大学生ボッチの一人暮らし (なかのん。)
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大学生ボッチの一人暮らし
ハーメルン、初投稿です!
右も左もわかんないですがよろしくお願いしますー!
俺は大学進学と同時に一人暮らしをすることになった。
もちろん自ら望んでとかではない。
両親曰く、「大学生なんだから一人暮らしに慣れろ」とのことだがなんだか納得いかない。
一人暮らしになってしまうとなかなか我が愛しのマイシスター小町に会えない。
それに大学だって家からの方が近いのに。
小町成分が足りなくなる心配があるため、大量の「コマぐるみ(小町の人形)」を用意した。・・・別に「のんのんびより」見た影響とかではないのん!
そして俺の憂鬱な大学生活が始まった。
大学はボッチに優しい環境だと思った。
誰とも話さなくてもまあある程度はなんとかなるし、人が多いおかげで一人でも別に目立つことがない。
それに俺は自前で「ステルスヒッキー」を発動させているのでまず気づかれること自体稀なのだ。
まあ存在感なさ過ぎて気づかれたとき大体「うわっびっくりしたー」って顔されるんだけど・・・
一週間たった今でも「ストローとお箸付けますか?」とコンビニの店員さんに話しかけられるくらい。
そんなこんなで毎日最低限な会話しかしていない俺は今日も颯爽と帰宅する。(コミュ障)
・・・そろそろ小町ちゃん電話とか掛けてきてくれないかな。あれだよね?別に鬱陶しい兄が家からいなくなって清々したとかじゃないよね?もしそうだったらお兄ちゃん、立ち直れないよ・・・
まあ電話が来ても多分「友達できたの?」ってとどめ刺されるのがオチ。
自分のアパートに着いた。
はあ、今日も小町のいない家に帰ってきてしまった。ひょっこり遊びに来てたりしてないかな。
一人暮らしになって家族の有難さに気づいたどうも俺です。ん?シスコンをこじらせているだけだって?うるせえ!
脳内でノリツッコミしながら扉を開ける。
「おかえりなさい。比企谷君」
・・・おかしいな。雪ノ下雪乃が俺の家にいる。しかも部屋着だ。幻覚か?もしそうならば小町に代わってくれええええ!
「・・・悪かったわね。小町さんじゃなく私で。馬鹿なこと考えてる暇あったらさっさと着替えたら?」
「なんで俺の頭の中読んでんだよ。怖えから。後、なんで俺んち知ってんだよ!どうやって入ったんだ!そして何故平然とお茶沸かしてんだよ!」
「この前小町さんから電話が来て「お兄ちゃん、多分寂しくなっているころだと思うので暇なときにでも遊びに行ってあげてください」と言われて場所を教えてもらったの。それで今朝たまたまこのアパートから出ていく比企谷君が見えたものだから声をかけるべきか迷ったのだけれど、緊張して声をかけることができなかったわ。そして比企谷君が去った後に玄関を見たら鍵が刺さったままになっていたから私が預かっていたの。わざわざ返しに来たのだけれど、お礼も言えないのかしら?この男は」
勢い余って一気に質問してしまったが彼女はしっかりと答えてくれた。とても気になるワードがあったがどうやら俺んちが空き巣の被害にあうかもしれない危機を救ってくれたようだ。
「そうだったのか。すまん。ありがとう。なんか礼をしなくちゃな。俺にできることなら何でも言ってくれ」
そういうと雪ノ下は満足そうな顔をして俺に鍵を返してくれた。
そしてポケットから一本の鍵を取り出し、こう言った。
「それでは、自由にここに出入りする権利を頂くわ」
雪ノ下は合鍵を作っていた。マジぱねえっす。
