銀色の契約者 (飛翔するシカバネ)
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プロローグ

「転生するぞ!答えは聞いてない!」

 

 

何もなくただただひっろい空間にハイテンションな男が現れた。

真っ白なフルヘルメットを付けた変質者だ。

 

俺は戦闘態勢をとった。

そしてフルヘルメットの腹を殴った。

 

「ちょっと待って!俺は敵じゃない!むしろ恩人的な人!しかも頭を守っているのになんでお腹狙うの!?」

 

「いや、貧弱そうだから」

 

「弱点を迷いなく狙っていくスタイル!しかも、精神的にもきつい。説明するからひとまず止まって!」

 

それで止まる人などいない。

結局、格闘しながら説明された。

 

そして格闘というなの説明を終えた。

 

 

「転生を三つから選んで特典を一つくれるとな」

 

「腹にいいの何発か貰った。鳩尾を寸分狂わず殴ったその才能が憎い」

 

「で、なんの世界だ」

 

「サクサク行くね、君は。こう大人を殴って罪悪感があったり自分が何故ここにいるのか疑問に思うところなのに」

 

「うるさい。殴るよ」

 

俺の拳がやつの腹部に当たり、蹲る。

 

「ウゴぉっ…殴ってから言う言葉では、無い」

 

ヘルメットは息を整え、

 

「いいよ、言うよ。君がいける世界は

《HUNTER×HUNTER》のポックル

《べるぜバブ》の古市

《NARUTO》のシノだ」

 

と転生対象を言った。

ってゆうか……

 

「なんでそんな微妙なのばっかなんだよ!」

 

「しょうがないだろ!大体いいとこは先輩が持っていくんだし。余り物しか残って無いんだよ」

 

「先輩とかいんのかよ!」

 

いや、悪いキャラでは無いんだが全員が微妙だ。

ポックルは幻獣ハンターになりゴンとも交友が持てるがキメラアントに脳グチャグチャにされるし、古市は主人公の親友だが扱い雑だし、NARUTOのシノは強いが影が驚くほど薄い。

この中で1番マシなのは…

 

「《べるぜバブ》に転生で…」

 

「へえ、それを選ぶんだ。てっきりNARUTOを選ぶと思ったけど」

 

「転生したら性格が変わること多いからな。案外ポロッと死んでしまう可能性があるだろ。それならギャグ漫画なら死ぬ表現がギャグ化するから安心だ」

 

「まあ、君がいいならいいか。じゃあ特典選んでね」

 

「その特典で転生を変える事は出来ないのか?」

 

「できないね。それは決まった運命。でも安心して他の転生者が同じ世界にいることはないから」

 

「じゃあ特典として俺に四つに特化した従者をつけてくれ性別や性格、何に特化するかはアンタに任せる」

 

「おや、そんなランダム要素をいれてもいいのかい」

 

「下手のにしたら1日1回必ずお前を呪う時間を設ける」

 

「呪いは聞かないけど精神的に痛い!」

 

「一応主従契約を結んでいることにしてくれ。古市は憑依体質だったはずだし。きっかけとかいろいろご都合を聞かせておいてくれ」

 

「オーケー!任せてよ。この笑顔にかけて特典を届けるよ」

 

サムズアップしてくる。

 

だが、フルヘルメットのせいで分からない。

 

 

フルヘルメットの後ろに大きな門が現れる。

ゆっくりと門が開かれていく。

 

 

「じゃあ、いってらっしゃい。いい人生を」

 

フルヘルメットとすれ違う。

俺はすれ違いざまに

 

「じゃあな」

 

と、一言挨拶した。

 

 

 

 

俺は門に歩いていく。

 

そして、

 

 

「あ、嫌がらせに記憶覚醒は最初っから。つまり赤ん坊からだから」

 

「はあ?!」

 

俺は立ち止まり、フルヘルメットに掴みかかろうとしたが、床に黒い穴が出来、落下した。

 

「やっぱりギャグ漫画を選んだからお約束でしょ!」

 

「ふざけんなよっおぉおおおおおおおおおおおおお」

 

俺の声は穴に木霊した。

 

 

 




友人の熱い要望で実現した作品です。
毎度不安で不定期更新を入れてますがこの作品投稿してる時既に十三話程完成してます。

これからも読んでくださると嬉しいです。


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一将 友人が魔王拾ってきた

オッス俺古市。

本当にあのヘルメット赤ん坊からやり直させやがった。

 

今は男鹿が俺の家に来ている。

原作の第一話だ。

 

俺はツッコミに徹しながらも戦闘のやり方やバイト、契約等をやった。

 

契約の事はいつか話す。

一応護衛四人とも契約できたが今は原作が大事だ。

話に戻ろう。

 

まあ、話は進んでいるんだが。

 

「何してんの?お前」

 

「いや……とにかくその後もいいろやったら……めっさなついた」

 

男鹿が赤ん坊を連れてきた。

普通に来たからちょっと…動揺してる。

いよいよ原作始まると思うと嬉しいがこれはちょっとな。

夏がきたからそろそろだと思ったらいきなりだからな。

原作通りならここから登場だな。

 

「懐いた…?」

 

「フン、勘違いも甚だしいな」

 

「貴様ごときに坊っちゃまがなつくわけなかろう。死ね、ドブ男」

 

「………」

 

こんな窓から普通に現れるんだな。

正直引いてるわ。

契約中やバイト中にいろいろあったせいかトラブルには強くなったから原作の様に驚いてはいないが。

 

「あ″ぁ!?誰だ、こら。誰がドブ男だ。いきなりどっからわいて出たんだ、ボケ。つーかそこ、おりろ。人んちでえらそうにしやがって。あとくつぬげ」

 

 

窓から入ってきたやつに動じず対応できる精神力は尊敬するが此処はお前の家ではない。

俺の家だ。

 

ヒルダは男鹿を無視してベル坊に話しかける。

その反応に男鹿が少し怒っているがヒルダは全く気に止めない。

 

「さぁ、坊っちゃま。参りましょう。ヒルダがお迎えに上がりましたよ」

 

おっとこれは危なそうだ。

原作は確か………離れるか。

 

原作を知っている俺はさり気なく部屋の隅に移動する。

瞬く間に赤ん坊を処刑にかけているような図が出来上がる。

 

「ダーーーーっ!!!」

 

「ぎゃあぁあああああああああああああっっ!!!」

 

うおっ!

流石に目の前で感電されるとびっくりするな。

ていうか確実にこれ死ぬよな。

ポケ○ンといい不思議だな。

ある意味安全が保証されてるからいいけど。

いや、良くないわ。俺の部屋が少し焦げてるじゃねーか。

 

 

1回感電した事で二人とも落ち着いた。

改めて自己紹介をする。

 

「失礼しました。…私、その赤子に仕える侍女悪魔、ヒルデカルダと申します。そしてその方は我々魔族の王となられるお方……名を………

 

カイゼル・デ・エンペラーナ・ベルゼバブ4世。

つまり魔王でございます」

 

「へ…へー…まあ、アリだよね…アリ」

 

(おいおいマジか?悪魔とーりこして魔王かよ!!)

(つーか魔王てっ!!!)

(んな事いったって、おめーさっきのバリバリどーすんだ!?説明できんのか。ボケ!!)

(ハア?!お前がボケだ、ボケ!!)

 

自分が考えていること以外にも回線が繋がったような感覚になったと思ったらテレパシー出来ちゃったよ。

これは場慣れしててもびっくりしたわ。

これがギャグ漫画補正というやつか。

 

「ーと、いうわけでございまして…」

 

あ、話進んでる。

 

(大魔王…適当だなー)

 

今回は俺が話聞いてなかったせいもあってか一方的にテレパシーが届いたな。

 

いろいろ考えたいがここはあの名台詞(名テレパシー?)を……

 

俺は男鹿の肩に手をのせる。

 

(ガンバ!!)

 

「ちょっ…お前この状況で逃げんのかよ」

 

「うん…てゆーか帰れ。俺関係ねーみたいだし」

 

「くっ…冗談じゃねーぞ!何が魔王の親だ」

 

このセリフということはあと少しで俺の寝床が無くなる。

急いで障壁を……

 

「では、死んでください」

 

タイムオーバー

 

 

「あ″ぁあああああああああっ!」

 

俺の家が、俺の部屋が……ちくしょう。

しょうがない。エメラはついてきて、他の3人は修理お願い。

『『『『畏まりました』』』』

じゃあ逃げるか。

 

「落ち着け!古市。俺は大丈夫だ!!」

 

男鹿が赤ん坊を抱えて俺に話しかける。

 

「おめーが1番落ち着け!何持ってきてんだそれえぇぇっっ!!!」

 

「ん?なにって……ぬがっ!!」

 

「ぬがっじゃねーよさっさと置いてきなさい」

 

この極限状態でなにふざけてんだ。

 

「いや…てゆーか、なんか。離れねぇ……っっ」

 

男鹿の頭にベル坊がついて離れない。

頭を降っても引き剥がそうとしても離れない。

凄い画だな。

全く赤ん坊が離れない。

 

「あきらめろ!悪魔から逃げられるのでも思ってるのか」

 

電柱の上からヒルダカルダが見下している。

しかし…

 

「うるせーっ!!一生そこでかっこつけてろ!!」

 

「パンツ見えてますよー!!!」

 

『主様(Ծ﹏Ծ )』

 

エメラそんな目もといそんな声を掛けるな。

これは必要な事だ。

見てしまったのはあんなに高い所に登っていた、あの子のせいだ。

不可抗力だったしな。

あと、お前の見てたとおり俺は直ぐに目を離したぞ。

 

『因みに必要な事とは(?_?)』

 

パンツ見えてることあの子に伝えないとあの子、これからもいろんな人にパンツ見せる痴女になってしまうぞ。

 

『それは大変です(✘д✘๑;) ³₃』

 

だから必要なんだよ。

教育が。

 

『エメラまた、一つ賢くなりました(*`・ω・´*)ゝ』

 

お前はそのままがいいんだけどな。

 

『主様(///°∞°///)』

 

っと早く男鹿を追いかけないとな。

 

「よかろう…アクババッ!!」

 

ヒルダカルダが呼ぶと巨大な鳥が目の前に現れた。

思わず俺は立ち止まった。

鳥はそのまま向かってくる。

 

しかし男鹿はそんな事はお構い無しに鳥を殴り伏せた。

 

「何してんだ、行くぞ!」

 

「お、おう!」

 

相変わらず躊躇しないな。

 

「お前のそういうとこ尊敬するよ」

 

「うるせー先手必勝だ」

 

全速力で走っていく。

 

そして河川敷近くの鉄塔のとこまで来た。

 

俺は息を切れてる演技をしているが男鹿は本気で切れている。

だが、悪魔は容赦なくやってくる。

 

「それで逃げたつもりか?」

 

真後ろにヒルダカルダが現れ、男鹿の首元に刃を置く。

 

『主様!∑( °д° )』

 

まだ、大丈夫だ。

ってゆうかこの後だ。

 

『また、予知ですかo(;-_-;)o』

 

ああ、災害級のな。

 

男鹿の頬に切れ筋が入る。

血が流れ落ち、赤ん坊の頬に落ちた。

 

エメラ、一応障壁お願い。

自分でも貼るけど、念のため。

 

『畏まりました( *๑•̀д•́๑)̀』

 

赤ん坊が唸り始める。

 

「坊っちゃま…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ビエエエエエエエエエエエエェェェェエン!!!!」

 

 

 

 

 

 

「ウオオアアアアアアアアアアーッッッ!!」

 

『何ですかこの魔力はΣ(ºДº;;)』

 

大魔王の駄々だな。

凄まじい魔力。

魔力を感じるようになって分かるけど大分凄いな。

 

『駄々でこのレベルですか∑(๑°口°ll๑)』

 

俺は座り果てているヒルダに声をかける。

 

「おい、アンタ!これどうにかならないのかよ!」

 

「ムリです」

 

即答ですか。

 

「ああなってしまっては……もう坊っちゃまを止めることは……」

 

まあ、そうか。

親以外にはこれは泣き止められないだろう。

 

因みにエメラ、これ止められる?

 

『私1人じゃ…せめてライト様がいないと(。í _ ì。)』

 

大丈夫だ、聞いただけだしな。

いても赤ん坊を無事にとつくと更に難易度上がるだろうし。

 

『3人を呼びますか【・_・?】』

 

いや、いいよ。

流石に3人の力をあの魔族に隠すのは無理そうだし。

魔王の息子の護衛なんだし、多分エリートでしょ。

それぞれ待機ということで。

 

『ですが、このままだと(´・-・`)』

 

大丈夫だよ。

3人にはこっちに来ないように連絡しといて。

 

「……こんな……こんな大泣き。止められるのは大魔王様位しか……」

 

普通はな。

そろそろか……やったれ男鹿。

 

 

 

 

「男が…ギャアギャア泣くんじゃねぇ」

 

 

「ナメられちまうぞ」

 

 

男鹿が赤ん坊に言い赤ん坊が泣き止む。

泣き止むと同時に電撃も止んだ。

 

 

「ダ」

 

「よーし。じゃあ、もう泣くなよ」

(決まった)

 

なにも無かったかの様に男鹿が離れようとする。

しかし電撃や魔力の余波を受けた鉄塔がメキメキと音をたてる。

 

『主様!Σ(こ□こ;)鉄塔が!』

 

「坊っちゃまーーーーーーっっ!!!!」

 

鉄塔が赤ん坊のいる場所に倒れていく。

男鹿は赤ん坊に駆け寄り、守る様に抱える。

 

「うっ…おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!!!!」

 

 

そして極限状態の男鹿は赤ん坊から流れてくる魔力を無意識に使った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

周りが唖然としている。

 

そりゃそうか何だって、

 

 

 

 

鉄塔が消し飛んだからな。

 

根本など残っていない。

男鹿も無我夢中だった筈だが鉄塔だけを消し飛ばす事が出来るなんてやはり男鹿は凄いな。

まあ、ちょっと余波があった分は俺とエメラが張っていた結界で被害はないからな。

 

さて、男鹿を助けるか。

エメラ回復用意

 

『…( ゚д゚)』

 

……エメラ?

 

『はい、すみません。直ぐに準備します(*゚Д゚)』

 

さて、男鹿の怪我を治すか。

俺はちょっとしたアイテム入れのポーチがある中には応急処置セットが入っている。

男鹿との毎日は怪我ばっかだかんな。

 

男鹿に近寄ると赤ん坊…いや、ベル坊が睨んできた。

 

「安心しろよ。俺は親友の怪我を治しに来ただけだ。お前も心配だろ」

 

そう言うと警戒はしてるものの少し動いてくれた。

 

酷いな。

エメラの力があってもバレ無いように使うから多分2日は寝込むな。

男鹿の事だから夢オチというか夢に逃げるんだろうな。

 

「ヒルデカルダさん」

 

「ヒルダでよい」

 

「ヒルダさんちょと坊っちゃま預かって貰えませんかね。応急処置は終わりましたけど目覚ましそうに無いんで家までおぶって行くんで」

 

「そうか」

 

さっきまでアタフタしてたとは思えない程の落ち着きっぷり。

俺の中では貴女のキャラがブレっブレですよ。

 

 

 

 

 

家まで送るとヒルダさんは屋根の上に移動して、俺は男鹿の家族である、美咲さんに男鹿を受け渡した。

 

「たかちん、いつもこの馬鹿をありがとうね」

 

「親友ですから。あともう高校なんでたかちんはちょっと……」

 

「えー、いいじゃん面白いし」

 

「下ネタみたいな響きが嫌いなんです」

 

「じゃあたかちんって呼ぶ代わりに何か合った時に力になってあげるよ」

 

「呼ぶことは決定なんですね、分かりましたよ。なにかあったらお願いしますよ」

 

「任せなさいって」

 

男鹿を受け取った美咲さんは俺の背中を叩く。

 

俺強くなってるはずなんだけどな。

必ず一定のダメージが背中に入るのは何故だろう。

 

「じゃあ、俺は帰るんで。男鹿によろしく伝えといて下さい」

 

 

 

 

男鹿の家から離れたとき窓からヒルダさんが侵入するのが見えた。

挨拶するのは男鹿が起きてからだからどうやってバレない様にするんだ?

 

………何でも考えてたら疲れるだけだ。

なんとかしたんだろ。

 

俺は1人夜道を歩き家路へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は家についた。

そこには爆発した後も半壊した後も残っていない。

我が家があった。

寧ろその見た目は元からそんな事が無かったかのように。

 

「ご苦労さま、3人とも」

 

背後に人影が3つ現れる。

 

 

 

『主様。お怪我はございませんでしたか』

 

「大丈夫、なんとも無いさ」

 

『自宅は完璧に直しました』

 

「有難う。外壁の染みまで元の通りだ」

 

『ルビがもっと主様に相応しい自宅に変えようと勝手に改築しようとしていました』

 

「止めてくれたのか……助かったよ」

 

俺の中からもう一つ、人影が出てくる。

 

『主様、これで良かったのですか(´•ω•`๑)』

 

「いいもなにも最善だよ、これが。魔王の産声に相応しい始まりだろ」

 

『また、神の予知なのですね』

 

「そう…だね。これが始まりだね。俺の力もこの為に必要だったみたいだしな。だからな、」

 

 

 

 

 

 

「これからもついてきてくれよ。四人とも」

 

 

『『『『主様の仰せのままに』』』』

 

「じゃあ、解散」

 

影が消えていく。

 

さてと、まずは

 

「ただいま。遅くなりましたよっと」

 

「お兄ちゃん、遅い。もうご飯出来てるよ。早く早く~」

 

「あいよ」

 

 

 

 

 

夕飯食べるか

 

 

 

 

 



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二将 友人が起きません

やはり、男鹿が起きない。

 

この男鹿が寝てる2日は何も予定が無いし、原作も知らない。

 

あまりにも暇だったので商店街にある廃れたゲーム屋に行った。

 

 

あれ?いつもより不良が少ない。

大体こういう時って誰かがシメた後か、現在もいる場合か…

 

まあ、俺は喧嘩しにもカツアゲしにもきてないし、純粋にゲームを楽しみきたんだ。

 

 

この頃はシューティングゲーにハマってたが久しぶりに男鹿のハチャメチャ具合を見て格ゲーをやりたくなったな。

 

といってもこのゲームは俺が前にやって1位取れたから辞めたんだよな。

ちなみに名前は「ネーヴェ」

孝之の之を雪にしてイタリア語変換したもだ。

 

あれ、記録が更新されてる。

…「オータム」

 

……ふふっ

 

俺に挑戦するなんていい度胸じゃないか。

望むところだ。

記録をさらに更新してやろう。

 

 

-5分後-

 

このゲーム簡単になったんじゃないか。

いや、ルビと契約したからか。

手の動きも動きの最適化もされている。

 

簡単に更新出来たな。

一応更新ギリギリにしといてやった。

もしも、まだやっているなら……

 

ピコンッ

 

やはり更新してきたな。

だがここから本気を出してやろう。

さっきのはギリギリに更新してやたっが今度は圧倒的に離してやろう。

 

 

ー5分後

 

 

ピコンッ

 

絶望的だろう。

この差は覆すことはできまい。

 

あれから、更新されてるけど先程までの記録は越せるが俺の記録を超えられない。

 

更新が徐々に俺の記録に近づく。

さて俺もやるか。

 

遂に俺の記録を、更新する。

1点だけだがこういう時1点の勝負が分けるものだ。

 

だがしかし、俺は甘くない。

俺はその記録を10点差をつける。

結果オータムは2位、俺ことネーヴェは堂々の1位だ。

 

俺は結果に満足していると、対戦を仕掛けられた。

名前はオータム。

まさか、真向かいで1位を取り合っていたとは。

 

もう、順位が勝てないと知って直接対戦をしてきたか。

PC相手だとわりと攻撃が読みやすいからな。

人が相手だと勝てないとかあるらしいしな。

 

-対戦中-

 

流石に旨いな。

俺と新記録を更新しあった位だ。

だがしかし。

 

-対戦後-

 

まあ、圧勝ですが。

このゲームで1番嫌われるハメ技でノーダメージで勝った。

そして俺はもう一度戦おうと対戦をしかけてくるオータムの対戦を断り続けている。

勝ち逃げだお。

 

 

真向かいの台から鼻をすする音が聞こえる。

やり過ぎたか。

しょうがない、今日は500円だけしか使わないつもりだったんだけどな。

オータムに対戦をしかける。

 

泣き声が止まり真剣さが漂ってくる。

ここで負けてあげる事も出来るがそれじゃ意味が無いから本気で戦ってあげよう。

 

さて、ゲームスタートだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はマックスな缶コーヒーとココアを買ってきた。

結果は俺の勝利。

ハメ技なしで普通に戦った。

まだ、さっきのはハメ技だったからと自分に言い訳できるがこれは正々堂々と戦ったからな。

ゲーム台に突っ伏しているのをみたら何となく買っていた。

 

 

「はい、これココア。飲む?」

 

「ココアは好みません」

 

外ちょっと暗くなっているから、温かいのしたけど疲れたから炭酸系にすれば良かったかな。

 

「じゃあ、自分で飲むか」

 

「飲まないとはいってません」

 

はいはい。

 

俺はココアをあげる。

俺は相手が不良だと思って容赦なくやっていたが相手は女の子だった。

俺の中で罪悪感が漂ってくる。

漂うっていうよりそれしか無いけどな。

 

俺はコーヒーを飲む。

あー甘っ、この甘さがもう、なんとも言えない感じがもう、すごくおいしい。

 

「もう一度です」

 

ん?

 

「最後にもう一度。そこで倒します」

 

「いいよ。かかってきなよ」

 

俺と女の子は台に向かい合う。

 

「お金は俺が出すよ」

 

「お願いします」

 

さて、いざ尋常に勝負!

 

 

 

 

 

 

「次は負けませんよー」

 

結局勝負は俺の勝ちだった。

 

あの後また、ゲームをやる約束をしてその女の子とは別れた。

暗いから送っていこうとしたら近くに友達がいるから心配いらないと言われ、ゲーム屋で俺は女の子と別れた。

 

 

「ライト」

 

『御身のお側に』

 

「あの子が友達に会うまでの守護をお願い」

 

『御身の御心のままに』

 

これで大丈夫だろう。

明日はアウトドアに山にでも遊びに行くか。

 

 



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三将 友人の家が侵略されたみたいです

俺は学校に来ている。

昨日は山で遊んだだけなので特にいうこともないだろう。

 

今お昼休みで俺は中庭で飯を食っている。

先程、美咲さんから連絡が来て男鹿が起きて学校に行ったといってたからもう少ししたら来るだろう。

 

因みに俺は自分で弁当を作っている。

というか家族の昼の弁当の担当が俺だ。

購買で買うと金が多くかかるからな。

一応一人暮らしも予定しているから料理は一通り出来る。

更に俺は1週間に1回俺は夕飯を作っている。

妹が言うには母より美味しいらしい。

これもルビやラピスのお陰なのかは分からない。

 

 

そんな事を考えていると男鹿が来た。

ベル坊を連れて。

 

「大丈夫か?怪我の方は。頭とかやられてないか」

 

俺は暗に男鹿に何故ベル坊を連れてきてるか聞く。

 

「よっ!」

 

「お前、今失礼な事考えているだろ?……じゃなくてな!なんで、赤ん坊連れてきてんだ!」

 

「古市…聞いてくれ。俺ん家はもうダメだ」

 

男鹿が深刻な顔で俺に話す。

その顔には疲れが溜まっている。

 

 

「…悪魔に……乗っ取られた…」

 

まあ、俺が連れてったしな。

いったら怒るだろうから言わないけど。

 

 

「あの女が変な事言い出しやがったせいで家の家族が変な勘違いして……今や、このありさまさ…」

 

疲れている表情をしている男鹿に俺は励ます。

 

「良かったな男鹿。ゴスロリ金髪巨乳が家に来てしかも親公認とか凄いな。こんなラブコメ展開珍しいぞ」

 

「お前は何を呑気に話してんだっ!」

 

「いや、俺関係ないし。そんなうらやまけしからん事になっているお前を助ける気もないし」

 

「うらやましいってこっちは命がかかってんだぞっ!」

 

「……一緒に寝た?」

 

「寝てねーよ!」

 

全く健全な男子高校生とは思えないな。

 

 

 

「二ギャーーー!!!」

 

ベル坊の泣き声がした。

振り返ると不良どもがベル坊を抱えている。

いつの間にか男鹿の元を離れていたみたいだ。

 

「動くなっ!てめえそれ以上動くなよ。動いたらぶっ殺す!!!」

 

男鹿が声を張り上げる。

これ言うセリフ逆だろうが即死レベルの電撃があるって脅されてるからな。

 

「まちな!」

 

「あんたらは…石矢魔の双頭竜!…真田兄弟!!」

 

「キラーマシーン阿部にグッドナイト下川まで!!」

 

「な、なんてこった。2年幹部が勢揃いじゃねーか!」

 

ぞろぞろと不良が集まってくる。

この高校はホントもう。ゴキブリじゃないんだから。

どうせキモ川以外はこれから出てこないじゃねぇか。

 

あ、モブが殴られてベル坊帰ってきた。

馬鹿だね。

自分から男鹿に近づくなんてさ。

 

そこに2年幹部2人が近づく。

えっと…阿部とキモ川だっけ?

 

腹に1発ずついれて瞬殺。

そこに真田兄弟がそれぞれ弟がナイフ、兄がチェーンソーを持ち襲いかかってくる。

兄弟で獲物の差があり過ぎる様な気がする。

 

「邪魔」

 

その一言で兄は地面にめり込み、弟はベル坊の電撃で倒された。

 

息ピッタリだな。

これで男鹿の不敗伝説がまた一つ出来上がったな。

 

男鹿はガラガラを鳴らしながら教室の方に去っていった。

 

それを屋上から見ている人がいた。

ヒルダさんだ。

ていうかまた、あの人は屋上とか高い所に登って。

いつか町の名物になりそうだな。

 

俺も飯食い終わったし教室帰るか。

 

 



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四将 友人が悪夢を見たそうです

 

俺と男鹿は屋上で休憩を取っている。

 

 

「一応聞いとくけど、大丈夫か?」

 

「大丈夫に見えるか?今日だけでもう6回だ」

 

目の前には黒焦げになって男鹿が転がっている。

つーか男鹿じゃなかったら確実に死んでるだろこれ。

 

「やべぇぞ古市…このままじゃまじであの夢のようになる…死ぬ、確実に死ぬっつ。何とかしなければ」

 

「夢?」

 

「ああ、恐ろしい悪夢だ」

 

その夢ではべる坊が魔王になり癇癪も大きくなり、泣いて街1つが電撃で消し飛ぶという事だった。

 

 

「フーン、そりゃあまた…何一つ否定出来ない所が恐ろしいな…」

 

「だろ?」

 

「それ、俺も死ぬよな」

 

「うむ、バッチリ死ぬ」

 

まあ、こんな見た目は赤ん坊でも大魔王の子どもの魔王だもんな。

 

「つーか改めて考えてみると…もしかして、人類の未来ってお前の肩にかかってる?」

 

「「………」」

 

「ハハハ」「アハハハ」

 

「「「あーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは

 

 

 

 

って!誰だーっ!!!」」

 

俺らと一緒に巨大なおっさんが大笑いしていた。

 

ビックリした。

能力的には珍しい、唯の変態アランドロンだ。

 

「そうです!次元転送悪魔、アランドロンです」

 

「大きなおっさん」

 

「あの二つに割れたやつか!デカっ!」

 

男鹿がオッサンの頭に掴みかかり頭を潰そうとする。

まあ、今までの恨みつらみがこもってるからな。

 

ひとまず手を離して説明してもらうことになった。

 

「坊っちゃまは魔王ですから強いものにしか惹かれません」

 

「いや、ま……ね」

 

あ、喜んでる。

男鹿は何気に率直に褒めると照れるからな。

 

「そして更に凶悪で残忍で傍若無人で人を人と思わぬクソヤローであればサイコーです」

 

「おまえじゃん」

 

上げて落としたな。

一応こいつも悪魔ということか。

 

「ええ、私も川で薄れゆく意識の中、貴方が大勢の人間を土下座させ、高笑いをしているのを見て確信しました」

 

「あぁ、この男なら坊っちゃまを任せられると。力を使い果たしてその後、寝ちゃったんですのねー」

 

男鹿が頭を抱え込み項垂れる。

なるべくしてなったわけだな。

 

しかし男鹿が項垂れていると何かを思いつく。

 

「もしかして、俺より強くて凶悪なクソヤローがいればそいつが親に選ばれるって事か?」

 

「そりゃあ、そんな人間がいればそーなりますかね」

 

男鹿が満面の笑みを浮かべる。

だが、男鹿よ。

 

「いねーよ。そんな奴。鏡見てみろ」

 

お前の今の顔は悪魔そのものだぞ。

 

「馬鹿め古市、忘れたのか?」

 

「あ?」

 

「ここは天下の不良校石矢魔高校だぞ?」

 

俺はその言葉に押し黙る。

確かにな。

候補はいっぱいだろう。

お前を超えるとは思えないが。

 

 

「神崎くんいるぅーー?」

 

男鹿が3年の教室のドアを開ける。

おお…見事に悪そうな奴ばっか。

 

ところ変わってここは3年生の教室。

こういう時の男鹿の行動力は凄まじいものだな。

 

「神崎さんだ。一年坊」

 

本当に押し付けにいったぞアイツ。

本当にあいつの精神どうなってんだ。

 

俺は観戦してるよ。

頑張って面白くしてくれ。

 

(古市~どうしよう)

 

こっちみんな。

もう、ギブアップか。

本当に頭弱いな男鹿の野郎。

しょうがないな。

 

「俺達実は東邦神姫最強の男である神崎さんの下につきたくて来たんです」

 

「こいつ喧嘩は強いですけど口ベタな奴でして…」

 

「あ″あ!?」

 

「口裏合わせろ。まずは下手に出ねーと話にならねー」

 

「下につきたい?」

 

「あ、ああっそーなんだよ!!」

 

「敬語」

 

「でがすよっ!!」

 

でがすよ?

 

勢力争いばっかしてるこの学校だ。

1人で2年幹部全員の力が集約したようなやつだ。

戦力にはなるし、他の勢力にとられるのも嫌なはずだ。

これは甘い餌だろう。

 

「ククッおもしれーじゃねーか。強いやつは大歓迎だ」

 

「ま、まって下さいっ!!こんな奴ら信用しては……」

 

「だったら証明してみろよ、城山。テメーに負けるようなやつはいらねぇ」

 

男鹿と城山が向き合う。

 

いい流れだ。

これであのデカイの倒せば下での地位が確立される。

 

男鹿の事だから容赦なく一撃で倒すだろう。

 

そんな事を考える間に予想通りに終わった。

顎に1発。

脳震盪起こしたな。

あれは立ち上がれない。

 

 

「待ってください…まだ、やれます」

 

おおっ!

常人なら絶対無理だぞ。

すごくタフだなあいつ。

 

それを神崎が蹴る。

男鹿が笑ってる。

この状況で笑えるとかお前、本当に人間味どこに捨ててきた、おまえ。

 

それでも神崎に忠誠を誓ってる。

凄いな。

更に立ち上がったぞ。

 

『私も主様のためならあれくらい』

 

ルビにまずあんな事しない。

その時点であの神崎ってヤローは失格だな。

悪ではあるが家臣を使い捨てる時点で王にも親にもなれる筈が無い。

 

「そこから飛び降りろ。はーい全員拍手ー!!」

 

「というわけだ。みんな期待してるぞ、側近気取りの城山くん」

 

いくらなんでも男鹿でも無理だなこれ。

 

「おまえが飛んでけ」

 

神崎を殴り、窓から吹っ飛んでいく。

他の人は呆然としている。

そりゃそうか。

 

そんな中魔王の雄叫びが春の空に高く、高く響いたという。

 

まあ、こうなると思ってたけど。

 

「よし、男鹿逃げるぞ!」

 

そういって俺は教室から出ていく。

男鹿を置いて。

 

「あ、まて。古市!」

 

遠くの教室から友人の声と人がめり込む音が聞こえる。

 

達者で帰れよ男鹿。

 

俺は男鹿を置いて帰宅した。

 

 

 



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五将 友人家が水浸しでした

男鹿に呼び出され、家に行くと男鹿の部屋の窓から滝が出来ている。

写真撮って置くか、記念に。

 

「ーというわけでな。事態は一刻を争うのだ」

 

ベル坊のアレを紐で止めている。

将来ベル坊病気になるぞ、アレ。

病名は覚えてないが男としては致命傷なアレが。

 

「俺の素晴らしい機転により一時的に沈静化はしたものの依然、ベル坊ダムは決壊寸前。予断は許さぬ状況だ。幸い、今日はうちに誰もいねぇ。今のうちに全て収拾するにはどーすればいいか。全員、頭をひきちぎれ!」

 

「知恵をふりしぼれ…な」

 

「ひきちぎれっ!!」

 

やはり、頭が弱いな男鹿は。

 

そんな横でヒルダさんが滅亡計画のような物騒な事をいっている。

沈むとべる坊も沈んでいく気がする。

 

「えーと…いいか?」

 

「はい、古市君!」

 

「何度もいうけど俺を巻き込むなよ。関係ないだろ」

 

「お前だけが頼りなんだ」

 

「出てねーし、出す気もねーよ」

 

「ばかやろう古市!!てめぇ、このまま日本が尿に沈んでもいいのか!?」

 

「うるせーよっ!!テメーも親ならオムツくらいはかせろやっ!!」

 

男鹿が俺の言葉に目からウロコな顔をしている。

 

「家の事は任せた!!」

 

「おい、待て!任せたって…どーすんのこれ!!」

 

「元通りにしてくれ!」

 

「ハア?!」

 

 

そういって男鹿は走り去っていってしまった。

どうせ、オムツがある所といえばドラックストアだろう。

 

「ーったく、オムツの問題じゃねーっつの。相当てんぱってんな、あいつ」

 

あーあビショビショ。

ーって俺の貸した漫画じゃん、これ。

俺の本焦がしたり、濡らしたり、あいつ……

 

 

「戻すのか?」

 

「そりゃあまあ、少し位はね。親友だしな」

 

「フンっ」

 

「ヒルダさんこそ…いくら悪魔の存在理由とはいえ、あんなアホと子育てなんて大変でしょ…」

 

 

 

 

 

 

 

「口が滑ったな男、いや古市」

 

 

「何のことですか?」

 

「私は自分が侍女悪魔だとは明かしたがその意味を教えてはいない。貴様ら人間がその意味を…その重さを知らないのは男鹿の姉で分かっている。だからその意味を知らないがおまえが知っているのはありえない。しかし貴様はそれを知っている。何故だ?」

 

 

「あれ?俺そんな事いいました?」

 

「もう、粗末な演技は辞めろ。本性を見せろ」

 

「………」

 

やっぱり勘がいいな。

俺も口が滑るなんてまだまだ、だな。

 

『主様』

 

ラピス、ここは黙っていろ。

 

俺は笑みを浮かべながらヒルダさんに話しかける。

 

「大丈夫です、安心して下さい。俺はあなた方の敵にはなりませんよ。男鹿の敵にならない限りは」

 

「……一応は信用しよう」

 

バリバリ警戒してるじゃないですか。

言葉だけだ。

ずっとこっち睨んでいるな。

 

「それより、男鹿のやつ追わないんでいいんですか?そろそろ決壊するんじゃないですか」

 

「……フンっ」

 

そういってヒルダは窓から出ていった。

 

「ラピス、よく我慢したな」

 

『……ご命令ですから』

 

「ちょっと乾燥してくれないか。家全体を」

 

『畏まりました』

 

「雑用を任せたみたいですまんな」

 

『主様が我々の存在理由なのです。そんな事は言わないでください』

 

「後で好きな食べ物作るよ」

 

『では、和菓子を食べたいです』

 

「材料は男鹿の家の使うか。ラピスの仕事料金として」

 

あんこやら何かいろいろ使って和菓子を作っていたが小腹が空いたから更に主食を作っていたら、男鹿の両親が帰ってきた。

 

 

「古市くん…何やっての?」

 

「男鹿に小腹空いたから料理を作れっていわれたから作ったんですけどついでにお疲れでしょうから夕飯を作りましたけど、迷惑でしたか」

 

「え!たかちんの料理!?やったー」

 

男鹿の両親の後ろからみさきさんが顔を出した。

 

「じゃあ俺も夕飯なんで帰ります」

 

「えー!たかちんも食べていきなよ。美味しいよ」

 

「味見して作ったの俺なんですから美味しいのは知ってます。大人しく帰りますよ。あ、あと冷蔵庫に羊羹入っているので良かったら食べてください」

 

そういって俺は男鹿宅を出て家に帰った。

 

「ラピス、羊羹美味しい?」

 

『主様の作った料理は最高です』

 

それはよかった。

俺はゆっくり空を眺めながら帰路に向かった。

 



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六将 友人が喧嘩やめるそうです

男鹿に屋上に呼び出されて行ってみると男鹿の他にヒルダさんとアランドロンがいた。

 

男鹿の右手をみると『蝿王紋(ゼブルスペル)』が描かれていた。

ようやく男鹿にも正式な契約の証が出たな。

 

ヒルダさんが説明しているが俺は知っているので聞き流す。

話が終わり、俺は質問する。

 

「あのー今更なんですけど、なんで魔王って親が必要なんですか?」

 

三人全員が俺の方を見る。

ここで、俺が突っ込まないと男鹿は気づかないからな。

 

「だって大魔王の命令で人間を滅ぼしに来たんでしょ?なのに人間を親にするって変じゃないすか。親代わりっていえばヒルダさんがいるんだからそれで、十分なんじゃ…」

 

(たしかに…っ!!)

おや、男鹿のテレパシーが聞こえたぞ。

本当にランダムだな、これ。

 

「触媒なんですよ。つまり魔王の親というのは」

 

アランドロンがしゃべりだす。

 

「まだ、幼すぎる坊っちゃまが人間界で魔力を発揮するには触媒となる人間の助けが必要となるのです。どれ程、巨大な電力があってもそれを通す丈夫な電線が無ければ意味が無いでしょう…それと同じです」

 

この頃はまだ、説明キャラみたいな感じだったのになんで後々あーなっちゃったのかな。

 

「そう。そしてその電線の伝導率が上がれば上がるほど坊っちゃまは巨大な力を引き出せる。貴様の拳の刻印はそのパラメーターだ。坊っちゃまと同調すればする程複雑に増えていくだろう」

 

男鹿の顔が呆然としている。

大丈夫か?

話ついてきてるか?

 

「つまり、貴様が周りの人間をぼろ雑巾の様に扱えば扱うほど……【真の魔王】に…っ!!!!」

 

男鹿が自分の手の甲を見ながら驚く。

そりゃなるわ。

 

 

 

 

 

-放課後-

 

俺は海釣りを楽しんでいる。

 

男鹿は海を見ながら決心していた。

もう、2度と喧嘩をしないと…

 

「人もなぐらねえ、土下座もさせねえ。スーパーいい人と呼ばれるようになろう」

 

男鹿よ、決心はいいことだが人を殴らないのも土下座をさせないのも普通の人だぞ。

いや、普通の人も偶に殴るか。

本当にこれから2度と殴らないならスーパーいい人なのかも知れない。

 

その決心を試すかのように不良が絡んできた。

 

男鹿は喧嘩せずに逃げ出した。

不良の仲間が逃げ道を塞ぐが男鹿は海に飛び込み泳いで逃げた。

 

不良がオドオドしている。

大人しく諦めるか、泳いで追いかければいいのに。

 

「ラッキー」

 

しかし、俺を発見して呟く。

こーなるよね、そりゃ。

 

「お前いつも男鹿とつるんでるよな?あいつのヨメのケータイの番号知ってるか?」

 

「あの人携帯持ってないっすよ」

 

なんで、不良ってこんなに顔近づけて喋るんだろう。

 

「持ってねーわけねーだろ。このご時世によー」

 

会話がアホだな、こいつら。

 

「あの、暴力とかなしにしません?見てのとーり俺、喧嘩弱いんで」

 

ブンっ!!

 

危なっ!

 

「すかしてんじゃねーぞ、腰ぎんちゃくがっ!」

 

普通に避けられるけど、力を殴る本人に返さないように受け流すのは苦手なんだよな。

 

「何をしている?男鹿と坊っちゃまはどーした?」

 

「ヒルダさん!…」

 

ヒルダさんに声を掛けたら後頭部に一撃食らった。

障壁を貼ったから食らった訳ではないが、食らった様に見えるからこのまま倒れよう。

 

よし。

ここでエメラ、精神沈静化を掛けてくれ。

そして気絶した提にする。

 

『アイアイサー(๑و•̀Δ•́)و』

 

そして意識が遠のいていった。

 

 

目が覚めるとどこかの廃ビルにいた。

横にはヒルダさんが転がっていた。

意識は無いようだ。

 

エメラ、他の3人に連絡した?

 

『してません。した方が良かったですか(・w・)』

 

しない方が正解。

あんまり大事にしたくないからな。

来たら絶対気づくし。

 

目の前では1話限りのモブみたいのが喋っている。

喋りながら近づいてくるが手に持っている銃が欲しいと思ってしまって全然話が耳に入ってこない。

 

俺の横には見事なリーゼントをした男がヒルダさんの髪を引っ張って顔を確認していた。

 

『見事な頭ですね(-´∀`-)この人』

 

この男は姫川。

石矢魔、東邦神姫のひとりで財力あり、知力あり、人脈ありと知り合っていたら将来が明るくなりそうな将来性のある男だ。

性格以外はな。

 

姫川が銃を持っていた男を蹴り飛ばす。

そして追い打ちをかけるようにモブを踏み付ける。

そして知ったがモブの名前は鈴木のようだ。

ザ・モブのようの名前だな。

アシッド鈴木ってwww

 

「フン。なかなか見所のある奴ではないか」

 

「気がついたんですね」

 

「あぁ…だが、何か強い薬を嗅がされたらしい。体の自由がきかん」

 

「悪魔にも薬とか効くんすね」

 

「まぁ、ものにもよるがな…相性が悪ければ死ぬ事も………」

 

「さてと、男鹿くんを呼び出してーんだが…」

 

「その事だけどヒルダさん、ケータイ持ってないっすよ。代わりに俺持ってるんで貸しましょうか?」

 

「ケータイ?なんだそれは?連絡手段のひとつか?」

 

「その口ぶり、持ってないみたいだね。じゃあそこの1年貸してもらおうか」

 

「1回千円です」

 

「………ポケットにケータイ入ってるだろ。取り上げろ」

 

モブが俺のポケットからケータイを取り出す。

 

チクショウ、後で無断使用で10倍の一万円財布から抜き取ってやろーか。

 

 

 

おせーな。

ここら辺よく覚えてないけど、何か準備してたような。

まあ、気長に待つか。

来なかったらこいつらボコって帰るだけだし。

 

「姫川さん!人影です!!誰か入ってきました!!」

 

お!ようやくか。

 

「なんだ、このおっさん。いよーに弱かったな」

 

次元転送悪魔、アランドロンだった。

 

「使えん奴…」

 

「ククッ残念だったな。タイムリミットだ」

 

 

そうだったそうだった。

アランドロンは次元転送悪魔の中でも下の方で戦闘はからっきしだったな。

 

さて、ご登場だ。

 

ピシッ

 

アランドロンが真ん中にから割れていく。

 

「ーったく、てめーら…世話やかしてんじゃねーぞ」

 

中から男鹿が飛び出てくる

そしてその勢いのままモブを殴り飛ばす。

 

「おまたせ♡」

 

ホント遅いわ。

ギリギリで登場するなんて主人公みたいだな。

 

「喧嘩、しねーんじゃ無かったのかよ」

 

「喧嘩じゃねーよ。今からすんのは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王の処刑だ」

 

 

 

 

 

 



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七将 友人がやりすぎました

男鹿がアランドロンの中から登場だ。

 

「魅せるねぇ、いい登場だ。マジシャンにでもなるつもりか?」

 

「あぁ、男鹿くんのびっくりイリュージョンの始まりだ。全員消します」

 

 

男鹿の死刑宣告だな。

 

「いくらだ?お前いくらで俺の下につく?」

 

 

姫川の口癖ともいう言葉が出たな。

 

「悪い話じゃねーぜ?俺はお前の事買ってんだ。どうやったか知らねーがさっきのマジックも大したもんだ」

 

姫川が椅子に座り、契約について話し出す。

 

「望む報酬を用意しよう。俺とお前が組みゃ石矢魔統一なんてわけねぇんだからな」

 

報酬としては破格何だろうが男鹿を雇うには足りないな。

 

「つーか、誰だ?てめー」

 

「プwww」

 

やっぱり男鹿は人の名前覚えるの下手だな。

元から覚える気がないだけかもしれないが。

 

モブ2人組が男鹿に絡みに行くが吹っ飛ばされ、天井に埋まる。

 

 

姫川が立ち上がり男鹿と向き合う。

 

俺達を開放して男鹿とサシで戦うみたいだ。

挑発して腹に殴らせようと仕向けてるな。

 

案の定男鹿は姫川の腹を殴り、人の腹とは思えない高い音がなった。

これで終われば姫川の計算通りなのだがそんなに男鹿が甘いわけねーじゃねえか。

 

男鹿は姫川を殴り飛ばし、先程まで座っていた椅子まで吹っ飛び叩きつけられた。

 

男鹿の手の蝿王紋が鳴動して光り輝く。

 

「くくっ、いいね。最高だよ、お前!!」

 

男鹿は姫川が隠し持っていたバトンを手で受け止める。

卑怯な姫川はバトンにあるスイッチを起動させる。

120万vの電気が男鹿に流れる。

 

 

「ベル坊の夜泣きの方が全然いてぇ」

 

しかく毎夜それ以上の電気を食らってる男鹿に聞くわけが無い。

流石に手が無いよな。

ここまでやって倒れないやつは殆どいなかっただろうし。

ていうかべる坊の電撃って120万v以上なんだ…

 

「くっ…おまえら!!何、ぼーっと見てんだ。人質だ!!人質を使え!!!」

 

姫川の手下がこちらに近づいてくる。

 

「よーしっ!!動くな!!それ以上動いたらテメーのヨメがどーなるか…

 

ドゴォッ!!!

 

「もう、よい。貴様の器は知れた。消えろ」

 

「後で無断使用ということで財布から10万抜き取ります」

 

俺とヒルダさんが立ち上がり紐を外す。

さっきのドゴォッ!!!で姫川の手下は全員、俺とヒルダさんが吹っ飛ばした。

残りは姫川だけ。

 

「ベル坊」

 

「ダ」

 

「男は、一度決めた事は貫き通さなきゃならねぇ。そう言ったよな」

 

「ダ」

 

「ーでもな。ダチがやられて黙っているのは男ですらねぇ、わかるな?」

 

「ダ!!!」

 

「ひっ…まっ待て…」

 

「お返しだ」

 

魔王の咆哮(ゼブルブラスト)』!!!!!!!

 

 

 

 

 

男鹿が姫川に魔王の咆哮を打ち込んだあとヒルダさんが男鹿に近づいていく。

 

「てめぇ…まさかわざと捕まってたんじゃ」

 

ヒルダさんが男鹿の手を取り蝿王紋を確認する。

 

俺はその間に姫川の財布から10万抜き取る。

 

「フンっ行くぞ。アランドロン」

 

「イエッサー」

 

「おいこら、試しやがったな。俺だけじゃねぇ、ベル坊だっててめぇを心配して……」

 

「坊っちゃまは私の心配などせん。貴様の怒りにアテられただけだ」

 

そういってヒルダさんとアランドロンが部屋から出ていった。

 

「古市…テメーもグルか?」

 

俺に矛先来たな。

 

「いや、全く。俺は殴られるの嫌いだから避けるのだけは得意だったじゃん。それで縄抜けはしといたんだけど人が多すぎて逃げられなかった」

 

「1人なら出来ただろう」

 

「1人なら…な。あ、あと男鹿!」

 

「なんだよ」

 

「ありがとな」

 

「ったく、ホント世話やかしてんじゃねーぞ」

 

「助けてくださったお礼にコロッケ10個でどうだ」

 

「今すぐコロッケ屋に行くぞ、古市!!」

 

「ダー!!!」

 

 

男鹿が走って廃ビルから脱出する。

 

臨時収入もある事だし他にも何か買うか。

帰りにスーパーにも寄らないとな。

 

「姫川先輩……ゴチになります!」

 

 

俺は外に出てふと、後ろを振り返る。

ビルは半壊していた。

 

最後の一撃でここまで崩れ去ったのだ。

 

姫川も運がいいよな。

衝撃の殆どをビルが吸収してくれて。

それがなきゃ死んでたぞ。

 

 

「おーい。古市何してんだ!早く行くぞ」

 

「分かった!今行く」

 

 

そうして俺は半壊した廃ビルから離れていった。

 

 

 



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八将 友人の公園デビュー

ボーーーーーーーーーーーーーーっ

 

男鹿はベンチに座っていた。

 

 

「男鹿、はいこれゴリゴリ君。ソーダとコーラ、どっちがいい」

 

「コーラ」

 

俺は男鹿にコーラを渡して男鹿の横に座る。

 

「…また、やっちまったな」

 

「あぁ、やっちまった」

 

「ケンカしねーとかさ、マジで無理じゃね?」

 

「すまん」

 

「あやまんなよ、先に。お前はコロッケ買ってくれたじゃねぇか」

 

「男鹿のせいとはいえ俺も油断したからな。一応謝らねーと」

 

(ーーーいや…)

 

「と、いうより今回はヒルダさんにハメられたな」

 

「…………あぁ、あの女狐。結局捕まったふりかよ」

 

まあ、疲れたわ。

マジで。

 

「ーったく、今思い出してもムカつくぜ。あの乳女。人が折角助けにやってきたのに礼の一つも無しかよ。古市は俺にコロッケ10個買ってくれたのによー。なぁ、ベル坊……ベル坊?」

 

 

「ダ(要求)」

 

ベル坊が公園にいる親子のたかいたかいを要求している。

そして男鹿はベル坊を天高く投げ飛ばした。

 

しかし、投げ飛ばした時点で13m。

男鹿即死まであと、2m。

男鹿はベル坊のお陰で距離を正確な翻訳に図れるようになった。

 

「まて、こらぁあ!!!」

 

男鹿は、天高く飛んでいったベル坊を追っかけていった。

 

ゴリゴリ君コーラは地面に投げ捨てた形になった。

まあ、友人の命には変えられないか。

 

俺はゴリゴリ君を食べる。

 

「あ、当たった」

 

後で店にもらいに行こう。

 

「ーーーしっかし、この先どーなんのかねー」

 

男鹿も飛んでいったことだし、

 

「ゲーセンでも行くか」

 

 

 

 

 

 

ゲーセンに行くと女の子が絡まれてた。

 

っていうかオータムだ。

 

「なにやってんすか」

 

「ぁあ?!てめぇには関係ないだろ!」

 

「いや、そういうの放っておけないタチなんで。で、どうしたんすか」

 

「この女がよ俺をゲームでハメやがってよ、一種のカツアゲをしてくんだよ。だからその分の代金よこせっていってんだよ」

 

ただのゲームが弱い馬鹿じゃん」

 

「なんだと!てめー!!」

 

あ、声に出てた。

 

「ちょっと待って下さいよ。ここで話すのも何ですからちょっと奥で話しませんか?」

 

そういって俺は店の奥を指さす。

すると、馬鹿はニヤリと笑い。

 

「おー、いいぜ。向こうで話そうぜ、ゆっくりな」

 

オータムはここで待つことになった。

俺はお金を渡してゲームでもしといてもらう事にした。

 

-5分後-

 

俺は奥から出てきた。

 

「早かったですね」

 

「いや、案外話せばわかる人たちでさ。早めに話を終わらせてくれたよ。ただあと、ゲームは1回だけにしてくれってさ」

 

「じゃあ、一戦。あのゲームでお願いします、ネーヴェ」

 

「リベンジかな。オータム」

 

ネームで呼び合うのはなんか悪ノリだ。

 

Redy FIGHT!!!

 

 

熱戦だった。

こんなにもやり込むのはいくらかかるか分からない。

しかし、そう簡単に勝ちは譲れない。

 

「また、負けました」

 

「流石に危なかったよ」

 

「同情はやめて下さい」

 

「同情してないよ。ぶっちゃけギリギリだったよ。俺もゲームは一番だと自信あったんだけどな」

 

「あなたもなかなか上手いですよ。私に勝つのですから」

 

「……そっちもなかなかの自信家だね」

 

「当然です。ではもう一度」

 

「いや、1回だけだったからね。俺は帰るよ。まだ、明るいし俺が送る程でも無いでしょ」

 

「そうでしたね。私はトイレに行ってから帰ります」

 

「寄り道しないで帰りなよ。じゃあ、またゲームしような」

 

そういって俺はゲーセンから出て家に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

不思議な人ですね。

また、名前を聞くの忘れてました。

でもオータムとネーヴェでいいですかね。

必要は無かったのですが少しめんどくさかったので絡まれたときは助かりました。

 

私も家に帰らないと…?

