創真が幼児化しました (ザルバ)
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創真が幼児化しました

ある日のことであった。極星寮で朝食を寮生一同が集まっている中、創真だけがまだ来てなかった。

「幸平、まだ起きないね。」

「そうね。」

 吉野の言葉に凉子は相槌をうつ。

「恵ちゃん、起こしてきてくれないかな?」

 一色が恵に頼むと恵は承諾する。

 

 恵は朝食を食べ終え、自分の隣の部屋の創真の部屋の扉をノックする。

「………………………」

しかし、返事はなかった。

「そ、創真君、は、入るよ。」

恵はおそるおそる創真の部屋に入ると創真の姿はなかった。ベットには、小さな膨らみがあった。

「な、なにかな……………これ?」

 恵はベッドの布団をめくるとそこには創真と同じ髪をした子供の姿があった。

「んん…………」

 布団の中にいた少年が目をこすりながら起きる。

「あれ、田所?なんでそんなにおっきくなってんだ?」

 その瞬間、恵の中である仮説が立てられた。

(も、もしかして……)

 恵はおそるおそる聞く。

「な、名前を教えてくれないかな?」

「幸平創真だよ。」

「え………………ええええええええええええええええぇ!?!?」

 恵の声が極星寮に響き渡った。

 

「で、叫んだと。」

「はい………ごめんなさい。」

 恵は極星寮一同に謝罪する。

「まーまー伊武崎、仕方ないって。てか実際あたしたちも驚いているけど。」

 吉野の言葉に一同頷く。

「一色先輩、何か心当たりありませんか?」

「う〜ん………あっ!」

「何かあるのですね!」

 丸井が食いつく。

「昨日………」

 

『創真君、このハーブティーを飲んでくれないかい?』

『なんすか、それ』

『知り合いが珍しいからと言って分けてくれたんだ。さぁ。』

 

「—――て、ことがあっただ。」

『………………………』

 恵は無言で創真のゲソ料理を冷蔵庫から取り出す。

「め、恵ちゃん?」

 吉野と凉子が一色の動きを封じる。

「ふ、二人とも!なにをするだい!」

 恵は何かしらの力で一色の口を無理やり開け、ゲソ料理を口に押し込む。

「こ、これは宇宙を飲み込むほどの不味さだ――――――!!!!」

 一色、死亡

「って!幸平がいない!」

「さ、さっきの騒動の間に何処か行っちゃった!!」

 恵と吉野は慌てる。

 一方創真はというと・・・・・・・・・・鹿の背中で寝て何処かに行ってました。

 

 鹿がとあるゼミの前で止まりました。

「ん?」

鹿にアキラは気づく。

「んでこんなとこに鹿が?てか背中に何か……………て、子供じゃないか!?」

 アキラは創真を抱き抱える。

「なんで子供が………ん?なんか見たことある顔だな。」

 アキラはそう言いながらゼミに創真を入れた。

「お〜い、潤。なんか鹿の背中に子供がいたから連れて来た。」

「なにを変なこと言ってるの葉山君?」

 いつものように床で調味料を調合している汐見がアキラの言葉を疑った。

「潤、毎回言っているが床で調味料を調合するな。」

「ごめんなさい……………じゃなくて、その子は?」

「だからさっき言っただろ。」

汐見は創真を近くでよく見る。

「……………葉山君、どこかで見た顔なんだけど気のせいかな?」

「ん?……………………言われてみれば確かに。てかこの顔の傷、まさか……………………」

二人が近くでよく見ようとした途端に創真が目を覚ました。

「………んん?お兄ちゃんお姉ちゃんだぁれ?」

「うおっ!」

「お、起きた!」

 二人は驚いた。

「?」

創真は何故二人が驚いたのかわからなかった。

「よ、よう…………俺は葉山アキラだ。こっちは汐見潤だ。坊主、名前はなんて言うんだ?」

「名前?ゆきひらそうまだよ。」

(やっぱりか――――!!!)

二人の予想は見事に的中した。

「おい、潤。どうしたらいいだよ?」

「わ、私がわかるわけないよ!」

二人は創真に聞こえないくらいの大きさの声で話す。すると創真がアキラの服をクイクイと引っ張る。

「お兄ちゃん、ここどこ?」

(お、お兄ちゃん!?)