「まあ特に困ることはないんだが時間とか考えてきてくれ。後、来るときは連絡の一本くらい入れてくれると助かる」
「そうね。でも私たちお互いの連絡先知らないじゃない」
「そうだったな・・交換してもらってもいいか?」
「いちいち確認なんてしなくてもいいじゃない。なんだかその恥ずかしいじゃない」
「お、おう」
こうして俺たちは知り合って3年たってやっとお互いの連絡先を交換した。
数日後
To.雪ノ下 雪乃
件名:今日なのだけれと。
本文:夕方くらいから来ても大丈夫かしら?一緒にお茶でも飲みましょう。
おお、雪ノ下からの初めてのメールだ。なんか文面が俺に似てるような。顔文字使わないところとか特に。
ちなみにあれから小町からの連絡は来ていない・・・
とりあえずなんも予定ないし大丈夫だ。と返信し、楽しみができた気がして少しニヤニヤしながら講義を受けに行った。変態みたいだな俺。
「お疲れさま。比企谷君。いじめられなかった?」
帰るとすでに雪ノ下は家に来ていた。そしていきなりひどいことを言ってきた。
「バッカお前、いじめられるどころか誰も俺の名前も知らないんだよ。大学はボッチの最後のフロンティアかもしれんな」
言ってて虚しくなってくる。一人暮らしになってからやたらと寂しがってたくせに。
「あなたは相変わらずね。サークルにでも入ればいいのに」
彼女は笑いながらそんなことを言ってくれる。高校3年の受験が終わったあたりからとても丸くなった気がする。無論体系などではなく、性格の話だ。
「いや、俺は別に大学で友達なんて作ろうなんてこれっぽっちも考えてねーよ。まあなんだその・・上辺だけの付き合いなんてごめんだしな」
そうね。と、彼女はふっと笑う。
「そういう雪ノ下は大学で友達できたのか?」
「いらないわ。多分私もあなたと同じ意見ね」
そうか。そういえば由比ヶ浜とも遊んだりしているようだしまだ大学生活は始まったばかりで、むしろ今からなくらいか。
その中に自分も居られたらいいな。と感傷に浸ってしまう。
雪ノ下と俺の関係は何と呼べばいいのだろうか。
俺が思考の海にダイビングしていると雪ノ下は拗ねたようにほっぺたを膨らませて「聞いているのかしら」と言っている。
「とりあえずお茶にしましょうかクッキーもあるから」
まあ、俺と雪ノ下の関係が何て呼べばいいかなんてそんなこと今はまだ考えなくてもいいような気がした。
書くのが遅いですが、更新頑張ります!
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大学生ボッチの一人暮らし 2
続きです!
俺が部屋の合鍵を雪ノ下に渡した事によって俺の生活に3つの変化が起きている。
・ほとんど毎日夕方になるとメールが来る。
・俺が家に帰り着くとすでに雪ノ下は家にいる。
・雪ノ下の家具が増えてきている気がする。
まるで同棲している恋人のような状況なんだが俺は勘違いなんてしない。
第一、友達ですら断られるのに恋人になどなれるはずがない。
そんなこと分かり切っているからこそ俺は今日も普段と変わらず雪ノ下と接していられる気がする。
「今日の夕飯は何がいいかしら?」
「うまいもんなら何でもいい」
雪ノ下は「そう」と言うと台所へ向かった。
今日も雪ノ下の旨い飯を食えると思うと心がピョンピョンしてしまう。
飯ができるまでに風呂でも沸かしとくかな。
風呂場から戻ると俺の携帯と雪ノ下の携帯がほぼ同時に鳴った。
由比ヶ浜からのメールだった。何だろう珍しいな。
To.★☆ゆい☆★
件名:やっはろー!