 

そういえば奥の部屋と言っていましたが奥の部屋は今行ったトイレしかありませんね。

 

女子トイレと男子トイレの二つ。

それ以外に外に出る手段はありません。

男子トイレにずっといるのでしょうか。

 

流石にあの状況で話し合うだけには見えませんでした。

ゲームをして忘れてましたけど。

ネーヴェが力自慢には見えないのですが。

 

私は男子トイレのドアを開けると

 

「だめよ、中を見ちゃ。お嬢ちゃんは家に帰りなさい」

 

女の人の声がして目の前が真っ白に光り、思わず目を瞑り、そして目を開けると目の前には私の家の扉がありました。

 

「あれ?私はいつのまに」

 

『ゲームをしにいってあの人とゲームをやってトイレにいって普通に帰ってきたのよ』

 

「そうでしたっけ?」

 

『そうよ』

 

「そうでしたね」

 

私は誰と喋っているのか。

その場で振り向いても誰もいませんでした。

 

「千秋姉ちゃん扉の前でなにやってるの」

 

「あ…いえ、ただいま」

 

「おかえり、姉ちゃん」

 

 

不思議なこともあるんですね。

 

 

 

 

 

 

 

「ラピス、護衛お疲れ様」

 

『主様、危なかったですよ。あの子男子トイレ覗こうとしてました。主様のやったことバレるところでした』

 

「え?じゃああれ使ったの?」

 

『だめでしたか?』

 

「いや、矛盾が特に出来てなさそうだから別にいいよ。聞かれてもしらばっくれるから気にしなくていいよ」

 

『主様の為ですから』

 

「ホント、いい子だよラピスは。帰りに和菓子買っていこうか」

 

『はい』

 

 

 

さて、帰るか

 

 

 

 



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九将 先輩の見舞いに行きました

男鹿が家でゲームをやるといっていたので暇つぶしにちょっと先輩方のお見舞いに行くことにした。

 

「たしか、401号室。神崎一、姫川竜也…ここか」

 

部屋の中から先輩方二人の声がする。

 

「邦枝?」

 

「戻ってきたのか、あの女」

 

へえ、いい情報だな。

東邦神姫の紅一点、烈努帝瑠3代目総長。

 

【邦枝 葵】

 

いやー美人なんだろうな。

 

「ええ、昨日北関東制圧を終えて」

 

「また、勢力増えてるらしーっすよー」

 

あれ、二人以外にも声がする。

この声は夏目先輩と城山先輩だな。

 

「実際、邦枝はやりづれーっすよ?強ーし、人望はあついし。なんせ一年にして石矢魔女子をまとめ上げたカリスマだ」

 

それを聞いて神崎、姫川が話して喧嘩を売り合う。

怪我してるのによくやるなー。

病院なんだから暴れないようにしないと。

 

「ーーーま、それはともかく。そこに隠れてるの出てきなよ」

 

夏目先輩から声がかかる。

 

まあ、バレてるよな。

気配全く隠してないし。

 

「どうも先輩方お見舞の品です」

 

「お前は男鹿のツレの…」

 

「顔を覚えてもらいありがとうございます。城山先輩」

 

「何しに来た。神崎さんの首でも取りに来たのか」

 

城山先輩が臨戦態勢に入る。

 

「別にそれでもいいんっすけど、今回は普通にお見舞ですよ。神崎先輩にも姫川先輩にもお世話になりましたし。ああこれ甘い物です」

 

そういって俺は家で作った手作りのお菓子を渡す。

 

「敵の塩なんかいるかよ」

 

「その通り、俺はタダほど信用無いもんはねえんだよ」

 

「そうですか……あ!じゃあ、夏目先輩食べますか?」

 

「いいの?ありがとう…ってうまっ!なにこれ城ちゃんも食べてみなよ」

 

「毒が入っているかもしれん」

 

「神崎先輩の毒味役ということで最初に城山先輩が食べるとおもってたんっすけど」

 

「そうだな」

 

速っ。

速攻で食べたぞ。

本当にこの人は忠臣だな。

 

「本当に上手い!これはどこで売っているっ!?」

 

「手作りっす」

 

「お前菓子作りの天才か!?」

 

ここまで褒められると流石に照れるな。

 

あれ、先輩方2人がこっちを見ている。

すると、姫川先輩が

 

「いくらだ?」

 

「はい?」

 

「その菓子いくらだって聞いてんだよ。俺はタダが嫌いなだけだ。いくら払えば渡す?」

 

「お見舞の品なんで特別価格5000円で」

 

「買った!」

 

5000円を貰い残り全てのお菓子を譲る。

 

「てめー!!姫川!独り占めしてんじゃねえ!」

 

「これは俺が買った菓子だ。お前には渡さん」

 

「さっきバナナやったじゃねぇか!」

 

「バナナはタダだがこれは見舞いの品じゃなく、俺の金で買ったんだよ諦めな。…ほう中身は羊羹か」

 

「右から順にこし餡、粒餡、胡麻餡、芋餡、芋羊羹、栗羊羹になっております」

 

「それも元々は見舞いの品じゃねーか!一年坊もなに普通に説明してんだ!」

 

「お前これ、俺が買ってる和菓子店より上手いぞ!俺が雇ってやろうか」

 

「俺の名前は古市です。学生のうちは無しで、将来仕事に困ったら姫川財閥に就職しに行きますんで。あ、あと」

 

俺は部屋の外に一旦出る。

そして廊下に置いてあるものを取ってくる。

 

 

「病院食は味薄いと思ってお弁当持ってきましたけど食べます?」

 

俺が取ってきたのは和食が入った重箱と洋食が入った開けるまで中が見えない【クロッシュ】を詰んだ台車を運び込む。

 

「タダが怖いのであればどちらも10000円からの値段です」

 

「買った!」

 

「姫川てめー何また買おうとしてんだ!」

 

結局神崎先輩が重箱を姫川先輩がクロッシュの方を買った。

普通のお弁当サイズの方も二つ持ってきたので城山先輩と夏目先輩に渡した。

 

ここでお昼タイムとなり、各々食事をしてまたもや俺の料理が美味しかったらしく。

 

「お前卒業したらうちの会社でシェフやらねえか。特別待遇で雇ってやるよ」

 

「こんな髪型の奴じゃなく俺の家の板前やれよ言い値で働かせてやる」

 

父さん、母さん。

俺、もう就職の心配がなくなったよ。

 

「これ食って学校に早く戻ってきてくださいよ。お二人がいなくなった事で統率がきかなくなってんすから」

 

「学校の統率をして俺達になんの利益がある」

 

姫川が睨んでくる。

 

「報酬に毎日昼の弁当届けます」

 

「引き受けた!よし、3日で治す!」

 

「ざっけんな!俺が先だ」

 

「じゃあ、俺帰りますんで。先輩方お大事に」

 

「城ちゃん俺達も帰ろう」

 

「お、おう。神崎さん、失礼します」

 

部屋から退室すると同時に看護師が入ってくる。

 

「ちょっと、アンタたちまたケンカっ!?いい加減にしなさい!」

 

 

「「たーのしーなー」」

 

「夏目、古市……お前ら…」

 

 

さて、学校が楽しみだな。

 

 

 

 



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十将 友人が修羅場を作り出しました

 

「女王?」

 

「ああ、なんか噂でさ石矢魔の女王がかえってくるって。すんげー美人らしーぞ。なんでも、うちの女子全員連れて遠征にいってたとか…」

 

「ふーん、女王ねー」

 

登校のときに聞いた噂を男鹿に聞かせる。

これで記憶の奥底に植え付けられたろ。

 

そして放課後、俺達は飲み物を買いに来た。

 

「女王見に行こーぜ」

 

「は?」

 

「「は?」じゃねーよ。」

 

「お…おう。え?何が?」

 

「だからっ!女王見に行こーぜって言ったろ。話聞けよ!」

 

「あ…ああ」

 

「そして何でそんなテンション低いんだ」

 

「逆にお前は何故そんなテンション高いんだ」

 

「この学校共学のはずなのに女王が全員引き連れて行ったから男子校状態だったからな。だがこれからは違うぜ。なぁ!男鹿!」

 

「ウゼェ…」

 

「てゆーか男鹿も興味あると思ったんだけど…」

 

「はあ!?ねえよ。そんなもん…」

 

「…赤ん坊って父親より母親に懐くっていうから」

 

「行くぞ、古市!!光よりも早く、女王のとこへ!」

 

「ぐえっ、襟を引っ張るな!首がしまるだろ!」

 

「ようやくベル坊をあずけられるぜ」

 

「あずける前に襟から手を離せ、女王に会う前に俺が死ぬ!」

 

 

 

俺は男鹿と廊下を走り、女王もとい邦枝のとこへ向かう。

 

ガッシャーン

 

ガラスの割る音…近いな。

 

廊下の先に薄らと人影がみえる。

特攻服にみえる、あれか。

面白い場面がやっと見れる。

 

着いた瞬間邦枝が男鹿に木刀を突きつける。

 

これが邦枝葵か…

綺麗な黒髪とヘソが出てるのがいいな。

 

 

ん?あれって…

 

「オータム!!!」

 

「古市どーした?ついに壊れたか?」

 

俺の叫びで3人反応した。

1人は単純に俺の頭を心配した、男鹿。

1人は俺の叫びに驚いた邦枝。

そして、

 

「ネーヴェ?」

 

邦枝の側近のひとり谷村千秋ことオータムだった。

まさかの原作キャラに驚きが隠せない。

マジか…でもなっちゃったもんは仕方ないしな。

腹決めるか。

 

「何、千秋。知り合い?」

 

「古市知り合いか?」

 

奇跡的に同じ答えをいう。

 

「「ゲーム仲間」」

 

「この前話した絡まれてる時助けてくれた人」

 

「へえ、そうなの。千秋を助けてくれてありがとね」

 

「どういたしまして」

 

ここで、周りの不良共が話し出す。

邦枝ビビってるとか何とか。

そしたら邦枝が木刀を振り、

 

「赤ん坊を下ろしなさい。それじゃ本気で戦えないでしょ?」

 

やっぱ心月流はとんでもねーな。

 

「男鹿、良かったらベル坊預かるよ。そしたらしっかり見極めなよ」

 

 

「いや、いい。来いよこのまま相手してやる」

 

「やっぱりクズ野郎ね。赤ん坊を盾にする気?それとも…私のこと、ナメてんのかしら」

 

邦枝が踏み込み、男鹿を突こうとするがシャツが切り裂かれるだけで肉体には当たっていない。

やっぱり目で追えるところを見るとまだ、遅いんだな。

 

さらに邦枝が追撃をかける。

『心月流抜刀術弐式【百華乱れ桜】』

 

校舎を破壊するがまだ一撃の間に隙間があり過ぎる。

校舎を見てもそれが良くわかる。

そこらへんのボンクラには聞くだろうが……

 

「こえーヒルダかよ」

 

男鹿には通用しない。

 

ここからは聞こえないが男鹿とベル坊が喋っている。

まあ、大体予想できるが。

近づき邦枝の肩を掴む。

 

この、誰もが男鹿に邦枝がやられると思った瞬間、

 

 

「こいつの母親になって下さい」

 

 

 

「は?」

 

 

 

 

 

はい、修羅場確定しました。

 

 

 



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十一将 友人の知らないところで…

「男鹿…何考えてんの?」

 

「何のことだよ」

 

「何って女王。お前の中でどんな感じ?」

 

「ああ、あいつか。あの女凄まじい強さだった。ベル坊も珍しく喜んでやがった。あいつにならベル坊も懐くぜ。そしたらこんな生活もオサラバだ」

 

諦めホントに悪いな。

無理なんだろうけど。

 

「必ずあの女にベル坊を押し付けてみせるっっ!!!」

 

「情ねぇ決意だな」

 

「ーーー……だれに何を押し付けるって?」

 

「あ、ヒルダさん」

 

「まったく貴様はいつになったらミルクを忘れずに持っていくのだ」

 

「てめーこそ、いつになったらふつーに登場すんだよ」

 

真後ろから気配を消し、ヒルダさん登場。

まあ、悪魔だから俺は感知できるがな。

 

 

 

ヒルダがべる坊にミルクを飲ませながら男鹿の話を聞く。

聞き終わると一応契約者にはなれるらしい事を聞いて男鹿が喜ぶ。

本当に馬鹿だな、男鹿は。

強さだけじゃ無理な事もう忘れてる。

 

 

と、考えているとベル坊の哺乳瓶が割れる。

 

何かと思えばMK5か。

 

空気読めないっていうより運が悪いよなこの5人は。

瞬殺でMK5を打ち倒す。

 

人の目に付いたので中庭から退散する。

 

 

「で、男鹿よ。クイーンに魔王押し付けるったって一体どーするつもりだ」

 

「あん?どーするって普通にな」

 

「確かに邦枝は強かったけど全然悪じゃないじゃん。むしろ正義だろ。女子を男子から守ってる時点で。まさか勝手にベル坊が懐くとか思ってんじゃねーだろうな」

 

男鹿がハッって顔をしている。

思ってたな。

 

「古市…男は気合だぜ」

 

「うるせーよ。つまりノープランじゃねーか。渾名にかんしても王は男の王で女王は女の王だから渾名としても合わねーぞ」

 

「バカ、古市。女王つまり王、魔王が懐く…マジで」

 

「それで懐くとしたら渾名は王女じゃないか?」

 

「マジか…」

 

そんな話をしていると

 

「男鹿ちゃーん邦枝とやり合ったんだって?なんだよ早いよ。見たかったのに」

 

トイレから夏目先輩が話しかけてきた。

 

「誰だっけ?」

 

忘れんなよ。

見てないけどオムツの時も世話になったろうが。

 

「ほら、お前が最初にベル坊をあずけようとした奴と一緒にいた」

 

男鹿と夏目先輩が話していると近づいてくる気配があった。

どちらも確認済みだ。

 

「男鹿辰巳…ちょいとツラ貸してもらおーか。あんた邪魔なのよ」

 

2人と男鹿が向き合う。

ベル坊は野良猫と向き合う。

ベル坊と野良猫の戦いが始まり、ベル坊が決まった!みたいな顔をするがその拳は野良猫にがっつり噛み付かれている。

 

「ベル坊ーーーーっ!!!」

 

「よわっ」

 

「でぇい!離れろこの性悪猫がっ!!いたっちょっ……いたたたたたっ」

 

「ちょっと勝負…」

 

「今、それどころじゃねーよっ!!泣くな、ベル坊ーーーっ!!傷は浅いぞおぉっっ」

 

「あっ…こらっ!!待ちなさい!!」

 

男鹿はどこかに走り去っていった。

 

「何だ、やんねーのか」

 

「残念そうな夏目先輩に悲報ですけど男鹿は女殴らないんであんま見に行く必要ねーですぜ」

 

「マジで…あの男鹿ちゃんがねえ」

 

「確実に姉の影響ですけどね。男鹿の唯一頭が上がらない人ですし」

 

「そーかい。んじゃ女王との戦いは見る必要ないね。じゃーね古ちゃん」

 

「さようなら、夏目先輩」

 

なんか、呼び方が城山先輩みたいにグレードアップしてる。

 

「ちょっとそこのアンタッ!」

 

「なんすか?」

 

「男鹿が女殴らないってホント何でしょうね?」

 

「ホントっすよ。男鹿の姉がそういうの嫌いでそんな事やったら男鹿が確実に病院送りでしょうしね」

 

「はあ!?病院送りッ!?」

 

「はい、男鹿は喧嘩で姉に勝てませんから」

 

俺は後ろに殺気を感じ振り向く。

 

「そこまで悪いやつじゃないのかも……」

 

「千秋!?あんたまで何て事を」

 

「そうだぜ」

 

ガンっ!

 

俺は後ろからの攻撃を避けたが前方向からも来ていた男に谷村さんは殴られ、倒れてしまった。

 

「あ…あんたは!」

 

大森さんが反応するが、後ろに忍び寄ったものがいた。

 

「大森さん!後ろ!!」

 

「男鹿は極悪非道さ」

 

大男から拳が振るわれる。

大森は身構える。

その衝撃に備えるために。

しかしその細腕ではその衝撃を耐えられない。

思わず大森は目を瞑った。

 

 

ドゴッ!

 

 

 

音はなったが衝撃が来ない。

目を開けると目の前に男が1人。

 

「てめーら、なに女子を闇討ちしてんだ。本当に空気読めない奴らだな」

 

 

 

 

「1回死んでみるか?」

 

 

 

 

銀髪の男が大男の一撃を守っていた。

 

 





古市君のフェミニストの部分がブチ切れタイム
次回にご期待ください


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十二将 友人の知らないところで喧嘩します

俺が大男と大森さんとの間に入り、警戒のためか殴ってきた大男が距離をとる。

 

「こいつ誰だ?」

 

俺と烈努帝瑠の2人を襲ったのはMK5だった。

本当に空気読めない奴らだな。

久々にプッツン来ちゃったよ。

 

「ほら、男鹿についてた腰ぎんちゃくだよ」

 

「ああ、男鹿にくっついて甘い汁啜ってるただの雑魚か」

 

「雑魚はお前らだろ。場の空気も読めない下等生物が」

 

 

「アンタ……」

 

「そこから動かないでください」

 

「女を守るヒーロー気取りかよ!男鹿を呼んできた方がいいんじゃねえのかよ」

 

「理由は3つ。一つは人を呼びに行く時は後ろから狙われやすいから。お前らもそこを狙うだろう」

 

「そりゃそうだ」

 

「だったらアタシも戦えば…」

 

「二つ目は単純に邪魔だから」

 

「!?」

 

「俺が守った時に咄嗟にやった所為なのか足を痛めてる。そんな状態で戦っても足でまといになるだけ」

 

自分の足の状態を見切られ、落ち込む大森さん。

 

「じゃあ、お前どーすんだよ。ひたすらお仲間が心配して駆けつけるまで時間稼ぎするか?」

 

「三つ目」

 

「?」

 

「実はこれが一番の理由なんだが…お前らが弱すぎて手伝うと過剰戦力だから」

 

「あ”ぁ!てめぇ、金魚の糞の癖してホラ吹いてんじゃねぇ…ぐボッ」

 

頬にハートマークつけた阿呆の後ろに移動して首に手を回し、落とした。

 

 

「嶋村!…てめぇ、嶋村に何しやがる」

 

「見せてあげてるだけだよ。…天国の扉ってやつを。早く助けないと本当に逝っちゃうよ」

 

「てめぇ!」

 

殴りかかってきた4人を去なす。

サングラスの大男の背を足場に飛び上がり、もう一人の大男である眼鏡の男の顔をサッカーボールキックで思いっきり蹴る。

首が真横に曲がり、倒れる。

あと、3人。

 

真後ろからヌンチャクを使ったスキンヘッドが攻撃してくる。

回しているヌンチャクを手で掴み。

ヌンチャクを取り上げ、ヌンチャクをサングラスかけた大男の顔に向かってブーメランの様に投擲する。

なんとか大男は掴むがこれはブーメランじゃない。

残念ながらこれはヌンチャクだ。

 

掴んだ方とは逆の方が自身の顎に当たり、脳震盪を起こしてその場に倒れる。

あと、2人

 

ヌンチャクを取られ怒ったスキンヘッドが掴みかかって来たのでそのまま巴投げした。

普通の巴投げは投げ飛ばすが今回はちょっと魔力使って高く上げてみた。

 

校舎より高く上がったな。

地面につくまでに分かるだろう自分がどういう状況にあるか。

気づかない方が楽だろうがな。

あと、1人

 

リーダー格が逃げようとするがここで俺が逃がすと思うか?

一瞬で傍に近づき腕を回してロックする。

 

「いてててっ!」

 

「当たり前だろ。お前がリーダー格だろ?最後に取っておいたんだから」

 

俺は手のロックを解除してリーダー格の前にでて顔のある箇所を、押す。

昔なにかで読んだのだが顔のある箇所を押すと地上でも海に溺れている感覚を味わえるらしい。

リーダー格は一瞬止まったがそのままその場に倒れた。

 

俺はハートマークの男を覚醒させる。

 

「んあっ?お前らっ!」

 

「人の心配より自分の心配した方がいいぜ」

 

俺はハートマークの男の髪を掴む。

 

「いてぇ!髪を掴むなよ!」

 

「さっさとお前らの飼い主とこ帰れば止めてやるよ」

 

「帰るから離してくれっ!」

 

「分かった、離すよ。」

 

俺は髪から手を離す。

そして頭を引っ張り、大森に聞こえないように耳打ちする。

 

「あと、これをやったのを俺ってばらすなよ」

 

「え?」

 

「yesなら右目を瞬きしろ、noなら左を。noなら今ここで病院送りにする。超拷問コースでな」

 

ハートマークの目が恐怖に染まる。

 

「後で言ったら、お前を探し出し決行する。同じ学校だから早いよな。お前ではなく他のメンバーが言っても決行する。答えがない場合もしくは声を出す等の他の行動した場合も決行する。君の英断を期待するよ」

 

当然ハートマークの答えはyesだった。

 

 

「良かった」

 

俺は頭を離す。

 

「じゃあ、さっさと帰れ!そして飼い主に伝えろ!そんな卑怯なマネすんなってな!」

 

 

 

 

それにしても

 

 

「やり過ぎた」

 

ここまでやる必要なかった気はするが、後悔していないからいいか。

 

大森さんがずっとこっちを睨みつづけている。

とりあえずは、

 

「何する気!」

 

大森さんの方に近づく。

 

「保健室に行こう。設備がないと処置も出来ない」

 

「あ、ああ」

 

俺は谷村さんを横抱きする。

 

「行きましょう」

 

「ああ……痛っ!」

 

そこで気づいたが大森さんも足怪我してたな。

 

「後で何発でも殴っていいんで」

 

「へ?…って何すんのよ!」

 

俺は大森さんを担ぎ上げる。

 

「口開けないでください。舌噛みますよ」

 

「ちょっと待って、降ろし…ああっ!」

 

俺は保健室に駆け出した。

 

エメラ、守備しなくていいから治癒の準備しといて。

 

 

 



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十三将 友人による犬神アート

「谷村さんの怪我の手当ては終わりました。ちょっと靴下脱いでください手当てするので。そう、いつまでも顔を隠してないで足を出して下さい」

 

「うるさい。こっち見るな」

 

「じゃあ、布団から足だけでいいので出して下さい」

 

そういうと怪我をしている方の足だけ出した。

俺は湿布などをはり、手当てをしていく。

 

「全く、後で怪我が治ったら好きなだけ殴っていいと言ってるんです。その恥ずかしさはそこにぶつけるとして今は普通にして下さいよ」

 

流石におぶって校内走ったのは精神的にキツかったようだ。

 

「はい、終わりました。ゆっくりしておいて下さいね」

 

大森さんは横になる。

 

「ありがとね。助けてくれて」

 

「どういたしまして。一応気疲れしてると思いますし少し眠ったらどうですか?ケータイにアラームかけて。休んだ方が女王にも心配かけないんじゃないですか。他の烈怒帝瑠の子が来るまで俺がここを守りますし」

 

「ありがとう」

 

「それについてはもういいんで。そうだ後で女王呼んでくれませんか?」

 

「いいけど、どうしたの」

 

「男鹿は超のつく馬鹿なのであの時のセリフも多分意味を間違って使ってますんでちゃんと話し合いの場を設けた方がいいと思いまして」

 

「ちゃんとした理由ならいいわ。葵姐さんに伝えとく」

 

そういって大森さんはケータイのアラームを設定すると直ぐに寝てしまった。

 

エメラ…なにかやった?

 

『魔力慣れしていない人間では私の治癒は少し眠気を誘ってしまいますからね(*´ч`*)』

 

知らなかったけど結果オーライか。

助かったよエメラ。

 

『主様の仰せのままに(。>▽<。)ノ』

 

さて、他の烈怒帝瑠が来るまでと言ったが早めに来るだろう。

何気に俺が烈怒帝瑠総長の側近2人を担いでいたんだから、目撃者多数で直ぐに駆けつけるだろう。

 

「こっちだ!」

 

ほら早くも。

 

ガラッ

 

「お静かに。怪我人がいるのだから大きな音で開けないでください」

 

「寧々さん、千秋さん。…何をした?」

 

何をしたって…

 

「男鹿のところに来て(MK5に)襲われたから返り討ちにして(気疲れしてたから)眠らせただけだよ」

 

「よくも寧々さん達を!」

 

あれ?壮大な勘違いの予感。

危なそうだから……よし、窓から逃げよう!

 

俺は窓から外に出る。

 

「待て!」

 

「屋上で男鹿と待ってるって伝えといて(大森達に)」

 

そういって俺は走って屋上を目指す。

一緒にケータイで男鹿に屋上に来るように連絡する。

 

そういえば大森さん達、全然起きなかったな。

 

『1度寝たらアラームなるまで起きないようにしちゃいました(๑´•ω • `๑)』

 

うん、親切心だからしょうがない。

多分俺もあの子達が入ってくる前にそれ聞かれたら同じことしてくれって頼んだからあまり結果は変わらないよ。

 

 

 

「古市〜どうかしたか?」

 

「おう、男鹿焦げてるって事は結局ベル坊は泣いたのか」

 

「それだけ言うために屋上に呼んだんじゃねえだろうな!」

 

「いや、さっきお前のところに烈怒帝瑠の子2人来たじゃん。あの子にいって女王連れてきてもらおうと思ってな。一応悪魔の話だし、雑魚共に聞かせていいか迷ったから聞かれない屋上に呼んだんだよ。もうすぐ来るだろう」

 

「もう、来てるわ」

 

扉が開き、邦枝が出てくる。

 

「全くうちの子たちを伝言に使うなんて…」

 

凄い怒ってる。

ああ、ヒルダとの修羅場的な感じで怒ってんのか。

 

「男鹿辰巳、古市貴之。あなた達は許さない」

 

あれ?俺も?

 

「はっ、上等だ。わざわざそっちからきてくれるたぁ、気が利くじゃねーか」

 

「ーで何をゆるさねーって……?」

 

「ーーーっと…」

 

「あんたらの狙いは私でしょ?だったら最初から私のところに来なさいよ」

 

「狙い?」

 

ここから男鹿のスーパー勘違いスタート。

 

「何だ、知ってんのかよ。だったら話は早ぇな」

 

「何を…してるの?」

 

「いつでもどーぞ」

 

「何が?!この後に及んで、まだ赤ん坊を盾にする気!?この卑怯者!!」

 

「むずかしーな」

 

分かっているのか男鹿よ。

むずかしくしているのはお前だ。

 

「何をした?」

 

「あ?」

 

「2人に何をしたの?」

 

ここで男鹿倒した神崎先輩と姫川先輩の2人が頭に浮かぶ。

ここで俺が間違いを正してもいいが話を聞かない可能性があるかならな。

 

「…別に弱ぇ奴に用は無えからな。サクっとぶっ飛ばしただけだぜ」

 

「外道がっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぴぴぴぴぴぴぴぴぴ

 

「寧々さん!!良かった気がつきましたか」

 

「大丈夫だよ。少し寝てただけだからね。そうだ葵姐さんの居場所知らない?」

 

「え?…ああ大丈夫ですよ。さっき寧々さん達の仇をとるって男鹿と男鹿の腰ぎんちゃくが待ってる屋上に」

 

「…え?」

 

「あの銀髪のヤロー許せないですよね。寧々さんと千秋を襲撃するなんて。大丈夫です。総長がやってくれます…って、あ!寧々さんっ!?」

 

「まずい、知らせなきゃ。誤解だって…痛っ!」

 

足が痛い。

けど早く伝えなきゃ。

 

葵姐さん、待っていて下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んふふ、いいざまね」

 

あの2人が戦っているという事はMK5は作戦に成功した訳だけど帰ってきてないのが気になるわね。

まあ、私1人でも作戦には支障がでないからいいのだけど。

 

「しょうがないから人払いを雇う事になったじゃない。あとであの子達は折檻よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作戦など全く上手くいってないが自分の望んだ展開になって喜ぶオカマが笑っているのがここから丸見えだった。

人払いなんてとっくに俺が凹ませたから、普通に人が来たら上がってくるよ。

いやー戦闘音してると思ったんだよな。

烈怒帝瑠の子とやりあってたから軽く捻って烈怒帝瑠の子の手当てして放置してきた。

 

こっちもいよいよ終盤だからな。

 

「何故?どうして、攻撃してこないの!?」

 

「アウ」

 

「何考えてるのか知らないけど…あの子達の痛みはこんなもんじゃないわよ」

 

『心月流抜刀術壱式【破岩菊一文字】』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男鹿が倒れるの久しぶりに見たな。

まあ、本人はやったー凌ぎきったとか思ってるだろうが。

 

「姐さんっ!誤解です。そいつらは」

 

 

「フフッ少し遅かったわね。チェックメイトよ」

 

「美破!!」

 

「美破…え?どういう事?」

 

「私と千秋がやられたのはこいつらにです。男鹿じゃ、ありません」

 

「そう、全てはあんたと男鹿を戦わせる為の罠よ♡おかげであんたはバテバテ。不味いわねー。今、私と戦って勝てるかしら?」

 

既に勝ち誇ってるところすまなんだ。

 

「シムラー後ろー」

 

「へ?」

 

「人がせっかく我慢してんのに…邪魔すんじゃねーよ」

 

後から倒れていた男鹿が登場。

オカマを後から屋上の床に殴りつけた。

その拳でちょっとしたクレーターが屋上に出来上がった。

 

「…なにを…してくれてんのよ!このボケがぁぁぁっっっっっ!!!!!」

 

本当にタフだよな。

ある意味この世界で一番タフなんじゃないか?

まあ、いまこの話はどーでもいいがな。

 

「てゆーか、何なのあんた!?さっきまでボコボコにやられてたクセに空気読みなさいよっ!!あんたの出番はもう終わりなの!!こっから先は女王対決でしょ!?そーゆー流れなの!!わっかんないかなぁ!?あーもうっ!!本当、信じらんない!!私の美しい顔をよくも……絶対ぶっ殺すから…」

 

めこっ

 

再度オカマが床に埋まる。

 

「うーん何言ってんだ?このオカマ」

 

同感だな。

 

「ちょっとおおおおおおひどいじゃないのっ!!あんた悪魔!?さっきから乙女の顔を容赦なくガンガンとーーー……」

 

めこっ

 

「タフなヤローだな」

 

「ゴラァぁぁぁぁあっっ!!まだ、人が話してる途中でしょー!!てゆーかさっきからその赤ん坊の顔がムカつくんですけど…!!」

 

「うるせー」

 

めこっ

 

「あの…もう、そのへんで…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーーーやっと静かになったね」

 

「ウィーーーッ」

 

クイーン(笑)が屋上に突き刺さり、見事な犬神家を作り出している。

その出来の良さかベル坊が勝利の雄叫び上げている。

 

「おっ、ベル坊も機嫌なおしたか。よしよしちょっと血ぃ流したくらいでもう泣くんじゃねーぞ?」

 

「ダッ」

 

「ーーーさて、と。じゃ、続きをやろーか?」

 

「私の負けよ」

 

「あん?」

 

「いえ、そうじゃないわ。ごめんなさい、私…何て言ったらいいかーー…」

 

「そうか!!じゃあはい!!」

 

「は…?はいって…?」

 

「あん?だってお前の攻撃に耐えきったらこいつの事もらってくれるんだろ?」

 

「いやーなかなかきつかったぜ。ベル坊は泣いちまうし」

 

 

 

 

 

 

 

「あっはははははwwwあー面白かった。これが見たかったんだよ。……ヒルダさんは失望してるんでしょうけど」

 

俺とヒルダさんは屋上入口の陰から見ていた。

このどうしようもない微妙な空気漂うこの空間が見れて俺は満足だった。

 

「まったくだ。あの男には失望した。残忍さだけが取り柄だと思っておったのに女相手では手もあげんのか……まったくもって、クズめ」

 

「まあ、しょうがないでしょ。そういうのは美咲さんの教育がありますからね」

 

「姉に負けている時点でその程度ということか」

 

「潜在能力的には男鹿の方が上でしょうが美咲さんには小学生の時からボコられてたから体にそれが染み付いるんじゃないですか。男鹿は体で覚えるタイプですし」

 

「そのくらいで手を上げないのがドブ男なのだ」

 

「さいですか」

 

ヒルダさんが男鹿の方に歩いていった。

 

「まったく……いつまで下らん話をしている。帰るぞ、その女は親にはなりえん」

 

「え?いやーでも…」

 

「さぁ坊っちゃま参りましょう。帰ってオフロに入りましょうねー」

 

「だっ…ちょっ……待てこら!」

 

「待ちなさいっ!!」

 

「あなた、恥ずかしくないの?自分の子を人に押し付けたりして…」

 

「ーフン、文句があるなら腕を磨いて出直してくるんだな」

 

男鹿にはきこえないようだが俺には聞こえる。

2人を挟んで鳴り響く雷の音がwww

 

俺はその光景を笑いこらえながら見ていた。

 

「じゃ、俺らも帰ろうぜ、男鹿。雨降りだしそうだし」

 

「古市…おまえどこに隠れてやがった」

 

「何処って…隅っこの方。じゃあ烈怒帝瑠の方々また、明日!」

 

俺は走っていく。

 

男鹿は俺を追いかけてくる。

しかし、俺には追いつけまい。

不良共から逃げるためについた持久力、脚力、反射神経をなめるな!

 

結果はコロッケ屋のとこで捕まり、お詫びとしてコロッケ奢ることになったのだった。

 

 

-次の日-

 

「結局、今回もダメだったな……」

 

「あぁ、だが心配するな」

 

「してねーよ」

 

「俺は諦めん。次の目星はついてるしな!!」

 

「次っていうと石矢魔最強と呼ばれる東条か…?」

 

「おうよ」

 

 

「ちょっ…待って下さいよ。姐さん!!なにやってんですか!!」

 

後ろから女子の声が聞こえる。

 

「これくらい当然よ。私が浮ついた所為で皆に迷惑をかけたんだもの」

 

「だからって何もやめなくても…千秋!!あんたも何か言いなさいよ」

 

「……似合います」

 

「千秋!!」

 

「ーーーそれに前々から考えてた事なのよ。そろそろ烈怒帝瑠は寧々に任せてもいいんじゃないかって…」

 

「ー…姐さん…」

 

「ーだからカン違いしないでよね、ケジメよ」

 

「姐さん!!」

 

「「………」」

 

フッ

 

「男鹿…頑張れよ」

 

「何だよっ」

 

 

 

これからも面白くなりそうだな

 

 

 

 




明日から不定期更新です。


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十四将 友人の所為?友人のお陰?

白い砂浜、青い海。

照りつく太陽が俺を歓迎している。

 

みなさん、こんにちは。

古市です。

 

ようやく夏休みに入り、喧嘩に明け暮れる友人とも離れ、俺は今家族と南の島に来ています。

 

男鹿は当然置いてきました。

 

家族旅行にあの友人をつれてきてもまた喧嘩するだけ。

ゆっくり休めないしな。

 

原作の記憶も割とあやふやになりかけてるし、一回頭も体もリラックスしよう。

 

プールで遊んでいた女性達のビーチボールが跳んでくる。

俺はそれを投げ返そうと持ち上げるとプールの中に大きなおっさんが浮いていた。

 

とりあえず女性達にはボールを返す。

女性達は後ろのおっさんに驚いてプールから出ていった。

 

俺はおっさんと目が合った。

 

おっさんは立ち上がりこちらに向かってくる。

 

俺は駆け出した。

それが逃げきれないものでも。

 

『殺しますか?』

 

あの侍女悪魔に感ずかれる。

ここで敵対はしたくない。

それに次元転送悪魔はそう簡単に殺せない。

それは身にしみてるだろ。

 

『…はい』

 

『では、逃げ続けるのですねε=ε=┏(゚ロ゚;)┛』

 

いや、もう無理だ。

ラピスとライトは解析に専念しておいて。

 

俺はおっさんに飲み込まれた。

 

 

 

 

 

 

「お!きたきた。古市!!」

 

 

俺はおっさんから吐き出された。

 

 

「市民プール、行こうぜ!!」

 

ーーー前略おふくろさん、

 

 

 

 

 

 

友達って…何ですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「学生2枚」

 

男鹿の分も払うのはもう恒例化してるな。

 

 

 

 

「改めて聞くけどさ、これは何の拷問だ?」

 

木陰で俺は人を眺める。

男鹿は横でべる坊と一緒に寝っ転がっている。

 

「何って…夏といえばプールだろ?」

 

「それはそうだが…なんでこんな蒸し風呂みたいな市民プールに行かなければ行けないのか聞いてるんだ」

 

「なんかムカツクから」

 

「直球だな!!つーかこれ、お前も楽しくねーだろ!」

 

「ん?俺はほら…お前のがっかりした顔が見れたらそれで満足だから」

 

やっぱりこいつはスーパーいい人には絶対なれないな。

こんな人の不幸を喜ぶヤツ。

 

『主様も喜ぶときあるじゃないですか(Ծ﹏Ծ )』

 

俺別にいい人になる気ないし。

 

『主様より徳の高い者などこの世にいません』

 

あまり持ち上げすぎないで欲しいな。

いつもは護衛が1人だけどこういうのも楽しいな。

 

「ーー…ときたもんだ。さすが次元転送悪魔」

 

話進んでたな。

 

「それ、逆に男鹿がリゾートに来るという発想にはならなかったのか?」

 

「ははっ何いってんだ。そんな事しても………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あっ!!!

 

 

 

 

死ねよもう……

 

 

 

実際、男鹿がリゾートに来ても面倒だったけど。

 

「はあ、全く…リゾートで浮かれてたかな」

 

この話も割と俺の中では大きな話だったと思うんだが、やはり気を引き締めなければ。

 

自販機を見るとよく知っている銘柄のパチもんみたいのがある「コク・コーラ」とか「四ツ谷サイダー」とか。

俺は「オレンジーノ」派だがな。

 

排出口からオレンジーノをとると俺の横に人が来た。

チラリと横に来た人を見ると。

 

「オータム」

 

隣には谷村千秋がいた。

俺は谷村さんと呼んでいるが不意に会うとオータムと言ってしまう。

癖だな。

 

「千秋ー!!そっちの席座ってるわよ…ん?」

 

更に後ろをみると四代目烈怒帝瑠総長大森寧々がいた。

 

「…あんたは…確か、古市」

 

俺はぶっちゃけこのイベントが凄く楽しみだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー奇遇ですねー今日は二人っきりなんですか?」

 

「…ええ、まあ」

 

俺はなんとなく2人と同じ席に座る。

男鹿はどうせ呆けているんだ。

 

 

「残念だなー女王に挨拶もとい水着見たかったのに」

 

やばい本音と建前が声に出た。

 

 

「姐さんは今、修行中だからね。遊んでいるヒマなんてないのよ」

 

「修行…?…まさか、花嫁修行ですか?」

 

「違うわよ。1から鍛え直すって言ってんのよ」

 

男鹿との戦いで実感したんだろうな。

まあ、それでも勝てないのごろごろいるけどな、この先。

 

「おまけにチームはやめるってなんて言い出すし、本当男鹿との1件があってから踏んだりけったりよ」

 

大変そうだな。

 

「ーーーそっちこそ、男鹿は一緒じゃないの?」

 

「いますけど、そこらへんで呆けてますけど。呼んできましょうか?」

 

「その必要は無いわ。言っておくけど…私らまだ、あんたの大将の事認めてないから」

 

二人がこちらを睨んでくる。

 

「まあ…あんたは…認めてなくもないけど…」

 

顔を赤らめながら大森さんはそっぽ向いた。

 

((か…かわいい!!))

 

今、谷村さんと心が通じあった。

 

「…って寧々さん!何かあったんですか?!」

 

「あれ?千秋に話してなかったっけ?」

 

あれ?伝わって無いのか。

 

 

 

「よう!古市じゃねーか。久しぶりだな」

 

後ろからチャラいのが四人きた。

 

「珍しく女連れだな。俺らにも紹介しろよ」

 

 

 

 

誰だっけ?

 

 



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十五将 友人はまだ呆けていた

話を大幅に編集しました。


「知り合い?」

 

機嫌悪そうな顔をして大森さんが話しかけてくる。

 

「いや、顔覚えないです」

 

「おいおい、何だそりゃ。もっとあんだろお世話になりまくった先輩だろ」

 

先輩?……あっ高島か!

あの時は悲惨だったな。

 

「こいつ根っからのたらしだから気をつけた方がいいよー君たちのことをエロい目でしか見てねーからね」

 

高島の取り巻きが大森さん達の後ろにまわる。

 

「まあ、安心しなよ。こいつ俺達には頭あがんねーから」

 

高島が大森さんの肩に手を置く。

 

 

 

瞬間

 

 

俺は立ち上がり机を叩く。

 

 

 

「先輩…今日は勘弁してくれませんか?」

 

「何だそりゃ。古市諦めろってか」

 

「はい、代わりにこの人紹介しますんで。ここはお願いします」

 

俺はケータイに入れてる写真を見せる。

写真には金髪の眼鏡美女が写っていた。

眼鏡があっていて知的で清楚さのオーラがある。

 

「へえーなかなかいい女じゃん。いいよ、今から電話しろよ」

 

俺はボタンを押す仕草をしてケータイをかけるフリをする。

 

『二度目はないということですね』

 

そういうこと。

ヨゴレ仕事任せてごめんね。

怒ってるライト連れてっていいから。

ていうか行くでしょ。

 

『はい、この下等生物達に身の程を教えてやります』

 

「はい、分かりました。先輩会えるそうです。場所はどうするか聞いてますけど」

 

「場所は駅裏の喫茶店って伝えくれ」

 

「はい」

 

じゃあそういうことで。

 

『『畏まりました』』

 

 

 

そこでもう出てこない人達は帰っていった。

 

 

「あんた…あれでよかったの?」

 

「はい、あの人の近くに先輩方のトラウマがいるので」

 

「嵌めたってこと」

 

「ええ、あまりやりたくは無かったですけどあの人今回みたいな事常習犯なんで」

 

「戦おうとはしないの?」

 

大森さんが聞いてくる。

質問ばっかで飽きてしまう。

最後の質問は俺の強さを知らない谷村さんはそれは酷だろうという顔をしていた。

 

「俺は痛いの嫌いですからね。あと男鹿には絶対勝てないしな」

 

男鹿には俺の能力を総動員しても勝てないと思ってるからな。

漫画の主人公とか魔王の親とかじゃなくてあいつには勝てないからな。

 

「それよりもあの時の話谷村さんに話してないのですか?」

 

「そういえば千秋、あの時気を失っていたから話してなかったわね」

 

凄く無理やりな話題転換だったが話題は変わってくれた。

 

 

「あの時ってなんですか?寧々さん」

 

「MK5に襲われた時に助けて貰ったんだよ。一応助けられたからね。信用はしてるわ」

 

 

「じゃあ俺はかき氷買ってくるんで話といて下さい」

 

 

こういう所の値段って軽く引くくらい高いよな。

女の子と食べれるなら安いとみるか。

 

「買ってきましたよ。苺とメロンとブルーハワイ買ってきましたんでお好きな味をどうぞ」

 

「…MK5の件、ありがとうございます」

 

話はついたようだ。

谷村さんにお礼を言われる。

 

「いいって、俺もやり過ぎた所あるから。あ!あとその事は他の人には言わないでね」

 

「?何でですか」

 

「いや、ね。俺は余り痛いのとか嫌いだから喧嘩は弱いって事にしてるんだよ」

 

「じゃあなんで男鹿の隣にいるんですか」

 

だいぶ直球だな。

まあ、話の流れ的に気になるところだろうけど。

 

「男鹿の親友だから…かな?」

 

自分で言ってなんだけどくっさいセリフだな。

 

 

 

 

「………」

 

 

無言やめて!辛い!

 

『主様、終わりました』

 

あ、お疲れ様。

どうなった?

 

『過程は話すと長くなるので省略致しますが、今彼らは町のゴミ拾いに勤しんでおります』

 

大丈夫?それ。

精神おかしくなってない?

 

『少しラピスの魔法で視野を広げただけです。生命活動においては問題ありません』

 

………うん、分かった。

そういう事にしておく。

 

 

「大森さんに谷村さん」

 

「名前呼びでいいよ。千秋もいいね」

 

「……寧々さん千秋さん。今日はすみませんでした。意図してなかったとはいえあんな奴らを近づけてしまって」

 

「気にしてないよ。そもそもあんたがいなくても来そうだったわよ」

 

「いいえ、そちらが気にしてなくもこっちが気になりますから。ですので今度こちらがお金持ちますので何処か行きませんか」

 

「あんたもナンパのつもり」

 

「いえいえ、別に。俺以外にも男誘ってもいいですし。そうですね時間がある時…そうですね、男鹿が東条倒した後なんてどうですか?」

 

「!?……あんた勝てると思ってるの?」

 

「男鹿は強いですからね。勝ちますよ絶対」

 

「………………はぁ」

 

「どうしました?」

 

「いいわよ。けど条件として「男鹿が東条を倒した」時だけだからね」

 

「有難うございます。じゃあ俺は帰ります。元々は男鹿に引っ張られた感じ来たのでそろそろバイトの時間が」

 

「ふーん、そう。じゃあね。古市」

 

「では、さようなら。寧々さん千秋さん」

 

俺はプールから出ていった。

男鹿?

どうせ話しかけても反応しないだろ。

というわけで置いてく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空には青空が広がっているがもう俺は1日の終わりのように疲れていた。

 

はあ、いい事と悪い事が一気に来すぎて頭がパンクしそうだ。

 

そうだ。

ラピス解析は完了した?

 

『はい。ですが完全に再現するのは難しいです。少し転移魔法というのを侮ってました』

 

で、できるのかな。

 

『霊体は実体があればついていくという形で可能です。実体は現時点で1人なら可能です』

 

なら、いいか。

後々飛べる人数を増やせばいいし。

で、今から飛べる。

 

『はい、座標指定は完了しています』

 

じゃあ、開いて。

 

 

 

俺の前に黒い歪みが現れる。

歪みは広がっていき遂には人1人通れる程になった。

俺は足を進めその歪みに入っていく。

 

「さようなら、日本。そして……さっきぶり、南の島」

 

俺は南の島に来れた。

いや、ね。

少しばかりは賭けだったけど成功して良かった。

 

「じゃあ、ホテルに帰るか」

 

 

俺はオッサンを見つけたプールにいた。

 

「あー!お兄ちゃんいた!どこいってたの」

 

後ろから声をかけられる。

振り返ると妹がいた。

 

「ほのか!よかった帰ってこれたのか…」

 

「帰ってこれた…って何処までいってたの?」

 

「いや、少しばかりこの辺を探索してたら思ったより遠くに行ってたみたいでな。やっとここまで帰ってこれたんだよ」

 

「お兄ちゃん…はぁ。残念だろうけど夕食は無いからね」

 

俺は空を見上げる。

まだ転移魔法は完成していない。

場所は飛べるみたいだが通る瞬間に時間も大分飛んでいるようだ。

いくら時差があろうとも行っていたのは1時間位だ。

それがもう真っ暗闇。

………当然か。

ちゃんと場所に飛べただけでも良しとするか。

 

「じゃあそこら辺のスーパーで食材買って厨房借りて料理するか」

 

「私も食べる」

 

「あれ?ほのかは夕食食べたんじゃ無いのか」

 

「食べたけど食べるの。お兄ちゃん心配してお腹減ったの」

 

「はいはい、作りますよ。でも初めての食材だから上手く作れるか分からないよ」

 

 

 

 

 

その後…厨房は無事借りる事ができた。

しかし、他の客が俺の料理を食べたいと言いだして、何故か料理するハメになった。

バイト代としていくらかもらえたからいいけど。

 

俺の睡眠時間は減る事になった。

 



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十六将 夏風邪

お久しぶりでございます。
とりま、1話上げます。
明日上げるかは秘密。
それではどうぞ



「ただいま!我が家!!」

 

リゾートも終わり、家族一緒に我が家に帰ってきた。

こっちは蒸し暑いが、それでも少し懐かしく感じてしまうのはなぜだろうか。

 

「お帰りなさいませ」

 

そしてリビングには大きなおっさんがソファーに座っていた。

 

 

 

俺はすぐさまおっさんの腕をとり、動きを止める。

しかし抵抗して暴れだす。

 

「父さんはこの不審者抑えるの手伝って!母さんは警察に電話、ほのかは倉庫から縄持ってきて」

 

「お待ちください!!不審者じゃないですから!警察は不味いです!縄とかいいので話をお聞きください!」

 

 

 

 

 

おっさんが暴れた所為でただでさえ蒸し暑いというのに更に熱くなった。

 

とりあえず、おっさんは縛り上げて正座させる。

 

 

 

「私、バティム・ド・エムナアランドロンと申します。我々がこちらに来て数ヶ月。私もそろそろどこかに腰をおちつけねば……と思っておりまして。しかし主君と同じ家に暮らすなど畏れ多いですから、男鹿殿のご友人の古市殿の家に上がらせて頂きました。という訳で住んでもよろしいでしょう「ダメ」」

 

 

アランドロンがいう前にほのかが言い放つ。

 

「男鹿さんの知り合いかもしれないけどこんな変なおっさんが家にいるなんてありえない」

 

まあ、当然だよな。

 

「俺はどうでもいいからほのかと親から頑張って許可貰えよ。もらえなかったら警察に不法侵入で突き出されるだけだし」

 

俺はそれだけを言い残して、家から出てきた。

家に住むかは割と大事なことだが、めんどくさかったので家族に任せた。

家族がOKしたなら俺はいいかな?って感じだし。

 

とりあえず男鹿の家行こう。

 

 

 

 

 

「む、古市ではないか」

 

呼び鈴を鳴らすとヒルダさんが出迎える。

 

「こんにちはです。本当に男鹿の家住んでるみたいですね。男鹿はどうしてます?」

 

「あの男なら中にいる」

 

家に入れてもらい、リビングに入ると外より暑い。

べる坊の顔が赤い。

王熱病だったか?

