OVERLORD 自衛隊彼の地にて・・・ (ラルク・シェル)
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異世界の兵団

懲りずにまた新小説です。
今回はオーバーロードとゲート 自衛隊彼の地にて斯く戦えりのコラボです。ちなみに原作はオーバーロードにしました。


DMMO-RPG ユグドラシル。

近未来、西暦2126年の日本で始まり、とてつもない人気を誇ったオンラインゲーム。だが、サービス終了してしまう。

そんな中、プレーヤーの1人。鈴木悟=モモンガはプレイヤーの仲間達と一緒に作ったギルド、“アインズ・ウール・ゴウン”の拠点、ナザリック地下大墳墓に1人で残ることになった。だが突然、モモンガは自分達で作ったNPCとナザック地下大墳墓と一緒に異世界に来てしまった。その為か、NPCは自分の意思を持ってさまざまな法則が変わってしまう。

だが、ほかのプレイヤーもこの世界に来ていると考えると、さっそく自分の名前をギルド名からアインズ・ウール・ゴウンへと変える。しかしアインズは生涯で初めて星空を見た時の迂闊な一言を部下達が誤解し、ナザリックは一丸となって世界征服計画に乗り出し始めていた。

 

その頃、2010年の東京に巨大な門が現れた。

そこから大量の騎士とモンスターが現れて人々を襲い掛かった。だが、丁度ここに同人誌即売会に来ていた自衛官、伊丹耀司の適切な指示でなんとか異世界の敵を討伐する事が出来た。

そして日本政府は伊丹も含めた自衛隊を異世界・特地に調査に向かわせた。

 

 

 

 

ここはリ・エスティーゼ王国にある城塞都市のエ・ランテル。

そこに全身黒のフルプレートを着込んで背中に2本の剣を持った大男と、腰に剣を携えて黒髪ポニーテールの凛々しい美女が歩いていた。

 

「それで、アインズさ「モモンだ!」

 

大男は訂正するかのように叫んだ。

じつはこのフルプレートの大男こそが、モモンガ改めアインズ・ウール・ゴウンであり。美女も本当は戦闘メイド(プレアデス)の1人、ナーベラル・ガンマ。この2人は何故ここにいるかというと、プレーヤー探しの一環として冒険者になって名を上げるために来たのだ。

 

「とにかく私はモモンで、お前は冒険者仲間でパートナーのナーベだ」

「はい…モモンさ……ん」

 

そして2人は宿屋で部屋を借りて、しばらくしてから冒険者組合に向かおうとした時に。

 

「なぁ、知っているか?」

「ああ!たしか緑の服を着た人達が炎龍を蹴散らしたって」

「ん?」

 

アインズは酒を飲んでいる旅人の話に興味を持ち始めた。

 

「さっきの話を詳しく聞かせてもらおうか?」

 

さっそくアインズも旅人の話に割り込んでみた。

 

「え? いや…なんかよく知らないが、奴らは突然現れたらしいんだよ」

「んでさぁ、連合軍を見た事ない武器で全滅させた後、炎龍から村人を救ったんだぜ」

「見たことのない武器?」

「なんか、火を噴いたり飛んだりと…上手く説明できねぇんだ」

「そうか」

 

話を聞き終えたアインズは、かなり興味を持った。

 

[もしや…俺と同じようにこの世界に迷い込んだプレーヤーかな?]

「しかし、その話が本当ならば…我がナザリックの脅威になるかもしれません」

 

ナーベラルは心配そうにアインズに言う。

 

「心配いらん。たとえ、何者であろうともな」

「たしかに、そのとおりですね」

 

それから冒険者組合にて、漆黒の剣と呼ばれる冒険者チームと組む事になって、さらにンフィーレア・バレアレという薬師も同行して魔物退治に向かった。そしてゴブリンやオーガを討伐して、ンフィーレアの依頼のカルネ村に向かっていた。

 

「それにしても、モモンさんは本当にお強いですね」

「たしかに、どう見てもオリハルコンクラスの実力のようですからね」

「本当だよね、モモンさんはもちろんだけどナーベちゃんもね♪」

「うむ、アナタ達には驚かされるであるな」

「いえいえ、そんな事は」

 

 依頼人のンフィーレアは勿論。漆黒の剣のメンバーのペテル・モーク、ニニャ、ルクルット・ボルブ、ダイン・ウッドワンダーは感心したりしている。

 

「はっ!?」

「ん?なんか、聞いた事のない音が…」

 

 いち早く気付いたナーベラルと、ルクルットはどこから奇妙な音が聞こえてくるのに気付いた。

 

「みんな、あれ……」

「「「えっ!」」」

[あれは…まさか!?]

 

全員が目にしたのは3台の車だったが、どれも近代的な形状であると同時に、アインズにとっては見た事のあるものだった。

 

[じ、自衛隊だと!?]

 

それは自衛隊の高機動車と軽装甲機動車と73式大型トラックの3台だった。

驚くアインズだったが、ぺテルはすぐに3台の近くに駆け寄った。

 

「あの、すみません!」

 

すると車は立ち止まって、中から少しヒゲの生えた自衛官の男が出てきた。

 

「はい……なにか御用ですか?」

 

 自衛官は少しカタコトだが、ぺテルに話をし始める。

 

「もしかして、アナタ達が噂の緑の人ですよね?」

「え~~~と…よく分かりませんけど、そうですね」

 

自衛官の男はなんとか質問に答える。

 

「噂は聞いておりました!なんでも炎龍を撃退したとか」

「ええ…たしかに、倒してはないけどね」

 

少し恥ずかしそうにする自衛官。

ただ、アインズだけは信じられずにいた。

 

[おいおい!まさか、緑の人って自衛隊の事だったのか…しかしなんで自衛隊が?]

 

アインズが考え事をし始めると高機動車から、小柄でゴスロリ衣装に巨大なハルバードを持った美少女が降りてきた。

そのままゴスロリ少女はアインズに近づく。

 

「ん?」

「アナタ、なんだか不思議な匂いがするわねぇ♪」

「えっ!?」

 

ゴスロリ少女の言葉にアインズは思わずギョッとする。

しかしその瞬間ナーベラルが剣を抜こうとした。だが

 

「いっ!?」

 

アインズに頭を叩かれてしまう。

そして小さい声で話しかけた。

 

「ナーベ、お前何を?」

「しかしこの者、アインズ様の正体に気づきかけていましたので…」

「気持ちは分かるが、場所を考えろ!」

「……はい」

 

するとンフィーレアが馬車から降りてゴスロリ少女に声をかけた。

 

「あの…アナタもしかして、エムロイ神殿の?」

「ええ、ロゥリィ・マーキュリーよ♪」

 

2人の会話を聞いたアインズはある事を思い出していた。

 

[エムロイの神官…たしか、カルネ村で聞いた事が]

 

じつはこれから行くカルネ村は、この間スレイン法国に襲われたがアインズによって救われた。その時、村長にこの世界の事を色々と聞いたりした。当然、エムロイ神殿とそこの神官の事も。

 

「あの…」

「はい?」

 

 しばらくすると隊長らしき男が、アインズに近づいてきた。

 

「自己紹介しても良いですか?」

「ああ…良いが」

「どうも、俺は伊丹耀司っていいます」

「モモンだ」

 

これがアインズと伊丹耀司との出会いであった。




どうでしょうか?
ちなみにピニャ・コ・ラーダの住む帝国ですが、バハルス帝国とは別の帝国として名前をつける設定にします。どんな名前になるかは待っててください。


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カルネ村に到着

特地に位階魔法があるようにしました。それでテュカ・ルナ・マルソーは1位階の、レレイ・ラ・レレーナは第2位階の魔法が使える設定です。


アインズとナーベラルにンフィーレアと漆黒の剣達は、伊丹達陸上自衛隊と遭遇する。

 

「え~~~と、我々は此処とは違う。別の世界から来ました…そしてこうして、調査をしています…」

 

ぎこちない喋り方をする伊丹の隣で、魔法使い・ 魔法詠唱者(マジック・キャスター)の少女レレイ・ラ・レレーナが通訳をする。

ただし、アインズやナーベラルはちゃんと通訳なしで伊丹の言葉を理解していた。

 

「では、お尋ねしますが」

 

するとアインズは手を上げながら質問してきた。

 

「アナタ達の世界は…一体どういう世界なのですか?」

 

そんな質問に逆に伊丹は不思議そうに尋ねる。

 

「あの…なんでそんな質問を?」

「いや別に…ただ本当に別の世界に来たというなら……」

「まぁ、良いけど。それなりに平和な世界で、たしか…平成って時代の2010年くらい」

 

その言葉にアインズの中で衝撃が走る。

 

 [2010年? たしか…俺が居た年は2138年だった筈…]

 

アインズがこの世界に転移する前の鈴木悟という人間だった頃の時代は、2138年の環境汚染が問題とされて屋内での娯楽が当たり前となっていた世界だった。

即ち、伊丹達が来たとされる平成23年の2010年は、およそ128年前の過去という事になる。

 

[だが…考えられるかもしれない。彼らの装備が大昔のものだ!]

 

じつはアインズ改め鈴木悟が人間だった頃に、ネットで少し過去の自衛隊の事を調べて装備の種類とかを知ったのだ。

 

[という事は…私か彼らが時間軸のズレた存在なのか……]

「あの、アイ…いや、モモンさん」

「ん?」

 

深く考え事をしていたアインズだったが、ナーベラルに呼びかけられているのに気付いた。

 

「あの、なにか考えてたのですか?」

「あ…ああ、少し…」

「そうですか。では、そのカルネ村まで我々も同行しましょう」

「はぁ?」

 

伊丹の発言についアインズが間の抜けた声を出す。

 

「あの…すみません、うまく状況が読めないのですが…」

「いえいえ、じつはアナタ方が向かうカルネ村が丁度俺達と同じ道だったので」

「それに炎龍を追っ払った緑の人達なので、色々と話も聞けますし」

「はぁ、たしかにそうですな…」

 

こうして自衛隊も一緒に行くことになった。

 

「へ~~~そんな夢が?」

「はい、チーム名もそこからです」

「それにしても、そちらさんも美人揃いですな♪」

「あんまりいやらしい目で見ないでくださいよ」

「まさか、神官様まで一緒とは!」

「ふふふふふ♪なんだか楽しそうだからねぇ♪」

 

道中楽しく会話を続けながら進んでいった。

しばらくしてアインズと伊丹達は目的のカルネ村に到着する。しかし、村の周りには柵が出来ていた。

 

「隊長?あの村柵がありますね?」

「随分と用心深い村ってことだな?」

 

女性自衛隊員の栗林志乃が村の様子に疑問を持つ。

 

「あ、あれ?」

「どうしました?」

「いや、あんな頑丈そうな柵…前にはなかった筈?」

 

そしてンフィーレアも村の異変に気付き始めたが、いつのまにか柵の門と周りの草原からゴブリンが現れた。

 

「なんだっ!」

「ゴブリンだな?」

「おお!なんだ、やる気か!」

「栗林さん、なに興奮してるんですか?」

 

すぐさま武器を構えるペルテ達と自衛隊員。そしてやる気満々の栗林に富田章が呆れたりする。

 

[あのゴブリンはまさか…]

 

 だが、アインズはゴブリン達に何かしらの違和感を覚えた。

しかもゴブリン達もまるで戦おうとしない雰囲気で、1体のゴブリンがアインズ達に向かって喋り出した。

 

「すいやせんが、武装を解除してもらいませんか?」

「とくにそっちのフルプレートと、黒服の女からヤバイ臭いがするんでね」

 

しかもアインズとロゥリィの実力を見抜いたりする。

 

「なっ、なんだ?コイツらは…」

「たしかに、ただのゴブリンじゃありませんね?」

 

 ロゥリィやレレイと同じく付いてきたエルフの少女、テュカ・ルナ・マルソーも不審に思う。

 

「あの、どうしたんですか?」

「おっ!姐さん」

「姐…さん?」

 

すると1人の少女が別のゴブリンと一緒に門の前にやってくる。

 

「え、エンリ!」

「ん?あっ、ンフィーレア!」

 

ンフィーレアが叫ぶとエンリという名の少女も彼の名前を言って返事をした。

 

「あっ!もしかしてあの娘が!」

「であるな?」

 

ニニャとダインはなにか理解したようだが、伊丹達は全く理解できずに戸惑っていた。

 

「え……と、どういう事で?」

「どうやら彼女が、ンフィーレア氏が言っていた親友らしいである」

「へ~~~なるほど」

 

するとアインズもエンリの顔とゴブリンではっきりと理解した。

 

[そうか、やはりあの角笛のゴブリン達か!そして彼女の言ってた知り合いが…]

 

アインズがカルネ村で最初に救った村人が、エンリ・エモットと妹のネム・エモット。その時にマジックアイテム・小鬼将軍の角笛を渡して、魔法詠唱者の知り合いがいると話してくれた。その魔法使いがンフィーレアだった。

 

「あの、すみませんが…良いですか?」

 

そこに伊丹が割り込んできた。

 

「アナタは…?」

「この人は緑の人達のリーダーみたいなんだ」

「緑の人って、あの炎龍を倒した!」

「ええ、そうですね…んで、良いかな…村に入って?」

 

そして伊丹達も少しの間カルネ村で一息つく事になった。さっそく伊丹とレレイと桑原惣一郎が村長にそれぞれの事を話したりする。

 

「なるほど、スレイン法国に襲われたのですか」

「良くご無事で」

「それはあるお方のおかげですよ」

「あるお方?」

 

村長は話を続けた。

 

「そのお方は、ある地の魔法使いで少々世間知らずのようでしたが、魔法は第4位階か第5位階を超えると思われます」

「第5位階!?」

 

その言葉にレレイは驚く。

 

「なぁ、レレイ。前から思ってたんだが、その位階ってなんだ?」

 

伊丹は位階という意味についた尋ねた。

 

「簡単に言えば魔法の引き継ぎ。一般的には精霊魔法を含めた魔法を扱えるのは第1位階から第3位階まで、それからの第4位階から第5位階は天才か個人の限界となっていて、第6位階は伝説になっているの」

 

 レレイの真剣な説明に伊丹と桑原はなんとか付いていけた。

 

「で…では、その人の名前は?」

「はい、なんでもアインズ・ウール・ゴウンと名乗ってました」

「アインズ……ウール・ゴウン?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、テュカとロゥリィと栗林は村人がゴブリン達に剣や弓矢の特訓の様子を見ていた。

 

「熱心ですね…」

「そりゃ、また村が襲われても大丈夫なようにねぇ」

「しかしまさかゴブリンが人を助けるなんて、信じられないね」

 

すると話が終わったのかレレイがやってきた。

 

「あっ!レレイ」

「レレイ、どうだったの?」

 

3人はレレイにどんな話だったのか聞いてみた。

 

「うん、この村はアインズ・ウール・ゴウンっていう人が救ったって」

「アインズ・ウール・ゴウン?どんな人なの?」

「それは分からないみたい。仮面をかぶっていたみたいだけど、どうやら第5位階を超えた魔法を使えたみたいなの」

「「第5位階を超えた!?」

 

テュカとロゥリィも先程のレレイ同様に驚いた。

 

「それって凄いの?」

「凄いのなんのって限界の域ですよ!」

「アインズ・ウール・ゴウン…一度会ってみたいわねぇ…」

 

アインズという存在に興味を持ったロゥリィだったが、当の本人が近くにいることなど気付かずにいた。

 

[やれやれ、早くも話題になったか]

「モモンさん!」

「む?」

 

ンフィーレアが走ってアインズとナーベラルの所にやってきた。

 

「どうした」

「あの!モモンさんって、アインズ・ウール・ゴウンさんなのですか!?」

「なっ!?」

 

自分の名を当てられて少し驚いてしまった。

 

「ありがとうございました!村を救ってくれて」

 

そのままンフィーレアはお礼を言い始めた。しかし面倒な事になるかもしれないので否定しようとする。

 

「違う!私は」

「名前を隠されてるのは、何かの理由がありますよね。ですが、この村を!僕の大切な人を救ってくれて…ありがとうございました!」

 

さすがのアインズもこの状況ではお手上げのようだった。

 

「それで、ゴウンさんに隠していた事があったんです」

 

 それはンフィーレアの依頼の理由の事だった。この前、アインズが宿屋でブリタという女冒険者のポーションをダメにした事で、赤いポーションを渡したことから始まった。不思議に思いンフィーレアの祖母のリィジー・バレアレにポーションを調べて貰ったら、通常の製法では決して出来ない希少なものだった。だからその製法と持ち主が知りたくて依頼したのだった。

 

「なるほどな…だがここでは私はモモンという冒険者だ! アインズという名は誰にも言っていないのなら嬉しいが?」

「はい、誰にも言ってません!それでもエンリを救ってくれて、ありがとうございました!」

 

再び頭を下げてお礼を言うンフィーレアはこの場から去った。




これからはオリジナルのマジックアイテムを出しますし、また全く違った話の進み方になるかもしれません。たとえば、シャルティア暴走が東京帰還の後になるかもしれませんので理解してください。
そして次回は自衛隊と一緒に森の賢王=ハムスケ探しになるかもしれません。


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対決、森の賢王

テュカたちがハムスケをどんな風に感じるのか?


カルネ村で休息を終えたアインズと伊丹達一行。しばらくするとンフィーレアの薬草集めの手伝いをする事になった。

 

「なんかすみませんね。アナタ達にも手伝わせて」

 

申し訳なさそうに伊丹達に謝罪するンフィーレア。

 

「いえいえ、テュカとレレイも薬草が欲しいって言っていたから、ついでみたいなものですよ」

「ええ、この辺りの薬草は結構効くって噂ですから」

 

するとレレイは目の前の森を見てある事を思い出した。

 

「そういえば、ここら辺って森の賢王のテリトリーじゃあ?」

「森の賢王?」

「聞いた事あるわ。たしか、数百年も生きている魔獣だって。長い尾と白銀の体に、優れた英知と魔法が使えるみたいよ」

「ふへ~~~なんというチート設定」

 

自衛隊員で伊丹と同じオタク趣味の倉田武雄は森の賢王に少し引いたりした。

 

「ですが、殺さずに追い返してくださいね」

「え?なんでよ?」

「元々カルネ村がモンスターに襲われなかったのは、この辺りが森の賢王のテリトリーなので」

「つまり、ここの主を殺したらモンスターが好き勝手に暴れて村を襲うかもしれないって事だな?」

「そういう事です」

 

理解する伊丹にンフィーレアが返事をする。

 

「あの、ナーベはアラームに似た魔法が使えるので、少し2人で周囲を一回りして来ても?」

「構いませんよ。ですが、あまり離れないようにしてくださいね」

「分かりました」

 

こうしてアインズとナーベラルは少しの間、別行動をとる事になった。

それからンフィーレア達も薬草集めを開始した。しかし伊丹はアインズ達が心配になってきたので。

 

「やっぱ、アイツらだけじゃあ危ないからな…俺、探しに行っていいかな?」

 

伊丹は全員にアインズとナーベラルを探してもいいか尋ねてみた。

 

「別に構いませんけど、気をつけてくださいね?」

「分かってるって。とりあえず今持ってる装備で何とかするから」

「だったら、私もついて行きましょうか?」

「大丈夫だよ。すぐに戻ってくるし、それにこれ以上減ったらダメだろ?」

 

レレイやみんなにそう言ってアインズ達が行った方向に向かって進んだ。

 

「と言ったものの…こんなに深くちゃ何処探せばいいのか……?」

 

 初めて来た別世界の森で、半ば迷子になってしまう伊丹。

 

「は~~~これならテュカか栗林も連れてくるんだった」

 

少し後悔してると、どこからかアインズの声が聞こえてきた。

 

「ん?この声はモモンさんか?もしかしてこの近くに…」

 

 さっそく声がした方に行ってみると、林の向こうにアインズとナーベラルを見つけた。でもその2人が、何者かと会話しているところだったので木の陰に隠れた。

 

「では、その森の賢王をけしかければいいんですね?」

「そうだ。頼んだぞ、アウラ」

「お任せください!」

 

 木の枝で座っているのは、金髪ショートヘアーのオッドアイで、男の服装をしたダークエルフの少女。彼女は、ナザリック地下大墳墓・第6階層守護者のアウラ・ベラ・フィオーラという。

 

「多分アイツの事だと思いますので、待っててくださいね。アインズ様♪」

 

そのままアウラは枝から枝へと飛び移りながら離れていった。

 

「さてと、そこにいるのは分かっている。出てこい!」

「は…はい……」

 

アインズに勘付かれたので伊丹は姿を見せる。

 

「貴様は!」

 

つかさずナーベラルが剣を抜こうとしたので伊丹は思わず尻餅をついてしまう。

 

「待て待て!落ち着けって…」

「そうだ。ナーベ、今は引け」

「…はい」

 

ナーベラルは納得しないまま後ろに下がる。

 

「伊丹さん、アナタは先程の話を何処まで?」

「え~~~と…アナタがエルフと話していたところまで」

「……そうですか」

「んで、さっきのエルフの子がアインズって言ってましたけど…まさか?」

 

ここまでだとアインズは仕方ないと感じ、伊丹に本当の事を話した。

 

「いかにも私の真の名は、アインズ・ウール・ゴウン。かつてカルネ村を救った魔法使いだ」

 

アインズは自分の正体を伊丹に告白した。すると伊丹はそのまま地面に座り込んで考え始めた。

 

「なぁ、さっきレレイが第5位階から先は伝説になっていると聞いたけど…」

「はい…私は第10位階まで使えます…」

「10って…なんだかよく分からないような…」

 

そしてアインズはこう思った。この男なら自分の本当の名前や今までの事を話せるのではないかと。なにやら自分と似た雰囲気を持っている感じがするので。

 

「ナーベラル!」

「はい、なにか」

「しばらく、この男と2人っきりにしてくれ」

「で、ですが!」

「良いな!」

「……はい」

 

納得しないままナーベラルはこの場から離れた。

 

「あの、なにか?」

「今から見る事と聞く事を信じてくれないか?」

「信じるって何を?」

 

アインズはさっそく精神を落ち着かせて、頭部の兜を解除して伊丹に素顔を見せた。

 

「うわっ!?」

 

素顔を見た伊丹はまた驚いてしまう。なぜならアインズの素顔は頭蓋骨そのものだった。

 

「アンタ、スケルトンか!?」

「いや、私はアンデッド。いや…正確には死の支配者・オーバーロードだ!」

 

こうしてアインズは伊丹に全てを話した。自分の正体とかつて住んでた世界と、ここにいる理由も全て。

 

「つまり、アンタは俺達で言うところの未来人で…本名は鈴木悟。オンラインゲームの終了の時に、自分とNPC全員がこの世界に転移したって事?」

「そういう事になる。そして、ゲームの仲間達もこの世界に転移してないかと思って、冒険者になったという訳だ」

 

オタク趣味の伊丹はアインズの話にかなり興味を持ち始めた。

 

「じゃあ、ナーベさんとさっきのダークエルフの少女は?」

「仲間達と作ったNPCですよ。ナーベの正体はドッペルゲンガーで本名はナーベラル・ガンマ。ダークエルフはアウラ・ベラ・フィオーラ」

 

恥ずかしそうにしながらも話を続けるアインズ。

 

「なるほど、第10位階の魔法ってのはゲームでの経験値によるものだな」

「ええ、努力してここまでレベルを上げたので」

 

2人はなんとなく笑ったりするけども、しばらくしたら笑うのを止めた。

 

「それで…この事は…」

「はい、秘密にしますけど…もし喋った場合には…」

「そちらでお任せします」

 

こうして2人の会話はここでストップした。

 

「ナーベラル、もういいぞ」

「はい」

 

そしてアインズに呼ばれてナーベラルは林から出てきた。

 

「先程、どんな…?」

「気にするな。単なる世間話だ」

「はぁ……」

「じゃあ、一度戻りましょうか?」

「そうだな。心配されたら些か面倒になる」

 

3人はンフィーレア達の所に戻って薬草集めをした。

しばらくすると突然大きな走る音が鳴り響いた。

 

「ん?なに、この音は?」

 

いち早くテュカが音に気付くと、ルクルットは地面に耳をつけてた。

 

「こりゃ…デカイのが来るな…」

「まさか、森の賢王!?」

「そのようですね。では、みなさんは下がってください。私とナーベでなんとかします」

 

この時を待っていたアインズは全員を引かせようとした。

 

「モモンさん。無理しないで、なるべく殺さないように」

「分かってる」

 

 ンフィーレアと約束をするモモン。その後ろでは伊丹が栗林達に指示を出していた。

 

「お前らもなんとかンフィーレアさん達を守れよな?」

「隊長は?」

「俺か…もちろん、2人を残して引けないだろ?」

 

伊丹もアインズの隣に立つ。

 

「伊丹さん。なんで?」

「同じオタクとして見逃せないからな」

「そうですか」

 

小声で話をする2人の隣でロゥリィが入ってきた。

 

「ロゥリィ!」

「私も、一度森の賢王に会ってみたいからねぇ♪」

「あははははは、そうか。という訳だ!引け!!」

「では、隊長。ご無事で!」

 

栗林とンフィーレアを逃がして、アインズとナーベラルと伊丹とロゥリィは森の賢王を待ち構えた。

 しばらくすると、猛スピードで走ってくる影が近づいて来る。

 そしてアインズ達がいる事に気づくと長い尻尾で攻撃してきた。

 

「ふん!」

 

だが、ロゥリィが愛用のハルバードで防いだ。

 

「ほぅ、某の攻撃を防ぐとは見事でござる」

 

木の影に隠れながらロゥリィの実力を絶賛するかのように声が鳴り響いた。

 

「ござる?」

「さて…今逃走するのであれば、先の見事な防御に免じ、見逃してやってもよいでござるよ?」

 

 まるで見下しているかのようにアインズ達に逃走しても良いぞと言いだした。負けずにアインズも挑発し始める。

 

「笑止!そちらは姿を現せないのは、臆病だからか?それとも恥ずかしがり屋か自信がないのか?」

「言うではないか?良かろう、某の姿を見るが良い!」

 

アインズの挑発に乗ったのか、ついに森の賢王が姿を現した。

森の賢王の姿に、アインズと伊丹は言葉を失ってしまう。だから、伊丹は賢王に質問をしてみた。

 

「あの、ちょっと良いですか?」

「なんだ。言ってみるでござる!」

「もしかして、アナタはジャンガリアンハムスターって種族名?」

 

それは大熊と同じサイズで、まるで蛇と甲殻類を合わせたような長い尾のハムスターだった。

これが数百年生きたとされる伝説の魔獣の姿。

 

「なんと!お主らは某の種族を」

 

驚いたかのように巨大ハムスターは彼らに返事を返す。

 

「まぁ、知り合いがお前とよく似た生き物を飼っていてな」

「そうなのか!では、もし同族がいるのであれば教えて欲しいでござる!」

 

巨大ハムスターはアインズの話に興味を持ち始めた。

 

「とにかく子孫を作らねば、生物として失格でござるので」

「いや…それは、サイズ的に無理だろう?」

「そうでごさるか…」

 

残念がる巨大ハムスターだが仕方がなかった。掌サイズのハムスターとクマサイズのハムスターでは完全に無理だった。

 

「ならば、無駄な話は止めて命の奪い合いをするでござる!」

 

巨大ハムスターは両手の鋭い爪を構えながら戦闘に入ろうとした。

 

「と言ってるけど、どうする?とりあえず、威嚇射撃でも?」

「ふん!そちらは妙な武器を持っているようだが、某の前では全くの無意味でござるよ!」

「なんだかな~~~」

 

アインズは森の賢王が想像とは全く違っていたことに、呆れてため息を吐いてしまった。

 

[もう良いや…]

 

すると剣を巨大ハムスターに向けると、アインズはそのまま投げやりな感じに言った。

 

「スキル・絶望のオーラ!レベル1」

 

剣先から黒いオーラを放った瞬間。

 

「うひゃああああああ!!」

 

巨大ハムスターは全身の毛が逆立ちながら震えてそのまま倒れた。

 

「降伏でござる~~~某の負けでござるよ~~~」

 

涙目になりながらも巨大ハムスターは負けを認めた。

 

「なんだか、違う意味で疲れたな」

「たしかに…所詮獣か」

 

呆れたり苦笑いをするアインズと伊丹。

しかしロゥリィは倒れる巨大ハムスターを見ながら口を開く。

 

「まさか…こんなにも強いオーラを纏って、気品と気高さを兼ね備えた魔獣を何もしないで降参させるなんて…アナタ、やっぱり普通じゃないのねぇ!?」

「「えっ!?気品と気高さ!?」」

 

 なんとロゥリィは巨大ハムスターを倒した(?)アインズに驚きを隠さない。

 それからアインズと伊丹とナーベラルは、巨大ハムスターを連れて森の外に出た。結局巨大ハムスターをアインズの配下にする事にした。ちなみに、巨大ハムスターを嗾けたアウラは任務が終わったので帰った。

 

「これが、森の賢王ですか?」

「なんだかイメージと違う……」

「俺、てっきりクマとか狼のモンスターだと思ってましたよ」

 

 当然、栗林達は森の賢王の姿にイメージが崩れたりしていた。

しかしンフィーレアは

 

「なんて、立派な魔獣なんだ!」

「「「「「え!?」」」」」

 

さらにテュカ達も巨大ハムスターを見て。

 

「うん、想像以上だよ!」

「たしかに、優れた英知と力を感じるのである!」

「それになによりも、恐ろしいほどの気迫も」

「これだけの偉業を成し遂げるとは、ナーベちゃんを連れて行く程の実力者って事だね♪」

「私達だけでは、皆殺しになっていましたよ。やはりモモンさんは凄いですね!」

 

 全員がロゥリィと同じように巨大ハムスターを恐れたり、または賢王の姿を見て興奮したり。さらにはそれを連れてきたアインズに感動したりする。しかし、アインズと伊丹達自衛隊は巨大ハムスターが、それ程凄い存在なのか全然理解できなかった。そこで栗林は現地の人間である冒険者に尋ねてみた。

 

「あの、本気で言ってるの?」

「本気とは一体」

「だって、これって可愛いって単語が似合いそうな?」

「可愛いだなんて!こんな恐ろしくも勇ましい魔獣の何処にそんな言葉が!」

「いやいやいや!なんでもない…」

 

ぺテルに迫力に負けてしまう栗林だった。

それから巨大ハムスターの協力も得て、薬草集めは早くも終わる事ができた。

 

「本当にありがとうございました」

「いえいえ、困ったときはお互い様ですから」

 

ンフィーレアとぺテル達は自衛隊にお礼を言った。ただし、アインズはまた伊丹とこっそり話をした。

 

「なんだか、色々とお世話になりました」

「別に、俺も形は違えど日本から来た人が居てちょっと安心しましたよ」

「と言っても、アナタにとっては過去から来たという形ですからね」

「たしかに、とりあえずこれでも」

 

アインズが青い水晶のバッジと風の形をしたペンダントを伊丹に渡した。

 

「これは?」

「マジックアイテムですよ。貰ってください」

「そうですか…では」

 

伊丹はさっそくマジックアイテムを2つ貰った。

 

「では、我々はこれで!」

「じゃあ!またどこかで!」

 

伊丹達は高機動車と軽装甲機動車と73式大型トラックに乗って、アインズ達と別れた。

 

「では、我々も」

「は~~~」

 

 しかしなぜかアインズは乗り気ではなかった。なぜなら巨大ハムスターの背中に乗ってエ・ランテルに帰るからだ。

そして巨大ハムスターはハムスケと名づけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、アインズ達と離れた伊丹達。しかし車内でロゥリィの発言が混乱を呼んだ。

 

「ねぇ、伊丹」

「なんだ?」

「あのモモンって人。彼が、アインズ・ウール・ゴウンでしょ?」

「いっ!!」

「「「「「「え?!」」」」」」

 

その言葉にテュカやレレイ達、高機動車に乗っている全員が驚いた。

 

「モモンさんが、アインズ・ウール・ゴウン!!」

「それ本当?!」

「ええ。あの鎧かは分からないけど、どうやら魔力を抑えていたみたいよ。それに、彼から死者の臭いもしたわ」

「死者?」

「つまり、アンデッド?」

「そういう事ねぇ?」

 

次々と当てられるので伊丹は頭を抱えてしまう。

 

「てか、隊長。モモン…いや、アインズさんを探したりしましたよね?」

「え?あの…」

「先程、アインズ殿とも会話してましたし?」

「だから…え…と」

 

結局伊丹は全員に問いかけられてしまったので、仕方なくアインズとモモンが同一人物だと話した。

ただし、アインズが未来の日本からから来たというのは話さなかった。アインズと伊丹の2人だけの秘密という事なので。




伊丹はモモンがアインズだと知り、ロウリィもアインズだと気付きましたね。元々ロウリィもアンデッドに近い存在なんで分かるかもしれませんね。
次回は、ンフィーレア篇やイタリカ攻防篇じゃないかもしれませんが待っていてください。


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伊丹の危機

残念ですが、ンフィーレア後の話になります。さらにシャルティア暴走はさらに後にしています。
現在シャルティアはセバスと合流する前に、ほかの集落などを調査してるという設定です。


エ・ランテルに戻ってきたアインズとンフィーレア達。だが、ンフィーレアが何者かに誘拐されて、漆黒の剣が全員殺されてニニャ以外の3人がゾンビとなってしまった。だからリィジーはアインズとナーベラルにンフィーレアを救ってくれと依頼をした。

ナーベラルの魔法でンフィーレアの居場所を見つける。敵が潜伏している墓地でアインズ達は、ズーラーノーンという組織のクレマンティーヌとカジット・デイル・バダンテールを倒して、見事ンフィーレアを救出した。

そして一度ナザリック地下大墳墓に戻ったアインズとナーベラルだった。

 

「長旅お疲れ様でした。アインズ様」

「ああ、留守中すまなかったなアルベド」

「そんな。勿体無きお言葉♪」

 

自分の部屋に戻ってきたアインズは、骸骨の顔で紫のローブを纏った本来の姿で、羊の角と黒い羽の白いドレスを着た美女が出迎えてくれた。

この美女はナザリック地下大墳・階層守護者統括のアルベド。

 

「うむ…それでセバス達はどうなっている?」

「はい、明日になったらシャルティアと合流すると言っております」

「そうか…では、セバスから出た情報を」

「こちらに」

 

アルベドはナザリック執事のセバス・チャンと、戦闘メイドで捕食スライムのソリュシャン・イプシロンからの情報資料をアインズに渡した。

資料によれば、なんでもバハルス帝国とは異なる国家・セクフィア帝国が大分離れた場所に存在して、どうやらリ・エスティーゼ王国とは遠いが少し友好関係にあるらしい。かなりの覇権国家で、さまざまな所で侵略戦争を続けて奴隷狩りをし続けている。

 

[伊丹さんから聞いた話じゃあ…銀座に軍勢が現れて、そいつらがセクフィア帝国の兵という可能性があると言ってたな?てか、たしかカルネ村の村長もたしかセクフィア帝国の説明もしていたっけ?しまった!うっかりしていた…]

 

思い出して少し恥ずかしがるアインズだったけども、資料を読むのを再開した。そのセクフィア帝国領土に、イタリカと呼ばれる都市は帝国の食料供給地。

 

[たしか…伊丹さんはこのイタリカに向かうって言ってたような…]

「あの、アインズ様?」

「え?ああっ!悪い、つい考えていた」

 

アルベドに声をかけられて、すぐ我に帰ったアインズだった。

 

「そういえば、セバスの話では緑の人と呼ばれるもの達が現れたと?」

「それならすでに会ったぞ」

「あら、そうでしたのですか」

「彼らは見た事のない武器と乗り物を使っていたからな。まぁ、その内の1人とはなんとか友好関係をとることに成功した」

[といっても…半分抵抗していたな…]

 

伊丹が少し自分の骸骨顔に引いていた事を思い出していた。だが、アルベドはなにやら安心した表情になっていた。

 

「でも、本当に良かった…」

「ん?」

「アインズ様がご無事で…もしアインズが緑の人に傷付けられたときには、奴らを皆殺しにしますから!!」

 

とてつもなく強い殺気を放ち始めるアルベド。そして今にも眼光からビームを発射しそうなまでに輝いていた。

このままでは色々マズイと思い、すぐにアインズが止めに入る。

 

「落ち着けアルベド!こうして私は無事なんだから」

「たしかに、そのとおりですわね」

「まぁ、ところであれは?」

 

するとアインズは自分の姿がプリントされた抱き枕が置いてあったので尋ねて見た。

 

「すみません、片付け忘れて。これはアインズ様が出かけられた時に作ったものです。ほかにもほら♪」

 

さらに手編みの服と靴下を取り出して見せた。

 

「こ、これは?」

「もちろん!生まれてくる子供の為にと作っておいた服です!男の子用のと女の子用も用意してますわ!なんでもデミウルゴスの話では、男の子にも女の子の服を着せても良いって言ってましたわ!マーレもその1人ですし!!」

[いや…それはぶくぶく茶釜さんの趣味なんだが…]

 

ここまで真剣でアインズは引いてしまった。しかしアルベドがここまでアインズLOVEなのには訳があった。

 

[は~~~ゴメンなタブラさん…]

 

それはアルベドを作ったのがタブラ・スマラグディナという設定マニアで、本来アルベドの設定では【ちなみにビッチである】とされていた。しかし最終日にアインズがこれで最後なので、その設定を消してふざけ半分に【モモンガを愛している】と変更した。

そのせいでアルベドはアインズに惚れてしまった。

 

「まぁ、とりあえず…イタリカはどんなものか見てみるか」

 

アインズはマジックアイテムの“遠隔視の鏡”で伊丹達がいるとされるイタリカを覗き込んだ。

そこで映し出したのは、上空から見たイタリカの様子だった。破壊された塀と建物が目立っていた。

 

[なにやら戦いの後みたいだな?さて、伊丹さん達は?]

 

伊丹達を探していると自衛隊がイタリカから離れているのがわかる。

 

「もしかして、あの乗り物に乗っているのが緑の人でしょうか?」

「ああ、そうだ」

[撤退しているのか?まさか、伊丹さん達が襲ったわけじゃあ…ん?]

 

すると前方に馬に乗った集団が走ってきていた。そして集団の一人が伊丹に話しかけると、いきなり殴りかかった。

 

「え!?」

 

当然アインズは驚いてしまうので、もっと拡大してみてみる。

すると伊丹が残りの自衛隊を逃がすが、リーダーらしき者が怒ったのか、伊丹を縛って馬に引きずられてた。

 

「伊丹さん!」

「あ、アインズ様?」

「あっ…な、なんでもない。その、少し1人にしてくれ」

「はぁ…アインズ様がそう言うならば」

 

納得しないままアルベドは部屋を後にした。そして1人残ったアインズはなぜ伊丹が捕まったのか考えた。

 

[まさか…本当にイタリカを攻撃して捕らえられたのか?しかし、仮にも自衛隊は侵略的な行為はしないはず…]

 

しばらくするとつい忘れていたことを思い出す。

 

[そうだ!こんな時こそ、伊丹さんに渡しておいた“千里の視聴”があるじゃないか!]

 

じつはアインズが伊丹に渡した2つのマジックアイテムの1つ。バッジ型のマジックアイテムは“千里の視聴”と呼ばれる“遠隔視の鏡”のようなもの。それは赤と青のがあって、それぞれ持っている者の目で見たものが見えるという物。

さっそく赤のバッジを額に掲げながら目を瞑ってみると、それは甲冑に包まれた足で蹴られる光景だった。

 

[なんだこれは…]

 

いきなりこんな光景でアインズは引いてしまう。そしてしばらくすると女だけの騎士達に連れられて玉座の間のような所に連れてこられた。すると玉座に座るピンクの髪をした美女が伊丹の隣の金髪の美女に向けてコップを投げた。

なにやら取り返しのならない事になってしまった感じに悩みだした。

 

[どうやら、この彼女が彼らのリーダーのようだが…]

 

それから2人が話をしながらも、最後は伊丹がメイド達に連れられてどこかに行った。

 

「う~~~ん。この様子だと、なにやら誤解を受けて謝罪した感じになるな?」

 

アインズはどうして伊丹がこんな目にあっているのか気になって仕方がなかった。

 

「良し、これを使おう!」

 

すぐにアインズは伊丹に渡したもう1つのペンダント型マジックアイテム、“テレパウィンド”を使うことにした。これは所謂電話のようなもので、ナザリックの関係者はある程度なら通話が出来るが、通話の出来ない距離や種族でもこれがあれば出来る。

 

「しかし、まさかこれが役に立つとはな…」

 

かつてユグドラシルの時にテレパウィンドは、なんの役にも立たないアイテムらしいが、こうして役に立つ日が来たのだった。

さっそくテレパウィンドを首にかけて、千里の視聴を持ちながらそのまま伊丹に話しかけた。

 

《伊丹さん!伊丹さん!》

「ん?この声って…アインズさん!?」

 

伊丹は耳元でアインズの声が聞こえた。

 

《聞こえるってことは、ペンダントを持っているのですね》

「え…と…もしかしてこのアイテム?」

 

偶然なのか幸運なのかは不明だが、伊丹は常にテレパウィンドと千里の視聴を身に着けていた。そのおかげでアインズが伊丹は今部屋のベッドに寝込んでいるのを確認した。

 

「やっぱり、このマジックアイテムの効果ってやつですかね?」

《ええ、ところで一体どんな状況なんですか?なんか捕まったみたいでしたけど?》

「いや~~~なんか敵だと間違えられて」

 

話によればイタリカは盗賊に襲われており、セクフィア帝国王女で薔薇騎士団の団長ピニャ・コ・ラーダと一緒に盗賊を全滅させた。そしてピニャと交渉することが出来たが、その帰り道で薔薇騎士団と遭遇し、隊長のボーゼス・コ・パレスティーに敵だと思われたので、伊丹は仲間たちを逃がして自分が身代わりになり今に至る。

 

《なるほどね…》

「ええ、でもなんとか誤解が解けましたので」

《それはそれは大変でしたね。では、また後で連絡いたします》

「そうしてください」

 

伊丹との通信が終了したアインズ。そしてアルベドを部屋に入れた。

 

「あの、一体誰かとお話ししていましたけど?」

「いや…なんでもない」

[なんでもないって、まさかアインズ様が浮気を!]

 

勝手に妄想し始めるアルベドをすぐにアインズが止めた。

 

「落ち着け!少し親友と話してただけだ」

「親友というと、まさか!至高の御方達が見つかったのですか!?」

「そうではない。緑の人だ」

「もしや、先程アインズ様が言っていた緑の人のうちの1人ですか?」

「そうだ。だが、今は今後についてだ」

 

再びセバスや他にも調査に向かわせた一般メイド達の調査表に目を向けた。

それから夜になって伊丹からの連絡が来なかった。

 

[おかしい…これを使っても何も見えないってことは、持っていないってことか?]

