラに並ぶ大型種。

(あれが、この群れを………でも、ここからじゃ!!)

 

しかし、見つけたとてサクヤの射程圏からはあまりにも離れ過ぎている。これでは弾丸も有効なダメージを与えられない。

 

「ねえっ!もうちょっとヘリを寄せられない!?」

 

「無茶言わないで下さいよぉ!!こっちも袋叩きにされちまいますよ!!!!」

 

ダメ元でパイロットにヘリを近づけるように頼んでみたが、危険すぎるとやはり無理。さあ、どうする?サリエルを倒すなり撤退させれば群れは散々になるだろう……されど、今はこの手を打つ手段が無い。こうなれば…と、サクヤは通信を繋ぐ。

 

「イッシンくん、きこえる?」

 

【こちら、イッシン…どうしたっスか?】

 

「北東の方角に群れを率いているボスがいるわ!そっちから、狙撃できない?」

 

【はぃ!?無理ッすよ!!今、どんな状況かわかってます!?】

 

「こっちからじゃ、有効射程外なの!どうにかならない!?」

【俺の銃身は、ショットガンだから無理ッす!アリサちゃんはアサルト………あっ、たっくんは確かスナイパーだったはずッス。】

 

よりにもよって、面倒な奴に…。仕方ない、任務が何よりも優先と巧に通信を繋ぐことにした………

 

 

 

 

 

Φ Φ Φ Φ Φ

 

 

 

 

「………全く、新人だからって人使い荒すぎやしねぇか?」

 

飛び交うザイゴートたちを斬り刻み、愚痴る巧。おまけに、狙撃までしろとかこんな人食い風船軍団の真っ只中で正気とは思えない。

というより…

 

 

「………銃ってどうすんだ?」

 

 

隣にいたアリサは呆れたと溜息をつき、見かねたイッシンが駆け寄って銃形態の展開について教える。

 

「あの、ガンフォームはですね…ここをクイッと………」

 

「これか?」

 

すると、ガチャン!と音を立てて巧の槍は刃先を鍔へと収納し…入れ替わりに細く長い銃身が刃があった所へ展開された。成る程、これが銃形態というやつか。…って、感心している場合じゃない。スコープを覗きこみ…ザイゴートの群の先にいるサリエルを狙う………

 

が………

 

 

『シャアアァァァ!!!!』

 

「うおっと!?」

 

不意にザイゴートが頭上をかすめ、その拍子にトリガーを引いてしまい弾丸はサリエルをかすめていってしまった。無論、そうなればどんなに馬鹿な相手でも狙われていることに気がつく…。

 

『ォオオオ…!!!』

 

すぐさま、自らの軍団に指示を出すサリエル。敵は自分に照準を向けた愚か者たち………ボスの一声で黒の異形たちは大挙として津波のように巧たちに押し寄せてくる!

 

「うおっ!?」

 

「くっ!」

 

咄嗟にイッシンとアリサは神機の盾を展開し、死の波を耐える…しかし………

 

「ぐっ!?ううう…!?」

 

銃形態のままガードをしていた巧はザイゴートの群に押されていってしまう。彼は知らなかったのだ………銃形態では盾が展開できないことに…

やがて、輸送機の隅まで追いやられ…足がズルッと空へと滑り落ちて………

 

 

「何やってるんですか!?」

 

いく直前、少女の手が巧の腕を掴む。間一髪、アリサに助けられ…彼は引き上げられた。これを見かねたイッシンが叫ぶ!

 

「一旦、退きましょう!体勢を立て直さないと………!」

 

リンドウと同型のチェンソー刀身を振り回し、迫りくるザイゴートをバッサバッサと斬り捨てていくか…いかんせん、数が多過ぎてキリがない。巧やアリサも銃形態で応戦するも、すぐに弾が尽きてザイゴートたちに囲まれる。

 

「あらあら、逃がしてくれそうもないですね。」

 

「くそっ………」

 

 

 

巧は思う………こんな時、『アレ』があれば………

 

『アレ』さえあれば、こんな数の不利など容易に突破が可能なのだが………それは、故郷たる異界へ置いてきてしまったのだ。無いものねだりしても仕方ない…

 

 

 

 

だが………

 

 

 

 

 

【Battle mode】

 

『Bi』

 

 

輸送機の倉庫でムックリと起き上がる重厚でメカメカしい影。人形のボディを動かし、閉じかけているハッチに向かうとバイザーアイをチカチカと光らせる………今、この先には自分の『主』がいると………

 

「…?」

 

同時に、巧も気がついた。何処かで聞き覚えのある音声が異形の合間から確かに響いてきた…。されど、ありえない…アイツは居ないはず…

 

なのに………

 

 

 

『Bi』

 

 

…顔をあげれば平然と自分の目前を飛んでいるのは何故だろう?あと、車輪の盾がこちらに向いている………まさか…

 

「おい、お前ら!!伏せろ!」

 

 

…巧の一声に何事かとイッシンとアリサ………されど、アイツは待たず………

 

 

 

ババババババババババババババババババババババババババババ…!!!!

 

 

「「ちょっ!?」」

 

 

盾から容赦なくマシンガンを放つ。イッシンはあわててシールドを展開し、アリサは身を伏せた…

おかげで、ザイゴートはろくに傷は与えることは出来なかったものの…集中した陣形を崩し、離散していく…。そして、巧の前にかつて共に戦い抜いた『相棒』がジェット噴射しながら舞い降りる。

 

「…やっぱり、お前か。」

 

『Bi』

 

銀のボディが心なしか誇らしげに見えるのは気のせいだろうか…バイザーアイを輝かせる人間よりにも一回り大きいくらいのロボット。背中と左腕のバイクの車輪らしきパーツがなんとも印象的でイッシンは胸の『Φ』のマークとかカッコいいな…とか戸惑いながら思っていると………

 

「当たったら、どうすんだよ!」

 

 

ガンッ!

 

「「!?」」

 

 

巧はこのロボットを蹴っ飛ばした………うん、何の躊いもなく蹴飛ばしたのである。一応、助けたのにあんまりな扱い………流石に、アリサすら唖然としていたが…ロボットは立ち直ると平然と立っていた。

「…というか、なんだってここに………」

 

それはそうと、巧はコイツが何故ここにいるかが分からなかった。この世界に来る前、まだ生きていた仲間に諸々と一緒に託したはず…でも、目の前のコレは間違いなく本物の『オートバシン』である。

 

 

 

 

「よう………」

 

 

 

すると、不意に新たな人物の声に巧は振り向いた…。そこに立つのはベルトからオレンジに輝く2本のフォトンストリームが巡る…すでに変身する者がいないはずのライダー………

しかし、顔を『Χ』のラインが走る紫の複眼を輝かせるはこちらも間違いなく『仮面ライダーカイザ』であった。彼は銀のアタッシュケースを投げ渡すと短く要件を伝える。

 

「忘れ物だ。」

 

「!」

 

何ということだろう…確かにそれは自分が置いてきてしまった『忘れ物』。留め金を外して開ければ確かに見慣れた銀のメカメカしいベルトに時代遅れな折り畳み式な上に大きめな携帯電話……その他にカメラや望遠鏡など……

 

知っている。自分と一番最初の世界の危機から何度も運命と死線を潜り抜けてきた相棒だ。

 

「…感謝しろよ?なっ、巧?」

 

…これを持ってきたカイザは何者なのか?本来の所持者はとっくに死んでいる。ましてや、本来の主ならこんな軽い調子なわけが無い…むしろ、もっと追い込まれるのを待つか見殺しにしていただろう。また、別の変身者ならば…『自分と同じ(=人であらざる者)』ということ。誰なのだ…?

 

「お前…」

 

「あ?もしかして、わからない?俺だよ、俺?なぁ?おい…!?」

 

…いや、誰だよお前?

