ViVidかと思ったら無印でした…… (カガヤ)
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小学生編
第1話 「目が覚めたら●女に激突した」


ギャグメインのリリカルなのは!
神様転生オリ主のテンプレパレード、はじまります!



「俺の名は草薙健人(くさなぎ けんと)18歳。よしっ、自分の名前は覚えている!」

 

唐突に自己紹介してみたが、誰も何も反応なし。

それもそのはず、俺は今気味の悪い空間の中を飛行中だからだ。

飛行中、と言うのはちょっと違うか。

俺は舞空術もトベルーラも土遁・軽重岩の術も使えない、ただの人間。

 

「なんでこうなってんのか分かんないけど、俺が飛んでるのだけは分かる」

 

結構高速で飛んでるはずなのに、強い風やらなんやらを感じない。本当にどうなってるんだ?

なんでこうなったのか原因を考えてみる。

確か、リリカルなのはViVidの15巻を読み終えて、ジークリンデのチャイナドレス可愛いなーと思って寝たはず。

俺は色々な漫画やアニメを見てるけど、リリカルなのはが特にお気に入りだ。

中でもViVidのジークリンデとINNOCENTのシュテル、ディアーチェがいい!

あ、ViVidのノーヴェやスバルも捨てがたいな。

と言っても、俺が知ってるリリカルなのはって漫画で読んだViVidとゲームのINNOCENTしか知らないんだよなー。

俗に言う、無印、A’s、StrikerSはキャラの名前とか断片的にしか知らなくて、これからBDで見ようと思っていた所だった。

昔、ViVidを勧めてきた友達に言ったらものすっごく変な顔して驚いてたな……いや、気持ちは分かるけどね。

 

「さーって軽い現実逃避をしたけど、俺は一体どこに向かって飛んで……おっ、なんか見えてきた」

 

見えてきたのは、いかにも悪の親玉が住んでそうな歪な形の城。

まさか、あそこに行って大魔王でも倒して来い、なんて事じゃないよな。

 

「まさかなー。ただでさえ体弱いのに、バーンとか出てきたら1秒も持たない自信あるぞ。あっはっはっは……ってなんか加速してる!?」

 

城っぽいのが見えてきた途端、速度があがった。

 

「ちょっ!? 待てまて! まさかホントに目的地あそこ!? あ、なんか人影が見えてきた……これ直撃コース!? と、とまれーー!!」

 

全力全開の叫びもむなしく、俺は魔女っぽい服装をした熟女に激突した。

あ、これは死んだかも。

 

 

 

「おーい、もしもーっし?」

 

んん~? 誰かの声が聞こえてくる。

 

「もう、いい加減起きてよー話が出来ないじゃん!」

「うる、っさ……」

 

――ゴンッ!

 

「っ~~!?」

 

起き上がろうとしたら何かが頭にぶつかった。

あまりの痛さで目を思いっきり見開くと、そこには漫画でありそうなコブをつけて頭を抑える青髪の少女がいた。

あれ? 俺、どうなったんだ?

確か変なポットの側に立ってた熟女の人にぶつかって、そのまま気絶したのか、それとも死んだ?

今の痛みで死にそうにはなってるけど。

 

「っつつ、痛いよぉ……って、き、君が死んだという表現は間違ってないけどね」

「頭がまだジンジンする……あー俺やっぱ死んだのか……ってあんた誰!?」

 

辺りを見渡すと俺は真っ白な空間にいて、目の前には青い長髪とアホ毛を生やした少女がいた。

さっき見えたタンコブはもう消えてるようだ……ってか、らき☆すたのこなたじゃん!

 

「いや、見た目はそうだけど、私こなたじゃないよ?」

「声までこなたじゃん。あ、いやいや、そんな事どうでもいいんだけど、ここはどこだ? さっきまで俺飛んでたんだけど?」

 

頭に??マークを浮かべながら尋ねると、こなたっぽい少女が申し訳なさそうな顔をした。

 

「えっとね。順を追って説明するね。私は神様で、あなたは死んだの。で、私がここへ呼んで転生させようとしたんだけど、色々失敗しちゃって、転生先も間違えてぶっ飛ばしちゃったわけ。分かる?」

「今の説明で分かる人がいるなら見てみたい。ってかあんたが神様?」

「とんでもねぇ、わたしゃ神様だよ! アイタァ!」

 

ドヤ顔で志村けんの真似をする少女にチョップした俺は悪くない。

 

「か、神様に何のためらいもなくチョップする人間初めて見たよ」

「いいから、分かりやすく説明しろ」

 

それから自称神様のこなたに説明を受けた。

説明、と言っても半分以上チンプンカンプンな事ばかり言ってくるだけだけど。

 

「話を纏めるぞ? まず、俺は元いた世界で死んだ」

「そうそう」

「で、俺に興味を持ったあんたは、死後の世界に行こうとしてる俺をViVidの世界に転生させようとした」

「うんうん」

「でもその時飲もうとしてたコーヒーがとても熱くて……」

「ワチャーー!! って悲鳴をあげた拍子にあなたの体を魂もろとも、なのは無印時代にぶっ飛ばしちゃった。テヘッ☆」

 

こなた顔でテヘペロされても殺意しか沸かない。

ってかさっきから殺意しか沸いてない。

死んで転生なんてどっかで聞いた事あったし。

俺も出来ればViVid時代に転生したいなーとは思ってたけど、よりにもよって無印時代に転生させられるとは。

まだジークリンデもティアナも誰もかも赤ん坊か生まれてないじゃないか!

 

「いやー、咄嗟にあなたの肉体年齢を9歳にしておいてよかったよ。無印時代に18歳で行ってたらちょっと悲惨だったもんねーイロイロと、アハッ☆」

「アハッ☆ じゃねーだろがこのへっぽこ神!」

「アダッ!?」

 

テヘペロで誤魔化そうとしていた駄神にゲンコツを落として少しはすっきりした。

 

「ところで俺は無印とかA’s時代の事何も知らないんだけど? そんな所に放り出されてどうしろと?」

「あ、それなら問題ないよ。ちょうど今無印終わった頃に飛んだから」

「……マジで?」

 

無印時代に飛ばされたと思ったら、すでに無印イベント終わった後とか、そりゃないだろ。

 

「せっかくだし、特別に無印で何があったか教えるね。君がぶつかったおば……彼女も大事なキャラだしね」

 

そう言えば俺、魔女っぽい人にぶつかったんだったな。

駄神曰く、あのおば、魔女はプレシア・テスタロッサで、フェイトの母親だそうだ。

無印時代に何があったのか映像つきで教えてくれた。

事故で死んだ娘を蘇らせようと娘のクローン使って、ジュエルシードを集めさせた、か。

原作ではプレシアとアリシアは虚数空間に落ちて、フェイトは天涯孤独となるけどリンディ提督が養子にして俺の知っているフルネームになる。

で、俺はちょうど最終局面に出くわせて、今はアースラと言う管理局の船にポットに入ったアリシアと、逮捕されたプレシア共々移されているらしい。

原作とは少し違っているけど、このままだとアリシアは死んだままで、プレシアは不治の病で長くないから結局は原作通りに進むようだ。

 

「まぁ、思う所があるのは分かるけど、話を進めるね。君の転生特典は私のミスもあるし、ちょっと多めにしたよ」

 

転生特典。神様が人間を転生させるときに付ける特典か。

大抵はチート能力とか金銭とかそういう類で、1つか2つくらいしか付けないけど、今回は神様がミスしたおかげ(?)で結構沢山つけてくれるそうだ。

そんなのよりViVid時代に転生させて欲しかった。

 

「まずは肉体だけど、さっきも少し言ったけど外見はそのままに9歳まで若返らせたよ。なのはやフェイトと言った主要キャラに合わせる為にね」

 

それはありがたいのか微妙だな。このまま行けばViVid時代には俺は23歳、ジークリンデとは7歳差、いけるか?

 

「そんな先の事は後で考えたら? 特典で健康体として肉体は強化してあるし、修行すればするだけ強くなるようになるよ。リンカーコアもつけたし、魔力も高め。格闘戦特化と言えば大体分かるかな? あ、空も飛べるよ」

「おー! それはすごい!」

 

健康体、この駄神俺の生前知っててこういう風にしたのかな。

何にせよ。魔力も付いて空も飛べるようになるのはいいな!

 

「でもいきなりだとちょっと不自然だから、最初は魔力が強いだけで、空の飛び方とか使い方は自分で学んでね。そういう機会は沢山出てくるから」

「あーそこら辺はどうとでもなるからいいや」

 

いきなりドーンと体が強くなったり、空が飛べても物足りなさ感じそうだ。

 

「で、これまでのが私からのミスの返済、ここからが本題。君には特別に3つまでどんな願いも叶えてあげるよ」

「へっ? 何でも願い事? それが俺の特典?」

 

これまでのでも十分すぎるのに、更に願い叶えるとか気前がいいにもほどがあるだろ。

 

「まーこっちのミスもあるし。生前の君を知ってるから、その、ね?」

 

申し訳なさそうな顔をする駄神だけど、こればっかりは誰も悪くないからな。

 

「そんなのあんたが気にする事じゃないだろ。えーっと、3つの願いか……何にしようかな」

 

正直、思い浮かばないな。金は生前沢山あった。

あったけど、別に使う事もなかったし、あっても邪魔にしか思わなかったから、これはパス。

必要になれば自分で稼ぐのがいい。

あ、どうせ何でも叶うなら……

 

「じゃあ、まずはアリシアを生き返らせて、プレシアの病気を完全に治す」

「はい? 本気? それが君の願い?」

「あぁ。年代は違うけどリリカルなのはの世界に来る事出来たし、肉体強化や魔力や空飛べるのも俺が生前やりたかった事叶ってるし。それにこのままじゃフェイトが可哀相だ」

 

いかにこれから新しい家族を得るとは言え、母と姉を失う事には変わりない。

家族がいなくなるのは絶対にダメだ。

 

「うん、分かったよ。でも、君に関わる事なら問答無用でどうにでも出来るけど、あの世界の人に関わる事ならちょっと調整しないといけないねぇ。プレシアは特効薬があるって事にして、アリシアは仮死状態だったのが今回の騒ぎで目が覚めた事にするかな」

「それでよろしく」

「で、最後の1個は? 出来れば今度こそ君自身に関わる事にしてほしいな」

 

俺自身ねぇ……ダメだ。やっぱり浮かばない!

 

「うーん、じゃあ3つ目の願いは保留で。何か浮かんだらお願いするよ」

「ほ、保留!? まぁしょうがないか。そろそろ時間だしね」

 

時間? 何の事かと思ったが、意識が遠くなっていく感じがした。

 

「じゃ、目が覚めたらアースラの中だと思うから、後は好き勝手にがんばってね。あ、最後の願いが決まったら心の中で私を呼んでね」

「分かった……そう言えば」

 

あんたの名前は? と聞こうとして完全に意識が途切れた。

 

 

 

「あ、肝心のあの子の戸籍とかそういうの用意してなかった。アハハハ~……まぁ、大丈夫だよね。言ってなかったけど転生特典の最後の1つに【女キャラとのエンカウント率が高くなる能力】付けたから、これで何とかなるでしょ」

 

続く

 




息抜きと気分転換で始めたこの話。
さっそくシリアス入っていますが、これからはギャグ多めでいきます!
主人公の好きなキャラ、ジークリンデ達は当たり前ですがしばらく出ません(笑)


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第2話 「ラッキースケベって羨ましいですか?」

かるーいノリでほのぼの~っと行きます


目が覚めると、俺はベットに寝かされていた。

ここはどっかの医務室のようで、周りには誰もいない。

 

「さっきのは夢、じゃないよな……っ!?」

 

いきなり頭痛がして頭を抑えると、時の庭園でプレシアにぶつかった時に出来たコブがあった。

 

「つ、ついにでこれも治してくれればよかったのに、あの駄神」

 

と思っているとすぐに痛みが消えて、コブも引っ込んだ。

どうやら自然治癒力も高まっているようだ。

さて、気を取り直して、自称神様に言われた通りなら、ここはリリカルなのはの世界でアースラの中のはずだ。

ベットから起き上がり自分の体を改めて見渡してみる。

 

「おぉ、ほどほどに筋肉付いてる! 体が軽い!」

 

両手を振り回したり、その場でジャンプすると自分の体じゃないと思うほど動きが軽やかだった。

身長も縮んでいたけど、それはこれからまた成長するからいっか。

 

「確かリンカーコアもついて空も飛べると言ってたけど、どうやって使うんだ?」

 

試しに右手を翳して力を籠めても、ふんばってみせても何も起こらない。

ただ、自分の体に今までにない強い力があるのは感じるからこれから訓練次第だな。

 

「魔力の使い方教わればよかった……」

 

こ、これから、頑張って訓練すれば……誰に教わって?

 

「……なのはやフェイトに教わるのもアレだし。リンディ艦長教えてくれないかなぁ」

 

ユーノやクロノは声が声だから、今のうちにはまだ会いたくないと言うのが本音。

ってそんな事言ってられないけどさ。

 

「ところで、何で無人? しかも誰も来る気配ないし」

 

アースラって医療スタッフいないのか?

医療ポットとかで全自動で治せるから専門医は必要なし! なわけないか。

 

「どっか出てるのかもしれないけど、黙って待ってるのは退屈だな」

 

せっかく自由に動けるんだし、リリカルなのはの世界に来たんだ、探検するっきゃない!

そうと決まれば、こんな所で寝ている場合じゃない!

 

「……さて、どっちに行こうかな」

 

医務室を出て、アースラの廊下を適当に進む。

艦長室とかブリッジとか人がいる所に出れればいいけど、まさか迷子にならないよな。

 

「なんて思ってた時が俺にもありました」

 

ただいま絶賛迷子中。

おかしいな、人の声がする方する方に歩いてきたはずなのに。

艦内案内板らしきものがある。けど、読めない!

適当に部屋に入ろうとしてもロックかかってて入れない!

すみませーん! 誰かいませんかー! と、叫ぶのはなんか負けた気がするから最終手段だ。

 

「不審人物が艦内ウロウロしてるんだけど、なんで誰も来ないかな?」

 

でも、駄神様からもらった特典のおかげで、これだけ歩いても全く疲れないのは良いな。

 

「昔はロクに走れもしなかったからなぁ……って、人の声?」

 

どこからか声が聞こえてきた。すぐ横にある見た目は普通の部屋から聞こえてくる。

ドアに聞き耳を立てると中から声が聞こえてきた。

 

「フェイト、今までごめんなさい……」

「かあさん、かあさん……母さん!」

 

えっと、これはどうやら中でプレシアとフェイトによる感動の抱擁シーンって所かな。

見てみたい気はするけど、邪魔しちゃ悪い。

そもそもロックかかってて入れないし、他の場所へ行こう。

 

「ん? 誰かいるのかい?」

「えっ?」

 

突然誰かの声が聞こえて、ドアが空いた。

寄りかかっていた俺はそのまま部屋の中へと倒れこみ、そして……

 

――ふにゅん

 

柔らかいクッションにぶつかった。

初めて味わう柔らかい感触に思わず手を触れる。

 

――ムニッ

 

うん、やっぱり柔らかい。

 

「ひゃうん!?」

「??」

 

クッションから色っぽい声が聞こえてきた。

まさかと思い、恐る恐る顔をあげると……

 

「……」

 

顔を真っ赤にしてこっちを睨みつける犬耳が生えたオレンジ髪の少女と目が合った。

訂正、クッションだと思ったのはこの女性の胸でした。

この人誰だっけかな……確か、アルフだっけ?

ともかくこの状況はヤバすぎるので、ひとまず挨拶して場を和ませる事にしよう。

 

「……ど、どうも~迷子で~っす」

「こ、こんのぉ~、私の胸から離れろ~!!」

 

挨拶作戦、失敗。

 

「ご、ごめんなさ~い!」

 

怒り狂った猛犬から全力全開で逃走開始!

猛犬の後ろで、プレシアとフェイトがポカーンとしているのがなんか笑えた。

 

 

 

猛る猛犬ことアルフからどうにかこうにか逃げられた。

途中、数人の管理局員っぽい人とすれ違ったけど、誰もかれもが何事かと固まっただけで特にコンタクトなし。

リリカルなのはキャラのファーストコンタクトが俺の知らないキャラ、アルフとは……なのは、とは言わなくてもせめてフェイトがよかったな。

あ、ファーストコンタクトはプレシアか。ロケット頭突きかましただけだけど。

 

「はぁはぁはぁ……ま、全く、トんでもない目にあった」

 

自業自得な気がしないでもないけど、アレは事故だ事故。

 

「ん、待てよ。あれが世に言うラッキースケベと言う奴か! おぉそうかそうか、アレがそうだったのか!」

 

と謎の感動に浸る。

しかし、アルフは使い魔だけど格闘戦向きで身体能力も高いはず。

それなのに追いかけっこで捕まりもせず逃げ切れた俺って、何気にすごい?

 

「こなた神のおかげか。一応感謝しよう」

 

感謝の印に駄神からこなた神へランクアップだ。

 

「さて、いい加減に誰かに会ってちゃんと話がしたいんだけど……ここどこだろ?」

 

また迷ったようだ。

おかしいな。アースラってこんなにでかくて迷いやすい船だっけ?

 

「ま、自分の家の近所以外か病院以外ロクに歩き回った事ないから、方向感覚がおかしくても仕方ない、か」

 

さてはて、ここからどうしようか。

幸いさっきの騒ぎを結構目撃されてるからここにいれば誰かが来てくれると思うけど。

 

「ん~こっちから匂うぞ?」

 

げげっ!? 誰かとは言ったけど、よりにもよって猛犬がきやがった!?

どうしようどうしよう……よしっ、全力全開土下座だ!

 

「その前に……悪あがきしようか」

 

近くにあった少し大きめのドアに手をかける。

ここが開かなかったら、諦めよう。

 

「神様、仏様~……いや、仏様だけでいい!」

 

一瞬頭にこなた神が満面の笑みを浮かべてきた。

 

――プシュッ

 

「おっ、開い……た」

 

仏様だけに願ったのが功を奏したのか、ドアはあっさり開いた。

開いたが……中にいたのは。

 

「えっ、君は…」

「……へっ?」

 

女性看護師らしき人と、その女性に上着を脱がされてたと思われる上半身裸の金髪美少女。

 

「キャッ……キャアァァ~!?」

「なんでだー!?」

 

なんでこういうイベントばっか!? これも駄神のせいか!?

と、ともかくあの子の裸を見ないように、後ろを向かないと

 

「よしっ、これで……「おしり~!?」……あ、さっきの猛犬の攻撃で」

 

アルフにチェーンのようなものを投げられて、うまく避けられたけどお尻が少し掠ったんだった。

で、服が裂けてお尻がベロンと丸見え。

今少女に向けて背中を見せている。

少女に俺のお尻が丸見え……

 

「イィ~ヤァ~!」

「ちょっとそれ私のセリフ! なんで裸見られた奴のお尻を見なきゃならないのよ!」

「……喧嘩両成敗? 見てしまったのだから、見せてしまえばいい?」

「そんなの、ただの私の二重苦だぁ!」

 

ごもっとも

 

「ア、アリシアちゃん。まずは服を着て服を!」

「はっ!? 見るなぁ! ……尻向けるなぁ!」

「そんな、どうしろと?」

「目をつぶればいいでしょ!」

 

あ、そっか。

 

「ここかぁ!」

 

猛犬までやってきたー! 考えてみれば部屋に逃げ込む程度じゃ逃げ場なくすだけだった!

 

「ってなんであんた尻丸出し何だよ!」

「そりゃお前のせいだぁ!」

 

くそぉ、こんな事になったのもあのこなた神、もとい駄神のせいだぁ!!

 

――私、迷子属性もラッキースケベ属性もつけてないよ?

 

何か聞こえた気がしたけど、空耳だよな……

 

 

 

続く

 




ラッキースケベって憧れますよねぇ(トオイメ


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第3話 「ファイヤーーー!!」

ギャグって難しい。


幼女と漫才を繰り広げた後、すぐに騒ぎを聞き付けたアースラスタッフと言うか原作メンバーがかけつけてきた。

幸い誤解(?)は解けたようで、猛犬……もといアルフからは威嚇されながらも謝罪された。

で、俺の健康状態は問題ないと言われ、早速リンディ艦長自ら事情聴取となったわけだが……

 

「さて、これからどうしましょうか?」

 

リンディ艦長が困った顔をしながら言った言葉、それは俺が聞きたいです。

俺がこの世界に来て飛んでいた空間、虚数空間と言うモノは魔法が一切使えない空間らしい。

で、そんな空間からマッハで飛んできて、娘と別れをしようとしていたプレシアに激突した俺。

有り得ない場所から有り得ないタイミングでロケット頭突きしてきたのは誰だ!? と騒ぎになったが、肝心の正体がさっぱり分からない。

だから目が覚めて話を聞いてみたわけだけど、それでもさっぱり分からない。

まさか死んで駄神に転生させてもらった元18歳です! と言うわけもいかない。

なので、記憶が曖昧で気が付いたらあの空間を飛んでいて、何が起きたのか分からない9歳児としか言っていない。

生前の住所は教えたけど、そんな住所はこの世界の日本には存在しないと言われた。

早い話……

 

草薙健人、元18歳現9歳、身元不明住所不定無職の迷子です!

 

と言うわけで……これからどうしよう?

 

「あんな所から飛んできたのだから、ただの次元漂流者とは思えないのだが。魔力もあるわけだし君は一体何者だ?」

 

クロノがそう言うけれど、他に言い様がないんだよな。

ってあれ? クロノが銀さんボイスじゃない。

そう言えば、クロノは声代わりしたと言う話を聞いたような……

残念なようなほっとしたようなだ。

 

「まぁまぁ、クロノ。彼はどうやら記憶も曖昧みたいだし、しばらくはこちらで保護する事にしましょうか」

「ぜひお願いします!」

 

良かったー、ホントどうしようかと思ってたんだよね。

あの駄神、俺の戸籍とか生活資金とかそう言うの一切何も言わなかったんだよな。

 

「ところで俺がぶつかった人は誰だったんですか? あの女の子も何か訳ありのようでしたけど」

 

プレシアの顛末は知ってるけど、ここは白々しく聞いておこう。

案の定、リンディ艦長もクロノも困った顔をした。

 

「あ、いや、気になっただけなんで、機密とかそういうのだったら、別に知りたいとは思いませんけど」

「うーん……じゃあ、直接本人に聞いてみるのはどうかしら? 彼女もあなたと話したがっていたから」

「かあさ、艦長!?」

 

これは俺も驚いた。プレシアが俺と話したがってるのもだけど、仮にも犯罪者でラスボスに気軽に会わせようとするだなんて。

まぁ、別に怖くないけどね、さっきのアルフに比べたら。

 

「今のプレシアなら多分大丈夫よ。フェイトさんへの接し方、あなたも見たでしょクロノ? まるで別人みたいだったわ」

「確かにそうかもしれませんけど……分かりました。僕が立ち会います」

 

結局プレシアとの対談にクロノだけでなくリンディ艦長も立ち会う事になった。

そう言えば、原作主人公のなのはは今どうしてるんだろ?

漂流者でさっき目が覚めたばかりの俺がなのはの事知ってるはずがないから、2人に聞くわけにもいかないしな。

 

「あ、リンディさん、クロノ君!」

 

と思っていたら、プレシアに会いに行く途中でなのはと遭遇! ついでにユーノにも。

 

「あら、なのはさん、ユーノ君。食事はもうすんだのかしら?」

「はい! あの……」

 

なのはは俺の方を見て何だか困ったような顔をしている。

あれ? なんでそんな顔になる?

初対面だから、とはちょっと違う感じだ。

でも、せっかく出会えた原作主人公兼ヒロイン。

さっきのようなミスはおかさず、ちゃんとした自己紹介で警戒心を解こう!

 

「いつもニコニコあなたの隣に這い寄る迷子! 草薙健人です!」

「「「………」」」

 

――ヒュ~

 

あ、あれ? なんだこの空気?

なんでだ……あれか、きっと名乗りポーズがいけなかったんだな。

そりゃそうだよな。ニャル子さんポーズはいけないよな、セリフも中途半端にアレンジしたけど似合わねぇ~

と言うか、ニャル子さんネタなんて分かるわけないか。

日本人のなのはでも分からないだろうな。

 

「え、っと、私は高町なのは」

「ユーノ・スクライア、です」

 

……引かれた。見事に引かれた。

 

「彼女達は民間協力者だ。君は知らなかっただろうけど、彼女達は君が唐突に現れてプレシア・テスタロッサに頭突きをかましたのを見ている」

 

な、なるほど。だから俺をみて変な顔になったんだな。

そりゃそうだよなー。いきなり現れてラスボスを頭突きで撃破する乱入者を見たらそりゃ困惑するよなー

フレンドリーに挨拶しても、引いちゃうのも仕方ない。

 

「いや、彼女達が引いたのは明らかにさっきの挨拶のせいだろ」

「……ですよねー」

 

クロノ、えぐるようなツッコミありがとう。

 

 

ちょっぴり傷心したけど、気を取り直してラスボスとの面会になった。

俺の出身が違う世界の日本と知って、なのはが少し興味を持ってくれたのは幸いかな。

あのまま警戒心丸出しだと、これから先碌な事なさそうだし。

なのは達とは後で話す事にして、今はラスボスラスボス。

 

「そんなに緊張……してないわね。それはそれでいい事だけど」

 

原作でどういう人か知らないけど、ある意味超親馬鹿な人とは駄神からは聞いてるし。

それにあんないかにも魔王がいそうな城に住んでるラスボスって、どんな人かちょっとワクワク。

でも俺そんなラスボスにロケット頭突きしたんだよな。その事で恨み買ってたらどうしようか。

と、思っていましたが……

 

「そう、あなたが……ありがとう」

 

出会って早々お辞儀をされるとは思っていませんでした。

てっきり頭突きの件でお怒りかと思ったけど。

 

「あなたに頭突きされて気を失った時、昔の夢を見たのよ。アリシアとの懐かしい夢をね」

 

で、目が覚めてあんなヒドイ事をしたのに、心配してくれたフェイトを見てこの子も自分の娘だと再確認出来た、というわけか。

ついでにあの次元震の影響で仮死状態のアリシアも復活したのがトドメとなったらしい。

うんうん、良かった良かった。

ちなみになんで仮死状態だったのが復活したのかは、現在調査中らしい。

これも駄神様の影響だし、一生分かる事ないだろうな。

 

「ところで、あなたは一体何者なの? 見た所フェイトと同じくらいの魔力を感じるけど」

「えっ、マジですか!?」

 

あの駄神、魔力はほどほどと言ってたのに、まさかフェイトと同じくらい付けたとは……

驚愕の事実に固まったけど、それはリンディ艦長とクロノも同じようで目を丸くしている。

 

「そ、それは本当なのプレシア?」

「正確には分からないけど、それはあなた達が調べればわかるでしょ?」

 

 

と言うわけで、プレシアとの面会も程々にして急きょ俺の魔力検査になった。

今はトレーニング室のような広い部屋で魔法を使ってみる事にした……が。

 

『うーん、確かに魔力値は高いわね。リンカーコアもちゃんとあるし』

 

ガラスの向こうでこっちをモニターしているリンディ艦長の言う通り、俺の魔力はなんとクロノよりも高い。

しかし、肝心の俺が魔法を全く使えない。

訓練用のデバイスも貸してもらって使ってみたが、うまくいかない。

なんかこう自分の内に眠る強い力は感じるようになったけど、それを外に出すのが難しい。

 

「君は別世界とは言え、なのはと同じく魔法自体知らない世界出身だ。高い魔力があってもうまくいかなくてもしょうがない」

 

とクロノは慰めてくれるけど、せっかく魔力あるんだから魔法使いたい、空も飛びたい!

 

「理屈よりもイメージでやった方がいいのかもしれないな」

「イメージ? あ、そうだ!」

「ん? 何か分かったのか?」

 

クロノがイメージと言った事で、一つ思いついた事がある。

それは、Fateで主人公の士郎がアーチャーに言われたセリフ。

 

【忘れるな。イメージするものは常に最強の自分だ】

 

Fateとは全く違う世界観で魔法や魔術、魔術回路とリンカーコアみたく別物だけど、要領は似たようなもののはず。

もう一度、デバイスを握りしめて意識を集中……イメージ、イメージ、最強の自分をイメージ。

すると体の奥底から何かが湧きあがってくる感じがした。

 

「これなら、いける……おりゃぁ~!!」

「なっ!? ま、魔力変換素質!?」

 

気合の叫びと共に噴き上がった、炎。

と同時にデバイスが爆発した。

あれ? 俺、燃えてる?

 

「……か、火事だぁ~!!」

 

体が燃えている事に驚き、パニックになった。

自分で出した炎で燃える事はない、んだけどその時の俺はそんな事考えてる余裕なし!

 

「落ちつけ! 君の体が燃えているわけじゃ……ちょっ、こっちにくるな! あっつ!?」

「クロノ~消火器~119番~!」

 

とにかくこの火を消してもらおうとクロノに詰め寄ったら、クロノの髪が燃えてしまった。

すぐにスプリンクラーが発動して鎮火されたけど、俺はまだ燃えている。

 

『ちょっと、2人共何をしているの! 健人君、その火はあなたには無害よ。ひとまず落ち着いて!』

 

スピーカーからリンディ艦長の声がするけど、全く耳に入らねェ。

 

 

後で聞いた話では、あれは魔力変換素質・炎熱と言うもので、ViVidのリオや番長と同じものらしい。

でも、魔力変換素質を持つ人は、大抵純粋魔力の大量放出は苦手だ。

と、前髪が少しチリチリになったクロノに睨まれながら言われた。

 

ごめんちゃい。

 

 

続く




地球学生ルートに行こうか、それとも別ルートにしようか迷い中。

そろそろ主人公のプロフィールでも……
生前の設定は結構シリアスだったりします。


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第4話 「チートだぁ!……と思ってました」

主人公にバトらせるかどうか悩み中。


「全く君は……才能があるのか、ないのかさっぱりわからない!」

 

前髪を更に焦がし、ちょっとアフロっぽくなったクロノが吠えるが俺に言われても仕方がない。

 

「俺をなのはと一緒にするなよ。少なくともここに来るまでは魔法とかそういうのは一切無縁だったんだから」

 

こいつら管理外世界である地球生まれのなのはが高い魔力と才能持ってたからって、俺にまでそれを期待してたんじゃないだろうな?

俺は駄神様から高い魔力やら色々もらったからこうなってるんだ!

と、そう考えると……高町なのはは、化け物か!

白い魔王は伊達じゃない! って事だな、うん。

 

「何を考えているか分からないけど、話を戻すわね。あなたには高い魔力素質があるようですが、うまく使いこなせていないようです。ですので、しばらくはこちらで身柄を預かりたいのだけど、いいかしら?」

 

リンディ艦長の言う通り、俺はどうやら魔力値は高いけど、宝の持ち腐れになっている。

 

① 俺が魔力を発動すると自動的に体が炎に包まれる。

② 火力調節が出来ず、俺以外を燃やしてしまう。

③ その炎は射撃や砲撃すらも弾くほど攻防一体の強いもの。

④ 一度出すと魔力が無くなるか、俺が気絶するまでずっと火達磨。

 

さっきは消火と俺を落ちつかせる為、水圧の高い放水をしてくれたおかげで気絶して止まった。

だけど、次に出した時はどうやっても止められず、止めようとしたクロノの魔法を全て弾き前髪を燃やしてしまった。

結局、俺の魔力がきれてダウンして鎮火。

 

「本来、デバイスを使って制御するものだけど……」

「無理ですね」

 

リンディ艦長とクロノの視線の先には、壊れて使いものにならなくなった杖や銃が散らばっている。

どれもがこの船にあった予備のデバイス。

コレを使えば大抵制御できるはず……だったけど、俺が使おうとするとすぐに壊れた。

並のデバイスじゃ扱えないほど強大な力って……こんな強い力、いらなかったんだけどなぁ。

 

「ともかく、食事にしましょうか。魔力を使いきってお腹空いてるでしょ?」

 

そう言われて急に空腹感に襲われた。

俺さっきから魔力空っぽだったな。

魔力なんて持った事ないから分からないけど、魔力が無くなるとこんな感じになるのか。

 

 

あれから食堂に案内され、ちょうどそこにいたなのはとユーノを交えて食事となった。

2人共食事を終えたばかりでは? と思ったけど、時計を見るとさっき廊下で会ってからかなり時間が過ぎていた。

どうやら俺が気絶している間に夕食の時間になったみたいだ。

 

「じゃあ、健人君って別の世界の日本に住んでたの!?」

「あぁ、こっちの地球には俺が住んでた街はなかったよ」

 

なのはは興味津々に俺の事を聞いてきた。

俺の事をどこまで話せばいいかと困ったが、クロノが全部言っていいと許可してくれたので遠慮なくはなしている。

 

「クロノ、なんでそんな奇抜な髪型になってるんだ?」

「聞くな、ユーノ」

 

クロノは幼馴染のエイミィにブラッシングを受けていた。

くっそぉ、幼馴染とか羨ましい奴。

リア充、爆発しろ! あ、さっき燃えたか。ならよし!

 

「ところでフェイトとかアリシアは?」

 

やっと原作キャラのなのはと話せたんだ。

フェイトやついでに生き返ったアリシアとも話したいんだけどな。

特にアリシアは、誤解を解きたい……でないと俺の将来が、というかプレシアから何されるか分からない。

 

「フェイトとアルフはプレシアと一緒だ。アリシアは仮死から目覚めてまだ身体がまともに動かせない。君には分からないだろうけど、プレシア同様フェイトとアルフも犯罪者なんだ」

 

ちょっと残念だけど、仕方ないか。

原作でもプレシア事件後もなのはと会話できたの、別れの時だけだったし。

 

「えっ、それじゃあ……」

「ただし、プレシア自身がフェイトに何も詳細を話さずただジュエルシードを探すよう指示していただけ。と言っている。ちょっと時間はかかるかもしれないけど、どうにか出来そうだ」

 

あーここら辺の会話も駄神に教えられたとおりの展開になってるな。

下手に口出すとボロ出そうだし、ここは何言わず食べよう。

うん、うまい。

 

「健人君、さっきから黙々と食べてるね。よっぽどお腹空いてたんだ?」

「あれだけの魔力を無尽蔵に放出し続けていれば、お腹も空く」

 

クロノはかなり髪の件を根に持っている様子。

エイミィに髪を整えてもらったけど、焦げた前髪を切ったせいでデコが広く見える。

 

「気にするなってクロノ。毛根が死滅したわけじゃないんだしさ」

「君がそれを言うか!? いや、君自身が悪いわけじゃないのはわかっているが……」

 

あークロノ思ってたよりええ子や。高い魔力は俺のせいじゃないし、それを制御出来ないのも俺のせいじゃないもんな。

強いて言うならあの駄神のせいだし。

 

「???」

 

頭にハテナマークを浮かべるなのはとユーノにエイミィがさっきあった事を説明した。

すると、なのはが目をキラキラさせて俺に迫ってきた。

 

「健人君も魔法少女なの!?」

「いや、俺どうみても男だろ!?」

 

どっからそういう話になるんだ!?

 

「管理局のデバイスでも制御しきれない程、特殊で強力な魔力を持った次元漂流者か。聞いた事ないな」

「僕も初めて聞くケースだ」

「管理局のデータでもないね」

 

ユーノは別の事に興味を持ったみたいだ。

この声が未来でヴィヴィオやセインと同じになるんだよな、中の人ってすごい!

と俺もまた別の事で感心していた。

 

「ところで、明日には君の世界へ送り届ける事が出来そうだと、さっき艦長が言っていたよ」

 

クロノに言われ、なのはの顔が明るくなった。

プレシアが引き起こした次元震の影響でミッドチルダ方面には戻れないけど、地球へは明日には戻れるらしい。

そこでユーノも一先ずはフェレットとして、今まで通りなのはの家にお世話になる事になった。

羨ましい……なんて思わなくもなかったりする。

 

「健人君も一緒にうちに来ない?」

「いや、フェレットになれるユーノはともかく。生の男の俺が女の子の家にお世話になるわけにもいかないだろ」

 

なのはの提案は非常に受けたい気持ちいっぱいだけど、下手すればお巡りさんのお世話にもなりそう……

いや、今の俺はなのはと同い年だから大丈夫か?

大丈夫じゃない、大問題だ……

 

「な、生って……それじゃあこれから健人君はどうするの?」

 

さてと……俺はこれから一体どうしようかな。

金がないどころか、家も、戸籍も何もない。

地球で暮らそうにも家なし子、学校にも通えず、年齢的に働けもしない。

管理局で働こうにも、ただ魔力高いだけでデバイスも満足に扱えないポンコツ。

こんな事であと10年生きのびて、ジークリンデやミカヤ達に出会えるのかなー(超遠い目)

せめて戸籍があればどうとでもなった……はずなのに。おのれ駄神め!

と、何でもかんでも悪い事はアイツのせいにしておこう。

 

――ちょっ! それはあんまりだよ!

 

キコエナーイキコエナーイ。

 

「健人君? 難しい顔したり突然どこかを睨んだりどうしたの?」

「今更ながら、これからの人生設計について真剣に考えてた所」

「わ、私と同い年なのにもうそこまで考えてるの!?」

 

いやいや、なのはちゃんや、そんな尊敬のまなざしは止めてくれ。

 

「俺は次元漂流者。当然こっちの地球にも、ミッドにも家も戸籍もない。このままじゃ学校にも通えないし、働く事もできない。それでどうしようかと悩んでるんだよ」

「あ、そっか。健人君、家族の人や友達が心配してるよね。元の世界に戻れないの?」

 

さっきまで明るく元気だったなのはが、急に沈み込んでしまった。

俺の問題なのに、まるで自分の事ように思ってくれてる。心底良い子なんだな。

 

「……今のところは無理だな。どこからどうやって来たのか全く分からない」

 

クロノの言葉にますます沈み込んでしまった。

それを見て、エイミィがクロノの脇腹を小突く。

 

「か、彼の今後は艦長が色々と考えてくれているから大丈夫だ。彼は膨大な魔力を持っているから、管理局で働いてもらう手もある」

 

なのはが落ち込んだ事に気付き、クロノは慌ててフォローした。

 

「えっ、健人君そんなに強いんですか?」

「さっきも言ったが、彼の魔力は強大だ。魔力値だけなら君やフェイト以上だよ」

「えっ!? そうなの!?」

「なんで君がそこまで驚くの?」

 

俺が一番驚いてる事に、ユーノが苦笑いを浮かべた。

 

「強い強い言われてても、どれだけ強いかイマイチよくわからなかったし……」

 

プレシアはフェイトと同じくらいと言ってたけど、まさかそれ以上とは。

てか主人公とヒロインよりも強いのはやりすぎだろ、駄神。

 

「しかしだ。君はその強大な魔力を全く、使いこなせていない!」

「あ、あはは、クロノ君。そこまで強くいわなくてもいいんじゃない?」

 

エイミィがフォローしてくれるけど、クロノは不機嫌なままだ。

俺の火の玉で髪が燃えた事がそこまで恨めしいのか。

いや、恨めしいだろうな。

 

「それを使いこなせない以上、管理局で働く事も自由に行動する事も難しいな。外で下手に魔力を使ったらそのまま野たれ死ぬ可能性もある」

「一度発動させたら、気絶するか魔力からになるまで永遠と燃え続けるんだもんな……」

 

魔力尽きても結局気絶するし。

 

「というわけで申し訳ないが、君はしばらくアースラにいてもらう事になる。本局への航路が安定したら、向こうで君に合ったデバイスを用意しよう」

「でないとクロノ君の髪が無くなっちゃいそうだもんね。健人君が魔法使う度に髪燃えちゃってるし」

「あぁ、そうだな。なぜだろうな、全く。なんで僕の髪が毎回犠牲になっているんだろう、な!」

 

またここで蒸し返してきた!? エイミィ、わざと言ってるだろ!

ともかく、しばらく衣食住には困らなさそうだな。

 

「健人君が魔力をちゃんと制御できるようになるのと、クロノ君の髪が全部焼失するのどっちか先になるか楽しみだね」

「「楽しみなわけあるかぁ!」」

 

 

 

続く

 




高い魔力もまだ使い道のない宝の持ち腐れ状態です(笑)
本格的に魔法が使えるようになるのはまだ先の話~
そもそも、そんなに高い魔力を使う事があるのかどうかすら謎です(笑)


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第5話 「話をしよう」

お待たせしました―!
早く出したいヒロインがたくさーん


『私、高町なのは、なのはだよ』

『……なのは』

『うん!』

 

モニターの向こうでなのはとフェイトが感動のお別れシーン真っ最中。

それを俺はアースラの管制室で眺めていた。

隣にはアリシアもいる。

 

「2人共、いかなくて良かったの?」

「あの2人の邪魔しちゃ悪いし。生まれた地球じゃないなら特に愛着もないですし」

「お別れはこっちでしたから大丈夫!」

 

俺もアリシアも最初は誘われたけど、邪魔しちゃ悪いと断った。

本当は立ち会いたい気持ちはあるし、なのはも少し悲しそうな顔をした。

でも、また会えるから、そう言ったら笑顔を見せてくれたからよしとしよう。

 

 

それから、俺はアースラ内で勉強&訓練の毎日を送っていた。

午前中はエイミィやリンディ艦長に教えられてミッドの言語や歴史の勉強、午後はクロノやアルフが魔法の訓練に付き合ってくれた。

先の事件の後処理とかで大変だろうに、いいのだろうか? と聞いてみたら、教えるのもいい気分転換になると言われた。

そして、夜はフェイトやアリシアの話相手になっている。

フェイトはなのはとの別れを少し引きずっているようで、始めはどこか沈んでいた。

プレシアやアリシアが生きているので、大丈夫そうには見えるけどどこか無理をしている。とは相棒であるアルフの言葉。

アリシアは……ただ退屈しているだけだった。

ずっと眠っていてまだリハビリの最中な為、身体が自由に動かせないのが不便らしい。

そんな2人の、要は暇つぶし相手としては一般人である俺が適任らしい……のだが。

 

「それでね、私の場合だけど電気を操る時はね……」

 

あれ? 世間話をしにきたのに、いつの間にか魔法講義になってる?

おかしいな。話相手になってと来たのに、なんでこうなってる?

魔力変換素質持ちとしての話になって、俺がうまく使いこなせていないと言う話になって……

まぁ、フェイトが楽しそうだからいいか。

 

「ふむふむ、流石は私の妹。分かりやすい教え方だね」

 

アリシアもなぜかこの講義に参加してる。しかも、俺より理解してる。

だけど、アリシアは魔力が全くないのであまり意味はない。

それからなんとかフェイトの言った事を理解して、もう一度魔法を使ってみようとしたが、アルフに止められた。

 

「よしっ、じゃあやってみるか!」

「ちょっと待ちなよ! いくらフェイトの説明が分かりやすいからと言って、フェイトの部屋でやるんじゃない!」

 

確かに。

 

クロノとエイミィも付き合ってくれる事になり、場所を移して毎度おなじみの特訓部屋。

いつもならクロノが俺の近くで見てくれているのだけど、今回はエイミィやフェイト達とガラスの向こうにいる。

その代わりに何かあった時の為にと、アルフが側にいて様子を見守ってくれている。

 

「残念、今日こそクロノの前髪全焼させるつもりだったのに」

『聞こえているぞ。いいからさっさと始めてくれ』

 

独り言のつもりが、クロノにはばっちりと聞こえていたようだ。

クロノの横で見ているフェイトやアリシアからの期待の籠った眼がちょっと眩しすぎる。

なら、その期待に答えて見せよう!

 

「まず俺が最初に魔力発動させた時の事を思い出すっと」

 

初めて魔法を使った時、俺が思い描いた事をもう一度やってみるといい。そうフェイトは言っていた。

デバイスに登録された魔法を使ったなのはと違い、俺は全部一からのスタート。

だったら、下手に固定概念に囚われず思う通りに使う方がいい。

 

「えっと、あの時はFateだったけど、今回は別なのにしてみようか。炎……と言えば」

 

右手を強く握り、意識を集中させる。

頭に浮かぶのは、ガンダム一熱い男……キング・オブ・ハート!

 

「俺の、この手が勝手に燃える!……以下略!」

「いや、勝手に燃えちゃダメだろう!?」

 

うん、アルフのツッコミに感謝だな。

そのおかげかどうかは分からないが、右手に強い魔力が集まるのを感じ、次の瞬間一気に炎が燃え盛った。

今までと違うのは、全身からではなく右手のみ炎に包まれている。

 

「おぉ~!」

『やった!』

 

俺もフェイトやアリシアが感嘆の声をあげた。

しかし、意識を集中するのに精一杯でとてもこれ以上の事は出来そうにない。

それでも今までよりはすごい進歩だな。

 

「やったじゃないか、健人!」

「あぁ、フェイトのアドバイスのおかげだよ」

 

かけよってきたアルフとハイタッチ……あっ。

 

「あっちぃ~~!?」

『『ア、アルフー!?』』

 

しまった。炎に包まれた右手で思いっきりハイタッチしちゃった。

 

『君らはバカなのか!?』

『そ、そんな事より早く消火消火!』

 

今回の実験の結果、クロノの前髪の代わりにアルフの手と尻尾が燃えてしまった。

幸い、軽傷で済んだのだけど、やはり専用デバイスが見つかるまで魔法の訓練は禁止となってしまった……

爆熱ゴッドなんとか! とかやってみたかったけど、それは後のお楽しみだな。

 

 

 

更に数日後、暇だ。

ミッドの言語や歴史の勉強は進んでるけど、それ以外が暇だ。

別に勉強が嫌いではないけど、それ以外何かやりたい。

 

「というわけで来た」

「え、えっといらっしゃい?」

 

今日も今日とでフェイトの部屋に遊びにきた。

なんでここかと言われても、他に行く所がないからだ。

プレシアの所はダメと言われてるし、アリシアはリハビリ中。

他の局員達のお手伝いしようかと思ったけど、見た目が子供でしかもミッド語の読み書きも満足に出来ない俺に出来る事はないわけで。

 

「要するに、暇?」

「簡単に言えば暇」

 

というかそれ以外当てはまらない。

後、少し遠慮しがちに首を傾けながら言うフェイトは可愛かった。

 

「にしてもさ、あんたって本当に自由だよね。リンディ艦長達の許可あるとはいえ、私達一応犯罪者なんだけど?」

「アルフ、今更そんな事言ってもな。散々ここに来てるし。他にいくとこもやる事もないんだよ」

 

勉強ばっかじゃ退屈するし、息抜きも必要だ。

 

「それに……下手に出歩くと……」

「ん? あぁ、そうだったね」

 

アルフが苦笑いを浮かべるけど、俺にとっては死活問題だったんだ。

何度かアースラ内を探検しようとしたが、なぜか毎回重要保管庫やらエンジンルームやらそういう所に迷い込んでしまう。

しかも、エラーでロックが解除されてたり、ロックが壊れたりとすんなり中に入っては警報がなって、怒られる始末。

 

「だから、俺の行き場所はここしかないんだ……」

「そんな哀愁漂わせる程深刻な事じゃないだろ!?」

「……可哀相、私もアルフも大歓迎だからいつでも遊びにきてね」

 

アルフはツッコミ入れるけど、流石にフェイトは優しい。

けれども、この眼はなんか思いっきり可哀相な人扱いされてるような?

いや、フェイトの事だから本気で俺を心配してくれてるんだろうけどさ。

あーこの純粋さが眩しい。

 

「ところで健人はこれからどうするのか、いい加減決まったのかい?」

「いんや、まだ。管理局で働く事になるのかなー……最悪事務員で」

 

いいデバイスが見つかればいいけど、それがダメなら魔力封印の上、事務員スタートになっちゃうかも。

とりあえず、金を稼げて住む所もしっかりするのが一番だよな。

 

「そっか、それじゃあ私と一緒になるかもしれないね」

「あれ? フェイトも管理局に入るのか?」

 

確かに、フェイトはViVidで管理局執務官やってたけど、こんな幼い頃からやってたのかな。

 

「うん。正確には嘱託魔導師。リンディ艦長やクロノに勧められてるの。といっても、難しい試験を通らなきゃいけないんだけど」

 

嘱託魔導師試験をパスすれば、異世界間の行動にも自由が効き、裁判も迅速に終わらせられるとの事。

プレシアの為が半分で、なのはの為が半分って所だな。

それにしても、いきなり執務官ではなくまずは見習いという形でか。

 

「フェイトならばっちりだよ。エイミィ達が色々教えてくれるって言ってるし」

「本当にリンディ提督達には色々と迷惑かけたのに、お世話になりっぱなしだね」

 

うーん。俺もリンディ艦長達には迷惑と世話しかかけてないよな。

ははっ、返さなきゃいけない借りが多すぎるぜ。

 

「そうだ! 健人も嘱託魔導師受けてみたらどう?」

「俺か? 無理だろ。俺は次元漂流者だし、魔法も満足に使えないんだぜ? 魔力高いだけで通れる試験じゃないだろ」

 

筆記試験も危ういけど、履歴書でまずアウトだな。

 

「そっか。私でも受けれるんだから、健人も大丈夫かなって思って」

「ははっ、まー俺は俺で何とかなるだろ。心配してくれてありがとな」

 

心配してくれるのが嬉しくて礼を言うと、さっきまで不安そうだったり悲しそうだったフェイトに笑顔が戻った。

 

「でもさーなんで次元漂流者のあんたに、あれだけ高い魔力あるんだろうね。なのはもそうだけど、地球出身者って恐ろしいよ」

「俺だってなんであんな魔力持ってるか分からないよ。それに俺となのはは生まれは地球でも全く別の地球だ」

 

駄神の仕業なんて言えないし、言っても信じてもらえないだろうな。

 

「でも健人と同じ管理局で働けたらいいな。だって……友達だから一緒にいたい、かな」

 

うっ、この笑顔は反則すぎる。

ま、俺の将来なんてどうなるか分からないけど、フェイトと仲良くなれたのは良かったな。

 

 

 

続く

 




そろそろ展開を進めたい今日この頃。


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第6話 「急展開……すぎるだろこれ!」

はい、急展開です(笑)


退屈だ……えぇ、数日前の俺は確かに言いましたよ、退屈だと。

でもさ、だからって……

 

「これはないだろー!?」

「「待て――!!」」

 

アースラで絶賛暇つぶし中だった俺はなぜか、全身タイツのお姉さん達に追いかけられてます。

 

「ホントになんでだー!?」

 

 

事の始まりはほんの数十分前、リンディ艦長に呼ばれた事から始まった。

 

「本局への次元転送が可能になったんですか?」

「えぇ、次元震の影響も予想より大分収まってきたわ。今アースラは本局へ向けて航行中だけど、あなたは私と一足先に行って色々検査をしてもらう事になります」

 

アースラの設備じゃ限界あるって言われてたもんな。

まぁ、本局で検査すれば俺に合ったデバイスや魔力の使い方とか色々分かるみたいだし、拒否する理由はないな。

アースラで後から来るフェイトやアリシアとはまたすぐに会えるし。

 

「それじゃクロノ、エイミィ、こっちの事は任せたわね。何かあったらすぐに連絡する事」

「はい、分かりました。すぐに2人に追いつきますよ」

「健人君もまた後でねー」

「うん。フェイトやアリシアの事お願いします」

 

2人にはさっき挨拶したけど、どっちも悲しそうな顔をされて、アルフに睨まれたな。

 

「行くわよ、健人君。すぐに着くからそんなに緊張しなくて大丈夫よ?」

「はい!」

 

実は緊張と言うより、初の次元転送にちょっとワクワクしてる。

でも、遊園地のアトラクションとかにも乗った事ない俺が、酔ったりしないか心配ではある。

そこら辺はどうなんだろうな?

まぁ、やってみれば分かるか。

 

「じゃ、眼を瞑っててね」

「転送、開始します」

 

眼を瞑ってエイミィの声を聞くと、何か身体がフッと浮き上がる感覚がした。

次の瞬間には……真っ逆さまに落ちる感覚になった。

 

「えっ?……がっ!?」

「ぅごっ!」

「ぎっ!?」

 

何かこう、数日前にも体感した痛みが、誰かの頭に激突した痛みが襲ってきた。

 

「ぃっつつ~! ……あれ、ここどこ?」

 

頭を抑えながら周囲を見渡してみると、どこかの広い部屋の中のようだ。

そして、目の前にはスーツ姿のお姉さんが目を見開いて驚いた顔をしていた。

他にも全身変なタイツスーツ姿をした青髪の姉さんと、銀髪の女の子がいる。

あれ? この人達どっかで見た事あるぞ?

あ、そうだ! この銀髪の女の子、確かチンク!

眼帯してないし、右目もちゃんと開いてるから分からなかった!

それにスーツを着たお姉さんはイノセントで見た、一架さん!

って事は、青髪のお姉さんは三月さんか!

いやぁ~実物見ると感動的だなぁ~……なんか思いっきり睨まれてるけど。

それに皆私服姿じゃなくブレイブデュエルでの、ウーノやらトーレみたいな姿になってる。

 

「お前、一体どこから来た?」

「え、えっとどこからと言われても……?」

 

アースラから飛んできました―って言っていいのかな?

 

「ひとまず、ドクター達からどいてもらおうか」

 

チンクにナイフのような物を付きつけながら言われ下を見てみると、白衣を着た博士っぽい人とメガネをかけたお姉さんを尻に敷いていた。

どうもさっきからやけに地面柔らかいと思ってたんだよね。

あ、2人共頭にでっかいタンコブが付いてる。

まるで漫画みたいだ(笑) なーんて言ってる場合じゃない!

 

「あなたが何者かはともかく、ドクターとクアットロに危害を加えたのは見過ごせないわね!」

「大人しくつかまれ!」

「断る!」

 

三月が手を伸ばして俺を捕まえようとしたので、ヒラリとかわし逃走開始。

 

「あ、こら、待て!」

「待てと言われて待つ馬鹿いるかー!」

 

と、こうして冒頭の鬼ごっこが始まった。

 

 

チンクと三月さん、おまけに途中から加わった二乃さんっぽいお姉さんに追いかけられて、どうにか倉庫っぽい所に隠れて状況整理。

まず、俺はアースラから本局へリンディさんと転送した。

けれども、なぜか別の場所へ転送させられ、スカリエッティとクアットロに頭から激突。

呆気にとられた一架さん達に侵入者と間違えられて、追いかけられている、と。

いや、侵入者なのは間違いないか。

走りながら気付いたんだけど、俺は一つ大きな間違いをしている。

ここはリリカルなのはの世界であって、リリカルなのはイノセントの世界じゃない。

と言う事は、チンク達は人間ではなく、戦闘機人と言う人造人間で、Stsの時代でおお暴れする犯罪予備軍なのだ。

で、一架はウーノで、三月はトーレ、二乃はドゥーエと言う事か。

チンクは確か元の世界でもイノセントでもチンクだったな。

ただ、中島家に引き取られるのはSts時代の後の話。

うん、リリカルなのはの事を教えてくれた友達からの情報を整理するとこんな感じか。

正直、チンクはともかくウーノやトーレはイノセント世界なら友達になりたいんだけどなぁ。

 

「なんて状況整理したはいいけど、どうしようか」

 

多分このまま隠れていてもすぐに見つかるだろうなぁ。

かと言ってノコノコ出て行っても殺されるだろうなぁ。

Vividやイノセントならともかく、この時代じゃ彼女達殺伐としてそうだもんなぁ。

対抗しようにも魔法まともに使えないし、使ったとしても制御不能で魔力切れで気絶してアウトだし。

 

「どうすればこの場を生きのびる事が出来るか」

 

などと考え込んでいると、どこからともなく声が聞こえてきた。

 

「みーつけ 「のわぁ~!?」 はひっ!?」

 

突然すぐ横の壁から水色の女の子が出てきて、思わず払いのけようと手を伸ばしたら柔らかい感触があった。

 

「あわっ、あわわわっ……」

 

この柔らかい感触懐かしい、と言うかデジャヴ?

でもあの時はもっと柔らかくて張りと弾力あったよな?

 

「うーん、分かりやすく言えば……小さい?」

「誰の胸が小さいっ!? っていつまで胸揉んでるんだー!!」

 

あ、やっぱり俺胸揉んでたのか。

 

「あはは、ごめん。小さくて気付かなかったよ……では!」

「まちやがれぇーーー!!」

 

胸が小さい女の子、セインから何とか逃げる事が出来た。

いやぁ~危なかった。セインって泳ぎがうまいだけじゃなくて、壁とかすり抜ける事出来たのか。

でも能力が分かったからにはもう驚かないぞ。

 

「あはははっ、このまま逃げ切ってやる……ってどこへ逃げればいいんだろ?」

「ライドインパルス!」

「あっ」

 

とか考え込んでいる間に、ものすっごい速さでやってきたトーレにあっさり捕まってしまった。

 

「いやぁ~お姉さん足速いねぇ。その足で世界陸上とか出てみない?」

「確かに高速移動だが、正確には走っているのはではなく飛行している。陸上とやらでは反則になるだろう」

 

……渾身のボケに真面目に返されてしまった。

それから鎖でがんじがらめに拘束されたわけではなく、応接室っぽいところへ連れていかれた俺はウーノやチンク達に囲まれて尋問となった。

セインはさっきから唸り声をあげて俺を睨みつけており、チンクがなだめている。

 

「で、あなたは一体どこのだれなの?」

「名前は草薙健人、地球生まれの……迷子です」

 

正直に答えたはずなのに、みんなの視線が冷たい。

 

「正直に答えた方が身のためよ?」

「正直に答えたんだけど。あ、正確に言えばアースラから本局に行こうと次元転送装置で転送したらなぜかここに……」

 

そう言うとウーノは空間に現れたキーボードを操作し始めた。

ああいうのなんかかっこいいな。アースラにもあったけど、空間コンソールって名前かな?

 

「ふむ、どうやら管理局員ではなさそうね。魔力はあるけど、地球人と同じ遺伝子配列だわ」

「と言う事はこの子は本当に迷子?」

「どうやらそうみたいね。なんで二重三重にも張ったプロテクトを破って、このアジトに直接飛んでこれたのかは分からないけど」

「ならばどうする?」

「うーん、見た所人畜無害っぽいし、このまましばらく飼ってみると言うのは?」

「反対反対! 私はぜーーーったいに反対!」

 

どうにか俺が事故でここに来た事は分かってくれたようだけど、これからどうなるのか。

ドゥーエの口から飼うって単語出たり、それに反発するセインを見ると、心中穏やかではいられない。

 

「はぁ、ドクターが目を覚ましてから考えましょうか」

「その必要はない! 彼はしばらくここで保護する事に決めた!」

 

ババーンとドアが開き、頭に包帯を巻いた変態博士、スカリエッティが入ってきた。

その後ろには同じく包帯姿のクアットロもいる。

この2人もイノセント世界じゃ好きな部類に入るキャラだけど、ここじゃどうなんだろ?

ウーノ達のあの殺伐とした空気を見れば一目瞭然か。

 

「ドクター! 大丈夫なのですか!?」

「問題はないよ、ウーノ。それどころか頭がすっきりして実に気分がいい!」

「私もなんだかとっても晴れやかな気分ですわ!」

 

妙にハイテンションな2人に、俺はともかくウーノ達も眼をぱちぱちさせて驚いている。

 

「あ、あのドクター、クアットロ? 本当に大丈夫なのですか!? 精密検査をすぐにしましょうか!?」

「いや、すぐにするべきです。さぁ、ドゥーエ、セイン。2人を運ぶぞ」

「ちょっと落ちつきたまえ、ウーノにトーレ。私は何ともないさ」

「そうですよ。大げさすぎますわ」

 

いや、全く部外者の俺から見ても2人が異常なのは分かります。

でもこの人達って元々異常だから、これが普通なのか?

 

「ともかくだ。このアジトが出来て初めての小さなお客様だ。丁重におもてなししないとね」

「そーですわよ。それにトーレ姉様やセインちゃん達を相手にして二度も逃げ切るなんて、普通の人間とは思えませんし」

 

あー……こりゃまいった。

相当にピンチかも。

 

 

 

続く

 




この段階ではまだノーヴェ達は登場しませんが、いずれ出ます。
次回からキャラ崩壊激しくなります。と言うか誰だお前!?状態に(笑)


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第7話 「洗脳? いいえ、これは救済です」

久々に投稿!
久々過ぎて長くなっちゃいました(笑)


「さてと、改めて自己紹介させてもらおうか。私の名は、ジェイル・スカリエッティ、しがない科学者だよ」

 

キラッ☆と擬音が聞こえてきそうな程、歯を輝かせて爽やかスマイルを浮かべる変態もといジェイル博士。

 

「私の名はウーノ。博士の助手をしているわ」

 

それを見て、体中の空気を吐きだしているんじゃないかと思えるくらいの深いため息をするウーノ。

苦労人っぽいオーラ全開だな。

 

「私はドゥーエよ。よろしくね、ボ・ク♪」

 

寒気がするほどの邪悪なスマイルを浮かべるドゥーエ。

そのスマイルを見た瞬間、全身の毛穴が開いて冷や汗がドバっと出てきた。あれは獲物を狙うハイエナの眼だ!

 

「……トーレだ」

 

トーレはぶっきらぼうな自己紹介だったけど、警戒心が丸出しと言うわけではなく、博士にちょっと戸惑ってる感じだな。

 

「私はクアットロよ。困った事があったら何でも言ってね♪」

 

メガネっ娘のクアットロ。彼女も俺が下敷きにしちゃったんだよなぁ。

スマイル全開でもドゥーエみたいな感じではなく、面倒見の良いお姉さん的な感じがしていいな。

なんかそれ見たウーノやトーレが目を見開いて驚いてるけど。

 

「わ、私の名前はチンクだ。よろしく」

 

チンクはさっきのクアットロスマイルに動揺しているようだ。

片目を閉じた彼女しか知らないけど、やっぱり両目があった方がいいな。

なんで片目になったんだっけ?

 

「セイン」

 

ぶっきらぼうどころではなく不機嫌オーラ全開のセイン。

よほど胸を触られたのが気に入らないらしい……いや、当然の事だけどさ。

 

「私はディエチ。この中では最年少、になるかな」

 

そして、最後に紹介されたのがディエチ。

彼女はさっきまで所用でいなかった。

帰ってみたら見知らぬ子である俺がいて驚いてたな。

ってか、最年少と言いつつ意外と胸大きい。

そう言えば、イノセントでは小学生ながら姉のギンガより少し大きかったっけ。

 

「将来はもっと増える予定だが、彼女たちこそ私が生み出した戦闘機人にして娘のナンバーズ達さ」

「は、はぁ」

 

まるで父親のような顔をしているスカリエッティ、もうスカさんでいいか。

イノセントで見るような表情で、とても残虐非道なマッドサイエンティストには見えないな。

って今もっと増えると言った? そう言えば、ノーヴェとかウェンディとかいないな。

 

「ふむ、そうだ。君には少し面白いものを見せようか、こっちだ。」

 

スカさんに連れられてやってきたのは、アリシアが入っていたようなポットが並べられた部屋だ。

その中のいくつかには素っ裸の女の子が浮かんでいて……素っ裸!?

 

「な、なななっ!?」

「あははは、その反応は実にいい。まだ幼いとはいえ実に男の子らしい反応だ。彼女達はナンバーズのメンバーだよ。まだ製造途中だがね。どうだい?」

「何やってるんですかドクター!!」

「へぶっ!?」

 

いきなり少女の裸体を見せられ固まっていると、ウーノが文字通り飛んできてスカさんを蹴り飛ばした。

GJ、ウーノ!

 

「いや、どうだい?って言われても何がどうなんだか……」

 

俺には少し刺激が強いです。

ってかよく見ると、浮かんでるのノーヴェやウェンディだ。

なるほど、この時代にはまだ生まれてなかったのか。

アリシアみたくロリっ娘ならともかく、見た所どれもこれも年頃の女の子らしくほどよく引きしまった肉体。

そして大きく実った2つの……いや、凝視するなよ俺!?

チンクやディエチが冷たい視線送ってきてるけど、しょうがないじゃん!

 

「さて、これを君に見せたのには理由があるのだよ。正直に答えてほしい……」

 

さっきまでの笑みをひっこめて、真剣な表情でスカさんは言って来た。

そのシリアス表情に自然とゴクリと喉がなる。

 

「男の子から見て……彼女達は魅力的かい?」

「……はい?」

 

あ、セイン達がずっこけた。

 

「聞き方を変えようか、君はどの娘が好みかな?」

「…………どういう意味ですか?」

 

聞き方変えられても何が聞きたいのか全く分からん!

 

「いやなに、こうして年上のお姉さんタイプからメガネっ娘にロリっ娘、ボーイッシュ。クーデレタイプにヤンデレ、ツンデレ、巨乳に貧乳と色々揃えたつもりだったが、これで足りているかどうか、男の子の意見が聞きたくてね」

 

スカさん、もといこの変態は何を言っているのだろうか?

さっきのようにウーノのツッコミに助けを求めようとして振り向くが。

 

「………」

 

なんか色々限界だったようで、口を大きく開けて固まってる。

よく見るとトーレとドゥーエもだった。

 

「ふむ、どうやら君にはまだ早かったようだね。しかし、先程の反応で十分だ!」

 

何が十分何だろうか。というかこの人一体何がしたいんだ?

 

「えっと……あの、博士? つまりあなたは一体何者で何をしようとしてるんですか?」

「むっ? 科学者とはさっき言ったが? そうか、君は地球人で管理局員でもなかったね。私の名前を聞いてもピンとこないか。ならば、お教えしよう! 私はアルハザードの技術によって生み出された……」

 

そこからスカさんは自分がどうやって生まれたのか、何がしたいか、とかを詳しく説明してくれた。

のは良いんだけど、専門用語多すぎて何言っているかわかんねぇ~。

 

「ドクター、ドクター、あまり難しい話しない方がいいですわよ。彼全く話についていけてないみたい」

「ふむっ、そうかいクアットロ? 子供にも分かりやすいように説明したつもりだったのだが。仕方ない。結論だけを言おう。私は……管理局の崩壊、つまり世界征服がしたいのだよ!」

 

ババーンとわざわざクアットロが効果音やら証明やらで演出して盛り上げたつもりだろうけど……

管理局の崩壊=世界征服なのかな?

 

「ドクター、世界征服って」

「本気ですか?」

 

俺はともかくチンクやディエチまで呆れかえっているのはいいのか?

 

「あれ? どうしたんだい2人共?」

「いや、私達の生み出された目的って初めて聞いたので」

「そーいえば、そうね。私も聞いてなかったわ」

「そのうち話してくれると思って、いつの間にかうやむやになってたわ」

「えっ? ウーノやドゥーエまで聞かされてなかったの!?」

 

反応を見るとトーレやセイン、クアットロまでも聞いた事がなかった様子。

せめてウーノは知っておくべき事じゃなかったのか?

 

「これはしまった。ついうっかり忘れていたよ。まぁ、そういうわけで世界征服しちゃうよ?」

「うっかりですませて良い事じゃないですし! 軽いノリで言わないでください、ドクター!」

 

ウーノの抗議に頷くナンバーズ達。

いくらスカさんに作られたからっていきなり世界征服と言われても納得出来ないのか、お前ら悪の集団だったよな?

しかし、世界征服か……このまま見過ごしてたら将来Stsの事件が起きるんだよなー

なんか、それってつまらないな。

 

「おや? その顔は何か言いたそうだね? 意見があるなら遠慮なく言ってくれたまえ。その為に君をここに案内したのだよ、少年」

「じゃあまず、いい大人が色々な美女や美少女を並べて何をするかと思えば世界征服って、なんか安っぽくて安直すぎてつまらない」

 

遠慮なく言っていいとの事なので、その通り言ったのだけど固まっちゃったな。

 

「あ、安直? つまらない……だと?」

「だっていかにも三流悪役が思いつきそうな事じゃないですか」

「さ、三流、この私が三流!?」

「じゃあ聞きますけど、世界征服してその後何するんですか?」

「何をって、それは……その、だね。世界を恐怖で支配するという」

 

スカさん露骨に視線を逸らして、汗がダラダラ流れ落ちてる。

最初は俺の言葉に敵意すら見せていたナンバーズだけど、段々と冷たい視線をスカさんに送ってる。

 

「何十億と言う国民をどう管理して、経済や外交やら治安やら色々な問題をどう取り組むとか、そういう具体的にやりたい事ないんですか?」

「うっ、うぅ……」

「……お前、本当に子供か?」

 

トーレのツッコミは無視。

 

「世界征服がしたいだけで、その後の事何も考えていない。そもそも、そういう悪巧みって大体が失敗するのが世の常です。そうなった場合、残された娘達はどうなるんですか? 罪人として捕まるか路頭に迷うしかないんですよ!」

 

まー実際は色々な所に保護されて幸せに暮らしてるけどね。

あれ? 俺今何か未来をぶっ壊す事言ってないか?

 

「し、しかしだね。これはもう最初から決めていた事で、今更どうこう出来る事では……」

「いやいや、そんな事はないじゃないですか、ドクタースカさん! まだ娘達は揃っていない準備段階! これからいくらでも軌道修正は可能です!」

 

なんか言ってて楽しくなってきた♪

 

「軌道修正……で、ドクタースカさんとは私の事かな?」

「管理局を崩壊させたい、つまり管理局が憎いって事ですよね?」

「う、うん、まぁそう……なのかな?」

 

スカさん段々と歯切れ悪くなってきた。

よし、このまま押し通る!

 

「管理局が悔しがる姿を見れれば、それはそれで満足ではないんですか?」

「そうだな。うむ、それはそれで見てみたいね」

「だったらやる事は一つ! 世界征服、ではなく世界救済を行いましょう!」

「「「世界救済?」」」

 

スカさんだけでなくウーノ達も何言ってるんだコイツ的な目をしている。

 

「世界救済、つまり世界を救って見せるんですよ。具体的には管理局が手を出せない、もしくは気付かない世界の危機をスカさん達がズバっと解決させちゃうんです!」

「それと管理局が悔しがるのはどう繋がるんだ?」

 

トーレ、いい質問だ。

 

「つまり、権限やら何やら縛りプレイで動けない、動きの遅い管理局の代わりにスカさん達が人助けなどをする。すると住民達は管理局ではなく、犯罪者であるスカさん達を絶賛。管理局立場が無く悔しー! になるんです!」

 

時空管理局って地上やら本局やら縄張り争いもあったり、人材不足やら沢山問題抱えてて迅速に動けない事が多い。

アースラにいた時、散々クロノやリンディ艦長達愚痴ってたもんな。

 

「そんな無茶苦茶な 「それはナイスアイディアだよ!」 ……ドクター?」

 

おっし、どうやらスカさんノリ気になった。

 

「管理局では解決できない問題を私達が解決する! あぁ~なんて面白そうじゃないか。悪い事をしているわけじゃないから大手を振って活動できるし、奴らの悔しがる姿も見られるしまさに一石二鳥!」

「いえ、良い事しても派手に行動して良いと言う事ではないと思うのですが?」

 

ウーノが何か言っているけど、今のスカさんの耳には入っていないようだ。

ふー、これで洗脳完了。

なんか色々未来を変えちゃった気がするけど、気にしない気にしない。

スカさんはともかく、ウーノ達までただの犯罪者にするよりは少しは善行を詰んだ方が将来のためになるよね。

 

「決めたよ、ウーノ。すぐに計画変更だ! まずは、ナンバーズ達の性格を正義の味方風に補正しなければ」

「「「えっ!?」」」

 

物凄く嫌な予感がするトーレ達。

俺は逆に面白い事が起きるような予感しかしない。

 

「あぁ、安心したまえ。君達にはそういう処置は行うつもりはないさ。しかし、まだまだ調整が必要なノーヴェ達なら時間は十分にある」

 

トーレ達は心底安心したように息をはいた。

生まれてしまったウーノ達の性格を調整するのは色々問題があるみたい。

でも、まだ生まれていないノーヴェ達ならこれから十分に調整は可能なようだ。

 

「君達には、別に正義の味方について学んでもらう事にするよ。クアットロ」

「は~い! こんな事もあろうかと、用意しておきましたー!」

 

クアットロがどこからか持ってきたのは、沢山のブルーレイディスクだ。

よく見ると、俺でも分かる日本のアニメや特撮番組のBDだ。

ホント、どっから持ってきた?

 

「君達の武装の参考になればと色々取り揃えていたのだよ。最初は、正義の味方として描かれる彼らを鼻で笑いながら見ていたが、これは立派な正義の味方の教本になる!」

 

アン●ンマンやウ○トラマン、仮◎ライダーやらを1人で観賞してたのかスカさん……想像したら笑いがこみあげてきた。

 

「ド、ドクター? まさかこれを全部見ろと?」

「あぁ、その通りさ。その間は私とクアットロで十分だからね」

「え~なんでクア姉は不参加なの~!?」

 

クアットロは観賞会に不参加と言う事で、セインが抗議の声を上げた。

 

「私はドクターと一緒に全部見ましたもの。だから、それはかなりの名作揃いなのは保証するわ」

 

あ、スカさん1人で見てたわけじゃなかったのか。

 

「はー……分かりました。ほら、行くわよ」

「……なんで私がこんな事を」

「……今日は厄日ね」

 

ウーノは色々諦めきったようだ。

納得がいかないトーレやドゥーエ達を連れて部屋に戻って行った。

その際、何人かから恨みがましい目を向けられたが、気付かないフリをしておいた。

 

「さてと、君の今後についてだが、どうだい? しばらくアドバイザーとして私達に協力してくれないかい?」

「アドバイザー?」

 

こんな子供に何のアドバイスを求める気なんだ?

 

「ほんの2、3カ月でいい。それが終わればお望みの場所に転送してあげよう。その間三食昼寝付きで、それなりに給料も出す。どうだい?」

「勿論、その間の世話は私達でするわ。文字通りイ・ロ・イ・ロなお世話をね☆」

 

色目で迫ってくるが残念、俺にメガネ属性はない!

あ、ViVidのメガネノーヴェは可愛かったな。

しかし、思わぬ展開とはまさにこれだな。

元々これからの生活をどうしようか悩んでたし、管理局でも働けるか分からなかった。

でも、短期間とはいえここで働いて収入を得れれば、最低限どうにかなりそうだ。

まー問題はスカさんが犯罪者である事もだけど、アースラに戻ったらどうやって説明しようかという事だな。

 

「そう言えば君は管理局のアースラから来たのだったね。ならば、私から連絡しておこう」

「えっ? ちょっ、待って!」

 

俺が反応するよりも先にクアットロが空間モニターを操作し始めた。

ヤバい。この流れはヤバい!

 

『はい、こちらアースラですが、どなたですか?』

 

時既に遅く、どうやらアースラと繋がったようで、空間モニターにはエイミィの姿が映し出された。

おい! 仮にもエイミィは管理局員だぞ! あんたの顔見たら一目で犯罪者スカリエッティってバレちゃうだろ!

と、言おうと横を向いたら……噴き出しそうになった。

 

「もしもし? こちらで1人迷子を保護したのだが、その件で責任者の方はいるかな?」

 

なんとスカさん、この短時間で変装してましたよ!

膝まである銀髪のカツラを被って、額に月の形の紋があり、頬に2本の文様、おまけに衣装は戦国武将風……

ってそれ思いっきり殺●丸!?

ご丁寧に天○牙っぽい刀も腰に差しちゃってるし!

 

『えっ? 迷子? えぇ~!? 健人君!? ちょっ、ちょっとクロノ君。大変大変!』

 

俺の姿を見たエイミィは慌てた様子で席を離れ、クロノを呼びに行った。

どうやらリンディ艦長はいないようだな。

 

『健人! 今どこにいるんだ!? 艦長から転送中に行方不明と聞いて皆心配してたんだぞ!』

「あーいや……気が付いたら、変な所にいて……えっと、今この人のお世話になってる」

 

どう説明しろっつうねん!

そんな俺を見かねてスカさん、もとい殺生○が前に出てきた。

 

「失礼、私はちょっと人里離れた地で研究をしている者なのですが、彼を3カ月の間私の助手として雇いたいのですよ。勿論その間の彼の身の安全は私が保証します」

『なっ、いきなりそんな話をされても困ります。あなたの名前は? どの次元世界にいるんですか?』

「これは申しおくれました。私はブライト、ドクターブライトと呼んでください」

 

ちょっとー!? 何伝説のガンダム部隊の艦長さんの名前出しちゃってるんだ~!?

そう叫びそうになったけど、俺はモニターの映らない所でクアットロに抱き止められてて何も言えない。

ってかクロノもエイミィも、スカさんの服装についてのツッコミはなし?

思いっきり時代錯誤な衣装だよ!? 刀も差してるよ!?

あ、そう言えば、ミカヤみたく戦国武将っぽいバリアジャケットもあるから気にしないのか?

 

「シーッ、大丈夫よ。ここはドクターに任せておきましょう?」

 

ドクターブライト、スカさんは俺を保護した経緯と3ヶ月間助手として手伝う事になった経緯を説明した。

曰く、誰にも干渉されない辺境の地で人知れず研究していたが、流石に人手が欲しくなり、そんな時に俺が現れた。

と、真実と嘘をごちゃまぜにしながら、クロノとエイミィを説得していた。

最初は警戒していた2人だけど、段々とスカさんの話術にハマって納得した表情を浮かべ始めてる。

って、背中になんか当てられてるけど、そんなの気にする余裕なし!

このままじゃ下手すれば俺犯罪者の仲間扱いになるんですけどー!?

 

『では、ドクターブライト。3ヶ月後にアースラに彼を転送させると言うのですね?』

「えぇ、すでに彼には了承を得ています。そうだね、健人君?」

 

◎生丸の格好でそんな爽やかスマイルをするな、似合わないにも程がある!

しょうがない。ここは腹をくくるしかない。

 

「はい。ドクターブライトの研究、俺も興味があるんでしばらくここでドクターの手伝いをしながら、色々と考えたい事もあるんで、だから3ヶ月間だけ、俺、ここにいます!」

 

ハァー、言っちゃった。

自分でも予想外にスラスラとはっきりここに残りたいと言ったな。

背後でクアットロがパチパチと拍手してる。

脅されてるわけでも、洗脳されてるわけでない俺の様子にクロノもエイミィも困った顔を浮かべた。

 

『分かった。艦長には僕から話しておく。3ヶ月後、アースラに戻ってきたら詳しい話を聞かせてもらうよ』

「ありがとう、クロノ!」

『では、ドクターブライト。彼の事を頼みます』

「あぁ、任せてくれたまえ。傷一つ付けずにお返しするよ」

 

こうしてアースラとの通信は終わった。

クロノ達はこちらの発信元を逆探知しようとはしていたみたいだけど、最後に俺と話して危険性は少ないと判断したのかやめたらしい。

一先ず、これでしばらくの衣食住とバイト先はゲットできた。

 

で、今更だけど、スカさんがいるとはいえ、美少女だらけのここに3カ月もいるのか……色々ともつかな、俺。

 

 

 

続く




スカさん洗脳完了!(爆)
これからナンバーズはどうなるのかなー(棒)


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第8話 「どすこい!」

お待たせしました!
今回で、健人の知られざる能力の一端が明らかに!?(笑)


晴れて(?)犯罪者集団の手伝いと言うアルバイトを管理局公認(?)でやる事になった。

ウーノやチンク達はあれから延々と特撮ヒーロー物のBDを色々見せられた。

途中食事や休憩などで何度も部屋から出てきたけど、その度にウーノ、ドゥーエ、トーレの3人からは睨まれ、段々と殺気も混ざりだしてきた。

チンクとディエチは対照的に面白かっただの、見て良かっただの。

心底疲弊し切った顔をしながらも、笑顔で俺を気遣ってくれた。

あぁ~やっぱりこの2人は天使だな

で、意外にもセインが一番ハマってしまい。こっそりと自分の部屋で毎晩見ているんだとか。

悪の集団ナンバーズはこうしてお笑い集団と化していってる気がするのだが……これでいいのかな?

 

「細かい事は気にしちゃダメですわ♪」

「それあんたらが言っちゃう!?」

「まぁ気にするな、としか言えないのは事実だな」

 

あっけらかんと言ってくるクアットロとため息交じりで同情してくるチンク。

この2人がなぜか俺の世話係になった。ディエチは荷物運びをしてくれている。何気に力持ちだ。

俺にメガネ属性はないが……まぁ、明るくて陽気なお姉さんスタイルをいってるからいいか。

チンクもロリっ子とはいえ、今の俺もあまり変わらないし。

でもチンクもだが、クアットロもスカさんのお手伝いとかはいいのだろうか。

 

「あなたの世話をしつつ観察するのもドクターのお手伝いになりますもの。問題ないですわ」

 

何だろうか、この純粋無垢な笑顔。

クアットロの事はイノセントでしか知らないけど、とんでもなく違和感を感じる。

 

「クアットロの言う通りだ。そこも君が気にする必要はない」

「外回りには私やセインもいるしね」

 

チンクとディエチが俺の側により、小声で話した。

 

「最も私の場合、8割は君の世話だが……残り2割はクアットロの見張りだ」

「監視って事? 穏やかじゃないなぁ」

「いやいや、そういう意味じゃない。君は分からないかもしれないが、クアットロは前とは別人のように変わってしまった」

 

チンクの言いたい事の半分は分かる。

今のクアットロはどう見ても悪者には見えない。。

でも、俺からすればイノセントでのクアットロ、四菜って割とあんな感じだったような??

今もルンルンと鼻歌歌いながらも俺に割り当てられた部屋の掃除をしている。

 

「頭を強く打った衝撃で不具合が起きたのは間違いない。他の機能などにも障害が出ていないか、それを観察するのが私のもう1つの目的だ」

「なるほどなるほど。でもさ、そんな回りくどい事しなくても検査すれば一発で分かるんじゃないの?」

「いくら検査しても異常が見当たらなかった。それに肝心のドクターが今のクアットロを正常と言って、あまり本腰を入れて調べようとしない」

 

がっくりと肩を落とすチンク。

これは俺のせい……ではあるんだろうな。どう考えてもここに来た時の頭突きが原因っぽいし。

思えば、プレシアにも頭突きして性格が丸っきり変わったよな。

俺の頭突きには性格改変の特殊能力でもあるのか?

 

「それは私も気になっていた所だよ、健人君!」

「うわぁ!? スカさん!?」

「っ!?」

 

いつの間にかスカさんが俺達の背後に立っていた。

驚いてビクっとなったチンクが可愛いと思ってしまったのは内緒だ。

 

「君には魔力以外の不思議な力があるのかもしれない。今日はそれを実験で調べようと思う」

「調べるってどうやって? 一応ウーノが俺の事調べたけど?」

「あぁ、その事は聞いている。君にはとても強い魔力を秘めているが制御が出来ていないとも知っている。しかーし、それだけでは留まらない! と私は思っている」

「はぁ……」

 

駄神様との事勘付いてる。ってわけじゃなさそうだけど、スカさんの興味を引いているのは何となく分かる。

 

「安心したまえ、洗脳や人体改造をするわけでもない」

「それじゃあ一体どういう事を調べるつもりですか、ドクター?」

「いい質問だディエチ。ちょっと耳を貸したまえ」

「??」

 

ハテナマークを頭に浮かべながらもスカさんの言葉に耳を傾けるディエチ。

その顔が徐々に驚愕に染まり、困惑へと変わった。

 

「ド、ドクター!? いくらなんでもそれは可哀相ですよ!」

 

か、可哀相!? えっ、それ俺の事だよね? 俺可哀相な目に会うの!?

 

「これが彼女達の為さ、クアットロを見たまえ。あんなに生き生きとしているじゃないか」

「うぅ~それはそうですけど……分かりました。でもこれっきりですよ?」

「それで十分。残りの彼女達はこれから調整すればいいだけの話だ」

 

何やら小声で話してるようだけど、丸聞こえなんだよなー……五感が発達してるせいかな?

 

「では、行こうか。クアットロとチンクは引き続き部屋の手入れを頼むよ。何せ、思春期の男の子が数カ月生活するんだ。エロ本の隠し場所くらい作らないとね」

「は~い♪ お任せ下さい。ちゃんとベットやタンスの裏にスキマは作っておきますよー」

「……思春期とはそういうものなのか」

「おい、お前ら! 思春期の使い方間違え……てはいないけど! 俺まだ9歳だからな!? そんな心遣いいらないからな!?」

 

実際には18歳だけど!

ってか、スカさんは真顔でエロ本とかほざくし、クアットロは慈悲の籠った眼で俺を見てくるし、チンクはなんか納得した顔しているし! 

そもそもエロ本はどっから……って、クアットロ、その手に持っている雑誌が数冊入ってそうな紙袋はなんだ!?

あぁ~もうツッコミ所が多すぎて困る、マジで!

あ、ディエチは無言だけど、顔真っ赤だ。

 

「さてと、実験と言っても難しい事をするわけじゃない。君は何もしなければいい、すぐ終わるさ」

「……そうですか」

 

スカさんに飛びかかろうとした所を、申し訳なさそうな顔をしたディエチに首根っこを掴まれ、猫のように移動させられた。

 

「ご、ごめんね。大丈夫、私も多分チンク姉も君をそんな目で見てないから。ドクターとクアットロの悪ふざけなのは分かってるから」

 

ディエチのフォローになってるのか、なってないのか分からない慰めを聞きつつ、俺達は別フロアへと降り立った。

 

「あ、ドクター、私とトーレへの重要な用件とはなんでしょうか? もうBD観賞会はごめんですよ?」

「命令ならば従いますが、あのようなものに長時間縛られるのは流石に……」

 

エレベーターの前に面倒くさそうな顔をしたドゥーエとトーレがいた。

ただでさえ不機嫌気味なのに、俺の顔を見ると更に不機嫌さが増した。

 

「安心したまえ、今回はすごく短時間で済むよ。ふむ、2人共完璧な位置で立っているのは流石だ。そのまま動かないでくれたまえよ。では、ディエチ」

「はぁ……3人共、ごめんね」

 

スカさんが指を鳴らすと、俺を掴んでいたディエチがボソと呟くように謝った。

 

「何がごめん……ってえええぇぇぇ~~~!?」

 

何をするつもりか聞く前に、ディエチは既に行動を起こしていた。

首根っこを掴んだ手をそのまま、俺の両脇に抱えグルグルと回りだした。

そして、勢いそのままに呆気に取られたドゥーエとトーレに投げつけた。

 

「えっ!?」「なっ!?」

 

2人共驚くだけで反応が遅れた。

驚愕一色に染められたお姉さん2人にロケットキス、なんてロマンな展開にはならず、俺は2人の頭にぶつかった。

 

―ゴンッ!

 

そこで頭に浮かんだのは国民的格闘ゲームで力士キャラが重力も引力も何もかも無視して、ただ地面と平行に相手に向かって飛んでいく技、スーパー頭突き!

なーんて呑気な事を考えながら意識を失った。

 

 

 

「ドクター!! これは一体全体どういう事なんですか!!」

 

次に意識が戻ったのは、女性の怒鳴り声だった。

ボーっとした意識の中、首だけを動かすとスカさんにウーノが詰め寄っていた。

 

「お、落ちつきたまえよウーノ。本来、君にも参加してもらおうと思ったのだが、君の場合は必要ないと判断したんだ。君を信頼してね」

 

こうも狼狽してるスカさんって初めて見たかもしれない。

あ、無言でウーノがグーパンを始めた。痛そうだ。

でも、俺の頭もまだズキズキと痛い。

 

「気が付いたね! 大丈夫?」

 

反対側を向けば、心底安堵した顔のディエチとチンクがいた。

 

「ご、ごめんなさい。ドクターからあなたを2人の頭向けて投げ飛ばすようにって強く頼まれちゃって」

「私からも謝ろう。ドクターの命令とはいえ、訳の分からない実験の為に君を傷付ける事をさせてしまった」

 

2人揃って頭を下げられたけど、朦朧とした意識の中だったので、何に謝っているのか分からない。

そのうち、やっと頭がすっきりとしてきて、俺がディエチにブン投げられた事を思い出した。

 

「そうだ! ドゥーエとトーレは!? っつ~!?」

「大丈夫!? まだ起きない方がいいよ」

 

飛び起きた反動で頭に激痛が走った。

これで何度目だろ、一度目はプレシア、2度目はスカさんとクアットロ……アレ?

そこまで来てふと首を捻った。

プレシアもスカさんもクアットロも、俺が頭突きを噛ました相手は性格が180度どころか18000度くらい変わってしまった。

ならば、さっき頭突きしたあの2人は??

 

「なぁ……ドゥーエとトーレは?」

 

さっきとは全く違ったニュアンスで2人の無事を確認すると、ディエチとチンクは気まずそうに視線を逸らした。

それを見て、自然に溜息が零れる。

 

「健人君が起きたって!?」

「無事か、健人!?」

 

外から騒がしい足音が聞こえたと思ったら、ドアを蹴破る勢いで本人達登場。

あーこれは確認するまでもなく、一目見ただけで変わっちまったと分かるなぁ。

息を切らして……るのはドゥーエだけだけど、割と本気で心配そうな顔をしている2人。

それを見て、ディエチとチンクと俺はさっきよりも深いため息をして、ウーノはスカさんをフルボッコしていた手を止め目を丸くしてフリーズした。

 

「あ、良かった。目が覚めたのね。ごめんなさいねドクターの悪ふざけに付き合わせちゃって、頭は大丈夫?」

「どれどれ? 私達にぶつかってタンコブすら出来ていないとは頑丈だな。ディエチちゃんと謝ったのか? すまない。ディエチはドクターの命令には逆らえないんだ。彼女を責めないでやってくれ」

 

俺の側にかけより、頭部を中心にあちこち触って触診する2人。

さっきまで2人の眼は戦闘機人と言うロボットっぽい目だったが、ViVidでのノーヴェやスバルみたくほんのりと人間味を感じる。

それを見て、一番ショックを受けたのはウーノだ。

自らの手でボロ雑巾にしたスカさんを放り投げ、ドゥーエとトーレにかけよる

 

「あ、あなた達、本当にドゥーエとトーレなの?」

 

真顔で尋ねるウーノにスカさん以外の全員が同じ事を思った。

 

「あははは、何を言っているのウーノ。私は私よ?」

「あぁ、私も私だ。何もおかしな所はないぞ、ウーノ?」

 

眩しい笑顔でそう返す2人に、ウーノの意識は真っ白になり倒れてしまった。

 

「ウ、ウーノ!? ちょっといきなり倒れてどうしたのよ!?」

「大丈夫か!? 早くメディカルポットへ! ディエチ、手伝え! チンクはクアットロを呼んでくるんだ!」

「わ、分かった!」

 

目を丸くして倒れたウーノを抱えて、ドゥーエ達は慌てて出て行ってしまった。

残されたのは俺と……娘達にトドメとばかりに踏みつけられまくり、満身創痍のスカさんのみ。

 

「はっ、はははっ……実験は大成功だよ……健人、くん」

「そのまま笑っていっちまえよ、スカさん」

 

 

続く




はい、ナンバーズどんどん汚染が進んでいます。
もうある種のバイオハザードですねこりゃ(爆)
種明かしと言うか、健人のスーパー頭突きを食らうと、INNOCENTっぽい性格になります。
全員が全員じゃないですけど


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第9話 「もっと輝けぇ~!」

健人のデバイス完成!
見せ場がこの先あるかは未定(笑)


――いくぜ、ベルトさん!

 

――Ok!Start your engine!

 

「これだ!」

「「「やらせない!」」」

 

思わずウーノやドゥーエ達とハモってしまった。

言われたスカさんは予想外だったのか、ビクっとなっていて少し情けない。

 

「いや、しかしだね。私の意思を映したベルトで変身だなんて、ロマンだと思わないかい?」

「思わない」「思いたくもないです」「そんなの付けたくもないわ」

 

なおも食い下がるスカさんに、俺、ウーノ、ドゥーエが続け様に否定して行く。

 

「ク、クアットロはこのプランをどう思うかね?」

 

尚も往生際が悪いスカさんは、BDの続きを見ているクアットロに助けを求めたが。

 

「ドクターのベルトですか? そんなの死んでもイヤに決まってるじゃないか♪」

 

眩しい笑顔でキッパリと言われ、それがトドメとなってスカさんは真っ白になり崩れ落ちた。

 

なんでこんな事になっているかと言うと、全ては俺のデバイス作りの為だ。

この前、実験と言うかディエチに投げ飛ばれた埋め合わせと言う形でスカさんが無償で作ってくれると言った。

正確には……ウーノやトーレ達にボコられてだけど。

しかし、スカさんの所にあった試作型デバイスはどれもダメ。

そこで俺専用のデバイスのヒントになりそうな物を探したのだが……参考資料はよりにもよって特撮BD、しかも仮●ライダー物だ。

おかげで、ア●ダムを探しに古代遺跡をセインに片っ端から探させたり、ヘ○ヘイムの森をまたセインに探させたり、主にセインがヒドイ目にあった。

 

「スカさん、いい加減真面目に作ってくれないかなー俺のデバイス」

「わ、悪かった。と言うか、今までも真面目に君のデバイス作りに励んでいたのだが?」

「尚更タチ悪いわ! セインに謝れ!」

 

ちなみにセインはあっちこっちに行かされたせい+原生生物とバトりまくったせいで寝込んでいる。

寝言で、オ○フェノクがぁ~あっちにはファンガイ○が~! とうなされてたのはきっと悪い夢を見ているせいだと思いたい。

 

「はぁ、ドクターいい加減にしてくださいね。また食事抜きにされたいんですか?」

「そ、それは困る。うん、分かった今度こそ真面目にやろう」

 

セインがボロボロになって帰ってくる度に、ウーノに散々怒られて食事抜きにされていたっけ。

 

「やっぱり今まで真面目じゃなかったのかよ……」

「コホン。さて、健人君。君は今まで様々なタイプのデバイスを触ったわけだけど、何か気に入ったのはあるかな?」

 

改まったスカさんに言われ、アースラいた時から今まで試したデバイスの数々を思い起こした。

なのはやクロノが使ってた杖型のインテリジェントデバイスやストレージデバイス、剣や斧と言った武器の形をしたアームドデバイス、それにグローブ型のブーストデバイス。

ヴィヴィオやアインハルト達が使っていた、ぬいぐるみ型はまだこの時代ではないみたいだ。

うーん、杖を振って魔法を使うのもいいけど、俺って射撃や砲撃魔法にはあまり向いていないみたいだから、やっぱここはアームドデバイスだな。

剣や斧を持ってもいいけど、せっかく強靭な肉体を手に入れたんだから、格闘したい。

 

「うん。アームドデバイスがいい。それも両手足に装甲がつくような奴」

「それは面白い。確かにアームドデバイス、それも格闘型なら君の高い魔力にピッタリだろうね。しかも、君は異様に身体能力も高い事だし。うん、それでいこう」

 

俺の身体能力の高さはここに飛ばされた時、トーレ達との鬼ごっこで既に知ってるもんな。

それに、あの駄神曰く鍛えれば鍛えただけ強くなる身体みたいだし、なんか楽しみになってきた。

気分はサ○ヤ人だ!

 

「では、それでいこう。形状はどのようなものがいいかな?」

「うーんと、形状は……」

 

さて、どんなのがいいかな?

頭に浮かんだのは聖○士星矢に出てくる聖衣、でも何か違う。

俺の属性は炎だから、こう爆発力が合って燃えたぎるのがいいな。

……そうだ! アレだ!

 

「えっとえっと、何か描く物ちょうだい」

「えっ? あぁ、これでいいかしら?」

 

ウーノにもらったメモ紙に今頭に浮かんだイメージを描く。

絵はあまり描いた事ないけど、これで伝わってくれればいいや。

 

「ふむふむ、なるほど実に面白い! すぐに作る事にしよう。この出来栄えをノーヴェ達の武装にも活かせそうだ!」

 

俺のイメージ絵と簡単な説明を聞いたスカさんは、喜び勇んで研究室へと行ってしまった。

ウーノやクアットロ達もスカさんを追いかけて、残されたのはさっきからずっと黙っていたトーレ。

チンクとディエチはダウンしたセインの看病に付きっきりだ。

前まではポットで治療していたのだが、今じゃ普通の人間同様にベットに寝かせて療養させている。

これも俺の影響らしい。

で、トーレはなぜか俺が描いたイメージ絵をジッと見ている。

 

「どうしたんだトーレ? 俺のへったくそな絵を見てもしょうがないだろ?」

「いや、そうでもないぞ? 私は絵についてはよくわからないが、言いたい事が良く分かる絵だと思うが?」

「そりゃどうも……」

 

へたくそな絵を褒められても、悶絶しかないんだけど!?

身体がかゆくなってきた。

 

「健人。このデバイス……出来あがったら私と勝負だ!」

「はい? なんでそうなるんだ?」

「やっと健人にデバイスが出来るんだ。戦うのは当たり前だろ?」

「ごめん。全く意味が分からない」

「健人、私はお前と戦いたかった。お前の身体能力はすごい! 全力で追いかけても追いつかず、ライドインパルスでようやくだったからな。けど、お前にはデバイスがなかった。そんな相手に全力は出せない。やっとこれで全力が出せる!」

「あー……はい、そーですか」

 

この前から俺をちらちら見てウズウズしてたのはこう言う事かい。

トーレとドゥーエに頭突きしてから、性格が変わった。

変わったのはいいけど、トーレは何だか脳筋になってしまったようだ。

身体を動かしているのをよく見かけた。

大抵相手はセインで、その時のトーレはとても楽しそうだ。

ウーノ、クアットロは元々戦闘向きじゃないし、チンクは俺の世話があり、ディエチは仕事があるので暇そうなセインが相手にはぴったりなのだとか。

セインも結構仕事してるはずなんだが、どうやらドゥーエがうまくそそのかしてセインばかり相手にさせているようだ。

そのドゥーエは、相変わらず何考えてるかよくわからないし。よく俺のベットに潜り込んでくるし、自分の部屋にお持ち帰ろうとするし……アレ? ただの変態になってきてる?

 

「健人君、まだここにいたのね。あなたの魔力データもう一度見直したいから、来てもらえるかしら?」

「はーい」

 

そう言えば、ウーノには頭突きしてないよな?

でも何だか俺へは普通に優しいし、スカさんやドゥーエの暴走を止めたりしてくれる。

元からこういう性格って事なのか。

きっと今までスカさんに散々振り回されてきたんだろうな。

 

「ん? どうしたの? 私の顔何かついてる?」

「いや、ウーノって苦労人なんだなぁと思って」

 

そう言うとウーノは急に立ち止り俯いてしまった。

 

「ウ、ウーノ?」

 

的外れな事を言ったかと、顔を覗き込む。

 

「そうね。ここへ来て日が浅い君にも分かるのね」

 

うわぁ、なんか思いっきり凹んでる!? 顔に陰入ってるし!

 

「本当にね。あなたが来る前もドクターには散々苦労させられたのよ。ドゥーエもクアットロも基本的にドクターの指示には従うから私もそれに乗るしかなくてね」

 

近くの椅子に腰かけて愚痴を言い始めたぞ。

なんか、ドラマで見かける疲れ切ったOLみたいだ。

 

「ふふふっ、大変だったのよ。馬鹿げた実験は失敗しても成功しても採算合わなくて、予算だけが飛んでってそれに関する釈明を考えるのは私だったしねぇ」

「まぁ、馬鹿と天才は紙一重と言うし」

「そうよ、そうなのよ! 確かにドクターは天才なの! でもね、馬鹿で天災でもあるのよ!」

 

ウーノ、生みの親をそこまでこき下ろすなんて……

 

「だからね。君が来てくれてドクターやクアットロに頭突きしてくれて本当に助かったわ!」

「は、はぁ……それはよかった」

 

涙ながらに語るウーノに俺は苦笑いを浮かべるしか出来なかった。

それから1時間ほど、いかに今までウーノがドクター達の暴走に付き合わされたか愚痴られる羽目になった。

……キャラ崩壊にも程があるだろ、おい。

 

それから数日後、いよいよ俺のデバイスが完成した。

スカさんはあれからずっと研究室に籠っていて、食事もウーノが運んでいた。

正直、そこまでしてくれるとは思ってなかったので、感謝の気持ちでいっぱいだ。

それを言おうとしたらスカさんが。

 

「デバイス自体は2日で出来ていたが、塗装が納得いかなくてね。3日もかかってようやく納得行く色になったよ」

 

と聞かされて思わず殴った俺は悪くない。

 

「ドクターはほっといて早速デバイスを装着して見なさいよ。はい、これブレスレット型にしたわ」

 

クアットロが渡してくれたのは見た目が時計のような、ブレスレットだ。

 

「見た目だけじゃなくちゃんと時計の機能もあるのよ。それに携帯電話のように色々な機能を持たせてみたわ」

「あ、ホントだ。計算機にタイマーにミニゲームまで出来る!」

 

ここまで多機能なのはどうかと思うけど、便利なのは良い事だ。

腕時計型パソコンって所だな。

 

「それで名前は決まっているのか?」

「勿論さ、トーレ。このデバイスにはこの名前しかないってのを決めてあるよ」

「だったら早く名前を呼んでマスター認証を済ませると良いわよ。チンクちゃん達も見たがってるみたいだし」

「そうだな。えっと、デバイス名を言えばいいんだよな」

 

ドゥーエに急かされて、ブレスレットを付けた左手を高く掲げた。

 

「マスター認証、草薙健人。デバイス名……シェルブリット!」

<おっし。行くぜ、マスター!>

 

叫び声と共に、ブレスレット、シェルブリットが赤く輝き、全身を光が覆った。

白を基本として、赤や橙色など炎のようなプリントが入ったジャケットを羽織り、両手足に装甲が付き、そこから魔力が炎のように噴き出る。

見た目はまんまス○ライドのシェルブリットだ。

 

「よし、装着完了!」

「「「おぉ~!」」」

 

側で見ていたチンクやディエチ達から歓声があがる。

トーレが持ってきてくれた大きな鏡で全身を確認する。

想像していた通りの見た目に大満足だ。

さっきシェルブリットから聞こえてきた声も、要望通りシェルブリットのカ○マっぽい声だ。

 

「うっわぁ~なんかこれが自分だって信じられないなぁ」

「今までと違って魔力値は安定、暴走の危険もなし。フレームにも異常なし、全て正常よ」

 

ウーノが言った通り、今までのデバイスは使った途端にもって5秒でドカーンだったけど、シェルブリットは問題ない。

軽く手足を振ってみると、仰々しい装甲が付いてるとは思えないほど軽い。

 

「かっこいい~」

「うん、よく似合ってるよ」

「な、なんか羨ましい……あたしもこんなデバイス欲しかった!」

「ありがと、ディエチ、チンク。セイン、お前にだって見事なの付いてるだろ、指先に」

 

まぁ、指先に付いてるとは言え、カメラしか機能ないんだから盗撮くらいしか使い道なさそうだけど。

 

「むっきー! ねぇ、ドクター! あたしにも何かかっこいい武装つけてよー!」

「ふむそうだね……なら、ペリスコープ・アイに電子錠や魔力錠を開ける機能もつけるとしようか」

「やったー! ……ってそれ地味! 思いっきり地味!!」

 

セインとスカさんの漫才を無視して、トーレがそれはもう爽やかなスマイルを浮かべて近付いてきた。

 

「よーっし、健人。それじゃ、試運転と行こうか!」

「はははっ、やっぱりやるの?」

「当たり前だろ? せっかくの新型だ。性能を試さないでどうするよ? なぁ、シェルブレット!」

<おぉ、そこのねぇちゃんのいう通りだぜ。ってブレットじぇねぇ! シェルブリットだ!>

 

シェルパン、シェルブリットはやる気満々だし、ディエチ達は目を輝かせて観戦モードだし。

仕方ないか、俺とシェルブリットの初陣と行きますか!

 

 

 

続く

 




好きなんです、スクライド(笑)
デバイス名も形状もそのまんまシェルブリット(両手両足モード)です(笑)
違いは炎を纏って攻撃する事くらいですかね。
そのうち、健人のプロフィール含めて設定書く予定。


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第10話 「無理でした……」

スカさん家の日々。はもうすぐ終わります。
ってか終わらせないと長々と続きそう(笑)


輝けませんでしたorz

完敗も完敗、瞬殺されました♪

……トーレに殴りかかった、までは多分良かったと思う。

でも、それからすぐに一撃を入れられぶっ飛ばされてKO。

 

「あ、あれ?」

 

拳を突き出したままトーレが呆気に取られている。

他のみんなも目をパチクリさせている。

うん、そうだろうね。俺もビックリの瞬殺だよ!

 

<な、情けなさすぎるぜマスター>

「……うるさい。ほっといてくれ」

 

床に大の字になりながら、出来たてホヤホヤな相棒の呆れ声が聞こえる。

流石に勝てるとは思ってたなかった。

ひょっとしたら、一撃くらいいれれるワンチャンくらいないかなーとは思ってたけど、現実は非情である。

 

「だ、大丈夫か?」

「あ、うん。大丈夫」

 

納得がいかない顔をして気まずそうにするトーレの手を借りて起き上がり、自分の身体を再確認。

トーレの一撃は結構な強さのはずだったけど、傷らしい傷もなく痛みすらない。

 

<それは俺の防御が優秀だからだぜ、マスター!>

「あーはいはい。ありがとなシェルブリット」

 

分かってたけど、スカさんやウーノ達ががんばったおかげで、めっちゃ高性能だコイツは。

 

「しかし、予想外にも程があるな。少しは善戦すると思っていたのだが」

「それは同感ね。まさか数秒で負けるなんて」

 

チンクとドゥーエに同調するように、他のナンバーズからも意外だと言う声があがる。

ただ、スカさんだけは納得がいったような顔をしている。

 

「あのさー忘れてるかもしれないけど、俺ほんの数日前にこの世界にやってきた一般人! ホンットに魔法のマの字も分からない9歳児なんだよ!?」

「「「あーそう言えばそうだ」」」

 

トーレ達がポンと手を打ち、納得した顔をした。

全く……いくら神様に転生させられて、高い魔力と身体能力と高性能デバイス手に入れたからってさ……

元の世界ですら喧嘩のケの字もしたことない元18歳、現9歳児が、戦闘機人でもトップクラスに強いトーレに勝てるわけあるかぁ~!!

 

<でもよぉ、マスター。日本って管理外世界じゃ、マスターの同じく喧嘩もした事ない魔法も使った事ない9歳の女の子が大活躍したってデータにあるぜ?>

「……おのれ、高町なのはぁーー! 分かった。何かが決定的にズレてるのは、全部高町なのはって奴の仕業なんだ!」

「いや、その高町と言うのが誰の事か知らないが、関係ないんじゃないか?」

 

冷静にチンクがツッコミを入れるけど、知った事じゃない。

うん、俺に過度な期待がよせられるのは、なのはのせいって事にしよう。

よしっ、決めた!

 

――や、八つ当たりにも程があるんじゃないかなー!?

 

なんか幻聴聞こえたようだけど、無視。

 

「では健人君にはデバイスや魔法の使い方を教えるとして……しかし、困ったな」

 

ここでスカさんが珍しく困った顔をした。

 

「ドクター、どうしたんですか?」

「いや、今思ったのだが、デバイスはともかく、誰が彼に魔法を教えられるのかと思ってね。君達は魔導師ではないし」

「「「あっ……」」」

 

ちょっと待て待て、今更それはないでしょ!?

結局みんなで話し合った結果、デバイスの使い方や制御の仕方はウーノやクアットロ達が、戦い方に関してはトーレやチンク達が教えくれる事になった。

しかし、魔法その物に関してはアースラに戻ったらクロノ達に教えてもらえと言われた。

それまでに制御の仕方を覚えなきゃな……せっかく爆発しないデバイス手に入れたんだし。

 

 

 

それから、午前中はウーノ達の講義、午後はトーレ達の訓練やスカさんの研究の手伝いになった。

ひとまず今日は研究手伝いをする事になり、訓練や講義は明日からだ。

研究の手伝いと言っても、科学者でも何でもない俺が出来る事は限られている。

それは、スカさんが開発しようとしている機械兵器についての意見だ。

カプセルを巨大化したようなボディに数本の触手がウネウネとしていて、とても見た目が気色悪い。

 

「これを見てどう思う?」

「とても、気色悪いです」

 

スカさんに感想を聞かれたので、素直に答えるとやっぱりなという表情で顎に手をあてた。

 

「で、これはなんて名前?」

「名前? そう言えば……付けてなかった」

 

おい、なんか細かい所いい加減だな。

 

「元々戦力としてはあまり考えず、AMFを搭載した量で攻めるタイプの兵器だったからね。まだ起動実験すらしてないよ」

「じゃあまずは名前を付ける所から、ですねドクター。健人君にかっこいい名前を付けてもらいましょう」

「うん、私もそう思っていた所だよ、クアットロ」

 

そう言ってスカさん達の視線が俺に集中する。

えっ? ここでの初仕事がこんな触手マシーンの名付け親になる事!?

 

「何でもいいわよ? 私達じゃそういうセンスないし」

「あー……えーっと、じゃあ……ガジェットでどう?」

「「「よしっ、採用!」」」

 

もうちょいマシな名前思いつかなかったのか俺!?

仕方ないだろ! 土壇場で思いつかばないし、それならなのはStsのかっこいいOPで見た丸っこい変な奴の名前そのまんま言っちゃっただけなんだし!

原作通りで素敵な名前だネ!

 

「ではこのガジェットの見た目を改良していくとしようか」

「健人の言う通り、よく見ると確かに気色悪い。こんなのと一緒に仕事は御免だな」

「チンク姉に同意~やっぱり見た目が気持ち悪いよー」

 

いかにも悪の組織が使いそうな兵器だなーとは思うけど、正義の組織(笑)に生まれ変わるにはこの見た目はダメらしい。

 

「ならばまずはこれを見てもらおうか」

 

そう言ったスカさんの背後にはいくつもの空間モニターが開かれ、ガジェットの外観修正案が陳列していた。

ウーノやドゥーエはあきれ顔でそれを端から眺めたが、クアットロやチンクまでも目を星のように輝かせて魅入っていた。

 

「あらぁ~! このカエルのようなロボットかっこいいじゃないですか、5体で変形合体も出来ますよ?」

「顔がそのままロボットになったようなのもいい。特にこの頭に砲塔が載っているタイプがいいな!」

 

お前ら、わざと言っているな?

 

「なぁ、スカさん? 自分でデザイン考えるの面倒だから、アニメや特撮のメカを参考にして日本人である俺に選んでもらえば手っとり速く済む……と思ってない?」

「ナンノコトカナー?」

「こっち向けよ、おい!」

「ふむ、概ねその通りだが、作業時間の短縮は重要な事なのだよ? 他のナンバーズが揃う前に準備万端にしたいからね」

 

理には叶っている……のかなー?

ともかく、口でああ言ったけど、俺も内心実はワクワクしてる。

リリカルなのはと言うアニメの世界にやってきて、更にスクライドのシェルブリットをデバイスと言う形で手に入れて、更に更に他のアニメのロボを実際に見れるかもしれない……これは幸運だ!

 

「よーっし、なんか燃えてきた―!」

「健人君、健人君、実際燃えてるから!?」

「あ、ごめん。ウーノ」

 

テンションあがりすぎてうっかり炎出しちゃったようだ。

でも、すぐに抑える事が出来たのもデバイスのおかげだな。

 

「では、健人君。一緒に考案して行こうじゃないか。新しい正義の使者を!」

「おぉー!」

 

こうして、新型ガジェットの開発が始まったのだが、そう簡単に行くわけがなかった。

ガジェットにはAMFという魔力結合を遮断する防御フィールドを張れる機能がある。

それを最大限に生かすには複雑な形状では不具合が起きやすいらしい。

だから、単純に丸い形をして触手……アームケーブルで複雑な動作を行うようにしたようだ。

単純な形状、ねぇ。

1つ思い浮かんだけど、あれは戦闘用には向かないな。

でも待てよ? 戦闘用でなければいいのか?

 

「スカさんスカさん、これって全部戦闘用にする必要あるの?」

「それはどう言う意味かね?」

「いや、ガジェットの目的って運搬とかそういう目的で作るのもありかなーと」

「そうだね。チンクやディエチなど空戦用ではない子もいるから、彼女達の運搬兼援護としての目的で作ろうとしたタイプもあるよ」

 

そう言って見せてくれた設計図には、小型の全翼機のような形状のタイプがあり、Ⅱ型と名前が付いていた。

これなら上にチンク達を乗せて飛行する事も出来そうだ。

形状もさっき見た奴よりはマシだ。

機体の下には攻撃用の砲塔が付いていて、小型戦闘機としても十分にかっこいい。

 

「それで、どうかしたのかい?」

「いや、1つ思いついた形状のがあるんだけど、こっちの方がかっこいいからいいや」

「ふむふむ、一応見せてくれるかな? 今後の参考になるかもしれない」

「えっ、うーん、分かったよ」

 

ウーノからまた描く物をもらい、描いて行く。

シェルブリットよりは構造が単純なので、すぐに描き終えた。

 

「これだよ。単に移動や運搬用に特化してて、AMFは乗せないけどその代わり物凄く速くなると思うんだ」

 

スカさんやウーノ、クアットロに見せたのはロ○クマンに出てくるアイテム2号だ。

 

「ほほう、これはなかなかシンプルだがいいんじゃないかな?」

「そうですね。戦闘能力を付けるのは難しいですけど」

「1人で乗る移動用としてはかえって戦闘力ない方がいいでしょう。この形状なら安上がりで組み立てられそうですし」

 

意外にも好評だった。

ガジェットⅡ型よりも小型だが、飛行速度は倍以上出せるとの事。

さらにこれだけ小型ならば他のガジェットに搭載して、いざという時の逃走手段にも出来るらしい。

 

「Ⅱ型の底にはこれを1機搭載する事にしよう。元々誘導ミサイルを付ける予定だったが、正義の味方が質量兵器を使うのはよくないな、うん」

 

なんか物騒な事言ってる。質量兵器ってこの世界じゃ禁止されてる実弾とかミサイルとかあんなタイプの事だよな。

 

「それと、ガジェットのカラーリングを変えてみませんか? 改めてみると気色悪い理由の1つに色が悪いように見えますわ」

「それだクアットロ! こんな地味な色じゃ目立たないな!」

 

クアットロとスカさんの意見が微妙に食い違ってる気がする。

あと、カラーリングってガンプラかよ!