久しぶり!さっきいろはちゃんと偶然会って懐かしい話してたらヒッキーとゆきのんも呼んで4人でご飯食べにいこーって話になってるんだけど行かない!?( *´艸`)
なるほど。ちょうど雪ノ下と俺は一緒にいるし行けるっちゃいけるんだが、彼女は今夕飯を作ってくれている。
しかも上機嫌に鼻歌も歌っている。でも由比ヶ浜からの誘いだし行くって言いそうだな。
聞くだけ無駄だろうが一応聞いてみるか。
「雪ノ下由比ヶ浜からメールで飯食いに行こうって来てるけどどうする?」
すると鼻歌を止めて少し沈んだ声で雪ノ下は答えた。
「私は別に構わないけれど…あなたは行きたいの?」
あれ?なんか予想していた答えと少し違った。由比ヶ浜に優しい雪ノ下はてっきりすんなりそっちに行くと思っていたんだが。
予想を外すとは雪ノ下検定1級も返上かな……
彼女はノリノリで料理を作っていた。そこに「外で食べよう」なんて言われたら誰でも思うところはあるだろう。
「まあせっかくお前が作ってくれてるんだし断っておこうぜ」
そう言うと雪ノ下の瞳に光が差した。
「そ、そう。では由比ヶ浜さんと一色さんには悪いけれど断る方向で」
心なしか彼女の顔が赤い気がした。
そんなに今日の飯は自信作だったのか。そうか楽しみだな。あいつらにも……ってそうか。その手があったか!
「雪ノ下、俺ん家にあいつら呼べばみんなで飯食えるぞ!俺って頭いいな。呼んでもいいか?」
高校時代、葉山に「みんなってなんだよ。母ちゃんにみんな持ってるよーって物ねだるときに使うみんなかよ」とか皮肉を垂れていた俺がまさか「みんな」って言葉を使うことになるとは。人間どうなるか分かったもんじゃない。
「…まあ貴方が構わないのなら別にいいのだけれど!」
何故か雪ノ下は不機嫌になってしまった。なんだよナイスアイディアだと思ったのに何が不満だったのか分からなかった。
まあ、とりあえず返信っと。
由比ヶ浜と一色はすぐに来た。
「ヒッキー、ゆきのん!久しぶりやっはろー!」
「雪ノ下先輩とせんぱい、お久しぶりですー」
そして俺の家に入るなり部屋の中を一通り見まわしてとりあえずマーキングと言わんばかりに二人はベッドに寝そべった。おい、何してんだよ雪ノ下めっちゃ見てるし…
「ねえ、ヒッキーゆきのんと同棲してるの!?ベッドからゆきのんの匂いがするし…」ウルウル
「せんぱい、雪ノ下先輩とどういう関係なんですか?」ニッコリ
いきなりとんでもないことを口走った。
「あ、貴方たちね、言っていいことと悪いことがあるのよ。私は同棲なんてしていないし貴方たちが想像しているような関係ではないもの…ね?比企谷くん?」
なんでちょっと動揺してんだよ。
まあ、間違ったことは言っていないので俺は必死に縦に首を振る。
「そうだ。同棲なんてしていない。ただ雪ノ下が部屋の合鍵持ってて一緒に飯食ったりダラダラ生活してるだけだっつーの。勘違いしないでよねっ」
「勘違いしないでよねっ」のとこで一色に「うわっ」って言われた。いつも通り快調快調!
繰り返すが俺と彼女はそういう関係ではない。
ただどういう関係なのかは俺もわかっていないのだが。
「それにしても随分とゆきのんの荷物が多い気がするんだけど」
そう言われた雪ノ下はビクッと反応した。
これに関しては俺も知りたいと思っていた。
「そ、それは、そう。無いよりあることに越したことはないからよ。調理器具とか…他はついでよ。やましいことなんて無いわ」
俺は成程。と納得してしまっているのだが二人は違うらしい。
「ふーーーーん?本当に?ゆきのん」
由比ヶ浜は雪ノ下をジト目で見た。雪ノ下は居心地が悪そうに俺の後ろに隠れた。
「せんぱい、本当にやましいことは無いんですか?ここまで来て逆になんもないと言われても流石に怪しいんですけど」
まずいな。これが修羅場ってやつなのか?ん?この修羅場って俺が原因なのか?
