イケメン女提督と艦娘達 艦これSS《完結》 (室賀小史郎)
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一話:提督が鎮守府に着任しました。

事の始まり。
キャラ崩壊入ります。


 

 ◇◇鎮守府、早朝、門前ーー

 

女督「ここがあたしの鎮守府か……」

 

 遡ること数週間前ーー

 

女督「え、私を新たな鎮守府の提督に……?」

元帥「あぁ、そうだ」

女督「そうする理由をお聞かせください」

元帥「君も知っての通り、我らの敵である深海棲艦は日に日に数を増やしている。それに対応する為にも、こちらも新規で鎮守府を設けなくてはならない。そこで君にもその任に就いてもらおうと思ってね」

 

女督「……しかし私は実戦経験はあれど、実際に戦線で指揮をしたことがありませんが……」

元帥「そんなのは慣れさ。君は海軍学校を卒業と同時にこの大本営に着任し、あの第一次深海戦線を見事に戦い抜いた。今ではその時の経験を生かし、新たな仲間である艦娘達の訓練教官をしているではないか。私から見れば十分に務まると判断した」

女督「…………」

 

元帥「君の後釜には練習巡洋艦の香取君と鹿島君に就いてもらう。何も問題はあるまい? 現に君は艦娘の娘達と毎日訓練に励んでいるじゃないか。それが鎮守府の提督としての仕事になるだけだ」

女督「はぁ……相変わらずこうと決めたら曲げないお方ですね。分かりました。その任、お受けいたします」

元帥「うんうん。初めからそう言えば良いんだよ。では、荷造りや身の回りの整理をしてきなさい。期待しているよ」ニコリ

女督「最善を尽くします」ニガワライ

 

 そして今に至るーー

 

女督「事前に渡された資料の通りだな。規模はそこそこ。艦娘寮完備、自室完備、会議室、司令室、執務室etc…………」

 

 いつまでも門の前で資料の確認をしているのもアホらしいので、とりあえず荷物が届いているであろう自室に向かおう。

 

女督「ここか……」

 

 ガチャーー

 

 広さは大体十四畳といったところか。

 既に必要最低限の家具、寝具は揃ってる。

 そして私物が入った大きな段ボールが一つ。

 

女督(中にまで運んでくれるとは親切な海軍元帥様だな……)

 

 荷ほどきを軽く済ませ、ベッドへと転がる。

 

女督(未だに信じられないな……あたしが提督になっただなんて……)

 

 

 

 海軍学校に入った理由ーー

 中学の修学旅行のクルージング中、当時はまだ名の知れてない深海棲艦に遭遇して船ごと沈められ、乗客の生徒の中で私を含めた数人が生き残った。

 

 顔の左半分に至る傷跡が今も痛々しく残る。幸い失明は免れた。

 

 今でもたまに夢に出るあの惨劇……そして、親友の最期の言葉。

 

『私の分まで生きて』

 

 当初は仇討ちの気持ちで海軍を志した。しかし、今は海を平和な海にしたいと思うだけだ。

 

 両親は今でも漁師をしていて危険と隣り合わせ。

 そして何より海の中に眠る親友の為に……。

 

 海軍学校は殆どが男だったが、元々男勝りな性格だったし、一度話せば皆良い友達になれた。女同士特有の変に気を遣うこともなくて済んだ。傷を見ても慣れてくればみんな警戒もしてこない。

 

 まぁ、最終的に女だらけの職場になったけど、艦娘の娘達は訓練中は真面目だし、それ以外でも良い関係が築けた。

 

女督(でも、今回はあたしが最高指揮官だからなぁ……)

 

 とりあえず、そろそろ初期艦の娘が来る時間だから、司令室に行くか。

 

 司令室ーー

 

女督「ま、ここでは堅苦しいのは無しで、あたしらしく過ごそう。後は猫と轟沈に気をつけて、それからーー」

 

 コンコンーー

 

女督「お、来たな。入れ」

??「失礼します」

 

 ガチャーー

 

陽炎「やっと会えた! 陽炎よ。よろしくね、教k……じゃなかった、司令!」

女督「あたしを知ってるって事は、あたしが教えていた陽炎でいいのか?」

陽炎「えぇ、そうよ。私が元帥殿に司令の鎮守府に転属願いを申し出たの! 快く承諾してくれたわ!」

女督「そうか……お前も物好きだな。わざわざあたしの所に来るなんて」アハハ

 

陽炎「あら、私だけじゃないわよ? 明日には不知火と黒潮も着任するわ。みんな司令の元で働きたいって」

女督「そのわりにはあたしの事を『鬼教官』だの『獄卒教官』だのと呼んでいたじゃないか」フフ

陽炎「それは事実だもの。でも訓練以外では優しいし、よくみんなを食事に連れ出してくれたり、私達にとっては最高の教官だったわよ」ニコ

 

女督「分かった分かった。そんなこと言われたらむず痒くなるからよせ。とりあえず、改めてよろしく頼むぞ。顔見知りが着任してくれたから心強い」

陽炎「ふふ、そう言ってもらえて嬉しいわ」

女督「じゃあ今日は特にすることも無いから、ここの施設でも見て回るとしよう。お互いにここを分かってないからな」

陽炎「えぇ、よろしくね、司令♪」

 

 こうしてあたしは陽炎と教官時代の話をしながら、これから過ごす鎮守府を見て回った。

 見て回っている最中の陽炎はあたしの手を握り、ずっとニコニコしていてご機嫌だった。

 その姿はとても可愛らしく、娘のように思えたのはあたしだけの秘密だ。

 

 翌朝ーー

 

不知火「不知火です。ご指導ご鞭撻、よろしくです、教官」

黒潮「黒潮や、またよろしゅうな、教官!」

陽炎「二人共、教官は教官だけど、もう教官じゃないのよ?」

不知火「不知火に落ち度でも?」

黒潮「つい癖で呼んでまうな~。ま、そのうち『司令』で慣れるやろ」アハハ

 

女督「ははは、相変わらずだな、お前達は。お前達の着任、心から歓迎する」

陽炎「今日から本格的に鎮守府も始動ってことね。司令、私達の中から秘書艦を選んで」

二人『』ピクッ

 

女督「秘書艦……あたしの補佐艦となるんだったな。誰に頼むか……」ウデクミ

陽炎「人数が増えれば、その名の通り司令の補佐専門になるわ」

女督「ふむふむ」ナルホドー

 

不知火「僭越ながら、この不知火はどうでしょう?」ズイ

黒潮「うちが妥当なんとちゃうか?」ズイ

 

 同時に口を開く二人。

 

二人『……!』キッ

女督(なんだ、この不穏な空気は……)

 

陽炎「ま、ここは間をとって私ね」ドヤァ

不知火「それは間とは言いませんよ、陽炎……」ゴゴゴゴ

黒潮「抜け駆けはいかんのとちゃうか……?」ゴゴゴゴ

陽炎「あ、あれぇ?」ヒヤアセ

女督「まぁまぁ、こんなことで揉めてたらキリがない。今日は陽炎、お前に任せる。そして不知火と黒潮の順で秘書艦はローテーションしよう」

 

陽炎「さっすが司令♪ 分かってるわね、そういうとこ大好きよ♪」

二人『』ピクッ

女督「ははは、相変わらず素直で可愛いヤツだな、お前は」ワシャワシャ

陽炎「えへへ~♪」

二人『』ブチッ

 

 その瞬間、二人の目からハイライトが消える。

 

不知火「陽炎……ちょっと屋上に行きましょう……!」

黒潮「うちも久々にプッツン来たで……!」

 

女督「気を付けーーっ!」

二人『っ!?』サッ

陽炎『』サッ

女督「こんなことで仲間割れとは嘆かわしいな、陽炎を本日の秘書艦に選んだのはあたしだ。異論は認めん」

 

 腰に装備していた鞭を手にする。

 

 ヒュンッーー

 

 慣れた鞭捌きで不知火と黒潮を拘束し、自分の側へ引き寄せる。

 

女督「少しお仕置きが必要だな……」ニヤリ

不知火「あ、あぁ……////」ゾクゾク

黒潮「ひぃ……////」ゾクゾク

二人『お仕置きしてくださいっ!』

陽炎(あ、あ艦これ……)

 

 ビシッ、ズビシッーー

 お仕置き決行。

 

二人『っ////』ビクビク

女督「まったく……反省しろ」

二人『イエス マイ ロード!////』

陽炎(もう手遅れかしらね……)

 

 そんなこんなであたしの鎮守府は始動したーー。

 

 




読んでいただきありがとうございました!

女提督版を書いてみたくなったので書いてみました!

補足説明
女提督は『つよきす』の鉄乙女先輩の口調をイメージしてます。

↓筆者の女提督イメージ

体型・モデル体型、長身。
髪型・通常時=スーパーロング。訓練や戦闘時=ポニーテール。
家事スキル・完璧
髪色、瞳の色、顔の作りは読者様のご想像にお任せします←すいません!

こんな感じですがよろしくお願い致します!


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二話:お疲れ様です。

初任務。

本編前に追加補足を一つ。
女提督の一人称は基本「あたし」ですが、上官等との真面目な会話では「私」になります。
ご了承お願い致します。


 

 初任務で陽炎を連れて工廠にやって来た。

 

女督「艤装の開発か……資材も限られているし最低限の資材で開発すれば良いだろう。その方が失敗しても被害は少ない」

陽炎「そうね。開発や建造は大事だけど、それは資材が潤って余裕が出てからにしましょう」

 

 中に入ると工廠担当の妖精が集まっていた。

 

妖精I「おう提督。今日がお互い初仕事だな。早速トランザムシステムでも開発しちまうか?」

妖精R「格闘特化型の艤装なんてどう?」

モブ妖精「どうします?」

女督「やる気があるのは嬉しいが今は資材が無いんだ。今日は適当に最低限レシピで造ってくれ」

  (そもそもトランザムシステムって何だ?)

妖精I「まぁ、資材が無いならしゃぁないな」

妖精R「そうね。では陽炎さん、資材をこちらのバケツへ入れてください」

陽炎「オッケーよ♪」

モブ妖精「すぐに造りますです!」

 

 妖精仕事中ーー

 

妖精達『すいません』ドゲザ

女督「ははは、最初だし仕方ないさ。資材が充実したら存分に造らせてやる。それまで辛いだろうが、耐えてくれ」ナデナデ

妖精達『イエス マイ ロード!』

女督「では、今日の仕事は終わりだ。ゆっくり休んでくれ」ヒラヒラ

妖精達『ふ、ふつくしい……////』

 

 執務室ーー

 

女督「さて、あらかた今日の仕事は片付いたな。後はーー」

 

 Prrrrr……Prrrrr……

 

女督「はい、こちら◇◇鎮守府、執務室……って、元帥殿? どうしました?」

元帥『いやなに、今日から本格的に鎮守府を運営するんだろ? その激励さ』ハハハ

女督「それはわざわざ、ありがとうございます」

元帥『気にするな。そこで、君に私からプレゼントだ』

女督「と、言いますと?」

 

元帥『君には半ば強制的に提督業を押し付けてしまったからね。先程、此方で建造した艦娘を数名そちらに送った。昼過ぎにはそちらに着任するだろう』

女督「いつも元帥殿の話は急ですね……。既に陽炎を始め、不知火、黒潮と私はお譲りしているのに、ですか……?」

元帥『陽炎達は正規の艦隊員ではなかった。言うなれば見習いだ。だから君の下で訓練をさせていた。ならば次は所属先を決めなくてはいけない……とそこに陽炎君達から申し出があって、私はそれを受理した。譲ったのではない……良いね?』

女督「…………はい」

元帥『気にすることは何も無い。今回は私の所から建造し送るだけの事だ。君の下で訓練して、大いにこき使いなさい』ハハハ

女督「はぁ……分かりました。お心遣い感謝します。では失礼します」

 

 カタンーー

 

陽炎「司令、電話は終わった? それならお昼休憩にしない? 不知火と黒潮も訓練を終える時間だし、折角だから、みんな一緒に……ね?」

女督「それもそうだな。ならば行こうか」

陽炎「了解よ♪」

 

 それから不知火、黒潮と合流し、鎮守府内の食堂へ来た。

 

 食堂ーー

 

女督「そういえば、ここはまだ間宮や伊良湖は配備されていないから自炊になるわけだが……」チラ

三人『』サッ←目を反らす

女督「……だろうな。仕方ない、あたしが作るか」

三人『……!』キラキラ

 

女督「これでも家事は得意だからね。何かリクエストはあるか? と言っても下ごしらえも何もしてないから簡単なのしか出来ないが……」

妖精い「料理は出来ませんが、ご飯やパンの用意はしてありますよ!」

妖精あ「食材も揃えてあります」

女督「おぉ、それはありがたい。で、みんな何が良い?」

 

陽炎「簡単なのって言えば、炒飯とか?」

不知火「ふ、フレンチトーストが良いです……////」

黒潮「うちはお味噌汁とご飯があればええで♪」

女督「見事にバラけたな。まぁ、どれも簡単だしそれぞれ作ってやろう」ニコ

陽炎「手伝うわ♪」

不知火「し、不知火もお手伝いします!」

黒潮「みんなでやろか~♪」

 

 仕度中ーー

 

女督(自前エプロン)「よし、みんなエプロンして手は洗ったな?」

陽炎「問題無いわ!」

不知火(し、司令のエプロン姿……////)ドキドキ

黒潮(ヤバイわ~////)キュンキュン

 

女督「じゃあ、陽炎はお豆腐とワカメと長ネギ、それと味噌を持ってこい」

陽炎「了解!」

女督「不知火は食パンと卵を持ってこい」

不知火「は、はい!////」

女督「黒潮はレタスとキャベツとトマトを持ってこい」

黒潮「アイアイサー♪」

 

 女督料理中ーー

 

女督「はいでは、みんな手を合わせて~」

四人『いただきます!』

 

 昼食開始ーー

 

陽炎「司令! この炒飯、とっても美味しいわ♪」

不知火「フレンチトーストも美味しいです♪」

黒潮「お味噌汁も良い味や~♪」

女督「ははは、そいつは良かった。ちゃんとサラダも食べろよ? 艦娘とは言え体は人間と同じなんだからな」

三人『はい!』ニコ

女督「食べ終わったらデザートにフルーツポンチもあるからな」ニコ

三人『やった~♪』バンザーイ

 

 

 

 そして昼食を終え、みんなで食休みで母港の埠頭に来た。

 

陽炎「司令の料理どれも美味しいかったわ~♪」

不知火「是非とも嫁ぎたいです////」

黒潮「嫁さんに欲しいわぁ////」

女督「そんなに誉めても何も出ないぞ?」フフ

三人『……////』ドキッ

 

女督「」ピクッ

 

 三人とそんな話をしていると波と風の音が変わった。

 

 ヒューーーン

 

女督「伏せろ、お前達!」

三人『!!?』バッ

女督「はぁっ!」

 

 ピシャッ!

 

 突如飛んできた砲弾を透かさず鞭で捌き、明後日の方角へいなす。

 

 ドーーーン!

 

 轟音が響き、三人はすぐさま海へ視線を移す。

 

陽炎「はぐれ深海棲艦!?」

不知火「駆逐イ級、軽巡ト級……重巡リ級までも!?」

黒潮「最初の二隻ならまだしも、重巡まで居るんか!」

女督(いくらこの娘達でも重巡は分が悪い……しかも艤装も外してしまっている……!)

陽炎「砲撃来ます!」

女督「三人はあたしの後ろへ! はぁっ!」

 

 パシンッ!

 ドーン!

 

女督「お前らにあたしの命もこの娘らの命もくれてやる気は毛頭無い!」

陽炎「司令……」

黒潮「またや、司令はん!」

女督「くっ!」

 

 ビシッ!

 バーン!

 

 次の瞬間、リ級が陽炎達のすぐ側まで接近してきたーー

 

不知火「司令!」

女督(またお前らはあたしから大切なモノを奪うつもりか……?)

 

 ドクンーー

 

 ブチッーー

 

女督「さぁ、踊ろうか」ニタァ

リ級「? ……っ!?」

 

 ピシッ、パンパンパンパン!

 

女督「まだまだ!」

 

 ズバッズバッ、ズビシッ、バンバンバン!

 

 ドゴォーーーン!

 

 リ級はまるで木偶人形のように宙を舞う。

 

女督「」オジギ

三人『……カッコいい////』キュンキュン

 

 ドバーン!