あ、そういえば何となくこんな奴いたような…

 

「ちょっと!?3人目!!!何してるんです!?」

 

とっ…………ぼやぼやしていたらアリサの怒号が飛んできた。まあ、ここは戦場なのだから仕方あるまい…むしろ、変に場馴れしてしまい余裕がある巧がある種おかしいのか……

 

やれやれ、と溜息をつきながら愛槍で寄ってきたザイゴートを飛行機の装甲に縫いつけてアタッシュケースの中身…『ファイズギア』をとって腹に巻く……

 

「待ちくたびれたぞ。」

 

別にコレに意思があるわけではない。でも、何気なく話かけてしまうのは愛着があるからだろう……

滅多に見せぬ仏頂面から垣間見える微笑を覗かせ、携帯電話『ファイズフォン』に【5……5……5……】と入力し、最後にEnterをプッシュ…

 

 

【Standing by…】

 

キレのある電子音声にサイレンのような駆動音は準備完了の証。ファイズフォンを再び折り畳み、頭上に掲げて彼は叫ぶ!

 

……幾度となく、世界を救ってきた仮面の英雄たちが口にする言葉!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…変身!!」

 

 

 

 

 

【Complete】

 

 

 

 

To be continued……

 

 




お久しぶりです。

更新停止したと思った?残念、まだ生きてたよ!!


今回の話を纏めると。


たっくんのゴッドイーター人生は短かった………←


もう嫁と相棒もきたから槍なんていらない子。きっと、自害にしか使わないんだから!たっくんにランサーの適正なんていらない!

ギル「解せぬ。」

レンゲル「解せぬ。」


さてさて、今後なんですか…秋から冬にかけて私の職場が繁忙期になりますので更新は全体的に更にペースが落ちます。(なんか毎度、あとがきがこんなかんじ………?ふむ、知らんな(キリッ))
もう会社の休み時間も事実上の電話番で全く執筆できないっす………くっ!!

最近、精神状態も安定しないのもありましてね。でも、これを執筆の発想のバネにしていけたらと思います。


なんかゴッドイーターそのものに触れたのが随分な昔な気がするけどファイズGEは更新しますよ!だから、感想よろしくぅぅ!!!!




………あ、FVAにもたっくん出す予定。(このたっくんじゃないけど)


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第三話


555無料配信してるのなら、更新しないわけにいかないじゃない!!

感想お待ちしてます。


 

【Complete】

 

 

……その時、辺り一帯が目が眩むほどの真っ赤な光に包まれた。

 

ザイゴートたちは怯み、イッシンやアリサも何事かと巧にへと視線を向ける。

 

 

「………たっくん…さん?」

 

やがて、光が晴れていく先……そこに乾巧の姿をイッシンが瞳に映すことはなかった…。そこにいたのは銀の装甲に真紅のボディラインが走る漆黒のスーツに仮面。『Φ』を模した複眼と真紅の輝きが迸るフォトンブラッドのラインが全身へと巡るこの姿は………

 

 

 

『仮面ライダー555<ファイズ>』

 

 

 

 

巧の人々を護るための力であり、幾度となく世界を救ってきた救世主。まさに危機へと駆けつけたヒーロー………

 

「…やっぱり、ファイズ<コイツ>とは縁が切れないようだな。」

 

巧…仮面ライダーファイズは静かに笑う。腐れ縁とはまさにこの事だろう…オートバジンからファイズエッジを抜き放ち、閃光の刃でザイゴートを斬り払いながら再会の想いに浸る。背後で斬られたザイゴートたちが『Φ』の紋章を浮かべて次々と灰になっていく……ああ、この感覚…身体が本来あるべきものを取り戻したようだ。

一方、他の面々も突然の事態に…特にアリサは混乱をきたしていた。

 

「な、何なんですか!?神機も使わないでアラガミを…!?」

 

「たっくんさん……カッケェ。」

 

そんな彼女彼等をよそに、ファイズは彼方にフワフワと浮遊するサルエルを睨む。神機でこそ当てられなかったが、使いなれたこれなら距離を補う方法など熟知している。ファイズエッジにミッションメモリをスロットすれば、電子音声と共に血染め色の刃が更に激しくフォトンブラッドで輝き…

 

【Exeed charge】

 

「……はあッ!!!」

 

 

これを一気に振り抜き、紅の斬撃を飛ばす…!斬撃は次々とザイゴートたちをバラバラにしていき、最終的には逃げ遅れたサルエルの左下半身を切断。ふらふらとバランスを失ったこのタイミングにファイズは叫ぶ!

 

「サクヤ!!」

 

「…!……この位置なら!!」

 

銃身から迸る弾丸。一閃したそれはサルエルの胴体部にあるコアを容易く粉砕し…その生命活動を停止させた。同時に指揮するリーダーを失った群れは散り散りになるは共食いをするわで呆気なくバラバラになった。これで、ひとまずと…

 

「動かないで下さい、乾巧…!」

 

「…」

 

済むわけもない。アリサから突きつけられる銃口は何かデジャヴを感じるが…これをカイザが制止した。

 

「まあまあ、大丈夫だから…!な、アリサちゃん。」

 

「!……その声、海堂さん!?」

 

「やっぱり、お前か……海堂………」

 

お互いに変身解除すれば、カイザの素顔は巧のよく知る人物。チャラい髭のオッサン…かつての戦友『海堂直也』だ。そして、今や唯一の巧の仲間の生き残りでもある。しかし、何故に彼もこの世界に…?彼もまたサガラに連れてこられたのだろうか。

 

「積もる話もあるだろうが、取り敢えずあとだ……ここは場所が悪すぎる。」

 

 

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

フェンリル極東支部 支部長室

 

…本来の部屋の主である者はおらず、代わりに副支部長とも言える男であるペイラー・榊がいた。やはり、狐目といい毎度の含みある笑みが信用ならないのだが取り敢えず、支部長よりはマシかもしれないと至る巧。更に、ここにはアリサと海堂にサクヤ…加えてリンドウの姿もある。議題は間違いなく……

 

「やぁ~、諸君。先の作戦はご苦労。功績を労いたいところだし、極東支部の新な仲間の歓迎をしたいところだけど……まず話あわなくちゃいけないことがある。勿論、海堂くんと乾くんは…解っているよね?」

 

「「…」」

 

これだろ?…っと、デスクにそれぞれファイズギアとカイザギアを置く。鈍く銀色に輝く2本のベルトに全員が息を呑む…それはそうだ、自分たちの技術とは違うテクノロジーそのものが目の前にあるのだから。これが、アラガミを倒したとなれば尚のこと…

すると、ペイラーは確かめるように口を開く。

 

「……話してくれるね?」

 

 

……それから、巧は語った。己の世界で起こった人間と人間の進化形『オルフェノク』との戦いを…そして、自分や海堂もオルフェノクで人間の味方『仮面ライダー』として戦ったこと

 

……オルフェノクの王と呼ばれる存在を倒し、戦いに終止符を打ったこと

 

 

……数年後にあたる今、お互いに謎の森を通ってこの世界にやってきたこと

 

 

「まあ、俺はロシア……巧は極東だったってことだな。で、ロシアで縁あってアリサちゃんの世話役になったわけよ俺!」

 

「勝手についてきただけじゃないですか。まさか、ここまで来るとは思いませんでしたが……」

 

海堂の来歴は大体わかった。まあ、勿論……

 

「…とにかく、そんな話は信じられるわけありませんよね。」

 

アリサの一言で一蹴。サクヤは愚か巧に比較的に親いリンドウさえ苦々しい顔をしていた……だが、ペイラーのみがフムフムと頷く。

 

「いや、彼等の話も強ち嘘でもなさそうだね。スマートブレインという会社だが、こちらの歴史では存在していない。そして、このベルトの技術も該当するものは見当たらない…加えて巧くんのもう1つの姿のことを考えれば……」

 

意外だ。このオッサン、地味に話が解るじゃないか……解ることが腹に何かあるのではと疑いたくなるが頑なに否定されるよかマシ。すると、ペイラーはニコッと巧たちに微笑んだ。

 

「うむ、私は君の話に信じる方向に1票を投じよう。では、その1票を確かなものにするために…このベルトを少々貸してくれないかね?」

 

彼の狐目が少年の瞳のようにキラキラしていたのは気のせいじゃないだろう。ここで拒否権は無いと見た…『好きにしろ』と巧はベルトを彼に託す。まあ、ゴッドイーターをやる上でなら神機があれば充分だ。

となれば、次は海堂の今後だ…彼はどうやらゴッドイーターどころか正規のフェンリル職員でもなく、勝手にロシアからついてきたらしい。

 