 

「では、このようなカラーはいかがですか?」

 

クアットロがコンソールを操作すると、ガジェットⅡ型は全身が金色になった。

派手は派手だけどさー、なぜに全部金ぴか!?

 

「おぉ~! これは派手だね!」

「でも目立ちすぎないかしら?」

「それでしたら、こうしましょう」

 

ちょちょいっとクアットロが操作すると、金一色だったⅡ型に赤が加えられた。

さしずめ……アイアンマンガジェット?

 

「まぁ、これなら目立ち過ぎず地味すぎずいいんじゃないでしょうか?」

「ふむふむ、どうだい健人君? このガジェットⅡ型改は?」

 

スカさんは描いた絵を渡した後、邪魔にならないように部屋の隅で座っていた俺に声をかけた。

専門的な話には関わらない方がいい。どんな事に関してもね。

 

「いいんじゃない? いっそのこと、みんなが着てるそのビッチビチのスーツも色合い変えてみたら?」

「えぇーこれ結構気に入ってる色なんですけどね。地味ですか?」

「我々は心機一転したんだ。色々変えてみるのもいいんじゃない?」

「それもそうですね。でもそれに関してはチンクちゃん達も交えて話した方が良さそうです。呼んできますねー」

 

こうしてナンバーズ&ガジェットの改造計画は着々と進んで行った。

しかし、最初はガジェットⅠ型の外観を変える話が、脱線しまくっている気がするのは気のせいか?

って、それは俺のせいだったな……

明日からは本格的な訓練に入る。

別に強くなってどうするって言う目的は今はないけど、せっかくの力を腐らせるのは勿体ないよね。

空も自由に飛びたいし。

 

 

あれ? でも待てよ? アースラに格闘型の魔導師っていたっけ?

クロノは完全に典型的な中遠距離型、アルフは一応格闘型だけど、使い魔でサポートタイプと言っていた。

フェイトは鎌使いだし、そもそも裁判でそれどころじゃないだろうし。

うーん、どっかに格闘型魔導師いないかな。

出来れば美人さんがいいけど、そんなうまい話ないよなー

 

「クシュンッ!」

「あら、クイント風邪?」

「うーん、どこかで誰かが私の噂してるのかも?」

 

とある場所で青紫色の髪をした女性がくしゃみをしたとかしなかったとか……

 

 

続く

 




最後に出てきた彼女、もうちょい後で本格的に出てきます。


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第11話 「またかよ!」

お待たせしました!
今回からまた新展開です!


スカさんファミリーに仮入部(?)して早3ヶ月。

その間にも色々な事があった。

クアットロやドゥーエに魔法やミッドチルダなどの事について教わったり……

 

「じゃあ、今日は年下の後輩キャラと年上のお姉さんキャラの口説き方を教えてあげるわ。と言うわけで、私達を口説いてね健人君♪」

「何変な事教えてるのよ、ドゥーエ!!」

「むぅ、見た目で年下扱いは腑に落ちないが、健人を先輩と呼ぶのも悪くないな」

「チンクちゃーん? ドゥーエ姉様の戯言につき合わなくていいんですよ?」

 

トーレやディエチ達相手にデバイスの使い方や戦い方を教わったり……

 

「じゃあ復習するぜ。左腕を伸ばして次に右腕を伸ばして交差させて、変身! と叫んでからベルトの両脇のスイッチを押すこの動作は……」

「仮面ラ○ダーアギト、バーニングフォーム!」

「惜しい! これは最終回でのシャイニングフォームへの変身ポーズだ!」

「セイン! 何を教えているんだ! まずはウ○トラマンの変身ポーズが先だろう!」

「えぇ~だってあっちは変身アイテム掲げるだけで終わりじゃん、トーレ姉」

「ここは戦隊物で行こうよ、2人共。ほら、5人分のレ○ジャーキー持ってきたからさ」

「あんた達まで何変な事教えてるのよ! ってかディエチまでどこからそれ持ってきたの!?」

 

も、勿論ちゃんと勉強したし、訓練も受けたぞ?

 

まーそういうわけで、今日はアースラに戻る日。

このアジトにある転送装置でアースラに一度戻り、そこからクロノ達と管理局本局へ行く予定だ。

スカさんやウーノ、クアットロ達ナンバーズ総出でお見送り。

本当はノーヴェとかまだ生まれていないナンバーズにも会いたかったんだけど、どうにもまだ時間かかるみたいだ。

機会があれば、会ってみたいな。

スカさん達の性格変更を受けてどんな風になったかちょっと興味あるし。

 

「健人君、この3カ月は実に有意義だったよ。君の意見でガジェットドローンも更に進化するだろうしね」

「スカさん、何事にも程々にして下さいね。ウーノが胃薬を主食にする前に」

 

ホント、スカさんの暴走は止まらなかった。

ガジェットにAIを搭載したら、ウーノをママ呼ばわりしてキレさせたり。

ディエチの武装を改造して、腕が変形してバスターになると言う風にしたらキレてハチの巣にされかけたり……

これらのほとんどは俺がこそっと言った事がきっかけだったりするのだが、これは俺とスカさんだけの秘密だ。

本当は皆にバレバレだけど、なぜかスカさんが被害に合っているのは俺だけの秘密だ。

 

「ウーノも色々ありがとう。料理、うまかったよ」

「はぁ~慣れない事はするもんじゃないわね。ノーヴェ達には料理の仕方から教える事にしましょう」

 

この3カ月掃除洗濯はともかく、料理を作っていたのはウーノだ。

俺が来るまではカプセル栄養剤だのインスタントばっかりだったが、スカさんが育ち盛りの男の子にそれはいけない! とウーノが作る事になった。

ドゥーエやクアットロ、ディエチも料理は作れるんだけど作りたがらず、チンクやトーレが作ったらダークマターが出来あがると言う始末。

最初はいやいや作っていたウーノもいつの間にか料理にはまってしまったと言うわけだ。

俺? 料理途中で誤って魔力使ってファイアーーー!! になってから台所出禁になりました。

 

「うぅーん、あなたがいないと寂しくなるわねぇ。またいつでも会いに来てね」

「あんたの場合、例えアースラにいても侵入してきそうだな……」

 

ドゥーエはなぜか俺に色目を使うようになってからと言うもの、毎晩ベットに侵入されるようになった。

怖いので一度トーレに身代わりをしてもらったら、部屋が爆発した。

でも、それ以外ではこの世界の事とか魔法の事もウーノやクアットロ達と教えてくれたので、結構世話にはなったよな。

エイミィ達が教えてくれた事よりもっと深くて黒い事も教えてくれたけど……

 

「健人は筋がいい。もっと身体を鍛えてキチンと学べばもっともっと強くなる。次に会うのを楽しみにしてるぞ」

「うん、色々ありがとうトーレ。おかげで結構強くなれたよ」

<結局避けるのに精一杯だったな、マスター>

「うるさい! 避けるだけじゃなく受けれるようにもなっただろ!」

<だったら今度は反撃もしてくれよ>

 

トーレのシェルブリットもある程度使いこなせるようになったし、攻撃もまともに避けれるようにはなった。

でも、攻撃も反撃も俺にはまだ無理!

何度も言うけど、俺は喧嘩のケの字もしらないし、人を殴った事すらないんだもん。

そんな俺がわずか3カ月でスーパー戦闘機人トーレ相手にほぼ無傷で終わらせられるって奇跡だよ?

 

「ふふっ、楽しい3カ月だったわ。また遊びにいらっしゃいね。歓迎するわよ」

「こちらこそ、クアットロ達との生活楽しかったよ。色々ありがとう、クアットロ」

 

何気に一番お世話になったのはクアットロだな。

魔法に関する知識を教えてくれたり、ドゥーエの暴走をウーノと止めてくれたり、身の周りの世話をチンクとしてくれたり、結構俺に付きっきりだった。

なんかこう。お姉さんって感じだった。

クアットロも以前、弟が出来たみたいで嬉しいって言ってくれたっけな。

 

「と言ってもこのアジトは近々放棄するのだけどな。今度は新しいアジトで新しい妹達と歓迎するよ、健人」

「あぁ、今度会う時を楽しみにしているよチンク」

 

チンクは、何だろうなある意味一番謎なキャラだったな。

一番まともかと期待してたんだけど、ドゥーエ達のボケに乗っかったりして天然なのかそういうキャラなのか分からない。

何かと世話を焼きたがってはクアットロに役目を取られて軽くすねたりもしたし、うん、お姉さんキャラになりたい妹キャラって感じだ。

 

「ドクターやドゥーエが散々迷惑かけてごめんね。後……私も迷惑かけちゃったね」

「気にしないでいいよ、ディエチが悪いわけじゃないし。ちゃんとその都度制裁加えてたしね」

 

ディエチが申し訳なさそうな顔をして謝ったけど、本当に俺は気にしてない。

以前いきなりドゥーエとトーレに向けてブン投げられたりは驚いたけど。

それからもスカさんの思いつきの実験に、ディエチがいやいやながら協力させられ俺が巻き込まれたりもした。

ディエチにはその度に謝られるので返ってこっちが恐縮してしまう。

 

「じゃあ、そろそろアースラに戻るよ」

 

と、ここでスカさん達に手を振りながら転送装置に入ろうとした。

が、突然グイっと肩を掴まれた。

 

「ちょーっと、私! 私を忘れるなー!」

「あ、セインいたんだ」

「いたよ! 最初からいたよ!!」

 

ウガーとなっているセインをドウドウと諫める。

セインも戦闘面で世話になったけど、それ以上に貴重なツッコミ要員として役に立ったな。

初日に初対面で胸を揉んでしまったのがセインの運のつきだと思っておこう、うん。

 

「全く、健人が来てから疲れる事多くなったっての!」

「いや、ウーノよりはマシだろ?」

「……そうだね」

「そんな目で私を見るのをやめてくれないかしら2人共!?」

 

こんなやりとりも新鮮で心地よかったな。

うん、ありがとうセイン。と心の中だけで礼を言っておこう。

 

<ちゃんと言えよ、マスター>

 

そんなツッコミはいらん、シェルブリット。

 

「名残り惜しいが、そろそろ約束の時間だ。健人君、本当にありがとう。いずれ新しいアジトが落ちついてノーヴェやセッテ達が覚醒したら連絡するよ」

「その時は、私が迎えに行くからね」

「ははっ、なるべく穏便によろしく……」

 

ドゥーエはこれから管理局にスパイとして潜入する予定らしい。

前から管理局への潜入は予定にはなっていたが、色々あって先伸ばしになっていたようだ。

俺はデバイスも手に入れて魔力も制御できるようになったので、これから管理局入りは確実になるだろうからドゥーエとの接触もあるかもしれない。

なんだろ……急に不安になってきた。

 

「はいはーい。アースラとのゲート開いたわよ」

「お、それじゃあ行くよ。スカさんも皆も本当にありがとう! またなー!」

「元気でねー!」

「また遊ぼうねー!」

 

みんなに手を振りつつ、俺は転送装置へと入った。

アースラからここに来る時同様、フッと浮き上がる感覚がした。

 

「あてっ!? えっ!? うわぁ~~!?」

 

そして、次の瞬間、俺は草の上を転がり落ちていた。

 

「うわわわっ、なんだなんだ!?」

 

しばらく坂らしき所をゴロンゴロンと転がり、ようやく止まった。

 

「はぁはぁ、止まったぁ……で、ここ……どこ?」

 

辺りを見渡してみると、どうやらここは河原の堤防のようだ。

 

「なんでアースラじゃないんだよ。ってかまたこの展開かぁ!」

 

今回は誰かの頭に当たる事なかったからいいようなものの、俺はまた目的地に転送されなかったようだ。

 

「見た感じここは地球っぽいけど、シェルブリット?」

<あぁ、どうやらここは地球の日本、海鳴市って所だな>

「海鳴市……ってマジか!?」

 

確か海鳴市ってなのはが住んでる街じゃん。

なんでこんな所に転送されたのかは知らないけど、砂漠とか北極とかに飛ばされなかっただけましか。

 

「ともかく、アースラに連絡取ろうか、シェルブリット通信開いて」

<ん? 出来ねえぞ?>

「はっ!? なんでだよ!?」

 

デバイスなら通信で他と連絡取れるんじゃなかったのか!?

 

<いや、俺まだそういう設定してないから。アースラとも接続されてないぞ?>

「接続って何!? ネットワーク設定とかそんなのかよ!?」

<そもそも通信機能のテストしてなかったんだよなー、今気付いたけどよ。と言うわけでドクターの所にも連絡できねえ>

「……なんだよそれぇ」

 

思わずorz体勢になってしまった。

デバイスの一通りのテストはしたつもりだったけど、肝心の通信に関しては誰も何も言ってなかったなそう言えば。

 

「……仕方ない。なのはの家まで行ってそこから連絡取ってもらおうか」

 

確かなのはのレイジングハートならアースラとも連絡取れるはず。

地球に戻った後も何度かなのはと指令室で話した事あるし。

 

<んで、マスター。そのなのはってのはどこに住んでるのか分かるのか?>

「翠屋って喫茶店がなのはの家だから、それを目指して後は人に聞いたりして行くしかないな」

 

気付けばもう夕方だ。綺麗な夕日を背に受けて、ひとまず堤防を降りる。

幸いここらへんは住宅街のようで、少し歩けばコンビニもありそうだ。

スカさんの所で働いた分の給料は貰ってきちんと鞄に入れてある。

けど、そのお金はミッドで使える通貨なので、日本じゃ使えない。

 

「早い所なのはの所に行って、金借りよう」

<子供に金借りに行く子供がどこにいるんだよ>

「少なくともここに1名いる」

 

付近を歩いてる人はいないので、俺とシェルブリットの会話が聞かれないのは良い事だな。

出ないとブツブツ独りごとを呟く不審な子供になっちゃうからな。

 

「ここら辺に店も人も見えずか。ひとまず、大通まで出てみるか」

 

と適当にぶらぶら歩いて大通を目指したのだが、ふと立ち止まって周囲をぐるりと見渡した。

なんて事ない住宅街だが、何かが引っ掛かる風景だ。

 

<ん? どうしたんだマスター?>

「いや、気のせい……かな?」

 

少し歩いて車も通る道まで出てきて、改めて周囲を見渡す。

 

「あ、あれ?」

 

やはり変な感じがして、思わず走り出す。

 

<お、おい。どうしたんだよ!>

 

あてもなく走り出したわけじゃない。

俺の記憶にある風景と、今見ている風景が似ているんだ。

 

「ここ知ってる」

 

俺が元いた世界で住んでいた街に、ここはそっくりだった。

いや、そっくりなんてもんじゃない。

家の色も並びも道路も公園も、その先にある自動販売機も、小さな商店も何もかもが同じだった。

 

「ここは、俺が住んでいた、街?」

 

 

 

続く

 




もっとスカさん達との騒動を書きたかったけど、それはまたいずれ……
いい加減次の展開に行きたかったので。
さて、次回はシリアスな予感??


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第12話 「たまにはシリアスもね?」

お待たせしました!
子狸達初登場!(笑)
関西弁が間違ってたらごめんなさい(汗)
いつもよりシリアス多めです。



スカさん家からアースラに転送されるはずだった、が。

なぜか転送されたのは地球の日本、それも俺が 【生前】 住んでいた所にそっくりの町だ。

 

<マスター、間違いないぜ。やっぱりここは日本の海鳴市中丘町って所だ>

 

再度シェルブリットに現在地を確認してもらうと、俺が住んでいた町とは名前が違う。

こんな偶然はあるのだろうか、とフラフラと自然に足がとある所に向かって行く。

 

「えっと、ここにコンビニがあって」

 

――お兄ちゃん、買い食いしようよ。中学デビュー記念!

 

――おいおい、奈々。それは何か違うと思うんだけど?

 

――いいじゃん。あ、今日は新刊発売日だった! ここで売っててラッキー♪

 

唐突に頭に浮かんだのは妹、奈々が中学に入学してすぐの頃。

よくここのコンビニに寄ったんだよな。

と言っても、学校に通えたのなんてほんの数日だけど。

あははっ、名前まで一緒だ。

 

「……」

<どうしたんだマスター? いきなり黙って?>

「いや、なんでもない」

 

頭に浮かんだ事を振りはらうようにして、俺はどんどん進んで行った。

 

「ここは公園か、目の前にバス亭があるのも一緒だ」

 

――いいなぁ。ぼくもみんなとここであそびたい!

 

――健人、大丈夫よ。きっとまた遊べるようになるから。ねっ?

 

――……うん。

 

この公園で遊んでる友達を見て、一緒に遊びたいって駄々をこねて母さんを困らせたっけ。

こっそり遊ぼうとしたら、怒られた事も何度も合ったし。

外で遊ぶ事なんて、当時の俺に出来るわけないのにな。

置いてある遊具も何もかもが一緒だ。

 

<マスター、一体どこに向かってるんだよ?>

「……もう少しで俺の家なんだ」

<俺の家って、マスター。ここは別世界、違うんだろ? 何しに行くんだよ>

 

シェルブリットの言う通りだ。

俺の家なんてここにあるわけない。ここは同じ地球で同じ日本でも町の名前が違う別世界。

でも、それでも俺は自然に走り出していた。

もう帰れない所だとしても、分かっていても。

第一、あの家は、父さんが残してくれたあの家は、死ぬ前に火事で焼け落ちた。

だからこそ、別世界のここでは、あるかもしれないと言う変な期待をしてしまった。

 

――ここはね。お父さんとお母さんが結婚してすぐに建てたの。家族いっぱい作ろうって、張りきり過ぎちゃってこんな大きい家にしちゃったのだけどね。

 

――ぼく、この家好きだよ。明るくて暖かいもん。だから1人でいても寂しくないし。

 

――わたしも好き!

 

――……そう、そうね。お父さんが遺してくれた家だものね。

――お母さん、泣いてるの?

 

父さんは奈々が生まれて少しした頃、事故で亡くなった。

俺も奈々もわけがわからず、母さんは俺たちを抱きしめて泣いてたけど、家にいると父さんがいるような気がしたっけ。

 

「ここも、この家も一緒、何もかもが一緒だ」

<マスター、大丈夫か? さっきから心拍数や呼吸がおかしいぞ!?>

 

道をどんどん進んで行くと、見た事ある家家が立ち並んでいる。

まるで自分の家に帰るような感覚だ。

懐かしさと、怖さでさっきから胸の動悸が収まらない。

 

「っ、……あそこの角だ」

 

俺の家があった場所に段々と近づいて行く。周りに建っている家も作りも、壁や屋根の家も一緒だ。

目を閉じれば、あの頃の事がどんどん浮かんでは消えていく。

 

――おや、学校帰りかい? 楽しかった?

 

――あ、おばさん! うん、久しぶりにみんなと会って楽しかったよ!

 

――そうかい。それは良かったね。

 

「はぁ、はぁ……見えて、きた」

 

角にある家が見えてきた。

少し見えてきた屋根と壁は、住んでいた家と同じ色と形。

 

「すー、はー……」

 

一度立ち止まり目を閉じて、深く息をした。

そして、ゆっくりと瞼を開け、目の前にある家を見上げる。

 

「……ぁ、あぁ」

 

そこには、全く同じ作りをした、俺の家があった。

家の中から人の気配はしない。

恐る恐る、表札を確認する。

 

「八神……はっ、ははっ、そうだよな。草薙って書かれてるわけない、よな」

 

俺は何を期待してここまで来たのだろうか。

ひょっとしたら、母さんや奈々、父さんがいるんじゃないかって期待していたのかもしれない。

父さんだけではない。2年前、俺の見舞いに来る途中に事故で亡くなった母さんと奈々にそっくりな人が住んではいないか、と。

 

「ははっ……馬鹿、だよな、俺」

 

目から涙が止まらなかった。

けど、俺はそれを拭う事もせず、ただ笑いながら、赤の他人の家を見上げてた。

「あの、大丈夫?」

「えっ?」

 

突然誰かに話しかけられ、ハッと振り向くとそこには怪訝そうな表情を浮かべる2人の女性と、車いすに乗った1人の少女が心配そうにこっちを見ていた。

 

「えっ、えっと……その、ごめんなさい!」

「あ、待って、ってはやっ!?」

 

3人の顔を見て、その時自分が泣いている事にようやく気付き、色々と頭がごっちゃになり、反射的に彼女達と反対方向へ駆け出してしまった。

泣いてる所を見られたのが恥ずかしかったのと、不審者と思われているかもしれないと言うのと、何より……彼女達は俺が知っている姿をしていた。

 

<お、おい。泣いてたと思ったらいきなり走り出してどうしたんだよ? さっきの奴ら知り合いか!?>

「いいから、とにかく逃げる!」

 

車椅子に乗っていた女の子は、八神はやてだった。

そして、はやての側にいたのは、シグナムとシャマルだ。

なんではやて達がここにいるんだ、とか、なんで車椅子に乗ってるんだ、とか色々疑問が浮かんだ。

と、ここで俺は大事な事に気付いた。

さっき俺が泣きながら見上げていた家、かかっていた表札に書かれていた文字は、八神。

あそこは八神はやてが住んでいる家だったのだ。

帰宅したら見知らぬ子供が泣きながら自分の家を見上げている。

はやて達にしてみれば不審者以外の何者でもない。

捕まれば物凄く厄介な事になる予感しかしない!

 

「待て!」

「えっ? えぇ~!? なんで追いかけてくるの!?」

 

後ろから声がして振り向くと、シグナムが走って追いかけてきた。

あれ? これ3カ月前にもなかったっけ?

あの時と違って、今回は誰にも頭突きしてないから追いかけてくるな―!

しかも、よりにもよってバトルマニアのシグナムかよー!

トーレ並に逃げ切れる自信ない!

魔法を使って飛んで逃げようかと思ったけど、それだと怪しさが倍増だ。

第一印象が不審者から不審な魔導師にランクアップしてしまう。

彼女達に合流して、管理局へ連絡してもらおうかとも一瞬考えたけど、ともかく逃げの一手だ。

 

「捕まえた!」

「うわわっ!?」

 

そういう考えているうちに、いつの間にか背後にまで接近していたシグナムに捕まってしまった。

最初から本気で走って飛べば良かったかな?

 

「落ちつけ、何もしはしない。しかし、お前は子供なのに随分と足が速いな」

 

シグナムは落ちついた声をしているが、少し睨んできてる気がする。

 

「あ、あの、何か用ですか? きれいなお姉さん?」

 

ちょっと怖かったが、精一杯年頃の子供の笑顔を浮かべた。

それを見てシグナムが少しだけ困惑したが、すぐに睨んできた。

だから怖いって!

 

「我がある……はやてが話がしたいと言ってきている。すまないが、来てくれないか?」

 

シグナムはさっきよりはすこーしだけ優しく言ってきたけど、顔は険しいままだ。

我がある、って主と言えば俺が不審がるから言い直したのかな?

 

「え、えっと、はい……いいですよ?」

 

断る理由が浮かばなかったので、素直に受け入れた。

それを見て、なぜかシグナムがまた首をかしげたように見えたが、一体何だったんだ?

 

<おい、念の為マスターの魔力や俺の存在を感知されないようにしておいたぜ>

 

シェルブリットが俺に念話で話しかけてきた。

今更ながら、念話という存在を忘れていたな。

 

『それはありがとう。ってそんな事も出来るのかよ』

<あぁ、これでマスターは普通にしていれば魔力のない一般人の子供にしか見えないはずだ。魔導師って気付かれないように気をつけろよ>

 

シェルブリット曰く、さっきからシグナムが念話で話しかけていたそうだが、シェルブリットが遮断してくれたおかげで俺が無反応だったので、俺が魔導師ではないと思ったらしい。

俺が魔導師、もしくは魔力持ちだと気付かれると面倒になりそうだからと、咄嗟にシェルブリットが気付かれないように処置してくれたようだ。

シェルブリットが使った魔力に対するステルス機能、これはクアットロが付けてくれた機能だそうだ。

ナイスな機転だシェルブリット!

それにそんな機能も付けてくれたクアットロにも感謝!

いかに原作キャラとは言え、不用意に俺が魔力持ちの魔導師モドキとバレるのはまずいよな。

よくよく思い出してみれば、確かはやて達って最初なのは達の敵だったはずだし。

うーん、今更だけど、無印やら原作アニメ全部見ておくべきだったかな。

 

 

シグナムに連れられて、八神家と戻った俺ははやてやシャマル、それに帰宅してきたヴィータとザフィーラを紹介された。

 

「初めまして、私の名前は八神はやて。あなたの名前を教えてくれへんかな?」

「俺は、草薙健人。健人でいいよ」

「健人君か。ほな私もはやてでええよ。八神やと見ての通り大勢おるんよ」

 

はやては警戒もせずに親しげに俺に話しかけてきた。

シグナム達は複雑そうな表情を浮かべている。

それからはやてに夕食を御馳走になった。

はやての料理の腕はプロ級で、アースラの食堂で食べた料理やウーノの手料理よりもうまかった。

将来いいお嫁さんになると言ったら、顔を真っ赤にして喜んでくれた。

色々世間話をしてるうちにヴィータとも大分打ち解けてきた。

シグナムとシャマルは最初からそこまで警戒心を出してなかったけど、ヴィータは露骨に警戒してたからな。

夕食を終えて、そろそろ行こうかと思っていると、はやてが真剣な表情をして俺に聞いてきた。

 

「それで、どうして健人君はうちを眺めてたんや? 何か、嫌な事でもあったん? あ、言いたくなかったら言わんでええよ?」

 

はやては表情こそ真剣そのものだったが心の底から心配そうに言ってくれた。さて、どうやって誤魔化そうか。

他のみんなをチラ見すると、シャマルははやてと同じく心配そうな表情を浮かべている。

シグナムはただじっと黙って、俺の返事を待っているだけと言う感じだ。

ただ、ヴィータはさっさと吐いて楽になれ、とでも言ってそうな顔をしている。

ザフィーラはずっと黙って狼形態だが、じっとこっちを見てきている。

あーこれ下手に誤魔化せないんだけど、どうしようか。

 

<管理局やスカリエッティ達に世話になってた事は黙っていた方がいいみたいだぜ。どうやらこいつら魔導師だけど、管理局員ってわけじゃなさそうだ>

 

シェルブリットははやて達が管理局に登録されていない魔導師だと言った。

管理局のデータにハッキングでもしかけたのか? 

と思ったが、ウーノが気付かれずに管理局のデータベースにアクセスできるようにしてくれたようだ。

ウーノもありがとう! でも、これバレたら重罪だと思うんだけど!?

まぁ、滅多に使わないようにしよう……

どうしようかと考え込んでいると、はやてがゆっくりと話し始めた。

 

「あんな、私の両親は幼い頃事故で亡くなって、それから親戚のおじさんに援助してもらいつつどうにか生活しとったんやけど、やっぱり1人は寂しかったなぁ。原因不明の病気で足も動かなくなって、この家で1人の生活は結構しんどかったんよ」

「でも、今のはやてはとても楽しそうに見えるけど、シグナムさん達のおかげ?」

「せやな。シグナム達が2カ月程前、私の誕生日にふらっと現れて、最初は何の事か分からんかったけど、私を主と呼んでくれて、それからみんなで暮らし始めて、おかげでもう寂しくなくなったんや」

「あ、主、それは!」

 

はやては自分の家庭環境だけではなく、シグナム達の事まで話し始めた。

シグナム達が急に焦り始めたのは、魔法関係の話は一般人に話すのはマズイって事だろうな。

俺、一般人じゃないけど。

 

「別にええよ。半ば無理やり健人君の秘密を聞こうとしとったんのは私らやし。それに、健人君なら話しても大丈夫やと思ったんや」

 

はやてがそう言うとシグナムはシャマル達と顔を見合わせ軽く息を吐くと、詳しくは秘密だが自分達は普通の人間ではなくはやてを主とする特別な存在と言う事を話してくれた。

当然、この事は誰にも話さないでくれとお願いされて、友達の秘密は絶対に話さないと言うと、皆笑顔になった。

さて、はやてやシグナム達がここまで話してくれたんだから、俺も話さないとダメだよな。

でも、どうやって話そうか。こなた神や管理局、スカさんの事をうまく話さないようして、尚且つ嘘を交えないようにしたいな。

うん、言うべき事は決まった。

俺ははやて達を見渡して、こう切り出した。

 

「俺は、一度死んでいるんだよ」

 

 

 

続く

 




健人の生前の話を今回と次回で触れます。

未だにメインヒロインを誰にするかと、どのルートにするか悩み中。
ハーレムルートにハーレムエンドでもいいかなー……


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第13話 「過去話が暗いのは御約束?」

お待たせしました
健人の生前話~……前話に含めても良かったかなー?


俺は生まれつき身体が弱かった。

色々な病気にもかかって、手術もした。

そんなんだから外で遊ぶ事なんて出来るわけもなかった。

小学校や中学校にも進学はしたけど、まともに授業を受けた記憶はあまりない。

保健室でテストを受けたり、家で家庭教師の先生に勉強を教わったくらいだ。

公園で元気に遊んでいる子達を見て、混ざりたいと言って母さんを困らせてたっけ。

 

――いつかきっと、みんなと遊べるからね。

 

家族は母さんと1つ下の妹、奈々だけ。

父さんは奈々が生まれて少しして事故で亡くなった。

遺されたのは俺達3人と、父さんが設計した一軒家と多額のお金。

父さんも母さんも仕事上、結構な収入がありお金に不自由した事はなかった。

病院では特別な個室が用意されていて、色々な本やテレビなどが置かれていた。

外へは遊びに行けず、運動も出来ない俺がネットをするのが日課になった。

たまに学校に行っても、変な目で見られるか無視されるかばかりで友達なんて出来なかった。

そんな俺が病院内で同じような子達やネットの中で友達をたくさん作った。

その友達の影響で色々な漫画やアニメ、ゲームにハマった。

外を見ると、楽しく登下校をしたり遊んだりする子達が溢れていて辛くなって、パソコンにばかり目を向けるようになった。

 

――ぼく、今日で退院なんだ。

 

――そっか……おめでとう。

 

そういう会話も何度もしていって、いつしか別れに慣れてしまって悲しくなったりする事がなくなった。

母さんは仕事が忙しいのによく見舞いに来てくれて、奈々も毎日学校帰りに来てくれたのは嬉しかった。

 

――お兄ちゃん、今日球技大会で私のクラス優勝したよ!

 

――ほら、庭に

 

でも、奈々の中学卒業式の帰り道、俺への見舞いに来る途中に2人共交通事故で死んだ。

俺は、家族をみんな亡くしてしまった。

父さんと母さんには親兄弟はいない。

葬儀を終えてすぐの頃、家が火事で全焼した。

幸い、俺は入院していた為何ともなかったけど、家族の思い出の品は病院に持ち込んでいた少し以外全部なくなった。

俺の手元には事故と火事の保険やら慰謝料やら多額のお金と、それ目当てで近づいてくる変なのが増えただけだった。

俺はますますネットやアニメなどにハマって、現実では誰にも心を開かなくなった。

そんな俺を看護師さん達は色々世話してくれて、おかげで少しは笑えるようになった。

 

で、ある日死んだ。

 

「いや、ちょっと待てよ! 最後! 最後がものすっごく雑じゃねぇか!?」

 

涙目のヴィータにつっこまれるけど、こればっかりはなんとも言いにくい事だ。

 

「仕方ないだろ。普通に寝て、起きたらここにいたんだから。死んだって事くらいしか分かんない」

 

俺は今、八神家の居間にてリンディ艦長やスカさん達にも話していない俺の生前話をした。

勿論、こなた神に出会ったとかアースラに拾われたとかスカさんとの出会いは話していない。

後、入院中に勧められてハマった一番のがリリカルなのはViVidなのも黙っている。

ま、正直ドン引きされるか信じてもらえないかの二択だったんだが、まさか大号泣祭りになるとは思わなかったわー

はやてやシャマル、ヴィータはともかく意外や意外、シグナムですら涙を拭いてるんだもん。

ザフィーラは相変わらず犬形態のまま、黙って俺の話を聞いてるけど、キリっとした中に暖かさを感じる目は口に以上に語る!

 

「そっか、健人く、さん……そんな事あったんやな。私の家を見上げて泣いてたのもしょうがないんやね。辛い事話してくれてありがとう。それとごめんな。そんな話させてしもうて」

「健人でいいよ。今の俺、9歳くらいっぽいし。それにもう終わった事だし、今はこうして生きてるから」

 

正直、死んだ以上に目が覚めたら身体が縮んでいたバーロー状態ってのが一番信じてもらえないと思った。

けど、はやて達はすんなり信じてくれた。

 

「初めて見かけた時もやけど、やっぱり健人さんは雰囲気もしっかりしてて、とても同い年には見えへんよ?」

 

リンディ艦長達にはそんな事言われた事ないけどな。

まぁ、なのはやフェイトも9歳に見えないほどしっかりしてたからかな。

 

「私も同感だ。どこか達観したように見えたのだが、18でそれだけ辛い目にあっていれば納得がいくな」

 

シグナムもさっきまでの警戒心はどこへやら、今は優しい目になっている。

 

「それを言うならはやてだってしっかりしてるじゃん。ってかさ、普通こういう話をすんなり信じないと思うんだけど?」

 

死んで別世界に飛ばされた。とか、気が付いたら若返ってたなんてどこの御伽話だっての。

だから、リンディ艦長達にも言ってなかった。

 

「うーん、なんでやろな。話してる時の健人さん、泣いてたからやろうな。嘘をついてる人には見えへんよ?」

「それは……どうも」

 

うわぁ~子供の前で号泣、それも2回もなんて思い出しただけで恥ずかしくなってきた。

穴があったら入りたい……

 

「これでも私達も色々な人を見てきてから、嘘をついてる人や悪い人は一目で分かるわ。だから、健人君はそういう人じゃない」

「私はまだ完全に信じたわけじゃねぇけどな。まぁ、はやてに危害を加えるわけじゃないって事だけは信じてやるよ」

「ありがとう、シャマル、ヴィータ、ザフィーラもな」

 

ザフィーラも同じような事を言いたげな目で俺を見上げていた。

 

「それじゃ、湿っぽい話はここまでや。健人さん、今日はもう遅いしうちで泊まっていきませんか?」

「えっ、そこまで世話になるわけには……」

 

確かに外を見るともう暗くなっていて、時間も時間だ。

だからと言って女性ばかりの家に泊まるのは、あ、ザフィーラいたか。

 

「ええって、元々私が引き止めたせいで遅くなったんやし。もっと色々話もしたいんよ」

 

困ったようにシグナムやシャマルを見たが、2人共笑顔で頷くだけだ。

まぁ、急ぐわけでもないし今から翠屋に行ってもどうしようもない。

ここははやての好意に甘える事にしよう。

 

「分かった。じゃあ泊まらせてもらうけど、健人さんは止めてくれ。こっちに来てお世話になってる人達にも俺が本当は18だって言ってないんだし」

「そっか、うん、分かった。なら健人君で呼ばせてもらうな。へへっ、初対面の私らに秘密打ち明けてくれてありがとうね」

 

こうして、今日は八神家にお泊りとなった。

結構遅い時間まではやて達と喋ったりゲームで遊んだりと、かなり楽しかった。

アースラでもフェイトやアリシアと遊んだりはしていたけど、こうやって友達の家で遊ぶのは生まれて初めてだった。

 

 

そして、次の日。

朝食を食べて、名残惜しそうな皆に見送られて八神家を後にした。

その際、シグナムから自分達の事は内緒にしてくれと頼まれた。

どうもこのはやて達は、まだなのはやフェイト達と出会う前みたいだし、色々事情があるんだろう。

 

「さーって、大分予定狂ったけど今度こそ翠屋に行ってなのはに助けてもらおう」

<その前に翠屋ってのがどこにあるのか聞かないとな>

「そうだった」

 

と言うわけで適当に歩いてコンビニで場所を聞き、翠屋へと向かった。

場所さえ分かれば後はシェルブリットに道のりを調べてもらえる。

同じ海鳴市内とは言え、今いる中浜町と翠屋がある藤見町近くの海鳴商店街とは少し離れているようだ。

だが、ここのお金を持っていないのでバスは使えず、結局徒歩しかない。

体力が有り余っているので疲れる事はないし、せっかくだから散歩がてらにこっちの日本を見て回ろう。

 

「流石にここら辺は見た事ないな」

 

八神家周辺は元いた世界と同じ風景だったが、少し離れると違ってきている。

何の因果か八神家周辺だけが同じだったんだろう。

 

「あーっ、健人君!?」

「んっ? なのは?」

 

突然誰かに呼ばれて振り向くと、道路の反対側になのはが俺を指さして立っていた。

なのはは俺を見ると一直線に横断歩道を走ってきた。

足速いな。

 

「健人君、今までどこにいたの!?」

「どこにって、えっ? 何?」

 

なんでここにいるの? と聞かれるのなら分かるけど、どこにいたのってどういう意味だ?

 

「昨日、エイミィさんから連絡があったんだよ! 健人君が行方不明で私の所に来てないかって!」

「お、落ちつけなのは。顔が近い近い!」

 

間近で見るとなのはは可愛いよなぁ、目がくりくりしてるし。

 

「あっ、ごめんね。でも健人君探してたんだよ?」

「俺を、探していた?」

 

なのはが言うにはこうだ。

昨日、海鳴市へ飛ばされた時、すぐにドクターブライト、もといスカさんからアースラに連絡が入った。

なぜか俺が海鳴市のどこかに飛ばされたとの事で、アースラからなのはに連絡が入り昨日今日と周囲を探していたらしい。

 

「そっか、それは迷惑かけたな、ごめん」

「ううん、謝らなくていいよ。健人君が悪いんじゃないんだし、無事でよかった」

 

なのはは俺の元気そうな姿を見て、心底安心したような顔をした。

フェイト達と違ってそんなに話していないのに、もうここまで心配するなんて……

はやてといい、お人好しが多いんだなここは。

 

「それで健人君は昨日から今までどこにいたの? どこかに向かってたみたいだけど?」

「翠屋に行こうとしたんだよ。なのはにアースラへ連絡取ってもらおうと思って。昨日は親切な人に泊めてもらったんだよ」

「そうだったんだ。だったら一緒に行こう。お母さんやお父さん達にも紹介したいし」

 

紹介? 気が早いな!? ってそんなわけないか。

それから翠屋へ向かう最中にこれまでの事を色々話した。

勿論、スカさんの事やはやての事は内緒だ。

……俺、色々な人に秘密にしてる事多いな。

 

「それにしても健人君って運が良いよね。親切な人に何度も助けてもらうなんて」

「そうだな。ドクターブライトにはデバイスまで作ってもらったし」

「えっ、健人君デバイスあるの!?」

「あぁ、シェルブリットって言うんだ」

 

周りに誰もいない事を確認して、なのはに左手のブレスレットを見せた。

 

<よぉ、俺の名はシェルブリットだ。よろしくな!>

「わっ、こ、こちらこそ初めまして、高町なのはです」

 

突然流暢に話しだしたシェルブリットに面食らったなのはは、思わず敬語で挨拶しペコリとお辞儀までした。

 

<へぇ、あんたがマスターがよく言ってた高町なのはか、思っていたよりも普通な子供だな>

「あれ? 健人君、私の事何か言っていたの?」

「あ、シェルブリットそれは黙ってろ」

<あぁ、言ってたぜ。なんでも地球には高町なのはっていうトンデモなくめちゃくちゃな魔砲少女がいるって>

 

シェルブリットに口止めしようとしたが、遅かったようでなのはは何とも言えない表情で固まっていた。

 

「と、トンでもない、めちゃくちゃな……まほうしょうじょ、それも何だか字が違う気がするの」

「あーいや、ほら、なのはは才能があるから……な?」

「ううん、健人君。私全然気にしてないから大丈夫なの♪」

 

笑顔が怖いです、流石連邦の、じゃなかった地球の白い悪魔。

 

結局、翠屋に着くまでなのはは絶対零度の笑顔のままだった。

 

 

 

続く

 




今の所、はやてが一歩リードな気がしてきたメインヒロイン争い。
しかし、一番メインヒロインにしたいキャラがまだ出てこないし出せない!
とっとと話進めちゃいたい!(笑)


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第14話 「そう言えば原作主人公でしたね……」

なのはとの本格対面話です。
ネタに走るのは楽しい~♪(笑)


はやて達と別れ、翠屋に向かっていた俺は運よくなのはに出会えた。

そして、なのはの案内で翠屋へとやってきたのだが……

 

「な、なのはが男の子を連れてきたー!?」

「どこで拾って来たのその子!?」

「まぁ、大きなおでん種」

「明日は槍(ゲイ・ボウ)が降ってくるか……」

 

何このカオスな高町家……

どうやらなのはが男友達を連れてくるのが生まれて初めてで、かなりテンパってるみたいだ。

 

「あ、あはははは……」

 

流石のなのはも笑うしかない。

ツッコミ所が満載だけど、とりあえず俺はオレンジツインテール髪した狐の化身じゃないし!

後、その槍降らせたら危ないどころじゃないぞ緑川ボイス!!

 

「本当に見苦しい所を見せちゃって申し訳ないね、草薙君」

「い、いえ、こちらこそ突然お邪魔してしまってすみません」

「あら、礼儀正しい子ね~」

 

その後、どうにか皆落ちつき、高町家のリビングで翠屋特製ケーキと紅茶を堪能している所だ。

ところで一家勢ぞろいでここにいるけど、店は大丈夫なのか?

 

「細かい事は気にしないでいいよ」

「そうそう、何せなのはが初めて男の子を連れてきたんだもの。店は少しの間閉じてても問題ないって」

 

それでいいのか高町兄妹、今お昼前でかき入れ時だぞ!?

 

「にゃ、にゃはははは……」

 

なのはは自分の家だと言うのに、戻って来てからずっと苦笑いを浮かべたまま固まってるし。

 

 

「な、何だか疲れたよぉ~」

 

お昼を御馳走になり、ただ今なのはの部屋。

ぐったりとしたなのはを目の前にして、俺は部屋の中を隅々まで凝視。

正直、女の子の部屋って入ったの初めてだからちょっとワクワクしてる。

妹の部屋には入った事あるけど、アレはノーカンで。

スカさん家では部屋には行ってない。

多分行ったとしてもぶっきらぼうな何もない部屋ばかりだっただろうし。

行かなくても皆俺の部屋に遊びに来てた。

八神家でもはやての部屋には行ってない。

 

「そ、そんなにジロジロ見ても面白いもの何もないよ?」

「そんな事ないって、可愛らしい部屋だなって思ってさ」

「そ、そうかな。ありがとう」

 

なのははモジモジと照れくさそうにしている。

悪いけど、そんなドキドキな展開じゃないと思うんだ。

何せ……なのはは、10歳近く年下の女の子だもん!

俺に少女趣味はないし守備範囲もそこまで広くはない。

来た当初はアリシアの裸とか目撃しちゃって動揺したけど、今はもう平気。

これがジークリンデやミカヤとか、大人ななのはやフェイトだったら、もうヤバかったね。

忘れてはいけない、俺は18俺は18俺は18……

 

「?? 健人君顔赤いけど、暑いの? エアコンいれるね」

「あーうん、そうして、ちょっと緊張してる……」

 

はい、無理でしたー!

だってなんか部屋の匂いとか女の子らしい雰囲気とか、色々な物に飲みこまれてます!

 

「そうなんだ。私もちょっと緊張、してるかな。あのね、アースラにいた時はお話し出来なかったから、こうしてまた会えてうれしいの!」

「お、おう」

 

目をキラキラさせて身を乗り出してくるなのはの迫力に、面喰ってしまった。

考えてみれば、なのはとは本当に会話してなかったな。

俺が来てからすぐになのははここに戻ってきたし。

何だか今更ながらすごく勿体ない事をしてる気がしてきた。

この世界に来てから俺は何をしてたんだ!?

主にした事って、クロノの髪を燃やしたりフェイトに魔法教わったりスカさん達の手伝い……うん、充実はしてるな。

フェイトとアリシアと友達になった。

スカさん達とも仲良くなった。

八神はやてやシグナム達とも親しくなった。

けど、肝心の主人公兼ヒロインのなのはとは全く関わってなかった!

すごーく勿体ない!

 

「よしっ、じゃあ今まで話せなかった分、沢山話そうぜ!」

「うん! あ、そうだ。ブライトさんに作ってもらったデバイス、もっとよく見せてほしいの」

「あーほら、これだ」

 

手首からシェルブリットを離して、なのはに手渡した。

なのはは、それを物珍しそうにじーっと眺めていた。

 

<なんだ嬢ちゃん。そんなに俺が珍しいのか?>

「うん。私もフェイトちゃんもアクセサリー型だから、腕時計みたいだなーって」

<おっと、ただの腕時計じゃないぜ。気温に湿度、風速に風向き、その他何でも計測して表示出来るぜ>

 

シェルブリットは機嫌よく色々な情報を画面に表示させ、なのははその度に驚いている。

普通の腕時計でも気温とかって表示されると思うんだけどな。

 

「それでそれで、どんな形なの? 杖!? それとも剣!?」

「なんでそこまでテンション高くなるのか分からないけど、えーっとどう言えば良いのかな。融合装着型?」

 

ってそれは元ネタだ!

 

「うわぁ~なんだか凄くてカッコ良さそうだね!」

「あれだけで理解しちゃうなのはも凄いな。実際に見せてもいいんだけど」

<一般人が間近にいる中ではオススメしないぜ。一応俺達の会話までは漏れてないけどな>

 

なのはが魔法少女なのは確か家族には秘密にしてるんだよな。

なら、今ここで俺が変身するわけにはいかないか。

 

「そうだね。お父さん達が見ちゃったら驚くだろうし」

「驚く程度じゃすまないだろうけどな」

「あ、そうだ。今度、健人君に会ったら聞きたい事があったんだ」

「ん? 何を聞きたいんだ?」

 

なのはは急に神妙な顔つきになったかと思うと、不安そうな表情を浮かべたりした。

 

「あのね……健人君は、元の世界に戻りたくないないのかなって」

 

申し訳なさそうに尋ねてきた内容に、目をパチクリさせた。

 

「えっとね、アースラにいる時の健人君の事フェイトちゃんやエイミィさん達から聞いたけど、元の世界に帰る事なんて全く考えていないようだって言ってたから、その気になっちゃって」

 

初めて会った時もなのははその事を気にしていた。

多分、俺が家族と離れ離れなのが気になっていたんだな。

優しい子だ。

 

「考えないようにしていたと言うか、何と言うか……気にするの止めた」

「なんで!? 家族や友達に会えなくなって寂しくないの!?」

 

なのははまるで自分の事のように声を荒げた。

目には涙まで浮かべている。

 

「……ありがとう、なのはは優しいな」

 

目尻に溜まった涙をそっと拭いて、優しく微笑んだ。

こんなんじゃ、実は死んでる。なんてとても言えないな、なのは達には。

あれははやて達とだけの秘密だ。

 

「でも、俺はさ寂しくないんだ。いきなり別世界に来て、魔法って言うわけ分からない力目覚めて驚いたけど、おかげでなのはやフェイト達に出会えた」

「健人君……」

「それにドクターブライトとか変な知り合いも出来たし。この世界に来て結構経ったけど毎日が楽しくて仕方ないから、寂しいなんて思った事ないよ」

 

これは本心だ。

死んだのは誰のせいでもない。

そりゃ死んだ後、駄神のせいで中途半端にリリカルなのはの世界来ちゃったけど、おかげで毎日が結構楽しい。

生前、と言うか元いた世界じゃ、朝から晩まで検査やベッドの上で何も出来ずに寝てるだけなんてしょっちゅうあった。

だから、俺はこの世界に来た事は後悔していない。

 

「そっか、うん、健人君がそう言うなら分かったの」

 

それで納得したのか、ようやくなのはは笑顔を浮かべてくれた。

俺なんかの為に泣いて欲しくない。

 

「ところで、健人君この3ヶ月間ブライドさんの所で何をしていたの?」

 

ブライト、スカさんのお世話になったとは言ったが、具体的に何をしていたかはまだ言ってなかった。

 

「うーん、そうだなぁ……一言で言うなら、男の浪漫?」

「ほへ?」

 

それからスカさんの所で何をしていたかをなのはに話した。

変な実験に付き合わされたとか、ドクターが作ろうとしているロボットのデザインを担当したとか、あまり料理がした事ないお姉さんの味見に付き合わされたとかとか。

 

「な、なかなか大変だったんだね……」

「そう? 結構楽しかったんだけど?」

 

変態なお姉さんに追いかけ回されたりは何度もあったけどね。

 

それからなのはの友達、アリサやすずかの事や、アースラにいた時のフェイトやアリシアの事などを色々話した。

外を見るともう夕方で、そろそろ帰ろうか、と思っている時だった。

 

<マスター、通信です>

「えっ? 誰からだろ?」

 

レイジングハートが突然喋り出した。

今思ったけど、シェルブリットってレイジングハートやバルディッシュに比べるとやけに饒舌だな。

 

<そりゃあの変態ドクターの自信作だからな!>

「生みの親をそこまで言うなんて……って、あぁー!? アースラ!!」

「あぁ~!」

 

レイジングハートを手に取ったなのはと俺は同時に叫び声を上げた。

そうだった。ここへ来た理由はアースラに通信取ってもらう為だったんだ。

すっかり忘れてた。

なのはを見ると、口に手をあて苦笑いを浮かべていた。

 

「え、えっと、なのは、その通信相手って誰なのかな?」

「い、今出すね!」

『あ、やっと繋がった。もしもし、なのはちゃん? 出るの遅かったけど、何かあった……って健人君!?』

「ど、どうも~」

『ちょ、ちょっと待っててね!』

 

通信モニターの向こうでエイミィが慌てて席を離れて行った。

多分、リンディ艦長かクロノを呼びに行ったんだろうな。

あ、この場面見覚えるんだが、これがデジャブか。

しばらくすると、リンディ艦長が走ってきた。

 

『健人君! 良かった、無事だったのね』

「ご心配おかけしました、リンディさん」

『全くよ。ドクターブライトには私からキツく抗議したわ。彼もあなたの事とても心配していたし、わざとじゃなく本当に事故だったみたいだけど。それで今はなのはさんと一緒にいるのね?』

「はい。今健人君と一緒に私の家にいます」

『分かりました。そちらにクロノを迎えに行かせるわ。場所は、前にお別れしたあの公園ね。あなた達が着く頃にはクロノを行かせられると思うから、よろしくね、なのはさん』

「分かりました! しっかり、健人君を送り届けますね」

「あははは、それじゃまた後で」

 

何だかなのはがお姉さんで、迷子の子である俺を送り届けるみたいだな。

ってまさにその通りか。

 

「それじゃあ行こうか、健人君」

「うん、案内よろしく」

 

こうして俺となのはは、以前フェイトとの感動の別れシーンの舞台となった臨海公園へと向かった。

帰り際に、高町家総出で盛大に見送りをされて、なのはと2人すごく恥ずかしい思いをした……

 

 

公園に着くと、既にクロノが待っていた。

周囲には人払いの結界が張ってあるようだ。

 

「全く、君はどこまでアクシデントに見舞われれば気が済むんだ?」

「あははは……俺に聞くな」

「ま、君のせいじゃないか。なのは、こちらの不手際で迷惑をかけたね」

「そんな事ないです。おかげで健人君とゆっくりお話出来ました」

「うん。美味しい料理やケーキも沢山御馳走になれたし」

「ふっ、そうか。それは良かったな」

 

あぁ、こっちも予想外のアクシデント続きだったけど、おかげではやてやシグナム、ヴィータ、シャマルとも知り合って仲良くなれた。

ザフィーラは、多分仲良くなれたはず。

普通の犬として過ごしていたから喋ったりはしなかったけどね。

それに、なのはの言う通りゆっくり話す事も出来た。

 

「では、行こうか。今度は迷子にならないでくれよ。手をつないだ方がいいかい?」

「リンディ艦長と手を繋いでも迷子になったんだけどな。まぁ、今回は遠慮するよ」

 

今回は、と言うか次回も何も野郎と手を繋ぐ気は毛頭ない。

 

「健人君、クロノ君、また会おうね! フェイトちゃん達に会ったら元気でって伝えてね!」

「あぁ、必ず伝えるよ。色々ありがとうなのは!」

 

元気いっぱいに手を振るなのはに負けじと、こちらも手を振った。

 

いやぁ~本当に色々あったなぁ。

あ、そうだ。デバイスの事を言わないとダメだな。

さて、これで俺も管理局入り出来るかな?

なんかこうワクワクしてきたぞ!

 

「顔が緩みまくってるぞ。そんなんじゃまた迷子になるかもな」

「2度も迷子になったんだ。そう何度も迷子になってたまるかい! 今度こそ俺はアースラに帰るんだ!」

「……いや、それが逆にフラグになってないか? まぁ、いい。行くよ」

 

クロノが杖を掲げて転送ポートを開いた。

今回こそちゃんと目的地まで転送されそうだ。

 

 

しかし、現実は非情である。

 

 

続く

 




はい、なのはの出番終了!
A'sまでさようなら~

次回はまたもや、トンでもない事になります(笑)


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第15話 「二度ある事は……ってもういいよ!」

お待たせしました!
ナカジマ家登場!


「………」

「「「………」」」

「え、えーっと……」

「「「………」」」

 

皆さん、俺はただ今武装したいかついおっさんと綺麗な美女2人に武器を突き付けられ、両手を上げております。

足元にはもっといかついおっさんを踏んづけたまま。

 

「おかしい。なんでこうなったんだ?」

 

本当なら俺はクロノに連れられてアースラにいるはずだった。

だが、運命のいたずらか、はたまたあの駄神のせいか。

またしても俺は転送事故で変な所へと飛ばされてしまった。

しかし! 3度目ともなれば慣れると言うモノ!

万が一に備えて、バリアジャケットを展開し、転送直後に頭から落ちないように受け身を取った。

そして、見事に両足揃えて着地!

うん、審査員がいたら皆10点満点をくれただろう、芸術的着地だ!

 

「うごっ!?」

 

と、足に妙な手ごたえを感じた。

例えるなら、ライダーキックがクリティカルヒットした感覚。

もっと言うなら、こんな感覚3カ月前にもあった。

恐る恐る足元を見ていると……

 

(-ノ-)/Ωチーン

 

とSEが鳴りそうな程見事に大の字で伸びているおっさんが1人。

その後頭部にはシェルブリットで武装した俺の両足が突き刺さっている。

あーこれはあれだ。

俺が転送直後に受け身を取ったから、今回は頭からではなく足からぶつかってしまったと。

で、両脚を踏み込むタイミングが飛び蹴りとしてジャストヒットしてしまったと。

おまけに今回はシェルブリット装着してるから、ただ頭突きするようにも攻撃力が倍増していると。

つまり……

 

<見事に決まったな。こりゃ死んでるなこのおっさん>

「死んでない死んでない! この人は二日酔いで倒れて眠ってただけだ! 俺がたまたまふんわりと踏んじゃっただけだ! ごめんねおっちゃん!」

<と言うか、足元よりも周りを見た方がいいぜ?>

「まわ、り?」

 

おっさんから目を上げ、周りを見渡してみると、あらいやだ綺麗なお姉さんが2人もいる。

隣には渋いおにーさんもいて、みんなでデバイスなんて物騒な物を構えながら怖い顔で俺を睨んでるじゃないですか♪

 

<現実逃避はやめようぜ?>

 

現実は、いつだって……こんなはずじゃないことばっかりだよ!!

これはクロノのセリフか。少しだけ変えたけど。

 

「ひとまず、レジアスからどいてもらおうか」

「あ、はい。すみません」

 

静々とおっさんから降りて、両手をあげる。

 

「で、お前は一体どこの誰だ?」

「見るからに高性能なデバイスを持っていて、おまけに高い魔力も持っているんだもの。一般人じゃないわよね?」

「不意打ちとは言え、地上本部の総括を単独で仕留めるなんて大胆な暗殺者さんね?」

 

わーお、俺暗殺者にされちまったぜ。

俺、ツバメなんて切れないし、他愛無しダンスも踊れないし!

あ、毒娘ちゃんは可愛いよね?

じゃなくって!

 

「え、えっと、アースラに連絡してもらえれば俺の事分かると思いますけど?」

「アースラ? 海の船か。メガーヌ、すぐに連絡を。クイント、すぐに医者を呼べ」

「「分かりました!」」

 

メガーヌ? クイント??

あ、思い出した!

どっかで見た事あると思ったら、綺麗なお姉さん2人はメガーヌとクイントだ!

メガーヌはティアナと同じ声でViVidアニメで見た事あるし、クイントもチラリと出たな。

って、クイントはイノセントに普通に出てる!

漫画やゲームで見て思ったけど、やっぱり2人共若いしめっちゃ美人!

あ、そうか。この時代なら2人共まだ20代前半なのか、そりゃ若い!

くそぉ~こんな美人と結婚して沢山の可愛い娘をもって、ゲンヤが羨ましいぞ!

うっわぁ~、なのは達よりもレアな感じがしてなんか感動だぁ。

 

「な、何だかこの子目がキラキラしてない?」

「う、うむ……」

 

 

その後アースラと連絡を取って身分照会などをして、俺の冤罪?が証明された。

で、俺が今いるのはミッドチルダの首都、グレンラガン……クラナガンの管理局地上本部らしい。

なんで俺こんな所にまで飛ばされたんだろうか。

やはり駄神のせいか。

 

『なんで君、そんな所に行っちゃってるの!? しかも、よりにもよって中将の真上におちるって、もはやわざとじゃない!?』

「それは俺が知りたいですよ。クロノが何かしたんじゃないの? 陸との関係愚痴ってたじゃん」

『僕に責任転嫁しないでくれないか!? いや、確かに今回の件では責任を感じているけど、だからってそんな嫌がらせはしないぞ!?』

 

わーわーぎゃーぎゃー騒ぐ俺達を見かねたクイントさんとメガーヌさんが間に入った。

 

「まぁまぁ、とにかく事情は分かりましたよ。彼が次元漂流者のほんとうにタダの子供だったのは驚きましたけど。ごめんね、怖い顔したおじさんがデバイス向けちゃって、怖かった?」

「怖い顔……」

「ク、クイント! 隊長が気にしてるホントの事言ったらダメよ!」

「ホントの事……」

 

怖い顔のおじさんが凹んでる。意外に気にしてたんだな。

ところで、このおじさん誰だろ?

さっき踏みつぶしたおっさんはレジアス中将って言うみたいだけど、知らない人だ。

 

「彼は本当に一般人で今回の件は完全な事故のようですし、中将も検査で異常はないですから、隊長?」

「そうだな。デバイスを所持している件も説明がついた。中将次第だろうが、恐らく大丈夫だろう」

 

ちなみにレジアス中将は頭を強く打ったが、検査に異常は出ずすぐに意識を回復したようだ。

念の為検査入院中だ。

無傷とは言え、中将を踏みつぶしてそんな楽観できないんだけど……

 

『デバイスねぇ。私達は知らなかった事なのよね』

 

リンディ艦長が困った顔をしている。

事前に言っておけばよかったかな。

 

「ブライトさんからもらったんです。アースラで驚かそうと思って黙ってたんですよ」

『まぁ、その件はこちらに戻ってからね。今回の件は中将が復帰してから改めて検討する事にして、健人君はしばらくそちらに預けた方がいいでしょうね』

 

仮にも地上本部に次元転送して中将の頭にライダーキックしちゃったんだもんなぁ。

逮捕は免れても事情聴取はしなければいけないだろうし。

あぁ、ここにきて犯罪者一歩手前か。

スカさん達に協力してる時点で犯罪者だけどね。

 

「なら、ここにいる間は私が預かります」

 

俺がこれからどうなるのかと思っていると、クイントさんが名乗りをあげた。

 

「大丈夫か、クイント?」

「えぇ、ちょうどあの娘達も近い年の子が身近にいた方がいいでしょうし。あの人もきっと良いと言うでしょう」

「そうね。まだ子供だから、地上本部の寮や施設よりもクイントの所がいいかもしれないわね」

 

クイントさんとメガーヌさんに言われ、隊長と呼ばれた怖い顔のおじさんは少し考えるそぶりを見せたが、すぐに顔をあげ俺をまっすぐに見つめてきた。

 

「悪い子には見えないな。うむ、いいだろう」

『では、健人君、何度も変な所に飛ばしちゃってごめんなさい。転送方法に問題がなかったかちゃんと調査するわね。それじゃあ、皆さん、健人君の事よろしくお願いします』

「あぁ、責任を持って俺達があずかろう」

 

リンディ艦長と隊長達は敬礼し合って、通信を終えた。

クロノ達の話じゃ、地上本部と本局は仲悪いって聞いたけど、今の会話では嫌悪感とかそう言うのはなく、普通にふんわりとしたやり取り出来ていた。

組織同士のいざこざは個人レベルじゃ特に問題ないって事か。

 

「クイント、今日はもうあがってこの子の事を頼む。明日は一緒に出てきてくれ。詳しい事はその時に決めよう」

「分かりました。では、お先に失礼します。ささっ、行こうか健人君」

「また明日ね健人君」

「クイントは面倒見がいいから、心配しなくても大丈夫だぞ」

「はい、ありがとうございます。メガーヌさん……えっと、隊長さん」

「……ゼストだ」

 

名前を呼ばれずに地味にショックを受けたゼスト隊長だった。

でも、やっぱりゼストとレジアスって誰か分かんないや。

 

 

クイントさんに連れられてやってきたのは、郊外のとある一軒家。

ミッドチルダはどんな家なのかと思ったが、地球にもありそうな一般的な家だ。

ここに来る途中に見たビルもそこまで変わった外観じゃなくて、行き交う車も地球にありそうな車だった。

こういうのがカルチャーショックと言うのか、違ったか。

 

「はい、到着。ここが私の家で、あなたの家よ」

「??」

 

クイントさんの家ってのは分かるけど、俺のってどう言う意味だろ?

 

「あなたを預かる少しの間とは言え、毎日にここに帰ってきて生活をするの。ほら、あなたの家でもあるでしょ?」

 

そう言われたのが、凄くうれしかった。

クイントさんはとて暖かい笑顔で、俺を迎えてくれた。

あぁ、これは母さんと同じ笑顔なんだ。

そう思うと涙がこみあげて来て、気付かれないように拭った。

 

「ふふっ、よしよし」

 

でも、クイントさんにはバレバレだったようだ。

優しく抱きしめられ頭を撫でられた。

 

「ゲンヤ、あぁ、私の旦那なんだけど、あの人にはもう伝えてあるから、後はあの娘達ね。2人共、きっと喜ぶわよ」

 

今更ながら気付いたけど、今この家にはあの2人がいるのか!

俺が知っているのは結構大人になっている時代だ。

あ、そうか。イノセントだと思えばいいのか。

 

「ただいま、今日は早く戻ったよー」

「おかえりなさい! おかあさんはやーい!」「おかえりー!」

 

ドアを開けると、元気のいい掛け声と共に、奥から2人の女の子が走ってきた。

あれがスバルとギンガか……ってちっさ!?

イノセントだと思ってたけど、あれより幼い。

確か、スバルが小2でギンガが中1だったけど、今目の前にいる2人はその頃よりもはるかに幼い。

 

「あれ? だれ?」

 

クイントさんに抱きついたギンガが、見慣れない俺をキョトンとした顔で見つめている。

結構可愛い仕草だ。

スバルは俺に気付くと、そそくさと柱の影に隠れてしまった。

見慣れない俺が怖いのかな。

 

「大丈夫よ、スバル。この子は草薙健人君。少しの間、ここで暮らす事になったの。仲良くしてあげてね」

「うん! わたし、ギンガ、よろしくね!」

 

ギンガは興味津々といった満面の笑顔で俺に手を差し出した。

この歳で握手を知ってるとは、なかなかやるな。

 

「はじめまして、俺は草薙健人。健人でいいよ」

「健人おにいちゃん!」

「お、おにいちゃん?」

 

なぜにいきなりおにいちゃん呼び?

 

「健人おにいちゃん、ダメ?」

「いや、ダメと言うか……」

 

どう応えればいいか分からず、クイントさんに目でSOSを送ったが。

 

「あら、良かったわねギンガ。お兄ちゃんが出来て」

 

もう俺がお兄ちゃん確定ですか!?

ギンガは少しシュンとした哀しげな表情になった。

あぁ、もうしょうがない、腹をくくろう。

 

「ギンガの好きに呼んでいいよ」

 

俺がそう言うと、表情を一変させ笑顔になり、全身からキラキラオーラが溢れかえってきた。

 

「健人おにいちゃん健人おにいちゃん!」

 

何が嬉しいのか、ギンガははしゃぎまくって俺の周りをグルグル回り出した。

 

「ありがと、健人君。ほら、スバルもそんな所にいないでこっち来て挨拶しなさい」

 

クイントさんがまだ柱に隠れているスバルに手招きすると、少しだけ身を乗り出してきた。

 

「……スバル、よろしく」

「よろしく、ってあれー!?」

 

それだけ言ってスバルは奥へと走って行ってしまった。

 

「?? どうしたのスバル?」

「きっと恥ずかしがっているだけよ。あの子、少し人見知りな所あるから」

「俺は気にしていませんよ。いきなり変な人来たらびっくりするのが普通ですし」

「まぁ、そうかもしれないわね。それより時々妙に大人っぽいもの言いするわよね、健人君って」

 

本当は18歳です。それでも、子供か。

 

「おっ、君が健人君だな。俺はゲンヤだ。よろしくな」

「はい、お世話になります!」

 

あれからすぐにゲンヤさんも戻ってきた。

何でも、レジアス中将が直々に今日は早くあがれと言って来たらしい。

そして、俺が今までどうしていたかや、スバルやギンガは事件の関係で引き取った養子だなどと身の上話をしつつ、夕食となった。

はやての所やなのはの所でも賑やかな食事になったけど、ナカジマ家でもそれは同じでギンガが特にテンションが高かった。

それから風呂に入る事になったのだが、なぜかクイントさんとギンガ、スバルと一緒に入る事になり、ゲンヤさんが何だか寂しそうにしていた。

ギンガはよく話しかけたり、遊んでくれたりしたけど、スバルは俺と目を合わせようとせず、会話もあまりせず終始距離を取っていた。

スバルと言えば、どの作品でも超元気娘だったんだけど、まだ幼いから人見知りが激しいのは仕方ない、のかな?

 

 

 

続く

 




地上本部に飛ばされてしまいました―次はどこへ跳ぶのでしょうか?(笑)

で、しばらくは地上本部とナカジマ家の話になります。
キャラのイノセント化が激しくなってきているような??


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第16話 「師ィ匠オォォ~~~!!」

サブタイは某Gガン風に叫んで読んでください。



全く意味はありません。


ナカジマ家で世話になった翌日、クイントさんに連れられて再度地上本部へとやってきた。

ゲンヤさんは別の部隊所属なので、玄関先で別れた。

俺達を出迎えてくれたオーリスと言う、いかにもキャリアウーマンな女性に連れられやってきたのは昨日と同じ部屋。

そこにはメガーヌさんと、顔が怖い人ゼストさんもいた。

 

「儂が時空管理局地上本部中将、レジアス・ゲイズである!」

 

ドドーンと効果音が聞こえてきそうな迫力満点なこの四角いおっさん。

昨日俺が思いっきりライダーキックをかましてしまった人だ。

あ、両脚蹴りだからライダーシュートの方がいいか?

ついでに言うとオーリスさんは彼の娘だった。

それはさておき四角いおっさんは腰に手を当て、胸を大きく張って威厳を出しているが、なぜか違和感を覚えた。

俺が知らないStsキャラだと思うけど、この人こんな面白キャラじゃないと思う、絶対。

だってこの場にいる全員ポカーンとしてるんだもん。

さっきまであんなに凛々しい表情を浮かべていたオーリスさんも、口を大きく開いてキャラ崩壊中だ。

 

「……れ、レジアス? お前本当にレジアスなのか?」

 

フリーズからいち早く立ち直ったゼストさんが恐る恐るレジアスさんへ声をかける。

どうもこの2人古くからの親友らしい。

 

「ん? どうしたのじゃ、ゼスト? 儂は儂じゃよ?」

「「「じゃよ!?」」」

 

またもやゼストさんやオーリスさん達が驚嘆の声を上げている。

俺はこのおっさんの事全く知らないが、こんな口調する人じゃないっぽい。

アレ? この流れはなんかすごーいデジャヴを感じるぞ?

でも、今回は頭突きしてないんだけど……

 

「オーリス、レジアスは確かに精密検査をしたんだな?」

「え、えぇ、脳波も正常だし何も問題はなかったわ。けど、もう一度じっくり検査する必要があるみたいね」

「その必要はない! 儂は儂じゃ! レジアス・ゲイズであーーーる!」

 

娘が病院へ行こっ? と優しく諭すようにいっても頑として行こうとしない四角いオヤジ。

それを見て、ゼストさんの視線がグイッとこっちへ向いた。

いやん、そんな怖い顔で睨まれるとおいらこわぁーい♪

 

「健人、少し聞きたい事が……」

「何睨んでるんですか隊長! 健人君怖がってるじゃないですか!」

「い、いや、睨んだつもりはないのだが……」

「もう! 健人君はまだ9歳なんですよ。ただでさえ怖い顔のおじさんに睨まれたら怖いに決まってるじゃないですか!」

「そう怖い怖いと言わなくてもいいのでは、と言うか俺は隊長なのだが……」

 

有無を言わさずキッパリと言い放ったクイントさんの剣幕にビビったのか、ゼストさんは見るからにションボリしてしまった。

クイントさん、言い過ぎ。

確かに物凄く怖かったけどね?

 

「ま、まぁまぁ隊長。ほら、これでも飲んで元気出して下さい!」

 

見かねたメガーヌさんが、いくつもの縦線が入って沈み込んでいるゼストさんへお茶を出して励ましている。

部隊の隊長と言う威厳が全くないな。

 

 

四角いおっさん、レジアスさんとオーリスさんの親子漫才は娘のマジ泣きで一先ず終了。

ウン、オレハナニモミナカッタ。

 

「君が草薙健人か。うむ、よくぞ儂の後頭部を蹴ってくれたな」

「き、昨日は本当にごめんなさい……えっ、よくぞ?」

 

よくも、ではなく?

 

「あぁ、君のような若者に蹴られて目を覚まさせられたのじゃよ。いくら守る為とは言え、手を出してはいけないモノが世の中にはある」

「は、はぁ……」

 

何の話だろ?

それからレジアスさんは長々と熱く今の地上本部の現状について話出した。

難しい話ばっかで俺には全く理解できなかったけど、後半どこからか取り出した酒を飲みつつ涙ながらに話してくれた。

おい、勤務中にいいのか? と、ゼストさんやオーリスさんに目を向けると、揃って視線を逸らされた。

もうこのレジアスさんに関しては諦めたらしい。

 

「ごめんね、健人君。君には難しいわよね」

「大丈夫ですよ。ほとんど聴いた話ですから」

 

アースラでクロノやリンディ艦長に聴いていた話がほとんどだし。

要するに陸上本部は予算なし人員なしで、本局に色々持っていかれ過ぎて戦力不足。

それをどう解消するか頭を悩ませていたらしい。

 

「しかし、もう悩むのは止めた。儂は儂の信念に乗っ取った正しいやり方で変えて見せる! そして、海の連中にあっと言わせてやるのじゃ!」

「うむ、ここら辺はいつものレジアスだ」

 

心底安心しきった顔をして頷くゼストさん。

よほどさっきまでのレジアスさんがおかしかったんだな。

気が付くと、じゃよ口調が直ってる。

 

「はいはい、レジアス中将もうその辺でいいでしょ? 今日は健人君の事で来たのに、ほったらかして難しい話を長々としないでください」

「お、おぉ、そうだった。すまない、儂とした事が本題を忘れてしまっていたな。健人君、そう言うわけで儂は昨日の件は全く気にしておらん。それどころか目を覚まさせてくれて感謝もしているぞ!」

 

ガシッと両手で握手までされてしまった。

な、な~んかおかしな流れになってるよなこれ。

 

「それで中将、そういう事なら彼をすぐアースラに帰すんですか?」

 

それはそれでイヤだな。せっかくギンガと仲良くなれたし、今日ここに来る時だって、寂しそうな顔で見送られた。

スバルとは今日もまともに話せなかった。どうも、嫌われていると言うより恥ずかしがってる感じなのが救いかな。

 

「それなのだがな。リンディとも話し合ったが、彼を次元転送ポートで戻すのは無理と判断した。過去3度も事故で目的地に辿りつかなかったのだ。いくら地上本部からとは言え、危険すぎる」

 

確かに、転送する度に変な所に行って、変な人にぶつかってばかりだったな。

 

「彼を送るには直接迎えに来るのが一番だ。だが、アースラはしばらく他の任務がある。先のプレシア事件の後処理の為に本局から離れられないらしい」

 

そう言えば忘れていたけど、プレシアの事件終わってからまだ半年も経ってないんだよな。

って事は、俺はどうなるわけ??

 

「そこでだ。君に選択肢を与えたい」

「選択肢?」

「1つ、船で儂が本局まで送る。今度本局で会議がある時に一緒に行き、向こうでアースラに合流だ」

 

これは普通だな。と言うかこれ以外どんなのがあるんだ?

 

「もう1つは?」

「うむ。地上本部で臨時局員として働いてみないか?」

「「「えぇ~!?」」」

 

レジアスさんの提案に俺より、ゼストさんやクイントさん達の方が驚いている。

 

「何を考えているんだレジアス!? 彼はまだ子供で、少し前まで魔法の事も全く知らなかった一般人なんだぞ!?」

「しかし、彼は強大な魔力やそれを制御できる専用のデバイスも持っているではないか」

「だからって危険すぎますし、早すぎます! せめてちゃんとした訓練校へ通ってからでないと!」

「中将、私も反対よ。いくら人員不足だからって子供の手まで借りる事ないじゃないですか」

 

ゼスト隊全員に責められ、流石にたじろぐレジアスさん。

そう言えば、フェイトも嘱託魔導師になるとか言ってたっけ。あれはいいのか? 

それにクロノも見た目は俺とそう変わらないのに、あっちは14だからいいのか。

うーん、俺が地上本部で働くって事は、ギンガやスバル達と遊びやすくなるって事か。

で、アースラに行けばフェイトやアリシア達か……うーん、これってルート分岐って奴?

あ! フェイトもアリシアも裁判の準備とかでこれから多忙になるってクロノ言ってたな。

じゃあ、アースラ行ってもあまり意味ないか。

地上本部で働く事になっても、これから会えなくなるわけじゃないしね。

それにクイントさんってシューティングアーツって言う格闘技のスペシャリストと言う話だ。

格闘型魔導師を目指す俺としては、クイントさんに色々習った方がいいな。

トーレからも射撃や砲撃より格闘重視の魔法を習っておけとアドバイスされたし……ってあぁぁ~!?

今更ながら思い出した事があった。

ゼスト達って確か、Sts前に全滅しちゃうんだった! それもスカさん達に殺される!

ま、まぁ、この世界のスカさん達ならそんな事はしないと思うけど……ま、万が一って事があるからな。

よしっ、決めた!

 

「レジアスさん、俺地上本部で働きます。働かせて下さい!」

「何っ!?」

 

俺の決断に皆驚いてるけど、提案したレジアスさんが一番驚いてる。

 

「お、おぉ、儂が言っておいて何だが、本当にいいのか?」

「はい! 元々管理局で働く為にデバイス作ってもらったような物ですから」

「そうか、よくぞ言ってくれた! 早速手続きに入ろう。オーリス、頼んだぞ。ゼスト、お前の部隊で見習いとして編入する。任務につかせる必要はない。まずは色々教えてあげてくれ」

「待って下さい!」

 

クイントさんが俺に目線を合わせるようにしゃがみこみ、ジッと俺の目を見つめてきた。

美人さんに見られるのは恥ずかしかったけど、それ以上に真剣なまなざしに目を逸らす事が出来なかった。

 

「健人君、本当にいいのね?」

「……はい!」

 

実際いつ全滅するのかは知らないんだけど、この人達には死んでほしくない。

うぅ~こんなことなら早めにシリーズ全部アニメ早く見ておくんだった。

見る直前に死ぬってないよなぁ。

こうなったら、しばらくはこっちにいた方がいいな。

その為にももっと強くならないと。

 

「よしっ、分かったわ。レジアス中将、ゼスト隊長、この子は私がこのまま預かって色々教えようと思います。いいですか?」

 

ゼストさんは俺とクイントさんの顔を交互に見てしばらく考え込んだ後、深く溜息をついた。

 

「仕方あるまい。草薙健人君、君を我が部隊の臨時隊員として認める。しかし、まだ臨時だ。現場には出さない。それに嘱託魔導師としての勉強もしてもらう。それと、アースラに合流し本局に行きたくなったらいつでも言う事」

「隊長、いいんですか!?」

 

メガーヌさんはまだ納得してないようだ。

と言うか、それが当たり前だと思う。

Stsの設定だけ見て、エリオやキャロが働いてると知り、なのは達が管理局入りした歳知ってエェーー!? ってなったもんな。

 

「ここで断っても、彼の魔力量は高い。いずれ本局の方で採用されるだろう。それならば、ここで経験を積ませてから本局か地上本部か改めて決めさせた方が本人の為だろう。それにあそこまで乗り気なクイントが引きさがると思うか?」

「思いませんね、全く」

 

そう言えば、クイントさんとメガーヌさんって親友だっけ。

ViVidの合宿イベントでメガーヌさんがそう言っていたな。

 

「では決まりだな。まずは嘱託魔導師の資格を取った方がいいだろう。任せたぞ、ナカジマ」

「了解いたしました!」

 

今日はこれで解散となり、明日から俺は臨時局員として働く事になった。

それからアースラに連絡を取って、リンディ艦長達に決めた事を伝えると、クロノだけは難しい顔をしたがリンディ艦長やエイミィさんは喜んで応援してくれた。

 

「そうだ。健人君、デバイスはアームドデバイスだったわよね? それも格闘型の。どこかで習ったの?」

「はい、簡単な基礎はドクターブライトの所で教えてくれた人がいます」

 

碌でもない事を習ったりもしたけどね。

 

「そっか、それじゃあ明日にでもその腕前見せてもらえる? 私こう見えてもシューティングアーツっていう格闘技やってるのよ。良ければ教えてあげるわ」

「はい、ぜひ教えてください!」

「うん、良い返事。男の子は元気良くないとね。ふふっ、ギンガとスバルもきっと喜ぶわよ」

 

よーっし、これで本格的に魔法を覚えられるぞ!

 

「よろしくお願いします、師匠!」

「し、師匠はいらないかな。普通に呼んでくれる? 何だか恥かしい」

 

意外と可愛い一面もあるんだな、クイントさん。

 

 

続く

 




綺麗(?)なレジアスが完成!
健人の当面の目的はゼスト隊全滅フラグを折る為に強くなる事。
もうとっくにバッキバキに修復不可能に折られてるんですけどねー


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第17話 「姐さん、事件です!」

サブタイの元ネタ知っている人がいれば、感激です(笑)


突然ですが、事件です。

 

「お前ら、騒ぐんじゃねーぞ!」

「大人しく金をだせ!」

 

ただいま俺の目の前でイカつい覆面マン達がファンシーな武器を片手に暴れまくってます。

そう、銀行強盗です!

 

「……こわいよぉ」

「大丈夫だから、俺の側を離れるなよ?」

「うん」

 

背後には涙を浮かべながら恐怖に震えるスバルが、俺の服をギュッと握りしめている。

思わず可愛いと思った俺にそっちの趣味はないと叫びたい。

 

さて、なんでこうなったのか……

 

クイントさん、俺、スバルの3人でお買い物(ゲンヤさんとギンガの2人はお留守番)

スーパーで買い物をするクイントさんに、スバルが疲れたと訴えた。

スーパー内に座れる場所はなく、向かいに銀行。

俺の給料口座を作る為に行く予定があったので、銀行で休憩。

銀行強盗さんいらっしゃーい! ←今ここ

 

運が悪かったなぁ。と、妙に落ちついている自分に驚く。

いや、落ちついているどころか妙にわくわくしているな。

ドラマでしか見た事ないテンプレな銀行強盗シーンを、まさか生で観れるとは思わなかった。

って、そんな事思っている場合じゃない。

これは現実で犯人達は武装していて命が危ない。

俺一人人質ならいいけどスバルもいるし、他にも何人もの人質がいる。

これがドラマなら、警察に言われて女子供は解放するかもしれないが、それはさっき犯人達が拒否してしまった。

うーん、ちょっと困った。

と、ここで外にいるであろうクイントさんから念話が届いた。

 

『健人君大丈夫!? スバルも一緒?』

『あ、クイントさん。大丈夫です、スバルも俺と一緒にいますよ』

『そう、良かった。申し訳ないんだけど、犯人達や人質の状況、分かる範囲で教えてもらえるかな?』

『分かりました。結構人数いますね。えっと、映像送りますね』

 

やはり、クイントさんは他の局員達と一緒に外で犯人達と対峙しているようだ。

俺達人質がいるので突入はできず、シャッターも締められ監視カメラもシャットダウンされて状況が分からないらしい。

幸い、シェルブリットは持ってきていたので、通信は問題ないし、映像も送れる。

早速シェルブリットから店内の映像を送った。

 

『これは、まずいわね。犯人達は質量兵器を持っているわ。犯人を刺激しちゃダメよ?』

『分かったよ』

 

質量兵器、魔力を使わないただの拳銃やミサイルなど物理兵器の事を言うんだったよな。

ミッドでは禁止されていて入手は困難なのに、たまにテロとかで使われる物騒な代物だ。

たかが銀行強盗が持っているには分不相応だな。

ともかく、クイントさん達に魔法とか色々教わってまだ数日の俺では、危ない橋は渡れないな。

それに後ろにはスバルがいる。

彼女だけでも守らなきゃ。

 

『大丈夫。こっちで犯人と交渉しながら突入の機会うかがっているわ』

『気を付けて、こいつらあまり気が長い方じゃないみたい』

 

銀行強盗犯は携帯片手に怒鳴り散らしている。

とても円滑に交渉が進んでいるとは思えないんだよな。

 

「こわいよ、おにいちゃん」

「っ!?」

 

い、今スバルが……俺の事おにいちゃんって言ってくれた!?

あの、いつもクイントさんやゲンヤさんの後ろに隠れて、黙って俺をジッと見るだけだったスバルが!?

あー……感激だぁ。

これがこの状況下で極度の緊張に置かれての行動だとしても……銀行強盗GJ!

なんて、感動に浸ってる場合じゃない。

下手に犯人達を刺激したら、こっちの身が危ない。

 

「大丈夫だ、スバル。怖いなら目を瞑ってじっとしてるんだ。すぐに終わるよ」

「……うん」

 

そう言ってスバルは俺に抱きつきジッと目を閉じ縮こまった。

あっ、ヤバい……これは父性本能って奴か!(多分違)

 

「おいそこ! さっきからなにコソコソしてるんだ!」

 

俺のリアクションがオーバー過ぎたのか、犯人の1人がこっちに気付いてしまった。

 

「あ、いや、別に……」

「怪しいな。おい、こっちにこい!」

「ひっ!」

 

ハイテクっぽい拳銃を向けてながら、犯人が俺の手を掴んだ。

途端にスバルが怯えながらギュッと抱き締める力を強く……ってイタタッ!?

 

「ちょっ、ちょっと待って、タイム!」

「あ? どうした?」

 

スバルはこう見えて戦闘機人。

並の人間より筋力や腕力が上だ。

しかも、幼いのでうまく制御出来ていない。

日常生活を送る分には問題ないけど、こういう状況では無理な話。

つまり、何が言いたいかと言うと……現在、スバルが全力で俺に鯖折りをかけてきています!

 

「スバル、痛い。痛いからすこーしだけ力弱めてくれないかな?」

「~~~っ!!」

 

パニクってるスバルが更に力を加えてきてる!?

シェ、シェルブリットへるぷー!

 

<しょうがねぇな。一応強化はかけたぜ。でもこれからどうするんだよ?>

『ど、どうしようか……』

 

肉体強化魔法をかけてくれたおかげで、どうにか背骨がやられるのは避けられたけど、これからホントどうしよう。

すっかり銀行強盗達の注目を浴びちゃってますなー。

これはヤバい。マジで命の危機を感じる。

 

「おい、こいつら本当にただのガキか?」

「最近じゃ9歳の管理外世界のガキが、急に魔法に目覚めて大活躍したって聞いたぜ。こいつらもその口かもしれねぇな」

 

なのはさーん!? またあんたのせいで俺がピンチなんだけどー!?

ってかその情報どっから得たの!? アレ、結構機密事項何じゃなかったっけ!?

最悪の場合、シェルブリットを起動させて大暴れするしかないかなーと考えていると、ふと奇妙な光景が目に映った。

地面から、何か生えている。指か?

その指の先端には小型カメラのようなレンズが付いていて、アレ? これ見覚えあるな。

 

「な、なんだ!?」

 

突然銀行内の電気が落ち、辺りは真っ暗になった。

 

「そこまでだ!」

 

暗闇に威勢のいい掛け声が響き渡る。

ついにクイントさん達が突入してきたのか!? と思ったら、声が違う。

しかも、この声すごーく聞き覚えがある。

 

「ひと~つ 人の世、生き血をすすり」

 

続けて、別の女性の声が辺りにこだました。

 

「ふた~つ 不埒な悪行三昧」

 

あ、これ俺知ってる! 銀○でやってた!

 

「みぃ~つ 醜い浮き世の鬼を……」

 

あれ? なんか違うな。

みだらな○○を~じゃなかったっけ?

じゃなくって、この声明らかにあの3人だ!

と、なぜかスポットライトが付き、3人の女性の姿が照らし出された。

 

「「「退治してくれよう、ナンバーズ!」」」

「何やってんだ―おまえらー!?」

 

予想通り、そこにいたのは真っ白いスーツに身を包み、目元を覆う程度のマスクを被ったトーレ、チンク、ディエチの3人。

更に、地面からまるで魚のように飛び上がった水色の影がもう1つ。

 

「さぁ、お前の罪を数えろ!」

 

ビシッと某半熟卵探偵のポーズを決めた同じくマスクを被ったセイン。

 

「ってお前ら、決め台詞丸パクリかよ!!」

「いや、つっこむ所はそこじゃねぇーだろ!」

 

なぜか銀行強盗にツッコミを入れられてしまった。解せぬ。

そんな俺達のツッコミを無視しつつ、トーレ達は4人固まりポーズを取った。

 

「我ら正義の使者……機人戦隊ナンバーズ!」

 

真っ白いボディースーツに身を包んだ美女&美幼女4人組。

戦隊かよ。ってか名前ナンバーズってそのままかよ!

それよりなによりも……

 

「名乗りを2回もするなー!」

 

あれれ? おかしいなーさっきまでの殺伐とした空気がどこかに吹き飛んだぞ?

 

『どうしたの健人君! 何かあったの!?』

『クイントさん、目の前に……正義のヒーローがいます』

『はぁ?』

 

クイントさんが口を大きく開けてる絵が頭に浮かんだ。

けど、その反応はものすごく正しいです。

 

「「………」」

 

あ、チンクとディエチが俺をジッと見つめてきた。

その無言の瞳がこう叫んでいる。

 

『『見るな 聞くな 忘れろ』』

 

つまり、自分達の事には一切触れず他人のフリをしろって事ね。

いやまぁ確かに正義の味方になれ、とか散々戦隊ヒーローや仮面ライダーとか教えたけどさー

何もここまで露骨に丸パクリしなくてもいいような。

しかも、トーレとセインはやる気満々だけど、チンクとディエチは若干恥かしそうにしてるぞ。

他にもツッコミ所は満載だけど、ここは黙っておこう。

いずれまたスカさんと出会う事があったら、一発ブン殴ろう。そう心に誓った。

 

「ナ、ナンバーズだかパンパースだかしらねぇが、俺達の邪魔はさせねぇーぞ!」

「ふん、セリフが三流小悪党だな。とう!」

 

軽く挑発してトーレ達は散開して戦闘を開始した。

だが、戦闘はあっけなく終了。

この犯人達、人数は有利だったのに何も出来ずに一発KO。

その後、シャッターが開き、クイントさん達が突入すると同時に、トーレ達は姿を消した。

 

「また会おう、少年!」

 

最後に、俺に向けて爽やかスマイルを浮かべたせいでクイントさんから知り合い? と聞かれたので、迷うことなく。

 

「いいえ、他人です」

 

と答えた。

事情聴取があったが、俺もスバルも子供と言う事もあり、簡単な質問だけで終わった。

それからクイントさんに連れられて帰宅し、ニュースで強盗の事を知っていたゲンヤさんとギンガに激しく心配された。

スバルはトーレ達が現れてから終始ぽかーんと口を開けたままトーレ達を見ていたが、バッタバッタと強盗達を薙ぎ払う姿を目をキラキラと輝かせて魅入っていた。

この一件で、スバルは特撮ヒーロー好きな事が判明した。

ついでに、スバルも俺に慣れたのか、普通に話す事が出来るようになったのは嬉しかった。

 

のだけど……

 

「なんで、いるの2人共?」

「「おにいちゃんといっしょにねるー!」」

 

と、風呂に突入するだけじゃ飽き足らず、ギンガもスバルも俺の布団に潜り込むようになった。

流石にゲンヤさんの表情に哀愁が漂い、影が出来始めたので。

 

「じゃあ、みんなで一緒に寝ましょうか」

 

クイントさんとゲンヤさんを両端に、さらにスバルとギンガに挟まれる形で寝る事がしばらく続いた。

 

 

また、後日スカさんからのメールによれば、あの日たまたま4人が近くにいたので、急遽かけつけた。

なので、まだ名乗りポーズも新スーツも未完成品で、もうしばらく待っていて欲しいとの事。

俺はとりあえず、丸パクリだけはやめておけとだけ返事をした。

 

 

続く

 




はい、機人戦隊ナンバーズ爆誕!
ただし、今回のは未完成品で、完成品はもうしばらく後になります(笑)


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第18話 「ひっさつわざってたのしいね」

お待たせしました―!
vivisストライクフリーダムが少し気になる今日この頃・・・・…


アッ! と言う間に数カ月が経った。

その間、ゼスト隊のみんなに色々鍛えられたり教え込まれたり、とだいぶ管理局の仕事も分かってきた。

また、訓練だけではなく実際に任務についたりもした。

迷子の捜索、害虫駆除、交通整理、駐車違反の回収……etc

正直、地味すぎて魔法の出番が全くなかったのが不満。

地上本部ではこれくらいの仕事が多いのかーと思っていたけど、ただ単に俺がやる仕事を選んでいただけだったと言われたネ。

それにしても、俺が地上本部に入ってもう12月も半ばかー……何かひっかかるけど、気にしないでおこう。

そんなある日、今日もギンガとスバルに見送られて地上本部にやってきた。

あの2人からお兄ちゃん、行ってらっしゃいと笑顔で送られるのはかなりくるものがある。

いや、ロリコンじゃないよ? 風呂とか一緒に寝たりするけど、それだけダヨ?

さて、今日はなにやら重要な話があるようだ。

 

「健人君も結構仕事に慣れてきたし、そろそろ任務ランクを上げても良いって事になったのよ」

「えっ!? ホント!? やったー!」

 

と、クイントさんから言われて、気分は波の国編のNARUTOだってばよ!

 

「ただ、一つだけ不安材料があるのよね。健人君、必殺技とかないでしょ? それがあった方がいいと思うのよね」

「必殺技、ですか?」

 

クイントさんから特訓を受けたこの数カ月で思う事、この人脳筋な所ある。

トーレもそれっぽい所結構あったけど、クイントさんはそれ以上だ。

シェルブリットなしで魔法使おうとして燃え上がる俺を見て、かっこいいと目をキラキラさせた事もある。

そんな彼女には必殺技と呼べるものがいくつもあった。

拳に魔力を籠めて突進する技。

地面を殴って魔力を走らせる技。

ローラーブーツに魔力を籠めて弧を描くように回転カカト落としを決める技。

……どこの狼さんですかあなたは?

 

「そう。君は射撃や砲撃魔法は無理、魔力変換素質で生み出した炎を纏って殴ったり蹴ったりするのが基本でしょ? それをもっと応用させればいいと思うのよ」

 

クイントさんの言うように、俺は炎を両手両足に纏っての攻撃はなかなかのものだと、同じ炎熱の変換素質を持つゼスト隊長からのお墨付きもある。

けれども、中・遠距離攻撃は思うように伸びなかった。

炎をガスバーナーのように放出するだけならできるけど、消耗が激しい。

でも、ゼスト隊長から炎熱のコツを教わって、どうにか炎弾を作り撃ち出せ……はせず、投げつける魔法なら覚えた。

しかし、致命的なのは見た目が派手だけど、威力が低い。

それならば、とシェルブリットのオリジナルを模倣して、シェルブリットバーストを使えないかと試行錯誤したが、これも無理。

で、分かったのは、俺は地上本部でも上位に入るほどの膨大な魔力量を持つけど、生粋の近距離専用魔導師だと言う事。

空を飛ぶなど、機動力はシェルブリットのおかげもあって、ゼスト隊長よりも速く動けるので敵に素早く接近してぶん殴る、が基本戦術だ。

 

「でも、クイントさんのシューティングアーツ結構使えるようになりましたよ?」

「それは私も驚いたわ。でも、君だけの特別な必殺技があると良いと思わない?」

「確かに……オリジナル必殺技っていいですよね」

 

パワーウェイブやバーンナックルもどきなら俺も使えるようになった。

空を飛べない陸戦魔導師のクイントさんのシューティングアーツは、ローラーブーツとリボルバーナックルあってのアーツ。

ちなみに俺は空を飛べるけど、シェルブリットの脚甲にローラーを付ける事で疑似ローラーブーツに出来る。

広い場所ならともかく、狭い建物内とかなら空を飛ぶより速く動ける。

それにしても、オリジナル必殺技か……パワーゲイザーとかトリプルゲイザー?

いや、テリー・ボガードから離れよう。

 

「と言うわけで、今から考えて使ってみよう!」

「はい!……はい? いや、そんな急に出来るものじゃないでしょ?」

 

3分クッキングくらいのお手軽感覚で言われても、すぐに出来るわけない。

 

「そんな事ないわよ? 私のシューティングアーツだって結構短時間で作ったの多いし」

 

曰く、適当にそこら辺を殴ったり蹴ったりしたら頭にビビっときたものらしい。

だから俺もそこら辺を殴ったりしていたら頭に思い浮かぶんじゃないかとの事。

それなら、この数カ月に思い浮かぶと思うんだけどなー。

 

「と言うわけで、トレーニングルームは今日1日貸し切ったから思う存分やっちゃっていいわよ」

 

うーん、そう言われても必殺技なんて思い浮かばないな……なーんて、実は何度か試した必殺技ならあるんだよね。

射撃や砲撃適正がなく、格闘のみと言われて真っ先に練習したのが、二重の極み。

でも、普通に殴った方が負担もないし破壊力もあるからって事で断念。

それからも釘パンチとか、流星拳とか色々考えたけど、どれもしっくりこなかった。

 

「こういうのは難しく考えず、単純なものの方が効果高いわよ」

 

と言うアドバイスを受けて、一先ず俺の得意な事をやってみる事にした。

両手両足に炎を纏わせて適当に動いてみる。

次に、バーンナックルもどきをしてみる。

この時、拳に魔力と炎を集中させるんだけど、ここで頭にピーンときた。

今まで拳や足に魔力を集中させたが、ある一定の量以上は集中させなかった。

それはこれくらい魔力が溜まれば良いだろうと言う無意識での調整だ。

これを、わざと限界まで溜めこめばどうなるだろう。

単純な事だけど、一撃必殺としては効果的なものに思えてきたぞ。

 

「なぁ、シェルブリット。今から俺が思いっきり魔力を溜めこむから、限界が来たら教えてくれ」

<何するのか大体予想付くけどよ。俺を壊すんじゃねぇぞ?>

「分かってるって。行くぞ、はあぁぁぁ~~!!!」

 

拳を握りしめ思いっきり全力で魔力を溜めこむ。

 

「お、何か思いついたみたいね」

「クイントさん、危ないから離れてて!」

 

こういう技の特徴って大体爆発オチって決まってるからな。

万が一の為にクイントさんには離れてもらわないと。

 

「まだ、まだまだぁ!」

 

右手が今までにないくらい熱く燃え上がるのを感じる。

と、同時に何か高揚感のようなものが胸の中でくすぶっている。

間違いない。これは、いける!

 

<お、おいマスター。そろそろ止めた方がいいんじゃねぇか?>

「いやもっと、もっとだ! もっとかがやけぇ~!」

 

拳が真っ赤に輝きスパークまで出てきた。

うん、これだ! これを待っていた!

後は的へ思いっきり拳を突き出すのみ!

 

「ここだ! いっけぇ~!!」

 

 

――ドガァーン!

 

 

この日、地上本部を中心に中規模な地震が発生した。

地震が起きる地層ではなく、またその予兆も観測されなかったにも関わらず起きたこの地震。

ミッドの気象庁は揃って首を傾げたが、幸いこの地震によって被害が皆無だったのが不幸中の幸いだ。

なお、余震は観測されず、謎の地震としてミッド市民の間ではしばらく話題になったそうだ。

 

「……で、どうしてこうなったんだ?」

「どうやったらこうなるのか教えて欲しいですね」

 

怒りを通り越して呆れ顔のゼスト隊長とオーリスさん。

2人が目を向けた先には、トレーニングルームの壁にぽっかりと開いた巨大な穴。

 

「さぁ? なんででしょうかねぇ?」

「不思議よねぇ?」

 

SEIZAさせられている俺とクイントさんは揃って不思議そうな顔をした。

 

「この部屋は耐魔力防壁など完璧にしていたはずなのに」

「見事に貫通しているな」

 

メガーヌさんとゲンヤさんも苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

<そりゃあれだけ魔力を溜めこんだ一撃を放てばこうなるぞ>

「でもシェルブリットだってあれだけド派手にぶっ放せればスカッとしないか?」

<否定はできねぇな、うん>

「だろ?」

 

流石はスカさん特製の俺の相棒だ。

この後、俺とクイントさんはゼスト隊長達からみっちりと絞られた。

でも、俺は念願の必殺技が出来て大喜びだったので特に気にしなかったが。

 

 

それから更に数日後、なのはから通信が入った。

なのはやフェイト達とは直接会う事はなかったが、たまにこうやって通話をしていた。

なのはは地球と言う管理外世界にいるし、フェイトやアリシアは裁判があるので会う事が出来なかった。

なので、久々になのはと話せて嬉しい。

 

『ごめんね。最近ずっと忙しくて連絡出来なかったんだよ』

「あーなんかそうみたいだな。こっちも色々忙しかったし」

 

詳しい話は聞いてないけど、なのはもフェイトもある事件の為に多忙だったそうだ。

それを聞いて、また頭の隅に引っ掛かるものがあったけど、それが何かは分からなかった。

 

「本当は俺も手伝えればいいんだけど……」

『リンディさんから聞いてるから大丈夫だよ。健人君、地上本部でがんばってるんだってね』

 

数週間前、なのは達が事件に巻き込まれてると知り、俺も地球へ向かおうと思ったがゼスト隊長に止められた。

最初、仮とは言え今の俺は地上本部所属だから、本局が絡む事件に首を突っ込むなって話かと思ったが、そうではなかった。

俺の訓練はまだ済んでいないので、中途半端にして増援に行っても足手まといになるだけだと。

実は先日の必殺技云々の話は、地球へ増援に行くことを踏まえての事だったらしい。

まぁ、やりすぎてしまったけど……

 

『それでね。健人君ってこっちには来られたりするのかな?』

「海鳴市に? 多分もうすぐ行ける事になると思うけど?」

 

先日のアレでどう判断されるか分からないよなー

 

『ホント!? 良かったー! あのね、もうすぐクリスマスだから一緒にパーティー出来ないかなと思って』

「クリスマス? あ、あぁ~! そうか、そんな時期か!」

 

ミッドにはクリスマスって概念ないからすっかり忘れていた。

生前でも入院したりで、クリスマスのお祝いやパーティーとは無縁だったからなぁ。

母さんや看護婦さん達がケーキを御馳走したり、プレゼントをくれたりはしたけどね。

俺のここ数日の胸のモヤモヤはクリスマスが近いのに、ミッドの市内ではそれらしい気配が全くないから違和感を覚えてたんだな、多分。

 

「で、俺も行っていいのか?」

『勿論だよ! 健人君の事アリサちゃんとすずかちゃんに紹介したいし。勿論フェイトちゃんやアリシアちゃんも一緒だよ』

 

フェイトとアリシアは、今海鳴市にいてなのはと同じ小学校に通っているんだったな。

魔導師としてはダメダメだけど、それ以外の勉学でフェイトやお母さんの役に立てるようになりたい。

アリシアはそう言っていたな。

 

「俺がそっちに行ける詳しい日時をゼスト隊長に聞いてみるよ。あ、そうだ。リンディさんは俺がそっちに行く事何も言っていないの?」

『健人君が来てくれるのは嬉しいけど、ゼスト隊長に任せてあるって言ってたよ』

「じゃあ全てはゼスト隊長次第か……これはなんとしても認めてもらわないと」

『にゃははは、私もフェイトちゃん達もこっちで健人君に会えるの楽しみにしているの!』

「あぁ、俺も今から楽しみだよ」

 

そう言って俺達は通信を終わらせた。

さーって、こうしちゃいられない。

ゼスト隊長に早く地球行きの許可をもらわなくちゃ!

 

「あ、そう言えば。またなのは達が巻き込まれてる事件の事、聞きそびれたな……」

 

ま、いいか。全ては俺に地球行きの許可が出るかどうかだ。

事件の詳細はその時に教えてくれるだろう。

 

 

続く




はい、次回からはA's編です。
と言っても、もうA'sは終盤なんですけどねー
健人にA'sの知識がほとんどない弊害が出ました(笑)


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第19話 「はじめての……」

お待たせしました!
やっと原作介入です。


クリスマス・イブ

 

いよいよ、久々の地球へ行く日になった。

本当はもっと早く行けるはずだったが、俺が開発した必殺技の改良や調整に時間をとったせいだった。

そして、なのはが話していた事件はまだ続いていて、それの捜査協力も兼ねて俺が行く事になった。

そして、俺が事件の詳しい情報を聞いた時だった。

 

「闇の書と呼ばれるロストロギアの事件よ」

「えっ? 闇の書??」

 

ここで初めて事件名を聞いたのだが、闇の書と聞いてピンとこなかったが、何やら超嫌な予感がした。

 

「これが闇の書から生み出された守護騎士達、ヴォルケンリッターね」

 

そう言って見せられた資料には、シグナムやヴィータ達が載っていた。

それを見て、今まで胸の奥底で疼いていた違和感が、火山の噴火のごとく噴出したのを確かに感じた。

 

「あああぁぁぁぁ~~~!!?」

「ど、どどうしたのよ!?」

「一体何!?」

 

突然の叫びにクイントさんとメガーヌさんは驚いていたが、今は時間がない。

生前、はやて達の過去について友達から簡単に教えてもらった事を今更ながら思い出した。

なのはが小学3年のクリスマスの時、闇の書事件で敵対してそれから友達になったのがはやてとシグナム達だと言う事だ。

最初にはやて達を見た時にここまで思い出しておけばよかったのに、と激しく後悔。

 

「ゼスト隊長! 今すぐ俺を地球の日本の海鳴市へ飛ばさせて下さい!」

「落ちつけ、一体何をそんなに慌てているんだ?」

「か、彼女達なんですよ! 俺が地球で迷子になった時にお世話になった大恩人が彼女達なんです!」

「なにっ!?」

 

海鳴市へ飛ばされた時、一晩泊めてもらった現地の人の話はしていたが、シグナム達の事はヒミツにしていた。

だが、この際喋れる事は全部喋って急いで俺を飛ばしてもらう!

 

「その八神はやてと言う子が闇の書の主、と言うわけか」

「でも、俺が会った時はとてもそんな禍々しい本の主に見えなかったし。何より魔法とか関係なく平和に暮らしていたんですよ。だから、今回の事件も何か訳があると思うんです!」

「なるほど、ともかく急いでリンディ提督に連絡を取ろう!」

 

言うが早いか、ゼスト隊長はアースラに連絡を取った。

通信モニターにはエイミィとは違うスタッフが出ていた。

 

『あ、ゼスト隊長? 申し訳ありません。ちょっと今緊急事態で、こちらからまたかけ直します!』

「待て。こちらも大至急の用件だ。リンディ提督に繋いでくれないか? 今そちらが追っている闇の書に関する重大情報だ!」

『なんですって!? ちょっと代わって!』

 

スタッフに割り込む形で、リンディ提督がモニターに出てきた。

その表情は、今まで見た事ないほどの緊張感が漂っている。

 

『ゼスト隊長、手短にお願いします。闇の書がどうかしましたか?』

「リンディ提督、健人が闇の書の主とヴォルケンリッターと接触していた事が分かりました。それで、そちらの状況は?」

『なんですって!?……映像と音声がとぎれとぎれだけど、確実なのは今、こちらでは闇の書の管制融合騎が目覚めたわ』

「っ!?」

 

まずい! 何がまずいって色々マズイ気がする!

闇の書事件の詳細とか、どうやって解決したかは思い出せないけど、このままじゃダメだと直感した。

なのはやフェイト、それにはやて達が危ない!

 

「リンディ艦長、ゼスト隊長! 今すぐ俺を海鳴市へ飛ばして下さい!」

「健人、それはダメだ。闇の書が完全に目覚めた以上、危険すぎる」

「おねがいします!」

 

土下座して地面に頭突きする勢いで2人にお願いする。

 

「ゼスト隊長、健人君を行かせてあげてください。世界がどうとかではなく友達を助けたい、そうよね、健人君?」

「はい!」

「クイント、しかしだな……」

『……分かりました。すぐに転送ポートの中継を確保します。ゼスト隊長、私からもお願いします。健人君を行かせてあげてください』

 

クイントさんだけではなく、リンディ提督にも言われ、ゼスト隊長は深く息を吐いた。

 

「了解した。だが、いいのか健人? 経験しているはずだが、お前はまともに転送魔法で跳べるとは思えないのだが?」

 

あ、その事は考えてなかった……けど、今更後戻りはできない。

 

「今度は大丈夫です! ちゃんと海鳴市へ行ける気がします!」

 

ホントはどこに飛ばされるか全く分からないし、不安もある。

だけど、ここでじっとしてるよりは100倍マシだ。

 

「なら、俺はもう何も言わない。だが、無茶はするなよ、健人」

「はい! ありがとうございます!」

 

すぐに地上本部からアースラを経由して、海鳴市への転送ポートが開かれた。

ゼスト隊長達に礼を言って、シェルブリットを起動させて転送ポートへと飛びこんだ。

正直、これから行ってどうすればいいかさっぱり分からない。

だけど、まずは行ってみるしかない。

待ってろ、皆! 特訓の成果見せてやるぜ!

 

 

 

――チュッ♪(はぁと)

 

「………?」

 

跳びこんでまず最初に唇が何かに触れた感触があった。

次に柔らかい何かにぶつかり、思わず抱きついた。

……あれ? 俺、今どういった状況なんだ?

今回は今までの転送と違って変な感じはしなかったし、多分海鳴市へ飛べたんだと思うが……

ものすっごくおっそろしい程、もう何度目だよコレ! って思うほどのデジャビュゥ……

 

<マスター、ちゃんと現実を見た方がいいぜ。マスターは今、女性に抱きついて、おまけにキスまでしちゃってるぜ?>

「……MA・JI・DE?」

 

言われてみれば、唇に暖かくて柔らかい感触が、ちょっと気持ちいい。

目の前には大人の女性っぽい顔がある。

あ、かなりの美人さんだ♪

 

「んっ……」

 

女性の口から甘い声が聞こえて、ゆっくりと唇を離した。

それから自分の置かれている状況を再確認。

 

うん、確かに俺、この女性に抱きついてるネ♪

しっかりとキスしちゃってたネ☆

 

状況確認を終えた所でゆっくりと女性から離れる。

 

「スー……」

 

おおきくいきをすいこみ

 

「ハー……」

 

おもいっきりはきだすしてからの……

 

「なんでさーーーーーー!!!?」

 

えっ、何? なんで!? Why!?

なんでこうなってるの!? ラッキースケベにも程があるでしょ!?

そりゃ確かに今まで転送されて碌な事なかったけどさ、熟女に激突したりおっさんをふんだり蹴ったりでさ!

いい加減良い目に合いたいと思った事は何度もあったけどさ!

でもさ、だからってなぜに今度は綺麗な女性にダイレクト・キス!?

 

<マスター朗報だぜ。生まれて初めて転送が上手く行った。ここは地球の海鳴市で間違いないぜ!>

「何!?やった! って全然嬉しくない! あれ? 待てよ、アースラに今の状況ひょっとしてライブ中継されてたのかな……されてるよな。俺、オワッタ……」

<いやいや、そんな事気にしてるよりもまずは前見ろ前!>

「あ、なんだよ。そんな事なんかじゃないっての! えっ、前? あっ」

 

空中で回転しながら身悶えて、シェルブリットに言われ少し冷静になって前に向き直った。

そこにはプルプルと肩を震わして俯く女性。

言うまでもなく、さっき俺が突撃かましてキスした女性だ。

よくよく見ると、どっかで見た事あるなこの人。

黒いバリアジャケットに身を包み、左手にごっつい盾なのか武器なのか分からない篭手を嵌めて、大小4枚の羽を生やした銀色の髪をした女性。

頬に赤いラインが入ってるけど、間違いない。

イノセントよりも目付きが厳しいけど、彼女はリインフォース・アインスだ。

でも今は、その名は持たないはず。

確か、暴走した後ではやてから名付けられるんだったっけ。

 

「……あ、その……えっと、ごめんなさい!!」

 

色々と聞きたい事とか話す事があったけど、まずは全力全開の土下座だ。

 

「わざとじゃないんです! これは事故なんです!! 許して下さい何でもしますからぁ!!」

 

誠心誠意、行動の全てに謝罪を籠める。

これで許されるとは思わないけど、まずは謝るしかない!

 

「……ね」

 

俯く彼女が、ぼそっと何かを呟いた。

 

「えっ? 今、なんと? ひょっとして、事故ってわかってくれましたか?」

 

次にアインスはゆっくりと顔を上げて、はっきりと言った。

 

「……シネ」

「デスヨネー!?」

 

分かってくれるなんて甘い考えを木っ端みじんに打ち砕くようにアインスが両手を翳すと、黒色の魔力弾がマシンガンの如く放たれた。

ここは、闇に沈め。とか、もう眠れ。とかそういう中二病的なセリフを吐く場面じゃないかな?

なんてド直球ストレートな言葉。

良く見ると、アインスの目から思いっきり涙が零れ落ちていた。

うん、そりゃそうだよね。

そりゃ、いきなり見ず知らずの人に抱きつかれて、キスまでされたらそうなるよネ!

問答無用で案件、いや、現行犯逮捕だよネ!

是非もないよネ!

 

<なーかせたーなーかせた。せーんせーにいってやろー!>

「先生って誰!? ってそれよりも逃げるぞ!」

 

もうこうなったら逃げるしかない!

光弾をかわしながら、全速力で空へと飛び上がった。

幸い、今まで攻撃をかわす事に重点を置いた訓練をスカさんの所でも、地上本部でもイヤと言うほどやってきた。

その成果と、駄神から与えられたずば抜けた動体視力と反射神経のおかげで、どうにかアインスが放つ魔力弾マシンガンをかわせている。

 

<マスター、逃げてばっかりじゃらちあかねぇぞ。反撃しないのか?>

「そんな余裕ない!」

 

チラリと後ろを振り向くと、涙を流しながらも鬼気迫る表情で殺気と魔力弾をばらまくアインスがはっきりと見える。

はっきり言って恐怖しかない!

 

「……どうしようか」

 

このまま飛びまわっていてもいつか当たってしまうだろうに、どうしようか考えていると。

向こうからこっちに向かってくる2つの影が見えた。

 

「健人君!」

「健人!」

 

それはなのはとフェイトだった。

2人共無事だったのか、良かった……さっきのキスシーンみられてないだろうな?

そんな心配をしたが、2人共アインスに追われてる俺を心底心配した表情で見ている。

どうやら、さっきのは見られていなかったようだ。

2人を助けに来たのに、逆に助けを求めるなんて恥ずかしい事この上ないが、状況が状況だ。

 

「なのは! フェイト! たす、うわぁっ!?」

 

今、魔力弾が頬を掠った。

危なかった……こりゃ、2人に救援を求める余裕すらないな。

でも、あの2人ならこの状況を見て、助けに入ってくれるはずだ。

 

「健人君……うん、分かったの!」

 

良かった! 分かってくれた! これで少しは楽に……

 

「健人、がんばって!」

 

が、がんばって? あれ? 俺は何をがんばるの!?

そうだ、念話だ念話!

これなら逃げながらでも会話が出来る。

 

『なのは、フェイト!』

『健人君、来てくれたんだね。うん、分かってるよ!』

 

いや、だから何をわかってらっしゃるのかななのはサン?

 

『健人が囮となって彼女を引きつけている間に、私となのはで特大の一撃を準備して食らわせればいいんだよね』

 

あるぇー?(・3・)

 

『健人君が作ってくれるチャンス、絶対に逃さないの!』

 

いや、いやいやいや、なのはサンや、それはあんまりではないですかい?

 

『健人、死なないで』

 

フェイトサン、そう思ってるなら今すぐにヘルプ・ミー!