 

三人『っ!?』

女督「何とかなったな……」フウ

 

 残りの深海棲艦が次々と沈んで行く。

 そしてその向こうから、複数の影が見えた。

 

 元帥の言った時間通り、着任予定の艦娘達が援護してくれたのだ。

 

 埠頭ーー

 

女督「着任早々、手間掛けさせて悪かったね。気を緩め過ぎていた。助けてくれたこと、心から感謝する」フカブカ

??「いえ、艤装無しの娘達を身を呈して守っていたお姿は、とても立派でした。あなたの様な提督が居る鎮守府に着任出来たことを嬉しく思います」

 

 軽い挨拶を交わし、あたしは陽炎達とその娘達を連れて、司令室へ向かった。

 

 司令室ーー

 

女督「では、改めて。あたしがここの提督だ。以後よろしく頼む。一人ずつ自己紹介をお願いしたい」

 

 横並ぶ艦娘達で向かって右の艦娘が一歩前に出る。

 

妙高「私、妙高型重巡洋艦、妙高と申します。共に頑張りましょう」ケイレイ

 

那智「私は那智。よろしくお願いする」ケイレイ

 

足柄「足柄よ。砲雷撃戦が得意なの。ふふ、よろしくね」ドヤァ

 

羽黒「は、羽黒です。妙高型重巡洋艦姉妹の末っ娘です。あ、あの…ごめんなさいっ!」サッ

 

女督「ん? あぁ、あたしのこの顔の傷が怖いのか。それはすまなかった。しかし、これは馴れてもらうしかないからな……辛抱してくれ」

陽炎達『』ギロリ

 

羽黒「い、いえ……! ご、ごめんなさい!」ササッ

妙高「すみません。この子はすごい人見知りで。提督のお顔のせいではないのでお気遣いなく」ペコリ

 

女督「しかし、数名とは聞いていたが……まさか重巡洋艦四名とは……元帥殿にも困ったものだ」ハァ

妙高「あの、一つ宜しいですか?」

女督「ん?」

妙高「元帥殿から、提督の事をくれぐれも宜しくと仰せつかっておりますが……お二人はただの上司と部下の間柄では無いのでしょうか?」

 

 その質問にどう答えようかと一瞬迷ったが、隠す必要もないので正直に答えた。

 

女督「あぁ、あの元帥殿は私の叔父だ。奥さんは居るが子供に恵まれなくてな……あたしのことを本当の娘のように構ってくれているが、今では実の両親より過保護なんだ」ハハハ

全員『えぇーーーー!』

 

 衝撃的とはこの事を言うのだろう。みんな驚いて口が開いたままだ。

 

女督「とりあえずこの話はここまでにして、既に着任しているお前達も自己紹介してやれ」

 

陽炎「陽炎型駆逐艦の一番艦、陽炎よ。司令の秘書艦をしてるわ」フフン

二人『』ピクッ

不知火「……駆逐艦不知火です。以後お見知りおきを。明日はこの不知火が秘書艦となります」キリッ

黒潮「……駆逐艦の黒潮や。みんなよろしゅうな。明後日はうちが秘書艦やからな」キリッ

陽炎「……」グヌヌ

 

妙高「よ、よろしくお願いします」

那智(これはこれは……)フフン

足柄(面白い所に着任できたわ……)ニヤリ

羽黒(く、駆逐艦なのに、ここ、怖い……)ガクブル

 

 こうしてうちにまた新しい仲間が増えたーー。

 

那智「ところで提督、貴様に聞きたいことがある」

足柄「私もあるわ」

女督「あぁ、質問を許可しよう」

 

那智「では……先程の戦闘のことだ。なぜ我々艦娘ではないのにリ級を屠ることが出来たんだ?」

足柄「私も那智姉さんと同じ質問よ」

妙高「私もそれは気になりました」

羽黒「」コクコク

 

女督「あぁ、それはあたしが自分の部下を守る為に元帥殿に特別に造らせたこの鞭のお陰だ。他にもあたしの愛用のベレッタM92とデザートイーグルもある」

那智「我々艦娘の艤装を応用した物なのか?」

女督「まぁ、簡単に言えばそうだ。しかし艤装には劣る……だがあの状況は敵がわざわざ陸に上がっていた。海上なら攻撃をいなしたり、交わすのが精々だっただろう」

 

足柄「陸上だとどうして勝てるの?」

女督「奴らの装甲は陸へ上がると深海のエネルギーを失う。かと言って弱くなる訳じゃないが、勝てない相手ではなくなる。だから奴らは今でもこの国の内陸部まで侵略出来ていないだろう? 厄介なのは空母くらいだ」

 

妙高「ならば、何故陸での戦闘ではなく海での戦闘に?」

女督「……ここからはあたしの持論になるが良いか?」

妙高「はい」

 

女督「仮に内陸部での戦闘をメインにしても、相手は海から無限に沸いてくる。それに海を制圧されていては我が国は貿易も出来ない。貿易で成り立っているようなこの国が貿易困難に陥れば、満足に国も回らない。だから海上を守る事を第一に考え、こうして深海棲艦に対抗できる存在である艦娘……すなわち君達の手を借りているんだと思っている」

 

羽黒「で、でも司令官さんのような武器を改良して沢山作れば、もっと戦いが早く終わるんじゃ……?」

女督「そう考えるのが妥当なんだがな……そんなにシンプルにいかないのが世の常だ……」

 

 ここで話を区切り、あたしはまた話を始める。

 

女督「あたしは一度だけ、深海棲艦の意識に触れたことがある」

那智「深海棲艦の意識……?」

女督「そう。それは人間に対する、深海のように深く、冷たい憎悪や悲壮だった。この顔の傷はな、深海棲艦と同じ皮膚組織なんだよ。言うなれば、あたしは一部深海棲艦みたいなものなんだ……だからあたしはある程度の武器があれば奴らに対抗できるのさ」

 

足柄「え、深海棲艦と同じ……?」

女督「そう……奴らと同じだ。奴らの中に人間に似た奴が居るのは、あたしのように奴らの意識に触れ、取り込まれた者達や今まで轟沈した仲間達なんだろう」

 

妙高「では、私達は人や仲間達を殺しているのですね……」

女督「そう言われればそうだろうな。こればかりは割り切ってもらうしかない」

 

那智「そんな戦いに意味はあるのか?」

女督「これは大本営の見解だが、深海棲艦というのはある意味、人間が生み出したものらしい。幾度となく繰り返してきた人間同士の戦争や過去の世界大戦、度重なる環境汚染……その都度人間は海に数多くの仕打ちをしてきた。地上ならば整備し、育むことも出来るが、海はそうはいかない。そこで海は深海棲艦を産み出し、人間に仕返しをしているのではないかとな」

 

足柄「なら、私達は何なの?」

女督「深海棲艦に対抗できる唯一の存在。それと同時に深海棲艦と唯一、意志疎通が出来る存在なのかもしれない」

 

羽黒「意志疎通……?」

女督「あぁ、これも大本営の見解だが、そもそも君達が兵器なら意思と言うものは要らない。ただ使われ、壊れたら棄てる物に意思は要らないだろう? だが、君達はそれぞれ意思を持っている。それは君達が兵器ではなく、あたし達人間と海との信頼関係を取り戻す為の架け橋のような存在だと考えている。あたしや元帥殿、数多くの提督や大本営がそう思っている」

 

妙高「では、私達は提督や皆さんのご期待に応えなくてはいけませんね!」

 

那智「あぁ、ただの無意味な戦争ではないのだと希望が持てた。私は何の憂いも無く従うぞ!」

 

足柄「なんか熱い展開ね! 良いわ、私達にそんな期待があるなら、やってやろうじゃない!」

 

羽黒「こ、怖いけど……が、頑張ります……!」

 

陽炎「なんか私もやる気が出てきたわ!」

不知火「はい。しかし、不知火はあくまでも司令の為に戦います」

黒潮「うちも頑張るで♪ 司令はんの為にな♪」

 

女督「至らない点もあるだろうが、あたしを信じてよろしくこれからよろしく頼む」

全員『はい!』

 

 初日から色々な事があったが、それも提督となれば日常茶飯になるだろう。

 あとは仲間を失わないよう、あたしがしっかり鍛えて指示を出すだけだーー。




読んでいただき本当にありがとうございました!

補足説明等がある場合は、前書きや後書きの場にてあげていきます。


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三話:期待に応えてみせます……!

提督の愛情。

キャラ崩壊、R-15含みます。


 

 翌日、鎮守府内訓練場ーー

 

女督「隊列を乱すなっ! 味方が死んでも良いのかっ!」

全員『はい!』

女督「あと十周追加だっ! 遅れた時点で更に十周追加だっ!」

全員『はい!』

 ……。

 …………。

 ………………。

 

全員『はぁ、はぁ、はぁ……』

女督「午前中の基礎訓練は終わりだ。昼食を挟み、午後は戦闘及び回避訓練を行う、以上解散!」

全員『あ、ありがとう、ございました……』

 

女督「ほら、スポーツドリンクだ。飲みなさい」

陽炎「ありがとう、司令」

不知火「お心遣い感謝します」

黒潮「おおきに~♪」

 

 笑顔で受けとる陽炎達とは違い、未だに息を整えるのがやっとの妙高達。

 

妙高「陽炎ちゃん達から聞いていたけど、流石は元訓練教官だわ……」フゥ

那智「あぁ、私達と同じく水面を駆けているのにあの余裕……」ハッハッ

足柄「しかも私達を見ながら書類の確認とサインまでこなしてたわ……」ガクガク

羽黒「……もう、立てない……」ゼェゼェ

 

女督「あたしはお前達が水面に浮かぶ為のその艤装じゃなくて、それを応用した人間の海上移動用の靴を使ってるからな。走れば走るだけ体力を使うお前達よりは楽だ。アクセルとブレーキに気を配るだけだからな」

 

妙高「それでも私達の訓練に付き合い、訓練を見つつ、書類までこなすなんて普通は出来ませんよ……」

女督「そうか? 教官時代は訓練生の体調管理、訓練メニュー、成果報告等、一人一人のデータを出していたから、これくらいは出来て当たり前だったし、提督になってやることが減ったと思っているんだが……」

那智「我々とはベクトルが違うな……」

足柄「と、とにかく凄いとしか言い様がないわね……」

羽黒「はぁ、はぁ、はぁ……」コクコク

 

女督「羽黒、ちょっと体に触れるぞ?」グイ

羽黒「ふぇ!?」

女督「うつ伏せのままでは飲める物も飲めないだろう。私が支えてやるから、飲みなさい」ヒザマクラ

羽黒「で、でも……」アセアセ

女督「ほら、落ち着いて息を整えろ。訓練をめげずに頑張った褒美だと思え」ナデナデ

羽黒「ぁ、ぁぅぁぅ……////」パクパク

陽炎達『…………』ジトー

妙高達『(イケメン……////)』

 

 

 

 食堂ーー

 

女督「では、みんな一緒に……」

全員『いただきます!』

 

\ワイワイガヤガヤ/

 

女督「あぁ、ドタバタしてすっかりみんなに言い忘れていた……昼食を終えたら訓練の前に時間を貰えないか?」

陽炎「あぁ、いつものね! 了解よ!」ニコ

不知火「…………////」モジモジ

黒潮「提督になったからやらんのかと思おとったわ」ニコ

妙高達『???』クビカシゲ

 

足柄「何か知ってるの?」

陽炎「司令はね、私達と写真を撮るのよ」

那智「写真?」

不知火「えぇ、司令と各自のツーショットと全体で一枚ずつ」

妙高「何か理由があるのですか?」

黒潮「司令はんの愛や」ニシシ

足柄「提督、理由は?」

黒潮「無視はいくないやないかな!?」ガーン

羽黒「ご、ごめんね、黒潮ちゃん……」オドオド

 

女督「理由……昔からの習わしかな? 自分の仲間や部下、教え子達とは何か記念を残したいじゃないか。それで手っ取り早いのが写真ってだけだ。何か変か?」

妙高「いえ、とても良い考えだと思います」ニコ

那智「写真を撮られるのは苦手だが、そういうことなら撮られてやろう」

足柄「提督らしい理由ね。そういうの好きよ♪」

羽黒「ちゃ、ちゃんと笑えるかな……?」

女督「お前達は部下であり、仲間だからな。そこら辺はちゃんと自覚しておいてくれよ?」

みんな『はい!』ニコ

 

 鎮守府、港の埠頭ーー

 

 昼食を終え、みんなと写真を撮るために港の埠頭へと場所を移す。

 あたし達と言えば海軍、海軍と言えば海と言うことで海をバックに撮影することにした。

 カメラの準備も整え、いよいよ撮影に入る。

 

女督「まずはみんなで一枚撮ろう」

陽炎「なら、司令は真ん中ね!」

不知火「そして不知火は司令の右隣で」

黒潮「うちは左隣~♪」

陽炎「む~……」ムスッ

女督「ははは、そうむくれるな。なら陽炎はあたしの前に来い」アスナロダキ

陽炎「えへへ~~♪////」キュンキュン

二人『』ゴゴゴゴゴ

妙高達『あはは……』ニガワライ

 

女督「では、みんな撮るぞ~」

 

 パシャーー

 

女督「……うん、綺麗に撮れたぞ。現像したらみんなに渡すからな」

全体『はい!』

女督「では、次にあたしと一人ずつ、ツーショットだ。手の空いている者にシャッターを任せる」

 ……。

 …………。

 ………………。

 

 全員との撮影を終え、それから午後の訓練も全てこなした。

 

 鎮守府内訓練場ーー

 

女督「本日の訓練はこれにて終了する。各自汗を流した後、夕飯前に一度、司令室へ集合するように。以上だ」

全員『はい!』

 

不知火「司令、司令も汗をかいたはずです。不知火達と一緒に入りませんか?」

女督「う~ん……まぁ、準備はもう済ませてあるし、良いだろう」

不知火「ほ、本当ですか!?」

女督「お前が誘ったのに驚くんじゃない……たまにはお前達と入るのも良いだろう」

不知火「は、はい!////」

陽炎「」b

黒潮「」b

 

 脱衣場ーー

 

女督「妙高達には初めて晒すが、許してくれよ」

妙高達『?』クビカシゲ

 

 ヌギーー

 

妙高達『っ!?』ギョッ

 

 提督が上着を脱ぎ、素肌を晒す。それを見た妙高達は思わず息を呑んだ。

 提督の背中から腰にかけて無数の傷痕があり、太股にも数ヶ所の同じ様な傷痕があったからだ。

 

女督「悪いな、綺麗な肌ではなくて……しかし、この傷痕の数だげ仲間や部下を救えたと思えば恥ずかしくない。醜いだろうが勘弁してくれ」アハハ

妙高「私は素敵だと思いますよ。醜いだなんて思いません」

那智「あぁ、まるで歴戦の猛者のようで勇ましいではないか」

足柄「誇りに思って良いと思うわ」

羽黒「じれいがんざん~~」シクシク←感動

女督「ははは、そう言ってもらえるとありがたいが、改めてそう言われると少し照れてしまうな……」ハニカミ

全員『っ!!////』キュンッ

 

 洗い場ーー

 

女督「不知火の髪は綺麗だな。女として羨ましいぞ」ワシャワシャ

不知火「あ、ありがとうございます////」ドキドキ

陽炎「不知火は司令にはすぐ甘えるんだから……」

黒潮「陽炎も人のこと言えんやろ? うちもやけどな」

 

妙高「でも、提督の髪も綺麗ですよ? きめ細かくて」ニコ

女督「それは嬉しいな。ありがとう妙高」ニコ

那智「妙高の言う通りだな……それに胸も大きすぎず小さすぎず綺麗なラインで羨ましい」

女督「そうなのか? あんまり胸は気にしたことがなかったからイマイチ分からないが……そう言われると嬉しいものだな」

足柄「腰も細くて羨ましいわ……」

女督「世の中の男はお前くらいの腰が好みだと思うぞ? あたしは親や友人達からもっと肉を付けろと言われるからな」

羽黒「わ、私も司令官さんみたいな、大人の女性になりたいな……」

女督「あたしはそんなに良い女ではないぞ? 羽黒の方が女性らしくてあたしは良いと思うぞ」

 

 そんな他愛の無い話をしながら、和気藹々と汗を流した。

 

 司令室ーー

 

女督「みんな居るな? ではこれを……あたしからお前達へ贈り物だ」

 

 そう言って、あたしは写真立てとアルバムを机に置いた。

 

女督「これは昼間に撮影した写真とあたしが用意したお揃いの写真立てとアルバムだ」

不知火「だから訓練の途中、席を外したんですね」

女督「そんなとこだ……」

 

 そうしてあたしは一人ずつに手渡していく。

 

女督「訓練生の頃とは状況がかなり違うが、戦場でもよろしく頼む」

陽炎「勿論よ。任せて♪」

 

女督「不知火もいつも通り頼りにしている。よろしく頼む」

不知火「お任せを。必ずやご期待に応えてみせます!」

 

女督「黒潮、訓練生の時と同様、戦場でも明るくみんなを引っ張ってくれ」

黒潮「了解や。司令はんの為に頑張るで♪」

 

女督「妙高、我が艦隊では頼りになる重巡洋艦だ。頼らせてもらう」

妙高「はい。提督の為に精一杯頑張りますね!」

 

女督「那智、その冷静さは戦場で大いな強みとなる。よろしくな」

那智「あぁ、提督の期待に恥じぬ働きを約束しよう」

 

女督「足柄、お前の勇敢な戦い振りに期待させてもらう」

足柄「任せなさい♪ 戦場が勝利が私を呼んでいるわ!」

 

女督「羽黒、お前の優しい心でみんなを和ませてやれ。頼むぞ」

羽黒「は、はい! 頑張ります!」

 

女督「写真立てにはどんな写真を入れても構わんが、アルバムには艦隊の写真や自分達の写真を入れていってくれ。これからそのアルバムが一杯になるくらいにこの鎮守府を盛り上げて、みんなで平和な海にしよう!」

全員『はい!』

 

 それからあたし達は明日の予定を確認して、一緒に夕飯を食べ、その日を終えた。

 

 その後ーー

 

 艦娘寮、陽炎・不知火・黒潮の部屋ーー

 

