火竜の遷悠 (通りすがりの熾天龍)
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“火竜” ナツ・ドラグニル

唐突ですが新作です。
今週と来週に1話ずつ投稿してみて様子を見ます。
評価が悪ければ一旦非公開にする予定です。

その割に3話目が最初しか書いてないまま放置状態っていう(汗)


ボリボリ、ガリガリ。

道端に座り込み、建物の壁に背を預けてそれを食べる。

 

「ママ、あの人石食べてるよー」

「シッ! 見ちゃいけません!」

 

通りすがりの親子がそんなことを言った。

 

「ナツー、何か悪目立ちしてるよー」

「・・・そうは言ってもしょうがねぇじゃねえか」

 

子供の方はその場を動かずにこっちを見ている。

 

「あ! 猫が二本足で立ってる!」

「駄目よ! これは罠に決まってるんだから! 見てないで行くわよ!」

 

子供が母親に引き摺られていった。

 

「何でハッピーが罠扱いされるんだ?」

「オイラに訊かないでよ」

 

むしろ何故罠という発想が出てきたのか。

後俺が食ってたのは石じゃなくて火の魔水晶(ラクリマ)な。

 

 

 

 

 

俺の名はナツ・ドラグニル。

相棒の青猫、ハッピーと共にこの港町ハルジオンにやってきた。

・・・列車でな。うぷ

 

「ナツ、思い出しただけで酔わないでよ」

 

すまぬハッピー。

 

さて、俺が苦手な乗り物を使ってまでこの街に来たのは理由がある。

 

「確かこの街に火竜(サラマンダー)がいるっていう情報だったよね」

「あいつが言っていた通りならな。まぁ、街に(ドラゴン)がいることは有り得ねぇだろうし、大方火竜を見たって情報が伝言ゲームのごとく変化したってことだろうな」

 

魔水晶(ラクリマ)を食べ終えて立ち上がる。

 

「よし、行くか」

「あいさー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺には誰にも言えない秘密がある。

相棒であるハッピーにも、育ての親であるイグニールにも、ギルドのマスターであるじっちゃんにも、現師匠であるギルダーツにも、誰にも言っていない。

 

その秘密は、一言でいえば『憑依』、もしくは『転生』。

元々は地球に住む特に知名度もない一般人。

自分が死んだ記憶もないのに気付けばこの身体になって森の奥深くに居た。

そして、路頭に迷っていた俺を拾い、育ててくれたのがイグニール。

本来の自分の名前がわからなくなった俺に、彼が与えてくれた名前が『ナツ・ドラグニル』。

その後、巡り巡って今の俺がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街道を少し進んだ辺りで目的の単語が微かに聞こえた。

間違いなく、「火竜(サラマンダー)」と。

 

「よっしゃ来た! 行くぞハッピー!」

「あい!」

 

俺達は声の聞こえた方へ向かう。

声の元は道の真ん中に集まった集団。

集団には女性しか見えず、そこから「火竜(サラマンダー)様~」なんて黄色い声が。

・・・ってあれ?

ドラゴンを見た人が居ると思ってたんだけど違うの?

ま、まぁいいや。

 

「ちょっと失礼!」

 

集団に割り込む。

その中央に出ると一人の男。

 

「あんたがドラゴンを見たって聞いたんだけど本当か!?」

「え? いや、それは違うけど?」

 

やっぱり、今回も駄目だったよ。

 

「・・・突然変なこと聞いてすまなかった。失礼する」

 

男に謝罪して立ち去ろうとしたが、

 

「ちょっとアンタ失礼じゃない?」

「そうよ! 火竜(サラマンダー)様はすっごい魔道士なのよ!」

「謝りなさいよ!」

 

「え? 急に何だ、ってか俺ちゃんと謝っtうぉあ!?」

 

投げ出された。

 

「ま、まぁそれ以上はやめてあげてくれたまえ。彼とて悪気があったわけじゃないし、ちゃんと謝ってはくれたからね。君、大丈夫かい?」

「ああ、まぁな」

 

女性達の度を越した横暴に顔を引きつらせながらも、男が俺に右手を差し出す。

その手を取って立ち上がった時、俺の嗅覚が微かな魔力を捉えた。

魔力の元は、男の右手中指に付けられた指輪。

 

「なぁ、ちょっといいか?」

「なんだい?」

「お前の右手中指の指輪。それって違法魔法の魅了(チャーム)だよな?」

 

目に見えて焦る男。

 

「俺は正規魔道士ギルドに所属しているから、場合によってはお前を憲兵に引き渡さなきゃいけない。とりあえずは名前と所属を教えてくれ」

 

俺が堂々と指摘をしたために指輪の効力が切れ、周囲の人たちが戸惑いながらも距離をとる。

 

「あ、あぁ。僕の名前はサラマンダー・ドレイク。所属は『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』だ」

 

男の口から発せられたギルド名。

それは間違いなく嘘だ。

そして俺は、その嘘だけは断じて許さない。

 

「ハッピー、照合頼む」

「あい、任せといて」

 

傍らのハッピーはスマホ型の装置を取り出した・・・虚空から。

これは魔法の一種、換装だ。

 

俺は目の前の男の襟首を掴んで引き寄せる。

そして、人とは桁違いの頑丈さを誇る体を持つ俺だからこそできる、頭突き。

 

「ぐっ・・・!?」

 

よろめいて数歩後ろへ下がる男。

驚愕と困惑を混ぜたような表情で俺を見る男に、俺は宣言する。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)所属のナツ・ドラグニルだ。お前のような奴は見たことも聞いたこともない。そして俺の二つ名は・・・火竜(サラマンダー)

 

その証拠として右肩の紋章を見せる。

色は赤。

 

「何っ!? 本物だと?」

 

男の表情は先ほどと違い驚愕一色。

 

「な、なら・・・ここで消えろぉ!」

 

その手から炎を放つ男。俺はそれを避けない。

そして周囲から悲鳴が上がる。

 

「はっ、他愛もないじゃないか」

 

勝ったと思ったのか余裕の笑みを浮かべる男。

 

「俺の二つ名が何故(ドラゴン)の名を冠するか教えてやろうか?」

「っ!? 馬鹿な、平気だと!?」

 

そんな男の笑みも俺の言葉によって消える。

更に、炎が俺の口の中に消えていくことにより、男は顔面蒼白に。

 

「竜の肺は焔を吹き、竜の鱗は焔を溶かし、龍の爪は焔を纏う。そして、竜の顎門(アギト)は焔を喰らう」

「な・・・なんだと・・・!?」

「故に(ドラゴン)、故に火竜(サラマンダー)。お前ごときがこの名を騙れるものか」

 

男が後ろへ下がる。一歩、二歩。

 

「つーか酷い味だな。ここまで質の悪い炎初めて食ったぜ。こんなんでよく炎の魔道士なんて名乗れたな。どんな神経してやがるんだか」

 

そう言って、一歩前へ。

 

「く、来るな!」

 

怯えた男が再び炎を放つが、それは俺が手で軽く払うだけで消える。

食べないのは、単純に不味いから食べたくないだけ。

 

「さて、一つ訊かなきゃなんねぇな。妖精の尻尾(フェアリーテイル)を騙った目的を言え」

「だ、誰がそんなこと・・・」

「まぁ、聞かずとも大体わかるさ。組織的な犯罪だろう?」

 

そこでハッピーが声をかけてきた。

 

「ナツー、わかったよ。そいつは紅天(プロミネンス)のボラ。複数回に渡って魔法による盗難事件を起こした罪で数年前に『巨人の鼻(タイタンノーズ)』から追放されてるね。あと追放直前は奴隷売買にも手を出してたみたい」

「奴隷商か。闇側にどっぷり浸かりやがって。それに紅天(プロミネンス)って明らかに名前負けしてるな」

 

臭いを辿れば拠点の場所くらいはわかる。

さて、もういいか。

俺は右手を握り、その手に炎を纏う。

 

「本当の火竜(サラマンダー)の力、その身でとくと味わえ」

「ま、待ってくれ! あ、謝るから許しt」

「《火竜の鉄拳》!」

 

悲鳴も上げずに男、ボラは沈んだ。

 

 

 

さて、次だ。

 

「そこの金髪のお前!」

 

群衆の中にいた一人の少女を指さす。

 

「えっ? あ、あたし?」

「あぁ。お前星霊魔道士だろ?」

 

驚愕した少女にしてやったりという表情を見せた。

 

「何でわかったの!? 位置的に鍵は見えなかったはずなのに。というか周りを見回してすらいなかったのに」

「星霊の鍵特有の魔力(の匂い)を辿ったのさ」

「魔力感知もできるんだ・・・」

 

呆然とする少女に要件を告げる。

 

「お前さ、こいつを取り押さえられるような星霊は持ってるか?」

「身動きをとれなくさせればいいのよね?」

「ああ」

 

気絶したボラが目を覚ましかける。

 

「開け、時計座の扉《ホロロギウム》!」

 

ボラが柱時計に閉じ込められた。

よく見るとその柱時計には手足と顔がついている。

 

「『な、なんじゃこりゃ~!?』と申しております」

「音を遮断する代わりに星霊自身が代弁するのか。面白れぇな」

「遮断するのは一方向だけで外の音は中に居ても聞こえるけどね」

 

よし、じゃあボラは彼女に任せて、と。

 

「行くぞハッピー!」

「あいさー!」

 

(エーラ)を出したハッピーに背中を掴んでもらい飛翔。

その状態で集中して空気の匂いを嗅ぎ分ける。

ボラの臭いは・・・見つけた。

 

 

「港の方向だ! 頼むぞハッピー!」

「あい!」

 

ハッピーが普段と比べてかなり遅い速度で飛ぶ。

臭いを辿っているため、速いと行き過ぎる可能性が高いのだ。

 

「・・・見つけた!」

「どこ?」

「港から少し離れたあの黒っぽい船だ!」

「あいさー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハッピーが船の真上の空中で止まる。

嗅覚ほどではないが常人より遥かに鋭い聴覚を更に魔法で強化。

船の中での会話を聞き取ろうとする。

そして聞こえた、ボラという言葉。

更に聞けば、帰りが少し遅いなといった会話。

他にも奴隷として連れてこられたであろう人と奴隷商らしき人間の会話も。

 

「ビンゴだ!」

「あい!」

 

ハッピーが手を放す。

自由落下での単騎襲撃。

そこで気づいた。

 

「船の中って・・・拙くね?」

 

時既に遅し、である。

甲板に激突からのそのまま船内に突入。

 

目の前にはこの船の乗組員、すなわち奴隷商の関係者がいた。

 

「な、なんだお前・・・!」

「一体何で天井を突き破って・・・まさか空から!?」

 

状況を理解できない男達に向かって言う。

 

「お前等もここまでだ奴隷商人共。全員纏めて牢にぶちこんでyオボロロロロロロロロ」

「「「いきなり吐くなぁ!」」」

 

はは、傍から見ればシュールに違いないな・・うぷ

 

「あぁ、そうそう。お前等のボス、ボラは既にお縄だ。諦めておとなしkうぷ」

「こいつ色々と大丈夫か?」

「いやちょっと待て、ボラさんが既に捕まってるって言わなかったかこいつ!?」

 

混乱している男達。

そのうちの一人は考えるのをやめたようで、

 

「へっ、魔道士かもしれなくても船酔いで動けない奴なんか大したことないぜ!」

 

斧を振りかざして突撃してきた。

 

「うぷ・・・甘いぜっ」

 

振り下ろされた斧を片手で止める。強靭すぎる俺の皮膚には傷すらつかない。

あっさり止められたことに驚く男の顎めがけて頭突き。

男は昏倒した。

 

「な、なんだこいつ、斧が効いてねぇ!?」

「あの重量を片手で受け止めた上に無傷だと!? ありえねぇ!」

「ひ、怯むな! 全員でかかるぞ!」

 

奴らがそれぞれ武器を手にしたところで、船が大きく揺れた。

俺を含む全員が転んだのもお構いなしといわんばかりに再びやってくる大きな揺れ。

何度も揺れたと思いきゃものすごい音がして船が完全に止まった。

どうやら流されて陸に乗り上げたらしい。

 

「ナツー!」

 

俺が突き破った天井の穴から聞こえたハッピーの声。

見るとハッピー以外にも星霊魔道士の彼女と知らない青髪の女性。

それに何故か丸坊主になって気絶しているボラ。

 

「ありがとう、アクエリアス」

「とりあえず暫く呼ぶな。一週間彼氏と旅行に行く。彼氏とな」

「いや、二回言わなくていいから」

 

どうやら青髪の女性は星霊だったらしい。

そして、星霊魔道士の手に握られている鍵は金色だった。

黄道十二門の鍵だ。

ってことは・・・実はあいつかなり凄い?

 

「か、かかれー!」

 

視線を戻すと、武器を持って飛び掛かってくる男達。

甲板上では星霊魔道士が鍵を手に慌てて割り込もうとし、それをハッピーが止めている。

 

「そういや、ボラは俺の二つ名、火竜(サラマンダー)を勝手に名乗っていたよな。お前等もその身に刻め。これが本物の火竜(サラマンダー)の魔法だ」

 

息を大きく吸い込み、

 

「《火竜の咆哮》!」

 

灼熱のブレスが男達を伸した。

港も吹き飛ばした。

 

「さて、と」

 

飛び上がって天井の穴から甲板の上に。

呆然としていた星霊魔道士に向かって言う。

 

「いろいろと付き合わせちまって悪かったな。お詫びに奢るよ」

「えっ? い、いや、そこまでしてくれなくても」

「気にすんなって! あ、そういや自己紹介がまだだったな。もう知ってると思うが俺はナツ・ドラグニル。この青猫は俺の相棒の」

「あい! ハッピーです!」

「う、うん。あたしはルーシィ。・・・えっと、本当に、いいの?」

「いくらでもいいぞ。今ちょっと懐が温かいんだ」

 

外が騒がしくなった。

軍隊が来たようだ。

 

「ハッピー」

「あい」

 

俺の言わんとすることを察したハッピーが(エーラ)を発動してルーシィの背を掴む。

 

「え? ちょ、ちょっと急になにをsうわぁ!?」

 

持ち上げられて驚くルーシィ。

 

「逃げるぞー!」

「あいさー!」

「ちょっと何で逃げるのー!?」

「あい、周囲をよく見るのです」

「え? あ! み、港が大変なことに!?」

 

どうやら今気づいたらしい。

それはさておき、

 

「またお前か! 待てー!」

「だが断る!」

「あい!」

「何であたしまでー!?」

 

ルーシィの悲鳴についてはゴメンとしか言えない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「御馳走様でした」

「おうよ、お粗末様」

「ルーシィあんまり食べなかったねー」

 

そんなこんなでルーシィに奢ったのは隣町で。

俺やハッピーは普段通りの量を食べたがルーシィはハッピーの半分くらいしか食べなかった。

 

「あたしが奢ってもらってるのにあんまりがっつり食べるのも悪いから」

「気にしないでいいんだよ?」

「そうそう。金には割と余裕があるし、ルーシィが気にする必要なんてないぞ」

 

俺達がそう言ってもルーシィは少し気まずそうにしている。

 

「その・・・あたし、ナツ達に頼みたいこともあったし、それなのに遠慮しないっていうのはどうかなって・・・」

「「頼みたいこと?」」

 

ルーシィがコクリと頷いた。

そして姿勢を正し、真剣な顔で俺達に言う。

 

「あたし、妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入りたいの」

 

その言葉に、俺たちはニッと笑って、

 

「大歓迎だ! よろしくな、ルーシィ!」

「わーい! やったねナツ! 仲間が増えるよ!」

「そのセリフは色んな意味で拙いぞハッピー!?」

「うぱー!? そうだったー!」

 

ハッピーの危ない発言に肝を冷やす俺。

発言がヤバイフラグであることを思い出してハッとするハッピー。

そんな俺達にルーシィは笑顔で言った。

 

「ありがとう! ナツ、ハッピー、これからよろしくね!」




『火の魔水晶』

乗り物酔いを治す薬代わりとしても使う固形物。
但し乗り物から降りた後の回復のためにしか使えない。
つまり酔い止め代わりにはならない。




『サラマンダー・ドレイク』

ボラの偽名を何も考えずその場で書いた結果がこれだよ!




『スマホ型の装置』

顔写真を撮ってそれをもとにデータベースから人物情報を探し出す。
別にスカウター型でもよかったんだけどね。
装置、データベース共に製作者はナツ。
ここのナツはガッツリ技術者肌。
ついでにここのハッピーは翼以外にもいろいろ使える。
例えば今回出てきた換装とか。




『頭突き』

ナツが頑丈なのは滅竜魔道士な上に素体が悪魔だから。
要するに最初から頑丈だったんだよ。
なお、ナツの関係者の内、ナツが悪魔であることを知っているのはイグニールのみ。
ナツ自身ですらその事実を知らない。
でもこれ原作よりもずっと頑丈な気がする。
ちなみに本人は単に常人より頑丈だなと思っているだけ。
その理由については考えるのをやめたようだ。
ついでに五感が鋭いのは滅竜魔道士であることの影響の方が遥かに大きい。




『組織的な犯罪』

経験則によるもの。
フェアリーテイルを騙る輩は大体複数人で悪事をしている。
そのうち大部分は名前を勝手に使って罪を押し付ける目的で名を騙るらしい。
偽物潰すべし慈悲はない、とはギルドメンバー共通の認識である。
ぶっちゃけただモテたいんだったら魅了の指輪だけで十分。




『金髪の星霊魔道士』

当然ながらルーシィのことである。
ナツが乱入した時点で魅了状態から正気に戻っていたらしい。
そのあたりもさすが魔道士。というかこれに限っては原作と全く同じ。
ナツ曰く、星霊は匂いで人間との区別は付けられないとのこと。
しかし鍵の方には特有の匂いがあるそうだ。




『ホロロギウム』

ナツがハッピーの翼で飛んでった後、ルーシィと一緒に走って追いかけたらしい。
短足のくせに走るとかなり速い。
ただしその場合、中は相当揺れるとか。
ナツを筆頭に滅竜魔道士を入れて走らせてはいけない。




『いきなり吐くな』

セリフの途中までは我慢できていた模様。
ここのナツは約30秒くらいは我慢して平気なフリが出来る。
ただ、そのあとリバースするあたり原作よりも重症かもしれない。
なお、リバースは乗り物一回につき最大一回。




『アクエリアス』

港に着いたルーシィはハッピーと合流。
ホロロギウムを帰してボラを伸した後、ハッピーに沖まで運んでもらって宝瓶宮。
ボラをどうやって伸したか? エビの言う名のカニだよ。
何気に星霊を三体連続召喚しているあたりここのルーシィは原作よりも強い。
ちなみにハッピーに止められて召喚できなかった星霊はタウロス。




『またお前か!』

ナツは以前にもハルジオンの港を半壊させている。
理由はやっぱり戦闘によるもの。
犯罪者等が暴れた被害よりもナツによる被害の方が大きいのはいつものこと。




『やったね○○! ××が増えるよ!』

世界を超えても存在する鬱展開。
但しこの世界では漫画ではなく小説で、ストーリーや細部もいろいろと違うらしい。
その証拠の一つとして『やったね』と『増えるよ』の順番が逆転している。
本が大好きなルーシィも当然知ってる有名なセリフ。







とりあえずこの作品ではこんな感じの後書きにしていきます。


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ようこそ、《妖精の尻尾》へ

第2話投稿します。
この後の読者の反応を見て今後どうするかを考えます。
感想などもぜひ書いてください。


「わぁ・・・」

 

ルーシィが感嘆の声を上げる。

 

「おっきいね」

「そうだろう?」

「なんたってオイラ達の自慢の“家”だからね」

 

ハッピーの言葉にルーシィが疑問符を浮かべる。

 

「家? みんなここに住んでるの?」

「そういう意味じゃねぇよ。俺達妖精の尻尾(フェアリーテイル)にとってギルドの仲間はみんな家族だ」

「家族が集まるから“家”なんだよ!」

 

言い方を変えれば、“第二の家”だ。

 

「さて、ルーシィ」

「ん?」

「ようこそ、俺達のギルド」

妖精の尻尾(フェアリーテイル)へ!」

「っ・・・うん!」

 

ルーシィが喜びか感動からか、少し涙ぐんで頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たっだいまー!」

「ただー」

「あら、お帰りなさい。ナツ、ハッピー」

 

俺達の帰還に真っ先に気付いたのはミラジェーン・ストラウス。

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の看板娘であり、容姿も含めて俺達の中でも特に有名だ。

 

「ミラジェーン・・・本物だぁ」

 

ルーシィは何やら感動している。

まぁ、こういう反応は意外と多いのだが。

 

「その子は?」

「は、はい! 初めまして! ルーシィといいます!」

「新入りの魔道士だ! このギルド初の星霊魔道士だぜ!」

 

俺の言葉を聞いたみんなが盛り上がる。

 

「新人か! これからよろしくな!」

「星霊魔道士? いいね、なんか星霊を見せてくれよ!」

「おぉっ! 金髪美少女じゃねぇか!」

「パイオツでけー!」

 

当のルーシィはこの熱気に圧倒されているようで、呆然としている。

 

「おぉ、新入りかね」

 

こちらまで歩いてきたのはミニマムなおじいちゃん。

 

「ルーシィ、といったかね?」

「は、はい!」

 

いまだに緊張しているルーシィ。

 

「わしはここのマスターをやっておるマカロフ・ドレアーじゃ。ルーシィよ、わし等はお前さんを歓迎するぞ。ようこそ妖精の尻尾(フェアリーテイル)へ!」

 

歓迎の大歓声が轟く。

 

「そういうわけじゃ。これからよろしくネ」

「はい! よろしくお願いします!」

 

マカロフのじっちゃんが差し出した手をルーシィが取り、握手。

 

「つーわけで宴だぁー!」

 

俺の言葉に再び大歓声が轟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところでさっきからエルザの姿が見えないんだが?」

「エルザはナツ達が帰ってくる30分ほど前にクエストに行ったわよ。短期の護衛任務だから帰ってくるのは来週じゃないかしら」

「入れ違いか。ちとタイミング悪かったな」

(エルザって誰だろう?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいナツ! こないだの続きやるぞ!」

「よし来た!」

 

そして始まる殴り合い・・・の前に、

 

「グレイ! いつものことだが服はどうした!」

「うぉ!? しまった!」

 

それでも構わず殴りかかってくるのがグレイクオリティ。

迫りくる拳を捌いて殴り返すが捌かれる。

そんな応酬をしながらルーシィの方を見る。

当然ながら唖然としているようで。

 

「とりあえずこんな感じで何人か紹介するぜ。この黒髪はグレイ・フルバスター。見ての通りの露出魔だ。でも肝心の本人が脱いでることに気付いていないっていう罠」

「うるせ。俺の使う魔法は造形魔法、属性は氷だ。よろしくな」

「いつも思うが半裸で使って寒くないのか?」

「ほっとけ! こちとら小さいころから吹雪の中半裸で修行してたんだ!」

「と、こんな奴だ」

 

以上、グレイの紹介終わり。

 

「喧嘩しながらも紹介って、あんたら無駄に器用ね」

「HAHAHA、何を言ってるんだルーシィ。お互いに手を抜いてるに決まってるじゃねぇか」

「そうでなきゃ自己紹介してる余裕なんざねぇっての。《アイスメイク―――」

「《火竜の―――」

籠手(ガントレット)》!」

「鉄拳》!」

 

軽い魔法がぶつかり合い、水蒸気が辺りを覆う。

 

「男おおおぉぉぉぉ!」

 

グレイが飛びのいてそこに割り込む巨漢の拳が迫る。

俺も右手を動かし、互いの正拳がぶつかり合った。

 

「こいつはミラの、あ、ミラジェーンのことな。ミラの実の弟で・・・」

「エルフマン・ストラウス。接収(テイクオーバー)という魔法を使う男だ!」

 

その言い方だと自己紹介じゃないみたいに聞こえるな。

 

「えっ!? 姉弟なの!? っていうか、接収(テイクオーバー)って何?」

「あー、特殊な変身魔法みたいなもんだと思えばいいんじゃねぇか? ・・・いいよな?」

「一応合ってはいるだろう。まぁ、見せた方が早いだろうがな。《獣王の腕(ビーストアーム)・黒牛》!」

「《火竜の炎肘》!」

 

エルフマンの巨大化した腕を、肘打ちで迎え撃つ。

衝撃が散り、直後、互いに飛び退く。

 

「そこまでにせんか!」

 

じっちゃんに止められた。

 

「とぅ!」

 

そしてじっちゃんは二階の手すりへと跳び上がり、ゴチン!

・・・痛そう。

 

「え~、宴が盛り上がっているところを悪いがたった今評議会から抗議文が送られてきた」

「「「「え~~~~」」」」

「そうぶーたれるでないわい。読み上げるぞ」

 

じっちゃんが文書に目を通す。

 

「まずは・・・グレイ。密輸組織を検挙したまではいいが、その後街を素っ裸でふらつき、挙句の果てに干してある下着を盗んで逃走」

「いや、だって全裸じゃ拙いだろ」

「そもそも脱ぐなよ」

 

エルフマンの言葉はこの場の全員の心の声と一致している。

 

「次、エルフマン。要人護衛の任務だというのに当の要人に暴行」

「『男は学歴よ』なんて言うからつい・・・」

 

「カナ。経費と偽って某酒場で大樽15個の消費。しかも請求先が評議会」

「あ~、バレたか」

 

「ロキ。評議員、レイジ老師の孫娘に手を出す。某タレント事務所からも損害賠償の請求あり」

「仕方ないじゃないか。彼女も十分可愛かったからね」

 

「ナツ。デボン盗賊一家壊滅の巻き添えに民家7軒全壊。チューリィ村の歴史ある時計台の倒壊。フリージアの教会全焼にルピナス城一部損壊。ナズナ渓谷観測所を土砂崩れに巻き込み機能停止。更には本日、ハルジオンの港をブレスで半壊させる」

「こうして聞いてみると結構多いな。いつからの分だっけ?」

「2週間前からの分じゃ」

 

「面倒になってきたから名前だけ読み上げるぞ。アルザック、レビィ、クロフ、リーダス、ウォーレン、ビスカ・・・ええい、もう面倒じゃ! 以下全部省略!」

 

ルーシィがいいの? といわんばかりにこちらを見てきた。

半笑いで頷くことで答えの代わりとする。

 

「そんなわけでわしは今回も評議員に怒られる羽目になったわい」

 

誰かが唾を飲み込む音がした。

 

「―――じゃが、そんなものはクソ喰らえじゃ」

「え?」

 

きょとんとするルーシィ。

じっちゃんが書類を燃やしてこちらへ放り投げてきたので口でキャッチ。

 

「理を超える力は、全て理の中より生まれる。魔法は奇跡の力などではない。我々の内にある“気”の流れと、自然界に流れる“気”の波長があわさり、はじめて具現化されるのじゃ。それは精神力と集中力を使う。いや、己が魂全てを注ぎ込むことが魔法なのじゃ。上から覗いてる目ン玉気にしてたら先に進めん。評議員のバカ共を怖れるな。自分の信じた道を進めぃ!」

 

 

 

 

 

 

「それが! 妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔道士じゃ!!」

 

 

 

 

 

 

そして轟くは三度目の大歓声。

俺がいいところだろ? と笑いかけ、ルーシィが笑顔で頷く。

 

「っしゃあ、宴の続きだー!」

「「「「ウオオオオオオオォォォォォ!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「場所は此処ね。色はどうする?」

「じゃあ・・・これでお願いします!」

「はい。それじゃあ・・・」

 

ポン

 

「おめでとう。これであなたも妖精の尻尾(フェアリーテイル)の一員よ」

「わぁ・・・! ありがとうございます!」

 

ミラとルーシィのやり取りを見てた俺達は拍手で迎える。

 

「これで正式に仲間入りだな。ルーシィはギルドに入るのも初めてだし、最初の数日は皆から仕事の体験談を聞いたり初心者向けの簡単なのに着いて行ったりしていろいろ覚えていけよ。後、住む場所の確保もしっかりな」

「はーい。 と、どこか行くの?」

 

言うべきことを言ってすぐ席を立った俺に、ルーシィが訊いてくる。

 

「今日は家に帰る。やりたいこともいろいろあるからな。行こうぜハッピー」

「あ、ちょっと待って―」

 

食器を置いて口を拭いた後、ハッピーが戻ってきた。

そして俺達はギルドの出入り口へ。

 

「あ、ナツ。ちょっと待って」

 

ルーシィに呼び止められた。

 

「どうかしたか?」

「うん。マグノリアの案内をして欲しいんだけど、いいかな?」

「別に構わねぇぞ。ハッピーは?」

「オイラも大丈夫だよー」

「よし。決まりだな」

「ありがとう!」

 

そしてギルドを出る俺達。

 

「・・・ナツ兄?」

 

ギルドの外側の壁、出入り口のすぐ脇に、一人の男の子が涙目で座り込んでいた。

 

「ロメオか。どうかしたのか?」

 

俺が訊くと、ロメオは涙を拭いながら話し始める。

 

 

「父ちゃん、もう1週間も帰ってこないんだ。3日で戻るって言ってたのに。マスターのおじいちゃんに探しに行ってって頼んだけど、魔道士は自分でなんとかするものだからダメだって・・・」

「・・・そうか。確かハコベ山でバルカンだったよな?」

「うん・・・。お願い・・・父ちゃんを助けて・・・っ」

 

 

 

 

 

「あぁ、任せろ」

 

 

 

 

 

「それとロメオ、俺が助けに行くっていうこと、誰にも言うなよ。本来なら一人で受けた依頼(もの)は一人でやりきるのが筋だからな。親父を馬鹿にされたくはないだろう?」

「・・・うん」

「いい子だ」

 

頭を撫でて立ち上がる。

 

「つーわけだ。悪いがルーシィ、案内はまた今度だ。行くぞハッピー」

「あい、了解」

「待って!」

 

ルーシィが俺達を呼び止める。

 

「・・・なんだ?」

 

振り向けば、ルーシィはあの時店で奢った後のような真剣な表情をしていた。

 

「あたしも・・・それについて行っていいかな?」

 

・・・。

 

「あえて理由は訊かないでおく。・・・本気か?」

「うん」

「そうか」

 

特に断る理由もない。

足手纏いだと決めつけるのは早計過ぎる。

とはいえ、俺以外にもう一人となると・・・ハッピーにあれ(・・)をやってもらう必要があるな。

 

「まずは街の外まで行くぞ。着いてこい」

「ルーシィ、出来るだけ急いでね」

「わかった!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街の外に出て、森の入口付近の広場になっている場所。

俺一人ならここから普通にハッピーに運んでもらう。

だが、今はもう一人居る。

いくらハッピーでも二人を抱えての長距離移動は不可能。

ならば、()()()()()()()()()()()()()()

 

「それって一体どうやって? ハッピーの大きさじゃ、人二人を背負うなんて・・・」

「すぐにわかるさ。ハッピー」

「あいさー!」

 

気合十分な返事をしたハッピーの体が青い光に包まれる。

そしてその姿が変わり始め、巨大化していく。

人の大きさを越えたあたりで口をあんぐりとあけたルーシィ。

そして形を完全に変え、光が収まる。

 