 

<もうこうなったら腹くくろうぜ、マスター。男だろ?>

「あ……あぁ~もう!」

 

こうなったらしょうがない!

情けなくてもなんでもいいから、囮になってアインスを引きつけてやるよ!

思えば、これが模擬戦以外での初めてのまともな戦闘かもしれないな。

トーレ達に追いかけられた時は一方的に逃げてただけだし、戦闘とは呼べないな。

 

『なのは、フェイト』

『『えっ?』』

『ああ。時間を稼ぐのはいいが――別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?』

『『それは言ったらダメ―!!?』』

 

 

これは後で知ったけど、アースラの皆にはさっきのキスシーンはノイズのせいで見られていなかったようだ……安心したぁ。

 

 

続く




はい、健人生まれて初めての●●でした(笑)
本格戦闘は次回……戦闘になるのかな?(ぇ


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第20話 「大・爆・発!」

お待たせしました!
別タイトル『壮絶、死体蹴り!』


さーって、困った事になったぞー

事故とは言え、俺のファーストキスがリインフォース、名前がまだつけられていないから(仮)に奪われてしまった!

いやいや、重要なのはそこだけじゃなくて、そのせいでリインフォース(仮)が激おこ状態で攻撃をしかけてくる。

おまけに、なのはとフェイトは何を勘違いしたか、俺が囮になってリインフォース(仮)を引きつけてくれてると思ってる。

なので、俺は1人でリインフォース(仮)と対決しなくてはならなくなった。

もうこうなったら破れかぶれで突撃だ―!

 

「うおぉ~……ぉぉ?」

 

突然リインフォース(仮)の動きが止まった。

それだけではなく、左手のパイルバンカーっぽいのが突然黒い蛇みたいなものに変形して、うじゃうじゃといくつも湧き出て体に巻きついて行った。

 

『外で戦ってる方達、聞こえますか? すみません、協力して下さい!』

「っ、声が?」

 

その時、どこからか通信、いや、念話が届いた。

 

「この声、はやてか!?」

「はやてちゃん!?」

「はやて!」

『えっ、まさか健人君? それになのはちゃんとフェイトちゃんも!?』

「健人君、はやてちゃんと知り合いだったの!?」

「あー、まぁな」

 

この念話はなのはとフェイトも聞こえているようだ。

はやてもなのはやフェイトも俺がそれぞれ知り合いなのを驚いているけど、今はそれどころじゃない

 

『あ、今はそんな事よりもこの子に付いてる黒い塊をどうにかしてくれる?』

「はやて。今意識あるのか!?」

『うん、なんでか分からないけど、さっきいきなり私の意識が目覚めて、この子に纏わりついてるナハトヴァールが混乱し始めたんよ』

 

ナハトヴァールってのがあの黒い塊の事か。

はやてが言うには、今目の前にいるリインフォース(仮)の姿をしているのはリインであってリインじゃなくてナハトヴァールが暴走している姿なんだとか。

それにしても、いきなりナハトヴァールが混乱して、おかげではやての意識が目覚めたのって、あ、アレか!

なのはとフェイトが俺の方を見て、尊敬の眼差しを向けてる気がする。

 

<あーアレきっと、マスターが何かしたおかげで事態が好転したと思ってる顔だな>

「あはは、そんなまさか」

「健人君、ひょっとしてもう何かしていたの?」

「私達が駆け付けるまでに手を打っていたなんて、すごい!」

「うそーん!?」

 

ホントに誤解しちゃってるよ! 何なの君ら、アホなの!?

俺が何かしたわけじゃ……はい、しでかしちゃいましたね。キスを。

でも、そんなの目がキラキラしてる2人に言えるわけない。

これは一生墓の中でも来世でも持っていこう、うん。

 

『でも、私の管理者権限が完全に使えるようになるには、ナハトヴァールをなんとかしなくちゃいけなくて!』

「ああぁぁ~~!」

「うおっ、また動きだした!」

 

リインフォース(仮)が突然狂ったように叫びだした。

よっぽどさっきのキスがトラウマになったようだ。

闇の書の防衛プログラムとは言え女の子だもんな。

何度も言ったけど、本当にごめんなさい。

 

『3人共聞こえる!?』

 

その時、今度はユーノから通信が入った。

どうやらアルフと一緒にこっちに向かっていて、クロノも別方向から接近中らしい。

ユーノ達にも今のはやての声が聞こえてきたみたいで、作戦を伝えてくれた。

曰く、魔力ダメージであの黒いうじゃうじゃをぶっ飛ばせばいいようだ。

幸い、思いっきりやっても中にいるはやてにはダメージが通らないらしい。

よーっし、ここはいっちょあの必殺技を繰り出して……

 

「健人君、ここは私とフェイトちゃんに任せて!」

「うん、健人にばかり負担をかけさせられないよ」

「なのは、フェイト、分かった。任せた!」

 

と思ったらなのはとフェイトがやる気満々な様子。

正直、アレをやるとめっちゃ疲れるから2人にお任せ。

砲撃も射撃も下手な俺より、なのはとフェイトの魔砲少女コンビの方がうまくいきそうだしね。

 

「中距離殲滅コンビネーション」

「ブラスト・カラミティ」

「「ファイアー!!」」

 

そして、放たれるなのはとフェイトの合体魔砲。

いや~やっぱり魔砲って派手でいいねぇ。

俺もいつか撃てるようになるといいな。

それにしても、今なのは、殲滅って言ったよな?

魔力ダメージとは言え殲滅って……

流石は白い魔王と呼ばれるだけの事はある。

今、その根源を見た気がする。

イヤーカンドウダナー。

 

「―――!」

 

2人の魔砲はそのまま、悶絶していたナハトヴァールを呑み込み、大爆発を起こした。

 

『防衛プログラム、管制融合騎との分離を確認!』

 

衛星軌道上で待機中のアースラからの通信によると、どうやら作戦は成功したようだ。

これで、はやては闇の書、いや、夜天の書の力をフルに使えるようになる。

爆発の中に、はやての魔力である白い光が見える。

 

「おいで、私の騎士達」

 

光が収まると、十字型の杖を構えたはやての姿と、その周りにはやてを守るように現れたシグナム達。

 

「はやてちゃん!」

「シグナム達も!」

「夜天の光に祝福を。リインフォース、ユニゾンイン!」

 

そして、リインフォースとユニゾンして、甲冑を纏い白い髪に蒼い目をした姿へと変わった。

くぅ~かっこいい!

俺だって炎を纏いながらバリアジャケットを装着するけどね。

 

「はやて……」

「すみません」

「あの、はやてちゃん私達」

「ええよ、みんな分かってる。リインフォースが教えてくれた。ま、細かい事は後や。まずはおかえり、みんな」

 

あーあ、ヴィータが感極まって泣きながらはやてに抱きついてる。

いいな、感動の再会シーン。

俺達も微笑みあいながらはやての側に降りた。

 

「なのはちゃんもフェイトちゃんもごめんな、それとありがとう」

「あはっ、良かったね」

「うん」

「それに、健人君、お久しぶり。まさか健人君が魔導師になってるとは思わんかったよ」

「おう、久しぶりはやて。それはこっちのセリフだよ。まさかはやて達が……コスプレ趣味の集まりだったなんて」

 

ずっこけるはやて達。

 

「「「コスプレじゃない!」」」

 

流石に冗談だよ。

 

「すまない。水を刺すようで悪いんだが」

 

そこへKYなクロノがユーノとアルフを連れてやってきた。

いや、KYじゃなくて差し迫った状況なのは分かるよ?

 

「時空管理局執務官のクロノ・ハラウオンだ。あの黒い淀みは闇の書の防衛プログラムで後数分で暴走する。間違いないか?」

「うん、自動防衛システム、ナハトヴァール」

 

クロノが指さした海上には、切り離されたナハトヴァールが異形の姿を現そうとしている。

はやてを助ける事が出来たけど、これからが本番。

今までと違って邪悪な存在との戦いだ。

クロノが発案したプランは、まずナハトヴァールの周囲に展開されている複合バリアシステムと本体をみんなで破壊。

それから、露出したコアをユーノ、アルフ、シャマルでアースラの前まで転送して、アースラの主砲アルカンシェルで完全消滅させる。

暴走を開始したナハトヴァールは周囲の物体を呑み込み巨大化する。

手加減無用で思いっきりぶつけてもまだ足りないくらいだ。

ここで、俺がトーレやクイントさん達に教えられた全てをぶつけられる。

 

「健人、君は大丈夫なのか?」

「おうよ。ここ数カ月で随分鍛えられたし。なのは達の砲撃に負けない必殺技もあるぜ」

「ふふっ、それは頼もしい。ナハトヴァールを一時的にとは言え停止させたんだ。期待させてもらうよ」

「あ、あはははっ……」

 

まさかキスで停止させましたーなんて死んでも言えない。

 

「夜天の魔導書を呪われた闇の書と呼ばせたプログラム、ナハトヴァールの浸食暴走体。闇の書の、闇」

 

ついにその姿を現したナハトヴァール暴走体。

ところどころ機械的でもあるそのおぞましい巨体へ向けて、ユーノとアルフとザフィーラが拘束魔砲で動きを封じていく。

それでも触手を伸ばして砲撃してくるが、高速飛行しながら俺の拳で粉砕して行く。

 

「やるな、健人」

「どうも。師匠達のおかげ、だよ!」

 

炎の拳がなのは達へ砲撃を放とうとしていた触手を打ち砕く。

うーん、気分爽快だ。

 

「先陣突破! なのはちゃん、ヴィータちゃん、お願い!」

「おう、合わせろよ高町なのは!」

「うん! アクセルシューター・バニシングシフト!」

「ギガントシュラーク!」

 

そして、なのは、ヴィータが攻撃を加える。

複合バリアの2つが破壊された。

 

「シグナム、フェイトちゃん!」

「いくぞ、テスタロッサ」

「はい、シグナム」

 

フェイト、シグナムの剣士コンビがそれに続く。

 

「翔けよ、隼!」

「貫け、雷刃!」

 

2人の攻撃が残っていたバリアを破壊した。

 

「はやてちゃん、健人君!」

「やるぜ、はやて!」

「うん!」

 

さて、俺も行くか!

両腕に魔力をチャージして行く

 

「シェルブリット、限界ぶっちぎりでぶっ放すぞ!」

<仕方ねーな。付き合うぜ、マスター!>

 

あの時以上に力強い魔力が両腕に集まって行くのを感じる。

それを見て、クロノとユーノが驚いた表情を浮かべた気がするけど、気にしている余裕はない。

 

「彼方より来たれ、やどりぎの枝。銀月の槍となりて、撃ち貫け」

 

はやても詠唱を終えたようだ。

俺も準備万端だぜ!

 

「石化の槍、ミストルティン!」

 

はやてが放った8本の槍が命中すると、ナハトヴァールはあっという間に石化してしまった。

ここで、俺が続ける!

 

<おい、マスター。今更だが、この魔法。なんもトリガーを登録してないが、どうするんだ?>

『……あっ、忘れてた! ってか今それ言うか!?』

 

一般的に魔法を発動させる際には、本人やデバイスが魔法名を叫んだりする。

なのはにもフェイトにも、そしてクイントさんやゼストさん達にもそれぞれかっこいい名前がある。

けど、それが俺にはない。

一般的な魔導師よりも魔力量が高いから、アクショントリガーのみで発動出来てしまうかららしい。

だから、俺が使える魔法は全部名前が無い。

名前がなくても発動出来るから今までほっといたけど、こう言う場面で叫ばないのは逆になんか恥ずかしい!

ま、さっきザフォーラが雄たけびだけのパンチ使ってたし、いっか。

こういうので大事なのは、ノリだ!

 

「うぉ~! 行くぜ、これが、俺の自慢の拳だぁ~!!」

 

両拳を石化したナハトヴァールに叩きこむ。

それと同時にシェルブリットの手甲に籠められた魔力を完全開放。

魔力は炎と共にナハトヴァールの巨体へヒビを入れさせながら駆け巡り、大爆発を起こした。

なのは達の攻撃以上の大爆発にみんな吹き飛ばされそうになってる。

うーん、結局俺もパクっちゃった! いいよな、色々と元ネタだし!

なのはやフェイト達はすごいすごいと言ってるけど、クロノやユーノは唖然としてるな。

 

「やったか!? あ、フラグ立てちゃった」

 

やっちまったぜ、まさかやってないフラグを立ててしまうとは。

いや、俺なんかの攻撃で倒せるとは思ってないけどさ。

 

<そうでもないみたいだぜ>

「ん?」

 

煙が晴れると、原型を留めていないくらい吹き飛んだナハトヴァールの残骸が転がっていた。

 

<今まで一番のはちゃめちゃな威力になったな。ナハトヴァールがほぼ吹き飛んでる……いや、まだだ!>

「やっぱり!?」

 

粉々に砕けたはずのナハトヴァールがうねうねと波打ち、体をすごい速さで再生し始めた。

 

「後は任せろ。凍て付け!」

 

クロノが、凍結魔法で再生中のナハトヴァールを一瞬で凍りつかせた。

かなりの低温度凍結魔法で、俺まで寒い風が通り抜けた。

良く見ると、術者であるクロノの髪もちょっと凍て付いてる。

クロノの髪も燃えたり凍ったり大変だな。

俺が炎で融かそうか? え、いい? そうですか。

 

「なのは、フェイト、はやて!」

 

クロノが叫ぶと上空で待機していたなのは達3人がブレイカーを放とうとしていた。

 

「全力全開、スターライト」

「雷光一閃、プラズマザンバー」

「ごめんな、おやすみな。響け終焉の笛、ラグナロク」

「「「ブレイカー!」」」

 

お~生ブレイカーだ! しかも、トリプルブレイカーだ!

いやぁ、すごいすごい。さっきの俺の拳なんて目じゃない砲撃がナハトヴァールへと直撃した。

露出どころか、もうコアしか残っていない!

煙を上げながらピクピクしたコアが海上を漂っている。

ってか、俺の攻撃ですでにコア露出してなかったか?

何と言う死体蹴り!

 

「捕まえた!」

「長距離転送!」

「目標、軌道上!」

「「「転送!」」」

 

ユーノ達サポート組がコアを軌道上へ転送。

待機していたアースラがアルカンシェルを発射。

地上からでも見えるくらいの光。

汚い花火だぜ。

いや、実際はすごーく綺麗で気付かれないように写真を撮っちゃった。

 

『コアの消滅、確認!』

「「「やったー!」」」

 

エイミィさんの報告を受け、なのは達が歓声をあげた。

ふー、疲れた。

でも、これで事件解決だ。

 

アレ? これで本当に解決、だっけ?

 

 

 

続く

 




どうにかFate/GO、4章までいきました。
が、7章まで終わる気がしない。
ソロモン討伐は他のマスターに任せましょうか。
だって、星5がイシュタ凛とエルキとケツァル、ナイチンしかいなくて、再臨も素材がなくてやっと第一段階できたくらい。
種火集めも一苦労で他のサーバント育てる暇なし。

あ、これで闇の書事件解決?
次回はあのキャラが久々に登場です!
危うし、健人!(笑)


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第21話 「困った時の神頼み!」

今年初投稿になります!
今年中には終わるかなー……終わりをいつにするか決めてないんですけどね。
ジークリンデと結婚させて終わらせたいけど、どうなるかな(笑)


アースラ

 

気が付くと、ベッドに寝かされていた。

 

「知らない天井だ」

 

人生における1度は言ってみたいアニメセリフで、ベスト20に入るであろうセリフを言ってみる。

どうやら俺は眠っていたようだ。

あの時、ナハトヴァールを破壊したのを確認して、なのは達と喜んでたら急に身体から力が抜けて気絶した、んだったな。

で、確かはやても倒れたのがちらりと見えた気がする。

って、そうだ! はやては、みんなは大丈夫なのか!?

 

「やぁ、起きたみたいだな。おはよう、気分はどうだい?」

 

ベッドから跳ね起きた所へちょうどクロノがやってきた。

 

「あれからどうなった? はやては? 俺は一体なぜ倒れたんだ?」

「落ちつきたまえ。まずあれからどうなったかだが、ナハトヴァールはコアの消滅が確認されて、念の為アースラが周囲一帯を警戒中だ。八神はやてに関しては、初めてのユニゾンと大規模魔力戦闘で疲れがでて倒れただけだ」

 

別室で眠っていると聞いて心底ホッとした。

ヴィータ達が真っ青な顔をしていたからな。

 

「それで、君の事だが……」

 

そこでクロノは溜息をつきながら俺を半ば睨むように続けた。

ん? なぜそこで溜息??

 

「倒れた原因は君も八神はやてと似ているが、無茶をしすぎだ。集束魔法を打撃として使ったんだからな」

「集束魔法? 俺が??」

 

はて? 射撃も砲撃も苦手な俺にそんな高等技術あったっけ?

 

「まさか、自覚がなかったのか!? ナハトヴァールを半分以上吹き飛ばしたあの攻撃だぞ!?」

「あ~あれね。えっ? あれが集束魔法?」

 

そう言うと、クロノは額に手をあて天を仰いだ。

どうやら、本来なのはのスターライトブレイカーみたいに砲撃として使用する集束魔法だが、打撃に使用するなど滅多にない事で砲撃よりも難しい技術らしい。

だからあの時クロノもユーノも驚いていたのか。

でも、確かViVidではミウラが抜剣と言う打撃技として集束魔法を使っていたけど、今はまだあんな使い方は珍しいようだ。

 

「でも、あれを使ったの今回が初めてじゃないし。クイントさんもゼスト隊長達も何も言わなかったぞ?」

<それなんだがマスター。今回使ったのは今までとはかなり違ったプロセスだったぜ。多分無意識で集束技術を使ったんじゃないか?>

 

シェルブリットに言われて、あの一撃を準備した時を思い出す。

確かに、今までとはなんか感じが違っていた気がする。

今まではただ魔力を拳に溜めていただけだったが、あの時は、スクライドでカズマが劉鳳との最終決戦の時、宇宙で使った周囲の色々な物を拳に集中させる感じだ。

 

「全く、君と言うやつは……トンでもないな」

「いや、なのはには負ける」

 

俺は高い魔力と身体能力を半年くらい訓練してやっとここまで使えるようになったけど、なのはは僅か数週間であそこまで言って集束魔法も俺より早くうまく使ってるし。

 

「僕から見れば、2人共天才としか思えないけどな。そうだ、夜天の書の管制人格、リインフォースの事も教えよう」

 

クロノの表情がさっきと一変して、どこか辛そうな表情になった。

そして、静かに話し始めた。

 

「な、んだよそれ!」

 

話を聞き終えて、思わずクロノに詰め寄った。

 

「彼女が、リインフォースがそう望んでいるんだ」

 

そう言うクロノもどこか哀しそうだった。

クロノが言った、夜天の書の破壊。

ナハトヴァールは破壊されたが、夜天の書の基礎構造の歪みは修正不可能になっている。

夜天の書が存在する限り、いずれナハトヴァールは再生しはやてやシグナム達をも浸食してしまう。

だから、それを回避する為に夜天の書本体を完全に破壊する。

シグナム達ヴォルケンリッターは既にリインフォースの手によって、夜天の書本体と切り離されており問題はない。

はやてもナハトヴァールから解放され、いずれ両足も元に戻るそうだ。

けど、管制人格であるリインフォースは共に消滅するしかない。

 

「だけど、そんなのはやてが納得するはずがない!」

 

はやてはシグナム達を家族以上に大切に思っている。

それはリインフォースにも同じだ。

そんな家族が黙って消える事なんて、耐えられない。

頭に浮かんだのは、見舞いに来てくれた母さんと奈々の最後の姿。

また明日来ると2人共笑っていたけど、次に会った時は冷たくなっていた。

両親を亡くしているはやてに同じ思いを抱かせたくない。

 

「彼女はまだ眠っている。だから、その間にリインフォースがなのはとフェイトに完全破壊を頼んだ。もうそろそろ始まるだろう」

「っ! だったら、せめて俺も!」

「その体で無理するな。と言いたいが、君なら無理やりにでも行くだろうな。分かった」

 

行った所で、魔法に関しては全くの素人の俺にはどうする事も出来ないのは分かっている。

けど、じっとなんかしていられない。

 

 

 

海鳴市郊外

 

転送された先は、海鳴市郊外にある展望台だった。

雪が降り積もっていて、一面銀世界だ。

今回は生まれて初めてまともに転送が成功したが、そんなの気にしている余裕はない。

見晴らしのいい展望台で、リインフォースを中心に魔法儀式が始まっていた。

なのはとフェイトによって、リインフォースと夜天の書が空へとかえっていく。

 

「リインフォース、リインフォース!」

 

その時、はやてが車椅子で丘を駆けあがってくるのが見えた。

目が覚めて良かった……とまでは言えないけど、別れには間に合ったみたいだ。

 

「はやてちゃん!?」

「はやて!」

「動くな。動かないでくれ、儀式が止まる」

 

はやてへ駆け寄ろうとしたヴィータ達をリインフォースが止めた。

 

「リインフォース、こんなんせんでええ! 私がちゃんとおさえるから!」

「主はやて、良いのですよ」

「良い事なんかなんもあらへん!」

 

はやてが涙ながらに訴える。

自分が抑える、だから逝く必要はないと。

それでもリインフォースは自分がいかにはやてと出会い、幸せだったかと心の底から笑みを浮かべている。

リインフォースはずっと呪われた闇の書と言われ、ずっと苦しい思いをしてきたのに、やっとはやてという最高の主に出会えたと言うのに。

はやても、これからずっと幸せに過ごそうと決めた家族を目の前で失う。

やっぱり駄目だ。こんなの認められない、認められるわけない。

でも、俺にはどうする事も出来ない。

このまま力づくで止めようとしたら、今度はナハトヴァールが再生されて元も子もなくなってしまう。

こんな残酷な運命があってたまるか、神も仏もないのかよ!

ん? 神……あっ!

 

「そうだ。確かまだもう1つ……神様、聞こえているか!? 3つ目の願いが今決まった。リインフォースをどうにかしてくれー神様!」

 

そう叫ぶと同時に、急に光に包まれ目の前が真っ白になった。

 

 

 

次に目をあけると、半年以上ぶりになる真っ白い空間の中にいた。

そして、目の前にはあの時同様、蒼い長髪にアホ毛を生やした幼女が物凄く不機嫌な表情を浮かべて立っていた。

 

「ちょっ、幼女はないでしょ幼女は! あの時は少女って言ったのに!」

「あ、そうだったかごめんごめん。それでお久しぶり、神様」

「うん、久しぶり~元気そうで何よりだよ~……じゃなくって!」

 

こなた神はらき☆すたで良く見た線になった目で挨拶してきたが、急に目を見開いて怒りだした。

 

「ねぇ、私ものすっごーく怒っているんだけど、理由に心当りないかな?」

「正直、ありすぎて困っています」

「自覚あるんかい! 全く、私言ったよね? 最後の願いは君自身に関わる事って! なんで今回もまた他人の為に使おうとするかな? まぁ、どうにかしたくなる気持ちはすごく分かるよ?」

 

こなた神曰く、はやて周りの事はどうにかしたいが、仮にも神様なので自発的にはどうしようもない。

だから、俺がリインフォースをどうにかしてと願ったのは神様にとっても願ったり叶ったりらしい。

 

「だったら分かるでしょ。はやてがリインフォースと、家族と一緒に幸せに過ごせるのをみるのが俺にとっての幸せだって」

 

それに俺だってここ数カ月、クイントさんやゲンヤさんに息子みたいに接してくれて、ギンガとスバルからは兄として家族として一緒に過ごせて楽しいし。

血は繋がってなくても、心が繋がっているならそれはもう家族であり、そんな家族と別れるのはダメだ。

 

「はぁ~君ならそう言うとは思っていたけどね。んじゃそれはそれで叶えるね。あ、もうこれで君とは死ぬまで会えないだろうから、言っておくね」

 

こなた神はさっきよりも更に不機嫌な顔になった。

 

「この半年間、君が願いを言うのずっと待っててさ。たまに君から呼ばれたかな? って思っていると、駄神だのなんだの身に覚えのない冤罪を押しつけられてきたんだよね~?」

「あ、あはは~やっぱり?」

 

事ある毎に駄神って心の中で叫んでいたからな。

もしかして神様に通じているかもしれない。とは思っていた。

 

「だってさ、俺転送される度に変な所に行って、ろくでもない目にあってるんだぜ? そりゃもう運命のいたずらとしか思えないじゃん」

「あ、うん。それは転生させるときに生じたバグだね。ごめんなさい」

「あっさり認めた!? やっぱりアレはあんたのせいだったのかよ! やっぱり駄神じゃん!」

 

冤罪でも何でもない事じゃん……

いや、転送バグ以外にも駄神呼ばわりした事はあったけどね。

 

「いやぁ~、最初は私もおかしいと思ったんだけど、4回目くらいで、あ、コレバグだ。って気付いたんだよ」

「1回目で気付けよ!」

「だからもう直っているよ。アースラから海鳴市へ行くときは何も問題なかったでしょ?」

 

4回目、本局から海鳴市へ跳ぶ時には場所的には合っていたけど、それはたまたまだったわけか。

 

「それに、最後はおかげで良い思いしたじゃん?」

 

( ̄▽ ̄) ニヤ とむかつくほどのニヤリ顔だ。

でも、良い思いをしたのは否定出来ないし、あの時の感触を思い出して熱くなってきた。

 

「残念なのは君のファーストキスは、相手が覚えてないって事だろうね。そこもどうにかしておく?ニヤニヤ」

 

あの時、俺がキスしたのはリインフォースの姿をしたナハトヴァールだったらしい。

なので、今向こうにいる真なるリインフォースはその事を知らない。

 

「いや、いい。あれはノーカウントって事にしておく」

 

あれは事故だ。あんなふっくらした感触は忘れてしまえ。

 

「あ、そろそろ時間時間。リインフォースの事は何とかするから。でも、これから先何があっても私はもう手助け出来ないから、それを忘れないよね。3つの願い、君自身の幸せの為に使ってほしかったよ」

「願いなんてもう既に叶っているよ。俺は今最高に幸せだから、ありがとう神様」

 

前の世界じゃ死んじゃったけど、こっちで友達も家族も出来て、自由に体を動かせる。これ以上の幸せはない。

俺の願いは、もう叶っている。

 

「うん。良い笑顔。それじゃあ、元気でね」

 

――チュッ♪

 

「っ!?」

「はっはっは~ファーストキス、ゲットだぜ♪」

 

ったく、最後の最後にトンでもない事してくれたぜ、こなた神。

暖かい唇の感触をかみしめながら、また目の前が光に包まれた。

こなた神は見えなくなるまで、笑顔で手を振ってくれていた。

 

 

 

三度目を開けると、そこは海鳴市の展望台だった。

車椅子から落ちて、涙を流しながらリインフォースの元へ行こうとするはやてと、主へかけよろうとするリインフォース。

パッと見、さっきまでと何も変わっていない。

そう思った時だった。

 

――ビカッ!

 

突然、空が鳴り稲妻がリインフォースへと落ちた。

その衝撃で辺りは煙に包まれた。

 

「えっ!?」

「「「リインフォース(さん)!?」」」

 

な、なんだいきなり? これも儀式?

いや、シグナム達のあの焦りようは儀式とは関係ない稲妻のようだ。

まさか、こなた神がどうにかするって言ったのは、コレか?

 

「リイン、フォース?」

 

あまりに突然の出来事に放心した状態で固まるはやて。

煙が晴れていくと、そこには……

 

「ケホッケホッ、一体何が……」

 

全くの無傷で煤すら付いていないリインフォースがいた。

それを見て安心した。

いや、今まさに消えようとしていたのだから、これで安心するのは何か違う気がするけど。

 

「リインフォース、大丈夫、なんか?」

「あ、はい。主はやて、ご心配をおかけしました。っ!?」

 

自分の身を確認したリインフォースはふと、地面に目を向け驚きの表情を浮かべた。

 

「や、夜天の書が!?」

「落雷で燃えた、だと!?」

 

つられて地面に目を向けたはやてやシグナム達も驚きの声を上げた。

そこにはさっきの落雷のせいか、燃え上がる夜天の書があった。

そして、炎につつまれた夜天の書は光となって消えてしまった。

 

「一体何が、どうなったの?」

「これで儀式は終了、したのかな?」

 

何が起きたのか分からないなのはとフェイト。

リインフォースは自分の身体をぺたぺたと触ると、信じられないと言った表情を浮かべた。

 

「儀式が、終わったのに私が消えていない?」

「えっ、どう言う事なんリインフォース?」

「本当なら、私は夜天の書と共に消えるはずでした。ですが、私も夜天の書から完全に切り離されています。今の落雷のせいでしょうか、消えたのは夜天の書の本体だけでした」

「それってつまり、リインフォースは消えなくてええって事?」

「はい、どうやらそのようです」

 

リイン自身も何が起きたのかさっぱり分からないと言う顔をしているが、ともかく儀式が無事に終了したらしい。

で、夜天の書は消えたが、リインはなぜか消えずに済んだ。

この事実を全員が理解するのに、数秒かかった。

そして、全員が理解した瞬間。

 

「「「リインフォース!」」」

 

みんなが一斉にリインに駆け寄った。

はやてもシグナムに支えられて、リインに泣きながら抱きついた。

ふー、いきなり雷落ちた時は何事かと思ったけど、これでどうにかなったわけだな。

 

「良かった良かった」

「あ~! 健人君いつの間に来ていたの!?」

「気付いてなかったのかよ!」

 

どうやら俺はこっちに来ていたのを、今まで誰にも気付かれなかったようで……

 

<泣くなよ、マスター>

「クスン、違うもん。この涙はリインが助かってよかったっていう嬉し涙だもん」

 

 

 

続く

 




これでA’s本編終了です。
次回は後日談で、リインが結局どうなったかです。
ちゃんとツヴァイも出しますのでご安心を。
それから、クリスマス、年末年始と日常を挟んで、BOA編を飛ばしてGOD編をやります。
自分、BOAはやった事ないんでストーリーは超独自のギャグになります。

Fate/GO、6章が難しすぎです。
福袋でジャックちゃんきて、ピックアップでセイバー式はとれたけど、槍師匠取れなかった。
でも、ジャンヌとニトリ、茨木来たからいいか(笑)


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第22話 「ルート分岐?」

おまたせしました!
説明回、と言うかルート分岐……?
選択肢が出る?


リインフォースの消滅の危機を回避してから、アースラに一泊して俺達は本局へとやってきた。

闇の書から分離されたと言うリインやはやて達の精密検査と、ついでに俺も精密検査をさせられる羽目になった。

リンディさん曰く、俺が何回も無事故で転送に成功したのがおかしい、と言う事だ。

大げさすぎるでしょ……確かに地上本部から海鳴市へ跳んだ時にこそちょっとした、ちょっとした!(大事な事なのでry) 事故はあったけどさ。

ナハトヴァール倒した後にアースラに戻された時と、またリインが消滅すると聞かされて海鳴市に行って戻ってくる時の計3回も何事もなく無事故で転送に成功した。

ちなみにアースラに戻る時、両脇をなのはとフェイトががっちりと腕を取ってくれた。

万が一またどこかに跳ばされないように、だそうだ。

正直、嬉しかったけど、どうせならシグナムとシャマルが良かったな。リインは流石に無理だろうけど。

なぜかは察してくれ。見た目は9歳でも俺も男なんだ。

そんなこんなで本局での精密検査は無事に終了。

 

「あ、健人君、お疲れ様。検査はどうだったの?」

「どこも異常はなかった?」

 

なかなかに検査が長時間だったにも関わらず、なのはとフェイト、それにアルフが待っていてくれた。

 

「いや、どこも悪い所ないってさ。リンカーコアも全く消耗してないし、魔力も全回復していて逆に驚かれたよ」

 

あんな無茶な集束魔法を使ってもう全回復しているのはおかしい。とは言っていたな。

 

「そりゃ、あんなに無茶な事したらそう言われるさ。あたしだってビックリしたもん」

 

アルフが苦笑いを浮かべると、なのはとフェイトも頷いた。

 

「健人君がいつの間にかあんなに強くなっていたなんてびっくりしたよ。すごいよね」

「私は、健人がまともに次元転送出来るようになれてよかったよ。これでどこでも行けるね」

 

あぁ、ほんまこの2人はええ子やわぁ~。

思わずエセ関西弁でほっこり。

あ、そうだ。

 

「リインフォースの方はどうなったか知ってる? 確か別の棟で検査してるって聞いたけど」

「それならさっきクロノ君から連絡あって、もうすぐ終わるみたいだから行ってみよう」

 

それからリインフォースとはやて達が検査を受けている所までやってきた。

着いてみると、ちょうどはやて達が出てくる所だった。

どうなったか少し不安だったけど、はやての車椅子を押すリインやシグナム達がみんな笑顔を浮かべているのを見て、ひとまずホッとした。

 

「はやてちゃん、リインフォースさん。もう終わったんですか?」

「おぉ~そっちも終わったんやな。健人君、どうだったん?」

「俺よりまずはリインフォースだろ。まぁ、俺は問題なしの健康体だよ」

「どうやらそうみたいだな。彼女達の事も含めて話が色々ある。こっちにきてくれ」

 

クロノに言われて俺達は会議室のような所へとやってきた。

そこには、リンディさんやエイミィさん、それにもう1人いて楽しそうに話をしていた。

俺はその1人を見て固まってしまった。

 

「リンディさん、その人は誰なんですか?」

「あぁ、みんなに紹介するわね。この人は地上本部のクイント・ナカジマさんよ」

「初めまして。クイント・ナカジマ准陸尉です。時空管理局地上本部首都防衛隊所属で、健人君の母親代わりもしてるわ」

「「「えぇ~!?」」」

 

みんな、クロノすら驚いて声をあげている。

そう、リンディさん達と一緒にいたのはクイントさんだった。

なんで地上本部所属の人が本局にいるんだろ。

はい、間違いなく俺の事ですね。

母親代わりって所、めっちゃ強調して言ったし。

 

「なんでこんな所にいるんですか、クイントさん!?」

「なんでって、あなたが心配だから来たに決まってるじゃない。ちゃんとゼスト隊長の許可はもらったわよ?」

 

何、さらっと許可出してるんですかい隊長。

地上本部にとってここは敷居高い場所じゃなかったっけ?

 

「そんな細かい事気にしないの。それよりもリンディ提督から色々聞いたわよ」

 

クイントさんは目をキラキラさせて俺の方へかけよってきた。

うわぁ、色々って何を聞いたんだろ。

まさか……ファーストキス事故の事ですか?

 

「あのトンでもないパンチを集束魔法に昇華させるすごいじゃない! 今度隊長達と一緒に見せてね」

 

あ、そっちですか。

 

「それとギンガとスバルがすごく機嫌悪いのよ。事情が事情だから仕方ないけど、今度うーんと遊んであげてね」

「やっぱりか、分かりました」

 

すぐには戻って来れないかも、とは言っておいたけど、まさか2日くらいでそこまで機嫌悪くなってるとは思わなかった。

てかクイントさん、周りみて周り!

クロノ達置いてけぼりになってポカーンとしてるよ?

クイントさんの事を話してあるなのはとフェイトはものすごーく暖かい眼差しを向けてきてるし。

 

「こほん、クイントさーん? もういいでしょうか? みんな固まってますよー?」

「あら? ごめんなさいねこっちで勝手に盛り上がっちゃって」

 

エイミィさんが助け舟を出してくれたおかげで、ようやく話が出来そうな雰囲気になった。

まずは、クイントさんと俺との関係をさらっと説明した。

ミッド本土に転送させれた後、クイントさんの家でお世話になっていて、ギンガやスバルにも兄として懐かれているとまで言っちゃって、物凄く恥ずかしかった。

なのはとフェイトには妹分が出来たとしか言ってなかったしな。

それを聞いて、はやてが。

 

「健人君にも家族が出来て良かったね」

 

と言ってくれた。

それから、今度は俺と八神家の事について話をする事になった。おい、リインフォースの事はいいのかよ。

 

「そっかぁ、事故でこっちに飛ばされた時にはやてちゃんの所に泊めてもらってたんだね」

「世間は狭いと言うか。全く、知っていたなら早く説明して欲しかったな」

 

クロノがぼやくように呟いた。

 

「仕方ないだろ。口止めされてたんだし。闇の書事件にシグナム達が関わってるの知ったの当日だったんだし」

 

まぁ、俺がもっと早くはやての事、闇の書の事を思い出していれば良かったんだけどな。

 

「私達も健人君の事は、迷子としか聞いていませんでした。まさか管理局に保護されていた次元漂流者だったなんて。でも、怪しむべきだったかしら」

 

シャマルが数カ月前の事を思い出して懐かしむように言った。

 

「でも黙っていてくれて良かったぞ。もし管理局が関わってるなんて言われたら……」

「記憶を改竄するくらいはな」

「最悪、監禁していたかもしれない」

「こ、こら、ヴィータもザフィーラもシグナムも脅かしたらあかんよ。あ、心配せんでも私が絶対にさせへんかったからね?」

「あ、あはははは」

 

冗談冗談とヴィータ達は笑いながら言ったけど、なんか若干目がマジだった気がする。特にシグナム。

 

「じゃ、次はリインフォースさんの事ね。エイミィ、説明をお願いね」

 

やっとリインフォースの身体についての話になった。

全く、俺の事なんて話題にしなくていいってのに。

すごーく恥ずかしかったぞ。

あれ? なんでクイントさんもずっと会議に参加してるんだろ?

俺の事が心配で来たのは分かるけど、あれれ?

 

「リインフォースさんの身体データですけど、改竄された痕がありました。と言っても人工的にではなく、事故と言ってもいいですね。恐らくあの落雷のせいだと思います」

 

エイミィさんが言うには、リインフォースは消滅の瞬間に落ちた落雷の影響で、完全に闇の書の根元から切り離されてシグナム達守護騎士システムと同じ存在に変換されたらしい。

はやてやシグナム達とユニゾン出来なくなり、元々の魔力がかなり減ってしまったがそれでもSランククラスの魔導師なのは変わらないようだ。

色々難しい話も出てきたけど、要するにユニゾン出来ないけど守護騎士が1人増えただけと思えばいいか。

それと、はやての足については、原因はどうやら闇の書の汚染によるものだったらしく、それが取り除かれた事で早ければ年明けには歩けるようになるらしい。

思っていたよりもかなり早いとはリインフォースが言っていたけど、これもこなた神が何かしてくれたかな?

 

「以上が検査の結果で分かった事だけど、本人の感覚としてはどうかな? 何か違う所ある?」

「いや、自己診断した結果も同じだ。私は管制人格ではなく、騎士達と同じ存在へと生まれ変わったようだ」

 

最初は不安そうな表情を浮かべていたなのはとフェイトだったが、説明を聞いて表情が明るくなった。

 

「良かったぁ。じゃあ、消滅しなくていいんですよね?」

「はやて達とずっと暮らせるって事ですよね?」

「あぁ、私は騎士達と共に主はやてと共に生きる事が出来るようになった」

 

それを聞いて、なのはとフェイトは満面の笑みを浮かべてはやてとリインフォースに駆け寄って一緒に喜んでいる。

かく言う俺も気付かれないように深く息を吐いた。

あの神様の仕事を疑うわけじゃないけど、どうなるのかと心配したからなぁ、良かった良かった。

 

「それじゃあ、続いてはやてさん達と、健人君のこれからの事について話をしましょうか?」

「えっ? 俺?」

 

夜天の書から闇の書へ改竄された事情があったにせよ、過去に闇の書関係で事件や事故を起こした。

今回も管理局員を襲ってリンカーコアを蒐集したりと色々やっちゃったシグナム達と何も知らなかったとはいえ彼女達の主であるはやての今後について話し合うのは分かる。

けど、俺の事もとは??

 

「はやてさん達の意思確認は、おおまかには聞きました。これから少し時間をかけて色々としなければいけない事は多いですけど、こちらとしては管理局への勤務は大歓迎ですよ」

 

何となく予想はしていたけど、こういう流れではやて達は時空管理局に勤める事になるんだな。

 

「で、次に健人君なのだけど。単刀直入に聞きますね。健人君、なのはさん達と同じ学校に通ってみる気はあるかしら?」

「えっ?」

 

今何と? 俺がなのはやフェイトと同じ学校へ?

 

「クイントさんから相談は受けていたの。健人君を日本の学校に通わせる事は出来ないかってね」

「前に話したでしょ? 学校に通わないかって。地球人の健人君がミッドの学校に通うよりは、同じ地元の日本の学校になら通っても問題ないどころか、普通でしょ?」

「あ、うん。うんうん、それすごくいいです! ねっ、健人君も一緒の学校に行こう」

「私はまだ少ししか通ってないけど、すごくいい所だよ。みんな優しいし楽しいよ?」

「あ、私もなのはちゃん達の学校へ復学する予定なんよ。健人君も一緒にどうやろ?」

 

リンディさんやクイントさんだけではなく、なのは、フェイト、はやてまでが勧めてきた。

いや、一応9歳の俺が学校に通うってのは、管理局に勤めるよりは普通なんだろうけど。

てか、はやてよ。俺の正体知ってるのになぜに勧めて来るかな?

 

『はやて、俺は本当は18歳って知ってるだろ。今更小学校に通うってのはちょっと……』

『だって健人君、今は9歳なんやろ? それに、言っとったやないか、まともに学校に通った事ないって。だから、ね?』

 

はやてが言いたい事は分かる。

俺は、小学校すらまともに通った事はない。

授業を受けた記憶もほとんどなく、勉強は家庭教師に教わっていた。

そんなんだから、学校生活ってのはすごい憧れている。

だからって小学校からと言うのは……

 

「あ、仕事の事なら大丈夫よ。健人君、正式にじゃなくて仮に所属してるだけでしょ? 本格的にうちに勤めてくれるって言うなら嬉しいけど、それにしても学校をメインにして管理局の仕事はアルバイト感覚で大丈夫よ?」

「いや、いいんですかそれで!?」

「クイントさんの意見は私も賛成よ。あなたは本来、魔法とは無関係の一般の子供なんですよ。それもこの世界とは別の世界から来たんですもの。普通の生活を送っても誰も文句は言わないわよ?」

 

いや、もう普通の生活は無理でしょ。デバイスも出来たし。集束魔法も身につけちゃったし。

あ、いたね。俺の隣にいたね。魔法少女と学業を両立しているスーパーな小学生。

 

さて、このまま管理局に専念するか、それともなのは達と同じ学校に通うか、か。

うむむ、どうしようか。

 

 

続く




分岐と言いつつ実は決まってたりして。
将来的には、ヒロインによって変わるとかその程度です。


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第23話 「名前って大事だよね。ティロなんとかみたく」

お待たせしました!
実はティロなんとかは、原作よりも某男子高校生の日常で使われた方が印象に残ってたりします(笑)


結論から言って、なのは達と同じ学校に通う事になりましたぁ!

ただし、来年の4月からでそれまでは管理局地上本部で研修を受ける事になった。

今までは半ばバイトみたいなものだったので、基本的な事しか教えてもらっていなかった。

嘱託魔導師の話もあったけど、うやむやになったし。

けど、4月からは本格的に管理局の地上局員として働くからしっかりと研修で教えてもらう事になった。

これは俺からお願いした事だ。

最初はリンディさんからなのはやフェイトと共に本局への勤務を勧められた。

はやてやシグナムさん達もいずれは本局勤務になるらしい。

意外だったのは、クイントさんも地上本部よりも本局へ勤務する事を勧めてくれた事だ。

クイントさん曰く、これはゼストさんやレジアス中将も本局を勧めているようだ。

理由はいくつかあり、1つに地上本部には若い局員はいても、俺のような子供の局員はまだいないので寂しい思いをする事になると言っていた。

そして、本局にはクロノやエイミィさんなど、まだ子供と言ってもいい程の年齢の局員が沢山いるからだそうだ。

クロノはともかくエイミィさんは、生前の俺よりも少し年下なのに子供か。

確かに地上本部には若くても20歳ほどの人しか見なかった。

けど、ギンガやスバルやティアナって割と子供の頃に地上本部入りしてから機動六課入りしなかったかと思ったが、今の時代では色々事情がありそうだ。

で、次の理由がなのはやフェイト、そしてはやて達が本局入りするのが決まったからだ。

正式な配属先は未定らしいけど、本局で働いていれば同じ所属にもなりやすい。

これにはなのは達も大いに大賛成してくれた。

まぁ、自分で入る事を決めたなのはとフェイトはともかく、今回の事件の後始末と贖罪的な意味合いで入局するはやては同い年の友達がいた方が嬉しいだろうな。

なんて納得していたら、クロノが溜息をついていたのはなぜだろう?

リンディさんとクイントさんはニコニコ笑っていて、なのは達は苦笑い浮かべてたし。

そして、最後の理由。

ぶっちゃけ、地上本部より本局の方が給料いいからとの事。

でも、最後の理由についてはどうでもよかった。

大金持ちになりたいわけじゃないし、生前はお金があっても碌な事はなかった。

それよりも、まだ9歳の子供にそういう話をしちゃう辺り、ミッドと地球の職と言うか文化の違いに驚く。

 

ってか、正直、学校に通わず今のまま地上本部で正式に働きたいと言ったんだけど、それはクイントさんに却下された。

地上本部で働くなら、せめて小中学校は通いなさいと言われた。

前話であんな事を言ったけど、クイントさんは何がなんでも俺を学校に通わせる気だったみたい。

選択肢があると思ったら実はなかった件。

そして、これはその話をした時にあったある出来事。

 

「なんでそこまで学校に通いたくないのかしら? なのはちゃん達と一緒に通えるのに」

「あーそれは……」

 

流石に小学校から通い直すのは抵抗感あったけど、それ以上に……

 

「クイントさんやゲンヤさん、ギンガにスバル。家族と離れるのが、ちょっと……」

 

ギンガとスバルに兄のように慕われるのも良かったけど、ゲンヤさんとクイントさんが自分の息子のように怒ったり優しくしてくれたのがすごく嬉しかった。

って、これ言っててめちゃくちゃ恥かしかった!

それを聞いたクイントさん、目に涙を浮かべて俺を強く抱きしめた。

 

「うん、うんうん。そうだよね。ごめんね、健人君。そして、家族と言ってくれてありがとう」

 

傍から見れば感動シーンなんだろうな。

リンディさんやなのは達も涙浮かべてるし。

でも、実際には、結構息苦しいデス。

胸に圧迫して息できねぇ。

リリカル世界脅威の巨乳率だけど、クイントさんも胸でけぇ!

たまに漫画やアニメで巨乳に押しつぶされるラッキースケベを見て、すこーしだけ羨ましく思ったけど、実際にやられると胸の感覚やら匂いやら堪能するよりも呼吸困難で苦しい!

そんな俺の窮状をやっと理解したリンディさんに解放され、救出された。

 

「あ、あはは。ごめんね健人君。つい嬉しくなって」

「い、いえ、だいじょうぶです。はい、ほんと」

 

こんな事で生死の境をさまよう事になるとは思わなかった。

てか、はやてニヤニヤ笑っているけど、念話で。

 

『ええなぁ』

 

って言って来た事、俺は忘れないからな。

それはともかく、最終的にはこうなった。

 

・学校には中学卒業まで通う。

・普段はリンディさんが借りた海鳴市でのマンションにリンディさんやフェイト達と同居。

・週末や休日、または好きな時にナカジマ家へ。

・ゼスト隊に正式所属して中学卒業後、改めて配属先を決める。

 

と言う事になった。

後はあれよあれよと言う間に俺の新生活の段取りが決まって、なのはとフェイトとはやては大喜びしてくれた。

シグナムやリイン達も管理局に勤めながらも八神家に住むのは変わらないので、いつでも遊びに来てほしいと言ってくれた。

だけど、一番大変なのはギンガとスバルの説得だった。

週末などに帰るとはいえ、普段は遠く離れた海鳴市に住む事になって、ギンガとスバルに大泣きされてゲンヤさんやクイントさんと共に宥めるのが大変だった。

それから地上本部に正式所属する事を改めてレジアスさんに言ったら、これもまた泣かれた。

大のおっさんの嬉し泣きって正直、どうよと思った。

余談だけど、俺が本局より地上本部を選んだ事で、レジアス中将とオーリスさんが給与を含めた福利厚生の大改革をお偉方に直訴し、数年で地上本部の待遇が大幅改善されたらしい。

 

 

とまぁ、ここまでがめちゃくちゃ長い前置き。

今現在、俺は何をしているかと言うと……

 

「「「メリークリスマス!」」」

 

八神家で数日遅れのクリスマスパーティーをしていた。

シグナム達ヴォルケンリッターは本局で取り調べの為不参加で、参加者は俺、なのは、フェイト、アリシア、アルフ、ユーノ、はやて。

それに加えてすずかと同じくなのはの友達であるアリサ・バニングスだ。

すずかとアリサの事はぶっちゃけ存在自体忘れていた。

いや、イノセントではしっかり魔法少女してたけど、ViVidじゃ名前すら出てこなかったし……

 

「へぇ、これが噂の彼かー」

「よろしくね、健人君」

 

すずかとアリサは俺の事をなのはやフェイト達からよく聞かされていたようで、興味津々に色々質問された。

何でもすずかは、はやてとも前から友達だったようで、はやてからも俺の事を聞いていて会いたさが倍増していたようだ。

みんな、俺の事なんて言ってたんだよ。

ちなみに、俺が魔導師だって事は既に知っていた。

どうやらあの闇の書の事件で、2人は巻き込まれていてナハトヴァールと俺の鬼ごっこも見られていたようだ。

幸い、見られていたのはナハトヴァールに追いかけられた後の事で、俺がキスしたシーンは見られていなかった。

で、なのはとフェイトに救出されて、その時魔法少女の事とか全部バレて、後日説明した。

後、なのはの家族にもリンディさんを加えて色々説明したようだ。

すずか達もなのはの家族も魔法の事とか管理局の事とか、すんなり受け入れてくれたみたいだ。

適応力の高さすげぇ。

まぁ、そんなすずかとアリサよりも存在を忘れていたのが……

 

「健人と話すの、すっごく久しぶりだね!」

「ソウデスネ、アリシアサン」

「んん? 健人はなんでこっちを向いてくれないのかな?」

 

満面の笑みを浮かべて俺に迫りくるアリシア・テスタロッサさん。

何でも、アリシアは闇の書最終決戦時にはアースラにいて、リインとのお別れもどきの時も、クイントさん交えての今後の話の時も同席していたらしい。

……全く気付いていなかった。

 

「そんな事だと思ったよ! 健人ったらこっち見向きもしなかったもん!」

「ご、ごめん。本当に気付かなかった」

「それって私がフェイトよりも小さいから?」

「それもあるけど、一言も話さず空気だったし」

「場の空気読んでただけ! ってか小さい事へのフォローもなくあっさり流したね!?」

「だ、大丈夫だよ姉さん。まだこれからもっと伸びるよ」

 

フェイトが必死にフォローしようとしてるけど、周りから見たら妹を宥める姉にしか見えない。

そんな微笑ましい姉妹を尻目に、はやてが俺の所へとやってきた。

 

「なぁなぁ、健人君。聞こうと思ってた事が1つあるんやけど」

「ん、なんだはやて?」

「私らのトリプルブレイカーより前に放ってたあの集束拳撃って言うんだっけ? あれって名前はあるん?」

「えっ? 名前?」

「あ、それ私も聞こうと思ってたの!」

「私も少し気になってた」

 

はやてだけでなく、なのはもフェイトも寄って来た。

てかフェイトよ、いきなりほったらかしにされて姉が拗ねてるぞ?

それにしても、あの攻撃の名前か。

いや、それよりも魔法の事知ったとはいえ、すずかとアリサの前でそういう話していいのかよ。

あ、なのはがレイジングハートに記録していたその時の戦闘シーンを2人に見せてる。

それを見てアリサもすずかも目をキラキラさせて驚いてるし。

こういうのって男の子が興奮するものだと思ってたよ。

 

「なぁ、ユーノ?」

「うぇ!? いきなり話をふられても何の事か分からないよ!」

「こっちの話こっちの話」

 

トイレにいっていたユーノを巻き込んでみた。

 

「あーあの集束魔法の事? 僕もびっくりしたよ。まさかブレイカーを拳に乗せて放つ事が出来るなんて」

「そりゃ誰だってビックリするって、何せ半年前まで魔法のまの字もしらない一般人だったんだから」

「いや、アルフ。隣にいる2人を見て。俺よりすごい魔法使えるあの2人を見て!」

 

そう言われ横を向いたアルフが、あぁって顔をしてフェイトとユーノが苦笑い。

当の本人達はキョトンと首を傾げる。

 

「むむっ、私だって私だって……」

「何だか魔導師も色々大変みたいね。ところで、健人。いい加減名前教えてくれない? 私も気になっちゃった」

 

ジェラシーマックスなアリシアに同情するような視線を送っていたアリサに言われ、改めてみんなの視線が俺に向いてくる。

 

「えっと……名前は、ない」

「ええぇ? ないの!?」

 

なんでそんな大げさに驚かれるのか分からないけど、ないものはない。

話を逸らして時間を稼いでその間に考えようとしていたけど、うまくまとまらなかった。

 

「魔法名は大事だよ。トリガーにもなるんだし」

「それは知ってる。けど、トリガーなしで使えたし、別にいらなくない?」

 

あの時もただ殴るだけでトンでもない威力だったし。

 

「そんな横着な」

「アルフの言う通りだよ。それに名前があると、かっこいいよ?」

「うんうん、私だってスターライトブレイカーって叫びながら撃つと気持ちいいし」

「いや、なのは、それは色々と問題大ありな気がする」

「ほえ?」

 

未来のハッピートリガー?

まぁ、白い魔王の事はほっといて、改めて名前を考えてみる。

 

「なぁ、シェルブリットは何か良い名前思い浮かばないか?」

<デバイスの俺に聞くなよ、マスター>

 

シェルブリットに決めてもらう作戦、失敗。

 

「なら、マイ・プラウド・フィスト?」

 

英語にすると、My proud fist

By ヤフー翻訳

 

「うーん、どうもしっくりとせえへんなぁ」

 

はやてが言うと、皆頷いた。

そりゃ元ネタそのまんま英訳しただけだしな。

 

「他にはナックル……あ、こりゃだめだ」

「??」

 

頭に浮かんだのは、ナックルブレイカー。

どこのエアロミニ四駆だよ。

それにナックルブレイクってコロナの魔法と被るからダメだ。

 

「なら、シャイニングナックルはどうかな?」

 

頭に浮かんだのはシャイニングフィンガー。

でも、こっちは拳だからナックルだ。

フィストよりナックルの方が語呂いいし。

 

「うーん、どうせならブレイカーを最後につけたらどうかな?」

「えっ? なぜに?」

 

集束魔法だからブレイカーって付けなきゃいけない法則でもあるの?

 

「あのね。いつか健人君と2人で撃つ時にブレイカーって一緒に叫びたいな、って思ったの」

「あ、それいいね、なのは!」

「うんうん、私らもトリプルブレイカーやったし。健人君含めてフォースブレイカーの完成や!」

 

おーい、もしもーっし?

何をそんなに盛り上がっているのかなこの魔砲少女達は。

 

「と言うわけで、ブレイカーを最後に付けてもう一度考えてみて!」

 

目をスターライトのようにキラキラさせてるなのはさん。

フェイトとはやても同様で、あまりの剣幕に思わずアリシア達に救援を求めたが。

 

「オウ! ワタシ、マホウワッカリマセーン」

「アリシア、お前はどこの外国人だ! いや、あってるか」

 

正確には外世界人か。

 

「諦めなよ健人。ああなったなのはは止められないよ」

「フェイトも同じく」

「あはは、はやてちゃんもそうかな」

「がんばりなさい」

 

みんな他人事だと思って!

しかし、ブレイカーを最後に付けてそれらしい名前にか。

もうナックルブレイカーしか頭に浮かばない。

けどそれだとなぁ……あ、そうだ。

 

「なら、シャインナックルブレイカー。これならどうだ!」

「「「賛成!」」」

 

やれやれ、なんか疲れた。

まぁ、これで俺の必殺技に初めて名前がついた。

他にもいくつか使える技あるから、これを機会に名前つけてみるかな。

 

 

続く

 




はい、季節外れのクリスマスパーティー回なのに命名回でした(笑)
次はすこーっし時間飛びます。
バレンタイン?
ジル・バレンタインの事ですか?生憎クレア・レッドフィールド派です(`・ω・´)キリ


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第24話 「えっ、まさかの遭遇!?」

一か月遅れのバレンタインネタ。
でも、その前にあるフラグをたてます。


2月14日

 

今日俺は、地上本部の訓練施設にいる。

シェルブリットを手に入れてから魔力の制御がやりやすくなって、色々な魔法を覚えた。

と言っても、なのは達みたくポンポンと気軽に出来るわけでもなく、闇の書の件で覚えた集束魔法共々実践で使えるようになるまで時間がかかった。

今日はその最終調整と成果のちょっとした披露会だ。

 

「グレンマグナム!」

 

拳に回転する魔力を籠めてターゲットの人形を殴る。

人形は胸元に大穴をあけながら吹き飛ばされた。

やばっ、やりすぎた。

 

『はぁ……次!』

 

スピーカーから聞こえるクイントさんの呆れた声。

そして、目の前に新しいターゲットが十数体現れた。

 

「今度はもっと加減しないと、マッハボンバー!」

 

再度拳に魔力を溜めて打つ。

いくつもの火球が拳から放たれて、ターゲットを次々と撃ち落としていく。

さっきのが個人向けの必殺技なら、これは複数の敵を攻撃できる射撃魔法。

いよいよ念願の射撃魔法をゲットしたぜぃ!(感涙)

 

『これは問題なし。次!』

 

次に現れたターゲットはこれまた複数。

しかも、俺を囲むように配置されている。

 

「じゃあ、これだトルネードクラッシュ!」

 

足に魔力を集めて、その場で高速回転しながらの回し蹴り。

これは周囲の敵を攻撃する範囲攻撃だ。

 

『それじゃ、ラスト!』

「おっ、おぉ~」

 

いよいよラストのターゲット、なんだが。

 

「コイツはまた、デカっ!」

 

今まではターゲットは動かないただの人形だったのだが、今回は巨大なゴーレムがターゲットだった。

あれ? これって模擬戦とかだっけ?

 

『さぁ、がんばってぶっとばそう♪』

「さっきまでと難易度違い過ぎませんかぁ!?」

 

岩のような剛腕を避けながら叫ぶ。

しかも、結構動きが機敏で避けるのも大変だ。

一発でも食らったらタダじゃすまなそうなんだけど?

 

『大丈夫大丈夫、冷静に動きを見極めてアレをぶつければ余裕余裕♪』

『ちょっと、クイント!? あれって確かSSランククラスの訓練用じゃなかったかしら!?』

『あれ? あ、間違えちゃった♪』

『クイントー!?』

 

テヘペロをして誤魔化すクイントさんにメガーヌさんのツッコミが炸裂。

ぶっちゃけ、テヘペロが非常に可愛かったですあの若奥様は!

はぁ、ゲンヤさんが心底パルパルだぁ。

 

「なんて言ってる暇はなし。行くぞ、シェルブリット」

<おぉ、こっちはいつでもいいぜ>

 

ゴーレムの攻撃をかわしながらも、シェルブリットに魔力を集束させていた。

前までは動きながらではうまく集束させられなかったけど、今じゃ動きながら出来るようになった。

ゴーレムから逃げると見せかけて、壁を蹴り反転しそのまま突っ込む。

両脚の脚甲からブーストを点火させて更に加速する。

 

「行くぞ、シャインナックルブレイカー!」

 

全身を輝かせ、巨大な光球となりゴーレムの巨体へと両手を叩きこむ。

ぶつかった瞬間、全身を覆っていた光はそのままゴーレムへと注ぎ込まれ、大爆発を起こした。

 

――ドドォーン!

 

「いよっしゃー! 撃破―!」

 

カメラの前でわーいわーいと喜んでいるけど、別室でモニターしていたレジアス中将やゼスト隊長達は唖然としていた。

あ、クイントさんだけはよしっ、と言った表情で頷いてる。

それもそのはず……

 

<マスター、現実逃避してないで後ろ向こうぜ?>

「……ですよね」

 

恐る恐る後ろを振り向くと、確かにゴーレムは撃破出来ていた。

だが、実際には撃破はなく消滅していて、訓練室の壁にはゴーレムよりも大きな穴が空いていた。

確か以前も似たような事した気がするけど、今回はあの時よりも明らかに穴がデカイ。

 

「あ、まぁ……これは、アレだな。想定よりも高レベルなターゲット設定をしたクイントが悪いな」

「えっ?」

「だな、レジアス。これの修繕費はクイントの給料から天引きしよう」

「え“っ!?」

「大丈夫ですよ、クイント准陸尉。全額を一気に天引きはしません、とても足りませんから。ボーナスと合わせて分割払いになります」

「え“ぇ”~~!?」

 

レジアス中将、ゼスト隊長と立て続けに言われ、トドメとばかりにオーリスさんから処分を言い渡されクイントさんはムンクの叫びのような顔になった。

 

「いや、これ悪いの俺ですから。俺が……」

「はいはーい、健人君は気にしないでいいのよ。ささっ、午後からなのはちゃん達に呼ばれているんでしょ? 一緒にお昼食べたら送ってあげるわ」

 

真っ白になったクイントさんを置いて、メガーヌさんに食堂へと連れ出された。

一応金ならスカさんにもらった分も合わせて結構あるから俺が弁償しようと思ったのだが、あんな高レベルを用意したクイントが悪い、とメガーヌさんに強く言われ、今回は甘える事にした。

 

「なんでよぉ~~!!」

 

クイントさんの絶叫を聞きながら、俺達は訓練ルームを後にした。

ホントにいいのかな。

 

 

「健人君ってすごく強くなったわね。私でももう勝てないかも」

「そんな事ないですよ。遠距離から攻撃されたらキツイです」

「あはは、今の健人君なら私程度の射撃は回避しながら接近出来るでしょ」

 

俺は、食堂でメガーヌさんと昼食を食べつつ、先程の俺の新技披露会について話していた。

披露会と言っても見ていたのはゼスト隊以外、レジアス中将とオーリスさんと言うある意味いつものメンバーだったけどね。

それにしても、俺って結構な過大評価をされている気がする。

メガーヌさんって遠距離支援型に見えて、接近戦も出来るからなぁ、俺じゃ無理かも。

 

「すみません。ここ、いいですか? 今日は混んでて席が空いてなくて」

 

と、そこへ元の俺と同い年くらいの男性局員が話しかけてきた。

確かに今日は食堂が混んでいる。

俺とメガーヌさんも空いていた4人掛けのテーブルを使っていた。

 

「あ、別に構わないわよ。ねぇ、健人君?」

 

クイントさん達はまだ来る気配ないし、いいよな。

 

「はい、どうぞ」

「ありがとうございます。あ、僕はティーダ・ランスターと言います」

「んぐっ!?」

 

俺の隣に座った男性局員が自己紹介をしてくれた。

礼儀正しいなぁ……ん? ティ、ティーダ・ランスター!?

このいかにも普通にモブでいそうな好青年な彼が、ティアナ・ランスターの兄貴―!?

Stsでももちろんだけど、イノセントでも名前しか出てなくてどんな人か全く知らなかった。

思わぬ所で思わぬキャラと遭遇して、思わず喉を詰まらせてしまった。

 

「私はメガーヌ・アルピーノよ。ってどうしたの健人君!?」

「だ、大丈夫!?」

 

ティーダ・ランスターが慌てて俺の背中をさすってくれたおかげで、どうにか治った。

ふー、危うく三途の河を渡る所だった。

 

「げほげほっ、あ、ありがとう、ございます」

「もう、いくらなのはちゃんに呼ばれているからって慌てて食べる事ないわよ。あ、この子は、草薙健人君。まだ幼いけど、ちょっと訳ありでうちの部隊にいるのよ」

「はい、噂は聞いています。まだ幼いのにここでもトップクラスの魔力の持ち主だって。何でも訓練ルームの壁を破壊する程の実力者と聞いていますよ。あと、管理外世界で本局の人達と共に第一級ロストロギア殲滅に貢献したとか!」

「あ、あはは……どうも」

 

そんな噂が立っているのか。

どうりで物珍しい視線だったのが、ここ最近は驚きの視線に変わっていると思ってた。

なんか天然記念物を見るような歓喜の表情も浮かべる人いたしな。

 

「あら、あなたの事も知ってるわよ? 地上本部でも類を見ない射撃の名手って言われてるじゃない」

「僕にはそれしか特技がありませんから。それにこんなに幼いのに頑張ってる健人君には遠く及びませんよ」

 

いやいやいや、俺のはただの神様チートですから。

って、ティーダって原作だと確か、事故か事件かで亡くなるんだっけ。

うーん、マズイ。ゼスト隊よりも情報がなさすぎていつどうして亡くなるか分からない……

ティアナのトラウマにも関係するって話だったし、どうにかしたいんだけど、現時点じゃどうしようもない。

 

「健人君? 今度は難しい顔しちゃってどうしたの?」

「えっ? いや、なんでもありませんよ。俺ってそこまで有名人だとは思ってなくて」

「あはは、そうだよね。ティアナとあまり歳変わらないのに有名人って言われてもピンとこないよね」

 

今のティアナって確か、元々ギンガの1つ下だから、今の俺と3歳差。

結構差が空いてる気がするんだけど、子供なら6歳でも9歳でも一緒の括りにされるのか?

 

「ティアナってひょっとして妹さん?」

「はい。今6歳なんですよ。まだ幼いのに僕の射撃魔法に興味湧いてて教えて教えてってせがまれますよ」

「あら、可愛いじゃない。6歳ね。うん、これからますます色々と興味持つようになるわよ」

「ですよね。あ、そうだ。よければ健人君、ティアナと友達になってくれないかな?」

「えっ? 俺が、ですか?」

 

いきなり見ず知らずの男を友達にって、それでいいのかお兄さん。

 

「うん。まだティアナが幼い頃に両親が亡くなって、それから周りの人達に助けられて何とか面倒を見てきたんだけど、やっぱり友達がいた方がいいと思ってね」

「ご両親が、そうだったの。それじゃあ健人君はピッタリね。彼、この歳でもう結構な女の子のお友達が多いのよ? 午後からも地球って言う管理外世界出身の子達に呼ばれてるのよ?」

「ちょっ、メガーヌさん!?」

 

ここでそういう話題持ってくる!?

なんかややこしい事になりそうなんだけど!?

 

「おぉ~それはますますティアナと友達になってほしいな」

「えっ、なんでそうなりますか?」

 

てっきり警戒するものと思ってたけど、なんかこの兄、ノリノリである。

 

「うふふっ、これは早速クイントにも教えないとね」

「僕もティアナに良い話が出来そうですよ」

 

それからも2人は俺とティアナ、それにギンガとスバルまで話題に引っ張り出して盛り上がっていた。

余計なお世話と叫びたいところだけど、実の所ティアナってSts時代まで接点ないだろうから知り合えないなって思ってたから、結構楽しみでワクワクしている。

なんか修羅場になりそうな予感がしないでもないけど、まさかそんな漫画みたいな展開俺に起きるわけないよなー

 

<十二分に漫画っぽい波乱万丈な人生送ってると思うぞ、マスター>

 

黙ってろシェルブリット。

そう言えば、なのは達に呼ばれてるけど、何の用だろうか?

まさか、模擬戦の誘いじゃないだろうな。

正月に会った時も模擬戦したがってそうだったしな。

あの時は、忙しいからって断ったけど、すごく残念そうだったな。

しょうがない。次に誘われたら断らずにちゃんとしよう。

 

<いや、まぁ、戦と言えば戦になるのかな……マスター、日本人なのに知らないのかよ>

 

シェルブリットが何か言ったけど、気にしないでおこう。

 

 

 

続く

 




出して出したくてしょうがなかったティアナ登場フラグ!
実は、ティアナはジーク、ナカジマ姉妹(ナンバーズ含む)マテリアルズ並に好きなキャラです!
でも出すにはどうしようか迷っていましたが、どうにかなりそうです。
あ、ジークはどうがんばってもまだ無理です……

次回こそはバレンタイン突入です。


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第25話 「ばれんたいんこわい」

お待たせしました!1カ月以上遅れてバレンタイン話です(笑)


意外な所でティーダ・ランスターと知り合い昼食を共にして、俺は海鳴市へとやってきた。

クリスマス前にこなた神に出会ってから、次元転送で変な場所に行く事はなかった。

だから油断していた……

「や、やっほー」

「健人君!? なんでうちの風呂場から出てくるの!?」

 

そう。俺はなぜか八神家の風呂場に転送された。

本当ならプレシアとフェイト、アリシア、アルフが住んでいる一軒家に着くはずだった。

最初はリンディさんが借りたマンションだったのだけど、4月から俺が住むと言う事で、プレシアが広い一軒家を買った。

プレシアって意外に金持ちだったんだな。

で、これが夜だったら、誰か入っていてキャー! 健人君のエッチ! 的なイベントが起こったのだろうけど、今は真っ昼間なので誰も入っていない。

 

「どうやら久々に事故ったみたい」

「難儀やなぁ。まだ直ってなかったん?」

「そうみたい」

 

はやては心底心配そうな顔をしてくれる。

どうやら今ははやて以外の面々は留守のようだ。

思えば、スカさんの所からの転送事故ではやてと出会うきっかけが出来たんだよな。

人生、何が転機になるか分からないな、うんうん。

 

「せや、はようフェイトちゃん達に連絡した方がええんちゃう? きっと心配しとるで?」

「あぁ、そうだな」

 

早速フェイトに連絡を取ると、転送ポートの前でアリシアと待っていたそうで、俺が八神家に着いたと知り驚いていた。

どうやらプレシアとアルフは本局に行っていて、なのははもう到着していて、また事故ったのかと言った顔をしていた。

またって……

ついでにアリシアは、俺が転送したと同時にクラッカーで驚かそうとしていたらしい。

後でシェルブリットデコピンの刑だ。

それからはやてと2人でテスタロッサ家の所に行く事になった。

ちょうどはやてが出かけようとした所に、俺が風呂場から現れた。

 

「ほんなら、行こっか健人君」

「あぁ……なんでナチュラルに手を握って来る?」

 

はやては、もう車椅子じゃない。

足も完全に直って、普通に歩いたり走ったりも出来るようになった。

どこかへ出かける時に自分の足で自由に動けるのが嬉しくて、今も上機嫌なんだろうな。

だからつい俺の手を握ってきてるのだろう。

これくらいならもう慣れっこだ。

 

「ええやん。こんな可愛い子に手を握ってもらえて本当は嬉しいんとちゃう? 健人さん」

「だからさんはやめろっての」

 

はやては2人きりか、シグナム達身内しかいない時に俺をさん付で呼ぶ事が多い。

一応中身は年上だけど、今は同い年なんだからそういうのはなんか妙に照れくさい。

 

「む~……あ、ひょっとして、話に聞くギンガちゃんやスバルちゃんにいつも手を繋がれてて、慣れっことか?」

「そうだな。クイントさんやゲンヤさんもだし」

 

みんなで出かける時は誰かしら手を繋いでくる。

最初は慣れない事に恥ずかしがったり、離したりしたけど、その度にギンガとスバルには悲しい顔をされて手を繋ぎ直したりした。

 

「健人さんって……ロリコン?」

「なんでそういう話になる!? それにもしそうなら、ちょっとややこしい話にならないか?」

「あっ! そう言えばそうやね。うん、健人さんはロリコンやない! シスコンや!」

「なんでそうなる!?」

 

と言うか、まだはやては小学生なのにそういう知識があるのに驚きだ。

 

「それでも、女の子に手を握られて少し無反応すぎやない? 私の事どう思ってるんや?」

「話が変な方向に行ってるぞー。はやての事か……ませすぎな子供?」

「ま、ませすぎって。それに自分だって子供やないの!」

「残念、中身は18だ。車の免許も取れる大人だぞー」

「それでも微妙やし、今はそこからマイナス9やな」

 

そんなこんなで2人で漫才のような会話をしていると、あっという間に目的地に到着。

テスタロッサ家はなのはの住む翠屋と八神家のちょうど中間にある。

なのはもはやても遊びに来やすく行きやすい場所を選んだようだ。

 

「ここに来る度に思うんやけど。立派な家を買おうたな、プレシアさんは」

 

2人で目の前の一軒家を見上げる。

いや、これはもう豪邸だな。

親子3人+ペット+居候が住むには十二分過ぎるほどの豪邸だ。

八神家よりもデカい。

 

「あぁ、すっかり親馬鹿になっちゃったからなぁ」

「フェイトちゃんに厳しかったって言う、昔のプレシアさんが想像でけへん」

 

元のプレシアを知らないはやてには、今の

プレシアはただの親馬鹿だもんな。

 

「あ、きたきた! 待ってたよ2人共!」

「健人、はやて、いらっしゃい」

「こんにちは、健人君、はやてちゃん」

 

2人でテスタロッサ邸を見上げていると、中からアリシア達が出てきた。

アリシアはそのまま走ってきたので、カウンターぎみにデコピン。

 

――ビシッ!

 

あ、良い音した♪

 

「あいたー!? い、いきなり何するの!?」

「クラッカーでお出迎えしようとしてくれたアリシアに、俺からの意趣返し。本当はシェルブリットつけてやりたかったけど、人目を考えて素手にした俺の優しさプライスレス」

「あ、あははは。私は止めたんだけど、ね?」

「アリシアちゃん、健人君に久々に会うからびっくりさせようってはりきっちゃって」

「フェイト、せめてネズミ花火にしようって言ったじゃん。なのはちゃんはヘビ花火にしようって言ってたし」

 

ネズミ花火の方が驚くっての。

で、ヘビ花火って……どう反応すればいいんだよ。

 

「そもそも室内で花火しようとするなよ! てかよくあったな!」

「去年の夏に母さんやクロノ達とやった残りがあったんだよ」

「何してんだよクロノ……」

 

何気にクロノが日本の花火に一番興味津々だったらしい。

 

「それでみんなして呼んだりして、何かあった? 模擬戦の誘い?」

「ううん、そういうのじゃなくて……やっぱり気付いてなかったんだね、健人君」

 

なのは達が苦笑いを浮かべている。

気付いていない? ハテナ?

 

「あ、そう言えばこの前のマテリアルズの事件でまだ何かあったの?」

 

実は、少し前ある事件があった。

闇の書の闇、ナハトヴァールの残骸がなのは、フェイト、はやての構成情報を元にマテリアルと言う存在を作り、密かに復活しようとしていた事件だ。

なのは達が解決したけど、俺はちょうどその時、研修中でちょっと遠い所に行っていた。

で、戻ってきて事件の事を知った。

戦闘記録を見せてもらったけど、それを見て俺は事件に関われなかったのを非情に後悔していた。

そのマテリアルというなのは達に似た存在と言うのが、思いっきりイノセントに出てくるシュテル達だった。

微妙に差異はあったけど、口調やら見た目は思いっきりシュテル達だ。

なのは達からはマテリアルSとか呼ばれていたし、本人達もそう名乗っていたのが驚いた。

でも、イノセントのシュテル達の元ネタって確かリリカルなのはのゲームネタだったのを今思い出した。

思い出すの遅すぎだろ俺。

 

「「「それは聞かないでくれるかな?」」」

 

マテリアルズと言った途端、なのはとフェイトとはやての表情に陰が差し、ズーンと疲れた表情を浮かべた。

 

「ダメだよ、健人。フェイト達あの事件の事ちょっとトラウマになりかけてるんだから」

「ご、ごめん」

 

何があったのか不明だけど、マテリアルズ事件でなのは達3人がとーーーっても疲れる事があったらしい。

何度か本人やクロノ達に聞いたけど、みんな苦笑いを浮かべるだけで応えてくれなかった。

クロノやユーノはお気の毒様と言った表情を浮かべていたけど、あれはなんだったんだろ?

 

「ほ、ほら! 3人共、そんな事よりせっかく健人が来たのだから早く用件済ませちゃいましょ! 健人は居間でテレビでも見て待ってて。あ、ゲームしててもいいよ?」」

「う、うん、そうだね!」

「お、おう……」

 

あれよあれよと言う間に、居間に1人取り残されてしまった。

フェイト達は台所で何かやっているみたいだけど、ここからじゃ何も見えないし聞こえない。

休日の昼間じゃ面白い番組もやってないので、1人寂しくゲームでもやってますか。

 

「よっし! 2時間半でクリア! これでロケランゲットだぜ! ……ってまだかな?」

 

で、なんで俺はゾンビゲームなんてやっているのかな。

てかなんでこんなゲームがここにあるのかな?

確かアリシアは幽霊とかホラーダメだったはず……自分が幽霊やゾンビっぽい存在なのにな。

あれ? どこからか甘い匂いがしてくるぞ?

 

「健人、お待たせ~……ってなんでそれやってるの!?」

 

台所から出てきたアリシアがテレビを見た途端、涙目になって台所に引っ込んだ。

これ、そこまでする程怖いかな。

 

「なんでって、ゲームやってろって言ったのアリシアじゃん」

「そうじゃなくて! なんでそのゲームがうちにあるの!」

「あ、それはやてから借りたんだよ。すごく面白かったよ。他にも映画とか沢山あるから後で一緒に見ようね、姉さん」

「は~や~て~!? 何フェイトを悪の道に落とそうとしてるのぉ~!!」

「あ~アリシアちゃん、ホラー全般ダメなんやね。ヴィータやシャマルと一緒や。シグナムは大好きなんやけどな」

 

悪の道=ホラー好き、か。

で、ヴィータとシャマルはホラー嫌いか。

……なんで守護騎士がホラーダメなんだよ。

お前ら幽霊とかゾンビ以上にグロテスクな怪物相手にしてきてるだろ。

 

「にゃはは。向こうは無視して、こっちに来て健人君」

 

ぎゃーぎゃー喚くアリシアを無視して、なのはに連れられてダイニングに行くと、そこには立派なケーキやクッキーなどのお菓子が沢山並んでいた。

 

「俺を今日呼んだのってコレの為? でもなんで? 別に今日誕生日ってわけでもないし」

 

何かの記念日か? でもまるっきり心当たりがない。

そう言うと、なのはは今まで一番大きな溜息を吐いて、呆れるような目で俺を見た。

 

「健人君、今日はバレンタインデーだよ? あ、もしかして、バレンタインデーって元いた世界じゃなかったのかな?」

「ん? バレンタインデー? あ、あぁ~! そっか、そうだったのか! うんうん、分かった分かった。大丈夫、俺のいた所でもバレンタインは今日だった!」

 

バレンタインデー、確かに今日は2月14日だ。

あー……俺、生前チョコとか甘いもの制限されていたからそういうのもらった事なかったんだよな。

こっちに転生して甘いもの食べれるようになって喜んだ時、何か引っかかる事あったけど、そうかそうか!

 

「って事は、これはなのは達からの? うわっ、嬉しい……」

「うん! せっかくだから皆でチョコケーキやお菓子作って渡そうって事になったの!」

「ほへ~それで4人でこれだけの量を」

 

テーブルの上にある特大チョコケーキだけで満腹になりそうなのに、チョコサンドとかチョコ系のお菓子がたくさんある。

 

「えへへっ、ちょっと楽しくなって作り過ぎちゃった。あ、ギンガちゃんとスバルちゃんの分も用意してあるから渡してあげて」

「あぁ、ギンガ達の分までありがとな。それじゃ早速食べますか」

「あーなのはちゃん1人で抜け駆けはずるいで~!」

「そーだそーだ! 私だって手伝ったのに。ねぇ、フェイト?」

「う、うん……私は、あまり手伝ってないけど、ね」

 

そこでズズーンと沈むフェイト。

一体どうした?

 

「あわわ、大丈夫だよフェイト! 生地のスポンジと普通のスポンジを間違えたり、砂糖と洗剤を間違える事なんてよくあるから!」

「あってたまるかい! ま、まぁ、フェイトちゃんはこれからじっくりと、な?」

「…………」

 

何その漫画に出てくる料理音痴でもやらないような間違い。

フェイトは料理苦手だったのか。

 

「大丈夫だよ! ちゃんと全部味見したから!」

「そうだよ。私は盛り付けや飾り付けしかやってないから……うん、それ以外には手をつけてないから」

 

どっかの海賊漫画に出てくる狐のおやびん並に地面にめり込む程沈んでるよ、フェイト……

 

「あぁ~もう! とにかく健人さっさと食べちゃって!」

 

実の姉が匙投げちゃったよ!

 

「ご、ごちそうさま……ウプッ…でした」

 

な、何とか食べきったぜ。

途中何度かやめようかと思ったけど、なのはのキラキラした目とフェイトの半分死んだような目を見てると全部食べなきゃと言う使命感ががが……

はやてとアリシアは胃薬を用意してました。

 

「大丈夫、健人君?」

「だいじょうぶだいじょうぶ~」

「そんなテンションの低い芸人見たいな返しされると、とても大丈夫に見えないよ」

「うん、本当に大丈夫。それにどれも美味しかったから」

 

生れてはじめてのバレンタインの贈り物。

それも、リリカルキャラからのなんて……あぁ、転生して良かった。

 

「そうそう。これな、シグナムやリイン達からのバレンタインチョコや。本当は直接渡したかったんやけど、皆今日どうしても外せない用事があるから渡してくれって頼まれたんよ」

「これは母さんとアルフからね」

 

そう言ってはやてとアリシアは、大小様々色取り取りの箱が入ったバッグを渡してくれた。

うん、これだけあればしばらくはチョコいらないな。

 

「本当にありがとう。今度、みんなにお礼を言わないとな。じゃあ、そろそろ帰るよ」

 

今から帰って夕食か、少なめにしないとな。

 

「いいっていいって、来月のお返しが楽しみだから♪」

「ん? お返し……御礼参り?」

「なんでやねん! 3月14日のホワイトデーや!」

「あはは、分かってるって。えっと、確かお返しは3%だっけ」

「少なすぎや! 3倍返しや! ついでに言っておくけど、赤く塗ってこれで3倍! って言うのはナシやで?」

 

ちっ、ネタを潰された。流石は関西系女子。

4人に改めてお礼を言って、転送ポートでミッド地上本部に戻って、ナカジマ家へと帰った。

行きがアレだったから心配だったけど、帰りは何の問題もなく帰る事が出来て良かったぁ。

 

 

 

「ただいま~」

 

家に戻ると、ゲンヤさんが1人でいた。

クイントさんは地上本部で壁を吹き飛ばした後始末中で、ギンガとスバルはお昼寝中だった。

 

「おかえり健人。久々に高町の嬢ちゃん達に会って来たんだってな。で、随分と土産が多そうだな」

「バレンタインデーのチョコをもらったんだよ」

「バレンタインデー?」

 

ゲンヤさんは俺の言ってる事が分からないらしく、不思議そうに首を傾げた。

あ、そうか。バレンタインデーって地球独自の文化だったか。

俺がバレンタインデーの説明をすると、途端にゲンヤさんはニヤニヤした顔つきになった。

 

「ほほう。じゃあチョコを沢山もらった健人はモテモテってわけだな」

「そんなわけないでしょ。義理チョコって言って親しい友達に渡すチョコもあるんだし。あ、これギンガとスバルの分ね」

<……はぁ~>

 

シェルブリットが小さく溜息を吐いた気がしたが気のせいだろう。

 

「ほう、あの子達の分まで用意してくれたのか、こりゃあ今度何かしないとな。あぁ、そうだ。健人、荷物が届いているぞ」

「荷物? 誰から?」

 

見ると玄関にはちょっと大きいダンボールが置かれていて、送り状を見ると確かに俺宛だ。

そして、差出人の名前は……

 

「ドクターブライト?」

「ほれ、お前さんのシェルブリットを作ってもらった博士だろ?」

「あ、あぁ~そうかそうかそうだった」

 

ドクターブライトってスカさんの偽名だった。

その偽名全く使わないから、すっかり忘れてた。

そりゃそうだよな。流石に本名で管理局員の家に荷物なんか送って来ないよな。

なんか他にもツッコミ所はあるけど、スル―しておこう。

 

「なんだ。ひょっとしてそれもチョコか? 本当にモテモテだな、健人は」

「んなわけないでしょ」

 

そう言って荷物を持って部屋に向かったが、背後から小さな声で。

 

「……俺の分はなしか」

 

と呟くゲンヤさんの声は聞かなかった事にした。

 

 

部屋に戻って早速荷物を空けてみると、ゲンヤさんの予想通り中にはチョコらしき箱が沢山入っていた。

どれも丁寧にラッピングされていて、それぞれメッセージカード付きと言う気合の入りようだ。

 

「ほ、本格的すぎる。どれどれ?」

≪健人君へ、バレンタインデーと言う文化がおもしそうなので乗ってみたよ。私のデバイスを有効利用してくれているささやかなお礼だ。変な意味はないので安心してくれたまえ≫

 

すっかり日本の文化に感化されてるな。

とても元・悪の科学者とは思えない。

それにしても、まさか男から友チョコを受け取るとは思わなかった。

……毒でも入ってるんじゃないだろうな?

そう思い、慎重に箱を開けたが、中にあったのは普通の四角いチョコだ。

これでハート型だったらアジトに乗りこんでブレイカーぶちかます所だった。

 

「あれ、これにもメッセージ書いてあるぞ。なお、このチョコレートは5秒後に自動的に消去される……ってうぉい!」

 

――ビィー!

 

突然チョコが音を出して光だし……何も起こらなかった。

 

<落ちつけマスター。別に危険物の反応はないぜ>

「そうみたいだな。あ、裏にも何か書いてある。あっはっはっ、引っ掛かったかな、健人君? ってあのアホドクター! l今度会ったら即ブレイカーだ!」

 

良く見ると板チョコの下に光って音が鳴るだけの小さな装置が置いてあった。

他の箱もこんな調子じゃないだろうな、とげんなりしつつメッセージカードを読み上げて行った。

 

≪お久しぶり健人君。ドクターが怪しげな笑みを浮かべてあなたへのプレゼント作っていたから10回程ぶっとばしておいたわ ウーノ≫

「ありがとう。ウーノ!」

 

チョコレートもシンプルながらとても美味しそうだ、流石はウーノ。

 

≪ハッピーバレンタイン! いつも陰からあなたをしか……げふん、見守っているわよ♪ ドゥーエ≫

「こえぇ~よ! たまに視線感じる事あるけどお前かよ!」

 

微妙にひびわれたハート型なのがまた怖い!

ドゥーエはISを使って変装して管理局に潜入してるんだっけ。

それにしても怖いっての!

 

≪新しいアジトが完成したから遊びにきてね。それとウーノが最近胃の調子が悪いそうよ。 クアットロ≫

「アジトの住所が書いてある。って住所だけ書かれても場所わかんねぇ! てかアジトに住所があるのかよ!」

 

良く見ると板チョコに地図が彫られている。これじゃたべられねぇっての!

この住所宛にウーノへの胃薬送っておこう。

 

≪謹賀新年。今年もよろしくな トーレ≫

「年賀状かよ!」

 

チョコレートはビターチョコでした。

 

≪バレンタインチョコ。初めて作ったけど、美味しく出来たと思う。味わって食べてくれると嬉しい チンク≫

「あぁ~……癒されるぅ」

<泣くほどの事かよ>

 

チョコはチンクらしい可愛いリボンに包まれていた。

と思っていたら、肝心のチョコは度数の高いウイスキーボンボンだったので、ゲンヤさんにあげた。

9歳児に何渡してるかな?

 

≪砲撃手らしいチョコを作ってみたよ ディエチ≫

 

箱の中には、長い砲身の両側に球体状の物体が付いた簡素な形状をしたチョコが……

 

「ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃねぇか、完成度高ーな、オイ。ってうぉい~~!!」

 

何トンデモナイ形のチョコ作ってるんだよ!

確かに砲撃手らしいと言えばらしいけどさ!

 

≪か、勘違いすんなよ。他の皆がお前にチョコ作ってるから私も一緒になって作っただけだからな! セイン≫

<なんか、一番手間暇かけて丹精に作られたチョコの様に見えるんだが>

「言うな、シェルブリット。何も言うな」

 

スカさん達の中にで一番美味しかったのはセインのチョコだった。

 

「これで全部か、なんだかんだでチンク以外のは全部食べれたな……ん? あれ? あんな物机の上にあったっけ?」

 

スカさん達のチョコを開けて一通り食べて一息ついた所で、ふと机の上に箱が4つ置いてあるのに気付いた。

変だな。部屋に入った時はあんな箱なかったと思うけど。

 

「宛先は全部俺宛か、健人さんへ、けんちゃんへ、健人へ、健人様へ、なんだこりゃ」

<また誰かからのチョコなんじゃねぇか?>

「うーん、俺をこんな呼び方する知り合いはいないと思うんだけどな。開けてみるか」

 

箱を開けてみると、スカさん達と同じくそれぞれメッセージカードとチョコが入っていた。

 

≪健人さんへ、あなたを思って濡らしながら作りました。私だと思って食べてください Sより≫

「………」

 

≪けんちゃんへ、むてきにさいきょーなチョコを作ったよ! 感想を聞きに行くから逃げないでネ☆ Lより≫

「………」

 

≪健人へ、近々我直々に貴様へ貰われに行くので、今はこれで我慢しろ Dより≫

「………」

 

≪健人様健人様健人様健人様健人様健人様健人様健人様健人様健人様 Uより≫

「………」

 

無言でメッセージカードとチョコを丁寧に箱に戻して燃えるゴミの袋に入れて、外のゴミ捨て場にシュート!

 

「ふぅ、これでよし」

 

と、部屋に戻ると……また机の上にカード付きの箱が4つ。

 

≪捨てないで≫

≪逃げないで≫

≪食べよ≫

≪健人様健人様健人様健人様健人様健人様≫

 

あまりの恐さに泣きながらチョコを食べました。

もう味なんて気にしてられねェ・・・

バレンタイン、こわい・・・

 

 

 

続く

 




はい、そういうわけで健人初のバレンタイン回でしたー
はやてのヒロイン力が高くなってる気がしますけど、メインヒロインは未定のままです。
さて、次回からはGOD編。
今回見て分かると思いますが……色々な意味でとんでもなくぶっ壊れております(笑)


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第26話 「あんこく侍とマジカル☆ナース」

久々に更新です。
今回のタイトル、某パンマンのタイトルコールが頭の中で再生されています(笑)


恐怖のバレンタインデーから数日後、俺は海鳴市でなのはとフェイト、それにはやてと共にとある場所へ向けて飛んでいた。

今日ははやての家で、お泊まり会に誘われてやってきていたのだがクロノから、以前なのは達が倒した闇の書の欠片が再び出現したと連絡が入った。

反応が複数の場所に出たので、手分けして探すと決めた途端に3人共俺と一緒に行くと言い出した。

シグナム達もそれに賛成したけど、みんな苦笑いや同情的な視線を送ってきてがんばってと声をかけてきた。

未だに以前の闇の書の欠片事件で何があったか教えてくれないけど、大体何があったか想像出来るんだよな、この前のバレンタインデーのアレで……

うぅ~思い出しただけで鳥肌立ってきた。

ちなみに念の為、クロノとプレシア、それにユーノとアルフがアースラで待機している。

 

「………」

「なぁ、3人共、さっきから顔怖いぞ?」

 

なのは達はクロノから連絡があってからずっと顔が怖い。

何と言うか、顔が劇画ちっくになっている。

 

「えっ? そんな事ないよ?」

「いや、その表情でこっち見ないで、ってほらほらいつもみたいな笑顔笑顔」

「うにゅにゅにゅ~!?」

 

未だに劇画ななのはの頬を引っ張り無理やり笑顔にすると、どうにか元に戻った。

 

「い、いたひ……」

「よしっ、これで元に戻った。さてと?」

「「も、戻しました戻しました!」」

 

フェイトとはやての方を向くと、2人共首をブンブンと振って自力で顔を元に戻していた。

うん、これでよし。

 

「やっぱり3人共笑顔が1番だもんな」

「えへへっ。あ、あそこに誰かいるよ」

 

なのはが指さした方を見ると、確かに遠くに誰かがいた。

空中でぼんやりと浮かんでいるので、一般人なんかじゃない。

近付いて行くと向こうも気付いたのかこっちへ飛んで来ていた。

 

「あれ、シグナムじゃない?」

「そやねぇ。でも、おかしいな。シグナムはリイン達と向こうに行っとるはずやし、それにあのシグナムとはパスが繋がっとらんよ?」

 

シグナム達守護騎士とはやてはリンカーコアがリンクしているんだっけ。

だから、近づいてくるシグナムが俺達の知っているシグナムとは別人と気付いた。

 

「と言う事は、あれが闇の書の欠片か」

「うん!」

 

なのは達も警戒し、デバイスを構えた。

近付いてきたシグナムは更に速度をあげ、レヴァンティンを抜いてきた。

あれ? 俺達のシグナムよりもなんか全体的に黒っぽいぞ?

 

「来たっ!」

「リア充、しねーーー!!」

「って、えぇ~!?」

 

闇の欠片のシグナム、闇シグナムはいきなり俺に向かって斬りかかってきた。

どうにか避けれたけど、闇シグナムは何度も斬りつけてきた。

で、リア充って何だよ!?

 

「こんな状況でもいちゃつくリア充しねー!」

「だから何なんだー!?」

 

あまりに鬼気迫る闇シグナムになのは達はポカーンとしていたけど、すぐに攻撃をしかけた。

 

「健人君から離れて、アクセルシューター!」

「プラズマランサー!」

「バルムンク!」

 

なのはとフェイトの射撃も簡単にかわし、追撃とばかりに放たれたはやての砲撃もかわされた。

けど、おかげで闇シグナムから離れる事が出来た。

 

「いきなり斬りかかってくる事はないだろ! しかも、なんだよリア充って!」

「ふっ、ふふふっ、お前はいいよな。両手に華どころか周りが一面のお花畑で」

「えっ? ちょっ、何言うてるん?」

 

闇シグナムは突然、暗いオーラを撒き散らして俯きながらブツブツと呟きだした。

いきなり襲われるのは想定内だったけど、この闇シグナム様子がおかしすぎる。

 

「子供の頃も大人になっても需要があって、仕事も出番もある。その点私はずっとこのままの姿で、やれニート侍だの仕事してないだの出番がないだの……」

 

何を言っているか大体わかる。

分かる、けど。

 

「このシグナムめんどくさい!」

「い、言っちゃったの!」

「でも、確かに面倒やなぁ。このシグナムをうちらのシグナムと会わせたら……」

「それはやめてあげて!」

 

はやてが物騒な事を言ってフェイトが全力で止めている。

けど、俺もこの闇シグナムは俺らのシグナムに会わせてみたい。

と言うか対応丸投げしたい。

 

「で、このシグナムどうするんだ? ぶっ飛ばすのか?」

「何か悪い事してるわけじゃないし、いきなりそういうのはちょっと……」

「いやいや、フェイトさんや。俺さっき思いっきり殺す気満々で斬りかかられたぞ?」

 

このままスル―したいけどそうはいかないのが、管理局員の辛い所だな。

 

「まーちーなーさーいー!」

 

まだブツブツ呟く闇シグナムをどうするか、あーだこーだと言っているとどこからか声が聞こえてきた。

あぁ、また面倒な展開になりそうな予感。

 

「シャッキーン! マジカル☆ナース、ズバッと華麗に参上!」

「「「「………」」」」

 

――シーン

 

突然現れたシャマル……っぽい人。

顔と声はシャマルなんだけど、見た目が、その……控え目に言ってただのコスプレイヤーだ。

闇シグナムは全体的に黒っぽい色になってるだけで、見た目は何も変わってない。

けど、このシャマルっぽい人は、ナースの白衣と天使の羽と悪魔の尻尾と鬼の角、と言うコスプレが混ざり合った変な服を着ている。

コスプレってのが良く分かってないなのは達も、あまりの奇抜さに固まって何も言えないでいる。

はやてなんて白目剥いてるし。

 

「あれ? みんなどうしたのかな? もう一度自己紹介した方がいいかしら? あ、ほら、今度はシグナむーんも一緒にやるわよ」

「いたっ!? むっ、あぁ、シャマるんか、分かった」

 

今、ブツブツ言ってる闇シグナムの頭にフォーク刺して正気に戻したぞ、あのシャマルもどき。

って、えっ? シグナむーんにシャマるんって今言わなかったか? 空耳?

 

「コホン。我こそは闇に生まれ、闇に生きる、闇の剣士、あんこく侍シグナむーん!」

「愛に生まれ、愛に生きる、愛の堕天使マジカル☆ナース、シャマるん!」

「「「「………」」」」

 

――ひゅ~るり~らら~

 

ビシッとポーズを決めるシグナむーん、シャマるん。

対する俺達4人は、今度は全員白目をむいて固まった。

あ、はやてが真っ白になって砕け散った。

 

「はは、はははっ、あんなのシグナムとシャマルやない……」

「はやてー!?」

「剣士なのか侍なのかはっきりしろよ。そっちは色々混ざり過ぎだ」

「そう言う問題なの!?」

「最初はミス・ブシドーにするつもりだったが、英語が分からない子供の為に日本語にした」

「最初はデビルエンジェルナースにするつもりだったけど、長いからマジカル☆ナースにしたの」

「……もうどこからつっこめばいいか分からないの」

 

なのはが頭を抱え込んでいるけど、確かにとんでもなくカオスだな。

とにかく、あの2人をどうにかするか。

 

「なのは、仕方ないから俺達でやろうぜ。フェイトは、はやてを頼む」

「う、うん」

「2人共、気を付けて」

 

壊れたままのはやてをフェイトに任せて、俺となのはの2人でイロモノ退治だ。

 

 

「スターライトブレイカー!」

「ふっ、またつまらぬ物を斬れなかったか」

「やっぱり、ナースよりティーチャーの方がよかったかしら……」

 

意外なほどにあっさりと戦闘は終わった。

高機動接近戦が得意な俺が2人を撹乱して、なのはがドッカーンと一発でかいのをぶっ放して、シグナムもどきとシャマルもどきは光の粒子となって消えた。

ま、超近接戦闘向けの俺と、人型移動要塞なのはのコンビは結構相性いいんだよな。

 

「誰が移動要塞なのかな!?」

「あはは、それにしてもさっきの2人、本物よりも弱くて助かった。本物のシグナムとシャマルだったら結構苦戦してたよな」

 

シグナムとはよく模擬戦をやったからな。

最初は手加減してくれていたけど、段々俺が強いからと言って本気になって来るようになって結構あれも面倒だったなぁ。

 

「お疲れ様2人共。シグナムとシャマルがどうかしたん?」

「やっと戻ったかはやて。いや、さっきのシグナムとシャマルもどきが本物より弱くて良かったなって話」

「シグナムとシャマルもどき? そんなんどこにおったの? さっき2人が戦ったのは、ただのイロモノやんか」

「あー……いや、なんでもない」

 

はやての能面のような笑みが、怖かった。

なのはとフェイトも首を横に振っている。

これは、あれだな。少し前の闇の欠片事件同様に今回の件は、はやてにとってトラウマになったようだ。

 

「とにかく、一度アースラの所へ戻ろう。向こうの様子も気になるし」

「そうだな。なんだかんだで結構疲れたし」

 

主に精神的に。

 

 

「みんな、お疲れ様。その、色々な意味で……」

 

アースラに戻った俺達を、クロノ達は微妙な表情を浮かべ出迎えてくれた。

当然俺達の様子をモニターしていたんだから、何があったか知ってるよな。

 

「ありがとう、クロノ君。でも、健人君となのはちゃんが戦ってくれたおかげで、私らは特に疲れるような事はなかったで?」

「そ、そうか。さっきの闇の欠片はプレシア達が今解析している所だ」

 

またもや能面のような笑みを浮かべるはやてに、クロノも冷や汗を浮かべた。

そこへアルフとユーノが飲み物を持ってやってきた。

 

「フェイト~みんなお帰り~」

「シグナム達ももうすぐ戻ってくるよ。」

「ありがとう、アルフ、ユーノ」

「向こうは逃げられたのか、どんなのがいたか分かる?」

 

あのシグナムもどき達みたく、俺らの誰かがイロモノ化した奴じゃなきゃいいけど。

俺がそう聞くと、ユーノとアルフは困ったような表情を浮かべて、フェイトとクロノを見た。

クロノは少し考えた後、首を縦に振って話しだした。

 

「フェイト、落ちついて聞いてくれ。シグナム達が追っていた反応は、どうやら青い髪をした君の姿をしていた。つまり」

「……分かったよ、クロノ。彼女が、ううん、彼女達がまた来たんだね」

 

クロノとフェイトの会話で何かを悟ったのか、なのはとはやても深刻な表情を浮かべた。

で、俺は何の話かさっぱり分からなかった。

いや、青い髪したフェイト似の子って、大体の見当はついてるんだけどね?

 

「心配しないで、健人。私達がついてるから」

「うんうん、絶対に渡さないの!」

「健人君は、私らが絶対に守るからね」

「あ、ありがとう……」

 

超シリアスな空気でフェイト達が頼もしい事を言ってくれてるけど、絶対にシリアスな展開にはなりそうにないんだよなぁ……

 

 

 

続く




今回の犠牲者はシグナムとシャマルとはやてでした(笑)
なのは達が恐れる(?)彼女達の出番はもうすぐそこへ……


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第27話 「襲来(レベル1)」

俺は確かにエミヤが欲しかったさ……
メルトもレベル2になってリップは来なかったけど、BBはマックス。
イベントもあらかた終えて、あとはボブを引くだけだった。
でもさ、なんで来たのさ、キリツグーーー!

いや、まぁ、普通に嬉しかったですけどね?


アースラでクロノに今日の一件を報告して、なのはとはやてもそれぞれの家に帰宅して、俺とフェイトはテスタロッサ邸へと戻った。

しばらく地球にいるのは、クイントさん達には伝えてある。

まぁ、ギンガとスバルには間接的に伝言をお願いしたけど、帰ったら何かありそうで不安だ。

ちなみに、アルフは解析作業を進めているプレシアの手伝いをする為にアースラに残っている。

テスタロッサ邸ではアリシアが1人で留守番しているから、きっと退屈してるだろうな。

家の前にオロオロと辺りを見渡すアリシアの姿。

どうやら俺達が帰って来るのを待っているようだ。

1人で寂しかった……わけではなさそうだ。

 

「フェイト、健人おかえりー! 健人にお客さん来てるよ?」

「客? 誰だろ?」

 

ミッドならともかく地球に知り合いはまだ多くないのに。

 

「まさか!」

 

首を傾げていると、フェイトが冷や汗を流しながら家の中へと走って行った。

それを見てアリシアもまた冷や汗を流す。

またまたそれをみて俺が冷や汗を流す。

だって、この後の展開読めるんだもん。

 

「な、なんでここにいるのー!?」

 

家の中からフェイトの絶叫が聞こえてきた。

あ、やっぱりね。

 

「健人も入ったら?」

「さーって、そろそろ俺も帰るか。ギンガもスバルも待ってるだろうし。今日の夕食何かな~」

「入れ」

「はい」

 

アリシアにドス声で、真顔で言われちゃ素直に従うしかありませんな。

 

「あ、やっと来たね! けんちゃん、やっほー! つよくてかっこいいレヴィ・ザ・スラッシャー参上!」

「……やっぱお前かぁ」

 

家の中にいたのは予想通り、アイスを食べながらポーズを取るフェイトちゃんブルーこと、レヴィ。

なのは達から聞いた話で、彼女達だと確信はあったけど、直に見るとまんまINNOCENTのレヴィ・ラッセルだな。

確か、彼女達の元ネタはPSPに出たゲームだっけ。

俺はそのゲームはやった事ないけどな。

俺を【けんちゃん】呼びしたり、頭文字が【L】だって事は考えないようにしよう。

 

「ねぇねぇねぇ! チョコ食べてくれた? あれ、王様やシュテルん達と頑張って作ったんだよ!」

 

か、かんがえないようにしてたのに・・・

 

「チョコ? まさか、健人、彼女達からもチョコもらってたの!?」

「あ、あぁ、うん……でも、それには触れないでくれるかな」

「分かった。もう、聞かないよ。ごめんね」

 

フェイトが驚いた顔で俺を見てきて詳しく聞こうとしたけど、俺の顔を見て何かを察してくれたようだ。

 

「で、何しにここに来たんだ? まさかチョコの感想を聞く為だけに?」

「そうだよ? カードにも書いたでしょ。感想聞きに行くって」

 

あぁ、確かに書いてあったけどさ。

まさかこんなにすぐに来るとは思わなかった。

ナカジマ家に来られるよりは100倍マシだけど。

 

「姉さん、なんで彼女を家にあげたりしたの!?」

「だ、だって鎌で脅してくるんだもん。私魔力のまの字くらいしかない一般ピーポーだよ!?」

 

叱るフェイトに涙目で抗議するアリシア。

あ、うん。そうだったね。アリシアって魔力ほぼゼロだったね。

ゼロじゃないけど、1か2程度。

そりゃ、レヴィには勝てない。

 

「むー! 脅してなんかいないよ!」

 

レヴィが頬を膨らませて抗議するけど、彼女がどうやってアリシアに頼んだか聞いてみると。

 

「ちゃんと頼んだでしょ! こう、けんちゃん来るまで待たせてくれる? って」

「「うわぁ~……」」

 

フェイトを元にしているだけに可愛く眩しい笑顔……なんだけど、後ろ手に持ったバルディッシュに似た鎌を、こうチラチラ見させながらなので完璧に脅し文句になっている。

正直、怖い。フェイトもドン引きだ。

これじゃ、アリシアも従うしかないね。

 

「えぇ~なんでけんちゃんまでそんな顔するの!? ちゃんとシュテルんに教わった通り、丁寧にやったのにぃ~|」

 

元凶はシュテルかよ!

 

「だって、こうやってお願いすると大丈夫って言ってたんだもん。ここに来るまでだって色々な人にお願いしたら聞いてくれたよ? けんちゃんへのお土産にって、はい」

 

そう言って、レヴィは林檎や苺が入った袋を出した。

 

「ここに来るまで?」

「色々な人にお願い?」

 

レヴィの言葉に嫌な予感がして冷や汗を流しながらフェイトと顔を見合わせると、ドアが勢いよく開かれプレシアが飛びこんできた。

 

「フェイト! 商店街の人からあなたに脅されて……って、あら?」

 

よほど急いできたのか、プレシアは息を切らせながらフェイトに詰め寄ろうとして、呑気にアイスを食べているレヴィに気付いた。

そして、フェイトとレヴィを交互に見てから、安心したように息を吐きだし、ソファに座りこんだ。

 

「……あぁ、そう言う事。紛らわしいわね」

「えっ? 母さん、一体何がどうしたの? 」

「商店街の人から電話があったのよ。お宅の娘さんに脅されて物を盗られたって、それでアルフに後を押しつけて帰ってきたのよ」

 

アルフ哀れ……

 

「えええぇ~~!? 私そんな事してないよ!?」

「あぁ~それってこの子とフェイトを見間違えたか、フェイトに似てるから家族に間違えられたって事ね」

「ふえっ?」

 

アリシアが呆れ顔で、まだアイスを食べている真犯人の頭を小突くけど、レヴィは何の事かわかっていないみたいだ。

プレシアさん、アースラにいたのに携帯通じるのか。

ってか、商店街の人達から連絡取れるとは、それにレヴィを見て一瞬で全てを理解したプレシアお母さん、流石です。

 

「つまり、お前のせいでフェイトに強盗の濡れ衣を着せられたって事だっての!」

「うぎぎっ、い、いたひ~!」

 

レヴィは呑気に3本目のアイスを口にしようとしたので、思いっきり頬を引っ張ってやる。

 

「でも、このマテリアルの話や映像は見たけど、実際に目にすると本当にフェイトにそっくりね。このまま三女として迎え入れようかしら」

「「「それはやめて!」」」

 

アリシアはともかく、俺とフェイトのストレスがマッハになる。

 

 

あれからすぐに商店街に行こうとしたが、当の本人であるレヴィが何も悪くないと言って聞かなかった。

それに怒ったプレシアが、額に青筋を浮かべてレヴィと2人きりで話すと別室に籠ったのだ。

てっきりフェイト顔のレヴィには甘甘になると思っていたので、これには俺もフェイトもアリシアも驚いた。

結界でも張られているのか、中で何が行われているのかは全く分からなかった。

それからしばらくOHANASHIは続き、出てきたときにはレヴィは泣きながら俺達にまず土下座した。

正直やりすぎじゃないかと思うくらい、レヴィは打ちのめされていた。

 

「この子達には叱る親がいなかったから、私がそれをしただけよ……柄じゃないのは百も承知よ」

 

うーん、これが無印でフェイトに拷問や虐待を繰り返していたプレシア・テスタロッサなのだろうか。

フェイトもアリシアもこれでもかってくらい口を開けて唖然としてるし。

ともかく、レヴィが脅して奪い取った品々のお金を払う為に商店街へ行った。

 

「ず、ずみまぜんでしだ……」

「いやいや、こうして謝罪してくれてお金も払ってくれるんならいいんだよ。それにしてもホントにフェイトちゃんにそっくりだね」

「ふふっ、やんちゃな所は違いますけどね」

 

商店街の人達にはレヴィは、外国に住むフェイトの遠い親戚で、こっちに遊びに来ている事にした。

こっちで悪い友達達に騙されて、ついうっかりとやっちゃった。と言うわけだ。

まぁ、フェイトに似ているから親戚と言うのはうまく誤魔化せたけど、脅した動機についてはかなり苦しい言い訳だな。

それで許してくれる商店街の皆さんもおおらかと言うか何と言うか。

 

「はぁ、結構な数の店に出入りしてたなんて」

「ごめんなさい……」

「うっ、まぁ、反省してるならいいわよ」

 

アリシアが皮肉を言うと、涙目のレヴィはしょんぼりとうなだれてしまった。

それをアリシアも流石に強くは言えなくなった。

最初は能天気で底抜けに明るかったレヴィが、今はまるで小動物のように縮こまっている。

 

「プレシアさん、一体レヴィに何をしたんですか?」

「何って、お説教しただけよ?」

 

プレシア・テスタロッサ、恐るべし。

 

「これで全部ね。額は微々たるものだったけど、みんなすぐに許してくれて助かったわ」

 

いや、プレシアさんや。

多分、商店街の皆さんが簡単に許してくれたのは、あんさんに説教されまくって打ちひしがれているレヴィの姿を見て許す気になったんだと思うぞ。

若干、引いてた人もいたし。

プレシアは、クイントさんとはまた違った母親なんだなぁ。

 

「レヴィ、大丈夫?」

「うん。でも、悪い事したの僕だし。ごめんね、ヘイト」

「だから私はフェイトだよ……」

 

流石のフェイトもレヴィが心配のようだ。

 

「今度からはちゃんとお金を払って物を買うようにしなさい。お金がないなら働いて稼ぐ事」

「はい、分かりました」

 

いやいや、お金を稼ぐって、普通の子供って自分でお金稼げないからね。

俺やフェイト達が特別というか変わってるだけだからね?

 

「じゃあ、これをあげるわ」

 

そう言ってプレシアはレヴィに紙袋を渡した。

中には林檎が入っていた。

 

「これは?」

「八百屋の御主人がくれたのよ。ホント、お人好しが多い街ねここは」

「わぁ~、ありがとう! それじゃ僕そろそろ行くね。今日は本当に、ごめんなさい」

 

ペコリとお辞儀して飛び立とうとするレヴィだったが、急に反転し俺の所へかけよってきた。

 

「けんちゃん、今日は出直すけど、絶対にまた来るからね。ん~…」

 

と、レヴィは俺に抱きついて唇を合わせ……

 

「ちょっと待った!」

 

られなかった。

フェイトが間一髪間に手を挟み、レヴィにキスされるのを防いでくれた……のだけど、俺の唇がフェイトの手の甲に当たっちゃってるんですけど!?

それはスルーですか、そうですか。

 

「フェ、フェイト?」

 

フェイトは今まで見た事もないくらい冷たい笑みを浮かべていた。

さっきのレヴィが脅し文句と共に見せた笑みとは比べ物にならないほど、怖い。

アリシアとプレシアですら、怯えながら一歩引いているくらいだ。

あ、もう片方の帯電した手でレヴィの頭にアイアンクローをかまして持ち上げた。

うわぁ~フェイトさん力持ちー

 

「レヴィ、今健人に何をしようとしたのかな?」

「い、いたたたっ!? なんでもないなんでもない!」

「本当かな? もし、今度健人に何かしようとしたら……ワカッテル?」

「は、はい! ご、ごめんなさ~い!!」

 

顔面蒼白のまま、レヴィは逃げるように飛び去って行った。

少し前はLが怖かったけど、今はテスタロッサ母娘が怖いよ。

そんなフェイトを間近で見ている俺の顔も、きっとレヴィと同じくらい真っ白だっただろうな。

 

「さっ、帰ろうか」

 

何事もなかったかのように振る舞うフェイトだったが、ふとさっきまで俺の唇に当てていた手の甲を見て、何をしたのか気付いた。

 

――ポンッ!

 

「あわ、あわわわわっ……」

「フェイト!?」

 

顔がレヴィに渡した林檎よりも真っ赤になって、顔面が爆発して煙を吹いて倒れてしまった。

 

「しっかりして、フェイト!」

「あー、こりゃ完全にフリーズどころかオーバーヒートだよ。全く、フェイトにしては大胆な事してるなーと思ったらこれだよ。健人もいい思い出来て良かったんじゃない? 今になって顔赤いよ?」

「ノーコメント」

 

ホントにノーコメント。

 

 

「あ、今思ったんだけど。レヴィ、あのまま帰しちゃって良かったの?」

「「「あっ」」」

 

今頃言っても遅いよ、アリシア!