かなりキツそうだ。

 

「古市!!いいところに来たな。丁度お前を呼ぼうと思ってたとこだ。見ろ、べる坊が夏風邪でよ。なんとかならねーか?」

 

「なんとかってなんだよ。人ならともかく魔王の風邪の治し方なんて俺知らねーよ」

 

「人のやり方でいいから頼む!」

 

「あっ、たかちんじゃん。氷嚢はなかったんだけどさー簡易プール見っけちゃった。こいつに氷浮かべて冷やすべ」

 

間違った風邪の治し方をいう、男鹿の姉の美咲さんが話してくる。

 

「治らないと思いますけどね。しょーがない。俺が代わりに氷嚢買ってくるわ」

 

「おー頼んだぞ!古市」

 

ドラッグストアにでも売ってるだろ。

 

俺は男鹿の家を出て、ドラッグストアへ向かった。

 

 

それにしても……

 

 

本当に手の蠅王紋(ぜブルスペル)消えてたな。

 

 

 

 

 

 

その日はとりあえず氷嚢渡して、べる坊の汗をちゃんと拭くように伝えて帰った。

 

 

 



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十七将 友人がふっとんだ

「いなくなった?」

 

次の日、男鹿の家に行くと男鹿が清々した顔をしていた。

 

いや、この顔は心配してる顔だな。

自分でも気づいていないみたいだしな。

 

「たつみーーーっ!!!」

 

美咲さんの飛び蹴りが男鹿にクリームヒットする。

 

漫画でもoutな音を出しながら男鹿がボコボコにされていく。

絵も見せられないよ!って感じだ。

 

男鹿と俺が外に放り投げられる。

 

 

「いいっ!?ちゃんと探して連れてくるまで家には入れないからね!!」

 

 

 

「せっかく手に入れた自由だってのに誰がわざわざ探すかってーの。それにしてもあっちーな、川原にでも行くか」

 

 

男鹿は気づいているのか、いないのか分からないが川原というとべる坊を拾った場所じゃないか。

 

変な感じだが数ヶ月で男鹿の信頼を得るなんて……な。

 

「おーい、はやく来いよ」

 

「わーってるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっ」

 

川原につくとサングラスかけた男がいた。

名前なんだっけ?思い出せない。

 

「東条さーん、男鹿来ましたよー」

 

草陰に話しかけると、返事が帰ってくる。

 

「おー今行く。……ほーうなるほど、お前が男鹿か………思ったより細いな

 

 

 

 

 

 

ケンカ、しようぜ」

 

その男の肩にはべる坊がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男鹿のやつ、かなりムカついてるな。

だが、状況的には願ったり叶ったりだから凄く混乱して焦っている。

 

家に帰ると言いながら川に入っていく。

 

「おい、男鹿。焦るのも分かるが一先ず確認しろよ」

 

「別に焦ってねーよ」

 

「素で川が家とか言いだす友人なんか俺は嫌だぞ。………東条先輩!一つ聞きたいんですが、その赤ん坊はどうしたんですか!?」

 

「あぁ……こいつか?………そうだな、俺に勝ったら教えてやるよ」

 

ですよね。

結局ケンカするんだよな。

 

東条が手下その1にベル坊を預ける。

 

そして男鹿と向かい合う。

 

 

「ふふっ、いいね。目でわかるぜ。お前も俺と同じただのケンカ好きだ。自分の本気を試したくてウズウズしてんだろう?だが、周りには弱いヤツばっかで全力を受け止めてくれるやつなんてそういねえ」

 

 

 

 

「俺がそうだ。どっからでもかかってこい」

 

「………ふざけたやろーだ」

 

 

男鹿……悔しいだろうがここは負けないといけない。

ここらで自分並みに強いヤツと戦わないと強くなれない。

 

お前が負ける姿は俺も見たくは無いけどな。

 

 

「……いくぜ」

 

その言葉で二人が同時に殴りかかる。

 

男鹿が押し負け、川まで飛ばされる。

 

 

ここで終わるのは雑魚だけ。

男鹿は直ぐに立ち上がる。

 

そして殴り合う時と同じように二人が向き合う。

 

「いいね、もう一回やろうってか」

 

今度はなんの合図も無しに二人が同時に殴る。

 

 

「……らぁっっっ!!!」

 

 

今度は東条が押し負ける。

 

東条の巨体も吹っ飛ばされる。

しかし東条も何もなかったかのように立ち上がる。

 

「面白くなってきやがった。……なぁ、お前もそうなんだろ?いい気分だ。続きをやろうぜ」

 

そしてまた、向き合う二人。

これはもう、ケンカよりただの殴りっこだ。

 

また、二人が同時に殴る。

今回は吹き飛ばず、すぐさま東条がもう一度殴りかかる。

 

それは男鹿がガードして、ワンテンポ遅れて男鹿が殴りかかる。

しかし、簡単に東条に手をつかまれる。

 

そして同時に頭突きをかます。

 

 

 

 

「フッ…男鹿っつったか……お前、下の名は?」

 

「あ?辰巳だ、ボケ」

 

「……そうか……礼を言うぜ、男鹿辰巳……」

 

その瞬間男鹿が後ろに遠のく。

 

「そうそう、そこのガキな。ありゃ俺のじゃねーぜ。昨日拾っただけだ。なんだか知らねーが迷子でな、仕方ねーから親が見つかるまで面倒みよーって訳だ。……まさかお前が親ってわけじゃねーだろーな」

 

「そんな事聞いてねー………聞ーてねーって……

 

いってんだろっっ!!!」

 

男鹿が東条に殴りかかる

そこから男鹿がラッシュしていく。

 

肩襟を掴み、破る。

 

 

そこには男鹿から消えた蠅王紋(ぜブルスペル)が刻まれていた。

 

そしてその一瞬に気をとられ、男鹿が油断してしまった。

 

「礼をいうぜ……お前のお陰で少し本気を出せそうだ

 

 

いくぞ」

 

 

東条が言葉を発した後、男鹿の視界は逆さまになる。

 

俺のいる場所から更に後から飛ばされ、川に落ちた。

 

手下その1が言っていたがギャグマンガみたいに吹っ飛んだと言ったがまさにその通りだ。

 

これで悪魔の力が無いから化け物だよな。

 

「なあ、そこのお前。あいつに伝えときな、楽しかったぜってな」

 

「いいっすけど、俺も男鹿の代わりに伝えていいすか?」

 

「ん?」

 

 

 

「俺はまだ、負けてねー。勝負の途中だボケって」

 

「………」

 

 

「男鹿ならそう言うと思うんで宜しくお願いします。……それじゃ俺は男鹿拾ってこなきゃいけないんでさよならです」

 

俺は男鹿が落ちた方に走っていく。

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫か?男鹿」

 

男鹿は気を失っていたようで少し流されていた。

口には魚が生きたまま入ってピッチピッチいってる。

 

「くそっ!!」

 

「男鹿……この後どうすんの?東条のやつは帰ったけど。東条のやつを追いかける?」

 

「帰る。体がクセーからシャワーを浴びる」

 

「分かった、俺はちょっと用事が出来たから。あ……そうだ。男鹿!東条から伝言」

 

「ああ?」

 

「楽しかったぜって」

 

男鹿は無言のまま川から上がり、自宅の方に歩いていく。

 

 

 

 

 

「じゃあ、俺も用事をすませるか。私用だけど」

 

 

 



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十八将 決戦前

市立図書館裏の公園でケンカが起きていた。

 

ケンカしていたのは男鹿に負けた東邦神姫の二人神崎、姫川と東条の手下その2のかおる。

 

東条もその場にはいたが、ケンカには参加せず傍観していた。

 

二人はかおるに倒されてしまっていた。

 

「お前らは弱い。手下達がいなくなるのも時間の問題だったな」

 

かおるはケンカする為に外していた眼鏡をかけ直す。

 

「虎、終わったぞ」

 

「じゃあかおる、ちょっと手伝ってくれよ。学校に運びたい物があってな」

 

「俺も手伝いましょうか」

 

東条の後から声がかかる。

そこには銀髪の男が立っていた。

 

 

ってゆうか俺だ。

 

 

「お!お前は男鹿と一緒にいた………えっと……?…」

 

自己紹介していないから名前覚えてないよな。

 

「古市貴之です。伝言はちゃんと伝えておきましたよ」

 

「おお、フルイチか、ありがとな。で、なんのようだ」

 

「大方、男鹿の腰巾着をしていたが負けたから虎の手下にでもなりに来たんだろ」

 

男鹿のケンカの強さでついてると思われてるのは心外だな。

ま、そう見られるのも仕方ないけどね。

 

「いや、俺が下につくのは1人だけなんで。残念ながら違います。東条先輩………

 

 

 

 

 

ケンカしませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいぜ。かおる、こいつ預かってくれっか?」

 

「虎!こんなやつとやる必要ない俺で充分だ」

 

「いや、ケンカはしますけど。記念づくりみたいなもんですから。ちょっと軽めに殴るだけなんで」

 

「だってよ」

 

「はあ、分かったよ。赤ん坊預かっておく」

 

 

 

 

「じゃあ、やろうぜ」

 

「まあ、軽めってことで一発ずつにしませんか?東条先輩からでいいので」

 

「おう」

 

そう言うと東条は腹部を思いっきり殴ってきた。

かおるがケンカしてる時見ていてケンカしたい衝動に襲われていたのか、イライラをぶつけられた気がした。

 

しかし、

 

 

「ぐっ!………次は俺の番っすね」

 

障壁もなにもしてない状態で俺は耐え切る。

ここはちょっとした意地みたいなものだからな。

 

俺は振りかぶり東条を殴りつける。

 

 

 

その一撃は昼間に男鹿から受けた一撃よりも重かった。

 

東条は吹き飛ばされ、公園にある池に突っ込む。

 

 

 

 

男鹿が負ける事は前世の記憶で分かっている。

しかし、それとこれは別だ。

男鹿が負けた姿に少しムカついた。

 

そして男鹿を負かした男にちょっと八つ当たりしようと思った。

 

理由がちょっとあれだったから一発ずつで最初は東条から、()()の力は使わない。

 

そんなルールをしいてケンカした。

 

痛いのは嫌いだがここはやっておきたかった。

力は使わなかったが少しイラつきに任せて強めに殴ってしまった。

 

これ、後で男鹿と戦う時に響いたらどうしよう。

 

 

 

「はっはっはー!!!面白いなお前。続きやろうぜ!」

 

東条は普通に立ち上がってきた。

 

 

力使ってないし、手加減したけど、それでも立ち上がってくるなんてやはり凄いな。

 

東条はケンカするつもりみたいだが。

 

「ダメです。一発ずつって最初に言ったじゃないですか。それでもやりたいのであれば男鹿と戦ってからにして下さい。伝言の通りまだ、終わっていませんので」

 

「………はっ、分かった。後でだな」

 

ちゃんと分かったのだろうか?

原作でもボケが多かったから心配だ。

 

東条の友人兼手下その2は呆然としている。

東条が吹っ飛ぶところなんて見たことなかったのだろう。

 

 

 

「では、約束通り運ぶの手伝いますよ。どこにあります?」

 

「おう、こっちにな……」

 

 

 

 

今頃男鹿は夢の中かな。

 

 

俺は先に行ってるよ、男鹿。

 

 

 

 

東邦神姫のお二人はベンチに寝かせときました。

 

 



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十九将 友人と喧嘩と花火

ここは学校の校庭。

 

東条先輩とかおる先輩が一緒におり、東条先輩が花火の準備をしている。

 

そんな中小規模だが爆発音がした。

 

「なんか今、妙な爆発音が……」

 

「爆発音?まだ火、つけてねーぞ?」

 

「いや、そっちじゃなくて……」

 

東条先輩には聞こえなかったようだが、今の爆発音は邦枝先輩の菊一文字だな。

 

「いやーびびったびびった、こんな時間に花火やるとかいうから来てみたら………なんすか?あの人だかり」

 

「人だかり?」

 

「あっ!ちょ!!!花火って……それ本物じゃないすか!!いったいどこで…?」

 

「ん?あぁ。祭りのバイトでくすねた」

 

「犯罪っすよ!!屈託ない笑顔で何言ってんすか!!」

 

花火の玉も打ち上げ用の筒も揃っている。

 

因みに筒を運んだのは東条先輩だが、花火の玉を運んだのは俺だ。

花火大会行きたかったが行きそびれたしな。

 

「ははっ、でっけー花火でも見りゃこいつもちょっとは元気出すと思ってよ。なあ」

 

そう言い東条はベル坊を見る。

依然としてベル坊は何も言わずに東条の背中に引っ付いている。

 

「ってお前、男鹿のツレの……「古市です」…そうそう古市、お前がなんでいるんだよ。まさか、東条さんに取り入ろうなんて考えてんじゃないだろうな」

 

相沢先輩がサングラス越しにこちらを睨んでくる。

 

それにしても、かおるさんといい俺ってそんなに小物に見えるかね。

 

「そんな事しませんよ。俺はただ見届けに来ただけですよ」

 

「………」

 

どの人も無言好きですね。

 

 

 

「それより庄次、人だかりっていうのは…?」

 

かおる先輩が相沢先輩に話しかける。

 

 

 

 

「全校生徒?」

 

「ええ、なんか手柄たてて東条さんの部下になるとか」

 

「でたらめな話だ。誰が言い出したんだそんな事……」

 

「あ、それオレオレ」

 

二人の視線が東条先輩に向けられる。

 

「ーーーってあんたかいっ!!!」

 

「いやー手下にしてくれとかうるさいからさ、頑張ったらいいよって。あと花火やるから見においでって」

 

「しかもテキトー!?」

 

こういうところが東条先輩が好かれる要因の一つだな。

強さも確かに引かれるが邪気のないひたすら真っ直ぐな心が人を引きつける。

 

元来の性分なのか憧れの人の影響なのかは分からんがな。

 

 

 

「まあ、いいじゃねえか。どのみちウチはそういう学校だ」

 

 

 

 

「全員集めて、喧嘩して、最後まで立ってた奴が大将。それでいいだろ?」

 

東条先輩はマッチに火をつける。

その火を花火の筒に入れ、点火する。

 

「ハデに行こうじゃねえか。花火も喧嘩も」

 

花火は天高く登っていく。

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、男鹿辰巳」

 

 

花火は夜空で大きく花開いた。

 

 



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二十将 決戦

目の前では、東条と男鹿が見合っている。

 

相沢先輩達と神崎先輩達は校舎裏の方に歩いていった。

あちらはあちらで決着をつけるのだろう。

 

 

「遅かったですね、ヒルダさん」

 

「フンっあの男がなかなか起きなかったのでな」

 

また、ヒルダさんは少し高い場所…木の上に座ってこちらを見下ろしている。

 

馬鹿は高いところが好きというがヒルダさんは自尊心の高さの現れなのかもしれない。

 

「機嫌が良さそうじゃないですか。どうしたんですか?いなくなっている間に何かいいことでもあったんですか?」

 

「たわけ、医者をつれに魔界に帰っておっただけだ」

 

木の影から金髪の少女と適当なデザインの白いおばけみたいのが出てきた。

 

そして機嫌についてはスルーですか。

 

 

「こいつがベルゼ様の家来?……キモ。さっきからヒルダ姉様の太ももガン見してますよ」

 

生意気なガキめ。

医者の助手の癖に。

 

いつもならここでルビ達が怒るだろうが今は離れてもらっている。

流石に大魔王と時を過ごした宮廷薬師フォルカスを騙し通せるかは分からなかった為だ。

 

結局ジャンプ掲載時にはテキトーなデザインのムームーの姿のみ登場でNEXTで無駄にイケメンで登場した何気にひどい扱いのキャラだ。

 

だからといって警戒は怠らないが。

 

「違うぞラミア、家来ではない。危険人物だ」

 

「って、まだ警戒してるんですか。俺は今のところ何もしてないじゃないですか」

 

「東条というあの男の攻撃を受け全く動かなかっただけでなく、あの巨体を殴り飛ばす力があるのにか」

 

見られてたのか。

俺も本当に甘いな、反省しないとな。

後悔は全く無いが。

 

 

ドーン!!!

 

 

また、花火が上がる。

 

 

東条がベル坊を下ろし、男鹿に向き合う。

 

男鹿が歩いて行き、東条に近づく。

 

すると、ベル坊の目が正気に戻り、男鹿の足にしがみつく。

男鹿が名前をよぼうとするが、体をかけ登り頭に乗る。

 

そして、高らかに雄叫びを上げた。

 

「ダーーーーーっ!!!」

 

 

 

正常に戻った事で男鹿の体に魔力が流れ出した。

これで、一応一安心だ。

 

 

ベル坊が男鹿に戻った事で東条が安心した表情を見せる。

 

やはり、この人は普通にいい人だな。

器も大きく、人の上に立つ才覚がある。

 

 

 

 

 

 

圧が来る。

烏たちは飛び上がり、空気が震える。

 

 

「ーーじゃあ、とっととケンカはじめようぜ」

 

湧き出る気迫。

恐ろしさを感じるが楽しそうに見える顔。

まさに、戦闘狂(バトルジャンキー)

 

「また、てめーと闘いたくてうずうずしてたんだ。さっさとそいつを下ろせ、男鹿」

 

「ああ」

 

男鹿はベル坊を離れたところに(15m以内だが)置いてくる。

ベル坊と何か話しているのが見える。

 

 

2人が向き合うと直ぐにケンカが始まった。

 

バカ正直に力比べをするかと思いきや男鹿は裏拳を放ち、東条がグラつく。

そこにすかさず腹に連続して殴り込む。

一撃一撃が相手を仕留める様な殴打だ。

 

流石の男鹿も勝つ為に考えて戦っている。

 

更に追い討ちをかけるように飛び蹴りをかます。

 

 

 

しかし、東条は現石矢魔最強。

少し考えただけで倒せる相手では無い。

 

男鹿の蹴りを額で受け止めきる。

 

 

男鹿の動きが止まる。

 

そこを逃す東条でもない。

 

 

東条の拳が男鹿に振るわれる。

とっさに防御をとるが衝撃を受け切れず、1m程飛ばされる。

男鹿が体勢を立て直そうとするが一瞬で距離を詰め、今度は東条が殴打を叩き込む。

 

 

「調子に……のんなボケッ!」

 

カウンターを東条に叩き入れる。

かなりの威力があったようで東条が膝をつく。

 

 

そんな男鹿の手には蠅王紋が出ていた。

 

 

それに驚いたラミアが弄っていた花火の筒を倒してしまう。

男鹿の方向に花火が発射される。

 

花火に手を添えるようにあてがうと、相殺した。

いや、吸収かな。

そして瞬時に放出。

男鹿の後ろに蠅王紋の形の炎が生まれる。

 

上から見れば魔法陣の様な感じなのだろう。

悪魔の儀式と言った方がいいかもな。

 

 

「ベル坊っ!!」

 

今はどうでもいいことだがな。

 

「……てめぇ、邪魔すんなっつってんだろ」

 

膝をついている東条を置いてけぼりにしてベル坊の方に歩いて行く。

 

「てめぇ、ふざけんなよ。オレが負けるとでも思ってんのか?………負けねぇよ、絶対」

 

「……ちょっ何いってんのよ!誰の為に私達がここまで来たと思ってんのよ。アンタが坊っちゃまの力なしで勝てるわけないでしょ!!」

 

ラミアが男鹿に突っかかる。

 

確かに東条は化物だ。

普通に考えてズルしないで勝つなんて出来るはずが無い。

 

 

「まあ、言っても無駄だろうけどな」

 

本当にいつ以来だろうな、あんな男鹿を見るのは久しぶりだな。

 

「何度も言わせんなよベル坊」

 

 

 

 

 

「こいつはオレの戦いだ。てめえが水をさしてもいいもんじゃねぇ。ーーーそれにな、

 

 

 

こんなもんなくてもオレはどこへも行きゃしねーよ」

 

 

その言葉と共に蠅王紋が消えていく。

それはベル坊がリンクを切ったということ。

リンクを切るという行為は悪魔にとってリスクでしか無い。

しかし、それをあの赤ん坊はやったのだ。

 

今、二人の間には契約を越えた信頼関係が築かれつつあるということ。

 

 

小さい頃からの友人としては少し妬いてしまうな。

俺より短い期間なのにこんなにも絆が芽吹いているなんてな。

 

 

 

少しばかり喋ると男鹿と東条が再び構え、向き合う。

 

 

あの河原の時と似たように一撃づつ殴り合うのを

 

 

「「うおおおおおっっっ!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空が明るくなってきた。

 

かなり、長い時間殴りあっていた。

一瞬も目が離せなかった。

 

2人はもう血だらけで体はフラフラだ。

しかし、倒れない。

 

次がお互い最後の一撃だろう。

 

 

そして東条が勝負にでる。

男鹿に飛び蹴りをかます。

フラフラの体とは思えない最高の一撃といえよう。

 

東条は勝ったと思ったろう。

 

だが、男鹿の勝ちだ。

 

 

 

東条が安心した一瞬に東条の背中に張り付き、胴をがっしりと捕らえる。

 

「うぉおおおおおおおおぉぉおっっっ」

 

 

そのまま反り返り、脳天を叩っきつける。

そう、スープレックスだ。

 

自身の体重が後頭部にかかり、脳震盪は確実だ。

これでは流石の東条もここまで疲労した体にこの攻撃はもうお終いだ。

 

 

「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!

 

ついに石矢魔の頂点をやりやがったぁぁっっ!!!」

 

 

男鹿も膝をつくが東条は倒れたまま動かない。

 

まあ、動けないのは当たり前だろう。

逆に意識があるのがおかしいしな。

 

 

 

 

さて、男鹿んとこ行くか。

 

 

「男鹿!!」

 

「古市!なんだお前来てたのかよ。まあ、見ての通りだ。借りは返したぜ」

 

「それもあるけどな、お前あれ聞いてないだろ。東条先輩聞きたいことあるんすけど。肩の印の事なんすけど」

 

しかし、返事がない。

 

「しゃあない、後日聞くか。行こうぜ男g「昔憧れた男がいた」

 

俺らは足を止める。

 

「こいつはそいつの真似で憧れで入れた刺青だ。あの時、お前の拳に光るその印を見た時に思い出したよ。あいつもそうやって信じられない事をやってのけた。お前はオレと、違う。本物だってな。

 

 

 

男鹿、お前が石矢魔最強だ。

 

もう、この学校はお前のもんだよ」

 

 

「……うん……それはいいんだけどね……」

 

 

 

 

 

 

「さっきから腕がもげそーなんですけど」

 

そんな男鹿の右腕は信じられない程ムキムキになり、腕が捻られていく。

 

 

「ア“ーーーーー!!!」

 

ベル坊が興奮している。

たまりにたまった魔力が全て右腕に注ぎこまれる。

 

ラピス、俺の周りにかなり厚めに障壁張って。

あと、念のため隠蔽の魔術をお願い。

 

『はい』

 

そして男鹿は近くにある手ごろな物体を殴りつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日

 

 

 

俺と男鹿はセミが煩いほど鳴いている公園のベンチで座っていた。

 

「また、やっちまったのか………?」

 

「……ああ」

 

 

「ああ……じゃねえよ。お前何したかわかってんの?」

 

「東条を倒した」

 

「その後だよ」

 

「石矢魔統一した」

 

「それは東条を倒した時点で達成している。その次だ」

 

「校舎を……」

 

「校舎を?」

 

「は………」

 

「は?」

 

「………かいした」

 

「ん?」

 

「校舎を……破壊した」

 

 

 

 

 

俺は男鹿の胸ぐらを掴む。

 

「そうだよ!お前のよく分からない一撃でコナゴナって

どうゆうことだ!?

 

 

 

校舎全壊ってどういう事だーーーっ!!!!」

 

 

「俺もそれは反省している。しかしどうすることも出来なかった」

 

俺は男鹿から手を離す。

 

「……ふー、まあなんとかなるだろ。俺もとりあえず怪我してないしな。とりあえずは学校だろ、この先学校どーなんだろうな?」

 

 

男鹿の家につくと魔界の医者に腰を揉んでもらっている美咲さんがいた。

 

美咲さんの言うことによるとしばらくは生徒全員別の学校に通う事になる。

俺は知っていたが男鹿への説明が面倒だったのと少し俺の記憶が曖昧になってきているところにある。

今のところは話の大筋は分かっているので問題ない。

 

 

 

 

 

 

 

夕方になると男鹿の家でバーベキューをやった。

家の家族も呼ばせてもらったので割と大人数になっている。

代わりに俺が仕込んでおいた肉を持ってきておいた。

 

タオルを頭に巻いて火の番をする。

 

「ほれ、男鹿焼けたぞ。あと、ほのかは野菜をもっと食べなさい」

 

「サンキュ、古市」

 

花火を持ってきておいたのをヒルダたちが遊んでいる。

東条の時のと違う普通の家庭用の花火だ。

 

男鹿はヒルダと話している。

 

 

 

俺は不意に夜空を見上げる。

 

そろそろ夏も終わりだ。

数日あるとはいえ、俺も少しは鍛えないとな。

また、修行しに行くか。

 

「古市ーっ!!ベル坊が成長して自由になったんだよ!!こーんなに離れてもだ……ギャアアアアアアア」

 

案の定電撃が男鹿を襲う。

 

成長したとはいえ、そんなに一気には無理だろう。

 

「見ろ!男鹿。15m8cm!!8cm延びたぞ!!やったな」

 

一先ずは男鹿を介抱しようか。

 

 




【お見舞いの話】

「先輩方こんにちはっス。おお、ぎゅうぎゅう詰めですね」

俺は病院の姫川先輩が借りた個室にいる5名の先輩方に話しかける。

「古市ちゃんじゃない。どうしたの?」

「夏目先輩、お久しぶりです。一人だけ無傷なんて凄いですね。今日は前回と同じ様にお見舞いですよ」

俺は障壁を貼ったから無傷なのにこの人が何故大丈夫なのか本当に分からない。

「前回と同じって事はまたかい?」

「今日も同じく和洋ですけどメニューは全部違う感じにしてみました。相沢先輩と陣野先輩もどうですか?」

「いらねえよ。東条さんが負けたとはいえ俺らはまだ認めていないからな。さっさと持って帰りN「なら俺が買う!」…!?」

相沢先輩に断られている途中に姫川先輩が名乗りを上げる。

「幾らだ。お前の料理はかなり美味いからな。十万でかってやれるぞ」

「てめぇ汚ねえぞ!だったらこっちも十万だしたら!」

「そうですね……因みに陣野先輩はどうします?」

「最初は断ろうと思ったがこいつらの反応見て気が変わった。有り難く貰うことにする」

「じゃあ、姫川先輩と神崎先輩は5万づつください。二つにいい感じに分けますので。一先ず1人分はあるんで我慢してください」

「くっ!まて!」

ここで唖然としていた相澤先輩から声がかかる。

「やっぱり、食いたくなった。今更だけどくれないかな?」

「そのお見舞いの品の所持権は俺ではなく既に姫川先輩と神崎先輩に写っているのでそちらに交渉して下さい」

しかし、売る事はないだろう。

「俺達に土下座して謝って俺と神崎に十万づつ払えば売ってやるかもしれない」

姫川先輩……それはもう、売る気が全く無いですね。

「では、先輩方俺は帰りますのでお大事に」

「じゃあ、俺も帰ろうかな。神崎くん、姫ちゃん、城ちゃんじゃーね」

俺と夏目先輩は部屋から出ていく。

「ふざけんじゃねえ!元は俺のだろうが!!」

「今は俺のもんだ。買い戻したけりゃ100万払ってみな」

「はあ!?ボリ過ぎだろうが!もう一回二人纏めてシメてやろうか!!」

「「できるもんならやってみやがれ!!!」」

「アンタ達また、ケンカしてんの!?いい加減しな!」


部屋からそんな声が聞こえてきた。

「古市ちゃん」

「はい」

「楽しいね」

「そうですね」

俺は病院を後にした。


////////////////
やりたかっただけ
ただそれだけ


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二十一将 友人と魔二津

俺は今魔二津に来ている。

 

 

これは前回言っていた修行の為だ。

修行のはずだった。

 

修行の為に駅に向かったら金を持っていない男鹿にたかられ一緒に向かうことになった。

 

金が無かったらどうやって向かう気だったのか聞いたら自転車で行くとかいいだしたのだ。

 

何故魔二津に行くのか、それは。

ベル坊の虫嫌いの特訓のようだ。

 

まさかこれに巻き込まれるとは思いにもよらなかった。

 

 

蜂蜜とロープを持ってどっか行った男鹿をよそに俺は飲み物を買いに言っていた。

男鹿の分も買わないと駄々をこねるから一番安く、美味しいのか分からないものを買っていく。

 

男鹿が落下して人にぶつかっていた。

 

「いや、一先ず謝れよ」

 

「あ、古市。飲みもんか、俺にも寄越せ」

 

結局謝らないのかよ。

俺は先ほど買った飲み物を投げ渡す。

 

 

ゴクゴクゴク…………マズッ!

 

やっぱり美味しくなかったか。

よく全部飲んでから感想いうんだろ。

 

「すみませんね、こいつアホですから。ケガとかしてないすか?」

 

血とか出ていないな。

 

………てゆーかもしかして俺って邪魔?

 

「俺、邪魔ならどっか行きま「一緒に居て!お願いだから」…yes」

 

 

 

 

 

 

「特訓?」

 

ところかわって駅前のアイス屋。

何故俺が男鹿の分も払うかはもう、説明の必要が無い。

 

 

「ああ、こいつ虫が苦手でよ。情ねえから鍛え直しに来たわけよ」

 

「ふ、ふーーん」

 

やっぱり俺邪魔じゃね。

 

「れ?そういやお前、名前なんだっけ?」

 

「名前も知らない相手にそんな馴れ馴れしい態度とってたのかお前は」

 

俺は男鹿の頭を叩く。

 

「だってよー」

 

「だってもクソもあるか!」

 

「葵!何をしておるか!!」

 

俺ら以外の声が聞こえた。

 

「全くお前は…こんな所で道草をくいおって……む?」

 

「あおい?」

 

「くにえっ!!青井くにえってゆーの!!」

 

結局誤魔化すのか。

別にいーけど、それだと男鹿は苦労するぜ。

 

「こちらは?」

 

「おじーちゃん紹介するね。この間知り合った、えーと……」

 

「男鹿ッス」

 

「その友人の古市です」

 

「ほう、同じ町内の方ですか。失礼だが葵とはどーいう関係で?」

 

「あん?」

 

「俺は友人の友人で知人位ですかね」

 

「こ……子育て仲間よ。変な風に聞かないでよ!」

 

俺はスルーですか、そうですか。

別に俺は別件でここに来たからいいけどね。

 

俺は溶けかかっているアイスを食べ切る。

 

 

「ほうほう、なるほど。そーかそーか。ほい、握手握手」

 

じーさんが男鹿と握手する。

 

その瞬間男鹿は投げられ、地に倒れてしまう。

 

「な……なにしやがる!クソじじい!!」

 

「特訓に来たんじゃろ?わしが少しもんで…あいたっ」

 

「じーさん!いきなり投げたら手にもってるソフトクリーム落とすのは当たり前でしょーが!!食べ終わってから若しくは置いてからそういう事はやりまさい!!!」

 

食べ物を無駄にするのはご年配だろうが子どもだろうが俺は怒るぞ。

ましてや、そのソフトクリームは俺の金で買ったやつだぞ!

 

「わしの背後を簡単にとり、更に頭を叩いてくるとはなかなかの童じゃな。一先ずは合格点じゃな。……ん?お前さんの顔、どっかで見た気が……」

 

「そういうのいいから!あーあソフトクリームまだ全然残ってんじゃん」

 

俺はソフトクリームを片してベンチに座りこむ。

一緒に背負っていたリュックを地面に下ろす。

クソっ……超重いな。

アイツこれで力貸さなかったらただじゃおかねえ。

 

俺はじーさんに向き直す。

 

「だいたい相手は俺じゃなくて男鹿だろう。俺は座ってるから」

 

「それもそうじゃな。小僧、突っ立ってないでかかってきなさい」

 

「二人ともやめて!にらみ合わないの!おじいちゃんもそうやって男の人見る度ちょっかい出すのやめてよね」

 

悲劇のヒロインみたいな事を言う邦枝さん。

 

「フンッ、何を言うか。わしゃ、お前に相応しい男かどうか試しとるだけじゃ。お前より弱い奴は殺す」

 

「だからそーゆーんじゃ無いってば!あなたも相手にする事ないからね!!」

 

「別にじじいをいたぶる趣味はねーけど、やられっぱしってのもなぁ……」

 

「安心せい、いたぶる趣味はわしもないよ」

 

 

ピキっ

 

 

「上等だこのやろーっ!!後で吠えづらかいても知らねーからな!!アホアホッバーカ!!」

 

「いいからこんかい」

 

子どもかっ!

もう既に負けフラグだぞ、それは。

 

 

体をバネにしてじーさんに飛びかかる。

しかし、腕を取られてまたもやひっくり返される。

今度は男鹿もやられずに受けをとり、果敢にじーさんに攻撃をするが簡単によける。

 

そのまま後ろをとられてしまう。

 

「力の使い方を教えてやろう」

 

「おじいちゃん!まって……」

 

 

心月流 無刀 【撫子】

 

 

地面にヒビが入るほど男鹿が押し付けられる。

男鹿は動けずに地に伏せる。

 

「見込みはあるがその程度では葵はやれんのう。出直して参れ……してそこの悪タレ共はどうした?」

 

じーさんが俺の方をみる。

 

俺の座っているベンチの横には不良3人組が倒れ込み一つの山となっている。

じーさんの小包を盗もうとしていたのでボコボコにして置いといただけだ。

 

「やはり、貴様強いの。どうじゃ、次はお主が相手するかの?」

 

「ノーサンキュー。それより男鹿と再戦して下さい。男鹿!寝てないで早く立ちなよ。今、凄くだらしないぞ」

 

「かなり強めにやったからの。そう簡単に起きん「うっせーぞ、古市」…!?」

 

倒れていた男鹿がゆるりと立ち上がる。

 

「じじい!もう一回戦え!!」

 

「ほう、立ち上がるか。よかろう。来なさい」

 

また手合わせが始まる。

(ケンカだがじーさんが手加減しているから手合わせでいいだろう)

 

男鹿がまた、適当に攻撃しているように見える。

しかし、わざと避けやすい攻撃をして目でじーさんを追っている。

 

下段への足蹴り。

じーさんは先ほどと同じくジャンプで避ける。

 

そこに男鹿がじーさんに向けて突きをくりだす。

無駄な要素が無い、体の体重を上手く使った突きだ。

 

しかし、あっさりじーさんに受け止められてしまう。

じーさん自身は少し驚いている表情だが。

 

「なかなかの突きじゃな。まあ、及第点かの」

 

じーさんは手合わせを止め、ベンチの横には置いておいた小包をとり、寺へと向かう。

 

「おい、じーさん!逃げんのか!!」

 

ピタリと足を止める。

 

「男鹿とか言ったな。憶えておこう。強くなりたければいつでも家に来なさい」

 

「あ?……いや、勝負………」

 

そのままじーさんは歩いて行ってしまった。

 

「また今度って事だろ。なんか用があったっぽいしな。お前も特訓の最中じゃなかったのか?」

 

「お!そういえば……ベル坊!特訓再開だ!!今度は違う感じで行くぞ!」

 

「アーーー!!!」

 

「がんばれよ〜俺も用があるからじゃーな」

 

 

泣いてるベル坊を連れ、男鹿は走り去っていった。

 

さて、俺も向かうか。

置いてあったリュックを背負い俺は山の方に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は奥の院の更に奥にある祠に来ている。

ここは寺の関係者、更に重要人物しかこれないが俺は黙ってここに侵入した。

ここには天狗が住んでいるといわれている。

俺は正体をしっているが。

 

このクソ重たいリュックもそいつの為のものだ。

 

 

「おい!コマ!!持ってきたぞ。さっさと出てこい!」

 

『なんや……誰か来たかと思うたら男かいな。儂は諫冬以外の誰にも会わんと伝えたはずやで』

 

「馬鹿いってんじゃねえぞ!舐めたこと言ってっとこれ全部燃やすぞ!この……夏特編水着美女集!!!」

 

そういって俺はリュックの中からグラビア誌を取り出した。

 

そう、このリュックに入っているものは全てグラビア誌。

コマに頼まれて買ってきたものだ。

凄く重たいのもこれが原因だ。

 

 

「諫冬ちゃんじゃ買えないからって俺に買わせてきやがって……それで知らんぷりとはいい度胸じゃねーか。御堂事全て燃やしたかろうか」

 

「わーっ!堪忍やタカやん!堪忍したってや!!」

 

中から狛犬をディフォルメした生物が出てくる。

 

これが天狗の正体の狛犬のコマちゃんだ。

 

天の狗と書いて天狗だからあながち間違いでもないのだがいささか拍子抜けだろう。

 

「これでいいだろ」

 

「分かっとる分かっとる。いつか来る邦枝葵ちゅー女に無条件で力を貸せって話やろ」

 

「諫冬ちゃんにもとセクハラ行為を控えろって条件だろう。その条件で大量に金こっち持ちでグラビア誌しこたま買ってきてんだろ」

 

「セクハラ行為やめろって言わへんのタカやんの譲歩やもんな」

 

「それは無理だと把握しているからな。じゃあ、俺は帰るからな。上級悪魔相手でも太刀打ち出来るように少しは鍛えとけよ」

 

「はいなー!タカやんまた頼みますわ。次は秋、冬の行事系と制服系よろしゅうなー!」

 

「わーったよ」

 

 

 

さて、用事も済んだ事だし帰るか。

 

 

 

 

 



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二十二将 ほんまかい

「魔界に帰る?誰が?」

 

俺は男鹿の家に呼び出され、いつもの様にゲームをプレイしている。

ゲーム好きな癖に男鹿は割と弱いから同じくゲーム好きの俺が手伝っている。

 

「医者だよ、医者。いただろ、あの小っこいのとテキトーなヤツ。ベル坊も回復してやる事もねーからな。そろそろ魔界に帰るんだとよ」

 

「ふーん、()()()()()

 

 

 

 

「………さむっ。何あんた、今の。ジョーク?もう一回言ってみてよほれっ。あたし達魔界に帰るんだー」

 

「ほんまかい。おらっ、言ったぞ。だからさっさと帰れよ」

 

俺は適当に返事を返す。

 

「うむ、そのつもりなのだがアランドロンが捕まらんのだ。」

 

適当なデザインのフォルカス先生が答える。

 

「一緒に住んでる君なら何か知っていると思ってな」

 

「えっ?俺の家に住んでるんすか、あのオッサン。俺は見た事無いッスけど」

 

「そうか……困ったの」

 

「だったら師匠!今日はやめにしましょうよ」

 

「ばかもんっ!魔界にも患者はわんさかいるんだぞ」

 

「呼んでみればよいではないか」

 

そこにヒルダさんが扉を開け入って来る。

 

 

「アランドロンを呼び出す通信機を使っておるのだがさっきから通じん。しかし奴は次元転送悪魔。恐らく近しい者が呼べば飛んでくると思うぞ」

 

「へぇーじゃあ、アランドローン」

 

 

………………

 

しかし何も起こらなかった。

 

「来ませんね」

 

「お兄ちゃん!ちょっといい?」

 

 

「あ、ほのか!その前にお兄ちゃんも一ついいか?あの時家に出た変質者のオッサン。あれって結局どーなったんだっけ」

 

「え……ああ、あのオッサンなら家の物置に住んでるよ。どーなったか知らないけどね」

 

アランドロン……物置に住んでるんだ………

 

「ちょっと呼んできてくれないか?」

 

「嫌よ!あのアランドロンとかいうオッサン気持「およびですかな?」!?きゃー!!!」

 

ベットの下からオッサンがニュっと出てきた。

 

凄い鳥肌立った。

普通に気色悪い。

 

ていうかほのかが近しい者って男に近しいなら(それもそれで気持ち悪いが)まだしも女はアウトだぞ。

あと、手出したら本気で殺す。

 

「いや、失敬失敬。家族と連絡とってたもので……」

 

「だから()()()()()()にしろと言っておるのだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

という訳で……ここは男鹿がベル坊を拾った川原。

妹の件は宿題を教える事だったので夜に回させて貰った。

 

 

 

 

 

別れの挨拶は割愛。

 

 

 

「じゃあ、さよーならー」

 

アランドロンが開き、フォルカスとラミアが入っていく。

 

俺達は手を振る。

 

「じゃーな。……そういえば男鹿、ベル坊どうした?」

 

「ん?……ベル坊?」

 

ベル坊は転送を始めているラミアの足に引っ付いていた。

 

ベル坊が魔界に行く、男鹿死亡の図式が成り立つ。

 

「どこ行こうとしてんだぁっ!!」

 

俺と男鹿はベル坊を引っ張る。

しかし、ベル坊は全く離さない。

ベル坊こういう時はどこに力があるんだ?っていう位凄いパワーを放つ。

 

抵抗むなしく俺達はアランドロンにのみ込まれてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いてて、どこだ?ここ」

 

こんな事言わなくても分かっているんだけどね。

ここでまたもや謎テレパシーでほんまかいっていってフラグを回収するんだろ。

俺はあたりを見渡した。

 

「は?」

 

そこに男鹿たちの姿はなく、魔界で飛ばされるはずのヴラドの魔境の様な鬱蒼と草木が茂ったジャングルの様な場所でもない。

 

そこは遺跡の様な場所だった。

 

 

そして俺はそこにある檻の中に入っていた。

 

 

「ここは……もしかして……」

 

「あなたは誰ですか!いきなり、目の前に現れて……」

 

俺は声のした後ろを振り返る。

 

そこには手に枷を嵌められた一人の女性が座っていた。

 

 

原作の流れでは男鹿と一緒にヴラドの魔境につき、アランドロンが再起不能となったためにその娘であるアンジェリカを探すという話だった。

 

「これは失礼しました。そして一つ聞きたいのですが、あなたの名前はアンジェリカさんでよろしいでしょうか?」

 

「はい、そうですけど……」

 

 

 

 

 

「ほ……」

 

「ほ?」

 

 

 

 

「…………ほんまかい」

 

 

 



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二十三将 友人とは仲間はずれ

前回のあらすじ

 

俺こと古市は男鹿に巻き込まれ、魔界であるヴラドに来てしまった。

ここで原作通りなら俺は男鹿と一緒にヴラドの魔境に飛ばされ、アランドロンの娘であるアンジェリカさんに会いに行くはずだった。

 

しかし俺は1人だけで放り出され、なぜかアンジェリカさんが捕まっている牢屋に転送されてしまった。

 

 

 

いや、なんでやねん。

 

 

俺だけこっちに来るとかふざけんなよ。

俺は地味にアクババのでっかい奴とかヨップル星人とか見たかったのになんで俺だけ。

 

しかも敵の本拠地+目的(アンジェリカさん)とかありえなす。

 

配管工のおっさんが出るゲームならいきなりエンディングだぞ。

ゲーム会社に大量にクレームが来てもおかしくないぞ。

 

混乱しすぎて俺1人でほんまかいって言っちゃったし。

 

 

 

とりあえず言っとくがこの回想は一通り説明が終わった後なのであしからず。

 

 

 

「状況は把握できました。貴方が父がいつも言っておりました古市様という事も。ですが私はこの通り魔力を封じるこの手錠のせいで転送をする事ができません」

 

本当に申しわけないというアンジェリカさん。

 

問題はそこなんだよな。

漫画読んでる時これなんで脱出できないんだろとか思ってたらこんな事になってるだもの。

何かあると思ってたらホントにめんどくさいのついてるし。

 

「しかし、なんで俺だけ別に転送されてるんだろ」

 

「それは古市様の後ろのもののせいかと思います」

 

「え、見えてるの?」

 

俺の独り言にアンジェリカさんが答える。

答えが帰ってくるとは思わなかったため少し驚いてしまった。

そして口も滑ってしまった。

 

「古市様も自覚していたのですね。あいにく私にはハッキリと見えてはいません。しかし、うっすらと古市様の後ろの景色が揺らいでいるのです」

 

なるほど。

魔界の豊富な魔力の中に悪魔でも人間でもない異物が紛れ込んでいれば分かるのか。

 

これはこれから気をつけないとな。

魔界に行くのは今回だけじゃなかった………はず。

 

 

さて……

 

「それについてはまた今度話しましょう。さっさとこんなところから脱出しましょう」

 

「脱出……そうでした、魔獣です!!魔獣が来るんです。それもすごく大きな」

 

ああ、そんなのもあったな。

 

「身の丈よりも大きな魔獣です。ここの連中は魔獣を殺しすぎた。ヴラドの主はそれに怒りを感じ、自ら制裁を下す為にここに向かって来ているのです」

 

「とりあえずその枷外しましょう。俺も貴方も逃げられませんし」

 

「枷を外すってこれは魔術が折り込まれていて魔力の無い者は勿論のこと魔力のある者も破壊出来ない特殊な枷で出来て……「ガシャン」……え?」

 

俺は魔術回路だけを破壊し、枷どころかただの石版となったものが地面に落ちる。

 

さて、あとはこの牢屋をなんとかすればいいのだがどうするか。

壊してもいいが壊した音で盗賊の頭が来るのも面倒だしな。

 

後ろであの魔術をいとも簡単に……もうこれに枷の能力が残っていない……等言っているアンジェリカさんをおいて俺は考えに耽る。

 

すると外から気配を感じる。

 

「おーい、そこに誰かいねーかー。アンじーさんとか」

 

この声は

 

「もしかして男鹿か?あと、アンじーさんって何だ。アンジェリカさんならいるけどそんな奴いねえぞ」

 

「あ?古市か。なんでオメーそんなとこにいんだよ」

 

「転移したら牢屋に転移した」

 

「スマン……聞いても分からん」

 

「大丈夫だ、男鹿。俺も良く分かってない。それより男鹿!ここの壁破壊してくんね。中に被害来ない程度に」

 

俺はアンジェリカさんと一緒に鉄格子の方による。

 

 

ドガッン

 

 

轟音がし、壁が破壊される。

 

さっきまではなるべく隠密行動を取りたかったが男鹿達が来たという事は魔獣があと少しで来るということ。

それならもう関係ないからな。

 

「おう、古市。さっきぶり」

 

「ああ、さっきぶり。さっさと帰ろうぜ」

 

ぶっちゃけ盗賊団についてはどうでもいい。

だから、もう帰ってもいい。

ここに残って死にかけてもメリット無いし。

 

 

 

 

その時俺は反射的にしゃがむ。

 

俺の首があった場所を刃が通り過ぎる。

 

「どこへ行く気かな契約者共」

 

そこには謎の男で結局それらしい伏線回収もされずギャグで終らされた男、アスランがそこにいた。

 

 

 



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二十四将 友人と帰還

「なんだ、てめぇ」

 

俺の背後に現れ仕込刀を振るった謎の男に男鹿は話しかける。

 

ここで説明しておくがこの謎の男はアスラン。

蝿の王、つまりベル坊の親に制圧された国の密偵だったはずだ。

 

国の名前?そんなとこまで覚えてねえよ。

そこは勝手にWikipediaさんで調べてください。

 

「アンジェリカ!逃げるぞ!!とんでもねえ化け物が来やがる。……む」

 

そうこうしていると盗賊団の親玉がやってくる。

 

地鳴りはさっきからしているがかなり遠い。

よくこいつ気づいたな。

 

「フンっ……例の王族の契約者とかいう人間か……残念だったな。オマエら、回り込んで殺せ!こちらには先生が居られる。逃げられない様に回り込め!!」

 

アスランいるから俺達は逃げらんないけどそれは言わなくていいか。

 

それよりヴラドの主がちょっと見えた。

でっか……ありゃ無理だわ。

 

あっという間に囲まれた俺達。

俺はアスランに気を配ってるから動けないし。

 

男鹿に任せるか……

 

「男鹿。そっちの人めり込ませ………ベル坊?」

 

俺がチラリと後ろを見るとベル坊の頭部だけ巨大化していた。

 

「ア”ーーーーッ!!!!!」

 

ベル坊の頭部だけでなく身体も徐々に大きくなっていく。

ついにはヴラドの主と同等のサイズまで大きくなってしまった。

 

「ダーーーーーっ!!!」

 

男鹿はなんとかベル坊の髪の毛にしがみつき、乗っている。

 

そしてベル坊とヴラドの主が睨み合う。

 

かなり声が小さく聞こえたが男鹿の「やれ!」が聞こえた。

それを開戦の合図として2人?が動き出した。

怪獣大決戦の始まりだ。

 

向かって来たヴラドの主(次からは〈主〉と表記)に向かってキックをかます。

技名は男鹿の声が何言ってんのか聞こえないので割愛。

 

顔を蹴られ、吹き飛ばされた主はすぐさま立ち上がる。

しかしベル坊はその隙を逃さずラリアットを食らわす。

その衝撃によろけた主に追い討ちをとエルボーを食らわす。

 

最後に転んだ主に止めをと主を一旦うつ伏せにさせ、逆エビ固めをかける。

 

主は抵抗しているかのように地面をたたいていたがついには動かなくなってしまった。

 

「ダーーーーーっ!!!」

 

ベル坊が勝鬨を上げる。

 

 

 

ナレーションしといてなんだが……なんだ、これ?

 

まあ、いいやこっちも終わらせよう。

 

 

 

アスランは転移玉使って早々に転移していないし、逃げられたら盗賊の頭とアンジェリカさんを追うか。

 

 

たしか、こっちの方に………いた。

 

「うぬぅ……ワシの街が…っ」

 

「おっと、そこまでだ。その子を離してもらおうか。それとも俺と踊るかい?」

 

「古市様!!」

 

「ちぃっ、小僧…っ」

 

言ってみたかった事。

ぶっちゃけこんなキザったらしいセリフ今後言う機会なんて恵まれないしね。

後ろでラミアが呆れているが放っておく。

 

頭はナイフを取り出し、こちらを牽制する。

 

「刃物か……そんなもの止めときな。ケガするぜ?」

 

「なんだと!?何故だ!!」

 

俺がここでしなければならないのはあくまでも時間稼ぎ。

 

「何故って……それはあれだ」

 

「どれだ!?」

 

「つまり、そんなものだしてもお前の負け以外もう有り得ないからだ」

 

「負け?何を言ってっ……」

 

 

ズンっ!!! プチッ

 

 

そんな話をしていると空からベル坊の足が落ちてきて、頭を潰してしまった。

ギャグ描写で良かったな。

リアルだったらいきなりこの話をR18にしなければならなくなる所だった。

 

俺は指の隙間になり、潰されなかった。

 

何気に古市は悪運が強かったな。

戦争があっても生き続けられると思うぞ。

 

「つまり………こうなるって事さ!!」

 

「ムリヤリ、キメた!!」

 

無理矢理じゃない。

割と決まったじゃないか。

 

さてと男鹿にこの状況を怒るか。

 

「おーい、男鹿!!」

 

「おっす」

 

「てっ何故か前にいたっ!!」

 

ボロボロになり頭から血を流している。

男鹿が目の前にいた。

 

「振り落とされました」

 

「よく生きてたなっ!!」

 

え?この会話があるということは。

 

俺はベル坊の方を見る。

そして、今まさにベル坊の足が落ちてきている。

 

「ぎゃあああああああああっ!!!」

 

「ふっ古市様!?」

 

「ちょっ!離しなさいよ!」

 

「今離したら死ぬぞぉぉおおお!!!」

 

俺はとっさに女子2人を抱え走り出した。

 

男鹿もなんとか走ってきている。

 

「興奮してるんだわ。どうにかして止めないと……」

 

「ベルゼ様!!落ち着いてください!!」

 

「男鹿!なんとかして、ベル坊落ち着かせろ!!」

 

「なんとかってなんだ!」

 

「なんとかだ!」

 

やばいかなりパニックになってる。

しかも俺なんでラミアを小脇に抱え、アンジェリカさんを肩に担いでるんだ。

 

「アンタも離しなさいよ!私ひとりで走れるわよ」

 

「バカっ今離したら……!」

 

当然そのままラミアが地面に落ちてしまう。

それでも尚ベル坊は突き進んでくる。

 

「ちぃっ」

 

男鹿がラミアを庇うように前に出る。

 

「止まれっ!!ベル坊!!!」

 

ベル坊の足が止まら

 

「って無理かぁああああ!!!」

 

なかった。

 

 

ズズゥウン

 

 

衝撃が伝わり、砂煙が舞う。

 

「情けないな……貴様、それでも契約者か?王族の契約者がどんなものかと思えば……期待はずれだな」

 

そこにはベル坊の足を片手で支えるアスランが立っていた。

 

一応助かったから有難うなんだが、かなり険悪なムードだな。

それにしても周りにバレない程度の魔力でこの巨体を片手で支えるなんてな。

想像よりもかなり強いな。

 

「呪文は?」

 

「あん?」

 

「この赤子を止める呪文だ。契約者にしか知らん独自の呪文があるばすだ。………まさか、そんな事も知らんのか…?」

 

 

「面倒だな……殺すか」

 

その言葉の後すぐさまアスランは行動を開始した。

片手を振るい、その衝撃でベル坊は宙を舞う。

 

そしてそのまま落下してくるベル坊を待ち構えるようにアスランは腰にある剣に手をかけた。

 

 

「ごはんですよーっ!!」

 

「ダッ」

 

男鹿が叫ぶとベル坊が反応し、空から姿を消した。

そしてアスランの後ろ、男鹿の前方にベル坊が元のサイズになり、そこに座っていた。

犬か。

 

「ったく、面倒かけやがって……」

 

「命びろいしたな、蝿の王……いずれまた、お目にかかるとしよう」

 

その言葉の後またもや転移玉を使い、アスランは姿を消してしまった。

残念だな。

 

何が残念ってこいつこの後最終回間近まで出番が消えるんだよな。

割と強キャラだったのに本当に残念だ。

 

 

その後これまでの騒動がなんだったのかって位スムーズに進んだ。

 

盗賊団は頭を失った事により散り散りに逃げて、誰もいなくなった盗賊団のアジトに幽閉されていた魔獣達も逃がした。

ベル坊に倒されたヴラドの主も起き上がりまた、騒動になるかと思えばアンジェリカさんが説得して魔境に帰っていった。

 

そして帰りの時がやってきた。

 

また、ラミアと男鹿が人悶着やっている。

そんな中に1人の悪魔がやって来ていた。

 

「では、参りましょうか」

 

そこにはヒゲ面のオッサンが立っていた。

 

「みなさんご無事のようで何よりですな」

 

「アランドロン!!生きてたの!!?」

 

「ハッハッハッあれしきの事で死にませんよ。それではカモーン」

 

なんだか、反射的に逃げてしまった。

しかし転送悪魔からは逃げられない。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達はまた、あの蒸し暑い河川敷にいた。

 

「とりあえずこう言っておこう。お帰りなさいませ」

 

「たっ……ただいま」

 

こうして初めての魔界旅行は終わりを告げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても不思議な方でした」

 

アンジェリカは転移して無事に自分の家に帰ってきていた。

 

「さてと、掃除しなくちゃ」

 

自分が連れ去られる時に部屋は大分壊されてしまった。

せめて寝床だけでも直して置かなければ今日はぐっすりとは眠れない。

 

「ただいま、我が家……!?」

 

アンジェリカが家に入るとそこは荒れ果てていた廃墟の様な我が家ではなく、盗賊に襲われる前。

つまり、自分が生活していた時に戻っていた。

 

そして中の椅子には1人の男が座っていた。

 

「なにもせず帰るわけには行かないのでね。家の方は直しておきました。アンジェリカさんには少しお願いがありましてね」

 

その男の髪は銀色に輝いていた。

 

 



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二十五将 友人と聖石矢魔学園

9月1日 午前7:15

 

長い夏休みが終わり、今日から新学期が始まる。

そんな日の早朝に俺は男鹿の家にいた。

 

「転校?なんだそれ」

 

アクビをしながら男鹿が出迎える。

 

「やっぱ見てねぇか。校舎が直るまで間借りするとこに転校するって案内来てただろうが。因みに生徒は色んな高校に分散させるんだってさ。俺達が行くのは聖石矢魔学園だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

聖石矢魔学園の俺達が使わせてもらえる教室に行くと2年の烈怒帝瑠と3年の東邦神姫の3人がいた。

他にも名前は覚えていないが三学年がごちゃ混ぜになっている。

 

とりあえず座ったが既に何人かがクラス編成にケチをつけている。

確か石矢魔学園がバカばっかだから1クラスにまとめても問題無いとかそんな理由だったはず。

 

 

そんなこんなで聖石矢魔学園での生活は始まった。

 

 

心底どうでもいいが石矢魔学園の担任になってしまった佐渡原先生は1日目以外殆ど病欠で休んでしまったので割愛させてもらう。

 

 

 

 

 

 

登校初日なのだが特にイベントらしいイベントもなく俺達は下校していた。

 

「ぶぇっくしっ!!やべぇなこれは……風邪か!!」

 

「馬鹿の癖に何言ってんだ」

 

「魔界から帰ってから調子悪くてよー。ほらっ俺って意外とデリカットだろ?」

 

「デリケートな。そこを間違えてる時点でデリケートじゃねえな。つーか意外とデリカットってなんだ?妙に語呂がいいな」

 

「アホなドラマのタイトルみてーだな。メガネの外タレが意外と頑張る話とか」

 

「意外とな」

 

下校にする何時ものくだらない会話をしながら歩いていた。

 

俺は不意に後ろを見る。

そこには聖石矢魔学園の生徒である2人がいた。

1人は男鹿に憧れて舎弟になりたいと思ってる山村和也くんとその幼馴染みの藤崎梓ちゃんだ。

 

どうせ関わる事になるのだし、ここは放っておくか。

 

 

 

 

俺達は大通りから外れ近道である小道の方に入っていく。

 

そこには帝毛工業の方々が待ち伏せしていた。

 

リーダーみたいな奴が喋っていたが男鹿の蹴りで壁に頭がめり込んでしまう。

 

「うーむ……やっぱ調子悪ぃ。めり込みがイマイチだ。今日はダメだな」

 

「そうだな。いつもなら胴体もめり込むもんな」

「てめぇこら!待ちやがれ!こいつが見えねーか」

 

人だかりになり見えないところから声がかかる。

 

そこには先ほどの2人を人質にとっている帝毛がいた。

 

「……な?」

 

「な?っじゃねーよ」

 

ほらこの通り調子出ない、みたいな事を「な」の一文字ですますんじゃねぇよ。

 

「まあ、大丈夫だろ。先輩来てるし」

 

その瞬間帝毛の後ろに邦枝先輩がいた。

 

「その子達を離しなさい」

 

「へ?」

 

帝毛が振り向き切る前に邦枝先輩は壁に立てかけてあった傘を手に取り、傘で帝毛を叩き飛ばしてしまった。

 

「アンタ達こそわかってんでしょーね。今後聖石矢魔学園に手を出したらうちらがだまってないよ」

 

そこからはもう瞬殺だった。

邦枝先輩が吹っ飛ばしーの男鹿がめり込ませーので。

俺?俺は2人を守ってたよ。

ぶっちゃけやることなかったし。

 

 

帝毛の不良共を全員倒すと人質にされていた山村くんは土下座をしていた。

 

「男鹿さんっ!!どうか俺を舎弟にしてくださいっ!」

 

「は?」

 

やったな男鹿!舎弟が増えるぞ!