「…で、海堂くん。君のカイザの力についてだが…ロシアの幹部クラスの誰かが把握しているわけではないのだろう?」

 

「ま、防衛班のうち何人かくらいかな。一応、掃除係になってますから俺。」

 

「じゃあ、極東支部の掃除班兼防衛班に転属するよう根回ししておくよ。これで、問題なしだ……あ、勿論だけど支部長にはあとで方向しておくからこの事は他言無用でお願いするよ。特にサクヤくんとアリサくんは……」

 

こちらも一安心…なのだろうか。予め釘を刺されたサクヤとアリサは隠しているが、表情は穏やかではない。多分、真っ先に支部長へ告げ口するつもりだったのだろう。今、極東支部から彼が離れていたのはせめてもの幸いだ。これで一段落…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…は、博士!!」

 

 

 

ドタドタと雪崩れこむように支部長に飛び込んできたコウタ。息をきらし、その顔は青い……ただ事ではないようだ。すぐに、イッシンが駆け寄り事情を問う。

 

「コウタ、どうしたッス…?」

「はぁ……はぁ…、エリックが!!エリックが…アラガミに……!」

 

 

 

「「「!」」」

 

 

それは、ひとりの戦士の訃報を伝えるものだった。

 

 

 

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

極東支部ラウンジに運び込まれる1つの棺……

 

サングラスの青年が静かにそこで眠っており、周りは哀しみにくれる人々で溢れていた。ある者は涙を流し……ある者はやり場のない感情を声にして叫んでいた。

ペイラーと巧たちが駆けつけた時はまさにピークの時間。もう葬式と言っても他言ではない。

 

「…任務中、背後からオウガテイルに。ヴァジュラと戦って疲弊したあとを突かれたらしいよ。くそっ、俺も任務に同行していれば……」

 

「よせ、コウタ。今さら、たられば言ったところでどうにもならねぇよ。」

 

「……リンドウさん」

 

「巧、イッシン…これが俺達の職場だ。普通に誰であろうと死ぬ…どんな天才だろうと幸運だろうと死は容赦なく襲いかかる。次にああなるのは自分になるかもしれない……だからこそ、恐れることに呑まれるな。立ち向かうことを辞めれば次はお前たちがああなる。解ったな?」

 

…世界は無慈悲である。特にこちらの世界はあまりにも近くにある…それが、ゴッドイーターでも例外ではない。横たわる棺と彼が示す現実。巧は死した仲間の顔など知らないが、悲しむ者たちと共に黙祷を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何をメソメソしているんです?」

 

 

 

 

 

 

…捧げようとすらしない一言が空を裂いた。単純にただイラッときたから……それだけだとアリサは苛立つ表情で訴える。

 

「ロシアから来るなり葬式ムードだなんてうんざりなんですけど?それに、惜しむ理由も無いじゃないですか?人なんて毎日何処かで死んでいるし、それに死んだのが旧型で私が新型……総合的に見ればプラスなのは一目瞭然。さっさと棺(それ)…片付けて頂けます?」

 

「アリサくん、よしたまえ……!仮にも死者の冒涜は…!?」

 

ペイラーが嗜めるがもう遅い。青フードの青年が棺の周りの団から抜け出して歩いてくれとグイッ!!とアリサの胸ぐらを掴みあげる!

 

「…ッ!!」

 

「あら?殴りますか…?何方か存じませんが、下手なことはしないほうが良いんじゃありません?」

 

…握りしめられ、振り上げられる拳ッ!だが、それを巧が止め…アリサを引き剥がす。

 

「おい、よせ。こんな奴、テメェが殴るまでも無ぇ…」

 

 

 

 

ーーーバキッ

 

 

「!?」

 

直後、青年の代わりにアリサを殴る巧。ふっとばされたアリサは手刷りにひしゃげるほどの勢いでぶつかり、周りから悲鳴があがる。静かだったが……死んだ者の顔も知らなかったが……確かに、怒りで燃えていた。

 

「…」

 

睨みで返すアリサ……あちゃー…と頭を抱えるリンドウ。イッシンや他の面々が狼狽える中、新しい仲間との生活は……最悪のスタートをきった。

 

 

 

 

To be continued…

 

 

 





☆★next.555GE……

???「ようこそ、クソッタレな職場へ。」

海堂「それが俺がこの世界に来た理由……」

アリサ(?)「だって、あれはアタシだったんです!!」

巧「嘘だろ……」


ペガサスオルフェノク『…』


巧「この世界の…オルフェノク!?」

ペガサスオルフェノク『変身。』

【Complete】



……See you next.555GE!!!!


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第四話 前編

……なんで、

 

 

…………なんで、お前たちまで先に逝っちまうんだよ。

 

 

 

 

 

清潔なベッドに横たわる彼女はもう動かない。

 

 

クリーニング屋のカウンターで眠る青年も目を覚ますことはない。

 

 

「巧……本当に俺達だけになっちまったな。」

 

 

海堂の言葉が…とても重く、胸の中に響いた。

本来、最初に消えるのは『俺』だったはずなのに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第 四 話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

 

目を覚ますと薄暗い医務室らしき部屋。どうも頭がフワフワして意識が定まらないが心地よいこの時間はアリサが好きだった…。凛と張りつめている顔をする必要など無いし、だらけてても何も誰も言わない。

 

……でも、あの夢は何だったのだろう?

 

 

「やあ、アリサ…調子はどうだい?」

 

「オオグルマ先生……」

 

視線を傾ければそこには見慣れた黄色いバンダナの主治医が白髪をかいて覗きこんでいる。あと、煙草くさい……

 

「全く、駄目じゃないか。極東支部に着いて早々に騒ぎを起こすなんて……一体、どうしたんだ?」

 

思い出す……ラウンジでの出来事。自分は死を嗤った…そして、乾巧に殴られてそのままこの主治医にメディカルチェックと称してここに連れてこられたのだ。

この流れを思い出すや一気に顔をしかめるアリサ。

 

「だって…!私はアラガミを沢山殺したんですっ!!あの役立たずで死んだ人とは違うのに…!褒められて良いはずなのに、私を殴ったんですよぉ!?…うっ、うっ、私…あの人、嫌いですっ!大嫌いです、うわあああああああああああ…!!!!!!!」

 

呂律もあまり回らず、挙げ句の果てに泣き出す始末。もしイッシンやサクヤが見たらその豹変ぶりに自分が知るアリサの像を疑うだろう。

主治医も参ったな…と顔に手を当てると巧やリンドウといった第1部隊の面々が写った写真を手元からファイルにしまい、小瓶を取り出すとそれに注射器をブスッと差して中身を吸い上げる…

 

「やれやれ、精神をまた随分と病んでいるようだね…仕方ない、今日は少し強めのお薬を打つから少しチクッとするよ?」

 

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

リンドウの部屋……そこに集まるのは第1部隊のメンバー。といっても、アリサはいないが……

ホログラムで映し出された窓…これはフェンリルの職員の居住スペースが地下に根を張るように存在しているからだ。それに、リンドウが寄りかかり…サクヤはベッドに腰掛け、残る男たちと海堂はソファーに座っている。勿論、集まったのは話があるからだ。

 

「ああ、諸君…先の作戦はご苦労様だった。エリックのことは残念だったが仕方ないさ、この業界ではよくあることだ。明日は我が身、お互いに気をつけようぜ。」

 

リンドウが無理に明るく振る舞うが、そんなことでこの場の空気が晴れるわけも無い。

まあ、まずはだ…サクヤは巧に加えて海堂という不確定要素まで増えたこともあり、苛立ちが滲み出つつあった。

 

「海堂さん……で良いかしら?貴方は一体、何者で何のためにこの極東支部に来たの?」

 

「それはあのお狐目博士の前でも言ったんだが……何者かはやっぱり、この姿になったほうが早いか?」

 

すると、海堂に不気味なシルエットが重なり…彼は蛇の異形『スネークオルフェノク』へと変身。これを見るや巧以外の面々は驚き、それを確認するや彼はすぐに人間の姿に戻った。

 