 

心配になってきたアインズはこんな事まで考え出す始末。

 

[…伊丹さんいた部屋は、すでに千里の視聴で見て確認したからな。ゲートでちょっとだけ見て帰っていくことにしよう。まぁ、ほんの少しなら…]

 

そんな事を企みだすアインズだったがすると

 

「アインズ様。何を考えているのですか?」

「え?」

 

いつのまにか後ろに現れたのは、オールバックにメガネにスーツの少しマフィア風の男。

彼は第7階層守護者のデミウルゴス。一番最初にアインズの発言を誤解して、世界征服に乗り出そうとしたのが彼であった。

 

「アインズ様。お尋ねしますけど、もしかしてどこか出掛けるつもりですか?」

「ああ…少し友の様子を…」

「いけません。アルベドから聞きましたが、いくら緑の人と友好関係を持ったとしても、奴らはいずれ我らの野望の障害になる存在!油断はできないもの!!」

「そんなことは分かってる!だか、ほっとく訳にもいかないものだ」

 

やってきた時代が違っていても、アインズにとっても同じ日本人と会えたのだから。どうしてもほっとく事が出来ずにいた。

 

「頼む。なるべくすぐに戻ってくる。だから…」

「では私も同行します」

「え?」

「そのアインズ様が友として認めた者の顔を一度見てみたいので、それならばいいでしょうか?」

 

なにやらとんでもない事になってしまったアインズ。しかしこのままでは話が進まなくなると思った。

 

「…じゃあ、なるべく殺気を抑えるようにしておけ?」

「承知」

 

デミウルゴスが付いて行くことになって後悔し始めるアインズ。

しかしもう後戻りはできないので、さっそくアインズはゲートを展開して伊丹のところに向かった。ただし、ゲートを使うには目にした場所にしか移動できないのだが、遠隔視の鏡や千里の視聴を使えばなんとかなるのだ。

 

「さてと、待っててくださいよ!」

 

ゲートを潜ってアインズとデミウルゴスが見たのは、ベッドの上で横になる伊丹の周りで、テュカと栗林達が亜人のメイド達と仲良く話し合っているのがわかり。さらに色気のあるネグリジェを着込んだ、あの金髪美女のボーゼスも居た。そして周りはアインズとデミウルゴスの姿を見て沈黙が漂ったが

 

「て、敵だ!!」

「「「「きゃあああああああ!!」」」」

 

ボーゼスは声をあげると同時にメイド達も叫び出す。それから素早くメイドの持っていたナイフを手にして、ボーゼスはそのままアインズに向かって刺そうとした。

 

「まっ、待て!?」

 

伊丹の言葉を無視してボーゼスが、アインズの胴体に突き刺した。だが

 

「やれやれ…いきなりこれとは。まぁ、これが当然の反応だな?」

「なぜ死なない?!」

「当然だ。私は死者なのだからな」

 

アインズは何事もなかったかのように、ナイフを奪い取って投げ捨てた。

 

「貴様…至高の御方にナイフで突き刺すとは!」

「ひっ!?」

 

アインズを傷つけた事にデミウルゴスはボーゼスに殺意を見せる。その殺気にテュカと栗林達は警戒し始めたが、アインズがすぐに落ち着かせる。

 

「止せ!約束した筈だ。殺気を出すなと」

「申し訳ありません。しかし、この者は」

「そう!この女は私の大切なアインズ様に攻撃したのよ!」

 

すると展開し続けていたゲートから声が響きながらも、そこからアルベドが現れた。

 

「アルベド…なぜここに?」

「勿論、今後のためにもアインズ様の部屋の前にいました。ですが、アインズ様がデミウルゴスと共にゲートでどこかに行こうとしたので、すぐさま後から追いかけたのですよ!なのにその下等生物の女がアインズ様にナイフを、ナイフを!!」

 

怒り狂うアルベドに周りからは引いた視線が出て

 

[こんな事なら、来なければよかった…]

 

改めて後悔するアインズに伊丹は同情する。




アインズがイタリカへ伊丹の顔を見に行くという展開と、オリジナルマジックアイテムの設定ですが、少し無理があったでしょうか?
そしてピニャの住む帝国の国名をセクフィア帝国にしてみました。


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ナザリック全員集合

なんとかアルベドを落ち着かせたアインズは、伊丹の計らいで王女兼団長のピニャと出会う事ができた。

 

「オーバーロード…死の支配者とは…」

「お初にお目にかかりるピニャ王女殿下。我が名はアインズ・ウール・ゴウン」

「私はアインズ様に仕えるアルベド」

「同じくデミウルゴスと申します」

 

ピニャに挨拶するアインズ達。しかし完全に異形な存在のアインズ達にいささか戸惑いを見せた。それから栗林達も。

 

「本当にアンデッドだったなんてね…」

「てか、あれってスケルトンっスよ」

「なんか本当に不気味」

 

そんな感じであった。もちろんテュカ達も同じ反応だった。

 

「あんなにスラスラと喋れるアンデッドがいるなんて」

「それも、5位階を超えるって…」

「まさか…ハーディの手下なんかじゃないでしょうねぇ?」

 

ロゥリィはアインズが冥府の王ハーディと繋がりがあるのかないのか気になっていた。

 

「で、私に何か用なのか…」

 

ピニャは冷や汗をかきながらもアインズに尋ねた。もしこのアンデッドがこの領地だけでなく、セクフィア帝国を狙う事になったらまるで歯が立たないと既に分かっていたからだ。

そして盗賊からイタリカを守ってくれた伊丹達自衛隊でも、彼らを倒せるかどうか分からなかった。

 

「お前は、なにか勘違いしているのでは?」

「ん?」

「私はただ…友の伊丹殿が心配になって会いに来ただけだ。争う理由などない…寧ろ驚かせたこっちに非がある」

 

軽く頭を下げてピニャ達に謝罪するアインズ。アルベドとデミウルゴスは殺気を出しながら続いて言った。

 

「下等生物共、アインズ様が貴様達に態々頭を下げたのだ。感謝する事ね?」

「そういう事です。もしも今度このような事が起きたら覚悟してください」

 

2人の強烈なまでの威圧にこの場の全員が引いたり怯えたりする。しかしピニャはこのままアインズ達が本当に何もせずに帰ってくれるかどうか心配していた。

 

「あの…すみませんが、もう隊長を連れて帰りたいんですけど?」

「我々はもう帰りたいと言っている」

 

通訳のレレイが富田の言っていることをピニャに伝いえると、彼女はもっと困った顔になって引き止めようとする。

 

「ちょっと待った!朝食を用意してやるからもう少し此処に!!」

 

もしもこのまま帰られたら、セクフィア帝国と薔薇騎士団の信用に関わるかもしれないと感じていて。さらにもしかしたら自衛隊と戦争になるかもしれないと焦ったピニャは、なんとしても伊丹達を引き止めようとする。

 

「大変うれしいのですけど、伊丹隊長は国会の参考人招致を任せられて…」

「国会の参考人…」

 

その言葉にアインズは興味を持った。

 

「お尋ねしますが、伊丹さんはなんの参考人として国会に?」

「それは、炎龍の犠牲者とかセクフィア帝国の事とか色々」

 

するとアインズは考え始めた。

参考人という事は一度、日本に戻るという意味に。つまりなんとか自分もその関係者に入れば、日本に行ける可能性が高いと。

 

「アインズ様?どうかしましたか?」

「えっ!いや、別に何も…伊丹さん!!」

「はい?」

 

さっそくアインズは伊丹に小声で相談し始める。

 

「あの、参考人って事はアナタ方の世界に戻るって意味ですよね?」

「え……っと、そういう事になりますけど…まさか?」

「はい、私も日本に連れてってくれませんか?」

 

伊丹に自分も日本に行かせてくれとお願いするアインズ。しかし、いきなりそんな事を言われて戸惑う伊丹。

 

「いや~~~どうしよっかな…」

「お願いしますよ。一応、私の世界でもありますから…」

「じゃあ、なるべくその姿を隠せば良いと思いますけど…」

「分かった。では、決まったら連絡を」

 

相談が終わるとアインズはすぐにゲートを展開した。

 

「では、我々はこのまま帰るとしよう」

「え?もう帰るのですか?」

「そうだ。元々…伊丹さんの様子を少しだけ見に行きたかっただけだからな。そんなに留まる必要はない」

「たしかに、長居は無用ですね」

 

そしてアインズは全員の前で

 

「では、皆さま。またどこかで会いましょう」

「下等生物共。今度またアインズ様に手を出したら許さない!」

「という訳ですが、それでは」

 

アルベドが念入りに脅しをかけながらも、アインズはそのままゲートからナザリックに戻ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼時のナザリック。

アインズが自室で色々と調べごとをしていた。

 

[とりあえず、これだけ見ればいいかな?後は、伊丹さんからの連絡が来れば…]

 

その時、普段から身に着けることにしたテレパウィンドから伊丹の声がしてきた。

 

《アインズさん、聞こえていますか?》

「ええ、聞こえてますよ伊丹さん」

 

返事を返すアインズ。そして本題に入った。

 

「あの…それでアナタ達の世界に行くのは、いつ頃に?」

《明日ですけど》

「明日!随分といきなりですね?」

《いや~~~初めから決まっていた事なので》

「分かりました…では、こちらも何人か連れていきますので」

《ええ、では明日》

 

連絡が終わって伊丹の声が聞こえなくなった。明日には日本に行くことになったアインズは、すぐにナザリックの全員に通話をし始める。

 

「ナザリック地下大墳墓に残っている階層守護者及び、戦闘メイド達に命ずる。至急玉座の間に集結せよ!」

 

さっそく現在ナザリックにいる階層守護者と戦闘メイドを呼び出す。そして10分程で玉座の間には、集結させた階層守護者と戦闘メイドが待機していた。

扉が開いてアインズが中に入ると、全員が一斉に2列でひれ伏せていた。

 

「我らがオーバーロード」

「アインズ・ウール・ゴウン様に…」

「「「「「栄光あれ!!」」」」」

 

アルベドとデミウルゴスの後で敬礼し始める。そしアインズはそのまま歩いて玉座に座った。

 

「ふむ…全員見事に集まったな」

「当然デ、ゴザイマス」

〔なぜなら私は…モモンガ様改めアインズ様のシモベですので〕

 

かなり片言で返事するのは、巨体で背中に2つの氷の結晶が突き刺さった昆虫型のモンスター。第5階層守護者のコキュートス。

さらにエノグ語という言語を使って喋ったりするのは、天使の輪と枯れ木型の羽の胎児の姿をした天使。第8階層守護者のヴィクティム。

 

「もしかして、この前の緑の人達の事ですか?」

「たしか、アインズ様は会いましたよね?」

 

さらにアウラと一緒に現れたのは、金髪でオッドアイのミニスカートをした男の娘のダークエルフ。アウラの双子の弟で同じ第6階層守護者のマーレ・ベロ・フィオーレ。

ちなみにアウラとマーレの製作者はぶくぶく茶釜っていう、エロゲーからギャルゲーまでやる売れっ子女性声優で、趣味として2人がそれぞれ男装と女装する設定になっていた。

 

「それで、ナーベラルも緑の人と出会った筈ですね?」

「んで、どんな人達だったっスか!?」

「なんでも…少し変わった武器を持っただけで、下等生物には変わりない」

「武器…見て…みたい」

「シズ、どうやら緑の人の使ってた武器に興味持ってございますね」

 

本来の黒いメイド姿のナーベラルに尋ねるのは、メガネをかけた真面目という言葉が似合いそうなデュラハン。戦闘メイドリーダーのユリ・アルファ。

それから赤髪で小麦色の肌をして明るく声を上げて質問する女は、人狼で戦闘メイドのルプスレギナ・ベータ。

自衛隊の武器に興味を持っている眼帯の無表情で無口の少女は、自動人形(オートマトン)の戦闘メイドのCZ2128・Δで通称シズ・デルタ。

蟲のような髪とまるで仮面のような顔してシズの言ってることを理解した少女は、蜘蛛人(アラクノイド)の戦闘メイドのエントマ・ヴァシリッサ・ゼータ。

現在ナザリックにいる階層守護者と戦闘メイドで第1〜第3階層守護者の吸血鬼、シャルティア・ブラッドフォールンはセバスとソリュシャンと合流するまで調査中。

 

「さて、アルベドとデミウルゴスにはすでに知っているが、明日どうやら異世界からやってきた自衛隊と呼ばれる者たちの代表が、一度元の世界に戻るようだ」

「それは昨日彼らの会話で知りましたけど…それが一体?」

「じつはな…私も行くことにしたのだ!」

 

そんなアインズの言葉に全員は驚いた。

 

「それは本当ですか!?」

「ああ、昨日約束したんだ」

「なるほど、これを機にその異世界も征服という事ですね?」

「いやいや…そんなのではない」

 

デミウルゴスの意見を否定という名のツッコミをしながらも話を進んだ。

 

「とりあえず、明日には自衛隊代表の伊丹さん達と門の前で待ち合わせする事になったが、何人か私と同行することを認めよう」

「「「「「はっ!」」」」」

[と言っても…まともな姿をしてるのは少ないからな…]

 

とりあえずアインズはまず誰を連れていくか考えた。かなり人間離れしているコキュートスとヴィクティムは除外して、デミウルゴスも連れてくのを外そうか悩んだ。しかし、アインズが気になるのは強い眼力で、連れてってと心の中で叫ぶアルベド。

そして悩んだ末に、行くメンバーを決めた。

 

「では、まずはアルベド」

「はっ!」

「続いてアウラとマーレ」

「はい!」

「あ…はい!」

「そして、ナーベラルだ」

「はい」

 

日本に行くのはアルベドとアウラとマーレとナーベラルとなった。

 

「中々の組み合わせですね。たしかその異世界は人間が多いとか」

「まぁな、なるべく人間に近いものなら大丈夫だとな」

「ウウ…モシ我ガ人間ノ姿ナラ…アインズ様ト行ケタ筈…」

 

アインズの決めた選抜にデミウルゴスは納得したが、行けない事を悔しがるコキュートス。

 

「では、明日の為に4人とも準備するように!」

「「「「はっ!」」」」

「それでは、残りは再びナザリックの防衛に尽力を尽くすように」

「「「「はっ!」」」」

 

話が終了して各自それぞれやるべき事に入った。そしてアインズも自室で支度を始めた。

 

[まずは服装だが…このローブはもちろんモモンの姿じゃダメだよな。それにこの顔も隠さないと…後は資金だけど…]

 

もしも日本に行くとなれば、お金も必要だと分かっていたが、どうやって手に入るか考え始めた。すると何かを思いついたアインズはある場所に転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

日本に行く為の門と自衛隊の拠点があるアルヌスの丘。その門の前に冬服の伊丹が立っていた。すると車が到着すると、栗林と富田とさらにテュカとレレイとロゥリィが出てきた。

 

「2人共遅いぞ」

「すみません。色々と支度して」

 

さらに今度は別の車が止まると、そこから派遣部隊幕僚の柳田明がピニャとボーゼスと一緒に出てきた。

 

「おい、柳田。なんだよこれは?」

「なにって、ピニャ・コ・ラーダ殿下とボーゼス・コ・パレスティー公爵公女閣下も一緒に行きたいと行っておりましたので」

「聞いてねぇぞ?」

「仕方ないでしょ?彼らはどうしても…ん?」

「え?」

 

その時、伊丹達の前にあの時と同じゲートが出てくる。そこから現れたのは、アインズとアルベド達4人。今のアインズの姿はデミウルゴス風のスーツに、アイテムの嫉妬する者たちのマスクだった。

ただし、アルベドとアウラとマーレとナーベラルはいつもと同じ格好で来た。

 

「アインズさん、来てくれましたか。その恰好は?」

「もちろん、怪しまれないようにとね」

「ええっと…アナタが、アインズさんですか?」

「はい、アインズ・ウール・ゴウンといいます」

 

アインズは初めて出会う柳田に挨拶した。

それから栗林と富田は改めてアルベドとナーベラルに話しかける。

 

「どうも。一度しか会ってないけど、こんにちは。それにしてもまさか、アナタがメイドだったなんてね」

「それがなにか?」

「言っときますけど、アインズ様に手を出すつもりなら容赦しませんからね」

「そんな、殺気を出さないでくれませんか?」

 

などと2人は冷たい目で返事を返したりする。ついでにテュカはダークエルフのアウラとマーレに話をしてきた。

 

「じゃあ、アナタ達。ずっとアインズさんに仕えているんだね?」

「まぁね!」

「でも、この世界にエルフがいるって事は、ダークエルフもいるかもしれないね?」

 

するとレレイとロゥリィはマーレに声をかけて質問してきた。

 

「ところで、なんでアナタは女の子の服を着ているのぉ?」

「え?それってどういう…」

「だって、彼って男な筈でしょ?」

 

ロゥリィとレレイがマーレの本当の性別を当てた。その事実に伊丹達はしばらく沈黙が続いたが、アインズがすぐに切り替えようとした。

 

「あの、気持ちは少し分かるかもしれませんけど…早く行った方が?」

「え?あ…はい、そうですね。では行きますよ」

 

こうして伊丹の指示に従って、アインズはアルベド達と一緒に門を潜って日本に突入した。




せっかくですので、シャルティアとセバスとソリュシャンを除いたナザリックの守護者と戦闘メイドを登場させました。
ちなみにヴィクティムのエノグ語はさすがに分かり難いと思いましたので、少し「」を変える形にしてみました。
次回の日本来日編をお楽しみに。


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アインズ一行日本へ・銀座編

日本に戻ることになった伊丹達は、テュカとレレイとロゥリィとピニャとボーゼスだけでなく、アインズとアルベドとアウラとマーレとナーベラルと一緒に、巨大な門・ゲートを潜った。

そして彼らが目にしたのは

 

「これは…」

 

摩天楼という名がふさわしい沢山のビルが立ち並ぶ東京の銀座。ティカ達やピニャ達は勿論、アインズ達もこの光景に驚愕していた。

 

[なんて事だ…まさか100年前の東京に来るなんて!タイムスリップの気分だ!]

 

アインズにとっては過去に戻ったのと同じ感覚であった。そして冷たい冬の風を感じ始める。

 

[それに呼吸が出来なくてもよく分かる…これが本来の東京の空気!俺のいた時代の世界とは本当に違う…]

 

それからアインズ達だけでなくアルベド達も、銀座の光景に驚いていた。

 

「ここが、至高の御方達が住んでいたとされている場所…?」

「なんというか…言葉では表現できない…」

「スゴイ!スゴイ!なにこれ!」

「本当だね…」

 

当然のような反応だった。するといきなり栗林が泣いて混乱し始める姿があった。

 

「あの…どうしたんですか…?」

「じつは…」

「ウソよ!あんなオタクの隊長が…レンジャーだったなんて!!」

 

どうやら彼らの前に駒門英世という防衛省の情報部から来た男が現れて、そこで伊丹が幹部レンジャーで特戦群だった事にショックを受けていた。

これがかなりのショックだったのか、未だに泣き続けている。そして駒門はその様子を見て笑い出した。

 

「あはははははは!アンタやっぱり面白いね。働き蟻の中の怠け蟻として尊敬するよ!」

 

なんとも嫌味な言い方をする駒門に見送られながらも、一行はバスに乗って町の中を進んだ。

未だにショックから抜け出せない栗林だったが、アインズはこれからの行動について尋ねる。

 

「で、まず最初に?」

「そうだな。これから国会に行くんだから、恰好からかな?」

 

最初に着いたのはスーツショップで、ティカとアルベドとナーベラルに黒いスーツを着せる。

 

「へ~~~スタイルが良いから、3人共スーツが似合ってるわね!4人も着て見る?」

 

立ち直った栗林がスーツ姿の3人を見て褒めたりしながらも、レレイとロゥリィとアウラとマーレにも勧めてみた。

 

「えっ!いやいや、アタシそんなの似合わないって!!」

「僕も結構です…」

「同じく」

「これ、神官の正装よ」

 

似合わなかったり不要だったりと断る4人。それからアルベドはアインズにスーツ姿の自分について尋ねてみた。

 

「どうでしょうか?アインズさま♪」

「え?ああ、似合ってるぞ」

 

アインズの感想を聞いて子供みたいにはしゃぐ。ちなみにピニャ達はスーツの生地に興味を持ったりしていた。

それから昼食は牛丼屋で食事を始めた。

ちなみにアインズはアンデッドなので食べる必要がないが、アルベドとナーベラルが食べていた。ただし文句を吐きながら。

 

「下等生物共の食べ物なんて、やっぱり私達には合わないわね…」

「たしかに…ナザリックのご飯と比べても味付けは変ですし、なんかべちゃべちゃと」

「双方!あまり文句を言わんでよろしい」

「「はい!アインズ様!」」

 

アウラとマーレは牛丼を気に入ったのか美味しそうに食べてた。

 

「これって、かなりいけるね♪」

「うん、おいしいね!」

 

なんとも微笑ましい光景であった。

 

[あ~~~牛丼かぁ、現実でよく食べてたな~~~まぁ合成だけどな。それに今の俺はこんなんだから、食べる必要もないし…懐かしいなんて気にもならないしなぁ]

 

ちなみにアインズが居たとされる未来では、合成食品やサプリメントが殆ど。しかしながらも少し複雑な気持ちになっていた。

またバスに乗って町を進んで行くが、アインズは運転手に止めるようにとお願いした。

 

「あの、ちょっと止めてもらっても良いですか?」

「え?」

 

運転手は思わずバスを停車した。当然、全員は停車させた理由について聞いてきた。

 

「ちょっと、いきなり何を?」

「すみませんが。頼みたいことが」

「頼みたいこと?」

「これを、あっちの店で換金してきてくれませんか?」

 

するとポケットから出したルビーのような赤い宝石を出して、目の前にある宝石店に売ってきてとお願いした。

 

「え…と、これって?」

「我々はこの世界の通貨は持っていないので…」

「はぁ…じゃあ、僕が」

 

さっそく富田は赤い宝石をもって宝石店に向かった。

 

「あれって?」

「ええ、ユグドラシルのアイテム。まぁ、ダメ元で持って来たけど…多分いい値はしないか偽物扱いされるかですけどね」

 

苦笑いするアインズ。しばらくすると富田は辺りをキョロキョロしながらも、なるべく怪しまれないようにと早歩きでバスに戻って来た。

 

「ただ今、帰りました…」

「どうしたんだ?なんか様子がおかしいぞ?」

「そうだね?汗もびっしょりだし…一体なんが?」

「もしかして、アナタに渡した宝石の事で?」

 

その質問に頭を縦に振る富田は深呼吸しながら気を落ち着かせた。

 

「あの…アインズさんが持ってきた宝石ですけど…」

「はい、売れたんですか?」

「一応……売れたのですが…」

「そうですか、で…どれぐらいで?」

「1000万円」

「「「「「1000万!!?」」」」」

 

とんでもない金額の言葉と一緒に、1000万円の札束を見せたので伊丹も栗林も、さらに換金を頼んだアインズは驚く。

 

[嘘だろ?適当に決めた宝石がそんな高値で…第一あれユグドラシルの通常アイテムだろ?!]

 

アインズは予想外の値段に信じられずにいた。ユグドラシルで使っていた金貨ではダメだと考えて、あえて宝石アイテムの1つを持ってきたのだ。

 

「店の人達、かなり慌てていましたよ。相談しあったりして……」

「そうですか…」

 

さっそく1000万を均等に5等分にして4人に念押しに言った。

 

「では5人で200万!無駄使いはするなよ?」

「「「「はい」」」」」

 

再びバスを走らせた。そしてようやく目的の国会議事堂に到着して、伊丹はアインズに尋ねた。

 

「じゃあ、俺達は国会に行くけど。一応、アンタ達も来てよな」

「分かりましたが、ピニャ王女達は?」

「彼らは日本に来てないことになってますからね」

 

伊丹とアインズ達がバスから降りて、栗林と富田はピニャとボーゼスと共に別の場所に向かった。かつて銀座を襲ったセクフィア帝国の捕虜について話をするために。

それから国会内部でも

 

「じゃあ、ここからは中継されるかもしれないからな。気を付けるんだぞ」

「分かってます。アルベド、アウラ、マーレ、ナーベラル。お前たちもな」

「了解です」

 

そして伊丹達4人とアインズ達5人が委員会室に入ってくると、一斉にしてカメラや人々に注目された。こうして議員とアインズとテュカ達の波乱が始まるかもしれなかった。




ついにアインズにとって過去の日本にやってきました。そして持ってきた宝石を売る話は、「はたらく魔王さま」と「海賊戦隊ゴーカイジャー」からになります。
さらにアルベドの羽は収納可能にしたので、スーツを問題なく着れることが出来ます。
次回は議員の質問攻めにアインズ達はどう答えるのか?


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アインズ一行日本へ・国会編

国会議事堂では、テュカ達はもちろんアインズ達も議員やマスコミの注目になっていた。

 

[こうして見ると、政府が生きているって実感できるな…]

 

アインズの住んでいた未来では、政府など機能しなくなって巨大複合企業が支配される形になっていた。だから政府や議員などがちゃんとしている事に新鮮な感じだと思える。

それから伊丹達とアインズ達は席に座ると、さっそく審議質問が始まる。最初に質問してきたのは幸原みずきという女性議員。

 

「では、単刀直入にお尋ねしますが…アナタ方、自衛隊員が保護した特地の避難民がドラゴンによって150人犠牲になりました。その理由は?」

 

幸原は伊丹に対して少し意地悪な質問をした。これで与党を叩いて自衛隊の力不足だと認めさせようと企んでいる。

その質問に対して伊丹は

 

「それは…ただドラゴンが強かったのと、武器が弱すぎた事です」

「はぁ?」

「7.62㎜なんて豆鉄砲ですよ?もっと超電磁砲とかの強力な奴なら、なんとかなったと思いますけどね」

 

なんとも予想外という理由に幸原や他の議員も固まってしまう。だが、すぐにレレイやテュカにも質問してきた。しかしそれでも回答は曖昧なもので、ついにロゥリィの質問に入ってきた。

 

[喪服を着ているってことは、これで政府に非がある質問が聞けるかもしれない…]

 

そう確信した幸原だったが、その時アインズが手を上げ始める。

 

「あの、すみませんが」

「なにかしら?」

「私にも、話させてくれませんかね?」

 

アインズも質問に参加してくれないかとお願いする。そして許可が得ると、さっそくロゥリィの隣に立つことが出来た。

 

「それでは、お尋ねしますが…アナタはさっきから、被害者が出たのは自衛隊の責任だと言っているみたいですな?」

「ええ、そのとおりです」

「……全くもって愚かな…」

「は?」

 

アインズの言葉に幸原は呆気にとられてしまうがすぐに切り替えた。

 

「愚かって、私が?」

「そうだ。つまり貴様は、自衛隊なんて廃止しようと思っているはずだ?」

「なっ!」

「だが、伊丹殿の言っている通りドラゴン相手に通常の武器など役に立たなかったと分かる。しかしそれでも彼らは、難民を4分の3救った事になる。それで十分ではないのか?」

 

どうやら幸原の態度が気に入らなかったのか。強い殺気を全身に纏ったアインズの口から語る内容は、確かに間違ってはいなかった。それも自分の企みにも少し気づき始めていることに、幸原は固まってしまうがすぐに切り替える。

 

「しかし!自衛隊が犠牲者を出したのは事実ですのよ!」

「まだ、そんな事を言うのか…本当に愚かだ」

「ひっ!」

 

もっとアインズが怒りと殺気を出し始めると幸原はもちろん、周りの議員や伊丹にまでその殺気に少し怯えたり冷や汗をかいたりする。これにはテレビ越しで見る視聴者の半分にも及ぶ。

 

「こんなに怒らせて、アナタって本当にお馬鹿ねぇ。お嬢ちゃん?」

「お嬢…ちゃん」

 

さらにロゥリィも幸原をバカにするような発言をし始めると、それに続いてアルベドもやってくる。

 

「お前、アインズ様の話を聞いていなかったのか?たかが下等生物がどれだけ死のうとかまわないけど、アインズ様が自衛隊の活躍を認めているだけでいいのでは?」

「下等…?」

「人間なんて、我らにとっては下等な存在ですから」

 

アルベドとナーベラルも質問が気に入らなかったのかストレートすぎる発言。これにはなんとか冷静に質問してきた幸原も、ついに堪忍袋の緒が切れる。

 

「か…下等って、アナタ方!さっきから随分と失礼な発言しまくってますね!人が質問をしているというのに、お嬢ちゃんだの下等生物だの!!」

「待ってください!彼らは特殊なんで…」

 

伊丹がなんとかこの場を落ち着かせようと入ってきた。続いてレレイも入って来て発言する。

 

「そもそもロゥリィは見た目はこうですけど、結構長生きなのですから」

「長生き?では、一体何歳なのか教えてくれませんかね?」

 

疑ったのかロゥリィに年齢について尋ねてみた。

 

「私?961歳よぉ」

「……え?あの、もう一度…」

「だから961歳よぉ、私♪」

 

とんでもない年齢に幸原や他の議員も度キモを抜く。

 

「では、テュカさんは?」

「165歳ですけど?」

「あっ、アタシ達は2人そろって76歳ね」

「165歳…76歳…!?」

 

テュカに続いてアウラとマーレの年齢にも驚きを隠せずにいた。そしてレレイにも訪ねてみる。

 

「レレイさん、アナタは?」

「15…人間種なので」

 

これにはなぜか安心してしまう議員たち。しかし次に聞いたのはアルベドとナーベラル。

 

「ところで、御2人の年は?」

「そんなのありませんが」

「え?」

「私はインプでありサキュバスですから」

「そして私はドッペルゲンガー」

 

自分達が年齢という概念が存在していないことを全員に教えると、ついにアインズも自分の正体について語り出した。

 

「ついでに教えておきますが…私も年齢はない」

「ないって…」

「私は死者…アンデッドだ」

 

その発言には伊丹やアルベド達以外の全員がさらに騒めく。

 

「し…しゃ……」

「ええ、別にこの仮面をとっても良いですけど、素顔を見る勇気はアナタ方にありますかな?」

 

仮面に手を付け始めるアインズ。さらに伊丹も参加する。

 

「という訳ですので、これ以上話すことはないかと思いますけど…どうしますか?」

 

しばらく氷のように固まり続ける幸原はしばらくすると、目の前の資料を綺麗に片付ける。

 

「もう良いです…以上です」

 

敗北したのか聞くのが怖いのかは不明だが、小声で言って質問を終了することにする。そして本来はバスだが、マスコミなどの罠から回避する為に地下鉄に乗り込むのだった。

丁度、栗林達も合流したけども、ピニャとボーゼスは勿論。ロゥリィもかなり怯えている。このまま地の底に連れて行かれるかと心配になっていて。しかし人間だった時から地下鉄を使っていたアインズと、元々地の底にいたアルベド達は平気であった。

 

「地下鉄…ダブラ様が言っていた地下を進む乗り物」

「本当に地下を走っているのね?」

「もしかして、この国の墳墓に繋がっているのかな?」

「そんな事を言わないでぇ!!」

 

そんなこんなで次の駅に到着したが、そこには駒門が先回りしていて乗り込んだ。

 

「まさか、バスを囮に使うとはな」

「我々は…あんまり人目を避けたいと思っていますので」

 

しばらくするとあまりにも怯え続けるロゥリィが見るに堪えなくなった伊丹は、仕方なく途中の駅で降りた。だが、これには駒門も焦ってしまう。

 

「おいおい、勝手に動いたら困るだろ!?」

「分かってるけどな…」

 

地上に出るとロゥリィは生き生きとし始める。

 

「駒門さん、アンタが言っている敵の狙いは?」

「それはもちろん、威力偵察とかだよ。バスも電車も失敗したから、恐らく直接的な行動に」

 

その時、大きく鈍い音が響き渡った。なぜなら不審な男がロゥリィのハルバードを引ったくりしたが、あまりにも重くて逆に潰されてしまう。

 

「なにやってんだコイツは?」

 

呆れた駒門はハルバードを拾い上げようとした。

 

「あっ、それは」

「え?…ふぎゃ!?」

 

伊丹の警告も束の間。重さでギックリ腰になって駒門は、そのまま救急車に運ばれてしまった。

 

「やはり、ニンゲンなんて本当に弱い生き物ですね」

「まぁな…だが、今は…」

「ですな」

 

2人はこのままホテルに向かうのは危険だと考える。しかも全員が泊まる筈のホテルはボヤ騒ぎで使えなくなった。だが、伊丹は近くに心当たりがあるというので、全員はその場所に歩いて行った。そして到着したのは安アパート。

 

「なんなの、このみすぼらしい建物は…」

「本当です。至高の御方にこのような所を!」

「いや、でもここは俺の知り合いが借りているから」

「知り合い?信用出来るのですか?」

「なんとなくだけど」

 

少し乗り気にはなれない伊丹だったが、そのまま扉に立って開けて中に入る。するとメガネをかけた明らかにオタク風な女性が、やつれた感じに匍匐前進して駆け寄った。

 

「遅かったじゃない…ご飯も電気代も…」

「分かった分かった。ちゃんと出してやるよ」

「あの、その人は?」

 

アインズは伊丹に泣きついてきた女性は誰なのかと尋ねた。

 

「この人は、葵梨紗といって…俺の元嫁さんね」

「「「「「元嫁!?」」」」」

「伊丹さん…結婚を!?」

「まぁね。離婚したけど」

 

伊丹が元既婚者だったという展開には誰もが驚愕した。




審議質問でも幸原がイジワルな質問をしてきたに対し、見事アインズ達で懲らしめました。
そして伊丹の元嫁の葵梨紗の登場しました。
次回はナザリック達の自由時間です。


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アインズ一行日本へ・自由編

マスコミや自分達を狙う敵から逃げなきゃならない上。おまけに泊まる筈のホテルが火災にあってしまったので、アインズ達は伊丹の元嫁という葵梨紗の住むアパートに転がり込んだ。

 

「外側もそうだけど…部屋もなんて様なの?」

「アルベド様、全くそのとおりですね」

「ちょっと、泊めて貰っているのにその言い方は?」

 

部屋の中で文句を言うアルベドとナーベラルの2人。

 

「たくさんの本があるね…」

「しかも、挿絵が多いけど」

「これがぶくぶく茶釜様の言ってた、マンガって奴だね」

 

アウラとマーレは置かれているマンガ本に興味を持ったりする。ちなみにピニャとボーゼスはBL同人誌を読んだりしていた。

 

「もしや…アナタの元奥さんも?」

「ええ、オタクなんですよね…」

 

アインズに尋ねられて伊丹は少し恥ずかしそうに言う。すると葵が少し不機嫌な感じで伊丹に尋ねる。

 

「ところで、改めて聞くけどなんで家なの?ますます狭くなったし…」

「そうですよ!いくら元奥さんでも民間人を巻き込むなんて危険すぎますよ?それに駒門さんも」

「だってギックリ腰になった人を無理やり連れてこられないし。しかもこのままだと、駒門さんも十分あやしくなるから…」

「それよりも、一体どうやって寝るつもり?」

 

葵は最初からそんなに広くない部屋が、大勢入って来たのでもっと狭くなった部屋の事で聞いてきた。

いくらなんでも狭すぎてどこでどうやって寝るのか分からないのだった。するとアインズは顎に手をかざして考えると何かを思いつく。

 

「あの、でしたら我々はこうしましょうか?」

「「「え?」」」

 

それから伊丹達は居間で、アウラとマーレとナーベラルは押し入れ。そしてアインズとアルベドは屋根の上で一夜を過ごすのであった。当然屋根にシートを敷いて2人は毛布に包まった。

 

「アインズ様をこんな所に過ごさせるなんて」

「いやいや、思いついたのは私だからな」

「まぁ、それでもアインズ様と過ごせるならどこだって♪」

 

そのまま嬉しそうにアインズに抱き着くアルベド。もうどうにでも良いと思うアインズだったが、上空の夜空と星を見て改めて自分が日本にいると自覚する。

 

[俺って本当に日本にいるんだな?]

 

アインズは思った。もしもこの日本が自分のかつていた日本の過去の形で、いずれ大気汚染で人が普通に住めなくなってしまうのかと。でもそんなことを考えても仕方ないと分かっていた。

 

[そもそも、ここと俺のいた所が繋がってる訳じゃないしな。でも、本当に暇だな…動きたくても動けないし]

 

分かっていると思うけどアンデッドのアインズは、食事はもちろん睡眠の必要はない。おまけにアルベドが抱き着いたまま眠っているので、とても長くて暇な夜を過ごすのだった。

そして長かった夜が終わって太陽が昇り朝になり。ロゥリィは朝の祈りをささげている頃、ようやくアインズも朝になって解放されたと思った。

 

「ふ~~~やっと朝になったか…」

「ん…もうちょっとこのままで」

「ダメだ」

「う~~~」

 

残念そうになるアルベド。そしてアインズ以外の全員が朝食を食べ終わった途端に伊丹が

 

「よーーーし、今日は楽しむぞ!!」

「楽しむとは?」

「もちろん遊ぶんだよ!俺のモットーは喰う、寝る、遊ぶ!」

「しかし良いのか?我々を狙う敵とやらが?」

 

ナーベラルは伊丹の言っている敵が今でも狙っているのではないかと警戒していた。

 

「もしも敵が居場所を知ったのなら、どこでも同じだろ?それに人気の多いところが結構安全かもしれないしな」

「たしかにな。一先ず我々には休息が必要だ」

 

伊丹の提案に賛成するアインズだった。

 

「行きたい、行きたい!!」

「そうだね…せっかくの東京だし」

 

葵と栗林もそれなりに行く気満々で、それからピニャ達が図書館に案内してくれと富田に頼んできた。

 

「この世界のお土産とか、たくさん買おうね」

「もちろん!シャルティアが羨ましがるようなものをね!」

「みんなにはどんなものが良いのか?」

 

さらにアウラもマーレもナーベラルも何を買おうか考えていた。そしてアルベドもアインズを誘おうとしてた。

 

「では、アインズ様も我々と」

「いや…私は別の所に行きたい」

「え?」

 

アルベドの誘いを断ったアインズは伊丹に近づき。

 

「あの…すみませんが」

「なにか?」

「じつはある場所に行きたいんですけど?」

 

小さい声で伊丹にその場所の案内をしてくれないかと頼んだ。

 

「まぁ、良いですけど」

「本当にありがとうございます」

 

会話が終わるとアルベドがショックでうるうるとした眼差しになってしまった。これにはアインズも想定外だとはっきりしていた。

 

「すまないな。でも、本当に仕方のないんだ…だから頼む」

「でも…」

「とにかくだ。後の子の為の買い物もした方が良いぞ」

「後の子の!?」

 

それを聞いたアルベドはすっかり立ち直ったので安心するアインズだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうしてそれぞれ3つのグループに分かれて遊びに出かけたのだった。

まずは栗林とアルベド達は原宿・渋谷で買い物をしていた。初めは買い物に興味がなかったロゥリィだったけど、色んな種類のゴスロリ衣装を見て気が変わった。

テュカとレレイとロゥリィが着替えをやっているので、当然アルベドとアウラとマーレとナーベラルにも色んな服を着替えして楽しんでいる。ちなみにアウラとマーレは、普段から男装と女装しているという事から逆に着ていた。

たとえばアルベドには白いカットソーと黒いミニスカートで、ナーベラルは青いパーカーにショートパンツとニーソックス。

さらにアウラは白くレースの入った落ち着きのあるワンピースで、マーレはラフな感じのジャケットとジーンズになっていた。

 

「うわ~~~!4人共、似合ってる!」

「きっとアインズ様も気に入るかしら♪」

「しかし、こういう衣装は…」

「なんか…ねぇ?」

「うん…ちょっと恥ずかしいよ」

 

恥ずかしがる3人とは別にアルベドは色々と服を選び続けた。

富田とピニャとボーゼスは図書館に到着する。するとピニャとボーゼスは葵の所から持ってきたBL同人誌を取り出して、芸術の資料がないか頼んできた。

そしてアインズは伊丹に頼んである所に案内されてる。

 

「はい、着きましたよ」

「おお!これが…」

 

アインズが行きたかった場所はネットカフェだった。

 

「じゃあ、俺はここで」

「はい、ありがとうございます」

「では時間通りに来てくださいね」

 

伊丹が離れるとさっそくアインズはネットカフェに突入した。

最初は受け付けで入金をし始める。

 

「え~~~と、初めての方…でいいですよね?」

「はい」

「では、PCワンルームに3時間で良いですか?」

「それでお願いします」

 

店員は昨日の事を知ったのか初めて見るアインズの姿に少し戸惑いを見せた。なんとなくこうなるのだと理解していたアインズは、すぐに指定されたPCルームに向かうと、さっそくパソコンを立ち上げた。

 

「こういうパソコンは、なんとなく懐かしいな」

 

人間の頃は仕事とネトゲー以外なにもやる事はなく。異世界に行ってからは色んな騒動に巻き込まれたり関わったりしてきた。だからパソコンを使うのは本当に久しぶりだと感じていた。

 

「では、まずは環境問題について」

 

最初にアインズが調べたのが未来では問題となっている環境について。それから政治も開いてみると昨日の事でいっぱいになっていた。

 

「やれやれ…当然だしな」

 

少し恥ずかしそうになったりする。それから今流行ってるアニメとマンガとゲームについても調べた。

 

「あっ!このマンガ読みたかったけど…俺のいた時代だと、もう絶版扱いになってたからな…ネットで読んだけど」

 

笑いながらもネットを楽しんだりするがすぐに時が経ってしまう。

 

「もう時間か…もうちょっと調べたかったけどな」

 

もう少しゆっくりしたかったが仕方なくネットカフェを後にした。でもまだ待ち合わせには時間があるので、ゆっくり辺りを見ながら歩いたりするアインズ。

 

「本当に俺って東京にいるんだな~~~ん?」

 

するとアインズは一軒の古本屋を発見した。興味を持ったのかそのままアインズは古本屋に足を運んだ。

 

「ほ~~~こんなにもマンガが…あっ?!」

 

アインズが目に留まったのは、先程のネットカフェで発見したマンガの単行本全巻。

 

「全巻そろってるな。なんだか少し緊張するな」

 

さっそく一巻から読み始めると、あっという間に夢中になってしまう。だが、後一時間で行かなきゃならなかった。

 

「マズイ…早く行かないと。でも…ええい!」

 

考えた末に思いついたのが、アインズは気に入ったマンガを衝動買いしてしまった。しかも美少女ゲームのビジュアルファンブックも一緒に。

まさかの衝動買いにアインズは少し恥ずかしくなり始めると、丁度そこに伊丹がやって来た。

 

「あれ?こんなところでなに落ち込んでるの?」

「聞かないでください…」

「はぁ?」

 

あまり検索してほしくなさそうな雰囲気をしてたので、アインズも伊丹も何も言わずに待ち合わせに歩いて行った。

到着すると女性陣の大量の荷物に伊丹はため息を吐いた。

 

「ええっと、お前達3人はなに買ったの?」

 

するとテュカとレレイとロゥリィは買ったものを答えた。

 

「こんぱうんどぼう!軽くて扱いやすいのにスゴイ威力♪」

「本は必要。それからたぶれっととぴーしーも」

「こっちの神官服ってみんな斬新なデザインだからねぇ♪」

 

買った物を説明する3人。それからアインズもアルベド達に何を買ったのか尋ねてみた。

 

「では、お前達は何を?」

「もちろん、未来のアナタ様との子の為の服ですわ!それから子育てについての本も!」

「魔獣達のお菓子とか調教グッズに、ついでにこのぬいぐるみも♪」

「僕は、植物の本や双眼鏡とそれから…僕もぬいぐるみを」

「当然ユリ達のお土産を色々と考えましたけど、とりあえずこの国の銘菓とメイド服の資料を」

 

4人も4人で服以外に色々と買っていたようだ。仕方なくそれらの荷物をアイテムボックスに収納させた。それから富田はなにやら落ち込んでいた。その理由はピニャ達の探している資料が図書館になかったのだ。そもそも同人誌やBL本は図書館にはあまり置かないものだから。

 

「とりあえず、全員温泉行くぞ!!」

 

切り取りなおして、全員はさっそく温泉旅館に向かうのだった。しかし密かに彼らを追う影が存在していた。




自由時間ではアルベド達のファッションシーンはどうでしたか?それからアウラに女の子の、マーレには男の子の服を着せたりしてみました。そしてアインズのネットカフェと古本屋の過ごし方も。
次回の温泉編も楽しみにしてください。


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アインズ一行日本へ・温泉編

山海桜閣という温泉旅館に到着した伊丹達は、まず男性と女性に分かれた。しかしそれに納得しないのがアルベドだった。

 

「なぜ私が、アインズ様と別々なのよ!」

「いやいや…ここはさすがに…」

「そうだ。郷に入っては郷に従うという事だ」

「しかし……」

 

アルベドのウルウル目と離れたくないオーラがアインズの心にビンビンと響き始めた。

 