「えっ・・・えええええぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

ルーシィは目の前の光景に、驚愕のあまり絶叫。

ハッピーの姿は獅子の顔をした中型のドラゴンへと変わっていた。

その肌に鱗はなく、あるのは変身前と同じ青色の毛。

背中の翼はいつもの(エーラ)を青く染めてそのまま大きくしたような一対。

ハッピーの使う魔法の中でも特に強力なこれは変身魔法を改造したもの。

その名は・・・

 

「これがオイラの魔法の一つ、《猫竜形態(ドラゴライズ)》だよ!」

 

ちなみに姿は変わっても声は全く変わらない。

俺は竜の姿となったハッピーに飛び乗る。

 

「ルーシィも乗って!」

「え、あ、う、うん」

 

ハッピーの言葉に我に返ったルーシィが俺の後ろに乗る。

 

「ハッピーってこんなこともできるんだね」

「当然だ。ハッピーを誰だと思ってやがる。妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強の猫だぞ!」

「猫はオイラしかいないけどね」

 

さて、雑談はここまでにしておいて、だ。

 

「しっかり捕まってろ。振り落とされんなよ!」

「わ、わかった!」

「いっくよー!」

 

ハッピーが地を蹴り、飛び上がった。

一直線に飛ぶ。目指すはハコベ山。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルーシィにハコベ山がどんなところかを言わなかったのは失敗だった。

 

「ぅ・・・さ、寒いっ」

 

その服装、普通に夏物。

俺は自分の魔法で温まればいいし、ハッピーは暑さに弱いが寒さは平気。

 

「ルーシィ、これを首にかけて」

 

元の姿に戻ったハッピーが換装で取り出したネックレスをルーシィに渡す。

 

「う、うん。・・・あれ? 寒くなくなった?」

 

今ルーシィがつけたネックレスは寒さから身を守るための魔道具。

菱形の金色の台座には俺の竜の炎を凝縮して結晶化した石が填まっている。

炎の魔力を含んだバリアを展開し、冷気を遮断する物だ。

 

「俺特製の防寒具だ。効果は保障するぞ」

「へぇ、凄いね。ありがとう、ナツ、ハッピー」

「早く行こう。オイラ、マカオが心配だよ」

 

ハッピーの言葉で、俺達は歩き出す。

 

「ルーシィは俺達の後ろを少し離れて着いてこい」

「少し離れて? 何で?」

「それは相手がバルカンでルーシィが女だからだよ!」

「?」

 

ハッピーの捕捉にルーシィは首をかしげる。

 

「バルカンってのは白い大猿の凶悪モンスターだ。人語を喋ることが出来、エルフマンと同じ接収(テイクオーバー)の魔法が使える。でもこいつの一番厄介なところは・・・」

 

 

 

 

 

「ウホホー! 人間の女ー!」

「・・・言ってるそばから出やがった」

 

 

 

 

 

歩く俺達の横側からバルカン出現。

奴が向かうはルーシィ一直線。

 

「ルーシィ! バルカンは人間の女ばかり狙うぞ! ・・・性的な意味でな」

「えっ!? 性・・・的、って・・・」

 

顔を青くするルーシィ目掛けて全力ダッシュで接近するバルカン。

 

「ウホーッ! 人間の女はオデのものー!」

「い、いやあああぁぁぁぁ!! 開け! 金牛宮の扉ぁ! 《タウロス》!」

 

俺が介入する前にルーシィが金の鍵で星霊を召喚。

 

MO(モォ)―――――――!」

 

バルカンと同じくらいの大きさの牛が現れ、巨大な斧を前に構える。

そして・・・バルカンが急に止まれずに勢いよく斧に首から突っ込んだ。

 

「「「「あ・・・」」」」

 

俺達+牛の声が重なった。

バルカン、死す。

 

「え、えっと・・・あ、ありがとう、タウロス」

「・・・MO(モォ)不完全燃焼ですなぁ」

 

牛もといタウロスがお帰りになった。

 

「なぁにこれぇ」

「あいつ自滅しやがったぞ」

 

と、首がもげたバルカンが光って消え、中からマカオが現れた。

・・・彼の首は無事だ。

 

「い、生きてる・・・よね・・・?」

 

ルーシィが心配する中、マカオの様子を確かめる。

生きていることを確認し、炎のドームで吹雪を防ぐ。

 

「傷が深いな。でもまだ助かりそうだ」

「ナツ! これ救急箱!」

「サンキュー、ハッピー! ルーシィ! マカオを抑えててくれ! 傷口を焼く!」

「! そ、そうか。そうすれば止血にはなるよね。うん、わかった!」

 

ルーシィにマカオの両脚をを抑えてもらい、俺が上半身を左手と右膝で抑える。

ハッピーが俺の懐からナイフを出し、鞘ごとマカオの口に入れて噛ませる。

 

「歯ぁ食いしばれよマカオ! いくぞ!」

 

半分意識を取り戻したマカオが頷いたのを見て、右手に炎を纏い傷を焼く。

マカオが歯を食いしばって耐え、俺は完全に血が止まったのを確認して火を消す。

すぐさまハッピーが消毒液を吹きかけ、ガーゼを当てて包帯を巻く。

 

「大丈夫か、マカオ」

「あ、あぁ。19匹は倒せたんだが、20匹目に・・・情けねぇ」

「一体何があったんだ? バルカン如きにたとえ不意打ちでも後れを取るお前じゃねぇだろう」

「奴は・・・妙な道具らしきものを持ってやがった。それによって何が起こったかは・・・わからねぇ。奴の巣は山の中腹あたりだ。その道具の形は・・・棒のような・・・ぐぅっ」

「わかった、一旦黙ってろ。傷が開く」

「すまねぇな・・・後は頼む」

 

そう言ってマカオは再び気を失った。

 

「ハッピー。ルーシィとマカオを連れて先に山を下りてポーリュシカさんのところへ行け。ルーシィ、ハッピーと一緒にマカオを頼むぞ」

「あい、任せといて!」

「え、でもナツはどうするの?」

「マカオの言っていた道具ってのを探してくる。安心しろ、すぐ戻る!」

 

そして俺はドームを出て吹雪の山へ。

竜化したハッピーが飛ぶのが見え、残していたドームを消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論だけ言えば、道具はすぐに見つかった。

黒い棒状のそれは、以前小さな闇ギルドを潰した時に見つけたものと同じ。

それは、人にしか効かない不可視の刃を作り出す道具だ。

簡素な構造だが、それ故に魔力が無くても使える。

これの用途はただ一つ。

人を傷つける、ただその為だけの道具。

そして何故これをバルカンが持っていたのか、だが。

簡単なことだ。

人を襲ったバルカンが力ずくで奪ったのだろう。

それを使えたのは恐らく偶然。

だからこそその道具の存在を誰にも気付かれていなかった。

と、こんなところか。

まぁ、面倒な考察は此処までにしよう。

 

 

目的を果たした俺は全速力でマグノリアへ戻り、診療所へ。

マカオの様子を見た後じっちゃんに報告。

じっちゃんも特に問題無しとして今度の定例会で報告だけするそうだ。

それはそれとして、ロメオにはハッピーが報告したらしい。

一緒に居たルーシィはロメオに言われた『ありがとう』の言葉が嬉しかったと言っていたそうだ。

ま、一件落着だな。

 




『グレイ・フルバスター』

仲は悪くない。むしろいい方。
だが喧嘩という名のじゃれ合いはする。
本人達も喧嘩のつもりではない。




『互いに手抜きの殴り合い』

いつもはもっと凄いんだってよ。
なお、魔法も使いまくっている模様。
ギルドを吹き飛ばさなければいいらしい。
滅竜咆哮、駄目絶対。




『アイスメイク籠手(ガントレット)

適当に出したオリジナル魔法。
その名の通り近接専用。
ジェット機構を付けることで冷気噴射も可能。
冷気のジェット噴射で拳速を上げるのに使用する。
使用中は指を動かすことが出来ない。
拳型や爪型など、複数のバリエーションが存在する。
今回使ったのは拳型。




『燃えた書類を口でキャッチ』

なお、燃えカスはごみ箱へポイした模様。




『いろいろ覚えていけよ』

ルーシィは初めてのギルド入りの為、覚えるべきことがたくさんある。
そのためには人に話を聞くのが楽っちゃ楽。
実際にやってみないとわからないことも多いので、他の人のクエストについて行こう。
当然、選ぶのは簡単なやつから。




『住む場所の確保もしっかりな』

ギルド内にも一応寝泊りに使う部屋はある。
ただ、生活するにはあまりにも不便なので、住む場所は各自で確保しなければならない。




猫竜形態(ドラゴライズ)

ハッピーの使う変身魔法。
筆者のイメージとしては遊戯王の罠カード《竜星の極み》に描かれている《輝竜星-ショウフク》のアーマーパージ状態が青色になったような感じ。
サイズの問題で搭乗可能人数は2.5人。
つまり大人二人と子供一人を乗せるのが限界。
その図体を活かしたタックルがこの姿での最強技。
当然ながら最高速度は通常形態と比べればかなり遅い。
しかし、その姿でもギルド最速の名は譲らない。
ちなみに、ハッピーはどんな姿に変身しても声は変わらない。




『防寒ネックレス』

ナツが滅竜魔法の炎を凝縮して作り上げた真紅の石が本体。
台座は飾り・・・ではなく、炎の魔力を防寒バリア化するための回路。
ちなみに、台座及びチェーンの金色は純金ではなく金メッキ。




『バルカンが持ってた道具』

弱小の闇ギルドがたまに持ってる殺傷用の魔道具。
ぶっちゃけ魔道士なら自分の魔法を魔法を使った方が強い。
それ故に、持っている人の方が珍しい。
マカオがやられたのはこれをバルカンが持っているとは思わなかったため。
遠目に見えただけだったため判断できなかったが、この道具はマカオも知っている。


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金色の本

間が空いてしまってすみませんでした。
感想も返してないことにもごめんなさい。
現時点ではこのまま続投していいのか少し迷っています。

今回は短くなってしまいました。


ドアをノックする。

 

「はーい。あ、ナツ。どうしたの?」

 

出てきたルーシィに手に持った紙を見せる。

 

「仕事のお誘いだ。今のルーシィにも出来そうなやつで報酬も高いぜ」

 

内容はシロツメにあるエバルー公爵の屋敷から特定の本を持ってくること。

なのに報酬が20万J(ジュエル)だ。

裏はありそうだが俺やハッピーも一緒に行く。

厄介な部分は引き受ければいい。

まぁ、その屋敷に本が大量にあって探すのが大変ってだけかもしれないが。

 

「あ、そうそう。今回の依頼では依頼者の家まで言って詳細を口頭で説明してもらうことになってるんだ。場所はシロツメから少し離れた場所にある別荘らしい」

 

「へぇ。やっぱりハッピーの竜猫(ネコマンダー)で行くの?」

猫竜形態(ドラゴライズ)だ。勝手に名前変えるんじゃねぇ。あと前回のは緊急事態だったからだ」

「あい、基本は徒歩だよ。緊急じゃないけど急ぎたいときは列車」

 

考えてもみろ、絶滅したと認識されている(ドラゴン)が街に現れたらどうなるか。

 

「今回は徒歩だ。シロツメには駅が無い」

「・・・どれくらいかかるの?」

「丸一日」

 

あ、ルーシィの目が死んだ。

 

「大丈夫だよ。疲れたらオイラが(エーラ)で運んであげるから」

「それじゃ、行こうぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

丸一日と言ったな。

あれは嘘だ・・・じゃなくて走らなかった場合の話だ。

ルーシィがバテた辺りでハッピーがルーシィを運ぶ。

その時点から俺は全速ダッシュ。

ハッピーは余裕で着いてこれる速度だが。

というわけで半日で到着。

馬車を使った場合とほぼ同じだぜ・・・うぷ。

 

「だから想像しただけで酔うの止めなよ」

「止めようとして止められるもんじゃねぇんだよなぁ」

「ナツも大変ね・・・」

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで依頼者と面談。

カービィ? 真ん丸ピンクの大食い生物のことじゃないの?

そんな事より報酬が10倍の200万J(ジュエル)に跳ね上がってたでござる。

 

「おや、知らずにおいででしたか」

「報酬上げたの何時だよ」

「5,6時間ほど前ですが?」

「俺らが依頼受けた後の移動中じゃねぇか」

「・・・失礼しました」

 

それはさておき、だ。

依頼内容が本の“奪取”ではなく“破棄”と来た。

どういうことだってばよ。

 

「どうしても・・・私はあの本の存在が許せない」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッピー、ルーシィ。報酬無しは覚悟した方がいいかもしれないぞ」

「えっ!?」

「あの家は借り物だ。本人達にあれほどの大金を払う余裕はないだろうな」

「何でわかるの?」

「匂いが違うんだよ。ね、ナツ」

「ああ、俺は五感が人より鋭い。特に嗅覚が飛びぬけているんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わってエバルー公爵邸前。

ルーシィがメイドとして数日間雇ってもらおうという作戦だ。

で、内側から窓を開けてもらって俺とハッピーが侵入、と。

・・・駄菓子菓子。

 

「吾輩のような偉い男には美しい娘しか似合わんのだよ」

 

エバルーの背後に控えるメイドはゴリラのような体格に、潰れていると見間違えそうな顔。

・・・これはもはや美醜逆転の極致と言ってもいいのではないだろうか?

こんな酷いのと比べてブス呼ばわりされたルーシィは泣いていい。

 

 

 

 

 

・・・さて、気を取り直してレッツゴー。

 

「忍びなれども忍ばない!」

「あい!」

「いや忍びなさいよ!」

 

現在俺達はエバルー邸の中。

屋敷の上から窓を破って侵入した。

ダイナミックお邪魔しますじゃなくて炎で溶かしてだ。

廊下に出たら超不細工メイドが襲撃してきたから返り討ち。

適当な部屋に入ってみる。

目の前には大量の本棚。

 

「レビィが喜びそうだな」

「ルーシィの目もキラキラしてるよ?」

 

ハッピーの言う通り、ルーシィが目を輝かせている。

女の子同士、かつ本好き。

二人は仲良くできそうだな。

と、何故か魔力の匂いのする本があった。

その本を手に取ってみる。

 

「うわ、この本金色だ」

「何か凄く豪華だね」

「気になるのは色よりも魔力の匂いがするってことなんだけどな・・・」

 

つ【DAY BREAK】

 

「開幕発見」

「まだ一冊目だよ?」

「いくらなんでも速過ぎないかしら?」

「なるほどなるほど・・・」

 

俺達の誰でもない四人目の声が聞こえてきた。

 

「貴様らの狙いは“日の出”だったか」

 

エバルー自身が床を突き破って現れた。

さっきのメイドと言い公爵自身と言い自分の屋敷を穴だらけにでもするつもりか?

それはさておき、

 

「ドーモ。エバルー=サン。ナツ・ドラグニルです」

「アイエエエ!?」

 

ハッピーには俺が仕込んだ。

 

「な、何だそれは?」

「「挨拶」」

 

それはさておき、

 

「探し物のために吾輩に雇ってもらおうとしてたのか? しかし、その探し物がそのくだらん本だったとは・・・」

「じゃあ俺達が貰ってもいいか?」

「それは許さん。どんなに下らなくても吾輩の物は吾輩の物」

 

ケチな奴である。

 

「じゃあ、ここで読んでもいいかしら?」

 

ルーシィが魔道具らしき眼鏡を掛けながら言った。

 

「ほう、“風読みの眼鏡”か。お主もなかなかの読書家と見た。だが、それも断る。例え読書家であろうとも吾輩の蔵書を勝手に読むなど許さん」

「でも、ナツはこの本から魔力を感じるって言ってたわよ?」

「なぬっ!?」

 

というわけで調べなければ。

 

「開け、時計座の扉《ホロロギウム》!」

 

ルーシィはホロロギウムの中で読み始めた。

ホロロギウムがダッシュで離脱する。何気に速い。

 

「ハッピー、ルーシィのフォローは任せた」

「あいさー!」

 

ハッピーがその後を追った。

 

「ぬぅ、ならば・・・来い、バニッシュブラザーズ!」

 

本棚が開いて二人の男が現れた。

どうやら隠し扉になっていたようだ。

 

「吾輩は小娘を追う! その小僧は任せるぞ!」

 

エバルーは床に潜った。

だから屋敷がボロボロになるだろって。

 

「先手必勝、《火竜の咆哮》!」

「ぬっ!?」

 

炎が口から出てきたことに驚いたようだが即座に対応してのけた。

一人がもう一人を庇う形で前に出て、手に持ったフライパンでガード。

 

「口から出てきたことには驚いたが我らに対して火の魔法を使うなど愚策!」

 

炎が跳ね返ってきた。

 

「自らの魔法に焼かれて朽ち果てるがいい!」

「いや、無駄だから」

「「!?」」

 

自分の炎は流石に食えないが効かないことには変わりない。

 

「馬鹿な!? 何故だ!?」

「俺にはあらゆる炎が効かない。自分の炎だって例外じゃないんだ」

 

と、いうわけでさっさと終わらせよう。

 

「《火竜の劍角》!」

 

一撃で沈めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【DAY BREAK】

作者ケム・レオザン。

しかしそれはエバルーの目を欺くためのフェイクだった。

ケム・レオザンとはペンネームで、その本名が“ゼクア・メロン”。

この本の魔法は一度限り。

ゼクアの息子であるカービィ・メロンの手に渡った瞬間に発動し、真の姿を現す。

そして、この本の真のタイトルは【DEAR KABY】。

この本は、息子へ宛てた手紙だったのだ。

後、俺の予想通り、依頼人夫婦は金を持っていなかった。

流石に報酬を受け取ったせいで依頼人の人生を潰したなんてのは洒落にならない。

 

 

「すまねぇな。初めての仕事が報酬無しで」

「別の依頼を選んだ方がよかったね」

「いいのよ。報酬は無しになったけど代わりにこれを手に入れたし」

 

ルーシィが俺達に見せてきたのは金色の鍵。

十二門の鍵だ。

 

「それは誰が持ってたんだ?」

「エバルーよ。あいつのメイドの一人が実は星霊だったのよ」

「あい! ピンクの髪のがそうだったよ!」

「あれが・・・来たのか・・・」

 

俺が戦慄を覚えたのも仕方ない。

それくらい関わりたくない容貌なのだから。

いずれ顔合わせがあるのだろうか?

その時が恐ろしい。

しかし、俺の予感では近いうちに顔合わせがやってくる。




『カービィ?』

カービィ・メロンという名を聞いて
ナツ「星の○ービィ」
ハッピー「おいしそうな名前!」
ルーシィ「メロン・・・どこかで聞いたような・・・?」
この時点でルーシィは予感していたのかもしれない。





『忍びなれども(ry』

ハッピーはナツに教わっているネタ。
即座に返せるのはそのため。
ルーシィが即座に返せたのはツッコミの才能によるもの。





『魔力の匂いがする本』

原作では色で見つけたがここでは匂いで見つけた模様。
いくら大量の本があるとはいえ、魔力を宿す本なんてそうそう無い。





『アイエエエ』

ナツ「(ネタを)仕込むのは俺なんでね!」
当然ながらこの世界には存在しないネタ。
ハッピーには教えている。





『ホロロギウムのダッシュ』

ルーシィは慣れている為、揺れる中で本を読んでも平気。
元々乗り物に強かった可能性も大いにあるが。





『あれが・・・来たのか・・・』

現時点ではバルゴが姿を変えられることを誰も知らない。
ルーシィが星霊を呼べばその星霊が教えてくれたかもしれないが、バルゴを倒したのはハッピー。
下水に突き落とした模様。ある意味エグイ。


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事件の臭い

現時点で5話が書き終わっていません。
ペースも遅いので来週の投稿に間に合うか心配になってくる今日この頃。
評価が高いのは嬉しいけれど感想が少なくて不安になってしまうこの微妙な気分。

作者がそんな状態でありながらも投稿はします。
それでは、第4話です。どうぞ。


「大☆変☆DA――――!!」

 

出かけていたロキが大慌てでギルドへ飛び込んできた。

口調がおかしくなっているが。

 

「エルザが、エルザが・・・帰ってきた!」

「「「「な、何だって――――!?」」」」

 

ギルドは騒然、ルーシィは呆然。

 

「え、何? なんでみんな怯えて、え?」

 

そんなルーシィにハッピーが教える。

 

「エルザっていうのはこのギルドで最強の女性魔道士なんだよ!」

「さ、最強!?」

「あい、エルザ・スカーレット。皆がビビってる理由は・・・見ればわかると思うのです」

 

―――ズシィィン

 

いや待て、なんで軽く地響きがしてるんだ?

そして入口に現われた緋色の髪の女性。

帰ってきたエルザは巨大な角を担いでいた。

 

「今戻った。マスターはおられるか?」

 

そのエルザの質問に答えたのはミラ。

 

「お帰り。マスターは定例会よ」

「そうか・・・」

 

それを聞いたルーシィが定例会という言葉に首をかしげる。

その様子を見てルーシィの隣まで逃げてきたレビィが解説を始めた。

一方のエルザは・・・

 

「カナ、なんという格好で飲んでいる。ビジター、踊りなら外でやれ。ワカバ、吸いがらが落ちているぞ。ナブ、相変わらずリクエストボードの前をうろうろしているだけか? 仕事をしろ。それとマカオ!」

 

マカオの名だけ強く呼ばれたので呼ばれた本人は焦る。

 

「・・・ふぅ」

「何か言えよ!」

 

それだけに結局何も言われなかったことにツッコむのは仕方ない。

 

「全く、世話が焼けるな。今日のところはこれくらいにしておいてやろう」

 

その言葉に何人かが胸を撫で下ろした。

 

「(エルザって風紀委員か何か?)」

「(あい、それがエルザです)」

「(でも今日はいい方だよ。いつもは鉄拳制裁とかだから)」

 

ルーシィ、ハッピー、レビィが小声で話している。

さて、とりあえず訊くべきことを訊かないとな。

 

「なぁ、エルザ」

「どうした、ナツ」

「その角は?」

 

俺が指差したのはエルザがたった今床に置いた角。

 

「あぁ、これか。帰りがけに討伐した魔物の角だ。こいつの被害を受けていた村の人達が飾りを施してくれたんだ。綺麗だったのでギルドへの土産として持って帰ろうと思ってな」

 

装飾されているから俺が開発素材として貰うわけにはいかないけれども・・・。

 

「どこに置くんだ?」

「・・・・・・・・・orz」

 

硬直した後崩れ落ちた。考えてなかったらしい。

 

「(さっきとは全然違う・・・)」

「(あい、それもエルザです)」

「(あはは・・・実は天然なんだよね)」

 

三人が小声で会話。

 

「・・・仕方ない。これは私が自宅に持ち帰ろう。ナツ、それと・・・グレイは居るか?」

「ここに居るぞ。どうかしたのか?」

「服を着ろグレイ!」

「しまった! いつの間に!」

 

安定のグレイ。

 

「はぁ、まぁいい。ナツとグレイに頼みたいことがある」

「「・・・何だ?」」

 

エルザが俺達に頼みごと、しかも依頼から帰ってくるなりだ。

何かあると思うのは当然のこと。

 

「仕事先で少々厄介な話を耳にしてしまった。本来ならマスターの判断を仰ぐところだが、早期解決が望ましいと私は判断した。お前達の力を貸してほしい、着いてきてくれるな?」

「・・・それは一体?」

「出発は明日だ。午前7時、マグノリアの駅で落ち合う。準備を急いでくれ」

 

何も説明せずにエルザは帰ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。マグノリアの駅。

 

 

エルザは7時ジャストにやってきた。

・・・大量の荷物を抱えて。

 

「エルザ・・・そんなに荷物が多いならもうちょっと早く来てくれよ」

「む、すまない」

 

そんなわけでエルザの荷物の検閲が始まった。

検査官は俺とグレイとハッピー。

毎回余計なものばかり持っていくのだ、この天然は。

俺達のそんな作業の間・・・

 

「君が先週入ったという新人だな?」

「はい、ルーシィと言います。星霊魔道士です」

「ミラから聞いているぞ。マスターからも期待の新人と評価されていると」

「あ、ありがとうございます」

 

作業をしていない女子2名が互いに自己紹介をしていた。

ルーシィが緊張気味になってしまったのは仕方ない。

マスターであるじっちゃんからも高評価だと聞けばプレッシャーも結構なものだろう。

 

「なぁ、何でルーシィも来てるんだ?」

「俺が誘った。あいつや星霊の実力を考えても連れて行って損は無い」

 

そんなこんなで荷物検査終了。

最終的に小さなリュック一つに収まった。

 

「エルザ、貸し1な。今度兵装開発に付き合え」

「うむ、それくらいでいいならいくらでも構わないぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、ありのまま、俺の身に起こったことを話すぜ。

列車に乗ってワンリバースした後エルザが俺の意識を刈っていきやがった。

何を言っているかわから・・・まぁわかるだろうけど。

くそ、最近はそういうことをしなくなったと思っていたのに!

そして起きたら皆いなくなっていたでござる。

置いてくんじゃねぇよお前らああぁぁぁ! ・・・うぷ

 

「・・・お兄さん、ここ開いてる?」

「お、おぅ・・・うぷ」

「ありがとう。・・・ん? へぇ」

 

糸目の男が話しかけてきて、何かに気付いたような声を出した。

 

「うぷ、どうかしたのか?」

「その紋章、正規ギルドの妖精の尻尾(フェアリーテイル)だよね。羨ましいなぁ」

「・・・?」

 

酔いに耐えながらも首をかしげる。

すると突然蹴りが顔面目掛けて飛んできた。

咄嗟に手で掴む。

 

「正規ギルドが調子こいてんじゃねぇよ。妖精(ハエ)の分際で僕達《鉄の森(アイゼンヴァルド)》に・・・あれ? そう言えばまだ何もしてきてなかったっけ?」

 

無言で足を掴んだ手に力を込める。

 

「い゛っ!?」

 

男が離れようとしたときに力を緩め、反動で男がこける。

 

「よくもやってくれたな!」

 

逆ギレした男の足元の影が動き、腕の形に実体化する。

飛んできたそれらの内、二つを手で掴んで握り潰す。

残った一つは歯で受け止め噛み砕いた。

 

「甘いんだよ・・・うぷぉぇ」

「な、何だこいつ!? 僕の魔法が効いてない!?」

 

次の瞬間、列車が大きな音を立てて急減速する。

俺と男は当然こける。

列車が止まったために余裕ができ、俺は周囲を見回す。

この車両に乗っていたであろう他の客は両隣の車両に避難し、こちらの様子を覗っている。

次に目に入ったのは笛。

ただ、その笛から()()()()()()()()()()()()がする。

笛の見た目を一言でいえば『三つ目の髑髏』

男が慌てて拾ったところを見ると、こいつの所持品か。

 

「おい、その笛は何処で手に入れた?」

「っ!? 見られたからには!」

 

糸目の男が再び魔法を使い、今度は数十もの影の手が迫りくる。

しかし、俺が乗り物酔いしていない以上、それは何の意味もない。

男の顔面が蒼白になったのは、俺の全身から吹きだした炎が影を吹き飛ばしたから。

 

「もう一つ訊こう。その笛をどうするつもりだ?」

「くそっ! 妖精(ハエ)のくせに僕等鉄の森(アイゼンヴァルド)に・・・っ!」

 

しかし男は悪態をつくだけで答えない。

 

鉄の森(アイゼンヴァルド)か・・・。ならここで仕留めるべきだな」

 

しかし・・・

 

『先ほどの急停車ですが、誤報によるものだということが確認されました。間もなく発車いたします。皆様にご迷惑をおかけいたしましたこと、お詫び申し上げます』

 

拙い、流石に動いている列車の中じゃ分が悪い!

ここは一旦外に出て合流すべきか。

幸い俺のよく知る匂いが近づいてきていることだしな。

何も言わずに窓を突き破って跳ぶ。

 

「ハッピー!」

「ナツー!」

 

飛び出した俺をハッピーがキャッチ。

直後にハッピーは反転して列車と逆方向へ。

そして前方に見えた魔導四輪。

運転席にはエルザが乗っている。

四輪が急停止したため、すぐそばに降り立つ。

 

「ナツ、無事か!」

「一応無事だ。只、お前の頼みを聞いている状況じゃなくなった!」

「何!? それはどういうことだ!」

 

半ギレで胸倉を掴みにかかってくるエルザを何とか抑える。

 

「列車の中で闇ギルドの奴に会った! そいつの持っていた物品から()()()()がしたんだ!」

「「「っ!?」」」

 

息をのむハッピー、エルザ、グレイ。

 

「そいつは一体どこの奴なんだ!?」

鉄の森(アイゼンヴァルド)を名乗っていた!」

 

エルザの問いに答えた途端、一瞬だけ空気が止まった。

 

「ナツ、それは今エルザが追っている奴等だ」

「・・・マジで?」

「ナツ! 私の話を聞いていなかったのか!?」

「ちょっと待て! 俺はそんなの知らねぇぞ!?」

「バカモノオオオォォォォ!」

「うおぁっぶなぁ!?」

 

慌てて屈んだ俺の頭上をエルザのビンタが掠った。

 

「何故人の話を聞かなかったんだ!」

「それいつどこで話した!?」

「列車の中でに決まっているだろう!」

「あんたが俺の意識を刈り取ったんだろうが!」

「ハッ!? すまない、私を殴ってくれ!」

「野郎オブクラッシャァァァ!」

「グハッ」

 

「ほ、本当に殴った・・・」

「あいつらはお互いに遠慮しねぇんだよ。まぁ、同じS級同士だからってのもあるんだろうが」

「S級・・・? っていうかアンタは服を着なさい!」

「うぁっ!? いつの間に!」

 

 

「・・・ひょっとしてオイラ忘れられてる?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっきのナツの話から考えると奴らが封印を解いた魔法というのはその物品か」

 

エルザが考え込む。

 

「で、その物品って何だったんだよ?」

「見た目は木で出来た笛。只、マウスピースが無くて目が三つある髑髏が付いていた」

「趣味が悪いね・・・ルーシィどうしたの?」

 

ハッピーの言葉にルーシィを見ると、何かに気付いたかのように目を見開いている。

 

「・・・私、それ知ってる」

「何!? それは本当なのか!?」

「う、うん。って言っても本で読んだだけなんだけど」

「それでも構わない。教えてくれ」

 

 

集団呪殺魔法“呪歌(ララバイ)

 

曰く、元々呪殺に使われていた笛をかの黒魔道士ゼレフが進化させたもの。

曰く、その効力は、文字通り集団呪殺。

曰く、笛の音を聞いた人全てが呪殺の対象となる無差別殺害魔法。

 

そこから()()()()がすることも考えると・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

走るのは四輪。その横を飛ぶのは俺を抱えたハッピー。

向かうは二つ先の駅、オシバナ。

 

「飛ばし過ぎだエルザ! いくらおまえでももたねぇぞ!」

 

グレイの言う通り、この速度で四輪を走らせ続ければエルザの魔力は底をつきかねない。

魔導四輪とは魔力を消費して走らせるもの。

その消費は速度の二乗に比例する。

 

「今は一刻も早く着かねば! それにいざとなれば棒切れでも持って戦うさ」

 

そう。今この状況においては運転手を交代する時間すらも惜しい。

 

「エルザ! これを使ってくれ!」

 

俺は自分の魔力を結晶化させてエルザに投げ渡す。

魔力を取り込む端子であるSEプラグに押し当てれば補助になるはずだ。

 

「助かるぞ、ナツ! ・・・!? あれは・・・」

「ナツ! 前!」

 

エルザが何かに気づいたように声を詰まらせ、ハッピーも俺に警告する。

見れば駅らしき建物から煙が上がっていた。

クヌギの駅はとっくに過ぎている。

だからあの駅はオシバナだろう。

そこが奴らの目的地だったようだ。

なんとしても、あの笛を壊さなければ。

あれは、あの笛の力は・・・()()()()()()()()・・・!