「わかる…?つまり、俺は巧と同じってこと。まあ、あと目的か……うん、巧の噂を聞いてやってきたってことぐらいだな。つーか、お前さなんでファイズ忘れたの?」

 

「…色々あったんだよ。」

 

主に謎のDJ.Sの不始末である。おかげで、ヴァジュラの放電を生身で喰らう羽目になった…。

さて、今度は巧が海堂に問う。

 

「そういうお前も、あっちで何やってたんだよ?」

 

「あー…今、それ訊いちゃう?訊いちゃうか……」

 

「?」

 

オルフェノクの王と戦いその後……巧と海堂は離れていた。今、この世界で再会するまで何をしていたのか。そこだけは支部長室では語らなかった…そして、今も何やら渋っている様子が窺える。すると、気をきかせるイッシン。

 

「俺達がいると話辛いッスか?」

 

「…まあ、そうだな。一応、『俺達』の問題だし……」

 

俺達=オルフェノクということだろう。巧はすぐに察した……どうやら元々の世界で異常が発覚し、海堂はこれを知った。出来ればゴッドイーターたちを巻き込みたくないという想いもあるのだろう…自分たちで解決すべきという考えかそれとも不信故にか…躊躇っている。

すると、見かねて…おもむろに口を開いたリンドウ。

 

「…あのさ、なんかこう……巧や海堂が来たのは…まあ、その偶然じゃねぇと俺は思ってる。何かが起こる時は必ず兆しがあるもんだ…。そして、事が起こった時に俺達、ゴッドイーターは力無き人々の盾でなくちゃならない。そして、ひとりでも…命ある限り救うために戦う……そう信念を持って俺達は今日まで来た。だから、世界を救ったって言うんなら…俺らの気持ち、解ると思うからよ……その、話してくれないか?な…?」

「…」

 

海堂は暫し、悩んだ…不器用だったがリンドウの言葉に謀り事は感じられない。頭をボリボリかきながら、巧のほうを向けば…彼は頷いて返す。なら…と腹をくくり彼は語りだす。

 

「わかったよ、話すから!これは俺が巧と離れてた時の話だ。俺はな、生き残りのオルフェノクの世話をしてたんだ……勿論、人間側のだよ?でな、ベルトを造ったスマートブレインのデータベースに生き残りの情報が無いか漁ってたら、『想定外のもの』を見つけちまったんだ。」

 

「想定外…?」

 

巧は首を傾げる……そして、海堂は告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺達のベルト以外に……もう2本の発展型とでも言うべき『帝王のベルト』があるらしい。」

 

 

 

 

 

 

 

「!」

 

 

衝撃。巧のファイズ、海堂のカイザ、もう1本のベルトのデルタ……これらを巡り、巧たちはオルフェノクと戦いを繰り広げたのだ。それに加えて、新たにベルトがあるなど予想すらしなかった。

 

「そいつはほぼ完成していたらしいが、それを待たずに俺達が決着をつけちまった。んで、帝王のベルト未完成のまま埃を被るはずだったんだが……そのベルトがスマートブレインの研究施設から持ち去られた痕跡があったんだよ。どうやら、研究員の誰かが持ち去ったと見た俺はその足跡をずっと追ってきた。そして、…………恐らくベルトはこの世界の『ショッカー』と呼ばれる組織にあるところまではつき止めた。」

 

「ショッカー…だと!?」

 

ショッカー……仮面ライダーを産み出したはじまりの悪。世界征服を企む秘密結社の殆どの雛型と言っても良い。その陰謀を他のライダーたちと共に幾度となく叩き潰してきた。よくもまあ、毎年毎年復活してくれるものだと思っていたが…まさか、この世界にまであるとは巧も呆れざら得ない。

 

「やっぱり、知ってるよな巧。この世界だとフェンリルの下請け企業ってことになってるが…明らかに他の企業とは待遇が違う。唯一、エイジスに本拠地を置くことを許され…人間も資材もそこらで妙な動きをしてやがる。信じるって言った手前だが…フェンリルもこの件に絡んでると見て間違いない。」

 

悪の組織と世界を牛耳る製薬会社…組み合わせ的に最悪としか言い様が無い。全く、どうしてこう厄介事はさらに面倒になるのか…

そんな傍らでリンドウは『やはりな…』と頷く。

 

「よりによって、またショッカーかよ!いい加減にしてくれ…!」

 

「なんだかショッカーでも派閥争いがあるんだらしいが…派閥ごと毎年、力ある誰かが担当するってわけらしいぞ?全く悪の組織もなんとやら…。」

 

「しかも、何だってこんな世界に…!元の世界に帰る方法だって検討つかねぇってのに!!」

 

個人、個人の繋がりであるライダーとの違い故か、組織という体裁…まあ、色々とあるということか。取り敢えず、帝王のベルトの悪用阻止・回収とショッカーの壊滅が目下の目的となりそうだ。フェンリルに睨まれるかもしれないがこの際、仕方ない。成るように成れだ。

 

「あ、そう言えば巧…ソーマが呼んでたぞ?」

 

「…は?」

 

…そんな矢先、リンドウの一言に巧の苛立ちが彼に向く。

 

「悪い悪い、タイミング無くて紹介して無かったな…俺たち第1部隊のメンバーだ。気難しい奴なんだが…確か屋上のヘリポートで待ってるとか言ってたな。」

 

 

まだ、第1部隊にメンバーがいたのか……というか、それはどれくらい前の話なのかいい加減なリンドウの態度に気にすらしたくない巧だった。

 

 

 

 

To be continued…

 




素晴らしく悪いな、オンラインの操作性!!

駄目だ、昨日から始めたけど続けられる気がしない……モンハンFのように家庭用ゲーム機で出来るよう出すべき。うん、操作性が全ての良さを潰している(確信)

後編つづきます。

感想お待ちしてます。


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第四話 後編

フェンリル極東支部 屋上

 

夕刻

 

 

「……きたか。」

 

待ち構えていたフードの青年は見覚えがあった。浅黒い肌…銀の髪………確か、巧がアリサを殴りとばした時、先に彼女へと殴ろうとした彼だ。そんな彼が何用かと巧と海堂は顔を見合わせる。

 

「いきなり何だって顔だな、乾巧。お前の話はまあ耳にしている…。俺の名前はソーマ…別に覚えなくても良い。」

 

第1部隊は中々の曲者揃いと解していた巧だったが…このソーマと名乗る青年…一番の面倒さだとすぐに察した巧。すると、『お前に1つ言いたいことがある…』と彼は続けた。

 

「……あの時、例のロシアの新人を殴っただろ?何故、お前が殴る必要があった?」

 

ああ…なんだ、そんなことか。巧は納得し、語る…

 

「別に、殴りたいと思ったから殴った…。どんな優秀な奴だろうと人の命を嗤う奴は許せない、そう思っただけだ。ま、お前のような一般のゴッドイーターが事を起こせば面倒だろ?」

 

「…ただのゴッドイーター…か…。」

 

そんな彼にソーマは意味ありげに微笑む。何を思ったのかは巧や海堂には解らない…ただ、自嘲を含むような横顔は印象に残る。

 

「フンッ…なら新人、ようこそクソッタレな職場へ。お前のようなお人好し…嫌いじゃない。」

 

「歳上はせめて名前で呼べ。宜しくな。」

 

握手は交わさない。ベタベタと絡み合うのはお互い柄じゃない…そんな匂いを感じつつ巧はソーマを背て見送る巧。そして、アリサも含めて彼もとなると第1部隊はかなり曲者揃いだと改めて実感して『ふぅ…』と溜息をついた。

 

「へぇ、アイツがソーマ……何かどっかの誰かさんとそっくり…チラリ?」

 

「……なんだよ?」

 

海堂のリアクションも鬱陶しい。さっきはシリアスな空気だったから我慢したが、コイツは元々真面目な雰囲気に馴染む奴でもないのを思いだし…ニヤニヤ顔をぐいっと押し退けて屋上のドアを開け……

 

 

 

ガタッ

「?」

 

 

……開け?

 

 

ガタッガタッ

 

 

 

「…は?」

 

……開かない。ドアノブをいくらまわしても、押しても引いても、殴ってみても、開かない。どうした?と海堂も覗きこみ、『あかねぇ…』と呟くや『どれどれ俺に任せてみぃ?』と彼は思いっきり蹴っ飛ばすがただ衝撃で足を痛めてのたうちまわるだけだった。なにしてんだコイツ?