「まぁ、もしもなにかあったら…いつでも私達の所に尋ねてくればいいから…少しはガマンするんだぞ」

「…はい」

 

アインズがなんとか説得するが、それでも納得しない様子のアルベドだった。とりあえずさっそく温泉なので、それぞれ男湯と女湯に向かった。そして密かに防衛省の特戦群が、旅館の周りで監視をしている。

脱衣所では女性陣が服を脱いでいると、ロゥリィとアルベドにナーベラルとアウラが、視線を感じたので窓から外をのぞいた。

 

「4人共、どうしたの?」

「視線を感じる…」

「ええっ?!」

「なっ!」

「まさか…隊長が!」

 

なぜか伊丹が一番疑われたが犯人は監視中の特戦群で、ロゥリィと目が合った事から一度この場から離れた。でもアルベドが窓から顔を出して辺りを見回す。

 

「私の体は、アインズ様だけの物…それは即ち万死に値する!」

「同意!」

 

同じ意見をするナーベラル。そんな様子をただアウラやレレイは見ているしかなかった。

 

「たしかに、勝手に覗きをされるのは本当に嫌だよね」

「でも、私は普通に村の井戸で水浴びしているけど、気にしなかったよ」

「そ…そうなんだ」

 

少しレレイのマイペース差と羞恥心の無さに引いたりする。

そしてアルベドとテュカ達が初めての露天風呂に驚いたり興味を持ったりした。

 

「これが…露天風呂!」

「泉がお湯になってる♪」

「こんなたくさんのお湯、どうやって?」

「まさか、こんな画期的な浴場が存在するとは!」

「殿下、ここは異世界です」

 

するとロゥリィとアウラが体に巻いたバスタオルを取って、そして2人が顔を合わせるとにやけた表情になり。そのまま湯船に入ろうとした瞬間。

 

「コラ!」

 

2人の後ろから栗林とナーベラルが抑えた。

 

「まずは、体を綺麗に洗ってから!」

「だそうですね」

 

仕方なく2人は一度体を洗うのだった。そして男湯では、久々の温泉に伊丹と富田もまったりと浸かっていた。

 

「あ~~~本当に温泉は良いな」

「ですね~~~」

「ここには男2人しかいないな」

「ですね~~~僕は、普通に女の人が好きなんです!!」

「勘違いしてんじゃねぇよ!」

 

否定する富田に伊丹も否定し返す。するとそこにマーレが女の子みたいに体をバスタオルで隠してってきた。これには2人も本物の女の子が来たのかと思って驚く。

 

「うわぁ、本当に大きなお風呂ですね。アインズ様!」

「そうだな。でもマーレ、あんまりはしゃぐと危ないぞ」

 

さらに腰にタオルを巻いて胸には赤い水晶が輝く、全身骨格姿のアインズもやって来た。アインズの姿を間近に見た伊丹と富田は、今度は違う意味で驚き湯船に入るアインズ達から少し離れ始める。

 

「あの…もしも怖かったら、もっと離れても大丈夫ですから」

「いや…なんかすみません」

 

気を遣うアインズの言葉に2人は少し気まずくなってしまう。それから肩まで漬かるアインズだったが、伊丹は少し近づいて尋ねてみた。

 

「ところで、風呂に入る必要はあるのですか?」

「気分ですよ気分」

「なるほどね…たしかに何事も気分が大事ですからね」

「はい…」

[隊長、随分と打ち解けてますね…]

 

オタク同士気が合うのか温泉に浸かりながら会話し続ける2人を、ただ見続けるしかない富田。そしてマーレはゆったりと温泉を満喫していた。

その頃、アルベド達もゆったりまったりと温泉に浸かっていると

 

「ねぇ、みんなで面白い話をしよう♪恋話とか?」

 

葵が全員に恋話しようと提案した。

 

「恋話ねぇ…そういえば、アルベドさんはなんでアインズさんの事が好きになったの?」

 

栗林がいち早くアルベドとアインズの関係について聞いてみた。

 

「勿論、あのお方の全てです。我が絶対的な支配者にして、私が最も愛する人…」

「ふへ~~~そういえば、富田ちゃんがボーゼスさんを?」

 

すると今度はボーゼスにターゲットを変えてきた。さらに興味を持ったのかピニャも入って来る。

 

「なに?それは聞いていないぞ。どうなのだ」

「いえ…騎士団では交際は禁止な上に、身分とかも」

「無粋なことを言うな。白状するがよい!」

「うひゃ!お止め下さいお姉様!」

 

ピニャが後ろからボーゼスの胸を鷲掴み揉み始める。なんとも百合的な光景ながらも、アウラは葵に質問し始めた。

 

「ところでさぁ、なんでアンタは伊丹って人と結婚したのに離婚しちゃったの?」

「え?」

「たしかにねぇ。結婚したのになんでぇ?」

「そうそう!私もそこが聞きたかったのよ?!」

 

ロゥリィも栗林もなぜ伊丹と結婚したけど、離婚したのか気になっていた。そしてついに葵と伊丹の関係を話し始めた。

 

「元々、“先輩”とは中学が一緒で高校も一緒なんだ。それで先輩は公務員だから、安定した収入を貰っていて眩しくて…〔養ってください!その代り結婚してあげます!〕って言ったらすんなりと…」

「なのに…なんで離婚を?」

「銀座事件が始まりですね」

 

なんでも銀座事件の後、特地に向かう伊丹だったけども危ないと感じていた葵。しかし伊丹は(もしも自分が何かあっても、保険金が出るから生活は大丈夫さ)と言ったらしい。

 

「アタシが好きなの、先輩全然気づいてなかったから…仕切り直そうと思ったの」

 

これが伊丹と離婚した理由であった。

そしてしばらくすると、全員が湯船から上がって夕食を楽しんで、各自の部屋で過ごしている。

 

「あーーー!このまま年末まで休みたい!仕事忘れたい!!」

「そうはいかんでしょ?」

 

休暇を満喫した伊丹はずっと休みたいと駄々をこね始める。これにはアインズも呆れてマーレも苦笑いをする。ちなみにアインズは今、嫉妬マスクを着けていない髑髏顔のままだった。

するといきなりアウラが襖を開けて入ってきた。

 

「失礼します…」

「お姉ちゃん?」

「どうしたアウラ?」

「いや、ちょっとここに居ていいかな?」

 

まるでなにかに逃げてきたかのような感じだった。その時、勢いよく襖が開き現れたのは

 

「なに逃げてんのよ?ほら男共、ちょっとツラ貸せやぁ!」

「「貸せやぁ!」」

 

なんとかなり酔っぱらったアルベドと栗林とロゥリィ。

 

「お前達、なに…酔っぱらって…」

「お姉ちゃん…これに怯えて?」

「うん…」

 

それから無理やり連れてこられた男性陣が見たのは、浴衣がかなりはだけたピニャとボーゼス。さらに酒をグビグビと飲んだりする葵とゆっくりと飲むレレイ。おまけに飲み過ぎたのか、お互い抱き合いながらも眠るテュカとナーベラル。

 

「こ…これは」

「はい、全員お酒が入ってから暴走しちゃって…」

「そもそも逃げ出すなんて、アナタ守護者としてどうなの!ねぇ、アインズ様?」

 

アインズに抱き着きながらも喋り続けるアルベド。おまけに浴衣がはだけ胸や下着が露出していた。

 

「アルベド、少し頭を冷やした方が…」

「そんな事より!子作りの予行練習をいたしましょ!」

「ええっ!ちょっと!?」

 

そのままアインズを押し倒し始めるアルベド。これは危険な予感を感じ逃げようとしたマーレだが。

 

「うひっ!?」

「つーーーか、アンタって本当に男かよ?本当は女の子じゃないのか?」

 

すると栗林がいきなりマーレを抱きかかえると、セクハラ当然に胸を撫で股間を触ろうとした。

 

「おいおい、それはセクハラ…「てか、隊長!お願いがありまふ!」え?」

「特戦群の人を紹介してください!」

 

栗林はこの状況で伊丹に特戦群から結婚相手を紹介してとお願いし始める。最早、カオスな状況となってしまった。

その頃、特戦群はアメリカと中国とロシアの特殊部隊と交戦していた。この3つの国も特地を狙っていて、交戦中に特戦群は一度撤退する事になってしまい。今、アメリカ・中国・ロシアは旅館に近づいて来る。

そんなピンチにどんちゃん騒ぎの後、アインズ以外の全員は眠っていた。

 

「やれやれ、本当に参った…ん?」

 

アインズは1人で酒をのんびりと飲むロゥリィを目にする。ロゥリィはそんなアインズをそばに来てと誘ってきたので、仕方なく近づいた。

 

「なんだ?」

「一杯、どう?」

 

コップをアインズに渡したが首を横に振って断った。

 

「残念だが、私はこの通り食べる事も寝ることも必要ないからな。すまないと思っている」

「あらそぅ?もし私が肉体を捨てたら、姿形が自由に変えられるけど肉の欲求が消えちゃうのよねぇ」

「なるほど…」

 

どこかしら寂しい目をするロゥリィ。自分もアンデッドになってからそういった感覚がなくなって、少し寂しいと思った頃があった。だが、ロゥリィは何かを感じていて、そわそわと落ち着きのない様子になっていた。

 

「ところで気づいていた」

「え?」

「この近くで、戦いが起きているのよ」

「なに?」

 

アインズは少し隠れながら外を覗くと何人か人影が確認した。

 

「いつのまに…」

「さっきまで戦っていたみたいよぉ。おかげで全然眠れなかったわぁ」

「そうか…いや、そんな事より」

 

すぐに伊丹を起こし始めたアインズ。

 

「起きてください、伊丹さん!」

「あれ、アインズさん…なにか?」

「なにかじゃなくて!」

 

丁度、伊丹の携帯がなったので開いてみると【太郎閣下】の文字が。これは伊丹の友人で内閣防衛大臣兼務特地問題対策大臣の嘉納太郎からだ。

 

「閣下からの?」

「閣下って…たしかアナタの友人の?」

「ええ、そうだけど」

「とりあえず、全員を起こしてくださいね」

 

伊丹に頼んでアインズが戸を開けて中庭に出た瞬間、3ヶ国の特殊工作員達が待ち構えていた。そしていち早く驚いたアメリカ側の工作員が撃った弾丸が、アインズの胸を貫いてしまった。




ついにアインズ達、初めての温泉体験となりました。
そして次回はアインズと工作員の戦闘となりますのでお楽しみに。


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アインズ一行日本へ・戦闘編

得地から来たティカ達をさらう為にやってきた。アメリカ・中国・ロシアの工作員達は、いきなり骸骨が現れたのでアメリカ側の1人が迷わずアインズを撃ってしまう。

 

「ど…ドクロ……!!」

「リアル…スケルトンって奴か…」

 

撃った本人達も改めてアインズの姿に驚きを隠せずにいた。でも、その時アルベドがアインズを撃った工作員に素早く近づいて頭を強く掴む。

 

「えっ!?」

「よくも…アインズ様を!」

 

とてつもない怒りと殺気に満ちた目で、いつのまにか持ったナイフで工作員の首を切り裂いた。首から大量の血が噴水のように飛び出てアルベドの全身は血まみれに。だが、アルベドはその首を別の工作員に目掛けて投げつける。

 

「うわっ!」

 

驚いて投げつけられた首を避けたが、いつのまにかアルベドがその工作員に近づいてズタズタに切り裂く。しかも隣の工作員にも目をつけて首を掴んでへし折ったり。または何人か殴り撲殺して、この光景に周りは恐怖した。

 

「さぁ、次に罰を受けるのはどいつだ?」

 

目を輝かせながらも獲物を借るような目で睨み続ける。

 

「アルベド、もういい」

 

するとアインズがまるで何事もなかったかのようにアルベドを止める。そしてアルベドはすぐにアインズ達の元に戻った。

 

「アインズ様!」

「無事だったのですか?」

「当然だ、これぐらいでは死なん」

 

元々体が骨のアインズなので、弾丸が肋骨の隙間を貫通したのだった。

 

「そちらがこのような挨拶をするならば…こちらも挨拶をしなくてはな」

 

そしてアインズは指を鳴らすと紫ローブの姿に戻った。さらに両手をかざし出すと、傭兵は再び銃を構えた瞬間。

 

心臓掌握(グラスプ・ハート)!」

 

すると3つの心臓のよう赤い光が浮かび上がると、そのままアインズが3つを両手でつぶした。両手から血のような液体が飛び散った途端に

 

「「「がっ!!」」

 

3国それぞれの傭兵が3人声を上げて倒れた。

 

「「「うわっ!!?」」

「「「ひっ!!?」」」

 

当然、他の傭兵はいきなり仲間が倒れて死んだことに驚いたり怯えたりした。

 

「あの…なにをやったのですか…まさか魔法を?」

「ええ…どうやらこの世界でも私の魔法が通用するようだな?」

 

アインズがユグドラシルの魔法が地球でも使えると確信する。するとアメリカ側の1人がポケットからなにかを取り出し

 

「く…喰らえ!」

 

その取り出したのが液体の入った瓶で、そのままアインズに投げつけるがキャッチし中身を見て理解する。

 

「聖水か…まぁユグドラシルのだったらヤバかったかもしれんが」

 

アインズは聖水の入った瓶を握りつぶした。

 

「もっとも、これは粗悪品に近いようだがな」

「全然効いてない!?」

「情報では、自分の事をアンデッドって名乗ってたから…一応持ってきたのに」

 

せっかく装備してきた聖水が全く無意味だった事に驚いたりする。

 

「アインズ様」

「分かっている。不意打ちとはいえ、私を攻撃した奴らが難いのだろう…」

「はい」

「しかし、我が友人の伊丹さん達がいるからな。危険な目には合わせたくない…中位アンデッド作成!」

 

アインズは3つの魔法陣を展開する。そこから巨大な体で鎧を着込んだスケルトンの死の騎士(デス・ナイト)と、細身で仮面を着けて指先がメスの切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)と、屈強な肉体で包帯と杭が特徴の屍収集家(コープスコレクター)がそれぞれの魔法陣から現れた。

 

「3体に命令する…伊丹さん達の近くにいろ。そして近づく敵を薙ぎ払え!」

 

さっそく命令すると3体はさっそく伊丹達の所に来てそれぞれ武器を構える。するといつの間にかアルベド達が着替えを完了し、さらにそれぞれ武器を持ってアインズの前に並ぶ。

 

「アインズ様。いつでもOKです」

「私達もアインズ様を攻撃した奴らを!」

「絶対に……」

「では、次はお前達にも命令しよう。目の前の敵を皆殺しにしろ」

 

アインズが宣言した瞬間、最初に動いたのがナーベラル。ナーベラルの雷撃(ライトニング)で工作員を一気に5人も黒焦げにする。続いてアウラも鞭型アイテムのクイーンで次々と工作員を薙ぎ払っていた。当然、アルベドも長柄斧型アイテムの3Fで怒りに任せながら工作員を惨殺し続ける。マーレはアルベド達が敵の弾丸を受けないようにと、マジックシールドで防いだりしていた。しかしその後ろで敵がマーレに近づきながら、ライフルで殴りつけようとした。だが、マーレが後ろを振り向き。

 

「なにっ!?」

「えい!」

「ぐぎゃっ!」

 

マーレは普段から持っている杖型アイテムのシャドウ・オブ・ユグドラシルで、工作員の頭部を思いっきり叩き割った。ゴキャっと鈍い音が鳴り響き、飛び散った血が顔に着いたけど、軽く拭いてすぐにアウラのバックアップに戻る。

そんな様子を伊丹達はただ見守るしかなかった。

 

「スゲ…アイツらマジに…」

「たしかに…」

「てか、あのマーレって子。見かけによらず容赦ないわね…」

 

ピニャもボーゼスも改めてアインズ達の実力に言葉が出なくなっていた。

ちなみにこっそりと伊丹達に近づいてくる連中も何人かいたが、すぐに3体のアンデッドに見つかって殺されてしまう。さらにこんな事も。

 

「あぁぁぁん…ダメ…本当にぃ!」

「またか…」

「こればっかりはね」

 

ロゥリィは死んでいく戦士の魂を彼女の体から通っていく。つまり今のロゥリィは媚薬で感覚が敏感になった状態であった。

そして次々と倒されて行く3ヶ国の工作員達に、アメリカ側の工作員クワイゼル・ハイデッガーはこの状況を信じられずにいた。

 

「バカな…なんなんだ奴らは?!」

 

するとクワイゼルの所にアインズが近づいてきた。

 

「どうかな?我が下僕達の実力は」

「貴様達は一体!」

「悪いが、貴様に言う必要などない」

 

アインズは人差し指から黒い火を出してクワイゼルに向けた。

 

「最後に言い残すことは?」

「……化け物ども」

「当然の反応か…獄炎(ヘルフレイム)!」

 

そしてアインズの黒い炎がクワイゼルを包み込み骨も残さず消し炭にされる。それから全ての敵はアルベド達とデス・ナイト達で全滅し、アインズはデス・ナイト達3体を戦闘が終わったので消した。

 

「伊丹さん、敵は全て倒しましたよ」

「ああ、そりゃどうも」

 

伊丹は工作員達の死体を確認する。中庭は死体がたくさん転がっていて、弾丸も至る所に散乱していた。確認が終わると伊丹はさっそく行動に出る。

 

「じゃあ、公安が後始末をしてくれるかもしれないけど…他にも敵がいるかもしれないからずらかるか。すぐに敵の武器を回収するぞ」

「はい」

「うわ~~~あるある♪」

 

とりあえず伊丹達は敵の銃やライフルの武器を回収するのだった。だが、ナーベラルがすでに銃器を10丁程回収していた。

 

「ナーベラル、いつのまに…」

「すみません。でも、シズの良いお土産が出来ましたね」

「え?…あっ、たしかにな」

 

こういう兵器はたしかにシズなら喜びそうだと確信したので、さっそく銃器もマジックボックスに入れた。

全員の準備が終了して、庭から外に出ることに成功する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

葵の住んでいるアパート。突然、葵の部屋からゲートが展開すると、最初に出てきたのがアインズだった。

 

「さぁ、みなさんも入ってください」

「はぁ…ではさっそく」

 

続いて伊丹がゲートから現れる。それからアルベド達から栗林達も通って来て、なんとかアインズのゲートのおかげで、安全に葵のアパートに到着出来た。

 

「それにしても、ちょっとドキドキしましたよ。ワープみたいで」

「超上級魔法を使えるなんて、本当に興味深い」

 

レレイは相変わらずアインズの魔法に興味を持つ。全員が腰を下ろして寝っ転がったりしていると、ピニャが伊丹に尋ねてきた。

 

「伊丹殿、尋ねたいことがある。なぜ我々がこうして逃げ隠れしなければならぬのだ?」

 

昨日もそうだが今日もなぜ自分達が狙われているのか気になって仕方がなかった。すると伊丹の口からこう宣言した。

 

「そうだな…はっきり言うと、俺も分からない」

 

そのストレートすぎる言葉に栗林は回収した銃器を伊丹に構える。ついでにナーベラルも手から少しの電撃を出しながら伊丹に近づく。

 

「隊長、いい加減なことを言うと後ろ弾を撃ちますよ?」

「貴様、真面目に言う気はないのか?」

「うわぁぁぁ!ちょっと待って!」

 

慌てる伊丹にアインズはこんな推測をした。

 

「つまり、日本だけが特地と和解するのが気に入らない国が存在する。故に予定や乗り物を変えてきたのでは?」

「まぁ、そうだな」

 

それから小腹が空いたのか、伊丹とアインズは近くのコンビニに行くのだった。ただし買い物をするのはティカとレレイとロゥリィと、アウラとマーレの5人。伊丹とアインズは外で待っていた。当然、アインズは変装して。

 

「それにしても、本当に彼女達ってアニメや漫画やゲームから出てきた感じですな?」

「んまぁ…たしかな。金髪ロン毛のエルフに、黒ゴスロリに、本当の意味での魔法少女に、双子のボーイッシュ&男の娘ダークエルフ」

「あの姉弟を作ったのは、売れっ子の女性声優なんですよ」

「そうなんだ。未来にもまだアニメが?」

「もちろん、エロゲもちゃんと」

 

アインズと伊丹がオタク話をしていると、ちょうどティカ達が買い物を終了してアインズと伊丹の所にやって来た。

 

「買い物終わりましたよ」

「頼まれたものを買っておきました」

「パンもね」

「ちゃんと飲み物も」

「そうか。では帰るか」

 

再びアインズがゲートを開いて7人は入っていった。




今回は3ヶ国の工作員とナザリックの戦闘です。たしか中位アンデッドは触媒なしで制作すれば、アインズの意思で消すことが出来るみたいのでそうしました。
次回はついに帰国で、シャルティア編はもう少しです。


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アインズ一行日本へ・帰国編

アインズ達が日本に来て3日目の朝。

全員が目を覚ましてテレビを見ると、緊急放送が流れていた。内容は、入院していた総理大臣が辞意表明したというもの。

 

「ありゃ、やっぱりこうなるだろうと思った」

 

伊丹がこのニュースを見て、既に分かっていたかのような口振りをする。

 

「というと…?」

「だって…突然銀座に現れた兵隊に、ゲートに突入した自衛隊と、さらにそのゲートからやって来たテュカやアインズさん達。これだけの騒動に総理もきっと体を壊してると思うだろ?」

「たしかに、そしてそんなプレッシャーやストレスに耐えきれなくて辞任か…」

 

首相辞任の理由を理解したアインズは再びニュースを目にする。今度はゲートのある銀座の様子であったが、テレビからも分かるかのようにたくさんの人集りとなっていた。

 

「なんだか、たくさん集まっているみたいですが…これは一体?」

「もしかしてお祭りって奴ですかね?」

「違うな…これは恐らく」

 

丁度その時、テュカとレレイと葵が大量の花束を持って帰って来た。

 

「今、帰ったわよ…」

「ほら!こんなに綺麗な花をたくさん買ってきたよ♪」

「おっ、そうか。じゃあ、俺達も行くかな」

 

さっそくアインズがテレビに映った場所にゲートを繋げた。すると葵は伊丹に話しかける。

 

「ねぇ、次はいつ頃戻ってこれるの?」

「分かんねぇな。でも、年末には休暇を取れるようにしてみるけど…それよりも借金を返せよな!」

「うん、分かってるって」

「元気でな」

 

まるで二度と帰ってこないようなセリフを言いながらも、伊丹はアインズの開けたゲートを通る。

それを葵はただ見守るしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、銀座の近く。そこは今、ニュースで見たとおりに大量の人でいっぱいなのが分かる。ほとんどが銀座事件の遺族やテュカやロゥリィは勿論、アインズ達の姿を間近で見たい人達で溢れかえっていた。当然テレビ局も動いていて、さらに各国のスパイも待機している。

 

「ん?おい、これ?」

「え?」

 

するといきなり道の真ん中にゲートが展開すると、アインズ達と伊丹達が先程買った花束を持って現れた。周りの集まった通行人は驚きを隠せずにいて写メを撮る程に。

そしてロゥリィは通行人にまとめてこう発言する。

 

「ねぇ、私達…銀座まで通りたいんだけどぉ?」

 

ロゥリィがお願いした途端、ぎゅうぎゅう詰めだった道がいっせいに開き。綺麗な一本の道が出来上がった。

さっそくアインズ達がまっすぐ銀座まで歩き出した。

 

「これはまさしく、支配者にふさわしい扱いと言えるでしょうね」

「ああ、そうだな」

 

とりあえず返事を返したアインズ。だが、その時いきなりアインズの前に1人の男が、十字架とナイフを持って現れた。

 

「「ふん!」」

「あぅっ!」

 

しかしアルベドとナーベラルのダブルアッパーでノックアウト。そして警護していた機動隊が男を取り押さえる。すると男は先程のアッパーが効いたのか、顎に強い痛みを感じながらも口を開いた。

 

「うぐぐぐ、貴様らのような異端の化け物を野晴らしには…」

「い…異端?」

「多分、どっかの宗教の信者でアナタ達の存在が危険だと感じたのでしょ」

「そうか…」

 

伊丹の話を聞いたらアインズは男が持っていたバックに手を付ける。開けて中を見てみると、水の入った瓶と草と石が入っていた。そこで少し尋ねてみた。

 

「これはなんだ?」

「貴様のような悪しき化け物を抹殺する為に、我らの教祖が用意してくれた聖水と霊草と霊石さ!」

 

質問に答えながら男は機動隊に連行された。

 

「昨日のもそうだが、この聖水は完璧に偽物だな?この霊草もハーブだし、この霊石もただの石ころだ」

 

アインズは男が持ってきた装備が昨日の工作員が持ってきたものより、かなり粗悪品だと理解しながらも機動隊に渡す。そんなトラブルがありながらも、なんとか慰霊碑に持ってきた花束を置いた犠牲者にお祈りをする。

 

「なぜ、我々が下等生物共に」

「アルベド様の言う通りです」

「は~~~」

 

相変わらずのアルベドとナーベラルにアインズはため息を吐く。その時、栗林は取材に来たニュースキャスターが妹の菜々美だと気づいて近づいた。

 

「菜々美?なにやってるの」

「なにってテレビの中継!お姉ちゃんこそ?」

「ちょっと休暇。それよりも私、早く特地に帰らなきゃ!」

「え?ちょっと、なんで?」

「だって私達、なんかアメリカか中国かロシアに狙われてるみたいだから」

 

カメラの前で自分達が3ヶ国に狙われていると告白する栗林。それによって作戦が大きく失敗しアメリカ大統領のディレルは悔しさのあまり癇癪を起し、ロシア大統領のジェガノフは日本に対して賞賛し、中国の国家主席の董徳愁は悔しそうになりながらもスパイの撤収を指揮する。

 

「じゃあ、年末には戻ってくるね♪」

「あっ、ちょっと待って!?」

 

栗林がみんなの所に戻ろうとした途端に、丁度銀座名物の和光本館の鐘が鳴り響いた。被害者の祈りが終わり、さっそくゲートに行こうとしたその時。

 

「「「「「アルベドォォォ!!」」」」」

「ん?」

「「「「「テュカ!テュカ!テュカ!」」」」」

「え?」

「「「「「レレィ!レレイ!レレイ!」」」」」

「「「「「ロゥリィ!ロゥリィ!ロゥリィ!」」」」」

「「「「「ナァァァァーベラル!!!」」」」」

「「「「「アウラ!アウラ!アウラ!」」」」」

「「「「「マーレ!マーレ!マーレ!」」」」」

 

いきなり集まった通行人たちがいっせいにしてこの7人の声を大きく叫びながら見送った。まるでアイドルかオリンピック選手の声援みたいだった。

当然、戸惑ったりしたがなんとか無事にゲートを通ることが出来た。

 

[やれやれ、なんだか彼らがアイドルみたいだな?]

 

特地に戻ってきたアインズはナーベラル達を見ながらも少し苦笑いをする。そしてアインズはゲートを展開する。

 

「では、我々はこれで」

「あれ?もう帰っちゃうの?」

「はい…我々も忙しいですので」

「そうですか。もしなにかあったら」

「はい、その時には」

 

嫉妬マスクを外し素顔をさらしたアインズと伊丹が握手をする。それからナーベラル達も栗林達にお別れをする。

 

「本来なら下等生物相手に握手なんてしたくないけど、アインズ様がやっているならば」

「あはははは…」

「はいはい、分かってますよ」

 

なんとなくアルベドの性格を理解した栗林と富田だった。

 

「じゃあね、2人共。また会おうね」

「もちろんだよ!今度はアタシのペットを紹介するね!」

「本当に…お世話になりました」

「いや、こちらこそ」

「うふふふふふ、また着せ替えをしましょうねぇ」

 

アウラとマーレはすっかりティカとレレイとロゥリィと仲良くなってた。

 

「では、これを」

「良いのか?」

「ええ、既に我らが気に入ったのはここに」

「そうですか…ではありがたく」

 

なぜかナーベラルはピニャとボーゼスが葵の所から持っては来た、BL同人誌を譲り受けた。じつはナーベラルもBL物に興味を持っていたのだ。

そして最初にアルベド達をゲートで送って、アインズは伊丹達の前で頭を下げる。

 

「この度は、日本に招き入りて感謝する」

「いやいや…こっちこそ色々と助かりましたから」

「それもそうですね」

 

アインズもゲートに入って一度伊丹達と別れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無事にナザリックに戻ってきたアインズは、まずマジックアイテムを開いてそれぞれの手に入れたお土産を仕分けする。それが終わったら普段着のローブ姿になって自室に腰を下ろした。

 

「ふ~~~私は本当に日本に来て過ごしていたのだな?」

 

未だに自分が日本に3日間もいた事を改めて自覚するアインズ。それから日本で大人買いしてきたマンガを読もうとした時。

 

「アインズ様、お帰りなさいませ」

 

するとそこにデミウルゴスはなぜか少し浮かない顔でやって来た。

 

「どうしたデミウルゴス?なにかあったのか?」

「じつは…」

「なんだ?早く言ってみろ」

「シャルティアが反逆を起こしました」

「……え?」

 

それはあまりにも突然すぎて理解できなくなる程の事だった。




ついにアインズ一行の日本観光が終了しました。
次回はついにシャルティア編に入ります。当然、伊丹達も出すつもりですのでご期待を!


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吸血美少女の調査

伊丹達が日本から特地に戻って3日。

アルヌスに作っていた駐屯地はかなり完成していて、それから色んな所からも行商人が来ては店を出したりしている。だが、今はそんな暇ではなかった。

 

「しかし、日本での休暇が終わったのに…今度は何だ?」

 

なぜなら伊丹達が日本に行ってる間にある大事件が起きたらしい。

その内容というのは

 

「単刀直入に言うと…吸血鬼ですね」

「きゅ、吸血鬼?」

 

狭間浩一郎のそんな言葉に伊丹達は呆気に取られてしまう。するとすぐに写真を取り出した。

 

「これが、その吸血鬼の写真だ」

 

その写真には黒いドレスに大きなランスを持って、蝋のような色白で銀髪ロングの少女の姿。

 

「これが…吸血鬼か?」

 

伊丹は写真の少女を見てこう思った。まるでホラー系のエロゲに出てきそうな感じだと。

 

「この吸血鬼は今、セクフィア帝国と友好関係のリ・エスティーゼ王国にあるエ・ランテル近郊の森に出没」

「しかもこの吸血鬼を討伐しようとした冒険者達は、全て全滅させられている様子。そこでリ・エスティーゼ側は、なんとかセクフィア側に助力をお願いしたみたいです」

「あの…いくら友好関係でも、そんなに簡単にお願いできたのですか?」

 

栗林はいくら2つの国が友好関係でも、片方の一方的なお願いに簡単に応じるとは思えなかった。すると黒川茉莉は机に地図を広げ始める。そこにはリ・エスティーゼ王国とバハルス帝国とスレイン法国と、そしてセクフィア帝国の位置が良く分かる地図だった。

 

「ここがリ・エスティーゼ側にあるエ・ランテル近郊の森で、それからここからがセクフィア側の森。こうして見ると丁度、吸血鬼がいるのがその中間辺りなんですよ」

「なるほど、もしいつ何時に吸血鬼が帝国の領土に来るかもしれないから…そうならなければ協力しろって訳ですか?」

「そうだ。ただし、あくまで我々は吸血鬼の調査を前提に行い。大きな戦闘はなるべく避けるとのこと」

 

狭間が今後の吸血鬼に対する行動は、控えながらも限りなく調査に力を入れるという方針とした。しかし伊丹はこの吸血鬼少女は、もしかしたらアインズと関係があると考える。

それから会議が終了して、伊丹は急いでテレパウィンドを首にかけてアインズに連絡を取った。

 

「アインズさん、アインズさん聞こえてますか!?」

《伊丹さん、いきなりなんですか?》

「じつは…これから突然現れた吸血鬼少女の調査に向かうんですけど…その吸血鬼はもしかしてアインズさんのところの?」

《はい、アナタの思っているとおり。アナタが言っている吸血鬼は恐らく私のところの守護者のシャルティア・ブラッドフォールンだ》

 

なにやら暗い感じで伊丹の質問に答えるアインズ。それはデミウルゴスから聞いた話ではシャルティアがセバスとソリュシャンと合流し行動した。それから2人と別れたシャルティアだったが、どういう訳か精神操作を受けて今回の事件に発展してしまう。

 

《という訳なんです…》

「じゃあ、これからアナタは何を?」

《まず我々だけで、シャルティアの所に向かいなんとか洗脳を解いて見せます》

「そうですか…じつは俺達も今からシャルティアって奴のいる草原に行くつもりなんです。と言っても、ただどんな動きをするか監視程度ですけどね」

《それが良いでしょう。シャルティアの戦闘力は高いですからね。ロゥリィ以上だと思ってください》

「あはははは、そうですか。だったら気を付けますね」

 

会話が終わるといつのまにか伊丹の後ろに、テュカとレレイとロゥリィが立っていた。

 

「お前ら、なにを?」

「あの…私達も出来ることがあれば」

「その吸血鬼も見てみたいし」

「なんだか私と近い感じがするしねぇ♪」

 

少し困った感じがしたが仕方なく一緒に調査に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして伊丹と会話が済んだアインズも、アルベドを連れてシャルティアが潜伏している草原に向う。

だけど、いち早くシャルティアから少し離れたセクフィア付近の森に、到着したのは伊丹達であった。さっそくテントを張ったりしてシャルティアの監視体制が完了する。

 

「さてと、俺達の任務は吸血鬼改めシャルティアの監視と調査だ。どうやらアインズさんとの知り合いみたいで、後はあの人が何とかしてくれるみたいだからな」

「でも、本当にアインズさん達に任せていいのですか?」

「仕方ないだろ?ここからはリ・エスティーゼの領土だから。いくらセクフィアと友好関係らしいけど、俺達は未だによそ者だ」

「それに、万が一部下を死なせる訳にはいかないからな」

 

それから全員は林に隠れて高性能フィールドスコープやカメラでシャルティアの観察・見張りをし始める。すると倉田はフィールドスコープでシャルティアを見ていると、伊丹にこんな質問をし始めた。

 

「あの、隊長」

「なんだよ倉田…」

「…俺、ケモノ萌えって知ってますよね?」

「もちろん、だからなに?」

「あの吸血鬼…結構カワイイっスね?」

 

どうやら倉田はシャルティアのルックスを気に入っているみたいだった。これには伊丹も同意してしまう。

 

「たしかに、なんかエロゲに出てきそうな美少女だな?」

「ええ、しかもロリ巨乳なんて…」

 

そんな事を言っているが、実際シャルティアの胸はただの詰め物。

 

「2人共、いい加減にしないと撃ちますよ」

「ところでさぁ、私にも見せて」

 

銃を構える栗林が2人の会話に乱入して、ロゥリィもさっそくスコープでシャルティアを覗いた。

 

「あれが例の吸血鬼ねぇ…あっ!?」

「どうしたロゥリィ?なにか動きが?」

「もう彼らが来たみたいよぅ」

「彼ら…アインズさん達か!!」

 

すぐに再びスコープを覗いた伊丹。丁度そこにアインズとアルベドが到着する。シャルティアが愛用の武器のスポイトランスを持った状態で、血のように赤い目が虚ろになっていた。

 

[アンデッドのシャルティアがなぜという疑問が残るが?ここで戦闘が起きて、何者かに精神支配か…何かが起きて命令が起きないままか?]

 

アインズはシャルティアの状況に仮説を考える。だが、それでも今はシャルティアをなんとかするのが最優先だ。

 

「少しもったいない気がするが…」

「それは?」

「超々レアアイテム、流れ星の指輪(シューティングスター)!」

 

アインズの指に着けている3つの宝石の付いている、指輪型アイテムの流れ星の指輪(シューティングスター)

経験値に応じた願いが叶える超位魔法の星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)を3回だけ使えることの出来るアイテム。ちなみにこれを手に入れる為に、夏のボーナスを全部課金ガチャにつぎ込んだらしい。さっそく流れ星の指輪(シューティングスター)を使って、魔法陣を発動させる。

 

「超位魔法とそんなレアアイテムを…下僕のシャルティアに使うなんて、なんて慈悲深い♪」

「さぁ、指輪よ!シャルティアにかけられた全ての効果を打ち消せ!」

 

しかし突然星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)の魔法陣が砕けてしまった。

 

「なに!?」

 

これにはアインズは大きな衝撃を受けた。なぜならレアアイテムを使った超位魔法が効かないのだからだ。

 

「くっ…撤収だアルベド!」

「はい!」

 

仕方なくアインズはアルベドを連れてテレポートで逃げた。そしてこの様子を見た伊丹達も驚いた。

 

「おいおい…アインズさんとアルベドさんが逃げた…」

「なんかの魔法を使ったみたいだけど、効かなかったみたい…」

「隊長どうしますか?」

 

富田に聞かれた伊丹はこれからどうしようか考えた。

 

「とりあえず、しばらく監視を続ける!そして武装を強化してヘリで上空からの調査をさせろ!」

「了解!」

 

今の伊丹が出来るのはこれぐらいだった。

一度戻ったアインズは、まずナザリックの警護レベルを上げるようにと命令する。さらにシャルティアがあの状態なので、第1から第3階層をマーレとコキュートスに守護して貰った。一方その頃。自衛隊も伊丹の指示通りに警戒レベルを上げて、上空からでもシャルティアの監視を続けていた。




ついにお待たせしましたシャルティア暴走編です。
伊丹達はシャルティアの調査・監視をすることになりましたけど、一応シャルティアは丁度リ・エスティーゼとセクフィアの国境の間にいると考えてください。


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アインズの黒い歴史

アインズはシャルティアの洗脳を解こうとしたが失敗して一度撤退する。しかし伊丹達は未だにシャルティアの見張りという名の監視を続けた。

 

「未だに動く気配なし…か?」

「そうですね…」

 

伊丹は全然動こうとしないシャルティアの見張りを続けたのか、暇になって思わず欠伸をしてしまうのだった。

 

「はいはい、文句言わないの!ほら、隊長の食事ですよ」

「おっ、サンキュー」

 

栗林からレトルトカレーを渡されたので夕食に入る伊丹。テュカや富田達もパンやレトルトカレーやカップ麺を食べていた。

 

「あの…」

「え?」

 

するといつのまにか伊丹達の前に愛用の魔銃と、日本でナーベラルからお土産で貰ったライフルを装備したシズが現れた。

 

「え…と…君は?」

「どうも……私はCZ2128・Δ…シズ・デルタで」

「はぁ、もしかしてアインズさんの?」

「うん…万が一の為に」

 

シズが全員に挨拶するとレレイが近づいてきてジロジロし観察し始める。

 

「アナタ、もしかして人形?」

「うん……自動人形…」

 

レレイの質問にすんなりと答えるシズであった。

 

「自動人形ってロボットか?」

「そう言える」

「ねぇ、ろぼっとってなに?」

「つまり、ゴーレムみたいなのかな?」

 

全員はシズに興味を持ち始めるのだった。

 

「へ~~~動くお人形さんなのねぇ」

「あっ、この武器って」

「アインズ様とナーベラルが……お土産でくれた」

「武器がお土産ですか?」

「とりあえず、座りましょうよ」

「うん」

 

シャルティアの見張り中だけども、いきなり歓迎ムードに包まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、ナザリックではアインズがアルベドとユリを連れてある場所に来た。そこはナザリックの宝物殿で山のような金貨と宝石があった。じつはアインズが地球に持ってきて、高値で売れた宝石はここから持ってきたのだ。

 

「ここが、ナザリックの宝物殿ですか?」

「そうだ。しかも宝物殿のこの辺りは侵入者を撃退する為の猛毒が散布されている」

「ですからボク…いえ、デュラハンの私をお選びに?」

「その通りだ」

 

アインズ達は真っ黒な壁の前に立つ。この壁の先がナザリックの武器庫に続くのだが、あんまり行ってなかったのでパスワードを忘れていたのだ。

 

「まず合言葉は、アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ!」

 

ヒントの合言葉を言った途端、ラテン語の文章が出てきた。

 

[ラテン語がヒントか?あんまり行ってなかったからな…]

 

これをヒントにアインズはそりなりにパスワードを思い出す。

 

「ええ~~~たしか…“かくて汝、全世界の栄光を我がものとし、暗きものは全て汝より離れ去るだろう”…だったかな?」

 

少し不安だったが、黒い壁が消えて扉が現れた。さっそく3人は扉を開いて武器が並べている通路を進みながら、辿り着いたのは応接室みたいな部屋だった。

 

「この先は霊廟だ」

「霊廟…で、ございますか?」

「霊廟を知らない…では、パンドラズ・アクターは知っているか?」

「実際会ってませんが、それなりに知っています。宝物殿の領域守護者にして、私やデミウルゴス達と同等の力を持つ。そして…」

 

その時、アルベドからなにやら殺気が漂い始めた。

 

「アインズ様自ら創造されたとか!!」

「あ…まぁな」

 

少し引いてしまうアインズだが、3人の前に何者かが現れた。それは軟体生物のような頭部に、まるでボンテージのような衣装を着込んだ魔物。するとアルベドは驚いた表情になってしまう。

 

「そんな…タっ、タブラ・スマラグディナ様!?」

 

なぜならこの魔物はアルベドの製作者で至高の四十一人の1人、タブラ・スマラグディナであった。だが、すぐに偽者だと気づく。

 

「違う!何者!?たとえ姿と気配を真似ようとも、創造してくださった御方を間違えることなど!!」

 

アルベドとユリはすぐ構えながらも偽タブラに尋ねるが答える気配はない。

 

「そう…では殺せ!」

「待て」

「「え?!」」

 

偽タブラに攻撃をしようとする2人を止めるアインズ。そしてアインズが偽タブラに近づいてこう言う。

 

「元に戻れ、パンドラズ・アクター」

 

突然偽タブラが溶け始めると別の姿に変わっていく。

 

「ようこそ、御出で頂きましたね」

 

そして黄色の柄をしたナチス親衛隊制服を着込んで、顔はまるで埴輪のような目と口だけのドッペルゲンガーになって敬礼した。

 

「私の創造主である、モモンガ様!」

 

これこそがアインズが作ったNPCのパンドラズ・アクター。するとアインズはなんだか少し恥ずかしそうになる。

 

「お…お前も元気そうだな?」

「はい、元気にやっております!それでどんな御用?」

ワールド(世界級)アイテムを取りに来た」

「おお!ワールド(世界級)アイテム…世界を変える!強大な力…至高の御方達の偉大さの証。切り札とされるアイテムをご使用の時なのですか!?」

 

なんとも大袈裟なアクションとウザいくらいに喋るパンドラズに、もっと恥ずかしくなってしまうアインズ。かつてアインズがカッコいいという理由で設定したため、本当の意味でパンドラ(黒歴史)という形になっていた。

 

[うわぁ…改めて見るとダサいわぁ…!]