『毎回余計なものばかり持っていくのだ、この天然は』

換装という魔法があるのに着替えを荷物として持っていく。
しかも数日分どころか十数日分。
その中にはコスプレも紛れ込んでいるとか。
他にも置物とかテーブルとか椅子とかホントに色々。
ちなみに今回要らない荷物は駅員に預けました。





『君が先週入ったという新人だな?』

エルザは帰ってきたときに依頼終了の報告をし忘れてしまっていた。
その為、一度帰った後にまたギルドへ戻りマカロフの代わりにミラへ報告。
ルーシィのことを聞いたのはその時。





『貸し1な。今度兵装開発に付き合え』

ナツは本当に色々作っている。
しかしその殆どは実用化されずにお蔵入り。
お蔵入りとなったものは分解して新たな製品を作るために使われるのだ。
ギルドのクエストボードにはナツが制作を手伝ってほしいと出す依頼もある。
なお、今回エルザは無償で協力することを約束させられた。





『エルザが俺の意識を刈っていきやがった』

エルザと一緒に列車で仕事に行くとよく意識を刈られる。
最近は刈られてなかったので油断していた模様。うぷ
なお、超頑丈なナツの意識を刈れる理由についてだが、
ハッピー「あい、それがエルザです」
とのこと。むしろそれでこそエルザと言うべきか?





『うぷぉぇ』

乗り物酔いに加えて影属性を口にしてしまった。
多分ローグ君なら少しは回復してた。





『ナツが最も警戒している臭い』

いずれわかるさ、いずれな。
と言っても原作知ってる人ならわかると思う。
ギルドのメンバーの殆どはナツが「あの臭い」と言えばわかる。
なぜナツがその臭いを警戒しているかといえば・・・
それこそ「いずれわかるさ、いずれな」ということで。





『野郎オブクラッシャァァァ!』

エルザの「私を殴ってくれ」発言に対して本当に殴る人は少ない。
ナツ以外ではラクサスと昔のミラ、マカロフくらい。
とはいえ鎧越しなのでダメージは少ない。
ちなみにここのナツはS級である。


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VS《鉄の森》

最近忙しくてなかなか書けない状況です。
おかげでしばらく投稿できないかと。
少しずつ書いていければと考えております。
それでは、第5話です。


「駅内の様子は?」

「な、なんだね君?」

 

ゴッ!

 

「駅内の様子は?」

「は?」

 

ゴッ!

 

「駅内の様子は?」

「な、なんですかあなt」

 

ゴッ!

 

「駅内の様子は?」

「ヒィッ」

 

ゴッ!

 

「やめんかアホオオォォォ!」

 

スパァーン!

 

ハッピーに出してもらったハリセンで叩いてようやくエルザの頭突き祭りが止まった。

 

「ナツ! いきなり何をする!」

「こっちの台詞だバカたれ! 何駅員を気絶させてんだよ! それに今の人怯えてたぞ!」

「おい二人とも! コントやってないで早く行くぞ!」

 

グレイの言葉で言い合いを止めて全員で駅内に突入。

まず最初に見つけたのは倒れ伏した軍小隊。

一応全員生きているが、危ない状態の人も何人かいる。

手早く応急処置を済ませ、意識があった人から話を聞く。

やはりギルド丸ごと一つが相手だったようだ。

つまり鉄の森(アイゼンヴァルト)の連中はほぼ全員がこの駅にいる。

彼らの言葉を頼りに向かう場所は駅のホーム。

 

 

 

 

 

 

階段を上がった先のホーム、そこから一つ線路を挟んだ別のホーム。

そこに奴らは居た。

更に先の線路には奴らが使ったであろう列車が停まっている。

 

「カゲが言ってた通りだな。嗅ぎ付けていたわけだ、妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 

言葉を発した男は大きな鎌を持っている。

恐らくこいつがエリゴールだろう。

 

「貴様等の目的は何だ? 呪歌(ララバイ)など持ち出して何をしようとしている?」

 

エルザがこちら側を代表して問いかける。

 

「やっぱ俺達の切り札も気付かれていたみてぇだな。とすれば当然、その性質についても知ってるんだろう? それを踏まえて、だ。列車ってのは短時間で長距離を移動でき、駅があるのは人が多く集まる街。更に、駅には必ずある設備・・・あれだ」

 

エリゴールが指し示したのはスピーカー。

それが意味するところは・・・

 

呪歌(ララバイ)の放送による無差別大量殺害か!」

正解(パーフェクト)だ、妖精女王(ティターニア)。音量を最大まで上げれば死の音色は街全体をカバーできる」

「・・・何のためにそんなことを?」

 

怒りを抑え、冷静になろうとしながら俺は訊いた。

 

「粛清さ。権利を奪われた者の存在を知らずに権利を掲げ生活を保全している愚か者共へのな。この不公平な世界を知らずに生きるのは罪。罪には罰を。故に、俺達死神が死の罰を与えに来た」

 

それに対して今度はルーシィが声を上げる。

 

「何が権利を奪われた、よ! 自分達で倫理もルールも破って、それで当然の処罰を食らって、なのに権利を主張する? その権利のためにこんなことをする? ふざけるんじゃないわよ!」

 

それでも表情を崩すことなくエリゴールは続ける。

 

「ここまで来て“権利”で満足しようなんて思っちゃいねぇ。ならば、次に欲するべきは“権力”だ。俺達鉄の森(アイゼンヴァルト)だけじゃねぇ。この魔法社会の裏に潜む全ての闇ギルドが権力を欲しているのさ。そして、俺達がその全てを牛耳る。そのための力が、今、俺の手の中にあるんだよ!」

 

そしてエリゴールは魔法を発動させる。

風の爆発。暴風の破裂。

ご丁寧に強烈な臭い付きの煙幕も混ぜている。

 

「《アイスメイク (シールド)》!」

 

グレイが咄嗟に盾を張り、煙幕の中から飛んできた鉄球を防いだ。

 

「もういっちょ! 《アイスメイク 旋風砲(エアロバズーカ)》!」

「オイラも行くよ! 《天翼(アークエーラ)》!」

 

続けて砲弾の代わりに風弾を打ち出すバズーカ砲で煙幕を吹き飛ばす。

同時にハッピーも(エーラ)の上位版となる天翼(アークエーラ)で風を巻き起こす。

煙幕が晴れた先には、線路を越えて俺達に襲い掛からんとする鉄の森(アイゼンヴァルト)の連中が。

 

「《火竜の咆哮》!」

 

広範囲型のブレスで俺が薙ぎ払い、

 

「換装《天輪の鎧》、《循環の剣(サークルソード)》!」

「開け、巨蟹宮の扉《キャンサー》!」

 

エルザとルーシィ、それと星霊によって吹き飛ばされた。

しかし、エリゴールがいない。

恐らく煙幕はこのためか。

臭い付きだったのは俺の嗅覚を警戒して。

さっきエルザを二つ名で呼んだことといい、向こうが持っている情報は意外と多いようだ。

 

「この場は私とハッピーとルーシィが受け持つ! ナツ、グレイ! お前達はエリゴールを追いかけるんだ! 奴は放送室へ向かうはずだ、頼むぞ!」

「「任せろ!」」

 

ダッシュで離脱、階段を駆け下りる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ先に放送室へ向かおうとした俺とグレイ。

しかし、ご丁寧にも駅内の案内表示は大きなものから小さなものまで全て破壊されていた。

仕方なく手分けして全ての部屋を片っ端から虱潰しに捜索。

だが・・・見つからない。

そうこうしているうちに駅の半分を探し終えた。

そしてグレイと合流する。

 

「俺の方は全部ハズレだ。グレイは?」

「一応放送室は見つけた。ただ、放送機材は既に破壊された後だった」

「何!?」

 

ということはさっきエリゴールが言っていたことはフェイクか!

それでも鉄の森(アイゼンヴァルト)のメンバーが残っていた事をかんがえると・・・。

 

「ここを占拠した目的は、多分俺達の足止めだ!」

「っ! 急いでエルザ達と合流するぞ!」

 

恐らく、エリゴールはもうこの駅にはいないだろう。

 

「っ!? おい、外を見ろ!」

 

グレイの言葉に従い、俺達の位置から見えた小さな窓を見上げる。

 

「・・・なんだあれは!?」

 

見えたのは外も見えないほどの暴風だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「エルザ!」」

「ナツとグレイか。すまないが、かなり拙いことになった」

 

ホームにいたのはエルザのみ。

ルーシィとハッピーは別行動だろうか。

まぁ、それも多分、全員を倒した後からだろう。

 

「エリゴールの目的は此処じゃない。無差別殺人はフェイクだ! ここを占拠したのは多分俺達の足止めの為だ! 既に閉じ込められている!」

「だろうな。こいつらの本当の目的は私の方で聞き出した。真の狙いはクローバーの街」

「定例会! 標的はギルドマスターか!」

 

拙いことになった。

今、この駅は暴風の壁で囲まれている。

さっき試したが力ずくで破ることはできなかった。

 

「この風の壁は魔風壁というらしい。今ルーシィとハッピーにカゲという男を探しに行かせている。今ここにいる人物の中でこれを解除できるのは多分そいつだけだろう」

 

それを聞いてグレイが思い出したように言う。

 

「そうか! 確かそいつが呪歌(ララバイ)の封印を一人で解いたって話だったな!」

「あの影使い、解呪魔道士(ディスペラー)だったのか・・・」

「私達も探しに行くぞ。ナツ、鼻はもう大丈夫か?」

「あぁ。もう大丈夫だ」

「急ぐぞ! 一刻も早く魔風壁を解かなきゃなんねぇ!」

 

そして俺達は、手分けして捜索を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論を言えば、影使いは見つかった。

・・・瀕死の状態で。

 

 

背中から血を流しうつぶせに倒れる解呪魔道士(ディスペラー)の影使い。

そのすぐ脇には血が付いたダガーを持った一人の男。

影使いの背中から流れる血と男のダガーに付着した血は全く同じ臭いがする。

その事実が意味するところは・・・

 

「お前・・・自分の仲間を手に掛けたのか?」

「ぅ・・・ぁ・・・」

「自分の仲間を手に掛けたのか!」

「うわああぁぁぁぁぁ!」

 

悲鳴を上げて壁の中に魔法で逃げ込む男。

当然、逃がすつもりはない。

両手に炎を宿し、それらをぶつけ合わせて解き放つ。

 

「《火竜の煌炎》!」

 

壁ごと男を吹き飛ばす。

即座に接近して男の頭を鷲掴む。

 

「《火竜の握撃》!」

「づあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」

 

零距離で破壊の炎を叩き込む。

男を放り投げてすぐ影使いのもとへ行き、傷口を焼いて止血。

 

「ナツ!」

「・・・エルザか」

 

彼女が一番近くにいたのだろう。

爆音を聞いて駆け寄ってきたエルザは俺の顔を見て足を止めた。

 

「ナツ・・・? 一体何があったというんだ?」

「影使いが瀕死状態。同じギルドの仲間に殺されかけてな」

「な・・・!?」

 

絶句するエルザ。

その後方から駆け寄ってくるハッピー、ルーシィ、グレイ。

俺達は応急処置をした影使いを連れて魔風壁へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・どうする?」

 

エルザの言葉には誰も答えられない。

影使いの意識も未だ戻らず。

全魔力解放の滅竜奥義でも使えば破れそうだが、そんなことをすれば逆に俺達が生き埋めになりかねない。

 

「・・・あ!」

 

ハッピーが思い出したように声を上げた。

 

「ハッピー? 何か思いついたのか?」

「ほら、バルゴ! エバルーの屋敷では地面の中を移動してたよね?」

「「あっ!」」

 

何で今まで忘れていたのだろうか?

・・・多分思い出さないようにしていたからかもしれない。

 

「そうか。仕方ないとはいえあのヤバい外見の奴を呼び出すのか・・・」

「お、おい。震えてんぞ。そんなにヤバいのか・・・?」

 

グレイは俺が顔面蒼白で震えているのを見て若干顔を青くする。

 

「・・・ええい、背に腹はなんとやら! 我、星霊界との道を繋ぐ者。汝、その呼びかけに答え門を潜れ。開け! 処女宮の扉《バルゴ》!」

 

そして現れるヤバい見た目の女。

ピンクの髪に端正な顔つき、ルーシィと同じくらいの背丈の普通に可愛らしいメイド服の少女・・・あれ?

 

「「「誰!?」」」

 

俺とハッピーとルーシィの声が重なった。

 

「おい、これがヤバいってどういうことだ?」

「うむ。流石にこの見た目がヤバいとなるとナツの感性を疑わねばならんな」

 

グレイとエルザが俺を白い目で見る。

 

「い、いやいやいや。俺も今混乱してるんだよ。前に会ったときはホントにヤバかったっつーか、今はもはや完全に別人っつーか・・・おいルーシィ、マジでどうなってんの!?」

「あ、あたしも全然わからないわよ。あんた、バルゴ、なのよね? どういうことなの?」

 

俺がルーシィに訊き、ルーシィがバルゴに訊く。

そしてバルゴの解説は、

 

「私は御主人様の忠実なる星霊。御主人様の望む姿にて、仕事をさせていただきます」

「要するに姿をある程度自由に変えれるってことね」

「そのような認識で構いません」

「そう考えるとマジでエバルーの趣味は酷いな」

「あい。あ、そうだ! グレイとエルザにもあの時の姿を見せてあげてよ」

「かしこまりました。では―――」

 

そこまで聞いたところで俺とルーシィは慌てて飛びのく。

もちろん、俺はハッピーを抱えてだ。

 

「「――――――ッ!?」」

 

例の姿を初めて見た二人は顔を真っ青にして10メートルほど後ずさった。

グレイもそうだが、流石のエルザもこればかりは許容できるわけがないか。

 

「今すぐ元の姿に戻りなさい!」

「かしこまりました」

 

バルゴの姿が戻ったことに俺達は一息つく。

 

「悪いけど、正式な契約は後回しでいい? 今は一刻を争うの!」

「問題ありません。この風の壁を迂回する道を作ればよろしいのですね?」

「お願い!」

「かしこまりました。では、行きます!」

 

バルゴが通り道となる穴を残して地面に潜った。

俺は影使いの男を背負う。

 

「おい、ちょっと待て。そいつは敵だろ?」

「流石にこんな形で見殺しになんかはできねぇよ」

 

グレイの問いにそう返す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺達の・・・勝ちだ。今からじゃ・・・追いつける、わけが、ないからね」

 

魔風壁による檻から脱出し、一息ついたとき、意識を取り戻した影使いが言った。

だが・・・“それはどうかな?”

 

「ハッピー!」

「あいさー!」

 

俺の合図にハッピーが巨大な4枚の(エーラ)を展開する。

虹色に輝くそれは、普通の(エーラ)の約4,5倍の大きさを誇る。

これこそがハッピーの最速形態、《天翼(アークエーラ)》だ。

空気抵抗すらも無視し、マッハ1~2を出せる超高速。

 

「先に行ってエリゴールを潰してくる」

「ならば私達はゆっくり後を追うとしよう」

「なっ・・・!?」

 

俺とエルザの会話に驚愕する影使い。

 

「ハッピーは俺達妖精の尻尾(フェアリーテイル)のなかでも最速だ。対してエリゴールは魔風壁で魔力をかなり消耗してるはず。すぐに追いつけるだろうぜ」

 

グレイの言葉に影使いは絶句。

ハッピーが俺の背中を掴み、準備完了。

 

「頼むぜハッピー!」

「任せてナツ!」

 

そして俺達は線路沿いにクローバーへと飛び立った。




『強烈な臭い付きの煙幕』

強烈な臭いを叩き込まれると鼻が一時的に麻痺してしまう。
嗅覚が鋭すぎる故の弊害。
エリゴールの方はというと鼻を麻痺させることまで考えておらず、その場から臭いを辿られる事を警戒して強烈な臭気で自分の臭いを隠そうとしただけ。
ナツは鼻が利くという情報までは調べようとすれば調べられる。





天翼(アークエーラ)

ハッピーの最速魔法。
飛翔系魔法では最上級。
今のところこの世界でこれが使えるのはハッピーだけ。
翼の大きさが4,5倍程になる上に数も4枚に増える。
更に飛行時に空気抵抗を無視する付加効果もある。
最高速度はマッハ2.0で、その場合の持続時間は約5分。
現時点では。





『煌炎からの握撃』

ナツはブチギレした模様。
エルザがナツの顔を見て足を止めたのは殺意に溢れた表情をしていたため。





『バルゴ』

姫呼びエピソードは省いた。
次回彼女を呼んだときに回そうかな。
ゴリラメイドの姿はヤバイ。エルザでもビビるくらいヤバイ。


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風に炎を、悪魔に業火を

1月24日、深夜0時過ぎ辺り。
お気に入り数、22時:10人、23:10人

  (  Д ) ゚ ゚

マジでひっくり返った。

おかげでやる気出して6話間に合いました。

なお、試験勉強や卒業研究は犠牲になった模様。
それでいいのか! よくない!

そんなわけで暫く執筆及び投稿はお休み。
まずは卒業しなきゃ話にならねぇ!


強化した視力で見えた。

エリゴールは今休息を終えたようだ。

線路に座り込んでいた状態から立ち上がって魔法で飛び始める。

俺がそれに気づいたのは奴が線路で立ち上がった時だが。

タイミングが悪ければ通り過ぎていたかもしれない。

まぁ、その場合でもすぐ気付いて引き返せるだろうが。

 

 

 

 

 

右手を構えて炎を宿す。

向こうはようやく俺たちに気づいたようだが、遅い。

――まずは一撃。

 

「《火竜の鉄拳》!」

「ッガァ!?」

 

エリゴールの腹に拳がめり込み、奴を線路へ叩き落す。

続けて俺達も着地。

 

「ナツ、オイラもう限界だよ・・・」

「だがおかげで間に合った。よくやったぞハッピー、ゆっくり休んでくれ」

「あい・・・」

 

ハッピーが歩いてこの場を離れた。

 

「っ・・・テメェ、火竜(サラマンダー)か。なぜここに居やがる? 魔風壁をどうやって抜けた? いくらなんでも早すぎる・・・そうか、カゲにやらせたんだな?」

「あいにくだが違う。地中に抜け道を作ったんだ。地面の下なら魔風壁も届かねぇからな」

「何!? 一体誰が・・・火竜(サラマンダー)妖精女王(ティターニア)と氷使いと・・・ハッ! 金髪の女は見覚えがなかった。そいつか!」

「正確には彼女が呼んだ星霊だ。入って一週間の新人だからお前が知らないのも無理はない」

「くそ・・・ぬかったか」

 

さて、戯れはここまでとしよう。

 

「ここから先へは行かせねぇ。ギルドマスター達に、特にウチのじっちゃんに手は出させねぇ。俺達は、ギルドの仲間(家族)を傷つける奴を許さねぇ。それが俺達、妖精の尻尾(フェアリーテイル)だ!」

「そうかい。だがな、俺もここで引くわけにはいかねぇんだよ。鉄の森(アイゼンヴァルト)として、エリゴール・リーパーとして! 俺は立ち止まったりしねぇ! 行くぞ、《火竜(サラマンダー)》ナツ!」

「あぁ、来いよ、《死神(グリムリーパー)》エリゴール!」

 

それぞれ炎と風を纏った拳がぶつかり合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ナツをゆっくり追うエルザ達は、通信魔水晶(ラクリマ)でハッピーと連絡を取っていた。

 

『それで、今ナツとエリゴールが戦い始めたところだよ』

「そうか。ハッピーもご苦労だった。今はゆっくり休むといい」

『あい、そうするよ』

 

通信が切れる。

 

「馬鹿な・・・もう追いついたって言うのか? まだ5分弱しかたってないぞ」

 

影使い改めカゲヤマが震え声で驚愕を口にした。

 

「だから言ったろ? ハッピーは妖精の尻尾(フェアリーテイル)最速だって」

「い、いや、まだだ。エリゴールさんには《暴風衣(ストームメイル)》がある。そして火竜(サラマンダー)は炎使い。炎じゃ《暴風衣(ストームメイル)》は破れない。だから、僕達の勝利は揺るがない!」

 

カゲヤマの言葉をグレイが鼻で笑った。

 

「な、何がおかしい・・・!」

「ナツの二つ名、火竜(サラマンダー)は炎と同時に(ドラゴン)を表す。どれだけ鋭い風だろうが(ドラゴン)の鱗は貫けねぇし、どんなに硬い防御魔法だろうが(ドラゴン)の炎は魔法ごと破壊する」

 

 

 

 

 

「勝つのはナツだ」

 

 

 

 

 

堂々と言い切るグレイに、カゲヤマは返す言葉を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「《暴風波(ストームブリンガー)》!」

 

エリゴールの掌から風弾が打ち出される。

それを跳んでかわし、炎の噴射を利用して鉄拳を打ち込むべく飛び掛る。

しかしエリゴールは魔法で空中へと飛んで避けた。

 

「《火竜の咆哮》!」

「《暴風爆破(ボムストーム)》!」

 

灼熱のブレスと風の爆発がぶつかり、衝撃が生まれる。

俺は再び跳び上がり、魔力同士の衝突によって発生した煙を突き抜けて奴に殴りかかる。

その拳は巨大な鎌によって止められた。

同時にエリゴールの鎌鼬が俺を打ち払う。

線路から落ちかけたが淵を掴んで戦場に復帰。

 

「俺の鎌鼬が直撃しておいて無傷だと・・・!?」

「生身の頑丈さは誰にも負ける気はしねぇよ。当然ギルド内では頂点だ」

「っ・・・《暴風衣(ストームメイル)》!」

 

エリゴールが風を纏う。

その密度はどんどん濃くなっていき、エリゴールの姿さえ見えなくなってきた。

その風の密度のおかげで臭いが全くわからねぇ。

まぁ、今この場においてそれは関係ないけれども。

 

「この魔法は魔風壁を個人単位まで圧縮したもの。“縮小”ではなく“圧縮”だ。つまり強度は魔風壁とは桁違い。魔風壁を破れなかったお前が、こいつを破れる訳がねぇ。一気に決めてやる!」

 

魔風壁の効果は内側から触れたものを切り刻む。

暴風衣(ストームメイル)は裏表を反転させ、外側から触れたものを切り刻む魔法だろう。

なるほど、究極の防御でありながら強力な攻撃も兼ねる、というわけか。

そう読んだとおり、風の塊となったエリゴールがそのまま突っ込んでくる。

突進の速度は意外と速く、避けるのは厳しい。

――――ならば迎撃するまでだ。

 

「全魔力開放――――」

 

今までとは桁違いの焔が全身から噴き出す。

 

「滅竜奥義――――」

 

右手の指を揃え伸ばして手刀にし、その右手を大きく引いて左手を突き出す。

 

「《『十六夜型』――――」

 

焔が右手に流れ、その密度を増していく。

 

「っ・・・! 《翠緑迅(エメラ・バラム)》!」

 

危険を感じたであろうエリゴールが、魔力消費を惜しむことを捨て、おそらく奴自身の中で最強であろう攻撃魔法を放つ。

・・・だが、そんなものは関係ない。

 

「――――紅蓮鳳凰劍》!」

 

一気に踏み込んで右手の手刀を突き出した。

煉獄の竜火が風の刃を砕き、風の衣をも貫き、中のエリゴールすらも焼いた。

 

 

 

――――決着がついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナツー、お疲れー」

 

トテトテと歩いてきたのはハッピー。

 

「おぅ、終わったぞ。ハッピーはゆっくり休めたか?」

「まだちょっとふらふらかも。帰ったら寝ます」

「そうか。ま、お互いにお疲れ様、だな」

「あい!」

 

呪歌(ララバイ)の処分については評議会で集まっているじっちゃん達に訊こう。

いくら()()()()がするとはいえ、俺が勝手にどうこうする訳には行かない。

俺が進言すれば、じっちゃんが他のマスター達を説得してくれるだろう。

それならば、堂々と破壊できる。

 

 

 

約一分後、エルザ達が追いついてきた。

 

「ふ、もう終わっていたか。流石ナツだ」

「よー、お疲れさん。その疲れ具合からすると、滅竜奥義まで使ったか?」

「滅竜奥義!? そんなのあるんだ。あたしも見てみたかったなー」

「う、嘘だ・・・。エリゴールさんが・・・負けた・・・!?」

 

四者四様の言葉に笑うことで返す。

 

「あれ、魔導四輪が違くねぇか?」

「それがね、駅内の案内同様に破壊されてたのよ」

「そっかー、なら仕方ないねー。もぐもぐ」

 

ハッピーが食べてるのは携帯食料だ。

 

「さて、後は呪歌(ララバイ)の処遇だな。とりあえずじっちゃん達のところに持ってく」

「そこまでの運転は俺がやろうか? ナツとエルザは、後ハッピーも消耗してるし、ルーシィは運転経験が皆無だって言うし」

 

それが妥当か。

ルーシィの初めての運転に使うにはこの場は危険すぎる。

なんたって線路の両脇はすぐに崖だからな。

とりあえず呪歌(ララバイ)を拾いに行こうとした、その時。

 

「うぉっ!?」

 

グレイの慌てた声と同時に爆音。

 

直後、頭上に影が。

見上げると魔導四輪が飛んでいるではないか!

俺達の頭上を飛び越えた魔導四輪が着地するとそこから影のような物が伸びる。

というか影だった。運転してるの影使いだった。

 

「ハハハ、油断したな! 笛は、呪歌(ララバイ)はここだ! ザマーミローwwww」

 

その言葉通り呪歌(ララバイ)を奪って影使いはクローバーへ向かっていく。

 

「・・・えりごーる倒シタカラ諦メタト思ッタノニネー」

「考エテミレバららばいニ魔導士ノ強サトカ関係ナイモンネー」

「アイ、コンナコトナラかげやまヲ縛ッテオイタ方ガヨカッタネー」

「ソレニ私達ガ乗ッテキタ魔導四輪モ奪ワレテシマッタナー」

「って現実逃避してる場合じゃないわよあんた達!」

「HAHAHAHAHA、よっしゃダッシュで追いかけるぞー!(半ギレ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クローバーへと辿り着き、影使いを見つけた。

しかしその目の前には俺達のじっちゃんが。

慌てて介入しようとした俺達を止めたのは定例会で集まっていたマスター達。

 

「――――何も変わらんよ」

 

それでもなお介入しようとしていた俺達を止めたのはじっちゃんが発したたったの一言。

 

「弱い人間はいつまでたっても弱いまま。しかし弱さの全てが悪ではない」

 

じっちゃんは続ける。

 

「もともと人間なんて弱い生き物じゃ。一人じゃ不安だからギルドがある、仲間がいる」

 

いつの間にか影使いは口から笛を離していた。

 

「強く生きるために寄り添いあって歩いていく。不器用な者は人より多くの壁にぶつかるし、遠回りをするかもしれん」

 

笛を持った影使いの手が少しずつ下に下がっていく。

 

「しかし明日を信じて踏み出せば、おのずと力は沸いてくる。強く生きようと笑っていける」

 

 

 

 

 

「そんな笛に頼らなくても、な」

 

 

 

 

 

「――――参りました」

 

影使いの手から笛が落ちた。

感極まった俺は堪らず飛び出した。

 

「じっちゃん!」

「うぉっ! ナツ!? なぜここにホガッ!?」

「今のすげー感動した! 流石俺達のじっちゃんだぜ!」

 

俺はじっちゃんに抱きついて少しだけ感動の涙を流す。

 

「ええ、流石私達のマスター! 私も目頭が熱くなりました!」

「なんと、エルザも一緒に来ておったのk痛いっ!?」

 

エルザがじっちゃんを抱き寄せ、その鎧に頭を激突させた。

 

「まぁ、それでこそ俺達のじーさんだよな」

「うん、そうよね。あたしもちょっと泣いちゃった」

「あ゛い゛! オ゛イ゛ラ゛も感動じだよ゛」

「グレイにルーシィにハッピーもか!? そんなに大勢でどうしたんじゃお前達!?」

 

その質問を受けてエルザが代表で答えようとしたとき、事は起こった。

 

「――――カカカカカ・・・」

 

この場に似つかわしくない悪意に満ちた声。

例外なく全員が凍りつき、声の方を見る。

声の元は死を呼ぶ魔笛、呪歌(ララバイ)

笛から漂う()()()()が強くなっている。

紫の煙が噴き出した。

 

「――――どいつもこいつも根性のねぇ魔導士だな」

 

煙が実体を持ち、呪歌(ララバイ)を包み隠し、まだ膨れ上がっていく。

 

「――――もう我慢できん。ワシが自ら喰ってやろう」

 

実体を持った煙が更にその姿を変える。

山にも匹敵するその巨体は、まさしく樹の巨人。

 

「――――貴様らの魂をな!」

 

警戒していた通りだった。

笛からしていた()()()()()

それは俺がこの世で最も警戒すべき臭いだ。

 

 

 

事態が事態だけに、各ギルドのマスター達も警戒を強める。

但し、ウチのじっちゃんを除いて。

 

「慌てんでもよい。今この場で正体を現したことは奴の最大の失策じゃ」

「おいマカロフ、それはどういうことだ?」

 

そう問いかけたのはゴールドマイン。

四つ首の猟犬(クアトロケルベロス)》のマスターだ。

 

「簡単なことじゃよ。今この場には、対悪魔のスペシャリストがおる」

 

 

 

 

 

「――――そうじゃろう? ナツ」

 

「――――あぁ、任せろ。じっちゃん」

 

 

 

 

 

俺の全身に黒い文様が浮かび上がる。

その文様は()()()()()の証。

 

「《炎魔の激昂》」

 

炎が悪魔ララバイを貫く。

 

「グヌォォォ!? こ、この炎は、滅悪の・・・!?」

 

連戦で魔力、体力共に消耗がきつい。

あまり長引かせるわけには行かないな。

 

「皆、サポート頼むぜ」

「あい!」

「おうよ!」

「任せろ!」

 

ハッピーが俺を抱えて飛ぶ。

 

「おのれぇ!」

 

ララバイが口から弾丸のようなものを大量に発射する。

 

「アイスメイク《(シールド)》!」

 

しかしそれは、グレイが一つ残らず防いだ。

その横からエルザが飛ぶ。

今彼女が纏っている《黒羽の鎧》は僅かだが飛翔能力を持つのだ。

 

「せああぁぁぁ!」

 

気合と共に放った一撃はララバイの腕を切り落とした。

 

「《炎魔の鉄拳》!」

 

ハッピーの速度を上乗せした鉄拳をララバイの顔面に叩き込む。

同時に、

 

「アイスメイク《(チェーン)》! アイスメイク《(フロア)》!」

「換装《妖刀・紅桜》!」

 

グレイがララバイの足元を凍らせ、更に鎖を両脚に巻きつけて引っ張る。

すぐに俺とハッピーが顔面から飛び退き、直後にエルザが自由落下と共に追撃。

足を手前に引かれ、上半身を奥に押されたララバイがバランスを崩す。

ハッピーが俺を上に放り投げて急降下。

エルザを抱えて離脱する。

俺は空中で体制を整え、滅悪の炎を右手に集約。

 

「ナツ、今だ!」

 

グレイが叫んだ。

そして俺の右手に現れるは巨大な炎の槍。

自由落下を始めた俺はその槍を構え、真下でバランスを崩しているララバイを睨む。

 

「おのれ、おのれえええぇぇぇぇ!」

 

ララバイの口から再び砲撃が放たれる。

俺は奴の胸の中央に照準を合わせ、全力で投擲。

 

 

 

 

 

「滅悪奥義《業火大葬槍》!」

 

 

 

 

 

業火の槍が、悪魔の攻撃ごとララバイを貫いた。

ララバイの巨体が炎に焼かれながらゆっくりと倒れていく。

笛の悪魔は轟音を立てて地に伏せ、本体の笛ごと、その躰を焼失させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・こいつはすげぇ。ゼレフの悪魔をこうも簡単に」

「そうじゃろうそうじゃろう! ふひゃひゃひゃひゃひゃ・・・・・・ひゃ?」

 

じっちゃんの笑いが不自然に止まった。

見ると、じっちゃんは顔面蒼白である一点を見つめている。

視線を辿る。

 

「ぬおぁ!? 定例会の会場にしていた会館が粉々にィィィィ!?」

 

なんということでしょう。

ララバイが倒れた地点は定例会の会場ではありませんか!