仕方ない、ここは通信を誰かに繋ごう…確か、オペレーターのヒバリだっけか……彼女なら腕輪の通信機能から直接……

 

 

【……】

 

「…もしもし!おい!!」

 

駄目だ。こっちもノイズを出すだけでろくに動きやしない。なんてこった……ついてない。

苛立ちが込み上げて……

 

「…おい、巧………」

 

「あ?」

 

なんだよ、今取り込み中…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な~んか、嫌な予感しない?」

 

 

 

 

 

 

 

海堂の呟きと同時に屋上の手すりを乗り越えてくる複数の人影。黄色いスカーフをなびかせた彼等は飛蝗のマスクを小脇に抱え、胸元には金色の鷲のエンブレムを光らせている。そして、バサッと羽音を立てて着地する巧と海堂と同じ『オルフェノク』…。翼を持つ一角獣というモチーフから『ペガサスオルフェノク』とでも呼ぶべきか…

彼女は巧たちに指先を向けるとマスクを持つエージェントたちに指示を出す。

 

『乾巧だな。ショッカーは裏切り者<仮面ライダー>を許さない。ここで抹殺する。』

 

これに反応して、ある者は飛蝗のマスクを被り『ショッカーライダー』へ…ある者は簡易型のベルトのバックルを倒し、ファイズを簡略化したような量産型ライダー『ライオートルーパー』へと変身。そのまま、巧たちを包囲する。

 

「クソ…噂をすれば、ショッカーかよ!?こちとら手ぶらだぞ……」

 

悪態をつく巧。すぐにウルフオルフェノクへと変身しようとしたが海堂が不敵に笑い止める。

 

「まあ、待てよ?こんな状況予想してないと思ったか?」

 

「?」

 

「俺だって、馬鹿じゃねぇんだよ!」

 

彼は鞄の中からゴソゴソとあるモノを取り出した。そう、ペイラーには引き渡したのはあくまでファイズギアとカイザギア…手札にベルトならもう1本あるのだ。

………『デルタギア』

 

ファイズとカイザのプロトタイプのツールであり、多くの人間を惑わせた魔のアイテム。詳しい説明はここで省くとして、海堂とて信用なるか解らないペイラーに戦う手段全てを預けるほどお人好しではなかった。元の世界から持ち込んだベルトは3本だったが、万一の事態に備えてデルタギアのみ別個で隠していたのである。

 

「コイツを使え…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バチンッ!!

 

 

 

ナイスだ…って言おうとしたが、それより一瞬はやくショッカーライダーの投げたクナイが海堂の手からデルタギアをはたき落としこれを回収したペガサスオルフェノクがベルトを巻く。そして、デルタフォンに無慈悲な認識音声(パス)。

 

『変身。』

 

 

【Complete】

 

 

久々の登場から間もなく、出番はまさかの敵に奪われての変身。白いフォトンブラッドのラインが走り、黒の装甲とスーツ…赤い複眼のライダー『仮面ライダーデルタ』が君臨。かつては敵側として散々苦しめられたギアだったか、こんなに呆気なくまた敵となるとはある種の因果なのか………

 

「そりゃないっしょ!?」

 

「ちっ!!」

 

取り敢えず、海堂のドジは今は責めていられない。ウルフオルフェノク、スネークオルフェノクになった彼等はなんとか応戦に入るもライダーシステムまで奪われた上に数まで勝る相手に渡りあえる道理など無い。次々とショッカーライダーとライオートルーパーの連係が襲いかかり、反撃しようと合間を狙えばブラスターモードのデルタフォンで弾丸をデルタにぶちこまれ機会を潰される。

スネークオルフェノクはともかく、ウルフオルフェノクもそれなりにオルフェノクの中では瞬発力や速力に優れるタイプだが、限られた屋上というフィールドかつ多勢に無勢では能力を発揮しろというのが無理な話。スネークオルフェノクに至っては成す術なくリンチされる始末だ。

 

『…くそ!』

 

悪態をつくウルフオルフェノク。このままではじり貧だ…なんとか状況を打開しなくては。

焦るその時、視界によぎる影。即座に理解したウルフオルフェノクはスネークオルフェノクを掴み、ショッカーライダーを踏み越え屋上からダイブ。そこを、飛来したオートバジンが掴み、彼方へと飛んでいった。

ショッカーライダーとライオートルーパーたちは地団駄を踏むがデルタはデルタフォンを口元に近づけ音声認証を行う。

 

『3821(スリーエイトトゥーワン)。』

 

 

 

 

 

★☆ ★☆ ★☆ ★☆

 

 

 

 

 

逃走、そして、巧と海堂は外部居住区へと投げ出された。オートバジンは主とおまけを運び終わるやバイク形態に戻り着地。やれやれ、散々な目にあったものだ……呻きながらパンパンっと砂ぼこりを払い立ち上がる。取り敢えず、致命的な怪我は負わずに済んだのはせめての幸いだが……

 

「くそっ……俺ら以外にもオルフェノクがいるなんて聞いてねぇぞ!」

 

「俺だって知らなかったつーの。ててて……っ…」

 

よりによって、デルタギアを奪われ敵にそれを扱えるオルフェノクがいた。本当にうんざりする展開だ……ベルトも無しに戦うのは無理がある。さあ、どうする?極東支部に戻ってファイズギアとカイザギアを一刻でもはやく回収しにいきたいところだが、わざわざ敵から逃げたのに丸腰で戻るなど間抜けだ。だが、こちらにはオートバジンしかいない。

巧は辺りを見渡し、居住区を囲む隔壁へと目をつけるとオートバジンへと乗り込む。

 

「お、おい何処いくんだよ!?支部は……」

 

「今、支部に戻るのはまずい。俺に考えがある。後ろに乗れ。」

 

慌てる海堂を後部に乗せ、先を急ごうとエンジンを鳴らす。

すると、海堂はふと、後ろを眺めて突然に巧の肩をバンバンバンバン!と叩く。

 

「巧、あれ見ろよォ!?」

 

「…なんだよ! …!?」

 

瞬間、振り向いた時には言葉を失っていた。外部居住区のあばら家を勢いよく踏み潰しながら向かって来る鋼色の巨大なマシン……球体のような前輪に後部のあまりにも肥大なブースターが後部で幾つも束になったバイク…いや最早、装甲車とでも形容すべき巨大な影が向かってくるではないか!?

 

「…嘘だろ。」

 

『ジェットスライガー』…かつて、デルタが敵に渡った時に幾度となく苦しめられたモンスターマシン。縦横無尽の機動性に爆発的な速力…おまけに、ミサイルまで搭載しているというスマートブレイン社がどう考えても悪ノリで産み出したであろう産物。一応、ファイズやカイザにもあるが試運転では巧ですら扱えきれない代物だったが、使いこなす持ち主ならまさに悪魔的な戦力となる。

 

「…ちっ!」

 

一気に巧はハンドルをきって、オートバジンを外壁目掛け繰り出した。直後、ジェットスライガーの横殴りのスライディングがいた場所に空振りし、低空ホバリングしながらデルタは巧たちを見据えながらデルタフォンをガンモードにして撃ちまくる!しかし、巧のハンドル捌きで避けられると再びゴォォ!!火を吹かしジェットスライガーで追う。

 

「巧、急げ!急げ!!」

 

「うるさい、少し黙ってろ!」

 

焦る海堂の声が耳障りだ。わかってる、でもここは人が住んでいるし道は複雑に迷路のようでスピードも出すに出せたもんじゃない。下手をすれば衝動するか、人を轢くかのギリギリで運転をしているがすぐに限界はやってくる。

 

「…!」

 

キキィィィ!!!!と急ブレーキ。とうとう行き止まりにぶち当たってしまい、ジェットスライガーに完全に追いつかれてしまう。

 

『遊びは終わりだ。』

 

鬼ごっこの幕が下りる……。デルタフォンの引き金がゆっくりと引かれ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バァァン!!