創真の言葉にさらなる衝撃を受けるアキラ。

「どうしたの?」

「い、いや何でもないぞ。俺の名は葉山アキラだ。で、こっちが・・・・」

「汐見潤だよ。あっと、もう一度聞くけど幸平創真君でいいんだよね?」

「うん。」

「そっか・・・・・・・・・・そっか・・・・・・・・・・才波先輩の息子の幸平創真君なんだよね。ははは・・・・・・・・・」

 潤は渇いた声で笑う。

「(そういやコイツの親父に潤は散々な目に遭ったんだよな?ちょっと聞いてみるか。)なあ、ちょっといいか?」

「な~に?」

「お前の親父・・・・・・・いや、お父さんはどこでどんな仕事してんだ?」

「“ゆきひら”で働いてるよ。」

「そうか・・・・・・」

「でも・・・」

「?」

「たまに知らない言葉の電話が来たり、いろんなお国の料理人さんと一緒に写ってる写真を見るよ。」

(どういう親父だよ!)

 アキラは全力でツッコミを入れたかったが心の内に収めた。

「とりあえず・・・・・・・・田所の奴に電話して確かめてみっか。」

 アキラはそう言うとケータイを取り出し恵に電話を掛ける。

「もしもし、田所か?」

『葉山君、ごめん今ちょっと・・・』

「あ~・・・・多分お前が探してんのってちっこい幸平か?」

『そ、それを何で知ってるの!』

「いや、今こっちにいるんでな。で、なんでこいつちっさくなってんだ?」

 恵は事情を説明する。

「はぁ・・・・・・とりあえずそのハーブは一回こっちで預かる。他にも副作用ないかわからんからな。」

『うん、わかった。一色先輩が起きたら伝えておくね。』

「ちょっと待て、今起きたらって言わなかったか?なんで寝てんだよ。」

『創真君が作った失敗ゲソ料理を食べさせました。』

「・・・・・・・・・・・そうか。」

 アキラはそれ以上言葉を述べなかった。

「まあ、早くこっちに来てこいつを・・・・・・・・」

 アキラは創真がいる方向に視線を移すがそこに創真はいなかった。アキラは辺りを見渡すが創真の姿は見当たらなかった。

「おい、潤。幸平がどこ行ったか見ていないか?」

「え?さっきまでそこに・・・・・・・・・・・・あれ?」

 潤も辺りを見渡すがどこにも見当たらない。そして占めてあったはずの扉が開いてあることに気づいた。

「「まさかっ!?」」

 二人は慌てて外に出ると足元に鹿のであろう足跡があった。

『ど、どうしたの?』

「悪い田所!幸平の奴が鹿に乗ってまたどっかに行った!」

「え・・・・・・・・・ええぇぇぇぇぇぇぇ!」

 一方その頃幸平は・・・・・・・

「ぱっかぱか~、ぱっかぱか~。」

 鹿の後ろで一人楽しんでいた。

 

 次に鹿が止まったのは遠月学園内の中庭のベンチであった。創真は鹿から降り、ベンチに座る。太陽からの温かさが心地よく、創真はうつらうつらと眠ってしまう。

「ん?なんでこんなところに子供がいるんだ?」

「どうしたの兄ちゃん。」

「イサミ、あそこを見ろ。」

 タクミが指さす方向には創真の姿があった。

「子供だね。僕たちより小さい。」

「ああ。だがなんでここに・・・・・・・・・・そもそも誰なんだ?」

 アルディーニ兄弟が幸平を近くで見る。

「なんかコイツ・・・・・・・・・・幸平に似ていないか?」

「そういわれればどことなく・・・・・でもこんなところで寝てたら風邪引いちゃうから起こさないと。」

 イサミは創真の身体を揺すり起こしてみるが、全く起きる気配はなかった。

「どうしよう、兄ちゃん?」

「とりあえずここに置いておくわけにはいかないだろ。幸平のいる極星寮に連れて行くぞ。」

「うん。」

 イサミは創真を背負い、極星寮へ向かった。

 

「結構遠いね、兄ちゃん。」

「そうだな・・・・・・・と言うかここまで遠いと嫌でも体力が付きそうだな。っと!道も整備されてないし。」

 アルディーニ兄弟は極星寮へ向かう道中、愚痴をこぼしていた。その距離は自転車を使うほどの距離である。おまけに道も整備されていないためところどころに石があり、時折足を取られる。

「あれ?タクミ君?」

「君は・・・・・・・・・・幸平といつもペアを組んでいる田所君じゃないか。」

「こんにちは。」

 恵にタクミが気付き、イサミが挨拶をする。

「こんにちわ。あ、ちょっと聞いていいかな?」

「なんだ?」

「えっと・・・・・・・・・・・その・・・・・・・・・・そ、創真君に似た子供見なかった?」

「それって・・・・・・・・・・・こいつのことか?」

 イサミが背負っている創真を見せる。

「そ、創真君!!ど、どこで見つけてくれたの!」

「学園の中庭でだ。コイツ・・・・・・・・・・・・幸平だったんだな。」

「すごいね、兄ちゃん。人間が幼児化するなんて。」

「イサミ・・・・・・・・・・今それを言うことか?」

 二人は恵から事情を聞いた。

「大変だな・・・・・・・・・・・・その・・・・・・・・・・君の寮は。」

「個性が強いね・・・・・・・・・」

「うん・・・・・・・・二人の心遣いが嬉しいよ。」

 