人呼んで、悲劇的ビフォーアフター。

 

「居たぞ! 捕まえろー!」

「またフェアリーテイル(お前達)かああぁぁぁ!」

 

評議員が軍隊を引き連れて押し寄せてきた。

 

「ちょっと待ちなさいよ! これはララバイが街中で巨大化したせいでしょ!? もうその時点でどうしようもないことじゃない!」

「知らん、そんなことは我々の管轄外だ!」

「横暴だ―――!」

「HAHAHAHAHA、よっしゃ逃げるぞー!(半ギレpart2)」

 

俺達はダッシュでその場を離脱。

とにかく今は、逃ィげるんだよォォォーッ!




ララバイ編、完!

次回投稿は未定











『エリゴール・リーパー』

ファミリーネームは適当に決めた。ただそれだけ。





暴風爆破(ボムストーム)

オリジナル魔法。
前話にて臭い付き煙幕を混ぜて放たれた魔法である。
文字通り風の爆発。





暴風衣(ストームメイル)

原作と比べて大幅に強化された魔法。
ナツが滅竜奥義まで使ってやっと破れるほどの強力な防御と、魔風壁と同様に特定の側から触れた相手を切り刻む攻撃を兼ね備えた大魔法。
他の攻撃魔法とも併用できるよ!
「登場人物全員強化」のタグに偽りなどないッ!





『滅竜奥義《『十六夜型』紅蓮鳳凰劍》』

「不知火型」って付けられてるならほかの型があってもいいじゃない!
なぜ「十六夜型」かって? フィーリングさ。特に理由などない。
不知火型が突進頭突きなら十六夜型は右手の手刀。
攻撃の構えは「るろ剣」の牙突を参照されたし。
本家牙突とは左右が逆だけどね!
もっと言えば刀を持ってないから片手を前に出す必要がないという





『・・・えりごーる倒シタカラ(ry』

上から順にナツ、グレイ、ハッピー、エルザ、ルーシィ、ナツ(2回目)。
ただの現実逃避だよ!(半ギレ)





『ナツの滅悪魔法』

ここのナツは滅悪魔法も使える。
現在正規ギルド唯一の対悪魔スペシャリスト。
ナツが滅悪魔法を使える理由?
「いずれわかるさ、いずれな(約:もう暫くお待ち下さい)」
なぜ滅悪魔法が使えるのに悪魔を超警戒しているのか。
その理由は滅悪魔法を習得した時の事に起因する。
それも「いずれわかるさ、いずれな(約:もう暫く(ry)」





『滅悪奥義《業火大葬槍》』

オリジナル滅悪魔法。
本編中の説明通り。
地上で使うと余波でいろいろ吹き飛ぶ。だって街中だもん。
炎の色は普通。
原作でも滅悪魔法に色の描写はないし。
・・・ないよね?





『知らん、そんなことは管轄外だ』

だからこの世界に遊戯王カードはないって言ってるだろいい加減にしろ!(横暴)
それはともかく逃ィげるんだよォォォーッ!(半ギレ)
ララバイは消滅したので法では捌けない。
そもそも悪魔なので人間の法に関してはそれこそ
ララバイ「知らん、そんなことは管轄外だ。そんなことより魂食べたい」
こうなる。
おのれドン千もといゼレフ絶対許早苗!
ちなみに作者のデッキはドラゴン族。


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SPECIAL CLASS QUEST

お待たせしました。
卒研とかまだ終わってないですけど投稿します。





今回からガルナ島編がスタートです。
それでは第7話、どうぞ。


「疲れた・・・」

「お、おぅ。お疲れ」

 

エルザがテーブルに突っ伏して溜息をついた。

 

「ナツ、すまないが兵装実験への協力はまた今度にしてくれないか?」

「いや、あれはもうチャラにしちゃっていいよ。エルザも大変な目にあったことだしさ」

「すまない、感謝する」

「ゆっくり休んでいいからな」

「あぁ、何だか眠気がな・・・」

 

 

 

 

 

クローバーの街ごとララバイを破壊して逃げた日の翌日から話そう。

俺は昼までぐっすり寝た後、日帰りの護衛依頼に出発。

護衛対象は俺によく懐いてる貴族の娘。

まぁ、護衛と言うよりは一緒に遊んでいるわけだが。

危険な魔物や盗賊連中に出くわした場合は俺ともう一人が即撃退。

 

そんな依頼の流れはこちら。

俺個人宛に依頼書が届き、そこに日時と待ち合わせ場所、目的地が指定される。

そして通信魔水晶で連絡を取り、調整。

今回の場合は俺の仮眠後に朝早く連絡を入れ、急遽昼からにして貰った。

当日、指定時間に待ち合わせ場所にハッピーと一緒に向かう。

待ち合わせ場所にはその娘が護衛の男と一緒に待っている。

いつもの二人だ。

目的地は森や山、海岸などの自然がきれいな場所。

風景を堪能したり、草木などを使う遊びを教えたり、魔法の練習を見てあげたり。

そんなことをして一日を過ごし、偶にはテントを張ってキャンプしたり。

一年ほど前から大体週一でやっている。

後は、偶にマグノリアの俺の家やギルドに遊びに来たり。

 

俺にとっての恒例行事が終わり、その次の日の昼近くにエルザとバトル。

とはいっても、兵装実験の為なのだが。

今回作った兵装のモデルは某狩りゲーのチャージアックス。

エルザが開発実験に協力する場合はいつも試合形式の実戦試験なのだ。

 

いざ、試合開始――――と、始めようとしたとき。

評議員が乱入してエルザがタイーホされてしまった。

罪状は二日前のテロ事件での器物損壊他。

あれはゴルゴムもといララバイの仕業なんだ!

エルザが帰ってきたのはその翌日。

結局、逮捕は形だけだったとのこと。

その割にエルザが疲労困憊だったわけだが。

どっちかってーと身体的ってよりは精神的疲労?

エルザがそうなった理由は不明である。

 

んで冒頭に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけで2階に上がって仕事探しだ。

2階の掲示板はS級専用である。

 

 

と、階段を上がりきったところで一人の男が目に入った。

俺と同じS級で、雷の魔法を使う魔道士。

彼はソファに深く腰掛けていた。

 

「ラクサス。帰ってきてたんだな。フリード達は?」

「おー、ナツか。あいつらはそれぞれ自分の家で寝てるぞ。流石に疲れたんだろ」

 

ラクサス率いるチーム雷神衆。

フリード、エバーグリーン、ビックスローがメンバーだ。

確か今回は4人でクエストに行ってたはず。

 

「依頼は?」

「完遂だ」

「流石ラクサス。10年クエストお疲れ様。でもフリード達にはきつかったんじゃないか?」

「あんがとよ。まぁソロで向かっていい内容じゃなかったからな。そっちはゼレフ書の悪魔を討伐してきたらしいじゃねぇか。依頼でもないのにお疲れ様だったな」

「書物じゃなくて笛だったけどな」

「んで、また街を壊したと」

「それを言ってはいけないッ」

 

ラクサスと駄弁りながら俺は掲示板を物色。

報酬の欄に珍しい単語を見つけたので、その依頼書を手に取る。

 

「っ――――!?」

「ナツ? どうかしたのか?」

 

その依頼内容を見た俺は声にならない声を漏らし、それに気づいたラクサスが上体を起こす。

 

「・・・見ろ」

「何だよ・・・・・・んなっ!? これは!」

 

ラクサスも俺の持つ依頼書、その中の俺が指差した部分を読んで目を見開く。

次の瞬間、

 

 

 

 

 

ゴトン・・・

 

 

 

 

 

突如下でそんな音が響いた。

俺とラクサスは反射的に音の聞こえた方向を向く。

同じ音が何度も響く。

手すりから身を乗り出して下を見ると、ギルド内に居た人がほぼ全員寝ていた。

今この建物内で起きているのはたったの3人。

マスターであるじっちゃん。

そのじっちゃんの孫で、ギルドでもトップクラスの強者であるラクサス。

そして、干渉系の魔法や呪いが一切効かない特殊体質の俺。

とは言え、慌てる必要はない。

ここではまれによくある光景だからだ。

この光景を作りだした下手人が入ってくる。

 

目元以外の全身をマントやマスクなどで覆い隠した異質な男。

唯一隠れていない目元から僅かに青い髪が見える。

そして背中には大きな杖が複数本。

俺やエルザ、ラクサスと同じS級魔導士の一人、ミストガンだ。

ミストガンは2階の俺とラクサスに気付くと、片手を挙げるだけの簡単な挨拶をする。

ラクサスは眠そうに、俺はいつも通りに返した。

眠そうなじっちゃんがミストガンの依頼完遂を確認し、ミストガンが2階に上がってきた。

 

「ミストガンも10年クエストだったよな。仕事お疲れ」

「あぁ。それにしても、相変わらずナツは平然としているな。ラクサスは眠気で口を開くのも億劫になっているというのに。俺も魔法の腕を磨いているはずなんだがな」

「俺がそういうの効かないってのは俺以外ではお前が一番よく知ってるだろ?」

「ふ・・・そうだったな。さて、皆を眠らせたまま長居するのもまずいだろう。俺はそろそろ仕事を選んで行くとしよう」

「それなんだが、ちょっと待った」

「?」

 

俺は表情を引き締めて仕事を選びに掲示板へ向かおうとするミストガンを呼び止める。

疑問符を浮かべるミストガンに手の中の依頼書を突き出した。

 

「内容は『島内の村を救え』、場所は『ガルナ島』・・・噂の『呪われた島』か。報酬は物品プラス700万J(ジュエル)。少なめだな」

「問題はそこじゃねぇ。備考部分を見てみろ」

「備考? ・・・っ!? 島民の『悪魔化』だと!?」

 

無言で頷いた後に続ける。

 

「お前が帰ってきたのが今で丁度よかった。俺もついさっき見つけたばかりの依頼だからまだ本人達の了承は貰っていないが、誰を連れて行くかは大体決めてある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前も来い、ミストガン」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・いいだろう」

「助かる。出発は明日の朝を予定したいがまだ詳細は決められない。この魔水晶を預けておく。詳細が決まり次第それに連絡を入れさせてもらうから。後、エルザはメンバーから外しておく」

「わかった」

「頼むぞ」

 

手すりを飛び越えて下へ降りる。

そしていつの間にか完全覚醒していたじっちゃんに依頼書を見せた。

 

「じっちゃん、話は聞いてたよな?」

「依頼を受理する前に聞いておきたい。誰を連れて行くんじゃ?」

「確定してから申告する」

「では依頼書はわしが預かっておく。受理するのはメンバーが決定してからじゃ」

「あぁ」

 

その話の間にミストガンは階段を下りてギルドの出口へ向かう。

 

「ミストガン! 出ていく前に眠りの魔法を解かんか!」

「う、すまない。・・・伍、四、参、弐、壱」

 

零を言わずに行ってしまったミストガン。

それでも魔法は解け、皆が起きる。

俺はもう一度跳躍して2階へ上がり、ラクサスに話しかける。

 

「ラクサス、お前にも頼みたい」

「悪ぃがパスだ。既に明日の仕事の予約を入れてある」

「・・・そうか」

 

その後ソファに横になり眠るラクサス。

俺は手すりから下を見下ろし、大声で喧騒を鎮めようとする。

 

「皆ちょっと聞いてくれ!」

 

ミストガンの話で盛り上がっていた全員が静かになり、俺を見上げた。

 

「明日の朝、S級に出発するつもりだ。ハッピーは勿論だが、ミストガンもメンバーに加えた。同行者を指名したいから今から呼んだ奴は予定が大丈夫かどうか聞かせてくれ!」

 

ミストガンがメンバーにいるという事実に驚愕する面々。

まぁ、その驚愕も当然だろう。

ミストガンは殆ど同行者を付けずにクエストへ行くのだから。

 

「グレイ、カナ、エルフマン、ルーシィ。以上だ。用事とかで行けないなら教えてくれ」

 

数秒の沈黙。

 

「俺は行くぜ」

「漢たるもの、行くしかあるまい!」

「あたしも行くわよ」

 

グレイ、エフルマン、カナが同行を表明する。

 

「え、あ、あたしは・・・えっと・・・」

 

一方、ルーシィは迷ってるというよりは混乱しているようだ。

 

「報酬に黄道十二門の鍵があるぞ」

「行く!」

 

変わり身は早かった。




『貴族の娘』

少なくともナツは彼女が貴族家系だと聞いている。
そしてナツは彼女のファミリーネームを知らない。
()()()()()()()()
いずれ正式に登場する予定。
初邂逅はこの時点から数えて約一年前。
原作内での時期的にはリサーナが居なくなって少し経ったあたり。





『チャージアックス』

ビンの代わりにナツ特製の魔水晶を使用。
ナツが炎属性しか扱えないため属性は炎一択。
試作品なので素材は溶かしたガラクタ。
この世界のモンスター素材は殆どがこれを下回るほど悪性能。
いや、逆に考えろ。モンハン世界がおかしいんだ。





『ゴルゴムもといララバイの仕業なんだ!』

??「それも私だ」
??「ゆ゛る゛さ゛ん゛!」
??「だが私は謝らない」
??「全て乾巧って奴の仕業なんだ」
??「おのれディケイド!」
??「ユグドラシル絶対に許さねぇ!」
??「紘汰さん、全部あなたのせいだ!」
??「全部私のせいだ! ハハハハハッ!」
ナツ「出てくる作品違うだろあんたら!」




『ラクサス』

現時点においては暴力的でも高圧的でもない。
ギルドメンバーとの仲は割と良好。
というのは少し違っていて、単に溜め込んでいるだけ。
いずれ爆発して原作と同じになる。





『報酬欄の珍しい単語』

言わずもがな、金の鍵。





『ミストガン』

皆さんご存じ不審者枠。
もうちょっと詳細な説明は次回を待て。
??「瑠璃!!」
??「(無言の腹パン)」
彼らは関係ござらん。
実はナツが滅悪魔法を使えるようになった原因の事件に居合わせていた。
この事件を目撃したのは彼とハッピーのみ。
もうちょっと詳細な説明は次回を待て。





『ナツの特殊体質』

本当ならナツは“最強の”悪魔だから元から効かないと思うの。
なのになぜ原作では効いているのだろうか。
ポケモンで言えば以下の通り。
・毒    有効
・猛毒   有効
・麻痺   有効
・火傷   無効
・凍り   有効
・眠り   無効
・混乱   無効
・滅びの歌 無効
・ヤドリギ 無効
他は省く
ドラクエで言えば以下の通り。
・毒     有効
・麻痺    有効
・メダパニ  無効
・ラリホー  無効
・マホトーン 無効
・マヌーサ  無効
・魅了    無効
・呪い    無効
FFで言えば以下の通り。
・毒    有効
・石化   無効
・暗闇   有効
・凍結   有効
・ゾンビ  無効
・睡眠   無効
・麻痺   有効
・混乱   無効
・忘却   無効
・死の宣告 無効
・呪い   無効
他の物はこんな感じ。
・幻覚   無効
・精神干渉 無効
・スタン  有効
・呪殺   無効
・物理拘束 有効
・金縛り  無効
とまぁ、大体こんな感じかな?
チート過ぎるってば。
当然ミストガンの睡眠魔法も無効化。
ナツはマカロフ以外でメストの存在を覚えている唯一のメンバー。





『ガルナ島クエのメンバー』

ナツ、ハッピー、ミストガン、グレイ、エルフマン、カナ、ルーシィ。
総勢7人。内2人がS級。
人数増えたけど敵キャラどうしよう・・・。













よろしい、ならばアンケートだ!
というわけで活動報告にアンケート置いときますね。

次回投稿は未定。
出来れば来週には上げたいです。


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ガルナ島

お待たせしました。
二週間ぶりですが更新です。

では、第8話、どうぞ。


バリボリバリボリ。

 

やってきましたハルジオン。

俺とハッピーを含めてメンバー総勢7人。

当然の如く列車である。 うぷ

 

ガリガリゴリゴリ。

 

魔水晶(ラクリマ)うめぇ。

当然ながら属性は炎。

 

「あ! あの時のお兄ちゃん、また石食べてる!」

「だから見ちゃいけません! 早く行くわよ!」

 

ぐはぁっ

ナンカミオボエノアルオヤコダナー(棒)

 

「おいナツ! しっかりしろ! 傷は浅いぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は遡って大体30分~1時間前。

 

「そう言えば、ミストガンさんが誰かの仕事に同行するのって初めてなの?」

 

電車の中でルーシィがそんな質問を投げかけた。

ちなみに俺ことナツはグロッキー。

 

「少し違うがこの大人数だとそうだな。基本的に俺は一人でクエストに行く」

「確か例外はナツとハッピー以外に2人だったよな?」

 

ミストガン本人が質問に答え、グレイがさらに訊く。

 

「ラクサスとギルダーツだ。昨日ラクサスはギルドに居たから面識はあるんじゃないか?」

 

ミストガンの言葉に首をかしげるルーシィ。

 

「いや、ルーシィは会っていないはずだぞ。ラクサスはルーシィが居る間に下には降りてこなかった」

「そのラクサスって人は、どんな人なの?」

「金髪で顔に傷のある青年よ。それに青のヘッドホンをしてるわ」

 

カナの説明した男を、確かにルーシィは見かけなかった。

 

「へぇー。じゃあ、ギルダーツって人は?」

「「「「「ギルド最強の魔道士」」」」」

「さ、最強!?」

 

ミストガン、ハッピー、グレイ、エルフマン、カナが息ぴったりに発した言葉を聞いて、ルーシィは飛び上がりかけた。

・・・なぜ飛び上がりかけたのかは不明である。

怯える必要などないのだから。

 

「んでもって俺の師匠だ・・・うぷ」

「ナツの師匠!?」

 

2年と数か月前からずっと帰ってきていないが。

 

「あい、オイラも凄くお世話になってる人です」

「へー、どんな人なんだろ・・・」

「会えばわかるさ、とだけ言っておくぜ」

「ギルド最強だけあって、彼は漢の中の漢だ!」

「会ったら会ったでいろいろと驚くわよ」

 

――閑話休題(少し話がそれてしまったな)――

 

「とにかく、俺と一緒に仕事に行った事のある人はその4人だけだ。チームを組んで行ったことは一度もない。基本的にソロ、偶にギルダーツかラクサスかナツとのペア。但し、ナツと組む時は必ずハッピーが一緒になるからチームみたいになる。・・・こんな答えでいいか?」

「えぇ、ありがとう」

 

ひとまずこの疑問は解決。

 

「後、運が良ければミストガンの素顔を拝めるかもしれないぜ?」

「止めてくれ」

「今のところミストガンの素顔を知っているのは同行した事のあるオイラ達とマスターだけだよ」

「へぇ・・・き、気になる」

「頼むから止めてくれ・・・」

 

ミストガンが項垂れたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冒頭に戻って現在午後12時前後。

二手に分かれ、買い食いしながら港を捜索。

俺達が探しているのはガルナ島へ乗せてもらうための船である。

・・・駄菓子菓子。

全くと言っていいほど見つからない。

 

曰く、冗談じゃない。

曰く、あの島には近寄りたくもない。

曰く、名前も聞きたくない。

曰く、縁起が悪い。

曰く、行ったら呪われる。

曰く、海賊すらも避けて通る。

曰く、曰く、曰く・・・。

 

 

 

 

 

 

ガルナ島。

あれは呪われた島ということで有名だ。

しかし、その島がゼレフの悪魔と繋がりがあるという話は聞いたことが無い。

じっちゃんやミストガンに確認してみたが、それに関しては間違いないと言い切れる。

今回の『悪魔化』の原因はゼレフ関係なのかどうか。

恐らく9割以上の確率でそうだろう。

まずはガルナ島へ行く手段を見つけないと話にならないのだが・・・。

 

 

 

 

 

 

「成果なし。そっちは?」

「駄目だった。島の名前を聞けば誰も話を聞こうとしなくなる」

 

合流したはいいものの、全員で溜息をつく事態。

 

「おや、見ない顔だな。何かあったのか?」

 

そこに話しかけてきたのは一人の男。

 

「あぁ、ガルナ島に用があるんだ。でも誰も話を聞いてくれなくて」

「ガルナ島か・・・。すまないが、力になれそうもないな」

「デスヨネー」

 

もう一度全員で溜息。

気を取り直して立ち会議開始。

 

「で、マジでどうするよ?」

「俺の転送魔法も流石に使えない。距離が遠すぎるし、何より正確な位置がわからない」

 

流石のミストガンも今回の移動手段では戦力外。

・・・それを言ったら全員そうか。

 

「とりあえず一人ずつ意見でもテケトーに言ってもらおうか。ハッピー」

「あい、泳いでいく」

「道中サメが湧いてるらしいし体力の消耗がキツイ。次、グレイ」

「造形魔法で船を作ろうかと思ったが途中でほぼ確実に壊れる」

「だろうな。ルーシィ」

「じゃあ、ハッピーに全員運んでもらう、とか?」

猫竜形態(ドラゴライズ)にカナの協力があってもギリ二往復半。流石にハッピーが持たない。エルフマン」

「漢なら、無理を通して道理を殴るべし!」

「それって脅迫でもするつもりか!? 一番駄目な手段だろうが! ・・・カナ」

「海賊潰して船を奪う」

「・・・現状それが一番か。港に停泊中の海賊が見つからなかったらまた一からやり直しだが」

 

兎に角まとまったのでミストガンが代表して男に訊く。

 

「そういうわけだ。今この港に海賊船らしきものが停泊していないか教えてほしい」

「だ、大丈夫なのか!? 海賊ということは武装集団だぞ!?」

 

男が心配そうに声をあげる。が、それがどうした。

 

「超余裕。フィオーレ最上級のギルド(フェアリーテイル)舐めんな」

「心配すべきは俺達がやりすぎて船を壊さないかだがな」

「それならミストガンの結界があるから問題なし。そうだろ?」

「俺を便利屋扱いしないでくれ」

「あい、実際万能系魔道士な件について」

「そう言えばミストガンってマスターや評議員に怒られたことはあるの?」

「あたし達が知る限り、それは無いね。妖精の尻尾(フェアリーテイル)では珍しく」

 

ミストガンは普段居ないから怒られないのである。

まぁ、それ以前に騒ぎを起こさない性格なのだが。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)!? ま、まさかあんた達、魔導士なのか!?」

「ん? 確かにそうだが?」

 

魔道士かどうかを確認するってことは何かあるな。

 

「魔道士なら話は別だ。俺が船を出そう。その代わり、一つだけ頼まれてくれ」

 

風向きが変わってきたな。

 

「あまり時間を取られるような頼みなら無理だぞ。俺達は依頼でガルナ島へ行くからな」

 

男は一瞬考え込む仕草を見せたが、それを振り払うように膝と手を地に着いた。

つまり、土下座である。

 

「頼む! 島の人達を殺さないで助けてくれ! あの人たちに非は無いんだ!」

「いや、依頼人を殺すなんて普通ないぞ?」

「え?」

「え?」

 

・・・多分勘違いされてる。

 

「“島の人達を殲滅しろ”とか、そんな依頼じゃないのか?」

「違うぞ? 島の人達から“自分達を助けてくれ”っていう依頼だ」

「そ、そうか。よかった・・・。そ、そうだ。あんた達は島の状況を何処まで知ってるんだ?」

 

“島民の悪魔化”“ゼレフ関係という考察”について簡潔に伝える。

 

「そうか。だったら俺からも改めて頼む。島の呪いを解いてくれ」

「あぁ。俺達に任せろ」

 

交渉成立。

まぁ、単なる誤解の修正作業だったが。

 

「ついてきてくれ。俺が船を出す」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本日二度目のリバース。

船乗りの男も心配してくれたが、これはどうしようもないことなのだ。うぷ

 

「ナツー、そろそろ大丈夫?」

「・・・あぁ、なんとかな」

 

俺が落ち着いた為、全員揃って船の上の男、もといボボに礼を言う。

彼は船で移動中に自己紹介をしてくれた。

そんな彼が見せてくれた片腕は異形化してしまっている。

元々彼はガルナ島の住人で、呪いで異常をきたしてしまったらしい。

しかし、少なくとも彼から悪魔の臭いはしなかった。

船酔いから覚めた今なら、それは間違いないと言い切れる。

 

ちなみに、道中大波に襲われたがミストガンが難なくガードしてのけた。

 

「大波の対処まで任せてしまったというのにすまないが、俺はこれからハルジオンへ戻る。この島にも船乗りは居る。無事に呪いを解いてくれたら帰りは送ってもらうといい。最後まで付き合ってやれなくて悪いな。だが俺にも、帰れない事情があるんだ」

「何、気にするな。俺達は俺達の仕事をやるだけさ」

「安心してくれ。君の故郷は必ず正常に戻してみせる」

 

代表して俺とミストガンが言葉をかける。

ボボは頼む、と一言言い残して戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よくぞ来てくださった。わしがこの村の村長、モカといいます。ほがほが」

妖精の尻尾(フェアリーテイル)所属、ナツ・ドラグニルだ」

 

村へと移動し、島民達との顔合わせ&代表者同士の自己紹介。

 

「早速だが本題に入らせていただこう。まずはこれを見ていただきたい」

 

モカが背後に控える島民達にローブを脱ぐように促す。

ローブの中から出てきた人々の体は、皆どこかしら異常な形となっていた。

ある者は耳。またある者は腕。

例外なく、体の一部が悪魔というべき形に成り果てている。

しかし、悪魔の臭いはない。

 

「こちらからもいくつか質問させてもらいたい」

「我々に答えられることならばいくらでも」

「おぅ。まず、これを“呪い”だと判断した根拠は?」

「二つの理由から判断しましたな。まず、何十人という医者に見てもらい、このような病気はないということでしたので、まず病気ではないと判断しました。二つ目の理由は“月の異常”です」

「月の異常?」

「ほが。この島は古代からの月の光を蓄積し、島全体が月のように輝く美しい島でした。しかし、数年前、突然月が紫色に変化し、それ以来、この島から見える月は紫色のままなのです」

 

この島から見える月は、か。

とにかく続きを促す。

 

「わしらの姿が変わり始めたのはその紫の月が出始めてから。そしてもうひとつ。この呪いで姿が変わった者が紫の月の光を見たり浴びたりすると、全身が悪魔のような異形に成り果ててしまうのです。朝になれば今のような姿に戻るのですが。しかし・・・」

 

そこまで語り、モカは話しづらそうな様子を見せる。

 

「・・・呪いの効力なのか単に心が折れてしまっただけなのかはわかりませんが、理性を完全に失い、暴れだしてしまう者も出てきたのです。幽閉しても牢を壊してでてきてしまい、追放しても異形の翼で飛んで戻ってきてしまう。放置などすれば当然わしらの命が危ない。故に、心を失ってしまった者は殺すしかなかったんじゃ。かくいうわしも、自らの手で息子を、ボボを殺めたのです」

 

当然俺達は息を呑んだ。

それもそのはず。

モカの話の通りなら俺達を島まで送ってくれたのは死人ということになってしまうからだ。

しかし当のボボからは、間違いなく()()()()()がした。

その動揺を表に出さないように平静を装って言う。

 

「わかった。この件は俺達が必ず解決してみせる」

「お願いします。ですがもうすぐ夜になる。今夜はゆっくり休み、疲れを癒してくだされ。少々狭いかもしれませんが、宿を用意しております」

「助かる。俺達もこの件には万全の体制で臨みたいからな」

「わしらにできることがあればいつでも協力いたします。では、村の者に案内を頼むので、彼に着いていってくだされ」

 

こうして俺達は、島民に案内された家に泊まることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に案内されてから数時間後、日が沈み、月が昇る。

その月の光は、確かに紫色になっていた。

紫色の月を目視で確認した瞬間、俺の頭に異常な激痛が走る。

 

「っが・・・!?」

「ナツ!?」

 

即座に理解できた。

紫の月の光が与える影響は身体ではなく脳に及ぶものだと。

 

「村の人達は異形化なんてしていない・・・っ」

「何だと!?」

「ぐ・・・紫の月の光は、記憶の方を歪めるんだ!」

 

拙い、意識が遠くなっていく。

 

「カナ! 急いでナツを隔離しろ!」

「わかってる!」

 

そんなグレイとカナの言葉を最後に、目の前が真っ暗になった。




『超余裕』

上から順に、グレイ、エルフマン、ナツ、ミストガン、ハッピー、ルーシィ、カナ





『ボボ』

ここでは途中で飛んで逃げることは無かった。
ちゃんと島まで送り届けた。
なお、原作同様に大波に遭遇したがミストガンが防いだ模様。





『ガルナ島の住人』

彼らは悪魔ではなく亜人という設定。
ナツが普通に人のにおいがすると言ったのはそのため。
便宜上彼らをガルナ族と呼ぼう。
月の光が集まりやすい場所に邪悪なる存在が住んでる訳無いじゃない。
彼らは月の光を浴びて魔力を生成する種族という設定。
もしかすると、どこかのギルドにガルナ族の魔導士が居るかもしれない・・・。





『モカ』

月を壊せ発言は無かったことにした。





『紫の月』

紫の月光はガルナ族に対しては緩やかに記憶を歪めていく。
しかし、悪魔に対しては強烈な頭痛を与えるほどに攻撃的。
しつこいようだが、ナツは自分の種族が悪魔だということを知らない。
本人を含む全員が、ナツが月光の影響を受けた理由は滅悪魔法習得の原因となった事件が影響していると思っている。
もちろん、その事件についてルーシィは知らない。
というわけで、次回はミストガンによる回想回を予定しております。





『カナによるナツの隔離』

カード化です。
ちなみに、この次点でのカナは同時に一人しかカード化できず、カードがカナから離れすぎるとカード化が解けてしまう。


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回想、探索、そして邂逅の時

10話書いてみた。ものっそい短くなった。
ならばいっそのこと9話と繋げちまえ!