 

その為、それを目の当たりにしたアインズはかなり心にダメージを受けてしまう。後ろのアルベドとユリも少し引いた目をする。しかしすぐに本題に入る。

 

「ああ、強欲と無欲とヒュギエリアの杯と幾億の刃と山河社稷図を持っていこうとな」

「なるほど…了解しました」

「それから私の名は今後、アインズ・ウール・ゴウンだ」

「おおっ!こちらも承りました…我が創造主のアインズ様!!」

[止めてくれよ…マジで……]

 

ますます自分のセンスや黒歴史に羞恥心を痛めるアインズであった。それでもなんとか切り替える。

 

「では、行くぞ。これからも宝物殿の警備を頼む」

「行ってらっしゃいませ、アインズ様。そしてお嬢様方」

「お嬢様?」

 

するとパンドラズにお嬢様呼ばわりされたのが気に入らなかったのか、アルベドとユリは再び敵意ある目で睨んできた。

 

「おっと、申し訳ありません。お美しいのでつい言葉を誤りました」

 

また変にカッコつけながらも2人に謝罪するが、ついに我慢していたアインズの限界であり。

 

「パンドラズ…ちょっとこっちで…」

「はい!なにか?」

 

アインズはパンドラズを連れて部屋の端に行くと、そのまま顔を近づけてこう言った。

 

「私…いや、俺はお前の創造主なのは分かってるだろ?」

「はいっ!当然、分かっておりますが?」

「そうだよな?お前の忠儀を一身しているよな?」

「ええ、それも分かっていますが?」

「だったら主人の命令でも頼みでもいいから!敬礼は止めないか?」

「ええ?」

 

設定した以上変えることが出来ないと分かっているので、せめてパンドラズには敬礼だけはしなくも良いと命令した。

 

「でも…それはアインズ様が、この軍服も含めてカッコいいと?」

「たしかにそうだけど…今はもう変わったから!」

 

念入りに命令というより頼んでくるアインズに、パンドラズもそれには応じなければとして

 

Wenn es meines Gottes Wille(我が神のお望みとあらば)!」

「ドイツ語もやめろ!」

「あ…はい」

 

ドイツ語で返事するがそれも却下された。これはかつてハムスケに乗った時以来に恥ずかしい思いをするアインズだった。

なにはともあれ、さっそく霊廟に行こうとする。

 

「そうだ、アルベド。お前に与えた、リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンをパンドラズ・アクターに預けておけ」

「え…」

「この先に指輪を着けて入ると、ゴーレムに襲われて大変だからな」

「そんな…」

「そしてユリはここに残れ」

「はい」

 

アルベドは仕方なく指に着けたリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンをパンドラズに預けて、ユリを置いて2人で霊廟に入った。

そこには異形な魔物の姿をかたどった像・ゴーレムが飾られていた。

 

「これは、至高の御方達の?」

「良く気が付いたな?これはかつての仲間達を模ったのだが、不格好だろ?」

「そんな事はございません!ですが、霊廟という名や像といい…もしや、至高の御方々はお亡くなりに?」

「…正解かもしれないな?」

 

返事をするアインズだったけども、本当は仕事や家庭の事情や飽きたという理由で、他のメンバーは装備とアイテムを置いて引退した。しかしそれはアインズにとっては亡くなったという事になっていた。

 

[みんな…本当に亡くなっているかもしれないけど、この世界にいると思いたい]

 

するとアインズは気分転換にと思って、像のない空白の席に指を刺して説明する。

 

「じつはな。あの空白の席には、私の像が置かれる予定なのだよ」

 

その言葉にアルベドは悲しそうな声でアインズに向けて口を出した。

 

「そ…そのような事は…言わないでください!!」

 

アルベドの目からは薄っすらと涙が出ていた。まるで大切な人と別れたくないという気持ちが詰まったような表情で。

 

「アインズ様。最後までお残りになられた慈悲深き御方…いつまでも私共の上に君臨してくださいまよう…心よりお願いいたします!!」

 

泣きながらアルベドが土下座するかのように、頭を垂らしてアインズにお願いする。ただ自分がふざけ半分に書き換えた設定だが、それがここまで真剣とは思いもよらなかった。

アインズはすぐさまアルベドの顔を起こして涙を拭く。

 

「許せ」

 

そして悲しい思いをさせたアルベドに謝罪すると、再びアインズにお願いし始める。

 

「アインズ様…お約束してください。私達をお捨てになって、この地を離れないと…」

「すまんな、しかし」

「どうして?なぜ約束してくれないのですか!?一体何が不満なのですか!?ならば私はこの場で自害を!!」

「違う!!」

 

なんとかアルベドを落ち着かせるとアインズはこれからどうするのか話し出した。

 

「シャルティアの精神支配しているのが、恐らくワールド(世界級)アイテムだ。同じくワールド(世界級)アイテムを所持しなければならないと」

「ですから、このワールド(世界級)アイテムを?」

「そうだ。だが、それらは守護者達に」

「え?」

ワールド(世界級)アイテムの中でも、“二十”と呼ばれる破格のアイテムがあればな。しかしこの世界にどのような脅威があるのが分からんからな」

 

その為、むやみにワールド(世界級)アイテムを使うのは危険というのだ。仮に自衛隊の伊丹とは親友同士になったとはいえ、それでもワールド(世界級)アイテムの使用は危険という訳だから。しかも“二十”は使い捨てな為、一回しか出来ないとされている。

 

「だからアルベド…私は1人でシャルティアと戦う」

「はっ!!」

「もしかしたら生きて帰れないかもしれない…」

「シャルティアと戦うのはよく分かりました。ならこそ、我らも一緒に戦いますので!数で押せばなんとか!」

「悪いが出来ない…理由が3つもあるからな」

 

アインズが1人でシャルティアと戦う3つの理由。

1つ目はアインズ自身が本当に主人として相応しいのか疑問という事。2つ目はシャルティアが1人でいるからと言って罠とかがある可能性が高い。そして3つ目はアインズがこの手でシャルティアを倒す為であった。

 

「お前も知っているだろう?シャルティアの戦闘力はナザリック1…一騎打ちならば私しかいない」

「たしかに…そうですけど」

「そしてなにより…」

 

アインズはバードマンをモチーフにした像を見つめる。

 

[ペロロンチーノさん…]

 

この像のモデルになったペロロンチーノがシャルティアの製作者。

エロゲーを愛するオタクで、アインズとは良く相談し合ったりしている仲であった。そしてアウラとマーレの製作者のぶくぶく茶釜は彼の姉で頭が上がらないらしい。

 

「分かりました…ならば」

 

するとさっきまで涙を流したアルベドの目は、決意に満ちた目になってこう約束した。

 

「必ず生きて帰ってください!!」

「約束しよう…私はシャルティアを倒して、必ずここに戻ってくると!!」

 

洗脳されたシャルティアを倒す為と、アインズも強く決意して約束した。




ついに違う意味でアインズの弱点のパンドラズ・アクターが登場。そしてシズも伊丹達と仲良くしています。
次回は本気のアインズとシャルティアの戦いをやります。


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アインズ対シャルティア1

伊丹達が未だにシャルティアの見張りをしている頃、少し離れた場所でゲートが展開された。そこにかつてギルドを作る前の装備姿のアインズが、ワールド(世界級)アイテムの山河社稷図を装備したアウラと、強欲と無欲を装備したマーレと一緒にやって来た。

 

「2人共、ここからは別れるが」

「はい、我々はシズと伊丹さんの所に向かって、一緒に偵察と見張りをしておきます」

「もちろん、なるべく離れてですよね?」

「うむ。もしも別の敵が同数体発見したら、伊丹さん達に任せてシズと共にナザリックに撤退する事だ」

「「はい」」

 

2人に命令をするアインズは最後に別れの言葉を言う。

 

「では、よろしく頼むぞ…」

 

寂しそうに発言したアインズはそのままシャルティアの所に向かって、アウラとマーレも指示通りに伊丹達の所に急いだ。

その頃、ナザリックのアインズの自室にやって来たデミウルゴス。そこには既にアルベドとコキュートスがソファーに座ってたので、さっそくデミウルゴスも腰を掛けた。

 

「お伺いしましょうか?なぜ…アインズ様をお1人で行かせたのですか?」

 

デミウルゴスは少し不機嫌な様子でアルベドに尋ねた。

 

「当然、アインズ様がお決めになった事よ?」

「ではなぜ、アインズ様が守護者を引き連れずに人間の都市(エ・ランテル)に向かう事を拒絶したアナタが、今回はお許しになった!」

 

どうやらデミウルゴスはアインズがたった1人で、シャルティアを倒しに行ったのが納得いかなかった。ここは守護者全員でシャルティアと戦うのが安全だと言ってきた。

 

「私達が考え付くような対策を、アインズ様が思いつかなす筈がありません。だから、アインズ様はあえて嘘をついたのでしょう」

「そこまで分かっていながら…なぜアインズ様を行かせたのですか?」

「数日前のアインズ様と今のアインズ様は、まるで別人に見えて男の顔をしてらっしゃったわ」

 

アルベドは頬を少し赤く染めながら語り始めた。

 

「惚れた殿方がその意志を貫こうしている時に、横から口を挟むのは無粋というものよ?それに、アインズ様は私と約束してくだっ「甘い!」

 

突然、デミウルゴスがアルベドの話している途中で彼女の考えを否定した。

 

「甘すぎるぞアルベド!理性でなく感情で判断とは、アインズ様はただ1人の最後の至高の御方なのですぞ!たとえ命令に背く事になろうとも、命を守る為に動くべきでしょうが!」

 

するとソファーから立ち上がって部屋を出ようとする。

 

「何処へ」

「決まっている。すぐに私の部下を連れてアインズ様を」

 

だが、コキュートスが斧を片手にデミウルゴスの前に通せんぼした。すぐに避けようとしたが斧をかざして部屋から出させないようにする。

 

「…なるほど、私を呼び戻すと同時にここに来るように厳命したのは、こういう事ですか?アルベド」

「そうですけど、なにか?」

「なんてアナタは愚かな!もしアインズ様がお亡くなりになったら、一体その責任はどうやって取るつもりですか!?」

「アインズ様は、お戻りになるわ」

「そんな保証はどこにある!?」

 

デミウルゴスが眉間にしわを寄せて、宝石のような両目を輝かせながらも叫んだ。

 

「……もしも、アインズ様に何かあった時には、守護者統括の地位を降りて貰いますよ」

「至高ノ御方々ガオ決メニナッタ地位ヲ降リロト言ウノカ?デミウルゴス、ソレハサスガニ」

「良いでしょう。アインズ様がお亡くなりになったら、地位を降りることも罰を受けることも構いません。コキュートス、アインズ様の勝算はどの程度か判断するかしら?」

 

そんな無茶な約束をデミウルゴスと交わしながらも、コキュートスにこの戦いはどうなるのか尋ねてみる。

 

「…三体七デ、アインズ様ガ三ダ」

「そうですか…だけど、その不利をはねのけてくれるでしょう」

 

アルベドは勝利を信じながらもただ遠隔視の鏡を見続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからシズと伊丹達が未だにシャルティアの見張りをし続けていた。

 

「今日も…全く動く気ゼロ…」

「まさか、死んでたりして?」

「そんな筈…ない」

 

こんな感じて暇を感じ続けていた時に、アウラとマーレがやってきた。

 

「ヤッホー!シズにみんな」

「こんにちは」

「あ、君達」

「アウラ様、マーレ様」

 

また歓迎ムードに入った雰囲気だったけども、すぐにアウラが本題をこの場の全員に話す。

 

「伊丹さん達、いきなりだけど少しここからは離れてくださいね」

「え…と、それはなんで?」

「じつは……アインズ様が1人でシャルティアと戦うんです」

「アインズさんが!?」

「だから、少しでも安全なあの丘に移動をね」

 

アウラが安全だという丘を刺しながら説明する。すると富田が伊丹に声をかけ始める。

 

「どうしますか隊長?このまま彼女の言う通りにしますか?」

「そうだな…万が一ってこともあるし…だけど」

「隊長!?」

 

伊丹は考え始めた。

アウラの言う通りにするのか、それともこの場所で見張りを続けるか、もしくはいっその事アインズの助太刀に全員で向かうか。しかしもしもアインズとシャルティアの戦いで、部下が巻き込まれるかもしれないと思って考えた結果。

 

「仕方ない…移動するぞ!ヘリにも撤退の指示を!」

「了解!」

 

すぐに上空のヘリに連絡し撤収させて、それから機材を片付けて伊丹達は移動を始めた。

そして移動中に伊丹はテレパウィンドで、森の中を歩いているアインズに連絡をした。

 

《アインズさん》

「伊丹さん、アウラ達とは?」

《合流しましたよ。今指定した場所に移動中ですが…》

「なにか?」

《本当に1人で大丈夫なのですか?相手は強いって》

「だからですよ。これは我々…いや、俺の問題ですから」

《しかし…》

「心配してくれるのは嬉しいのですが、私の立場を懸けた戦いでもありますので」

《分かりました。どうかご無事で》

「もちろん、では」

 

伊丹との通信が終了した瞬間、アインズはようやく目的の場所に到着した。

 

[さてと、始めるかな]

 

さっそく戦う為の準備を入り始める。

 

光輝緑の身体(ボディ・オブ・イファルジェントベリル)

 

まずは自分の防御魔法をかけた。これで大抵のダメージを低下させる。

 

魔法詠唱者の祝福(ブレス・オブ・マジックキャスター)魔法からの守り・神聖(マジックウォード・ホーリー)無限障壁(インフィニティウォール)生命の精髄(ライフ・エッセンス)上位全能力強化(グレーターフルポテンシャル)自由(フリーダム)虚偽情報・生命(フォールスデータ・ライフ)看破(シースルー)魔法三重最強強化(トリプレットマキシマムイズマジック・)爆撃地雷(エクスプロードマイン)魔法三重化(トリプレットマジック・)上位魔法封印(グレーターマジックシール)魔法三重最強位階(トリプレットマキシマムイズ)上昇化(ブーステッドマジック・)魔法の矢(マジックアロー)

 

続いてアインズはさらに自分自身の強化魔法や、周りに魔法の罠をかけたりした。

 

「では、行くか!」

 

するとアインズの全身が光り始めて、移動した場所に到着した伊丹達にも見えるように。

 

「あの光って?」

「超位魔法よ」

「超位魔法⁉」

 

その単語にいち早く反応したレレイ。超位魔法というものなんて今初めて知ったのだからだ。

 

[やっぱり超位魔法を…だけど]

 

その超位魔法は発動開数に制限があるので、切り札として使いたいがそうはいかない状況でもある。それからアインズはマジックボックスから時計を出して腕に巻いて、そのまま時間の設定し始める。

 

『モモンガお兄ちゃん!時間を設定するよ!』

 

すると時計からロリボイスがなった。じつはこの時計を作ったのはぶくぶく茶釜であった。

 

「やれやれ、ぶくぶく茶釜さんのボイス付きだったけな」

 

少し呆れながらも仲間達の装備が入ったプレートを、取り出しやすい所に入れて準備は整った。

 

「超位魔法、失墜する天空(フォールンダウン)!」

 

発動した途端、シャルティアの立った場所全てが超高熱による大爆発が起きた。それによって発動した範囲の木がチリも残さず焼かれて、地面も真っ黒に溶かされてしまった。

 

「なっ、なんだあれ!?」

「爆発のようですけど……」

「てか、なにもかもなくなっている!?」

 

観察を再開した伊丹達もあの爆発の威力に度肝を抜かしてしまう。

だが、その溶かされた大地には血のように真っ赤に甲冑を纏って、背中には白い羽が生えている無傷のシャルティアが立っていた。

 

「カハハはははアアははあああははは!!今のはなかなか痛かったでありんす♪」

 

しかもダメージは少ししか聞いてない様子。だが、ここからが本当の戦いの始まりでもあった。




ついに始まったアインズとシャルティアの戦い。バトルの描写をちゃんと書けるか不安ですが、期待していてください。


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アインズ対シャルティア2

「つまらないプレゼントだが、気に入ってくれたか?シャルティア」

 

アインズは少し嫌味な感じに感想を尋ねてみる。すると応じるかのようにして返事するシャルティア。

 

「素晴らしい!これ程の巨大な力を持つアインズ様を、今ここで殺さなくてはならないなんて♪」

 

随分と余裕な笑みとはしゃぎようなシャルティアであった。しかしそんなのは無視し再び質問をした。

 

「アインズ様か?ではなぜ私に様と着けるのだ?」

「かははははは!至高の御方であられるアナタに、様と呼ぶのは当然ではないですか?」

「ほぉ、では今の主人は?」

「そんなの決まって…」

 

シャルティアはその言葉にハッとする。なぜ自分は今アインズと戦うのか、なぜアインズは自分を攻撃してきたのか。そんな自分な疑問を持つが、シャルティアはどうでも良くなってきた。

 

「よく分かりませんが…攻撃してきたからには、全力でアインズ様を滅ぼす必要がありますね!」

「そうか…なら了解した」

「うふふふふ、敵前で構えを解くなんて感心しませんよ!」

 

さっそく走ってアインズの元に向かうシャルティア。

 

「危ないぞ」

「なに?」

 

するとシャルティアの目の前が爆発した。さっきの魔法三重最強強化(トリプレットマキシマムイズマジック・)爆撃地雷(エクスプロードマイン)がここで発動したのだ

 

「じつはそこには地雷を設置しておいたのだ」

 

アインズは説明しながらも攻撃に入った。

 

魔法最強化・(マキシマイズマジック・)重力渦(グラビィティメイルシュトローム)!」

 

掌から重力を螺旋の球を出して投げつけた。すぐさまシャルティアは後ろに下がり。

 

石壁(ウォール・オブ・ストーン)!」

 

地面からカベを出して盾代わりにし防いだ。しかしそれでもすぐに、次の攻撃に入るアインズだった。

 

魔法最強化・(マキシマイズマジック・)肋骨の束縛(ホールド・オブ・リブ)

「なっ!」

 

今度は地面から肋骨のようなものが生えてきて、シャルティアの周りを包み込もうとした。すぐに羽で飛ぼうとしたが、捕まってしまうけどもなんとか飛び出した。

 

「おっと、あんまり飛ばない方が良いぞ。この辺りにも罠を仕掛けたからな?」

「そんな挑発に乗ると思ってたんですか?空中にも罠があるんでしょうに?」

「バレたか」

 

少し悔しがる演技をするアインズ。仕掛けた罠は最初の魔法三重最強強化(トリプレットマキシマムイズマジック・)爆撃地雷(エクスプロードマイン)だけで、余分な MP(魔力)を使う余裕はないから。しかしシャルティアが魔力を感知する魔力の精髄(マナ・エッセンス)を発動した。するとアインズの魔力が、かなり高いレベルになっていると分かる。

 

[あれだけの魔力をどうやって…だが、魔力を削ればなんとかなる。だが、一番気になるのは…神器級(ゴッズ)アイテムを使っていない事]

 

いつも身に着けている神器級(ゴッズ)アイテムの紫ローブを今回は装備していない事に疑問を持つが、とりあえず今は自身の回復を始めた。

 

生命力持続回復(リジェネ―ト)

「回復の暇は与えん。魔法最強化・(マキシマイズマジック・)重力渦(グラビィティメイルシュトローム)!」

 

回復をさせないようにとすぐに新たな攻撃を開始したアインズ。

 

上位転移(グレーターテレポーテーション)!」

 

だが、テレポーテーションで攻撃を避けてアインズの後ろに回った。しかしなぜか元の場所に戻ってしまった。

 

[これは、転移遅延(ディレイ・テレポーテーション)?!]

浮遊大機雷(ドリフティング・マスターマイン)!」

 

いつのまにかシャルティアの周りに機雷が設置されて爆発した。体を気体に近い状態になりながらも避けるシャルティアに次の攻撃。

 

「まだだ、魔法最強化・(マキシマイズマジック・)星幽界の一撃(アストラル・スマイト)!」

 

そこに光の弾丸を連射した。地面に落ちた気体がシャルティアの形に戻ったが、口から少しの血を出していた。さっきの攻撃が効いたらしい。

 

魔法最強化・(マキシマイズマジック・)千本骨槍(サウザンドボーンランス)!」

力の聖域(フォース・サンクチュアリ)!」

 

今度は地面から無数の骨の槍を発射するアインズだが、すぐに防御魔法を起動する。しかしアインズの攻撃が上だったのか、障壁は砕けてしまうが上位転移(グレーターテレポーテーション)で逃れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに遠くに離れた自衛隊は

 

「おいおい、なんかレベルが違うだろ?」

 

この戦いのレベルに着いてこられない伊丹達自衛隊。

だが、そんな時。引いたはずのAH-1コブラが一機、アインズとシャルティアとの戦場に向かった。

 

「隊長!ヘリが勝手に!!」

「あのバカ!」

 

すぐに無線機でAH-1に通信し始める。

 

「お前ら、なにしてる!」

『いや…もっと近くで調査したいので』

「あの戦い見て分からないのか!」

『危険を承知ですので、失礼します!』

 

AH-1のパイロットはそう言って無線を切った。

 

「もしもし、もしもし!クソっ…アイツら」

「伊丹さん…あっ!」

「どうしたの?アウラちゃ、ああ!」

「今度は何だ?」

 

また新しい問題が起きた。それはロゥリィも勝手にアインズの戦場に向かおうとしていた。

 

「ロゥリィ!お前、なにを?!」

「だって、勝手に行った彼らを止めなきゃならないしぃ。それに…私も我慢の限界だからぁ!!」

 

そう言うとジャンプしながらもアインズとシャルティアの戦場に行った。

 

「行っちゃいましたけど…どうしますか?」

「どうもこうもない!」

 

すぐさま伊丹はパンツァーファウスト3を装備し、偵察用のXLR250Rに乗ってロゥリィを追いかけた。

 

「隊長まで…」

「死なない…かな?」

 

残された栗林達とアウラとマーレとシズはただ見つめるしか出来なかった。

それから未だに双方の戦いはヒートアップし続けていた。

 

「では行くぞシャルティア。お前のスキルと私のスキル、どちらが上か思い知れ!」

 

なんとか短く終わらせようとするアインズだったが、ここにAH-1が飛んできた。

 

[あれは伊丹さん達の、引いた筈じゃあ!]

「おや…あれはたしか私の上をブンブン飛び回っていた物?」

 

シャルティアが新たな獲物を見つけたかのように、AH-1をただ見つめる。操縦するパイロットは少しビクッと怯えた。

 

「おい、なにか狙ってきてないか?」

「たしかに…だが、ここまで来たんだ!」

「そうだな。よっしゃ!これでも喰らえ!」

 

シャルティアに向けてM197ガトリング砲を乱射した。だが、シャルティアは軽く避けたので、何度もガトリング砲を撃ち続けた。

 

「止せ!そんな事をしても無駄だ!」

 

アインズの言葉も聞こえないままガトリング砲を撃つけども、シャルティアは見失って弾も切れてしまった。

 

「た、弾が!?」

「いや、それよりもあの吸血鬼は!?」

「私ならここに?」

 

いつのまにか機体の下に飛んでいたシャルティアは、その下からコックピットを覗き込む。

 

「うわっ!いつのまに!?」

「まさか、こんな乗り物で私を倒そうなんてとんだ冗談ね!」

 

そしてスポイトランスでスタブウイングに装備している、ロケット弾ポッドとミサイル発射機を叩き壊した。

 

「ああっ!ミサイルポットが!?」

 

慌てるパイロットだったがシャルティアはすぐに正面に移動する。

 

「さてと、せっかくアインズ様との戦いを邪魔した奴らには…罰が必要のようね」

 

魔法を発動しようとした瞬間。

 

「うふふふ♪」

「おっ?」

 

ロゥリィがいつのまにかジャンプしながら現れて、ハルバードでシャルティアを叩き落した。そのままシャルティアは地面に叩きつけられ、たくさんの土煙が漂いロゥリィも着地する。

 

「ロゥリィ…」

 

いきなりロゥリィの登場に戸惑うアインズだが、AH-1のパイロット2名は

 

「今だ。この隙に逃げよう!」

 

素早くこの場から撤退するAH-1。それから叩きつけられたシャルティアだったけども、何事もなかったかのように立ち上がる。

 

「貴様は何者ですの?」

「ロゥリィ・マーキュリー。アインズの知り合いよぅ」

「ほぅ…貴様も私達の戦いの邪魔をするのですか?」

「そうかもしれないけど…アナタとも戦ってみたくてねぇ」

 

しばらくするとシャルティアとロゥリィとの間に緊迫感が漂う。

そしてついに

 

「はっ!」

「ふん!」

 

シャルティアのスポイトランスと、ロゥリィのハルバードがぶつかり合い。お互いの武器から火花が出るほどに打ち合い続けた。

 

[ロゥリィ…結果的に彼女は、守護者達と同じだけの実力はある。だが、シャルティア相手だと!]

 

アインズはシャルティアの方が遥かに上だと理解していた。そして明らかにロゥリィがかなり苦戦しているが分かり、体中にキズが複数出来ていた。

 

「…まさかここまで強いとはねぇ…」

「おやおや、もう息切れですかな?」

「冗談…まだまだよぅ!」

 

そのままハルバード大きく振りかざして、シャルティアの首を斬りつけようとした。

しかし避けられると、ロゥリィはスポイトランスに貫かれてしまう。

 

「ロゥリィ!」

「あらあら…威勢の割にあっけないですね?」

 

そしてスポイトランスでロゥリィから血と生命力を吸収し始めた。




アインズとシャルティアの戦いに、自衛隊のAH-1とロゥリィが参戦しましたね。しかしAH-1は逃げてロゥリィもやられてしまいました。
そしてロウリィの運命は次回までお楽しみに。


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アインズ対シャルティア3

アインズとシャルティアの戦いに乱入した自衛隊とロゥリィ。しかし自衛隊のAH-1コブラでは歯が立たずに撤退し、ロゥリィも最初は互角な戦いになっていたが、シャルティアのスポイトランスで腹部を貫かれ血が吸われていくのだった。

 

「先程の威勢はどうしたのかな?」

 

笑い出すシャルティアに対してロゥリィは唾を吐きかけながら笑い返す。

 

「貴様…」

「うふふふふ、アンタが強いのは分かったわぁ。でも、まだたまだよぉ!」

 

ロゥリィはハルバードの柄でシャルティアの胴体を着くと、力を振り絞って自身の腹部に突き刺さったスポイトランスを抜き取った。そして再びハルバードを構えて大きく振って斬りかかる。

 

「はあっ!」

「ぐっ?!」

 

ロゥリィのハルバードがシャルティアの首に直撃し斬り落とした。だが、斬られた勢いで吹っ飛んだ頭部はまるで時間が巻き戻ったかのように、頭部と首が繋がって再生。何事もなかったかのように首元を軽く動かす。

 

「へ~~~首を斬られても死なないんて、面白いわねぇ?」

「そういう貴様も、腹を貫いて血を取られたのでまだピンピンしてるとは」

 

2人が不気味に笑いながらも再び武器を構えて混じり合う。それはお互いの獲物がぶつかり合うと同時に、火花が出る程で肉眼では確認できるのは難しいぐらい。2人は素早く力強く戦っていた。

 

[……ふむ、なるほど。伊丹さんの言ってたとおりだな?しかし、シャルティアのスキルと魔法にどう対処するのか?]

 

アインズの予想通りにシャルティアはスキルを発動させる。

 

「不浄衝撃盾!」

「おおっ!?」

 

それは1日2回までしか使えないスキルの1つで、赤黒い衝撃波を放った。すぐにロゥリィは避けて一度距離を離れたが

 

朱の新星(ヴァーミリオンノヴァ)!」

「っ!あぁぁああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

しかしシャルティアの魔法でロゥリィは紅蓮の炎に包まれてしまう。炎が消えるとロゥリィは服がボロボロで、体に火傷と焼け爛れが出来ていた。

 

「どうしたのかしら?今のは強化無しでやったんだけど、ダメージは大きすぎたらしいかしら?」

「くっ…」

 

最初のスポイトランスで血をかなり取られた上に、さっきの朱の新星(ヴァーミリオンノヴァ)が効いたのでロゥリィはかなり弱っている。

最早立っているだけで精一杯の状態だったが、それでもハルバードを手に戦いを続けようとしていた。

 

「まだやる気かしら?」

「止せ!いくらお前でも彼女には勝てない!!」

 

アインズが止めようとしても、再びシャルティアに立ち向かった。

 

「なるほど…では、徹底的に相手しますよ!」

「上等よぅ!」

 

またハルバードとスポイトランスの打ち合いが始まった。次第に腹部の傷と火傷が再生してきた。だが、受けたダメージが大きかったので体力は未だに回復していなく。次第にロゥリィが苦戦しているのが分かる。

 

[これはまずい…ロゥリィを助けたいがタイミングが、ん?]

 

しかしその時、どこからか弾頭が飛んできた。

 

「ん?あれは…!」

 

驚いたシャルティアは力の聖域(フォース・サンクチュアリ)でガードし、ロゥリィも力を振り絞って離れると、弾頭はそのまま地面に当たって爆発した。

 

「アインズさん、ロゥリィ!」

 

さらに声がするので振り向くと、パンツァーファウスト3を持った伊丹がいる。さっきの弾頭は伊丹のパンツァーファウスト3による攻撃だった。

 

「伊丹さん!」

「伊……丹…」

「おいおい、ロゥリィ!」

 

安心したのかロゥリィは力が抜けてこの場に倒れようとしたが、アインズがすぐに駆け寄って抱きかかれた。

 

「…随分と派手な花火だ事?」

[あれ?なんか…俺、獲物にされたの?]

 

しかしシャルティアはターゲットを変更したのか伊丹に視線を変える。獣を狩る目と殺気に気付いたのか、無駄だと分かっていたが銃を構えた。

 

「おやおや、そんなおもちゃで私を倒そうと?」

「無理だとは分かってるけどな…この状況だ。やらなきゃいけないだろ」

「随分ご立派な事。では、まずアナタから殺してあげましょうか?」

 

シャルティアがまた朱の新星(ヴァーミリオンノヴァ)を伊丹に放とうとした瞬間。

 

「シャルティア!!」

 

アインズが重力渦(グラビィティメイルシュトローム)で攻撃したので、シャルティアはすぐに避けた。それからアインズはロゥリィを抱いたままジャンプして、伊丹の所に到着した。

 

「さぁ、早く逃げてください」

「アインズさんは?」

「もちろん、俺はシャルティアを倒します」

「……では、ご武運を!」

 

すぐに伊丹は敬礼をして、ロゥリィを背中に担いだままXLR250Rに乗って離れた。

 

[アインズさん…これしか出来ないが、無事でいてくださいね]

 

心の中で祈りながらもXLR250Rを走らせる伊丹。そして伊丹が遠くまで逃げたと確認したアインズは、改めてシャルティアに目を向けた。

 

「アインズ様…あのような下等生物風情を逃がすとは。随分と甘くなられましたね?」

「残念ながら彼らは私の友人なのだ。それに本気で行きたいと思ってな」

「なるほど…では、こちらもいきましょうか!」

 

シャルティアは光の3m位ある槍を出した。

 

「スキルの召喚?」

 

じつはロゥリィの時に使った不浄衝撃盾と同じスキルであった。

 

「はい、ご存じないので教えておきます。これは清浄投擲槍といいます!」

 

清浄投擲槍と呼ばれる光の槍をアインズ目掛けて投げ飛ばし腹部を貫いた。

 

「がはっ!」

 

どうやら清浄投擲槍が効いたのかアインズは苦しそうに声を出した。

 

「きゃはははは!さすがは神聖属性の魔法武器。これはさすがに効くみたいですね!」

「舐めるな!魔法最強化・(マキシマイズマジック・)現断(リアリティ・スラッシュ)!」

 

魔法の斬撃でシャルティアの右肩から胴体を次元と一緒に、切り裂いたがシャルティアの時と同じ時間が戻って再生してしまう。

 

「さっきのもそうだが、ただの回復ではないな!?」

「もちろん、これも時間逆行スキルですのでね。しかし2回使ったのであと1回となりましたが!」

 

また清浄投擲槍をアインズに向けて投げると、今度は左肩を貫かれてしまう。

 

「卑怯だなんて思わないでくださいよ。ペロロンチーノ様が与えてくださった力ですので、アインズ様よりあの御方の方が優れているって証明では?」

 

なにやら自分を作ってくれたペロロンチーノを感謝するかのように自慢し始める。しかしアインズにとってはそんなものは関係なかった。

 

「…どうやら本音のようだな?」

「ん?」

「行くぞシャルティア!貴様のスキルが上か、私の魔法が上かはっきりさせようぞ!」

 

2人は最初動かずに黙ってどう動くかお互い確認したりする。アインズはさっきから魔力を消費しまくっての魔法をし続けたが、これは短期決戦を狙っていると睨むシャルティア。

そして2人は一斉に動いて魔法を発動させた。

 

「「魔法最強化・(マキシマイズマジック・)」」

輝光(ブリリアントレイディアンス)!」

無闇(トゥルーダーク)!」

 

それぞれ光系と闇系の魔法攻撃を受けるがなんとか耐えた。とくにアンデッドのアインズは、光系や神聖属性は致命的な弱点になっているが、万が一のために防御魔法をかけていたのでダメージは低い様子。

 

[さすがに私もダメージは大きい…だが、またこれで回復を]

 

じつはロゥリィの時もスポイトランスで血を奪って回復していた。今度はアインズから生命力を奪って回復を企む。

するとアインズの口からこんな言葉が出てきた。

 

「…なんて不利な戦いなんだ」

「アインズ様?なっ、ならば、撤退すれば……」

「確かにそうなんだが、ワガママで逃げたくないんだ」

 

さらにアインズは話を続ける。

 

「ギルド長だった頃の私の仕事は、メンバー間の調整だけ。私…俺はこうして先頭に立って戦っている。今この瞬間が、俺が今ギルド長としての満足感を得ている!」

 

一見すれば自己満足に見えるかもしれないが、それでもアインズにとっては矜恃となっていた。

 

「つまらない話をしたが、再開しよう」

「そうですね…ご主人様」

 

話が終了して、再び2人の戦いが開始しようとしていた。




さすがのロゥリィもシャルティアに敗北してしまいましたね。そして次回からアインズの切り札は出すか考え中です。


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アインズ対シャルティア4

アインズとの会話が終了したシャルティアは背中から、今生えている白い翼とは別に黒いコウモリの翼を生やし戦闘態勢に入る。

 

大顎の竜巻(シャークスサイクロン)!」

 

アインズが大型で鮫がいる竜巻を出してシャルティアを包み込んだ。しかし4枚の翼を羽ばたかせて打ち消すと、そのままスポイトランスでアインズの胴体を貫く。

 

光輝緑の身体(ボディ・オブ・イファルジェントベリル)!」

 

しかしアインズが戦う前から自分にかけていた防御魔法でダメージを無効化させた。続けて次の魔法を発動させた。

 

骸骨壁(ウォール・オブ・スケルトン)発動!」

 

シャルティアの前に武器を持った大量の骸骨の壁が出現。

 

魔法最強化・(マキシマイズマジック・)力場爆裂(フォース・エクスプロージョン)!」

 

だが、負けずにシャルティアも魔法衝撃波で骸骨壁を消し飛ばしたけども、周りから魔法陣が展開する。

 

「なっ?!」

「解放!魔法の矢(マジックアロー)!」

 

同じく仕掛けていた魔法の矢(マジックアロー)でシャルティアを一斉攻撃した。

 

「鬱陶しい…魔法解体(マジックディストラクション)!」

 

相手の魔法攻撃を打ち消す魔法解体(マジックディストラクション)魔法の矢(マジックアロー)を消す。するとシャルティアから全身が白く輝くこと以外、全てがそっくりな分身体が出てきた。

 

「ついに来たか。シャルティア最大の切り札…死せる勇者の魂(エインヘリヤル)!」

 

このスキルは魔法とかは使えないが、戦闘能力だけなら全く同じというもの。つまりアインズは2人の戦闘レベル100の相手を1人で戦うという事になる。

 

「眷属招来!」

「眷属もだと!」

 

さらに自分の眷属モンスターの古種吸血蝙蝠(エルダー・ヴァンパイア・バット)吸血蝙蝠の群れ(ヴァンパイア・バット・スウォーム)吸血鬼の狼(ヴァンパイアウルフ)とネズミ型モンスターも召喚させる。するとシャルティアの分身体がアインズに攻撃してきた。

 

「なんだっ!なんでシャルティアも戦わな…!?」

 

アインズはシャルティアの行動に驚く。なぜなら分身体の方を戦わせて、本人はスポイトランスで眷属モンスターを攻撃し生命力を回復していた。

 

[汚ねぇ!同士討ち(フレンドリィ・ファイヤー)を使って、自分の眷属で回復するなんて!?」

 

だが、驚きを通り越して呆れながらも分身シャルティアの攻撃を避けたりする。そしてついに自分のスキルも発動しようと考えた。

一方その頃、伊丹はXLR250Rを走らせながらも、なんとかロゥリィを背負ったまま栗林達の所に急いで向かっていた。

 

「たく…無茶しやがって!」

「心配いらないからぁ…ちゃんと回復が進んでいるわぁ」

「それとこれとは別問題だ!」

 

ボロボロになるまで戦っていたロゥリィを叱ったりする伊丹だったけど、その途中でテレパウィンドからアインズの声がした。

 

《伊丹さん、伊丹さん!》

「アインズさん、いきなりなんなんですか?!シャルティアは倒したのですか」

《いや、それはまだ…でも、一つ聞きたいのですが今アナタはどこまで離れているのですか?》

「え?今なんとか進んでいるけど…」

《なるべく早くもっと離れてください。絶対に!》

「あ…はいはい」

 

アインズに念入りに言われたのでスピードを上げて森を突き進んだ伊丹。

 

[良し…ではこっちもスキル発動]

 

その時、アインズの背後に巨大な時計が出現した。これはあらゆる生あるものの(The goal of all)目指すところは死である( life is death)という。エクリプスの限界レベル5に到達して、100時間に一度使える特殊スキル。

 

魔法効果範囲拡大・(ワイデンマジック・)嘆きの妖精の絶叫(クライ・オブ・ザ・バンシー)!」

 

背後の巨大時計の長針が動いて、12時に到達した瞬間に強化された即死魔法を発動。魔法の悲鳴と一緒に辺り一面が一度光に包まれた。

 

「今度は何だ?!」

 

かなりギリギリの所まで栗林達の待機場所に近づく事が出来た伊丹は、悲鳴と光に驚きながらもバイクを走らせる。これには当然、栗林達も気づいていた。

 

「あれは?!」

「アインズ様の即死魔法だ…」

「しかも強化された」

 

すぐにアインズの魔法だと理解したアウラ達。だけど、丁度よく伊丹とロゥリィが戻って来た。

 

「隊長。ご無事でしたか?先程、ヘリが戻ってきましたよ」

「って、ロゥリィ!その体っ?!」

 

栗林が全身ボロボロのロゥリィに驚く。

 

「ちょっと…無理しちゃった」

「なにがちょっとよ!なにが!」

 

当然、栗林からも怒られるロゥリィ。だが、ふとアインズとシャルティアの居る場所を見てみると、そこはなんと砂漠となっていた。

これがアインズのあらゆる生あるものの(The goal of all)目指すところは死である( life is death)のスキルと嘆きの妖精の絶叫(クライ・オブ・ザ・バンシー)で、木も草も土もさらには空でさえも死んでいるのだから。

 

「これは流石はアインズ様。ですが、MPはほとんど使い果たしてしまったようですね?けれど、私の体力は満タンですよ?」

 

またもや無傷で自慢げに言うシャルティアで、じつはペロロンチーノから蘇生アイテムを貰っていたのだ。

 

「と言いたいところだけど、私のMPもスキルの使用回数も尽きてしまいましたが…魔法詠唱者のアインズ様と私が戦ったらどっちが勝つか明白ですわ。それで、言い残したいことは?」

「…そうだな」

 

そしてこれからアインズの口から出た言葉にシャルティアは驚愕するのだった。

 

「私のMPが尽きれば勝利は確実。と判断してくれた事に感謝する」

「……え?」

 

それはまるで自分が立てた計画通りに進んでくれたかのような反応。しかもどう見ても不利な状況で、全然アインズが距離をとろうとしない事にも疑問を持つ。

 

「PvPにおいて大切なのは、相手に偽の情報を掴ませることだ…たとえば、神聖属性が効くように見せかけて、炎属性が弱点だと悟られないようにするといった具合に」

 

アインズの言っているのが正しいとすれば、つまり今までの戦いは全てが演技。

 

「これを可能にするためには、相手の情報把握がポイントだ。かつてペロロンチーノはお前を作った時に、俺に色々と教えてくれたんだ」

「では……私のスキルを知らないというのは…」

「……嘘に決まっている」

 

これはまさにシャルティアにとっては大きなショックとなる。自分のスキルを知らない振りして、計算して戦っていた事になる。シャルティアは信じられずについ無意識にスポイトランスで襲い掛かった。

 

「そしてじつは私は、接近戦で決着をつけるつもりだったんだ」

 

なんといつのまにかアインズは白銀に輝く鎧に身を包んでいた。それはナザリックで戦いの様子を見ている、アルベドとデミウルゴスとコキュートスも驚きを隠せない。

 

「馬鹿ナ!アレハたっち・みー様ノ!?」

 

それはかつてアインズがモモンガだった頃に、他のプレーヤーに襲われて時に助けてくれた恩人で、セバスを制作した至高の四十一人の1人たっち・みーの装備。コンプライアンス・ウィズ・ローとアースリカバー。だが、たっち・みーの職業はワールドチャンピオンで、アインズはネクロマンサーとチョーセン・オブ・アンデッドとエクリプスと全く違うもの。

 

「これは確か戦士化の魔法、完璧なる戦士(パーフェクト・ウォリアー)を使えはペナルティ無しでも?」

「ここまでお考えだったとは…」

 

デミウルゴスが完璧なる戦士(パーフェクト・ウォリアー)という魔法だと気づくと、アルベドは全てを計画してきたアインズにますます好意を見せる。

それからアインズが巨大な雷を纏った刀を使ってシャルティアの胸を切り裂く。

 

「がっ!そっ、それは…建御雷八式!?」

 

この刀はコキュートスを製作した武人建御雷の建御雷八式という武器。

 

「言ったよなシャルティア。アインズ・ウール・ゴウンに敗北はないとな?そして知るが良い…今、お前の前には…アインズ・ウール・ゴウンの四十一人の力が集まっているという事を!」

 

シャルティアの目には、アインズの後ろに至高の四十一人の姿が見えていた。




ついに次回でシャルティア編を終了します。ラストスパートという奴です。


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アインズ対シャルティア5

アインズの用意した切り札。それは至高の四十一人による装備を使う事。建御雷八式を振るうアインズに対して、シャルティアは片腕を犠牲にして動きを止めて攻撃する。だが、今度はナーベラルの製作者の弐式炎雷の、天照と月読という双剣を構えた。それでシャルティアを斬りつけたら、今度はユリの製作者のやまいこの女教師怒りの鉄拳という巨大なガントレットで殴りつけた。次々と繰り出される武器の攻撃にシャルティアは混乱してしまう。

そして今度は弓矢型の武器だが、シャルティアにとっては見覚えのある装備だった。

 

「まさかそれは…ペロロンチーノ様の!?」

「そうだ。流石に気づいたか?」

 

この弓矢はゲイ・ボウというペロロンチーノの武器で、属性ダメージの塊を与えることが出来る。

 

[MPがあれば防げたのに…しかしなぜ?]