時間は早く過ぎ、夜になった。創真捜索に協力をしてくれたアキラとアルディーニ兄弟には後日極星寮で採れた野菜などを送ることにし、解散となった。

それで今創真はと言うと・・・・・・

「すぅ・・・・・・・すぅ・・・・・・・すぅ・・・・・・・すぅ・・・・・・・」

 よい子はおねむの時間でした。晩御飯を食べて風呂から上がればもうおねむの創真君。しかし・・・・・・・・・子供とはいえ夜に起きてしまうかもしれず、またいなくなったら大変なので誰の部屋に泊めるか相談をしていました。

「それで誰の部屋に泊めるの?言っておくけど私の部屋はジビエたちがいて無理よ。」

 真っ先に無理を言ったのは吉野であった。

「ごめんねー。私課題でまだ終わってないのがあるの。だから幸平君を見ていてあげられないの。」

「僕は部屋にちょっと十席の書類があるから無理だね。」

 涼子と一色も無理であった。

「丸井君は・・・・・・・・すでに燃え尽きかかっているから休ませよう。」

 一色が見る先には創真捜索によって燃え尽きかかっている丸井の姿があった。

「俺のところはスモークで匂うから起きちまうと思うよ。」

伊武崎の部屋も無理であった。

「青木と佐藤の部屋はダメね。前に部屋見に行ったけど汚かったわ。」

 吉野の言葉により二人も無理。となると・・・・・・・」

『ジ――――――――――――――――――――――――――――――――――――ッ。』

「・・・・・・・・・・・・・・・え?」

 一同視線を恵に向ける、吉野と涼子は恵の肩に手を置いた。

「恵・・・・・・」

「頑張りなさい。」

「へ?・・・・・・・・・・・えぇええ!」

「田所、幸平が起きる。」

「あっ!ご、ごめんなさい。」

 伊武崎に注意され恵は謝る。

「これで話は決まったね。それじゃあ恵ちゃん、頼んだよ。」

「ううう・・・・・・・・・・・・・はい。」

 こうして創真監視役は恵に決定した。

 

「すぅ・・・・・・・・・すぅ・・・・・・・・・」

 リズムある寝息を立てながら眠る創真を恵は創真が寝ているすぐ隣で見ていた。

「今日は創真君に色々大変な思いをさせられたね。でも・・・・・・・・・・・小さい創真君を見れたからいいかな///////」

 恵は顔を赤くしながら眠った。

 

「ん・・・・・・・・」

 朝になり、恵はぼんやりした意識の中目を覚ました。

「誰・・・・・・・・・・・・・かな?」

 ぼんやりと映るものがわからず恵は目を擦る。すると目の前には子供ではない創真の顔があった。

「っ~~~~~~~~~~~~~/////////////////////////////////////////////」

 恵は耳まで顔を真っ赤に染める。

(そ、そそそそそそうそうそう創真君っ!なしてこんな近くにいるだべさ!)

 恵は現状を理解できず困惑していた。そんな時、昨日のことを思い出した。

(そ、そういえばみんなと話し合って私が創真君を見る役になったんだったべ!は、早く起きなきゃ!)

 恵が起きようとした途端、創真は無意識に恵を抱きしめた。

(う、うわ~~~~~~~~~~~~~~~~~!そ、そそそそそそそそ創真君なにしてんだべさ!は、離れない!放して~~~~~~~~~!)

 恵はどうにかして創真の拘束から抜けようと体を動かすが全く抜けられる気配が無い。そして抵抗するとするだけ創真は恵を強く抱きしめる。

「ん~~~~。」

 締め付けが強くなった分、創真と恵の距離がほぼ0になった。

(そ、創真君の温もりが・・・・・・・・・なんか落ち着いてくるような・・・・・・・・じゃなくて!)

 その時、なに中の悪戯か涼子と吉野が部屋に入って来た。

「恵~、幸平戻った~?」

「どうなの~・・・・・・・・・・・・て・・・・・・・・」

「あ、あのこれは//////////」

 涼子と吉野は互いに顔を見合うと頷き、一言言った。

『お邪魔しました。』

「ま、待って!弁解を!挽回をさせて~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!」

 



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