 

 

 

 

 

『!!』

 

 

…否、それよりもはやく貫かれたのはジェットスライガーのブースター。オラクル弾のレーザーが鋼鉄の管を融解させ、直撃には至らなかったものの煙が上がり機体が不安定に揺れる。

 

「俺が考えも無しに逃げ回ってるとでも思ったか?」

 

仮面ライダーファイズ……乾巧にとってこの手の危機など1度やそこらどころか指で数えきれるくらいではない。場数を踏めば、自然と頭は回転する……例えば、こんな時に『誰が頼れるのか?』『頼れる存在は何処にいるのか?』脳は冷静に答を出す。

 

 

 

 

★☆ ★☆ ★☆ ★☆

 

 

 

 

 

 

「……あら、駄目ね。やっぱり機械じゃ熱くならない。」

 

遥かに離れた場所……あばら家の屋根にスナイパーの神機を構える銀髪に眼帯の女性。胸元が大きく開いた服が特徴的な彼女は妖艶に溜息をつき、耳許の通信機で先行している仲間らに一声。

 

「後は任せたわよ。」

 

すると、瓦礫を蹴って踊りでる刃とガトリングの銃口。咄嗟にハンドルをきったデルタは強引に車体をよじらせ被弾を最小限に抑えると忌々しい乱入者を睨みつける。

 

「シュン、お前は引っ込んでろ。傷物にしたらギャラが下がる。」

 

「はぁ!?ふざけんなよカレル!!コイツは俺の獲物だっつーの!」

 

畜生め。コイツらは防壁の警護にあたっていたゴッドイーターだろう。あえて支部へとベルトをとりにいこうとしなかった理由はこれか!…と気がついた時には他の方向からも近づく他のゴッドイーターらしき姿も見えた。まあ、あれだけジェットスライガーで暴れまわったのだから当然といえばその通りだろう。流石にこうなれば分が悪いとレバーを操作して浮遊を開始…神機からの弾丸が飛んでくるが致命的なダメージは与えられず鋼の車体は上へ……

 

そして、バシュゥゥ!!!と轟音をたてて外部障壁へと突撃していき、格納していたミサイルを展開する。

 

 

「…まずい!!」

 

戦慄する巧。外界と支部内を隔絶する障壁を破壊して逃走する気だろう…そうなれば、空いた穴から外をウヨウヨするアラガミたちが雪崩れこんでくるのは間違いない。おまけに、守りの要たちはこの事態を片付けるために持ち場を離れているとなれば被害は甚大なものになる……しかし、バケモノマシンのスピードの前にもう為す術はな……

 

 

「逃がしません!!」

 

 

その時、ジェットスライガーの直線上に立ちはだかるのはアリサ。神機の銃口は恐れもブレもなくデルタを狙っているが、もし狙撃が成功したとしても操縦を失った鉄塊が彼女にその莫大な質量で牙を剥くのは想像に難くない。

 

「よせェ!!!」

 

巧が叫ぶ。しかし、応えることない彼女。スコープのような蒼い瞳がデルタを見据える……絶対に外さない……自身があった。あの車体も直前で避ければ良い。それだけのことだ、不規則なアラガミに比べればあんなもの訓練の的。訓練と同じ、狙って引き金を引けばいい……引き金をひけば…………

 

 

『……!?』

 

 

「…………………え?」

 

 

しかし、寸前でジェットスライガーは不意に車体をもたげ、アリサの頭上をゴォウ!!と過っていった。舞い上がる彼女の赤い帽子。彼方へと飛んでいく襲撃者。

結果、進路は上部へと逸れて装甲壁の頭をかるく削る程度におさまった。

 

「……」

 

そのあとを、ただ……ただ……見送る彼女。

 

 

何故、自分は引き金を引けなかったのだろう

 

何故、轢き潰すことだって容易だったはずなのに襲撃者は自分を避けたのだろう

 

 

……何故、自分は名前を呼ばれた気がしたのだろう

 

 

 

 

 

次々と浮かびあがる疑問。沈む太陽は日没を告げ、少女を日没と共に謎の闇へと誘おうとしているようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued.

 





☆Open your eyes for the next 555GE.

ペイラー「……君も知っておくへぎだ。アラガミとはなんなのかをね?」

巧「エイジス計画?」

コウタ「…それが成功すれば、皆助かるんだろ?」

デルタ『……アリサ…』

アリサ「答えなさい!!あなたは何者なんですか!?」



マンティコアオルフェノク『…変身。』

巧「……帝王のベルト!」





☆☆☆


ランキングに555の作品があって決意。こっちも更新しなくては!!





更新が遅くていつもすまんのう。

最近の仮面ライダーも嫌いじゃないけど、ファイズのスタイリッシュさが恋しいこの頃。ビルドのラピラピタンタンも思った以上にかっこよくてハザードも活かしてるのがとてもいいけど、すでに情報が出ているあの最終形態はいったい…。いや、これはエグゼイドみたいにマキシマムからのムテキみたいにいちど溜めてからの~~っていうパターンでしょう??そうだと言ってよ!!でないと、クローズがかっこよすぎるじゃんか!!(バンバン

さて、今回の話はファイズといえばベルトの奪い合い。今作でもバリバリやっていく予定……そして、早速と敵にまわるデルタ。デルタってさ、やっぱり敵ライダーのほうがしっくりくるんだよねぇ。そう思いません?いや、まあドイツもコイツもヒーロー面じゃないというのは置いておいて。
ペガサスオルフェノクはゴッドイーターの知識が深い人ならあらまし正体は想像できるんじゃないかな?あと、オルフェノクは次回予告のマンティコアオルフェノクが控えていたりします。そして、あの仮面ライダーも……



感想お待ちしてます! では!


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第五話 前編


うわっ、久しぶりの更新すぎ……

一年ぶりってもうそんなに経ってたのかこれ…(汗)




『……』

 

極東支部よりはるかに離れた何処か。空はドームのような天井が闇を張り覆っている……

コンテナが乱立しているエリアにジェットスライガーはホバリングして半円を描きながら着地するとデルタは軽快に飛び降り、デルタフォンをベルトから引き抜いて変身解除。コンテナの列の影に佇む人影にズンズンと歩いていき仮面ライダーに変身していたとは思えない華奢な腕で掴みかかった。

 

「どういうことよ…アリサがここにいるなんて聞いてないんだけど!?」

 

『…』

 

「なんで私の仲間が…!!家族が…ッ!!!極東にいるの!?」

 

相手は異形…彼女と同じオルフェノクと呼ばれる同属。鬣が靡く獅子の頭部に翼を持つ姿は神話のキメラと呼ばれた魔獣のそれ…『マンティコアオルフェノク』。普通の人間なら見るだけで足がすくんで動けなくなるような迫力だが、少女は怒りを剥き出しで睨む。対して、マンティコアオルフェノクはつまらなさそうに鼻を鳴らしその手を振り払う。

 

『それがどうした?今、誰が目の前にいようと変わりは無い。さっさとベルトを渡せ。』

 

「……」

 

『お前には果たさなくちゃならないことがあるはずだ。その家族とやらのためにな。』

 

「…っ!」

 

そして、彼女はベルトを外し乱暴に突き出した。マンティコアオルフェノクがそれを受け取るのを確認すると、少女は背を向け去ろうとするがマンティコアオルフェノクは彼女を呼び止めた。

 

『待て。おかしな気を起こすなよ?俺達はオルフェノク……死人なんだ。決して、誰かに受け入れてもらえると思うな。』

 

「わかってる。こっちはあんたよりオルフェノクのキャリアは長いんだから。今更そんなこと……!」

 

『なら、構わない。取り敢えず、ベルトが手に入った……首領もお喜びになるだろう。これで、【帝王のベルト】は完成する。その時は俺とお前が選ばれる……覚悟はしておけ。』

 

気にさわることを偉そうに言い終えたあと、デルタギアを携えてマンティコアオルフェノクは翼を拡げ去っていく…。少女は見届けたあと、懐からペンダントを取り出すと蓋を開き中の写真を眺める。その写真には戸惑うような顔をしたアリサが写っており、彼女は胸に込み上げる思いを吐きださないようにこらえながら目を瞑った。

 

 

 

「…………アリサ…」

 

 