とにかくこの場を納めねば…葉山のように「THE ゾーン」が使えれば…まあ、そんなもんただの幻想なんだけど。あいつはあいつで苦悩してたし。
「一色、バカなことを言うもんじゃねえぞ。さっきも言ったじゃねえか。やましいことなんて本当に何もないんだ。そもそも俺と雪ノ下がそういう関係に見えるか?勘違いも大概に…痛って!」
後ろで身を隠していたはずの雪ノ下にわき腹を手刀で殴られた。
なんだよ!かくまってやってたのに!
雪ノ下はまるでゴミを見るかのような目で倒れた俺を見て、由比ヶ浜たちに呼びかける。
「そこで倒れている愚かなゴミ…いえ、比企谷君の事は放っておいてご飯にしましょう。食べながらでも私からもう一度説明するから」
そういうと二人は納得し、喜んでガールズトークをしながら旨い飯を食っていた。
一方俺はというと雪ノ下の会心の一撃が上手くツボにクリーンヒットしたせいで倒れっぱなしだった。
おかげさまで飯も食えていない。腹減ったな。
だが倒れっぱなしだったこともあり3人のパンティを見ることに成功した。変態で最低だな俺。だが、飯も食わせてもらえなかったんだこのくらいの幸せは許してほしい。
ちなみにみんなピンクではなかった。
「なるほどね~。それでゆきのんがヒッキーの部屋の合鍵をゲットしたんだ。でもヒッキーはゆきのんに対して全然そんな感じになってないとか…分かるよゆきのん!」
「ふむふむ成程。せんぱいガード固いように見えて案外チョロ…なかなか強敵ですからね。心中察し致します雪ノ下先輩」
俺が復活するまでの間、雪ノ下は二人にちゃんと説明してくれていたようだ(俺はパンティと闘っていた)
そして二人の反応も疑いから呆れとと同情になっていた。なんで?
話し終えた雪ノ下もなんか落ち込んでいて気まずい空気になっていた。
しまいにゃ俺のせいでした。って感じになっていた。
「待て、俺は悪くない。社会が悪い」
なにがあったかは知らんが俺は悪くない。弁解しとく事に越した事はない。
「いえいえせんぱいが悪いですよ100パー」
「ヒッキーが悪いよ!絶対!」
二人に思いっきり非難されてしまった。
「酷いわ比企谷君」
雪ノ下まで言い出した。なんで泣きそうになってんだよ。俺なんかしたっけ?まさかパンティの事か!?
多数決したら3対1で俺が悪いってことになってしまう。
そうか。これが僕たちの不等式。僕たちの不当式…
なぜ自分が悪いのかわからないのでとりあえず聞いてみる。
「何が悪いんだよ?雪ノ下の事か?俺と雪ノ下の間にやましいことなんて一切ないぞ。まずありえない」
とりあえずそう断言した。
すると雪ノ下は何も言わず立ち上がり部屋から出て行ってしまった。
頬に光るものが見えた気がした。
「ゆきのん!?ちょ、ヒッキーもっと女心考えるし!」
由比ヶ浜は雪ノ下を追いかけて行ってしまった。
何が起こったのか全然状況を理解できていない。
何故俺は責められたのだろうか。
何故雪ノ下は泣いて出て行ったのだろうか。
女心?一番ないと思っていた結論にしか行きつかない。
むしろその結論以外でこの状況になることはないだろう。
ならば俺が間違えていたのか。
そうだとしても分からないことがある。
「せんぱい」
いきなり耳元に甘い吐息がかかる。
「なんだ一色か。お前は雪ノ下を追いかけて行ったりしないのか?」
「雪ノ下先輩の涙の理由、分かりましたか?」
質問に質問で返してきやがった。
「まあ何となくは。由比ヶ浜にあんなこと言われたらな。それにその理由でしか雪ノ下が涙を流す理由が思いつかん。これが勘違いだったらもう恥ずかしくて自殺するしかなくなるまであるけどな。俺も今から追いかける。お前はどうする?」
即答すると一色は少し寂しそうな顔をした。そして首を横に振った。
何故かはわからないがそんな事考えてる余裕がなかった俺は「分かった」と短く返事して走り出す。
しかし一色は走りだした俺の肩をぐいっと引っ張り床に押し倒したのだ。
瞬間、唇に柔らかいものが触れる。
口呼吸ができない。
鼻で呼吸すると一色の匂いがする。
何かで口が塞がれてしまっている。
目の前に少し潤んだ一色の瞳がある。
つまり唇を奪われたのだ。
「雪ノ下先輩は多分、せんぱいとこういう関係になりたかったんですよ」
「私もせんぱいからこういうことされたいんです」
「お部屋の合鍵だって私も欲しいです」
「だからせんぱい、私と付き合ってください」
更新遅いと思いますがよろしくお願いします!