 

 

 




おい、やめろ
ということで、聖石矢魔編です
さっさと終わらせて悪魔野学園編に行きたいものですね
次回もよろしくお願い致します


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二十六将 友人と六騎聖

前回の次の日。

 

駅に着くと山村くんに乗せられた男鹿がそこにいた。

 

「結局乗せられたのかお前。バカだろ」

 

「ノン!!バカじゃないアニキだ」

 

「バカアニキ」

 

「つなげる、よくないっ!!」

 

本当に簡単にのせられてるな。

 

「古市さんですよね!!」

 

「そ、そーだけど」

 

「すげえ!噂は本当だったんだ」

 

「噂ぁ?」

 

「男鹿さんの相棒にして唯一つっこめる男。智将古市。イケメンで頭もキレるとか超カッコイイっす!!」

 

ある意味ここから俺の渾名である、智将古市が始まったんだよな。

 

(いい奴じゃないか)

(だろ?)

 

久々のテレパシーだ。

 

 

 

「でも山村くんは「カズって呼んでください」……カズくんはなんで男鹿なわけ?聖石矢魔に憧れるやついないの?」

 

電車に揺られながら俺はカズくんに質問する。

 

「強い人はいるんすけどね。なんつーか俺は不良のがカッコイイッつーか憧れるつーか」

 

「いるの?強い奴」

 

強いという言葉に反応してしまったな。

 

「強いつっても不良じゃないすっからね。全然別次元の人達ですよ!!」

 

「別次元?」

 

「要するに競技のエキスパート達ですね。うちの学校部活動が盛んでして。剣道柔道空手にボクシングその他にもいろいろ。インターハイに出場しちゃうような人達がごろごろいるんですよ

 

ーーーでその中でもトップクラスの人達が毎年6人選ばれてうちの学校生徒行事をとりしまっているんです。ある意味生徒会より権限を持った連中です。

 

それが聖石矢魔部長連合またの名を【六騎聖】

 

 

なんで彼らに睨まれると大変なのでうちの学校で不良になろうとする奴なんていません」

 

「ほう、つまり俺達は既に睨まれていると?」

 

「いやいや問題起こさなきゃ大丈夫ですよ。って俺なんか焚きつけちゃいました?」

 

六騎聖か。

一応原作と変化ないか調べとかないとな。

 

「フフフ……古市君、俺分かっちゃいました。何故今まで他の奴にベル坊は懐かなかったのか……ヒルダも言ってたろ腕力だけではダメだと。ーーーつまり

 

バカはダメなんだ」

 

「もしかしてベル坊を押し付ける話か?まだ、諦めてねーの?」

 

「あきらめるかよ!というわけで当面の目的が決まったぜ。俺より頭のいい六騎聖とやらを捜す!!これだ!」

 

「多分全員だし、学園とりしまってるなら悪いやつじゃないから無理じゃね」

 

まあ、六騎聖のリーダーのアイツなら懐く可能性はあったかもだけとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

教室につくと全体的に人数が少なっていた。

東条先輩はバイトだろーけどMK5は六騎聖の新庄アレックスロドリゲス一郎にやられたはずだ。

 

クラスは六騎聖の噂話が飛び交っていた。

 

「やめなさいっ!!」

 

 

邦枝先輩が部屋に入ってくる。

邦枝先輩の一言で教室が静まり返った。

そして男鹿の目の前で立ち止まった。

 

「ちょ……ちょ、ちょ…ちょっとつき合いなさいよ」

 

その台詞でクラスが先程の噂より更に盛り上がりをみせる。

だが、完全に中学生のノリだ。

 

2人は帝毛の奴らとモメた件で職員室に呼び出されているのだ。

俺は影薄かったからとかそういう理由で排除されたんだろ。

 

2人は颯爽と教室から出て職員室に向かって行った。

 

 

 

さて、俺は自販機にジュース買いに行くか。

 

 

 

 

 



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二十七将 友人の旧友

俺の見た目は一般生徒に近いからこっちの聖石矢魔の自販機来ても特に言われないな。

こっちの自販機はオレンジーノの缶タイプが売っているんだよな。

ペットボトルタイプとは同じのはずだが炭酸が強い気がする。

 

「古市君、久しぶり。てゆーか俺の事憶えてる?」

 

缶の蓋を開けてると後から声がかかる。

 

「お前……三木……?」

 

「本当に久しぶりだね。一人かい?男鹿も一緒だと思ったのに………残念……」

 

「おー三木か!久しぶり!!そっかーお前この学校だったのか。雰囲気違うから最初分かんなかったよ。硬中以来だな」

 

三木の肩に手を置く。

しかし、三木は手をはねのける。

 

「君たちの方は相変わらずのようだね。どこへ行っても噂が絶えない。校舎を壊したんだって?」

 

「いや、俺は壊してない。あいつといるだけで俺までA級戦犯扱いだ」

 

「2人はいつもつるんでたもんね。古市君の成績なら普通にうちの高校でも受かったろうに」

 

「いや、受かったよ。けどね、無くなったんだよ」

 

「ああ……なんとなく分かったよ」

 

「……お前……変わったな。昔はおどおどしてたと思ったけど……モテるだろ?」

 

「全然」

 

「いーやモテるね。まあ、しかし……知ってるやつがいて助かったよ。正直この学校のアウェー感ハンパなくてさ」

 

「まあ、不良アレルギーだからね。うちは」

 

「いや、俺は石矢魔通ってただけであって不良じゃねーって」

 

「そうだね、でも忠告しとくよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

この学校の秩序を任されている連中だ。彼等のターゲットは完全に君たちになっている。どっちが強いとかそういう事じゃないんだ。戦った時点で君たちの負けだ。それを教えておきたくてね。男鹿にも伝えてくれ」

 

帰ろうとする三木に俺は声をかける。

 

「三木、それは自分の方が男鹿より強いって言いたいのか?」

 

三木は足を止める。

 

「なんだ……知ってたのか。それで君はまだ男鹿なんかが強いと思ってるのかい」

 

先ほどの三木とは打って変わって冷徹な目をこちらに向けてくる。

そんな三木に俺は。

 

「いや、勝てんじゃないか」

 

「え?」

 

「1回は絶対勝てると思うよ」

 

「1回はって事は2回目があったら僕は勝てないってことかな」

 

「あいつ負けず嫌いだからな。でも今のあいつなら三木は勝てるよ。けど……」

 

「けど?」

 

「……いや、何でもない。六騎聖の事は男鹿に伝えとくよ。じゃあな三木、俺用事あるから」

 

俺は三木と別れる。

けどの後は別に言わなくていいことだ。

 

 

俺は小走りで中庭の方に向かっていく。

 

 

そこには頭から血を流している城山先輩がいた。

頭上からはバーベルが降ってきている。

 

チッ、クズどもが。

ルビ!ライト!力を貸せ!

 

『『主様の仰せのままに!!』』

 

 

ギリギリで俺は城山先輩の背後に移動し、バーベルを空中で受け止める。

 

「あっははははって……あれ?」

 

笑っていたがバーベルが空中で止まり驚いている。

俺は空中に浮かせているバーベルを下に下ろす。

 

「城山先輩何やってんすか?」

 

「む?古市か……これはケジメというやつだ。邪魔は無用だ」

 

こんな事されているのに……本当に男前だな城山先輩は。

 

「それだったら俺も石矢魔なんすからこれでチャラになったんじゃないすか?それより神崎先輩がヨーグルッチ買って来いって。ここは俺に任せて行った方がいいですよ」

 

当然嘘だ。

でも買っていっても怒られないだろう。

 

「む!そうかそれは済まない。古市、ここは任せた」

 

城山先輩は走って行ってしまった。

 

「アンタも俺を殴れっていうのかよ」

 

笑いながら聖石矢魔の奴ら、3人が話して来た。

 

「大丈夫だ。そんな脳筋みたいな事は俺も言わないよ」

 

「お!じゃあ金でもくれんのかよ」

 

「いや、そんなものじゃない。もっと素敵な………」

 

俺は左手を3人に手を向ける。

 

「素敵な夢を見せてあげよう。目が覚めたら生まれ変われるさ」

 

「へ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、有難う。六騎聖の情報助かるよ。それから、今後は真面目に生きるんだよ」

 

俺は3人を見送った。

 

さてと、神崎先輩と城山先輩には悪いけど戦争は起こさないとならないからね。

 

そろそろ城山先輩が教室で倒れてる頃だろう。

神崎先輩を見た時に意識を飛ばすように設定しておいたはずだからね。

 

『エメラ、頑張りました(*´▽`*)』

 

俺も騒ぎに乗じて三木の教室に向かうか。

教室には城山先輩にダンベルぶつけた奴はまだ帰ってないし、まあ大丈夫だろ。

 

向かうか……それにしても。

 

 

六騎聖のメンバー変わっていたのは想像ついていたけど、あの子になってるとは。

 

運命は少しずつ変わり始めている……ということかな?

 

 



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二十八将 友人、六騎聖との喧嘩

「マ“ーーーッ!!!」

 

ベル坊のキレた叫び声が聞こえる。

もうはじまってんのか。

 

「古市さん!!何の騒ぎっすか?!これ!」

 

廊下を走っているとカズくんが後から話しかけてくる。

 

「俺も向かってるところだけど話聞く限りだと聖石矢魔の生徒が神崎先輩の舎弟を病院送りにしたとか」

 

「えっ!?マジすか!!」

 

教室につくとすでに神崎先輩はやられており、男鹿と三木が向かい合っていた。

 

「古市君、あの2人って知り合いなの?」

 

邦枝先輩が教室についた俺に聞いてくる。

 

「ええ……中学の時の同級生で。因みに俺も」

 

 

「あいつは何の部活?主将なんでしょ?」

 

寧々さんが一緒に来たカズくんに聞いてくる。

しかし、カズくんが話す前に俺が話し始める。

 

「俺が調べた感じだと空手部ですね。史上初めての1年での六騎聖に選ばれた怪物って噂ですね」

 

「さすが智将っすね。もうそんなに情報を……」

 

カズくんがすかさず褒めてくる。

さっき生徒からこころよく教えてくれた情報とは言えない。

 

「ひとまず神崎先輩を運びますか。あと、男鹿こんな所で戦うなよ」

 

俺は神崎先輩を背負いながら男鹿に忠告する。

 

「戦わねーよ。だってベル坊こんなだぜ?」

 

ベル坊は「ないない」というように首を振っている。

 

「じゃあ、さっさと帰るぞ。カズくんは保健室から医療道具持ってきて。絶対入れてくれないと思うから」

 

「ちょっと待ちな「三木、ちょっと黙れ」………」

 

「くだらない挑発をしても無駄だからな。伝えたい事があるなら手短に話した方がいい」

 

「…………そうだね。石矢魔のみなさん、放課後は是非旧校舎屋上へ。我々部長連がお待ちしておりますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で教室に戻ってきた。

神崎先輩は案の定使わせてもらえなかった保健室から持ってきてもらった医療道具で治療した。

 

治療していると男鹿が誰にも気づかれずに教室から出ていった。

治療も終わったし俺も行くか。

 

教室から出ると姫川先輩の声が聞こえる。

しかし今は無視して俺は男鹿を追いかける。

 

「待てよ男鹿、何ひとりでいってんだよ」

 

「古市止めるな。俺はただ六騎聖見てーだけだ」

 

「止めたつもりはねーよ。お前は止めても止まらないだろ。行くなら誘えよってだけだ」

 

俺は男鹿に並ぶ。

 

 

 

屋上につくとそこには4人おり、中には三木もいた。

そしてあの子も。

 

「2人ですか?ワタシ達相手に」

 

「2人足りねーぞボケ」

 

「と、これは失礼しました。足りてましたね」

 

後ろを振り返ると姫川先輩と夏目先輩が立っていた。

 

「どいつだ?神崎君と城ちゃんやったの……」

 

「どーでもいいが俺の石矢魔ナメてくれた礼はしねーと……な」

 

 

 

 

 

 

さて、観戦しとくつもりだったんだけどね。

少し俺も戦いますか。

 

 

ちなみに屋上の扉に鍵をかけたので邦枝先輩はこれてません。

ごめんね!

 

 



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二十九将 友人が沈む

 

「どうしました?退学を気になさっているのであれば大丈夫です。それを逆手にとるつもりはございません」

 

ボクシング部新庄はそう言い、三木に目をやる。

というか、本当にあのアマチュア無線部はいないんだな。

代わりに新庄がかませ犬役を買ってでている。

 

「そうですね……もともと今日はそのつもりで呼んだんですよ。負けた時の言い訳が欲しいなら別ですけど………ねぇ男鹿くん」

 

「三木くん、因縁があるのはいいですが、今回はワタシに譲ってくれませんか?ワタシは少し不完全燃焼でして」

 

「構いませんよ。お先にどうぞ」

 

自分以外に男鹿が負けるとは思ってないのか三木は新庄に譲っている。

 

「では、行きますよ」

 

その言葉と共に新庄は軽やかなフットワークで近づいていく。

しかしその手が男鹿に届く事は無かった。

頭に蹴りがとんでくる。

 

蹴りを放ったのは夏目先輩だった。

 

「そう簡単に大将とやれるわけないでしょ……」

 

 

 

剣道部主将の榊光輝はこちらに向き、ため息を吐く。

 

「……萎え」

 

お目当ての相手である邦枝先輩がいないせいか明らかにテンションが下がっている

刀を構え、ゆっくりと近づいてくる。

その後ろから人知れず気配を消して近づいている者がいた。

その者は金属製のバトンを振りかぶり、殴りかかろうとする。

 

殺気に気づいたのか榊は距離をとり、殴りかかってきた者の顔を拝見する。

 

「あっれー?気づいちゃった?おしい、竹光じゃなけりや即死だったのによ」

 

「…………激萎え……」

 

姫川先輩が明らかに電撃が迸るバトンを構える。

 

 

 

 

「安心しました。ちゃんと戦ってくれるようですね」

 

三木は静かに声を発する。

姫川先輩よりも気配を断ち、同じ六騎聖にも気づかれないように近づいていた。

 

三木は技を放つ。

姫川先輩を狙ったそれは有効な打撃とならなかった。

振動を与えるその技は振動を伝える場所以外、今回は手首を抑える事で威力は消える。

 

 

「正義の集団が不意打ちとはやるじゃないか」

 

 

「古市君」

 

三木は俺の手から離れ、距離をとる。

 

「男鹿とやるんじゃなかったのか?俺みたいな雑魚を相手するのか?」

 

「いいや、戦おう。今ので確信したことだし。君はそれ程の力がありなら自分の保身の為に戦わないんだね。全力で潰して上げるよ」

 

「ダメです。いくら三木さんでも、この戦いは譲れません」

 

後ろから1人の女子生徒が話しかけてくる。

三木は肩をすくめ、男鹿の方に向かっていく。

 

すれ違いざま、

 

「いずれ、君とも決着をつけるよ」

 

そう言い残していった。

 

 

 

「決着って言っても俺とそんな因縁合ったっけ?」

 

男鹿の方は分かるけども俺と合ったっけ?

マジで思い出せん。

 

 

「さあ、決着をつけよう。男鹿」

 

「悪ーな、またベル坊預かって貰うぜ?こいつの相手は俺だ」

 

邦枝先輩ベル坊を預ける。

というかいつの間に邦枝先輩屋上に?

 

屋上の扉を見ると見事に壊されていた。

 

邦枝先輩だけ単純に器物破損で謹慎処分になりそうなんですけど。

 

「男鹿、気をつけて。流派までは分からないけどおそらく、発勁を使う大陸の武術を取得してる」

 

「はっ、俺が負けると思うか?」

 

 

 

「思わない」

 

邦枝先輩が笑みを浮かべながら答える。

 

三木が構える。

 

そして一瞬で男鹿に近づき、腹に一撃決める。

 

 

その衝撃に思わず男鹿は腹を抑え、膝をつく。

 

「男鹿!」

 

邦枝先輩が男鹿に近づく。

 

「やっぱり貴方……その技は…」

 

 

 

 

 

 

「どいてください。僕の力はこんなんじゃないですから」

 

 

 

そして、

 

「私は強くなりました。貴方を倒せるくらいに」

 

俺は俺で投げ飛ばされ、屋上に倒れていた。

 

こんな可愛い女の子に投げ飛ばされる位悪いこと俺したっけ?

というか何でこんな目がガチなの?

聞いても答えてくれなさそうだな。

 

 

ゆっくりと立ち上がり、アマチュア無線部の代わりに入っている屋上にいる中で最後の六騎聖に目を向ける。

何部の部長かは忘れたけど、それは仕方なかった。

名前にインパクトが強すぎた。

 

その名前は ()()

 

邦枝先輩の祖父の知り合いのお孫さんだ。

何故ここにいるかは不明だ。

 

因みに何故こんなに怒りを買っているのかも不明だ。

 



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三十将 友人と喧嘩終了

三木の一撃で男鹿が膝をつく。

 

膝をついた男鹿に邦枝先輩が駆け寄っていく。

邦枝先輩が声をかけるが反応が無い。

 

さすが三木……いや、さすが()()()()()といったところか。

八極拳を元にしている武術だがあれは悪魔も敵にまわす事も視野に入っている武術だ。

まだ、対悪魔は早いだろうが人間相手なら十分な威力だろう。

 

 

男鹿だけでなく、夏目先輩や姫川先輩も危ない。

六騎聖の2人は涼しい顔しているのに対して先輩2人は肩で息しているように見える。

 

 

そして俺も。

俺は体力的にもダメージ的にも問題は無いんだが、何故彼女がこんなに怒っているのか、そして何故いるのかと困惑している。

こっちに非が無ければ男女平等パンチが表に出ない所を狙っていくのだけど、原因こっちぽいしなー

 

何だ?

中学の冬休みに男鹿と遊ぶ以外の時を魔二津に修行しに行った時に知り合いはしたけど、特に何も不味い事はしなかったはずだよ。

 

とりあえず、様子見で睨み合っとこう。

 

 

「あっけない勝負だったね。これで終わりだよ」

 

三木が男鹿に止めを刺そうと拳を放つ。

しかしそれは屋上に来た1人の男に顔を蹴られて止められる。

 

まあ、神崎先輩なんだけどね。

 

 

神崎先輩の登場で場の空気が変わった。

まさに、反撃開始だ。

 

 

しかし、

 

「神崎先輩ストップかけさせてもらいます」

 

俺は神崎先輩の後ろに近づき、首元にスタンガンを当てて気絶させた。

 

感電して頭が若干パーマになっている先輩をゆっくりと床に寝かせる。

………電力の加減ミスったな。

少し痺れさせるつもりが気絶している。

 

 

あと、なんか周りが俺に注目している。

まあ、いきなり1年生が先輩の背後からスタンガン当てたら注目するか。

みんな呆然としている。

 

三木以外(諫冬ちゃんもだけど彼女はこちらを睨み続けているだけ)。

 

「正しい判断だ。教室では脳を揺らす技を使った。自覚は無いだろうが大ダメージだ。これ以上僕と戦えば命の保証はできない」

 

技を出した張本人はそりゃ分かってるよな。

 

「ただ、これだと僕の相手がまたいなくなってしまった。今度は君が相手かい、古市君?」

 

「いや、相手が違うだろ。お前の相手は男鹿だ。そうだろ男鹿?いつまで気絶してんだよ」

 

膝立ちしていた男鹿に声をかける。

 

「……気絶してねえ。昼寝してただけだ」

 

男鹿がゆっくりと立ち上がる。

 

 

そうだ。

それでこそ男鹿だ。

 

今回は残念にもここで終わりだが。

(ぶっちゃけ助かった…)

 

 

「はい、終了。あなた達、バカ騒ぎはやめなさい。勝手なことして……言わなきゃバレないとでも思った?

彼………結構、怒ってるわよ」

 

 

三木の背後にいきなり綺麗な女性が立っていた。

彼女の存在は多分俺以外だれも気づかなかっただろう。

 

その姿を見て、他の六騎聖は一瞬身体が硬直した。

まるで、子どものイタズラがバレたかのように。

 

そしてその姿を見た瞬間に薄ら寒いものを感じた。

感じた方向を見ると諫冬ちゃんがこちらを睨んでいた。

 

やっぱり何かしたのだろうか……

 

 

「大丈夫、怒ってへんよー」

 

 

屋上入り口から高身長の男が出てくる。

その関西弁と六騎聖ということでこの男が誰なのか容易に分かる。

 

三木の師匠で六騎聖のリーダー。

そして出馬八神流十六代目当主……

 

出馬(いずま) (かなめ)

 

 

出てくると他の六騎聖を叱っている。

笑ってるけど内心怒ってるな。

別にこっちに矛先向いてる訳じゃないからいいが。

 

そしてなんでか入り口の上に東条先輩がいるのにケンカにならないとはね。

 

少しつまらないかな。

 

………つまらない?

今まではつまらないなんて感情湧かなかった。

なんだ?男鹿の影響かな。

 

なんて、知的に考えてるけど俺は早くここから去りたい。

男として女性を怒らせているなら謝りたいところだけど何に対して怒っているのか分からないで謝るのは違う。

それを相手側に聞くのもOUTな気がする。

 

さて、俺は神崎先輩背負って出ていくかね。

どうせ誰にも注目されていてないことだし(諫冬ちゃんは除外してます)。

大物はやっぱり違うね。

俺みたいな小物と違って。

 

俺は逃げるように屋上から去っていった。

 

 

 



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三十一将 友人と先輩と退学交渉

朝学校に来ると退学処分が下されたことが書いて合った。

 

そして現在生徒指導室に退学組全員呼び出されている。

 

 

「もちろん内の生徒にも非があった。しかし君たちは厳重注意を受けた上での過失だ。何か言い分はあるかね」

 

 

「無いので帰っていいですか?」

 

現状、覆ることないので早く教室に帰りたいです。

 

 

 

 

「古市くん!?何諦めてるの!?すみませんが彼は本当に無関係です!」

 

邦枝先輩!

俺は正当防衛に見られなくも無いけど、割とがっつり関わってます。

主に俺が覚えてない方向で!

 

「そもそもの責任は全て皆を止められなかった私にあります。私が退学になるのは仕方の無いことですがここにいる者はせめて聖石矢魔の方々と同じ処分であるべきです」

 

「なるほど……ちなみに城山くんに怪我をさせたと思われる生徒にはそれぞれ2週間の停学処分となっている。部長連に関しては特に処罰はない」

 

この言葉に黙っていた他の男達が反応する。

さすがになんの処分も無いとは許せる話ではないのだろう。

 

「残念だが彼らと君らでは立場が違う。彼らは校内の秩序を守るために多少の制裁行為を認められている。今回もその範疇だ。今回の行動は彼らに落ち度はないよ」

 

退学組が反発する。

納得出来る訳が無い。

ノーガードでこちらは一切攻撃してはいけないと言われている様なものだ。

 

「話が良くわかんねーだけどよ」

 

ここで男鹿が口を開く。

 

「俺、あのチビぶっ飛ばしに行きたいんだけど。もう、いいか?」

 

それに同調するように東条先輩もメガネと喧嘩したいと言い出している。

 

邦枝先輩が男鹿の肩を掴んでグラグラと揺らしている。

 

「いや、案外そいつらの言う通りだぜ」

 

ここで姫川先輩も話に入ってくる。

 

「どーせ退学になるんだ。だったら奴らと決着つけてからってのも悪くねぇ」

 

そういうと指導室から出ようとする。

他の奴もついて行こうとする。

 

「待ちなさい。……やれやれ。確かにこのままではまた騒ぎを起こされかねない。ではこうしよう。一ヶ月後、本校で行われる学園祭。そこで君たち7人対部長連で決着の場を設けよう。ただし喧嘩ではなくスポーツでだ。学生らしくね」

 

ここで教師側が譲歩案を出してきた。

これが姫川先輩の思惑通りなら気持ちがいいのだけどね。

 

「競技に関しては部長連の有利にならぬように一考しよう。そして君たちが勝った場合は今の処分も考え直す。退学もそれまで保留とする。どうかな?破格の条件だと思うが」

 

「いいや、まだ足りない。アイツらにリスクがねえ。俺達が勝ったら六騎聖の権限、取り下げてもらおうか」

 

取り巻きのような教師陣が突っかかってくる。

しかし。

 

「いいだろう。ただし、勝敗がどうであれその後は一切揉め事は起こさないと誓ってもらうぞ」

 

 

これにて交渉終了だ。

 

そうして指導室から退学組が出ようとする。

 

「ああ、それとは別に邦枝葵は1週間の謹慎処分だ。屋上の扉の破壊……まあ、器物破損だね。心当たりあるだろう?」

 

邦枝先輩すみません。

俺が扉に鍵を掛けたばっかりに。

 

 

 

 

指導室から出ると廊下を歩く。

早速馬鹿二人が何も分からず喧嘩しに行こうとしている。

夏目先輩は笑いながらそれを眺め、姫川先輩は必死に説明している。

 

「あ、俺忘れ物したのでちょっと戻りますね」

 

他の人の静止をかける間もなく俺は生徒指導室に向かう。

 

「失礼します」

 

「なんだね?忘れ物でもしたのかね。流石に器物破損はバレボールとは関係ないから無くすのは無理だよ」

 

流石にそんな事はしないわ。

 

「忘れ物というか忘れ事というか。一つ確認がありまして……流石にあの力までは使いませんよね?」

 

「何の話だね?」

 

「出馬八神流を使うのは許容範囲内ですけど……流石にあれまで使われるのはちょっと困るので。学生内のイベントでやるとは思えませんけど、念の為に聞いて起きたかったんですよ。それではありがとうございました」

 

そういって俺は指導室から退出した。

流石に悪魔の力使えばヒルダさんは来るし、俺も若しかしたら力を使う場面が来るかも知れない。

 

 

 

 

 

 

「なんだったのか。しかし、これでよかったのかね?出馬くん」

 

「ええ、有り難うございます。これで彼らも必死になるやろし、久也らも納得のいく舞台が作れると思います」

 

「……すまないね。話の流れ上、ああいう条件がついてしまった」

 

「いやいや構いませんて、負けませんから。しかし、こっちも気を引き締めなアカンようです」

 

 

やはり、あの銀髪の子は一味違うようやな。

諫冬ちゃんの言ってた通りやわ。

過剰評価では無いと思うて行動せんとな。

 

 



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三十二将 友人とバレーボール 練習編

悪魔の力を使わない事をお願いしてきた俺は教室に帰ってきた。

 

すると教室には制服を着たヒルダさんがいた。

 

まあ、教室入る前から中学生みたいなノリが聞こえてたからなんとなく想像ついてたけどね。

 

「どうしたんすかこれ?」

 

昨日まで丸刈りの先輩が座っていたはずの席に座っているヒルダさんに話しかける。

ちなみに丸刈りの先輩は後ろの方に座っている。

 

「少々思うところがあってな。今の私は男鹿の従妹で名門私立からの転入生という設定になっている。それに私だけではない。アランドロンも来ておるぞ」

 

一応理由を聞いたがはぐらかして教えてくれないのでとりあえず頷いておく。

 

 

 

 

次の日

 

 

「みんな!学園祭の競技が決まったわよ!」

 

烈怒帝瑠のメンバーが廊下を走って教室に入ってくる。

 

「競技は……バレーボールです!!」

 

やっぱり、バレーボールか。

予想通りという原作通りというか。

人数的にピッタリだしな。

 

というか謎テレパシーのお陰かこの空間に宇宙が出来ている。

ハレー彗星やらブラックホールやらビックバンやら。

意味分からん。

 

そして何故か謹慎処分の筈の邦枝先輩がいる。

今日も佐渡原先生は腹痛で休みだし、謹慎がバレないって素晴らしいよね!

 

 

放課後。

 

 

やはりというか当然というべきか。

退学組は俺と男鹿、そして邦枝先輩だけだった。

 

「とりあえず練習だけしましょうか。男鹿、お前攻撃とか練習したいだろ。トスしてやるからアタックしてみろよ」

 

いないものはしょうがないので男鹿とペアで練習を始める。

俺がトスしたのを男鹿が気持ちよくアタックする。

それを俺がレシーブしてまた男鹿がアタックする。

その繰り返しだ。

 

その間に女の子達が会話をしてる。

おっと悪寒が。

怖いね、触れないように淡々と練習を続けますか。

 

 

 

 

 

 

その晩

 

明日の朝ごはんの下準備をしていたはずだ。

 

目の前には軍曹と書かれた服を着たキャタピラ兎が目の前で稼働している。

 

俺の今の姿は制服にエプロンをしている。

その上から拘束具をつけている。

 

周りには同じように拘束具をつけられた先輩方と黒焦げた男鹿がいる。

 

全員そろうとヒルダさんが出てくる。

 

 

皆、抗議を上げるが文字通り一蹴される。

 

 

というかこれってやる気の無い人たちをやる気にさせるための集まりだから、そこそこやる気のある俺はいらないんじゃないかな?

まあ、俺だけいないのもどうかと思うからいいけどね。

 

いいんだけどね……何で挑発の映像のアテレコ、俺のは無いの?

俺呼んだ意味無いじゃん。

 

アテレコだから言われてないのは分かるけど、本当に忘れられてそうでムカついてきた。

 

 

そして次の日

 

 

案の定挑発に乗せられた人たちの練習がスタートする。

 

リベロを決めたり、

MK5を瞬殺したり、

姫川先輩のリーゼントを下ろしてイケメンの姫川、通称イケ川を召喚したりした。

 

その騒動中に俺と男鹿は休憩を兼ねて外に出る。

 

 

「古市……言ってもいいか?俺、何してんの?」

 

「何ってバレーボールの練習だろ。退学をかけた真剣勝負という名の何かだろ。どうせお前のことだ、喧嘩出来ないから嫌だってだけだろ」

 

「よく分かってるな、古市。そうだ、俺はあのチビをぶっ飛ばしてーだけなんだよ。退学なんてどうでもいい。俺は喧嘩がしたい」

 

「でも、退学になったら流石に美咲さんにデンプシーロールを叩き込まれるだろ」

 

その言葉に一瞬硬直する男鹿。

 

因みにデンプシーロールとは上半身を8の字を横にした起動で振り続け、身体が戻ってくる反動でパンチの連打を叩き込むパンチの事だ!

 

 

ズパァッン!!!

 

そこに響く破裂音。

 

振り向くとそこには古びた道場のような物が見えた。

中を見ると三木が柔道着を着て鍛錬している。

 

三木の前には破壊されたサンドバッグ。

道場内には同じように破壊されたサンドバッグが散乱している。

 

 

結局手合わせという感じで男鹿と三木は戦うことになった。

 

漫画ならここから回想編に行くのだが生憎そんな事はやらない。

俺はあの時の事を覚えているし、それを今更三木に伝えるつもりも無い。

それが勘違い基い、逆恨みだとしてもだ。

それを伝えればこんな事をする意味も何も無くなるが、あの時起こったことをもう少し深く調べなかった三木も甘いし、伝えたら奈良に行っても仕返しする可能性を考慮した俺たちがいう訳にもいかなかった。

 

何より男鹿は伝える気は微塵もない。

なのにそれを俺が伝えるのも変な話だ。

 

しかし、諫冬ちゃんのことは誰か教えてください。

幾ら考えても思い出せないのです。

 

ちゃん付けで呼ぶのが悪いのかな?

諫冬さんのがいいかな?

 

なぜか、寒気がしたのでちゃん付けにします。

 

 

 

戦いは三木の方が優勢だった。

努力を続け、技を磨いて、ただ一つ男鹿より強くなる事を願い鍛錬し続けた。

頑張っただろう。

 

まあ、ツンデレだな。

男鹿より強くなって背中を預ける存在になりたい。

一途でその為に努力を惜しまない。

男鹿みたいなタイプにツンデレは仲が進展する事は滅多に無いだろうがな。

 

俺も男鹿の隣で戦い、あいつを1人にしないという願いがある。

だから否定はしないが、それが正しいとは言わない。

いや、正しいだろう。

しかし、正しいだけでは男鹿の横には立てない。

 

だからこそ、俺は……原作ではあんなもの(ティッシュ)に手を伸ばしたのだろ。

そして俺も()()に手を出している。

 

どんなに努力して技を身につけようがそれを凌駕するアレを。

チートだなんだ言われても構わない。

 

とまあ、色々と考えていたら戦いも終局だ。

 

三木が奥義を決める。

それをモロに食らった男鹿は意識はあるものの立ち上がる事が出来なかった。

誰がどう見ても火を見るより明らか。

 

 

三木の勝ちだ。

 

 

 

 

 

体操服のままだったので着替えて、先輩達に謝って帰宅した。

 

夕暮れの中の川原を歩く。

 

 

川原の横にたこ焼き屋を見つける。

そこには見知った人物がたこ焼きを売っていた。

男鹿は店の前に向かっていった。

 

「らっしゃい」

 

「てめえ、いくつバイトしてんだよ」

 

「こいつは珍しい客が来たもんだな。何にするよ?」

 

「………喧嘩、しようぜ」

 

「ああ?………そいつは高ぇぞ?」

 

バイトの鬼、東条先輩だった。

 

「俺はたこ焼き2箱ください」

 

とりあえず俺はたこ焼きを買った。

 

 



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第三十三将 バレーボール戦開幕

新たに作り直した所がありますので前話以前の改善点もチラホラあります。
読者を混乱させてしまう事をここに謝罪します。

では、続きをどうぞ。


男鹿と東条先輩がケンカを初めて数分。

俺はたこ焼きが2箱目に突入していた。

 

三木の奴に負けたとはいえ、東条と戦って必殺技を模索する。

ケンカで友情が育まれるアイツらはケンカで新たな何かを掴もうとしている。

 

俺はそれを眺めて東条先輩が作ったたこ焼きを食す。

つーかこれ、うまっ!

 

 

 

勝敗は男鹿の勝利。

といってもベル坊が判定したに過ぎないけどな。

 

 

さて、終わったことだし俺も帰るか。

明日のためにお弁当とレモンの蜂蜜漬けを作らなきゃな。

 

 

 

 

 

 

 

「遅いっ!!ったく、あと30分で試合開始だってのに古市君しか来てないなんて」

 

俺は不用意に怒りを買う事を避けるためにちゃんと30分前に到着していた。

ユニフォームも配られたので既に来ている。

 

「男鹿は今学校に向かってるみたいですね。かなりギリギリになりますけど、この時間なら間に合いますね」

 

連絡を知らない男鹿に俺は代わりに連絡していた。

 

メイドカフェには行かない。

カズ君の出し物を見に行こうかと思ったが今行ってもどうせ他の生徒に煙たがられるだけだ。

 

「あ、男鹿おはよう」

 

「古市か……完成したぜ、俺の必殺技が」

 

「そりゃよかったな」

 

どうせ、(スーパー)めりこみパンチだろうに……

 

男鹿が入ってきてから次々に退学組が入ってくる。

そろそろか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それではこれより聖石舞祭、石矢魔対聖石矢魔部長連のエキシビションマッチを開催します!!!両チーム整列!!!」

 

 

完全にアウェーな中の戦いだ。

数にものをいわせて、だいぶ強気だが、運動神経は良い不良を簡単に倒せるものかな?

なんて、解析役に回るしかやることないんだよな。

数も6人だから1人余るし、俺は応援しますかね。

 

 

その後は城山先輩が乱入してきたり、男鹿と東条先輩がボールを蹴ったり掴んだり隠したり飛び越えたり破裂させたりして失点になり、六騎聖がリードしている。

 

とりあえず姫川先輩がタイムをとり、こちらの陣地に戻ってくる。

 

「これ飲み物とレモンの蜂蜜漬けです」

 

俺が家で作ってきたお茶とレモンの蜂蜜漬けを食べながらバレーメンバーは悪巧みをする。

 

要約するとベル坊をつかった反則行為だ。

六騎聖側がベル坊の存在を許可した為にできた穴だか問題はアリアリだろ。

勝つために黙認するが。

 

こうしてベル坊を使った頭脳プレイという皮を被った汚い行動が六騎聖に牙を向いた。

親子時間差から始まり、ベル坊ブロック、ベル坊の癇癪雷を使った金縛りで点数は逆転して行った。

 

俺はそれを眺めて思った。

 

バレーじゃねぇ……

 

ラスト1セットになったがこのまま終わってしまうと誰もが思った事だろう。

思わないのは俺と敵大将、六騎聖最強の男…出馬要だ。

 

 

出馬要が放ったサーブにより、邦枝先輩は弾き飛ばされる。

そのブロックした腕は赤く腫れ上がる。

 

 

「あかんわーもう。あかんあかん。1セット目は普通のバレーしとこ思ってたのに……君らのせいやで?」

 

 

ここで出馬要が扱う、出馬八神流の話をしよう。

発祥は戦国時代の古武術と言われるが八極拳を取り込む事で独自の進化を遂げた流派である。

発勁を用い、一撃の威力を極限まで高めた技の数々が存在する。

 

決してそれをバレーボールに使うものでは断じて無い。

 

その重い一撃がボールに乗っかり、唯一石矢魔の中でレシーバーの邦枝先輩に向かう。

しかし、またもや弾かれコート外へ。

 

石矢魔が取るかと思われた1セット目はこの怒涛のサーブにより逆転負けした。

 

 

「あーあーすげぇ赤くなっちゃってるね……大丈夫?」

 

「ええ……」

 

「あのクソ眼鏡、なんつーサーブ打ちやがる」

 

邦枝先輩の手は赤く腫れ上がり、このまま2セット目続けるのは絶望的といえるだろう。

 

「………古市」

 

「ん?何だ、男鹿?」

 

「眼鏡のやつ、かなりサーブやったけど出来るか?」

 

「そうだな……うん、できる。そんじゃ反撃と行きますかね」

 

俺はベンチから立ち上がり、コートに向かう。

 

俺たち退学組は7人。

邦枝先輩がやられたら出るのは俺だ。

 

元々出馬八神流は知ってるし、それを活かすくらい俺にも出来る。

 

そして第二セットが始まる。

 

「おおーっと石矢魔チーム、選手を代えて来ましたね!!邦枝選手に代わり入ってきたのは古市選手!!不良の間で智将と名高い彼はどんなプレーを見せてくれるのでしょうか?」

 

 

「男鹿……古市の奴は強いのか?」

 

姫川が男鹿に質問する。

 

「確にケンカしているのはみないよね」

 

夏目が賛同する。

 

「……古市はケンカが好きじゃなくて殴ったりすんのは得意じゃねぇ。けど……スポーツは得意だった。それも人の真似をするプレーが」

 

 

 

俺はサーブするべくボールを上に投げ、構えをとる。

 

「あの構えは!」

 

「馬鹿な!猿真似だ!!これは一朝一夕で出来る技じゃ無い!!!」

 

六騎聖の人が驚いているが驚くのはこのボール受けてからにしてほしいね。

 

俺は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

そのボールは三木に向かって飛んでいき、三木を弾き飛ばした。

 

「うわっ!」

 

「普通なら猿真似って言いたくなるやけどな。君もウチの門下生やったかな?」

 

出馬先輩は技の完成度を見て、そう質問する。

その質問に対して俺は皮肉の意味を込めて、返す。

 

「いやぁ、全く。…でもウチみたいなトーシロの不良にちょこっと見ただけで真似できる簡単な武術ちゅーことやろ?それで……この程度か?」

 

エセ関西弁だが、煽るには丁度いいだろう。

 

さて、少しでも得点をとりますか。

 

 



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第三十四将 友人たちとのバレーボール決戦

久しぶりの投稿です。

この話を書いてるうちに前の話を少し改変しました。
少しと言っても六騎聖メンバーが変わったという話です。
お手数ですが2、3話前から1度読んでもらうと差異無く読めると思います。
読者にお手数をかける事、申し訳ございません。

それでは本編の方どうぞ


『誰が予想したでしょうか!!1セット目は聖石矢魔の出馬選手の怒涛のサーブで逆転劇でした。そして2セット目も同様かと思われましたが、古市選手の出馬選手と全く同じのフォームのサーブにより石矢魔無失点!そして聖石矢魔タイムアウトを取りました!』

 

「なんだよ!?あれ!!写輪眼かよ!」

完全無欠の模範(パーフェクトコピー)か!」

「いや、複写眼(アルファ・スティグマ)かも!!」

完成(ジ・エンド)だろ!!」

「俺は樺地が好きだな…」

 

色々な漫画のコピー系能力を出すな。

というか最後能力名無いからって人名だったぞ。

しかもお前の趣味じゃねーか!

 

『にゃー』

 

『先輩がキャラを戻してきました!』

 

『流石に自分のフォームを真似られ、精神状況は悪いでしょうからね』

 

『速攻でキャラを変えないでください!絡みづらいです!!』

 

 

実況と解説が馬鹿やっているが俺たちは聖石矢魔がとったタイムアウトで休憩している。

 

 

「あれ、やっぱり会長の……」

 

「ありえないっ!あんな風に簡単に真似られるほど武術は安くはっ…!」

 

「三木!……信じられんのも分かる。せやけど、現実を見い!今は対抗策を考えるのが先や!」

 

会長出馬の言葉に会員は皆黙る。

 

対抗策を考えると言ったが実は一つある。

というかそれしか取れない。

技は出馬の動きを真似ている。

ならば、対抗するのは出馬しかいないだろう。

 

しかし、その策を取ると出馬はレシーブ専門とならなければならない。

攻撃もやっていた出馬がそうなるのはかなりの痛手だ。

返せたとしても攻撃に転じきれず、攻めきれず負けることになるだろう。

 

「樫野ちゃんなら返せるやろ」

 

そんな思考に陥っている中、出馬は1人の名前を出した。

六騎聖の女性陣のもう1人、樫野諫冬の名前を。

 

 

樫野諫冬

彼女は六騎聖なのだが部活に所属していない。

それは家の関係で部活に参加する時間が無いためだ。

しかし、放課後を除き休日の試合などに助っ人として参加するのだ。

それは一つのスポーツに留まらず、欠員が出ようともどの役職でも完璧にこなす。

 

当然バレー部の助っ人も行っている。

他六騎聖メンバーとの練習は休日しか出来ていなかったがその実力に申し分無く、懸念であったのはメンバーとの連携くらいだった。

それも今では懸念でも何でも無いのだが。

 

 

そして当の本人は!

 

 

「かっこいい……」

 

古市を眺め、惚けていた。

 

「樫野ちゃん?」

 

「……はっ!えっと…すみません。どうしました?」

 

「あ、うん……樫野ちゃんにはあの銀髪の「古市さんです」…古市…くんのサーブを止めて貰いたいんやけど、お願いしてええかな?」

 

「分かりました。任せて下さい」

 

タイムが終了して試合に戻っていく。

 

 

色々と察しているだろうが、樫野諫冬は古市に恋をしている。

六騎聖メンバーはその話を前から聞かされていたのだ。

詳しい事はぼかされ聞いていないが、霊媒体質である樫野諫冬は実家での仕事中に一瞬の気の緩みで襲われてしまったのだ。

祖父が庇い、傷は無かったのだが次に標的になる事は自分になるのは当たり前だった。

頼りの天狗さんは伸びてしまっていた。

 

やられる!……そう、目をつぶったがその衝撃は無く、目の前には神々しく立つ、銀髪の男の背中が見えていた。

 

その後は早かった。

悪霊はやられ、祖父を助け、銀髪の男は去っていた。

天狗さんは友人のようでたかやんと呼んでいた。

 

その後天狗さんのエッチな質問に答えながらその人の話を聞き、きちんと会ってお礼をしたいと考えていた。

 

石矢魔学園に通ってると聞いて天狗さんは割と男の人の話は適当に覚えてるから石矢魔じゃなくて聖石矢魔と勘違いしたのだと考えて、聖石矢魔学園に編入したのにそこに古市はいなかった。

それを悲しく思っていた。

 

それが今こんなにも近くにおり、数度見ただけで出馬会長の技を真似てしまう古市の事を更に尊敬していた。

 

 

そんな話を六騎聖メンバーは聞かされていた。

そして聞かされるたびに胸焼けや砂糖をザラザラと口から吐き出していたのだ。

 

 

その思いを向けられている者は鈍感系主人公の如く全く気づいていなかった。

そして当の本人も超のつく箱入り娘。

自身が恋をしている事に気づいていなかった。

 

 

閑話休題(それはさておき)

 

こんな状態で古市のサーブに耐えられるのか。

それが六騎聖メンバーは心配していた。

 

しかし、それは杞憂だった。

例え恋をしていたとしても自身がこなすべき事は確実にこなす。

それが精神の油断から招いた過去の失敗から得たものだった。

 

古市がサーブを振るう。

凄まじい圧力が向かってくる。

 

変わらずの勢力…いや、自分流にアレンジを加えているのか先ほどよりスピードが早い。

 

「さすがです。古市さん」

 

しかし、返せない球では無い。

ボールが破裂しない様に放っているのは当然だ。

それなら返せる。

 

 

 

ボールが上がる。

 

そしてそれに反応する様に六騎聖は攻撃に転じる。

相対するように初めて返されたそのボールに反応出来なかった石矢魔はその攻撃に反応できず、点を入れられる。

 

このレシーブは六騎聖の反撃ののろし。

そう六騎聖と観客達は考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは……無理だな。小細工はもう使えない」

 

俺は呟く。

 

まあ、点数取れた方だよね。

タイムも取った訳だし。

 

 

()()だな。

 

邦枝先輩がこちらに歩いてくる。

どうやら腕の方は回復したようだ。

 

「邦枝……腕はもういいのか?」

 

「みんな聞いて。今から全部のボール、私が拾って拾って拾いまくるわ。だから……」

 

 

 

「絶対勝つわよ」

 

 

 

「「「「「おおうっ!!!」」」」」

 

 

『おっと!ここでリベロの交代のようです。ついでに急に気合いが入りました。先ほどまで会長と似たサーブを繰り出していた古市選手は樫野選手に簡単に返され、すぐさまベンチです。やはり、猿真似では限界だったか!?』

 

いくらでも言えばいいさ。

俺はもう、役割はこなしたからな。

 

後は応援だけ。

 

 

がんばれ。男鹿、みんな。

 

 

 

 

 



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第三十五将 友人と旧友の共闘です

前回のあらすじにも付け足しましたが六騎聖編の数話程編集しました。
主に六騎聖メンバーの変更と主人公のダメポイントの追加ですかね。

久しぶりの連日投稿お楽しみください。


そんなこんなで、何やかんやあって石矢魔5回目のマッチポイントと相成った。

 

幾ら俺が点数を稼いだとしてもそれは相手を本気させたくらい。

その分疲労が早くなり、結局は原作通り。

 

 

姫川先輩がサーブする。

体力の限界か、乱れが生じる。

 

六騎聖のチャンスボール、会長出馬が今日一番の威力のスパイク。

夏目先輩のブロックでなんとか弾いたものの、観客の方へ飛んでいく。

流石に邦枝先輩、追うが間に合わない。

 

これで、六騎聖に点数が入れば六騎聖は攻撃のチャンスは多くなる。

流石、スポーツ組。

スタミナは多いのだろう。

 

完全に六騎聖が取ったと誰もが思っただろう。

 

 

邦枝先輩の前に男鹿が現れる。

 

自分のポジションを無視し、ボールに食らいつく。

そして、そのままスパイクを放つ。

 

ボールはそのままネットを超え、六騎聖のコートギリギリのところに落ちた。

 

ギリギリセーフ。

つまり……

 

『入ったーーーっ!!!まさかの返球に一歩も動けず!!エキシビションマッチバレーボール対決を制したのは石矢魔です!!!』

 

これで石矢魔の退学は白紙に戻ったわけだ。

整列の為にも前にでる。

 

人数的に俺の前には誰もいないがそこはご愛嬌といったところ。

 

最初は不良集団と罵り、馬鹿にしていた聖石矢魔の生徒たちも歓声を上げ、拍手喝采だ。

 

これでやっと石矢魔の生徒も新しい学校に馴染む事ができるだろう。

 

キャプテン同士で会話している。

 

ふと、入口を見ると顔に3本傷が入っている男が入ってきた。

これでもう一つの問題も解消されるだろう。

 

俺は誰にも注目されていない。

念の為、ラピスに隠蔽魔術をかけてもらう。

 

俺はそっと体育館から退出した。

 

 

 

 

体育館から出、廊下を歩く。

後ろの方からはマイクで何かを殴ったかのようやハウリングした鈍い音がした。

 

前からスキンヘッドの男が4人歩いてくる。

服装から帝毛工業の生徒だということが伺える。

 

俺は道を明け渡し、素通りする。

 

 

通り過ぎる時4人の中の1人の頭が光った気がした。

見間違いかも知れないが数字のようで3と書いてあった気がした。

 

 

 

 

 

 

俺は屋上に来ていた。

この前喧嘩した屋上だ。

 

そこから体育館を眺めていた。

 

しばらくすると体育館から光りが漏れ出した。

閃光はすぐに収まったが若干焦げ臭い。

 

体育館の天井を見ると1部、明らかに歪な形になっている。

まるで無理やり紙に穴をあけ、破いたかのような。

 

 

男鹿のゼブルブラストにより、開いた次元の穴だ。

知らず知らずのうちに物理的ダメージを最小限に抑える事で学校が消し飛ぶのを防いだ。

しかし、その反動で次元の穴が開いたのだ。

腐っても魔王、赤ん坊でも魔王という事だ。

 

とりあえず、穴は塞いでおこう。

本来の悪魔流の塞ぎ方は知らないので自己流だが。

 

それに気づくのはよっぽどの実力者くらいだろう。

 

 

魔力を使う事になるがそれを感じ取るのなど1握りの強者のみ。

それも皆疲れているから、来るのなんてヒルダさんくらいかな?

 

 

 

見た目的にも魔術的にも次元の穴は無事閉じた。

 

そして、後ろに気配。

 

「やっぱり気が付きますよね。ヒルダさ……え?」

 

 

 

そこにいたのはヒルダさんではなく、先程も試合に出ていた樫野諫冬。

 

試合ユニフォームから着替えたのか巫女姿になっている。

 

「どうしたんですか?樫野さん。もしかして最後のイベントをすっぽかしたの怒ってます?それはすみませんでした。退学取り消しになったので後はいいかなっと考えてしまって…「そんなのどうでもいいです」………」

 

どうでもいいとは……

では、何用なのだろうか。

 

「古市さん、私は貴方にっ…!?」

 

何か喋ろうとした時後ろから1人の男が樫野さんを押さえつけようとする。

殺気も気配も感じさせなかったそれにギリギリで気づいたようで紙一重で躱す。

 

「よせ、光星」

 

「畏まりました、貴之様。ご命令通り任務は完遂しました」

 

「ご苦労さま。今後は邪魔にならない程度で自由に活動する事を許可する。力は一段階の使用のみ許可する」

 

「畏まりました。そして、この女性は何方でしょうか。体育館でも貴之様の相手側にいたと記憶しているのですが」

 

「多分後輩。それでいて、上司になってるかも」

 

「それはどうゆう?」

 

「光星ってさ、後頭部に数字あるじゃん。それで数字を確認出来なかったのだろうけど数字が2から3になってるんだよね」

 

「なるほど……なら納得です。なぜ敵対心が全く無いのか。それでいて朝から光りが強く光るはずです。新たな仲間を得たということなんですね」

 

 

いきなり現れたハゲの男と楽しいそうに談笑する想い人を不思議そうに眺める樫野諫冬。

 

「何がなにか分からない顔してるね。どうかな?説明も兼ねて家に来ない」

 

「家ですか!行きます!!……え?」

 

条件反射で返事してしまったのか、それとも本当に家に行けるか夢なのか考えているのか。

それは地の文も分からない。

 

「光星も来るだろう。久しぶりに家で飯食ってけよ」

 

「ありがとうございます。それではご同伴させていただきます」

 

 

 

 

 

 

ーーそれにしても今日争った三勢力が一同にいるっておかしい状況だなーー

 

 



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第三十六将 友人の元に魔王が来るそうですよ

諫冬ちゃんに説明をしている内になんとか睨んでいた理由も解消できた。

 

よかった、この頃はそれだけが気がかりだったんだ。

 

助けた時のお礼を言いたかったのとあの時よりも戦えるようになったので安心してくださいということだったらしい。

屋上に来たのも古市()がいるのを聞いて見に行ったら喧嘩とは知らなかったそうだ。

 

これからの事も説明出来たし、ゆっくりと次の戦いに備えられる。

 

 

あと、年上だったんだ……

 

まあ、確かに邦枝先輩と顔馴染みらしいし、当然ちゃ、当然か。

本人からこれからも諫冬ちゃんで呼んでほしいとの事なので呼び続ける。

 

光星はこれから修行に入る。

修行せずに帝毛工業という弱小校を纏める事に費やして貰ったのだ。

アレの力を制御する為に鈍りを解消する為にも修行は必要だ。

 

 

 

次の日からもう学校なんて疲れるが…まあ、日本ってそんなもんか。

 

 

俺は一直線に屋上に向かう。

 

「なんや君えらいタイミングやなぁ……君もやる気かいな?」

 

屋上の柵に1人の男子生徒が寄りかかっている。

 

「俺は見届け人です。いつの時も必要でしょ、そういうの。2人も来たみたいですし」

 

後ろを見ると男鹿と東条先輩が来ていた。

寄りかかっている生徒は聖石矢魔生徒会長、出馬。

3人の勝負は終わっていない。

 

俺はそれを通り越し、屋上入口まで行き、そこから3人を眺める。

 

3人がにじり寄る。

 

いざ、喧嘩が始まる。

その瞬間っ…

 

 

出馬会長の寄りかかっている柵に1人の男が着地する。

 

 

「よう、お前ら。ホームルームの時間だぞ」

 

脳が正常に反応する前に3人は一撃ずつ、謎の男に殴られ、吹っ飛ばされる。

 

流石に3人が吹っ飛ばされるのを見ると若干引くな。

 

三木もいつのまにやら屋上に来ていて、口を開けていた。

 

「よいしょっと……お前ら運ぶの手伝え」

 

「あっ…貴方は何者です!?この3人を軽々とのすなんて!!」

 

「三木、今は運ぶのが先だろ。教室か保健室かは分からんが」

 

とりあえず三木は黙り、出馬会長を背負う。

インパクト重視なのか後の2人は謎の男が背負う。

 

 

俺はそれについて行く形になった。

 

 

 

その後教室で新しい担任になった早乙女禅十郎という事を謎の男は言った。

後の詳しい説明は無し。

ホームルームごはさどこかに消えてしまった。

 

俺も飲み物を買いに行ったので分からん。

ここぐらいだよピクニックのヨーグルト味あるの。

 

 

 

飲み物を買っていると俺の隠蔽魔術が破壊された。

それと同時に圧迫するような魔力が学園中にほとばしった。

完全に直せば早乙女禅十郎も動かないと予想したがそうならなかったらしい。

 

明らかに何者かによって手を加えられたのを確認したらしい。

 

そういう真似したら破壊するように仕掛けていたとはいえ、これで完全にバレたな。

後は俺がやったということをバレないようにすればまだ大丈夫だろう。

 

「古市くん!男鹿は!?というか感じなかったのか?あの圧迫感……」

 

「ああ……あの体育館からのだろう。差し詰め、あの謎の男じゃないか?他に何かしそうな奴は思いつかん」

 

「体育館か……古市くん!僕らも「嫌」向かおう!!……へ?」

 

「そろそろ終わるだろ。俺は教室に帰るよ。教師らしいし、無意味にする事もないだろ」

 

俺は三木に背を向け、教室に帰っていく。

後は体育館裏だけだからな。

荷物を取りに行かねば…

 

 

 

体育館裏。

 

邦枝先輩と男鹿が向かい合い、真剣な面構えでこちらを見ている。

俺はその光景を隠れみている。

 

告白か!