……ああ、せめて自分が『異形』じゃなければ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Φ Φ Φ Φ Φ

 

 

 

 

 

 

「…どけ!」

 

最早、巧の怒りは頂点に達していた。極東支部の廊下をマンモスの行進のように進み、その後ろを海堂が平謝りをしながら続く。目指すはラボラトリ……よくもまあ、こんなことしてくれたと一言言ったあとに一発ぶん殴ってやらなくては気が済まない。すれ違う職員やゴッドイーターたちを押し退け、ラボ前の扉。プシュッと開くやそのまま中央に座す狐目の主の胸ぐらを掴む。

 

「テメェ、随分と舐めた真似してくれたな博士?」

 

「…い、乾くん!?」

 

ペイラー榊、彼はいきなりの展開に慌てている様子だったが構わず揺さぶる。

 

「信じろと言った手前に、真っ先に裏切るなんて随分と良い根性してやがる。」

 

「お、落ち着きたまえ!上でのことはさっき報告を受けたばかりだ…!!私は何も関与していない!」

 

「いやぁ、俺達からベルトとったあとにこれじゃあ流石に信用出来ないよねぇ?」

 

海堂の言い分は最も。戦う手段であるファイズギアとカイザギアを託した直後の襲撃とあっては疑うなというのが無理な話。明らかにタイミングを狙ったとしか思えない。

 

「本当だ、信じてくれ!!私はなにひとつ知らなかった…!!誓って、君達を陥れたりなどは……」

 

「じゃあ、さっさとベルトを返せ!」

 

「……わかった。ここより下にある総合研究ラボで私の助手のリッカくんが持っているはずだ。分析は彼女に任せたからね。」

 

博士も今回ばかりは致命的すぎると観念したのか、ベルトの有りかを話すや、巧は彼を突き放して海堂と共にラボを後にする。ゲホッと咳をしながら見送ると眼鏡の位置を直して椅子へ改めて座りなおす。

 

(やれやれ……先手を打ってきたか。だが、私もそう易々と引き下がりはしないよ?)

 

 

 

 

 

 

☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆

 

 

 

 

 

「なあ、巧ぃ少し落ち着けって。眉間がすんごいことなってるぞ?こんなかんじに皺寄って……って元からか。」

 

「うるせぇ!!」

 

海堂を突き放し、本来なら技術者しか立ち入らないラボの深層へと入る巧。油やら鉄臭かったりと普通の人間なら近寄るのも御免被りたいところだが、あちこちにいるエンジニアたちを押し退けて目指すは最奥の部屋…ベルトが保管されているであろう場所。そこのゲートを手にかけるとシュンッと開き…

 

 

 

【5…5…5……Standing by】

 

 

「これで良いのかな…?よし、変身!!」

 

 

「「!?」」

 

 

その先のガラクタだらけの部屋ではゴーグルをつけた少女がファイズギアで今まさに変身シークエンスをとろうとしているではないか! ファイズギアはオルフェノクにしか扱えず、万一人間が使用した場合はリミッターが発動して下手をすれば死の危険性があるのだ。途端、巧の頭から怒りなどふっとび、少女の凶行を止めにかかる。

 

「おいバカ、よせ!!」

 

「えっ、ちょっと…!?」

 

なんとかファイズフォンを奪おうとするが、少女も抵抗し部屋のガラクタが散乱していき一部が海堂の足に当たってしまう。『いってぇ!?』とのたうちまわる海堂も加えてかなり混沌とした空気になるが、その拍子にファイズフォンがギアに装填され…

 

 

【ERROR】

 

 

「「あ…」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Φ Φ Φ Φ Φ

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、そんなことになってたの? 全然、気がつかなかった。」

 

「「…」」

 

楠木リッカ……それがファイズギアを無謀にも使った彼女の名前。ショートした勢いで巧もろとも壁に叩きつけられたりしたが、割りとピンピンしている…頑丈だな。この部屋は彼女の間借りしている研究室らしくあちこちに書類やら何かの機械類らしきガラクタなどが散乱しており、あとは赤やら青やらのチューブで繋がれた建造中の神機とおぼしき物体やら…

かなり若いがエンジニアらしいが…いくらなんでもこちらの世界でのオーパーツであるベルトを使うのは命知らずにも程がある。

 

「名残惜しいけど、返すね。いやぁ、やっぱり駄目だったか。イッシンくんにも手伝ってもらったけど同じだったし……」

 

「ダメ元でやってたのかよ。」

 

更に部屋の隅ではエラーによるショートを喰らったらしいイッシンの姿が…『スタングレネード20個で買収されたッス…』とぼやいている。こっちはゴッドイーターなので肉体はリッカより大丈夫だろう。

取り敢えず、ファイズギアとカイザギアを返却してもらう巧たち。

 

「良かったら、変身してからのデータをとりたいんだけど……」

 

「きこえなかったか? 俺はお前たちを信用していない。神機もベルトが手にはいったならもう要らねえ…世話になったな。」

 

「! まって!!」

 

早々と立ち去ろうとした巧だったが、リッカに呼び止められる。

 

 

「いくらそのベルトでも、オラクル由来じゃないからアラガミにはすぐに対抗できなくなるよ! それに、フェンリル出たところで行く宛は…」

 

「構うな。」

 

 

リッカを振り切り、ラボを後にする巧……と、そこへふらふらとアリサが現れる。ちょうどいい、短かったが挨拶でも済ましておくか。

 

 

「よう。」

 

「……? …ぁひ?」

 

「あ? どうした、寝惚けてんのか?」

 

「?? …ぅ?」

 

 

なんだ…様子が妙だ。視点もあってないし、へらへらとしていつもの凜とした顔立ちは何処へやら口元がだらけきっている。話も通じてる様子が無いし、……それとキツイ薬のような臭いもする…。

 

 

「おい!」

 

 

明らかにおかしい…。巧は咄嗟にゆらゆらする彼女の腕を掴む、その時だった。

 

 

 

 

 

――キュイイイィィィィィン

 

 

 

「!?」

 

 

 

巧の視界は目の前でスタングレネードが炸裂したように強い光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

To be continued.







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第五話 後

冗談だと思うだろ? 前回の更新、一年前だぜ?




――もーいーかい? もーいいーかい?

 

 

――まーだ、だよ!

 

 

 

 

――もーいいーかい? ――もーいいーかい…?

 

 

――まーだ、だよ!

 

 

 

 

――もーいいーかい?

 

 

 

――もーいーよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…かくれんぼ。棄てられたクローゼットに小さな体はすっぽり入る。ここならパパとママに簡単には見つからない。だから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……これがいけなかったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

グシャ!!

 

 

 

 

 

突然、低い唸り声と肉が潰れてくちゃくちゃと租借される音…。そして、私はクローゼットの隙間から見てしまった。真っ黒な巨大な影がパパとママを食べちゃうのを……

 

 

 

 

むしゃむしゃと、ただ口の中にほうばっていく…千切れた腕も、破けた白衣も、人間という容を崩して呑み込んでいく。

 

 

 

「やめて… やめて、食べないで……」

 

 

くちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃ。

 

最後にごっくん。もう血の跡しか残らない…。そして、こちらを向く…その顔は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやああああああああ やめてぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

 

唐突な悲鳴に何事かと、動揺に包まれるラウンジ。慌て手を離した巧だったが、完全に絵面は年頃の少女に手をあげようとしたオッサンである…アウト。否定しようとするが、ぞろぞろと集まるギャラリーたち…これはまずい。

 

 

「おい、違う!こいつは……」

 

「ああ、皆さん…お騒がせしました! 何でもありませんから!!ええ…!」

 

 

そんな時、何処からともなく現れてギャラリーたちを追いはらっていく白衣に黄色いバンダナの中年男。そのまま、そそくさとアリサを回収すると『いやあ、すみません。ご迷惑を。』…そう言い残して去っていった。

 

……何だったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

Φ Φ Φ Φ Φ

 

 

 

 

 

 

 

「P.T.S.D.?」

 

「恐らくな…」

 

 

暫しほとぼりが冷めるまで、リンドウの部屋に避難した巧。直属の上司である彼に話をきくと、どうやらアリサは精神的に不安定な要素があるらしく、かかりつけの医師と共にロシアからやってきたのだとか。極東支部に移った今でも、定期的な投薬に出撃後もカウンセリングが欠かせないという話。新型という鳴り物入りで来たわりには随分な壊れ物である。