陽炎「…………」アタマカカエ

不知火「ふふ、ふふふ……司令と不知火の思ひ出……ふへへへへへ////」ニヤニヤ

黒潮「司令はんはホンマに格好ええなぁ////」デヘヘ

 

 提督から貰った写真を締まりがなく、だらしない顔で眺める妹達を陽炎はため息混じりで見ていた。

 

陽炎「……あんたらね、司令のことが好きなのは分かるけど、少しは自重しなさいよね? そんなんじゃ、司令に幻滅されるわよ?」

不知火「何を言っているのですか? 司令はそんな女々しいお方ではありません」ジュルリ

黒潮「そやそや。寧ろ『なんて顔をしてるんだ、可愛いヤツめ』って頭を撫でてくれるはずや」ニヘヘ

 

陽炎「いや……逆に『シャキっとしろ!』って鞭打ちの刑にされるんじゃない?」ヤレヤレ

不知火「それはそれでありです!」b

黒潮「うちらにはご褒美や」b

陽炎(司令、私は妹達の将来が不安です……)トオイメ

 

不知火「でも、この全体写真は少々いただけませんね」

黒潮「せやな。特に司令はんの前に邪魔なモザイクがありよるからな」

陽炎「……自分達の姉をモザイクとか言わないでくれない? それは司令が私に対してしてくれた心遣いじゃない」

 

不知火「聞きました、奥さん? 両隣を逃してたくせによくあんなことが言えますね」コソ

黒潮「えぇ。司令はんの優しさに甘えて、自分だけええ思いしてはるからってね」コソコソ

 

陽炎「あのさ……陰口なら見えないとこでするものよ?」

不知火「陰口ではありません。悪口です」キリッ

黒潮「わざわざ、目の前で言ってるんやから陰口な訳ないやん」ハァ

陽炎「…………そろそろ私泣いて良い?」ウルッ

不知火「あ、す、すいません! 悪ふざけが過ぎました!」アセアセ

黒潮「せ、せやせや! うちらが悪かったって~!」オドオド

 

 ガチャーー

 

女督「陽炎、渡し忘れてたが、お前のリボン直してやったぞ。後、お前に似合うだろうから、アレンジでフリルも付けておいた」

陽炎「え、本当!? わぁ、ありがとう、司令! 毎日このリボン使うわね!」エヘヘー

女督「あぁ、そうしてくれ。では、夜分に悪かったな。みんなおやすみ」

 

 パタンーー

 

陽炎「えへへ~。司令のお手製~♪ ……はっ!?」

二人『……泣きたいのはこっちです(や)!』ウワーン

陽炎「あ、え、えぇぇ~…………」

 

 そしていつの間にか、三人は仲良く眠っていた。

 

 その頃ーー

 

 艦娘寮、妙高型姉妹の部屋ーー

 

妙高「よし、ここに飾りましょう」

羽黒「私はここに……」

那智「写真は苦手だが、こういうのはなかなか良いものだな」

足柄「提督って女の人だけど背も高いわよね。私よりも高いわ」

 

妙高「そうね。それでいてお考えも素晴らしいし……こんな素晴らしい艦隊に着任出来たことを誇りに思うわ」

那智「確かにな。それにセクハラ等もなさそうで良かった」

足柄「男なら男でありだけど、うちの提督ならありかも……」グフフ

羽黒「わ、私は訓練とか以外の優しい司令官さんが好きかな……」

 

妙高「あら。足柄はいつものことだけど、羽黒にしては珍しい発言ね」フフ

那智「お前が提督をと言うなら私は構わん。応援するぞ」フフン

羽黒「ちょ、そそ、そういうのじゃないから!////」アセアセ

足柄「そんなに顔を赤くしてたら、そうですって言ってるようなものじゃない」ハハ

羽黒「~~~~~っ////」ウツムキ

 

那智「ま、可愛い妹をからかうのは終わりにして、姉妹揃って一杯やるとしよう」スチャつ日本酒

足柄「お、良いわね!」

妙高「明日も仕事なんだから、一杯だけよ?」フゥ

羽黒「す、少しなら……」オズオズ

 

 姉妹でお揃いの盃に酒を注ぎ、姉妹揃ってささやかな乾杯をする。

 

那智「……っはぁ。酒の熱が喉に心地良い」

足柄「……ぷはぁ。こうしてみんなで飲むのも乙なものね」

妙高「こんな和やかなお酒は良いわね」

羽黒「美味しい……」ニコニコ

三人(天使がいるわ……)ホホエマー

 

 まったり中ーー

 

妙高「さて、じゃあ明日に備えて今日はもう寝ましょうか」

那智「もう少し飲みたいが、まぁ良いだろう」

足柄「次は勝利の美酒を飲みましょう!」

羽黒「頑張るぞ~!」ニヘラ←もう酔っている

 

 こうして寝る準備を済ませ、姉妹は仲良く床に就いた。




読んでいただき本当にありがとうございました!

書き貯めてあるので、次も早めにあげられます!

よろしくお願い致します!


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四話:艦の建造が完了したわー!

初建造。


 

 ◇◇鎮守府、工廠前ーー

 

 今日は黒潮を秘書艦に置き、初の艦娘建造を行う為、共に工廠へと出向いた。

 

 陽炎、不知火、妙高型姉妹達には日頃の訓練の成果を計る為に他の鎮守府と演習に向かわせた。

 

黒潮「なぁなぁ、初建造するのはええけど、司令はん的にはどんな娘を建造したいん?」クビカシゲ

女督「ん? 特に希望は無いが、駆逐艦、軽巡洋艦の頭数を先に揃えたいとは思っている」

黒潮「遠征させるのに今は手が足りひんからな。うちもその考えに賛成するわ~」

女督「資材が少ないからALL30で四回行うつもりだ」

黒潮「一気に四人かぁ。ええなええな、誰が来るか楽しみやわ♪」

 

 鎮守府の工廠では資材の一定量を使い、艦娘を産み出す事が出来る。

 

 初建造の艦娘はそのまま工廠から産み出されるが、既に在籍している艦の場合はメモリーチップと艤装が産み出され、そのメモリーチップを使い既存の艦娘を近代化改修する事が可能だ。

 

 工廠内ーー

 

女督「ではこのレシピで順番に建造をしていってくれ」

妖精I「おう! 任せときな!」

 

\ヨシマズハカマノカリョクヲアゲロー! オオー!/

 

妖精R「建造が終わりましたら、内線でご連絡しますね!」

女督「あぁ頼む。あたし達は執務室へ戻るから、内線はそちらに頼むよ」

妖精達『了解しました!』

 

 そしてあたしと黒潮は執務室へ戻った。

 

 執務室ーー

 

女督「さて、この書類を始末するか。黒潮、終わった書類から種類別にファイリングを頼む」

黒潮「任せとき!」

 ……。

 …………。

 ………………。

 

 Prrrrr……Prrrrr……

 

黒潮「はい、こちら執務室~」

妖精I『お疲れ。提督に建造が終わったって伝えてくれ。みんな初建造の艦娘達だ』

黒潮「おっ、ちょっと待ってなぁ? 司令はん、建造終わったらしいで。みんな初建造の娘等やて、どうする?」

女督「そうか。なら黒潮、迎えに行って司令室まで連れてきてくれ」

黒潮「アイアイサー♪ あ、もしもしぃ? 今からうちが迎えに行くわー!」

妖精I『そうか、なら艤装は外させておくように言っとくよ』

黒潮「あ~い! ほな、また後でなぁ~!」

 

黒潮「ほな司令はん、行ってくるで~♪」ノシ

女督「あぁ、行ってらっしゃい」ニコ

黒潮「」キュンッ

  (そないな笑顔反則やで……////)

 

 黒潮は元気に工廠へと向かった。

 

 その頃、演習組はーー

 

妙高「第一・第二主砲、斉射、始めます!」

那智「演習と言えど気を抜くなよ! 隊列を乱すな!」

足柄「集中砲火よ! てーーーっ!」

羽黒「あ、当たってぇ!」

 

陽炎「不知火、被弾しないでよね! 私達がこの演習の鍵なんだから!」

不知火「不知火に落ち度はありません!」

 

相手旗艦「流石は元訓練教官の艦隊……と言ったところか。既にこれだけの連携が可能とは……」

相手「いや、感心してないでよ!」

相手「とりあえず、あの動き回っている駆逐艦を黙らせるか!」

 

 バーン! ババーン! ボンッ!

 

羽黒(当たらなくても良い! とにかく陽炎ちゃんと不知火ちゃんに的を絞らせないようにしなきゃ!)

 

 バーン! バーン!

 

相手「くそ! 目眩ましか! なら!」

 

 バーン! ボーンッ!

 

羽黒「っ!? きゃっ! いった~い……」ウルウル

妙高「羽黒! 私と那智がフォローするわ!」

那智「私の肩に掴まれ!」

足柄「羽黒の仇よー!」

羽黒(仇って言われるとなんか複雑だなぁ……)

 

 ババーン! ババーン!

 

相手旗艦「ちぃ! なんて連携だ!」

相手「おい、後ろ!」

相手「ダメだ! 間に合わない!」

 

 カシャンーー

 

相手旗艦「っな!? いつの間に!」

不知火「つまらないわね。もっと骨のある敵はいないの?」

 

 バーンッ……ーー

 

 勝利Aーー

 ……。

 …………。

 ………………。

 

妙高「何とか勝てたわね……」小破判定

那智「だが、撃ち損じたのもいくつかあった。まだまだ鍛練が必要だな」小破判定

足柄「そうね。後で反省会をしましょうか」中破判定

羽黒「……お、怒られるかも」ガグブル 大破判定

 

陽炎「大丈夫よ、羽黒さん! ちゃんと反省点を見つけて次に活かせば!」無傷判定

不知火「それに、羽黒さんの積極的な砲撃のお陰で不知火と陽炎は被弾せずに済みました。このMVPが取れたのも、羽黒さんのお陰です。感謝します」無傷判定

羽黒「陽炎ちゃん、不知火ちゃん……あ、ありがとう////」

 

妙高「ふふ……さ、早く帰って提督にご報告して、反省会をしましょう!」

全員『おおー!』

 

 

 

 司令室ーー

 

女督「あたしがこの鎮守府の提督だ。みんなの着任を心から歓迎する。至らぬ点もあるだろうがよろしく頼む。順に自己紹介をお願いする」

 

球磨「クマー、軽巡洋艦の球磨だクマ。よろしくクマー」ノシ

綾波「ごきげんよう。特型駆逐艦、綾波と申します。よろしくお願い致します」ペコリ

初春「わらわが初春じゃ。よろしく頼みますぞ」フフン

初霜「初春型四番艦、初霜です。よろしくお願いします!」ケイレイ

 

女督「あぁ、よろしく頼む。ここでの基本的な規則は、先程黒潮から渡された冊子に書いてある。明日までに熟読するように。質問等は気軽にあたしや既存の娘達に聞いてくれ。何か今質問がある者は居るか?」

 

 シーン……ーー

 

女督「無いようだな。では、後は黒潮に任せる」

黒潮「任されたで~♪」

女督「あぁ、よろしくな。では黒潮、みんなを部屋に案内した後、鎮守府の案内を頼む。一通り終わったらみんなを連れて執務室へ」

黒潮「アイアイサー♪ ほな、みんなうちに付いてきてや~♪」

 

 バタンーー

 

女督「軽巡洋艦一名に駆逐艦三名か……重畳だな」

 

 艦娘寮ーー

 

黒潮「ここがうちらが寝泊まりしてる艦娘寮や。一部屋四人までは入れるから、とりあえずはこの部屋をみんなでつこうてな。家具や寝具は揃ってるけど、それ以外で自分に必要な物は自分で用意せなあかんから、その時は教えてな」

 

初春「わらわは和室が良いのじゃが、和室は無いのか?」

初霜「私も畳がある方が……」

黒潮「うーん、ほな二人ずつにしよか。初春と初霜は和室のこっちつこうて、この部屋は球磨はんと綾波が入るっちゅうことで……」

 

球磨「球磨はどっちでも良いクマ~」

綾波「はい、綾波もです。ですから、四人でこの和室を使いましょう。新米艦同士同じ部屋の方が良いと思いますし」

黒潮「ホンマ? ほならこっちの和室がみんなの部屋っちゅうことで」

四人『はい(よいぞ)(クマー)!』

 

黒潮「ほなとりあえず部屋は決まったし、次は鎮守府内を案内するで~♪」

四人『おおー!』

 

 それから黒潮は、訓練場、食堂、ドック、大浴場、購買、工廠とみんなが必ず使う場所を案内していき、最後に港をする為にみんなを連れて港の埠頭へとやってきた。

 

黒潮「ほな、ここが最後やで。ここは見たまんまやけど、埠頭や。ここから出撃、遠征、演習に行くで」

初霜「あ、あそこに提督が居ますよ!」

黒潮「あぁ、演習に行った艦隊が戻る時間やな……報告なんかもあって忙しいと思うから、うちらは一旦部屋に戻って、それから執務室へいこか」

球磨「賛成クマー♪ 歩き疲れたから少し休憩するクマ♪」

黒潮「これくらいで疲れてたら、司令はんの訓練に付いて行かれへんよ?」

初春「提督自ら訓練をしてくれるのかの?」

黒潮「うちの司令はんは元艦娘専門の訓練教官やからね。詳しい事は配られた冊子にちゃんと書いてあるから、ちゃんと目を通しておくんよ? さもないと明日が大変やからね」ニシシ

初霜「が、頑張ります!」

 

 そんな話をしながら、黒潮達は一旦艦娘寮までみんなを先導していった。

 

 

 

 鎮守府近海、海上ーー

 

陽炎「鎮守府が見えて来たわね」

不知火「早く司令にお会いしたいです」ニヘラ

陽炎「そんなだらしない顔しない方が良いわよ……」

羽黒「あはは……」ニガワライ

 

那智「しかし、あれだけ派手にやられたのに体や服には傷すらつかないとは驚きだな……」

妙高「演習のシステムでそういう風に出来てるらしいからね……技術の進歩は凄いわね」

足柄「ま、難しく考えずにありままを受け入れるのが肝心よ♪」

妙・那『貴女(お前)はもう少し考えなさい(考えろ)』

羽黒「あはは……」ニガワライ

 

陽炎「あ、あれ司令じゃない?」

不知火「えぇ、あの出で立ちは司令で間違いありませんね」

那智「出迎えとは粋だな」

足柄「なんかこう……嬉しいわね!」

羽黒「はい」ニコ

妙高「では、少し急ぎましょうか」

全員『了解!』

 

 埠頭ーー

 

妙高「旗艦妙高及び、第一艦隊、演習より帰還致しました!」

女督「みんなお疲れ様。戦果報告は既に手元に届いている。みんな素晴らしい活躍だったな」

全員『ありがとうございます!』

 

女督「羽黒、不知火の援護はとても的確で素晴らしかった。後は回避のタイミングを磨いていこう」ナデナデ

羽黒「は、はぃ……ありがとう、ございますぅ……////」アウアウ

 

女督「那智、よく大破判定の羽黒をフォローしてくれた。後は命中率を上げていこう」ナデナデ

那智「ふふ、こうして誉められるのは嬉しいな。これからも努力するとしよう」フフン

 

女督「足柄、中破になっても怯まず攻撃に転じたのは見事だった。しかし実際の戦闘を想定してもう少し立ち回りを考えて挑むと良いだろう」ナデナデ

足柄「うふふ♪ 的確なアドバイスね! ちゃんと活かしてみせるわ!」ドヤァ

 

女督「陽炎、敵の撹乱、雷撃はとても良かったぞ。後はもう少し状況判断速度を上げる為に訓練をこれからもやっていこう」ナデナデ

陽炎「えぇ、私もいくつか思うところがあるから、反省して次に活かすわね♪」ニパッ

 

女督「妙高、旗艦としての現場指揮、状況判断は見事としか言いようがない。後は砲撃技術を高め、色々な撃ち方を磨いていこう」ナデナデ

妙高「はい、慢心せず、これからも励みます! 撫でられるのはちょっと癖になりそうですね」ニコ

 

女督「不知火、相手を手玉に取り相手旗艦を落とした働きは正にMVPだ。後は雷撃の命中率を上げていこう」ナデナデ

不知火「はい! これからもご指導ご鞭撻よろしくです!」ニヘラ

 

女督「よし、では補給を済ませ艤装を外した後、執務室へ集合してくれ。新たに着任した艦娘達を紹介した後、例の恒例行事をやるからな」ニッ

全員『了解ッ!』ケイレイ

 

 

 

 執務室前ーー

 

 コンコンーー

 

女督『入れ』

 

 ガチャーー

 

黒潮「失礼します。四人の案内終了したで♪」

女督「ご苦労だったな」ナデナデ

黒潮「へへ~♪」ニコニコ

女督「時期に他のみんなも来るから、ゆっくりしていてくれ。ココアでも出そう」

全員『ありがとうございます』

 

初春「のう、提督。譲り受けた冊子に貴様の傷は深海棲艦と同じ類いの物とあったが、真か?」

女督「あぁ、事実だ。ちゃんと知らせる為にあたしの経験してきた事は全てあの冊子に記載してある」

初霜「では、本当にあのような事があったんですね……」シュン

女督「そんな顔をするな。確かに辛い事ではあったが、この傷のお陰であいつ等と渡り合えるんだからな。それでお前達と共に前線に出れるならこの傷も悪くはない。あたしは必ずお前達を沈めさせたりしないぞ」

球磨「うお~! 格好いいクマ~!」キラキラ

綾波「この綾波、司令官のお役に立てるよう精一杯頑張ります……!」

女督「あぁ、共に海の平和を取り戻そう」

 

 コンコンーー

 

 ノックの音に返事をすると、陽炎達が入ってきた。

 

 互いに自己紹介をし、あたしは新しく着任した娘達に話を切り出した。

 

女督「では、着任記念としてみんなとの写真と個別にあたしとの写真を撮ってもらう。この鎮守府では恒例行事にしようと思っている」

球磨「お、提督と写真クマ? 嬉しいクマー!」

綾波「なんか皆さんの仲間入りを果たしたみたいですね♪」

初春「わらわと写真とは、貴様はお目が高いのう♪」

初霜「提督と写真を撮れる行事なんて……とても嬉しいです!」ニパー

 

 それから港の埠頭にて、集合写真と着任艦とあたしのツーショットを撮り終え、新しく着任した四人の歓迎会を開こうと食堂へ向かった。

 

 また新たな仲間を得て、あたしの鎮守府は更に活気を増していったーー。




読んでくれて本当にありがとうございました!