 

シャルティアは何度も出てくる武器・アイテムに疑問を持ち続ける。

 

「その武器をどこに隠し持ってた!?」

「手品のネタを簡単に教えるわけないだろ?」

「その手品でペロロンチーノ様の武器を出せるはずが!」

 

しかしある事に気づいた。それはアインズが天照と月読を使う前に、アイスの棒と同じ形のプレートを取り出して折ったのを。

 

「まさか…」

「ふっ、課金アイテムだよ」

 

じつは全て課金アイテムだと宣言する。プレート型の課金アイテムを割る事で自在に武器を取り出していた。そしてゲイ・ボウによる魔法の矢を放ち、MPが少なくなったシャルティアは強いダメージを受けた。さらにアインズが今度は血ヲ啜リ肉ヲ喰ウという赤い結晶の斧を振りかざし、負けずにシャルティアもスポイトランスで攻撃する。

そしてその様子を見続けるアルベドとデミウルゴスとコキュートス。

 

「コレハ、確実ニアインズ様ノ勝利ダ」

「いや…まだ勝敗が決まった訳ではない。体力勝負ならシャルティアの方が上」

 

この戦いでどちらが勝利するのか緊張感を漂わせながらも、デミウルゴスは未だにシャルティアが上だと判断してしまう。

 

「シャルティアハ、防御ヲ捨テ攻撃ニ特化シタ。私モソウサセルカモシレンガナ?」

「とにかく信じましょう。至高の御方…アインズ・ウール・ゴウンの名において、勝利を宣言してくれたのですから」

 

アルベドはあの時にアインズが言った言葉を信じながら祈る。それからアインズとシャルティアの戦いは続いて、何度かスポイトランスで突いて体力を回復していた。

 

「あははははは!どうやら、体力が尽きているかもしれませんね!」

「それはどうかな?」

『予定してたお時間が経過したよ?モモンガお兄ちゃん!』

 

するとアインズが戦う前にセットしていた、ぶくぶく茶釜製腕時計から時間経過の音声が流れる。シャルティアは驚くがアインズは血ヲ啜リ肉ヲ喰ウから、たっち・みーの純白の盾を装備。

 

「何の時間だと思う?それは決着の時という事だよ」

 

じつはアインズは初めから超位魔法で決着をつけるつもりだった。だけど、超位魔法の一撃ではシェルティアには効かない。しかし今までの戦闘は、その膨大な体力を消耗させる為のものだった。

一度ならず二度までもアインズの掌に踊らされたシャルティア。

 

「う…うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

自棄を起こしてスポイトランスで攻撃し始めたが、アインズは純白の盾で身を守った。

 

「今の防御力は私が上だ。行くぞ、超位魔法!」

 

そしてさっきのローブ姿に戻って片手に、時間を短縮できる水晶型課金アイテムを持ちながら超位魔法の魔法陣を展開。だが、シャルティアも最後の抵抗をするが、突然背後から誰かの視線を感じる。

 

[スキル!いや、まさか!?]

 

シャルティアが目を逸らせた隙に、再びアインズの失墜する天空(フォールンダウン)が発動された。

 

「これって、あの時と同じ!?」

 

戻って来た伊丹と自衛隊は二度目の失墜する天空(フォールンダウン)を目の当たりにする。消滅するシャルティアは満足したような表情になって口を開いた。

 

「アインズ・ウール・ゴウン様…至高の御身にして…まさにナザリック最強の御方……ちび」

 

この最後の一言はアウラに対する皮肉だった。じつは先程の視線は吐息というアウラのスキルで、強化と弱化を同時に発動させ感情をコントロール出来る。

 

「ばーか…」

 

聞こえたのか、なんだか気に食わない顔になったアウラの口からシャルティアへの皮肉を吐く。そしてアウラとマーレとシズは何も言わずに去っていった。

 

「ちよっと、3人共!?」

 

栗林はこれからの事情聴取の為に引き留めようとしたが3人は行ってしまう。

 

「……とりあえず、任務は終わったって事だな?引き上げるぞ」

「それが良いですね…」

「テュカもレレイも、そしてロゥリィも戻ろう」

 

自衛隊も任務が終了して撤退。

そしてナザリックの玉座の間では、今からパンドラズが運んできた金貨5億枚を全て費やしてシャルティアを復活させようとする。しかし万が一復活しても精神支配が続いている可能性が高いので、全員は気を引き締めていた。

 

「準備は良し…では、さっそくシャルティアの復活をさせる」

「ですが、またシャルティアの精神支配が続けているならば、我々が対処いたします」

「…分かった。守護者達よ、その時はお前たちに任せよう。シャルティアよ…復活せよ!!」

 

さっそくアインズはスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを掲げ、復活の魔法を発動させた。すると金貨5億枚が溶け始めて、人の形に形成されて全裸のシャルティアとなる。それからアルベドはNPCメニューを開いて、シャルティアが今どんな状態か確認。

 

「ご安心ください。シャルティアの精神支配は解除されています」

「そうか」

 

安心したアインズはマジックボックスから、黒いシーツのような布を出してシャルティアにかける。それからゆっくりと抱き起す。

 

「シャルティア、シャルティア?」

「アインズ…様?」

 

アインズに呼びかけられてシャルティアは目を覚ます。

 

「良かった。そしてすまなかったな、私の失態だ」

「ふぇっ!いきなりどうしたのでありんすか?私のアインズ様が失態など…」

 

全く理解できなかったシャルティアだが、これを気にアインズに抱き着いて甘え始める。しかしこれを気に入らないのがアルベドだった。

 

「アインズ様?シャルティアは疲れているみたいですので、休ませた方が良いかと?」

「はぁ?」

 

喧嘩腰に言うアルベドに気に入らないのかシャルティアはメンチを切る。

 

「それよりもお前に尋ねたいが、最後の記憶は何だ?」

「はい、ええっと…たしか?」

 

シャルティアは今覚えているのを話した。あれはアインズ達が日本に行ってからの頃、シャルティアはセバスとソルシャンと合流。その後、死を撒く剣団という野党集団と交戦したが、別の冒険者集団と出くわした。

 

「それから…その後の事は思い出せませぬ…」

[5日分の記憶が途切れてるようだな…]

 

どうやらその冒険者集団に洗脳されたらしいが、とにかく今はシャルティアの体の方が心配。

 

「では、体に異常はないな?」

「別に何も…ああっ!」

「ど、どうした!?」

「胸が…なくなってるでりんす!!」

 

胸を見ながら衝撃的なショックを受けるシャルティア。これには全員が、“そんな事かよ”と呆れた。

 

「そんな間抜けな事を!」

「全くよアンタ、驚かせないでよ!」

「えっ、ええ?」

 

下らない事にアルベドとアウラはシャルティアを怒鳴る。しかしアインズはこのやり取りを見て懐かしいと思う。するとアルベドはそんなアインズの手を握った。

 

「では、アインズ様。ナザリックの長として、シャルティアを厳しく叱ってください」

「ああ、そうだな。今回はこの私の責任となる…シャルティアに罪はないが、今後とも気を付けるんだぞ」

「はい…」

「そして全員も聞け。今回、私達に被害を及ぼしうる未知の敵がいるという事になる。早急にナザリックの強化を開始する…気を引き締めろ!」

「「「「「はい!!!」」」」」

 

アインズの宣言に守護者達の敬礼が響き渡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルヌスの自衛隊駐屯地。伊丹は今回に関する調査報告書をまとめていると、テレパウィンドからアインズの声が聞こえた。

 

《伊丹さん、聞こえてますか?》

「あっ!アインズさん。それで、シャルティアさんは?」

《さっき蘇生しましたよ。洗脳も解けたみたいですし》

「それは良かったですね」

 

少し安心しながらもそのままアインズと話を続けた。

 

《ロゥリィの様子はどうですか?》

「傷は治りましたけど…未だに眠っていますよね。そうとう体力を消耗したみたいですからね?」

《たしかに…では、私の方からですが、こんなことになって申し訳ありません》

 

アインズはテレパウィンド越しで、巻き込んで迷惑をかけた事を謝罪する。

 

「いえいえ、そんな謝らなくても」

《全ては私の責任ですからね。では、また》

「はい、また」

 

会話が終了して伊丹はコーヒーを飲み。

 

「さてと、早く報告書をまとめて寝よう…」

 

そして軽くストレッチをしながら急いで仕事を再開した。




これにてシャルティア篇は見事に終了。
しばらくはゲート側に進んで行きたいのですが、じつは伊丹とテュカとレレイとロゥリィも加えたぷれぷれぷれあですをやろうと考えてます。


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行こう、ナザリックへ

シャルティア暴走からしばらく経ち。レレイは仮設住宅で暮らしていて、朝になって目を覚まして外に出る。そこで見たのは大きな町であった。

 

「だいぶ、大きくなったね」

 

自衛隊がアルヌスに駐屯地を構えてから一か月半。難民キャンプ地は語学研修が行われて、研修生は薔薇騎士団のメンバーと従者。

それから旅の行商人が店を出してたが、アルヌス共同生活組合と購買部が協力して一軒のコンビニが開店した。それが瞬く間に大繁盛して人手不足になってしまう。しかし組合との間の伝手が効くファルマル伯爵家に協力してもらって、亜人のメイドが手伝いに来てくれる。おまけに次々と行商人がやって来ては、新しい店やさらには食堂までも出来てきて、ついには町が完成していった。

 

「随分賑やかになったな?」

「ピニャ王女達もがんばったみたいねぇ」

 

伊丹は前回の戦闘で重傷を負ったが、見事に回復したロゥリィと歩いていた。

じつは伊丹達がシャルティア監視してた頃に、外務省から菅原浩次がピニャとセクフィア帝国の元老院議員と交渉していた。そこで元老院の重鎮、キケロ・ラー・マルトゥスと会談して、日本の伝統文化の品を献上して交渉は成功したらしい。

 

「伊丹さん、ロゥリィさん!」

「おっ?マーレ、それにハムスケも」

「お久しぶりでござる」

 

2人の前にマーレとハムスケが現れる。じつは事件の後に時々アウラとマーレが遊びに来ている。そしてアインズが賢王にハムスケと名付けたと教えた。

 

「ここも随分と大きくなりましたね」

「まぁな。ピニャ王女の支援やレレイの授業のおかげでな」

「それでアインズ様からの伝言ですけど、僕が到着したらすぐに連絡するって」

「え?連絡を?」

《伊丹さん》

「うわっ!」

 

するといきなりアインズの声が聞こえたので驚く。伊丹はこれからはテレパウィンドを着ける事にしている。

 

「アインズさん、いきなりの通信は驚くからと」

《それはすみませんね…ですが、ちょっと話が…》

「話…ですか?」

《といっても…いいのかどうか分からなくて》

 

なにやら少し言うかどうか迷っている様子。そんなアインズにこの前のシャルティア反逆のようなのが起きたのか心配になっていく。

 

「まさか…また面倒事か厄介事?」

《いや、そうじゃなくて…伊丹さんに我がナザリック地下大墳墓に招待しようかと》

「……え?」

 

いきなり自分達の住処にご招待と言われて、戸惑ってしばらく固まってしまう伊丹。そしてすぐに我に返ると返事した。

 

「ちょっと…なぜいきなり?」

《あはははは、すみません。こんな事を言って戸惑う気持ちは分かります。ですが、アナタには色々と迷惑をかけてきましたのでお礼にと》

「お礼って…」

《まぁ、無理にとは言いませんから…返事を待ってますので、気長に考えてくださいね。それからマーレとハムスケを頼みますし、よろしければテュカもレレイもロゥリィも連れてきても構いませんから》

 

そのまま通信を切ってしまう。しばらくしてマーレとハムスケが帰っていき、伊丹とロゥリィは飲み屋で飲んでいた。

 

「ナザリックか…」

「伊丹、まさか行くつもりぃ?」

「なんだ?行かない方が良いってか?」

「だって…地下にあるんでしょぅ?」

「ああ、たしかにそう言ってたな」

 

日本来日でロゥリィが地下鉄に怯えてたことを思い出す。だから、地下にあると聞かれた時はロゥリィがとても怯えてた。そんな時に、テュカがうろうろと歩いているのが発見する。

 

「おーーーい、テュカ」

「伊丹」

 

呼ばれたので2人の所に駆け寄ったテュカ。しかし未だに浮かない顔のまま。

 

「お前、誰を探してたんだ?」

「別に…なんでもないの…」

「いや、そんな雰囲気じゃあ」

「本当に大丈夫だから」

 

そう言って去ってしまうテュカだったが伊丹は気づいていた。テュカは炎龍に村を滅ぼされて、父親も目の前で死んだことに。それが今でも心に大きな傷になっている様子。

 

[まさか…無意識に父親を捜しているのか?]

 

もしもそうだとすれば、このままだと彼女の心が壊れる可能性が高い。そう感じる伊丹は飲み屋を出て自分の部屋に帰ってベッドに横になる。そしてしばらくボーっとする伊丹だったけど、ある事を思いつく。

 

[そうだ!]

 

すぐに伊丹はテレパウィンドでアインズに連絡を開始。

 

「アインズさん、アインズさん!」

《伊丹さん。もしかして?》

「はい、アナタ方の住むナザリックに行きます!」

《そうですか。で、決めた理由は?》

 

それはアインズ達ならばテュカのトラウマを何とかしてくれるかもしれない事と、これで少しは気分転換してくれることに。

 

《なるほど。やはり…その記憶を消すのが一番ですね?》

「それはちょっと困る。なんか危なそうですし」

 

アインズの記憶消去か改竄の提案は却下した。万が一にこれが原因でテュカの心が壊れるかもしれないので。

 

《まぁ、とりあえずいい方法が他にないのか考えてみますね》

「お願いします」

《ついでに、来るときにはお菓子を?》

「はいはい、分かりました」

 

連絡が終了して伊丹は一度、テュカの部屋に向かった。入ってみるとテュカが目に少し涙を出しながら寝ているのが分かる。

 

「お父…さん」

 

しかも寝言で父親の事を呟くので、優しく頭をなでたりする。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから2日後。

伊丹とテュカとレレイとロゥリィが集まってアインズを待っていた。それから頼まれたとおりに、日本のお菓子や護身用の銃とガスマスク3人分を用意。

 

「隊長、あんまり迷惑をかけないようにしてくださいね?」

「本当ですよ?あちらは未だに我々を信用していないみたいですからね?」

「分かってる、分かってるって」

 

栗林と富田に心配されながらも待ち続けるが、その隣でテュカが腕に強く抱き着いていた。

 

「テュカ、どうしたんだ?」

「なんでもないの。なんでも」

 

ただそう返事を返すと、ゲートが展開されてアインズが現れる。

 

「では、伊丹さん。この度、ナザリックへご招待します」

「どうもアインズさん…じゃあ、行こうか」

「うん」

「はい…」

 

少しするとロゥリィも伊丹の腕に抱き着いてきた。

 

「ロゥリィ?」

「だって、これから行くのって地下の墳墓でしょぅ?あのハーディーがいたらどうするのぉ?」

「あの…そのロゥリィの言うハーディーと我々は本当に関係ないから」

 

怯え続けるロゥリィを伊丹達が、少し時間をかけてなんとか落ち着かせた。

 

「それでは、いきますよ」

「はい」

 

アインズを先頭に伊丹とテュカとレレイとロゥリィはゲートを潜った。

ゲートを潜って着いた先は、ナザリックの特別交流室。そこには既に各階層守護者とプレアデス全員にセバスが待機していた。ちなみに任務に出ていたセバスとソリュシャンは、今回の為に呼び戻されてる。

 

「お待ちしておりました」

「伊丹殿」

「これはどうも…」

 

アルベドとデミウルゴスに出迎えられたので、ついお辞儀をする伊丹達。

 

「アルベドやアウラにナーベラルはすでに会ってるので、残りの守護者とプレアデスを紹介しましょう」

 

最初に伊丹の前に出てきたのはコキュートスとヴィクティム。

 

「伊丹殿。我ノ名ハ第5階層守護者、コキュートスト申ス」

〔同じく私は第8階層守護者、ヴィクティム〕

「ああ…これはご丁寧に」

 

何とも人間離れした外見の2匹に少し引きながらも握手する。それからセバスが、ユリとルプスレギナとエントマとソリュシャンを引き連れて来た。

 

「どうも初めまして、ナザリック執事のセバス・チャンと申します。それからこちらが、ナーベラルとシズと同じ」

「戦闘メイドのユリ・アルファです」

「ルプスレギナ・ベータっス!」

「ソリュシャン・イプシロンです」

「エントマ・ヴァシリッサ・ゼータですわ!」

 

約1名を除いてセバスと戦闘メイドは少しまともそうと感じてホッとする。だけど、誰か足りない事に気が付く。

 

「あれ?そういえば…シャルティアだっけ?彼女は?」

 

そうこの間、任務の監視対象でロゥリィをボロボロにしたシャルティアがいなかった。

 

「あ…彼女は……」

「え?」

 

アインズが指を刺した先には部屋の隅で暗い顔のシャルティアが立ってた。すると苛立ちをみせたアウラがシャルティアに近づく。

 

「ほら、伊丹さん達が来たんだから少しは挨拶ぐらいしなよ!」

「……分かったでありんす」

 

やる気なく返事をして伊丹達の前に来ると

 

「改めて自己紹介するでありんすが…第1…から、第3階層守護者…シャルティア・ブラッドフォールンでありんす」

 

ドレスの両端を掴んで少し上げながら挨拶した。しかし、本当にやる気というものがない。

 

「これって…」

「はい、あの反逆と暴走を話した途端に、あのとおりに」

 

いくら精神攻撃を受けてたとはいえ、アインズに牙をむいたのは変わりなく。その為、強いショックを受けた。

 

「とりあえず…ユリ、ナーベラル」

「「はい」」

「2人で伊丹さん達にナザリックの案内を」

「分かりました」

 

2人に案内を頼むと、さっそく伊丹達のナザリック案内が始まった。




今回は伊丹達のナザリック招待篇となりましたが、次回には「ぷれぷれぷれあです」のあのアイテムが登場するかもしれません。


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楽しい階層案内

テュカのトラウマ治療の為にナザリックにやって来た伊丹達。そこで残りの階層守護者と戦闘メイドと挨拶をして、ユリとナーベラルにナザリックの案内をしてもらう。

 

「では、伊丹殿。それから他のお3人。リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンは付けましたね?」

「ええ、もちろん」

 

今伊丹達4人とユリとナーベラルはリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを指にはめていた。

 

「これさえあれば、本当にナザリック内や周りの外を自由に行けるんですよね?」

「当然です。ただし、終わったら返していただきます。では、行きましょう」

 

さっそく6人がリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンでナザリック見学が始まった。

最初に来たのはシャルティアが管轄の1~3層・墳墓。それはまるで迷路のような作りで、まさに墳墓という単語が似合いそうな空間。

 

「シャルティア様が守護をしている墳墓です。この迷路にはデストラップも多数仕込んでいます」

「へ~~~まさにダンジョンのような場所だな?」

「なので、すぐ別の所に行きましょう」

「えっ?もう移動しちゃうの!?」

 

いきなり次に行くなんて早すぎると感じた伊丹。

 

「いやいや、せっかく来たんだしもうちょっとこの階層の説明をしてくださいよ?これさえあれば、罠を通らずに行けるでしょ?」

「出来るには出来ますけど…ここには五大最悪の1つ、恐怖公の住居がありますので」

「五大…最悪?」

 

五大最悪とはナザリックの中でも醜悪な外見や役職や住処を持つ5人。ちなみにグループ名ではなく、ナザリックメンバーからそう呼ばれているだけ。

 

「ええ、アインズ様からSAN値というのが下がるかもしれないと言われてますが、どうしてもというなら」

「いや…別に良いですから…次にしてください」

 

とても不気味なぐらいに無表情なユリとナーベラルの顔に、少し恐怖を感じる伊丹である。

次に到着したのは巨大な地底湖が広がる第4層・地底湖。

 

「ここが第4階層で、今から階層守護者のガルガンチュア様を呼びます」

「ガルガンチュア?」

 

すると地底湖から泡が噴出してくると、そこから30m以上ある巨大なゴーレムが現れた。しかも体で胸から赤い光と鼓動が発せられている。

 

「なっ!なんだこりゃ!?」

「ゴーレム?」

「大っきいわねぇ?」

「もしかしてこれが?」

「はい、第4階層守護者のガルガンチュア様です」

 

その圧倒的な巨体の第4階層守護者のガルガンチュアに度キモを抜く伊丹達。だが、隣でナーベラルがなにかを用意していた。

 

「さぁ、伊丹殿。これを」

 

手渡したのは防寒用コートと赤い色の手袋。

 

「これは?」

「次に向かうのはコキュートス様の守護階層で、これ位の防寒装備でないとアナタ達は耐えられません。と言っても耐えられるかどうか分かりませんが?」

「耐えられないって…どういう?」

「いいから、早く着てください」

 

言われるままに伊丹とテュカとレレイとロゥリィ、さらにユリもナーベラルも防寒着と手袋型の防寒用アイテムを着込んで移動する。次についたのは北極か南極と同じぐらいの氷山で埋め尽くされた、第5階層・氷河。

 

「なんだよ…ここは…寒すぎるだろ!!?」

 

防寒具と防寒アイテムを纏っているが、それでも寒いのか体を振るえながら伊丹は叫び。他の3人も必死に寒さを耐えたりした。

 

「言った筈ですが、耐えられるか分からないと」

「ちなみにここにも五大最悪のニューロニスト・ペインキルが住み、さらにアルベド様の姉の二グレド様もいますけど?」

「分かったから、早く次!身がもたないから!!」

 

のん気に説明するユリとナーベラルにツッコミを入れながらも次に移動した。それから今度はアウラとマーレが管轄の第6層・ジャングル。ちなみに今伊丹達が立っているのが、ローマのコロッセに似た円形闘技場の円形劇場(アンフイテアトルム)

 

「今度は大分マシな所だな?」

 

安心した伊丹が5人と一緒に防寒具を脱いだ。

 

「…地下なのに太陽が昇っている!」

「それがこの階層の特徴です」

「ここにはそれ程危険な所はない筈ですので、案内しましょう」

「それは助かるよ」

 

さっそく伊丹達は円形劇場(アンフイテアトルム)を出て見る。円形劇場(アンフイテアトルム)の外は周りの半分が森林に包まれていて、しかも見るからに立派な巨大樹もあった。

 

「あの巨大樹がアウラ様とマーレ様の住居になっております」

「うわ~~~なんだか、少し故郷と同じ匂いがする…」

 

どうやらこの階層からテュカの故郷に似た雰囲気を感じて少し寂し気な顔になった。これはマズイと感じて伊丹が、すぐ2人にお願いする。

 

「あの!もう、この場所の事は分かりましたから次に!」

「別に構いませんが、次は暑いですけど?」

「とにかくすぐに!」

「はいはい、分かりました」

 

こうして次に向かった。到着したのはデミウルゴス管轄の第7層・溶岩。

 

「なんだこれ…」

「だから言った筈ですよ?暑いって?」

「暑いというより、熱いだろ?」

 

汗だくに言う伊丹。なぜならマグマが川のように流れているため、とんでもない熱気に包まれていた。そして廃墟になったギリシャ風の遺跡が立っていたが、この暑さで伊丹は見る気にもなれず。当然、テュカもレレイもロゥリィも暑さには勝てずに汗を流してダウン。

 

「次に行った方が良いですか?」

「早く!次々!」

 

これ以上いると脱水症状になる可能性も高いので、次に向かう。今度はヴィクティムが管轄の第8層・荒野の筈だが、そこは現在立ち入り禁止になっているので特別交流室に戻った。

 

「ただいま、戻りました」

「ふむ、ご苦労。どうでしたかな?ナザリックの階層は?」

 

そこでアインズ達が伊丹達を出迎えてくれた。

 

「ええ、ちょっと疲れました…」

「そうですか…」

「だけど、少しスリルがあったわねぇ」

 

様々な階層に伊丹達は言えるだけの感想を言い出す。

 

[ん?あれは…]

 

するとレレイは部屋の隅に箱を見つけたので駆け寄って開けてみた。そして中に入ってた物に興味を持ったのか、手に取り伊丹の所に戻る。

 

「伊丹、これなに?」

 

レレイが持ってきたのはパーティークラッカーみたいなもの。

 

「これって、クラッカー?」

「クラッカー?」

「ああ、この紐を引っ張ると」

 

伊丹はさっそくクラッカーの紐を引っ張ろうとした。するとアインズが伊丹の持っているクラッカーを見た途端。

 

「ああっ!それはっ?!」

 

慌てたアインズが伊丹を止めようとしたが、時すでに遅し。

 

「え?」

 

紐を抜いた途端、“パーン!”と大きな爆音と一緒に紙吹雪が辺り一面に巻き上がる。そしてこれが大きな騒動の火ぶたになってしまった。




伊丹達のナザリック案内です。第8層・荒野は許可を得なければ入れないので行かれないという事にしました。そして次回は伊丹達を含んだ「ぷれぷれぷれあです」の特別版をやりますのでお楽しみに。


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恐怖の完全なる狂騒・改

ナザリック案内が終わって特別交流室に戻って来た伊丹達。するとレレイがクラッカーを見つけると、慌てて止めようとしたアインズだがうっかり伊丹が紐を引っ張ってしまう。そして大きな音と紙吹雪が部屋中に舞う中、ロゥリィに異変が起きる。

 

「な…なんだか、普段とは違う感じに感じちゃうぅ…」

「ロゥリィ?どうしたんだ?」

「触らないでぇ!」

 

心配した伊丹がちょっと肩を触れた途端、振り払ってロゥリィは少し離れた。

 

「ロ…ロゥリィ?」

「こんな露出の高い格好で…恥ずかしいし、おまけにこんな大きな斧を振り回して…」

 

なんとロゥリィが少しおしとやかになって恥ずかしがる素振りを見せる。普段から好戦的で戦闘狂なロゥリィとは全くの逆な性格に変わっていた。

 

「ロゥリィが可笑しい!?」

「たしかにな…一体どうなって!」

「ほんと、バッカじゃないの!」

「「え?」」

 

すると普段のテュカとは全く違った口調に2人の中で凄い衝撃が走った。思わず振り向くといつもより強気な表情のテュカの顔。

 

「いつもいつも無茶ばっかりしてるから、そのツケでしょうが!でも、体調の方は大丈夫そうね?」

 

純粋で優しさが漂うテュカも、少しツンデレが入ったコギャル風な口調と性格に変わっていた。この異変に驚く伊丹はすぐに原因はこのクラッカーだと確信しアインズに尋ねる。

 

「アインズさん、これは一体?!」

「これは…完全なる狂騒・改といって、アンデッドだけでなく他の種族にも精神が狂騒状態にし。心の壁を外す効果となる」

「狂騒状態にする?」

 

本来、完全なる狂騒とはアンデッドのみ精神系の魔法が効くというアイテム。じつはちょっと前にアインズがうっかり自分に使ってしまって、ちょっとした事で動揺する体質になって大変な目にあってしまっていた。

 

「じゃあ、これはその改良版って奴?」

「そうなんだ。元々は守護者に使う予定だったけど…あっ!?」

 

その時、アインズは気づいた。このアイテムはこの前のシャルティア暴走の時に踏まえて、守護者の精神支配に対する強化の為にと使おうと考えて用意。それが今度は伊丹がうっかり使ってしまい。その結果

 

「うう…なんだか…体が火照ってしまう気分でありんす……」

「あらあら、普段からビッチの癖にもっとビッチになったのかしら?」

 

普段から色気=ビッチ感があるシャルティアはそれが大きく出ていた。しかしアルベドは変わっていない様子。アインズはすぐに様子を分析する。

 

[……恐らく、俺の前だからこそ起きる効果かも知れないな?もしくは俺と同じ一度掛ったから効かないのかな?そして普通だったら…ここはコキュートスが止めるところ…]

 

そのコキュートスはシャルティアの様子を見ていた。

 

「ビッチトハ…ドレ位ノビッチカ気ニナッテシマウ…!」

[うわっ!?これがコキュートスの本音なの?!]

 

激しく鼻息をして興奮するコキュートスを見て、色んな意味で恐怖を感じるアインズ。これには伊丹も引いていた。

 

「うわ~~~なんだか性に敏感な思春期の中学生みたいな反応……」

「ふむ…まぁ、言われてみればそうだな」

〔いやいや、そんなの私には関係ないし…〕

「「ん?」」

 

アインズと伊丹が声をした方に振り向くとダラっと横になるヴィクティム。

 

〔もぅ、めんどくさいし…大体、いきなりそんなアイテム使うなって話だし…アインズ様、そろそろ帰ってもいいっスか?〕

 

なんともヴィクティムは怠惰な態度でアインズに半分タメ口な忠誠心が空っぽになっていた。

 

「ヴィ…ヴィクティム…これがお前の本音か…」

「つまり忠誠心が強い者ほど、本音はめんどくさがり屋というゾナモシ」

「「ゾナモシ!?」」

 

いきなりデミウルゴスが変な語尾を使うので2人は驚く。

 

「そしてこのアイテムというのは、前回のシャルティアのような精神攻撃に踏まえてのものデシ」

「「デシ!?」」

「「デシ!」」

「つまり、このような精神になりながらもコミニケーションを取れるかの訓練ですモジャ!アインズ殿?」

「「モジャ!?殿!?」」

「「モジャ!殿!」」

 

いち早く完全なる狂騒・改の使い方を理解したデミウルゴスだが、その変な語尾で色々と台無しになり。アウラとマーレも本当の子供のような感じて無邪気に真似をする。これが2人にとっての本音だと思う伊丹だがあることに気づく。

 

「てか、なんで俺達はいつものままなんだ?!」

「たしかに、おかしい?」

 

そうなぜか伊丹とレレイは普段通りの性格だった。

 

「多分…まだ人間に対しての効果は出てこないのかもしれないな?」

「そうなんスか?じゃあ。なんでアインズさんも?」

「ん…きっと、前に使ったから耐性が付いたのかな?」

「では、私達も?」

 

するとプレアデスが横一列に並んでユリがアインズに尋ねる。

 

「そういう事になるな。という訳で、これは実験に近いもの。これからお互い気軽に接しようと思う。プレアデスと、それから悪いが伊丹さん達には私のやることを手伝ってもらえないか?」

 

プレアデスだけでなく、伊丹とレレイにも少し手伝ってくれないかと頼んだ。

 

「別に良いですよ。そもそも、今回は俺のせいみたいだからね」

「私も少し興味を持ったからやる」

「ありがとう。そしてプレアデス達には、何時ぞやの砕けた感じで接して見せろ」

 

その言葉を聞いてユリは顔色を悪くして少し震える。この前にユリが完全なる狂騒の影響で、頭をボウリングのように投げ転がしたりしとはっちゃけてしまった。そして今となってはトラウマになっている様子。

 

「ああ、頭は投げなくていいから!!」

「そうですか…」

 

それでもまだ顔色は変わらずにいるユリ。

 

「してアインズ様、まずどの様な事を?」

「そうだな?では、今の段階で皆と面談してみるか?」

「畏まりました。部屋を準備しておきます」

 

アインズの命令に従って部屋を出るセバスに、伊丹とレレイは少し気になり始める。

 

「あの、セバスって人。あんまり変わっていなかったな?」

「もしかして、私達と同じ影響を受けないのかな?」

 

完全なる狂騒を受けたアインズとアルベドとプレアデスが普段通りだが、セバスはいつもと変わらずにいるのに疑問を持つ。

 

「それにしても、テュカとロゥリィは彼らと比べてマシな方じゃないかな?」

 

ツンデレな態度のテュカと恥ずかしがるロゥリィに対して、未だに激しく騒いだりする守護者達と見比べたりする。

 

「まぁ、本音は人それぞれですし…」

「それにしても…セバス様が発動しないなんて?」

「案外!セバス様も心の中じゃあ、スンゲェ狂騒なのに必死で抑えているかもしれないっスね!」

 

笑いながらルプスレギナが大声で喋ったりする。そして部屋の外ではなぜかセバスがいて、体を震えさせながら。

 

「あぁぁぁぁぶなかったぁぁぁぁあああああ!!あの瞬間に私の中の花火みたいなのがハジケ飛んで、アインズ様に肩を組んじゃったりしようと思っちゃう程に!!」

 

じつはルプスレギナの言った通りセバスもちゃんと受けて、とてつもなくテンションの高い本音であった。しかし自分の立場や役割やキャラの為にグッと我慢していたらしい。

 

「とにかく、アインズ様の要望通りに会談出来る場所を作らなければな!」

 

そのままスキップしながら準備をするセバスであった。




完全なる狂騒・改でシャルティア達だけでなく、テュカとロゥリィの本音がさらけてしまいました。とりあえずテュカはツンデレでロゥリィは内気にしていきますが、まだ人間には効果がないという設定にしました。
次回はなんとか○○の部屋風にしていきます。


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テュカとロゥリィと話そう

セバスが用意してくれた守護者との会談が出来る部屋。それはテレビ番組で○○の部屋に出てきそうなセットになっていた。最初にアインズと会談するのは、テュカとロゥリィで後ろには伊丹とレレイが立っている。

 

「はい、ではゲストにテュカさんとロゥリィさんに来て貰いました」

「どうも…でぇす…」

「ええ、来てやったわよ」

 

少し声を高めにするアインズに、恥ずかしがるロゥリィと堂々とした態度のテュカは返事を返す。

 

「では、これよりお2人の色んな所を聞いてみようと思います!」

「ええ…上手くいくかは分かりませんが、なんとかがんばりますぅ!」

「お手柔らかに頼むよ」

「最初はロゥリィさんからです!」

「は…はい!!」

 

大きな声で返事をするロゥリィに伊丹は見守るしかなかった。それでもとにかく話は始まった。

 

「ますロゥリィさんは不老不死の亜神という事ですが…もしかして、あの性格は亜神になってからか?」

「いえ…恥ずかしいけど私のあの性格は初めからでしてぇ…」

「そうか、じゃあ次の質問は…一体どこでそんな力が?」

「はい…それはエムロイ神教団によるものでしてぇ」

「エムロイ神教団?」

 

するとロゥリィの口から出たエムロイ神教団という単語に興味を持つ。これは伊丹も同じ。

 

「なぁ、前から思ったけど…そのエムロイ神教団ってなんだ?」

「その名の通り、戦いの神エムロイを祀る教団。なんでも年が若い神官にはフリルというのが多いけど、年を取る程少なくなるらしい」

 

レレイから分かりやすく説明を受ける伊丹とアインズ。

 

「では、話を変えるが…そのゴスロリ風の神官服を好んでいるようだが、今の性格になってからは?」

「はい…なんだかとても恥ずかしいと感じますぅ…とくにスカートの丈が短いのは」

 

言いながらもスカートの裾を引っ張ったりしながらもロゥリィとの会話は終了して、次にテュカに切り替える。

 

「じゃあ、次はテュカだ…さて、今の性格になった感想は?」

「まぁ…解放されたというか、スッキリしたっていうか。大体そんな感じね」

[たしかに、いかにも解放されたって表現に近いな]

 

今のテュカにどことなく納得してしまう伊丹だが、ここでアインズが少しいたずら的な発言をする。

 

「なるほど、それじゃあ伊丹に対してどんな印象を?」

「はぁ!?」

「え?」

 

この質問にはテュカは顔を真っ赤になる。

 

「あっ…アンタ!いきなり何言ってんのよ///」

「いや、別に答えなくてもいいんだ。言ってみたかっただけだからな」

「だからって、そんな変な事を二度と言わないでよね!!」

 

恥ずかしそうに叫び続けるテュカだった。

そんなこんなで、テュカとロゥリィの話が終わって、次は他の守護者との会談をする。初めはシャルティアから始まって、次にアウラ&マーレにコキュートスとデミウルゴスとセバスとの会話をやっていき。最後はヴィクティムとなるのだが

 

〔グ~~~グ~~~〕

 

ヴィクティムはソファーの上でいびきをして眠っていた。

 

「ヴィクティム…だらけるのは構わんが…せめて起きて話だけでも」

〔だって、めんどくさいから…〕

「めんどくさいからって…まぁ、仕方ないか」

 

全くのやる気ゼロなヴィクティムにアインズはため息を吐いて諦めかける。そして会談の見学をし続けた伊丹とレレイは、今までのカオスな内容に精神に限界が近づけていた。

 

「なんか…これ以上いると、俺達までおかしくなりそうだ」

「私も…ん?」

 

するとレレイはどこかに行こうとするユリとナーベラルとルプスレギナの姿を目撃する。

 

「伊丹、あの3人?」

「ん?ユリさん達、どこに?」

 

2人はこの場から離れて3人を追いかける。

 

「ちょっと!」

「あら、2人共どうしたの?」

「それはこっちが聞きたいよ。アンタ達もどこに行くんだよ」

「会いに行くの。完全なる狂騒・改を作った人に」

「「「「えっ!?」」」」

 

なんとユリは今回の騒動の引き金の、完全なる狂騒・改の製作者を知っているらしい。これには伊丹はもちろん、レレイもナーベラルもルプスレギナも驚く。

 

「それ本当っスか、ユリ姉!」

「ええ、恐らくだけどね。だから、行くのです」

「だったら、俺達も」

「うん、会ってみたいから」

 

すぐに行きたいとお願いする伊丹とレレイに、ユリはポケットから指輪を取り出して2人に渡した。

 

「これは猛毒を無効化させるアイテムです。これから行くのは猛毒が漂う場所ですので」

 

ルプスレギナにも同じアイテムを渡すと、さっそくリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを発動し目的の場所に向かう。




今回は少し短めでしたが、どうでしたか?テュカとロゥリィだけでなくヴィクティムとの会談も入れてみました。
次回は伊丹がパンドラズと出会うのでお楽しみに。


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伊丹&レレイ、黒歴史を見る

完全なる狂騒・改でテュカやシャルティア達のの心が解放されて、その状態での会談をやることになった。だけど、精神的に疲れてしまった伊丹とレレイだったが、ユリとナーベラルとルプスレギナと一緒に完全なる狂騒・改を作った人の所に向かう。

伊丹達がリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンで到着したのは宝物庫。

 

「うへ~~~ここが宝物殿か?」

「スゴイ…」

「ちなみに、この部屋には侵入者対策の猛毒が漂ってますからね。渡したアイテムが無ければ入っただけで」

「あの世行ってことね」

 

ユリの説明を聞きながらも部屋いっぱいの財宝の山に2人は釘付け。

 

「それで、あのアイテムの製作者は誰なの?心当たりは?」

「はい、じつは…以前のオリジナルの物とは少し違っていました。その鍵を握るのは…」

「ぬふふふふふふふ…そぉぉぉぉぉぉの通りぃぃぃぃです!お嬢様方とお客人!!」

 

そこにパンドラズが相変わらずのウザいくらいに高いアクションと一緒に登場。当然、引いてしまう伊丹とレレイだったが、ナーベラルに何者か聞いてみる。

 

「なに…コイツ?」

「パンドラズ・アクター。アインズ様が自ら創造なさった宝物殿の領域守護者を任されたドッペルゲンガーです」

「これが…アインズさんが作った?」

 

まさかアインズがこんな変にテンションが高くて、いちいちアクションをするキャラを作っていたのを知ってさらに引く。しかしユリは本題に入る。

 

「やっぱり、パンドラズ・アクター。アナタが作ったのですね?完全なる狂騒・改を」

「ユリ姉、どうしてこのパンドラズ・アクターが作ったって分かったんスか?」

 

ルプスレギナは完全なる狂騒・改を作ったのがパンドラズだと気づいたのかユリに聞いてみた。

 

「説明しましょう。なぜ私が作ったのが彼だと気づいた理由。1つ目は、私が一度彼に会ったからです」

「出会ったから?」

「そして2つ目。前使用した完全なる狂騒は、発動の時に人形が出てくる仕組み」

「はぁ…で、どういうこと?」

「つまり、こういう事です!!」

 

ユリが大声を出しながら完全なる狂騒・改を手に持って掲げる。

 

「あっ!?」

「いいっ!?」

「これって!?」

「なるほど…」

「ほわっ!?」

 

そしてこの場にいた伊丹とナーベラルとルプスレギナと、ついでにパンドラズは驚愕してレレイは納得したりする。なぜなら完全なる狂騒・改から出ている人形の顔がパンドラズと同じ顔だった。

 

「まさか…そこで気づかれるとは、思いませんでしたね」

「いやいや、アンタの顔を知ればすぐに分かるけどな」

 

何気にカッコつけてユリの推理を褒めるパントラズだけど、あまりにも分かりやすいので伊丹が呆れながらツッコむ。

 

「それでは、守護者統括のアルベド様も気づかれていましたか?」

「いや、気づいていない様子だけど?」

「そこは触れないで頂きたいので、お願いします」

「たしかに、益々ややこしくなりそうだな」

 

伊丹とユリがお願いした丁度そんな時に、アルベドはクシャミをしたらしい。

 

「なるほど、そういう事でしたか」

 

するといつのまにか後ろにデミウルゴスが現れた。

 

「デミウルゴス様…どうしてここに?」

「なにやらコソコソとしていたので、着いて行った次第でしたね」

「てか…あの語尾は?」

 

伊丹の言う通り変な語尾は使わらずにちゃんと喋っていた。

 

「どうやら私も、アナタ方と同様に効かなかったみたいでしてね。でもここは敢て、敢て!振る舞わせていただきました」

「本当に?」

「そんな真剣な目で疑わないで頂けないでしょうか?」

 

レレイは本当に効いてないのか信じられない様子だが、そこにパンドラズが入って言ってきた。

 

「そんな筈は?試作品ならまだしも、完成品なら決して効果が出てた筈!」

「試作品?!」

「さっき試作品って言ってたけど…」

 

すると伊丹はパンドラズの試作品という言葉を聞いた途端に、すぐナーベラルが質問。そのままパンドラズが説明し始める。

 

「はい。本音をさらけ出すというのは、精神のアプローチをするに最も難しい干渉です。なので、まずは試作品を作り出してそこから完成品を作った訳です」

「その試作品と完成品はどう違うの?」

「説明しますと、本来の完成品は本音をさらけ出す効果がありますが、試作品は性格を変化させるシンプルな物。たとえば、性格が解放される。コンプレックスを刺激するか、ぶっ飛んだキャラになる」

 

説明を聞いた途端に伊丹達はなんとなく納得する。たしかにテュカらロゥリィはもちろん、シャルティアやコキュートスがなんかさっきの説明通りの性格になっていたので。

 

「なるほど…つまりアンタの説明を聞いた限り…」

「その性格の変化や全員にかかっていない事から」

「試作品って訳ですね」

「ところで、こんな質問だけど試作品と完成品の見分け方は?」

「はい、それは簡単です」

 

レレイが完全なる狂騒・改の見分け方にして質問するのでパンドラズは見分け方について説明する。

 

「まず、紐を引いた時に出てくる人形がアインズ様だったら完成品。そして私だったら試作品」

 

説明を聞いた途端、この場の空気が止まったかのように静かになる。

 

「……じゃあ、使用前の…紐を引かないで見分ける方法は?」

「無理ですね!」

 

大きく宣言するパンドラズ。つまり、紐を引いて発動しなければどれが完成で試作か分からないという事。するとデミウルゴスは今、シャルティア達がどうしているのか心配になってシズに連絡。

 

「メッセージを…シズですか?今の状況は?」

《大変》

 

それからデミウルゴスはシズとの連絡が終わると、すぐに伊丹達はパンドラズも一緒に宝物殿を出た。




伊丹とレレイがパンドラズと出会ってかない引いてましたね。
次回でこの騒動が終了します。


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騒動の終了

オーバーロードの二期がもうすぐスタートで楽しみにしています。


伊丹がうっかり使った完全なる狂騒・改は、パンドラズが作った試作品だったと判明。そして今、シズからの連絡でもっと大変な事が起きていると知らされたので急いで戻る。

戻ってみると会談の場改めスタジオは、性格を変化されたテュカやシャルティア達の暴走で半壊されていた。

 

「という訳なんだ…」

「なるほど…私が用意してたのが試作品だったのか…」

 

伊丹は完全なる狂騒・改が試作品で作ったのがパンドラズだとアインズに説明した。

 

「アインズ様、さっそくですがこれのご使用の許可を」

 

デミウルゴスはピコピコハンマーの形をしたアイテムを取り出す。

 

「それは?」

「完全なる静寂。パンドラズ・アクターの話では、試作品でも完成品でも関係なく完全なる狂騒・改の効果を解除できるアイテムだとか」

「ああ、そうか。よろしい…使用を許可するぞ!」

「その前に、これ本当に効くのか?」

 

どうみてもピコピコハンマーにしか見えないアイテムに伊丹は疑う。その言葉に、アインズも少し心配になった。

 

「……たしかに、言われてみれば…」

「では、まず一番やりやすそうなヴィクティムを実験に使ってみてはいかかでしょう?」

「ヴィクティムを?」

 

ここでアルベドが提案。たしかにこんな騒ぎの中、未だにヴィクティムはダラダラとし続けている。

 

「そうだな…悪いがヴィクティム・実験体になってもらうぞ」

 

さっそく寝っ転がってるヴィクティムの頭に完全なる静寂をピコっと叩いた。

 

〔あれ?私は今まで何を…〕

 