 

 

「ま、別に珍しくないさ。特にこのご時世でこんな職場ならな……」

 

 

リンドウのフォローも確かにその通り。アラガミが跋扈するこの世界で肉親や知人を目の前で食いちぎられるなんて話はよくあるのだ。そして、人智を超えた神になぞられる化け物を生身で相手をするなんて、全うな精神でいられるほうが本来なら珍しい。ぶっちゃけ、この激戦区最前線こと極東支部の隊員たちは個性こそ強けれど、気さくな人間や親切な人間が多く摩りきれているような者は表向きは少ないように見える。

 

されど、この世界を生きる全ての人間が強くしなやかではないのだ。

 

 

「アリサの経歴をちょいとこっちも洗ってはみた。幼い時に両親を…ロシアでの親友だった同期をアラガミに喰われたらしい。しかも、本人の目の前でだ。」

 

「…」

 

大切な人間を目の前で奪われる… 作為的であれ事故であれ、その傷の痛みと深さはよく知る巧。しかも、アラガミに喰い殺される…しかも、肉親や親友となればまだ幼さと若さの半々である彼女の精神を歪めてしまうのは納得できる。異様なプライドを誇示したり、他人の死を嘲笑したり、……全ては自分の不安への裏返し。これなら、納得はできる。許しはしないが…

 

 

「そういえば、アリサの過去なんてまたどうして…。それに、お前さ…さっきは出ていくとか騒いでなかったか?」

 

「色々あった。もう少しここにいる。」

 

 

? …そうか。先の騒ぎはリンドウの耳にも入っていたので、気になってはいたが彼が残留するに越したことはない。

で、と次に巧は海堂に視線を向けた。

 

 

「あー、うん知ってたよ。」

 

 

やっぱりか。アリサと同じくロシアから来たならと思ったが予想通りだ。

 

 

「アリサちゃんの保護者とも知り合いだし、ぶっちゃけ任されてこの極東にくっついてきたんだ。」

 

 

巧と違い、ロシアに放り出された海堂はカイザギアと今は奪われたデルタギアを引っ提げて宛もなくさ迷っていたところを現地の女性医師に拾われた。その女性医師がアリサの親代わりであり、本業で手がまわらない自分に代わって彼女の様子を伝えてほしいという依頼を受け、わざわざ極東までついてきたのである。

 

 

「…でな、ロシアで亡くなったアリサの同期ってのがその保護者の女ドクターの妹だったんだ。それを切っ掛けに溝が出来ちまってな。今、あの娘に寄り添ってやれてるのは担当医のオオグルマ先生くらいか。」

 

 

…あの黄色いバンダナの中年男、あいつがオオグルマか。巧は先のアリサのフォローに入ったあの時に見た限りだが、はっきり言って胡散臭い部類というのが印象。しかも、年頃の少女についてまわるオッサンとか絵面がアウトである。 ……まあ、巧自身も歳なので下手をすれば他人事ではないが

 

 

「しかし、どうしてまだフェンリルに残る気に…?」

 

「……嫌な予感がした。今、ここを離れるべきじゃない…。きっと、何かが起こる気がする…よくないことがな。」

 

「…は?」

 

 

あれだけ、上司に突進してからの掌返し。理由が要は勘とか…海堂は呆気をとられていたが、巧は確信を持っていた。そして、巧の『勘』が実は全く別のものであることが明かされるのはまだ先である。

 

 

 

 

★★ ★★ ★★ ★★ ★★

 

 

 

 

 

 

……自分としたことが

 

 

あれから薬の副作用が切れたアリサは、ラウンジで起こした自らの騒ぎに頭をかかえながら神機保管庫にいた。アタッシュケースのような台座に陳列する神機たちの中から、彼女は自分の深紅の神機『アヴェンジャー』をとると、エレベーターで演習場を選択する。

 

 

(頭がまだモヤモヤする…気晴らしをしよう。)

 

 

よりによって、忌々しいあの男…乾巧に自分の情けない姿を見られてしまったのが腹立たしい。先日、殴られた借りも返していないのに! まあ、仕返しなんて子供っぽいことはさておき、こんな時は演習に限る。出撃して、アラガミをぶちのめせればそちらが良いが、第二部隊の防衛班なんぞと一緒の任務などされたらあそこの隊長からの小言が鬱陶しくてたまらない。第三部隊は…まあ、別の意味合いで避けたい。

というわけで、エレベーターを降りてやってきた演習場……だったわけだが

 

 

「お、新人! 訓練か?」

 

「げ…」

 

 

降りてすぐの待合室のベンチに腰かけていた男に顔をしかめる。黒髪のツンツン頭に紅いジャケットは、アリサが嫌がる防衛班の第二部隊隊長『大森 タツミ』だったのだから。気さくで明るい人物だが、自分とはソリがあわない…そんな表情を露骨に顔に出すものださらタツミも苦笑する。

 

 

「おいおい、そんな顔するなよ? 一応、階級と経験はお前さんより上だぞ?」

 

「…失礼しました。」

 

 

謝り方すら不服丸出し、人によっては鉄拳制裁が待っていてもおかしくないが幸い、タツミはそんな人間ではない。それにしても、彼は何をしていたのか…

 

 

「やれやれ。演習なら先客がいるぞ。もう少し経ってから出直したほうが良い。」

 

 

…先客? 怪訝な顔をしながら、厚いガラスの向こうの地下演習場を見れば確かに見覚えがある人影が。ソーマにコウタ……そして、自分と同じ新型ゴッドイーターであるイッシン。3人でヴァジュラのホログラムに連携しながら立ち向かっている。ああ、成る程。

 

 

「…そこそこ悪くない動きですね。」

 

「随分、上から目線だな。」

 

 

当たり前だ。演習のスコアや出撃した際のスコアだって、自分が圧倒的に上だ。同じ新型…?だから? 正直、戦績のデータをロシアに行く前に見せられた時は呆れを通りこして情けないとまで感じたほど…もっと精進してほしいと思ったくらいだ。

 

乾巧…?論外です。

 

 

「お前さんは参加しなくて良いのか?」

 

「私は別に。取り敢えず、邪魔にならなきゃそれで構わないので。」

 

 

アラガミを倒せればそれで良い。自分の両親を奪い喰らった奴等を殺し尽くせれば仲間などどうでも良いのだ…むしろ、役立たずなど居ないほうが良い。……目の前で死なれるくらいなら。

 

 

「…(そう、仲間なんて…。私は独りでいい。独りで良いんだ。)」

 

 

無意識に拳を握る… 頭の中で呪文のようにアラガミを殺すことだけを考える。私は『復讐者(アヴェンジャー)』…握る深紅の神機もその名を冠す。だから、馴れ合いなんて不要だ…滾る怒りのまま冷たい心で荒ぶる神々を殺す。それだけで……

 

 

自ずと眉間にシワが寄る…その深溝にあるものを追及するのは野暮だろうと弁えているタツミ。まあ、性分としてお節介な先輩風は吹かせてしまうのだが…と小さくため息をつく。

 

 

「そうだな…お前さんがお前さんなりに戦う理由はあるんだろうな。だけど、それは他の奴も同じ…『日銭を稼ぐため』『自分の強さを求めるため』『なりゆき』はたまた、『命のやり取りを楽しむため』なんて色んな奴がこの極東にはいる。…だから、お前さんが戦う理由がなんであれ否定はしない。ただ『俺達(ゴッドイーター)』の本分を見失うなよ?少なくともアイツらはそれに向き合っている。」

 

 

最後に、『…ま、こう言うのガラじゃないがな!』と言い残して去っていった。

 

残ったアリサはむっとした気持ちを抱きながら再び演習場を見下ろす…

 

 

 

 

「ゴッドイーターの本分?理由? …そんなの、アラガミを殺すこと以外にあるわけないじゃないですか。」

 

 

 

 

 

そう、自分は両親を奪った神々を喰らい尽くす…そのために『復讐者(ゴッドイーター)』になったのだから。

 

 

 

 

 

 

 



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