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大学生ボッチの一人暮らし 3
続きです!!
なんだか今日は疲れた。だが完全に目は冴えていて、横になっていても全然眠れる気がしない。
雪ノ下の涙と一色からのキスと告白が脳裏に焼き付いて離れない。俺のファーストキスはあっさりと奪われてしまった。
一色は告白をした後、「返事は今すぐじゃなくてもいいです、雪ノ下先輩の事もありますし、そろそろこのぬるま湯に浸るのはやめにしましょう。しっかりと考えてくださいね?」と言い残し帰って行った。
恐らく一色は、ずっと進んでいなかった俺たちの関係を進めるのは今しかないと踏んでの告白なのかもしれない。
俺は一体どうしたいのだろうか。友人が欲しい?恋人が欲しい?違う。本物が欲しいのだ。
目を閉じて寝ることもできずに考えているとインターホンが鳴った。時刻は午前1時過ぎ。
誰だろうこんな時間に。
今は一人でいたい、だから出ない。
ピンポーン ピンポーン ピンポーン
うるせえ、意地でも出ねえぞ。
ピピピピピピピピピピピピピピーンポーン
連打とか普通に迷惑すぎるだろう。そう思っているとドアの向こうから聞き覚えのある声が聞こえた。
「ごみいちゃん、起きてんのは分かってるんだぞー。寝てたとしても起きてー」
その声を聴いた瞬間、体は勝手に動いていた。鍵を開け妹を抱きしめる。会いたくて会いたくて仕方がなかった!愛しきマイシスター!
「小町!お前こんな時間に外出歩いてんじゃねえよ!補導でもされたいのか!?そして急にどうしたんだよ!」
すると、小町は鬱陶しいと言わんばかりに俺から離れた。
「いやー、結衣さんから『雪乃さん来てない?』っていう内容のメールが来てたからお兄ちゃんに連絡したんだよ!」
「そうだったのか…すまん、携帯の充電が切れてた…」
これは嘘だ。
一人になりたかったからあえて電源を切っていた。
「…それはもういいよ。それよりさ、わざわざ家を抜け出してきた小町に何か言うことないの?」
「ありがとう小町。事情は大体由比ヶ浜に聞いたのか?」
「うん、小町的にごみいちゃんがゴミなのは今に始まったことじゃないし、いつかこうなるのは何となく分かってたから仕方ないかなーって思ったけど、どうするの?」
どうするのって……そんな軽い感じで聞かれてスルッと答えが出せるような問なら俺はこんなに悩まないだろう。
しかも一色の事もある。容易に答えは出てこない。
「分からん。でも何とかする…しかないだろう」
踏み出してくれた一色のためにも。
「お兄ちゃん、小町になんか隠してない?」
「な、なんでそう思うんだ?」
背筋に冷や汗が伝った。一色の事は誰にも言いたくない。
「……まあ言いたくないなら無理に言わなくていいケド。どうせ誰かの為なんでしょ?」
俺の考える事はお見通しか。お手上げだよ、愛しきマイシスター。
突然だが俺は今、雪ノ下のマンションのオートロックドアの前にいる。