するとさっきまで寝ていたヴィクティムはすっきりと目を覚まして周りを見回す。それからすぐアインズは尋ねてみた。

 

「ヴィクティム。お前に尋ねるが、私に対する忠誠心は?」

〔そんなの当然ありますよ!下僕の私がアインズ様の忠誠を汚す事なぞ!〕

「ふむ、それを聞いて安心した。これの効果があった事だしな」

 

真剣な目と大きな声で宣言するヴィクティムに、完全なる静寂の効果はちゃんとあると確信する。

 

「だけど、まずこの状況でどうやってするの?」

 

レレイの言う通り、暴走中のテュカとシャルティア達にどんなタイミング使うのか分からなかった。しかし伊丹は伊達に自衛隊の隊長をやっていたので、すぐに状況分析をした。

 

「じゃあ俺とレレイがテュカとロゥリィの気を逸らしておく。ソリュシャンさんとルプスベギナさんはシャルティアさんを、シズさんとエントマさんはコキュートスさんを、そしてセバスさんはアウラとマーレをお願いします。デミウルゴスさんは完全なる静寂を担当。ユリさんとナーベラルさんは彼らがこの部屋から出ないように扉の死守を」

 

伊丹が彼らに適切な指示を送るといきなりアルベドが質問してきた。

 

「では、私は何を?」

「え?じゃあ…アインズさんの警護を…」

「もちろん!貴様の命令を受けなくても、初めからそうするつもりでしたわ!!」

[もぅ、なにもツッコまない…]

 

などと心の中で呟くアインズ。だが、何はともあれ作戦が開始された。さっそく伊丹とレレイはなぜか矢を撃ちまくるテュカと彼女の後ろに座るロゥリィに近づく。

 

「2人共、いい加減にしろ!」

「なんなのよ!さっきまでいなかったくせに…本当はレレイの事が」

「そうじゃなくて…」

「伊丹、少し危険だけどこの方法で」

 

何か思いついたレレイが伊丹にこっそりと作戦を伝える。そして再びテュカの前に立って宣言。

 

「テュカ!いつまでそんなことをすると、お父さん怒るからな!」

「おっ、お父さん!?」

 

レレイの思いついた作戦とは、伊丹が父親宣言をしてテュカの気を逸らす事。たとえ性格が変化しても父親の執着が残っていたが、その隙にデミウルゴスが完全なる静寂でテュカの頭を叩いた。

 

「良し、次はロゥリィ!」

「ひゃっ!そんな大きな声で」

 

大声に驚いたロゥリィだったけども、そこはスルーして伊丹がこんな事を言う。

 

「お前に一言言っておきたいことがある…」

「なに?」

「俺は…ハルバードを笑いながら振り回す姿のお前が一番好きだ!!」

「ええっ!?」

 

伊丹は大きな声でロウリィに告白宣言をする。

 

「そっ、そんな…普段の私のはしたない姿が…」

 

当然、そんなことを言われてロゥリィは顔を真っ赤にして恥ずかしがる。だが、つかさずデミウルゴスの完全なる静寂で攻撃。それからコキュートスは変形したシズに乗って子供のようにはしゃいだところを。シャルティアはソリュシャンの胸議論をして頭を抱え込んだところを。そしてアウラとマーレを任されたセバスは

 

「もう…もう…我慢で出来ない!!」

 

ついにさっきまで抑えていたものが爆発して、大声を出してハイテンションに意味もなく動き回った。

 

「何その踊り!!」

「面白い!!」

 

セバスの動きを見てはしゃぐアウラとマーレ。そしてデミウルゴスはセバスの行動にもしやと思い尋ねる。

 

「セ…セバス、もしかして…」

「はい!じつは私も影響をしっかりと受けていたのです!」

「言ってくださいよ…そういうことは」

 

呆れながらもアウラとマーレと一緒にセバスも完全なる静寂で叩いた。

 

「あれ?私さっきまで何を?」

「本当ねぇ」

「テュカ、ロゥリィ。戻ったか!」

「「戻った?」」

 

最初にテュカとロゥリィが正気に戻ると他のみんなも

 

「ム?我ハナニヲ?ン…ナゼシズニ乗ッテイル?」

「あれま、私はさっきまで何に頭を抱えていたのかえ?」

「ん?マーレ、アタシ一体?」

「ゴメンね、お姉ちゃん。僕もあんまり…」

「私も…さっきまでの記憶が?」

 

全員が性格変換した時の記憶を失っていながらも戻っていた。

 

 

 

 

こうして騒ぎが終了して、伊丹達とアインズに案内されて第9層・ロイヤルスイートのバーにて飲んだり食べたりする。

 

「やれやれ、このまま行ったらどうなる事だと…」

「ゴメンなさい。全然覚えてなくて」

「私もぅ…なんだかまだ頭がボーっとなってるようなぁ」

 

テュカとロゥリィはさっきまでの記憶がないようなので頭を抱えてしまう。

 

「随分と大変な目にあられたのですね。お客人」

「いえいえ、こっちが悪いのですから」

 

キノコ型モンスターでこのバーのマスターの副料理長が伊丹に同情しながらも、彼らに料理を振る舞ったりした。

 

「全くでありんすよ。前回アインズ様に対してとんでもない事をしでかしたばっかりなのに」

「そうだよね…」

「はい……」

 

これにはシャルティアやアウラやマーレも恥ずかしそうになる。

 

「まぁまぁ、こうして元に戻れたのだから良しとしましょうか」

「それにしても…なぜ掛っていなかった私達にも?」

 

じつはあの後、もしも遅く発動するかもしれなかったのでナーベラルとデミウルゴス。そして伊丹とレレイとプレアデスとアインズ自身も完全なる静寂で頭を叩いた。

 

「まぁ、とにかくこうして無事に元に戻った訳だ。今から無礼講という事で」

「流石はアインズ様。こうして私達やこのような輩に対してその気遣い。感激いたします!」

「ふふふふ…だが、いずれはこの私がナザリックの支配者になる予定ですけどね」

 

などと独り言を言うこのペンギンは、バードマンで執事助手のエクレア・エクレール・エイクレアー。ナザリックの支配を狙っているが、あくまで製作者の餡ころもっちもちの設定。

とにかくそんなエクレアを無視して全員が料理や飲み物を楽しむ。

 

「それにしても…貴様、改めて見ると可愛らしいでありんすな?」

「え?」

 

シャルティアはロゥリィの顔をじっと見つめると、そのまま彼女の太ももを撫でる。

 

「ひゃっ!ちょっと、アナタいきなりなにを?!」

「ええではないかえ…ええではないかえ♪」

 

そのまま押し倒すとロゥリィのゴスロリ衣装の上を脱がして自分も服を脱ぎ始めた。これはペロロンチーノの趣味で、屍体愛好家と嗜虐趣味と両性愛を持ったキャラにしたから。なのでシャルティアは洗脳が解いた後にロゥリィを見た途端に一目惚れしたらしい。

 

「コラっ、シャルティア!」

「うぎゃっ!」

 

だけど、すぐにアウラがトレイで彼女の頭を叩く。

 

「全く、まだ治ってないんじゃないの?」

「大丈夫か?ロゥリィ…」

 

伊丹は服を脱がされて半裸状態になったロゥリィに上着を羽織らせて尋ねた。

 

「ええ…まさか、ハーディーと同じ性格だったなんてぇ…」

 

少し怯えながら発言。それでも気を取り直して食事をして、またはゲームなどをやって楽しい時間を過ごし。

そしてしばらくしたら3人はゲートで駐屯地に帰った。

 

「楽しかったね」

「本当ねぇ…」

「少し大変だったけど…」

 

3人はそれなりに楽しんでいたけども、伊丹は何かを忘れた気がした。

 

「あっ、テュカの治療を頼むの忘れた…」

 

そうだったテュカのトラウマをアインズ達に相談する事。

すっかり忘れてた伊丹だったけど、テュカのトラウマはゆっくりなんとかしていこうと決めた。




ついにぷれぷれぷれあです編を終了しましたが、次回はリザードマンか帝都のどちらに進もうか悩んでいます。


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リザードマンの集落

今更ですが、オーバーロードの第二期が放送しましたね。


ナザリックの騒動から2日。ちなみにセバスとソリュシャンは任務に戻り、アインズもすぐに次の計画を始めようとしていた。それはナザリックの戦力強化計画。

自室ではアインズが今まで集めた各国の情報をアルベドに教える。

人間達の国家のリ・エスティーゼ王国とバハルス帝国とスレイン法国と、伊丹達がいるセクフィア帝国。さらに亜人の国家のアーグランド評議国や竜王国に海上都市と浮遊都市なども存在した。

 

「とりあえず、ナザリックの戦力強化として進んでいる」

「はい、リザードマンですね」

 

じつは今、アインズが狙っているのはリザードマンだった。

 

 

ここはリザードマンの村がある湖。一匹のリザードマンが歩いていたが、彼はザリュース・シャシャ。様々な技術を学ぶために旅し続けてきたが、村に帰って来て学んだことを伝えている。

そんな彼は魚の養殖場に来てみると別のリザードマンがいた。

 

「兄者!」

「お前、なんでここに?」

 

このリザードマンは族長でザリュースの兄のシャースーリュー・シャシャ。

 

「それはこっちの台詞だから、まさかつまみ食い?」

「うっ!飼育の様子を見に来ただけだ!兄をそんな目で見ているのか!?」

「冗談さ。だけど、脂が乗ってて美味く育っているぞ」

 

ザリュースは少しからかうかのようにしてシャースーリューに言う。

 

「しかし…最初いきなり村を出て旅に出たお前が、帰って来たと思ったらこんなことをするなんてな」

「いや……初めは失敗続きでバカにされてきたけど、兄者のおかげで成功したんだ」

「そっか、兄として鼻が高いぞ」

 

生け簀から離れたザリュースは村に戻った。村にはたくさんのリザードマンが、のんびりと暮らしているのが分かる。

だが、その時。

 

「ん?」

「あれは…」

「なっ、なんだ!」

 

突然、空が曇り始めた。さらに黒い塊が降りてくると、赤い目をした不気味な顔が何個か現れる。

 

『よく聞け…我は偉大なる御方に仕えるもの!先触れとしてきた』

[偉大なる御方?]

『汝らに死を宣告する!偉大なる御方は汝らを滅ぼす為に軍の準備をしている。されど…寛大なる御方は汝らに、無駄な抵抗をする猶予を与えになられる。本日より数えて8日。その日、この湖のリザードマン部族の中で汝らを二番目の死の供物にしよう』

 

すると黒い塊は次第に消えようとしていた。

 

『必死に抵抗せよ。そして8日後を消して忘れるな』

 

言い終ると黒い塊は消えて空も晴れた。

その夜、村の族長たちが集まって会議を始める。

 

「あの雲は恐らく、第4位階魔法の雲操作(コントロールクラウド)じゃな」

 

祭司頭がさっきの曇りが魔法かも知れないとみんなに説明する。

 

「強大な魔法使いしか出来ない領域じゃ。わしでも第2位しか出来ん。だから、避難した方が」

「まだ戦ってもいないのに、諦めると言うのか!」

 

戦士頭は不満そうに祭司頭の考えに異議を唱えると、続けて狩猟頭も口を開いてシャースーリューに提案した。

 

「それに、奴は8日後と言った。時間がまだあることだから敵の様子を探った方が良な」

「ん…」

「族長、俺に意見を」

 

すると何か思いついたのかザリュースが意見を唱えた。

 

「旅人風情が口を開く事ではない!」

「そうだ。この場にいただけでも」

 

一度旅人になって村を去ったザリュースに一部の村人は認めようとしなかった。でもシャースーリューがバシッと、尻尾で床を叩いてこの場を鎮める。

 

「騒いでいる場合ではない」

「しかし、いくら族長の弟だからって…特別扱いは?」

「広い世界で知識を学んできた弟の意見も聞くべきだろう?」

 

それでもまだ半分が納得してないが、戦士頭は斧の形をした氷の塊みたいな武器を持ったザリュースを確認。

 

「たしかに、一応聞いてみる価値はある。あの凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)の所有者の意見を聞かぬ戦士はおらん」

 

彼の言葉にこの場の全員も納得するしかなかった。

 

「それで、お前はどうする?」

「逃げるか戦うかならば…選ぶのは後者」

「…理由は?」

 

戦う事を選んだザリュースに、その理由を聞いてみた。

 

「それしか……道はない」

 

仮に逃げても、この先どうやって過ごせば分からない。ならば戦って勝つしかないという理由だった。

 

「勝てるのか?」

「勝ってやるさ!」

「いや、今は勝算が低い。相手はこちらの戦力を知っているからあのような態度をとっているのだろう」

 

相手がこの村をある程度調べて、その戦力を理解したうえで宣戦布告をしてきたとザリュースは考えた。

 

「ならば、敵の計算を狂わせようと思う。みんな、かつての争いを覚えているか?」

 

2年前、食糧不足で他のリザードマン部族と戦争が起きた。

ザリュース達の緑爪(グリーン・クロ―)

狩猟が得意な小さき牙(スモール・ファング)

防御力の優れた鋭き尻尾(レイザー・テイル)

戦い好きな竜牙(ドラゴン・タスク)

穏健派が多い黄色い班(イエロー・スペクトル)

剣が得意な鋭剣(シャープ・エッジ)

祭司の才能がある朱い瞳(レッド・アイ)

緑爪(グリーン・クロ―)小さき牙(スモール・ファング)鋭き尻尾(レイザー・テイル)の3部族と、黄色い班(イエロー・スペクトル)鋭剣(シャープ・エッジ)の2部族と争い。そして3部族が勝利して、負けた2部族は戦いに参加しなかった竜牙(ドラゴン・タスク)に吸収された。

 

「奴は、この村は2番目と言った。ならば、他の部族も順番に滅ぼすのかもしれない」

 

これには全員が納得した。

 

「そうか!だったら、奴らか攻め込む前に、他の部族と手を組み一斉に迎え撃つのか!」

「では、かつての盟友の小さき牙(スモール・ファング)鋭き尻尾(レイザー・テイル)を」

「いや、俺が言いたいのは全部の部族。つまり小さき牙(スモール・ファング)鋭き尻尾(レイザー・テイル)だけでなく、竜牙(ドラゴン・タスク)朱い瞳(レッド・アイ)も同盟を結ぶことを提案する」

 

とんでもない提案に今度は周りが騒めく。

 

「族長!竜牙(ドラゴン・タスク)朱い瞳(レッド・アイ)の同盟を!」

「無理じゃ!」

竜牙(ドラゴン・タスク)には戦いで負けた2部族の生き残りがおる。わしらに恨みを持っている可能性が高い」

「それに朱い瞳(レッド・アイ)は交流が一切ない。難しいのではないか?」

 

祭司頭も狩猟頭もこの提案は無理だと言い出す。そしてシャースーリューは別な事を考える。

 

「…仮にこの2部族とも同盟を結ぶにしても、誰が使者になるのだ?」

 

それは同盟の交渉をするための使者は誰にするか。ある意味、危険な任務だから。

 

「俺が行こう」

「旅人がか……」

 

この提案を言い出したザリュースが使者になると宣言。族長のシャースーリューは今後の為に忙しい身で、旅人と言う理由で話を聞かない相手なら組む価値はないと見極めるだと言う。

 

「良し、族長の印を持たせよう」

「感謝する」

 

こうしてザリュースは2部族と同盟を組むための使者となった。さっそく魔獣・ヒュドラのロロロを出して旅の準備をする。

 

「本当なら…お前が族長になるべきだと思っていたよ」

「兄者」

 

そこにシャースーリューが見送りに来てくれた。

 

「2年前の戦いが終わって、旅に出ると言った時は引き止めるべきだったんだ」

「何を言うんだ。兄者のおかげで、俺は魚の養殖の仕方を学んでこれたんだ」

「……これは族長ではなく兄として言っておく。生きて帰ってこい」

「当然だ。全て完璧にこなして無事に帰って来る」

 

ロロロに乗ってザリュースは旅に出た。

旅立って1日目の事。ザリュースの前に一隻の小舟が漂っていた。

 

「ん?なんだあれは…ロロロ!」

 

ザリュースは気になったのか、一度ロロロを停めると小舟も止まった。

 

「ん?リザードマン?」

 

小舟に乗っていたのはダークエルフの美女。それはアウラとマーレとは違い、この世界産のダークエルフ。

 

「ダークエルフか?」

「そうだが、貴様は?」

緑爪(グリーン・クロ―)のザリュース・シャシャ。お前は?」

「私はシュワルツの森から来たヤオ・ハー・デュッシだ」

 

2人はそれぞれ名前と部族名と住処と一緒に挨拶をした。




リザードマン篇を開始しますが、ここでヤオ・ハー・デュッシを登場させました。少しの間だけヤオを出させようと考えます。


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ザリュースの初恋と求愛

オーバーロードの第二期が終わりましたが、まさか夏に第三期もやるとは驚きました。


リザードマン達が住む緑爪(グリーン・クロ―)の村の空に突然、黒い雲の塊が8日後に村を滅ぼすという予告をしてきた。そこで族長の弟のザリュース・シャシャが他の村と同盟を結ぶ旅をしていると、途中にヤオ・ハー・デュッシというダークエルフと出会う。

ザリュースはとりあえずヤオをロロロに乗せてどこに旅をしている訳を尋ねた。

 

「なるほど…古代種の火龍が故郷の森を襲って来たのか?」

「そうだ。だから、私は緑の人に助けて貰おうと旅をしている」

「緑の人?」

 

なんでも数か月前に、ヤオの故郷のシュワルツの森を片腕のない炎龍に襲われた。このままでは部族が滅びるかもしれないので、緑の人という存在に助けて貰おうとヤオが使者になって旅にでた。

当然、緑の人は紛れもなく伊丹達自衛隊。

 

「噂によれば、何でも破壊する武器を持って空を飛び回る乗り物を使うと」

「……俺も色んな所に旅していたけども、そんなのが存在するとは」

 

少し緑の人改め自衛隊に興味を持つザリュース。

 

「それで、お前は何の旅をしているのだ?」

 

ここでヤオも同じ事をザリュースに質問した。

 

「じつは…俺の村を襲う侵略者が現れたのだ」

「なにっ!?」

「8日後に襲うと宣言してな。だから俺は、他の部族に同盟を結ぼうと使者になったんだ」

 

などと少しは信頼できそうだと思い経緯を語る。するとヤオは何かを思いついてザリュースに提案した。

 

「だったら、お前も緑の人に頼んで見たらどうだ?」

「緑の人に…だと?」

「ああ、きっと彼らの力なら侵略者を倒す事が出来るかもしれない!」

 

などと自衛隊に侵略者を倒してもらおうと提案したヤオ。だが、その侵略者はアインズ率いるナザリックで、色々と面倒な事が起きるのが間違いない。そしてザリュースが出した答えは

 

「いや、その緑の人とやらがスゴイ武器や乗り物を持っているか分からんが…これは俺達の問題だ。人間の手は借りん」

 

あくまでもリザードマンの問題は自分達で解決したいとのこと。

 

「そうか…では、その同盟が出来るか一緒について行っても良いか?」

「まぁ…それは構わない」

 

こうしてヤオは少しの間だけザリュースと行動した。それからザリュースとヤオはロロロに乗って川を進むと目的地の1つ。朱い瞳(レッド・アイ)の村に到着。

 

「俺は緑の爪(グリーン・クロ―)族のザリュース・シャシャ!族長に話がしたい!」

 

ロロロから降りて門の前で族長の面会を頼んだ。すると門が開いて長老らしきリザードマンが前に出る。

 

緑の爪(グリーン・クロ―)族のザリュース・シャシャ。歓迎はせぬが、部族をまとめ上げる者が会うそうだ」

[族長か?]

 

それからヤオもロロロから降りてザリュースと一緒に村に入ろうとしたが、門番のリザードマン2体が入らせないように武器を構える。

 

「なにをする!私は彼の付き添いで」

「悪いが、人間だろうとエルフやダークエルフだろうと、村に入れないようになっている」

「すまない。なんとか早く終わらせるからロロロと一緒に待ってくれ」

「分かった」

 

仕方ないのでヤオはロロロの背の上に昼寝しながら待った。ザリュースは長老達に連れられて、辿り着いたのは小さな小屋。

 

「ここに、族長がいるのか?」

「部族をまとめ上げる者は。1対1の話し合いを望んでいる」

 

ザリュースに説明すると離れていったので、気を引き締めて小屋の外から挨拶を始める。

 

「俺は緑の爪(グリーン・クロ―)族のザリュース・シャシャ。中に入らせてもらう」

「どうぞ」

[女?]

 

小屋から女性の声がしたので、少し驚きながらも入ってみる。中は窓も明かりもなく暗いがメスのリザードマンがいた。

 

「なっ!」

 

それは全身に呪文のような模様が描かれているのを除けば、真っ白な鱗で赤い瞳をした所謂、アルビノのリザードマン。ザリュースはその姿に驚愕する。

 

「うふふふ、かの四至宝の1つ。凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)の所有者にもこの身は異形に見えるようですね」

 

どうやら彼女はアルビノの体にコンプレックスを持っていたが、ザリュースはこの場に座り込み。

 

「キュクェェェェ!」

「えっ!」

 

いきなり奇声を放つと少し彼女の顔が赤くなって動揺した。じつはこの声はリザードマンにとって求愛の意味。

 

「あっ!すまない!」

「いえいえ…私は朱い瞳(レッド・アイ)族の族長代理。クルシュ・ルール―です」

「えっと…さっきも言ったが、緑の爪(グリーン・クロ―)族のザリュース・シャシャ」

 

お互い、恥ずかしくなりながらも自己紹介する。それでもクルシュ・ルール―はザリュースに此処に来た理由を尋ねた。

 

「アナタがお尋ねになった理由は?」

「えっと……それは……」

「もしや、先日現れたモンスターの事?」

「結婚してくれ」

「はぁっ!?」

 

いきなりのプロポーズに驚くクルシュ。先程の台詞通りに彼女の村も雲のモンスターが、ザリュースの村と同じように伝言をづけに現れた。

なので、その事だと思いきやまさかのプロポーズなので混乱する。

 

「優先順位はおかしいかもしれないが…自分の気持ちに嘘は付けない!だから、今ここで言う事にした。返事は後日で構わない!」

 

しかし今のクルシュは混乱して尻尾を振ったりしていた。

 

「…この、白き体を恐れないのですか?もしかしてアルビノの私をからかって」

「山脈の雪のようだ」

「え?」

「綺麗だ」

「えええぇぇぇ!?」

 

さらに彼女の体の色を褒めたりする。その為か、2体はお互いの尻尾を床に叩いた。でも話が進まないので、ザリュースはなんとか本題に入る。

 

「まぁ、一目惚れって奴だ。今回の戦いで俺は死ぬかもしれん。後悔だけはしたくないからな」

凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)の所有者のアナタが死を?」

「メッセージを告げに来たモンスターは見たか?精神をかき乱す絶叫を放ち、魔法の類は効かない」

 

ようやく真剣に本題に移り話を進めた。

 

「では、朱い瞳(レッド・アイ)族は何番目に襲うと?」

「4番目でした。もしも逃げ出したとしても、避難できる場所は限りがありますので」

「もしも5つの部族が1つに纏まったら、確実に食料不足で奪い合いが起きるな」

「…まさか?」

 

万が一にも食料の奪い合いが起きそうなときは、そうなる可能性も高いと語る。ならば、一緒に侵略者と戦う方が良いと言う。

 

「2年前の事ですが…」

「ん?」

 

クルシュはその2年前に起きたことを話した。朱い瞳(レッド・アイ)が食料不足で争いが起き始めたころに、族長が突然新鮮な肉を持って現れる。その肉を持ってくる時は、掟に反した者が村を追放された直後に出てくるので薄々気づいていた。それでも生き抜くために仕方ないと思う者もいる。

だが、ある日。ついに反乱が起きて祭司の才能があるクルシュを旗印にされた。

 

「…その結果、部族が減って食糧問題は解決したのか?」

「皮肉な話ですが、その通りです。族長は…止めを刺された瞬間に綺麗な笑顔で…笑いかけました」

 

語りながらクルシュの目から涙がこぼれた。無理やり旗印になって族長を殺したことが、とても辛かったのかが分かる程に。そしてザリュースは泣き出すクルシュの肩に触れてなだめる。

 

「一体何が正しいのか分からないが、後悔して傷だらけになっても前に進み続けるしかないんだ。今はそれしか出来ない」

「なんか…無様な姿をお見せしましたね…」

「別に構わないが、朱い瞳(レッド・アイ)はどうする?」

 

ここで本題の同盟の件については未だに言葉を積もらせる。

 

「1つだけ言わせてほしい。俺達は死ぬためでなく勝つために戦う!勝てば全て解決するからだ」

 

その真っ直ぐな目と意志にクルシュはザリュースになら信頼できると心に思った。

 

「……我々、朱い瞳(レッド・アイ)もアナタ方に協力します。そして族長の無意味なものにしない為にも、なるべく多数の生き残れるように!」

「感謝する」

 

こうしてザリュースは見事に朱い瞳(レッド・アイ)と同盟を組むことが出来た。




次回はザリュースとゼンベルの対決になりますが、じつはアルヌスとリザードマンの交代で話を進めようかと考えています。


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ザリュース対ゼンベル

ザリュースはダークエルフのヤオと一緒に朱い瞳(レッド・アイ)の集落にやって来た。そこで族長代理のクルシュ・ルール―に一目惚れしてしまう。だが、すぐに侵略者と戦う為に同盟を組んでほしいと交渉を始めて見事に成功。

翌日、ザリュースはヤオとロロロは村の外で野宿をしていた。しばらくすると彼らは目を覚まして、ヤオが池の水で顔を洗ったりする。

 

「おはようございます」

「ん?」

「えっ?」

 

いきなり2人の前に現れたのは、全身草や葉をくっつけた姿のクルシュ。

 

「しょ…植物のモンスター!?」

「違います。これは私の姿を隠して日除けの為の恰好。太陽の光は私には辛いので」

 

クルシュは顔だけを出してヤオに説明をした。

 

「そうか…私は一応、今は彼と同行しているヤオ・ハー・デュッシ」

「私は朱い瞳(レッド・アイ)の族長代理のクルシュ・ルール―と申します」

 

2人はお互い自己紹介と握手をする。

 

「ところで…違うと思いますけど、アナタはザリュースとどういう?」

「え?」

 

しかしクルシュは、もしもヤオがザリュースとは愛人関係なのかと疑って尋ねてきた。

 

「まさか…一緒に行くつもりじゃあ?」

「もちろん、竜牙(ドラゴン・タスク)は全部族一の武力を持っていて交流が少ない。だから、私も同行した方が話しやすいとは思いませんか?」

「だが、本当に行くのか?危険かもしれんぞ」

 

いくら族長の代理として交渉に行くとしてもでも、竜牙(ドラゴン・タスク)の旅でモンスターや盗賊が照るかもしれないと心配になって聞いてみた。

 

「あら?これからもっと危険な戦争が起きるかもしれませんよ?」

「……たしかにな。では、お願いしよう」

「任せて頂戴、ザリュース」

 

こうしてクルシュも一緒に竜牙(ドラゴン・タスク)の村に向けて出発した。

 

「緑の人に助けを?」

「ああ、私は森の代表として緑の人に会いに行く為に旅をしている」

「その途中で、ザリュースと出会ったのですね」

 

ロロロの背でヤオは自衛隊を探して旅をしているとクルシュに話した。おまけに会話している内に、2人は親友関係になっている。

それからしばらく経って、竜牙(ドラゴン・タスク)の村に到着。けれども、この村のリザードマンは武装をして戦闘態勢に入っていた。

 

「俺は緑爪(グリーン・クロ―)族代表のザリュース・シャシャ。族長と話がしたい!」

「私は朱い瞳(レッド・アイ)族長代理のクルシュ・ルール―。こちらのザリュースと同じく族長に会いに来ました」

「シュワルツの森出身のヤオ・ハー・デュッシ!一応2人の付き添いの者だ」

「よく来たじゃねぇか。凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)の持ち主」

 

3人が自己紹介すると、地響きを鳴らしながら1人のリザードマンが前に出てきた。それはまるでワニのような姿で、左手の薬指と小指がかけて槍を持っている。しかしザリュースが目にしたのは胸に自分と同じ旅人の刻印をしている事に。

 

「……お初にお目にかかる。俺は」

「別に名乗りは良いから。しかしダークエルフのメスに、植物系のモンスターか?」

「違います!」

 

ヤオと同じことを言われて少し怒るクルシュ。

 

「冗談だよ。俺が竜牙(ドラゴン・タスク)族長のゼンベル・ググー。ゼンベルでいいぜ」

「ならば、俺もザリュースで構わない。それで話が」

「言わなくてもあれだろ?この間、偉大なる御方の使いだと言う奇妙なモンスターが来た事だろ?」

 

やっぱり竜牙(ドラゴン・タスク)の村にも現れたらしい。

 

「だが、俺達が信じるのは強者のみ!剣を抜きな。勝負しようぜ」

 

するとゼンベルは槍を構えて勝負を挑んだ。

 

「ま…待て!ザリュースはお前達と同盟を組む為に来たんだぞ!それなのに、なぜこんな無用な事を」

「ダークエルフのメスは黙ってろ」

「なっ!?」

 

同盟の話し合いが戦い合いになろうとしたので止めようとするヤオだが、ゼンベルは睨みながら黙らした。

 

「そうだ。ここからは俺達の問題であり、時間を無駄にすることのない判断だ」

「さすがは凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)の所有者だ。話が分かるな」

 

ザリュースはさっそく凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)を構える。

 

「あれが、前の戦争に負けてうちに吸収された」

鋭剣(シャープ・エッジ)族長の者だった凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)か」

 

竜牙(ドラゴン・タスク)のリザードマン2人は、ザリュースの凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)を見て息をのむ。

 

「殺す気で来い。俺はお前が今まで戦ってきた奴らとは明らかに上だ」

「了解した。だが、俺が死んだら」

「応よ!お前のメスは2人共無事に帰してやる」

「ヤオは同行だけでなんの関係もない。クルシュは…まだ、俺のじゃないがな」

 

その言葉にクルシュは少し顔を赤くする。

 

「めちゃくちゃ狙ってるみたいだが、そんなにいいメスなのか?」

「非常にな」

「はわわわわわ!!」

「ん……」

 

2人の会話にクルシュはもっと顔が赤くなって丸くなってしまう。そしてヤオは2人のやり取りとクルシュの反応の仕方に呆れて何も言えない。

 

「こりゃあ、俺が勝ったら解放する前にはぎ取って顔を拝みてぇな」

「ふっ…絶対に負けたくないな」

「むちゃくちゃホレてんだろうな?」

「ああ…むちゃくちゃな」

「うう……」

 

勝負する前に変なムードになっていくのでヤオは堪忍袋の緒が切れた。

 

「全く、勝負するなら早くしろ!」

「おっと!そうだったな。あのダークエルフのメス、少し堅そうだからやるか!」

「俺も、すっかり忘れてた。勝ってやるつもりさ」

「勝てるものならなっ!」

 

最初に動いたのはゼンベルで槍を大きく振るうので、すぐに避けて凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)で反撃。だが、体格と腕力はザリュースより上だけど、手を抜いていると感じる。

 

「うりゃっ!」

「おっ!」

 

それでもなんとかゼンベルの手から槍を弾き飛ばして、そのままザリュースの一撃が決まろうとした。だが、何かを切る音がして一度は離れるとザリュースの頬に切り傷が出来ていた。するとヤオは何かに気づく。

 

[あれはたしか、気で体を強化するアイアン・ナチュラル・ウェポン]

 

すぐにゼンベルが強化した両手で攻撃しまくるが何とか耐えるザリュース。

 

「生き残ったか」

修行僧(モンク)だったのか」

「言っとくがな。俺は昔、凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)を持ってた奴に負けて指はその時に失ったんだよ。あの時の能力を使えば勝てるかもしれねぇぞ?」

 

まるで挑発するかのようにして左手を見せて言う。しかし凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)には発動回数に限りがある。

 

「悪いが、あれを使うつもりはない」

「そうかよ…なら、本気を見せろ!」

 

強化した足で蹴り付けるが避けて凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)で斬りかかる。だけど、冷気で少し青白く凍っただけでダメージは少ない。

しかし2人の戦いは激しさを増していき、一時間が経つ。ザリュースは体の至る所に傷が、ゼンベルは手足が冷気で凍っていて、2人共かなり体力を消耗している。するとゼンベルは手を上げると

 

「俺の負けだ!」

「え?」

 

負けを認めた。これにはヤオは驚くが、ザリュースは体力と傷でその場に座り込む。

 

「ザリュース!今治癒魔法を」

 

クルシュはすぐにザリュースに治癒魔法のミドル・キュアウーンズをかけた。するとヤオはゼンベルに近づいて尋ねる。

 

「其方は彼と互角な勝負をしていたようだが、なぜ降参したのだ?それを聞きたい」

 

どうやらさっきの勝負で降参した理由を知りたいらしい。

 

「なんていうかな…アイツの意志が俺以上っていうか…色々とめんどくさそうって感じかな」

「はぁ…」

「まっ、とにかく俺の負けは俺の負けだ!」

 

変な説明の仕方でヤオは納得出来ないが、ゼンベルはすぐクルシュに手足の治癒を頼む。

それから夜になるとゼンベルの指示で宴会が始まった。

 

「へ~~~お前さんの森を救う為に、その緑の連中に頼みに行くってのか?」

「その途中で、ザリュースに出会ってここまでな」

 

ゼンベルにもこれまでの経緯を話すヤオだけど、ここでクルシュが話に入る。

 

「それで、同盟は?」

「もちろん組むさ。元々、戦いたかったからな!」

「根っからの戦闘狂ね」

「ほめんなよ。照れちまうから♪」

「やれやれ、ほめているんじゃないぞ」

 

笑い出すゼンベルに呆れてしまう2人。

 

「んでだ、前の凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)の持ち主に負けて強くなろうとお前のような旅人になってな。その時に出会ったドワーフに、修行僧(モンク)を教えて貰ったのさ」

[そういう事か]

 

ゼンベルが旅人になった訳を聞いてザリュースは理解する。

 

「んで、勝てるのか?」

「それは分からないが、相手は油断しているから、そこを上手く使えば」

「どういう事だ?」

「えっと、モンスターの言った言葉を覚えている?」

「すまん…その時寝てた」

 

大胆なのか鈍感なのか3人は何も言えなかった。

 

「必死の抵抗を見せよと、奴は言った」

「つまり、その場から見た戦力と兵力で予想し言葉という訳か?」

「なんかむかつくな。初めから下に見ている感じで」

「つまりだ。それだけの兵をそろえている事になる」

 

怒り出すゼンベルだけど、ザリュースも静かな怒りを見せる。

 

「だから…奴らの思い上がりを叩き潰す!5部族を集めて、こちらが準備できる最大の力を示す」

「良いね!分かりやすい」

 

ザリュースの考えに賛成するゼンベルだが、クルシュは少し心配になる。

 

「ねぇ、ザリュース。避難が難しいと分かってるつもりだけど…たとえ自由が奪われても命があるだけマシだと思います」

 

朱い瞳(レッド・アイ)族長が目の前で殺された時に、人が死ぬのに抵抗を持ったので。降伏しようという考えに浸っているクルシュ。

 

「……目の前を見て聞こえるだろ?」

「え?」

 

クルシュは楽しく飲んだりして騒ぐリザードマンの様子を見る。

 

「やっと手に入れた平穏を…破壊されてたまるか」

 

ザリュースの意志が強く戦って勝利する気持ちでいっぱいだと理解するクルシュだった。

 

「分かった。それでも死なないでね…ザリュース」

「死なないさ。答えを聞くまで」

 

2人が良いムードになっていて少し居心地が悪そうと感じるヤオとゼンブルだった。

次の日。ゼンブルを連れて鋭き尻尾(レイザー・テイル)の村に行くザリュース達。けれども、途中でヤオはここで3人と別れようとした。

 

「本当にこの辺りで良いのか?」

「ああ、この川をまっすぐ進めば緑の人達のいるアルヌスと呼ばれる地の、近くの森に着くらしいからな。もし可能であれば、お前達の事も頼んでくる!」

「では、お前達の森が救えることを祈っているぞ」

 

こうしてヤオは小舟に乗ってザリュース達と別れた。そしてザリュース達も鋭き尻尾(レイザー・テイル)の村に向かう。




かなり頑張った気がします。次回はリザードマン篇とアルヌス篇を合わせようと考えています。


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それぞれの出来事

ヤオと別れたザリュース達。しばらく川を進んで行くと、鋭き尻尾(レイザー・テイル)の集落に近づいてきた。なぜなら鋭き尻尾(レイザー・テイル)が一番目に襲うとされているから。

そこでは集まった各部族のリザードマン達による護りの強化が進んでいる。

 

「良く帰って来たな」

 

シャースーリューが村の前で出迎えてくれた。

 

「兄者!いい知らせを持ってきた」

 

ロロロから降りたザリュースはクルシュを丁重に降ろす。

 

「そこの植物系モンスターは?」

「俺の惚れたメスだ。結婚も考えっ、いっ!」

 

クルシュは恥ずかしさのあまり自分の尻尾を、思いっきりザリュースの尻尾に叩いて黙らせる。

 

「なんだ。自分は結婚できないと言っていたが…惚れた相手がいなかっただけではないか?」

 

まさかザリュースに恋人が出来たので、少しからかったりするシャースーリューだった。

 

「その事は…忘れてくれ」

「ふっ、緑爪(グリーン・クロ―)族長のシャースーリュー・シャシャだ」

朱い瞳(レッド・アイ)族長代理のクルシュ・ルール―といいます」

「俺は一応、竜牙(ドラゴン・タスク)族長のゼンベル・ググー。んで、状況は?」

「今、斥候に出た者が戻ったところだ」

 

すぐに彼らは用意された小屋で会議が始まった。

小屋の中ではザリュースとシャースーリューとクルシュとゼンベルはもちろん、少し黄色い鱗で舌を出している小さき牙(スモール・ファング)族長のスーキュ・ジュジュと、全身に四至宝の1つ白竜の骨鎧(ホワイト・ドラゴン・ボーン)を纏った鋭き尻尾(レイザー・テイル)族長のキュクー・ズーズーもいた。

 

「斥候からの話では、敵の本陣は森の中で数は5千弱でしょう」

「構成はどのような形ですか?」

「スケルトンと動物系ゾンビなど、アンデットが殆ど…さらには巨大な肉塊のモンスターもいたようなのですが、ボスかどうかまでは…」

 

スーキュは偵察・斥候からの情報を全員に話す。

 

「こちらの戦力は1300。明らかに相手はその3倍だな」

「んなもん、1人で5体ぐらい倒せば余裕じゃねぇのか?」

「もしも相手の増援が来たらどうするの?」

 

などと相手のナザリック側戦力が有利なので、色々と意見を言い出したりする。

 

「しかも敵は攻めづらい森林を切り開いた場所に、砦を立てていますし」

「ならば、籠城戦をすればいいのですかね?」

「まもるのむずかしい。しっち、とてもあしばわるい…おまけにかべが、かんたんにこわさける」

 

白竜の骨鎧(ホワイト・ドラゴン・ボーン)の影響で上手く喋れないキュクーも籠城戦は無理だと発言。

 

「いや、それでも籠城戦も検討すべきだろう」

「壁の補強は朱い瞳(レッド・アイ)でやっておきますから」

「後は、指揮系統の構築だが…」

「ならば、族長達で部隊を作るべきだ」

 

ザリュースは別動隊を用意した方が良いと提案した。

 

「せいえいぶたいをつくる…すんぽう?」

「敵は数が圧倒的に多い。となれば、最大戦力をもって敵の親玉を狙うべきです」

「しかし…こちらの指揮官が不在になるのでは?」

 

もしも別働隊を作ったら指揮する者が居なくなってまとめるのが難しくなるとスーキュは心配になる。

 

「では、こうするのはどうですか?敵の本陣と親玉が見つかるまでは、別動隊は後方から指揮するのは?」

「それならいいんじゃねぇか?ところで、別動隊はザリュースも含んだここにいる6人って事か?」

「いや…敵の親玉を討つ隊と守備隊を引き連れる隊の2つに分けよう」

「約束された期限は4日。それまで準備をしなくてはな」

 

会議が終わって全員は小屋から出始めた。

 

[ヤオ…今頃無事に到着したかな?]