書いていて思いましたが工廠の「廠」って廠と厰で似た漢字があるんですね……。←無知

次回もよろしくお願い致します!


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五話:休憩入りまーす!

箸休め的な回。


 

 ◇◇鎮守府、お昼前ーー

 

 執務室ーー

 

 球磨達を迎えてから数日が過ぎた。

 

 そして今日は艦隊全体に休暇を与えた。

 

 それでもみんなは訓練場に行ってしまった。

 まぁ、自主的に訓練をするのは良いことだが、休めるときは休んで欲しいものだ。

 

 一方、あたしと陽炎は日頃の書類や資料のまとめをしていた。

 

 当初はあたしだけでやろうと思っていたが『今日の秘書艦は私なんだから、私も手伝うわ!』と、半ば強引に手伝いを申し出てきたのだ。

 そもそも休みなのだから秘書艦も何も無いんだがな……。

 

 

 

陽炎「司令、言われたファイリング終わったわよ!」

女督「ご苦労。さて……では今日の作業は終了だ。陽炎、休暇なのにありがとう」ナデナデ

陽炎「えへへ~♪ 私達だけお休みでも司令はきっと何かやるって思ってたからね。読み通りだったわ!」フフン

 

女督「お陰で予定よりかなり早く終わったよ。あたしも今日はこれで休むとしよう」

陽炎「それが良いわ。司令は働きすぎなんだもの」

女督「そんなに働いてはいないんだがな……」

陽炎「司令の『そんなに』と私達の『そんなに』はベクトルが大違いなの!」ズイ

女督「そ、そうか。なら今日はゆるりと過ごすことにするよ」

陽炎「えぇ、そうしてちょうだい♪」ニコ

 

女督「……なら、久し振りに手の込んだ料理でもするか。みんな訓練で腹を空かせて食堂に来るだろうからな」

陽炎「私も手伝うわ~!」ピョンピョン

女督「あぁ、分かった分かった」アハハ

 

 そしてあたしは陽炎と共に食堂の厨へ向かった。

 

 食堂ーー

 

陽炎「ねぇ司令、初日から気になってたんだけどさ……」

女督(エプロン姿)「ん? 何だ?」グツグツ

陽炎「あれよあれ。どうして食堂に置いてあるの?」

 

 陽炎が指を指した方を見ると、そこにはコンパクトサイズのグランドピアノがあった。

 

女督「あぁ、あれはあたしの親友のピアノだ。あいつとは幼馴染みでな、ピアニストになるのが夢だった……でも修学旅行の時の事故で亡くなってしまってな。それからあいつのご両親が一番仲が良かったあたしに譲ってくれたんだよ」

陽炎「……そうなんだ」

  (まずいこと訊いちゃった……でも親友さんの話をする司令の瞳、とても優しい……)

 

女督「ずっと実家のあたしの部屋に置いてあったんだが、あいつは賑やかな場所が好きでな。あたしも提督になったことである程度の融通が利くようになった……だから部屋に置いておくよりはみんなが集まるここに置いた方が良いと思って、実家から送ってもらったんだ」

 

陽炎「なら、きっと親友さんも喜んでるわね♪ いろんな人がここに来るものね」ニコ

女督「あぁ、そうだな」ニコ

 

 それからあたしと陽炎はみんなの昼食作りを再開し、昼食時には全員が食堂に集まっていた。

 

不知火「不知火は、いつもこうして司令の美味しい手料理を食べられて嬉しいです!」

黒潮「こんなん毎日食べられるうちらは幸せ者やな~♪」

女督「そう言ってもらえると作った甲斐があるな。おかわりもあるからどんどん食べると良い」ニコ

 

球磨「この鮭のムニエルは絶品クマー!」ガツガツ

初春「この肉じゃがは実に美味であるぞ♪」モグモグ

初霜「こちらのコロッケもとても美味しいです♪」ハフハフ

綾波「今度は綾波もお手伝いしますね」ニコ

女督「口に合って良かった。みんなの笑顔が見れてあたしは嬉しいよ」ニコニコ

 

那智「私も料理が出来れば少しは戦力になれるんだがな……」クッ

妙高「貴女のは隠し味が隠れていないのがいけないと思うわ。食べられないことはないけどね……」ニガワライ

足柄「なら今度、提督に教わったら? 私や妙高姉さんが教えるより上手だと思うわ」

羽黒「わ、私も教わろうかな……」オズオズ

女督「あたしで良いなら教えてやるよ。優しく……な?」キラッ

全員『っ////』ズキューン

 

 あたし達は楽しく昼食を終え、特にやることもなくみんなでそのまま食堂でまったりと過ごしていた。

 

妖精あ「皆さんお茶です」

妖精い「洗い物はお任せあれです」

妖精ろ「何かあったらお呼びくださいです」

女督「あぁ、ありがとう」ナデナデ

妖精達『やったるぜ~!』キラキラ

陽・不・黒『…………』ジトー

 

女督「さて……久し振りにこうしてゆっくり過ごすが、みんなはここに居て良いのか? 街に買い物とかしに行っても良いんだぞ? 前みたいにはぐれ深海棲艦が出ないように対策してあるからな」

不知火「街へ行くのであればみんなと行きたいです」

黒潮「うちもうちも!」

陽炎「私もみんなで一緒に行きたいな~」

羽黒「わ、私も行くならみんなとが良い、です……」ウツムキ

 

初春「……だそうじゃ、貴様はどうするのじゃ?」ニッ

女督「……なら仕方ない、みんなで行くか。各自仕度してもう一度ここへ集合だ」

  (妖精達に鎮守府の防衛システムの作動を頼んで来なくてはな……)

 

全員『了解♪』

 

 そして急遽決まった街に行く予定にみんなは大喜びで仕度しに向かった。

 

 

 

 鎮守府側にあるバス停から約三十分、あたしとみんなは街へやって来た。

 

 鎮守府近くの街ーー

 

女督「さて……ではここからは自由行動にするか。一七○○にはこのバス停に集合だ。何かあったらあたしに連絡をするように。では、解散!」

全員『了解!』

 

\アソコニイクワヨー ホラネエサンコッチ ワラワラ/

 

 みんな思い思いの場所へと散らばって行く。前に連れてきたことがあるから目当ての場所があるのだろう。

 

 そんな中、あたしから離れようとしない四人に声をかける。

 

女督「お前達はどこにも行かないのか?」

球磨「行きたいけど、何があるか分からないクマー」

初春「わらわは扇子が見たい故、案内をしてはくれぬか?」

初霜「わ、私もまだよく分からないので……」ウワメヅカイ

綾波「迷ったら怖いですし……」ウワメヅカイ

女督「そうだったか……配慮が足りなくてすまない。ではあたしと一緒に行こうか」ニコ

四人『はい(うむ)(クマー)♪』

 ……。

 …………。

 ………………。

 

 ◆反物屋◆

 

初霜「沢山の扇子やかんざしがあります~!」キラキラ

球磨「反物で出来た小物も一杯あるクマー」キョロキョロ

綾波「この着物の柄、素敵です……」ウットリ

初春「なかなか良い店じゃの♪」ルンルン

女督「良かったな」ニコニコ

  (やはり女の子だな、みんな目がキラキラしている)

 

初春「むう……この柄も良いが、こちらも捨てがたいのぅ」ウデクミ

女督「初春なら、こちらの桜柄が良いんじゃないか?」

初春「お、おう、貴様がそう申すならこちらを貰おうかの////」ドキドキ

女督「あぁ、そうすると良い。では、初春が迷っていたこちらの菊柄はあたしが買おう。プレゼントだ……みんなには内緒でな」ウインク

初春「そ、そうか、貴様も気が利くのう////」ニコニコ

 

 ◆大型スーパー◆

 

球磨「おぉ~! この試食のハチミツ、とても美味しいクマー!」

初春(お主、本当は熊なのではないか?)

綾波「いい味ですね~♪」

初霜「~♪」ペロペロ

女督「なら買って行こう。これで今度何かお菓子でも作ってやろう」ニッ

球磨「クマー! 球磨は一生提督に付いていくクマー!」キラキラ

女督「大袈裟なヤツめ」ナデナデ

球磨「クマ~♪////」ニコニコ

 

 ◆展望台◆

 

球磨「高いクマー♪」キラキラ

初春「あまりはしゃぐでない、みっともないぞ?」

 

綾波「うわぁ、とても綺麗な景色です♪」

初霜「人があんなに小さく見えます~♪」

女督「この綺麗な街をみんなで守っていこうな」ニッ

綾波「は、はい////」ドキッ

初霜「はい////」キュン

女督「勿論、お前達はあたしが守るぞ」ナデナデ

二人『はぅ////』ズキューン

 

 それからも四人と街を回っていると、集合時間が迫って来ていた。

 あたしは四人を連れてバス停へ向かった。

 

 バス停までの帰り道ーー

 

女督「結構買い物してしまったなぁ」アハハ

球磨「おやつに食べたあの喫茶店のケーキは最高だったクマー♪」

綾波「結構回ったのに、まだ見てないお店も沢山ありまますね」ニコニコ

初霜「次のお楽しみですね」ルンルン

初春「実に良い買い物であったな」フフン

女督「次に来る時はまた新人も居るだろうから、今度はお前達が案内してやると良い」

四人『勿論です(じゃ)(クマー)!』

 

 すると帰り道にゲームセンターの前を通った。

 

 来る時は気づかなかったが、プリクラと言う写真のプリントシールを作る機械が目に入った。

 

 四人もそれも気がついたのか、あたし達は顔を見合せた後、笑顔で頷いてそのプリクラ機へ入った。

 

 プリクラ撮影中ーー

 

女督「たまにはこういうのも一興だな」

球磨「みんなに自慢するクマー♪」

綾波「宝物が増えました」フフ

初霜「自分の手帳に貼ります♪」

初春「わらわは鏡の端に貼ろうかの」ニコ

 

 それからバス停に着くと、あたし達は見事に一番最後だった。

 

 バス停ーー

 

陽炎「お帰り~♪」

不知火「? 皆さん、何やら凄い笑顔ですね」クビカシゲ

黒潮「何か良いことでもあったんか?」ノゾイコミ

 

球磨「ふっふっふ~……これを見るクマー!」ババーン

陽炎「司令とのプリクラ? 良かったじゃない」ニコ

不知火「なん……」チーン

黒潮「だと……」ガーン

 

綾波「宝物です♪」キャハ

初霜「ね~♪」ニパー

初春「ふふん」ドヤァ

不知火「陽炎について行くんじゃなかった……」

黒潮「司令はんに付いとるべきやった……悔やまれるわ……」

陽炎「ねぇ、流石に傷つくんだけど……」ウルッ

 

\スミマセン! ナカンデヤー!/

 

女督「何をやってるんだあいつ等は……。そう言えば、妙高達はどこに行って来たんだ?」

妙高「あぁ、私達は那智と羽黒のぬいぐるみを見nーー」

羽黒「妙高姉さんっ////」

那智「もう少し私達の気持ちを汲んでくれ!////」

足柄「でも、その抱えたままのラッコ(羽黒)とイルカ(那智)の大きなぬいぐるみを隠さない時点でバレバレだと思うわ」ニヤニヤ

 

羽黒「~~~~////」モジモジ

那智「お、お前なんか、良いと思って手にしたスカートが入らなくて涙目だったじゃないか!////」ハンゲキ

足柄「う、うぅ、うるさいわね! 何も今そんなこと言わなくても良いでしょ!?」カオマッカ

那智「お前が先に言ったんだろうが!」

妙高「ケ ン カ は よ し な さ い っ !」ボスオーラ

那・足『アッハイ』

女督「はっはっはっ」

 

 みんなそれぞれ楽しめたようで良い休日になって良かった。

 

 そしてあたし達はみんなでバスに乗りまた鎮守府へと帰ったーー。




読んでいただきます真にありがとうございました!

次回もよろしくお願い致します!


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六話:やったぁ!

初改造。

キャラ崩壊入ります。


 

 ◇◇鎮守府、朝ーー

 

 提督の自室ーー

 

 日課である朝の鍛練を終えて自室に戻ったあたしは、朝礼に出るため軍服に着替えようとした。

 

 しかしクローゼットにはいつもの軍服が無かった。

 

女督(……しまった。この前の戦闘で最後のをダメにしたんだった。他のはまだクリーニングから戻ってきてないし、大本営に軍服の支給を頼んだがまだ届くには数週間掛かる……)

 

 どうしようかと考えていると、クローゼットの隅に真新しい軍服が数着掛けてあるのを見つけた。

 

女督「仕方ない、暫くはこれにするか……」

 

 その軍服に手を掛け、あたしは仕度に取り掛かった。

 

 

 

 司令室ーー

 

不知火「司令はまだでしょうか?」ソワソワ

陽炎「いつもより少し遅いだけじゃない。その内来るわよ」

黒潮「でも、司令はんがいつもより遅いってなんや不安や……」ソワソワ

 

初春「その気持ちは分かるがの、少しは落ち着かんか」ヤレヤレ

妙高「朝礼にはまだ早いですし、朝礼の時間になっても来なかったら呼びに行きましょう」

那智「あぁ、それで良いだろう。それより、足柄と球磨を起こすのが先だ」

 

羽黒「足柄姉さん、立ったまま寝ないで~」アセアセ

初霜「球磨さんも起きてください!」ユサユサ

綾波「司令官が来ないと起きそうにありませんね」

妙・那『はぁ……』アタマカカエ

 

 ガチャーー

 

女督「待たせたな。支度に手間取ってしまった」

不知火「あ、司令。おはようござiーー」

陽・黒『っ!?』

妙高「」ボウゼン

那智「ほう……」

羽黒「っ!!?」

足柄「んぁ……っ!?」

球磨「むにゃむにゃ……クマー!?」

春・霜・綾『』ポォー

 

 司令室に入って来たのは確かに皆が知る提督だった。

 しかし、彼女達は言葉を失った。

 

 何故なら、提督の姿に見惚れたからだ。

 

 いつもは男性提督と同じ白の軍服を身にまとっている提督が、今朝は女性用の軍服だったのだ。

 

 上着はいつもの白で丈がいつもより短めなだけでなんら気にならないが、問題は下だった。

 

 下は濃い目な灰色のフォーマルなミニスカート。

 そして網目の細かい黒のニーハイタイプの網タイツに太股のセンターラインに沿って見える黒のガーターベルト。

 

 それは同じ女性から見ても艶やかで魅力的だった。

 

女督「やっぱり変か? 普段はスカートなんて穿かないからな。しかもこんなに短いだなんて……なんか恥ずかしいな////」スカートスソギュッ

 

陽炎「ううん! とっても似合ってるわよ!////」ドキドキ

妙高「えぇ、良くお似合いで。つい見入ってしまいました」ニコ

那智「あぁ、思わず嫉妬してしまうくらいな」ニコ

女督「そ、そうか……ふふ////」ハニカミ

 

不知火「」プシュ←鼻血

黒潮「」カハッ←吐血

羽黒「~~////」アワアワ

球磨「」ガンミ

足柄「」ダバー←涎

初春「」ドギマギ

霜・綾『わぁ~////』ポワー

 

女督「あ、あんまり見ないでくれ////」モジモジ

 

全員『(その格好でその仕草は反則……////)』

 

 普段の服装とは違うからか、かなりみんなにからかわれてしまったが、あたしは気を取り直して朝礼を始めた。

 

女督「こほん……えーと、では朝礼を始める。本日の予定を発表するから、覚えるかメモを取るかするように」

球磨「メモメモクマー」

初霜「わ、私も……」

 

女督「本日は製油所地帯沿岸へ出撃してもらう。続いて艦隊編成を発表する。妙高、那智、足柄、羽黒、球磨、綾波の六名。旗艦は妙高に任命する」

 

六名『はっ!』ケイレイ

 

女督「この前の出撃であと一歩のところまで来た。これで決めてきてくれ。あたしは同行出来ないが指揮はモニターと回線を繋いで行うから安心してくれ」

 

六名『はっ!』ケイレイ

 

女督「お前達の力を信じている。連(絡)相(談)報(告)は怠るな。よろしく頼む」

 

六人『了解!』ケイレイ

 

女督「初春、初霜は訓練にて課題を消化するように」

春・霜『はっ!』ケイレイ

 