 

 

続く

 




と言うわけで襲来レベル1です。
レヴィは1人だとただのアホの子です、1人だと(ニヤソ
トラウマの元になったはずだったレヴィに逆にトラウマを植え付けるフェイトさんにプレシアさん。

ところで、あの姉妹出てきませんねー……ってか出番あるのかな(白目


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第28話 「わぁいヽ(∇⌒ヽ)(ノ⌒∇)ノわぁい♪」

健人、壊れる。

5/22 ちょっと修正しました。


レヴィ襲来(?)の翌日、俺は八神家にやってきていた。

レヴィ達マテリアルが復活して、それ以外にも不穏な空気が流れ始めていると言う事で、当初の予定されていたなのはとフェイトのデバイスの調整と、アリシアとプレシアは定期診断を早めた。

アルフとユーノはそれぞれの付き添いで本局へ行き、クロノはアースラで待機していて、地球には俺とはやて達しか魔導師がいない。

が、万が一のために一緒にいた方がいい。と、はやてに誘われた。

1人で留守番は暇だったからちょうど良かった。

最初はアースラで待機のはずが、家で1人で待機になってタイミングよくはやてに誘われたんだが、深くは考えないでおこう。

相変わらずはやては健人さんと呼ぶが、俺の過去を知っている人達といるってのは気兼ねしなくていいな。

 

「へぇ、昨日あの後そんな事があったんやなぁ。呼んでくれたらすぐに応援にかけつけたのに」

「俺とフェイトにプレシアさんまで来たんだ。いくらなんでもそれで足りるだろ」

 

あの場にはやてかなのはまでいたら、絶対にややこしい事になってただろうしな。

 

「あのフェイトちゃんに似たレヴィって子、まさか1人で健人君の所に来るとはね」

「そう言えば、他の2人は見かけていないな。前に見た時は3人で行動していたのに」

「リインフォースの言う通りだ。我らが捕捉した時も彼女1人だった。主はやてと高町に似たマテリアルの姿はなかったな」

 

ん? んん?

今のシャマル達の会話で、すごーい違和感があったんだけど、気のせいか??

 

「ま、他の2人はそのうち現れるか。クロノ君達が見つけてくれるやろ。それよりも、健人君夕飯の買い物付き合ってくれる?」

 

時計を見るといつの間にか、いい時間になっていた。

 

「もうこんな時間か。食事を御馳走になるんだ、それくらいお安い御用だよ」

 

はやての料理はうまいからなぁ。

クイントさんも料理うまいけど、日本料理ならまだはやての方が上手だ。

 

「あ、買い物だったらあたしも……ングッ!?」

「行ってらっしゃい、はやてちゃん、健人君」

「車に気を付けてくださいね」

「ありがと、シャマル、シグナム。行ってくるよー」

 

ヴィータが何か言いかけたけどリインに口を塞がれ、退場になった。

はやては見ていないフリをして、上機嫌だ。

俺も見なかった事にしよう。

 

 

「~♪~~♪」

 

商店街へ来てもはやては上機嫌だった。

いつぞやみたく手を握って来ないのはありがたい。

流石に色々な人の前でそんな真似は恥ずかしすぎる。

 

「どうしたん? あ、またこの前みたく手を握ってほしいん? 買い物が済んだらな♪」

「勘弁してくれ……」

 

そう言ってはやては近くの肉屋へ向かった。

結構な量の買い物したけど、まだ買うのか。

確か、晩飯はすき焼きって言ってたか、大勢で囲むにはちょうどいいな。

ベンチに腰掛けて周りを見渡すと、ある一角で目が止まった。

 

「あれ? まさか……」

 

周りには家族連れやカップルが座っているが、少し離れた場所にうなだれている少女の姿があった。

黒髪のツインテールにジャージ姿、珍しい服装と言うわけではないけど、あるキャラが脳裏に浮かんだ。

彼女は不安げな表情で周りをキョロキョロ見渡して、深く溜息をついている。

けど、彼女がここにいるはずがない。

しかも、俺の知っている姿でいるはずがない。

 

『シェルブリット、あそこに座ってる女の人なんだけど』

<なんだ、マスター。あの姉ちゃんみたいなのが好みなのか? 見た所結構離れてるぞ?>

『そんな事どうでもいい! あの人から魔力反応ないか調べてほしいの!』

<分かった分かった。あー……魔力反応あるな>

『マジか』

 

と言う事は、彼女で確定、かな。

疑問はいくらでも湧いてくる。

なんでこんな所にいるんだとか、なんで原作通りの年齢なのか、とかとか。

でも、そんな事どうでもいい。

だって、彼女に会えたんだから。

自然に頬が緩み、動悸が激しくなる。

 

「おまたせーいやぁ、安くしてくれたから沢山買ってしもうたわ」

 

両手に沢山の肉を持ったはやてが戻ってきた。

 

「いやいやいや、どんだけ買いこんでるんだよ」

「だって健人さん、育ち盛りやし良く食べるやろ?」

「それは戦闘とかで身体を沢山動かした時で、今日はそれほど動かしてないって」

「ふーん、まぁええわ。それよりも、ジーッとあの人をみてどうしたん? 変わった雰囲気しとるなぁ」

 

はやても彼女の異様さに気付いたようだ。

さて、話しかけるとしますか。

うわぁ~緊張&興奮する~!

 

「健人さん? なんでそんな嬉しそうな顔しとるん?」

「あ、いやいや。なんでもないなんでもない。ただ、あの人から魔力反応するし、ちょっと様子がおかしいからもしかしてーと思って。ちょっと声掛けてくる」

「ああいう人が健人さんの好みの女性なんかなぁ。確かに黒っぽい髪って私らの周りにはおらへんしなぁ。染めた方がええかなぁ」

 

なにやらブツブツ言ってるはやてを放置して、彼女の所へ行く。

彼女は近付いてくる俺に気付いたようで、首を傾げている。

その動作に胸がドキっとした。

 

「あの~すみません。ちょっといいですか?」

「え、えぇ、いいけど。私(うち)ここら辺の人やないから、道聞かれてもわからへんよ?」

 

明らかに不審者な俺の声掛けに、苦笑いを浮かべながらも優しく答えてくれたのは……

 

ジークリンデ・エレミア、だった。

 

(」゚ロ゚)」(」゚ロ゚)」(」゚ロ゚)」オオオオオッッッ

(ノ*゚▽゚)ノ ウッヒョーーナマジークダゼー!

 

<マスター、かえってこい>

 

はっ!? あまりの嬉しさに一瞬ヘブン状態だった。

でも、生ジークだよ、生ジークリンデ!

だって、ViVid時代までまだ10年以上もあるんだし、まさかこんなに早く会えるとは思わなかった!

あーでもやっぱり実際に見ると綺麗で可愛いよなぁ。

16歳で、生前の俺より2つ下で、奈々よりも年下で……うん、深く考えるのはやめよう。

ジークリンデは、俺がリリカルなのはキャラで一番大好きなキャラだ。

他にも好きなキャラは沢山いるけど、彼女達には幼いとはいえもう会えた。

ノーヴェは……裸体だったけど、あれは忘れよう。

ともかく、ジークがそれが目の前にいる。

これが喜ばずにいられるか!

 

「あの~? どうかしたん?」

 

やばっ、また意識が飛んでた。

けど、声をかけておいてなんだが、これからどうしよう?

俺の見かけがこんな幼い子供だから良かったものの。

完全に不審者で、ガイスト打たれたりしても不思議じゃないな。

でも、いきなりあなたジークリンデさんですね? って言っても後ではやて達に誤魔化しが効かないよな。

うーん、どう言えばすんなり話通じるかな。

と、ここで俺はある事に気付いた。と言うか思い出した。

俺、今は時空管理局員だったの忘れてた!

よしっ、この手で行こう!

 

『すみません。時空管理局の者ですけど、あなたから魔力反応ありまして、ミッドチルダの方ですか?』

 

これなら多少の不自然さはどうにか誤魔化せる……だろう。

 

『えっ? 念話? それに時空管理局!? ヴィヴィちゃんとあんま変わらんのに!?』

『えっと、とにかく、なぜ管理外世界のこんな所でうなだれていたか、事情を話してもらえますか? 何かお困りなら力になりますよ?』

 

念話でそう言うと、ジークはパーっと表情が輝きだし、目をウルウルさせて俺の両手をぐっと握りしめた。

 

「ううぅ~ほんま、ほんまにええ子やなぁ、君。私いつの間にか知らない場所に来てて、一緒にいた子とはぐれて1人で心細かったんよ~」

 

あれ? あなたよく1人でトレーニングしてませんでしたっけ? とツッコミたいのを我慢我慢。

 

「そら、私だっていつまでも子供やないんし1人でいる事も多いし、慣れっこなんよ。けど、いきなりわけもわからん場所に1人で取り残されるんのは、流石に心細いんよ?」

 

そう言うものか。

彼女もやっぱり年頃の女の子なんだなぁ。

なんだかほっこりした。

 

「な、なんで急に生温かい目になってるん?」

「いえいえ、ともかくこれから」

「健人さーん、置いてかんといて~!」

 

あ、復活したはやてが息を切らしながらこっちに走ってきた。

てか今までずっと1人でトリップしてたのか。

俺もさっきまでそうだったから人の事言えないけど。

 

「はぁはぁ、いきなりいなくなったから商店街中走りまわったんやで?」

「なんですぐ近くにいたのに、気付かないんだよ」

「あ、あはは~そんな事より、この人どうかしたん? 知り合い?」

「この人は……」

 

おっと、こっちはまだ名前を聞いてないのに思わず言ってしまう所だった。

 

「八神司令!?」

「「はい?」」

「八神司令ですよね!? なんでこんな小さい姿に、あ~またフォビアが悪さしたんかな?」

「え、えっと、落ちついて下さい。と言うか、あなた誰ですか?」

 

1人で驚いて1人で納得しているジークに、流石のはやてもオロオロしている。

あ、そっか。ジークの時代じゃ、はやては司令で管理局のお偉いさんだもんな。

しかも、このジーク、どうやら無限書庫の一件も終えているようで、フォビアって言う魔女っ子の魔法ではやてが幼くされていると勘違いするのも無理はない。

実際、ジーク自身フォビアの魔法で小さくされたわけだし。

 

「えっ、八神司令私の事忘れちゃったん?」

「あの、確かに私は八神ですけど、司令でもなんでもないですし。まだ管理局に入ったばかりのペーペーですよ? 誰かとまちごうてません?」

 

はやてが嘘をついているわけじゃないのが分かったようで、ジークもやっと落ち着きを取り戻した。

俺は誤解の原因知ってるけど、話すわけにはいかないんだよねー

てか、ホントになんでジークがこの時代にいるんだ?

と、その時だった。

 

――グゥ~~~

 

「「「………」」」

 

誰かのお腹が盛大に鳴った。

俺ではない。

はやての方を向くと、全力で首を横に振っていた。

とすれば……

 

「お、おなかへったぁ~そういえば、昨日から何も食べてなかったんや~」

 

お腹が鳴ったのはジークだった。

 

「大丈夫、そうには見えへんね」

「すみませんけど、おなかいっぱいごはんをたべさせてくれへんかなぁ~?」

 

お前はどこぞの暴食シスターか!

 

 

あれからお腹が減って動けないジークをおぶって八神家へと戻ってきた。

途中、はやてからは生温かい視線と、冷たい視線が混ざった変な視線攻撃を食らい続けた。

シグナム達は俺に担がれたジークを見て驚いたが、はやてが事情を説明して納得した。

その時、シャマルが 【おおきなおでん種】と呟いたのを、俺は聞き逃さなかったぞ。

それからはやてがすき焼きの準備をしている間、クロノに連絡を取った。

クロノの方も俺達に連絡しようとしていた所で、用件を聞くとどうやら次元の揺らぎが観測されて、調査に向かったユーノとアルフが2人の少女を保護したそうだ。

その保護した少女の名が、ヴィヴィオとアインハルトだった。

これには俺もビックリだ。

まさか、彼女達までこの時代にいるとは……

 

『そっちにいるのがジークリンデ・エレミアか。ヴィヴィオ達に話を聞いた所、ジークリンデと3人でトレーニングしていた所変な穴に吸い込まれたらしい』

「あ、はい。その通りです」

 

おにぎりを食べて少しは回復したジークがクロノの説明に頷いた。

ジークには、ここが過去の時代であると言う事は伝えてある。

驚いた顔をしたが、はやての姿を見て納得した。

 

『それにしても、昨日の話とはな。マテリアルの捜索で気付かなかったのはこちらの不手際だ』

 

ジークやヴィヴィオ達がやってきたのは昨日で、アースラも誰も気付いていなかった。

それが今日になって妙な揺らぎの痕跡がみつかって、それが本局近くの次元世界だったのでデバイスメンテ中のなのはとフェイトに変わってユーノとアルフが行ったというわけだ。

 

『ジークさん、大丈夫ですか?』

「あーうん、私は平気やで。優しい子に拾われたから。ヴィヴィちゃんとハルにゃんはどう?」

『こちらも大丈夫です。それにしても……』

 

モニターの向こうでヴィヴィオとアインハルトは、ヴィータ達に目を向けた。

ヴィータ達にもジーク達は未来からきた人で、未来ではみんな知り合いと言う事も話してある。

流石に向こうもこっちも戸惑っていたな。

で、そんなヴィヴィオとアインハルト、ジークまでもが俺に興味津々な目を向けている。

 

『草薙健人、さん。なのはママやフェイトママとも友達、なんですよね?』

「あ、あぁ、うん。そうだけど?」

 

なのはママにフェイトママか。

最初それを聞いてクロノも目を丸くしていたな。

挙句の果てに俺に向かって、パパは君か? なんて言いだしてちょっとした騒ぎになった。

 

『健人さんはこちらでは会った事もないですし。スバルさん達からも聞いた事ないですね。話に聞くと、スバルさんのお兄さんのような人なのに』

 

アインハルト、ヴィヴィオもだけど、君ら未来の事情そんなにポンポンしちゃっていいのかな?

一応未来で何があったかは、俺達は聞かないようにしているし、ヴィヴィオ達も話さないようにとは取り決めてるけど。

って、えっ? 待て待て、未来から来たのに未来組の子達、俺の事知らないの!?

 

「私は元々八神家の人達ならともかく、ヴィヴィちゃんのお母さん達とはあまり面識ないから、ごめんな」

「ジークさんが謝る事ないですよ。でも、俺って未来じゃ、死んじゃってるのかな」

 

ポツリと思った事を口にすると、辺りの空気が暗くなってしまった。

一度死んでる身なんだし、未来のどっかで死んじゃっててもいいんだけど、やっぱ少し……な。

 

「ちょっといいかな?」

 

と、ここで少し離れた場所で話を聞いていたリインがモニターの前に立った。

 

「はじめまして、でいいのかな。私の名は、リインフォースだ。君達は私の事を知っているのか?」

『はい、リインフォースさ……あ、あれー!? 大きい!? リインさん、しかも何だかすごく大人?』

『リインフォースさん、昔は大きかったんですか?』

 

リインの姿を見たヴィヴィオとアインハルトがなぜかすごく混乱している。

小さいはやてを見た時以上に、混乱してるように見える。

 

『なるほど、そう言う事か。僕も君達に質問しよう。そちらの世界のフェイト・テスタロッサの母、プレシア・テスタロッサとアリシア・テスタロッサの事は知ってるかい?』

『はい。2人共フェイトママの家族で、でも、ずっと昔に亡くなったって』

「「なに~!?」」

 

クロノの質問にヴィヴィオは少し答えにくそうな顔をしたが、その答えを聞いて今度は俺達が驚いた。

プレシアとアリシアが死んでいる? しかもずっと昔?

あーそう言う事か。

リインとクロノが何を思いついてヴィヴィオ達にそんな質問をしたのか、分かった。

 

「つまり、ヴィヴィオ達がいる世界って、俺が存在しない、と言うより、漂流してなかった世界って事か」

 

それを聞いて、アースラにいるユーノとアルフが納得した声をあげた。

 

『そうか。健人がこの世界にやってきて、プレシアさんに頭突きした事でアリシアと2人、助かったんだよね』

『言われてみれば、健人が来なかったら、プレシアはアリシアと一緒に虚数空間に落ちていただろうね』

「私がこうして存在し続けている事も、健人の存在が何か影響を与えたとしか思えない。ナハトヴァールの暴走が一時止まった事もある」

 

リインフォースさーん、ここでそれ蒸し返さないでー、あの時はただ転送事故ってキスしちゃっただけだから!

皆に言われて、改めてこっちに来てから自分がした事を思い浮かべる。

プレシアに頭突きして、アリシアと一緒に完全復活させて、それはこなた神の力だけど。

で、スカさんの所へ行ってスカさんとクアトロに頭突きして、ドゥーエとトーレにスーパー頭突き。

地上本部でレジアス中将に、ライダーキック。

それからリインフォースの姿をしたナハトヴァールにファーストキス。

うん、トンでもない事ばっかしてるな。

 

「思い返すと、健人君って色々な人の恩人って事になるのね」

「シャマルの言う通りだな。我らの一件でも世話になったしな」

「あーそうだな。改めて礼を言うぜ、健人」

 

シグナム達が頭を下げると、ザフィーラもわざわざ人型になって頭を下げた。

この光景をアースラにいるクロノやヴィヴィオ達にまで見られて、むっちゃくちゃ恥かしい。

ヴィヴィオが目をキラキラさせて俺を見てるのが気になる。

 

「いやいやいや、俺何もしてないから。偶然だって偶然。」

「ほんま健人君ってすごいんやなぁ。私の世界にいないのが勿体ないなぁ」

「わわっ、ジークさん!?」

 

突然、ジークに頭を撫でられて顔が熱くなってくるのが分かった。

 

「くくっ、健人の奴照れてるぜ」

『これくらいの役得はあってもいいと思うぜ。それにしても、本当は健人の方が年上だってジークリンデが知ったら驚くだろうな~』

「わざわざ念話と同時にからかうなよ、ヴィータ」

 

しっしっしっと笑うヴィータと、微笑みながらそれを見守るリインやシャマル。

シグナムとザフィーラも暖かい視線を送って来るし。

はやて、台所から親指だけだして何のつもりだっての。

 

「そ、そんな事よりも! ジークさん達をこれからどうするって話でしょ、クロノ!」

『ふふっ、そうだったな。だが、彼女達がなぜ時間跳躍してきたのかは現時点で不明だ。マテリアル達の活動開始と何か関係があるのかもしれないが、何とも言えない』

『えっと、それってつまり……』

『君達を元の時代に戻す術が僕達にはないって事だ。すまない。だが、原因が分かるまでの間は、管理局が責任をもって保護する事は本局にいるリンディ艦長も了承してくれた』

 

タイムスリップなんて技術、管理局にはないもんな。

スカさんに聞けば何か分かるかな。

とにかく、どれくらいの期間か分からないけど、ジークやヴィヴィオ達と話す機会が出来るのは嬉しいな。

 

『それで住む場所なんだが、プレシアとアリシアが明日の朝そちらに戻るから、それから一緒に住む事になった』

「えっ? アースラじゃないの?」

『これまでの観測から、地球とその周囲の次元世界での異変が関わっている。何かあったときはアースラよりもテスタロッサ邸の方が早い。それに部屋も沢山あるからとプレシアが言ってくれたんだ』

 

アースラの方が安全だと思うんだけどな。

何かあった時の設備も、いや、あの家も色々と設備整えてあるんだっけか。

 

「ほんなら、しばらく健人君と一緒って事だね。お世話になるね、健人君」

『『お世話になります!』』

「お世話するの俺じゃなくてプレシアさんで……あっ」

 

そっか。テスタロッサ邸に住むって事はそう言う事だった!

マジか、マジでマジか!

ただでさえフェイトとアリシアと一緒に暮らすのが理性とか色々大変なのに、ジークにヴィヴィオにアインハルトも加わるのか!?

俺、大丈夫かな。

あ、スバルやギンガはまだ幼すぎるからノーカウントで。

嘘です。慣れって怖いなー

 

 

それから夕食のすき焼きをみんなで食べて俺とジークは、今日は八神家に泊まる事になった。

通信の最後に、ヴィヴィオとアインハルトが羨ましそうな目でこっちを見ていたのは、忘れよう。

アースラでもうまい料理は沢山あるんだ。

夕食後は、ジークが俺達の話を聞きたがったので色々と話をした。

ジーク達未来組の話は、次元が違う世界の未来とは言え色々と問題があるけど、俺達の話をジークにするのは問題はないだろう。

夜遅くまで楽しく話をして、いざ寝ようと客室にしかれた布団に入ったまでは良かった。

なぜか布団が3組あった事は目の錯覚だと思った。

思いたかったんだ。

 

「で、なんでこうなってるんだ?」

 

現在、はやてとジークが俺を挟むように寝ています。

泊まらせてもらう身で文句を言うのは間違っているけどさ。

 

「はやて、なんで自分の部屋で寝ないんだ?」

「うーん、なんでやろなー?」

「細かい事は気にせんほうがええで?」

 

10000歩譲ってジークと一緒なのは……まぁ、渋々ながら、しょうがない、として……

 

「健人君、顔真っ赤やで?」

「うふふっ、さっきは大人っぽい所あるなーおもうてたけど、子供っぽい所もあるんやな♪」

 

神よ、ここが全て遠き理想郷(アヴァロン)か……

 

――某花の魔術師みたくそこへ幽閉されたりしてー

 

不吉な事を言うな、こなた神!

 

 

続く




ジークの出番はかなり先と言ったな、あれは嘘だ。
はい、と言うわけで出しちゃいました未来組にジークリンデを!(笑)
ギアーズやシュテルや王様達を差し置いて、出しちゃいました!
だって、出したかったんだもん(笑)
自分、ジークとティアナとギンガ、スバルとマテリアルズが大好きなんで(笑)
でもなかなか出す機会が(汗)

あ、トーマとリリィは出ない……かも。


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第29話 「コミュニケーションは大事」

お待たせしました!
vivid未来組、というかジークとのコミュ回です。
なんか思ったより長引きそう……


八神家でドキドキお泊り会をした翌日、俺とジークはテスタロッサ家に戻ってきた。

フェイト達は学校に行く支度をしていたけど、ちょうどタイミングよく、ヴィヴィオとアインハルトがやってきた。

 

「高町ヴィヴィオです。今日からお世話になります」

「アインハルト・ストラトスです。あの、よろしくお願いします」

「で、私がジークリンデ・エレミアといいます。よろしくです」

「はい、よろしく。私はプレシア・テスタロッサよ。いつまでかはわからないけど、それまではここを自分の家だと思ってゆっくり寛いでね」

 

ジーク達を迎え入れたプレシアは娘が増えたみたいでうれしそうだ。

プレシアが未来から来たジーク達をアースラではなく自分のところで世話をすると言い出したと聞いて結構驚いたけど、いいお母さんしてるな。

 

「フェイト・テスタロッサです。仲良くしてね」

「アリシア・テスタロッサだよ♪ 「ちっこいけど」 フェイトのお姉ちゃんだよ……って健人? 何余計なこと言ってるのかな~!?」

「……必要ないかもしれないけど、アリシアと漫才してるのが草薙健人。あんなのだけど私とアリシアの恩人ね」

 

あんなのって……まぁ、アリシアとほっぺたを引っ張り合って漫才してるから否定はしないけど。

 

「「「……」」」

 

そんな俺たちを見る、ジーク達の反応は三者三様だ。

ジークは微笑ましく、アインハルトは困惑していて、そしてヴィヴィオは驚きで目を見開いている。

まぁ、原作世界から来たみたいだし、プレシアとアリシアの存在に驚いてるんだろうな。

多分あっちのフェイトに詳しい話、聞いてるかもしれないし。

 

「あの、ヴィヴィオ? どうかしたの?」

「あ、フェイトマ……フェイト、さん? あの、何でもないです。ちょっとにぎやかだなぁって思って」

「ふふっ、そうだね。姉さんもだけど、健人がいるともっと賑やかだよ。それと私の事はフェイトでいいよ?」

「うぅ~なんだかすごく複雑な気分だけど、えっと、フェイト?」

「うん、短い間かもしれないけど、よろしくね、ヴィヴィオ。私と姉さんはこれから学校だけど、帰ってきたらなのはやはやても含めていろいろ話しよう」

「はい!」

 

フェイトやなのは達には、ヴィヴィオは別世界の未来からやってきて、向こうでヴィヴィオはなのはの娘でフェイトが後見人であると昨日、伝えてある。

それを伝えた時、なのはもフェイトもめちゃくちゃ動揺してたな。

それと、なぜか俺の顔をちらちら見てたのは気になったけど。

そして、フェイトとアリシアは学校へ行った。

2人は厳密には歳が離れているけど、双子ということで同じ学年に通っている。

ちなみに、フェイトはなのは達と一緒で、アリシアとはやては別クラスだけど、2人とも同じクラスだ。

 

「さてと、フェイトとアリシアの学校が終わったら、あなた達の服とか日用品を買いに行きましょうか」

「えっ? 服、ですか? そんな悪いですよ」

「いつまでこっちの世界にいるか分からないし。お金なら心配しなくていいわよ。リンディから生活費預かっているから」

 

次元漂流者の生活費援助も、管理局の仕事の1つでその分の予算もちゃんと確保されているらしい。

もっとも、漂流者などそんなしょっちゅう出るわけじゃないんだとか。

ここに3人一気に来たけどな。

ってか俺も漂流者だったっけ。

こっちきてすぐ、スカさんだったりゲンヤさん達にだったりで、いろいろな人にお世話になってたから忘れてた。

 

「私は家にいるけど、あまりこの時間帯は外をうろうろしない方がいいわよ?」

「言われてみれば、今日平日だったな」

「そう。ジークリンデはまだしも、健人やヴィヴィオ達なら変に思われるわよ」

「確かに。ふつうなら学校行ってるはずだもんな」

 

土日祝日と連休だったし、俺はこっちの学校まだ通ってなかったから曜日感覚が狂ってきてるな。

 

「うーん。あ、そうだ。健人君ってシューティングアーツやってるんよね?」

「シューティングアーツというか、クイントさんに格闘戦を教わってるけど、ほとんど自己流だよ?」

 

シューティングアーツやるには、ローラーブーツとかリボルバーナックルがないとな。

一応シェルブリットもローラーブーツモードがあるけど、ちょっと格闘スタイルが合わない。

と、ここでヴィヴィオとアインハルト、それにジークの目の色が変わった。

 

「「「健人(くん・さん)手合せお願いします!」」」

「えっ、えぇ~? 俺が!? 無理だって」

 

それなりに経験は積んだとはいえ、まだまだ魔力頼りの力押しが多いから本格的に格闘術を習ってるヴィヴィオ達では役者不足だと思うんだけどな。

それも3人とも色々曰くつきだし。

コロナなら勝てる……いや、ゴーレムでドッカーンがオチだな。

 

「あら、そんな事ないわよ。クイントがあなたは筋がよくて上達も早いって言ってたわよ。それに同年代の子とやるのもいい経験になるんじゃない? 裏庭で軽くやってきたら?」

「クイントさんって、スバルさんのお母さんですよね。確か……」

「わわっ、アインハルトさんダメ!」

 

クイントさんの名前に反応したアインハルトが何かを喋ろうとして、ヴィヴィオが慌てて口を塞いだ。

何を言おうとしてたか、想像がつく。

ゼスト隊の壊滅とクイントさんの死。

忘れていたわけじゃないけど、ちょっと気が重くなる。

でも、それを防ぐためにもゼスト隊に志願したんだし、そのためにももっともっと強くならないと。

 

「あ、そうでした……」

「「???」」

「あ、あははは、お気になさらず~」

 

苦笑いを浮かべるヴィヴィオに、知らないふりをしてプレシアと首をかしげた。

 

「ま、いっか。どうせやることもないんだし。うん、やろう」

 

ジーク達と手合せってまたとない機会だし、いっちょやっか!

 

 

それから裏庭に行き、ジーク達と軽くスパーリングをすることになった。

裏庭といっても、めちゃくちゃ広いのでもってこいだ。

 

「で、誰からやりますか? 健人さんが選んでください」

「その前にさ、ヴィヴィオ。俺もフェイトと同じくさん付けと敬語なしで話してくれないか? 同い年なんだし」

「え、えっと、そう、ですね。でも、なんだか健人さ、健人は同い年に見えなくて、ちょっと年上っぽいかなーって」

「私も同感ですよ。健人さんは、たまにですが年上のような雰囲気がありますよ。背も私と変わりありませんし」

「せやねぇ。はやてちゃんも健人君の事年上みたいに見てるときもあったしねぇ」

 

は、はやてぇ~やっぱり俺が生まれ変わって生前は18歳だったの言わなきゃよかったか。

考えてみれば、ヴィヴィオやアインハルト、ジークって生まれ変わりとかそういう系統の経験あるし、似たような何かを俺にも感じてるのかも。

というか、クイントさんやリンディさん達もそういうのには、薄々気づいているのかもしれないな。

なのは達にもたまに言われるし。

すごーーーく今更だけど、9歳のフリって結構意識しないと難しい。

うーん、でもここでジーク達にまで言っちゃうのもなぁ。

はやて達と違って、俺を年上扱いして敬語になりそうな予感もするし、もう少し様子見よう。

 

「と、とにかく。せっかく知り合えて友達になれたんだから、そーいうの禁止! で、やる順番だけど、ジークさん、お願いします」

 

勢いに任せてジークを指名しちゃった。

よりにもよってチャンピオンで大本命をトップバッターに選ぶとは。

 

「ん? 私? やったぁ、健人君のご指名や♪」

 

やけにジークがご機嫌に見えるな。

 

「ジークさん、何だか嬉しそう」

「今日はずっとテンションが高いですね」

 

珍しそうな表情でジークを見る2人。

ジークがこんなにテンション高いの、そんなに珍しい事なのかな。

結構ハイテンションな時多いキャラだと思ったけどな。

 

「ふふ~健人君って、可愛い弟できたみたいで嬉しいんよぉ」

「お、弟、ですか」

 

9歳と16歳、7歳差か。

うーん、もう少し縮めたい。

ってか、俺がこのままViVid時代になると、逆に俺が7歳ほど年上になるのか。

それなら、いけるか。

 

「えっと、健人君? どないしたん? いきなり弟呼ばわりは嫌やった?」

「そんなことないよ。ジークお姉ちゃん」

 

心配そうに見つめるジークに、つい悪戯心が湧いてついお姉ちゃん呼び。

お姉さんとか、ジーク姉の方がよかったかな。

 

「お姉ちゃん、お姉ちゃん……ふふふっ、ええなぁ~」

「ジークさ~ん? もしも~し?」

 

あ、ジークさんがトリップして昇天してしまった。

ってこれ言う方もめっちゃ恥ずかしいな。

今更ながら顔が熱くなってきた。

言わなきゃよかった~!!

 

「あの、健人さん? どうしましたか?」

 

顔を赤くして昇天したジークと、俯く俺。

何事かとヴィヴィオとアインハルトはしばらく、ワタワタしたそうだ。

 

 

それからしばらくして、やっともとに戻った俺とジークは手合せを始めた。

といっても、ここは管理外世界の住宅地のど真ん中。

魔法もバリアジャケットも一切禁止のスパーリングだ。

それでも、俺の攻撃はジークにカスりもしない。

さすがはチャンピオン。

 

「よっ、ほっ、うん、いい動きやね、健人君」

「それは、どうも!」

 

拳の連打をフェイントにし、下段回し蹴りを放つが、あっさりと見切られてしまった。

真っ向勝負じゃ話にならないからと、搦め手を混ぜて打っているけど全く効かない。

 

「ふ~ありがとうございました」

 

深く息を吐き、時計を見るとどうやら結構な時間、ジークと打ち合っていたらしい。

といっても結局、俺が一方的に打つだけで、ジークは交わしたり反らすだけで終わった。

それでも、最初はジークにかわされっぱなしだったのが、後半になると防御に回るようになったので、善戦はした……と思いたい。

 

「健人君、すごいねぇ。私も後半は結構本気出したんよ? それに、身体能力はすごく高いし反射神経も動体視力もええな。パワーでもスピードでもないバランス型や」

「それにジークさんとあれだけ動き回ったのに息も切らしてないし」

「健人さん、体力だけなら私よりあるかもしれません」

「それはほめすぎだよアインハルトさん。これでも結構疲れまくってます。それにジークさんは全然反撃してこなかったし」

 

久々に魔法なしの全力を出して疲れたけど、それ以上に楽しかったなぁ。

 

「今日は健人君の力を見てみたかったから、私から打つ気はなかったんよ。でも、予想以上に楽しかったわぁ。次は魔法ありで思いっきりやりたいな」

「うん、その時はこっちも思いっきりやるよ」

「へへっ、約束や♪」

 

突き出されたジークの拳に拳を合わせる。

ジークの笑顔がとてもまぶしかった。

あぁ、やっぱり女神様だぁ。

 

「ところで、もうジークお姉ちゃんとは呼んでくれへんの?」

「いや、あれは……」

「呼んでくれへんの?」

「うっ、ぐっ……その、なんといいますか」

 

涙目で悲しそうな表情で迫るジークは色々と卑怯だと思う。

 

「呼んであげてよ、健人~」

「そうです。私から見てもお二人は姉弟のように仲がよいですよ?」

 

ヴィヴィオはアリシアみたいな小悪魔的笑みを浮かべ、アインハルトは本気で俺たちを気遣ってる表情を浮かべている。

でも、待てよ……実年齢なら俺が上と言ってしまえば、立場が逆になるのではないか?

 

『健人お兄ちゃん♪』

「……ぐはっ!」

 

――クリティカルダメージ、オーバーキル!

 

「ちょっ、健人君? けんとくーん!?」

「わわっ、いきなりどうしたの!?」

「すごい量の、鼻血が!」

 

妄想はほどほどにしましょう。

 

 

 

続く

 




うーん、なんかもう満足感が(ォイ)
そろそろギアーズや残りのマテリアルズを出したいところ。
でも、まだまだネタがあってどう出そうかなー……


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第30話 「襲来(レベル50)」

お待たせしました!
一気にレベルアーップ!


それからヴィヴィオやアインハルトとも軽く打ち合い、4人でゲームをして遊んだ。

マリ○カートやゴー○デンアイなど、少し古く俺からすれば結構昔の対戦ゲームで盛り上がった。

打ち合いでは手も足も出なかったけど、ゲームだとフェイトやアリシア達とやりこんでいるのでかなり優位に立てた。

まぁ、ジークに涙目で睨まれてからは手加減した。

ジークの涙目上目使いはずるい。

午後になりフェイトとアリシアが学校から帰ってきて、俺たちはジーク達の服や日用品を買いに街へとやってきた。

なのはとはやて達はそれぞれ家の用事や、アースラに向かったりとして一緒ではない。

女の子だらけの買い物はワイワイキャッキャッと賑やかで、しかも全員美少女だらけとくれば、周りの注目を浴びるのは当然だ。

でも……

 

「で、なんでこうなるわけ?」

「ねぇねぇ、健人君。これなんかどうやろ?」

「健人、こっちも見て」

「あ、次私~!」

 

俺の目の前では、ジークやフェイト達が目まぐるしく衣装チェンジをしてミニファッションショーを行っている。

 

「あら、不満でもあるの? フェイトやアリシアだけでも十分なのに、あなたのお気に入りのジーク達の色々な衣装をタダで見学できるなんて。本来ならがっぽりお金取るわよ」

「色々ツッコミたい事あるけど、とりあえずカメラしまいなさいな。店員さん困ってるから!」

「大丈夫よ。どうせ全部買うつもりなんだし」

「あ、そうですか……」

 

プレシアはさっきからフェイトやアリシアが着替える度、シャッターをきりまくっている。

デジカメに娘達の姿を収めるのがマイブームらしい。

後で俺もジークやアインハルト達のをもらおう。

フェイトとアリシアは、これから嫌でも見られるからね。

ってか、プレシアが素直に愛娘の写真譲ってくれると思えないけどね。

 

<マスター、安心しろ。俺がさっきからしっかり動画と画像で抑えてあるからよ>

『ありがとう、シェルブリット! 今日ほどお前が相棒でよかったと思った日はない!』

<おい! そりゃどういう意味だ!?>

 

正確にはトーレやクアットロに感謝だな。

スカさん? あー一応、感謝してるぞ、たぶん。

そんな夢のようなミニファッションショーを眺めていた時だった。

突然、フロアの電気が消えた。

 

「っ、なんだ?」

「きゃっ!? な、何? 停電?」

「わわっ、どうしたの!?」

「みんな、大丈夫?」

 

着替え途中だったジーク達は突然の暗闇に、危うく転倒しそうになっていた。

何事かと周りを見渡したら、館内スピーカーからどっかで聞いたことがあるBGMが流れ出した。

 

――パパパパーン パパパパーン♪

――パパパパン パパパパン パパパパン♪

――パーパーンパパーンパーンパ パンパンパンパンパ ♪

 

そして、スポットライトが点灯し、フロアの一角を照らし出した。

そこには、なんと……

 

「迎えに来たぞ、健人~!!」

 

黒と青紫色のウェディングドレスを着た、はやてっぽいナニカがいた。

 

「「「………」」」

 

あまりの出来事に呆然とする俺たち。

周りにいた他のお客たちも呆然としていて、店員達だけが微笑ましそうに俺とはやてもどきを交互に見ていた。

あれ? どうしてあなた達は驚かないの?

まさか、この演出って店の許可得てるの?

 

「……えっ、八神司令? グレてしまったんですか!?」

「いや、アインハルトさん。その反応はおかしい! 確かにアレははやてを基にしてるけど、中身は全く別人! 本人にそれ言ったら泣くよ!?」

 

髪の毛の色とかだいぶ違うところあるでしょ。

 

「そうだ。我はあんな子鴉とは違う! 我こそは、健人に貰われるためにやってきた、黒天に座す闇総べる王! その名も、ロード・ディアーチェ・ブライド!」

 

……ちょっと待て。

 

「お前、それ絶対、名前に変なのくっついてるだろ!」

 

原作ゲームをやってなくてもそれはわかる。

 

「むむっ、流石は健人。よくぞ気が付いた! 我は闇を総べる王にして、貴様の嫁! なれば、ブライドと名乗るは必然であろう! あーっはっはっはっは!」

 

どこの薔薇皇帝だお前は!

そんなことよりもそれを聞いて、フェイト達は心底同情の目で俺を見てくるが、ジーク達は驚きとちょっと悲しそうな目で俺を見てきた。

 

「あ、あれが健人のお嫁さん!?」

「健人さん、大人ですね」

「健人君、婚約者がいたん?」

「いやいやいやいや、待って。ちょっと待って。もう色々ありすぎて俺の頭が爆発しそうだ!」

 

ヴィヴィオ、そんなキャーって若干嬉しそうな顔しないでくれ!

アインハルト、大人ですねって、お前は天然か!

そして、ジーク、そんな目で見られるとこっちまで悲しくなる!

 

「ともかく、騒ぎになる前にここを出ましょう。もうかなり手遅れな気がするけど」

「それもそうだな。では、行くぞ、健人!」

「えっ? ちょっ、待て! ええぇぇ~~!?」

 

ディアーチェはウェディングドレス姿のまま、俺をお姫様抱っこしてそのまま階段を駆け降りた。

 

「ここの後始末は私がするわ。フェイト、あなた達は早く追いなさい!」

「……う、うん。分かった。待って! 健人を連れて行かないで!」

 

後に残されたフェイト達は少しの間ポカーンとした顔をしていたが、フェイト、ジーク、ヴィヴィオ、アインハルトは俺たちを追いかけてきた。

あとで、聞いたがプレシアはアリシアと残って店員や客達への説明(暗示)を行ったらしい。

当分、このデパートには来たくないなーとお姫様だっこされながら思った。

 

 

デパートを出たところで、突然周りの景色の色が変わった。

プレシアが辺り一面に結界を張ったようだ。

 

「健人君!」

「健人~!」

「ちっ、もう追ってきたか」

 

結界が張られたことで周りの目を気にせずよくなり、フェイト達はそれぞれバリアジャケットを着て追ってきた。

ヴィヴィオとアインハルトも大人モードで戦闘態勢だ。

 

「ディアーチェ、悪いことは言わないから、俺を置いて大人しく投降してくれないか?」

<お姫様抱っこされた状態で言ってもかっこ悪いだけだぞ>

 

結構しっかり抱っこされていて、抜け出ようとしたら……その、色々体にあたるんだよ。

 

「心配する事はないぞ、健人。これしきの障害で、我らのバージンロードは止められぬ。すぐに蹴散らして新婚初夜を迎えようぞ!」

「お前は何を言ってるんだ。言ってる事がアウトすぎる!」

「しょ、初夜!?」

 

フェイトやヴィヴィオ、アインハルトはディアーチェの言っている意味がよくわかってないようだ。

だけど、ジークは新婚初夜に反応して顔が赤くなった。

力づくで抜け出してどうにかしないと、もっとややこしいことになりそうだ。

 

「ええい、もういい加減下ろせー!」

「むっ? そうか、よしっ、健人。一緒にお邪魔虫を蹴散らすぞ!」

 

ディアーチェはやっと俺を下すと、ウェディングドレスの上からさらに甲冑を身にまとった。

何を勘違いしたのか、俺が一緒に戦ってくれると思っている。

 

「いや、なんで俺が一緒に戦うのさ!? 逆だから逆!」

「逆? そうか、そういう事だったのか。ならば早く言えばよかろうに。それっ!」

「えっ? えっ??」

 

今度はどこをどう勘違いしたのか、ディアーチェは俺の首に手を伸ばしそのまま飛び込んできた。

思わず抱き留めてしまったが、自然と俺がディアーチェをお姫様だっこする形になってしまった。

 

「健人? さっきから何をしてるのかな?」

「たのしんどるなぁ」

「俺に言われても困るんだけど!?」

 

何だかフェイトの様子が……ってジークも様子がおかしい。

2人共目からハイライトが消えてるよ?

こわいよ?

ヴィヴィオとアインハルトも若干引いてるぞ?

 

「ジークさん、もう2人纏めて……が一番早いですよね」

「せやね。もうそれでいこか」

「よくないよくない! ディアーチェ、降りろ!」

「ダメだ! 我はこれが気に入った! このまま戦おうぞ!」

 

ディアーチェは片手で俺の首に手を回して、もう片方の手に杖を持ってバリバリやる気だ。

どっかに放り投げるか振り落としたいけど、それはそれで抵抗感がぁ~

 

「プラズマザンバー……」

「わわっ、フェイトママそれはダメー!!」

「鉄腕解放、ガイスト……」

「落ち着いてください! エレミアの神髄まで!?」

 

あ、これ、俺もまとめてO☆HA☆NA☆SIされるパターンかな。

今すぐディアーチェを遠くに放り投げてもたぶん、無理だ。

覚悟を決めて、空を仰いだその時、結界の一角で何かが光った。

 

「えっ?」

 

――シュッ!

 

「あだっ!?」

 

光はそのまま器用に俺にカスりもせずに、ディアーチェの額に当たり彼女は吹き飛ばされた

 

「健人!」

 

突然の出来事に驚いたフェイト達だったが、すぐに俺の側へとかけより、辺りを警戒した。

 

「大丈夫、健人君?」

「うん、大丈夫だけど、いったい何が??」

 

そこへどこからか、一枚の紙切れがヒラヒラと舞い降りてきた。

その紙を手に取ると、こう書かれていた。

 

【レヴィに続いて、王様がご迷惑をおかけしました。この不始末の謝罪はまた後日お伺いいたします あなたのUより】

「「「………」」」

 

なんだろ。丁寧な謝罪文なのに寒気がしてきた。

 

「あたたっ、今のはまさか、ん? なんだこの紙は」

 

ディアーチェの方にも紙が降りてきたみたいだ。

 

「何々? 【抜け駆け禁止法違反。お仕置きです ユーリ】……な、ななななぜバレたのだ!? え、ええい、致し方ない! 健人、また来るぞー!!」

 

そう言い残してディアーチェは、結界をまるで紙のように簡単にぶち破って空の彼方へと消えていった。

 

「助かった、のかな。俺」

「そう、みたいやね」

 

何が起きたのか、分からないが、どうやらこの騒動はひとまず終わったようだ。

 

「また来るって言っていましたね」

「ユーリ、という方も健人さんのお嫁さんなのですか?」

「全力全開で否定します」

 

ぽつりとヴィヴィオとアインハルトが呟いた言葉に、鳥肌が立ってきた。

 

「ジークさん、ヴィヴィオ、アインハルトさん。俺そっちの世界へ逃げてもいいですか?」

「うん。ええで、テント暮らしやけどな」

「住むところなら私の家で、なのはママも大歓迎してくれますよ」

「私のところでもいいですよ。少々狭いマンションですが」

「私もその方が健人の為になる気がしてきたよ」

 

冗談抜きでそう思ってしまった。

 

 

 

続く




はい、ディアーチェ回です。
レベル50は高いか低いか……それはまた次の襲来でご判断を(笑)


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第31話 「襲来(レベル?)」

長らくお待たせしました!
やっとかけましたー


マテリアルズのせいで、当初の予定よりも長く海鳴市へ滞在となってしまった。

なので、こうしてミッドのナカジマ家に通信をつなげ近況報告をすることにした。

どうやらクイントさん達は出かけているようで、ゲンヤさんが出た。

 

『よぉ、健人。話は聞いてるが、お前さんモテモテなんだってな。あっはっはっはっ』

「笑いごとじゃないですよ。こっちは精神的に色々大変だったんですから!」

 

ここ数日あった出来事をシェルブリットが保管していた映像と共に詳しく話すと、段々ゲンヤさんの表情が険しくなりついには額に手をあて天を仰いだ。

 

『……すまん。俺が悪かった』

「わかってもらえてよかったです。ホント……」

 

2人揃って深く、ふかーくため息をついた。

その時、通信モニターの向こうでドアの開く音がして、クイントさん達の声が聞こえてきた。

 

『ただいま~あら、誰かから通信? って健人じゃない!』

『けんにぃ!?』

『おにいちゃん!?』

『おぉ、戻ったか……グヴォッ!?』

 

ギンガとスバルの声も聞こえたかと思ったら、モニターからゲンヤさんの姿が消えて変わりに2人が現れた。

うん、俺は、何も、見て、いない。

 

「スバル、ギンガ、元気にしてるかー?」

『うん、元気だよ! けんにぃは元気だった!?』

 

それから、ギンガがストライクアーツをクイントさんから習い始めて、スバルも興味を持ち始めたとか、色々な話をした

ふと、ギンガが急に悲しそうな顔をしてこんなことを訪ねてきた。

 

『おにいちゃん、いつこっちに戻ってこれるの?』

 

そんな目で見られると、色々とこみあげてくるものがあるな。

 

「今回ちょーっと面倒な事が起きててさ。終わったらすぐにそっちに戻るよ」

『……それって、いつ?』

 

ギンガにつられてスバルも悲しそうな目で俺を見てきてる。

うわっ、これ今にも泣きだしそうなパターンだ。

どうしよう。

 

「えっと、だな……そうだ。さっきまでお父さんとその話していたから、お父さんに聞くといいよ、うん!」

『えっ? おい! こっちを巻き込むな!』

『『お父さん!!』』

 

2人はゲンヤさんに突撃して、代わりにクイントさんがモニターに現れた。

ゲンヤさん、ごめん。

 

『あははっ、健人も随分と強かになったわね。で、そっちは大変そうだけど、大丈夫?』

「えぇ、まぁ、なんとか大丈夫ですよ」

 

今の所は、だけど。

 

『早く解決するといいね。おいしい御飯たくさん作って待ってるからね』

「はい!」

『よしっ、じゃあ、健人に1つアドバイスを送るわ』

 

クイントさんのアドバイスって何だろ? ストライクアーツに関する事かな?

 

『一夫多妻制もいいじゃない。レジアス中将の力で可能よ♪』

 

――ドテッ!

 

「な、何を言ってるんですかー!?」

 

爽やか笑顔で何を言ってるんだこの人は。

 

『あはは~じゃ、元気でね~♪』

 

そういって通信は切れた。

 

「全く、あの人は軽いというかなんというか……あっ」

「「「あっ」」」

 

苦笑いを浮かべつつ部屋を出ようとして、ドアの隙間からこっちを覗き込むなのは達と目が合った。

ドアを開けると、そこにはなのはとジークとアリシアがいた。

 

「……いつからそこに?」

「えっと、ゲンヤさんと2人で落ち込む前あたり?」

「めっちゃ最初からじゃねぇーかー!」

「いやぁ、健人君の意外な一面見れたわ。ふふっ、いいお兄ちゃんしとるんやなぁ」

 

なのはやアリシアはともかく、ジークに見られたのが恥ずかしい。

 

 

クロノから連絡があり、時空の歪みの形跡が発見されたらしい。

それによるとジークやヴィヴィオ達以外にも、誰かがこっちの世界にやってきた可能性があるそうだ。

ただ、どこの次元世界にいつ飛んできたかまでが分からないようで、地球を中心にみんなで捜索する事になった。

俺はジークとなのはと一緒に海鳴市で待機となり、ヴィヴィオとアインハルトは念のため未来からやってきたかもしれない人物が知り合いである可能性を考慮してフェイト達と出ている。

そして、アリシアは普通にお留守番だ。

 

「見られた。ジークさんにまで見られた」

「あ、あはは、そこまで落ち込む事はないんじゃない?」

 

以前、クイントさんが来た時も後で色々弄られたからな、特にはやてとアリシアに。

もうすっかり慣れちゃったけど、ジークには見られたくなかったなぁ。

ナカジマ家を前にすると色々と昔を思い出して素が出るというか、あまり人に見られたくない状態になる。

まぁ、家族と思ってるからだろうけど。

 

―ピンポーン

 

その時、チャイムが鳴った。

今日はなのは以外お客が来る予定はないけど、誰だろうか。

 

「はーい、どちらさまですかー?」

 

―ガチャ

 

「あっ♪ あなたは運命を信じますか?」

「……いえ」

 

―ガチャ

 

はて? 今のはいったいなんだったんだ?

ドアを開けたら淡いクリーム色の長髪なお姉さんが宗教勧誘してきた。

しかも、俺を見るなりとても嬉しそうに眼をキラキラ輝かせていた。

少なくとも俺の知り合いにはいないな。

何だったのかと考えていると、2階からアリシアも降りてきた。

 

「健人? 誰だったの?」

「なんかの宗教勧誘な人だから気にしないでいいよ」

 

―ピンポーンピンポーン

 

「……チャイム、鳴ってるよ?」

「無視で」

 

―ピンポンピンポンピンポン

 

「連射してるよ?」

「16連射までまだまだだね」

 

―ポポポポ~ン!

 

「まほうのことばで♪」

「あーもう出るよ! 出ればいいんだろ!」

 

チャイムが壊れそうだったので、チェーンをかけて開けた。

そこにはさっきのお姉さんが今にも泣きそうな顔をしていた。

 

「ぐすっ、あなたは、うんめいを、しんじますか?」

「なんでしょうか?」

 

流石に罪悪感が出たので、しょうがなく話を聞くことにした。

俺が話を聞く気があるのが分かると、お姉さんは涙目ながらも嬉しそうに顔を輝かせた。

さっきからコロコロよく表情変わるなぁ。

 

「えっと、ですね。あなたにぞっこんラブな運命のお相手をご紹介に来ました!」

「はぁ……」

 

宗教勧誘だと思ったら結婚相談所の人か?

 

「まだ小さくて幼いんですけど、その子とっても一途であなたの事をすごーく大切に思ってるんですよ! だからぜひぜひ会ってあげてください!」

「え、えっと?」

「分かります分かります。健人さんもまだ幼いですし、いきなりこんな事言われてもピンときませんよね?」

「あ、はい。というか、俺名乗ってませんよね? なんで俺の名前知ってるんですか?」

 

「でも、大丈夫です! きっと絶対にいい夫婦になれますから!」

「いや、こっちの話を聞いて」

「あ、ごめんなさい。夫婦って気が早いですよね。まずはいいカップル、ですよね♪」

「それも気が早いから。というかあなた誰ですか!?」

「不安になるのはわかります。こういうのをマリッジブルーっていうんですよね? キリエさんに教わりました♪」

「それ違う、全く違う、キリエっていう人会った事もないけど、絶対にろくでもない人って事はわかる」

「とりあえず、チェーンを外してもらっていいですか? 自分でこわ……外せますけど、無理やりの力づくは最終手段でって言われてますから」

「サラリと怖いこと言わないでくれますか!?」

 

もうなんなんだこのお姉さん!

あれ? ちょっと待て、今このお姉さん、キリエって言ったよね?

キリエってまさか……ヤバいかも。

 

「………」

 

後ろでアリシアも唖然としてるし、どうしたらいいんだこれ。

 

「健人君、どうしたの?」

「お客さん?」

 

と、そこへジークとなのはも降りてきた。

 

「ひっ!? た、高町教導官!?」

 

その時、チェーン越しになのはの姿を見たお姉さんから変な声が出た。

 

「えっ、どなたですか?」

「あ、あの、また来ます!」

 

なのはがキョトンとしながら玄関に近寄ると、お姉さんは踵を返して帰ろうとした。

 

「あ、待って!」

 

不本意だけど、このまま帰すのはまずい。

そう思い急いでドアを開け、追いかけようとした。

 

―カッ、ゴンッ!

 

「ブギュッ!?」

「「あっ」」

 

今何が起こったのかというと、お姉さんが走って逃げようとして、玄関で躓いて転んで柱に思いっきり頭をぶつけて気絶した。

 

「だ、大丈夫ですか?」

「むきゅ~……」

 

とりあえず中へと運んで寝かせたが、頭に大きなタンコブを作った以外に、大きな怪我はしていないようだ。

念の為、ジークにお姉さんを見たことがないか聞いてみたが、知らない人だと言われた。

色々と聞きたいことが山積みだが、まずはアースラに連絡してクロノに報告すると、向こうでも動きがあったようだ。

それによると、フェイト達が未来から来たという少年を保護した。

その少年の名前は、トーマ・アヴェニール。

トーマは、フェイトやシグナムだけではなく、ヴィヴィオとアインハルトの事も知っていた。

話を聞くと、ヴィヴィオ達よりも数年先の未来から来たらしく、気が付いたらこの時代にいた。

そして、一緒に来たはずのリリィという女の子を探してこの数日管理外世界でサバイバルをしていたようだ。

見た目は華奢な現代っ子なのに、随分とワイルドな子だな。

で、一緒に来たはずのリリィというのが、どうやらこのお姉さんという事だ。

 

『今トーマは別室でエイミィやヴィヴィオ達が話を聞いている。一旦その子を連れてこちらに来てくれないか?』

「了解。それにしてもジークさん達と同じく未来からとは。話を聞く限りこの世界ではなく、ジークさん達のいた世界の未来からって事でいいのかな?」

『あぁ、彼はヴィヴィオとアインハルトの事は知っていたが、君やリインフォースの事は知らなかったよ』

 

なんだかずいぶんとややこしい事になってるなぁ。

 

「私、高町教導官って呼ばれてましたけど」

『あぁ、その事だが、向こうの世界では君はヴィータと一緒に、トーマやリリィ達をかなりしごいでいたからだろうな』

 

なのはがヴィヴィオ達の世界では教導官をやっているというのは前に聞いたが、鬼教導官だったか。

 

「流石は未来の管理局の白い魔王。トラウマを植え付けるほどとはね」

「そんな事ないの! ね、ねぇ、ジークリンデさん? そちらの私は魔王とか鬼教導官とかじゃないですよね!?」

「……え、えっと~」

 

思わずジークに助け舟を出したなのはだったが、視線をそらされた事でショックを受けた。

 

「わ、私の未来って……」

「わわっ、勘違いしないで。私は未来の高町なのはさんと話した事ないからよく分からないって意味やで!?」

 

その後、ヴィヴィオからフォローされるまで、なのははずっと体育座りで凹んでいた。

 

 

続く

 




やっとやっとあの2人が登場!
なんか、相変わらずぶっ壊れてますが……
リリィにいったい何があったのか!?(笑)

魔装少女リリカルなのはForce Reflection?
初日に観に行きましたよ?
感想は、ノーコメントで……


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第32話 「かつ丼よりも牛丼派」

大変お待たせしましたー!
そろそろGOD編も終わりが見えてきました。


「はい。まずは氏名と年齢、職業からね」

「えっと、名前はリリィ・シュトロゼック、です。年齢は、トーマと同い年、だったらいいな。職業はトーマと一緒に管理局見習い、でいいのかな? 以上、です」

「なるほど、トーマ爆発しろ、っと」

「なんでだよ!?」

「健人、真面目にやってくれないか?」

 

今俺はクロノと一緒に、アースラの一室で先ほど襲撃(?)を仕掛けてきたリリィを尋問(?)中だ。

リリィの連れであるトーマも同席している。

問題は、この世界に来てトーマとはぐれてから、リリィがどこで誰といたのか。

そして、なんで俺を連れ去ろうとしたのかだ。

気絶したリリィを連れてアースラに来た時、トーマとも対面したがやはり俺に面識はないらしい。

やっぱりジークやヴィヴィオ達と同じ世界の少し未来からきたんだな。

今思い出したけど、たぶんトーマとリリィはリリカルなのはForceのキャラだ。

ただ、Forceは一度も見たことないんだよな。vividよりも未来の話としか知らない。

で、そんな彼女達を尋問する時、リリィが言った事がある意味衝撃だった。

 

『あの、かつ丼より海鮮丼をお願いします!』

 

……どうやらどっかで日本の刑事ドラマを観すぎたようだ。

しかも、海鮮丼ってかつ丼より明らかに高いし!

とまぁ、当然そんな彼女の戯言はトーマのツッコミと共にスルーされたわけで。

 

「さてと、じゃあ君がトーマと離れてからの話を聞かせてくれないか?」

「はい、わかりました!」

 

てっきり話すのを拒否するのかと思ったけど、リリィはすんなりと話してくれた。

それによると……

 

 

リリィはトーマと違う次元世界に跳ばれたらしく、通信もできずにあてもなくさまよっていて街でフラフラっとさまよっていた。

で、自分がどこにいるのかもトーマの居場所も分からず、お腹が空いてレストランに入った。

メニューの文字が読めず適当に頼んだら最高級フルコースだった。

わけもわからず飛ばされてきた彼女にお金があるはずもなく、食い逃げしようとした時だった。

 

『はぁい。ここは私が出すから、ちょっとお話聞いてくれない?』

 

と、ピンク色の髪をした女性が親切にもお金を出してくれることになった。

その人は空になった財布を見て、泣きそうになってたそうだけど。

で、リリィを助けてくれた人の名は、キリエ・フローリアン。

キリエはリリィをとある場所へと案内した。

そこには3人の女の子がいて、キリエはとある目的の為に彼女たちに協力しているらしい。

彼女達にはもう1人仲間がいて、その子は眠っていて、その眠りを覚ますのを手伝ってほしいというのだ。

3人の女の子の名は、シュテル・ザ・デストラクター、レヴィ・ザ・スラッシャー、ロード・ディアーチェ。

眠っているもう1人の子は、ユーリ・エーベルヴァイン。

彼女達の目的は、とある男の子のお嫁さんになる事。

その男の子は、眠っていた自分達を、熱い魂の籠った一撃で起こしてくれた。

その衝撃に彼女達は激しい恋に目覚めた、一目ぼれというやつだ。

それからリリィは彼女達から、いかにその男の子の事が好きで、ユーリまでも無理して実体化してチョコを届けたりだの色々と将来設計まで教えられた。

リリィはその話に感動し、彼女達の初恋を叶える為にその男の子、俺を迎えに来たというわけだ。

 

「「「…………」」」

 

そこまで話を聞き終えて、何とも言えない空気が場を包み込んだ。

トーマはリリィが食い逃げ未遂をしたと聞いた時に、机に突っ伏してしまいブツブツ何かを言っている。

クロノは心の底から同情すると言いたげな目で俺を見てきていて、後ろで話を聞いていたなのは達もなんとも言えない表情を浮かべている。

とりあえず、ツッコミ所が多すぎだ。

だけど、どうしてマテリアルズ達が、会った事ない俺にベタ惚れだったのかは分かった。

闇の書の闇を退治した時に放った一撃、シャインナックルブレイカー。

アレが闇の書の奥底に眠っていたマテリアルズを起こしたんだ、きっとそうだ!

 

<マスター、絶対あのキスが原因だと思うぞ>

 

そんな事ない! 断じてない!!

ちなみに、リインフォースに改めてマテリアルズやユーリの事を訪ねたが、覚えていないそうだ。

闇の書の闇の呪縛から完全に解放された事が関係しているかもしれないのだとか。

 

「うーん、それで君は健人を迎えに来たわけだが、そんなにペラペラと喋って大丈夫なのか?」

「何がですか?」

「キリエ達に口止めされてはいなかったのかい?」

「はい、されてませんよ。だって、私、話を聞いてすぐに飛んできましたから」

「「へっ?」」

 

あれ? 普通口止めするんじゃないの?

さもなきゃたった1人でテスタロッサ邸によこすわけないと思う。

もしくは、彼女が1人で乗り込んできたこと自体が罠?

でも、リリィを検査したけど特に異常はなかったよな。

 

「ディアーチェちゃん達からユーリちゃんが完全に目覚めるには健人君の力が必要だと聞いて、善は急げってことでそのままやってきましたから」

「……ちなみに誰も止めなかったのか?」

「健人君の住む家の近くに転送する時に、キリエさんは何か言おうとしてましたけど、きっと、必ず健人君を連れてきてね。って言おうとしたんだと思います」

 

違う。絶対違う。

多分キリエはリリィを止めようとしたんだろう。

キリエの計画では、ユーリを目覚めさせる為の鍵である俺を連れてくる為に、リリィを味方に引き込んでこっちに襲撃をかけてくるつもりだったんだろう。

でも、リリィが話を最後まで聞かず、衝動的に飛び出した為にご破算。

しかも、なのはやフェイト達がいるって事をリリィに説明する前だったんだろうな。

だから、あの時、なのはをみてリリィが驚いて気絶したんだろう。

 

「恐らく、その予想は当たっていると思うよ。さっき、そっちにリリィってアホの子行ってませんか? って匿名の通信があったから。保護してます。って言うと、やっぱりかー! って叫びながら通信切れちゃった」

 

エイミィ曰く、どうやらリリィの話を聞いている間にキリエらしき人から、通信が入ったそうだ。

もちろん、発信源は特定できなかったそうだが。

 

「……何だかそのキリエってやつに、同情しちまうね」

「「「うん」」」

 

アルフの言葉に、俺たちは黙ってうなずいた。

けど、どうしてマリッジブルーなんて言葉を教えたんだろ、キリエは。

それよりこの世界の事、なのは達がいることを教えなきゃダメだろ。

 

「それで、これからどうするの?」

「キリエがリリィを次元漂流者と分かって接触してきたって事は、彼女がこちらの世界に来た理由を知っているはずだ。マテリアルズの確保も含めて、リリィから居場所を聞いて突入だ」

 

クロノはそう息巻くけど、そう簡単にうまくいくかなぁ。

 

「待たせてすまない。話の続きだが、キリエ達がいた場所はどこにあるか分かるか?」

「えっとですね……あれ、私、どこから来たんでしたっけ?」

 

やっぱりかー! このリリィ、言っちゃ悪いがポンコツすぎるー!

 

「リ、リリィ? 転送したなら座標情報は残っているんじゃないのかい?」

「ううん。私1人じゃ転送なんてできないよ? なぜかリングも銀十時の書もトーマの方に行っちゃってて呼び出せなかったし」

「ちょっと待ってくれ。じゃあ、君は、健人をどうやってキリエやマテリアルズ達の所へ連れて行く気だったんだ?」

 

クロノがそう聞くと、リリィは手を組んで顎に指をあててしばらく考え込み……

 

「あ、そうですね。そのこと、すっかり忘れてました、あははは♪」

 

――ドテッ!

 

あまりに能天気に笑う彼女に、俺やクロノ、トーマになのは達まで全員が見事にこけてしまった。

こ、こいつはほんとにもう……

 

「ク、クロノ、どうしようか?」

「い、致し方あるまい。しばらくは様子を見るしかない。海鳴市への転送反応は確認できたが、逆探知はできなかったんだ」

 

現状、こっちからは打つ手なしなのは変わらないか。

 

「ふっふーん、そんなことはないよ。毎回毎回逃げられたりしてたんじゃ、管理局の名が廃るよ! さっきの通信や今までの転送反応、その他もろもろ反応は追えなくても解析はばっちり進んでるんだから!」

 

そのためにプレシアはアースラに行くこと多かったもんな。

 

「あと1回、1回だけ転送でも通信でもなんだろうと、向こうからのアプローチがあれば完璧に発信源を追えるよ」

 

エイミィは自信たっぷりに言うけど、要はあと1回襲撃がなきゃダメってことかい。

 

「今まで来たのがレヴィとディアーチェ、なら次は」

「シュテルかキリエが来る可能性はあるな」

「順番に来るわけじゃないだろうけど、どちらにせよ健人を狙ってくる可能性は高いな」

 

ものすごーく複雑な気持ちだ。

マテリアルズ達は大好きだけど、今までロクな襲撃かけてこなかったからなぁ、不安しかない。

 

「大丈夫だよ、健人君。私たちが絶対に守るから!」

「でも、次に来るのがシュテルだったら、なのはちゃん、大丈夫なん?」

「うぐっ!?」

 

息巻くなのはだったが、はやてに言われると髪の毛がげんなりしてしまった。

良い機会だ、前から気になっていた事を聞くか。

 

「なぁ、前にマテリアルズが復活した時、一体何があったんだ? いい加減教えてくれないか?」

 

なのはとフェイトとはやては難しい顔をしたが、少し考えて頷きあった。

 

「えっとね、前にシュテル達と戦った時は、シュテルとかレヴィとかまだ名前がなかったの」

「うん。自分たちが何者で何をしようとしているか探っている、感じだったね」

「で、覚えている事は……王子様を見つけ出す事だったんよ」

「王子様!?」

 

当時のシュテル達は、はっきりと俺を探しているわけじゃなく、自分達を深い眠りから目覚めさせてくれた王子を探して暴れているだけだったのか。

 

「ディアーチェが言うには、その王子は紅く燃える髪をして、身長は180センチを越えていて、すらりとしていてでも筋肉が逞しい……とにかく、王子様の特徴を長々と恍惚な表情を浮かべて語ってたんや」

「うわぁ~……それはいやだな」

 

自分と似た顔をした女の子が目の前でそんなことをしてたらげんなりするか。

 

「そ、それだけじゃなくてね。レヴィたち、聞いてもいないその王子様を見つけたら……えっと、その、色々とやりたいことがあるって、それも長々と赤裸々に……」

 

顔を真っ赤にしたフェイト、それを見てなのはとはやても煙が出そうなほど、顔を赤くした。

それ以上は聞いてやるなと、肩に手を乗せたプレシアが目で語っている。

 

「うん、分かった。それで十分だよ」

 

シュテル達が何を言ったのか、なんとなくわかった。

きっと、それは大人の世界だったんだろうなぁ……なのは達には早すぎたんだ。

 

「ともかく、健人は今まで以上に気を付けて行動した方がいい。絶対に単独行動はダメだぞ」

「あぁ、分かってる」

 

彼女達に捕まると命は取られなくても、それ以上の大事なものが色々奪われそうだし。

 

「大丈夫や。私もヴィヴィもハルにゃんもフェイちゃんもおるんやし」

「そうです! 私たちがもとの世界に戻る方法を見つける為にも」

「はい、健人さんをお守りしてキリエさんとお話しします」

「うん、健人は絶対に渡さないよ……ところで、フェイフェイって私だよね?」

 

頼もしいことを言ってくれるジーク達に感動。

 

「私だって」

「当然、私らもや」

 

なのはとはやてもそれに続く

女の子に守られてるって言うのは正直どうよって思うけど、今更だよねー?

 

 

「何だか、外は盛り上がってるね、トーマ?」

「……忘れられてるってこと、ないよね?」

 

尋問室に残された2人の事は、正直忘れていた。

あれ? もう1人忘れているような気がするんだけど……はて?

 

 

続く

 




次回はいよいよ、彼女が……

お姉ちゃんの出番はあるのか!?(笑)


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第33話 「襲来(レベル99)」

お待たせしましたー!

書いてていろいろ暴走してR18的な話になってしまい、何度か書き直しました・・・


「ぅ、うぅ~ん……」

 

暖かくて柔らかいものに包まれている感じに目が覚めた。

腰に手を回して、背中に誰かが抱き着いている?

こんな事しそうな人は……クイントさんくらい?

でも、背中に当たる柔らかい感触が小さい。一体誰だ?

起こさないように慎重に抱き着いている手を離し、ゆっくりと振り向く。

そこにいたのは……

 

「……けんと、さん」

 

パッと見なのはっぽいけど、よく見ると別人な、シュテルだった。

幸せそうな寝顔で気持ちよさそうに寝ているなぁ……全裸で。

 

「………」

 

俺はシュテルを起こさないようにベッドから降りて着替えを持って部屋を出て、1階のリビングへと降りた。

そして、着替えをして冷蔵庫から牛乳ビンを取り出して一飲みして、ソファに腰かけ天を仰いで一言。

 

「(なんでさーーーーーーー!!!!)」

 

全力全開で叫びたかったけど、みんなを起こしちゃうから心の中だけで叫ぶ。

なんでシュテルがすっぽんぽんで俺のベッドにいるんだ!?

いや、実際に見たわけじゃないですよ?

たださっきまで足にまで絡みつかれるほど、密着して抱き着かれていたからわかるんですよ?

今も目に見えているのはシュテルの肩から上だけで、そこから下は誓ってみていませんでしたよ?

 

<ふわぁ~、朝からうるさいなぁ>

「デバイスが熟睡してんじゃねぇよ。大体なんで警告してくれなかったんだよ」

<ん? 別にジークやプレシアじゃあるまいし朝から幼女が全裸で侵入したからって問題ないだろ?>

「判断基準がおかしいが、朝からジークがいたら鼻血で出血死する自信があるぞ」

<自信満々に言うことかよ>

 

シェルブリットと漫才していると、突然背後から抱きしめられる形で目隠しされた。

 

「だ~れだ?」

「その綺麗でかわいい声はジークお姉ちゃん!」

 

ついでに言うと後頭部に当たっている、程よい柔らいものもうちでいる中じゃジークしかいないね。

 

「はうっ!? そ、そそそそんな事ないよ? 私の声なんて……ってもう、健人君ったら!」

 

悪戯してきたのでこっちは意地悪っぽく言ってみた。

 

「うぅ~……」

「あははっ、おはよう、ジークさん。早起きですね」

 

ジークはよくヴィヴィオ達と早朝にマラソンやトレーニングをしているけど、夜明けにはまだまだなこんな時間に起きているのは珍しい。

ま、俺が言えたことじゃないけど。

 

「む~ちょっと喉が渇いて何か飲もう思うたら、電気もついてないリビングに誰かいるからてっきり泥棒かと思ったんよ。そしたら健人君が何か考え込んでるから驚かそう思うたのに、逆にこっちが驚かされたわ。健人君はこんな時間にどうしたん?」

「えっと……何だか目が覚めちゃって?」

 

まさか、ベッドに全裸の幼女が侵入したから起きた。なんて言えるわけない。

それがシュテルだとわかればなおさらだ。

最悪、この家消し飛ぶかもだ。

 

「ふ~ん、せやったら……私と一緒に寝る?」

 

暗がり+パジャマ姿+前屈み+上目使い=超天使!

って、ジークこんなキャラだっけ?

いや、こっちに来てからたまに変なテンションになってる事あるけど、ここまでじゃなかったぞ?

 

「ぶふっ!? ちょっ!? な、何を言ってるんですか!? てか誰の入れ知恵ですかそれ!?」

「あ、あははは。やっぱりわかる、かな?」

「わかりますよ。ものすごーく恥ずかしそうに言ってるんですもん」

「うぅ~……せやなぁ。私も今更やけど、ものすっごい恥ずかしいわぁ。クイントさんやメガーヌさんに教わったんやけどなぁ」

「何してんだよ、あの2人は!?」

 

俺がジークをお気に入りだって事バレたからな。

だからってここまでさせるなんて。

まさかギンガやスバルにまで変な事吹き込んでないだろうな……ありえるから怖い。

 

と、その時だった。

 

――ゾクリッ

 

「っ!?」

 

突然物凄い寒気がして、辺りを見渡した。

けれども特に異常はない。

ジークは何も感じなかったようで、平然としている。

 

「ど、どうしたん? 急にキョロキョロして。誰か起きてきた?」

「いや、なんでもないよ。気のせい、だと思う」

 

まさか、ね。

と、その時は思い……たかった。

 

 

 

それからジークと他愛無い話をして、そのうちヴィヴィオやフェイト達も起きてきて皆で早朝トレーニングをした。

そして、なのは達と合流してリリィの案内でマテリアルズとキリエがいた次元世界を探す事にしたのだが、これがなかなか難しい。

リリィは自分のいた次元世界の事をまるっきり覚えていないので、地球付近の次元世界を片っ端に訪れてリリィが見覚えある景色があるかどうかの確認をするという方法しかなかった。

で、そんな方法ですぐ見つかるわけもなく、無駄に次元世界を移動するだけになり、収穫のないままへとへとになって帰ってきた。

 

「あー……これじゃいつになったら解決するのかわかんないな」

 

風呂に入りながらこれからどうしようかと考える。

解決するってことは、ジーク達は未来に帰るって事なんだよな。

それはそれでかなり寂しい。

 

「ま、俺なんかが考えても仕方ないか」

「そうです。あなたはただ私達に身をゆだねてくれればいいんですよ」

 

ハイ?

今誰かの声が背後から聞こえてきたぞ?

何だかなのはっぽい声が聞こえたけど、なのはがいるわけない。

というか、ここは風呂場なんだぞ?

誰もくるわけないじゃん。

ははっ、空耳だろう。

 

「では、お背中流しますね」

 

背後にいる誰かがそういうと、背中にスポンジが当たった感触があった。

これ、幻聴でも幻覚でもないや。

俺の背後に誰かいるー!?

ヘルプー! と言いたいけど、シェルブリットは当然持ってない。

持ってたとしても、この家にいるのは女性ばっかり、風呂場へ助けを呼んで来てもらうわけにはいかない。

いや、プレシアかアルフなら……2人共今日いないんだった。

 

「力加減はいかがですか?」

 

こうなったら腹を括って……スルーしよう。

俺の背後には誰もいない。

背中を洗われてる気がするけど、気のせいだ。

俺は前を洗っていればいいんだ。

 

「あ、前も洗いたかったのですが……」

 

スルーして、シャワーで泡を流して風呂に入る。

 

「失礼します。ふぅ、いい湯加減ですね」

 

隣に誰か入った気がするけど、俺には何も見えない。

さっきからずっと目を瞑っているからね!

 

「ふふっ、こうしていると夫婦みたいですね」

 

スルースルー

 

「触ってもいいんですよ?」

「さーって、のぼせる前に上がるか!」

 

スルースルースルー

 

「……やはり、小さいとダメですか」

 

――ドテッ

 

目を瞑りながらだったからこけちゃった……けど、スルー!

 

念のため風呂場を出てもずっと目を瞑り、手探りで着替えてシェルブリットを装着。

 

「なぁ、もう、いない?」

<いないって、なんの事だマスター?>

「いや、風呂場に誰もいない?」

<誰もいないぜ? そもそも、風呂はマスター以外入っていないぜ?>

「…………」

 

ス、スルー……

 

「ど、どうしたの健人、顔色悪いよ!?」

「平気、のぼせただけだから」

 

リビングへ行くと、フェイトが驚いた顔をして駆け寄ってきた。

 

「はい、お水。でも、健人そんなに長い時間入ってたっけ? むしろいつもより短くなかった?」

「のぼせ、たんだ」

「は、はい。そうですか……」

 

水を持ってきてくれたアリシアは不思議そうな顔をしたけど、他に言いようがないんだよね。

まさか風呂場にシュテルがこっそり侵入してきた。なんて言えるわけない。

ってかどうやってきたんだよ、シュテル。

 

――愛です。

 

ゾクッ!!

 

「っ!?」

「今度はどうしたの健人!? いきなり立ち上がって」

「あー……いや、なんでもない」

 

今のは幻聴だ、幻聴!

 

 

思いっきり疲れた俺は早めに寝る事にして部屋に戻った……のだが。

 

「………」

 

ドアノブに手をかけて、そこで俺は猛烈に嫌な予感がした。

蟲の知らせというか、NT的キュピーン! というか、スパイダーセンス的な何かが働いた。

音を立てずにソーッと少しだけドアを開け、隙間から中を覗き込む。

特に変わった様子は……あった。

 

ベッドが妙に膨らんでいる。

というか誰か入ってる。

しかも、茶色の髪の毛が見える。

 

それだけ確認して、また静かにドアを閉めた。

そして、気づかれないようソーッと部屋を離れて……

 

「健人君、何しとるの?」

「~~~っ!!?」

 

突然声をかけられ思わず声にならない叫びをあげて、飛び跳ねてしまった。

 

「そ、そんな驚かすつもりやなかったんよ? ごめんな~」

「あ、ジークさんだったのか、びっくりしたぁ」

 

俺に声をかけてきたのは、ジークだった。

もう見慣れたけど、パジャマ姿が可愛い。

 

「アリシアちゃんから健人君調子悪そうって聞いて、様子を見にきたんやけど、大丈夫?」

「う、うん。大丈夫だよ」

「強がるのはよくないよ? 顔色悪いし、今だってフラフラやったし」

「大丈夫大丈夫。少し疲れただけだよ。寝たら直るって」

 

まともに寝れるか心配だけど。

 

「ん~……あ、せや! 今日一緒に寝よか。2人共なのはちゃんの所に泊まるから1人で寂しかったんよ」

「なぬ!?」

 

ヴィヴィオとアインハルトはなのはの所に泊まりに行ってるから、ジーク達の部屋はジーク1人だけど……マジか。

 

「私と一緒は、嫌やの?」

 

そこでそんな寂しそうな顔をするのは、卑怯だー!

で、ジークってまさかショタ……いやいやいや、そんな事ない! と思いたい!

あぁ~なんで今の俺9歳なんだよ!

でもこれで元の年齢だったら……うん、理性が天元突破して何するか分からないかもしれないな、うん。

 

「じゃ、じゃあ……お邪魔しまーっす」

「ふふっ、不束者ですが、よろしゅうね」

「ブッ!?」

 

ジーク、ひょっとして俺で遊んでないか?

 

 

それからジークの部屋で一緒に寝て、朝起きたらジークの抱き枕状態だった。

昨日と同じ抱き枕状態でもシュテルとジークじゃ体格差がありすぎて、色々な意味でやばかった。

さらに、アリシアとフェイトに運悪く抱き枕状態を目撃された。

アリシアにはかーーなり弄られ、フェイトはしばらく不機嫌で、プレシアにプレッシャーをかけられて1日中ご機嫌取りとしてフェイトと街へ出かけた。

で、それを知ったなのはとはやても不機嫌になった。

……どうしてこうなった?

 

 

それにしても、ジークは色々と柔らかかったなぁ(現実逃避)

 

 

 

「やはり……私達では、ダメなようですね」

 

 

続く

 




はい、ついに彼女襲来です!

GOD編も佳境です。
ジーク達、というかジークとの話ももっと書きたいんですけどねぇ。
これから少しバトルも予定してます。

で、GOD編が終わったら、ナカジマ家+ティアナ編!
ティアナとジークって同じくらい好きなので今から燃えてます(笑)


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第34話 「決戦前はさすがにシリアス」

お待たせしました!
最終決戦直前です!


――モグモグ

 

――パクパク

 

アースラ食堂で、無言で食事をする2人。

周りに誰もいなく、沈黙の時間がすぎていく。

 

――ムシャムシャ

 

――かゆ うま

 

「「………」」

 

さっきも言ったが現在、アースラの食堂には俺とトーマの2人しかいない。

なのは達はマテリアルズ達のアジト捜索で全員出ている。

本来なら俺もトーマも行くはずだったの。

しかし、前回のシュテル襲撃(?)もあって俺はアースラでお留守番。

リンディさん達にはシュテルが誰にも気づかれずに侵入してきた。としか報告していない。

それ以上の事は言えるはずもないからねぇ。

エイミィはもう1回襲来なりあれば、逆探知して居場所を突き止められると息巻いていたけど、流石に誰にも気づかれず来られちゃ逆探知も何もあったもんじゃない。

ってか、シュテルがいつの間にか来ていたのを知ってなのはやジーク達が燃えに燃えて早くマテリアルズ達を探そうと躍起になって、全員出動になった。

そして、トーマなのだが、リリィがダウンしてしまい、戦闘不能でお留守番。

その原因は、シャマルにある。探索に向かうみんなの英気を養おうと、シャマルがクッキーを焼いた。

だけど、みんな食べるのを拒み、唯一シャマルの料理の腕を知らないリリィだけは興味津々でそれを食べて、見事に撃沈。

シャマルははやて達からの説教+台所の立ち入り禁止、それに食材に触る事すらも禁止されてしまったというわけだ。

で、俺とトーマはやる事がなく、こうして2人して黙々と食事をしているわけだ。

 

「「(き、気まずい……)」」

 

今、絶対トーマも俺と同じこと考えてたな。

なんでか知らないけど、俺とトーマだと会話が続かない。

考えてみれば、トーマは生前の俺とほぼ同年代の男子だ。

同年代の子と話したことなんて、あまりない。

学校なんて数えるほどしか行ってないから友達はできなかった。

病院で入院してた時、色々話をしたのは看護婦さん達で、当然みんな年上だった。

アニメやゲームの事で盛り上がったのは、みんな俺より年下の子供達。

だからか、年下のなのは達にも年上のスカさん達にもすんなり話せたのは。

こっちきてから生前の同年代と話す機会なんてなかったよな。

ジークにアインハルト達は原作から色々知ってるから、割と普通に話せた……感激して興奮してハイテンションになったけど。

でも、トーマもトーマで俺と話す時かなりぎこちなかったんだけど、どうしてだ?

ともかく、この沈黙が耐えられない!

何を話せばいいか分からないけど、話しかけるしかない。

 

「「あ、あの! えっ?」」

 

……なんでハモるんだよ!

あーもう、なんにせよトーマが話しかけてきたのは好都合だ。

よしっ、どんな話題を振られようとものってやろうじゃん!

 

「「………」」

 

無言で見つめあう俺とトーマ……って今度は2人揃って譲り合いかい!

 

「何してるの2人共?」

「あ、エイミィさん」

 

そこへエイミィが食事の乗ったトレイ片手に苦笑いを浮かべてやってきた。

 

「みんなの捜索、何か進展あったんですか?」

「ううん、全然ダメ。だから交代で休憩を取ってるんだよ。ホントにどこにいるんだろうねぇ、闇なのはちゃん達は」

「や、闇なのはさん……」

 

確かにシュテル達はなのは達をベースにしてて、ものすごくダークサイドというかポンコツダークサイドだけど。

トーマもそれを聞いて複雑な表情を浮かべている。

多分、自分達の未来のなのは達を思い浮かべてるんだろうな。

それでなんか、納得してるような気がしないでもない。

トーマの時代のなのはってどんだけ破天荒になってるやら。

 

「ところで、2人してどうしたの? 無言で見つめあったりして……あ、そっちの趣味?」

「「違います!」」

「あははっ、健人君はともかく、トーマ君は違うよねー?」

 

おい、俺はともかくってなんだよ。

 

「だって、トーマ君にはリリィちゃんがいるし」

「えっ、あっ、いや、俺とリリィはそそそういう関係じゃなくてですね」

 

おぉ、動揺してる動揺してる。

ってかこの話題はトーマがここに来た時に散々弄られてるのになぁ、主にヴィヴィオやはやて達に。

ウブなんだよなぁ、思春期真っ盛りって感じでいいねぇ、15歳。

って、おっさんか俺は!?

 

「で、俺はともかくってどういう意味ですか、エイミィさん」

「いや、健人君って美少女に囲まれてるのに、そういう素振り見せないから女の子に興味ないのかなーって」

 

ナ、ナンデストー!?

 

「そういう素振りってどういう素振りですか!?」

「それは……ふふっ、もうお姉さんになんてこと言わせようとしてるのかなぁ、このおませちゃんは♪」

 

いや、話振ったのあんただし!

何このおばちゃん化した16歳は!?

ひょっとして、年頃の男女ってこんな感じなのかー!?

 

「言われてみれば、健人君ってフェイトさんやアリシアさんと住んでて、向こうではスゥちゃんやギンガさんのお兄さんとして慕われてるんだよね。高町教導官や八神司令とも仲良しだし」

 

何かトーマが感慨深そうに言ってるけど、明らかに一回り年下のフェイト達にさんづけってすごく違和感あるな。

確か、元いた世界ではスバルの弟みたいだし。

 

「う、うーん。やっぱりなのはちゃん達をそう呼ぶと違和感あるねぇ」

「あ、ごめんなさい。まだ小さい高、なのはさん達に慣れなくって」

 

それでもさん付けか。

まぁ、なのは達が好きに呼んでって言ってるからいいか。

と、そこへトーマにリンディさんから通信が入った。

 

『トーマ君。リリィさんが目覚めたそうだから医務室に行ってくれるかしら?』

「あ、わかりました。すぐに行きます!」

 

エイミィは食事を終えたらブリッジに戻るとのことなので、俺とトーマで医務室に向かった。

やる事なくて暇だったしね。

 

「あ、トーマトーマ!」

 

医務室に入ると、目覚めたばかりだというのにすっかり元気になったリリィがトーマに向かって走ってきた。

何だろ……今のリリィ、声は違うのに、なぜか某暴食シスターを連想してしまった。

声的には某エアロハンドの取り巻きズの1人だというのに。

 

「リリィ、もう大丈夫なのか?」

「うん! 出すものだしたからすっきりしたよ!」

「だ、だすものって……」

 

ナニを出したのかは聞かないでおこう。

てか、女の子がそういうこというんじゃありません!

 

「それでね。私、思い出したの!」

「何を思い出したんだ?」

「キリエさん達がいた世界の事だよ!」

「「ええぇ~!?」」

 

リリィが言うには、キリエ達のいた世界の名前を思い出したんだそうだ。

その名前をエイミィが調べたところ、とある次元世界がそうだと分かった。

地球のある次元世界からは割と離れていて、クロノ達も何度か調査したが、痕跡すら出てこなくて捜索対象から外れた世界だった。

リリィが言うには、その世界の山奥にある場所で結界を張ってアジトにしているらしい。

で、結界は近くにいても探知すらできず、合言葉を言わないと解除されないらしい。

 

「なるほど。それならば見つからないはずね。クロノやなのはさん達を大至急アースラに帰還させて。全員戻り次第、アースラはその次元世界へ向かいます」

 

やがて捜索に出ていたなのは達が戻り、アースラはその次元世界へ発進した。

いよいよ、マテリアルズ達のアジトへ向かう。

最終決戦を前に俺達は異様な緊張感に包まれていた。

 

「ねぇねぇ、お土産何か用意すればよかったかな?」

「僕たちは、これから敵地に乗り込むんだが?」

「だって、キリエさん達にはお世話になったお礼も満足に言えず出て行っちゃったから」

「あ、リリィの食事代、立て替えてもらったんだよな。俺も何か用意すべきだったかな」

「だから、これから向かうのは敵地なんだが!?」

 

一部には緊張感が……

 

「これから向かう所って、結構有名な温泉がたくさんある観光世界みたいですよ。私、ちょっと楽しみかも」

「ヴィヴィオさん? 私たちは観光に行くのではないのですけど?」

「温泉まんじゅうあったら、留守番してる姉さんのお土産にしようかな」

「フェイトちゃん、フェイトちゃん、それツッコミ待ちかな?」

「どうですか、リリィちゃんの記憶が戻ったのは私の料理のおかげなんですよ! だから、料理禁止令を解除してもいいですよねー?」

「「「黙ってろ!」」」

「(´・ω・`)シャマルーン」

 

い、一部緊張感が……

 

「うぷっ……酔っちゃった」

「わわっ、ジークさんしっかり!」

 

訂正、どこにも緊張感のきの字もなかった。

 

 

続く

 




シリアスとは一体・・・な、タイトル詐欺回です(爆)
次回はやーっと彼女が出ます。
バトルらしいバトルもできるかな?


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第35話 「襲来(レベル∞)」

もうどこからつっこめばいいやら……


ついに、ついにこの時がやってきた。

リリィの案内でやってきました、マテリアルズのアジト。

メンバーは俺、なのは、フェイト、はやて、ジークリンデ、ヴィヴィオ、アインハルト、プレシア、ユーノ、アルフ、シグナム、リインフォース、ヴィータ、ザフィーラ、シャマル、トーマ、リリィ、クロノ。

ちょっとした戦争でも起こせるくらいの超豪華メンバーだ。

これでギンガやスバル達も加われば完璧なんだけど、それは10年後に期待だな。

で、俺達はアジトの前に到着したわけだ。

リリィの話では結界が張られていて、合言葉を言わなければ入れないらしいのだが……

 

「何、これ」

 

俺達の眼前にあるのは、巨大な扉だ。

どうやらアジトは、岩山をくり抜いて作ったようで岩肌に、超大型巨人でも入れそうな程の巨大な扉がある。

 

「目立ちすぎだろう」

 

うん、どうみても隠れアジトには見えないな。目立ちすぎている。

ここへはクロノが局員引き連れて何度か来てると言ってたけど……

あ、クロノが凹んでる。

 

「ここには調査に来たことあるのに、なんで気づかなかったんだ」

「ぎゃ、逆にここまで堂々としてるから、気づかなかったんじゃない、かな?」

「うん、うんうん。きっとそうですよ!」

 

高町母娘(予定)が励ましてるけど、こんなに堂々と目立つ場所にあるのに気付かなかったのはねぇ。

 

「じゃ、リリィ早速合言葉言って」

「はい! 任せてください!」

 

今更だけど、リリィが出てから合言葉変えたりしてないだろうな。

ま、そうなったらなったでトリプルブレイカーでぶっ飛ばそう。

 

「では、行きます……お姉ちゃんの、馬鹿ぁ! 分からず屋! 頭でっかちー!」

 

――でっかちぃ~……ちぃ~…

 

「「「……」」」

 

えっ? 今のが合言葉なのか?

 

「リリィ? 本当にそれでいいの?」

「はい。キリエさんがこれを言っていました。キリエさんが言うとなぜか私の心にグサっと来るんですけど」

 

キリエってよっぽどお姉ちゃん嫌いなのか。

あれ? キリエのお姉ちゃんって、誰だっけ?

イノセントと一緒なら、いたのは覚えてるけど、うーん?

と、考えていると、地鳴りのような音があたり一面に響き渡った。

 

――ゴゴゴッ!

 

「いよいよか。みんな気を付けるんだ!」

 

クロノに言われるまでもなく、みんな臨戦態勢だ。

すでに俺達が来ている事は向こうもわかっているはず。

こんな巨大な扉が開くんだ。いきなり大群が押し寄せてきても不思議じゃない。

さぁ、巨大な扉が音を立てて……開いた!

 

――パカッ!

 

開いたことは開いたのだが、巨大扉……の横の壁が小さくパカッと開いた。

 

「「「へっ!?」」」

「あ、開きました開きました!」

 

俺達全員ポカーンとしている中、リリィだけスタスタと中へ入ろうとしていく。

 

「あれ? どうしたんですか? 入らないんですか?」

「えっ? いや、いやいやいや。これは? この巨大扉が開くんじゃないの!?」

「この扉、ただ壁に彫っているだけみたいだよ?」

「えぇ~……」

 

ユーノの言う通り、巨大扉は壁をただ彫っただけのアートだった。

ご丁寧に塗装もちゃんとしてあって、汚れもつけたりと結構凝って作られている。

 

「あ、これはあまりにドアが地味すぎると見栄をを張るために、王様が魔法も使わず1人で彫った偽装扉ですよ。」

「リリィ、そういうことは早く言って……ってディアーチェが1人で彫ったんかい!」

「い、意外すぎる才能やね」

 

ディアーチェの意外な才能に思いっきり出鼻をくじかれた俺達は、若干脱力しながらもドアから中へと入った。

無骨な外見とは裏腹に中は、どこかの研究施設かのような広場といくつもの通路が伸びていた。

電気は普通についているが、壁にあるモニターらしきものは完全に落ちていて何も映し出していない。

入り口の側には、リリィが使ったと言っていた転送装置もあった。

 

「これは、何かの研究施設か?」

「どうやらそうみたいね。これをあの子達が1から全部作ったとは思えないわ。恐らく廃棄された施設を根城にしたんじゃないかしら? 詳しくは施設を再起動させて調べてみないと分からないけど」

「再起動できそうか?」

「やってみるわ。アルフ、手伝いなさい」

「僕も手伝います」

 

プレシア、それにユーノとアルフが反応しないコンソールの起動を試みて、俺達は奥へと進むことになった。

 

「しかし、ここはかなり広そうだ。手分けするか?」

「人数も多いし、あまり大人数で動いていたら身動き取れなくなるぞ」

 

シグナムとヴィータの言う通り、この施設はかなり広そうだ。

広間からも通路がいくつも分かれている。

各々デバイスで魔力反応や生体反応をスキャンしたが、施設自体が妨害装置と化していて探知できなかった。

 

「そうだな。3つのグループで分かれよう」

 

戦力的に分散させて俺、なのは、フェイト、クロノのAチーム。

はやてとヴォルケンリッターのBチーム。

異世界未来組のCチームに分かれる事になった。

 

「リリィ、がんばろうな」

「うん! ところで、奥に行って何を探すの?」

 

と、ここでリリィのポンコ……天然が爆発した。

 

「あ、あのなぁ……マテリアルズやキリエ達を探すんだよ!」

「えっ? それならみんな部屋にいるんじゃないかな? ほら、あそこ」

「「「え“っ!?」」」

 

リリィが指差した先にはいくつかの部屋があって、それぞれネームプレートがかかっていた。

思わず全員の視線が集中した。

そこは、入り口からほんのすぐ近くにあった。

 

「こんな近くに部屋があるんかい!」

「ここの施設広すぎて、キリエさん達も隅々まで探索したわけじゃないんだって。だから奥まで行った事はないって言ってたよ」

「そうか……リリィ、そういう事は早く言ってくれ!」

 

頭痛がしてきたのか、頭を押さえるクロノ。

俺も頭痛くなってきた。

 

「あ、あはは、とにかく入ってみる?」

「うーん、こんなに騒いでも出てこないってことはいない可能性が高いけど」

 

とりあえず一番近くの部屋を開けてみる。

幸い鍵はかかってないようだ。

プレートの名前は、シュテルか。

 

「あ、うかつすぎる! もし何か罠があったらどうするんだ!」

 

クロノが注意したが、一足遅かった。

シュテルの部屋って事で用心すべきだったんだ。

 

「うん……確かにうかつだった」

 

部屋を開けた事を心底後悔した。

一緒に部屋を覗き込んだはやてとヴィータが白目をむいて固まっている。

 

「あ、主はやて!?」

「健人、ヴィータも一体どうし……っ!?」

 

俺達を心配してかけよってきたリインとシグナムも、部屋の中を見て息をのんだ。

部屋の中には、壁一面に色々なポーズをした俺のポスターが貼られていて、ベッドには俺の人形がいくつも置いてあった。

さらにどこでいつ隠しどったのか分からないけど、俺の着替えや食事の姿もポスターや抱き枕にされていた。

 

「健人君? それにみんな、どうしちゃったの…… 「「見るな!」」 は、はい!」

 

なのは達もかけよってきたが、急いで止めた。

そして、ゆっくりと部屋のドアを閉めて、俺達は頷きあった。

 

「マテリアルズの部屋は厳重に封印!」

「「「(はい!・あぁ!)」」」

 

それから素早く部屋のドアを溶接し、更に叩いて歪ませて、リインが凍結させて、はやてが厳重に封印を施した。

それと同じ事をディアーチェとレヴィの部屋にも行った。

この間わずか数十秒。

 

「クロノ、この部屋は壊れていて中を探知できなかった。おk?」

「わ、分かった。分かったからそのハイライトが消えた目はやめてくれ!」

 

みんなも俺達の尋常じゃない様子を見て、何かを察したのか同情と憐みの籠った目で俺達、いや、俺を見ている。

それを見て、さっきの部屋の中の惨状が頭の中によぎり……

 

「……おうちかえる!!」

「わわっ、お、落ち着いて~」

「健人さん、しっかりして下さい!」

 

入り口までダッシュしようとした俺だったが、ジークとアインハルトに止められた。

 

「健人君、気持ちは分かるから!」

「大丈夫だ! 何があっても我らが守る!」

 

2人を引きずって外に出ようとする俺を止めようと、シグナムとリインも加わった。

その際、体に柔らかいものがいくつも押し当てられたのだが、その時の俺はそれどころじゃなかった。

 

数分後。

 

「健人、落ち着いたか?」

「ウン、ゴ心配ヲオカケシマシタ。モウ大丈夫」

「全然大丈夫そうに見えないの!?」

 

また数分後。

 

「えっと、俺、何をしてたんだっけ?」

 

おかしい。ここ10分間程の記憶が曖昧だ。

 

「げ、現実逃避で記憶も抹消しちゃったの……」

「よっぽどつらいものを見たんだね」

 

なのはとフェイトが心配そうな顔をしているけど、ハテ?

 

「無理もない。あれは、ヒドイ」

「あ、あははは……正直、私も記憶を消したいくらいや」

 

シグナムとはやては何の話をしてるんだ?

 

「コホン。ともかく、残るはこの部屋のみだが、どうする?」

 

えっと、クロノが言う部屋って、キリエルームってプレートがかかってるこの部屋か?

 

「この部屋は厳重にロックされていて、どうやっても開けられないんだ。今、プレシア達がロックを解除しようとしている」

 

あ、向こうのコンソールでプレシア達が色々弄ってるね。

まだ時間かかりそうだな。

 

「面倒だ。あたしがぶち抜いてやるよ」

「私が斬った方が早いだろう」

「なら、私がガイストで削り取るよ?」

「断空拳で打ち貫きます」

「ブレイカーでぶち抜く!」

「物騒な発想しかできないのか、君たちは!?」

 

だって、時間かかりそうなんだもん。

と、その時、突然部屋のドアが開いた。

 

「何よ、さっきから騒がしいわね~こっちは昼寝……えっ?」

 

部屋から出てきたのは、寝起きなのか少しぼさついたピンクの髪をして可愛いクマを着た女の子、キリエだった。

寝ぼけ眼をこすりながら、俺達を見たキリエは、目をパチクリさせて、固まった。

 

「………」

 

沈黙が5秒ほど続き……

 

「えっ? えええぇぇぇぇ~~~!!!? なんで!? なんであなた達がここにいるの~~!?」

「キリエさん、お久しぶりです! あ、おはようございます?」

 

あまりの出来事に俺達もフリーズしていた中、リリィだけは笑顔でキリエに挨拶した。

 

「あぁ、おはようございま……リリィ!? なんであんたまでここにいるのよ!?」

「えっと、健人さんをお連れしました!」

「お連れしました。じゃないわよ! なんでこんな大人数なの!? えっ? 待って待って、あれ? 王様は? シュテルは? レヴィは? みんなどこ!? まさかもう倒しちゃった!?」

「?? いえ、私達が来た時は誰もいませんでしたよ? みなさんお部屋にもいないようでしたし」

 

うーん、どうやらキリエはディアーチェ達がいないことを知らないようだな。

 

「えええ~!? よりにもよってこんな時にみんな揃って外出!?」

「あー、色々混乱してる所悪いんだが、時空管理局の者だ。色々と話を聞かせてもらいたいのだが?」

 

クロノがデバイスを構えて尋問をしようとすごむと、やっとキリエも落ち着きを取り戻したようだ。

 

「……そっか。ここがバレちゃったか。なら、仕方ないわね。こうなったら私1人でも健人君を」

「その恰好で?」

 

パジャマ姿で身構えるキリエに思わず突っ込んでしまった。

 

「えっ? ……あっ、あああぁぁ~~~!!?」

 

すると、キリエは自分がパジャマであることをようやく思い出したようで、顔を真っ赤にして勢いよくドアを閉めた。

 

「………」

「ま、待ってあげよう、クロノ」

 

色々我慢の限界だったのか、無言でデバイスをドアに向けるクロノをフェイトが止めた。

うん、その気持ちはよくわかるぞ。

部屋の中からはドタバタと物音と 「あれ? パンツどこー?」 や 「いたっ!? もうなんでこんな所にザッパー転がってるのよ!」

とかいう声が聞こえてきた。

 

「「「………」」」

 

その間、俺達には誰も何も言えないすごく微妙な空気が流れていた。

 

「これは、全員で来ることなかったんじゃないかしら?」

「言わないでくれ、頼むから」

 

作業をしながらプレシアがぼそりと呟き、クロノがとうとう蹲ってしまった。

更に待つこと数分。

 

「はぁ、はぁ……っ、お、お待たせ! さぁ~! どっからでもまとめてかかってらっしゃい!」

 

かなり息を乱したキリエが部屋から出てきた。

両手に拳銃を構え、かっこつけているけど、色々と手遅れだ。

まぁ、ともかく、かかってこいと言われたのだから……

 

「じゃあ」

「お望み通り」

「全力で」

「全開で」

「……無理無理無理! 無理すぎる~!! こんな大人数相手にどうしろっていうのよぉ~!!」

 

ですよねー。

 

「大人しく投降してくれるなら、こちらは何もしない」

「そういうあんた! 目が一番血走ってて、説得力皆無!」

 

確かに、今のクロノは鬼気迫る表情を浮かべている。

無理もないか。

一応みんなデバイスを向けているけど、流石にこの状況は可哀想すぎて、シグナムやリインも困惑の表情を浮かべている。

ヴィヴィオやアインハルトに至っては、構えを解いている。

その時だった。

突然、入り口のドアが開いて何かが飛び込んできた。

 

「けーーんーーとーーさーーまーーー!!!」

「くぎゅっっ!?」

「「「健人君!?」」」

「「「健人!」」」

 

猛スピードで飛んできた物体をよけきれず、一緒にぶっ飛んでしまった。

一体何が起こった?

 

「いたたっ、一体何ご……と?」

 

何かが俺の胸に飛びついてきて、最初は子猫か子犬かと思ったけど、言葉を喋っている。

胸元に飛びついてきた物体に目を向けると……

 

「ケントサマーケントサマーケントサマー」

「なに、これ?」

 

何か小さい人間、のような物体が頬ずりしてた。

あ、これINNOCENTで見たことある。

確か、チヴィットのめ~ちゅ!

あれ? って事は……まさか!?

 

「ユーリ! 1人で抜け駆けはずるいぞ!」

「そうです! 第一さっきまで私にしがみついていたじゃないですか!」

「おーい、けんと~~!」

 

更にそこに新しい声が3つ聞こえてきた。

 

「誰……え?」

「その声、それにその姿」

「ま、まさか……」

 

なのは達が声のする方へ向いたまま、驚きの表情を浮かべた。

うん、俺も聞こえた声に聞き覚えあるぞー。

って、それよりも、今、なんて言った?

ユーリ? 誰がユーリ? このチヴィットの事かなー? そうですよねー

 

「お前……ユーリ?」

「ケントサマー」

 

め~ちゅは嬉しそうに何度も頷いている。

おめでとう。ユーリはめ~ちゅに進化した。

あれ? みんなが固まるのはわかるけど、キリエも白目をむいて固まってる?

 

「いや、健人。あっちも見た方がいいぞ」

「……わざわざありがと、クロノ」

 

いやだなぁ、後ろを振り向くの怖いなー

でも、振り向かない方がもっと怖い事になりそうだ……

だってさっき聞こえた3人の声って、どう考えてもディアーチェにシュテルにレヴィだもん。

 

「い、いやぁ~3人共、ひさしぶ……りぃ~!?」

 

恐る恐る振り向いた先には、予想通りマテリアルズの3人がいた。

 

「健人!」

「健人さん♪」

「けんとー」

 

が、予想と違ったのは、3人共、それぞれウェディングドレス姿で、なぜか色々と大きくなっていた事だった。

 

大人モード!?

 

 

続く




はい、カオスです(爆)
今回の襲来はキリエにとっても襲来でした(笑)
これでも最終決戦……のはずです。
次回でバトルが……あるはずです。

FGO、武蔵は正月に引いているので、軽い気持ちで引いたらアサシンパライソが2人きました
やったー!


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第36話 「さいしゅうけっせん」

お待たせしました!
ぐだぐださいしゅうけっせんです


アースラチーム VS マテリアルズ+キリエ

 

マテリアルズのアジトで、ついに俺達はマテリアルズと対峙する。

 

「健人さん。まさか自ら私達を迎えに来てくれるとは思いませんでした」

「けんちゃん、やっほー♪」

「健人よ。いよいよ我らをもらう覚悟ができたか!」

 

なぜかディアーチェ達3人は花嫁姿でしかも、大人モードになっている。

言ってる事はレヴィ以外スルーしよう。

流石にマテリアルズが3人揃っている姿は、緊張感が今までの比じゃない。

いくらこちらがオールスターで戦力が申し分ないとはいえ、今日の彼女達はそれ以上の迫力がある。

俺達もそれぞれデバイスを構えて、いつでも仕掛けられるようにする。

 

『クロノ君、今の彼女達は未知数だよ。気を付けて!』ケントサマー

「あぁ、分かっているエイミィ。みんな、あんな恰好でも油断するなよ」ケントサマー

「「「「了解!」」」」ケントサマー

 

・・・・・・・・

 

ケントサマー♪

 

「「「「「なんで(お前・あなた・それ)がそこにいるんだ!?」」」」」

 

クロノ達ばかりではなく、ディアーチェ達もこの場にいる全員が俺の頭に乗っているコレにツッコミをいれた。

出来ればスルーしてほしかったなぁ。

 

「いや、その……なんででしょう?」ケントサマー

 

今、俺の頭の上にはちっさいユーリこと、め~ちゅが乗っている。

さっきから俺の頭から降りようとしないんだよな。

そればかりかベッド代わりに寝ようとしてるし。

 

「ずるいぞ、ユーリ! なぜ健人側にいるのだ!?」

「そうだーそうだー! ボクだってそっちに行きたいのに!」

「なら、行きましょうか?」

 

アースラチーム + マテリアルズ VS キリエ

 

「まてまてまてまって、まちなさい! どうしてそういう構図になるのよ!? 私1人でどうしろっていうの!?」

「君1人で何ができるというんだ? 素直に降伏しろ」

 

クロノはすでにツッコミを放棄している。

それは、俺達もだけど。

 

「だーかーらー! どうして私1人で全員相手する流れになるのよ!」

 

もうキリエは涙目だ。

なのは達もキリエを可哀想な人を見る目になってる。

 

「なんだかちょっと、可哀想ですね」

「じゃあ、こうしよう!」

 

アースラチーム + マテリアルズ VS キリエ + クロノ

 

「まてまて! なんで僕1人をこっち側にさせた!?」

 

この状況にはさすがにクロノもツッコミを入れざるを得ないか。

 

「じゃ、これでいく?」

 

マテリアルズ VS キリエ + アースラチーム

 

「うんこれでよ……くないわよ! なんであなた達みんなこっちに来るのよ!?」

「そうだそうだー! 僕たちこっちに来た意味ないでしょ!」

「……もうめんどくさい!」

 

 VS アースラチーム + マテリアルズ + キリエ

 

「全員こっち側!?」

「私達一体誰と戦うの!?」

「というか、どうしてこうなるんだ!?」

 

誰もいない空間に向けて身構える俺達。

ホント、何やってんだ?

 

「『あなた達、いい加減にしなさい!!!』」

 

リンディ提督とプレシアのダブルママんに怒られたので、仕切り直し

 

「で、なんでそんな恰好でしかも、大きくなってるんだ? それにこのちっこいのは一体何?」

「それは私も知りたいわね。お昼寝してる間に一体何があったの!?」

 

どうやらキリエも、ディアーチェ達の大人+花嫁モードとユーリのチヴィット化は知らなかったようだ。

 

「花嫁姿なのは、王様が前に言った通りの事だよ。僕たちけんちゃんにもらわれるんだもん」

「あ、そうですか……」

 

分かっていたけどねぇ。

がっくりと肩を落とすと、ヴィータとリインが慰めてくれた。

 

「この大きい姿は、以前王様が行ったときに、異世界からきたその子達が大人になっているのを見て真似しました」

「わ、私達の大人モードを!?」

「一度見ただけで解析したというのですか!?」

「ふっ、我らにかかれば造作もない」

 

ヴィヴィオ達の大人モードって今でも使える技術か分からないけど、それでもあの短時間での邂逅で解析しちゃったのか?

それとも、ずっと俺達を観察していた? そっちの方がありえそう。

 

「それに……健人さんは大きい女性の方が好みのようでしたので」

「えっ? な、なんで私の方見るん?」

 

シュテルが若干殺意の籠った目でジークを睨んでいるけど、ナンデダロウナー?

 

「お、大きい言うたら私よりリインさんやシグナムさんの方が大きいで?」

「せや、こっちには最終兵器が2人もおるんやで!」

「わ、私達を巻き込まないでくれないか?」

「主はやても乗らないでください!」

「あの~? 私は入らないんですか? いえ、別にいれてほしいわけじゃないんですけど、なんだか複雑です」

 

シャマルの呟きはスルーされた。

 

「はぁ~、とにかくみんなのその姿は、分かりたくないけど分かった。じゃあ、これは何?」

 

さっきから頭が静かだと思ったら、め~ちゅは俺の頭の上で眠っていた。

 

「私も聞きたいわよ。まだユーリは目覚めないって話じゃなかったの!? 以前、チョコ作る時に半ば無理やり短時間だけ実体化させたのだってすごく大変だったじゃない」

「あぁ、それなのだが……あまりに健人に会いたい会いたいと言うのでな。健人への愛がそれだけ強ければその想いを力に変えれば復活できるのではないかと、レヴィが」

「ボ、ボクだけが言ったわけじゃないよ!? シュテるんだって賛成したよ!」

「それもありかも。と言っただけです。それにユーリの想いは大きくても、私よりは大きくないとも言いましたが」

「むっ、それは聞き捨てならないぞ。健人への想いが一番強く激しく大きいのは、我だぞ!」

 

3人共なんでユーリがめ~ちゅになったのかの説明をしたと思ったら、なんか内輪もめ始めちゃった。

しかも、その原因が俺ですか……い、胃が痛い。

 

「健人君。だ、大丈夫!?」

「なのは……想いが、重い」

「い、意外と大丈夫そうやね」

 

分かっていた。分かっていたさ。こうなるって事くらい。

バレンタインの時に嫌ってほど彼女達の想い受け取らされたからね……

あ、トラウマがががが・・・・

 

「け、健人君の目からハイライトが消えちゃったの!?」

「健人、しっかり!」

「わわっ、えっと、ジークさん、健人をぎゅーっとしてあげて」

「ええぇ~!? ヴィヴィちゃん何言うてんの!? で、でも、しょ、しょうがない、よね?……えいっ!」

 

何か柔らくて暖かいものに包まれて、俺の意識が戻された。

 

「ん? あれ? 俺は一体??」

「あ、よかった、ハイライト戻ったよ!」

 

なのは達がほっとした表情を浮かべている。

え? ハイライトがどうかしたのか? まぁ、いいか。

 

「けんちゃん大丈夫?」

「体調がすぐれないようでしたら休みますか? 私の部屋で」

「うむ、それはいい考えだ、シュテルよ。ならば、我の部屋で休むがよい!」

「丁重にお断りさせていただきます!」

 

部屋は厳重に封印したし、あの中で休める気が全くしない。

 

「あ~もう! これじゃ話が進まないじゃない! 王様、シュテルもレヴィも! いいから戦って!」

 

長々と茶番を続けたので、とうとうキリエが怒ってしまった。

いや、さっきもプレシアママとリンディママに怒られたのだが、もう諦めたのか、2人揃って茶を飲みながら観戦モードだ。

 

「健人、ちゃんと骨は拾ってあげるから……残ればだけど」

『健人君、いい弁護士紹介するわね』

 

2人共、不吉な事言わないでください。色々と洒落にならないから。

 

「むっ、キリエ。何をそんなに怒っているのだ?」

「あ、ボク知ってる! 高麗人参生姜焼き定食でしょ!」

「それを言うなら更年期障害です、レヴィ」

「うきーっ! 誰のせいだと思ってるのよ! それにまだ私若いわよ! そこの2人よりも!」

 

ヒステリックな叫びをあげながらキリエが指をさしたのは、茶をすすっているプレシアとリンディ。

それを見て、フェイトとクロノの顔が真っ青になった。

他のみんなもアッって顔になってる。

 

「『ア”? 何か言ったかしら?』」

「ヒィ~!? ごめんなさいごめんなさい! お二人もまだまだお若いです!」

 

俺達は何も見てない、見なかった。

ディアーチェ達も冷や汗流しながら目を反らしているし、寝ているはずのめ~ちゅも頭の上で震えている。

 

「……今のうちに帰ろうかな」

「帰れると思うか?」

「デスヨネー」

 

正直めっちゃ帰りたい。

 

「でだ。キリエよ、我らに戦えというが、なぜ戦う必要があるのだ?」

「はい?」

 

ん? ディアーチェがおかしな事を言い始めたぞ?

 

「いや、戦うでしょ。こっちに攻め込んできたのよ!?」

「だからと言って戦う必要性があまり見当たりませんね。まぁ、健人さんに纏わりつく虫を追っ払うという名目ならありますが」

「そ、そう、そうよ! それよ! とにかくこういう流れになったらそのまま戦うのが普通でしょ!?」

 

キリエの言ってる事は多分真っ当な事なんだろうけど、何だかなぁ。

もう戦う雰囲気じゃないというか、ぐだぐだすぎてね。

ホントにこんな大人数で来たのが無意味に思えてくる。

 

「えぇ~? この恰好で戦うの? 汚れるし破れそうだから嫌だ」

「だったら、変身して戦えばいいでしょう!? というかいつもそうしてるでしょう!?」

 

おーキリエの目が血走ってる血走ってる。

彼女も色々顕界なんだなぁ。

 

「ダメだ。健人に見てもらう為に、わざわざこのサイズで作った花嫁衣裳だぞ」

「それ王様が作ったの!? じゃなくて、王様この前だって健人君に見せに行ってそのまま戦闘になりかけたじゃない!」

「そうだ。あの後、ユーリやシュテルから花嫁衣裳で戦うなと怒られたのだ。だからこの姿の時は戦わないぞ」

 

怒ったのはそこかい! そういう問題じゃない!