何故かって?小町に言われたからここにいる。
「今すぐに雪乃さんに会いに行って」
小町はお願いを言いに来たのだ。これを言う為だけにわざわざ来てくれたのだ。
ならば聞かないわけがない。
いや違うな。これも小町の為という言い訳をしているだけだ。
全く、一人で悶々と考えていたって仕方がないじゃないか。
なんて言ったって俺はもう一人ボッチではないのだから。
そろそろ俺がかっこ悪い奴じゃないって証明してやるよ。
覚悟を決めてオートロックマンションのインターホンを押す。
勢いのままに来ちゃったけど寝てたらどうしよう。
「はい」
「お、俺だ、こんな時間にすまん。ちょっといいか?」
「駄目よ。貴方に今会ってしまったらきっと貴方を傷つけてしまうから」
「じゃあこのままでもいい。聞いてくれよ雪ノ下」
「………」
雪ノ下は無言だ。
だけど切らないってことは聞いてくれるというせめてもの意思表示なのだろう。
「俺は今夜、踏み出そうと決心したんだ」
俺たちの関係をしっかりと言葉で表したい。
「そう決意するに至った出来事はいくつかあるが、一番大きかったのは一色からの告白だ」
それを言ったとたん、通話機越しに鼻をすする声が聞こえてくる。
「やめて」
「駄目だ、やめない。ここでやめたら今後お前には一生近づけないから」
「俺は一色にファーストキスを…」
「お願いやめて」
お互い無言になる。雪ノ下はもう傷つくのが嫌なんだろう。だがあえて言わせてもらおう。
青春に傷はあるくらいがちょうどいいんだ。
「なぁ雪ノ下、俺には好きな女の子がいるんだ」
「………」
もう制止の声はない。
ただ雪ノ下が泣いているのだけは分かった。
「俺が好きなやつは弱いんだ。いつもは強がっているだけなんだ。そして、俺はどっちのそいつの事も好きだと気づいたんだ」
もう後には戻れない。
開いた口は閉じてはくれない。全く、余計な口だな。
「しかも挙句の果てには合鍵なんて作ってくるし。なあ、酷いと思わないか?こんなにドキドキしていたのに今夜その気持ちに気づくなんて」
俺は今泣いてしまいそうだ。
駄目だ。ここで泣いたら絶対言えないだろう。
今しかないんだ。その為にここまで来たんだろ。
「俺は………」
声が震えているのが自分でもわかった。
確か、前にも似たことをやっていた気がする。
「俺はな……」
こんな泣きそうな顔をして、震えた声を出して、震える足で立って。
かっこいいの「か」の字もないな。俺らしいな本当。
「俺は、雪ノ下雪乃が欲しい」
そう言った俺の声は自分でも驚くくらいすっきり出てきた。
足の震えはもう収まった。
だけど涙は止まらなかった。
この続きは、少し時間がかかると思いますがよろしくです!
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大学生ボッチの一人暮らし 4
遅くなりましたが更新です!
よろしくお願いします!