女督「本日の朝礼は以上だ。各自準備を済ませた後、執務室へ連絡しに来てくれ。尚、陽炎、不知火、黒潮の三名はあたしに付いて来てくれ、話がある。では解散!」

 

 あたしの言葉でみんな一斉に行動を開始する。

 

 そしてみんなが司令室から居なくなった後で、改めて陽炎達に声をかける。

 

女督「では、陽炎達はさっき言ったようにあたしに付いて来てくれ」

三人『はい!』

 

 執務室ーー

 

女督「そこの椅子に掛けろ」

三人『…………』ソワソワ

女督「そう不安そうな顔をするな。ちょっと待ってろ」

 

\タシカココニ…/

 

不知火(スカートなのにあんな前屈みになるなんて……いけない、また鼻血が!)ガバッ

黒潮(なんであんなセクシーなんやろ……眼福やわ~////)ジュル

陽炎(見え……見え……ってそうじゃなくて、その体勢は危ないわよ!)ドキドキ

 

女督「あったあった。これは陽炎、こっちが不知火でこれが黒潮のだ」つ書類

 

 書類へ目をやると一番に飛び込んできた文字があった。

 

 『改』への改造承認ーー

 

陽炎「え、ホントに?」

不知火「不知火達が?」

黒潮「嘘みたいや……」

女督「本当だ、おめでとう」

三人『』パァー

 

女督「早速、その書類を持って工廠へ行って向かえ。改造が終わる頃にあたしも向かえれば向かう」

三人『はい! 行ってきます!』ダッ

女督(あんなに嬉しそうな顔をして……こっちまで嬉しくなるじゃないか……)ニコニコ

 

 余程嬉しいのか、三人は競うように執務室を後にした。

 

 それから本日の活動をする者達も準備を終え、それぞれ任務へ向かった。

 

 あたしは司令室へ戻り、出撃の指揮へ入るーー。

 

 前回の出撃でこの海域の敵艦隊をほぼ壊滅させておいたお陰で、最深部まで特に戦闘らしい戦闘も無いまま到達出来た。

 

 製油所地帯沿岸、ボス海域ーー

 

妙高「報告します、敵陣形は単縦陣。先頭から戦艦ル級、雷巡チ級、軽巡ヘ級、駆逐ロ級二隻です」

女督『あぁ、こちらのモニターでも確認済みだ。各員は砲雷撃戦用意。妙高、足柄の二名は戦艦ル級を』

妙・足『了解!』

 

女督『那智、球磨の二名はチ級、ヘ級を

那智「任せておけ!」

球磨「やってやるクマー!」

 

女督『羽黒と綾波はの二名は残りのロ級二隻を頼む』

羽・綾『了解しました!』

 

女督『最後に、六名全員生きて帰還せよ!』

六名『了解(クマ)!』

 

 

 

 敵艦隊、見ゆーー

 

妙高「撃ちます!」

足柄「十門の主砲は伊達じゃないのよ!」

 

 ドーーン!

 

那智「敵は右舷だ! しっかり狙え!」

球磨「なめるなクマー!」

 

 バーーン!

 

羽黒「撃ち方、始めてくださーい!」

綾波「よく狙って……てぇえええ~い!」

 

 ババーーン!

 

 

 

 対戦艦ル級ーー

 

妙高「流石に固いわね! 足柄!」

足柄「えぇ、任せて!」

 

 妙高が正面へ砲撃し、その間に足柄は弾幕を張りつつル級の右へ回り込む。

 

ル級「……撹乱カ、無駄ナコトヲ……」

妙高「それはどうかしら!?」

足柄「こっちは毎日戦艦クラス以上の化物にしごかれてるのよ!」

女督(足柄……後で絞める!)ニコニコ

 

ル級「ナンダ、コレハ……!」

 

 今度は二人同時にル級を中心に円を描くように撃ちながら海上を移動する。

 

妙高「弾の出し惜しみなんてしないでよ!?」

足柄「そんなの考えたことすらないわ、ね!」

 

 ババーーン、ババーーン!

 

ル級「クッ……駄目ダ、照準ガ定マラナイ……!」

足柄「妙高姉さん!」

妙高「良いわよ!」

ル級「……!?」

 

 二人は螺旋を描くように回りながら、ル級へ接近。

 

足柄「ばぁい♪」

 

 ドーーン!

 

妙高「戦艦ル級、轟沈確認。次の目標へ向かいましょう」

足柄「えぇ!」

 

 

 

 対雷巡チ級、軽巡ヘ級ーー

 

那智「球磨、ヘ級は頼んだぞ!」

球磨「任せろクマー!」

 

チ級「……!」バラララッ

那智「ちぃっ……ちょこざいな。球磨、まだか!」

球磨「今やってるクマー!」ダダダダダッ

ヘ級「……!」

 

 球磨は前進しつつ、ヘ級へ砲撃する。

 

 そしてチ級とヘ級が互いに背中合わせで固まるーー

 

那智「よし、主砲最大火力! 撃てーー!」

球磨「魚雷発射クマー!」

 

 ドババーーン!

 

球磨「轟沈確認クマ♪」ニッ

那智「ったく、少し被弾してしまったぞ……」

球磨「次はもっと早く確実にやるクマ!」

那智「あぁ、そうしてくれ。次に行くぞ!」

球磨「クマクマー!」

 

 

 

 対駆逐ロ級二隻ーー

 

羽黒「綾波ちゃん、左はお願いします!」

綾波「任せてください!」

ロ級『……!』

 

 ボンボン!

 

羽黒「遅い!」

綾波「なんの!」

羽黒「綾波ちゃん、行って!」

綾波「はい!」

 

 パシュンッーー

 

ロ級『!?』

 

羽黒「余所見してる暇はありませんよ!」

 

 バーンバーン!

 

ロ級『………………!!!?』

 

 ダーーン!

 

綾波「魚雷命中です♪ 羽黒さん!」

羽黒「これで終わり! 主砲、撃てーー!」

 

 ババーーン!

 

羽黒「ふぅ、轟沈確認。索敵機からの反応は……よし、大丈夫!」

綾波「皆さんも集まって来ましたよ」

 

 

妙高「戦艦ル級は撃破したわ。そちらは?」

羽黒「ロ級二隻とも轟沈を確認しました。索敵機からも反応は無いみたい」

那智「こちらも任された二隻を沈めた」

球磨「被害は那智が小破、球磨は那智のお陰で無傷クマ」

足柄「こっちは妙高姉さんと私が小破よ」

綾波「羽黒さんと綾波は無傷です」

 

妙高「分かったわ。那智、足柄、羽黒は索敵機から目を離さないで……提督、応答願います」

女督『こちら司令室。戦闘はすべて確認していた。索敵をしつつ、複縦陣で帰還してくれ。隊列右は羽黒を先頭に、球磨、妙高。隊列左の先頭を足柄で綾波、那智の順だ。妙高と那智は背後に索敵機を飛ばすのを忘れるな』

六人『了解(クマー)!』

女督『気を抜かず、無事に帰還してくれ』

 ……。

 …………。

 

女督「よし、安全海域に我が艦隊が入ったな……」

 

 それを見届けてあたしは工廠へ向かった。

 

 

 

 工廠内、改造室ーー

 

妖精I「おう、提督。ナイスタイミングだな」

妖精R「丁度、皆さんの改造が終わりましたよ」

モブ妖精達『良い仕事したです』ゴマンエツ

女督「ありがとう、みんな」ナデナデ

妖精達『へへへ////』キラヅケカンリョウ

 

 すると、改造室の奥から三人が姿を見せた。

 

陽炎「改造終わったわ。強くなった私の活躍、期待しててよね♪」

不知火「良い強化です、感謝します!」

黒潮「うわぁ! うち、なんか強ぉなりおった!」

 

 服装等は変わらないが、表情やまとう気に自信が満ち溢れていた。

 

女督「おぉ、見事だな。みんなが帰ってきたら見せてやると良い」

三人『はい♪』ニコ

 

 それからあたし達は艦隊を出迎えようと港の埠頭へ向かった。

 

 港、埠頭ーー

 

 埠頭に着くと、丁度みんなが沖から上がって来たところだった。

 

女督「みんなご苦労。みんなの生還を心から祝福しよう」ニコニコ

妙高「ありがとうございます。艦隊、無事母港へと帰還しました」ニコ

 

足柄「今回のMVPは私よ♪」

女督「あぁ、良くやってくれた。偉いぞ」ナデナデ

足柄「ふふーん♪」ドヤァ

女督「でも、人を化物扱いとは酷いよなぁ」ニヤァ

足柄「あ、まさかあれ聞かれて……」ゾクッ

女督「明日はマンツーマンで特別訓練をしてやろう♪」ニコニコ

足柄「わ、わーい……(棒)」ハイライトオフ

陽・不・黒『(良いなぁ……)』ユビクワエ

 

那智「そう言えば、陽炎達は少し変わったな」

綾波「はい、なんと言うか……風格が違いますね」

女督「三人は改になったからな」

球磨「おぉー! 三人揃って改クマー!? 凄いクマ!」

羽黒「三人共、おめでとう♪」ニコ

皆『おめでとう(クマ)♪』

陽・不・黒『ありがとう(ございます)♪』

 

女督「さて、第一艦隊は補給後ドックへ。無傷の者も念のため見てもらってこい。後で詳細を報告書にまとめて提出してくれ。みんな良くやってくれた」

六人『了解!』

 

女督「じゃあ、陽炎達は改造後の試運転をするか。訓練場へ行こう」

三人『はい!』

 

 

 

 訓練場ーー

 

初春「おぉ、改になったのか。それは真、めでたいではないか」

初霜「改になったせいか、前より頼もしく見えます!」

陽炎「えへへ~♪ さ~んきゅ♪」

不知火「ありがとうございます」

黒潮「嬉しいなぁ~♪」

女督「よし、では早速一人ずついってみようか。初春と初霜は相手を頼む」

春・霜『はい(うむ)!』

 

陽炎「やっぱり最初は私よね♪ いつでも良いわよ!」

初春「遠慮はせぬぞ!」

初霜「いきます!」

 

 バーン!

 

陽炎「そんなんじゃ、当たらないわよ!」

初春「何!?」

初霜「さっきはあそこに居たのに……いつの間に!?」

陽炎(スピードが段違いだわ。これなら!)

 

 ビュンッ!

 

春・霜『っ!?』

陽炎「あは♪ 悪くないわね♪」コウトウブホウコウツキツケ

春・霜『ま、参った(ました)……』

女督「良い動きをするようになったな、次は不知火」

不知火「はい!」

 

初春「初霜、挟み込むぞ!」

初霜「はい!」

 

 二手に分かれ、挟撃に持ち込む。

 

不知火「甘いわね」ギラッ

初霜「っ!?」

初春「馬鹿者! 足を止めるでない!」

初霜「……はっ!?」

不知火「遅いわね」

 

 バンバン!

 

初霜「くっ!」

初春「くぅっ!」

 

 艤装を弾かれ、初春と初霜は揃って頭を垂れた。

 

女督「眼力で相手を押さえるとは……やるじゃないか。じゃあ、最後は黒潮だな」

黒潮「アイアイサー♪」

 

初霜「改って凄いですね……」

初春「安請け合いなどするものではないのぅ」

黒潮「いくで~!」

初春「初霜、今度はしくじるでないぞ!」

初霜「はい!」

 

 初霜は右へ展開、初春は左へ展開する。

 

黒潮(前よりよう見えるわ……ここやな!)

 

 ヒュンッーー

 

初霜「初春姉さん!」

初春「いつでも良いぞ!」

 

 バラララ! バーン! バーン!

 

 弾幕を張りつつ、主砲を繰り出す。

 

黒潮「三番手ともなると、策を練ってくるなぁ」

  (でも……)

 

初春「よし、次は……っ!?」

 

 ボーーン!

 

初霜「初春姉さん!」

黒潮「余所見はあかんで!」

 

 バーーン!

 

初霜「くぅ!」

 

女督「魚雷発射が格段に上達したな……狙いも読みも的確だ。ここまでにしよう」

 

 あたしの言葉で試運転は終わり、全員があたしの元へ集まる。

 

女督「初春、初霜、ご苦労だった。改の陽炎達はどうだった?」

初春「見ての通り手も足も出んかった……」シュン

初霜「前よりも格段に差が広がった気がします……」シュン

女督「相手を引き受けてくれてありがとう。お前達の動きも決して悪くなかったぞ。あたしが保証する」ナデナデ

春・霜『はい(うむ)……////』テレッ

三人(なんか負けた気がする……)ズーン

 

女督「陽炎達にはこれからも頼らせてもらうぞ。お前達はあたしの自慢だ!」ワシャワシャ

陽炎「えへへ~////」テレッ

不知火「ふへへ~////」デレッ

黒潮「んへへ~////」デレッ

女督「では、みんなで食堂へ行こう。祝勝会と改造祝いだ!」

五人『はい(うむ)♪』

 

 それから第一艦隊も加え、あたし達は勝利の美酒と仲間の改造祝いに酔いしれたーー。




結構な独自感を出してしまいましたが、ご了承を……。

ここまで読んでくれて本当にありがとうございました!


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七話:通信が入っています。

初の空母。


 

 ◇◇鎮守府、執務室ーー

 

 製油所地帯沿岸を攻略して一週間が過ぎた。

 

 次の攻略海域は南西諸島防衛線で既に何度か出撃したが、一つ問題が発生した。

 

女督「うちにはまだ空母が居ない……」

 

 そう、今攻略中の海域で敵艦隊には多数の空母が確認されているのだ。

 最初から制空権を棄てて接近戦に持ち込むのもありだが、あまりにもリスキーだ。

 

女督「建造するか……」フゥ

不知火(本日の秘書艦)「とうとう我が艦隊にも空母が……」キラキラ

女督「まだ建造出来るかすら分からんがな……」アハハ

 

 幸いにも資材は初期に比べて大分潤ってきた。

 

 艦隊もあれからそこそこ大きくなり、今では駆逐艦十一隻、軽巡洋艦五隻、重巡洋艦六隻にまでなった。

 

 ここらで空母を二隻程加えられれば大分楽になるはずだ。

 

女督「よし、早速建造をsーー」

『はじめて~の~ちゅう~♪ きみと~♪』←着信音

 

女督「……はい、もしもし?」

元帥『やぁやぁ、私だ私だ』

女督「あたしの身内に『私だ私だ』と言う人は居ません」ピッ

不知火「」

   (司令の着信音可愛いです////)

『はじめて~の~♪』

 

女督「はい、もしもし」

元帥『私だよ……君の大好きな叔父さんだよ……。いきなり切るなんて悲しいなぁ』クスン

女督「どうしてわざわざあたしのスマホに……と言うより、叔父さんには番号を教えてないはずですが……」

  「(先に艤装の開発を頼む)」アイコンタクト

不知火「」ケイレイ

 

 ガチャーーパタン……ーー

 

元帥『元帥になればこれくらいは朝飯前だよ。それと、私のことは『パパ』と呼べと昔から言っているじゃないか!』プンプン

女督「最初のは聞き流しますね……。そもそも、あたしは父さんにも『パパ』なんて言ったことないんですから……」

元帥『あんなのお前の父親失格だ! お前に電話や手紙も寄越さないなんて! だから早く私の所に養子に来なさい!』フンス

女督「丁重にお断りします。それに父さん元々そういう人ですからね……それで、わざわざあたしのスマホの番号まで調べて話したかったのはこの戯言ですか?」

元帥『……戯言じゃないやい!』ブワッ

女督「(めんどくさい……) 分かりました。それでどんな用件ですか、パパ?」

元帥『何度聞いても良い響きだ……』カンドウ

 

女督「私も忙しいので、もう切っても良いですか?」

元帥『本題に入ろう……君、そろそろ空母が欲しくないかね?』

女督「えぇ、欲しいですね。今そのことで工廠へ行こうと思ってましたから」

元帥『そうだろうともそうだろうとも! 君の戦果は随時私の所に入ってくるからな! それでどうだ? 私の所で正規空母でも建造して送ろうか?』

 

女督「その提案は魅力的ですが、妙高達も譲ってもらっているのに空母までもとは……」

元帥『身内贔屓してるように言われないか心配なのだね?』

女督「お察しの通りです。私が海軍学校を卒業と同時に大本営に着任出来たことも、叔z……パパの手回しのせいでしたし」

 

元帥『だがその分、有り余るほどの戦果を上げているではないか。今だって着任から一ヶ月以内でそこの南西諸島防衛線にまで来たのだからな』

女督「それは陽炎達やみんなの功績です。彼女達を誉めてください」

元帥『無能な指揮官では、どんなに戦艦を揃えても成し得ない事だ……君は良くやっている。だから私がこう提案しても、大本営のお偉方は二つ返事なのさ』

女督「……分かりました。お心遣い感謝します」

 

元帥『そうそう、最初からそう言えば良いんだよ』ハハハ

女督「パパには敵いませんね」

元帥『よし、では明日には正規空母を送ろう。何隻欲しいんだ? なんならパパン、娘の為に装甲空母も造っちゃうぞ~!』フンス

女督「正規空母や装甲空母ではうちの資材が待った無しで底を突いてしまいますから、軽空母を二隻程お願いします」

元帥『何なら資材も一緒に送るのに……』

女督「 い い で す ね 、 パ パ 」ゴゴゴゴゴ

元帥『アッハイ……んんっ、では明日軽空母二隻を着任させよう。ではな』

女督「はい、ありがとうございます。では」ピッ

  (全く……あの人は……)

 

 しかし、これで空母の心配は無くなった。

 

 後は対空戦の訓練を中心に、他の鎮守府とは対空母の演習を申し込もう。

 

 コンコンーー

 

女督「入れ」

 

 ガチャーー

 

妙高「提督、無事に艦隊が出撃任務から帰投致しました。それから深海棲艦との戦闘後にこちらのメモリーチップを見つけました」つチップ

女督「そうか、ご苦労だったな。補給と入渠を済ませたら、報告書に取り掛かってくれ」

妙高「分かりました。それでは失礼致します」ペコリ

 

 妙高から預かったメモリーチップ。

 これは敵の艦を倒した際に敵が落としていく物で艦娘のデータが入っている物だ。

 

 これを工廠に持っていくと、このメモリーチップに記録されている艦娘を復原することが出来る。

 何故敵がこんなものを落とすのかは諸説あるが、有力なものでは『深海棲艦は前に沈んだ艦のデータとこれまで轟沈した艦娘のデータから出来ている』と言うものだ。

 

 確かにそれならば人型の深海棲艦が居ても不思議ではないし、艦娘と分かり合えるかもしれない。

 

女督(とにかく、これを工廠まで持っていこう)

 

女督「誰か来た時に困らないように書き置きして……よし、では行こう」

 

 こうしてあたしは工廠へ向かった。

 

 工廠ーー

 

不知火「司令……? お疲れ様です。先程妙高さんがそちらへ向かったと思いますが、お会いになられましたか?」

女督「あぁ。それと妙高からこれを預かったのでな」つチップ

 

不知火「了解しました。もう少しで妖精達も手透きになるので、座ってお待ちください」つ椅子

女督「ありがとう……今回の開発はどうだ?」

不知火「今回は三式爆雷投射機を開発出来ました! 今は最後の開発をしているところです」エッヘン

女督「おぉ! それは良いじゃないか! 良くやったぞ、不知火」ワシャワシャ

不知火「恐縮です……えへへ////」ニヘラ

妖精I「イチャイチャしてるとこ悪いが、開発終わったぞ。またも三式爆雷投射機だ」ニッ

女督「二つもとはやるなぁ。妖精さんもありがとう」ナデナデ

妖精I「よせやい。なんならトランザムシステムも搭載してやるぞ!」ニコニコ

女督「いや、それよりもこちらのメモリーチップの確認を頼む」スチャつチップ

  (だからそのトランザムシステムとは何だ……?)