てか、変身すればいいだけだろ! と思ったが、口には出さない。

せっかく戦闘しないで済みそうな空気をぶち壊したくない。

 

「あの~王様? 私達、ただ色々、お話聞かせてほしいの」

「な、OHANASHIだと!?」

 

ぐだぐだな空気を一掃すべく、なのはが恐る恐るディアーチェ達に話しかけたが、彼女達はなぜか戦慄している。

 

「ど、どうしてそこまで驚くのかな!?」

「高町なのは、あなたのOHANASHIとは砲撃の撃ちあいと聞きました。戦う気がないと言いつつも、砲撃の撃ちあいをしようと提案する。なんと矛盾してるのでしょう」

 

シュテルが真顔でそう指摘してくるが、否定できない。

なのは=OHANASHI=ブレイカー は割と有名だもんな。

 

「えぇ~!? 私そんな事しないよ! お話はお話なの! ねぇ、健人君、フェイトちゃん、はやてちゃん?」

「うぇ!? あ、あぁ、お話ね、OHANASHI……」

「うん、なのはのお話は、OHANASHI、だね」

「………」

 

なのはがワタワタと両手を振り回しながら否定して、俺達に救援を求めた。

だが、俺もフェイトもうまく言えず、はやてに至っては無言で目をそらした。

シグナム達も同じくなのはと目を合わせようとしない。

ユーノですら、苦笑いを浮かべるだけだ。

 

「うっ……ヴィ、ヴィヴィオちゃん?」

 

将来の娘ならうまく擁護してくれると期待の目を向ける、が。

 

「ごめんなさい」

「即答!? うわーん! みんながいじめるー!」

 

ヴィヴィオは、なのは直伝のOHANASHIでアインハルトと仲良くなったもんな。

誰もなのはを擁護できず、隅っこでのの字を書き始めた。

 

「……そちらに戦う気がないなら、こちらにも戦闘の意思はない。ともかく、話を聞かせてもらえないか?」

 

いじけるなのはをスルーして、今度はクロノがディアーチェ達に話しかけた。

 

「そうですね。いい加減話を進めましょうか」

 

誰のせいでこうなってると思ってるんだよ! と心の中でシュテルに突っ込む。

 

『大丈夫です。自覚はあります』

 

っ!? こいつ、直接脳内に!?

 

「……分かった。分かりました。ひとまず、こちらの目的を話します!」

 

半ばやけっぱちになったキリエが、色々と話し始めた。

 

それによると、キリエはエルトリアという地球とは全く別の星系出身で、しかも、ジーク達と同じく未来からやってきたようだ。

エルトリアは死病という星の病によって、環境が激変して凶暴な魔道生物が増えて人が住めなくなり、それをどうにかするには、『永遠結晶エグザミア』が必要で、それを求めて過去の地球にやってきた。

で、なんだかんだあってディアーチェ達と合流したが、肝心のエグザミアのシステムであるユーリは不完全にしか覚醒していなかった。

ユーリを完全に覚醒させるためには俺の力が必要で、その為にここを拠点にして活動をしていたらしい。

なんだかんだっていうのは、途中でめ~ちゅが起きて、俺に甘えてきてそれの世話をしていて、聞きそびれたからだ。

 

「君にもかかわる事だというのに、何を遊んでいるんだ?」

「仕方ないだろ。このちっこいのが寝ぼけて噛みついてくるんだから」ケントサマー

「わぁ~甘噛みしてて可愛い! 猫みたい」

「話聞く限りでは、とんでもなく危険な存在みたいですけどね、ヴィヴィオさん」

 

そう。め~ちゅ、ユーリは実は完全に覚醒したら、超トンデモナイ存在になるらしい。

今いるメンバーが総掛かりでも、簡単に全滅出来る程……と言われても皆半信半疑だった。

そりゃ、今までの経緯とめ~ちゅの姿見ればねぇ。

リインフォース達も、やはりそんな危険な存在が夜天の書に封じられていたなんて知らなかったみたいだし。

 

「未来から来た私が過去の人たちと無暗に接触するのはダメだから、王様達に頼んだのに……まさかここまで面倒なことになるなんて」

「あ、うん、それは、ご愁傷様」

「ひょっとして、私らが未来から過去に来ちゃったのも?」

「ごめんなさいね。多分、それ私が原因。でも、リリィにも言ったけど、大丈夫、元いた未来に戻せれるわ。けど、先にどうしても、エグザミアが必要なの!」

 

とはいうものの、一体どうすればいいやら。

今のユーリは中途半端に復活していて、この姿からどうすれば完全復活できるかは分からないようだ。

 

「健人君の力、ではダメなんですか?」

「むぅ、健人によって我らが目覚められたあの熱い力か」

「それは、つまり、俺がユーリをぶん殴ればいいんだな?」ケントサマー

 

ディアーチェ達が物凄く余計で嫌なことを言われる前に、先に先手を打たなければ。

 

「健人君、こんな小さな女の子を殴れるの?」

「ぶん殴ったらあかんで?」

「じょ、冗談だよ、冗談!」ケントサマー

 

はやてやジーク、それにヴィヴィオ達の責めるような視線が突き刺さる。

と、同時に俺の胸元に抱き着いているめ~ちゅが目をキラキラさせて、俺の顔を見上げている。

こんな可愛い生物を殴れるわけがない。

 

<もう手っ取り早くキスしちゃえよ>

『それだけはいやだーーー!!』

 

さて、どうしたものかな。

と、考えていると……

 

「ふははははっ、お困りのようだね、健人君!」

「誰だ!?」

 

突然、響き渡る大音声。

みんなで辺りをキョロキョロするが、俺だけはものすごーく聞き覚えのある変態博士な声だ。

 

「あそこに誰かいるよ!」

 

ユーノが指差した、崖の上に数人の人影が見える。

真っ青なラバースーツの上に黒いジャケットを羽織って、それぞれ個性的な青い仮面を被ったマスクドファイター達。

その後ろで某英雄王のように腕を組み、尊大な態度でこちらを見下ろす、殺生丸。

一体何しに来たんだスカさん?

 

「誰だ!? と聞かれたら」(ドゥーエっぽい人)

「答えてあげるが世の情け」(クアットロっぽい人)

「じ、次元世界の破壊を防ぐ為」(ウーノっぽい人)

「次元世界の平和を守る為」(セインっぽい人)

「愛と真実の正義を貫く!」(トーレっぽい人)

「ラブリーチャーミーなヒロイン役」(ディエチっぽい人、超棒読み)

「「「「我ら機人戦隊ナンバーズ!」」」」

「銀河をかけるナンバーズの娘達には、ホワイトホール白い明日が待っている!」(殺生丸っぽい変態)

「ニャ、ニャーンてにゃ……」(チンクっぽい猫耳少女)

 

「「「「………」」」」

 

――ヒュ~……

 

あ、世界が真っ白に染まって冷たい風が引きぬけていく感じがする……

 

 

続く

 




収拾がつかないというかツッコミしかできないというか……ぐだぐだです。
最初は、健人&ジークVSユーリ、なのは&ヴィヴィオVSシュテル、フェイト&アインハルトVSレヴィ、はやて&トーマinリリィVSディアーチェ。
をしようかなーと思ってたんですけど、やめました(笑)
次かその次でG(ぐだぐだ)O(おーだー)D(ですとろい)編終わります。


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IF「最終決戦」

長らくお待たせしました!
PC復活やら身内の不幸やらで年末ぎりぎりになりました!
しかも、本編ではなくシリアスなIF最終決戦です。

34話でぐだぐだ粒子が消滅するとこのルートになります(笑)


「はぁ、はぁ……っ、はぁ」

 

乱れた息をどうにか整えながら、周りを見渡す。

もう、俺とジークしか残っていない。

 

「……大丈夫? 健人君?」

 

俺を守るようにして前に立つジーク。

彼女も全身ボロボロで、両の手甲は骨ごと砕けていて拳を握るのも満足にできていない。

かくいう俺もシェルブリットはほぼ全壊状態で、魔力もほとんど残っていない。

あのこなた神からもらった力も、スカさん達に作ってもらったデバイスも今や完全に無力だ。

全ては、あいつのせいだ。

 

「うふふっ、どうですか健人様? そろそろ降参しない?」

 

次元震の影響で雷鳴が轟き血のように紅く染まった空をバックに、妖美なオーラを纏い悠然とこちらを見下ろす金髪の女性。

彼女の名は、砕けえぬ闇、U-D。

その姿は俺が知るユーリ・エーベルヴァインよりもずっと年上な大人の姿で、3対6枚の赤紫色の翼がある。

全身には紅い稲妻のような刺青が走っていて、とてもイノセントのユーリとは思えない。

全ては俺達がリリィの案内でこの世界へ来て、マテリアルズやキリエと戦闘した直後に起きた。

今回の事件の全てをキリエから聞いた直後、突然マテリアルズとキリエが何かに吸収されて消滅し、現れたのがU-Dだった。

U-Dは話す間もなく俺達に、正確には俺以外の全員に襲いかかってきた。

応戦したなのは達だったが、あらゆる魔法が彼女の前では無力だった。

なのは、フェイト、はやてのトリプルブレイカーも、ジークのエレミアの神髄も、トーマのディバイドゼロ・エクリプスも全く効果なし。

そればかりか、惑星への悪影響も覚悟の上で何とか放ったアースラのアルカンシェルすらも彼女には効かなかった。

そして……なのは達までもが、U-Dに吸収された。

残ったのは俺と、たまたま近くにいたジークだけだった。

アースラはU-Dの攻撃で墜落した。

奇跡的にリンディ艦長たちは無事だったが、とてもこちらに応援に来れる怪我ではなかった。

更に、U-Dはこの次元世界に結界を張り、周辺世界や本局への通信、転移もできなくされた。

おまけになのは達を吸収した事で、U-Dの魔力はさらに膨大になり、次元震すら起こすほどで、この次元世界が崩壊するのも時間の問題だ。

まさに、絶体絶命。

 

「……はっ。降参? 降参すればどうなるっていうんだ?」

「もちろん、すぐにあなたを連れてどこか遠い世界に避難するだけ。この世界はもうすぐ崩壊するもの」

「ジークや、なのは達は解放してくれるのか?」

「するわけない。必要なのは健人様1人。そこの女も強いから吸収する」

 

こいつ、狂っているにもほどがある。

 

「ははっ、私を吸収したらお腹壊すよ?」

「なら殺す」

 

U-Dが右手をあげると、ジークの周りに数百個もの赤黒いダガーが現れた。

これは、ブラッディダガー!?

 

「ジーク!」

 

とっさにジークをかばうように抱き着いた。。

 

「健人君っ!?」

「ちっ」

 

ダガーは俺達の寸前、ほんの数ミリの所で止まっていた。

こうなると分かっていたわけじゃないけど、ともかく助かった。

 

「どいてください健人様」

「断る!」

「離れて健人君! U-Dは君を殺さない。だから、健人君だけでも……」

「いやだ! 絶対にいやだ!」

 

ジークは、せめて俺だけでも助けようとしている。

でも、俺だけ助かっても意味はないんだ。

 

「なぜです、健人様? あなたには私がいるじゃないですか。それとも私よりもその女が好きとでも?」

「……いいや、そうじゃない。ジークだけじゃない、俺はなのはもフェイトもはやてもみんな、みんな大好きだ!」

 

この1年近くの出来事が次々と頭に浮かんでくる。

これが、走馬灯か。前に死んだ時はこんなのなくて、あっけなく気づいたら死んでたもんな。

産まれた世界で死んで、こなた神に力をもらって9歳になって生き返り、この世界に来てプレシアと激突した事。

目が覚めたらアースラにいて、たまたまアリシアの着替えを覗いてアルフに追いかけられた事。

なのはやフェイト達と友達になり、スカさん達の秘密基地に飛ばされて数か月過ごした事。

その間にクアットロやチンク達ナンバーズと家族のように過ごした事。

スカさんにシェルブリットという相棒を作ってもらった事。

今度は地球に飛ばされてはやて達とも友達になった事

それからさらに地上本部に飛ばされて、クイントさんに預けられて、ギンガとスバルに兄のように懐かれた事。

闇の書事件が起きて、リインフォースを助けた事。

今回の事件で、ジークやヴィヴィオ達とも友達になれた事。

マテリアルズ達が変に騒ぎを起こして頭や胃が痛くなった事。

他にも楽しい事やつらい事、色々あったけどその全てが、俺の大切な思い出だ。

 

「俺はさ、わがままなんだよ。なのはがいないとダメ、フェイトもはやてもクイントさんやギンガ達、みんな、みんな大好きだからいないとダメなんだよ!」

「健人君……」

「この世界に来てから沢山の人に出会って、色々な事があったけど、楽しかった! つらい事もあったけど、みんながいたから楽しかった!」

 

気が付けば、俺は涙を流していた。

 

「……何が言いたいのですか?」

 

U-Dは、さっきまでよりももっと声が冷たくなった。

殺気の籠った目で俺を睨んでくる。

でも、怖くはない。

 

「みんながいない世界なんて意味がないんだ! 俺だけ助かっても、そこにみんながいなかったら死んだ方がマシだ!」

「そう、そうですか。そこまで言いますか……だったら、一緒に死ね」

 

U-Dの声がさらに冷たくなり、さっきまで俺を愛しげに見つめていた目に憎しみと怒りと、殺意の炎が見えた。

 

「あぁ、死ぬかもな……けど、その代わりにみんなを助ける!」

「っ!? 健人君、何をするつもりや!?」

「シェルブリット! まだ動けるな? アレを使うぞ」

<……ガッ……し…ぬ、きか、ますたー?>

 

もうシェルブリットはボロボロでまともに返事もできないが、わずかでも動いているのなら、発動できる。

これはスカさんが、デバイスが機能不全になるほど追いつめられた時の為にと作ってくれた、正真正銘最後の手だ。

でも、これを使うという事は体にどんな反動が来るか分からないとも言われた。

なんでそんな物騒な機能付けた! と後でウーノやクアットロがスカさんを袋叩きにしたけど、それは実は俺が頼んだ機能だ。

 

「このままじゃ、みんな死んじゃうんだ。それだけは死んでも嫌だ!」

<……りょ、うかい、さいご、ま、で、付き合うぜ……マスター!>

「やめっ、やめるんや健人君!」

 

最後にジークに微笑み、俺は切り札を発動させた。

 

「オーバードライブ……」

<アルティメットブラスター>

「ぐっ、ああぁぁぁ~~!!!」

 

俺の中で、魔力が爆発した。

アルティメットブラスター、それは俺の中に眠っている魔力を強制解放させるモード。

スカさんが俺を調べた時、俺のリンカーコアの奥底にとんでもない潜在魔力が眠っているのが分かった。

ただし、あまりにも強すぎてリミッターを無意識に掛けていると言っていた。

本当は無意識ではなく、こなた神の処置だと思ったがどっちでもよかった。

体をもっと鍛えて成長すれば、徐々に使いこなせる力だったけど、それを強制的に発動できるようにしてもらった。

なぜか分からないけど、必要になってくる予感があの時はした。

でも、まさかこんな形ですぐに使う事になるとは思ってなかったけど。

 

「な、なんなの、この魔力!」

 

U-Dが妨害しようと魔法を繰り出してくるが、全て膨大な魔力が発する防壁に弾かれた。

俺やなのは達の魔法を防がれた時とは立場が真逆だな。

 

「まだ、まだだ……もっと、もっと輝けぇ~!!」

 

俺の体から噴き上がった膨大な黄金の魔力は、そのまま柱となってU-Dが張った結界を貫き、この世界を崩壊させていた次元震をも抑え込んでいった。

 

「ば、ばかな……」

「健人君、すごい……えっ?」

 

黄金の柱が徐々に収まると、そこにいたのはさっきまでの俺ではなかった。

崩れ落ちかけていた両手足の装甲は完全に修復され、そればかりか巨大化していた。

全身を金色の装甲が覆い、フェイスマスクも追加され頭をすっぽり覆う紅い鬣のような兜もついた。

見た目はスクライドのシェルブリット最終形態だ。

ここまでは予想通りだったが、予想外の事も起きた。

 

「……俺、成長してる?」

 

元々18歳で死んでこなた神のせいで、9歳まで縮んでしまっていたが、今は元の18歳の時の姿に戻っている。

更には、病気のせいでやせ細っていた生前と違い、全身に筋肉がバランスよくついている。

これは、こなた神のプレゼントかな?

ためしに手足を軽く動かしたが、まるで羽のように軽く、風圧だけで岩が砕けたほどだ。

これなら、いける。

 

「U-D、みんなを返してもらうぞ」

「何を、うごっ!?」

 

一瞬でU-Dの眼前まで接近し、拳を叩きこんだ。

女の子を殴るのは躊躇いがあるけど、今はそんな場合じゃない。

それに叩き込んでいるのは主に魔力ダメージだし。

吸収されたなのは達助けるには、膨大な魔力をU-Dにぶつけて吹き飛ばすしかない。

なぜか頭にその解決策が浮かんだ。

 

「時間はかけない。一気に行くぜ! オラオラオラオラッ!」

 

両手にありったけの魔力を集中させて、U-Dに反撃の隙を与えない程の、強烈なラッシュを叩きこむ。

 

「あがっ、がっ、ば、ばか……な」

 

拳を叩きこむ度、U-Dの体から魔力が漏れ出して俺の両手に吸い込まれていく事に気が付いた。

 

「この魔力は、なのは、はやて、フェイト、みんな!」

 

それは吸収されたみんなの魔力だった。

U-Dの体からあふれ出してきたのかと思ったが、違った。

魔力と共に、みんなの声が聞こえてきた。

 

『がんばって、健人君!』

『私の魔力を使って!』

『でも、死んだからあかんで!』

『我らの魔力も使え!』

『けんちゃん、やっちゃえぇ~!』

 

力をくれるのは、なのはやヴィヴィオ達だけじゃない。

ディアーチェ達も俺に力をくれている。

 

「健人君……私のも!」

 

ジークも俺に向けて手をのばし、魔力を送ってくれている。

もうほとんど魔力が残っていないのに無茶をする。

これは、ホントに早く決めないとな。

 

「……はぐっ、あぁ……うぁ、けんと、さま」

 

U-Dは、瞬間移動で俺から離れた。

その表情はさっきとは打って変わって涙を流し、沈痛な面持ちだ。

 

「……健人様、健人様健人様健人様ぁ!!」

 

流す涙が血の涙へと変わっていく。

U-Dは、両手を掲げアースラよりも巨大な杭を生み出した。

この世界ごと俺を消し飛ばす気らしいな。

いや、自分も一緒に死ぬ気のようだ。

 

「みんな、ありがとう……行くぜ!」

「『『『(うん・えぇ・おぉ)!』』』」

 

両手の装甲カバーが開き、そこからみんなの魔力がどんどん吸収されていく。

みんなの魔力を纏った拳の輝きは、黄金から虹色へと変化していった。

 

「あぁ、あたたかい……」

 

みんなの暖かい魔力と声援に包まれる。

この暖かさに、俺は何度救われたか分からない。

だから、今度は俺がみんなを救う番だ。

両手を腰に構えて、両足にも魔力を集束させる。

 

「……一緒に死んで、健人様?」

「いいや、お前は死なないさ。ちょっときつめのお仕置きは受けてもらうけどな! さぁ、覚悟しろ。これが俺の、俺達の、自慢の拳だぁ~!!」

「けんと、さまぁ~~!!」

 

U-Dが投げた巨大な杭と俺の虹色の拳が激突した。

拮抗したのは1秒にも満たないほんの一瞬。

巨大な杭は、虹色の拳に簡単に砕かれた。

 

「どう……して?」

「簡単なことだ。みんなから奪った力でお前が1人で作り出した杭に、みんなが分けてくれた力が籠ったこの拳が負けるはずがない!」

 

虹色の拳がU-Dの身体に突き刺さり、眩しい光があふれ出した。

 

「あぁ、そうですね……それでこそ、健人様」

 

U-Dは、俺の知るユーリの姿になり、笑顔を浮かべて虹色の奔流に飲み込まれた。

と、同時に奔流から次々と人影が飛び出してくるのが見えた。

それはU-Dに吸収されたなのは達だった。

 

「あぁ、みんな……よかった」

 

なのは達だけではなく、ディアーチェやキリエ達も出てくるのを確認して、俺の意識は途切れた。




はい、IFルートです。
これ、まだ続きますがひとまず本編に戻ります。
今年最後の更新がIFか……
来年こそは完結させたいなー

では、みなさんよいお年を!

えっ?栗酢鱒?それ、どんな鱒ですか?


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第37話「主役は遅れてやってくる……遅れすぎ!」

大変お待たせしました!

もうこれ、わやだよ!(某もじゃもじゃ頭な北海道出身コメディアン?風)


どっかで聞いたような某ロケット団っぽい決め台詞と共に、突然現れた殺生丸、もとい変態丸と目元を隠す程度のバイザーを付けた愉快な娘達。

変態丸はドヤ顔だけど、クアットロやウーノ達はポーズを決めたまま固まっている。

ドゥーエやトーレは満足げな表情浮かべていて満面の笑みだ。

でも、ディエチやチンクはバイザー付けていて見えないが、多分、目のハイライト消えているだろうな。

そんな変態集団を見て、みんなの反応は様々だ。

 

「あれが、ナンバーズ!?」

「知ってるの、クロノ君?」

「あぁ、最近色々な次元世界に現れて伝染病の治療や、凶暴な生物の鎮静化、逃走中の指名手配犯の確保やら人助けをしている集団があると噂になっているんだ。まさか、ドクターブライトが背後にいるとは思わなかった」

 

クロノはナンバーズの事を知っていたみたいだ。

最も、原作みたく犯罪者集団ではなく、謎の人助け集団という認識みたいだ。

というか、管理局では結構有名になっているみたいだ。

そういえば以前レジアス中将が、謎の美少女集団がさまざまな次元世界で人助けをして、本局のお株を奪っていて酒がうまい! と高笑いしてたっけ。

その集団って、ナンバーズの事だったんだ。

 

「あれは、殺生丸様!」

「ど、どうしたんですか、アインハルトさん?」

 

いきなり実年齢の半分くらいの幼女声で叫びだしたアインハルト。

そんなアインハルトに驚くヴィヴィオ。

でも今の呼び方どこかで、あー……なるほどなるほど、そういえば能○さんってそうだったな。

うんうん、と1人で納得。

 

「で、何しに来たんですか? 変態丸さん」

「変態丸ではない私はスカ……ドクターブライドだ!」

 

おい、今思いっきり正体明かしかけたぞ。

でも、クロノやリンディ提督達もそれに気づいていない。

それでいいのか時空管理局!

あ、俺も管理局員だった。

 

「あれ? ねぇ、トーマ? あそこにいる人達どこかで見たことないかな?」

「えっ? あ、本当だ」

「言われてみれば、全員に見覚えが……?」

 

あ、やばっ。ヴィヴィオら未来組がクアットロ達を見て怪しんでいる。

完全に変装しているスカさんはともかく、ディエチやセイン達って普通にViVidでも出てきてたもんな!

あんな目元を隠す程度の仮面じゃ気づかれてしまう!

というか、ナンバーズと名乗っているの時点で気付かないのかい!

 

「あれ~? 私達って空気?」

「あんな登場の仕方をされてはそうなりますね」

「わぁ~! わぁ~! なにあれなにあれ! かっこいぃ~!」

「ふん。多ければいいというものではないわ!」

 

一方、ナンバーズの登場ですっかり空気と化してしまったキリエ達。

シュテルとディアーチェは呆れているけど、レヴィは目をキラキラさせてる。

さっきから頭の上が静かだなーと思ったら、め~ちゅはいつの間にか眠っていた。

 

「それでドクターブライト、あなたがナンバーズの関係者だったのですね」

「関係者、というよりは彼女達の父親みたいなものだよ」

「ナンバーズは養子集団だったのか」

 

おーい? クロノくーん? 君、管理局のエースだよね? 結構な経験積んでるよね?

もうとにかく、捕まるのがスカさんだけでクアットロ達が捕まらなきゃいいや。

 

「はぁ~い、健人く~ん、おひさし 「キリエーー!!」 ぶっ!?」

 

ドゥーエが俺に手を振って挨拶しようとした瞬間、背後から来た深いピンク色の髪をして青い服を着た女性にぶっ飛ばされていた。

その人はまるで彗星のようにキリエに向かっていき、そのままの勢いで抱き着いた。

ただ、流石というかなんというかキリエは驚きつつもしっかりとその誰かを受け止めていた。

そして、自分に抱き着いてきて泣き崩れる女性を見ると、更に目を丸くした。

 

「お、おねえちゃん!?」

「はい! おねえちゃんのアミティエ・フローリアンですよー!」

 

なんと、その赤髪の女性はキリエの姉、アミタだった!

……あぁ、そうだそうだ、アミタだ、アミタ。

やっと名前思い出した。

 

「なんと!? そやつがキリエの姉であるアミタか?」

「う、うん。そうなんだけど。ちょっと、いったん離れてお姉ちゃん!」

「いーえ、もう離れません離しません! というか、もうお姉ちゃんから離れないでください!」

「えぇ~!? 一体どうしたの、おねえちゃん。すぐに私を追いかけてくると思ったのに」

 

大泣きの姉に困惑気味のキリエ。

どうにか引き離して何があったのか聞いてみた。

 

「ぐすっ。実は、あなたを追いかけてすぐにこの時間軸へ飛んだ……はずだったんですが、なぜか誰もいない無人世界へ飛ばされて、通信も転送もできずにずっと彷徨っていたの。ついこの間たまたま無人世界へきたドクターブライトさん達に助けてもらったんです」

 

つまり、迷子の迷子のアミタちゃん、か。

 

「あっちゃぁ~……多分、それで時空の歪みが起きたのかなぁ。それであの娘達もこっちに来ちゃったのかぁ」

 

どうやらジーク達がこの世界へ来た原因の歪みのせいで、アミタはキリエを追いかける所ではなくなったみたいだ。

 

「道理でお姉ちゃんが追ってくる影も形もなかったわけね。用心してアジトから出なかったっていうのに」

「うぅ~……キリエはひどいです。お姉ちゃんを探しに来てくれないですし」

「あのねぇ。どこの世界に自分を追いかけてくる人を自分から探しに行く馬鹿がいるかぁ!」

「キリエ」

「私のどこが馬鹿か!!」

 

2人はそのまま姉妹漫才を始めてしまった。

さて、そういえばなんでスカさん達は総出でここに来たのか、と聞こうと彼らの方を向くと。

 

「つまり、あの手配犯はあなたの娘さんをナンパしようとして?」

「あぁ、そうさ。トーレに目を付けたのはいいが、彼女はちょうど機嫌が悪くてね。問答無用でKO。私がもみ消……後処理の為に身分照会したら指名手配犯だったのでね。これは好都合とそのまま捕まえたのだよ」

『なるほど。では、2か月前の疫病の流行について聞きたいのですが』

「あぁ、いいともいいとも。他の管理局員たちは好かないが、君達は特別さ」

「はぁ、それはどうも……」

 

なんか、スカさんは今までナンバーズが解決してきた事件の事情聴取をクロノとリンディ提督から受けてる。

てか、いい加減目の前の変態丸がスカリエッティだって気づけよ!

 

「じゃあ、健人君が迷子になってお世話になった人達ってお姉さん達だったんですね」

「えぇ、あの時はびっくりしたわ、秘密にしていた研究所にいきなり彼が現れてね。でも、おかげで楽しい時間を過ごせたわ」

『あの時はアースラも大変だったんだよ。リンディ艦長なんて顔を真っ青にしてパニック寸前だったんだから』

「で、こちらからアースラに転送しようとしたら、地球へ飛ばされて今度はあなたの家にお世話になっていたのね」

「お世話やなんて。ほんの一晩、遊び相手になってもろうただけです」

「それが今じゃみんな揃って管理局で働いていて、しかも、こんな辺境の地で再会なんて、世間は意外に狭いわねぇ」

 

なのは達は、ウーノとドゥーエから俺と出会った話を聞かされているし。

 

「あの決めポーズといい、今の崖の上から降りてきた時の身のこなしと言い、随分と鍛え上げられているようだな」

「いやいや、貴女達ベルカの騎士達ほどではないさ。常日頃訓練はかかさないがな」

「でもよ。そのバイザー、今もしている意味あるのか?」

「これでも私達は秘密戦隊ですから。だから任務中はコードネームで呼び合っているですよ。ちなみに私はナンバー4です」

「まるで、はやてちゃんが好きな戦隊ヒーローね」

 

シグナム達は、トーレやクアットロと盛り上がっている。

 

「うーん。ねぇ、お姉さんってセインって名前じゃないですか?」

「セ、セセセインなんて名前は知らないなー誰かと間違えてるんじゃないかな、お嬢ちゃん?」

「じゃあ、あなたはひょっとして、チンク姉?」

「?? 確かに私に妹はいるが、弟は……健人は、弟、かもな」

「わぁ~なんだかナンバー5さん、乙女ちっくで可愛いです!」

「ヴィヴィオさんとナンバー6さん、声似てますね」

「なんで、ワンツースリーと続いて、あなたはいきなりナンバー10なん? 結構飛んでるねぇ」

「あーそこらへんは色々事情があってね。気にしないで」

 

で、ヴィヴィオ達は、セインとチンク、ディエチという未来での顔見知りと話してるし。

 

「はぁ~話が進まないじゃない。アルフ、ちょっとなんとかしなさい」

「クロノもリンディ提督もすっかり空気に呑まれているからね」

「えぇ~!? あたしには無理だって! てか、あたしら帰っていいんじゃない? 家でアリシアと遊んでた方がよかったよ」

「そうねぇ。アリシア1人は心配だし、帰ろうかしら」

「いやいやいや、2人共待って!」

 

呆れ果てて帰ろうとするプレシアとアルフをユーノが引き留めてるし。

 

「っていうか、カオスすぎでしょ」

 

右も左も人が多すぎて収拾がつかない。

しかも、いつの間にか俺取り残されてるし。

 

「どうしたもんかなぁ~……ケントサマー ん? どうしたんだユーリ?」

 

眠っていたと思っていため~ちゅがいつの間にか起きていて、俺を慰めようとしているのか頭を撫でてくれた。

あ、なんか癒される。と、思っていると、め~ちゅが俺の頭から飛び上がり、光に包まれた。

光の中から出てきため~ちゅは、さっきまでの小さいSDフォルムではなく俺がよく知る、ユーリ・エーベルヴァインの姿をしていた。

そして、ユーリは右手を掲げ、一気に振り下ろした。

 

「みなさん、いい加減にしてください、ね?」

 

――ドカーン!!

 

ユーリは、と~っても素敵な笑みを浮かべ、巨大な杭をみんながいる中心部に投げ落とした。

誰にも直撃こそしなかったが、その余波はすさまじく全員吹き飛ばされていた。

俺はというと、ユーリが張ったと思われる結界のおかげでなんともなかった。

 

「いつつ、一体何が……ん? あれは!?」

「せっかく健人様の愛を受けながら安眠していたのに、訳も分からない人ばかり集まってきてうるさくなって、あげくの果てに健人様をほったらかしてそれぞれ雑談、ですか?」

「「「「「すみませんでした!」」」」

 

天使のような無邪気さと、大魔王や破壊神すら逃げ出しそうな迫力を併せ持ったユーリの微笑み。

それを見て、スカさん達も含めたその場の全員が全力土下座。

ユーリが前半何を言っていたかは、聞かなかった事にしようそうしよう。

 

<愛ってすごいな>

『言うな!』

 

「では、健人様。後はお任せしますね?」

「えっ? お任せって?」

「みなさんとお話しして事態を収拾させる事です」

 

あ、なるほど。後は俺がスカさんやキリエ達と話してこの騒ぎ終わらせろって事ね。

でも、元凶ではないけど、一応のラスボスに言われてもなぁ。

 

「出来る妻は、おいしいところを夫に譲るものですから」

 

うん、これも聞かなかったことに、したいです(泣

 

「え、えっと……とりあえず、ス、ドクターブライトさん達はなんでここに?」

「コ、コホン。何、私達の別荘が勝手に使われていたから色々調べていてね。アミタ君を偶然発見し保護して話を聞いていたのだが、そこへ、君たちがここへ来たから挨拶にきたのだよ」

 

まてまてまて、さっきから色々とツッコミ所が多すぎ!

俺、ツッコミキャラじゃないんだけど!?

 

「別荘……って、まさか!? ここの事!?」

 

別荘という単語に反応したのは、キリエ達だ。

続けてプレシアもあぁ、と納得したような顔をした。

 

「そうとも。ここは私達が以前使っていた研究所でね。今はこの娘達がたまに使う、温泉やプールなどリゾート施設にしているのだよ」

「リ、リゾート施設?」

「キリエ君達は奥まで見ていなかったという話だが、賢明な判断だったね。奥へは無関係者が進んだら迷路に迷い込むようにしてあったからね」

 

スカさんが告げる衝撃の真実に目を白黒させるキリエ。

レヴィはプールと聞いて、シュテルは温泉と聞いて目を輝かせている。

ディアーチェはというと、なぜかビクビクしながら涙目でユーリをちらちら見ている。

そういえば、ディアーチェは前に抜け駆けしてユーリに怒られたって言ってたな。

トラウマでもできたかな?

 

「ちょちょっと、待って。うん、一回整理させて。話をまとめると私達がアジトにしていたここって、あなた達の研究所だったのよね? で、奥へは娯楽施設があるけど、封印されていた」

「だから必要最低限の設備は使えたのね。ご丁寧にデータは全て消されていたけれど」

 

プレシア達は研究所を再起動しつつデータも漁っていたけど、何も出てこなかったんだよな。

 

「管理局はともかく、プレシア女史まで来るとは思わなかったがね。いやぁ、データを全て消しておいて正解だったよ。しかし、まさか空き部屋をあんな風に改造されるとは思わなかったなぁ」

 

と、ニヤニヤ顔のスカさんと、気の毒そうな顔をして俺を見るウーノ達。

そこでキリエは、嫌な予感がしたいようで、顔が真っ青になった。

 

「待って! このアジトが使われているって結構前から知っていたって事は、まさか!?」

「うん。防犯カメラに色々とばっちり映っていたよ」

 

親指立てて爽やかスマイルを浮かべる殺生丸に超違和感。

 

「こんなの、殺生丸様じゃない」

「あ、アインハルトさん? しっかり!」

「ハルちゃん!? なんでハイライトが消え取るん!?」

 

あっちは気にしたら、負けだよな。

 

「いーーーやぁ~!!! 盗撮よ盗撮! 乙女の秘密まるみえーーー!?」

「ほほう、では私たちのあんな姿も、ですか」

「これは、滅却の必要があるな」

 

キリエは雄たけびをあげのた打ち回り、シュテルとディアーチェもハイライトの消えた瞳を輝かせデバイスを握りしめている。

レヴィはよくわかっていないようで首をかしげている。

てか、ウェディングドレスからいい加減着替えたらどうなのかな。

 

「本当にごめんなさいね。この変態は責任をもって私達が退治するわ」

「ま、待ちたまえ! すでに散々説教も受けてボコボコにされたじゃないか!?」

「被害者の前でこそ制裁の意味があるかと思います、ドクター」

 

で、爽やかスマイルな変態丸は、ウーノやチンク達にフルボッコされていた。

 

「落ち着いてキリエ! 大丈夫、そういうプライベートな所はウーノさんやクアットロさんが削除したから!」

「……おねえちゃんも見たの?」

「えっ?」

「待て、何を観た貴様」

「正直に答えてください」

 

ハイライトが消えた妹とウェディングドレス少女2人に詰め寄られるってシュールだな

 

「た、たまたま、ですね……その、ウーノさん達が消しそこなったのをみて、ですね」

 

見た物を思い出したのか、顔を真っ赤にしてしどろもどろになったアミタ。

その反応で何を観たのか悟ったキリエ達も加わり、変態丸はあっという間にボロボロにされた。

それでも変装自体が解けない辺り、無駄に高性能だな。

クロノ達は白い眼で見ているだけで、誰も止めようとしない。

それでいいのか、管理局!

あ、俺もだった。

 

「あとは私が説明するわ」

「お願いします。クア……ナンバー4さん」

 

ナンバー4、もといクアットロが改めて説明をした。

それによると、研究所を勝手に使用しているキリエ達の様子や会話を観察して、俺達に被害が及ぶようなら動くつもりだったようだ。

でも、あまり実害は出ていなかったので、しばらく様子見をしていると、数日前に餓死寸前のアミタを保護した。

彼女から聞いた話とキリエ達の目的を確認して、動こうと思ったら俺達がここへ来たのを知ってかけつけてきたらしい。

 

「正直、動くならもっと早く動いてくださいよ」

「ごめんね。さすがに管理局員になった健人君と無暗に接触するのはお互いの為にならないと思って……」

「実害、ありまくりなんですけど、せめてバレンタイン前に動いてくれれば……」

「それは本当にごめんなさい!!」

 

ちらっとユーリやシュテル達の方へ目を向けると、クアットロが誠心誠意をこめた土下座をしてくれた。

うん。なぜ知っているか深くつっこまないけど、バレンタインから今まで俺に何があったかは知ってるみたいだね。アハハ~

 

「健人様、大丈夫ですか? 目からハイライトが消えていますよ?」

「けんちゃん、大丈夫? アイス食べる?」

「大丈夫ダヨーオカマイナクー」

 

原因は君たちなんだけどな、ユーリにレヴィよ。

 

「は、話を続けるわね。キリちゃんとアミちゃんの産まれたエルトリアと、その星に蔓延している死病の事、それに必要なエグザミアの事も全部わかってるわ」

「サッスガーソレダケワカッテルノニイママデ放置デスカー」

 

分かってるなら、はよ動いてくれよ。

 

「だからそれは謝るわぁよ。私達だって結構危機感あったのよ。ドゥーエ姉様なんて、健人君の貞操の危機だ! って飛び出しそうになった事か。それにセインちゃん達だって」

 

て、貞操の危機……分かってたつもりだけど、はっきり言われると嫌でも自覚しちゃうなぁ。

 

「で、あとの問題は中途半端に起動して不完全なユーリちゃんを、シェルブリットを使って起爆剤代わりのあなたの魔力を彼女に移して、システムを再起動させる手筈、だったのだけど」

「自分で普通に再起動させちゃったみたいだね」

 

クアットロの視線の先には、め~ちゅの面影はあるけどしっかりと完全復活しちゃってるユーリ。

こちらの会話は筒抜けだけど、それを気にも留めず、すごく年相応な笑顔を浮かべてこんな事を言ってきた。

 

「話をまとめると、ドクターさん達が来た意味なかったんですね」

「あなたが、それを言わないでください……」

 

結局、スカさん達何のためにここまで来たんだか……

 

 

続く

 




うん、やっぱ書いてて暴走しちゃった気がしないでもないです。
次回でGOD編、完結です!


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第38話「めでたしめでた……し?(涙」

お待たせしました!
イノセントも終わってとある魔術も終わって、モバゲーでやるゲームがほぼ無くなった。


「いやぁ~平和だなぁ」

「うん、みんないいストレス発散になってるようだね」

 

そういって俺とユーノが目を向けた先では。

 

「いくよ、ヴィヴィオ、アインハルトさん!」

「こっちだってなのはママとフェイトママには負けないんだから!」

「あの、これでこのピンポン玉を破壊すればいいんですか?」

「違うよ!? そんな物騒な競技じゃないよ! ちゃんと打ち返して!?」

 

なのはとヴィヴィオ、フェイトにアインハルトが4人で卓球を楽しんでいたり。

 

「よしっ、もう少しでゴー……って今赤甲羅ぶつけてきたのだれ!?」

「ごめんなさぁ~い。でも、せっかく取ったのに使わないのもったいないでしょ?」

「え、えげつねぇ~……」

「うちの姉がご迷惑をおかけしてます……」

 

トーマとドゥーエ、それにヴィータとディエチがアーケード版のマリオカートで遊んでいたり。

 

「あーもっと右もっと右!」

「うるさいぞシャマル。集中できん!」

「セ……シックスちゃーん? ディープダイバーでズルはダメですよー?」

「ひっ!? いや、その……ちょっとあそこのぬいぐるみの位置を直そうかなーって思っただけ、だよ?」

 

シャマルがザフィーラにクレーンゲームでぬいぐるみをねだり、セインがディープダイバーでこっそり景品を取ろうとするのをクアットロが諌めたりしている。

要するに、スカさんの別荘の奥にあったレジャー施設で、みんなそれぞれ思い思いに遊んでいるというわけだ。

ちなみに、クアットロ達は服装こそ普段着だけど、バイザーだけはしっかりとつけているので正体はばれていない。

なんでバレてないのか超不思議だけど。

 

「こんな事してていいのかな」

「ドクターブライトの調査が終わるまでまだ時間かかるんだし、いいんじゃない?」

 

あれからドクターブライトこと、スカさんから色々聞いた話によると。

スカさん達がここへ来た理由がユーリの完全復活の他に、ユーリの核であるエグザミアを調査して、アミタとキリエの故郷、エルトリアに蔓延している死病を治す手順を調査する為だった。

他に、病に倒れ余命わずかなアミタ達の父、グランツ博士もエグザミアの力で治せるらしい。

この準備の為に、俺への接触が遅れて……というのが、ボコボコにしたスカさんの言い分だった。

まぁ、一応は納得した。

 

「でも、まさかユーリ達があんなに協力的になってくれるとはねぇ」

「君がお願いしたのが効いたんじゃない?」

 

エルトリアの死病とグランツ博士の病を完全に治すには、エグザミアが必要。

つまり、ユーリがエルトリアに行くことが絶対であり、ユーリとシステムを同じくして支援をするプログラムであるディアーチェ達も同行しなければならい。

しかも、エルトリアに一度行けばもう2度と会えない可能性もあるという。

というもの、エルトリアはこことは全くの別次元に存在して、しかも、アミタ達は時間軸的には未来から来たことになるので、俺達のいる現代へまた来れるかは不明。

もし、来れたとしてもヴィヴィオ達みたく別の時間軸への影響も出てしまう恐れがあり、管理局としても見過ごせないというわけだ。

当然、それを聞いたユーリ達の反応は。

 

「「「「(健人様・健人・けんちゃん・健人さん)と離ればなれは嫌!」」」」

 

と、4人揃って見事に猛反対。

てかエルトリアに来るのはキリエが最初に言ったのではないか、と思った所。

 

「まさか、人型プログラムだと思わなかったから、言いそびれたわ……」

 

とテヘペロをして、ユーリ達にボコボコにされた。

困ったアミタは、超申し訳なさそうに俺へと説得をお願いしてきた。

正直、ユーリ達へはこのままエルトリアに行って欲しかったので、喜んで説得役をすることにした。

 

「ユーリ、ディアーチェ、シュテル、レヴィ。エルトリアでは皆の力が必要なんだ。だから、エルトリア(俺の平和)の為に協力してあげてくれないか?」

 

と上目遣いでお願いすると。

 

「「「「おk!」」」」

 

と即答してくれた。

なぜか顔が赤くなっていたけど、気にしない気にしない。

 

<……マスター、そこまでして……>

 

と、シェルブリットの呆れたような声がしたが、気にしない気にしない。

 

で、今に至るというわけだ。

 

「あ、いたいた。健人君、そんなところにいないで、一緒に遊ぼ?」

 

ユーノと談話していると、ジークが水着姿でやってきた。

どうやらはやてやリリィ達とプールに行くようだ。

 

「あ、あぁ、分かった。今いく!」

「モテる男は辛いね、健人?」

「う、うるさいっての」

 

ジークの水着という極めてレアな姿をシェルブリットと心のアルバムに十二分に収めた。

ジークは楽しそうな顔をしているけど、どこか悲しそうな顔もしていた。

それは、ヴィヴィオやトーマ達も一緒だ。

 

もうすぐ、お別れの時がやってくるからだ。

 

 

それから数時間、俺達はプールにゲーム、はたまた模擬戦まで十二分に楽しんだ。

そして、とうとうその時がやってきた。

 

「うーん、最後に健人君と温泉も入れたし、満足やなぁ」

「ふふっ、健人君とっても恥ずかしがって、可愛かったわよ?」

「勘弁してくれ……」

 

ジークとクアットロが面白そうにからかってきたけど、俺は内心それどころじゃなかった。

思う存分遊んだ後、全員で温泉に入った。

男湯と女湯で分かれてはいたけど、最初はかなり抵抗したが、これが最後だからと俺とトーマは女湯に連行された。

当然、女性陣も俺達も水着姿だ。

クロノとユーノとザフィーラは男湯だった。

ちなみに、ナンバーズ達は温泉でもプールでもバイザーだけは外さなかった。

 

「さて、最終調整も済んだ。これで君たちはそれぞれの世界の時間軸、それも向こうを立ってから数秒後の時間軸にたどり着けるよ」

 

スカさんは施設にあった転送装置を改良して、ちょっとしたタイムマシーンを作ってしまった。

と言っても、ジーク達時間渡航者が元にいた時間軸へと戻る為だけの装置で、俺達では時を超えられないそうだ。

改めてスカさんが天才だという事を思い知らされた。

 

「ちなみにこれをくぐれば、トーマ君達のここに来てからの記憶は消える。と、同時に私達の君たちに関する記憶は全て消えるようにした」

 

何というご都合主義、流石は天才!

ではなくて……スカさんから改めてそう聞かされて、俺やなのは達はすごく哀しくなった。

これは、早くからスカさんやアミタから言われていた事だ。

別世界の時間軸とはいえ、未来の人との記憶は残してはいけない。

SFではよくある話だけど、実際に自分がそうなってしまうと、喪失感が半端ない。

最も、この喪失感も記憶が消えれば多分無くなるのだろうけど。

 

「健人君も、はやてちゃんもそんな悲しい顔せんで、笑顔でお別れしよ?」

「そんな事言ったって、ジークさんだって泣きそうやないですか」

「あ、あははは。うん、ヴィヴィオちゃん達と話していた、はずなんやけど、ね」

 

ジーク達はこうなるって事は最初から覚悟していたようだ。

けど、それでも皆泣きそうだ。

 

「なのはママ、ううん、なのは、フェイト! この数日間、すごくすごーーく楽しかったよ!」

「こっちこそ、楽しかったよ。ヴィヴィオちゃん」

「未来に帰っても、元気でね」

「はい、アリシアさんにも改めてお礼とよろしく伝えてください」

 

なのはとフェイト、ヴィヴィオとアインハルトは目に涙を浮かべているけど、それでもしっかりと別れの挨拶をした。

ついさっき、海鳴市で留守番をしているアリシアとも通信で別れを済ませている。

アリシアは終始笑顔だったが、最後の最後で大泣きしてしまい、プレシアとアルフが急いで戻ったほどだ。

 

「健人、こっちのスゥちゃんやティア姉達の事、頼んだよ」

「任せとけって、俺はスバルとギンガの兄貴だしな。ティアナは、これから、だけど」

「それと、なのはさん達との事もね。誰が彼女になるか、楽しみにしてるよ、健人君」

「リ、リリィさん!?」

 

まさかリリィから恋仲の事で言われるとは思わなかった。

幸い、なのは達には聞かれていない……聞かれてないよな?

なんか冷たい視線をユーリ達から感じるけど、気のせいだよな?

 

「あー私はばっちり聞いとったよ?」

「私もや~♪」

「……2人共、離して」

 

ジークとはやてがわざとらしく俺に胸を押し付けるように抱き着いてきた。

あ、ユーリ達の方からの視線が絶対零度級になった気がする。

心なしか、ナンバーズ達の方からも同じ視線を感じる。

何か、俺身体能力の他に第六感もめちゃくちゃ鍛えられてる気がする。

 

「コホン。名残惜しいのは分かるけど、そろそろ時間だよ」

「はい……それじゃ、元気でね健人君」

「うん、さようならジー(チュッ♪)……クさ、ん?」

 

今、俺何をされましたかー!?

 

「「「あぁぁ~~!!?」」」

「ふふっ、どうせ記憶無くなるんやったらこれくらいええやろー?♪ ほんなら、皆さん。本当にお世話になりました!」

 

気恥ずかしいようで、ジークの顔はリンゴよりも赤い。

 

「ジ、ジークさん、ものすごく大胆」

「何だかこちらに来てから、意外な一面ばかりを見てきました。記憶が無くなるのが別の意味で惜しいです」

「うぅ~忘れて! ほんまに忘れて! あ、これ入ったら忘れるんやったね。2人共早く入って~!」

 

ヴィヴィオとアインハルトはくすくす笑いながら、2人揃ってこちらに向き直った。

 

「それでは、皆さん色々お世話になりました!」

「記憶はなくなるでしょうけど……それでも、この数日間は、とても楽しかったです。ありがとうございました!」

 

続いてトーマとリリィが装置の前に立った。

 

「えっと、俺達は短い間だったけど、それでもたくさんお世話になりました! 特に、リリィの事でキリエさんには!」

「キリエさんには本当にたくさんご迷惑をおかけしました! それと健人くんにも!」

「あはは、俺は気にしてないから大丈夫ですよ」

「私も気にしてないわ。というか、元はと言えば、あなた達を巻き込んじゃって、あれくらいじゃ謝罪にもならないわ。本当に、ごめんなさい」

「私からも、本当にご迷惑をおかけしました!」

 

キリエとアミタが心底申し訳なさそうに頭を下げる。

けど、2人のどたばたのおかげで、ジーク達と出会えて一緒に過ごせたんだから、俺としてはお礼しかない。

それは、ジーク達も同じだ。

 

「では、行くよ。5人共。君たちの未来に希望が満ちるように祈っているよ」

「さようなら~!」

「元気でね!」

「体に気を付けてね!」

 

みんな名残惜しそうに別れを言い、ジーク達はそれぞれ涙を流しながら手を振り、そして、消えた。

もうジークもヴィヴィオもアインハルトもトーマもリリィも、この世界のどこにもいない。

てか、結局変態丸達がスカリエッティやナンバーズだとヴィヴィオ達にはバレなかったな。

もし、バレてたらどうなっていたか、ちょっと気になる。

 

「ではでは、次は私達の番ですね」

「これで私達もエルトリアに戻れば、自動的にヴィヴィオちゃん達の記憶は改竄が完了するわ」

「確認しますが、本当に私達の事は?」

「大丈夫だ。君たちの事は忘れないようにしてある、してあるからその杭をしまってくれないかね、ユーリ君?」

 

そう。実は記憶が改竄されるのは、ジーク達異世界未来組のみだ。

ユーリ達とアミタとキリエに関する記憶は改竄されない。

多少なりとも記憶の祖語や矛盾が生まれるが、それはすぐに脳内で補完されるらしい。

実は、ユーリ達がエルトリアへ行くにあたっての絶対条件だった。

これが呑まれないようなら、最悪エルトリアへ行かされても破壊するとまで言った。

厳密に言えば、キリエとアミタも未来の人だが、ヴィヴィオ達と違い、なのは達とのつながりはない。

ユーリ達も本来こちらの世界の存在なので、記憶を無くす事は絶対ではないのだが、それでも多少の問題は残る。

が、それはスカさんとリンディ艦長達でどうにかするらしい。

最後の最後まで頭痛が残る事件だ。とクロノは頭を抱えていたな。

 

いや、頭を抱えたいのは俺もなんだけどね?

 

「健人様、しばしのお別れですね。お勤めに行ってまいります」

「あ、あぁ、しっかり、ね?」

 

さっきまで笑顔だった4人は、ずずいっと俺の側によると、小声でこう宣言してきた。

 

「健人、我らが次に会う時が、すなわち婚姻の時だ!」

「ボン・キュッ・ボーンになって戻ってくるから、楽しみにしててね!」

「ですが、もし再会の時までに好きな女性が出来たとしても、私達は怒りませんのでご安心を……」

「そこまで健人様を束縛する気はありません。ただ……」

「「「「改めて、決着をつけるだけ(だ・だよ・ですので)」」」」

「あ、あははは……」

 

うわぁ~皆さん瞳のハイライトがオフになってますよー?

なのは達は何やら勘違いをしているようで、3人共妙に燃えている。

 

「うん、私達だって負けないよ!」

「私達ももっと強くなってるからね!」

「う~ん? 決着というのが何か違う意味合いがありそうやけど、負けへんよ!」

 

どうやら決着云々の部分だけ聞こえてたのね。

うん、今この場面で最終戦争が勃発しなくてよかったよ、ホント。

 

「健人、がんばれ」

「骨は拾おう」

「致命傷でも治せるように私も治癒魔法や医学をもっともっと勉強するわね」

「わが主の為にも、我らも全力を尽くす」

「だから、死んだ魚のような目はやめてくれ、正直怖いぞ」

「うん、ありがとう」

 

ばっちり会話が聞こえていたっぽい守護騎士達のありがたい激励を受けた。

ははっ、ありがてぇ~

 

「装置の再調整は完了した。これでエルトリアに繋がった。ただし、この転送が済めばこの装置は壊れて使い物にならなくなるだろうけどね」

「それで構いません。今はまだ、エルトリアとこちらの星系の交流は早いと思いますし」

 

いよいよ、その時が来た。

アミタ、キリエ、ユーリ、ディアーチェ、レヴィ、シュテルの6人が装置に入っていく。

 

「キリエさん、アミタさん、故郷とお父さんよくなるといいですね」

「ありがとう、健人君。たくさん迷惑かけてごめんね」

「では、皆さん、またお会いしましょう」

「うん、ユーリちゃん達もエルトリアで頑張ってね!」

「ふはははっ、さらばだ!」

「王様は最後まで王様やなぁ。向こうでも迷惑かけんようになぁ」

「へいと! 次にあったら覚えてろよ!」

「うん、何か挨拶おかしいね。それに私の名前はフェイト! 次に会う時までそれは覚えてよ!」

「あ、最後に健人さんへの置き土産に私達の下着でも残して……」

「ドクター! 転送速くして!!!」

「りょ、了解!」

「……最後までいけずです」

 

アミタ達は装置の向こうへ消えていった。

最後の最後にとんでもない爆弾を投下しそうになった。

なんだかんだ色々あったけど、楽しかった事は楽しかった。

それ以上の恐怖も散々味わったけどね……

 

次に再会するのが100年後くらいになりますように!

フラグじゃないからな!?

 

 

続く

 




はい、これにてGOD編やっと終了です!
長かったぁ~それに今まで一番はっちゃけたぁ~
書いててキャラの暴走ここに極まれりって感じでした(笑)

次回からはナカジマ家+ティアナの話。
今度は健人の癒しになるのかなー?


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第39話「ティアナ参上!……えっ?」

大変お待たせしました。
軽くスランプ入ってました……


「……知ってる天井だ」

 

目に映るのは、ナカジマ家にある俺の部屋の天井。

マテリアルズの事件もようやく終わり、俺は昨日久々にナカジマ家に帰ってきた。

ゲンヤさんは息子が帰ってきたと暖かく出迎えてくれて、クイントさんが腕を振るった料理を堪能した。

ギンガとスバルはというと、帰ってきて玄関を開けた途端に、猪突猛進タックル+涙目攻撃をしてきて俺は一発KOされた。

うん、マテリアルズの精神攻撃に比べたらこんなの甘いシュークリームだ(?)

もう布団に侵入される心配しなくて済むもんな!

さて、まだ外は薄暗いし、二度寝するかなぁ……

 

――ムニッ♪

 

「ぁん♪」

 

ムニッ? あん? なにこの感覚、というか何このデジャヴ。

何気なく手を伸ばしただけなんだけど……ねぇ?

冷や汗を流しながら横を向くと。

 

「おはようございます、健人さん」

 

そこには満面の笑みを浮かべたシュテル。

 

「おっはーけんちゃん!」

 

反対側に同じくレヴィ。

 

「むっ、早起きだな、健人よ」

 

胸元からひょっこり顔を出したディアーチェ。

てかお前は猫か!

 

「ってあれ? 1人足りない? てか、なんか枕が妙に柔らかいような?」

 

ペタペタと枕を触ってみると、滑々で柔らかい。

しかもほんのり暖かい、まるで人肌のような……ってこれHUTOMOMO!?

嫌な予感がビンビンだが、恐る恐る顔を上に向けると……

 

「あ、やっと気付きましたか、健人様♪」

 

俺に膝枕をしているユーリ……

 

「さぁ、健人様~」

「私達と」

「一緒に」

「眠りましょう?」

 

いいぃぃ~~~やあぁ~~~~~!!!!

 

 

――ガバッ!

 

ベッドから飛び起き、枕元のシェルブリットを掴み、瞬時に武装。

この間、わずか1秒。

 

「ハァ、ハァ、ハァ、よっしゃこいやぁ!! あ、あれ? 誰もいない?」

 

辺りを見渡したが、部屋の中には誰もいない。

過呼吸寸前の息を整えて、ゆっくりと深呼吸をすると頭がスーッと覚めてきた。

あーこれはつまり。

 

「ひょっとして、夢? だ、だよなー。まさかいるわけないよなーアハハハハッ」

<ふわぁ~朝っぱらから騒がしいなマスター。武装までしてどうしたんだよ>

「いやぁ、おはようシェルブリット。なんでもないぞなんでも! ちょっと朝の点検をしただけだよーあははは」

<………>

 

顔はないけど、今シェルブリットが白い目で俺を見ているな、多分。

が、そんな事は気のせいだと思い込み、着替えて1階に下りる。

というのも、さっきのは夢だとしても、あいつらの事だからちゃっかりとリビングで寛いでいても驚かない。

いや、無理。驚きます。

 

「……よしっ、誰もいないな」

「誰か探してるの?」

「うひゃあぁ~!?」

 

突然背後から声をかけられて、咄嗟に裏拳した。

だけど、その裏拳はあっさりと受け止められてしまった。

 

「うわっと。おぉ、朝から元気ねぇ」

「あ……クイントさん?」

「うん。おはよう、健人君」

「おはよう、ございます。はぁ~……ごめんなさい」

 

俺の拳を受け止めたまま、ニコッと笑うクイントさんを見て、急に体から力が抜けた。

 

「私は大丈夫だけど。健人君こそ大丈夫? 汗びっしょりじゃない。ひとまず、お風呂入ってきたら?」

「ちょっと、変な夢を見ちゃって。もう大丈夫ですけど、風呂行ってきますね」

「ふふっ、一緒に入る?」

「い、いいってきまーっす!」

 

なんつう爆弾発言するかなこの人妻は!?

あ、いや。何度か一緒に風呂入った事、あるけどね。

おかしいなぁ。1人お風呂でゆったりした事、全然ないぞ?

むしろ風呂で疲れる事多い気が??

 

 

 

特にトラブルもなく風呂はゆっくりと入る事が出来た。

風呂から上がるとゲンヤさんやギンガ達も起きていて、朝から風呂に入ってた俺を不思議そうな顔をしていた。

 

「健人君、ここ最近地球で色々あったものねぇ。疲れやストレスが溜まっているのよ」

「あー俺も顛末はリンディ提督から話を聞いたが、災難だったな」

 

マテリアルズ事件で何があったか、詳しい顛末は2人共リンディさんから聞いていて、ここに帰ってきてからよく慰めてくれた。

簡単に言えば女難だったのだけど、その女難は子供が味わうレベルを遥かに超えているんだよね。

事件が解決してから改めて何があったか頭で整理したら、なんか軽くトラウマになっちゃったし。

 

「お兄ちゃん大丈夫?」

「元気だして?」

「うん、ありがとうな、ギンガ、スバル」

 

ギンガとスバルも事情は知らずとも、疲れ切った俺を見て幼い彼女達なりに元気づけようとしてくれている。

あぁ~、ホント癒されるなぁ。

 

「そんな健人君のストレスを発散させる為、今日から一週間、みんなでお出かけします」

「「わーい!」」

「えっ、1週間もおでかけ? どこに行くの?」

「そういえば、健人君昨日は帰ってきて食事したらすぐに寝ちゃったわね。今日はティーダ君とティアナちゃんと最近オープンしたレジャーランドに行くのよ」

「えっ? ティーダ君に、ティアナちゃん?」

 

クイントさんの口から思わぬ人名が出てきた。

ティーダとは以前に会った事あるし、ティアナは生前から好きなキャラの1人でよく知ってるけど、クイントさんが知っているとは思わなかった。

なんでも、俺が地球に行っている間に、メガーヌの仲介でナカジマ家の面々は2人と知り合い、ギンガとスバルはティアナと友達になったのだそうだ。

 

「リンディ提督がレジアス中将に言ったのよ。今回の事件解決に健人君が大いに貢献してくれたって。で、かなり無理もさせたから大いに労ってあげてってね」

「で、俺もクイントもお前さんが戻ってくるタイミングで1週間ほど休暇を与えられてな。ついでにレジャーランドの招待券とかホテルの優待券とかをもらったってわけだ。ついでにティーダと妹さんもな」

「ティアちゃんと一緒にお出かけ~♪」

 

うーん、確か原作ではギンガとスバル、それとティアナはStsで知り合うんじゃなかったっけ?

ま、細かい事はいっか。

ギンガとスバルに友達が出来たのは良い事だ。

それに俺もティアナに会ってみたかったし。

……なんだろう。ものすごーく嫌な予感がするけど。

 

 

とんとん拍子で話が進み、いつの間にか俺の一週間分の荷造りが済んでいて、気が付けばレジャーランドについていた。

ティーダとティアナはここで待ち合わせする事になっている。

やってきたのは、今年オープンしたばかりでVRやらその他、最先端技術をふんだんに使ったアトラクションが多い。

そればかりか、動物と触れ合える場所や映画館に水族館などなど超大型複合施設となっているらしい。

最初は1週間って長すぎだろと思っていたけど、実際に来てみてその広さにびっくりだ。

ここなら下手すれば1週間でも遊びつくせないかもしれない。

 

「うわぁ~……ひろーい、でかーい」

「どうだ健人、すごいだろ?」

「うん! こんな所で1週間もなんて、すごく楽しみ!」

 

こういう所に家族と来るのは、生前じゃ夢だったからなぁ。

結局叶わなかった夢だけど、今はこうして家族同然のナカジマ家と一緒に来られてまさに夢のようだ。

 

「えっと、ティーダ君達はもう来てるはずだけど。あ、いたわ。2人共~! こっちこっち!」

 

クイントさんが手を振った方から、ティーダともう1人、オレンジ髪のスバル並に幼い少女がやってくるのが見えた。

まぁ、ギンガも幼いけど。

 

「クイントさん、ゲンヤさん、おはようございます。妹と今日から1週間お世話になります!」

「おぅ。まぁ、そんな肩肘張らずに気楽にしろよ」

「そうそう。せっかくの休暇なんだから。みんなで思いっきりリラックスして楽しみましょ」

「はい! ギンガちゃん、スバルちゃん、おはよう」

「「おはようございます!」」

 

既に何度も会っているせいか、若干人見知りなスバルも元気よくティーダに挨拶した。

 

「健人君もおはよう。それと、久しぶりだね」

「はい、お久しぶりです。で……妹さん、は?」

「えっ? あ、あれ~? ティア?」

 

ティアナはティーダと一緒にこっちに歩いてきたが、俺の姿を見ると猛ダッシュで近くの木に隠れてしまった。

スバルに初めて会った時と同じかなーと思ったが、どうやら様子が変だ。

木陰に隠れながらもちらちらこっちを見ている。

頭だけ隠して下半身を隠していない。

まるでチョッパーだ。

 

「ティアー! そんなところでどうしたんだ? 健人君に会えるの楽しみにしてたろう?」

「俺に会うのを楽しみに?」

 

それはそれで嬉しい事だけど、はて?

素直に喜んではいけないと黄色信号が出ているぞ?

 

「ティ~ア? どうしたの?」

「こっちこっちー!」

 

ティーダが呼んでもティアナは動かず、こちらをちらちら見ているだけだ。

すぐに、ギンガとスバルが半ば強引にティアナを引きずって連れてきた。

いや、そこまで強引にしなくてもよくない?

 

「えっ、と……その」

 

俺の眼前に連れ出されたティアナは、オドオドとしているが、スバルみたく人見知りとかじゃなくただ緊張しているように見える。

それにしても、このティアナ。幼い。いや、当たり前だけど。

イノセントのティアナをちょっとだけ小さくした感じだ。

 

「はじめまして。俺は草薙健人。よろしくね」

「あ、はい! よ、よろし……く」

「ほら、ティアナ。健人君にちゃんと挨拶しないと」

 

ティーダに言われ、ティアナは意を決したような表情を浮かべ一歩前に出た。

いや、近いから!

ちなみに、ナカジマ夫妻はさっきからニヤニヤと意味ありげな笑み浮かべて、黙って見守ってる。

 

「は、ははじめまして! えっと、あの……サイン、ください!」

「……へっ?」

 

ティアナは顔を真っ赤にしながら、どこからか取り出した色紙を俺に突き出してきた。

これにはティーダもびっくりしている。

それ以上に俺がびっくりしているけど、なんでサイン?

 

「あっ、間違えちゃった。えっと、サインは欲しいけど、そうじゃなくってえっとえっと……」

「お、落ち着いて。ゆっくりでいいから。ほら、深呼吸」

「は、はい! すーはー、すーはー」

 

数分かけて何度も深呼吸を繰り返して、ティアナはやっと落ち着いたようだ。

なんでこんなにテンパってるんだろ?

 

「わ、我が名は、ティアナ・ランスター。問おう。あ、あなたが私の許嫁ですか?」

「……え”っ?」

 

な、なんですとーー!?

 

 

続く

 




FGO2部、思ってたより早く始まりますねー(笑)

これからナカジマ家とランスター家の休暇編。
なのは達の出番なし!
学園生活とかやりたいけど、それやるとStsがかーなり先になりそう。
でも、ネタはいろいろあるんですよねー


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第39話「インパクトは時と場合を考えよう」

お待たせしました!
ティアナのキャラが結局こうなりました(笑)


突然、どっかのハラペコ騎士王みたいな自己紹介をしたティアナ・ランスター(6歳)

そのあまりにも衝撃的な内容に固まる俺。

アレ? これは、アレか? また俺、やっちゃいましたか?案件?

でも、ティアナに関しては全く身に覚えがないぞ。

確かに生前では中○麻衣さん声で、ロングヘアーもSts時代のツインテールも可愛いなーとは思ってたし、ジーク並に好きなキャラだけど。

まさか……これもこなた神が何かしでかしたのか!?

 

――冤罪だよー!!

 

聞こえない聞こえない。

 

「え、えっと……我が名は、ティアナ・ランスター! あなたが私の許嫁ですか?」

「いや言い直さなくていい! ちゃんと聞こえてた聞こえてた!」

 

急に周りがシーンとなったので、何か間違えたかと涙目で心配そうに言い直すティアナが可愛かった……じゃなくって!

俺だけじゃなく、ゲンヤさんやクイントさん、ティーダさんまでポカーンとしていた。

ギンガとスバルだけは何のことか分からず首をかしげている。

 

「あ、あははは、なかなかませた可愛い嬢ちゃんだな」

「そういうレベルじゃないでしょあなた! ティーダ君? 何自分の妹に変な事吹き込んだのかしらぁ~?」

「い、いえいえいえ、ボクは何も知りません!」

 

いち早く正気に戻ったクイントさんが、ちょっと怖い目をしながらティーダに詰め寄ってた。

けど、ティーダはほんとに何も知らないようだ。

てか、クイントさん、あなたも普段からギンガやスバルをたき付けてるでしょ!

 

「いいなづけ、ってなに?」

「あ、分かった! おいなりさんの事だ! 食べたい! 私もおいなりさん食べたい!」

「スバル、お稲荷さんじゃないから。って、よくお稲荷さん知ってるね?」

 

一応日本食はミッドチルダにもあるけど、いなり寿司とかはまだ見たことない。

 

「うんとね、この前はやてお姉ちゃんが作ってくれたの!」

「はやてが? いつの間に……」

「なのはお姉ちゃんやフェイトお姉ちゃん、アリシアお姉ちゃんもよく遊びに来るよ?」

「ホント、いつの間に来てたんだ!?」

 

俺、基本ナカジマ家かテスタロッサ家にしかいないのに、知らない間に皆の交友関係広くなってる?

良い事だろうけどね。

 

「あぁ、ギンガとスバルには歳の近い友達が多い方がいいと思ってな。クイントやプレシアがよく連れてくるんだよ」

「その時にティアナとも会ってるんだけど、こんな自己紹介はしてなかったんだけどなぁ」

 

ティーダは不思議そうな顔をして、ティアナはまだ木の陰に隠れてしまった。

相変わらずのチョッパー隠れだけど。

 

「ところで、さっき俺に会えるの楽しみにしてたとか、サイン欲しいとか言ってたけど。ティーダさん、何か知ってる?」

「えっ? あぁ、それは多分君の噂、色々聞いたからだろうね。出張とかで管理局の託児所に預かってもらう事多いし」

「管理局での、俺の噂? 前も流れてるって言ってたよね?」

 

はい、黄色どころか赤信号になったぞ!

 

「最近の噂は、健人君は次元震をたった1人で止めたり、A級ロストロギアの暴走をパンチ一発で沈めたり……」

「あ、それ以上は言わないで……」

「出会った女の子を片っ端から落として、ラブレターを山のようにもらってたり」

 

ノォーーー!?

 

「やっぱりかー!? 何か前より噂が悪化してる! なんでそんな根の葉もない噂が広まってるの!? ゲンヤさんもクイントさんも笑ってないで否定してよ!」

「あはははっ、俺もそれは聞いているぞ。いいじゃねぇか、女の子にモテモテなのは事実だろう?」

「そこ!? いや、そこはどうでも……よくないけど! もっと他のとんでもない噂を否定してよ!」

 

しかもラブレターって……あ、マテリアルズのチョコね。

 

「他にも、中将にライダーキックをしたっていう、それこそ根の葉もない噂もあるよ?」

「いえ、それは事実です」

 

なぜに1人で次元震を止めた事より、中将にキックをかました事の方が信憑性ないんだよ!?

言われてみれば、いや、やっぱりどれも信憑性ないでしょ。

 

「まぁまぁいいじゃない。私達も噂は聞いているけど、悪い噂は流れていないんだし」

「クイントさんも否定してよ。俺、これから地上本部でどんな目で見られるか分からないよぉ」

 

俺がしばらく地球に行ってる間にとんでもない事になってそう。

 

「で、それを聞いたティアナちゃんは健人君に会えるの楽しみにしていたってわけね」

「それにしたって、サインって、しかも、許嫁って……」

「あはは、許嫁は僕も初めて聞いたよ。意味、分かってるのかな?」

 

6歳で許嫁の意味分かってたら、怖いよ。

 

――ケントサマー

 

いや、あれらは特別枠で除外だ。

 

「なぁ、ティアナ? 許嫁ってどういう意味か知ってるの?」

「えっ? お友達になりましょう、でしょう?」

「「「違うよ!?」」」

 

誰だ、ティアナに変な言葉教えたの!

 

「ティアナ、それ、誰に聞いたのかな?」

「えっと、この前管理局で出会ったお姉さんに、健人さんの事聞いたら色々お話してくれて、その時に教えてもらったの。こういえばきっと健人さんが喜ぶって」

 

ホントに誰だよそんな事教えたお姉さんって!

いや、待てよ。管理局内で俺の事をよく知ってるお姉さんってめっちゃ限られてくるんだけど?

 

「それってまさかメガーヌさん?」

「よしっ、ちょっとメガーヌぶっ飛ばしてくるわ」

「待った。まだメガーヌが犯人って決まったわけじゃないだろ。な、なぁ、ティアナちゃん。そのお姉さんって名前なんて言うんだ?」

 

「えっとね……二乃お姉さん!」

「「「誰?」」」

 

ゲンヤさん達が?マークを浮かべている中、俺だけは誰だかわかった。

うん、管理局内で俺の事詳しいお姉さん、メガーヌさんとオーリスさん以外でもう1人いたね。

管理局に潜入しているドゥーエが!

本局と地上本部を行き来してるみたいだけど、何余計なことをティアナに吹き込んでるんだ!

とりあえず、ウーノとクアットロにメールして〆てもらおう。

 

――ピロリン♪

 

『OK』

『まかせて♪』

 

返信はやっ!

 

「ともかく、ティーダ君。ティアナちゃんに正しい挨拶を教え直してね」

「そうします。ごめんね、健人君」

「い、いえいえ、ティーダさんが謝る事ないですよ。ちょっと驚いただけですから、それに、こういうの慣れちゃった」

 

確信犯なマテリアルズに比べたら、10000倍マシだよ。

アハハハッ~

 

「わわっ、お兄ちゃん! 目が暗いよ~!」

「健人君ハイライトどこいったの!? しっかり!」

「わたし、なにか悪い事言っちゃった、かな? かな?」

 

ピキーン!

ティアナの涙声が聞こえてくる!

これはいかん!

 

「大丈夫大丈夫! ティアナは何にも悪い事言ってないぞー!」

 

全力全開のスマイルを浮かべて、必死で泣きそうなティアナの頭を撫でた。

少し驚いた顔をしたけど、すぐに笑顔になった。

危ない危ない。

さっきのティアナの涙声の後半、若干ヤんでるっぽい声に聞こえたんだよな。

 

「あーティアナちゃんずるい!」

「おにいちゃんわたしもわたしもー!」

 

その後、ギンガとスバルの3人を交互に撫でる羽目になった。

ここまで来ると妹っていうより、小動物みたいだな。

 

「流石、健人君」

 

いや、そこ褒めないでティーダ。

 

 

 

気を取り直して、俺達はレジャーランド内へと足を踏み入れた。

ゲンヤさん達は休みを取っているが、今日は連休前でもないただの平日。

なのに、ランド内は沢山の人でにぎわっていた。

 

「さーってまずはどこから行きましょうか? みんな、行きたいところある?」

「俺はここの事全く知らないから、ギンガやスバル達はどこに行きたい?」

「うーんうーん」

「たくさんあって迷っちゃう」

 

確かに。パンフレットだけでもえらい大きさだ。

あ、デバイスもちの人にはデジタル表示用のデータダウンロードもあるみたいだ。

早速俺とクイントさん、ティーダさんのデバイスにダウンロードした。

 

「まずはこのシューティングランドでいいですか? ティアナと来たかったんですよ」

「うんうん!」

 

ティアナは目をキラキラさせてシューティングランドを指差している。

よほど興味があるようだ。

ティアナは大きくなったらガンナーになるけど、今からその素質が目覚めつつあるのかな?

 

「そうね。時間はいくらでもあるんだし、まずはそこに行きましょうか、健人君達もいい?」

「「「いいでーっす!」」」

 

 

こうしてやってきたシューティングランド。

ここは、地球にあるようなガンシューティングや、戦闘機型媒体に乗ってのVRシューティング、銃型デバイスを用いた仮想空間での本格的模擬戦など様々なゲームがある。

どれも子供から大人まで遊べるような親切設計になっているのがいいな。

 

「ティアナはどれが一番やりたいんだい?」

「えっとね、全部! 全部100回ずつ!」

「そ、それはちょっと疲れるからやめようね?」

 

ティアナはここに入ってからテンションがすごい事になってる。

チョッパー隠れしていたとは思えない程だ。

 

「じゃあ片っ端からやりましょうか。あそこのはみんなで協力プレイが出来るみたいよ」

 

クイントさんが指差したのは、迫りくるゾンビの群れを倒す4人用のガンシューティングゲームだ。

 

「4人用なのね。じゃあ、健人君達ね」

「わーい、やったー!」

「えっ……わたし、いい」

 

ティアナとスバルは意気揚々と台に立ち銃型コントローラーを握ったが、ギンガだけは動こうとしない。

そればかりか、クイントさんの後ろへと隠れるに下がって行った。

 

「お姉ちゃん? 一緒にやろうよ」

「ううん、わたし、見てるだけでいい」

 

と言いつつ、目はモニター画面には向いていない。

 

「あらら~ギンガって幽霊とか苦手だもんね。なら、ティーダ君やったらどう?」

「あ、いいんですか? それじゃあ。がんばろうな、ティアナ、健人君、スバルちゃん」

「「はい!」」

 

あれ? 何だろ? ティアナの返事が少しトーンおかしかった気がする?

何というか、大人っぽい?

まぁ、気のせいか。

4人共それぞれモニターの前に立ち、銃を構える。

画面にはたくさんのゾンビが映し出され、ギンガは短い悲鳴をあげた。

それよりも、やっぱりティアナの様子が何だかおかしい気がする。

銃を握った途端、6歳児がする表情には見えなくなった。

 

「行くわよ、兄さん! 健人さん! スバル!」

 

えっ? ティアナさんや、あなた、雰囲気も口調も変わってますよ?

まさか、銃を握ると性格変わるってやつですか?

 

「さぁ、来なさいゾンビ共! 纏めてぶっ飛ばしてあげるわ!」

 

正直、ゾンビよりティアナが怖いです。

 

 

続く




普段はおとなしいけど、ひとたびに銃を握ると原作Stsモードになるティアナなのでした(笑)

バイオ2リメイク続報まだかなぁ。


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第40話「現実逃避レベルアップ!」

お待たせしました!
はちゃめちゃランド編はまだまだこれからです!


俺、スバル、ティアナ、ティーダの4人で始めたゾンビ系シューティング。

ぶっちゃけバイ○ハザードなのだが……

 

「ほらほらほら! まだまだこんなんじゃないでしょ!? かかってらっしゃい!」

「………」

「あははははっ! ダメじゃない、もっとたくさんで襲ってこないとさぁ!」

「………」

 

誰? この娘?

いや、どっからどうみてティアナだけどさ。

ゲームとはいえ、銃を握ったら性格変わりすぎじゃね?

 

「よっしゃぁ! 次の獲物はどこだーー!」

 

こんなティアナはいやだ!(泣)

 

「「「……」」」

 

後ろで見ていたナカジマ一家の皆さんも、ティアナの変わりようにあんぐりと口を開けて固まってる。

 

「ティアナすごいすごーい! かっこいい~!」

 

スバルだけは、目をキラキラさせて見ている。

で、そんな目で見ている暇あったら援護してほしいなぁ。

お兄ちゃん、さっきからスバルに行きそうなゾンビ必死に倒しているんだけどなぁ。

 

「健人君、なかなかやるね」

「えっ? う、うん。ティーダさんもね」

 

てかティーダや、一人黙々とゾンビやらカラスやらを撃っていますが、隣で暴走している妹さんの変貌っぷりはスルーですか?

 

こうして、色々とツッコミ所は多かったが、何とかノーコンティニューでクリアできた。

 

『究極の一発!完全勝利!』

 

「「やったぁ~!」」

 

画面に現れるゲームクリアとエンドロール。

それを見てティアナとスバルが大はしゃぎだ。

 

「うん、さっきまでのティアナは見なかった事にしよう」

「えっ? わたしがどうしたの??」

「いや、なんでもないよ……」

 

どうやらティアナはゲーム中の自分の暴走ハイテンションっぷりは記憶にない様子。

もしくは、あれも素だったのかな。

 

「ティーダ、ティアナっていつもああなの?」

「?? ああっていうのはなんですか、クイントさん?」

「いえ、何でもないわ。うん、何でもない」

 

どうやらティアナはガンシューティングでは毎回ああなるみたいだな。

ティーダもそれに慣れきっていて、クイントさんもそれ以上は何も突っ込めないでいた。

 

「まぁ、健人、がんばれ」

「お兄ちゃん、ふぁいと」

「がんばれって、何を……」

 

何とも言えない表情をしたゲンヤさんとギンガになぜか励まされた。

 

 

次にやってきたのは、後ろに銃座が付いたゴーカートに2人一組で乗ってゴーグルをつけてバーチャル空間の中で争うゲーム。

銃座からは光弾が出て、ある一定数がぶつかると大破判定になりゲームオーバー。

時間内まで生き残った組の被弾数や撃墜数によって順位が決まるというルールだ。

組み合わせはくじ引きで決めることになり結果、俺とギンガ、クイントとティアナ、ティーダとスバルでやることになった。

ハズレを引いたゲンヤさんは、少しだけがっかりしていた。

 

「がんばろうな、ギンガ」

「お兄ちゃん、わたしが運転してもいい?」

「ギンガは運転したいのか? じゃあ任せるよ」

 

このゴーカートは実際に走らせるわけじゃないし、子供でも簡単に運転できるような設定なのでギンガでも問題ない。

というか、ここだけじゃなく全体的に子供でも出来るゲームばっかりだしな。

 

『皆さん、準備はいいですか?』

「「「おー!」」」

 

このゲームは大人数でやるので、俺達以外にも多くの参加者がいる。

 

『では、レディ、ゴー!』

 

アナウンスと共に、ゴーグルに映し出されたのは、岩場が多い高原。

ここを走り回って岩場を盾にしながら、他のプレイヤーと競うんだな。

本当にこの世界のゲームは元の世界とは比べ物にならない程進化してて、ワクワクが止まらない!

 

「よっしゃ、行こうぜギンガ!」

「うん! かっとばすわよ!」

 

ギンガも興奮してるのか、普段と雰囲気が変わった。

……アレ? なんだかデジャヴを感じるぞ?

 

「いくわよ。いくわよいくわよいくわよいくわよっ!」

「どこのアルターエゴだ、それ!?」バババッ

「蹂躙しろだなんて、たまらないわ!」

「そんな事言ってないから!」ババババッ

 

猛スピードで駆け回りながら、手当り次第に撃ちまくってるだけだけど、面白いくらいに当たってるな。

てかギンガ、まるっきりさっきとティアナと同じじゃん!

ティアナは銃を握ると性格変わるけど、ギンガはハンドル握ると変わるタイプ?

いやいや、まだ7歳と6歳なのに将来が不安すぎてお兄ちゃんは心配でたまりませんよ!?

スバル達は大丈夫かな?

確かスバルが運転で、ティーダが射撃担当だったけど。

 

「とう! はいっ! 大・回・転っ!」

「当たれ~っ!」

 

うん、心配いらなかったな。

2人が乗ったカートがなぜか大回転しながら、激しく乱れ撃ちしている。

あっちの方は近寄らない方がいいな。

さてはて、クイントさんとティアナは……

 

「見てなさい、私の華麗なドライビングテクニック!」

「あっはははははっ! 人がゴミのようね!」

 

豪快に体当たりしながらのゼロ距離射撃。

……見なかったことにしよう。

 

「お兄ちゃん! だいぶ少なくなってきたわ。そろそろ母さんたちにも仕掛けるわ!」

「あ、あぁ。でも、正直あまり近寄りたくないんだけどなぁ……」

 

なんていう俺の呟きは当然ギンガの耳には入っていなく、クイントさんとティアナのカートを目指した。

2人のカートは、少し離れた場所でスバルとティーダのカート相手に激走している。

いや、撃ちあってるというか、走りで競い合ってる?

 

「スバル。そんな走りじゃ私には追いつけないわよ!」

「ならっ、とっておき、見せてあげる!」

「ちっ、出遅れたわ。でも、ここで巻き返す!」

「ギンガ? 別にこれレースじゃないから! 抜かす必要ないから! クイントさんもスバルも何レースしてるの!?」

 

てか、スバル。さっきも感じたけど、お前もハンドルで変わるタイプかよ!

俺も撃てばいいんだろうけど、剣幕すごすぎて割って入りこめないです。

仕方ないから残った他のプレイヤー達を狙って撃ってます。

 

「何!? ナカジマ家ってみんなそうなの!? まさかゲンヤさんもハンドルとか銃とかで性格変わるの!?」

「あの人が変わるのは夜、ベッドの……ゲフンゲフンッ」

 

おいー!? 今何言いかけた人妻―!?

というかもうほとんど言っちゃてるじゃん!

 

「あっはっはっ、みんな元気だなぁ」

 

ゲンヤさーん? 何呑気に観戦してるんですかー?

そんな暇あったらツッコミしてくださいよ!

 

「ティアナ……仕掛ける!」

「兄さん、受けて立つわ!」

 

ランスター兄妹も兄妹でなんか盛り上がって、2人して撃ちあい始めちゃった。

本来はこういうバトルなんだろうけど、何かが違う気がする。

 

「流石、母さんとスバル。なかなか抜けない。でも、ゴールはもらったわ!」

「だからこれレースじゃ……ゴールってどこ!?」

 

何度も言っているが、これはレースじゃない。

なので、当然コースなんてものもない。

だけど、ギンガもクイントさんもスバルもある一点を目がけて走っているようだ。

その先にあるのは、岩壁の中にある小さなトンネル。

どうやらあそこが3人にとって、ゴールのようだ。

ティーダとティアナは激しくぶつかり合うカートの上で撃ちあっている。

けど、互いの光弾同士がぶつかり合っていて相殺されて、なかなか相手に当たっていない。

 

「みんなハイレベルなバトルしているなー」

 

と俺は近くを通り過ぎていく他プレイヤーを撃ちまくっていたのだが、俺達のバトルがあまりに変、すごいのでビビッて逃げて行った。

うん、そう思っておこう。

そうこうしているうちに3台のカートはゴール(仮)まであと少しとなった。

ここまで来るとティーダとティアナも撃ちあいをやめて、それぞれの相棒にすべてを託したようだ。

 

「クイントさん、ぶっちぎっちゃって!」

「かっとばすわよ、ティアナちゃん!」

「スバルちゃん、そのまままっすぐ!」

「うん! ラストスパート!」

「ぎんがーがんばれー(超棒読み」

「任せてお兄ちゃん!」

 

相棒の声援を受けて、ナカジマ家の女性陣がアクセルを更に踏み込んだ。

ゴール(仮)まであと、100メートル……50……10……

 

「「「いっけー!」」」

 

――ドーンッ!

 

トンネルが目の前に迫った所で、爆発音とともに画面が真っ暗になった。

 

――GAME OVER

 

そして、画面に映し出されるゲームオーバーの文字。

3台揃って同時に小さなトンネルに突っ込んだら、そりゃ激突するよな。

まぁ、みんなの普段と違った顔が見れて、よかった……かな。

 

 

続く

 




最近某アイドルゲームのLove∞Destiny という曲を聴いて
これうちのマテリアルズのテーマソングでもいいかな。
と思いましたが、それと同時に。
あ、でもあの娘達のヤンデレはこんな可愛いもんじゃないな。
と思い直しました(笑)

ブレイカー
バクメツケン
ジャガーノート
マトリクス

おや、こんな夜中なのに外が明るい……

( ((≪☆★BOMB!!★☆≫)) )


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第41話「To loveる? いえ、トラブルです」

お待たせしました!
ティアナとギンガのターンは続く!


シューティングランドをこれでもかってくらい遊びつくした俺達の一日目は終了した。

ホテルに戻って夕食のバイキングを食べつくして、部屋に戻ると俺達は全員ベッドに倒れこんだ。

元気が走り回っているようなスバルも、今日は流石に疲れたようだ。

それから大浴場とかで色々あったが……忘れよう。

 

「お兄ちゃん、明日もみんなで入ろうね!」

「あ、うん……ソウダネー」

 

いや、女の子と一緒にお風呂って、何度か経験あるけどさ。

この前、スカさんアジトでシグナムとかリインとかお姉さん方とも入ったけど、みんな水着着てたもん。

シュテル達は、最初素っ裸で入るつもりだったようだけど、クアットロやトーレに半ば無理やり水着着させられてたっけな。

でも、今回はクイントさんもギンガもスバルもティアナもみんな素っ裸だった。

いくらなんでもこれは慣れない。慣れるわけない。

ギンガ達はまだいいとしても、クイントさんってまだ20代前半で若いしスタイルもいいし……うん、忘れよう。

てか、ゲンヤさんとティーダは、ドナドナされる俺を笑顔で見送ってくれたっけな、薄情者!

あれ? そういえば、スカさんのアジトでみんなで温泉入った時って、もっと人いなかったっけかな? うーん??

ま、いっか。

 

 

そして、翌日。

今日は、乗り物系を中心に回る事になった。

定番の観覧車は3時間待ちという長打の列ができていたので、まずはジェットコースターに乗る事にした。

見た目としては地球にもある一般的なジェットコースターに見えるけど、俺の知ってるものよりもかなり長いように見える。

こういう定番の絶叫系どころか遊園地自体生まれて初めてなので、見るものすべてが新鮮で興奮しっぱなしだけどな。

で、このコースターは2人乗りなので俺とティアナ、その後ろにギンガとゲンヤさん、クイントさんとスバルが乗り、ティーダは荷物番となった。

地球のコースターは年齢制限とか身長制限があるけど、こっちのはそういうのはない。

なんでも、子供に合わせて対G制御がかかるようにしてたり、安全対策はばっちりしてるからだそうだ。

無駄に最先端な気がする。

 

「で、大丈夫かティア?」

「だ、だだだだだいじょうぶ!」

「嫌だったらお兄さんと下で待っててもいいのよ?」

「ダイジョウブデス、クイントサン!」

「全く大丈夫に見えないよ、ティア」

 

後ろの席にいるクイントさんとギンガが心配に言ってくるが、2人の言う通り今のティアナは、顔色が恐怖に染まっている。

元々このコースターはギンガとスバルが乗りたがっていて、俺もかなり興味があった。

いざ乗ろうとすると、ティアナが固まってしまった

コースターに乗るのが嫌なら待っていていいと言ったのだけど、俺やギンガ達が乗るなら私も乗る!

と、半ば強引に俺の隣に乗り込んでしまった。

ティーダも止めようとしたが、泣き出しかけたので仕方なくティアナも一緒にとなった。

ゾンビはよくてこういう絶叫系はダメなのか。ギンガと正反対だな。

 

「では、出発しまーす!」

 

係員のお兄さんの号令と共に、コースターは音もなく発車した。

どうやらこのコースターはリニアモーターカーみたいなものらしく、静かに動くようだ。

静かに動くから、それはそれで怖い気もする。

 

――ギュっ

 

「ん?」

 

いつの間にかナチュラルにティアナが手を握ってきた。

ほとんど無意識なようで、ティアナ自身はしきりに。

 

「にげちゃだめだにげちゃだめだにげちゃだめだにげちゃだめだ」

 

などと、虚ろな瞳をしてぶつぶつと危ないセリフを呟いている。

下で待っていた方が良かったと思うんだけどなー

てか、今更だけど5歳児がジェットコースターってどうなんだろ。

と考えていると、コースターが頂上に差し掛かってきた。

頂上に近づくにつれて握ってくる手の力が段々と増してきてるけど、まだまだ幼女の力じゃ痛くない。

いつぞやスバルに思いっきり抱き着かれて骨が砕けると思った時に比べたら、どうってことないない。

そう、思っていたんだ……

 

――ギュンッ!

 

「きゃあああぁぁぁぁーーーー!!」

 

コースターが急降下どころか、レールから外れて自由落下しました。

それに伴い、ティアナの握力が100倍くらい増しました。

 

「ぎゃあああぁぁぁぁーーーー!?」

 

いたいいたいいたい!

自由落下したコースターなんて気にならなくなったのは幸か不幸かだけど、とにかく痛い。

ティアナって戦闘機人だったのか!? というくらい強く握りしめられた。

コースターは自由落下からの錐もみ回転、また急上昇してからの急降下などなど盛りだくさんに動き回ってる。

けど、俺にそんなの楽しむ余裕はなかった。

 

「ひゃっほーーー!」

「わーい! たーのしー!」

 

後ろからはこの惨劇に気づいていないのか、楽しそうな絶叫が聞こえてくるけど俺はそれどころじゃない。

 

「シェ、シェルブリット! って置いてきたんだった―!!」

 

シェルブリットに身体強化頼もうと思ったけど、ティーダに預けているんだった!

 

「わぁー!? まえまえまえ!」

「ふえっ? なにぃーー!?」

 

前を見てみるとなんとレールが空中で無くなっていた。

 

「おちっ……ない!?」

 

コースターはレールが消えてもそのまま走り続けた。

どうやら、レールを視えないようにしているだけのようだ。

これは普段なら迫力満点と興奮するんだろうけど、今の俺にそんな余裕はない。

 

「ふにゃーー!?」

「いてててててっ!!」

 

握った手の力がさらに増した。

俺の左手、最後まで持つかなぁ。

 

「お、おかえり。お疲れ様」

 

長かったコースターもやっと終わり、疲労困憊状態な俺とティアナをティーダが苦笑いを浮かべながら労ってくれた。

ティアナは単にコースターが思った以上に怖かっただけだが、俺はティアナにずっと握りつぶされかけていたせいなのだけどな。

 

「もう、もうコースターは乗らない……」

「俺、手、まだついてる?」

「あ、あははは……」

 

流石のギンガもかける言葉が見つからないようだ。

 

「楽しかった! また乗りたい!」

「そうだな。また来た時に乗ろうな、スバル。ありゃ、どうしたんだ2人共?」

 

俺達の惨劇を知らないスバルが、?マークを浮かべて話しかけてくるけど、俺もティアナもそれに応える気力はない。

 

「あらら、少し休んだら今度はもっとゆっくり出来るアトラクションにしよっか?」

「う、うん。今度はティアの行きたい所に行こう! ティアはどこに行きたいの?」

「じゃあ……あそこ」

「どれどれ……え“っ!?」

 

まだ顔色が悪いティアナが弱弱しく指をさした先にあったのは、お化け屋敷の看板。

今度は、それを見たギンガの顔が真っ白になった。

 

 

こうして少し休んだ俺達がやってきたのはお化け屋敷だが、ここは魔法技術の発達したミッドチルダ。

さっきのコースターもそうだけど、地球よりも技術が発達しているのでそんじょそこらのお化け屋敷とは比べ物にならない。

立体映像でリアルな幽霊が出たり、ポルターガイスト現象も当たり前のように起こせる。

それに何より、お化け屋敷全体がすごくデカい。

学校と病院とホテルが1つになったような廃墟をモチーフにしているようで、真っ昼間で人だかりの中にあるにも関わらず見ているだけで怖い。

 

「大丈夫、ギンガ? 無理しなくていいんだよ?」

「ダイジョウブダYO、ファーザー」

「今度はギンガがかよ」

 

先ほどのコースターの時と同じく、今回はギンガがお化け屋敷を前に固まってしまった。

そんなギンガを尻目に、ティアナとスバルは目をキラキラさせている。

スバルって苦手なアトラクションはないのかな。

さて、ここもコースター同様に2人1組で入るようもので、ゲンヤさんとギンガは外で待っていて、ティーダとスバルとなった。

クイントさんは、お化け屋敷は1人でスリルを楽しみたいという事だ。

どこまで姐さん気質だなぁ。

 

「じゃ俺はギンガとここで待ってるからお前たちだけで 「行く!!」 お、おぅ? 大丈夫なのかギンガ?」

「うん、行く! 私も行きたい! だからいこっ、お兄ちゃん!」

「えっ? お、おい、ギンガ? そんなに引っ張るなよ。いててっ、また左手がぁー!?」

 

お化けが大の苦手なギンガはゲンヤさんと待っているはずだったのだが、ティアナとスバルが楽しそうなので触発されたのか、意気揚々と俺を引き摺りながらお化け屋敷に突入していった。

今回はシェルブリットを持っているので、念のため身体強化をしてもらったから左手がつぶれることはない。

ティアナよりも握力が強いギンガに握られたら粉砕されそうだ。

 

「で、意気揚々と入ってきたというのにさ、ギンガさんや」

「な、なななにかな、お兄ちゃん?」

「どうして目をつぶったまま俺の背中に張り付いているのかな?」

 

薄暗い屋敷に突入した途端、俺を引っ張っていたギンガが、目にも留まらぬ速さで俺の背中にがっしりとしがみついてきた。

しかも、両目もがっつりと閉じている。

 

「いや、いやいやいや、ナンデモナイヨー? ただせっかくお兄ちゃんと2人きりだから、ム、ムードをね?」

「………そういうセリフはあと10年くらいたってから言おうな」

 

セミのように背中に張り付かれてムードも何もあったもんじゃないんだが、しかもお化け屋敷で。

このままここにいても、他のお客さんに迷惑かかるので仕方なく先に進むことにした。

建物内は薄暗いとはいえ、足元はしっかり照らしだされていて、最低限の明かりはついている。

お化け屋敷としてのムードは満点だ。

 

「ひゃぁああ~!!? い、いま何か背中に~~!!」

 

ギンガの首に何か冷たい水でも落ちたのか、大暴れしだした。

で、当然その被害はギンガが張り付いている俺にくるわけで。

 

「いだだだっ! ギ、ギンガ、痛いから! つねるなぁ!」

 

身体強化魔法がなかったら背中の皮が引きちぎられてたかもなぁ……

 

「うぎゃぁ! だ、だれかいるの~!?」

 

どこからか生暖かい風が、まるで人が吐いた息のようにギンガの首筋を撫でるように吹いたら。

 

「ぐぐぐっ……ぎ、ぎぶぎぶ……」

 

パニクったギンガが俺の首をギュウギュウに締め付けてくる。

お化けよりも身内が怖いってどうなのよ……

 

「ぎゃーー! がいこつー!!」

「はぶっ!?」

 

目を瞑っている方が怖いと思ったギンガが恐る恐る目を開けると、そこにタイミングよく(悪く?)目の前に骸骨が大勢現れた。

俺は思いっきりギンガに突き飛ばされて、壁に激突した。

 

「あの、ぼく大丈夫?」

「お兄ちゃんは大変だね」

「あ、あははは……」

 

骸骨達に慰められたよ。

 

それからも……

 

「きゃー!? 化け猫―!?」

「今期の猫姉さん、綺麗でかっこいいよなー」

 

魔法で化けたのか、被り物ではなく首から上だけリアルな猫になった猫娘に追いかけられたり。

 

「く、くびが……」

「あぁ、首ならほら、ここにあるよ、お嬢ちゃん」

 

自分の生首を脇に抱えた騎士が立ちふさがったり。

 

「いちまいたりない……」

「わ、私の愛用の皿あげるからこないでぇ~!」

 

井戸の中から顔が半分ないお姉さんが現れたりしたが、そのたびになぜかギンガに突き飛ばされたりした。

 

「か、からだじゅうが、いたい……」

「ひくっ、っく……ごめんなさい、おにいちゃん」

 

もうギンガは限界で、半泣き状態だ。

 

「ほらぁ、もうすぐ出口につくはずだから、もう少しの辛抱だぞギンガ」

「う、うん」

 

お化けも段々でなくなってきて、もうすぐ出口かと思ったその時だった。

 

――バチバチッ

 

「えっ、な、なに? まっくら?」

「これは、停電かな」

 

突然何の前触れもなく建物内の明かりが全て消えてしまった。

足元を照らしていた明かりすらも消えている所を見ると、これは仕掛けではなく本当に停電したようだ。

動かずじっとしているのが良いと思うけど、こう真っ暗じゃギンガも怖いよな。

よしっ、俺が魔法で灯りをつけるか

 

「お兄ちゃん、こわいよぉ……」

「大丈夫だ、ギンガ。今灯りをつけるから。ちょっと待ってろよ」

 

こういう暗い所を明るくするときはどうするかは、教わっている。

魔力で小さな球を出してそれを灯りにするやり方や、全身を発光させるやり方など色々ある。

俺は人より魔力が多いから、全身を発光させた方が明るくなる。

まずは集中させて、魔力を全身から少しずつ出していくイメージ。

すると、すぐに俺の全身から赤い魔力がじわじわ浮かび上がってきて、段々と辺りを照らし始めた。

 

「どうだ、ギンガ、これで少しは明るく……」

「きゃーー! おばけーーー!」

 

――メキョリッ

 

「なんでさーーー!?」

 

なぜか知らないけど、突然ギンガに殴り飛ばされてしまった。

あまりに突然の事だったので、受け身も取れず俺はそのまま気を失った。

 

後で聞いた話では、赤い光を出す俺の姿がギンガには、人魂を連れた幽霊が現れたように見えて怖かったんだそうだ。

 

今日の俺、全身ボロボロ。

 

 

続く

 




はい、ティアナとギンガのターンでした(笑)
今までは精神的な女難でしたが、今回は物理的な女難が多い気が……

がんばれ健人(ォイ)


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第42話「二度ある事は、何度もいらない」

お待たせしました!
浮かんじゃったネタは使わないともったいないよね!


お化け屋敷でギンガに思いっきりぶん殴られ、一撃必倒のクイントさんの教えはしっかりとギンガに受け継がれていると実感した俺。

あの後、騒ぎを聞いて駆けつけてきたお化けの恰好した係員さん達を見て、恐怖が臨界突破して卒倒したギンガ。

結局、係員さんに助けられた俺とギンガ。

目が覚めるとギンガが涙を流しながら謝りっぱなしだった。

で、それを宥めていると二日目が終了してしまった。

 

 

そして、三日目。

ホテルの朝食バイキングで今日の予定が発表された。

 

「さぁ、今日はグルメランドめぐりよ!」

「「「わーい!」」」

 

乗ってない乗り物やアトラクションはまだまだあるけど、クイントさんの鶴の一声で今日は食道楽となった。

流石は 【次元世界最大級のアミューズメント都市誕生!】 と謳い文句にあげてるだけはあるこのレジャーランド、レストラン街も半端なく広い。

ミッドだけじゃなく、様々な次元世界のデザート専門店やドリンク専門店、はたまた駄菓子専門店など多種多様な名店をそろえている。

レストラン街だけで1日時間をつぶせるらしい。

昨日俺が散々な目にあったから今日は休憩を挟んで、というクイントさんとゲンヤさんの気遣いだ。

 

「しかし、よく食べるね。ギンガちゃんもスバルちゃんも」

「あぁ、クイントの娘だからな。もっとも、一番食べるのはクイントだけどな」

 

テーブルいっぱいに積まれた皿の山を見て苦笑いを浮かべるティーダとゲンヤさん。

山と積まれたこの皿の料理の数々、俺も結構食べたけどほとんどはクイントさん、ギンガ、スバルの三人が食べた結果だ。

まぁ、俺やゲンヤさんはもう慣れっこで、ティーダとティアナも少しは慣れた風景だ。

1日目の昼食でクイントさんが用意した弁当の山。

そして、夕食でのバイキングで、2人は初めてナカジマ家女性陣の食欲のすごさを体験して目が点になっていて面白い顔をしていたな。

 

「こ、こんなに食べたばっかりなのに、大丈夫?」

「うん、これくらい朝飯前だよ、ティアナちゃん」

 

これだけ食べて今日一日食べまくる気満々なギンガとスバルに、ティアナは一昨日同様目を丸くして驚いていた。

 

「いや、正確には朝飯後だけどね。だけど、食道楽かぁ」

「あはは、健人君も楽しみにしているね」

「健人も育ちざかりの男の子だからな。ギンガとスバルばかり目立つが、こいつも結構食うんだぜ?」

「だって、ミッドや他の世界の料理もたくさん食べれるんだよ。楽しみに決まってるでしょ!」

「そういえば、健人君は地球生まれだったね」

 

よくこっちのみんなに忘れられがちだけど、俺は地球出身だ。

正確には別世界の地球生まれだけど、それでも地球人。

ミッドという全くの別世界での料理には興味津々となるのは当たり前。

ただでさえ生前は食事制限で点滴だけの時もあったくらい。

それがこっちに来ては食欲モリモリ。

加えて、アースラの料理もクイントさんの手料理も未知の味でおいしかった。

まぁ……スカさん所では、最初は固形食とかそういう系ばかりで少し萎えたけどね。

ともかく、そういうわけでひそかにレストラン街も非常に楽しみにしていたのだ。

 

「さーみんな、沢山食べまくるわよー!」

「「「おおーー!」」」

 

と、意気込んでレストラン街をズンズンと突き進む大食いガールズ+俺。

朝食を済ませたばかりなので、まずはデザート系を攻めることにした。

 

「わっ、このたこ焼き大きい!」

「タコさんも大きい! けど、すごく食べやすい!」

「量より質なんだなこのたこ焼きは」

 

通常の2、3倍はあろうかという巨大タコ焼き。

というか、デザートからといいつつ最初から結構重いんだけど!?

 

「牛乳ソフト、すごく甘い!」

「けど、しつこくないな。これなら俺でも食べれそうだ」

「ランド内にある牧場から毎朝新鮮な牛乳取って、それを使ってるのがウリの1つみたいですね」

 

甘いものはそこまで好きじゃないゲンヤさんも大満足の牛乳ソフト。

 

「す、すっぱっい!」

「あはは、ギンガ達にはまだ早かったな。健人は大丈夫か?」

「すっぱいけど、このせんべいにつけて食べると美味しい。ティアナもどう?」

「う、うん……すっぱい! けど、おいしいかも」

「この麩菓子食べても食べてもキリがない」

「あら、なら私が半分食べるわよ、ティーダ君」

 

駄菓子屋巡りで色々な駄菓子を食い漁った。

この店は生前、テレビで見たことがある昔ながらの駄菓子屋をイメージして作られて……

 

「って、さっきから地球の食べ物ばっか!?」

「あら、そういえばそうね」

 

このエリアに入ってから片っ端から食べまくって行ったのだが、どれもこれも地球の食べ物ばかりだ。

とは言え、生前あまり普通の食事をしてなかった俺にとっては、例え地球の食べ物でも新鮮だ。

こっちの地球にいた頃はあまり外食せず、はやてとかプレシアさんとかの手料理ばっかだったしな。

 

「どうやらこのランドのオーナーの先祖が地球出身らしくて、それでレストラン街に地球展みたいな感じで作ってるみたいですよ」

「へぇ、あなたと同じね」

「あぁ、なんだか親近感がわくな」

 

ここのオーナーはゲンヤさんと同じく、先祖が地球出身者なのか。

だから、レストラン街の入口に地球関係の店を固めたってわけか。

 

「奥に行けば、他の次元世界のお店も結構あるみたいですよ。けど、地球出身の健人君には物足りないかな?」

「そんな事ないですよ。なんだか懐かしいですし」

 

実際は食べた事ないものばかりだから嬉しいんだけどね。

 

「でも、私もギンガ達も地球の料理はほどほどに食べているし。せっかくだから奥に行きましょうか。ティーダ君とティアナちゃんもいいかな?」

 

クイントさんの手料理はミッド系が多いけど、それと同じく地球の料理も多い。

はやてや、なのはの母、桃子さんと知り合って教えてもらっているそうだ。

 

「えぇ、僕も構いませんよ。ティアナはどうだい?」

「も、もう無理。少し休む……」

 

ティアナのお腹は少し膨らんでいるように見える。

ギンガとスバルに付き合って、結構な量を食べてたもんな。

 

「ティアちゃん、あまり食べないんだね。私はまだまだ食べれるよ」

「私も!」

「嘘っ!?」

「ティアナ、あの2人のペースに合わせてたらお腹壊すよ?」

 

俺はまだまだいけるけどね。

しばらく進むと、広場に出た。

ここは、ドリンクやお菓子系のお店がぐるっと広場を囲んだフードコートみたいになっている。

そして、広場の奥には巨大なステージがあり、スタッフが何かの準備をしていた。

 

「ん? どうやらもうすぐショーが始まるみたいよ」

「あら、ヒーローショーかしら。せっかくだし、休憩がてら見ていきましょうか」

「ティーダ、悪いけど子供達見ててくれや。俺とクイントは飲み物買ってくる」

「わかりました」

 

結構混んでいるけど、ちょうどステージ間近のテーブルが空いていたので俺達はそこに座った。

ここならステージ見やすい、というか近いくらいだ。

あれ? 何か、嫌な予感がしてきたぞ。

 

「ヒーロー♪ ヒーロー♪」

「スバルってヒーローもの好きだよね」

「前に銀行で本物のヒーローさん達に助けられて、それからハマっちゃったんだって」

 

それ、ナンバーズの事だよな。ヒーローじゃなくてヒロインだし、プ◎キュア?

そこへ飲み物とスナックを乗せたトレーを持って、クイントさんとゲンヤさんが戻ってきた。

 

「はい、お待たせ。おかわりはしてもいいけど、他の料理食べれなくなっても知らないわよ……って遅かったわね」

 

クイントさんがトレーを置いた次の瞬間には、トレーの上にあったスナックは綺麗さっぱりなくなっていた。

 

「「ごちそう様!」」

「いや、速すぎでしょ!?」

「あはは。まぁ、こっちはこっちで食べるとしようか」

 

俺とティーダはゲンヤさんが持ってきてくれたトレーのスナックを食べつつ、ショーが始まるのを待った。

 

『それでは、これより特別ショー。機人戦隊ナンバーズ VS リリカルショッカー を始めます』

 

――ワーッ!パチパチ!!

 

アナウンスと共にあちこちから歓声と拍手が巻き起こった。

周りを見渡せばいつの間にか、立ち見も含めたギャラリーが大勢集まっていた。

どうやら、このショーは大人気のようだ……ナンバーズ!?

 

「まさか、あいつら……」

「? どうしたのお兄ちゃん? はじまるよ?」

「あ、うん。なんでもないなんでもない」

 

思わず叫びそうになった俺だったが、どうにかこらえた。

クイントさんやティーダも怪訝な顔をしている。

そりゃそうだよね。

 

――新暦X年、ミッドはブレイカーの炎に包まれた。

 

どっかで聞いたことあるようなナレーションが流れると、ステージ一面に黒い霧が立ち込めた。

 

――わずかに生き残った人類は、新たな居住世界を求め旅立った。

 

――そして、新たな惑星フリーザへと降り立った人類はそこで一から文明をやり直した。

 

――だが、その惑星フリーザをわが物とすべく、宇宙からリリカルショッカーと名乗る異星人が攻めてきた。

 

……どこからツッコミすればいいか、わからないや。

 

「わはははっ、我らはリリカルショッカー! 素直にこの星を渡せ!」

 

ステージ上で逃げ回る人々の上空に巨大な宇宙船が現れ、そこから無駄に凝ったディティールのエイリアンが降り立った。

宇宙船はもちろん映像だ。しかし、エイリアンのスーツといい、まるで映画のようだ。まさに魔法技術の無駄遣いだな。

 

「くっ、せっかく見つけたこの星を渡すものか!」

「そうか、ならば仕方ない。おい、1人子供を人質にしろ!」

「イィー!」

 

これまた無駄に凝った戦闘服を着た戦闘員らしき人がステージから降りて、客席を見渡した。

どうやら人質役を探しているようだ。

 

「はいはいはーい! 人質! 人質になります!」

 

と、ここで元気よくスバルが手を挙げた。

 

「う、うむ、活きのいい娘だな。よしっ、連れてこい!」

「イィー!」

「やったー♪」

 

満面の笑みで人質になっていくスバル。

これには流石にナカジマ夫婦とティーダは苦笑いを浮かべている。

ギンガは若干羨ましそうに見ていて、ティアナは呆れ気味だ。

その時だった。

 

――まてーい!

 

広場に響くほどの大音量で誰かの叫びが響き渡った。

 

「むっ、誰だ!?」

 

――むっ、誰だ!? と聞かれたら(どうみてもクアットロ)

 

――答えてあげるが世の情け(ウーノなお姉さん)

 

あ、この口上はやっぱり……

 

――天が呼ぶ、地が呼ぶ(ドゥーエにしか見えない)

 

――おばあちゃんが言っていた(セイン)

 

…………

 

――さぁ、お前の罪を数えろ!(やけっぱちなチンク)

 

――私達、参上!(諦めきったディエチ)

 

――機人戦隊ナンバーズ!(一番声がでかいトーレ)

 

――このナンバーズ印が目に入らぬか!(いつの間にか印籠作った殺生丸)

 

――ババーン!

 

ナンバーズが名乗りを上げると同時に花火が上がり、観客達のテンションは最高潮になっていた。

逆にクイントさん、ゲンヤさん、ティーダの3人は真っ白になって固まっていた。

 

「お、お兄ちゃん!? いきなり地面に倒れこんでどうしたの!?」

「あれ? 兄さん達もどうしたの?」

「……この展開、ちょっと前に見たばっか」

 

あぁ……なぜか知らないけど、胃が痛い。

 

 

 

続く




ナンバーズ、作者も想定外で早くも再登場(笑)
早くほかのナンバーズも出したいんですけど、それはもうちょっと後で。


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第43話「死闘!ナンバーズvsリリカルショッカー!」

お待たせしました!

書いてて思ったこと・・・なんだこれ


ヒーローショーに突然現れた奇人戦隊ナンバーズ(誤字にあらず)

ステージとは客席を挟んだ反対側にある、高台の上に立つ8人。

俺はもちろんだが、クイントさんにゲンヤさん、ティーダまで固まっている。

まぁ、スカさん達は、本局地上問わず管理局じゃ有名人になってるしな。

それにしても、この前マテリアルズの事があったばかりなのに、わずか数日でもう再会かよ。

あの後、念のためじっくりと俺の身体とシェルブリットを検査してもらって何も出なかったけど、どっかに発信機付けられてるんじゃないだろうな。

 

<本当はこっそり付ける予定だったが、ウーノとクアットロがぶん殴って止めてたぞ>

『あ、やっぱりか』

 

で、そんな俺達とは対照的に、ギンガ達はナンバーズの登場に目をキラキラさせている。

特に以前助けてもらって、憧れの対象になっているスバルは興奮して手をパタパタ振り回して……って、あぁ~あ、一応スバルを人質に取っていたショッカー戦闘員さんがぶっ飛ばされたし。

どうすんだよ、これ。

 

『……さぁ、みんなのヒーロー、ナンバーズが助けに来ましたよ! みんなでナンバーズを応援しよう!』

 

ナレーションの人、見なかった事にするようだ。それがいいネ。

 

――ガンバレー!ナンバーズー!

――キャーイクサーン!

――パンパースー!

――チンクーオレダーケッコンシテクレー!