告白なのか!

 

いや、違ったな。

ベル坊について聞いてるな。

 

それを告白する(男鹿が)なら告白も間違いじゃないか。

 

 

しかし、男鹿は馬鹿だぞ。

説明なんてできるはずが……

 

「だぁあっ!!面倒くせぇ!!ベル坊っ!!お前、自分で答えろ!!!」

 

「ニョ!?」

 

ほらみろ。

ベル坊にぶん投げているじゃねぇか。

ベル坊もびっくりしてニョ!?っとか言ってるし。

 

つーか喋れんだろ。

 

「ダ」

 

「ダ……?」

 

「だ」

 

「ダ」

 

「ダ…?」

 

 

そして静寂が訪れた。

 

 

 

「″ダ″じゃねえぇぇーっ!!」

 

「いいところに古市!こいつの名前なんだっけ?」

 

「そこから!?お前親のくせに名前忘れてんじゃねーよ!!!もう、邦枝先輩だめですよ、こいつに聞いちゃ!放っておいたらそいつらどこまでもカオスなんですから!!」

 

「貴方も知ってるの?」

 

こんな空気の中未だにシリアスに持ってこうとするのは尊敬します。

 

「もちろん!!何度巻き込まれたことか……ベル坊の本名はカイゼル・デ・エンペラーナ・ベルゼバブ4世。正真正銘の王子です」

 

「えっ?王子…様?」

 

「そうです。ヒルダさんは侍女で男鹿は日本での親代わりとして代わりに子育てしているんです」

 

大事な部分は隠しつつ、真実を伝えた。

これならきちんと説明して、問題は無いはずだ。

 

「おお!それだ、古市!!お前よく覚えてたな」

 

「逆に親のお前がなんで忘れてんだよ」

 

「ど、ど忘れだ!だって、こいつのフルネームなんて1話目でしか出てこねーから忘れちったんだよ!!」

 

こら!

1話目とかメタい事言うな!

お前の中では1話目かも知れないが今作では2話目なんだぞ!!

 

いかん……俺も混乱している。

 

「ア"ーーーッ!!!」

 

忘れたと男鹿が言うから泣きながらベル坊が逃げてしまった。

 

 

 

「よしよし、ダメよぉ?大魔王の息子が簡単に泣いたりしちゃ……」

 

ここにいる人、誰1人気づかなかった。

その人はベル坊を抱き抱え、こちらを見る。

 

足跡もない。

まるでそこにいきなり現れたかのようにその女性はこちらを見ている。

 

 

その見た目はヒルダさんに似ているが…

 

 

「誰だ……お前は…?」

 

「あら、てっきり私とあの下衆女を見間違えるかと思ったけれど……案外見る目があるのね。けれど、

 

………死んでもらえるかしら?」

 

 

バックステップをして、俺は男鹿の後ろまで下がる。

 

「あら、勘のいいこと……」

 

 

ズドオォン!!!!!

 

上から何かが落ちてきた。

砂ホコリが舞い、そこには1人の女性がいた。

 

ヒルダさんだ。

 

「ヨルダ、何故貴様がここにいる……」

 

「あらぁ……なにも聞いてないの?かわいそう……」

 

「坊っちゃまをつれて下がっていろ、男鹿。こいつの目的は私だ」

 

「あらあらあら〜つれなぁ〜〜〜い。数年ぶりの再会だっていうのに……もうお別れ?」

 

ヒルダさんは仕込み傘の剣を構え、ヒルダさんによく似た女性はモップを構える。

 

 

 

「おやめなさいっ!!!」

 

そんな一触即発の状況に声が響く。

 

そこにはヒルダさんとヨルダと呼ばれた女性と同じく侍女服を着た女性2人が立っていた。

 

「勝手な行動は慎みなさい。貴方とヒルデガルダの因縁は存じてますが今はその時ではありません」

 

「でもでもイザベラ〜」

 

「そうだぜ!慎めヨルダ!!」

 

「サテュラは黙っていなさいよ」

 

「何ぃ〜〜っ!!」

 

イザベラと呼ばれた女性は眼鏡に赤毛を左に寄せ、結っている。

その手には不気味な本が1冊。

 

逆にサテュラと呼ばれた女性はなにも持っておらず、他の2人よりも露出が多い服を着ている。

 

 

「よい。3人とも下がっておれ……」

 

いきなりキャラが増えて混乱しそうなのに更にもう1人声がした。

次は女性の声ではない。

 

寧ろ幼い子どもの声だ。

 

 

 

「久しぶりじゃ……弟よ」

 

 

 

 

 

 



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第三十七将 王子とゲームプレイ

 

「よっしゃあー!!来たのじゃ!!余のミラクルエイト!これで1発逆転じゃ!!」

 

「すみません、雷です」

 

「焔王様!……くっ!しかし青コは既に飛び立ちました。1位は終わりです!」

 

「ごめん、今テレサだから。青コも雷も今効かないんだよね」

 

 

そしてそのままゴールイン。

ダメ押しで後ろにファイヤーボールとボムを置き土産にしていく。

2位だったサテュラが落ちていき、代わりに3位だったほのかがゴールした。

 

焔王はNPCにも負け、12位だ。

せっかく、ハンドルコントローラ貸したのに。

ムズいからなハンドル。

 

俺はやっぱり、ゲームキューブがやりやすいよ。

 

 

 

 

何故、家でマリカーをやっているかといるとあの後説明する為に場所移動する事になり、自宅に帰ってきた。

 

焔王と侍女悪魔3人が言うには大魔王がベル坊人間界に送ったのを忘れて焔王を送ってきたらしい。

 

その後家がオーブンのように灼熱に晒されそうになったり、一悶着あったりしたが家にあるゲームで事なきを得た。

 

その後ゲームをしてからに後回しにされた、人間滅亡だった。

 

 

あと、忠告の様にベヘモット34柱師団が殺しにくるかも知れないから気をつけてという言葉も。

 

 

そしてどこかに泊まりに行くという焔王を引き止め、1日だけ泊まらないか?と提案。

最新機種は全て取り揃えてある家なら遊べるであろうということでとりあえず、全員で遊べるマリオネットカートをプレイしていた。

 

 

「なぜ、勝てんのじゃ……」

 

「焔王は昔のゲームから新しいゲームをやった事で身体が追いついてないんじゃないか?元々ゲームは得意みたいだし、慣れが足りないだけだと思うぞ」

 

「逆に私もゲームボーイやっても上手くプレイ出来ないもん。それと同じでしょ」

 

あと、コントローラーの問題でほのかにも機体を借りている。

ついでに参加している。

 

あと、人数2人空きがあったから諫冬ちゃんも呼んでプレイ中だ。

マリカーは運ゲーというけど諫冬ちゃんの運がカンストしているような気がしてならない。

 

「どうする、別ゲーやるか?それともチーム戦とかバトルモードで遊ぶか?」

 

レート8000の俺は普通に操作が上手いからな。

 

「いや、あと1回勝負じゃっ!!!」

 

「よっしゃ!流石焔王!!王族だけある男気だな!焔王が勝ったら家の最新機種であるスイッチャーを献上しよう!!」

 

「なんじゃとっ!!真か!!」

 

「男に二言は無い!」

 

「ならば、貴様が勝った場合は余が叶えられる範囲であればなんでも願いを叶えよう!」

 

「なんでも?焔王、それは嘘じゃないな!!」

 

「嘘なぞつくものか!余は王族じゃ、そのような事は気にせんでいい!!さあ、余から勝利をもぎ取ってみせよ!」

 

「勝負だ!!!焔王ーーー!!!」

 

「かかってこい!古市ーーー!!!」

 

 

 

 

 

「何これ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「世話になったの、古市。最高のもてなしであった」

 

次の日の早朝。

 

焔王たちは新居を探しに行くらしい。

あの後も白熱して結局徹夜でゲーム大会となった。

 

一応女の子はほのかの部屋に行って眠ってもらった。

夜更かしを女の子にさせるのはまずいからな。

 

 

 

結局マリカーは俺が勝った。

 

というか、俺がかかってこいと言う立場だったはずなのに流石王族もとい、魔王。

いつの間にかそういう雰囲気になっていた。

 

最後の何これは誰が言ったのか……

客観的に見てたら俺も言ったのだろうが。

 

 

あの後料理を振舞ったり、別ゲーやって協力プレイで友情が芽生えたり、約束をしたりなど……

 

 

約束は……内緒だ!

願い事を約束にしたのだがそれが叶えられる条件を色々と用意したから大分後になるしな。

 

 

「さて、また会おうぞ!古市よ」

 

「また、ゲームしような……もしかしたら全国対戦でマッチするかも知れないからその時はやろうぜ。俺、プレイヤーネームは[ネーヴェ]にしてるからその時もよろしくな」

 

「うむ!さらばじゃ!!」

 

そういって焔王はイザベラの能力により出したスポーツカーに乗り、朝日に消えていった。

 

イザベラの能力詳しく知らないけど、本から紙を破って、そこに書かれているものを具現化しているみたいだな。

体育館裏にも椅子を出していたし。

そんで、放置していたから時間制限もあるみたいだ。

 

便利そうだな……

 

 

とりあえず、朝食作ってその時の気分次第で学校行くか、休むか決めよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局休みました。

 

 



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第三十八将 焔王探し

 

 

「もししも、古市です。諫冬ちゃん今……あ!実家帰ってるんだっけね。ごめんごめん、あー…大丈夫!時間が空いてたらってだけだったから。うん、それじゃさよなら。……じゃあ、探すか!」

 

俺はスマフォをしまい、ラミアに声をかける。

 

「友人って1人しかいないの!?」

 

「1人って訳じゃ無いけど、光星の奴は魔二津に行ってもらってるし、他にもいるけど別件頼んでるからな。まあ、ゲーセン巡ればなんとかなるだろ」

 

ということで俺とラミアは2人でゲーセン巡りに行くことにした。

 

というかなぜ、こんな事になっているかというと一つ理由がある。

 

 

 

俺が焔王と遊んでいる時に、男鹿達が悪魔から襲撃を受けた。

それによりヒルダさんは重症を負い、男鹿は自身の弱さに痛感し、邦枝先輩の家に修行しに行った。

そしてラミアはヒルダからの頼みでこの戦いを止めるべく、焔王を探しに行くことになったらしい。

 

それで協力者を探した時に男鹿と一緒にいた男(つまり俺)を使い探し出そうという訳だ。

 

これがヒルダさんに提案されてなのか、ラミアが思い至ったかは分からない。

ヒルダさんに提案されたのであれば信用してくれているということでいいのだろうけど、まだ信用されてないっぽいからなー。

 

 

 

とりま、行きつけのゲーセンに行く。

 

UFOゲームのぬいぐるみを欲しがっていたので五百円使って取り、一応メダルゲームのところを見に行く。

 

 

「お、古市じゃねーか。お前もメダルゲームか?」

 

「神崎先輩……普通パチンコ行くんじゃないですか。キャラ的に」

 

「お前風営法知らねーのか?」

 

いや、アンタヤクザの息子だろ。

 

「神崎くーん、ヨーグルッチ買ってきたよー」

「お?古市」

 

後ろから城山先輩と夏目先輩も現れる。

 

 

 

 

 

 

「緑色の頭をしたガキ?……ああ、見たぜ。ついてきな、ここんとこ毎日そこの対戦格闘ゲームで…」

 

「ぐああああああああぁぁぁっっっ!!!また、負けたああああぁぁぁ!!何じゃこいつはああああぁぁぁ!!パネェェェっっっ!!!……およっ、神崎先輩」

 

「パー子……なんでテメーが俺の城にいんだ?あれか?ファンか?ファンなのか?」

 

「いやいやいやっ!!知らねーっスよ!たまたまつーかっ!パー子ってなんすか?」

 

画面にLOOSEと書かれた席に座るパー澤さんとその頭をアイアンクローする神崎先輩という異様な光景を見せられる。

 

「緑色のガキ?いやぁ……見てないっスね……地球人スか?」

 

「省略し過ぎだ。なんだ?緑色のガキって。ピッコロか、ピッコロなのか?」

 

というか日曜日の昼間に高校生がほぼ一人で来るというのもどうなんだ。

 

「もしかして今ウチが戦ってる相手かも知れないっスね。緑色っスかー?」

 

「あ?誰が緑色のガキだ。殺すぞテメーら」

 

そこにいたのは見事なリーゼントを持つ先輩。

姫川先輩だった。

 

「パー子そこどけ……クソメガネ。俺様の城に土足で入ってきてんじゃねぇよ…!ボッコボコにされてぇのか!?」

 

「あぁ?やってみろよ。この際だどっちが上かハッキリさせとこうじゃねえか」

 

「面白ぇ……いくぞ、おらァ!」

 

「こいやぁっっ!!」

 

いや、ゲームでつけるんですか?

それって…

 

話せる雰囲気じゃないし、ここはパー澤さんに。

 

「緑色の子どもについて聞くんすね。とりま、寧々さんに聞くっす」

 

おお、物分りがいい。

今度からパー澤じゃなくてちゃんと花澤さんと呼ぼう。

 

「あ、もしもしーっス。……葵姐さんいないんスか?」

 

「あ、俺居場所知ってますよ。とりあえず説明するんでカストに集まりましょう」

 

 

 

 

ーー移動中ーー

 

 

「今日みなさんに集まって貰ったのは他でもありません。とある人物を手分けして探し出す為です」

 

場所は変わって市内のレストランカスト。

この席だけメンツがヤバいのか周りのお客さんが引いている。

すいません、直ぐに出ていきますから。

 

「古市…てめーぶっ殺されてぇのか?勝負の邪魔してまで理由がそれか?」

 

「同感だね、古市君。あんまり調子にのっちゃダメだよー?オレ達をアゴで使おうってわけ?」

 

「そんな事はどーでもいいよ!葵姐さんはどこなの!?」

 

三者三様の答えだ。

 

「もちろん皆さんに無関係な話ではありません。というかこれは石矢魔の沽券に関わる大問題です」

 

この問題ということばで反応を示す

 

「ちょっと大丈夫なの?適当なこと言って…」

 

「大丈夫だ。第一、石矢魔の大将がやられたんだ。無関係というわけでも無いだろう」

 

そう、大丈夫だ。

他勢力に舐められていると知ったら途端に団結力を示すからな。

 

一息つき、

 

「先日、男鹿と邦枝先輩が襲撃を受けました」

 

その言葉で先ほどの問題について話半分だった皆に緊張が走る。

 

「幸い二人とも無事です。しかし、相手は信じられないほど強く、あの男鹿ですらズタボロに負けました。1度敵は引きましたが敵は挨拶程度らしく次は本格的に攻めてくるのです。力の無さを痛感した二人は今、とある場所で修行に向かいました」

 

「修行!?」

 

「はい、魔二津の山奥です。あの二人は必ず強くなって帰ってきます。だから、石矢魔の為にお願いします!先輩たちはその首謀者を探す為に協力して欲しいんです」

 

「……もしかしてそいつら、妙なコートの制服を着た連中か?だったら俺もやり合ったぜ……なぁ、パー子」

 

神崎先輩が発言する。

 

「はっはい、ウチも偶然見たんスけど、奴らあの東条先輩もボッコボコにやられてましたから!!」

 

ここで目撃者来たー!

もう勝ったも同然。

更にぶっ込んでやる!

 

「奴らの名は悪魔野学園…!!」

 

「たしかに奴ら悪魔がどーとか言ってたな。なんて悪そうな名前の学校だ!俺らがぶっ飛ばしてくれらぁ!」

 

 

その後、手分けしてゲーセンを周り、焔王を探した。

度々、不良に絡まれたがダメンズ達のお陰でそこはスムーズに進んだ。

 

しかし、それでも見つける事は叶わなかった。

 

 

そして時間もすっかり夜になっていった。

 

 

「しかし、こんだけ探していねーとなるとちょっと探し方を変えねーと駄目だな。なんかねーのか?ゲーム好き以外に手がかりはよ?」

 

「うーん、でも後はもう、ヒルダ姉様のメールに合った「ネトゲサイコー」という言葉くらいしか……あれ?」

 

 

(((((((それだよ……)))))))

 

全員の心が一つになった瞬間だった。

 

ゲームセンター関係ないじゃん。

 

 



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第三十九将 ネトゲサイコー

焔王がゲーセンではなく、ネトゲしている事が分かったので我々はゲーム機器が揃っている場所に移動することとなった。

 

その中で名が上がったのは広さとゲーム機器がひと通り揃っている姫川先輩の家となった。

 

 

「ネトゲで探すとなりゃウチが設備揃ってるからな。一部屋6人、全部で30人が同時にプレイできるようになってる」

 

「一部屋ってまさかてめーこのフロア丸々てめーのもんとかいうんじゃねーだろーな!?」

 

「ばーか、こっから上全部だ、ハゲ」

 

流石姫川財閥。

まー稼いだのは本人だろうけど。

 

とりあえず一部屋に上がることになった。

 

上がってまず、夏目先輩と神崎先輩は冷蔵庫を漁りだし、千秋さんはゲームが入った棚を眺めていた。

 

「これ、やってもいい?」

 

「ストIVか……お前格ゲーなんてやるのかよ…」

 

「かなり、得意。弟達とかゲーセンでよくやる」

 

「そうです!姫川先輩!!その子どもはゲーセンで格ゲーの対戦台に座ってたってこととネトゲをやり始めて日が浅いなら同じタイトルの格ゲーをネットでやってる可能性があります!」

 

「なるほどな……それなら世にあるネトゲを片っ端からやるよりは希望が見えるな。とりあえず、あそこにあった全タイトルを手分けして探すか」

 

「はいっ!!あ、あとハンドルネームなんですけどもし「エンオウ」と読める奴がいたら教えてください。良く名乗る名前みたいなものです。漢字でもローマ字でも」

 

これで希望が……

 

「あの……それ、今戦ってる人かも……」

 

ミラクルキターーー!

 

「いや、まさか。そんな……いきなりは」

 

 

《ENOH》

 

おお、確かにエンオウと読める。

いや、まだ確定じゃない。

もっと決定的な情報を…!!

 

「おっ…向こうからメッセ届いたぞ」

 

全員画面前に集まる。

 

 

『ムキーーーーーーっ!!

おぬし調子にのるなよ!!

再戦じゃ!!再戦!!

余の恐ろしさをとくと

味合わせてくれるっっ!!(゜皿"゜メ)』

 

((絶対こいつだ……!!))

 

「こいつです。いきなり、大当たりです!とにかく返信しましょう。ちょっとキーボード打たせて」

 

大丈夫だ。

焔王の性格なこれに乗るはず。

 

『焔王坊っちゃま、勝負しましょう。

次の勝負に勝ったら相手に質問するということでどう

でしょう?

必ず、質問には正直に答えるということで。

しかし、焔王坊っちゃまにはこちらには質問は無いと

思います。

ですので先にこちらが情報を一つ。

今、私達のところにラミアがいます』

 

送信した。

 

「なんでアタシがいるって送ったの!?」

 

「いや、ラミア焔王苦手そうだったから何かを感じ取って……あ、メッセ返ってきた」

 

『ぬぉぉぉぉぉっっ!!

ラミアー!!ラミアかっっ!!

なぜ お主がっっっ!!

どこじゃ!?今こっちに来とるのか!?』

 

めっちゃ食いついた。

とりあえず返信しよう。

 

『これで焔王坊っちゃまにも質問が出来ましたね。

しかし、契約は絶対です。

質問がありましたら勝ってください。

これで対等です』

 

送信っと。

 

送ると直ぐに再戦願いとメッセが届いた。

 

『よいだろう。

この勝負で余に勝てば教えてやろう』

 

ほう。

挑発とは中々。

 

「まかせてください……勝ちます」

 

プレイヤーは千秋さん。

 

 

プレイ後すぐさま2本取り、あと1本となった。

 

「てゆーかなにこのゲーム」

 

怪訝な顔した寧々さんが質問する。

 

「ストリーキングオブファイターズIV。通称ストIV。脱げば脱ぐ程強くなる裸の戦士達が戦う格ゲーだ。プレイヤーはダメージを受けると服が破けていく。そして破ける毎に大技が出せるようになり一発逆転が可能になる。ただし、全裸になったら負けだ。かなり玄人向けの格ゲーだが、谷村は相当うまいよ」

 

説明キャラと化した夏目先輩ご苦労様です。

寧々さんは目が死んでいる。

 

「あれは…!!ゼロフレーム浮かし脱ぎっっ!!通称【ゴーストストリップ】!!」

 

そして画面にLOSEの文字が刻まれる。

 

「え?何?負けたの?」

 

状況を理解してない寧々さんが周りに尋ねる。

 

「ありえない……殆どハメに近いウルテクだ。噂には聞いてたが本当に使える奴がいるなんて……」

 

「プレイヤーが……変わった…」

 

その後も奮闘したが千秋さんが30連敗したところで一時中断となった。

俺もウルテクが出来ない訳では無いがやるスピードがあちらの方が上だ。

同じ技なら早い方が勝つのが通り。

ここは諦めるしか無いだろう。

 

今は姫川先輩が交渉し、明日別のゲームで対戦することになり、解散となった。

 

 

 

 

 

 



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第四十将 ネトゲシュージン

次の日姫川先輩の家に集まりゲームをした。

内容はThird・Person・Shooter

俗にいうTPSゲームだ。

ゲーム名はジ・エンド・オブ・ウォー4。

 

相手がチート行為をしてきたので姫川先輩がゲーム会社を買い取り、設定を弄りまくりでのド汚い手で勝った。

しかし、その後焔王はごねりだし、別ゲーで戦うことになった。

 

なぜか桃鉄(桃太郎DE鉄人)で。

 

そして三徹してゲームをやっている。

まさにネトゲ囚人。

 

 

俺はみんながゲームをしている中で料理を作ったり、疲れた先輩達にマッサージをしたりとアシスタントに回っていた。

 

ゲームも好きだがこうやって他の人の為に行動するのも好きだ。

 

 

おっと食材が無くなった。

また、買い出しに行かなくては。

 

「買い出し行ってきます」

 

「わ、私も!」

 

「古市くん俺も荷物持ち行くよ」

 

「ウチも!めっちゃおいしい料理の為っスからね」

 

買い出しは夏目先輩と花澤さんとラミアと行くことになった。

 

残りの女性陣はゲーム、男性陣は仮眠だ。

 

スーパーで食材を買う。

片手で食べられるようにサンドウィッチでも作ろう。

 

「それにしても焔王はどこにいるんだか……」

 

「今のところゲームしか無いからね。かといってこのままじゃ前に進まないし……」

 

「いいのよ。あたし、アイツ苦手だから。正直会わなくて済んでホッとしてるもの」

 

「それじゃあ、本末転倒だろ。にしてもどうするかな……こうなるともう打つ手なしだし……」

 

帰り道雑談しながら歩く。

 

 

ドンっ

 

「あ、すいません。少し余所見を………あ」

 

俺は不意にぶつかってしまい、すぐさま向き直り謝る。

そして顔を見るとその顔には覚えが合った。

 

「あ」

 

「……ヨルダ」

 

侍女悪魔の一人、ヨルダさんだ。

 

そしてヨルダさんは逃げ出した。

俺とラミアは追いかける。

 

エレベーターに乗ったようで先に上がって行く。

階段を使い駆け上がる。

 

階層はこの四日間居続けた見覚えのある階層。

 

ヨルダさんは更に逃げる。

その方向は帰るべく方向。

 

そして不意に隣の部屋のドアが開かれる。

開かれた先には焔王が顔を出していた。

 

 

気づかれたと気づいたヨルダさんの行動は早かった。

すぐさまこちらの口を塞ぎ、焔王と共に部屋に入る。

 

「ごめんなさいね。せっかく出来た坊っちゃまのゲーム相手ですもの。大人しくしてくれたら危害は加えないわ」

 

大人しく?ゲーム相手?

普段使ってないとはいえ、姫川先輩の部屋だぞ。

本当に……本当に。

 

 

ずっと隣の部屋にいたのかよ……

 

俺は膝から崩れ落ち、地面に手をついた。

 




作者の独り言
これが投稿されれば視読者は思う事だろう。前話のサイコーのイントネーションが変わってしまった…と。


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第四十一将 ヒルダさんが帰ってきました

お茶を出されたので座って飲んでいる。

 

あの後隣にいるという三日間を台無しにしてくれた絶望に打ち震えている内に話すことになった。

 

てゆーか、部屋汚ねぇ。

侍女悪魔が3人もいて、主人の生活環境悪化させんなよ。

 

「ヒルダに頼まれたのですか?」

 

いきなり確信をつくような事を話すな。

 

「……ラミア、あなたも久しぶりですね。二人が何をしに来たか大体察しがつきます。焔王坊っちゃまにまた、会いに来てくれて嬉しいわ。少し背が伸びたかしら?」

 

「はい、ちょっと見つけるまでが大変でしたけどね」

 

どちらの女性もニコニコと会話する姿は微笑ましいかも知れない。

しかし、不穏な空気で満たされた空間ではこの笑顔が貼り付けられたものだとヒシヒシと伝えてくる。

 

こぉわっ!

胃が痛くなる。

 

「にしてもちょっと見つかんの速えーよなー。だからちゃんと変装しろっつったんだよ!」

 

「していったじゃない。それに、アンタの用意した髭眼鏡じゃ余計に目立つでしょ。あらぁごめんなさいね。そっちの男の子にはちょっと刺激が強すぎたかしら?」

 

こちらが話している後ろでヨルダさんが着替えている。

ラミアが隣で怪訝な顔をしている。

 

確かに健全な男子高校生である俺も反応するが、俺は生憎と鼻血を噴き出すようなことはしない。

それこそ漫画じゃあるまし。

 

そして俺たちに見つかったのに慌てる素振りが無いのは次元転送悪魔だからかな。

俺らをここから出さなければ問題は外に出ないからな。

 

何故わかるかって?

悪魔の種類はそんなに会ってないけど、次元転送悪魔に限れば二人確実に会っているからな。

判別はしやすい。

 

「そういや、焔王坊っちゃまは?先程までいましたよね?」

 

「あぁ……坊っちゃまはシャイですから」

 

そう言われ自分たちが入ってきた方を見ると扉を盾にこちらを見ている。

 

「ラ……ラミア」

 

もじもじしてらっしゃる。

 

「はい……」

 

ラミアが返事すると扉に隠れ、またもや…

 

「ラーミア」

 

顔を出して、また顔を隠すというのを繰り返した。

 

焔王めんどくさっ!

なぜ、この世界の恋してる人はこうも奥手なのか……

俺は恋したこともされたことも無いからどうにも答えられないが。

 

「古市、やっぱりここはいったん戻りましょう。私達だけで交渉を進めるのは危険だわ。まずわヒルダ姉様に報告よ」

 

ラミアが耳打ちをしてくる。

 

確かにそうだが、次元転送悪魔がいるなら離れるのも得策ではない。

かといってこれでは手が足りない。

 

「賛成だ。直ぐに出よう」

 

立ち上がろうとすると肩に手を置かれる。

 

「まぁまぁ、そういわず……せっかく来たんだからゲームでもしていきなさいよ」

 

「それは聞けない提案だな!」

 

俺はラミアを抱え、廊下に走る。

廊下を超え、玄関を開ける。

 

その先は真っ暗闇で満たされていた。

空間は断絶され、奈落の底の様な印象だ。

 

「今、この部屋は外界から切り離した別次元にあるの。逃げられないし、助けも来ないわ」

 

「本当よ、ヨルダはアランドロンと同じ次元転送悪魔なの。その気になったら逃げられやしないわ。ヒルダ姉様が魔力を辿れなかったのもこの力のせいよ。次元の壁で魔力を遮断しているんだわ。いちかばちかそこから飛び降りてみる?運が良ければどこかに繋がってるかもしれないわ」

 

「あのオッサンと同じにしないでもらえます?明らかにレベルが違うでしょ?降りるのはオススメしないわ。私も責任持てないから。とゆーか別に命狙ってる訳でもないんだしぃ、楽しくゲームしましょうよ」

 

万事休すと思われた。

 

ピンチに駆けつけるとかヒーローじゃないんだから。

 

『生憎だなヨルダ、アランドロンを見くびらん方がいいぞ?』

 

ラミアはポケットから白い四角いものを取り出す。

それはヒルダさんから渡されたと言っていた通信機だ。

 

『今回のことをお前に頼んだ以上、ラミア。これくらいの保険は当然だろう?二人とも下がっていろ』

 

通信機からはヒルダさんの声が聞こえる。

その声には覇気が詰まっている。

やられたと聞いていたが大丈夫そうでよかった

 

通信機から電磁音がし、徐々に身体が実体化する。

 

通信機を媒介にし、肉体を転送している。

 

「フム、初めてにしては上出来だ。待たせたなラミア」

 

いつも通りの、傷など無い姿のヒルダさんが出現した。

その手には仕込み傘の刀身がギラつかせている。

 

「ヒルダ!あなた一体どうやってここへ…!?」

 

「どうやって?きまっているだろう。アランドロンの力だ。奴の新式転送術【バリサン】次元を超越する魔界の電波を使って通信機から転送を行う。対貴様用に作らせたものだ」

 

「おお、あのオッサン。なかなか強いな!」

 

素直に賞賛しよう。

レベルが違うと自称していたヨルダさんも出来ないようだし、新たな技術を確立させたのは素晴らしい事だ。

後で解析しよう。

 

……ん?

 

ヒルダさんとヨルダさんが静止し、その間を見て固まっている。

 

「まさか……有り得ない!!」

 

「ヨルダの次元遮断を破るか……無能な家臣ではないようだな……」

 

黒い穴の様なものが二人のあいだに出現し、大きくなっていく。

 

それに反応したのか二人の侍女悪魔も廊下に出てくる。

 

「ヨルダ!何事っ……あれは……転送玉による空間の歪み……!!」

 

「ご苦労だったな、侍女悪魔」

 

歪みから一人の男が出てくる。

それはヨルダの首に手を当て、締め上げる。

 

「ヨルダ!」

 

「動くな……てめぇらもシメてやるよ。そう慌てんな」

 

いつの間にやら更に二人出現し、侍女悪魔二人の前に陣取っている。

 

「なっ……どういう事だよ!!あたしらは焔王様の侍女悪魔だぞ!!」

 

「だったらどうした?焔王様にとって害悪にしかならん者は全て敵だ。……理解してなかったか?この数日間人間界で自分たちがやっていた事を考えろ」

 

出てきた悪魔の中で中性的な悪魔が問いかけている。

まあ、あそこまで部屋汚くちゃな。

 

「主君を甘やかし、堕落させる侍女悪魔など、もはや害悪!!目的を忘れたか?クズ共が」

 

締め上げる力をどんどんと強くさせていく。

ヨルダさんの顔に余裕が無くなっていく。

 

そんな締め上げている男に刃を添える。

それはヒルダさんだった。

 

「貴様の相手は私だ……順番を間違えるな…ヘカドス」

 

「……フンっ、この間で実力の違いが分からなかったのか…?」

 

そんな嘲笑するように刃に手を触れ、破壊しようとするヘカドスと呼ばれる男。

 

しかし、する時間も無く、ヒルダさんの魔力によって拘束される。

その凄まじい魔力でヨルダさんから手を離してしまう。

 

「あぁ、そうだな。しかし、生憎とこの間はほぼ魔力を使い果たした状態だったのでな。実力の違いとやらを……確かめてみようか」

 

刀身に魔力を集め、綿飴のように練り固まっていく。

 

 

「なめるな!!!侍女悪魔風情がっっ!!!!!」

 

 

ドゴォッ!!!!

 

その思い響きは部屋に響く。

この上の階が無人でよかった。

 

ヒルダさんの一撃は太陽の光が見えるほどだ。

つまり、屋上まで貫通したということだ。

 

そしてそれを追うようにヒルダさんは貫通した部屋を駆け上がっていった。

 

それに合わせ、残っていた悪魔二人も上へと上がって行く。

 

 

それにしても何故、ヨルダさんの次元遮断が破られたのは何故だろう。

 

『主様!心配しました!!主様の魔力が遮断されましたので我ら4人で力を合わせ、結界を突破致しました。ご安心ください、我らはお側に……あれ?』

 

ああ、なるほど。

俺か、原因は。

 

 

 



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第四十二将 全員軍手着用ですよ

お久しぶりです


 

「早く上に向かいましょ!」

 

ラミアに声をかけられるが、俺はヨルダの集中が乱された事による次元の解放により、マンションの廊下にでる。

 

そして隣の部屋の扉を開ける。

 

「おう、古市じゃねーか。遅かったな」

 

「どこ行ってたんすかー?」

 

「姫ちゃんも不貞腐れて無いで元気だしなよ。ご飯係が帰ってきたよ」

 

扉を開けると先輩達が各々の反応を見せる。

 

このゲーム対決中のご飯係は俺が担当していた。

 

「敵の本拠地が割れました。向かいましょう」

 

「本当か、古市!」

 

廊下で寝ていた城山先輩が跳ね起きる。

 

「はい、隣です」

 

「ああ、電波は確かに隣だ。だが奴らはいねぇ。古市達が帰る前に確認したからな」

 

奥から姫川先輩もやってくる。

 

「それはおかしいです。俺とラミアは今、隣の敵に捕まっていたんですから」

 

「なんだと!?」

 

「来てください」

 

隣の部屋は開きっぱなし。

そこには侍女悪魔達がいた。

 

「やっぱ、隣にいたのかよ」

 

「だが、何故?さっきは空き部屋だったはずだ」

 

「先輩達は暗示にかかっていたんです。この部屋を開けたつもりが、逆隣の部屋を開けていた。脳による勘違いです。俺とラミアは先にそれが解けてしまった。それにより捕まっていました」

 

「そんなことが…」

 

「どうやって逃げてきた」

 

「男鹿です」

 

「何!?帰ってきたのか!」

 

「男鹿は主戦力と戦っています。なので俺とラミアは男鹿が戦っている屋上に向かいます。先輩方は敵を逃さないようにお願いします!」

 

そう言い残し、ラミアを抱えて屋上へと向かう。

 

少しタイムロスしたが、俺のロリコン回避の為に必要なこと。

上から凄まじい魔力を感じる。

 

これはナーガとか言ったか?

 

屋上へ着くと男鹿は哺乳瓶を頬に当てていた。

 

「嫌!何してのお前!?」

 

「おう、古市か。スーパーミルクタイムだ」

 

「意味分からんし、というか邦枝先輩はどうしたんだよ」

 

「先にアランドロンで帰ってきた」

 

「おい、まだか!」

 

「まだだ!やけどしたらどーすんだ!!」

 

なんだこれ。

 

「乗せられるな、グラフェル。貴様の悪い癖だ。この男の全力を叩き潰せばいい。それに王族の食事を邪魔するものでない」

 

「へっ、悪いな。そろそろいい感じだぜ」

 

そう言って男鹿は哺乳瓶を口にくわえ、ミルクを飲み出した。

 

「お前が飲むのかよ!!」

 

「アーダ!アーダ!アーダ!」

 

「不味っ…ベル坊君もう無理だ!これ以上は勘弁してください!」

 

なんだこれ。

会社の先輩に無理やり、酒飲まされてるみたいだ。

 

 

「うーし、きたきた」

 

男鹿の魔力の絶対量が上がっていく。

無理矢理リミッターを解除して同調していく。

 

「タップリ吐かせてやるよ!」

 

グラフェルの攻撃を片手でいなす。

 

そして自由奔放に縦横無尽に攻撃を加える。

 

そこに技など無い。

喧嘩ともいえない。

 

ただの赤ん坊のじゃれつきだ。

 

 

グラフェルはほぼ戦闘不能。

 

ナーガも傷を負った。

 

ミルクは本来混じらない水と油を混ぜる力がある。

そして現在、男鹿とベル坊の境界を曖昧にしている。

 

今の男鹿は無尽蔵に溢れ出すベル坊の魔力をそのまま引き出せる。

 

まさに魔王の大晩餐会(スーパーミルクタイム)

 

 

だが、これはより悪魔へと進行を早める。

 

元来、悪魔に魂を売るというのはそういう意味だ。

 

 

男鹿は更にミルクをあおる。

 

肌は浅黒く、紋章は全身に周り、蝿王の翼がはえる。

 

あれは既に男鹿の意識は無いだろう。

 

 

男鹿の姿を借りたベル坊だ。

 

「アウッ!アーイ!アーダ!!!」

 

完全にベル坊だ。

 

そしてまじまじとズボンを見るとやぶこうとする。

 

「ズボンを破こうとしている!邪魔なんだ!」

 

「いけません!坊っちゃまああああああああぁぁぁ!!」

 

「危ない!止めて!」

 

「なんというまるだしへのこだわり」

 

アランドロンいたんだ。

 

そこに魔力弾が飛来する。

 

それを、回避するために破こうとするのは止める。

魔力弾を放ったのは最初に倒れていたヘカドスだった。

 

「ナイス!」

 

「うむっ!!」

 

「まだ生きてたのね!」

 

男鹿が攻撃されたのにこの反応である。

 

「止めを刺さなかったのは間違いだったな!」

 

グラフェルが後ろからベル坊……いや、男鹿坊を羽交い締めする。

 

「俺ごとやれ!ナーガ!人間の肉体を壊せばベルゼ様は外に出られるはずだ!」

 

「よくやった2人とも。これで終わらせる」

 

「馬鹿野郎!グラフェル、てめぇも死ぬぞ!」

 

「へっ…こいつをやれるなら本望さ。あとの事は…」

 

そこまでグラフェルが言葉を紡ぐと気づく。

男鹿坊から紋章が連続で出ている。

 

そしてナーガを包み込み、空をも塗り立てる。

 

「まさか!これは…早く飛べ!!」

 

ラミアを抱えて飛ぶ!

 

「ナーガッ!!!」

 

マンションを破壊する。

 

これで小規模爆発らしい。

 

大魔王の連鎖大爆殺だ。

 

上の階層ごと吹き飛ばす。

 

この事件はこの町の不思議に加えられることだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

爆発を受ける中、 ラミアは見た。

 

自身を守るように障壁が貼られている事に。

 

そこには剣を持つ赤髪の青年。

 

錫杖を持った青髪の美女。

 

黄色髪の男が盾を構える。

 

 

そして銀色の髪をし、私を抱える男に緑髪の少女が寄り添っていた。

 

 

 

 

 

爆発は収まる。

 

いつの間にやら階層は姫川先輩の部屋まで落ちていた。

 

よく死ななかったな。

 

 

俺は護衛がいるけど他のみんな。

瓦礫に魔力攻撃がいったから良いけど、無かったら生き埋めだぞ。

砂より霧散する大量殺戮爆殺。

 

敵にしたくねー。

 

 

「古市…」

 

「焔王……様?」

 

後ろから焔王に話しかけられる。

怒気を含む声から思わず、様呼びしてしまう。

 

「貴様は戦友じゃ……しかし、余の嫁をお、お姫様抱っこなぞ……」

 

「全面戦争じゃ!!!必ず殺す!!」

 

おかしいな。

 

ロリコン回避+焔王友人関係で逸らしたはずが命狙われてますわー。

 

「全面戦争か……おもしれぇ」

 

「その喧嘩買ってやるよ」

 

気絶したグラフェルを焔王の方に投げ飛ばす。

 

「てめぇらが悪魔野学園か……人の家をなんだと思ってんだ」

 

「正直、侮ってたぜ。まさか爆弾まで使って宣戦布告してくるとはよ……上等だ」

 

「「その勝負……受けて立つぜっっっ!!!」」

 

凄い倒した感出てますけど、倒したの男鹿です。

あと爆発したのも男鹿です。

 

「えぇい!一旦帰るぞヨルダ!」

 

 

「離せ!1人で歩ける!」

 

一足先に目を覚ましたナーガが焔王に跪く。

「申し訳ありません、焔王様。この不甲斐なき結果の責任は……」

 

「良い、ナーガ。そんなことより全面戦争じゃ、余のために力を貸してくれるな」

 

「はっ!もちろんでございます!!」

 

「うむ……よいか古市!!近いうちに必ず全軍率いてくるからの!!それまでラミアを預かってて貰うぞ」

 

それだけ言い残し、空中へと飛ぶ。

 

 

やはり、避けられない道だったか。

 

指紋を気にして全員軍手着用してくる。

 

 

略して全軍。

 

とかかな?

 

 

ハハッ

 

 

 

 

 

 

 

 

その後1度解散となった。

 

男鹿を背負い、男鹿の家に向かう。

 

男鹿の、家族に出迎えられいつものように料理を始める。

 

 

どうせ、起きるまで時間あるしな。

 

 

 

 

 

 

 

「ヒルダ姉様!!ベルゼ様が目を覚ましました………覚ましたんですが……」

 

少し言い淀む、ラミア。

 

説明は見ればわかるという事で部屋へと行く。

 

男鹿は寝ているがベル坊は起きていた。

 

しかし、そのベル坊が発せられる言葉は赤ちゃん言葉ではなく。

 

「おう、ヒルダか。えーとあんまし、記憶ないけどアイツら倒せたんだっけ?えらい寝ちまったみてーだけど」

 

………

 

「ん?あれ寝てるの俺?」

 

 

 

 



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第四十三将 その他の人





 

「ごめんね、寧々。でも、今は一緒にいれないの」

 

これからの悪魔の戦いにみんなを巻き込めない。

 

 

『なんや、つれないやっちゃな。折角来てくれたんやから、笑顔で出迎えんとな』

 

『そうやで、葵ちゃん。気張ってはったやろ。少し気持ちも落ち着いとるし』

 

「う、うるさいっ!勝手に出てこないでね。何度もいってるでしょ。あなた達の事は秘密なんだから」

 

『おーこわ。分かってるがな。せやからちゃんと学校でも黙ってたやろ』

 

『葵ちゃんこそあの悪魔の綺麗な子にバラシそうやったやろ』

 

「ヒルダさんはいいのよ!」

 

 

いさちゃんが取り持ってくれた仲。

これを、有効活用するのよ。

 

 

魔二つでの修行のさなか、いさちゃんに連れられ奥の院にいった。

 

 

 

 

「奥の院…?」

 

「うん、この先は寺のもの以外立ち入り禁止なんだけどね。奥の院の更に奥に小さな祠があるの。悪魔を祓う時に私が必ず力を借りに行くの。そこは天狗の住む天狗塚って呼ばれているわ」

 

 

「凄い……こんな所があったんだ…」

 

「待って、葵ちゃん!!」

 

『諫冬……誰やそれ?儂はお前とアイツ以外の人間の出入りを許した覚えは無いで?』

 

「声?まさかこの中に天狗がいるの?」

 

「うん……でも今日は機嫌が悪いみたい」

 

「大丈夫まかせて!天狗さん!あの…話を聞いてください。この人は私の友達で……」

 

『知らん知らん。そんなんどーでもええ。あのくそばばあまじムカつくわ……諫冬…お前も同じ目に合わしたろうか』

 

「ちょっと待ちなさいよ!アンタが機嫌悪いのといさちゃんは、関係ないでしょ!それに私が勝手言って連れてきてもらったんだから!」

 

『お。なんや儂の声が聞こえるんか。まんざら見込みがない訳やない…か。ほな嬢ちゃん。2、3質問するから答えてみいや』

 

「試そうって言うの?」

 

『そんな、気張らんでもええで。質問は質問や。ズバリ!スリーサイズは!?』

 

「は?」

 

『スリーサイズやスリーサイズ!上から順に早う答えんかい!』

 

「質問の意味がよく分からないんだけど」

 

『意味とかちゃうねん!知りたいねん。スリーサイズ!スリーサイズ!』

 

「いさちゃんこの人何言ってんの??」

 

「天狗さんは力を貸す代わりにちょっとえっちなしつもんをしてくるんです」

 

「答えてるの!?」

 

『諫冬はえー感じに出るとこ出てきとるで』

 

「ただのセクハラ親父じゃない!」

 

『アンタ!!諫冬ちゃんきとるやないの!だったら早う呼びな!』

 

『あん!くそばばあ。今朝のエロ本捨てたのマジ殺すからな!』

 

『エロ本溜め込んどらんで働かんかい!ってあら!新しい子来とるやないの。またアンタ、セクハラ発言したんやないの!ごめんなさいね〜エロ親父がっ!』

 

『痛っ!殴ること無いやろ!!』

 

「え?2人目?」

 

「もう1人の天狗のコマ婆さん。よく人里降りて商店街にいるからあんまり力は貸してくれないの」

 

「力を貸せられるのってセクハラ親父一択なの!?」

 

『ってあら……諫冬ちゃんのお友達ちゃん。名前聞いて無かったわ。なんて言うの?』

 

『そういや、ムカついとったからスリーサイズしか聞いとらんかった』

 

『スリーサイズ聞く前に名前聞かないとアカンやろ!』

 

「まずスリーサイズを聞く必要ないわよ!」

 

 

 

 

「はぁ、葵です。邦枝葵です」

 

『葵!貴方葵ちゃんって!』

 

『あれ、それってタカやんの言ってた…』

 

『アンタ約束してたやろ。約束破ったら殺されるで』

 

『そうやな。完全に祓われるわ。よし、力貸したるわ。こっちも貸しがあるからの』

 

『その間の諫冬ちゃんの相手はおばちゃんがしとくからね〜』

 

御堂の扉が開かれる。

 

小さいミニキャラようなモノが2体出てくる。

鼻の長い姿ではなく巻いた鬣のような髪は狛犬だった。

 

「天狗……?」

 

『あっ!何!?天の狗って書いて天狗やで!狛犬だって天狗やん!』

 

『そうやでーそれに天狗呼びしたしたんは人間が先やで』

 

 

 

 

 

 

 

そんなことがあって力を貸してくれたけど…

 

 

「結局2体とも家にいるのよね」

 

「私も葵ちゃんの家に借りぐらししてるからね」

 

『都会楽しみやわー。お買い物やでー』

 

『烈怒帝瑠の子達、ぬいぐるみとか好きやろか』

 

 

「………」

 

 

 

前途多難だわ。

 

 



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閑話 裏山の狐さん

だいぶ前の感想欄見てたら、あるリクエスト(というか願望?)があって。
私の性癖的にntrはあんまり好きじゃないので、書くつもりは無かったんですが、なんか筆が乗ったので書いてみました。
あくまで相手は虎ですが、子どものときなら問題無いでしょ。


 

「虎!また無茶して!」

 

「静…問題ねえだろ、勝ったんだから」

 

七海静と東条英虎は幼馴染みだった。

現在、海でバイト中に暴走族に絡まれ、返り討ちにしたその後、普通に帰宅した後に怒られている。

 

 

「それで油断してる時にバイクで突っ込まれて怪我したんでしょ」

 

「違う、突っ込まれたからそのまま殴り飛ばしただけだ」

 

「それで拳を怪我しちゃ意味無いでしょ」

 

「次は大丈夫だ」

 

「次なんてしないでよ!」

 

 

東条英虎は黙り、傷の手当を受ける。

 

「骨は異常ないのよね。全く子供のときから頑丈なんだから……」

 

「お前の方こそ、怪我してないのか?」

 

「あら、心配してくれるの」

 

「そりゃ、心配するさ」

 

「そ、そう…」

 

 

 

「そういえば子どもの時にも怪我したよな……あの時も心配したさ」

 

「子どもの時でしょ……って私が?」

 

「そうだ。森で追いかけっこした時に…」

 

「森でなんていつでもしてたでしょ」

 

「あー……そうだ、お前が弓道場で怒られたって泣いてた時だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「虎!待ってよ」

 

幼少期、私たちはいつものように近くの山で遊んでいた。

 

私は女の子だったけど、虎や薫達と遊んでいた。

 

お母さんは新しくできた弟が独占している。

家でおままごとしている私を虎達は誘いに来る。

 

男の子に混ざって遊ぶと学校のみんなは少しおかしな目で見てくる。

 

けど、虎達とも遊ぶし、みんなとも遊ぶ。

そのうちみんなのアイドルの様な存在になっていた。

 

 

 

 

 

そんな時、いつものように森の中で遊んでいた。

 

今日は追いかけっこ。

 

虎が鬼で、みんなが逃げた。

 

普通の追いかけっこと違うのは虎が逃げる人を全員捕まえるということ。

 

虎は強い、喧嘩だけでなく、速くもある。

今回みたいにみんな対虎の時もある。

 

けど、いじめじゃなくてみんなが楽しくやってる。

 

虎もみんなを捕まえるって意気込み、捕まえる。

 

 

今日は私も男の子達に混ざって逃げていく。

 

 

昨日は弓の稽古で叱られた。

集中が無いと怒られた。

 

 

集中はしてなかったけど、そんなに怒ることも無いと思った。

お母さんは構ってくれないし、虎は喧嘩したり近所の不良に殴られたりするし。

 

だから少し今日は羽目を外して、不満を解消したかった。

 

ムキになって逃げるのに必死で足元が崩れそうになってるなんて知らなかった。

 

 

足を取られ、山の穴に落ちる。

 

穴は深くて広かった。

 

 

「あれ、静のやつ、こっちに逃げたと思ったんだけどな」

 

虎の声が聞こえた。

助けて、穴に落ちたと伝えたかった。

 

けど、落ちた拍子に足を怪我した。

 

痛みに気が向いているうちに虎は離れていってしまった。

 

 

 

穴は高くて自分一人じゃ上がれない。

そもそも足が痛くて動けない。

このまま1人で誰にも気づかれなかったら。

 

そう考えると悲しくて寂しくて涙が出そうで顔を伏せた。

 

 

 

 

「そんなこともあったわね…」

 

「で、結局どうやって帰ってきたんだ?」

 

「覚えてないの?」

 

「静から聞いただけだからな。俺が覚えているのはいつの間にかいつもの集合場所にいた静を見つけておぶって帰ったくらいだ」

 

 

 

 

 

 

心細くて泣きそうなその時、声をかけられる。

 

 

「大丈夫?」

 

顔を上げるとそこには1人の少年がいた。

 

少年の髪は銀色で、口元だけ露出している白い狐のお面をつけていた。

 

「足怪我してる!薬があるから傷見せて!」

 

いきなりの事で驚いて声が出せない私に彼は優しく治療してくれた。

 

「もしかしてあそこの穴から落ちちゃったの?」

 

私は無言で頷く。

 

 

「気づかなかったな…後で塞いで置かなくちゃ。じゃあ、よいしょっと」

 

そう言って少年は私をおぶった。

 

「足怪我してるでしょ。大人が来るには時間がかかるからね」

 

自分より背の低い彼は私を背負い歩き出す。

 

「大丈夫!安心してちゃんと安全に帰れるから」

 

私は何も言わずに彼の背中に身体を預ける。

彼の背中は小さいのにすごく安心した。

 

気づくと穴から出て、森の中を歩いていた。

そして直ぐにいつものみんなの集合場所に来ていた。

そこにみんなはいないけど、多分自分を探しているのだろう。

 

「直にみんなが君を見つけるよ。安心してここで休んでいなよ。足の怪我は治しとくから、明日からも元気に遊べるよ」

 

私はゆっくり、降ろされる。

 

「次はあんまり奥に入っちゃダメだよ」

 

お面越しにニコリと微笑みかける。

そんな少年に少しドキりとした。

 

「あのっ!…」

 

助けてくれてありがとう。

 

そんな言葉をかけようとした。

 

 

「静!みーつけたっ!」

 

後ろから声がかけられる。

そこには虎とみんながいた。

 

「心配した…」

 

「ありがとう薫…」

 

「虎はもっと心配してた。森だけじゃなくて街も走り回ってた…」

 

「言うなよ!薫!」

 

「ありがとう、虎」

 

「へへっ……あ!静、足包帯巻いてる!足怪我したのか!」

 

言われて気づく。

足に痛みが無いことを。

少年が言った通り、足に痛みは無かった。

 

 

「大丈夫。手当てしてもらったから」

 

「誰に?」

 

「そこの……あれ?」

 

そこに彼はいなかった。

夕暮れの風景にはいつもの集合場所。

狐のお面を被った銀髪の少年の姿はどこにもなかった。

 

 

 

「そうだったな」

 

「そうだったってやっぱり私話してたじゃない」

 

「けど、その後探しても何も無かったじゃねえか。静が落ちたっていう穴も狐の子どもも」

 

「それから色々噂になったわよね。裏山に住む狐さんって……神社がある訳でも無いから勝手に神社作ったりね」

 

「懐かしーな。また薫達誘って山行くか!」

 

「楽しそうね。弟達も虎と遊びたがってたわ。一緒に行きましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





彼らは再開する。
会った時は気づかないが、いずれ事実に気づく。

そしてそれは1つの契約となる。
あいたいものは誰であろうか。


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第四十四将 1週間の準備

 

石矢魔新校舎の建設完了。

 

そこは既に焔王の為の学校、悪魔野学園となっていた。

 

1週間の準備の後にベル坊の契約者男鹿辰巳とその配下対、焔王とその配下ベヘモット394柱師団との戦いを。

 

そして男鹿はジャヴァウォックに敗れ、ヒルダさんを奪われていた。

 

 

俺は保健室で寝ていた。

 

傍にはあの教師、早乙女禅十郎がいた。

 

ドラゴンから落とされた男鹿はベル坊の咄嗟の電撃により、落下のダメージをほとんど無くした。

 

しかし衝撃は凄まじく、気絶していたのだ。

 

それを運んだのが早乙女禅十郎って言ってた。

 

 

そして学校で鉢合わせた古市がいた。

 

 

「何やってんだよ、男鹿。強くなったんじゃなかったのかよ?」

 

震えながら、男鹿の傷の手当をしているラミア。

ジャヴァウォックの一撃により、足の骨を折られていた。

 

「お前こそなに普通に授業受けてんだよ。石矢魔が乗っ取られてんのに…情けねーな」

 

「知らなかったんだからしょうが無いだろ…やられて帰ってきたお前がそう言っても説得力ねーよ」

 

「アホか、あんなの負けに入んねーよ。それに気づいたらここにいたんだボケが」

 

「なお悪いわ、アホ」

 

「アホっつった方がアホだ、アホッ」

 

俺と古市はバカにしあった。

 

 

そんな中ラミアの目から涙が零れた。

 

「私の……私のせいだ…私が捕まったらよかったのに……なんで私じゃないのよ……ヒルダ姉様が死んじゃったらどうしよう。……私…ふえぇぇん!!」

 

そんなラミアをベル坊はやさしく撫でる。

 

そして自分に任せろと言わんばかりにグッと親指を立てる。

 

「ちっ…いつもなら真っ先に泣き出すやつが…」

 

「…だな」

 

俺たちは立ち上がる。

 

「こいつの言う通りだ、ラミア。

 

俺たちがなんとかする」

 

「泣くな!!」

 

 

「〜〜〜…………うん…」

 

保健室を出ようとすると邦枝がいた。

 

「人数は多い方がいいでしょう?」

 

 

 

「ああ」

 

 

 

 

その後俺は早乙女から無茶なしごきを受けた。

 

他のメンツもゲロ吐いたりして地獄みたいな光景だった。

 

そして気づいたら変な世界にいた。

 

 

「静粛にっ!!!」

 

ハンマーが叩かれる。

 

裁判長には古市がいた。

 

「それではこれより、《第2回男鹿ボロ負け裁判》を執り行う!被告、ヘタレうんこビチクソ弱虫は前へ!!」

 

俺はLOOSERと書かれたタスキをかけられ、被告人てして立たされる。

 

「また、これか。進歩のねー野郎だ」

 

「黙れっカスッ!!!進歩がないのはお前だ!死ね!」

 

法廷がザワつく。

 

「二度目だよ?二度目ですよ!仏の顔だってな…二度見して見りゃ思ったより笑ってない事があんだよ」

 

「いや、意味わかんねーよ」

 

「お前……あの悪魔達になんていったか覚えてるのか?その上でこれなのか?」

 

確かにあの一言で全部を敵に回して、ヒルダも攫われちまった。

あれは確かに……

 

()()()()()()()()()()()っつったんだよ!!!」

 

「言ってねーよ!!!恥ずかしい台詞捏造してんじゃねーよ!!」

 

「ふん馬鹿が、言ったかどうかは問題じゃない。お前の気持ちの問題だ」

 

「ここ法廷だよね!?」

 

「裁判場!よろしいでしょうか?」

 

「クイーン」

「法廷のクイーンだ」

「彼女が来たら無罪もありえるぞ」

 

「確かに被告人はプライスレスとは言ってません」

 

「それひっぱるの!?」

 

「しかし、彼はこう言いました。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……そんな彼の気持ちは確かに()()()()()()!!!」

 

「何言ってんの!?」

 

「いけねぇ……法の目にも涙ってやつか…」

 

「お前ら全員死ねよ!」

 

くっそ……相変わらず自分の夢とはいえ訳が分からねぇ……

さっさと目覚めろ!俺!!