 

妖精R「了解しました。すぐに解析結果は出ますよ……わぁ、軽空母・鳳翔のメモリーが記録されてますよ!」

女督「こいつは重畳。早速復原してくれ」

妖精達『了解!』

 

不知火「これで航空戦が出来ますね」

女督「あぁ。それに明日には元帥殿の所から、またうちへ軽空母二隻程譲ってもらうことになってな。航空戦を視野に入れる事が可能になった」

不知火「それでは先ずは訓練ですね」

女督「分かってるじゃないか」ニヤリ

不知火「司令の教え子ですからね」フフフ

妖精R「復原終わりました」

女督「そうか。では不知火、精密検査後に司令室へ案内してくれ」

不知火「了解です!」ケイレイ

 

 司令室ーー

 

女督「あたしがこの鎮守府の提督だ。そして君は我が鎮守府では初の空母だ。君の働きに期待している」

鳳翔「航空母艦、鳳翔です。不束者ですが、よろしくお願い致します」ペコリ

女督「あぁ、よろしく頼む。この鎮守府での規則等はこの冊子に記載してある。明日までに熟読するように」つ冊子

 

鳳翔「分かりました。家事も得意ですのでお任せくださいね」ニコ

女督「おぉ、それは頼もしいな。君は良いお嫁さんになるだろう」ニコ

鳳翔「そ、そんな////」カオマッカ

不知火「」クッ

女督「家庭的で更に愛らしいとは……羨ましいな。では不知火、鳳翔の案内頼んだぞ」

不知火「……了解しました。では鳳翔さん、不知火の後に付いて来てください」

鳳翔「はい、よろしくお願い致します」

 

 

 

 艦娘寮ーー

 

不知火「ここが鳳翔さんのお部屋になります。今晩はお一人で過ごしてもらうことになりますが、明日には軽空母の方が着任しますので」

鳳翔「はい。分かりました」

 

不知火「あの……司令の顔の傷の事は冊子に記載してあります。先程の接し方を見ていたので特に心配はしてませんが、決して司令を怖がらないでください」

鳳翔「はい。あんなに優しそうな瞳をしていますから、大丈夫です……ふふ」ニコニコ

不知火「何です? 不知火に落ち度でも?」

鳳翔「いえいえ。不知火ちゃんは提督のことをとても慕っているんだなと思いまして」ニコニコ

 

不知火「っ!?//// な、何当たり前のことを言ってるんですか//// 司令は不知火の自慢の司令です//// 今の不知火があるのは司令のお陰です//// 厳しいけど優しいですし、綺麗ですし、料理も上手ですし、誉めると照れる所も可愛いですし、それにーー」

鳳翔(スイッチ押しちゃいましたね……)アハハ

 

 数十分後ーー

 

不知火「ーーという訳で、不知火が司令をお慕いしているのは当たり前なんです////」

鳳翔「そ、そうなのね……(やっと終わりました)」アハハ

 

\アーツカレタ オツカレー ガヤガヤ/

 

不知火「……皆さん、訓練を終えた様ですね。では皆さんにご紹介するとしましょう」

鳳翔「えぇ、お願いします」

 

 艦娘交流中ーー

 

○○「ねぇねぇ、子日の名前読める?」

鳳翔「え~と……」オロオロ

○○「」ワクワク

若葉「おい、先程自分で答えを言ってしまったから、鳳翔さんが困ってるじゃないか……」

子日「あ、ホント? なら子日の名前、漢字で書ける?」

鳳翔「え~と……」オロオロ

初霜「子日お姉ちゃん……名札着けたままだから、鳳翔さん困ってますよ……」

初春「お主のような者を天然と言うじゃのう。わらわの妹がすまぬのぅ……」アタマカカエ

鳳翔「とても、良い個性だと思いますよ、はい」アハハ

 

文月「あたし、文月っていうの。よろしくぅ~」

皐月「皐月だよっ。よろしくな!」

敷浪「あたしは敷波。以後よろしく」

綾波「綾波と申します。よろしくお願い致します」

鳳翔「まあ、可愛らしい。よろしくお願い致します」ニコニコ

 

多摩「軽巡、多摩です。猫じゃないにゃ」

北上「アタシは軽巡、北上。まーよろしく~」

大井「こんにちは。軽巡洋艦、大井です。どうぞ、よろしくお願い致しますね」

木曾「木曾だ。姉貴達ともどもよろしくな」

鳳翔「皆さん個性的ですね。よろしくお願い致します」ペコリ

 

青葉「ども、恐縮です、青葉ですぅ! 一言お願いします!」

衣笠「初対面でやめなさいよ。私は衣笠さんよ。こっちの青葉ともども、よろしくね」

鳳翔「ふふふ、面白いお姉さんですね。よろしくお願い致します」ペコリ

 

 それからも妙高姉妹、陽炎、黒潮等との挨拶を交わし、その日は過ぎていった。

 

 

 

 次の日の朝、司令室ーー

 

祥鳳「軽空母、祥鳳です。ちょっと小柄ですけど、ぜひ提督の機動部隊に加えてくださいね!」ケイレイ

瑞鳳「瑞鳳です。軽空母ですが、錬度があがれば、正規空母並の活躍をおみせできます」ケイレイ

女督「あぁ、君達の着任を心より歓迎する。ここの規則はこの冊子に記載してある。それからーー」

 

 簡単な説明を終えたあたしは、本日の秘書艦である黒潮に新しく着任した祥鳳姉妹を部屋まで案内するように頼んだ。

 

黒潮「この部屋が二人のや。正確には三人やけど」

鳳翔「初めまして、鳳翔です。昨日ここに着任しました。どうぞ、よろしくお願い致します」ペコリ

祥鳳「こちらこそ、よろしくお願い致します」ペコリ

瑞鳳「よろしくお願いします」ニコ

 

黒潮「ほなら互いに挨拶済ませたとこ悪いけど、鎮守府の案内は鳳翔さんに任せてええか? うちこれから工廠行かなあかんねん」

鳳翔「はい。もう鎮守府内は把握しましたので、大丈夫ですよ」

黒潮「おおきに♪ ほな、終わったら司令はんの所に行ってな。大抵は訓練場か執務室におるから♪」ノシ

鳳翔「分かりました」

 

 

 

瑞鳳「……提督って苦労したんだね」

祥鳳「でも、だからこそ今の提督が居るんでしょうね」

鳳翔「はい、私もそう思います。他の鎮守府のことは分かりませんけど、ここはとても丁寧で心遣いを感じます」

瑞鳳「こんな冊子まで用意してるもんね~」ニコニコ

祥鳳「良い所に着任出来たみたいで一安心ね」ニコ

鳳翔「では、鎮守府内の案内をしますね。今からですと、お昼頃には終わります」

祥・瑞『よろしくお願いします』

 

 艦娘案内中ーー

 

 案内を終えると、鳳翔が言ったように時間はお昼前になった。

 

瑞鳳「みんなにも挨拶も出来たし、提督の所に行く?」

鳳翔「この時間ですと食堂に行った方が良いですね」

祥鳳「先程は訓練場でもお見かけしてませんし、執務室へ行くのでは?」

鳳翔「この時間、提督は食堂の厨に居ますから」ニコ

瑞鳳「もしかして、提督自ら艦隊の食事を?」

 

鳳翔「はい。流石に全てではないみたいですが、大抵は提督が作っていますね。私もお手伝いする予定で居たので、食堂に行った方が早いです」

瑞鳳「なら、私もお手伝いするよ! 卵焼きなら任せて♪」

祥鳳「私もお手伝いさせてください。ある程度は心得はありますから」

鳳翔「あらあら。それではお願いします」

 

 そうして三人は食堂へ向かって歩き出した。

 

 食堂ーー

 

女督「では、みんな手を合わせて……」

全員『いただきます!』

 

\ワイワイガヤガヤ/

 

女督「四人に手伝ってもらったから、今日は早く出来たよ。ありがとう」

陽炎「私は当番だったし、そもそも野菜洗っただけよ」

祥鳳「私もお味噌を溶かして仕上げただけです」

鳳翔「提督はお料理がお上手ですからね」

瑞鳳「私の卵焼きより提督の卵焼きの方が美味しそうだよ~」

 

女督「そう言うな。あたしは感謝してるんだから、素直に受け取れ」ウインク

陽炎「そ、そうね////」

鳳・祥・瑞『はぅ////』ズキューン

 

若葉「若葉に直接ではないのに、間接的に被弾した////」ドキドキ

敷浪「攻撃範囲広いよね……別に嫌じゃないけど////」ドキドキ

 

北上「そう言えば提督さ~、このあとってあれやるの?」ニヤ

女督「あぁ、勿論だ」

大井「本当に好きですね……」

北上「そう言ってる割りには提督とのツーショットは腕組んでたよね~」ニヤニヤ

多摩「多摩が提督の膝に乗るとすぐに怒るにゃ」ニマニマ

大井「~~~~////」パクパク

女督「なら、大井もあたしの膝に乗るか? 多摩や駆逐艦の娘達には意外と好評なんだぞ」ニコニコ

球磨「球磨も提督の膝に座るの好きだクマー♪」

大井「こ、今度座らせてもらいます!////」カオマッカ

 

瑞鳳「あれとかツーショットとか何の話?」

皐月「あぁ、司令官は艦隊に新しい人が来ると、その記念にみんなとの集合写真と着任した娘は司令官とのツーショットを撮るんだ。ボクはお姫様抱っこされて撮ったよ♪」ニシシ

文月「あたしは肩車してもらったの~♪」キラキラ

 

鳳翔「それは良い思い出ね。私達も写真撮影してもらえるなんて嬉しいですね」

祥鳳「はい。とても楽しみです」

女督「そうかそうか。そう言ってもらえると嬉しいな」

若葉「シャッターを押すのは任せろ」キリッ

子日「子日もやる~♪」キャッキャッ

女督「あぁ、頼むよ」

 

青葉「青葉に任せてくれないんですかっ!?」ガーン

衣笠「青葉は青葉で撮れば良いじゃない」ヨシヨシ

妙高「駆逐艦の娘達から役目を取るのは悪いですからね」

足柄「それこそ問題でそのシーンをカメラに収めなきゃね」フフフ

那智「私は今のお前の顔を撮ってやりたいよ」ハァ

羽黒「あはは……」ニガワライ

女督「では、昼食が終わって仕度が済み次第撮るぞ」

全員『はい♪』

 

 こうして空母という大きな仲間を加え、あたし達の艦隊はまた大きくなったーー。




読んでくれて本当にありがとうございました!
色々と独自設定付けましたがご了承を。

次回もよろしくお願い致します!


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八話:司令はん、なんやろかー?

南西諸島防衛線攻略戦。


 ◇◇鎮守府、○六三○ーー

 

 司令室ーー

 

 空母を艦隊に迎え数日が過ぎた。

 訓練、出撃を繰り返し、ついに迎えた南西諸島防衛線攻略戦も大詰め。

 

 前日に空母無しの艦隊で、ボスが確認されているポイントFまでの活路は開いた。

 

女督「後は自分を信じ、仲間を信じるのみ、か……」

 

 やれることは全てやった。

 後はみんなで勝利を掴むだけ。

 力みも緩みもせず、ただ冷静に……。

 

女督「すぅー……はぁー……」

 

 開けた窓から入る少し冷たい潮風と潮の香りを肺一杯に取り込み、馴染ませるように吐く。

 水平線は見渡す限りの異なる二色の青色で至って穏やかな日和だ。

 

 そしてあたしはもう一度、本日出撃する艦隊の名簿に目を通した。

 

旗艦:祥鳳

随伴:瑞鳳、鳳翔、妙高、那智、球磨

 

女督(誰一人として失わせはしない……!)

 

 ○七○○ーー

 

 コンコンーー

 

黒潮『司令はん、もう居る?』

女督「黒潮か、あぁ居るぞ、入ってこい」

 

 ガチャーー

 

黒潮「おはようさん、司令はん!」ニカッ

女督「あぁ、おはよう、黒潮。本日の秘書艦、よろしく頼む」ニコ

黒潮「アイアイサー♪」

 

 黒潮の笑顔を前にあたしは先程までの緊張が無くなり、平常心を取り戻せた気がした。

 

女督「黒潮、ちょっと良いか?」チョイチョイ

黒潮「ん~? 何なん?」テテテッ

女督「ちょっとな……少しこうさせてくれ」ギュッ

黒潮「なっ!? 司令はん……?」

  (司令はんの手、震えとる……?)