 

ザリュースは無事にヤオが目的地に到着したのか少し心配になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

ザリュース達と別れて川を進んで行くヤオは、ついにアルヌス近くの森に到着。小舟を降りて歩いて行き、夕方になった直後にアルヌスの駐屯地に到着。

そこはすでに立派な街になっていたので、色々とあって珍しかった。

 

「ほ~~~まさかこんなに大きいとはな…これじゃあ、緑の人がどこにいるのか探すのは大変だな?」

 

などと呟きながらも歩いて行くヤオだったが、目の前に大きな酒場らしき店を見つけた。

 

「酒場か…ここなら緑の人の情報を知れるかもしれない!」

 

胸に期待を寄せてさっそく酒場に入ってみると、奥の席で伊丹とロゥリィがビールを飲んでいた。するとヤオには男が無理やり少女に酒を飲ませて酔わせているように見えたので。

 

「おい、店主!この店ではガキに酒を飲ませてもいいのか!」

 

大声で叫んだ。これには周りの客は冷や汗をかいて離れたりする。そしてロウリィ本人はと言うと

 

「私をガキ呼ばわりして…おまけにこれからの予定をむちゃくちゃにしようとしてぇ…」

「予定ってなんだ?」

 

どうやらこのまま飲んで伊丹と一緒にベッドにGoと考えていたらしい。

 

「ダークエルフの女…300歳前後みたいだけど、アナタは何者?」

「ヤオ・ハー・デュッシ。シュワルツの森のデュッシュ氏族がデハンの娘だ。緑の人を探している」

「緑の人?」

「ああ、だがその前に…そこの男。少女を酔わせて何か卑劣な事をさせるつもりじゃないか?」

 

するとロゥリィは何かを企んだかのように怪しく口元に笑みを浮かばせる。

 

「お願い助けてぇぇぇぇ!その人が無理やりあたしにお酒を飲ませるのぉぉぉ!」

「え…俺がっ!?」

 

大きくウソ泣きしながら叫んでヤオの後ろに隠れるロゥリィ。どうやら邪魔した腹いせのイタズラのつもり。

 

「おのれ…こんな幼気な少女に手を出す獣欲に塗れた不埒者め…断じて許さん!この場で成敗してくれる!」

 

腰の剣を抜いたヤオは伊丹に向けたが、その本人はいなくなっていた。

 

「あばよ~~~とっつぁん!ツケで!」

 

店の人に言いながらもそさくそと走って逃げていた。

 

「なんだアイツは、立ち向かおうとせずに臆病者が。しかし、悪は去ったぞ」

 

後ろに隠れていたロゥリィもいなくなっていた。

 

「女も出てったよ」

「ん…礼儀知らずなガキだな」

「それで、何か飲むの?冷やかしなら出て行ってくれる」

 

酒場で働くヴォーリアバニーの女性デリラは、ヤオに注文するか帰るのか尋ねた。

 

「ん…じゃあ、一杯貰おう。そして話を聞いてくれないか?」

「話?」

 

ヤオはさっそく酒場にいる店員と客に緑の人改め自衛隊について話をした。しかし誰も炎龍退治と自衛隊に頼むのは無理だと思う。

そして次の日の朝。森の中で一夜を明かしたヤオ。

 

「う…ん、そうか、宿はないから野宿を…はっ」

 

その時、ヤオが目にしたものに驚愕する。それは自衛隊のF‐4EJが上空を飛んでいたから。それも見事なアクロバティックを決める程に。

この光景を目の当たりにしたヤオは涙を流しながら確信した。

 

「本当だったのだな。空飛ぶ剣と方舟…待ってろザリュース。お前達も助けてくれないかかけあってみるからな」

 

さっそく駐屯地に行くヤオだったが、そこで彼女は予想しない現実を目の当たりにする。




ザリュースとヤオの2人それぞれの路線で話を作りました。次回はヤオの交渉と新しい展開となります。


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ヤオの協力奮闘

駐屯地にたどり着いたヤオ。さっそく緑の人改め自衛隊に自分の故郷を救ってほしいと頼み込もうとした。

歩いて行くと丁度よく、自衛隊3人を見つけて駆け寄る。

 

「すまない!」

「「ん?」」

「はい?」

「私はシュワルツの森出身のヤオ・ハー・デュッシという者だ!数ヶ月前に炎龍が故郷の森を襲い、部族は滅びの道に向かおうとしている。我が一族に救いの手を差し伸べて欲しい!」

 

深々と頭を下げて自衛隊員3名にお願いした。そして3人の口から出た返事は

 

「「「ハジメ、マシテ…」」」

「え?」

 

じつはこの3人は特地の言葉にはまだ慣れていなかった。それから他にも自衛隊員を見つけても、言葉が通じないものが殆どで話にならず。

おまけにチャラそうな男に声をかけられて路地裏に連れて行かれたけど、強く相手の股間を蹴り付けて追い払う。それからしばらくすると【PX】という店に入ってみる。

 

「こんなに品揃えが…」

 

店内の商品に興味を持ち始めるヤオだったが

 

「ありがとうございましたにゃ♪」

 

レジ打ちをしているキャットピープルの女性、メイアが隊員相手に日本語で接客していたことに気づく。

 

「お前、さっき緑の人と喋っていたが!?」

「え…はいにゃん!私達には赤本がありますにゃん」

「赤本?」

 

赤本とはアルヌス共同生活組合で発行している日本語手引書。組合の従業員か語学研修生にのみ支給されている。ヤオはこの本を使えば、自衛隊と話が出来ると期待を持った。

 

「これを売ってはくれないだろうか!」

「ダメです。勝手に人に売ったりしたら私がクビになってしまいますにゃ」

「そこを頼む!なんとしても緑の人に依頼を伝えなければならんのだ!今朝から何十人とも声をかけたが、誰も話にならんのだ!この通りだ!」

 

頭を深々と下げてお願いするヤオだったが、メイアもこれでクビにされたら仕送りが出来なくて困る。そんな時

 

「どうしたの?メイアちゃん」

 

そこに巡回中の警務2人が店に入って来た。

 

「困っていることあんの?」

「大丈夫ですにゃ。ただ…」

「ん?カラメル色の肌に銀髪にエルフ耳で、マントに革鎧の」

 

すると警務がヤオの姿を見てあることを気づいた。ダークエルフの女性に恐喝されるという話で、ヤオの姿がそれにピッタリ。

 

「…なぁ、ちょっと来てくれへんか?」

「話が…話が分かるのか!」

「え?ああ、まぁな」

 

会話ができると目を輝かせるが、なにか勘違いしながらも2人について行くヤオ。

それからレレイが呼ばれて取調室の前に来た。

 

「私に何か?」

「ええ、じつは…」

 

窓から中の様子を除くレレイ。取調室にはカツ丼出されて恐喝の事情聴取をされているヤオの姿で、本人は全くの期待外れに落ち込んでしまう。それは取り調べをしている隊員も同じで、話がかみ合わずに困っていた。

 

「どうしたの?」

「丁度良かった!」

 

だが、レレイが代わりに事情聴取をすることになり、さらにヤオに対して被害届を出した男も自供したので無罪になった。けれども、ヤオはレレイがスラスラと日本語をしゃべっている様子を見て彼女に声をかける。

 

「なぁ!お前は彼らの言葉は分かるのだな!」

「うん、分かるし話せる」

「だったら緑の人に伝えてくれ!我が一族が炎龍に襲われているのだ!」

「炎龍?」

 

この話を聞いてレレイはかつて襲ってきたが、伊丹達の活躍で片腕を失い追い払った炎龍を思い出す。

 

「まさか、片腕がない?」

「そうだ!だから緑の人と話がしたいのだ!この通り!」

 

ヤオは必死でレレイに頭を下げてお願いする。

 

「…つまり、日本人に助けて欲しいって伝えれば良いのか?」

「ああ、出来れば口添えも」

「分かった」

「かたじけない」

 

ようやく自衛隊にお願い出来て安心するヤオ。それからレレイはヤオを会議室に案内して、狭間達にシュワルツの森に現れた炎龍退治をお願いする。手始めにシュワルツの森はどこにあるのか、特地の地図を広げて調べた。丁度外は雨が降り出したが、森の場所を確認すると

 

「申し訳ありませんが、ヤオ・ハー・デュッシさん。協力することは出来ません」

「え?つまり…」

「協力できない」

「なっ!?」

 

なんでもシュワルツの森はセクフィア帝国から遠いエルベ王国という国の領内。他所の国に、大量の軍が入ってきたら宣戦布告の危険性が高くなる。自衛隊はあくまでも日本の組織なので無理。

 

「諦めた方が良い。彼らの理屈はあっている」

「別に大群でなくてもいいのです!緑の人は十人程でも、炎龍を倒せると」

「滅相もない!部下に死地へ赴けなんて命令は出せません!」

 

狭間が言っている事は正しい。期待を持ってようやく自衛隊に助けを求めたが、彼らにはルールを守って動いている。ヤオは酷く落ち込んでしまう。

 

「遠路はるばる、本当に申し訳ありませんが、仕方ないのです」

「…では…1つ聞きたいのだが」

「ん?」

 

激しく振り続ける雨が降る外だが、ヤオは口を開いて尋ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日。

鋭き尻尾(レイザー・テイル)の集落では壁の補強や、武器の用意が大急ぎで進められていた。なぜなら明日が約束された日。なんとしても準備しなくてはならない。

 

「おい、あれは!?」

 

1人のリザードマンが空を見るとUH-1とCH-47が飛んできた。

 

「空飛ぶ船だ!」

「まさか、奴らが?」

「そんな訳ない!たしか明日の筈」

「とにかく非常事態だ!」

 

リザードマン達は慌てて警戒して戦士は急いで武器を持ち始めたが、UH-1とCH-47は地面に着地。

ザリュース達も機体の周りに立って警戒する。

 

「あれは一体…」

「分からない。だが、危険な物なのは分かる」

「まっ、戦ってみればわかるじゃねぇのか?」

 

するとCH-47のドアが開くと最初に出てきたのは伊丹とレレイ。

 

「えっと…ここが、アナタが言ってた場所ですか?」

「ああ、たしかにそうだ」

 

次に出てきたのは少し元気のないヤオだった。

 

「ヤオ!」

「ザリュース…連れてきた。緑の人だ」

「緑の人?本当にいたのか!」

 

まさかヤオが自衛隊を連れてきたことに驚くザリュース。

どうやら鋭き尻尾(レイザー・テイル)の集落は、ギリギリなぐらいセクフィア帝国の領内なのでOKだった。しかし伊丹は未だに何の状況か分からないままザリュース達の所に近づく。

 

「あの…私達、自衛隊でアナタ達の話を聞きに来ました」

「「「え?」」」

 

自分達が改めて敵ではないとザリュース達に話す伊丹。




次回はリザードマン達が自衛隊の協力を受けるかどうかですが、このままアインズ達と戦う事になるというリスクが生まれる可能性。
どうなるかはお楽しみに。


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リザードマンの意志

ヤオは自分の故郷の森を自衛隊に助けて貰おうとしたが、場所が問題あって行けない事が判明。ショックを受けてしまうが、しかしザリュースとの約束通りに、伊丹達と一緒に鋭き尻尾(レイザー・テイル)の集落にやって来た。

集落に集まったリザードマン達は初めて見るヘリに触ったり中に入って見学したり、武器をまじまじ見たりする。伊丹とレレイとヤオと富田を含んだ自衛官達は、小屋でザリュース達の話を聞いていた。

 

「つまり…アナタ方の村に雲のモンスターが現れて、それぞれ順番に滅ぼすと言ったのですか?」

「そう言う事になる。そして、今いる鋭き尻尾(レイザー・テイル)が一番目…明日、奴らが襲いに来る」

「はぁ……」

 

ザリュースの話を聞いて伊丹は思った。もしかしたらこれはアインズが仕組んだものだと少し不安になる。そうなったら色々と面倒だから。

 

「伊丹?」

「隊長?」

「えっ!ああ…なんでもない」

 

レレイと富田に声をかけられたのですぐに切り替えた。

 

「それで…今の状況は?」

 

するとヤオはザリュースにどれぐらい侵略者達と戦う戦力が整っているのか尋ねてみた。

 

「はい、今は防壁の補強と武器の手入れと製作を進んでいますけど…」

 

それでもまだ戦力が相手の方が上だとクルシュは心配そうに説明する。

これは仕方のない事だと伊丹も少し思ったが、とりあえずこんな提案をしてみた。

 

「これも何かの縁かもしれませんが…もしよろしければ、我々も少し協力しますけど良いですか?」

「え?」

「なん…だと?」

 

伊丹から協力してくれると発言してきた。これにはザリュースは勿論、シャースーリューやクルシュ達は少し驚きながらも話し合う。

そして彼らの出た答えは

 

「嬉しいが、これは我々の問題。助太刀は無用」

「俺もだ。リザードマンとしての誇りを持っての戦いだからな」

「それにアンタらのスゲェって武器で戦ってもつまらなそうだし」

「彼らに同意見ですので」

「おなじく。われらの、たたかいはわれらがつける」

「私も皆さんの意見に従います」

 

ヤオの時と同じでザリュース達は自分達の問題は自分達で解決すると宣言。そんな彼らの決意にこれ以上は無駄だと感じる。

 

「そうですか…じゃあ、せめて」

「「「「「ん?」」」」」

 

それから数時間が経つと、伊丹達はヘリに乗って飛び立ち。鋭き尻尾(レイザー・テイル)の集落を後にした。

 

「ねぇ、伊丹」

「なんだ?レレイ」

「その侵略者って、もしかしてアインズ達かも」

 

レレイも侵略者がアインズ率いるナザリックかもしれないと少し気づいていた。

 

「だろうな」

「分かっていたんだ。だったら、すぐに連絡して止めるようにとお願いした方が」

「それが出来ないんだよな」

「え?」

 

なぜか頼むのは無理だと断言する伊丹。

じつは伊丹はナザリックから駐屯地に帰る前にアインズと約束していた。

 

「伊丹さん…ここからは私と約束してください」

「約束?」

「ええ、これからは私達のやる事と進む道に口出しと手出し無用でお願いします。その時は、自衛隊改め日本に容赦なく襲う上に宣戦布告を覚悟してください」

「あ…はい…分かったよ」

 

アインズの本気に伊丹はつい承諾してしまう。けれども、ある意味ナザリックと戦わなくて伊丹はちょっと安心したりする。

そして一緒に乗ったヤオは

 

[それにしても、この男が伊丹だったのか…]

 

じつは昨日、柳田から「伊丹ならなんとかしてくれる」と呟いていた。もしかしたら彼に頼もうと思ったりしたが、どうやって協力してくれるのか考え中。

しかし自衛隊のヘリ2機はリザードマン達から見えなくなるほど飛んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、リザードマン攻略の為に建てた砦にはコキュートスがいた。今回の作戦の指揮を任されている。

会議室では配下の蟲モンスターとエントマと一緒に遠隔視の鏡でリザードマン達の様子を見ていた。当然、自衛隊が来たことも知る。

 

「奴らは何かを渡して説明していたみたいですけど、一体何だったのかしら?」

 

エントマは自衛隊とリザードマン達の行動を気になっていた。

 

「ソレハ分カラン。ダガ、奴ラハソノママ帰ッタノモ気ニナルナ…」

「アインズ様に一応報告しますか?」

「ソウダナ。頼ンダゾ」

 

さっそくエントマはメッセージでアインズに報告し始めた。

 

「アインズ様、アインズ様」

《どうしたエントマ。何かリザードマン達に動きが?》

「じつは、私達が最初に進撃する予定筈でしたリザードマンの村に、自衛隊が来たみたいですの」

《なんだと?!》

 

ナーベラルと宿屋で一緒の部屋にいたアインズが、まさか自衛隊がリザードマンの村に来ていたのに驚く。

 

「どうしましたか?」

「ああ…自衛隊がリザードマン共の村に来ているというんだ」

「そうでしたか。やはり、あの連中は先に始末すべきですね」

 

なにやらおっかない事を口走ったナーベラルを無視してエントマと会話を続ける。

 

「それで、彼らは?」

《リザードマンに何かを渡して帰っていきましたですわ》

「何かを渡した…一体何だったのか分かるか?」

《そこまでは分かりませんでしたわ》

「ならば、コキュートスに伝えろ。相手の警戒を厳重に」

《了解ですわ》

 

メッセージが終了したエントマにコキュートスは声をかけた。

 

「アインズ様カラナンダト?」

「警戒を厳重にしろと言っていましたわ」

「ソウカ…ソレハ当然ノ事ダガ、アインズ様ノ命令タイトルダ。ヨリ警戒スベキダ」

 

コキュートスは明日に向けての準備を急がせる。

 

 

 

 

次の日。

ついに約束の4日になって、見張り台では見張りを任されたリザードマンが辺りを監視していると、突然雲がかかって森の奥地からスケルトンとゾンビの軍隊がやって来た。

 

「奴らが、来ました!」

「分かった」

 

それからシャースーリューとザリュース達は用意した舞台に上がって開戦と激励の言葉を発した。

 

「聞け!全てのリザードマン達よ!認めよう敵は多いと…しかし恐れることはない!我ら5つの部族は歴史上初めての同盟を結んだんだ」

「この同盟で、1つになった5つの部族の祖霊が見守ってくれている筈です!」

 

シャースーリューとクルシュは同盟を結んだ各部族の戦士達に勝利すると宣言。

 

「敵を倒して、祖霊に勝利を捧げるぞ!」

「「「「「おおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」

「出陣!」

 

こうしてリザードマンの軍とアインズの軍勢の戦いが始まった。




リザードマン達は自衛隊の手を借りない事になりましたが、伊丹はアインズと今後から口出しはしないでと約束してしまいました。
もしかしたらアインズ達と自衛隊が戦う展開になるかもしれません。


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リザードマン攻防戦

「「「「「うおぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」

 

ついにリザードマンの同盟軍とナザリックのアンデッド軍の戦争が起きて、お互い敵に向かって進軍していった。

そしてお互い交戦を始める。数が多いアンデッド軍に翻弄されるが、怯まずに同盟軍は敵を何体か潰していく。

そしてザリュース達族長達は砦で様子を見ていた。

 

「おいおい、奴らは舐めてんのか?」

「弓兵も騎兵も動きはしないし、スケルトンはまだしもゾンビも動きが変だな?」

「もしや…指揮官は近くにいないのか…」

 

アンデッド軍に指揮する者がいないと気づくザリュース。

 

「んじゃあ、奴らはただの木偶か?」

「見くびられたものだな…」

 

シャースーリューはゼンベルと一緒になって、アンデッド軍が自分達を舐めてると思い怒り出す。

 

「落ち着いてくれ、敵が油断しているなら好都合だ。それで、儀式の方は?」

「はい、異なる部族の祭司達が力を合わせているから、いつもより速く進んでいるわ」

 

後ろで魔法陣を囲みながら魔法の準備をしている祭司達。

 

「協力する事って、スゴイ事なのね」

「ああ、クルシュの言う通りだ」

 

ザリュースとクルシュはお互いの尻尾を絡ませながら戦場を見続ける。

 

「ところで、スーキュ殿。2人の様子は?」

「未だに隠れています。もしも騎兵が動いたのなら」

「おっ、なんか動いたみたいだぞ」

 

ゼンベルの言う通り、アンデッド軍の騎兵隊がスケルトンの馬を走らせながら攻めてきた。けれども、別の所に隠れていたリザードマン2人が、アンデッド軍の騎兵隊が進撃する様子を確認。

 

「奴らは目的の場所に近づくぞ!」

「周りに味方はいないから行くぞ!」

 

他のリザードマンがいないことを確認すると、2人が手に持っているコードが繋がったリモコンみたいな装置のスイッチを押した瞬間。騎兵隊が走っていく二か所が大爆発。当然、強い爆風が起きて爆発に巻き込まれたスケルトンの欠片が飛び散る。

 

「やったぞ!」

「早く戻ろう」

 

喜んだが、すぐさま2人がこの場から立ち去った。砦で爆発の様子を見ていたザリュース達は

 

「やった…あれが本当に効いたのですな!」

「すごいいりょく…みどりのひとたち、すごい」

 

スーキュもキュクーも爆発の威力に驚いた。それからスリングショットを持ったリザードマンの遠距離戦闘部隊も、2人のように周りに味方がいないことを確認。

 

「良し…じゃあ俺達も、緑の人から貰ったこれで戦うぞ!」

「「「「「おーーー!!!」」」」」

 

さっそくM26手榴弾の安全ピンを外してスリングショットで飛ばした。その為、手榴弾の爆発でアンデッド軍に大きな打撃を見せる。

それでも動き続けるアンデッド軍だが、今度は普通に石を飛ばして攻撃を続ける。

しかし砦ではコキュートスが遠隔視の鏡でリザードマン達の戦闘を確認した。そしてリザードマン達が爆弾を使う事に疑問を持つ。

 

[ドウナッテイル…ナゼ、リザードマンニ爆弾ガ?マサカ!]

 

これは自衛隊の仕業だと、コキュートスは気づいた。

それからザリュース達側も。

 

「けれども、あんなものが本当に使うるなんてな」

「全く凄すぎるな…自衛隊の力は」

 

あれは昨日。

リザードマンを集めた伊丹は持ってきたある物の説明をしていた。

 

「みなさんが、自分達の力で戦う気持ちはよく分かりました。ですが、せめてこれの使い方を教えます」

 

それはM26手榴弾とプラスチック爆弾改めC4だった。リザードマン達は興味を持って触ってみたり、なかにはC4を食べ物だと勘違いして食べようとするのもいる。

 

「待って、待って!そのままだと爆発しなくても、食べたら中毒になるから」

「うげっ!?」

 

それを聞いたリザードマンは驚いて手放してしまう。それでも伊丹は全員に分かりやすく、C4の使い方を説明した。

 

「これはこねる程に威力が増すんだ。その後、埋める場所を決めたら浅めに埋める」

「さらに雷管っていう起爆用火薬を繋ぐ必要があるですけど、それらは私達でやっておきますね」

 

さっそくザリュース達は自衛隊が用意してくれた、C4を良くこねて2つの木箱に入れる。次に戦いの場になる湿地に向かい。

 

「では、決めた場所にこれを埋めるけど…雷管を繋げる必要があるので待っていてくださいね」

 

伊丹は1人でC4に雷管と起爆回路を繋ぐ作業を行った。なぜなら、特戦の時になんども教わったので。

 

「やれやれ…俺1人で地味な作業なんてな…」

 

少し惨めに感じる伊丹であった。一方、栗林は一緒に持ってきた手榴弾の使い方を教える。

 

「このM26手榴弾は安全ピンを抜いて4秒で爆発します」

「じゃあ、4秒以内に投げればいいんだな?」

「そう言う事になります。もちろん、周りに味方がいないのを確認する事。とりあえず、40個ほど渡しますので、ちゃんと安全に管理したうえで無駄使いせずに!!」

 

大声で念入りに説明する。そして伊丹の作業が無事に終了して、雷管と繋がったC4入り木箱の蓋を閉めて2か所に埋めた。

 

「さてと、この起爆装置のスイッチを押すだけだが…君達、大丈夫かい?」

 

伊丹は爆破担当のリザードマン2体に尋ねる。

 

「心配ないさ。俺達は隠れるのは得意だし」

「こう見えても、責任感は強い方だから安心できるさ」

 

胸を張って大丈夫だと宣言する。

 

「そっか…じゃあ、任せますよ」

「「おぅ!」」

 

という訳だった。

それからアンデッド軍の弓兵も矢を放って、さらにオオカミや猪や熊のアンデッドビーストも現れる。すぐに手榴弾を投げたが、素早く避けられてしまう。

しかし祭司達が泥で出来た湿地の精霊(スワンプ・エレメンタル)を召喚して、アンデッドビーストを次々と倒していった。

 

「リザードマン共ガ、ココマデヤルトハナ…」

 

再びコキュートスが戦場の様子を確認して、ここまで自分達が押されている事に信じられずにいた。しかたなくデミウルゴスにメッセージする。

 

「デミウルゴスカ?」

《そうだ友よ。君が私にメッセージを飛ばしてくるとは、いったい何事だね?》

「知恵ヲ貸シテホシイ」

 

コキュートスはリザードマン達が予想以上に強く、さらに自衛隊の持ってきた武器を使用していると話した。

 

《なるほどね…じゃあ尋ねるけど、アインズ様はなぜ君に弱い戦力を与えられたか分かるかい?》

「ソレガ、全ク分カラン…」

《コキュートス…恐らく、重要なのは勝利ではなく結果ではないのか?君が自分の意志で相手を調べるとか》

 

さらにデミウルゴスは話を続けた。コキュートスが攻める前にちゃんとリザードマンの兵力を調べたか、ナザリックの名を伏せたりとかは、自分自身でどういう動きをしながらも目的を達成するのかと。

 

「デハ、ソノ為ニアインズ様ハワザト私ニ勝テナイ兵力ヲ与エラレタノカ?」

《そう言う事だね。おっと、なんか急ぎの用事が出来たみたいだから君の勝利を祈っているよ》

 

そう言いながらデミウルゴスはメッセージを切る。しかし隣でエントマの頭部に貼っていた札が崩れ落ちたのを知り、彼女が邪魔をしたと確認した。

 

[モハヤ後ニハ退ケヌトイウ訳カ…ダッタラ切リ札ヲ出スシカナイナ!]

 

コキュートスは覚悟を決めて今度は別の相手にメッセージをした。

 

「指揮官タル死者ノ大魔法使イ(エルダーリッチ)ニ命令ヲ下ス。リザードマン共ニ力ヲ見セツケロ!」

 

コキュートスの命令を聞いた死者の大魔法使い(エルダーリッチ)はこれを待っていたと不気味な笑みを見せた。




リザードマンが手榴弾とプラスチック爆弾を使う展開にして見ました。次回は自衛隊の園遊会を入れてみようかと思います。


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園遊会と戦況

ザリュース達がナザリックの軍勢と戦っている頃、セクフィア帝国の帝都郊外にある皇室庭園。そこで伊丹達はと言うとピニャの園遊会に参加していた。

来客は日本の食べ物を堪能して、日本の遊びや護身術や化粧などを楽しんだりする。

ピニャは菅原と一緒に来客の人たちに挨拶をした。

 

「菅原殿。アナタの考えた園遊会は素晴らしいものですな」

「いえいえ…実質フォルマル家のメイド長に任せきりですし…」

「スガワラ様!」

「え?」

 

すると金髪のツインテールをした少女が菅原の所に駆け寄った。

 

「酷いですの!従姉妹が真珠の首飾りを見せびらかして、わたくしくやしくって!」

「コラ、シェリーお止めなさい!」

 

などと少女は怒りながら菅原の腕を掴んだので、すぐに彼女の親が迷惑だと感じて引き離した。

彼女はシェリー・ノール・テュエリという元老院の重鎮の類縁者。なにやら菅原の事を気に行っている様子。

 

「まぁまぁ、そんなに叱らないでくださいよ。シェリー様、ご両親を困らせてはいけません。きっと良い贈り物が届くかもしれませんので、いい子にしてくださいね」

 

優しく言いながら彼女の頭を軽く撫でる。その瞬間、シェリーは惚れたかのように顔を赤くして両親と一緒にこの場から離れた。

 

「あの娘、貴殿に惚れたぞ?」

「そんなお戯れを…」

 

軽く菅原に冗談を言ったピニャと一緒に伊丹の所に向かった。

その伊丹が来客の貴族たちに銃の実戦体験をしたり、L16 81mm 迫撃砲のデモンストレーションをしている最中。

 

「相変わらずの威力だな…」

「ピニャ殿下、菅原殿」

 

武器の威力に改めて度キモを抜くが、そこに元老院のメンバーらしき初老の男が2人近づいた。

 

「今回の園遊会は素晴らしいですな。ところで、なぜ日本は協和を求めるのか教えて下さらぬか?」

 

元老院議員はこれ程の武器と力があるならば、簡単に帝国を落とせるのに、協和をする訳を尋ねてきた。すると菅原は口を開く

 

「それは我が国が求めているのは…平和のためにですよ」

「平和…ですか…」

 

菅原はそのまま元老院議員達にこれからの条件に付いて話を始めた。そんな時に、伊丹の通信機から声がする。

 

『こちらアベンジャー!』

「ん?こちらアーチャー!どうした?」

『招待客には見えない騎馬の集団が8騎。どうしますか?』

「…監視を続けろ」

 

通信を終了して話の最中だった菅原に声をかける。

 

「騎馬の集団が此処に接近中です。だから、VIPの方々を」

「…分かりました」

 

とりあえずこの場をピニャ達に任せて、伊丹と菅原と一部を除いた自衛隊員と元老のメンバーを73式大型トラックに乗せて離脱。

それから監視の言った通りに、騎馬に乗った8人の男達が皇室庭園に入って来ると、全身に鎧を纏った傲慢そうな男が周りを見渡す。

 

「あら、ゾルザル殿下!」

「ご機嫌麗しゅう♪」

「ふん!ピニャはいるか!?」

 

じつはこの傲慢そうな男がピニャとは異兄妹で皇帝第1子のゾルザル・エル・カエサル。するとすぐにピニャがゾルザルの所に走って来た。

 

「兄様!この園遊会に何か?」

「なんだ?俺が此処に来ちゃ悪いのか?」

「いえ…ただ、こういうのには無関心でしたので…ですが、折角ですのでならか食べて行きませんか!」

 

なるべく日本の使節団と元老院が来ていない事を悟られないように、料理とかで誤魔化そうとする。

とりあえず、ゾルザルはさっそく骨に肉を巻いたマ・ヌガという料理に手を伸ばす。

 

「マ・ヌガ肉には、このマスタードとかいうソースをかけて召し上がってください」

「黄色いソース?マズそうだが…まっ、試してみるか?」

 

半分騙されたつもりでマスタードをかけて豪快にかぶりつく。

 

[これは…辛さと酸味が効いて…ブツブツと種みたいなものも妙に合う!]

 

初めてマスタードを体験した結果、気に入ったゾルザル。だが、すぐに別の話に入る。

 

「そういえばピニャ、たしかアインズと呼ばれる魔法使いと知り合いと言ったな?」

「ええ、ですがこれだけは言いますけども、兄様達でも絶対に太刀打ち出来ませんよ。アインズ殿と、その部下達は」

 

はっきりと宣言するピニャ。しかしゾルザルは何か別な事を考えた。

 

[たとえ何者だろうと…利用するか殺すかだな。なんだって俺には、あのアイテムが!]

 

良からぬことを考えながらも、マ・ヌガにもっとマスタードをかけてまた食べる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ザリュース達は殆どのアンデッド兵を倒して、怪我人の手当をした。

 

「いいか、重傷者から順番に村へ運べ!動ける者はそのまま進軍だ!」

 

怪我人を村に移動させながらも、無傷や軽い怪我の者はそのまま前線に進んだ。しかしその瞬間、突然火の玉が飛んできて湿地の精霊(スワンプ・エレメンタル)に直撃、そのまま燃えて崩れてしまう。

 

「なっ…はっ!?」

 

戦士頭が飛んできた方向に目を向けると、ローブを纏った死者の大魔法使い(エルダーリッチ)がいて、再びリザードマン達に向けて火球(ファイヤーボール)を発射。

 

「貴様らは、このイグヴァが滅ぼしてやる」

「「「「「ぐわあぁぁぁぁ!!?」」」」」

 

火球の爆発を受けてリザードマン達が吹っ飛んだりした。すぐに戦士頭が相手の死者の大魔法使い(エルダーリッチ)改めイグヴァが強いと把握。

 

「逃げろ!奴は今までのと違う!」

「すぐに族長とザリュースに伝えろ!俺達で時間を稼ぐ!」

 

何人か残って戦おうとする者と、ザリュース達に報告する者に別れた。

だが、イグヴァは勝った気でいるような不気味な笑みになって、向かってくるリザードマン達に火球(ファイヤーボール)を発射し続ける。

 

「なっ!」

 

容赦なく火球(ファイヤーボール)で攻撃して次々とリザードマン達を殺していくイグヴァに言葉を失うザリュース。するとゼンベルは軽く笑って声をかける。

 

「こりゃあ、俺達の出番だな?」

「ああ、奴がこの軍の指揮官か切り札の可能性が高い」

 

シャースーリューもすぐに相手のイグヴァが強敵だと確信する。

 

「問題はどうやって近づくかですね?射程距離は100メートルだと思いますので、自衛隊から貰った爆弾では届かないかと」

 

クルシュは相手の距離ではスリングショットを使っても手榴弾が届かないと理解。けれども、そんな時にロロロがザリュースに近づいて何かを伝える目をした。

 

「ロロロ…そうか」

 

ザリュースはロロロの4つの頭部を撫でながら決意を知った。それからイグヴァの攻撃が続いた。

 

「ふあはははは!我が軍に勝利を…ん?」

 

するとロロロが勢いよく突進して近づく事に気が付く。

 

「ヒュドラが1匹で、そんな鈍い脚で走り切ると思ったか!」

 

そのままロロロに火球(ファイヤーボール)を放った。しかし火傷を負いながらも、勢いは止まらずに突進し続ける。

 

「く…死ね!」

 

何発か撃ち続けたが臆せずに走って続ける。この姿にイグヴァは驚きと混乱が襲う。

 

「なぜ止まらんのだ!?」

 

今までよりも大きな火球を発射した。だが、次の瞬間。ロロロの背中に隠れていたザリュースがジャンプして現れて

 

氷結爆散(アイシー・バースト)!」

 

技名を叫びながら凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)を大きく振るうと、そこから冷気の壁が現れて火球(ファイヤーボール)を防いだ。

さらに後ろからクルシュとゼンベルが走って現れたので、一緒にイグヴァの元に向う。

 

「ありがとう、ロロロ」

 

全身に火傷の跡が出来るまでがんばってくれたロロロに感謝するザリュース。

 

「バカな!我が火球(ファイヤーボール)を打ち消すだと…ならばこれならどうだ、雷撃(ライトニング)!」

 

今度は雷撃(ライトニング)を放ったが、ゼンベルが前に出る。

 

「俺に任せろ!抵抗する屈強な肉体(レジスタンス・マッシブ)!」

 

修行僧(モンク)による肉体硬化スキルで雷撃(ライトニング)を自ら受けて防いだ。

 

「俺達なら絶対にいけるな」

「当然だぜ!」

「ええ」

「どうやら、ただのトカゲではないようだな?」

 

改めてイグヴァはザリュース達が強いと確信したが、ここで引き下がるわけにはいかないと魔法を発動。

 

第4位階死者召喚(サモン・アンデッド4th)!」

 

イグヴァの前に6体の戦士姿のスケルトンの骸骨戦士(スケルトン・ウォーリアー)を召喚してザリュース達に声をかけた。

 

「我は偉大なるに仕える死者の大魔法使い(エルダーリッチ)のイグヴァ。頭をたれるなら苦痛なき死を与えよう」

 

どっちにしろ死ぬというむちゃくちゃな選択肢をザリュース達にするイグヴァ。そしてザリュースの判断は

 

「断る!」

「慈悲を拒絶するか…ならば苦痛に塗れて死ぬがよい!」

「それはこっちの台詞だ!」

 

さっそくイグヴァは骸骨戦士を嗾けた。だが、ゼンベルが骸骨戦士を殴り倒す

 

「進めや、ザリュース!」

 

自分がスケルトンを相手している間にザリュースはイグヴァに近づく。

 

「恐怖を知れ!恐慌(スケアー)!」

 

しかし恐慌(スケアー)という相手に状態異常にする魔法をかけた。これによってザリュースは動けなくなる。

 

「ザリュース!獅子ごとき心(ライオンズ・ハート)!」

 

けれども、クルシュの恐怖を癒す魔法で解除された。

 

「煩わしい真似を…雷撃(ライトニング)!」

「きゃっ!」

「クルシュ!?おのれ!」

 

クルシュを攻撃されたが、その怒りを抑えてイグヴァに斬りかかる。

 

「魔法詠唱者でも、この距離ならば使えないだろう!」

「舐めるなよリザードマン!」

 

だが、イグヴァは近距離でも魔法の矢(マジックアロー)を撃って攻撃。それからゼンベルは骸骨戦士が、思った以上に厄介だと感じる。

 

「たく…骨の癖にかなりやるなんてよ…」

 

しかしザリュースも相手に手こずってる様子を見るので思い切った行動に出た。それはまず残りの骸骨戦士3体を、タックルして地面に押さえつけ動けないようにする。

 

「さてと、俺の硬化が勝つか…コイツの威力が勝つか勝負だ!」

 

すると手榴弾を2つ手に持って安全ピンを抜いた。その結果、爆発して大きな爆音と爆風が起きる。

 

「ゼンベル!?」

「なに、じ…自爆したのか!?」

 

これにはザリュースもイグヴァも驚いた。そして辺りには骸骨戦士の残骸が散乱していたが、ゼンベルは全身黒焦げになりながらも立っている。

 

「どうやら…俺の硬化が強いみたいだが…後は頼んだぞ」

 

やっぱり骸骨戦士との戦いと手榴弾の爆破で、相当なダメージを受けたのでこの場で倒れてしまう。それからザリュースはイグヴァの魔法の矢(マジックアロー)で、小さいがに大量の傷を負ってしまう。しかしクルシュは雷撃(ライトニング)でのダメージを負ったままだが

 

「ち…中傷治癒(ミドル・キュアウーンズ)!」

 

なんとかザリュースの傷をある程度まで治癒した。

 

「俺は…負けない!」

「舐めて貰っては困る!」

「この距離で火球(ファイヤーボール)を?いや、これは!」

 

イグヴァが自分も巻き込まれるかもしれないのに、火球(ファイヤーボール)を放とうとした。だが、それはザリュースじゃなく気絶したクルシュとゼンベルに向けて撃つと気づく。

 

「マズイ、氷結爆散(アイシー・バースト)!」

 

慌てて凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)を地面に突き刺して氷結爆散(アイシー・バースト)を発動。これによって広範囲で冷気が広がり霧と霜が広がる。

 

「我には冷気が通用せぬ。それにこれでは、自分も無事でなかろう」

 

などと独り言を吐きながらも濃い霧の中を探すイグヴァ。だが、後ろに気配を感じて振り向く。

 

「うおぉぉぉぉ!」

「ぎゃはっ!?」

 

ザリュースは凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)でイグヴァの左目を突き刺したる

 

「バカな!あれほどの冷気で…なぜ」

「俺にはすでに冷気耐性を持っているのさ」

 

普段から凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)を所持したおかげで冷気の対する耐性が出来ていた。だが、イグヴァは痛みに耐えながらザリュースに近づく。

 

「我は…御方に生み出されたシモベ…滅んで溜まるか!」

「うぐっ!」

「死ぬぇぇぇリザードマン!」

 

そのままイグヴァが執念と少し呪い効果を加えた手でザリュースの首を絞め始めた。まさかの絞殺というやり方に、ザリュースは焦りながらも段々意識が薄れていく。

 

[ロロロ…ゼンベル…クルシュ…]

 

ここまで一緒に頑張って戦ってくれたクルシュ達を思い出して活力を取り戻す。

 

「バカな…なぜ動けるのだ、この化け物め!」

 

まさかの復活にイグヴァが怯んだが、ザリュースは拳を掲げ。

 

「これで、終わりだぁぁぁぁぁぁ!」

 

そのまま拳で凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)の柄の部分を、強くぶつけてイグヴァの頭部を貫いた。

 

「ぐわぁぁぁぁぁ!アインズ様ぁぁぁぁ!おゆ…るし…を」

 

イグヴァはアインズに謝罪の言葉を上げながらも消滅して、ザリュースもこの場に倒れて気絶。

それから雲が消えて太陽の光がこの地を照らされ、この様子を見たリザードマン達は喜びと勝利の声が鳴り響く。

当然、戦いの様子を見たコキュートス達。

 

「コキュートス様、アインズ様がお呼びみたいです」

「承ッタ」

 

エントマがアインズが呼んでると言うのでコキュートスは立ち上がるが、もう一度遠隔視の鏡でリザードマン達が喜んでいる姿を確認。

 

「惜シイ…実ニ勿体ナイ」

 

などと呟いた。




ピニャの園遊会とザリュース達の戦闘を別々に書いてみました。ゾルザルも登場して、ピニャがアインズという存在と知り合いだと調査済みでした。
そしてゼンベルの手榴弾の使い方は、無理あるかもしれませんが勘弁してください。


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勝利と新たな作戦

イグヴァとの戦闘を終えて眠りについたザリュース。目を覚ますとまずは自分の体を確認。

 

[ん…生きているのか…あれ?]

 

だが、それ以前にクルシュが抱き着いて寝ていることを知る。それも自分の尻尾も絡み合わせて、絶対に離れないようにしていた。

 

[これは…]

「んん…あっ!」

 

ザリュースが起きたことに気づくと顔を赤くした。

 

「クルシュ…もしかしてずっと俺のことを看病?」

「ええ、あれだけ戦ったのですからね。なんとか治癒魔法と回復魔法を施したけど、アナタかなり疲れたみたいだからね」

「そうか…そうだな…」

 

お互いに顔を赤くなるが、ザリュースはそのままクルシュを優しく抱きしめる。

 

「ザ…ザリュース」

「もう少し、このままで」

「おぅ、やってるか?」

 

だが、ここにゼンベルが入って来たので、2人は分かりやすいように尻尾を振りながら離れた。そして顔を赤くしながら睨み付けた。

 

「お…お前…」

「なんだよ?邪魔したことは謝るけどよ…主役が居なくてつまらなかったんだぜ」

 

そう言いながらも、勝利の宴会の様子を2人に見せるゼンベル。

 

「そういえば、お前かなり無茶したよな?」

「無茶って…なにが?」

「あの手榴弾を2個も使って自爆した事に決まっているだろ?」

 

ザリュースは呆れながらも、自爆と言う無謀な策をしたゼンベルに言う。

 

「だけど、こうして無事だったんだろ?そんな事より、ほれ!」

 

すぐに2人を外に出すと、リザードマン達が祝勝会の最中だった。

 

「みんなお前のおかげなんだぞ?早く顔を出しに行きなよ」

「分かったよ」

 

ゼンベルに勧められながらザリュースとクルシュは、最初にシャースーリューの所に向かった。

 

「ザリュース、体はもう良いのか?」

「ああ、クルシュのおかげでな」

「え?はい」

 

つい照れ始めるクルシュで、そこに酒の椀を持ったスーキュとキュクーもやって来た。

 

「それにしても、緑の人もとい自衛隊と呼ばれる者達の爆弾などという物が役に立つとは」

「のこり…すくない。たいせ…つに、つかわな…ければな」

 

2人はかなり自衛隊から貰ったC4と手榴弾を高評して、さらにロロロも喜んだように近づくとザリュースの頬をスリスリする。

 

「ロロロ、お前も大丈夫そうだな?もちろん、よくがんばった」

 

優しく撫でながらも今回の勝利が本当に良かったと実感した。

 

 

 

 

一方その頃、ナザリックに戻って来たコキュートスとエントマ。今回の作戦が失敗したにもかかわらず、コキュートスは何か別な事を考えていた。

 

「コキュートス様。では、私はこれで」

「アア、ソウダナ?」

 

エントマと別れると玉座の間に入ると、すでにアインズと守護者達がいた。

 

「コキュートス。ご苦労様だったな?」

 

アインズはコキュートスの帰還を確認すると全員の声を聞いた。まずデミウルゴスから聖王国両脚羊のアベリオンシープの皮が羊皮紙にピッタリだと説明して、シャルティアも自分の失態の仕置きの覚悟が出来てると発言。

そして最後の問題はコキュートスで、リザードマンに敗北した事を尋ねた。

 

「聞いた話では、リザードマン共が爆弾を使っていたと聞くが?」

「ハイ、恐ラク自衛隊カラノダト分カッテイマス。シカシニナガラ、敗北シタノニ変ワリマセン故ニ」

「当然のことですよ。分かっているのなら、まず頭を上げて謝罪しなさい」

 

怒っている様子のアルベドがきつく言って来た。

 

「失礼シマシタ。ソシテオ預カリシタ兵ヲ失ッテ申シ訳アリマセン」

「また、今回の敗北を責めるつもりはない。誰だって失敗する…私だってな」

 

仮にも社会人なのでアインズはコキュートスの失敗を許した。

 

「して、どうすれば勝てた?」

「リザードマンヲ侮ッテイマシタ。モット慎重ニスベキカト」

「ふむ、どんなに弱い存在でも侮るのはいけない事だ。ほかには?」

「ヤハリ、情報不足ダットシカ考エラレマセン」

 

コキュートスは戦場の地形やリザードマン達の実力に、さらには自衛隊からの品をちゃんと把握できなかったのと、さらには低位のアンデッドの指揮がうまくいかないのも原因らしいと言う。

 

「それ以外はないのか?」

「ハイ」

「素晴らしい!死者の大魔法使い(エルダーリッチ)以外はPOPするアンデッド。滅びたところでナザリックに影響はない!守護者が学んだという事を考えればお釣りが来るぐらいだ!」

 

まさかのNPCの守護者であるコキュートスが失敗から学んだので、アインズはとても嬉しいようだ。

 

「しかし敗北したというのだから罰は与えたいが、その汚泥をお前の手で拭え必ずやリザードマンを殲滅せよ。今度こそ誰の手も借りずにな」

「素晴らしいお考えですアインズ様!リザードマン共をコキュートスの敗北という罪と一緒に洗い流すとのですね」

 

アインズから失敗の取り消しと殲滅という命令にアルベドが絶賛した。しかしコキュートスは乗り気になりない様子。

 

「アインズ様…ジツハソノ事ナノデスガ。オ願ガイ議ガアリマス」

「栄誉ある我らナザリックに敗北をもたらした身でありながら、アインズ様に請願するとは!」

「落ち着けアルベド。して、その願いとは?」

「…リザードマンノ皆殺シハ、反対シタイト思イマス」

「なに?」

 

なんとコキュートスは殲滅計画に反対して無しにしてと頼んできた。

 

「コキュートス!アナタ自分がなにを言っているのか分かっているの?」

 

これには当然、アルベドはコキュートスの意見でさっきよりも怒り出した。

 

「だから落ち着け。コキュートス、今の発言の理由を申して見ろ。当然、ナザリックの利益に関係するものだろうな?」

「ハイ…今後彼ラノ中カラ屈強ナ戦士ガ出テ来ル可能性ガアルノデ、リザードマンニナザリックヘノ忠誠心ヲ」

 

どうやらリザードマン達を戦力にして取り込めば、ナザリックの強化につながるというのがコキュートスの提案。

 

「なるほどな。しかしアンデッドの生産の方が費用効果は高い筈だが?」

「ソレハ…」

 

これには言葉を積もらせるコキュートス。しかしリザードマン達を生かしたいという気持ちもあるので、なんとかいい案はないのか考える。

 

「あの、アインズ様」

 

するとデミウルゴスが口を開いて提案してきた。

 

「リザードマン達で統治の実験をして見るのはどうでしょうか?」

 

それは色んな種族を束ねて支配する為に、まずはリザードマン達を恐怖に依らないで支配する実験をした方が良いという事。

 

「面白い案だデミウルゴス!では、リザードマンは殲滅ではなく占領に変更する。それからコキュートス」

「ハ!」

「お前の罰はリザードマン達をナザリックの忠誠心を植え付けよ。ただし、恐怖による支配は厳禁だ」

「カシコマリマシタ」

 