 

でも終わんねーんだよ!

 

このあとウルトラ検察官とかふざけたのが……

 

 

なんで知ってんだ?

 

っていうかこれ一回見たぞ?

んで、首切り島に行って、斑鳩酔天とかいうおっかねー人に暗黒舞踏ならうってなって……

 

酔っ払った邦枝と酔天を相手にしながら、とりあえず寝て………

 

「起きたら何一つ覚えてない」

 

気づいたらそこは法廷ではなくなった。

そして古市以外の人がいなくなった。

 

「でも、ただ寝てるなんて時間が勿体ないって思わないか?」

 

古市が話しかけてくる。

よくも俺の夢でこんな頭良さそうに話してくるな……

 

なら、法廷の時もそうしてくれよ。

 

「実戦形式でやりあおうじゃないか」

 

 

「お前と喧嘩しても意味ないだろ…俺より弱ぇー癖に」

 

「それも少し違うんだけど……まあ、今回はやる気の問題だからね。やるのは彼とだ」

 

 

スポットライトが照らされ、白髪の男が現れる。

 

腕に白と金の装飾がついた手甲をつけている。

 

 

「俺の代理人ってことで戦ってくれよ。あの時は学校に行ってたんじゃなくて、彼の存在を感じたから契約しに行っていたんだ。フルヘルメットもやさしいよな。4人以外にもいるなんて……まあ、元からいただけかもしれないけどな…」

 

古市の言ってる事がよく分からない。

 

「俺は学校の方で鍛えてるから……男鹿も頑張れよ」

 

そう言って古市の姿は消える。

 

「とりあえず目覚めるにはお前を倒せってことだよな。とりあえずボコらせて…っ!」

 

殴りかかると吹っ飛ばされる。

 

「我は主様の代理人……そしてこれはお前だけでなく、我の慣らしでもあるのだ……」

 

拳を主体に殴ってくる。

夢のせいかベル坊の力が使いづらい。

 

「我を倒す、か。応援しているぞ、私を数日で倒すのを。起きれば何も覚えていないとしても精神の奥底に記憶されるのだ。せいぜい頑張るといい…」

 

「はっ!直ぐに黙らせてやる!!」

 

 

そしてこれから三日間の夢の中の戦いが幕を開けた。

 

 

 



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第四十五将 友人が夜襲をしかけるそうです

 

 

「男鹿……帰っていきなり、俺の部屋の煎餅を食うな……せめて、説明しろ」

 

「ちょっと、アンタ!!私の分も残しなさいよ!」

 

「今俺は1匹の飢えた狼なのさ……そうだ、古市」

 

 

 

 

 

「駅前までいって、ケーキ買ってこいよ」

 

「いきなり帰ってきて何言ってんの!?」

 

「いや、修行中なんかお前が腹立たしかったから………それにアランドロンいないから片道6時間の船旅で腹減ってよ……モー腹減っちゃって減っちゃって…」

 

「古市、アンタカップ麺くらい作ってきなさいよ」

 

「お前ら山賊か何かか!?」

 

「何言ってんだ?忠告しにきてやったんじゃねーか」

 

「忠告って……お前まさか…」

 

「ああ、今から俺悪魔野学園潰してくるわ」

 

そう言って男鹿は俺の煎餅を完食した。

 

 

男鹿は少し雰囲気が変わった。

精神的に大人になった………と思う。

 

喧嘩して勝っていればいいとかそんなおちゃらけた中坊みたいな考えがなくなった。

 

すると壁から転移ゲートが開く。

 

そこから服と髪型がヒルダさんの人がでてきた。

 

 

それはヒルダさんの妹のヨルダさんだった。

 

 

ヨルダさんはゲートを通り、そのまま男鹿に倒れ込んだ。

 

 

「ヨルダ!どうしてヒルダ姉様の格好を…?何があったの!!」

 

「男鹿………辰巳……………ヒルダを助けて……」

 

 

 

「とりあえずベットに寝かせとく。お前は俺に任せて、行ってこい」

 

男鹿の代わりヨルダさんを抱き上げ、ベッドに寝かせる。

 

 

「任せた」

 

男鹿はそれだけ言い残して出ていった。

 

 

「まあ、俺も少ししたら追いかけるんだけどな。とりあえず濡れタオルとか色々持ってくるからラミアは拭ってやってくれ。俺廊下出てるから」

 

「で、でも罠の可能性も…」

 

「焔王はゲームがしたいんだし、夜に誘き寄せることは無いだろう。元から男鹿は行くんだ。やる気が出るのはいい事だ。それに……」

 

「それに?」

 

「姉が妹を助けるのに理由なんていらないだろ?」

 

「え?えっええぇぇぇぇぇ!!!!ヒルダ姉様とヨルダが姉妹!?」

 

「なんだ?気づいてなかったのか。名前も昼と夜でこんなに顔も似てるのに……後で聞いてみろよ。男鹿が連れて帰ってくるんだから」

 

「う、うん」

 

「じゃあ、俺は荷物持ってくるわ」

 

部屋をでる。

 

『主様』

 

 

()()も戦はしない。あくまでも観戦だ」

 

『時空の歪み……ですか』

 

「俺の行いがどれだけ影響を及ぼしているか分からない。せめて殺六縁起が出てくるまでは表立つ予定は無い」

 

『では、我ら仲間の捜索に移ります。エメラ、ライトが残留となります』

 

「任せた」

 

 

 

さて、下から医療道具もろもろ持ってくるか。

人間界のが効くかは知らんが。

 

 

 



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第四十六将 友人のカチコミ

あの後、ヨルダさんを寝かせて、ひとまずは落ち着いたところで学校に連絡した。

 

学校になら全員いるだろうと考えてだ。

 

案の定、明日のゲームの話し合いで全員揃っていた。

そして1人で悪魔野学園に倒しに行ったことを。

 

「あの野郎……抜け駆けしやがって…」

 

「夜襲なんて上等な作戦てめえにゃ似合わねえよ」

 

「男鹿くん……俺もすぐ行くよ」

 

神崎、姫川、三木は直ぐに動き出す。

 

 

「あ、そういえば古市君は今どこにいるんだい?」

 

「ん?俺は……」

 

三木に聞かれ、反応する。

 

「敵陣の真っ只中?」

 

 

ヨルダさんに傷薬を持っていったあの後、アランドロンによってワープして悪魔野学園に向かった男鹿。

そしてアランドロンのワープが閉じる瞬間に俺が(いるとは思わず)後ろからぶつかり何故か俺も巻き込まれた。

 

男鹿が走って出てったから既に家にいないもんだと思っていたが故の事故だ。

あいつ……アランドロンの方がはえーやんって戻ってきたらしい。

 

しかも、男鹿のワープ先とズレて悪魔野学園の校舎のどっかに来たらしい……

 

相変わらず、望んだ場所に行けねーな。

 

携帯を閉じ、当たりを見渡す。

 

サイレンが鳴りっぱなしだから男鹿が侵入した後なのは分かっているが……

 

 

後ろに気配。

さっそくお出ましか……

 

「第5の柱!エリムちゃんが相手になるよ!!」

 

小学生以下くらいの女の子が出てきた。

トテトテと歩いてきて、杖で叩いてくる。

 

「えいっえいっ!参ったか!このっ」

 

しかし、ポカポカというだけでダメージがまるで無い。

 

「なっ!?やめろばーか!」

 

とりあえず頭を撫でると数秒ウットリしてから罵倒して離れていった。

 

その先には他の人がいた。

 

「パミエルちゃんっ!アイツだよ侵入者!!」

 

「あはは、うぜぇ。お前今、ウットリしてたじゃねーか、エリム」

 

なんか変なの出てきた。

 

それにしても女性か……

という事は男鹿より先にワープしたか。

 

「第15の柱、パミエルだ。ヨロシク色男くん」

 

「女難……か」

 

後ろから2人の女性悪魔が斬りかかってくる。

 

1人は刀のような剃りのある双剣、もう1人は西洋の双剣だ。

 

攻撃を避け、手を近づける。

 

「きゃあっ、こわぁい!!」

 

一瞬だけ、か弱い女性の顔になる。

すぐさま戦士の顔になり、斬りかかってくる。

 

「アハハっ!ださーい笑。もしかして女に手を上げない系男子?キモイんですけど」

 

「古市!?てめぇなんでいやがる!!」

 

「うるせぇ!てめぇのアランドロンワープに巻き込まれて、また敵陣の真っ只中に飛ばされたんじゃ!」

 

敵のセリフを遮って男鹿が登ってきた。

あいつの中ではワープ失敗マンとして残り続けるんだろうな。

 

「またって……相変わらず何が起こってんだよ」

 

「知らねぇよ……っていうか先に行けよ。ここはお前じゃ無理だ」

 

「無理な訳あるか!!全員土下座させんだよ!」

 

「時間無制限ならまだしも、救急クエストならさっさといけ!ヒルダさんが待ってるぞ」

 

「っつ………任せた」

 

男鹿は先に進もうとする。

 

「行かせる訳無いでしょ!」

 

俺を無視して男鹿に攻撃をしかける。

 

「任されてるんでね、こっちも行かせねーよ」

 

男鹿との間に割って入って男鹿を先に行かせる。

 

男鹿は階段を登っていった。

 

 

「アンタ、カッコイイヒーロー気取り?まじきもいんですけど。契約者でも無いアンタなんか速攻で殺して、あの契約者も殺すわ」

 

「○月✕日、今日は人間界に初めてきました。人間界の事はまだあんまり知らないけど、頑張るぞ」

 

俺はどこからともなくdiaryと書かれた本を取り出し、読み上げる。

いきなりの意味不明な行動に首を傾げる悪魔たち。

 

「○月△日、今日はいつもの癖でエリムに悪態ついちゃった。本当はみんなと仲良くしたいのに…どうしたら良くなるかな」

 

読み上げていると思われる本の中にエリムの名前があった。

それに対してエリムに視線が行くが本人は何も分かっていないようだ。

そして1人の悪魔が焦り始める。

 

「○月〇日、今日は人間界で可愛いぬいぐるみを買った。私がこんな趣味持ってたらみんなに引かれちゃうだろうなー。もっとみんなと仲が良ければこんな秘密いらないのに」

 

「何普通に聞いてんの!さっさと殺すわよ!」

 

先程の戦いでか弱い乙女を演じた悪魔が発破をかける。

それに習い、全員が戦闘態勢を取る。

 

「私はみんなが大好きです。Byティリエル」

 

そう最後に読んで、日記を閉じた。

 

「……ティリエル……お前…」

 

「ファバス…何も言わないで…」

 

双剣を持った悪魔、ファバスはティリエルに暖かい目を送る。

それに対してティリエルは顔を伏せながら、震えている。

 

「手癖が悪くてね」

 

「殺す」

 

先程の相手をいたぶるような剣とちがい明確な殺意を持って、斬りかかってくる。

 

それをひたすら避ける。

 

「数が足りないよ。全員でかかってきなよ」

 

そう言って物陰を見る。

そこから新たに2人の女性悪魔が出てくる。

 

「私たちの存在に気づくとは中々やるな。柱将では荷が重いか…」

 

「ヴリトラにアナンタ…!女柱爵が2人も!!」

 

「私は低血圧で寝起きは虫の居所が悪いんだが……ティリエル」

 

「はっはい!」

 

「ぬいぐるみ趣味とか、可愛いな」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁーーー!!!」

 

崩れ落ちるティリエル。

 

ヴリトラと名乗る女悪魔はそれを見て、笑っている。

どうやらSで機嫌は少し良くなったみたいだ。

 

「さて、殺すか」

 

「マジで戦う気は無かったんだけどな」

 

というか邦枝先輩が来ない。

 

(原作で邦枝は古市から連絡が来て、悪魔野学園に向かいました。つまり、来ない。烈怒帝瑠は来てるけど邦枝は来ない)

 

 

「しゃーない。ちょっと計画が前倒しになるけど、やるか」

 

俺は魔力を解放させる。

 

「契約者でも無いのに凄まじい魔力ね」

 

「中々の強者のようだ。契約者にしてもいいかもね」

 

「それは願ったり叶ったりだな」

 

そうして魔力はこの部屋全体に行き渡った。

 

そして一瞬で全員の姿が消えた。

 




原作15巻まで終わりました。
長かったなー。

感想で4人の護衛が誰なのかという質問がありましたが、今のところノーコメントで。
然るべき場所で出して、チート具合を全面に出して行きたいですね。

また、次回!


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第四十七将 臣下の家に行くそうです

「え?なんで俺が呼ばれてんの?」

 

「面白いから」

 

「気づいたら校舎燃えてて、逃げ遅れて、病院に入院して、学校来たら、ヤクザの家に連れていかれるっておかしいだろ」

 

「だろ?おかしくて面白い」

 

「せめて、お見舞いくらい来いよ!」

 

そんな訳で神崎先輩のご実家であるヤクザの家へとやって来ましたとさ。

 

「「「「「お帰りなせぇっ若っっっ!!!」」」」」

 

「おらっ、何してんだ。とっとと入れ」

 

何十人もの怖い顔の人に囲まれ、挨拶される。

 

 

「いやいやいやいや!俺は帰るぞ!」

 

「大丈夫だって。別に喧嘩しに来た訳じゃねーんだから」

 

「嘘だね!絶対何かしら起こるね!お前がそう言ってそうなった事なんか一回も無いもんね!」

 

「いずれこの全てが坊っちゃまの物になるんですよー」

 

「こっちはなんか物騒なこと言ってるし!!」

 

襟を掴まれ、引きづられるように連れていかれる。

別に本当に入院してた訳じゃ無いけど、疲れてはいるからマジで勘弁して欲しい。

 

ヒルダさんの記憶喪失イベントも逃すし、なんでこの微妙なイベントは逃れられんのじゃー!!

 

 

「痛っ」

 

マジで斬られたところが傷んだ。

 

「古市……やっぱお前帰れ」

 

「あん?こんくらい大丈夫だから……」

 

「いや、面白かったからもういいや。帰れ」

 

「暴君か何かかなっ?」

 

手で払い、本当に帰らされた。

 

まあ、あれで心配してるんだろうけど……

俺がマジで怪我するの殆ど無いからな。

 

これだけの怪我をしたのは男鹿と喧嘩した時と

 

『大丈夫ですか、主様』

 

『力使えば傷など一瞬で…』

 

「大丈夫だ。いきなり治ったら可笑しいからな。もう少し隠し通さないといけない。しかし……」

 

『しかし?どうなさいました?』

 

 

「こんなに傷を負ったのは男鹿と喧嘩した時とお前とやった時以来だなぁと」

 

『あの時は本当に申し訳ございませんでした。責をとれと言うならいつでも返します』

 

「いらないいらない。懐かしんだだけだ」

 

『あの時は自我すらなく、近づくもの全てを無に帰そうとしていましたから』

 

「ああ。あの時はキツかった」

 

 

そう従者たちと昔話に花を咲かせながら自宅へと向かう。

 

 

 

『本当についていかなくてよろしいのでしょうか』

 

自宅で準備を進めているとまた話しかけられる。

 

 

「ああ、今回もまだ早い。力の一旦であるアイツらには来てもらうが。6人は留守番だ。何も無いとは思うが頼むぞ」

 

『かしこまりました』

 

準備を整え終わり、いつでも行ける準備をした。

 

目の前でゲートが開くのを待つ。

 

すると前から黒い空間転移が開く。

 

 

「すまねぇな。病み上がりだってのに」

 

空間転移のゲートから姿を現したのは……

 

 

 

 

 

 

「迎えに来たわよ」

 

 

ヨルダさんだった。



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第四十八将 契約

怒涛の連投していきます。
感想の返信は23時って言ってたのに早目に上げちゃうぜ。

そして終われば修学旅行だー


 

 

部屋の中に1人の女性が現れた。

 

「迎えに来たわよ」

 

金髪侍女服のその女性はヒルダさんの妹ヨルダさんだ。

 

「全く、焔王坊っちゃまの命令じゃなければこんな事しないわよ。有り難く思いなさい」

 

「ありがとな」

 

間髪入れずに返した感謝にヨルダさんは驚く。

しかし、直ぐに平静を取り戻し次元転送のゲートを開く。

 

 

 

ゲートを潜り抜けるとそこは広い闘技場の様な場所だった。

観客席とも呼べる場所には屈強な男や美麗な女性がこちらを見ている。

少し怪我をしているがそれでも覇気がある。

 

その視線は疑惑、観察、嘲笑、困惑……殺気も含まれている。

 

そして観客席の中央の席に玉座がある。

 

玉座には焔王が座り、こちらを眺めていた。

 

「来たか……よくぞ、恐れず参った古市」

 

「こちらから申し出た約束だからな。そちらこそ願い叶えてもらい感謝する」

 

「変なことをいうな、古市。まだ余は願いを叶えていない。というより、既にそなたの中では叶えられる先が見えておるのか?」

 

「無論。勝機が無い勝負など滅多に俺はやらない。そして条件は一つクリアしている。あの条件をクリアしたんだ。これでクリア出来なきゃ信じた意味が無い」

 

「確かにのう…」

 

「焔王様!」

 

俺と焔王の会話に1人の柱将が割り込んできた。

本来なら不敬だが、言い分はある。

 

「なぜ、我らベヘモット34柱師団全軍394名をこの演習場に集めたのでしょう。不敬とは思いますが理由を話して頂けないでしょうか!?」

 

「ふむ……そうじゃな。そなたの疑問は分かる。しかし、まずは余興じゃ。その後に話そう」

 

焔王は一息つき、命令をくだす。

 

 

「柱将未満の各団員よ!演習場に降りよ!!そしてそこにいる人間を倒せ!!決して手を抜かず全力を尽くせ!」

 

その命令に団員は困惑する。

たった一人の人間。

しかも、契約者でも無いただの人間を倒せというのだ。

 

団員は確かに柱将に比べると弱い。

それでもベヘモットの配下。

戦闘集団の名は伊達では無いのだ。

 

それを考えるとたかが人間に、しかも柱将、柱爵を抜き、考えても300人以上を1人の人間には余りにも多すぎる。

 

しかし、命令。

しかも、自分たちが付き従う王の命令だを

聞かない訳にもいかない。

 

団員は武器をとり、演習場に降りていく。

 

 

「言い忘れておったが降りた瞬間に始まりじゃからな」

 

焔王の声が通る。

 

「え?」

 

その瞬間に降りた団員200人が吹き飛ばされる。

 

ここで幸運だったのは降りたのが200人だったという事。

演習場は広いとしても300人降りるには時間がかかる。

その為に起きたタイムラグ。

 

不幸なのは次はきちんと知った上でやられることだ。

 

 

200人がやられた事で尻込みする団員。

 

あの時は油断していたと心の中で言い訳する。

何か卑怯な真似をしたのだ。

そう思い気を引き締め、次々と団員は降り立つ。

 

 

 

降り立った瞬間に意識が飛ぶ。

 

 

そしてあっという間に団員は全滅した。

そんな死屍累々な状況の中で尚も悠然と立ちはだかる者が1人。

 

 

 

その者は銀髪の人間だった。

 

 

 



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第四十九将 契約2

場は圧倒されていた。

300人を超える団員達を1人で倒してしまったのだから。

 

そして強者は感じ取る。

 

今の戦いで人間は1度も魔力を使わなかった。

 

幾ら団員が柱将や柱爵に弱いとしても悪魔と人間では基礎能力が全く違う。

魔力を使用する事で契約者は悪魔と戦えていたのだ。

 

それを単純な肉体の能力で圧倒したのだ。

 

 

「これは、余興にもならなかったの」

 

 

団員が倒され、黙っていた中で焔王は口を開く。

 

「さて、とりあえず余興が終わったことじゃ。古市と余の約束について話すかの」

 

約束であった話をはなす。

聞きたかった話ではあるが団員は少し情けなさを感じてしまう。

 

聞きたいと言ったが余興の後というからには時間が経ってからという事であったのに300人という精鋭はものの数秒でかたがついてしまった。

 

戦闘集団の名折れともいう状況だった。

 

自身の班が倒されたことの不甲斐なさ、呆れ、様々な事を考えている中、焔王は語り出す。

 

 

「人間界でのゲームの前に個人的な賭けをしたのじゃ。余が勝てば人間界の宝を、古市が勝てば余の叶えられる範囲でなんでも叶えてやろうとな。

 

そこで古市は勝利し、願った。

 

余と契約を結びたいと」

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

「ついでに余の配下であるお前たちとの契約じゃ」

 

焔王の言葉に悪魔たちは驚く。

この戦いと何が関係しているかはまだ分からないが、主君との契約とはかなりの大事だ。

遊びの賭けで契約者を決めてしまうとは。

焔王をまだガキと考えるジャヴァウォック等はため息をつく。

 

「しかし、流石に余が叶えられる事とはいえ、ゲームで勝った程度で契約はできん。それで古市は2つの条件を出した。その条件がクリアすれば正式に契約すると。そして余はそれを承諾した」

 

流石に何も考えていない訳では無かった。

勘のいい者や策士基質のものは気づき始める。

 

「一つは我が弟の契約者である男鹿辰巳が現ベヘモット34柱師団団長に勝利すること。これは既にクリアした」

 

その言葉を聞き、一部の者は反応する。

人間界での戦争前に演習場の中央にいるものは男鹿辰巳が勝つ事を分かっていたかのようなその物言いにジャヴァウォックは反応する。

 

「もう一つは自分1人でベヘモット34柱師団全軍を相手にし、全て打ち倒すこと」

 

その言葉に脳筋の者も気づく。

この演習場での戦いは()()()()ことだと。

 

「そうすれば戦いの先を見る目と余と契約するに値する力を持つと証明できるとな。流石に他者からの魔力供給や魔術の使用は許可したがの。人間だし。実質1人で戦う事が条件じゃ」

 

この演習場での戦いは主君の契約者候補である古市の選定。

既に団員がやられ、次は柱将だろうと理解したのか柱将が観客席から降りてくる。

 

古市も流石に降りたそばから攻撃をしてくる事は無い。

流石に危険視しているのか。

 

「既に何人か降りとるが次は柱将じゃ。余としてはここは持ってもらいたいがの」

 

余りにも早く、団員が倒されてしまったせいか雑な物言いの焔王。

しかし、それを言い返すことはできない。

 

ならば、示すにはこの人間を倒すしかない。

 

「流石あの契約者の仲間だな。1人で全軍と戦うとは。勇気と無謀の違いを教えてやろう」

 

「あの契約者との戦いで油断を経験したはずでしたが……団員の選定も必要のようですね」

 

 

 

柱将24名が古市を取り囲む。

 

「第二ラウンド開始だ。次も同じ事が起こると思うな」

 

「ああ、俺としても頼む。肩慣らしにもならなかったからな」

 

 

 

「かかってこいよ」

 

その言葉を切っ掛けとして戦闘が始まった。

 

 

 

 

 



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第五十将 契約3

「これで、半分か…」

 

柱将と戦いその約半数は既に観客席にめり込ませた。

男鹿が出来たのだ。

俺が出来ない、道理が無い。

 

しかし、この半数は俺としても残して起きたかった者達だ。

何故、残したかったか。それは…

 

 

「なかなかやるようですね。柱将をここまで減らすとは……それも貴方一人の手によって。それは後にも先にも貴方だけになりそうです。ですがその快進撃もここで終です。なぜならこの私第22の柱、クソブラーが相手だからです」

 

単純に見たかっただけだ。

 

それ以外にも、原作では一応名乗れた者も残した。

……覚えている限りで。

 

クソブラーさんは忘れようとしても忘れられないキャラクターだからね。

 

 

「一応こっちも挨拶しなおしますか」

 

俺は、一時的に構えをとる。

 

「石矢魔学園1年、古市貴之。しがない一般生徒で男鹿辰巳の親友であり、策士。智将古市だ!」

 

俺は俺ができるカッコイイ(と思ってる)ポーズをする。

 

「アンタ、恥ずかしく無いの?」

 

「恥ずかしい?それは自分に自信が無い臆病者が思う感情の事だろう。俺は親友を親友というのも、与えられた異名も勲章として素直に貰う男だ!」

 

ドヤァ…!

 

「………」

 

無反応は少しつらいかな。

何時もだったらエメラが

 

『流石です!主様、カッコイイ!!(`✧∀✧´)』

 

とか、なるんだけどな。

流石に団長クラスにバレない気も、契約も結んでないのに話す気も無いからな。

 

「じゃあ、こっちも一応名乗って起きますか」

 

 

「第1の柱、アギエル」

眼鏡をかけ、ビキニに柱師団のコートを羽織った女性が剣を構える。

 

「第5の柱、エリムちゃんだよー!」

魔法使いの格好をした幼女は自身の身の丈程ある杖を構え、こちらを睨んでいる。

 

「第6の柱、ファバス」

パンクの様な狂気じみた服と格好をしている女性。

 

「第7の柱、グラフェル」

逆だった髪が特徴的な男。

ヘカドスと共に人間界侵攻してきた為によく覚えている。

 

「第14の柱、オドネル」

顔に包帯を巻き、全身に鎖を巻き付けている。

 

「第15の柱、パミエル」

ワイルドな格好をした女性。

 

「第18の柱、スケタリム」

緑色の髪と目をした美青年は銃を構えている。

 

「第19の柱、ティリエル」

縦ロールの髪型の女性。

凄まじい殺気は日記を怒っての事だろう。

 

「第20の柱、ウァバム」

スケタリムと同じく銃を構えているのは顔がサングラスかけた犬の男。

 

「第23の柱、ユシエル」

眼帯をつけた女性が切っ先を向けていた。

 

 

……女性が多いのは倒しづらかっただけです。

いやだって、男と同じ力で殴るのもアレだし。

 

 

「なんで、アンタ名乗らないの」

 

俺が自分の中で言い訳していると、アギエルが仲間の一人に話しかける。

 

この中で名乗ってないのは皆が名乗る前に名乗ってしまったクソブラーさんともう一人。

 

「第8の柱、ヘカドス」

 

グラフェルと共に人間界侵攻をしたヘカドスだ。

 

 

 

 

 

「俺は負けを認める」

 

そういってヘカドスはその場に座ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあっ!?アンタ何言ってんの!」

 

「戦わずして負けを認めるとは……そこまで落ちたか、グラフェル」

 

グラサン犬と眼帯さんが発言する。

 

「理由はある。既に俺たちは負けているからだ。だからやる必要が無い」

 

「負けた、か。人間界に侵攻した時に戦っていたのか」

 

「報告をしなかったのは契約者でも無い人間に負けたのを恥じた、という訳か」

 

「"たち"ってどういうこと!?私たちはまだ戦ってないわよ!!」

 

 

柱将たちは思い思いに質問している。

しかし、ヘカドスは喋らない。

 

 

 

 

「そんなことどうでもいいじゃない。それよりも彼、そろそろ待ちくたびれてるわよ」

 

アギエルのそんな発言に柱将たちは目をやる。

 

俺は闘技場の真ん中でゲームをしていた。

 

 

「いや、何やってんだ(のよ)!!!???」

 

「あ、話終わった?じゃあ、また後で通信しような」

 

「そうじゃの、古市。今度は負けはせんからな!!」

 

「しかも、1戦終わってるっ!?」

 

ゲッコウガをカッコイイから使うのが分かるけど、初心者には辛いで。

俺は穏やかじゃないですねさんを使う害悪なので、速攻で倒させて貰った。

 

 

「ちなみに、焔王。負けを認めているのはいいの?」

 

「ワシとしては戦ってほしいが、今回の件では別に問題ないかの」

 

「じゃあ、いいか。……さあ、続きをやろう」

 

 

 

「そうだね。既に名乗りは終えた。後は拳を交えるだけだ!」

 

クソブラーさんがその身体では予想出来ない俊敏な動きを見せ、襲いかかってきた。

 

さすが名前が出た柱将。

あのネタのキャラとは思えない拳の重さだ。

 

「私はクソ家の長子というだけではない!クソ家に伝わるクソ拳を既に師範代クラスだ!!そして慢心は既に無い!最終奥義で終わらせる!!!

クソ家クソ拳最終奥義クソ竜が如く貫く拳!!クソ破傷風拳!!!!!」

 

「ブッフゥ!!!」

 

ダメだ…もう我慢出来なかった…w

 

由緒正しきクソ家の長男だけじゃなかったんですねww

 

 

それを笑いながら俺は水月に一撃いれて、倒す。

 

 

「クソブラー!!」

 

「やはり、クソブラー程度では話にならんか」

 

「ここは我々のメンツの為にも全員で倒させて貰おう」

 

 

全員が臨戦態勢をとる。

 

俺はそんな柱将を前に不敵に笑う。

 

「やってみろ」

 

 

 



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第五十一将 契約4

「次は柱爵じゃの」

 

悪魔だけあってダメージからの回復が早いのか最初に倒した雑魚兵も観客席からこちらを見ていた。

 

戦闘に復帰することはできるほどの回復ではない。

やれて野次を飛ばすことぐらいだろう。

 

しかし、今はそれもしない。

 

ただ息を潜め、戦いを眺め続ける。

 

 

古市は最後の敵をはるか空中へと投げ飛ばす。

その哀れな被害者は第五の柱エリムだ。

小さな子どもの姿をしていた為に暴力で解決はできない故の配慮だがそれは命綱の無いバンジージャンプと同じ。

 

落ちてきたエリムを殴るフリをして寸止めしてキャッチする。

やられるという未来を予見してしまったエリムは簡単に意識を途絶えさせてしまった。

 

 

そうして柱将は全滅した。

 

 

 

 

「これ以上はメンツに関わるのう」

 

顔に大きな傷を持つ大男は大きな両刃斧を持ち上げ、戦いの場に降りてくる。

 

「私は低血圧なんだ。さっさと終わらせるぞ」

 

中性的な容姿を持つ女性が気だるそうに降り立つ。

 

「あの時の戦いは私たちで練習してたという訳ね」

 

中華風の女性も降りてくる。

夜襲の時の事を言っているのだろう。

それは正解だ。

 

あの時の戦いのお陰で、攻撃を避ける事と命をかけた戦いに感覚を戻せた。

 

この頃平和ボケしていたからな。

 

「お前らもいけ」

 

団長席に座るジャバウォックから声がかかり、彼の直属の柱も降りてくる。

 

他にも強キャラのオーラを纏った悪魔が降りてくる。

 

 

そして、

 

「副団長として負ける訳にはいきません。ラミアの事もあります。殺しはしません」

 

 

ベヘモット34柱師団副団長、レイミア。

ラミアの母であり、副団長という役職を抜きにしてもジャバウォックに意見できる人物。

その実力は残念ながら原作では出されなかった。

しかし、サタン相手に時間稼ぎができる人物。

 

さすがにここまでかな。

 

 

「では、初めじゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は地面に倒れていた。

 

俺の他にも柱爵が数人倒れている。

 

邪眼を持つ大男、バジリスク。

新調したであろう日本刀が速攻で折られた夜刀。

ピエロの格好をした男、ケツァルコアトル。

中華風の容姿をした女性、アナンタ。

目元以外布を巻き付け、体全体を隠したフィフニール。

三つ編みと壮年な顔をしている、応龍。

色黒の肌に鞭を持つ女性、ルナナ。

 

 

柱爵を半分以上破った。

 

しかし、届かなかった。

 

「まじでただの人間かよ。ここまで俺らを倒すとは思っても無かったぜ」

 

折れたビリヤードのキューを持った、リンドブルムが汗を拭いながら話す。

 

「しかし、ここまでだ」

 

片方しかないトンファーを古市に向けるキリン。

 

「団員全て倒すと息巻くだけはあります。次に倒れていたのは私だったでしょうに」

 

銀色長髪のサラマンダーは残った魔力で炎を具現化させ、守りに入った。

その一瞬のタイムロスで倒れるとなったといっても過言ではない。

 

ヴリトラ、ナーガも既に息絶えだえ。

言葉を発しない。

 

「これで終わりです。負けを認めなさい」

 

副団長レイミアが武器であるレイピアを向け、勧告する。

 

 

 

 

やはり、無理か。

さすがに傲慢だったかな。

 

 

「ここまでだな……」

 

その言葉を聞き、悪魔は戦闘態勢を止める。

しかし、次の言葉で思考が止まる。

 

「魔力を回せ、決めにいかせてもらう」

 

!!!

 

 

その言葉に1番早く反応したのはレイミアだった。

 

「魔力を回せ?そんな言い方…まるで彼は今まで魔力を使わなかったとでもいうの…」

 

そして納得したのも1人。

 

「やはり……ですか。余りにも有り得ない話だったので勘違いかと思ったのですが……次の戦い私は辞退させてもらいましょう。このまま残っても足でまといでしょうし…」

 

サラマンダーはそういって、舞台から降りようとする。

 

「やはりとはどういう事だ!?答えろサラマンダー!!」

 

ナーガはサラマンダーに問いただす。

 

「いえ、先程の一撃を受けた時に気づいたのですよ。他の方も倒され、気を失う瞬間には気づいたでしょうがね。彼は今の今まで魔力を使ってません。彼は己の肉体の力のみで我々柱師団を圧倒したのですよ」

 

「それが本当ならこの人間は…あの契約者よりも強い。肉体のみで我々を倒すなどできるはずが…」

 

「実際無理です。魔力以外にも世界にはエネルギー源が存在するんですよ。これは気力…いや、仙力ともいえるものです。人間としての限界を超えた時に備わる悪魔には無い人間の力です」

 

 

そう説明されても知識の幅が広がっただけだ。

 

これから自分たちは今の仙力と新たな魔力で戦うというのだから。

 

そしてこの人間は複数の悪魔と契約できるという。

それは既に試しているということ。

 

 

そしてその内の一体は容易く想像できる。

 

「……お前が契約悪魔か。ヘカドス」

 

「そうだ」

 

ジャバウォックの言葉に反応する、ヘカドス。

そして自分の持っていた槍を舞台へと投げ飛ばす。

 

投げ飛ばされた槍は俺に飛来した。

俺は片手でそれを取る。

 

「第3ラウンドだが、サラマンダーの様に降りたいのは降りていい。どうする?…って聞くまでもないか」

 

下ろしていた武器は既に構えられている。

そして舞台外から飛来した炎を槍でたたき落とす。

 

「だと思ったよ、サラマンダー。それでこそ戦闘集団。しかし、それだけだ」

 

「さすが智将とだけはありますね。それではこれで本当にギブアップです」

 

サラマンダーの溝に一撃いれる。

 

しかし、既に先頭の火蓋は切って落とされた。

 

背後から迫る悪魔の影が見える。

 

 

 

俺は槍を構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

残った柱爵が散開し、各々に攻撃を仕掛ける。

 

しかし、戦闘集団。

一切の打ち合わせなく、隙間のない攻撃。

 

逃げ場など無い、全方位の攻撃。

 

それを俺は……

 

 

 

 

1番後ろにいたはずのケツァルコアトルの後ろに出現した。

 

魔術使いはいるだけで厄介の種となる。

 

サラマンダーの時の同じ轍を踏む気は無い。

 

背後からの攻撃に反応さえ出来ても防ぐ事は出来なかった。

 

 

ケツァルコアトルがダウン。

 

そしてそれにいち早く反応したジャバウォックの直属の柱の3人、リンドブルム、ルナナ、キリンが向かってくる。

 

それを槍で受け流す。

 

それに乗じ、3人の武器を払いあげる。

 

武器を失った隙に魔力を込めた拳で腹を掌底する。

 

バジリスクの能力が飛ぶ。

目を合わせた敵の動きを止める邪眼。

 

しかし、これは目を合わせ続ける事で能力が発動する。

そして止まるのはあくまでも肉体の動きのみ。

 

つまり、もう一度視界の外に逃げれば肉体の動きは解放され、それに集中していたバジリスクは真下からの攻撃に対応できない。

 

顎を狙い、脳震盪を与える。

 

挟み込むように夜刀と応龍、フィフニールが攻撃してきた。

 

俺を狙った攻撃ではなく、槍を狙い、たたき落とすことにしたようだ。

 

ならば、俺は槍を手放す。

 

既に地面に落ちていく槍に攻撃してしまった、3人。

 

がら空きの懐にまたもや魔力を込め、掌底を与える。

 

「図らずとも残りが女性だけになってしまいましたね。痛めつける趣味はありません。早めに終わらせましょう」

 

「甘く見ないでっ!」

 

「「「おおぉっ!!!」」」

 

副団長レイミアの主武器レイピアが右肩を貫く。

 

かすり傷などはあったが戦闘に支障のでる傷はこの戦いで初めてであった。

 

「……ようやく…」

 

「?……っ!!」

 

ボソりと何かを呟いた古市に不審に思ったが時既に遅し、レイピアの刃が抜けない。

 

筋肉で完全に掴まされている。

 

「副団長のレイピアの初撃で奪えなければ勝機など皆無になっていたでしょう。貴方は娘の友人には甘い」

 

「レイミアの負けだな…」

 

気を失わなければこの人達は戦いを辞めない。

 

頭に触り、魔力の乱雑な波長を流す。

 

自身の魔力と敵の魔力を戦いのさなか感じることはあっても、頭に直接的に、何十種類の魔力を流される。

 

意識を失うのは悪魔のような人間以外には効果抜群だ。

 

 

しかし、この技。

敵が攻撃するに十分な時間が生じる。

 

ヴリトラ、アナンタが近接、いや身体を捕まえに来る。

 

ナーガが魔術の発射体制に入っている。

 

「りゅうじんだくだく」

 

「その技は既に見ている」

 

一つ一つ丁寧に対処する。

 

ヴリトラの剣を掠め取り、そのまま転ばせる。

アナンタは掌底を放つ。

その勢いのままに腕を掴み、ヴリトラの方に投げ飛ばす。

 

ナーガの腕を下から蹴りあげ、魔力攻撃を逸らす。

そして頭を掴み、そのままヴリトラの方に投げる。

 

3人が固まったところにヴリトラの剣を投げつける。

 

地面に刺さったそれは目印だ。

 

 

後はこちらが放つだけだ。

 

 

左手を向ける。

 

紫電が走る。

 

気づいた時には遅い。

 

全身の痺れ。

 

意識を失う。

 

 

「393人達成……後はラスボスだけだ」

 

レイピアに刺された肩を抑えながら、焔王の次に高い位置にいる男に目をやる。

 

「降りてこいよ。男鹿に倒されて更に強くなるために修行とかしようと考えてるかも知れないけど、更に敗北を重ねさせてやる」

 

思いっきり挑発してやる。

 

ジャヴァウォックは立ち上がり、一飛びでこちらに来る。

 

 

 

「始まる前に1つ聞きたい事がある」

 

ベヘモットが睨み合う俺たちに話しかける。

 

「お主の契約悪魔を当てて良いかの?」

 

「どうぞ」

 

「まず、空間転移のカラクリは次元転送悪魔。ベルゼ様のお付のアランドロン。そして槍はウチのヘカドスじゃな」

 

「違うね。アランドロンの娘のアンジェリカだ。魔界に行った時に少しね。そしてヘカドスは合ってるがもう1人いる」

 

「そうじゃろうな。最後の1人が分からん。雷はベルゼ様の魔力じゃ。それ以外で雷となると……お主、まさか……!!」

 

「じじい、どうした?」

 

 

 

俺の後ろに並び立つものが現れる。

 

「彼の名は()()()()()。人間界のある所にいた彼と契約したのは割と最近だ。だが、すごく身体に馴染むんだ」

 

「悪魔で炎を使う者は多い。火とは人の力だ。しかし、雷は殆どいない。大魔王のご子息以外ある者しか使えない。それは雷が神のモノだからだ」

 

 

 

 

「つまり、神の雷()だ」

 

「さあ、問答はこれくらいにしてラストバトルだ」

 

俺はヘカドスの槍を構える。

 

そしてバラキエルの魔力を槍に纏わせる。

 

その矛先をジャヴァウォックに向けた。

 

 

「おもしれぇ……掛かってこい!!」

 

 

 

 

 




友人にお願いしたらバラキエルを書いて?(バラキエルとして使用の許可)貰いました。

【挿絵表示】

かっこいいー
こういうのが励みになり、頑張れます。


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第五十二将 契約完了

最初に動いたのは古市だった。

 

雷を槍に纏わせているがそれは目に見えるようにしていた。

 

古市は他に見えないように自身にも纏わせていた。

 

そして雷を纏ったそれは雷そのもの。

 

スピードは今までの非ではない。

 

 

雷の効果はスピードだけではない。

 

敵に当てれば痺れは動きを鈍らせる。

 

それは敵が触れれば発動する。

 

 

身に纏っているという事はそれは攻防一体の力だということ。

 

 

これによる対処方は少なく、そして簡単だ。

 

1つは長遠距離で初撃にて倒すこと。

凄まじいスピードは敵を視認していなければ近づく事が出来ない。

一撃当てて倒せれば、次は考えなくていい。

初撃で倒せなければ位置がバレ、移動するまもなく、やられるだろう。

 

もうひとつは……

 

「ぐっはぁ!!」

 

「少し痺れるかっ……だが、お前は倒せるだろう」

 

雷を気にせず、ぶん殴ることだ。

 

 

ひとまず離れる。

 

 

「お前の雷の攻撃は先に来る場所が分かる。雷は落ちる前に先に弱い雷が来る。そこに拳を置いて、来た瞬間にぶん殴れば当たるということだ」

 

「ああ、分かっているさ。初見で見破られるとは思わなかったけどな。次は速度を上げるぞ」

 

また、古市の姿が消える。

先程よりも早く、目に負えない。

 

しかし、やはり雷は位置を教える。

 

ジャヴァウォックは拳を構え、殴る。

 

それは空を切った。

 

 

ジャヴァウォックは思いっきり顔を殴られる。

 

「全力だぞ。悪魔の力全て使ってんだ」

 

次元転送悪魔の能力を雷速で使う。

 

途中まで出来ていた雷の道は消え、いきなり現れた拳はジャヴァウォックの顔に突き刺さる。

 

槍では殴れない。

 

近距離でいきなり現れたアドバンテージを槍を振るう間に攻撃される。

 

だから一発目は拳だ。

 

槍はジャヴァウォックの腹に突き刺す。

 

槍は楔だ。

 

痛みに悶える隙を与えず、蹴りを繰り出す。

 

 

蹴りは顔には当たらず、肩を掠める。

 

フリーになった両手で古市の頭を掴み、地面にめり込ませる。

 

鈍痛と衝撃で意識が飛かける。

 

 

古市はジャヴァウォックのエラを掴み、放電させる。

 

骨が軋み、血が熱くなる。

 

 

しかし、ジャヴァウォックは頭から手を離さない。

 

放電も長くは続かない。

 

電力が弱まると片手を首に、片手を構え、顔を殴る。

 

殴る殴る殴る殴る殴る。

 

容赦なく、殺すつもりで、ただ殴る。

 

男鹿は立ち上がった。

 

その親友を名乗ったこの男も立ち上がるのだろう。

 

だから立ち上がらないように、これ以上ないくらいに、入念に殴る。

 

そのうち、古市を纏う雷が弱まる。

 

そしてエラを掴んでいた手を離す。

 

誰がどう見ても終わった。

 

そう思えた。

 

 

しかし、ジャヴァウォックは信用しない。

 

否、信用しているからこそ、最後の一撃を加える。

 

全身全霊の一撃。

意識があろうが無かろうが、確実に刈り取る一撃。

 

 

それは古市の顔の横を思いっきり殴りつけた。

 

観客は勝負の終わりを予見した。

 

古市は気絶し、確認のために横を殴ったと。

 

 

しかし、ジャヴァウォックは笑う。

 

自身の負けを直感しながら笑う。

 

雷を纏うのをやめたのは、最後の一撃を狂わせるため。

エラを掴んだのは魔力を感じさせないため。

突き刺した槍はヴリトラの時と同じく避雷針のためだ。

 

「アンタみたいなラスボスには普通じゃ勝てない。戦いの最中に仕込ませてもらったよ」

 

この場所で古市は上空に何かを上げる動作を多くした。

ナーガの攻撃曰く、エリム曰く。

 

それは自身の魔力と敵の魔力を混ぜ、空に溜めておくことにあった。

 

いつの間にか暗雲立ちこめるこの闘技場上空にはジャヴァウォックを打ち倒す力が込められていた。

 

「俺の負けだ。意識を失う前にもう一度名乗れ」

 

「古市貴之。魔王の親の普通の親友だ」

 

槍を目印に雷が落ちる。

 

古市の魔力+団員の魔力+魔界の魔力だ。

 

 

 

一緒にいる古市にも当たるが、雷を纏うほどの繊細な魔力操作を持っている古市なら、この後戦う力は残っておらずとも、意識を保つことくらいなら可能だろう。

 

そしてジャヴァウォックは倒れ、古市は槍を支えにして立っていた。

 

 

 

「これにて契約の見極めを完了とする。この場はひとまず終わり、後日契約の儀を執り行う。すぐ様救護班とフォルカスを呼べ!!!」

 

「「「「ハッ!!!」」」」

 

焔王の迅速な対応で悪魔達は動き出す。

 

 

これで一応勝ったという事だな。

 

それを確認のすると俺は意識を失った。

 

 

 



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第五十三将 友人が修学旅行で大はしゃぎだそうです

 

 

起きたらホテルの一室で目を覚ました。

 

 

窓からは青く綺麗な空と海が見える。

 

多分修学旅行で沖縄に来たのだろう。

 

しかし、俺は怪我したから多分行けないと思っていた。

やっぱりベヘモット34柱師団全員と本当に1人で戦うのは無茶だったな。

 

その後寝て起きたらこれだ。

 

 

とりあえずもう一回寝るか。

 

 

 

 

起きたら隣で男鹿がブリッジしていた。

 

 

「おはよう、古市」

 

「……色々言いたいが……何があった?」

 

「なんか早乙女のヤローが沖縄に行きたいって言うから、お前も行きたいかなーってアランドロンに連れてこさせた」

 

「それは、まあ…ありがとう?お前は何してんの?」

 

「考え事だよ。あの野郎……他人とは思えね」

 

「あの野郎?」

 

「珍高とかいう高校が一緒にこのホテルにいてそこの番長が他人とは思えねー感じがすんだよ」

 

 

 

廊下に出て、夜飯を買いに行く。

そして奢ってもらおうとする男鹿がついてくる。

 

 

「よう、また会ったな」

 

「また、てめーか」

 

「こいつが?」

 

そこには金髪の男子高校生がいた。

背には女の子の赤ん坊を背負っている。

確かに男鹿に似ているな。

でも、火炙高校のあいつに比べればまだ普通かな。

 

「そっちは知らねーな。哀場猪蔵だ。それでだ葵の部屋はどこだ?口説きに行くんだよ」

 

 

「勝手にいけよ」

 

「ついでに協力してくれよ」

 

「はあ?なんで俺が?」

 

「あにじゃ」

 

「お?……大変だとんぬら。ウチのちぃがテメーの坊主に恋をしたぞ」

 

「なんなんだテメーらっ!?多感か!!」

 

 

 

その後、女子部屋に特攻した。

 

山賊のように女子部屋を荒らす。

 

何故だろう……酷く見慣れた光景だ。

よくやられているからだろう。

 

「えーとね、ちぃはねぇ。占いの本が好きなのー。ちぃとあにじゃはおとめ座だからここー恋愛運も95点なの。お姉ちゃんは何座?」

 

「私?私はおうし座よ」

 

「さそり座」

 

クイーンはおうし座、オータムはさそり座。

寧々さんは答えずに哀場の胸ぐらを掴んでいる。

 

「おうし座はおとめ座と相性抜群だって!!よかったねあにじゃー」

 

「男鹿もおとめ座だから相性バツグンじゃん。よかったじゃん。あと俺はさそり座」

 

「さそり座はねーさそり座と相性が良いのー」

 

あからさまにクイーンが嬉しそうな顔をする。

 

「ベル坊は何座だろうなー」

 

「先生もっ!!おとめ座だぜっ!!早乙女だけに!」

 

入口を勢いよく開けて早乙女先生が来た。

そして帰って行った。

 

どんだけ夜に恋愛トークするのに憧れてんだよ。

 

「ウチらはアンタたちと揉めたくないのよ」

 

「ま、分かるぜ。揉めたくないのはな。でも尚更俺たちだけでも仲良くしといた方がいーんじゃねーの?」

 

「そういうことなら確かに。1度ご飯に付き合うくらい……丁度明日は自由行動だし……ただし、二人っきりじゃないわよ。番長同士仲良くならお……男鹿も一緒なんだからねっ!」

 

精一杯の勇気を振り絞り、男鹿を誘うクイーン。

 

 

ラブコメ番長と鈍感番長とのラブラブダブルデート開始である。

 



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第五十四将 おみや巡り

本日は自由行動。

 

明日の夕方には石矢魔に帰る。

 

今日中にお土産を買わなければならない。

知り合いがどっと増えたからな。

どこから聞きつけたのかメールがいっぱいだ。

というかメールアドレスもいつ手に入れたんだか……

 

とりあえず午前中は美ら海水族館だ。

 

ツッコミの仕事は夏目先輩に任せて俺も羽を伸ばすか。

 