てなわけで9話を一端削除。
結合して新たな9話目として投稿いたす!

サブタイも変える。後書きも書き加える。

ほんと遅くなっても゛う゛し゛わ゛け゛ね゛ぇ゛・・・!


目を覚ましたら、そこはカードの中。

カナが心配そうに覗き込んでいるのがわかる。

異常なほど強烈な頭痛は全く感じない。

 

「・・・どれくらい気絶していた?」

「ほんの数秒。様子を見る限り大丈夫そうだね」

「それでもかなり体力を持っていかれた。悪いが寝かせてくれ」

 

そして俺はカードの中で眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・ねぇ、ナツに何があったの?」

 

静寂の中、ルーシィが全員に尋ねた。

グレイたち3人はハッピーとミストガンを見る。

 

「十中八九、悪魔関係だな」

「・・・オイラ、村を散歩してくる」

 

ハッピーが席を外す。

 

「ナツは、月の光が歪めるのは記憶の方だと言っていた。村の人達、そしてナツが影響を受けたのはその光が悪魔に影響を及ぼすものだからと考えたほうが良い」

「ちょ、ちょっと待って! その言い方じゃあまるでナツが・・・」

 

悪魔みたいに、という言葉をルーシィは飲み込んだ。

ミストガンがグレイ達に視線を向ける。

3人は揃って首を横に振った。

その後で、グレイが付け加える。

 

「だけど、ナツが滅悪魔法を使っているところは見ている」

「・・・そうか」

「ねぇ、何の話をしているの・・・?」

 

ルーシィの問いに、ミストガンは数秒ほど瞑目した。

 

「・・・これからする話は、ギルドのほぼ全員がハッピーを通して聞いている。当事者は俺とハッピー。ただ、俺の口から語るのはこれが初めてだ」

「何の・・・話・・・?」

「ナツが滅悪魔法を習得するに至る原因となった、ある事件の話だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事件が起きたのは今から大体一年半ほど前のことだ。

その数ヶ月ほど前から、ナツはある魔法を創ろうとしていてな。

滅竜魔法の弱点を補う為の魔法だ。

自分の属性以外を無理矢理口にした場合、大きく弱体化してしまうという弱点があるんだ。

主に、別の属性が混じっているものを口にする場合が多い。

その弱点を補う為の魔法を、ナツは開発していたんだ。

 

その魔法の名前は――――《暴食(グラ)

 

全ての魔法を食べることができ、かつ滅竜魔導士に影響がでないようにする魔法だ。

更に、食べた魔法のエネルギーを自分に取り込むことが出来る。

 

それ以外にも同時進行で合計7つの魔法の開発をしていた。

詳細は知らないが、いずれも暴食(グラ)に通ずる性質を持った魔法らしい。

その中で、最初に完成したのが暴食(グラ)だ。

そこで、丁度よさそうなS級クエストがあったので、その依頼で試験運用をしようとした。

・・・そのクエストに、俺が同行したんだ。

 

依頼内容は、見たことのない魔物の討伐。

S級だったのは、その魔物がかなりの強さを誇り、幾度も魔導士を返り討ちにしたから。

2体一組で行動し、それぞれ炎の魔法と水の魔法を使う奴だった。

といっても、出会い頭にいろいろあって、そいつらは魔物じゃなくて悪魔だとわかったんだが。

・・・当然ながら、ゼレフの悪魔だ。

 

事件が起こったのは、その悪魔達との戦闘中、ナツが暴食(グラ)を使った瞬間だ。

 

理論通りにナツの体のところどころが真紅に変色し始め、魔法の発動は成功した。

確かに試験運用は成功し、ナツは水の魔法、いや、呪法を食べることができた。

だが次の瞬間、ナツの様子が急変したんだ。

いや、呪法を食べる直前から様子がおかしかったんだ。

 

暴食(グラ)を発動した瞬間から目が少し虚ろになった。

水の攻撃を食べた直後に獣のような唸り声を上げた。

更に、変色した場所とは無関係に、ナツの体のあちこちから昆虫のような羽根が生えてきたんだ。

そんな状態になってしまったナツの出した声が、人間どころかこの世のものではないかと思うほどにおぞましく変わり果てていてな。

 

そのままナツは、あっという間に2体の悪魔を喰い殺した。

骨も、肉の一片すらも残さずにな。

その直後、いきなり倒れてもがき苦しみ始めた。

ナツの体に、黒い文様が浮かんできた。

そうだ。ナツが滅悪魔法を使うときに浮かぶ、あの文様だ。

俺には文様と羽がナツの体を奪い合っているようにも見えた。

暫くして文様も羽も、赤い変色も消えて、ナツはそのまま気を失った。

すぐさま調べたところ、ナツの体が異常な状態になっていたんだ。

 

理論上では、暴食(グラ)は食べた物を属性を無視してエネルギーだけを取り込む。

だが、実際は食べた物の性質を全て同化吸収してしまう性質になっていた。

・・・そうだ。

このせいで、ナツは悪魔と同然の存在になってしまったんだ。

そしてもう一つ、起こったことがある。

その悪魔共がナツに喰われてもなお自我を持ち続けていたんだ。

ナツは自分の中のそいつらを完全に殺し、その際に悪魔に対する抗体として得たのが滅悪魔法。

・・・ナツはそうやって滅悪魔法を習得した。

 

当然、暴食(グラ)はマスターにより禁止令が出された。

開発中だったらしき他の6つもだ。

その後、ナツは入院することになった。

2,3週間ほどで退院はできたが、異常は残り続けて仕事はできない。

喰らった悪魔の意識と戦い続けていたからだ。

そいつらを喰らい潰すのに約3ヶ月。

そのために体力、精神共に磨耗してしまってな。

復帰するまでに4、5ヶ月ほどもかかってしまったんだ。

 

ナツが悪魔を最も警戒しているのも、それが理由だ。

俺達も、それを知っているから悪魔という単語につい過剰反応してしまう。

今回俺が同行したのも同じ理由だ。

 

・・・それと、ナツはその事件以来呪法を使えるようになったんだ。

呪法というのは、悪魔が魔法の代わりに使用する、魔法に似て非なる何かだ。

 

 

 

 

 

いや、待てよ・・・? もしかすると――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝になり、俺は目を覚ました。

起きた時には既にカードの外だ。

 

「調子はどうだ?」

「・・・少し体が重いのと、魔力の流れが悪い」

 

さっきからルーシィが無言で俯いている。

昨日、ミストガンが“事件”の事を話したと聞いた。

そしてその間席を外して散歩をしていたハッピーが村人から話を聞いた。

 

俺が影響を受けた時のような頭痛の事は誰も知らなかった。

 

 

更にハッピーは上空から遺跡らしきものを発見したという。

昨日一番の大手柄はハッピーのものだろう。

 

 

そして・・・

 

「ナツ。試したい事がある」

「何だ?」

「“呪力”を開放してみてくれ」

「・・・何故だ?」

「昨日思いついたんだ。呪力でナツへの影響を中和できないか? とな」

 

ミストガンの注文通りに行動する。

自分の内側に意識を集中させ、奥底に眠る“それ”を取り出す。

 

「――――呪力開放」

 

禍々しいエネルギー、“呪力”が俺の体から溢れ出す。

同時に、全身に滅悪魔法使用時と同じ、黒い紋様が浮かび上がる。

そして、なぜか体が軽くなった。

ミストガンの推測は正しかったようだ。

事が解決するまでは、魔法ではなく呪法を使う事になるだろう。

 

そして俺達は遺跡へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遺跡まであと3分の1の距離まで来たとき、

 

「ヂュッヂュヂューのヂュー」

 

変な鳴き声の巨大なネズミが現れた。

 

「で、でかー!?」

「どうせ図体だけだろ」

「まぁ、サクッと狩ってとっとと先へ行こうzギエアアァァァァ!?」

「おいナツ!? 急にどうしt臭ええぇぇぇぇ!?」

「ナツが死んだ! もがっ」

「この人でなし! うべっ」

「言ってる場合か! ぬぐっ」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」

「ハッピーがなんか凄い声出してる!?」

 

大☆惨☆事

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死ぬ・・・死ぬぅ・・・」

「ナツ、大丈夫か?」

「無理・・・ゴフッ」

「オイラも無理・・・ゴフッ」

 

巨大ネズミの口臭があまりにも臭かったせいで俺とハッピーがダウン中。

ハッピーはギルド内で俺の次に嗅覚が鋭い。

更に第三位は意外にもラクサスなわけだが。

ルーシィがホロロギウムに避難したが、そのホロロギウムも気絶した。

・・・う゛ぇ

え? ネズミはどうしたのかって?

グレイが氷の床でダウンさせて俺とハッピー以外の皆でフルボッコ。

何気にホロロギウムも参加してた。

っていうか半ギレしたミストガンなんて初めて見たぜ・・・。

 

そんなわけで俺とハッピーは担がれての移動中。

俺はエルフマンが、ハッピーはルーシィが。

ついでにルーシィがハッピーをモフっているのはご愛嬌。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とか何とかやってて見つけた遺跡に入ったら入口で床が崩れるという出オチだよ!

何でや! 普通に最近の足跡とかあったやろ!

 

足跡があるということは人の出入りがあるというわけだが。

 

それはさておき、自由落下。

床への激突はミストガンによって阻止された。

重力制御である。

安全に着地した俺は、ある臭いを捉えた。

 

「・・・()()()()がする」

「「「「「「!」」」」」」

 

悪魔の臭いだ。

 

「どこからだ?」

「っと・・・こっちだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

辿り着いた場所にあったのは、凍りついた巨体。

悪魔の臭いは、こいつから漂ってきている。

 

「――――嘘だろ・・・・・・!?」

 

不意にそんな言葉が聞こえた。

声の主は、グレイ。

 

「グレイ・・・? どうかしたのか?」

 

そうミストガンが声もかけるも、グレイには聞こえていないようだ。

 

「ありえねぇ・・・! 何でこいつが・・・ここにあるんだ・・・!?」

 

その口調は、既知からの驚愕。

言葉が指し示すのは、紛れもなくこの悪魔。

 

「おい! しっかりしろ、グレイ! この悪魔を知っているのか!?」

 

エルフマンの言葉にグレイがようやく現実に戻ってくる。

そして、微かに震える声で、言った。

 

「こいつは、こいつの名前は、『デリオラ』。10年前にイスバンを荒らしまわった、通称『厄災の悪魔』だ。俺の両親もこいつに殺された。そして、俺の師匠、ウルが『絶対氷結(アイスドシェル)』で封じたんだ」

 

絶対氷結(アイスドシェル)・・・聞いた事のない魔法だ。

そう考えていた俺達だが、ミストガンだけは反応が違った。

 

絶対氷結(アイスドシェル)だと!? なら、この氷は・・・!」

 

その反応を疑問に思う俺達。

構わずグレイが続ける。

 

「そうだ。デリオラを封じているこの氷は・・・()()()()()()()()()なんだ!」




『ナツとミストガンの昇格時期』

ミストガンのS級認定時期を改変してミラ,ナツ,ミストガンが同時に合格した設定。
ナツとミストガンがよく一緒に行くのは同期だからという理由もある。
ミストガンはミラと一緒に仕事をしたことは無い。
その理由はミストガンのみぞ知る。
(作者が考えてないだけ)





暴食(グラ)

開発者:ナツ
元ネタが七つの大罪である魔法の一つ。
開発協力者はマスターのマカロフ。
滅竜魔道士の特性(自属性の経口摂取能力)をあらゆる属性に対応させる為の魔法。
食べた魔法(または呪法)を自分のエネルギーに変換できる。
但し、そのエネルギーは魔力としての活用はできない。
この魔法の発動中は皮膚の一部(複数個所)が赤く変色する。
(赤である理由は『暴食』のイメージカラー)
発動のためには詠唱が必要。

暴走した本当の理由はナツがENDであったこと。
元ネタが七つの大罪だったが故に悪魔とは相性が良すぎた。
しかし、誰もそれに気付かず、魔法そのものが危険なものだと考えられた。
人間が発動すれば暴走はしない。
『暴食』に限って言えばナツ以外のスレイヤー系魔導士ならより安定して扱える。

ナツの体から生えてきた昆虫の羽根はハエのそれ。
もちろん七つの大罪において暴食を象徴する生き物。
羽根の大きさは様々。
大きい物では20センチほど、小さい物では小バエサイズ。

作中では『暴食』で悪魔を喰ったせいで悪魔同然の存在になったと思われているが、実際は元から悪魔だったためであり、同化吸収の性質に変化した事も嘘。
しかし、そのことに気付くものは誰も居ない。

結論を言えば魔法は正常に作動。
問題があったのは使用者のほうだったという話。
もちろん、そうだとわかる人はナツ含めて皆無だが。

同時に開発していた魔法は以下の6つ。
 傲慢(スペルビア), 憤怒(イラ), 嫉妬(インヴィディア), 怠惰(アケディア), 強欲(アヴァリティア), 色欲(ルクスリア)
実は上記の6つの魔法は全て完成している。
そのことを知っているのは開発者であるナツ自身のみ。
各魔法の効果については省略。





『滅悪魔法の習得』

ナツが『暴食(グラ)』で喰った悪魔が意思を保ち、内部からナツを殺そうとした。
それに対抗して2体の悪魔を完全に殺しきるため、ナツが独力で悪魔殺しの炎を創造。
ナツの復帰後、その炎と滅竜魔法をベースに魔法として完成させたのが滅悪魔法。
なお、ナツ自身には滅悪魔法によるダメージを含む悪影響は皆無。





『時系列』

ナツがS級に昇格した半年後に『暴食(グラ)』の暴走事件。
事件の後遺症による魔法使用禁止の療養期間が約半年。
ナツが完治し、復帰を許される数日前にリサーナの事件。
そこから約1ヵ月後に『貴族の娘』との初邂逅。





『呪力』

ナツは本来悪魔なので原作でも呪法使えるんじゃないかと。
ガルナ島編ではナツは呪法一筋で通します。
少なくとも島を覆う幕を壊すまでは魔法使用禁止。





『ヂュッヂュヂューのヂュー』

どっかでこんなのを見たか聞いたかしたはずなんだけど全然思い出せない。
たしかネズミの鳴き声として出ていたはず。多分。





『ネズミフルボッコ』

フルボッコに参加したホロロギウムと半ギレしたミストガンは想像で補完してくだしあ。
半ギレするミストガンとか今までなかったと思うんだ。





『デリオラ』

まぁ概ね原作どおりですな。
なお、ここのナツは滅悪魔法が使える。
今回は使わないけどね!


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リオン一味

大変長らくお待たせしました。
ようやく第10話です。
投稿がめっさ空いた割には短いですが(汗)
しょーがないじゃん。切りがいいところそこだったんだもん。

今回、オリキャラが2人登場しております。
その片方はケツアゴさん考案のキャラです。
オリキャラの応募、ありがとうございました。

それでは改めて、火竜の遷悠、第10話です。どうぞ。


「ど、どういうことだよ・・・この氷が、お前の師匠そのものって・・・」

 

その俺の言葉に答えたのはグレイではなくミストガン。

 

絶対氷結(アイスドシェル)という魔法は、術者の肉体を氷に変える封印魔法だ」

 

グレイとミストガンを除く全員が絶句した。

 

 

 

 

 

 

 

しかし、更に話を聞こうとしたところで俺の嗅覚が人の匂いを捉えた。

嗅覚ほどではないが常人よりはるかに鋭い聴覚も足音を捉える。

その上得体の知れない何かの臭い。

 

「拙い、誰か来る・・・!」

「!? 隠れるぞ!」

 

ミストガンの言葉通りに全員で岩陰へ。

更にミストガンが認識阻害の結界を張る。

 

 

 

 

 

そして息を潜めて数秒後。

現れ出たのは、尾を引いて飛び回るいくつもの紫の何か。

紫の炎のようなもやに覆われたそれは、どう見ても人間の上半身の骨。

大きさは子供から大人まで様々だ。

初めて見るが、恐らくこれは悪霊の類だろう。

 

更に、その後から一人の幼い少女が出てくる。

無表情のまま、その少女は悪霊と話をするように声を出している。

そして時折、まるで悪霊の声が聞こえるかのように頷いている。

 

「そう・・・見つからなかったの」

 

少女は小さい子を慰めるように悪霊の頭蓋骨をなでる。

 

その少女の更に後から二人の男が出てきた。

 

「おぉーん」

「侵入者はいたか?」

 

片方の男は獣人だ。見た目とにおいから察するに犬人だと思われる。

もう一人は眉が濃い。

眉が濃いほうの男が少女に問いかけた。

それに対し、少女は首を横に振る。

 

「駄目。全然見つからない」

 

その答えに二人の男は揃って溜息をつく。

 

「シェリーのネズミがやられ、遺跡の入り口に大穴」

「どう考えてもネズミをやった侵入者が遺跡を壊したんだろうな」

「でも、私のお友達が一通り探してくれたけど見つからない」

 

眉男、獣人、少女が順番に声に出し、男二人がまた溜息。

少女の言うお友達、とは悪霊たちのことだろうか?

 

「全く、封印もあと一晩で解けるだろうってのに邪魔が入っては堪ったもんじゃない」

「おぉーん、全くだ」

 

その後眉男が少し考え込み、言った。

 

「とにかく、今日は早めに上に行こう。まだ月が出るには早すぎるが、もし侵入者が儀式の邪魔をするなら上来るだろうし、迎撃の準備をしておくのは悪手じゃないはずだ」

「だな。おい、行くぞ。その悪霊共はしまっておけ」

「・・・悪霊じゃない。私のお友達」

 

そんな会話をしながら3人と悪霊の群れはこの場を去っていった。

さて・・・

 

「目的は封印の解除、か。それと解除には月が重要。今のところはこんなもんか」

「ふざけやがって・・・!」

 

グレイが声を荒げる。

まぁ、それも仕方ないだろう。

封印を解くと言う事は氷を溶かすこと。

氷を溶かすことはグレイの師匠をこの世から完全に消すと言う事なのだから。

そして、恐らく今晩にはそれが達せられてしまう。

 

「追うよ。迎撃の準備が終わる前に仕掛けなきゃ」

 

カナの言葉に全員で頷き、認識阻害を掛けたまま俺達は移動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪ィ、侵入者は見つけらんなかった」

 

三人を追跡し、遺跡の上に到達。

そこで彼らを待っていた人物達に、獣人がそう言った。

 

「そのようだな」

 

溜息をつきながら仮面を付けた男が言う。

その男が声を出した瞬間、グレイが僅かだが反応を見せた。

 

「そうですか。悲しいことですわ。・・・そして愛」

 

ゴスロリの女が続ける。

語尾が痛々しいのはスルーしておく。

 

「くだらん。そのような下民、我等には関係のないことよ」

 

金髪の男が興味なさそうに言った。

なんだが某作品の英雄王を思い浮かべる風貌だ。

 

「ふぉっふぉっふぉっふぉっ」

 

愉快そうに笑う老人。

しかし、こいつだけが異質すぎる。

見た目は年老いた男だがにおいは若い女。

腹に一物抱えている雰囲気がある上に()()()()()()()()()

正確には、位置までは把握していないが俺達が認識疎外を使って隠れていることに気付いている。

しかし、その上で仲間であろう者達に伝えていない。

 

「今のうちに迎撃態勢を整えておいたほうがいいだろうね」

 

眉男の言葉に仮面は少し考えてから言った。

 

「・・・いや、先手を打ったほうがいいだろう。そうだな・・・村を消そう。敵は今村へ戻っている場合は一網打尽にできるし、仮にそうでなくともここから引き離せるはずだ」

 

その発言、まさしく外道。

人の道を踏み外した者の言葉。

 

「アリス。村の奴らをを消して来い」

「・・・やだ」

「・・・『お友達』が増えるぞ」

「やっぱり行く」

 

少女改めアリスが、仮面の言葉に従い、巨大な悪霊を呼び出してその背骨に乗る。

止めねば、と思った矢先、グレイが飛び出した。

 

「――――アイスメイク《双機関銃(ツインガトリングガン)》!」

 

グレイの手に創られた2丁の散弾機関銃が氷の弾丸を豪雨のごとく吐き出す。

しかし、それらは金髪の男によって弾かれた。

 

 

 

 

 

――――グレイが吠える。

 

「暫く見ねぇ内にそこまでクズになっていたとはな・・・なぁ、リオン!」

 

グレイの言葉が向けられたのは仮面の男。

 

「ふ、お前がここに来るとはな、グレイ」

 

仮面改めリオンがグレイの名を呼ぶ。

 

「グレイ、知り合いか?」

「あぁ。共にウルの魔法を教わった、俺の兄弟子だ」

「・・・そうか」

 

一言つぶやいて、大きく息を吸う。

 

「俺達は妖精の尻尾(フェアリーテイル)だ。この島で起きている現象を止めに来た。その原因であろう儀式とやらを即刻中断してもらおうか。断るのであれば・・・後はわかるだろう」

「下らんな。・・・そうか、お前はギルドに入ったのか、グレイ」

 

リオンが仮面を外しながら言う。

 

「そうだ。こいつらはギルドの仲間だ」

「友情ごっこか、くだらないな。・・・アリス。ぼさっとするな。村を消して来い」

「うん。わかった」

「リオン! てめぇ!」

 

まだ村を消すことをやめようとしないリオンに、グレイが怒鳴る。

 

「どうした、妖精の尻尾(フェアリーテイル)。こんなところで油を売っていると村の奴らが死ぬぞ? 正規ギルドの魔導士がそれを見過ごすのか? まぁ、どちらにせよ儀式の邪魔はさせないがな」

「・・・っ」

 

余裕たっぷりに挑発するリオンの言葉にグレイが歯噛みする。

 

「当然それはさせねぇよ。ミストガン!」

「あぁ、任せろ!《転移方陣》!」

 

俺の言葉に頷き、ミストガンが村へ向かった。

 

「お前らは行かなくていいのか? 一人でアリスの悪霊共を防げるとでも?」

「むしろミストガンだけで十分だ。俺達がヘルプに入ろうとすれば確実にあいつの邪魔になるからな」

 

それに・・・

 

「数は同数。一対一に持ち込むぞ! 俺はあそこでにやけているジジィをやる!」

「あぁ! 俺はリオンとやる! できる限りばらけて戦うぞ!」

 

俺はジジィに化けた女と、グレイはリオンと。

 

「させるかよ!」

 

獣人が魔法で両手に爪を生やしながら突貫してくる。

それを・・・

 

「それはオイラのセリフだ!」

「うがっ!?」

 

ハッピーが相手の腹に体当たりすることで止める。

 

「吹き飛べ下民共!」

「漢ぉ!」

 

金髪が放つ衝撃波をエルフマンが前に出てビーストアームで受け止める。

吹き飛ばされそうになったが、そこは足を変化させて地面にめり込ませることで耐えた。

 

「行きなさい、ゴーレム!」

「させないよ!」

 

ゴスロリががれきを組み合わせて作り上げたゴーレムを、カナが転ばせて壊す。

 

「くっ・・・ならば!」

「させない! タウロス!」

「MOOOOOOOOOO!」

 

眉男も金髪のように衝撃波を放つが、ルーシィが呼んだタウロスが斧で防ぐ。

 

「できるだけ一対一に持ち込め! 夜になっても儀式をさせる暇を与えるな!」

 

俺の言葉にそれぞれが答え、戦闘が始まる。

 

「行くぞリオン! お前がふざけた真似をするつもりなら、ぶん殴ってでも止めて見せる!」

「黙れ! ギルドなどというぬるま湯に浸かっているお前なぞに負けん! 俺はウルを超える!」

 

グレイとリオンが言葉を交え・・・二人とも脱いだ。

 

『この場面で脱ぐな!』

 

・・・全員のツッコミが一致した瞬間である。




『悪霊使いの幼女』

オリキャラです。
名前はアリス。ファミリーネームは未定。・・・いや、ちゃんと付けるよ?
容姿は銀髪ロリ。
イメージとしてはFateのイリヤスフィールが無表情で無口になった感じ。
使う魔法は悪霊を量産して使役するもの。
悪霊に殺された人は悪霊の仲間になるので、増える増える。
ちなみに、大型の悪霊は大体が冥界とかから直接呼び出した大悪霊。
なお、アリス自身には人を殺しているという認識がなく、お友達が増えていると認識している。
つまり悪霊はお友達。
悪霊の方もアリスを裏切ることは絶対にない。
7年後はどうするかって?
とりあえずジェラールのギルドに入れればいいんじゃないかな?(テキトー)
将来この子には型月的に英霊とか召喚させようかななんて考えてる。
FT世界の英霊なんて知らないけどな!(オイ)
この子を作った理由は村への襲撃のため。
ミストガンに物量で挑むキャラクターが欲しかったので。





『トビー』

この作品では犬耳は飾りじゃなくて生まれついての本物。
よーするに本物の獣人種ってことで。
もちろん強化してますよ。自爆はさせない。





『某慢心王っぽいオールバック金髪』

アンケートで募集したオリキャラです。
ケツアゴさん、本当にありがとうございます。

名前はリゼリク・アルゴート。
容姿は金髪オールバックの英雄王っぽい顔立ち。
一人称は『余』、敵を呼ぶときは『下民』
亡国の王子なので傲慢かつ上から目線。
引力と斥力の魔法の使い手です。

改めて、ケツアゴさんに感謝を。
ありがとうございました。





『一対一のバトル』

ナツVSザルティ(ウルティア)
グレイVSリオン
ハッピーVSトビー
エルフマンVSリゼリク
カナVSシェリー
ルーシィVSユウカ
ミストガンVSアリス
正直エルフマン、カナ、ルーシィの相手の組み合わせはかなり迷いました。
次回から戦闘が始まりますよっと。


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それぞれの戦い

丸々1年も放置してるバカはここだァ!





長らくお待たせして本当に申し訳ございません。


「――――呪力解放」

 

普段は体の奥底に封じている悪魔の力を引き出し、体に文様が浮かぶ。

 

「呪法《ブレイズランス》!」

 

炎の槍を老人に向かって投擲。

 

「おっと、危ないですねぇ」

「まだだ! 《フレアジェット》!」

 

炎を体に纏い突貫。

しかしこれも避けられた。

だが・・・これでいい。

まずは一番危険そうなこいつをここから引き離す。

幸い、老人もこの場から離れるように移動している。

罠かもしれないが、何れにせよ俺の役目は変わらない。

呪法で生み出した炎を脚に纏い、加速する。

しかし、突如足元が崩れた。

俺の呪法で崩壊したのではなく、突然風化したような感じだ。

 

「舐めるなっ!」

「うっ・・・なかなかやりますね」

「今の魔法・・・物体の時間の先送りか。俺達を遺跡の入り口から突き落としたのもその魔法だな」

「いえ、違いますが?」

「え?」

「え?」

 

ほんの僅かな間だが、気まずい沈黙が流れる。

 

「そういえば、貴方のお仲間には体格の良い男の方がいましたよね。その方を含めた貴方方の体重に床が耐えられなかっただけでは?」

「全然罠とかじゃなかったのかよ」

「ふぉっふぉ、当の大穴は私が直しておきましたよ」

「そうかい。そいつはご苦労・・・様ッ!」

「おっと。不意打ちとはやってくれますねぇ」

「ほざけ! てめぇもいつまで正体隠してやがる。俺の鼻は誤魔化せねぇぞ」

「おや、ばれてる様で。そうですねぇ、この島を去るまで、と答えておきましょう、かっ」

 

飛んできた球体を避ける。

横目でその正体を確認すると・・・

 

「水晶玉、か?」

「ご名答。では、そろそろ本腰を入れていきましょうか」

「そうかい。なんにせよ、ぶっ飛ばさせてもらうぜ!」

 

炎の槍と水晶玉がぶつかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「アイスメイク――――」」

 

グレイとリオンがそれぞれの造形魔法を発動させる。

 

「《槍騎兵(ランス)》!」

「《大鷲(イーグル)》!」

 

氷の槍と鷲がぶつかり、爆ぜる。

 

「おい、リオン。なんで片手なんだよ。ウルの教えはどうした?」

「そんなもの、当の昔に乗り越えたに決まっているだろう」

 

再びぶつかり合う氷。

 

「両手を使っているお前は所詮その程度だ。片手での造形魔法はこんなことだってできる。アイスメイク《白虎(スノータイガー)》! 《白獅子(スノーレオン)》!」

「っ!? 二つ同時にだと!?」

 

それぞれの手で別々の造形魔法を発動させるリオン。

 

「これが実力の差だ。沈め、グレイ」

 

リオンの合図で襲い掛かる氷の虎と獅子。

リオンは勝利を確信していた。

しかし・・・

 

「アイスメイク《騎士鎧(ナイトアーマー)》! アイスメイク《楯斧剣(チャージアックス)》!」

「っ!? 連続の造形でその速度だと!?」

 

グレイも負けじと高速の造形で全身鎧と武器を造り、氷の獣達の攻撃を止めた。

当然ながら、武器も造形した以上それだけでは終わらない。

 

「《エネルギーブレイド》!」

 

楯と剣が合体して斧と化しその先端からグレイの魔力を凝縮放出。

その魔力がそのまま刃となり、氷の獣2頭を切り裂いた。

 

「ふざけるな・・・!」

 

声に怒りを滲ませるリオン。

対してグレイは分離した剣を無言で構える。

 

「未だ両手の造形から脱せていないお前のほうが上などと・・・あってたまるか! アイスメイク《三凍狼(ブリザードケルベロス)》!」

 

氷の三頭犬がグレイに飛び掛かり、吹き飛ばした。

 

「ぐ・・・!? まだだ・・・! アイスメイク《戦神槍(グングニル)》!」

 

武器と鎧を破壊され、それでも新たな武器を造り、三頭犬を破壊する。

 

「ならば・・・これで沈めぇっ! アイスメイク《氷河双頭竜(ブリザードツインドラゴン)》!」

 

片手で発動した二つの造形魔法を融合させ、さらに強大な造形魔法にするリオン。

 

「こいつの鱗はドラゴンと同じ強度を誇り、機動力も高い。動かぬ『静』の造形ではこいつには勝てない。無論、さっきの鎧や武器も無力だ。・・・これで終わりだ、グレイ!」

「――――それはどうかな」

「なんだと・・・!?」

 

グレイが両手を構える。

一見、普通の造形魔法の構え。

しかし、構えは同じでもそこから先はただの《動かぬ形》ではない。

 

「確かに俺の造形は動物のようには動かない。だけど形を固定したまま動かすことはできる。この魔法はそれを突き詰めた、俺だけのオリジナルだ。アイスメイク――――」

 

その造形の大きさは、リオンの竜とほぼ同じ・・・

 

「《機構氷竜(フリーズ・ドラゴマキナ)》!」

 

「GIAAAAAAAAAAAAAA!」

 

氷でできた機械の竜がここに形を成した。

 