まさか二度もデミウルゴスに助けられて、コキュートスは心の中で感謝した。

 

「アルベド」

「はい」

「兵の準備とガルガンチュアを起動させよ」

「完了しました」

「では、行動を開始せよ!」

「「「「「はっ!!」」」」」

 

全員に命令してアインズは玉座の間から出た。それから自室に入ると、自分のベッドへ豪快にダイブ。

 

「まさかコキュートスが自分の判断であんなことを言うなんてな…」

 

コキュートスの成長に少し喜ぶと同時に、今後は自分も成長しなくてはと感じてしまう。

 

「でもまさか伊丹さん達が、リザードマンに爆弾を渡していたなんてな…」

 

アインズは伊丹に連絡しようとしたけど、あんな事を言った時点でもう遅いと分かっていたので諦める。

一方その頃、園遊会が終わって自室に戻って来た伊丹もアインズに連絡しようとした。

 

「なに考えてんだ?俺達はいつか今度は敵同士になるかもしれないのに…」

 

園遊会の事もあって、ドッと疲れてベットに横になる。しかしまだ色々とやることがあった。

 

「テュカはもちろん…元老との交渉。まだまだあるのにな」

 

しかし伊丹は知らなかった。近いうちに帝都で大変な騒動が起きる事に。




少し時間が空けてしまいました。次回からは帝都の地震が入るかもしれません。


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宣戦布告と帝都の近づく脅威

戦闘から2日が立った頃。ザリュース達はせっせと砦の補強や武器の補充をしていた。しかしいつの間にか彼らの知らないときに、鎧で武装したスケルトンの軍団が列を作っていたことに。しかも前の列は茶色い鎧だが、真ん中の列は銀色で後ろの列は金色で強そうな鎧。

 

「あれは…」

「いつも間にそんな!?」

「しかも、あれは魔法武具じゃねぇか」

 

ザリュースもクルシュもスケルトンの軍団に現れたり、ゼンベルは鎧が魔法の武具だと気付いたりした。すると今度は肌寒い風が起き始める。

 

「これって、この風は第6位階魔法コントロールウィザー!」

 

クルシュはすぐにこれが魔法によるものだと気づく。だが、リザードマン達はスケルトン兵士と、この魔法が第6位階だと知って少し怯えだす。

 

「落ち着け!」

 

するとシャースーリューが壁の上から大声で叫んだ。

 

「戦士達よ怯えることは無い!決して多くの祖霊を失望させるような行為を慎むように」

 

そのまま降りるとザリュース達の所に合流すると、スケルトン兵が動き出した。だが、攻撃ではなく真ん中を開くようにすると、そこにはアインズが禍々しいオーラを放ちながら立っている。

 

「あれが偉大なる御方…死の支配者か?」

 

するとアインズは自分の周りに魔法陣を展開し始めると、一瞬にして沼を凍りつかした。それもザリュース達のいる地にまで届き足を氷が張りつく程に。

 

「これも魔法なのか?!」

「私…あんな魔法しらない!?」

「全員、早く上に!」

「これは奴が偉大なる御方ってのは、確実だな?」

 

シャースーリューは急いでリザードマン達を砦に避難させて、すぐに祭司達が凍傷の手当を始めた。

さらに今度は巨大な地響きが聞こえてくる。

 

「なんなんだあれは?」

「まさか、ゴーレム!?」

 

地響きの正体はガルガンチュアで、大きな足音を上げながら歩いてきた。当然、リザードマン達は巨大なゴーレムに度キモを抜かれたが、ガルガンチュアは四角形の巨大な岩を凍った沼の真ん中に投げ込む。投げ入れた衝撃で氷が割れて水柱が起きる。

今度はスケルトン兵が岩の前に来ると組体操のように自分達の体で、階段の形にし始めた。

さらに金の鎧のスケルトン兵が左右から旗槍を掲げて、まるでパレードのようにするとアインズとアルベド達が進み始める。スケルトンの階段も上がり、アインズは玉座を出して座った。

 

「なんてことだ…まさに死の支配者に相応しいようだ…」

 

さらにアインズは雲操作(コントロールクラウド)を発動させて、ザリュース達が前に見たモンスターを大量に出して村の周りに配置させる。

 

『偉大なる御方の言葉を伝える。偉大なる御方は対話を望まれている』

『対象となる物は即座に歩み出よ!』

『無駄な時間の経過は偉大なる御方を不快にさせるだけと知れ』

 

配置されたモンスターがリザードマン達に代表者を連れて来いと言いだして、シャルティアが手を叩くと消えた。

 

「まさか、それだけの為にモンスターを…」

 

モンスターがただ伝える為に出して消されたという事で、まさに暴君だと感じていた。するとシャースーリューはザリュースに目を向けて

 

「一緒に来てくれるか?」

「兄者…当然だろ」

「ザリュース」

「クルシュ…行ってくる」

 

心配かけないようにクルシュに言って、シャースーリューと一緒に凍った沼を歩いてアインズ達の所に進む。

 

「すまんな」

「謝ることはないさ。それよりも」

 

ザリュースは物凄い威圧を放つアインズを見る。

 

「俺はリザードマンの代表、シャースーリュー・シャシャ!そして我が弟でリザードマン最強!」

「ザリュース・シャシャ!」

 

2人が目の前の相手に屈しないように大声で自己紹介をする。だが、デミウルゴスが口を開き。

 

「平伏したまえ!そして抵抗するな!」

「「ぐおっ!?」」

 

デミウルゴスのスキル・支配の呪言でザリュースとシャースーリューは、この場で頭が地面に着くほど土下座をして跪いた。まるで強い重力をかけられたみたいで、動けない様子。

 

「アインズ様、聞く姿勢が整ったようです」

「よろしい。デミウルゴス」

「頭を上げる事を許可する!」

 

なんとか頭だけ解除されてザリュースとシャースーリューは顔を上げた。そしてアインズも自己紹介を始める。

 

「私はナザリック地下大墳墓の主、アインズ・ウール・ゴウン」

[アインズ・ウール・ゴウン]

[あれが、偉大なる御方]

 

2人は改めてアインズがとんでもない存在だと確信する。

 

「さて、本題に入るが…私の支配下に入れ」

「なっ!?」

「と言っても、素直に聞く訳ではないだろう?故に4時間後に私の信頼する側近、コキュートスが攻めに行く。もし勝利したのなら完全に君達から手を引くと約束しよう」

 

なんとアインズは4時間後にコキュートスと戦って勝ったら手を引いて、負けたら支配下になれと言って来た。完全な暴君に怒りを見せる2人。

 

「降伏は?」

「ただの降伏をするようなつまらん考えは、しないで欲しいな」

 

降伏という提案を却下されてしまう。

 

「とにかく話は終わりだ。4時間後にたっぷりと楽しんでくれ」

「この氷は解けるのか?」

「それか…泥で汚れるのが嫌だからな。後で魔法は解いてやる。ゲート!」

 

そのままアインズは砦に通じるゲートを開いて最初に潜った。

 

「さようなら、リザードマン」

「じゃーねー♪」

「さらばでありんす」

「あの…元気でいてください」

〔では、さようなら〕

 

その後にアルベド、アウラ、シャルティア、マーレ、ヴィクティムの順でゲートを潜り。最後のデミウルゴスが

 

「自由にしてよい」

 

ザリュースとシャースーリューを解放した。

 

「さて、たっぷり楽しんでくれたまえ。リザードマン達」

 

そう言ってゲートを潜ると消滅して、同時に空も曇りから晴れに戻る。すぐに族長会議が始まった。

 

「んで、どうすんだよ?」

「たしかに4時間後になぁ…」

 

何かいい作戦はないか考えるザリュース達。するとクルシュは申し訳なさそうに手を上げた。

 

「あの…関係ない事ですけど」

「なんだクルシュ?」

「じつは先程から、大地が大きな揺れを起こそうと感じました」

 

なんと地震が起きるかもしれないと予知をする。

 

「揺れただと?」

「はい、あの方向に」

 

クルシュが外に出て指を刺した方向にザリュースは驚愕する。

 

[あっちは確か…ヤオや自衛隊達がいる国のはず]

 

それはセクフィア帝国の帝都がある方向だった。

 

「その揺れはいつ起きる?」

「分かりませんが…恐らく夜だと」

「しかし、今はそんな事を言ってる暇ではないと思うが?」

「大体、その揺れも本当に起きるのか分からねぇしな」

「たしかに、申し訳ありません」

 

軽く謝罪をしてシャースーリュー達は再び小屋に戻るが、ザリュースは帝都の方に目を向けた。

 

[なんだか…不安になるな]

 

ヤオや伊丹達自衛隊が無事か心配になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ナザリックの砦ではヴィクティムを帰らせてアインズは人間椅子のシャルティアに座っていた。

この前の罰らしいけど、本当はデミウルゴスの作った骨の玉座に抵抗あったらしい。シャルティアはかなり喜んで、アルベドは嫉妬に満ちている。

 

「リザードマン達、無駄に準備をしてますね」

 

遠隔視の鏡で村の様子を確認して見る。せっせと4時間後の戦いに向けて準備をしているリザードマン達だが、ザリュースとクルシュの姿がいない事に気づく。

 

[あの魔法の武器を持った奴と白いのがいない?]

 

小屋にいると思ってスクロールによる感覚器官作成の魔法を使う。さっそく小屋の中を見てみると、なんかザリュースとクルシュとお楽しみの最中だったので、すぐに消して見なかったことにした。

 

[あちゃ~~~]

「まったく不快な奴らですよ!これからコキュートスが攻めに行くというのに…」

「そうです!きっと自分達が勝てると思って油断してますよ!」

「はぁ…はぁ…奴らに…罰を与えるべきでありんす…」

「あの…その…えっと……」

「ああ…羨ましい…じゃなかった。憎たらしい」

 

見てはいけないものを見て少し後悔と感じたアインズと、怒ったり本音を吐く面々。

 

「まぁ、どうせ奴らは死ぬんだ!種族維持本能が目覚めたのだなぁ」

 

とりあえず適当な事を言って全員を静かにさせるしかないアインズたった。

それから所変わって、セクフィア帝国を調査しているナザリックの一般メイド2名。今彼女たちは帝都のスラム街、通称・悪所の少し近くにいた。そこでは医療と看護資格を持つ自衛官の黒川茉莉が診療を頼まれている。

 

「帝都もこういう場所ってあるんだね?ミューム」

「あんまりウロチョロしないの。この先は危ないらしいよテホラ」

 

ポニーテールの少し活発そうなテホラを、ボブカットで真面目なミュームが叱る。しかしそんな時にテホラは何かを感じた。

 

「どうしたのテホラ?」

「なんだか分からないけど、この国に大きな揺れ…地震が起きる気がする」

「え?地震が」

「うん、でも本当によく分からないから…」

 

テホラが少し誤魔化す感じで笑い出しながらも、2人はこの場から離れていった。




なんとかひさしぶりに投稿出来ました。
今回は一般メイドのオリキャラを出して見ました。とりあえず帝都の地震を感じたのは、クルシュとオリキャラのテホラとミュームです。


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対決、コキュートス対リザードマン

夕方頃。

沼地にはクルシュを除いたザリュース達代表5人を前に、リザードマン達が武器を構えていた。

さらにアインズ側は武装スケルトン部隊と、愛用の断頭牙を持って両腕と胸に金色の鎧を装備したコキュートス。両者はにらみ合っていたが、コキュートスが前に出る。

 

「……コキュートス」

 

思わず5人は息を飲む。恐怖を打ち消す魔法をかけたリザードマン達は、流石にそのオーラに負けて少し震える。

そして当の本人は、相手の戦意などをある程度把握。

 

「サテ、アインズ様ガゴ覧ニナッテイルカラナ…マズハ、氷柱(アイス・ピアー)

 

するとコキュートスは魔法を発動して氷の柱を四か所に設置し、巨大なバトルフィールドみたいな形となった。

 

「戦士トシテ、此処ニ来タ者達ニ無礼ダガ告ゲサセテモラオウ!コノ氷柱ヨリコチラ側ハ死地。超エタ者ニハ、死ガ待チ受ケルト知レ!

 

氷柱を囲んだ場所が命をかけての戦いと警告する形でリザードマン達に言う。

 

「へ~~~随分と良い奴っぽいな」

 

ゼンベルはコキュートスなりの優しさだと感じてバトルフィールドに進んだので、ザリュースとスーキュとキュクーもついて行く。それからリザードマン達も進もうとしたけども、シャースーリューは全員に向けて言う。

 

「無理しなくていいから、此処に待って…いや、村に帰れ」

 

気遣って帰らせようとした。だが、全員の答えは

 

「そんな!戦わせてくれよ」

「緑の人達から貰った爆弾だって、残りは4つだろ?!」

「いや、逃げるのは臆病だけの言葉じゃない。生きて帰る為の言葉でもある」

「だけど」

 

リザードマン達を説得させるシャースーリュー。それでも引くはずはない。

 

「そうだ。若造共は帰れ」

「こういうのは、年寄りの仕事だ」

 

だが、リザードマンの年長者戦士達も説得に当たった。これには流石に参ったのか、若い方のリザードマン戦士はザリュース達と湿地の精霊(スワンプ・エレメンタル)を見送って離れる。

そしてついに決戦の時。

 

「行くぞ。コキュートス!」

「突撃!」

 

シャースーリューの掛け声と共に、リザードマン達は一斉にコキュートス目掛けて突撃した。

 

「マズハ、数ヲ減ラスカ…フロストオーラ」

 

ここでコキュートスはスキルのフロストオーラを発動。すると強い冷気が発生して、リザードマン達はザリュース達を残して、寒さで動けなくなり倒れてしまう。

 

「少シ威力ヲ落トシタガ、コンナトコロカ?」

 

ある程度まで威力を少なくしたらしいが、ここでザリュース達の攻撃。

まずはスーキュがスリングショットで石を飛ばし、キュクーは2本の剣を構えて素早くコキュートス目掛けて走る。

 

「我ラ守護者クラスハ皆、飛ビ道具ナドニ対スル耐性ヲアイテムデ獲得シテイル」

 

すると石はコキュートスの前で砕け散った。しかしキュクーは剣を合体させて槍のようにして斬りつけようとしたが、コキュートスはアイテムボックスからなにかを取り出す。

それはコキュートスを作った武人建御雷の大太刀型装備の斬神刀皇で、容赦なくキュクーを白竜の骨鎧(ホワイト・ドラゴン・ボーン)ごと一刀両断にした。

 

[凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)でも傷つけなかった白竜の骨鎧(ホワイト・ドラゴン・ボーン)が…]

 

コキュートスの戦闘力と武器に強く警戒するザリュース。しかしその隙に、肉体強化したゼンベルがパンチしようとしたが、素早くコキュートスの斬神刀皇で右腕を斬り落とした。

 

「ぐおぁぁ!!」

「おのれ!」

 

ここでザリュースが凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)で斬りつけようとしたが、あっけなく掴まれてしまう。

 

「悪クナイ剣ダナ」

「く!」

 

すぐこの場から離れようと蹴り付けるが、効果はなくコキュートスは尻尾を振ってザリュースを飛ばした。

 

魔法上昇(オーバーマジック)集団軽傷治癒(マス・スライト・キュアウーンズ)!」

 

ここでシャースーリューが治癒魔法を発動。ゼンベルの右腕が再生して、湿地の精霊(スワンプ・エレメンタル)が攻撃したが斬神刀皇を振って斬り裂いた。だが、それでもスーキュは手榴弾を飛ばす。

 

「無駄ダ」

 

手榴弾はコキュートスの前で爆発したが、煙が漂うだけで本人は無傷のまま。

 

「煩ワシイ穿つ氷弾(ピアーシング・アイシクル)!」

「おご!」

 

今度は太い氷の柱を発射してスーキュを貫いて倒れた。

 

「…野郎!」

「待て、まだ右腕が!」

 

シャースーリューの言葉を聞かずに再び殴りかかったゼンベルだが、容赦なくコキュートスが斬神刀皇で首を斬り落とした。

ザリュースも苦しそうに胸を押さえながらも立ち上がり睨み付ける。

 

「残ルハ2人…アインズ様カラ伺ッテハイタガ、オ前達ガ最後ニ残ッタカ」

 

コキュートスは5人の内、生き残るのがザリュースとシャースーリューだとアインズから聞かされていたらしく。改めて実感していた。

そして2人はお互いのダメージを確認しながらも、まだ行けると覚悟を決める。

 

「オ前達ハ兄弟ラシイナ。名ハ?」

「シャースールー・シャシャ」

「ザリュース・シャシャ」

 

名前を尋ねたコキュートスに2人はそのまま名前を言う。

 

「覚えエテオコウ。オ前達トイウ戦士ノコトハ…本来ナラバ全ノ手ニ武器ヲ持チタイトコロダガ、コノ一刀ヲ相手ニスルコトヲ詫ビヨウ」

 

本気で全ての武器で勝負したいが、そんなことをしたらすぐに終わると思って斬神刀皇だけで十分だと言うコキュートス。

 

「そうか、それは残念だな!」

「全く、そうだな!」

 

2人はそろってコキュートスに向けて走る。まずは手榴弾1つを投げて爆破させてみた。当然、ダメージはないが爆発の煙が漂ってその隙に、シャースールーは大地の束縛(アース・バインド)を発動。

泥の触手がコキュートスに向けて伸びたがすぐに割れてしまう。しかしそこにザリュースが氷結爆散(アイシー・バースト)で大量の霜を散乱させる。

 

「爆弾デノ土煙ニ加エ氷ノ粒デ視覚ヲ絶ツ。ナカナカ考エタミタイダガ、無駄ナコトヲ…」

 

するとコキュートスの右側に凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)の刃が、突き刺そうとしたので軽く掴んで受け止める。

だが、目の前にシャースールーが大きく剣を振りかざし。

 

「終わりだ!」

「ナルホド、ザリュースハ囮カ…シカシ、静カニヤルベキダ」

「ぐおっ!?」

 

そのまま不覚にも斬神刀皇で斬られてしまうシャースールー。だが、ザリュースは最後の手榴弾2つをコキュートスの顔面に押し付けた。

 

「ン?!」

「さぁ、一緒にぶっ飛びな」

 

そのまま2人そろって爆発し、大きな爆風が漂ってぶっ飛ばされた凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)が地面に突き刺さった。そして爆発で黒こげのザリュースは意識が朦朧としながら立ってたが、コキュートスはただ身体に爆破の後が付いただけで何ともない様子。

 

「最後ノ最後デ自爆トハヤルデハナイカ…ハッキリ言ッテシバラシイ」

「……お前の勝ちだ」

「タシカニ、貴様ノ負ケダ」

 

そのまま斬神刀皇がコキュートスの首を斬りつけた。

一方その頃、駐屯地近くの森で自衛隊を動かせる方法はないのか考えていたヤオは一匹のトカゲの死体を見つける。

 

「ん…ザリュース」

 

とても不安な気がしていた。もしかしたらザリュースの身に何かあるかと思う。

 

[ザリュースは心配だが、私には私のやるべきことがある]

 

するとテュカが森の中を歩いているのが分かると、通せんぼするかのように前に出た。

 

「ヤオ…悪いけど、今から大工の棟梁の所に」

「貴様、父親を探しているようだな。本当に見つかると思っているのか?」

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、コキュートスが改めてリザードマンの全滅は待ってくれというので、クルシュがリザードマン代表としてアインズの前にやって来るのを待った。

 

「では名を」

「偉大なる至高なる死の王、アインズ・ウール・ゴウン様。私は朱い瞳(レッド・アイ)族長代理のクルシュ・ルールーと申します」

 

アインズは感じた。クルシュの体から出ている緊張と恐怖を。

 

「と言う訳でだ。お前達リザードマンは我が支配下となり、今後はコキュートスが代理として統治してもらう。以上」

「え?もう終わりですか?」

 

呆気なくそういいわたされ、拍子抜けしてしまうクルシュ。

だが、そんなクルシュに近づいて肩に手を置きながら言う。

 

「とにかくだ。お前には特別な事をしてもらう。その報酬として、ザリュースを生き返らせてやる」

「そっ、そんなことが!」

「私は生と死を操れる。使者を生き返らせる魔術を使える」

「…では、特別な事とは、私の体ですか」

 

その瞬間、アルベドもシャルティアも強い殺気を出して睨み付ける。

 

「いやっ!そうではなくて…監視をしてもらう」

 

慌ててクルシュに今後、リザードマン達がアインズに反乱をしないのか監視役になってくれないかと慌てて説明。

 

「とにかくザリュースや他の者達を復活させて特別な魔法をかける。裏切ったら即座に死ぬ魔法だ」

 

そんな魔法はないが、はったりとして言ってみた。けれども、クルシュの決断は

 

「分かりました。内部監視をなんとかしてみせます。ですので、生き返らせてください」

「よろしい」

 

こうしてクルシュはザリュースを生き返らせる条件として監視をすることになった。

 

「あの…少し関係のない事ですが」

「ん?」

 

クルシュはセクフィア帝国の方向に指をさす。

 

「自衛隊と呼ばれる緑の人達がいるあの方向に、大きな大地の揺れ。地震がもうすぐ起きるのですが」

「地震だと?」

「それは、本当」

 

アウラが不思議そうにして尋ねてみる。

 

「はい、それも大きな」

 

すると突然、本当に地震が起きて揺れ始める。しかし立ってられない程ではなかった。

 

「本当に揺れたね…」

「でも、それ程大したことじゃあ」

「なにを悠長なことを、震源地とは遠いためここでは大したことはありませんが…今、セクフィア帝国は」

「ふむ…大変なことが起きてるな」

 

アインズとデミウルゴスの言う通り、震源地のセクフィア帝国の帝都は大打撃となっていた。




大分、時間がかかりましたが投稿出来ました。
次回は伊丹達を中心にやってみたいと思います。


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地震と伊丹の怒り

アインズがリザードマン達を支配下にして、ザリュース達を生き返させる代わりに監視するようにとクルシュに命じた頃。セクフィア帝国の悪所にいるナザリックの一般メイド、テホラとミュームは町の様子を見て不安を感じる。

 

「やっぱり…地震が起きるかもね」

「たしかに、あの自衛隊の人達も警戒しているみたい」

 

その不安が的中して地震が起きた。

 

「うわっ!本当に起きた!?」

「まさか…テホラの予感が当たるなんて!?」

 

2人は地面に伏せながらも自信が収まるのを待った。そして揺れは3分で収まる。

 

「なんか…やんだみたいだね」

「いや、まだ余震があるかもしれないわよ」

 

警戒しながらも、とりあえず隠れ家に戻った。隠れ家は倒壊はしなかったが、棚のモノがぶちまけられて散らかっていたけども、それらは無視してテホラとミュームはメッセージで地震のことをデミウルゴスに報告。

 

《なるほど、じつは私達も揺れがあったのですよ。まぁ、規模は小さかったのですが》

「はい…ですが、こっちはかなりの被害に…わわっ!また余震が!?」

 

ここで余震が来て驚く2人。なんとか収まったが、隠れ家は今にも倒壊するかもと心配した。

 

《…となれば、セクフィア帝国の内部もこの状況をほっとく訳にはありませんね》

「ええ……そうなりますね」

《とりあえず、少し待ってください」

 

一度メッセージを切るデミウルゴス。そしてアインズにこの事を話した。

 

「なるほどな……やはり、セクフィア帝国が一番の被害が」

「はい、当然自衛隊もなにかしらの行動をとる可能性があります」

「ですがアインズ様。所詮、私達には関係ない事。まずは一度、ナザリックに帰還しますか?」

 

アルベドは一度、ナザリックに帰った方が言う。実はこの砦にはアインズとアルベドとデミウルゴスしかいない。他は全員、シャルティアとアウラとマーレはナザリックに帰って、コキュートスはリザードマン達にナザリックの説明をしていた。

 

[……普通だったらほっとくけど、まさかリザードマン達と繋がっていたのは驚かせた。だから、ここは]

「とりあえず、無駄だと思うが一度様子を見に行こう。もちろん、お前達も一緒に」

「「え!?」」

 

などと様子を見に行くと言い出した。当然、これにはアルベドもデミウルゴスも驚く。

 

「なぜ、どこで伊丹達がリザードマンの事を知ったのかは、後でコキュートスに彼らを問いただすとして、今の帝国の様子も多少だが気になる」

「……たしかに今回の地震で自衛隊の行動も気になりますしね」

「当然、私達も同行します」

 

こうしてアインズはさっそくゲートを出して、3人はゲートを潜った。そこにはすでにテホラとミュームは、メイドの恰好で跪く。

 

「我らの主、アインズ様……」

「このような所に来られるなんて、誠に…」

 

隠れ家が酷い状態なので謝罪するテホラとミューム。

 

「落ち着け、私達はこれから自衛隊の様子を見に行く。恐らく、伊丹達はこのことをピニャ殿下と一緒にいるだろうからな」

「分かりました。では、此処の掃除をいたしますので」

「どうかご無事で」

 

テホラとミュームはお辞儀をする。それからデミウルゴスがスキルを使って下級悪魔を5匹召喚させた。

 

「ここに自衛隊と伊丹という男がいるはず。だから、見つけたらすぐ連絡するように」

 

命令をすると悪魔達は探しに行った。それから5分も立たないうちに、悪魔の1体が飛んできてデミウルゴスに伝える。

 

「どうやら伊丹達は、ピニャと一緒に皇宮へ向かったの事」

「やはり…今回の地震の事を皇帝にでも話すのだな」

「アインズ様、我々はどのように」

 

伊丹達が皇宮に行ったと報告したので、アインズは考えた。

 

「では、デミウルゴス。お前の悪魔にこの千里の視聴を渡そう。そして潜入させて内部の様子を我々で見て、さらに聴けるようにと聴覚受信の魔法もかけさせよう」

「なるほど、それはいい考えですね」

 

デミウルゴスはこの提案に賛成。さっそく残りの悪魔を呼び戻すと、2匹を消して3匹には青の千里の視聴を着けて、聴覚受信の魔法をかけるとすぐさま皇宮に向かった。そして3人はテホラとミュームによって、大分片付けられて隠れ家に入ると赤い千里の視聴を付ける。

 

「では、始めるとするか」

「「はい」」

 

さっそく千里の視聴で悪魔達の視覚に入ったものがアインズ達に見えて、さらに会話も聞けるようになる。

悪魔達が皇宮に潜入して入ったのは諸見の間。そこには伊丹と栗林と富田と菅原、そしてピニャと兵士数名と彼女の父で皇帝のモルト・ソル・アウグスタスが玉座にいた。

 

「あれが、皇帝のようだな」

「そのようですね」

「静かにしてください。何か話しているようです」

 

デミウルゴスの言う通り、モルトはピニャに地震の事と伊丹達の事を聞いてきた。

 

「ピニャ…そなたが二ホン国の仲介役としていたが、一体こんな時にお連れしたんだ?」

「父上、彼らの話ではまたこの揺れがなんどか起きるようです」

「なんだと!?」

 

また余震が起きる可能性があると言うのでモルトは驚愕する。だが、その時。

 

「父上!ご無事でしたか」

 

そこにゾルザルとうさ耳のヴォーリアバニーという種族の女王で、今は彼の奴隷のテューレと部下2人が諸見の間に入って来た。

 

「兄上、居たんですか?」

「ピニャか…早く皇宮から出るぞ!また揺れが起きるんだろ!」

「え?なぜそれを」

 

なぜかゾルザルが余震が来ると言って来たので、それを知っているのか聞いてみるピニャ。だが、その理由がとんでもない事。

 

「ノリコが言ってたんだ。門から連れてきた黒髪の生き残りのな!」

「なっ!?」

「「「はっ!?」」」

 

その時、伊丹達は驚愕する。ゾルザルが鎖を引いて連れてきたのは、手枷と首輪にボロきれを着せられて顔や体中に傷や痣の痕がある日本人女性。

門から誘拐されて奴隷にされたノリコという女性がいたことに伊丹は怒り。

 

「このクソ野郎!!」

「ぐっ!?」

 

伊丹は大声を出しながらゾルザルをぶん殴った。ゾルザルが殴られたので2人の部下が伊丹を斬りかかろうとしたので、素早くパンチをやってすぐにノリコに近づく。

 

「大丈夫か?」

「う…」

 

弱弱しくも目を開けるノリコで、栗林と富田も駆け寄る。

 

「私達は自衛隊です。安心して」

 

それから菅原が上着を彼女に羽織させて、モルトを睨みながら叫んだ。

 

「皇帝陛下!これはどういうことなのか、詳しく聞かせてもらいたい!当然、ピニャ殿下は、この事を知っていたのですか?」

 

普段の菅原とは打って変わって高圧な態度を取るのでピニャは戸惑っていた。だが、いつの間にか兵が集まってこのまま敵に回してはまずいと感じ。

 

「待った!両方、武器をおさめよ。妾に免じてここは!」

「もう遅い!」

 

しかしここでゾルザルが起き上がった。

 

「これは貴様が撒いた種だ。ここまで来た以上、奴らを皆殺しにするだけじゃない…そのまま奴らの国も殺し焼き払う!」

 

声を上げると同時に、ゾロゾロと兵士が入って来て武器を構える。するとやっぱりこうなったと伊丹は頭をかきながらため息を吐く。

 

「各自、独断での発砲を認める。当然、彼女を護衛する形で」

「OK」

「廃棄にするなよ」

「なんとか、努力します♪」

 

栗林は暴れられると笑いながら銃剣装備の64式小銃で兵士を刺したり、またはグリップ部分を鈍器にしたり。さらには蹴りつけたりして倒していく。

 

「何やってる!隊列を組め!近づかないように、槍で突き刺しにしろ!」

 

ゾルザルの指示で兵士は横一列で盾を構えた。しかし栗林と富田は小銃を構えて撃つ。

 

「「「ぐおっ!!」」」

「「「がっ!!」」」

 

小銃から放たれた弾が盾と鎧を貫通して、次々と兵士は倒れていく。当然この光景にゾルザルとモルトは驚きを隠せない。

 

「やる気がないなら武器を捨てて立ち去りなさい」

 

栗林の言葉に生き残った兵士達は武器を捨てて逃げ出す。

 

「おい待て!逃げるな!腰抜けどもめ……」

「さて、皇子。アナタは彼女を生き残りと言いましたね」

 

すると銃をゾルザルに向けた伊丹が近づきながら質問し始める。

 

「それはつまり、他にも連れて来たって事になりますね?」

「答える義務はない。いや、それが皇子に対する聞き方か?」

 

それでも未だに高圧な態度を取り続けるゾルザル。

 

「兄上!ここは言う通りにした方が」

「黙れ!これはお前が招いたことだと忘れるな」

 

ピニャは何とかしようとしたが、無理だと判断すると伊丹は栗林の耳元で言う。

 

「栗林、アイツが喋れるようにしろ」

「……了解♪」

「なっ!?」

 

栗林は指を鳴らしながらゾルザルに近づくと

 

「それでは」

「おっ…おい!まさか…ぐおっ!」

 

それから栗林は徹底的にゾルザルを殴り痛め続けた。

アインズ達はただ悪魔からの視線で、この様子を見ている。

 

「まっ、自業自得だな」

「あのような器が小さな人種…死んだほうがよさそうですね」

「我々には関係ありませんがね」

 

アインズ達は当然の事だろうと感じる。

 

「とりあえず、この辺にするか。デミウルゴス」

「分かりました。撤収させます」

 

すぐにデミウルゴスは悪魔達を呼び戻して千里の視聴を外して消した。

 

「それでは、テホラとミューム。一般メイドでありながらも、またしばらく潜入調査を頼む。しばらくしたら交代が来るからな」

「「了解しました」」

 

テホラとミュームは頭を下げるとアインズはゲートを開いて砦に帰った。

砦に戻って来た3人。

 

「それにしても、日本からさらって来た者がいたとはな」

「まっ、我らには関係のない事」

「たしかにな。では、私はまたしばらく…冒険者モモンとして行って来る」

「「はい」」

 

それからアインズはモモンの姿になってナーベラルの居るエ・ランテルにゲートを開いて突入した。




また何ヶ月ぶりに投稿しました。
今回は地震で伊丹達がモルトとゾルザルと出会う話で、アインズ達はこっそりと悪魔を使って盗み見をしてました。次回はセバスの話と、炎龍の話を交代交代でやってみたいと思いますが、ちゃんと出来るかは分かりません。


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セバスの拾い物

セクフィア帝国が地震で大変なことなって次の日。リ・エスティーゼ王国では、昨日のセクフィア帝国の地震の話題でいっぱい。仮にも2つ友好国なので当然だが、あんまり大事にはならない様子。

そのリ・エスティーゼの王都本通では、潜入しているセバスが歩いていた。セバスの人柄や顔立ちは、貴族マダムの虜になっていたが本人は気にしていない。魔術師組合本部に到着すると受付に行く。

 

「魔術組合へようこそ。セバス様」

魔法の巻物(スクロール)のリストを見せてください」

 

受付の人がリストを出して貰うと、セバスはマジックアイテムのメガネをかけて読み始める。ちなみにこの様子を、女性受付の何人が見惚れる。

 

「この浮遊板(フローティング・ボート)の説明を聞かせていただきますか?」

「畏まりました浮遊板(フローティング・ボート)は、半透明の浮遊する板を作り出す第一位階魔法で、板の大きさと重量は術者の魔力で左右されますが、魔法の巻物(スクロール)からの発動の場合は1m四方と50キロが限界になります」

 

セバスは受付の浮遊板(フローティング・ボート)の魔法の説明を聞く。

 

「基本的には運搬の土木工事用の魔法ですが、如何です?」

「分かりました。では、その魔法の巻物(スクロール)を1本売っていただきましょう」

「ありがとうございます。金貨1枚と銀貨10枚を」

 

料金を払って魔法の巻物(スクロール)を手に入れたセバスは組合本部を出る。

 

影悪魔(シャドウ・デーモン)、ソルシャンに伝えてください。少し帰りが遅くなると」

 

自分の影の中にいる影悪魔(シャドウ・デーモン)に、家にいるソルシャンに家に帰るのが遅くなると伝言を頼んだ。

 

「さてと、今日はあっちに行きますか」

 

それからセバスはさっそく町の探索に向かった。

路地裏を歩いて行くが、もう夕方で太陽が沈み始めで少し暗くなる。すると店らしき建物の裏口の扉が開いて、誰かが辺りをキョロキョロと見回すと大きな袋を投げ捨てるのが見えた。

 

「…影悪魔(シャドウ・デーモン)!」

 

セバスは影悪魔(シャドウ・デーモン)に指示して袋の結び目を切り裂く。しかしなにも起きなさそうなので、そのままセバスは歩き出したが足が掴まれたので下を見た。

そこで目にしたのは、全身打撲やあざに切り傷だらけの金髪の全裸な女性。

 

「……手を離してはいただけませんか?」

 

関わると面倒なことになると思い、女性に手を放してと言う。

 

「おい、ジジイ!アンタ、なにしてんだ?」

 

さらに巨体で小太りの髭を生やした男が裏口か出てきてセバスに怒鳴る。

 

「とっとと失せな!無事で帰りたいのならな」

 

脅すようにとセバスに言いながら近づく男。だが

 

「そうですか…では」

「あ?うっ!?」

 

セバスは男の服の首元を掴むと持ち上げた。これには男もビックリして、顔色が恐怖で青くなる。

 

「彼女は何ですか?」

「えっと…うちの従業員だ……」

 

持ち上げられながらも男はセバスの質問に答える。

 

「では、なぜこのような?アナタは、彼女を人間として見ているのですかな?」

「…色々あんだよ!こんなご時世に」

「なるほど…それでは質問を変えますが、彼女をどうすると?」

 

殺気の怒りに満ちた目で質問するセバスに男はもっと顔色が悪くなった。

 

「教会に治してもらおうと…」

「正直に言ってください」

 

威圧感をかけながら、さらに首元を強く握りしめて正直に言えと要求。

 

「く…苦しっ!」

 

男は苦しさのあまりセバスに殴りかかったが、片手で止められる。

 

「正直に言った方が、身のためですが?」

 

そのまま服を離すと男はセバスの目を見てもっと怯える。

 

「だから…本当に教会に!」

 

それでもなおウソを着く男。これは相当、この男のボスが恐ろしくて正直に言ったら殺されてしまうのだと分かる。セバスは男を離すと彼女を見ながら言う。

 

「では、私が彼女を連れて行こうとも構わないという事ですね」

「待て!コイツは法律上俺達のモノだ!そのまま連れて行ったら誘拐になるぞ!大体、執事が主人に厄介ごとを抱えて良いのかよ?」

 

男は勝ち誇ったかのように連れて行くと誘拐になると脅し文句をつけてきた。とりあえずセバスは、彼女を優しく抱きかかえて声をかけて見た。

 

「助けて欲しいですか?」

「…た……け…て…くだ……」

 

なんとも弱弱しい声でセバスに助けを求めた。

 

「…たしかに、法律は大切なものです。けれども、時と場合によっては破る為のものでもありますな」

「え?」

「なので、彼女は私が助ける」

 

そのままセバスは女性をお姫様抱っこして連れて行こうとする。これには慌てて男が止めに入る。

 

「いやいや、待て待て!そいつを連れていかれるとヤバいんだ。アンタだって、知ってるだろ?八本指の事を!」

「八本指…あの?」

 

八本指という言葉を聞いた途端、セバスは思い出す。この王国を裏で牛耳る犯罪組織で、麻薬栽培と密売を中心に、奴隷と暗殺と密輸と窃盗と軽微と金融と賭博の8つを行っている。巨大すぎてボスや幹部が謎に包まれているらしい。

 

「そうだよ…このままじゃあ、俺もアンタもヤバい目にあるんだよ!だから、何も見なかったことにしてくれ」

 

男は女性を連れていかれたらセバスは勿論、自分も大変な目にあると警告。

 

「…連れて行きます。殺されるのが嫌なら、逃げれば良いだけ」

「無茶言うな!逃亡費はもちろん、追っ手を避ける為の用心棒を雇う金もねぇし!」

「では、私が出しましょう」

 

などと言って男に逃亡費の金貨を七,八枚ぐらい与えて、そのまま彼女を抱きかかえて屋敷に帰宅。

 

「お帰りなさいませ、セバス様」

 

屋敷には黄色いドレス姿のソリュシャンが出迎える。じつは人間として行動調査する時には、ソリュシャンはわがままで高飛車なお嬢様で、セバスはその執事という設定でいた。

 

「セバス様…その人間は一体?」

 

ソリュシャンはセバスが抱きかかえている女性を見て質問してみる。

 

「拾いました」

「そうですか。私のお土産ではないのは分かりますが、どうなされるのですか?」

「…では、彼女の傷を癒していただけますか?」

 

とりあえずソルシャンに彼女の傷を見るようにと指示。

 

「傷ですか…教会に頼んだ方がいいのでは」

「それもそうでしたな」

「今から、教会に捨ててきますか?」

「いえ、とりあえず彼女の肉体の健康状態を見ていただきたい」

「はぁ…分かりました」

 

ソルシャンは嫌々ながらも彼女を見ることになり、さっそく寝室でベッドの上に彼女を寝かせた。

 

「では、お願いします」

「畏まれました」

 

セバスはソルシャンに彼女の体の様子を調べるように頼んで部屋から出た。

 

[私は愚かですね…なぜ、あの時無視しなかったのですか…]

 

セバスは自分に疑問を持つ。普通なら潜入調査の為ならほっておくのだが、どうしても気になって助けてしまった。そんな自分の行動がどうしても気になって仕方がない。

 

[やはり…たっち・みー様の意志、というよりは呪いのようなものでしょうか?]

 

たっち・みーはかつてナザリックを作る前のアインズ改めモモンガを助けたプレイヤーで、職業・ワールド・チャンピオンの至高の四十一人の1人。座右の銘が「誰かが困っていたら、助けるのが当たり前」をモットーにしている。

なので、きっとセバスの人助けはたっち・みーの影響じゃないのかと思う。

 

[御方の御意思を顧みず…彼女を助けた行動は間違っていたのでしょうか?]

「セバス様」

 

思い悩んでいるセバスにソルシャンが調べ終わったのか、部屋から出て声をかけた。

 

「ソルシャン、どうでしたか?」

「はい、まず梅毒に性病が二種類。あばら骨の数本及びに指にヒビに加え、右腕と左足の腱は切断され、前歯は上下が抜かれています。内臓の動きも悪くなっていると思われ、裂肛もありました。何らかの薬物中毒になっている可能性もあります。打ち身や裂傷などが無数にあり」

「分かりました。もう結構です」

 

などとソルシャンの説明から聞いて、女性は全身が酷い状態だと分かる。一体なんで彼女がこんな目に合わなければと、セバスは心底憎悪を感じる程に。

 

「…治りますか?」

「容易く。ペストーニャ様をお呼びしますか?治癒系魔法が得意な」

「ソルシャン、治癒系の魔法の巻物(スクロール)を所持してますね?」

 

ナザリックから治癒魔法を使うペストーニャを呼んだ方がいいと言うソルシャンだが、彼女が持っている治癒系の魔法の巻物(スクロール)を使えとセバスが命令。

 

「しかしあれは、至高の御方々が私達に与えてくださったもの!人間に使うなどと…」

「やりなさい」

「ッ…畏まりました。では、あのような状態になる前の体に戻すという事で良いですね」

「私は食事を買ってきますので、治療が終わったらお湯を沸かして体を拭いてもらいますか?」

 

次から次へと指示を出すセバスにソルシャンは納得いかない。彼女にとっては人間は捕食対象で、しかも至高の御方の魔法の巻物(スクロール)を使えと言うので尚更。

 

「セバス様!精神の治療もするならば、アインズ様をお呼びした方が!」

「アインズ様に来てもらう必要はありません」

 

ソルシャンの提案を却下するセバスは買い物しに出かける。

 

「回復させてから私の玩具にするのなれば、セバス様の対応には理解できたのですが…」

 

納得いかないまま再び部屋に行くソルシャンは、自分の掌をスライムにして収納していた魔法の巻物(スクロール)を取り出して、さら人差し指と中指を治療器具みたいな形にする。

 

「普通なら食べてしまいたいのですが…ここは我慢しなければですね」

 

などと怖い笑みを見せながらも治癒を始めた。

それからしばらくして、セバスが買い物から帰って来るとソルシャンが彼女の治療と体を綺麗にし終わったところ。

それからセバスは体に優しいお粥を作って彼女の所に持ってくる。彼女は全身の痣や傷がなくなって、全身が健康状態になってソルシャンが持ってきた寝間着姿。けれども、目は虚ろで精神は安定していないのが分かる。

 

「体の傷は治ったみたいですね。とりあえず、食事を持ってきましたので食べてくださいね」

 

優しく言いながらもセバスは彼女にお粥の入ったお椀をお盆ごと渡した。女性は目が死んだまま、スプーンでお粥をすくい一口食べる。すると女性は久々にまともなものが食べられたのか、お粥をがつがつ食べていき途中で少しむせながらも完食。

そしてセバスに目を向けて

 

「あの…」

「此処にいれば、なにも危ない事はありません。私が保証します。目を覚ましても、このベッドの上にいますよ」

「あ……ありが…とう……ございま」

「お気にすることはありませんよ。私がアナタを拾い上げたからには、アナタの身の安全は出来る限り保証します」

「うう…うっぐ!あぁぁぁぁぁ…うう!」

 

セバスが優しい目でここにいれば安全だと念押しすると、女性は目から涙を流してそのまま泣き出した。今までの辛い日々の恐怖を思い出しながらも、こうして体が治って優しくされた喜びが混じっていた。するとセバスは優しく彼女を抱きしめる。

 

「もう大丈夫です。大丈夫です」

 

それからしばらくセバスの胸の中で泣き続ける。




本当に久しぶりの投稿で、セバスとツアレとの出会いの話で伊丹達ゲートは出ませんでした。しばらくはセバス目線で進めるかもしれません。


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