 

結構人気があるようで、老若男女問わず客席から声が上がった。

一部の声援に関しては聞かなかったことにしよう。

 

「フハハハッ! また会ったなショッカーの諸君! 幼い子を人質に取るとは、相変わらず下劣な輩め!」

 

スカさんノリノリすぎ。言い回しもなんか悪役っぽい気もする。

ウーノ達も顔こそ出してるが全身黒いコートを着込んでて、まるでどっかのⅪ機関だ。

それと、人質になってる幼い子は、戦闘員1名ダウンさせて、興奮しながらそばにいる幹部っぽい人の背中バシバシたたいてるからね?

幹部さんもなんか気持ちよさそうな表情浮かべてるし!?

 

「黙れ! ナンバーズ! 今日こそ決着をつけてやる!」

 

おぉ、ショッカーのボス役の人、いい声してる(ドモン・カ〇シュっぽい声)

これ、ますますどっちが悪役かわかんねぇ。

 

「行くぞ、ナンバーズの諸君! チェンジだ!」

「「「了解! チェンジ・ナンバーズ!」」」

 

スカさんの号令とともに、ウーノ達は一斉にコートを放り投げた。

 

――~~♪

 

プ〇キュアっぽいBGMが流れて、ウーノ達にスポットライトが当てられた。

ここ、オープンステージなのに意味あるのかな。

と、思ったらどうやらあのライトは、当てた先を暗くする効果があるようだ。

ウーノ達はそれぞれ黒い●の中に隠れてしまった。

◎ラえもんにこんなライトあったなー。

 

「チェンジ・ナンバーファースト!」

 

ライトが消えると同時に、いつの間にか変身したウーノが現れた。

と言っても、たぶんあれコートの下に着込んでたんだろうな。

ウーノの服装は、前に銀行強盗の時に見たビッチリスーツとも、マテリアルズ事件での黒いラバースーツとも違う。

白地に肩から先と、スカートが青紫色をしたスーツ。

どう見ても戦闘用には見えないけど、これがStsでの正装だったのかな。

アジトにいたときはただの白衣だったしな。

まぁ、前までのボディラインがばっちりでるビッチリスーツよりはましか。

 

「チェンジ・ナンバーセカンド!」

 

続いて現れたドゥーエ。

彼女の服装は見た目はウーノと同じだけど、白地と青紫の部分が真逆になっている。

だからなんで戦闘用に見えない服にしてるんだよ。

今までのラバースーツとかの方がよっぽど戦闘服っぽかったぞ。

あ、それともこれがヒーローショーだからそういう系(?)のにしてるのか?

 

「チェンジ・ナンバースサード!」

 

トーレは……なんでタンクトップだけなんだ!?

ズボンもタンクトップも真っ黒にして、両手には黒いグローブをつけている。

いや、前の2人よりは戦闘用に見えるけどさ。

トーレの胸のでかさが更に強調されとるがな……イテテテッ!? 

な、なんだ!? 太腿思いっきり抓られたぞ!?

横にいるのは、今はギンガだけだし……ゾワッ!

 

「?? どうしたの兄さん?」

「イエ、ナンデモアリマセン」

 

コワイヨーコワイヨー

 

「チェンジ・ナンバーフォー!」

 

さて、気を取り直してクアットロ。

眼鏡はそのままで三つ編みで、左手には楯のようなもの持ってて、右手にホチキス、衣装は青を基本とした和服で頭になぜか狐耳って色々盛りすぎ!

これは、あれだ突っ込んだら負けだ。

なんかクアットロからつっこめつっこめって熱い視線を感じる気がするけど、気のせいだ!

てか、クアットロ、お前はそういうキャラじゃないと信じてたのに……orz

 

「ちぇんじ・なんばーふぁいぶ」

 

とってもやる気のない声と共に姿を見せたのは、チンク。

萌黄色のワンピース・スカート、腰から後ろに突き出た薄緑色のマントに、深緑色のスパッツを穿き、ブーツカバーのようなショートブーツ。

うん、どこからどうみてもキュア◎ーチです、ありがとうございます。

あ、目からハイライトが消えてる。

 

「チェンジ・ナンバーシックス!」

 

セインは……うん、好きにティロってなさい。

マミられないようになー

 

「ちょっと、今なんか雑な扱い受けたぞー!」

 

はいはい。ショーの真っ最中に客へリアクション取ってはいけませんよー

 

「いくぞ、リリカルショッカー!」

「こぉい! ナンバァーーズ!」

 

トーレの掛け声と共に一斉にステージ上のショッカーに向けて飛び掛かるナンバーズ。

あれ? 1人足りないぞ?

高台には、なぜか冷や汗かいてチラチラ下を向いているスカさん。

あ、今気づいたけど、スカさん衣装が殺生〇からブライト〇長に変わってる!

あんたも衣装変わるんかい!

 

「い、いたたたっ……」

 

そして、高台の下には頭にタンコブを作ったディエチの姿が。

あー落ちたのか。

 

「大丈夫かいディエチ?」

「あ、はいドク……司令。すみません。足を滑らせてしまって」

「いや、いきなり暗くなるのはやはり危険だったな。さて、続けられそうかい?」

「はい、もちろん! 行ってきます!」

 

――ネェチャンガンバレヨー!

――キャーディエチサーン!

 

微笑ましいやり取りに、観客からも声援があがり、ちょっと照れ臭そうにしながらもステージにあがっていくディエチ。

それからナンバーズとリリカルショッカーの戦闘が本格的に始まった。

ヒーローショーだから大したことないなーと思っていたのだが……

 

「はぁ!」

「やるね、セカンド姉ちゃん!」

 

ドゥーエの鉤爪をショッカー幹部の1人が手に持ったショッカーマークが入った旗で応戦している。

てか旗を武器にするって、どっかの聖女様じゃあるまいし。

 

「ヘヴィバレル!」

「灼熱! バルカンパーンチ!」

 

こっちではディエチの撃ったいくつもの砲撃を、バルカンのように打ち出された拳で幹部が迎撃している。

爆発がすごい事になってるけど、結界のおかげで客席には爆風も熱も来ないのは流石というか技術の無駄遣いというか。

 

「ランブルデトネイター」

「ローズサイクロン!」

 

チンクが放った数十本のナイフと、幹部が放った薔薇っぽいナイフが激突している。

あんたらどっからそんなに武器持ってたんだってくらい放ってるな。

 

「へっへー、おーにさんこちら!」

「この! こっちか! そっちか!」

 

他の幹部たちとの戦闘は、こっちまで伝わるほどの緊張感なのに、セインの所は違った。

あちこちの地面から出てきて舌を出したり、指を立てたりして挑発するセイン。

対して、幹部は鎖付きのハンマーを何度も投げつけているけど、当たらない。

まるでもぐらたたきみたいだ。

あーそんなに激しくしたらステージが……壊れてない、だと?

 

「ふはははっ、私が提供した技術で作られたこのステージ。そう簡単に壊れると思わないことだ!」

「あんたの提供かよ!」

 

通りでこのパーク所々悪趣味だと思ったら、スカさんが入れ知恵したんかい!

 

「最初はただの小遣い稼ぎだったのに、段々とドクターが熱入れちゃって」

「結構技術提供料貰ったから、ついでにヒーローショーも手伝うことになったのよ」

「あーなるほど、ってクアットロにウーノ!?」

 

いつの間にか隣の椅子にクアットロとウーノが座っていた。

 

「そこだ、いっけー!」

 

で、クアットロの膝の上にはスバルがちょこんと座ってステージを観戦していた。

 

「……何してるんですか、2人とも」

「私達は人質救出係よ」

「もう役目は果たしたから、出番はないのよ」

 

そう言って、ウーノはステージに目がいったままのスバルを俺の膝の上に移動させた。

 

「だからって……」

「まぁまぁ、細かい事は後にして健人君。ショーも大詰めみたいだよ」

 

ティーダの言うように、ステージ上ではショッカー幹部が全て倒されて、残っているのはトーレが対峙しているボスのみだ。

 

「ふっ、残ったのはお前だけのようだな。どうする、リリカルショッカー!」

「まだだ! まだこの俺が立っている! 先に散ったみんなのためにも負けるわけにはいかない!」

 

だから、どっちが悪役なのかわかんないっての。

 

「その意気やよし! 最後の勝負だ、デモン!」

 

あ、デモンっていうのねショッカーのボスって。

 

「ならば、行くぞ! 俺のこの拳が真っ青に光る! 勝利を砕けと、煌めき吠える! 必殺! デモンナックル!」

 

勝利くだいちゃだめでしょ!

 

「来い! インパルスブレード!」

 

――ドォーーン!

 

デモンの拳とトーレのブレードが激突し、大爆発が起こり煙で包まれた。

防御結界のおかげでこちらには伝わってきてないが、ステージ全体が大きく揺れているようだ。

やがて、煙が晴れると、まだ2人はどちらも立っていた。

しかし、デモンの身体がぐらりと揺れた。

 

「倒れるときは、前のめり、だ」

 

――バタッ

 

『勝者、ナンバーズ!』

 

――ワァーー!

 

デモンが倒れ、リリカルショッカーはこれで全滅し、ナレーションのお姉さんが高らかにナンバーズの勝利を告げた。

客席からは割れんばかりの拍手と歓声がいつまでも続いた。

スバルとギンガ、それにティアナまでも他のみんなと一緒に立ち上がって、感動したのか3人とも涙を流して力の限り拍手していた。

そんな3人を苦笑いで見つつ、拍手を送る大人組。

あ、俺も拍手したよ? 思っていたよりは面白かったからね?

けどさ……

 

「なんだこれ」

 

 

 

続く




正直、最初はショーはあっさり終わってナンバーズとクイント達との会話がメインになるはずが、いつの間にかこうなりました。

どうしてこうなった(・・?


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第44話「ヒーローの裏設定は知らないほうがいい」

お待たせしました!
北海道はやーっと暑さが落ち着いてきました。
先週後半は寒いほどでしたし…


ヒーローショーが終わり、ティアナに変な事を吹き込んだ事とか色々話があったのでスカさん達を探した。

だけど、彼らは今日の日給をもらうととっとと撤収したらしい。

ちっ、逃げられたか。

ちなみにクイントさんもスカさん達ナンバーズに何か用があったようで、悔しがっていた。

 

「色々聞きたいことがあったのに」

「ま、まぁ、別に悪いことをしてるわけじゃないんですし」

「それに、この前リンディ提督やクロノ執務官が事情聴取したんだから、一先ずはいいだろ」

 

ナンバーズは今の所、要注意集団ではあるが、犯罪者集団という認識は管理局ではされていない。

本局としては面目を潰されるだけで、厄介な集団とは思われているようだけど、地上本部側は好意的に捉えている。

マテリアルズ事件で殺生丸、もといスカさんが事情聴取受けたのは、地上本部にも伝えられている。

で、その報告を聞いたレジアス中将が、何やら意味深な笑みを浮かべていたから、オーリスさんにぶっ飛ばされたそうだ。

何を企んでいるのやら。

 

「そっちじゃないわよ。以前、健人君がお世話になってた時の話を聞きたかったなーって」

「なるほど……って俺?」

 

なんで俺の事をいまさら?

 

「ほら、ナンバーズってみんな綺麗な子ばかりだから、だれか健人君に手を出して……はい、何でもありません。だからそんな睨まないで健人君?」

 

全く、ギンガやティアナの前で何を言い出すんだこの人は。

 

「手を出すって、ナンバーズってロケットパンチができるの!?」

「うーん、ゴムみたいに伸びるんじゃないのかな?」

 

スバル、ギンガ、お前達はそのまま純真な心のまま育ってくれ。

 

「えっ、健人さんって、手籠めにされたの?」

「されてない! いや、待った。ちょっと待った。ティアナ、今なんて言ったのかな?」

 

出来れば聞き間違えであってほしいなぁ。

 

「? 手籠め?」

 

途端にクイントさんとゲンヤさんからの厳しい視線を向けられるティーダ。

ティーダはティーダで、冷や汗ダラダラだ。

 

「ティアナちゃん、その言葉一体どこで知ったのかな?」

「この前、お兄ちゃんの部屋で見た漫画に……むぐぐっ!?」

 

あ、ティーダがティアナを超高速で向こうの茂みに連れ去った。

すごく速いなー。トーレのライドインパルスよりもずっと速かったぞ。

 

「?? ティーダさんの漫画ってそんなに面白いのかな?」

「頼むから2人はぜーーったいに興味を示さないように、ほんとにお願いします!」

 

まだこの2人には早すぎる……って、ティアナも早すぎる!

 

「まぁ、ティーダもお年頃、だからな」

「そうよね。あなただって未だに隠し持ってるくらいだものね」

「あぁ……って、まさかクローゼットの隠し扉開けたのか!?」

「ほほう。やっぱり持ってたのね、あ・な・た?♪」

「ギクッ!? い、いや、健人に今後必要になるだろうからと思ってな……」

「健人君をダシに使ってるんじゃないわよ!!」

 

夫婦漫才やってる2人はほっとこう。

 

「ティアが読んだ漫画、今度ティーダさんに見せてもらおっか」

「うん! 読みたい読みたい!」

 

今はこの2人の関心をどうにかしないと、穢れてしまう!

 

 

 

それから何事もなかったかのように昼食を食べて、食べ歩きを再開した。

自分で言っておいてなんだけど、昼食後に食べ歩き再開って……

 

「ここから先は各次元世界の専門店ばかりなのね」

 

と言っても各世界毎に店があるわけじゃなく、居酒屋のような個室がいくつもあり各部屋にあるメニューから選んでウェイトレスさんが運んでくるシステムのようだ。

店内がすごく広く、個室も数多くあるのでウェイトレスさんも徒歩ではなくウェイクボードみたいなデバイスに乗っている。

あのボードどっかで見た記憶あるけど、気にしないでおこう。

あと、ウェイトレスさんの服装が統一されてないのも気にしないでおこう。

俺たちが案内されたのは、和食レストラン風の造りの個室だ。

 

「へぇ、メニューも全部空間モニター形式なのね。さすが、進んでるわ」

「ほう。料理名だけじゃなく、どこの世界の料理で、どういった味なのかアレルギー情報まであるのか」

「しかも各料理は量の種類豊富ですね。10人前とかありますよ。クイントさんにはピッタリですね」

「あらほんとね~……ティーダ君? どういう意味かなぁ?」

 

クイントさん達が驚嘆しっぱなしだけど、確かにここのメニューは子供でも分かるように見やすい。

見やすいけど、メニューそのものの種類が多すぎて選ぶのに困るな。

一応、肉メインとか魚メインとか麺類とか細かく分類されてるけど、ゲテモノ系ってなんだ。

あと、胃薬とかすぐ空腹になる薬とか、怪しいものまであった。

 

「うーん、どれがいいかなぁ。お姉ちゃん決まった?」

「私もまだ決まらないよ。ティアはどう?」

「……昼食食べたばかりなのに、よく食べれるよね、健人さんも」

 

驚き半分呆れ半分のティアナはデザート系をせめるようだ。

なんだかんだ言ってティアナも結構頼んでいるんだけどな。

 

メニューを睨む事しばらく、ようやくみんなの頼むものが決まった。

クイントさんもギンガ達も、ここでは量より数で攻めるようで、少量の料理を沢山頼んでいた。

少量といっても、ゲンヤさんやティーダから見れば十分に大盛らしい。

俺から見ても少量だと思うんだけどな。

 

「さって、料理が来るまで……「料理お持ちしました!」……早すぎじゃない?」

 

料理を頼んでから2、3分で到着した。

いくらなんでも早すぎるだろ。

あれ? 今のウェイトレスさんの声、聞き覚えあるぞ?

 

「お待たせしました~♪ こちら、ご注文いただき……っ!?」

 

ウェイトレスさんは個室のドアを開けて、すぐに閉めた。

 

「えっ、何? なんで今ドア閉じたのかしら?」

「さぁ……」

 

俺の座ってる位置からは顔まではよく見えなかったけど、声はスバルに似ていたな。

それから、2秒ほどたって、またドアが開いた。

 

「お待たせしました、ご主人様♪ ちょっと誤ってドアを閉めちゃいました♪」

 

入ってきたウェイトレスさんの姿を見て、俺たちは固まった。

両手と頭に起用に料理の乗ったトレイをもって現れたのは、キツネっぽい獣耳をして青い着物を着た女性だった。

というか、クアットロだった。

 

「お、おう。早い、な。ところで、さっきと服装変わってないかい?」

「あ、これですか? 可愛らしいお子様やかっこいい殿方もいることですし、サービスですわ♪」

「わぁ、お姉さん、綺麗! それにかっこいい!」

 

まだ固まる俺たちをよそに、ギンガ達は目をキラキラさせて玉藻、もとい玉ットロを見ている。

 

「あれ? お姉さん、スバルと声が似てる?」

「わお! そこのお嬢ちゃん、スバルちゃんというのでしょうか? 確かに私と声が似ていますわね。これはまさに運命 (Fate)! ということで、そこの僕? 記念に、モフります?」

 

なんか自分でも何を言っているのかわかってないのだろう。

玉ットロは混乱している。

と、そこへ音もなく玉ットロの後ろにもう1人ウェイトレスさんが現れて、玉ットロに拳骨を落とした。

 

「うきゅっ!?」

「はい、そこお客様を誘惑しない! お客様、うちのウェイトレスが大変失礼いたしました。どうぞごゆっくりお楽しみください」

 

ウェイトレス姿のウーノが、玉ットロの首根っこを捕まえて個室から出て行った。

 

「い、今の一体何だったのかしら? 健人、お知り合いの方、じゃないわよね?」

「ううん、シラナイヒトダヨ? ソレヨリ、リョウリタベヨ?」

「「「………」」」

「あれ? お兄ちゃん、目に光ないよ?」

 

それからもウェイトレスさんが料理を運んできてくれた。

でも、玉ットロではなくハウマッチとあだ名が付きそうな服装したチンクだった。

ここはコスプレレストランなのか?

チンクが運んできた料理の説明をしているとき、少しだけ念話で話ができた。

 

『すまないな。ショー以外でもここでバイトしているのだ』

『あっ、そうなんだ……』

 

なんでも今まで研究資金を出していてくれたが、評判が最悪だったスポンサーとの縁を切った。

研究資金はそれまでの貯金や、ほかにも収入源があるので何とかなるが、ナンバーズ活動の少しでも足しにするために最近は色々とアルバイトをこなしているのだとか。

ボランティア活動もタダではできないから、仕方なく、だそうだ。

 

『ちなみにクアットロは、穴が入ったら入りたいとブツブツ言って使い物にならないので厨房に籠っている』

『一応、羞恥心はあったんだ』

 

「それでは、お客様。もう少しで当店自慢のショーが始まりますのでお楽しみください」

「ショー? またヒーローショーか?」

 

思わず呟いた俺の言葉に、苦笑いを浮かべてハウマッチンクが床下を指さした。

すると、今までただの木の板だった床や天井が、ガラス張りへと変わった。

中には凄く太いチューブが通っており、中には水が通っているようで様々な色の光に照らされて幻想的な雰囲気が出ている。

チューブは普段は壁などに隠れていて見えないようになっているようだ。

周りをみるとチューブは、レストラン中に走っており、さながらウォータースライダーだ。

 

「わっ、何何!?」

「確か隣が水族館だけど、ここと床下が繋がってたのね。ほら、魚が流れてきたわよ」

 

青や赤、黄や緑などに照らされた水流の中を、これまた色鮮やかな魚たちが次々と泳いできた。

 

「毎日1時間に1回、隣の水族館にいる熱帯魚たちがここのチューブを通るんです。どうですか? 魚達をもっと見たくなったら、後ほど水族館にもぜひ、足を運んでください」

「うん、行きます! 絶対行きます! ねっ!? お兄ちゃん!」

「ははっ、ティアナは水族館行ったことなかったもんな」

 

なかなか商売上手なサービスだな。

 

「あ、イルカさんだ!」

「あれ、だれか一緒にいるよ? 人魚さん!?」

 

最後に泳いできたのは、地球と似た姿をしているが、体が七色に輝くイルカだ。

それと、一緒に人魚が泳いできた。

人魚はお客達に笑顔で手を振りながら泳いできた。

俺たちの所も通り、ギンガやティアたちに笑顔で手を振っていたが、俺の姿を見ると笑顔のまま固まってしまった。

それは、人魚の姿をした、セインだった。

セインは笑顔で手を振ったまま、イルカの背に乗って流されていった。

 

『チンク、セインに俺がここにいるって教えなかったの?』

『ふっ、そのほうが楽しいだろう?』

 

クアットロやチンクがスカさんやドゥーエの悪影響受けてるー!?

 

 

 

続く

 




さて、まだまだナカジマ姉妹ティアナ編は続きますよー

と言いつつ、ナンバーズがかかわるとそっちがメインになってきてますが(爆)


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第45話「動物と少女って癒される」

何とか9月中に間に合いましたー!


結局その日は動物エリアはいかず、翌日行くことになった。

俺達の食べるペースに巻き込まれて、普段以上に大食いしたゲンヤさんが倒れたからだ。

仕方なく早めにホテルに戻って休養となった。

ティーダとティアナも少し食べ過ぎたみたいだったしな。

今は2人そろって隣の部屋で休んでいる。

 

「す、すまねぇなぁ」

「それはいいっこなしだよ、おとっつあん」

「なんですかその三文芝居は」

 

まるでどっかの時代劇コントみたいだ。

 

「この前見た地球の番組でこんなやり取りあって面白そうだったからつい、ね」

「色白の有名なお殿様が結構ツボにはまってな。ギンガとスバルも大笑いしてたぞ」

「バカ殿! バカ殿!」

「アイーン!」

 

と思ってたらホントにそうだったよ!

しかも、ギンガとスバルまではまっちゃったんかい!

 

「DVD、はやてちゃんから貰ったのよ」

「やっぱりかい、あの関西人!」

 

お笑いと言えばはやてしか浮かばなかったよ。

なのはだったら驚きだったけどね。

 

「アリシアお姉ちゃんからはドリフってDVD貰ったよー」

「まさかのアリシア……」

 

頼むからうちの可愛い義妹達を変に染めないでくれよ……

まぁ、はやて達が染めなくてもスカさん達から影響受けまくりそうだけど。

 

 

 

そして、翌日、4日目の朝を迎えた。

一週間とは言ったが、明日には別の場所でキャンプをすることになっているので実質的にランドは今日が最終日だ。

今日回るのは最後のエリア、アニマルランドだ。

ここには各次元世界のいろいろな動物が集まっている。

水族館や小動物と触れ合える広場、地下に広がり恐竜ほどの巨大動物をバスに乗って見るコーナーもある。

まずは触れ合い広場にやってきたのだが、気が付いたらクイントさんの姿がなかった。

 

「あれ? クイントさんは?」

「あぁ、あいつなら、ほれあそこだ」

 

苦笑いを浮かべながらゲンヤさんが指さした先には……

 

「うわっ、この子可愛い。あっ、こっちの子もふわふわしてて気持ちいいわねぇ」

 

目をキラキラさせてウサギやタヌキっぽい小動物と戯れるクイントさんの姿があった。

いや、訂正。目をキラキラ、ではなく、ギラギラさせている。

いかにクイントさんが美人でも、あそこまでギラついていたら、周りにいる他のお客達はドン引きするか、見て見ぬふりをしている。

動物達もその迫力にビビッて……はいなかった。

寧ろ積極的にクイントさんの元に駆け寄ってくるものまでいる。

そのうちの1匹のしっぽが3本ある猫のような動物と目があった気がした。

 

――フッ、伊達に可愛い癒し動物やってんじゃないんですよ、旦那。

 

その猫は言葉は話さなかったが、その眼は今まで数多くの動物園で様々な種類のお客をその身1つで癒してきた歴戦の勇士にも似たプライドと自信が垣間見えた気がした。

ちょっと感動。

 

「こうなるとはわかっていはいたが、ああなったクイントはしばらく止まらないぞ。さて、お前たちはどうする? ここでしばらく遊んでいくか?」

「うーん、もっといろいろなお魚さん見たい!」

「うん、私も水族館がいい! ティアナちゃんは?」

「わ、私も水族館いきたい」

 

ちびっ子3人は水族館がお望みのようだけど、しっかりとクイントさんに背を向け、視界に入れないようにしてるのはバレバレだぞ。

ティアナなんて少しおびえちゃってるし!

かくいう俺も、今のクイントさんの傍で動物と遊ぶ勇気はない。

 

「じゃ、俺はクイントとここに残ってるから、悪いがこの子達頼めるか、ティーダ?」

「えぇ、いいですよ。お二人でゆっくりしてください。じゃ、行こうか、みんな」

 

こうして、監視……付添としてゲンヤさんが残り、俺達はティーダに連れられて水族館へとやってきた。

チンクの話だと、ここでもナンバーズがバイトしてるんだったな。

昨日はセインの人魚姿見られたけど、また人魚になってたりするのかな。

結構似合ってて綺麗だったからまた見たいなーと水族館の中に入って行くと……

 

「いらっしゃー……い“!?」

 

なんとそこに待っていたのは、入口でちびっ子達に風船を配るどっかで見たことある魚の着ぐるみを着たセインだった。

彼女は魚の口から出た顔をこっちに向けると、昨日同様そのまま固まった。

 

「あ、コ◎キングだコ◎キング!」

 

スバルが一目散に〇イキングに駆け寄ると、セインはすぐに再起動しスバルに魚の姿をした風船を渡した。

切り替えの早さは流石プロだな。

てか、スバルよ。目の前のコイキ〇グは、お前が憧れるナンバーズの1人だって気付いてないのか。

ギンガとティアナにも順番に風船を渡し、俺の番になるとコイキングがずずいっと迫ってきた。

着ぐるみとはいえ、口開けた魚が真正面から迫ってくるのはなかなかに怖いな。

しかも、その口の中には真顔のセインがいて、迫力満点だ。

 

「なんでお前達が今日来るんだよ」

 

コイキ〇グに食われそうなくらい密着すると、セインは小声で文句を言ってきた。

てか距離近い!

 

「なんでって言われても、今日はアニマルランド巡りだからここに来たんだけど?」

「そうじゃなくて、なんで寄りにもよって今日なんだよ! 昨日だったら人魚役だったのに、てか昨日来るって言うから……ブツブツ」

 

えっと、これはアレか? 昨日来ると思ってスタンバってました的な奴か?

 

「あー待たせたようでごめんな。昨日はあれからホテルに戻って休んでたんだよ」

「べっ、別に待ってなんか! ただ昨日ならまだしも、今日は着ぐるみ役だから見られたくなかったんだよ」

 

えっ? なにこのセイン。いつにもまして可愛い。

ただコイキン〇の着ぐるみを着てるのがマイナスなんだよな。

 

「あぁ~! お兄ちゃんがコ〇キングに食われてる!」

「ははっ、大丈夫だよ、スバルちゃん。あれはコイ〇ングが歓迎のキスしてるだけだよ。健人君はモテモテだね」

 

ティーダー!? お前何余計な事言ってるの!?

いや、確かにそう見えるだろうけども!

 

「……キッ、キスゥ~!?」

 

やっとセインが俺とほぼ密着してるこの状況に気づき、顔を真っ赤にして俺を放そうと暴れだした。

 

「ちょっ! セイン、暴れるなって! 抜けない!」

 

俺を口に加えたまま暴れるコイキン〇。

これじゃ、俺が益々コイキングに踊り食いされてるように見えちゃう!

その時、両足を誰かに掴まれ、一気に引き抜かれた。

 

――スポンッ!

 

「大丈夫? 兄さん?」

 

助けてくれたのはギンガだった、のだが。

 

「あ、アリガトウギンガ……」

 

最近分かったことがある。ギンガが俺を兄さんと呼ぶ時は、大抵目からハイライトが消えてて怖いという事だ。

 

「あれがタイプゼロ・ファースト、怖いな」

 

シリアス顔で言ってもその恰好で台無しだぞ、セイン。

 

 

セインからもうすぐイルカショーが行われると聞き、館内を見るより先にイルカショーを楽しむ事にした。

結構な大人数が詰めかけていたが、幸いな事にすぐにいい場所に座ることができた。

 

「ここのイルカは地球産らしくショーも地球のを真似したようだけど、健人君はイルカショーは初めてかな?」

「はい。水族館も初めてです」

「それは良かった。かくいう僕も少しワクワクしてるんだ」

 

ギンガ達はもちろん、ティーダもイルカショーが楽しみだったようだ。

 

――それでは、これからイルカのリース君による、ショーが始まります。

 

ワーパチパチ!

 

場内アナウンスと共に、ステージ中央に水で出来た巨大な球が現れた。

 

――キューイ♪

 

水球の中から鳴き声と共に、イルカが勢い良く飛び出してきて、客席向けて泳いできた。

 

「えっ? 空を泳いでるの?」

「いや、よく見てご覧ティアナ。イルカの周りを水が覆ってるでしょ? 魔法でイルカの道を作ってるんだよ、細かいなぁ」

 

ティーダが言うように、水球から現れたリース君の道を作るようにウォーターコースターのように水が流れている。

昨日、レストランの室内を泳いだ時と同じように、客席の周りをぐるぐる泳いでいる。

 

「リース!」

 

突然、ステージに響き渡る声と共に、水球が弾けて中から水着姿の、クアットロが出てきた。

ただ昨日同様、狐のような獣耳としっぽを付けて、パラソル片手に某メリー〇ピンズ見たく空中をふわふわと待っていた。

そこへ空中を泳いでいたリース君が駆け寄って、クアットロならぬ玉ットロがその背に乗った。

と、同時に壮大なBGMが流れ出した。

 

「そーれ!」

 

玉ットロがいつの間にか手に持っていた、輪をいくつも空中に放った。

放たれた輪は、大きく広がりそれぞれ様々な色に輝きだした。

それと同時にステージ全体が薄暗くなり始めた。

玉ットロを背に載せたリース君は空中に光り輝く輪の中を次々とくぐり抜けていく。

その度に客席からは歓声と拍手が巻き起こる。

 

てか、イルカショーってこういうもんだっけ?

生前、テレビで見ていたのとはかなり違う。

空中を泳ぐイルカと、その背に立っている水着〇藻なクアットロ。

魔法と変態の技術が組み合わさればこんな風になるか。

 

「これはまたずいぶんと凝った演出だ」

「すっごーい、きれい……」

 

ギンガやティアナ達はすっかりステージに魅了されている。

まぁ、彼女達が楽しそうならそれでいっか。

俺もこの光景に目を奪われてるしな。

 

 

続く




ホントは水着ジャンヌのコスをさせたかったけど、リリカル世界に坂本ボイスな人いませんもんねぇ……

さて、そろそろランド編も次回で終わり、キャンプ編の後ドキドキ入学編です。


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第46話「久々の(キャンプ)ファイヤーーー!!」

お待たせしましたー!
キャンプ編です!


11月19日
ちょっと修正加えました。
うん、自分でネタを忘れるとは・・・スランプかなぁ(-_-;)


レジャーランドの楽しい日々は終わり、今日からはキャンプ場で1泊2日のキャンプだ。

えっ? レジャーランドはどうしたかって?

イルカショーを見終わってクイントさんとゲンヤさんに合流したら、クイントさんが小動物に囲まれながら、とてもいい顔で昇天してたのが衝撃的だったな。

思わず、ギンガとスバルの目を塞いじゃったよ。

で、ゲンヤさんが俺の目を塞ぎ、ティーダがティアナの目を塞いだ。

うん、あれは子供には見せられないね。

そんなクイントさんを回復させてランドを後にし、俺達はキャンプ場へとやってきた。

 

「山だー!」

「川だー!」

「「キャンプだー!」」

 

昨日まで散々ランドで遊びまくったってのに元気がいいねぇ、うちのちびっ子達は。

 

「ティアはギンガとスバルに混ざらなくて良かったのか?」

「叫ぶ言葉考えてたら、出遅れちゃった」

「いや、そこまで悔しそうにしなくても……」

 

まるで、ネタが被った芸人のような悔しがりを浮かべるティアナ、その妹に苦笑いを浮かべるティーダ。

ごめんなティーダ。たぶん君の妹さんは、うちの妹達の影響ですっかりキャラが変わってしまった。

そのうち、おっもちかえりぃ~☆ とか あんパン! とか言いそう……それはそれでいいな。

 

「???」

「あ、いや、なんでもないよ、ティアナ」

「……ぶー」

 

あれ? なんかいきなりティアナが不機嫌になったぞ?

俺なんか変な事言ったっけ?

 

「……ティア」

「えっ?」

「ティア! 健人さん、いい加減私をティアナじゃなくてティアって呼んでください!」

 

ティアナはランドで俺とギンガ、それにスバルにティアと呼んでほしいと言ってきた。

ギンガとスバルはティアと呼ぶ時が多いが、俺はなんだか気恥ずかしいから普通に呼んでいる。

が、今回は呼ばなきゃいけなさそう、というか、すでに泣きそうだ。

 

「お、おおう。わかったよ、ティア……これでいい?」

「うん!」

 

なんかいきなりずずいっとこられたよ?

しかも、背後にViVid時代のティアナがうっすら見えちゃったし。

確かにここ数日色々遊んで仲よくなったつもりだったけど、この娘、ホントに6歳なのか!?

いや、それ言うなら俺の周りに年齢不相応な子ばかりだよなぁ……

 

「あらあら、青春してるわね」

「青春と言うにはあと10年は早いと思うんだがな」

「せいぜい5年くらいじゃないかしら?」

「そういう問題ですか……はぁ、おーい、健人君。ちょっといいかな?」

 

テントを設営して、何やら保護者的な会話をしていたティーダに呼ばれたが、正直嫌な予感しかしない。

 

「……なんですか、ティーダさん?」

「そう露骨に嫌な顔をしなくてもいいと思うんだけどな。大丈夫、僕は君にプレッシャーをかける気はないよ。この2人と違って」

「えっ、お、おい。クイントはともかく、俺はそんな……健人はまだ子供だぞ!?」

「私だって変な事言った覚えないわよ! そうよね、健人~?」

 

若干呆れ目なティーダに明らかに動揺する2人。

クイントさんが俺を君呼びしない時がたまにあるけど、そういう時は大抵動揺してるか変な事考えてる時だよな。

 

「ここら辺の川は流れが急になってるけど、向こう側は緩やかになっていて釣り場として人気なんだよ。どうだい、魚釣りやってみるかい?」

 

そう言ってティーダは俺に竿を差し出した。

行くかと聞いておいて、俺を連れて行く気満々だな。

 

「あ、私もやる!」

「わたしもわたしも!」

 

ギンガとスバルも釣りをする気満々だけど、既に釣りの準備を整えている子が1人いるんだよな。

 

「兄さん、準備万端です!」

「よしっ、じゃあ行こうか2人共」

 

あれ? 俺まだ行くって言ってないよね?

魚釣りって初体験だからちょっと楽しみだからいいけどね。

 

「……ギンガは私の手伝いしてくれる? スバルはお父さんとキノコ採ってきて。ここら辺のキノコは毒キノコはないから安全よ」

「「はーい!」」

 

2人共一緒に魚釣りしたがっていたが、それぞれ手伝いを頼まれてそっちをする事になった。

クイントさんの料理の手伝いやゲンヤさんとのキノコ狩りも楽しそうだな。

 

 

キャンプ場の川に魚釣りに来てはや1時間が経過した。

ティーダは結構な数を釣り上げているけど俺とティアナは最初はなかなか当たりが来ない。

俺は初めてで、ティアナも魚釣りは2回目らしいからこんなものか。

気長に待とうか、と思っていたその時。ようやく何かかかったようだ。

 

「よしっ、かかった! ……長靴が」

「私にも来たー! ……バケツが」

 

2人そろってハズレを釣り上げガックリ。

誰だよこんな川にゴミ捨てたのは!

てかバケツでかすぎ! ティアナくらいの大きさあるぞ!?

 

「あれ? このバケツお魚さんがいっぱい入ってる!」

 

ティアナが釣り上げた大きなバケツには、色々な魚が入っていた。

ってか、魚満載のこの大きさのバケツを中身も落とさず釣り上げるティアナって色々な意味ですげぇ。

実は彼女も戦闘機人じゃないだろうな?

 

「2人共どうしたんだい? って、すごいなティアナ、大漁じゃないか」

 

ティーダも魚いっぱいのバケツを見て驚いていると、川の上流から女の人が走ってくるのが見えた。

それはとても見覚えるのある女性だった。

 

「すみませーん! そのバケツと長靴私達のでーっす!」

 

小走りで走ってくる金色と栗色の中間くらいの髪の毛の女性、どう見てもドゥーエ。

 

「あら、健人君じゃない。こんなところで奇遇ね♪」

「エェ、ホントウニキグウデスネ」

「ちょっ、そ、そんな怖い顔しないでよ。ランドでもだけど、今日も偶然よ偶然!」

「ホントニソウデスカ?」

 

なんでランドとここでも会っちゃうのかなぁ。

ドゥーエだけ来てるわけないからきっとスカさん達もいるんだろうなー。

シェルブリットに発信機を付けられそうになったって聞いたけど、ホントについてないよな。

 

「健人君、その人と知り合いかな? なんだかランドのショーで見た人に似てるけど?」

「あぁ、この人は……」

「初めまして! 私の名前は二乃と言います。健人君とは友達なんですよ」

「そうですか。僕はティーダ、ティーダ・ランスターです。こっちは妹のティアナです」

「……はじめまして」

 

仕方ないからドゥーエをティーダとティアナに紹介しようとしたら遮られた。

なんだろ。妙にドゥーエの目がキラキラしてる?

ティアナはティーダの後ろに隠れて、ジッとドゥーエを、睨んでる?

あれ? そういえばドゥーエに会ったらぶっ飛ばそうと思ってたんだけど……なんでだっけ?

ティーダも、どこかで聞いた名前のような。って呟いてるし。

あれ、アレレー?

 

「健人さん、この人、誰? 本当にお友達なの?」

「認めたくないけど、知り合い。昔世話になったんだよ、不本意だけどね」

 

これでも恩は感じているのだ。

 

「それでなんでここにいるんですか、二乃さん?」

 

一応管理局員であるティーダの手前、ドゥーエに合わせるか。

でも、クロノ曰く、今のスカさん、ドクターブライト達ならそこまで問題はないみたいだけど、まぁ一応?

あ、俺も管理局員だった。

 

「ちょっとランドで水族館のバイトしてたら、新鮮な魚食べたくなって、流石にあそこの魚盗る、もらうわけにはいかないでしょ? だから釣りに来たのよ」

『ドクターは来てるけど、先に帰ったわ。ウーノ達も来てないから安心してね』

 

どうやらこの長靴はスカさんので、釣りまくって調子に乗って転んで長靴と魚入ったバケツを川に落としたらしい。アホか!

 

「なるほど。それじゃこの量は二乃さんとお父さんのお2人で? 釣り上手なんですね」

「ふふっ、ありがとう。うちは姉妹が多いからこれくらいないとね。それじゃあ、父が待ってるから行くわね。またね、健人君、ティーダ君、ティアナちゃん♪」

 

そう言い残してドゥーエは去って……あっ、戻ってきた。

ドゥーエはバケツから一番大きな魚を取りだして、ティーダのバケツに入れた。

俺は元々川魚には詳しくない。ましてや、ミッドの魚なんてもっと知らない。

だけど、ティーダの反応から見てこれは結構大物でおいしい魚のようだ。

 

「ティーダ君。ここで会ったのも何かの縁だからこれ、どうぞ」

「えっ? こんな大きな魚いいんですか?」

「うん。うちは十分釣ったから大丈夫よ。それに健人君、意外と大食いだしね」

 

と、流し目でウインクして今度こそドゥーエは森の奥へと戻って行った。

ティーダは貰った魚で溢れそうなバケツを持ちながら、じっとドゥーエが去って行った方を見ていた。

 

「二乃さん、綺麗な人だったな」

 

あれ? これは、ひょっとして、ひょっとする?

 

「ティーダさん、ひょっとしてああいう女の人が好み?」

「え“っ!? い、いや、そ、そそんな事ないよ?」

「……兄さん?」

「ティアナまでその眼は何かな? いやだなぁ、健人君。変な事言ってからかわないでくれよ。そういう所はあの2人に似なくていいから!」

 

ほうほう。ドゥーエも興味深そうにティーダを見てたし。

これはこれで面白い事になりそうだネ♪

 

<ドゥーエの興味をティーダに向かせて、あわよくば押し付けようとしてないかマスター?>

『アハハハッ、シェルブリットもおかしなこというねー』

 

 

俺とティアナはロクに釣れなかったが、ティーダが釣ったのとドゥーエに貰った分で十分だろうと俺達はキャンプへと戻ってきた。

ゲンヤさんとスバルはもう戻ってきていて、キャンプファイヤーの木を組んでいる所だった。

 

「3人共おかえりなさい。あら、結構大漁なのね。これは腕がなるわ♪」

 

クイントさんは大漁の魚を見て大喜びだ。

ギンガとスバルも目をキラキラさせてバケツを覗き込んでいる。

 

「おう、健人。ちょうどいいところに戻ってきたな。待ってたんだ」

「私も健人君が戻ってくるの待ってたのよ」

「ん? どうしたんですか、2人共?」

「実はな、ライター忘れてきてな。火をつけてほしいんだよ」

 

キャンプに欠かせない種火を忘れたようだ。

ゲンヤさんもクイントさんもティーダもタバコを吸わないのでライターは持っていない。

魔法でどうにかならないかと思ったが、着火できるような魔法は俺以外は使えない。

つまり、俺はチャッカマン代わりというわけか。

 

「悪いわね。私もこの人もお互い用意してるとばかり思ってたのよ」

 

ちなみに料理だが、肝心の火がなかったので野菜や肉を切ったりといった仕込みしかできなくて困っていたそうだ。

 

「これくらいどうってことないですよ。じゃあまず、キャンプファイヤーに火をつけますね」

<なぁ、マスター? ただ火を付けるだけだからな? いつぞやみたく暴発させるなよ?>

『心配ないってシェルブリット。あれから結構訓練して魔力制御はばっちりだし、今はお前もいるんだし』

<嫌な予感しかしない>

 

心配性だなシェルブリットは。

そりゃ、この世界に来た当初は魔法のまの字も知らず、ただ力を使ったらクロノやアルフを燃やした事もあった。

が、今はちがーう! みよっ! 俺の成長を!

 

「じゃ、点火!」

 

組まれた木に手をかざし少しだけ魔力を注ぎ火を付けるイメージ……が、付かない。

あれ? なんで? と思い、もう一度力を籠める。

 

――ボゥッ

 

「ボゥ?」

 

本来なら目の前の組木から聞こえるはずの着火音がなぜか背後から聞こえたぞ?

 

「に、兄さん! あたまあたま!」

「えっ? っ、あっつぃ~~!!!」

 

なぜか俺の背後にいたティーダの頭に火が付いていた。

 

「お、おい! 水だ水!」

 

頭に火が付いたまま慌てるティーダ。

クイントさんがティーダを掴み持ち上げた。

 

「えーいっ!」

 

――ポイッ

 

「「「あっ」」」

 

そのままティーダをキャンプ場脇の川へと放り投げた。

確かここら辺の川は流れが急なんじゃなかったっけ?

 

「……近くに水なかったからつい投げちゃった、テヘッ☆」

「に、にぃーーーさぁーーーん!!」

 

ティーダは川から足だけ出して、どんぶらこどんぶらこと流されていった。

これは、俺のせい……だよね。

 

 

続く

 




はい、原作死亡キャラ同士なかよくしてもらいましょう!(マテ
ティーダとドゥーエはほぼ同い年設定です。



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第47話「季節外れにもほどがある」

お待たせしました!
2019年最初の更新です。


なんだこれ


「いやぁ、すみませんティーダさん。さっきは俺のせいで川に落ちちゃって。風邪、引かないでくださいね?」

「あはは、大丈夫だよ。あの後すぐに助けてもらったし、健人君の炎で暖めてもらったからね」

「……いえ、あれはただの誤爆で火だるまにしただけです」

 

ティーダ流しを終えて、俺とティーダは所要の為、キャンプ場から少し離れた川の上流に向かっている。

辺りはすっかり真っ暗でランタンは持ってきているが、今日は天気がいいので月明りだけでも歩くには十分だ。

さて、このまま男だけで深夜の散歩を楽しむのも悪くないが、今回は……

 

「あの、すみません……」

「「はいぃ?」」

 

と、突然背後から声をかけられ俺とティーダは思わず間の抜けた声をあげてしまった。

さっきまで誰の気配もしなかった。

これでも、クイントさんやゼスト隊長からデバイスに頼らない人の気配の探り方は教わっている。

マテリアルズ事件の時は、まーーーったく役に立たなかったけどね、シュテルとかシュテルとかシュテルとかに。

で、今回全く気配がなかった。

と言う事は、と言う事になるわけで、恐る恐る振り向くとそこにいた人の姿に更に驚いた。

ティーダもギョッとした顔をしているけど、気配に気づかなかっただけじゃない。

 

「あの、ちょっとよろしいでしょうか?」

「あ、はい。なんでしょうか?」

 

管理局員でなくても、人を見かけで判断しちゃいけない。

例えそれが、見るからにザ・不審者って恰好だとしてもだ。

 

「私って……綺麗でしょうか?」

「えっ?」

 

えっ、何いきなりナルシスト発言? しかもその割にはものすっごく謙虚で自信なさげ言い方だし。

声からしてたぶん女性なんだろうけど、その服装から全く性別が分からない。

 

「綺麗、かどうか、ですか?」

「はい。私って、綺麗、でしょうか?」

 

どう答えていいか分からない。

なので、ティーダに視線で助けを求める。

あ、念話があったね。

 

『ティーダさん。あと、任せます!』

『ちょっと!? 何1人だけ逃げようとしてるの!?』

『いや、こういう時、頼りになるのは先輩の務めでしょう。それにぼくこどもだからどうこたえていいかわかんない』

『思いっきり棒読みだね。はぁ、でも、僕が言うしかないよね。わかった。でも、頼むから1人にしないでくれないかな?』

『……頼りになるように見えて、あまり頼りになってないですね』

 

ともかく、あとはティーダに任せよう。

まずは、見た目をつっこんでもらおう。

 

「綺麗、かどうかですよね? すみませんけど、その状態じゃあなたがどういう人かわかりません。せめてマスクと包帯と眼鏡取ってもらえますか? あ、包帯してるのはケガとかでしたらすみません」

 

そう。この女性、なぜか知らないけど全身重装備にもほどがあるのだ。

足の先から頭の上まで髪の毛ごと包帯でぐるぐる巻きだし、更にその上に帽子をかぶりサングラスとマスク。

おまけのおまけに真っ黒いコートと手袋をしている。

どこからどうみても不審者。

せめて髪の毛は出した方がいいと思うんだけどな。

 

「あ、はい、そうでよね。では……」

 

そういうと女性はおどおどしながらも口にしているマスクを外した。

 

「あの、これでも、綺麗、ですか?」

「いや、あのですね……包帯取らなきゃ意味ないじゃないですか」

 

女性はマスクだけ外したが、口は包帯で覆われていてかろうじて鼻とよく見ると耳に穴があいている。

何、この人日に当たると溶けたりするの?

てかこんな真夜中になぜにそんな恰好する必要がある?

 

「い、いえ、このままで……怖がってもらえないかなぁと、顔見せるの恥ずかしくて」

 

この人さっきから何がしたいんだろ?

待てよ? マスクをしていて私、綺麗と聞く女性? で、マスクを取ってこれでも綺麗? って聞く……あっ!

 

「あの、あなたまさか口裂け女?」

「えっ? あなた、私の事知ってるんですか!?」

 

その名を口にした途端、いつの間にか女性は目の前までやってきて、俺の肩をガシッと掴み嬉しそうに目を細めた様に見えた。

 

「ねぇ、もう一度、もう一度! さっき言った言葉繰り返してくれますか!?」

「あ、あなた、口裂け女さん、でしょうか?」

「うん、はい! そうです! 私が、口裂け女です!」

 

敬語で答えると、包帯女、改め口裂け女はブワっと涙を流しながら喜んだ。

うーん、また面倒ごとになってるな。

 

「うぅ~やっと怖がってもらえそうな子に出会えました。では、さっそく気を取り直して、コホン、私、綺麗?」

「いえ、全く」

「Σ( ̄ロ ̄lll)……で、では、これなら……って私もうマスク取ってたんでした。この場合、どうすればいいんでしょうか?」

「俺に聞かないでよ……」

 

頭いたくなってきた。

 

「健人君、口裂け女って何かな? 有名人なの?」

「有名と言えば有名ですけど、人じゃないですよ?」

 

それからティーダに口裂け女について説明すると、妙に納得が言ったのかウンウン頷いていた。

 

「なるほど。つまり、あなたはマスクを取ってその裂けた口で僕たちを驚かすつもりだったんですね?」

「はい、そうです」

 

真顔で事情聴取のようなやり取りを始めたティーダに、口裂け女も面食らったようで、ハキハキした喋りだったのにさっきまでのオドオドした喋り方に戻った。

まぁ、元々俺達はこの為にきたんだしな。

 

「実は、ここのキャンプ場の利用客から川の上流に不審者が出たと相談があり、僕と健人君が調査に来たんですよ」

「はぁ、不審者ですか? 私は見かけていませんね」

 

こいつは天然なのかわざとなのか。

 

「いやいや、あなたがその不審者だから」

 

思わず突っ込んでしまった。

 

「えーっ!? 私のどこが不審者なんですか!? 口裂け女だからって差別ですよ、それ」

「そもそも全身包帯まみれなのに不審者なわけないでしょ! というか、口裂け女って時点で不審者!」

「あーそういえばそうですね。私、恥ずかしがり屋なものでして。見られるの恥ずかしいから、透明人間ちゃんに包帯もらって隠してきたんですよ」

 

もうツッコミ所が多すぎる。

 

「そもそもなんでこんなところにいるんですか? キャンプ場があるとはいえ、人来ないでしょここ?」

 

というか、ここ日本どころか地球ですらないんだが。

 

「えっと、ですね。もう日本じゃ私の事知らない人多くて、私綺麗? って、聞いてもスルーされる事が多くなって。子供に話しかけようとしただけで警察が来たり……」

 

マスク姿の女性にいきなり話しかけられたら不審がるご時勢だもんな。世知辛い。

 

「それでどこか新天地を探して旅をしていたら、いつの間にかここにたどり着いたんです。で、せっかくなのでここで人を驚かそうかと」

 

次元漂流者かな。いや、でも彼女は人間じゃないし、何が起きても不思議じゃないかな。

 

「私、人見知りなので出来れば人が多くないところがいいなーって思ってたんですよ」

 

うん、ツッコミを放棄しよう。

 

「裂けた口が売りなのに、そんな口まで包帯巻いてたら驚かす事なんて出来ないでしょ?」

 

裂けた口が売りってティーダ。彼女、芸人じゃないんだから。

 

「うぅ、やっぱり包帯取らなきゃダメでしょうか?」

「ダメ、というかなんというか……」

 

なんで俺達にそれを聞くかな。

 

「仕方ないですよね」

 

そういって口裂け女はいそいそと顔に巻いた包帯を取り始めた。

ティーダと2人どうしようかと顔を見合わせたが、ここは黙って待っていてあげようという事になった。

やがて口裂け女の顔から包帯が取れて、その下からは裂けた口以外は至って普通の女子大生みたいな顔が現れた。

思ってたより若いね。

 

「えーっと、コホン、で、では改めまして……私って、綺麗ですか?」

「「………」」

 

そこは相変わらず自信なさげかい。

いや、そうじゃなくて手順が色々おかしいから。

口裂け女の事をよく知らないティーダも無言になってしまうほど、何とも言えない空気が流れた。

 

「あれ? どうかしましたか?」

「いや、どうしたもこうしたも……マスク外したまま言われても。せめてマスク付け直さないんですか?」

「えっ? あ、あぁー! わ、忘れてました! も、もう1度やり直させてください」

 

改めて口裂け女はマスクを付け直した。

ぐだぐだだなー

 

「で、では……コホン、私って、綺麗でしょうか?」

「「普通です」」

「Σ(゚д゚lll)……で、でしたら、これでも綺麗、でしょうか?」

 

口裂け女はマスクを外して、裂けた口で精いっぱいの笑みを浮かべた。

 

「「いえ、普通です」」

「これでも普通ですか!?」

 

俺達の淡白な反応に、驚かすはずの口裂け女が逆に目を丸くしてビックリしている。

いや、確かに普通なら口裂けて怖いのだろうけど、俺もティーダも色々見なれてるから特には怖いと思わないな。

数日前にゾンビゲームでもっとグロいの撃ったり、ホラーハウスで首なしとか見たばっかりだし。

 

「うーん、別に綺麗じゃないわけじゃないんだけど」

 

ホント、普通な顔してるんだよな。

ここは綺麗です。って言えば良かったかな。

でも、クイントさんとかナンバーズとか、綺麗な人沢山いるから目が肥えたかな?

 

――ケントサマー

 

――ゾクッ!

 

うっ、なんか寒気がしたぞ。気のせいかな?

 

「健人君の周りには綺麗な人沢山いるものね」

「ですね、クイントさんとか。でも、ティーダさんだって、昼間に会った二乃さんの方が綺麗ですもんねー?」

「ぐっ!? い、言うねぇ健人君」

 

俺をからかおうとするから反撃したのだが、これはティーダ、二乃に本気で惚れてるかな?

 

「はぁ……そうですか、私が驚かれないのは普通な顔だったからなんですね」

「それだけが原因じゃない気がするんだけど」

「いえ、慰めてくれなくていいんです。ちょっと自分でも普通の顔だなーって思ってたんで。でも、ありがとうございました……」

 

苦笑いを浮かべながら口裂け女はスーッと溶け込むように消えてしまった。

残された俺達は、何とも言えない空気のまま、無言でキャンプへ戻った。

クイントさんやゲンヤさんから何があったか聞かれたけど、何も答えずそのまま寝た。

 

 

それから数年後、このキャンプ場ではとてもきれいな女性の幽霊が出ると噂になり、有名な心霊スポット化したのだけど。

その幽霊が口裂け女の整形した姿だと知った時は、色々な意味で心底驚いたのだった。

 

 

続く




なんでこんなのが今年最初の更新なんだろ(爆)

さて、キャンプ編も終わり、次回からまた舞台が地球へと戻ります。
やっとなのは達のヒロイン話……になればいいなー(トオイメ


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第48話「ピッカピカの4年生♪(語呂わるっ!)」

お待たせしました!
学校編スタートです


4月某日

 

ナカジマ家+ランスター家のキャンプを終えて、俺は地球へと戻ってきた。

戻ってきたって言い方はなんか違和感あるけど、どっちも俺の実家みたいなものだしなー

まぁ、それはともかく、テスタロッサ家で数日過ごし、ついにこの日がやってきた。

 

そう、今日は、なのは達が通う私立聖祥大附属小学校に初登校する日だ!

で、始業式や入学式はもう終わっているので、普通通りの時間割だ。

 

「はい。彼が今日からこの学校に転入してきた草薙健人君です。皆さん、仲良くしてくださいね」

「「「はーい!」」」

 

うわぁ、こういう学校の日常風景にものすっごく憧れてたから感涙物だなぁ。

まともに通った思い出全然ないからなぁ。

クラスの中をよく見ると笑顔で手を振るなのはとはやて、それにアリシアの姿があった。

そして、すずかとアリサもいるけど、フェイトは違うクラスか……あれ? 何か違和感が?

ん? よく見るとアリサは何か腑に落ちない顔をしていて、隣ですずかが苦笑いを浮かべているのはなぜだ?

そういえば、4年生じゃクラス替えはないんだったな。

 

「それじゃ、草薙君。元気にご挨拶してみましょうか!」

 

よしっ、この日の為に脳内で何度も練習した自己紹介を今から披露してやる!

 

「こほんっ……草薙健人。ただの人間には興味ありません。 この中に宇宙……「あ、草薙君。その自己紹介は他の子がやったので結構ですよ?」……えっ?」

 

ナンデストー!? この涼宮ハルヒ流自己紹介をすでにやった人がいると!?

その者、かなり出来るな。

 

「その自己紹介って誰がやったんですか?」

「あの窓側に座っている八神はやてちゃんよ。彼女も、少し前にこの学校に転入してきたの」

「おまえかー!!」

 

先生が言う方を見ると、はやてがしてやったりと言った顔でテヘペロをしていた。

ちくしょう、可愛いじゃねぇか。

 

「あら、八神ちゃんとお友達なのかしら? ならちょうど良かったわ。 草薙君の席は八神ちゃんの後ろなのよ。ここでも仲良くしてあげてね」

 

そんなこんなで俺の初(?)小学校生活はスタートした。

 

 

それから休み時間になる度、クラスのみんなからの質問攻めがあったがアリサやなのはの仲介でどうにか収まりつつ、昼休みになってやっと俺達だけで落ち着いて話をする事が出来た。

 

「にゃ、にゃはは、なんだかデジャヴだね」

「私が来た時もこうやったけど、まさか健人君の時もこうなるとは思わんかったで」

「うちのクラスは刺激が欲しい連中ばっかりなのよ」

「アリサちゃん、刺激って。否定はできないけど」

 

否定できないんかい、すずか。

いや、これが転校の洗礼と言うやつなら甘んじて受けようじゃないか。

 

「そんな洗礼受けるんじゃないわよ。フェイトや、はやての時も大変だったんだから……ってそうじゃなくって!」

 

いきなりアリサが大声をあげて立ち上がった。

一体どうしたんだ?

 

「なんでアリシアがここにいるのよ! で、なんでそれを誰も突っ込まないのよ!?」

「えっ? どういうこと?」

 

アリサが何を言いたいか分からないが、俺以外の全員が分かっているようで苦笑いを浮かべた。

 

「健人は知らないの? アリシアは本来隣のクラスなの。フェイトがこのクラスなの!」

「あっ? あぁ~そうだったな」

 

そういえばそうだった。フェイトはなのは達と同じクラスになれたけど、アリシアは1人別のクラスになったんだった。

アリシアは本来ならばフェイトの姉で学年は1つ上に入るはずだった。

だが、事情があってしばらく入院していた事になっていたので高学年は不安だから特例でって事で去年の秋、フェイトと同じ3年生に転入した。

だけど、姉妹では同じクラスになれずなのは達の隣のクラスにされて、文句を言っていたのを覚えている。

ちなみにはやての場合は、学校は休んでたけど長期間ではなかったし、その間勉強はしっかりとしていたのでそのまま3年生に復帰した。

 

「なのは達もなんで気付いていて止めなかったのよ」

「にゃははっ、フェイトちゃんにも黙っててって頼まれちゃったし」

「私は、先生が気付くまで放ってた方が面白そうやったから」

「はやて……って、そうよ、それよ! なんで先生は気付かなかったのよ!」

 

確かに、先生は気付いてなさそうだった。

 

「ふっふーん、そりゃ私とフェイトは瓜二つだもの。先生が気付かないのも無理ないじゃない」

「フェイトとアリシアって言うほど似てるか?」

 

まぁ、アリシアのクローンとして生み出されたのがフェイトだし。

でも、間違えるほど似てるかな?

 

「失礼ね、健人。私とフェイトはそっくりでしょ! 声とか見た目とか声とか髪の色とか声とか!」

「声を強調するな! 違う所もたくさんあるだろ。背とか背とか背とか」

「むきーっ! 背ばっかり言うなー! ともかく、私だけ1人で別クラスは寂しいの! 健人が来るかもって思ったら、フェイトと同じクラスに行っちゃうし、裏切り者~!」

「ふはははっ、裏切られる方が悪いのだよ!」

 

もう自分でも何言ってるかわかんないや。

 

「うわぁ、完全に悪役のセリフや」

「ま、まぁまぁ、アリシアちゃんも健人君も落ち着いて」

「はぁ、子供ねぇ。そもそもアリシアは健人と一緒に住んでるんだからいいじゃない」

 

うん。その事をアリシアがポロリと漏らした時、男子にすごく睨まれたなぁ。

その時、フェイトがクラスに入ってくるのが見えた。

 

「ごめん。ちょっと先生と話してて遅くなっちゃった。あ、健人、学校生活はどう?」

「よっ、フェイト。学校生活どう? ってまるで母親みたいな事聞くなぁ」

 

フェイトの保護者素質はこの頃からあるのかも。

 

「えっ、先生と話してたって。もしかして、入れ替わってるのバレたの?」

「ううん、私の事テスタロッサさんって呼んでたからバレてないと思うよ? ただ、姉さんと話があるから職員室に来なさいって言ってたよ?」

「って、それ思いっきりバレてるじゃないのー!?」

 

涙目で職員室に向かうアリシア。

やっぱり普通はバレるよな。似てる、と言うか声だけ同じで性格とか全然違うもんな。

 

「哀れな」

「当然でしょ。気付かない方がおかしいのよ」

 

このクラスの先生は気付いてなかったっぽいけどな。

なんか見た目天然っぽいから仕方ないかも。

 

「そういえば、健人君ってあっちでギンガちゃんやティアナちゃん達とキャンプに行ったんよね?」

 

俺がキャンプに行った事まだ話してなかったのによくはやては知ってるな。

 

「へへっ、ティアナちゃんから聞いたんよ。すっごく楽しかったって嬉しそうに話しとったわ」

「ティアナから聞いたのかよ」

 

意外な所から話行ってるな。ティアナはいつの間にかなのは達とは仲良くなってたみたいだけどさ。

 

「あ、私はスバルちゃんから聞いたよ」

「私は、ギンガからね」

 

なのははスバル、フェイトはギンガとよく通信用デバイスで話をするそうだ。

ホントみんないつの間にそこまで仲良くなったのかな。

 

「で、健人君としてはどうだったの? テーマパークで遊んだとも聞いてるけど」

「そうだなぁ。1週間ほど遊びまくったなぁ」

 

シューティングゲームで性格が豹変したティアナと遊んだり、ハンドル握ると人格変わるギンガとレースしたり。

ジェットコースターで絶叫したティアナに手を握りつぶされかけて、お化け屋敷でパニくったギンガに全身バキバキにされかけたり。

ヒーローショーやイルカショーで変態丸とゆかいな仲間達と再会したり、キャンプ場でティーダを燃やしたり、と色々あったなぁ。

 

「いやいやいや、色々ありすぎや!」

「どんだけ濃い1週間だったのよ!」

 

はやてとアリサにツッコミされて改めて思い返すが、全く持って2人の言う通りだった。

 

「あ、そういえばなんでか知らないけど、ミッドチルダのキャンプ場に口裂け女が出たな」

「あのねぇ、健人。これ以上ツッコミ所を増やさないでよ! なんでそっちの世界に口裂け女が出るのよ!」

「俺に言われてもなぁ」

 

そういうわけで、口裂け女と遭遇した話をすると、なのはの顔が真っ青になり、口裂け女をしらないフェイトはキョトンと首を傾げた、可愛い。

 

「口裂け女を普通って言えるあんたはおかしいわ……」

「その口裂け女さん、迷子さんだったのかな?」

「いや、すずか。その感想もおかしいわよ」

 

ツッコミ疲れたアリサはぐったりとして、すずかへのツッコミも弱弱しくなってる。

 

「どうしたアリサ。この程度で疲れてたらこれから先ツッコミ役としてやっていけないぞ?」

「誰のせいで疲れたと思ってるのよ! ていうか、誰がツッコミ役よ!」

「でもアリサちゃん、さっきから楽しそうだね」

「すずかぁ……」

 

すずか、意外と天然系だったか?

と、ここでチャイムが鳴ってお昼休みが終わった。

 

「フェイトちゃんフェイトちゃん、もうアリシアちゃんのクラスに行かなくていいんだよ?」

 

フェイト、もしかしてわざとじゃないのか?

 

 

こうして俺の小学校生活、第一日目が終わった。

そして、肝心の授業内容だが、これでも俺は生前18歳。

学校には行ってなくても家庭教師の人に教わったりしていたので、小・中学校レベルは全く問題ない。

 

「とか言いつつ、授業も結構楽しんでたで、健人君?」

「余計な事は言わなくていいんだよ、はやて」

 

 

 

続く




ちょっと短めですが、無事に小学校入学です。
さて、これでなのは達とのイベントが……あるのかないのか(笑)
学校や海鳴市での日常中心になりますが、たまにゼスト隊の話もあります。


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第49話「スポーツは危険がいっぱい?」

お待たせしました!
ちょいと短めです


なのはやはやて達の通う私立聖祥大学付属小学校に転入して早数週間がすぎた。

こんなに長い期間、連続で学校に通った事がない俺は毎日が楽しくて仕方なかった。

流石に小学4年の授業は、元は18歳だった俺からすればレベルが低過ぎるが、それでも楽しかった。

テストはまだやっていないが、先生にあてられても程々に答える様にしようと思っている。

 

『私らと仲が良いってだけで目立ってるんやから、あまり授業で高レベルな答えしたらもっと目立ってまうで?』

『健人は、身体能力が異常な程高くて、ただでさえ目立つのだからな。気を付けた方がいい。変なのに目を付けられないとは限らないからな』

 

これは、俺の本来の年齢を知ってるはやてやシグナムから忠告された事だ。

ミッドでならともかく、地球で変に目立つのは色々と良くない。

それに、俺は身体能力がかなり高く、クイントさんやゼストさん達に鍛えられたおかげで魔法なしでも一般的な魔導師にも楽に勝てるほどになっている。

これじゃあ地球の小学校では目立つのは当たり前だ。

だから自重しようと思っていたのだが……

 

「フェイトちゃん、いっくよー!」

「うん、なのは!」

 

なのはの投げたボールが凄まじい回転をしながらフェイトへと向かう。

大人でも止められなさそうなボールは、そのままフェイトに当たってアウトになるかと思った。

だが、フェイトはボールを真正面から受け止めた。

少し後退りはしたが、ラインを越えるほどじゃない。

 

「今度は、こっちの番!」

 

フェイトは、ボールを構えたまま天高く舞い上がりきりもみ回転をしながら、なのはへ投げつけた。

 

「流石、フェイトちゃん!」

 

なのはは、避けるのでも受け止めるのでもなく、ボールに向かって走り出して片手で掴み、その威力を利用して一回転しフェイトが空中から着地する瞬間を狙いカウンターで投げ返した。

流石のフェイトも今度は受け止められそうになかったが、着地してすぐにその場を飛びのき、ボールを避けた。

避けられたボールはフェイトの後ろにいたすずかがキャッチし、すぐに投げ返す。

その先にいたのはアリサだったが、彼女も難なくボールをキャッチして攻防に参加した。

こうして、ドッジボールは一進一退のまま膠着状態へと突入した。

 

「……なぁ、はやて。目立つなって忠告はありがたかったけどさ。あの2人はいいの?」

「あ、あはは、最初にみた時は私も驚いたわ」

 

今俺達は、体育の授業でドッジボールをしている。

数人のチームに分かれてやっていて、俺とはやては同じチームでまだ出番がないので見学中だ。

で、このドッジボールだが、明らかになのはとフェイトがトンデモナイ身体能力を発揮して目立ちまくってる!

しかも、ただの人間であるはずのすずかとアリサもなのは達に負けず劣らずの活躍を見せている。

で、他の生徒や先生もこの光景にあまり驚いていない。

この世界の小学生ってみんなこうなのか?

あれ? なのはって運動音痴じゃなかったっけ?

 

「はやてもはやてで、この前の徒競走でぶっちぎりの走り見せたし」

「いや、ほら、あれは……自分の足で自由に走れるのがうれしくて、つい。それに健人君と一緒の授業受け取るのがうれしかったんよ」

「ん? 何か言った?」

「それ絶対ワザとやろ? なんで隣に座ってるのに聞こえなかったんや!?」

「ごめんごめん、うれしかったんよ。までしか聞こえなかった」

「ちゃんと最後まで聞いとるんやないかーい!」

 

俺とはやてが漫才をしている中、とある男子生徒がジッと睨んでいる事に俺はその時気付いて……た。

 

「おのれくさなぎぃ~! 今日は八神とべたべたしやがってぇ!」

 

おまけに大声で叫んでるし。

普通そういうセリフは心の中で言うか、陰でコッソリと言うものじゃないかなぁ。

それがよりにもよって……

 

「なんで俺達の真後ろで言うかな、楯宮?」

 

俺達の後ろで悔しそうな表情を浮かべて睨んできてるのは、楯宮友樹(たてみや ともき)

なのはやはやて達と仲が良い俺を目の敵にしている……のだが、なぜか初めての男友達になった。

最初は、普通に向こうから話しかけてきてなのは達も混ざって楽しく話して友達になった。

生前含めて同い年の男友達は彼が初めてだったので、少し感動したなぁ。

で、俺がフェイトとアリシアと住んでいて、なのはやはやてとも親友だと知り、態度を一変……させたわけでもなく、せいぜいたまにこうしてパルパルしてくるようになっただけだ。

まぁ、それでも挨拶もするし、彼の家に遊びに行ったりした事も何度もある。

 

「よしっ、と言うわけで放課後勝負だ!」

「いいぞ。今日はいくら賭ける?」

「軽い! と言うか、賭けなんていつもしてないだろ!?」

 

だって、このやりとりだってほぼ毎日やってるし。

 

「ふふっ、健人君も楯宮君も仲がええなぁ♪」

「八神、いい加減ぼくも名前で呼んでほしいんだけど……」

「ん~楯宮君が健人君に勝てたら名前で呼んであげるって、約束やろ?」

 

何がどうしてこうなったのか知らないが、楯宮が俺に勝負して勝てたら、はやてだけでなくなのは達も楯宮の事を名前で呼ぶ、と言う事になってしまった。

 

「で、今日は何するんだ? サッカー?」

「サッカーはお前のせいで禁止になっただろ?」

「あ、そうだったそうだった」

 

先週、PK勝負して俺が蹴ったボールがゴールネットを破って禁止になったんだよな。

そのせいで、はやて達から忠告受けたんだった。

 

「どうやったらゴールネットをサッカーボールで貫通出来るんやろうなぁ」

「100Mを8秒で走ったはやてには言われたくないぞ」

「フェイトちゃんは7秒で走ったから問題なしや」

「お前ら揃いも揃ってツッコミどころしかないんだけどー!?」

「「ツッコミは(おまえ・楯宮君)に一任してるから♪」」

 

はやてと2人でサムズアップ。

それを見た楯宮はがっくりと項垂れてそれ以上何も言わなかった。

 

 

 

そんなこんなで、放課後。

約束通り、グラウンドで楯宮との野球勝負だ。

なのはとすずか、アリサは家の用事があるので先に帰ったが、残ったフェイトとアリシア、はやてはギャラリーとして見物する事になった。

 

「で、ピッチャはお前、バッターは俺で固定。打てば俺の勝ち、アウトならお前の勝ち、でいいのか?」

「あぁ、俺のボールが打てるものなら打ってみろ!」

「そーいえば、お前って野球クラブに所属してたっけ」

 

これでも結構なエースとして活躍してるんだったよな。

と、さっそく勝負をしようとしたらアリシアが待ったをかけた。

 

「キャッチャーと審判は? 2人でやるにしても必要でしょ?」

「あ、忘れた……どうするかな」

「じゃあ、俺がキャッチャーやるから、野球に詳しい楯宮は審判任せた」

「おう、任せておけ! って違うだろ! 俺とお前の勝負なのにそれじゃ意味ないだろ!」

 

ちっ、面倒になったからこれで逃げようと思ったのに。

 

「あ、あはは。私とフェイトがやろうか?」

「うん。野球の事なら詳しいから任せて」

 

何を隠そうこのテスタロッサ姉妹、地球に住んで野球にハマってしまったらしい。

と言ってもみる専門で、アリシアが巨●、フェイトが阪〇が好きなようだ。

あの2チームが対戦する時は2人してテレビの前で白熱してて、プレシアが引いてたな。

 

「いや、でも、テスタロッサさんにもし当たったら危ないし」

 

それは俺も思うけど、もう2人はやる気満々だし止められないな。

2人共どっから持ってきたのか知らないけど、サイズピッタリのキャッチャーと審判の防具を身に着けて準備万端だし。

 

「大丈夫大丈夫、2人に当たる前に俺が打つから」

「うん、頼りにしてるよ健人♪」

「頑張ってね」

 

わざとらしく挑発したら、悪戯っ子な笑みを浮かべたアリシアがちゃっかりと乗っかってきた。

おまけにフェイトまで乗っかかってきたし。

いや、アリシアはともかく、フェイトはただ普通に応援しただけだな。

あー楯宮が目に嫉妬の炎を灯らせて俺を睨んできてる。

と、ここではやてがとびっきりの笑顔を浮かべて楯宮に向けて声援を送った。

 

「楯宮くーん、がんばってなー♪」

「おっけーい! 八神さん、俺がんばるぞーーー!」

「うわっ、単純すぎ」

 

アリシア、バッサリと言ってやるな。

 

「それじゃ、プレイボール!」

 

審判アリシアの掛け声でとうとう始まった俺と楯宮の野球勝負。

正直、野球なんて実際にやるのは今日が初めてだ。

最低限のルールは知ってるけど、試合を見る事すらこっちの世界に来てからだ。

そればかりか、地球に来るまで野球を知らなかったフェイトとアリシアに教えてもらう事すらある程だ。

まぁ、要はボールにバットを当てればいいだけだ。

 

「じゃあ、いくぜー!」

「楯宮選手、振りかぶって第一球、投げたー!」

「ボール!」

「健人選手、見送って判定は、ボール!」

 

1人暇なはやては実況役になったようだけど、ノリノリだな。

流石関西人。ん、関係ないか?

 

「むっ、誘いには乗らないか。なら、これはどうだ!」

「ストライク!」

「楯宮選手、第二球も直球! これは決まった、ストライクッ! これで1ストライク1ボールになりました!」

 

はやて、それ誰かのモノマネかな?

 

「おいおい、健人。せめて振ってくれよぉ。これじゃあ張り合いないだろ」

「うん、次は振るよ」

 

ハッキリ言って、今の2球は当てようと思えば多分当たった。

いくら野球クラブのエースとはいえ、普段訓練で撃たれている魔力弾に比べたら遅すぎる。

野球がどういうものか味わいたくて、ちょっと遊んだんだ。

なーんて余裕ぶってると痛い目に合いそうだから次は真剣にやろう。

 

「さぁ、楯宮選手の第三球です」

「そらっ!」

 

――カッーン!!

 

三球目の直球がうまくバットに当たり、いい音がした。

打球はそのまま真っすぐ飛んで行った……楯宮の方へ。

 

――シュッ!

 

「……えっ?」

「「「「あっ」」」」

 

打球は楯宮の顔のすぐ真横を飛んで行った。

当たったようには見えなかったが、俺達はすぐに楯宮に駆け寄った。

 

「ごめん、楯宮! 大丈夫か?」

「楯宮君、ケガしてない!?」

「なぁ……今、ひょっとして俺の横、すぐ、飛んで行った? ははっ、あははは……キュウ」

 

楯宮は、最初何が起きたのか理解できていなかったようだったけど、自分の顔面向かって打球が飛んできた事を理解し白目をむいて気絶した。

 

「楯宮ー!?」

 

すぐに保健室へと運んだが、幸い打球はかすりもしていなく、ただ驚いて気絶しただけだった。

その後、先生に怒られ、野球は禁止になった。

 

それからというもの、楯宮が俺に勝負を仕掛けて来る事はなくなった。

仕掛けてこなくなったのは、はやて達が楯宮の事も名前で呼ぶようになったから……だと思いたい。

 

 

続く

 




学校生活編、オリキャラ出ますがそれほど多く出さない予定です。
出番もクラスメートAとかBとかその程度です。


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第50話「全・力・全・壊」

久々にバトルが書きたくなりました(笑)


ある日、クロノから訓練用の無人世界へと呼ばれた俺達。

そこで衝撃的な言葉が聞かされた。

 

『今日はみんなに、ちょっと殺し合いをして貰う』

 

「「「ええぇ~~!?」」」

 

「いや、言ってない! 言ってない! 健人、無駄にうまく僕の声真似して嘘つかないでくれないか!? しかも、なんで君たちまで真に受けるんだい!?」

 

まぁ、反応したのは俺とはやてと、なぜかフェイトもだけどね。

なのは達は苦笑いを浮かべているだけだし。

 

「そこは、ほら、お約束?」

「せやなぁ。健人君の声真似がうまかったから、つい?」

「クロノ……私達、殺し合いなんて出来ないよ……」

 

フェイトは、今にも泣きそうな目をしている。

ありゃ、冗談抜きで本気に捉えてしまったか。

 

「毎回毎回、僕で遊ばないでくれないか!? フェイト、なんで君は本気にするんだ。嘘だよ、嘘」

「そっか、良かったぁ。ダメだよクロノ、エイプリルフールはもうとっくに終わったよ? それに、今の嘘はいくら何でも酷過ぎるよ……」

「だーかーらー! さっきのは僕じゃないと言っただろう!? 健人、君のおかげで僕が悪者扱いなんだが!?」

「いつもの事じゃん♪」

「悠久なる凍土 凍てつく棺のうちにて……」

 

クロノの目からハイライトが消えてデュランダルを構えだしたが、エイミィによって止められた。

 

「はーい、そこまで。話が進まないからクロノ君抑えて抑えて。健人君もあんまりクロノ君で遊んじゃダメだよ? 遊ぶのは私の仕事なんだから」

「うん、ごめんなさい、エイミィさん」

「よろしい」

「よろしい、じゃないだろう! そこは謝るのは僕にだろう!?」

「あ、クロノ、ごめん、次は声真似もっとうまくするよ」

「そこじゃない! 僕が言いたいのはそこじゃない!」

 

クロノの頭が爆発しそうなのに、ここまでにしておこう。

 

「むっ、やっと終わったか。それで、我らは一体何をすればいいのだろうか? 任務か?」

 

さっきまでなのは達と歓談してたリインが代表するように聞くと、クロノはさっきまでのハイテンションとは打って変わってぐったりと項垂れながら今日のやることを説明しだした。

 

「はぁ~……今日は君達に模擬戦をやってもらう」

「なんだ。さっき言った事とあまり変わらないんだ」

 

もう突っ込む気も無くなったのか、クロノはこちらを一睨みするだけで話をつづけた。

 

「レイジングハートとバルディッシュ、それに、はやての新しいユニゾンデバイスのためのデータ収集が1番の目的」

 

レイジングハートとバルディッシュは闇の書の一件でベルカ式カートリッジシステム入れた。

あの時は緊急だったから急いだけど、ミッドチルダ式のデバイスにベルカ式システムを入れるのには、本来何度も調整が必要なのだそうだ。

で、その調整を今までずっと行ってきて、やっと終わったからその試運転の為だ。

それと、リインフォースがはやてとユニゾンできなくなり、代わりのユニゾンデバイスを作る為にはやての戦闘データを収集するのも目的の1つ。

 

「それから今は、健人の戦闘データがあまりなくてな。それの収集も目的の1つだ。徹底的にやってくれて構わない。勿論魔力ダメージのみだ」

「あれ? 俺のデータは地上本部にあるのもらってるんじゃないの?」

 

地上本部と本局の関係は、昔ほどギスギスじゃなくなったから結構風通し良くなったとゼスト隊長言ってたけどな。

 

「直に収集したデータも必要なんだ。それに、これからはなのは達との連携も前より必要になってくるからな。色々なデータが必要なんだ」

「言われてみれば、なのは達と模擬戦はあまりしたことないし。連携も闇の書の一件だけだった気がする」

 

フェイトやシグナムからはよく誘われるけど、少しだけやってあとは理由付けて断ってたな。

なのはやはやてとはした事すらなかったかも。

一緒に戦ったのだってなかった。

マテリアルズの時は …ケントサマー ………考えるだけで危険だからやめておこう。

で、地球で過ごす事になって、クロノ達の任務も手伝う事も増えていくだろうし、連携確認はいいかもな。

 

と思っていたのだが……

 

「これは流石にどうなんだろうな!?」

「何がだ? いいバランスだろう?」

 

俺 VS なのは、フェイト、はやて

 

どこが良いバランスなんだ?

なんで連携するのに俺が3人と戦う羽目になってるんだ?

 

「クロノ君、流石に私達3人で健人君1人なのはちょっと……」

「健人は、ゼスト隊長達とも互角に戦えるようになったと聞いているからな。これくらいは普通だろう? それに勝つのが目的ではなく、あくまでデータ収集が目的だ」

 

なのは達も困惑しているが、当のクロノはしれっとした顔をして答えた。

 

「さっき遊んだ事、根に持ってる?」

「………さ、始めようか」

「流石クロノ。背だけじゃなく器も小さい!」

「よしっ、僕も混ざろう。ついでにシグナム達もだ」

「キャークロノサン、サイテー!!」

「うがーっ!」

「はいはーい、それじゃみんな、ケガにだけは気を付けてねー」

 

デュランダルを振り回すクロノの首根っこを摑まえながら、エイミィが開始の合図を告げた。

 

「はぁ、しょうがない。やります、かっ!」

「速い!」

 

合図と共に、両足に魔力を込めてフル稼働させる。

先手必勝、まずは支援攻撃タイプで接近戦に弱いはやてを狙う。

が、はやても一瞬で防御壁を作り、俺の一撃を防いだ。

 

「わわっと、真っ先に私の所に来てくれるなんて嬉しいわぁ」

「相手の方が数が多い時は、不意をついて狙いやすい相手から倒して数を減らす。ゼスト隊長達から教わった事だよ」

 

伊達にこの数か月、鍛えられてきたわけじゃないんでね。

 

「そっかぁ。でも、強うなったのは健人君だけやないで?」

「っ!?」

 

気が付けば、すぐ横にフェイトのザンパーが見えた。

はやて、自分を囮にして俺を引き付けたのか。

 

「食らうかぁ!」

 

はやての防壁を蹴った反動で宙返りをして、フェイトの一撃を交わした。

 

「アクセルシューター、シュート!」

 

けど、かわした先にはなのはのアクセルシューター。

流石、なのは達はフォーメーションもばっちりだ。

でも、まだこの程度では落ちない。

 

「うおぉ~! マッハボンバー!」

 

俺の右腕から放たれたいくつもの火球が、シューターを打ち砕き、なのはへと迫る。

なのはは、一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐにその場を飛びのき回避した。

マッハボンバーは速度と威力は優れているけど、誘導弾じゃないんだよな。

 

「よそ見禁物や。クラウソラス!」

<ハーケンスラッシュ>

 

はやての魔力弾と共に、フェイトの斬撃が後ろから来るのが分かった。

 

「トルネード、クラッシュ!」

「きゃっ?」

 

振り向きざまに回転蹴りを放ち、斬撃共々魔力弾をかき消す。

斬撃を弾かれたフェイトが体勢を崩した。追撃のチャンス!

 

「グレンマグナム!」

「くっ」

 

体勢を崩したままフェイトは障壁を張って防御した。

だけど、咄嗟に張った障壁なんて、紙同然にもろい。

 

――パキーン

 

障壁はすぐに破られ、フェイトはそのままはやての所へと吹き飛ばされた。

別にこの攻撃でフェイトを倒せるとは思っていない。

とどめの一撃を構えた所で強い魔力を感じた。

 

「フェイトちゃん!」

<A.C.Sスタンバイ!>

 

なのはがしようとしている事に気付き、反転してなのはの元へと一直線に飛ぶ。

 

「は、速いよ健人君!?」

「なのは達3人相手に油断も手加減も出来ないだろ!」

 

なのはのエクセリオンバスターA.C.Sに対抗するには、こっちも新技を出すしかない。

高速飛行しながら両手の手甲が開き、魔力をチャージする。

右手と左手、それぞれに集まった魔力が逆回転をしながら渦を巻く。

対するなのはは、A.C.Sを展開して俺へと向かってくる。

 

「エクセリオンバスターA.C.S、ドライブ!」

「スパイラル・ドラグーン!」

 

この魔法は両手に逆回転の渦を作り、それを合体させて相手に突撃する魔法。

ちなみに元ネタは、獣王激烈掌。

 

「はあぁ~!」

「だあぁ~!」

 

螺旋状の魔力の塊が巨大な龍となって、なのはの光の矢と真っ向からぶつかった。

 

――ドドーンッ!

 

 

 

「やりすぎよ!」

「「「「はい、ごめんなさい」」」」

 

あの後、フェイトやはやても交えてのドンパチは続き、最後にはトリプルブレイカーとシャインナックルブレイカーとの大激突とまでなった。

で、次元震までは行かなかったが、無人世界が滅茶苦茶になり、リンディとプレシアが飛んできて模擬戦は強制終了となった。

 

「二人とも、いくらデータ収集が目的とはいえ、もっと早く止めなきゃダメじゃない!」

「すみませんでした。リンディ艦長」

「すぐ、終わると思ってたんですけど……」

 

俺やなのは達はプレシアから、クロノとエイミィはリンディからしっかりと怒られた。

徹底的にやっていいとクロノがお墨付きを与えたからだからか、俺達への説教は割とすぐ終わった。

 

「ここが無人世界で良かったわ。あなた達4人だけでここまで滅茶苦茶に出来るなんて、本来なら第一級危険人物としてマークされるわよ」

 

プレシアが呆れるのも無理はない。流石に、島が消し飛んじゃったからなぁ。

魔力ダメージで島が消し飛ぶってどんだけーってシグナム達も呆れてたな。

 

「健人君、すっごく強くなったね」

「うん、特に魔法の発動がかなり速かったよ」

 

なのは達がさっきから褒めまくりだけど、体中が痒くなってきた。

 

「ゼスト隊長達に鍛えられたからね。それにシェルブリットの性能のおかげだよ」

「それやそれ。シェルブリットもカートリッジシステムがないのに、あの大出力を速攻で出せるやなんて、一体どうなっとるん?」

 

なのは達が一番驚いたのは、俺の魔法の発動の早さだという。

そういえば、なのは達の前で戦ったの闇の書の一件の時だけだったな。

 

「へんた、ドクターブライドがカートリッジシステムなんて邪道だ。もっと別のシステムを導入した方が俺に合ってる! って言ってたんだよな」

 

俺の魔力量は異常に高く、質もいいのでカートリッジシステムで底上げするよりも、魔力を効率よく素早く発動させる機構にした方がいいとスカさんは言っていた。

だからシェルブリットには、管理局のデバイスにはない独自のシステムが組み込まれている。

具体的にどういうシステムなのか、詳しい事は分からないと言ったら、マニュアル運転とオートマ運転の違いだと説明されて、ますますわからなくなった。

最初のうちは、カートリッジシステムがいいと思ってたんだけど、実際使ってみるとこのシステムの良さが分かって、すぐにスカさんにお礼を言った。

調子にのったスカさんが、「このシステムをスカリーシステムと名付けよう」と言ったらウーノにぶっ飛ばされてたけど。

 

「よくそれで管理局が納得したな」

 

リインフォースが不思議そうな顔をするけど、なんの不思議な事はない。

地上本部でもその事でかなりシェルブリットを調べようとしたけど、スカさんやウーノ達が組み込んだセキュリティーの高さに解析を断念した。

それでも一部の研究者達は、ムキになって俺ごと分解してでも調べると言い出したが、レジアス中将に左遷させられた。

ついでに左遷先でもめげずに俺を拉致ってでも、と意気込んでいたら次々と不幸な目にあってるのは、運が悪かっただけと思いたい。

全身タイツのボディコンお姉さんに襲われたとか言ってたのは、気のせいだと結論付けられたしね。

 

「最終的に変態が作った変態デバイスだから仕方ない。って結論になって、シェルブリットや俺の素質については深く突っ込む人がいなくなった」

「「「……納得」」」

 

なのは達も、変態丸姿だったけどスカさんとは面識あるから、色々と察したようだ。

 

<褒められてるのか貶されてるのかさっぱりわかんねぇ……>

<大丈夫です。マスターたちはあなたの事をちゃんと褒めていますよ>

<私達も、あなたは素晴らしいデバイスだと思っていますよ>

<ありがとよ。レイジングハート、バルディッシュ>

 

こっちはこっちでデバイス同士の絆が深くなったようで何より。

 

「さてと、データ収集はもう十分だろうから帰ろうか」

「そうだね。姉さんとアルフ、お腹空かせて待ってるね」

 

アリシアは、最初見学したいと言っていたけど、宿題で出された作文がまだ終わってないからとアルフの監視付きで留守番だ。

 

「ちゃんと宿題終わってるかな。今季アニメの一押しとその一押し理由を書く、ってテーマの作文」

「……アリシアちゃんのクラスにならんで良かったわぁ」

 

と、帰り支度をしている俺達の所へ、神妙な顔つきのクロノがやってきた。

あれ? リンディ艦長のお説教がそれほどきつかったのかな?

 

「みんな、1つ伝えて置かないといけないことがある……」

「うん、聞きたくない」

 

ものすっごーく嫌な予感しかしない。

と、さっさと帰ろうとしていた俺達に構わずクロノは話し続けた。

 

「さっきの模擬戦がすごすぎて観測器が壊れて、データが全て飛んでしまったんだ。だから、模擬戦をもう一度やってもらいたいのだが……」

「「「「……(コクン)」」」」

 

さらりと何でもない事のように話すクロノ。

対して無言で頷きあい、デバイスを構える俺達。

 

「ま、待ちたまえ! なんでデバイスを構えているんだ君達!? 今すぐにとは言わないし、相手は僕じゃ……」

 

 

諸々のデータは無事収集することができました。

 

 

続く




お待たせしました!
なのは達との初模擬戦です。
ラッキースケベは今回残念ながらありませんでした(笑)


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第51話「名前を決めよう!」

お待たせしました!
令和更新第一号です!


前回の模擬戦で必要なデータが揃い、これではやての新しいユニゾンデバイス造りがスタートできる。

はやてのリンカーコアをコピーしてリインフォースの生体データを元に作るので、はやてだけではなくシグナム達ともユニゾンが可能になるのだそうだ。

本来、ユニゾンデバイス造りには時間とお金がかかるのだが、協力を申し出てきた団体が2つあった。

1つは聖王協会。ViVidではヴィヴィオを崇めるロリコ……こほん、聖王を崇める教会で、管理局ともタメを張れるほどのすごい宗教団体。

そして、もう1つは意外、と言うかなんというか……ドクター・ブライドこと、スカさんだ。

スカさんは、マテリアルズ事件の時にユニゾンデバイスから変異したリインフォースに興味を持ち、個人的に何度か八神家を訪れていた。

毎回、なぜか俺が仲介人という形で無理やり同行させられていたけど。

で、そこで新しいユニゾンデバイスを作るという話を聞き、スカさんが資金と技術提供の申し出をしたのだ。

俺やはやては兎も角、シグナム達は勿論裏があるんじゃないかと疑った。

技術提供は、スカさん達が潰した組織の1つが古代ベルカの研究をしていて、その研究成果を手に入れた。

が、分野が違うとかそういう理由で、スカさん達には無用の長物だったのでぜひ有効活用してほしいそうだ。

資金提供については、代わりにナンバーズ達の訓練に付き合って欲しいという事だった。

流石に管理局への断りなく独断では決めれないので、リンディ艦長に相談したらすんなりOKが出た。

 

「使えるものはなんでも使うのが管理局よ」

 

と、リンディ艦長はなぜかドヤ顔で言ってたが、緩いにもほどがあると思う。

もうスカさん達は、管理局公認の何でも屋さんになってきてるな。

そんなわけで、はやて主体で当初の予定では2年ほどかかるはずが、スカさんからの資金・技術提供、更にはクアットロが助手として付いてくれるおかげでなんと半年で完成する見込みがたった。

 

「いやぁ~こんなにうまく物事が進むと気持ちええなぁ」

「うん。早く妹に会いたいな」

 

はやてとリインフォースは、半年先が待ちきれない様子だ。

 

「ふふっ、リインフォースは、もう名前まで沢山考えてるのよね?」

「シャマル!? なっ、なななぜそれを!?」

「ふっふっふっ、ここ最近夜遅くまで考えこんでたの私らが知らないはずないやろ~?♪」

 

リインフォースは、顔を真っ赤にして座布団を頭にかぶってしまった。

普段、シグナムやシャマルと一緒に大人の雰囲気をかもしだしているが、たまにこういう可愛い所がある。

ところで、リインフォースの姉妹騎が生まれると決まってから、もう1つ決まった事がある。

それは姉妹騎には、リインフォース+αで名前を付けて、更に今いるリインフォースにも名前を追加して付けるという事だ。

これは、新しく生み出されるユニゾンデバイスはリインフォースの妹に当たるので、自分と同じはやてから授かったリインフォースの名を与えて欲しいとリインフォース(姉)が言ったのだ。

はやては喜んで賛成して、リインフォース姉妹には、それぞれ新しい名前が追加されることになった。

 

で、前置きはここまでにして、今日俺が八神家に呼ばれたのは、リインフォース(妹)の名前を一緒に考えて欲しいとの事、だったのだけど、さっきから放置されてる。

別に八神家の家族漫才は面白いからいいんだけどね。

 

「なぁ、リインフォースが沢山名前考えたのなら、その中の一つでいいんじゃないのか?」

「えっ? あ、あぁ~! ごめんな健人さん! すっかりこっちばっかり話してもうたわ。で、確かにリインフォースが考えてくれた名前は素敵なのばかりやったよ」

「まだ言ってないのに、私の考えたのは既に把握済みですか!?」

 

リインフォースの叫びはスルーされた。

 

「この中から選ぶにしても、他にもっといい名前がないかを考えるにしても、健人さんの意見が聞きたかったんよ」

「要するにはやては健人に名付け親になってくれって事だ」

「ヴィータ? 何言うてんのや!? そ、そそんな大げさなもんやないで?」

 

ヴィータがあっけらかんと言うと、はやての顔が少し赤くなった。

 

「なるほど。確かに、私も健人にも考えて欲しいとは思っていたところだ。」

「そうですねぇ。健人君のおかげでドクターとの縁ができて、こうして早く生まれる事になったんですし」

「私からもお願いしよう。健人、一緒に考えてくれないか?」

 

その様子を見たリインフォース達はなるほどと頷きあった。

いや、そっちで勝手に納得しないでくれませんかねぇ。

しかも、なんかプレッシャーかけられてる?

そもそも、新しいリインフォースって俺存在は知ってるし!

えっと、名前は……ViVidに出て来るちっこいリインフォースの名前、なんだっけ?

赤髪のアギトと一緒に出てきたり、ミウラの応援してたのは知ってるけど、名前呼ばれるシーンあったっけ?

ViVidを思い出せ、えっと……えーっと。

 

『ほんま健人君ってすごいんやなぁ。私の世界にいないのが勿体ないなぁ』

 

アレ? なんでジークリンデ・エレミアが出て来るんだ? しかもなぜ俺の名前呼んだ??

んー……ま、いっか。

それより、俺が介入してプレシアやアリシア、リインフォースまでもが生存していて、原作が崩壊しまくってるのに原作通りの名前になるのかな。

 

「じゃあ、とりあえず姉フォースが考えた名前はどんなのがあるんだ?」

「おう。これがそうだぞ。って姉フォースはやめろよ……」

 

そう言ってヴィータがやけに可愛いタイトルのノートを10冊もテーブルの上に置いた。

 

「なぜこれがここにあるんだ!? ヴィータ、私の部屋から持ち出したのか!?」

「あーそれは私。部屋の掃除をしていたらノートが置いてあって……その、タイトルに興味が湧いてつい、ごめんなさい」

「そ、そうなのか。出しっぱなしにした私が、悪いな」

 

そりゃ、まぁ 【妹ノート】とか【妹の妹の為の妹による】とかわけわからんタイトルが書かれてたら気にはなるよな。

俺ならさっき思わず厨二病かよ! ってツッコミたくなったし。

リインフォース、妹ができてうれしすぎておかしくなってるのかな。

 

「あまりリインフォースをいじるな、シャマル。妹ができてうれしいのはお前も俺達も一緒だろう?」

「そうね、ザフィーラ。ごめんなさい、リインフォース」

 

流石は八神家のお父さん兼長男兼ペットなザフィーラ。

必要以上に喋らない分、威厳があるなぁ……しっぽがさっきからパタパタしていなければ。

これ以上は、話が脱線しちゃうからいい加減に名前、考えますか。

リインフォースは床に妹の字を書きながら更に沈み込んでしまった。

いや、そこは、のの字じゃなくて?

 

「どれどれ? リインフォース・セカンド、ダブル、2号、Z、アストレイ、S、ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃねーか、完成度高けーなオイ……って最後のなんだこれ!?」

「すまない。所々自分でもなぜ書いたか分からない箇所がある。見なかったことにしてくれ」

 

ハイテンションになりすぎてホントに壊れたらしい。

リインフォースの記憶にはないが、ノートにははっきりと書かれた名前がチラホラ見られた。

他のノートを読んでいたはやて達も同じくそういう類の名前を見かけては、リインフォースに生暖かく憐みの籠った視線を向けていた。

リインフォースは穴があったら入りたいと沈み込んでしまった。

それにしても……セカンド、2号か。

ないなーとは思いつつも、どこか響きがひっかかるんだよな。

 

「おっ、これはどうだ? リインフォース・マキシマム!」

「それは物々しすぎるだろ、ヴィータ。こっちのリインフォーム・真の方が強そうだ」

「それこそ物々しすぎるわよ、シグナム。リインフォース・チャーム、これなら女の子らしくてかわいいでしょ」

「リインフォース・ザ・妹」

「ザフィーラ、ボソッと小声で言うてもしっかり聞こえたで?」

 

お前ら、新しい家族の名前で遊ぶなよ。

 

「ふっ、笑ってくれ健人。妹にまともな名前の1つも浮かばないバカな姉を……」

「おーい、リインフォース―? かえってこーい」

 

おいおい、ナハトヴァールだった時よりも闇が深くなってるぞ。

 

「リインフォース、そんな所で沈んでないでこっち来て一緒に考えよ? ほら、このコスモスって素敵な名前を沢山考えとるやないか、他にもたくさんあるんやし。まだ時間もあるんやし、焦らず、ね?」

「主はやて……」

 

あー美しき主従関係。

って俺は、リインフォース・どすこい、なんて名前を見つけて吹き出しそうになってたのを必死にこらえてるんだけどな。

あ、シグナム達もツボにハマる名前があったらしく、笑いを堪えて若干苦しそうだ。

 

「リインフォース・おかわり、か」

「「「「`;:゙;`;・(゚ε゚ )ブッ!!!?」」」」

 

ザフィーラ~~!? このタイミングでなぜそれを口に出したー!?

 

「う、うわぁーーーーーん!!!-=三ヾ(ヾ(ヾ(ヾ(ヾ(ヾ(*T□T)ツ」

「「「「「あっ」」」」」

 

リインフォース、逃げちゃった……

 

「……ザフィーラ?」

「す、すみません。つい目に留まってしまって口に出してしまったのだが、馬鹿にはしていなかったぞ。なぜか気になってしまった」

 

ザフィーラにしては珍しくすごく焦った口ぶりだ。

まぁ、犬ならおかわりは気になるよな、うん。

てか、リインフォースよ。どすこいといい、なんでこんな名前思いついたんだよ……

 

 

すぐにシグナム達がリインフォースを探しに行ったのだが、見つからなかった。

それからしばらくしてリインフォースは、なぜかなのはと一緒に帰ってきた。

さっきまでとはまた違った羞恥心で顔を赤くしてるリインフォースに、まずは土下座で謝る俺達。

 

「「「「リインフォース、ごめんなさい!」」」」

「み、みんな、主はやてまで止めてくれ。謝るのは私の方だ。すまない。取り乱してしまった……」

「にゃ、にゃはははっ。お邪魔しまーす」

 

何でもがむしゃらに走りまくっていたら、いつの間にか翠屋の前まで行ってしまっていたらしい。

で、様子がおかしいリインフォースを見つけたなのはが、家族と一緒に話を聞いて連れてきたというわけだ。

 

「そっかぁ。ごめんね、なのはちゃん。主の私がしっかり考えなあかんのに、リインフォースに負担かけすぎやなぁ」

「ううん。私は大丈夫だし、何もしてないよ。リインフォースさんの話を聞いたのは、お母さんやお父さんだったし」

「謝らないでください、主はやて。悪いのは、まともな名前がうかなばいわた 「はい、ストップです、リインフォースさん」 高町?」

 

またもや自虐モードに落ちそうになったリインフォースの口をなのはが防いだ。

 

「お母さんが言ってたじゃないですか。リインフォースさんは、名前が沢山浮かんでくるのは生まれてくる妹さんの事をとても大事に想っていてしっかりと考えている証拠だから、大丈夫だ。って」

「あぁ、そうだったな」

 

流石は高町家のお母さん、言葉の重みが違うねぇ。

きっとなのは達が生まれて名前を考えてた時の話とか色々聞いたのだろうなぁ。

 

「主はやて。私がこれだと思う名前が一つあるのですが、言ってもいいでしょうか? この名前がいいかを選ぶのは勿論主はやてですが、どうしても頭から離れない名前がありまして」

「ほー奇遇やな。私もあのノートの中で気になるのがあったんよ。ほんなら、2人一緒に言うてみよか」

「はい。では……」

「せーの……」

「「リインフォース・アインスとリインフォース・ツヴァイ!」」

 

アインス、そして、ツヴァイ。

あーそうだそうだ思い出した! リインフォース・ツヴァイだ!

 

確か、ドイツ語での1と2だっけ。

安直と言えば安直だけどな。

 

「へへっ、良かったわぁ。リインフォースもこの名前にしようと思うてたんやな」

「はい、私も嬉しいです、主はやて。安直かと思いましたが、私の力と主はやてから授けられた名前を引きつぐのなら……」

「せやな。私も同じ理由や。2人共、姉妹なんやし私の家族や。せやったら、この名前が一番心に響いた。みんなはどうや?」

 

はやてがアインスとツヴァイと言う名前が良いかとシグナム達に聞くが、みんな2人に同意見のようだ。

勿論、俺も大賛成。原作通りって言うのもあるけど、姉妹の2人が続いた名前って言うのはしっくりくる。

 

「リインフォース・アインスさん、ツヴァイちゃん。うん、すごく似合ってて素敵な名前だと思う!」

「ありがとう、なのはちゃん。あ、せや。今日、良かったら夕食一緒にどうやろ? 私が腕によりをかけて料理を振舞うよ。もちろん、健人さ、君もや」

 

時計を見ると、もうすぐ夕食の支度をする時間になっていた。

今日は、休みだけどテスタロッサ家もナカジマ家も用事があってそれぞれいないから夕食はどこかで食べようと思ったしちょうどいいや。

てかはやて、今俺をさん付けで呼ぼうとしてたな。

別になのはの前だからってさん付けでもいいんだけど、何か拘りがあるらしい。

 

「お邪魔でないなら、ご馳走になろうかな。はやての手料理、久々だし。楽しみだよ」

 

そう言ったらなのははチラチラこちらを見て何か考え込み、はやては一瞬だけだが含み笑いを浮かべた。

 

「やった♪ なのはちゃんは、どないや? 家族の人心配するかもしれへんけど……せっかくやし、ね?」

「えっと……じゃあ、お母さんに聞いて良かったら、ご馳走になろう、かな?」

「よっしゃ! せやったら今日は奮発するで! ささっ、そうと決まったら買い出しや。リインフォース、荷物持ちお願い出来る?」

「はい。お供いたします」

「なら俺も手伝うよ。荷物持ちくらいは俺も出来るし」

「そんなん気を遣わんでええのに。でも、ありがとう。どうせならなのはちゃんも一緒にどうや?」

「うん! 料理は私も手伝うよ」

 

こうして、楽しい買い出しの後ににぎやかな夕食となり、はやてとなのはの手料理をたらふく堪能した。

シャマルも何か作ろうとしていたようだけど、シグナム達に止められて軽く凹んでいたが……

 

 

続く

 




はい、というわけでリインフォースⅡは原作よりも早く完成となります!
スカさんは技術提供しつつ、ノリノリで魔改造する気だったのを
トーレとディエチが止めて、クアットロがスカさん用監視の為にアドバイザー兼助手となるという裏話w


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第52話「極々普通な小学生生活……?」

お待たせしました!
今回は日常(?)回です


今日もいつも通りの1日が始まる。

まずは朝。俺はほぼ毎日夢を見る。

そして、大抵夢の内容を1日くらいは覚えている。

さて、今日の夢は?

 

――けん……さ

 

――…んと!………

 

――……けん、……

 

――ケントサマー

 

とてつもない悪夢だった。

とはいえ、これは1週間に1回程度の割合で見ている悪夢なのでもう慣れてしまった。

以前は、2、3日に1回の頻度で見ていて、その度に悲鳴を上げて飛び起き、フェイト達に心配をかけてしまった。

心配だから一緒に寝よう、とまで言い出したからな、フェイトが。

その時は面白半分でアリシアがノリノリで一緒に寝ると言い出し、プレシアまで巻き込んで4人で寝ていたころもあったなぁ。

不思議とナカジマ家や八神家では見ず、テスタロッサ家でのみ見るんだよね、なぜか。

 

「……なれってほんとこわい」

 

目覚ましが鳴る前に起きて、完全に目が醒めたのでちょっと外を走ってこよう。

もう初夏なので、外は明るい。

毎朝とまでは行かないけど、早朝ジョギングは日課になってきている。

 

「あ、健人。おはよう」

「健人、おはよぅ。朝からジョギング? 元気だねぇ」

 

ジョギングから戻ると、既にフェイトとアリシアも起きていた。

アリシアは朝に弱いのでまだ眠たそうだ。

 

「アリシアもやるか? すぐ目が醒めるぞ」

「健人がおぶってくれるならやる~。あ、それいいねぇ。背中でもいいし、お姫様だっこでも…… 「ねえさん?」 フェ、フェイト? 目が怖いよ!? ジョ、ジョウダンダヨー?」

 

漫才始めたテスタロッサ姉妹はほっといて、朝食の支度をする。

と言ってもプレシアが作ってくれていたカレーを温めて、ジョギング前に炊いたご飯と食べるだけだけど。

プレシアは、リインフォース・ツヴァイの手伝いでアルフと一緒に研究所に泊まり込みする事が多い。

ここ1週間は研究所に泊まり込んでいて、通信越しでしか会話していない。

それでも、夜中や昼間にできる限り俺達の食事はちゃんと作ってくれて、今日も朝起きたら冷蔵庫にカレーと昼食の弁当がが置かれていた。

こういう所はクイントさんと同じく、お母さんだよなぁ。

 

 

そして、プレシア特製カレーを食べながら優雅な朝食タイム。

確かにカレーは美味しいけど、優雅かどうかは別だな。

 

「あーあ、いいなぁ。フェイト達のクラスは今日から水泳の授業なんでしょ? 私のクラス来週なんだよね」

「ねぇ、姉さん。今日、入れ替わらない? 水泳の授業だけでいいから、ね?」

「フェイト、諦めなよ。人間誰にも不得意な事はあるんだから」

「そんなぁ~」

 

フェイトとアリシアとの入れ替わりは今では教師の間でも要注意事項になっている。

それでもアリシア主導で入れ替わりをして楽しんでいるが、フェイトが入れ替わりをしたがるのは珍しい。

更に困り果てて、はては絶望まで浮かべるフェイトもまた珍しい。

体操着を忘れてなのは達に借りようとしたけど、サイズが違いすぎて絶望するアリシアはこんな顔だな。

で、そのアリシアはフェイトが何を思って急に入れ替わりを言い出したのか分かっているので、ニヤニヤ顔で断る。

どうしてフェイトはこんなに水泳の授業を嫌がるのかと言うと、答えは単純。

フェイトはカナヅチだった。

 

俺、フェイト、アリシアは各々事情は違えど、今まで泳ぎはしたことがなかった。

そこで水泳の授業が始まる前に泳いでみようと、先週プールに行った。

アリシアは最初こそうまく進めなかったが、すぐに泳げるようになった。

だが、フェイトは全く泳げるようにはなれず、溺れかけた。

フェイトは水中での訓練はしたことあるが、ただ単に泳ぐなんてしたことがなかった。

溺れかけた事で水が怖くなったわけではないが、フェイトは水泳が苦手になってしまった。

えっ? 俺の水泳の腕? すぐに分かるさ……

 

朝食を終えて、少し早めに家を出る。

途中、なのはやはやて達と合流して登校。

美少女だらけで登校は、最初すこーーーしだけ緊張したけど、スカさんやナカジマ家でのアレコレに比べたらどうってことはなくすぐに慣れた。

まだ小学生だからか周りも特に羨ましがったり妬んだりと言った感じじゃないしね。

 

「おはよう、草薙。今日も朝から随分と見せつけてくれるよなぁ!」

 

訂正。1名だけいましたよ、嫉妬の塊。

 

「おはよう、矛宮。今日も朝から随分と尖がってるなぁ」

「俺の名前は楯宮だ! ほこじゃねーよたてだよ! 雑なボケするんじゃねぇーよ!」

「せやで健人君。こういう時は、ボケる前に逆にもっと見せつけるんや……えいっ!」

「やぁっ!」

 

なぜかはやてが右手に、アリシアが左手に抱き着いてきた。

急な事だったので若干バランス崩しそうにはなったけど、どうにか踏ん張った。

小さいアリシアはともかく、はやてはうまく足も絡ませてきてる。

 

「おい、こらお前ら……」

「ほら、フェイトも早く乗っかって!」

 

アリシア、妹を巻き込むな。

 

「えっ? でもどこに?」

「背中が空いとるよ、フェイトちゃん」

 

はやて、たきつけるな!

 

「そうだね、えいっ!」

「ちょっ、待てフェイト。流石にこれは……」

 

フェイトが後ろから抱き着いてきた。

なんでフェイトもそれに乗っかるかな!?

なのは達も止めて……っていねぇ!?

 

「なのはちゃん達なら先に行くからごゆっくり、と言うとったで?」

 

あ、逃げられた。

 

「むむっ、なんのこれしきー!」

 

3人共、足を俺に絡ませて来てて重心がドンと来てる。

それでも、結構鍛えてるから重くはないけど、バランスがとりにくい。

あれ? 楯宮が静かなだな。

てっきりこの状況で嫉妬心を倍加させてるかと思ったが、なんか呆れ顔になってる?

 

「なんだよ、楯宮。羨ましいなら代ろうか?」

「いや、羨ましいと言うか、なんだろうな。修行してるようにしか見えなくてあまり羨ましく感じない」

 

右手にはやて、左手にアリシア、おまけにフェイトを背負って踏ん張っている姿は、そりゃ修行にしか見えないよな。

身長が大きくなったからできた事だけど、はやてとアリシアが足を身体に挟み込むようにしている。

しかも、今日は弁当箱持ってるから歩きにくいにもほどがある。

見た目的にもすごい絵面になってそう。

 

「えっ? これって訓練の一環じゃないの?」

 

フェイト、天然装ってワザととしか思えないんだが?

 

「せっかくやからこのまま教室へゴー!」

「あ、いいね。それ!」

「なんでだよ!」

 

結局そのままの格好で学校へ行き、生徒と先生から数奇な目半分生暖かな目半分で迎えられたのであった。

 

そして、今日の授業が始まった。

国語の教科書に載っている物語を読む授業や、理科の実験は面白いけど算数は若干退屈だ。

とは言え、問題を解く事よりも授業を受ける事が楽しいので全く問題はない。

逆に社会は、結構忘れていることが多い。

地図記号とかなんて使う事なかったから忘れまくってた。

 

「では、草薙君。この地図記号の意味はなんでしょうか?」

「はい。その記号の意味は……アンブレラ社です」

「違います! そんな物騒な会社が町に溢れているわけないでしょ!」

 

うん、ホント結構忘れてるなコレ。

 

 

昼食の時間。

 

学校生活で一番憧れていたのは給食。

なので、この時間が一番のお楽しみ……になるはずだったのだけど。

私立聖祥大学付属小学校は、給食ではなく弁当だと聞いて軽いショックだった。

教室や屋上やら色々な場所でみんなが弁当を広げている。

俺達も大人数なので、邪魔にならないよう踊り場の一角をレジャーシートを広げて陣取っている。

なのは達は弁当を持ってきてはいないが、これはクイントさんがみんなで食べてと大きい重箱に色々詰めてくれたので、これをみんなで食べるからだ。

プレシアも対抗心燃やして同じ重箱にフェイトとアリシアの好物中心に詰めて作った弁当もある。

最初俺の弁当はプレシアが作ってくれていたのだけど、今ではクイントさんが作ってわざわざテスタロッサ家に朝転送してくれている。

クイントさんが手作り弁当を俺に持たせたい。とプレシアに相談したら作ってくれたとの事。

スカさんが悪目立ちしすぎてるけど、プレシアも結構な天才なんだよね。

 

「じゃじゃーん。今日は、私のリクエストで茄子の浅漬けと南瓜の甘露煮。それと筑前煮、デザートに抹茶プリン!」

「おぉ~……って、アリシア。確かにおいしそうだけど……」

「地味と言うか、好みがおばちゃん通り越しておばあさんっぽいぞ。飲み物麦茶だし」

 

アリシアが和食を好きになって、プレシアがはやてや桃子さん達に和食を教わったのでかなりうまい。

 

「むぅーでも、フェイトよりはマシでしょ」

「まぁ、それは確かにそうよね。こんなお弁当あたしも見た事ないわ」

 

アリサが呆れ顔になるのも無理はない。

フェイト用にプレシアが作ったのは、ミニピザにナンにピロシキ……という国際色豊かすぎるラインナップ。

研究所に籠るほど忙しいのに、どこにこんなに沢山作る暇があったのか。

 

「へへっ、みんなも食べてね」

「もちろん! いただきまーっす!」

 

こうしてにぎやかに昼食の時間は過ぎていく。

料理上手なはやても絶賛するほどに上手いのだけれど、問題は子供7人に対して大人7人分はありそうなこの量を昼休み中に食べきれるか、だな。

朝、はやて達よりも両手に持った弁当の方が重いと思ったくらいだし。

 

 

午後の授業

 

午後は、待ちに待ったプールの授業だ。

小学校の水泳ならスクール水着で統一されてると思ったが、この学校は水着は各自自由だ。

みんな水着に着替えてテンションが高い。

カナヅチのフェイトだけは、若干テンションが沈んでいる。

どうやら、沈んでいるのはカナヅチだからだけではないようだ。

 

「……た、食べ過ぎちゃった」

 

フェイトは少し膨らんだお腹を手で隠しながら苦笑いを浮かべた。

アリシアも今頃お腹を抑えて苦しんでるだろうな。

あんな小さい身体でよく食べたもんだ。

 

「そりゃあれだけ食べたらねぇ。健人の食べっぷりにつられたんじゃない?」

「にゃはは、健人君もすごく沢山食べたもんね」

 

そりゃ、クイントさんにプレシアの弁当だもん。なのは達の分まで食べないようにはしたけど、沢山食べなきゃ損だ。

まぁ、なのは達から見たら桁違いに見えるんだろうけど、任務だけではなく普段から動きまくる俺にとっては普通だ。

だからクイントさんも沢山作ってくれたんだろうし。

 

「大丈夫? 胃薬いる?」

 

なんで胃薬を常備してるんだ、すずか。

 

「ところで、健人君。私らの水着、どうや? 似合っとるやろ?」

 

はやてが水着を見せつけるようにポーズをとりながら言うと、すずかとアリサはハッとした表情を浮かべ、恥ずかしそうに隠れた。

うん、そうだよね。これが普通だよね。

 

「見ろ、はやて。これが普通の女の子の反応だぞ」

「そして、あれが普通の男の子の反応や」

 

はやてが指差した先には楯宮含め、数人の男子が顔を赤くしてチラチラなのは達を見ている。

最近の小学4年生は進んでるなーこんなもんかな?