「っ!? 馬鹿な、『静』のまま『動』を造り上げただと・・・!?」

「どうしたリオン。勝負はここからだろう?」

「おのれ・・・俺はウルを超えるんだぞ・・・! だというのに弟弟子なんぞに負けるなんて、あっていいわけがないんだ!」

「随分と追い詰められた顔だな。そんなんじゃウルを超えるなんて一生かかってもできねぇぞ」

「っ・・・黙れ! いい加減に沈めグレイ!」

「とっとと止めてやるよ、リオン!」

 

それぞれが造り上げた氷の竜がぶつかり合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えい! やぁ!」

「くっそー、ちょこまかと!」

 

ハッピーが高速で飛び回り、獣人改めトビーの攻撃を避けながら体当たりや蹴りを加える。

トビーの魔法は両手に生やした爪だが、高速で動くハッピーに当てることができない。

体重が軽いハッピーは一撃の威力はかなり低い。

しかし、攻撃を何度も当てれば当然ダメージは蓄積されていく。

 

「だったらこいつでどうだ! ぐっ」

「っ!? 体が・・・痺れ・・・」

 

トビーがしたのは簡単なこと。

ハッピーの攻撃に合わせて自分の体表に気化した麻痺毒の膜を張っただけ。

それにより、自分も攻撃を食らうが確実に麻痺毒を当てることができる。

しかし、爪の毒に比べ効力が弱く、すぐにハッピーは動けるようになり、距離をとる。

とはいえ、繰り返し食らえば毒が体内に蓄積され、効果も強くなるだろう。

普通なら、毒が蓄積されることをわざわざ明かすなど愚の骨頂。しかし、

 

「どうする? さっきみたいに体当たり攻撃を繰り返したところで麻痺の効果が蓄積してどんどん強くなるだけだぜ?」

「・・・っ。それじゃあ、このままだと手が出せない・・・!?」

 

この状況においては十分に牽制できる手段となる。

このことは事実ではあるがハッピーには真偽がわからない。

いずれにせよ、ハッタリだと決めつけるのは危険が大きいのだ。

 

「でも、オイラだって妖精の尻尾(フェアリーテイル)で、ナツの相棒なんだ! こんなところで負けてられない!」

 

ハッピーの姿が、水色の髪の少年の姿に変わる。

ただし、耳と尻尾は元の猫のままである。

 

「何!? 変身魔法!? 猫が喋るのも二本足で歩くのも飛ぶのも普通じゃないってのに変身魔法まで使えるのかよ!? ・・・いや、待てよ。そっちの姿の方が本当の姿なんじゃ!?」

「オイラは正真正銘生まれつきの猫! そしてナツの相棒のハッピーだ! 《換装》!」

 

ハッピーが換装で籠手を装備する。

 

「《メガクラゲ》! お前の正体はともかくこれでようやく対等にやれるな! 今度は勝つ!」

「オイラだって負けないぞ! 絶対に止めて見せる!」

 

爪と籠手、互いに近接特化の戦闘手段が、今、幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エルフマンが衝撃波を受け吹き飛ばされる。

正確には衝撃波ではなく斥力であるが。

一見劣勢ではあるが、今回のメンバーで、この金髪の男、リゼリク・アルゴートと最も相性が良いのがエルフマンだ。

しかし、何度近づいても斥力で弾かれ、攻撃を当てることができない。

それでも、気合と根性だけで食い下がる。

 

「ほう、タフネスだけは桁違いの様だな、下民」

「下民ではない! 漢だ!」

 

エルフマンが再び突撃する。

リゼリクはそれを呆れたように見下ろし、斥力で吹き飛ばす。

だが、戦いというものは同じことが延々と繰り返すようなものではない。

 

接取(テイクオーバー)獣王の脚(ビーストレッグ)――《シムルグ》!」

 

脚を巨大な鳥のものに変化させ、地面に深く埋める。

そうして斥力に耐え、再び足を進める。

今はルーシィと戦っているユウカの魔法《波動》と違い、リゼリクの斥力は一瞬しか効果がない。

しかし、連続で放つことはできる。

 

「いい加減に吹き飛ばぬか!」

「断る! 漢として! 獣王の腕(ビーストアーム)《ノフ=ケー》!」

 

それでも、エルフマンは脚だけではなく腕も変化させて地面に突き刺し、進んでいく。

 

「ならばこれでも食らえ! 《二重斥力(デュアルヴァイス)》!」

 

両手を重ね、これまでの数倍以上の斥力を放つリゼリク。

これにはエルフマンも腕を突き刺した地面ごと剥がされて吹き飛ばされる。

だが、これでは終わらない。終わるはずもない。

 

接取(テイクオーバー)獣王の腕(ビーストアーム)――《ゴゴモア》!」

 

猿、獅子、蜘蛛の魔獣の力を組み合わせて作り上げた複合型の接取(テイクオーバー)

左腕に宿したその力で腕から糸を噴射し、リゼリクの腕に巻き付ける。

 

「なんだこの糸は!? 全く切れないだと!?」

 

リゼリクはナイフを取り出して糸に突き立てるが、全く歯が立たない。

更にこの糸は、伸縮自在である。

エルフマンが前方に跳躍すると同時に、糸が急速に縮む。

 

接取(テイクオーバー)獣王の腕(ビーストアーム)《鉄牛》!」

 

機械獣と化した右手で、殴った。

 

「っがぁ!?」

 

同時に、左腕の摂取(テイクオーバー)が解け、糸が消える。

故に、今度はリゼリクが吹き飛ばされた。

 

「ぐ・・・おのれ下民・・・否、下郎が! 《引力(シュヴァルツ)》!」

「ぬぉっ!?」

 

今度は逆に引き寄せられていくエルフマン。

これまで使われていた斥力とは違い、引力の効果は一瞬ではない。

 

「《斥力拳(ナックル・ド・ヴァイス)》!」

「ぐぬぉっ!?」

 

引き寄せられたところを斥力を纏った拳で殴り飛ばす。

再び吹き飛ばされ、地面に叩き付けられた。

 

「おのれ下郎・・・! 王子たる余の顔に傷を付けたな! 不敬極まりない貴様は死刑に処す!」

「お前が王子だろうと関係ない! 俺は漢として! お前を倒す!」

 

この二人の戦いは、ここからが本番となる・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行きなさい、《木人形(ウッドドール)》!」

 

ゴスロリの女、シェリーが近場の木を人形の如く操り、カナに攻撃を仕掛ける。

 

「《反転(リバース)》」

 

しかし、木の人形の攻撃はカナの魔法により自身へと返る。

直後にカナはよろめいた人形に1枚のカードを投げる。

「喰らいな! 《降雷(ライトニングフォール)》!」

 

木の人形に雷が落ち、焼き焦がす。

火が付き、縦に避けて木は沈黙した。

 

「あんたの魔法はおそらく非物質は操れない。ならこっちは物質を介さない攻撃をすればいい」

「この短時間でそこを理解できるとは、なかなかやりますわね。ですが、まだこの木人形(ウッドドール)は終わってはいませんよ?」

「何!?」

 

二つに裂けた木が燃えながら元の形に戻っていく。

シェリーの手により人形となった大木は炎を纏いながら復活した。

 

「さしずめ、《燃える木人(ウッドマン・フレイム)》といったところでしょうか。さて、貴女の魔法、そのカードは一度使ったものは暫く使えないのでしょう? 使い捨てではないようですが」

「あんたもやるじゃないか。同じ言葉を返すけど、この短時間でそこを理解するなんて」

「ふふ、それが愛ですわ」

「そんな愛があってたまるかい!」

 

会話を交わしながらも戦闘は続く。

殴りかかる燃える木の腕を避けてカナは次のカードを取り出す。

 

「《爆砕(エクスプロード)》」

 

今度は完全に砕き、木の人形はもう動かない。

 

「やりますわね。それなら、これはどうでしょう?」

 

今度は一度に10本の木を人形化させて操る。

一度に複数を操れるシェリーの魔法に、カナは心の中で舌打ちをした。

 

「同時に10体も操れるのかい!? 厄介だねこれは」

「私が同時に操れるのは両手の指の数と同じ10体まで。ですが、1体倒されてもすぐに追加で補充できますわ。諦めれば楽に愛して(死なせて)差し上げますわよ?」

妖精の尻尾(あたしたち)がそれで屈するとでも? 随分と舐められたもんだね」

「別に舐めてはいませんわ。貴女に勝ち目はない。その事実を言ったまでですとも」

「それを舐めてるって言うんだよ!」

 

10体の木人が襲い掛かる。

シェリーは勝利を確信し、笑みを浮かべる。

しかし、それは突如地面が爆ぜて木人の半数が吹き飛んだことによって消えた。

 

「な、なにが起こったんですの!?」

(トラップ)カード《万能地雷グレイモヤ》」

「っ! さっきまでのカードと違う・・・!?」

「このカードの力に《複製(インクリース)》を使って数を増やしたのさ。下手に動くと地雷を踏んでドカン、さ。もちろんあたしは全ての地雷の場所が見えるよ」

「まさかこのような手を隠していたとは・・・なら、これでどうでしょうか!」

 

シェリーが全ての木の人形化を解除し、操られていた木が全て静止する。

その後、シェリーは両手を地面に向けた。

 

「おいでなさい、《岩盤巨人兵(ロックギガント)》!」

 

地面が盛り上がり、地雷が飲まれて爆ぜる。

ここに、岩の巨人が誕生した。

 

「これで地雷は撤去しましたわ。そして――――《形態変化(フォームチェンジ)》」

 

巨人の姿が変わる。

 

「《岩石竜(ロックドラゴ)》」

 

岩でできた龍の姿へと。

 

(ドラゴン)・・・!」

「流石に本来の(ドラゴン)には強度やパワーは及ばないでしょう。ですが、それでもなかなかの強度を誇りますし重量がある分パワーもかなりのものですわよ? 果たして、あなたに倒せますか?」

 

シェリーの挑発に・・・

 

「フフッ」

 

カナは不敵に笑った。

 

「・・・どうやら、自信がおありのようですわね」

「そりゃそうさ。これくらいを倒せなきゃ《妖精の尻尾(フェアリーテイル)》の名折れだからね」

「その自信がいかほどのものか、試させていただきますわ!」

 

シェリーの操る岩の竜が動き出し、カナは新たなカードを手に取る。

カード使いと人形遣いの戦いは、まだ始まったばかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お仕置きですね!」

「出てきてすぐに何を言ってるんだこの星霊は・・・」

「なんか・・・ごめんなさい」

 

開幕謎発言のバルゴに若干引いてるユウカになぜか謝るルーシィの図。

 

「気を取り直して・・・と。戦闘よ、バルゴ!」

「かしこまりました、姫!」

 

バルゴが地中に潜る。

一方のユウカはバルゴの言った言葉に興味を持ったようだ。

 

「姫、か。もしかして君はどこかの国の王女だったりするのかな? リゼリクみたいに」

「そういうわけじゃないわよ。契約時になんやかんやあってその呼び方に決まっただけ」

「そうなのか。じゃあそろそろ俺も動こうかな!」

 

手から衝撃波、《波動》を放ち攻撃するユウカ。

ルーシィは横に飛びのいて避け、攻撃の動作で隙ができたユウカにバルゴが地中から飛び掛かる。

ユウカはとっさに開いた手を地面に向け、《波動》で空中へ逃げた。

攻撃に失敗したバルゴは悔しがることもなく再び地中に潜る。

 

「地中からか、やりずらいな」

 

《波動》を操り、ユウカは離れた場所へ着地する。

しかし、着地した瞬間に再びバルゴが彼の足元の少し後ろから飛び出した。

 

「何!? 早すぎる!」

「これで・・・終わりです!」

 

バルゴがユウカに背後から組み付き、意識を断つべく首を絞める。

 

「ぐっ・・・なら、これで!」

「カハッ!?」

「バルゴ!」

 

ユウカがしたことはたった一つ。

自分の手をバルゴに押し当て、零距離で《波動》をバルゴの体内に叩き込んだのだ。

とっさにバルゴは地中へ退避し、ルーシィの元へ戻る。

 

「っ・・・申し訳ありません、姫。彼を落としきれませんでした」

「気にしないで、バルゴ。あれは仕方ないでしょ? 貴女は戻って休んでて」

「いいえ。確かにかなりのダメージを受けましたがまだ大丈夫です」

「・・・うん、わかった。行くよバルゴ!」

「かしこまりました、姫!」

 

再び地中に潜るバルゴ。

今度はルーシィも自分の唯一の武装である鞭を手に駆け出す。

 

「ケホッ、その手はもう使わせないよ!」

 

対するユウカは咳込みながらも両手を地面に押し当て、《波動》を地面に叩き込む。

再び尋常ではないダメージを受け、バルゴはたまらず地上に飛び出した。

 

「バルゴ!」

「く・・・なかなか厄介ですね。地中はもう使えない、ということですか」

「そうみたいね。バルゴ、もう戻って休んでて。相性も良くないし、貴女はダメージを受けすぎてる」

「っ、そう、させていただきます。申し訳ありません、姫」

「大丈夫よ。貴女はよくやってくれたわ。しばらく休んでて」

「ありがとうございます、姫」

 

バルゴが星霊界へ帰還する。

 

「さて、次はどんな星霊が出てくるのかな・・・?」

 

ユウカはバルゴに与えられたダメージに息を切らしながらも、不敵な笑みを浮かべた。

 

「だったらお望み通り次を見せてあげるわ! 開け!」

 

新たな星霊の召喚とともに第二ラウンドが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

転移を終えたミストガンはゆっくりと目を開く。

突然彼が現れたことにより村人達は騒めく。

 

「ミ、ミストガン殿・・・? 転移、してこられたので? 他の方はどうされましたかな?」

 

村長が戸惑いながらミストガンに尋ねた。

 

「敵が現れた。一人がここを襲撃するために向かってきている」

「な、なんと・・・!」

 

村長の驚愕の声とともに村が一気に騒がしくなる。

 

「静かに!」

 

しかしその騒ぎも、ミストガンの一喝で静まった。

ミストガンは、背中の杖を一本取り出し、地面を突く。

その一点から光の円が広がった。

大きさは、大体半径400メートルほど。

 

「村人全員にこの円の中に入るように指示を。建物の中に入るのは構いませんが、円の中にある建物に入るように。円の外に出てしまえば、守ることは難しいでしょう。急いでいただきたい。もう時間がない!」

「わ、わかりました!」

 

村長が急いで指示を飛ばす。

村人達が慌ただしく動きまわる中、ミストガンは更に数本の杖を取り出し、地面に突き立てる。

しばらく集中して陣を構築、そして、時は来た。

気配を感じたミストガンが目を開けると、遠くに禍々しい悪霊が見えた。

 

「・・・来たか! 村長! 避難の状況は?」

「はい! 全員避難完了しました!」

 

答えたのは村長ではなく村人の男性。

なんと、当の村長は縛られて転がされている。

 

「どういう・・・ことだ・・・」

「いえ、実は村長の息子さんのお墓が円の外側にありまして・・・。それに気づいた村長が発狂してしまい、どうしても墓を守ると・・・」

「そ、そうか・・・。いや、今はそれどころじゃない。ここから先はあまり見ていいものではないから円の中の家に入ることを勧める。屋外で見るのは構わないが円から出ずに、決して私の邪魔はしないように!」

「は、はい!」

 

外にいる村人たちが一部を残して建物に入る。

ミストガンはそれを確認せずに自らの集中を高めた。

悪霊の群れが迫り、光の円まであとわずかのところまで迫った時、ミストガンの目が見開かれた。

 

「《守護方陣・五行神獣結界》!」

 

ちょうど光の円をなぞる形で、結界が起動した。

迫っていた悪霊の群れの先頭にいた数体が、結界に衝突して大きくはじかれた。

この結界は浄化目的の結界ではないが、聖なる結界であるため、副効果として浄化力がある。

故に、結界に衝突した数体の悪霊は浄化され、消滅した。

 

「なんで・・・?」

 

悪霊が消えたことに愕然とするアリス。

一番大きな悪霊の首の上にまたがっている彼女は、結界越しにミストガンを見た。

 

「・・・貴方がやったの? 貴方が、私のお友達を奪ったの?」

 

ミストガンは一時目を瞑り、アリスを見る。

 

「私は、彼らを本来居るべき『家』に戻したに過ぎない」

「嘘つき・・・! 皆は私のお友達だもん・・・! ずっと私と一緒に居るんだもん・・・!」

「どちらにせよ、私はこの村の者達を守るだけだ」

 

冷静さを崩さないミストガンにアリスの機嫌は落ちる一方だ。

 

「貴方は要らない・・・! 今すぐ消えて・・・! どっかに行って・・・! 貴方以外をお友達にするの・・・! ちょっと見た目が変だけど、お友達になれば一緒なんだから・・・!」

 

再び悪霊の大群が襲い掛かる。

しかし、ミストガンの結界には歯が立たず、悪霊たちは浄化される。

力のある悪霊は弾かれて力を削られるだけに過ぎないが、弱いものは消滅する。

悪霊の更なる消滅により、アリスの怒りは大きくなった。

 

「許さない・・・! 許さない許さない許さない許さない! 消えて! 死んで! 今すぐ!」

「ふぅ・・・聞き分けのない子には説教が必要なようだな」

 

こうして、それぞれの戦いがここに始まった。

月が昇るまで、残り――――――――――




『ナツの呪法』

炎の槍を多用する戦闘スタイル。
フレアジェットのモデルはポケモンのアクアジェット。
呪法の技名はカタカナ語表記。
なお、ザルティが呪法そのものに関して触れてこないのは尺の都合。次回を待て。





『グレイ特製チャージアックス(氷)』

ナツの依頼である兵装開発補助の副産物。
グレイの担当は造形魔法による機械構造モデルの研究および作成。
ナツのアイデアという名の前世の知識によって造形のレパートリーは急増中。
狩技の中ではエネルギーブレイドが一番好き。





『ハッピーヒューマンモード』

大体14,5歳くらいを想定。
換装で呼んだ籠手はナツ特製の超頑丈な奴。
エルザの剣すら通さないほど強い。





『ゴゴモア'sアーム』

この世界にゴゴモアなんていない。
もちろん元ネタはモンハンシリーズである。
蜘蛛の糸を束ねてロープみたいにしたらかなり頑丈になるイメージがあるが真偽は知らぬ。
作者が猿、獅子、蜘蛛を選んだのはなんとなくそれっぽいから。
なお、ナイフは護身用。





『リバースカードオープン』

言わずと知れた一番人気のカードゲーム。
ただフェアリーテイルの世界に導入しようとすると選べるカードが限られる。
モンスターカードは召喚だからNG。理由は召喚魔導士が要らない子になっちゃう。
魔法、罠だって似たようなもん。
カードを手持ち全てから選んで使うのにサーチやドローは無意味。
それ以外のカードだって制限賭けなきゃ無敵になっちゃう。
カードゲームのカードを魔法化するって難しいんじゃよ。





『守護方陣・五行神獣結界』

元ネタは風水。
東は青龍(木)、南は朱雀(火)、西は白虎(金)、北は玄武(水)、中央は麒麟(土)が守護する。
説によっては中央が黄龍だったり全部龍だったりするっぽいけど解説省略。
気になる人はググるなり書物探すなりすれば大体見つかると思う。
Wikiで五行思想のページを見れば大体わかる、はず。










すまない、遅くなって本当にすまない。


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それぞれの決着

ひいこらひいこら書いております。

サブタイトルですがナツのみ決着しない。
タイトル詐欺で申し訳ないです。


「・・・しかし妙ですねぇ」

「何がだ?」

 

目の前の老人がなぜか疑問符を浮かべる。

 

「先ほどから貴方が使っている()()ですよ。なぜ自分が悪魔であるとバレるような行為をわざわざするのです? せめて偽装のために魔法を使うべきはずでしょう?」

「さて、な!」

 

返答ついでに炎の槍を投げるが避けられる。

お返しとばかりに水晶玉が飛んできたので回避。

 

「ふむ、では別の質問をしましょうか。貴方は妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入る前、どこのギルドに居ましたか?」

「わけわかんねぇこと言いやがる。どうしてあんたの中で別のギルドにいたことが確定してるんだ?」

「ふむ。自覚無し、もしくは当時幼子だった可能性を考えると無知、といったところでしょうか。いいでしょう。では話させていただきましょうか」

 

炎と水晶玉のやり取りを中断し、互いに距離をとって着地する。

 

「まずは貴方が魔法ではなく呪法を使っている理由について考えました。これは簡単。単に呪法しか使えない、魔法が使えない、ということ。そして、力のない一般人として生活するのではなく、正体がバレる危険を顧みずに呪法を使っていることについて。考えられる理由はいくつかあります。セオリーを知らない、危険性を無視するほどの度胸がある、そもそも呪法が何たるかを知らない・・・ほかにも色々あるでしょうが割愛します」

 

単に現在魔法を封じられているに等しい状況、というだけなのだが。

もちろんそんなことは言わない。

 

「いずれの場合も貴方が《冥府の門(タルタロス)》かその配下の闇ギルドから遣わされたスパイという線はないと見ていい。そもそもバレるわけにはいかないのですから、魔法が使えず呪法しか使えない者を送り込むのは自殺行為に他なりませんからね」

 

老人の話は続く。

なお、戦闘は現在中断状態だ。

 

「ならば考えられるのは一つ。貴方が《冥府の門(タルタロス)》、もしくはその配下の闇ギルドから逃げ出した、悪魔に改造された実験体である。ここまではお判りいただけましたか?」

「理解はできたが一つだけ聞こうか。何故、改造人間、と?」

 

話を聞く限り人間が呪法を使えるようになる状況は改造という形で意図的に起こせるようだが。

 

「おっと、そこの話をしていませんでしたね。そもそも呪法はゼレフの悪魔のみが使用できる、魔法とは別の原理で動くもの。人間や魔法生物が使えるようになるには、悪魔に改造されるしかありません。そして、その改造を行える唯一無二の存在は《冥府の門(タルタロス)》にいるのですよ。ゆえに、改造の対象となる人間は、《冥府の門(タルタロス)》かその配下のギルドの人間、もしくは偶々実験台にされた一般人。しかし貴方は呪法を使いこなしている。故に悪魔としての戦闘訓練を受けた元人間、いずれかの闇ギルドによりスパイ目的ではない兵士として育てられ、偶然脱走して正規ギルドに辿り着いた。私はこう考えました」

 

――――そうでしょう? ナツ・ドラグニルの影武者さん。

 

「・・・・・・は? 影武者?」

 

またいきなりすぎる単語が出てきたんだが。

 

「えぇ、私は情報通でしてね。《火竜(サラマンダー)》ナツ・ドラグニルのことももちろん知っておりますよ。炎の滅竜魔導士。貴方が呪法を使い、魔法が使えないことからも貴方が彼ではないことは明白です。元双子でなければ、誰かに変身魔法をかけられているのでしょう?」

「・・・答える義理はないな」

 

ぶっちゃけ嘘をつくのは嫌いである。

というかなんだこの状況は。

 

「あんたの推測も聞いたところでバトル再開と行こうぜ。いずれにせよ、あんたを遺跡に向かわせるわけにはいかねぇからな」

「えぇ、いいでしょう。今答える気がないのならまたいつかの機会に聞きましょうか」

 

再び炎槍と水晶玉が衝突した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おのれ! いい加減に倒れぬか! 《斥力(ヴァイス)》! 《斥力(ヴァイス)》ゥ!」

 

リゼリクの斥力魔法は確かに強力である。

強力であるが故にいつもあっという間に片が付き――――だからこそ練度が足りない。

 

「引かぬ! 媚びぬ! それが漢ぉ!」

 

エルフマンはこの斥力に耐え切る。

 

「おのれ・・・!」

 

リゼリクにはこの状況での戦い方が全く分からない。

故に、相手のスタミナ切れを狙ってただ斥力を放ち続けるのみである。

しかし、エルフマンの体力はそれすらも凌駕していた。

 

「どうした! 息が切れかけているぞ! それでも漢か!」

「ぐ・・・黙れ下郎! 余に向かってそのような口を利くな!」

 

リゼリクはもはや魔力切れ寸前。

自分が王子であるという自覚が無意識に引力魔法の使用を封じていたが、この状況では使わない選択肢は自滅に直結する。

 

「これで最後だ下郎! 余が自ら引導を渡してくれる!」

 

両手を突き出し、斥力魔法とは真逆の黒い魔法陣が輝く。

 

「其は全てを飲み込む黒き渦・・・《超引力(オーバーシュヴァルツ)》!」

 

疑似的なブラックホールがエルフマンを引きずり込もうとする。

それに対しエルフマンは――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全ての接取(テイクオーバー)を解いた。

 

「フハハハハハハ! どうやら血迷ったようだな! やはり貴様はその程度の下郎に過ぎん! このまま無様に散るがいい!」

 

エルフマンはその言葉を無視して前に跳んだ。

 

接取(テイクオーバー)――――――――」

「わざわざ飛び込んでおいて抗うつもりか? 貴様は正しく無能の下郎だな!」

 

エルフマンの拳が黒に引きずり込まれていく。

超重力の黒い渦がエルフマンの拳を飲み込もうと・・・

 

「――――――《竜の鱗腕(ドラゴンアーム)》」

 

飲み込まれずに衝突した。

 

「何!? 《超引力(オーバーシュヴァルツ)》に飲み込まれないだと!?」

「人は漢を貫けば・・・不可能すらも可能に変える!」

「ふざけるなぁ! 余の力に抗えるなどあり得ぬ! あってはならぬゥ!」

 

引力が強くなる。

それに拳で抗いながらも、エルフマンは目を閉じた。

 

「竜の炎は魔法をも破壊する。力を借りるぞ・・・ナツ!」

「おのれおのれおのれおのれええええぇぇぇぇぇぇ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

《偽・火竜の鉄拳》!

 

 

 

 

 

 

 

 

炎の拳がブラックホールを貫き、リゼリクに届いた。

亡国の王子は、声も無く地に沈んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《波動》で空中から攻撃しようとするユウカの腹に猫の姿に戻ったハッピーが一瞬だけ展開した《天翼(アークエーラ)》の速度に物を言わせた強烈な体当たりをかます。

シェリーが操る人形をルーシィが召喚したタウロスは斧のフルスイングでぶった切る。

カナが風のカードを3枚重ねで発動し、トビーを吹き飛ばした。

 

「っ・・・まるで隙が無い・・・!」

 

一対一だった状況から合流した3組。

ユウカが呟いた通り、即席のはずのトリオはとてもそうは見えない見事なコンビネーションでユウカら3人を圧倒している。

事実、ルーシィとカナの戦闘スタイルは抜群に相性が良い。

二人とも手札が多いため、様々な形で互いの戦術を合わせやすいのだ。

そこに、ナツとのコンビでで経験を積んだ最速を誇るサポート型のハッピーが加わる。

更に、この場においては3人中2人が相性が有利なのである。

その速度により、ユウカの《波動》を常に回避できるハッピー。

接触攻撃しか使うことができないトビーを遠距離から一方的にかき回せるカナ。

二人と比べるとまだ未熟なルーシィはカナと互いにサポートしあいながらシェリーのゴーレムを壊す。

シェリーは星霊も操れるがそこは《強制閉門》で回避できる。

ならば、とハッピーに標的を定めようとするシェリー。

しかし、人形化には少し時間がかかるため、高速で動くハッピーは捕まらない。

 

「クッソォ、万事休すかよ!」

「いいえ、まだですわ! ユウカ! トビー! 少し時間を稼いでくださいませ!」

「わかった。頼むぞ!」

 

シェリーは大技を使うため、地面に両手をついて集中する。

 

「させないよ!」

 

カナが即座にカードを投げるが、

 

「それはこっちのセリフだ!《波動壁》!」

 

ユウカが波動の壁を作り、カードを止める。

波動の壁は球状に広がり、ハッピーも手を出せなくなった。

 

「だったら! 開け! 処女宮の扉《バルゴ》!」

 

ユウカが壁の維持に手いっぱいと見たルーシィが地中から仕掛けるべくバルゴを呼ぶ。

 

「あの女を止めて! 無理はしちゃだめだからね!」

「承知しました、姫!」

 

即座に地中に潜り、シェリーに攻撃を仕掛けようとするバルゴ、

 

「臭いでバレバレだ!」

「キャッ!」

 

しかし、獣人の嗅覚で嗅ぎ付けたトビーの爪がバルゴを麻痺させた。

 

「バルゴッ!? 《強制閉門》!」

 

即座にバルゴを帰還させたルーシィ。

次の手を考える間に、シェリーの魔法が完成してしまう。

 

「これで終わりですわ! 《大地の巨神兵(ガイア・ギガント)》!」

 

かなり深い地中の岩石と、広範囲の岩石と樹木をより合わせた巨大なゴーレム。

シェリーたちは、巨神兵の体内に空洞を作り、そこに避難している。

巨神兵がその拳を振り上げた。

 

「カナ! ルーシィ! 乗って!」

 

拳に潰されそうな二人を《猫竜形態(ドラゴライズ)》したハッピーが救出。

 

「ヤバイね、これは」

「これってどうすればいいんだろう?」

 

カナの頬を冷や汗が伝い、ハッピーが困惑気味に唸る。

そんな中、ルーシィは思考を巡らし、

 

「ねぇ、カナ。電気系の魔法ってある?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、シェリーもまた疲弊していた。

 

「トビー、回復薬をお願いいたしますわ」

「あぁ。わかってる」

 

トビーが差し出した魔力回復薬を飲み干すシェリー。

 

「速攻で決めるしかないね」

「えぇ。そうでなければ私が持ちませんもの」

 

ユウカは巨神兵の腹に空いた覗き穴から外を見る。

 

「どうやら彼らは海の方へ逃げているみたいだ」

「追いますわよ」

 

巨神兵が竜化したハッピーを追って海へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

二人を乗せたハッピーを追い、巨神兵が海へと分け入る。

 

「来たよ!」

「うん! 開け! 宝瓶宮の扉《アクエリアス》!」

 

空中から海へ向けた鍵のから魔法陣が飛び出す。

魔法陣は海面へ到達し、ルーシィの最強の星霊を呼びだした。

 

「全く、久々に呼ばれたと思いきゃなんだいこれは?」

「アクエリアス、あの巨人を海水で浸してほしいの!」

 

アクエリアスはルーシィの顔を見て全てを悟った。

 

「かなり重要とはいえ只の下準備か。でもまぁ、私に任せなぁ!」

 

アクエリアスが海水を巻き上げ巨神兵を上空に吹き飛ばす。

当然ながら巨神兵は中まで水浸しになった。

 

「やることはやったよ。私は帰る。これから彼氏とデートだから暫く呼ぶんじゃないよ」

 

アクエリアスが勝手に帰った。

 

「ありがとう、アクエリアス!」

(トラップ)発動! 《六芒星の呪縛》! 《デモンズ・チェーン》!」

 

打ち上げられた巨神兵を、カナが2枚のカードで縛る。

 

「っ・・・流石にきついねぇ。でも、ここで力尽きるわけにはいかないよ!」

「開け! 羅針盤座の扉《ピクシス》!」

 

ここでルーシィは最後の星霊を呼び出す。

その姿は人間のような形になった鳥。そして、頭には方位磁石。

 

「カナ!」

「わかってるよ! 《電撃(サンダー)》!」

 

カナが撃ちだした電撃はピクシスの力によって導かれ、巨神兵へ届く。

六芒星の魔法陣と悪魔の鎖に縛られた彼らに、なすすべはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ・・・・・・」