私は比企谷八幡の事が好き。
この気持ちに気づいたのは高校の卒業式の日だった。
卒業式の日に由比ヶ浜さんが比企谷君に告白していたところを私は見てしまったのだ。
由比ヶ浜さんの気持ちは薄々気づいていたから驚きはしなかったけれど、何故か胸にチクリと痛みが走ったのだ。
この胸の痛みの正体が分からないまま陰から二人の様子を見ていた。
比企谷君が何かを言った瞬間、由比ヶ浜さんが泣き出してしまったのを見て何となく駄目だったのが分かった。
そして、少し会話をした後二人は別れた。
何故かほっと胸を撫でおろしている自分に気づき、そしてもう一つの事実にも気づく。
それから大学に通い始めてからも比企谷君の事が頭から離れることは無かった。
慣れた手つきで夕飯を作っている。
いつか比企谷君と一緒に私が作った夕飯を食べられたらいいな。
そんなことを考えていると指に鋭い痛みが走った。包丁で切ったのだ。思っていたよりも傷はそこまで深くないが切った部分に消毒液をつけながら私は考えていた。
駄目だ…今の私。ここまで自分が恋愛に弱いなんて考えてもみなかった。
彼の事ばかり考えている。ずっと上の空な感じで何も手につかない。早急に何とかしなくては。
とりあえず彼に連絡を取りたいのだが、私はメールアドレスも電話番号も知らないのだ。
彼は聞いてこなかったし、私も聞いたことは無かった。改めて由比ヶ浜さんのコミュニケーション能力は凄いと思った。
とりあえず、夕飯を作ってから考える事にしよう。
夕飯を片付けお風呂にも入り、私は電話を掛けた。
「もしもし、お久しぶりです! 小町です!」
「小町さん、お久しぶり。こんな時間に電話して申し訳ないのだけれど……比企谷君は……」
「あ、兄なら大学入る時に一人暮らし始めたので家にはいないですよ! よかったら連絡先、教えましょうか?」
え? 一人暮らしを始めたの? 彼が? とても驚いたけれどそれなら話が早いわ。
「いいえ、彼の今住んでいる住所を聞いてもいいかしら?」
連絡先は本人から直接聞きたいし、直接話したいから。
次の日、早起きして教えてもらった住所を目指した。
結構近い場所にある為、すぐに到着した。
するとちょうど彼が家から出てきた。相変わらず目は腐っていて何も変わっていなかった。
「そんな簡単に人が変わるかよ」とか言っていた彼がすぐに変わるわけがないわね。
ここまで来たら話しかけに行かなければと思ったが、緊張で足がすくんで動けないでいた。情けない…。
結局、話しかけるどころか一歩も動けず彼はさっさと行ってしまった。
私は一体何をしているのだろう。自分の意気地の無さに絶望しながらもう一度顔を上げると、彼が出てきたドアに鍵が刺さっているのが分かった。
そうだ、あれを口実に彼に会える。…そうだ、合鍵を作りに行こう。
それから毎日彼の家に行った。
やっと連絡先の交換もできたし、夕飯も作って一緒に食べている。
だけど彼と私の関係は前と全然変わることは無かったけれど、今はこうしていられるだけでとても充実しているし思いを伝えるのはまだ早いと思っていた。
だが、由比ヶ浜さんと一色さんが彼の家に来たとき我慢が出来なくなった。
好きな人から「全然意識していない」みたいなことを言われるのがこんなに辛いとは思っていなかった。
だから私は泣きながらその場から逃げ出してしまった。
体力がないので疲れて歩いていたところを由比ヶ浜さんに捕まった。
「ゆきのん、ヒッキーのこと好きなんだよね?だったら、逃げちゃだめだよ!ヒッキー鈍感だし……言わなきゃ分かんないことだってあるんだよ!」
それは分かっている。
だけどもし思いを告げ、彼にオーケーを貰えたとしても由比ヶ浜さんに合わせる顔がない。
ノーだった場合、彼と今後どういう関係になるのか分からなくて怖かった。
結局私はあくまでも彼から言って来てくれることを期待していただけなのかもしれない。
「私は、彼にふさわしくなんてない、とても卑怯な女よ……。由比ヶ浜さんの気持ちを知っていたのに相談もしなかった……」
言っていて自分がとても醜いと思った。