 

『そうやねー健人さんは私らみたいなお子様には興味ないもんねークイントさんやメガーヌさん達の方がええよねー?』

『わざわざ念話で拗ねるなよ。てかなんであの2人が出て来るんだよ』

 

クイントさんは色々な意味でヤバイ。

 

『それとも、ナンバーズのお姉さん達?』

『……ノーコメント』

 

アレは触れない方がいい。

 

「で、健人君どうかな? 水着、似合ってる?」

「おう、なのはらしいカラーリングで似合ってるぞ」

「ホント? へへっ、嬉しいなぁ」

 

なのはは本当に嬉しそうだ……てかこのやりとり、この前みんなで水着買いに行った時にしたばっかなんだけど。

俺があまりみんなに反応しないのも、既にどんな水着がじーっくりたーっぷり見させてもらったからなんだよね。

 

「健人、私はどうかな?」

 

少しは回復したのかフェイトも水着の感想を聞いてくる。

ちなみに、この流れもこの前やったばっか。

なので、俺も同じ返答をしよう。

ただし、ここは人がいるから念話で。

 

『ソニックフォームとあまり変わらない』

『えぇ~!?』

 

だって、フェイトが気に入って買った水着は、まんまソニックフォームなんだから仕方ない。

速さを上げるためとはいえ、あの生地の薄さはどうかと思う。

将来、癖になって痴女にならないかとプレシアの悩みの種になってるし。

 

「さー皆さん。まずは準備運動からですよ」

「「「はーい!」」」

 

そして、始まる水泳の授業。

最初は、水の中を歩く事から始まり、ビート版でのバタ足練習をした。

 

「ブクブクブク……」

「フェイトちゃーん!?」

 

フェイトは案の定、プールに入ってすぐにビート版抱えたまま溺れてるし、ある意味器用だな。

ま、俺も人の事言えないか。

ブクブク……

 

「あら? 草薙君はどこかしら?」

「せんせー、草薙ならプールの底を泳いでいます」

「えぇー!?」

 

そう、俺は泳げるけど、なぜかすぐに沈んでしまう。

クロールや平泳ぎはすぐにできるようになったけど、息継ぎがうまくできない。

息継ぎするたびに沈んでいく。

溺れているわけじゃないんだけどねぇ。

見れば他にも変な泳ぎ方してる子がいるな。

 

「きょ、今日はこの辺にして、後は自由に泳いでみましょう」

 

流石に先生も面食らったようで、残りの時間は自由時間となった。

 

「フェイトちゃん、全身に力入れすぎかな。もう少しリラックスしよう?」

「よ、よろしくお願いします……」

 

フェイトは、すずかに泳ぎ方を教わっている。

意外にも俺達の中で一番泳ぎがうまいのがすずかで、はやてが2番目に上手だ。

で、俺の方はと言うと。

 

「ふっふっふっ。泳ぎなら、泳ぎならば俺の独壇場だ! さぁ、勝負だ草薙!」

 

いつものように楯宮に勝負を挑まれていた。

楯宮は泳ぎがうまいからいつもより自信があるようだ。

でも、なーんか勘違いしてる気がする。

周りも周りで俺達の勝負に興味があるようで、1コース分空けている。

先生は、フェイトや他に泳げない子達へ教えていて、すずかとはやてが手伝っている。

はやても何気に水泳得意なんだよな。

ま、やるしかないか。

 

「それじゃ、位置について、よーいドン!」

 

アリサの掛け声と共に俺と楯宮は一斉に泳ぎ始めた。

案の定、俺は泳げば泳ぐほど沈んでいく、ブクブク。

そして、少ししてから25メートル先のプールの対岸へと楯宮が着いた。

 

「よっしゃ! 草薙に勝ったぞー!」

「いや、俺もうここ着いてるぞ」

「くっ、草薙!? お前泳げないはずなのにいつの間に!? 何かズルでもしたのか!?」

 

あっ、やっぱり勘違いしてたか。

 

「友樹、あなた勘違いしてるわよ」

「えっ? ぼくの何が勘違いなんだバニングス?」

「健人は、泳げないわけじゃないわ。ただ、息継ぎが下手で沈んじゃうだけ。泳ぐ速さだけならすずか程じゃないけど速いのよ?」

「なんだよそれ!」

 

そう。俺は泳ぎの速さだけなら結構速い。

すずかやはやて程じゃないけど、3番目くらいって所だ。

 

「健人君って潜水艦みたいだよね」

「沈んだまま25メートル泳ぎ切る肺活量ってどんだけよ」

 

泳げないよりはマシだ。

うん、息継ぎを諦めて息を止めながら素早く動く方向に持っていったのが功を奏したんだな。

 

「目指せ、潜水100メートル」

「馬鹿な目標立てるんじゃないわよ。しっかり泳げるようになりなさい!」

 

アリサに突っ込まれてしまった。

俺もすずやかはやてに泳ぎ教わるかな。

 

「なら、私と一緒に泳ごうよ。私もそれほどうまくないけど、だから一緒にうまくなろう?」

「あたしもはやてやアリシアよりも速く泳げるようになりたいし。3人でうまくなるわよ」

 

なのはとアリサ、泳げる事は泳げるけど、フェイトよりはマシってレベルなんだよね。

アリサは、この前水泳初心者のアリシアに負けたのが悔しいらしい。

 

「な、なら俺が指導を……」

「「あ、結構です」」

「そんなー!?」

 

楯宮が何か言いかけたけど、即座に俺とアリサでシャットダウン。

なのはは苦笑いを浮かべているけど、特にフォローはしない。

楯宮って、頭悪くはないけど人に物を教えるのド下手すぎるんだよな。

前になのはが国語教わろうとしたら、全く参考にならなかったらしい。

 

 

そして、放課後。

 

「みんな、まったねー」

「ばいばーい!」

 

みんなそれぞれの家へと帰って行く。

帰宅後、誰かの家に遊びに行ったり、俺やなのは達は管理局の任務があったりする。

けど、今日は各々家の用事があったりで各自解散となった。

俺も買い物してから帰るつもりだ。

プレシアの残してくれたカレーはまだあるけど、少し物足りないのでカツや野菜を買う予定だ。

これでも人様に出せるようには料理もうまくなったし。

と言っても、今日俺が作る予定なのはサラダ程度だけど。

 

「さてと、俺は夕食の買い物して帰るから、2人共先に帰ってていいぞ」

「なら私も一緒に行くよ。姉さんは先に帰っててね」

「ガーン。さらりと健人と2人だけになろうとナチュラルに邪魔もの扱いされたー?」

「ふふっ、冗談だよ。健人、私達も一緒にでいいでしょ?」

「ん、別に構わないぜ」

 

フェイトってホント強かになったなぁ。

 

「おやおや~? 朝だけでなく放課後も両手に華で健人さん、口元がにやけてますよぉ?」

「そのセリフは10年早い。せめてプレシア程度にまで大きくなってから言え」

「むっ、これでも大きくなってるんですよーだ!」

「健人って、お母さんの事が好きなの?」

「ちっがーう!? そういう意味じゃないし。ショックを受けるなよフェイト!」

 

なんか最近俺かなりの年上趣味に見られ始めてる気がする……クイントさんやメガーヌさんならまだいいか。

 

「大丈夫だよ、フェイト。健人はお母さんみたいなおばさ…」

「あら、アリシア。誰がおばさんなのかしら?」

 

商店街へ向かって歩いていたら、いつの間にかプレシアが背後に立っていた。

フェイトは嬉しそうな顔で振り向いたけど、アリシアは冷や汗をかきながら固まっている。

 

「イ、イヤダナーオカアサマ。オカアサマミタイナオトナノオネエサマハ、ケントニハマダハヤイッテイオウトシタンダヨ」

「あら、そうだったの。ならいいわ。健人、買い物なら済ませたから、大丈夫よ。連絡しようと思ったらあなた達が見えたのよ」

「了解。でも、向こうは大丈夫なの? 3、4日は忙しいって言ってたのに」

 

アルフの姿が見えないのが何か嫌な予感がする。

 

「大丈夫よ。アルフが私の分まで頑張るから今日は家に帰りなよ。って言ってくれたのよ。ご主人想いのいい使い魔ね」

「そうなんだ。今度、アルフにありがとうって言わないとね」

 

絶対に嘘だ。と、俺のアリシアの声が一致した。

恐らく、娘と一緒にご飯食べれないのが耐えられなくなったからアルフに押し付けて無理やり帰って来たんだろう。

哀れ、アルフ。

 

「2人共。どうかしたかしら?」

「「イエイエナンデモアリマセンヨー」」

 

なんだかんだでフェイトもアリシアも嬉しそうだな。

 

その後、腕を振るい過ぎたプレシアの夕食に、フェイトやアリシアはまたもやお腹を丸くした。

 

「でも、俺も今日は食い過ぎたなぁ……」

 

風呂に入りながら大きくなったお腹をさすりながら湯舟に身を沈める。

ナカジマ家にいると、風呂に入ろうとスバルとギンガを連れて、クイントさんがほぼ毎日来たっけ。

で、スカさん家にいた頃はドゥーエが入ろうとしてトーレに止められて、セインが悪戯しようとしてディエチやチンクに撃退されてたっけ。

慣れるとああいう賑やかなのもいいけど、こう1人でのんびり風呂に入るのもいいもんだ。

ここじゃ流石に乱入はないだろうし。

宿題も終えたし、あとは寝るだけ。

これで俺の極々平凡な一日が終わる。

 

「健人? 一緒に……」

 

……まさか、ね?

 

 

続く

 




健人の平凡な学校生活でしたー

管理局の仕事がない日は大抵こんな毎日です(笑)

この小説独自設定として、泳ぎが一番うまいのはすずか、同じくらい上手なのがはやてです。


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第53話「運動会だよ全員集合!」

お待たせしました!
家族がらみのトラブルでストレスがマッハ……
おまけにネット環境が不安定、工事しようにも日程調整ができず最悪今年いっぱいは不安定なまま……
おかげで沖ジェット召喚できず(関係ない)


俺が学校生活で授業、給食以上に憧れた行事がある。

身体が弱かった俺は、一度も参加した事がない行事。

それは……運動会だぁ!!!

 

『いやぁ、気持ちは分かるんやけどね。私もしばらく不自由な生活で学校に行かれへんかったし』

『でしょ? でしょ!?』

『だからって、2徹はあかんで?』

『ですよねー』

 

今日は待ちに待った運動会。

なのに興奮した俺は昨日一昨日と寝れず、寝不足のままこの日を迎えてしまった。

なのは達は、様子がおかしい俺を心配してくれたが、うまくごまかした。

でも、はやてだけには気付かれて念話で指摘された。

 

『でもなんではやては気付いたんだ? フェイトやアリシアだって誤魔化せたのに』

『それは……私も、春に久々に登校した時は緊張と興奮で眠れなかったんや。経験者は語る!』

 

いや、ドヤ顔で経験者は語る。じゃないから。

 

「ねぇ、健人と念話で何を話してるの?」

 

流石にフェイトは俺達が念話をしてるのには気付いたか。

 

「それはやなぁ、秘密やフェイトちゃん。な? 健人君?」

「男同士の秘密の会話って奴だ」

「そうそう、って私は女や!」

「3人とも馬鹿な話してないで応援しなさいよ。そろそろなのはの出番よ、ついでにアリシアも」

「アリサちゃん、ついでって」

 

とまぁ、こんな馬鹿な掛け合いしている俺達の目の前では、クラス対抗の徒競走が行われていて次に走るのは、なのはとアリシアだ。

 

「負けないよ、なのは!」

「うん、私もだよ、アリシアちゃん」

 

本来なら2人の応援をすべきなんだろうけど、俺の視線の先ではそれどころじゃない事が起きていた。

生徒の家族が応援に来るのは小学校の運動会じゃ当たり前だけど、ある一角が明らかに人数が多すぎる。

なのは達はそれぞれ家族が来ていて、リインフォース・アインス達も来ている。

で、俺の家族という事でナカジマ家+αが来ている。

そのαは、ゼスト隊長にメガーヌさん、ティーダさんにティア。

と、まぁ、ここまでは想定内。

で、だ。

 

「なんで隊長達ばかりじゃなく、スカさん達までもここにいるんだ?」

 

そう。なぜか応援席には、スカさん達やなんとレジアス中将とオーリスさんまで来ていた。

おい、地上本部は今どーなってるんだよ?

 

「うっわぁ、目立っとるなぁ」

「あそこの人達、みんな健人君のお知り合いなの? すごいねぇ」

「母さん、研究が忙しいのに来てくれたんだ」

 

はやてとすずかが驚嘆の声を上げ、フェイトは桃子さん達と歓談しているプレシアを見て喜んでいる。

 

「おのれぇ、なんでお前の周りには美少女だけじゃなく美女も沢山いるんだよ!」

 

血の涙を流しかねない程の形相の楯宮は、いつも通りだな。

 

「いや、いかついおじさんや胡散臭いおじさんもいるからな?」

 

そのおっさん達は競技を肴に酒盛り始めちゃって、メガーヌさんやオーリスさん、ウーノに怒られていた。

いや、ホント何しに来たんだよあんたら。

てか、仮にも犯罪者なスカさんと意気投合してるんじゃないよ、レジアス中将!?

それにしても、衣装は現代風とはいえ、殺生〇な姿をしたスカさん浮きまくってるんだけど。

 

「ちょっと、誰も私達の応援してないってどういう事よ!?」

「「「あっ」」」

 

気が付いたらなのはとアリシアの徒競走終わってた。

 

 

「さて、次は俺の番か」

 

俺の出る種目は借り物競争だ。

これも俺が昔からやりたかった競技の1つだ。

グラウンドにバラ撒かれたカードに書かれた物や人を借りてゴールに持っていく、もしくは連れてくる競技。

全くの運任せの競技。カードに何が書かれているか今から想像するとワクワクが止まらない。

借り物競争には、俺の他にはやてとアリサ、それに楯宮が出る事になっている。

何だろう。この面々と応援席にいる面子を見て、まともに終わりそうな気がしない。

まぁ、何にせよ楽しむとしますか。

なんだか燃えてきた!

 

「位置について、よーいドン! と言ったらスタートですよ?」

 

――ドテッ

 

と、思ったら、スタートの合図でボケをかました担任のせいで萎えてしまった。

 

「せんせぇ~?」

「あ、あははは。冗談ですよ、冗談。だから目からハイライト消さないでね草薙君?」

 

この先生、実はワザと天然装ってるんじゃないだろうな?

 

「そ、それじゃ気を取り直して、位置について、よーいドン!」

 

――パンッ

 

今度こそ借り物競争がスタートした。

これは別に足が速ければいいというものでもなく、いち早くカードを取ればいいというわけでもない。

 

「うおぉぉぉ~~!!」

 

それが分かってないのか猛ダッシュする馬鹿1人。

 

「は~……楯宮君、初っ端から飛ばすねぇ」

「ああいうのに限ってろくでもないカード引くのよね」

「楯宮には生贄になってもらおう」

 

一方の俺達はマイペース。

他のクラスの参加者たちは楯宮に触発されて猛ダッシュする子や、そんな様子にドン引きしている子など反応は様々だ。

 

「よっしゃ、一番乗り! どれどれ、何を借りればいいんだ? 『タケコプター』 そーらを自由に、って飛べるかぁ!」

 

やっぱりろくでもない物が混じってるみたいだな。

 

「なんか、カードを見るのが怖くなってきたわ。私のはっと 『杉下警部のメガネ』 すみませーん、この中に水谷豊さんはいらっしゃ、るわけないでしょ!」

 

アリサもハズレっと。

 

「ふーん、ネタの広さが半端やないねぇ。『インフィニティ・ガントレット』……さて、次いこか♪」

 

はやてもハズレ、他の子達も 『こち亀全巻』やら『スピノザウルスの化石』やら無理ゲーにもほどがある借り物ばっかりのようだ。

 

「俺の運、試してやる! これだ! えっと?」

 

カードに書かれていたのは 『頼りになって大好きな美人な年上のお姉さん』 だった。

うーん、これに該当しそうな人は、沢山いるな。と、応援席にいるクイントさん達に目を向ける。

クイントさんにメガーヌさん、ナンバーズは、みんな美人で年上だけど、頼りになる……のはドゥーエとセインを除こう。

 

――なんでだよー!?

 

空耳だな、きっと。

さてと、これ、誰を選んでも後が怖い奴だ、うん。

と言うか、選べないなーみんな頼りがいあって美人だし、みんな大好きだし。

うーん……仕方ない。

 

「次いこっ」

 

――チッ

 

応援席の方から舌打ちが聞こえたような気がしたけど、気のせいだな。

 

「ドゥーエ姉様? セインちゃーん? あとでお仕置きね」

「げっ、ば、バレちゃったー?」

「うぇ~!? な、なんで私まで!?」

 

聞かなかった事にしよう。

 

「『宝石の肉』 よっしゃ、今すぐ第一ビオトープへ……ってどこだよ!」

「『鋼金暗器』 また懐かしい物やなぁ。でも、アウトや」

 

あっちもまだアタリのカードを引けてないようだ。

そもそも、アタリのカードなんてあるのか?

 

「はぁ、そろそろまともなの出てこーい。おっ?」

 

何枚目かに引いたカードに書かれいたのは、一見すると今までと同じようにハズレカードにも見えた。

 

「でも、これなら……いけるかもしれない!」

 

急いで目当ての人がいる場所、生徒の待機場所へと向かった。

俺が目指した人物は、アリシアだ。

 

「アリシア! 悪い、一緒に来てくれるか!?」

「えっ? 私!? え、えっと、その、心の準備が……」

 

ワザとらしくモジモジして渋るアリシアだったが、楯宮もはやてもアタリのカード引けたようでそれぞれ観客席に走って行くのが見えた。

ここでモタモタしていられない

 

「いいから来て!」

「わっ、ちょっと待って、ギャーー!?」

 

アリシアの手を引き、一目散にゴールを目指す。

 

「はやっ、足、地面についてなーい!」

 

後ろでアリシアが文字通り宙に浮いて軽く目を回しているような気がする。

まぁ、後でジュースでも驕ろう。

 

「ゴール!」

 

こうして俺達は無事に1位となった。

俺達のすぐあとに、大きな荒巻鮭を抱えたはやてが2位でゴールした。

アリサはお題がろくでもない物ばっかりだったので、早々に棄権して応援席に戻ってすずかに慰められている。

どんなお題だったのか気にはなるけど、俺らもとんでもない物ばっかだったからな。

 

『借り物競争1位は、4年C組草薙健人君、2位は同じく八神はやてさん……』

 

「やったで、私らでワンツーフィニッシュや!」

「いえーい!」

 

荒巻鮭抱えたままのはやてとハイタッチ。

いや、早く返して来たらどうかな? 重くないのかな? てか、どこで借りれたのかな、それ!?

と、ここで楯宮がやっとゴールした。

 

「ぜー……はー……ひどい目にあった」

「あれ? 楯宮、遅かったな? はやてと同じくらいに当たりのカード引いてなかったっけ?」

「そ、それが……お題は 『チワワ』 で、すぐに借りる事できたんだけど、すごくパワフルな犬で……ぜぇ、ゴールと全く別方向に走り出して、苦労、したぁ」

「そりゃまた、ご苦労様やな」

 

そういえば、俺らがゴールした時に離れた所で砂煙が上がっていたが、あれはチワワに引っ張られて爆走する楯宮だったようだ。

 

「そうだねぇ、私もだーれかさんに引っ張りまわされたものねぇ?」

「お、アリシア、お疲れさん。おかげで助かったよ」

「それはどうも! で、カードには何が書かれていたのよ? 『大事な友達』 とか 『美少女』 とか書かれていたのかしらぁ?」

 

アリシアがカードに書かれていた事が気になるのは分かるけど、なぜ得意げな顔をしているのだろう?

はやてははやてで微妙にむくれた顔をしていて、応援席からなのはとフェイトがこっちを睨んでいる気がする。

 

「どれどれ~?♪ ……『漫才相手』 ですってぇ~!??」

「「ぶふっ!?」」

 

なぜかはやてと楯宮が吹き出して、アリシアがやたらと大袈裟に驚いているけど、他に適任がいなくて仕方がなかったんだよなぁ。

 

「ちょっと健人! 何なのよこれ!?」

「何って、漫才相手にするならだれがいいかって事だろ?」

「それを聞いてるんじゃないわよ! なんで、私が選ばれたのよ!?」

 

どうやらアリシアは漫才相手に選ばれたのが不服なようだ。

 

「だって、はやてもアリサも同じ種目の選手だし。なのはやフェイト、すずかは違うだろ? で、アリシアになった」

「私も候補になっとったんやね」

 

はやてとはよく漫才のような会話してるからな。ボケ役とツッコミ役どっちもできるし。

アリサも俺とはやてやフェイトとのツッコミ役になってくれてる。

 

「あっ、そうかごめんな。アリシアが漫才相手で一番に浮かばなくてさ」

 

アリシアは一緒に住んでてよくフェイトを交えて漫才のような会話してるから、それが当たり前すぎて真っ先に浮かばなかったんだな。

 

「ちっがーう! 私が怒ってるのはそこじゃなーい!」

「アリシアちゃん、心底、本当に心の底から同情するわ。まぁ、健人君の気持ちもわかるんやけどね」

 

アリシアと2人して盛大にため息をつくはやて。

女の子同士、共感する事があるんだろうなぁ。

その原因は俺だってのが納得できないけど。

 

「草薙……なんで俺の名前が出てこなかったんだよ!」

 

楯宮、お前はそれでいいのか?

 

 

続く

 




運動会編、と言ってもあと数話で終わりますがー
で、その後原作での、なのはとゼスト隊に関わるイベントをサクッと終わらせて中学生編に行こうと思います。


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第54話「きょうふ(?)のちゅうしょくたいむ」

お待たせしました!
ネタの順番に迷ってて気づいたらこんなに間が・・・いつもの事ですがw

天災(?)は忘れた頃にやってくる・・・



午前中のすべての競技が終わり、待ちに待った昼食タイムとなった。

今日は、クイントさんとメガーヌさん、プレシアが腕によりをかけて弁当を作ってくれるという事で期待していた……のだけど。

 

「流石にここまでとは思ってなかったなぁ」

 

応援席に戻った俺達の目の前には、大皿に盛りつけられた料理が大量に並べられていた。

バイキングレストランかここは!

 

「私もお弁当作ろうと思うとってたんやけど、クイントさんに私らの分も作るから大丈夫って言われたんや」

「私の所も、プレシアさんから連絡あったの」

 

はやてやなのは達みんなの分も作ったようだけど、何十人分だこりゃ。

そりゃ俺やギンガやスバルは、大人よりもたくさん食べるけど、それにしたって多い。

ってかよく持ってこれたたね。

えっ? こういう時の為にゼスト隊長とレジアス中将がいる? 上司2人を荷物係かい……

スカさん達も何か色々持ってきてたし、ここは宴会場かよ。

 

「楯宮君、ちょっと引いてたね」

 

美人揃いなのを羨ましそうに見ていた楯宮が、クイントさん達がどこからともなく料理の山を並べたのを見て口を大きく開けてたな。

そして、普通が一番だ、普通がね。ってなんか悟りきった顔をして自分の家族の所へと行ってしまった。

ちょっとどころではなく、ドン引きだったなありゃ。

 

「あ、健人君。それになのはちゃん達もお疲れ様。ささっ、沢山食べて午後も頑張ってね」

「ふふっ、ちょっと張り切りすぎちゃったわ。でも、いつもこれくらい食べるから平気でしょ? ギンガやスバルもあなた並によく食べるって聞いているしね」

 

苦笑いを浮かべる俺達をクイントさんやプレシアさんが出迎えてくれた。

 

「量もすごいけど、どれも美味しそう! プレシアさんの料理の腕は知ってましたけど、クイントさんとメガーヌさんも皆さん料理上手ですね」

「喫茶店を営んでいる桃子さん程じゃないわ。料理なんて柄じゃなかったのだけど、娘達だけじゃなく健人が良く食べるからつい張り切っちゃってね」

「ふふっ、そんな事言うとクイントが妬いちゃうわよ?」

「そんなわけないじゃない。まぁ、プレシアの料理もうまいとは言っていたから、私も張り切っちゃったのはあるけど」

 

ママさんズは和気藹々としてる。

うん、プレシアもホントいいお母さんになってるよねー

とても1年前は娘を折檻してたようには見えないぜ、ハハッ。

さて、高町家も八神家もナンバーズも結構ばらけて座ってるけど、どこに座ろうかな。

と、思っていたらギンガが駆け寄ってきた。

 

「ねぇねぇ、お兄ちゃん。私達も料理つくったんだよ」

「ギンガとスバル、それにティアナちゃんの3人で色々作ったのよ。私は皮むきとか味見くらいしか手伝ってないけど、味は保障するわよ」

「おぉ、3人の手料理かぁ。どんなの作ったの?」

 

ナカジマ家でクイントさんの手伝いをしてた事はあるけど、ギンガ達が料理を作った事はなかったな。

さて、何を作ったのかな。と言っても、7歳や6歳じゃおにぎりとかウインナー焼いたのとか簡単な料理かな。

 

「えっとね。麻婆豆腐とパエリアと餃子と豚汁と肉じゃが」

「ピザもいくつか焼いた!」

「魚介類と野菜のスープも作ったよ」

 

思ったより本格的なの沢山作ってきたー!?

しかも、和洋中にピザまでー!?

 

「ここら辺の料理はギンガ達が作ったのよ。頑張るお兄ちゃんの為にってね」

 

クイントさんが言うここら辺とは、大皿10枚程に並べられた料理の数々の山。

プロの料理人顔負けの量と見栄えだ。

しかも、味はクイントさんの保障済みだ。

ここはホテルのビュッフェですか!?

 

「うわぁ、これはまた壮観だねぇ」

「この量を作るのは私でもちょっと無理やなぁ」

 

ギンガ達の手料理の山を見たアリシアとはやても驚きの声をあげている。

 

「みんなお兄ちゃん想いだね♪ 嬉しいでしょ、健人君?」

「もちろん!」

 

なのはの言う通り、これは兄冥利に尽きるってもんだな。

見てるだけでよだれが止まらなくなってきてるので、いただくとしますか。

 

「「「いただきます!」」」

 

こうして、大人数での大昼食会が始まった。

早速ギンガ達が作った料理を食べたのだけど、思っていたより美味しかった。

麻婆豆腐は辛すぎず甘すぎずちょうどいい加減で出来ていて、豚汁と肉じゃがも美味しくクイントさん特製おにぎりが進む進む。

パエリアはティアナが作ったスープと一緒に食べると更に美味しくなる。

 

「ピザもふわふわで美味しいわぁ。今度私もピザ作ってみようかな」

「主はやて、こっちのマルゲリータも美味しいですよ」

「私この餃子が好き! 焼き餃子って言うんだっけ?」

「うん。こっちに蒸した餃子もあるよ、アリシアちゃん」

 

と、みんなが驚きの声を上げる中、凹んでいるのが2人ほどいる。

 

「ま、負けた……ギンガ達にも、負けた……」

 

まず1人目はフェイト。

プレシアやはやてに教わってはいるけど、いまだにフェイトの料理の腕は壊滅的。

俺も何度か食べたけど、見た目は普通、味はひどかった。

それでもフェイトは俺の為にと料理を覚えようとして、作ってくれたので毎回完食している。

プレシアとアリシアは必死で食べるのを止めたが、哀しそうな表情を浮かべるフェイトを見て残すなんて真似は出来ない。

まー……毎回気絶してるんだけどね。

 

「ふふっ、笑ってください。ギンガちゃん達だってあんなにうまく作れるのに、未だに毒物しか作れない私を笑ってください……」

 

そして、もう1人はシャマルだ。

 

「笑えないぞ、シャマル」

「ほら、あれだ。健人の妹って事で納得しろって」

 

アインスとヴィータが慰めているが、ヴィータよそれはどういう意味なのか後でじっくり聞かせてくれ。

そこはせめてクイントさんの娘さんにしてくれ、ティアナもクイントさんとゲンヤさんを両親のように懐いているからヨシとしよう。

他にもメガーヌさんが作った揚げ物や、プレシアが作ったサラダなども堪能した。

と、そこへウーノとクアットロがやってきた。

 

「こんにちは、健人君。言いたい事は分かるわ。何かあっても私やクアットロが止めるから大丈夫よ。手違いはあったけど、ああいう事は二度と起こさないから安心して」

 

クアットロが言ってるのは、さっきの借り物競争のアレだな。

さっきまでドゥーエとセインがウーノに正座で説教食らってたみたいだし。

 

「来てくれたのは嬉しいけど、どこで知ったのさ今日の運動会の事」

 

さっきの借り物競争よりもそっちの方が重要なんだよな。

てか、今日はみんなマスクしてないし。仮名じゃなくて本名で呼び合ってるし。

色々大丈夫なのか?

 

「ドゥーエがティーダ君とオーリスから愚痴を聞かされてたのよ。せっかくだから有休取って応援に行く! ゼスト隊長とレジアス中将が張り切ってるって」

「で、それをドゥーエ姉様から聞いたドクターがならばこっちは全員で応援に行くぞー! って競う合うように張り切っちゃったのよ」

 

おい、地上本部の上層部が2人して、何してんだよ。

で、その2人と言うか、ゲンヤさん達大人の男性陣の姿が見えないな?

とあたりを見渡すと……

 

「ティーダ君、これお弁当作ったの。ウーノ姉様からのお墨付きも貰った自信作よ」

「ありがとう、ドゥーエさん。うわぁ、これキャラ弁って奴だよね? 一度食べて見たかったんだよ」

 

明らかに周りと浮いた空気をかもしだしているティーダとドゥーエの姿があった。

あの2人はいつの間にあんな仲になったんだろ。

ドゥーエは地上本部に通い詰めてるから接点があるから、なのかな。

 

「ねぇ、ウーノ。スカさんやゼスト隊長達は?」

「あー……ドクター達ならあそこにいるわ」

 

ウーノ疲れた顔をして指差した方を見る。

応援席から少し離れた一角にシートが敷かれていて、飲酒席と札が置かれている。

そこに、ゲンヤさんやゼスト隊長、スカさんやレジアス中将がいた。

それ以外にもなのはのお父さんである士郎さんや、他にも応援にきたお父さんらしき人が数人集まって宴会を開いていた。

いや、宴会という割には、なんか雰囲気暗いような?

 

「高町さんの娘さんが羨ましいですな。いまだにお父さんお父さんって懐いてくれて。うちなんて反抗期の娘が多くて」

「ブライトさんの所は娘さんが多くて賑やかでしょう」

「それを言うならゲンヤさんの所の方が賑やかでしょう。あ、それとも最近は健人君がこっちにいて少し寂しいですかな?」

「いやぁ、女房も娘たちも息子に取られてしまいましてね。前はよく風呂も一緒に入っていたんですが、今じゃ健人とばかりはいるようになってしまいましたよ。まぁ、それでも最近は健人がいない分、私とも入る機会はまた増えましたが」

「健人君は私の娘達にもモテますからね。将来が楽しみにですよ、あははははっ」

「ふぅ、オーリスのように口うるさくなってしまわないか心配だがな」

「オーリスの小言は9割以上自業自得だろうが、レジアス」

 

うわぁ~なんか変な話題で盛り上がってる。

てか俺の話題を出さないで欲しいんだけどね。

しかも、ゲンヤさん酔っぱらった勢いで、俺がクイントさんやギンガ達と風呂に入ってる事までバラしてるし!

勿論、ゲンヤさんとも風呂に入るよ? それに、クイントさん達と風呂に入るときは決まって半ば無理やりだからね!?

学校通い始めた4月に初めてナカジマ家に戻った時は、ギンガとスバルが一緒に入るって泣きだしたから。

って、そんな事は置いといて……

 

「何、アレ?」

「え、えっと、最初は普通にそれぞれ応援しながら飲んでいたのだけど、流石にそれはまずいと言う事で飲酒席を作ったのよ」

 

我が子の活躍を肴にして飲んでたら、我が子自慢合戦になって、いつの間にかお父さんの愚痴・自虐大会になって行ったというわけか。

どうしてそうなるかなぁ。

 

「まぁ、男どもは放っておきましょう。ささっ、ドンドン食べちゃって健人君」

「うん!」

 

沢山食べたけど、まだまだ料理は残っているし俺のお腹も満腹じゃない。

 

「次はどれを食べようかな……ん? なんだろこの包み?」

 

いつの間にか俺の隣にちょこんと、可愛らしい包みが4つ置かれていた。

包みの色はそれぞれ赤色、水色、紫色……あれ? この流れって確か半年以上前にもなかったっけ?

 

「どうしたの健人君? いきなり震えだして?」

「料理、まずかったの、かな?」

 

なのはとスバルが心配そうに尋ねてきた。

マズイ。外れていて欲しいけど、俺の予想はなのは達にはともかく、ギンガやスバル達には知られたくない。

 

『緊急連絡! 誰か、俺の横にこの包み置いたの誰でしょうか!?』

『えっ? 何!?』

『いきなりどうしたの健人?』

『あら、念話?』

 

こんな事を大人数に知られたら騒ぎになってしまうのは確実。

なので、美味しく食べている風にしてなのは、フェイト、はやて、アインス、それにクイントさん、ウーノ、クアットロにだけ念話をした。

 

『包みってその4色の包みの事? おかしいわね。私達が持ってきたものじゃないわねそれ』

『私達も持ってきていないわね。他の人のが混ざったのじゃないのかしら?』

『あ、でもこのカードに宛先が書かれていますよウーノ姉様。えっと、健人様、けんちゃん、もう1つ健人様……あっ』

『『『『『あっ……』』』』』

 

包みに挟まれていたカードを読んだクアットロが何かに気付き、続けてクイントさん以外の全員の顔色が変わった。

 

『…………』

『け、健人。落ち着くんだ。まだ決まったわけじゃないぞ!?』

『いや、でもこれはあかんやろ……』

『だ、ダメだよはやて! まだ希望は残っているよ!』

『?? みんなして何をそんなに慌ててるの? このカードがどうかしたの? あら、裏にアルファベットだけ書かれているわね。S、L、D、U? 何かの暗号かしら?』

 

――Ω\ζ°)チーン

 

『『『『『『『健人(君)!?』』』』』』

 

おれはかんがえるのをやめた。

 

ちなみに、中身は手作りらしきケーキやフルーツの詰め合わせでした。

 

 

続く

 




知らなかったのか…? 大魔王からは逃げられない…

しばらく出てこないけどマテリアルズを忘れないでね。的なメッセージを籠めての登場(?)となりました(笑)
スカさん達がもうガバガバすぎて、バレてるのかバレていないのか分からないレベルですが……まぁ、スカさんだし(笑)

フェイトはシャマルほどではないけど、料理が下手設定継続中。
改善するかは未定(笑)


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第55話「じんぎなきたたかいい(棒読み)」

おまたせしました!運動会もこれで最後です!


「どうしても、引く気はないのだなお前達……」

「いつかはこうなるとは思っていたが、まさかこんなに早く来るとはな」

「それはこっちのセリフですよ。しかし、こればっかりは引けませんなぁ」

「ふふふっ、この時の為に今、私は、ここにいる!」

 

4人の男たちが今、けん制しながら向かい合っている。

その表情は真剣そのもので、一寸の隙もない。

自分以外は全て敵、互いの表情から次の一手をうまく読み取らなければ負けるのは自分。

さぁ、拳を握れ! 勝負を決める時は今!

 

―――っ!

 

かくして、勝者と敗者は決まった。

勝者は拳を天へと掲げ、敗者は拳を地へと叩きつける。

そんな4人を見つめる、少女ヴィータはこう言い放った。

 

「いや、じゃんけん1つで何をしてんだよ」

 

 

事の始まりは、午後に行う親子競技。

これは、生徒が父親か母親と2人1組で挑む競技だ。

なのはは桃子さんと玉入れ、フェイトはプレシアと綱引きに出場する。

俺とはやては両親はいないし、アリシアはプレシアとの出場資格をフェイトに譲った。

応援に回ろうと思っていたのだが、ここで出場枠が3枠空いた。

そして、一緒に出場するのは親子でなくても応援に来てくれている誰かでもいいという事になった。

それを聞いて、クイントさんがいち早く名乗りをあげ、俺と二人三脚に出る事になった。

で、残ったのははやてとアリシアも出る事が決まった。

問題は、誰と出るかという事だ。

母親、もしくは応援に来てくれた女性と出る種目は埋まっていて、空いているのは男性と出場する競技のみ。

それを聞き、名乗り上げたのが、ゲンヤさん、ゼスト隊長、レジアス中将、そしてなぜかスカさん。

はやてもアリシアも、この4人の誰とでも組んで問題はないと言ったが、出られるのは2人だけ。

そこで誰がペアを組むかでじゃんけんをすることになった。

こうして、冒頭の無駄にシリアルなじゃんけんへとつながる。

 

ちなみに、じゃんけんの結果は、はやてはスカさんと大玉送り、アリシアはレジアス中将との綱引きとなった。

 

「よろしゅう頼みますね、ブライトさん」

「勝利の栄光を、君に」

 

スカさん、それフラグだからやめい。

 

「がんばろうね、レジアスおじさま♪」

「お、おう。儂に任せておけ!」

 

中将、娘さんが絶対零度の視線を送ってますよー?

 

「じゃ、私達も準備しようか健人♪」

「うん!」

 

クイントさんとの二人三脚は、正直言って天国のような地獄のようなでした。

クイントさんは終始俺のペースに合わせて動いてくれたけど、それでもぶっちぎりで1着になった。

まぁ、俺自身速いからそれに合わせてたらそうなるよね。

そして、途中クイントさんが何度か走る速度上げたくてウズウズしていたのを俺は見逃さなかった。

意外と走り屋気質なんだよな、クイントさん。

で、その資質は間違いなくギンガとスバルにも受け継がれていると。

 

それともう1つ、クイントさんが走るたびに胸が上下に……げふんげふん。

走ってる最中、男どもの熱狂的な視線がクイントさんの胸に集中していて、声援までとんだ。

まぁ、当の本人は気付いていなく、ゲンヤさんがティーダからデバイス奪って狙い撃ちしそうになっていたのがチラリと見えた。

でも、なんであんなに揺れたんだろ、まさかブラし忘れたって事はないよね、クイントさん? なんで目を逸らしてるのかな?

あ、メガーヌさんに連行されてどっか行った。

 

 

さて、気を取り直して次の競技、なのはと桃子さんの玉入れだ。

これは各クラスごとに籠が分かれているのではなく、クラスごとに決められた色の玉をどれだけ1つの大きな籠に入れられるかを競うタイプだ。

なんだか桃子さんのイメージ的にほんわかゆっくりと球を入れていきそうだが、そこはナカジマ家、テスタロッサ家に引けを取らないトンデモナさを誇る高町家の母。

競技開始からすぐに自分の持ち玉を拾い集め次々と籠へと投げ入れいていった。

なのはもなのはで、素早く玉を拾い上げているけど、籠へは投げ入れいていない。

なんと、なのはは他のクラスの玉を投げ落としていた。

それも、籠に入りそうな玉だけを瞬時に見つけ、正確に投げ落としている。

反則ではないし、立派な戦術なんだろうけど、運動会でそれはどうかと思う。

あ、ドゥーエがこっちみて親指立てた。

まさか、ドゥーエがなのはに吹き込んだのか。

とりあえず、お仕置きをウーノに依頼しとこ。

 

競技は進み次はフェイトとプレシアが出る綱引き……

 

「ねぇ、あれプレシアさん、よね?」

「そうとしか、見えないな」

 

シャマルとシグナムが、いや他のみんなも引いているのも無理はない。

 

「母さん、いつの間にそんな恰好を……」

「ふっ、郷に入っては郷に従え。フェイト、これはこの世界の勝負服なのよ」

 

ってな声が聞こえてきたけど、違うからそれ違うから!

あんたが着ている服は、ただの特攻服だから!!

 

テレビとかドラマでたまに見かけるレディースや暴走族が着る真っ赤な裾の長い学ランに幅の広いズボン。

頭に鉢巻、右腕に『フェイト命』左腕に『アリシア命』背中に『健人(未来の息子)命』と刺繍が……

 

「ってちょっと待てーーーーい!」

 

と俺が叫ぶと同時に、メガーヌさんに説教されてマッハで買ってきたブラを付け終えたクイントさんや桃子さん達が一瞬でプレシアに飛び掛かって連れ去った。

 

「ママの……馬鹿」

 

アリシアは顔を真っ赤にして羞恥心に打ちひしがれていた。

 

「あ、あれ? えっと、私はどうすれば?」

 

フェイトだけは、何が起きたのか分からずポカーンとしている。

 

「フェイトさん、プレシアはちょっとお腹痛いみたいだから、私と出ましょうか?」

「あ、はい。母さん、大丈夫かな」

 

リンディさんが係の人に説明(脅迫)してプレシアの代わりにフェイトと綱引きに出る事になった。

競技は俺達のクラスが勝った。

魔法は一切使用していなかったけど、リンディさんが4、5人分くらいの力を出していた気がする。

なんか腕の筋肉一瞬だけすごい事になった気もするけど、見なかったことにしよう。

 

 

今度はアリシアとレジアス中将という美幼女と野獣コンビが出る綱引きだ。

 

「こらー! そこはせめて美少女って言いなさい!」

 

ちんちくりんは競技に集中してなさい。

それにしても、さっきのリンディさんのインパクト強すぎて、綱引きでのレジアス中将の活躍がイメージ出来ない。

体格的には筋肉質で重みもあってピッタリだと思うんだけど、中将って実力的にはどうなんだろ。

どんな魔法使うのかとか全く知らない。

そもそも、魔力あるのかな。

 

「ねぇ、ゼスト隊長。レジアス中将って、力あります? 運動神経どうなんですか?」

「レジアスは……あっ」

「あっ」

 

俺がゼスト隊長に聞くと、なぜかオーリスさんと同時に固まってしまった。

 

「?どうしたの2人とも?」

「忘れていたわ。父さん、ものすごく運動音痴、なのよ……」

「えっ?」

 

――パンッ!

 

ちょうどその時、綱引き開始の合図が鳴った。

 

「うおぉぉーー!」

 

レジアス中将は唸り声をあげ、渾身の力を籠めて綱を引き……滑って転んだ。

 

「ちょっ、レジアスおじ、ヘブッ!?」

 

一緒に綱を引っ張っていたアリシアも倒れたレジアス中将に足を取られバランスを崩して転倒、更に前後の人達も巻き込まれて転倒。

更に更に綱にかかった力のバランスが一気に崩れて全員が転倒してしまった。

 

「うっ、わぁ~……」

 

見るも無残な大惨事。

額に手をあて、天と地をそれぞれ仰ぐゼスト隊長とオーリスさん。

 

「父さん、あなた達にいい格好見せたかったのよ。立場上、地上本部か本部ばかりで普段から全く絡めないからね。今回のイベント、すごく楽しみにしていたのよ……」

 

乾いた笑みを浮かべながら淡々と話すオーリスさん。

その視線の先には、背中を砂まみれにして某海賊漫画のおやびんの如く、地面に沈み込んでいくレジアス中将の姿があった。

 

『続けて、最後の競技。大玉送りになります! さぁ、本日最後の親子競技がついに始まります!』

 

そんな惨劇を忘れようと、放送席が無駄にハイテンションになってる。

はやてとスカさんが出る大玉送り。

レジアス中将の惨劇もあり、インドア派なスカさんが競技なんてうまくできるのかと思ったが、これがうまく進んでいた。

 

「私が都度進路を修正するから、君は遠慮なく大玉を転がす事に専念したまえ」

「はい、殺生丸様!」

 

あーついに言っちまったよ、はやて。

まぁ、相変わらず殺生丸な見た目の変装してるからなスカさん。

服装だけは現代人に合わせてるし、顔の模様もないけどね。

しかも、あの変装、最新技術が詰め込まれているとかで、スターライトブレイカー級の攻撃を受けない限り解除されない特殊なものらしい。

無駄に高性能。

 

「えーいっ!」

「むっ、よっ、ほっ」

 

はやてが力いっぱい大玉を転がし、スカさんが大玉の周りを素早く右往左往しながら進路を修正していく。

ただ転がすだけより、進路修正の方が力いるのを分かっていての役割分担、やるねぇ。

しかも、ちょこまかちょこま走り回って体力あるな、スカさん。

ギンガやティアたちはそんなスカさんの様子がツボにハマったらしく、笑いながら応援している。

 

「あーこの分だと1等だね、ドクターは」

「なんか不満そうだなセイン」

「不満だって程でもないけどさー」

 

不満ではないが、面白くなさげなセイン。

 

「ドクターが何か失敗しないか、それを期待しているのだろうセインは」

 

チンクがその横でため息と共にそうこぼした。

 

「あっ、チンク姉。別にそういうつもりじゃ……」

「まぁ、アクシデントが付き物だもんねドクターは」

「そんなドクターとワンセットにしないで健人君」

 

俺が同意するとドゥーエが苦笑いを浮かべた。

 

「たまには円満に物事を終わらせてほしい物だがな、ドクターだから仕方ない」

「むぅ、否定できない」

「……認めたくないわね」

「ですわねぇ」

 

トーレまでもが同意し、チンクだけではなくウーノとクアットロまでもがそろってため息をついた。

が、俺達の不安をよそにはやてとスカさんペアはぶっちぎりの1位でゴールを決めた。

 

「よっしゃー! やったで殺しょ、ブライトさん! ……ブライトさん?」

 

ん? 何やらゴールの様子がおかしい。

スカさんがゴールポストに手をついて、腰に手を当てて動かない。

慌ててはやてが駆け寄る。

 

「ブライトさん、大丈夫ですか? 歩けますか?」

「ふっ、ふふっ、すまないね、はやて君。どうやらギックリ腰と肉離れが同時発生したようなのだよ。す、すまないがウーノ達を呼んで、くれないかな?」

「「「ドクター!?」」」

 

ドクターブライト、ドクターストップにより強制送還。

 

これにて、すべての競技が終了となり、応援に来てくれたみんなの活躍もあって俺達のクラスが1位となった。

が、犠牲の大きい勝利でもあった。

 

「レジアスさん、プレシアさん、ブライトさん。私達、勝ったよ」

「みんな、無茶しやがって……」

「いや、誰も死んでないからな?」

 

アインスのツッコミを背に受けて、俺達は夕日に向けて敬礼をするのだった。

 

 

続く

 




はい、これで運動会も終わりです。
次回は年明けになりますが、原作でのあの鬱イベントをブレイカーします。
まぁ、スカさんになった時点でフラグなんてばっきばきに砕けてますけどねー


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第56話「ゲームは1日2,3時間がちょうどいい」

お待たせしました!
ちょいシリアス&戦闘回……シリアスはほんのちょっとだよ?


今日はとある次元世界でなのは、ヴィータと一緒に任務についている。

と言うのも、なのはの調子が最近おかしいというのだ。

なのはとフェイトは前、シグナム達との戦闘で破損したレイジングハートとバルディッシュをカートリッジシステムに切り替えた。

今はともかく、当時のカートリッジシステムへの改造はデバイスにもなのは達にも負担をかける代物だった。

その後、スカさんやプレシアのおかげで、ちゃんと安定したカートリッジシステムに調整された。

とは言え、最近特になのはが任務で色々と頑張りすぎていて、疲労が溜まっているんじゃないかと、ヴィータだけではなくクロノやフェイト達も言っていた。

そこで今回ヴィータから任務の同行を頼まれたのだが、なのはが管理局に正式入隊してから一番一緒に仕事しているのは、ちょっと意外だけど実はヴィータなんだよな。

近距離前衛タイプと遠距離支援タイプで見事に相性はいいからよく組まされるらしい。

ちなみに、ゼスト隊やなのは達とチームを組む以外で、俺がよくコンビで組むのは、はやてだ。

 

「えへへっ、健人君と一緒に任務は久々だね」

「基本的に俺はゼスト隊長達と一緒だからな。この前はクロノに依頼されてデータ取りの為に模擬戦したけど」

「クイントかーちゃんと一緒の方が嬉しいんじゃねぇのか?」

 

くっくっくっ、と小悪魔っぽい笑みを浮かべるヴィータ。

なのはやフェイトも知らない、俺が転生者であり生前は天涯孤独の身であるという秘密を知っているからこういう冷やかしは結構ある。

変に気を使われるよりは100倍マシだし、こういうやりとりも楽しい。

 

「俺はヴィータと一緒に仕事できて嬉しいけど?」

「っ、そうくるかよ……」

「あ、ヴィータちゃん照れてる♪」

「俺だっていつもいつもからかわれてばかりじゃないんだぜ?」

「うっせぇ! とっとと仕事片付けるぞ!」

「「はーい!」」

 

そうヴィータをからかうなのはだったけど、いつもより顔色が悪い気がする。

俺とヴィータも任務前に何度も休めと言ったのだけど、一緒に行くと聞かなかった。

だからこそ、何かあった時の為に俺がしっかりとしないとな。

さて、今日の任務内容はロストロギアらしき魔力反応の調査だ。

この次元世界で最近猛吹雪に見舞われている地域があり、そこからロストロギアらしき魔力反応があった。

そこで俺達が先発隊として調査に赴く事になった。

 

「これは、一体?」

「ここら辺一体は最近までは何の変哲もないもない森林だったみたいだからな」

 

空を飛びながら眼下に広がる凍った森林に目を向ける。

雪に覆われた森って言うのはよくある光景だけど、緑が生い茂った森がそのまま氷のに埋もれているのはありえない光景だ。

 

「こうなった原因って言うのがこの先にあるって事だな」

 

俺達が向かう先から時折嵐のような寒波に襲われる。。

バリアジャケットでなんとか防げるけど、それでもかなり寒い。

一応防寒用魔法は覚えたけど、あれは使えないからなぁ。

 

「近くに街はないし、動物達も避難させてるから被害は最小限だけど、このままだと気候が乱れて生態系にも影響が出る」

「うん、だから早く解決させないとね」

 

というわけで、目的地近くまでやってきた。

ロストロギアがあると思われる洞窟にたどり着いたのだが、洞窟の入口には変な生物がウジャウジャといた。

身体は氷か水晶で出来ているようで、2本の角を持った大きな虎に見える。

 

「エイミィさん、ここらへんの動物達って避難させたんじゃなかったんですか?」

『ちょっと待ってね。えっと、あった。あれらはブリーストライガーと呼ばれるこの世界の魔導生物よ』

 

エイミィさん曰く、あのブリーストライガーは、暖かいのが苦手で冬の間だけ活動してそれ以外の季節では冬眠ならぬ夏眠をしているようだ。

この世界の今の季節は夏なのだけど、ロストロギアが引き起こした大寒波のせいで目を覚ましてしまい、尚且つ高魔力にあてられて興奮して暴走してるの事。

幸いライガー達は洞窟内に意識を向けていているようで、こっちには気付いていない。

 

『一体一体もすごく強いの。だからここは一時撤退して本隊と合流し……』

<マスター、洞窟内の魔力反応が急激に上昇中だ! このままだと爆発するぞ!>

 

突然のシェルブリットからの警告、それと同時に洞窟内から凄まじい勢いで冷気が噴出してきた。

 

「まずい! なのは、ヴィータ俺の後ろに! シェブリット!」

<フレイムシールド展開>

 

普通のシールドでは防ぎきれないと思い、最近使えるようになった炎のシールドを貼り、どうにか冷気をやり過ごせた。

 

「ありがとう健人君。助かったよ」

「でもよ、ちょっと、いやかなりこっちも暑かったんだけどさぁ?」

「悪い。まだこの魔法の調整がうまくできなくてさ」

 

対炎や対雷系の防御魔法があるように、俺はシールドやバリアに炎を加えて防御力を上げる事には成功した。

ただ、普通はバリアやシールドの外にはいっても内側には炎の熱が来ないはずなのに、俺の場合内側にも熱が伝わってしまうというまだまだ調整が必要な未完成品だ。

でも、その分今回みたいな寒冷地や冷凍ビームには絶大な効果がある。

まぁ、冷凍系の魔法使うのクロノくらいしか知らないけど。

 

<そんな事より、まずいぞ。あの虎たちに気付かれたぞ>

 

見ると、さっきまで洞窟の周りで座ったり寝ころんでいたライガー達はみんな起き上がり、唸り声をあげている。

 

「どっちにしろあそこに行ってロストロギアを止めなきゃ大爆発でここら辺が吹っ飛ぶんだ。やるしかない」

『時間もないし、しょうがないか。本隊には連絡済だけど、無理しないで。それとライガーには必要以上には傷つけないように気を付けて!』

「「「了解!」」」

 

その時、ライガー達が一斉に口を開き青白く輝きだした。

 

「っ!? 飛べ!」

 

俺達が飛びあがると同時に、ライガーの口から青白いビームが放たれた。

ビームが当たった場所は氷漬けになった。

どうやらあれは冷凍ビームらしい。

ビームを撃てる魔導生物なんて……カッコいい! なんて言ってる場合じゃないか。

さっき俺の新しいバリアは冷凍ビームには絶大な効果があるって言ったのフラグだったか!?

 

「健人、あたしが道を開くからお前が洞窟内に入れ! なのは、援護だ!」

「うん! アクセルシューター、シュート!」

 

なのはが放った魔力弾は洞窟入り口周辺のライガー達に命中し、弾かれた。

 

「うそっ!?」

 

なのはがもう一度魔力弾を放ったが、またも弾かれた。

しかも、当たったライガーは全くダメージを受けておらずたじろぎもしない。

 

<どうやらあいつらの水晶みたいな体毛が全部弾いてるみたいだ。直接ぶん殴るしかないぜ>

 

シェルブリットが解析したように、あのライガーに射撃や砲撃は通じないようだ。

だったら……

 

「だったらあたしの出番だな! アイゼン!」

<ラケーテンフォルム>

「ぶん殴るのは俺の十八番だ! だよな、シェルブリット!」

<あぁ、ぶちかますぜ!>

 

ヴィータが2頭纏めて叩き飛ばし、俺が2頭続けて殴り飛ばす。

気絶してるけど……魔力ダメージ、しかないよね?

 

「私だって、援護くらいは……あっ」

 

砲撃を撃とうとしたなのはが突然眩暈がしたのか、ぐらりとふらついた。

その隙をついて、ライガーの1体がなのはに向けて冷凍ビームを放った。

 

「なのは! あぐっ!?」

 

なのはを抱きかかえてかわそうとしたが、左足を掠めてしまい足首が凍ってしまった。

幸い、ちょっと痛かったが凍り付いたのは装甲で覆われた部分のみだ。

ライガーはヴィータがぶっ飛ばしてくれた。

 

「健人君!?」

「おい、健人! 大丈夫か!?」

「問題、ない。うおぉ~!!!」

 

なのは達から離れ全力で魔力を燃やし、急いで解凍した。

全身を燃やすのは久しぶりだな。

 

「健人君ごめんね、ごめんね!」

『大丈夫、健人君!』

「ふぅ~ちょっと焦ったけど、大丈夫大丈夫。それよりなのはの方が大丈夫じゃないだろ」

 

俺の方は、シェルブリットが治癒魔法をかけてくれたおかげで痛みは引いて感覚もあるし問題ない。

けど、さっきのなのはの立ち眩みは普通じゃない。

 

「あっ、それは……ちょっと、ぐらっと来ちゃったけど、私だって大丈夫だよ!」

「それは大丈夫って言えないと思うんだけど。ともかく、ここは俺とヴィータでやるからなのはは退避して」

「でも、2人だけじゃ危ないよ! 私だって援護は」

「あーもう! 射撃も砲撃も効かない相手に今のお前じゃ足手纏いなんだよ! いいから下がってろ!」

「あぅ、分かった……」

 

ヴィータに怒鳴られ、しょんぼりしながらなのははこの場から離れた。

ま、あのライガーにはなのはの魔法は一切効かないし、体調が芳しくないのでは囮となる事も出来ないのは本人も良く分かっているのだろう。

でも、ちょっと言い方がキツイんじゃないかな。

 

「ヴィータ」

「うっさい、文句は後で聞く。今はとっとと突入すっぞ!」

『健人君。状況が状況だから今は何も言わないけど、後でなのはちゃんと一緒に君もちゃんと検査だよ!』

「了解。それじゃ、一気に行くぜ、燃えろシェルブリット!」

<おうよ! 受けた借りは100倍にして返してやるぜ!>

 

両腕のシェルブリットから炎が激しく燃え上がる。

ブリーストライガーが熱さに弱いと言うのなら、俺達が天敵だ。

 

「うおぉ~! バーニングウェイブ!」

 

クイントさんのパワーウェイブもどきを真似して生み出した魔法、バーニングウェイブ。

文字通りの炎の波が一直線に洞窟入り口付近に集まっていたライガー達を吹き飛ばした。

 

――グオオォ~!!

 

ライガー達は魔力ダメージとはいえ、炎は効いたようでうずくまって動けなくなった。

 

「「今だ!」」

 

俺とヴィータの2人は洞窟へと突入しようとしたその時、またしても強烈な冷気が吹き荒れてきた。

ここで足止めくらっていたらライガー達が復活してしまう。

 

「っ、このままいくぞ! スパイラル・フレイム・ドラグーン!」

「ちょっ、待て! あつっ!」

 

ヴィータが何か言っているが、俺は炎の龍と化し、冷気の中を突き進む。

 

『健人君! そのまま冷気の元へと進んで! そこにロストロギアらしき物体があるよ!』

「了解!」

 

洞窟内は結構入り組んでいたが、冷気が放たれている元へと向かい、がむしゃらに突き進む。

 

『もうすぐで到着するよ……ってちょっと速度落とさないとぶつかっちゃう!』

<マスター! スピード出し過ぎだ!>

 

洞窟の奥に何か機械らしきデカイ物体が見えてきたけど、勢いつき過ぎて止まらない!?

 

「そんな事言われても、急には止まれなぁー……ゴブッ!?」

 

――ゴンッ☆

 

ロストロギアにぶつかって意識を失う前に思った事。

あれ?このロストロギア、冷凍庫に似てるなぁ。だった。

 

 

「……知らない天井だ」

 

次に気が付いた時、俺は医務室のベッドの上だった。

 

「また懐かしいネタを。でも、良かった、健人さん目が覚めたんやね」

「はやて、おはよう」

「うん、おはようございます」

 

ベッドの横にはなぜかはやてがいた。

 

「あれからどうなった? なのはとヴィータは無事なのか?」

「目が覚めて真っ先に2人の心配なんて、健人さんらしいんやね。大丈夫、2人とも無事やで。ロストロギアも停止を確認したからあの世界の気候も元に戻るはずや」

 

なのはの不調が心配だったけど、無事なら良かった。

俺の方も激突したけど、特にケガもしていなく冷凍ビームを受けた左足も問題ないとの事だった。

俺とヴィータがぶっ飛ばしたブリーストライガーも、特にケガもなくまた夏眠に入ったそうだ。

 

「で、なんではやてがここにいるんだ?」

「そりゃ、健人さんが倒れたって聞いて飛んできたんや。それにうちのヴィータがお世話になったし。ほんま、今回はありがとね健人さん。ヴィータもなのはちゃんも言っとったで。健人さんに助けられたって。ただ……」

 

と、ここではやては盛大にため息をついた。

 

「ん? どうしたんだ?」

「うーん……なのはちゃんが、そのぉ、なぁ」

「えっ? なのはに何かあったのか!? さっき無事って言ってただろ!? まさか、身体の不調の事か?」

「その不調なんやけど……なのはちゃん、寝不足やったんやって」

「寝不足、やっぱり無理をしていたのか」

 

不眠症にでもなっていたのかな。

 

「あー健人さんが思っているのとは、まったく違うで」

 

はやてが呆れ声で息を吐いた。

一体どうしたんだろ?

 

「実はなのはちゃん、最近アリシアちゃんに勧められたゲームにハマりすぎて、それで寝不足に……」

「はあぁ~~!?」

 

あまりにもとんでもない理由に思わず大声が出てしまった。

 

「仕事の疲れやなく、私生活が乱れたせいでの寝不足。それで今回健人さんに迷惑かけてもうたからって、今ヴィータやリンディ提督、それにクイントさんにお説教されとる」

「クイントさんにまでかい……」

 

クイントさんは俺が任務で倒れたって聞いてぶっ飛んできて、俺が無事なのを知ると今度は不調だというなのはの心配をして、寝不足の理由を知って怒ったらしい。

 

「で、なのはちゃんにゲームを勧めたアリシアちゃんもプレシアさんとフェイトちゃんにお説教中や」

 

なのはと同じくアリシアもゲームに夢中で寝不足気味だったが、授業中にこっそり寝ていたから俺達も気付かなかったようだ。

 

「……心配して損した」

「あははっ、ヴィータも同じこと言うとったで。健人さんはそのせいで怪我までしたんやけど、なのはちゃんは家に戻ってこれから士郎さん達にも怒られるみたいやし、堪忍したってな」

「俺は別にもういいけど、士郎さん達にもか」

 

うーん、あの両親が怒る姿は想像できない。

 

「ところで、俺がぶつかって止まったロストロギアって結局なんだったのか分かった?」

「うん。こっちもしょーもないオチや。あれはロストロギアではなく、実はただの冷凍庫だったみたいよ」

「冷凍庫!?」

「クロノ君達が調べたんやけど、あの洞窟には誰かが住んでいた形跡があったんや、それもそれほど昔やないって。で、その住民たちが残していった家電があの場所に色々あって、冷凍庫以外にも大型の電子レンジなんかもあったんよ」

 

はやて曰く、全部機能停止していたはずだったが何かのはずみで冷凍庫のスイッチが入り、尚且つ扉が少し開いてしまった。

で、後はその冷凍庫の冷気がダダ洩れしていただけ。

でも、その冷凍庫と言うのが考えられない程超高性能で扉から漏れた冷気が周りの気候を変える程凄すぎたという、とんでもないオチ。

 

「…………」

 

と、はやての話を聞き、一つの仮説が頭に浮かんだ。

 

「ん? どうしたん、健人さん?」

「いや、なんでもない」

 

まさかと思うけど、あの洞窟ってスカさん関係ないよなぁ。

考えられない程の高性能な家電を作るのって、スカさんくらいだと思うんだよなぁ

この予感、外れてくれますように。

 

その後、なのはとアリシアには当面のゲーム禁止令が出されたというのはまた別の話。

 

続く

 




はい、原作の鬱イベントブレイカー1発目です!
今回の元凶がスカさんなのかどうかは、また今度の機会に(笑)


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第57話「うちのツヴァイ、知りませんか?」

お待たせしました!
安心のスカさん便利(?)回w


今日は待ちに待ったリインフォースⅡが誕生する日。

俺ははやて、アインスと一緒に管理局本局にある研究所へとやってきた。

はやてとアインスだけで良かったのに、なぜか俺まで来て欲しいと2人に言われて付いてきた。

シグナム達は仕事で来られないので、俺がその代わりと言う事なのだろう。

リインフォースⅡは本来ならもう少しかかるはずだったんだけど、なんでかスカさん達がものすごく頑張ってくれて予定より早く誕生する事になった。

八神家でスカさん達からそれを聞かされた時、ウーノ達が俺の方をチラ見しつつも視線を合わせなかったのは、ナンデダロウネー?

俺達が研究所に着くと、スカさんとウーノ、それからクアットロが待っていた。

なんでか、スカさんが包帯まみれになっていたが。

で、それをはやては気にしてたけど、キニシタラダメ、OK?

本人はちょっと実験に失敗してケガをしたって誤魔化してたけど、骨に異常はない程度にしたからイイヨネー?

でも、それにしては包帯の量が増してる気がするような? ま、いっか。

 

「さ、さてと、それじゃあお待ちかねのリインフォースⅡのお披露目よ!」

 

微妙な空気を切り替えるように、ウーノがわざとらしく声をあげると、Ⅱが入れられているポットが開かれた……のだが。

 

「いないね」

「おらへんなぁ」

 

ポットの中身は空だった。

 

「「「どういうこと?」」」

「わ、私にも分からないわ。ちょっと待ってて」

 

俺とはやて、アインスが同時にスカさん達の方へ振り向くと、スカさん達もこれは想定外の事態のようだ。

 

「ドクター、また何かやったのですか!?」

「お、落ち着きたまえ。今回ばかりは私も何もやっていない!」

 

クアットロがスカさんに詰め寄っているけど、彼にとっても想定外らしい。

てか、あの様子だとやっぱスカさん常日頃から何かをやらかしているようだ。

 

「はやてならⅡを探す事は出来るんじゃないか?」

 

確かはやては、真の夜天の主に覚醒した際に守護騎士とリンクしていて大体の居場所が分かるようになったはず。

 

「あーまだパスつないでないから分からないんよ。ウーノさん、ここ防犯カメラないんですか?」

「今調べてるから待ってて、出たわ」

 

防犯カメラの映像には、リインフォースⅡと思われる小さな少女がポット内に収められて蓋が閉められる様子がしっかりと写し出されていた。

それからしばらくスカさん達が作業をしている様子が流れた。

その間、ポットは一度も開かれず、リインフォースⅡも出た形跡がなかった。

 

「ここまでは異常はないわね」

「私とウーノ姉様で監視していましたし、ドクターがおかしな事したわけでもないですわね」

「2人共、私ってそこまで信用ないのかね?」

「「ありません」」

 

ウーノとクアットロに即答され、スカさんはいじけてしまったが誰もフォローはしない。

防犯カメラの映像はやがて、俺達が到着した時間に迫ってきた。

 

「ここで私達が健人君を出迎える為に外に出たのよね」

 

映像では、スカさん達が部屋を出ていき、そのすぐあとにポットが開いていく様子が映し出されていた。

 

「おかしいですね。ポットがひとりでに開いたように見えますけど、ロックはかかっていたはずですし……おや、ちょっと待ってください」

 

クアットロが何かに気付いて、映像を巻き戻していった。

 

「ここ、私達が出る時。ドクターの置いたコーヒーカップの場所、ポットのロックスイッチがある場所ですわね」

 

よく見るとスカさんがカップを置いた場所でスイッチが赤く光り、ポットが開いていくのがはっきりと分かった。

 

「それはつまり……また、私がやってしまったというわけだね☆」

 

――ドカッ バキッ メキョ

 

「それじゃ俺達はこっちを探すからウーノさん達は向こうをお願い」

「分かったわ」

 

俺達は二手に分かれてツヴァイを探す事になった。

と言っても、管理局本局って膨大に広いから探すのは大変そうだ。

 

「万が一無限書庫なんかに行かれたら……」

「捜索隊を組織せなあかんね……」

「不吉な事を言わないでください、主はやて」

 

無限書庫は管理局本局にある、書庫と言う名の大迷宮だ。

ユーノが最近、無限書庫で働き始めて大整理を行っているけど、まだまだ始めたばかりだ。

一応ユーノにも連絡しておくか。

 

「ユーノ、そっちに小さいリインフォースが行ったら確保しておいてくれ」

「確保……」

 

アインスが何か言いたそうだけど、無視。

 

『小さいリインフォースって今日生まれるって言うツヴァイの事だよね? 彼女ならついさっきここに来て、君たちを探していたよ?』

「あちゃー遅かったか」

 

それにして無限書庫ってここから距離あるはずなのにもうそこまで行ったのか。

 

「それで、ツヴァイは次、どこかに行くとか言うとらんかった?」

『リンディ提督の所へ行くと言っていたよ』

「分かった。ありがとな」

『どういたしまして……さて、あと12時間働いたら5分も仮眠取れるな』

「「「………」」」

 

最後にユーノは、笑いながら何か呟いてた気がするけど、気にしないでおこう。

 

「……彼、目の下に隈があったような」

「アインス、それは見間違えだ。もしくはアイシャードって奴だよ、きっと、多分……」

「健人さん、それは流石に厳しすぎるで……」

 

気を取り直して、リンディ提督へと連絡を取ったのだが。

 

『さっきウーノさんからも連絡受けたけど、こちらには来てないわね。来たらすぐに連絡するわ』

 

という事でリンディ提督の所にはまだ来ていないので、手あたり次第に聞き込みをする事にした。

 

「どなたかこの映像の子、見かけませんでしたか?」

「おや、君は草薙健人君だね。ははっ、この子はまた新しい彼女さんかな?」

「今日は美女と美少女を連れているのに、また増えたのかしら?」

「またってなんですか!?」

 

男性職員からは暖かい目を、女性職員からは黄色い歓声を浴び。

 

「すいません。小さい女の子見かけませんでしたか?」

「あーお人形さんを落としたのかしら? でも、見かけなかったわね」

「いえ、お人形なのではないんですけど。ともかく、ありがとうございました」

 

と、手がかりすら得られなかった。

ウーノ達もまだ探してくれているが、まだ何もつかめていないようだ

どうしようかと3人して休憩所で悩んでいたその時だった。

 

――ピンポンパンポーン

 

本局内に館内放送が流れた。

 

『お客様のお呼び出しを申し上げます。第97管理外世界地球よりおこしの草薙健人様、八神はたて様。お子さんがお待ちです至急迷子センターへお越しください』

「「「ぶふぅーー!?」」」

 

思わず飲んでいたジュースを吹き出してしまった。

 

「迷子のお知らせって、ここはデパートか!」

「私ははたてやなくて、はやてや! 誰が鴉天狗や! 念写なんて出来へんよ!」

「はやては鴉じゃなくて狸だもんな」

「そうそう……って誰が青狸や! 4次元ポケットなんか持ってないで!」

「誰もそこまで言ってない」

「2人共、ツッコミ所はそこじゃない。いや、現実逃避したい気持ちは分かるが」

 

また面倒ごとと言うか厄介事の匂いがするんだけどなぁ。

でも、迷子というなら迎えに行かないわけにはいかず、俺達はやむなく迷子センターへと向かった。

と言うか、迷子センターあったのね、管理局本局って。

 

 

こうして俺達はウーノやリンディさん達に連絡を入れて、迷子センターへとやってきた。

 

「さーって、とっととⅡを引き取って戻り…「この声はパパですかーー!?」…ゴフッ~!?」

 

迷子センターのドアを開けた途端、中から何かが俺の胸元めがけて飛び出してきた。

たまにギンガやスバルに突進を受けた事はあったけど、アレに勝るとも劣らない勢いだ。

 

「け、健人さん!?」

「大丈夫か、健人!? ん、お前は、Ⅱか?」

 

俺の胸元に飛び込んできたのは、俺達が必死になって探していたリインフォースⅡだった。

 

「あ、ママ! お姉ちゃんも! 会いたかったですぅ~!!」

「フブッ!?」

 

ツヴァイは俺の胸元からはやてに飛びついた。

はやてはともかく、俺にも反応できない速度の突撃とはツヴァイ、かなり出来る!

 

「そ、そんな事に感心しなくてええよ、ケホケホッ!」

「主はやて大丈夫ですか? こら、ツヴァイ。いくら心細かったとはいえ、無暗に人に突撃してはいけないぞ」

 

流石はアインス、見事なお姉ちゃんっぷりだ。

でも、それよりもツヴァイの俺とはやてへの呼び方を注意して欲しいなぁ。

あと、自分の所に来なかったの悔しかったって顔に書いてるぞ?

 

「はい。ごめんなさいです。お姉ちゃん」

「うん、分かればいい……それにしても、お姉ちゃん、か」

 

あ、こりゃダメだ。アインスの頬がゆるゆるになってる。

お姉ちゃんって言われたのがとても嬉しかったんだろう。

俺は、生前でも妹居たし。今もギンガやスバル、最近じゃティアナっていう妹分がいるから、気持ちはよーーく分かるけど。

 

「私の事はスルーなんやねぇ……あー床冷たくて気持ちええなぁ」

 

はやてはツヴァイに突き飛ばされたまま、地面に寝転がりながら拗ねていた。

 

「あははっ、やっぱりあなた達って面白いわね」

 

そんな俺達を微笑ましく見守る女性局員さん。

さっき放送を流した人なのだろうけど、見世物じゃないんだけどな。

 

「うちのツヴァイがお世話になりました。けど、あの放送は……」

「おっと、ごめんなさいね。君達が噂通りの子達か確かめたくって、ワザとあんな放送流したの」

 

確信犯かよ!

 

「でも、おかげでアレ本局中の人に聞かれちゃったんですけど?」

「そんなジト目で睨まないで。安心して、君達がいたあの場所以外には流してなかったの」

 

どうやら俺達があそこにいたのを見つけたおねーさんが遊び心で放送を流したらしい。

 

「色々言いたい事はありますけど、まずはそれよりもリインフォースⅡ?」

「はい、パパ!」

「その、健人さんをパパって呼んだり私をママって呼ぶのはなんでなのかな? ちょっと7年程、健人さんには9年ほど……えへへっ」

 

はやて、そこで嬉しそうな顔するな! その年数が何の意味あるかは聞きたくないなぁ!

 

「ツヴァイのパパなら、私も健人をパパと呼ぶべきか。悪くないか。いや、むしろ私がママと……」

 

そこ! 聞こえてないと思って小声でとんでもない事いわない!

 

「あんまり変な事言うと、次元や時空の境界超えて戦争起きるからやめて」

 

彼女達ならやりかねない!

 

「わわっ! パパの目からハイライトが消えちゃったです!?」

「わ、分かった、悪かった。だから、目から光を消さないでくれ」

「ごめんな健人さん! 悪ふざけはこの辺にしとくから元に戻ってぇ! ツヴァイももう私らを変な呼び方で呼ぶの禁止や!」

「ホントに面白い子達ね君達は~」

 

メンタルの再起動に3分ほどお待ちください……

 

「コホン! それじゃ話を戻すね。ツヴァイ、なんで私や健人さんの事をママやパパって呼んだんや? そんなプログラムはしてへんで?」

「それはですね。昨日、ドクターが言っていたんですよ。はやて君がママならパパは健人君になるのかな~って。その後なぜかドクターは娘さん達にボッコボコにされてましたけどね」

 

と、そこへタイミングよくドクター達がやってきた

 

「やぁ、無事にリインフォースⅡが見つかったようで良かったね! 娘たちと本局中を駆け回った……おや? 3人ともそんな怖い顔をしてどうしたのかな? ま、待ちたまえ! 私をオチに使うのはいい加減天丼というやつではないかね!?」

「「「おまえのせいかー!!」」」

 

こうしてリインフォースⅡは再教育を受ける事になり、みんなのお披露目はまたの機会になった。

 

続く

 




リインフォースⅡ登場!
一応原作よりも早く登場しました!これもスカさんパワーです!
で、案の定まともに登場しなかった!w
はやてのメインヒロイン感が強い……うん、俺的にはティアナかナカジマ姉妹をメインヒロインにしたいんだけど、なぜかこうなってしまいますw
健人の嫁は一体誰になるのかなー……嫁が決まるまで何年かかるのかなー(爆)


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第58話「うついべんとかいし」

お待たせしました!
原作Stsで回想シーンでちらっと出たうついべんと回前編です。


『け、健人くん。すまないが、大至急救援に来てもらえないかな。できれば……ゼスト隊のみんなと一緒だと、助かる、な……』

 

というメッセージが地図付きでスカさんから届き、俺はゼスト隊と複数のモブ局員、それからアドバイザーとしてドゥーエ、ドゥーエの護衛としてティーダも同行する事になった。

ドゥーエは最初はスカさん側のスパイとして入局したけど、最近では地上本部とスカさん達ナンバーズの公式交渉役として活動している。

それでいいのか管理局。

で、そんな彼女がアドバイザーとして同行するのは当然かと思った。

けど、スカさんから示された今回のアジトは最近作られたものでドゥーエもまだ行った事がないのでこれを機会にティーダを連れて行ってみたいと、要はティーダとデート名目で付いてきたというわけだ。

 

「親元がピンチだって言うのにラブラブねぇ、お2人さん」

「ははっ、ティアもドゥーエさんに懐いていますしね」

「頑張ってティアちゃんにお姉ちゃんで呼ばせるのが最近の目標ですよ!」

 

メガーヌさんが言う皮肉にも惚気で返す2人。

一応スカさんからのSOSは今までにないほどシリアスな感じだったからもっとまじめにやってもいいと……あっ、ひょっとしてこれがゼスト隊全滅イベントか!?

具体的な時期は相変わらず不明だけど、確かなのは達が小学生の頃秘密任務で、のはず。

なんでかは知らないけど、今回の一件がそれに該当する気がする。気がする……んだけど、スカさんが関わってるとシリアスイベントとは思えないんだよなぁ。

ともかく、行ってみればわかるか。

 

 

スカさんのアジトは、色々な世界にあるが、今回のはとある管理世界の郊外にある山脈の中にある。

人も獣も寄り付かない険しい山脈と、立地的に秘密基地要素が満載なのでちょっとワクワクしていた。

が、やはりそこはスカさんのアジト。

 

『この先、200メートル右折で秘密基地だよ★』

『ここら辺雪崩発生注意!』

『飛行魔法は覚えてた方が便利だよ♪』

 

などなどと描かれた看板があちこちに設置されていた。

しかも、文字はネオンで描かれていて昼間なのに目立つほど激しく点滅している。

 

「これ、景観を損ねてると思うんだけど、ぶっ壊していいかしら?」

「ごめんなさいすみません! ドクターに代って謝りますから壊さないであげてください!」

 

たまらずクイントさんが拳を握ってぶち壊そうとしたが、その度にドゥーエが必死に止めていた。

 

そうしてやっとたどり着いたスカさんのアジト。

やっぱりと言うかそこには今までよりも数倍デカい看板が置かれていた。

しかも、今度はスカさん(殺生丸変装)の顔つき

 

『歓迎! ようこそ! ナンバーズ秘密☆基地へ』

 

――バキッ!

 

「あらぁ~ごめんなさいね。うっかり拳が当たってしまったわ♪」

「いえ、今のは破壊してくれて構いません……」

 

流石にドゥーエもアレは許容できなかったようだ。

念のため入口をモブ局員たちに任せて、俺達だけで投入した。

アジト内は電気が止まっているのか、電灯はあれどついてはいない。

非常灯らしきランプがあちこちにあるので、かろうじて通路が見える程度の明るさだ。

 

「おかしいわね。アジトがこんなに暗いわけないのだけど」

「外の看板に電気使いすぎて停電しちゃった、のかしら?」

 

クイントさんの言う通り、看板のネオン結構ビカビカ光ってたからなぁ、電気代も馬鹿にならなさそう。

でも、それなら外の看板も消えているはずだけど。

 

「ドクターの事だから、外の看板は外の看板で別に電源を確保しているはずよ。ちなみに発電は地熱や水力などだから環境には配慮しているわ」

「無駄に考えているのだな」

 

ゼスト隊長が感心したように、いや、あれは感心半分、呆れ半分だな。

道中の看板をなるべく直視しないようにしていたっけ。

 

「ドクターやナンバーズはどこにいるんだろ?」

「私達が入ったのは分かっているはずだから迎えが来てもいいと思うんだけど」

 

しかし、しばらく待っても誰かが来ることも通信が入ることもなかった。

仕方ないので、先に進む事にした。

うす暗い通路を慎重に進んでいくと、やがて分かれ道が現れた。

 

「仕方ない。俺と二乃、ティーダは右を行く。クイント、メガーヌは健人と共に左を調べてくれ。何かあったらすぐに連絡するように」

「「「了解!」」」

 

こうしてゼスト隊長達と別れ、クイントさんとメガーヌさんと共に調査をつづけた。

その時、ドゥーエは少し渋ったがティーダに宥められるとあっさりと指示に従った。

ドゥーエ、ティーダとイイ感じになったから俺への興味薄れただろうなと思ったのに、まだたまにナニカを狙ってくるんだよな。

 

「それにしても、ブライトさん達どうしたのかしらね。通信もつながらないなんて」

「ここまでなんの痕跡もないわね。みんな無事だといいけど」

 

メガーヌさんの言う通り、ここまでの道筋で何かがあった痕跡はなかった。

何かに襲われたのなら戦闘の跡はあるはず。

でも、停電しているって事は何かが起きたのは間違いない。

 

<マスター! 前方から何か複数の生命体が接近中だ!>

 

シェルブリットが警告した通り、前方から複数の足音と声のようなものが聞こえてきた。

俺達は、即座に戦闘態勢を整えた。

 

「数が、尋常じゃないわよ! 2人とも警戒して!」

「メガーヌ、援護をお願い! 健人、無理しちゃだめよ!」

「うん。クイントさんとメガーヌさんも無理しないで!」

 

何か得体のしれないものが尋常ではない数で接近している。

今まで何度か危ない任務を経験しているけど、今回はスカさん達が恐らく原作ゼスト隊が全滅した事に関わる事件。

自然と冷や汗が流れ、握った拳に力が入る。

まさかエイリアンなんて事はないよな。

 

「距離100……80……」

 

メガーヌさんがカウントしてくれているが、少し緊張しているようで声が強張っている。

 

――…ぁ!

 

――……~ぃ!

 

段々と声がハッキリと聞こえてくるようになったが、何かおかしい。

通路の奥から沢山の人影がこちらに向かってくるのが見えた。

 

「この足音、子供!?」

 

真っ先にそのことに気付いたのは、幼いギンガとスバルを子にもつクイントさんだった。

こちらに向かってくる人影はどうやら子供のようだ。

 

「わぁーい!」「やぁ~!」「キャハハッ!」

「「「えぇ~~!?」」」

 

なんとこちらに迫る数十体もの人影は全て子供だった。

しかも、その子供、全員が全く同じ姿と声をしていた。

 

「あれ? だれかいるよ?」「だれ?」「だれだろ?」

「きれいなひと」「だれー?」

 

その子供たちはみんな赤毛のショートカットをした、どこかスバルを連想させる子供たちだった。

 

「ちょっ、どういう事!? この子達誰!?」

「わぁ~みんな可愛いわねぇ。あら? うちの子達にちょっと似てる気がするわね?」

 

確かにこの子は可愛い。

が、いくら可愛くても同じ姿をした子供が数十体以上もワラワラと俺達を取り囲む図は、ちょっとしたホラーだ。

アレ? 待てよ? この子達見覚えあるぞ?

確かイノセントで、って事はまさか……

 

「ノーヴェ!?」

「「「「「「「「「はーい?」」」」」」」」」

 

思わず叫んでしまったら、ノーヴェっぽい幼女数十体が一斉に俺の方を向いた。

いや、普通に怖いから!

 

「あたしをよんだー?」「おにいちゃんだーれ?」「うーん?」

「なんでなまえをしってるのー?」

 

まずい。不用意に名前を呼んじゃったから、ノーヴェ?達が俺に詰め寄ってきた。

クイントさんとメガーヌさんはノーヴェ?達の波にもまれて、身動きが取れていない。

そこまで広くない通路がすし詰め状態だ!

 

「ねぇねぇ、なんでなんで?」「なんであたしをしってるの?」「だれ? だれ?」

「ちょっ、ちょっと待ってくれ!」

 

ノーヴェ?達は目をキラキラさせて俺を取り囲んで、質問攻めをしてきた。

俺がその手の性癖の持ち主なら狂喜乱舞する絵面だけど……あ、これはこれで天国かも。

 

「はっ!? いかんいかん、これは孔明の罠だ」

「わけのわからない事言ってないで、健人君、この子達の事知ってるの? あ、髪を引っ張らないでー!」

 

さっきからメガーヌさんはノーヴェ?達に文字通り髪とか振り回されている。

 

「わぁ、可愛いわねぇ。ほーらたかいたかーい!」

「きゃはっ! たかいたかい!」「あぁ~あたしもだっこ、だっこぉ~!」「つぎあたしー!」

 

対照的に、クイントさんは抱きかかえたりおぶったりと高速でノーヴェ?達をあやしている。

 

「ねぇねぇ、おにいちゃんだーれ?」「あそぼっ、あそぼっ!」「おなかすいてきちゃった」

「うーん、カオスすぎる」

 

俺も、ノーヴェ?達に纏わりつかれて身動きが取れない。

確かノーヴェは、俺がスカさんのアジトに初めて迷い込んだ時に姿をみている。

けど、あの時は今みたいな幼女ではなくViVidで見たような大人の女性体だったはず……あの時は全裸だったな。

恐らくスカさんの仕業なのだろうけど、どうしてこうなったのか……

 

『こちらティーダ! クイントさん、メガーヌさん、健人君、聞こえますか!?』

 

その時、ティーダから緊急通信が入った。

 

「こちら健人です。どうしましたか? こっち今ちょっと立て込んでて……」

『こっちも緊急事態なんだよ。ゼスト隊長が……』

 

ティーダと繋がった通信ウインドウが開くと、そこに映し出されていたのは、口元が血まみれでぐったりしてるゼスト隊長の姿だった。

 

 

続く

 




はい、うついべんとです。
ノーヴェ?達のイメージはまんまリリカルなのはINNOCENTに出てきた、中島ノーヴェです。
本当はもっと後に出て来る予定だったんだけど、ネタが浮かんだので早めに登場しました。
さてはて、ゼスト隊長に一体なにがあったのでしょーか?(笑)


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第59話「うついべんとしゅうりょう」

大変お待たせ致しました!


モニターに映し出された血まみれのゼスト隊長。

普通、ここは驚く所なのだろうけど、俺もクイントさんもメガーヌさんもそこまで驚いてはいない。

だって、スカさんが関わってるんだもん。

スカさんが関わるイベントはシリアスの欠片もない絶対ろくでもない理由なのだと、3人とも分かっている。

それにゼスト隊長の血って、よく見ると鼻血に見えるんだよねぇ。

 

『あ、あれ? 皆さんどうしたんですか!?』

 

俺達の反応があまりにも淡白だったので、ティーダがさっきまでとは別の意味で焦りだした。

そうだよね。ティーダってドゥーエとイチャイチャしてる割に、スカさんイベントに関わるの初めてだもんねー?

テントの時のドゥーエとの邂逅はカウント外って事で。

 

「ティーダ君、一体隊長に何があったの?」

 

クイントさんは、シリアスな声と裏腹にノーヴェを3人も肩車して、1人を左手で抱きかかえて、もう1人を右手にぶら下げているというなんとも器用な事をしているため、シリアスにはなってない。

 

『ってよく見たら、そっちもどんな状況なんですか!?』

「こっちの事は気にしないで、割とどうにかなってるから」

「ク、クイント。私結構余裕ないんだけど!?」

 

メガーヌさんは、さっきから自分の髪の毛を弄ったりしているノーヴェの相手に四苦八苦してる。

俺? さっきからノーヴェ達の手を引いてピーターパンの如く空を飛んで遊んでいる。

あーでも、これやるなら名前的にウェンディが良かったなぁ。

 

『説明は私がします。ティーダ君はゼスト隊長の看護を、はいこれ使ってね』

 

モニターの向こうでドゥーエがティーダに箱ティッシュを渡した……ってやっぱ鼻血かい!

 

『えっと、どこから説明したらいいのかしら。まずはこの子達の説明からかしらね』

 

ドゥーエがまず説明したのは沢山現れたノーヴェの事だった。

けれども、ドゥーエ曰くノーヴェはスカさん達が最近保護した子と聞いていたが、こんなに沢山増えた原因は分からないとの事。

で、ゼスト隊長の鼻血が出た原因なのだが、これはどんな反応していいか困った。

 

「ノーヴェに食べさせられた麻婆豆腐が辛くて鼻血が出た、ですか」

『そう、ね。簡単に言えば、というかそうとしか言いようがないわね』

 

ゼスト隊長達はキッチンらしき場所に辿りついた。

そこにはクアットロとチンクがノーヴェ達と一緒に料理を作っていた。

で、ノーヴェが作ったという麻婆豆腐をゼスト隊長が食べたら、それが思った以上の超激辛で鼻血を出して倒れた、と言うのだ。

色々とツッコミ所満載だが、情けないというか呆れたというか、原因を聞いてモヤモヤする俺の尻目にクイントさんとメガーヌさんはなぜか納得した顔をしていた。

ちなみにドゥーエはクアットロとチンクに説明を聞こうとしたが、ゼスト隊長の鼻血でそれどころではなかったそうだ。

 

「ゼスト隊長、辛い物と子供には弱いからねぇ」

 

弱いの意味が若干違う気がする。

 

「多分、一度は渋ったけど、この子達が哀しそうな顔をして無理やりかきこんだのね」

『2人とも正解よ。私とティーダ君は辛いの大好きだから大丈夫だったけどね。ちなみにチンクはゼスト隊長の治療のために医務室の準備をしていて、クアットロはあなた達の方に向かったわ、あら?』

 

その時だった。突然天井の電気がつき辺りが明るくなった。

そして、目の前の壁から青い髪が生えてきた。

ディープダイバーで潜っていたセインだ。

 

「ふぅ~やれやれやっと元にもどっ…えっ!? なんでお前がいるんだ!?」

 

セインは、いつものナンバーズスーツではなく、思いっきり部屋着なのはなんだか新鮮だ。

 

「あらセインちゃん。こんにちは、可愛い服着てるわね」

「あ、クイントさん、メガーヌさん。どうも……ってだから、なんでここにいるんですか!?」

 

俺だけかと思ったらクイントさん達もいて、慌てて礼儀正しく挨拶するセインがちょっとかわいかった。

 

『セイン、あなたドクターから聞いてないの? 私達、ドクターにSOSされてここに来たのよ?』

「ドゥ、二乃姉まで!? そういえば、ドクターが何か言ってたっけ」

 

セインがモニター越しのドゥーエを見て、本名を言いそうになるも慌てて言い直したけど、今更なんだよな。

だって、二乃は偽名で本名がドゥーエってみんなにバレてるし。

なんかもう最近スカさん周りの緩さが拍車をかけてきて、スカさん達の隠し事ってほぼない。

唯一の隠し事が、ドクターブライト=スカリエッティって事くらい。

いや、それすらバレてそうだな。

 

ちなみにナンバーズが戦闘機人って事はバレている。

と言うか自分達で名乗ってるしな……

でも、ドクターブライトが別の研究所で生み出されたウーノ達を救出して、その恩があって親子関係になっている、というストーリーを披露しているので問題はない。

いや、色々問題ありすぎてそれでいいのか時空管理局!!

 

『ところで、この状況の説明が欲しいのだけど? あとなんでさっきまで電気が落ちていたのかもね。チンクとクアットロに説明聞く前にこうなっちゃったから』

 

ドゥーエは肩車しているノーヴェと、ぐったりしているゼスト隊長をツンツンしているノーヴェ達をモニターに映してジト目でセインに問いかけた。

 

「あ~それは、ドクターに聞いた方が……」

『はぁ、やっぱりドクターのせいなのね』

 

盛大にため息をついたけど、俺達は最初からこれはスカさんのせいって思ってたからまたも特に驚きなし。

 

「ともかく、ドクターに会わせてくれないかしら? SOSは大方この子達の事でしょうけど、ほっとくわけにもいかないしね」

『そうね。セイン、あなたが案内して。私はゼスト隊長の看病してから行くわ。医務室が近くにあるしね』

「それがいいわね。ティーダ君、念のため護衛よろしくね」

『了解しました。3人共気を付けて』

 

そうしてティーダ達と通信を終えた所にクアットロがやってきて、2人の案内で沢山のノーヴェ達を連れて移動した。

 

 

案内されて着いた部屋は、入口こそ普通だったが、中は体育館並みに広かった。

壁には熊さんやウサギさんが描かれていたり、天井には太陽や虹が描かれていたりといった、幼稚園の一室みたいな所だった。

その中で沢山のノーヴェがディエチと踊ったり、トーレと鬼ごっこしたりと、まるで幼稚園の様だった。

で、肝心のスカさんは部屋の隅っこの診療台みたいな所でうつ伏せで横になっており、ウーノが険しい顔でマッサージをしていた。

うーん、なんだこれ。

 

「やぁ~健人君、それにクイントさんにメガーヌさんもいらっしゃい……お見苦しい所をみせているが、ゆっくりしていくと、いぃ~……」

 

顔だけは無駄にキリっとしているが、ウーノが湿布を貼ると途端に顔が蕩けだしてなんともしまらない

 

「ドクター色々と聞きたい事とぶん殴りたい事あるけど、まずは、あの子達何?」

 

よく見ると、沢山のノーヴェの中に他のちびっ子が混ざっている。

あれは……まさか、セッテにオットーにウェンディ、ディート!?

ノーヴェもだけど、なんでみんな幼女になってるんだ!?

確か、ノーヴェ含めてもっと大人な姿だったはずなのに。

これじゃますますINNOCENTっぽいじゃん。

そう無言でセイン達に目で訴えると、揃って視線はドクターへと向けられた。

 

「さて、どこから説明したらいいかな」

 

スカさんは、相変わらず顔だけキリっとしている背中が湿布だらけのしまらない体勢で説明を始めた。

 

「戦闘機人であるノーヴェ達を保護したが、みなまだ幼い子供たちでね。秘密基地を転々としながら活動している私達ではうまく子育ては出来ないのだよ。だから、クイントさん達に相談しようと思っていたのだが……」

 

と、ここで露骨に視線をそらすスカさん。

 

「ノーヴェが最近押収したロストロギアを事故で弄ってしまってね。その結果、見ての通りさ」

 

うーん、一見筋は通っているけど、多分スカさん嘘をついてる。

クイントさんもメガーヌさんも怪しい目でスカさん見てるし。

 

「とドクターは言ってるけど、実際どうなの?」

「ドクターがノーヴェに玩具として与えたのが実は無限増殖するロストロギアだった、というのが真相よ」

「ウーノ!? そこは内緒にしてくれる約束じゃなかったのかい!?」

「知りません。大体ドクターがちゃんと回収したロストロギアを整理整頓していればこんな事にはならなかったんです!」

 

実はスカさん達は、悪の組織を壊滅させる傍らロストロギアを回収して管理局に売っているのだ。

ホント、ナンバーズが何でも屋になってきている。

 

「ちなみにこれがノーヴェが間違えて起動しちゃったロストロギアです。厳重に封印処理してますから安全ですわ」

 

そう言ってクアットロが持ってきたのは、見た目はまんまカレ〇ドステッキなブツ。

なるほど、確かに見た目だけならノーヴェくらいの年頃の女の子なら喜びそうな玩具だ。

 

「で、ノーヴェはいつになったら元に戻るの?」

「恐らく、明日までは元に戻らないと思う。そこで、君達にお願いがある。ノーヴェ達の、遊び相手になってくれないかな?」

 

スカさんやチンクたちが遊び相手になってはいたが、何せこの人数。

すぐにスカさんがギックリ腰で戦線離脱となり、さらにはTVゲームなど様々な玩具で電気を使いすぎて電源が落ちてしまうという事態になってしまった。

それを聞いて俺達は一斉に盛大にため息を吐いた。

くだらない事だと思っていたけど、まさかここまでとは。

 

「ねぇ、お兄ちゃん、お姉ちゃん、あそぼ?」

「あそぼうあそぼう!」

「遊んで、くれますか?」

 

幼いノーヴェ達がいっせいに上目遣い攻撃を繰り出してきた。

 

「「「( ゚∀゚)・∵. グハッ!!」」」

 

超クリティカルヒット、大ダメージだ。

特に恥ずかしそうにしながらも俺に話しかけてきた七緒、いや、セッテが衝撃的な可愛さだった。

 

「ま、まぁ、子供に罪はないからね。うん、お姉ちゃんと沢山遊びましょうか!」

 

俺達の中でも一番超ドストライクに決まったのは、意外にもメガーヌさんだったようだ。

顔を真っ赤にしながら、頬が緩みっぱなしだ。

 

「メガーヌ、お姉ちゃんって言われて喜んでるのね」

「ち、違うわよ!」

 

あ、なるほど。お姉ちゃんって言われて嬉しかったのか。

普段俺もギンガ達も名前で呼んでるんだけど、今度お姉ちゃんって呼んでみよう。

ちなみにクイントさんも少し頬が緩んでいるけど、俺やメガーヌさん程じゃない。

 

「ははっ、やはり健人君達に救援を求めて正解だったようだな」

 

そこへ、ゼスト隊長の治療を終えたドゥーエ達が戻ってきた。

チンクから事情を聞いたようで、ゼスト隊長もティーダも何とも言えない表情を浮かべている。

 

「和んでいるところ申し訳ありませんが、ドクター。事情はチンクから全て聞きましたよ?」

 

中でもドゥーエはノーヴェ達がロストロギアの影響でこうなったと聞いて、怒り心頭だ。

 

「なんで私には何の連絡もなしにノーヴェをこんなにして、健人君達にまた迷惑をかけるような事になってるんですか!?」

「い、いや、ドゥーエ。これは、だね。ウ、ウーノ!?」

 

普段の100倍怒りMAXなドゥーエに思わずウーノに助けを求めたスカさんだったが。

 

「ドゥーエ、あのお仕置き部屋を使って、イロイロと置いてあるから。それと腰へのダメージはなるべく避けてね。さっきまで私やトーレ達が痛めつけたばかりだから。」

「了解、ウーノお姉様♪ さて、ドクター。あちらでゆっくりOHANASHIしましょうか?♪」

「待ちたまえ! あの部屋だけはかんべ……」

 

――バタンッ

 

ドゥーエに引きずられるように、完全防音のお仕置き部屋へと連行されたスカさん。

哀れとも思わないが心の中で、ドゥーエにグッジョブと言っておこう。

スカさんのギックリ腰ってノーヴェ達が原因じゃなかったんかい。

 

そんなスカさんの惨劇(?)をスルーして、俺達は外で待機していた他の局員たちも呼んでノーヴェのロストロギア効果が切れるまで沢山遊んだ。

 

「子供との遊び方が上手ねティーダ君。やっぱり妹さんがいると違うわね、お兄ちゃん?」

「そういうドゥーエさんだって、立派なお姉さんしているじゃないですか」

「ふふっ、チンク達もいずれ、あなたの義妹になるのよねぇ、感慨深いわぁ」

「ぶふっ!? い、いきなり何を言い出すんですか!?」

 

もうあのバカップルの事はみんなスルーする事にしている。

でないと体中から砂糖が出そうだ。

と、思っていたら。

 

「ふふっ、子供っていいわねぇ。そう思いませんか、ゼスト隊長?♪」

「ま、まぁ、そうだな」

 

いつの間にかゼスト隊長とメガーヌさんもバカップルになっていた。

一体いつ2人がそんな関係になっているのかと驚いたが、クイントさんや他のモブさん達は気にしていないようだ。

 

「そっか、健人は知らなかったわよね。隊長とメガーヌの関係って結構前からだったけど、健人に悪影響を与えないようにあなたがいる時は自粛してたのよね。でも、ティーダ君とドゥーエさんがああでしょ? 自粛はやめたようね」

 

どうやら結構前からあんな関係らしい。

それにしても、メガーヌさんが意味深に下っ腹をやさしくなでているような気がするが?

 

「あ、やっぱり健人も気づいたかしら? ゼスト隊長は気付いていないようだから、まだ内緒ね?」

「はーい!」

 

 

その後、無事1人に戻ったノーヴェとウェンディ・ディード・オットーの今後をどうするかを、ゲンヤさんやレジアス中将も交えて話し合った。

結果、俺とクイントさんにとてもなついているノーヴェ・ウェンディ・セッテはナカジマ家の養女となった。

ギンガとスバルは姉妹が増えてとても喜んでいたな。

クイントさんはオットーとディードも預かろうとしたが、流石にそれはゲンヤさんとゼスト隊長に止められた。

そこにたまたま話を聞いたリンディさんの仲介で、オットーとディードは聖王教会に預けられることになった。

元々オットーとディードは、管理局に入っているドゥーエと同様に聖王教会に入り込ませる予定だったそうで、スカさんの思惑通りになったというわけだ。

なんかVivid時代を先取りしてINNOCENT世界を取り込んだような家族構成になっているな。

そういえば、今更過ぎるけどセインだけじゃなくドゥーエ達ってVividに出てきてないと思ったけど、どこにいたんだろ。

ま、細かい事は気にする必要ないか。

ここはVividでもINNOCENTでもないんだし。

 

ちなみに、ノーヴェやウェンディ達が俺が前ポットで見た時よりも幼い理由は、スカさんが調整ミスして装置が故障してこうなったらしい。

そんなお茶目をしでかしてお仕置き部屋から解放されたスカさんを慰める為、シェルブリットを装着して全力全壊のマッサージをしてあげた。

途中、クイントさんやメガーヌさん達も加わりスカさんは白目を向いて泡を吹くほど喜んでくれた。

 

 

続く




よっしゃー!やっと何とかかけたー!

モチベーション低下やら色々ありましたが、どうにか形に出来ました。
そして、ノーヴェ・ナカジマ、ウェンディ・ナカジマ、そして、まさかのセッテ・ナカジマ爆誕!
ディードとオットーも含めてスバルと同い年か1つほど下のイメージです。

次回は季節外れのネタをやります!
ハロウィンやりたいんですけど、ネタが全く浮かばないのでスルーです……


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第60話「学校の怪談①トイレの花子さん」

お待たせしました!
季節感ガン無視の話です!


正式にナカジマ家の養女になったノーヴェ、ウェンディ、セッテとギンガ、スバルはすぐに打ち解けて、本当の姉妹のように一緒に遊んだり風呂に入ったり寝たりしている。

ナカジマ家もたった数日で大幅改築して、部屋も増えて風呂も大きくなった。

ここまで短期間に大改築が終わったのは、スカさんが裏で色々と手を回したそうだ。

それはいいのだけど、大浴場かってくらい大きくなった風呂に俺も一緒に入ろうとギンガやスバルに加えて、ノーヴェ達までせがむのは勘弁して欲しい。

断るとセッテが無表情のまま涙目になるし、クイントさんは面白半分に焚きつけてくるし、その度にゲンヤさんも一緒に入りたそうな哀愁漂う背中みせるし。

そして、ノーヴェ達をなのは達にも紹介して、こちらもすぐに友達になれた。

 

「可愛い妹さんが増えて健人君楽しそうやね」

「ほほぉ~これが健人の新しい女ってわけね♪」

 

はやてやアリシアには散々からかわられたが、ノーヴェ達は可愛いのはホントの事だしね。

 

 

そんなこんなで季節は過ぎ、夏休みも終わり2学期が始まった頃、俺達はアリサからある相談を受けた。

ちなみにはやては今日は用事があるので、先に帰っている。

 

「ねぇ、健人? トイレの花子さんって知ってる?」

「トイレの花子さん? あの、便器の中から赤いカツラ欲しいか、青いカツラ欲しいかって聞いてくるやつ?」

「違うわよ! しかもそれ髪の毛じゃなくて紙が欲しいかって聞いてくるんでしょうが!」

「違ったか、なら……花子さん遊びましょ? って言うと、7日後に井戸から遊びにくるんだっけ?」

「それも違う! あっちはトイレ関係ないし、名前も子しか合ってないじゃない!」

「まぁまぁ、アリサちゃん。健人君も分かってて言ってるんだから」

 

流石にすずかはよくわかってる。無言でサムズアップを交わした。

 

「すずか、最近健人に毒され過ぎよ!」

「毒なんてひどいなぁ、せめてかっこよく汚染と言ってくあげないと」

「毒よりひどくなってるじゃない! しかも、全然かっこよくないわよ!」

「にゃははは、アリサちゃん話を先に進めた方がいいよ?」

「うぐっ、そ、そうね。このままだと夜になりそう」

 

話が脱線していると言うなのはに、コホンと咳払いをしてアリサは話を元に戻した。

 

「それでね。うちの学校の体育館に近いトイレに花子さんが出るって話が低学年たちの間に夏休み前に出たのよ。で、面白そうだと夏休みの間に肝試しとして、そのトイレに行った子達がいるの。それで実際に花子さんの声を聞いたらしいのよ」

「まさか、その子達に何かあったの!?」

 

フェイトが心配そうに声を荒げるが、アリサは苦笑いを浮かべた。

 

「えっと、花子さんには何もされていないようなの。ただ、驚いて転んだりはしたけど、それでもケガはしていないって」

「それなら、良かった。でも、そんな事あったって先生は何も言ってなかったよ?」

 

確かに。夏休み明けに先生からはそんな事があったなんて聞いていない。

怪我がなかったにせよ。実際に騒ぎになったのだから注意喚起くらいはしそうだけど。

 

「そりゃそうよ。その子達、先生にも親にも黙ってたんだし。終業式の日にこっそり窓の鍵を開けておいて、夏休みに入ってから忍び込んだ。なんて、先生に言えるわけないでしょ」

 

おぉ、そんな方法で校舎に潜入するとは、結構悪知恵が働く子達なんだ。

 

「それで、俺らになんでその話を? アリサも花子さんに会いたいから一緒に行こうって事?」

「え“っ?」

 

俺がそう言うと、なのはの表情が強張った。

アリシア程ではないけど、なのはも怖いの苦手だったな。

 

「違うわよ。肝試しに参加した子の1人が知り合いなんだけど、その子に本当に花子さんだったのか確かめてくれって頼まれたのよ」

「なるほどなるほど。と言うわけで、なのは、フェイトがんばってなー」

「えぇ~~!!?」

「うん。頑張るよ」

 

対照的な返事をする2人。

だって、2人がやるしかないじゃん。

 

「あのさぁ。女子トイレに出るのに男の俺がどうにか出来るわけないじゃん」

「それはそうだけど、あれ? そういえばアリシアちゃんはどこに行ったの?」

「アリシアちゃんなら、アリサちゃんが花子さんって言った途端に無言で帰っちゃったよ?」

 

すずかに言われて、俺もさっきまでいたアリシアがいつの間にか消えている事に気付いた。

道理で怖がりのアリシアがずっと静かだなと思ってたんだよな。

 

「ま、最初からアリシアには期待していないけどね。と言うわけで、お願いね健人」

「いやいや、さっきの話聞いてなかったの? 女子トイレに行けるわけないでしょ? なのはとフェイトがいればいいだろ」

 

おばけに魔法が効くのか分からないけど。

 

「あ、ダメだ。2人に任せたら校舎が街ごと消滅する!」

「そんな事しないよ!?」

「そうだよ。ちゃんと結界張るよ?」

「フェイトちゃん、そういう問題じゃないと思うの」

 

フェイトは花子さんをヤる気満々なようで、流石のなのはも若干引き気味だ。

 

「どうしてあんた達ってそう物騒なの……」

「そりゃ、2人は魔砲少女だし」

「健人君? 今字が違ってなかったかな?」

「キノセイダヨナノハ、キノセイ」

「なんで今度は片言なの!?」

「あーもう話が進まなぁーい!」

 

 

 

結局、その日の夜に俺となのは、フェイトの3人は夜の校舎へ潜入して噂の花子さんの調査をすることになった。

俺は乗り気はしなかったのだけど、アリサの知り合いの子は本当は俺にお願いをしたかったようだ。

運動会でのあのはちゃめちゃ騒動の中心にいる俺が、頼もしく見えたらしい……どういうことだってばよ。

 

「なーんでこうなるかなぁ」

「まぁまぁ、せっかく夜の校舎に入れる機会なんだしね」

 

なのはは花子さんを怖がっていた割に楽しそうだ。

 

「花子さんはちょっと怖いけど、健人君とフェイトちゃんが一緒だから平気なの」

「うん。私もちょっとドキドキして楽しいかも。それで、どこから入るの? ドアか窓を斬って入る?」

「こらこらこら、フェイトさんや。何を物騒な事言ってるのかな?」

 

バルディッシュで校舎のドアを斬る寸前だったフェイトを止める。

フェイトってこんなに物騒な子……だったね、割と。

流石はプレシアの娘。

 

「そんな事しなくても、ちゃんと窓開けておいたから……(ガチャガチャ)……あれ?」

 

今日、最後の授業で理科室つかった時、窓の鍵を開けておいたはずなのだが、なぜか鍵がかかっていた。

 

「あ、そこの窓の鍵ちゃんと閉まってなかったから、閉めておいたよ?」

「フェイトちゃん……」

 

………

 

「シャインナック……」

「わわっ! ストップストーーーップ! 健人君落ち着いて! 気持ちは分かるけど、そんな事したら校舎ごと消しとんじゃうよー!」

 

ついカッチーンときて、面倒になったからブレイカーで花子さんごと窓を消し飛ばそうとしたが、慌ててなのはに止められた。

その時だった。

 

――コンコンッ

 

「「「えっ?」」」

 

突然、理科室の窓から叩くような音がした。

3人で一斉に音がした窓に目を向けると。

 

「あの~? こんな時間にどうしましたか?」

「あらま、うちの生徒たちじゃない」

 

窓の向こうから人体模型と骨格模型がこっちに話しかけてきた。

 

「……きゅぅ~」

「「なのは~!?」」

 

そりゃ心臓や内臓が生々しい人体模型とカラカラと音を立てて骨格模型がいきなり話しかけてきたらこうなるか。

 

 

それから俺達は、人体模型が開けてくれた窓から理科室から校内へと入る事が出来た。

どうやら人体模型と骨格模型は夜にだけ動く事が出来るようだ。

人体模型と骨格模型では呼びにくいので、ボディ君とボーンちゃんと呼ぶ事にした。

安直な名前だとシェルブリットに突っ込まれたけど、2人(?)は喜んでくれた。

 

「なんだか、ビックリさせてしまって申し訳ないです」

「ごめんなさいねぇ。こんな夜中に生身の人間が来るなんて珍しいから、ついはしゃいじゃったわ」

「こ、こちらこそご迷惑をおかけいたしました……」

 

気絶した介抱してくれたボディ君とボーンちゃんに頭を下げるなのは。

すごく、シュールだ。

 

「それであなた達はこんな夜中に一体何の用事だったの?」

「体育館近くのトイレに花子さんが出たって言うからそれを調べに来たんだよ」

「あら、あの子に会いに来たの、そう……」

 

微妙な表情を浮かべて顔を合わせるボディ君とボーンちゃん。

 

『そ、そろそろ行かない?』

 

さっきからなのはが先を急ごうと念話で急かしてきてるけど、どうやらこの2人は花子の事を知っているみたいだし、もう少し話を聞いてみようか。

 

「あの、花子ってどういう子なんですか?」

「どういう子か。花子ちゃんかぁ。あの子、かわいそうな子なんだよな」

 

?? どうも2人とも口が重いと言うか、言い淀んでいる。

 

「花子ちゃんってもしかして、家族はみんな事故で亡くして、生まれつき重い病気で学校にも行けずに、そのまま亡くなったりした子、だから学校に現れるようになった。そういう子なんですか?」

「フェイトちゃん、それは可哀想どころか重すぎるの……」

 

フェイト、それほぼ俺。

 

「うーんとね。花子ちゃんは元は体育館のトイレだけじゃなく学校中のトイレに移動できる子だったの」

 

トイレ限定ですか。まぁ、トイレの花子さん、って言われてるから当たり前か。

 

「それが体育館のトイレでソシャゲやってた時に推しのキャラがガチャで出て、ハイテンションで喜んでたらうっかりスマホをトイレに落として壊しちゃって、その時の怨念が強すぎて体育館のトイレから出られなくなった子なの」

「「「………」」」

 

これ、どこからツッコミいれればいいんだろう?

それにしても水没して壊れた、ねぇ。

 

「要するに、頭が可哀想な子、って事でいいのかな?」

「「うん」」

 

あっさりと認めちゃったよ。

まぁ、何にせよ会いに行くしかないか。

 

 

その後、俺達はボディ君達と別れて目的地のトイレへとやってきた。

真夜中とはいえ、女子トイレに入るわけにはいかないので俺は入口で待機してなのはとフェイトが花子さんを呼ぶ事になった。

 

「「はーなこさん、遊びましょ!」」

 

なのはとフェイトが女子トイレで花子さんを呼ぶと、少し間をおいて返事が返ってきた。

 

「……は~い」

 

が、その声は明らかになのは達がいる所とは別の所から聞こえてきた。

 

「あれ? なんでそっちから聞こえて来るんだ? なのは、もう一度呼んでみてくれないか?」

「うん。は~なこさん、遊びましょ」

「は~い……」

 

やっぱり花子さんらしき声は女子トイレからではなく、隣の男子トイレから聞こえてくる。

 

「なんで花子さんの声が男子トイレからするんだ?」

「そういえばアリサの話だと、下級生の子達が花子さんの声を聞いたのって女子トイレとは言ってなかったよね?」

「「あっ、確かに」」

 

トイレで花子さんの声を聞いたとは言っていたけど、女子トイレとは言ってなかったしそもそも花子さんに会ったも言ってなかった。

花子さんは女の子だから当然、現れるのも女子トイレって思い込んでた。

ともかく、今度は男子トイレなので俺が入る事になった。

 

「あの、誰でしょうか?」

 

男子トイレに入ると、奥の個室から暗い表情の女の子がひょこっと顔を出してきた。

この子がトイレの花子さんか、赤い吊りスカートのよくテレビとかで見る服装だな。

でも、おかっぱ頭ではあるけど前髪は横一線に切ってるわけじゃなく、ちょっとマイルドな曲線になっていて意外と可愛い。

昔読んでたぬ~〇~に出てきた花子さんは怖いと言うかグロテスクだったしな。

 

「はじめまして。俺は草薙健人。向こうにいるのは友達だよ」

「高町なのはです」

「私は、フェイト・テスタロッサ。よろしくね」

 

なのはは、花子さんの見た目が普通の女の子と分かり落ち着いたようだ。

さっき女子トイレに入る時はフェイトの手をギュッと握ってたからな。

 

「どうも、私は花子です。あの、こんな時間に何の用でしょうか?」

 

何の用、と聞かれて返答に困る。

そういえば、俺達何しに花子さんに会いに来たんだっけ?