自由行動と言ったがみんな結局どこに行くか決めておらず、美ら海水族館にフルメンバーがいた。

 

そしてクイーンと男鹿とヒルダ3人が並んで歩いている。

 

まるで両手に花だが、トライアングルの修羅場なんだよな。

 

寧々さんとオータム、パー澤さんは草陰に隠れて観察している。

 

寧々さんは純粋に男鹿との恋愛を応援しているが、他はこのドギマギしている光景が可愛いのでずっと見ていたいタチ悪い人達だ。

 

 

なので、

 

 

「せっかく沖縄に来たんですからどっか回りませんか?」

 

「「「うわっ!!」」」

 

後ろに回りこみ、話しかける。

 

「……って古市じゃない」

 

「邪魔すんなー今ウチらはこの光景が見たくてなー」

 

「言っちゃなんだが、結局進展しないと思うぞ。デバガメしないで普通に……」

 

「あ!ラブコメ番長!」

 

「こんのっ……色ボケ野郎がっ!!!」

 

男鹿が殴られ、吹き飛ばされる。

吹き飛ばされるっていったってちょっとだ。

東条先輩の時みたいに有り得ないくらいではない。

 

「てめーどーゆーつもりだ!!こんなキレーな姉ちゃん侍らせやがって!?どっちが本命だ!!どっちが好きだって聞いてんだよ!!!」

 

いきなりド核心を……

何も分からない、弁解もしないヒルダさんと恥ずかしさと焦りで顔が真っ赤のクイーン邦枝。

 

さすがラブコメ番長。

下手したら全てを崩壊させるパンドラの箱を躊躇無く、開け放った。

 

3人はワクワクしているが、ラブコメ番長がいるとおり、この場はラブコメだ。

 

その答えが聞き出せる可能性の方が少ない。

 

 

 

男鹿は呟こうとしたが、

 

「ダメーーーーーっ!!!!」

 

そこら辺にあったサトウキビでクイーンに百華乱れ桜を決められ、先程殴られた時より吹っ飛ぶ。

 

男鹿は何故?と考えているだろうがそれはお前のせいだからな。

 

「やっぱこうなったか……」

 

「でも、このドギマギが……」

 

「うんうん」

 

「アンタたち……」

 

 

 

 

 

その後はイルカショーでのベル坊を挟んだ修羅場と喧嘩未遂があったくらいで何事も無かった。

 

その後国際通りに場所を写し、お土産めぐりとなった。

 

 

 

「あれ、パー澤さん」

 

「あ、フルチン。どうしたんすか?迷子スっか?」

 

「いや、普通に1人でおみや巡りですけども。そっちは迷子でしょ」

 

「だ、大丈夫ッスよ!こんな時こそケータイっス……って神崎先輩の番号知らねぇ!!」

 

「いや、ふつーにさっきの仲間にしろよ」

 

神崎先輩の姪っ子、二葉ちゃんに冷静に言われる。

 

「おお!それっす!流石神崎先輩の姪っ子!」

 

「お前……パー子だろ」

 

こんな、小さい子にもパー子呼ばわりとは。

 

 

そんな俺たちにチンピラが近づいてくる。

 

 

「どーも、チンピラですよー」

 

「お前らにはアイツらの餌になってもらうぜ」

 

「ゲッ」

 

ズカズカと近づいてくるチンピラと2人の間に入る。

 

「あ?なんだてめー。こっちは小さい子いればいいんだよ。お前みたいな金魚のフンヤローここで凹ませて……」

 

口を掴む。

 

 

「ギャーギャーやかましいんだよ」

 

そのまま万力のように締め上げる。

 

ついには痛みで気絶する。

手を離すと落下し、倒れる。

 

「こ、こいつっ!!」

 

「1人なら行けるだろ潰せれっ!?」

 

喋らせないで殴る。

顔に残ると面倒だから腹に。

 

数はいるから面倒だな。

 

国際通りは人が多いから、通報されると面倒だ。

 

 

 

「お前らさっさと帰れ」

 

「ここまで来て帰れるか!!」

 

「そうか。じゃあ、1発ずつ殴るから動かないでくれよ。早目に終わらせたいから」

 

「誰がテメェの言うことなんか!?」

 

チンピラ達は動けなくなる。

まるで身体が痺れ、麻痺しているかのように。

 

「あんがとさん。じゃあ行くぞ」

 

「てめぇ、何しやがった?」

 

「答える義務は無い」

 

全員沈めて、路地裏に捨ててくる。

 

「お待たせしました。あと神崎先輩の番号は俺知ってるのでここで待ちますか。パー澤さんは電話お願いします」

 

「フルチンつえー!」

 

「お前なかなか強いな!!舎弟にしてやる!」

 

「フルチン呼びしないでください。下ネタっぽい響きが嫌いなんです。二葉ちゃんが真似したらどうするんですか?」

 

「フルチン、肩車しろ」

 

「言ってる傍から……呼び方訂正したらします。訂正しなかったら先輩の家に届いてるプリンが次から届かなくなります」

 

「あれお前が作ってんのか!!スゲーな!お前は舎弟3号に格上げな!!えーと……」

 

「古市です」

 

「じゃあ、肩車しろ!古市!」

 

「はいはい…」

 

 

 

 



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第五十五将 帰ってきました

 

 

「沖縄……何だかんだで楽しかったな」

 

「男鹿は喧嘩してたしな」

 

沖縄旅行を終え、俺たち石矢魔組は全員帰宅した。

 

 

特に何か起こる訳でもない、普通の旅行だった。

 

違うことといえばあんな忘れられてるモブキャラ扱いは無かったくらいか。

ちゃんと集合写真も烈怒帝瑠の横の隙間に映りこんだし。

 

「というか何で家に来てんだ?」

 

「荷物は送ったからな。お土産を渡しとこうと思ってな」

 

居間まで入れてもらう。

 

帰って早速男鹿の鞄を漁る、美咲さん。

そしてソファーに座り、頬を膨らませているラミアがいた。

 

男鹿の両親は不在のようだ。

 

 

「おかえりなさい。どーでしたか?りょこーは!?」

 

「うむ、新しい臣下が出来たりと中々有意義であったぞ」

 

「よかったですね!」

 

ラミアが膨れていることには一切気にせず、会話しているな。

ラミアは置いてけぼりを食らっていじけているのに。

この分だとヒルダさんはお土産を買っていないのだろう。

 

「美咲さん、こちらお土産の紅芋タルトです。定番ですが、御家族でどうぞ」

 

「さっすがーたかちん。気が利いてるね」

 

「そうだ。お願い聞いて欲しいんですけど…」

 

「そういえば約束してたねーなんでもいいよー。お姉さんにドンっと任せなさい」

 

「あの………なんですけど…」

 

「あーいいよそれくらい。お土産の分もあるから釣り合わないかな?また、何かあったら言いなさい。お姉さんが叶えてあげよう」

 

「ありがとうございます」

 

 

美咲さんに礼を言うと、後ろでラミアが騒いでいた。

 

「お土産ないのー!?バッカじゃないの!!この甲斐性なしー!うえーん」

 

やはり、ヒルダさん買い忘れていたか。

そして当然のように男鹿も。

 

「しょうがねーだろ。金ねーんだから」

 

「すまない、ラミア忘れていた」

 

「うわ〜ん」

 

やれやれ。

 

ラミアの後ろから首にペンダントをつける。

 

「ほい」

 

「これ」

 

ペンダントには琉球ガラスがついている。

 

「沖縄土産だ。ちゅら玉って言うんだと。見かけて綺麗だっから買ってきた」

 

ラミアはこちらに向き直る。

 

「やっぱりラミアに似合う。綺麗だよ」

 

「きっ!……バッカじゃないの!!」

 

「あり?食べ物とかの方がよかったか?」

 

「〜〜〜っん!!……まあ、いいわ。許してあげる。次はもっといいの買ってきなさいよ!」

 

「へいへい。じゃ、男鹿。俺帰るわ」

 

「じゃーな。もぐもぐ」

 

「そのタルトはお前のために買ったわけじゃないんだけどな……まあ、いいや。また、学校でな」

 

 

 

 

 

 

家に帰宅すると、家の前でほのかが待っていた。

 

「遅い!」

 

「男鹿の家によってたからな。一気に行った方が効率がいい」

 

「お土産ちょーだい!」

 

「はいはい。家に入ってからな」

 

「何買ってきたの?」

 

「ちゅら玉っていうやつ。イヤリングなんだけど…」

 

 

 

 

 

 




おやおや(´-`)


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第五十六将 友人がごはんくんショーに行くみたいです

 

 

朝、学校に行くと下駄箱で男鹿と邦枝先輩が話していた。

 

次の日曜日にあるごはんくんショーに一緒に行こうと誘っている。

 

哀場に会ったことで少しは積極性が出たということか。

 

しかし、男鹿の朴念仁具合にはその程度の押しでは足りないぞ。

しょうがない、手助けするか。

 

「アホか」

 

後から頭にチョップを入れる。

 

「いてーな。いや、あんま痛くねーや。悲しいな古市」

 

「そりゃ、痛くしてねーからな。というか俺の攻撃力はいいんだよ。ベル坊も目を輝かせてんだから行ってやれよ」

 

「でも、あんま金ねーし」

 

「それくらい出してやれよ。というか石矢魔ランドとか俺たちもガキの頃いったじゃねーか。ベル坊にも見せてやれよ」

 

「しょうがねーな。邦枝、どうすりゃいいんだ?」

 

「じゃ、俺先教室行ってるから」

 

邦枝先輩に向き直る男鹿。

そんな邦枝先輩の横を通る俺は通り過ぎる瞬間にボソッと口にする。

 

「後は頑張ってくださいね」

 

アシストはこれくらいにしよう。

 

俺は次の日曜はやることあるし。

邦枝先輩の恥ずかしい姿は少し気になるがゲフンゲフン!

 

そういえば焔王がごはんくんショーに行くって言ってたから護衛の誰かに写真撮ってきてもらうか。

いいゆすりのネタにゲフンゲフン!!

いい交渉素材にゲフンゲフン!!!

 

今日は咳が酷いな。

こんな日は早目に帰るのが吉かな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこから1週間古市は学校を休んだ。

 

 

 

「くそぅ、古市のやつがいればツッコミしなくて済んだってのに…」

 

ごはんくんショーを終え、俺は大魔王のおつかいのためにサンサンお日様学校とかいう所に来ていた。

 

金足りねぇから入れなかった。

銃を突きつけられたが俺なら行けると思ったが、どこかから古市の声がしたような気がして止めた。

 

その後、大蔵省(姫川のヤロー)に頼んで学校に入った。

そのために舎弟なったが、なんで俺がこんな目に合わなきゃらならねぇ。

 

もう、帰ろうか。

 

「とか、1度やろうとしたことを投げだすような事はするなよ、ベル坊」

 

ヒルダに首元に剣を添えられ、瞬時にベル坊へ教えるように誤魔化した。

 

くそっ、なんで思ったことがバレたんだ。

 

「全部モノローグで語っておるからだ、バカモノ」

 

「たくっ……早く終わらせんぞ」

 

その後知らねえやつボコボコにしたり、

小便垂らす悪魔をボコボコにしたり、

絵を運んだり、ヒルダがボコボコにしたり、

して、帰った。

 

「なんでそれで家にいんの?」

 

「風邪だって聞いたからな。見舞いに来た」

 

「見舞いに来たやつが人の家で菓子勝手に食ったり、ゲーム漁ったりはしねーよ。山賊かてめー」

 

「元気そうじゃねーか。そういや、んまい棒貰い忘れたなー」

 

「そんな糞虫な貴様に朗報だ。大魔王様から褒美が届いたぞ」

 

ヒルダさんが窓を開けて入ってくる。

というかまた土足……

日本文化学んだんじゃ無いんすかね。

 

「おお!まだそれがあったか!!………なんだこれ?」

 

「………ティッシュだ」

 

「古市、風邪だろ。見舞いにそれやるよ」

 

「完全にいらなくなっただけじゃねーか。残念賞か!!」

 

「たく、一応貰っとくわ。あと風邪移さねーように帰れお前ら。メロンパンやるから」

 

「じゃーな、古市」

 

「早っ」

 

男鹿達は颯爽と帰って行った。

 

俺はふと、手元にあるティッシュを見る。

 

これが原作で古市()が離反した理由のモノか。

これ以上のモノを手に入れている今としては無用な物だが…………一応解析しておくか。

 

「頼んだ」

 

『畏まりました』

 

明日には学校に行く。

その時に返せればいいだろう。

 

 

 

本当にあんなもの俺にはいらない。

 

 

あんなもので俺は離反する気もない。

 

それに今じゃない。

 

もうすぐだが、まだだ。

 

 

 

 

 

古市貴之()が男鹿を裏切るには。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第五十七将 クリスマス回だそうですよ、その1

この作品さらっと冬へと到達しました。

夏真っ盛りなんですけどね。
色んな幕間がありますが、掛け次第「時は戻って秋…」とかやります。
多分話には関係ない話を書くと思いますので。
何かあっても辻褄は頑張って合わせます。

では、どうぞ。




 

 

 

「カップル限定聖セントクリスマス……ねえ」

 

「あ、古市さん」

 

「ちしょーだ」

 

「あっ…山本君。久しぶり」

 

聖石矢魔学園生徒の山本君達カップル未満の2人が廊下の先から駆け寄ってくる。

 

男鹿の舎弟となった彼だが、殆ど出番が無かった。

居たんだ…と思うばかりだったが久しぶりの出番だな。

 

「なんすかその暖かい目。それに久しぶりって結構会ってますよね?」

 

「いいんだこっちの話。山本君達も出るのかい?」

 

「はい。知ってたんすね」

 

「どうせ、これをきっかけに告白でもするんだろう?それだと優勝出来ないとしづらいから今のうちにしときなよ」

 

「えっ!?古市さん!何をっ!」

 

「カズくん…」

 

2人は1度目を合わせ、直ぐに離す。

そして気まずそうに赤くなりながら黙りこくった。

 

 

「それじゃあね。本番では、お手柔らかにね」

 

「あっ、ちょっと!」

 

「か、カズ君……あのね…」

 

「ちょっ、ちょっと待ってくれ。俺から言う……好きだ!付き合ってくれ!!」

 

「……うん。こちらこそお願いします。私ちょっと頭悪いけど、これは分かるよ。カズ君」

 

「ハハッ……お前が頭悪いのは知ってるよ。そこも含めて好きなんだよ。…これからよろしくな」

 

「うん!」

 

ピローン

 

電子音が聞こえ、2人は音のした方を見る。

 

そこには古市がカメラをこちらに向けていた。

 

「後でケータイに送っとくからー!」

 

そしてすぐさま石矢魔の教室へと走っていった。

 

「あの人は…!」

 

「そういえば……ちしょー相手いたんだ…」

 

「大会でやり返してやる!そして優勝だ!!」

 

「ゆうしょーだー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

教室に戻ると不良たちがお腹を痛くしていた。

どうやら、サンタからプレゼントを奪おうとしていたらしい。

 

そして烈怒帝瑠は初代からの鉄の掟の男作るべからずの元、冷たい態度を取っている。

 

それに対して俺は

 

「それ撤廃したらしいっすよ」

 

「はあ、アンタがなんでそんなこと…」

 

「じゃあ、聞いてみます」

 

そういって俺は美咲さんの電話にかける。

 

「あ、もしもし。美咲さん。古市です、実はですね……」

 

「美咲って…」

「伝説の初代の名前…」

「いや、まさか、そんな…」

 

「寧々さんどうぞ」

 

「はっ!あ、あの…初代すか!私四代目を務めさせて貰ってます寧々と……は、いや、あの……ありがとうございましたーっ!!!」

 

「これでOKですね」

 

そのあとツカツカと詰め寄り、胸ぐらを掴まれる。

 

「なんでアンタが美咲さんの番号知ってるわけ?」

 

凄んでも赤い顔しているために微笑ましい。

 

「え?だって美咲さんの苗字男鹿ですよ」

 

「は?」

 

「烈怒帝瑠初代総長男鹿美咲。男鹿辰巳の実の姉ですよ。ご存知なかったんですか?」

 

「知らねーよ!!!何だその衝撃的な事実!男鹿は?男鹿はまだ来てないの!?」

 

烈怒帝瑠メンバーが騒ぎたっている。

まあ、そうなるか。

初代は伝説。

二代目は留年女。

三代目がクイーン。

 

こうなると本当に濃いグループだな。

 

ガラッ

 

教室の扉が開かれる。

 

男鹿がどうやら来たようだ。

勇気をだして邦枝先輩が声をかける。

 

「おっ…男鹿っ、あのねっ…!」

 

「よー見たかこれ。サンタがくんだとよ、超ラッキー」

 

「2人で頑張りましょうね!辰巳さん!」

 

その勇気は男鹿のデリカシーの無い言葉とヒルダさん(天然)により粉々に砕いた。

 

流石の俺でもフォローは出来ない。

 

そして男鹿に話を聞こうとしていた烈怒帝瑠のみんなも固まっている。

 

 

 

 

 

結局下校時間になるとフラフラと邦枝先輩は帰って行った。

 

さて、俺も誘うか。

 

 

 

「オータム」

 

「ネーヴェですか。どうしました?ゲームでもしますか?」

 

「よかったらさ……俺と一緒に出ない?」

 

「?何にですか?」

 

「聖セントクリスマスに」

 

 

 




おやおやおやおやおやおやおやおやおやおやおや

次回をお楽しみに!


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第五十八将 クリスマス回だそうですよ、その2

大森寧々は緊張していた。

 

 

「こ、これはお礼なんだから…特にそういう恋とかそういう奴じゃないから…」

 

その場には自分しかいない。

 

誰に話すまでも無く、1人言い訳を繰り返していた。

 

 

これは男鹿の姉が伝説の烈怒帝瑠初代総長美咲本人だと知った話がきっかけだ。

 

そして古市はよかったら自分が仲介役を務めて紹介すると言ってきた。

 

古市貴之。

男鹿の幼少期からついていっている智将と名高い男。

 

地毛の銀髪と男鹿の友人を何十年も過ごしているというある意味で凄い彼には幾つもの借りがある。

 

美和に始まり、プールでのこと。

千秋を助けて貰ったり、ゲームした時は家事やら雑用やら全部任せてしまった。

そして初代への紹介。

 

彼にはいつか何らかの形で恩を返そうと思っていた。

 

そんな時にクリスマスの話である。

 

 

聖石矢魔では3年は大体推薦で終わる。

そんな者たちの卒業前のお遊びといえる。

 

それに石矢魔も間借りとはいえ参加できるというのだ。

 

そして教室で古市はこんなことを言っていた。

 

 

「俺も出たいっすけどねー。相手がいませんから。それに喧嘩は勝てないっすけど、これならみんなと遊べますし…」

 

少し寂しそうに残念そうに彼は笑いながらそう言った。

 

 

そしてこれは恩を返すチャンスなのでは?と思った。

 

出たいと言っていた彼がイベントに出れる。

少しは恩を返せるのでは?

そう考えた。

 

少しは打算的な事も考え…

 

 

「いや!全然そういうのじゃないから!!」

 

何度目か分からない言い訳をする。

 

 

「何やってるんですか?」

 

「ひゃうっ!」

 

急に声をかけられ、情けない声を上げる。

 

「あ、貴方は…六騎聖の…!!」

 

「は、はい。元六騎聖の樫野諫冬です」

 

聖石矢魔の学生服に身を包んだ樫野諫冬がそこにいた。

 

「こっち石矢魔の教室だけど。何しに来たの?」

 

「貴之さんに話があって…」

 

「貴之さんって……」

 

「ああ、古市貴之さんです。クリスマスにイベントがあるので一緒に出れないか誘いに来たんです」

 

笑顔で話してくる。

 

そして少し頭の中に()()の2文字が浮かぶ。

 

私なんかより大人しそうで可愛い子が誘いに来ている。

私に勝ち目なんか……

 

「勝ち目とかそんなんじゃないから!!」

 

「えぇ!?」

 

「いや、ごめんなさい。少し混乱してて…」

 

「いえ、大丈夫です」

 

そんなんじゃない。

けど、こんなに反応を示してしまう。

 

男鹿じゃないけど、理解させられる。

これは、この感情は……

 

そしてそれなら負けたくないという気持ちも。

 

この子は今誘いに来た、といった。

 

それなら私が誘える可能性もある。

 

「樫野…さんって言ったわね」

 

「はい?」

 

「私は負けないから。私も古市を誘うつもりだから」

 

「………」

 

「あと少しで教室に来ると思うから。その時に決めましょう。どっちと出るか…」

 

「……決めるのは貴之さんです。でも、ただ奪われるつもりはありません」

 

ここに女の戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

「おはようございまーす」

 

古市の声。

 

「古市!クリスマスイベントに出ない?!」

「貴之さん!クリスマスイベント出ませんか?!」

 

呼び掛けはほぼ同時。

これなら後は彼がどちらを選ぶか。

 

理由を聞かれたら話すだけだ。

しかし、彼はどちらも選ばなかった。

 

 

「あ、すいません。俺、エントリー済ませちゃいまして……オータム、いや谷村さんと出るんですよ」

 

「「え?」」

 

「いやぁ〜前に家に遊びに行った時に弟さんたちにお願いされちゃいまして……本物のサンタクロースに会えるの楽しみにしてるみたいで…すみません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ゑ?」」

 

 

 

 



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第五十九将 クリスマス回だそうですよ、その3

 

『さあっ!!皆さんお待たせしました!終業式も終わり、明日から待ちに待った冬休み!まったり観戦するもより、気になるあの子と挑戦するもよし!聖石矢魔の名物イベント!!恋人達の祭典…【聖セントXmas】間もなく開催です』

 

体育館の中は大盛り上がり。

 

聖石矢魔の生徒でごった返す中、2人は観戦来ていた。

 

「薫、こっちこっち」

 

「本当に出てるのか?」

 

「ああ、全く。葵姐さんはともかくなんであの三人まで…」

 

口にマスクをつけた金髪の女子。

寡黙で長身の女子。

 

どちらも烈怒帝瑠のメンバーだ。

 

その目線の先には烈怒帝瑠の主要メンバーが見知った人と一緒に出ていた。

 

 

 

 

 

男鹿、ヒルダペア

神崎先輩、パー澤ペア

出馬さん、邦枝先輩ペア

東条先輩、七海ペア

 

石矢魔のメンバーが既に舌戦を繰り広げる中、俺は姿を見せる。

 

 

「残念ながら今回は勝ちに行きますよ」

 

「葵姐さん、負けません」

 

谷村さんと一緒にみんなの元に姿を見せる。

 

「ちょっ!ちかちー一体どんな弱み握られたんすか!」

 

「パー澤さん酷くない?」

 

「家の弟達と約束してくれたから……私も頑張る」

 

「晴海くんと夏樹くんっすね!なるほどっす!でも二葉ちんの為に負けられないっすよ!」

 

「みんな凄いねー」

 

「たくっ…なんで俺達が…」

 

そして更に人が増える。

 

そこには夏目先輩とリーゼントを下ろしたイケ川、もとい姫川先輩がいた。

そしてペアは夏目先輩が諫冬ちゃん。

姫川先輩が大森さんだった。

 

「なんで寧々さん!どんな弱み握られたんすか!?」

 

「パー澤てめぇ…こっちが頼まれたんだよ。買うか一緒に出た手に入れるかでな。他人に奢りたくはねーし、お前らを邪魔して悔しがる姿を見るのも一興だ」

 

「ちょっと欲しいものがあってね……アンタ達に勝つなら姫川レベルじゃないと足りないからね」

 

「諫冬ちゃん、夏目先輩と接点あったけ?」

 

「いやーお願いされてね。交渉の結果だね」

 

「ちょっとお願いしました」

 

 

これでメンバーは出揃った。

 

このメンバーは確実にトーナメントに残ることだろう。

 

 

 

 

 

全員に紐が配られる。

それを、足に結び、二人三脚の形を取る。

 

『さて、みなさん足は結べたでしょうか?解けたら失格ですよー。1回戦目の種目は【二人三脚デスマッチ】ただの二人三脚徒競走に加えてなんでも妨害ありのラフゲーム!ただし、それに気を取られると大抵遅れます。コースは外周!現在参加カップル数は106組!このうち上位16組までが2回戦に進むことが出来ます!』

 

 

「あ、解けたら結び直すよ」

 

そういって紐を結び直す。

2人の足を結んでいた紐を谷村さん一人に結ぶ。

 

「何してるんですか!?」

 

『それでは位置についてよーい……スタート!!!』

 

スタートダッシュと共に大勢のグループから2組が出てくる。

 

1組は出馬&邦枝先輩ペア。

武術を嗜む同士呼吸が合うようだ。

 

そしてもう1組。

銀髪を靡かせ、黒髪の女性をお姫様抱っこして走り抜ける。

 

『飛び抜けたペアは2組!出馬前会長と邦枝嬢のペアと銀の叡智古市と谷村ペアだー!!!しかも古市谷村ペアはお姫様抱っこだー!!!二人三脚より数倍恥ずかしい絵になってます!!』

 

恥ずかしい絵面というより聖石矢魔から変なあだ名つけられてる方が恥ずかしいわ。

なんだ銀の叡智って?

 

ちょっと人の技パクッたり、テストの成績出馬前会長と並んだり、聖石矢魔の部活荒らししたくらいやぞ!

 

「な、何やってるんですかっ!」

 

「2人で三脚だし。それにこっちの方が早い」

 

「そ、そうは言っても……」

 

「お二人さんそれありかいな?」

 

「2人で二人三脚でし……それにそちらのペアはやって欲しい、やりたいがあったのでは?ぜひ、参考にしてください」

 

「君苦手やわ。技パクられた時から思っとったけど」

 

「そうすか……じゃ、先に行きますんで」

 

学校の外周に出ると同時に門近くの壁を蹴り、忍者のようにはね飛びながら、進んでいく。

 

「せっかくやるなら勝たないとね」

 

「…むちゃくちゃです」

 

「残念!褒め言葉だ!!」

 

 

 

『1回戦目を制したのは古市谷村ペアだー!!!そこに出馬邦枝ペア、東条七海ペア、最低カップルが続きます』

 

紐を外し、ゆっくりと休憩する。

 

『おぉーっと!神崎花澤ペアもお姫様抱っこで走り抜ける!先程の古市選手は一切、恥が無かった為に普通に王子様でしたがこちらは両者共に顔が真っ赤だー!!』

 

今から全速力で駆け上がっても普通は16以内に入れない。

 

しかし、先程の放送で最低カップルもとい、男鹿ヒルダペアによる電撃攻撃により他の参加者はいない。

 

屍の中を追い上げ、ギリッギリの16位でゴール。

 

ちゃっかり夏目樫野ペアと姫川大森ペアもゴールしていた。

 

 

案の定俺たちは2回戦に進んだのだった。

 

 



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第六十将 クリスマス回だそうですよ、その4

2回戦目は案の定ジェスチャークイズ。

 

山村藤崎ペアは自爆し、特に描写することは無い。

 

谷村さんが頑張って演技してるのを心のフォルダに保存したくらいだ。

たぶん、お題も原作と同じことだったろう。

 

 

あとは別にモブを倒していったことぐらいだ。

 

なんてったって参加ペア16組のうち、

 

男鹿ヒルダペア

神崎花澤ペア

夏目樫野ペア

姫川大森ペア

東条七海ペア

出馬邦枝ペア

早乙女先生斑鳩ペア

そして古市谷村ペア

 

8組が石矢魔ペアだ。

 

そして勝ちあがるのも石矢魔だ。

 

 

既にこの祭りは石矢魔ベストカップル状態だ。

 

 

 

 

 

しかし、次からは原作に無い事だ。

 

何故そうなってしまったかは知らないが出馬邦枝ペアVS姫川大森ペアの戦いだ。

 

烈怒帝瑠の三代目四代目の戦いだけでなく、姫川先輩も何かしらやり返したい気持ちはあっただろう。

 

この勝負……原作のように一瞬では終わらないだろう…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

終わりました。

 

やはり、邦枝先輩は強いね。

 

姫川先輩が早く乗らないからこっちがどうたらって文句を言っていた。

しかし、審議をしない審議おじさんの手によって拒否された。

 

 

そのまま大森さんは観戦に移行。

姫川先輩は帰ろうとしている。

 

そんな姫川先輩に話しかける。

 

「姫川先輩、お願いがあるんすけど…」

 

 

 

 

 

 

 

 

夏目樫野ペアも東条七海ペアに敗れた。

 

特に夏目先輩が勝ちを意識していないのが勝敗を分けたな。

夏目先輩自体もまるで乙女ゲームのように会場に観戦でいる女の子たちをキャーキャー言わせていたが性格の悪い教師こと佐土原先輩と審議のおじさんにより点数が低くなったな。

 

女性の教師からは満点だったんだが…

 

 

「行きますよ」

 

「出番か…じゃあ、パー澤さん腹痛治ったんですね」

 

パー澤は謎の腹痛(完全に炭酸水一気飲み)により保健室に運ばれていたので試合がズレていた。

 

ようやく、試合だな。

 

 

 

 

『さあ!お待たせしました。古市谷村ペア対神崎花澤ペアです!』

 

「「「「「わあぁああぁぁぁああっ」」」」」

 

 

『おぉーっと溢れんばかりの歓声!ぶっちゃけこのペアはどうなるか不思議でしょうがありません!神崎花澤ペアはあたふた具合が最高に面白く、古市谷村ペアはどんな事をやらかすのだろうと期待が高まっています』

 

「むちゃくちゃ言ってんな…」

 

『古市谷村ペアは相手の自爆によりなりを潜めていましたが、銀の叡智古市貴之は聖石矢魔では一番知られる石矢魔生徒です。学校のファンクラブでは既に50名のファンを超えているそうです!』

 

ファンクラブあんの!?

 

俺はモブ市やぞ。

 

 

 

 

ーー観戦席ーー

 

「ファンクラブなんてあるの?」

 

大森は隣にいた樫野に聞いた。

 

「ありますよ。私会員ナンバー1番です」

 

そういって生徒手帳の中から小綺麗なカードを取り出す。

 

「貴之さん暇な時にこっちに来て部活体験していくんです。本人は部活荒らしって言ってますけど、その功績により今ウチの学校部活が活発化してるんです。それに六騎聖がいない部活も功績を上げるようになって……女子だけでなく、男性もファンクラブ入ってますよ」

 

「へ、へぇ〜…」

 

「写真部が写真集を、お料理研がレシピ帳を運動部が特訓メニュー表をそれぞれ作ってます。聖石矢魔の極秘書類として出回ってますよ。写真集は買いました」

 

「………それはどうなの?」

 

「写真集いります?」

 

「……………………………いる…」

 

 

 

 

 

 

ーーステージーー

 

なんか二人仲良くなってる。

よかったー

諫冬ちゃん、あんまり友達いないって言ってたから。

(真実は近づき難い+六騎聖の名によるもの)

 

『今度の種目はズバリ!料理対決です!各ペアそれぞれ力を合わせて料理を作ってもらいます。ただし、作る品目はクジ引き、調理工程は1人ずつです!ぜひ、頑張ってください』

 

「フフっ、おもしれーっす。ウチの女子力舐めんなよ」

 

「………」

 

「…?神崎先輩どうしたんすか?そんなザリガニみたいな目して…もしかして料理下手っすか!しょうが無いっすね…ウチがリードして……」

 

「俺は姫川に習って反則をする。失敗したら負けだ」

 

「え?」

 

「おい、解説。料理が決まったら動いていいか?」

 

『あ、はい大丈夫ですよ!ではルーレットスタート!!』

 

ルーレットは周りだし、ストップを押す。

 

料理は神崎花澤ペアがグラタン、古市谷村ペアはオムライスとなった。

 

 

「1つも食材を残さねぇ!!」

 

そして料理が決まるとカートを持って神崎先輩は走り出す。

そして食材をカートに詰め始める。

 

『おぉーっとなんという!これはまさか……食材の独占だぁー!!!神崎選手、古市谷村ペアに料理をさせない気だー!!!なんという卑怯な手!美食會か!!料理勝負を根底から覆すド汚ねぇ手を使ってきたぁーっ!』

 

 

古市……てめぇが料理上手なのはよく知ってる。

届けられる弁当、届けられるプリン。

プリンなんかアレがあれば二葉簡単に言うことを聞くようになる。

そんなお前は酢飯だけでもおいしいオムライスを作る可能性がある。

 

ならば、勝つためにはこれしかねぇ…

 

悪く思うなよ……俺は二葉におもちゃを買う為に金を使いたくねーんだ……!?何だ?笑ってる…?

 

何故笑っていられるんだ!?

 

食材はねえ。

料理を、出すには食材がねえと。

 

「審判さん、手持ちの食材って使用ありですか?」

 

『ありです!というか食材が無いのでそれくらいしないと何も無いので!!』

 

「じゃあ、姫川先輩お願いします」

 

「いいだろう」

 

体育館の扉が開かれるそこには校庭に置かれた大量の食材。

 

まるで、そこが食材の宝庫のような光景だった。

 

「姫川てめぇーー!!!」

 

「かわいい後輩の頼みだ。聞かねぇ訳にはいかねえだろ」

 

そんな姫川先輩の瞳には豪華な食事の数々が写っていた。

 

「魂胆なんかお見通しだ!こらっー!!」

 

「それにお前が悔しがる顔がみたい」

 

「スプーン曲げのスプーンみたいな性根しやがって…」

 

『これはまさかの展開!!美食會のごとく食材の独占を測った神崎選手!しかし、IGOのように食材の保護を行っていた古市選手が1歩先に行ったぁー!!これはお料理研全員を降した古市選手の圧勝かー!?後は谷村選手の腕前がかかっております!!』

 

「オムライスはよく弟達に作ってるから大丈夫だよね?」

 

「問題ありません。貴方が置いてったレシピも覚えてます」

 

「オムライスのレシピ!?」

「まだ、お料理研に無いぞ!!」

「試合が終わったらください!」

「いや、1口食べさせて!!」

 

『観客席のお料理研が大変騒いでおります!これは終わったかー!?』

 

「くそやるしかねぇ!!いけぇーヨーグルッチ!!!」

 

「何やってんすか!?」

 

 

 

『そんなこんなで実食です。審査するのはもちろんこの人聖石矢魔の新しい顔!新条アレックス新会長です!!』

 

「よかったわ今年で会長止めて。半分罰ゲームやったわ」

 

「でも、半分は確実にご褒美ですよ」

 

「諫冬ちゃん的にはご褒美かもしれんけど…」

 

「貴之さん、1回三ツ星レストラン総料理長を倒してますし…」

 

「……マジで?」

 

 

『本来なら古市谷村ペアからですが先に神崎花澤ペアからです!もう見た目的にご褒美は後に残しましょう!』

 

「見た目は普通ですね……しかし、ヨーグルッチの甘さがなんとも吐き気を誘う……ゲロマズdeath!!」

 

『あまりの不味さに新会長吐き出したっー!!無理もありませんここまで甘ったるい匂いがします!何度も咳き込んでいます!大丈夫でしょうか!?』

 

「これは寧々が出てたら危うく泥仕合になるところだったわね」

 

「そんなやばいのか?」

 

「世界が……終わるわ。最悪死人がでる」

 

「」

 

 

『さて、地獄を乗り越え、次はご褒美タイム!古市谷村ペアのオムライスです!』

 

 

「見た目も美しいながら、スプーンがふんわりとした感触を伝えてくる。トマトの味がしっかりしている中、卵自体の味も損ねていない。他にも美味しさを伝えたいですがそれを伝える言葉をうまく表現できない……ですので一言だけ言わせてもらいます」

 

そういって新会長新条アレックスはスプーンでオムライスを頬張っていく。

 

そして、完食しこう言った。

 

「Excellent!!」

 

その目には涙が流れていた。

 

 

 



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第六十一将 クリスマス回だそうですよ。 その5

 

お料理バトルを制して、残ったペアは俺たち古市谷村ペア。邦枝出馬ペア。

そして今から戦いあう東条七海ペアと男鹿ヒルダペア。

 

この内の二組みが決勝戦へと行くが……どうなることやら。

 

ふと、スマートフォンを確認する。

 

メールだ。

 

もしかしたら手にはいるかも。

手にはいったらまた連絡します。

 

 

カルタツイスターゲームというツイスターを男子がやるというなんの魅力の無い闘いが終わる。

 

これで一応男鹿と東条先輩の因縁の対決は二勝一負一引き分けとなった訳だ。

 

そういえば東条先輩と喧嘩してないけど多分本人が忘れているんだろうな。

ひょっこりどこかで勝負をつけるときが来るかも知れないな。

 

 

「行きますよ、ネーヴェ」

 

「目的は達成できそうだけど、そこまで頑張ろう」

 

リングに上がる。

そこには邦枝先輩と少しやる気を失った出馬先輩がいた。

 

『今回の競技はガチンコバトルです!ここまでくれば小細工は必要ありません!目の前の敵を倒してください。ルールはそれだけです!はじめ!!!』

 

今までのイチャイチャバトルをガン無視してただの喧嘩となる。

ネタが無いというより尺がないのだろう。

 

「千秋……手加減しないわよ」

 

「本気で行きます」

 

「三代目と五代目候補の二人の対決だね。こっちはやる気の無くした先輩を倒すとするよ」

 

「相変わらず観察眼がええなー。確かに少しやる気は落ちとったけど、君が相手ならやる気だすで」

 

確かに顎を引き、こちらに目を向けてくる。

相手に油断せず、相対してくる。

 

「俺たちって因縁ありましたっけ?」

 

「いやな、バレーボールの時に技真似されとるやろ?武術家としてあのまま終わるのは癪やったんよ。ここで返させてもらうわ」

 

「お手柔らかに……」

 

最初に動いたのはオータムだった。

後手に回れば不利なのはこちら。

 

太ももに隠し持った2丁拳銃で邦枝先輩の目を狙う。

中身はペイント弾。

当たれば視覚を奪える。

 

邦枝先輩なら視覚を奪われても動くことは出来るだろう。

しかし、本物の戦闘に慣れはじめて殺気の無い攻撃は久しぶりだろう。

それに歓声やらなにやらで聴覚も万全とは言い難い。

 

狙うならそこだろう。

 

こちらは全ての攻撃が肉体を破壊する八佳をいなす。

それでいて二人を近づかせないように立ち回る。

 

武術を嗜む二人だ。

二人での戦闘も慣れがあるだろう。

 

余裕があれば。

 

「オータム!」

 

「スイッチ!!」

 

ゲームで慣らしたタイミング合わせで切り替えて戦う。

銃弾の線も男の俺の身体に隠して見切らせない。

 

 

 

それにしても……

 

「「攻めずらい…」」

 

言葉は重なった。

この戦いは早目に終わると思われていた。

 

捌くのが得意とはいえ攻撃の方法が無い俺と手段はあるが手数のオータム。

 

邦枝出馬ペアはどちらも手数もあれば一撃の重さもある。

 

はなから消耗戦だ。

 

こちらは一撃喰らえばアウト。

時間をかければ手数が減る。

短期決戦がこちらの最善手だ。

 

それはあちらも同じだったろう。

決勝戦が控えているなかここで体力の使いすぎは望めない。

しかし、選択肢としてそれを選んだだけ。

 

対して俺たちに選択肢は無い。

 

こちらの敗北は決まっている。

 

 

では、今やっているのは?

 

意地の張り合いだ。

 

俺ではなく、オータム……谷村さんの。

 

谷村さんも分かっているのだろう。

三代目である邦枝先輩。

 

四代目は大森先輩。

 

次に実力のある一年は自分とパー澤さんだ。

しかし、組織運営におくならパー澤さんは力不足だ。

なんとなく分かっているのだろう。

次は自分だと。

 

 

 

 

 

 

自分では力不足だと。

確かにみんなに鍛えられた。

強くなった。

しかし、未だに実力不足を抜けられない。

 

聖石矢魔でのぬるま湯を上がれば激化した闘いが始まる。

そんな気がしている。

それは自分だけでなく、知ってか知らずか勘の良いものはなんとなくだが気づいている節がある。

 

そこで自分は足手まといになると。

また葵姉さんに助けられる、と。

 

そんな守られるだけなんて嫌だ。

 

 

 

親は滅多に帰ってこない。

弟二人と妹がいる。

 

私が守らないといけない。

 

そんな義務感に殺されそうなときに。

自分が壊れそうな時に葵姉さんにあった。

 

守られて、鍛えられて、憧れて、助けられて。

 

そんな私も二年も経てば総長となる。

でも、私にそんな資格があるの?

 

守られてしかいない私がなれるの?

 

 

何の気なしに誘われたクリスマス会。

 

ネーヴェは私を助けてくれる。

 

二人の攻撃を捌き、代わりに受けてくれる。

 

切り替えるタイミングも私が戦いやすいようにサポートしてくれる。

ゲームでも他の人を生かす戦いかたをする。

でも、一番強いのは個人戦。

私も弟たちも敵わない。

 

けれど彼は笑い、続けるのだ。

 

彼に助けられたのは一度だけではない。

 

MK5に襲われたとき。

ゲームセンターで絡まれたとき。

そして今も。

 

この戦いは負けだ。

優勝はできない。

 

このペアが私以外ならもしかしたら優勝出来たかも知れない。

寧々さんや六騎生のあの子、葵姉さんも男鹿が優勝してほしくないから出ているんだ。私の代わりにネーヴェと出れば……

 

嫌だ。

 

なんだろうこの気持ちは。

 

私が誘われたのは弟たちの約束のためだ。

だけど、私は断らなかった。

そんな約束気にしなくていいのに。

なんて言葉が浮かんだのに口から出ることはなかった。

 

六騎生のあの子や寧々さん、誰にも負けたくない。

そんな事を考えてしまう。

 

今まで生きて来てこの感情は初めてだ。

 

「オータムっ!」

 

ネーヴェの声で現実に戻される。

スイッチが遅れた。

ゲームに集中してればこんなことはないのに。

 

葵姉さんの手が迫る。

その間に頼れる背中が割り込む。

 

攻撃を受けて、彼は倒れ込む。

また、私を守って。

 

このままなんて嫌だ。

守られてばかりなんて。

 

私は変わらなければ……!!

 

 

 

 

 

 

ようやく攻撃が当たった。

男鹿の近くで目立たない彼、古市くん。

 

おおよそ不良とは見えない彼は武人だ。

二人の攻撃を殆ど彼一人で捌ききった。

 

しかし、これで終わり。

 

後は千秋を止めれば。

 

そう思い、千秋を見る。

 

2丁拳銃を構え、こちらを見ている。

いつもと拳銃の持ち方が違う…?

あれでは銃を撃つのではなく、まるでメリケンサックのように…

 

そう思考した瞬間、千秋はこちらの間合いに入り込む。

 

退避しよう、行動が終わる前に銃身がみぞに入る。

一瞬呼吸が出来ない。

 

襟を捕まれ、離される。

出馬さんが引っ張ったようだ。

 

それにしても油断した。

まさか千秋があんな戦いかたをするなんて…

 

いつの間に近距離戦闘を学んだの。

 

今の間に古市くんは立ち上がっている。

ダメージはあるものの、サポートのみなら動けるだろう。

 

この戦いは終わるはずだった。

 

その起点が足りない威力を手にいれてひっくり返った。

この戦いは長引く…

 

そう考えたとき。

 

 

 

 

 

シャバドュビダッチヘンシーン

シャバドュビダッチヘンシーン

 

日朝のヒーローものの変身音が鳴り響く。

 

「あ、すみません。タンマ!」

 

古市はポケットからスマフォを取り出す。

 

それを耳に当て、応答する。

 

「はい、もしもし。あ、リンちゃん!どうしたの?手に入った?あ、ありがとう。じゃ、はい。はーい」

 

ピッ

 

通話を切り、スマフォをしまう。

 

そして片手を上げ、宣言する。

 

「サレンダーします」

 

「はい?」

 

『サレンダー?あ、敗けを認めるということですか?い、いいですけど、理由は?』

 

「参加理由が谷村さんちの弟さんたちにプレゼントあげようとしてたんですよ。で、プレゼント内容が売り切れ続出だったのでサンタさんに頼もうって話になりました。それが手に入りましたし、これ以上ガチでやるとマジで危なそうなのでストップしました」

 

『す、すこし不完全燃焼感は否めませんが決勝戦の時間もあるのでここは素直に受け入れます!古市谷村ペアは脱落!決勝は男鹿ヒルダペアと出馬邦枝ペアです!!』

 

「ごめんね。もう少しやりたかったかも知れないけど」

 

「いえ、大丈夫です」

 

「出馬先輩も今度きちんとやりなおしましょう。タッグ選じゃどっちにしろ不完全燃焼でしょ?」

 

「そうやなーまあ、楽しみにしてるで」

 

「邦枝先輩もこの後も頑張って下さい」

 

「え、ええ」

 

先輩たちと挨拶をして体育館から出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

なんとか千秋達を倒して決勝戦へと向かう。

 

そういえば千秋。

いつの間にあんなに強く…

 

あの太ももで光っていた6の数字はなんだったんだろう…

 

いけない。

 

決勝戦に集中しなきゃ!

 

「邦枝さん…あのさ。静さん負けたし…もう僕でる意味ないやん。モチベーションあがらんちゅーか」

 

「え?えっーーーー!!!」

 

 

 



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第六十二将 クリスマスも終わりですね

 

 

「はい、……クリスマス会敗退残念会始めまーす。先程の事は水に流して楽しみましょう。では!いただきます!」

 

「「「「「「いただきます!!!」」」」」」

 

 

 

聖石矢魔学園から場所を写し、ここは邦枝神社。

残念会を開くということで広い場所が欲しいということで邦枝先輩が申し出てくれた。

 

俺が料理担当を申し出ると、自分たちも行きたいと騒ぎ出す不良たちに囲まれ、移動をしたのだった。

 

そういう訳で神社はクリスマス1色となっていた。

神社だけども……

 

そこは気にせず(邦枝先輩の祖父も快く許可してくれた)、今はみんな料理にがっついている。

量的にな3日分くらい姫川先輩が用意してくれたが、一瞬で無くなりそうだ。

 

ぶっちゃけ、東条先輩が手伝ってくれなきゃ速攻で無くなっていた事だろう。

 

 

現在ここにいるメンバーはクリスマス会に来ていたモブ不良たち、石矢魔参加メンバー&聖石矢魔の猛者たちだ。

 

逆にいないのは先生ペアとやられ役で消えてった聖石矢魔生徒たちくらいでワイワイしている。

 

 

 

「それにしても東条先輩助かります。1人でやってたら手が足りなくなってましたよ…」

 

グラタンの処理が終わり、オーブンに入れる。

(機材類と食材は姫川先輩が用意してくれました)

 

「ああ、アイツらも参加させてもらってるしな。今日はバイトもねーし、飯がタダになるならありがたいもんだ」

 

アイツらとは元六騎生の七海先輩の弟たちだ。

今はチキン片手に神社内を駆け回っている。

オータムの弟たちとも仲良くなったみたいで、そこから繋がるようにベル坊や二葉ちゃんとも仲良くなって遊んでいる。

 

「もう少しやったら食材が底をつくんでそこからこっちも食べたりしましょう」

 

「こっちの分終わった。そっち手伝うか?」

 

「はっや!いや、大丈夫です。それより七海先輩と一緒に食べてきたらどうですか?」

 

「そうか…じゃ!頑張れよ!フルイチ!」

 

そう言って東条先輩は両手に料理を持って出馬先輩に話しかけられている七海先輩の元へ向かった。

頑張ってください。

 

誰とは言わないが…

 

 

グラタンも焼き上がり、後はスープ類が殆ど。

これで終わりだな。

 

エプロンを取り、厨房から出る。

 

「ネーヴェ」

 

 

そこにはオータムの姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

神社の裏手。

そこには俺とオータムだけ。

 

表の喧騒がこっちまで聞こえてくる。

 

「どうした?こんな所に連れてきて…」

 

「あの時…どうして負けを認めたんですか?」

 

「あの時って…クリスマス会の。アレはあの時も言った通り目的は叶ったし時間もかかってたから」

 

「なら、どうして戦おうと思ったんですか!」

 

普段からはあまり想像のつかない強い気迫で詰められる。

 

「あの時は目的は達成出来てなかったし…」

 

「それでも早くに決着が着いてしまう可能性があった……私が弱いから…。もしも目的が達成してなかったら、早目に負けてしまったら、そうしてたらどうしてたんですか?」

 

「………」

 

「貴方はなんのために参加したんですか?」

 

「……」

 

「弟たちのためって言ってましたけど、それは取ってつけた理由ですよね。他に理由は無かったんですか?」

 

「………確かに弟たちへのって理由は外聞的な理由だった。みんなが参加するなら誰か誘って遊びたいなって考えていた……」

 

「それなら私じゃなくてもよかった。他にも寧々さんや六騎生のあの子だって……」

 

「もうひとつ理由があった」

 

「それは……なんですか?」

 

「君だよ…谷村さん」

 

「私?……私が何か…」

 

「悩んでた。現状に。このままでいいのか、と」

 

「!?それは…」

 

「幸い参加者に強者達がいた。抗争みたいな過激なものじゃないけど、何か掴めるんじゃ無いかと思った」

 

「そんな……勝手に…」

 

「勝手にした。君は余り感情を出さない。寧々さんやパー澤さんみたいに積極的とは言い難い。それも美点ではあるが現状は苦しませるだけ。気づかない振りをして苦しむだけ。悪魔野学園の時に修行して強くなった。けど、それでも寧々さん達と比べると実力差がある」

 

「私は……私の力じゃ…烈怒帝瑠は…」

 

「……今回のことで少しは前向きになれたかな?」

 

「……」

 

「大丈夫。今回で新たな戦い方を見つけた。まだ先の事は分からないけど、一歩前進したんだ」

 

「私は……大丈夫でしょうか?」

 

「分からない。けど、俺も谷村さんもまだ高校1年だ。とりあえずは3年近くにいる。一緒に頑張っていこうよ」

 

「………はい」

 

「俺も男鹿に着いて行くのに精一杯だからな〜」

 

「千秋」

 

「へ?」

 

「私も寧々さんのように名前呼びでいいです。同じ1年なんですから名前で呼んでください」

 

「……そうだな。いつまでも苗字やアカウント名で呼ぶのもな。俺の事も貴之って呼んでくれよ」

 

「そう、ですね……古市……貴之」

 

「そういえば出会いが唐突だったし、改めて自己紹介でもするか!」

 

「今更ですね」

 

「今更だなぁ」

 

「「…………フフっ」」

 

「改めてよろしく、千秋」

 

「こちらこそよろしくお願いします、貴之」

 

互いに手を差し伸べ、握手する。

 

その光景が可笑しくてつい、笑いだしてしまう。

 

 

「神社の裏手で何やってるんだろうな!」

 

「おかしいですね?こんなはずでは…」

 

「どうしてこうなった!?」

 

「「アハハハハハハっ!!!」」

 

 

 

「見ようによっては告白シーンだよな」

 

「そうですね。結果は挨拶で終わりましたけど…」

 

「パー澤さん達に見られてたら面白いなー絶対学校でイジられるからな」

 

「こういう時は胸が熱くなるんでしょうか?」

 

「ある意味告白なら熱くなってもいいんじゃない」

 

「胸も確かに暑いですが、更に暑いのは太ももですね」

 

「なんで太もも!?……それじゃまるで……え?」

 

「ほら、見てください」

 

千秋は少しスカートを捲る。

 

「クリスマス会の途中から熱くてアザみたいになっているんです。それにこのアザ…数字の6みたいで…」

 

そこには彼女の言う通り、6の跡。

そして数字を取り囲むように存在する紋章。

茨の棘と十時をイメージしたかのようなその紋章が刻まれ、光輝いていた。

 

「貴之?どうしました?」

 

「そうか……そう、なってしまったか……」

 

驚き、真面目な顔をする。

さっきまで笑いながら喋っていたのが嘘のようだ。

 

 

「千秋。君には俺の秘密を打ち明ける。これは男鹿にも喋っていないことだ」

 

「え?」

 

「今日は遅いからまた後日改めて話す。他のメンバーにも伝える。その痣の事は誰にも話さないで欲しい。もちろん邦枝先輩にもだ」

 

「それは…」

 

「………そろそろ表に戻ろう。流石に怪しんで絡んで来そうだからね」

 

 

 

 

表に戻るとみんな笑い、笑顔だった。

 

勿論呼びに行った千秋の帰りが遅かったのと一緒に帰ってきたことでいじられた。

 

その後サンタクロースに扮した石動会長が現れ、ベル坊にプレゼントを渡していた。

 

それを見て顔を知っている人は笑い、モブ不良たちはプレゼントをカツアゲするべく襲いかかり、文字通り吹っ飛ばされていた。

 

その日はお開きになり、お試し保育や年越しに神社にまた集まったりした。

 

新年が開ければ石矢魔が直る。

ようやく、最後の戦いが始まるのだろう。

 

もしくは最初の戦いか。

 

ようやく俺たちも動ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

決着をつける。

 

 

 

 

 




年越し会は後で書きます。
お試し保育は書きません。
あと夏祭りが途中保存してあるので書き終わったら出します。
この作品は最終巻にあった空白の1年の話もやれたら書こうと思っています。

次回もよろしくお願いします。


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第六十三将 みんなの初夢

 

《邦枝葵の初夢》

 

「ここ…富士山?」

 

 

 

ロッジで目を覚ます。

 

窓からの景色は雪道と岩肌が見えている。

立て看板には富士山と文字が書かれている。

 

服装は寝巻き。

 

「なんでこんな所に…」

 

「眩しーな」

 

「もう、わがまま言わないの……え?」

 

横を見ると起き上がる男鹿の姿。

 

ベッドはひとつしかない。

必然的に同じベッドに寝ていた事になる。

 

「えっ?ひゃ、ひゃぁ…」

 

顔を真っ赤にし、言葉が出てこない。

 

「ん?どーした?熱でも出したか?」

 

男鹿は寝巻きを着てはいなかった。

ズボンは履いている。

しかし、上裸だった。

 

ロッジ内とはいえ雪山で服を脱ぐなど有り得ない。

今はそんなことを考えられないほど、頭が沸騰しているが…

 

そんな止まっている思考に畳み掛けるように男鹿が近づく。

そしておでこを当て合う。

当たっているのはおでこのみだが、少し近づけば唇も当たってしまいそうだった。

 

「やっぱ熱いじゃねーか。寒いんだったら言えよな。俺が暖めてや……」

 

「ダメっーーーー!!!!!!」

 

いつの間にか手で握っていた木刀を振り回し、男鹿を滅多刺しにする。

 

「はっ!!」

 

その瞬間に目が覚める。

 

時刻は夜の3時。

神社の手伝いをギリギリまでして残りはバイトの子達に任せて眠った瞬間に見た夢。

 

時間としては1時間も寝れていない。

 

「わ、私ったら……なんて夢を…」

 

部屋は冷えていたが身体が熱くて仕方無かった。

 

「でも、もう少し……ボッ!」

 

まるで口にしたかのように火がついたかのように音が鳴る。

暑かった身体が更に熱を帯びる。

 

深呼吸をして落ち着く。

そして布団へと入った。

 

「……続き見れないかしら…」

 

尚、この後一睡も出来なかった模様。

 

 

 

 

 

《ヒルダの初夢》

 

 

そこは地獄絵図だった。

 

町は火の海に包まれ、人間は泣き叫び、巨大な城の上でヒルダはいた。

そして玉座にはベル坊が座っていた。

 

「坊っちゃま……これら全てが坊っちゃまのものですよ……次は海向こうの国です」

 

「アダー」

 

「ええ、男鹿とその家臣が全てを破壊して帰ってきます」

 

「ダブっ!」

 

「ええ、大魔王様もお喜びになることでしょう」

 

「そうはさせん!」

 

目の前に銀鎧を付けた男たちが現れる。

 

「これ以上貴様ら悪魔の好きにさせてたまるか!」

「我らには神がついておるのだ!」

「殺すぞー!!」

 

「うるさい!」

 

「うわー」

「やられたー」

「殺されたー」

 

速攻でやられる。

 

「坊っちゃま…片付きました。これで坊っちゃまを邪魔するものは…」

 

振り返るとそこにベル坊はいなかった。

 

玉座には別の男が座り、目の前の地面にベル坊を背負った男鹿が膝をついている。

 

「坊っちゃま!男鹿!」

 

「残念だ……さよならだ、男鹿」

 

玉座の男は座ったまま、光を男鹿へと向ける。

 

そして光は男鹿とベル坊を飲み込んだ。

 

「坊っちゃま!男鹿ーー!!!」

 

そこで目を覚ます。

そこはいつもの部屋。

 

「不吉な…」

 

男鹿の部屋へ向かうとベル坊と男鹿が仲良く寝ていた。

その顔は幸せそうに寝ていた。

 

「私がさせん。あんな夢に私が絶対させん」

 

 

 

 

 

 

《男鹿の初夢》

 

 

「しゃああああああああああああああああああ!!!」

 

男鹿は指を空に向ける。

 

「一富士二鷹三茄子!!あれか!」

 

そこには鷹の身体、茄子の頭、ふじとひらがなで茄子に書かれている。

 

「見つけたぞごらぁっ!これで俺もアレだ!正月から運がいいぜっ!」

 

確かに正月の初夢に見ると縁起の良いものは一富士二鷹三茄子だ。

が、あんな化け物見たら迷わず病院に行くべきだ。

頭のどっか完全に病んでいるから。

 

その化け物はベル坊を掴み、羽ばたいていった。

 

「ちょっ…待てこら!お前っ……どこが縁起がいいんだよ!ベル坊返せ!………ベル坊ーーーーっ!!!」

 

「アーーーイッ!!!」

 

そこへ矢が飛んでくる。

それは鷹に刺さり、地に落ちる。

 

ベル坊は解放され、男鹿の元へ戻ってきた。

 

「ベル坊!なんだか知らんが助かったぜ…」

 

「親なんだから目を離すなよ…男鹿」

 

声のした方を振り返るとそこには古市がいた。

古市は和服を着ていた。

 

いつの間にかそこは市場のような活気づいた場所になっていた。

 

「古市?なんだその格好……コスプレか?」

 

古市は和装に赤い扇を仰ぎながら、現れた。

口元のタバコから煙が出ている。

 

「俺は古市だが、お前の夢の中の古市だ」

 

「また三権分立とか言うのかよ……勘弁してくれよ」

 

「現実の俺は何も言わないからな。気をつけろよ……俺が鷹を射った。そこからだ。そこから始まるんだ」

 

「何言ってんだてめー」

 

「とりあえず茄子は食えよ……後は気をつけろ」

 

「おい!古市っ!待てっ…」

 

男鹿は足元の茄子につまづき、転んでしまう。

 

世界が一転すると自分の部屋の天井だった。

 

ベッドから落ちて目を覚ましたようだ。

 

「なんだそりゃ…」

 

 

 

 

 

 

《古市の初夢》

 

「全戦力がようやく石矢魔に揃う」

 

白い空間で古市はそう呟いた。

 

古市は自身の手を見る。

震えていた。

 

「これは恐怖か武者震いか……どちらにせよもう止まらないんだ……」

 

そんな古市の前に黒い影が現れる。

手入れのしていない黒髪。

赤ん坊を背負い、向き合う。

 

顔が真っ黒に染まっているのは、どんな表情をしているのか想像つかないからだろうか…

 

そんな影に話しかける。

 

「男鹿……喧嘩しようぜ」

 

影はなんの反応を示さず、白い世界が崩れ去っていく。

 

 

「続きは現実でな…」

 

 

 

 

 

 

目を覚ます。

 

ベッドから起き上がり、外の景色を見る。

 

日差しが眩しい。

雲ひとつない晴れやかな空を眺める。

 

1度目を瞑り、開く。

 

その目には迷いはなく、真っ直ぐな瞳をしていた。

 

 

 




ラミア お菓子を取るかアクセサリーを取るかで悩む夢
パー澤 寧々さんと一緒にどこかで置いてかれる夢
寧々 夏祭りの思い出

とか考えたけど長くは書けないなと思って書かなかったりした。
いつか書くかも知れない。
多分書かない。
自分が1番信用できない。

次回は多分明日投稿。


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第六十四将 殺六縁起

今日でたわ。

ほら、信用ならない(前の話の後書きより)

なーんてね、そこらへんは作者の気分次第でーす。
気が変わることなんてしょっちゅうですわ。

無駄話は置いといて続きどーぞ!