「違うよ。これはゆきのんとヒッキーの事なんだから私は口を出せる立場じゃない。だけどこれだけは言わせて。……悔しいけどヒッキーは多分ゆきのんのこと好きだと思うよ。だからさゆきのん、逃げないで」
そう言ってくれた由比ヶ浜さんは泣きながら笑っていた。
由比ヶ浜さんと別れて歩いていると電話が来た。
画面には一色いろはと表示されている。
「……はい」
「雪ノ下先輩、私、先輩に告白してきました」
「そう……」
「それだけでした。それではお休みです」
電話が切れた後もそのまま立ち尽くしていて頭の中が真っ白だった。
由比ヶ浜さんも一色さんも自分の気持ちをしっかりと彼に伝えた。
だけど私は…
本当に自分がちっぽけに思えてきて、枯れたと思っていた涙がまた溢れてきた。
帰ってからは何もする気が起きず二時間くらいぼーっとしていた。
彼は一色さんの事どうするのかしら……。私はどんな顔をして彼に会えばいいのだろうか。
いきなりインターフォンが鳴り、反射的にビクッとしてしまった。
かなり遅い時間に何だろう怖い。
恐る恐るインターフォンのカメラを見るとそこにいたのは彼だった。
「はい」
「お、俺だ、こんな時間にすまん。ちょっといいか?」
「駄目よ。今貴方に会ってしまったらきっと貴方を傷つけてしまうから」
今の精神状態で彼と話してしまったら何を言ってしまうのか自分でも分からない。恐らくみっともなく泣きじゃくる事になると思うけれど。
「じゃあこのままでもいいから聞いてくれよ雪ノ下」
本音を言うと聞きたくない。だけど由比ヶ浜さんに言われた言葉を思い出して逃げない方を選ぶ。
「俺は今夜踏み出そうと決心したんだ」
消極的な彼から発せられたとは思えない言葉だった。
「そう決意するに至った出来事はいくつかあるが、一番大きかったのは一色からの告白だ」
駄目だ、もう聞いていられない。また涙が出てくる。
「やめて」
「駄目だ、やめない。ここでやめたら今後お前には一生近づけないから」
確かにここで引いたら私たちの関係は終わってしまう。
「俺は一色にファーストキスを……」
「お願いやめて」
もう一回言ってしまった。だけどそんなこと彼の口から聞きたくはなかった。
成程、彼は一色さんの事が……。
悔しさや色んな感情が私の中で渦巻いていた。
私はもうどんな言葉を彼の口から聞いても多分泣いてしまうだろう。
「なあ雪ノ下、俺には好きな女の子がいるんだ」
もう分かっている。その女の子が私ではないことを。
聞くまでもないことなのだ、私は何も変わっていない、弱くて脆くて怯えているだけなのだ。
傷つくのが怖いだけ、私は卑怯者、そんな自分が嫌で嫌で仕方がない。
お互いが無言の状態を破ったのは彼だった。
「俺が好きなやつは弱いんだ。いつもは強がっているだけなんだ。そして俺はどっちのそいつの事も好きだと気づいたんだ」
「挙句の果てには合鍵なんて作ってくるし。なあ、酷いと思わないか?こんなにドキドキしていたのに今夜その気持ちに気づくなんて」
彼は話し始めるとどんどん涙声になっていっている。
「俺は…………」
こんなシーンが前にもあったような気がする。
確かあの時も私は逃げ出した。だから私はもう逃げない。
「俺はな…………」
次の言葉を言おうと必死に歯を食いしばっている彼の顔はとても泣き出しそうで、それでもかっこよかった。誰の事をどんな気持ちで話しているのかは分からない。
「俺は、雪ノ下雪乃が欲しい」
その言葉を聞いた瞬間、私の口は勝手に動いていた。
「……はい」
「私は卑怯な女よ?」
「それでも欲しい」
「自分から告白する勇気なんてなかったくせに逃げ出したのよ?私」
「だからここまで追いかけてきたんだろーが」
「欲しいというのはどういう意味かしら?」
「そ、その……恋人として……というか本物として」
「何よそれ」
「とゆーかお前は俺のどこが好きなんだよ」
「そうね……優しいけど不器用なところかしらね。あなたは?」
「さっき言ったじゃねーか。恥ずかしいからもう言わん」
「そう……なら今すぐ私の上からどいてもらえるかしら?」
はい、という訳で続きます!
続きも頑張って書きます!
ではでは!
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