調べに来たとは言ったけど、そもそも調べてどうするんだろ……

 

『作戦かーいぎ! 俺達、花子さんに何しに来たんだっけ!?』

『えっ? 花子さんを斬るんじゃなかったの?』

『まだそれ引っ張ってたのフェイトちゃん!? ちょっと頭冷やそうか!?』

 

今日のなのははツッコミまくりだな。

 

『ここは素直に、ウワサの花子さんに会いに来たって言おうか』

『健人君。それ絶対に言わないでね。絶対誤解されるから』

『お、おう』

 

なんでかなのはに睨まれた。

花子さんなんかより怖いんだけど。

 

「?? どうかしたの?」

 

花子さん不思議がってる。

どうしようかな。あ、そうだ!

 

「実は、花子さんが困ってるって聞いて力になれないかな。と思ったんだよ」

「っ! ホント!? その為にわざわざ夜中に来てくれたの? ありがとう! あ、でも……」

 

最初は目を輝かせて喜んだ花子さんだったが、すぐにまた暗い表情を浮かべた。

 

「私が困ってるのって、スマホが壊れてデータが飛んだせいだから……自業自得だし」

「ひっ!?」

 

うぉっ!? 花子さんの表情がますます暗くなると、それに合わせてトイレ内の空気も重く冷たくなっていった。

なのはがそれを敏感に感じ取って、怖くなったのかまたフェイトの手を強く握ってる。

 

「あーとりあえずそのスマホを見せてくれないかな?」

「……どうぞ」

 

花子さんに渡されたスマホは、どこにでもある普通のタイプだった。

これどこで手に入れたとか、契約はどうしたってのをツッコミいれたらいけないんだろうなぁ。

 

「シェルブリット、解析鑑定」

<おう……あーマスターこれ、壊れてないぞ>

「えっ? 腕時計が喋った!?」

 

いや、お化けがその程度で驚いてどうするのさ。

 

「細かい事は気にしないで、花子さん。で、壊れてないってのはどういう事だシェルブリット」

「そ、そうだよ。トイレに落っことしちゃったんだよ? すぐに取り出して乾かしたけど、全然電源入らないんだよ!?」

<水が入った形跡はないから、水没させた影響はないって事だ。電源が入らないのは……ただの電池切れだぜ>

 

電池切れ……

あまりにも衝撃的でベタなオチに花子さんやなのは達も目を丸くして固まった。

俺はと言うと、なんとなーく予想は出来ていた。

花子さんのスマホの機種は知らなかったけど、最近のスマホは防水機能が高く水没させても、修理に出さずに復旧可能な事が多いとテレビでやっていたからだ。

最悪、スカさんの手を借りようかとも思ったけど、その心配はなさそうで良かった。

 

「電池、切れ……そういえば、私、充電してないや」

「花子さん……」

「だ、だってだって! 私トイレにしか行けないんだよ!? コンセントなんてなかなかトイレにないんだよ!? どうやって充電すればいいの!?」

 

それだったらどうやってスマホを入手して契約したのさ。とは言わないでおく。

 

「ともかく、そのスマホを充電させればいいんだよね? だったらこれを使って」

 

そう言ってフェイトが差し出したのは、携帯型充電器。

あれはプレシアに渡されたものだったな、俺もアリシアも持ってる。

普通の充電方法だけではなく、フェイトの魔力変換素質である電気の力でも充電できる優れものだ。

 

「ありがとう! わっ! 一瞬で充電出来た!」

 

流石プレシアの魔改造充電器。

 

「諦めていたのに、嬉しいなぁ。本当にありがとう!」

 

満面の笑顔ではしゃぐ花子さんに合わせてトイレの中の空気も明るく清々しいものに変わって行った。

と思ったら……

 

「あっ、連続ログインボーナスが……」

 

また暗く重たい空気に……ってもういいだろ!

 

 

翌日

 

「それで、花子さんの調査はどうだったの?」

「花子さんは、自由に他のトイレに行けるようになったよ」

「そ、そう。それは良かった? わね」

「あと花子さんの悩みは無事に解決して、スマホでソシャゲが出来るようになったよ」

「……はい?」

「ほら。花子さんと友達になって、lineも交換したんだよ」

 

――ピロリん♪

 

『やったよ、健人君、なのはちゃん! 宮本〇蔵に続いて水〇武蔵もゲットできたよ!』

『良かったね花子さん。私は〇弥呼をやっとスキルMaxに出来たよ』

「まちなさーい! なんであんた達普通に花子さんとlineしてるのよ! なんで花子さんがスマホでFG〇をやってるのよ! てかそもそもなんで花子さんがスマホ持ってるのよー!!」

 

アリサのツッコミは9月の空に消えたのだった。

 

 

「ねぇ、姉さんも花子さんやボディ君達とのlineグループに入ろうよ」

「ぜぇーーーったいに入らない!!」

 

 

続く

 




さて、北海道でマイナス30度を下回るニュースの日に晩夏の怪談話という。

トイレの花子さんのイメージはゲゲゲの鬼太郎6期の花子さんです。
可愛かったなぁ……声も良かったし。

あと数話怪談シリーズの予定です。


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第61話「学校の怪談②テケテケ 前編」

お待たせしました!
書いていてながくなったので前編後編に分けました。


ノーヴェ達がナカジマ家の一員になってしばらく経った休日、ノーヴェとウェンディ、そしてセッテがクイントさんに連れられて地球に遊びに来た。

ギンガとスバルは定期検査の為ゲンヤさんと共に向こうに残っている。

かなりだだを捏ねられて、次の休みは丸々2人と遊ぶ事で納得してもらった。

ただ、その際にデートだデートと2人がかなりはしゃいでいたのは……忘れよう。

そして、地球にやってきたノーヴェ達はまずは俺の学校が見たいと言ってきた。

今日は休みなので学校は空いていないと言ったのだけど、それでも見たいとの事なので連れてきた。

クイントさんは、日本料理を沢山食べさせると張り切ってプレシアとフェイトとアリシアを連れて夕飯の買い物に出かけている。

 

「ここが、にいちゃんの学校ッスか!」

「大きい」

 

ウェンディとセッテが想像していたのよりも大きかったのか、聖祥大学付属小学校に驚いてる。

ま、この小学校は普通に大きい部類に入るからな。

ところで、ウェンディってこんな幼い頃から語尾にッスを付けていたんだな。

と、ノーヴェが塀に登ってキョロキョロと中を見渡して何かを探していた。

一応ここ塀は高いんだけど、問題なくよじ登ってる。

身体能力高いなぁ、流石戦闘機人。

 

「ノーヴェ? 塀なんか登って危ないよ。何を探してるんだ?」

「きんたろーさん」

「へっ? 金太郎?」

 

なぜ金太郎?

 

「違うッスよ、ノーヴェ。ウ〇トラマンキンタロスッス」

 

何その、相撲と浪花節が似合いそうなウルトラ〇ンは。

 

「2人とも違う。正しくは二宮金次郎」

「「それだ!」」

 

ノーヴェとウェインディの間違いを正すセッテ。

二宮金次郎か……どんな人だっけ。

名前だけは聞いたことあるんだけどなぁ。

でも、待てよ。えっと、確かスカさんの話ではノーヴェとウェンディがスバルと同じ6歳で、セッテが5歳って話だったよな。

俺でもよく知らない人を知っている6歳児と5歳児……侮りがたし。

 

「二宮金次郎?」

「うん。日本には昔、重しを担いで修行しながら勉強する子供がいて」

「でも、児童虐待で修行を禁止されてそれを悲しんだ子を偲んで建てられたってってトーレ姉から聞いたッス」

 

何だろ。微妙に違う気がする。

俺も良く知らないから違うって強く否定できないけど、そこまで哀しい設定ではなかった気がする。

 

「だから2人とも違う。二宮金次郎は、子供の頃に薪や柴を運ぶ労働をしている間にも勉学に励むような子で沢山苦労をした。だから、今の子供にも家事手伝いと勉学の両立に努める立派な子になるように模範として建てたれた像」

「「「おぉ~」」」

 

セッテの詳しい説明に拍手する俺達3人。

 

「すごいなセッテ。日本人である俺も知らない事だったのに、よくそこまで日本の昔の事知ってるな。ここに来るまでにそこまで勉強したのかぁ」

「……クアットロお姉ちゃんに、教わった」

 

偉い偉いと頭を撫でると、セッテは赤くなって嬉しそうに少し頬を緩めた。

ノーヴェやウェンディと違ってセッテはいつも真顔だけど、決して無表情で感情がないわけじゃなく、たまにこうして笑顔を見せてくれたりする。

その笑顔にクイントさんやゲンヤさんは瞬殺されたんだよな、もちろん俺もだけど。

 

「で、二宮金次郎像だけど。うちの学校じゃないな」

 

確か、あの像がある学校は少なくなったんだっけか。

 

「残念」

「そこまで見たかったのか」

「うん、動くところ見たかった」

「え“っ?」

 

二宮金次郎像が動く?

あ、その話もどっかで聞いた事あるぞ。

 

「そうッスよねぇ~と、言っても今は真昼間だから動いたりはしないッスけど」

「私は、見れなくてホッとした、かも」

 

セッテは、幽霊とかは興味津々だけど、怖くもあるようだな。

 

――バキッ

 

ん? 今どっかから変な音したような?

 

「二宮金次郎像が動くって、それもトーレやクアットロから聞いたの?」

「ドクターからっス!」

「ドクターに見せてもらった日本の映画にもそういうシーンあった。ちょっと怖かったけど面白かった」

「やっぱりスカさんが元凶か」

 

トーレもノーヴェ達に日本の変なイメージ埋め込んだけど、スカさんも絡んでたか。

 

「あれ? ノーヴェはどこ行った?」

 

ふと、さっきまで塀の上から校庭を見渡していたノーヴェの姿がない事に気付いた。

 

「あ、ノーヴェならあそこっス!」

 

ウェンディが指を刺した先、校舎の入口付近にいるノーヴェを見つけた。

ノーヴェは靴を脱いで、スリッパに履き替えてる所だった。

どうやら校舎内に入ろうとしているようだ。

外靴を脱いでちゃんとスリッパに履き替えてる所は、しっかりしてるな。

 

「って感心している場合じゃなかった。ノーヴェを追いかけなきゃ!」

 

休みだけど先生の誰かが出勤しているかもしれないし、見つかったら厄介だから早く連れ戻さないと。

 

「あー……2人ともおいで」

「わーい!」

 

流石にウェンディとセッテを置いていくわけにはいかない。

こんな事ならアリシアでも連れてくればよかった。

 

「……計画通り」

 

セッテさんや、冗談でもそういう笑顔はやめてください、怖いです。

 

 

ノーヴェを追って俺達は校舎内へと入った。

玄関に鍵がかかっているはずなんだけど、なぜか鍵は開いていた。

そして、俺はいつも使っている上履きに履き替え、ウェンディとセッテにはスリッパを用意した

実は、この前夜中にトイレの花子さんに会いに校舎に侵入した時は、上履きに履き替えるの忘れてて帰る前になのは達と床掃除したんだよなぁ。

 

「さてと、ノーヴェはどこに行ったかは、足音聞けば大体分かるか」

 

――ペタペタ

 

凄く小さいけど誰もいない校舎内でスリッパで歩き回れば足音が響くから、その音をシャルブリットで拾えばすぐに分かる。

どうやらあまり遠くには行ってないようだ。

 

――ペタペタペタンッペタコツコツ

 

あれ? おかしいな?

ノーヴェのスリッパ音以外の音も聞こえてくるような?

しかも、こっちに近づいてきてる?

 

「ねぇ、足音、多いよ?」

「うわっ、ホントだ」

 

セッテとウェンディにも聞こえるのか。

 

「多分、誰か先生が出勤してるのだろう。それはそれでちょっとまずいけど」

<校舎内でマスター達以外の生体反応、ないぜ>

「ひっ!」

 

あ、セッテが怖がって俺の腕に飛びついてきた。

 

「こらシェルブリット、セッテを怖がらせるな。大丈夫大丈夫きっと……アダダッ!?」

 

腕にしがみついてきたセッテの力が段々と増してきた。

あーこの感覚懐かしいなぁ、スバルやギンガも怖くなってしがみついてきた時力加減できなくてよくこうなったなぁ、なーんて言ってる場合じゃない。

急いで腕に魔力を流して強化したから痛みは退いた。

 

「セッテ、ダメっスよ。にいちゃんは生の人間なんだからそんな力強く握り締めたら壊れるッス」

「あ、ごめん、なさい」

 

セッテが慌てて俺から手を離したけど、もう魔力で強化したからセッテ程度の腕力では痛くもかゆくもないんだよね……イタタッ。

 

「俺なら大丈夫だよ。それよりこの足音だけど、多分 「健人君!」 俺の友達だ」

 

階段から降りてきたのは、少し前に友達になったトイレの花子さんだった。

ノーヴェも花子さんに連れられて降りてきた。

 

「いらっしゃい、健人君。ノーヴェちゃんから話は聞いたよ。今日は妹ちゃん達に学校を案内してるんだって?」

「うん。と言っても本当は外から見るだけだったんだけど、ノーヴェが校舎に入っちゃって。ノーヴェ、どうして校舎に入ったんだ?」

「このお姉ちゃんが窓から手を振ってるのが見えたから、呼ばれたと思った」

 

……花子さん。

 

「ごめんね。友達待ってたら健人君が見えたからこっちに気付いて欲しくて、つい大きく手を振ったらおいでおいでってなっちゃったみたい、あはは~」

 

花子さん、意外とお茶目。

 

「でも、玄関には鍵かかってるから来れないだろうと思ってたんだけど、入ってきちゃったね」

「やっぱり鍵はかかってたんだ。ノーヴェ、どうやって入ってきたんだ?」

「普通にドアを開けて入ったよ?」

 

ノーヴェはさも鍵がかかってなく自然に入ったかの様に言ってるけど、花子さんは鍵がかかってたと言う。

花子さんと2人で?と顔を見合わせて、ドアに目を向けると……鍵が壊れていた。

鍵がかかっていなかった、と言うよりは誰かが無理やり力づくで開けた結果、壊れたようだ。

あ、さっき変な音がしたと思ったけど、まさか……

 

「なるほどなるほど、鍵を開けたんじゃなくて普通に力加減せずにドアを開けたら鍵が壊れたってわけか、そーかそーか」

「えっ、えぇ~? 健人君よりも幼いのにドアを普通に壊すって、この子一体何者なの!?」

 

いや、お化けのあなたが驚いてどうする。

気持ちは分かるけどねー。

さてどうしようか、戦闘機人って説明してもいいのかな。

花子さんは、人間じゃないからいいのかな?

一応俺となのはとフェイトが魔導師って事は言ってあるんだけどね。

 

「あ、でも健人君の妹ちゃんならこれくらいしそうだね」

「まてまてまて」

 

俺の妹だからって簡単に納得するな。

知り合ってまだ間がないのになんでそこまで言われなきゃいけないのさ。

魔導師の妹だからってこんな馬鹿力にならないから。

 

「冗談だよ、冗談。まーともかく普通じゃないってのは分かるよ」

「うん、そういう事にしといて、詳しく言うと色々難しい話だし」

 

花子さんが理解あって助かる。

 

「あれくらいなら、私でも出来る」

「セッテ、張り合わななくていいッスよ。多分にいちゃんがとっても困る事になるッス」

 

気遣いありがと、ウェンディ。

 

「あれ? シェルブリット、さっき確か生命反応ないって言ったッスよね? じゃあ、このお姉さんは……」

 

ウェンディの指摘に、セッテも何かに気付いて顔を青ざめた。

あ、それに気付いた花子さんの雰囲気が変わった。

 

「あら? 気付いちゃった? うん。私が生きている人間、だなんて本気で思っちゃってたのかな? フフフッ……ねぇ、火の球はいらないから!」

 

花子さんがお化けっぽい雰囲気を醸し出したから、演出として火の球を数個出して花子さんの背後に浮かせたんだよね。

うんうん、俺も魔力の扱い上手くなったなぁ。

いやぁ、花子さんがアフロにならなくてよかった。

 

「何を考えているのかな、健人君?」

「いや、昔の俺だったら花子さん今頃火達磨になってただろうなーと」

「ホント、何を考えていたのかな!?」

 

花子さんってボケ専門だと思ってたけど、意外とツッコミも出来るね。

 

「あれ? お兄ちゃん今花子さんって、ひょっとしてこのお姉さんの名前はトイレの花子さんなの!?」

 

ノーヴェが突然目をキラキラさせて花子さんにずずいっと詰め寄った。

 

「え、えぇ、そうよ。私はトイレの花子さん。健人君となのはちゃんやフェイトちゃんとは少し前に助けられたことがあって、それで友達になったの」

 

助けたと言っても、特に何もしてないんだけどね。

 

「わっ! わぁ~! そうなんだ、そうなんだ!」

「おぉ~これがトイレの花子さんっスか」

 

ノーヴェは感動しきっきりで、ウェンディも同じく感嘆の声をあげている。

さっきまで花子さんと距離を取っていたセッテも、いつの間にか花子さんの前に進み出ていた。

 

「はじめまして、セッテ・ナカジマです。おにいちゃんに最近拾われました」

「えぇ、はじめ……えっ? 拾われた!?」

 

わー!? 何、誤解を招く事言ってるのかなセッテは!?

ほら、花子さんもさっきとはまた違った意味で雰囲気変わっちゃってる!?

 

「いや違うから! そういう意味じゃないから花子さん誤解しないで!」

 

結局、ノーヴェ達との関係を説明する羽目になってしまった。

 

「へぇ~この子達もただの人間じゃないと思ったけど、機械と融合してるんだ。流石科学の発展はすごいわね」

 

花子さんは、ノーヴェ達の生い立ちを特に気にせずただただ戦闘機人の事をすごいとだけ言ってくれた。

 

「ところで、花子さん。今日は真昼間から何をしてたの? 確か昼間は活動しないんじゃなかったっけ?」

「そうね、平日の昼間は人が大勢いるから出ないのだけど。今日は休みで、先生も来ない日だから友達と遊ぶ約束してたの」

 

そういえばさっきも友達待ってるって言ってたっけ。

 

「もうすぐ来ると思うわ。良かったら健人君達の事も紹介したいけど、いいかな?」

「うん。俺は大丈夫だけど、ノーヴェ達は?」

「会いたい!」

「花子さんの友達なら会ってみたいッス!」

「私は……いいよ」

 

ノーヴェとウェンディはノリノリで、セッテも少し迷ったみたいだけど好奇心が勝ったようだ。

 

「良かった。もうすぐ来ると思うわ。あ、でも言っておかなきゃいけない事があって、あの子は……」

「は~なこちゃん、遊びましょ♪」

 

その時、花子さんを呼ぶ女の子の声が聞こえてきた。

ふと見ると廊下の角からこっちに顔を出して様子を伺っている女の子が見えた。

なぜか女の子の顔は床に近い場所にあったけど、うつ伏せにでもなってるのかな?

 

「あ、ウワサをすれば、テケちゃんいらっしゃーい。この子達は私の友達だから大丈夫だよ」

「うん、分かりました! 今そっちに行きますわぁ」

 

てけちゃんと呼ばれた、セーラー服を着た中学生らしき女の子が這いつくばって現れた。

なんか、嫌な予感がする。

 

「みなさぁ~ん、初めまして。私はテケテケと言います。仲良くしてくださいねぇ」

 

テケテケ、それは電車に轢かれて腰から下が真っ二つになってしまった女の子のお化けだ。

この女の子も腰から下はなく、血こそ出ていないが内臓がはみ出ていて生々しい。

それを見たノーヴェの顔が一瞬で真っ青になり……

 

「いぃ~~~やぁ~~~!!!」

 

ノーヴェは耳をつんざくほどの悲鳴をあげて、テケテケへ向けて全速力で突っ走った。

そして、勢いそのままにテケテケを思いっきり蹴った。

 

「あ~~れ~~……」

 

テケテケは蹴り飛ばされたサッカーボールのように物凄いスピードで廊下の奥へと消えていった。

 

「ハァ……ハァ……」

 

肩で息をしてやり遂げた顔をするノーヴェを、俺も花子さんもウェンディやセッテですら呆然と眺めるしかできなかった。

ノーヴェはホラーは大好きだけど、グロテスクやスプラッタな物は大の苦手だと言う事をその時知った。

 

 

続く

 




テケテケと言いつつ、最後にチラリとしか出ていません。
彼女には後編でがんばってもらいましょう(笑)
この作品のノーヴェ達の設定を少し。

ノーヴェ:6歳、ホラー大好き、スプラッタ・グロテスクは大の苦手
ウェンディ:6歳、ホラーもスプラッタもグロテスクも好き。
セッテ:5歳、ホラーは苦手だけど、興味津々。スプラッタとグロテスクは好きではないが平気


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第62話「学校の怪談②テケテケ 後編」

テケテケさんの秘密大公開(笑)


「「ごめんなさい!」」

 

現在、テケテケさんの顔面を全力全開で蹴り飛ばしたノーヴェと一緒に謝罪中。

ノーヴェは頭を下げているだけだが、俺は土下座中。

 

「いえいえ、そんな土下座までして、私はお化けなんで気にしないでください。床冷たいし固いから足痛めてしまいますわ。どうかお兄さん、立ってくださいな。そもそも内臓なんて見せてしまった私が悪いのですわ。お恥ずかしい限りです」

 

こちらが誠心誠意やりすぎなくらい謝ってるのを見て、テケテケさんも困惑している。

だって、あんなに綺麗に蹴り飛ばして……窓ガラスぶち割って外へまで飛び出してしまったのだから、兄としてこれくらいはしないと。

ちなみに、テケテケさんは戻って来る時にどこから持ってきたのか、ロングスカートを履いているので飛び出た内臓は見えない。

 

「それにしても、よくこの子をあんな遠くまで蹴り飛ばせたわね」

 

ノーヴェの脚力に花子さんは呆れ半分感心半分だ。

ちなみに、見た目はテケテテさんが女子高生、花子さんが小学生だが実年齢と言うか、お化け的に花子さんが先輩なのらしい。

 

「いやぁ、見た目幼くても戦闘機人なので」

「あ、うん。それもあるのだけど、ね」

 

花子さんは、上半身だけとはいえ見た目女子高生を6歳のノーヴェが何十メートルも蹴り飛ばした事に驚いているのかと思ったけど、なんだか微妙に違う事に驚いているみたいだ。

 

「あの~? 本当に私の事ならお気になさらず。空を飛んだみたいで気持ち良かったですし、それに頑丈なのが私の取り得ですから」

「頑丈?」

 

お化けだからかな?

 

「ちょっと失礼しますわ」

 

テケテケさんは、セーラー服の袖を捲り自分の腕を見せた。

 

「えっ? えぇ~!?」

 

それを見て思わず大きい声が出た。

 

「うわっ、すご~い!」

「むっきむきッスねぇ」

 

ノーヴェ達も驚いている。

それもそのはず、テケテケさんの腕は、まるでプロレスラーやボディビルダーのように筋肉でガッチガチだった。

 

「うふふっ、腹筋にも自信がありますわよ」

「ス、ストップストップ!」

 

と、今度は自分の腹を見せようとセーラー服を捲ろうとしたので、すぐに止めた。

 

「失礼いたしました。これははしたない真似をしてしまう所でしたね。つい年甲斐もなくはしゃいでしまいましたわ」

「あ、いえ、そういう意味ではなくてですね……」

 

お腹を見るのが恥ずかしい、のではなく、腹筋のついでにまた飛び出た内臓も見てしまいそうになり止めたのだった。

 

「うーん、テケちゃんって羞恥心がないのよねぇ。だから千切れたお腹もそのままにしてしまうのよ。私も出会った頃は色々と大変だったわ」

 

羞恥心とかそういう問題じゃないと思う。

てか花子さんもグロテスクなのは苦手なのね。

 

「それにしてもテケテケさん、どうしてそんなに鍛えたんですか? というか、お化けって筋肉付くんだ」

「お恥ずかしい話ですが、私以前は電車如きに真っ二つにされてしまうほどの軟弱な身体でしたの。その後、両足が無くなり手だけで動かなくてはなりませんのでしたので、鍛えに鍛えた結果。こんな頑丈な身体になれましたの♪ ですが、内臓がはみ出てしまうのはどうしようもありませんだしたわ」

 

その話を聞いて、ノーヴェ達の目の輝きはさらに増し、尊敬の眼差しをテケテケさんに向けていた。

え~っと、この話、どこからつっこめばいいのかな?

と、悩んでいると花子さんがとても穏やか笑みを浮かべて俺の肩に手を置いた。

 

「健人君、突っ込んだら負けよ」

 

あ、花子さんもツッコミたいけどツッコミが追い付かないようだ。

 

「お化けだからってね。限度があるのよ、限度が」

 

そう言って花子さんは遠い目をして窓から空を見上げた。

セッテはそんな花子さんの隣に立ち、宙に浮いて頭を撫でた。

 

「花子お姉さん、元気だして」

「ありがとう、セッテちゃん……セッテちゃん、空を飛べるのね。羨ましいなぁ」

 

セッテだけじゃなくノーヴェやウェンディも空を飛べる。

元々は単体では空を飛ぶ事は出来なかったが、幼児化したのでせっかくだから空を飛べる方が何かと便利だろうとスカさんが付けたとの事。

ギンガとスバル、それにティアナは羨ましがってたな。

それにしても、胴体立ちしてボディビルダーのように様々なポーズを決めるテケテケさん、その度に両腕の筋肉をつっついて歓声をあげるノーヴェとウェンディ。

片や年下の子に励まされて目をウルウルさせて感激している花子さん。

お化けっていったい何だろうね。

 

「あ、そうだ。玄関や窓ガラス、どうしよう」

 

ノーヴェが壊した玄関の鍵やテケテケさんを蹴り飛ばして壊した窓ガラス、流石にこのままにしておくわけにはいかない。

と言っても、例えクイントさんに連絡してもすぐに修理できるのかな。

魔法でパパーっと直せれればいいけど、出来なさそうな気がする。

と、その時だった。

 

「あっはっはっ、お困りかな健人君!」

「ドクター、五月蠅いです」

 

校舎内に響き渡るほどの大声と共に、なぜかスカさんとクアットロ、それにトーレとセインが現れた。

 

 

「えっ? なんでみんなここに居るの!?」

「私がドクターにヘルプを頼んだ。お兄ちゃん困ってたから」

 

と、ドヤ顔でブイサインをするセッテ。

 

「セッテえらいッス!」

「うん、ホント気が利くなぁ」

 

ウェンディと2人でセッテを褒めまくると、顔を真っ赤にして恥ずかしそうに照れた。

ノーヴェは、クアットロから注意を受けていた。

 

「っ~!! この子可愛すぎ! ねぇねぇ、この子私の妹に欲しい!」

「ちょっ、花子さん落ち着いて!」

「あらら~お気持ちは分かりますけど、セッテちゃん怖がってますわよ、花子ちゃん」

 

鼻息を荒くしてセッテを抱きしめようとする花子さんを怖がり、セッテは俺の後ろへと非難した。

テケテケさんが止めてくれたけど、花子さんの目が完全に逝っていて俺も怖かった。

 

「あの、そろそろいいかな? 流石に放置されるのは辛いのだが……」

「あ、ごめん、ドクター。それで、あのドアと向こうの窓ガラスなんだけど、直せる?」

「このくらい朝飯前さ。窓ガラスの方はチンクが向かっている。玄関の方はトーレに任せたまえ。ナンバーズに不可能はない! それで、そちらのお嬢さん達が花子さんとテケテケさんだね。初めまして、私はドクター・ブライト、またの名をジェイル・スカリエッティ、よろしく」

 

スカさんが本名を名乗るって珍しいな。

花子さん達が管理局とは全く関係ない一般……お化けだからいいのか。

 

「あーあなたが話に聞いたドクター様ですか。私はトイレの花子です」

「私はテケテケと言います。よろしくお願いいたしますわ、スカリエッティ様」

「あはは、有名な地球の都市伝説の方に様付けなど光栄ですね。もっと気軽に呼んでいただいて構いませんよ」

 

スカさんが花子さんとテケテケさんに自己紹介をしている間に、トーレとチンクは素早くドアと窓の修理に取り掛かった。

うーん、仕事が早いけど、いつもと様子が違う気がする。

 

「窓ガラスの付け替え終わりました」

「ドアの修理も完了しました」

 

と思っている間に修理が完了した。

最近では土木工事も頼まれると言っていたから、手慣れているのだろう。

しかし、何でも屋とはいえナンバーズは一体どこを目指しているのやら……

 

「ふむ、みんなご苦労様」

「本当にみんなありがとう。助かったよ」

「ノーヴェが迷惑をかけてしまい、こちらこそ申し訳ありませんでしたわ」

 

クアットロが謝ってくれたけど、そんな事される必要はない。

 

「いやいや、ドゥーエはもう俺の妹だし。監督責任は兄である俺にあるよ」

「あぅ、お兄ちゃん、ごめんなさい」

 

クアットロに諭されて、自分がした事をやっと理解したノーヴェが申し訳なさそうに謝ってきた。

 

「もういいよ、ノーヴェ。これから少しずつ力の加減覚えような?」

 

ギンガとスバルもクイントさんとゲンヤさんに引き取られた当初は色々仕出かしてしまったらしいからな。

 

「ところで、セッテから話は聞きましたが、テケテテさんは下半身を失ったとか。良ければ私の作成した義肢を使ってみませんか? 例えばこのようなものですが」

 

流石スカさん、用意が良い。

と感心したが、スカさんがどこからか取り出したのは見た目がまんま、ガンダムのBパーツだった。

ノーヴェ達がキラキラした目でそれを見ているけど、そういえば日本のアニメで一番ハマったのがガンダムにだったな。

じゃなくって!

 

「いや、テケテケさんMSじゃないから! それ付けたら見た目合わなさすぎるから!」

「ドクター、長居は無用ですわよ?」

「分かっているさ、クアットロ。すぐに済ませるよ。さて、試作として作って提供しているのだが、どれも評判が良くてね。色々とバリエーションに凝ってみたのだよ」

 

こんな見た目の義肢に需要があるのかよ。

 

「だからって、それは明らかに無骨すぎるでしょ」

 

下半身はガンダム、上半身はマッチョな女子高生テケテケさん。

想像したら恐怖しかない。

 

「ふむ、女の子のテケテケさんにこれは失礼だったね。では、こちらはどうかな?」

 

そう言って今度は取り出したのは、ノーベルガンダムの下半身。

ただし、腰のアーマーは本物のスカートのようなデザインになっている。

他にも色々と取り出したが、中にはジオングみたくホバータイプのものやガンタンクみたくキャタピラタイプのものまであった。

何を想定してこんなの作ったんだ。

あ、クアットロが目で諦めてと言っている。

 

「スカートが付いていればいいってもんじゃないでしょ! と言うか、今どっから取り出したのそれ!?」

「うーん、ご好意はありがたいのですけど。下半身が付いてしまったらテケテケとしてのアイデンティティが無くなってしまいますわ。それに上半身だけでも不自由はしておりませんので、気持ちだけ受け取らせていただきます」

 

そう言ってテケテケさんは、手を床に付けて器用に頭を下げた。

 

「なるほど、お化けの矜持というものですか」

 

矜持って、そんな大層な物じゃない気がするけど。

 

「ドクター、大変! お巡りさんたちがこっちの方に来てるよ!」

 

と思っているとセインが壁をすり抜けて現れた。

それを見た花子さんとテケテケさんがヒッ!?って声を出したけど、あんたらお化けだろ。

 

「むっ? それはまずいな。では皆さん、私達はこれで失礼します! ノーヴェ達も何かあったら健人君やクイントさん達のいう事をしっかり聞くんだよ。では、さらば!」

 

挨拶もそこそこに、あっという間にスカさん達は行ってしまった。

そういえば、クアットロ達いつもより少し急いでいると言うか、無駄話をしている暇はないって雰囲気だったな。

いつもなら色々と俺に絡んでくるのに。

 

『健人、健人! みんな無事?』

「ん? 一体どうしたんだフェイト?」

 

フェイトからいきなり通信が入った。

何やら焦っているようだけど、どうしたんだろ。

 

『良かった。あ、健人達まだ小学校近くにいる? あのね、小学校付近で変なスーツを着た幼女を連れた怪しい不審者が目撃されたって話を聞いたの。それで母さんやクイントさん達がそっちに向かってるけど、そっちは大丈夫?』

「……それ、多分ドクターブライト達の事だ」

 

変なスーツを着た幼女(チンク)や女性(トーレやクアットロ)を連れた怪しい不審者(スカさん)。

まぁ、日本じゃあの姿は目立つもんなぁ。

 

『ブライトさん? ブライトさんがこっちに来てたの?』

「うん。詳しい話はあとでするよ。とりあえず、今まだ小学校にいるから急いで帰るよ」

『う、うん。分かった』

 

なるほど。それで警察が見回りにこっちに来てるって事か。

あ、鍵が閉まっているはずの学校内にいる俺達も見つかったらまずい。

 

「やばい。俺達も急いでここ出るぞ! じゃ、花子さん、テケテケさん、またね!」

「ばいばーい」

「うん。みんな、気を付けて帰るんだよ」

「ごきげんよう~」

 

こうして俺達も急いで校舎を出て、クイントさんとプレシアさんと合流して家に帰った。

2人とも不審者を心配していたけど、ナンバーズの事だと言うと呆れながらも納得した。

 

 

後日談

 

「ねぇ、1階角の窓ガラスだけとんでもなく硬いって噂、知ってる?」

「うん。校舎に入ろうとした泥棒が割ろうとしたんだけど、どうやっても割れなかったみたいだよ」

 

学校の七不思議の1つに『割れないガラス』が追加された。

 

 

続く

 




見た目は美少女、口調はお嬢様、でもセーラー服の下はゴリマッチョなテケテケさんでしたー
うん。俺は一体何を書いているのだろうか(トオイメ


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第63話「学校の怪談③透明人間」

おまたせしました!
そろそろ怪談の季節がやってきますねー


可愛い妹も変な友達も増えて、只今絶賛小学校生活を満喫中の幸せな毎日!

だったのだけど……ちょっと最近異変が起きている気がする。

 

「最近、誰かに見られている気がする」

「「「えっ!?」」」

 

ある日の朝学校で言った言葉に、なのは達の顔色が変わった。

まぁ、そりゃそうだよな。

俺がこんな事言う原因に心当たりがあるもんなぁ……

 

「それって、もしかして……彼女達かな?」

「いや、なのはちゃん。そうとは限らんやろ? だってまだアレから半年くらいしか経っとらんやで?」

「じゃあ、新しい健人のストーカー?」

「フェイト、そんな新しいって、常連行事みたいな……いや、健人ならあり得るかな?」

「俺ならあり得るって怖い事言うなよアリシア。多分、彼女達じゃないと、思う。だって、もしそうなら鳥肌や悪寒を必ず感じるはずだから」

 

うん。間違いなくシュテル達ではない、と思いたいだけだが。

 

「健人君、重症やな。無理もあらへんけど」

「でもそうなると誰なんだろう? シェルブリットも何も探知してないって言うんだよな」

 

まぁ、シェルブリットの探知能力をすり抜けてたからあまりアテにできないんだけどな。

 

<悪かったな、役立たずでよ>

 

あ、拗ねた。

 

「ぜぇ、ぜぇ、草薙!」

 

と、楯宮が息を切らしながら登校してきた。

 

「あ、楯宮君おはよう」

「おはよう、友樹。大丈夫? まだ時間に余裕あるのにどうしてそんなに走ってきたの?」

 

今更だが、フェイトだけが友樹と名前で呼んでいる。

はやて達も名前で呼んでだ時期もあったけど、当の本人が名前で呼ばれると違和感があるから苗字で呼んで欲しいと頼んだからだ。

フェイトは最初から名前で呼んでるので違和感がないらしい。

贅沢な奴だ。

 

「お、おはよう。はぁ、はぁ……それよりも、楯宮。お前、お化けに知り合いでもいるのか!?」

「はい? いきなりなんだ?」

 

お化けの知り合いと言われて反射的に頭に浮かんだ人が数人いるけど、誰とはあえて言わない。

あ、花子さん達がいたか。

 

「今朝学校に来る途中で視線を感じたんだよ。でも、周りにはそれらしい人いなくて、気のせいだと思ったら声が聞こえてさ、草薙君のご友人ですか? って」

 

それを聞いて顔を見合わせる俺達。

そもそも、俺を草薙君と呼ぶ知り合いが学校の先生か、ここの友達くらいだ。

 

「で、その声の主は誰? もしくはどんな人だったんだ?」

「そんなの確かめる暇なかったぞ。一目散に逃げてきたんだから」

 

まぁ、普通は逃げるよな。

 

「それで、何か気付いたことなかったの? 例えば、声が若かったとか、健人の事で何か言いかけてたとか。あと、その時少し離れた場所でも周りに誰かいなかった?」

 

フェイトは、流石執務官候補生だけあって少しでも情報を聞こうとしている。

 

「うーん。女の子ってくらいしか分からないな。下屋則子っぽい声かな」

「それは重要じゃない。いや、重要か?」

「ホントに声だけ聞こえたんだよ。周りを見渡しても誰もいなかったし。ともかく、そいつお前に用があるみたいだったから、それだけ伝えたぞ」

「あぁ、ありがとな」

 

さてと、どうしますかね。

楯宮が聞いた声の主って、十中八九最近俺を監視してるのと同じだろうね。

今日は午前中で授業が終わり管理局の仕事もないし、専門家に聞いてみるか。

 

「それで、私の所に来たと?」

「うん、そうなんだよ花子さん」

 

蛇の道は蛇、と言うわけで花子さんに心当たりがないか俺とフェイト、アリシアの3人聞く事にした。

はやては足が不自由だった時にお世話になった石田先生と予定があり、なのはは店の手伝いという事でそれぞれ帰った。

本当はアリシアも用事があると帰ろうとしたがフェイトにせっかくだから一緒に行こうと誘われ、断れず渋々同行することになった。

アリスアもお化けには少しは慣れてきている。

流石にグロテスク系なテケテケさんやボディ君達は無理なようだ。

 

「心当たり、ねぇ」

 

俺や楯宮が遭遇した状況を伝えると、花子さんは明らかに何か心当たりあるって顔をして、冷や汗を流した。

 

「ひょっとして、花子さん。心当たり所か、犯人知ってるんじゃないの?」

「そ、そそそんなわけないじゃないフェイトちゃん」

「私フェイトじゃなくてアリシアだよ」

「犯人、庇うつもり、じゃないよね?」

 

アリシアの質問に明らかに動揺し、フェイトから睨まれタジタジの花子さん。

てか、犯人ってまだそのお化け何もしてないから。

被害者(?)である俺をほったらかして2人して盛り上がってるし。

 

「はぁ~多分、透明人間ちゃんだと思う」

「透明人間? そりゃまたどストレートなお化けだね」

 

ストレートすぎてすぐには思い浮かばなかった。

ん、透明人間って名前、誰かから聞いたような気がするぞ。

 

「で、その透明人間がなんで健人のストーカーになったの?」

「別にストーカーになったわけじゃないと思うけど、本人から聞いた方が早いよね。そこにいる透明人間ちゃん」

 

と、誰もいない廊下の一角を指差す花子さん。

いや、透明人間なんだから見えないだけか。

 

「あぅ。ど、どうして私がここにいるって分かったの花子ちゃん?」

「あのねぇ。普通の人間相手ならともかく、同じ存在の私が見えないわけないでしょ」

「あ、そうだったねぇ」

 

透明人間らしき声だけ聞こえるが、姿かたちはさっぱり分からない。

シェルブリットやバルディッシュのセンサーにも何にも反応がないようだ。

 

「えっと、あなたが透明人間さん?」

「あの、私こっちです、こっち」

 

今度は、フェイトが声をかけた方とは逆の方から声がした。

見えないからややこしいな。

 

「すみませんすみません。あの、私草薙君に相談したい事がありまして。でも、いざ本人目の前にするとどう話しかけていいか分からなくて。それで、その……」

「声をかけるタイミングを計ってたってわけか。それで最近妙に視線を感じると思ったんだよな」

「はぅ! ご、ごめんなさい!」

 

相変わらず声だけしか聞こえないけど、この子は今物凄く頭を下げまくってるのは分かる。

 

「それで健人に相談したい事ってどういう事ですか? 私達も相談に乗りますよ?」

「ホントですか!? ありがとうございます! 実は、私、もっと派手になりたいんです!」

 

………?

透明人間の言ってる事が良く分からなかった。

派手?

 

「派手、とは一体?」

「あ、あのですね。私ものすごく地味で、存在感薄いので……」

「……」

 

えっ? 地味ってそもそも透明人間だから見えないし、派手になっても意味ないんじゃないの?

存在感薄いのって、そもそも透明人間だから見えないし。

俺達が同時に花子さんの方を向くと、花子さんは肩をすくめてヤレヤレと苦笑いを浮かべている。

 

「あー、その、相談に乗ってあげて欲しいなぁ?」

 

分かった。

透明人間は最初花子さんに相談したけど、色々と面倒だからって俺に丸投げしたって事だ。

 

「「ジトー……」」

「健人君もアリシアちゃんもそんな声に出して睨まないでよ。健人君ならなんとかできるって信頼してるって事だよ」

「いや、そんな事言われても困るんだけど」

 

透明人間を派手にする、ってどうやって解決しろって言うのさ。

 

「あぅ、やっぱり、無理な相談でしたよね」

 

透明人間が落ち込んだ声を出してる。

 

「分かってます。地味な私が目立とうだなんて、身の程知らずにも程があるって思ってるんですよね」

 

いやいやいや、そんな事思ってないから。

と言うか、根本的に問題点がズレてるんだよなぁ。

 

「そもそも、あなたがどんな姿してるか私達分からないんだけど。透明なのはどうにかならないの?」

「ひいぃ~~!? そ、そんなあんまりですアリシアちゃん! 鬼畜です、鬼です!」

「えっ? えぇ~?」

 

突然、悲鳴をあげた透明人間に困惑するアリシア。

ん~やっぱり姿が見えないとリアクションが分かりにくい。

 

「透明人間の私に、透明じゃなくなれなんて、そんなのアイロンティーの喪失です!」

「えっと、アイデンティティ、だよね?」

「透明じゃない私なんて透明人間じゃありません! それだけはダメです!」

 

フェイトのツッコミは無視された。

 

「健人~後おねが~い……」

 

アリシアは心底ウンザリした顔をした。

気持ちは分かるけど、だからって俺に丸投げしないで欲しい。

あ、最初透明人間は俺に相談しようとしてたんだった。

なら俺が答えるしかないのか。

でも、いいアイデアが浮かばない。

仕方ない、はやて達にも相談しよう。

 

『至急アイデア求む! 透明人間を派手にする方法!』

『わわっ、いきなりなんや?』

『むっ、健人か。どうした?』

『ちょっ、このタイミングで念話をしてくるなよ! あ、アイス~!?』

 

どうやらはやて達は石田先生とカフェでお茶しているようだ。

ヴィータは、食べようとしていたアイスを落としてしまったらしい。ごめん。

 

『いらっしゃいま、って健人君?』

 

なのはは、どうやら接客途中だったようだ。

店の手伝いは一応本当だったんだな。

てっきりお化け関係に関わりたくないから逃げたんだと思ってた。

ともかく、シグナム達も含めて事情を説明しアイデアを求めたけど、みんなの反応が鈍い。

 

『透明人間を派手に、ですか』

『難しい注文だな』

 

シャマルもアインスも考えてはくれているけど、いいアイデアが浮かばないようだ。

 

『って言うかさ、透明人間なんだか見えねぇの当たり前じゃん。そんなのどうしろって言うんだ?』

『ヴィータ、それは思ってても言うたらあかんで』

 

ヴィータが至極真っ当なツッコミをする。

それは俺達もはやて達もみんな思ってる事だけど、それを言ったら元も子もない。

 

『あ、はいはーい! リインにいいアイデアがあります!』

 

と、ここで八神家でアインスとザフィーラと留守番しているツヴァイが声をあげた。

正直、期待できないが一応聞いておこう。

 

『ではツヴァイ君、どうぞ』

『はい、先生! 透明人間さんにお化粧をすればいいと思います!』

『あ、それいいかも』

『そうね。透明人間ちゃんも女の子だもの、化粧は必要よね』

 

なのはやシャマルも良い考えと言っているが、化粧か。

それって透明じゃなくなるって事なんだけど、本人がどう反応するかな。

他にいいアイデアないし。これ以上みんなに時間を取らせられないな。

 

『うん。そのアイデアで行ってみるよ。ありがとな、ツヴァイ。それと皆も考えてくれてありがとう』

『ええってこれくらい。ほんなら、健人君頑張ってなー』

『頑張ってね、パパ♪』

「ぶふっ!? げほっけほ!」

「い、いきなりどうしたの健人君!?」

「大丈夫、健人?」

 

突然のツヴァイの不意打ちにむせてしまい、花子さんや念話に参加してなかったフェイトがビックリしてしまった。

 

「だ、大丈夫大丈夫。それよりも透明人間さん。ちょっと思いついた事あるんだけど」

「はい。なんでしょうか?」

 

あ、今度はこっちにいるのか。

 

「化粧をしてみるのはどうかな? これなら派手になると思うけど」

「化粧、ですか? いいですね、それ!」

 

ダメかと思ったアイデアだったが、意外に受け入れられた。

余計なツッコミを入れず、とっとと片を付けようか。

アリシア、退屈だからって欠伸するな!

 

「でも、私化粧ってした事ないんでどうやればいいか分からない。花子ちゃんやった事ある?」

「やった事あるわけないでしょ。と言うか化粧するお化けなんているわけないでしょ」

 

流石の花子さんもゲンナリしている。

お化けは病気も化粧もない。って言うしな。

 

「というわけで、健人君お化粧って出来る?」

「何がというわけでなのか分からないけど、俺がやった事あるわけないでしょ」

 

かと言ってフェイトやアリシアもやった事はない。

なのは達もやった事はないだろうし、誰か適任はいないかと考えていると、アリシアが何かを閃いた。

 

「あ、じゃあお母さんにやってもらうのはどうかな?」

「えっ? プレシアさんが?」

 

確かに一番身近な大人だけど、あまり化粧をしている印象はないな。

 

「甘いよ健人。母さん、最近皺が目立ってきたからって結構厚化粧で 「あら、私がどうかしたかしら?」 え“っ? 母さん!?」

 

なんといつの間にかアリシアの後ろにプレシアが立っていた。

 

「あ、その、母さん。どうして、ここに?」

「今日は早く帰れたから、お土産に翠屋のケーキをって思ってたらなのはから話を聞いて、様子を見に来たのよ。そしたら……ねぇ? 面白い話してるじゃないアリシア?」

「えっと、その、あ、あははは」

 

プレシアさん、顔はニコニコ笑ってるけど、怖いです。

アリシアが涙目で助けを求めてるけど、俺とフェイトにはどうする事も出来ません。

ほら、花子さんだってブルブル震えて怖がってるし。

 

「なるほどね。そこにいるのが話に出てた透明人間ね」

 

プレシアは、花子さんの横の空間に向けて話し出した。

透明人間が見えるのだろうか?

 

「えっ? 私が見えるんですか?」

「えぇ、私はプレシア。アリシアとフェイトの母親で健人の、保護者代理というか寮母みたいなものかしら」

「あ、はい。よろしくお願いします」

 

流石プレシア。

どういう理屈か分からないけど透明人間が見えるようだ。

あれか、サーモグラフィとかそういう探知魔法でも使ってるのだろうか。

 

「勘よ」

 

ホントかよ。

お母さんすごい、ってフェイトが横で尊敬の眼差しを浮かべておりますが。

 

「ともかく、話は聞いていたから早速始めるけど、いいかしら?」

「お、お願いします!」

 

近くの空き教室でプレシアの透明人間派手化大作戦が始まった。

その間、俺達は教室の外で待っている事になった。

 

「化粧って結構時間かかるんだよなぁ」

「健人君。女の子の化粧はとても時間がかかるのよ。覚えておいた方が良いわよ? まぁ、私はしたことないけど」

 

化粧経験のない花子さんのよく分からない忠告は聞いておこう。

でも、クイントさんは化粧するけど結構早く終わってたよな。

これはアレか、クイントさんはプレシアよりかなり若いからか。

 

「健人?」

「うひゃぁ!?」

 

そんな事を考えていると、いきなり教室のドアが開いてプレシアが顔を出してきた。

 

「あら、何をそんなに驚いているの? 余計な事でも考えていたのかしら?」

 

その表情は笑顔だけど、さっきのアリシアの時のように目が笑っていない、怖い。

 

「まぁ、いいわ。調整が終わったから入っていいわよ」

「意外と早かったですね」

 

まだ5分くらいしか経ってないのに。

それに、調整? 化粧なのに調整?

ともかく、教室に入るとそこにいたのは間〇桜(Zero版)の見た目をして、メガネをかけた女の子。

恐らくこれが化粧をした透明人間なんだろうけど、声がそれっぽいからってまんまかい。

 

「ど、どうも。似合い、ますか?」

「うわぁ、すごく可愛い!」

「あらまぁ、すっかり変わっちゃったわね、透明人間ちゃん。そのメガネも素敵よ」

 

花子さん曰く、これが透明人間の素顔ではないらしい。

てっきり化粧で透明人間を視えるようにしたのかと思ったけど、それなら彼女が嫌がるか。

 

「察しがいいわね花子。そのメガネは私が昔、変装用に作ったものよ。まさか透明人間に使う事になるとは思わなかったわ」

 

透明人間がかけているメガネはどうやらかけると別の人間の姿になれる変装用魔法アイテムとの事。

プレシアが昔、アリシアを復活させようと引き籠って研究していた頃に、買い出しやら出掛ける際に目立たないようにするために作ったものだそうだ。

ん、と言う事は??

 

「じゃあ、母さんも昔はあんな姿に変装してたの?」

 

アリシアも同じ事を思い浮かべたようで、戦慄したような表情を浮かべている。

プレシアが幼女に化けて外出……ナイナイ。

 

「アリシア、健人。帰ったら少しOHANASIしましょうか?」

「「ごめんなさい!」」

 

さっきから俺は口にしてないのにどうして思ってる事がバレるんだろう。

ちなみにプレシアが変装した姿は流石に幼女姿ではなくちゃんとした大人の女性に見えるようにしていたそうだ。

 

「あの~私、綺麗?」

「透明人間ちゃん、置いてけぼりで寂しいのは分かるけど、口裂け女ちゃんのセリフを取るのはやめてあげなさい」

 

あ、やばっ。透明人間をほったらかしてた!

 

「ごめんごめん。眼鏡がとてもいいチャームポイントになってていいよ。さく……透明人間さん」

「うん、長髪が似合っててすごく可愛いよ」

「ありがとう! 私、長髪に憧れてたんだぁ。これで派手になりました!」

 

どうやら透明人間の素は短髪らしい。

髪を長くしただけで派手になるのか。

そもそも、今の状態はさっき散々嫌がっていた透明じゃない状態なんだけど、それでいいのか。

と、色々思う所があったけど、本人が喜んでいるので余計な事は言わないでおこう。

今日は余計な事は言うだけじゃなく、考えるのもよした方がいいと大事な事を学んだ。

 

 

 

続く

 




何度か書き直してこんな形に、スカさんの魔改造という話も浮かびましたけど前回やってるので今回はプレシアにその役をやってもらいました。
プレシアもプレシアで結構な天才なんですよねー


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第64話「学校の怪談(終)人面犬」

おまたせしました!
これで学校の怪談シリーズ終わりです。


帰りたい。

 

「それでな、花子が言うんだよ。『最近、ちょっと太ってきたでしょ』 ってよ。もうドストレートに言ってくるわけよ! そりゃさ、俺もさ、最近お腹出てきたかな? とは思ってたけど、疑問形で言って欲しいわけよ! もう少し言い方ってものがあると思うわけよ!」

「旦那、思春期の女の子ってのはそういうもんでさ。はい、がんもどき」

「花子は思春期どころか、もう数十年は歳食ってるがな。ガハハハハッ!」

 

さっきから酒を飲みながら愚痴をこぼしているのが、人面犬のケンさん。

そんなケンさんに相槌を打ちながらおでんを差し出しているのが、のっぺらぼうのガンさん。

そして、ここは校舎裏にあるおでんの屋台。

なんかもう色々とツッコミどころがありすぎるけど、なぜこうなったか思い出してみよう。

 

 

 

今日の放課後、なのは達が管理局の仕事や家の用事でみんな先に帰ってしまったので、珍しく1人で帰ろうとするとすると声をかけられた。

 

「よう、おめぇさんが健人か」

「はい?」

 

突然足元から名前を呼ばれ下を向くと、柴犬の身体に人の顔をした人面犬がいた。

渡〇也さんみたいなシブいおっさん顔で声も渋い。

周りに誰もいなくてよかった。ご都合主義っぽいけど。

 

「えーっと、どちら様ですか?」

「俺を見てそんな反応するとは、ウワサ以上に肝っ玉がすわった坊主だな。よっし、気に入った。健人、ちょっと付き合え」

「付き合うって、どこに?」

「なーに、ちょっとそこに行きつけの屋台があってな。心配すんな、俺の奢りだ」

 

ニヤっとニヒルに笑って先導する人面犬の後を付いていくと、校舎裏の一角にいつの間にか屋台があった。

あれ? こんな屋台あったっけ?

 

「ここはな、普通の人間には見る事も出来ない隠れた名店ってやつよ。お前さんなら見れると思ったさ。やっぱり俺達とは相性がいいみたいだからな。おう、親父。コイツが噂の健人だ」

「おう、旦那。それに、ようこそ俺の屋台へ! 俺がのっぺらぼうのガンってんだ。よろしくな、健人!」

 

屋台から顔を出したのは、なんとのっぺらぼうだった。

目や口がなくてどうやって見たり話したりしてるか分からないけど、お化けだから問題ないか。

 

「ガッハハハハッ! ガンさん見ても全然動じてないぜ。流石だな」

「えぇ、ウワサ通りの大物だ!」

 

のっぺらぼうを見ても全く動じていない俺を見て、人面犬とのっぺらぼう、ゲンさんは豪快に笑いあった。

そりゃ、これでも管理外世界とかで色々なモンスターにも出会ってるし、学校でも動く人体模型やら骨格標本を見た後じゃ、インパクトに負けるさ。

 

「あのー? 俺は一体何の用で呼ばれたのでしょうか?」

「まーまーまずは一杯飲みねぇ。安心しな。これはただのリンゴジュースだ」

「はぁ、どうも」

 

流されるまま席に座り、ガンさんから差し出されたリンゴジュースを受け取る。

 

「おっと、そういやまだ自己紹介してなかったな。俺は見ての通り人面犬だ。ケンさんと呼んでくれ」

「ケンさん、ですか」

「おうよ! 俺はケンさん、こっちはガンさんだ」

 

人面ケンだから、ケンさんかな。

なら、のっぺらぼうとガンの繋がりは、わかんねぇ。

 

「でだ。夏から随分とお前さんの大活躍を耳にしてね。ぜひ一度会ってみようと思ったわけだ」

「えっと、俺の活躍?」

 

はて? 管理局でゼスト隊なりアースラ組なり色々な人と協力して、そこそこ活躍はしてるけどなんでこの人達が知ってるんだろ?

 

「お前さんが花子達の相談事にのってるって話だよ」

「ま、一部相談事じゃなくてメリーちゃんみたいな厄介事になっちまったのもあるがな」

「あーアレ、ですか。確かにアレは厄介事でしたね」

 

最も、厄介なのは俺じゃなくて向こうにとっての厄介だったけど。

 

 

 

その①:メリーさんの電話

 

始まりは、アリシアとゲームをしていた時、俺のスマホにかかってきた知らない番号からの電話からだった。

 

『もしもし、私メリーさん。今駅前にいるの』

「へっ?」

 

いきなり何事かと思ったが、すぐに電話は切れてしまった。

 

「何々? 悪戯電話だったの?」

「そうかも、メリーさんって子から電話だったんだけどすぐに切れた。今駅前にいるんだって」

「メリーさん? どこかで聞いたことあるような気がする」

 

実は俺も聞き覚えがある名前なんだよな。

頭にまず浮かんだのは羊頭の海賊船だけど、多分違う。

 

「それは、メリーさんの羊のメリーさんの事じゃないかな」

「「それだ!」」

 

フェイトのおかげでスッキリした俺とアリシアはゲームを再開した。

それから数日後、はやての家で勉強会をしているとまた電話がかかってきた。

 

『私メリーさん、今あなたの家の前にいるの』

「今友達の家にいるから、俺そこにいないけど?」

『えっ? うそ、せっかく何日もかけてここまで来たのに……』

 

そういうとメリーさんからの電話はまた切れてしまった。

 

「今の誰からやったの?」

「ん、メリーさんからの電話だったんだけど、要領を得ない電話だったんだよな」

「へぇ、また私らの知らない間に女の子と仲良くなったんやなぁ」

「「………」」

「なんか言ってくれヴィータ、アインス」

「流石健人さん! すごいフラグ能力です!」

 

ジト目で見てくるはやてと、無言でため息をついてるヴィータと苦笑いを浮かべるアインス。

それになぜか感心するツヴァイ。

良く分からないが、冤罪だと言っておこう。

 

更に数日後。

ナカジマ家でギンガやノーヴェと留守番をしている時、また電話が鳴った。

 

『もしもし、私メリーさん。あなたが見つからないの。どこにいるの?』

 

メリーさんは若干涙声になってた。

 

「えっと、どういえばいいかな。実家、にいるんだよ」

 

里帰りみたいな言い方だけど、テスタロッサ家よりはナカジマ家の方が実家って言い方があってるよな。

 

『……分かった。絶対にそこに行く』

 

そう言って電話は切れた。

今までは割と暗めだったけど、今回は意を決したような口調だったな。

さて、どうやってここまで来るのかな。

が、ギンガとノーヴェと遊んでいるうちにそんな事をすっかり忘れてしまい、更に数日後。

 

『もしもし……私、メリーさん……ここ、どこ? 見た事ない建物だらけだよぉ』

 

メリーさんはミッドチルダの街中で迷子になっていた。

管理局員に保護され、俺の名前を出した事もあり仕方がないのでクイントさんと迎えに行った。

 

「私、め“り”ぃ~ざん! やっどあなだにあえたのぉ~!!」

「あらあら、相変わらずモテモテね♪」

 

チンクのような銀色の長髪少女に抱きつかれ、困っている様子をほのぼのとした暖かい視線で見守る局員やクイントさん。

いや、この子お化けだから都市伝説だから、普通の女の子じゃないから!

アレ? 俺の周りに普通の女の子、いない??

 

そして、メリーさんを無事に地球に送り届けた。

その際メリーさんからは、照れ隠しからか俺を呪い殺さんばかりに睨まれた。

この世界に来て、女の子にあそこまで恨まれたのは初めての事だったのでちょっと嬉しいと言ったら、ドン引きされた。

 

 

その②:呪いのビデオ

 

ある日、レンタルしたDVDを返そうとしたらビデオテープが混ざっていた。

そのビデオテープにはラベルも何もない。

ビデオデッキなんて持ってないし、誰かのいたずらかと思いそのままゴミに出した。

 

そうしたら、翌日またビデオテープがリビングに置かれていた。

なので捨てた。

翌日、またビデオテープがリビングに置かれていた。

なので捨てた。

翌日、またビデオテープが(ry

 

「ちょっと、いい加減どうにかしなさいよ! これ見たらいいじゃない!」

 

ビデオテープをスルーし続けていたら、アリシアがついに我慢できなくなった。

そりゃ、毎回ビデオテープ発見してるのアリシアだもんな、怖くもなるか。

俺もビデオテープに何が映っているかは気になって来ているけど。

 

「うーん、これが万が一レヴィ達からのビデオテープだったら、と思うとなぁ……」

「「あっ」」

 

正直それが一番ありそうで怖いんだよね。

1回チョコで同じことあったし。

 

「というわけで、これ破壊するか」

「それはちょっとかわいそうだと思うよ。ただ単に近況報告を送ってくれてるだけかもしれないし」

「未来の異世界から?」

「思い出したくないけど、未来の異世界に行ったレヴィ達から贈り物が届くの、これが初めてじゃないんだよな」

 

運動会の時にね……

 

「そ、そういえばそうだったわね」

 

アリシアもあの時を思い出して軽く鳥肌が立ったようだ。

 

「でもだからって壊すのは、せめて魔力ダメージで撃ってみて何も反応なければ見てみたらどうかな?」

「フェイト、それで何がどう変わるんだ?」

「あーもう、とにかくただのビデオじゃないんだから。再生したら何が起きるか分かったもんじゃないわよ。壊すなら早く壊しちゃいなさいよ」

「あいよ。シェルブリット」

<おう。久々の出番だな>

 

と、シェルブリットで破壊しようとしたら、俺のスマホが鳴った。

取ってみると、なんとメリーさんからだった。

 

『もしもし、私メリーさん。あなたの所に届いたビデオテープ、どうだった?』

「これ、お前の仕業かよ!?」

『そうよ。この前はとんでもない目に合わされたからちょっとした仕返しにって、友達に嫌がらせを頼んだよ。で、どうだったかしら?』

「どうだったって言われても、まだ見てないぞ。明らかに怪しい物だし、そもそもうちにビデオデッキなんてないし」

『えっ、ビデオデッキが買えないほど貧乏だったの? それは悪い事したわね』

 

ビデオデッキが高級品って、いつの時代の話だ。

 

「違う違う。持ってないって意味だ。そもそも今時ビデオデッキなんて持ってる人いないぞ」

『えっ、嘘、私の方が時代遅れだと言うの……あ、一度もあのテープ見てないのよね?』

「見てないぞ。店にだって売ってないだろうし。てかこれ何が映ってるんだ?」

『そのビデオテープには私の友達の貞子ちゃんがいるの。で、再生したらあなたを驚かす予定だったの』

 

へぇ、貞子ねぇ……貞子ぉ!?

 

「お前それ見たら1週間後に死ぬやつじゃないか!? 俺を殺す気か!?」

『大丈夫よ。言ったでしょ、嫌がらせって。一週間下痢が止まらなくなる程度の力しかないから』

「地味に嫌な嫌がらせだな!? で、これどうするんだよ。壊していいか?」

『ダメに決まってるでしょ! ああもう! そのビデオテープ、明日でいいから花子さんに渡して! 次はこうはいかないからね、覚えておきなさい!』

 

そう言って電話はキレながら切られた。

 

「というわけでこのビデオテープは明日学校に、ってどうしたんだ?」

 

見ると、アリシアが白目を向いて気絶していて、フェイトがビデオテープを持って困った顔をしていた。

 

「このビデオテープ、耳を澄ませると女の子の泣き声聞こえるって言ったら姉さんが……」

 

ビデオテープに耳を寄せると確かに女の子が泣いていた。

 

『シクシクシク。ごめんなさい。こわさないでください。おうちにかえしてください』

「……貞子が泣くなよ」

 

翌日、花子さんにビデオテープを渡した。

その後、メリーさんは何度か俺に嫌がらせをしようとして悉く失敗してたらしい。

俺は嫌がらせのターゲットなのに、らしい、という言い方になるのは理由がある。

嫌がらせが大抵アリシアに被害がいってしまい、俺には直接届かない事ばかりだった。

で、フェイト経由でその事を知った花子さんに、メリーさんはしこたま怒られて嫌がらせは終わった。

 

 

「そういえば、そんな事もあったね。元気かなメリーさんと貞子さん」

「あの嬢ちゃん達なら今もどこかで誰かを驚かせてるぜ。全く、少し前まではああじゃなかったんだがな」

 

そう言うとケンさんは真顔で俺に向き直った。

どうでもいいけど、さっきから犬の手で器用におでん食べてるね。

 

「メリーちゃんや貞ちゃんは勿論、花ちゃんやテケちゃんも、昔はもっとおどろおどろしいお化けだったんでさ」

 

ガンさんが懐かしむような表情浮かべて、頷きながら語ってくれた。

のっぺらぼうだけど何となく表情が分かるのがすごい。

 

「見た目だって今みたいな明るい美少女ではなくな、お化けらしいグロテスクなものだったんだ。それがだ」

 

そこで言葉を切って、さっきと違い俺をニヤリと見つめるケンさん。

 

「お前さんと関わってからは普通の、見た目通りの年頃の女の子のようになっちまった。他の連中もだけどよ。本来なら、それはお化けとしてどうなんだって話なんだがが。本人たちが幸せならそれに越した事はねぇよな」

 

そう言いながらケンさんは空いた俺のグラスにジュースを注いでくれた。

ん~これはつまり、花子さん達に悪影響(?)を与えた俺を見定めにきたって所かな?

 

「なんだか将来の義理息子を見定めに来たみたいですねぇ、旦那」

「まーなー健人なら花子達を嫁に出しても問題ねぇだろうな、人間とお化けだがそこに愛があればいいんだよ。ガッハッハッハッハッ!」

 

あっ、これなんかヤバイ空気になってくるやつだ。

なんとか修正しなければ。

 

「え、えっと、ケンさんはみんなの父親代わりみたいなものなんですね」

「そうさなぁ、なんだかんだあいつらの面倒見てたらいつの間にか親父さんとか言われてそうなってたなぁ……けどなぁ、最近あいつら反抗期なんだよ。こないだなんてなぁ……」

 

と、ここで冒頭の話に戻る。

おでん美味しいからこのまま話に付き合ってもいいんだけど、フェイトの手料理が沢山食べれなくなるしそろそろ帰らないと。

 

「すみません。そろそろ帰りたいんですけど」

「おーそうだな。あまり遅くまで付き合わせちゃって悪かったな。ま、旦那が言いたかった事は、健人達がこの学校卒業してもたまにでいいから遊びに来て、花ちゃん達と仲良くしてくれって事さ」

「うん、勿論。俺もなのは達も絶対に花子さん達の事忘れないよ。ガンさんやケンさんの事もね。今度はなのは達もこの屋台に誘ってくるよ」

 

言われなくても花子達との縁を切るなんて絶対にしない。

 

「ははっ、そいつは嬉しいねぇ。次の機会がいつになるのかは、わかりやせんけどねぇ……」

 

そう言い残し、ガンさんの屋台はまるで最初からなかったかのように消えた……

 

ってのがよくある話のオチだと思うんだけどなぁ。

 

「ほーら、ケンさん! お酒飲みすぎ! 全く健人の前で恥ずかしい姿見せないの!」

 

屋台が消えるなんて事はなく、すっかり上機嫌になったケンさんがお酒をガバガバ飲み、酔いつぶれてしまった。

で、俺とガンさんも始末に負えなくなり花子さんを呼んで回収してもらう事にしたのだが。

 

「はい、終わり。今度は少し髪の色を変えてみたけど、どうかしら?」

「すごいです、流石はプレシアさんです! ありがとう、テケちゃん」

「わぁ~! すっごく綺麗になったよ、透子ちゃん。いいなぁ」

「良かったらあなたもやってあげましょうか?」

「えっ、良いんですか!? ぜひお願いします!」

 

俺を心配して迎えに来たプレシアに新しい化粧を施されて見た目が〇桐桜からカ〇マになった透明人間さん、それを見て自分も化粧をさせてもらう事にしたテケテケさん。

ちなみに透子とは、透明人間さんのあだ名のようなものらしい。

 

「こ、このおでんの出汁は一体何を使ってるんですか? 旦那がおでん大好きなのでぜひ教えてください!」

「奥さん、そいつはぁ企業秘密でさぁ。代わりにお土産としておでんを持って行ってあげてください。勿論あっしのサービスです」

「うわぁ、ありがとう。よっ、ガンさん太っ腹!」

 

プレシアと同じく俺を迎えにきたクイントさんは、ガンさんのおでんに夢中になっている。

このおでんに刺激されたクイントさんの得意料理のレパートリーにおでんが追加されたのはまた別の話。

 

「なんで、なんで私までお化け屋台に来ることになってるのよ……」

「今日は、フェイトもアルフも仕事でアースラに泊まりになったんだから、一人で留守番するよりはここでみんなでおでん食べた方がいいだろ」

「そりゃあ、ここのおでんは美味しいけど。てかなんでのっぺらぼうが作るおでんがこんなにおいしいのよ。口がないのにどうやって味見してるのよ」

 

お化けに囲まれて複雑な表情を浮かべておでんを食べるアリシア。

 

こうして、いつの間にか校舎裏でのっぺらぼうの屋台で宴会が開かれる事になった。

後日、おでんの匂いが充満する謎の校舎裏、という新しい学校の七不思議が追加されたのであった。

 

 

続く




もっと学校の怪談関係のギャグを書きたかったのですけど、どうもうまく話がまとまらないので今回で一旦終わりです。
次回からは少し年月が飛びます。
いい加減早くStsに行きたいけど、学校編をもうちょっとやりたいんじゃー


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中学生編
第65話「二つ名で呼ばれるとカッコいい!」


またまたお待たせしました!
今回より中学生編です!


俺がリリカルなのはの世界にやってきて早数年。

明日からいよいよ俺も中学生と、ウキウキ気分に水を差すような事件発生。

 

「お、大人しくしろ!」

「助けて~!!」

 

犯人の人質になっている幼女を救出するという、今の状況をどうにかしなければならない。

とある事件で幼女が巻き込まれて人質になってしまった。

その事件の応援に現場近くにいた俺とクイントさんが応援に駆け付けた。

俺とクイントさんが犯人の交渉役となり、表で待機しているティーダを含めた狙撃班が犯人を狙撃するという手筈だ。

なんで俺まで交渉役になったかと言うと、犯人ではなく人質の子を安心させるには子供の俺もいた方がいいという判断だった。

のだけど……

 

『ねぇ、クイントさん。多分同じこと思ってるよね?』

「きゃー! 助けてー!」

『えぇ、そうね。同じこと思ってるわ』

「ころされるー! 助けて~!♪」

『『なんでこの子すごく楽しそうなの!?』』

 

人質になっている子、台詞だけなら必死に助けを求めているように聞こえるけど、どう見ても興奮して楽しんでいるようにしか見えない。

だって、叫び声がジェットコースターを楽しんでいるような声色だし。

(*>▽<*)←こんな顔してるし。

 

「お、おいお前! 状況分かってるのかよ!?」

 

はしゃぐ人質に、逆に戸惑う犯人。

そりゃ、流石にこんな反応されたらそうなるわな。

と言うか、犯人さん涙目で怯えててどっちが人質か分からない。

 

「うん。あなた極悪人さん。で、私は人質でしょ?」

「極悪人って……俺はただ職務質問受けてたら、お前が勝手に俺を極悪人扱いして管理局員に怪しまれて、あげくにお前が勝手に人質になって付いてきたんだろうが!」

「やっぱり極悪人さん! 私が人質……きゃ~♪」

「だからなんでそこで喜ぶんだよ!!」

 

なんか、俺達ほったらかしでコント繰り広げてるんだけどこの2人。

てかこの極悪人さん(笑)、ぶっちゃけ何も悪い事してない気がする。

 

「ともかく話は逮捕してから聞くわね」

「あぁ、もう! やれるものならやってみろ! 「この子がどうなってもいいのか!」……ってそれお前が言う台詞じゃないだろ!」

 

人質(?)の子が極悪人さん(笑)にしがみついてる。

で、極悪人さん(笑)は必死に引き剥がそうとしている。

なんだろうね、この状況。

 

「あれ? そちらのお兄さんはひょっとして草薙健人さん!?」

「何!? 草薙健人ってあの有名な……」

 

と、極悪人さん(笑)と人質の子はやっと俺の存在に気付いたようだ。

俺、影薄いのかな……

それにしても俺って結構有名なんだなぁ。

ここ数年でゼスト隊と一緒に仕事してそこそこ活躍してるし、結構犯人捕まえてるからな。

最近じゃ二つ名が付いちゃってるくらいだし。

 

「「灼熱の若獅子/ハーレムプリンス!」」

 

そうそう、灼熱の若獅子にハーレムプリンス……ってなんじゃそりゃ!

 

「ちょっと待ったー!! 灼熱の若獅子は兎も角、ハーレムプリンスって何!?」

「……プッ」

 

クイントさーん!? そこで吹き出さないで欲しいんだけど!?

 

「あれ? 違うんですか? お兄ちゃんから聞いたのですけど」

「……君のお兄ちゃんを後で紹介してくれるかな? ちょーっとOHANASHIしたいんだ」

「コラコラ、今はそれどころじゃないでしょ。で、そっちの極悪人さん(笑)はどうするのかしら? 一応、私も名乗るけどクイント・ナカジマよ」

 

なんでここでクイントさんまでフルネームで名乗るんだろ?

あ、もしかして自分も二つ名で呼ばれたいのかな。

でも、クイントさんに二つ名ってなかったような……

 

「あ、はい」

「むっ。あ、はい。じゃなくて。ほら私にも何かあるでしょ、何か!」

「いや、あの……俺からは言えない」

 

極悪人さん(笑)が顔をそらした。

ひょっとして、クイントさんにも二つ名あるのかな?

 

「何よその反応は。ねぇ、お嬢ちゃん。私の事は、知ってる?」

「はい。お兄ちゃんからは、ショタキラーって聞いています!」

 

――ピシッ

 

瞬間、空気が凍った。

人質の幼女だけが自分が言った言葉の意味を理解していないようで、?マークを頭に浮かべている。

それにしてもショタキラーかぁ。

そういえば、クイントさん目当てでナカジマ家に遊びに来る男子がギンガ達の友達に多いんだよな。

 

「……ふっ、ふふふっ……ウフフフフッ」

「あ、あの? クイントさん? 子供の言った事だし、ね?」

「ウフフフフフフッ……ハハッ、アハハハハハハハハッ!」

 

クイントさんが壊れたー!?

 

『健人君、そっちの状況はどうなっているんだい? 人質は無事かい!?』

『ティーダさん。状況は、ですね。クイントさんが壊れました』

 

クイントさんの笑い声はティーダにも聞こえているようだ。

 

『なんで!? 犯人にやられたの!?』

『いえ、やられてません。強いているなら人質の女の子に……』

『待って待って、そっちどういう状況なの!?』

 

ティーダは混乱している。

 

「あの~すみません。俺、どうしたらいいですか?」

 

すっかり毒気を抜かれた極悪人さん(笑)が困ったような顔をしている。

人質の子もやっと極悪人さん(笑)から離れたようだ。

 

「とりあえず、ぶっ飛ばして逮捕します」

「ええーーー!? 俺何もやってないじゃないかー!?」

 

とまぁ、ぶっ飛ばすのは冗談として、一先ず逮捕してティーダさんに引き渡した。

その際、今回の事件の詳細を録画した映像と共に報告して、出来る限り早く釈放されるようにお願いした。

実際にはちょっと違うけど、人質取って立てこもった事には違いないので、冤罪なのかどうか微妙なところだけどね。

で、その可哀想な極悪人さん(笑)を散々振り回した人質の女の子は、メガーヌさんに説教とまではいかないけど注意されて素直に極悪人さん(笑)に謝っていた。

そして、クイントさんはゲンヤさんに慰められていた。

 

 

その後、なんとか復活したクイントさんと人質の子と話をしていた。

この子はラグナ・グランセニックという名前だそうで、俺の前世(?)の記憶では聞き覚えのない名前だった。

とそこへラグナの保護者という管理局員がやってきた。

何でも彼はスナイパーで、今回でも近くのビルから極悪人さん(笑)を狙撃しようと構えていたそうだ。

 

「俺、いや、自分は、ヴァイス・グランセニックと言います! 今回は妹を助けて頂いてありがとうございます!」

 

ほほう、ラグナのお兄さんと言う事は……

 

「へぇ、あなたがラグナちゃんのお兄さん、なのね」

「ふーん、ラグナのお兄さん、かぁ……」

「あの、お2人ともなんでそんな顔をしてこっちににじり寄って来るんですかい? ちょ、ちょっとなんで目にハイライトがないんですかー!?」

 

コイツが全ての元凶ね♪

 

「ラグナちゃん。ちょっとお兄さん借りるわね。さて、ヴァイスくん♪」

「ちょっと俺達と♪」

 

「「OHANASHIしましょうか♪」」

「うぎゃーーー!?」

 

 

 

OHANASHIを終えた俺は明日から中学が始まるのでテスタロッサ家へ戻ってきた。

既に今回の事件(?)はアリシアも知っていたようで爆笑された。

ホント性格変わらないなアリシアは。

 

「あははははっ! ハーレムプリンスって、健人にはお似合いね」

「そんなに笑う事ないだろアリシア、ってフェイトも笑ってる?」

 

フェイトは俺に気付かれないように顔を背けて笑っていた。

 

「ふふっ、ごめんね健人。でも私達にとって健人は王子様だからピッタリだと思うよ?」

 

フェイトはこういう事をからかってるわけでも冗談でもなく、本気でそう思って言ってくるんだよな。

天然と言うかなんと言うか……

 

「フェイト、あざとい」

「なんで!?」

「そういえば、フェイトにもなのはちゃん達にも二つ名があったわね」

 

俺達の漫才をニコニコしながら見ていたプレシアが、ふと思い出したかのように言ってきた。

 

「えっ? 私にも?」

「えぇ、そうよ。あなたは、雷刃の剣士ね。なのはちゃんは、星光の射手。はやてちゃんは、夜天の継承者よ」

 

その二つ名なら俺も聞いた事がある。

が、フェイトにはそれ以外にも二つ名がある事も俺は今日知った。

OHANASHI中にヴァイスから教えてもらったからだ。

 

ミニラムちゃん

 

それがフェイトに付いている影の二つ名だ。

それを聞いて俺もクイントさんも納得してしまった。

最近のフェイト、身体の発育良いしそれに加えてソニックフォームのあの微妙な恰好に電撃……

クイントさんがプレシアに今度それとなく忠告するとは言っていた。

 

「いいなーフェイトにもあって。私にはないの?」

「アリシアは管理局員、と言うか魔導師でもないからないだろ」

 

アリシアは、魔力のまの字もないしなぁ。

 

「ところで、3人とも明日から中学だけど準備は出来てるのかしら?」

「俺はもう終わらせたよ」

「私とフェイトも終わらせたわ」

「そう。なら健人も事件上がりで疲れているでしょ、早く寝なさい」

 

そう言ってプレシアは、半ば強引に俺達を寝室へ押しやった。

なぜかプレシアの口元が妖しく微笑んでいたように見えたのは、俺の気のせいだろうか??

 

 

 

そして、翌日

 

今日から俺は私立聖祥大学付属中学校1年生だ。

小学校からのエスカレーター式で、校舎も隣接しているので特に真新しさはない。

と、思っていたのだが……

 

「なんでお前達がここにいるんだ??」

 

なのは達と合流して登校した俺達の目の前には。

 

「あ、兄さん。皆さんもおはようございます」

「けん兄おはよう!」

「にいちゃん、フェイトねえちゃんたちもおはようッス!」

「お、おはよう、お兄ちゃん」

「おはよう、にいさん。今日もいい天気、だね」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()ナカジマ姉妹が勢ぞろいしていた。

 

「ヴィータ、なんでここにおるんや!? しかも、その恰好は!?」

「み、みないでくれ、はやて……」

 

なぜかヴィータも私立聖祥大学付属小学校の制服を着てそこにいた。

こりゃ、真新しいどころじゃないな……

 

 

続く

 




Sts編まで行こうかと思ってたけど、ちまちまと学生編でやりたいネタが浮かんできたので中学生編もやります。
そこまで長くはやらない、つもりですけどネタ次第ですねー


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第66話「騒がしさマシマシ」

お待たせしました!
やっとかけたー♪


春、俺達は晴れて進学し、今日から中学校生活が始まる……のだが、早速変な流れになってきた。

なぜかは知らないが、私立聖祥大学付属小学校の制服を着たナカジマ姉妹+ヴィータと遭遇した。

誰に何を聞けばいいのか分からず少し混乱したが、多分この中で話が通じそうなのはヴィータだろうな。

 

「えーっと、ヴィータ?」

「あん? なんだよ?」

 

そのヴィータは、なぜか物凄く不機嫌そうにしている。

まぁ、無理もないか。何百年も生きてきたのに小学生の格好させられてるんだもんな。

でも、やっぱりその制服姿は……

 

「その制服、似合っててすごく可愛いぞ」

「なっ!? ばっ、バカ野郎! そういう事言う空気じゃなかっただろ!」

 

とりあえず感想を言ってみたのだが、顔を真っ赤にして照れてしまった。

こういう所は見た目相応な幼女なんだよなぁ。

 

「あらら~? 照れとるん、ヴィータ? 良かったやないか、健人君に褒められて」

「うんうん、ヴィータちゃんよく似合ってるよ」

「~~~っ、うっせぇ! とにかく、学校終わったら家に行くから、話はその時だ! 行くぞ、ナカジマ姉妹!」

「「「「は~い!」」」」

 

そう言ってナカジマ姉妹を引き連れてヴィータは小学校の校舎へと入って行った。

まるで引率者だな、背は一団の中で一番低いけど。

 

「……俺らも、行くか」

「そうやね。聞きたい事沢山あるけど、後で話してくれるみたいやし」

 

その後、クラス発表で俺とはやて、なのは、フェイト、すずかが一緒のクラスになった。

アリシアとアリサがそれぞれ別のクラスになった事でブーイングの嵐だったけど、みんなスルーした。

ちなみに楯宮も俺達と同じクラスになった。

何気に楯宮も俺が転校してからずっと同じクラスだな、退屈しないからいいけど。

こうして俺達の中学校生活一日目は過ぎていった。

 

 

そして、放課後。

ギンガに先導されてナカジマ姉妹がこっちで住む家に案内してもらう事になった。

なのはとはやては、ヴィータの案内で後で来ることになっている。

案内なんていらねぇけどな、とヴィータが呟いていたが、まさかね……

 

「なぁ、ギンガ。こっちではどこに住むか決まってるのか?」

「うん。もうすぐ着くよ、ほら、あの家だよ」

「あの家って……」

「私達のうち!?」

 

ギンガが指差した家を見てアリシアがビックリするけどそりゃ当然、そこは俺も住んでるテスタロッサ家だった。

 

「姉さんも健人も気付いてなかったんだ。私はなんとなく気付いたよ。だって家への道同じだもん」

 

俺も何となく予感はしたんだよね。

ギンガがこっちこっちと言う道、明らかにテスタロッサ家へだったし。

でも、俺とアリシアが驚いたのってそこだけじゃないんだよな。

 

「ならフェイト。あの家見て、もう1つ気付く事ないか?」

「ん? どこからどうみても私達の家だけど、どこか変かな?」

「変かな? ってなんで2階建てから4階建てに変わってる事気付かないのよ!」

 

そう。テスタロッサ家は2階建てだ。朝出る時も確かに2階建てだった。

あれから僅か6時間もせずに、テスタロッサ家は4階建てへと進化していた。

しかも縦にじゃなく横にも巨大化してると思う。

えっ? プレシアが親馬鹿の紋章でも見つけて、超進化したのですか?

 

「おかえりなさい。ふふっ、みんな驚いてるわね」

 

そんな俺達をプレシアは、企みが成功した子供のような笑顔で出迎えた。

プレシアが知らないって事はないよね、うん。

で、当然の如くクイントさんもそこにいた。

 

「みんな、おかえり~。こっちの学校はどうだったかな?」

「うん。友達沢山出来たよ!」

「スバルは、見かけた人片っ端から声駆け回って友達作ってたよ。これであなたと縁が出来た! って」

「ヴィータちゃんがそれを見てドン引きしてたよね」

 

ギンガ達は、普通にクイントさんと学校の事を話している。

フェイトもクイントさんがいる事を不思議に思わず部屋で着替えに行った。

が、生憎俺とアリシアはそうはいかない。

 

「なんでここにいるのとか、家が短時間で巨大化した事はとりあえず置いといて。ギンガ達の事説明してくれるよね? クイントさん?」

「そんな怖い顔して睨まないの健人。なのはちゃんやはやてちゃん達来たら説明するから、とりあえず昼ご飯にしましょ」

 

腑に落ちないまま、俺達は私服に着替えてクイントさんの作った昼食を食べた。

ちなみにテスタロッサ家は、4階建てになっただけじゃなくキッチンや居間が広くなっていた。

キッチンなんてどっかのレストランの厨房かってくらいの設備になっていた。

まぁ、ギンガ達がここに住む事になるからだろうけどね。

そして、なのはやはやて達がやってきてギンガ達がこっちの学校に通う理由の説明になったのだけど。

 

「留学制度、ねぇ」

 

ギンガやスバル達に一般常識や人間性を学ばせる為に、留学をさせるというものだった。

戦闘機人であるギンガ達の事を狙う輩がいないとは限らないのでミッドチルダの学校よりも、魔法に縁がなく俺やなのは達がいる管理外世界の学校の方が都合がいいとの事。

ものすごーくとってつけたと言うか、苦し紛れの言い訳に聞こえる。

だって、ギンガとスバルもだけど、ノーヴェ達だって一般常識とか教養は問題ない。

ナカジマ家にきてから多少力加減間違えたり、たまに暴走はしたけど今は改善されている。

まぁ、夜中に布団に潜り込んできたり、俺が入っている風呂に突撃したりと男女的な教養は皆無に等しいけど。

兎も角、どう考えても留学制度ってのは表向きな理由にしか思えない。

 

「で、本音は?」

「ギンガ達が健人ともっと一緒にいたいって前から言ってたのを、どうにか出来ないかってレジアス中将やリンディ提督と考えてて、その結果がこれよ」

「やっぱりかい! しかもレジアスさんやリンディさんも絡んでたか」

 

地上本部と本局のお偉いさんでもなきゃ、管理外世界へ大量留学なんて出来るわけないもんな。

俺やフェイト、アリシアの時もだけど今回も結構な力技使った気がする。

 

「レジアスさんって孫を溺愛するおじいちゃんって感じよね。リンディさんも同じくおばあ 「アリシア、それ以上はいけない」 あっ、はい」

 

危ない危ない。

 

「それで、なんでうちのヴィータまで小学校に通う事になったんです?」

「護衛兼何かあった時の為に知り合いがいた方がいいでしょ? 健人やなのはちゃんは中学生だから校舎違うし。小学生になっても違和感ないのヴィータちゃんだけだったのよ」

 

シグナムとシャマルは若く見ても大学生にしか見えない。

本当は俺が小学生のうちにと準備していたが、間に合わなかったようだ。

 

「本当ははやてちゃんに事前に相談しようと思ったのだけど、そこから健人達にまでバレるかもしれないから、内緒にしたのよ。ごめんなさいね」

「昨日から泊まりかけで任務と言ってたのは、ギンガちゃん達の引率だったわけやね」

「で、今になって留学したのはいいけど、俺達が中学卒業したらどうするの?」

 

まだ少し先の話だが俺もフェイト達も中学校卒業したら、高校に行かず管理局の仕事に専念してミッドチルダに移り住む予定だ。

アリシアもプレシアの仕事の助手として働く為にそっち方面の勉強も始めている。

俺は管理局のどこに所属するかの結論はまだ出ていないけど、ゼスト隊に所属しながら色々な部隊に出向したいなーとは考えている。

 

「そこはギンガ達にも話しているわ。ここに残って中学卒業までいるか、それともミッドチルダの学校に移るか。まだ分からないわね」

「行き当たりばったり過ぎない?」

 

ここで今友達作っても、3年でミッドチルダに戻るとなったら哀しむと思うんだけど、スバルやノーヴェが特に。

 

「それも含めて経験よ」

 

まぁ、クイントさんの事だから何か考えているのだろうけどね。

 

と、ここで階段から誰か降りてくる音が聞こえてきた。

この家に住むメンバーは全員いるし、クイントさん以外に客でもいるのかな。

 

「ただいま。やぁ、みんな揃っているな」

「ゲンヤさん!?」

 

降りてきたのは、ゲンヤさんだった。

 

「今日はどうしたんですか? ゲンヤさんもギンガちゃん達の様子を見に?」

 

クイントさんが来ているとはいえ、やっぱり父親として心配になってゲンヤさんも来るのは当然か。

 

「ん、なんだクイント。まだ説明してなかったのか?」

「これから話そうと思ったのよ。それよりあなた、今日は随分早かったわね? 夜までかかるんじゃなかったの?」

「あぁ、上司にとっとと帰ってやれって言われてな。健人の驚く顔を早く観にいってやれてな」

 

なんかまたもやいやーな予感。

 

「あ、私とゲンヤさんもこの家に住む事になったから、今日からよろしくねぇ♪」

「「はぁ~!?」」

 

思わずアリシアと2人で凄い顔になってしまった。

フェイトは嬉しそうに拍手までしていて、なのはやはやて達は苦笑いを浮かべていた。

 

「だって、プレシア1人で面倒見るのは大変でしょ。ここの転送ポートも地上本部や色々な所と繋げたし、ミッドの家から通うよりも速いのよ」

「それに陸や海だけじゃなく、管理局全体の制度も変わったしな。俺も昔に比べて残業が減ったな」

 

俺が管理局入りしてから福利厚生を中心に労働環境が良くなっていってるらしいけど、前がどんなのだったか分からない。

ひょっとして割とブラックだったのかな、時空管理局って。

 

「というわけで。ナカジマ家一同、しばらくの間…」

「「「お世話になりまーっす!」」」

 

色々とツッコミ所は多いが、少なくとも俺が中学卒業するまではナカジマ家もここに一緒に住む事になる。

賑やかになるのは良い事だけど、気苦労も多くなりそうだ。

 

『そういう割には健人さん、嬉しそうやね♪』

『ギンガちゃん達だけじゃなくてクイントさんも一緒ですもんね♪』

『ふふっ、両親と妹が一緒の方が寂しくないだろう』

『……否定はしない』

 

わざわざ念話で弄ってくるはやてとリインフォース姉妹。

 

「あれ? 兄さん、シェルブリットはどうしたの? いつも着けてるのと違うよね?」

 

ふとギンガが俺の左手首に付けている腕時計がいつもと違う事に気付いた。

 

「あぁ、シェルブリットは今スカさんの所に預けているんだよ」

 

シェルブリットは、数日前にドゥーエ経由でスカさんに預けてある。

なんでも俺の魔力値がまた上がって来ていてそれに対応するためにオーバーホールかねて改造するとも言っていた。

で、今は変わりにスカさんが作ってくれた代理デバイスを使っている。

代理と言っても、そこら辺のデバイスよりも高性能でよほどの事がなければ壊れないという優れものだ。

 

「あーそういえばバージョンアップするんだっけ。スカさんじゃないと弄れないのは、少し不便よね」

「わぁ、シェルブリットパワーアップするんだ! どんな名前になるのか楽しみ!」

「ちゃんとまともな改造されているといいけど、ってギンガ、気になるのは新しい名前の方かよ」

 

ちなみに、もう皆ドクターブライトじゃなくてスカさん呼びしちゃってるけど、スルー。

この前はレジアス中将が素のスカさんとそれぞれの娘の事で愚痴りあっている姿を居酒屋で目撃されているし。

それでいいのか時空管理局。

 

 

 

続く

 




というわけでナカジマ家、地球に一時移住となりました。
ただでさえ多いのに、出番あるキャラ一気に増やしてどうするのか…わかりません。
なるべく早くSts編に行って完結させたいんですけどねぇ、いつになるやら


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第67話「あの手この手どの手?」

お待たせしました!
ネタが浮かびすぎてどう並ばせようか悩みました…


数日前

 

ある日俺は、シェルブリットの修理を依頼する為にスカさんの秘密アジト(俺が訪れた最初のアジトから28か所目)を訪れた。

スカさんは留守だったが、ウーノとクアットロがいたので問題はない。

 

「最近、シェルブリットの調子がおかしいだけど」

「あら、どんな風におかしいの?」

「機能的には問題ないんだけど、実際に聞いてもらった方が早いね、シェルブリット?」

 

<はっ。お呼びでしょうか、お館様!>

 

「「……えっ?」」

 

そりゃ今までカズマだったシェルブリットの口調が、真田幸村に変わってたら2人の目が点になるのも無理はないよな。

 

「あの、健人君? これは一体どういう事なの?」

「問題はこれだけじゃないんだ、シェルブリット?」

 

シェルブリットを軽く叩いてから再度呼び掛けた。

 

<やめてよね。本気で喧嘩したら、クロノが僕に敵うはずないだろ?>

 

今度はキラ・ヤマトになってしまった。

ますますウーノとクアットロの目が丸くなった。

 

「数日前からこんな感じでコロコロキャラが変わっててさ。機能的には何も不具合が起きてないんだけど、管理局で調べても原因不明だし」

「なるほど。状況は分かったわ。調べてみるから少し借りるわね」

「じゃあせっかくだから健人君の身体も調べてみましょうか。ドクターがいないうちにね」

 

スカさんなら隙あらば俺に超人血清打ったり、悪魔の実食べさせようとしたり、仮面ライダーにしようとしたりと、人体実験したがるんだよな。

内容については深くつっこまない、つっこみたくない。

で、俺とシェルブリットが精密検査を受けた結果、意外な原因が分かった。

 

「俺の魔力が上がったいせいでシェルブリットにも影響が出た?」

「そうね。シェルブリットは基礎フレームから全てをあの当時の健人君に合わせて作成したでしょ。その後、健人君の成長に合わせて細かい調整もしてきたけど、それだけじゃ限界が来たのよ」

 

普通のデバイスではこんな事は起きないけど、シェルブリットは魔力が極めて高い俺用に作られた特注品だからこうなるのか。

 

「それじゃ、今回は結構時間かかりそうだから、この予備のデバイスを使ってね。一応性能はシェルブリットと同じくらいだから問題ないはずよ」

 

と、クアットロはシェルブリットと同じ形をしたデバイスを渡してくれたけど、用意いいな。

 

「実はね、ドクターがいつかこうなるんじゃないかって予備機を作ってたのよ。で、こんな事もあろうかと! って自慢げに健人君に渡したかったみたい」

 

スカさんならあり得る話。

けど、肝心の俺に渡す場面で外出中だとは、そこもスカさんらしいな。

 

「というわけで、シェルブリットの改良が済んだら連絡するわね。あ、そうだ。ついでだし何か改良してほしい所あるかしら?」

「それならちょうどよかった。実はこういう装備付けれないかと思って……」

 

少し前から考えていた装備について2人に説明した。

それを聞いたウーノもクアットロもノリノリで快諾してくれた。

 

「最後にお願いだけど、くれぐれもスカさんの暴走に気をつけてね」

「そうね。シェルブリットの改造なんてドクターが暴走しないはずないものね」

 

本当ならスカさんに内緒でお願いしたい事だけど、ちょっとした調整ならともかく本格的な改造はスカさんがいないと出来ないそうだ。

つくづく厄介な天才だ。

 

 

と、ここまでが数日前の出来事。

その間、特に予備機で問題なかったけど、応答がレイジングハート達みたく機械的になっててちょっと寂しかった。

 

「「「「こんにちわー」」」」

「いらっしゃい健人君。随分と賑やかね」

 

出迎えてくれたのはウーノだ、様子がおかしいけど。

俺だけ来ると思ってたのになのは、ギンガ、アリシア、ノーヴェ、それにクイントさんと言う大人数で来ればそうなるのか。

最初スカさんのアジトに行くと言ったらほぼ全員が行きたいと言い出した。

流石に全員で行くのは多すぎるというクイントさんの提案で、俺以外でじゃんけんをしてメンバーを選んだ。

そして、このメンバーで訪問する事になったのだが、もう何もつっこまない。

みんなして親戚の家かレジャー施設行く感覚で、ひと月に数回スカさんのアジトに行ってるし。

しかも、毎回アジトは場所が代わり設備や内装もコロコロ変えてるから、アジトに行くたびにスバル達が大喜びしていた。

 

「早速だけど新しいシェルブリットの説明をするわね。その間、他の皆さんはどうしようかしら。今日はトーレ達全員出かけているのよね」

「私、兄さんの新しいデバイスみたい!」

「わたしも、みたいです」

 

ギンガとノーヴェ、それにスバルはクイントさんが使っているのと同じ型をした訓練デバイスを持っている。

だから、似たような形をしたシェルブリットに興味津々で、じゃんけんに勝った時もすごく嬉しそうだったな。

その代わり、負けたスバルが泣きそうだったから帰ったら滅茶苦茶遊んであげないと……

 

「なのはとアリシアはどうする? 外で待ってる?」

「なんで私達だけ外に出てなきゃいけないのよ? 一緒に行くわ。ね? なのは?」

「うん。私も新しいシェルブリットにちょっと興味あるから」

 

なのはは、なぜかシェルブリットと話をするの楽しそうなんだよな。

やっぱ中の人の影響かな。

で、そのおかげでレイジングハートがたまに拗ねて俺が愚痴を聞いている。

なんでやねん。

 

「じゃ早速案内してもらいましょうか、新しいシェルブリットの性能早く試しましょ」

 

そして、何気にこの中で一番付いてくる気満々だったのは、実はクイントさんだったりする。

クイントさんって意外と中二病な所あるから新しいデバイスやアジトが気になってしまうのは、まぁ、仕方ない。

 

「健人、何か失礼な事考えてない?」

「いーや、何も考えてないよ?」

 

俺達はウーノの案内でアジトの奥へと進んだ。

アジトと言っても内装的にはどっかのホテルみたいなんだよな。

 

「ところでウーノさん、一つ気になる事があるんだけど?」

「どうしたのかしら健人君?」

「なんで、さっきから俺と視線を合わせようとしないの?」

 

そう。アジトに来てからウーノは、ずっと俺と視線を合わせようとしない。

 

「そ、そそそんな事あるわけないでしょ。変な事言うわね健人君は」

「ウーノさん、顔を健人に向けても視線は明後日の方向いてるわよ」

「どうせドクターがまた何かやらかっしちゃったんじゃないの?」

 

クイントさんとアリシアにジト目でツッコミを入れられ、ため息をつきながら渋々ウーノは俺の方を向いた。

 

「ごめんなさいね、健人君。気付いた時には手遅れだったの」

 

そう言ってウーノはひと際大きな扉を開けた。

 

「「「うわぁ~」」」

 

扉の向こうの光景を目にした俺達はそろって声をあげた。

しかし、その言葉に込められた感情は、驚愕や呆れなどまさに三者三様だった。

それと言うのも開けられた扉の向こうには、沢山の腕がずらりと並べられていたからだ。

 

「ナニコレ?」

「……ドクターが作った腕型デバイスよ」

 

腕の形をしたアームドデバイスなのは見れば分かる。

が、置いてある数が異様だった。

しかも、どれもこれもどっかのロボットアニメとかで見た事ありそうな腕ばっかりだった。

 

「100個は確実にあるわね」

「本当はもっとあったのよ。戦闘用じゃないのも含めてね」

 

頭を抱えながらウーノが語った経緯はこうだ。

数日前にスカさんはウーノからシェルブリットの現状を知り、最初は普通に改造するだけだった。

しかし、俺からの改造の提案を聞いて、それならばもっと改造しよう、いや、もっとすごい物を作って驚かせよう、とこっそり暴走が始まったそうだ。

ウーノやクアットロが気付いた時には既に手遅れ。

そうして、出来上がったのが数百個にも渡る腕型アームドデバイスの山。

 

「僅か数日でこんなに作ったのかよ」

「ドクター、アレでも天才なのよね。馬鹿だけど」

「馬鹿と天才は紙一重って教科書にのってたよお母さん!」

「ギンガ、もっと別な事覚えてね、頼むから」

 

予想以上におバカな顛末に頭が痛くなってきた。

 

「こんなに大量に作って大丈夫なの? その、性能や耐久性とか」

 

デバイスも大量量産すれば、品質が悪くなりがちになる。

 

「そこは大丈夫よ。ベースは前言ったシェルブリットの予備機を使ったから、どれもテスト済で耐用年数も管理局の基準値を上回っているわ。一応全部健人君用だけど、他の人でも着けれるようにはしてあるから、せっかくだからクイントさんもどう?」

「どれどれ。あ、ホントだわ。私でも使えるのね」

 

クイントさんが一つ試しに装着してみたが、俺と腕のサイズ違うのにピッタリとフィットした。

 

「お母さんいいなぁ。ウーノさん、私も着けてみていいですか?」

「私も私も!」

 

ギンガもノーヴェも目をキラキラさせている。

2人にはこれが宝の山に見えているようだ。

 

「なのはちゃんとアリシアちゃんもどうかしら? 魔力がほとんどいらないタイプもあるからアリシアちゃんでも使えるのもあるわよ?」

「え、遠慮します……」

「私も、レイジングハートがありますので……」

 

2人共若干、どころではなくドン引きして俺達からちょっと離れた所にいる。

アリシアは魔力がほぼないからデバイスに憧れていたけど、流石にこんなわけわからんデバイスは付けたくないか。

 

「これなんかどうかしら、ヴィルキスとアーキバスって名前なのだけど」

「「あ、アハハハ……」」

 

そう言ってウーノが持ってきたのは、ロボットの腕のような白いデバイスと赤いデバイスだ。

うん。あっちはほっとこう。

 

「兄さん、これどう? 似合う?」

 

ギンガが腕に嵌めているのは、クイントさんが使うデバイスに似てるけど、先端の手の部分がドリルになるデバイスだ。

どういう構造したら手がドリルになるんだよ。

てか、ギンガには、絶対に使ったらダメな気がする。

 

「うん。似合ってないから別なのにしようか?」

「う~ん、これが一番しっくりきたのに」

「じゃあ、これはこれは!?」

 

ノーヴェが付けたのは、銃口に変形する青い筒のような腕、どこからどう見てもロックバスターだ。

 

「違うわ。それはエックスバスターよ」

「なんで両方作ったんですか」

 

元ネタは知っているけど違うが分からないアリシアがゲンナリしながらツッコミを入れた。

よく見ると、ロックマンエグゼのロックバスターやロックマンダッシュのロックバスターとか色々置いてあった。

もうこれ実益より趣味に走ってるじゃん。

 

「ウーノさん、あっちに沢山並んでる黒い腕って何が違うんですか?」

 

なのはが指差した方には微妙に色合いや形状の違う黒い腕が沢山並んでいた。

 

「あれはまさか、ロケットパンチ?」

 

にしても種類多いな。

ロックバスターと同じく沢山作ったようだ。

 

「流石ね健人君。左から普通のロケットパンチ、強化版ロケットパンチ、真版のロケットパンチ、アトミックパンチ、ターボスマッシャーパンチよ。もちろんアイアンカッターやドリルプレッシャーパンチ、ビックバンパンチにも変形するわよ」

「違いが分からないわよ!」

 

てか、ビックバンパンチって正確にはロケットパンチから変形しないから。

 

「あら、見る人が見れば違いは一目瞭然よ? ターボスマッシャーパンチなんて形状が明らかに違うでしょ?」

「心底どうでもいいわよ」

 

アリシアのツッコミにもウーノは動じない。

 

「ちなみに、あっちにはブロウクンマグナムもあるわよ。しかも、ジェネシック仕様よ」

「いや、要らないから」

 

俺勇者オーじゃないし、技を放つたびに喉痛めたくないし。

確かに腕を飛ばせるのは魅力的だけど、俺が欲しいのはそういうのじゃない。

 

「で、なんでこういうのまであるのかな?」

 

俺が目に付いたのが、他の機械的なデバイスと違って明らかに生物っぽい手、鬼の手だ。

 

「それは花子さんに頼まれて作ってみたらしいわ。幽霊とかお化けに対して有効で触れるだけで大ダメージよ。どうかしら?」

「幽霊やお化けを攻撃する事なんて多分……ないと思います。と言うかなんで花子さんが自分を攻撃する手を欲しがるの!?」

 

ちなみにこれを見た花子さんは大喜びでさっそく身に付けようとしたが、鬼の手の効果で危うく消滅しかけたらしい

そりゃお化け特攻なのにお化けが装備したらそうなる。

 

「そういえばウーノさん。こんなに沢山作って資金大丈夫なの?」

 

クイントさんがそう聞くと、ギクリッ! と音が聞こえてきそうな程ウーノが反応した。

そして、クイントさんに泣きついてきた。

 

「実は、かなりヤバイのよぉ~! ドクターったら材料費とか全く考えずに作りまくっちゃって大赤字なのよ! このままじゃ破産だわ!」

 

破産って、ナンバーズって企業だっけ?

 

「それで、健人だけじゃなくうちの娘達にもデバイスを売りつけようとした、とか?」

「それは少し違うわね。あなた達に売るつもりはないわ。ただ、有用性を知って欲しかったのよ。で、それを管理局に売り込む足場にしたかったの」

 

実は、スカさん達が外出しているのは、営業の為らしい。

ここに残っているのは戦闘用がほとんどだが、他にも調理器具に変形するタイプや、建築用工具になるタイプなどあるのでそれを色々な業種の企業に売り込みに行っている。

 

「というわけで、管理局の方で使ってみないかしら? 健人君やあなたの紹介って事で割安にするわよ?」

「ウーノさん、OLみたいね……まぁ、分かったわ。ゼスト隊長やリンディ提督に伝えておくわね」

 

後日、腕型デバイスは、どうにか管理局を始め色々な企業に売れていき、ナンバーズは破産を免れた。

 

「さてと、色々と面白いデバイスばかりで非常に魅力的だったけど、まさかこの中から俺のシェルブリットの新フレームを選べって言わないよね?」

「い、言わない言わないから、目のハイライト消さないで健人君、コワイコワイ!」

 

流石にこんなイロモノデバイスを相棒にしたくはない。

ちょーっとは興味あるけどね、ロックバスターとか。

 

「暴走する前にドクターを調きょ、折檻してちゃんと健人君の依頼にも沿った新型を用意したわ」

 

今何を言いかけた? と言うか言い直した意味ないよね?

兎も角、ウーノが持ってきてくれたシェルブリットの待機形態である腕時計を装着して、わざとらしく左手を掲げる!

 

「よしっ、久しぶりのシェルブリット、セットアップ!」

<おっし、任せろマスター!>

 

ちゃんと修理されているか不安だったが、シェルブリットはいつも通りの反応をしてくれた。

 

「うわぁ、お兄ちゃんかっこいい!」

「うんうん。よく似合ってるわよ、健人」

「ありがとう、ノーヴェ、クイントさん。シェルブリット、久しぶり。新しい姿はどうだ?」

<へへっ、久しぶりぶりだな、マスター。最高に気分がいいぜ!>

 

新しいシェルブリットのバリアジャケットは、見た目とほぼ同じだけど細部は、少し変わっている。

両手足に噴射口と緑色の宝石が付いている、これはGストーン?

 

「ウーノさん、コレは何?」

「そこが今回の改造の鍵の1つよ。ここに健人君の余剰魔力を溜めこむ事が出来るの。これで負荷がかなり激減するし、魔力が切れそうになったらここから魔力を補給できるようにもなるわ」

「あ、それは便利かも」

 

実際に魔力切れになった事はないけどね。

 

「健人君からの要望があった改造もしてあるわ」

「おっ、なら早速。シェルブリット!」

<了解!>

 

―カチャッ

 

両手首の装甲が開いて中から銃口が現れた。

 

「「おぉ~!!」」

 

俺がお願いしたシェルブリットの改造、それは連射型の魔力銃の追加だ。

俺は、基本高機動接近型魔導師だ。

使える魔法は接近戦や移動しながら殴るものが多い。

中・遠距離にはマッハボンバーがあるけど、あれは威力は高いけど連射出来ないし出すのに少し溜めが必要だ。

だからガンダムNT1の腕部ガトリングみたく、即座に撃てる隠し武器みたいなものが欲しかった。

 

「威力も連射も結構自由に調整できるから、早速試してみるかしら?」

「兄さん、やってみせて!」

「私も見たいみたい!」

 

ギンガとノーヴェは新型シェルブリットを起動した時から目を輝かせているが、銃口を出した時は全身が輝くくらいに興奮していた。

こういうのって男の子が好きそうなものだと思うんだけどな。

 

「あの2人間違いなく健人の悪影響を受けているわね」

「ねぇねぇ、健人。試射終わったら私にも使わせてくれないかしら!?」

「訂正、クイントさんの悪影響もあったわ」

「あははっ、私もちょっと興味あるなぁ」

「なのはもかい!」

 

さっきからアリシアが失礼な事言っているけど、気にしない気にしない。

俺達は施設内の射撃場へと案内された。

ここは射撃や砲撃用の固定式・移動式のターゲットが多くある。

まずは小手調べとして、そこまで速く動かない空中浮遊型のターゲットを出してもらう事にした。

 

「じゃ、行くわよ!」

 

ウーノの合図と共に、赤い色をした丸いターゲットが複数現れた。

初めてなので右手だけを向けて精密射撃で落とす事にした。

 

「……そこだ!」

 

―ビュッ!

 

シェルブリットから黒い魔力弾が放たれターゲットを黒に染めた……黒?

と、同時に銃口からほのかに香ばしい匂いがした。

 

「なぁ、シェルブリット。ひょっとして今放たれたのって……」

<……醤油だ>

「やっぱり、なんでだよ!!」

 

なんでシェルブリットから醤油が出て来るんだよ!

 

念の為もう一度撃ってみた。

 

―ドビュ!

 

今度は血のように赤い魔力弾が放たれターゲットを赤く染めた。

うん、赤は俺の魔力光だけど何か色合いが違う。

 

<今放たれたのは、ケチャップだ>

「だと思ったよ!」

「落ち着いて健人君。もう一度今度は左腕でやってみたらどうかな?」

 

なのはに言われ、渋々左腕で試してみる。

今度放たれたのは魔力弾、とはとても言えないナニカが……

 

―パッ!

 

白い粉のようなものが放たれた。

 

<塩だな>

「ウーノサーン? コレハドウイウコトカナ?」

「い、いいまドクターに連絡するから、ちょ、ちょっと待ってて!」

 

ウーノも動揺しているようだ。

って事は元凶はやはりドクターか。

 

「いや、今の健人が怖かったからでしょ。白目むき出しで睨むんじゃないわよ。ギンガとノーヴェも怖がるでしょ!」

「兄さん、おもしろーい♪」

「なんで喜んでるのよ!」

 

やっぱりアリシアが来てくれて良かった。ツッコミが任せられる。

と、ドクターと通信が繋がったようだ。

 

『やぁ、健人君に皆さん。君たちが来るというのに留守にしててすまないね。新しいシェルブリットは気に入ってくれたかな』

「ドクター? 新しいシェルブリットから醤油やケチャップが出るんだけど、どういう事かな? かな?」

『えっ? いや、まさか、あの時の……』

 

ドクターは狼狽しながらブツブツと独り言をしている。

 

「この動揺の仕方は、わざとじゃなかったみたいね。てっきりドクターのいつもお茶目かと思ったわ」

「軽く言うけどクイントさん、そのお茶目で毎回被害食らうの大抵俺なんだけど」

 

おかげで管理局内で俺はドクターの避雷針扱いされてるの知ってるんだぞ。

 

『いやぁ~すまない健人君。この前ちょっと軽食食べようと目玉焼き作ったら醤油が切れていてね。こんな時手ごろに醤油が手に入れば君も喜ぶだろうと思ったんだよ。いやぁ、あの時は二徹していた後だから頭がぼーっとしていてね、アハハハッ!』

「あはは、じゃないでしょ! なんで醤油だけじゃなくケチャップまで出てるのよ!」

 

アリシア、ツッコミ所はそこじゃない。

 

『醤油が出て来るだけじゃ他の調味料が必要な時に困る、と、当時の僕は思ったらしいね。だから色々な調味料が出る用にしたんだよ。これで健人君の魔力がある限り一般的な調味料だが、シェルブリットから出せるよ』

「えっ!? これって魔力変換素質だったの!? こんな魔力変換素質を生み出すデバイス技術はかなり貴重よ?」

<い、いらない機能だぜ…>

 

シェルブリットは、魔力変換素質【調味料】を手に入れた!

 

――ゴマダレ~♪(某ゲームBGM)

 

『あ、ごまだれを出せるようにはしていなかった! 急いで改造を……ギャーーッ!?』

『ハァ~イ、バカな事言ってないで急いで戻ってシェルブリットを元に戻しましょうね、ドクター♪ ではでは、すぐに戻るので待っててね、健人君』

「うん、ありがとうクアットロ、心底スカっとした」

 

その後、ボロボロになったスカさんを引きずりながらクアットロ達が戻ってきて、無事にシェルブリットはちゃんと俺が要望したようなただの魔力弾が出せる仕様に再改造された。

 

なお、シェルブリットを改造する際、スカさんが衝動的に産みだした魔力変換素質【調味料】が使えるようになるデバイス技術は、ウーノが特許に出した。

更には、そのデバイスを売りに出した所、大ヒットとなり特許と合わせて大儲けとなった。

これでロケットパンチ型デバイスを数百個作った赤字をなんとか埋める事が出来たとウーノが言っていた。

ちゃっかりしてるなぁ。

 

 

続く

 

 




昔は徹夜も出来たんだけど、今は無理(笑)


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