 

 

「はーーーゆーうつだぜ。またあの不良共の巣窟に通わなきゃなんねーと思うと…」

 

「お前が言うな。その巣窟の大将のクセして」

 

まだ、息が白いこの日この頃。

 

投稿日となり、学校へと向かう。

 

本当に新年開けたら石矢魔が復活していた。

屋上に開いた穴以外は普通の学校だ。

 

「ん?」

 

「おいっ…こ、これは…MK5が既に瞬殺されている!」

 

「こいつらの瞬殺芸もここまで来たか…」

 

訂正、校門に人が埋まって……

いや、この学校は元から普通ではなかった。

 

「古市……こいつら減り込ませた奴…誰だか分かるか?」

 

「いや、分かる訳ねーだろ。エスパーか俺は」

 

「できるぜこいつ……減り込みの角度がもれなく綺麗な垂直だ」

 

「なにその専門家発言」

 

というかお前もそういうこだわりあったんだな。

 

深く埋めればそれでいいんだと思ってた。

 

他にもスプレーで落書きするもの。

バットで窓ガラスを割るもの。

麻雀するもの。

ヤムチャかナムで喧嘩しているものもいる。

 

「相変わらずだな…」

 

「全くだ…」

 

昇降口を通った下駄箱には神崎先輩方がいた。

 

「よう、お前ら」

 

「男鹿ちゃん、古市ちゃんあけおめー」

 

「神崎先輩、夏目先輩、城山先輩、あけましておめでとうございます。……なんかパワーアップしてますね」

 

廊下で普通に笑い合っている。

東邦神姫がいれば、目をつけられないように黙っていたというのに。

 

「ああ、どうやら他所の高校に行ってる間に随分力を付けた奴がいるみてぇだ。どいつもこいつも行った先で番張ってやがったんだと」

 

「いるんだよねートップにつくと急に自信つけて強くなるやつ」

 

「ああ……おかげで」

 

「神崎ーーーっ!!!」

 

メリケンサックをつけた男が殴りかかってくるが悪魔を相手するために修行した神崎先輩にはいささか足りなすぎる。

 

簡単に腹を蹴られ、殴りかかって来た生徒は苦しみ倒れ込む。

 

「こんな奴らばっか増えて鬱陶しくて仕方ねぇ」

 

「男鹿ちゃんも気をつけた方がいいよ。こいつらが欲しいのは君の首だ」

 

男鹿は瞬時に拳を放つ。

神崎先輩と夏目先輩の間。

 

そこから殴りかかって着ていた男に向かって。

 

男は壁まで吹き飛ばされ、減り込まされた。

 

「なっ……なすびさん……なすびさぁーーーんっ!!」

 

横に二人ほど雑魚がいたがなすびさんというのに気を取られ、夏目先輩と神崎先輩にやられる。

 

「関係ねーよ。来たやつは全員ぶっとばすだけだ」

 

男鹿はそのまま1年の教室へ向かった。

 

 

 

 

1年教室の曲がり角に姫川先輩が待っていた。

 

「よう、年男」

 

「姫川」

 

「姫川先輩、あけましておめでとうございます」

 

「久々に戻ったら随分様変わり……いや元に戻ったと言うべきか。今の石矢魔は大小30を超える勢力がひしめき合ってるよ」

 

「知ったこっちゃねーつーの」

 

「まあ聞け。中でも噂になってるのが3人。お前と同等かそれ以上と言われるやつらだ。それより実力は下がるがもう3人。俺たち東邦神姫に習って名前をつけてる。しかもそいつら全員お前と同じ1年だ」

 

「1年…?」

 

「まずは鳳城、市川、赤星。そして藤、鷹宮…そして奈須」

 

「富士……鷹…茄子!?」

 

「そいつらは縁起ものである一富士二鷹三茄子四扇五煙草六座頭に準えて石矢魔殺六縁起を名乗ってる。お前がとった石矢魔はもうここにはねぇ」

 

「情報ありがとうございます。姫川先輩」

 

「まあ、校舎なんだろうが訳分からん力で壊すテメーのことだ。今更そんなもんに興味もねーだろうが一応頭入れとけや」

 

そう言って姫川先輩は去っていった。

普通に忠告しに来て普通に良い人だな、あの人。

 

「どーした、男鹿?ソワついて。というかベル坊は漢気な顔に……」

 

「これはソワソワしてる顔だ。それより古市」

 

「ソワソワしてんの?」

 

「てめーも狙われてる。気をつけろ」

 

「逃げ足には自信があるから大丈夫だ」

 

「気をつけろってこれの事か……」

 

「ん?何が?」

 

「なんでもねぇ……しかし…」

 

男鹿は右てに刻まれた蝿王紋を見る。

 

そこにはう○ことナスとカタカナで書かれていた。

 

 

今まで来た道を戻る。

 

姫川の話だと茄子がいたはず。

 

さっき殴った男がなすびと呼ばれていた。

 

 

「荒れそうだぜ…」

 

 

男鹿は昇降口へと戻って行った。

 



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第六十五将 第一の臣下

 

 

あの後男鹿が減り込まされたり、火炙り高校の赤星や鯖徒高校の市川が現れたり、その場は1度お開きになったりした。

 

放課後、怪我をした邦枝先輩の神社に集まることになった。

 

 

当然寒いが外で待つ。

 

無駄に殴られたくはない。

 

家の中から叫び声と何かが叩かれる音がした。

しかし、男鹿しかいないはずだがなぜ2発も音がしたのだろう。

 

それはすぐに判明した。

両頬を真っ赤にした男鹿と邦枝先輩、そして烈怒帝瑠で名のあるメンバーが出てきた。

 

石段からは神崎先輩、夏目先輩、姫川先輩が来た。

 

少し遅れて陣野先輩方も来る。

 

そしてこれで全員揃った。

 

東条先輩はいつもの通りバイトだった。

それ以外はやられたと。

 

真田兄弟やキラーマシン阿部がやられたのは分かるがグットナイトが生きているのはびっくりした。

なぜMK5がやられてお前残ってんだ。

この頃はMK5+‪α‬ってやってたじゃねーか。

 

灯油缶を蹴りとばす。

 

蹴り飛ばしたのは神崎先輩だった。

 

「今はそんなことどーでもいいんだよ。今俺たちが潰さなきゃなんねーのは騒霊のなすびだろ」

 

「実力は未知数だが筋は通しそうな火炙りの赤星や鯖徒の市川と違ってあの茄子って男はピエロだ。次の瞬間何をするか分からない危うさがある。後手に回ると取り返しのつかないことになる」

 

「たしかにな……藤や鷹宮はまだ目立った動きをしてねぇ。となると今やばいのは奈須だ」

 

「後は邦枝先輩を狙ったっていう魔女学ですね」

 

「ええ、彼女の狙いも男鹿でしょう。でもまかせて。魔女学のタバコ、鳳城林檎は私たちが引き受ける。烈怒帝瑠の名にかけてね」

 

「じゃ、男どもは茄子喰いか。な?男鹿」

 

「そんなもん…最初(ハナ)っからそのつもりだっつの」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後話し合いで姫川先輩は単独行動を取った。

 

ジャンケンでとりあえずその場で大将を決めるといことでベル坊が大統領に決まった。

 

釈然はしないがとりあえずは纏まったということでその場は別れた。

 

話し合いで大将同士の戦いで男鹿と奈須が戦えるように情報戦を敷き、場を作る作戦になった。

 

騒霊組を全部潰したいところだが、他の目がある以上はそれが最善策となった。

 

 

次の日学校で全員がバラけているのを確認する。

 

神崎先輩は一緒に行動し、奈須が教室で1人で待機しているのを確認する。

 

そして神崎先輩は中に突入した。

 

誰も彼もが男鹿、男鹿、男鹿。

自分なんか眼中に無いと、雑魚扱い。

そしてそれをまぁいいかなんて思うようになっていた。

 

舎弟頭の城山がやられた光景が頭をよぎる。

 

俺一人でも………やってやる。

 

「なすびぃぃっ!!!」

 

部屋に入ると騒霊組幹部と配下が勢揃いしていた。

 

「2名様ごあんなーい♡」

 

扉が閉められる。

 

「どういうことだ?てめーら全員バラけているはずじゃ……」

 

「イッツ騒霊マジィーーーック♡♡」

 

バラを咥えて上裸の奈須は高らかに叫んだ。

 

そんな奈須の胸にはタトゥーのようなものが入っている。

凝ってもいない、簡素なデザインだが悪魔と戦った自分なら理解する。

あれは悪魔との契約の証だと。

 

そう思考している間に神崎先輩は動く。

城山先輩を殴り病院送りにした巨漢にかかと落としを繰り出す。

 

しかし、ものともせず張り手を食らい、地面を転がる。

そして狐面をつけた小柄な男がドロップキックのように踏みつける。

 

教室の床は罅割れる。

足と床の間にある神崎先輩の身体がどれほどのダメージか想像は容易い。

 

「よわっ」

 

そんな奴らの身体には茄子にあった契約紋に数字を追加したものが光り輝いていた。

 

「やれやれダメだっちゃ。大将失格。男鹿っちゃんは仲間の使い方がなってないなり。せっかくあんなスゲー赤ん坊がいるのに」

 

「黙れよ…」

 

先程のダメージでは絶対に立ち上がれない。

しかし、神崎先輩は立ち上がった。

 

血を流し、よろけながらも立ち上がる。

 

「てめぇごときがアイツを語ってんじゃねぇ…」

 

本当は気づいていた。

 

姫川だって気づいている。

 

俺みてーに素直じゃ無いだけだ。

 

「俺らの大将はなぁ……この学校のNo.1なんだよ」

 

鍵がかけられ、締め切られていた扉が蹴破られる。

そこには男鹿が立っていた。

 

「男鹿っちゃーん。またこの引きナリかー?正直ワンパターンにも程が…」

 

「あ?何勘違いしてんだ……まだ負けてねーだろ?ウチの特攻隊長なめんじゃねーぞ」

 

 

ヨロヨロで立ち上がったはずの神崎には力が溢れていた。

 

左肩の後ろ肩甲骨の辺り。

そこには男鹿の蝿王紋に数字の1を追加したようなものが光っていた。

 



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第六十六将 茄子喰い

 

ドクンッ

 

 

ドクンッ

 

 

ドクンッ

 

 

心臓の鼓動を感じる。

 

熱く光り輝く証。

 

 

今の今まで立つのがやっとだった。

 

しかし、力が溢れてくる。

 

「男鹿……またてめーの訳分かんねーやつか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「知らん」

 

「まじでか」

 

 

 

「説明してやろう」

 

男鹿が蹴破ったことでアランドロンが入れるようになり、ヒルダさんがいつの間にか部屋の中にいた。

 

「それは【王臣紋(おうしんもん)】。命尽きるまで王に従う事を誓った者にのみ与えられる戦士の称号だ」

 

「命尽きるまで?」

 

「王に従う……?」

 

「ははーん。ワシのために死ぬが良いでおじゃる丸」

 

男鹿がニヤニヤしだす。

心做しか鼻が伸びているように見える。

 

「あ”っ?誰が王だこら。分かりやすく調子のってんな!」

 

 

「ひとつ教えてやる」

 

額に4の数字を光らせ、巨漢が近づく。

 

「そいつは与えられただけじゃなんの意味もねぇ。血の滲むような鍛錬があって初めてつか…」

 

一瞬巨体が浮くほどの一撃を神崎は放った。

 

「クク…それが……ど」

 

虚勢を張ろうとしたが前のめりに倒れ込む。

 

「あん?なんか言った?」

 

ピクピクとするだけでもう動かない。

 

「勘違いするなよ、男鹿。テメーの部下になったつもりはねぇ。だがまぁ、雑魚は任せな。奈須はてめーにくれてやらぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後神崎先輩が奈須の王臣全てを、男鹿が奈須を倒した。

 

男鹿は暗黒武闘を使い倒した訳だが、融合を解除すると男鹿とベル坊はまた入れ替わっていた。

 

「逃がすかっ!」

 

俺は男鹿(ベル坊in)を押さえつける。

 

「流石ベル坊!こんな俺でも男鹿を押さえつけられる!今なら男鹿はくそ雑魚だ!」

 

「殺すぞ!いや、ナイスだ!古市!!」

 

「なにがどーなってんの?」

 

「とりあえず男鹿!家に行くぞ!このまま学校にいたら何時やられるか分かりゃしねぇ!」

 

「ようし!神崎俺を縛れ!」

 

「説明しやがれ!」

 

「説明のためにも疲れている今はあとです!!まずは安全な場所へ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪魔とか頭おかしーんじゃねーの?」

 

「だろうな…」

 

俺の家に移動し、事情を洗いざらい話た。

王臣紋が出た以上、悪魔の話にも知っていなければならない。

 

というかなぜ男鹿の家ではないんだ?

俺は男鹿の家って言ったはずだが。

 

「アランドロン。とりあえずワープすれば分かるだろう」

 

「分かりました」

 

神崎先輩の前でおっさんが開き始める。

 

「うおっ!」

 

その言葉を残してどこかへ行った。

 

そして数分後神崎先輩は帰って来た。

 

男鹿はうちのお茶請けを食い尽くした。

(因みに家に着くぐらいで入れ替わりは元に戻りました。)

 

「分かった……男鹿のよく分からねぇ力もそれが理由か……もしかして俺が負けたのもそれが理由……」

 

「その時はなんもしてないので素ですね」

 

「そうか……」

 

 

神崎先輩は疲れた目をしていた…

 

 

 

 

 

 

俺は不意に窓の外を眺める。

 

 

あっちはちゃんと出来たかな……

 

あの人ツンデレだからな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何を言っているの?」

 

 

 

周りに特攻服を着た女性達に囲まれた邦枝葵は目の前にいる女性に話しかけた。

 

「何って…言葉の通り」

 

周りの女性を従え、邦枝葵の目の前に立つ女性。

 

 

烈怒帝瑠元2代目総長にして魔女学(ヘッド)タバコ、鳳城林檎。

 

彼女は邦枝葵を前にしてこう言った。

 

 

 

 

「アタシは烈怒帝瑠を辞める」

 

 

 



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第六十七将 煙草鎮火

 

 

「アタシは烈怒帝瑠を辞める」

 

目の前に立つ女性はそう言い放った。

 

彼女の名は鳳城林檎。

 

烈怒帝瑠元2代目総長であり、魔女学組の頭。

 

邦枝葵が3代目を奪い取り、その座を追われた女性だ。

 

既に年齢は20歳を超えているためタバコを吸っているが、何回も留年しており、1年生だ。

 

「レディースは続けるけど、そろそろアタシも卒業しないといけないからね。それに2代目って呼ばれるより新しくチーム作った方がいいかと思ってね」

 

「それが真正烈怒帝瑠?そんなの…」

 

認められる訳ない、そう続けようとした。

 

「それはアタシんとこが勝手に言ってるだけ。アタシにそんな気は無いよ。それに……」

 

1度言葉を溜めて、放つ。

 

 

「烈怒帝瑠はふたつもいらない」

 

その顔は覚悟が決まった表情をしていた。

 

「そういう訳だから今はアンタらと争う気はないよ。新しいチームを作ったらその時は抗争があるかもしれない。それはその時でいい」

 

「卒業したら負けと言っていたのに…」

 

「そう思ってたけどね……変わった理由は葵、アンタと同じさ」

 

「同じ?」

 

「男だよ」

 

「…………………えっ!?」

 

冷静を保っていたクイーンの顔でなくなる。

 

「男鹿辰巳ねぇ〜いい男だったね…でも手こずるわよあの朴念仁みたいな男は…」

 

「べ、別にそんなんじゃ…」

 

「あの女王(クイーン)がなんて顔してるんだか…」

 

「ちっ違うわよ!」

 

「じゃあ、アタシがとっても言い訳ね」

 

「え?だ、ダメっーーー!!!」

 

「ハッハッハ!!冗談だよ!本当にあの女王(クイーン)がまるで生娘みたいな反応じゃないの!!」

 

今この空間に先程までのピリピリした空気は無い。

完全に崩壊し、ガールズトークのような会話になった。

 

周りの女生徒はどんな気分でこの話を聞いているんだろうか。

 

「大丈夫さ。アタシの好きな男は男鹿辰巳じゃないよ。アタシに好意を抱かれているのも気づいているさ。だけど競争率が高くてね……それに妻になるなら学校くらい卒業しとかないといけないと思ってね」

 

「変わった……わね」

 

「変わるさ……素敵な人に出会うと…」

 

 

1度静寂が訪れる。

 

 

「話を戻すよ。アタシに動く気は無い。けど、アタシの所が勝手に動いてアンタに怪我させた。それの責を果たす。本当はこれまでの狼藉を烈怒帝瑠除名で果たそうと思ったんだけどね……ケジメとして何をしたらいいかね?」

 

教室に後ろ手を縛られた女性生徒達が入ってくる。

 

「アンタを怪我させた奴らは捉えておいた。仕返しは自由にしていい。何だったらそいつらも除名処分したらいい。それでも気に食わないならアタシら全員土下座するのも……」

 

「いらないわ。それよりは折角仲良くなったんだからチームに残ってもいいんだけどね」

 

 

「それはできない……それにしてもお咎めなしとは随分甘くなったもんだね」

 

「私は元から石矢魔の女生徒を守りたかっただけよ」

 

「そうだったね……じゃあ、さよなら。大森によろしく言っときな」

 

「はい、ありがとうございました。2代目」

 

 

「少し待ってください」

 

それを止めたのは周りにいた数名の女性生徒。

 

「アタシらも烈怒帝瑠を止めます。それで林檎さんのチームに入ります。どうか許してください」

 

「いいわよ」

 

「どうかっ!……え?そんな簡単に」

 

「2代目がいなくなって素直に貴女達が従うか少し心配はあったのよ。それに貴女達は林檎のチームでしょ」

 

 

「アタシもいいよ。どうせ1人でチームは作れないんだ。アンタ達がいいならそれでいいわ」

 

「それで何時でも最強のレディースチームの座を奪いに来なさいよ。その時は寧々達が相手をするわよ」

 

「その時は正々堂々やろうか」

 

「2代目貴女……正々堂々が似合わないわね」

 

「安心しなさい!正々堂々アタシらしさ全開で行ってあげるわよ」

 

「魔女ね」

 

「魔女さ」

 

 

烈怒帝瑠の内部抗争は簡単に終わった。

 

 

しかし、烈怒帝瑠と新チームは近い未来確実に争う時が来る。

その時こそ真に内部抗争が始まるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第六十八将 鷹

お久〜


煙草、火がつかず。

 

殺六縁起と銘打たれた一角が抗争にならず、沈静した。

 

三王の1人が戦わず、三怪も1人落ちた。

 

三怪は上と男鹿だけ見て、三王を軽視している。

 

動くには充分な理由だろう。

 

 

動いたのは鷹宮。

正確には自身の智謀を売りつけた姫川だ。

 

そして東邦神姫最強の男、東条の敗北。

 

それを境に勢力図がガラリと変わる。

帝王鷹宮の台頭。

石矢魔の少数勢力の実に八割が鷹宮の元につくことになる。

 

帝政石矢魔時代の幕開けとなった。

 

 

 

姫川は元々策略家気質だった。

鷹宮を頭に立てた手腕は凄まじかった。

赤星、鳳城、市川による少数勢力1割の吸収により、少数勢力全てとは言わ無い。

しかし、石矢魔の少数勢力9割が全て帝王鷹宮の物となった。

 

そして聖石矢魔組はテニスコートへと追いやられていた。

 

「たった数日で恐ろしいねー」

 

「何を呑気笑っているかー!!!」

 

城山先輩に突っ込まれている夏目先輩。

 

今下手に動けば食われるのはこちら。

姫川の手腕ならこちらの出方は100%読める事だろう。

 

実力者たちは呑気にテニスをしながら笑っている。

 

「でも姫川のことだから素直に堕天組に入っているとは思えないわ。裏切った振りをしてる線も…」

 

「それはねーと。王臣紋とか言ったか?姫川の腕に出てたぜ」

 

「東条がやられるなんてそれくらいしかねーだろうしな」

 

「油断…しただけなんだ。次は倒す…」

 

「そういやアイツはどこだ?、男鹿」

 

 

「アイツ?」

 

「古市だよ。1人で行動したら危ねーって言ったのアイツだろ」

 

「古市なら風邪で家で寝込んでるらしいっす!」

 

「由香…なんで知ってるの?」

 

「鳳城先輩が言ってたっす!」

 

「なんで二代目が!?」

 

「そりゃもう怪しーすっよ。アレはもうCとか…」

 

「やめなさい」

 

「まあ、アイツ弱いし、家から出ない方がいいだろうけどな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピチョンッ……

 

蛇口から水滴が落ちる音がする。

 

そんな小さな音でも他に音がしない空間なら目を覚ますには充分な音だった。

 

夜の学校。

 

そこで俺は縄で縛られていた。

 

「そういえばお前を拉致るのは2度目だったな…古市」

 

「姫川先輩……雑な招待ですね…」

 

コンビニ買い物に出ていたら姫川をリスペクトした集団、通称姫ラーに襲われた。

 

「姫川、こんなやつで男鹿が動くのか?ただのモヤシじゃねーか」

 

「動くさ、必ずな」

 

「私も調べたところ、実力は一般人並ですが小学生からの付き合いという事で相棒というポジションにいるようです」

 

なんかだいぶ毒舌ですけど…

 

「相棒?運がいいんだね。小学生に男鹿と出会えて(笑)」

 

えらいキャラおるな。

トランプマン?

 

「それにしても見事な手際でしたな、参謀どの」

 

「おい、縄を解け。俺と戦え、勝ったら逃がしてやる」

 

「毒島さ〜ん、そいつ一般人くらいしか無いんでしょ。勝てるわけないでしょ〜」

 

「殺さないでくださいね。今殺しては人質には使えませんから…王臣紋も無く、悪魔との契約もない」

 

「そんなに弱いのか…俺はどーにも信用出来ねーんだ。やっぱこいつら何か企んでるぜ。なあ、鷹宮」

 

名前を呼んだ方向を見ると学ランを着て、髪を揃えた不良校には珍しい髪型をしている。

 

「俺はなんでもいいですよ。本気の男鹿とやれるなら」

 

「おいっ!鷹宮!!」

 

それだけ残して教室から出ていこうとする。

 

「本気の男鹿というか強いやつだろ。実力が拮抗した方が楽しいから」

 

その言葉に鷹宮はピタリと止まる。

 

そして言葉を吐いたのは銀髪の学生……まあ、俺だ。

 

 

「へえ…」

 

「こいつ!縄で縛られながら何をカッコつけてやがる」

 

「この程度で拘束したと思い込んでるのがまず…なぁ」

 

ブチリ

 

その音で縄はスラッと床に落ちる。

 

「誤算は3つ。1つ目は俺が弱いというのがブラフでしか無かったということに気が付かなかったこと。まあ、小学生の時から男鹿に隠し続けてたし仕方ない」

 

姫ラーが数人突っかかってくるのをいなし、窓から落とす。

大丈夫だ。

漫画表現で死人は出ない。

 

「2つ目は藤。鷹宮お前は自分と拮抗した相手と戦いたいばかりに藤と戦うことを避けた。だから気が付かなかった。既に藤が負けていることに。茄子が食われるとっくの前に藤率いる神曲組は既に落ちている」

 

「!?」

 

「3つ目は勢力図。姫川先輩の手腕により少数勢力の9割が帝王鷹宮の物になり、帝政石矢魔となった訳だが……いくら雑魚を取り込んでも烏合の衆。吸収するなら茄子とか行っとけばよかったな」

 

「貴様ァ!」

 

毒島と呼ばれた男が突っ込んでくる。

同じくいなしてもいいが、一応幹部のようだし、丁寧に倒す。

 

一撃で。

 

 

人差し指を立てた状態でパンチする。

拳は肉に埋まる。

皮を突き破らないのが秘訣だ。

 

毒島は意識が刈り取られ、沈黙する。

 

 

「姫川先輩、すみません。当初の計画じゃ、ソロモン商会から色々聞きだして、男鹿が鷹宮に勝利して一件落着って運びだったんでしょうけど…」

 

それを聞き、他の鷹宮の王臣達が焦る。

 

「よく分かったな…」

 

計画に支障を来たしたのか、姫川先輩はあっさりと白状する。

 

「まあ、色んなところに目があるということで…それに姫川先輩も散々煮え湯を飲まされてましたし…」

 

「そっそんな!?姫川!それでは王臣紋は!」

 

「技術が学べればなんとでもなるでしょ。ソロモン商会も悪魔への対抗の為の組織なんだし。悪魔を騙すものが作れないはずもない。姫川財閥ならなおさらだな」

 

「じゃあ、姫川。君は聖組に戻るのかい」

 

鷹宮が姫川に話しかける。

 

「ああ、計画が破綻したからな。同じ手が2度通じるとも思えねーし、真っ向からやるしかねーだろ」

 

「姫川先輩が真っ向からとか似合わないっすね」

 

「言ってろ」

 

「そう……か。なら、ここは見逃してやる。次にあった時は聖組と堕天組の全面戦争だ」

 

そう見た目とは裏腹に強い口調でこちらに啖呵を切る。

 

姫川先輩は何も言わずに教室から出ようとする。

誰も止めないのは鷹宮が逃がすと言ったから。

それに従う王臣達も従者としての教育が成されているのだろう。

 

しかし…

 

 

「逃がす?聖組と堕天組の全面戦争?そんなこともう起きねーよ」

 

「何?」

 

「藤は堕ちた。茄子は喰われた。後は聖組と堕天組。聖組がメインなのは当然だ。なら次に落とすのは堕天組。当然だろ?」

 

「古市……とか言ったか?お前は何を言って…」

 

 

ドカァッンッ!!!

 

 

一際大きい音が学校全体に鳴り響く。

 

「本来なら俺がケータイ忘れて男鹿が来るんだけどさ。俺がケータイ持って行って今日帰れないって言ったら男鹿は絶対今日は来ない。誰も呼ばないなら聖組は1人も来ない。なら動くなら今日だろ」

 

「伝令です!」

 

姫ラーが教室に駆け込んでくる。

 

「裏門から魔女学が!」

 

「なるほど…魔女が戦わなかったのは既に吸収していたのか…だけどそれは少し気が早いんじゃないかな?第一魔女学には悪魔が」

 

「伝令!正面から鯖徒組が現れました!」

 

「!?」

 

「だから情報が古いんだよな〜それにメインは聖って言ってるだろ。俺は既に聖組じゃないんだよ」

 

「伝令!屋上に火炙組が現れました!次々に校舎を制圧しています!!」

 

「!!?」

 

「さあ、総力戦だ。俺たち聖天組と堕天組のな」

 

そう言って手に刻まれた契約の証を鷹宮へと見せつける。

 

「そして鷹の死骸を持って、聖組に宣戦布告する。俺が、俺たちが石矢魔最強だ」

 

「おもしろ……かかってこい」

 

「かかってこい?まだ帝王のつもりか。これは下克上じゃない。これは神からの制裁だ。せいぜい頑張って抵抗してみろ」

 

 

 

 

 

 



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第六十九将 鷹狩り

 

「なんで三王が勢揃いしてんだ!?」

 

「まさか三王が同盟を!?早く幹部たちを!」

 

 

校舎のあちこちで悲鳴が鳴り響く。

 

「神とは思い切ったな。お前らは手を出すな。こいつは俺がやる」

 

鷹宮は懐からワックスを取り出し、髪を固める。

 

「王臣対王臣か。それにしては駒が弱いな。王臣全員呼んで多対一でやった方がいいんじゃないか?」

 

こんな風に強キャラに挑発する日が来るなんて…

予定はしていたが実際にすると震えるな。

 

感動と緊張で。

 

 

「鷹宮…」

 

「何を心配している?お前らはさっさとこいつの王臣を倒してこい。いつも言っているだろう?俺に必要なのは0か1、使えないか使えるかのどちらかだ。分かったらさっさといけ!」

 

鷹宮の言葉で残っていた姫ラーと王臣は廊下に出る。

 

「お前がなんの悪魔と契約したかは知らんが俺のルシファーは強いぞ」

 

「七大罪の中でも特に強い三強。ベルゼブブ、サタン、ルシファー……か」

 

「そうだ!男鹿は早乙女から魔力の引き出し方を学んだそうだが、俺が学んだのは膨大な魔力の抑え方だ!」

 

その言葉と共に一気に間合いをこちらに詰める。

速さにものを言わせ、連撃を叩き込む。

 

「どうした!藤をやって調子にでも乗っていたか?あの引きこもりはどうやら力を落としていたみたいだな。お前みたいな奴にやられるとはな!」

 

そのまま窓に追いやられ、蹴り飛ばされる。

壁と窓を破壊し、校庭に飛ばされる。

 

啖呵を切っていた割にこの程度かと少し残念そうな顔で教室から覗く形でこちらを見る。

そしてその目は強く開かれる。

 

吹き飛ばした俺は悠然と立っている。

攻撃により服が破け、服の意味を成していない。

 

そんな俺の周りには鷹宮の王臣達がいる。

 

それは先程教室から出ていったトランプマンもいた。

そして全員倒されていた。

 

俺の王臣によって足蹴にされ、成果を見せるかのごとく俺の前に差し出されている。

 

「なっ!?」

 

驚く鷹宮は後ろからの攻撃に反応出来ず、校庭に落とされる。

 

「ぐっ!誰だ!」

 

校庭に落ち、教室を見る。

そこには男鹿……によく似た男。

火炙組頭、赤星貫九郎。

 

炎を纏い、手にある7の数字を輝かせながら見下ろしていた。

 

「鷹は堕ちた」

 

その言葉に鷹宮は振り返る。

 

ボロボロの服を着ている俺がいる。

俺は上半身の服を脱ぎ、近くにいる鳳城林檎に渡す。

 

そして全身にある契約紋を輝かせる。

 

手のひらから順に起動したそれは腕を伝い、心臓に伸び、そこから身体中へと広がる。

足の指先から額までくまなく、紋章が紡がれる。

それは一つ一つは違う紋章。

 

それが強く重なり、時に交わり、ひとつの巨大な紋へとなる。

 

そしてそれを護る9名の王臣。

そこに赤星も加わり、10名が立ち並ぶ。

 

そしてその配下が校舎や校庭、正門を超えた先にズラリと並んでいる。

 

「ちっぽけな、帝国だったな」

 

「お前は……何者だ?」

 

「俺?古市貴之。男鹿の親友でこれから離反して、全部巻き込んだ大喧嘩する男だよ」

 

 

鷹宮が最後に聞いたのはその言葉だった。

 

聖天組と堕天組。

 

その総力戦の決着は聖天組頭、古市貴之による1発のパンチだった。

 

古市が鷹宮を攻撃した回数はこの1回のみ。

 

しかし、鷹宮が意識を途絶えされるには充分以上な攻撃だった。

 

 

 

 

 

 

「姫川先輩」

 

「………」

 

この場所唯一の聖組。

姫川はその鮮やかな手腕とその圧倒的な力に言葉を詰まらせていた。

姫川が手に入れた悪魔と契約者のパスを切る装置。

それが対鷹宮、そして対藤の切り札になるだろうと考えていた。

 

しかし、古市には効かない。

紋章を見たがその数は少なく見積って100。

たった一体の悪魔のパスを切ったところでなんら変わらないだろう。

1番強い悪魔を切ってようやく…いや、それでも届かないだろう。

 

「姫川先輩にはメッセンジャーを頼みたいんですよ」

 

「先輩を顎で使うとは大きく出たな」

 

「あはは。また、弁当でも持っていきますかね?」

 

「要らねーよ。これまでも弁当持ってきてくれたしな。……何を伝えればいい?」

 

「宣戦布告を。男鹿だけでなく、聖組の全てを聖天組の全てで倒す。そして石矢魔最強の名を貰う」

 

「そんなもんに興味があったとはな」

 

「決して軽い名じゃないでしょ。それにそれくらい目標にしないと男鹿に釣り合わない。親友としてじゃない」

 

そう言って左手に刻まれたベルゼブブの王臣紋を姫川に見せる。

 

そこには0の数字があった。

 

「古市…!お前…」

 

「これが出たのはアイツがベル坊と契約した日。俺はずっと王臣だった。だからこそこれを消すことが何よりも…」

 

バキリ!!!

 

0の数字にヒビが入る。

亀裂は紋章に広がり、キラリと光を放ち崩れていく。

 

 

「何よりもの証明となる」

 

その言葉と共に完全に0の数字は消えてなくなる。

 

代わりに十字架をあしらったかのような紋章が現れる。

それは両手の甲に現れ、自身の力を誇示するかのように光を放つ。

 

「決別の時きたれり……」

 

捕まえた時間が遅かったのか、思ったよりも時間がかかっていたのか日の出が古市達を照らす。

 

日差しを眺めながら、俺は呟く。

 

「喧嘩しようぜ………男鹿」

 

 

 



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第七十将 宣戦布告

 

鷹、堕ちる。

 

その噂は瞬く間に広まった。

 

堕天組は1人残らず病院送り。

何があったかは姫川の口より語られた。

 

それにより校内の勢力図は一新された。

聖組である男鹿達はテニスコートから教室へと戻り、石矢魔での騒動は一応残った聖組が天下を収めた。

そういう形で幕を1度閉じたのだった。

 

何とも煮え切らない形で。

 

その決定に不良達は文句しか無かった。

しかし、それを告げる相手である聖天組の姿が無かった。

 

元聖組である古市貴之。

彼とその勢力下である聖天組は1人残らず姿を消した。

 

姫川をメッセンジャーとして扱い、宣戦布告を行ったというのに当の本人達は一切学校に姿を見せない。

 

日本一の不良校と名高い石矢魔高校は静寂に包まれていた。

 

 

「男鹿…」

 

邦枝葵が声をかける。

かけた相手である男鹿は返事もせず、歩き続けている。

 

古市が拉致され姿を消したあの夜…男鹿は呑気に家で寝ていた。

魔力の発生を感知し、高校へ向かったがその時には倒された堕天組を病院へと搬送する救急車の群れがあっただけだ。

 

そして学校へつくなり、姫川が現れた。

 

 

「男鹿……遅かったな」

 

「姫川……こりゃなんだ?お前の作戦の仕業か?」

 

「お前を使わずにやるなんて無理に決まってんだろ。やったのは古市だ…」

 

「古市が?……ありえねー。確かにアイツも頭いいけどこんな事やれる訳…」

 

「古市の言う通りお前も知らなかったんだな……小学の時からつったら最低でも5年は演じきっていた訳か……俺も人の事は言えねーが親友のお前に対して嘘をつくなんてな…それもこんなにどデカい嘘を…」

 

「何言ってんだてめー」

 

「古市の手に王臣紋があった。それも0のな」

 

「!?」

 

「0なんて見たことねーからそこらへんはあの女悪魔に聞けばいい。古市は俺の目の前で王臣紋を破壊してみせた。アレはたった一人を王に定めて一生を誓うもの。それを破壊するたぁ、本気なんだろうよ」

 

「古市……」

 

「決別だとよ。……お前たちはずっと2人で生きて来たようだが、真に対等じゃ無かった訳だな」

 

「古市はどこ行った?」

 

「知らねーよ。だがまぁ、準備を整えるって言ってたな。聖組と聖天組の大喧嘩だとよ。こっちも声を掛けなきゃらなねぇ」

 

そう言って姫川は学校を後にした。

 

残された男鹿は辺りを見渡す。

倒された不良共でごった返す校庭。

 

そんな中担架で運ばれてくる1人の不良が。

堕天組総長の鷹宮だった。

 

昨日の昼間に乗り込んだ際に放ったオーラ。

それが見る影も無かった。

 

そんな光景を男鹿は呆然と眺めていた。

 

 

 

 

 

家に帰り、古市の事をヒルダに話した。

 

王臣紋の0はヒルダも知らず、離反した事を聞き、どこかへと姿を消した。

 

学校にいってとっちめてやろうと思った。

しかし、学校にも古市の家にも、通っていたゲーセンにも肉屋の前にも古市はいなかった。

 

 

男鹿は欠けた何かに対して行動を取れず、ただ呆然と学校へと通っていた。

 

下校時に河原を歩いていると邦枝に話しかけられる。

それに反応することもできず、ただ、歩く。

 

「男鹿!待ちなさい。アナタらしくないわよ」

 

「………」

 

「古市君が裏切ったなんて信じられない。何か絶対あるはずよ!親友の貴方がそれを信じなくて…」

 

「……」

 

「しっかりして!男鹿がそんなんじゃ、みんなも……?」

 

男鹿は足を止める。

止めた男鹿に邦枝葵は不思議そうな顔をする。

 

しかし、直ぐに男鹿の目線の先にいる男を目にする。

 

それは騒動の発端。

 

宣戦布告をした古市だった。

 

 

彼はたった1人で男鹿の前に立っていた。

 

「よっ、男鹿………時間あるか?」

 

 

 

 



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第七十一将 宣戦布告2

「古市…お前どこいってたんだよ!」

 

男鹿は怒鳴りながら襟を掴み上げようとする。

古市はスルリと躱す。

 

「ちょっと野暮用でね…アメリカの方に行ってたんだよ」

 

「アメリカ?何のためにそんなとこに…」

 

「ベル坊の母親に会いに」

 

「っ!?」

 

「ソロモン商会ってとこに捕まってたんでな。さっきお前の家に預けて来たよ。帰ったら合わせてやりなよ。説明は既にしてある」

 

「なんでお前がそんな事を…!!」

 

「お前と喧嘩する為だよ」

 

「それは姫川のヤローから聞いた。俺が聞いてんのはなんでこんな回りくどいしてやがんだ…喧嘩してーなら正面からやり合えば…」

 

「それはお前が弱かったから」

 

「!?」

 

驚いたのは邦枝葵だった。

石矢魔最強の男を前にして古市貴之は弱いと言い放った。

それに驚きを隠せ無い。

 

 

「最初にお前が敗れたのはもう随分前だ。東条先輩にやられた時だったな。東条先輩は強い……けど、魔力を使わない俺でも倒せた。ちょっとした動揺程度で力が鈍るほどにお前の精神はまだまだ惰弱だった」

 

東条を倒し、石矢魔高校の頂点になった男鹿。

あの時の戦いに一つだけ違和感があった。

身体を攻撃した際に東条が1度苦しそうな顔をした。

まるで怪我をしている場所を思いっきり殴ったかのように。

あの時の男鹿は無我夢中だった。

アレも単純に自分の攻撃がクリーンヒットしたのだと。

まさかあの戦いの前により強いものと戦っていたと男鹿は知らなかった。

 

「その後は聖石矢魔に行って三木に負けたよな。油断もあったろう。三木に本気を出すことにストッパーがかかっていたかも知れない……けれど、お前は技に敗れた。あの後あたりからお前は単純に力で殴るだけじゃないと学び始めた」

 

スポーツに強い六騎聖。

その最強である出馬の技を真似した古市。

喧嘩が弱くてスポーツができるなんてことあるのか。

そこらの不良にやられるなどあるのだろうか。

 

「その後は悪魔野学園とか来てな。力なんてないお前はボコボコにされて、ヒルダさんもやられた。あの時はみんな頑張って特訓したよな」

 

古市も特訓した。

しかし、戦う事は殆ど無かった。

相手の攻撃を回避する事に長けていた。

話でめんどくさい時も逃げるのは上手かった。

いつの間に姿が無くて、いつの間にかいた。

 

「その後は割と平和で沖縄行ったり、クリスマスイベントやったり、年越し会も楽しかったな…」

 

その頃から風引いたり、怪我したりも増えた。

バイトの怪我とか、寒くてとか。

そんな事を言っていた。

沖縄行った時もいつの間にか入院するほどの怪我をおっていた。

 

「年明けて校内戦争真っ只中だったけど、そろそろ先輩たちも卒業とか受験勉強とか就職とかあるな……」

 

 

春になれば石矢魔東邦神姫のメンバーが卒業する。

そうなれば大幅なグレードダウンになるだろう。

それでも男鹿は特に気にしていなかった。

 

幼少期から一緒に生きて、隣に立っている親友がいたから。

 

 

「だからその前に大きな祭りをしようと思ってな。俺とお前だけじゃない。お前がここまで強くなったその集大成だ。先輩達や他の高校も巻き込んで思いっきりやり合おうぜ」

 

「………古市」

 

「なんだ?」

 

「お前……ずっと嘘をついてきたのか?」

 

喧嘩をしたい理由を聞いた。

他の奴らを巻き込む理由も聞いた。

どうせ、2人でやり合っても他の奴らは見物に来る。

聞きたい話はそこだった。

 

「嘘はついてない。話さなかっただけだ」

 

「そんなのはっ…!」

 

「同じだって?聞かれたら話すつもりだったよ。他でもないお前になら」

 

今更な話だ。

聞けば話したかもしれない。

そんなのは。

 

「お前は聞かなかった。おかしな話があっても。それが亀裂を産んだのかもな。もしくは俺が産まれる前からこうなる様になっていたかもしれねぇ」

 

「何言ってんだ…」

 

「俺とお前にはもう1つ因縁が生まれた。それを果たすも果たさないも俺の自由だったが、これは俺のケジメでもある……」

 

そこまで言ったところで古市の隣に女性が現れる。

 

「おっお前は……アンジーさん!」

 

「アンジェリカです…」

 

時空転送悪魔アランドロンの娘、アンジェリカだった。

 

「男鹿、1週間後。俺は登校する。その時にやり合おう。せいぜい味方は多くな。こっちも数を揃えなるからな。三怪はオススメだぞ」

 

「おいっ!待て!!!」

 

古市に向けて手を伸ばす。

しかし、アンジェリカと手を握る古市の姿は掻き消えた。

どこかへと転移したようだ。

 

河原には最初の通り、男鹿と邦枝だけが残った。

 

 



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七十二将 それぞれの一週間

時間の合間に投稿していきます。
内容はできるので書けたら書いて投稿していきます。
終わりまで走れるかな?
お楽しみくださいませ…


 

週の初めである月曜日。

不良高である石矢魔はほとんど朝から生徒がいないのが日常だが、今日に限っては違った。

 

朝からほぼ全員が登校し、各教室で待機していた。

 

この学校の事実上の勝者である男鹿の統治。

そしてこれからの学校の行方を。

 

例に漏れず、一つの教室に聖組と呼ばれる石矢魔の勝利者たちが一堂に期していた。

その面持ちは決して勝者と呼ばれるものではなかったが…

 

「つまり完全に敵対したってわけだな」

 

顔に傷を持ち、突撃隊長とも呼べる神崎が最初に言葉を発した。

 

「今学校に来ているのは完全に掌握した。人数だけ見ればこっちの勝ちは確定だな。意味はないが」

 

茶化すようにリーゼントの男、姫川が答える。

 

「そういえば喧嘩の決着つけてなかったからな!思いっきりやってやるよ!」

 

以前の石矢魔最強の東条は拳を手に当てる。

 

「どうするの…?男鹿」

 

紅一点の邦枝は男鹿に尋ねる。

全員の視線が一人に向かう。

 

「俺は……すみません、電波が途切れました。すみません」

 

「「「「誰だーーーー!!!!」」」」

 

男鹿のコスプレをした2mを超えたおっさんことアランドロンはそう答え、全員が突っ込んだ。

 

「度々失礼します。アランドロンでございます。男鹿様は現在遠いところにおりまして代わり私がお相手しています。しかし、電波が悪いので声が途切れ途切れですね」

 

「遠いところってこんな大事な時にどこ行ってやがんだアイツは!?」

 

「男鹿様はベルゼぼっちゃまのお父上に呼び出され、魔界へ向かいました」

 

「「「!?」」」

 

「古市様に関することで急を要しましたので…そして必ず一週間後の決戦までにはお戻りになられると…それまで石矢魔を頼んだとのことです」

 

「アイツはまた勝手な…」

 

「男鹿らしいな!」

 

「では、私は失礼します。魔界と現世を繋ぎ続けるのは疲れますので…」

 

そう言ってアランドロンは教室から出ていく。その際に廊下から悲鳴のようなものが聞こえた。

 

「結局何も話は決まらなかったわけだな…」

 

「こんなとこに閉じこもってもしょうがねえ。俺は俺で準備させてもらうぞ」

 

「俺も虎さんに顔出せって言われたから。じゃーなー」

 

そう言って神崎と東条は教室を出ていく。

それに合わせて城山と夏目は神崎に、東条には相沢と陣野がついていった。

 

「それもそうね。私もそれまでおじいちゃんに修行つけてもらわないと…」

 

そう生き込んで教室を出ようとする邦枝。

 

「邦枝、一つ忠告だ」

 

そんな邦枝を姫川が止める。

 

「俺は仲間いないし、城山や夏目が裏切るのはほぼ無いだろうから何も言わなかったが、お前のところは気をつけろよ」

 

「何の話?」

 

「他の勢力に味方することはあり得ないが、今回は他でもない古市が相手だ。お前の烈怒帝瑠はそこが気になるからな。二代目鳳城林檎のことも考えると…」

 

「馬鹿にしないで。例え古市くんが相手だろうと私たちは…」

 

「姐さん!会合は終わりましたか!?千秋が…!!」

 

そこへ大慌てで烈怒帝瑠の飛鳥涼子と梅宮薫が教室に入ってくる。

 

「忠告が遅かったみたいだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少し戻り、石矢魔のとある教室。

ここは女生徒だけがおり、男子生徒の侵入は禁止されている。間違ってでも侵入すれば烈怒帝瑠から処断されるだろう。

そんな教室はいつになくピリピリしていた。

 

「千秋…アンタ本気で言ってんのかい?」

 

「はい寧々さん。私は烈怒帝瑠を抜けます。そして貴之のところに合流します」

 

「これから抗争する相手のところに向かうって意味わかってんのかい?」

 

「はい」

 

「いくら仲間だったとしても容赦はしない。それに今からここで襲われても文句は言えないんだよ」

 

「もちろん覚悟してきてます」

 

「これは裏切りだよ。あの留年女の鳳城林檎と同じようにあんたも裏切るのかい…?」

 

「はい」

 

「千秋アンタっ…」

 

「寧々さん!」

 

「!?」

 

「葵姐さんに助けてもらったこと、寧々さんたちによくしてもらったこと、烈怒帝瑠に入れて楽しかったこと。それを忘れたわけではありません。ですが、私は私自身の心に従います」

 

そう言って谷村千秋は席を立つ。そして教室を出て行こうとする。

そんな仲間…いや元仲間は谷村千秋に言って欲しく無いのか道を譲れていない。

 

「あんたらどきな。うちの総長のお通りだよ」

 

そんな声が教室の外から聞こえる。

 

そこには二人の女性がいる。

一人は特攻服をきた長髪の女性。もう一人は着物を着た女性。

 

「何あんたら!」

 

「私は糸井雫。こっちは池島春香。神聖烈怒帝瑠のダブル副長さ」

 

「糸井に池島って初代メンバーの…それに神聖烈怒帝瑠って…!?」

 

「あのひとだけ宣戦布告して私がしないわけにもいかないでしょう。私は改めて烈怒帝瑠の大森寧々に宣戦布告します。」

 

糸井雫から渡された特攻服に袖を通す。

特攻服には神聖烈怒帝瑠の刺繍と数字の6の文字がきらりと見えた。

 

「私たちは神聖烈怒帝瑠。烈怒帝瑠の名をかけて一週間後抗争を行う。私たちが勝てば烈怒帝瑠は無くなり私たちが烈怒帝瑠となる」

 

 

「千秋!!!」

 

「さようなら寧々さん。次会った時は……容赦致しません」

 

その目には覚悟の炎が灯っていた。

 

 



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