 

女督「すまないな。こんな弱い提督で……」

黒潮「そんなことあらへん。うちの自慢の司令はんなんやから、そんな悪い言い方せんでや……」キュッ

女督「ありがとう……黒潮……」ギュッ

黒潮(ホンマ優しいなぁ……)

 

 ○七三○ーー

 

 コンコンーー

 

黒潮「」ビクッ

女督「ありがとう、黒潮」ボソッ

  「開いているぞ、入れ」キリッ

黒潮(ホンマに……役得やで……)ニヘヘ

 

 ガチャーー

 

祥鳳「失礼します」

瑞鳳「失礼しまーす!」

鳳翔「失礼致します」

妙高「失礼します」

那智「邪魔するぞ」

球磨「クマー」

 

女督「第一艦隊が勢揃いだな」ニッ

祥鳳「全員いつでも出撃出来ます!」ケイレイ

全員『』ケイレイ

女督「本日は待ちに待った南西諸島防衛線攻略戦の総仕上げだ。あたしも同行する。みんなで生きてここへ帰還しよう!」

全員『はい!』

 

 それからあたし達は埠頭へ向かった。

 

 港、埠頭ーー

 

 埠頭へ着くと、他のみんなまで埠頭に居た。

 

 みんな笑顔であたし達を送り出してくれるそうだ。

 集まった仲間達を見て、改めて数多くの仲間が居ることに気が付き胸が熱くなる。

 

女督「これより、あたしと第一艦隊の面々は南西諸島防衛線攻略戦へ向かう。みんな、留守を頼むぞ」ニッ

 

陽炎「えぇ、任せて!」グッ

不知火「御武運を!」ケイレイ

黒潮「任せとき~!」ニカッ

 

足柄「救援なら任せてよね!」グッ

羽黒「必ず助けに行きますから!」グッ

青葉「青葉にお任せ~!」ケイレイ

衣笠「衣笠さんにもお任せ~!」ケイレイ

 

初春「遠征任務はわらわ達に任せよ」ドヤァ

子日「やっちゃうよ~!」ピョンピョン

若葉「しっかり任務を全うする」ケイレイ

初霜「頑張ります!」ケイレイ

綾波「どうかご無事で」ケイレイ

敷波「ファイト~」グッ

 

多摩「任せるにゃ」ノシ

北上「ま~ぼちぼち頑張るよ~」ノシ

大井「お気をつけて」ケイレイ

木曾「ここの警備は任せとけ」ケイレイ

 

女督「頼りにしているぞ……では、抜錨!」

六名『了解(クマー)!』

 

 こうしてあたしと第一艦隊は埠頭から戦地へと赴いた。

 

陽炎「行ったわね……」

不知火「えぇ……」

黒潮「ほな、うちらも自分の仕事に向かおか~」

 

 

 

 南西諸島防衛線海域、ポイントF付近ーー

 

 一度だけの戦闘を経たが目に見えた損傷は無く、目的地のポイントFへ近づいてきた。

 

女督「各艦索敵を怠るな。どんな些細なことでも随時報告しろ」

 

祥鳳「妖精さん、何か見える?」

索敵機妖精(以下妖精)『敵艦見ゆ!』

 

瑞鳳「妖精さん、報告を!」

妖精『敵艦隊、空母ヲ級二隻、重巡リ級二隻、軽巡ヘ級一隻、駆逐ニ級一隻の輪形陣です!』

 

鳳翔「索敵行動終了、ただちに離脱してください!」

妖精『了解したです!』

 

妙高「提督!」

女督「あぁ……陣形をこちらも輪形陣へ! 中央に祥鳳、瑞鳳! 先頭に球磨! 右に妙高! 左は那智! 最後尾に鳳翔! 空母は各艦載機を飛ばせ! 他の艦は弾幕を張れ! 空母に近づけさせるな!」

 

妙高「対空は任せて!」

那智「訓練の成果を見せてやろう!」

球磨「球磨の反応速度をなめるなクマー!」

 

 敵影もあたしの肉眼で捉えることができ、とうとう南西諸島防衛線の決戦が始まった。

 

 

祥鳳「攻撃隊、発艦始めてください!」

妖精RS『こちら妖精RS、デュナメス。目標を狙い撃つぜ!』

妖精AH『こちら妖精AH及びHH、キュリオス。迎撃行動に移ります』

妖精HH『楽しい戦闘にしようぜ~! アーヒャヒャヒャ!』

 

 

瑞鳳「数は少なくても、精鋭だから!」

妖精TA『こちら妖精TA及びヴァーチェ。迎撃行動に移行する!』

妖精SFS『こちら妖精SFS、エクシア。目標を駆逐する!』

 

 

鳳翔「風向き、よし。航空部隊、発艦!」

妖精AR『僕が一番艦載機を上手く扱えるんだ!』

妖精SA『あの艦載機、何て動きをするんだ……!』

 

 

ヲ級『行ケ……!』

 

 ヒューンヒューン!

 

 バラララ! バーン!

 

妖精RS『妖精AH、撹乱サンキュー!』

妖精HH『もっと行くぜ~!』

妖精AH『僕達がカンコレ・ビーイングだ!』

 

 チュドーーン!

 

妖精TA『敵は一掃した。妖精SFS、航空爆撃は頼んだぞ!』

妖精SFS『了解。これより敵を殲滅する。俺が艦載機だ!』

 

 ボボーーン! バーーン!

 

妖精AR『敵の動きが見える……!? これなら……!!』

妖精SA『あの体勢から当てるのか……!? 私も負けては居られないな……!!』

 

 バーーン! ボーン! ボーン!

 

祥鳳「敵空爆機接近!」

女督「対空放射放てーーっ!」

妙高「いきます!」

那智「当たれ!」

女督「球磨、空母に的を絞らせるな!」

球磨「任せろクマー!」

 

 バラララ! バラララ!

 

 チュドーーン!

 

鳳翔「制空権確保! 敵艦隊砲雷撃戦へ移行! 残存勢力は空母ヲ級ニ隻、リ級一隻、駆逐ニ級です! 内、敵旗艦ヲ級は無傷、他三隻は中破しています!」

女督「空母勢は第二攻撃隊準備を! 他は砲雷撃用意!」

 

 バーーン! バーーン!

 

妙高「ああっ! ……まだ……引けません……!」

那智「妙高! くぅっ!」

 

 ボンボン!

 

女督「くっ! 敵空爆機が予想以上に厄介だな! 球磨!」

球磨「はいクマー!」

女督「やれ!」

球磨「っ!! 了解クマー!」

 

 バシュンーー

 

鳳翔「これで決めます!」

祥鳳「っ!? 鳳翔さん避けて!」

鳳翔「え!?」

 

 ヒューンーー

 

女督「やらせんぞ!」

 

 バンバンバンバン!

 

 ボーン!

 

女督「無事だな?」

鳳翔「はい!」

瑞鳳「凄いなぁ……拳銃だけで敵空爆機落としちゃったよ……」

女督「そろそろか……」

 

ヲ級「……っ!?」

 

 バーーン!

 

 大きな水柱が上がりそれと同時に静けさが戻り、それが戦闘の終わりを告げる。

 

女督「各艦、索敵機を飛ばせ」

球磨「提督ーーー!」

女督「どうした球磨?」

球磨「敵旗艦のヲ級、まだ息があるみたいクマー!」

女督「っ!?」

 

 それを聞いてあたしは軽率にもヲ級の側へ向かっていた。

 

ヲ級「…………敗ケタノカ……」

女督「本当にまだ生きているようだな……」

ヲ級「っ!?」

女督「もう戦闘は終わった。お前達の敗けでな……これ以上の殺生をする気はない」

ヲ級「…………オ前ハ、ドコカワタシ達ニ似テイル……何故ダ……?」

女督「あたしはお前達の意識に触れたことがあるからな。半分はお前と一緒だ」

ヲ級「仲間ダト言ウノカ……?」

女督「敵だ。だが戦闘が終わった以上、敵でも味方でもない」

ヲ級「ワタシヲドウスル気ダ……ッ!!!?」ガクガク

女督「おい、どうした!?」

 

 突如として激しく身体を揺らし始めたヲ級。

 すると次の瞬間、ヲ級の頭の艤装が個体で動き出した。

 

六名『提督!』

女督「来るな!」

艤装『人間は審判の時を迎えている……』

女督「……っ!?」

 

 耳からではなく、脳に直接その言葉は入ってきた。

 

艤装『海は生物の母……それを汚すこと……それは生まれ出てきたことを否定すること……』

女督「…………っ!」

艤装『貴様の思考は読めている。お前のような人間が居ることは喜ばしいことだ』

女督「ならばなぜ未だに殺戮を繰り返す……!?」

艤装『人間がしてきたことを返している……審判の時が終わった時、生きるか滅ぶかが決まる』

女督「それまでこれは続くのか……」

 

 ボワンーー

 

 言いたいことだけを言って、ヲ級の艤装は消滅した。

 ヲ級を見ると、既に動かず身体の半分は海と同化していた。

 

女督(海へ還るということか……)

 

 ヲ級から手を離し、徐々に海へと還るヲ級に祈りを捧げながら、あたしは艦隊を引き連れて母港へ帰還を開始した。

 

 深海棲艦の艤装から語られたこと……それを考えたがまとまることはなかった。

 

 

 

 帰りの海上ーー

 

妙高「提督、大丈夫ですか?」

女督「あ、あぁ、すまないな。大丈夫だ」

 

那智「深海棲艦を知るには奴等の艤装が鍵になるようだな」ウデクミ

祥鳳「はい……次からは本体ではなく艤装に的を絞って攻めれば、本体は助かるのでは……?」

女督「それは無理だ」

瑞鳳「どうして?」

 

女督「あのヲ級の最期を見たろ? まだ息はあったが艤装が外れた途端、海と同化を始めていた……元が死体、ならば力を失えば海へ還るだけと言うことになる」

鳳翔「なかなかに辛い事実ですね……」

 

球磨「でも、だからって球磨達が沈んだら意味無いクマ」

女督「球磨の言う通りだ。今回は深海棲艦とその艤装の関係を知ることが出来た。それは海域を開放すること以上の収穫だ」

六名『はい(クマー)!』

 

女督「あたしにこういう事があったのなら、恐らく他にもそういった事があった鎮守府もあるだろう。まずは情報交換を他の鎮守府や大本営と交わす必要がある。みんなはこれまで通りの任務で頼む。何かあればすぐにあたしからみんなへ説明することを約束しよう」

六名『了解(クマー)!』

 

 それから無事に帰還したあたしと第一艦隊に鎮守府全体が歓喜した。

 

 第一艦隊に補給、入渠を促した後、あたしは残りの艦隊全員に今回のことを話した。

 

 司令室ーー

 

女督「ーーと言う訳だが、我々はいつも通り任務を続行する。納得出来ない者は居るか?」

 

 シーーン……ーー

 

女督「理解に感謝する。では解散!」

 

 最初は戸惑いの色を隠せていなかったが、帰る際の表情は何の憂いも見えなかった。

 

黒潮「お疲れ様やね、司令はん」

陽炎「大丈夫、みんな司令を信頼してるわ!」

不知火「寧ろ不審に思う者が居れば許しません」カチャ

女督「ありがとう……そう言われると、肩の荷が軽くなるよ」

 

黒潮「それより、今晩はパァーと行こうや♪」

陽炎「そうそう♪ せっかくの勝利なんだからね♪」

不知火「慢心はいけませんが、気を張り詰めるのは良くありませんからね」

女督「お前達は出来た部下だな。可愛いヤツめ!」ワシャワシャ

三人『えへへ~♪////』

 

 

 そうしてあたし達は気分を変えて祝勝会を催した。

 

 足柄が盛大に酔って脱ぎ出すわ、青葉がそれを撮るわで大騒ぎだったが楽しい一時を過ごせたーー。




他作品のネタをかなりぶっ込んでますがお許しを!

次もよろしくお願い致します!

読んでいただき本当にありがとうございました!


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九話:なぁに?お話したいの?

シリアルなシリアス回。

キャラ崩壊含みます。


 

 深く冷たくーー

 

 何一つ無いーー

 

 真っ暗な闇の中ーー

 

 浮き上がろうとしても沈んで行くーー

 

 ふと足元を見るとーー

 

 無数の何者かの手がーー

 

 あたしを深海へと引きずり込むように引いていたーー。

 

 

 ガバッーー

 

女督「夢か……」

 

 時計を見ると○二三○。柔らかな月の光りがあたしの部屋を照らしていた。

 

 あれからあたしの鎮守府は着々と海域を解放し、仲間もそれなりに増えた。

 

 しかし、どんなに仲間が増えても、敵を倒しても、あたしの気持ちは晴れなかった。

 

 あの深海棲艦の艤装から語られた事。

 

 他の鎮守府の提督や大本営との多くの情報交換をしたが、結局解決策は無く、ただただあたし達は生き延びる為に奴等と戦争をするしかないのだ。

 

女督「まだまだ未熟ということか……」

 

 それから寝付くことが出来なかったあたしは、おもむろにに食堂に置いてある親友のピアノの場所まで来てしまった。

 

 

 

 食堂、ピアノの前ーー

 

 海がこれまでの人間の業に耐えてきた代償……今の戦争は人間が招いた結果。

 

 人が無差別に海にしてきた仕打ちと何ら代わり無い。

 頭では理解しているが、心では理解出来ていない。

 

 親友のピアノの椅子にソッと腰掛けて、ピアノの鍵盤をなぞる。

 

女督「そう言えば一時期、ベートーベンの月光に二人してハマってあいつに教わって一緒に弾いたっけな……」フフ

 

 懐かしい気持ちになり、あたしは静かにその曲を弾いたーー。

 

 

 

女督(お前が亡くなったのはこれまでの人間のせい。過去の人間の罪がお前を奪った……)

 

 

女督(あたしはお前の分も生き抜き、必ず平和な海にするぞ……)

 

 

 そう心に決めて、あたしは朝になるまでピアノを弾き、気が付いたらそこで眠ってしまっていたーー。

 

 

 

 ◇◇鎮守府、執務室ーー

 

陽炎(本日の秘書艦)「司令、他の駆逐艦の娘達から『昨晩、外から変な音が聞こえた』って報告があったんだけど、何か知らない?」

女督「やはり聞こえていたか……」ニガワライ

陽炎「ん?」クビカシゲ

女督「昨晩は嫌な夢を見てな、食堂にある親友のピアノで曲を弾いて気持ちを落ち着かせてたんだ」

陽炎「そう……なら工廠妖精さんが夜中に実験してたってことにしとくわ♪」

女督「いや、あたしが悪いんだ。そのままみんなに伝えてくれて構わん」

陽炎「そう? 司令がそれで良いならそうするわ」

女督「あぁ、そうしてくれ」

 

 それからあたしと陽炎は書類を片付けた。

 

女督「うちも大分大所帯になってきたな。そろそろ大本営に鎮守府拡張の申請を出さなければ……」

陽炎「今、在籍艦が九二だからね。これからも増えるだろうし……」

女督「そうだな。……あぁ、後はこれも解決してないな」

陽炎「ん? どの書類?」

女督「これだ……『ケッコンカッコカリ』の」ピラ

陽炎「」ピクッ

女督「大層な名前を付けたものだ。仮とは言え結婚だぞ? 百歩譲って名前は良しとしても、あたしは女だからな……しかも大本営は『何の問題も無い』と来た。いつから我が国は同性でも結婚を認める国になったのか……」ヤレヤレ

 

陽炎「司令は私達の誰かとケッコンするのは嫌?」

女督「難しい質問だな……そもそもこれは艦娘とあたし達人間の絆を深める物だ。しかし結婚と言う言葉を使う以上、あたしも気を遣うんだ……女のあたしとお前達の誰かが結ばれるってことだからな」

陽炎「私は司令とケッコンしたい!」ズイ

女督「お前は……」ハァ

 

 ガチャーー

 

不知火「司令が不知火とケッコンカッコカリと聞いて!」スチャ

 

 バタンーー

 

黒潮「司令はんがうちとケッコンカッコカリと聞いて!」スチャ

 

女督「」コンワク

陽炎「あ、あんた達どっから出てくるのよ!」

不知火「掃除用具のロッカーからですが……不知火に何か落ち度でも?」

黒潮「うちは床下からや~♪」

女督「とりあえず正座しろ……」アタマカカエ

 

 艦娘説教中ーー

 

女督「全く……反省しろよ?」ギロ

不・黒『イエス・マイ・ロード!////』ゾクゾク

 

女督「……それで? どうしてわざわざ隠れて聞いていたんだ?」

不知火「陽炎の抜け駆けを阻止する為です」

黒潮「うちら今日は休みやろ? したら、青葉はんが司令はんと陽炎がケッコンの話をしてるって連絡があったんや」

女督「青葉の仕業か……あいつはまたしごかれたいみだな」アタマカカエ

 

陽炎(青葉さんも不知火達と同じ種類なのよね……)

不知火(青葉さんにとってはご褒美ですね……)

黒潮(情報提供の報酬がこれなら上々やな……)

 

 後日、青葉は提督からみっちりと絞られたが、その表現は恍惚な笑みだったとか……。

 

女督「お前達はそんなにあたしとケッコンカッコカリをしたいのか?」

三人『』コクコク

女督(みんな本気のなんだな……)

 

陽炎「とりあえず、司令的にはどうなの?」

女督「ん?」

不知火「ケッコンカッコカリのことです」

黒潮「する気はあるんやんな?」

女督「…………」ウデクミ

 

陽炎「それは練度の上限を更に上げて、燃費も格段に良くなるわ」

不知火「悔しいですが、順当に考えれば正規空母や戦艦の皆さんに差し上げるべきです」

黒潮「司令はんの夢は『海を平和にする』やからね。うちもそれが良いと思うわ」

女督「…………そうか」

 

三人「…………」

 

女督「お前達の気持ちは分かった。だが、このケッコンカッコカリというシステムは複数との艦娘と出来るシステムだ」

陽炎「なら正規空母のみんなと出来るわね……」ニコ

不知火「戦艦の方々とも出来ます」ムリナエミ

黒潮「これでまた一歩司令はんの夢に近づくな」ナミダグミ

 

 居ても立っても居られず、あたしは三人の前に方膝を突いた。

 

女督「……だから、最初はお前達三人とケッコンカッコカリをする。あたしとケッコンしてくれるか?」

三人『え……?』

女督「あたしなりに考えたが、難しく考えるのは止めた。あたしはお前達三人とこの鎮守府を盛り上げてきたと思ってる……だから、最初にケッコンカッコカリの約束をするのはお前達とだ」

三人『』

 

女督「もう一度言うぞ……あたしとケッコンしてくれるな?」

三人『はい!』

 

 そう言うと陽炎達はあたしの胸に泣きながらも笑顔で飛び込んできた。

 

 まだまだ戦争を終えることはない。

 

 だが、こうして守るものがあればあたしは負けることはない。

 

 この娘達の笑顔があたしに力と勇気をくれるからーー。




なんか無理矢理な展開ですが、ご了承ください。
このシリーズは次でラストにする予定です。
色々と話を考えましたが、長くなるとぐだってしまいそうなので。

読んでくれて本当にありがとうございました!
ラストも頑張ってあげたいと思います!
よろしくお願い致します!


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最終回:海色

最終回なので長めにしてます。
よろしくお願い致します!