 

激戦の末、膝をついたのはリオン。

 

「・・・一つ聞かせろ」

 

そんなリオンにグレイが問いかける。

 

「デリオラの封印を解く理由・・・それはデリオラを自分の手で倒すためか?」

 

リオンが再び立ち上がろうとする。

 

「そうだ・・・! 俺はウルを超えるために、ウルが倒せなかったデリオラを倒す! お前がウルを死なせたせいで、それ以外に俺の強さを証明する方法はない!」

 

グレイは目を伏せた。

 

「あぁ、確かにウルが死んだのは俺のせいだ。だからこそ、封印は絶対に解かせない。ウルの行為を無に帰させない。それが、俺が唯一ウルに返せる《贖罪》だからだ」

「・・・・・・そんなことで俺を阻むって言うのか」

 

リオンの言葉に対してグレイは答えを言わず、

 

「それに、今のお前じゃデリオラは倒せない」

「っ・・・黙れ」

「わかってんだろ、今のレベルじゃ俺もお前も」

「黙れっ・・・」

「ウルの足元にも及ばない」

「黙れええええぇぇぇぇぇぇェェェェェェッ!」

 

リオンが両手を上に突き上げ、更なる魔法を発動させる。

 

「アイスメイクッ! 《氷獄四頭竜(コキュートスクアトラゴン)》!!」

 

氷河双頭竜(ブリザードツインドラゴン)》に更に二つの首が生える。

 

「俺はウルの教えの上を行った! だからウルを超えたんだアアアァァァァァ!」

 

グレイも再び造形を発動させる。

 

「アイスメイク《竜魂神器(グラファイト・ギア)》」

 

機構氷竜(フリーズ・ドラゴマキナ)》が神々しい氷の鎧を纏う。

その鎧には腕がついており、その手の中に武器が現れた。

二つの大剣をそれぞれの手に持ち、腕を得た氷の機竜が吠える。

 

「ふっざけるなアアアァァァァァァァァ!」

「これで最後だ。お前の目を覚まさせてやる!」

 

氷の竜がぶつかり合う。

リオンの竜にひびが入った。

 

「なぜだ! ウルを超えた俺がグレイに負けるなど!」

「片手で作った造形は脆い」

「っ!」

 

グレイの言葉に息をのむリオン。

 

「そのうえ一度作ったものに後から無理やり首を継ぎ足したんだ。そんなことをすれば更に脆くなって当然だろう?」

「俺は・・・俺はッッ!」

「これで終わりだ、リオン。《氷刃・七連舞》」

 

グレイの竜が振るった二振りの剣が、リオンの竜を完全に砕いた。

グレイの最後の攻撃が、リオンが最後に放った氷の虎を打ち砕き、リオンに届いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワンサイドゲーム。

もはやアリスに打つ手はない。

それがわかっているのかいないのか、アリスは延々と悪霊を結界にぶつけ続ける。

結界に衝突した悪霊は浄化されて力を削られ、何度もぶつかることで消滅する。

消滅する悪霊を見てアリスは更に怒りを募らせる。

長時間村を守り続けるミストガンの結界には僅かなひび一つすら入らない。

ミストガンからすればこのまま現状維持でも時間が勝手に解決する。

だが、目の前の無知で無垢なまま狂気に浸る少女を放置するほど、彼も非常ではない。

 

「一つ質問しようか。彼らは今まで君の言うことを聞かなかったことがあるか?」

「うるさい! 私のお友達の悪口を言うな!」

 

どう聞いてもそう聞こえないはずの質問を悪口扱いされ、内心頭を抱えるミストガン。

そもそも会話が成立しない可能性があるのはいろんな意味で辛い。

 

「ならば質問を変えよう。彼らは自分の意見を言ったことがあるか?」

「私のお友達を! 汚いなんて言うな!」

「・・・」

 

いや、何をどう解釈したらそうなるのか。

あまりにも頓珍漢な回答にもはや溜息しか出ない。

ちなみに、興味本位で屋外にいる村人から見てもわかるほどにミストガンは落ち込んでいる。

なお、未だ結界は無傷。

 

「・・・仕方ない、実力行使だ。《虚方陣・恐鏡夢(おそれうつし)》」

 

狂った少女を夢の世界へ閉じ込める。

ところで、人間には眠ったまま乗馬などという離れ業は不可能である。

当然ながら、アリスも悪霊に乗ったままでいられず、滑り落ちて落下する。

悪霊は動かない。

当然だ。この悪霊に自我はなく、アリスの命令通りにしか動けないのだから。

 

「《二重魔法陣・幽波紋》」

 

魔法陣が二重に展開し、アリスの体は無傷で着地する。

 

「さて、次はこれの完全浄化だな」

 

ミストガンは未だ大群と呼ぶべき量の悪霊達を見上げた。

新たな杖を構え、地面に突き立てる。

魔力が吹き上がり、風の如く周囲へと流れる。

 

「その魂を解き放つ。《六重大法陣・天ノ道》」

 

巨大な光の柱が天へと昇り、悪霊達が吸い込まれ、浄化されていく。

悪霊が浄化される度、その光は力を増していく。

そして光の柱は、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「・・・何だ? 見えない壁があるのか?」

 

そして、その壁らしき見えない何かにひびが入り――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()

 

俺と老人は反射的に上を見上げる。

 

「上空に、何かが・・・? 貴方たちの仕業、ではないでしょうね。我々の中に上空の何かを割り砕いた光の柱の魔法を使えるものはおりませんし」

「・・・・・・なるほどな。そういうことだったのか」

「?」

 

疑問符を浮かべる老人。

それに対して、俺は答えを理解した。

今まで悪影響を中和するために放出し続けなければならなかった呪力を止める。

代わりに引きだすのは、俺自身の魔力。

 

「あんたの推理、その答えを教えてやるよ」

「・・・ほぉ?」

 

こいつが答えだ!

 

「《火竜の咆哮》!」

「なっ!?」

 

避けられたが、奴を驚愕させるには十分だったようだ。

 

「まず一つ。俺はナツ・ドラグニル本人だ。影武者? そんな奴居ねぇよ」

「ならば、なぜっ?」

 

こいつも混乱しているのだろう、質問がはっきりしていない。

 

「魔法が使えなかったのはこの島に入ってからついさっきまでのこと。原因はわからねぇが呪力を放出し続けなければまともに活動できない妙な環境だったからな。ちなみにその悪影響があるのは俺とこの島の住人だけみたいだがな」

「まさか、この島の住人もゼレフの悪魔だというの!?」

 

怒涛の展開に素が出ているようだ。

声も若い女のものになってしまっている。

 

「そいつはちげぇな。悪魔だったら俺が真っ先に潰してる。さて、次の答えだが、俺が悪魔と同様の存在になったのはただの事故。自作の魔法が妙な化学変化を起こしたせいでゼレフの悪魔と合体事故のようなものを起こしちまったってのが真相だ。()()()使()()()()()()()こいつを使えるのが俺が悪魔じゃない証拠だ」

 

――――――《炎魔の激昂》!

 

「なっ!? 滅悪魔法ですって!?」

「ついでにもう一つ。俺は最初から《妖精の尻尾(フェアリーテイル)》の人間だ」

「全部・・・勘違い!?」

「情報開示ご苦労様ぁ! まぁ、俺も少しバラしちまったからお互い様だよな!」

 

もはや完全に奴の変身魔法が解けている。

自分で気付いているのかどうかは不明。

 

「そういうわけだ。全部解決するまで付き合ってもらうぜぇ!」

 

ようやく本気が出せることだしな!

 




『勘違い』

書いてて楽しかった。
本格的な勘違い物を書けと言われると無理だが。
そのせいでウルティアにポンコツ属性が追加されてしまった模様。




『エルフマンの体力』

ギルド内の体力ランキング、堂々のトップである。
S級ですらこやつのスタミナに並ぶ者はいない。





接取(テイクオーバー)・《竜の鱗腕(ドラゴンアーム)》』

これがやりたかったからデリオラ編にエルフマンを投入した。
コピー元は当然ナツ。
現時点ではエルフマン最強の魔法。
なお、試験的に文字拡大、太文字を使ってみました。




『合流』

最初はそれぞれで一対一のバトルを書くつもりでした。
・・・書けなかったんじゃ。





『ピクシス』

原作にはなかった能力を付けてみた。
《電気・磁力の誘導》
この子だって強化されてもいいと思うの。





『《六重大法陣・天ノ道》』

最初は「機巧童子ULTIMO」という作品から6つの善性を元ネタにする予定で、その6つを詠唱に組み込む予定だった。
で、調べてみたら、持戒・智慧・布施・忍辱・精進・禅定。
浄化の魔法の要素として不適切。ボツである。
次に考えたのは仏教の「六道」。
ただ、これは半分天国、半分地獄。悪霊の浄化としてはこれも微妙。ボツ。
次、キリスト教より、「主の祈り」を構成する「6つの願い」
調べたが意味不明。当然ボツ。
なんか、6以上の数字で聖なる何たら的なのが見つからず、何の意味もない名前になった。
だれかそういうの知ってたら教えてください。





『次回』

デリオラ編最終回予定。
ミストガンがかつてのロリウェンディの時みたいに幼女を手籠めにするんじゃよ。


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師は偉大

前回までは土曜までかかっちゃってたから日曜に上げてたけど今回は木曜で終わったから金曜に上げる。
個人的には土曜午前零時がベストだと思ってたり。


ミストガンの魔法で眠らされ、使役する悪霊を全て浄化されて失ったアリス。

彼女は夢の中で知る。

己がしてきたことがどれだけおぞましいことだったのかを。

そう、《虚法陣・恐鏡夢(おそれうつし)》は夢の世界で己と向き合わせる魔法である。

今回のアリスのようにそもそも自分を見つめるために必要な知識が不足している場合はミストガンの知識と思考で補う。

だからこそ、アリスは初めて自分の行為を理解したのだ。

 

「・・・・・・ごめんなさい」

 

ここはガルナ村からある程度離れた場所。

漸く夢の世界から帰ってきたアリスは泣いていた。

 

「怖がらせてごめんなさい。殺してしまってごめんなさい。無理やり従わせてごめんなさい。なのに勝手に貴方たちが自分から友達になってくれたなんて言ってごめんなさい。ホントは私と一緒に居たくなんてなかったのに一緒に居たがってるって勝手に決めつけてごめんなさい。苦しんでいるのに無理やり縛りつけてごめんなさい。皆の力で人を傷つけさせてごめんなさい。友達にするためなんて言って怖いもので傷つけてごめんなさい。この村の人たちを殺そうとしてごめんなさい。消えてとか死んでとか言ってごめんなさい。今まで、いっぱい、グスッ・・・たくさんの人に、うぅ・・・いっぱい酷いことして・・・本当に、っ・・・本当に・・・ごめんなさい!」

「大丈夫だ」

 

地面に座り込んで泣きながら謝り続けるアリスをミストガンは優しく抱きしめる。

 

「君は優しい子だ。誰かのために泣くことができる、本当に優しい子だ。だからこそ、君はまだやり直せる。今まで間違ったことをしてしまったならば、その分だけ誰かを助けるために行動すればいい。今まで人を苦しめてきたのなら、その分だけ、人を笑顔にすればいい。君が心からそれを望めば、君の魔法は君の力になってくれる」

 

アリスはミストガンの腕の中から、彼を見上げた。

 

「でも・・・私、私・・・・・・」

「大丈夫だ」

 

罪に苦しむアリスの頭に、ミストガンの大きな手が置かれた。

 

「たとえ君が自分を許せなくても、私は君を許そう。君は罪を償える。だから私は君を許す。それでもまだ苦しいのなら、胸が痛いのなら。今は思う存分泣けばいい。そうすれば、君はまたきっと立ち上がれる。望むなら、私の胸を借りればいいさ」

 

「っ・・・グスッ・・・うぅ、うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁん!」

 

ミストガンの腕の中でアリスは泣いた。

その小さな頭を、大きな手が優しくなで続ける。

 

「大丈夫。君はもう、大丈夫だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜になった。

紫色じゃない正常な色の月が出た。

そして、それは突然起こった。

 

強い悪魔の気配。

 

それが意味することはこの状況ではただ一つ。

 

「まさか、デリオラが復活した!?」

「ふふ・・・仕掛けは上手くいったようね」

「仕掛けだと・・・?」

 

俺の疑問にザルティは笑みを浮かべながら答える。

ちなみに、変身が解けた後名前を聞いた。

 

「えぇ、3年前からの月の光の凝縮照射。私が介入したのは途中からだけど、そのころから少しずつ、《月の雫(ムーンドリップ)》の照射できない余剰分を貰っていたのよ。それを液体化した」

 

ザルティが見せてきたのは小瓶に入った液体。

 

「私の予知で今日、誰かの介入があるということはわかっていたわ。それによって今日の儀式ができないであろうことは十分予想できる。だから、月が出た後に液体化した《月の雫(ムーンドリップ)》をデリオラの上から落とすような仕掛けを作っておいたのよ」

「クソッ!」

 

即座に遺跡に戻ろうとしたが、それは幾つもの水晶玉によって妨げられる。

 

「行かせないわよ。最初は時間稼ぎに付き合うだけのつもりだったけれど、貴方が滅悪魔法の使い手だとわかった以上、行かれては困るのよ。せっかく復活させたデリオラだもの。貴方に倒されたら今までの時間が無駄になってしまうわ」

 

何とかして遺跡に向かわねば。

ハッピーの状況は既に終わった後だと信じ、拡声魔法を使って叫ぶ。

 

「ハッピィィィィィィィィィィィィィ!!」

「あぁいさああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

即座に答えが返ってきた。

俺は飛んできた水晶玉を爆炎で吹き飛ばし、大きく真上に跳ぶ。

その背中を最速で飛んできたハッピーが掴んだ。

 

「全速で遺跡に飛べ!」

「あいさー!」

 

俺達はデリオラを倒すべく遺跡に向かった。

 

「っ、逃げられたわね。・・・それにしても何なのよあの速度。速過ぎじゃない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リオンを制したグレイは予想外の状況に愕然としていた。

デリオラの上に何かが落ちてきたかと思うと封印の氷が砕け、デリオラが復活したからだ。

 

「なんでっ! なんでこうなるんだよ!」

 

グレイは叫んだ。

己に課した誓いを守れなかった自身を責めるように。

 

「・・・《月の雫(ムーンドリップ)》の液体だ」

「リオン?」

 

リオンが上体を起こしながら言う。

 

「月の光を収束して照射することで、あらゆる魔法を解除することができる古代ベリア由来の魔法だ。そして収束した月の力を液体化することもできる。今落ちてきたのはその液体を納めた容器だろう。だからデリオラの氷が解けた」

「お前が仕掛けた、わけじゃなさそうだな」

「・・・恐らくだが、ザルティ、《火竜(サラマンダー)》と戦っていたあのジジィの仕業だろう。俺たちの目的が復活したデリオラの打倒なのに対して、途中から加わったあいつの目的だけは全く分からなかった。得体のしれない男だ」

 

グレイはその言葉を噛み締め、徐々に自由になっていくデリオラを見上げた。

 

「一応聞くがリオン、こんな状況でまだこいつを自分が倒すなんて思ってないよな?」

 

リオンは少しの間沈黙し、やがて口を開く。

 

「当然だ、と言いたいところだが無理だ。この満身創痍で叶う相手じゃないし、何より、動き出した奴を見てようやく理解できた。たとえ俺が万全の状態だろうが、あれには傷一つつけられない。結局俺は、自らの力を過信し、災厄をわざわざ世に解き放った愚か者、というわけだ」

「リオン・・・」

「逃げろグレイ。俺のせいでこんなところでくたばるのは、俺一人で十分だ」

 

グレイは動かない。

 

「グレイ! 何をしている! 早く逃げろ!」

「――――アイスメイク《凍機王(ブリザードカイザー)》!」

 

現れたのは氷でできた巨大な機械兵。

その大きさはデリオラの半分ほど。

 

「グレイ! 馬鹿なことはよせ! 勝てるわけがない!」

「わかってる! ただの時間稼ぎだ! お前は先に逃げてろ!」

 

デリオラを覆う氷が完全に砕けた。

そのまま巨大な悪魔は体に見合った巨大な拳を振るい、《凍機王(ブリザードカイザー)》へと殴り掛かる。

そして、氷の機械兵の体にデリオラの拳が襲い掛かり――――――

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

「「はっ!?」」

 

驚愕のあまり変な声を出す二人の前でデリオラの巨体は崩れていく。

そしてデリオラは、塵となって消えた。

 

「「・・・・・・」」

 

そこでようやく二人は気付いた。

《災厄の悪魔》デリオラは、()()()()()()()()

彼らの師たるウルが10年の月日をかけ、強大な悪魔を殺しきったのだ。

 

「・・・・・・はは・・・全く、ウルの座は遠いな・・・」

「・・・・・・師匠、ありがとうございます」

 

 

 

「何だ、俺の出番はなしか」

 

二人が振り返ると、そこにはへとへとになったハッピーを抱えたナツが居た。

 

「ま、結果オーライってところか。二人とも無事で何よりだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デリオラの封印は解かれたが、それによってデリオラの死亡が確認できた。

まぁ、それは結果論でしかないけど。

 

ザルティはどこかに行ってしまった。

まぁ、奴の目的はそもそも最初から達成不可能だった可能性が高いし、それが判明した以上ここにいる意味はない。

つまり、帰ったのだろう。この場においては放置でいい。

 

リオン達を村の外で待機させ、俺達は村の中へ。

ちなみに、ミストガンは悪霊使いのアリスを無力化した後、村から離れていたようだ。

村に入る前に、リオン達にアリスを預けた。

アリスは渋ったが、彼女は村人達から敵としか思われていないので仕方ない。

 

「――――――というわけで原因は取り除きました。紫の月の悪影響はもうありません」

 

何故か縛られていた村長に報告を終える。

 

「しかし、我々の異形化は解けておりませんが? それは時間が解決するということでよろしいですかな。ほが」

 

・・・・・・ん?

 

「集合――――――!」

 

俺の号令で円陣を組む。

 

「どういうことだミストガン。お前が原因を破壊したはずだよな?」

「あぁ、間違いない。それに、その時点でナツへの悪影響も解消したんだろう?」

「結局どういうことなのさ? 常時悪影響を与えているならもう解けてるはずじゃ?」

「でもナツは記憶まで歪んでないし、村の人たちは長期間悪影響を受けてるし・・・」

「つまり長期間蓄積したものが解消されたわけじゃない、と?」

「結論:まだ悪影響残ってる?」

 

「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」

 

「ミストガン、解呪」

「任せろ」

 

ミストガンがサクッと解呪してくれました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いろいろと世話になったな」

 

彼らを代表してリオンが言う。

 

「これからどうするつもりだ?」

「それはこれから考えるさ。俺達は指名手配されてるわけじゃないから、時間はいくらでもある」

 

グレイにそう返し、リオンは俺に向き直る。

 

「今回はいろいろとすまなかった。ザルティが何を企んでいたかはわからないが、奴を止めてくれたこと、礼を言う」

「あれを止めたって言えるのかどうかは怪しいけどな」

 

俺としては、苦笑しながらそう返すしかないわけだが。

そんな俺に、意外なことにリゼリクが話しかけてきた。

 

「《火竜(サラマンダー)》。お前は対悪魔特化の魔法を使えるそうだな。それを余に、いや、俺に教えてくれないだろうか」

「あ~、悪ぃ。教えるのは不可能なんだわ。こいつを習得した状況が異常極まりなくてな。他人に教える方法が俺には全く分からん」

「そう、か」

 

落ち込むリゼリクにエルフマンが声をかける。

 

「気にするな、滅悪魔法を習得できずとも、お前は漢だ。これから強くなっていけばいい」

「抜かせ。今回は余・・・俺の敗北だが、次こそは勝つ」

「それでこそ漢だ。俺もまたその時を楽しみにしているぞ」

 

新たにライバルとなった二人は拳をぶつけ合わせた。

 

「俺達はギルドに戻ろうと思う」

 

トビーが言った。

 

「そういやあんたら3人は元正規ギルドの人間だっけ?」

 

カナの言葉にユウカ、トビー、シェリーの3人が頷く。

 

「《蛇姫の鱗(ラミアスケイル)》だ。あの頃は荒れていたとはいえ、大勢の人に迷惑をかけてしまった」

「たとえ土下座することになろうがマスターに回されようが、恥をかくことになってでもケジメをつけるつもりですわ。それが私達が示せる愛ですもの」

「リオン達は誘わないの?」

 

ルーシィの疑問にシェリーが答える。

 

「現在保留中、ですわ。考える時間は十分ありますし、焦る必要はありませんとも」

「そっか。何か困ったことがあったら連絡してね。いつでも力になるから」

「記憶にだけ留めておくことにしますわ」

 

シェリーの答えにルーシィが苦笑する。

 

「私は、フィオーレ全土を回ろうと思います」

 

アリスは口調も完全に変わり、もはや別人だ。

表情も生き生きとしている。

 

「今まで傷つけてしまった人達や、無理やり悪霊にしちゃった人達、その家族や友人の方々に、きちんと謝っていこうと思います。それから、その人たちのために私ができることをして、きちんと償っていくつもりです」

「そうか。しかし、お前もずいぶん変わったな」

 

リオンの言葉に、アリスは今まで一度もしなかったであろう自然な笑顔を見せる。

 

「全部ミストガンさんのおかげです。ミストガンさんが教えてくれなければ、私は自分がしたことの意味も知らずに、もっと多くの人を苦しめてしまっていたと思います。それに、ミストガンさんはまだやり直せると言ってくれました。だから私は、誰かのために私ができることをしたいです」

 

以前は考えられなかったであろう饒舌っぷりに以前のアリスを知るリオン達は苦笑する。

 

「本来ならアリスの更生は俺達の役目であるべきだったな。だが俺はそれを放棄するどころか、この子の無知と純粋さを悪用しようとした。今まで本当にすまなかった、アリス。そして俺からもお前に礼を言おう、ミストガン」

「何、私は私ができることをしたまでさ。この子は俺が思った以上に頭はよかったからな」

 

こうしているとさっきまで敵同士だったとは思えないな。

彼らも話せばわかる人間だったということか。

 

「アリスのことは俺達からマスターに相談してみようと思う。アリスはまだこの年だ。裏の人間や復讐しようとする人に傷つけられるのは俺達も望まない」

「マスターの人脈ならアリスを助けられる奴も見つけられるはずだ。こいつのためにも、やるべきことはしっかりとやるさ」

「ありがとうございます。ユウカさん、トビーさん」

 

アリスは《蛇姫の鱗(ラミアスケイル)》のマスターに相談すると言ってくれた二人に頭を下げた。

 

「もちろん、私からも頭を下げてお願いするつもりですわ。それが私ができる愛ですもの」

「はい。シェリーさんも、ありがとうございます」

 

シェリーにも礼を言い、アリスはミストガンに向き直る。

 

「私は誰かのために優しくできる人になりたいです。何年かかっても、必ずそんな人になって見せます。そしたら、《妖精の尻尾(フェアリーテイル)》の皆さんやミストガンさんに改めて会いに行きます。その時は、ミストガンさん――――――」

 

ここでアリスは大きく息を吸い、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私をお嫁さんにしてください!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」←ミストガン停止

「「ファッ!?」」←ユウカ、トビー驚愕

「「「えっ!?」」」←女子3人、唖然

「あい――――!?」←ハッピー愕然

「・・・」←エルフマン、顔が引きつる

「「「ぶっふぉ」」」←俺&氷造形組、吹き出す

「? どうしたのだ?」←リゼリク、疑問符

 

 

 

 

 

「ミストガンwwおまwwwおまっwwww」

 

笑いが止まらない。

それはリオンとグレイも同様である。

 

「あのアリスが、ブフッ、今日あったばかりの男に、フハッ、求婚っwwだとwww」

「ミストガンお前ww幼女にガチで、クフッ、惚れられてんのかwww」

 

そんな俺達3人と、驚愕のあまり停止している他全員を見て、リゼリクは言う。

 

「3人はなぜ笑っている? 他の皆はなぜ驚いている?」

 

どうやら元王族の常識では理解できないらしい。

 

「ミストガン・・・貴方、ロリコンだったの・・・?」

「ぶほっ」

 

ルーシィが混乱の末に吐いた台詞にカナの腹筋が犠牲になった。

 

「ハッ!? ま、待てルーシィ! なぜそうなるんだ!? 俺にそういう趣味はないぞ!」

 

ルーシィのロリコン発言にようやくミストガンが再起動した模様。

なお、それによりアリスは若干涙目である。

 

「ご、ごめんなさい。嫌、ですよね。私となんて・・・」

「うぐ・・・・・・」

 

哀れミストガン。何も悪いことしてないのに追いつめられるとは。

流石に可哀想になってきたのでちょいと手助けを。

 

「ククッ、まぁ、10年後とかにまた会ってから考えろ。今考えたって無駄だ」

 

主にアリスの年齢の問題でな。

 

「というわけでアリスも大人になってからまた告白しなおせ。その方がいいと思うぞ」

「わかりました、ナツさん! その時までにミストガンさんを振り向かせられる素敵な女性になって見せます! その時になってからお返事を聞きに行きますので!」

 

アリスも元気を取り戻したようで何より。

 

「それじゃあ、俺達はそろそろ行くとしよう。またいつか会おう、《妖精の尻尾(フェアリーテイル)》」

「おうよ、またな」

 

俺とリオンは固く握手をし、その後リオンはグレイとも握手をする。

 

「俺はもっと強くなって見せる。そして、いつかウルを超えて見せる。お前も励めよ、グレイ」

「そっちこそ、な。まずは俺に追い付いて見せろよ」

「ふ、そうだな。そっちが先だな」

 

リオン達は彼らが自前で用意していた船に乗り、ガルナ島を出発した。

 

「しっかりやれよ、リオン!」

「またいつか会おうぜ!」

「もし仕事で一緒になったらよろしく頼むよ!」

「うおおおおぉぉぉぉぉぉ! 漢――――――――!」

「今度《蛇姫の鱗(ラミアスケイル)》に遊びに行くからねー!」

「いい大人になるんだぞ、アリス!」

「あい! みんな―――! 元気でね――――――――!」

 

船が見えなくなった。

俺達は再び村へ向かう。

 

「さて、今夜は飲むよ!」

「ほどほどにしておけよ。船上で吐くのはナツだけでいい」

「・・・反論の余地もねぇ」

「どんなお魚が出るのか、オイラ楽しみだよ!」

「当然、ミストガンも参加するよな」

「そうだな。こういう場は久しぶりだ」

「バルゴにも参加してもらおうかなぁ。労わってあげなくちゃ」

 

事態を解決し、直感でそれを察したボボも帰ってきた。

今夜は村を挙げての祝いの席だ。

俺達も参加してくれと言われた以上、拒否するのももったいない。

リオン達は辞退したがな。

現時刻21時。そろそろ準備が終わっている頃だろう。

ほら、明かりが見えてきた!

香ばしい匂いや酒の匂いも漂ってくる。

村の入り口で何人かが俺達を出迎えてくれている。

 

 

 

 

 

 

 

「よっしゃぁ! 宴だあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 




『《虚法陣・恐鏡夢(おそれうつし)》』

睡眠学習をホラー化したようなもの、と言えなくもない。
アリスは数十分の夢の中で体感時間数年を過ごした模様。
それだけ罪と向き合わされ続ければ性格も変わる。





『ウルティア = ザルティ』

正体はバレたけどナツには偽名を名乗った模様。
ウルティアの名前出したら評議会とかグレイとか身バレ要素多いし、仕方ないね。





『予知』

時のアークの副作用で極稀に予知夢を見る、というオリジナル設定。
予知の精度は高いが予知自体がめったに見れない。





『ザルティ'sトラップ』

月の光が当たると固定していたロープが外れ、小さな台が傾く簡単な仕掛け。
台の上に乗せた小瓶がちょうどデリオラの上に落ちてくる。
本当に簡単すぎる仕掛けなのでナツの鼻でも見抜けなかった。





『グレイの時間稼ぎ』

すなわちナツの滅悪魔法頼り。
なお、グレイはナツが魔法を使えない状態だったことを忘れていた模様。
その時にはナツは正常に戻っていたが屋内のグレイが空が割れたことに気付くはずもなし。





『「集合――――――!」』

この小説を始めたころ、ガルナ島編ではこれがやりたかった。
実際に書いてみたら、あれ? 大して書けない?
書いてみるとなんか違うのってよくあるよね!





『アリス、ミストガンへ逆プロポーズ』

今回の冒頭でわかる、アリスがミストガンに惚れた瞬間。
実はナツも人のことは言えなかったりする。

某貴族の娘「将来の夢ですか? もちろん、ナツ様のお嫁さんになることです!」

なお、ナツはこのことに全く気付いていない。
娘の方も、告白の類は今のところ一切していない。


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夏だ! キャンプだ! 海水浴だ!

なんか今話って量が多いわりに内容が薄い気がする。
これも俺の描写力のせいなんだ!(自傷)

オリジナル回でござる


まずはテント! 10人くらいは余裕で寝れる超ビッグサイズ!

次に寝袋! 大人用二つ、子供用一つ、ハッピー用一つ!

タオルケットに毛布も追加で!

テント内の明かりに魔導式ランタン!

外で使う明かりに懐中電灯ならぬ懐中魔導灯!

テント内の掃除に箒と塵取り!

折り畳みテーブルと椅子のセット!

バーベキューコンロと火打石と燃やすための炭!

肉や野菜などの食材は調味料と一緒にクーラーボックスへ!

包丁は子供用と大人用を両方用意だ、調理器具一式!

食器を洗うためのスポンジと布巾、それに乾燥用収納箱!

タオルやハンカチは多めに用意!

救急箱に自作の虫除けアミュレット!

多機能ナイフにサバイバルナイフ!

カメラと双眼鏡を人数分!

五右衛門風呂を作るためのドラム缶、石ブロック、薪!

釣り道具一式、うち一つは子供用!

夏の夜空に天体望遠鏡!

虫取り網に虫かご、魚にも虫にも使えるアクリル水槽!

夜の遊びに花火も忘れるな!

俺の水着、人数分のダイバースーツ、シュノーケル、フィン!

上着と着替えに時計に水筒!

以下省略ッ!

 

「それらを全部オイラの倉庫へ! 代わりに兵器は置いていく!」

「荷物は揃った! いざ行かん!」

「あい! 初の3泊4日!」

 

ドン!

 

「遊び倒すぞおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

「あいさあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

俺と人間形態のハッピーが並んで叫ぶ。

 

「これ! テーブルから足をどけんか!」

「「ごめんなさい!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで、これ依頼だって聞いたけど遊ぶの?」

 

朝から騒がしいナツ達を見ながらカウンターでルーシィが呟く。

その疑問にはミラが笑顔で答えた。

 

「一年ほど前にね、ナツが貴族のご令嬢の命を助けたことがあったのよ。それ以来、ナツはその子に懐かれちゃってね。ちょくちょく会っては一緒に遊んだり、魔法を教えたりしているの」

「へぇー」

「今までは泊まることはあっても1泊だったからね。3日以上遊ぶのは初めてだからナツも張り切ってるのよ。きっと」

 

そしてナツとハッピーが出発する。

 

「行ってらっしゃーい。楽しんできてねー」

「おぅ! お土産楽しみにしとけよー!」

「あい! 美味しいお魚持ってくるよー!」

 

ミラの笑顔と見送りの言葉にナツとハッピーが答え、二人はギルドを出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やってきましたキャンプ場!

まずはテントを準備する。

 

「ナツー! お魚とってきたよ!」

「おい待て! いくら何でも早すぎだろ!」

 

そんなハッピーはバーベキューセットの組み立てに回す。

とってきた魚は一時的に水槽の中へ。

その後、10分ほどでテントの準備が完了。

慣れればもっと早いんだろうけど。

 

「バーベキューの用意完了! ナツー、こっちも終わったよー!」

「おー、んじゃあ後は二人が来るのを待つだけ・・・っと、ちょうどいいタイミングだな」

 

このキャンプ場へと至る登山ルートから、二人の人間がやってくる。

 

その片方が俺達を見つけるなり、大きく手を振りながら駆け寄ってきた。

駆け足の勢いのままダイブしてきた彼女を受け止め、地面に下ろす。

 

「よぉ、3週間ぶりだな。元気してたか? ヒスイ」

「はい! お久しぶりです、ナツ様!」

 

名前と同じ色の髪を陽光に煌めかせ、彼女は笑顔で挨拶してきた。

 

「久しぶりだな、二人とも。今日は姫をよろしく頼むぞ」

「あい! アルカディオスも楽しんで行ってね!」

 

ヒスイの護衛であるアルカディオスも一緒だ。

 

「こっちの用意はできてるぞ。とはいえ昼までまだ時間があるし、それまで川釣りでもするか」

「魚とりならオイラの出番だね!」

「水着はちゃんと持ってきましたよ」

「おっと、それは午後にしようぜ。釣り具は人数分用意してきてるぞ」

「色々と任せきりですまないな。こちらでもある程度用意すべきなのだろうが私も姫もあまり遊びの知識はないからな」

「気にしなくていいよー。こういうのは準備も楽しいんだから」

「ナツ様達ばっかりずるいです! 私だって、期待に胸を弾ませながら遊びの準備したいのに」

「ははは、ま、それはいずれな」

 

釣り具を用意してキャンプ場の近くの川へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハッピーは魚釣りがかなり上手い。

釣りに限らず手掴みも相当な腕前である。

で、俺は下手くそ。

ヒスイはまだ慣れていないがこの時点で僅かに俺より上である。

アルカディオスは俺と同レベル。

 

「5匹目釣れましたよ!」

 

どうやらヒスイはまたレベルアップした模様。悔しい。

 

「私はまだ1匹だ」

「・・・ゼロ」

「ナツ、今日調子悪いの?」

「えぇっ!? ナツ様不調なのですか!? こ、こうしてはいられません。今すぐお薬を―――」

「「違う、そうじゃない」」

 

慌てるヒスイを宥めたら、顔を真っ赤にして釣りに戻った。

流石に今のは恥ずかしかったのだろう。しゃーない。

 

っとお!?

 

「え、ちょ、待って、引いてる!? これ、デカいって!」

「いや待て、ここはそんなに深くないはずだろう? そんな大物がいるわけ・・・」

「違う! 針が川底に引っかかったんじゃない! これマジで引いてきてる!」

「私も手伝います、ナツ様!」

「オイラちょっと見てくるよ」

 

必要ないのにヒスイが手伝おうとし、ハッピーは飛んで様子を見に行く。

ハッピーが水面の釣り糸の上に差し掛かった瞬間、

 

ザッパァァァァァン!

 

「うぱああああぁぁぁぁぁぁ!?」

 

そいつがハッピーめがけてと言わんばかりの勢いで飛び出した来た。

 

「ブモオオオオオォォォォォォ!」

 

そいつは全長約30メートル。

顔だけ牛の、魚型の()()()()である。

釣竿を足元に置く。

 

「そんなデカい海洋魔物がこんな浅い川に居るんじゃねええぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

「ブギョオオオオオォォォォォォ!?」

 

跳躍して殴り飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼はバーベキューである。

ちなみにさっきの魔物の身は高級な牛肉同然なのだ。

 

「トーラギョス焼けたぞー」

「二枚ほど貰おうか」

「私にも一枚お願いします」

「オイラも一枚貰うねー」

 

俺も二枚貰い、丁度よく焼けた玉ねぎとピーマンも皿にとる。

椎茸は生焼けなのでもう少し焼く。

キノコ類は生で食べると生涯の食生活に関わってくるからな。

 

「お、ホタテか」

「今朝早くアルカディオスに買ってきて貰いました」

「そうなのか。サンキューな、アルカディオス」

「おかげで旨いものが食べられるんだ。大した苦労ではない。それと、エビとイカも買ってある」

「やったー! ありがとねー」

 

余った食材は夜に食べるため、クーラーボックスへ。

この後デザートに焼きリンゴを作って食べた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食事の後は一休みして再び川へ。

全員水着着用である。

 

「どうですか、ナツ様?」

 

そういってヒスイが見せてきたのはホルターネックのツーピース水着。

エメラルドグリーンの本体に赤いリボンの飾りがついている。

トップスの紐部分も赤色だ。

 

「結構派手なの選んだな。でもよく似合ってるぞ」

「あい! すっごい可愛いよ!」

「ありがとうございます。ナツ様、ハッピーさん」

 

ちなみに俺は紺の地に赤と青のラインが入ってるやつ。

アルカディオスは黒一色である。

ハッピー(人間形態)のは水色の地に黄色のでギルドマークのアクセントが入ってる。

 

そんな感じで俺達はしばらく水遊びをし、

 

「ウホホ―――ッ! 女――――!」

「獣風情が姫に手を出すなあああぁぁぁぁぁ!」

「ウボ――――――ッ!?」

 

乱入してきたバルカンをアルカディオスが殴り飛ばした。

おいここらの治安どうなってるんだ。

此処って正式なキャンプ場だろ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけで現在午後4時頃。

水遊びを中断し水着から普段着に着替える。

チームを3つに分けて周辺の調査である。

魔物が連続で出てきちゃ俺達も満足に遊べないしキャンプ場の不利益にもなるからだ。

俺とヒスイでペアを組み、アルカディオスは別行動。

ハッピーは上空からの捜索である。

ついでに魔物どもにはヒスイの経験値になってもらおうか。

そんなこんなで役2時間。魔物を全て片付けて、纏めて経営陣に報告。

報酬はギルドに話を付けてくれ。今この場で受け取る気はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだ、アイスを作ろう。

 

「アイス? 今からですか?」

「簡易冷凍庫でも持ってきているのか?」

 

使うのでは冷凍庫ではないのだ。

ハッピー!

 

「あい! 材料はもちら!」

 

牛乳、生クリーム、卵、砂糖。

 

「こちらを金属の容器に入れます」

「で、ここに専用の球状容器を用意しておいた」

 

もちろん自作である。

欲を言えば金属の造形魔導士が居ればよかったのだが。

 

「最初からやるつもりだったな?」

「当然だろう?」

「流石ナツ様。用意がいいですね」

 

材料を容器に入れて蓋を閉め、更に上からガムテープ。

それを暫くシャカシャカ。

シェイクした容器を氷で冷やすわけだがそれに使用するのがグレイ謹製の氷。

半球殻状になっている二つの氷の内側はデコボコになっている。

その隙間に塩を詰め、半球殻の氷二つで容器を挟むように閉じ込め、固定。

出来上がった氷球を上からアルミの球殻で、その上から更にゴムで包む。

アルミ製球殻やゴム球殻は予め半球殻状の物を二つ用意しておいた。

容器を覆ったゴムの継ぎ目を接着剤で固定し、上からガムテープで更に固定。

 

「こいつでボール遊びをするぞ!」

「あいさー!」

「「えっ!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10分ほど軽めにサッカーもどきをやった後、ボールを振ってみる。

途中からボールの重心がおかしくなってたのはご愛敬。

水の音は聞こえるが容器の内側から音はない。できてるな。

ゴムを裂き、アルミを割り、中から氷球を取り出す。

氷球を割ると中から塩水が溢れてきた。

中から容器を取り出し、両側面のロックを外して縦に開く。

皿に出した中身は紛れもなくアイスクリームである。

 

「すごいですね。遊んでたら本当にできちゃいました」

「しかし、これでどうやって・・・」

 

説明しよう!

 

「氷って溶けて水になるときに周囲から熱を奪うんだ。で、塩が水に溶けるときも同じく熱を奪う。この二つでアイスができるくらいに中身を冷やせるってことだ」

「あ、じゃあボールで遊んだのは水と塩を混ぜて溶かすためですか?」

「「大正解!」」

「なるほど、面白いな」

 

ヒスイってかなり頭が回るんだよな。

前世の俺って13歳頃って何してたっけか?

ところで、このアイスの作り方、前世では一度もやったことなかったりする。

こっちでは何度かハッピーと一緒に作ってたけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

晩飯は焼肉。

昼のバーベキューの具材の余りそのまんまである。

バーベキューと焼肉の違い? 知らんな。

強いて言うなら屋内外の差だと思ってるが。

その見方で言えばこれはバーベキューってことになるが。

まぁ焼肉ってことにしておけ。OK?

 

「それでいいんでしょうか・・・?」

「姫、こういうのを気にしたら負けと言うのでしょう」

「そそ、気にしない気にしない。あ、ナツー、それ取って」

「あいよ。鮭の切り身」

 

焼肉に魚? 気にするな。

と、そうこうしているうちに全員食べ終わった。

 

「さて、食後のデザートはさっき作ったアイスだ」

「クーラーボックスに入れたうえでオイラの倉庫に保存しておいたよ」

 

全員にアイスが行き渡り、揃って食べ始める。

 

「冷たくておいしいですね。自分達で作ったからよりおいしい気がします」

「ふむ、どちらかと言えばシャーベットに近い感じか。しかし素人の手作りとは思えん旨さだ」

「夏場のアイスはやっぱりおいしいねー」

「だな。それに、ちゃんとできるまで色々と試行錯誤したからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食後はのんびり花火である。

川の水をバケツに汲んできておいた。

火元として焚火も用意。

ちなみに焚火の火は俺の炎。

そして俺達の服装は浴衣である。

全員分の浴衣の用意は俺とハッピーがした。

 

お揃いの紺の地にそれぞれ違う柄である。

俺は赤とオレンジの鳳凰。

ハッピーは白い蝶。

ヒスイは色とりどりの花。

アルカディオスは白いライン模様。

 

「綺麗な服ですね。ありがとうございます、ナツ様」

「確か東方の服装だったか? 私がこのようなものを着る日が来るとはな」

「お祭りの時に着るやつだったよね」

「そうだったはずだ。あ、明日も使うから汚さないようにな」

 

その後は花火を楽しみ、後片付けをして就寝。

なのだが、ヒスイは遊び疲れたのか、横になったとたんに眠ってしまった。

寝袋にはまだ入ってない。

アルカディオスがヒスイを寝袋に入れ、俺達も就寝。

 

「んじゃ、明日もよろしくな、アルカディオス」

「あぁ、よろしく頼むぞ、ナツ」

 

一言だけ交わして寝た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二日目到来!

朝食はパンと目玉焼きとベーコンだ。

こっちではハムエッグと言うべきだろうが元日本人の俺は目玉焼きがしっくりくる。

食べたら後片付け。

全員で協力して綺麗にする。

大きな荷物はハッピーの倉庫に入れてキャンプ場を退去。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バードウォッチング。

読んで字のごとく鳥の観察である。

双眼鏡とカメラを用意。

服装は地味な色を、帽子も地味な色を。

大声を出したりして騒ぐのは厳禁。

ちなみに今日は移動があるため時間はそんなにない。

 

「ところでヒスイ、写真の腕前はどうだ?」

「はい。まだまだナツ様には及びませんが上達してきていると思います。お父様やアルカディオスにも同じ評価を貰いました」

 

ちなみに俺が写真を撮るのは器具開発の際の分析目的が始まりである。

ヒスイがパシャリと一枚。

 

「今のも上手く撮れたと思います。どうでしょうか?」

 

魔水晶(ラクリマ)のモニターに映し出されたのは赤みがかった小さな鳥。

写真自体は手ブレもなく鮮明に写っている。

 

「いい感じだな。その調子だぞ」

「はい! いい写真いっぱい撮りますね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午前9時半。

バードウォッチングを終了し、下山。

ここから歩きと電車で向かう先は和風施設と()()()()が有名な大神村。

・・・・・・ぅぷ

 

「だから想像しただけで酔うのやめようよ」

「あ、あの、大丈夫ですかナツ様?」

「すまない。我々、と言うか私が移動の荷物になってしまっていてすまない」

「大丈夫。火属性魔水晶(酔い覚まし)あるから」

 

今日の日程は各駅停車でそれぞれの町でゆっくりしていくものである。

最寄りの駅に到着。

 

「ナツ様、私、酔い止めの護符を作ってきました」

「おぅ。サンキューな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一駅進んで下車して休憩。

ヒスイの護符? 効かなかったよ(瀕死)

 

「おうっぷ・・・・・・」

「すみませんナツ様。私の護符、全然効果なくて・・・」

「ヒスイが気にすることないよ。だってナツの乗り物酔いって酔い止め全然効果ないし」

 

薬も魔法も一切効果なしだからなぁ。

この効かなさっぷりは俺の干渉系無効体質とは別物だと思う。

だって俺、普通の薬は効果あるし。

とりあえず魔水晶(ラクリマ)バリボリして復活。

この駅周辺で軽く遊んだ後、次の駅で昼食である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

要するにキングクリムゾンな!

日が沈み、夜になった。

丁度よく大神村に到着だ。

和風の旅館で浴衣に着替え、外出。

この近くの渓流が鑑賞ポイントとなる。

 

「何を見に行くのですか?」

「ま、見てからのお楽しみな。と、ちょっと目を瞑っていてくれ」

「は、はい。わかりました」

 

俺に背負われているヒスイは少々困惑気味に目を瞑る。

 

「私は目を開けていていいのか?」

「じゃあ、アルカディオスはオイラが運んでいくよ」

「わかった。頼むぞ」

「あい!」

 

そうして目を閉じた二人を連れて渓流へ到着。

丁度よく始まったようだ。

俺がヒスイを、ハッピーがアルカディオスを地面に下ろす。

 

「よーし。二人共、もういいぞ」

 

今まで目を閉じていた二人が目を開けた。

 

「うわぁ・・・・!」

「ほぉ、これは・・・」

 

辺り一面に飛び交うのはホタル。

フィオーレでも夏のここでしか見れない景観だ。

観光地故に、俺達以外にもホタルに見入ってる人たちがいる。

 

「すごい綺麗ですね・・・・・・」

「そうだな、素晴らしいな。これがホタルか・・・」

「ホタルは大神村周辺にしか居ないんだ。これが見れるのは夏の間だけだぞ」

 

ちなみに、大神村の始まりはある東洋人が訪れたことだとか。

今から150年程前と聞く。歴史は結構長い。

 

「そういえば東方と言えば温泉と聞くが・・・」

「・・・残念だが、ここに温泉はない」

 

魔法を活用したスーパー銭湯はあるがな。

温泉目当てなら鳳仙花村に行くべし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三日目キタ――――――――!

早速電車に乗って移動である。

オボロロロロロロロロ

 

「ナツー! しっかりー!」

「な、ナツ様、やっぱり無理はしない方がいいのでは・・・」

「すまない・・・お荷物で本当にすまない・・・」

 

向かう先は海辺のリゾートシティ、アカネである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バリボリバリボリバリボリバリボリ・・・・・・ふぅ。

着いたぞアカネに。

というわけで海水浴である。

 

「ナツ様! 準備できました!」

 

よし、遊ぶか!

 

 

 

 

 

昼飯は海の家で済ませた。

そのあと少々ビーチバレーを。

そして水着からダイバースーツへと着替える。

もちろん俺の炎の加護により保温はばっちりだ。

 

「んっ・・・ナツ様の・・・あったかいです・・・・・・」

「ちょ、待ってください姫。その言い方は色々とマズい」

「え?」

 

字面だけ見るとR-18に見えかねん問題。

何がどうマズいのかを教えるわけにはいかないという大人の問題である。

 

「ナツ、今のは何がマズいの?」

「い・・・いずれわかるさ、いずれな」

 

6歳のハッピーにも教えるわけにはいかないんだ。

猫の成人は1歳?

いや、ハッピーの精神構造って人間に近いし・・・・。

 

「ところで、これから何をするんだ?」

「シュノーケリングだ」

 

というわけでビーチから少し離れた場所へ移動である。

移動しながら全員分の水中ゴーグル、シュノーケル、フィンを用意。

 

「これを使って水面から海中の観察をするのがシュノーケリング」

「ちょっと潜るのもあるけど今回は水面だけで行くよ」

 

というわけでシュノーケリング開始。

サンゴ礁とかがあればなおよかったんだがあいにくフィオーレにサンゴはない。

なので鑑賞するのは魚の群れ、岩や砂に生えた海藻とそこに潜むエビなどである。

ちなみにここらの水の透明度は高いので結構遠くまで見渡せる。

3時間ほど楽しんだ後、着替えてホテルで一休み。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕飯を済ませた後はカジノ・・・と行きたかったが流石にヒスイが居るので断念。

ちなみにアルカディオスはカジノが好きではないらしい。

理由は賭け事での運が悪すぎるからとのこと。・・・うん、ドンマイ。

 

「というわけでナイトツアーを行う!」

「わーパチパチ」

「ナイトツアー、ですか?」

「このホテル、そんなツアーがあったのか?」

「うんにゃ、企画・実行は俺とハッピー」

「あい! オイラの猫竜形態(ドラゴライズ)と借りたボート1台で夜の海へ行くよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけでやってきました夜の海!

ここはアカネから300キロほど場所である。

予め転移用の目印を置いてあるため転移魔法でひとっ飛びだったが。

ホテルから借りたボートにヒスイとアルカディオスを乗せ、俺は竜化したハッピーに乗る。

ボートの上から水中を見るために箱眼鏡を渡しておいた。

ハッピーも竜化した顔に専用の箱眼鏡を装着済み。

箱眼鏡にはライトがついている。

 

「昼とは全然違いますね」

「昼夜でここまで変わるとはな」

 

本当なら夜光虫とかウミホタルとか見たかったが残念ながらフィオーレにはいないのだ。

なお、俺は前世でもどちらも見たことがない。

アカネって水綺麗だからウミホタルは居てほしかった。

そもそもこの世界に存在しない可能性はあるっちゃあるけども。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナイトツアーを終え、ホテルに戻ってきた俺達。

ホテルの大浴場でゆっくりと。

なお、このホテルの大浴場は混浴しかない。

それでいいのか経営。

 

「ナツ様。お隣、失礼しますね」

「おー」

 

並んで湯船につかる俺とヒスイ。

 

「うぱぁ~」

 

その近くではハッピーがぷかぷか浮かんでいる。

 

「温泉ではないが、疲れが取れるな」

 

アルカディオスは俺達とは少し離れてご満悦。

 

「三日間本当に楽しかったです」

「そうか。なら色々考えたかいはあったな」

「オイラも頑張ったよー」

「そうだな。私もナツ達には本当に感謝している。不謹慎かもしれんが、1年前の事件がなければ私も姫もこのような時間を過ごすことはなかっただろう」

 

確かに不謹慎かもしれないな。

 

「まぁ、そのおかげであの出会いがあって、今までいろいろと楽しくやってこれたんだ。それには俺だって感謝してる。あの時のことは、ある意味では運命だって言えるかもしれないな」

「運命、ですか・・・・・・えへへ・・・」

 

ヒスイが少し嬉しそうに笑った。

俺はそんなヒスイの頭を軽くなでる。

 

「フフッ、えいっ」

「おっと」

 

胸に飛び込んできたヒスイを受け止める。

 

「風呂ん中であんまりくっつくとのぼせるぞ」

「それでもいいです。ん・・・ギュッてしてください」

「りょーかい」

 

ヒスイの要望通り、彼女を抱きしめる。

 

「ん、はぁ・・・ナツ様の匂い・・・・・・」

 

ハッピーは湯に浮かびながら脱力しきっており、アルカディオスは微笑ましそうに俺達を見ている。

俺は苦笑しながらも再びヒスイの頭を撫でた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バリボリバリボリ・・・・・・ふぅ。

 

「終わっちまったなー」

「あい! 楽しかったね、ナツ」

 

翌朝、電車で移動し、ヒスイとアルカディオスは途中の駅で別れた。

俺達はそのままマグノリアまで電車と徒歩で帰る。

マグノリアに着き、まずは自宅へ直行して荷物を置く。

そしてお土産だけをもってギルドへ向かう。

 

グギュルルルル・・・・

 

俺の腹が鳴った。

 

「そろそろお昼だね」

「昼はギルドで食べるか。土産配ったり写真見せたりしながら」

「さんせー!」

 

と、そんな話をしながら歩いているうちに気が付く。

何かがおかしい。

 

「ハッピー、気づいたか?」

「うん。街の人たちの様子がなんか変だね」

 

少し早足になりつつギルドへ向かう。

そして、ギルド(俺達のホーム)が見えて・・・

 

「・・・・・・は?」

「え? え?」

 

視界に入った()()に俺達は走り出す。

そして辿り着いた場所にあったものは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひ、酷い・・・酷いよ・・・っ! 何で、何でこんなことに・・・!」

「おい・・・嘘、だろ・・・!? 俺達の・・・俺達のギルドが!」

 

瓦礫の山に成り果てたギルドの建物だった・・・

 




『時系列問題』

今話は7月上旬の設定。
アニメ版の桜の回の冒頭でルーシィがギルド入りしてからもうすぐ1年と明言されている。
そこから考えてルーシィ参入~ララバイ編が4月~5月、遅くても6月の出来事。
原作の描写からララバイ編の数日後にガルナ編。ここはこの作品でも同じ。
原作ではガルナからの帰還直後にファントム編だが、この作品では時間を空けている。
そして、海の描写があることから楽園の塔は7~8月、遅くて9月上旬。
ギルドの建て直しが1か月強で終わることになるがそこは魔法と言う便利な言い訳を使います。





『ドン!』

ナツとハッピー(人間モード)が揃ってテーブルに足を乗っけた音。
当然怒られるよね。是非もないよネ。





『ヒスイの年齢』

この作品では現時点で13歳、天狼島編では14歳になる設定。
改めて彼女の設定を確認すると、原作ではルーシィの父親の友人とある。
しかし、それを基準に考えると現時点で30代もしくは40代。
7年後の大魔闘演武編では下手すれば50代もしくはもっと上の可能性が。
更にそうなると現国王の年齢はマカロフと同じくらいの可能性も・・・。
ナツと絡ませるため、ヒスイの年齢を大きく変更しました。
7年後、大魔闘演武編では21歳になるということで。

ちなみにミストガンに懐いたアリスの年齢は10歳未満を想定。





『アルカディオス』

ヒスイの専属護衛と言う設定にしました。
それによってナツ達との交流が生まれた模様。





『釣りの腕前』

ナツとアルカディオスは下手と言っても数時間やって最低2~3匹は釣れる。
ハッピーは本気出せば同じ時間で数百匹は余裕。
ヒスイはそろそろ10匹釣れるくらいには上達している。





『海洋魔物トーラギョス』

Q1:なぜナツは魔物の臭いに気付かなかったのですか?
Q2:なぜ体の大きな魔物が浅い川に隠れられていたのですか?
A :どちらもギャグ補正です。

オリジナル魔物です。
トーラギョスという名前の由来は「トーラス(牛)」+「(ギョ)
魚なのに身は高級牛肉である。食べたい





『水着』

ヒスイの水着のイメージはFGOの夏イベアルトリアの色違い。
エメラルドグリーンに赤いアクセントの組み合わせが合うのかはよくわからん。
もっといい組み合わせがあったら誰か教えてください。





『ヒスイの経験値と化す魔物たち』

ナツが炎で動きを止めてヒスイが攻撃。
ヒスイの魔法は宝石魔法である。
ちなみに、この時点でヒスイはナツ達に「ヒスイ・エメラルド」と名乗っている。





『アイスづくり』

ネットで調べた。
しっかりボール遊びができるように魔法で専用道具を作らせました。
なお、ゴム球殻とアルミ球殻は使い捨て。





『浴衣』

ナツの前世は日本人だし、こういうのは好きだろうね、と。
女の子の浴衣姿っていいよね。
柄は適当だったりする。





『二日目』

午前中バードウォッチング。
昼前~午後はぶらり列車の旅。
夜は和風旅館でホタル来い。





『酔い止めの護符』

ヒスイが頑張って作りました。
材料はもちろん宝石。
なお、この作品ではナツ含め滅竜魔導士に酔い止めは全く効かない設定。
ちなみに、今回ナツは何度も列車に乗っているためかなりの回数吐いている。





『大神村』

今話限定のオリジナル地域。
場合によっては今後ちょろっと出すかもしれないけど。
鳳仙花村はマグノリアに近い設定なのと暑さでホタルが住めなさそうだから今回登場せず。
ホタルを出したかったんだからしょうがないね。
こちらの名前も適当。
ちなみに、作者はホタルを生で見たことはありません。





『ダイバースーツ』

作者は着たことありません。
シュノーケリングとかスキューバダイビングとかやってみたい。





『ウミホタル、夜光虫』

一回それらを出そうとしてたけどやめた。
なんかいろいろとおかしくなってしまったので。
作者はどちらも生で見たことはありません。





『お風呂、お風呂』

ヒスイがナツに抱き着いているけどエロ要素はない。いいね?
彼女がナツの匂いに感じているのは興奮ではなく安心感。
ナツの股間も全く反応してないのでノープロブレム。OK?
まぁ、ヒスイが4,5年ほど成長すればお互いに色々意識しちゃいそうだけど。
なお、この時点でヒスイは完全にナツに惚れている。
彼女が恋愛やエロを意識するのはまだ先だろうけどネ。





『ギルド崩壊』

次回、幽鬼の支配者編突入!
ガジルとかジュビアとか出るよ!
オリキャラも貰いましたので出したい。


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不穏な気配

今回めっちゃ短いです。
2000字にも満たない。


「何だよこれ! 一体何で・・・何でっ!」

「酷いよ・・・こんなのってないよ・・・」

 

崩壊して瓦礫の山となってしまった俺達のギルド。

何がどうしてこうなったのか、俺達には全く分からない。

 

「おぉ、戻ったか二人共」

「じっちゃん!」

 

残っていた地下への入り口からじっちゃんが顔を出した。

俺とハッピーも地下へ入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「《幽鬼の支配者(ファントムロード)》が、か・・・」

 

じっちゃんやギルドの皆から顛末を聞いた。

 

「でも、何でこんな・・・酷いよ・・・酷いよぉ・・・ぐすっ」

 

俺の膝の上で泣きじゃくるハッピーを、俺は頭を無言で撫でて慰める。

 

「奴らの狙いは?」

「全く分からん。被害が出たのは夜の間。ギルドに誰も居ない時に起こりおった。何かメッセージを残したわけでもない。これでは只奴らが罰せられる以外のことが起こらん」

 

ギルド同士の抗争は禁止。

当然ギルドの建物の破壊も駄目だ。

・・・相手が何を考えているのかわからない以上、今は警戒を怠らないこと、か。

 

「現状、それ以外には何もできんのぉ」

 

幽鬼の支配者(ファントムロード)》の魔導士にも強力な者達が居る。

まずは向こうのマスターであるジョゼ・ポーラ。

向こうのS級魔導士4人の総称である《エレメント4》。

そして最近入ったばかりな為S級の称号は持っていないが、S級同等の実力を誇る、鉄属性の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)、ガジル・レッドフォックス。

それ以外にも数名、無名の実力者が居るようだが、他は有象無象の弱者らしい。

しかしその人数は妖精の尻尾(ウチ)の数倍とも聞く。

 

「何か・・・嫌な予感がするな・・・・・・」

「それでも、今は動くわけにはいかん」

 

やるせない気持ちを抱えたまま、俺は地下の出入り口から差す陽光を見上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方になって、エルザとルーシィとレビィが帰ってきた。

昨日の朝から泊りがけで仕事に行っていたらしい。

これでギルドに今日いるはずの人間は揃った。

今いないのは長期の仕事に行っている人だけだ。

明日からギルドの建て直しをする予定となっている。

とりあえずこれから数日は複数人での寝泊まりが推奨されることとなった。

俺も例外ではない。

 

「おいナツ、開けていいのどれだ?」

「20年物までで頼むわ」

 

棚を覗くグレイに問われ、答えを返す。

 

「んじゃ、30年物貰うわ」

「オイコラ」

「冗談だって」

 

グレイが選んだワインを開けグラスに注ぐ。

 

「ナツ、こっちはできたぞ」

「いいタイミングだ。サンキュー、エルフマン」

 

エルフマンができたばかりの料理を持ってきた。

 

「ナツ、天体望遠鏡はどこだい?」

「右側の棚の青い取手の引き出しん中。ってかロキお前今用意するのか?」

「飲む前に準備だけでもしておきたくてね」

 

ロキが天体望遠鏡の場所を聞いてきたので教えた。

 

「おいビジター、踊ってないで運ぶの手伝え」

「待ってくれマックス。後10分、いや5分だけ・・・」

「却下に決まってんだろ馬鹿野郎」

 

マックスがビジターを引きずっていった。

 

そんな面子を前に俺は天窓から見える夜空を見上げた。

 

「こんな時に清々しいくらいの快晴だなぁ」

「あい、でも曇りだったらオイラの気分も落ち込んじゃいそう」

 

今頃他の皆も何人かで集まって飲んだりしているのだろうか。

このまま何事もなく終わって欲しいが、そうはいかないのだろう。

と、そんなことを考えているうちに準備ができた。

 

「んじゃ、とりあえず飲むか。あ、ハッピーはオレンジジュースな」

「あい」

「そんじゃ、乾杯」

『乾杯』

 

静かに乾杯をして、俺達は飲み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ、凄い数」

「えへへ~、そうでしょ。ここまで集めるの大変だったんだよ」

 

一方、ここはレビィの自宅。

ルーシィは現在彼女の家の大量の本棚を見上げて目を輝かせている。

この家には現在ミラもおり、彼女は料理中だ。

 

「二人共、できたわよー」

 

訂正。今料理が終わったところだ。

ミラが作った料理を置いた食卓を3人で囲み、食べ始めた。

 

そんな折、玄関の扉を叩く乱暴な音がした。

 

「あら? こんな時間に誰かしら?」

「あ、あたし見てくるね」

「オッケー。お願いね、ルーちゃん」

 

 

 

そしてルーシィが玄関の扉を開ける。

 

「はーい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「写真の通り、間違いねぇ。まさか一発目から辺りを引くとはな」

「・・・あの、どちら様、でしょうか・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギヒッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?」

「ん? どうかしたのかドロイ?」

「いや、なんかあっちの方で妙な光が」

「妙な光? 誰かが魔法でも使ったのか?」

「こんな時間に、か?」

 

「「・・・・・・」」

 

「急いで見に行くか」

「だな。あ、ジェット、悪いけど背負ってってくれ」

「あぁ、わかってるよ」

 



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