 

 海上ーー

 

 今あたしは艦隊と共にキス島海域のF地点にて、戦闘を終えたとこだった。

 

 今回の作戦はキス島に残された守備隊を収容し撤収することを目的とした撤退作戦だ。

 

 その為、艦隊は機動力重視の水雷戦隊で挑まなくてはならない。

 旗艦を球磨に任せ、後の五隻はみんな駆逐艦の娘達だ。

 

陽炎「司令、各艦損傷無し。任務続行出来るわ!」

不知火「球磨さんは既に観測機を飛ばしました」

黒潮「うちらはどうするん?」

女督「ご苦労。観測機と連絡を取りつつ進軍する。球磨を先頭に単縦陣へ移行だ」

六名「了解しました(クマー)!」

 

 進軍中ーー

 

綾波「少し霧が出てきましたね……」

初春「ここらは霧がよく立ち込めると言われた通りじゃの……」

女督「視界が悪いからこそ、神経を研ぎ澄ませろ。砲弾や魚雷の残弾数も今の内に確認しておけ」

綾・初『はい(うむ)!』

 

 暫くしてーー

 

球磨「提督、観測機からの信号がポイントH付近で途絶えたクマ!」

女督「……そうか。全艦、警戒態勢をとれ。球磨は上空を警戒。綾波、初春の二名は海中に気を配れ。陽炎は正面、不知火は左舷、黒潮は右舷を見張れ」

六名『了解(クマ)!』

 

 警戒態勢で進軍ーー

 

 やがて霧は更に濃くなった。

 この海域特有の濃霧……これを使い敵の目を誤魔化せれば重畳だ。

 だが警戒し過ぎるあまり、仲間を見失うことが無いようにあたしは艦隊全体に目を配る。

 

 するとあたしの頭に何者かの声が入り込んだ。

 

『キテハダメ……!』

 

 何処かで聞いたことのある声……。

 思い出そうと思考を巡らせるが、それはすぐに停止したーー

 

球磨「上空に敵艦載機発見クマ!」

女督「撃ち落とせ!」

六名『了解(クマ)!』

 

 ダダダダダッ!

 

 ボン、ボンボン!

 

 艦載機が飛んでいるということは空母が居る。

 事前の調査報告では空母は確認されていなかったが、状況が目まぐるしく変わるのが戦争だ。

 

『ダメ……! コナイデ……!』

 

 今度は先程よりも鮮明に聞こえた。

 

女督「まさか……!?」

 

 お前だと言うのか……?

 

陽炎「敵艦見ゆ! 先頭から軽巡ホ級、軽巡ト級、駆逐ニ級二隻、輸送ワ級二隻の複縦陣よ!」

不知火「ワ級は二隻共エリートの様ですね……!」

黒潮「ホ級はフラグシップみたいやな!」

 

女督「砲雷撃戦用意! 速やかに目標を排除せよ!」

六名『了解(クマ)!』

女督(おかしい……何故空母が居ない?)

 

球磨「なめるなクマー!」

 

 ババーン! ババーン!

 

陽炎「不知火、黒潮! 例のあれやるわよ!」ウインク

不知火「いつでもどうぞ!」ウインク

黒潮「いきなりフラグシップ狙いかいな!」ウインク

 

 三人は合図と共に縦一列にホ級へ向け急加速するーー

 

綾波「援護します! 突撃してください!」

初春「しっかりの! 雑魚はわらわ達に任せよ!」

 

 バーン! バーン!

 

ワ級『……!!』

球磨「お前らの相手は球磨だクマー!」

 

 ババーン! ババーン!

 

女督(あの技を使うのか……)フフ

 

ホ級「……!!」

 

 ボーン! ボーン!

 

 ホ級が放つ砲撃を陽炎達は巧みに交わし、反撃に出るーー

 

黒潮「ほな、お先に行くで~!」

 

 バーン! バーン!

 

不知火「弾幕を張ります!」

 

 バラララララッ!

 

 二人の連携に翻弄されるホ級。

 とそこへーー

 

陽炎「ボディががら空きよっ!」カチャ

 

 ドバーーーーンッ!

 

 見事な連携が決まり、ホ級は成す術もなく轟沈したーー。

 

球磨「ワ級二隻共轟沈確認クマ」ブイ

綾波「他の敵艦も轟沈確認です」ケイレイ

初春「ざっとこんなものじゃの」フフン

 

女督「よし。このままキス島に残った守備隊の収容作業に移行する。球磨、綾波、初春は守備隊の誘導を頼む。残りの陽炎達は周囲を警戒しろ」

六名『了解(クマー)!』

 

 

 守備隊を無事に救出用の船へと収容し、後はこの船を本土へと送り届けるだけだ。

 

球磨「守備隊全員の収容完了クマ!」

綾波「幸い怪我人の皆さんは軽傷みたいです!」

初春「残りは無傷だそうじゃ!」

守備隊長「救援感謝します。船の運転は私が責任を持って努めます!」ケイレイ

女督「救援が遅れて申し訳ない。了解した。船は我が艦隊が無事に本土へと送り届けることを約束しよう」ケイレイ

 

 こうしてあたし達は守備隊を収容した船を護りつつ、帰投することとなったーー。

 

 帰投中ーー

  

 相変わらずの濃い霧だが幸い戦闘も無く何とか安全海域まで船を連れてくることが出来た。

 

女督(だが……胸騒ぎが止まない……)

 

 守備隊が乗った船を中央に置き、球磨を先頭とした輪形陣。

 最後尾には私と陽炎が後ろを気にしながら海上を進んでいた。

 

陽炎「司令、難しい顔をしてどうしたの?」ノゾキコミ

女督「いや……敵の艦載機が飛んできたのに、結局その後の戦闘や今まで空母は確認されなかった。それが気になってな……」ハハ

陽炎「確かに……でも、あの霧じゃ空母が居たとしても手が出せなかったんじゃないかしら?」

女督「ふむ……」

  (あの声と敵艦載機は関係があるのか……?)

 

 そこであたしは肝心なことに気が付いた。

 

女督(今は安全海域内、だが先程の様に視界を遮るものはない……まさかっ!?)

 

 バッーー

 

 透かさず背後へ目をやると、一つの影が見えていた。

 

陽炎「司令、いきなりどうしたの……っ!?」

女督「球磨! 綾波! 初春! お前達は船を護衛したまま全速前進! 急げ!」

球磨「!? 了解クマー!」

不知火「不知火達が時間を稼ぎます!」

黒潮「頼んだで!」

綾波「無理をしないでくださいね」

初春「御武運を祈っておるぞ!」

 

女督「最後の最後に来たな……」

陽炎「それも空母ヲ級のフラグシップがね!」

不知火「司令、不知火達の後ろへ!」

黒潮「お客さんが団体さんをぎょ~さん送ってやって来たで!」

 

 ブ ォ ー ー ー ン !!!!

 

 数にして二十はある艦載機が晴れた空に散らばるーー

 

『ゴメン……ナサイ……!』

 

 またも聞こえた声。

 

女督「っ!! お前達、援護を頼む!」バッ

不知火「司令っ!?」

陽炎「ボヤボヤしてないで艦載機落とすわよ!」

黒潮「終わったらキッチリ説明してもらおか!」

 

 バラララララ!

 

 ヒューンーー

 

女督「どけっ!」バンバンッ

 

 チュドン!

 

 ヒュンヒュンヒューーーン

 

陽炎「なっ!? この艦載機達、司令を狙ってるの!?」

黒潮「うちらは外野かいな!」

不知火「早く援護に!」

 

 

 

女督「」バンバンッ ダンダンッ ボンッ

 

 あの声をあたしが間違えるはずがないーー

 

 ヒューーーン! ヒューーーン!

 

陽炎「くっ! 当たって!」バーンバーン

不知火「司令は必ず守ります!」ダンダンッ

黒潮「数が多すぎやで!」バラララ

 

女督「ふっ」ダンダンッ ボンッ

 

 お前はーー

 

 

 

 艦載機を掻い潜りヲ級の眼前までやって来たあたしは、ヲ級に声をかけるーー

 

女督「お前なんだな……?」

ヲ級「……ヲ……ヲォ……!!」

  『ゴメンナサイ……!!』

女督「静かに眠れなかったのか……」

ヲ級『墜チロッ!』グワッ

女督「っ!?」

 

 ヒュンヒュンヒュン!

 

陽炎「また!」

黒潮「キリないで!」

不知火「弱音は吐かないでください!」

 

女督「くっ!」

 

 バンバンバン!

 

 バーーーン!

 

ヲ級「死ネ……!!」

  『イヤーーーー!!』

 

陽炎「司令っ!」

不知火「司令ーーっ!」

黒潮「司令はんっ!」

 

 ヒューーーン!

 

女督「神風!?」

 

 ダンダンッ! バンバンッ!

 

 バーーーン!

 

ヲ級「ヲ……ヲォ……!!」

  『ア……アァ………………!!』

 

 プスプス……ーー

 

陽炎「あんたは生かして帰さない!」ジャキッ

不知火「沈め……!!」グワッ

黒潮「砲撃開始!」スチャッ

 

陽炎「黒潮、お願い!」

黒潮「任せとき!」

 

 バシュンーー

 

ヲ級「ッ!?」

 

陽炎「不知火!」

不知火「分かってます!」

 

 バラララララッ! ボンボンボン!

 

ヲ級「クッ……!!」

 

不知火「後は頼みますよ! 陽炎!」

陽炎「任せなさい!」

 

 シュンッーー

 

ヲ級「ヲッ!?」

陽炎「悪いわね、もらったわっ!」

 

 バーーーン!

 

ヲ級「グァァァ!」

黒潮「止めやで!」

 

 チュドーーーン!

 

陽炎「轟沈確認ね……」クッ

不知火「司令っ、しっかりしてください! 司令っ!」

黒潮「司令はんなら大丈夫や! 早く鎮守府へ運ぶで!」

陽炎「不知火、泣いてる場合じゃないわよ!」

不知火「っ!! はいっ」グシッ

黒潮「ほな行くで!」

 

陽炎(司令のバカ!)

不知火(死んだら一生恨みますから!)

黒潮(だから生きとってや!)

 

 ……。

 …………。

 ………………。

 

女督『ここは……?』

 

 見渡す限りの闇……そして遠退く光ーー

 

女督『そうか……あたしは……』

 

 応戦はしたが神風を受けてーー

 

??『大丈夫だよ……』

 

 薄れゆく景色の中ーー

 

 馴染みの顔が見えた気がしたーー

 

??『ごめんなさい。これで許されるとは思わないけど……』

女督『お前が悪いんじゃない……分かってるさ……』

??『ありがとう……これからも約束守ってね……』

女督『難しいことを……あたしはもうーー』

 

 するとソッと手であたしの口をふさいだーー

 

??『約束……』ニコッ

女督『本当にお前ってやつは……』ニコ

 

 そしてそれを最後にあたしの意識は途切れたーー

 

 ………………。

 …………。

 ……。

 

女督「」パチッ

 

 白い天井……白い壁……白いカーテン……。

 寝たまま窓の外を見ると、見慣れた建物が見えた。

 

女督(ここは鎮守府の医務室か……)

 

 周りを見ると点滴やら包帯やら大袈裟に付けられていた。

 

女督「まだあたしにはやることがあるってことか……」

 

 ふと手に違和感を感じ、見てみるとーー

 

女督「やっぱりな……」ハハ

 

 親友がいつも肌身離さず付けていたあたしと親友が写った写真を入れたペンダントが握られてたーー

 

 

 シャッーー

 

 すると不意にカーテンが開き、そこには陽炎、不知火、黒潮が立っていた。

 

女督「おぉ、お前達か。見舞いに来てくれたのか?」ニコッ

 

陽炎「司令……?」ポカーン

不知火「司令が起きてる……?」ポカーン

黒潮「司令はんが笑っとる……?」ポカーン

 

女督「ん? なんだ、ボーッとして?」クビカシゲ

 

 ぼんやりとしている陽炎達にあたしが小首をかしげながら微笑みかける。

 

 すると陽炎達のあたしを見据える瞳に大粒の雫が湧き、充たし、こぼれはじめるーー

 

 涙を止めようとするようにみんな手を顔へと近づけるが、止めることは出来ないみたいだ。

 せきを切ったようにその涙は勢いを増し、頬を伝い続ける。

 

女督「ど、どうしたんだ、お前達!?」コンワク

 

 すると陽炎達の手があたしの腕へと近づいてきた。

 まだ、おぼつかない不安そうな手ーー。

 

 あたしは訳が分からず陽炎達をただただ見つめた。

 

 やがて陽炎達は確かめるようにあたしの腕や手に触れ、掴み、それから抱きついてきた。

 

 不安そうだった顔が一瞬和らいだが、またすぐに泣き顔へと崩れていく。

 

陽炎「し……れい……。しれ……い、ふぁ、うぅっ、うわぁぁぁ、ああぁぁぁんっ!」ギュー

 

不知火「ふぇ……し、ふぁっ……ひっく、ひっ……れぃ……ぐす……し、れいぃっ」ギュー

 

黒潮「ホンマによかった……司令はん……ホンマっ……ぐす……よかったわぁ……。ひっく……も、もう……目、覚まさん……へんのか……って、おも……て……ぐすっ」ギュー

 

 涙に濡れた陽炎達の瞳はあたしを懸命に見つめ、あたしの存在を確認して不安を取り除こうとしているように見える。

 

 感情の発露は抑えられず、手は震え今にも崩れ落ちそうになっているが決して離そうとはしていない。

 

女督「心配を掛けたな……」ナデナデ

 

 苦しそうな呼吸を少しでも和らげようと、呼吸に合わせて一人ずつ背中を撫でる。

 

 それから陽炎達は暫くの間泣き続けた。

 

 ようやく落ち着きを取り戻した陽炎達は涙で目を腫らしながらも笑顔だった。

 

 ……。

 …………。

 ………………。

 

女督「まさか二週間も眠って居たとはな……」ニガワライ

陽炎「本当に心配したんだからね!」キッ

不知火「不知火を置いてきぼりにしたら一生恨んでました」ギロリ

黒潮「残された者の辛さ分かってるやろ?」ジトー

女督「す、すまない……」

陽炎「神風を仕掛けた艦載機が司令の射った弾でぶつかる直前に爆発して、司令は爆発に巻き込まれたのよ?」

不知火「奇跡的に火傷も傷も軽傷でしたが……」

黒潮「爆発のショックが強すぎたんよ」

女督「そ、そーなのかー」カワイタエガオ

 

 それからあたしが眠っている間の話を陽炎達から聞かされた。

 妙高と羽黒は毎日見舞いに足を運んでくれ、那智と足柄は願掛けに禁酒をしてるとか。

 球磨型姉妹はあたしの代わりに艦隊の訓練をしてくれていたとか。

 初春型姉妹や綾波型姉妹達はあたしがいつ起きても良いように、遠征で資材を調達してくれていたとか。

 元帥殿が四六時中あたしの容態を聞いてきて困ったとか……。

 他にも様々な話を聞いた。

 

女督「あのヲ級はあたしの親友だった……」

陽炎達『え?』

 

 話が一段落した所であたしは静かに当時のことを語った。

 

女督「攻撃をしながらあたしの頭にはずっと親友の叫びが聞こえていた。そして、あたしを救ってくれたのも親友だった。『約束を守れ』ってな……」

不知火「その人が司令を追いやったくせに……」ボソッ

陽炎「こら、不知火っ」

女督「不知火の言い分も分かるさ……だが意識は親友のままだった。あいつも今度こそちゃんと眠れたはずだ……あたしはそれで十分だ。こうして生きてるしな!」ニコッ

黒潮「そんな顔をされたら、何も言えんくなるわぁ」ニガワライ

 

不知火「司令、そのペンダントは?」

陽炎「あ、本当だ。今まで気が付かなかったわ」

黒潮「それどないしたん?」

女督「親友の形見さ」ニッ

 

 いたずらっぽい笑みでそう返すと、陽炎達は揃ってムスッとした表情を見せた。

 

陽炎「その人より、私の方が司令のこと好きなんだからね!」ズイッ

不知火「不知火に落ち度はありません!」ズイッ

黒潮「司令はんの親友はんでも、この気持ちは負けへん!」ズイッ

 

 何を今更そんなことを言い出すのかと思い、あたしは思わず声をあげて笑ってしまった。

 陽炎達も最初は笑われたことに抗議したが、あたしの笑顔に釣られたのか、あたし達は互いに笑い合っていたーー。

 

 

 

 それから数ヶ月後、あたしと陽炎、不知火、黒潮はケッコンカッコカリの契りを交わした。

 

 鎮守府の全員から祝福を受け、あたし達は更に絆を深めた。

 

 そして、この海を平和な海に戻すその時までーー

 

陽炎「司令! 敵艦隊発見したわよ!」ニコッ

不知火「ご指示を、司令!」ニコッ

黒潮「バッチリ頼むで、司令はん!」ニコッ

女督「分かってるさ……全艦、砲雷撃戦用意しろ!」ニコッ

 

ーー今日も新たな戦場へ立つ。

 

 

 人間がどういう審判を下されるかはあたしには分からないが、あたしとあたしの大切な娘達が築く絆は必ず良い結果をもたらしてくれると信じてるーー。

 

 

 

 

 

 

          『イケメン女提督と艦娘達・完』

 

 

 

 




なんかごちゃごちゃで読みにくかったらすいません。

何はともあれ、これにてこのお話は終わりに致します!

こんな筆者の作品をここまで読んでくれた読者の皆様、本当に本当に、ありがとうございました!
登場キャラが少ないのはご了承ください。

また新しいお話を書いた時、読んでもらえるように日々精進して参ります!

では、また違うお話でお会いしましょう!
ありがとうございました!


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